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1982-05-13 第96回国会 参議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年五月十三日(木曜日)    午後一時開会     —————————————    委員異動  四月二十七日     辞任         補欠選任      赤桐  操君     村沢  牧君  四月二十八日     辞任         補欠選任      青木 薪次君     和田 静夫君      村沢  牧君     赤桐  操君  五月十一日     辞任         補欠選任      藤井 孝男君     江藤  智君      鈴木 和美君     志苫  裕君      塩出 啓典君     和泉 照雄君  五月十二日     辞任         補欠選任      江藤  智君     藤井 孝男君      志苫  裕君     鈴木 和美君      和泉 照雄君     塩出 啓典君      近藤 忠孝君     立木  洋君      三治 重信君     栗林 卓司君  五月十三日     辞任         補欠選任      栗林 卓司君     三治 重信君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         河本嘉久蔵君     理 事                 衛藤征士郎君                 中村 太郎君                 藤井 裕久君                 穐山  篤君                 塩出 啓典君     委 員                 岩動 道行君                大河原太一郎君                 大坪健一郎君                 梶木 又三君                 嶋崎  均君                 鈴木 省吾君                 塚田十一郎君                 土屋 義彦君                 藤井 孝男君                 赤桐  操君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 和田 静夫君                 多田 省吾君                 矢追 秀彦君                 立木  洋君                 三治 重信君    国務大臣        大 蔵 大 臣  渡辺美智雄君    政府委員        大蔵大臣官房審        議官       水野  繁君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        大蔵省国際金融        局長       加藤 隆司君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君    説明員        防衛庁防衛局調        査第二課長    三井 康有君        経済企画庁調整        局財政金融課長  宮島 壯太君        経済企画庁調査        局海外調査課長  宮本 邦男君        外務省経済協力        局外務参事官   中村 順一君        大蔵省国際金融        局投資第一課長  石川 光和君        通商産業省通商        政策局経済協力        部技術協力課長  山口  健君        中小企業庁長官        官房総務課長   宇田川治宣君    参考人        日本銀行総裁  澄田  智君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十二日、三治重信君及び近藤忠孝君が委員辞任され、その補欠として栗林卓司君及び立木洋君が選任されました。     —————————————
  3. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事塩出啓典君を指名いたします。     —————————————
  5. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁澄田智君の出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 次に、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は前回聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 丸谷金保

    丸谷金保君 法案の審議に先立ちまして、まず最初に、きょう各紙に一斉に載っておりましたグリーンカード全面見直し決定自民税調という問題を中心に緊急に御質問いたしたいと思います。  昨日も衆議院決算委員会で、大蔵大臣はきわめて明確に絶対実施するんだと、こういう答弁をしておるということが新聞に載っておりますが、予定どおり実施するという決意、方針には変わりはございませんか。
  9. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は、法律があるんですから、法律がある以上、憲法法律を忠実に守るのが大蔵大臣の責務でございます。  問題は、法律が変わるかどうかは国会の問題でございまして、政府は変えてくださいというお願いはいたしません。国会がしっかりしていれば間違いなく実行できます。
  10. 丸谷金保

    丸谷金保君 きのうから見ると大分トーンが下がったような状況ですね。  もともと、このグリーンカードの問題につきましては、私どもは必ずしも全面的に賛成したわけじゃないんです。わが党としては分離課税には反対して、総合課税の一本化ということの基本的な方針の中ではまだいろんな手だてがあるじゃないかと、あるいはまた、三年間も分離課税そのままにしておくということ自体もおかしいということで、五十五年のグリーンカード制度法案所得税法の一部改正案が上程されたときに強くそういう点について質問をしております。  しかし、それはあくまで不公平税制をいかに正していくかという角度であり、また、大蔵大臣初め大蔵当局答弁も、不公平税制を正していくのはこれが一番いい制度なんだと、こういうふうに再三にわたって答弁しております。特にこの問題は、本会議でも当時私が代表質問いたしまして、それに対して当時の竹下大蔵大臣不公平課税、そういうことを是正するためにどうしても行わなきゃならない、こういう答弁がございました。  ですから、いま大蔵大臣が言われたように、法律が直ればそれはそのときの問題であり、それまではあくまで現行法でやっていくと、こういうお答えだけではちょっと納得ができないんです。その法律を提案したときの提案者はあくまで不公平税制、これを一歩でも二歩でも解消していくためだということだったんです。だから、いま言われているような自民党税調考え方、出てくる法案がもっと突っ込んで不公平税制改正のための前進だったら、それは大蔵大臣法律ができれば結構ですということが言えると思いますよ。しかし、むしろ不公平税制という観点から言うと、逆に大きく後退する見直し論に対しては、大蔵大臣としてはそれはおかしいという公的な議会の場において発言があってしかるべきだと思う。いかがですか。
  11. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私が申し上げたのは、原則論を申し上げたわけでございます。政府の気に入らない法案もたびたび政府はやむを得ないものと存じますとか、国会決議は尊重しろと言われまして、国会決議は尊重いたしませんと言ったことはございません。  したがいまして、最終的には法律をどうするかということは国会の問題でございまして、司法、立法、分権でございますから、国会で決まってもそんなものは守らぬよということを政府が言ったらとんでもないことにこれはなるわけでありますから、だから問題は、国会が決めたとおりに従いますと。したがって、現在は国会で決まっておるわけですから、しかも私としては、この法案については総合課税にするためには非常にいい法案である、そう思っております。  しかしながら、環境整備というものを同時並行的にやらないというと、九三%の最高税率なんていうのは世界に例がないものであって、そういうことは経済に大きな影響を及ぼす。したがって、これは少なくともでき得れば実施と同時に、こういうものはともかく世界の例のあるように直さないというと、経済というものはとんでもない問題を起こすことがありますから、これは環境整備もしていただきたいと、私の持論でございますということは、もうかねがね何十回となく国会答弁をしておるところであります。  したがって、私といたしましては、まずグリーンカードというものが背番号でもないし財産を全部それによって把握できるものでもないし、そういうことをよく知らせることが大事だと。かなりの評論家なども意外と知らないんですね。知らない。ですから、私はそういうことをよくPRをして、少なくとも一人九百万円の非課税限度というものは課税をしないということですから、これは法律の特例として恩典を与えておるものなので、それが悪用されて一億も二億も積んじゃっているというようなことがときどきつかまっているわけですよ。  そういうことをなくするためには、つまり不公正を是正して少額貯蓄優遇制度の乱用をなくするためにはこの制度が必要だということは、もうかねがねこれも言っておるところでございます。
  12. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、大臣不公平税制あるいは課税客体が把握されないような形が非常に現行制度の中で進んできているという現実を認めた上で、それを守っていこうとすることには反対ですね。いいですか、いまおっしゃったように、たとえばマル優制度を悪用して一億も二億も積むというようなことが現に行われていると、こういうものを目をつぶって、それらは仕方がないということでそれらを守っていこうとする考え方には反対ですね。
  13. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 当然でございます。
  14. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、いま言われているような自民党税調グリーンカード凍結廃止ということで、現況のままに凍結とか廃止とかいうことには反対だということになるわけですね。
  15. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それはもう法律でもそう決まっておるわけでございますから、当然でございます。
  16. 丸谷金保

    丸谷金保君 いや、それは法律で決まっているからということでないんです。いいですか。いまおっしゃっているように、現在のマル優、これは法律に決まっているからグリーンカード制度を実施するんだということでなくて、それ以前の問題として、いいですか、現在のようにマル優制度が悪用されて、一億も二億もの貯金非課税でもって隠れているということは直さなきゃならないとおっしゃったでしょう。だから、それをそのままにしておくというようなことには反対でしょうねと、こう聞いているんです。法律関係ないんですよ。いいですか、いまのグリーンカード制度に。
  17. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これはもうだれでも国会議員は、それはもう何千万円とか億の単位の非課税貯蓄を、法の不備といいますか、実際は執行上つかまれないということをたまたま奇貨としてそういうことをやってもいいなどと言う国会議員は、私は少ないのではないかという気がいたします。したがって私は、当然にそういうようなマル優制度の悪用というものはいけない。それは国会議員としてもいけないし、人間としても余りいいと思いません。
  18. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、現在のように、そういう非常に大きな矛盾があるにもかかわらず、現行制度を維持していこうということに対しては反対だと。現在、いま大臣が言われたようないわゆる課税隠しが行われておる、一億も二億もですね、架空名義を使って。現在のマル優制度の欠陥が出てきているわけですね、現在のマル優制度。それで、グリーンカードということに踏み込んだわけなんですから、だからマル優の現在の制度をそのままにしていこうということには反対だというふうに理解してよろしゅうございますね。
  19. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 御承知のとおり、去年一年間で国民個人金融資産というものが三十五兆円ふえたということが統計上出ております。そのうち課税ベースから合理的に推計いたしますと、そのうち非課税貯蓄がおおよそ二十二兆円増加した。課税貯蓄分離課税で約二兆円、それから総合課税で四兆円、大体六兆円増加したと言われております。  これだけグリーンカードグリーンカードと騒がれながら、現実にはマル優というものが年間に国民個人財産として二十二兆円もふえてしまったと。結局非課税貯蓄全体が百八十五兆、間もなくことしあたりは二百兆になると。二百兆の財産については利子課税が、所得税もかかっていないということになるでしょう。そういうことは、私は本当にみんなが一人当たり三百万円の限度、合計九百万円、銀行とか国債とかそれから郵便局を入れまして、そういう限度が守られているかどうかということについて私は疑問を実は持っておるわけでございます。  したがって、このような状態で放置をしておくということは決していいことではないと。みんなそんなに心配をしなくたっていいんじゃないかと。まして、国債なんて余り買ってないわけですから。二十二兆ふえたからといって、国債はどれぐらい国民が持っているかと。恐らくここの中で、お役所の方やなんかも、新聞社の方もおりますが、役所の人に聞いたことないけれども、在郷の皆さんにはどれぐらい国債、もう五百万円ぐらい持っているかどうか聞いてみたら、貯金は何百万持っている人があるが、国債なんというのは、三百万円持っている人というのは私は余り聞かなかったな。いるのか、隠しているのかどうか知らぬけれども、大体持ってないようですな。  ということになれば、またそういうような非課税貯蓄の道もあるわけでございますから、私は片一方にシフトしないで、国債も持っていただきたいし、そういうふうな道もあるわけですから、一カ所に三百万以上持っている方は、国債がゼロだったら、七百万あったら国債に二百万回してもらうとか、そういうことをしてもらうと国のためにもなるし、御本人のためにもなるし、何ら私は支障がないんじゃないかと、そういう実は考えを持っております。  したがって私は、最終的には国会の良識というものが判断される問題でございますから、国会でも私はちゃんとそこらのところはきちっとやってもらえるだろうと、私はそう思っています。
  20. 丸谷金保

    丸谷金保君 非常にしつこいようですが、先ほどからの大臣の御答弁聞いておりまして、やはり現在のマル優制度そのままにしておくことはよくないと、こう思っていることが十分うかがえるのと、ただ、法律だからやむを得ないと、手をこまねいてやむを得ないと言うのか、それとも大蔵大臣として積極的にいまのように、大体国会議員の中でいまのような制度で一億も二億もマル優非課税預金があるというのは、そんなことをそのまま守る、そんなことを考えている国会議員はないと、こういうふうに言われたように、そういうふうなことを考えている国会議員が出てきた場合に、それはおかしいじゃないかというふうな積極的な発言を今後なさるおつもりがあるのか。
  21. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それはもういまでもしゃべっておるわけでございますから、これ以上声を大にして言うといったって、記者会見で言ったり、新聞社で言ったり、暴力ふるうわけにはいかないわけですから、私は。言論としてはいろいろなことを申し上げておるわけです。  それよりも、これは国会議員自身の問題でございまして、そういうものが出てくれば当然大蔵委員会でこれは審議するわけでございますから、大蔵大臣を責めることも結構でございますが、自分自身が賛成か反対か。反対だということになれば、野党がかなり反対なものが、議員立法出たからといってすうすうすぐに通っちまうなんてことは、了解がついているような話なら別だけれども、そうでなければとてもそんな簡単にできるもんじゃないと私は思っていますがね。いままでの前例からしても、話し合いがつけば別だけれども、そんなに簡単に、多数で押し切って、残り少ない国会の中ですうすうとそういう法案が通ると私は思っておらぬのです。
  22. 丸谷金保

    丸谷金保君 しつこいようですが、大臣議院内閣制なんです。いいですか。議院内閣制ですから、内閣のあなた方は国会と無縁じゃないんですよね。議院内閣制なんです。全く別なもののような物の言い方をさっきからやっているけれども、とんでもない話なんでね。  しかも政党政治でしょう。政党内閣ですよね。そうすると、その政党の中において、政党の中から出て内閣を組織しておる各省大臣が、いや、それは国会議員のやることだと。あなただって国会議員なんだからね。やはりそういうおかしなことがまかり通れば、国会議員としてもやはりおたくたち責任あるんじゃないですか。それはもう全然私たち知らぬことだと、国会で決めたんだからそのとおりやればいいということにはならない。これがアメリカの大統領制なんかと違うところなんですから、これをやっぱりきちっとわきまえておいてもらわぬと困るんですよ。
  23. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは議院内閣制ということがありましても、憲法上からは三権分立になっているわけです。憲法上は三権分立なんです。  御承知のとおり、与党というものの母体の上に内閣がつくられていることも事実です、それは。したがって、与党としょっちゅう連絡をとって意思の疎通を図っておることも事実です。しかし、すべて党の要求内閣が全部まるのみしているなんていうことはございません。米価値上げ一つとっても、党の要求があったからって、いつでも要求どおりに、はいそうでございますかといって内閣告示したためしはありませんからね、実際は。それは話し合いをしてやっておるわけでございます。  したがって、不満な点がお互いにあることもあります。しかし、それは内部の問題であって、少なくとも表の問題というのは、やはり政府政府議会議会裁判所裁判所憲法ではそう定まっておるわけでありますから、われわれが内部で、その法律関係において拘束力というのは、与党政府の間で法律上の拘束力というのはお互いにないわけですから。そうでしょう。ですから内閣だって、与党内閣与党の手によってつぶれることだってあるわけですから。現実にあるんですから。内閣が幾らそう思ったって、国権最高機関で決まってしまえば、その現存の内閣自身がなくなってしまうんだから、問題は国権最高機関の問題であるということを私は申し上げておるのであって、丸谷さんの所属する社会党、大政党なわけですよ。そういう政党が本気になってもし反対だとすれば、そんなに簡単に法案なんてものは私は通るとは思っておりません。  したがって、私はちゃんと言うだけのことは言っておりますが、私も、グリーンカードそれだけが大蔵大臣仕事じゃないんですから、いっぱい仕事を持っているわけですから。それだけを毎日朝から晩までやれと言われましても、それだけに専念する時間的余裕はない。しかし、私は事あるごとにそれは誤解も解かなきゃならぬ、公務もしなきゃならぬということは与党に対しても言っておりますし、世間に対しても言っております。
  24. 丸谷金保

    丸谷金保君 私が聞きたいと思ったことを先に御発言なさったんで、大変話がしやすくなったんですが、内閣でもつぶれることあるわけです。それは政治責任です。この制度がこれだけ、大臣新聞記者会見その他においても、絶対実施するんだと、こう言い切ってきているわけです。これが与党の中のグリーンカード見直し凍結廃止というふうなことになった場合には、いまおっしゃった、内閣でもつぶれることあると同じように、大蔵大臣がこういうふうに言い切ってきているのが、結果が裏目に出てきた場合の、あなたは政治責任どうとるのか、これを聞きたかったところが、あなたの方が政治責任の問題を言われたんで、大変聞きやすくなりましたが、どうですか。
  25. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 大蔵大臣憲法法律に従うんですよ。ですから私は、法律は無視しますとか、法律つくっても守りませんとか、そういうことは言わないんですよ。  私としては、最善を尽くして、これはこうあるべきだということを言っておりますが、問題は、民主主義というのは多数決の政治で、最大公約数をそこでつくっていくわけです。だから政党の意見に反対だという人いっぱいいますよ、自民党の中でも。それを一々脱党していくというようなことになったら、政党政治守れないという問題もあります。最善をその中で尽くすということは、議員としても自分主張はあらゆる場所で言っても、自分主張が通らなかったからおれは自民党抜けました、社会党抜けましたということだけにはいかないじゃないですか。  したがって、最終的には、それは国会の多数によってどう決まるかという問題が最後の問題である。しかし、われわれは現在のような状態無期延期とか凍結とかというようなことは好ましいことではないし、現在のもので最善のものだとは私は申しません、これにはいろいろ直すべきものがありますということを何回も言っておるわけですから。そういう方向に向かって私は努力をしておるということだけであって、私は最善を尽くしておるんであって、別に責任をとらなければならないようなことをグリーンカードで何も私はしておりませんよ。私は一生懸命やっておるんですから。
  26. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣は上手に質問をすりかえた御答弁をなさるまことに巧みな技術をお持ちなんで、ちょっと焦点がときどきぼけてしまうんで、もう一遍申し上げたいと思います。  というのは、グリーンカード制度というのは現在の非課税限度額というようなマル優制度の中で、大臣がいみじくも言ったように、一億も二億も隠し預金を持つような人が出てきた。これらを何とか是正させなければならない一つの方法として出てきたものですよね。そうすると、それに対して反対動きがいま出てきております。もとへ戻せという動きなんです。もっとこういうふうによく直せという動きならいいんですよ、もとへ戻せという動きがあなたの所属する党内から出ているわけです。そして、これにばっかりかかわっているわけではないけれども、きょうの問題としては、もう読売なんかでも大きくトップ七段抜きですよ。  こういう大きな世間の問題になっているときに、実施するんだと大臣がおっしゃれば、これはやっぱり実施するという方向で全体も取り組んでいくということになるわけですよ。というのは、たとえばこのグリーンカードを実施するということになった場合に、登録番号と今度の口座番号をコンピューターの処理の中へインプットしていかなければならぬわけですよね。こういうことでシステムを変えていかなければならぬ。そのプログラムづくりがそのときになったんじゃ間に合わないんです。そして、これに対しては、現在のコンピューター制度の中で相当何千億という金と、非常に大変な働く人たちの苦労というものがついて回るんです。  ですから、それは前へ戻すようなことはしないと。ただ大臣としては、憲法法律を守る、これはあたりまえな話なんです。ですが、それじゃ政党人として、自民党が党議でグリーンカード廃止する、もとへ戻すと決めた場合には、あなたは党人としては従うことになるんでしょう、どうなんですか。
  27. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 民主主義というのは、それぞれの党の中でもいろんな意見があることがいっぱいございます。いっぱいございますが、政党が存続していくためには大多数の意見に自分の意見が合わない場合だってあるんですよ、数多くの場合には。そういう場合には自分が離党をするか、従っていくか、そんなことは社会党だって自民党だって同じじゃありませんか。  ですが、党でこれは廃止と決まったわけじゃありませんよ。どこでも決まってはいないんです。ですから、そういう問題は他党のことじゃなくても、どの党にだって、個人的な見解の違いと党の意見の違いというのはみんなあると思うんです。そのときに、その党を離党するか、自分ばかり言ったって大多数の人がそう言っているということになればそれは仕方がないわと、ともかくその党の中へとどまる以上は渋々でも従う場合だってみんなあるわけですから、だから私はそんなにはっきりしたものじゃないんじゃないか、同じことじゃないかと思うんですよ。  私は、まして総裁でもないんですし、党に対して命令してこうしろああしろと言う立場にあるわけでもないし、しかし、最終的にどうするかは国会の問題なんです、これは。国会においては各党がそれぞれ意見を決めるでしょう。そうなれば、問題は国会の場で最終的にはどう決まるかによって決まる話でありますから、国会反対党が三つも四つもあるとなったら、ともかく議員立法で強行採決、二泊三日やって法案通すなんということはできないじゃないですかということを私は申し上げているんです。
  28. 丸谷金保

    丸谷金保君 そこのところなんです、大臣個人個人と言いますがね、大臣個人じゃないんですよね。だから、一般の政党人、個々の党人としての国会議員大臣としての国会議員とはこれは違うんですよね。個人じゃないんですからね。個人はいいですよ。  私が聞いているのは、個人のことを聞いているのじゃなくて、大臣としてどうなんですかということを聞いているわけです。ですから、大臣としては個人渡辺先生じゃないんですから、大臣として、自民党がそういう方針を決めた場合に、その方針に従うんですか、従わないんですかということなんです。個人の党人としてじゃないんです、私の聞いているのは。そこをすっとすりかえられているんですね。
  29. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは内閣としての話でしょう。それは内閣としてその方針をのむかのまぬかという話ですよ。大臣だけが決めるわけじゃない。そういう法案が出れば、それに対する内閣意見というのが出るんですから。それに対して内閣反対である、やむを得ない、賛成である、いろいろ閣議決定をするわけですから。だからそのときどうするかという問題は内閣全体の問題であると私は考えております。
  30. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうもかみ合わないんで非常に残念だと思うんですが、まあ渡辺大蔵大臣というのはもう少ししゃきっとした歯切れのいい答弁が出るかと思ったんですが、どうも何遍聞いてもそれ以上のことはないようで、要するに、私は現在の制度よりはグリーンカードの方が前進した方法であると思っているけれども、党や内閣の各大臣国会が決めれば仕方がない、こういうことですね。
  31. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは仮に国会や何かが多数決で決めれば仕方がないんじゃないですか。これは仕方がないことですよ。だから、最終的には国会が決める問題であって、私はあくまでもいまの政府総合課税という制度はせっかくできたんだからこれを主張してもらいたい。しかし、いまのままではいろいろ不備な点もあるし、環境を整備しなければならない問題もありますから、それは直しましょう、こう言っておるわけです。  そして、これからそういう問題について党から呼ばれることがあるんです。大蔵省はどういう考えであるかということを聞かれることが必ずあると思うんです。そういうときにはちゃんとわれわれの意見というものははっきり申し上げていきたい、そういう場面にまだ一遍もぶつかっておらぬわけですから。そういう新聞に出ておるのは、きのう税調会会議の正副会長会議をやった、そこでどうだというお話が出ております。けさ実は私は税調会長とも会いました。会って話が決まったのかと聞いたら、新聞のとおりじゃないと言っておりました。だから、会長としての意見というのは申し上げていない、違う結論を出したいということでありまして、私としては私の考えをちゃんと申し上げてあります。
  32. 丸谷金保

    丸谷金保君 そういう点で、私は前段の御答弁を聞いていると、いや、もう国会で決めることだからむだな抵抗はしない、こういうふうな印象を受けたんですが、一番最後のところへ来て、いや、そうじゃなくて、意見を述べるときは堂々と議論を展開する、こういうことなので、大いにそれに期待をいたしたいと思っております。  ただ、これは五十五年のときに、私は本会議でこの法案反対討論をしたんです、グリーンカード、この法案にですね。しかし、いろいろ問題はあるけれども、やらないよりはいいだろうという意見は申し上げておきました。その問題とするのは、もっと総合課税に一本化していくためには本来、大臣ね、こういうことでいわゆる分離課税制度というものを認めておくよりは逆に税額控除、これは全体としての非課税預金を、全部昔はやってたんですから、これは大したことないんですよ、当座預金だろうが特別預金だろうが全部利率決めて、そして一定限度までは申告所得の段階で課税控除するということにすれば同じことになるんです、非課税は。そしてこれだといろいろいま問題にされているようなああいう反論が起きてこないんじゃないか、このグリーンカード制度だったら必ずそういう問題が起きてきますよということを私は当時指摘しておきました。  もう一歩突っ込んでそこにいけない、還付する事務が大変だからなかなかいけないという当時の主税局長答弁なんですよ。それはそんなふうにならぬです。それは所得税そのものの非課税の人だけです、還付事務が起こるのは。そうしますと、所得税も払えない人たちがそんなに定期預金なんかをできるはずがないんですからね。実務としては、そんなに税務署の実務がふえる——むしろ、このことにおける金融機関の費用と労力なんかの方がずっと大変なんですよ。ところが大蔵省は、非常なたくさん人を使ったり金を使ったりなんかする制度が平気で始まっちゃって、ここに問題があったということを指摘し、もっと本質的な総合課税一本化という方に向けてひとつ大臣としても努力をしていただきたい、検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  33. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それはグリーンカード法律ができる以前の議論としては私は一つの見識だと思います。  税収も一番入りますし、二百兆の個人貯蓄があるとすれば、そうすれば六%の利息が仮についたとしても平均して十二兆の利息を払うわけですから、二〇%源泉を取れば二兆四千億円のお金が入るし、二五%なら二兆五千億以上の税収になる。一方、総合課税であると、結局二五%以上の税率の人はさらに追加して払ってください、それ未満の人は還付請求を出しなさい、これは一つの一番いい方法で、できればこれは一番いい。ところが、そうなれば郵貯だけは別ですよというわけにはいかぬですから、全部ですから。これは実務的で、一番税収になって公平だと。どうせお金というものは、インフレヘッジがあるわけですから、インフレによって減価するのですから、少しぐらいの利息で財産がふえるわけではないという考え方があると思うんです。  そういうことも含めまして、仮にグリーンカード問題についての見直しをやるとするならば、それは減税問題に関する小委員会をつくって、各党集まってつくったわけですから、そういう中で大いに議論して結論を出してもらうということを私は拒否するものではございません。
  34. 丸谷金保

    丸谷金保君 きょう提案されております法案に入りたいと思います。  日銀の副総裁来ておりますので、その方の問題ちょっと飛びますけれども、先にいたしたいと思っております。  実は、世銀については法律事項ですけれども、アジア開銀その他法律事項から外れていて予算の中で処置するというふうなことに変わりました。そうしてそれはやはりできるだけ機能的にてきぱきと処理していくためにということが当時の法律事項から外した理由の一つでございましたが、ただ、人的な関係を見ますと、どうも私ちょっと納得のいかないのは、最初は日銀から総裁が出ていたのです。それが今度ずっと大蔵から総裁が出るように変わってしまいました。これはむしろ民間というか、日銀を含めてそういうバンカーにアジア開銀などの総裁を任した方が有用な機能性を発揮できるんじゃないか。もちはもち屋ですから、そう思ったんですが、副総裁がおいでになりますとちょっとこれはぐあいが悪いなと思ったのは、副総裁自身が大蔵から行かれた方でしょう。これは副総裁にお聞きするのは非常にうまくないと思いますので、大臣、どうですか。
  35. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 日本が決めてもそれで決まるわけでなくて、域内の加盟国から選挙の候補者を出すわけでございます。それで各国が投票いたすわけでございますが、この仕組みはもう先刻御承知だと思いますが、今回藤岡総裁の選挙の場合に、私どもが藤岡候補の推薦のために次のようなことを各国に選挙演説、選挙活動をやったわけでございます。  一つは、国際金融について豊富な知識、経験を持っているということ、それから二番目には、開発問題、特にアジア及び太平洋地域の経済発展に自分が全力投球しようという意欲を持っているということ、それから三番目には、国際金融機関の運営について経験なり手腕があるということ、この三つを藤岡候補が持っているということで各国に呼びかけたわけでございます。それで、各国の大臣が総務でございますが、総務会の投票によりまして決まったわけでございます。こういうような、私どもが選挙運動やりましたときに藤岡候補について申したことが大事だと思うので、出身というようなことでなくて、当該本人の資質じゃないかと。  それで、ちなみに世銀とかアフリカ開銀とか中南米の国際金融機関があるわけですが、こういうものの総裁を全部調べてみたわけでございます。そうしますと、IMFまで含めましていままで二十二人おいでになります。いわゆる金融機関出身者は半分ちょっとというような感じでございます。これだからどうということでございませんが、こういうようなことからわかるように、それぞれの方の経験なり抱負なり、そういうことで決まっていくんではないかと、そういうふうに思います。
  36. 丸谷金保

    丸谷金保君 金融機関出身者は半分程度とゆくりなくもおっしゃったように、それはいろんな国際金融機関を二十幾つですか、二十でもないですわね、幾つかあるのをとらえたんですが、ただアジア開銀というのは、拠出金の比率からいうと日本は何%ぐらいなんですか。
  37. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 一般の資本金、それから拠出金、両方とも日本が一番大きいわけでございます。
  38. 丸谷金保

    丸谷金保君 そのパーセント。
  39. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 一般の資本金が一六・三、それから基金という方がございますが、拠出でございますが、これが三六・八でございます。
  40. 丸谷金保

    丸谷金保君 副総裁、どうぞ……。  それで大臣、実はそれの問題で、たとえばアジア開銀だけ調べてみても、日本の職員数は一割いないんですよね、一〇%ないんです。出資の比率からいっても非常に悪いんです。だから総裁の問題だけでなくて、こういう人的な問題というのは、きわめてどうも、日本は金は出すけれども人は出さないと、これはちょっと僕は考えなきゃならぬ問題でないかと。  ちなみに、世銀について言いますと、人の段階ではチリやペルーよりも少ないんですよ、ベルギー並みなんですね。特に世銀なんかの場合、出資も余り多くないんで、実はその点もこれから聞こうと思うんですが、まずちょっと、いま人の問題から入ったから人の問題を先にやってしまいますけれども、一体これだけの出資をしていながら、たとえば世銀の場合も出資額からいうと五番目ですけれども、職員の数は日本は十三番目ということですね。こんなことでいいんでしょうかね。日本の意向、日本が一生懸命出資をして、世界の開発のためにがんばっているということが余り伝わらないんじゃないかという気がするんですが、いかがですか。
  41. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 御指摘のような数字になっております。世銀・IDAグループというのが、両方の出資金を加重平均しますと六・六%でございますが、職員数は、全体の二千六百二十八人の中で三十七人ということで一・四%、御指摘のような状況にございます。この問題については、私どもとしては、当然のことながら、日本人職員の増加を何とか図りたいということでずいぶん努力いたしておるわけでございますが、幾つかの問題があるわけでございます。  一つは、まあ日本の生活がかなりよくなってきておりまして、先方に行った場合になかなかつらいというような問題、子供の教育の問題とか、それから語学の問題とか、いろんな障害がございます。そこで、先般世銀の総裁が来られましたときに大蔵大臣から、まあ若干甘えの構造みたいなところもあるんでございますが、日本人についてはそういうハンディを何とか織り込んででもよけいに採ってくれないかと、たとえば少しぐらい語学ができなくても先方に行ってがんばるとか、あるいは永続して勤務しないでまた帰ってくるというような人についても採用してくれないかとか、いろいろなことを大臣からもそういう要請などもしていただいておるわけです。  私、担当局長といたしまして、省内にも呼びかけてできるだけ送り出そうとしておりまして、ごく最近、五、六月ごろに何人か若い連中が参りますが、率直に申してなかなか行きたがらない。それで、まあ勧奨だけしててはいけないので、何らかの手だてをとらなきゃいかぬということで、二段階というようなことを考えまして、ともかく普通は世銀やなんかは永続勤務を欲しておるわけでございますが、日本人に限っては二、三年というようなことでまた大蔵省へ帰ってくる、あるいは農林省へ帰ってくると、そしてまた行くというようなことを世銀と話し合いまして、そういう方向でやるようにいたしておりますし、アジ銀についても年に一回人員募集が参ります。そのときには各省に手広く周知いたしまして、昨年もことしもそういうようなことでできるだけ多くの人を送り出したい、そして国際金融の経験を積ませたいと、そういうふうに考えております。
  42. 丸谷金保

    丸谷金保君 それでは、大臣ちょっと出られるそうなんで、お聞きしておきたいんですがね。  いまお話が局長さんからありましたように、非常に少ない、そしていろいろ努力はしているが、なかなか希望者がいない。そこで、総裁を出すことには大変熱心な大蔵省——アジア開銀に選挙運動やってまで送り出している、この熱意があるんですからね、まず隗より始めよで、総裁を出してるアジア開銀くらいは、もう少し生きのいい大蔵省の人たくさんいますよね、それをどんどん出してフォローしてやる。少なくとも出資比率一番の日本が、インドよりも職員少ないというふうなことじゃ、総裁もかわいそうですしね。こういう点ではもっとひとつ勇断をふるってどんどん出すと、こういうことをお考えいただくわけにいきませんでしょうか。
  43. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これはいま加藤国際金融局長から話したとおりでございまして、私もそう考えておるんです。おるんですが、一つは語学力なんですね、語学。もう語学が自由に駆使できるという人でないと幹部職員などはそれはなかなか勤まらない、まず言われるのはそれなんですよ。その次はいま言ったように、もう向こうの人になっちまうというんならいいんですよ、語学ができて、向こうの人になると。それは嫌なんですね、みんな。腰かけ。腰かけじゃ向こうもいやだと。腰かけだって行けと言ったってなかなか行きたがらないんだから。  だから、今度はもう、そういうところへ行けと言ったやつを行かないのは部長にしないとか、局長にしないとか、この辺全部それを何かやればもう少し行くのかもしれませんが……。そうして、もう優秀なのを送り込むなら送り込むとか、何かそんなことをやらないと、余り今度は大蔵省でも要らないような人を出したらまたこれ評判悪い。こっちでも要るような人は取っておく、もう悪循環なんですね。ですから、私はやっぱり出すんなら優秀な人材をどんどん出すことを今後ともいろいろ工夫をしたい。それにはやっぱり語学力というのが問題なんですね。これも国際化をしているので、日本語で通じればいいんですけれども、なかなかそうもいかないところに問題がございますが、時間がかかるかもしれませんけれども、これは私は同趣旨の考え方を持っておりますから、今後も日本人の優秀な人を送り出すことに引き続き努力をしてまいりたいと考えております。
  44. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで提言があるんです。  確かに語学力が弱い。読解力はあっても話すのが非常に日本人は下手だと。ですから、ある程度はそういう海外の各地の機関に派遣する要員を別途採用する。多少、ほかの官吏採用試験では語学はよくできるけれども、法律がだめだからとても大蔵省には採用にならない、こういう人もたくさんいるんですよね。こういうような者を別途採用して、要員として養成して送り出すという道が一つあると思います。それが一つ。  もう一つは、やっぱりどんどん、大蔵省の将来の幹部職員になる人もこれは出す。そうすると、この人たちが帰ってぐると、いかに海外勤務というのは大変かということを理解するから、アフターケアの関係でもう少し予算もつけてやらなければならぬということがわかってくるんですよ。ところが、痛みがわからないから——これは私はUNIDOに行っている友人がいるんですがね、大変なんです。子供さんたち、ずっとこっちでもって勉強さしているんです、もう中学ぐらいから。それでないと日本のいい大学に入れない、えらい金がかかると。ですから行ってみると、相当いい給料をもらっているようでも、御当人たちの生活は非常につましい生活をしなければ教育費が出ないとか、こういうふうなことについてのアフターケアをもっともっと予算をつけてやってやらなければだめだということを、大蔵省幹部職員が肌で感じるようになるんです。このためには、やはりどんどん出す。  この二つの方法でひとつ、せっかく日本が出資しているところに人がたくさん、どこへ行ってもあふれるようにいるという姿勢をつくりませんと、金だけ出して人がついていっていないから、日本のやっていることというのは、世銀でもUNIDOでもそうなんですが、非常に薄くなるんです。この点についてひとつ。
  45. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) そういう面もございます。したがいまして、若い人にいま国費留学制度というのがスタートをして、だんだん実を結ぶようになってまいりました。こういう制度がもっと充実をしてくれば、もっと人材ができるんではないだろうかと。  私は、農林省に長く関係をしておったんですが、あそこも干拓事業とかそういうのは仕事がありませんので、若い人たちを東南アジアとか土地改良の仕事なんかで、そういうのをどんどん送れるように考えてまいったんです。したがって今回なども、農用地開発公団等が国際協力事業団の一部下請をやって、設計をやったり、それから人を派遣できたりして、農林省の身分のまま出向できるとか、そういう制度も今度はこしらえることにしまして、そういうことをやろうと。同じようなことをやはり大蔵省なんかでも将来考えていったらいいんじゃないか。  どういうのが実務的にいいかというのは、むしろ、私に聞くよりも、ここに石川課長なんかおりますから、出ていく希望があるかないか含めまして、参考人としてちょっと呼んで、ここで説明員として答弁をさせますからね。むしろ、その方がはっきりしたことを言うんじゃないかと思う。  それからもう一つは、金を出したんだから、ポストと人をそれぞれ総合してよこせということになりますと、これもいけないんですよ。これも経済支配、乗っ取りというような、金に物を言わして人の国までみんな干渉を日本人がやるという印象を与えても、これもいけないと私は思うんです。したがって、金を受ける方からも偉い人をとったりなんかしまして、ただ、日本がお金を出したから、それで経済支配をしているんじゃないんだよという印象を与えないと、余り欲をかいて強く言うと、経済支配に乗り出してきたんじゃないかと、せっかくのこちらの気持ちが逆に受け取られる場合も実はなきにしもあらずなんです。その辺の兼ね合いを含めまして考えなきゃならぬ。  しかしながら、現在のところは余りにも少な過ぎるじゃないかというのも事実でございますから、そういう点でひとつ十分注意をしたいと思います。補足は石川君にいま説明をさせますから……。
  46. 石川光和

    説明員(石川光和君) ただいま大臣局長から申し上げましたとおりで、私から特に補足させていただくことはございません。  私ども個人的な立場で申し上げさしていただきますと、やはり言葉の問題でございますとか、それから生活環境その他やはり日本の生活と、それから外へ行って国際機関で働くからには、その中で十分仕事ができるだけの力、特に言葉の問題とか、そういうのが一番大きい問題だろうと思います。
  47. 丸谷金保

    丸谷金保君 えらい簡単な……。まあ、いずれこれは平場でまたよく聞きます。  それで、大臣経済圧力をかけるように思われたら困ると言うけれども、そんな心配なんかさらさらないですよ。たとえば、いま私ここに持ってきたのを見ますと、世銀と、それからアジア開銀、それからUNIDO、経済技術協力機構ですかね、国連の。これはもう全部アメリカ合衆国が一番なんです。これを抜くことなんて、とてもできませんから。だから、どんなにがんばったって、日本が金を出したので経済圧力をかけるというふうに思われるほどになるような状況にないんです。やっぱりみんなそれぞれ、各国ともに金を出したところは人を出しています。日本だけなんです、遠慮しているのは。ほかがそうでなければいいですよ。しかし、ほかがそうなんですから。  たとえば、世銀だってアメリカが一番、英国が二番、インドが三番で、フランスが四番、西ドイツが五番と、こういう順序ですからね。やはり金をよけい出しているところはみんな人を出しているんですから。日本だけが遠慮しているだけ。そうしたからといって、そんなふうに外国から変に思われたら困るなんていう考えは、大臣間違っている。それはひとつ改めていただきたい。そんなことはないということを……。
  48. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) よその国の場合は個人ベースで出ているわけでございます。それで、大体アメリカや何かに留学した人たちが入っておるわけでございますね。いまの御指摘は、政府が送り込めというようなことになりますと、先ほど渡辺大臣が申し上げたような受け取り方になるという点でございます。ですから、個人ベースでどんどん行く分にはそういう問題はないかと思います。  それからもう一つは、上級職をどうやって取るかという問題になるわけです。これが非常にまた国力とかなんとかというようなことになりまして、かなりつらい問題になるわけでございます。そういう点を大臣が申し上げたわけでございます。
  49. 丸谷金保

    丸谷金保君 わかりました。人の問題は、それであれなんですが……。  次に最近、特にレーガンになってからそうなんですが、二国間援助というふうなことにアメリカが方針を切りかえてきている、こういうようないま状況になってきつつあります。それで、そういう世銀なんかの場合にはまだ顕著にあらわれておりませんけれども、レーガンのそういう方針というのが次第に各国際金融機関等に対するアメリカの姿勢にもあらわれ出してきているんですが、特にこの件について、これはきょう御出席している鈴木委員委員長として調査旅行にヨーロッパに出たときに、UNIDOの事務総長にお会いしましたときに、非常に日本の拠出金も少ないんです、経済技術協力の機構に。国連に出しているから、国連の機関であるそうしたところに余り出さないでもいいという日本の考え方、これが間違っているんじゃないか。というのは、むしろ一番いいのは二国間がいいし、その次にはそうした目的別のところにきちっと経済大国になった日本らしい出資が出ているということがまたこれに続いて必要なわけなんです。  世銀なんかの場合には、出したくてもなかなか割り当てが決まっていてそうふやせない。それで非常に西ドイツやフランスよりも下だというふうな状態にありますけれども、そうでないUNIDOのような機関にはもう少し思い切った措置もとっていいんじゃないか。そのとき事務総長は、日本が少ないとは言わないんです。何といいますか、日本は非常に遠慮がちに出資しておりますと、こういうような微妙な表現で、日本の出資が少ないとは言わないんですが、もっとふえないものかなあというふうな状況でした。職員の数が少ない上にそういう点も少ないんですから、技術協力というふうな面についての日本は、世界の状況の中で非常に非協力的な国だというふうに見られがちなんです。こういう点はもう少し積極的にひとつ対応していただきたい。  きょうは通産省からも来ていただいているんですが、そういう先ほど大臣が言われた農林省などがやっている、これは正確に言うと海外技術事業団が始めたんですが、そういうふうなものをきちっとやっていくというのはよくわかるんですよ。日本の技術協力というのはそういう点でヨーロッパへ行きますと大変消極的過ぎないかという意向があるんですが、これについて通産省どうですか。
  50. 山口健

    説明員(山口健君) 先生御指摘のとおり、技術協力、最近特に発展途上国から要請が強いわけでございます。技術協力は経済協力の中におきましても、発展途上国の持続的かつ自立的な発展に不可決な人材養成にきわめて役立つという点がございます。また、資金協力の効果を補完、拡大し、全体としての援助の効果を高めるというような効果もございます。  それに加えまするに、これは一番わが国にとっても大事なことの一つではないかと思われますが、人と人との触れ合いを通じまして技術協力を進めてまいるわけでございますが、そういうことによりまして、わが国と発展途上国との相互理解と申しましょうか、一層進められるという非常に大きなメリットがあるわけでございまして、そういう観点から、私どもといたしまして経済協力全般としましては、昨年の一月の新中期目標もございまして、三年倍増という計画もございますが、その中でも技術協力をますます発展といいましょうか、拡大してまいりたいと、こういうふうに努力しているわけでございます。  ちなみに、UNIDOのお話が出ましたんですが、UNIDOについてみますと、目的拠出と申しましょうか、技術協力に関する拠出を行ってございますが、ここ数年間の予算額で申しますと、五十三年度が約二十二万五千ドル、それから五十四年度が四十一万一千ドル、五十五年度が七十二万一千ドル、五十六年度が七十五万ドル、五十七年度九十五万ドルということになってございまして、ここ四年間の間に四倍強というぐらいの予算的に非常な拡大を見てまいってございます。私どもといたしましては、今後ともこういう方向でがんばって協力してまいりたい、こういうふうに考えてございます。  ちなみに、日本の予算の年度とUNIDOとの会計年度が違いますから正確には数字が合いませんが、一九八一年におきます日本の拠出金が九十二万四千ドルとなってございまして、現在五番目、全体で七・三%というような数字になってございます。  以上でございます。
  51. 丸谷金保

    丸谷金保君 世銀の融資対象先、これは非常に広範にわたっておりますが、特にその中で韓国に相当な融資が行われております。日本は対象にならないというふうになっているということなんですが、この世銀の問題に関連しまして、外務省がいま韓国援助問題を交渉しておりますが、これについての成り行き、こういうものについてちょっと簡単に説明していただきたい。
  52. 中村順一

    説明員中村順一君) 御説明申し上げます。  対韓国経済協力問題の現状につきましては、先般、四月二十九日からでございますけれども、柳谷外務審議官が韓国を訪問いたしまして、これまで日本側での検討の結果を踏まえましたわが方の結果というものを韓国に伝達をいたしました。これに対しまして韓国側は、日本側の誠意は多とするけれども、やはり韓国側の考えていることと日本側の考えていることということの間には隔たりがあるという話でございました。  このように、先般の柳谷外務審議官の訪韓では解決のめどを見出すまでには至らなかったわけでございますけれども、私どもといたしましては、韓国側が日本側の誠意ある対応にさらに理解を示し熟慮を加えることを強く希望しているわけでございまして、今後の具体的な取り扱いについては外交ルートを通じて協議が継続されるというふうに理解をいたしております。
  53. 丸谷金保

    丸谷金保君 世銀から借りて開発、公共事業その他をやるというふうなシステムがありますね。それで、特に日本が政府間の交渉で対韓援助、対韓借款をやらなければならないという基本理念は何なんでしょう。どうも借りる方がえらいいたけだかになって、貸す方が印象として辞を低うして頼み込んでいるような感じがして、ちょっと理解に苦しむんですがね。
  54. 中村順一

    説明員中村順一君) わが国の経済協力の基本理念といたしましては、南北問題の根底にございます相互依存と人道的な考慮という二つの基本的な理念に基づきまして、途上国の経済開発あるいは民生の安定に貢献するという目的を持って経済協力をしているわけでございます。  韓国につきましては、最近のいろいろな経済的な困難に直面いたしまして、かつ、これから新しい五カ年計画のもとに国づくりを行う、そういう大変韓国にとっては重要な時期に直面しているわけでございますけれども、日本と韓国とのきわめて密接な関係ということから、日本政府といたしましてもできるだけの協力はしていくという基本的な考え方に基づいて対応をしているわけでございます。
  55. 丸谷金保

    丸谷金保君 人道的というふうなことが基本理念に入っているというのですがね。  防衛庁、韓国は大体六、七%の防衛費を使っているんです。この韓国の防衛の実態というふうなものはどんな程度なんですか。知れる限りでひとつ。
  56. 三井康有

    説明員(三井康有君) 朝鮮半島におきましては、非武装地帯を挟みまして南北の厳しい軍事的対峙が続いていることは御案内のとおりでございますが、特に一九七〇年代以降におきます北鮮の大幅な軍事力の増強といったことが注目されているわけでございます。このような厳しい情勢のもとにおきまして韓国は、一つには米国との密接な協力関係を築くとともに、他方では韓国自身の国防力の整備に努めておるわけでございまして、このために本年から一九八六年までを対象期間といたします第二次戦力増強計画と呼ばれるものを立案しておるというふうに承知いたしております。
  57. 丸谷金保

    丸谷金保君 軍事対立というふうな形の中で韓国が国づくりをやっておるという状況、これはその国の、それぞれの国の問題ですからね。しかし、世界的に見ても物すごい国防予算と、軍事大国化の方向を進んでいる、そういうことは防衛庁としても認識できますね、韓国の軍事力というものについて。
  58. 三井康有

    説明員(三井康有君) 韓国の国防予算は、昨年度の場合で申し上げますと、GNPの約六%を充当していると言われておりますが、北朝鮮の場合にはいろいろな見方があるわけでございますけれども、GNPの二〇から二五%を充当していると言われておりますし、また、たとえばソ連につきましてはGNPの一二ないし一四%を充当しておる。またアメリカにつきましても五、六%程度の国防努力は払っておるわけでございますし、NATO諸国につきましても三ないし五%の国防費を充てておるというのが実態ではないかというふうに理解いたしております。
  59. 丸谷金保

    丸谷金保君 それで問題は、そうした軍事費に多額の金を投資しながら、福祉の方は〇・五%というように非常に悪いんですよね。日本がそれで、そういう状態の対韓援助というのは軍事援助につながりませんか。これは外務省、どうなんです。
  60. 中村順一

    説明員中村順一君) 先ほど御説明申し上げましたとおり、韓国はただいま経済的、社会的に転換期を迎えつつあるというふうに認識しておりますが、第二次オイルショック以降深刻な不況が続いております。韓国経済企画院の発表によりますと、昨年は実質経済成長率は七・一%を達成したわけでございますけれども、これは米作が平年作水準に回復したことによるところが大きく、実態では八〇年、八一年の二年間でわずか〇・五%程度の成長にとどまったということでございますし、また、国際収支の点につきましても非常に悪化をしているというのが状況でございます。  そこで、韓国側といたしましては、自国の経済的な社会的な開発を進めるために、やはり日本からぜひ経済的協力を得たいということで、あくまで韓国側といたしましては、自国の経済開発のために日本からの経済協力を要請しているということでございます。日本側といたしましては、そういう韓国側の要請を十分検討して、しかるべく対応していくということであろうかと存じております。
  61. 丸谷金保

    丸谷金保君 通産省にお伺いします。  ことしの春に、京都で予算の公聴会をやりましたときに、京都の繊維企業が非常に不況で在庫融資なども大変多く受けているんです。その原因が韓国から大量に日本に繊維品が流れ込んできているその圧迫が大きい。  それから、これは鹿児島県の奄美大島。奄美大島の技術が韓国に渡って、きわめて安い価格の労賃でできた製品が日本に入ってきているので、非常に奄美大島が困っている。こういうような話を聞いたんですが、そういう中小企業に対する韓国経済の圧迫、こういうふうなものについて通産省は具体的にとらえておるものはありますか。
  62. 宇田川治宣

    説明員宇田川治宣君) 先生御指摘の韓国からの繊維を中心とした輸入でございますが、若干まず数字を申し上げますと、総輸入額が昭和五十四年暦年ベースで七千三百億円、それが五十五年度六千八百億、五十六年度約七千五百億円ということでございます。  その中で工業製品、いま中小企業ということがございましたが、まず工業製品全体で申し上げますと、昭和五十四年の輸入額が韓国から五千七百億円、五十五年は若干減りまして五千三百億円、五十六年になりましてまた五千九百億円ということでございます。その中で中小企業に直接関係いたしますようないわゆる中小企業製製品の輸入額と申しますと、昭和五十四年が三千五百六十億円、五十五年が二千七百十億円、五十六年が二千八百七十億円ということで、五十四年から五十五年にかけまして若干減りまして、五十六年にまた中小企業関係につきましては六%ほどふえた、こういう状況でございます。  その二千八百七十億円の中で一番大きなものは、先生御指摘のとおり繊維品でございまして、五十六年だけで申し上げますと、繊維品の輸入額というのは韓国から二千二百七十五億円が輸入をしております。  通産省といたしましては、まず物として考えました場合に、繊維の輸入というのが韓国、台湾あるいは中国というところからの繊維輸入というのが多いわけでございますが、非常に輸入が急増するというようなことになりますと、ただいま先生御指摘のような、国内の特に中小企業を中心といたしました繊維業界に対する圧迫というものがふえますものですから、そういうような状態になるというようなおそれがあります場合には、一つは輸入業者に対しましてそういうような極端な急増を避けるようなことで、いわば行政指導と申しますか、要請と申しますか、そういうような措置を講じておりますし、他方輸出国、たとえば韓国というようなところに対していわゆる自粛を、そういう急激な増加というようなものに対して自粛を要請するというような形で、できるだけ円滑な対応ができるようにということを考えております。  私ども中小企業庁といたしましては、全般的に在庫金融というふうなものも含めまして、各種の金融措置をとっておりまして、二つ三つ申し上げますと、一つは政府系中小企業のいわゆる三機関と申しておりますが、そういうところでの低利融資ということをやっておりますし、また都道府県と協力をいたしまして、いわゆる中小企業体質強化資金助成制度というのが現在四十県市で実施をしておりますが、そういう体質強化資金の中で、いま申し上げたような急増品に対する対応ということでの融資を持っております。さらに中小企業信用保険公庫から出ておりますいわゆる信用補完制度、保証協会を経由いたしまして信用保証を行うということの対象といたしまして、不況業種に対する信用保証制度というのが特別にございます。  先生御指摘の繊維関係につきましても、不況業種ということで特別の指定を行いまして、別枠の保証措置をとっているというような対応を講じているところでございます。
  63. 丸谷金保

    丸谷金保君 中小企業の関係から見ると、そういうふうに韓国経済が日本の中小企業、特に繊維工業を直撃しているという実態は数字の上でも明らかでございます。  ところで外務省、にもかかわらず韓国側に言わせれば入超で非常に経済を圧迫している、全体としての韓国経済を圧迫しているという主張が、このいわゆる六十億ドルをめぐる交渉の経過の中で幾度か出ておるでしょう。どうなんですか。
  64. 中村順一

    説明員中村順一君) 先ほど御説明申し上げましたように、わが国の経済協力というのは相手国の経済開発、社会開発、民生安定のために供与されるということでございまして、その前提といたしまして、私ども実務者の協議を通じまして、いろいろ韓国経済について、あるいは韓国の経済開発計画についての説明というものはいろいろ徴したり、資料を入手するように努めてまいってきております。
  65. 丸谷金保

    丸谷金保君 交渉の経過の中で、韓国側の主張として非常に日本の工業製品が、韓国側とすれば輸入が非常に多くなって、全体のバランスで輸入超過になっている、それで韓国経済は非常に苦しいんだと。こういうふうな形で日本からの輸入超過の問題が提起されていないかということです。
  66. 中村順一

    説明員中村順一君) 日本と韓国との貿易収支の問題につきましては、韓国側から説明がございました。
  67. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは提起されているというふうに理解していいですか。
  68. 中村順一

    説明員中村順一君) 韓国側の経済の実情の説明の一つとして韓国側から説明がございました。
  69. 丸谷金保

    丸谷金保君 特にその中で大きな輸出、日本から言うと輸出しておる品目にはどういうものが説明されていますか。
  70. 中村順一

    説明員中村順一君) 韓国側の説明は一般的な説明であったと承知しておりますが、具体的にどういう内容の説明があったかということにつきましては、私必ずしも全般を承知しておりません。
  71. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、日本から輸出している品目というふうなものについてはわからないということですか。
  72. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 八一年の数字で、日本から韓国に出ましたものでは、一番大きなものが機械機器でございます。これがドルで言いまして二十三億ドル、四〇・七%でございます。二番が化学製品で約八億ドル、一五%、鉄鋼品が約八億ドル、一四%、そんなような順番でございます。
  73. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、韓国側に対する日本の輸出品目というのは、主として大企業の生産する製品が大半でございますね。一方、韓国が輸入超過だと言いながら、日本に輸出してくる物は全部日本の中小企業を圧迫している。大企業には痛くもかゆくもない。こういう図式がそこで出てくるんです、いまの形の中でですね。  そうすると、大臣、留守の間の話なんですが、中小企業では繊維、これは京都で私は実際に聞いてきた話なんです、予算の公聴会で。非常に圧迫しているということが具体的な数字で出てきております。中小企業庁の方から説明がありました。一方、日本が韓国に輸出する品目は、いま局長の御答弁のように主として大企業の製品です。  この図式を考えると、日本の韓国に対する現在の経済援助問題というのを韓国側から見れば、日本の大企業のためにわれわれのところは非常に為替バランスが崩れている。大企業の物を買わなきゃならない。実際に買わなきゃならない。軍事産業その他にもたくさん出さなきゃならぬ。そういう点で機器類を日本から、武器は輸入しなくても向こうでいろいろそういう形の中に使えるようなものもどんどん出ていっている。そういう図式で日本に経済援助を申し込んできているから、非常に高姿勢だと。  言うならば、現在日本と韓国の間で行われている経済援助というふうなものは、詰めていけば日本の大企業に還流してくる金を貸してくれと、こういうことになると思うんですが、いかがですか。
  74. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 動態的に見た場合に、この中で見ておりますと、生産財が非常に多いわけでございます。したがって、韓国経済全体の動きから見て、韓国経済の高度化を図るというような観点から大企業か中小企業か、そういう見方も、ある観点からはあり得ると思いますけれども、純粋に経済的に考えますと、生産性の高い品物をつくるための基本的な設備や何かを輸入しておる。そして韓国の経済を高度化を図ろうとしておる。現に造船などはヨーロッパが脅威を感ずるようなところまで来ておるわけでございますし、鉄鋼製品につきましても、日本からは約八億ドル輸入しておりますが、同時に日本に四億ドルぐらい八一年の数字で出ております。  そういうふうに、ある時点を切って考えますと御指摘のような見方もあるかもしれませんが、流れとして見ますと、幹国経済の高度化というような関係で、この日韓の貿易構造というのが変わっているんではないか、だんだんと変わっていくんじゃないかと、そんなふうに思います。あるいは繊維の問題は比較優位の問題で、日本の賃金が高くなれば韓国の繊維が入ってくる、そういうような歴史的な要素も非常にあるんではないかと思います。
  75. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) これは韓国に限らず、日本が資源のない、しかも自由主義貿易体制の国家として、将来日本国民が繁栄をしていくためにはいかにあるべきか。まして発展途上国と日本との関係というものを考えますというと、同じようなことはどこの国でも実は言える問題でございます。日本の高度の技術を移転しようとしても受け入れ体制がない。したがって、やはりその国の国民が日本の技術を学べる程度のものということになると、最高技術水準はむずかしい。それよりも下のものを教えていく、それ以外にはないわけですね。そうなりますと、そこでこしらえたものはどこへ売るんだという話にひとつなっております。日本で教えてやって日本には入れさせないよというのでは、技術を教えてけんかのもとになるわけです。  そういうむずかしい問題が一つあって、将来は日本がそれらの国と仲よくしていくためにはさらにどんどん頭脳集約の産業に日本自体を転換さしていって、そしてもう日本の旧式なもの、旧式なものと言っちゃ仕方ありませんが、どんどんそれらの発展途上国に与えて、それらの国が生きられるようにして共存共栄を図っていくという大きな図式は、中長期的に見れば変えることはできないんじゃないか、そういう気がいたします。したがって、一時点をとって、断面だけをとって言えばいまのような批評も出てきますけれども、大きく見れば日本全体の産業構造の変革であるし、構造改革というものは国内で進めていくと、このことが日本が将来にわたって繁栄する大きな基本的な物の考え方ではないだろうかと考えております。
  76. 丸谷金保

    丸谷金保君 大臣のその考え方に異論を差し挟むものではないんです。私がいま御質問申し上げておるのは、それは韓国に限らずASEANだろうが、いろいろ日本がそういう点でやっておりますわね。しかし、特にいま問題になっている対韓経済援助、どこの国にもやっているのから見ると非常に多額な金額です。平均的な意味で開発途上国に対する経済援助ということからは飛び離れた、特に韓国にだけなぜこれだけやらなければならないのかという疑念になると、いまのその経済のサイクルの問題だけでは理解ができないわけですよ。何が一体あるんですか。こういうことなんです。
  77. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 実は、額的に言えば、それはたとえば円借款でも韓国はだんだん小さくして二百億円ぐらいにしているわけです。一方、インドネシアには七百億か、インドとかエジプトあたりは三百億とか何百億とかやっているわけでして、円借款を韓国によけいやっているというが、いままではだんだん少なくしてきておるのも事実でございます。しかし、日本と韓国との特殊な状況というものを考えれば、私は韓国に対していままで行ってきた経済援助というものは、そう極端に多いものであるというようには考えておりません。  何でここで騒ぎになったかというと、一つは政権が革命によってかわったわけですよ、あれは。それはもうピストルでなった政権ですから、民主的投票でできたとは私思っておりません、最初は革命によってできた政権であると。そういうようなことの中で国民の意識がかなり違う。そこで、大きな要求をしたということが報じられておりますが、これはやっぱり日本の実情というものを軍人さん方よく知らないということが一つあろうかと私は思います。  そして、若い世代に交代になった。日本語のできる人がともかく外野席に行って、日本語のできない人が中心部に非常に多く座ってきたということは、いままで日本人との関係が非常にいろいろお互いに理解し合ったものが、そこで断層ができたということも私は言えるんじゃないか、そういう気もしておるわけであります。ところが逆に言うと、われわれが韓国に対して非常に理解を示しておるが、日本の若い世代ということになれば、必ずしもわれわれと同じぐらいの韓国に対する親密さというものを持っているかどうか疑問なところが実はないわけでもありません。  しかし、そういうことは将来の日韓両国のために非常に困る。向こうでも日本の重要性というものも若い人に教えてもらわなきゃならぬし、われわれとしても、日韓両国の繁栄というものは日本民族のために将来必要なんだということを若い世代に教える必要がある、私は少なくともそう思っておるわけであります。したがって、ここでやはりそういう世代間のギャップというものから突然日韓両国の関係が悪くなることは、決して両民族にとっていいことではないから、何とか話し合いを円満に進めて、私は両国民の将来のためにもいい日韓関係をつくりたいという、そういう基本方針を持っておるわけでございます。
  78. 丸谷金保

    丸谷金保君 日本がすべての国々とできるだけ友好関係を保ちたいという、そういう全方位外交、このことについて異議を差し挟む者ではないんです。ただ、韓国の場合、たとえば現に竹島のような問題があります。これは大臣御存じだと思いますけれども、明らかに日本の固有の領土に韓国が不法に侵入して占領し、すでに先日も外務大臣から御答弁いただきましたけれども、コンクリートの建物を建てて日本の船が近づくと威嚇射撃される。そして何十回となく外務省はその問題について韓国に抗議している、こういうことなんです。しかし一向にらちが明かない。一方ではそういう問題があるわけなんです。なのに、なぜ借款の問題で韓国があれだけ高姿勢な交渉の態度で臨むのに、日本が低姿勢の態度でそこまでしなけりゃならないのか。一方で不法侵入されているんですよ。こういう問題について外務省は一方で抗議しているんです。  どうも私は、そこら辺で、大臣言われるように韓国に対する理解をしなきゃならぬと、しかし向こうは全く一方的に無理解で、むちゃなことやりながらさあ金貸せと、ちょっと世間の常識では通らない話をなぜ日本の政府は対応をしなきゃならぬのか。何としても納得できないんですが、どうなんですか。
  79. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 借りる方がえばっておって貸す方が低姿勢だということはどうも納得いかぬと、このことはタクシーに乗ったらタクシーの運転手が言ったというんですよ、ある人に。しかし、これは素朴な国民感情として新聞を見ている限りみんなそう思うんじゃないですか。それはまことに遺憾なことだと私は思います、そういう印象を与えることは。対等でなければもちろんならないわけでございます。お金を援助する方だけえばる必要はもちろんありませんが、やはり対等な交渉であるような印象がなければ、にじみ出なければ国民が満足しない、当然だと私は思っております。  竹島の問題は、これはいろんないきさつのある問題で、私は理屈から言っても日本領土だから返せ、あなた方やっているのは不法じゃないかということも、これも私はわかります。そうしなければならぬと思いますが、しかしだからといって、竹島だけの問題で、実益という問題を考えれば、日韓両国が領土解決がしない間は国交断絶、あるいはともかくうんと仲が悪くてもいいという話ではないのであって、それはそれといたしまして、日韓の両国というものはもっと親善なる方途も考えていくことの方がよりベターである。今度は比較の問題ですから、竹島の問題だけで日韓両国決まるわけでもございませんので、やはりいろんな全体の問題として日韓関係というものは親善が増進をされ、両国が栄える方策というものを考えていくのがよいというような基本的な考え方を持って進めておるわけであります。  したがって、交渉の過程等においては、いかにも日本が低姿勢で向こうが高姿勢というような印象はなるべくつくってもらいたくないし、しかし日本がえばり過ぎるということよりも、まあまあいいんじゃないですか、大人の方が。やっぱり日本は大人でございますから、むしろ日本がえばっているという印象よりも、日本の方がおとなしいという印象の方がどちらかと言ったらいいのかもしれません。  しかし、物は程度問題というものもありますので、先生の御意見は十分に留意して今後いきたいと思っております。
  80. 丸谷金保

    丸谷金保君 私は別に貸す方がいばらなきゃならぬということを申し上げているのではなくて、一方で外務省は竹島の問題何回も抗議をしている。にもかかわらず低姿勢になるのは何かがあるからでないかということを言っているんであって、この何かはなかなか短い時間で出てきそうもありませんし、もう時間が参りましたので、実はきょうはこのほかに農林水産省や林野庁、先ほど大臣が言われました海外協力事業団、これと世銀との関連というふうな問題等も聞きたかったんですが、けさの新聞グリーンカードの問題が余りにも大きく出てきたのでそちらの方に時間をとって、そうした問題、せっかく出席していただいて、質問する時間がなくなってしまいました。  しかし、ただ、世銀としても韓国に相当な融資をしておる、そういう国際的な状況の中でおつき合いをしていくのはわかるんですが、竹島問題というふうなことが一方でありながら、それはそれということにもならないんでないかということを御指摘申し上げて、きょうの質問を終わらせていただきます。
  81. 塩出啓典

    塩出啓典君 今回、世銀の一般増資が実施されることになったわけでありますが、世界銀行は一九四五年十二月、戦後の復興及び開発援助を目的として設立をされ、その後世銀を補完する機関として国際開発協会、いわゆる第二世銀及び国際金融公社が設立をされておるわけであります。  まず最初に、世銀が設立以来、今日までの実績の評価を政府としてはどう考えているか、特に当初はわが国も世銀等の融資をかなり受けたように言われておるわけでありますが、そういう状況についてお尋ねしたいと思います。
  82. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 世銀の評価の問題でございますが、ただいまお話がございましたように、戦後の復興というようなことで世銀ができ、IDAができ、国際金融公社、この世銀グループができたわけでございます。  いままでの貸付総額は、相当いずれの機関も大規模になっておりまして、たとえば世銀の貸付承諾額は全部で約二千件、金額で六百八十一億ドル。IDAの場合には約千件、二百四十億ドル、金融公社の場合には実行額で約二十六億ドルというような規模になっておりまして、世界経済復興、続いて開発途上国の経済開発あるいは民生安定に大きく貢献していると評価しております。
  83. 塩出啓典

    塩出啓典君 増資前の世銀の授権資本は約三百三十四億七千万協定ドルでしたが、今回行われるいわゆる一般増資によって授権資本総額は約二倍の六百七十六億三千九百万協定ドルになる予定でありますが、今回授権資本を増資する理由はどういう辺にあるのか、お尋ねをいたします。
  84. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 八〇年代の開発途上国の開発資金需要というような観点から昭和五十五年に加盟各国の間で議論がなされまして、倍額増資というようなことになったわけでございます。
  85. 塩出啓典

    塩出啓典君 だから、なぜ倍額増資になったのかというそのいきさつです。
  86. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) ただいま申しましたように、八〇年代の開発途上国の開発資金需要というようなものを計算したわけでございますが、たとえば将来の貸付額の実質伸び率とか、インフレ率だとか、それから個々の貸付事業の完成年数とか、そういうようなものがいろいろ加盟理事間で議論がなされまして、そういうような観点でコンセンサスとして倍額増資というようなことが決まったわけでございます。
  87. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、わが国の世銀における投票数のシェアでございますが、今回の一般増資決議に伴い、わが国は増資前の出資シェアに比例して割り当てられているので、わが国の増資後の投票数のシェアは四・七五%となり、中国が加盟する以前のシェアであった五・〇四%を大幅に下回ることになっております。  今日のわが国は、自由世界第二位の経済大国としての国際的な地位にふさわしいようにもっと国際機関等において積極的に活動すべきでありますが、そういう点から見て、やや世銀におけるシェアにおいてもわが国のウエートは相対的には非常に軽いような気がするわけですが、その点は大蔵省としてはどう理解しておりますか。
  88. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 五十三年の五月三十日に当委員会におきまして、やはり世銀の増資法案につきまして附帯決議をちょうだいいたしております。その中に、いま塩出委員が御指摘のような、増資に当たっては加盟国の経済の現状を十分反映したものとなるよう努めなさいという附帯決議をちょうだいいたしております。  それで、今回の増資後、御指摘のような数字でございますが、これは一つ理由がございましてそうなったわけでございます。これは開発途上国の投票権シェアの低下を避けるという見地から、基礎票と言いまして、各国に二百五十票を割り当てたわけでございます。その結果、御指摘のように、増資前には投票権シェアが五・一六であったわけでございますが、出資シェアでは四・七六でございますが、それが増資後若干下がったというような結果になっております。  ただ、日本だけではなくて、たとえばアメリカの場合も若干下がっておりますし、イギリス、西独、フランス、いずれも日本と同様に低下しております。これはただいま御説明いたしましたように、開発途上国に対する基礎票を付与したということで、計算上こういうふうになったわけでございます。
  89. 塩出啓典

    塩出啓典君 それから、世銀への現金払い込みはわが国への出資割り当て額の〇・七五%に当たる千四百八十五万現行ドルとなっております。今年度の予算には、五十七年一月一日における基準外国為替相場一ドル二百二十九円で邦貨換算をした三十四億二百万円を五十七年度一般会計予算に計上しておるわけでありますが、この二百二十九円の換算レートは、現在の円相場の実勢から見るとやや高い評価でありますが、したがってわが国が実際に払う額はもっと多くなるはずであります。  また、国債払い込み分についてはどのような会計上の操作を行うのか御説明願いたい。
  90. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 前段の支出官レートの問題でございますが、六月までに支払うことになりますれば、予算上はこのままでまいりまして、一般会計の歳出科目の中に貨幣交換差減補てん金というのがございます。五十七年度予算で申しますと九十二億八千万円計上されておりますが、この世銀の出資金のみならず支出官レート、予算計上のレートと実際に支出する場合の差が足りない場合には、この補てん金の中から出る仕組みになっておりますので、そういう措置がとられることになります。ただ、いつ支払うかということで、そのときのレートで、いまの段階では御指摘のような問題がございますが、支払うときにはまたどういうことになるのか。ただ、足りない場合にはそういう制度がございます。  それから、第二点の国債部分でございますが、これは御指摘のような金額になっておりまして、国債整理基金の方に国債で先方に渡しまして、実際にディスバースになりますとキャッシュを取りに参るわけでございます。そうしますと、国債整理基金の方からキャッシュを払うと、そういう仕組みになっておりまして、国債整理基金の中の積算といたしまして、この金額の約四〇%ぐらいのものが積算で入っておりますが、実際にキャッシュを取りに来るかどうかというような問題がございまして、これは経験値でそんなような積算として計上がなされております。
  91. 塩出啓典

    塩出啓典君 先般大蔵大臣はアジア開銀の総会にも出席をされたわけでありますが、五十三年にアジア開銀に設立されたアジア開発基金は、発展途上国向けの無利子融資の財源ですが、五十八年から六十一年までの財源補充額三十二億ドルは予定どおり達成される見込みであるのかどうか、これをお伺いします。
  92. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 過日のマニラにおきます十五回の総会におきまして、三十二億ドルがまとまりました。で、端数は若干出っ張るかと思いますが、おおむね実質ベースで前期の融資額を確保するという見地から、名目額で三十二億ドルが確保されたわけでございます。
  93. 塩出啓典

    塩出啓典君 新聞の報道では、アメリカが割り当てられた拠出額を下回る金額を提出したために、不足分を日本とそしてアメリカを除く先進国が折半で肩がわりするとの合意があり、これが総会で決定されたわけでありますが、最近は、この場合のみならず、アメリカの経済協力に対する姿勢が非常に消極的になってきておる。そしてアメリカが消極的になった分を日本等に肩がわりをさせようというような、こういう動きがあるように思うわけでありますが、こういうアメリカの姿勢について、どういうわけでだんだんこうなってきているのか、どのような認識をされているのか。
  94. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 最初に、アジ銀の開発基金で具体的に申してみますと、先般のファンドの方でございますが、アメリカのシェアが二〇・七%ということで、四億四千五百万ドルということであったわけでございます。それで、今度の場合総額を三十二億ドルにしたいというようなことは、これはコンセンサスであったわけです。  そこで、アメリカが仮に前回並みの二〇%を出すとすればどうなったかという問題があるわけでございますが、大体公平分担というような感じで、各国が一応大体特段の理由がない限り、GNPとかいろいろな計算をやりまして、公平分担の率がおのずからあるわけでございますが、その額を下回ることをアメリカが主張したのは事実でございます。で、その結果差額が、足らず前が出てくるわけでございますが、それに対してどうするかと。で、日本がこれを、率直に申して、総裁も日本から出ているというようなことで、よけい金を出すというような問題があり得るわけでございますけれども、これは決してそういうわけにいかないので、加盟国が全部集まりまして、金を出せば喜ばれるかというと、必ずしもそうでないわけでございます。公平分担ということでいろいろな議論をやりまして、先ほど申し上げたような結果になったわけでございます。  それで二番目に、アメリカのこういう国際金融機関に対する政策変更という問題でございますが、二月末に財務省が中心になりましてリポートが公開されております。その基本的な理念というのは、強いアメリカと小さな政府ということで、できるだけ民間ベースでいろいろなことを考えていこうではないかという考え方が一つ根底にございます。そこで、ある程度経済がテークオフしたような国については、IDAよりも世銀、世銀よりも金融公社、金融公社よりもコ・ファイナンシングと言いますが、こういう国際金融機関と民間の銀行との協調融資、さらに高度の国は民間ベースでやんなさいというような考え方があるわけでございます。  これは戦後アメリカがいろいろな経済援助をやってきたわけでございますが、アメリカの立場から見て、同時に援助のあり方ということから考えて、そういう自助努力といいますか、あるいは市場経済というような要素をもう少し入れた方が、全般の経済協力あるいは援助関係が効率的になるではないかという考え方から出たわけでございます。ただ、現に約束したものについては必ずこれは、支払いが延びることはあるにしても、全額約束どおりにやるということがそのリポートに書いてございます。いろんな国際金融機関に対する考え方がございますけれども、アメリカの立場からそういう考え方が出てきたわけでございますが、その中には、当然納得できる部分もあります。それから同時に、問題である部分もございます。  私どもとしては、公平分担というような議論と、それから国際協調というような観点、両面を踏まえながら日本は日本なりの方向でいくと。先ほど申しましたように、一口に肩がわりというようなことが言われますけれども、決してそういうことは日本がやろうとしてもできないわけで、みんなが集まりまして議論をいたすわけでございまして、やはり公平分担と国際協調というふうな観点の決着が図られていくというふうに見ております。
  95. 塩出啓典

    塩出啓典君 大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、このような最近のアメリカの姿勢について大蔵大臣としてはどう考えるのか、それが一点。  それともう一点は、先般のアジア開銀の総会で渡辺大蔵大臣の演説が、私新聞で見たわけですが、ざるで水をすくうような総枠援助方式はとりません、一つ一つのプロジェクトを徹底的に吟味しますと。恐らく選別融資というか、もっと効果的な援助ということを考えての御発言ではないかと思うんですが、その発言の真意はどこにあるのか、特にいままでの援助のあり方についてどういう点を反省された上での御発言であるのか、これをお伺いしたいと思います。
  96. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は、まず知ってもらいたいと思うことは、別に韓国向けに言ったわけじゃないんですよ。三十一カ国集まっておりますから、それらの人たちみんなに私は申し上げておきたいという考えが一つあるんです。その考え方は、われわれは日本という国は世界の国と仲良くしなきゃならないし、経済大国でもありますから世界にできるだけの御協力をしなきゃならぬと。しかしながら、日本政府は金の卵を産む鶏でもございませんし、打ち出の小づちを持っているわけでもないと。私の言わんとするところですよ。そこまで言っておりませんけれどもね、具体的には。  日本のいまの経済の繁栄というものは、確かに世界の羨望の的であって、そこから貿易摩擦も起きている、いろいろと非難も出ている。しかし、何といっても世界随一であることは間違いないんですから、これは。世界じゅうがそう言っているんだから。そのために日本の国内の財政赤字という点はさっぱり知られてないわけです、かなり言っているんだけれども。幾らでも日本はお金があるんじゃないかというぐらいに思い込まれている節がなきにしもあらずなので、私としては、まず日本の財政事情というものを御紹介を実は申し上げたんです。  しかし、そういう苦しい、国民に増税をお願いし、歳出カットでつらい思いをさせ、にもかかわらず国際責任の分担は日本はいたしますと。いたします以上は、その日本の国民の納税によって賄われたお金がむだに使われたんでは、あるいは反日運動のような結果になったのではこれは困るわけでございまして、私としてはそれは国民に申しわけないから、有効に使っていただいて、そして本当に日本にも、感謝はしてくれなくてもいいけれども、少なくとも日本との友好増進になり、そうしてその国の本当に国民の繁栄のために使われるということが必要だと。  私は、いままでたくさんの経済援助を見ておるが、中には——中にはですよ、必ずしも有効でなかった例を私は知っているんです。したがって、そういうことがあんまり軽はずみにデモンストレーションや、あるいはその場だけの一時的な何か利害みたいな話からプロジェクトの選定をされますと成功しない。したがって、冷静に大所高所から公平に、科学的基礎の上に立ってプロジェクトは選定をされる必要があると。したがって、いままでのように枠であなたは幾らよ、あなたは幾らよ、自由にお使いよというようなことは、ややもするといま言ったような問題を起こすことが多いので、そういうことについては困りますと。  だから、プロジェクトごとに、果たしてそれだけのものがその時世に合っているかどうなのか、余り早まり過ぎて、発電所をつくったはいいが、電気を使う人がないとか、そういう例があるわけですから、ダムをつくったけれども水の使い場所がないとか、こういうのは困るわけであって、やはりその時代に応じて、そして、でっかいことがいいことだというだけじゃなくて、その地域に消化能力があるのかどうなのか、そういう問題や、大きさ、タイミング、そういうもの全部調べた上でプロジェクトごとに決めさしていただきたい、こういうことを言わんとしたわけであります。  もっとお上品な言葉で言ったからわかりづらい点もあったかと思いますが、解説するとそういう意味のことを実は申し上げようと思って演説をしたということであります。
  97. 塩出啓典

    塩出啓典君 私もそういう大蔵大臣の言われることには反対じゃないんですが、ただ、わが国の経済援助のあり方がいろいろ問題にされてきているのは、何も最近のことじゃなしに前々から言われてきておるわけですが、それがなかなか現実には改まっていない。  まあ日本の学者等が東南アジアの国々に行って帰ってきてから、日本の経済協力というものが必ずしも成果を上げていない、こういう話を最近でもよく聞くわけなんですが、そういう意味で今後の融資、経済援助というものについて、その選定のルールとかそういうものを、こういうようにやってより効果的な経済援助を推進していくんだという、こういう何か具体的な案でも考えているのかどうか。あるいはこれからそういうものを考える考えはあるのかどうか、その点はどうなんですか。
  98. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 具体的にどうということは考えておりませんが、たとえば、ばかでかいものを考えちゃって、後になって途中で、こんなでかくて持ち切れないからやめようとか、そういうのがありますよ、現実につい最近でも。恐らく、あれは元へ戻るということはもうないんじゃないですかね。  そうすると、これだけでかいもののためにつくった製鉄所というものについては、いろいろ部分的には今度はむだが多いとかコストが高くつくとかあるわけですから、それはやっぱり基礎調査とか何かが足らない。それでも日本へ来ると、もっともっと世界最高の水準のやつをやってくれと言ったそうだ。そんなものつくっておいたらますます人を使わないし、それだけの金をかけて人を使わないものをつくられても困るとか言ってね……。それは人をいっぱい使うなら最新鋭のものは要らぬわけだから、みんなトロッコを押して、ともかく自動化なんか余りしない方がいいんで、旧式の方がむしろ役立つわけですから、人をいっぱい使うんなら。だけれども、そういうところがその地域社会と首脳部というものとの一体性に欠けていることが往々にしてあるんですよ。  ですから、そういうようなことのないように、売ればいいという話でもないし、結局国民の税金に結びつく話なんだから。だから、そういうことをもっと公正に冷静に、客観的に科学的に決めていく必要がある。少しおせっかいかもしらぬけれども、その方が長い目で見ると援助に役立つと思ったから申し上げたのであって、他に他意はございません。ただ警鐘を一つ鳴らしたということであります。
  99. 塩出啓典

    塩出啓典君 警鐘も鳴らさぬよりはいいわけですが、やはり警鐘だけじゃなしに、さらに具体的な実行を、今後改まっていくような手を私は打っていかなければならないんじゃないかと思います。  この間新聞で書いておったんですけれども、アフリカから日本へ来ているある青年が、日本の人は非常にみんなぜいたくをする、ごみ箱に捨てた中にも幾らでも使えるやつもあるし、そういうものを本人が朝早く単車であちこちかき集めて、そうしてそれをまとめて自分の本国へ送り返した。そうすると非常に喜ばれて、そういうものをいまもやっておるという記事を私は新聞で見たわけです。また先般も、ある大学で非常に古い使えなくなった機械があると、ところが、東南アジアの留学生たちは、これはもうぜひ日本からもらいたい、けれどもなかなか勝手に使えないものでもやっぱり大学のものですからやれないとか、いろいろ経済援助というものはそういうように金をかけないでもっと効果的にやる方法も私はあるんじゃないかと思うんですがね。  そういう点も含めて、大蔵省としても、経済援助のあり方、より少ない予算でより効果を上げる方法を常にやっぱり努力していかなければいけないんじゃないか、こういう意見を申したいと思います。  それから次に、アメリカが非常な高金利でございまして、そのために世界的な高金利であるために、これが開発速上国の債務利子負担を非常に過重にしておるわけであります。発展途上国の先進国向けの輸出も非常に低迷をして、その結果、特に非産油途上国等の対外債務に係る利払い負担が大幅に増加をしておるわけであります。OECDの見通しによりますと、一九八一年における途上国の対外債務に係る返済総額は千百十七億ドルで、そのうち利子部分が四百六十五億ドルと、四一・六%という大きなシェアを占めておるわけであります。  去る十月二十三日の南北サミット議長報告にも見られるように、発展途上国の直面している国際収支赤字、債務累積の深刻さについて共通の認識を持っており、IMFの融資制度の拡充あるいは世銀の融資条件等について再検討する余地があるのではないか。現在、世銀の融資条件は一一・六%とのことでありますが、一一・六%、なぜこういう状況になるのか、日本の金融市場からでも調達すればもっとはるかに安い金利もできるんじゃないかと思うんですが、こういう点についてわが国としてはどのように考えておるのかお伺いしたいと思います。
  100. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) ただいま御指摘の八一年の債務累積五千二百四十億ドル、元金利子が千百十七億ドルという数字がございます。ただ、この内訳を見ますと、一番うんと借りている国十カ国が約半分になるわけでございます。それからさらに、一番大きな順で三カ国で三〇%ぐらい占めております。本当に困った国というのが約三十一カ国ぐらいございますが、この債務残高というのは百八十億ドルぐらいでございます。  それで、一口に非産油発展途上国の債務負担問題と申しましても、たとえばブラジルとかメキシコのように、非常に積極的な経済政策をやっておる、あるいは農業が不作であった、それから石油価格のインパクトを受けたというような個々のいろんな理由がございますけれども、どちらかといいますと、債務残高のでかい国はこういう非常な積極的な経済政策をやっている国が多いわけでございます。だから大丈夫だという意味ではございませんけれども、その辺をどう考えるかという問題になるわけでございます。  七〇年代IMFが中心になりまして債権国会議をやった国が十二カ国ございますが、これをIMFが分析してみますと、やはり経済政策にいろいろ問題があるという指摘がございます。しかしながら、農業の不作なりあるいは石油価格の高騰なり御指摘の高金利というようなことで、こういう国々が非常な困難に逢着していることは事実でございまして、世界全体の経済がその結果いろいろな影響を受けかねないという状況にあることは否定できません。  それで、世銀の金利が現在一一・六%であるということでございますが、これは日本から見た場合に非常に高く見えるわけでございまして、大体世銀は先ほどの御質問にもあったわけでございますが、払い込み資本と授権資本との差額を資本市場で調達しておるわけでございます。そこで一定のルールを設けまして計算方式があるわけでございますが、各国が出資拠出した金とマーケットで調達した金、これらを総合しまして過去六カ月の平均金利と将来の六カ月の借り入れコストを平均しまして、それに〇・五というような手数料を乗っけた数字が毎六カ月ごと発表になるわけでございますが、現在適用されているのが一一・六%である。これをユーロ市場で借りたとすればやはり一五、六%取られるわけでございます。日本の金利が非常に特異な現象で低いというようなことでそういう問題もあるわけでございますが、同時に一一・六%という絶対水準は決して低くないという点はございます。  それで、いろんな問題ございますが、ある銀行の計算によりますと、金利が一%上昇しますと大体十二カ国ぐらいの計算で十三億ドルぐらい利子負担がふえるというような計算もございます。OECDの見通しによりますと、八二年度は非産油開発途上国の経常収支の赤字が七百四十というようなことでさらに昨年より悪化するわけでございますが、そういう意味で御指摘のような非産油開発途上国の債務累積問題というのはかなり大きな問題でございますけれども、同時に、それぞれの国の経済政策をしっかりしなきゃならないというようなことで、若干最近国際的にも考え方が変わってきておりまして、IMFから金を借りた場合にコンディショナリティーといいまして経済政策に注文がつくわけでございますが、世銀についてもそういう考え方が要るんではないかというような考え方が出てきております。で、むしろ困っているからじゃんじゃん安い金利で貸した方がいいという考え方よりも、やはり経済政策をしっかりやると、そうした上で助けるというような考え方の方がだんだん力が、数がふえてきているように思います。  ただ、開発途上国の方は、さはさりながら高金利でわれわれは非常な大きな影響を受けているという要請は強く出ております。その辺今回の暫定委員会の機会に、世銀・IMFの合同開発委員会というのがございます。これは開発途上国と先進国との合同の会議でございますが、その場におきましても開発途上国からは御指摘のような要請が出、先進国の方からは私が申し上げたような議論が出、それぞれ毎回議論をしておるわけでございますけれども、いま申しましたように、後進国の方はみずからそういう経済政策のあり方を反省すべきであるし、先進国の方はできるだけの援助はしなければならないというようなことで、コンセンサスが大体まとまってまいったわけでございます。
  101. 塩出啓典

    塩出啓典君 経済企画庁にお尋ねをしますが、いままで、今年度の後半は米国の経済は回復をすると、それがわが国の経済にも非常に景気回復に役立つんではないか、このように楽観的に言われておったわけでありますが、世界的な不況が予想以上に深刻であり、アメリカ経済の不況脱出が非常に遠のいているように思うわけであります。  経企庁が四月十三日に発表いたしました海外経済報告等を見ましても、アメリカ、西ドイツでは失業率が上昇している、あるいは英国、イタリアでは鉱工業生産が減少する、このように言われておるわけでありますが、そういう点が結果的には発展途上国の景気低迷、国際収支の赤字拡大にも影響を及ぼしておるわけであります。こういう世界経済の見通し、あるいはアメリカ経済の今後の見通しについてはどのような感じを持っておるのか、これをお伺いします。
  102. 宮本邦男

    説明員宮本邦男君) 世界経済の現状につきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、アメリカを見ますと、GNPが二期連続でマイナスになりましたし、それから失業は四月で九・四%ということで、これも戦後最高ということで、依然景気後退が続いているということだろうと思います。それから、西ヨーロッパにつきましても、去年の半ばぐらいにおおむね景気は底入れしたと見られますけれども、その後も内需の基調が総じて弱い、雇用も引き続き悪化しているということで、景気は底離れをできないでいるわけでございます。  こうした中で、今後の見通しでございますけれども、アメリカにつきましては、ことしの後半から緩やかながらも回復に入ると見られております。いろんな理由が挙げられるかと思いますが、たとえば消費とか、住宅とか、個人部門の最終需要が下げどまってきたとか、それから在庫の削減幅が縮小していくだろうとか、加えまして、この七月にレーガン政権の個人減税の第二弾がございます。そういったことで、金利の見通し等によりますけれども、緩やかながら回復に向かうんではないかと見られております。  一方、ヨーロッパ側につきましても、在庫調整の進展等から、緩やかながらもことしの後半から回復に向かうと見られているのが一般的だと思います。もっとも、回復が緩やかであるということで、雇用情勢はなお悪化を続けると考えられます。  以上でございます。
  103. 塩出啓典

    塩出啓典君 経企庁に続いてお尋ねいたしますが、今年は五・二%の実質成長の見通しでスタートしておるわけでありますが、さらには公共事業の前倒し等も決定をしたわけですが、最近の景気動向、輸出あるいは個人消費、鉱工業生産指数、そういうものがいまどういう状況であるのか、これは一般的なあれでいいと思います。  それから次に、経企庁長官は五月の十日、十一日のOECDの閣僚理事会に出席をされたわけでありますが、きのうの新聞でしたか、閣僚理事会の最終のステートメントが載っておりましたが、特に各国がわが国に対しても景気対策を配慮した柔軟な政策をとれと、こういうように要求があり、河本長官も非常に威勢のいい発言をされておるようでありますが、そういう内需拡大策をOECDの閣僚理事会で発言をしておるわけですけれども、それはどういう内容であるのか、どういう内容を日本でやろうとしているのか。  それから、米国の金利については下げろと、こういう要求もされて、いろいろ米国の財務長官ともお話をされたようでありますが、米国金利の動向についてはどういうような見通しを持っているのか、これをお伺いします。
  104. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) お答えを申し上げます。  まず、最近の経済動向、特に経済見通しで五・二%という実質成長率を掲げておる関連でどうかという御趣旨の御質問でございますが、まず五十六年度の経済状況を見ますと、実績見込みが四・一%というように、経済見通しをつくった段階、昨年の十二月末で見ておったわけでございますが、十−十二月の実質成長率が前期比マイナス〇・九%という七年ぶりのマイナス成長ということになりまして、最終的な数字は出ておりませんけれども、恐らく実質三%を割る状況になっているということでございます。しかし、このマイナスになった大きな要因というのは、輸出の伸びが落ち、そして輸入がふえたということで、外需のマイナスが非常に大きかったということでございまして、内需につきましては上向きの数字になっておりますので、これが一−三月期、あるいは五十七年度に入ってから引き続くものと期待をしております。  ただ、五・二%の数字につきましては、これはほっておいて達成できるかどうかということにつきましては、河本大臣国会等の場において、相当努力しなければならない数字であるというように言われておりますので、今後ともそういった努力が必要なものだというように考えております。  第二点の、OECD閣僚理事会において、わが国の政策運営について積極的な政策運営をやるべきであるというような指摘があったのではないかという点でございますが、確かに会議の場におきましては、わが国の円相場あるいは経済政策につきまして幾つかの国から発言があったというように聞いておりますが、その討議を踏まえまして最終的に出てまいりました共同コミュニケを見ますと、わが国の政策運営そのものについて転換を求めるといった表現にはなっておりません。内容を見てみますと、第二次石油ショック以来とり続けてきた戦略というものを各国ともさらに進めるということが基本となっておりまして、その戦略を三つ掲げてございます。  第一が失業の削減のための努力を引き続きするということ、第二が持続的にインフレなき成長を達成するということ、第三が開放的貿易体制の維持というこの三点でございます。  で、わが国の今後の政策でございますが、まず物価につきましては、先生御案内のようにわが国はきわめていい状態になっておりますが、今後ともこの物価安定というのは経済運営の基本でございますので、物価の動きに十分注意しながら経済運営をやっていくというのは当然でございます。  第二の持続的インフレなき成長の達成という点でございますが、現在わが国は緩やかな回復基調にありますが、その回復の度合いというのはそれほど大幅なものではございませんので、先般先生御指摘にもありましたように、現在なし得る施策、すなわち予算が成立したところで公共事業等の前倒し七七・三%という大変な前倒しを決め、金融政策についても弾力的にやっていこうということで長期金利の引き下げ等も行われたわけでございますが、今後ともこうした機動的、弾力的な経済運営を図っていくということになっております。  第三の開放的貿易体制の維持でございますが、これにつきましても従来からガット等におきまして関税の引き下げ交渉において前向きに対応するとともに、今後とも長期的かつ大局的な見地から一層の市場開放に努め、近く第二弾の対外経済対策を決めるという方向で現在検討しているところでございます。
  105. 塩出啓典

    塩出啓典君 最近いろいろ貿易摩擦に関連して、諸外国から日本の市場の開放ということが言われておるわけでありますが、その中でいわゆるサービス部門あるいはまた金融市場、金融部門にもそういう話が及んでいるわけでありますが、まあ現在米国で相互主義法案というものが何種類も米国議会に出されているように聞いておるわけでありますが、この内容一つ一つわれわれはよく知らないわけでありますが、こういう相互主義法案がもし通った場合、日本の金融資本市場に影響を与えるような内容のものがあるのかどうか、その点はどうなんでしょうか。
  106. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 御指摘のように、いろんな法案が準備されあるいは提案されておりますが、その中で御指摘の金融、保険、証券等のサービス分野に関係しております法案といたしまして、ロス議員の提出法案でこれを例にいたしまして御説明をしてみたいと思います。  結局法案の中身は二つございまして、現在のアメリカの通商法の中にはサービス貿易に関する権限が連邦政府の大統領に与えられてないというようなことから、その権限を付与するというのが第一点でございます。それからもう一つは、外国からアメリカのサービス貿易に対して不当な扱いを受けた場合には対抗措置がとれるような条文を入れると、大体大ざっぱに申しましてこの二点でございます。幾つかの法案がございますけれども、サービス分野につきましては大体こんなような条文あるいは考え方が共通しておると思います。  で、二番目にこの取り扱いの問題でございますが、三月の二十四日の上院の財政委員会の貿易小委員会の公聴会におきまして、ブロック通商代表が二国間またはセクター別の相互主義には反対するというような証言をいたしております。そういうようなことで、目下のところこれからどうなるかはわかりませんけれども、大体そういうことではなくて、通商代表部が言っております、ガットの場でサービス貿易についてのルールづくりを議論しようではないかというような方向に向いているやに観測しております。
  107. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 答弁の補足があります。
  108. 宮島壯太

    説明員(宮島壯太君) 大変失礼をいたしました。米国金利の動向についての御質問に対する答弁が漏れておりましたので、ここで答弁させていただきます。  先生御指摘のとおり、五月の十日、河本大臣がOECD本部におきまして米国のリーガン財務長官と会談をいたしました。その際、河本大臣からアメリカの高金利について、最近のインフレ鈍化が非常な成功をおさめていることを評価するが、それにもかかわらず金利が下がらないのはなぜかと、また下がるとすればいつごろから下がるのか、こういう質問をいたしましたところ、リーガン長官は、これはむずかしい問題だけれども、インフレ政策の成功という点を考慮するといま下がってもおかしくないはずだと自分は思うと、一つの可能性として言えば、財政赤字のめどがつけば金利は急速に下がろうというような趣旨の発言があったというように私は聞いております。  新聞報道によりますと、そのほかの場においてリーガン財務長官は、数カ月先にはというようなことを発言されたという報道を私見ておるんですが、これは確認しておりませんが、いずれにしてもアメリカの高金利がやはり世界経済の再活性化にとってマイナスになっているということは各国とも指摘し、またOECDのコミュニケにおいてもはっきり書かれているわけでございますので、私どもとしてはアメリカの高金利ができるだけ早く引き下げられ、各国が経済運営をしやすい環境が一日も早くできるように期待しているところでございます。     —————————————
  109. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 委員異動について御報告いたします。  本日、栗林卓司君が委員辞任され、その補欠として三治重信君が選任されました。     —————————————
  110. 塩出啓典

    塩出啓典君 じゃ、わが国も一昨年に外国為替及び外国貿易管理法を改正をし、わが国経済の閉鎖性を指摘する諸外国の批判をかわすために措置がとられ、すでに一年を経過をしてきたわけでありますが、どうも大蔵省のお話を聞いておりますと、たとえば外国の銀行にしてもあるいは保険会社にしても何ら差別はしていないと、むしろ優遇しているところもあると。けれども、そういう実態がわからない連中がいろいろ言っているんだと、あるいはまた古いときの事情をもとにしてそういうことを言っておるんだという、こういうようなお話なんですけれども、確かにいろいろ説明を聞いてみると、余り差別はないようにも思うんです。  ただ、アメリカはどのように考えているのか。やっぱり制度の違い、たとえば損保の料率が日本の場合は全部もう一緒だ。あるいはたとえばインターバンク、銀行間の預金の金利もこれを自由化されていない。アメリカに比べてそういう日本の金融市場、資本市場の自由な競争というものがちょっと足りないというか、そういう点をアメリカはやはり言っておるんではないか。だから私たちは、やはり今後はそのように金利の自由化等の問題を含めてもっとできるだけ規制を廃止して、完全な競争になるようにしていかなければいけないんじゃないか、それが日本経済の効率化の面からも必要ではないかと、このように思うわけでありますが、その点についての政府の考えをお聞きします。
  111. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) いま御指摘になりましたように、誤解とか古い事実とかというような点に基づく批判が非常に多うございます。ただ、御指摘のように、どうもおかしいんじゃないのかという点、彼らがなかなか理解を示そうとしない点があることも事実でございます。  アメリカの場合、証券会社と銀行が別になっております。ところが、ヨーロッパの方はこれは一緒にできるわけでございます。こういうふうに、金融の問題というのは歴史的な背景がございまして、アメリカと日本はむしろどっちかというと似ている方でございますが、ヨーロッパと比べますとアメリカも違うところがあるわけです。  そこで、原理原則的には、よその国に行った場合に内国民待遇を与えると。要するに、アメリカの銀行が東京へ来ましたときには日本の銀行と同じ扱いを受ければいい、日本の銀行がニューヨークへ行ったときにはアメリカの銀行と同じ扱いを受けると。こういうような内国民待遇というような点、基本的な点についてはアメリカの方も合意をしておりまして、アメリカで受けているような扱いを東京で受けたいと、そういうところまではいっておりません。まず第一点がそういう内国民待遇ということでございます。  それから二番目には、自由化の問題でございますけれども、私どもは、原理原則的に、先ほどの改正外為法で自由になっておると考えております。ただ、その場合に、行政指導——行政指導はやっておりませんが、業界が自粛をしておるわけでございますけれども、そういうようなものについていろいろな議論がございます。で、この点は今回使節団を派遣いたしまして、国際金融局、銀行局、証券局と、それから民間の銀行、証券会社、さらに日銀も入ってもらいまして、アメリカ、ドイツ、ECというようなところに、改正外為法以降の日本の資本金融市場の状況ということを事実に基づいて説明すると。先方も、ぜひエキスパートのグループが来てくれて、自分たちのエキスパートとファクツについて、事実について意見交換をすることを希望するというような要請もございまして、そういうようなことを、十日に出かけたわけでございますが、そういうことをやっております。  それから第三点に、ただいまの個々の問題がございます。たとえば、生保の許可がなかなかおりないとか、あるいは損保について、先般決着いたしましたけれども、そういう個々の問題がございます。国際金融局の領域で言いますと、円転枠というのがございます。本店からドルを持ってまいりまして、東京の支店がそれを円に直して使う。その枠が銀行別にあるわけでございますが、そういうようなものが窮屈であると。そういうような個々の問題がございます。  個々の問題につきましては、それぞれのケース・バイ・ケースで処理をしておりますが、ただいま円転枠につきましては、今回約十億ドルぐらいの枠を外銀だけについて増額を図っております。実際的に申しまして、枠いっぱい使っていない銀行もかなりあるわけでございまして、銀行によっていろいろな問題がある。それから銀行局、証券局の方においても、個々の問題についてはケース・バイ・ケースで、いまの内国民待遇という原理原則の上に即して処理をしていく。  問題は、結局違いという点と差別という点でございますが、制度、歴史的背景で違いがある点は内国民待遇ということで余り議論にならない。差別をしているかどうかという点が問題であったわけですが、最近は違いについてもかなり議論が出てきております。  そこで、ただいま申し上げましたような改正外為法以降の一年間、約一年たったわけでございますが、日本の金融資本市場がいかに自由であるか。もちろんその中に、いま御指摘のインターバンクの金利の自由化というようなことが、日本の場合銀行間の金利の自由化というのが行われておりませんけれども、これは日本の銀行にも行われてないわけで、外国の銀行にも行われない。まあそういうような問題もありますけれども、全般的に申して、個々の問題、それから全体のマーケットの問題、私どもは原則的に自由になっておる、そういうふうに考えて、できるだけ事実に即して先方の認識を深めてもらうようなことをやっております。  同時に、問題が指摘された場合、われわれの方に直すべき点がある場合には積極的に直す。それで究極的に、御指摘のような金融の自由化というようなものを進めていった方が国益にも即すんではないかというような基本的態度で対処しております。
  112. 立木洋

    立木洋君 先ほど、局長の御答弁の中に、同僚委員の述べられたように、IBRDが発足して三十六年、IFCやIDAが発足してそれぞれ二十数年たっわけですね。この間の世銀グループの活動についてどういうふうに評価されるかという質問があったのに対して、まあ開発、民生の安定等々で積極的な役割りがあったというふうな趣旨のことを述べられたわけですが、私はそうではないんではないかという認識を持っているわけですね。これは、もちろん世銀グループが発足してそれぞれの時期でとっておる政策というのは変わってきておりますね。もちろん当初は戦争からの復興、開発等々の問題が問題にされ、さらにその後貧困問題だとか農業開発だとか、さらにまたマクナマラさんが今度はクローセンにかわった。また新しい政策を持ち出されるというふうな状況になってきています。  重ねてここではっきりお尋ねしたいのは、この世銀の発足の中には、やはり生活水準の向上、あるいは労働条件の向上に対する援助という問題も含まれているわけで、そういう開発途上国に対する問題から見て、現在の時点でどういう問題点をお感じになっているのか、ちょっと別の角度からお尋ねしたいんです。
  113. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) いろいろな問題があることは事実でございます。いままでの融資の重点が農林関係が大体四分の一ぐらい、それからエネルギーが四分の一ぐらい、運輸関係が四分の一ぐらいというようなウエートになっておりますが、その配分は、この六〇年代、七〇年代を通じまして、そのときの歴史的な要請に沿ったものだろうとは思われます。  問題は、御指摘のような効果の点だろうと思いますが、どういうもので効果を論ずるのかという点でございますけれども、一般的に所得水準が上がってきていることは事実でございます。問題は、結局自助努力というような点が問題の焦点だろうと思うんですが、いかに世銀グループが融資、援助をいたしましても、みずからそれをいかに利用するかという点で欠ける場合なかなか効果が上がらないと。わが国も、事実約八億ドルぐらい世銀から金を借りた経験があるわけでございますが、まだ残高が一億八千万ドル残っておりますけれども、名神にしろ高速道路を初め新幹線、ああいう成果が上がったわけでございますが、そういう意味で日本が一番世銀から金借りたグループの中では効果が上がった例としていつも引用されておりますが、片や後進国の中にはなかなか所得水準もよくならない、民生も向上しないという国もあることは事実でございます。  けれども、そういうようないかなる視点で評価するかという点、決して問題がなしとしませんけれども、今後の方向でございますけれども、世銀の内部に評価委員会というようなものをつくってかねていろいろ検討してあります。
  114. 立木洋

    立木洋君 どういう角度から評価するかというのは確かに一つ問題があるだろうと思うんですけれども、たとえばいま開発途上国人口が三十億といいますか、その開発途上国のGNPを見てみると、世界のGNPの中で占める比率というのは一七%だと言われていますね。そして百十余カ国の途上国のGNPの総計というのがアメリカ一カ国のGNPの総計の何と七割だと、大変な状態ですね。もちろん私は、これは単純に世銀の政策だけによるものだなんというふうに言うつもりは毛頭ありませんよ。もちろん、戦後の紛争もあったわけですし、あるいはエネルギー危機などの問題もあったわけですから。  しかし、少なくとも開発途上国に対して相当重点的にやらなければならないという問題が出されて以後、たとえばこれは一九八一年の世界開発報告によりますと、最貧国において一人当たりの穀物の消費量が二十年間絶対量において減少している。それから一九八一年の世銀総会の報告でも、これはサハラ以南のアフリカ十八カ国が、この十年間一人当たりの所得がマイナスになっていると、これは明白な事実ですね。だからこういう問題から考えてみると、やっぱりそのことを、重大な開発途上国に対する援助ということを最重要課題に掲げながら、それが現実にこうなっているという問題はやはりもっと重視しなければならないじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  115. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 最近その二つの問題に限定しますと、措置がとられておりまして、サハラ以南につきましては、昨年の世銀・IMF総会におきまして特別のタスクフォースをつくるというようなことでいろんな検討をいたすということが発足しております。それから最貧国でございますが、これも昨年でございますが、各国が重点的に援助を差し向けるというような国際的合意が図られております。  先ほどの御質問にもあったんですが、五千二百五十億の中で非常にテークオフした国に対しての債務累積がクローズアップされちゃっているわけですが、三十一カ国債務累積百八十億ドルぐらいですが、こっちの方にいまは問題があるという問題意識も出てきておるわけでございます。
  116. 立木洋

    立木洋君 今度の倍額増資ですね、これで本当に問題が解決できるんだろうかというふうに私は大変な疑問を持つんですね。今回加盟国が百四十一にたしかなっているんじゃないかと思いますが、この状態見てみますと、この中でアメリカの割合というのが二一・七八、そしてずっと初代から総裁はアメリカ人が占めてきているわけですね。私は、アメリカの世界的な政策というのが世銀の政策の中にきわめて大きな重要な影響を果たしてきているんじゃないかと思うんですが、その点はいかがなもんでしょうかね。
  117. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 形式論で言いますと、世銀の協定の中に政治的な立場にかかわらず経済援助をやるということがございます。
  118. 立木洋

    立木洋君 実質的にどうかということ。
  119. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 実質的にどう評価するかということでございますが、目下のところは条約の精神に沿って行われているんではないかと、そういうふうに見ております。
  120. 立木洋

    立木洋君 もちろん、それは局長そう御答弁にならないと、そこで問題があるなんといったらこれは大変なことになるからそういうふうにお答えになるだろうと思いますけれども、だけれども、たとえば百二十カ国が賛成をした第二十九回国連総会の中で、諸国家の経済権利義務憲章、こういうのが出された。これは開発途上国がいまの経済的なあり方の問題について、どういうあり方でやっていくことによって解決できるかという開発途上国などの要求、意見というのが相当積極的に盛り込まれた内容になっておると思いますね。  ところが、日本は残念ながらこの憲章に対して全体的には棄権をされた。アメリカやイギリスなどは反対だという立場が積極的にとられた。いまの世界経済でいろいろ起こっている問題をどう解決していくかという、大半の国が占めておる開発途上国の意見が積極的に組み入れられて、そしていまの経済の問題が解決されていくという方向にならなければ、やっぱり実質的には解決にならない。そういう形がアメリカなどの拒否的な態度によって、いろいろな共通基金の問題にしろ第一次農産品の問題にしろ、いろいろ問題があったわけですが、そういうふうな点というのがやはり一つ根底に大きな問題としてあるんじゃないか。その点はいかがですか。
  121. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) いま御指摘の後進国の国連の決議でございますが、その中核は先般のカンクンの南北サミットというようなかっこうで展開されておる、さらにはグローバルネゴシエーションというかっこうで議論が進行しておるわけでございます。  問題は、後進国側の援助なれというような点があるわけです。片方には、先進国側には援助疲れというような問題もございます。日本は両方の立場を踏まえまして世界のためあるいは後進国のため、ひいてはわが国のためという立場で一貫してこの問題に当たってきておるわけでございますが、率直に申して後進国側にもかなり問題がある、先進国ばかりを責めるわけにもいかない。後進国側にも問題がある、そんなような認識で対処しております。
  122. 立木洋

    立木洋君 なかなか両方の立場を兼ねられる便利なあれですが、そうではなくて、もちろん開発途上国の述べていることが全部が全部私は正当だというふうなことを主張しているんではないんですよ。これはさっき大臣が言われたように、やっぱり自助努力といってもそれはだれが自助を評価するかという問題もあるし、それから来てみたら、一番すばらしい技術を見るとあああれがいいと、これはなるんですよ。ところが、おくれた国にそんなもの持っていったって、それを受け入れて消化するだけの経済環境があるかといったら、ないんですから。だけれども、だれでもいいものを見ればいいと思うわけです。ところが、何から始めたらいいかということすらわからないという状態というのが最貧国の中の現実なんですね。  これを本当に心を打ち解け合って話し合って、どうするのが最もいいかという平等互恵の立場に立たないと、常に先進国の側で問題を見て、もっとおまえたちちゃんとやらぬとだめだというふうな考え方でやっていったんじゃ、これはいつまでたってもやっぱりうまくいかぬ。ところが、そういう姿勢というのはどうもアメリカにあるということを強く感じるんですよ。  それで、先ほども言われましたように、レーガンが強いアメリカ、小さな政府と、そしてそれに対する援助でも選別でやるだとか、いろいろ問題がある。その点についてももちろん肯定的な面もあるけれども、問題点も確かにございますと局長言われた。だから私は、アメリカのやり方に日本の政府が全部賛成しているとは思いませんよ。だけれども、そういう問題点があるんなら、それを改善していかなきゃいけない。今度の場合だって、IDAの出資の問題にしたってアメリカが出し渋っている。出し渋っているからこそ拠出する国々にもいろいろな影響を与えて、さあこれから国際資本がたくさん必要になってくる状況の中でどうするかという一つのまた問題にぶつかっている。  何といっても、やっぱりアメリカのそういう現実的な政策というのが世銀に影響を与えている。これが一つの問題になっているということについてはちゃんと踏まえて、その上で対応していくという姿勢をとらないと、倍額増資したからといってすべてがうまくいくわけじゃない。そういう点での発言権というのは私はもっと日本政府として積極的にやるべきじゃないか。そこらあたりはもう渡辺大蔵大臣はもっと積極的にどんどん言える、大変率直に物を言われる方ですから、そういう点努力していただきたいと思うんですが、いかがですか。
  123. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 全く私も同感でございまして、やはり心が通じなければ物をやってもだめだということを言っているんです。だから、僕はアジア開銀でも色即是空の話をした。通訳が通訳できないから、それはスカイ・イズ・カラー、カラー・イズ・スカイだと私は言った。それを説明したら大体わかったらしい。やはり同じ心になってやらなければ援助をやってもだめだということを言ったわけです。
  124. 立木洋

    立木洋君 それでアジア開銀での蔵相の発言ですけれども、私は確かに自助努力というのは一面その側面があると思うんですね。だけれども、本当にその自助努力というのは何によって評価をするか、これはアメリカが強力に主張している、自助努力という問題は。だからちゃんと選別して援助をしなければいかぬのだと。だからアメリカに余りそういう考え方の上で蔵相接近されると、私はさっき言ったように、世銀にアメリカの政策的な影響が多分に入り込んできている。いわゆる開発途上国とうまく話し合いを進めるという形になかなかならない。だから、そのあたりをちゃんと姿勢をとっていただきたいというふうに思うんで、その点をもう一遍聞きたい。
  125. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 別にアメリカの言うことを聞いているわけじゃないんです。それはいいところは聞くし、まずいところは聞かないということでございます。  しかし、あなただったかな、先ほど言ったように開発途上国へでっかいことを、いいことを持っていったって、これはなかなかそれがこなせるというわけじゃありません。それから塩出委員も同じようなことを言っていました。塩出委員が言ったことは、ちょっと例が違うだけで、サミットでレーガン大統領が同じことを言ったんで、私は感心してさっきのは聞いておったんです。  本当に現場に即したものをやらなければいけないわけであって、上の支配階級と言うとなんですが、まあそうでしょうな、高位高官が言うことと、民衆とかなり開きがあるわけです。だから、高位高官が最高のものを持ち込んでも民衆が消化できない。そういうものではだめなんであって、やはり民衆が消化できるようなものをなだめながら、そんなむちゃなことを一遍にやってもだめですよと、日本だってそれで失敗している例がたくさんあるんですから。トラクターばかり買えばいいと思って、圃場整備できないところへトラクターを構造改善だからと持っていって、たんぼの中にぶつ込んで動かなかったと、私の隣村にあるんだから、現にそういう例が。似たような話があるんですよ。  だから、それはやはりその人たちの気持ちと一緒になって、そしてやはり謙虚に同じ心で考えてやるということが非常に大事だ。そのためには言うべきことを言って、大いにディスカッションをしていいんですよ。そして、やはりその中から一番いいものをお互いに見つける努力をする、そういうことが私は大切だと、そう思っておりますから、高圧的に物を言うようなことはだめでございまして、やはり一緒になって相談をしていくということが大事だと思っております。
  126. 立木洋

    立木洋君 大臣が言われましたように、指導者の側だけではなくて、やっぱり民衆自身がどういう状態になっているのか、この点今後十分に重視していただかないと、対外企業の進出なんというような問題とあわせていろいろ批判が出てくるわけですから、特にそういう点注意していただきたいということを御要望しておきたいと思います。  それから、これは話が変わりますけれども、最近アメリカではまた金本位制度への何か復帰の動きが問題にされておるというふうなことなんですが、昨年来の金委員会の場でその是非について論議されているというふうなことがあるわけですが、これについてはどういうふうに大蔵省ではお考えになっておられるんでしょうか。
  127. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) これはIMFの増資法案の附帯決議議会でついたものでございまして、委員会が設けられまして、昨年一年間、ことしの三月に最終リポートが出たわけでございます。  ねらいは、インフレ抑制というような角度の議論、その場合に、金というようなものを通貨に結びつけることによってそういうことが達成できるのかどうかというのが焦点であったわけでございますが、やはりそういうことで簡単に解決できる問題じゃないというのが報告書の骨子でございます。それに関連して金本位制というような議論がいろいろなされておるわけでございますが、この金本位制についてはやはり現在では現実的なものではないという結論になっております。
  128. 立木洋

    立木洋君 そうするとあれですか、日本の外貨準備に占める金の割合というのは非常に低いわけですね。ですから、結局その結果、各国の公的保有金を時価評価した場合の外貨準備高というのは、日本はきわめて少なくなっている、こういう事態はそのまま改めなくても問題はないというふうにお考えになっておられるんですか。
  129. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 日本の外貨準備の中の金のウエートでございますけれども、六七、八年以降日本が一番金がふえているわけです。これは金を買ったわけではなくて、IMFで金を借りていった国が返すとか、あるいはIMFの金を各国に売った際に日本が買ったとかというようなことでふえたわけでございますが、現在非常に金を多く持っている国は、一九六七、八年ぐらいまでにかなり金を買ったというような経緯がございます。  それで、われわれも金が欲しいことは欲しいわけでございますけれども、たとえばことしの一月から四月まででも、外貨準備は十五億ドルぐらい減っております。金はなかなか利息を生まないわけでございまして、そういう運用上の問題、それから金本位というようなことは当面現実的な問題として日程に上がらないであろうというようなことから考えて、まあ現在のあり方で構わないんではないかと、そういう考え方を持っております。
  130. 三治重信

    三治重信君 ごく簡単に御質問をいたします。  今度の法律案と予算書を見ると、現金で出すのはほんの一部で、現金で出すものは〇・七五%がわが国の出資分で、あと残りの六・七五%は国債で払うと、こういうふになっているわけなんですが、この国債で払った分は将来どういうふうに——増資でしょう、増資だと国債で払ったやつ、世銀はどういうふうに利用するんですか、これは。
  131. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 交付国債とお考えいただければいいわけですが、紙切れを渡してやるわけですね。それで世銀から金を借りた国が実際にお金が要るようになって、引き出しに来る場合日本に通告がございまして、国債整理基金から払ってやるという仕掛けになるわけです。国債整理基金には一括一般会計から償還財源というもので繰り入れられておりまして、大体約三百億円でございます、国債分が。四割ぐらいのものが本年の五十七年度予算の国債整理基金に対する一般会計からの繰り入れの中に積算として入っております。  四割というのは、過去の経験値から出したものでございまして、出資をした後、世銀が加盟国に金を貸します。それで事業の進捗に応じて引っ張りに来るわけです、キャッシュを。そういうようなことから計算上そんなような措置がとってあるわけでございます。
  132. 三治重信

    三治重信君 そうですか。そうすると国債整理基金の方へ入れて、世銀が融資を決めると、日本でどれだけ出してくれと、こういうふうに言った場合に、国債整理基金の方からこれは予算とか——こういうふうに出資したときだけじゃなくて、毎年繰り入れておるわけですな。それで整理基金のやつは全部がなっているから金が足らぬことはない、そこから出すと。  こういうことで、そうすると何というんですか、日本がいままで国債で出したり、出資で出したやつの中のほとんど使われているんですか、まだ相当残っているんですか。
  133. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 大体使われております。
  134. 三治重信

    三治重信君 そうでしょうね、だから今度倍額増資すると、こういうことであろうかと思うわけです。  そこで、参議院の大蔵委員会の調査室の資料によりますと、世銀の貸し付けの地域別は、やはり世銀だけあって各地域を、まあ一方に偏することなく、各地域に分散をして貸し付けをやっているわけなんですが、この中で大きな項目は東アフリカ、西アフリカ、それから三番目に欧州、中近東、北アフリカ、中南米、東アジア、南アジアと、こういうふうにこれは世銀の貸し付けの分布状況、これらは世銀がきっと分けているんだろうと思うんですが、この各地域の典型的な、世銀がやっているので非常に効果が上がっている融資、こういうようなものについて、ひとつごく簡単に御説明願えればありがたいと思うんですが。
  135. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 全体の割合は先ほども御答弁しましたが、農業関係が大体四分の一ぐらい、それからエネルギー関係、それから運輸関係というようなのがウエートが高い方でございます。  これを地域別に見ますと、たとえば東アフリカの場合、ケニアでございますが、運輸関係に五千八百万ドル、教育関係にIDAから四千万ドルというような例がございます。それから西アフリカでございますが、ナイジェリアというのが農業で世銀から一億四千二百万ドル。それから東アジア・大洋州、韓国が先ほど御議論になりましたので韓国の例を申しますと、開発金融会社、これは産業とか工業とか、そういうファイナンスをするわけでございますが、世銀から一億ドル。インドネシアに対してエネルギーで世銀から二億五千万ドル。それから南アジアでございますが、インドの例で申しますと、エネルギー関係で四億ドル、工業関係でIDAから四億ドル。それからヨーロッパでございますが、トルコ、これは財政援助になりますが、世銀から四億ドル。それからラテンアメリカでございますが、ブラジルがいい例でございますけれども、工業で世銀から二億五千万ドル。メキシコでございますが、農業関係に世銀から三億二千五百万ドルと、相当多額のものがこれらの国に出ております。
  136. 三治重信

    三治重信君 いまの御説明によると、別にそう特別な一定のルールというんですか、開発途上国一般の共通的な融資の項目は余りないようなんですが、わりあいにこれを見ていると、何というんですか、農業関係とか、いまエネルギーが非常に多いようになっているんだけれども、これの資料だと、エネルギーはいままでの全体としては二・一%しかなっていないわけなんですが、今度の倍額増資なんかの理由としては、今後どういうふうなところへ融資をしていかなくちゃならぬ、またこういう希望が多いのでというか、世銀のいわゆる融資や後進国の開発の方向についての意欲的な何か指針というようなものがあって倍額増資で、先進国が応ずる、こういうことがあるんじゃないかと思うんですが、倍額増資というんだから、いままでずっとやっていたやつ全部だから、最大の今度は増資になるわけじゃないですか。
  137. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 現在のお願いしております法案の背景になりました倍額増資決定されましたのは五十五年でございますが、全部こういうのは、各国から出ております理事がおりまして、理事会というのがあるわけでございますが、そこでいろんな分析をやったものが事務当局から出されまして、ディスカッションをするわけでございます。そして本国政府との間で意見交換をやり、また理事会で議論をするというような過程を経るわけでございますが、今回の場合には、将来八〇年代の世銀の融資需要というようなものを、成長率とかいろいろなファクターによって議論をいたした結果、大体八〇年代の資金を賄おうとすれば倍額要るというようなことでコンセンサスが形成されたわけでございます。  それで、重点の問題でございますが、この増資の総務会決議というのがあった後、いろいろ状況変化が起こってきているわけでございますが、目下のところの重点的に各国が言っておりますのは、エネルギーとやはり農業でございます。で、後進国の当面の状況から見て、こういうような点に重点を置くのは妥当ではないかというような感じを持っております。
  138. 三治重信

    三治重信君 これは国際復興開発銀行だから、まあいわば一番最初のもとですよね。そうすると、何か見ると世銀グループといって、今度増資するやっと、さらに第二世銀と言われる国際開発協会、それから国際金融公社、こういうふうに、世銀は政府を相手にやってるようなんだけれども、そういう民間の企業や、それから金を個別企業に貸すというようなことのようなんですが、こういうのはやはり同じ、何というんですか、国際復興開発銀行の指導で、この附属機関みたいなかっこうでやられてるのか。  これの何というんですか、まあきょう質問多分あったんでしょうけれども、この国際開発協会の前に行われた出資について、アメリカが全部出すことをちょっとおくらすと、まあおくらすというか、いまは出せぬということで、融資がつのってきているのに、日本とヨーロッパと二、三年肩がわりして出そうかと、こういうふうなことが言われているんですが、世銀ではまさかアメリカはそんなことはないんでしょうね、今度倍額増資して。アメリカはまた、今度は赤字財政だから実際出すのはむずかしいというふうなことがあるのか。  この国際開発協会と国際金融公社、これはやはり同じように各国の政府が出してるわけでしょう、民間金融機関が出しているんじゃなくて。その関係はどうなってるんですか。
  139. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 大体この三つの何といいますか、トップは同一人がやっておるわけでございますし、それからボードの方も大体同じ人がやっております、若干のずれはございますが。それで業種内容でございますが、世銀の方は金利がただいまですと一一・六%で、十年から二十年で貸すわけでございます。で、第二世銀の方は金利がゼロでございます。ただ、手数料が〇・七五取られると、期間は五十年と。それから金融公社の方は金利が大体一三%で、七年から十二年。世銀とIDAは、いま御指摘のように政府なり政府関係機関と、金融公社の場合は企業が対象になるわけでございます。  それで、重点的な貸付事業でございますが、世銀とIDAは大体農林関係、あるいはエネルギー関係が大宗を占めております。国際金融公社の場合には若干民間ベースでありますので、建設材料とかマイニングとか中小工業、こういうようなもののウエートが高くなっております。それぞれ何といいますか、融資対象の分野、それからやり方が分業になっているわけでございます。
  140. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  本案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  141. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本案の審査報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 河本嘉久蔵

    委員長河本嘉久蔵君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十九分散会      —————・—————