○安恒良一君 私は、
日本社会党を代表して、
総理並びに関係閣僚に
国民生活及び
福祉に関する問題を中心に質問をいたします。
総理は、
施政方針演説で「
変化する
社会への備え」を力説されました。八〇年代後半から二十一
世紀にかけて、
わが国には急速な高齢化と低
成長への移行といった激しい
変化が押し寄せてきますが、そうした情勢を前に、
政府は
国民生活の安定と
福祉の維持
向上にどのような備えをされるのか、まず
総理に伺いたいと思います。
いま多くの
国民は、「
福祉切り捨て」とか「
年金の崩壊」とか、さらに「環境の汚染と
破壊」といった声に代表されるとおり、生活と
福祉の先行きに非常な不安を抱いており、悪い方へと
変化する生活基盤に対してどう備えたらよいのか迷っているのではないでしょうか。果たして
総理の
演説はこうした不安にこたえたかどうかと言えば、「
国民の生活は最優先順位で
政府が守ります。何も心配は要りません」、この一言が
施政方針演説になぜないのか、きわめて大きな疑問を感じるものであります。
総理、
変化する「
社会への備え」を
国民だけに訴え、押しつけながら、
政府の
責任は棚上げしたとの批判に、あなたは一体どう答えられますか。五十七
年度予算は
防衛費の七・八%の異常
突出が目につきますが、これは
経済大国の国際的
責任だと
説明されております。しかしながら、
経済大国の
責任と言うならば、これを生み出した「
国民一人一人の英知と努力」に対しどう報いるというのか、
総理、あなたに問われているのではないでしょうか。
政府は、
国民生活の重点が量的
拡大から
質的充実への
時代になったという認識をお持ちだと思います。しかし、かつて
国民生活白書が掲げた「健康、安全、快適、創造、平等」といった生活の質を充実するための
目標は、
政府の言う
国民一人一人の「自立自助」の努力だけではとうていこれを実現することができません。その
理由は、これらの
目標に欠かせない
条件や手段を
国民がお金を出してそれぞれに買い調えるということができないからであります。たとえば、汚染されない水や食物、公共交通、
保健医療、さらに介護者の派遣などのシステムが必要となりますが、これらはいずれも
個人個人の努力で調えることはとうてい不可能であります。これらはいずれも
国民共同の生活手段として、公的に供給するというのが近代国家の任務ではありませんか。そこで端的にお尋ねいたします。
総理、これらの生活手段を整備する
責任が国にあることを、あなたははっきりお認めになるのですか。
総理のお答えをいただきたいと存じます。
社会共同の生活手段については、国の
責任で公的に供給、整備するという原則から見ますと、五十七
年度予算の
社会保障関係費の
伸び率二・八%という措置は、万人の目から見て奇異であり、異常であるとしか言いようがありません。
総理、あなたは
行財政改革と
福祉の関係を一体どう
考えているのですか。本来
政治の基本目的である
福祉が、あなた方にとっては行
財政の手段にすぎないのですか。
自民党政府はハンディキャップを持った人々の暮らしを削ってまで戦闘機や駆逐艦をふやすのですか。
行財政改革と
福祉の関係について
総理の基本理念を問わないわけにはまりません。
昨年は国際障害者年でしたが、その
目標である「完全参加と平等」にいたしましても、緊縮
予算だからといってこれを後戻りさせてよい性格のものではありません。この
目標を
達成するために、私たちは、障害者の
雇用拡大、障害児への普通
教育の開放、障害者
年金及び最低賃金による
所得の保障及び移動・交通の自由、以上四つを最
重点課題として主張してまいりましたが、これらについて今後どう
推進されるのか、いわゆる十カ年
行動計画との
関連で明らかにしていただきたいと思います。
なお、これにあわせてスモン患者、とりわけ投薬証明のない患者の早期全面救済についても、この機会に
方針を承りたいと存じます。
社会保障
予算に関して、厚生大臣、大蔵大臣にお尋ねをいたします。
国民健康保険などに対する自治体
負担への振替措置は、今後きっぱりあきらめると理解してよろしいのでしょうか、まずこの点についてお尋ねをいたします。
また、
年金給付に要する国庫
負担額も、これまでは八%台で推移してきた
伸び率がわずか一%弱に抑え込まれ、その上、厚生、
国民両
年金の
物価スライドの
実施時期が一カ月繰り下げられたのであります。しかし、
財政の帳じり合わせにお年寄りまで利用しようというこの
姿勢は、血も涙も通わない、まことにつれない仕打ちと言うべきではないでしょうか。
昭和四十八年、
年金制度にスライド制が初めて導入されて以来、
消費者物価の
上昇に追いつこうと努力してきたにもかかわらず、早くもこれが一歩
後退させられたのであります。従来の経緯を尊重して、直ちに
改善すると約束すべきと
考えますが、
総理、いかがでしょうか。
年金問題では、二十年後、三十年後の長期
年金財政の
見通しと計画をどのように策定するかが欠かせない問題であり、これがないため、
国民の間には
年金の将来について不安感があふれているのであります。言うまでもなく、
国民は老後の生活設計に破綻が生じては困るのです。この種の
改革には、長期的な
見通しのもとに段階的に
実施に移していくという配慮が必要であります。この際、
年金制度の長期計画について明確な
方針を示していただきたいと思います。
さらに、五十六
年度に十三兆円に達すると見られる
国民医療費について、一体、
総理並びに
関係大臣はどう
考えられておるのか、お尋ねしたいと思います。
国民は、いま
医療の
現状に不安と
不満を抱きながら健康な生活をみずから取り戻す実践を始めております。その動きの中で培われているのは、成人病、慢性病が、薬づけ、検査づけのいまの
医療では予防も治療もできはしないという見きわめてはないでしょうか。すなわち、日常生活における自然とのかかわり方、食物のとり方、あるいはまた運動と休養のバランスなど、要するに日ごろの暮らし方を変えるごとによって健康を取り戻そうとする動きが活発になってきたと思われるのであります。また、一九七七年にアメリカ上院栄養問題特別委員会が「不治の病と食事との
関連」と題するレポートをまとめ、また国内では「食は医なり」との
考えが広がって、熊本県菊池郡などにこれを実践する公立の
医療機関さえあらわれております。
そこでお尋ねしたいのは、第一に、
政府が進めてきた健康づくり
対策及びこれから手をつけようという老人
保健事業においては、成人病、慢性病の予防と治療にかかわる以上のような動きをどう評価されているのか、特に
老人保健法案のどこでそれを裏づけようとしているのか、明らかにしていただきたいと思います。
第二に、
医師や
保健婦などが患者と十分に話し合って指導しても、投薬や検査をしない限り全然採算が合わないという現行
制度をどう打開する所存か、承りたいと思います。特に、現行の点数出来高払い
制度をどのように見直すのか、この点は大蔵大臣からも
答弁をいただきたいと存じます。
次に、
社会保障と
関連して、産業用ロボットの導入が
雇用にどのような
影響を与えるかについて、
政府の見解をお尋ねしたいと思います。
わが国のロボット設置台数はすでに七万七千台以上にも達し、
世界の産業ロボットのうち、実に八〇%を保有していると言われています。最近これがきわめて広範な産業分野に導入されつつあり、しかもロボットがロボットをつくるという
時代を迎えようとしております。このホワイトカラーでもない、ブルーでもない、スチールカラーのロボットを導入した工場においては、現在中高年労働者を中心に
配置転換や人員整理が行われており、次の段階には当然、本格的な人員整理の強風が荒れ狂うことが
予測されております。したがって、この余剰労働力の吸収をどうするかが今後の
雇用政策の面での重大な課題になるでしょう。そこで
政府は、これからのロボット
社会において
雇用問題をどのように取り組むのか、またロボットの活用の望ましい方向をどのように描いているのか、
総理並びに労働大臣から所見を述べてもらいたいものであります。
また、
わが国のロボット化
社会は
高齢化社会と同時に進行してまいります。このまま放置すれば、
年金保険料を支払う労働者はロボット化によって減少し、他方、
年金受給者は高齢化によって増大し、その結果、
年金財政を逼迫させることは必至であります。そこで、ロボットを就業者とみなし、
年金保険料その他を事業主がロボットにかわって全額を支払うという
制度、簡単に言えばロボット税というような
制度を創設する必要があると思うのでありますが、この点は大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
総理は、
施政方針演説で「特に
婦人の活動に
期待する」と述べられております。国連
婦人十年の運動も後半期に入り、各国は次々に
婦人差別撤廃条約を批准しています。
わが国においても当然批准を急ぐべきと
考えますが、本
国会に提出される
予定がありますか。また、
雇用における男女平等は条約の中の重要なポイントであります。わが党はすでに法律案を提出しておりますが、
政府はいつ提案されるのか、お伺いをいたします。
次に、わが党は、パート等で働く
婦人の課税最低限度額を百二十万円とするように提案をしておりますが、
政府はどのようなお
考えをお持ちでしょうか、お伺いをいたします。
次に、
国民生活に不可欠な公共交通の確保についての問題であります。
第八十五
国会で、公共交通の確保のために必要な行
財政・立法措置を講ずるという決議を行い、
政府はこの趣旨に沿って誠意をもって努力することを約束いたしました。しかし、その後
政府は、何らこれを
実行しないばかりでなく、国鉄ローカル線の撤去や過疎
地域におけるパス路線の廃止等の問題が相次ぎ、
地域交通の確保に逆行するような措置をとっているではありませんか。このような
国会を愚弄した結果となったのは一体どこに原因があったのでしょうか。まず
政府に猛省を促して、お尋ねしたいと存じます。
政府は、これまで公共交通に関しては、「総合交通体系の中で検討する」ということを半ば決まり文句のように言われてきましたが、総合交通体系の
中身とは一体何だったのでしょうか。果たして体系的な計画があった上でそう言われていたのでしょうか。この際、率直に
答弁をしていただきたいと思うものであります。
こうした
政府の無
責任な
姿勢は、昨年出された運輸政策審議会の
答申によりさらに倍加すると思われてなりません。すなわち、この
答申の柱になっている
考え方は、
わが国の車
社会の
現状を追認し、交通事業者にはより一層の過当競争をあおり、過疎
地域における鉄道やバスはどんどん切り捨て、
政府が率先してマイカーの積極活用を奨励し、私的交通手段に
社会的
責任を負わす方向を目指していると思うのであります。このような
答申に反対し、生活交通を確保するための
地方自治体の決議ないし
意見書採択は、すでにこの一月二十七日現在で何と五百九十を数えております。さらに非常な勢いで全国的に広がりを見せておりますが、
政府は一体これをどう受けとめておられるのか、所感を承りたいと存じます。
公共交通をめぐる
政府の信じられないような無為無策ぶりは、国鉄の
現状に最も象徴的にあらわれております。国鉄の負債総額約十六兆円の半分以上は、何と工事に伴う借入金によるものであります。そして、いまなお毎年一兆円を超える膨大な工事費のほとんどを借金で賄い続けております。赤字を承知で東北及び上越新幹線、青函連絡トンネルをつくり、高い工事費や借料を国鉄に押しつけ、そしてまた新幹線開業に伴い並行在来線もまた巨額の赤字を出す、このようなやり方で赤字が累積しないはずがないではありませんか。その上、この
ツケをたび重ねての運賃値上げに回すのですから、国鉄経営にはまさに常識の一かけらもないと言わざるを得ません。
こうしたやり方を長年続けてきた国鉄経営陣、それを行わせた
政府と
自民党、国鉄経営の危機の本質はまさにこの点にあると言わなければなりません。
総理はそれを認めるかどうか、認めるとすれば今後どう改めるのか、
総理の
責任のとり方とあわせて、明確に答えていただきたいのであります。
公共交通がいわゆるモータリゼーション、とりわけマイカーの普及によって
後退していることは
周知のとおりであります。
わが国の自動車総数は四千万台を超え、人口当たりにしてアメリカに次ぐ
世界第二位になりました。しかし、
わが国の自動車業界は
昭和六十年には六千万台になることを想定しております。また、
政府も自動車道路
予算などでこれを支援するというのが
現状であります。
そこで、この際
政府の自動車政策の基本をお尋ねしたいのであります。
政府は、
わが国における自動車保有台数の限界をどの水準に置いているのかという問題であります。国土面積から森林面積等を差し引き、いわゆる可住地面積当たりの乗用車保有台数を国際的に比較いたしますと、すでに
日本は第二位の西ドイツの二倍、アメリカの十倍となり、断然トップ、超過密になっている事実を
政府は一体どう理解しておられるのでしょうか。
わが国の地理的
状況、既存道路の混雑度、交通事故死傷者の再
増加といった実態、並びに
省エネルギーの必要性から見ましても、
政府は自動車及び自動車道の
増加拡大には、もはや急ブレーキを踏むべきではないでしょうか。総合交通体系を整備する最高
責任者としての
総理の明確な
答弁を聞かせていただきたいと思います。
以上で私の質問は終わりますが、最後に、
鈴木総理の
施政方針演説を初め、各党代表質問に対する
政府の
答弁は、いま大多数の
国民が素朴に疑問に思い、不安を感じている点について、何一つ答えていないという
不満と批判が
国会の内外で充満していることは
周知の事実であります。特に私の質問は
国民生活に直結する諸問題にしぼっているのでありますから、
総理以下の明確で具体的な
答弁を求めて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
〔
国務大臣鈴木善幸君登壇、拍手〕