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1982-08-19 第96回国会 参議院 農林水産委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年八月十九日(木曜日)    午前十時四十一分開会     —————————————    委員異動  八月三日     辞任         補欠選任      神谷信之助君     下田 京子君  八月四日     辞任         補欠選任      村上 正邦君     林  寛子君      板垣  正君     三浦 八水君      仲川 幸男君     中村 禎二君  八月五日     辞任         補欠選任      林  寛子君     熊谷  弘君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         坂元 親男君     理 事                 下条進一郎君                 鈴木 正一君                 宮田  輝君                 村沢  牧君                 鶴岡  洋君     委 員                 熊谷太三郎君                 熊谷  弘君                 古賀雷四郎君                 田原 武雄君                 高木 正明君                 中村 禎二君                 三浦 八水君                 勝又 武一君                 川村 清一君                 坂倉 藤吾君                 中野  明君                 藤原 房雄君                 下田 京子君                 田渕 哲也君    衆議院議員        農林水産委員長  羽田  孜君    国務大臣        農林水産大臣   田澤 吉郎君    政府委員        農林水産政務次        官        成相 善十君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産大臣官        房審議官     大坪 敏男君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        食糧庁次長    山田 岸雄君        林野庁長官    秋山 智英君        水産庁長官    松浦  昭君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        臨時行政調査会        事務局主任調査        員        谷川 憲三君        農林水産省経済        局統計情報部長  関  英二君        農林水産省構造        改善局次長    中川  稔君        自治省財政局財        政課長      持永 堯民君        日本専売公社管        理調整本部総務        部長       田口 和巳君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○繭糸価格安定法の一部を改正する法律案(衆議  院提出) ○農業生産の発展と食糧自給率向上に関する請  願(第七四号) ○食糧自給力向上に関する請願(第八五号) ○農業者年金制度改善に関する請願(第八六  号) ○昭和五十七年度農林年金制度改善に関する請願  (第一八四号) ○日本農業再建食糧自給率向上のための食管制  度拡充に関する請願(第四六一号外六七件) ○増産ふすま用小麦増枠に関する請願(第七九  三号) ○食糧自給率向上農畜産物輸入規制に関す  る請願(第七九四号) ○木材需給の安定と秩序ある外材輸入体制確立  に関する請願(第七九五号) ○木材産業不況緊急対策に関する請願(第八七  七号) ○昭和五十七年度農業共済保険予算等に関する請  願(第八八七号) ○蚕糸業の振興に関する請願(第八九七号) ○オレンジ果汁牛肉等輸入自由化枠拡大  反対に関する請願(第二一七四号) ○農畜産物輸入自由化反対に関する請願(第二二  五四号) ○昭和五十七年度畜産物政策価格並びに畜産経営  の強化に関する請願(第二二五五号) ○農畜産物輸入抑制に関する請願(第二六四三  号) ○農畜産物輸入規制並びに畜産経営安定対策及  び価格安定対策の推進に関する請願(第二七〇  二号) ○エサ米転作作物としての認定に関する請願  (第二七〇三号) ○農畜産物貿易自由化阻止に関する請願(第二七  四五号) ○畜産経営安定強化に関する請願(第二八四二  号) ○農畜産物輸入抑制措置に関する請願(第二八  六二号) ○チチュウカイミバエ侵入阻止に関する請願(第  二八六三号) ○農産物輸入規制に関する請願(第二九八八  号) ○オレンジ果汁牛肉等自由化枠拡大阻止並  びにチチュウカイミバエ検疫規制緩和措置撤回  に関する請願(第三〇七三号外一件) ○農産物輸入自由化枠拡大阻止並びに畜産経  営の安定等に関する請願(第三四八一号) ○農産物輸入自由化枠拡大阻止に関する請願  (第三六四五号外一件) ○農畜産物輸入自由化枠拡大反対等に関する  請願(第三九一〇号外四件) ○農水産物輸入自由化等反対に関する請願  (第四〇二七号外一件) ○農業共済制度改善に関する請願(第四一八八  号) ○こんにやくの輸入自由化反対等に関する請願  (第四五八七号) ○昭和五十七年産生産者米価引上げに関する請  願(第五三〇二号) ○食料・農業基本政策確立並びに要求米価実現  に関する請願(第五三三三号外三件) ○昭和五十七年産米価並びに稲作農業生産性向  上に関する請願(第五三六九号) ○松くい虫の防除に関する請願(第五三七〇号) ○農畜産物輸入拡大阻止に関する請願(第五三  七一号) ○昭和五十七年産米政府買価格引上げに関  する請願(第五三七二号) ○農林水産業改良普及事業体制維持強化に関す  る請願(第五三七三号) ○農林業再建生産者米麦価等引上げ等に関する  請願(第五三八九号外二件) ○農業基本政策確立並びに昭和五十七年産米の  政府買価格に関する請願(第五四二八号) ○生産費及び所得補償方式による生産者米価の実  現等に関する請願(第五四三一号外六件) ○生産者米価引上げ等に関する請願(第五四六一  号) ○果汁輸入自由化阻止等に関する請願(第五五  〇〇号外一件) ○肉畜・乳製品輸入自由化阻止等に関する請願  (第五五〇一号外一件) ○トマト関係品目輸入縮減等に関する請願(第  五五〇二号) ○農産物残存輸入制限撤廃枠拡大反対等に関  する請願(第五五〇三号) ○米作の減反拡大中止等に関する請願(第五五〇  四号外一件) ○生糸等輸入抑制等に関する請願(第五五〇五  号外一件) ○昭和五十七年産米政府買価格に関する請願  (第五五二七号) ○食糧管理特別会計予算充実等に関する請願  (第五七八〇号外二件) ○農林水産政策に関する調査継続調査要求に関する件 ○委員派遣に関する件     —————————————
  2. 坂元親男

    委員長坂元親男君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る八月三日、神谷信之助君が委員辞任され、その補欠として下田京子君が選任されました。  また四日、村上正邦君、板垣正君、仲川幸男君が委員辞任され、その補欠として林寛子君、三浦八水君、中村禎二君がそれぞれ選任されました。  また五日、林寛子君が委員辞任され、その補欠として熊谷弘君が選任されました。     —————————————
  3. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 繭糸価格安定法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、提出者衆議院農林水産委員長羽田孜君から趣旨説明を聴取いたします。羽田君。
  4. 羽田孜

    衆議院議員羽田孜君) ただいま議題となりました衆議院農林水産委員長提出繭糸価格安定法の一部を改正する法律案について、提案趣旨及びその主な内容を御説明申し上げます。  最近のわが国蚕糸業を取り巻く情勢は、末端絹需要の減退、海外からの生糸絹製品輸入圧力蚕糸砂糖類価格安定事業団在庫累積等まことに厳しい状況に立ち至っております。  こうした事態に対処して、生糸絹製品輸入抑制を初め、生産価格等各般にわたる需給改善対策官民一体となって総合的に実施されているところであります。  しかしながら、今後、長期的に蚕糸業の安定を図っていくためには、絹需要増進対策を一層強化する見地から、事業団が保有する生糸新規用途または販路等需要増進を図るための方途に放出し、その波及効果を期待することが緊要となっているのであります。  今回の改正は、かかる要請にこたえ、現行繭糸価格安定制度の枠組みの中で、新たに、事業団生糸在庫が適正な数量を超えている場合には、事業団が保有する生糸需要増進のために活用する道を開こうとするものであります。  以下、改正案の主な内容について申し上げます。  第一は、事業団が保有する国産糸について新規用途等生糸絹需要増進に資するための売り渡しの道を開く特例を設けたことであります。  第二は、事業団が保有する輸入糸についても国産糸の場合と同様に、新規用途等生糸需要増進に資するための売り渡しの道を開くこととしたことであります。  なお、これと関連して、従来、輸入糸について現行法運用として行ってきたいわゆる一般売り渡し及び実需者売り渡し法律上明確に位置づけることとしたことであります。  第三は、事業団の保有する輸入糸糸価安定のために売り渡す場合に、コスト価格以下では売れないこととされていたことの例外を設けることとしたことであります。  以上が提案趣旨及びその主な内容であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  5. 坂元親男

    委員長坂元親男君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 村沢牧

    村沢牧君 ただいま提案された法律案は、衆議院でわが党も賛成した議員立法ではありますが、法律が制定された後の運用は主として政府が行うことになっておりますので、確認の意味も含めまして、提案者並びに特に政府に若干の質問をいたします。  最近の生糸実勢糸価は高騰しておりますが、その背景、今後の見通しはどうか。さらにまた、本法改正糸価にどのような影響を与えるというふうに思われますか政府答弁を求めます。
  7. 小島和義

    政府委員小島和義君) 御承知のように、生糸価格は一昨年以降低迷してまいりまして、昨年の暮れごろから少し上昇いたしてまいりまして、最近におきましては中間価格安定帯のやや上の方で往復をいたしておる、こういう状況に相なっております。  このような糸価の上昇の背景といたしましては、基本的には、昨年以来続けてまいりました基準糸価の引き下げ及びその据え置き、さらには生産者団体が自主的に繭の計画生産に取り組んでこられましたこと、また製糸業者操業短縮などいたしまして供給面圧縮に努めてまいりましたこと、国際的にも生糸綿製品輸入圧縮に努めてまいりまして、そのようなことが供給面要因として挙げられようかと思います。また消費の面におきましては、官民一体となりまして各種の絹需要増進対策を進めてまいりまして、そのことが大きく効果を上げたということでございませんけれども、五十五生糸年度と五十六生糸年度を対比いたしますと、絹消費もどうやら横ばい程度を維持しておる、そういうことが総合的に効果を上げたものと見ておるわけでございます。  今後の見通しでございますけれども、なかなか端的には申し上げにくい点もございますが、御承知のようにことしも養蚕関係者が繭の計画的生産努力をしていただいておりますやさきに台風十号による被害も出てきておりまして、特に晩秋蚕に被害が出てくるだろう、こう見られておるわけでございます。その意味供給の面からはかなり窮屈になってきておりますのと、一方では事業団在庫を大量に持っておりますので、そういったものを適時に放出いたしますことによりまして、おおむね需給関係は均衡をとれるというふうに見ております。  値動きにつきましては、短期的ないろんな要素もございますので的確には申し上げにくいのでございますが、ただ今回の改正法案需要増進を図りながらその用途事業団在庫を活用していく、需要拡大を図りながら供給を行っていくということでございますから、基本的には糸価変動要因になるものではない、長期的には需要拡大によって糸価の安定に資するであろう、かように見ておるわけでございます。
  8. 村沢牧

    村沢牧君 提案者に質問しますが、この法律改正によって在庫放出が始まってくる、そうすると生糸相場も変わってくるのではないかということを一部心配される向きもあるんですが、提案者はどういうふうに考えていますか。
  9. 羽田孜

    衆議院議員羽田孜君) この問題につきましては、私どものこの法をつくる間におきましても、大変な実は議論になったところでございますけれども、結局その放出する量、そこに余り大きなものを出した場合に、やっぱり価格低迷があるであろうということで、その点につきましては、相当きめ細かく政府の方にも配慮するように、たしか「繭糸価格安定対策に関する件」ということで決議が実はなされております。これによりますと、「改正法による生糸売渡しに当たっては、一元輸入措置を含む繭糸価格安定制度基準糸価維持を本制度基本としていることにかんがみ、いやしくも糸価悪影響を及ぼすことのないようその適正な運用を図ること。」ということで歯どめをしてございまして、過度にわたる放出はないようにということを厳重に申しているところであります。
  10. 村沢牧

    村沢牧君 本改正案による特別売り渡しは時価に悪影響を及ぼさない方法によってやれということに法律上も規定されておるわけでありますが、その判断基準はどこに置くんですか。つまり基準糸価にかかわらず放出するというようなことがあれば、これはきわめて問題だと思う。したがって実勢糸価基準糸価すれすれあるいはそれを下回ったような場合には、たとえ特例売り渡しといえども放出はしない、こういう基本的な原則を持つべきだというふうに思いますが、これは政府の方から。どうでしょうか。
  11. 小島和義

    政府委員小島和義君) 先ほども申し上げましたように、新規用途等に対する売り渡しは、その分だけ需要拡大をいたしまして、それに見合うものを放出をいたすわけでありますから、基本的には需給に対しては中立である、こういう性格を持っておるものでございます。  また、糸価変動によりまして期待しておりました新規用途向けの糸が出ないということになりますると、せっかく需要拡大努力をしていることに水をかけることにもなりかねませんので、その辺は全体的には需給に注意深く考慮を払いながらでございますけれども、糸価変動関係なしに放出できるようにしたいと思っておるわけでございます。  それから実需者売り渡しの方でございますけれども、これは一面におきまして供給の全体的な増大ということをもたらすわけでございますが、最近の綿業状況を眺めてまいりますと、非常に経営的に苦しい状況になっておりまして、綿業が完全にまいってしまいますると、それによって将来の絹需要というものがその分だけ圧縮されるということになりかねないものでございます。したがって、絹業者側からは定時、定量の……
  12. 村沢牧

    村沢牧君 そんなことは聞いてないよ。実需者売り渡しなんか聞いてないじゃないか、よく質問聞いてよ。実需者割り当てなんか聞いてないんじゃないか、これからだんだん聞いてくるんだよ、そんな先の答弁することないじゃないか。  そこで、私が言ったことは——局長の言うこと何か小さくてちょっとよく取れぬけど、わからないんだよ。その糸価変動なく売り渡しをするといったようなことを言ったようにも答弁聞こえるし、わからないんだよ、ちょっと何言ってるんだか。だから、糸価悪影響を及ぼしちゃいけないんだと、だから実勢糸価基準糸価すれすれになったり、実勢糸価基準糸価を割るようなことがあっては——そのような場合には、こういう売り渡しはしてはいけないという原則を持てということなんだよ。そのことについて答弁をすりゃいいんだよ。
  13. 小島和義

    政府委員小島和義君) 先ほど申し上げましたように、新規用途向けの売り払いは一遍に完結するわけではございませんで、計画に従いまして一定の期間にわたって売り渡すというケースも出てまいるわけでございます。その間におきまして糸価低迷いたしました場合に、その分の売りをとめるということになりますと、せっかくの需要開発がストップしてしまうということもございますので、糸価低迷関係なしに売り渡しをいたすことにいたしたいと思っております。もちろん全体の量といたしましては新しい用途向けの量というのはそれほど多いものではございませんから、糸価に大きく影響をするというものではないと考えております。またそのように運用をいたしたいと思います。
  14. 村沢牧

    村沢牧君 委員長にちょっとお伺いしますが、委員長先ほど決議を読まれて、糸価影響を与えちゃいけないというふうに申されたですね。局長答弁糸価関係なくこういうふうに決めたんだから売り渡しをするんだと言うけれども、一体提案者はどういうふうに考えるんですか。
  15. 羽田孜

    衆議院議員羽田孜君) いま局長が説明していることは、結局生糸というものが新規用途があるということで、いま糸価は比較的安定しているときですね。それで判断をしてこれを売り渡すことに決めます。しかし、そのときに一年間ですぐ、何と言うのですか、売り渡した、ある程度放出したもので結果が出ればいいんですけれども、まず研究をする、それからある程度の製品をつくる、そして市場に出しますね。そのときに、市場に出すときに、やっぱり新規需要があるということで、ある程度放出するわけです。あるときにはこんなことが二年ぐらいかかる場合もあるわけです。そのときに多少価格低迷しているときがありますね。しかし、引き続いてやっていることですから、価格が多少落ちているときでもその分については出しますよということをいま局長は言っているわけです。
  16. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、価格低迷するということは需要に対して供給が多いから、一般の場合はね、価格低迷するでしょう。それで基準糸価も割るわけでしょう。そういうときにもやっぱり特例売り渡しだからといって出すんですか。それじゃよけいまた価格が下がっちゃうじゃないの。そういうときには特例売り渡しであってもやっぱり放出制限をしていくんだと、そういう基本原則を持たなきゃ、この法律をつくったけれども特例売り渡しはずっとやっていきますよとなりゃ、価格低迷の原因をつくるじゃないですか。局長どうですか。
  17. 小島和義

    政府委員小島和義君) 確かに絹全体の需給といたしましては、価格低迷しているときは需要供給よりも少ないということでございますから、供給面を何とかして抑えていくと、こういう努力をしなければならないわけでございます。事業団在庫放出一般的な原則といたしましては、おっしゃるとおりにいたしたいと思っております。ただ、新規用途向け売り渡しのその分と申しますのは、それによる需要拡大効果を持つわけでございますから、その分だけから見ますと、需要増大効果供給の増加と、いわば相殺をされまして、糸価に対しては中立的なものと考えておりますのと、いま委員長からお話がございましたように、せっかくのその放出を続けて需要拡大を図っている最中にそれをストップするということになりますと、新規用途開発の意欲をそぐという問題もございますので、全体としては注意深く、時期なり数量なりを決めてまいりますが、その糸価の水準によりましてストップをするということではなしにやらしていただきたいと、かように思っておるわけでございます。
  18. 村沢牧

    村沢牧君 しかし、原則糸価低迷して基準糸価を割るようなときにはまた別途の放出をしちゃいけないと、これは原則じゃないですか、基本的な考え方としては。糸価低迷したにもかかわらずまた特例売り渡しをして放出をすれば、ますます低迷するじゃないですか。特例売り渡しといってもその生糸はまた織物なり洋服なり、いろいろなものに使われてきますからね。ですから、その原則はやっぱり確認できないんですか。じゃ、何のためにこんな法律をつくるの、糸価を下げるためにやるの、じゃ。
  19. 小島和義

    政府委員小島和義君) たびたび申し上げておりますように、この売り自体需要拡大効果をもたらすものについて、それに見合ったものを売るわけでございますから、その売り自体が全体の供給量をふやすということにはならない、いわば行ってこいの関係にあるわけでございます。全体の需給調整につきましては、この新規用途売りだけが唯一の放出ではございませんで、一般放出実需者売り渡し、いろいろな制度があるわけでございますから、そういう全体の需給調整の中におきましては、糸価の安定に心がけてまいるつもりでございますし、適時適切な放出をやっていくということによりまして需給調整いたします。  今回の新規用途売り渡しは、いま申し上げましたようなことでございまして、数量的にも全体需給を左右するという量ではございませんし、また需要増大効果があるわけでございますから、その意味で中断をすることなくやらしていただきたい。数量的には十分考慮してまいります。
  20. 村沢牧

    村沢牧君 私も持ち時間が余りありませんから、答弁簡潔にしてください。  そこで、需要増進のためにこういう制度をつくるんだと、それは結構なことです。したがって、需要増進はどういうところへやるかというと、新規用途または販路を開拓するために、需要増進のためにこの特例売り渡しをするんだ、あるいは政府が、農林大臣省令で認めた場合と三つになっているわけですね。そうすると需要増進という名目でかなりのものが放出できるんじゃないですか。その辺どうなんですか、新規用途販路農林水産大臣省令で定めるもの、この三つについて簡潔に言ってください。
  21. 小島和義

    政府委員小島和義君) 新規用途販路というのは、一つのグループとして考えております。これは全く新しい絹の仕向けということでございます。  農林水産省令で定める用途の方といたしましては、まあ需要増進効果の著しいものと、こういうものを定めたいと思っております。  具体的に申しますならば、絹需要拡大のためのキャンペーンのようなもの、これにつきましても需要増大効果がございます。ただ、その種のものにつきまして、その用途に用いますもの全量を売りの対象にするかどうかという問題は別でございまして、需要増大効果をもたらすものにつきまして、その用途のたとえば半分なら半分は事業団放出で見ると、そういう数量的な調整の余地はあるわけでございますので、両々あわせて運用してまいりたいと考えております。
  22. 村沢牧

    村沢牧君 そうすると、いま絹製品需要はその九〇%が呉服、和装品であって、その消費は停滞、むしろ減っているわけですね。これは新規用途にみなさないんですか、中へ入りませんか。
  23. 小島和義

    政府委員小島和義君) 和服全般につきましては、新規用途と言いにくいものがございますけれども、和服につきましても、さまざまな改良研究をこらしまして、和装の世界においてもまたその新規用途というものはあり得ると思います。具体的に私、イメージを持っているわけではございませんが、これまあ申請によりまして、制度趣旨にふさわしいものがあれば対象とするという考えでございます。
  24. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、その新規用途販路等に供する、需要増進のために、供するために特例売り渡しをするんだと、その数量等は大臣が最終的には決定するであろうけれども、数量がどのくらいになるかわからない。しかも、それは基準糸価が下がった場合にだってやるんだということなんですが、これは提案者、そういう考え方でいいですかね。
  25. 羽田孜

    衆議院議員羽田孜君) はい、その量によってやっぱり価格等に大きな変動を及ぼす場合があるわけですから、そのために「新規用途等売渡しに当たつては、その内容が多岐にわたることにかんがみ、事業団関係業界、学識経験者等による審査機構を設置する等の措置を講じて厳正かつ公平な運営を期すること。」ということでございまして、価格等に変な影響があるときには当然ここでいろんな問題が提起されるという歯どめをやっぱりつくってあるところでございます。
  26. 村沢牧

    村沢牧君 そうすると、糸価に重大な影響を及ぼすというような場合においてはこういう売り渡しも削減をしていくんだという基本的な考え方ですね、提案者としては。
  27. 羽田孜

    衆議院議員羽田孜君) そのとおりであります。
  28. 村沢牧

    村沢牧君 局長いいですか。
  29. 小島和義

    政府委員小島和義君) 先ほど申し上げましたように、必ずストップということではございませんで、数量、時期等については十分調整をして、実施してまいりたいと思っております。
  30. 村沢牧

    村沢牧君 次に、先ほど局長が先走りをして言った実需者売り渡しですね、これについては今回法制化をしたと、法的に位置づけたと。実需者売り渡しは従来生産者団体から問題も提起されておったわけですね。しかし、今回法制化されるということになったからには、その実施に当たっては、糸価や絹業の安定、さらには蚕糸業の安定に資するようにしなければならないと思います。改正法では、農林水産大臣の定める範囲というふうになっていますが、その数量は、これまた基準糸価との関係を無視しちゃならない、すなわち定時定量方式で売り渡すんではなくて、実勢糸価基準糸価を割ったような場合にはこの売り渡し数量抑制などをしていかなければならないというふうに思いますが、この定時定量方式と数量の問題については、局長どういうふうに考えますか。
  31. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農林水産大臣が定める数量といたしましては、年間に売り渡す数量の限度と、それから価格低迷いたしました場合でも最低これだけは出すという月別の最低数量のようなものと二段構えで決定をいたしたいというふうに考えております。  具体的な数量につきましては、法律制定後におきまして、通商産業省ともよく相談をいたしまして、需要者側、生産者側、各方面の意見を聞いて適正に決定いたしたいと思っております。  したがいまして、最低数量につきましては、従来はいわば下べそ価格を下りました場合には売りどめというルールがございましたけれども、そういう最低数量の範囲内においては絹業者のことも考えまして売りを継続する、かようにいたしたいと思っております。
  32. 村沢牧

    村沢牧君 私が聞いたのは、数量は全体は決めるでしょう。しかし、それを定時定量で糸価関係なく放出することは問題があるということなんです。その辺はどうなんですか。
  33. 小島和義

    政府委員小島和義君) 年間数量をどういう月にどういう出し方をするかという問題につきましては、もちろん需給と無関係ではございませんので、そういう状況をにらみながら適切に対処してまいるつもりでございます。
  34. 村沢牧

    村沢牧君 実需者売り渡し法律上明確にする、これについてもいろいろ議論はあるところではありますけれども、これはまあ時間の関係答弁は結構ですけれども、さらに価格は瞬間タッチ方式で一般放出よりも安くするということですね、すなわち絹業者の権益を強めたことになる。そうすると、この実需者売り渡し輸入生糸対象にするんですから、こういうことをすることによって一定のものを輸入しなきゃならない、あるいは輸入拡大をしなければならない、そういう心配も出てくるんですが、その辺についてはどういうふうに考えますか。
  35. 小島和義

    政府委員小島和義君) 御承知のように、実需者売り渡しは、現行法運用といたしまして、輸入原価に若干の事業団手数料を乗せました価格で従来から売り渡しをしてきております。今後におきましてもそういう方式は継続をいたしますが、同時に今回の改正によりまして事業団のいわゆるコスト条項が緩和されるという問題がございますので、輸入数量圧縮の過程におきましては、事業団在庫も含めて売り渡し対象にすることができる、かように考えております。
  36. 村沢牧

    村沢牧君 私はそんなこと聞いてるんじゃないんですよ。こういうことをつくれば輸入をしなきゃならない、輸入糸ですからね。輸入糸実需者売り渡しをするんですから、将来輸入拡大につながることはないのか、そのことを聞いてるんですよ。
  37. 小島和義

    政府委員小島和義君) そのようなことはございませんで、輸入輸入として今後とも引き続き圧縮努力をしてまいるわけでございます。ただ、そのことが従来行ってまいりました実需者売り渡しができなくなってしまう、新しい輸入がないためにできなくなってしまうということになりますと、絹業の側からは大変な問題が起こってまいりますので、輸入圧縮に努めながら、同時に事業団在庫も活用していただく、こういうことによって対処いたしたいと思っております。
  38. 村沢牧

    村沢牧君 この改正法律によって特別売り渡しができる場合は、事業団在庫が適正な数量を超えた場合ということになっておるんですが、その適正な数量というのはどういうふうに解釈しているんですか。
  39. 小島和義

    政府委員小島和義君) ただいま日本全体の生糸の年間流通量から見ますと、大体月にいたしますと二万儀ぐらいのものが流通いたしておるわけでございます。在庫の水準についてはいろいろ議論はございますが、従来大体二・五カ月分ぐらいというのが適正在庫水準であろうと言われております。したがいまして、約五万俵ぐらいというところに考えておるわけでございます。
  40. 村沢牧

    村沢牧君 本年六月現在の事業団在庫は十四万四千五百余俵、それを五万俵にしたいということですね。そうすると、在庫というのを、あるいは事業団放出というのは糸価の現況や需要供給との関係輸入との関係あるいは今度できる特例売り渡し関係といろいろあるんですから、これを予測することは困難であるとしても、いまの在庫を五万俵に持っていくには、一体農林水産省としてはどのぐらいでひとつやってみたいという気持ちを持っておりますか、何年ぐらいで。
  41. 小島和義

    政府委員小島和義君) これはあくまで私どもの希望的な観測でございますけれども、おおむね三年ぐらいの間には適正水準に持っていきたいという願望を持っております。
  42. 村沢牧

    村沢牧君 三年ぐらいで在庫を五万俵ぐらいにしたいと、ひとつその努力は評価していいのか悪いのか、それは結果を見なければわかりませんからお聞きをしておくとして、新規用途拡大して事業団在庫を減らしていくという、本法改正によって年間どのぐらいな新規用途を見込んでいるんですか。
  43. 小島和義

    政府委員小島和義君) このことの面接的な売り渡し対象というのは、大体年間四、五千俵程度ではないかと思っております。もちろん、これは申請によって判断するわけでございますから、限定的に運用するという考えではございません。私どもの想定しておりますもの以外の新しいものが出てまいりますれば、当然それも審査の上対象とするわけでございます。ただ、この四、五千俵が即需要増大効果というわけではございませんで、そのことの波及的効果というものを大きく期待いたしておるわけでございます。
  44. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、特例売り渡しはその運用のいかんによっては需給だとか糸価悪影響を及ぼすことも心配されるわけでありますが、そこで、先ほど提案者から話もありましたけれども、この売り渡しの方法ですね、どういうふうに、どういう機構で行うのかということですね。いやしくも特例売り渡しが投機筋の思惑や利権に利用されることがあってはならないのですけれども、その審査はどういうふうにするんですか。
  45. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは、何が新規用途であるかということにつきましていろいろ見方もございますし、またそのことの技術的な裏づけというものも必要になってまいるわけでございます。したがいまして、事業団の中におきまして中立的な審査機構をつくりまして、その議を経た上で判断、決定すると、かようにいたしたいと存じております。衆議院農林水産委員会決議におきましてもそのようなことを言われております。
  46. 村沢牧

    村沢牧君 審査会の構成はどのように考えてますか。
  47. 小島和義

    政府委員小島和義君) 事柄の性格といたしまして、まあ生糸生産あるいは流通、加工と、そういう業務に携わる団体の代表ないしは専門の方という者を含めざるを得ないと思っておりますが、できるだけ学識経験者中心の中立的なものとして運用いたしたいと思っております。
  48. 村沢牧

    村沢牧君 学識経験者も結構ですがね、たとえば米価審議会等を見ても、これは余談になりますが、学識経験者というと、政府の方の御意向にかなった皆さん方がずいぶん入るわけですね。ですからこういう審査をする場合においてはもちろん生糸生産する皆さん方の代表も入れなきゃならないんですが、そういうことは十分考えていますか。
  49. 羽田孜

    衆議院議員羽田孜君) いま園芸局長の方からもお話がありましたように、この決議の中でも言っておりますように、「事業団関係業界」ということで実は明記してございまして、その中には養連ですとかあるいは製糸関係、こういったものも含めていきたい、それを政府の方に対して申しておるところであります。
  50. 村沢牧

    村沢牧君 そこで特例売り渡し実需者売り渡しを受けた者がその目的以外に生糸運用した場合、たとえば目的以外に、横流しという言葉はいいか悪いか知りませんが、横流しをしたり、プレミアをもらう、そうした場合にはいかなる規制の措置があるんですか。
  51. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは不特定多数の方に売り渡しをするということになりますと、売り渡し後の利用を完全にチェックするということは非常にむずかしくなりますので、売り渡しの相手方といたしましてはできるだけ生産者団体、産地の組合、試験研究機関などに限定して運用してまいりたいと考えております。また契約に当たりましては、その目的外使用につきまして厳重な制約を設けまして、必要に応じまして事業団がこれをチェックするという体制にいたしたいと思っております。また万が一、契約に違反して目的外使用をいたしました場合には違約金を徴収するあるいは生糸そのものを返還させるというふうな措置を定めまして、契約上も実効を担保されるようにいたしたいと考えております。
  52. 村沢牧

    村沢牧君 その辺は強く守ってもらいたい、実行してもらいたいことをこの際申し添えておきます。  そこで、こういう制度をつくっても現在のような絹業業界の流通組織、これを放任しておったんじゃ消費拡大はできないと思う。たとえば着物一枚の原料の絹の価格は一万三千円程度だというふうに言われているんですが、これが七十万、八十万で売られているわけですね。幾ら皆さん方が安くそういう売り渡しをしたとしても流通の改善をしなきゃ消費者のところへはね返ってこないし、需要拡大にならないんですが、その辺についてはどういう指導をするんですか。
  53. 小島和義

    政府委員小島和義君) 絹の製品になりますと、実は非常に価格の幅も広うございまして、安いものでございますと三万円程度のものから数十万のものまであるわけでございまして、中にはいわば製造工程における経費というよりは、その芸術的な値打ちが評価されておるというものもございますので、なかなか一概に申し上げにくい点があるわけでございます。しかしながら、絹の消費拡大のためにはやはり流通段階における経費を節減をいたしまして、消費者にできるだけ安いものを提供するという努力がなければならないということについては再々審議会その他でも言われておりまして、私どもといたしましても直接の所管ではございませんけれども、絹の関係業界に対してはお願いをいたしておるわけでございます。また、通商産業省に対しましても同じようなことを申し入れをいたしまして、通商産業省におきましてもその意味での業界指導をしていただいているところでございます。
  54. 村沢牧

    村沢牧君 そんなこと何遍言っとったって改善できてないから、またこんな質問をするんですよ。  そこで、この特例売り渡し実需者売り渡しを安く受けたものは、それが製品にはね返ったんだと、そのことのやっぱり留意をするように売り渡しをしなきゃならないですね。ともかく安く売るんですから、特別に売るんですから。その辺は自信ありますか。
  55. 小島和義

    政府委員小島和義君) 新規用途向けの売り払いなど、事業団が直接にそのことを目的として売り渡しをいたしましたものについては、その結果としての製品をどう売るかということにつきましても計画段階で審査し、チェックいたしたいと思っております。
  56. 村沢牧

    村沢牧君 私は大胆が十分ということになっておりますので、大臣見えておりませんから、ちょっと質問を中断いたします。
  57. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  58. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 速記を起こして。
  59. 村沢牧

    村沢牧君 大臣がお見えになりましたから大臣に質問いたしますが、いままで事業団在庫が多かったことが糸価や繭価にも悪い影響を与えておった。したがって、私たちは在庫が適正になるまで輸入はストップしたらどうか、あるいは消費をもっと拡大しなさい、こういう要求をしてきたところでありますが、なかなか政府は適切な対応ができなかった。  そこで、今回の法律改正によって特例売り渡しができるようになるんですけれども、大臣はこの法律にどういう期待をしておるのか、あるいはまたこの法律が成立した後に政府は適切また真剣に取り組んで、生糸を取り巻く環境を改善をして、蚕糸業の安定を図っていかねばならないけれども、大臣の見解はどうですか。
  60. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) いま御指摘のように、わが国の蚕糸業をめぐる厳しい情勢の中で生糸需要増進を図るということは、やはり基本的に非常に重要な課題でございますので、したがいましてその観点からこの法を改正したということでございますから、私はこの点は高く評価いたしているわけでございます。したがいまして、事業団がやはり保有している生糸を売り渡す、そして繭糸安定を図るということはきわめて大きな意義を持つのでございますので、私たちはこの法の改正趣旨を十分踏まえながら、今後の対策を進めてまいりたい、かように考えております。
  61. 村沢牧

    村沢牧君 この法律改正は申すまでもなく糸価悪影響を及ぼしちゃいけないということが原則なんですけれども、そこで私も先ほど来議論をしておるんですけれども、たとえば実勢糸価基準糸価を下回ったような場合、すれすれな場合、こういう場合にはたとえ特例放出であろうとも実需者売り渡しであろうとも、やっぱり抑えていかなきゃいけない、こういうふうに考えますが、どうですか。
  62. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) そういう点をも十分私たちは配慮しながら、今後これらに対応してまいりたいと、かように考えております。
  63. 村沢牧

    村沢牧君 せっかくこういう法律をつくって、事業団在庫を少なくしようとしても、片方では依然として輸入が続いておるようなことでは、これは帳消しになってしまうわけですね。したがって、こういう法律ができたとしても、輸入は思い切って削減をしていく。先ほど局長は適正在庫は五万俵だと言っていたんですが、五万俵ぐらいになるまでは輸入を本当に抑えていくんだと、その基本的な方針がなくてはならないというふうに思いますが、どうですか。
  64. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) これは直接農林水産省の所管でございませんけれども、通産省とよう連絡をとりながら、輸入抑制努力をいたしたい、かように考えております。
  65. 村沢牧

    村沢牧君 そういうことを努力したけれども、なかなかいままでうまくできないわけですね。したがって、しわ寄せを養蚕家や製糸業界に押しつけてきた。つまり養蚕家の生産調整をする、それから製糸業界の総合対策をする、こういうことをいままで行ってきたんですけれども、こういう法律改正してこの在庫が適正の基準になる。先ほど局長は三年間でやってみたいと言っていましたが、そうすれば生産調整をしたり、そのために基準繭価を下げたり、そんなことはやらなくて日本の養蚕を振興さしていくというこの決意をお持ちですか。
  66. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 輸入抑制については、現に今回中国との間の交渉あるいは韓国との間の交渉においてもかなり抑制の措置を講じてまいったわけでございますので、今後こういう努力を重ねて、ただいま御指摘のような方向に私たちはできるだけ対策を進めてまいりたい、かように考えているのでございます。
  67. 村沢牧

    村沢牧君 私も指摘したんですが、適正な在庫になってくれば、そうして日本の養蚕業をさらに発展をさしていくんだと、生産調整も余りやらない、そういうような気持ちを持って養蚕業の発展のためにこうした法律も施行していこうとするのかどうか、その決意ですね。
  68. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) この問題は非常にむずかしい問題でございまして、やはり繭糸の需要というものは必ずしも大きく伸びる可能性があるかといえば非常にむずかしい状況でございますので、いずれも計画生産をせざるを得ないということでございますから、その中で私たちは何か繭糸の価格の安定を図ってまいりまして、いわゆる生産者にできるだけしわ寄せを与えない、しかも希望を持てるような形をとりたいということが私たちはねらいでございますので、厳しい環境にございますけれども、私たちはこの法を基礎にいたしながら積極的な政策を進めてまいりたいというのが私たちの考え方でございます。
  69. 村沢牧

    村沢牧君 大臣、そうおっしゃっていますけれども、いま日本の生糸需給を見れば需要に対して供給が足らないんですね。私は約七〇%ぐらいのものだと思う。そういう状況でありますから、需給を埋めることは当然だけれども、在庫がなくなってくれば日本の足らない分を日本の養蚕を振興さして補っていくんだという、農水大臣としてはそういう見解を持つのは当然じゃないんですかね。足らない分をどうするんですか。外国からまた持ってきて埋め合わしていくということをずっと続けていくんですか。
  70. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) この点が非常にむずかしい問題でございまして、たとえば繭糸の、いわゆる絹織物そのものを扱っておる地帯においては、いわゆる輸入をできるだけ促進してほしいと、安い繭糸を入れてほしいという要望があるわけですよね。一方では私たちはいわゆる生産者を保護していかなければいけないという、この中で繭糸安定をどうしていくかという問題でございますので、そこには事業団の存在というのがあるわけでございますから、そういう三つの関連をうまく操作することによって先生御指摘のような方向に持っていけるわけでございますが、先生の御指摘になっている点はようわかりますので、私たちもその線に沿うて努力はいたしますものの、環境は非常に厳しいということだけは御理解いただきたいと思うんでございます。
  71. 村沢牧

    村沢牧君 厳しさはよくわかっていますがね、こういう法律をつくるということは事業団在庫を少なくするということもあるけれども、大臣としてはやっぱり国内の養蚕業を振興さしていくと、農林大臣ですから。そういう決意をぜひ持ってくださいね。  最後にお伺いしますが、いずれにしてもこういう法律をつくると事業団のある面では損失になるわけですね。事業団の損失になることが事業団の運営なり、強いて言えば労働条件もあるでしょう、あるいはこの事業団が振興資金ですか出している、こうしたことに影響があっちゃいけないというふうに思いますが、その辺はどうなんですか。
  72. 小島和義

    政府委員小島和義君) 事業団が保有する糸をいわゆるコスト価格、それ以下で売るということになりますと、一時的には事業団に欠損が生じます。しかし、事業団のこれまでの運営を見てまいりますと、正常に事業団の売買が機能いたしますときにおいては多少の利益金が生じてきたという経過もあるわけでございますから、長期的にはそういう欠損を事業団の運営の中で解消していけるだろう、こう見ておるわけでございます。  それから、蚕糸業振興資金につきましては、過去におきまして利益が発生いたしました場合に、それの一定割合を原資として積み立てまして、それをいわば助成に使ってまいったわけでございます。一時期、単年度に二十億円ほど支出をした時期もございますが、原資が減ってまいりましたので、現時点におきましては八億円程度が残っておるのみでございます。もちろん、将来利益が出てまいりますればまた積み立てをいたしたいと思っております。  最後に職員の労働条件でございますけれども、これは一般管理費として、公共的な仕事に従事している職員の待遇の問題でございますから、損益に関係なく待遇を確保する、かように考えております。
  73. 村沢牧

    村沢牧君 時間ですから終わります。
  74. 下田京子

    下田京子君 他の委員からただいま質問ございましたが、今回の法律改正に基づきますと、やっぱり基準糸価を下回っていても売り渡すことが可能になると、これは繰り返し答弁されておりますが、問題はその運用がどうなるかということで大変やっぱり違った側面が出てくるんではないかと思うんです。  そこで、端的にお尋ねしたいんですが、実需者売り渡しについて、輸入糸の問題ですけれども、大臣が定める数量というものはどうお決めになるのか、これが一つですね。それからまた、その決めた枠ですが、さっきもお話ありましたが、年内枠とそれからまた月ごとの売り渡しというふうに、こう言われておるようですけれども、そうするとそれはどのように売り渡していくのかという売り渡しの方法の問題。具体的に三点目は、そうしますと実際にこれは提案者である衆議院委員長も言っておりますが、また法案にも出てますけれども、時価に悪影響を及ぼさない方法で売り渡すと、こういうふうに言われているわけですね。ところが、現実の問題として、生糸の相場が大幅に下回っていてなおかつ国内生糸を買い上げるような状況、想定されますね、そういう中にあってもこの実需者売り渡しというのは行うのかどうか。この三点。
  75. 小島和義

    政府委員小島和義君) まずその数量の決め方でございますが、実需者売り渡し数量につきましては、年間の売り渡し数量と月別の最低数量というものを決めたいと考えております。  売り渡し方法につきましては、実需者売り渡しは従来機屋さんの団体を相手にして売っておるわけでございますけれども、新規用途売り渡しにつきましては、その新規用途に向けようとする者の申請によって判断をいたしたいと思っておりますが、運用といたしましては、目的外に使用されるということを回避するために、できるだけ営利目的でないような生産者団体や織物組合、試験研究機関などを対象にいたしたいと考えております。  それから、時価との関係でございますけれども、先ほども申し上げましたように、新規用途売り渡しにつきましては、事柄の性格としては糸価に対してニュートラルなものである、中立的なものである、つまり、新しい需要を開発いたしまして、それに見合うだけの糸を出すわけでございますから、いわば行ってこいの関係になりますので、その分だけが市況に対する圧迫材料になるものとは考えておらぬわけでございます。また、数量的にも年間を通じましてそれほど大きな数量になるとは思っておりませんので、その意味でも糸価影響はないとは思っておりますが、売り渡し数量なり時期につきましては、市況との関係に十分注意深く考慮を払いながら運用してまいりたい、かように考えております。
  76. 下田京子

    下田京子君 ちょっと具体的にお答えいただいていないんですよね。数量はどう決めるかという問題がわからないし、数量自体もどの程度か。売り渡す方法というか、それは信用のおける団体とか研究所だとかというお話があって、これはわかりましたが、私は具体的事例を挙げてお話しているんで、生糸相場が大幅に下回っていて、国産生糸を買い上げているような状況であってもやるのかということについては御答弁いただいていないわけです。それはどうか。  それから、ついでですからもう一つ聞きますが、いま言っている新規用途の問題ですが、その新規用途、これが確実にその目的に使われているかというその歯どめはどのように考えているか。
  77. 小島和義

    政府委員小島和義君) 新規用途向け売り渡しにつきましては、事柄の性格から見まして、市況が低迷しているときでありましても、またそういう時期であるからこそ需要拡大努力というものを払うべき時期であろうと思います。したがいまして、糸価低迷しているという理由で売り渡しをとめるということは適切ではないと考えておりますが、全体的な需給の問題もありますので、時期、数量などについては注意深く運用をいたしたいと考えております。
  78. 下田京子

    下田京子君 実需者の方の、さっきのこと答えていないのよ。
  79. 小島和義

    政府委員小島和義君) 実需者売り渡しの方につきましては、従来はいわば下べそ価格というものをめどにいたしまして、それを下りますと売りをとめるというルールでございます。したがいまして、過去におきましても一年数カ月にわたって実需者売り渡しがとまったという経過がございます。ただ絹業者の側から見ますと、絹業は非常に窮迫しております際に、唯一の当てにしておりました糸が来ないということになりますと綿業の沈滞に一層拍車をかけるという問題がございますので、糸価低迷しておるときでも一定数量だけは出してくれ、こういう要望がございます。もちろん先ほど申し上げました月例の最低数量ということで、年間の数量を十二で割ったものよりはかなり少ないものを継続して出す、かようにいたしたいと思っております。
  80. 下田京子

    下田京子君 ちょっと局長、理解してくださっているの。輸入糸について大臣が数量や範囲や売り渡しを決めていくってなっているわけ。いま言っているように基準糸価が相当下回っていて、国産糸を買い上げているような状況の中にあってこの輸入糸を買い上げていくようなことがあるのかと、それを言っているのですよ。答え出ていないんです、さっきから。もう私、三十七分で質問終わりなんですよ。どうなのかということを明確にしてください。
  81. 小島和義

    政府委員小島和義君) 基準糸価を下回っているという状態はあくまでこれは異常な状態でございますから、事業団が買い出動をするということにおいてこれは回復すべきものでございます。基準糸価を長きにわたって下回っている状態自体はあくまで異常でございます。したがいまして、事業団の売りをとめるかどうかという問題は、従来は基準糸価と下べそ価格との間の時点でどうするかという問題であったわけでございます。  したがいまして、仮に瞬間的に基準糸価を下回っているという事態があれば、その出す時期を調整するとか数量を区分するとか、細かなところでは対応いたしますけれども、売りを即座にストップするということではなく運用をさせていただきたいと、かように考えております。
  82. 下田京子

    下田京子君 ここがやっぱり一番問題なんですよね。特に輸入糸との関係で一番問題になっているところなんですよ。  次に聞きたいんですけれども、今回の法改正背景というのは、私が言うまでもなく生糸絹織物の需要が減少している。そういう中にあって、一方輸入はそれに見合って減ってないんですよ。そのために生糸相場低迷していて、事業団在庫は年間需要量の七割にも相当しているわけでしょう。このまま過剰在庫を持っていきますと、生糸相場も回復しない、糸の売り渡しもできない、在庫がふえていく一方だ、何とかしなきゃならないということでもって今回こういう特例をつくったわけでしょう。にもかかわらず、その輸入生糸の問題についてどうするかということは、これは重大なポイントなんですよね。そうでないと、これは逆に、このことをやったことによって輸入生糸はそのまま野放しになってじゃんじゃん、今度国内糸が低迷していくというかっこうになるんじゃないか、こう思うわけなんです。これをはっきりしていただきたいと思います。  あわせて聞きたいんですけれども、その点で、これは私は大臣に聞きたかった点なんですよ。輸入糸をどうしていくのかという問題でありまして、最近、七月の三十日が韓国と、それから八月の四日でしたか、これが中国と、二国間の取り決めやっておりますね。二国間取り決めやっていて、これは昨年に比べれば若干減ってきているというふうに言われておりますけれども、そうは言っても国内に比べてどういう状況になっているかと言えば、国内の生産量は四十年代に十万トンからあったでしょう。それが五十年代で九万一千トン、五十五年が七戸三千トンになり、五十六年には六万五千トン、そして五十七年に六万一千トンって、どんどん減ってきているわけ。輸入糸はそのままになっているというような状態になりますと、大変問題なんですよ。その辺をきちっと実効あるような、そういう対応をされる気があるのかどうかです。
  83. 小島和義

    政府委員小島和義君) 輸入の問題につきましては、従来から二国間の話し合いベースで行っておるわけでございます。国内法上一刀両断にいわばその輸入抑制するということはなかなかできかねる状況でございます。  ただ、いま数量の問題についてお述べになりましたけれども、確かに対中国、対韓国、この夏に妥結いたしました。実はこれは五十六年度分の協定でございますが、前年対比大体四分の三の水準ということで、そのことだけを見ますと大したことはないというお考えになられるかもしれませんが、これを五十三年度と対比いたしますと、実は三分の一強という水準まで圧縮してきておるわけでございます。  でございますから、相手国の事情もいろいろ考慮に入れながら日本側の主張もよく説明をいたしまして、話し合いをベースにして運用してまいるつもりでございます。  ただ、輸入いたしましたものが直ちに一般に出回るということのないよう、事業団の機能を活用いたしまして適切な放出を図ってまいる、かように考えております。
  84. 下田京子

    下田京子君 答えてないですよ、数量の範囲の問題、数量
  85. 小島和義

    政府委員小島和義君) 輸入数量について、これは織物まで含めました輸入……
  86. 下田京子

    下田京子君 いやいや、そうじゃない、そうじゃない。
  87. 小島和義

    政府委員小島和義君) 全体の数字でお答え申し上げますと、ただいま国産の繭の生産がかなり減っておるという数字をお述べになりましたけれども、輸入の方の数字については、先ほど申し上げましたようにかなりの部分圧縮をしてきておるということを申し上げた……
  88. 下田京子

    下田京子君 わかってないのよ。——時間オーバーしているけれども、わかってないんだもの、しょうがない。
  89. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 時間が大分過ぎておりますから。
  90. 下田京子

    下田京子君 だって、答えてくれてないんだもの。——いいですか。最初に言ったことで、時間の関係で私、次々答えていただかないで移っちゃっているんですよね。
  91. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 簡単にしてください。
  92. 下田京子

    下田京子君 はい。  輸入糸の問題のところで、とにかく農水大臣が定める数量はどういうふうに決めるんだと。その数量の枠内で云々ということを言っているわけですけれども、その数量というのはどの程度を見ているのかと。
  93. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 簡単に答えてください。
  94. 小島和義

    政府委員小島和義君) 実需者売り渡し数壁の問題でございますね。年間の数量といたしましては、いま通産省とも相談中でございますけれども、過去の数字で申しますと、年間の数量が大体三万俵ぐらいという時期がございました。ですから、その前後の数量が一つのめどであろう。  それから、月間の数量といたしましては、その十二分の一よりは小さい数字を考えております。
  95. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  96. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  98. 坂元親男

    委員長坂元親男君) これより請願の審査を行います。  第七四号 農業生産の発展と食糧自給率向上に関する請願外百三十八件を議題といたします。  これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、第八六号 農業者年金制度改善に関する請願外二十五件は議院の会議に付するを要するものにして内閣に送付するを要するものにし、第七四号 農業生産の発展と食糧自給率向上に関する請願外百十二件は保留とすることに意見が一致いたしました。  以上のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 御異議ないと認めます。よりて、さよう決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十三分休憩      —————・—————    午後一時十六分開会
  101. 坂元親男

    委員長坂元親男君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  農林水産政策に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  102. 村沢牧

    村沢牧君 私は、最初に災害関係について質問いたします。  長崎災害や台風十号、さらにはその後の集中豪雨によって農林関係も大変な被害を受けておるわけであります。そこで、天災融資法の発動、特別被害地域の指定、また激甚災害法の適用について、その対応、見通しについて明らかにしていただきたい。
  103. 大坪敏男

    政府委員(大坪敏男君) まず、第一点の天災融資法発動についてでございますが、現在、私どもの方の統計情報部におきまして被害状況の数値を調査取りまとめ中でございます。したがいまして、この取りまとめ結果を踏まえまして農林水産省としての方針を固め関係省庁と協議に入ってまいりたいと、かように考えております。  また、お尋ねの特別被害地域の指定の問題でございますが、これにつきましては天災融資法を発動するとなった場合には、あわせまして政令上この地域を指定できる都道府県を定めることになるわけでございますが、この適用都道府県につきましては、著しい被害を受けた農林漁業者の数等も考慮しながら、地域におきます被害の実情に即しまして適切に対処してまいりたいと考えております。  次の激甚災の指定につきまして農地、農業用施設につきまして申し上げますと、七月豪雨及び台風十号等によります農地、農業用施設の被害額につきましては、近年にない大災害となっておるわけでございます。したがいまして、現在、関係県から被害額を集めている段階でございますが、集計した被害額につきまして精査した上で激甚災の指定ができるかどうか検討を行い、指定の要件に合致いたす場合は速やかに指定の手続を進めてまいりたい、かように考える次第でございます。
  104. 村沢牧

    村沢牧君 今回の災害は当然天災融資法の適用になるものというふうに思われますが、いつごろの時期に発動できるか、おおよそのめどを聞かしてください。
  105. 大坪敏男

    政府委員(大坪敏男君) ただいま申し上げましたように目下統計情報部の被害状況の数値の取りまとめを待っている状況でございまして、現状で申し上げれば今月下旬にはまとまるんじゃないかと考えております。したがいまして、今月下旬には天災融資法を発動できるかどうかにつきまして農水省としての判断ができる、かように考えておるわけでございます。  その後の手続といたしましては、その数値をもとといたしまして、別途現在進めております被害農林漁業者の資金需要調査をもとにいたしまして資金需要量をはじきまして関係省庁と協議に入るわけでございますが、通常の手続の進みぐあい、これまでの経験等から考えますと、関係政令の制定、公布につきましては、来月の中旬ごろというふうにめどをおいておるわけでございます。
  106. 村沢牧

    村沢牧君 次は、資金の問題ですが、天災資金の限度額の拡大については、今回議員立法で対処することになったわけでありますが、その他の災害資金、つまり、制度資金のすでに借り入れた分の償還延期または自作農維持資金の枠の拡大等が要望されておりますが、どのように対応しますか。
  107. 大坪敏男

    政府委員(大坪敏男君) まず第一点の制度資金等の既貸付金、金融機関が被災農林漁家に貸しました貸付金の償還猶予等の問題でございますが、これにつきましてはすでに八月五日付をもちまして通達を出しておりまして、関係金融機関に対しまして、従来同様、今般の災害の激甚災にかんがみまして、しかるべく貸付条件の緩和をとるように指導しているところでございまして、目下その趣旨の徹底を図っているところでございます。  次の自作農維持資金の融資枠の問題ないしは限度額の引き上げの問題でございますが、これにつきましては天災融資法の発動状況もにらみながら、かつまた地域の被害の実態、さらにまた被災農家の資金需要等を踏まえながら適切に対処してまいりたいと、かように考えております。
  108. 村沢牧

    村沢牧君 自作農維持資金は限度額が百五十万円であるわけですが、過去において自作農維持資金を借りている人があるわけなんです。したがって、この百五十万円の枠の範囲となると、既借入金分を差し引いた残りということになるんですが、それ以上に借りたいという人に対しては何らかの措置がとれますか。
  109. 大坪敏男

    政府委員(大坪敏男君) ただいま先生御指摘のように、通常自作農維持資金の限度につきましては百五十万円ということで運用しているわけでございますが、ただ、昨年の相次ぐ台風ないしは低温被害等によりまして、県によりましては二百五十万円まで限度を引き上げた事例がございます。したがいまして、今般の災害につきましてもかなりの県におきましては被害が激甚でございますし、すでに関係県から限度の引き上げについての要請も受けております。したがいまして、先ほど申しましたように天災融資法の発動状況をにらみながら、かつまた被害の実態、地域におきます被害の実態ないしは資金需要をにらみながら適切に対処してまいりたいと、かように考えます。
  110. 村沢牧

    村沢牧君 適切に対処するということは、枠の拡大についても農水省としても配慮していこうという気持ちを持っているというふうに理解しておいていいですね。
  111. 大坪敏男

    政府委員(大坪敏男君) 前向きに検討するつもりでございます。
  112. 村沢牧

    村沢牧君 ぜひ検討してそういうふうにしてください。  次は農地、農業用施設の災害復旧も早期に完遂するために特別な予算措置を講ずべきであるというふうに思います。また、林道や治山事業についても同様であります。  そこで、大臣に伺いますが、要請しますが、災害復旧は原則として三、五、二の比率で三年間で完遂することになっておるわけですが、五十六年度には初年度六〇%復旧する、そういう前倒し措置をとったわけでありますけれども、本年度も昨年同様の措置をとって被災地の救済に充てる、同時に景気浮揚対策にもなるというふうに思いますが、大臣として、政府の方針がまだ必ずしも決まっておらないようでありますけれども、積極的にそのことを要請して、そのような方向に取り組むべきだというふうに思いますが、どうでしょう。
  113. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) ただいま御指摘のように昨年並みの方向で進めてまいりたいと考えております。
  114. 村沢牧

    村沢牧君 そのことは、これは農地、農業用施設だけでなくて、他の建設関係も全部関連をしてくるわけですけれども、政府としても近くその方針を出すというような、いま考え方、対応なんですか。
  115. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 過般の閣議ではそのことは話題になりませんでしたけれども、この点は農林水産だけじゃなく、建設関係にも当然に及ばなければならない問題だと思いますので、そういう点は今後政府としてもそういう態度にするよう私の方からも要請をしたいと、こう考えております。
  116. 村沢牧

    村沢牧君 いま申し上げました農地、農業用施設、あるいは治山、林道、これらについても大臣がいまお話があったような形で復旧をしていくということをぜひ要望したいんですが、関係局長として、特別今度の災害に対して措置をとるということはありますか、たとえば耕地関係にしても、あるいは林務関係にしても。
  117. 中川稔

    説明員(中川稔君) ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、今回の災害は非常に近年まれに見る災害でございますので、できるだけ早期に査定を行いまして、そして早期に実施してまいりたいと思っております。そして、先ほど先生御指摘のように三、五、二の比率も、これは全体としての比率でございますから、緊急を要する物件につきましては、さらに進度を上げていくというようなことで適時に対応してまいりたいと、そういうふうに考えております。
  118. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 治山、林道につきましても同じ方針でできるだけ早期に復旧するように努力してまいりたいと、かように考えてます。
  119. 村沢牧

    村沢牧君 次に共済資金ですが、農業共済の早期支払いについても指導をしておるようでありますが、ぜひ積極的に推進をしてもらいたいというふうに思いますが、それについてのお答えと、それから今度の災害に直接間に合わないとしても、果樹共済その他の共済にしても加入率がきわめて低いということですね。したがって、共済の制度があってもなかなかこれの恩恵をこうむらない。せっかく共済制度法律改正等をしたわけでありますから、もっと加入促進を農水省としてやるべきではないかと思いますが、どうなんですか。
  120. 大坪敏男

    政府委員(大坪敏男君) まず第一点の農業共済につきましての、損害評価の早期実施と共済金の早期支払いについてでございますが、本件につきましてはすでに八月五日付をもちまして局長通達を出しておりまして、目下この線に沿って関係団体に対しまして督励をしている最中でございます。その際、特に被害が激甚でございまして、かつまた被害が判然としているものにつきましては収穫期を待つまでもなく、損害評価を迅速に行い、共済金の仮渡しを行うようにあわせ指導しているところでございます。  次の果樹共済の問題でございますが、先生御指摘のように、果樹共済につきましては、きわめて加入の状況が悪いということになっているわけでございます。先生御案内のように、果樹共済につきましては五十五年の第九十一国会におきまして制度改正をしたわけでございますが、その際の最大の眼目はいかに加入しやすいような制度の仕組みを取り入れるかということでございまして、先生御案内のとおり、たとえて申しますと、比較的被害の少ない専業的農家も入りやすいように、無事故割引制度を導入するとか、あるいはまた掛金率の低い暴風雨やひょう害のような特定危険を対象とする引受方式を充実する等々の制度改正をやったわけでございます。さらに、この制度改正を機といたしまして私どもといたしましては、生産出荷団体に対しまして集団加入の奨励金を交付するという予算措置を講じまして、さらにまた関係者を集めた会議等を通じまして加入推進の指導に努めているところでございます。加えて、関係団体におきましてもいろいろな協議会をつくるとか、あるいは普及のための職員を置くとか、さらにまたパンフレット等を通じます宣伝活動等もやっているわけでございます。なお、今回の災害を契機に、特に被害の大きい果樹の生産県、これは長野県、山梨県、福島県等々でございますが、これらの県には係官を派遣いたしまして、果樹の被害状況の把握とともに、果樹共済へ加入を促進するにつきまして、どういう点に問題があるかという点につきましても洗ってみようということで現在調査を行っているところでございます。したがいまして、こういった調査結果も踏まえながら、さらに加入推進のためにはどのような方策をとるべきかにつきまして研究し、その具体化を図ってまいりたいと、かように考えております。
  121. 村沢牧

    村沢牧君 その共済加入については農水省の指導も積極的にやってもらいたいが、さらにやっぱり加入が進まないということはこの法の内容においても、加入の条件においても幾つかの問題点があるというふうに私は思うんですね。しかし、きょうは時間がありませんから、そのことについては触れませんけれども、皆さん方が調査をして、どこにこの加入ができない原因があるんだということがわかった中で、またこの問題について要求をし指摘をしてまいりたいというふうに思います。  そこで、十号台風では風倒木が非常に多いわけです。たとえば長野県のような風倒木の多い地域ですね。これは昨年この改正した激甚法のB基準に該当さして救済すべきだというふうに思いますけれども、その見通しはどうなのか。さらに、風倒木の利用方法について、政府として何らかの指導性を持っているのかどうか、林野庁にお尋ねします。
  122. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 風倒木につきましては、長野県、群馬県を中心といたしまして発生しております。現在、鋭意その調査努力しておるわけでございます。調査の結果、順次その被害量も多くなってまいっておりますが、私どもといたしましては、その調査結果を踏まえまして、先般御審議いただきまして決めていただきましたこの基準にどういうふうに適用するか検討しながら、ひとつ早急に対処してまいりたいと、かように考えております。  なお、被害木の処理でございますが、これにつきましては、やはりひび割れ等が入っておりますので、これはチップその他にこれを活用する以外にないわけでございますので、現在そういう関係方面にこの活用方のいま話しかけをしておるところでございますが、さらにこれを積極的に進めてまいりたいと、かように考えているところでございます。
  123. 村沢牧

    村沢牧君 一昨年ですか昨年ですか、豪雪に関連をして法律改正して、風倒木に対しては救済措置もつくったわけでありますから、ぜひ今度の台風においても、風倒木被害についてのこの法律を適用できるように、ひとつ前向きに取り組んでいただきたいというように思うんです。  それから、風倒木の跡地あるいは森林災害の復旧造林については、どういう措置を講じていかれますか。
  124. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) やはり、これがこれからの造林意欲の停滞につながると大変でございますので、私ども、このB基準なりあるいは局地の基準に適用しますと、これは補助率のかさ上げがございますので、その補助率のかさ上げをしながらこれにつきましては積極的に対応できるようにしてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  125. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、今度の災害では国有林もかなりの被害を受けているわけでありますが、その被害額はどのぐらいになるのか、あるいは災害復旧はどのように進めていくのかということについてお示しください。
  126. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 今回の被害は、国有林、民有林ともに出てまいっておるわけでございますが、国有林につきましては三百四十四億円の被害と相なっております。そこで、私ども国有林につきましては、現在経営改善に鋭意努力しているわけでございますが、やはり経営管理上、この災害の復旧はきわめて重要でございます。特に、災害が局所的に出てまいっておるところがございますので、これは十分ひとつ調査しながら今後の対応につきましても方針を決定して対処してまいりたいと、かように考えております。
  127. 村沢牧

    村沢牧君 国有林の災害復旧は、他の公共事業と違って特別な補助があるわけではないというふうに思うんです。林野庁予算の中で、国有林野事業特別会計の中で捻出していかなければならないというふうに理解するんですけれども、そうですね。
  128. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) そうです。
  129. 村沢牧

    村沢牧君 これはいいです。  そうすると、これは大変なことだと思うんですね。国有林の予算もそんなに限られている中で、これだけの予算を捻出するということは大変なことだと思うんです。しかし、大変であるけれども、災害復旧は優先的に行わなければならないわけですけれども、そのために本来の事業が縮小されるような心配はないのかどうか、その点はどうなんですか。
  130. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 現在、災害復旧の予算といたしまして、緊急治山並びに林道の災害緊急対策費がございますので、まずこれをもちまして充当してまいることとしております。なお、この災害は、経常よりも優先して当然すべきでございますので、その辺につきましては、事業の内容につきまして分析を加えながら、さらに重点的にこちらの方に充当してまいりたいと、かように考えております。
  131. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、いま答弁になった災害復旧予算というのは、国有林会計の中でどのくらいあるんですか。  それと同時に、先ほど御質問いたしましたように、災害復旧に重点を置いてやらなければいけない。そのことが従来計画した国有林の事業に、予算に支障があってはならないが、そういう心配はないんですか。
  132. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 通常、災害の被害額に対しまして五%前後の金額をこの当面の緊急の復旧予算ということで考えております。現在、治山につきましては十四億、それから林道につきましては二十九億、一応これが予算として確保してございますので、その中でまず当面は鋭意努力してまいりたいと、かように考えております。
  133. 村沢牧

    村沢牧君 いずれにしても、治山、林道合わして十四億と二十九億ですか、四十三億ですね。三百四十四億円の被害を受けてこれだけこの予算を使うって、そんなことじゃ大変だと思うんですね。あなた、だからほかのところから、国有林会計の方から回してこなければならぬ。そうすると他の事業に支障を来すんでしょう。どうですか、その辺は。
  134. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) これは足らぬ分にはまたそれなりの措置を当然とらなければいかぬと思いますが、これはその他の災害との関連を踏まえまして検討してまいりたいと思いますが、当面は、まずはこの持っている予算を充当しまして重点的にやってまいりたいと、かように考えます。
  135. 村沢牧

    村沢牧君 そういうふうに自信がおありになるなら結構ですが、こういう災害の方へ予算をたくさん回したから、いままでの仕事はだめですという形にはならないわけですね、計画計画どおりに仕事をやっていくということに。そういうことなんですね。
  136. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 被害地の中におきましては、林道等も相当寸断された個所もございます。そういうところにつきましては、やはり長期の見通しを立てながら今後の事業実行について検討していかなきゃならぬ個所もございます。非常にいま財政上厳しい中ではございますが、私ども、この災害の方ももちろん早急にしなければならぬところはやるわけでございますが、同時に事業面につきましても、やはり経常的な事業をストップするわけにいきませんので、十分その辺も配慮しながら、苦しい中でございますけれども当面努力してまいりたいということであります。
  137. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、長期的な展望を立てながら災害復旧もする、事業もするという話ですが、国有林は、いま改善計画に基づいて事業所の廃止なんかも積極的に進めているわけですね。災害を受けたことをきっかけに、契機にして、さらに改善計画を促進さしていく、つまり被害を受けたところの事業所を閉鎖してしまうと、そのようなことがあってはならないけれども、災害復旧と改善計画とは全然別なものだというふうに私は理解していますが、その点ははっきりしていますか。
  138. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) この問題につきましては、現在具体的に調査している最中でございますので、その調査の結果を待ちまして、特に激甚な被害地で道路等が寸断されているようなところもございますが、これらにつきましては、今後の方針について少し慎重に検討してまいりたいというふうに考えておるところであります。
  139. 村沢牧

    村沢牧君 その慎重に検討するということが非常にひっかかるんですね。これは災害を受けたんだから、もうこれ復旧するにはかなりの金がかかる、だからひとつこの奥地の事業所をやめちゃおうと、そんなことを検討しちゃいけないと思うんですがね。災害復旧は災害復旧でするんだと、改善計画はいままでずっと進めてきた経過があるし、計画があるんですから、それに基づいてやっていくんだという、災害復旧とこの合理化と一緒に関連さしては絶対いけないと思うんですが、どうなんですか。
  140. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 現在非常に厳しい予算の中での実行でございまして、この段階におきまして分離してすべて行いますというふうには実は申し上げにくい実態がございます。私どもといたしましては、現在非常に被害の多いところで、今後林道等の復旧に数年も要するようなところにつきましては、今後の実行方針につきましてはひとつ慎重に検討したいという方針でございますので、ぜひともこの点は御理解を賜りたいと存じます。
  141. 村沢牧

    村沢牧君 しかし、災害復旧はすべてのことに優先するわけですよ。金がないから荒廃した国有林のこの治山や林道をほうっておいてもいいと、そしてそっちの方の事業をやるのはストップしたと、それじゃ済まないんですよ。やっぱり災害復旧は優先をしていく。そして改善計画は皆さんやるでしょう。改善計画は皆さんが計画持っているんだから、それに基づいてやっていくということにしなければ、災害を受けて、それを契機に、きっかけにこっちの事業所もやめちゃったということじゃ、これは済まされないですね。どうなんですか、その辺は。
  142. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 重ねて申し上げて恐縮でございますが、今後の復旧に相当時間を要するようなところにつきましては、やはりその復旧計画内容を十分検討した上で、それとの関連で今後事業実行もひとつ決めてまいりたいということで鋭意現在検討中でございますので、検討結果を待ちましてまた御報告申し上げたいと存じます。
  143. 村沢牧

    村沢牧君 そんな報告は聞いたってだめですよ、そんなことは。そんなこそくな手段でやっちゃいけないんだ。  大臣に要請しておきますが、お聞きのように、御承知のように、国有林も大変な被害ですね。しかし国有林で災害に充てる金は少ない。ほかの公共事業だったら予備費を充当して災害だけは何とかしましょうとなるんですけれども、国有林だけは一年間の予算の中で何か賄えというのは、これは無理があると思うんですね。ですから、国有林に対しても大臣の立場で何らかの施策を要請し、立てるべきだと思うんですが、どんなものでしょうか。
  144. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) いま林野庁長官から基本的な考え方が述べられたわけでございますが、長官として最大の努力をしていただいて、しかし国有林野の枠の中ですべて処理することが不可能な場合は、これは何らかの対策を考えなきゃならぬと思うのでございますけれども、そういう点は十分配慮しながら今後災害対策には万全を期したいと、かように考えます。
  145. 村沢牧

    村沢牧君 ぜひそうしてもらいたいと思いますね。政府の措置によって、住民の要求が強くて民間の公共裏業は推進するわけですね。国有林だけがやっぱり予算に制約されてできないということになると、これはむしろ大臣の責任にもなってきますから、ぜひその辺は大臣が前向きに取り組んでもらいたいというふうに思うんです。これ以上林野庁長官に質問したって答弁できないと思いますから、よろしくひとつお願いします。  次の問題に入りますが、私は臨調について農水省の対応をお聞きしてまいりたいというふうに思いますが、臨調の基本答申が出されましたけれども、農政に対してもかなり厳しい指摘がされているわけなんです。政府はこの答申を尊重して実行に移すというふうに言っているわけでありますが、大臣としては臨調答申をどのように受けとめこれに対処していこうとされるんですか。まず基本的な考え方をお聞きしたいんですが。
  146. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 今回の基本答申での農業についてでございますが、農政上の基本課題でございます米をめぐる問題と、生産性の向上ということが非常に大きな視点になりまして、いま産業として自立できるような農政をつくりなさいということが広範な角度から指摘をされているわけでございます。特にやはり国民にとって非常に重要ないわゆる食糧の安全供給、あるいは雇用の場の提供、あるいは環境保全等について非常に理解ある態度を示していただいたということは、私たちはこれは一応高く評価しているわけでございますけれども、ただ、具体的な問題になりますというと、たとえば食管会計の扱いだとか、あるいは水田利用再編対策の将来について等については厳しい一つの内容をはらんでおりますので、これについては私たちは中長期的な立場でこれをどう扱うかということを示しながらも、できるだけ現在の農林行政の現状を国民に理解をしていただいて、慎重な態度で対応したいと、かように考えておるのでございます。
  147. 村沢牧

    村沢牧君 具体的に多くの問題が指摘をされておりますが、私は時間の関係上、本日は食管問題、普及制度の問題、統計情報の問題について以下伺ってまいりたいと思うんですが、まず食管制度、基本答申は特に食管制度について多くの指摘をしているんですが、その中で生産者米価抑制あるいは消費者米価に行政介入の緩和、逆ざや解消、コスト逆ざやの縮小、自主流通米の補助金の削減、これらを通じて米の全量管理を見直せと言っているんですね。このことは食管制度を空洞化し、見方によっては食管制度を無視するものである。大臣はこの答申を尊重して実行しようとするんですか。
  148. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 食管制度について私たちはあくまでも堅持してまいらなければならないというのはすでに何回かこの委員会で申し上げておるとおりでございまして、新食管法は御承知のように基本計画でやはり生産計画を立てる、そして供給計画においてはできるだけ消費者のニーズに合う配分をするという基本に立ってのことでございますから、そういう意味での食管制度を私たちはあくまでも堅持してまいりたい。しかも、いま臨調の答申にありますように、食管会計をひとつできるだけ合理的な運営をしなさいということでございますので、私たちは逆ざや解消についてもできるだけ努力をしてまいらなければなりませんし、しかし、これはいま直ちにやりなさいと言ってもなかなかこれはできないことでございますから、これはやはり中長期的な面からこれを検討してまいらなければならないと思います。  また米価の抑制についても、いろいろ私たちも主張するところは主張いたしたのでございますけれども、なかなかこれは現実の農政の面では直ちに実施されるということは非常にむずかしい問題をはらんでおりますので、こういうように具体的に進めてみて、現状とある程度競合しながらこれらの政策を進めてまいらなければなりませんので、しかし第二臨調の答申は尊重してまいらなければならないのは当然でございますから、私たちは中長期的な面の計画にのっとってこれを進めていくということをできるだけ説明をいたし理解をいただこう、こういう考えでおるのでございます。
  149. 村沢牧

    村沢牧君 説明をし理解をしてもらうことは当然だけれども、臨調の基本答申もう出ちゃったんですからね。これは何とかしなければならぬということですね。  そこで行管庁にも尋ねますが、食管制度は日本の農業の基本政策とも言うべきものだというふうに思うんです。またこの法律は、国民食糧の確保と国民経済の安定に重要な役割りを果たしている。大臣も食管制度の根幹を守るというふうに言っているんですけれども、いままでの農水委員会の論議の中で、食管制度の根幹とは何か、それは一つは米は政府の全量管理である、それから二重米価制である。だんだん食管法も骨抜きにされてきたけれども、このくらいは根幹として守っているわけですね。ところが臨調の答申は、全量管理も見直せ、逆ざやを直ちになくせよというようなことは、この食管法を骨抜きにするどころか否定をするような発想なんですね。そして、単なる財政負担だとか金減らしの発想にすぎない。これじゃ日本農業は破壊してしまうし、食糧の確保を不安に陥れるものだ。行管庁は臨調の窓口になっていますが、どういうふうに考えますか、この答申を出したことについて。
  150. 谷川憲三

    説明員(谷川憲三君) 私、臨時行政調査会の主任調査員でございます。  先生御指摘のように、食管制度は米の需給安定のために非常に重要な役割りを果たしております。その点については臨調の基本答申でもそういう理解の上で、現在の食管制度の運営改善をさらに推進してほしいということで、先ほど来出ております生産者米価抑制的な設定とか、売買逆ざやの解消あるいはコスト逆ざやの縮小、そういった改善策を示しているわけでございます。さらに、そういう改善を行った後、中長期的な問題といたしまして、食管制度のあり方をいろんな観点を踏まえて検討、見直しをしてほしい、これはその時点での米の農業生産や食生活における地位、あるいは食管制度によって価格安定を図っていくことの意義、あるいはそのために要するコスト、そういうことを総合的に勘案して、現在の全量管理という方式を残していくのか、あるいはそういう方式がいいのか悪いのか、その点をその時点で見直す必要があるんではないかと、こういう考え方でございます。
  151. 村沢牧

    村沢牧君 その考え方はここに書いてあるけれども、そのことが食管法に照らしてどうかということなんですね。米の全量管理を見直す——いま自主流通米にしてもその他の米にしても政府がともかく、直接扱う扱わぬは別として、全量管理をしているわけですね。これを見直すということは、これは農政の基本問題だと思うんですね。臨調が見直ししなさいとおっしゃるのは勝手だけれども、そんな問題じゃないと思うんですね。じゃ、食管法に照らしてこの指摘はどうなんですか、法律上。
  152. 谷川憲三

    説明員(谷川憲三君) 当面の運営改善については、もちろん食管法、現在の食管制度を前提とした話でございます。それから中長期的な話として、全量管理方式の見直しということについては、やはり現在の食管制度を、食管法そのものについても場合によっては見直すと、こういう意味が含まれていると理解しております。
  153. 村沢牧

    村沢牧君 大臣、食管法そのものについても見直しということですね。食管法は去年改正したばっかりですね。それを見直しということは、きわめてこれは強い指摘であるし、大臣としても重要な問題だというように思いますが、どうなんですか。米の全量管理はやめなさいということなんですか。
  154. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 現状においては食管法を堅持してずっと進めていくということには変わりございませんが、やはり中長期的に見て米の管理制度そのものはその時代にどういうように変化しなければならないかということが第二臨調から指摘を受けていると思いますので、私たちは現状はあくまでも食管制度を守るというこの態度には変わりございませんけれども、中長期的に見てこの食管制度そのものを、あるいはまた米の管理制度全体をその時代に即応した考え方でやはり検討はしていかなければならないと思いますので、したがいまして、中長期的に見て私たちは、米の管理制度というものはどうあらねばならないかということは常に検討をしてまいらなければならない課題であると、かように考えておるのでございます。
  155. 村沢牧

    村沢牧君 検討することはですね、どんな問題についても検討はしますけれども、臨調の指摘、しかも昨日あたりの新聞を見ると、特に食管制度については、鈴木総理側近として、九月までに何とか方針を出してこいというふうなことが新聞で報道されているんですが、こんなことまで含まれている臨調の答申をそんなに簡単にできるものじゃないと思う。  私は、食管制度のあり方についてはわずか三十分や二十分の質問時間ではできませんから、これ以上はこの問題について触れませんが、またいずれかの機会でもって本当に日本の食糧を守っていくという立場で農水省側のあるいは政府の姿勢をただしていきたいというふうに思いますが、臨調の答申を受けて食管制度も見直しましょう、二重米価もやめましょうと、そんなことであっては農林水産大臣が務まらないと思いますから、その点はよく指摘をしておきます。  次は、八〇年代農政の展望をするときに、農業技術の向上、さらには普及事業の発展は農政の重点施策の一つであるというふうに考えますが、大臣はどういうふうに考えますか。普及事業や技術向上は大事なことだというふうにお考えですか、どういうふうに考えますか。
  156. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 普及事業の問題でございますけれども、現在第二臨調から大きく指摘を受けているのはこの普及事業の問題でございますけれども、現在私たちとしては、この普及事業等については現在の農林水産業の生産性向上をするためにはどうしても必要なものなんだという考えでいま進めておりますけれども、やはり普及事業そのものにもある程度内容改善は必要だと思いますので、そういう点については、やはりこれも私たちは第二臨調の答申の趣旨もございますので、十分検討はしてまいらなければならない、かように考えております。
  157. 村沢牧

    村沢牧君 普及事業あるいは技術の向上をこれからの農政の柱にしていくということはときどき大臣からも言われていることなんですね。そこで、臨調の答申を受けるまでもなく農林水産省としては、所管をする大事な事業の普及事業について、時代の要請に即応した新しい技術の普及なり、あるいは農政の重要課題に取り組むこと、こういうことは当然のことですが、臨調に言われるまで農林水産省は普及事業について何にもしなかったんですか。あるいはいろいろやっているけれども、皆さんが指導して。そうしてそれに対して普及員はどういう対応をしているんですか、その辺について。
  158. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 普及事業については、たとえばアメリカの例を申し上げますというと、アメリカは大学の研究室と普及員との関係が非常に密でして、しかもそれはやはり農民が非常に高いレベルにあるということも一つの原因でございますけれども、いずれにしても、人的資本というものが非常に高く扱われているアメリカにおいては、やはり研究室といわゆる農民とが直結している、あるいはまた普及員と研究室が非常に密着しているというようなこと、あるいはまた、農林水産省のお役人も直ちに農家に帰るというような非常に高い農業を技術の面で考えておられるようでございますが、そういう一つの考え方というものは私たちは常に念頭に置きながら、現在の技術開発の面で普及事業の役割りというものは非常に重要でありますだけに、やはりこのままで果たしてよろしいだろうかということは常に念頭に置きながら進めてきているわけでございますが、ただいまの段階ではそれに手を染め得ないままに今日きているわけでございますけれども、普及事業そのものは時代に即応してやはりある程度見直していかなければならない時期であろうと、かように考えておるのでございます。
  159. 村沢牧

    村沢牧君 大臣のその高邁な御意見、アメリカのことを私は聞いているわけじゃないですが、日本の普及事業をやっているたとえば農蚕園芸局長ですね、普及事業を見直してこういうふうにしなさいということを皆さん方は指導してないんですか。そのことだけでいいんですよ。いままで全然やってなかったから臨調からこういう指摘をされたんですか。何かやったんですか。余りどういうことをやりましたという細かい例を挙げなくたっていいですけれども、その指導方針についてどうなんですか。
  160. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農業の実情がいろいろ変わってきておりますので、これまでも数年に一度程度はいろんな形で見直しをいたしておりますして、その内容を運営方針あるいは予算の内容に反映をさしてまいっておるわけでございます。しかしながら、今回の臨調といういわば国家的な規模での行政の見直しという問題もございますので、私どもにおきましても、昨年九月以降、普及問題研究会というのを発足させまして、ひとつ普及の問題について徹底的に見直しをして刷新強化を図る、こういうことにいたしておりまして、近々にその報告も出てまいると、こういう予定になっておりますので、その内容も参考にしながら今後さらに一段と普及事業の効率化、刷新を図ってまいるつもりでございます。
  161. 村沢牧

    村沢牧君 政府の皆さん方は、臨調から指摘をされたからやるんだと。そんなことは皆さん専門にやっているんだから、この程度のことは臨調から指摘をされぬたって、いいことだったらどんどんやらなきゃいけないですね。私たちがここで、委員会で質問して、これやったらどうかと言ったって全然耳を傾けない。臨調から言われれば何とかしなきゃならないというのでは、そんな姿勢じゃとても農民の信頼はできませんよ。ですからもっと、臨調から指摘を受けるまでもなくやらなければいけない。  そこで、臨調の報告は、地方公務員に対する人件費補助についても原則として二年以内に一般財源に移行せよと、こういうふうに指摘しているんですよね。この報告どおり実行するとするならば、農水省関係では対象となる事業はどんなものが幾つぐらいあるのか、あるいは人員はどのくらいになるのか、その点について示してください。
  162. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) ただいま農林水産省で人件費補助を行っておりますのは、農業改良普及員等約十三種類ございます。人員といたしますと、合計いたしまして大体二万二千六百人余りでございます。このうち法律に基づきますものが八件、人員で約一万九千五百人、予算上のものが残りの五件、三千百八十人ということでございます。
  163. 村沢牧

    村沢牧君 そうすると、この臨調答申を実行しようとするならば、法律補助も、いまお話があったようにあるわけですから、法律改正に取り組まなけりゃならないんですが、そこまで進めていくという決意をもってやっているんですか。
  164. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) いま先生御指摘のように、人件費補助につきましては、農水省の行政の、全国的に、また統一的な基準で進めるという必要からやっておるものでございますので、私どもとしては、この人件費補助を一般財源に移すということについては非常に問題があると考えております。  ただ、現在の実情に即しまして、いま申し上げました十三件のうちでも、実際上何か別途の代替措置をとることによって実効を失わないでそういうことができるかどうかという点につきましては、臨調の御報告もございますので、私どもやはり検討しなきゃいかぬ課題かと考えておりますが、現段階ではまだ結論は出ておりません。
  165. 村沢牧

    村沢牧君 臨調から指摘をされて一般財源に移行すると言ったって、法律補助なんですから、その法律改正しなきゃだめなんですよ。皆さん方で勝手にやると言ったって国会の承認を得なきゃできないですよ。ですから、問題があるという官房長の指摘ですから、問題としてあるんですよ。ですから、こんな答申どおりにはいかないと私ははっきり申し上げておきます。  それから、自治省いらっしゃいますね。——自治省にお伺いしますけれども、法律補助や、いままで法律に基づかない補助もあったわけですけれども、一般財源に移行せよということは計算的に、交付税で対応するということになるというふうに思うんですが、それはどうでしょうか。
  166. 持永堯民

    説明員(持永堯民君) 御指摘のように、人件費補助については一般財源に移行すべしという答申が出ておるわけでございますが、仮にそういうことになりました場合には、いまお話ございましたように、地方交付税を通じて、地方負担分については措置をしていく、こういうことになると思います。
  167. 村沢牧

    村沢牧君 そこで従来、警察官だとかあるいは高校職員等は交付税対象だ、それには一定の設置基準が法的に決められておって、その基準に基づいて交付しておるわけですね。いま報告あったような各種のものが交付税にみんな入ったらどういうことになるんですか。設置基準を設けている。これは農水省ばかりじゃないと思うんですね。ほかにもあるかもしれぬ。そうすると、一体、交付税の財源だって決まっているでしょう。それをみんな交付税に持ち込んだら一体どういうふうになっちゃうんですか。自治省、どういうふうに考えますか。設置基準もまとめて全部つくるんですか。
  168. 持永堯民

    説明員(持永堯民君) 設置基準の問題につきましては、これはいまお話ございましたように、警察官あるいは高校教員等もあるわけでございますが、それぞれの職種につきまして、所管省庁と十分相談いたしまして、どういう人員を参入すべきかということについては、協議を申し上げた上で措置をしていくことになろうかと思います。  それから、全体の交付税財源の問題でございますが、これは臨調の答申にも触れてございますけれども、そういった形で補助金を一般財源にした場合において、所要の地方財源をどう確保していくかという問題については、地方財政計画を通じまして、全体の地方財源を措置すべきだと、こういう考え方が出されておりまして、そういった方向で全体の財源を措置すべきものというふうに考えております。
  169. 村沢牧

    村沢牧君 将来検討されていくでしょうけれども、現段階二年以内に全部この種のものを皆交付税に持ち込むといっても、自治省として本当に対応できますか、これ。大変なことだと思うんですね。交付税の財源、決まっておるわね。これは人件費も皆交付税に持ち込んだと、で、あとの交付税の基準財政需要額これいろいろあるんだけれども、そういうものに関連して、どうなんですか、できるんですか。
  170. 持永堯民

    説明員(持永堯民君) これは結局毎年度の地方財政全体の状況がどうかということにかかわる問題でございまして、毎年度の地方財政対策あるいは地方財政計画を策定することを通じまして、もちろん大蔵当局とも折衝をするわけでございますが、そういった中で全体の地方財源あるいは地方交付税の総額というものを確保していくということでございます。
  171. 村沢牧

    村沢牧君 これも大変無理があると思いますし、そんな簡単にできることじゃないと思うんですね。そのことの論議はまた後に譲りまして、そこでそのように一般財源に持ち込んでくる、改良普及員の数を減らすということになってまいりますと、いまの農業技術のあり方についても大分変わってくると思う。たとえば農業改良普及員にしても、生活改良普及員にしても、林業改良普及員にしても養蚕の改良指導員にしても、現在の人間を確保することができるかどうかも疑問である。地域によっては農業格差が生ずるあるいはまた県の考え方、知事の考え方によって農業技術指導等も異なってくる。こうした結果、日本の食糧を供給していくという農業にとって、全国レベルの生産向上が足並みがそろわなくなってしまう。つまり臨調の答申は、私は普及事業の後退を招くと同時に、日本の農業にとっても重要な問題だと思う。このような答申を尊重して農業の後退をする道を選ぶのではなくて、大臣はさっきアメリカの例を引いて高邁な意見をおっしゃっていましたけれども、そういう形にしてもっといままでの内容を充実していくことが大事じゃないですか、どうですか。
  172. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 農業改良普及員の問題については、やはり第二臨調の答申にも指摘を受けているわけでございますが、私たちとしてはやはり新しい農政を確立していくために、やはり技術の普及をこういうふうに研究機関を通じて進めていく。それをどういうように普及していくことが日本の農政を転換できるかということをやはり基本的に考えていかなきゃならない問題であろうと思いますので、そういう点で現状のままで果たしてよろしいのかというようなことは、やはり十分私たちは考えていかなければならない問題だと思うんです。したがいまして、今回第二臨調の答申をも受けておるわけでございますので、この機会に私たちはこの答申を基本にしながら、やはり新しい普及員のあり方というものをどうしなければならないかということ積極的に詰めて、そして農業全体に、しかもマイナスになることなしに、むしろプラスになるような普及制度にしてまいりたいというのが私たちの欲張った願いなんでございます。
  173. 村沢牧

    村沢牧君 どういう普及事業をやるかということは十分検討しなければいけない。しかし、普及事業のいままでのシステム、組織ですね、これまでやっぱり変えなければいけないのか。皆さん方が法律でもって普及員に補助している。それを変えてこれは後は県知事さんに任したよと、それでいいのかどうか、これは重大な問題を含んでいると思いますね。その点については後ほど同じような問題を指摘をしてまいりますけれども。  次は、省庁の整理・統合合理化で、ブロック機関のもとにある都道府県機関ですね、これは廃止せよと、こういうふうに臨調答申が出ておりますが、その中で農水省の統計情報事務所はその対象になりますか、これは臨調か行管かどっちかですね。
  174. 谷川憲三

    説明員(谷川憲三君) お答えいたします。  今回の基本答申では、地方支分部局を含めまして、省庁組織の整理・再編合理化の問題につきましては、再編合理化の基準を示しておりまして、個別な、具体的な機関についての検討はこの基準に基づきまして今後調査審議していくと、こういうことになっております。  御指摘の農林水産省の統計情報事務所につきましても、地方支分部局のうちの府県単位機関の一つとして、当然検討の対象となるものと考えております。
  175. 村沢牧

    村沢牧君 農水省にお伺いしますが、臨調は基準を示してひとつ検討の対象にはなるということですが、私の理解をするところでは、統計事務所というのはブロック機関のもとにある都道府県機関、必ずしもそういう形になっておらないというふうに思いますが、農林水産省はどういうふうに理解しておるのですか。
  176. 関英二

    説明員(関英二君) 御指摘のように統計情報事務所は地方局所在地を除く各府県に置かれておりまして、各県すべてにあるわけではございません。
  177. 村沢牧

    村沢牧君 もう一回言ってください。済みません。
  178. 関英二

    説明員(関英二君) いま御指摘の統計情報事務所は、府県単位ではございますが、地方農政局所在地を除く府県には置かれておりませんので、各県にすべて網羅的に統計情報事務所があるわけではございません。
  179. 村沢牧

    村沢牧君 じゃ、ブロック機関のもとにおける都道府県機関ではない、そういうふうに判断していいですね。
  180. 関英二

    説明員(関英二君) ブロック機関のもとには統計情報事務所はございませんので、したがいましてブロック機関のもとでの統計情報事務所ではございません。
  181. 村沢牧

    村沢牧君 そのことは臨調とまたよく協議してくださいね。こっちは対象になると言っているし、こっちはならないと言っているんだから。そんなことは私のこれからの質問することではありませんから、それは皆さんに任せます。私は、臨調の言う機関ではないじゃないかというふうに、そういう見解を持っていますが。  そこで、この整理統合方針のもとに画一的に統計情報部もこれに該当させると、これを強行するとなると地方の実態に即応する農業生産の再編成や農業構造の改善が図れなくなってくると。統計情報部は、これは国家目的のためだけに利用するのじゃなくて、地方行政機関のためにも有効に働いているわけですね、重要な機関だと思うんですよ。したがって、この地方事務所は府県と密接な連絡をとりながらその適切な情報も提供しておると、これは臨調の答申に従って府県単位の機関を廃止するということは統計の地方移譲の価値というものが半減しちゃうんです。これはどういうふうに思いますか。
  182. 関英二

    説明員(関英二君) 先生の御質問にお答えする前に、先ほど私はブロック機関のもとに統計情報事務所がないと申し上げたのは若干表現が悪うございまして、ブロック機関のもとに統計情報事務所が置かれておるということを申し上げた中に、地方農政局所在地にないという意味で申し上げましたので、訂正さしていただきたいと思います。  あと、先生の御質問は、農林水産統計は国並びに地方の行政をやっていく上に非常に重要であるというような御質問であったというふうに考えてお答えをいたします。  事実、農林水産統計は、たとえば米価なり乳価等の行政価格の決定なり米やミカンの需給調整というようなものなり、天災融資法なり、激甚災害法の発動基準なり、融資枠を決定するという意味では非常に重要な役割りを果たしておりますし、統計情報事務所は府県にありましてこれら統計の作成に直接当たっておるわけでございます。また、地域農政推進という観点から統計情報事務所は市町村別統計等を作成提供するというような役割りを果たしておりますので、必要な機関であるというふうに私どもは考えております。
  183. 村沢牧

    村沢牧君 統計情報事務所が必要な機関であるということは当然のことだけれども、最後に一点大臣に要請し、質問しておきますが、地域の重要な農産物生産費を初め、家計費調査生産実態の把握、特に災害の場合の迅速的確な調査、これは地方の実情に即応する統計がきわめて大事だし、重要だと思うんですね。しかもまた、農産物価格の決定や災害のいろいろ法律発動の基準にもなるわけですね、この資料が。したがってこの作業をブロックの機関が代行するとしても地域の実情には合わないと思うんです。うまいものはやっぱりできないと思うんですね。  そこで大臣、どうしてもこの臨調が指摘をしているような、府県の統計事務所をやめちゃえということは、これまた地域に対しても重大な影響を及ぼすし、農林水産省のとるべき態度ではないと、こういうふうに思いますが、大臣の決意はどうですか。
  184. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 統計事務所の役割りについてはいまお答えしたとおりでございまして、しかもその統計は、やはり食管、各種の農産物価格を決定したり、あるいは災害等の適用等にも大きな基礎的な資料になるわけでございますから、したがいまして統計事務所の必要というのは当然理解できるわけでございますが、問題は、各県の統計事務所を一体どうするのかという問題だと思うのでございまして、この点については、やはり統計事務そのものは当然必要でございますけれども、それを運用する機能、機構はこれから一体どうあらねばならないかということがいま第二臨調から指摘を受けているわけでございますので、したがいまして、その点はやはり合理的な統計事務を進めるための機能、機構というものはどうあらねばならないかということは私たちは真剣にやはり検討していかなければならない課題だと思いますので、それはこれからも十分検討を進めてまいります、こういうことでございます。
  185. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 きょう私が質問を予定をしておりましたうちの二つはいま同僚の村沢委員の方から出ておりますので、重複の点はなるべく避けていきたいというふうに思います。  一つは、災害の問題であります。ほとんどいままでの質疑の中で、具体的な要望事項としては私どもも同じでありますので、ぜひいまの質問を踏まえておいていただきたいと思うんです。ただ、特にお願いをしなければならぬことは、季節的に眺めてみまして、むしろわれわれの地方といいますか、紀伊半島地域というのはこれからが大変な時期でありまして、従来の台風等による被災状況を眺めていきますと、むしろ九月、十月あたりの方がひどい実績を持っているわけです。そういうことになりますと、今回の台風に対する被害を早期に原況に戻すという努力がきわめて重要なポイントになってくるわけで、そういう意味合いで、次の災害を引き起こさない緊急対策というものについてはきわめて重要である、この認識に立ってぜひ具体策を現地と相談をしながら進めていってもらいたいということが第一の課題であります。現地の方では、農林水産関係いち早く現場に駆けつけていただきまして、そして実態の把握あるいは調査、相談等にあずかっていただいておりまして、現地の方ではよくやってくれるという感謝の声が上っているわけでありますが、いずれにしても、その体制をぜひ持続をしていただくと同時に、いま申し上げましたような位置づけでこの緊急対策に万全を期してもらいたい、こういうふうに要望をいたしておきます。大臣からもぜひ現地の激励のためにも、私が感謝を申し上げますので、それにこたえる対応を、現地に声援を送ってもらいたい、こういうふうに思います。  特に指摘がありましたそういう意味合いからいきまして、問題は、災害の救済に当たって一番心配なのは、そういう時期の災害の心配でありますが、同時に、その復旧をしていくのに具体的にお話が出ましたように、たとえば天災融資を受けるような形に行く、この決定をするまでの路線のつなぎを一体どういうふうにしていくのか、それを見越しながら資金融資その他の対応が具体的にやっぱりなされるということについて、これは法律的な手続からいきますといろいろ問題のあるところです。あるところですが、それにかわるべき一つの対応策についても現地を指導してもらいたい、こういうふうに思うんですが、これは答弁のしにくいところであろうと思いますが、その辺の決意をまずお聞きをしておきたいと思います。
  186. 大坪敏男

    政府委員(大坪敏男君) ただいま先生御指摘の天災融資法発動前の被災農林漁家に対する資金手当ての問題でございますけれども、この点につきましては、大体多数の県におきましては県条例におきまして災害資金制度を設けております。通常の場合でございますと、まず県段階で条例に基づきます災害資金を融通をするということが先行いたしまして、私どもの天災融資法の発動が行われ、天災資金が融通される過程でこれに乗りかえていく、借りかえていくというのが通常の例でございますので、私どもとしてはその線に従って被災農林漁家に対する資金融通が円滑にいくようさらに指導してまいりたいと考えております。  また同時に、私どもといたしましては、八月五日付の通達をもちましてつなぎ融資の指導もいたしておるわけでございますので、そういった点を通じまして被災農林漁家に対しまして経営資金にいささかも支障を来たさぬよう指導していくつもりでございます。
  187. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 問題は、そうなりますと復旧のための予算措置、それから具体的な金の流れ、この二つがきわめて大きな柱になるわけでありまして、むしろ先ほど林野の場合の予算のやりとりがありましたが、具体的には今日まで計画している枠内の中ではとうてい処理のできないのが災害の特徴でありまして、その点はぜひひとつ大蔵省財政当局と十分に大臣責任を持ってかけ合ってもらわなきゃならぬ。  それからもう一つは、やっぱり金の流れでありまして、被災地の方では従来から金融機関その他についてその流れ方がとまっていったのではお話になりませんので、もちろん現地の方からどれぐらい必要だという調査は行われるわけでありますから、その要求がきちっと確保できて、金がないからわかっていても後回しだというようなことのないようにぜひひとつ気をつけて対処をお願いをしておきたい、こういうふうに思いますが、これはよろしいんでございますね。
  188. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) まあ、災害対策については、これは財源の面で不足しているから災害対策ができないというような、復旧が不可能だというようなことはしてはいけませんので、あくまでもやはり災害復旧については最優先的に扱うのは当然だと思いますので、そういう姿勢で今後も臨みたい、かように考えます。
  189. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 それからもう一つの課題は、これは大臣いつも私思うんですが、こういう災害に対する対応の仕方もやはり縦割りなんですね。私は、ここに一番大きな問題点があると思うんです。一つの端的な例を挙げますと、私は伊勢市の神社港というところに、港に住んでいるわけです。ここは前の伊勢湾台風のときに勢田川というのが大変はんらんをいたしまして、激特の適用を受けて実は復旧をしてきたところであります。河川は建設省でありまして、ところが入り口に入りますと港湾なもんですから運輸省になります。私の方の側はまさに運輸省なわけですね。それから、対岸の方は漁協がございまして、漁港になっている。したがって、農林水産省の方になる。上流の方の建設省はもうほとんど終わって、そしてせきができたわけですね。ポンプも設置をされました。完了であります。ところが、対岸の方は農林水産省が管轄をしながらもうすでに高い堤防がざあっとでき上がっているわけですね。私のところの方は運輸省なもんですから、計画的に五カ年計画でぼちぼちやってまいりまして、同じ川でありながら相手の高さよりもこちらの方が低いままでいまだに存続をされているわけです。今回、集中豪雨で水が来まして、上流の水をはかすのにポンプを働かしてやったんですが、そのときちょうど満潮でありました。ポンプを動かしたがために逆に私どもの方へ水が上がり、これは早く引きましたからいいんですが、そういうようなかっこうであれがもし——農林水産省もあるいは建設省もあるいは運輸省もそれぞれが、それぞれの所管はあるでしょうけれども、持ち寄りながらたとえば工法の問題だとかあるいは共同で全体をどういうふうにしていくかということが、同時進行を図るというのが私はやっぱりたてまえだろうと思うんですね。それが縦割り行政であるがゆえに、同じところの影響下にあるところにつきましても工法がばらばらであったり、これはいろいろあると思うんです。たとえば農林水産の工事単価の問題、運輸省の工事単価の問題、おのずから枠組みが違うわけですから。しかし、こういう災害の問題は少なくとも総合的にくみ上げて、そうして全体が協力をして完了をさせていこう、こういうところがありませんと、私は現地の問題としては大変残念ながら指摘をせざるを得ないところがありますんで、これはぜひひとつ農林水産大臣に、今回まあ新生崩壊など幾つかありまして、建設との絡みだとか幾つか出てくるんですね、現実問題。それらのところをぜひひとつ相談をしながらやってもらうような配慮、これはぜひひとつ閣議あたりでもそういう問題提起をしていただいて具体化をしてもらうようにお願いをしておきたい、こういうふうに思いますが。
  190. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 御承知のように今回の災害に当たりましては、政府に災害対策本部を設けまして国土庁長官が中心になって各省庁の取りまとめをして総合的な対策を進めているわけでございますが、特にいま御指摘がございましたので、今後の閣議等において総合的な対策を進めるようにさらに要請はいたしたいと思います。
  191. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 要請はじゃなくて、具体的にぜひそうやってもらいたいと思います。本当に私のところはずっと問題がありましてね、同じ防潮堤をやっていくのにも農林水産省がやる、県が単独でやる、建設省がやるというふうなことでずいぶん困ったことがあるんです。そのつなぎ目が結果的に問題になったりしているわけでありますから、ぜひその辺のところは統合的に組み上げられるように、これはもう強力にひとつ主張をしてもらいたい、こういうふうに思います。  それから次に臨調の問題ですが、先ほども御指摘がありましたが、この臨調の中身へ大臣は尊重するというふうに先ほども言われていまして、尊重しないとはこれは覆えないわけですね、言えないんですが、たとえば生産軒米価についてこれは農林大臣が決めるのがいまの法律ですね。それから先ほど言うておりましたたとえばこの食管の全量管理制度の問題は「中長期」、こうなっているんですが、「中長期」とついていないところは緊急にやれというところなんですね。緊急にやれというところの中で、実は生産抑制的に生産者米価決めろ。まさに大臣のふところの中へ土足で踏み上がってきたような問題の御指摘になっていますね。それらは私指摘の仕方もきわめて問題があるんじゃないだろうか、こういうふうに言わざるを得ぬのですが、率直に言って大臣はこれらも含めて尊重する、こういうことなんでしょうか。
  192. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) いま農業の置かれている現状というのは非常に厳しいというのは御承知のとおりでございますから、こういう厳しい環境の中でやはり対外的にも対応できるような農業をつくるということは私たちの課題でございます。したがいまして、やはり米をめぐる問題だとかあるいは生産性の向上というこの問題は、私たちはどうしても避けて通れない問題でございますので、これは積極的に進めていこう、こういう考え方については、第二臨調も農水省の考えはそのとおりなんだ、積極的に米をめぐる事情についてはやりなさい、あるいはまた、生産性向上については積極的にやりなさいという大前提のもとに、農林水産業というのは自然を相手のことですから、改正する、改善するということは非常に時間がかかるだろうからというので、ある程度他の省庁の問題の扱いとは私はかなり弾力的に扱ってくれておるんじゃないだろうかと私は判断しているんですよ、私なりに。ですから、私はこの答申に対して、具体的な問題に対してはいま坂倉委員御指摘のように非常に厳しいものはございますけれども、私は中長期的に見てこの問題を判断していこう、なかなかいま、あしたすぐできるという問題じゃございませんが、しかし新しい農政はつくらなきゃいかぬ、日本の農政はこのままではいかぬということはもう御指摘のとおりでございますので、第二臨調もそれを心配しているわけでございますから、その目標に向かって中長期的に判断をする、中長期的に解決しようというのが私の考えであり、第二臨調も大体そういう方向をある程度示唆しているようにも受け取られますものですから、私はそういう答申を理解しながら進めていきたい、こう思っておるのでございます。
  193. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 それは大臣、ちょっと甘いんじゃないでしょうか。中長期という観点では、確かにある程度理解をして検討をしろということですから、検討をした結果が政府得意のできませんでしたと言えばそれまでの話でしょう。ところが、いま私が具体例として出しましたのは、生産抑制的に生産者米価は決めるべきだ、こう言っているわけでしょう。そうなりますと、いま大臣は、これからまだ能率を上げて、いわゆる生産性向上を目指して努力しなきゃいかぬ、こう言っている、片方では。ところが、生産性向上という観点からいくと、生産抑制となりますとその生産性すらも阻害をしてしまうことになりはせぬのだろうかという一つの心配点は出てくるはずです。しかも、米価そのものについて、大臣が決めることに臨調で抑制的に決めなきゃいかぬのだと、こうなりますと、自由経済のたてまえから一体いかがなものだろうか。幾つか問題を残す指摘なんですよね、余りにも。ここのところは私はちょっとやっぱり問題がむしろあり過ぎる、こういうふうに言わざるを得ないです。それもひっくるめまして、大臣、それは尊重でございますからという話で、しかもこれは中長期じゃなくって来年また米価決めなきゃならぬのです。決めなきゃならぬのに、こういうふうに出されておって値上げができますか。これはもう毎年毎年いくわけでしょう。これ、めったに値上げができるという条件ではないですわな。そうすると、いまから米価の値上げはありませんよということを官省されたことと同じじゃないですか。そういうようなことで能率向上生産性向上なんという話がストレートに入りますか。これはまさに矛盾をした話です。これはまた一遍やりとりをしたいと思うんです。  それからもう一つだけ聞いておきたいのは、ずっといまの大臣の御答弁なり何なり聞いていますと、さきにこの委員会の中でも論議をしました八〇年見通しというのは一体どうなるんだろうか、もう一遍この見通しについて、たとえば農政審あたりで審議をするということになるんだろうか、あるいは修正をされるという前提に立つんだろうか、ここのところは明確にしておいてもらいたいと思います。
  194. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 農政審議会で一昨年決めまして、閣議で決定いたしました農産物の長期需給見通しにつきましては、私ども当面は変えるあれはございません。  それで、現在、農政審の専門委員会におきましても、今後の農政のあり方を基本答申の方向に沿っていま検討を進めておりますが、一応私ども六十五年の需給見通しというものを前提に置いております。
  195. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 わかりました。それはずいぶん矛盾が出てくるはずですから、これはまた改めて論議をすることにいたします。  それから次に、水産の関係なんですが、いまカツオ・マグロが大変な状況に実は置かれています。その情勢と、具体的にこのカツオ・マグロの危機的な状況を脱出できる方策をどう立てようとされておるのか、この辺のところをひとつ御説明いただきたい。
  196. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 先生御指摘のように、遠洋カツオ釣り漁業につきましては非常にむずかしい情勢にございまして、基本的に申しますと、昭和五十三年が底でございまして、それから回復基調にあるというふうに考えておったわけでございますが、またそれに対応いたしまして私どもといたしましても、燃油資金であるとかあるいは経営維持安定資金といったものの融通によりましてできるだけ経営のてこ入れをするという方向でまいったわけでございます。  ところが、最近の情勢から申しますと、本年の一月中旬以降に冷凍カツオの産地価格が下落をし始めまして、その後一時回復いたしましたが、最近の状況ではまた再び低落をするという状況で、いま二百三十円台であるというふうに思っております。これは生産の動向を見てみますと、必ずしも生産はふえておりません。また、需要の動向を見ましても、国内の生食——かつおぶしが若干需要が減退しておりますけれども、一般生食は伸びはかなりございまして、最大の問題はアメリカが高金利政策をとっておるものでございますから、このために在庫をできるだけ減らすということのためにアメリカへの輸出不振ということが最大の問題になっているわけでございます。  そこで、このような動向に対応いたしまして、私どもといたしましては、なるべくこの魚価を維持するということが重要であるというふうに考えておりまして、実は日鰹連及び全漁連に対しまして調整保管の実施を話をいたしまして、これは実施の態勢に入っております。それを予定しているという状況でございます。  それからまた同時に、このような魚価の低迷の動向に対応いたしまして、実は八月十日に今後の対策につきまして関係四団体——これは日鰹連とそれから近鰹とそれに海外まき網漁業協会、それと北部太平洋まき網漁業協同組合連合会、この四者でございますが、この四者を集めまして、この魚価対策について鋭意検討してほしいということを申しまして、この結果、当面この四団体とも品質の向上に努めるということと、それから今後の冷凍カツオの魚価の推移によりましては水揚げの分散、それから海外から日本への輸出の調整といったような事項につきまして必要に応じてその実施を検討してまいるということにしたところでございます。  水産庁といたしましては、このような関係団体の検討結果も踏まえまして、今後の魚価の動向を十分に注意いたしまして適時適切な対応策を実施するということで冷凍カツオの価格の安定を図ってまいることによりまして遠洋カツオ釣り漁業の経営の安定を図ってまいりたいと思っている次第でございます。  なお、長期の問題といたしましては、やはりこの遠洋カツオ釣り漁業の経営を支えてまいりますには、やはり生食を中心にいたしまして、特に付加価値の高い刺身とかあるいはたたきといったような需要をふやしていくということが非常に重要でございますし、また同町に空冷装置等をつけさせることによりましてより経営が合理化できるようにし、かつまた自動釣り機とかあるいは省エネ対策といったようなことを重点的に実施いたしまして、このカツオ釣り漁業の長期的な安定策というものをとってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  197. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 いま総括的なお話をずっといただいたわけでありますが、同じカツオ・マグロにいたしましても、その中心をなしてまいりました一本釣り、これは特に大変な状況です。そこでは、やはり一番問題点は、そういうカツオ・マグロの基地の地域は地域ぐるみがそれに協力をしてきた体制がありまして、むしろそれによって町づくりが行われているし、あるいは後継者育成等も兼ねてそこで展開をされている。ところが、肝心の一本釣りがもう今日時点では操業してきても赤である、こういう状況で、たとえば私どもの宿田曽あるいは尾鷲を中心にいたしましたあの周辺にいたしましても船主がどんどん減っていくわけですね。そうなりますと、減船をやって調整をしつつなおかつ減っていく形でありまして、町がまさに火の消えたような状況を呈してくる。しかも、漁業従事者がそういう状況ですから若手が入ってこない、いわゆる後継者が育っていかない、こういう悪循環を展開をしてきておりまして、まさに町の雇用対策、それから過疎化問題、いろんな状況をひっくるめて呈することになってきていまして、単にこれはカツオ・マグロの採算だけの話じゃない、こういうのが実態なんですね。  そこで、いままでも論議をしてまいりましたが、具体的にはこの操業の中のコストからいきますと、やはり何のかんの言っても燃油の問題が、率が高いわけであります。そうしますと、今日でも燃油対策として幾つかの具体的な対策が講じられてまいりましたが、いまでも大体八万円当たり下がらないわけですね。そうなってまいりますと、これはどうしても今日の時点を踏まえて、さらにもう一遍燃油対策というものについて、一定の期間でも区切って、そして条件を区切って、ひとつ特別な対策を検討してもらうときではないかと、こういう気がするんですが、その辺はいかがなものでしょうか。
  198. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) ただいまの先生の御質問は、燃油につきまして特別の価格の設定とか、あるいは特別の助成といったようなことは考えられないだろうかという御質問と受け取ったわけでございますが、この点につきましては、私ども、確かに現在燃費が漁業経理の中に占めている割合、これが特に高くなっておりまして、しかも燃費につきましては、二回のオイルショックによりまして非常に高い水準になっておる。これに対しまして、魚価は低迷をしているという状況でございますので、漁業経営者の非常に苦境ということはよくわかっておりますし、また同時に、先生御指摘のように、三重県あるいは高知県あるいは鹿児島県といったようなところは皆、地域ぐるみでこのカツオの漁業をやっておりまして、その地域の大きな問題であるということもよく存じておるわけでございます。  さような面では、私どもも十分に理解はいたしておるわけでございますけれども、何分にもこのような特別の助成措置といったようなことをとります場合には、やはり他の産業との比較その他もございまして、このような助成といったような措置をとりますことは非常にむずかしいということを申し上げてまいったわけでございまして、現在もこの考えは同じと申し上げざるを符ないわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、できるだけこの燃費を使わない形で経営を安定させる方法はないかということで、先般も、燃費の削減につきましては積極的にこれに取り組むという姿勢から、この国会におきまして、漁業再建整備特別措置法の改正もお願いをいたしまして、省エネ漁船につきましての税制の特別の措置、あるいはこの法律に基づきますところの構造改善事業としての省エネの推進ということを明確にいたしまして、これに対応するということを申し上げた次第でございますし、今後はさらにこの漁業における省エネ化というものを進めますために、省エネ技術の再開発といったようなことも通じまして、より一層の経営コストの引き下げということをお願いしたいと思っている次第でございます。しかし、それはある一定の時間がかかります。したがいまして、そのためには先ほど申しましたような価格面での対策を講じながら安定をさせ、一方でこの省エネの対策を進めていきたいというふうに考える次第でございます。
  199. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 基本的な物の考え方は、特別措置はとれないというふうに言い切られて、そのままですと私は大変だと思うんです。    〔委員長退席、理事宮田輝君着席〕 これは、だから水産庁長官というよりも、私は大臣にその辺のところを具体的に検討してもらいたいと思うんです。  実際には乗組員にいたしましても、カツオ一本釣りで行くときにもうすでに借金がありまして、これは漁災のときにも私申し上げたと思うんですがね、もう借金をして、航海に出ていくときに、どれだけ水揚げになるかわからぬけれども、とった魚を、これを担保に入れまして、そして出ていくような船が幾つか出てきているんです。だから、倒産をするときはそこまで行っているんですね。カツオ一本釣り上げた、釣り上げたカツオはもう釣ったときから、実は金を貸した者の権利に移っているんです。本来あり得ぬことなんですよ。ところが、そこまで実は苦労しているわけです。それでも、これは乗組員の生活の問題だとかその他考えて、がまんにがまんを重ねてやってきているという現状ですからね。そういうところまでひとつ十分に、少なくとももう少し明るい展望ができるようになるまで、一定の期間これだけはやってみろよというような対策というものが、いまの制度ではそれができないはずですから、その制度を越えて何らかの手が打てないのかというのが、これが今日の現状を救う手段であります。  だから、ぜひ大臣ね、緊急に、もうどんどんどんどんやっぱり倒れていくんです、ですから、そういう現状にありますんで、これは検討を加えていただいて、早期にやっぱり何らかの手を打ってもらいたい、このことを申し上げておきたいんで、その辺の検討を約束してくれませんか。私から検討というのはぐあい悪いんですがね、実行してほしいんですが、実はきょうの段階は検討ということにしておきますが。
  200. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) いま坂倉委員から非常に重要な御質問を受けたのでございます。私は、焼津へ行ってカツオ・マグロの現状を実は見てまいりまして、同じ考え方を持って水産庁長官にこれはできぬのかと、私もテーブルをたたいてお願いしてみたんですが、やはり現状はなかなかむずかしいということでございまして、それは燃油価格を他の業種と区別して扱うということはなかなかむずかしいよと、ですから、減船をしたり、あるいは省エネ的な船をつくったり、いろんなそういう対策は考えられるけれども、どうも油そのものを他の産業と区別して特別に扱うことはむずかしいよと、こう言われまして、ずいぶん情のない水産庁長官だと思っておったんですが、依然として変わりないようですけれども、私としてはやはり同じ考えでございますので、さらに検討はしてまいりますものの、なかなかむずかしい問題であるということだけは御理解いただきたいと思うんでございます。
  201. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 時間が来ましたから終わります。
  202. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 最初にお伺いしたいのは、農水省が十六日に発表した農業総産出額と生産農業所得の点でございますが、発表によると、生産農業所得が五十四年以降昨年まで三年間連続してマイナス、こうなっております。五十六年度のこの生産農業所得の減少となった原因、要因は何なのか。加えてことしは、御存じのとおり、災害もございました、台風、豪雨災害等で。その上冷害も三年連続予想されるわけですけれども、そうすると、またまたここで農業所得が減少するのではないかと心配するわけですけれども、農水省のお考えはいかがなものかお尋ねいたします。
  203. 関英二

    説明員(関英二君) いま先生御指摘のように、生産農業所得につきましては、五十四年マイナス五・五%、五十五年一〇・五%、昨年五十六年は一・七%と三年連続マイナスになっております。ただ五十六年度につきましては、農家一戸当たりの農業所得につきましては一・九%上昇ということにはなっております。  五十六年度の落ち込みにつきましては、五十五年度は例の冷害や秋の長雨ということで、異常気象で、米を初め野菜などが減産したわけでございますが、五十六年度につきましては、米の生産は回復いたしまして、農業総産出額も増加したのでございますが、生産資材価格の上昇、それから資材投入量の増加や減価償却費などの増加によりまして、物的経費がかなり増加をいたしました。そのためにマイナスの、いま申しましたように、一・七%ということに対前年度なったわけでございます。  なお、五十七年度本年度につきましては、まだ年度途中でございます関係で、この点につきましては現在のところわからないということでございます。
  204. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そこで、大臣にお伺いしますけれども、いま言ったように、三年連続の生産農業所得がマイナスになった原因というのは、生産の伸びに比べて経費の伸びがそれに大きく影響した、    〔理事宮田輝君退席、委員長着席〕 いわゆる経費がその足を引っ張っていると、こういったことで、考え合わせると、今後の物価上昇も含め、さらに行革の縮小予算を考え合わせると農家経済はますます厳しいものとなるのではないかと、こういうふうに心配するわけです。先ほど言ったように、ことしもまた冷夏で夏らしい日も幾日もないし、もう秋を迎えようとしているわけです。したがってことしも恐らく収穫量の減少、こうなってくると日本の農業の将来はきわめて暗いものになるのではないかと、こういうふうに思われるわけですけれども、こうした厳しい農業を取り巻く情勢を大臣はどう認識しておられるか。  さらに、このような状況下にあって今後基本的に農業の安定的発展を図っていくためには、どうしてもいわゆる強い農業といいますか、その根本的な農業経営の強化、体質強化、これを図らなければならないんじゃないかと、こういうふうに思うわけですけれども、大臣の基本的な考え方を教えていただきたいと思います。
  205. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 確かに昭和五十一年−五十三年は農家所得はある程度上昇あるいはまた横ばいだったのでございますが、五十四年、五十五年、五十六年と農家所得は減少をいたしたわけでございます。それは冷害によるものと同時に生産資材の高騰等による理由が非常に大きいわけでございます。それと、わずかに支えているのは農外収入によって所得が維持されているというような現状なのでございますので、こういう状況ではやはり魅力のある農業とは言えませんので、やはり私たちとしては何としても活力ある農業をつくり上げなければならないということでこれまでも努力をしてまいっておるのでございますが、なかなかその方向を大きく転換するまでに至っていないのが偽らざる実態でございます。  しかしながら私たちとしては、やはり農地三法も改正されたことでもございますので、農用地利用増進法を基本としながら、経営規模拡大を希望する人にはできるだけ農地を与え、経営規模を拡大できるような措置を講ずるということ、あるいはまた、水田利用再編対策等を機会に転換をしたい、そのためには基盤整備が必要であるという方々に対してはできるだけその基盤整備の対象にしてやるというようなこと、あるいはまた、技術を何としても開発して、そしてやはり新しい作物をつくり上げなきゃならないと思いますので、そういう点に対しての指導を進める、あるいはまた、複合経営をできるだけ進めていって、やはり農業の堅実なる運営を図っていくというようなことを今後してまいらなければならないわけでございますが、問題はやはり現在兼業化しておる農村社会、混住化している農村社会、老齢化している農村社会のこういう中でそれを進めることは非常にむずかしいんです。ですから、私はできるだけ若いエネルギーを日本の農業に注がなければ新しい芽は出てこないということを常に主張しているわけでございますけれども、その若い方々が魅力を持つ農業にしていくためにも、私たちはできるだけ、先ほど申し上げましたように中核農家を中心とした経営規模の拡大、あるいは基盤整備、あるいは技術の開発等を進めまして、魅力ある農業を一日も早い機会につくり上げたい、こう考えておるのでございます。地域によってはかなりその芽が伸びている地域もございますけれども、やはり農業に魅力はないという大方の考えは依然としてあるものですから、私たちはそういう方々に、いまこそ農業が一番重要なんだ、必要なんですよということを訴え、積極的に農業に取り組んでいただくように指導、督励をいたしていくようにしてまいるというのが実態でございますし、今後もこの態度は変わらずに進めてまいりたいと、こう考えておるのでございます。
  206. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大臣の御答弁では、全体的にはむずかしいけれども、何とかして魅力のある農業、活力のある農業と、こういうことで、規模の拡大であるとか、それから基盤整備、技術の革新、複合経営の推進、こういうことをおっしゃっておりますけれども、それにしても、このこと自体にしても私は非常にむずかしいんじゃないかと。きょうは時間ございませんので、じゃ規模拡大を具体的にどうするんだとか、それから基盤整備はどうするんだとかはお聞きしませんけれども、たとえば基盤整備にしても、先ほど臨調の話がありましたけれども、これは金のかかることでございますし、いまゼロシーリングだとかマイナスシーリングだとか、こう言われておるときでございますので、これもそれをやるに当たっては非常にむずかしいんじゃないか。それから、たとえば規模拡大についても、国際競争力をつけるために規模拡大というのは当然やらなきゃならないことですけれども、現実の問題として、この規模拡大については、幾つか私は大臣の言うような規模拡大にうらはらにネックがあるんじゃないかと。たとえば農家の遺産の相続についても、兄弟姉妹——配偶者が二分の一、それからあとは均分すると、こういう民法になっておりますけれども、実際問題として地価がこういうふうに上がってくれば、これを分割する、そうすると規模拡大どころじゃなくて規模縮小になってしまうと、こういうことも実際にあるわけです。そういうことも含めて非常にこれはむずかしいことだと思います。いずれにしても、魅力ある農業、食糧確保のためにはどうしてもやっていただかなきゃならないと。具体については後ほどの機会にお伺いしたいと、こういうふうに思っております。  その次は、水田利用再編対策が実施されて五年になりますが、私が思うのには、本当に農業の将来に明るい展望が見出せないままになっているような感じがしてならないわけです。私は、農業所得の停滞現象を見ても、これによって、先ほど言いましたようにますます農家の生産意欲が低下してしまうんではないかと、こう心配するわけであります。また、わが国の食糧をめぐる情勢は二年続き冷害、またことしも冷害になるかもしれない。こういう状況下にあって米の需給が非常に逼迫する事態が考えられるわけでございます。輸入依存度のきわめて高いわが国にとって食糧の安全保障体制を強化することは緊急課題であると、このように認識しているわけでございますけれども、しかし、十七日ですか、新聞によりますと、五十九年度から工業用米については輸入に踏み切るという記事が報道されておりますけれども、この記事は大臣もちろんお読みになったと思いますが、このことは事実なのかどうなのか、この場でお聞かせ願いたいと思います。もし事実とすればこれはきわめて重大な問題であると、こう思わざるを得ませんけれども、いかがなものですか。
  207. 山田岸雄

    政府委員(山田岸雄君) いま先生御指摘のように、十七日付のある新聞によりますと、五十九年度から工業用米の輸入が決定的になったと、このような報道がなされておりましたけれども、私どもといたしましては、わが国食生活の中心をなす米につきまして国内で自給するということを基本としておりますし、また、現在水田利用再編対策を実施し、米の需給均衡化対策を進めているところでもございますので、工業用需要分を輸入によって賄うと、こういう考え方は持っておりません。
  208. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そこでお聞きしたいんですが、政府はこの過剰米処理対策として、五十四年度から五カ年計画で進めておりますけれども、この過剰米処理状況、また今後の見通しについてはいかがなものですか。
  209. 山田岸雄

    政府委員(山田岸雄君) お尋ねの過剰米の処理状況でございますが、五十年産から五十三年産米のうちで、通常の主食用の需要を超過して残ったいわゆる過剰米につきましては、その有効的な利用と保有経費の節減を図る、こういった観点から、おおむね五カ年計画をもちまして、五十四年度からその処理に着手しておりますが、五十六年度までの三カ年間におきまして三百三十二万トンを処理してまいっております。  この用途別の売却量といいますか、につきましては、工業用につきまして七十九万トン、輸出用につきまして二百三十四万トン、飼料用につきまして約十万トンでございます。  なお、今後の処理の見通しでございますが、五十七年度以降の要処理数量といたしましては、おおむね三百十万トン程度というふうに見込まれますが、そのうち、五十七年度におきましては、予算上、この数字のおおむね半分、約百五十二万トンを処理する、こういうことを現在予定しております。この処理に当たりましては、できる限り財政負担を軽減する、こういった観点から、工業用、輸出用、飼料用の順に優先処理をする、こういう方針でございまして、五十七年度におきましては、工業用に二十七万トン、輸出用に三十九万トン、飼料用に八十六万トンを計画しておる次第でございます。
  210. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大臣にもう一点お聞きしますけれども、天候異変や世界の食糧情勢もさることながら日本の食糧については、農政審の「八〇年代の農政の基本方向」によると、この「米、野菜については、米はわが国食料の中心として、野菜は生鮮食料品として、食生活や農業生産において重要な地位を占めていること、また、米は国際市場が狭く、野菜は生鮮さを必要とするため」云々と、こう書いてありますけれども、この精神からいけば、米の輸入については米作農家、また生産者団体、当然私は反対の立場であると思うんです。そこで、工業用のいわゆる米については将来にわたり輸入に依存するのではなく、他用途米の開発等に力を入れて、いろいろ憶測はできますけれども、主食である米の完全自給、先ほどもちょっと御答弁ありましたけれども、今後とも断固として守るべきではないか、こういうふうに思うんですけれども、大臣の御決意をお伺いいたします。
  211. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 過般の新聞の状況についてはいま答弁したとおりでございまして、何か他用途米の扱い等を今後していかなければならないということがたまたまああいう記事になったのじゃないだろうかと私は思いまして、ちょうど過剰米はそろそろ終わりになるから、あと他用途米としてどういう扱いをしていくかということがはっきり打ち出されないままに、結局、工業用のものは過剰米で処理できないとすればやはり輸入よりないのじゃないかという結論を出したのじゃないだろうかと思いまして、私たちはちょっとあれは誤解だなと、こう思っておるわけでございまして、したがいまして、私たちはやはり他用途米をできるだけの研究を進めるということはこれらの問題の処理の大きなかぎになろうと思いますので、そういう点に重点を置きたいと考えておるのでございます。  また、米の輸入等については、私たちはこれからも決してしないということは言明して差し支えございません。私たちは、あくまでもわが国で生産できるものはできるだけわが国で賄うという基本原則を常に崩すことのないように、今後もその点はきちっとした態度で臨んでまいりますので、その点は御理解いただきたいと思うのでございます。
  212. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 話は変わって恐縮でございますが、次に、イネミズゾウムシについてお伺いをします。  最初に、このイネミズゾウムシを含む病害虫ですけれども、ことしも天候異変、不順といいますか、の年であり、例年に比べてその発生状況の傾向、特徴といいますか、どんなものなのか、最初にお伺いいたします。
  213. 小島和義

    政府委員小島和義君) 国は病害虫の発生状況を適時適切に把握いたしまして防除の参考にいたしますために、県に専任の職員を設置いたしまして、病害虫の発生予察事業というものを実施いたしております。  それによりますと、ことしの発生状況でございますが、七月前半までは、五月が好天であったこと、六月が雨が少なかったことなどもございまして、全般的には果樹、野菜の葉ダニ類、アブラムシ類等の害虫の発生が多く、病気の発生はむしろ少な目であったわけでございます。  お話ございましたイネミズゾウムシも発生区域といたしましては、昨年に比べまして格段の拡張が見られております。その後、集中豪雨あるいは台風、梅雨明けのおくれなどによりまして、関東以西では稲のイモチ病、柑橘の黒点病等の病害の発生が増加しているように見受けられます。今後問題になりやすい稲の白葉枯れ病あるいは野菜の細菌病といったところについても適切な注意を払い防除していかなければならない、かような状況に相なっております。
  214. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 このイネミズゾウムシは新しい稲の害虫として日本列島に急速にはびこり出して、農業者関係非常にあわてているわけですけれども、この害虫というのは五十一年にたしか愛知県で最初に発見されて、どこからどのように入ったのか明らかではないようですけれども、原産はアメリカのカリフォルニア州だとも言われているんですが、大体この虫の特徴というのはどういうんですか。
  215. 小島和義

    政府委員小島和義君) イネミズゾウムシは体長三ミリ程度の小型の甲虫でございまして、北アメリカ、西インド諸島等に分布する水稲の害虫でございます。ただ、原産地におきましては、最近日本で見られますような大きな被害を生むというふうな傾向はございませんで、日本で申しますと、もうほかにその稲によくつく虫という程度の害虫でございまして、まあ異なる環境に入ってきて、いわば大量に増殖された、こういうものであろうと思います。  それから、その生態といたしましては、これは雌だけで繁殖をするというきわめて変わった、いわゆる単為生殖の昆虫でございまして、年に一遍発生をいたします。通常でございますと、山林、畦畔等で越冬いたしました成虫がちょうど田植え直後の水田に出てまいりまして、稚苗の葉を食害した後産卵をいたしまして、それがふ化をいたします。ふ化した幼虫が土中にもぐって根を加害する、これが稲作に対する被害をもたらす一番大きな原因になろうかと思います。幼虫はその後一カ月ぐらいでサナギになりまして、七、八月ごろに新しい成虫が出てまいりますが、その成虫はまた稲の葉っぱをかじるわけでございますが、この段階になりますと稲も相当育っておりますので、これが稲作に直接的な害を及ぼすという例は少のうございます。大体そういう特徴を備えた虫でございます。
  216. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 日本は動植物の検疫の厳しいことが一時非関税障壁と批判され、貿易摩擦の一因となって、農水省は一月末だったですか、輸入検査手続等の処理方針を発表しましたけれども、わが国は島国でもあるために病害虫の侵入を水際で防ぐということについては全神経を集中しておられると思いますけれども、このイネミズゾウムシの侵入は干し草からではないかと、こういうふうに言われておりますけれども、それを含めて防疫体制は万全となっているのか、また侵入経路が先ほどは私はわからないと、明らかでないと申し上げましたけれども、そちらでわかる範囲でどういう侵入経路なのか、おわかりになったら教えていただきたいと思います。
  217. 小島和義

    政府委員小島和義君) このイネミズゾウムシにつきまして、その後侵入の経路を探索するという目的でさまざまな調査を実施いたしております。  たとえて申しますと、当初愛知県下にこの虫が発生しました場所に入った干し草と同じ荷口の干し草が入荷いたしました場所、ここにおいてこの虫が出たかどうか。それから、同じロットではございませんけれども、同じような産地の干し草が入っておりますほかの地域というものにつきまして、これは三十四県、百三十五市町村にわたりまして調査をいたしましたが、いずれもその時点におきましては同じような虫の発見はございませんでした。その意味においてはこの干し草に必ず付着しておったというふうな確証はないわけでございますが、この虫の先ほど申し上げました単為繁殖という特徴、これはまさにアメリカのカルフォルニア州に分布しております虫の特徴でございますし、それから発生地域におきまして外国から持ち込まれた植物といたしましてはこの干し草しかございませんものですから、そういう状況証拠によりましてアメリカからの干し草が侵入経路であろうというふうに考えておるわけでございます。ただ、その後同じような干し草の検査につきましては輸入時特に厳粛に検査をいたしておるわけでございますが、同様の干し草の中からこの虫の発見が行われたという事例はございません。ただ、まあ干し草につきましてもこの虫に限らずいろんなものが紛れてくるという可能性を持っておる物資でございますので、この経験に徴しまして輸入検査につきましては特に厳重を期してまいる所存でございます。
  218. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いろいろお聞きしていますけれども、ただ小さな害虫だということでおろそかにすることはできないわけですが、新聞報道によるとことしはもうすでに二十八県この害虫発生の確認がされているわけです。昨年は兵庫県から静岡県まで、近畿圏、東海圏、加えて福井県と十二府県だったと、面積は約十四万ヘクタール、もうこのように発生が確認されておりますけれども、ことしはさらに関東の茨城県、それから千葉県、埼玉県、神奈川県と、関東から東北方面、岩手までにも北上していると、こういうことになっているわけですけれども、専門家に言わせると、愛知県に五十一年に発見されて関東に発見されるのは恐らく三、四年先だろうと、こういう専門家の意見もございましたけれども、それが本年はいま言ったように関東近県に非常にはびこってきているわけです、この被害状況ですね。また被害額はどんな程度にことしはなるのか、そちらで掌握しているならばそれを教えていただきたい。
  219. 小島和義

    政府委員小島和義君) この虫の被害拡大をしていきますプロセスを眺めてまいりますと、昭和五十一年に愛知県下で初めて発生を見たわけでございますが、五十三年で三重、岐阜、静岡の三県に拡大し、その後も等心円的な拡大をしていったわけでございます。ところが、本年に至りまして、先ほど御指摘のございましたように、昨年十二府県だったものが一挙に新たに十六県について発生が確認をされております。面積で申しますと、昨年が十四万、ことしで十八万ということになっております。そのうち、十八万ヘクタールのうち新規の十六県についての発生面相は約五千ヘクタールでございまして、大部分はこれまでの発生県でございます。  なお、この虫によりますところの被害でございますけれども、発見当初におきましてはこの虫の生態並びに防除方法がよくわからなかったということもございまして、大きな被害が心配されたわけでございますが、その後試験研究の推進、有効農薬の開発、防除の推進によりまして、現在では被害を最小限に食いとめることができるようになっております。昨年の各県からの報告によりますと、十四万ヘクタールの発生面積のうち一〇%以上の被害があったという面積は約千五百ヘクタールでございまして、全体の一%程度ということでございます。ことしになりましてからの発生地域でございますが、現状ではまだはっきりしたことはわかりませんが、各府県とも新規発生の県におきましては初期において適切な防除を行っておりますので、これらの区域において大きな減収を見るというおそれはほとんどないものと考えておりますが、正確には稲作の終了時点におきましてより正確な取りまとめをいたしたいと思っております。
  220. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 まあ、一時は大分はびこって、最小限に食いとめる段階に来たと、こういうお話でございますけれども、しかし、現実には、先ほど言ったように、ことしはもう二十八県にもなっているわけです。三、四年先だと言われた関東にも、特に多いところは千葉県富山町、それから神奈川県の葉山ですか、特に多く発生しているわけですけれども、このように急激に蔓延してきている、東北までも行っていると、この原因は何なのか。それと、五十一年に発見されたわけですからもう六年、七年たっているわけですから、この間具体的にどんな対策を立ててきたのか。この辺をお伺いしたいんですが。
  221. 小島和義

    政府委員小島和義君) これまで等心円的に拡張してまいりました発生面積がことしにわかに急激にふえたという原因については、まだ推測の域を出ないのでございますが、たとえば昨年の夏から秋にかけまして東北地方を襲いました台風二十四号でございますか、ああいう台風によって運ばれたのではないかという推定と、また人的な移動、つまり自動車でございますとか荷物でございますとか、そういうものに付着をして移動したのではないか、こういう推計が成り立っております。この虫はかなりな飛しょう距離を持っておりますけれども、虫の自然的な移動ということから見ますと、ことしの発生地域の拡張は余りにも広範囲過ぎる。こういう意味で、なおまた正確な原因究明をいたしました段階でお答え申し上げたいと思いますが、いまの段階ではそのような推定でございます。  それから、このイネミズゾウムシの初発見以来、一体どういう生態を持ち、どういう防除をすれば有効かということが初期段階で明確ではなかったということもございまして、非常に広い区域にまたがりかつかなりな被害が出た地域もあったわけでございますが、その後のいろんな知見をもとにいたしまして、この防除方法といたしましては、幼虫、つまり水の中の土にもぐって稲の根をかじる、この段階におきまして育苗箱に薬剤を散布する、それから水面に施用をするということで幼虫を退治するというのが最も適切な防除方法であるということがわかっておりますし、また成虫を対象といたしました薬剤散布、さらにはこれはちょうど田植えの時期に産卵をいたしまして、その後の初期段階の稲の根をかじるということがございますので、田植え時期をおくらせるという耕種的な方法による防除も効果的であることがわかってきております。  また、この虫に有効であります農薬もすでに十七種類ほど登録されておりまして、この農薬の有効な活用によりまして相当な防除効果が上げられるということに相なっておるわけでございます。農林水産省といたしましては、こういった方法を各地の実情に合わせまして組み合わせて総合的に実施することが一番望ましいことであると考えておりますので、このために国の段階におきましていろいろな予算措置を講じております。昭和五十三年からは特殊病害虫緊急防除事業の一環といたしましてこの虫の蔓延防止と被害軽減を図ってきておりますし、五十四年度からは新たにイネミズゾウムシ特別防除事業を実施してまいっておるわけでございます。中身は防除費の補助、指導費、モデル防除地区の設置、それから米発生地域の発生調査などが内容でございますが、新規の発生県に対しましては特に十分の十の農薬費補助をすると、かような対策を講じておるわけでございます。
  222. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 最後に、この虫も非常に小さい虫ですけれども私は軽視するわけにはいかないと思うんです。これだけ被害発生面積が拡大することは、また来年も恐らく、北海道まで行くかどうかわかりませんけれども、ますます広がるんではないかと心配するわけですけれども、この虫についても、もちろんマツクイムシとは違いますけれども、病害虫というのは一遍発生するとその駆除は非常にむずかしく撲滅というのは私は不可能に近いんじゃないかと、こういうふうに思います。そのためには徹底的に防除をしなければならない、発生を食いとめる、こういう必要があると思うわけですけれども、これをほうっておくとまたマツクイムシのように法律もつくってやらなきゃならないというような事態になったらこれは大変なことだと、こういうふうに思うわけでございますが、そこで大臣に、マツクイムシ防除事業のための予算というのはことしは七十一億円以上計上されております。もちろん松と稲とは性質も違うし、環境もまた機能も違っておりますので一概に比較はできませんけれども、余りにも虫に対する、害虫対策費というのは、これは予算額が少ないような気がするわけでございます。米の問題に先ほどもいろいろお話ございましたけれども、米に限って言えば、現在生産者の現状はどういう状況かと言うと、生産資材は上がる、それで冷害で悩まされる、ことしは三年連続であると、減反もしなけりゃならないと、そうして米価は先日上がりましたけれども、据え置き同然である。こうなってくると、農業者の立場を考えると大変な状況にあるわけです。それに加えてまたこのイネミズゾウムシがますます蔓延するということになるとこれは踏んだりけったりと、こういうことになるわけです。そこでこの防除対策についてもっともっと私は強化すべきではないか、こういうふうに思うわけですけれども、大臣に最後に御決意をお聞きしたい、こういうふう思うんです。
  223. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) この虫の発生は、御指摘のように五十一年に愛知県に発生してから、農水省としては調査を進めてまいったものの、適切な防除対策が見つからないまま今日に至っていると。幸いにして農薬も十七種類、あるいはまた成虫あるいは幼虫町の防除対策もやや明らかになってきているようでございますので、五十四年以来特別防除事業を実施しておるのでございますから、これをさらに積極的に進めましてこれら対策に万全を期したいと、かように考えております。
  224. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 同僚委員からもお話ございましたが、このたびの風水害による被害ですね、非常に広範多岐にわたり、また激甚な災害の被害を受けているわけでありますが、これに対しましての対策について、いろいろ法的にはあるわけでありますが、現状としましては被害状況の把握ということであって、これが今月いっぱいまでにおよそ大体集計ができるだろう。そうした段階でどの法律によってどうするかということがいろいろ検討されるというふうなお話がございましたが、農業に関しましても農用地を初めといたしまして被害がございましたけれども、山林につきましても、林野関係のことにつきましても被害が相当あった。このように私どもも認識をいたしているわけでありますが、きょうわずかの時間でございますので、林野行政のことについて若干御質問申し上げたいと、こう思うわけであります。  まず、ことしの被害状況、まだ統計がとれてないからどの法律に当てはめてどうするかということについては、具体的な問題については、法の適用については今後のことといたしましても、現状として林野に関する被害状況についてはあらあら把握しているんではないかと思うんでありますけれども、まずその状況について御説明いただきたいと思います。
  225. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 七月の集中豪雨並びに台風十号によりますところの被害状況を現在把握しておりますのを申し上げますと、林地荒廃が千百八十三億、それから治山施設が四十六億、それから林道が三百五十四億、それから林地の立木が五十三億、その他合わせましてトータルで千六百六十六億円と相なっております。
  226. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この一千億、一千六百億を超す大変な被害、これは林野関係のやつですね。実際的な法の発動ということになりますと、これは実態がはっきりしないとできないことになるんでしょうけれども、しかし一千六百億を超すこういう大きな被害であるという——現在把握している範囲内からいたしましてもこれは相当被害が大きいわけでありますから、激甚災その他の——天災融資法で激甚災の指定を初めとしまして、法の適用、これは当然のことになるだろうと思います。  林野関係につきましては、緊急治山事業とか地すべり対策の問題とか、それからまたところによりましては治山激甚災害対策特別緊急事業とか、いろんな卒業がございますね。こういうことについては、一千六百億を超すこういう被害でありますから、当然こういう問題についても現在検討されている面もあるだろうと思うんですけれども、現在のこの被害の現状からいたしまして、林野庁長官、検討なさっているその諸問題について、現在やっていることで結構ですけれども御説明いただきたいと思います。
  227. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) 私どもも、これから本格的なやはり台風シーズンが参るわけでございまして、被害拡大防止ももちろん考えながら災害復旧をするわけでございますが、まず治山関係につきましては、これからまた雨が降る、降雨の問題もございますので、これらの時期の降雨等によりまして人家、公共施設等に被害を与えるおそれのある個所もございますから、これも緊急の治山事業によりまして対処しようと思っておりますし、また人家、裏山等に発生しました小規模の災害でございますが、これも激甚災害に指定された場合には林地災害防止事業でやりますし、また小規模の場合にはこれは小規模災害の対策事業によりまして緊要な個所から実施してまいりたいと思っております。  なお、この治山施設につきましては、現在現地調査をすでに九日から実施しております。したがいまして、これに基づきまして緊急を要するものから応急工事をしながら対処してまいりたい、かように考えています。  それから林道の施設の災害復旧でございますが、これは生活に関連する林道、あるいは緊急な個所、さらには今後の台風等によりまして被害のおそれのある個所等につきましては、応急、復旧工事を現在直ちにやるように対応すると同時に、本格的な復旧につきましてはこの二十三日から実際現地へ参りまして査定をしたいと思っております。それに基づきまして緊急実施してまいりたい、かように考えておるところでございます。  なお、造林につきましては、森林の被害地につきましては、現在その実態把握をしている段階でございますが、その実態把握をした段階でこの緊急災害に対応の措置をとるべく現在鋭意その把握に努力しているところでございます。
  228. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 いま長官からお話ありましたように、できるだけ早くということでいろいろ手順をお考えのようでありますが、地元としましては、やっぱり査定というのは非常にいままではとかくに現状として緊急性があるにもかかわらずなかなか査定がしていただけないということでどうしても時間がかかる、こういうことが最近は非常にスピーディーになったということで、それは当然のことなんですけれども、特にいま長官のお話ありましたようにこれから台風シーズンを迎えるわけでありますから、ぜひひとつこれは、日も決めていらっしゃるようでありますけれども、早急に査定をして係る緊急事業につきましてはひとつ取り組んでいただきたいと思います。北海道の有珠山の爆発のときなんかは相当いままでにない、——ないといいますか、いままでに考えられないぐらい早くに手を打たれたということで、地元としましては非常にそれなりの評価をしておるわけですけれども、それが地元に対しては被害を最小限度に食いとめるまた一つの大きな歯どめになったわけでありますが、今度の被害、実に甚大であるだけにひとつ、地元のいろんな要望等も来ておると思いますけれども、台風によってまた二次災害、三次災害といいますか、次の災害を引き起こすことのないような対処をぜひしていただきたいと、こう思います。この点についてはひとつ大臣もこれ非常に重大な問題でありますから、最大の関心を持って推進していただきたいと思います。  それと、今度の白書を見ますと、一昨年の暮れから豪雪、それから去年の北海道の台風、去年の十月ぐらいまで一千億近い被害がございましたですね、林野というのはここのところずっと大変な被害が続発をしておるわけですけれども。一千億を超す大変な被害を受けました昨年の災害に対しましても、林野庁としましてもいろいろな対策を講じてきておるんですけれども、これはいろいろ問題があることはもうよく御存じのことだと思います。白書を見ますと、この被害に対しまして、「このように被害額が増加したのは、異常気象の多発によるものであるが、我が国の森林に除・間伐などの手入れが十分に行き届かない人工林が増加してきたことにも一因があると考えられる。今後、被害を防ぐための除・間伐などの手入れを積極的に行うとともに、被害が生じた場合の復旧を容易にするため森林損害てん補制度への加入促進」を重視したい、こういう一文がございますね。これは当然昨年度の被害に対しまして緊急の問題についてはそれなりの措置をしたと思うんですけれども、この被害に対してとられた措置、そして今日の現状と、それから除・間伐についてもこれ今日までもいろいろ言われてきておるんですけれども、現在政府がとろうとしている政策について、概略で結構ですから御説明いただきたいと思います。
  229. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) いま先生御指摘の五十五年の十二月から三月にかけましての異常豪雪の被害並びに昨年の八月の台風十五号による被害でございますが、これは従来の施策では限界がございまして、おかげさまで五十六年の四月に激甚災害法の一部改正によりまして制度が新たにできました森林災害復旧事業によりまして現在計画的に実施をし、その復旧に努めておるところでございます。  それからやはり災害を防ぐに当たりましてはやはり間伐を積極的に実施することがきわめて重要でございます。そこで従来は年間の間伐の実施する面積というのは十万ヘクタールないし十五万ヘクタールでございましたが、昨年度から間伐を促進する総合対策というのを実施するようにいたしましてから現在までの集計ですと五十六年度は二十三万ヘクタール程度までふえてまいっております。私どももやはり今後健全なる森林を造成し、さらには将来の国産材時代に志向するためにはやはりここで基盤整備をし、林道、作業道をつくり、間伐がしやすいようにすると同時に、やはり総合の助成制度によりまして積極的に間伐を実施しまして管理の行き届いた人工林にすべく努力してまいりたいと思っております。  なお、これと関連いたしましてやはり治山関係も第六次の治山五カ年計画をことしから実施することにしておりますので、これらも十分踏まえて抵抗性の強い森林をつくってまいりたいと、かように考えておるところであります。
  230. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 考え方は結構なんですが、その実施に当たりましての予算とか何か見ますと、長官がいろいろ考えていることの幾らも進み得ない現状にあることは、予算の執行状況とか何か見ますと非常に遅々として問題の推進が進んでいないということを言わざるを得ないと思うんです。今回の第五次治山事業五カ年計画、これは最終年が昨年、第五年次となっておりますわね、これで治山事業の推進ということですけれども、実際的にはこれの達成率がどうだったのか、第六次についてはそれを基礎にしてまたつくられるわけでありますけれども、この問題は過日いろいろ議論したところですから今後のことをいろいろお話しするつもりはないんですけれども、広範な地域の諸問題を管轄するわけでありますから、むずかしい問題はあろうかと思いますけれども、しかし、こう被害が相当額に、昨年も一千億を超し、ことしもまた一千六百億を超すような被害が続いておるという現状を見ますと、これは本当に長期的な、そしてまた財政的な裏づけのある、実効性のある計画というものをしっかりつくらなければならぬだろう。しかし、ここで財政という一つの大きな問題もございますが、やはり国の財産を守るという一つの大きな使命の上に立ちましてこれは最大限の努力をしなければならない問題だろうと思います。しかも、最近の動向、白書などを見ますと、輸入材よりも国内材がだんだんウエートが大きくなるような傾向が見え始めておるという、こういうことを考えますと、いまさらながら山を見直す大事なときではないか。そういう中に今度は国有林の赤字が一千四百億を超すということで非常にしなきゃならないことはたくさんあるのだけれども、一方では、赤字がまた昨年の倍を超すような赤字になっておるという非常にむずかしい環境の中にある。ここは本当にかじ取りが非常にむずかしいんですが、それをいかに切り抜けるかというのがやはりこれは長官の腕の見せどころであり、また、それを実際政治的に進めていくのが田澤大臣の政治性ということになるんだろうと思いますが、大臣、これ非常に大事なことなんですけれども、そしてまた、こんな大きな被害が続いておるのですが、財政的には非常に厳しいという、こういうことで長期的に見てこれは重要であることはもうだれも論をまたないことですけれども、厳しい財政状態の中でこれを進めるには非常に特段の努力が必要だという、こういう現況です。どうでしょう。
  231. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 災害が起きて初めて森林の重要性というものは理解される。また、最近は森林に対する山を緑にするという考え方が非常に国民から理解をされてきているものの、さて国有林に対する理解はというと非常に薄いんですね。赤字だ、四Kに今度は入るんじゃないだろうかなどという冷たい見方をするものですから、私はそういう点では非常にがっかりしているわけでございますけれども、申し上げるまでもございませんが、木材の供給だとかあるいは水資源涵養だとか自然環境の整備等で森林の役割りというのは非常に大きいわけでございますから、それなりに私たちはやはり森林資源の培養というものを思い切ってやっていかなきゃならない時期、そういうときに、国有林特別会計は赤字を生むと、そのことが財政面から見ると非常な体質の悪い事業に見られているわけでございますがね。私は最近の国有林の現状を見ますというと、やはり森林資源を確保するためには大きな伐採はできない状況にあります。過般も知床で伐採をしているというような状態を見て、反対に、知床周辺には小学生、中学生が小遣いの一部を割いて森林事業に努力しようというときに国有林野は伐採されているという状況は好ましくないからどういうものだろうというので、私はそれはできるだけ注意を与えたほどでございます。  そういうふうに余りにも伐採するわけにいかぬ状況にある。そうなりますというと、ますますこの特別会計の経理がいい状況にはならないわけでございます。しかし、あくまでも事業は事業として進めていかなければいけない、また災害に対する復旧もしていかなければならないとなりますというと、森林事業そのものはやはりある程度公共性を尊重していかなければならないのじゃないだろうかということで、今回はその点を少し財政当局にも説明をして理解をいただいて、新しい形の特別会計の姿をつくらなければならないと私はいま考えているわけでございまして、まだ具体的には動いておりませんけれども、この後林野庁長官とともにこの問題に取り組んでまいりまして、国有林のあり方を新しい形にしていかなければならないというようにいま考えているわけでございますが、まだ折衝の段階に入っておりませんけれども、そういう方向で何とか対策を進めたいものだと、かように考えております。
  232. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 これは農業、漁業、林業、一次産業というのはどこの国もそれぞれこれは新しい近代化の波の中で苦悶しながら進んでおるのが現状であります。日本の林野行政につきましても、いままでの形のままでこういう近代的な高度成長の波に乗れぬのは当然でありますし、まあ大臣、いま心の中にということですけれども、昔からいろいろ考えていらっしゃったんだろうと思いますが、ぜひひとつ新しい時代に即応した構造的な対処といいますかね、こういうものにひとつ積極的に取り組んでいただきたいと思うんです。  時間ありませんから一つ一つのことについては申し上げることもできないんですが、今度の白書のポイントとして、木材需要の停滞とか、それから林業経営費の増大とか山村の過疎化、こういうようなことがいろいろ挙げられておりますね。そういう中で、森林組合等の事業体育成とか複合経営の推進、こういうことが強調されておるという、こういうことの何本かの柱があるわけなんでしょう。  そういう中で、過日ちょっと新聞にも出ておりましたが、林業振興のための森林の適正管理のためのいろんな手だてを検討中だというようなことも出ておりました。これは、今後の林野のあり方として、現状のままではならぬということだと、じゃどうするのかといういろいろなことが検討されなければならぬだろうと思いますけれども、今度のこの白書を見ますと、何点かいろいろな問題点が挙がっておりますけれども、その中の間伐の実施が非常に不十分だということや、それから不在村森林所有者が非常に増加しておるとか、こういうようないろいろな問題点が出ておりますね。そういう中でいま大臣がおっしゃったような林業の構造を改革しようということになりますと、新しい時代に即応したいろいろなことを考えなければならぬだろう、そういうことから、これは明年法案化するとかしないとかは別にして、省内でもいろいろな検討がなされているんだろうと思いますけれども、この間のことについてはどうでしょう、長官。
  233. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) ただいま先生御指摘ございましたが、一九八〇年の世界農林業センサスによりますと、四十五年から五十五年の十年間に約五十万ヘクタールの不在村の地主と申しますか、所有者がふえておるわけでございます。もちろん不在村の森林所有者の中には林業経営に積極的に対応している者も多いわけでございますけれども、一方におきましてやはり大規模開発等林業以外を目的といたしまして林地を取得したというふうな側面も見られるわけでありまして、これらのところについては、やはり林業生産活動が低下するとかあるいは森林の管理が適正に行われてないという面も実は出てまいっております。  そこで私どもやはり不在村の森林所有者の方々にも適正な森林の取り扱いをしてもらうように、森林施業計画の作成などについて指導を行うと同時に、森林組合等によるところの施業の受託等も図ってまいっておりますけれども、さらに今後これらの地域の森林の管理をより一層適正化するための現在制度改善につきまして取り組んでおるわけでございますが、何といたしましても今後のやはり森林の持っておりますところの各種の多面的機能をより高度に発揮させるためには、適正管理に持っていくことが必要でございますので、ことしはこれに積極的に取り組んでまいりたいと、かように考えて現在検討しております。
  234. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 まあ、検討段階でしょうから詳しいことをいろいろお聞きする段階ではないのかもしれません。これは後日にまたやらしていただきたいと思いますが、いまも長官や大臣のお話の中にもありましたように、この森林の持つ公益性とか水資源とか、その重要性はいかに力説しても力説し過ぎることのないことだと思うんです。それだけに、国有林というのは、国民の財産として非常に重要な位置を占めるだろうと思いますし、その管理にありましては、国民の負託にこたえて信頼に富むものでなきゃならぬだろう、こう思うのでありますが、過日報じられたところによりますと、秋田の営林局において収賄事件がございましたですね。まことに残念なことで、これは司法当局によっていろいろ調べられておりますから、この実態等については明らかになるんだと思いますが、いずれにしましても国民の共有の財産として厳正でなければなりませんし、またそれなりの国民の信頼を得なきゃならない大事な立場の人がこういう事件を起こすということは、非常にこれは残念至極なことだと思うんです。これは、こういうことがあったということじゃなくて、いままでの制度に欠陥があるという、こういうふうにきめつけるわけにはいかぬかもしれませんが、いままでのままですと、また同じことが起きないとはこれは断言できません。やっぱりこういう問題が起きたときには、どこに問題があったのか、それを防ぐためにはどうしなきゃならないのか、当然その現場でいろいろ検討されていることだろうと思いますし、また林野庁としましてもこの問題は決して一地方に起きたこととしてではなくて、重大に受けとめていらっしゃるんだろうと思います。特に随意契約が非常に多いということですね、公共土木なんかに比較しますと。随意契約と、それから一般競争と大体半々ぐらいという。そしてまたその随意契約の問題につきましても、いろいろお聞きしますと、非常にこれはきちっとした取り決めといいますか、ほかの公共事業なんかと比べますと、どうも私どもはよくわからない点があるんですが、今回のこの事件を通しましても、業者のこともありますし、断然その任に当たった者の責任を問わなければなりませんけれども、こういう随意契約のあり方そのもの自体に対しても、これはもっともっとこういうことにつながらないようにきちっとしなきゃならぬ問題もたくさんはらんでいるのじゃないかと私は思うんですね。当然林野庁でも御検討なさっていることだと思いますが、この問題の現在つかんでおられます現状と、それからいま部内でいろいろ検討していらっしゃるこの問題については、これを反省点としてどうしようとなさるのか。特にこの随意契約の問題についてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか。この三点についてひとつお願いしたいと思います。
  235. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) かねてから職員の綱紀粛正につきましては厳しくその徹底を図ってまいっているところでございます。特にこの経営改善に取り組んでいるさなかでございます。こういう段階で現場の責任者の不祥事件が起きまして、私まことにこれは遺憾にたえない、深くこの事態を反省し、深刻に受けとめておるところでございます。  そこで、このたびのこの事件を踏まえまして、職員一同がこの国有林野事業の使命を深く認識を新たにいたしまして、再びこういうことの起こらぬように徹底を図るべく指示をしておりますが、さらに具体的にこの問題につきましては業務の適正執行を図るために、現在検討委員会を設けまして、改善方策につきまして鋭意検討しておるところであります。この検討結果を踏まえまして、この営林局長に適切な、適正な事業の業務の執行がなされるようにさらに徹底してまいりたいと、かように考えておるところであります。  なお、この地元工場に対します随意契約でございますが、これはやはり地元の製材工場等に計画的、安定的に供給しまして、地域の木材産業振興に寄与するという面もございますので、やはりその相手方には適確なものを選定すると同時に、販売の仕方、量等につきましても適正に運用されるように、さらにこれからも検討を加えてまいりたいと、かように考えております。
  236. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 もう時間ですからあれですが、まあいま検討中ということですからあれですけれども、いま申し上げたこの随意契約を初めとしまして、検討中という一言で片づけるんじゃなくて、少なくたってもう時間は大分たってますから、検討しているより、その中身のことについても少し御説明いただけませんか。  随意契約につきましても、確かにその地元の業者のこともあります。確かに、今回のこの業者は急速に伸びて、そういう随意契約の指名を受けるような立場になったということで、人のすることですからね、制度だけで縛りつけるわけにはいかぬかもしれませんけれども、ある程度制度的なものをきちっとした上で、人の管理といいますか、その運用ということについても厳正でなきゃならぬわけでしょう。そういうことからしまして、問題点、何もこの何日もかけてどうするというのじゃなくて、さしあたってしなきゃならない問題点というのは何点かもう出ているわけでしょう。だから、そういうもう決めたこととか、現在こういうことでするんだということで、決まったことはそれで申し上げていただきたいし、検討中ですとかそういうあいまいなことじゃなくて、もう日にちもたっていることでもありますから、また今後検討しなきゃならぬ問題については今後大いに検討していただかなければならぬわけですけれどもね。どうですか。
  237. 秋山智英

    政府委員(秋山智英君) このすべてがまだ決まったわけではございませんが、今回のこの不適正な事故が起きましたのは、これは秋田の天然杉の被害木の流木処分でございますので、これにつきましては、今後は随意契約の利用販売は原則として中止して、全部素材で生産したものを公売、その他の方法で売り払うというふうな形にこれは一切切りかえることにいたしております。  その他の問題等につきましても、村の問題もございますし、また、その売り払いにつきましても内部検査の問題もございますし、その他もいろいろございますので、それらを現在検討委員会で検討しておりますが、まず一番の問題になりますところにつきましては、いま申しましたような形でやることに決定して進めさしております。
  238. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 じゃ最後に大臣、これだけ公益性ということを叫ばれまして、だれもが異存はないわけですけれども、自然環境の保全や、また国土の保全ということから言いまして、森林の持つ意味というのは非常に重大である。そういう中にありまして、国民からそれなりのまた信頼を得なければならぬ。その任にある者がこういう事件を起こすようなことではならぬ。ぜひひとつ、これは長官からもいろいろ話がありましたけれども、仕組みの上からも、また今後、何といってもこれは人が大事ですから、一地方にたまたまこういうことがあったなんという受けとめ方じゃなくて、全体として国民の負託にこたえるような、しっかりとした今後の管理運営、こういう問題についても、機構上もまた人間もしっかりして、この任にひとつ当たってもらいたい。このことを強く私は要望したいんですが、どうでしょうか。
  239. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 国民はやはり国有林野に対する関心というのは非常に高うございますので、したがいまして、この国有林事業に従事している職員はそれなりに襟を正してやはり行為を進めていかなければならないと思うのでございます。秋田県においてはこういうような事件が発生したわけで、まことに遺憾でございます。  いま林野庁長官からも具体的な内容を含めて今後の検討事項も報告されたわけでございますが、私としても、これはやはり、このことについては厳にその入札の形式から、あるいはまたそれに携わる人の態度等について、さらに林野庁長官とも相談しながら積極的にこの対策に臨んでまいりたいと思います。それで今後このようなことの起こらぬように十分注意を払ってまいりたいと考えております。
  240. 下田京子

    下田京子君 まず最初に、日本海での日米合同訓練、これをぜひ中止するように申し入れてほしいという点でお尋ねしたいんです。  大臣、せんだってもその点でお願いに参りました。抗議を申し上げました。大臣、そのとき、こうおっしゃいました。もし事故が起きたら、たとえ米軍であろうと、自衛隊であろうと、即刻中止させるようにしたい。ところが、このイカ釣りの場合には、例のサケ・マスのはえ縄切断ということではなくて、事故ということは即人身事故につながるという重大なことなんです。ですから事故があったらということでは遅い。このことを改めて御認識していただきたい。幸い前期は事故がなかったと聞いておりますが、ここにいま秋田県北部いかつり組合の組合長さんからの声明が届いております。「日本海での日米合同訓練に対する抗議と操業の安全を要求する」、そういうことであって、下旬の訓練はぜひ中止してくれ、そして日本海を平和の海に、安全な操業、漁業の繁栄をとうたっているわけなんです。これを受けて、ぜひ後期二十一日、あさってから行われるこの日米合同訓練をやめるように大臣から申し入れしていただきたいということを申し上げたいわけです。
  241. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 日米合同演習の前期については私の方から、防衛庁から事前に申し入れがありましたので、日本海の魚族を保護する観点から、あるいは安全操業という面から、地域をも影響のない地域でおやりになってくださいということを指定いたしまして、そういう枠の中で行われたようでございまして、幸いにして事故がなかったわけでございます。  これから二十一日からまた第二回目の演習が行われるわけでございますが、まだ防衛庁からは正式には私の方にまだ来ておりませんが、——来ているか。ああ、そうか。水産庁長官に来ているそうで、私にまだ届いていないですけれども、しかしまた私の方としても第一次と同じように地域に対しては厳重に指定をしてこの災害、漁業者に影響を与えないように演習をしてほしいということを強い要請をいたします。もし、それ事故が発生した場合においては、私は直ちにこの停止方を申し入れをしたいということはこの前と変わりございません。
  242. 下田京子

    下田京子君 もうじっくり私は申し上げたい点があるんですが、大臣、事故が起きたらということをまた繰り返しております。ところが、事故が起きればそれはとうとい人命を失うというふうなことにつながることなんだという点を改めて御認識ください。  もう一点、影響のない海域を選んだ、大和堆を避けるようにということなんですが、最近の日本海の漁海況速報、ここにございます。この「日本海漁海況速報」によりますと、訓練区域の中にはスルメイカ漁場というものが含まれておるんです。そういう状況でありますから、全く影響がない海域だと、これは断じて言えないんです。さらに、昨年もやられました。事故が起きました。そして、ことしは幸いにしてないと言いつつもミッドウェーが参加されている。例年そういうことで定着していったときに一体これはどうなるのかということになるわけなんです。そういう点で私も改めて日本海を平和な海に、そして操業の安全を漁業の繁栄をという点をしかと定めて対応していただきたい、重ねて申し入れしておきたいと思います。  次に移りますけれども、このたび七月三十日に臨時行政調査会から基本答申が出されております。大臣にお尋ねしたいんですけれども、この基本答申の中には農政にかかわる問題もかなり含まれているわけです。とりわけ重点に取り上げられているのが三K赤字の一つと言われる米、食管問題でございます。もう一つはやっぱり三公社の民営化問題だと思います。  この答申に対しまして大臣は具体的な改革方策は厳しい内容のものであるという談話を発表されています。五点の中で一点こういうことを言われているわけですけれども、そもそもこの臨時行政調査会というものは総理府の一諮問機関であると思うんですね。その答申に対してどのように受けとめていくのか、すでにこれは閣議なんかでは最大限尊重ということを言っておりますけれども、私が具体的にいま大臣からお答えいただきたいのは、国会の意思をどういうふうに見るか、たとえばせんだって国会決議で食糧自給力強化に関する決議、これを出しております。こうしたものをどういうふうに扱うのか、この臨時行政調査会というものを絶対的方針として見るのか、明確にお答えいただきたいと思います。
  243. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) 第二臨調の答申については閣議ですでに最大限に尊重するということでございますので、したがいまして私としてもこの臨調は最大限に尊重するという態度は変わりございません。  ただ、問題は第二臨調の農業に対する考え方でございますが、先ほども坂倉委員にもお答え申し上げたのでございますが、第二臨調としては農業に対する考え方は一つは米をめぐる問題、もう一つは生産性向上の問題を取り上げているわけでございまして、この点についてでございますが、私はやはり米の管理制度は社会経済の推移に即応して常に新しいものをつくり上げていかなければいかぬ、しかし食管制度の根幹はあくまでも守りつつそういう体制に対応した考え方を持っていかなきゃならないと思いますので、その点が一点。  もう一つは生産性の向上でございますけれども、この問題については確かに価格問題というのは非常に重要な要素を占めておりますけれども、価格問題と同時にやっぱり構造政策というものがいま非常に重要なんじゃないか、新しい農政をつくる意味では構造政策が必要であるという点は私たちもそういう点では変わりないのでございますので、そういう点では第二臨調の指摘する点も私たちは今後中長期的に見て十分検討に値するものであると、こう考えておるのでございます。  さらに食糧の安全保障の問題でございますけれども、この点についてもやはり食糧の自給力を強化するという点については、やはり第二臨調もその点は特に農林水産省の役割りは食糧の安全供給にあるということは指摘しているわけでございますので、そういう大きい面では私は農林水産省の方向と第二臨調の答申とは異なるものじゃないと。ただ具体的にいますぐやりなさいと言うことはなかなかむずかしいから中長期的に見てこれは進めていきたい。たとえば食管会計の中でコスト逆ざやを削減しなさいということ、あるいはまた米の価格抑制しなさいというようなことなどはできるだけ早くやりたいと思いましてもなかなか現状ではそれはきょうあすに解決できる問題ではございませんので中長期的に私たちはこれは処理したい。あるいはまた水田利用再編対策等についてもやはりそういうような、いまにわかにできませんけれども、やはり長い目で見てこれは処理していかなければならない、そのことが新しい農政をつくる基本になるのだという考え方を私たちはお話をして、そして農林水産省のはっきりした態度を示して、それで今後も対応していきたい、こう考えております。
  244. 下田京子

    下田京子君 私は臨時行政調査会の性格を聞いたつもりですが、大臣は明確に御答弁いただけなかった。ただし、これは最大限に尊重すると言いつつも国会の決議等無視するというものではないというふうに受けとめたいと思います。否定されてないからそうだと思いますし、そういう立場から——そういう立場というのは国会を無視するような立場であってはいけないという点から日本の農政をきちっと見誤らないように進めていくべきだということを申し上げておきたいと思うんです。  専売公社の民営化問題でお尋ねしたいんですが、いまの公社改革の中での専売公社の民営化問題というのは非常にまた大きな問題になっているのは御承知のとおりだと思います。去る五月の十七日に臨調の第四部会が完全民営化というものを打ち出してきました。そのことによってもう全国各地でこれは大変だと、とりわけ私は福島に住んでおりますが、福島県は全国一のたばこ生産地域です。福島県のみならず、全国各地からのそういう産地から大きな反対も出ていることも御承知のことと思うんです。  そこで、お尋ねしたい点なんですけれども、この第四部会の報告をそっくり受けて今度の基本答申の中ではやはり同じように専売制度を廃止して専売公社の特殊会社への移行をしなさいということを提言していると思うんです。このことについて公社としてはどういう立場にお立ちになるのか。葉たばこ耕作農民の声を聞き、そしてまた過去のいろんなことを考えてみたときにはやっぱりこの民営化ということについては受け入れられないんだという立場を明らかにすべきではないかと思うんです。
  245. 田口和巳

    説明員(田口和巳君) 御説明申し上げます。  先ほど大臣のお言葉にございましたが、臨調の答申につきましては政府はもちろん、私ども政府関係機関の一員として同様に答申の趣旨を最大限尊重し、真剣に取り組んでいかなければいけない、基本的にはそのように考えています。  公社の経営形態をどのようにしていくべきかという点は、政府としては行政府としての政策判断がなされるわけでございましょうが、また最終的には国会の御審議を通じて国民によって決められていくというような事柄であろうかと存じます。ただ、私ども公社といたしましてもたばこ事業なり塩事業を直接責任を持って預からせていただいておる事業主体でございますので、その立場から申し上げさしていただきますと、私どものたばこ事業なり塩事業を取り巻くいろいろな最近の厳しい状況なり、それに伴います問題の所在なり、またそういうことに対処して時代に合わせた形で民間的な企業性というものをもっと発揮していかなくちゃいけないんではなかろうというような問題、そういうことを含めた改善の必要性ということに関しましては、私どもとしてもかねがね大事な問題だと考えています。臨調の御答申においては、このような問題に関して大きな方向についてのいわば総論的な御示唆をいたしておられるものと考えますが、具体的に考えてまいります場合には、私どもの事業集団、これは明治以来の長い歴史と伝統を持っております。その大きな集団、葉たばこ農家だけでも約十万戸でございます。そういった大きな集団のあり方をどうしていったらいいか、そういう点について国民経済的な見地から真剣に検討し、いろいろと工夫を重ねてこれからいくわけでございますが、やはり葉たばこ農家を初め、たばこ事業集団、いろいろな方面の理解を得られなければならないと思っております。また、現実との調和ということも考えていかなければいけない、そのようなことで鋭意検討いたしてまいりたいと思います。  なお、先生の御指摘の中にございました分割、民営というようなお話がございました。私どもはたばこ事業というのは非常に大きな規模のメリットが発揮できる業種でございます。世界的にも御承知のことかと思いますが、大きな米、英の三大資本がほとんど世界を制覇しておるというような状況にございます。したがいまして、やはりいまの日本のたばこ産業を守っていくためには、やはりなるべく大きな規模のメリットを発揮できるような形がいいのではないかと私どもは考えています。したがって、企業的に民間的な合理性を発揮していくという点は大事なことと存じますけれども、直ちに分割をしてというようなことにはいろいろな問題があるのではないか、特に国内の葉たばこ農家にとっては壊滅的な影響を与えるのではないか、そういうことで問題が数々あるのではないかというふうに感じております。
  246. 下田京子

    下田京子君 直ちに分割、民営化というのは問題であると、その点は同じ七月三十日付で総裁が談話でも発表しておりまして、なおいま詳しく御説明がありましたので理解されます。ただし執拗にこういうことが議論されておりますし、もしこれが現実のものになったときにどういう事態が起きるだろうか、大変これは心配するところです。その点で改めて公社が果たしてきた役割りと意義、それを見直していくことが大事ではないかと思うんです。さっきもちょっとお話がございましたけれども、たばこ産業の関係集団というのは非常に大きいと。たばこの耕作者、五十五年度で約十一万人、販売店が約二十六万店、公社職員等が約四万人ということになりますと、四十二万を超えるというような状態でありますね。  さらに、財源問題で、お触れになりませんでしたが、五十五年度でたばこ売上高が二兆六千億円のうち約一兆四千億円が国と地方の財源になっていると。さらに、消費者に対しても全国一律の価格で安定的に供給されていると。さらにまた、臨調が言っておりますように企業性とか効率性、こういった魚についても、いろんな流通問題も含めてメリットが明らかになっているわけでして、このことをきちっと押さえないで、もし完全民営化ということになりますと、いまいみじくもお話がございましたが、世界の国際たばこ支配、それを許すようなことになるんじゃないか。大変心配でありますだけに、こうしたことがないように重ねてそうした意義と役割りを踏まえた形で今後も対応していただきたい。その決意を念のために一言だけ。
  247. 田口和巳

    説明員(田口和巳君) 専売公社のこれまで専売制度なり公社制度で果たしてまいりました役割りについて先生の方から御理解ある御指摘をいただいて、逆に恐縮しております。  私どもとしては、現行の専売制度なり公社制度の中には時代に即応して改善をしていかなければいけない点もなしとはしないと存じますけれども、私どもなりに精いっぱい長年にわたって、先ほど御指摘がございましたような三千五百万人に及ぶたばこの消費者に対して安定的に適正な値段で、全国一律の価格供給する、あるいは大きな財政貢献をしておる、それからさらにはたばこ産業集団全体の中核として私どもはいろいろなことに配慮しながら精いっぱい努力してきておると思っております。そのようなたばこ事業の中で、たばこ耕作農家なり、あるいはたばこの販売店なり、たくさんの、数々の方々がいわばこのたばこ事業の両輪の一輪と申しますか、大きな翼として私どもと一緒に事業を長年営んできておるわけでございまして、そういう方々のいままでの貢献度、それからさらに今後ともその重要性というのを十分踏まえながらこの問題に対処してまいりたい、かように存じております。
  248. 下田京子

    下田京子君 そこで大臣にお尋ねしたいんです。  たばこの問題は専売公社、大蔵省ということですが、生産者は農民でございます。いまお聞きのように、非常に歴史的に果たしてきた役割りと現実に果たしている役割りが多大である、明らかになったと思うんです。  そこで、大臣にはっきりとお答えいただきたい点は、いまの専売公社か民営かの問題について、関係ないという立場ではなくて、農民の、そして農業生産というか、そういう点を考えた立場から明確に意思表示をしていただきたいんです。  言うまでもなく、臨調が専売公社の民営化を打ち出してきた背景というのは明らかだと思うんですよ。第一番目は、いまも御指摘がございましたけれども、国際たばこ資本の日本市場への進出なんです。どういうふうな状態かと言いますと、世界のたばこの販売総数量の四六%というシェアを五十五年度段階でもってBATというところとフィリップモリス、それからレイノルズという三大たばこメジャーが支配しているんです。日本においては約三千億本というものが出回っていますので、大変そこに魅力を持っているんですね。それから二つ目には、大企業がこれに便乗して、年間一兆四千億円もの財源を捻出しているこの商品を、新しいもうけ口としてねらっている、こういう点を押さえて私はきちっとした対応をしてほしいんです。いかがですか。
  249. 田澤吉郎

    ○国務大臣(田澤吉郎君) たばこに関する経営形態については、私の方ではやはり直接所管でございませんので申し上げるわけにまいりません。ただ、総合農政の立場から生産者の育成、保護ということはあくまで私たちは考えていかなければならない、かように考えますので、そういう点については専売公社等の意向も十分承りながら、生産者は将来とも安定して生産できるような形を私たちは守って差し上げたい、かように考えております。
  250. 下田京子

    下田京子君 生産者の保護、育成ということを考えるならば、いまのお話聞いていただけでも専売公社の民営化というのは、これはとるべきでないという立場に立って対応すべきではないかということを重ねて私は申し上げておきます。なぜならば、国産葉たばこがいま非常に、どういう状態になっているかというと、四十五年度で在庫月数三十一カ月分でしたが、五十五年で三十六カ月分です。ふえていると言っていますけれども、そういう中にあって外国葉たばこの使用割合がどうだったかと言うと、四十五年は一八%だった。五十五年が三四%と、ものすごくふえているんです。ですから、そういうことも考えて対応すべきだと重ねて言います。  もう時間がなくなりましたから、最後にまた公社にお聞きしたいんですけれども、もう九月一日に葉たばこの審議会で価格問題あるいは面積問題で議論になることを承知しておりますが、特殊会社への移行ということを考えていろいろと臨調も指摘されているわけなんですが、その中でやっぱり問題なのは減反をもっと進めろと、価格を抑えろと、こういうことなんですね。しかし、いまずっと言ってきたようにそういう立場でやられていったときには国内の生産、これはもうすたれてしまいます。ですから、その辺をきちっと押さえた形でこの葉たばこ収納価格の問題についてもきちっと対応してほしい、これ以上の減反を許さないでほしいという関係者の期待にこたえた対応をしていただきたいと思うんです。とりわけここに私お写真持ってきておりますけれども、五十五年には冷害があり、五十六年には凍霜害、ことしはまた十号台風、そして氷害、もう大変なもんなんですね。福島県の大越町というところの町長さんが全国たばこ耕作組合の副責任者やってるんですけども、そこで聞きましたら、五十六年の収納代金というのは五十五年に比べまして六九%も落ち込んでいるんですよ。もう壊滅的になっちゃいます、それは。そういう点も踏まえて対応をいただきたい。これも一言お答えいただいて終わります。
  251. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 田口総務部長、時間が来ておりますから、簡単に答えてください。
  252. 田口和巳

    説明員(田口和巳君) 先生御指摘のように、過剰在庫の問題等いろいろ厄介な問題を抱えておりますけれども、そういうことについての改善努力も必要であると同時に葉たばこ農家が安心して働けるようにしていくための配慮も大変大事でございます。その点も踏まえて慎重に検討してまいりたいと思います。
  253. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。     —————————————
  254. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産政策に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  256. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  257. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 委員派遣承認要求に関する件についてお諮りいたします。  閉会中の委員派遣につきましては、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 坂元親男

    委員長坂元親男君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十二分散会      —————・—————