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1982-04-13 第96回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月十三日(火曜日)    午前十時三分開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月十二日     辞任         補欠選任      板垣  正君     安孫子藤吉君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         稲嶺 一郎君     理 事                 鳩山威一郎君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 中山 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 細川 護熙君                 宮澤  弘君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君    国務大臣        外 務 大 臣  櫻内 義雄君    政府委員        外務大臣官房長  伊達 宗起君        外務大臣官房審        議官       藤井 宏昭君        外務大臣官房審        議官       田中 義具君        外務大臣官房審        議官       宇川 秀幸君        外務大臣官房外        務参事官     都甲 岳洋君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        財務省中南米局        長        枝村 純郎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省中近東ア        フリカ局長    村田 良平君        外務省経済局次        長        妹尾 正毅君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        外務省情報文化        局長       橋本  恕君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛庁防衛局防        衛課長      澤田 和彦君        防衛庁防衛局調        査第二課長    三井 康有君        科学技術庁研究        調整局宇宙企画        課長       吉村 晴光君        外務省国際連合        局外務参事官   遠藤 哲也君        郵政省電波監理        局周波数課長   大瀧 泰郎君        郵政省電波監理        局宇宙通信企画        課長       磯野  優君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (日・仏科学技術協力問題に関する件)  (経済貿易摩擦問題と国際経済の円滑な運営  に関する件)  (アジア諸国との科学技術協力問題に関する件  )  (国連海洋法会議に関する件)  (科学技術協力進展外務省機能強化に関  する件)  (宇宙開発国際関係に関する件)  (シーレーン防衛問題に関する件)  (北方領土におけるソ連の軍備増強問題に関す  る件)  (ミッテラン仏大統領訪日に関する件)  (外交基本姿勢に関する件)  (軍縮問題に関する件)  (日米航空交渉問題に関する件)  (対外経済協力問題に関する件)  (日韓経済協力問題に関する件)  (外交体制に関する件)  (日米安保体制に関する件)  (フォークランド諸島紛争解決に関する件)     ―――――――――――――
  2. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 中山太郎

    中山太郎君 まず外務省お尋ねをしたいんですが、フランスミッテラン大統領がいよいよあすですか、日本へこられる。大統領の初訪日について、フランスは最先端の科学技術専門家を同時に東京へ出して、日本フランスのこれからの長期の国際協力というものは科学技術政策中心にやっていこう、貿易摩擦問題なんていうものはとるに足らない小さなスケールの問題であって、日仏間の大きな政治課題というのは科学技術中心にした二国間の協力基本であるというふうに、この間私、パリで科学技術研究大臣にお目にかかったときも彼はそう言っていたわけですが、そういうふうなフランスの取り組み方に対して、日本政府というのは外交の部門でどういうふうにこれを受けとめてやっていこうというお考えでしょうか。それをまずお尋ねをいたしたいと思います。
  4. 田中義具

    政府委員田中義具君) 御指摘のとおり、今度のミッテラン大統領訪日に際して、フランス側科学技術協力分野での日仏関係強化ということを非常に重視しておられるということは、そのとおりでございます。もちろん経済の問題もとるに足らない問題ということでは必ずしもなくて、やはり日仏間における経済の問題というのは大きなウエートを占めておりますし、フランス日本というものを認識したそもそもの基礎にあったのも、日本の増大する経済力、それに伴う貿易上のいろいろな問題が生じたということにあったわけでして、経済の問題というのももちろん大きな問題でございますけれども、それに伴う単に摩擦の問題だけを今度大統領が来られたときに話し合うというのでは、これは全く後ろ向きの話になってしまうので、そういう摩擦から生じた問題については、大統領が来られる前にできるだけ円滑に話を進めておいて、大統領が来られたときにはもっと前向きの話――前向きの話の中ではやはりフランス側も重視している科学技術協力というのが非常に重要な分野でございまして、そういう分野について少しでも協力強化されるような話し合いができることを望んでいるわけです。そういう観点に立って現在フランス大統領訪日準備を進めている状況でございます。
  5. 中山太郎

    中山太郎君 まあフランスは御案内のように高速増殖炉開発とかあるいは海底油田開発探査技術とか、そういう面では世界でナンバーワンの技術を持っているわけです。そういうふうなものを含めて、日本外務省にどういうふうな基本的な姿勢というのがありますかということをお尋ねしているわけです。
  6. 田中義具

    政府委員田中義具君) 確かに科学技術分野は、いろいろな分野フランスは進んでおりまして、原子力分野では実はたとえば再処理技術をめぐっては東海村で試験工場を建てるに当たってすでにフランス技術を活用しているとか、それから高速増殖炉の問題についてもいろいろ情報交換をすでにやっているという形で、原子力分野ではもうすでに日仏関係というのは非常に緊密な関係にあるわけです。そういう関係はもちろん今度の大統領訪日に当たっても、さらにそれを確認し強化させるということで話を進めることになると思いますが、それ以外にもいろいろフランス側関心を持っている事項がございます。たとえばマイクロコンピューターのようなものを使ってこれを日仏、あるいは日仏だけじゃなくて世界的な協力のもとで発展させて、第三世界経済開発にも役立てていきたいというような雄大な構想も、ミッテラン大統領は何か推進しておられるということも聞いておりますし、そういう原子力といった既存分野だけに限らず、今後の将来性のある科学技術協力全般についていろいろ大統領訪日の機会に話し合いをしたい、そういうことで現在関係省庁ともいろいろ協議しながら準備を進めている状況でございます。
  7. 中山太郎

    中山太郎君 東海村の第一再処理工場の再処理技術というのはこれはフランスから導入していることはあなた御存じのとおりなんです。結局第二再処理工場建設ということを政府考えているんですね。これをどこの技術でやるかということは一つの大きな問題ではないか、こういう問題について外務省としては一体どういうふうなお考えを持っておられるのか。
  8. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) お答えいたします。  先生から御指摘のとおり、東海村の現在の日本の再処理設備というのはフランス技術ベースといたしております。第二再処理工場は、計画がございまして鋭意詰められているのも御承知のとおりでございますが、細目が全部固まったわけではない、そういう状況において、どういう形でどの技術を使って一番いい結果を出していくかというのは、今後ともさらに詳細な詰めを必要とする次第でございます。  フランスの再処理技術は、現在日本が持っております技術ベースになっておるということもございまして、明確に関係者の間で態度が確定したというわけではございませんが、やはり現在までの協力関係、それから日本技術がその意味ではフランスの系統の技術であるということから、第二再処理工場においてもそういう形で日仏協力をしていく、フランスの持っている技術というのは、一つベースになり得るという可能性は十分高いと承知しております。
  9. 中山太郎

    中山太郎君 これは非常に大きな日本核サイクルの問題について、私は見捨てておけない問題だと思うんですね、核燃料サイクルの問題というのは。だから、使用済み核燃料再生処理を、現在イギリスとフランスに出しているということで、フランス再生処理能力について増大をしないと第二再生処理工場が完成するまでの日本再生処理の、いわゆる何といいますか実施が一つ問題点になる、こういうことで、これは再生処理のための工場建設能力を高めるために、日本からいわゆる低利の輸銀融資というものを行っているはずなんですね。そうして、日本再生処理能力をカバーしているという中で、日本は第二再生処理工場をつくるという際に、私どもとしてはやはりこれをどうするかということについても、いまあなたから御答弁のように、この第一再生処理工場の経過をよく確かめた上で、やはり第二再生処理工場技術についてはわが国としては慎重な配慮が必要ではなかろうかと思うんですが、この点についてもう一度ひとつ確認しておきます。
  10. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) まさに先生から御提起があったとおりでございまして、そういう慎重な配慮のもとにできるだけ日本技術水準自身を促進利用する、あわせて海外技術で一番いいものと、それから既存技術とをどうやって組み合わせていくかという視点から非常に慎重な、何がベストの結果になるかという検討が加えられることになると思います。また、私どもとしてもそういう方向で処理を図りたいと存じております。
  11. 中山太郎

    中山太郎君 この第二再生処理工場導入技術詰めというのは、結果というのはいつごろ出てくる予定ですか。
  12. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 率直に申し上げますと、そこまで詳細は承知いたしておりません。かなり先になる。しかし、現在すでに相当真剣な検討が行われておりまして、そう遠くない将来、内容を固めざるを得ない状況にきておるというふうに承知しております。
  13. 中山太郎

    中山太郎君 去年の十二月の時点での日仏間の話し合いというのはどういうところへいっていたわけですか。
  14. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 十二月の日仏間の話し合いというのは……
  15. 中山太郎

    中山太郎君 その第二再生処理工場技術をめぐって日仏間で合議がなされたと聞いておるわけです。
  16. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 細目については私、承知しておりません。
  17. 中山太郎

    中山太郎君 それじゃそれで結構ですが、問題は結局、日本外交科学技術の絡まりというのが一体どういうふうな形で成り立っているかというところに視点を移して、お尋ねを少ししてみたいと思います。  今回の貿易摩擦の問題を見ても、日米間の貿易インバランスの発生の原因というのは、これはほとんど天然資源アメリカから導入して、日本からはハイテクノロジーの商品を輸出していると、こういう形になっていますね、航空機とか兵器の輸入以外はほとんどアメリカからの輸入品というのは天然資源が大半を占めている、そういうふうな貿易形態というのがこれから続いていくということになれば、科学技術開発することによって日本貿易立国で生きていかなきゃならないんだけれどもインバランスの面ではこれが解消するという見通しというものはなかなか立たないんじゃないか、そういう点では、どういうふうに日米関係経済問題としてこの技術の問題を評価されているか。
  18. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 私から必ずしも全面的にお答えできる分野ではございませんので、私のいまお預りいたしております視点から述べさせていただきますが、御指摘のとおり日米貿易基本形態が、主として食糧、原材料を購入しておる、私ども工業製品、非常に高度の技術に支えられたものからむしろマネージメントテクニック、量産という形で輸出されておるというのは御指摘のとおりでございます。双方の比較優位といいますか、競争力の反映がかなりこのインバランスに反映しておるということもまた事実であろうと思います。この間にあって科学技術といいますか、ハイテクノロジー商業面でどういう形に実際商業化していくかという問題と、より基本的にはそういう基礎研究、純粋な意味での科学技術協力の側面と二つあるかと思います。  私はいま申し上げました中の後者の方をお預かりしているわけでございます。これについては、原子力平和利用、それから原子力以外の部分での協力ということで日米間に協定がございまして、いろいろのプロジェクトも進行しておる、その面から両方の利益が合う、また両方で追求すべき特にこういう分野では非常に多額の資金、非常に高度に訓練された人員を要するという意味双方とも限界がございますので、その面での協力を重視していくというのが基本姿勢でございます。商業的に技術水準が動いておるということで、それにどう対処するかということもまた重視されるべきことかと思いますが、日本が一方的に進んでアメリカが必ずしもそうではないという事態では決してございませんで、アメリカ自身も非常に優秀な技術かつコマーシャライズされた実際の商売に利用されるという技術も持っておるわけでございます。その面でも協力できる分野は多々あるかと思います。むしろインバランス自体技術水準跛行性ということよりはどちらが先端を切ったか、そういう企業努力の差というものが短期的に現在は出ておる、長期的にはよりバランスがとり得る事態であると私自身認識いたしております。
  19. 中山太郎

    中山太郎君 長期的にあなたのお考えではバランスがとれるというふうな御判断を外務省として出されたわけですけれどもアメリカにおける外国人特許申請率を見てみると、決してそんなアメリカがいわゆるライセンスの確保において優位を保っているとは思えないんですね。そのためにカーター政権時代アメリカ大統領府の特許事務所というのは、アメリカ関税法とか全部の見直しをやっているじゃありませんか。だから私どもの今日の貿易趨勢から見て、このインバランスというものがそう簡単に私は解決する問題ではないんだ、また先般の江崎調査団の際にもアメリカ側インバランスというものは直ちに解消できるものとは思っていない、こういうことをはっきり言っているんですね。それは結局背面から見ると日本先進技術アメリカ技術格差生産管理能力、そういうものの大きなハンディキャップというものが今日の貿易格差を生み出した大きな原因ではないか、私はそういうふうな見解を持っていますが、どうですか、こういう点については。
  20. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 私は現在その分野をおあずかりしているわけでは必ずしもございませんので、外務省を代表してお答えするというわけにはまいらないと思いますけれども、先ほど申し上げました長期的には技術水準跛行性というものは、技術の面に限ってみれば、事柄の性質上バランスしてくるものじゃないかということを申し上げました。御指摘のとおり、貿易インバランスというものはそう簡単に解消することではないと、こう思います。これはもちろん技術水準の差はございますでしょうが、より多くは双方管理能力、平たく言えば企業努力の差、かつその管理能力ないし企業努力を非常に促進するような経済政策背景があるかないかというようなのが、現在表面化しているというふうに私自身認識しております。
  21. 中山太郎

    中山太郎君 あなたはどういうことを専門に扱っておるわけですか。何を担当しているわけですか、外務省で。
  22. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 私は先進国との技術協力、それから宇宙原子力等を主としておあずかりいたしております。過去の経歴において経済問題をかなりやらされまして、東京ラウンドその他やりましたので、そういうような背景に基づいて一般的な認識を申し上げましたわけです。
  23. 中山太郎

    中山太郎君 わかりました。  それじゃ技術系非常にお詳しいということですからお尋ねをしますけれども技術導入流れというのは国際的にどうなっているのですか。
  24. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 詳細については承知しておりません。むしろ私の分野であるよりは経済局関係で統計がとられておると思います。  私の認識では日本側から最近はかなり技術が外へ出始めておる。同時に、海外からの技術というのは引き続き高度のものその他を含めて流入しているというふうに理解しております。
  25. 中山太郎

    中山太郎君 問題は、この間の委員会でも木島委員からでしたと思いますが、アジアのいわゆる各国との貿易インバランスの問題を今日だれも余り課題として取り上げていないというようなお尋ねがあったんじゃないかと思いますが、私が見ておって、技術導入の面からアメリカあるいはヨーロッパからの日本への技術導入というのは、今日もなお相当大きいですね。しかし、技術貿易輸出の面で黒字を出しているというのはアジア各国なんですね。そうすると、日本からアジアへの技術移動ということが、一体将来どういうふうな影響日本に及ぼしてくるのであろうかということについては、経済外交の面から相当一つのしっかりした見通しを持ってこれからの国際外交に臨んでいかないと、やはりいろんな問題点が起こってくるじゃないか。たとえば自動車産業にしてもテレビにしても、これはもとを正せば日本で発明されたものは一つもなかった。みんなアメリカヨーロッパからの輸入品ですね。それが日本生産管理システム品質管理の優秀さによってどんどん加工されて、むしろそれが逆流していったという、これは歴史の一つの歩みだろうと思うんですが、そういうふうなブーメラン現象というのがいろいろな地帯に起こっていると私は実は思っているわけです。そういうふうなことから考えていくと、これからの国際経済における技術資本移動というものが、国際間の貿易インバランスにどのような影響を与えると外務省考えておられるのか、これは非常に大きな問題だと私は思っております。
  26. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 私の必ずしも責任分野でございませんので、私の一般的認識を述べさしていただきますが、御指摘のとおり、確かにアジアとかそのほかの発展途上国には日本技術というのはかなり大きな流れになっております。その結果、確かに比較優位性から低開発国の方で製造したものがいいという分野日本は後退して、より高度の分野へ移行しているというのが一般則というふうに言われまして、かつその大きな国際経済流れ、長期的に見てみれば、これは望ましい進展だと考えます。短期的には個別の品目ごとにはいろいろ問題はあり得ると、そういうものについてはそれぞれ対処は恐らく必要になるかと思いますが、大きな流れとしてはそういう現象が繰り返されるということが、一国の経済発展のみならず世界経済発展にもつながっていると私は認識いたしております。
  27. 中山太郎

    中山太郎君 この技術移転ですね、これは二年前ですか国連で決議されていますね、南北間の技術移転というものを推進していくということが。そして昨年ですか、国連科学局を廃止していくんだということもウィーンの会議で言われたと聞いていますけれどもね。そういうふうな技術移転というものが、相当日本の場合もASEANとの間に起こっていると思うんですね。たとえば昭和五十五年時点ASEAN諸国だけで日本からの技術移転が七百七十九件、貿易額にして二百五十八億の技術輸出を行っている。五十四年は六百二十四件で百十七億。この五十四年、五十五年を見ると、アジアASEAN各国に対する日本からの技術貿易の金額は実に倍以上に伸びているのですね。だから、猛烈な勢いASEAN日本技術移動している。また資本も大変な勢い移動している。こういうことがこれから先どんな影響アジア、特にわが国に与えてくるだろうかということを私は非常に大きな関心を持って見ているわけです。外務省としては、これだけの技術移動している、資本移動しているということについて、将来一体何が起こってくるだろうかという見通しはお持ちなんでしょうか。
  28. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 先生指摘のとおり、ASEANとの関係におきましては、資本アメリカに次いで多額の量が行っております。それから御指摘のとおり、技術分野でも日本側からのフローの方がはるかに多いわけでございまして、そういう意味では均衡は全くとれておらぬわけでございますが、この傾向を短期的に是正するということはとても考えられないわけでございまして、先方との納得ずくで今後とも技術ASEAN流れていくものと考えられるわけでございます。先般インドネシアとは科学技術協力協定を締結いたしまして、インドネシア側としては、他のASEAN諸国と同様、一層の技術導入を希望いたしておるわけでございまして、この流れの不均衡の問題はさておきまして、これが円滑に流れていくということを私ども考えておるわけでございます。これをバランスさせるためには、したがいまして、結局はインドネシアあるいは他のASEAN諸国の主として一次産品、それから最近では製造業製品輸入をふやすべく努力いたしておりまして、そういった面から均衡と調和、発展を図るということが必要ではないかと考えております。
  29. 中山太郎

    中山太郎君 日本インドネシアとの間に科学技術協力協定ができているといういま御答弁があったわけですね。アジア各国科学技術協力が結ばれている国家というのはどことどこでしょう。
  30. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) ほかには中国でございます。
  31. 中山太郎

    中山太郎君 そういう形で、アジア中国インドネシア日本との間に科学技術協力協定ができている、そういうふうな一つ協定がある国はまだしも、ない国との間の科学技術協力というのは一体どうやっていくのか、そこらの点は一体どういうふうなお考えですか。
  32. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) ほかの国とも科学技術協力協定を締結することが、当然のことながら望ましいわけでございますが、実態的には先ほど申し上げました構造的な不均衡、これは避けられないというふうに考えております。
  33. 中山太郎

    中山太郎君 そこで、協力協定がある場合と、ない場合との二国間協力というのはどういうハンディキャップがあるのか。
  34. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) やはりこの委員会が設けられまして、また、そのもとには非常に専門的な分科会が設けられまして、いわゆる非石油エネルギー開発等々、いろいろな分野におきます意見の交換の場が持たれるわけでございます。その帰結といたしまして人的交流を増進させる、タイムターゲットを設けまして人の交流専門家交流が図られるということが刺激剤になる、そういう意味でプラスではないかと考えております。
  35. 中山太郎

    中山太郎君 私がお尋ねをしておきたいことは、いろいろな日本技術が出ていく、資本も相当出ていっていますね。そういうものが、結局今度は現地で、日本技術と現地の材料と現地の労働力というもので生産が始まるわけですね。その生産が始まった結果、それがブーメラン現象を起こして日本輸出市場にどれだけのインパクトを与えてくるだろうかということを、外務省経済的な観点からどのように考えておられるでしょうね。
  36. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) ASEANとの関係におきましてはそこまでまだ至っておりません。繊維産業等々の面で若干問題があるわけでございますが、このことがブーメラン現象というふうには形容できないかと思います。問題になりますのは、やはり韓国と台湾ではないかと思います。鉄鋼の分野では台湾、韓国、それから、造船の分野では韓国ということで、日本わが国の業界も、この特定業種につきましてはかなり深刻に受けとめておられる次第でございます。
  37. 中山太郎

    中山太郎君 いま鉄鋼のお話も出ましたけれども、化学繊維の分野もそうじゃないですか、どうでしょう。
  38. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) おっしゃるとおりでございます。
  39. 中山太郎

    中山太郎君 いわゆるシッピングチャージとバレル当たりのコトスアップと、それから投資の金利、そういうものと最新設備というものとで後から出ていくいわゆる技術というものが日本の現有の技術よりもさらに更新されたものが出ていくということも当然いままでの歴史の中であったわけです。そういうものが出ていって生産が始まる、相手の労働賃金が安いという中ではなかなか日本のその分野での競争力というのは非常な力で落ちていくということもいままで私は現実に出てきたのではなかろうかというふうに見ております。  白黒のテレビあたりでももう韓国製品の方が安いと言われているわけですね。あるいはトランジスタラジオでもシンガポールでつくった方が安い。かつては東南アジアではラジオの製造あるいはテレビのブラウン管の製造というのは日本がある程度独占形態をもってやっていったのが変わってくる。こういうふうにだんだんといろいろな商品が国際分業というか、国際社会の中で技術資本移動によって変化を起こして、相手の国のいわゆる国民所得というものを引き上げていくことは非常にいいことですけれども、それによって受ける経済圏内にある日本というものが日本の産業構造との絡みでどういうふうな考え方でこれから外交とか経済というものを絡ませながら運営していくかということは、工業先進国貿易立国基本にするわが国としてはこれは無視してやっていくわけにいかないだろう。こういうふうに私は見ているのですが、私の考えは間違っているでしょうか。
  40. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 中山委員指摘の点は大問題でございまして、これは慎重に対応していかざるを得ないわけでございますが、大ざっぱに申し上げまして、やはりわが国の進路といたしましては、知識集約それから非常に進んだ先端技術、この分野を指向することによりましてブーメラン現象ということではなく、調和のある関係を近隣諸国と持っていくべきではないかと、かように考えられると思います。
  41. 中山太郎

    中山太郎君 そこで私は、外務省にもう一つお尋ねをしたいことは、宇宙関係の話をちょっとお尋ねしてみたいと思うのです。  宇宙条約を早く批准しろという国会決議が行われたのがもう数年前になると思うのですが、その後宇宙条約の取り扱いの経過というのは一体どうなっているのでしょうか。
  42. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 先生の御指摘は通称宇宙三条約という分野かと思います。御指摘のとおり、かなり前からこれを早く審議する準備をしろという御要望がございまして、私どもとしても鋭意その準備作業を進めております。私はこの職につきましてからまだ日は浅いわけですが、いろいろ関係省庁とも打ち合わせながら、三条約に入るに際して万全な国内態勢をとるための準備を進めてまいりました。遺憾ながら今国会にはその準備が完了いたしませんでしたので、御審議をお願いできるというところには至らなかったというのが現状でございます。
  43. 中山太郎

    中山太郎君 一体どこにその問題点があるんでしょうか。
  44. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 簡単に申し上げますと、一つは、打ち上げられる宇宙物体をどういう形でコントロールするか、これが何らかの事故によってどこかに損害を与えた場合に無条件で賠償に当たるという趣旨がございますので、それに対してどういう形で対応できるかということで鋭意検討をしておりますけれども、最終的な結論を得るに至っておらないという状況でございます。
  45. 中山太郎

    中山太郎君 これは最終的な結論を見るに至っていないということは、結局見通しが立たないという意味でしょうか。
  46. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 細目について調整が完全にできません状況であるということでございまして、できるだけ早い期間に、私どもとしてはできれば来期国会にはぜひ御審議をいただきたい。外務省限りで全部すべて処理できることではございませんのでお約束するわけにはまいりませんけれども、そういう気構えで各省と話を進めておりますし、各省もそのつもりで対処してくれ始めているというふうに私は承知しております。
  47. 中山太郎

    中山太郎君 世界宇宙開発の第三位の国家になっているとこう言われているんですね、ハンディキャップは相当あっても第三位にある、そういう国が三条約が批准できないということは少しちょっと私は問題があるんじゃなかろうかと思う。大体いまどれぐらいの国家が批准していますですか。
  48. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 御指摘の問題は事実でございまして早期に加入批准いたしたいと私どもとしても考えております。  三条約それぞれによって加盟国の数が違いますのでちょっと対比しにくい面がございますが、平たく申し上げますれば、もとの条約である宇宙条約には八十二カ国、日本を含めて入っております。救助返還に関係する条約には七十八カ国でございます。それから損害賠償、事故が起こったときにどうするかというのは六十七カ国、それから宇宙物体を打ち上げる際に登録する制度がもう一つの条約が規定されてございます。これには三十  一カ国が加盟しております。
  49. 中山太郎

    中山太郎君 相当な国家がすでに批准も行っておる。こういう現実で、外務省としては批准国の国内法がどうなって整備されたのか、そういうことを早急にやはり調査されて、国内の関係各省庁との協議を速やかに進めていただきたい、私はそのように考えております。外務省としても外国の国内法規との絡まりというものが当然あるでしょうし、損害賠償の責任者、民間の衛星を打ち上げた場合どうなるのかというような問題点が非常に大きなネックになっているのじゃなかろうかというふうに見ておりますが、そこいらはきちっと海外調査を終えられて、早急に国内法の整備が私は必要だろうと思うんです。その点、もう一度確認をしておきたいと思います。
  50. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 御趣旨は承りました。外務省自身としてもその点はかなり精密に調べたつもりでございまして、各省庁にも各国状況については随時説明してまいりました。いろいろ工夫をしながらこの問題はできるだけ早く解決のめどを立てたいと考えております。
  51. 中山太郎

    中山太郎君 もう一つ、この間、海洋法で日本が置き去りを食っちゃったということがありますね。ドイツ、アメリカ、イギリスですか、フランス話し合いをつけたのですか、あの経過はその後どうなっていますか。
  52. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。  先生の御質問は、恐らく深海底開発の問題につきまして海洋法条約ができるまでの間のいわば一種の経過措置というような形で、若干のアメリカ中心としました先進国の深海底開発のための条約作成の動きについての御言及だろうと思いますが、本件につきましては、現在進行中の海洋法会議の前に、アメリカ等を中心といたしまして条約作成の動きがございまして、わが国もこれに参加しておったわけでございますが、作成すべき条約の内容について必ずしも関係国の間に合意が成立いたしませんで、またわが国といたしましては、やはりその種の条約をつくるといたしましても海洋法会議のある程度の帰趨を見きわめた上ですべきではないかと、こういう立場でございまして、結局、結論を申し上げますと、海洋法会議再開までに関係国間の間で結論を見るに至りませんで、やはり海洋法会議の帰趨を見てからもう一度改めてまた関係国の間で相談をしようと、こういうことが現状でございます。
  53. 中山太郎

    中山太郎君 最後になりますけれども外務省の職員にはたくさん科学技術庁とか通産とかからいろいろ出向して外務省としてのタイトルで海外勤務をされている方がずいぶん多い。それはそれで結構なんですけれども外務省プロパーの中で理工系出身者というのは一体どれぐらいおられますか。
  54. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) お答えいたします。  理工系出身者は外務省全体で二百四十二名現在おります。全体の定員は三千六百三十一名でございますので、二百四十三名と申しますと一割以下ということになると思います。
  55. 中山太郎

    中山太郎君 これは本省採用が二百四十三名ということですか。
  56. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) この二百四十三名の中の、本省採用とそれから各省からのアタッシュの区別が、実は申しわけございませんがコンピューターをはじきましてもちょっと出てまいりませんので、しかし出てきた結果を拾ってみますと、いま確実な数は申し上げられませんが、本省の五十九名はほとんど外務省採用の者であり、在外の百八十四名のうち二十名ないし三十名ぐらいが本省のプロパーでございます。他は他省庁からの出向の方々でございます。
  57. 中山太郎

    中山太郎君 どういうふうな学問分野の方が大体その中におられるわけですか。
  58. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) いろいろな部門にございます。水産部門、それから船舶工学、数学、航空、林野――林学でございますね、それから建築、医学、それから電気、物理、応用物理、通信関係と、そういうようなところが主なものでございます。
  59. 中山太郎

    中山太郎君 その方たちはどこの部局に所属しているのですか。
  60. 伊達宗起

    政府委員(伊達宗起君) ただいま申し上げた例で申しますと、在外公館に配置されております。
  61. 中山太郎

    中山太郎君 それじゃお尋ねしますけれども国連局科学課というのがありますね。定員何人ですか。
  62. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) ちょっとチェックさせていただきますが、十人前後でございます。
  63. 中山太郎

    中山太郎君 国連局科学課と原子力課というのと二つあるのですか。
  64. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) そのとおりでございます。
  65. 中山太郎

    中山太郎君 原子力課に原子力専門家は何人いますか。
  66. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 外務省から途中採用をした形で二名事務官が入っております。これは原子力分野でかなりの専門知識を持った者でございます。それからそのほかに出向者として、現在の時点では二人原子力に詳しい者がおります。科学課の方はほかの省からの出向者もおりますし、それから外務省の事務官で理工系出身の者が筆頭事務官となっております。
  67. 中山太郎

    中山太郎君 これは数年前私が調査してみると、原子力課と科学課におられる本当の純粋の専門家というのはもう五人もいなかったんですね。大来さんにもやかましく私は注意を申し上げたことあるんです。先ほどのお話では、理工系の方がずいぶん外務省におられるというお話ですけれども、なかなかこれからの国際的な科学技術外交というのを展開していかなきゃいかぬときに、国連局科学課と原子力課にもう少しやはり専門家を採用すべきだと私は思います。大体法文系へ行く人は数学が余り好きじゃない、物理が余り好きじゃない、化学も余り百点はとれなかったという人が大体法学部へ行くんですね。そういう人が外交官試験に通って外務省へ入った人がほとんどらしいんだな、よほどの秀才は別として。やっぱりこれから非常に細分化した分野での国際協力というものは私は出てくるだろうと思います。そういうふうな細分化された科学技術分野国際協力をやろうというときには、やっぱりカウンターパートになる人がしっかりしたやっぱりスペシャリストでないとなかなかうまくいくものじゃないと思います。だから、そういう意味では外務省機能強化というものを前々からやかましく言っているのですが、私は外務省に生物学を勉強した人がおられるかどうかということを確かめてみたいと思う、細かいことかもわかりませんがね。やっぱり八〇年代、九〇年代の国際社会における新しい産業としては遺伝子組みかえによる生物産業というのが恐らく急速な勢いで伸びていくだろうと思いますし、世界の最新先進国を歩いてみて、科学政策をやっておる連中と会ってみても、みなやっぱり遺伝子産業がこれからの先進国の重大な問題になってくるということを言っておりますから、私は最後に要望としてもう少し外務省も旧来の思想から脱却されて、やはり科学技術外交という問題にもう少し私は力を入れるべき時代に到達したのではなかろうかというふうに実は判断をしているわけです。  今日、国際緊張の原因になっていますSALT、核兵器の制限交渉にしてももとを正せばいわゆるレーダーと、それから核分裂を起こさしたいわゆるアインシュタインの原理と、それからやはりそれを運ぶロケットの運搬手段というものの三つの組み合わせが今日の国際緊張を高めたり緩めたりする最大の原因に私はなっていると思うんです。  それをめぐって米ソ間での大きな調停が行われているという中で、やはりこれからわれわれの国の安全保障とか、あるいはアジアの平和というものを見詰めていく場合には、アジアの繁栄とともにやはりこの科学技術政策というものは日本外交とは切り離せない事態になってきたということを外務省はよく認識する必要がある。アメリカの下院の科学技術委員会あるいは外交委員会を見てもサブコミティーでは相当突っ込んだ論議をしています。アメリカ外交科学技術というテーマを掲げて、ボリュームにしたってこれぐらいのやつが五冊ぐらいあるような議事録を発行していますね。そういうことがやはり日本外務省でも真剣に考えないと、科学技術科学技術庁の出向者でワシントンにいるやつにやらせればいいとか、そういう感覚はすでにもう時代におくれていると、はっきりアメリカの議会でロジャース国務長官でしたか十年ほど前もちゃんと証言をしているわけですね。これからの国際外交というものは科学技術中心になるんだということをはっきりと証言していますし、アメリカも非常に力を入れている、それの充実を図っている、そういう中でぜひこれからの外務省の機能拡充には、科学技術に関する相当な専門家を採用されて、りっぱな国際外交ができるようにひとつ全力を挙げてやっていただきたい。特にこれは外務大臣からひとつお考えを聞いて私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  68. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 中山委員から、今後の外交政策の中で科学技術の面も、これを重視する必要があると、日進月歩をいたしますこの世の中のことでございまして、科学技術に対する見識を深め、その面についての外交についても熱意を持つということは、これは当然のことだと思うのでありまして、本日の御意見を交えての御質問を参考にいたしまして、これからの外務省外交政策の中で重視してまいりたいと思います。
  69. 松前達郎

    ○松前達郎君 私の方からは、いまの中山委員の質問と似たようなことになるかもしれませんけれども、特に宇宙開発国際関係、こういった問題を中心にして最初に質問をさしていただきたいと思うんです。  最近特に、先ほども御意見がありましたように、科学技術で新しい世紀が開発されてくる、将来の展望が開かれていくという、そういう状況にいまなりつつある。そうしますと、やはりわれわれとしても科学技術がすべての問題の根源にあるということを理解しておかなきゃいけないし、それをまた十分考えた上での外交その他も展開するべきだと、これは私全く同感であります。  そこで、今日は宇宙時代というふうに言われているのですが、宇宙とそれから海の中のいわゆる海洋時代、こういうふうになりつつあると私は考えております。そしていろいろと宇宙開発については人工衛星等の打ち上げ等、これはソビエトがまず最初にスプートニクを打ち上げてから熾烈な宇宙開発の競争に入ってきたわけなんですが、現在、政府の中でこういった宇宙開発関係について担当をしている省庁、これはいろいろあると思いますが、一体どの部分をどの省庁が担当しているのか、それについてまず最初にお伺いをいたしたいと思うんですが。
  70. 吉村晴光

    説明員(吉村晴光君) お答え申し上げます。  現在、日本宇宙開発につきましては、内閣総理大臣の諮問機関でございます宇宙開発委員会が全体的な取りまとめ、調整をいたしておるわけでございますが、実際に仕事をいたしております機関といたしましては、科学衛星の科学観測の分野につきましては文部省が担当いたしております。それから人工衛星やロケットの開発につきましては科学技術庁、宇宙開発事業団が担当いたしております。実際に衛星を使いまして宇宙空間を利用するという点からまいりますと、通信衛星、放送衛星の分野につきましては郵政省、気象衛星の点につきましては気象庁、その他これからいろいろな利用によりまして関係省庁がふえてくるというふうに思っております。  大体ざっと申し上げまして政府機関の主な役割りは以上でございます。
  71. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、打ち上げる星の性能といいますか目的、これによってそれぞれの省庁が担当する、こういうことになっているというふうに理解していいと思うんですが、現在、宇宙開発に関する各国間の交渉ですね、あるいは国連等の機関を通じての交渉、いろいろあると思いますが、先ほどもちょっとその話が出ましたけれども、これらの交渉合意あるいは取りまとめ等を含めて取り扱っているのはどこが取り扱っているか。
  72. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 平たく申せば、全般的には外務省、具体的には私のお預かりしている部局が調整役になります。事柄によって違ってまいりますが、たとえば国連その他国際的な場での交渉事につきましては外務省及び関係省庁でそれぞれ対処ぶりというものを十分練り上げまして、必要に応じまして混成部隊で当たっておるし、非常に技術的な細目にわたることにつきましては、一たんそういう国際的な話し合いないし組織ができました時点以降においては、ケース・バイ・ケースでございますが、専門の省庁において扱われるという慣行ができております。
  73. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこで、それではわが国の今後の宇宙開発、衛星の打ち上げ等について、まず最初に衛星の打ち上げの計画等についてお伺いしたいんですが、これは各省庁に分かれているので、それぞれ担当のところからお願いします。
  74. 吉村晴光

    説明員(吉村晴光君) 宇宙開発につきましては、宇宙開発委員会におきまして関係省庁の計画の全体の取りまとめをやっておりますので、私の方から御説明をさせていただきます。  まず、科学衛星の開発でございますが、これにつきましては四つほどの科学衛星の計画が具体的にございまして、それぞれ準備が進んでございます。御紹介いたしますと、五十七年度にはX線星の観測をいたしますアストロBという科学衛星を打ち上げます。五十八年度に中層大気の観測をいたしますエクソスCという衛星を打ち上げます。六十年度にはハレーすい星の観測をいたしますプラネットAという科学衛星を打ち上げます。六十一年度にはX線天体の観測をいたしますアストロCという科学衛星の打ち上げをいたします。以上四つが現在具体化しております科学衛星の開発計画でございます。  実用衛星の開発計画につきましても五つほどの具体的な計画がございまして、五十七年度に技術試験衛星Ⅲ型というものを打ち上げます。これは三軸姿勢制御等の衛星基礎技術の実験を行うというものでございます。それから五十七年度と五十八年度に通信衛星二号を二個打ち上げるという計画がございます。それから五十八年度と六十年度に放送衛星二号、これも二個打ち上げる。五十九年度には静止気象衛星三号、これは現在のひまわり二号の後継機となるべきものでございますが、これを打ち上げる計画になってございます。六十一年度には海洋観測衛星一号というものを打ち上げるという計画でございまして、以上申し上げましたものがいま具体的に計画として準備を進めておるという衛星の打ち上げの中身でございます。
  75. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういうふうにいまおっしゃったような計画で今後衛星の打ち上げが進んでいくとしますと、当然この打ち上げ等に関する各国間との問題というのが出てくるわけなんですね。そこで、現在宇宙開発に関する条約、取り決め、こういったようなもので効力のあるものは一体どういうものがあるか、これについてお願いします。
  76. 宇川秀幸

    政府委員宇川秀幸君) 全部で六本だと思いますが、略称で言わせていただきますと、まず第一に通称の宇宙条約でございます。月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約、長い名前がついておりますが、それから先ほど話題になりました宇宙三条約、すなわち宇宙の救助返還協定に関するもの、それから宇宙損害賠償条約、それから最後に宇宙物体登録条約がございます。このほかに、国際電気通信衛星機構に関する協定いわゆるインテルサットに関する協定、それから国際海事衛星機構、インマルサットに関する協定がございます。以上六本でございます。
  77. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、特に静止衛星打ち上げに関していろいろな国際間のトラブルとまではいかないけれども、それに近いものが予測されるような新聞で発表になった記事を私読んだのですが、一九七九年に国際電気通信連合、ITUですね、これに対してわが国が、一九八三年のCS2aという衛星、これの打ち上げ、さらに予備衛星のCS2bの打ち上げ、これらのことを通告をした。これは静止衛星ですから、その数がある程度制約をされてくるわけですが、これに対してソビエトから日本の郵政省に対して抗議が行われたという記事を読んだことがあるのです。これは、ソビエトの方は一九七五年に十個の静止衛星による衛星システム、この計画を発表をしているわけですが、第一号がもうすでに一九七五年にラドガ一号という名称で打ち上げられ、一九七八年の末までに四個を打ち上げている。またそのほか一九七七年国内通信衛星を四個、通信衛星を四個、海上通信衛星を四個、それに航空通信衛星七個、合計十九個になりますけれども、この静止衛星シリーズを打ち上げるということをソビエトが公表している。そういうこともあって、わが国の静止衛星打ち上げに対してクレームがついたということが報道されておりますが、これについてはいかがでしょうか。
  78. 大瀧泰郎

    説明員(大瀧泰郎君) お答え申し上げます。  衛星通信回線を設定する場合は、御承知のように国際電気通信条約の付属無線通信規則の規定に従いまして、打ち上げ国からの情報をもとに国際周波数登録委員会世界各国へその衛星の情報を事前に公開するということになっております。この情報をもとに各国は自国の衛星通信回線または地上の無線通信回線に混信があるかどうかということを検討いたしまして、混信のある場合は関係国と調整を図るということになっております。その場合、それぞれの通信回線が相互に容認できる限度で技術特性の変更を行って、問題の解決を図っていくということになっております。今回の新聞はソビエトとの関係を取り上げておるわけでございますが、CS2aの打ち上げ計画と同じ東経百三十度の軌道位置にソビエトのスタチオナール十号という衛星を打ち上げるということでございまして、現在わが国とソビエトとの間で無線通信規則の規定に従いまして国際周波数登録委員会と十分連絡をとりながら調整を行っております。
  79. 松前達郎

    ○松前達郎君 いまのCS2aという衛星は一体どういう内容のものですか、衛星の性能ですね。
  80. 磯野優

    説明員(磯野優君) お答え申し上げます。  CS2aというのはわが国初の国内の実用通信衛星でございまして、五十八年の二月にその六機と申しますCS2a、それから八月に予備機でございます2bを打ち上げる予定になっております。この衛星は、静止軌道上で約三百五十キログラムの重量のものでございまして、電話で換算いたしますと約四千回線の通信容量を持っております。そして電電公社、国の機関、各公共機関等が非常災害用あるいは離島との通信等に使用することになっております。
  81. 松前達郎

    ○松前達郎君 それに対してソビエトからいろいろと抗議といいますか、クレームが来ている。これは、大体赤道の上で二度ぐらいずつずらすということですから、当然百八十個ぐらいしか打ち上げられないから、あの付近に打ち上げるときにはやはりそれぞれの国と話し合いをした上で、混信とかそういうものがないように、打ち上げても全然役に立たないということがないようにするということで協議が必要なんだと私は思うんですけれども、これらの問題を考えてみますと、特にインテルサットいわゆる通信衛星、あるいはこれから恐らく海事衛星等もたくさん打ち上げられる計画があるんじゃないか。また今度は航空衛星ですね。こういったようないろいろな衛星が打ち上げられてくる。もうすでに打ち上げられてもいますけれども、そういったような問題をやはり調整をしていかないと、これまた宇宙戦争みたいになってしまって大変な問題となってい一くんじゃなかろうか。地球上の戦争についてはいろいろと問題にされますけれども宇宙の場合もやはり同じような意味国際間の調整が必要だと思いますが、これを調整するのは一体どういうところで調整をするのか。それについてお伺いしたいんですけれども
  82. 大瀧泰郎

    説明員(大瀧泰郎君) 調整は、先ほど申し上げました国際周波数登録委員会というのがございますが、そこを中心にいたしまして、関係国が技術的な資料を公開し合いながら調整を行っていくということでございます。
  83. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、それを取り扱っている組織としては国連ですか。
  84. 大瀧泰郎

    説明員(大瀧泰郎君) 国連専門機関でありますところの国際電気通信連合というのがございまして、そこの下部機構に、ただいま申し上げました国際周波数登録委員会というのがございます。
  85. 松前達郎

    ○松前達郎君 こういったような問題はちょっとわれわれから目で見えない範囲ですから、なかなかこうぴんとこないわけなんですが、やはりこれから先、宇宙開発というのは非常に熾烈な競争になってくるはずなんで、この点もひとつ十分調整しながらやっていかないといろいろな問題が出てくるというふうに思う。そういうことで質問さしていただいたわけです。  さて今度は、アメリカ宇宙開発の中で、最近スペースシャトル計画というのが実施をされつつあるわけなんですが、このスペースシャトル計画の中にわが国が一体どの程度参与するか。技術的な面でいろいろとアメリカ側からの申し出等もあるんじゃないかと思いますが、その点、もしありましたら知らしていただきたいと思います。
  86. 吉村晴光

    説明員(吉村晴光君) スペースシャトル計画がアメリカで立案されました際に、日本に対しましても協力の申し入れがあったというふうに聞いておりますが、その当時の日本技術開発のレベルが非常に低いということもございまして、残念ながらいまございますスペースシャトル計画にはわが国として参加をしていないというのが実情でございます。  私どもといたしましては、スペースシャトルを利用するというところでは、これからは宇宙空間におきます材料実験のような場合には、そういう形で利用をしたいと思っておりますが、現在のシャトル計画そのものの開発には関与をしていないというのが実情でございます。
  87. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと今後の問題として、スペースシャトルはこれで終わっているわけじゃないので、これから続けられていくわけですから、その中にわれわれが日本として何らかの形で、いまおっしゃったような技術的なあるいは研究開発的な意味も含めて関与していく、関与というか参加していくというふうなことについては何らかの計画はあるんですか。
  88. 吉村晴光

    説明員(吉村晴光君) スペースシャトル計画そのものにつきましては、恐らく今後も協力をすることはないと思いますが、その後の問題といたしまして、まだ決まっておるわけではございませんが、NASAにおきましては宇宙ステーションのようなものを考えておるというふうに聞いておりますし、それにつきましても、非公式に伝えられるところによりますと各国協力を得ながらやりたいという意向を持っておるというふうに理解をいたしております。そういう場合にわが国がどうなるかということにつきましては、今後の問題でございますけれども、具体的な中身等を見ながら対応をしていくということになろうかと思います。
  89. 松前達郎

    ○松前達郎君 それでは数字の問題でちょっと、もしわからなければ仕方ありませんが、現在人工衛星がどのくらい宇宙に打ち上げられているのかということと、その中で科学衛星とかそういった一般的なものと違って軍事衛星ですね、そういうものが一体どのぐらいあるのか。数は余り正確じゃなくて結構ですけれども、その点わかっておりましたらひとつお知らせ願いたいんですが。
  90. 吉村晴光

    説明員(吉村晴光君) 世界の人工衛星の打ち上げ数でございますが、私どもが持っております昨年の十月の中旬現在の数字でございますけれども、これによりますと約二千七百個の人工衛星が打ち上げられてございます。  ただ、その内訳につきましては、科学とか技術開発とか通信とか気象とか、そういう割り方になってございまして、軍事というような分類はなされてないというふうに理解をいたしております。そういう意味から、その中で軍事的な色彩を持っておるものはどれぐらいあるかということにつきましては承知をしていないという状況でございます。
  91. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこがいろいろと問題になるんですけれども宇宙開発わが国も三番目ということですから、これから人工衛星も数多く打ち上げていくということになろうと思いますけれども、これが果たす役割りというのは、それはわれわれの生活に直接関連する気象衛星とかあるいは科学分野での研究のために役立つような衛星ですとか、いろいろなその目標が、衛星それぞれの目的があると私は思いますけれども、軍事であるかないかというのは非常にきわどいところでしてね、たとえばアメリカのスペースシャトルの計画にしたって、軍事衛星と言えば言えないことはない、衛星ではないけれども軍事的な目的があるということを言おうと思えば言えるわけですね。ですから、その境目というのははっきりはしていない非常にきわどい境界があるというふうに私は思うんですけれども、特に今後わが国が六十一年に打ち上げるという予定であるシーサットですね、これは海洋観測衛星ですか、こういう衛星なども、ある意味で言うとそういった面でも活用できるような衛星であるかもしれない。まあしかし、私はそれは別に活用して悪いとは言いません、これは攻撃的なものでありませんから。  こういったようなものが、わが国の周りで一体どういうことが起こっているかという情報収集とかそういうものにも、これは気象の面であろうと何であろうとすべて含めて、情報収集にやはり人工衛星というものが非常に重要な役割りを演じる時代が来ているんじゃないかと私は思うんです。  そういうふうに考えてみますときに、人工衛星からの情報の入手ですね、これについて、たとえばいまのランドサットみたいなものについてはNASAから直接情報を得ることができるということなんですが、この情報の入手というのは、行政の中では一体どういうところが入手しておられるのか。それから、それに対する情報解析等も行っておられるのか。その辺ちょっとお伺いしておきたいわけです。
  92. 吉村晴光

    説明員(吉村晴光君) いまお話ございましたランドサットの情報につきましては、これからも日本といたしましてそのような地球観測衛星をつくり、いろいろ利用していきたいということを考えておる関係上、その情報を受けてどういうふうに利用ができるかという研究をやっておるわけでございます。具体的には、宇宙開発事業団におきましてランドサット衛星からの直接に受信をいたします施設を設けまして、そこで処理をいたしまして画像をつくるということをやってございますし、そういうものが国内の研究機関で広く利用をされまして、そういう衛星データを国内でのいろんな面でどういうふうに利用できるかということの研究をやっていただいておるという状況でございます。
  93. 松前達郎

    ○松前達郎君 ランドサットの場合は公開情報みたいなものですね、ですから入手ができるんですが、さっき私、軍事衛星がどのくらい打ち上げられているかということをお伺いしたんですけれども、恐らく衛星の中の目的として分類した場合に八〇%以上は軍事的な目的だと思うんです、ランドサットはそういう目的じゃないと思いますけれども。しかし、いずれにしても衛星というものが情報入手の手段としては非常に重要な今後の課題になってくるし、現にそうなりつつある。たとえばソビエトのアフガニスタン侵攻に関してでも、これはビッグバードというアメリカの軍事衛星、偵察衛星といいますか、これがもう相当前にこれを察知をしている、こういうこともあったわけで、ある意味で言うと、そういう情報そのものをわれわれがつかむということですね、これが今後外交の面でも先制的に情報をつかんでそれに対処するようなことができる大きな原動力になるんじゃないか。これは何も軍事だけじゃなくてすべてを含めてですね、そういうふうに思うものですから、これから先のわれわれの人工衛星等の打ち上げ、いわゆる宇宙開発というのは非常に重要な分野になってくるだろう、こういうふうに思っておるわけであります。そういうところで今後わが国の計画というものも、これはたとえばロケットを打ち上げる手段、そういう問題も含めて十分に検討していかなきゃならない。特に国産技術といいますか、日本は先端技術は非常に発達しているといいながら、宇宙開発に関する星の技術についてはある程度あっても、打ち上げ手段に関しては余り持っていない、そういう面も含めて今後われわれとして十分対応していかなきゃならないし、計画もしていかなきゃならないと私は思います。そういうことですので、きょう宇宙開発について質問さしていただいたわけなんですが、また宇宙開発については後でちょっと触れたいと思いますけれども、さしあたってそのぐらいにしておきます。  次に、今度シーレーン防衛です。またかということになりますが、それについてちょっとお伺いをしたい。この前の委員会でもお伺いしたのですが、どうもまだ納得がいかない面があるわけです。このシーレーン防衛というものが一体どういうものなのかというのが、この前もごく抽象的にはお伺いをしたのですけれども、これから先、恐らくシーレーンというものが果たして防衛できるものかという大議論がいま行われているし、わが国にとってこれが一体どういう価値があるのかという問題、そういう問題等も含めて質問をさしていただきたいと思うんです。  ジョージ・ワシントンが日章丸とぶつかっていろいろと問題を起こしたのはもう大分前の話でありますが、このジョージ・ワシントンが就役したころというのが大体十六個の核弾頭を持つミサイル、これを積載して、これは二千五百キロ離れた地点に打ち込むことができた、これが精いっぱいだったわけですね。ところが最近の米ソの核戦略の中では北極海が比較的重要視されてきている。特に、かつては北極海を潜航したまま横断したというので一大ニュースになったというのを記憶をしているんですが、その目的というのはやはりそういった軍事的な目的があったということ、これはいわゆるミサイルのレンジとの問題である、私はそういうふうに考えておるわけですが、北極海がアメリカ原潜のひそんでいる場所であった、こういうことであったわけなんですが、今度はそれがだんだんと開発をされてきて、一九六四年ごろになりますとポラリスのA3というミサイルが開発されたわけですね。これがいわゆる航続距離といいますか、射程というのが四千六百キロ。ですから、ジョージ・ワシントン積載の当初のミサイル二千五百キロよりもはるかに射程が伸びてきた。そうなると何も北極海だけでなくていいわけですから、アラビア海とかあるいは地中海に原潜の活動する海域が移っていく、こういうふうになるわけですね。しかも北極海が氷結するから、なかなか海中からミサイルを撃ちにくい、こういうことだろうと思うんです。北極海というのは、ソ連にとっては唯一の直接海岸線を持っている海なわけですから、非常に魅力的であろうと私思うわけなんですが、そのために最近ではチタン合金の潜水艦まで、タイフーンですか、つくられている、こういう情報があるわけなんですが、それがさらに進んで八〇年代になりますと、トライデント二型がいま開発中、このミサイルの時代になってきたわけですが、これが七千四百キロメートル以上の射程を持っている。そうすると地中海などああいうところから発射する必要はない。どこが発射基地になるかというと、日本海であり東シナ海であり、あるいはベーリング海であり西太平洋である。こういうふうに変わってきたわけです。その辺からソビエトの中枢部をねらうことができる、こうなってきますと、やはり太平洋というものが、特にわが国の周辺の海域というものが非常に原子力潜水艦にとっては重要な海域になってくるんじゃないか。一万キロレンジのミサイルですから当然そうなるんじゃないか、こういうふうに思うんです。  そういうこと等を含めて考えた場合、一体シーレーンの防衛というものがどういうふうな意味を持つのかということがある程度漠然とですけれども、私なりにその意味がわかってくるような気もするのですけれども、シーレーンの防衛というのは、この海域にいるソビエトの攻撃型原潜――ソビエトというと抵抗があるかもしれません、日本以外の国の攻撃型原潜の発見とかあるいは有事の際に原潜に対する攻撃をするとか、あるいはアメリカの核ミサイル潜水艦に対する海上、空中からの攻撃を防御する役割りをするとか、いろいろな役割りがそれに含まれてきているんじゃないかと、私はそういうふうに思っておるわけですが、その点外務省の方はどういうふうにお考えでしょうか。
  94. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 非常に技術的な問題を含めてむずかしい問題を提起されたわけでございますが、私たちあるいは同本政府考えているシーレーンの防衛というものは、そういう核戦略の一環としてやるわけでなくて、日本が攻撃された場合にわが方の海上交通を保護する、こういうために行われるものでございまして、いまトライデントが出てきたあるいは射程距離が延びたということによってシーレーンそれ自身考え方というのは、月本に関する限りは変わってくるということは余り考えられないのじゃないか。しかし、私も軍事的知識が非常に乏しいわけでございまして、防衛庁がここにおられるので、むしろ防衛庁の方に軍事的知識であればお尋ねいただければと思います。
  95. 松前達郎

    ○松前達郎君 防衛庁、いかがですか。
  96. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) お答えいたします。  ただいま外務省の北米局長から御答弁ありましたとおりシーレーン防衛、私ども海上交通の保護と申しておりますが、シーレーン防衛といいますと、いま先生がおっしゃいましたようなポラリス、ポセイドン、トライデントというようなことで代表されるいわゆるアメリカの潜水艦から発射します戦略ミサイル、これを積みましたSSBNと言っておりますが、戦略ミサイル潜水艦、こういうものを防衛するとか、あるいはいまも先生おっしゃいましたように今度は逆にアメリカの潜水艦が攻撃されるのを防ぐとかという意味では全く考えておりませんで、ただいま外務省局長から御答弁ございましたように、わが国の生存に必要な海外からの物資をわが国に運んできますわが国の船舶、こういうものが有事におきましてわが国の周辺海域で、わが国に対して武力攻撃を行う国の主として潜水艦であろうかと思いますが、そういうものから攻撃を受けるのを守る、こういう意味でございます。
  97. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、タンカーですとかあるいはその他の商船、いわゆる民間の船ですね、こういうものを船団を組んだり、いろいろな方法を行って防御をするんだと、この前もたしかそういうふうにおっしゃったと思うんです。これは一つ考え方の相違かもしれませんが、そういうことも確かにあろうと思いますけれども、もしわが国が攻撃された場合にはこれはどうなるのですか。安保条約との関係はどうなるのですか。公海上で攻撃された場合、たとえば日米安保条約に関連して、わが国が攻撃された場合にはアメリカはそのままで知らない顔しているんですか。それとも何らかの形でそれに対して協力するんですか、防御に対して。
  98. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいまのお尋ねが安保条約との関連ということでございますので、安保条約の五条で、アメリカが防衛の義務を負っているのはわが国の施政のもとにある領土、領域ということでございまして、公海において日本の船が攻撃された場合に、アメリカ側が条約上の義務は負っていないということは明らかでございます。
  99. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、わが国の商船に対する第三国といいますか、アメリカが攻撃することはないと思いますけれども、ここで仮定して、ソビエトとしますね。その他の国は攻撃能力持っているのは余りいないですから。そういう国が、たとえばわが国に攻撃をするというのは、単独でほかの国際緊張と関連なく、わが国の商船だけに攻撃するということがあり得る、要するに日ソが戦うということですね。そういうことを想定してシーレーン防衛をやるのですか。
  100. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) お答え申し上げます。  具体的な国の名前を挙げますのは無用の誤解を招くおそれがございますので差し控えさしていただきますが、一般論として申し上げますと、もしわが国を侵略しようとする国があるとしました場合に、わが国を侵略する方法の一つとしまして、たとえばわが国の本土に対しまして直接に飛行機で攻撃しますとか、あるいは上陸進攻軍を送り込んでくるというような直接的な攻撃をする場合もありましょうが、そのほかにたとえば潜水艦等によりましてわが国の周辺の海域におきまして、わが国への重要物資を運んでおりますわが国の船舶を攻撃しましてわが国の海上交通路を破壊する、そしてわが国に、事実上海から封鎖するようなことになると思いますが、わが国に大打撃を与えてわが国を屈服させて、そういうことによりましてわが国に対する侵略の目的を達成するという方法をとらないということは断言できないと思うわけでございます。もし、こういうような侵略の手段をとられました場合に、わが国がこれに対しまして、わが国を防衛する手段を持たない、そういう能力が低いというような場合には、逆に言いまして、わが国を侵略しようとする国があった場合には、こういう方法をとる可能性があるだろうということも言えるかと思います。  そして、いま申し上げましたように、わが国に対する侵略の可能性というものは将来にわたって否定することができない。そしてまた、その中でも、いま御説明申し上げましたような方法もないとは断言できないという以上、わが国の自衛のための必要最小限度の手段といたしまして、そのような海上交通の破壊に対しまして、わが国の海上交通を保護するための海上防衛力を整備することが必要である。またこれを整備して保有しますことが、逆に言えば、わが国に対しましてそういう手段による侵略を未然に抑止することになる、このように考えているわけでございます。
  101. 松前達郎

    ○松前達郎君 どうもその辺が、わが国だけを分離して考えて、わが国のシーレーンだけはわれわれの手で守るんだと、そのような説明なんですけれども、いまそんなことでできるんですか、防衛が。というのは、もうすでに安保条約もあるし、たとえば合同演習なども日米間でやっているわけですね。だから、そういう中で果たして、それじゃ、私たちは私たちだけでやりますからどうぞそれには知らぬ顔してくださいというふうなことが言えるかどうか、そういう国際関係じゃないと思うんですね、現状では。ですから、りっぱな説明にはなりますけれども、なかなかその辺がわれわれとしては腑に落ちない点があるということなんです。たとえば、アメリカは、日本に対する軍事的な要望として三海峡の封鎖も要望する、あるいは原潜に対する偵察能力といいますか原潜を発見する能力、たとえばP3Cみたいなこういう飛行機も増強しろ、いろいろと言ってきているわけですね。さっき申し上げた海峡封鎖なんというのは全く潜水艦対策である、こういうことですね。あるいは対潜能力を持つ艦船でパトロールをしろとか、いろいろなことを要望してきているのではないかと私は思うんですけれども。  そういった面から考えまして、アメリカ側考えているのといまおっしゃったようなことと食い違いが出て、全然合わないんじゃないかという感じを私持つわけですね。ですから、たとえば商船が攻撃される、これはある特定の国が攻撃する、それに対して防衛をするんだとおっしゃるんですが、果たしてそれだけで済むものかどうかですね。その辺ですね。どうも、いまの国際的な感覚からいって私は全然理解に苦しむわけです。その点、いかがですか。アメリカの要望と、アメリカ考えているのと日本の間に食い違いがあるんじゃないか。
  102. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) まず、アメリカの要望と食い違いがあるかどうかという御質問でございますが、その前に、アメリカは一般的に御承知のように、自分自身も大変な国防努力を行いますとともに、わが国を初めとする同盟国にそれぞれ自身の防衛努力を期待をしておりますが、具体的に三海峡を封鎖するようにしろとか、具体的にP3Cを何機持てとかいうような要望はいたしておりません。また一般的に申しまして、わが国が自分自身の防衛能力を一層向上させるようにという一般的な期待をしていることは確かでございます。そこで、そのアメリカの恐らく期待の中に、いまのシーレーンに関しましては、わが国が従前からの方針といたしまして、わが国の海上防衛力の整備目標としまして、わが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里の程度の範囲内におきましては海上交通の保護のできる能力をつけようということを目指して防衛力整備を進めているということをわが国は明らかにしておりますので、アメリカはそれについて、日本としてそういう能力をしっかりつけてもらいたい、こういう期待を抱いているのだろうと思います。そういう意味で、アメリカが申しています期待、持っていると思われます期待というものと、わが国が独自に従前から目標としておりますわが国の海上交通の保護に関します防衛力整備の考え方との間に、食い違いがあるとは考えていないわけでございます。  それからもう一つわが国だけでできるかという御質問があったように思いますが、これは、しばしば国会で御説明しておりますように、わが国に対します武力侵略というものがありました場合に、その侵略の様相、手段がいろいろあり得ると思います。少し大げさに言えば千差万別と言っていいぐらいのいろいろな方法があると思います。先ほど私御説明しましたような場合の可能性もあり得ると思いますが、そのほかに、わが国の本土に対します直接の侵略というものと競合して起こる場合もあると思います。また、その規模につきましても、小さいものから大きいものまであるということで考えられますので、一概に守れるか守れないかということを申し上げることは困難でございますが、ただ一般的に申し上げまして、わが国の海上防衛力は現在、先ほど申し上げましたような目標に向かって、防衛計画の大綱に定める防衛力の水準を達成しようとして努力している途中でございますので、現時点で言えば、十分かと言えばこの能力は十分ではございません。
  103. 松前達郎

    ○松前達郎君 あるアメリカ専門家が、たとえば太平洋の中で相手の潜水艦を見つけるのはうず高く積まれたわらの山の中から針一本見つけるようなものだと、こういうことを言っているわけですね。ですからこのシーレーン防衛というのは、私はどんなことをしても、たとえばいまの日本のGNPの十倍ぐらい投入してもこれはできるわけはないと思っているんです。そういうことも一つあり、またさっきお話ありましたけれども、たとえばシーレーンの防衛というのは、公海上であれば条約からいってもアメリカの責任でないということになって、日本が独自でやりなさいということで、アメリカはそういうふうな態度でいるということであれば、これは何もそんなやかましく言うことないんですね、日本のことですから。わが国独自の問題であり、アメリカがそれに対して何にも口をはさむ必要もない。しかも、そういうことであるという前提に立っているにもかかわらずシーレーン防衛について公約だとか、そうでないとか、いろんな問題が出てくる。  そういうふうに見ますと、やはりどう見てもこのシーレーン防衛というのは、太平洋において攻撃型潜水艦からアメリカの核ミサイル潜水艦を含めて、守るための戦略分担みたいな感じを私持つんですよね。それが、しかもいまのいわゆる国際的な軍事的協力のもとでは当然の話になってくるんじゃないかと、こういうふうにどうしても私は考えるわけなんです。そういう意味で、どうもまだ腑に落ちない点があるわけですね。日本日本だけでいいんだとなれば、何でアメリカがそんなことに口出すのかという問題が出てくるし、あるいはさっき私が申し上げたように攻撃型の潜水艦というものの位置を発見したり、それについて防御をしたりするということであれば、これはもうアメリカの戦略とのリンクが必ずそこに出てくるわけですから、その辺がまだ私はすっきりしないところがあるんです。  最後にもう一度お伺いしますけれども、たとえばシーレーン防衛というのは、どうも総理が公約したとかしないとか言っておりますけれども、便宜上出てきたような気がするんですね。シーレーンがあるのかないのかという問題とか、あるいは果たして防衛できるのかという問題とが、いろいろな問題を考えてみますと、シーレーン防衛というのは一つのテーマとして取り上げたかもしれないけれども、これは日本アメリカの防衛分担の、その一つのテーマとして私出てきたんじゃないかというふうに考えておるわけなんです。たとえば日米間で相当の相違があるというのは、対米公約であるかないかという問題についても、たとえば最近ではドネリー空軍中将ですか、これは在日米軍司令官、これが千海里防衛は対米公約であるといったような趣旨の発言もしている。ところが、総理は対米公約ではない。これはこの前のときにも申し上げたのですが、矢田統合幕僚会議議長は、防衛力はシーレーン防衛に対しては現在では不足であると言ってみたり、とにかくシーレーンというのはまずテーマとして出てきているんだけれども、みんなそれぞれ考え方が違い、それから取り扱いといいますか、シーレーンの防衛に対する実際的な取り扱というものが違ってきている。地域防衛だということも一時言われたことがありますね、これは塩田さんがおっしゃった。何だがその辺がはっきりしないんです。しかもその基本にある問題として、さっき私が冒頭申し上げたような安保条約との絡み合いとか、さらにわが国わが国だけで防衛すりゃいいんだというふうなこともおっしゃいましたけれども、その辺がそれぞればらばらでどうもはっきりしてない、そういうことから考えると、やっぱりどうしてもつくられたテーマのような気がしてしようがないんですね。その辺いかがですか。
  104. 澤田和彦

    説明員(澤田和彦君) いろいろいま御質問ございましたが、まずドネリー司令官の発言というのは、これは先日経団連の会館でドネリー司令官が行った講演で、昨年の鈴木総理のナショナル・プレス・クラブでの御講演に触れたくだりだと考えますが、これはしばしば外務省の方からも御答弁申し上げておりますように、また先ほど来私も申し上げておりますように周辺数百海里、航路帯を設けます場合にはおおむね一千海里程度の周辺海域における海上交通の安全を確保することを目標に、鋭意防衛力整備を進めているわけでございまして、この従来からの日本考え方を総理は説明されたと承知しているわけでございます。したがいまして、公約とか公約ではないとか、これは総理の発言でございますからそれなりの重みはございますが、日本政府の従来からの考え方を説明したものであると、そういうように承知しているわけでございます。確かにシーレーンという言葉自体は、ここ一、二年でございますか、比較的最近使われるようになってまいりましたが、これは国会の議事録等をずっと詳しくお調べいただくとおわかりいただけると思いますが、アメリカ日本に対しまして、日本考え方に従って日本の防衛努力をもっと一層してくれるようにという期待を表明するようなことが話題になりました以前から、私の記憶ではかれこれ十年ぐらい前から防衛庁、海上自衛隊が、シーレーンという言葉は必ずしも昔使わなかったかと思いますが、おおむねわが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里程度の中においては海上交通の保護を行えるような能力をつけたいということを目標にして、一貫した考えのもとに防衛力整備を進めてきたわけでございまして、突然ここ一、二年で飛び出してきたテーマではないわけでございます。
  105. 松前達郎

    ○松前達郎君 シーレーンについては、またそのうちいろいろと問題出てくるでしょうから、そのときにまたお尋ねすることにしまして、最後に一つだけソビエトの脅威の問題ですけれども、ソビエトの脅威ということを盛んに言われておりますが、一つだけお伺いします。  北方四島ですね。この北方領土におけるソビエトの軍備増強に関する認識、これは恐らく防衛庁としても相当の情報を持っておられると思いますが、たとえば飛行場が建設されているとかいろんなこと番言われているわけですが、これらについて、かつて日本軍が建設していた飛行場が利用されているもの以外に新たな飛行場ができているとか、そういうものについての情報ありますか。
  106. 三井康有

    説明員(三井康有君) まず、北方領土の国後島でございますけれども、ここには東沸という飛行場とそれから古釜布という飛行場の二つがあるというふうに承知いたしております。これらは滑走路が約二千メーター程度で、ソ連の輸送機でございますとかあるいはヘリコプター等が随時使用しているようでございます。  択捉島につきましてはまず天寧という飛行場がございまして、これは二千メーターよりもやや長い滑走路を持っていると見られますが、各種の軍用機が使用しているようでございます。それ以外に択捉島には、糖路飛行場、それから糖路南飛行場という二つの飛行場があるように思われるわけでございますが、具体的な状況は全く不明でございます。
  107. 松前達郎

    ○松前達郎君 それでさっきの人工衛星の話とここで関連がつくのですけれども、たとえばランドサットで見ますと択捉の留茶留原に相当大きな飛行場ができているらしい写真が解析できますね。私地図も持っていますし写真も持っていますけれども、こういった大きな飛行場が一つどうも建設されているらしい。あるいは蘂取郡ですか、そこに小型の予備飛行場がつくられているらしい。これは衛星から見ますとばっちり出てきます。何だったらお目にかけてもいいんですが。まあ、それをつくったことについて別にとやかく言うわけじゃありませんが、こういったものもいわゆるその衛星からの情報として入手できるわけですね。そういうことですから、さっきの質問の一番前に戻りますけれども、やはり衛星そのものが果たす役割りというのは、情報入手の方法としては非常に重要なものを持っているんだと、こういうふうに私は思っておるわけであります。  そのほかまだ質問したいこともありますけれども、また次のチャンスに譲りたいと思います。  まあ、ソビエトの脅威等についてはもうちょっと詳しく、どの程度の認識をされているのか。というのは、アメリカそのものもソビエトの脅威、脅威であおり立てているわけですから、日本の方としては一体じゃどの程度現在、正確な認識としてソビエトの脅威をどう認識されているのか。これについてはこの次またお伺いします。  きょうはこれで終わります。
  108. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十五分まで休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時十五分開会
  109. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  110. 戸叶武

    戸叶武君 あしたはミッテランさんがおいでになるということで、いまミッテランさんの言動というものは端倪すべからざるものがあって、世界じゅうが特に核燃料の問題あるいは核兵器の廃絶の問題、もろもろの問題において西ドイツの動きよりもさらにフランスのミッテランの動きを、ミッテランどころか手のうちが見たいという一つの興味が持たれておると思います。ミッテランもあした乗り込んでくるのには、やはり日本人というのはなかなか感覚が鋭敏で、テンション民族においては危機に対する直観力はフランス日本かと言われて、日本の方がこのごろは大分評価されてきているから、やはり打ては響くというのが日本フランス大統領ミッテランと、来るべき先進国会議の前に、どこまでが本音か、本音には間違いないが、どうやって長期的な中期的な展望を持って、現実的な対応をグローバルな時代にするかというような、いままでの列国の大統領が来た中においても、歴史的な私は記録をつくるのでないかと思うんですが、サミットの会に続いて直ちに国連の軍縮総会も開かれるのでありますが新聞にいろいろなことが伝えられておりますけれどもアメリカの国務長官のサッチャーさんとのやりとり、アルゼンチンの問題、イギリス帝国主義の残存的な処理の問題、そういうものがアメリカの国務長官を中心として粘り強く続けられていますが、中南米問題のむずかしさをアメリカの国務長官は避けて通らないで、真っ向から全力投球で問題解決の糸口をつくろうという気構えをしておりますが、ときに櫻内さんはどういう気構えてこのミッテランを迎え、また来るべきサミットや国連軍縮会議に対して向こうの出方を待って、動いていく情勢に対応しながら、グローバルな時代における歴史的な変革の時代にどういうふうな一つの対処方法を見出そうと思っていられるか。  非常に慎重であることは結構ですが、余り慎重だと五月から六月は物が腐るときですから、食べ物にも注意するようにというぐらいで、アオカビが出たやつはなるたけ食べないようにした方がいいという、公害問題においても重要な注意が出ておりますけれども、好むと好まざるとを問わず、やっぱりアメリカの国務長官なりフランス大統領なりが自分たちの手のうちを世界じゅうに公然と示しながら、一つのグローバルな時代における国際情勢下において一役を買ってやらなけりゃならぬという構えできているときですが、櫻内さんは音なしの構えですか。
  111. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ミッテラン大統領がいよいよあす訪日をされるわけでありますが、戸叶委員のおっしゃるとおりに、大統領と鈴木総理の会談は現在の国際情勢下におきましてはきわめて意義深い重要な会談であると思います。  仏元首として歴史上初めての訪日ミッテラン大統領がされるわけでありますが、いままでの連絡の上からいたしますと、大統領は自由濶達に大所高所から鈴木総理と腹蔵のない意見交換をされたいと、こういう御意図のように思われます。貿易問題等の個別問題についてはでき得る限り事前に別途話し合いをしておいてもらいたいと、こういうような御意向も参っておる次第でございますが、折からフォークランドの問題もございまして、御指摘のようなヘイグ米国務長官の精力的なあっせんも続いておるわけでございまして、領土問題はそういう御努力にもかかわらずなかなか困難な面があろうと思いますが、フォークランドの問題についても時期的に非常に大事な問題でありますから、これも話題になるでありましょうし、またベルサイユ・サミット、さらには特別軍縮総会、こういう重要な一連の国際会議が次々と予定されておりますので、今回の大統領日本の総理の会見は、そういう重要な会議を前にしての意見交換として私も刮目しておるところでございます。
  112. 戸叶武

    戸叶武君 向うからもすでに予告が示されているようでして、日本としては知らなかった、存ぜぬではこれに対応ができないと思います。フランスのミッテランがこちらへ来るのには、やはりいまの状態は見ておられぬという危機感を感じて私は乗り込んでくるのだと思うのであります。このミッテランと少なくとも鈴木首相並びにあなたも立ち会うと思いますが、このやりとりというものが世界の模索時代の潮流に大きなチェンジを与えないとも限らない歴史的な私は意義を持っているんじゃないかと思うのであります。それだけでなく、日本の官僚はなかなかフランス官僚よりも優秀で専門的と思われるところを深く言っているが、本当のことを語らぬことにおいては世界で有名な秘密外交とか受けとめられるような、日本のとにかく政治家が危機を感じ、もっと聡明になり、官僚を使うだけでなくてみずからの責任においてリーダーシップを発揮しなければ、お役人でも幾ら首があっても間に合わないから、沈黙を守らざるを得ない奇形的な日本のこの議会政治の運営というものがなされているときでありますが、それだけに今度はいままでの政党政治、名ばかりであって政権の交代のない、議会主義のルールの確立してない、近代政党にまで発展してない、そのアミーバと言っちゃ悪いですけれども、やっぱり一つの派閥連合的な国家体制で、政権さえ握っていればという卑しい発想が今日における日本の議会主義を遠くしていると思うんです。  そのことはもう言わなくてもわかってきている。わかっても惰性だからしようがない。ぬるま湯に入ると、やはりうっかり出るとかぜを引くからというのでそのままずっとこう、そういうぬるま湯の習性がついているんですが、私はイギリスの議会政治の中で画期的な役割りをしたのは、ナポレオンに対抗して国内体制をつくり上げたピットの、おやじさんの大ピットはイギリスにおける内閣制度をつくり上げたが、勲章をやったり利権をやったり全くイギリスの政治が腐り切ったときにおける長期政権を打破する役割り、責任内閣制、内閣制度というのでなくて、人民と結びつくところのやはり責任体制というものをつくり上げたところに、その息子のピットが二十四歳の若さでやはりイギリスの危機を救うために宰相にも迎えられたのだと思うんですが、いま日本の議会政治はきわめて変則です。議会政治のルールというものは、政権の交代のないところに議会政治というものはないんです。アメリカにしてもフランスでもそうですが、一般の官僚や情報機関が予測したとは違って、底流の流れというものが、やはり長期政権の腐敗を招くよりもかえた方がいいと思えばジスカールデスタン氏を倒し、あるいは前のカーターも、勝つと思っていたのがレーガンに敗れてしまう。いわゆる地下三千尺の人民の心を食いとめることのできない、地下水の流れの所在をわかり得ない、情報化時代の官僚や機械でははかり知れないものが政治の中にはあると思います。そういう頂点に立ってアメリカのマクナマラのこの間の発言というものは、ミッテランのあした日本に来てからの発言以上に、アメリカにおいて彼がフォード会社の赤字を清算するために送られたときの副社長時代に、将来アメリカの二十年後、三十年後責任を持つ政治家に育つ人であるから、無名の時代に彼を知っておかなけりゃいかぬというので、フォード会社のあるところを私は訪ねました。フォード会社はずいぶん金をもうけているんだから、日本の青年のためにバスぐらい仕立ててナイアガラぐらいは見させてやるだけのあれがあっていいんじゃないかと言ったら、即座にそれを実行してくれましたが、彼はケネディの時代あるいはジョンソンの時代に、要するにケネディが殺された後マクナマラのような人物を、フォード社においては私は失敗だと思いますが、ペンタゴンに送り込んで、ペンタゴンに行っても迷子にならない数字の明るい、頭脳の明晰な人として見られておったのですが、いまジョンソンは自分がアメリカ大統領を去る前後に彼を世界銀行の総裁に推薦したのだという考え方があるかもしれませんが、しかしいまのジョンソンさんが古いアメリカ外交、ダレス時代の包囲政策の力の外交から抜け切れないでいるのにかかわらず、台湾問題でソ連や中国を余り刺激すると、中国をもアメリカから離反させる。日本は、豊葦原の瑞穂の国といわれている日本から、日本の米を食えないようにしてしまうと日本の神様が怒るんじゃないか。  それだけじゃなく、憲法改正にはその国が自主的にやるものだからといってなくても注文は出して、これだけの軍事費を負担しなけりゃというような、米ソのヤルタ体制をそのままにして原爆でおどかして、ソ連をばして日本との宣戦布告をさせ、ヤルタ会議においてアメリカとの妥協をやらせて、他の国の領土をその主権の所在を無視してソ連に与えるよなんてはかげた外交は、いつまでも世界の秩序を守り得るものではないと思うので、恐らくはこの来るべきポーランド問題を中心としてのいろいろな調整問題、食糧問題、あるいはポーランドをして絶望的な抵抗をさせないようにというときには、おのずからヤルタ協定の清算が私は促されると思うんです。  すでにあのときから、いわゆるルーズベルト夫人のエレノアという女性は才女であったが迷信深い女で、そしていろんな入れ知恵を秘密のホテル会合なんかやって――女というのは聡明な人はあるが、あの人は聡明過ぎて迷いが先走っていったので、この間もいかがわしいやっとホテルで会ってこうだなんということまで暴露されておりましたが、予言者たちですらもあの当時において、水晶に映っている予言によると、人の国のものを無断でとって他の国に与えるなどということは、外交上においてなすべきことではないという警告も受けているのが事実でありまして、シカゴ・トリビューンのマコーミックはエレノアの出しゃばりを抑えるために全紙を挙げて、あのパールハーバーにおける攻撃前に、日本政府が使っている暗号は全部アメリカで判読している。真珠湾攻撃もわかっている。にもかかわらず、真珠湾に攻撃をさせてから受身の形で戦争に参加するという形じゃないと、戦争にこりごりしていた婦人連中がまず戦争反対で応じないだろうというので、それをやったのだというシカゴ・トリビューンの資料をいまでもとって、外務省あたりでも参考にすればいいですけれども、これは私の恩師大山郁男先生がノースウェスタン大学の図書館においてデューイやあるいはアメリカにおけるマッカーサーの憲法顧問できたノースウェスタン大学に人物がおりますが、それらも知っていることですけれども、本当に戦争というものは権謀術策が時が経過したので、サンフランシスコ講和条約の真相なんかでも前の国防や自衛隊関係の大学の先生猪木さんがその文章を中心として真相を伝えたときに、猪木さんに対する攻撃も御用学者からずいぶんありましたが、歴史の現実は私は非常に厳しい、三十年か四十年たてば秘密にできないものが全部私は出てくると思うのであります。  過去の多くを私は追及しませんけれども、いまにしてアメリカがやらなければポーランド問題が片づかないとするならば、ソ連が軍事的な介入をしないでヤルタ体制を解消して、国連中心世界のグローバルな時代における新秩序をつくる以外にないと踏み切った場合に、アメリカの方だけを向いてきた日本世界政策はどうなるのかということに対して私は心配でならないんだが、鈴木さんや櫻内さんは非常な苦労人で、うっかり変な答弁しちゃ悪いから答弁しなくてもよろしいけれども、どういうふうにこれに対処するか、日本の有能な官僚ですらも、いま日本における何もかも追いはぎに遭ったように操にされて、資源もない国においてアルゼンチンにおけるあの軍部クーデターのような支配へのたくらみを日本においても公然とやるというようなことでは、国民が私は許しがたきものを感ずると思うんですが、その辺の情報なりその辺の模索はどういうふうになされておりますか。
  113. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 英議会の例をお取り上げになって議会政治への御意見をいただき、あるいはヤルタ体制に対する御批判、続いては、日本外交政策についての御心配を披瀝せられたわけでありますが、この外交政策の中には現実の面と理想を持ってやる面とあると思うのですが、そういう点で日本外交政策の中で、アメリカとの関係を重視しておるということは現実的にやはり必要な面があると思います。  また、理想としては国連中心主義の外交考える、これはどなたにも御異存がないところで、こういうものが普遍的になっていけば、日本外交国際的にも評価されるのではないか、このように思う次第でございます。
  114. 戸叶武

    戸叶武君 いま外務大臣がお答えになった中でやはり国連中心主義であるということを堅持するところに日本外交基本路線というものは確立していると思います。しかしいま、憲法改正の問題には私はまだ触れる時期ではないと思いますが、戦争が終わったときに世界じゅうが、挙げて再び戦争をやるべきでないという国連憲章の宣言に基づいて国連は平和維持機構として誕生したのであります。厳然たる平和維持機構としての国連が存在するにもかかわらず、未発展の国々においてあれもしてくれ、これもしてくれという形じゃとても応接ができないというアメリカの心理が先進国会議で受けとめられたり、あるいはソ連と真っ正面衝突を避けてはいけないという形のダレスさんの反共的な考えと、もう一つはソ連とアメリカとが対立したならば世界の破滅に導かれる、その辺にダレス外交基本線というものは一面において理想を掲げ、一面において米ソの中における秘密条約を通じて妥協を行い、他の国の迷惑は考えないというやり方では、私は今後における世界新秩序の基本原則はヤルタ体制の清算なしには確立しないと思うんです。その時期が来た、理想と現実とは違う、そのとおりであります。  外交権は内閣にあります。また内閣としては、主権者は人民であり国会が最高の機関である。しかし、自民党だけで多数をおごって押し切るということも困難であるから、まず外堀を埋めて、そして野党関係における、幾人ふえるか、これはとらぬタヌキの皮算用でわかりませんけれども、二、三名はそういう形において社会党あたりもふえるんじゃないか、同調してくれというような形における全国区の他の野党を無視した憲法違反的な行動も、多数決で国会において議決すれば、それが人民につながる意思表示であり、最高機関における承認を得たのだから差し支えないというような考え方を持ち込もうとするならば、今後この手を逆用すれば憲法改正なんかは赤子の手をねじるがごとく易々たるものになると思います。私は人民の権利というものは、人民個々人に与えられたものであり、国の最高機関というものは個人の自由なる意思、それを酌み取って万人をして言わしめよ、自由を与え、そうして屈託のない人民の意思表示の機関として国会を保たなければ、国会の権威というものは三百代言的な御用学者的な便宜主義の考え方では今後はいかないと思うのであります。  日弁連が反対だとか、あるいは婦人有権者同盟が反対だとかというだけでなく、もっと私は国の基本法に対する問題の解釈というものは慎重に慎重を重ねていかなければ、ただ単に政治上における取引みたいな古い形の議員族的な発想においてなされたならば、取り返しのつかないものが出るんじゃないかということを憂えている一人でありますが、どうもこの憂いも幾らか自民党の中ですらも、奇道は行くべきではないという正論が台頭してきつつあるのが事実だと私は思いますが、憲法問題には改めて触れまするけれども、少なくとも日本国憲法はマッカーサー憲法じゃないんです。やはり、日本の憲法九条に示されているように、再び戦争はしまいという念願を込めての全世界の批判を結集してできた、あの段階における国連を母体として国連のモデル的な憲法がつくられたのだと思うのでありまして、軽々率々に議員族的な発想において憲法改正が可能だなどと思う者は人民の鉄槌を食らって必ず滅びます。  変な憲法改正は命取りであります。短命で終わることをもって過渡的な政治の役割りは済ましたとほっとするつもりで、櫻内さんやあるいは総理大臣の鈴木さんは歴史の上において取り返しのできないような汚点を後に残しては、後になってから銅像なんか建てられても、どうぞお先にと言ってあの世にまで引っ張られて地獄へ行ってしまいます。どうぞそういう意味において、この問題は私は一政党の駆け引きの道具でなくて、主権者は人民である。個々の人民が自由濶達に自分たちの運命を切り開くことのできる自由というものを高く評価しての憲法である。人間の命を大切にするがためにつくり上げて、未来がよかれという念願が込められている憲法であるというだけの、少なくとも人生哲学と世界観を持たなければ私は憲法問題は論議する資格はないと思うんです。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕  いま、自民党では党の綱領か何かに入っているというのでうっかりこの問題も触れられないと思うが、流れはいつも流れているんです。停滞を許さないんです。私は自民党の中にも志士仁人はいると思います。これをやってしまっては日本が何もかもなくなってしまって、ストリップにされて見せ物にされたんじゃ見物人も来なくなってしまう。この辺でやっぱり日本人はなめられないような体制をつくらなければ、真の愛国の至情というものは盛り上がらないというだけの私は愛国者が輩出すると思うのです。どうぞそういう意味において、もうこの問題は勝手な自民党内における派閥駆け引きの論議の段階を離れて、少なくとも憲法で規定された手続上において、国会を母体として鈴木内閣というものは生まれたということを忘れないで、自民党のおかげで生まれたという形だけにとらわれないで、何が大切かということをじっくり考えて、国家百年の計を誤らないようにするのが、いまの段階における総理大臣なり外務大臣の他に責任を転嫁することなき一つの構えじゃないかと思うんですが、人のやることだから失敗もあるし成功もあるし、まあ見ておけという人もありますけれども、見ているだけでは、祖国の音を立てて壊滅していく状態をわれわれは見ちゃいられない。さっき中山さんが松前君とともに、なかなか高適な宇宙時代の科学技術を論ぜられましたが、日本の領土問題でもずいぶん苦労したようだけれども、二月七日の下田条約の結ばれた日が日本の北方領土問題の原点だなんてうそです。ちっとも勉強してない、日本外交史も。準備がなく用意がないから黒船に襲われ、あのときにもアメリカのハリス、下田条約あるいは神奈川条約、あるいは帝政ロシアの軍閥がぼっこわれ軍艦を持ってきて恫喝をやって、クリミアで敗戦するロマノフ王朝の崩壊を導いたあの冒険主義者が自分たちの帝国主義の手を足を伸ばそうとして、ついにロマノフ王朝を葬ってしまった。日本においても井伊掃部頭が何の準備もできてない幕府のうろたえを、醜態を見せないために屈服して下田条約を結んだのであって、量も日本外交史の中において腰抜け外交の見本が下田条約であります。そのことは、幕府の外交に携わった人も後で取り返しのない悲劇として腹を切ったり、文久二年に竹内下野守あるいは松平石見守あたりが、あのとき中国側から示された地図なり何なりはあれは間違いのもとだと言って訂正を申し入れて、グリニッジ天文台にまねしてつくられたペテルスブルグにおけるところの郊外につくられたイギリス製の地図を見て、はっきりそこでは樺太が、北緯五十度以南が日本領になって記されている。万国が認めているようなことを偽って日本に強要したような条約に対しては訂正を申し込まなけりゃならぬと言われたが、安藤老中が坂下門事変で傷ついて、井伊大老の後を追おうとするような国内における騒ぎで帰ってきた。  そういうもろもろの外交史における帝政ロシアを取り巻く、ロマノフ王朝を取り囲むところの節度なき冒険主義者の横行に対して、日本とロシアとの間は際限なき抗争が続く危険性がありと見たから、ウィッテ伯は軍部に追放されて野にあって、ポーツマス条約のときだけ、世界的な視野を持って対処し得るようなものはあなた以外にないというので、あのポーツマス条約に行ったときに、在来の懸案をすべて一掃すべく、ポーツマス条約において、日本と帝政ロシアの間においてわだかまっている問題を平和条約の名において処理したのであります。それは日本外交官は小村寿太郎のことだけを高く評価しておりますけれども、ロマノフ王朝がやがて崩壊していくであろうことを予見して、自分たちの苦心というものを後に残すのには、フランスの銀行に回想録を保管してもらって、自分が死んでから後に、ウィッテはかくのごとき悲願を持って外交に当たったのかということを知ってもらえばいいし、知らなくてもいいし、というだけの私は見識を持ってポーツマス条約に臨んだと思うのであります。保  それから見ると、佐久間象山の開国論者と攘夷党の吉田松陰とが、立場は違っても、ともに腐れ切ってしまった主体性を失った、奴隷への道を行くところの幕府に外交を任せることはできぬということで一決して、イデオロギーを乗り越えて宗国の急を打開しようという決意を示したあの百八十度旋回から見ると、どうもいまの官僚なり政府なり、なかなか学のある人もいるが大切なへそがない。タヌキも笑うであろう。タヌキは腹をたたけばポンポンと鳴るそうだけれども、へそのないタヌキが腹だたいても腹立つばかりで、笑うこともできないし鳴くこともできないというタヌキばやしのこの外交には私は愛想が尽きてくると思うんです。まあこの辺は今後において十分心得ておって、優秀な外務官僚や通産官僚や、あるいは防衛庁における官僚の中にもきわめて良心的な人があります。政治が、見識がなく経綸がなく、責任を持つという気魄がなく、これじゃゴキブリ退治はできません。そういう意味において、今度は神風は吹いているんです。日本よ、ここまで来たら、もうマージャン賭博に憂き身をやつしているような、ゴルフのがけに憂き身をやつしているような小ばくち打ちを退治して、もっと本物の日本人に立ち返らなけりゃ日本は救えないという声が、私は地下から総理大臣や外務大臣にはもうとうに届いていると思います。届いたか届かないかは郵便局じゃありませんから私は問いません。届いているが、それが耳にまでは入ったが腹の奥にまでは達しないかどうかはその人の見識によるものであります。  外交については、われわれは野党としていろんな進言はできるけれど、最終的にはやはり内閣が責任を持つべきであります。また野党も、自分の国のためにやっているのか、あるいはソ連の手先かアメリカの手先かわからないようなところでうろちょろしておっては、政府に向かって本物の外交をやれというだけの進言の威力はないと思います。自分はどうだ、国に対して責任を持つのか。何が何やらわからないような、本当のことを言うと党が二つに三つにぶっ裂けちゃったら大変――党などのことではない。問題は国の将来の運命のことである。私はそういう意味において、まず外交権を握っている自民党の中の、酷かもしれないが苦労人の鈴木さんと櫻内さんから断固たる決意を、いまのチャンスを逃がしては、歴史の中における哲学は、流れの中にタイミングを失っては何にもならないのです。火事が起きてから拍子木をたたいて、幾ら救急車を出したなんて言ったって何にもならないんです。そういう意味において、政治の頂点に立つ者の苦労というものはわかり過ぎるほどわかるから余り責められないけれども、櫻内さんでもあるいは鈴木さんでも、いまの機会に日本にあれだけの見識を持った政治家がいたということになれば、銅像なんかつくっても次の時代には、ヒンデンブルクの銅像のように引っくり返されてしまう危険性があります。このごろは、革新陣営でも変な銅像なんかつくるのがはやるそうですが、最たることです。胸像ぐらいでがまんして、あとは献金した方がいい。そういう意味において、そこいらに伊藤博文の銅像もうろちょろしているけれど、木の葉の中に隠せと言ったら木の葉の中に隠してはいるけれども、ちょいちょいのぞいているようですが、あんなことは最も野蛮な陋劣な一つの品性をそこに表現しているものであって、民主主義というものは人民の血においてから取ったものであります。私の恩師ハロルド・ラズキーは、デモクラシーというのは二言で言えばフリーディスカッションだ――自由にして濶達な意見が述べられて、人民の声が政治の中に正しく到達しないような政治は悪政です。悪政は必ず滅びます。そういう意味において、私は日本の議会政治を守らんとするならば、一党一派の利害打算に、権謀術策に陥ることなく自由濶達な政治論議をやって、そうして日本人の考え方というものを外国に率直に知らせることが外交の最高の手段であって、情報化時代の役割りはアメリカのようなCIAをつくったり、あるいは帝政ロシア以来伝統的なソ連のGPUや、スパイ政策みたいなものをやっても、最終的には自由を求める国民の声を抑えることはできなくなったのです。この二、三年過ぎてごらんなさい。ソ連であろうがアメリカであろうが人民の声に、小さいか大きいかのそんな議論のときではない。もっと国民にわかるような明るい、未来に対して理想を描くことのできるような政治、外交を求める声というものは世界の新秩序の原動力になると思います。  理想論だ、現実論だなどということじゃない、俗論を廃して、やはり私はいまのときにこそ、世界の運命をかけての戦いの中にわれわれ日本の安全のためだけじゃなく、ポーランドのよう在武器なき抵抗者にも、ベトナムでもってだまされて殺された黒人の中にも、自分の安全だけあればいいと言ってまだ発展途上国の人たちに武器を売りつけて、戦争をやたらにやるなどという残酷なことをやることは外交でない。もう世界はそういうものに応じなくなったということを、目に物を見せてやるのがいまの現実政策でなけりゃならないので、理想と現実が分断されるような下等動物的な発想においては世界新秩序は確立されない。それならば、人間はミミズになってしまった方がいい、ミミズというのはところどころ切れてもすぐつながるから。そういう意味において、現実政策の中にこそ理想的なものが貫かれ、子供たちに対して未来に対して、希望が持てるようなものが貫かれなければそれは現実政策とは言えない、俗悪な政策だと私は思います。  いまこの一週間ぐらいが大変なときです。ミッテランも来ます。世界銀行の総裁までやったマクナマラも、政府の要路に立った一人として、いろんな幅の広い人を集めて、ニクソン時代のジェラルド・スミス元軍備管理軍縮局長官とか、マクジョージ・バンディ元国家安全保障担当大統領特別補佐官とか、そういう人たちが出て、アメリカの良識ある知識人、政府の責任を持った経験のある人たちが見ちゃいられぬといって、ミッテランの来る前にちゃんとアメリカからも一つの声が上がっています。日本の自民党の中からも、あるいはかって政府に責任を持ったような人たちの中からも世界の破滅を好む者などだれもいないんで、こんな危険な火遊びと思うような世界の危機感をあおって、そこでヘゲモニーを握ろうなどというけちな、やくざでも考えないようなけちくさい考え方を捨てさせなければ地獄への道が開かれるだけです。これが現実の回答です。  時間が来たと言いますから、私はほかの人も呼んでいましたが、もうほかの人にじゃない。いまは鈴木さんとあなたがどういう政治家としての最終的な役割りを果たし得るかどうかというものを、外交権を持つ内閣の責任者としてそれを見届けたいと思います。どうぞ、そういう意味においていろんな知恵を吸収し、いろんな段階を経、あの場合この場合を考え用意させ、それに対処して恥ずかしくないような日本外交の躍動を、新しい創造をつくり上げてもらいたいと思うんで、ほかの人にというと問題が切れてしまいますから、すべての責任を総理大臣と外務大臣がとって、日本人の魂の奪還、民族の悲願、それを全人類的な納得のいくような外交路線をいまこそ設定してもらいたいということを質問というよりはお願いし、祈りながら私はあなたたちに迫ります。迫った以上は私たちはただごとじゃ済みませんよ。それで終わりといたします。
  115. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 初めに軍縮問題について触れたいと思います。いよいよ第二回国連軍縮特別総会も間近に迫ってまいりました。政府としても特別総会に臨むに当たっての政府基本的な考え方の取りまとめを急いでいるやに伺っております。ただ軍縮総会が開かれるに当たって想起することは、第一回の前後においてもいろんな研究がなされ、いろんな角度から要請、提言がなされて今日まで来ておるわけであります。特にワルトハイム事務総長の時代には政府側からも当時の松井国連大使が専門グループの一人として参画をされ、大変な労作とも言える研究成果というものができているわけであります。また各国の首脳もしくはそれに次ぐような方々が特別総会において演説をなさった。その演説の中にも提言あり要請あり、しかし四年を経過した現在、一つとして効果ある前進的な現象というものが見られない。新しい世界の秩序というものを樹立する上に当たって、世界のほとんどの人類が願望してやまない平和ということについての最大の障害は、何といっても軍縮、核廃絶にあることは論をまたないわけでありますけれども、少しもそれが進まぬというところに大変ないら立ちと不安感を感ずるのは私一人のみではないであろうと、こう思うわけであります。  さてそこで、従来からもしばしばこの種の問題についてはいろんな角度から委員会等においても議論がなされてまいりました。それは与野党を通じて、つまるところは世界でただ一つの被爆国であるという観点に立った共通の願望を込めて、核廃絶、軍縮へ向けての話し合いがなされてきたわけであります。果たしてこれからどれだけの時間をかければ、われわれが願っているような足がかりというものができるのか。それは恐らく、いま直ちに一切が解決するとは考えられません。考えられないけれども、その曙光だけでも何らかの形で見出せるような方向へ道を開けないものであろうかというのは、われわれだけでなく同じような考えを多くの人が持ってあろう。今回、第二回の特別総会に臨むに当たりまして、総理自身もいろいろと試行錯誤をされておいでになるようであります。すでに本会議等においても明確にその所信のほどを披瀝されたことはわれわれつとに知るところでございますけれども、一方において、核は絶対悪だと言いつつも、核の傘にあるわれわれといたしましては非常に矛盾に満ちたその辺をどう一体整理していったらいいのか。絶対悪だと一方において言いながら、片一方においては現実的対応を迫られる、こうしたことを政府としてもいろいろ苦慮されておると思うんでありますけれども、今回の第二回特別総会に当たってその辺をわきまえつつ、どういう所信を述べられ、世界に向けて少しでも前進的な効果あらしめるような話ができるかどうか。もう用意なさっておいでになると思いますので、その辺を、いま申し上げた経過を踏まえてお教えをいただきたいというふうに思います。
  116. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ただいまお話がございましたように、第一回の国連軍縮特別総会以降の動きというものを見ますと、軍縮の進展は必ずしもはかばかしくない、これは認めざるを得ません。それには国際情勢の厳しい展開というものがあったと、こう思うのでありますが、しかしその中に、この軍縮に対する二、三弁が出ているように私ども思うのです。米ソ中距離核戦力の削減交渉あるいは戦略兵器削減交渉であるSTART、これも近く開始をしようというような動きがございますし、また核実験の全面禁止ということについては、日本が非常に強くこのことを訴えておるわけであります。最近ジュネーブの軍縮委員会においてアメリカが、検証と遵守につき作業部会の設置に同意するということを言っております。こういうようなことを見ますと、芽が少しずつ出ておるようにとれます。  そこで今度の第二回の軍縮総会あるいはジュネーブでの軍縮委員会等で実質的な進展を強く期待して、鈴木総理が国会でしばしば申しておりますように、核実験の禁止であるとか、核不拡散体制の確立であるとか、あるいは化学兵器の禁止とか、いろいろ申し上げてきておると思いますが、それらのことにつきまして、今度の軍縮総会で会議に参加せられる各国に広く訴えていくと、そして大事な芽を育てるように努力をしていくべきではないかと、かように思っておるような次第でございます。
  117. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにいま述べられたような空気があることを否定はいたしません。しかし、過去においてもそういう芽が出てはつぶされる、何回かそういう繰り返しが過去においても実はありました。果たしてというわれわれ疑問を抱かざるを得ない。仮にアメリカの場合、本気になってそういうことを提唱しているのかどうなのか、一方においてはやはりソビエトが同じテーブルの中に着きませんと、これはどうにも進まない問題でもございましょう。そうした政治的な駆け引きのはざまの中にあって、またその芽が摘まれてしまうんじゃないかという心配がないではありません。核の廃絶、これはもう何としてもやり遂げなければならない宿願といってもいい大きな政治課題であることは言うまでもありませんけれども、なかなかそれが一朝一夕にして実効が挙がるというようないま現状ではないと思うんですね。それをやはり進めるためにはどうすればいいのか、一歩でも二歩でも、ちょうど昭和五十三年に軍備競争の経済的及び社会的影響並びに世界の平和及び安全に対するそのきわめて有害な効果というものをまとめられた時点でも、外務省ではこの参考資料が一里塚となってもらいたいという、そういう切ない気持ちを込めてこれを出していただいているんです。確かにそのとおりだと思う。そのためには一体何か具体的な措置というものが当然考えられなければならないであろう。一歩でも二歩でも前進できるあるいは一里塚となれるような、そういう手がかりというものが今回の第二回特別総会においてできないだろうか。確かにいままでおっしゃられたような要請というのは何回か繰り返されて述べられてきております。あるいはほかの国からもそういう提言がなされております。たとえばフランスのジスカールデスタン元大統領の提言なんかも、中身を見ておりますと、大変日本の場合と共通したようなそういうものをもって述べられているわけであります。  一方、考えてみると、通常兵器、現在世界各国の軍事支出というのが約五千億ドルを超えたというふうに言われておりますね。いまから四、五年前は三千五百億ドルです。いろんな物価の高騰というものもございましょうし、そのようなふくれ上がり方というものもわからぬわけじゃありませんけれども、しかしそれだけの要素というものがあってふえたのではなかろう。やはり、一方においては通常兵器というものを主体にした軍備競争というものが血道を上げるような勢いで広がりを見せている、しかも全体の軍事支出の約五分の四はこの通常兵器のために用いられておるという報告がなされているわけであります。大変もう莫大な金額に及ぶわけであります。こうしたことが続く限りは、南北問題の解消を初め、できないことは言うまでもありません。  したがって、何とかまず一つの手がかりを、いま私が提言と申しますか、私が考えておることを申し上げたいわけでありますが、この通常兵器の拡大競争というものをやめさせるための国際的な規制という、そういうものがつくれないだろうかどうかという、そういうところから具体的に一歩踏み込んだ核廃絶へのスケジュールというものを組んで臨むということが、私はこれから非常に重要なポイントになっていくのではないだろうか。一面考えるとそういうようなことが浮かんでくるわけであります。これはきわめて具体的な問題です。そのためには各国首脳とも話し合うことも必要な場面も出てまいりましょう。しかしこれとても、言うべくしてなかなか簡単にはまとまりがつかない背景というものもあることを知らないわけではございませんけれども、やはり日本が、一つの提言として国際協定のような国際的規制というものを何らかの形でつくる必要があるのではなかろうか。これは一つの例でございますが、そういった点をお含みおきをいただいて、いま具体策をお持ちになっているかどうか、いかがでしょうか。
  118. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 世界の軍備費が五千億ドルを超えておる、その中で通常兵器のことも配慮すべきではないか。これは、現実に五千億ドルの中で通常兵器に占める分野も非常に大きいのでありますから、これは核軍縮とともに、通常兵器の軍縮についてもこれを考えなければならぬということについては私も同感でございます。ジュネーブの軍縮委員会で作業部会がいろいろ設置をされておりますが、その中に通常兵器の部会も設けるのがいいのかどうか。さしあたってそういう場でやるのがいいんではないかということを考えるのでありますが、よくこの問題も研究をさしていただきたいと思います。
  119. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 御存じのとおり、通常兵器がどんどん拡大されれば一体何が起こるか、これは申し上げるまでもないと私思うんです。当然国際的な移転が行われるわけですね。そうすると無用の混乱と地域的な紛争が起こる、そういう可能性を持たせるということに傾斜していかざるを得ない。これは大変残酷なあり方ではないだろうか。それでなくても軍事的に、しかも加速度的にそういういろいろな軍事用の武器というものが生産されてまいりますれば、逆に今度は、経済的な破綻を来すということはもう常識になっているわけであります。カンクンでもそういった問題がずいぶん検討されたはずであります。それすらも実際はもう言いっ放し、聞きっ放し、後は一体どうなっているんだろうか。常にどこかで歯どめがかけられるような行き方というものはどうしても必要じゃないだろうか。  結局、通常兵器のバランスが崩れてくると核兵器に依存しようというようなそういう場合も出てこないとは限りません。ですから、いま核廃絶というものが願望ではあるけれども、それが何年先になるかわからないという不安感があるわけです。それよりも、核廃絶に持っていく一つのスケジュールの中で、いま申し上げたような日本政府として通常兵器の生産であるとか開発であるとか、そういうことをやめさせるための国際的なルールづくりというものを提言しても、私は決してむだではないんではないだろうかというふうに思うのでいま申し上げているわけでございますけれども、いかがでしょうか。
  120. 門田省三

    政府委員(門田省三君) お答え申し上げます。  渋谷委員指摘になられましたように、通常兵器の問題は核兵器と並んできわめて重要な要素でございます。わが国は通常兵器の問題について強い関心を持っておりまして、国連の場等において従来とも通常兵器についていろいろ提言をいたしております。最近におきましては、第一回特総の場合に外務大臣演説の中で、無統制な通常兵器の国際移転、これは慎まなければならないということを提言いたしまして、最終文書の中にこれが報告として取り入れられております。その後も機会があることにこの点を提言いたしておるのでございます。  なお、先ほどお話のございましたように、通常兵器の問題について日本は今度の総会に備えて何か考えているのかということでございましたが、大臣が御答弁になられましたように、軍縮を取り扱う実務的な場においてこの問題を取り上げるということが基本でございまして、そのような機会がある場合には積極的にこの問題を取り上げたい、こういうことで考えております。
  121. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それから次のポイントは、これも過去において私も申し上げたことがあるんですけれども、特に核保有国の首脳者との間における会談をやる。個別的にということになりましょう。あるいは全体的でも結構でおりましょう。これも一つの方法ではなかろうか。核保有国の首脳を集めて、そこで核廃絶というのかあるいは核軍縮へ向かっての話し合い、これが実際はまだ具体化されておりません。たまたまこうした機会にミッテラン大統領訪日をされる。ミッテラン大統領の頭の中には訪日した際における話し合いのテーマというものはお決めになっておられるようでありますけれども、私はむしろ大変いい機会でありますので、軍縮特別総会に臨むためにもきわめて私はこの話し合いというものは有効な手段ではないだろうか。そういう用意はいまございましょうか。
  122. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ミッテラン大統領がおいでになった場合は、先ほどもお答え申し上げましたが、鈴木総理との間で本当に首脳の立場で腹蔵のない意見交換をする、これが非常に肝心なことだと思うのであります。特に個別の議題を設けずに、世界全体の繁栄のために日仏両国がいかに協力し得るかという高い次元からのお話し合いが期待されるわけであります。もちろんこのベルサイユ・サミットあるいは第二回特別軍縮総会を控えておることでございますので、それらに対応するための両首脳のお話し合い考えられると思いますが、要は大所高所からの両首脳の会談に期待をいたすと、こういうことでございます。
  123. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もちろん、大所高所ということになるんだろうと思いますけれども、なかなかそのチャンスというものは、そうつくろうと思ってもできるわけではございませんし、大統領訪日こそ千載一遇というのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、核軍縮、通常兵器の軍縮を話し合う絶好の機会であると同時に、そこで具体的にどうしようということは出ないと思うんですけれども、次の段階として今度は実務者レベルというような話し合いまで持っていく窓口、そういう足がかりというものは一体できないものかどうか、本気になってこれを強力に推進しようとするならば、やはりこの機会を逃さずに、日本の立場は十分認識はされているものの、初めて来られるミッテラン大統領としてみれば、実感としてなるほど日本国民の全体的なきわめて強い願望が横たわっているんだという、そういうことを知っていただく上からも、大所高所は結構でございますけれども、その大所の中に入るかどうか、私は疑問だと思うんですけれども、むしろ外務大臣からそういう提言をなさって、話し合いの中にはこれだけは絶対に外してもらっては困るというぐらいおっしゃられた方が、むしろ私は多少でも各国首脳との会談への一歩踏み込んだ効果というものがあるいは期待できるのではないだろうか、無理でしょうか。
  124. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 渋谷委員のおっしゃるように、確かにこのミッテラン大統領日本においでになって、そして日本が被爆国としての立場から、鈴木総理が核軍縮、核廃絶ということをテーマにいろいろ話し合われるということは、非常に実感の伴う話でございますから、私はそこに大きな効果の期待が寄せられると、こう思います。私、先ほどから、両首脳の会談は腹蔵のない大所高所において話し合われるということを前提として申し上げておりますが、渋谷委員のただいまの御提言については、私から総理にも申し上げたいと、こう思います。
  125. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それからいままでいろんな方が言われたこと、もう一遍この辺で私なりに整理をして強調もし、できればその面での実現というものを図っていただきたいものの中に、これはジュネーブにもちろん軍縮委員会というものはありますけれども、その軍縮委員会の機能といいますか、それを強化させる一つの働きと言った方がいいのかも知れませんけれども国連の中に一つの軍縮のための研究機関というものの設置、その中には科学者であるとかというような人を集めて英知をしぼって、そして核廃絶への強力な推進母体となれるようなものはできないものだろうかというふうに思えてならないわけであります。やはり科学者であるとか、あるいは文化人であるとか、いろいろなさまざまなそういう専門的な立場の方が英知をしぼって、そして核兵器の恐ろしさというのを実際にその成果として取りまとめられ、軍縮への一つの具体的な実現への手がかりになることがあるいは期待できるのではないだろうか、この点についてはいかがでしょうか。
  126. 門田省三

    政府委員(門田省三君) ただいまのところ、委員がおっしゃられましたような事柄を取り扱う機関といたしましては、国連の中に軍縮センターというものがございます。しかしながら、軍縮センターの現在における主たる機能は、軍縮に関するデータの収集、それの方法ということでございまして、おっしゃられましたような学者あるいは専門家による深く掘り下げた、いわば徹底的な研究という点におきましてはまだいまだしという感がございます。他方第一回特総、これは先ほど渋谷委員もお触れになられましたが、フランスのジスカールデスタン大統領がいろいろ提言を行いました中に、こういった軍縮問題を研究する機関を設けてはどうかということで、この提言に基づきまして、ただいま暫定的にジュネーブにUNIDIRと申します機関がございます。しかし、これもきわめてまだ初歩的な段階にございまして、おっしゃられましたようなレベルまではまだまだ遠いのでございます。  他方、国連の中におきまして、特に加盟国の中にもこういった点での努力を推進すべきではないか。ただし、その場合にはすでにございますところの軍縮センターあるいは新しい研究機関、場合によりましては日本にございますところの国連大学というものといった諸機関の相互の調整協力関係をどういうふうにすべきかということも考えながら、今度の特総の機会にこういった問題をさらに前進させるべきじゃないかと、そういう声も最近高まっております。これは非常に重要な部門でございますので、私どもといたしましても十分真剣に考えたいと思っている分野でございます。
  127. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それから、次にもう一つ申し上げたいのは、いま軍縮特別総会というのは、大体今回で二回目でありますので、四年間という期間がございますですね、実際はもう時々刻々いろいろな変化がございます。SALTの問題もありましょうし、いろいろな二国間での交渉だとか、それが進みぐあいでは急速に進むかあるいは後退するか、さまざまな変化があるわけです。そういった状況に敏速に対応するためにも、この国連の特別総会というものをやはり一年に一遍は開いていいのではないだろうかというような感じを実は持つわけです。一番関心度の高いものが四年に一遍とか、あるいは五年に一遍ということになりますと、言わずもがな間延びしてしまいまして、それはジュネーブに軍縮委員会があるから、そっちの方でもいろいろ折衝の場としてやっているんだからいいではないかという、これとはちょっと次元がやっぱり違うだろうと思います。ジュネーブ委員会でいろいろと検討され、そして話し合われたことを軍縮特別総会にかけて、そして各国に対しての一つの表明というような形、これがやっぱり連動していくようなことが一番望ましいのじゃないかなというふうに感じられてならないわけでありますけれども政府としてはそういう問題についてはどのような判断をいまお持ちになっていらっしゃいますか。
  128. 門田省三

    政府委員(門田省三君) おっしゃられましたように、軍縮に対する強い関心というものを常に表面に置く、盛り立てていくということは非常に重要なことであろうと思います。特に軍縮という問題は、事柄の性格上きわめて厳しいまたむずかしい問題を取り上げる、そのためには、第一回の特総の最終文書にもございますように、政府レベルのみならず広く各国の国民の声を動員してそういう機運の上にこの軍縮を進める必要があるということがうたわれているわけでございますが、そういった点からいたしますと、まさにできることであれば間隔の狭い時期に開くのがよろしいのではないかと思われます。しかしながら、この特別総会と申しますのは、全加盟国が参加する、しかも非常に高いレベルの代表、国の最高首脳が参加されるというようなこともございます、また取り上げます内容も多岐にわたる複雑な問題がございます。したがいまして、かなりの準備を進めておくということが必要条件になろうかと思われます。そういうこともございまして、各国考え方、これがどういうものであるかということによって最終的に決まるわけでございます。  ちなみに第二回総会につきましては、第一回特別総会のございました一九七八年の時点で今後四年後に開催しようという決定がなされておるのでございますが、果たして今度の第二回特別総会におきましてこの次の総会をいつ開くかということがどのように決まるか、これは十分注目して見守りたいと思います。
  129. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これも恐らく、外務大臣も国連局長もけさの朝日新聞をごらんになったと思います。アメリカのハリスというのですか世論調査機関、協力し合って核の廃絶あるいは軍縮に対しての世論調査が行われました。日本はもう圧倒的に多いわけですが、アメリカですと七割以上賛成であると。こうして見ると世界的な世論というものは確かにいま高まっていることは事実ですね。これを冷却する方向へ持っていく、それは時間の経過が冷却の効果を果たしますから、そうあってはならないという配慮のために、それはなかなか準備するまでむずかしいことは私も知っております。それだけにいまの特別総会のやり方もあるいは改革してもいい面があるんではないだろうか。もっと実質的に効果が上がるような、そういう各国の、百何カ国から集まった首脳が一堂に会してのそこで核廃絶なり軍縮へ向けての討議、これは南北問題も当然絡むわけでございますから、むしろ百何カ国の加盟国全部が集まってやるということが大変私は意義があると思うんですね。そういう意味からも私は一年と申しましたけれども、できるだけ短期間の間にこうした世論の高まりに応じながら、そういう方向へ前進をさせるということは非常に私は可能性があるのではないか。先ほど冒頭から申し上げたように、非常にいまむずかしい側面を持っているだけに何とか可能性考えてそこに道を開いていく、その一環としていまそういうことも一つの方法ではあるまいかと申し上げたのでございますが、これはむしろ外務大臣の政治的な判断としていかがでございましょうか。
  130. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 特別総会のあり方についてのお話でございました。  私、今回初めてこの総会に臨むのでありまして、相当長期間特別総会が持たれるという現実の姿、一体百何十カ国がどのような形で会議をするのかというようなことについての経験もないのでございまして、いまおっしゃっていることはよく私に理解ができましたが、実態が一体どうなっておるかということについて私に知識がございませんので、いませっかくの私へのお尋ねでございますが、御趣旨を踏まえてよく研究をさしていただきたいと、こう思います。
  131. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それから、むしろこれは門田さんに伺った方がいいと思うんですが、これは前回も私お尋ねした仲なんですけれども、現在のジュネーブの軍縮委員会は必ずしも機能していないということをかつて申し上げたことがあります。この辺の改革の問題も、やはり軍縮を進める上からの大事な一つの要素ではないだろうか、現状はその後どうなっていますか。
  132. 門田省三

    政府委員(門田省三君) 第一回特総の後、軍縮委員会のメンバーの数がふえまして、ただいまでは四十カ国になっております。また、第一回特別総会後の大きな特色といたしまして、フランス及び中国がジュネーブの軍縮委員会に参加するということになりました。この点は評価に値する事柄であったと思います。  しかしながら、渋谷委員がまさに御指摘になられましたように、この軍縮委員会の合意を見出すための手続はいわゆるコンセンサス方式、全会一致方式になっております。これは先ほども申し上げましたように、軍縮という問題はそれぞれの国の安全保障にかかわるきわめて厳しい基本的な問題であるということでございますので、いわゆる多数決をもって事を議する、決するというわけにはまいらない側面があるということでコンセンサス、つまり全会一致方式になっているわけでございます。全会一致方式ということはそれだけに、いろいろな事柄を決定に持ち込む上できわめて困難があるということでございますが、ただ、こういった場で軍縮というむずかしい問題を取り上げる上では、やはり絶え間なく、一歩一歩力強く、また熱を込めて問題を訴えていくということ、これが迂遠のようでございますが、しかし着実な方法でもあろうかと私ども考えておるわけでございます。  現実問題といたしましては、特にわが国は被爆国でもございますし、平和憲法を維持している国でございます、また非核三原則を堅持していると、こういう立場から、特に核の廃絶を目指す核軍縮を中心とする軍縮外交、これを強力に進めているわけでございます。特に、わが国と志を同じゅうする国と協力いたしまして、声を高く、その声の響きの波紋を一回りも二回りも三回りも強くしていくという、そういう努力を絶えずやっていく、これがやがては実を結ぶのではないかという考えでございますが、現実問題としまして、先ほど御紹介いたしましたようないわゆる核実験の全面禁止につきましてようやくその作業部会が開かれるという展望が見えた、これなども長年にわたりますわが国及びその他念を同じゅうする国の努力の結晶ではないかと、かように見ているわけでございます。  おっしゃるように、確かにその効果は遅々たるものがございますが、しかし、やはり絶ゆまざる努力ということを続ける以外に、ただいまのところは有効な手だてはないのではないかと、かように考える次第でございます。
  133. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まさに私も、いま述べられたことをそのとおりに理解しているつもりなんです。特に、たしか参加四十ヵ国だったでしょうか、必ずしも加盟国全体の歩調が、米ソは例外といたしましても合わない。そういうやっぱり全体的なコンセンサスを得る場として設置された以上は、余り関心を持たない他の国々に対してもいろんな側面的なアプローチの仕方というものが私はあるのではないだろうか、必ずしも軍縮に限らずとも結構だと思うので、二国間の交渉という場合もあるだろう。やはりいま日本の代表も苦労されていることをつとに知っておる一人として、何とかその苦労が実るような方向へ持っていきませんと、労多くして功少なしという、何をやってきたんだというそういうそしりを免れないと私は思うんですね。これはまだまだ時間のかかる、忍耐を要求される課題だろうと思いますけれども、やっぱりこれも総力を挙げてそういう方向へぜひ取り組んでいただきたい。  それから次の問題に入る前に、きょうのとりあえずの締めくくりとして、総理が特別総会に臨まれるに当たって、いろいろ頭を悩めているらしいというようないろんな取りざたがされているようであります。先ほども申し上げたように、一方では核は絶対悪だと言いながら、一方においては米国の核の傘のもとにいる以上余り強いことも言えない。何かずっと後退したみたいな印象を与えるということは、これは日本国民にとっても大変な信頼を裏切ることに実はつながる大問題であります。私は、理想と現実はばらばらにする問題でないと思うんです。やっぱりこれは素真一体として、絶対悪だということも現実的な問題だと思うんです、はっきり申し上げて。思い切ったやはり所信の表明をしながら、要請といいますか提言をこの第二回総会においてもやっていただきたいというふうに願う一人なんですが、櫻内さん、どうでしょうか。
  134. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 鈴木総理は、率先今度の第二回軍縮総会出席の意向表明をして、そして相当な意欲を持っておられるわけでございます。また、すでに六月九日に総理演説を行うことを申し入れておるのでございまして、その際の演説が非常に大事であると、このように認識をしております。総理は、かねて来この総会に出席するに当たりましては、各界各方面の意見を徴して、そして自分の意向の表明をしようと、こう言っておる折からでございますので、この演説の草稿作成に際しましては、きょうの渋谷委員からの御意見もでき得る限り反映するように努めてまいりたいと、こう思います。
  135. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次に、日米航空交渉の問題について若干触れさしていただきたいと思います。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕  大変な努力にもかかわらず不調に終わった、きわめて残念なことであったろうと思います。今後の展望等を踏まえて、一体どうなるのかということであります。大変な努力をしたことは、新聞報道を見ましても私たちがよく肌で感じているわけでございます。いかにまたこの交渉が厳しいものであったか。しかし、これまた交渉が厳しいから、いつまでも手をこまねいてこのままにして放置しておく問題でもなかろう。それぞれの航空企業の利害がきわめて敏感に絡むという問題が背景にありますだけに、大変むずかしいなというふうに思いますが、かいつまんでその経過と今後の展望を述べていただけるとありがたいと思います。
  136. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 非常に長い交渉でございまして、特に一九八〇年以降を限って申し上げれば、一九八〇年の九月以降アメリカとの間で非公式な協議あるいは公式な協議を重ねてまいりまして、三月にサンフランシスコにおいて協議を行って、日米両国の間で今回の三月の協議をもって最後の協議としようということで協議に臨んだわけでございます。  最終的に折り合いがつかなかったのは二つあるわけでございまして、第一点、これはアメリカ側がユナイテッド・エアラインズというものを日本に乗り入れたいという希望を持っていたわけでございます。それに対してわが方としては、このUALの乗り入れについては、航空協定の一環としてあるいは航空交渉の一環として話をしようということでございまして、そのUALの見返りとしてわが方が要求したのが、シアトル、シカゴへの乗り入れということであったわけです。ところがアメリカ側は、そのシアトル、シカゴの地点については同意をしたわけでございますけれども、最終的にそのシカゴについては貨物の専用便の乗り入れは認めたくないと、こういうことでございます。そこが一つの交渉妥結に至らなかった点でございます。  第二点は、渋谷委員も御承知のとおり、日米の航空協定のもとではいろんな不均衡がございますが、目に見えた不均衡としては、以遠権の問題があるわけです。今回の最終交渉で問題が出てきたのは、日本側がロス以遠中南米への以遠権を求めた、それに対してアメリカ側は、日本側のロス以遠の中南米は拒否するということ。他方日本は、アメリカ側東京あるいは大阪から香港その他第三の地点への以遠権を持っておりますが、この以遠権の行使、これを現状のまま凍結したいと、それ以上にアメリカ側が便数をふやしたりあるいは乗客の積み取りをふやしたりということは困る、現状凍結という案を出した。これが相打ちになって交渉が成立しなかった。したがってかいつまんで申し上げれば、一つはシカゴへの貨物便の乗り入れ、もう一つはロス以遠の日本側の以遠権あるいは日本から第三の地点へのアメリカの以遠権に対する制限、これがネックになって残念ながらサンフランシスコの交渉は妥結に至らなかったわけでございます。  それを受けまして、先般の大臣の訪米の際にレーガン大統領から、今回最後まで夜を徹した交渉を行って紙一重のところまで行ったけれども、妥結に至らなかったのは非常に残念であると、何とかこの解決のために日本側で手をかしてくれないかという話がございました。それに対して大臣の方から、長い交渉の末に交渉がまとまらなかったのは非常に残念である、帰ってから総理大臣にもレーガン大統領の意向は報告するということでございます。それに加えてルイス運輸長官からも同じような話がございました。あるいはUALと非常に関係の深いイリノイ・シカゴ出身でございますパーシー議員からも、航空交渉の妥結についての要請がございました。  その後日本側としては、こういうアメリカ側の要請を踏まえて、今後一体どういうふうにしたらいいかということを目下運輸省と外務省との間で話を詰めております。しかし、なかなかここまで交渉が行きながら決裂したということで、この交渉をまたもとへ戻すというのはそう簡単にいかないわけでございまして、われわれとしてはできるだけ、せっかくの交渉があったわけでございますので、問題の解決を期待するというその気持ちは非常に強いわけでございますが、さて具体論とするとなかなかその名案がいま出てこないというのが現状でございます。
  137. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 当初、日米両国政府では恐らく交渉妥結までいくであろうという観測が強かったように聞き及んでおります。ところが、実際交渉の段階に入ってからはもう日を重ねるにつれて後退に次ぐ後退と、その背景どもいろいろ伝えられているとおりでありましょう、恐らく。カーター政権のときには自由化政策をとったために、あるいは運賃のダンピングなんということもあって、相当壮烈な客の奪い合いというものがあったように聞いております。そんなことで、恐らくアメリカの航空業界としては赤字に次ぐ赤字ということで、現状としては大変なピンチに立たされている。そこへ持ってきて、日本の多年の希望であったロスからの以遠権の問題については、もし日航なら日航が入り込めば、あそこはもうパンナムにしてもあるいはブラニプにしてもドル箱と言われている路線だそうでありますので、大変なことになるということ等もあったようで、相当航空業界からの突き上げが激しかったために、レーガン政権になってから航空業界との関係も非常に緊密であるという、そういう立場に立って、今回の交渉はうまくいかなかった。としてみると、将来われわれが希望している、あるいは妥協しようと思っている妥協点も、いろいろと考えながら折衝に臨んだはずであるけれども、レーガン政権の続く限り、これはきわめて見通しの暗い先行きの全く不明確な、いつになったらこれが解決の段取りまでこぎつけることができるんだろう、そういうようないま状況じゃないかと思うんですが、その見方については誤りがないでしょうか。
  138. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 渋谷委員が言われましたそのアメリカの航空企業の採算が非常に悪くなった、そのためにロス以遠、特に名前を挙げられましたパンナム、ブラニフというものの経営が悪くなって、そこへ日航が入ってくるということは困るということは事実であろうと思います。しかし、同時に日米間の航空協定の上で実は哲学上の非常な差異があるわけでございまして、たとえば以遠権の行使にしても、アメリカは本来全く自由であるべしと、こういうことでございます。日本は以遠権の行使の場合にいわゆる第五の自由、これについても制限し得るという立場をとっている。ここにその哲学上の違いというものがやり残されている。  それから、第二点としては、アメリカの航空企業というものが採算は悪くなっているけれども、原則としてはカーター政権時代の航空自由化、やはりその消費者の利益を大事にするということは、レーガン政権のもとにも継いでいると、これは事実であろうと思います。  さてそこで、いままでせっかくの交渉をしてきて、どこに活路を見出すか、こういう御質問でございますが、これはなかなかいままでの長い間の交渉にもかかわらずまとまらなかったという点を考えれば、われわれとしてもそう簡単にはその交渉の活路を見出すということについて楽観論は吐けないと。また、三月の最終交渉においてまとまるであろうという見通しが強かったということでございますが、われわれとして交渉に臨むに当たって、やはりこれは交渉であるから五分五分であるというふうに考えていたわけです。そうは言いながら、しかしこの日米間の航空問題をこのまま長い間ほうっておくということにはやはりならないわけでございまして、現在政府部内で、どこで、どういうところでアメリカ側と再度交渉ができる道があるかということを考えていく、こういうのが現状であります。
  139. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この問題はアメリカ側にもいろいろな勝手な言い分といいましょうか、そういうものもあったかもしれません。一方においては、アメリカ側貿易摩擦解消の一環として日本の市場開放を迫ってくる。片方においてはわれわれが要求しているようなことがシャットアウトされるという、きわめて矛盾に満ちたような問題が並行的に走っている。こういったことは将来日本としてもどう一体整理をして、めどをつけていくのか。片方は、貿易摩擦貿易摩擦でやっぱり解消する。あるいは日米航空協定は航空協定として、将来交渉として解決へ持っていく。やっぱり私は包括された一つ課題として、これは両方並行的に解消の道を考えながら取り組むことがよろしいんではないかというふうに思えるんですけれども、その辺どうでしょうか。
  140. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 論理的に申し上げれば、貿易摩擦と航空交渉というのはリンクはしていないわけでございます。ただ、雰囲気といいますか、感情的なことから言えば、これはどこかの点で結びつかざるを得ないであろうということでございます。しかし、航空交渉については従来から、この問題はこの問題として話し合おうということが日米間で言われてきたわけでございまして、われわれとしてはできるだけ貿易摩擦の一環としてでなく、航空問題はそれ自体取り出して解決していきたいという気持ちを非常に強く持っているわけです。しかし、さはさりながら、いき言われたように全体の雰囲気というものもあわせてやはり考える必要がある、こう思います。
  141. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これは継続的な課題でありますので、将来また問題になるでありましょう。  次は、先ほど午前中だったと思うんですが、ちょっとお触れになった問題があるんですが、これもまた厄介な日米間を取り巻くと言った方がいいのかもしれませんけれども、深海底鉱物資源開発にかかわる問題でございます。率直に言えば、日本は何かボイコットされているみたいな、そういう立場に置かれているんじゃないかという印象を実は強く受けるわけであります。従来は申し上げるまでもなく、これに関連する考え方というのは三つの考え方があったようですね。非公式草案というものと、米国の大幅修正案というものと、その他、カナダ、オーストラリア、北欧諸国など十一ヵ国グループによる妥協案、こんなようないきさつがあるものですから、この第三次国連海洋法会議もなかなかまとまらぬ。その期限が今月の三十日で切れるはずですね。この問題は相当やっぱり深刻に受けとめる必要があるんじゃないかというふうに思えるんですが、現状どうなっていますか、これは。
  142. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。  いま渋谷先生から御指摘がありましたように、現在ニューヨークで開かれております海洋法会議は、会期の後半に入っておりますが、先生指摘のように、アメリカのかなり大幅な修正提案というものがございまして、主として深海底開発関係の条項についてでございますが、それに対しまして開発途上国がそのような大幅な修正はとうてい認められないということで反発いたしました。しかしアメリカもまあ、自分の修正提案を一〇〇%のまれなければいかぬということではない、ある程度の柔軟性は持って対処すると。途上国の方も、アメリカの提案はけりましたけれども、しかしながら交渉の扉を閉ざしたものではないと。こういうことで先ほど先生もおっしゃいましたように、北欧諸国、カナダ、ニュージーランド等の主として西側の国でございますけれども、そういう国が集まりまして、一種の妥協案を提示した。この妥協案をめぐりまして現在舞台裏で種々話し合いが行われておりまして、まあ現在のところ明確な見通しを申し上げられる段階でございませんが、しかしながらアメリカの方も、日本その他はかの先進諸国の働きかけもありまして、ある程度会期当初と比較すればかなりの柔軟性を持った交渉態度を示しつつあると、こういうことで、これから残す会期を十分使いまして、何とかアメリカ開発途上国も、それから日本も含めました先進諸国、そういうすべての国際社会のすべての国にとって受諾可能な包括的な条約をつくるという方向に向けて全力を尽くしていこうと、こういう状況に現在なっております。  それから、一言補足させていただきたいのでございますが、けさもちょっと御質問がありましたその深海底開発関係で、海洋法会議ができるまでのいわば経過措置みたいなものにつきまして、深海底開発の活動に従来参加しておる国の間で、それぞれの国内法をもとにしまして鉱区の排他性を認めるような条約をつくろうという動きがございまして、これはまあ現在もその動きが消えたわけではございませんが、これは日本がボイコットされておったということでは全くございませんで、わが国は当初からこの話し合いには参画しておりまして、ただその条約の中身あるいは海洋法会議とどういうふうに関連づけるかということにつきまして、日本とほかの国あるいはほかの国とアメリカと、こういう諸国の間で必ずしも意見が一致いたしませんで、したがいまして海洋法会議の展開ぶり、推移ぶりも見ながらまだ改めて話し合おうと、こういう状況になっているのが現状でございます。
  143. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 確かにいま述べられたとおりだとは思うんですがね。ただ、その背景に米側が自国のその権益を独占しようという、そういった発想が先行しているんじゃないかなという、これは極論かもしれませんけれども、そういったことで、特にアメリカ側の大幅修正案に対しては発展途上国側も全員こぞって反対と、もうなかなかまとまらない、海洋法会議の運営すらどうなっているんだという疑いの日を向けられかねないというようないままでのあり方ではなかったろうか。そういうような経過を踏まえて、アメリカとイギリスとフランスと西ドイツですか、これは相互協定は実際結ばれたのですか、四カ国の。
  144. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) いわゆる相互国協定というものは、先ほど私が御答弁申し上げましたとおりに、日本も含みまして関係国の間でまだ十分意見の一致を見るに至っておりません。したがいまして、アメリカ、ドイツ、イギリス等との間におきましてもまだ最終的にそういう協定が結ばれるという段階に至っておりませんで、現在海洋法会議でその海洋法会議とその深海底開発との関連での経過措置をどうするかということが話し合われておりますので、それとの関連でもう一度考え直そうと、こういうことになってまだ懸案でございます。
  145. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 懸案でありましょうけれども、どうなんですか、まとまる可能性というものはいまの推移の上からどう判断されていますか。
  146. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 深海底開発につきまして、アメリカその他わが国も含めまして、またソ連も含めまして、若干の国が具体的な、これは現実に開発が行われますのは一九九〇年代に入ってからのことというふうに一般に言われておりまして、現在はまだ探査の段階でございますが、そういう探査を現実に行っており、また行う能力を持っておる国がアメリカを初めとして若干ある。それで、そういう国の企業あるいは国自体の探査活動というものについて海洋法条約が発効するまでの間何らかの経過措置が必要であるということにつきましては、これは途上国も含めておおむね会議のコンセンサスがあるというふうに考えられます。したがいまして、現在海洋法会議におきましてもその経過措置をどういうふうにするかということにつきまして、現に具体的な案に基づきまして真剣な議論が行われておるところでございまして、したがいまして、何らかのそういう国際的な制度ができるということは間違いないんではないかというふうに考えております。
  147. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そういうふうな、いまできるというふうな方向に向かっているような判断のようですので、そこでもう一点、その場合に国内法の調整というものは当然必要になってくるんじゃないかと思うんですが、いままで外務省と通産省の間になかなかその意見の食い違いがあってまとまらなかったという経過があったようですが、それはどうなりますかね。
  148. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 国内法の必要性につきましては、従来政府の方でもそういうふうに認識しておりまして、その必要性そのものにつきまして、いま先生指摘のように外務省と通産省の間に意見の相違があったということは必ずしもございません。ただ、今回の海洋法会議との関連につきましては、私どもといたしましては、開発途上国がそういう一部先進国の国内法をつくって先行しようという動きに対してかなり警戒的と申しますか、批判的な受けとめ方をしておるという状況にかんがみまして、海洋法会議における途上国と先進工業国との間の交渉というものを不必要にむずかしくしてしまうということを避けるためにも、国内法の制定につきましてはもうちょっと様子を見た方がいいのではないかと、こういうことで、政府としては若干国内立法の時期につきましては慎重に考えてきたと、こういう次第でございまして、基本的には先生指摘のように、やはり国内法を整備する必要がある、こういう認識でございます。
  149. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 残余の問題については、二件ほど用意してきておりましたけれども次回に譲りまして、私の質疑は以上で終わらさしていただきます。
  150. 立木洋

    ○立木洋君 本日は、経済協力の幾つかについてお尋ねをしたいと思います。  経済協力をどのように行うかというのは、国にとっては外交基本的な姿勢にかかわる重要な問題だというふうに思いますし、それなりに一定の基準が明確に定められて、それを具体的に適用していくという形で進められているのではないかというふうに考えております。  最初に、そういう点でお伺いしたいんですが、最近の中米・カリブ海においていろいろな国の内部で紛争がありますし、厳しい内戦状態もある、あるいは国家間での対立、これが軍事的な問題を含むかもしれないような、そういう厳しい状況というのが中米・カリブ海において見られるわけですが、この地域に対して国が政府開発援助を行う場合、どういうふうな基準で最近行っているのか、まずその点からお伺いしたいと思うんですが。
  151. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お答え申し上げます。  先生御案内のように、わが国発展途上国に対します援助、経済協力でございますが、これは南北問題の根底にございますところの相互依存ということとそれから人道的考慮という二つの考慮から、わが国世界的にも経済的に強い国であり、かつ平和主義国家であるという見地から、その国々の民生の安定とそれから国民の福祉の向上と、こういうことでやっておりまして、この一般的な考え方は中米地域に対しましても当然同じ考え方でいたしております。
  152. 立木洋

    ○立木洋君 それはいろいろな機会にお聞きしているのでよくわかっているわけですが、具体的に、現実にあの地域はそういう状態になっておるということが考慮に入れられないのかどうかという問題ですね。紛争が激しくなっておる状態にあるということが援助を行う場合には全然考慮に入れられないでやられているのかどうか。考慮されるとするとどういうふうに考慮されているのか。
  153. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ただいま申し上げました考え方に基づきまして、平和主義国家としてのわが国は、やはり援助を通じまして当該地域の経済的な繁栄と政治的な安定のために貢献する、そうすることが世界の平和にも貢献するという考えでございますから、中米地域に御指摘のようにいろいろと問題ございますけれども、やはり私どもの力の範囲内で、実際にわが国が中米地域、カリブ地域にやっている援助は非常に微少なものでございますけれども、力の範囲内でやはりいま申し上げましたような平和と安定のために貢献していく、こういうことでございます。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 もう少し具体的にそれならお尋ねすることにしたいと思いますが、この間外務大臣がアメリカを訪問されて演説された中で、その地域の援助の問題に触れられたところでジャマイカとホンジュラスという国名だけが挙げられていたわけですが、この地域において特に重点的にいま政府開発援助を行っている国とすると、この二カ風ですか。あるいはどういう国がいま重点的に行われているのか。
  155. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お答えいたします。  一九八〇年の実績で申し上げますと、ホンジュラスが一番大きな被援助国になっております。それからコスタリカ、グァテマラ、こういうふうな順序に大体なっております。ニカラグア、ハイチ、それからパナマ、ジャマイカ、エルサルバドル、こんな順序になっております。
  156. 立木洋

    ○立木洋君 これは一九八〇年ですね。
  157. 柳健一

    政府委員(柳健一君) さようでございます。
  158. 立木洋

    ○立木洋君 去年はそういう動向というのは全く変わりないですか。多少順位に差が出てきたとか、特に重点的なところが加わったとかいうふうな点はどうでしょうか、変化は。
  159. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 昨年、これも先生御案内のように、ジャマイカに対する世銀の主催の緊急援助会議というのがございまして、これに基づきましてたしか昨年三月でございましたか、日本は一千万ドルの緊急援助をするということを行っております。なお、八一年以降の実績は、これは技術協力とかいろんなものがございまして、まだ実績が出ておりませんので、ちょっとわかりません。
  160. 立木洋

    ○立木洋君 エルサルバドルに対しては援助を行っているのか行っていないのか。行っているとしたらどういう種類の援助を行っているのか。エルサルバドルについてはどうでしょうか。
  161. 柳健一

    政府委員(柳健一君) エルサルバドルに対しましては、現在では円借款がございません。無償援助もございません。技術協力が若干ございます。たとえば青年協力隊が派遣されておりまして、これもたしかいま引き揚げたままだと思います。ですから、研修買受け入れ程度だと思います。
  162. 立木洋

    ○立木洋君 ニカラグアに対してはどうでしょうか。どういうふうな援助がどれぐらい行われているのか。
  163. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ニカラグアにつきましては、一九七七年に地熱発電所の建設のための円借款が出ましたが、これがキャンセルになりましたのでその後何も出ておりません。それから無償といたしましては、再建復興無償援助ということで、一九八〇年でございますが、五億円相当の食糧等の物資の援助が出ております。それ以外に緊急災害援助といたしまして、内乱によって生じた難民の救済用に二千万円相当の食糧、医薬品等が七九年に出ておるほか、若干の専門家派遣なり研修買受け入れがございます。
  164. 立木洋

    ○立木洋君 いまお尋ねした事実に基づいてなんですが、エルサルバドルに対しては、いわゆる国内でああいう紛争があるからということが考慮に入れられて行われていないというふうに考えていいのか、あるいはニカラグアに対しては引き続いて行うというふうに判断していいのかどうなのか。そこらあたりはどういうふうに考えていいでしょうか。
  165. 柳健一

    政府委員(柳健一君) エルサルバドルにつきましては、実は内乱が起こりましたときに派遣中の専門家も引き揚げまして、若干生命に危険があるということもございましたので引き揚げたりいたしまして、私どもの援助は、さっき申し上げたようにできるだけ平和と安定のためにやっておりますが、実際に援助を受け入れられないような状況になっているときはやむを得ずこれは中絶せざるを得ないということがございます。エルサルバドルにつきましては、現下の当該国の状況によって当面中絶しているという感じだと思います。それからニカラグアにつきましても、いま援助を与える、共与することが適当であるかを検討している段階でございます。まだ何も決まっておりません。
  166. 立木洋

    ○立木洋君 いま中米・カリブ海の問題について外務大臣にここでひとつちょっとお尋ねしておきたいんですが、アメリカにおいでになった際、つまりこの地域に対する援助については、やはりあくまで人道的なあるいは民生安定といいますか、そういう見地からの援助であって、いわゆる軍事的な紛争が激しくなるような、つまり軍事的にかかわるようなものに関してはわれわれとしてはそういうことは行わないというふうな態度をアメリカ側に表明なさったのかどうなのか。もしかなさっていないとしたら、そういうふうなお考えはお持ちなのかどうなのか、この点だけちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  167. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 直接にお尋ねのような表現はしておりませんけれども、世銀のカリブ援助国会議に参加するとか、あるいは米、カナダ、メキシコ、ベネズエラの構想に基づいてやるとかという表現で申し上げております。
  168. 立木洋

    ○立木洋君 それじゃ、大臣のお考えとしてやっぱり紛争が激化するような、そういう問題にかかわるようなことはしないというふうにお考えだというふうに判断してよろしいでしょうか。
  169. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) これは局長の方からも申し上げましたように、この地域の経済社会開発と民生安定に貢献するための種々の援助ということで、援助に伴って何か紛争に関連をするというようなことについては考えておりません。
  170. 立木洋

    ○立木洋君 それから今度は話が変わりますけれども、ベトナム、カンボジア地域についての問題ですが、凍結されてからもう大分たっているわけですが、現在の状態がどういうふうになっているのか、それからこの援助の凍結問題についてどういうふうにいま判断されているのか、あるいは多少なりとも動く気配があるのかどうなのか、また見通しはどうなっているのか、そこらあたりについてお尋ねしたいんですが。
  171. 柳健一

    政府委員(柳健一君) インドシナの中でベトナムにつきましては、同国が国際世論の声にもかかわらずカンボジアに対する介入を継続しておるという状況のもとにおきましては、私どもといたしましては対越援助の実施は困難であると考えております。  それからカンボジアにつきましては、現在の事情からかんがみまして、とても二国間で援助できるような状況ではございませんので、食糧とか医療というものを必要としておりますカンボジア民衆に対しまして、従来もやっておりますが、今後とも国際機関を通じまして人道援助をやっていきたいと、こう考えております。  それからラオスにつきましては、これは御承知のようにLLDCということもございますし、従来から小規模ではございますが、ラオスからの要請に基づきながら経済社会開発のための援助をいたしております。今後とも適当な案件があればこれを検討すると、こういうふうに考えております。
  172. 立木洋

    ○立木洋君 これは新聞その他で知ったわけですけれども、ベトナムに対して少額の援助が動くようなことをちょっと聞いたこともあるんですが、これはどうなっているのかということと、それから、いま凍結している援助が事実上凍結解除する条件というのはどういう場合に解除されるのかという点について、その二点をお伺いしたいんですが。
  173. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先ほど申し上げましたように、ベトナムに対する援助はいま中断しておりますけれども、チョーライ病院という、かつてわが国が援助いたしました病院のいわばフォローアップの問題といたしまして、同病院が医薬品等の非常に深刻な不足を来しておるということがわかりましたので、実はもうたしか三年近く前だと思いますが、それがわかったときに、わが方としては全く純人道援助の見地からこれを援助しましょうということを伝えておった経緯がございます。今般、ベトナム側の方からぜひお願いしますということがございましたので、金額としては三千万円程度のことでございますけれども、これを援助しております。  それから第二の御質問につきましては、将来インドシナの状況に平和がたとえば回復するというような事態になったときには、そのときに改めてまた検討するということにしたいと思っております。
  174. 立木洋

    ○立木洋君 次に、いわゆる対韓援助の問題ですが、この間の話のちょっと続きなんですが、最近よく言われている総枠提示という言葉が使われているわけですが、いままでいろいろ委員会なんかでお聞きした範囲内によりますと、いわゆる数年間にわたるプロジェクトについてはこういう総枠提示といいますか、意思表示は全体を一括して行うというようなことをやっていなかったというふうに承知しているんですが、この総枠提示を行うかもしれないというふうな報道については、どういうふうに理解したらいいんでしょうか。もしかそういうふうなお考えがあるとしたらどういう形なのか、ちょっとお示しいただきたいと思いますが。
  175. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 御承知のとおり、私どもの方針としましては各年度にわたりましてそれを毎年の年度ごとの交換公文でプロジェクトにつきまして先方と話し合いをつけまして、これを実行に移していくという基本的な方式には全然変わりはないわけでございます。しかしながら他方では、韓国としては、一体全体日本としては第五次五カ年計画についてどのような腹構えでどの程度の協力考えておるのかと、そこに大変な関心があるわけでございまして、一つのめどみたいなものを承知されたがっておられるということは私どももっとに承知しておるわけでございますが、現実の問題としましては、各年度ごとに話を詰めまして実行に移していくという基本的なアプローチには毫も変わりないことは、これまで御説明してきたとおりでございます。
  176. 立木洋

    ○立木洋君 そうしますと、全体については明確な約束を取り交わすということはしない、けれども、全体の枠についての一定の何といいますか、話し合いの中で、大体そのぐらいになるだろうというふうなことはまず示されるということなのか。そして、約束として明確に交換公文を取り交わすのは毎年ごとに取り交わすということなのか。向こう側としては何としてでもこう全体をはっきりさしてほしいという要望があると。これは単年度ごとでないとできないということがあって、政治決着で総枠提示というふうな報道もあるのだけれども、そこらあたりもうちょっと説明していただきたいんですが。
  177. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) やはり各年度ごとという。ことは先ほど申し上げたとおりでございます。全体について総枠提示というようなコミットの仕方は全く考えておらないわけでございまして、ただまあ非常に抽象的と申しますか、漠然どこんなところかなという感じのことは、場合によっては外務大臣御訪韓のときにお話を、感じを先方に伝えられることも可能なわけでございますが、現時点では国内の調整に大変手間どっておるわけでございまして、そのような状況は新聞ですでに御承知かと思います。
  178. 立木洋

    ○立木洋君 どうもしつこいようですけれども、その全体を示される、まあそういうことになるだろうかといま局長が言われたそれはもちろん約束ではないわけですね。公約だとか約束だとかというものではなくて、明確に約束というのは単年度ごとの約束だということですね。
  179. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 全くおっしゃられるとおりでございます。
  180. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ次に、商品借款の問題ですが、これについては先般外務大臣の方で、いま直ちにそれがだめだというふうに言うのはいかがなものでしょうかと、何らかの可能性があるかどうかよく検討してみたいというふうな趣旨の御説明があったのですが、この商品借款の問題についてはどういうふうに検討をその後なさっていられるんでしょうか。
  181. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 三月の十九日に私ども考えを韓国側にお伝えいたしましたとき、その一つに商品援助というものはきわめて困難であるということをお伝えしまして、これに対しまして四月一日の時点だったと思いますが、韓国側から、現在韓国は世界景気の後退で輸出も思うに任せずということから国際収支上の困難に見舞われておると、そういう意味合いにおきまして何とか商品援助を再考してもらいたいと、この要請は韓国の強い主張であるということを申し越されておるわけでございますが、私どもとしては商品援助がむずかしいという立場は変えておりません。
  182. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ、まだむずかしいと言って、その余地はあるという意味に解釈していいんでしょうか。大臣の方で検討してみようというふうに述べられた。その検討する過程で、むずかしいがまだ結論が出ていないと、その可能性が全くなくなったわけではなくて、まだ行う可能性は残されているというふうに考えていいんでしょうか。
  183. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) きわめてむずかしいという立場を変えておるわけではございませんで、そういう意味可能性もなかなか乏しいんじゃないかというふうに考えております。
  184. 立木洋

    ○立木洋君 それじゃ、大臣がこの間お述べになったことから見て、より一層やっぱりむずかしいという状況だというふうに大臣自身もお考えになっておられるんでしょうか。大臣のお考えはいかがでしょうか。
  185. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) その点はお尋ねのとおりでございます。先方から、何とか考えてもらいたいということから、それはよく検討したらいいということは申しておりますが、なかなかむずかしいことはそのとおりでございます。
  186. 立木洋

    ○立木洋君 それから輸銀の貸し付けの問題で、低利というふうな要望が出されてきているというふうに聞いているんですけれども、さらにこの輸銀の貸し付けの問題で、低利にするというふうなことが可能なのかどうなのか、そこらあたりの検討はその後どうなっているんでしょう。
  187. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 輸銀の金利が円借款に比べて高額である。したがいまして有利な円借款をぜひ欲しいというのが韓国側の基本的な立場でございまして、その調整が最も難航している側面の一つでございます。  輸銀につきましては、御承知のとおりOECDの場で議せられておりますがイドラインがございまして、昨年の秋以前の段階では七・七五%でありましたのが、日本につきましてその後九・二五%と高く打ち合わせられておるわけでございまして、私どもとすればできるだけもっと安い条件にしたいわけでございますけれども、このガイドラインを尊重もしなければなりませんし、また近々、五月に入りましてOECDの場で再度、この六カ月間について打ち合わせられました金利について御相談いただくことになっておりますので、その辺の帰趨も見きわめる必要があるかと思っております。
  188. 立木洋

    ○立木洋君 もちろんこの点もいま局長言われたように大変むずかしいと。しかし、もちろんあれでしょうね、この八号ローンなんかが適用されるなんということは全くないでしょうね。
  189. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 八号ローンは一応資源絡みの金融ということになっておりますので、中国の石油あるいは石炭という場合はこれが出ておるわけでございますが、韓国との関係ではきわめてむずかしいということは立木委員指摘のとおりじゃないかと思います。
  190. 立木洋

    ○立木洋君 韓国の今度が経済開発計画が第五次になっていますが、これまでの第四次あるいは第三次等々の場合には、その後に日本側から強力な使節団を送って、そしていろいろ韓国の経済状況を視察をして、そういうものに基づいてどういう援助が可能かというふうな検討なんかがなされてきたという経緯があると思うんですが、しかし、今回の第五次の計画に関しては使節団は送られたんでしょうか。第五次のこの五カ年計画に際しての使節団は日本から送ったのでしょうか。
  191. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 調査団の派遣は今後の問題でございまして、この第五次経済社会発展五カ年計画のどの部分に協力するかということの方針が決まりました場合には、そのダムならダムのエキスパートを含めました調査団を、ダムの視察ないし打ち合わせのために派遣されることに当然相なるわけでございます。したがいまして、どの点について具体的に協力申し上げるのかまだ決まっていないいまの段階では、調査団の派遣はまだ行われておらないわけでございます。
  192. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、それが決まった場合にはやっぱり調査団を送って、十分な経済協力が行き届くといいますか、完全にマッチしたような形で行われるようにという調査は行うという計画はあるわけですね。
  193. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) まだ具体的な計画はございませんけれども、そういうことは当然私どもとしてはなさなければならないプロセスかと心得ております。
  194. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、五十二年から始まる第四次五ヵ年計画のときには、五十一年内に行っているんですよね。今度始まるのが五十七年から始まるのだけれども、その前には行ってないというのはどういう意味なのか、そこらあたりちょっと、後で行くからいいというのか、いわゆる計画が出されて、それに適合した交渉が行われるために出されるという性格なのか。その点はいかがなんでしょうか。
  195. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 先ほど申し上げましたとおり、現在十一の事業計画についての協力要請があるわけでございます。これを全部手がけることができるかどうか、まだはっきりいたしておらないわけでございまして、仮にそのうちダムであるとかあるいは病院であるとか、取り上げるものが決まりました段階で調査団を派遣するということに相なるものと承知しております。
  196. 立木洋

    ○立木洋君 それからもう一つ、一九七三年十二月の第七回日韓定期閣僚会議の共同コミュニケでは、もう先般来何回も問題になりましたけれども、日韓経済協力政府ベース協力から民間ベース協力に主体を移していくというふうな点で意見の一致を見たということが確認されて、さらに第十回日韓定期閣僚会議の一九七八年九月の場合にも、この協力が民間ベース主体に移行しつつあることということについての共通の認識を深めだということが確認されていますが、今回の場合にはそうではなくて、また再び逆戻りしてきたというふうな印象が非常に強いわけですが、今後の日韓の経済協力のあり方というのは、今後のベースというのは、やはり政府ベース中心になるのか、民間ベース中心になるのか。またそのペースが変わったとしたら、その変わった理由はどういうことなのか。その点ちょっとお尋ねしておきたいんですが。
  197. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 七九年の第二回目の石油ショック、その後の戦後最大の長期不況というもののあおりで、韓国のみならずでございますが、世界的に疲弊し切っておる。そういう状況での援助でございます。したがいまして、民間主体に移行するペースが少し後退したんじゃないかということであれば、その嫌いはあるわけでございますが、私ども基本的には、立木委員指摘の閣僚会議の共同コミュニケどおり、韓国のように業績のいい、能力のある国につきましては民間主体で対処するのが最も韓国のためにもよろしいのではないかと、かように考えておるわけでございます。
  198. 立木洋

    ○立木洋君 今回の第五次経済社会発展五カ年計画、これは経済企画院八一年九月十日付のあれで、資料をいただいたわけですが、この「第五次計劃の基本目標」というところに、第一に、「自主国家安保能力のレベル・アップ」というのが第一に掲げられてあるわけですね。ところが、これまでいただいておる第四次や第三次などの場合には安保能力のレベルアップという、こういう防衛的な問題に関する項目というのは全然なかったわけですね。自立成長構造の達成、あるいは均衡の増進、技術革新と能力向上、こういう項目が韓国側で明確に基本目標の第一位に登場してきたという点については、どういうふうに認識されているんでしょうか。
  199. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) この韓国の五カ年計画は、韓国国民に向けられた計画でございまして、その基本目標に国民生活の水準向上、あるいは世界経済に対する韓国のコントリビューションの増大といううたい文句とともに、韓国の国情に沿いまして安保能力のレベルアップといううたい文句があっても、私どもになじむかどうかは別にいたしまして、これは当然のことではないかと思います。ちなみに第四次五カ年計画におきましても、この基本目標に国民生活の質的、量的向上とともに国家の恒久的安全保障といううたい文句があるわけでございます。  問題は、私どもの行う経済協力が安全保障絡みのものであるかないかということでございまして、その点につきましては、韓国側の要請してまいっておりますプロジェクトは、収益性のあるものも含めまして経済の基盤強化ということを志向いたしておるわけでございまして、その点につきましては、立木委員の御関心と同様の関心を私どもは持っておる次第でございます。
  200. 立木洋

    ○立木洋君 時間がなくなりましたから、最後に大臣の御所見をお伺いしたいんですが、いま幾つかお尋ねしましたように、韓国に対する援助、いわゆる対韓援助というものが非常に金額的にも突出しておる。これがどういう理由によるものだろうか、あるいはまた、輸銀の問題にしましても商品借款の問題にしましても、あるいは総枠提示が行われるかどうかというような、つまりいままでの日本が行ってきた外国に対する援助とは異なる要素がもしかすると入り込むかもしれない。また、調査の問題についてもそうですし、それから韓国側が非常に防衛能力を高める、いわゆるそういう意味での軍事的な結びつき、そういうふうなことが非常に強まっていく。だから、この問題で政府がどういう態度をとるかということは、これはもちろん私たちだけではなくして多くの人々が注目している問題だというふうに思うんです。そういう点では、やはり日本政府が明確な道理のある態度をきちんとこの点でけじめをとるかどうかということは非常に注目されておると思うんです。  それからもう一つは、いま最後に局長が言われましたけれども、先般来お伺いしてきたたとえば園田外務大臣の場合には、この安保絡み等については憲法の点からいってもそういうことは絶対にできないということを明確に述べられておったわけですが、いよいよ五月の連休に大臣がおいでになるとかどうとかというようなこともますます確定的な報道がなされるようになってきておりますけれども、そういうことを控えた現在の段階で、いわゆる対韓援助に対してどういうふうな基本的な姿勢で臨まれるのか、結着をつけようとされるのか、その点についての現在の段階における大臣の御所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  201. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 私が外務大臣就任後に、韓国から新五カ年計画の中でこういうプロジェクトに対して日本の援助協力を求めたい、こういう要請がございまして、その折にはちょうど昨年の十二月早々でございますが、前年度の経済の非常な落ち込み、そういうことを背景にして民生の安定、経済社会開発に資するために何とか日本の援助をお願いしたい、こういうことから取り上げたのでありまして、園田外相当時とは事情が大分違っておるものと私は判断して、その要請に理解を示す必要があるんではないか。また、その要請に応ずるためには、日本の持っておる経済協力に対する基本的な方針あるいは積み上げ方式というようなものを十分配慮しながら、しかし歴史的な特殊な関係にある韓国のことであるから、これについては特段の配意をしたい、こういうことで本日に至っておるわけでございまして、韓国に要請されてこの問題が起きまして以来、一貫して私の考え方は繰り返し申し上げておるところでございます。
  202. 木島則夫

    木島則夫君 まず、日韓経済協力問題はいよいよ山場を迎えたと言っていいと思います。きょうの閣議の後、三閣僚が初めて折衝をされたそうでありますけれど、私どもが伝え聞いておるところによりますと、外務省と大蔵省との見解が対立をして進展がなかった、こういうことでありますけれど、まずその辺の確認をさしていただきたいと思います。どんなものでございましたか。
  203. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) お尋ねのとおりに、閣議終了後に渡辺大蔵大臣と宮澤官房長官と私とで打ち合わせをいたしました。その際私から申し上げましたことは、経済協力関係の四省庁間の意見がまとまらない、したがってこの問題を上に上げるということであるが、と言って四省庁関係の大臣が寄るというのも時期尚早ではないか。であるので、私から大蔵大臣と一度話してみたい、官房長官にお立ち会いをいただきたい、こういうことでお残りをいただいたという、私の方が発議したことを申し上げまして、そして話し合いに入ってみましたところ、基本になる経済協力の五年倍増の基礎がどうしても大蔵大臣と私とで話がかみ合わないので、こういう点で話がかみ合わないというのではまずいので、それではお互いに持って帰ってもう一度事務レベルでよく話し合ってみようか、こういうことできょうは物別れになったのであります。
  204. 木島則夫

    木島則夫君 いわゆる問題は円借款だろうというふうに私思うんでありますけれど、この算定の基本部分で外務、大蔵の考えが対立した、こういうことでございますね。外務省の主張にのっとって算定をすると、問題の円借款はたしか五年総枠で十五億ドルですか、大蔵省案ですと十億ドル、こういうふうに聞いておりますけれど、何でしたらアジア局長からでも結構でございますが、算定の基礎というのをお聞かせいただけますでしょうか。きょう話し合われた算定の基礎でございます。あるいは外務大臣でももちろん結構でございます。
  205. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お尋ねの算定の基礎でございますが、まだ……
  206. 木島則夫

    木島則夫君 算定の基本部分において大蔵、外務の両省で意見が合わなかったということでありますね。その部分を具体的におっしゃっていただきたいと、こういうことであります。お差し支えなくばと、こういうことであります。
  207. 柳健一

    政府委員(柳健一君) これはまだこれから韓国と交渉しなければならないことでございますので、大変申しわけございませんが中身を具体的に申し上げるのは遠慮さしていただきたいと存じます。
  208. 木島則夫

    木島則夫君 それは事は外交で秘密を要することでありますから、私のお尋ねが無理だったかと思いますけれど、そういたしますと外務、大蔵の閣僚間の折衝でも進展が見られなかったといたしますと、事務レベルでの再度の協議を今週中にでも行うのかどうか、この辺は伺ってもよろしゅうございましょう。
  209. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 私も本日、けさの大臣のお話の結果を伺いまして、できるだけ早い機会にもう一遍事務レベルで打ち合わせをしたいと、こう考えております。
  210. 木島則夫

    木島則夫君 五月の連休のときに訪韓なさらなければ、その後はいろいろ外交スケジュールがふくそうしておりましてそのチャンスを遠のかせてしまうという点では、これは外務省も大蔵省も異存はないというふうに私は受け取っております。何としても五月連休の訪韓は実現をしていただきたいということからも、前田大使が近く帰任をされますので、今週中にももう一度三閣僚の折衝を持たれる必要があろうと思うんでありますけれども、この辺は外務大臣いかがでございましょうか。
  211. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ずいぶん事務レベルにおいても丹念に作業をしていただいておるのでありますが、もう一度練り直してもらうということで事務レベルに下げたところでございますので、やはりこれは作業の進行状況を見ないと、今週中に閣僚が寄れるのかというそういうお答えはちょっとしにくいところがございます。しかし、すでに十二月からというと相当時間の経過もございますから、私としてはなるべく早く事務レベル間の話し合いがついてもらいたいと、そういう期待感は持っております。
  212. 木島則夫

    木島則夫君 私の希望といたしましては、訪韓前にぜひ外務省の見解をもとに合意ができますように強く希望をいたしますけれど、外務省が総枠四十億ドル、大蔵省は三十五億ドルというこの辺でも数字が大きく食い違っているわけですけれど、外務省がお考えになっている四十億ドルという額は、韓国側と交渉をする際、テーブルにつく場合の最低の線であるというふうに外務省はお考えになっていらっしゃると思います。アジア局長、その辺はどういうふうに解したらよろしゅうございましょうか。
  213. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 遺憾ながら、韓国側の考え方と私ども考え方との間には、依然として大きな懸隔があることは率直なところ認めざるを得ない次第でございます。
  214. 木島則夫

    木島則夫君 なかなか微妙なところでございますけれど、もしその全体の合意が得られない場合ですね、たとえばせんだって八日の当委員会アジア局長がお述べになった点でありますけれど、たとえば五十六年度分の供与額だけでも話し合いの活路を見出す可能性は絶対にないではないと、絶無ではないというこういう御見解は、平たく解釈さしていただくと、仮に今後の調整の中で全体の枠の合意ができない場合でも、五十六年度分だけの話し合いのために外相が訪韓することもあり得ると、こういうふうに解釈をしてよろしゅうございましょうか。
  215. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) 話し合いが難航いたしました場合に、五十六年度だけについても活路を話し合うということにより局面の打開が図られればというのは、私どもの希望としてはございます。
  216. 木島則夫

    木島則夫君 なかなか外務省としてもいま微妙な段階ですから、これからの見通しは全体枠での合意か五十六年度分での合意かということになりますとなかなかおっしゃりにくいというふうに思いますけれど、私としてはやはり政治的な決断、決着を求めて全体の枠の中での合意ができるようにお願いをしたいんでありますけれど、その辺の外務省見通しはどんなものでありましょうか、外務大臣から伺いたい。
  217. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 御承知のように、前田大使が帰られて韓国の状況を承り、また四月一日の韓国側の回答などを踏まえますと、先ほど木内局長の言われたように相当懸隔のある問題でございまして、どのように打開をするか、しかも、しばしば申し上げておる日本としての基本の方針の中でどう解決するか、非常にむずかしい問題だと思っております。
  218. 木島則夫

    木島則夫君 実務的な立場で局長からも一言伺っておきたいんでありますが、むしろ局長に前に伺うべきだったと思いますが、見通しはどんなものでありましょうか。
  219. 木内昭胤

    政府委員木内昭胤君) ただいま大臣が申されましたとおり大変難航いたしており、したがって見通しもそういった経緯を念頭に置いてお考えいただくほかないものと思っております。
  220. 木島則夫

    木島則夫君 私は、当委員会でしばしば発言をしておりますように、何よりも日本と韓国の特別な関係というものを配慮に入れて、ただ形式論とか原則論にこだわってはこの問題は大変なことになるのだというふうに再々申し上げてまいりました。その辺も十分にひとつ御配慮をいただいて、むずかしいこの問題に当たっていただきたい、そういうふうに希望をするわけでございますが、再度それでは外務大臣から御見解を伺ってこの締めくくりにしたいと思います。いかがでございましょうか。
  221. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 私も就任早々からこの問題に取り組んでまいっておりまして、また韓国の要望と実情については理解ができるのでありますから、まとまるものであればまとまるように努力をいたしたいと、せっかく非常に困難な局面ではございますが、誠意を持って臨みたいと思っておるところでございます。
  222. 木島則夫

    木島則夫君 それじゃ、フランス大統領訪日に当たって、問題はたくさんあるのですけれど、数点にしぼってお尋ねをしたいのであります。  大統領訪日に当たってはすでにスケジュール、そして話し合われる内容などについてはもうほとんど決まっていると思うんでありますけれど、大統領とは安全保障の問題については話し合われるのかどうか、この辺はどんなものでしょうか。
  223. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) 大統領と総理との会談、御指摘のとおり予定されてございますけれども、首脳同士の会談でもございますので、細かい議題等はあらかじめ設定してございません。ただ、ポーランドの事態が最近起こったとか、今後の日程としてベルサイユ・サミット、それから国連の軍縮総会、こういうものを控えて当然その関連の話し合いは出ると予想しております。特に東西関係あるいは軍縮問題、そういうコンテクストの中で、先生指摘の安全保障の問題が何らかの形で取り上げられるのではないか、かように考えております。
  224. 木島則夫

    木島則夫君 この日米欧の協力関係というのは、日本の安全保障の重要な柱であるわけですが、日欧の協議は余りなされていないというのが実情であろうと思います。フランスという国は、西欧の中心的な国家であって、その安全政策やソ連に対する認識、こういうものについて突っ込んだ話し合いをすべきではないかというふうに私は考えておりますけれど、この辺は外務省としてどんなふうな見解をおとりになりますか。
  225. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) 日欧関係日米関係の一番大きな相違、特に戦後の日欧関係でございますが、安全保障あるいは防衛というそういう側面が欠けておったということではないかと思います。日米関係日米安全保障条約等の関係もございまして、安全保障の柱があったわけでございますが、日欧関係にはそれがございません。そういうことで、従来とかく日欧関係では安全保障とか防衛の問題を取り上げる機会は比較的なかったわけでございます。  しかしながら、最近東西関係がかなり均衡と申しますか、緊張緩和にかげりが差してくる、こういう状況で、日欧間にもそういう方面の話し合いがかなり積極的に進められてきております。特にアフガニスタンの問題、イランの問題、最近のポーランドの問題を契機といたしまして、日欧間にこういう政治あるいは防衛の問題を含めた対話というのが急速に進んでおります。そういう背景を受けまして、今回のミッテラン大統領訪日の際に、日欧対話の継続、発展ということが期待できると考えております。
  226. 木島則夫

    木島則夫君 同米の防衛問題あるいは貿易問題については、お互いの理解を欠くところから誤解を生んで、これがまた摩擦に輪をかけるというようなことにもなりかねません。せっかく日本が、西欧の一員としてそのGNPに相応する世界協力、責任を果たすんだという立場をとっているわけでありますから、同時に日本の安保・防衛政策もよく説明をして、この際ヨーロッパの、つまりフランス中心とした西欧の国々にもわかってもらう必要があると思うんですね。どうも西欧から見ると、日本は稼いではかりいて、GNPに相当する、国力に相当する責任分担を果たしていないとかいろんなことを言われておりますね。誤解に基づくものも相当多いと思う。したがって、こういういい機会でありますから、日本の安保・防衛政策にもよく理解をしてもらう、その説明が必要だと思いますけれど、当然こういった機会はあるんでしょうね。
  227. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) 安全保障の考え方につきましては、日仏間で相違点も共通点もいろいろあろうかと思います。その点にいま立ち入ることは避けますけれども、お互いの地政学的な立場とか伝統とか、そういうものから出てくる相違点、これを、いろいろな会談の途中おのずから浮き上がってくる面もございましょうし、また積極的に掘り下げて議論するというような機会は当然あろうと思います。また、そういう機会をつくりたい、限られた時間ではございますけれども、立ち入った会談をしたいと事務当局としては準備しているところでございます。
  228. 木島則夫

    木島則夫君 もう少し具体的に申し上げると、フランスはNATOのメシバーではありますけれど、軍事機構からは脱退しておりますね。また、独自の核戦略を持っている、このことは私が御説明をするまでもないと思います。置かれた立場や歴史的な経過が違うとは言いながら、安全保障に対するフランスの非常に独特な何というか、自主的で、しかも厳しいこういった政策は、日本としてもやはり聞いておくべき価値があり、参考にと言うと大げさな言い方になるかもしれませんけれど、参考にする価値がある、私はこういうふうに考えているわけでありますが、どんなものでしょうか。
  229. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) 社共連合政権でございますミッテラン政権になりましてから、フランスの防衛政策は従来よりさらに一段と拍車をかけてきたというか、姿勢が正されたというふうに私どもは見ております。特に東西間のバランスの維持、そのバランスを低いレベルで抑えるためには、まず均衡を達成しなければいけないという非常に現実的な政策をとっているやに見受けられます。こういう基本的な点では、確かに日仏で見方を等しくする点はございます。ただ、そういう基本的な認識は同じであっても、それでは自国の防衛をどういう手段で達成するかということになりますと、フランスはいま先生指摘のとおり、独自の核戦力開発ということに主眼を置いております。日本の場合には、アメリカの核抑止力というものをまず第一に見ているわけで、そういう点で若干の相違はあろうかと思います。こういう点も踏まえていろいろ掘り下げた意見を交換することは、日本の安全保障の問題の考え方をさらに深める意味においても非常に意義があることと思います。その点、先生の御指摘と全く同感でございます。
  230. 木島則夫

    木島則夫君 この問題については、外務大臣からも一言ちょっと御見解を述べていただけますでしょうか。
  231. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) ヨーロッパ諸国、特に西側としてミッテラン政権が新しい角度で物の判断をされておる。そういう面からいたしますと、今度の首脳会談、腹蔵のない意見交換、その間に意思の疎通が図られ、何らかの方向が出るということは非常に関心が持たれるところでございます。  また、私も日仏外相定期会談を持つ予定にしておりますので、ただいま局長から申し上げましたような点が一つ問題点でございまして、私としても外相間で腹蔵のない意見を交換いたしまして、今後のわが国としてのいろいろな方策を考える上に役立てたい、このように思っておる次第です。
  232. 木島則夫

    木島則夫君 もちろん、核軍縮についても当然話し合うべきだろうと思いますが、特に南太平洋において行ってきた核実験を今後どのようにするかという予定など、明確にただしておく必要があろうと思うんでありますけれど、こういった問題についても率直な意見が交わされてしかるべきであろうと私は思うんでありますけれど、どんなものでしょうか。
  233. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先ほど加藤政府委員の方から御答弁申し上げましたとおり、今回のこれは首脳会談でございますから特に議題を設けずに大所高所から第二次核軍縮特別総会を控えまして、核軍縮を中心とします双方の意見交換が行われるのではないかと考えておりますが、いま御指摘の点につきましては、ごく最近では去年の十二月に在京大使館を通じましてフランスの地下核実験につきまして、日本政府としてはきわめて遺憾に考えておるという申し入れをすでに行ってきているわけでございます。なお、この点は申し入れと同時に外務省の清支局の発表という形で公表もしておる次第でございまして、日本があらゆる国のいかなる核実験にも反対だという立場はフランス自身も十分に承知しておると、こういうふうに考えております。
  234. 木島則夫

    木島則夫君 日仏間にまたがるいろいろの問題については、貿易摩擦フランスを含めての日欧の貿易摩擦の問題もそうでしょうし、それから文化交流を一層進めるという問題もそうですね。その中に科学技術協力、いわゆる技術協力の問題も当然含まれるということは今朝来からのこの委員会における議論の中でもお話が持たれているところでございます。せっかくいい機会でありますから、とことんひとつ話し合ってお互いに理解を深める、そのことが西欧の一員としての日本の立場への理解を深めることにもなり、また日仏間あるいはフランスを含めた日欧の問題の解決にも大きな前進をもたらすであろうと、こういうふうに思うわけでありますので、ひとつ積極的にこの問題と取り組んでいただきたい。  残余の質問をしようと思いましたけれど、ほかの委員の方がおやりになっておりまして重複するのもなんでありますから、私はここで終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  235. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 一口で申し上げまして、大変な世界日本は曲がり角に来ていると思いますが、経済政策ももちろん問題ですけれども国際的な日本のあり方というものはいろんな形でこれから問われてくると思います。いままでの惰性の行き方じゃ通らない時代が来ている、そういう時期なんですが、外交政策の決定過程というものが非常に重要になると思います。  大臣に伺いますけれども日本外交政策を基本的に決定している機関はどこですか。
  236. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) これは第一には、総理あるいは私などが各種の情報あるいは情勢に基づいてある判断を持ちながら問題ごとに対応していく、その辺が非常に現実的には重要だと思います。しかし、そういう情勢を得るとかあるいは判断材料を得るということにつきましては、これは外務省の機能を挙げてやらなければならない問題だと思います。
  237. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 閣議はどういう役割りを演じていますか。
  238. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 閣議は実際上の扱いを申し上げるとわかりいいと思うのでありますが、大きな問題につきましては私が外務省における諸情報を総合したものを報告をいたして、そして意見をちょうだいする。時たま閣僚の方から私に対する、この問題は外務省はどう扱っておるというような御質問の形で見解を述べられたり、あるいは外務省に対して物事をただす、こういうことはございます。
  239. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私がこういうことを伺うのは、いまから四、五十年前日本がやっぱり大きな転機にいたのですが、そのときは一体どこで外交をやっているのかしまいにわからなくなってしまったわけですね。いわゆる軍部などというものが外交に非常に大きな制圧を加える。政治がほとんど外交に対する発言権を失うというようなことになってきたわけですが、いまのような日本の時期に、やっぱり同じような大きな変化、転換、これが求められているし、希望しなくてもそういう方向に行く可能性もありますが、外交政策の決定過程というのは非常に重要であると私は考えて、こういう原則的な質問をするのですけれども日本外交を決定するのは、外交権は内閣に属す、こういうことですから、内閣それから外務大臣がそれを担当する、省と相談する、これは当然です。と同時に、外交の事務機関である外務省が大臣を、内閣を補佐する。これも当然なことなんですが、一体国会は、外交に関するいろんな条約や、あるいは国際法を決定するという意味外交に当然関係してくるわけであります。それを正しく判定する意味でいろんな外交政策全般に対する質問をしたりなんかするわけですけれども、国会というものが日本外交において果たすべき役割りはどういうふうに考えられますか。
  240. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) いまの御質問にお答えする前に、今国会の劈頭、外交方針の演説を行いまして、その折に外交体制強化ということを訴えました。そのことはただいま宇都宮委員が御質問のとおりに、近時日本国際的地位の高まり、それからまた経済問題、政治問題、非常に国際関係がむずかしい状況にございまして、またそれらの状況というものが日本にとって非常に影響が大きい、こういうことでありますから、どうしても外交体制強化する、あるいは情報収集、広報活動というものの重要性が非常に高まっておるわけで、この辺はひとつよろしくお願いをいたしたいと思うのであります。  また、国会の関係についてのお尋ねでございますが、予算委員会の総括質問あるいはこの外務委員会における国際情勢の質疑、これらを通じて国会の皆様の御意図というものは把握できるのでありまして、それらを総理を初め、私、また外務省の担当責任者が参考にして物の判断をするということは言うまでもございません。なお、御承知であろうと思いますが、いまの内閣としては与党である自由民主党における外交機能の活動、これも重要視しなければなりませんが、同時に重要問題に際しましては党首会談などを行うというような場合もございまして、これらを総じて申し上げますならば、われわれの判断が独善的に陥らざるように、また国家国民の利益に反しないように、総合的な判断の必要性があるということはもとよりでございます。
  241. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 最近は特にレーガン政権ができる前後からアメリカ外交政策が、非常に簡単に言うと軍事と絡めたいろんな要求が非常に強くなっていることは事実であると思うんです。一国の外交政策は、外国はいろんなぶれがありますから、相当落ち着いていないととんでもない方向に打っちゃって、アメリカが政策転換をする場合に、こちらの方は遠心力で振り回されてなかなかどうにもならぬというようなことにもなりかねまい。アメリカ自身の中にもいろんな政策転換の要望、方向が出てきていることは私は間違いないと思います。ですから、いままでの固定した観念で同盟国だとか何とかいう観念だけでついていけない時期に来ている。一方また、アメリカ日本にとって重大な大きなマーケットであるし、重要な原料も輸入している、そういう日本の加工貿易国家といいますか、そういう経済の特性から、アメリカに対して非常な弱味ももちろん持っていることは間違いないことでありますけれども、しかしそうだからといってアメリカの言いなりほうだいになっていると、アメリカ自身が変わってくるということは私どもはしばしばいままで経験しているわけですね。たとえば中国問題なんかで、意見が非常に衝突していたのが、現在は大体一致してきて、また少し変なふうになっているというようなことだとか、いろいろあるわけでありますが、現在のアメリカ外交政策、特に日本に対する軍拡要請といいますか、そういうものに対してどうお考えになりますか。
  242. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 日本アメリカが安保条約を結んでおって、その間に特別のものがあるということはこれは承知をしておらなければならない。したがって日本外交の中では対米外交というものは非常に重要である。しかしながらアメリカもその時々に外交方針も変わることも、たとえばカーター、レーガンというふうに政権がかわればそれだけの変化はあるのでありますから、当然日本もそういう動向については常に配慮をしておらなきゃならないと思うのであります。  宇都宮委員お尋ねの国防の問題については、これは総理初め防衛庁長官、私どもが終始一貫して申し上げておりますことは、そういう外交上特別な関係がございましても、防衛の問題については日本には憲法あるいは日本自身の方針である防衛大綱、そういうようなものがあって常に自主的に判断をしていきたい、こういうことを申し上げておるわけでございまして、今後ともそのとおりの方針で臨んでまいりたいと思います。
  243. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私らは安保条約の締結それから改正、その時代に議員としていろいろ検討したことがありますが、安保条約をわれわれが論ずる場合に、安保条約のできた当時の性格というものは、日本の周辺に国際連合の安全保障措置が有効になるまで継続すると、一九五二年ですか、締結されたときはそういうことであった。その後岸内閣になって改定になったのですけれども、そのときもやはり新しく具体的な廃棄条項がついたわけですね。つまり米日のどちらかが一年前に廃棄を通告すればこれは廃棄されるという廃棄条項がついたわけですけれども、しかしやはり同時に、国際連合の安全保障措置が日本の周辺に有効に成立するまで継続すると、こういう非常に重要な抽象的な終了規定がありますね。これはやっぱり安保条約の底を流れている基本的な精神であり、それはやはり日本の憲法とかあるいは非核三原則というものと関連があると思うんですが、安保条約を考える場合に、一方的にただ乗りしているとかなんとかいう議論ばかりで、安保条約自身日本の周辺における国連の集団安全保障の強化というものを待望しているということは、いま日本外交でほとんど忘れられているように思いますが、どうですか。
  244. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 安保条約それ自身について、いま宇都宮委員が御指摘になりましたまず期間の点について「日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。」というのが前段にございまして、その後を受けて、「もっとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後一年で終了する。」ということのほかに、前文でも国際連合についての言及があるわけでございます。したがって、この安保条約というものもやはり国際連合というものを念頭に置きながら考えている条約であるということは、まさに御指摘のとおりというふうにわれわれも考えておるわけであります。
  245. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 今度はアルゼンチンが突如として、いろいろ歴史的な理由があるにしても、大西洋の一番南の方の島に軍隊を揚げた。アメリカはそれを調停しているわけです。イギリスはそれに対して武力で対応している異常な事態になっているわけですけれども国連はそれに対していまどういう活動をしていますか。
  246. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先生御承知のとおりに、アルゼンチンのフォークランド諸島に対する武力の行使というものが行われた時点におきまして、安保理事会において本件が取り上げられまして、御承知のように四月の三日に安保理事会としてはイギリスが提案いたしました決議を採択いたしまして、本件が国連憲章でいうところの「平和の破壊」という事態の存在というものであるという認定を行いつつ、敵対行為の即時停止、それからアルゼンチンの軍隊の関係諸島からの即時撤退、それから関係国間における外交手段によるこの問題の解決の追求、そういうものを要請する、こういう決議が採択されたということでございます。
  247. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 イギリスが、それに対して実力で対応する行動をいまとっていますね。それに対してどう考えられますか。
  248. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ただいまの先生の御質問の御趣旨必ずしも私、理解しなかったわけでございますが、……
  249. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 じゃもう一度言いましょう。とにかくアルゼンチンのとった態度というものは違法であり、国連の精神にも規定にも違反することは間違いないわけですね。しかしまた、国連にそれがすでに上程されてある以上は、イギリスが実力をもって艦隊、原子力潜水艦まで派遣をするという行為もちょっとおかしいと私は思うんですね。つまり、こういう問題はこれからしきりに起こり得る、今度のことを契機にして場合によって起こり得るわけですけれども、その場合に力には力をということでやりますと、際限なく紛争が広がっていく可能性があって、日本のような平和憲法を持ち、国際的な平和の存在をいわば生存の条件にしているような国家にとっては非常に迷惑なことになる。ああいう紛争が起きた場合に、大国が力には力ということでやるのは一体どうか、私はいかがなものかと考えておる、こういう質問です。
  250. 田中義具

    政府委員田中義具君) 今度の事件につきましては、現在の時点ではアルゼンチンが武力行使を行ってフォークランド諸島を占拠したというのが事件の発端になっておりまして、イギリスはそれに対して、その軍事占拠を排除するための艦隊を派遣しつつあるという状況でございます。いま日本政府がとっている態度は、そういうアルゼンチンとイギリスとの間に存在している紛争について、アルゼンチンが武力でもってこれを解決しようという形で行動に出たということについてそれを遺憾とし、早急に撤兵するように要請しているわけです。それからまた国連もそういう態度をとって、現在アメリカのヘイグ長官がその線に沿ってあっせんを行っているわけです。したがって、もしそういう国際世論、またそれに基づく外交努力が実ってアルゼンチンが撤兵すれば、現在、イギリスは現地に向けて艦隊を派遣しておりますけれども、イギリスがその武力行使をするという事態になるのは回避できるわけです。そういう観点から、昨日アルゼンチン側に対しても改めて撤兵を要請したというのが事実でして、現在までのところまだイギリスがこれに対して現実にそれを排除するための武力行使を行ったという段階にまで達していないというふうに判断しているわけです。
  251. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 武力行使を行うとこれは相当大規模な戦乱になる可能性があるわけであって、そういうときに国連が本当は有効に動かなきゃいかぬわけですね、したら大変なんだから。しかし、イギリスという大国が相当な艦隊を派遣し、潜水艦まで派遣してやっている。だから一触即発という状態ですね。まあ一種の軍事的危機ですね。そういう危機を管理するのが国連の任務であって、大国はできる限り忍耐強くそういう危機を回避することをしなきゃいかぬ。ところが、すぐ力をもってやる。これはサッチャー政権の性格かどうか知らぬけれども、これはむなしいことである、むしろこういう機会に、国連の安全保障機能を強化するように、そういう努力を世界全体としてすべきであるし、日本などはやはりそういう姿勢をとるべきであるというふうに私は思うわけだけれど、どうですか。
  252. 田中義具

    政府委員田中義具君) もちろん国連中心にこの問題が処理されることは最も望ましい状況だと考えますし、現にまず安全保障理事会でアルゼンチンに対して撤兵を求める決議が採択されたという形で、国連がまずアクションをとったということでございますが、その後、もちろんさらに安全保障理事会を中心にしてその決議を実施するためのいろいろな措置を講ずるという段階が次の段階としてあるわけですが、そこに至る過程で、現在のところ、イギリスに対してもアルゼンチンに対しても非常に友好的な関係にあり、かつ非常に影響力を行使できるアメリカ中心になって、国務長官を派遣して両国の間のあっせんを行っているという状況ですので、もちろん国連中心に本件が解決されることが一番望ましいわけですが、いまのところ国連の中でも、このアメリカのあっせん活動というのをまず見守って、その結果に応じて対応しようというような状況にあるというふうに報告を受けております。
  253. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 まあとにかく、最も望ましい方向に世界の政治は努力すべきであって、私は、いわば一種の国連の危機の一つだと思いますね。ですから日本外交などは、こういう機会に、国連強化しなきゃいかぬじゃないか、国連なんか何にも役に立たないんだ、つぶしちまえなんという方向に行かないで、それだから国連強化しなきゃいかぬじゃないか、そういう方向にやっぱり相当積極的に動く必要が私はあると思います。  私は、これはここで何度も言ったかもしれませんけれども、とにかく国連の予算が二年間で十三億ドルなんというのは、それこそトライデントの原子力潜水艦一隻分にも当たらない、こういう状態ですね。こういう状態をいかにして直すかということがいまの世の問題であると思います。それに対して外務大臣はどういうふうに考えられますか。
  254. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 今度のような異常事態が起きて考えさせられますことは、国連機能強化であり、国連の活動ということが求められると思うのであります。幸い国連安全保障理事会において、英国の提案ではございましたけれども、敵対行為の即時停止、またアルゼンチン国軍の即時撤退を求め、両国に対して外交的解決を要求する決議が採択されて、また安保理事会の中でこの決議に賛成した主要国であるアメリカが、直ちに両国の調停のためにヘイグ長官のあの努力が行われておるということは、これはやはり国連活動の一環と私は見ていいと思うのです。日本も両国に対して、このあっせんに応ずるようにという積極的な行動をとっておるわけでございます。幸いにして、イギリスがフォークランドの戦時水域を発表した、またアルゼンチンが距岸二百海里の戦争水域を指定した、そういうような両方の張り合いがございましたけれども、現在アルゼンチンはフォークランドのその水域からは艦艇を全部引き揚げておるという報告も受けておるわけでございます。こういう事態が本当に一触即発、戦火を交えるということになってはいけないのでありますが、ヘイグ長官の努力がどうやら先に明るさを見出すような状況にあるのではないかと、こう思っておるやさきでございまして、今後におきましても国連の一層の活動を求めてやまないものがございます。  従来、カンボジア問題あるいはイスラエルのゴラン高原の併合問題、その都度国連はそれにふさわしい活動をいたしておるわけでありますから、日本のように国連外交というものを重視しておる立場からいたしますと、今後とも国連機能強化のために一層の予算的な措置であるとか、あるいは活発な活動のできるようなそういう状況に持っていくことが好ましいと、このように判断いたします。
  255. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 ヘイグ長官がアメリカのひとり仕事でなしに、国連を代表するような形でやってくれることが望ましいし、そういう形を日本がつくる苦心をしていくというような方向が私は望ましいと思います。断固そういう方向に持っていかないと、こんな紛争ばかりが起きて、紛争の解決が力によってなされるということになると、われわれ日本なんという国は安心して生きていけないということになると思いますから、ここら辺でひとつ日本外交もふんどしを締めて、そして平和憲法、非核三原則が守れるような状況国際的に積極的につくっていく努力をお願いしたいと思います。  それから、ミッテランさんが来るわけです。この人はNATOに入っていないのですけれども、やはり西欧の有力な一員であって、西欧としては軍事的に大体一致した姿勢をとっているというふうに見えます。NATOと安保というものを比べてみると、やっぱり違うところがあります。それで、これは時間がないからちょっと言いにくいわけですけれども、NATOがヨーロッパの平和に貢献しているのと安保が極東の平和に貢献しているのとじゃ、大分私は安保ただ乗り論の反対でNATOの方が大きいと思います。だから、ミッテランなんかも大体そういうNATO的な安全保障線を一応支持しているわけです。  一方、日本が独自にいわゆる単独講和を結んだのだけれども、ソ連とか中国とかの関係を改善していったということが、これが現在の日本の平和や安全にずいぶん役に立っていると思う。これは安保の線から言うと必ずしもそれに沿ったものとは言えません。沿ったものとは言えないけれども、しかし日本独自で中国の問題を解決する、それから鳩山内閣時代にソ連との関係も改善するということが、現に日ソの漁業交渉が行われておるわけですが、どのくらい同本の安全に寄与しているかわからぬと思う。だから、NATOというものは何と言ってもヨーロッパ全体という厚みがありますけれども日本というのは非常に薄いですからね、実際、軍事的にも。ですから中国なんかの関係を改善する、ソ連との関係も緩和する。それが日本の安保に頼るという姿勢を否定しないけれども姿勢と同時にそういうものがなきやいかぬ。だから、私は日本の平和、安全というものはやっぱり独自な中国政策、ソ連政策を持つ。それから同時に、朝鮮半島の平和ということが非常に必要であって、今度の日韓の借款の問題などもこの前もお話し申し上げたけれども、これが朝鮮半島の平和にどう役立つかということを十分考えないと逆効果になるおそれがありますから、この点についてひとつ外務大臣、簡単でいいから答えてください。
  256. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 宇都宮委員が朝鮮半島の平和を希求されるお気持ちは十分理解ができます。私も劣らないほど朝鮮半島の統一平和を念願しておるものでございまして、最近における全斗煥大統領による統一の提案、あるいは北朝鮮側からもこの構想が提示されておるわけでありますが、残念ながら、食い違っておるために一向に進展を見ないということは残念でございます。しかし、こういう提案の繰り返されるということ、またそれに先立って両国の間で統一平和を願おうという話し合いのあった時点もあるわけで、具体的な構想で食い違うということは非常に遺憾でありますが、かねて来、国連の事務総長などのあっせんに期待することも申し上げておるわけでございまして、速やかに朝鮮半島が安定し、平和を取り戻すということは必要なことだと思います。日本の行います施策がそういう前提に立っておるのでございまして、宇都宮委員が御心配されるような、かりそめにも日本のやることが朝鮮半島における情勢の悪化に寄与するというようなことは私としては考えません。
  257. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 時間が参りましたからこれで終わります。
  258. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時散会      ―――――・―――――