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1982-09-14 第96回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年九月十四日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  八月三十一日     辞任         補欠選任      山田  譲君     赤桐  操君  九月十一日     辞任         補欠選任      赤桐  操君     山田  譲君  九月十三日     辞任         補欠選任      北  修二君     板垣  正君      三浦 八水君     岩本 政光君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         竹田 四郎君     理 事                 井上  孝君                 亀井 久興君                 高橋 圭三君                 内藤  健君                 粕谷 照美君                 峯山 昭範君     委 員                 板垣  正君                 岩本 政光君                 仲川 幸男君                 降矢 敬雄君                 円山 雅也君                 森山 眞弓君                 小谷  守君                 本岡 昭次君                 山田  譲君                 黒柳  明君                 鶴岡  洋君                 安武 洋子君                 柄谷 道一君                 三治 重信君                 森田 重郎君                 中山 千夏君    国務大臣        内閣総理大臣   鈴木 善幸君        法 務 大 臣  坂田 道太君        外 務 大 臣  櫻内 義雄君        大 蔵 大 臣  渡辺美智雄君        文 部 大 臣  小川 平二君        運 輸 大 臣  小坂徳三郎君        自 治 大 臣  世耕 政隆君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君         —————        会計検査院長   大村 筆雄君         —————    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    説明員        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        経済企画庁調整        局長       田中誠一郎君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        大蔵省主計局次        長        宍倉 宗夫君        大蔵省国際金融        局長       大場 智満君        文部省初等中等        教育局長     鈴木  勲君        文部省管理局長  阿部 充夫君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君        会計検査院事務        総局次長     丹下  巧君        会計検査院事務        総局第一局長   佐藤 雅信君        会計検査院事務        総局第五局長   中村  清君    参考人        日本鉄道建設公        団理事      吉村  恒君        日本鉄道建設公        団東京新幹線建        設局長      堀内 義朗君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十四年度特別会計歳入歳出決算昭和五十四年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十四  年度政府関係機関決算書(第九十四回国会内閣  提出) ○昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第九十四回国会内閣提出) ○昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書  (第九十四回国会内閣提出) ○昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十五年度特別会計歳入歳出決算昭和五十五年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十五  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出)     —————————————
  2. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十三日、三浦八水君及び北修二君が委員辞任され、その補欠として岩本政光君及び板垣正君が選任されました。     —————————————
  3. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 次に、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は第一日目の総括質疑を行います。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 本岡昭次

    本岡昭次君 まず、防衛問題につきまして若干御質問をいたします。  第十四回日米安保事務レベル協議ハワイにおいて去る八月三十日から九月一日まで三日間開催されましたが、その経過及び結果の概要説明をしていただきたいと思います。  そこで、このハワイ協議に先立って、八月二十六日、政府ハワイ協議への対処方針について、大筋の部内調整を終えて、さらに、日本側代表団現地入りをした八月二十八日、ハワイ協議主要議題と、これに対するアメリカ側の主張と、日本側の対応を最終的に確認したと伝えられているんですが、その骨子は、政府防衛構想、あるいは日本財政事情等に照らして、アメリカ側から能力を超す事項要求されても、具体的協議に入らないことであると了解をしているんですが、それでいいのかどうか。そしてまた、ハワイ協議アメリカのペースに終始したという見方も報道をされていますが、政府のこうした事前に決めた方針は貫かれたと、このように考えておられるのか。そうした点も説明をいただきたいと思います。
  5. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 第十四回の日米安保事務レベル協議が、八月の三十日から三日間ハワイで行われたことはいま御指摘のとおりでございますが、本来この安保事務レベル協議というのは、日米双方相互に関心のある防衛問題、安全保障の問題について、自由に率直に意見交換を行うというのがたてまえでございまして、そういう意味合いから、今回の会議もきわめて自由な立場で、それぞれ活発な意見交換があったということが言えようかと思います。  この会議の特に改まった意味での議題というものはございませんが、話題として出た話が、まず第一日目は国際情勢に関する意見交換、第二日目におきましては、わが方の五六中業、あるいは五十八年度の概算要求につきまして、わが方の立場と、その内容についての説明をしたわけであります。その後、いわゆるシーレーン防衛についてアメリカ側考え方のコメントがございました。それから第三日目は、日米防衛協力並びに駐留米軍の支援に関する話が主題になって議論が進められたわけでございます。  以上が協議概要でございますが、この協議に先立って、国内的に事前打ち合わせをしていったのではないかということでございますが、今般のハワイに出発する前に、当然のことでございますが、私ども事務レベルとしましては、当然予想されるもろもろの話題について、日本側対処すべき方針というか、考え方というものを整理したのは事実でございます。  その概要を申し上げますと、今回のハワイ協議において、国際情勢意見交換があるだろう、そういう際にアメリカ側言い方を十分聞いてくることが第一点。それから第二点は、五六中業、あるいは五十八年度概算要求等を通して、わが方の防衛力整備の問題がテーマになるであろう、そうしてアメリカ側は従来の経緯にかんがみて、このわが方の防衛力整備についての期待、要請というものが当然あり得ることが予想されたわけでございます。それに対してわが方は、現在防衛計画大綱水準を達成するという基本方針に基づきます五六中業というものを先般作成したばかりでございます。そういったものを着実に実施するということ。そうして、五十八年度もこの厳しい財政事情の中で、シーリングが決められた後でございますので、そういった与えられた枠の中で、最も効率的な防衛力というものを着実に推進するという考え方、こういうものを説明することになるだろう。大綱を超えるような要求がもしあるとすれば、これは仮定の話でございますが、そういったものについては、現在私どもとしては大綱を改めるというような考えのないことをはっきり言明すべきであるというふうな方針について、大臣の御了承を得て出発したということでございます。現地に赴きまして、会談に先立ってアメリカ側と具体的な打ち合わせをしたということは特にございません。
  6. 本岡昭次

    本岡昭次君 いまの報告の中で、シーレーン日米共同研究をやろうじゃないかということが、日本側の提案によって最終的に決まったというようなことが新聞報道されているのですが、その点について若干触れていただきたいと思います。
  7. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 先ほども申し上げましたように、この会議の二日目のセッションにおきまして、アメリカ側からシーレーン防衛についての話題が提起されたわけであります。アメリカ側言い方というのは、日本安全保障にとって、海上交通安全確保、すなわちシーレーン防衛というものはきわめて重要であるということが第一点。そして、そのシーレーン防衛を行うに当たって、現在の日本防衛力というものは必ずしも十分でない、アメリカ側分析をした結果によれば、現在の防衛力、あるいは五六中業でもって達成されるであろう防衛力においても、なおかつシーレーン防衛というのは十分に行われないのではないかというふうな懸念が表明されました。そうして、アメリカ側で行った分析によれば、そういった能力不足であるというふうな指摘がありましたので、日本側から、その翌日でございますが、わが方としてもシーレーン防衛というのはきわめて重要であるという認識をしているということが第一点。第二点は、今回の五六中業において、こういったシーレーン防衛能力が格段に向上するということが第二点。それから第三点は、いまアメリカ側から不足であるというふうな指摘があったけれども、そういった指摘前提になっておる脅威分析、あるいはシナリオ設定等、私どもとしてもわからない不明確な点があるので、今後これを日米ガイドラインに基づく共同作戦研究の場において、相互に勉強をしたいということを申し入れまして、アメリカ側もそれに賛意を表し、必要な協力をしようということに相なったわけでございます。
  8. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、シーレーン日米共同研究ということは、シーレーン防衛に対する日本考え方シナリオ、そうしたものと、アメリカ考えているシナリオなり、考え方、あるいはシーレーン概念、そうしたものの食い違いがあったので、これから研究をやろうじゃないかと、こういうふうに理解していいんですか。
  9. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) シーレーン防衛についての考え方に違いがあったのかということであれば、必ずしもそうではない、すなわち海上交通安全確保重要性についての認識の差があったということはないと思います。ただ、この海上交通安全確保をするに当たって、アメリカ側がわが方の防衛力をもってしては不十分であろうというような指摘があったわけでございます。私どもも現在の防衛力、あるいは五六中業防衛力をもってして、この能力十分パーフェクトであるとは思っておりませんが、アメリカ側不足であるというふうな認定をする以上は、それなり前提なり、根拠というものがあるであろう、そういう意味合いにおいて勉強しようということでありまして、特段この間の認識の差があったということではない。強いて申し上げれば、それに必要な防衛力の量といったものについての考え方の違いはあるかもしれません。細かな点については今後の研究、検討の中で順次明らかになってくるであろうというふうに思われます。
  10. 本岡昭次

    本岡昭次君 シーレーン防衛認識の差はなかったと考えていると、こうおっしゃるんですが、シーレーン防衛の問題については、いろんな委員会でこれは取り上げられておりまして、私もきょう質問するに当たって、いろいろ過去の防衛庁答弁を中心に調べてみましたが、日本考えているシーレーン防衛シーレーン防衛シナリオと言うんですか、内容と言うんですか、そういうものは一向にはっきりしていないのであります。国民が求める言葉で言えば、日本シーレーン防衛とは一体何なのか。何から何をどこまでどのようにして守るのかと、こうした言葉で語られる中身がなければ、はっきり私も納得できない。いま私が言いましたように、それでは、認識の差がないんであれば、日本シーレーン防衛とは一体何から何をどこまでどのように守るということをシーレーン防衛と言うのかということを、ぜひアメリカとの間で共同研究をするのなら、はっきりとした防衛庁認識、そして、シーレーン概念というものを明らかにしてやってもらわなければ、ただ認識の差がないということでは困る、そこをはっきりさしていただきたい。
  11. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) シーレーン防衛というのは、端的に申し上げれば、海上交通の安全を確保することであるというふうに理解できようかと思います。この海上交通の安全を確保するのは何から守るか、なぜ守るのかということでございますが、御承知のように日本海洋国である、四面海で囲まれているというようなこと。物資、資源の大半というものは海外に依存しているという国柄であるということから、わが国が生存し、繁栄していくためには、海上交通安全確保がきわめて重要であることは御認識いただけると思います。さらに、有事の際における継戦能力の保持というふうなことを考えた場合も、この海上交通の安全を確保することはきわめて重要であることもまたこれ当然のことでございます。私どもとしては、そういった海上交通安全確保重要性というものにかんがみまして、海上防衛力整備増強ということを推進してきておるわけでございます。  何から守るかということでございますが、有事の際、海上交通安全確保を脅かすものとして常識的に考えられるのは、まず対象国潜水艦であり、水上艦艇であり、航空機であろうかと思います。どのように守るかということを申し上げるならば、この相手方の艦艇航空機というものに対して、言うまでもなく海上交通の安全を確保するためには、周辺海域の広域的な哨戒によって、そういった脅威を見つけ出し、そいつを排除する。さらには重要な港湾、海峡を防備することもその一環であろうと思います。さらには、広い海域にわたって、対潜制圧というか、対潜掃討というようなものもやる必要があるだろう。あるいは、安全な航路帯考えて、その中を船舶を通す、必要があれば直接防衛するようなこともいろいろあろうかと思います。要は、そうした各種の作戦の組み合わせ、複合的な累積効果によって、海上交通の安全を確保するというのが私ども考えでございます。
  12. 本岡昭次

    本岡昭次君 もっと具体的に、数量的な面で防衛庁としてもうすでに明らかにされているでしょう。いまあなたは周辺とか、海域とかということでしかおっしゃいませんでしたが、もっとはりきりとそこを言ってください。
  13. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) そういった、いま申し上げたような前提でございますが、現在私ども防衛力整備の目標として考えておることは、周辺の場合数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイル程度一つのめどとして、私どもは現在海上防衛力整備というものを進めておるということでございます。
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 まあ従来程度の問題はいままでも論議をされていたことですが、しかし、今回のこのシーレーン防衛に関する共同研究なんですが、いまおっしゃったことが特別問題になるわけじゃないでしょう。いま答弁があったことをさらにもう一歩踏み込んでいくということに、共同研究をやろうという動機があるのじゃないのですか。つまり、シーレーンというものが一つの面としてとらえられて、いま言われた一千海里という言葉一つの面となって、グアム以西、あるいはフィリピン以北という形になって、その中でのシーレーン防衛日本アメリカと行うという事柄について、いままで一番問題になってきたことは、果たしてそうした海域における、面におけるシーレーン防衛というものが、日本自衛権の問題として、政府がいままで明確にしてきた個別的自衛権範囲内でそうしたことが済むのかどうかという事柄、それに一歩踏み込むことがなければ、このシーレーン防衛日米共同研究というものは成り立たないと、こう思います。  しかし、防衛庁の方は個別的自衛権範囲内で行うんだと、こうおっしゃってますが、最近の新聞報道の中で宮澤官房長官が、このシーレーン防衛に関して記者会見の中で言われていることは、シーレーン防衛といっても具体的な定義がはっきりしているわけでないと、あらかじめシーレーン防衛に関して何が集団的自衛か、個別的自衛なのかを言うのはむつかしい、共同研究の開始に先立って、その点を明確化するかどうかは、防衛庁がどう考えているか私はわからないと、知らないと、こういうふうに政府責任者もこの問題についてはっきりしないまま、この共同研究が進められようとしているというふうに私は見ているんですが、これはひとつ防衛庁長官、このまずシーレーン防衛研究に当たって、いま言いました一つ海域というものに対する防衛を、本当に個別的自衛権範囲内で行うと、それ以上もう絶対出ないという日本側確信アメリカ側からどのような要請があっても集団自衛権という問題にかかっては触れないという確信があって、この共同研究そのものに踏み込まれていかれるのか、その点明快なひとつ答弁をいただきたいと思います。
  15. 伊藤宗一郎

    国務長官伊藤宗一郎君) このようなすばらしい日本国民生活を守るために、われわれは防衛努力をやっておるわけでございまして、あくまでも憲法の範囲内、また集団自衛権にわたらない個別的な自衛権範囲内で守り切るように、精いっぱい努力をしているところでございます。
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、精いっぱい努力するということじゃなくて、アメリカとのシーレーン防衛に対する共同研究を行うに当たって、日本の基本的な態度努力じゃなくて、集団自衛権という問題にかかわることについては踏み込めない、踏み込まない、個別的自衛権という範囲というものを厳守するとはっきりあなたが言ってもらわなければ、官房長官シーレーン防衛といっても具体的によくわからない、防衛庁個別的自衛権から集団自衛権に踏み込むかどうか、そういうことについてもわからない、こういうことをおっしゃっておられるんですからね。あなたまで努力するというふうな努力事項じゃないでしょう、これは。日本の基本的な態度なんでしょう。
  17. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 個別的自衛権範囲内で努力をするわけでございます。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 個別的自衛権範囲内で努力するということは、集団自衛権の問題には一切踏み込まないというふうに理解していいですか。
  19. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) そのとおり御理解賜って結構でございます。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 そこで、私はもう一つ問題点を心配しますのは、この共同研究が、研究ということで終わらないんじゃないかという点です。先ほど答弁がありましたが、日本防衛計画というものがあって、いまその大綱水準に近づけるために最大限の努力をしていると、また一方きわめて困難な財政状況の中にあって、防衛予算の枠が決まっているというふうな事柄から、日本立場ハワイ協議説明されています。しかし、この共同研究というものの結果、今後アメリカ側からその研究の結果として、日本が不十分である海域一千海里のシーレーン防衛について、もっと強化しなければならんというその結論、合意が研究の結果できたとすれば、今後双方研究の結果に基づいて、防衛大綱の枠の見直しなり、あるいはまた防衛力増強にかかわる諸問題が、研究の結果として、これから外圧というふうな形をもって要請されてくるというふうなことになってはならないと、こう思うのですが、防衛庁長官の明快なひとつお答えをいただきたい。
  21. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) 今回のこのシーレーン防衛に関する日米共同研究につきましての具体的な内容は、これから詰めるわけでございますけれども、まず第一点のこの研究というのは、先ほども申し上げたとおり、日米防衛協力のための指針、すなわちガイドラインに基づくところの共同作戦計画研究一環として行うものである。この研究というのは、具体的に申し上げますれば、わが国シーレーン防衛について、わが国が攻撃を受けた場合に、現在の兵力をもってどう対処するかという、いわばオペレーションプラン、そういった対処計画に属する事項でございまして、この研究と、この結果防衛力整備とつながるではないかというような懸念がいま表明されましたけれども、将来の防衛力整備とは直接の関係というものはないわけでございます。この研究はあくまでも日米が整合のとれた作戦を効率的に実施するための作戦計画という中で、ガイドラインの枠の中で始めるというものでございますことを念のために申し上げます。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 具体的な内容はこれから詰めるということなんですが、それではその日米共同研究はいつから始まるのか、そして、またどのような期間かけていまおっしゃったような研究をするのか、教えていただきたい。
  23. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) これも先般この種の研究を始めようということを提案して帰ってきたわけでございまして、今後アメリカ側と具体的な調整に入るということでございまして、いまこの時点でいつから始めるか、そしていつまでのタイムスケジュールでやるかということについての具体的な案というものをただいまの時点で持ち合わせがございません。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 しかし、防衛庁長官は今月の末にワインバーガー長官会談をされるというふうなことを新聞報道で知っているわけなんですが、そうしたスケジュールがもし今月末にあるとすれば、当然ハワイ協議内容の今後に残された問題として、シーレーン共同研究ということが議題一つにもなろうかと思うんですが、そういうふうな中で、いまこれからということじゃないじゃないんですか。もうある程度はっきりしたものがそこにあって、防衛庁としても相当しっかりとした腹固めをして、防衛庁長官ワインバーガー長官との会談に臨まなければならないという状況にあるんではないんですか。長官いかがですか。
  25. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) ワインバーガーとの会談は、例年定期的な形で日米防衛関係首脳が、日米間の防衛の問題について、総括的に腹蔵のない対話を交わすというのがもともとの趣旨でございますので、その趣旨にのっとって私も会談に臨むわけでございますが、したがって、特定の問題等首脳間で詰めるというようなことでもございませんので、今度の私の訪米に当たって、それまでに詰めておかなきゃならないということでもないものと思います。ただ、会談の中でいろいろのお話し合いがいろんな形で出ると思いますから、それなりの私ども腹構えは持たなけりゃならないと思いますけれども、いま防衛局長から答弁をいたしましたように、ハワイから帰ってきたばかりでもございますし、また相手のこともあるわけでございますので、いつからこの問題についてお話し合いを進めるというような、確たる段階までは至っておりませんことを御理解賜りたいと思います。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 長官にもう一度お伺いしますが、シーレーン共同研究というのは単なる研究で、さしたることはないんだという認識をお持ちであれば、私は大変な間違いだと思うんです。というのは、いまも防衛庁答弁にあったように、日本側のこのシーレーン防衛に対する認識なり、概念というものは、海上交通の安全を確保するために、有事の際どうするのかと、潜水艦に対して、あるいは航空機に対してどういうふうに防衛をするのかというふうなことのようなんですが、その基本は、防衛庁が従来から言っているように、ある国の潜在的脅威脅威の対象となる能力はあるけれども、その意思が定かでないというふうな一つの解釈のもとに潜在的脅威というものを立てて、それに対して守るということで、しかし、アメリカシーレーン防衛というのはもっとはっきりしているわけで、対ソ戦略というものを北西太平洋の中でどう展開するのかという、もっと規模の大きなアメリカの対ソ戦略の基本にかかわる問題として、このシーレーン問題が提起されているわけで、そこには格段の認識なり、概念の差があるわけですよね。だから、国民の皆さんが心配しているのは、そのシーレーン防衛に対する共同研究ということに入った場合、日本アメリカ概念なり、認識に差がある。それに対して日本が、本当に日本防衛庁なり、政府が言っておられるところの憲法の枠内という専守防衛とか、あるいはまた個別的自衛権、そうした範疇ではおさまらなくなってしまうんではないか。アメリカの対ソ戦略、アメリカは潜在的脅威とソ連を考えていないですからね、もう直接的にソ連敵視論という立場に立って防衛体制をどうとるかと、こうなっておるんですから、それに対して日本が組み込まれていくということに結果としてなる、ならないという保証を一体だれがするんだということがいま問われていると思うんですよ。そして、このことは日本防衛計画そのものに大きくはね返ってきて、基本的な考えそのものを変えることになりますよね、日本防衛計画の、もしアメリカの基本戦略の中に組み込まれていくとすれば。私は、日米シーレーン共同研究というのは、そういう意味をもって、防衛庁長官にもっとしっかりした認識を持ってもらいたいのですが、ワインバーガー長官との会談の中で、シーレーン共同研究というものに対する日本の確たる姿勢、態度、そうしたものを打ち出して、いま私が言っているような心配は絶対にないようにしていくという点をここではっきりおっしゃっていただきたい、こう思うんですがいかがですか。
  27. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 日米安保条約を結んでおるわけでございますから、われわれはアメリカ側防衛に対する考え方をいろいろと念頭には置かなければなりませんけれどもわが国はあくまでも自主的に日本防衛考えておるわけでございまして、言うまでもなく憲法の範囲内、また個別的自衛権範囲内ということで、これからも日本防衛考えていくわけでございまして、アメリカ考え方を念頭には置くわけでございますけれども、最終的に日本防衛を決めますのはわが国であり、われわれでございますので、そのままアメリカの戦略に組み入れられるというような懸念国民が持たないように、毅然とした態度会談に臨んでまいりたいと思います。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 そこで、これもテレビの中の長官の発言が話題になっている点をいまの問題と関係してお伺いをしたいんです。  最近のNHKテレビの政治討論会の録画の中で、私も聞いていたんですが、シーレーン一千海里以内の米艦の護衛、第七艦隊の護衛というふうな問題に討論が進んでいったときに、防衛庁長官の発言をここで正確に私は再現することはできませんが、次のような意味にとれることをおっしゃったんです。丸山元防衛事務次官の発言にかかわって、日本周辺シーレーン一千海里以内の第三国攻撃に対しては、自衛艦がアメリカの第七艦隊の護衛に当たるということがあっても、それは集団的自衛権の行使には当たらないではないかというふうな考え方を持っているという、このようにずばりという言い方ではありませんでしたけれども、そう聞き取れる、読み取れる判断をNHKテレビで示されたと私は聞いたんです。この判断は、いま防衛庁長官が確認をされましたその個別的自衛権を逸脱して、集団自衛権というふうな範囲に絶対にこれから踏み込むことはない、こういう話といささか異なるわけで、一体日本の侵略とか、日本有事とかといったものが、日本周辺海域でなく、扇形に広がった一千海里という、あの広い海面の中で考えていくときに、非常にむずかしい問題が防衛庁長官もおっしゃったように起こるわけで、あの防衛庁長官の発言は、集団自衛権というものの発動を考えての発言と私はとらざるを得ないのですが、防衛庁長官の明快なひとつお考えを示していただきたいと思います。
  29. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 日本が攻撃をされ、侵略をされようとしているときに、当然防衛出動がなされて、日本有事の場合において、できるだけ日本の独力でそういう侵略なりを阻止したいし、また、しなければなりませんし、その方向でいまわれわれは限定的な小規模な侵略に対しては独力で排除できるような防衛力整備しようとしておりますけれども日米安保条約の発動があって、公海上でも日米間で共同対処共同作戦をする場合が当然予想されるわけでございまして、その場合にわが自衛隊は、日本の国を守る自衛の範囲内で、しかも必要最小限度の実力行使でその侵略に当たるわけでございますけれども日米共同対処をしておるわけでございますから、当然、自衛隊の自衛の範囲の行動が、アメリカ軍の防衛にも結果的になるということは当然予想されるわけでございまして、そういうことは集団自衛権には抵触はいたさないというような考え方を述べたものでございまして、あくまでも自衛の範囲内で、その行動としてアメリカ軍を守るような結果になることは決して集団自衛権のものに抵触はしないというような考え方を申し述べたものでございます。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 いまの長官の答弁、私は納得できないんですが、日本周辺海域というところから一千海里も遠く離れて、そして日本から太平洋に向かって扇形に広がった面の中で、アメリカの第七艦隊がソ連を一つの目的として対ソ戦略を展開している。それに対して日本の自衛艦が、あるいはまた自衛隊全体が、日本海上交通の安全を確保するということで、そこで防衛に当たっている。全然目的の違う形で行動をしていて、アメリカの第七艦隊がソ連との間で、仮定の問題として、戦闘が起こり、双方が攻撃し合ったときに、その海域にいる日本の自衛艦なり、航空機が、日米安保条約に基づいてアメリカの艦隊を守るということが、集団自衛権の行使ではなくて日本を守るという自衛の範囲内である、こうした解釈を納得され、そしてそれでいいんだとされているのは、これは長官なり防衛庁の方だけじゃないんですか。いまのような話が論議されたときに、だれもそれは集団自衛権じゃないかと、こうなると思うんですが、どうですか。
  31. 夏目晴雄

    説明員夏目晴雄君) わが国が武力攻撃を受けた場合に、いわゆる有事の際に、わが国シーレーン防衛のためにいろいろ行動するわけでございます。この場合、あくまでもわれわれとしては、わが方の海上交通の安全を確保するというために、日本防衛のために、自衛の範囲内で行動するということでございます。その行動の範囲が公海に及ぶことというのは大いにあり得ることだというふうに思いますけれども、それは日本防衛のためであって、決してアメリカの船を守るために行動するというものではないということをまず一つ認識をいただきたいと思います。日本防衛のために、自衛のために戦うということが、結果としてアメリカの船を守ることになり得ることは、いま大臣からも御答弁がありましたとおり、あるかもしれない。しかし、それはあくまでもわが方の個別的自衛権の行使に伴う結果であって、決してそのこと自体が集団的自衛権にまたがるものではないということをいま申し上げたわけでございます。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 結果的にということが、前後の状況が不確定のまま結果としてそういうことがあり得るという判断そのものが私は大変危険です。そして、もうすでにそのことが日米共同研究の結果として、シーレーン防衛そのものが、アメリカ第七艦隊と共同行動をとり、そして共通の目的の敵をつくって、それと戦うこともやむを得ないというふうな、なし崩し的な一つの解釈の拡大というものをあなた方がやっていこうとしているんではないかということについて、非常に強い私は危惧を持ちます。  そこで、防衛庁長官も安保特別委員会の方に出席されなければなりませんので、一応この辺で私は質問を終わりますが、最後に、長官として、日米共同研究シーレーン防衛に対する日米共同研究が、今後防衛大綱の見直しに発展をしたり、あるいはまた防衛力増強ということにかかわって、防衛費の一層の枠の拡大、あるいはまた集団自衛権へ踏み込んでいく、専守防衛の枠が取っ払われる、こういうふうなことは絶対にさせない、日本のいままでの政府の解釈、見解、そうした範囲、いわば歯どめとされている問題を担当者に厳守させるということをひとつ明快にここでおっしゃっていただきたい。
  33. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 憲法を守り、個別的自衛権範囲内、専守防衛、シビリアンコントロール、わが国防衛のすべての基本原則をしっかり守り、また先ほども申し上げましたとおり、いろいろアメリカ側の期待表明もあろうと思いますけれども、われわれはあくまでも日本の国はわが国の判断において守る。そういう防衛努力を続けることが、真に国民の皆様方に御信頼いただける防衛の方向だろうと思いますので、そういう方向で会談にも臨みたいと思いますし、事務当局等の指導にもそういう方向で当たってまいりたいと思います。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは文教問題について質問をいたします。  まず初めに、国士舘大学の問題について若干ただしておきたいと思います。  国士舘大学のブラジル国教育法人ブラジル国士舘大学協会を初めとする海外の事業に資金を送金しているというこの問題につきまして、私は昨年の十月に文教委員会でその実態についてただしましたが、そのときに文部省として調査をするという答弁もいただいておりますので、そのことも含めてお伺いをいたします。時間もございませんので、できるだけ簡潔にその結論をお答えいただきたいと思います。  まず、ブラジル関係について、現在でその現地法人に送金している金額の総額は幾らでございますか。
  35. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 国士舘大学側からの説明を聞いたところによりますと、ブラジル国士舘大学協会に対しまして五十五年、五十六年、五十七年と三カ年にわたって送金が行われておるわけでございますが、これまでの総額は十億百二十一万九千円余りという金額になっております。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 十億という大金ですが、その資金が送金された名目は、貸付金であったのか、それとも寄付金であったのか、どうでしたか。
  37. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 法人から事情聴取したことによりますと、送金した資金の性格は貸付金であるというように聞いておるところでございます。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 大蔵省にお伺いをいたしますが、大蔵省に対して送金許可申請というものが出されると思いますが、そのときの資金名目は何になっておりますか。
  39. 大場智満

    説明員(大場智満君) 私どもに申請されているものには二種類でございまして、一部は寄付金、一部は貸付金の申請がなされております。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 一部と言われましたが、十億百二十万何がしのその金額のうち、寄付金となっていた金額は幾らですか。
  41. 大場智満

    説明員(大場智満君) 約七億円でございます。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 私一部と言うから一億円ぐらいかと思っていたんですが、全部でなければやっぱり一部ですか。  そこで、文部省にお尋ねをいたしますが、前回の文教委員会で、貸付金という名目で送金しているその金は、国士舘大学が日本の国内で銀行から融資を受けて、その融資を受けたその融資条件でもって海外の法人にそれを貸し付けているんだという答弁があったわけなんですが、とすれば、その資金の返済計画、あるいはまた利子がどういうふうになっているのかということも明らかでなければならんと思います。それについては調査するということでしたが、どうでございましたか。
  43. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 大学側からの説明でございますと、銀行からの借り入れは、資金の必要に応じましてその都度何回かにわたって行っておるわけでございます。借入先の銀行も複数でございますが、概して申し上げますと、返済の方法につきましては、二年据え置き五年ないし八年の均等返済ということになっておりますし、利息はこれまた六・七%から七・七%までの間で何種類かの利息になっておるわけでございます。  なお、国士舘の銀行に対する返済につきましては、銀行からの借入金とほぼ同じ条件でブラジルの協会に貸し付けを行っておりますので、その返済金をもって銀行の方へ返済をすると、こういうような説明となっております。
  44. 本岡昭次

    本岡昭次君 その返済なんですが、返済可能かどうかということを文部省がはっきり答えるわけにいかんと思いますが、現在の文部省の感触として、二年据え置きで五年から八年にわたって返済していくということが正常に行われる、心配ない、こういう判断を持っておられるんですか。
  45. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 外国にございます別団体の経営の内容にかかわってまいりますので、私どもの方も的確なことをつかみかねておるわけでございますけれども、学校法人側の説明としてはこれで返済するという、これまあ借款契約等も結んでおりますので、大丈夫であるという説明を聞いておるところでございます。
  46. 本岡昭次

    本岡昭次君 それは十億の送金したうちの一部の三億の貸し付けにかかわる部分だと、こう思うんですね。残り七億が寄附ということで出されている場合は、寄附金というものの性格からは、その寄附を受けた法人はこれを返済する必要がないと、こうなるわけで、十億を銀行から融資して、三億は返済計画に基づいて返ったとしても、残りの七億は現地法人に寄附したままだと、こういうことになるんですが、大蔵省、こうしたことは外為法の問題になるんではないかと、違反にかかわるんではないかということを、文部省の関係者が表明しているということが新聞に出ているんですが、その点はいかがですか。
  47. 大場智満

    説明員(大場智満君) 私どもは、七億円について寄附金としての申請を受け、許可しております。また、三億円につきましては、これは新しい外国為替管理法下で申請がなされたものでございますが、新しい外国為替管理法のもとでは、このような貸し付けは事前届け出で足りることになっておりますので、届け出を受理しております。したがいまして、この寄附金並びに貸付金が大蔵大臣に申請されたとおりであれば、特に問題はございません。
  48. 本岡昭次

    本岡昭次君 その寄附金、あるいは貸付金という形で送金された金の性格なんですが、文部省、それではなぜその十億のうち七億が寄附金で、あとの三億が貸付金と、こういうふうになったのかという点はどういうふうに理解しておられますか。
  49. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 私どもといたしまして法人側の事情を聴取したところによりますと、これは全額貸付金であるという説明を受けておるわけでございます。なお、事柄内容につきましては、理事会の議事録、あるいは現地の法人からの借用証書のごときのもの等によって貸付金という表示で確認をいたしております。
  50. 本岡昭次

    本岡昭次君 お金の性格は全額貸付金であるということで文部省は確認している。しかし、大蔵省の届け出は寄附金ということでそのうちの七億が出ている。こういうことになれば、大蔵省としてはどう考えるんですか、この問題を。
  51. 大場智満

    説明員(大場智満君) 私どもは申請に従って許可しているということでございます。したがいまして、いまもし別の性格の資金であるとすれば、関係者から事情を聴取してみなければいけないかと思っております。
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、大蔵省として事情を聴取をして、この問題を究明をしていただきたいと思います。  新聞によると、文部省の学校法人調査室の話ということで、ブラジルへの送金は、文部省報告に反する虚偽の申請で、外為法違反に相当すると見られ、問題はきわめて大きいという話をしたということが報道されているのであって、この問題の真偽のほどは、文部省の方は貸付金だというふうに認識し、実態は寄附金ということで大蔵省が受けているのなら、大蔵省の方が果たして寄附金なのか、貸付金なのかということを、つまり報告の内容が正しかったのか、虚偽があったのかということを、これははっきりさせてもらわなきゃいかんと思うんですが、早急にやってください。いかがですか。
  53. 大場智満

    説明員(大場智満君) 私どもは、寄附金の申請が出、これに対して許可を与えている。また、三億円につきましては貸付金として事前届け出の申請があり、これを受理したということでございまして、相手方、国士舘大学はあくまで一部七億円については寄附金として考え、三億円については貸付金として私ども説明しておりますので、それに沿った処理をしているわけでございます。当事者から別段の申し入れがあれば、これについて十分検討したいと思います。
  54. 本岡昭次

    本岡昭次君 文部省に聞きますが、学校法人が海外にそうした送金をする、あるいは出資をするというふうな事柄の場合、寄附金というふうなことでもって処理できるのかどうか。学校法人の性格上いかがなんですか。
  55. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 学校法人の目的、性格から見て許されるような範囲内の事業であれば、寄附をすることも可能であると考えております。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、十億もの金をブラジルに、またそのほか、後で聞きますが、エジプトとか、いろんなところにどんどんと送金をしているんですが、そうしたことが私立大学の教育活動、あるいは法人の事業、活動の範疇に入るとそれではお考えになっているんですか。
  57. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 学校法人も民法法人の場合と同様に、その目的の範囲内に該当するような事項であれば、各種の事業を営むことは可能であるわけでございますが、今回のこの事業につきましても、その性格を考えますと、いわば体育系、武道系の大学である国士舘大学のいわばスクールイクステンションの一環のごとき性格のものであろうかと思うわけでございまして、目的の範囲から外れているというふうには考えられないと思うわけでございます。
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 しかし、あなたは貸付金としてそのお金が返ってくると、こうおっしゃいました。三億は返ってくるかもしらん。しかし、銀行から融資を受けて、いわば国士舘大学が七億というお金をブラジルに対してそれを投資したということになってくるわけです。そのお金は返ってこないんですよね。国士舘大学そのものの経営上の問題は、それほどそれでは豊かなのかということになってきますね。私学助成金もそこには出ているし、出ているということは、経営上やはりそれだけの補助をしなければならないから出るわけで、またいろいろ経営上問題があって、二五%のペナルティーが四カ年もかけられているという大学であるわけですよね。それをいまあなたのような一般的な答弁で、これは認められるというふうなことで済まされるんですか。  現に文部省も二月十二日に国士舘大学の理事を呼んで、そして次のような三点を指導しているじゃありませんか。第一点、貸し付けは好ましくない。二点目、私学の教育活動の範囲を超えている。三点目、理事会の手続不備。こうしたことでもって指導をしているというふうに私は聞いております。  しかも、なおその後、その指導にもかかわらず、新しく海外に対しての送金が行われているということですからね。もちろん文部省が私学の経営に全面的にタッチしてどうこうせよと言っておりませんが、しかし、いま私の言っている事柄は学校法人そのものの活動の範囲を明らかに逸脱し、しかも、外為法違反というふうな内容も含むような虚偽の申請をやって金を送り出している。銀行で金を借りるためには担保が要ると思いますが、その担保をつけて借りたお金を、もう返ってこない寄附金という性格で出している。これではどうにもならんじゃないですか。明快なひとつ答弁を願います。
  59. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) もちろんこの件につきましては、私どもの方も無条件で結構なことであると言っているわけではないわけでございまして、大学の本来の目的である教育研究条件等に悪影響が来るようなことがあってはならないという勧点から、慎重な取り扱いを大学側に対しては留意を促しておるところでございまして、それはかねてからずっと同じ姿勢でまいったわけでございます。  ただ、この事柄は、特にブラジルの問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように、十億全額が貸付金であるということで、それぞれの現地法人との間の借款の証明書等もついておるわけでございますので、私どもとしてはこれが返ってくるものというふうに考えておるところでございます。  それから、なお先ほどお話のございました二月十二日の件は、カイロの方の話でございまして、この点については若干ブラジルとは違うケースでもございますので、別途の指導をしたということがあるわけでございます。
  60. 本岡昭次

    本岡昭次君 それではいまの問題、相手から融資を受けた承諾書のようなものも整備されているということで、文部省では貸付金、大蔵省では寄附金、ここの問題ははっきりとひとつさせてもらわなければならんと、こう思うんですがね。文部省このままで済ましていくんですか。虚偽の申請をして寄附金として海外へ出しているということと、あなた方は貸付金としてそうした証拠書類は全部そろっているということの関係はどうするんですか。このまま放置していくんですか。
  61. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 私どもといたしましては、この件につきましては大学側に何度も事情を問いただしまして、ただいま申し上げましたような各種の資料によって、貸付金であるという説明を聞いておるわけでございます。したがいまして、大学側のその申請を現在のところ正しいものというふうに判断をしておるわけでございます。
  62. 本岡昭次

    本岡昭次君 あなたは正しいと思い、大蔵省の方は、いやこれは寄附金として受けているんだから、寄附金としての性格であろうと、両者が一つの金の性格を違う立場で、一つ政府としてやっているんですからね、おかしな話です。しかし、これをここで追及する時間がちょっともうありませんので、具体的にそういうことが事実であるということをここで明らかにしておきます。次の機会にこれをどうするのかという問題をもう少し詳細にやらしていただきます。  そこで、いまエジプトのカイロにも同じような問題があるという話が出ました。カイロにも武道館を建設するというふうなことがあって、何か二億五千万の金がそこに出ているということ、さらにまたアメリカのニューヨークで、あるいはシカゴで、サイパンでといって、次々とそうした投資計画が国士舘大学の事業としてなされていると、こういうことを聞くんですね。ニューヨークに一億二千万の邸宅を購入するとか、シカゴではマンションの一階部分を購入するとか、サイパンにも進出しようということで、サイパンの現地の人を呼んで、また総長も現地へ行くとか、さまざまなそうした動きがあるわけなんですが、明らかにここまでくれば、私立大学の教育活動、あるいは法人として認められる事業の範囲を逸脱しているというふうに考えなくてはならんし、ましてや私学助成ということを受けて、そして絶えず文部省が国士舘大学の学校の経常経費を精査した上で補助金を出しているという事柄からかかわって、将来これは大変な問題が国士舘大学に起こるんではないか、また現地の、ブラジル国士舘大学何々というふうなもの、またカイロにできるものが、果たしてそれでは正常な形で法人として運営していけるものかどうかというふうなことも、この貸付金であれ、寄附金であれ、その金が返ってくるのかどうかという問題にもこれから発展してくるし、ありようによっては、国際問題にも発展するというふうな性格を持っていると思いますので、この問題についてひとつ文部省として一層国士舘大学に対して指導性を強めて、この問題について調査を行い、監視をして、私がいま心配しているようなことが起こらないような万全のひとつ配慮をしてもらいたいと思います。  それから大蔵省の方も、いや私たちは寄附金として受けているんだから、届け出はそのとおりだと、届け出に間違いない、届け出を変更するということも起こっていないのでと、そこでやっていないで、事柄の性格というものをもう少し文部省と詰めて、はっきりさしていただきたいと、このように思います。  いまの問題について文部大臣、大蔵大臣、一言ずつお答えをいただいて次の問題に移りたいと思います。
  63. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 国際化がここまで進展いたしておりますから、大学において教育、学術、文化の交流を進めていくということは、一般的には有意義なことであり、歓迎すべきことだと考えておりますが、海外に施設を設けて、大学開放事業等を行います場合には、申すまでもなく多額の経費を要する仕事でございますから、それが本来の大学教育に影響することがあってはならない、十分な配慮のもとに実行すべきだと考えておりますので、この点につきましては、学校当局に対して、今日まで強く注意を喚起してまいったところでございます。この問題につきましては、従来からも法人関係者から事情を聴取するなど、慎重に見守ってきておるのでございますが、その運営の状況、将来の見通し等について、今後も引き続いて実態の把握に努めまして、必要な指導助言を行ってまいるつもりでございます。
  64. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) どういうわけで貸付金が寄附金として申請されたのか、実態が寄附金なのかよくわかりません。私どもとしては、学校法人でございますから、申請があればそう一々疑ってみるということも実際なかろうかと存じます。しかし、現実にそういうふうに食い違いがあるのは事実でございますので、さらに関係者の実態を調べてみたいと思っております。
  65. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは教科書問題に入りたいと思います。  教科書問題は九月九日一応外交的決着がついたと、このように報道されています。それは八月二十六日宮澤官房長官の談話ということで発表された政府見解が、中国、韓国に了承されたということだと思います。そこで、この政府見解の解釈なり、考え方を、その直接の責任者である官房長官、また直接の担当大臣である文部大臣、あるいはまた外交上の諸問題に発展した中で、外交上この解決のために東奔西走された外務省等々に、ひとつそれぞれお伺いをしていきたいと、このように考えています。  そこでまず第一点ですが、その政府見解の第一項に、日韓コミュニケ、日中共同声明の深く反省するという認識は現在においてもいささかの変化もないというふうにそこには記されております。深く反省するという認識は現在においてもいささかの変化もないというこの第一項のことと、一方、侵略や、あるいは朝鮮の三・一独立運動、あるいは南京の大虐殺、朝鮮人の強制連行等々について、文部省が教科書検定によってそれを書き改めるよう、その指導が強められていったということの関係であります。その教科書検定によって書き改めることが強められていったのは、まことに不思議なことで、日韓コミュニケ、日中共同声明が発せられたその当時から、この教科書記述の書きかえという検定の行為が強められてきて今日に至ったのであります。とすれば、一体、政府は深く反省するというその認識について、いささかも変化はないというふうにここで表明しておりますが、実態としては、そのときから教科書の書きかえの強制が文部省検定の名において行われてきたということはどう解釈していいのか、私にはわからんのです。国民にもこの点がよく理解のいかない点だと、このように思います。  そこで、官房長官なり、あるいは文部大臣にお伺いしますが、それでは、深い反省という事柄内容が非常に不十分であったから、そのようなことが起こったのか、いやまた、その深い反省の内容は、中身は十分なものであったけれども、文部省の教科書検定がそれを逸脱していったのか、さらにその深い反省そのものも不十分であったし、また検定もそうした日韓コミュニケ、あるいは日中共同声明の認識なり、精神を逸脱していったと、このようにこの関係を解釈していいのか、そこのところがわからないという人がたくさんいるわけなんですが、そこの点、まずこの談話を発表された長官いかがですか。どのようにそこの関係を理解すればいいのでしょうか、お伺いいたします。
  66. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日韓共同コミュニケ、あるいは日中共同声明における認識わが国の反省なり、決意なり、それは今日といえども変わらないということは、官房長官の談話に述べましたまさにそのとおり、お読みいただくとおりでございます。教科書検定の面でそれがどういうふうになっておったかということにつきましては、ちょっと私つまびらかでございませんので、説明員からでもお答えをしていただきたいと思います。
  67. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 文部省は、従来から教科書の記述が客観的で、公正であり、かつ十分な教育的配慮がなされたものでなければならない、かように考えて、中正な態度で検定を行っております。検定に臨む姿勢は一貫して今日まで少しも変わっておりません。  また、日中共同声明、日韓共同コミュニケにつきましても、現行の教科書はその趣旨を詳しく記述しておるところでございます。検定済みの教科書の記述は、文部省が正しいと判断をして検定を行った結果の記述でございますが、今回のことが深刻な外交問題に発展いたしまして、中国、韓国から強い批判を受けたことにかんがみまして、これら両国の国民感情に対する配慮において、なお欠けるところがあったに違いないということを反省いたしておる次第でございます。この反省に立脚して、教科書検定基準を改めまして、改訂のために道を開こうとしておりますことは御承知のとおりでございます。
  68. 本岡昭次

    本岡昭次君 いまの官房長官、あるいは文部大臣のお話は、今回の教科書問題が起こった本質そのものをすべて避けて通っておられるわけですね。わからんですよ。というのは、日中共同声明、日韓コミュニケの戦争行為について深く反省するという認識は、その当時もいまでもいささかも変わっていなかったと、こう言い、文部省は文部省で、それに基づいて教科書検定を客観的公正に、そして中立な態度でやってきた、こう双方がおっしゃる。しかし、中国や韓国から批判を受けたのでという事柄になってくるわけです。とすれば、その中国や韓国の批判の方に無理があったという判断を持っておられるのかと言いたくなるようなお話であるわけなんです。官房長官どうですか、私のいまの話は。  いま外務大臣もお越しになりましたので、いまの問題を再度お尋ねいたします。  政府見解の第一項で、日韓コミュニケ、日中共同声明そのものに内容としてある深く反省するという認識は、その当時からも現在もいささかも変わっていない、文部省の方もそれに従って中立公正に客観的に記述をしてきた、こう胸を張っておられるわけです。しかし、中国や韓国から御批判があったので、なお欠けるところがあるようなのでと、こういう話なんですが、事柄はそのような問題なのかということなんですよ。そういう認識で想定されることは、いまのままでも問題はないんだけれども、中国や韓国からいろいろと批判されるので、要求されるので変えましたというふうに理解する方がごく自然ということになってくるのではないかとこう思う。そこのところを、私の言っていることが間違っているなら、あなたの考えは間違いですよと、こうなんですよということ、官房長官いかがですかとお伺いしている。あるいは外務大臣、文部大臣、それぞれお答えいただきたいと思うのです。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど文部大臣が言われましたように、欠けるところがあったに違いない、こう考えたという御答弁、それで私はそのとおりであるというふうに考えておるわけでございます。
  70. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 中国、韓国の言い分に無理があったと思っておるんだろうという言葉でございましたが、決してさようなことはございません。中国の批判、韓国の批判に謙虚に耳を傾けました結果、今回公表いたしましたような措置をとろうとしておるのでございます。
  71. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いろいろ批判があったということは事実でございまして、この批判に耳を傾けて、そしてよりよく是正していくと、これは必要なことだと思っております。
  72. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは角度を変えて質問いたします。  いまの第一項の問題は、私は、いま長官なり、それから文部大臣、あるいは外務大臣がおっしゃいましたけれども、いまのような認識を持って今回の問題の外交決着をされたということであれば、本質的な問題は何も解決していないし、今後またさらに大きな問題が出てくるという懸念を強く持つということをここで表明しておきたいと思います。その問題をここでもうやっていく時間がありませんから次へ進みます。  そこで、そのようにおっしゃるのであれば、ひとつ文部大臣にお伺いしますが、昭和四十七年の九月二十九日、参議院の文教委員会で、社会党の安永委員が、日中共同声明が出されたことにかかわって、当時の稻葉文部大臣に質問をしております。  それは日中正常化された段階で、いままで足りなかった面を教育の面ではどのように補っていくのか、あるいはまた今後の日中関係を教育の分野でどのように進めていくのか、そうしたことについて基本的な考えをただしております。そして稻葉文部大臣答弁として、いかに戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたかについて国民はよく知る必要がある、責任を痛感する必要がある、深く反省する必要がある、こういう点について、今後、初等中等教育その他社会教育においてなすべきものが一ぱいあるということについて、安永委員と同感ですと、こう答弁をしています。そしてまた、文部省の側も、具体的な教科書には中国に対する侵略、日本人の反省、こうしたものがないので、考えていかなければならないのじゃないかという安永委員の質問について、大臣の御答弁の方向で検討いたしますと、このように答えているんです。議事録がありますから詳しくひとつ文部大臣も読んでおいていただきたいんですが、少なくとも十年前にこうした国会における質疑があります。いま同じことをまたこれでやろうとしているんですね。とすれば、文部省は一体十年間何をしてきたのか。当時の文部大臣、文部省の答弁をサボってきた。サボるだけじゃない、逆の方向へ方向へと検定でもって変えていった、歴史の事実を改ざんしていった。そのあげく今回、中国、韓国、東南アジアの各諸国からいろいろ批判を浴びる始末となってしまった。文部省はこの責任をどうとるんですか。このとき稻葉文部大臣、あるいは文部省がそうした事柄について検討しますということを具体的にやっておれば、宮澤官房長官もおっしゃるように、日中共同声明、日韓コミュニケのときの精神はいささかも変わっていないんだということは、まさにこのことを文部省が具体的にやっていくことであったと思うんです。それをあなた方はやらないで、小川文部大臣が客観的、公正、中立なものでありましたと幾ら胸を張られたって、これは首尾一貫しないじゃありませんか。そして、わが国が外交的に大きな損失を受けて、アジア諸国民から強い対日不信感を受けてしまった。  この間も香港へ行った私の友達が食事をしておると、あっ日本人だ、日本人だ、君たちは南京大虐殺をどう思うかと言って、一斉に詰め寄られたと言うんです。いままで香港へ何遍も行ったけれども、そんな状況に遭ったことはない、こう言うんです。これから多くの日本人はこういう場に遭遇すると思うんです。  私は、こうした対日不信感というものは、今後日本外交の上に非常に大きな損失で、取り返しのつかんことをやってしまったんではないかという気さえするんですが、文部大臣、あなたの先ほど言った、通り一遍の答弁では済まされない問題がある。文部省が重大な反省をしなければならんという点、ひとつ誠意あるこの問題に関しての回答をいただきたい。  また、官房長官にお伺いしますが、私がいま言ってきたのは一つの事例でありまして、結局、日韓コミュニケ、日中共同声明の「深く反省する」という精神なり、認識をより忠実に進めてこなかった一つの原因が、検定というものの中にあるということの認識政府としてどれほど持っておられるのかという点についてお伺いをしたい、このように思います。
  73. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 文部省は今日まで、ただいま引用なさいました稻葉文部大臣答弁趣旨を念頭に置いて努力してまいったと信じております。  御高承のように、今日の教科書におきましては、たとえば平和主義という見出しのもとで、過去の戦争に対する反省、あるいはその責任ということについて詳細に記述をいたしておりますし、日中共同声明につきましても、ことごとくの教科書がその趣旨について正しく解説をいたしておるのでございます。  文部省が検定に臨みまする姿勢については、先ほど来申し上げておるとおりでございまして、検定済みの教科書につきましては、今日までるる繰り返し申し上げておるとおりでございます。  問題はすでに外交的に落着をしてしまっておるんですから、この期に及んで蒸し返しのようなことを申し上げるつもりは全くございませんけれども、これまた繰り返しになりますけれども、きわめて強い批判を受け、抗議を受けたという事実にかんがみまして、両国の国民感情に対する配慮という点において、なお欠けているところがあったに違いないと反省をいたしておるところでございます。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの文部大臣のお答えに尽きておりますが、基本的にはこうこうこういうことでやってきたつもりである、しかし、そういう批判を受けたことについては、欠くるところがあったに違いない、こういう反省に立っておる、まさに文部大臣の言われたとおりであろうと存じます。
  75. 本岡昭次

    本岡昭次君 その欠けるところがあったに違いないということなんですが、そこのところが私は非常に重要だと思います。欠けるところがあった、欠けさせていった、そういう状態に持っていったものがあるわけですよね。絶えず原因と結果というものがあるわけで、それが文部大臣考えとか、あるいは自民党の考えとか、あるいはまた私たちの考えとか、いろんな歴史に対する考えがあるし、教科書に対する考えがあるけれども、教科書を執筆する著者なり、その出版社の出してきた教科書の内容が、それではどこでそのように変わったのか、あるいはまた変えられたのかということは、検定というその作業を通してこう変わってきたのですから、今回問題にされているのも、その検定という問題を通して起こった事柄がこういう教科書問題という大きな事態を招いたんですから。とすれば、その欠けているものということは、単に侵略がどうとか、南京大虐殺がどうとかという記述上の問題はもちろん大切ですけれども、そういう状態に至らしめたものが検定であった、だから検定そのものに欠けた点があったというふうにいまの答弁を私は理解したいんですが、それであれば私も納得します。それでよろしいですか。
  76. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 先ほど来申し上げておりますように、文部省は正しいと信じて検定を行ったのでございます。しかし、その結果非常に強い批判を受けたわけでございますから、足らざる点があったに違いないということを深く反省をいたしておるのでございます。
  77. 本岡昭次

    本岡昭次君 正しいと信じていてやってきた検定に、足らざるところがあったという点で反省をしているという、まあそれ以上論議を進めるとまたむずかしくなると思いますから、やはり検定そのものに足らざるところがあった、問題があったという認識が文部大臣にあるということを私は一応この段階では了としておきます。  そこで、その問題を次へ発展さしていきたいんですが、第二項で「政府の責任において是正する」、こうあります。いまのように足らざる点があった、至らない点があったということで、「政府の責任において是正する」、こうなってきたわけです。  そこで、その「政府の責任において是正する」事柄でございます。私はというよりも国民の多くはこう考えているんじゃないかと思います。というのは、これは日韓コミュニケなり、日中共同声明の精神を尊重してきたけれども、しかし、結果として今日見ると足らざる点があった、反省しなければならない点があったというその教科書の検定の問題と、その検定によって記述が不適切なもの、批判を招くようなものになったという点から、その教科書記述そのもの、この二つを政府の責任で是正するということであるという理解を多くの国民はしておりますが、私もそういう理解をいたしておるのですが、これで間違いはありませんか、官房長官なり文部大臣にお聞きしたいんです。あるいはまた直接その衝に当たられた外務大臣にもできればお答えいただきたいと思います。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 「政府の責任において是正する」ということは、歴史教科書の記述におきまして、アジアの近隣諸国との友好親善の精神がより適切に反映されるようにするということであると理解をいたしております。  具体的にどのような内容を含むものであるかということになりますと、これは所管の大臣なり説明員からお聞き取りをいただきたいと思います。
  79. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 官房長官談話の中で「政府の責任において是正する」と、こう申しておりますことは、韓国、中国等からの意見にかんがみて、近隣諸国との友好、親善の関係が、歴史教科書により適切に反映されるようにしますために、現行制度のもとにおいて、政府のとり得る措置を示したものだと考えております。文部省といたしましては、文部大臣の権限として実行し得ること、第一に教科用図書検定調査審議会にお諮りいたしまして、問題を解決するための検定基準のあり方について答申をいただく、いただきました上は検定基準を改定する、改定いたしました上は新たな検定基準に従って検定を行う、これを「責任において」と、こう申しておるわけでございます。
  80. 本岡昭次

    本岡昭次君 もう少し具体的に私の質問に答えていただきたいのです。是正するということは、もう少し厳密な意味を持っているんじゃないんですか。厳しく強い意味を持っているんじゃないんですか。官房長官はどのような意味で使われたか知りませんが、字引きを引きますと是正するというのは間違いを正すとありますよね、間違いを正すのです。だから間違いを正す場合には、その間違いを明らかにしなければならないわけですね、よって来る原因、結果。だから国民の多くは、いまのように近隣諸国が云々といった抽象的なことじゃなくて、今回の問題を引き起こしたその原因である教科書検定、そして中国や韓国から歴史を改ざんしたと批判をされた記述、教科書に書かれている事柄、この二つに対して、政府として足らざる点、欠けた点と言っておられますが、いわばそれを正すと、こういうことではないかと、このように考えているんですが、私の考えは間違った理解をしているんですか、官房長官
  81. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど文部大臣から教科用図書検定調査審議会に諮問をして、答申に基づいて検定基準を改める、改正すると言われたと存じますが、まさにそのことが是正ということであろうと思います。
  82. 本岡昭次

    本岡昭次君 もうこのような問答はやめておきます。  それで、是正すべきなのは教科書検定とその不適切な記述、間違った記述ということなんですよ。それをやらなければ政府の責任において是正したことにはならないという点をまずここで私ははっきりさせておきたいと思うんですが、その点について、先ほどなお欠けるところがあったということで、現行の教科書検定制度そのものを廃止してしまえ、やめてしまえという一つの議論、私は廃止すればいいと、こう思うんですが、しかし現行のこの制度があって、それが機能をしていて、その上に立ってなお今回のような問題が起こらないように改善していく方法はあるのかないのかということを考えていくということは、先ほど文部大臣が言われたように、検定そのものは中立公正で客観的なものであったけれども、なお欠けるところがあったという、その欠けるところを補っていく方向にかなっていくんではないかと、私はこう思うんですね。  そこで、その問題を二、三やりとりしたいんですが、外務大臣がお越しになっておりますので、それは外務大臣答弁をいただいた後でさしていただくことにいたします。  それで、外務大臣にお伺いしますが、最初にお伺いしたかったことです。というのは、八月二十六日のいま論議しておりますこの政府見解に不満はあるが、基本的にこの見解を受け入れる姿勢を明らかにした韓国、あるいはまた要求とかけ離れ、失望したと拒否の見解を打ち出した中国に再び補足説明を行って、外交上の決着はついたということのようですが、一体その後どのような補足説明によって両国が了承し、一応の外交的決着がついたということになったのですか、そこのところを説明を願いたいと思います。
  83. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 御指摘のとおり、二十七日に韓国が原則としてよろしいということに対しまして、翌二十八日に中国側はどうもよく事情をつまびらかにしないので同意できないと申してまいったわけでございます。その後中国側に対しましては、より詳細に今後の政府考えております段取りにつきまして御説明を申し上げたわけでございます。すなわち、いつごろ検定審議会にお諮りするか、そしていつごろその御結論が得られそうであるかという見通しについて、より詳細御説明した結果、中国側も御納得をいただいたわけでございます。韓国につきましても同様同じ手順について詳細同じタイミングにおきまして御説明を追加的に申し上げた経緯があるわけでございます。
  84. 本岡昭次

    本岡昭次君 より詳しくという、いままで第一回目の説明では納得していただけなかったものが、さらにより詳しく説明という、特により詳しく説明しなければならなかった点はどこですか。
  85. 木内昭胤

    説明員(木内昭胤君) 韓国におきましても、中国におきましても、教科書は国定教科書であるわけでございまして、そういう意味におきまして、日本側の制度というものがなかなかのみ込みいただけなかったということでございます。すなわち、諮問をいたしまして答申を求めるという段取り、あるいはその結果いろいろな措置がとられるわけでございますが、それまでの間どういったことでつないで、韓国あるいは中国側の御批判におこたえしていくかという点をさらに詳しく申し上げた次第でございます。
  86. 本岡昭次

    本岡昭次君 それで了解をいただいたということなんですが、いまの内容はさっぱりわかりませんが、まあよろしいです。  そこで、いよいよきょう午後、文部省は教科用図書検定調査審議会を招集してそこに教科書の検定基準改定を諮問するということなんですが、教科用図書検定調査審議会というこの組織は、先ほど言われた公正中立な第三者機関というふうに考えていいのですか、どうですか。
  87. 鈴木勲

    説明員鈴木勲君) 教科用図書検定調査審議会は三つの分科会がございまして、ただいま先生のお挙げになりましたのは教科用図書検定調査分科会でございまして、これは申請に係る教科用図書の検定につきまして調査をするものでございまして、文部大臣の諮問機関として専門的な立場から所掌の仕事を行う機関でございます。
  88. 本岡昭次

    本岡昭次君 私はその公正中立ということを先ほど文部大臣が検定の基準に置いているんだとおっしゃったから、公正中立な第三者機関というふうに理解していいんですかと質問しているんですから、そのとおりだとか、いや違うんだとかというふうに答弁していただければいいんです。
  89. 鈴木勲

    説明員鈴木勲君) 諮問機関の性格といたしまして、文部大臣の諮問に応じて、その諮問内容について専門的な立場から自主的に御検討いただくということでございますから、そういう意味では責任を持って専門的なお立場から御検討いただく機関であるというふうに考えております。
  90. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、私は、公正中立な第三者機関ですかということについて、そうなのかそうでないのかということを言ってください。言わないということは、公正中立な第三者機関でないというふうに考えていいんですね。それならそういう立場で私は話を進めていきますが。
  91. 鈴木勲

    説明員鈴木勲君) 一般的に諮問機関としての要件は、委員の任命とか、また文部大臣の諮問に応じて答申をするというその関係の中にあるのでございまして、委員の任命等につきましては、中立公正な立場からの人選を行っておりますし、またその答申については、文部大臣はそのとおり尊重して行っているという意味でございます。
  92. 本岡昭次

    本岡昭次君 その審議会に諮問をしていくわけですが、文部大臣として、政府が是正しようとする方向と異なるような答申が絶対出ることはないというふうに確信を抱いておられるんですか。不安はないんですか。
  93. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 審議会におかれましては、申すまでもなく自主的なお立場から十分に御論議をいただくわけでございますが、今回の問題の、特に外交上の重要性にかんがみまして、審議会におかれても十分御理解をいただいて、妥当な結論が得られることと期待をいたしておりますし、また私もそのために懸命に努力をするつもりでございます。
  94. 本岡昭次

    本岡昭次君 文部大臣が懸命に努力されるということから、前段に外交上の問題だという事柄を付しての話ですが、しかし外交上の問題であろうと、何の問題であろうと、教科書が公正中立にということで、検定そのものについて政府が直接国家権力というようなものを介入させないという非常に重要な要点があります。しかし、いま文部大臣が懸命に努力するとおっしゃったそのお言葉、そして審議会そのものも同じような答申をしなければならないというふうな関係というものは、今回だけでなく、従来からもいわゆる検定審議会そのものの性格として存在をしていたと。だから、政府の方も自信を持って、検定審議会は政府と同じ考え方を出してくれるであろうと、何の不安もないんだということになったんではないかと思うんですね。だから、私はこの検定審議会そのもののあり方ということが、検定の問題を見直していく、考えていくひとつの大事なポイントだと、このように思っているんですが、文部大臣はその検定審議会に対して、教育内容そのものを、政府の、文部省の思うとおりに、そこでひとつの基準としてはめていくんだという事柄について、何の問題意識も持たれないのですか。いかがですか。
  95. 鈴木勲

    説明員鈴木勲君) 文部大臣が諮問を申し上げようとしておる事柄は、歴史教科書の記述についての検定のあり方でございまして、教育内容そのものとは直接のかかわりはないわけでございますが、この検定調査審議会におかれましては、ただいま大臣が申し上げましたような、これまで外交問題となりました日韓、日中等の関係の歴史教科書に関する記述の決定につきましては、これからこの検定基準の改定等を含めまして、どのような観点から御審議をいただくかという観点をお示しいたしまして、自主的な立場からの御検討をいただくわけでございまして、その御検討の結果が出ますれば、先ほど大臣が申し上げましたように、検定基準の改定を行いまして、それによって今後の検定の道を開き、発行者、執筆者の申請に従って、ただいまいろいろ問題になっておりますような記述についての是正が行われるというような筋道になっているものでございまして、教育内容に文部大臣が介入するとか、そういうことではなかろうと考えております。
  96. 本岡昭次

    本岡昭次君 結果として私はそうなると思いますよね。政府の責任で検定基準そのものを変えさせていくということになり、いまそれをあなた方はやろうとしておられるんですからね。だから、そこで二つの問題があると私は思います。そうした無理をしないで、正誤訂正という方法がある。しかも教科書会社、執筆者がいま正誤訂正の申請をやろう、このようにしているんでしょう。なぜその政府の意向を、考え方を、その検定制度の中に無理やりに、中身は別として、形の上ではそれを押しつける。やらせる。しかも文部公報によって現場を指導するというふうな事柄が続いていくという、非常にこれは無理がある。教科書検定制度そのものを政府みずからがぶっつぶしているというふうな状況があります。しかし、そういう方法をしなくとも、教科書会社がいま正誤訂正をしたい、執筆者がしたいと申し出ているんですから、なぜそれを受け付けてやろうとしないのですか。その方がよほど筋が通るのじゃないですか。
  97. 鈴木勲

    説明員鈴木勲君) 正誤訂正は、これは発行者がこの正誤訂正に該当する場合には、訂正しなければならない義務を負っているのでございまして、ただいまのところ、発行者からの申し入れはないわけでございます。  なお、今回問題になっております記述は、教科用図書検定調査審議会の答申に基づきまして、いずれも理由があって検定意見を付し、それに従って記述の改善がなされたものでございまして、正誤訂正によって修正するような事柄ではないというふうに私ども考えております。
  98. 本岡昭次

    本岡昭次君 改善意見が付されて、あるいは修正意見が付される、それは文部省が改善意見なり、修正意見を付したわけで、その改善意見、修正意見を付したことから起こったのが今回のこの教科書批判問題なんでしょう。文部省は当初、政府がやったことではない。これは会社が自発的に改善をしてきたことなんだ、このようにして開き直った。しかし、事実は文部省がそうした指導をやって、ここにたくさん私も資料を持っておりますが、その多くの教科書記述の書きかえが行われた、こういう事実に立ったときに、いまの検定審議会にかける、あるいはまた教科書の検定を一年早める、あるいはまた広報でもってその間の教育の問題について現場に周知徹底させる、こうした異例の方法を一方で現在の教科書検定の制度というものをゆがめ、教育の国家支配、権力支配というふうなことにつながるような危険な道も冒しながらやろうとしている、その事柄と、教科書会社が、執筆者がいま出そうかと言っている事柄について、あなたがもう事前に受けつけられない、それは正誤訂正の範疇に入らないんだということのつり合いをとってみると、どちらの方に大きな問題があるのかというと、いま文部省が、政府がやろうとしている方にむしろ問題があるので、正誤訂正の方を素直に受け入れて、そちらを書きかえる方が、教科書は来年の四月からそれによってかわるということで、もうすべてがいわば解決するということで、そのことが教科書検定そのものの根幹にかかわる何ら重大な問題ではないと、こういうふうに考える方がより素直な自然な考え方じゃないのですか。なぜ文部省がそこまで正誤訂正を受け入れることを拒むんですか。文部省がそれをせよと言うんなら問題ですけれども、あなた方が自発的に書きかえてきたんだと言うその人たちが、今度は自発的に書きかえましょうといういま動きがある。それに対してあなた方は事前に牽制をして、それは受けつけられませんと言ってはねつけている。こんなばかな、むちゃなことはないんじゃないですか。異例の措置をとるんなら、異例の措置は幾らでもとり方があるでしょう。
  99. 鈴木勲

    説明員鈴木勲君) ただいま文部省が官房長官談話の線に沿いましてとろうとしておりますのは、あくまでも現行検定制度の枠内でなし得る最善の努力をしようというものでございまして、その枠を崩してまでやろうというものではございませんで、正誤訂正につきましては、これは本岡先生御承知のように、検定調査審議会の議を経ることなく、簡弁な手続によって修正するものでございますし、対象となる事柄につきましても、誤りが、客観的にかつ明白な誤記、誤植等の、あるいは客観的な事情の変更等のようなものに限られているものでございまして、今回問題になっておりますような事柄は、文部省が検定調査審議会の議を経まして改善意見なり修正意見を付し、それに従って著者が修正をしたという事柄でございますから、たびたび申し上げておりますように、正誤訂正という、そういう簡易な手続によって行うのではなく、やはり改訂検定という、現在の検定制度の枠内で、それをさらに、あるいは三年の周期を一年早めるというふうな措置をとることによりまして、改善を図っていくというものでありまして、正誤訂正によって行うということは、現行の検定制度の枠からは考えられないものでございます。
  100. 本岡昭次

    本岡昭次君 いまの話とても私は納得できないんですね。最も簡便な方法が一方にあって、ただそれが、文部省が修正意見、改善意見を現在の検定基準の枠内で出したものだから、出したものについてもとへ戻すわけにいかん、そんな理屈が通るんですかね。そしたら逆に、一体この検定基準の中のどの部分に該当しなくて記述訂正が行われたんですか。この改定基準のこの抽象的などの部分に該当しなかったんですか。これを直すんでしょう、これから。検定の基準というものを直すんでしょう。それでは、どの部分に侵略とか、あるいは南京大虐殺とか、三・一独立運動とかいったものが該当しなかったんですか。あなたは、正誤訂正を受け入れられない根拠は、現在のこの検定基準というものが変わっていないから受けつけられないんだと、こうおっしゃっているんでしょう。どうですか。
  101. 鈴木勲

    説明員鈴木勲君) 検定基準につきましては、内容の取り扱いとか、あるいは記述の問題とか、いろいろな観点からの見方がございまして、たとえば侵略につきまして意見を付しました改善意見につきましては、表記の統一とか、記述のバランスとか、そういう観点からつけているものでございまして、そういう観点から従来からずうっと同じような見地で意見を付してきたものでございまして、それはそれなりの理由があってやってきたものでございます。したがいまして、そのことが間違いであるということではございませんで、したがって、正誤訂正によって訂正をするという事柄ではないということはるる申し上げているところでございます。
  102. 本岡昭次

    本岡昭次君 それであるならば、今度は審議会でどのように検定基準が変わるのですか。いまおっしゃったように、統一とか、バランスの上でその言葉そのものを変えてもらわなければならないとしたその根拠が、どのような検定基準の改正が行われることによって、また侵略と書いてもいい、あるいは南京大虐殺という言葉を従来のように書いてもいいということになるんですか。基本条件とか必須条件とかいうものがありますが、検定審議会がどのような基準を書きかえることによって、そうした言葉がもとに戻るんですか。
  103. 鈴木勲

    説明員鈴木勲君) 社会科の部会に「歴史教科書の記述に関する検定の在り方」につきまして、大臣から諮問を申し上げる予定でございますが、その中には検定の基準、あるいはただいま先生お挙げになりましたような教科用図書検定基準という告示そのもの、あるいは検定におきます歴史教科書の記述に関する検定に際しての一般的な方針、あるいは検定基準細則、いろいろなものがあるわけでございますけれども、そういう検定に際しての基準となるべきものについて、どのような観点からの改善を加えたならば、いま御指摘になりましたような事柄につきまして、改善が図られるかということの御検討をこれからお願いするわけでございまして、いわゆる、お挙げになりました教科用図書検定基準のどこにどういう項目を加えたならばそうなるということまでは、いまのところ私としては申し上げることはできないわけでございます。
  104. 本岡昭次

    本岡昭次君 いやしかし、いままでそういう言葉を修正意見、改善意見として書きかえさせていた根拠というものが、現在の基準の中にあるんでしょう。統一をとるとか何か、あなた、バランスが云々とかいうものが、あるのでしょう。とすれば、その基準の改善という問題なんですが、それは審議会でやられることですということでございますが、具体的にそうした問題を、いまの検定基準であれば書きかえても受けつけられない、しかし基準が変わればそれでいいんだという、その事柄の中身というものを文部省としてはっきりつかんでいなければ、政府の責任で是正するということになっていかないんじゃないですか。こういうふうに検定基準の改善を加えてくれなければ、いままで修正意見、改善意見を付しておった事柄を付さなくてもいいというふうにはならないというものが文部省側になければいけないのと違うんですか。
  105. 鈴木勲

    説明員鈴木勲君) きょう文部大臣が諮問を申し上げる段取りになっておりまして、この場で私がこの諮問事項について、あらかじめ、非常に具体的にその中身を制約するようなことを申し上げることは、今後の検定調査審議会におきます審議に際しまして、いろいろ問題を生ずるおそれがございますので、検定調査審議会におきます今後の自主的な御検討にまつということを申し上げたわけでございまして、これまでの官房長官談話に至ります、またその中に含まれます趣旨を十分に御説明をして、検定調査審議会におきまして、そういうお立場から御検討いただき、よりよき結論が得られることを期待しているわけでございまして、そのことは先ほど来文部大臣が申し上げた御趣旨でございまして、具体的なことを申し上げなければどうしてもならないということではなかろうというふうに——ただいま検定調査審議会にお諮りをするという、ちょうどきょうがそういう段取りでございますので、その点につきましては控えさしていただきたいということを申し上げたわけでございます。
  106. 本岡昭次

    本岡昭次君 もう時間が十分ほどしかありませんから先を急いでしまいますが、それでは国内問題いろいろあるわけです。それは沖繩の戦争の記述の問題について、沖繩県議会も満場一致でもって削除されたその記述をもとに戻してもらいたい、こうした要望が沖繩全県民の声として上がって、その要請が文部大臣の手元にも届いているはずでございますが、その扱いもいまと同じような考え方であなた方は対処されようとしているんですか。
  107. 鈴木勲

    説明員鈴木勲君) 沖繩県議会等からの御要望等は承っておりますが、このたびの教科用図書検定調査審議会に対する諮問につきましては、これは外交問題になりました事柄に関連いたしまして、官房長官談話の趣旨を受けてする措置でございますので、官房長官談話の中には日中、日韓、アジア近隣諸国からの歴史教科書の記述についての批判をいただきまして、それに基づいて所要の改善措置を講ずるということでございまして、沖繩に関する記述の問題には及んでいないわけでございますから、今回の検定調査審議会に対します諮問につきましても、この事柄は諮問事項の中には入れていないわけでございます。  しかしながら、検定におきましては、いろいろな方面からの教科書に対する意見につきましては、これまでも参考にしてまいっておりますし、沖繩の件につきましても県民感情等配慮いたしまして、今後の検定において教科書の記述がより適切なものとなるような配慮を行うことは必要であろうというふうに考えております。
  108. 本岡昭次

    本岡昭次君 政府が今回の教科書問題の受けとめ方の基本的な誤りがあるということは最初に私がいろいろ追及をいたしましたが、外交的に決着がついて、あとはそれでは国内的な問題だという段階に入って、やっぱりはっきりしていることは、検定そのものに対して少しも間違いがないんだと、従来と同じようなやり方でやっていくんだということであって、一番の問題が日中、日韓のさまざまな問題、あるいは国内の問題、いま沖繩の問題も例を挙げましたが、そうした歴史的事実というふうなものが文部省の考え、あるいはまた自民党の皆さんの考え方、こうしたものが著者の思想や物の考え方の介入として行われたことが今回のような問題になったんだと、やっぱり検定そのもののあり方なんだということについて深い反省がない、ここは非常に私は残念でありますし、そこのところを直さない限り、教科書問題の根本的な解決はない、このように思うんです。だから、文部省のいま言っているのは、現在の検定制度の枠の中で、技術的な操作の中でこれはできるできないということを言っているだけで、本当の歴史的事実なり、真実なり、国民の求めているものに対してあなた方は目を背けて、それを切りまくっているということで、こういう態度ではこの問題の本質的な解決もないし、外務大臣もおられますが、日本のこれからのアジア外交の問題についても、私は大きなこれは不安を持たざるを得ない、こう思います。そして、中国も韓国も具体的な事実で示してくれと、こう言っています。私の知っている中国の人もそう言っています。しかし、その事実が教科書検定のこの制度の中で、教科書会社が次記述を書き改めてきたらそれで終わるというふうな認識は非常に甘い、それだけでは具体的な事実にならない。同じ過ちを繰り返さないために、やはり明確な検定制度そのものの見直しということを文部省が踏み出さなければ、中国も、韓国も、基本的に日本の行為そのものを信用してもらえない、私はこのように思うんです。  そこで、そのために何をなすべきかということが幾つかあると思いますが、しかし、その検定制度そのものをいますぐどうこう言わなくても、今回の問題をめぐって検定審議委員そのものの構成、審議会そのものの構成、これにメスを入れろという声が非常に強い。本当に審議会の委員が憲法なり、教育基本法を本当に尊重する人たちが任命されているのか、あるいはまた教科書問題というのはこれほど重要な問題なんだから、国際的な問題にまで発展する問題なんだから、この委員を国会の承認事項にするほどのやはり思い切った考え方が必要ではないか、こういう意見もあり、また検定の公開——密室性というものをなくさなければいけない、これは中教審の委員の中からも出始めている。こういう事柄で、教育にかかわる学者の八〇%までが、教科書の検定問題にメスを入れるべきではないかという意見を出している。こういう中にあって、文部省が現検定制度の枠というものをただ守った、守らなかったということだけに今回のこの教科書問題の結果を置くというやり方は、私は大変な過ちを犯すと、このように思います。  だから、ここで文部大臣にお答えをいただきたいんですが、検定制度をいまここであなたがこうやればいい、ああやればいいというお考えを示せということは無理だと思います。しかし、今回の教科書問題の起こってきたその根本に、そうした検定制度のあり方が問われているという認識をあなたも最初されたんでありますから、検定審議会委員の選任の問題とか、あるいは検定そのものを公開するという一つの方法として、問題点になっているところを国民的な討議に付すということもできましょうし、やはり今回の問題によって、日本の教科書制度が変わったというふうに、国内外の皆さんが安心してこの解決というものに賛意を表することができるよう文部大臣として努力を払う責任があなたにはある、このように思うのですが、文部大臣の再度検定制度のあり方そのものをこれから見直していくという事柄についてのひとつ誠意あるお答えをいただきたい、このように思います。
  109. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) 検定の制度は、改めて申し上げるまでもなく、学校教育において主たる教材として使われまする教科書の記述が、客観的かつ公正であり、十分な教育的配慮の届いたものでなければいけない、かような趣旨から申しまして、その根幹は今後もあくまで維持していくべきものと考えております。  文部省が検定に臨む姿勢につきましては、先ほど来申し上げたとおりでございますが、仕上がりにつきましては、いろいろな御批判をいただいております。いずれの御批判に対しましても謙虚に耳を傾けて参考にしてまいっておるわけでございます。  また、検定の制度そのものにつきましてもいろいろな御意見が出ておりますことは御承知のとおりでございます。検定の問題につきましてはただいま中央教育審議会で御審議をいただいておりますので、答申を待って、その趣旨を尊重しつつ改善をすべき点があれば改善をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  110. 本岡昭次

    本岡昭次君 教科書の検定制度の根幹は変えないということなんですが、それでは文部大臣、再度根幹の問題はまた別に論議するにして、最初のあなたの反省をすると言われた事柄の中に、やはり現在の教科書がつくられている過程の中で足らざる点があったということは率直にあなたも言われたわけで、その足らざる点は一体何であったのかということを、やはり制度の上にもはっきりとさせなければならんと思うんですが、いま私が言いましたように、審議会の委員を公正に選ぶ方法を検討する、あるいは公開をする、あるいはまた採択の問題等々もあろうかと思うんですが、中教審の委員会にすべてを任せるということでなく、文部省としてその反省の具体的な事実の問題として、この点をもっと真剣に考えていくということをぜひやらなければならないときが来ているということを私として強く申し上げ、これからも具体的にそうした問題について提起をさせていただくということで、もう時間も来ましたので、一応これで終わらしていただきます。
  111. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ——————————    午後一時開会
  112. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を一括して議題とし、総括質疑のうち、内閣総理大臣に対する質疑を行います。  総理に対する質疑時間等につきましては、理事会において協議し、各質疑者に御通知申し上げたとおりでございます。  それではこれより質疑に入りますが、まず私が各派のお許しを得て、決算委員長として総理に若干の質問をいたします。  私どもは、昭和五十四年度、五十五年度の決算の審査を開始するに当たりまして、鈴木総理の御出席を多といたします。  時間が短いことは非常に遺憾でございますが、まず決算の国会における審議について、総理はどのようにお考えになっているのか。国の決算が今日きわめておくれてしまっております。私どもこうした国会の決算の審議状況を国会関係以外の人にお話を申し上げますと、まさかうそではないかとすら言われるような状態でありまして、都道府県や市町村の議会では、九月、十月あたりから五十六年度の決算審査が始まろうとしております。今回、きわめて異例でございますけれども、私どもはこの一年間で二カ年分の決算審査をしようということで決意をしている次第であります。しかし、このことができるのもできないのも、総理や政府側の対応いかんにあるわけであります。決算とその国会における審査についての基本的な首相の御認識をこの際お聞きをしておきたいと思います。
  113. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 決算は予算執行の表示でございまして、きわめて重要なものと心得ております。決算の御審議をいただくに当たりまして、その審議を通じまして予算が適正に執行されておるかどうか、また予算が真に成果をおさめるようになされておるかどうか、そういう点を審議を通じて掘り下げた御審議を願うわけでございますから、この決算の審議の結果につきましては、政府としては今後の予算の編成の上に、また予算執行の上に最大限にこれを尊重し生かしていかなければならない、このように考えておるところでございます。  また、ただいま委員長から、決算の審議がおくれておることにかんがみて、またその重要性に思いをいたして、五十四年度、五十五年度の決算を一括して当委員会では御審議をいただくという大変な御配慮をちょうだいをいたしておるわけでございまして、この点深く心から御礼を申し上げます。また、この審議につきましては、政府といたしましても最大限の御協力を申し上げたいと、こう思っております。
  114. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 今日、政治経済の流れは非常に早いものでありまして、恐らく最近の財政事情というものを昭和五十四年度当初予想した者は余りなかったと思います。余りにもかけ離れた情勢で決算の審査をやるということになりますと、いま総理がおっしゃっていたような予算執行への影響というようなこともきわめて不十分になってしまうわけであります。  今日、財政危機の中にありまして、少ない歳入でもってより効果のある行政効果を上げる、このことがきわめて重要な段階に入っているわけであります。諸外国の中には費用効果分析などというようなことを行いまして、予算の執行に生かしているという国もあるように承っているわけでありますけれども日本政府もそうした制度を導入を図るべきであろうかと思いますし、あるいはある意味では制度としてではなくても、そのようにおやりになっていると思うわけでありますけれども、国会としてもそれに応じて費用と効果の考量というものを今日考えなくちゃならない。そのためにはどうしても、余りにも古い決算を今日状況でやるというのは、そういうことが期待できない、こういうふうに思うわけですが、総理はその点についてどのようにお考えなのか、再度確かめておきたいと思います。
  115. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 全く委員長の御指摘のとおりであろうかと思うわけでありまして、政府におきましても、国会と一体になって決算の審査の促進を図りまして、そして大きな情勢の変化のない中において、予算の執行、あるいは予算の効果というものが、決算委員会において御審査をいただけるようにしなければならない。またその予算の実際上の効果、そういうものにつきましても、十分政府としても研究をしてまいりたい、このように考えております。
  116. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 私どもは、きょうとそれから十六日の総括審査を終わると、後各省別の審査に入るということになるわけでありますけれども、今日もそれらの省庁と日程を打ち合わせつつありますけれども大臣が外遊するとか、あるいは何々の送別会があるとか、あるいは激励会があるとかということで、なかなかその日程がとれないというのが現状であります。これではせっかく総理がいまお話しになったようなこともできない。何か各省庁とも逃げよう逃げようというような態度が見られて非常に遺憾であります。私どもも総理の御出席を願う、このためにはもう二カ月ぐらい総理の御出席に対して御努力を願うことにしたんですが、今日ようやくそれが実現したということ自体を見ましても、そうした状況がうかがえるわけでありますけれども先ほどのお言葉のように、今後各省庁の大臣、幹部を激励いたしまして、せっかくここ二年分の決算をやろうという私どもの決意に水を注がないように、各省庁をひとつ十分督励をしていただきたい、このように考えますが、いかがでしょうか。
  117. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 委員長からいろいろ御叱正をいただいたわけでありますが、当委員会におきまして五十四年、五十五年の決算を一括審議をしようという大変な御高配また御熱意の存するところをよく私どもも評価をいたしておるわけでありまして、政府としてもこれに十分こたえるようにしなければいけないということにつきまして、各省庁、各大臣等を督励いたしまして、御趣旨に沿うようにいたしたい、こう思います。
  118. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 以上で私の質疑を終わります。  それでは質疑のある方は順次御発言を願います。
  119. 本岡昭次

    本岡昭次君 まず、歳入欠陥問題について四点お伺いします。  昭和五十六年度の歳入歳出の出納事務は、去る七月三十一日に主計簿が締められました。その結果、一般会計で二兆四千九百四十八億円という歳入歳出決算上の不足額が確定しております。本年度——五十七年度の税収見込み三十六兆六千二百四十億円は、五十六年度の税収が確保されることが前提となって見込まれておりますが、しかし、いまも述べましたように、この前提が狂ったため、このままでは現在の景気動向から見て、五十七年度の税収は五兆円にも及ぶ不足を生じることは必至の状況にある、このように言われておるわけでございます。  そこで、まず第一に、この巨額な歳入欠陥についての総理の責任についてであります。これまで大蔵大臣も国会において歳入欠陥の規模が確定すれば、その内容によっては責任をとるといった答弁をしておられましたし、去る八月二十三日、歳入欠陥についての政治責任を認められて進退伺いを総理に出されています。しかし、総理は渡辺大蔵大臣の進退伺いについてそれを慰留されたのでありますが、それでは総理はこの巨額な歳入欠陥問題についての政治責任をどのように考えられておられるのか、また今後総理としてどのようにされるおつもりなのか、まずお伺いをしたいと思います。
  120. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 五十六年度の歳入欠陥が世界的な経済不況その他のいろんな状況の変化等によりまして、税収の見込みが大幅に狂った。そして、二兆五千億程度の歳入欠陥を生じたわけでございまして、この点はまことに残念でならないところでございます。  五十七年度の問題につきましては、まだその途中でございますから、はっきりした歳入のめどが立っておりませんけれども、しかし、五十六年度の土台がそのように下がったわけでございますから、五十七年度におきましても、相当の歳入欠陥が生ずるであろうということが予想をされるところでございます。大蔵大臣は、現時点において機械的に算出をしてみると、五兆円ないし六兆円程度の税収減が出るのではないか、こういうような見通しをいたしておるわけでございます。非常に厳しい状況に相なっております。  そういうようなことから、一体どういう責任をとるのかという問題でありますが、これはいかにしてこの歳入欠陥を補てんをするか。それにはまず第一に、やはり歳出の思い切った削減をせざるを得ません。さらにまた、歳入の面におきましても、あらゆる面にわたりまして見直しを行いまして、そうして歳入歳出ともに財源をできるだけ捻出をして、必要最小限度にこの歳入欠陥というものを詰めるようにしなければいけない、このような努力をいま政府としては懸命にやっておる段階でございます。  五十九年度特例公債依存の体質を脱却をするという目標、しかも、これを達成するに当たりまして、大きな増税を念頭に置かずにこれを達成をしようということを私は国民の皆さんにお約束をしながら、これに努力をしてきておるところでございます。  私は財政再建に取り組むに当たりまして、二つの目的を掲げておるわけでございます。一つは、私が総理に就任いたしました際にすでに七十兆を超える国債残高がございましたが、これを何とか減らすようにしたい、少なくともふやさないように努力をしたい、そのために財政再建という一つの五十九年度を目標としたものを掲げて、これに努力をしてまいりました。  もう一つは、これを行うことによって、高度経済成長時代から肥大化を続けてまいりましたところのわが国の財政構造、こういうものを、歳出歳入等を思い切って厳しく見直しをして、そうしてその減量化を図ろう、合理化を図ろう、こういうことを目標にして努力をしてきたわけでございます。  後段に申し上げたところの財政構造の体質改善、この面につきましては、幾らかの前進を私は現実に見ておると思っております。具体的に申し上げますと、昭和四十六年から五十五年までの十年間、平均いたしまして一八%程度の毎年一般歳出の伸びがあったわけでございますが、これを五十六年度予算におきましては前年対比で四・三%、また、五十七年度におきましては一・八%というぐあいにこれを圧縮をすることができた、こういうことでございまして、幾らかその面においては成果をおさめておりますが、残念ながらいまの国債の累積残高、これを減らす、思い切って、これをなくするという目標につきましては、世界的な経済の状況、その他厳しい環境等からいって、これが十分な達成ができないでおるというのが現状でございます。
  121. 本岡昭次

    本岡昭次君 総理はいまのような現状の分析の上で責任をとることは、自分の約束したその二つの公約を実現するために、これから精いっぱい努力することだ、このようにおっしゃっておられるんですが、現在のそうした予想される巨大な歳入欠陥、あるいはまた、いまも五十六年、五十七年と財政を圧縮するそうした措置の結果、長期の不況ということから、国民の間には景気を一日も早く回復する具体的な措置をとってもらいたいという強い要求もある中で、臨時国会を早期に開催すべきだと。そして総理も御自身の思うところを十分述べられ、そしてみんなで力を合わせて、こうした問題の解決に当たっていこう、こういうことをわれわれは申しているんですが、総理は、臨時国会をどのような時期に開催して、いまいろいろ述べられたような問題の解決に当たろうとされているのか、説明を願いたいと思います。
  122. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 臨時国会の早期開催を求める御意見がいろいろ各方面にございますが、私は、臨時国会を開く場合におきまして、具体的には二つの目的がここにあると思っております。  一つは、いま本岡さんからお話がございました景気回復の停滞、こういう面から言って、景気対策をやる、補正予算等を提出をして景気にてこ入れをする、こういう目的。  また一つは、かつてない大きな災害が頻発をいたしまして、九州から北海道に至る各地で大きな被害を出しております。そういう災害対策を実施する。  それから、もう一つの問題は、臨調から第三次の基本答申がなされたわけでございまして、この基本答申は、わが国の行革史上非常に画期的な内容のものを含んでおるわけでございます。そういうような観点から、この基本答申で緊急実施を要するもの、そういうものはできるだけ早く法案を作案をし、そして、国会に提出をして御審議を願うということが必要である、このように考えておるわけでございます。  前段の景気対策の問題につきましては、御承知のように、四−六のQEが先般発表になりました。これを見ますと、内需が、個人消費が伸びております関係で一・三という伸びを示しており、年率にいたしまして五・一%の伸び率という、相当高い、期待されるような成長を示しておるわけでございます。しかし、これをしさいに検討いたしました場合に、四−六のQEがそうなっておるからと言って、必ずしも楽観を許さない、いろいろ分析の結果、これだけで判断をするわけにはいかない。その後における経済諸指標等も十分検討する必要がある、このように考えておるわけでございます。  そういうような観点から、実は昨日の月例の経済関係の閣僚会議で、私から関係閣僚に対しまして、特に経企庁長官を中心として、下期の経済見通し、これが閣内で一致いたしませんと一つの方向にまとまった対策が出ないわけでございますので、この下期の経済見通しを早急にひとつ固めてほしい、それに基づいて必要な経済対策、景気対策を講ずる必要があるかどうか前向きで検討していこう、こういうことにいたしまして、この作業を督励をいたしておるところでございます。  それから、臨調の答申につきましては、国鉄再建監理委員会法というような、できるだけ早くこれを取り上げる必要のある案件等々につきまして、内閣の審議室に準備室を設けまして、これを督励をいたしておるところでございます。  これらの準備ができ次第、いろんなことを総合的に勘案をいたしまして、できるだけ早く必要な国会の召集等も考えたい、このように考えておるところでございます。
  123. 本岡昭次

    本岡昭次君 いまの問題について、また後ほど同僚委員が大蔵大臣の方といろいろ質疑をされることと思いますので、質問を予定しております中身を急いで総理に尋ねてまいりたいと思います。  いまいろいろお話しになりました財政問題について、新聞報道によりますと、明後十六日に総理は記者会見を行って、財政の非常事態宣言というふうな内容をもって、財政危機の現状を国民に訴えて協力を求めることにしたというふうなことを見るわけです。  そこで、私は記者会見でそのようなことを行われるのも一つの方法だと思うんですが、きょうこのように決算委員会という公式の場があり、必要があれば、それぞれ各委員会を開いて、国会という公式の場で、そうした問題についての提起、そして国会を通して国民に訴えるというふうにされるのが至当ではないか、このように思うんですが。そこで、国民協力を求めたいとおっしゃっているその協力の中身、それはどのような事柄をいまお考えになっておられるのか、ひとつこの決算委員会という場でお示しを願えればありがたいと思います。
  124. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) わが国の財政の現状は、ただいまも本岡委員にお話を申し上げましたように、大変な厳しい状況に置かれておるわけでございます。公債の累積残高は九十兆円を現在超えるような状況でございます。一日の国債費は百七十七億円に上る。そして国債費は公共事業費を上回る、社会保障関係の予算にも近づこうとしておる。こういう状況であり、また十兆円の国債を発行いたしましても、その八割が国債の利払い、そういうものに充てられるというようなことでございまして、大変ないま財政は厳しい環境、そしていろいろの施策をやってまいりますためにもそれが大きな制約になる。また、公債を仮に発行いたしまするにしても、これが今度は金融圧迫になる、こういうような財政、金融全体に悪い影響もすでに出てきておるという状況でございまして、こういう実情を国民の皆さんにまとめて御報告をする、国会を通じてそれぞれいままでもやってきておりますけれども、そのことを直接私が国民の皆さんに御報告をして、そしてこの財政再建について、政府がこれからいろいろの問題を検討してまいりますに当たりまして、国民の皆さんの御理解と御協力をお願いをしたいというのが趣旨でございます。  そういうことでございまして、国会におきましては、本日も決算委員会においていろいろお尋ねがございますし、お答えをいたしまして、明らかにいたしたいと思っておりますが、臨時国会は先ほど申し上げましたように、諸般の準備を整えた上でということになりますので、十六日に記者会見でこのことを御報告をしたいというのが私の考えでございます。
  125. 本岡昭次

    本岡昭次君 国民が一番いま不安に思っていることは、いま総理が財政の危機、それが国民の生活にいろいろな形で圧迫をしている状況は、国民一人一人は現実に生活の中で感じ取っていても、政府の対策、方策というのが一向にはっきりせずに、いつも抽象的な論議で済まされてしまっている。また、鈴木総理の政治手法と言われている問題を先送り先送りしていくというふうな事柄の中で不安を持っているわけなんです。だから、はっきりと具体的な方策を、考え方を一日も早く示して、その中で国民の不安を取り除いていくということが、いま総理に課せられた一番大切なことであると思いますので、その点ぜひこれから機会あるごとに具体的に問題の解明、将来の展望、そういうことをやっていただきたいということを強く要望しておきまして、次の教科書問題に入らしていただきたいと、このように思います。  それで、総理は二十六日に訪中をされるわけですが、ずばりと言って、訪中の目的を私たちはどのように考えたらいいのですか、ひとつおっしゃっていただきたいと思います。
  126. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 日中国交正常化が実現をいたしましてから満十カ年を迎えるわけでございます。この間、日中両国政府はもとより、日中両国民の不断の努力によりまして、日中の友好協力関係はすばらしい進展を見てまいったわけでございます。今後日中の友好関係をさらにこの十年を節目に将来に向かって発展をさしていくということが、今日非常に私は重要である、特に日中関係が良好になってまいりますことはアジアの平和と安定、ひいては世界の平和と安定にもこれは寄与するゆえんであると、このように考えておりまして、さきに中国の趙紫陽総理がわが国を訪問をされました。また、その答礼も含めまして、私が今回訪中をして、中国の首脳とひざを突き合わして隔意ない意見の交換をしたい。また中国が四つの近代化政策を進めてまいっておりますが、これに対しまして日本としても応分の協力を今月までやってきたわけでございます。そういう四つの近代化に努力をしておる中国の姿、最近の状況というものも、この目で確かめてきたいものと、このように考えております。
  127. 本岡昭次

    本岡昭次君 幸い訪中されるまでに教科書問題が外交的決着ということで収拾をされたということ、これは総理が訪中されるについてはよかったと、このように私思うんですが、しかし、これは外交的決着でありまして、基本的な問題は残っているし、やはり中国側も不満とする点を幾つか持っております。したがって、私は、中国の側が総理の訪中を熱烈歓迎するというふうに言っており、それは当然だと思います。しかし、教科書問題は避けて通れるかと言えば、やはり日中友好の根幹にかかわる問題がその背景にありますだけに、これは避けて通れないという私は認識を持っているんですが、総理はどうお考えですか。
  128. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この教科書問題につきましては、日本政府といたしまして中国、韓国を初め、近隣諸国の厳しい世論に謙虚に耳を傾けまして、日本として誠意を尽くして、最大限の努力をいたしたわけでございます。これは官房長官談話の中に明らかにされておるところでございます。これによって中国、韓国の御理解をいただきまして、一応、外交的には決着を見たことは大変よかったと考えておるわけでございます。  問題は、官房長官談話で日本立場を、日本政府考えを明らかにしたわけでございますから、それを今後は誠実に実行をいたしまして、教科書の是正すべき点は是正をされるということがはっきりしなければならないわけでございまして、今後は政府としてはそれに向かって最善を尽くしてまいる考えでございます。と同時に、私はこの教科書問題を契機といたしまして、アジアの中における日本として、アジアの国々、アジアの国民の方々から真に信頼をされる、また尊敬をされる、そういう日本にならなければならないわけでございまして、そういう点において、私どもは十分今回の教科書問題で、いまだ日本が手放しでこのアジアの中の日本というような立場を固持しておられるような状態でない。本当に、常に反省もし、また努力をして、近隣諸国との友好協力関係を発展をさせる、また軍事的な面等におきましても、近隣諸国にいささかでも脅威を与えるような、そういうことであってはいけない。そういう点を十分反省もし、絶えず日本立場というものを明らかにいたしまして、アジアの中における日本に対する信頼を今後確立をしていく必要がある、そういう努力も必要である、このように考えておるところでございます。
  129. 本岡昭次

    本岡昭次君 抽象的には理解ができるんですが、そこで具体的にお伺いをいたします。  私は、中国がいま基本原則だ、重要な原則問題だと言って日本政府に対して突きつけている問題、それは日本軍国主義の中国侵略を認めるか認めないかという問題である、この問題は解決していない、このように外交決着の中でも中国見解として述べているわけです。  そしてまた総理は、この中国侵略を認めるか認めないかという問題にかかわって、去る八月二十三日、侵略か進出かは後世の史家の判断にまつという言葉記者会見の中で一定の見解を示されました。このことは、総理の意図はどこにあるか別にして、内外から大きな批判を浴びております。後世の史家の判断にまつ——後世と言えばあの世、後の世ということで、総理は総理である間は絶対この判断をしないのかということになってくるわけです。さらに、八月二十七日、衆議院の文教委員会において宮澤官房長官政府の問題、立場として同じことを繰り返し答弁をされております。  したがって、総理として日本軍国主義による中国侵略というものを認めるか認めないか、ここの問題ははっきりとした態度を決めて、日本軍国主義の中国侵略というのは歴史的事実であるというはっきりとした確認をした上で、中国に行かれなければ大変なことになると考えます。あの趙中国首相も、日本の中国侵略は紛れもない事実で、私は三光政策の目撃者である、焼き尽くす、奪い尽くす、殺し尽くすという、この問題について目撃者であるというふうに、日本の中国侵略に対する明確な認識を示しておられます。したがって、ここのところをあいまいにしたまま総理が中国を訪問されるということは大変問題がある、こう思うんですが、その点に関して総理の明快な、後世の史家の判断にまつんじゃなくて、中国を訪問するに当たって、私はこうだと言って日本国民にも示し、安心して中国に行ってもらえるようにしてもらわなければならんと思うんですが、いかがですか。
  130. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 戦前のわが国の行為につきまして、中国を含めて、侵略であるという厳しい批判がなされておりますことは事実でございます。  わが方といたしましても、この事実というものが存在する、そういう日本の戦前の行為は侵略である、こういう厳しい批判があるという事実、その事実を踏まえまして、今後日本としては対応を誤りなくやっていかなければならない、このように考えております。  こういう認識の上に立ちまして、御承知のように、日中国交正常化の際における共同声明の前文におきまして、「日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省をする」、こういうことを前文で申し上げておるところでございます。  私は、この問題が教科書で取り上げられたわけでありますが、こういうことを十分、この精神を私どもは教育の中に、教科書の中に正しく反映をさしていかなければならない、このように考えております。
  131. 本岡昭次

    本岡昭次君 過去の日本の行為が侵略であるという批判がある、その批判そのものは事実であるとして、その存在を認めるという非常に回りくどい、ややこしい理解の示し方であります。どうですか、それをもう一歩踏み込まなければ、中国側が、教科書問題は一応政治的に解決はしたけれども、基本原則をはっきりしてもらわなけりゃならんと言っているのは、日本軍国主義の中国侵略を認めるか認めないか、こう端的に提起をしているんですから、中国が日本の過去の戦争が侵略であるとおっしゃっている、そのことを批判されているということは認めますということであれば、それは日本政府一つの見解なり、判断にはなり得ない。ましてや私も含めて、日本人全体の総意を総理が代弁されることにもならない。多くは明らかに中国侵略というものを日本軍国主義が行ったという事実を、これは国民の圧倒的多数が認めているんですから、それを総理が代弁されることをなぜちゅうちょされるのか、そこが私はわからない。だから、今回のような教科書問題が——日中共同声明、日韓コミュニケの認識はいささかも変わっていないと言われたけれども、起こったんだ、こう判断をするわけです。  首相、どうか率直に一歩踏み込んで、中国が重要な原則問題であるということについて、日本も同じ立場であるということを国民の総意として総理がぜひおっしゃっていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。
  132. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この問題につきましては、日中国交正常化の際におきまして、あの共同声明の前文で、日中両国が協議、検討いたしました結果の結論といたしまして、あのように「戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」、こういうことで、日中の間ではっきりとこれを共同声明の中に明らかにいたしておるところでございます。
  133. 本岡昭次

    本岡昭次君 依然として総理の言葉の中からは、中国侵略を認めるか認めないかということが重大な原則問題であるといって、やはり外交決着した後も日本に対して突きつけているわけですから、この問題を総理がしっかりとした認識を持たれた上で、表現はどのようにあろうと、それはその会話の中で出せばいいんですが、そういう国民一つの総意、日本の国としての総意、それを総理がやっていただかなければ、日本国民はみんなそうだと、こう思われてしまいますよ。あなたが、一部の軍国主義者と言われている中のあなたが一部であればよろしいよ、私たちはそのほかなんだから。だけれども、一部の軍国主義者云々の中の総理は一部でない、こう総理も思っておられると思うんですよ。とすれば、これはどう考えてもいまの総理の答弁には納得できないんです。非常にしつこいようですがね、この際、教科書問題でここまでいろいろ論議もした、考え合ってもきた、その結果としてこの日中友好の実をさらに発展していくため、総理もおっしゃったけれども、十年前の日中共同声明の中で盛り込まれた精神をより発展させていくということは、とりもなおさずその原則問題を、過去、原則問題を具体的に表現できなかったことをいまするということじゃないですか。でなければ総理のお言葉は抽象論に終わってしまう、こう思うんです。もう一度ひとつ総理国民総意を代弁して中国へ行かれるという立場ではっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  134. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) しつこいようでございますが、私は過去における日本の行為、これに対しまして、中国を含むところの国際的な立場から、この行為が侵略であると、こういう厳しい批判が出ておる、これは事実でございます。この事実を私ども認識をして、この認識の上に立って、今後の日本の外交を初め、諸外国とのおつき合い、対応というものをしっかりとしていかなければならない、こういう認識で日中国交正常化を図った際の共同声明の前文におきまして、あのようにはっきりと両国の公式の文書の中にうたっておるわけでございますから、これで日本立場というものは十分明らかになっておると思います。
  135. 本岡昭次

    本岡昭次君 まあどう言ったらいいのか私もわからへんですがね。しかし、私は公式の場で首相と論議をした以上、私の結論は、総理の表現はいろいろ回りくどくわかりにくく言っているけれども、中国侵略ということは歴史的事実として私は認めているんだと、だけれども何かの事情があってここでなかなか言えないんだというふうに私は理解させてもらいます。そうでなければこれは大変なことになりますから。でなければあなたも中国へ行けない、行っても大変むずかしいことになると思いますから。私は総理としては中国侵略という歴史的事実は認めている、ただ日中国交回復、あるいは共同声明のそのときの事情とか何かあるか知りませんが、そういうことをはっきり言えないんだと、私はそう理解し、これからも総理はそういうふうに理解していると思っていきたいと思うんですが、でないと日本人が救われないと思うんですが、それでよろしいですか。
  136. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、繰り返し申し上げておりますように、日中の間におきまして国交正常化がなされた、これからも日中は将来に向かって本当に隣国の友邦として仲よくつき合っていこうと、そういう際の共同声明の前文の中に、いま申し上げたようなことを公式に両国で声明を出しておるわけでございますから、これが私は日中の間では十分理解されておる、そしてその上に立って日中の友好協力関係というものは発展をしてきておると、このように私は考えておるところでございます。
  137. 本岡昭次

    本岡昭次君 また別の機会に論議をさしていただきたいと思いますが、やはり私は心配します。総理のいまのような認識、そして発言の仕方、こうしたことが日中共同声明以降十年間、あるいは日韓コミュニケ以降のこの間、文部省が教科書検定を通して歴史的事実を改ざんをするということにつながってきたんだと思いますので、一日も早く、いま言えないんならば、そうした問題を明確にする政府の見解をまとめていただきたいということを要望します。  最後に一点だけ、これで終わります。  実は午前中日米シーレーン防衛日米共同防衛について防衛庁との間で幾つか質疑をいたしました。その中で防衛庁の見解として明らかになったことを確認をさしていただきます。  一つは、共同研究はその結果が防衛計画大綱を見直すとか、あるいは防衛力増強するとか、そういったものにつながる性格のものでない。二点目として、集団自衛権の方向に踏み入る研究ではない。こうしたことを確認いただいたんですが、総理も先ほど今日の教料書問題を通して、アジアの皆さんに軍事的にいささかも脅威をこれから与えるようなことがあってはならんと思っていますということも先ほど答弁いただきましたが、そうしたことも絡めて、総理のひとつ明確な確認をいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  138. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 日米防衛協力の指針、つまりガイドラインでございますが、それに基づきまして、シーレーンにつきましても共同研究をしていこう、こういうことでございます。これは現在持っておるところの日本防衛力の中で、有事の際にどのようにこのシーレーンを守っていくに当たって、共同でこれに有効に対処をするかということを研究をしようというものでございまして、これが集団自衛権に及んで、憲法がこれを認めるわけにはいかない、憲法に抵触するようなことはもとよりあり得ないことでございます。  それから、現在の防衛力の中でどう対処するかを共同研究をするわけでございますから、このことが将来の防衛力増強、そういうものを検討する、算定をする材料になるとか、そういうようなものではございません。このガイドラインを設定をし、ガイドラインに基づいて日米協議をする場合におきましては、憲法また自衛隊法、その他国内法、日本の諸般の法律等々の枠内においてすべてやるというようなことが明確に合意されて、その上に立ってなされておる、こういうことでございますので、本岡さん御心配になるようなことはございませんし、恐らく私のこの見解は、防衛庁長官の見解と全く一致しておるものと、このように思います。
  139. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほどから総理の答弁をお伺いしておりましたが、非常に短い時間でございますので、総理の率直な御答弁を期待したいと思います。  私は質問の順番を変えまして、ただいま同僚議員の方から教科書問題と中国訪問の問題がございましたので、これも一言だけやっぱり詰めて聞いておきたいと思います。  それは総理、私が聞いておりましても総理の言うことがわからないわけです。もう少しわかりやすくぱっと言うてほしいわけです。それは何でかといいますと、総理、非常に憎たらしいことを私これからちょっと言います。それは、総理が総理大臣になられたとき、国民鈴木内閣の支持率というのは五二%ありました。鈴木内閣を支持しないというのが一八%です。ところが現在は、これはほんの二、三日前の同じ新聞の調査によりますと、鈴木内閣を支持するというのは二六%で、支持しないというのが五二%と、こうなっている、逆転してますね。これだけ逆転した原因は一体何か。これはいろいろあると思います。いろいろあると思いますが、鈴木さんのある面ではいい点であろうと思いますが、ある点では非常に欠点である優柔不断というのか、わかりにくいというのか、これがやっぱり大きな原因じゃないかと私は心配しておるわけです。  そこで、いまのこの教科書問題ですが、いろいろ共同声明の問題等も全部わかっているわけです。私たちの手元にもあります。総理が日ごろそういう答弁をされていることもわかっているわけです。しかしながら、現実の問題として、あなたはこの間国会が終わりましてすぐに記者会見がありました。先ほどお話がございました。あのときの記者会見で、あなたは日本が中国を侵略したかどうかは後世の史家の判断にまつと、こういうふうに発言をされておるわけです。後世の史家の判断にまつということと、共同声明の中身とは違うとるわけですよ。共同声明には明確にあなたがおっしゃったように、さっきから言っているわけです。過去において日本国は戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省するとあるわけです。あなたも何回もおっしゃっているとおりです。ここには侵略という言葉は出てきませんが、明確にその点は僕は裏づけとしてあったんだろうと思うんです。日本がそういう迷惑をかけたか、かけてないかということについては、史家の判断にまつなんという認識で中国に行ったんでは、これはかなわん。そうじゃなくて、もう少し明確に、中国に対して過去の戦争が日本の軍国主義による中国侵略であったことを明確にあなたが認めるかどうかということです。この点は余り長い時間こんなこと言うてられしまへんので、明確にぱっとおっしゃっていただけませんか、総理の認識として。私は共同声明のこととか、そういうことは全部わかっているわけです。その上で総理の認識を、私はこうだとはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  140. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 後世の史家云々と申し上げたのは、歴史に対する一般論として申し上げましたが、その後で、先ほど本岡さんにお答えをしたような御答弁をすぐそれに続けて申し上げておるわけでございまして、後世の史家が私の答弁のすべてではなかったということも、これも明らかでございます。私は先ほど来申し上げておりますように、わが国のこの行為、戦争を通じての行為というものが、中国の国民に大変な損害を与えたと、こういう責任を痛感して深く反省をしておるということで、すべてが、この日本の行為というものが中国の国民に大変な御迷惑をかけた、損害を与えた、反省をしておるということが明らかであろうかと思います。
  141. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまおっしゃった中には、中国侵略であったということも入っておるわけですな、総理のその発言の中には。
  142. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そういう表現をストレートで私は使っておりませんけれども、いまの共同声明の前文のあの表現の中には、日本が中国国民に対して申しわけのないことをしたということははっきり出ておると思います。
  143. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、いまおっしゃったその中に、中国に対して、日本軍国主義による中国侵略であったということを、そうであったかどうかということが問題になっているからわざわざそこを言っているわけですけれども、このことはそうだったと言っても特別むずかしい問題じゃないんじゃないでしょうか。やっぱり何かむずかしい問題があるわけですか。共同声明の言葉、語句にこだわって総理は答弁しておられますけれども、そこのところはどうなんですか。
  144. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これは一貫した政府答弁の筋でございまして、私はこれはそのとおり申し上げ、そして皆さんの御理解を願いたいと、こう思っております。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まあ、非常に私も納得はできませんけれども、時間がございませんので次に進みます。  これも総理、最近の不況、あるいは財政危機、あるいは対外的な円安という問題非常に厳しい情勢にあるということは、もう総理も御認識のとおりだと私も思います。しかしながら、そういうふうな非常に厳しい情勢にありながら、政府の毅然とした対策というようなものが現実に講じられていない。先ほども同僚議員の方からいろいろ質問ございましたけれども、中身がありません。そこで私は総理にまず基本的な問題として、先ほど答弁になりましたけれども、どうも納得できない問題として三点だけ明確にしたいと思います。  まず第一点として、これは総理が先ほどもおっしゃいましたが、五十九年度までに赤字国債依存を脱却する。これはもう総理が公約していらっしゃるわけです。しかしながら、先ほどの総理の答弁を聞いておりましても、また現実に最近の歳入欠陥、昨年度の約三兆円に及ぶ欠陥、それから本年度の見込み五兆円、あるいは来年度はさらに拡大することは、当然これはもうだれが見てもそうなるんじゃないかと、そういうように考えているわけです。そういうふうな事態になっても、まだ総理は先ほど答弁の中にも、何となく五十九年度までには赤字国債依存を脱却する、そういうことはまだ堅持していかれるような御答弁をしていらっしゃいますが、これはもうちょっと無理じゃないかとわれわれそういうふうに判断をするわけですが、もし総理がそれをまだこのとおり守っていくのだというのであるならば、これは総理はやっぱりわれわれ国民に対しても、何かその場しのぎでいわゆる言い抜けていっているんじゃないか、そういうような感じすらするわけです。先ほどおたくの党の議員さんとずいぶんこの問題についても討論をいたしておりましたけれども、いま時分こんなことを総理が、五十九年度までに赤字国債依存を脱却するなんて、いま時分そんなことを言っているのはもう白々しいと、こう言うていました。名前は言いませんが、ほんまにそう言うてましたよ。そういうような点からいきますと、総理、こういう点は、これはわれわれもそう思いますし、おたくの党の皆さんも何人かの方はそう思っていらっしゃるわけです。これは総理、一つはっきりしていただきたいと思うんですが、どうですか。
  146. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 財政再建に当たりまして、目標を五十九年度、特例公債依存の体質を脱却する。それは六十年から特例公債の償還が始まりますから、その償還の財源を新たな特例公債の発行で財源をつくって償還に充てるというようなことではいけないということで、そういう私は目標を設定をしたわけでございます。  そこで、先ほども申し上げましたように、一方において増税なきということも申し上げておる。こういう両方から一つの歯どめをかけておるわけでございますが、これによって、私はさっきも申し上げたように、日本の高度経済成長時代からの肥大化した財政体質というものを思い切って体質改善をしようと、こういうねらいが一つございます。もう一つは、この税収が予定どおり入ってくれば、五十九年に特例公債を発行せんで済むようにと、この二つの目標でありますが、一方の方は世界的な大不況の関係等もございまして、税収が思うに任せない、こういうことで、大変五十九年脱却という目標が、環境条件が厳しくなっておる、これは私も認めます。認めますが、一方において財政再建の財政体質を改善するという一つの大きな目標もあるわけでございます。これを増税なきも外す、五十九年も外すということになりますれば、私は財政再建というのは、あるいは行政改革も緩みに緩んで、私はこの大きな仕事というものはやれなくなってしまう、こういうことを心配をいたしておるものでございます。でありますから、大変に条件、環境は厳しくなっておるということは百も承知でございますが、私はこの旗はおろすわけにいかない、それに向かってぎりぎりの努力を続けていこうと、こういうことでございます。
  147. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、それは大臣の決意はわかりました。しかし、いま総理がおっしゃっているように、その前提となる税収が予定どおり入ってくればとか、あるいは税収が思うに任せぬとかおっしゃっておりますように、現実の問題としては厳しくなってきておるわけですね。もう一回確認しておきますが、大変厳しい情勢になっても、五十九年度までには赤字国債依存は脱却する、この公約はおろさない、最後までがんばると、こういうことですか。それでしかも、これに対する見通しについてはどう考えているかですね。
  148. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 旗をおろす時期ではない。情勢は非常に厳しくなっておることは、これは私も認めますが、五十九年までぎりぎりの努力を続けていきたいと、このように思っております。
  149. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 またちょっとひっかかることを言いましたね。旗をおろす時期ではないとおっしゃったが、いつか降ろすんですか、時期が来れば。五十九年までがっちり、そういうことですか。
  150. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は先ほど申し上げましたように、財政再建について二つの目的を掲げております。それに向かってぎりぎりの努力をしておる際でございますから、いまこの時期に旗をおろすわけにはいかないと、こういうことです。
  151. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから、第二番目の問題として、先ほどから総理、私は質問はしてなかったんですが、先ほど答弁の中で、増税なきも外す、五十九年も外すではもうみんなむちゃくちゃになるというような御答弁がございました。その増税の問題ですが、これはもういまのいろんな問題から考えまして、増税なき財政再建という問題については、われわれとしてはそのとおり臨調の答申の中にもそうあるわけですし、非常に何といいますか、理想論としては現在の財政状態の中で、非常に厳しい情勢の中で冷静に考えてみましても、増税なき財政再建というのは理想論としては非常にいいわけです。しかしながら、現実の問題として、この増税なき財政再建というのを貫けるかどうかということになると、これは一つ大きな問題になってくると私は思います。  そこで、先ほど答弁を聞いておりましたら、その総理の答弁、ときどき言葉のあれが違ってくるわけですが、大きな増税を念頭に置かずと、こうおっしゃっていますね。大きな増税を念頭に置かずなら、小さな増税はいっぱい考えて、できるだけと考えていらっしゃるのか。そういう問題は別にしましても、私はもうここまで来れば、この最近の歳入欠陥、来年の歳入欠陥の見通し等、ずっとここまで来れば、もうこれは国民に対しても、十六日にあなたはどういうふうなことをおっしゃるのか私はまだわかりませんが、少なくとも国民に対して本当のことを言わないと国民は納得しないところまで来ているということです、総理、私が言いたいのは。要するに言葉先でごまかして済むという問題ではない。国民が総理に協力するかしないかは、総理の言うことが信頼されているかいないかにかかっているわけですね。そういうふうな意味では、やっぱりもう本当のことを言って、ある程度の増税はやむを得ないんだ、だから、ここら辺まではこれはやりたいんだと、どうでしょうかと、そういうふうな明確な態度でないといかんと私は思うんですよ。そういうふうな意味では、先ほど私が聞かないでも、増税なきの旗も外すというような話がありましたから、そのつもりでいらっしゃるのかどうかわかりませんが、総理の御真意のほどを一遍お伺いしておきたいと思います。
  152. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これは国会でもしばしば申し上げてまいりましたように、一般消費税のような大型の増税というようなものは念頭に置かずにやっていくんだということはもう繰り返し申し上げておるところでございます。しかし一方におきまして、国会からも御意見が出ておりますように、税の公平というような観点からいたしまして、租税特別措置等の面で改善を要する点がある。それが結果として増税ということになりましても、それは国会からもかねがね言われておりますところの租税特別措置法の見直しという問題でございまして、一般消費税のような大型増税ということは念頭に置かないということと相矛盾するものではないと、このように私は申し上げておる次第でございます。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや総理大臣ね、大臣のおっしゃることはわからんではないんですけれども、要するに、現在のような歳入欠陥、税収不足のとき、いま総理がおっしゃるような、そんな小手先の増税で、小さな増税でカバーできるのかというわけです。そんなもう時期に来てないんじゃないか、もっと積極的に考える時期に来ているんじゃないかと、実際そう考えるわけです。われわれ国民に対してそんなことじゃ困るわけです。われわれとしても困るわけです。困るけれども、本当のことを言っていただいて先の見通しを立てた方がいいわけです。ですから、そういうふうな意味では、要するにとてもできないようなことを総理は国民に期待を持たせて、何となく増税なき財政再建がうまくできるような雰囲気をつくっていて、実際はできなくて、もうにっちもさっちもいかなくなってお手挙げだというんじゃ困るんで、もう少し国民にわかるように、こういう点についても、こういうことを考えているんだということぐらいは明確に言った方がいいんじゃないかと、こう考えているわけですが、総理、どうでしょう。
  154. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) その点は先ほども申し上げたように、五十六年度の税収が大幅に見積りが狂ったわけでございます。これはいろいろの、申し上げるまでもなしに、日本だけじゃない世界的な情勢でございますが、そういうようなことから、一定の税収が入ってきて、そして一方において歳出も削減をして、それで財政再建が順調にいくという状況でなくなった、非常に厳しくなったということは御指摘のとおりでございます。その税収のへこんだ分をどうやって一体カバーをするか、こういうことが、いま峯山さんもおっしゃっておる、その点をはっきり増税なら増税と言えと、こういうことだと思うんでありますが、私は増税というものはいま考えておりません。やはり国民の皆さんは歳出のカット、思い切ったそういう面の努力をぎりぎりにやった上でないと、私は御理解がいただけないものと考えておりますから、この段階で増税ということは私の念頭にはないわけでございます。  それに関連いたしまして、いまの税収減をどうやってカバーするかという問題につきましては、いろんな、特別会計から一般会計への一部の繰り入れであるとか、特殊法人からの積立金だとか、剰余金だとかの繰り入れであるとか、いろんなあらゆる工夫をいま大蔵省において検討を進めておるところでございます。そして、ぎりぎりやってみまして、なお財源が足らない場合に、特例公債をお願いせざるを得ないかどうか、そういう問題もあわせ検討しておるということでございます。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まだまだ総理、これは税収の見積りが狂ったり、あるいはどうやってカバーするかということで、総理が先ほどおっしゃったいろんな問題がありますが、そういうような問題も、昨年度のいわゆる歳入欠陥をカバーするぐらいはいけるとしても、来年これはいまいろんな新聞等で言われているように、五兆円、六兆円というようなものが出てくると、とてもそんなものでもうカバーできなくなってくるんじゃないかということを心配しているわけです。  そこで、さらにもう一点だけ、これも明確にしておいてもらいたいことなんですが、今回の行革の中の目玉となっておる国鉄再建の問題ですね。これは先ほども総理から同僚議員に御答弁もございましたように、国鉄再建監理委員会の発足等もあわせていま準備していらっしゃるそうでありますが、これは総理、私は臨調答申の一つの大きな目玉だろうと思うんです。これはこれを断行しないとやったうちに入らないと思うんですね。ところが、実際問題として、担当大臣の小坂運輸大臣並びに高木国鉄総裁、この人たちの発言を聞いておりますと、この臨調の方針にまだ納得してないような発言がときどき見られるわけですけれどもね、総理はこの点についてはどういうふうにお考えなのか、国鉄再建については断固として断行されるおつもりなのか、これも一遍聞いておきたいと思います。
  156. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 国鉄再建問題は、今度の臨調の答申の中でもまさに御指摘のとおり国民の最大の関心事でございます。目玉と言ってもいいぐらいの私は重要な改革であると、このように考えておりまして、政府としても最重点を置きまして、これに取り組んでいく、それは御承知のように政府並びに自由民主党の行財政改革推進本部におきましても、この基本答申を最大限に尊重して、そしてこれが実現のために最善を尽くすという決定もし、閣議でもこの答申を最大限尊重実行ということを了承いたしておるところでございまして、この国鉄の改革につきましては、まず監理委員会を設置をする、そしてこれを権威あるものにして、監理委員会を中心として改革を具体的に進めてまいる。また一方におきまして関係閣僚会議、これも設置をいたしまして、そして政府としてこれに総力を挙げて取り組んでいくと、こういう考え方でございまして、国鉄問題は臨調答申の最大の課題として、私どもは真剣な努力をすることをここで申し上げておきます。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 下期の経済見通しの問題につきまして、先ほども御質問ございましたが、この問題についてやっぱり閣内で分かれた意見がそれぞれ新聞に掲載されておりますね。これは総理御存じのとおりです。そこで閣内で一致しなくちゃいけないということで、昨日の会合もあったように——定例の会合の中で総理の話があったんでしょう。  そこで総理、先ほどもちょっと話がございましたが、十六日の記者会見ですね、これはわれわれも関心を持って見ているわけですが、財政非常事態宣言というふうに新聞にも報道されておりますが、その中身ですね、中身がどんなものになるのかということについてはわれわれ非常に関心を持っているわけです。これは総理、大体そのさわりの部分でも結構ですから、どういうふうになっているのか、一遍教えていただきたいと思います。  さらに、この問題について河本経済企画庁長官が、宣言することよりも財政の非常事態への対策をどうするかということが大事なんだということもおっしゃっているようでありますが、そこら辺の細かいことを言っている時間がございませんので、いずれにしてももうあしたあさってですから、全部原案はできていらっしゃるんだろうと思いますが、基本的に何を総理は言わんとしていらっしゃるのか、言おうとしていらっしゃるのか、そこら辺のところを一遍お聞かせいただければ幸いと思います。
  158. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 財政の厳しい現状というものをまとめて国民の皆さんにわかりやすく御説明をし、理解と協力を得ようということでございまして、特別これこれをやるんだということをいま私は打ち出すものではございません。これは十分準備をいたしまして、国会にも御提案をし、国会の御審議を煩わさなければならないような課題であろうかと、こう思っております。十六日に申し上げるのは、この厳しい現下の財政の事情というものを、わかりやすく詳細に国民の皆さんに御報告、御説明を申し上げて、そして今後痛みを分かち合い、また御協力をいただくということで、国民の皆さんの御理解を願う、こういう趣旨でございます。  それから前段の下期の経済対策の問題は、やはりこの下期についての経済見通しというものが、共通の土俵ができませんと対策も一つの方向に効果的に展開できませんから、まず下期の経済見通しを早急に経企庁長官が中心になってまとめてほしい、それに基づいてひとつ対策を講じようではないか、こういうことにきのう私から指示をいたしたということでございます。
  159. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 峯山君、時間が来ております。
  160. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これで終わります。  政治倫理の問題についてもお伺いしたいと思っておりましたけれども、時間が参りましたから次回に譲りたいと思います。ありがとうございました。
  161. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理にお伺いいたします。  七月末以来紛糾を続けておりました教科書問題は、九月九日、中国がようやく原則的了解の意思を表明したことによって、一応外交的には決着がつきました。しかし、私は今回の問題は一過性の問題ではないし、また一過性のものとしてはならないと、こう思います。ただいま答弁の中で、総理は訪中などを通じて、つまずいたアジア外交の立て直しに全力を挙げる旨の決意を述べられました。しかし、私はアジア諸国がなぜこれほどまでに日本への怒りと反発をつのらせたのか、その根因を真剣に考え直さない限り、各国との信頼関係を完全に修復することはむずかしいと思います。  そこで、総理にお伺いしたいことは、今回の問題の背景についてどう認識しておられるのか、お伺いをいたします。
  162. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) その背景につきましては、いろいろの角度から議論の存するところであろうかと、こう思いますが、三十七年前までに日本がアジアの近隣諸国で行動し、振る舞ったことについて、終戦後におきましては日本は本当に二度とこのような過ちを繰り返してはいけない、近隣諸国にこんな迷惑をかけるようなことが二度とあってはいけないという深刻な、真摯な反省の上に立っておったと、そして平和国家としての国づくりに国民が力を合わして努力をしてまいったわけでございます。そういう点が過去の日本の行った行為、こういうものに対する反省の気持ちが薄らいできたのではないだろうかと、そういうことから経済的な日本の発展等々もあって、日本は反省を忘れて思い上がっておるのではないかというようなこと等がアジアの近隣の国々に出てきておるのではないだろうか、こういう点は私どもは謙虚にやはり反省するところがなければならないと、このように考えております。政府といたしましては、そういう点を常に私どもは反省をしながら、近隣諸国との友好親善関係というものに力を入れております。  私が就任以来、最初の訪問国はASEANの国々であったことは御承知のとおりでございます。それから経済的な協力、技術協力あるいは文化協力、そういう面につきましても努力をいたしまして、そして血の通った真の友好ということに努力もいたしておるところでございます。  それから、よく軍国主義の復活とか、なんとか言いますけれども、一部からそういう印象を与えておるとすれば、これは大変残念なことでございまして、そういう点につきましてはお互いに、政府としては特にそういう点が近隣諸国に不信、あるいは脅威という形で悪い影響を与えないように、今回のことを特に契機といたしまして、一層反省をして努力していきたいと、こう思っております。
  163. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は検定教科書の歴史記述は、かつての戦争で傷つけられた各国の国民感情の琴線にじかに触れて、再び心の傷跡、痛みをかき立てた、と同時に、旧日本の復活という危惧が背景にあったのではないかと、こう思うのでございます。  総理はいま過去の反省が薄らいだ、そのことが誤解を招いたのではなかろうかと、こう述べられたわけでございますけれども、私はそれだけに形式的な記述の書き直しや、外交的決着だけで、本質的な解決が得られるものではないと、こう思うのでございます。およそ外交関係におきまして、一国の政府が責任を持って是正すると約束するということは、これ最大限のものでございます。にもかかわらず中国が直ちにこれを受け入れることがなかった、そして九月九日まで日を要したということは、総理は、中国とわが国関係が国交回復以来十年、その積み上げによって友好信頼の上に成り立っておる。今後それを一層発展さしていきたいと、こう述べられたわけでございますけれども、本当に友好信頼関係があるとすれば、日本政府見解をまず受け入れ、今後の行動を見守るというのが私は友好国としては通常のあり方であろう。にもかかわらず、日を要したということは、日本政府の見解に対し、中国が信をおけないという底流があったということを示すものではないかと、こう思うのでございます。  そこで、いままでの委員の質問を私聞いておりますと、かつて日中国交回復の共同声明の両国折衝を通じて、中国は強く侵略という直接の表現を取り入れるべきであると主張した。日本はこれに難色を示した。そして交渉の結果が、過去の責任を痛感する、そして深く反省するという共同声明となって決着を見たと、こう私は理解しておるものでございますが、総理は今回中国に行かれて、その日中共同声明より一歩も踏み出すことはできないと、しかし、それをもって信頼関係は回復できるという確信があると、御答弁はそう受け取らざるを得ないわけでございますが、そう理解してよろしゅうございますか。
  164. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) まず私は、教科書の記述を是正をしたと、それだけですべてが終わるということであってはいけない。やはり根本は近隣の諸国の、政府はもとより、諸国民の信頼、尊敬を得るところまで日本が反省もし、また行動の実践の上に立って、積み重ねの上に立って、そういう信頼関係を確立をしていかなければいけないというのが基本だろうと思います。それで日中の関係におきましても、私はあの共同声明の精神を深く、さらに広く拡大をしていって、日中の真の恒久的な和平と、そして、揺るぎない信頼協力関係を打ち立てていく、これが根本だと、こう思っておりまして、したがって、日中の間の言葉でもってあらわす、文字でもってあらわすものは、あの共同声明、合意した共同声明の前文の精神、これを発展拡大、深めていく、深化していくということで私はいいのではないかと、こう思っております。
  165. 柄谷道一

    柄谷道一君 共同声明の前文を拡大発展さしていくというお答えがあったんですが、もう一度くどいようですがお伺いしますが、侵略戦争か否かを迫られた場合、または今回の共同声明の場合、その内容、いま総理の言われた姿勢で貫く、それで信頼関係は回復できると、こう思っているということでございましょうか。
  166. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は日本政府または日本政府を代表する首相として、本当に誠意を尽くして日本があの共同声明の精神を深く本当にこれを広く日中の信頼と協力の上に今後将来に向かって生かしていくと、こういうことが十分御理解をいただければ、私は言葉の問題ではなく理解ができるものと思っております。
  167. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間がございませんので、もう一点教科書問題をお伺いいたしますが、私は今回このような問題を引き起こした大きな原因は、複雑にしてかつ閉鎖的な現在の教科書検定制度にあるのではないかと、こう思います。われわれは一部の方々が述べております検定制度の廃止論にくみするものではございませんが、しかし、国の将来を左右する教育の根本にかかわる教科書内容につきましては、国民全体がこれにかかわるべきではないか。このために教科書検定についての法的な根拠を明らかにすると同時に、たとえば、審議会委員の国会承認、検定基準の法制化など、現在の教科書検定制度を抜本的にこの際洗い直し、その改善を図る必要があると思いますが、総理の所見を伺います。
  168. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、今日の教科書検定制度は、わが国の戦後教育を不遍不党の偏らない中正な正しい教育を確保するという観点から、それなりの成果、役割りを果たしてきたものと考えております。しかし、それが万全なものであるかどうかという問題は、常にやはりこれを検討し、見直しをするという、そういうことも必要であり、現在中教審において教科書の制度のあり方、教科書問題についての御審議がなされておるということでございますから、そういう中教審の答申等も踏まえながら、政府として最善を尽くすようにしていきたいと、こう思っております。
  169. 柄谷道一

    柄谷道一君 中教審の答申等も踏まえながら、見直しの用意ありと、姿勢ありと、こういうふうに受けとめておきます。  そこで問題を転じまして、五十六年に引き続く大幅な五十七年度の歳入欠陥の予想、これに対して増税なき財政再建、五十九年度赤字国債脱却という総理公約が実現できるのかという各委員の質問を私聞き、総理の答弁を聞いておりますと、総理のお考えはこういうことじゃないかと思うんですね。ぎりぎりの努力を続けたい、したがって、いまの時期にその旗はおろせない、いわば、これ決意の表明なんですね。いわゆる確信ではないんです。と思うんですね。そこで、この問題につきましては、時間がございませんので、私は十六日の質問にさらに関係大臣に深く問いただしまして、本当に確信の持てる、確信に裏づけられた公約か否か、これは突っ込んで御質問したいと思いますから、きょうの質問は省かしていただきます。  そこで、経済の見通しについてお伺いしたい。本年四−六月における経済が、年間換算五・一%の実質成長を示したということをめぐって、大蔵大臣、中曽根行管庁長官、そして大蔵省が発表しております見解等はいわば楽観説でございます。しかし、河本経企庁長官、安倍通産大臣、さらに建設大臣等の見解は、いわば楽観を許さず、早急に総合景気対策を講ずる必要ありと、こういう主張でございます。私は同じ鈴木内閣の閣僚の意見が、これほど分かれるということに対して、国民は奇異の念を持つと思うのでございます。  そこで、総理は十月早々までに河本経企庁長官を中心として、下期の景気の見通しに対してその見解をまとめるようにと、こう示唆されたわけでございますが、総理自身の経済に対する認識はいかがでございますか。
  170. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 柄谷さん専門家でいらっしゃるからわかるわけでしょうが、いまほど経済の先行きについて、的確な見通しをつけるということは非常に困難な状況下にございます。アメリカの経済の動向、あるいは金融市場の動き、為替相場等々、そういう面だけを取りましても大変情勢は毎日動いていっているというような状況でございまして、それだけに景気の見通しということについては、いろんな角度から慎重にこれを分析をし、判断をする必要がある。私も、経済界の方々についてもいろいろ景況の動向、見通し等についても御意見を伺ったり、対策についても伺っておるんでありますけれども、なかなか的確な、また景気対策についてもこれという決め手を私は御提言をいただけない、こういう状況でございます。そこで私は、しかしいま上期が終わり、下期に入るわけでございまして、非常にわが国としても大事な時期でございますから、四−六の期でああいう結果が出たからといって、それで私は楽観をしたりするような問題ではない。七月、八月は冷夏の影響等もあって、必ずしも四−六の状況がそのまま継続するという状況にもないと、いろんなことがございますから、この際経企庁長官を中心に、下期の経済見通しというものを、あとう限りの資料、データ等を基礎にこれを固めてもらって、それに基づいて、その共通の認識の上に立って政府として下期の経済対策、景気対策というものを固めたいというのが私の考えでございます。
  171. 柄谷道一

    柄谷道一君 そこで、閣内の見解が一致すれば、これ幸いなことでございますが、今日までの経緯を見ていると、相当その展望について各大臣の見解異なるようでございます。しかし、これいたずらに意見が調整できるまでということで慢然日を過ごすということは、景気対策を、総合経済運営を誤るということにもなりかねないと、こう思うんです。いま、大体通説として言われておることは、このまま推移すれば昨年に引き続き二%台の成長にとどまるであろう、二兆五千億円程度の財政措置を講じても三%台にとどまるであろう、政府が当初述べました五%台の経済成長見通しは下方修正せざるを得ない。その下方修正の幅をどれだけ縮小し得るか否かというのが、もう現実問題だと思うんです。  そこで、私は総理に最後にお伺いいたしますが、経済関係閣僚の意見が依然として十月上旬に至るも一致しない場合、総理はその指導力において、閣内をまとめ、機を失せず経済運営対策を打ち出されるという決意をお持ちかどうか。もし、しからずして、本年度——五十七年度の経済成長が二%台にとどまり、そのことが重大な歳入欠陥を生じたという場合、総理としてはいかなる責任をとられるのか。この二点を伺って、私の質問を終わります。
  172. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) そういういろいろの問題を含んでおりますから、河本経企庁長官に対して、いろんな、あとう限りの経済指標、資料等を整えて、そして客観的に分析をして、そして景気見通しをしっかりしたものを立ててもらいたい、こういうことをお願いしておるわけです。しっかりした、だれが見ても客観的になるほどこれは諸般の資料その他から言って、こういう見通しというのは妥当であるということになれば、対策はおのずから私は濃淡はあっても一つの方向に向かって対策が進められる、このように考えるわけでございます。  それから、経済成長率が二%台、三%台、五%台に行かなかった場合の責任のとり方という問題でありますが、これは経済のことでございますから、しかも国際的に大変な大きな激動期にあるということから言って、何%なら責任をとり、何%なら責任をとらんと、そういう問題ではなかろうと。しかし、いずれにいたしましても、機動的に、機を逸せないように経済運営をやって、政府としても最善を尽くしていきたいということははっきり申し上げておきます。
  173. 安武洋子

    ○安武洋子君 教科書の問題ですが、これは外交決着がたとえどうあろうと、やはりあの日中戦争、それから第二次世界大戦、これを日本の侵略戦争として認めない限り、私は根本的な解決はないと思っております。総理御自身が十五年戦争を侵略戦争だというふうにはっきりと認識され、それを表明されるということがなければいけないと思いますが、総理はいままで一貫した政府の筋であるからというふうなことで「侵略」という言葉をストレートに使わないと、こういうふうなことを答弁されておりますけれども、これはいままでの政府の一貫した筋が間違っている、侵略戦争に対する反省がないからそういうことになってきたのだと思います。だから、謙虚にここは侵略戦争であれば「侵略」という言葉をストレートに使っていくと、総理がそれを御自身が表明をなさると、そのことが私は、正しいことは正しいというのがあたりまえですから、当然の態度ではなかろうかと思います。いかがでございましょうか。
  174. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 安武さんの御意見として拝聴しておきますが、先ほど来申し上げますように、日中国交正常化の際におきまして、両国政府におきましては、あのような共同声明を一緒になって天下に声明をいたしておるわけでございます。問題はその責任を痛感し、反省をしていくと、その反省、責任を痛感すると、そういうことを本当に深く掘り下げて、それにふさわしい日本が行動をとっていくということが一番大事なことであろうかと、こう思います。
  175. 安武洋子

    ○安武洋子君 では総理ね、第二次世界大戦のときのあのナチの侵略行為、これについては総理はあれは侵略であったというふうに御認識でございましょうか。  さらに聞きますがね、総理。では、あなたは一体侵略とはどういう状態を侵略というふうに思っていなさるんですか。あなた自身のお口から御答弁ください。
  176. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) よその国の過去の行為につきまして私があれこれ申し上げることは差し控えたいと、このように考えておりますし、また、いま文字の、表現の論争をあなたとしてもこれは始まらない。私は、先ほど来申し上げるように、過去の日本が行った行為については、深い責任を感じ、そして反省をしておる。そして、その責任を痛感し、反省をするという、それをいかに日本が真剣に行動でもって今後実践をしていくかということにかかっておるということを繰り返し申し上げておるわけでございます。
  177. 安武洋子

    ○安武洋子君 よその国の過去の行為とおっしゃいますけれども、これは世界的に国際的に侵略行為であったという評価は定まっているわけでしょう。そして、ドイツ自身があれは侵略行為であったということをちゃんと明記しているわけです、教科書の中に。  私は、反省をするとおっしゃる、本当の反省というのは、侵略であった、侵略戦争であったということを謙虚に、素直に認めること、それ以外の反省のしようはないと思います。総理のおっしゃり方というのは、私は詭弁にすぎないと思いますが、謙虚に侵略戦争であったと、迷惑をかけたと思うのなら、アジアの国民がいま日本に対して大変な危惧を抱いている、アジアの国民に対して信頼を得たいというふうなことを再三繰り返しておっしゃっておりますけれども、総理のいまのその態度はそれに全く逆行するではありませんか。私は、侵略戦争なら侵略戦争とはっきりと認める、そういう態度になぜお立ちにならないのか、総理の態度に大変危惧を抱きますがね。  さらに総理にお伺いいたします。小川文部大臣は国会の御答弁で侵略戦争であったということを二度にわたって認めておられます。ところが総理はいまのような態度をおとりになっていらっしゃいます。しかも閣内で箕輪郵政大臣、あるいは松野国土庁長官、大変不謹慎な発言をなさっていらっしゃいます。まさに閣内の意見不統一じゃありませんか。この閣内の意見不統一、どう処置なさいます。私は閣内の統一見解を示していただきたい、こう思いますが、いかがでございますか。
  178. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いろいろ閣僚の言動の中にも御指摘の点等、いろいろあったわけでございますけれども、私はその閣僚の諸君ともお会いをいたしまして真意も伺いましたし、そして、誤解を受けてはいけないので、十分言動に注意してもらいたいということで、私から注意もしておるというようなことでございまして、現在閣内の意見の不統一はございません。
  179. 安武洋子

    ○安武洋子君 とんでもない。小川文部大臣は侵略戦争であったと認めてなさいます。総理はいまだに侵略戦争であったと、そう言明なさらないではありませんか。明らかに意思の不統一です。この意思の不統一、どう処置なさいますか。
  180. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 意思の不統一というきめつけ方はちょっといかがと思うんでありますが、表現の違いということなら私もわかりますけれども、意思の不統一ということは私は理解ができない。
  181. 安武洋子

    ○安武洋子君 これはね、表現の問題で済む問題でないからこそ、外交問題にまで発展したんではありませんか。侵略戦争を侵略戦争と、正しいことを正しいと認めないで、何の教育なんですか。私は、そういう総理の態度自身が今日の教科書問題を起こしていると、総理御自身が一貫した政府の筋であると、ただそれだけのことで、侵略戦争を侵略戦争と認めないという態度をとり続けられるということは、大きな間違いであろうと思います。ここで態度を訂正され、小川文部大臣と同じ態度をとられるべきだと、そのことを重ねて申し上げます。いかがですか。
  182. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 表現において幾らか違うかもしれませんが、小川文部大臣と私のわが国が行った行為についての認識というものは変わっておりません。
  183. 安武洋子

    ○安武洋子君 総理、私が一体どういう状態を侵略であるかということを御質問申し上げたことに対して、御答弁がないわけです。私はお答えもいただきたいし、そして、侵略ということがどれほど重大な問題であるか、単なる表現の問題でない、そこには日本が行ってきた行為に対する本当に深刻な反省が込められていなければならない。あなたはうなずいてなさるけれども、それなら侵略とおっしゃるべきなんですよ。おかしいんです、あなたの態度は。だから、侵略戦争だということは世界的にも評価が定まり、国連の定義であろうと何であろうと、侵略ということはきっちりこれ定まっていることを、あなた御自身だけがなぜそんなに頑強に認めようとなさらないのか、閣内の意思の不統一をそのままに残して訪中なさろうとするのか、私はそういう総理の態度に対して断固抗議を申し上げます。さらにもう一度お伺いをいたします。
  184. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私が先ほど来申し上げておりますように、日中共同声明の前文で表明した点は、これは日本が本当に責任を痛感をし、そしてこれを反省をする、それを深刻に私どもは受けとめて、それを今後の行動の中で生かしていこうと、こういうことでございますから、精神においていささかも違うものではないということで、私が言ったことをあなたが言うからうなずいたということです。
  185. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 安武君、時間が来ておりますから短くお願いします。
  186. 安武洋子

    ○安武洋子君 総理、私は総理のそういう不謹慎な態度に対して断固抗議を申し上げるということで、次に最後に御質問申し上げます。  これはちょっと昨年の五月にあなたがナショナル・プレス・クラブの発言で、日本周辺海域を庭先と述べて、第七艦隊が中東へスイングしたと、この留守を守るということを表明されております。これは第七艦隊がいなくても日本周辺海域で十分な作戦ができる能力を持つということの表明です。  まず第一点ですけれどもね、今日のこの膨大なアメリカ要求というのは、留守を守ると総理が表明なさいましたけれども、その総理の言明、すなわち留守を守るというそのことを実行するという、それよりもさらに膨大な要求をしてきているのか、あるいは総理がその留守を守ると言われたその言明の決意の範囲内の要求であるのかということが第一点です。  それから第二点は、日本の庭先というのは日本海とか、オホーツク海とかいう北方の地域も含まれているのかどうか、この二点についてお答えください。
  187. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) だんだん共産党さんの御質問を聞いておると、私の言わんことまで言っていらっしゃる。留守を守るということは私は一遍も言ったことはありません。私は、ナショナル・プレス・クラブで講演をいたしました際に質問が出ました。その際に私は、周辺数百海里、シーレーンを——航路帯を設けるとすれば一千海里程度、この航行の安全を確保するために必要な自衛力の整備ということは、これは防衛計画大綱の中に含まれておりますから、私は国会でも、アメリカへ出発する前にすでに何遍もそのことは御質問に対して答えておる。そういうことから、ナショナル・プレス・クラブでの質問に対して、日本周辺数百海里、航路帯を設けるとすれば一千海里を守るように防衛力整備を図っておると、これは日本防衛計画説明をしたと、こういうことでございます。
  188. 安武洋子

    ○安武洋子君 二つ聞いているのに全然どっちにも答えていない。答えてくださいな。
  189. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いまのお答えで十分と思います。
  190. 安武洋子

    ○安武洋子君 日本の庭先に北も入るのかどうかというのも聞いていますよ。
  191. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 周辺数百海里ということを申し上げている。
  192. 安武洋子

    ○安武洋子君 日本海、オホーツク海が入るのかどうかということも私聞いているんです。
  193. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 時間来ておりますから。
  194. 安武洋子

    ○安武洋子君 いや、答弁全然なってないんですから、答弁ちゃんとしてください。
  195. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 周辺数百海里の中で御理解を願いたい。
  196. 森田重郎

    ○森田重郎君 私が差し上げました質疑通告表には入っておらないかと思いますが、後から補足いたしまして政治倫理の問題を通告いたしておりますが、政治倫理確立の問題につきまして総理の率直なお考えを伺いたいと、こう思います。  今回の延長国会の最大の焦点の一つに政治倫理確立の問題があったと思います。政治倫理確立を主張されましたのは、鈴木総理御自身であり、同時にまた、議院証言法改正を、これは自民党さんが提案をされておったと、こう思いますが、会期末が近づきますと、総理の姿勢は政治倫理確立の問題から大分後退をされてきたというふうに私自身は感ずるわけでございますが、どうもこの辺、自民党の総裁選に絡んで、余り党内に波風を立ててもというような配慮が動いたのではなかろうかと思いますが、この辺に関しまして総理の率直な御意見をちょうだいしたい、かように思います。
  197. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 政治倫理の確立の問題に関連いたしまして、議院証言法の取り扱いについてのお尋ねがございました。  私は、御説のとおり、お互いに議員として国会の姿勢を正し、また非違があった場合にはこれを証人として場合によれば喚問をして、そして責任の所在を明らかにする、そして、そういう審議を通じて国会の権威を高め、また政界の浄化と明朗化を図る、そういう意味合いにおきまして私は議院証言法の持つ国会における機能として、非常に大事な制度であろうと、このように考えるものでございます。それは、目先に起こった事件にかかわらず、りっぱな議院証言法を国会が用意しておく、制定しておくということは、私はそういう意味で重要であると、このように考えております。  したがいまして、この三年間にわたりまして、衆議院においても議会制度協議会、そして一時これが法務委員会に移されまして検討が進められてまいりました。さらにさきの国会におきましては、再び議会制度協議会でこれを取り上げ、小委員会を設置して、そして十六回にわたって審議が進められて、相当問題点が詰まったわけでございます。  自由民主党におきましても、法案要綱だけでなしに、法文化までしたわけでございますが、それが時間切れで衆議院の段階でも議決に至りませんで、議長がお預かりをするという、議長預かりという形になりました。しかし、私は非常な前進であったと考えておりまして、次の国会等におきまして衆議院並びに衆議院を終えて参議院におきましても御審議をいただいて、ぜひこの議院証言法は成立を図るようにお願いをいたしたいと、このように期待をいたしておるところでございます。  なお、議院の証人喚問の問題も、それとの関連において、衆議院においてもいろいろ論議をされたところでございますが、結論を得るに至らなかったことは私も残念に思っておるところでございます。
  198. 森田重郎

    ○森田重郎君 わかりました。  それではちょっと話題を変えまして、これもすでに同僚委員の方々から何回か同じような質問が出ておるわけでございますけれども、昨日、月例経済報告閣僚会議が開かれた。そこで下期の景気対策に対する総理からのいろいろ指示があったというふうに私承知をいたしておりますが、先ほど、総理御自身の景気対策、さわりの部分でもよろしいからお聞かせ願えないかというような同僚委員からの質問がございましたが、その辺につきましては、必ずしも明確な御答弁をされなかったというふうに理解しておりますが。いかがでございましょうか、総理は、大体これまでどちらかと申せば、景気対策に対しては比較的消極的な立場におありではなかったかと思います。むしろ行財政改革を進めるというふうな意味から、やはり行政経費の削減と申しましょうか、その辺に重点を志向されておったような感じなんでございますが、何かここに来まして、総理御自身の政策転換がなされたのではなかろうかというふうな感じがしないではない。ですからその辺で、さわりのさわりの部分でもよろしいんですが、何か総理御自身でお考えがございましたらちょっとお聞かせをいただきたいと、かように思います。
  199. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私も、いろんな角度から、経済が一体どういうぐあいに動いていくのかということを相当真剣に勉強もさしていただいておるわけでございます。そこで言えることは、四−六のQEに出ておりますように、個人消費、これは物価が非常に低位に安定をいたしました関係もございまして、個人所得が、実質所得がふえてきておって、それがじわじわと個人消費に向けられてきておる。レジャーなんかも盛んに相なってきておるように思うわけでございます。しかし、一方におきまして、中小企業関係の設備投資は非常に不振でございます。大きな企業の方の設備投資は、若干の調整をしたものもあるようでございますけれども、底がたいものがあるように思います。それから、鉱工業生産その他の生産活動におきましては、これはどうもさえないものがあるように思います。金融につきましては、恐らく世界じゅうで日本が一番金利が安いし、金融も比較的緩やかに相なっておると、このように見るわけでございまして、また一方において為替相場が非常に乱高下いたしますし、どっちかというと円安というような傾向にあるわけでございます。そういうぐあいに、若干個人消費が明るい面をのぞかせておるけれども、まだ世界経済その他の動向、特に輸出がどうも非常に低調であるというようなこと等もございまして、日本経済は全体として明るさが戻っていない、非常に景気の回復は停滞というか、緩やかというよりも停滞をしておる、こういう現況にあるのではないか。しかし、先ほど来申し上げるように、非常にいまむずかしい経済情勢にございますので、客観的な資料を十分整えて、それを分析をして、そして下期の経済見通しというものを固めて、これによって下期に対する経済対策をやろうではないかというのが私の考えでございます。
  200. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 森田君、時間が参りました。
  201. 森田重郎

    ○森田重郎君 時間が参りましたので、もう一問だけひとつお伺いをいたします。  実は、昨日の閣僚会議の結果なんでございますけれども、これは新聞紙上にも一部報道をされておりますが、これは端的に申し上げまして、一般公共事業費の追加規模の問題、この辺に、これは景気対策の一部ではございましょうが、規模がしぼられてくる。そういうような感じがしないではないんですが、その辺につきまして、総理の率直な御意見と、同時にまた、せっかく大蔵大臣お見えいただいておりますので、財政面からその辺をちょっと御説明いただければ大変ありがたいと思います。
  202. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 五十七年度予算の執行に当たりまして、景気の状況を判断いたしまして、公共事業費を思い切って上期に七七・三%前倒しをやったわけでございます。それで、その後の状況をフォローをしておるわけでありますが、九月の一日現在で、まだ未契約の分が一〇%余りございます。しかし、私は九月中には大体七七・三%の前倒し分の契約ができるようにということで、大蔵大臣、自治大臣を通じまして、各省庁を督励をして急がせておるわけでございます。  問題は、契約ベースでそうなっておりますが、実施ベースで一体どれだけいま工事が進んでおるのか、進捗状況でございます。恐らく、大ざっぱに言いますと昨年の実績、経過等からいたしますと、三分の一強ぐらいしか実施ベースでいってないのではないだろうか、このように考えるわけでございます。私は、契約が済んだら、今度はせっかく前倒しをしたんでありますから、できるだけ早くこれを実施に移すように、そして経済に、景気にそれが反映するように、活用されるようにしなければいけない、このように考えております。ただ、そういう点をよく見ませんと、一のぜんをまだ三分の一ぐらいしか食べていないで、二のぜん、三のぜんを要求をするということでもいかがかという問題もございます。十分その辺も調査をする必要があるのではないか。  それからもう一つは、公共事業関係ではことしは大変な大きな災害がございまして、今度の十八号台風を除きましても、一兆円を超える大きな被害がございました。そうすると、この災害対策というものも非常に急がなければなりません。従来災害の復旧は三、五、二の割合でやってまいりましたが、五十六年度は景気対策等も合わせまして五、三、二ということでやりました。五十七年度、今度の災害につきましては、あるいは場合によってはもっとそれを傾斜して、早目にその災害対策が進むようにやらなければいけない。そういうことも考慮いたしておるわけでございます。そういうことを総合勘案をいたしまして、追加の公共予算、追加をするとした場合どの程度にしたらいいのかという問題もございます。また証券市場の情勢も見きわめにゃいけません。金利を圧迫をして、かえって景気の足を引っ張るようなことになってもいけないというような問題もあるわけでございます。これから総合的に勘案をして、対策を誤りなきを期したい、こう思っております。
  203. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 大蔵大臣答弁ございませんか。
  204. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) ありません。
  205. 中山千夏

    ○中山千夏君 時間がないので大急ぎで質問いたします。  総理もごらんになったと思うんですけれども、数日前の新聞に「鈴木内閣不支持が52%」「支持の2倍 経済政策に不満」というような記事が出ておりました。これは一新聞社の世論調査ではありますけれども、この新聞社が昭和三十年以降調査したところでは、不支持が支持の二倍を上回る、二倍以上になるというのは次の数件に限られると書いてあります。六〇年安保のときの岸内閣、佐藤内閣の末期、オイルショック後の田中内閣、敗北を喫した五十四年総選挙後の大平内閣、このうち岸、佐藤、田中一内閣はこうした現象が起きた後退陣に追い込まれたなんという記事なんですけれども、こういうものを総理はどういうふうに受けとめられますでしょうか。それから、どういうふうに対処なさるお考えでしょうか。
  206. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 世論調査は客観的なデータに基づいて集計をして出されるものでございますから、そのとおりに私は受けとめております。  そして、その原因とか内容につきましても謙虚に耳を傾けまして、至らざるところは自分としても今後におきまして努力してまいりたい、このように考えております。
  207. 中山千夏

    ○中山千夏君 それから、大蔵大臣にちょっとお伺いいたしますけれども、これも八月二十四日に新聞でちょっと拝見したんですが、大蔵大臣は総理に対して口頭で辞意を表明なすったと。その理由は、要約すると、五十六年度に約二兆五千億円の歳入欠陥が生じたことに対する責任をとるためと、そんなふうに新聞から受けとったんですけれども、これは事実でしょうか。
  208. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 私は国会で歳入欠陥の問題でいろいろ御叱正を受けました。  国会が終わりましてから、担当の主税局長等が私のところへ参りまして、非常にわれわれ事務方として計算をしたんだけれども、一年半ぐらい前の資料でやるわけですから、それがどうも見通しがつかなかった。補正予算のときは、九月の法人税が二〇%も伸びておったもんですから、特に法人税について見通しがつかなかったと。したがって、法人税だけで一兆五千億円。それから申告所得税も一年に一遍の申告のもんですから、これも見通しつかなかったんだと。両方で二兆円。あとは大体見通しがついてある程度直した、修正をした。だけれども、結果的に二兆五千億円の歳入欠陥になったことは申しわけがないということで、私のところへ進退伺いに来たわけです。  それで私は、それはその必要はない。これは見通しがつかなかったんだから、客観的に、それはあなた方が幾ら努力をしても、経済は生き物で動いておるわけですから、そうはなかなかできないと言ってもそれは仕方のないことだと言って、私は、みんながんばれと言って帰したんです。  しかし、私もこれ使われている身でございますから、私だけが素知らぬ顔をしておるわけにまいりません、私の部下が私のところへ進退伺いに来ているわけですから。私は国会においても、それはしかるべく責任は感じておりますということをちゃんと言っておりますので、私は謙虚に、やはり結果的に間違ったことは幾らそう言っても責任者はあるわけですから、私は責任者ですから、部下に対してはそう言っても、私自身の責任がないというわけにはまいりません。したがって、総理大臣のところに参りまして、ともかく見通しについて一割近いずれができちゃってまことに申しわけありませんでしたと、しかるべくひとつ責任をとりたいので、進退について総理大臣にお伺いを立てたということでございます。
  209. 中山千夏

    ○中山千夏君 総理がこれを慰留なすったということを記事で知っているわけなんですけれども、それでいまのお話聞いてもすごく不思議だなと思うんですが、大蔵大臣は部下に対していろいろ大変なことがあったんだから、君たちがやめたってしょうがないとおっしゃって、そして、御自身は総理のところに済まなかったと、そして、責任を明らかにして進退伺いにいらした。今度は、それを総理が慰留なすった、総理はどうするんですか。私、不思議でしょうがないのは、鈴木内閣の大蔵大臣でしょう。その大蔵大臣がこれだけはっきり責任を表明して、とろうとなすった。それを慰留した以上、今度は総理が国民の前に責任を明らかにして、そして、何らかの形で責任とってもらわないと、何だか総理だけは神様みたいで、そこから先責任がないという感じがするんですね。これはぜひ何らか形の上で責任をおとりにならないと、何となく総理はけろっとしていらして、大蔵大臣以下が大変気に病んでいらっしゃるという感じが不思議でしょうがないんです。それについて、総理、お答えください。
  210. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 中山さんから、総理だけがけろっとしているというお話がございましたが、決してそうでございません。私は本当に一国の政治の責任者といたしまして、真剣に現在のこの財政の厳しさ、また、しかも今後、世界経済がこういう状況の中で、大きな増収もなかなか期待できない、こういうような中で財政再建をしよう、こういうことでございますから、本当に私は真剣にこれに取り組んでおる。したがって、こういう財政再建の目標を掲げて、国民の皆さんにもお約束をしておるわけでございますから、それに向かってぎりぎりの努力をして責任を果たしていくというつもりで取り組んでおります。
  211. 中山千夏

    ○中山千夏君 何となく形の上で責任を明らかにしたとかいうところが見えないもんですから、けろっとした感じがどうしても私はしてしまうんですが、それはそれとしまして、まだ五十七年度、五十八年度に赤字国債がどんどん出そうだとか、それから大蔵省の方で国債四兆円を増発などという計画があるというような記事やうわさが出ております。  それで、ここに「財政法逐條解説」という本がありまして、これをちょっと見たんですけれども、これは昭和二十二年に出版されたもので、大蔵省主計局第二課長兼第三課長平井平治さんという方が書いていらっしゃる本です。  一番最初に、当時の大蔵省の主計局長の野田さんという方が、   財政法が一般によく理解されることが、財政を國民のものとする第一歩である。   私は國民の一人でも多くが本書を讀んで財政に對する認識を深め、本法の精神を充分に把握されることを、切に希う次第である。 そういう趣旨で書かれた本なんですけれども、もちろんこういうものは総理もそれから大蔵大臣もよく御存じのはずだとは思うんですけれども、これを見ておりましてちょっと念押しをしておきたいと思うところがあったものですから聞かせていただきます。  ちょっと一部読ましていただきますと、「國の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」という第四条に関する解説なんですが、その中で、   第四條は健全財政を堅持して行くと同時に、財政を通じて戰爭危險の防止を狙いとしてゐる規定である。  それから、   戰爭危險の防止については、戰爭と公債が如何に密接不離の関係にあるかは、各國の歴史を繙くまでもなく、我が國の歴史を觀ても公債なくして戰爭の計畫遂行の不可能であったことを考察すれば明らかである、又我が國の昭和七年度以來の公債を假に國會が認めなかったとするならば、現在の我が國は如何になっていたかいわずして明らかである。換言するならば公債のないところに戰爭はないと斷言し得るのである、從って、本條は又憲法の戰爭放棄の規定を裏書保證せんとするものであるともいい得る。  この方は財政法の立案に最初からかかわってこられた方だそうです。ですから、財政法の基本というものをこの方は一応押さえていらっしゃると考えていいと思うんです。いまこの時期に、戦争と絡んでいるということで、公債についても基本に戻ってぜひ考えていただきたいと思うんですね。  それで、最初の全体の「自序」のところで、   財政法は財政に關する、重要な基本原則を明確にしている。即ち從來のように公債によって戰爭を計畫したり、インフレーションを招來して大多數の國民を塗炭の苦しみに突き落したり、國民の知らぬ間に、煙草の價格や通信費や、鐵道賃が何倍にもなったりすること等を一切禁止している。  一番最初にも「公債によって戰爭を計畫したり」ということを挙げているところを見ると、財政法の中でもこれ非常に大切な条項なんだろうと私は素人ですが思います。ですから、これをぜひその原点に返って考えていただきたい。  それからもう一つこの方の意見を紹介いたしますと、いまのに続けまして、  これ等をみると、なる程從來の財政法規に比して國民の總意を尊重していると、いい得ないこともない。又一部支配階級の専横を封じているともいい得る。然し私には憲法や、會計法が不備であったがために戰爭が計畫されたり、インフレーションが起ったりしたとは信ぜられない。やはり戰爭を惹起したのは人であり、インフレーションによって大衆をこの慘めな生活に突き落したのも人である。こう考えて來ると如何に民主的な憲法が出來ても、立派な財政法が出來ても、其の運用に人を得なかったならば、所謂、猫に小判であって、意味をなさない。況んやこの財政法には幾多の拔道と、曖昧なところのあることは本文で指摘しているとおりである。從って私は總ては人にあると信じている。即ち民主的な人によって民主的に運用せられて、始めて、財政法は民主的であるといい得るのである。  そう書いてあります。ですから、人事ということも大変にこの財政法を運用するに当たっては重要な問題なんだと私は理解いたしました。こういうものは恐らくほかの本でも、ほかの財政に詳しい方の間でも、恐らく財政法の基本として言われていることではないかと思うのですが、これについて総理のお考えを最後にお聞きして私の質問を終わりたいと思います。
  212. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 財政法の解釈についての参考文献をお読みになったわけでありますが、原則的に国の歳出は租税をもって賄う、それが原則だと私は思うんです。したがって、アメリカあたりでもかなりの軍備をやっておりますが、歳出の九〇%ぐらいが租税収入でやっております。ヨーロッパ諸国も大体八〇から九〇前後の租税収入でやっておるんです。残念ながら日本の場合は、六十数%であって租税が非常に足りない、間違いございません。したがって、われわれはこの不健全な状態を何とか近い将来にまず歳出の切り詰めによってその比率を少なくしていく、歳出の方から落としていくというようなことをしなきゃならん、そう思っております。  当然に安易に国債に流れるということは、そのときは安易に財源の調達ができるようだけれども、しかし、それはいわば税金の先食いみたいなものであって、利息をつけて払わなければならない税金と全く変わらないと私は思っております。したがって、そういう点からも極力国債の発行というものは、できるだけ戒めていくという私は原則は変わらない、そう思っております。
  213. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ただいま大蔵大臣が財政法に照らしましての御意見を述べたわけでございますが、私も同感でございます。  確かに過去におきまして軍事費を公債に大幅に依存をして、そして軍備を拡大し、戦争へ走った、こういう苦い経験があるわけでございまして、財政法はそういう点についても厳しく歯どめをしなければいけない、こういうことであったと思います。しかし、現在は日本は平和憲法のもとに必要最小限度の防衛力しか整備しないという不動の方針を堅持いたしておりますから、そういう意味でなしに、最近における租税収入の税収の減退、しかし、行政需要は相当急速にこれを減らすわけにいかないというようなこと等から、これを建設公債、特例公債に依存する面が大きいわけでございまして、こういう体質を改善しようというのが行革と財政再建でございまして、いま御指摘がありました点を十分私どもも踏まえて、今後の財政運営にさらに一層慎重に対処していきたい、こう思っております。
  214. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 以上で内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。鈴木内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。御苦労さまでした。  それでは引き続き、総括質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  215. 山田譲

    山田譲君 私は大きく分けまして二つほどこの際御質問したいわけでありますけれども、まず最初は、鉄建公団がやりました上越新幹線の榛名トンネルを掘るに当たりまして現地の水がかれてしまった。それでその渇水対策をめぐるいろいろな補償工事につきまして、二、三年前の話でありますけれども、現在も続いておる問題でもあるだけにいろいろとお尋ねをしてみたいわけでございます。運輸大臣何かお都合がおありのようでありますから、時間になったらお帰りいただいて結構でありますけれども、それまでぜひ私がいろいろ質問したりする内容をひとつお聞き取りいただきたいと思います。  まず最初に、昭和五十年ころから例の榛名トンネルを掘っているうちに水がかれて、そのかれた地区というのは、特に渋川の北西あたりにあります川島地区というところ、これは昔から本当に水がよく出ていたところなんですが、これが全然出なくなっちゃった。そこで、この渇水対策をめぐっていろいろな補償事業が行われたわけであります。それで、昭和五十四年八月の八日に、渋川市川島地区の農業用水渇水に対する補償についてということで、鉄建公団の東京新幹線建設局長西川重次氏と、それから川島用水協同組合代表理事浅見三二さん、この間に補償契約が締結をされたわけであります。  これについてまず鉄建公団の方にお伺いしたいのですが、この補償契約の内容を見ますと、大きく分けて補償工事、それから用地の補償、この二つがあるわけですけれども、この工事の内容を見ますと、かなり公共補償的な内容を持ったものがあるわけであります。ところが、そういうものであるにもかかわらず、渋川市当局が全然それに介入していなかった、関与していなかった、そしてこの協同組合の浅見氏との間で補償契約が取り交わされているわけであります。私ども普通は、公共工事などが伴うような補償の場合は、当然地方自治体であります、ここで言えば渋川市が中に入ってしかるべきであるというふうに思うわけでありますけれども、まずひとつその点について触れたいわけでございます。しかも、これについて最初は市がやろうと、公団との交渉に当たりましょうということを言っていたわけでありますけれども、それに対していわば地元のボス的な存在であります浅見さんという人が、強引に市に申し入れをしまして、文書で申し入れをしたのですが、そして市当局は排除する、そしてわれわれだけが交渉の相手方になるのだと、こういうふうなことを要求を出しまして、いわばそれが入れられた形になった。そして、その後はそのとおり公団とその浅見何がしとの間でもって補償契約がとり行われたわけでありますけれども、最初に、まずなぜ公団は市当局を相手にしないで、そしてこういった協同組合の代表ではありますけれども、この人との間に交渉をしたか、その間に契約を取り交わしたか、こういうことについて、公団のそのときのお考え方がどの辺にあったかということについてお伺いをしたいと思うんです。
  216. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) お答えをさせていただきます。  工事に起因いたしました補償は、直接被害を受けた個人に支払うのが原則でございますけれども、渇水の場合には、この渇水で被害を受けた農家が減収をする、これに金銭をもってお支払いをすることもあり得るわけでございますけれども、多くの場合、渇水の場合は多数の被害者に共用の設備をつくりまして、水が出るような機能回復をいたします。これらに要します対策工事費を補償をいたすことになるわけでございますが、こういうケースが多いわけでございます。  この場合にどこにお願いをするかということになりますと、多くの被害者の方々がおられるわけでございますので、何らかのかっこうでこれらの個人から委託を受けた団体に対して補償を申し上げる、補償の交渉を申し上げ、契約を締結していくということにならざるを得ないわけでございます。この場合の団体といたしまして、被害者の方々が関係自治体、いま先生がおっしゃいますように渋川市に対策工事の設計、あるいは施工を委任をされますときには、私どもは市町村、この場合渋川市にお願いをするわけでございます。事実、同じ渋川市内でほかの個所で市にお願いをしたものもございます。しかしながら、一般的に被害者の団体が、たとえば水道法に基づきます公法人でありますところの水道組合、あるいは簡易水道組合でありましたり、本件のように、農業協同組合法に基づきます農事組合法人として登記されました用水組合の場合には、これは法律に基づく自治体と同等の公法人でありますので、これらの団体と協議して補償を行うケースもあり得るわけでございます。  本件の場合、川島地区で被害を受けられました方々が全員で用水組合を結成をされ、この用水組合の中で、先ほど先生がお話がありました代表者が選ばれて、この方が全員の委任を受け、私どもの交渉、契約のお相手をしていただいたわけでございます。  したがいまして、これらの方々と協議をいたしますことは、先生おっしゃるとおり市ではございませんが、これと同等のものとしての立場でございますので、特段異例とは言えないで、ほかにも例のあることだと思っております。
  217. 山田譲

    山田譲君 それでは、先ほどちょっと私言いましたけれども、市当局が最初は公団と直接やるんだと言っていたときに、浅見氏が横から入ってきて、市当局にはやらせない、おれたちがやるんだということでやったということはさっき言ったとおりですけれども、公団としては市当局に対して、それについての何か話をしておりますか。
  218. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 市とは初めからお話をいたしております。もともとこの榛名トンネル、全長十五キロございますが、渋川市内にそのうち約十キロを長さを持っておりますので、この川島地区ばかりではございませんで、そのほか相当多くの個所で施工いたしております。これらがいずれも残念ながら渇水問題を起こしておりますために、渋川市とは初めから深いかかわり合いを持ち、御協力をいただいてきております。その段階からいまのこの川島地区も含めていただけるという方向の話はいたしたことはございますが、何分にも利根川に並行いたします区間の渋川市内と、それから川島地区が、渋川から分かれまして利根川の支流であります吾妻川流域になりますので、同じ渋川市内と言いながら、多少地域性の違ったところでございます。それらがあって、先生おっしゃるような分離したかっこうになってしまいまして、市一本にならなかったという経緯でございます。
  219. 山田譲

    山田譲君 補償契約の中に補償金の内訳書というのがありますけれども、工事費が一億八千四百三十六万円、用地補償費が一億七千七百八十三万円ということになっておりますけれども、この内訳はどういうことになるんですか。
  220. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) いま先生の言われました細部の内容でございますが、工事費といたしましては貯水池が三カ所、合計で一億四千八百万円、この貯水池間をつなぎます送水管路が延長で約一キロ六百メートルございまして、これの金額で三千五百万円、一部貯水池をつくる、貯水池敷の中に市道が入っております。この道路をつけかえる、総延長六十メートルのつけかえをいたします道路つけかえの工事費百万円というようなものが工事費の内訳でございます。また、先ほどお話のございました用地費の一億七千八百万の内訳でございますが、これは貯水池等を築造をいたしますための、三カ所の貯水池用地、面積にいたしまして約一万平方メートル、買収単価は一平方メートル一万五千七百円と鑑定を受けた上で査定をいたしておりますが、合計で一億五千七百万円、それから中間の送水管路の用地の費用といたしまして、これが七百万円、そのほかに立木の補償でございますとか、そういう雑件を入れまして一千四百万円をプラス支出したものが、先ほど先生が言われました補償費の合計になるわけでございます。
  221. 山田譲

    山田譲君 工事費につきましては、これだけじゃないんじゃないかと思うんですよ。ほかにすでに契約を結ぶ前からいろいろ交渉しておりまして、かなり細かくいろいろなことを約束してきている。その中にはいまおっしゃったもの以外にたくさんあるわけですね。それで、その中身を見ますと、必ずしもこの工事といいますか、渇水とは関係ないようないわゆる市道を、近所なんですけれども、そこを舗装するとか、あるいは農道を何メーターかつくるとか、あるいはさらにひどいと思われるんですけれども、この契約の相手方の浅見何がしの家までの舗装をずっとやっちゃう、道もりっぱな、いままで三メーターぐらいしかなかったやつを六メーターぐらいにして、その中をりっぱに舗装するというふうな、こういう工事費まで中に入っている。そういうことになりますと、これは単に渇水対策というんじゃなくて、純然たる、迷惑かけるために補償するという意味の公共補償になってくる。これはやはり市を当然対象として考えなきゃ、いわば人の土地なんですから、私道というのは。それについて用水協同組合がそんなことを公団と決める資格があるのかないのかという問題なんですよ、これはどうですか。
  222. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 私どもの行いました補償の、先ほど申し上げました一億六千万円の中には、いま先生の言われましたような、ということは、現地でこの理事長さんが言っておられますような、いろいろの雑件を含んでおるわけではございません。農業用水の渇水の補償に要する費用に限定をして、これを公正に評価をして、また数次の協議を重ねて御納得いただいた費用でございまして、決していま言われるようなものを含んでおるわけではございません。  ただ、市道を含んでおるのはおかしいのではないかというお話でございますが、先ほど申し上げましたように貯水池敷に市道がかかっておりましたり、あるいは管路を埋設する部分に一部市道があったりするわけでございますが、私ども、相手の公法人に対しまして対等な契約を結ぶわけでございますので、ある程度の規模の工事をする際に、その附帯といたしまして、道路法に基づく諸手続をやった上で、この道路の中に入る、あるいは道路をつけかえるという工事をやっていただくことを前提とした補償というのを、この用水組合に対してしたわけでございますし、そのことは後に施工の際に公法人の方におきましてそれぞれの手続に誤りがないのを前提にして考えておるわけでございまして、決して違法ではないというふうに思っております。  また、先生さっきからお話のございます地元の有力者の問題でございますが、私どもこの種の仕事をいたそうと思うと、ある意味では地権者会の方々でございますとか、あるいは回りの農業関係の団体、いろいろの団体の代表の方々の御協力を得ねばならんことは確かでございますが、だからといって、やってならんことをやっていいわけではございませんで、この辺は私ども厳重にやっているつもりでございます。道路を方々で直したではないかと、こう言われるんでございますが、先ほども申しましたように、榛名トンネルを出ましてから、吾妻川を高架橋で渡っていくという明かりの区間が約一キロ同じ川島地区の中に出てくるわけでございまして、この区間につきましては、トンネルのズリを運んだり、いまの高架橋をつくったりいたしますために、本線の用地、これは例の側道分を含んでおりますが、こういうものをつける、あるいは工事用の道路をつける、さらに同じ地内に変電所を設けておりますけれども、これの盛り土をする、あるいは変電所の将来の保守をするために通路をつくるというようなことが必要になってまいりまして、かなりの道路工事を、これはいま先生とお話しいたしております渇水補償の問題とは別に、渋川市の道路当局者と私どもとの間で結んだものがございまして、かなりの道路が直されているのは事実でございます。ただ、先ほどお話のございましたような有力者の方が、地元でおれがこれをやってやるんだと、多少そういう点がございますので、これらが混同されまして、地元でいろいろおうわさがあることは私どもも承知しておることでございますが、決して私ども間違ったことをやっていると思っていない次第でございます。御了承いただきたいと思います。
  223. 山田譲

    山田譲君 そうしますと、いろいろ細かいいろんな補償をこれ以外にもやっているということですか。
  224. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 補償ではございませんで、工事でございます。工事というかっこうではいろいろの事業、たとえば私ども高架橋をつくります際に、道路をまたぎます、一部道路の改造を要します、その場合の道路工事費、あるいは従来あります道路をつけかえていただくというふうな場合の道路工事費、あるいは先ほど申しました変電所へ入りますために未舗装の道路を格上げしていただいて、その部分を舗装をしていただくというようなもの、というような工事の委託は申し上げております。補償ではございませんが、他の件での工事の委託はたくさん市に対していたしております。
  225. 山田譲

    山田譲君 そうしますと、たとえばシイタケの補償だとか、あるいはあの辺金魚をわりと飼っているところが多いんですけれども、金魚の補償であるとか、あるいはふろおけが振動によって壊れたからとか、それも全然そうじゃなかったんですけれども、一応そういうことでやられている補償というのは、これはどこの補償に入るわけですか。
  226. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) いま先生のお話のございましたような種類の補償は、工事施工に伴いまして、個人に対して実害を与えたものの補償でございますので、これは別途各個人の被害者に対しまして、それぞれの被害の内容状況に応じましたものを、協議を申し上げた上で御納得をいただき、お支払いを申し上げております。いまの金魚の問題、あるいは地盤の移動からふろが漏るようになったというような問題の補償は、個人に対して申し上げております。
  227. 山田譲

    山田譲君 そうすると、それは先ほど出た浅見さんと、それから公団との間に取り交わした補償契約とは別なものですか。
  228. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 用水組合の渇水補償の問題とは別のものでございます。
  229. 山田譲

    山田譲君 そうすると、それもやはりこの浅見さんと交渉してやったということですか。
  230. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 浅見さんが入られたものもございます、それから直接個人とお話をしたものもございます。それから、そのほかの地元の有力者の方々のお口ききによったものもございます。しかし、多くの部分浅見さんが非常に有力であられるので、その協議の際にお相手となったということは先生の御指摘のとおりでございます。
  231. 山田譲

    山田譲君 ところが非常に不思議なことは、五十六年、去年の八月に入ってから、今度は一切浅見さんは相手にしないと、今度は渋川市と協議することにするんだと、こういう確認書が市との間に取り交わされている。そういう確認書を取り交わされるまでの間、公団とその浅見氏との間に何回も話し合いが持たれて、最初は徹頭徹尾その浅見氏は市にはやらせないということを言っていたんだけれども、最終的にどういうことか浅見氏がおりて、そして渋川市が正面に出てくることになった、こういういきさつがあるわけですけれども、この辺の事情はどういうことでしょう。
  232. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 先生お話しのとおり、渇水問題に関する処理について、それまでお話をいたしておりました浅見さんとのお話から、市を窓口としていただいての協議に切りかえることにしたわけでございます。これは、補償の内容の中で、設備をつくる話、このほかに将来この設備を維持管理をしていくというお話、これも同じく妥結いたさなければならない、設備をつくる話と将来維持管理をする話、この二つがセットになって初めて完結するわけでございます。浅見さんと最初にできましたのは、この設備をつくる方の話でございまして、維持管理の問題は残っておりました。ところが渋川市内におきますそのほかの渇水関係の設備、これも維持管理の問題が同様に出てまいるわけでございまして、市内としてここだけ独立で維持管理の問題を扱うのではなくて、全体の設備の維持管理の問題として扱うのが合理的である。たとえば、ポンプ類を見回るにいたしましても、一カ所だけのために人を雇うということではなしに、全部の設備を見回るために共通に運用するというようなことが可能になってまいりますので、そういうことから、維持管理の問題を中心にいたしまして、次の協議の過程として、市への一本化ということが強く望まれるようになったわけでございまして、このために、それまでいろいろ川島地区だけとお話をしてきたことと縁を切りましてと申しますか、それまでいろいろお申し出がありましたけれども、それらを越えまして市へ今後の協議を一本化していきたいということで話をまとめたわけでございます。
  233. 山田譲

    山田譲君 そうすると、最終的にこの浅見氏と今度公団が特別な確認書を取り交わしましてね、そして一つは、「浅見三二の未解決要求項目は昭和五十六年六月二十四日付で公団に提出した「上越新幹線工事に伴う川島地区補償工事の未工事分の明細」に限るものとし、今後一切要求しないものとする。」もう一つは、「浅見三二が公団に要求している「精算、立替金」については渇水対策の恒久対策に関連するものを除き、過去の経緯を踏まえ浅見三二が公団と協議する。」という、その際の確認書が取り交わされているんですけれども、とりわけこの二項の「過去の経緯を踏まえ浅見三二が公団と協議する。」これはどういう内容ですか。
  234. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 御指摘の表になりました渋川市との文書のほかに確認書を入れて、いま先生お読みになられたとおりのものが入っているわけでございますが、これの第一項の意味は、今日現在で川島地区での飲料水、農業用水の恒久対策、先ほど申しましたように、今後維持管理が残っているわけでございますが、その前の段階になります恒久対策の中で、実は取り残しておりますものが若干ございますので、この未工事分をすると、これはいたしますよというのが第一項の意味でございます。  それから、特に御指摘のありました第二項の話でございますが、これは先ほども申しましたように、地元有力者の方がいろいろの御要求をぶつけてこられるのが実情でございます。この中には、私どもせねばならぬものも入っておりましたけれども、実はのみがたいものもまざっておるというのが実情でございます。これらはしかし、地元としては御要求というかっこうで顕在化をいたしております。渋川市へ引き継がれていく過程で、これらの、従来から向こうは御要求になる、われわれの方はのめないというふうなものにつきましては、さらに深く別途協議をしていきたい。われわれとしてできないものについては、誠意をもってできない理由を御説明し、お断りをせねばならぬということを含めまして、別途お話をしていかねばならんというのがこの確認議事録の第二項の意味でございます。
  235. 山田譲

    山田譲君 この補償契約書の第三条によりますと、「乙に渡し切りとする。」と、三億六千万円を渡し切りということになっている。そして、そのときに契約した途端に三億六千万円渡したわけでしょう。これは渡していますね。そして、その範囲内でもって一切合財やろうというのが、これはこの契約の内容だと思うんですよ。それにもかかわらず、五十六年になってなおかつそのようなことを浅見氏と確認書なんか取り交わしていなきゃならないという事情はどういうことですか。
  236. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 先生御指摘のとおり、五十四年の補償契約書では、三億六千二百十九万円をお払いし、これによって渡し切りをいたしました。これによって、今後一切損失補償の要求をしないという確約をいただいておるわけでございますが、ただし、この中では維持管理費の問題と、それから農耕期以外の農閑期の水量の問題につきましてはまだ協議が残っておりますので、それらの問題を除きましたものについて、と申しましても、渇水問題についての問題でございますが、これについては今後損失要求をしないということになっておるわけでございます。先ほど私申し上げました地元との確認書の第二項に上がっておりますものは、この渇水問題以外の条項を数多く含んでおるわけでございます。したがいまして、この五十四年の補償契約で申しますところの、今後一切損失補償の要求をしないと言っております範囲をもっと超えましたものが含まれておりますので、それらを確認書の方で、これはその外だよ、さらに誠意をもって交渉していきたいということをお話申し上げ、御協力を願ったわけでございます。
  237. 山田譲

    山田譲君 何かよくわかりませんけれども、とにかく三億六千万というような大金を、やっとその交渉が決まったというので、補償契約としてぽんと渡したと。それでもなおかつ三、四年たってから、まだ別なことを要求してくる。あるいはさらに、精算が足りないとか何とか言ってきているそうですけれども、そういうことを一体どうしてそんな本人に言わしておくのか。きちっと補償契約で万事済んでいるのじゃないかというふうに私は思うのですけれども、その辺はどうなんですか。
  238. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) いろいろ地元をがたがたお騒がせいたしましてまことに申しわけないんでございますが、私どもの基本的な工事をする立場でございますと、御協力は得ねばならず、かといって、できないものはできないということも申し上げねばならずということでございまして、その点でなかなか御了承が得られないでおるわけでございます。私どもとしましても、苦しい面もございますんですが、さらに誠意を尽くして御説明をし、公共的な補償として間違いのない業務を執行していきたいというふうに念願をして進めておるところでございます。
  239. 山田譲

    山田譲君 だから、この渡し切りということ、これは会計検査院の方にも後からお聞きをしようと思うのだけれども、渡し切りという制度は、渡したらその範囲内で、たとえば工事費が一億なら一億のものを八千万円でやったとしても、あと二千万円は協同組合がいわばピンはねしても構わないという趣旨のものなのか、それとも、そういう場合は二千万円は国へ返すという趣旨なのか、どっちなんですか。
  240. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 補償者としての公団側の考えを先に申し上げます。  いま先生の言われた、補償したら後はそれを何に使ってもいいという性格とは考えておりません。十分御協議を申し上げて、両者合意に達した価額でございますが、その中身といたしましては、やはり補償に直接必要な費用に限っておるわけでございます。これを公正に積み上げたというふうに信じております。ただ、実際にそこから先の進め方につきましては、委任を申し上げましたわけでございますので、いろいろ若干あるかとは思いますけれども、基本的には当初お打ち合わせ申し上げたとおりだと思います。  それから、渡し切りという点でございますけれども、これはこの種の補償としてはっきりしていれば、内容に疑いがなければといいますか、変動要因がなければなるべく一回渡し切りと、それで今後一切の補償要求をしないという一札が入るのが定義かと思っております。したがいまして、この場合、そうむずかしいところに池をつくるわけではございません、限られた、はっきりした長さのパイプを埋めるという、比較的明確な仕事でございます。自然条件もそう不測の事態は起きないものと考えまして、補償の原則論としての渡し切りの契約をいたしましたものでございます。
  241. 山田譲

    山田譲君 それじゃ会計検査院にお聞きしますけれども、こういうふうな場合に渡し切りというやり方ですね、もう一つのやり方というのはどういうやり方があるんですか。
  242. 中村清

    説明員(中村清君) 補償の方法でございますけれども、公共補償基準要綱等に基づきまして、金銭補償というのが原則となっておりますけれども、この金銭補償の場合には、それを支払いすることによって、一切の責務を免れるというふうな考え方ができるのじゃないかと思っております。  これはあくまでも原則でございますけれども、そのほか現物補償としましては、たとえば公団がやったものでございますけれども、私どもの検査した範囲内でも見たわけでございますが、それによりますと、まず工事との因果関係を確認いたしまして、とりあえず応急対策ということにしまして、第一に公団が、たとえばトンネル等の工事の一環として、それに含めて対策を講ずる場合、この場合にも現物補償としてやっておりますが、そのほかに、たとえば関係市町村に対策工事を委託する場合、それから第三番目に、既設の施設管理者に委託して行わせる場合、こういう各種のやり方をやっております。しかし、先ほど申し上げましたように、金銭による打ち切り補償というのがあくまでも原則であるというふうに私ども考えております。
  243. 山田譲

    山田譲君 その場合、さっきのような例の場合にお金はどうなるんですか。つまり、一億を補償として出しちゃった場合に、実際に相手方が八千万円でその仕事をやっちゃったと、二千万そこに余るわけですね。その金はどうなるんですか。
  244. 中村清

    説明員(中村清君) 先ほど申し上げましたように、この金銭を支払うことによって一切の責務を免れるというのが基本的な考え方でございますから、原則としてはそれですべて終わりという形になろうかと思いますけれども、ただ問題は、その補償した後にその内部で若干の変更がある、いろんな取り決め等によって、組合内部でもって若干の変更がある、こういうことにつきましては、これはやむを得ないんじゃないか。あくまでも総額としては打ち切りというかっこうになっているというふうに私ども考えております。
  245. 山田譲

    山田譲君 そうすると、三億六千万円を相手に渡せば、その金は相手はどう使おうと勝手ということですか。もちろん中身は、池は三つつくるとか、あるいは補償を単価幾らでやりますとかということは変えるわけにいかないと思うけれども、とりわけ工事の場合なんかですと十分そういうことはあり得るわけですよね。そういう場合、それでも構わないということですか。
  246. 中村清

    説明員(中村清君) 補償というのは、数次の交渉を重ねまして、どういうふうな工事をやるかということについて非常に綿密な交渉というものがあるわけでございます。したがいまして、やはり信義誠実の原則と申しますか、そういう形において、金銭補償をすればその線に沿ってやるというのが当然ではなかろうかというふうに考えております。
  247. 山田譲

    山田譲君 信義誠実のような人じゃないんですよ。いまもいろいろ言ってますけれども、やっぱり浅見何がしというのは、本当の地元の何といいますか、ボスであって、そしてこんなことばかりやっているんですけれども、この場合だって三億六千万円その人間に与えて、それがちゃんとそのとおりやっていないわけだ。  たとえば、今度次の問題に移りますけれども、貯水池を三つつくるということになったわけですよね。そして、その用地補償として平米当たり一万五千七百円で計算すると、こういうことで、補償が一億六千万円、七千万近くのやつが決まったわけです。それをみんな全部地権者十三人に渡しちゃったわけですよね。それで、池ですから、これ畑だったところに池を三つ掘るわけで、当然農地の転用の問題が出てくるわけですよね。農地転用の申請をその相手方の協同組合と、それから地権者たちが共同で申請書を農業委員会に出した、その中身を見ますと、これは使用貸借ということになっているわけですよ。ですから、地権者は協同組合に使用貸借させると。使用貸借というのは、御存じのとおり全然ただという話ですね。だから、地権者はただでもって協同組合に提供しようとしている。協同組合はただということでそういう申請を農業委員会に出してきたわけだ。農業委員会としては、それをそのまま認めちゃっているわけです。結局、県庁まで行って、県の方で書類不備ということで返されていますから、それはそのままになっているんですけれども、要するにただで畑を貸すと、池にね、その人に対して一億六千万円の補償が払われているというのは、これはどういうわけですか。
  248. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 私どもといたしましては、先ほど会計検査の御答弁にもありましたように、この用水組合と信義誠実の原則に基づきまして、一括して渡し切りの契約をし、正当の方法で実施をされることを前提として、それらをやったわけでございます。したがいまして、先生お話もございましたような金額で、面積当たり単価でございますが、これらは通常考えて必要な費用としてわれわれ積算、算出をし、地元も御納得いただいた金額でございます。それらの算出に当たっては、十分な鑑定もとっております。われわれとしては通常必要な費用としては見積もったわけでございまして、そこから先、この組合の中におきまして、違った形の進め方がされているという点につきましては、私どもの関知しがたいところでございます。
  249. 山田譲

    山田譲君 そこで私は言いたいんですよ。先ほどの話に関連するけれども、渡し切りにしてしまえば、後は野となれ山となれ、ただでもって池を提供しましょうと言った人にまで補償金何億という金を出さなきゃならないかということ、それでも構わないという話なのか、そこら辺を会計検査院の方にもはっきり聞いておきたいと思うんです。
  250. 中村清

    説明員(中村清君) この種補償につきましては、先ほどもちょっと申し上げたんですが、公共補償基準要綱等がございますが、この要綱等に基づきまして、適正な対価を補償するということが基本になっております。したがいまして、必要と考えられる用地費については、当然補償の対象となるものでございますから、補償後における処理が相手方の内部の事情で若干変更があるとしましても、補償の内容が適正である、補償の目的を損なわない、機能の回復が十分行われている、こういうことであれば差し支えないというふうに考えております。
  251. 山田譲

    山田譲君 私たちは常識的にちょっとそういうことは考えられない。幾ら渡し切りとはいいながら、全然そういった、ただでもって貸すなんという人にまでお金を渡すというのは、どう考えたっておかしいと思うんですよね。しかも適正な価格だとさっきおっしゃったけれども、ここに文書がありますが、あそこは金島という駅が近くにあります。そこの駅前の一番高いところで坪当たり二万二千円ぐらいだというんですね。ですから、二万二千円といいますと、平米大体七千円くらいですか。ところがここは山の上で、私もこの間行ってきたけれども、山の上のへんぴな池のところですよ。そこでしかも一坪三万円以上、五万円近くになるわけですね。金島駅の前でも二万二千円くらいなものが、山の上のそんな人も住まないようなところの畑地で五万円だというんですね。そういう補償金、これはもう計算するときにすでに大きな間違いがあったと思うんですけれども、しかもそれを決めるときに、浅見何がしさんの家に公団の職員も集まってきて、そして坪当たり五万円で決めようと言ったときに、これは高いという話が出たようですけれども、公団の職員が酒を飲みながら日本列島の改造ブームだから、そんなものはすぐ値上がりするんだから構わないと、国の金じゃないか、平気だと言いながら酒を飲んでいたというんですね。そして五万円の補償金を決めた、そんな金が適正な金と言えると思ってんですか。そこら辺、どうですか。
  252. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 酒を飲んだ上とはいえ、私どもの職員がそういう不遜なことを申したとは、いささか信じがたいところでございます。もしあったという御指摘でございますれば、おわびを申し上げなければならない問題だと思います。  価格の問題でございますが、先ほども申し上げましたように、私どもここの個所で鑑定をいろいろとっておるわけでございます。三カ所につきまして評定点をとりまして、そのほかに、この地域におきます他の売買事例、これは昭和四十八年東京電力が鉄塔敷を買ったというような問題を含みます各種の取引事例を含めまして、いまお話しのありましたように、一万五千三百円から一万六千五百円、これは平米当たりでございますが、という算出をいたしまして、これの平均をいたしました査定価格として一万五千七百円を得たものでございます。決して不当ではないというふうに信じております。
  253. 山田譲

    山田譲君 ここで不当だとか正当だとか言ってもしようがないけれども、とにかくこういう事実が、これは全然荒唐無稽のことを言ったとは思われないんだよ、余りにも真に迫っているわけですよね。日本列島ブームだから構わないと、そのお金の出どころは国なんだから、そんなところだって五万円でいいじゃないかということを公団の職員が酒飲みながら決めたというんだから、やっぱりただこれは知らないとかなんとかじゃ済まない問題だと思うんですよ。しかもそれが全然ただでもって提供すると言っている人なんで、しかも農地転用の問題がそういうことで全然解決していないのに、そういうところに全部用地補償の金を、一億六千万の金を払っちゃった、十三人に対して。そうなりますと、私はこれは渡し切りだから、後は渡した相手方の責任においてやるんだから余り構わないということで済む問題かどうかという話だと思うんですが、ここら辺どうですか、会計検査院の方。
  254. 中村清

    説明員(中村清君) この種の渡し切りの金銭補償でございますけれども、これはあくまでも補償契約が成立した次第で補償金が支払われる、こういうかっこうになっておりますものですから、あくまでも一般論として申し上げますが、一般論の場合には、補償工事についての法令等に基づく各種手続は、補償の相手方が行うという形になるんではないかと思います。しかし、先生おっしゃるとおり、内容についてだから何でもいいんだということでは決してないというふうに考えております。
  255. 山田譲

    山田譲君 そうすると、会計検査院としては、いま私が指摘したことがもし事実であったとすれば、どうするんですか。相手から補償金を取り上げますか。
  256. 中村清

    説明員(中村清君) その問題につきましては、いま申し上げましたように、補償契約は成立次第補償金が支払わられる金銭補償という形でございますので、その内容について若干の変更があったにしましても、目的を損なわない場合には、私どもとしてはそれ以上指摘するわけにはいかないというふうに考えております。
  257. 山田譲

    山田譲君 目的というのは、適正な価格でもって国が買いましょうということが目的でしょう。それが適正でなかった場合に、それでもやっぱり目的が達成されたというふうにとるんですか。
  258. 中村清

    説明員(中村清君) 本件渋川の問題につきましては、実は私ども会計検査院の検査におきましてはやっておりません。と申しますのは、上越新幹線につきましては、非常に数多くの補償問題がございますので、私どもとしましては、日数あるいは人員の関係から、どうしても抽出的にならざるを得ない、こういうことでございますので、これは五十四年度の補償でございますけれども、五十五年度においては検査は実施してなかったわけでございます。
  259. 山田譲

    山田譲君 それは指摘されてもやらないという話ですか。いま私は必ずしもこれやれという意味じゃないけれども、一般論としてそういうこと指摘されても、もう済んだことだからやらないという話かどうかですよ。
  260. 中村清

    説明員(中村清君) 先生御指摘の補償の問題につきましては、貴重な御示唆をいただいたというふうに私受けとめておりますけれども、内部的な事情を申し上げますと、本年の検査はすでにすべて終了いたしまして、現在昭和五十六年度の決算検査報告の作成をすべく、内部的に作業をやっているところでございます。したがいまして、私としましては、通常の検査を行う段階におきまして、改めて検討したいというふうに考えております。
  261. 山田譲

    山田譲君 この決算委員会は五十四年と五十五年でしょう。ですから、いまあなたが言うのはおかしい。いまあなた方がこれからやるのはわかりますけれども、いま決算委員会まさしく五十五年の決算やっているわけですよ。だから、そこで私がこういうこと言った場合に、それは私が必ずしもこれから行ってやってくださいとかという、そういう意味で言うんじゃないんだけれども、もう過ぎたことだからやらないとか、渡し切りでもって渡した金の行方のことだから余りやらないとか、そういう姿勢はちょっと会計検査院おかしいんじゃないですか。
  262. 中村清

    説明員(中村清君) 先生に誤解を与えて大変申しわけなかったんですが、私どもとしましては、御指摘の件があれば当然それを検査をやるわけでございますが、先ほど申し上げたような事情で、すぐただいまやるというわけにまいりませんので、これから通常の検査を行うという段階でもって、改めて検討させていただきたい、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  263. 山田譲

    山田譲君 そういうことはわかりました。  だから、私はいまこれですぐやってくれなんて、そういう言い方をするんじゃないけれども考え方として、やはりそういう補償を出した、余りにもでたらめな補償を出したということが、まあでたらめではないとこっちはおっしゃるわけだけれども、われわれはおかしいと思っていますが、そうしたら、やっぱりでたらめか、でたらめでないかは会計検査院が行って検査してもらうしかないわけですよ。だから、いま行ってやってくださいという言う方はしませんけれども、やっぱりそういう気持ちで、先ほど来、渡し切りだからもうどうなろうと勝手だとかというんじゃなくて、やはり渡された先が、こっちが補償契約やった約束どおりの内容かどうかくらいのことは検査するという、そういう姿勢でやってもらわないと困るというふうに特にお願いをしておきます。  その次に、この公団職員の不正の問題、不正といいますか、問題でありますけれども現地へ行ってみますと、公団職員と現地の連中との間にいろんな取りざたが現在でもされているわけですね。そのうちの一つとして、これは必ずしもうわさじゃないんですけれども、公団職員の六名、これは名前もちゃんとわかっていますがね、これに対して協同組合の浅見氏が一人一人に対して相当の高価な、これは二、三万なんという金額じゃないんだけれども、時計を渡している。もらった人もちゃんと認めているんですけれども、そしてこれ聞いてみると、これはせんべつだったからもらっても平気だというふうなことでいるようですけれども、これは公団どうですか、こういうせんべつのときに公団の職員はみんな相当高価な時計を業者なり相手方からもらうようになっているんですか。そういう習慣があるんですか。
  264. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 本件につきましては、おわびを申し上げる次第でございます。  現地でこの種の工事を円滑に進めていくために、地元の有力者であります先ほど来お名前が出ました方、対策協議会長であり地権者会長で、また農業用水の組合長であり、簡易水道の組合連合会長でもあられるというような方でございますので、有力者として私どももいろいろの折衝を持つことは避けられない状況にあったわけでございます。  御質問のありました事実は、調査いたしましたところ、昭和五十年から五十二年ごろにわたりまして、私ども現地関係者が、あるいはその中の何人かは現地に勤務をいたしました後転任をいたしましたときにごあいあつに伺った、このときせんべつとして贈られたという事実を調査をいたしております。そのときには本人それほど高価なものと思わず受け取ったと言っておりますが、先ほど来のいろいろの問題から、実は私ども今年初めにようやく事実を把握をいたした次第でございます。御指摘の六人のうち、一人は後に返送を申し上げていると言っております。一人は相応のお返しを申し上げることでパーにしたつもりでおると言っております。いずれにいたしましても、いわゆる儀礼的範囲を逸脱をしているという御指摘をいただいてやむを得ないようなことを不用意にもしたということは、公団職員としてきわめて不適当でございまして、厳重に注意をいたしたところでございます。今後ともこのようなことがないように厳しい指導をしていく所存でございます。申しわけございません。
  265. 山田譲

    山田譲君 それともう一人、そのときの副所長をやっていました竹屋という人ですけれども、この人が横浜に家を建てた。われわれが見る限り、その図面もありますけれども、かなり大きな二階建ての五十坪くらいの家なんです。二階にも台所がちゃんとあるようなすばらしい家、それを建てまして、これはちょうど一千万円であった。五十年の話ですけれども、いかに当時といいながらかなり安い家だったと思うんですが、しかも、一千万円で請け負った人が、この協同組合の副会長か何かの幹部なんですね。そしてそれが渋川からわざわざ行って建てている。そしてしかもその保証人になっているのが、これまた問題の浅見何がしなんだ。そしてお金を借りたところは渋川の農協なんですね。それでもって家を建てた。ですから横浜あたりの人は皆どうしてあの人はあんなにりっぱな家を建てたんだろう、よっぽど高かったんだろうというふうなことを言っているようですけれども、こういうものすごく密着しているわけですね、その相手方と。そういうことが果たして許されるかどうか、この辺どうですか。
  266. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) 御指摘の疑いをかけられた点は残念ながら事実でございます。  後ほど直接それの調査をいたしました現地を担当いたしております局長から細部説明をいたさせますが、調べました結果、金銭のやりとりについては幸いにしてと申しますか、間違いはなかったようでございますが、明らかに、いま先生がおっしゃいますような癒着の疑いを受けるようなことがございましたので、本人に注意をいたしましたところ、申しわけないということで、本人申し出によりまして、定年以前ではありますけれども、昨年の九月末をもって依願免にいたしておる次第でございます。今後とも、このようなことがないように指導を厳重にしていきたいと思っております。  なお、調査の細部につきまして、決して過度なものではなかったという点を含めまして、堀内局長にお答えをいたさしていただきたいと思います。
  267. 堀内義朗

    参考人(堀内義朗君) いま吉村から御説明したことに補足さしていただきますが、当人は、昭和四十九年一月から五十年三月まで、一年三カ月現地の建設所に勤務いたしておりまして、その後体の病気の関係で東京に転勤いたしております。それで、五十年十二月に、いま先生のお申し出がありました地元の区長さんの経営する工務店に建築を依頼しております。この委託契約は総額一千万円でございまして、まあ通常申しますと、ローン形式と申しますのでしょうか、融資は直接本人が受けたんではなくて、融資はこの工務店が受けまして、返済は本人から工務店に返しております。五十年から五十五年までの六年間に分けまして、利子八%を含めまして五十五年末に完済いたしております。先生のお話にもございましたが、二階建てでございまして、これは息子夫婦と同居する関係で二階建てにしたようでございますが、私どもの専門家——これは一級建築士に現地を見させましたところ、建坪は約四十三坪でございますけれども、材料等は非常に悪いものが使われているようでございまして、建て売り住宅程度のできばえであったという報告を受けておりますので、一千万という額は坪当たりにいたしますと二十四、五万でございますが、五十年当時としてはそれほど不当な値段ではないのではないかと私考えております。  それから、このローンの返済につきましては、私、直接銀行送金の受取を全部確認いたして、完済が終わっていることを確認いたしたことをあわせて御報告を申し上げたいと思います。
  268. 山田譲

    山田譲君 公団としても汚職になるとかならないとかという問題は別として、とにかく余りいいやり方じゃないと、非常に疑いを持たれやすい行動であるということで、依願免という形で退職さしたようですから、これ以上この問題追及いたしませんけれども、この人は、さっきの国の金だから構わないじゃないかと、列島改造論のときだったと言った本人でもあるわけですよ。  また、もう一つ事実を挙げますけれども、そういうことで、さっきの時計の問題もあるけれども、この三億六千万とか何億というような大きな金が動くときに、公団職員はどうしてもそういう相手方とぐるになって、そして適当にいろいろうまい汁を吸うというふうなことが相当あったというふうに私は現地の人からいっぱい聞いているわけですね。あるいはまた、あすこに川島駅をつくるというふうな問題がありましたよね、新幹線の川島駅をつくれという。そのときにあすこは勾配が急であるから駅はできないというのが公団側の言い分だったようです。ところが、この竹屋氏は自分でわざわざほかのところまで見にいきまして、そして、そこの図面を持ってきて、こういう勾配でもちゃんとこれこれの駅はできているんだから、できないはずはないというような、その資料をわざわざ相手方に渡しているんですよ。そういういわば機密の書類を平気でもって渡しているような、そういう公団職員じゃ本当に困るわけであります。  それからもう一つ、この話聞いてもらいたいんですが、トンネルから掘ったずりがありますよね。ずりを一体どこに持っていくんだというときに、いろんな話があって、その中には自民党の某代議士が介在したとか何とかと言われておりますけれども、いずれにしても近所の東村というところに持っていくことになっていた。ところが竹屋氏が地元のさっき係証人になった人、あるいは金を貸した人ですね、請け負った人との間に話し合いをしまして、そのずりを三万五千立米ばかりすぐ近くの、自分たちのすぐそばの河川敷にばあっとばらまいて、そこにりっぱな宅地をつくちゃったわけです、いまでも屎尿処理場なんかそこにできていますけれども。そういうことを平気でやっているわけですよ。  三万五千立米というのはどういう根拠かといいますと、竹屋氏がはっきりと相手に三万五千立米は河川敷へ持っていきましょうと言って約束しているわけです。それで、公団に現地の者が聞いたときに、公団はずりは東村の方へ持っていくことになっているんだから、全然そんな話は知らないと言ったそうですけれども、少なくとも三万五千立米のずりというのは相当なもんですよ、これは。トラックだって千台ぐらいかからなきゃいけないようなもの。それを公団の人が知らないなんてはずはない。それは竹屋氏がそういうことでもって、相手とぐるになって、そして河川敷へばらまいてりっぱな宅地を造成しちゃったというふうな、こういうことについてどうですか、これは。
  269. 吉村恒

    参考人(吉村恒君) いろいろお疑いをかけられるような言動をいたした点があったかと思いますが、おわびを申し上げる次第でございます。  ただ、お言葉返すようでございますが、三万五千立米という大量のものを、そう簡単に違った方法で捨てられるわけではないわけでございますので、いささか先生の御指摘は違うんじゃないかということを申し上げたいわけでございます。  トンネルの掘削に伴いますずりの処理につきましては、量の莫大なことと、場合によりましては、いま先生のお話にありましたように、大変有効なものでございますし、場合によりましては、今度はもう本当の邪魔ものでございまして、相当の金をかけても捨てるということを必要とするわけでございますので、工事計画に当たりまして非常に大きな量の、相当部分と申しますか、ほとんど全部と言ってもいいほどのものにつきまして、その大筋を地元とよくお話を申し上げて、なるべく有効に使うということでやっておるわけでございます。現に渋川市内でも公園、学校の造成等に持っていっているものもございます。ここの川島の坑口から出ますものにつきましては、金島、このすぐ前にあります吾妻線の駅でございますが、この駅前広場に一万、それから変電所、これは私どもの変電所でございますが、これに一万、残り先生御指摘の東村へ十四万立米、合計十六万立米を処理しておりますが、このほかに、これはいまの大きなトンネルから出ますずりでございますけれども、そのほかに切り取り部分もございますし、それから長い吾妻川橋梁がございます。それの根掘りの土も相当なものがございまして、合わせてそのようなものが二万立米ぐらいございます。トンネルのずりは非常にまとまって大きいもんでございますから、私ども指定の土捨て場ということで、先ほど来申し上げたような東村、あるいは変電所等、駅前というところに捨てたわけでございますが、この二万立米につきましては、施工業者のいわゆる俗にいいますところの自由処分と申しますか、自主処分と申しますか、それにゆだねることにいたして契約をいたしております。  御指摘の川島地区の、通称言われるところの河川敷については、いま申し上げましたような私どもの大筋の取り決めの外でございますけれども先ほど申しました二万立米のうちの若干、恐らく数千立米程度だろうと私ども予測しておりますけれども、あるいは請負業者が地元との協議をした上で捨てたものがあるかもしれないというふうに思っております。
  270. 山田譲

    山田譲君 全然違うわけですよね、それは。つまり、約束は五万立米、これも最初の約束は何か中之条の方に持っていくと言ったのに、自民党の某有力代議士さんか何かが働いて、東村というところへ持っていくことになっていた。ところが東村へ持っていかないで、今度は川島地区の方へ持っていっちゃったわけですよ。だから東村の方からは文書でもって、どうしておれのところへよこさないんだといって抗議文がちゃんと出ているわけです。それをどこへ持っていったかというと、その分はいま私が言いました川島の河川敷へ持っていった。あなたがおっしゃった一万立米を金島駅に持っていったなんて——そこを私も見てきましたよ。それは確かに一万立米ありました。だけど、私が言っているのはそんなちゃちなものじゃなくて、その河川敷に膨大な敷地ができちゃっている。最初はもらう人は五万立米欲しいと言った。そうしたら竹屋氏が、五万立米はちょっと無理だから、三万五千にしておいてくれと。そのかわり個人にやるわけにはいかないから組合をつくりなさいといって、竹屋氏が入れ知恵をして、その相手方は何とか組合という農事法人をつくって、それを受け皿にして三万五千立米をずっと入れて、やっぱり予定どおり足りないものですから、あとの一万五千はどこか別なところから持ってきて、そして五万立米の敷地をつくっちゃっているんですよ。この間、私二、三日前に行ってきたばかりだからよくわかっている。ですから、その辺はあなた方ちゃんと理解しておられないし、実情を見ておられないと思うんだけれども。だから、そういうことをこの竹屋というやつは平気でやっていたわけですよ。そして、一千万円高いとか安いとかと言っていますけれども、そういうことをやらせて、これはけしからん話だと思うんですけれども、ずりの話はひとつ見てきてくださいな、物すごい敷地ができちゃっているんですから。東村から文句が出たくらいですからね。そういうことで非常にでたらめなことをやっている。ですから、一切合財浅見氏に任せて、三億六千万やってあるんだから、もう後はどうなったってしようがないということじゃ済まない問題が僕はあると思うんですよ。  あるいは補償の問題だって、適正だ適正だっておっしゃっているけれども、たとえばふろ場が壊れたから直してくれ、工事の震動で壊れちゃったって言っていますけれども、こんなのうそっぱちで、もう数年前に壊れちゃっている。それを浅見氏が入れ知恵をして、そのままほっておけと、お金はいずれ公団が工事を始めるだろうから、そうしたらそれを取ってやるからといって、わざわざ日付を書かせないで、そして日付は震動ができてからの日付にして、そして何十万かふんだくっている。あるいは金魚だってそうですよ。メダカのような金魚が十数匹しかいないところを、まるでそれこそ何百万円という金魚がいっぱいいる池がだめになったというふうなことにして相当な金額を取っている。こういう補償が適正な価格だなんてどう見たって言えません。でも私は、もうすでに本人たちの手に渡ったんだから、いまさらその人たちからまたもぎ取ってくれなんということも実際言いにくい話だけれども、決して適正な補償金が支払われているというふうには言えないわけです。  それでまた、さっきの浅見何がしから請け負って工事をやった神道興業、とんだ神の道だと思うんだけれども、この神道興業と、津久井建設というのが事業だけやって、それでその後すぐに倒産しているわけです。その工事をやるときだけつくって、浅見氏とぐるになってつくって、そして工事が終わった途端に雲をかすみとどこかへ行っちゃった。どうなっているか全然わからない。あれがもし何か問題があったらどうするんだというふうな、あの池が壊れたりなんかした場合にだれが責任とるんですか。これは当然公団がやったということになるんだから、公団が責任とらざるを得ないだろうと思うんですよ。中に立った浅見何がしなんかそんなことできるわけがないんだから。そういういいかげんなことをやっているような、そういういわゆる擬装倒産をしたようなやつら、こういうものを相手にして、この渇水対策が行われているという事実を私どもは見逃すわけにいかないわけです。しかも、国の大事なお金を、国の金だから構わないというふうなことで、相手方と酒飲みながら言っているようなそういう人たちに公団の工事を任しておいたんじゃ、これ金幾らあっても足りないということになるわけですよ。  私は、たまたま一例を渋川の問題について言ったわけですけれども、恐らくこういうような風潮は公団事業のあちこちに見られるんじゃないかと思うんですよ。だから、これはひとつ厳重に今後注意をしていただかなきゃ困る。この財政再建とか言っているときに、国の金だから幾ら出してやったって構わないというふうな、そういう根性で仕事をやられたんじゃ、本当に国鉄の赤字が多くなるのはあたりまえである。それにもかかわらず、国鉄の赤字は労使関係が悪いからだなんて言っていたんじゃ困るんであって、ひとつ鉄建公団としても今後、いままで以上にがんばってよく監督をしていただきたいというふうに思うんです。  最後になりますけれども、これは運輸省の所管の公団の話でもありますから、運輸省の鉄監局長さんいらっしゃいますか、ひとつよろしくお願いします。
  271. 永光洋一

    説明員(永光洋一君) お答えいたします。  二点あると思いますが、まず公団の補償問題につきまして、適正な審査を行って補償額を決定しておることとわれわれとしては考えておりますけれども、いま先生がお話がいろいろありましたが、その運用に当たってはいやしくも誤解のないように、厳正な上にも厳正を期して対応するように今後引き続き十分指導してまいりたいと考えておりますし、さらに職員の問題につきましては、そういう補償関係に携わる職員について、やはり疑惑を招くような行為は厳に慎むように指導をいたしておりますが、いまお話がありましたようなことがあるということで非常に遺憾なことだと考えておりますので、今後十分に指導監督してまいりたいと、こういうように考えております。
  272. 山田譲

    山田譲君 ひとつ厳重に運輸省としても対処していただきたい。運輸大臣にもよく私はこの話聞いていただきたかったわけだけれども、後からよく伝えておいてくださいよ。こういうでたらめ——でたらめと言っちゃあれだけれども、インチキなやり方が行われているということを。今後絶対にそういうことのないように大臣からも注意をしていただきたいというふうに思います。  その次には、今度、現在の経済政策、財政政策についてお話を承っていきたいというふうに思います。  最初に、これは河本長官にお聞きしたいんですけれども、春ころ私が、たしか物特の委員会だったと思いますが、景気といいますか、日本の経済の不況がいつごろになったら立ち直るだろうというふうな質問をしたときに、長官は、大体世界経済はことしの暮れあたりからよくなることが予想される。そうなると当然それに伴って日本経済もよくなっていくんじゃないか。そればかりじゃもちろんないと思いますけれども、要するに世界経済の中で日本経済も動いているわけですから、世界経済がよくなれば当然日本の経済もよくなっていくというふうなお話があったわけです。現在見ている限り、世界経済がそう好転をしていくというふうには思われないわけですけれども、ここで長官にお伺いしたいのは、最近における国際経済といいますか、世界経済の動向がどうなっているか、そして今後どうなっていくであろうというふうなことについての見通しといいますか、それをまず詳しくひとつ教えていただきたいというふうに思うんです。
  273. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) わが国の経済は昨年の五、六月ごろから回復に向かいました。そして、秋には在庫調整もほぼ終わりまして、非常にいい方向に進んでおったのでありますが、十一月ごろから貿易がだんだんと減り始めまして、その傾向は現在までずっと続いております。    〔委員長退席、理事粕谷照美君着席〕 そこで、貿易が減り始めましてから再び経済は足踏みが始まったと思うんです。生産、出荷も停滞ぎみでありますし、在庫も再びふえ始めまして、昨年の五、六月ごろの水準にまた戻っております。  そこで、現在の日本経済の特徴を簡単に申し上げますと、一つは、このように輸出がずっと減っておるということでありますが、ことし初め政府がつくりました輸出貿易の見通しは大体千六百五十億ドルぐらいと想定をしておりましたが、残念ながらいまの情勢ですと、二百億ドル以上も減るのではなかろうかと、こういう感じがいたします。  そこで、輸出がこんなに落ち込んでまいりますと、やはり企業家心理にも相当厳しい影響が出てまいりまして、設備投資を見直す機運が相当強くなったと思います。しかし、大企業につきましては、力もございますし、設備の近代化投資をおくらせますと、競争力がなくなりますので、無理してもできるだけやろうと、こういうことで、そんな大きな落ち込みはないと思います。    〔理事粕谷照美君退席、委員長着席〕 しかし、中小企業につきましては、力がありませんし、貿易がこんなに落ち込んでくるということになりますと、投資計画を延ばすとか、あるいは縮小するとか、そういう変更が相当顕著になってまいりました。御案内のように、民間の設備投資はGNPの大体一六%ぐらいと想定をしておりまして、中小企業の投資は約その半分強ということでありますから、八%強を考えておるのであります。したがって、全公共事業、これはGNPの九%弱でありますから、ほとんどそれと変わらないぐらいの投資量でございます。それが相当大幅に落ち込むということになりますと、非常に大きく経済に影響が出てまいります。  それから、それだけではありませんで、中小企業に元気がなくなってまいりますと、やはりボーナスとか、給与等にも当然影響が出てまいります。つまり、貿易の落ち込み、その背景は深刻な世界不況ということでありますが、以上申し上げましたような幾つかの影響、これが一つの流れだと思います。  ただ、しかし一方で、ことしになりましてから物価が低い水準で安定をしておりますので、実質可処分所得が二年ぶりでプラスになっております。昨年と一昨年は実質可処分所得はずっとマイナスが続いておりましたが、ことしになりましてから大体月々、若干違いますが、平均いたしますとおおむね三%前後のプラスになっております。これは私は経済の流れとして非常に大きな変化だと思うんです。マイナスの実質可処分所得がとにかくプラスになってきた、これは大きな変化だと思います。  それを背景といたしまして、消費の方は強含みだと思うんです。特に五月、六月は夏が早く来たということもありまして、夏物の消費が一時急上昇をいたしました。そういうことが主たる原因になりまして、先般発表いたしました四−六のQEは年率に直しまして五・一%成長と、こういう水準でありますが、この成長のほとんど全部が、これは消費の一時的な急上昇、これが原因になっております。ただ、この間の消費の急上昇というのは、年率で約一〇%ぐらいの増加でありますから、これだけの消費がふえる力は、私はいまの日本にはないと、こう思っております。やはり一時的な現象だと、こう思うんです。その証拠に、七月、八月は再び長雨とか、それから冷夏、こういうことで、消費がある程度落ち込んでおります。したがいまして、四−六のQEでもって現在の日本経済を楽観をするということは、これは将来の判断を間違うのではないかと、こういう感じがいたします。  いずれにいたしましても、以上申し上げましたように、相当警戒すべき流れ、それから、やや楽観すべき流れ、二つの流れがございますけれども、輸出貿易の落ち込みと、それの先ほど申し上げました投資その他に対する影響、この方がやはり相当大きいのではないかと、こういう感じがいたしますので、経済の情勢は楽観を許さないと、こういう感じであります。  ただ、最近のいろんな国際機関の発表、あるいは一カ月ばかり前のアメリカ政府の経済見通し、あるいはアメリカ議会の見通し、こういう見通しにつきましては、私どもは、過去に何回か間違いがございましたので、そのまま信用するわけにはまいらないと、こう思っておりますけれども、ただ大きな流れといたしまして、世界経済が最悪の状態をようやく抜け出して、回復の方向にこの年末ぐらいから進むのではないだろうか。もっともその時期等にちついては若干のずれがあるかもわかりません、あるいは回復のスケール等につきましては若干の変化があるかもわかりませんが、大きな流れとしては、最悪の事態はようやく世界経済は通り過ぎつつあるのではないかと、こういう感じがいたします。本来の春になりますか、あるいは夏になりますか、そこはわかりませんが、世界経済が回復いたしますと、日本の商品は世界最強の競争力を持っておりますし、条件がいいわけでありますから、現在のように減り続ける、こういうことはないと、こう思っております。これだけ円安でありますから、普通の状態ですと、常に輸出が拡大をいたしまして、それが契機になって景気が回復するというパターンでございますが、今回はこんなに大幅な円安であっても、ごく一部の雑貨なんかはふえておるものも少しありますけれども、大勢としてはずっと減り続けておると、こういうことでございまして、私どもはこういう幾つかの複雑な要素を分析をいたしながら、これからの経済政策を決めていきたいと、このように考えております。
  274. 山田譲

    山田譲君 私は最初に世界経済の現状をお聞きしたかったわけです。いま少しお話ありましたけれども、観測によると、来年の春か夏かわからないけれどもというようなお話でしたけれども、ことしの春は、長官は全体としては国際経済はことしの暮れにはよくなるであろうというふうなことをおっしゃっておられたわけです。どう見てもそれが少しずれておくれているというふうに考えざるを得ませんけれども、世界経済がよくなるであろう、いまが一番底をついているんだということは、どういう根拠でおっしゃるわけですか。
  275. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これはまず第一に、ほとんど全部、日本を除く先進工業国の経済がゼロ成長かマイナス成長、こういう状態が続いておるということが一つであります。それからもう一つは、失業者が非常に大きな数字になっておりまして、OECD加盟二十四カ国の失業者は、御承知のように第一次石油危機の前は一千万、それが第一次石油危機によりまして二千万になり、さらに今度の第二次石油危機によりまして、昨年は二千六百万までふえておりましたが、現在は大体三千二百万と想定をされております。失業者のかつてなかったような急上昇。それと、インフレは峠を越したと思いますが、なお依然として二けたの国も相当多いと、こういう状態でございますので、そういう大きな流れ、それから各国が発表しております細かな経済指標、そういう点を分析をし、先ほど申し上げましたような権威ある国際機関の見通し、こういうことを分析いたしまして、現在が世界経済が最悪の状態にあると、このように判断をいたしております。
  276. 山田譲

    山田譲君 先ほどいろいろお話ありましたけれども、この日本経済の現状についてはいま大体お話あったとおりだと思うんですけれども、現在の不況の特徴といいますか、これは一体どの辺にあるというふうにお考えですか。
  277. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 不況の特徴は、やはり輸出が昨年の十一月以降ずっと減り続けておるということ、しかも先ほど申し上げました数字ですと、大体政府の想定しておりました数字に比べまして一三、四%も輸出が減るということ、そこからくるいろんな悪い影響が顕著に方々にあらわれておるということ、これが不況の一番の特徴であろうと、このように思います。
  278. 山田譲

    山田譲君 輸出ばかりでなくて、輸入も減っていますね。それで、輸出入が非常にこの統計を見ますとマイナスになっているというふうな状況のようでありますけれども、その原因はやはり世界経済の不況ということになっているのか。それとも別に要因があるのかどうか。そこら辺はどうですか。
  279. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 輸入も御指摘のように減っております。いわば縮小均衡、こういう形になっておりますが、輸入力が弱いということは、それだけ日本経済の力が弱くなっておると、最終需要が縮小しておると、こういうことだと思います。
  280. 山田譲

    山田譲君 ですから、それはどういう理由かということなんです。つまり世界経済全般がおっしゃったように不況のどん底にあるから、日本における輸出も輸入も減っているんだということなのか、それもあるにしても、もっと積極的に何か別な理由があって、輸出が減っているのかという、そこのところどうですか。
  281. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 輸出が減っておるのは、これはまあ世界経済が非常に悪い状態になっておって、相手に購買力がなくなっておると、だから幾ら優秀な商品を安い値段で供給しようと思いましても、相手に買う金がなければこれはどうにもなりませんから、そこに原因があると思います。  それから、輸入が減っておる、輸入が計画どおり伸びていないということは、これは先ほど申し上げますように、日本の経済の力が依然として弱いと、したがって、購買力がないと、こういうことだと思います。
  282. 山田譲

    山田譲君 現在日本経済がいわゆるトリレンマで苦しんでいるというふうなことをよく言われますけれども、その三つは、財政再建の問題、あるいは貿易不振のいまのおっしゃった問題、それからもう一つは内需の不振というふうな、この三つがお互いに原因となり、結果となって、非常に不況の中に苦しんでいるということだと思うんですけれども、この三つの関係について長官どうお考えですか。つまり具体的に現在の不況を脱するためには、この三つのうちどれかを突破しなきゃならない、あるいは三つ全部が突破できりゃ一番いいでしょうけれども、いずれにしてもこれを何とか解決しないと、不況から脱出することはできないこということだと思うんですけれども、さしあたりこの三つの問題について長官のお考えをお聞きしたいと思うんです。
  283. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま政府考えております基本的な経済政策は、できるだけ早く日本経済を安定成長路線に定着させると、これを基本的な目標として考えておるわけであります。安定成長路線とは何ぞやといいますと、それは雇用問題が解決できる経済でなければならんし、それから同時に、わが国の経済の国際競争力が新しい投資をどんどん進めることによって維持される、そういう経済、つまり貿易立国としての基本的な力を維持すると、こういう経済でなければならんと思いますし、また税収がある程度確保できると、こういう経済でなければならん。この三つが解決できるような経済成長、それを私どもは安定成長路線と考えておりまして、それを昭和五十四年にスタートいたしました新七カ年計画では、おおむね五%前後の成長が維持できれば、その三つの問題は十分解決できると、それが安定成長路線であると、こういう認識に立ちまして、七カ年平均五%強の成長を達成することを目標にしておるというのがいまの中期計画の中身でございます。  もっともその後、この中期計画がスタートいたしましてから第二次石油危機が起こりましたので、この計画は軌道に乗っておりませんが、日本の基本路線は、以上申し上げましたような三つの課題が解決できるようなそういう経済、それを目指しておると、こういうことだと思います。
  284. 山田譲

    山田譲君 この財政再建の問題と、この不況との関連についてお伺いしたいんですけれども、財政再建ということでできるだけ歳出を減らすと、とにかく節約していかなきゃいけない。そういうただ節約節約というふうな、消極策だけでいって、本当に日本の財政再建が、真の意味の財政再建ができるかどうか、ただ節約すりゃいいというふうな二宮尊徳のような考え方だけで、本当の意味で日本の経済をいまおっしゃったようなところまで発展させることができるかどうか、この辺はどうですか。これはひとつ大蔵大臣にお伺いします。
  285. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) すべての経済というものは兼ね合いの問題だと私は思っております。いま私どもがやっておるのは、要するに高度経済成長時代のいろんな惰性というものがあって、当然租税をもって充てるという大原則であってくれば、とうていこれほど多くの歳出は私はできなかったと思います。御承知のとおり、昭和四十八年から五十六年の税収は二・三倍にしかなっておりません。しかしながらたとえば社会保障費は約四倍、文教費は三倍、公共事業も二・六、七倍ということになっておるわけでありまして、それが赤字の最大の原因になっておるわけですから、われわれはさらに赤字をふやしていくということはできない。それだけの水準を守っていくためには相応の負担をしてもらわなければならない。しかしながら、やはり高度経済成長下の、いまになってみれば、もっと受益者負担なり、あるいはがまんしていただけるものなり、そういうものがあると言われておるわけですから、まずわれわれはそういうものを切り落とす。それによって、要するに国家の財源確保のために、あるいは借金か増税かどちらかによらなければならんわけですから、民間に資金を頼るものを少なくすることをまず優先的に考える。これはそれじゃ歳出を切らないでだぶだぶにしていけば景気はよくなるかと、必ずしもそうはなりません。アメリカあたりがやはりもう歳出がふえちゃって、結局はその歳入を得るために無理な国債発行をして、二〇%の高金利というところまでいっちゃったわけですから、それが好景気になるということには結びつかないわけであります。だから兼ね合いだと私が言うのはそのことでございます。だから一概にどうだということは申し上げません、兼ね合いの問題。私はいまの段階においては、やはり歳出カットはまず優先的にもう少し進めてよろしいと、そう考えております。
  286. 山田譲

    山田譲君 大蔵大臣についでにお伺いしたいんですけれども、各省の概算要求が大体出そろったと思うんですけれども、そしてそれは大体どのくらいの規模になっているか、そしてそれを今後どういう方針で査定をなさろうとしているか、これはどうですか。
  287. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 数字的なことは事務当局から答えさせますが、大体歳出が前年対比一・五%程度で大体おさまっております。たとえば、参議院の選挙が来年ございますので、そういうところでシーリングが二百億円ぐらいよけいふえちゃったとか、あるいは国会の一部とか、何かもう少し、少しのものが多少ございますが、大体全体的には一応シーリングの中におさまって出てきております。しかしながら、これはやはり要求の限度額を示したものであって、ことしの五、六月ごろでは、世界の景気の問題、日本の経済見通に等についても、少し甘く見ておった点がございます。したがって、それがもっときついという状況になれば、私はマイナスシーリングだからといって現在の概算要求をそのまま認めるわけにはいかない。やはり歳入が減るということになれば、それを横目でにらみながら、可能な限りもう少し圧縮をする努力をする必要があると、そう思っております。
  288. 宍倉宗夫

    説明員(宍倉宗夫君) 数字についてちょっとだけ申し上げます。  マイナスシーリングでかかっておりますのは、御承知のように一般歳出でございますが、マイナスシーリングのシーリング枠は守られまして、一般歳出につきましての要求額は三十三兆一千二十四億円でございます。そのほか国債費と地方交付税を足しまして、全体といたしましての要求額は五十兆一千百五十億円でございます。ただ、この要求額には、御承知のように、いま取り扱いにつきまして給与関係閣僚会議等で御議論をいただいております人事院勧告に関連する経費、それから五十六年度の歳入欠陥の後始末に関する経費、こうしたものはこの要求額の中には入ってございません。
  289. 山田譲

    山田譲君 これはやはりあれでしょう、このままうのみにするというんじゃなくて、これからもちろん査定なさると思うんですけれども、査定の一つ方針みたいなものはありますか。
  290. 宍倉宗夫

    説明員(宍倉宗夫君) 具体的にここで、これこれの経費につきましてこのような方針で査定をいたしますということを申し上げられませんけれども先ほど大臣からもお話しございましたように、非常に厳しい財政事情でございますからして、それぞれの経費につきまして、制度的な改革も含めまして、一々基本的に見直してまいりたいと、このように考えております。
  291. 山田譲

    山田譲君 この五十兆一千百五十億のうちに、防衛費というのは幾らぐらいになっていますか。
  292. 宍倉宗夫

    説明員(宍倉宗夫君) お答えいたします。  防衛庁費といたしましては、概算要求額で二兆七千七百六十億円でございます。
  293. 山田譲

    山田譲君 これは伸び率は幾らになっていますか。
  294. 宍倉宗夫

    説明員(宍倉宗夫君) 伸び率は七・三%でございます。
  295. 山田譲

    山田譲君 何か、この間ちょっと新聞で見たんですけれども、この伸び率七・三%、二兆七千億というやつがそのままなかなか認められないというようなことを大蔵当局は言っているというような新聞がありましたけれども、その辺はどうですか。
  296. 宍倉宗夫

    説明員(宍倉宗夫君) 先ほども申し上げましたように、すべての経費につきまして聖域というものを設けることなく、臨時行政調査会の答申の線にも沿いまして、みんな洗い直すつもりでございますので、防衛費だけは要求どおりでございますというふうなことにはならないわけであります。
  297. 山田譲

    山田譲君 そうすると、防衛費については七・五%一応出ているけれども、このとおり認めるというふうに決まっているものじゃない、当然みんなと同じに減らすものは減らしていくんだと、こういうお考え方ですか。
  298. 宍倉宗夫

    説明員(宍倉宗夫君) みんなと同じ程度に減るのかどうか、それは結果わかりませんけれども、見直してまいるつもりでございます。
  299. 山田譲

    山田譲君 それでは、ついでに大蔵省にお願いしたいんですが、臨時国会が恐らく開かれると思いますけれども、これに補正予算を出されるかどうか、出されるとすれば大体どのくらいを予定しておられるか。これはまだわかりませんか。
  300. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) 臨時国会が開かれれば私は、今度の災害復旧というような問題もございますし、税収についても当初に見込んだよりも、先ほど総理が言ったように、かなり税収が減るというほぼ見通しがついておりますから、数字はまだはっきりわかりませんが、いずれにしても補正で経済の実態に合わせる。経済は生き物ですから、やはりそれを無視してやるわけにはいきません。実態に合わしていきたいと、そう考えております。  時期については、これは高度の問題でございまして、大蔵大臣がいつということをいま申し上げる段階にはありません。
  301. 山田譲

    山田譲君 私も、その時期については大蔵大臣に言っても無理だと思って聞かなかったわけですけれども、金額、大体幾らくらいというふうな予定はもう大体事務的にやられておらなきゃ。どうですか。
  302. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それは御承知のとおり、たとえば税収が減るといってもどれくらい減るか。大ざっぱな数字が五兆ないし六兆とかと言われておりますが、問題は補正予算を出すということになりますと、税収まとめて、ひっくるめて幾らというので国会で御了解いただけるならば、それはそうむずかしい話ではないんです。しかしながら、補正予算を出すということになると、税目ごとに、法人税はどうだ、所得税はどうだ、物品はどうだ、酒税はどうだ、何税はと、何十品目にわたって一応合理的な根拠というものをある程度出さざるを得ないということになると、非常に作業がむずかしいんです、実際のところ。したがって、経済見通しとの関係もございますから、まだ額について幾らということはなかなか申し上げられませんし、災害の方もできるだけ直近まで取り入れたいと考えております。まあ一兆円程度の被害ということが言われておりますが、これもはっきり災害の被害報告、きちっといま集計しておるわけでもございません。したがって、そういうようなところもまだはっきりわかりません。  ただ、国債発行という問題については、市中消化という問題がございますから、まあ国会が開かれるといっても、なかなか九月中といっても無理。かなり後にずれ込むんじゃないかということになると、しかし十二月に予算編成がありますから、それよりもおくれるということもこれは困ることだと思います。したがって、仮に——これは仮々の話ですよ。まあ十一月いっぱいぐらい国会がかかるということになれば、さらに国債を発行するとしても十二、一、二、三しか月はないわけですから、いままでその期間に国債を最高に発行できたのが三兆円程度という前例もございますので、やはり無理のない発行——十兆円から発行した上での話ですから、そこであんまりそいつを大きくすると、金利にはね返ってくるというようなことで、金利の引き上げという問題を起こしたのでは、せっかくの景気対策もマイナス面で全国民がこれかぶってくる話になりますので、それらの点も考えると、やはりまあ三兆円台というのが限度ではないか。したがって、結局新しい財源がそのほかに何が見つかるか、国債のほかに。税金の方はふえる計算がなくて、減る計算になるわけですから。そうすると、ともかく税外収入ということになります。そこで、税外収入といっても、公社、公団、事業団、特別会計その他いま洗い直しもしておりますが、幾ら金額がそこでまとまるという数字はまだ出ておりません。  したがって、いま目安のつくのは三兆円台の国債の財源の範囲ということと、あと何があるかというくらいのことであって、それは税収の見込み不足に対してそれを充てるというだけであって、あとは追加需要については、これはもう非常にむずかしい状態なので、まだ規模については、国債発行のめどとか、税収の減の、減額するめどとかはある程度考えられますが、その他の予算規模自体についてはまだ考えられないというのが実情でございます。もう少し時間がたたなければ何とも申し上げられません。
  303. 山田譲

    山田譲君 災害対策なんかですと、大体ある程度は予定できるけれども、ほかの方はなかなかまだ決まらないという話ですけれども、これはこの間もちょっと聞いた、ある建設業協会の幹部の話であります。もちろんこの真偽のほどはわかりませんけれども、その建設業協会の幹部の話によりますと、もうすでに三兆円くらいの補正ということが約束されているんだと、自民党と。ですから、そういう約束の前提のもとにこの前倒しをやったんであると。だから、そういうことがなけりゃ前倒しやったって、後息切れすることは決まりきっているんだから、そういう約束のもとにわれわれは前倒し七十何%か何かやったんだという話が、ある建設業協会の幹部、相当信頼するに足る人から話を私は聞いたんですけれども、そうなりますと、もし全然補正をそういうことでやらない、追加をしないというふうな話になると、建設業協会としてはこれはもう約束違反だと言うんで、黙っちゃいないというふうなことを言っていたんですけれども、その辺の真偽のほどはどうですかね。
  304. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) どなたと約束になったのか、私は約束した覚えは毛頭ございません。  問題は、九月までに七七・三%の契約を目途にがんばるということですが、七月の段階では五六%しか契約しておりません。八月は、これは統計が出ておりませんが、サンプル調査からすると、大体九%ぐらい上積みになるんじゃないか。わかりませんがね、大体のサンプル調査ですから。それすると大体六五%。あと一二%ぐらい九月の分があるわけですね。したがって、それはうまく約束をなるべくやって契約してくれと。契約というのは、図面とか何かができなければ契約できないわけですからね。契約したからもうそれで仕事が終わったわけじゃなくて、契約してそれから仕事が始まるわけですからね。したがって、一部分の金は出るかもしらんけれども、大部分の金は仕事が終わらなければ全部金が出ないわけですから。ですから、契約ができたから建設業終わりというんじゃなくて、契約ができたそこからスタートするわけですから。ですから、実際の実施ベースというものを見てみないというと、これはわからない。だから、実際は工事の進捗状況というようなものを見ないと、ただ契約が大部分済んじゃったんだから仕事がなくなっちゃったということには一概にならないわけですよ。契約しても一つも仕事してなければ全部残っているわけですから。ですから、その実施状況というものを一遍調べた上でないと何とも申し上げられない。
  305. 山田譲

    山田譲君 それと全く同じことを私はたしか予算委員会か何かのときに言ったんです。盛んに前倒し前倒しと言って、前倒しをやればすぐにでも景気がよくなるようなことをおっしゃるから、私は幾ら前倒しやったって、契約するだけで工事はおくれるんじゃないか。そうすると、金はそう簡単に出てこないんだから、それはそう簡単に特効薬みたいにならないですよと言ったら、そうしたら、たしか企画庁長官だったか大蔵大臣だか忘れましたけれども、そんなことはないんだ、契約すれば、契約を担保にして金を借りるんだからそんな心配は要らない、契約をまず結ばせることが大事なんで、工事なんか後回しになったって構わないんだということで、私はあなたがいまおっしゃったとおりのことを質問したら、そういう言い方だったんです。そうなると、何のために前倒しをやったかという話になるんですよ。そこのところはどうですかね。
  306. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それはそこに専門家がいるから向こうに聞いた方がいいと思うんですが、それは契約すれば前渡金というのは幾らかもちろん出ますよね。それは、金が必要なものはあるいは借りられるかもわかりません。しかし、問題は実際に材料を買い、実際に人夫を雇い、実際に現金をばらまかなければ、効果というものはそんなに出ないわけですから、やっぱり実際は工事がどんどん進むという段階になってこなければ、それは金はばらまかれないというのが原則でしょう。問題は、それじゃ契約しなかったら、おくらしたらいいのかとなると、やっぱり契約を早くすれば、仕事も早く始められるということは事実なんです。ただ、河川だとか、たとえば農業の水田関係の圃場整備とか、そういうようなものは、契約したってなかなか水をとめるわけにはいかんわけですよ。まして、台風が来るのがわかっていて河川工事をやったらみんな流されちゃうわけですから、やっぱり台風が来ないという目安がつかなければ、川の中へもう機械を持ち込んで、大がかりに始めるといったって、なかなかむずかしい問題もございます。したがって、やはり契約ができたから全部が工事がどんどんどんどん進められるとばかりにはいかない。だから、実態をもう少し調べて、どれぐらいの進捗割合になっているか、そういうものを見ながら、災害復旧の関係等もいろいろかみ合わした上で、われわれは考えていきたい、そう思っておるわけでございます。したがって、そういうように、前倒ししたから効果がないと言うが、前倒しすればするだけの効果はございます、それは。ございますが、契約直ちに全部金が払われて、全部仕事ができ上がってということじゃないということも御了解をいただきたいと思います。
  307. 山田譲

    山田譲君 そうすると、いまこの時点でいわゆる景気浮揚策の一つとしてとられましたこの前倒し、かなり有効な手段だということでおやりになったはずだと思うんですけれども、その効果は実際に上がっているというふうに考えておられるかどうか、これは企画庁長官にお願いしたいと思うんですが。
  308. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 公共事業、例年ですと大体上半期に六五、六%やるのが普通だと思います。昨年はやや前倒しということで七〇・五%をやったわけであります。ことしは技術的に可能な限り最大限やってみようということで、御承知のように七七・三%、普通の年に比べますと一一、二%を繰り上げる、こういうことでありますから、私はこの繰り上げた分はそれなりに相当な効果は出ておると思っております。
  309. 山田譲

    山田譲君 それでは次に、内需振興の一番いい方法、手段と思いますけれども、いわゆる住宅の問題ですけれども、この現状がどうなっているか、どうも資料なんか見ますと、政府の見通しをまだ非常に下回っているんじゃないか。これも春、私質問したときは、何か住宅金融公庫の申し込みが非常にふえているんで、住宅建設はことしはかなりいい線いくんじゃないかと思いますというふうな話でしたけれども、必ずしもそうなっていないんじゃないかというふうに思うんです。その住宅について、政府の見通しはどんなもんですか。
  310. 田中誠一郎

    説明員田中誠一郎君) 最近の住宅の着工状況でございますが、ことしの四−六月期、前期比で二・二%の増加でございまして、季節調整値の年率にいたしますと百十三万戸という水準でございます。七月に入りまして前期比では八・三%でございますが、前年同期比で七・八%の伸びでございます。年率にいたしますと百六万戸という水準でございます。したがいまして、ことしに入りましてからの住宅の着工の水準は約百十万戸の水準で推移しているという状況にございます。  その内訳を見ますと、公的資金分は比較的順調でございます。ことしの第一回の募集もわりあい順調でございましたし、第二回の募集は御案内のとおり八月末というのを九月末まで延ばしておりまして、現在までのところ順調に公庫の募集は行われているという状況にございます。  したがいまして、全体として見ますと、公的資金分は比較的順調でございますけれども、民間資金分が若干低調であるということでございまして、総じて見ますと、ただいま申し上げましたとおり、政府の見通しの水準から見ますと、若干下回るところで推移しているという現状にございます。
  311. 山田譲

    山田譲君 企画庁長官、どういうふうに考えられますか。この住宅がいまおっしゃったようなことで、政府の予定どおりどうもことしも行きそうもないというふうな状態の中で、この辺どういうふうにお考えになっておられるか、伺いたいと思うんです。
  312. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま政府委員答弁いたしましたが、新築の分は公的住宅はほぼ計画どおりいっている、民間資金の分が減っておる、こういうことでございますが、一番の根本はやはり所得と価格の乖離にある、こう思っております。昨年も一昨年も予定よりも相当減りました。その最大の原因はやはりここにあったと思うんです。  先ほど実質可処分所得が伸びておるということを言いましたが、伸びるといたしましても、せいぜい三%という見当でございますし、一方におきましては住宅の値上がりというものは最近は大体横並びでございますけれども、過去の一、二年の間に相当上がっておりますから、したがって、やはり依然としてこの所得と価格の乖離、つまり、いまの所得では新しい一戸建ての住宅を建てると、しばらくの間は返済等に大変苦しまなければならん。借り入れ条件が少しはよくなっても、とにかく大変だ、計画はあるんだけれども、延ばしましょう、こういう方がやはり十万とか二十万おられる、このように私どもは判断をいたしております。  しかし、一方におきまして家族もふえるし、子供も大きくなる、こういうことでもう少し住みよい家が欲しいと、もう少し広くならないかと、こういう希望は非常に強いと思うんです。一戸建ては建てられない、しかし何とかもう少しというその希望が、結局最近の増・改築になってあらわれておると思います。増・改築が非常にいまふえておりまして、はっきりした数字は統計がとりにくいもんですから明確にはわかりませんが、大体ことしは七兆ぐらいになるんじゃないだろうかと、こういう感じがいたします。したがって、全住宅投資のほぼ四割近い増・改築が進んでおるのではなかろうか。だから現在の住宅の特徴というものは、以上申し上げましたようなことだと思います。そういう動きを十分分析をしながら、さてこの後半の住宅政策をどうしたらよいかということにつきましては、いま建設省が中心になられて、いろいろ検討していただいておるところでございます。
  313. 山田譲

    山田譲君 企画庁長官にお伺いしたいんですが、先ほどの話もちょっと触れたようですけれども、この四月から六月にかけての消費が、非常にというか少し伸びていると、あるいは鉱工業生産指数を見ても、六月はちょっと上がっているというふうな状態でございます。ですから、それだけを見ると何か非常にいい方向へ行きそうな感じもするんですけれども、必ずしもそう楽観はできないという話もありました。それで長官、どうして四月から六月が消費が伸びたり、あるいは鉱工業生産指数が伸びたりしたというふうに考えておられるか、それをお伺いしたいんです。
  314. 田中誠一郎

    説明員田中誠一郎君) 四−六月期は季節的な条件がございまして、御存じのとおりかなり高温でございました。したがいまして、クーラー等、あるいは清涼飲料水等の売れ行きがかなりよかったということがございまして、加えまして実質可処分所得がプラスであるというようなところから、四−六月期は消費がプラスになったということでございます。六月の生産も、そういった事情もございますが、そうしたことを反映いたしまして、季節的な要因ということでプラスになっているということでございます。
  315. 山田譲

    山田譲君 そうすると、それは単に季節的な要因であるということで、毎年そういう状態だということですか。
  316. 田中誠一郎

    説明員田中誠一郎君) 御存じのとおり、昨年は季節的な要因から申しますと、冷夏でございまして、余りよくない状況でございました。ことしはむしろ夏が早く参りまして、六月にはわりあい暑かったということでございまして、むしろ本格的な夏の時期に入りまして、ことしは冷夏でございましたし、むしろ長雨であったということで、消費等に対する需要に対しましては、むしろマイナス要因として働いているという状況でございます。
  317. 山田譲

    山田譲君 そんな短期的なことを言っているんじゃなくて、たまたま去年は寒かったからそうかもしれませんけれども、ずっとならしてみると、毎年四月から六月くらいの間というものは、そういうことで消費が伸びるんですかということを聞いているんですよ。
  318. 田中誠一郎

    説明員田中誠一郎君) 通常ですと、季節的な調整をいたしたすと、四−六月期に特に伸びるという要因はございません。ただ、需要項目の中では、住宅等が若干四−六月期はふえるという特殊要因はございます。
  319. 山田譲

    山田譲君 いまのお話でいきますと、要するにそういうことで消費が伸びたからといって、直ちに今後もずっと同じような調子で行くであろうというふうには考えられないということですか。
  320. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほどもお答えをいたしましたが、四−六の消費の伸びは、年率に直しまして一〇%伸びておるわけであります。この異常な消費の伸びというものは、先ほど政府委員答弁いたしました五月、六月の季節的な要因が加わっておると、このように判断をしておりまして、消費は実質可処分所得がふえておりますから、基調としては去年よりは堅調だと思いますが、年率一〇%で、成長率を消費だけで一・四%、したがって四−六の一・三%の成長、それ以上の成長力を消費だけで持っておったと、こういうことでございまして、それだけの消費が伸びる力というものはこれはとてもない、これはやはり季節的な要因だと、このように判断をすべきであろう。先ほども申し上げましたが、事実七月、八月は相当減っておりますので、そのような判断が必要かと、こう思っております。
  321. 山田譲

    山田譲君 この消費といいますか、収入の内訳を見てみますと、妻の収入、大体パートが多いと思うんですけれども、これは非常に大きく寄与しているということが統計数字見るとわかるんですけれども、この点はどういうふうに考えておられるんですか。
  322. 田中誠一郎

    説明員田中誠一郎君) 確かに御指摘のとおり、最近の労働の事情を見ますと、短期的なパートの需要がかなりふえているわけでございます。これは全体としての家計の所得をふやすといったような要因が働いているかと思われますけれども、そういった意味でパートに従事する女子の数がふえているというところから、ただいま先生御指摘のとおりの状態になっているということでございます。
  323. 山田譲

    山田譲君 この表といいますか、ちょっと調べてみたら、非常に興味のあることに、パートの人の数がふえるときほど常用の人の数が減っているんですね。ですから、たまたま妻の収入がかなり大きく寄与したということではあるけれども、常用雇用との関係考えてみますと、パートがふえるということは必ずしも望ましいことではない、むしろ不況の影響だというふうに考えられてならないんですけれども、その辺どんなものでしょうか。
  324. 田中誠一郎

    説明員田中誠一郎君) ただいま御答弁申し上げましたとおり、通常パートがふえますのは、どちらかといいますと、やはり所得をふやすという形でふえるのが大部分かと思います。したがいまして、景気の局面によりまして、またそのときどきによりまして変化はございますが、御指摘のとおり、やはり景気が若干悪くなりますと、家庭の主婦が労働に出るという状況がございますが、さらに景気が悪化いたしますと、むしろ雇用機会がなくなる。最近の情勢を見ますと、臨時工、パート等をむしろ切るという状況がございますので、このところそういった面では減少要因になっておりますが、ただ常用雇用とパートとの関係からいきますと、やはり企業としてはどちらかと申しますと常用雇用はなるべく温存する、雇用調整という面ではパートを漸次削減するという形でございますので、少し長い目で見ますと、パートのために常用雇用が減るという状況はないのではないかと考えております。
  325. 山田譲

    山田譲君 もう時間なくなりましたから、最後に自治省にちょっとお尋ねしたいんですけれども、都道府県の税収が六月の累計を見ますと、前年比五・五%増にとどまっている。それで地方財政計画で見込んだ税収の伸び、これは前年度決算対比の一四・八%ということですけれども、これを大きく下回っているわけですね。それで、そのために五十七年度税収は一兆円の過去最高規模の不足のおそれが出ているというふうなことが言われているわけでありますけれども、これについて来年度、あるいは今年度の地方財政について、どういうふうに対処していかれようとしているか、自治省のお考えを聞きたいと思うのです。
  326. 関根則之

    説明員(関根則之君) 地方税の収入状況でございますけれども、七月末の都道府県の徴収状況によりますと、相変わらず芳しくございませんで、対前年度の実績に対する伸び率は、先生御指摘の六月末よりも多少よくなっておりまして、六%でございます。それにいたしましても、地方財政計画計上額を達成いたしますためには、一四・八%伸びなければいけないわけでございますから、計画には相当不足を来す心配があるわけでございます。金額にいたしましては、現時点において的確なことを申し上げる段階ではもちろんございませんけれども、このまま機械的に推移をするということになりますと、市町村税も合わせましてほぼ一兆円程度の財政計画に対しましての不足額が生ずるんではないかと考えております。
  327. 石原信雄

    説明員(石原信雄君) ただいま税務局長が御答弁申し上げましたように、五十七年度の地方税収入は、現時点のデータから推定いたしますと、全体として一兆円程度の減収になるおそれがあるということでございます。  この点について、各団体ごとに状況がかなり差があります。そこで、個々の団体ごとの税収の落ち込み状況、あるいはそれ以外の財政の全般の状況をにらみまして、各団体の本年度の財政運営に支障がないように、年度末までに減収補てん債の発行等について相談に乗っていきたい、このように考えております。
  328. 山田譲

    山田譲君 自治大臣、いかがですか。
  329. 世耕政隆

    国務大臣世耕政隆君) 五十七年度は、いま説明員から申し上げましたように、かなりの減収が地方税も見込まれる。それから、先ほど大蔵大臣は、はっきりとはおっしゃられませんでしたが、大体大まかに国税の減収をかなり見込まれておられます。そこから判断しますと、国税三税の三二%分もかなり減収が見込まれる。こういうものを全部含めまして、私どもは五十七年度の財政計画、これは予定された、計上された地方交付税の総額の確保にできるだけ努めてまいる、いろんな各般の措置を講じてまいります。  それから、地方税に関しましても減収が見込まれますので、それらの団体に対して減収補てん債の発行を可能な限り許可してまいる。こういったいろんな施策を通じまして、地方自治体の財政が運営できなくなるようなことをできるだけ避けまして、できるだけの努力を払ってまいる。  さらに、五十八年度のことも当然これいろいろ財政的な減収も予想されますし、さらには五十六年度分の精算減が出てまいりますので、これらもできるだけのあらゆる措置を図りながら、地方財政の円滑化を図ってまいりたいと思っております。
  330. 竹田四郎

    委員長竹田四郎君) 本日の質疑はこの程度といたします。  次回の委員会は、明後十六日午前十時に開会し、本日に引き続き総括質疑を行うことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十三分散会