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国務大臣(
田澤吉郎君)
昭和五十七
年度農林水産
関係予算について、その概要を御
説明申し上げます。
昭和五十七
年度一般会計における農林水産
関係予算の総額は、総理府など他省庁所管分を含めて三兆七千十億円で、対前年比〇・二%、八十五億円の
増加となっております。
本予算におきましては、
財政再建と
行政改革の推進の
方向に即し、予算のより重点的かつ適切な配分、補助金等の統合・メニュー化等を図りつつ、農林水産
行政を着実に展開するよう努めた
ところであります。
以下、予算の重点事項について御
説明いたします。
第一に、生産性の
向上を基本とした地域農業を展開するための予算について申し上げます。
需要の動向に応じた農業生産の再編成を行いつつ、農業の生産性の
向上を図るためには、地域の自主性と活力を基盤とした総合的な生産対策等を推進する必要があります。
このため、従来各作目ごとに行われてきた生産対策等を統合・メニュー化し、耕種部門につきましては新地域農業生産総合振興対策として、畜産部門につきましては畜産総合対策として実施することとし、生産性の
向上の促進等を図ることとしております。
また、中核農家や生産集団を
育成し、これらを中心とした地域農業生産体制の整備を図るため、農村地域農政総合推進事業を引き続き推進するとともに、地域ぐるみで農業の再編整備が図られるよう、地域農業再編整備資金の拡充を図ることとし、七百億円の貸付枠を予定しております。
さらに、中核農家の経営規模の拡大等農業
構造の改善を促進するため、農用地利用増進事業に積極的に取り組もうとする地区において、作付地の集団化、農作業の効率化、農用地の利用
関係の改善等を図る農用地利用増進特別対策事業について八十一億円を計上するとともに、新農業
構造改善事業、農地保有合理化促進対策等を引き続き推進することとしております。
第二に、食糧の安定供給、農業の生産性の
向上等を図るために必要な農業技術の開発を長期的視点に立って積極的に推進するとともに、新技術の普及
指導、統計情報の整備に努めることとしております。
このため、細胞融合、核移植等により新生物、新品種を創出するための技術開発に着手するとともに、転換畑作技術の高度化、超多収作物の開発等を推進するほか、畜産新技術、省エネルギー技術等の実用化の促進に努めることとしております。
また、普及事業をさらに効果的、効率的に推進するため、地域への一層の密着を主眼とした
指導、情報活動の充実等を内容とした新普及システム推進事業を新たに実施することとしております。
さらに、地域統計情報を含め、生産、流通、
消費の各
分野にわたる統計情報の整備に努めるとともに、統計情報ネットワークの整備等を通じその活用を図ることとしております。
第三に、農業生産基盤の整備であります。
農業生産の
基礎的
条件である農業生産基盤の整備につきましては、需要の動向に即した農業生産の再編成等現下の農業を取り巻く諸
情勢に対応して、排水対策等水田の汎用化のための事業、畑作振興のための事業等に重点を置いて推進することとし、前
年度とほぼ同額の八千九百九十七億円を計上しております。
なお、事業の実施に当たっては、今日の厳しい
財政事情のもとで事業効果の早期発現を期するため、新規事業を極力抑制し、継続事業の着実な推進を図ることとしております。
第四に、農業生産対策等につきましては、地域の特性を踏まえつつ、需要の動向に応じて実施することが肝要であり、水田利用再編対策につきましては、第二期の枠組みのもとで着実かつ的確に実施することとし、奨励補助金等として三千五百億円を計上しております。
また、麦、大豆、果樹、野菜等の農産物につきましては、生産性の
向上を一層促進するため、
先ほど申し上げました新地域農業生産総合振興対策を実施することとし、六百二十八億円を計上しております。
畜産部門につきましては、地域の特性を反映させつつ、生産から流通、
消費に至る各種事業が総合的に実施できるよう畜産総合対策を実施することとし三百五十二億円を計上しております。
なお、これらの生産対策等とあわせて、各種農産物の
価格の安定、飼料穀物、大豆の備蓄量の確保等を図ることとしております。保
第五に、農林漁業を基盤とする住みよい農山漁村を建設するため、生産基盤と生活基盤の一体的な整備を推進するとともに、地域住民の福祉の
向上に努めることとしております。
このため、地域の特性に応じた住民の自主的な共同活動を推進するとともに、農村総合整備事業、農村地域定住促進対策事業、第三期山村振興農林漁業対策事業等の推進を図るほか、農業者年金の充実等に努めることとしております。
第六に、食料品に対する需要の多様化に対応して、農産物等を適正な
価格で安定的に供給するため、生産対策、
価格対策等とあわせて、
食品産業対策、流通
消費対策の充実に努めることとしております。
このため、
食品産業の一層の近代化を進めることとし、中長期の展望に立った
食品産業政策の
課題について検討を進めるとともに、
食品産業の技術水準の
向上を図ることとしております。
また、卸売市場の計画的整備、小売業の近代化、流通情報の活用等により
食品流通の効率化を推進するとともに、JAS
制度の充実、
食生活改善のための
消費者の啓発に努めることとしております。
さらに、国民の栄養バランスの保持、総合的な食糧
自給力の
維持等の観点から、米等わが国の風土に適した基本食糧を中心とした
日本型
食生活の定着促進を図ることとしております。
第七に、開発途上国等における農業開発の重要性にかんがみ、農業開発協力を一層推進することとしております。
このため、国際協力
事業団等を通じた調査、
指導、資金の融通等を行うとともに、最近の協力案件の増大、大規模化等に対応して、農用地開発公団の活用を図ることとしております。
以上申し上げましたほか、農業金融の充実、農業災害補償
制度の円滑な運営等により、農業経営の安定を図ることとしております。
第八に、森林、林業施策に関する予算について申し上げます。
林業につきましては、国内林業の振興と森林の公益的機能の発揮とを調和させつつ、森林、林業施策を推進することとしております。
まず、林道及び造林事業につきましては、一千二百五十一億円を計上し、林業生産基盤の整備を進めるとともに、治山事業につきましては、新たに第六次治山事業五カ年計画を策定し、その計画的推進を図ることとしております。
また、木材不況の深刻化等に対処して新たに木材産業の再編整備を図るための低利融資を行うことを目的とした基金造成等の措置を講ずるとともに、林家の定住促進のため特用林産振興を主体とした総合的な集落振興対策を推進することとしております。
さらに、間伐対策の充実を図るほか、マツクイムシ対策につきましては、新たに被害木の特別伐倒駆除を実施する等により、総合的、計画的な対策を講ずることとしております。
このほか、新林業
構造改善事業、林業の担い手対策、木材
需給の安定対策等の推進を図ることとしております。
第九に、水産業の振興に関する予算について申し上げます。
水産業につきましては、二百海里
時代の本格的到来、燃油
価格の上昇等の厳しい
情勢に対処して、わが国水産業の振興と水産物の安定供給を確保する必要があります。
このため、漁業生産
構造の再編整備を推進することとし、新たに長期低利の負債整理資金を設けるなど漁業経営安定対策を拡充することとしております。
次に、わが国周辺水域の漁業の振興を図るため、沿岸漁業
構造改善事業、栽培漁業振興対策等を引き続き実施するほか、新たに第二次沿岸漁場整備開発計画を策定するなど沿岸漁場整備開発事業の推進を図ることとしております。
また、漁港施設につきましては、新たに第七次漁港整備長期計画を策定してその整備を促進することとし、五十七
年度は一千六百五十三億円を計上しております。
さらに、水産物の鮮度等を表示し、これを
消費段階において保証するシステムの開発等水産物の
消費拡大と流通改善対策を推進するとともに、引き続き水産物の
価格安定対策を講ずることとしております。
このほか、漁業災害補償
制度については対象の拡大等を図るとともに、漁業共済事業に係る不足金対策を講ずることとしております。
次に、
特別会計予算について御
説明いたします。
まず、食糧管理特別会計につきましては、米の
消費拡大やモチ米の
需給安定を図るほか、本年四月から米の政府売り渡し
価格の改定措置を講ずるなど食糧管理
制度の運営の改善に努めることとし、一般会計から調整勘定への繰入額を四千九百八十億円に
減額した
ところであります。
また、五十四
年度から計画的に実施している過剰米の処分に要する経費として、一般会計から国内米管理勘定へ一千四百二十一億円を繰り入れることとしております。
国有林野事業特別会計につきましては、国有林野事業の経営改善を計画的に推進することとし、事業運営の改善合理化等の自主的
努力とあわせて、国有林野における造林、林道事業に対する一般会計からの繰り入れを行うほか、
財政投融資資金の導入の拡大を図ることとしております。
このほか、農業共済再保険等の各特別会計につきましても、それぞれ所要の予算を計上しております。
最後に、
財政投融資計画につきましては、
農林漁業金融公庫等による総額八千四百九億円の資金
運用部資金等の借り入れを予定しております。
これをもちまして、
昭和五十七
年度農林水産
関係予算の概要の
説明を終わります。
よろしく御審議くださいますよう
お願い申し上げます。