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1982-04-01 第96回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月一日(木曜日)    午前十時二分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         稲嶺 一郎君     理 事                 大石 武一君                 鳩山威一郎君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 大鷹 淑子君                 中山 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 細川 護熙君                 宮澤  弘君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君    国務大臣        外 務 大 臣  櫻内 義雄君    政府委員        外務大臣官房長  伊達 宗起君        外務大臣官房会        計課長      恩田  宗君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省中南米局        長        枝村 純郎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省経済局長  深田  宏君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        外務省情報文化        局長       橋本  恕君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務大臣官房領        事移住部長    藤本 芳男君        文部省学術国際        局ユネスコ国際        部国際教育文化        課長       光田 明正君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十七年度一般会計予算内閣提出、衆議  院送付)、昭和五十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付)、昭和五十七年度政府関係  機関予算内閣提出衆議院送付)について(  外務省所管)     —————————————
  2. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  去る三月三十日予算委員会から、三月三十一日及び四月一日の二日間、昭和五十七年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  櫻内外務大臣から説明を求めます。櫻内外務大臣
  3. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 昭和五十七年度外務省所管一般会計予算概要について御説明申し上げます。  外務省予算総額は、三千三百五十八億五千百七十九万九千円であり、これを昭和五十六年度予算と比較いたしますと、三百四億八千六百九十八万九千円の増加であり、一〇%の伸びとなっております。  激動する国際情勢下にあって、有効かつ機動的な外交の展開を図るためには、外交実施体制を一層整備、強化する必要があります。この観点から、昭和五十七年度においては定員の拡充、在外職員勤務条件及び情報収集機能強化等格別配慮を加えました。特に外交強化のための人員の充実は外務省にとっての最重要事項でありますが、昭和五十七年度においては、定員七十二名の純増を得て、合計三千六百三十五名に増強されることになります。  また、機構面ではオマーンに大使館を開設することが予定されております。  次に経済協力関係予算についで申し上げます。  経済協力は、平和国家であり、大きな経済力を有するわが国世界の平和と安定に寄与し得る主要な分野であります。中でも、政府開発援助の果たす役割りはますます重要なものとなっており、このため政府は、従来の三年倍増に引き続き、五年間にわたる新たな中期目標を設定し、経済協力強化に努めておりますが、その一環として、五十七年度予算においては、無債資金協力予算を前年度より九十億円増の九百二十億円としたほか、技術協力関係予算、なかんずく国際協力事業団交付金を前年度比八・三%増の六百六十一億円とした次第であります。  このほか、海外で活躍される邦人の方々の最大の関心事一つである子女教育の問題については、全日制日本人学校二校の増設を図る等の配慮をしております。  以上が外務省関係予算概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、お手もとに「国会に対する予算説明」とした印刷物を配布しておきますので、委員長におかれましては、会議録に掲載されますようにお願い申し上げる次第でございます。
  4. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 以上で、外務大臣説明は終わりました。  この際、お諮りいたします。  外務省所管昭和五十七年度予算大要説明はこれを省略し、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 秦野章

    秦野章君 余り質問事項を申し上げる時間もなかったのですけれども、ざっくばらんなところでお答えをいただけば結構でございます。  今度の予算のうち、例の日本人学校というのがときどき話題になるんですけれども、在外日本人学校に使っている予算を国際比較してみますと、日本がべらぼうに少ないわけです。先進国の中で、外交官の数も少ないことは少ないんだけれども、民間人海外進出は大変なものです。それにもかかわらず日本は他国の三分の一とか、四分の一とか、五分の一とかいう予算額になっているんだけれども、多分、これは日本人学校の投資が非常に貧弱で規模も貧弱であるということがその裏側にあるんだろうと思うのです。大臣、今度の予算では、われわれの承知している程度は知れているんですけれども、どうも外務省歴代予算を取るのは余りうまくないんですよね。私ども見ている限りにおいては。何も、いまに始まったことじゃない。もう少し外政というものを重視し、予算を思い切って取るという腕を発揮しないと心もとない感じがするんですが、その一つの例なんですけれども、海外子女教育日本人学校予算総額で言ったらば、日本は幾らでしたか。
  7. 藤本芳男

    説明員藤本芳男君) 文部省関係で百二十八億、それから外務省の分は十六億でございます。
  8. 秦野章

    秦野章君 それで、アメリカはやや特殊なやり方をしているようだけれども、フランスにしても西独にしても、日本とは非常に差があるんですね、これに投じているお金が。これはわかっているんでしょうね。これは文部省外務省と両方の問題になろうけれども、これはわれわれも注意しなければならぬ問題だと思いますけれども、ひとつ格別要望をしておきます。  それから海外子女教育というものは、これは外務省の役人だけじゃないけれども、帰ってきての教育にみんな往生しているわけですね。これについて文部省は、外交官海外で働いた人たちが帰ってきて日本学校に入学することに困っているという実情に対して、公の態度で、通達その他で国内学校関係意思表示をしてますか。
  9. 光田明正

    説明員光田明正君) 毎年金国都道府県教育委員長教育長会議全国都道府県教育委員会指導部課長会議等でよろしく受け入れ方を改善するよう要望いたしております。
  10. 秦野章

    秦野章君 よろしくお願いしますという程度でうまいこといっているのかどうか、一部の私学その他では一生懸命やっているところがあるし、国公立ても大学なら京都大学がわりあいやってくれているというんだけれども、これは私はいま日本人学校に関連して言っているのだけれども、実は日本一般的国内勤務でも、子女学校教育のために単身赴任をしているというのが転勤者の七十何%なんです、統計を見ると。単身赴任というのは、うれしがるやつもいるかもしらぬが、家庭の崩壊みたいなものをもたらしているという日常のニュースを見ても、これは自分の好き勝手に転勤するんじゃないんだから、文部省としては単身赴任というものはほとんど教育のためだということを考えたら、義務教育あるいは義務教育に準ずる高校にしても、あるいは大学にしても、もう少し公の態度を持って堂々と指導してほしい。チョンガーで赴任したやっぱろくなことはないんです。そういう意味においてこれもまた要望なんだけれども、一般的に会議とかで抽象的に言ったって余り効果はないから、もう少し何か個別というか、積極的な態度をとれないかどうかということを、あなたも答弁し切らぬだろうから、上の方によく話をして、やってくれないですかね。これは教育の問題だけじゃなくてやっぱり日本の国民の一つの単位としての家族の問題である。そして、子供だけの問題じゃなくて家庭の問題であるということは間違いないでしょう。これひとつぜひ積極的な態度を、これも要望しておきたいと思います。  それから大臣、今度アメリカ行き大変御苦労さんでございましたが、日米摩擦ですね、これからまた一つ決断をだんだんしていかなきゃならぬと思うんだけれども、こういう問題が起きるときに警戒すべきは、右側のナショナリズムと左側のナショナリズムの台頭だと思うんですよ。どっちも過度のナショナリズムはだめだと思うんですよ。その辺のところ、そして特にいま一つアングロサクソンとはやっぱり日本協調していくという、明治以後の近代の歴史の中で、これはやっぱり腹の底に据えてかからなきゃいかぬ。私は外交路線としてはそこに基本があるというふうに思うんです。無原則の妥協じゃありません。しかし、協調という路線はやっぱりやっていかないと、戦争以後の歴史のみならず、明治以後の歴史を見てもへたなけんかをしたらろくなことはないというふうに思うんです。このアングロサクソン協調主義路線は腹に決めていくと、おのずから交渉の具体的な案も出てくるであろうというふうに思うんですが、大臣、その辺の基本路線は、政府の中でもこのごろは国際問題が各省にわたって広がっておりますから、いろいろやりにくいところもあると思うんだけれども、これは外交一元化外務省中心になってこの路線をやはり貫くということが非常に大事だと思うんですが、大臣いかがでございましょう。
  11. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 日本平和国家としていく上におきまして、特に秦野委員のおっしゃるように、アングロサクソンとの協調、これはもとよりでございますが、日本外交方針といたしまして、価値観を同じくする、自由と民主主義、この価値観を共有する各国との間で協調連帯をして日本外交を進めていくということは特に必要なことだと、秦野委員のおっしゃるとおりだと思います。
  12. 秦野章

    秦野章君 行き過ぎたナショナリズムが右からも左からも出てくるということについての警戒は大事なことだと思うんです。  それで、アングロサクソンとの協調というものは意外どこれが現実主義ではないのか。いい意味における現実主義ではないのか、ここのところは腹を据えてかからぬと、日米交渉あるいはEC関係もそうかもしれませんけれども、変なふうに持っていかれる危険がある、変な言動も多少出ておりますから私は警戒意味で申し上げるんです。  それから、やはりそういう腹を持って決めていく段階では日本世界の優等生だと言われる。西側はいま三千万の失業者が出ると言われているような状況の中だから、日本はある意味経済は強くなったのだから、強い者は弱い者を多少めんどう見るみたいな気分も腹の底になくちゃならぬだろう。理屈を言えば切りがない。経済摩擦は多少は永遠にあるわけなんだけれども、理屈を言い合っていてもやっぱり切りがないというようなところもあるから、基本路線を前提に決断すべきものは決断していくべきではないのかというふうに思うわけです。これまた抽象論ではありますけれども、一つの哲学というか、背景の問題としてそういうふうになると思うんです。  それからまた、日米交渉イコール農産物交渉でもないわけですね。そういう基本的な考えのもとに立って判断をしていけば、具体案だって出てくるというふうに思うんですよ。日米交渉イコール農産物交渉みたいに与野党挙げてやっておったってしようがないんだ。そこらの問題ももっと総合的な立場に立って、たとえば牛肉を自由化したらアメリカからよりもオーストラリアが来ちまうとか言う。うまい肉は日本がつくるが、ホテルの肉や大衆肉アメリカの安い肉でもいいんだ。と言って、しかしその結果オーストラリアからも入ってしまう。しかしそんな細かなことを言わないんだというような次元で判断できないか。戦後の状況を見ても、われわれはやっぱりアメリカに占領されてよかったのです。ソ連なんかにされたらたまったものじゃない。そういうことを考えても、まあ飯もくれてめんどう見てくれたし、今度日本が強くなったのだから、武士の情けみたいなこともあるので、少し大きな腹で決断をしていかなきゃならぬと思うが、結局これは外務省中心でなきゃだめだと思うんですよ、外交一元化路線で。これは大臣大変苦悩に満ちたお仕事をしていただかにゃなりませんが、総理を補佐されて、その辺のところはひとつ決断を私は要望しておきます。  何か御意見あったら承りたいと思う。
  13. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいまの秦野委員のおっしゃることは、わが国の大きな外交路線だと思います。外交を推し進めていく間に、個々の問題でつかえる場合があろうかと思いますが、秦野委員のお考えのようなことをわれわれも念頭に置きながら、個々の問題について理解を求めて、大きな方針を誤らないように外交をやっていかなければならないと、そのように考える次第でございます。
  14. 秦野章

    秦野章君 経済摩擦背景にやはり文化とか社会体質とかといったようなものの違いがあるんだという説もあるし、また、それはある程度事実だと思うんですね。日本という国は外国から入りにくい国だという海外の評価があることも事実です。入りにくいといいことになっているのは、向こうが悪いのかこっちが悪いのか、両方あろうかと思うんだけれども、日本文化社会体質というものは、向こうから見ると入りにくいという現実は、いい、悪いは別としてある。この現実日本封鎖性というか島国性というものをやはり擁護するようなかっこうになっていっちゃう、これはやっぱり長い目で見て非常にまずいんで、私は四年前から例の国公立大学外国人を正式に任命するというようなことをやるべきだということを言い続けて、今度は国会を通るようなことになっていくんだろうと思うんで、野党の大部分の方も賛成をしていただけるような案だと思っているんですけれども、これはアメリカ大学先生なんかに聞いても、日本に行きにくいようになっているということを盛んに言うわけですよ。日本で直すべきことは直さにゃいけませんから、この法案はぜひ通すような方向にいきたいと思うんだけれども、やはり大学先生だけじゃなくて、ほかの者も日本に入りやすいというような開かれた社会というようなことであることが大事だと思うわけです。これは文部省仕事になっていくんだけれども、外務省もできればやっぱりそれに協力していって、このごろノーベル賞も少しくたびれたようなのが、余っているようなのがあるらしいけれども、しかしノーベル賞ノーベル賞だから、そういうのを日本国公立大学に教授として任命するとか、そういうことをやっていけば、それ自体日本島国性をだんだん解消していくムードづくりに役立つというふうに思うんです。  そういう点については、ひとつ文部省だけじゃなくて外務省文化交流橋本君なんかも、これひとつしっかり、大いにやってもらわにゃいかぬところだけれども、それと似たようなことで姉妹都市というのがあるんですが、しばらく前まではアメリカの町と姉妹都市になるのが得意で、このごろは田舎の方の何も聞いたことのないような町と姉妹都市になっていろいろやっている。このごろは中国がはやって、中国大陸のまあ私なんか余り知らないわけのわからないような町と姉妹都市を組んでうれしがっているような地方自治体もずいぶんふえてきた。姉妹都市それ自体は悪くはない。ところが、姉妹都市というものを進めていく上で、これは中央官庁がやる仕事じゃないといえばやる仕事じゃないんだけれども、資料を取りまとめるというようなことはどこの役所もやってないわけだ。日本はいま姉妹都市が大変偏在しているんですよ。韓国なんかとは、どういうものか日本はやらない。私は、ちょっとやったらいいと思うんだ。余り毛嫌いしちゃだめですよ。そういう点で、資料というものをまとめるところがないんですよ。これは文化交流一つの姿なんですよ。何でも政府がやればいいというものじゃないから、それは自治体がやるのはいいんだけれども、たとえばアメリカなんかで姉妹都市開発途上国アメリカのある町がやる、そうすると開発途上国開発援助をその姉妹都市を通じて政府の開発庁が助成金を出してやらせるというようなことをアメリカはやっているわけですよ。アメリカのやっていることも、いいことはまねしたらいいと思うんですけれども、援助だって政府手一点張りでやる必要もないんだし、何か姉妹都市というものに中央が全くノータッチである。これは市長会ですね、こういうところが若干まとめている程度で、これからの文化交流考えていくときにちょっとさびしいんですよね。外務省はちょっとここらへ目をつけてもらいたいと思う。それによっていろいろな手がかりが出るし、政府で気がつかないようなことに気がついてくるということもあるんですよね。そしていかにも偏してもいる。自治体がやることはほうっておけばいいと言うたって、アメリカ中国ばかりやっておってもこれはどうかなという気もするんです。  恐らくいま姉妹都市は三百五十か四百ぐらいできたと思うんだけれども、意外と地方の人たちは、できると、まあこのごろは金もあるせいか観光旅行を兼ねて行ったり来たりやるわけだ。向こうに水害があったらこっちは見舞いをやるとか、いいことですよ。ただ国立場としては偏しない方がいいと思う。役所がどこでやるか、これは大臣、私もよくわからないんですけれどもね、自治省でもなさそうだし、外務省がこのごろ国際交流とかいろいろなことを言い出すから、やっぱり外務省なんかもノータッチではうまくないんじゃないかという気もするんだが、これは研究して、政府としても全く放置していいかどうかという点について、いま少し前向きに考えたらどうだろうかというふうに思うんです。  それからこの間、自民党の江崎委員会、これは中山太郎先生もいらしたんだけれども、フランスでミッテランが、日本文化を見直すみたいな話が出たようですが、というのは、私がこの間会った弟子丸泰仙という禅坊主がたった一人でヨーロッパへ出かけていって、禅の普及をやって、ヨーロッパ禅教会というのをパリのちょっと郊外につくって信者はいまヨーロッパで三十万人と言われている。それは禅道普及伝道所が全欧で八十ヵ所ある。日本の駐仏大使は知らないんですよ。これなんかはやっぱり日本を理解させるために、また文化交流という点から目をつけ、目を広げていかなきゃいかぬ。出先大使館国会議員なんかばかり見ておってもだめなんです。要するに民間の方に目を広げていって、そこで動向というものを見きわめ、状況を見て本省にも報告させ、いいことは、さらに広がりを期待する。そして文化というものはもとより権力志向でもないし役所志向でもないわけでしょう。そういう問題であればあるほど、私はこちら側の姿勢が大事ではないのかというふうに思います。フランスあたりでは大変若い人たちが、女子大生だとかバレリーナだとか、そういうのが禅教会に入ってやっている。私も目のあたりにしてびっくりしたんだけれども、今度赴任した内田大使に私はちょっと言っておきましたけれども。経済摩擦はいろいろあるけれども、その背景にはそういう問題への着眼があるわけだ、そういうことも御参考のために申し上げておきたいと思います。  それから引き続き、余りはやらぬ言い方かもしれませんけれども、国連外交というか、国連機能国連外交というものが多少色あせた感じがするのだけれども、国家国家の対立以外にやっぱり国連があるということは忘れられない一つ存在感を持っていると思うのだけれども、ただアメリカが銭出さないとかいろいろなこともあって、またそれなりの理由も若干ありそうな点もあるのだけれども、ここでひとつ、国連職員日本人は一体何人入っておるのか伺いたい。
  15. 門田省三

    政府委員門田省三君) お答え申し上げます。  ただいま国連のいわゆる専門職以上の職員が二千八百九十四名おります。そのうち、日本から出ております職員の数は八十名でございます。
  16. 秦野章

    秦野章君 ちょっとわかりにくいですね。専門職というのはどういうのかわからぬが、階層別で言うたら、たとえば国連事務総長は小さい国から出ているわけだけれども、その次長というのがおるでしょう。次長は何人ぐらいおるのか……明石君といったか、一人、日本人がいましたね。その下あたりランクでどのくらい入り込んでいるのか、これは、入り込むについては外務省が推薦するのか、どうなっていますか。
  17. 門田省三

    政府委員門田省三君) 次長及びその下に次長補という二つのランクがございまして、これらがいわゆる国連高級職員のポストというふうに理解されております。この次長の数は三十名、それから次長補は三十一名ということになっております。わが国からは次長に一名出ております。この高級職員を送り込むに当たりましては政府が所要の推薦あるいは働きかけ、これをいたしております。
  18. 秦野章

    秦野章君 政府が推薦するようだが、比率ですね。日本人職員が入り込んでいる比率はほかの国に比べていかがですか。先進国余りそういうがんばりはしないところなのかもしれないけれども、どうですか、それ。
  19. 門田省三

    政府委員門田省三君) 比率につきましては、先ほど申し上げました国連職員専門職以上の場合には約二・七八%ということでございます。高級職員、つまり次長または次長補ということにつきましては一%強ということでございます。
  20. 秦野章

    秦野章君 どうですかね、これ少ないんじゃないですか。金も結構出しているんだけれども。
  21. 門田省三

    政府委員門田省三君) 仰せのとおり少ないと考えております。
  22. 秦野章

    秦野章君 それでこれは大臣にお願いですけれども、日本外交態度として、国連なんかに職員をやっぱり一人でもよけい送り込んでおく、できれば階層別に特に幹部も。日本大国大国というけれども、総合的には中級国家でしょう。やはり国連あたりに人を入れておけばいろんな情報もとれる。そういうことについて外務省の努力は余り十分でなかった。国連に人を入れていろんな情報をとる、いろんな仕事をみつける、今度は国連にこういう仕事ができる、そうか、それなら事務所を日本に置いてもらおうかと、こういうようなことをやっぱり少しやっていった方がいいんじゃないか、やるべきではないか。ヨーロッパには、御承知のとおりジュネーブには国連欧州本部というのがあるけれども、アジアにはアジア本部はないわけです。ただ、タイ国なんかが環境上、安全保障上大変国際的な感覚があって、国連機関を早めに持ってくるというようなことをやっているし、まあ日本アジアではやっぱり何だかんだ言っても負担能力もあるから、そういう方向に努力をして、国家条約で中立国になっているオーストリアは一九七八、九年ごろからか国連機能をどんどん引っ張ってきた、これはワルトハイムが出ていたせいもあるんだけれども。私ヨーロッパへ行って驚いた。国連ニュータウンというのをドナウ川の左の岸にぶっ建てたんですよ、でかいビルを。そこへ家賃は大方ただで、どんどんいらっしゃいといって国連機関を引っ張っているんだ。米ソの谷間に中立国を維持するあのオーストリアのクライスキー首相の構想だと思うんだけれども、元外務大臣ワルトハイムを国連に送り出し、そして国連機関を一生懸命引っ張ってきている。これはいいですよ、だれが考えたって。国連機関を持ってきておけば爆弾も落としにくいし、安全保障政策なんです、一つのね。  そういう努力を日本政府は、言うならば大臣、私は政府のプロジェクトとしてもおやりになった方がいいんじゃなかろうか。こんなもの知れているんですよ。オーストリアに聞いてみたらお金は一千億かかっていないんです。もっとも地代なんかも日本より安いけれども。高層ビルを建てて、そういうことを日本でもやっぱりやると、これは野党の人たち余り反対はできぬ、賛成してもらえるだろうと思うのだが、場合によっては国会政府を鞭撻するために全体の決議をしてもらってもいいんだけれども、ひとつ理事会でも検討してくださいよ。国連機関を重視し、いろんな機関を日本にも持ってくるというような努力をすることはちょっと遠い道のようだけれども意外と近い、やっぱり安全保障政策になるんだ、そしてまたいろんなことに便利なんだ。いろんな国の人が日本にやってくる。国際会議場もやっぱりないではないか。アジアで国際会議場で一番大きいのはマニラだと、日本じゃないんだと、こんなみっともない話あるだろうか、どこかの道路つくるのをちょっと延ばしても国際会議場のでかいのをつくって、そして安く使わせれば何ぼでも国際会議できるんです。  そういうような方向に、これはちょっと外務省次元だけじゃないんだけれども、政府ペースとしてそういう構想を出すことは私は大変国民にも理解があるだろうし、国際的にも評価を受ける。その金は大したことはない、建物は千億が二千億だ、国際会議場つくったって大したことないですよ、いまね。そういうことを政府として、外務省中心になって一つの看板としてやってそれを実行していくということは、これはいろんな摩擦を解消することにも通ずるし、言うならば高度の文化交流一つのあり方だと思うんですね。マニラよりも国際会議場が悪いなんというのは話にならぬ。これは同時通訳でもって堂々としたそういうものをつくって、それから事務所をつくって、来てくれれば家賃は余り要りませんよと。こういうような方向でひとつそういうものを掲げて、そして一年二年じゃできないにしてもできますよ、これは。大したことないですよ、金の問題は。大臣どうですか、そういう方向を。そして、長い目で見てそのことがいろんな波及効果を持つんですよ、いろんな波及効果がある。いろんな会議日本でやれるんですよ、国際会議を。国際会議なんかうんとやるようにならなきゃだめなんですよ。それで、いろんな目の色の変わったのや肌の色の変わったのがいっぱい集まってくるのはいいことなんですよ。そういうことを、来年と言ったって無理かもしれぬが、一つの計画をお立てになってぜひやっていただきたい。これは異論のないところだと思いますので、いかがでございましょうか。前から私は外務省に言っているんですよ、大臣の耳には入っていないかもしれないけれども。
  23. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 大変いいお話を承りました。外務省のみならず、政府としていまの御所見を踏まえて国連機関を誘致をする。きょう前段のお話で日本が閉鎖的だ、入りにくいと、そういうことに対しても国連の各機関をどんどんふやしておけばその面にも大きく寄与するでありましょうし、また現在の国連職員、分担金は三番目だがその分担金の割合でいけば最小限度倍ぐらいは日本人職員がおっていいんですね。八十というのを最小限度百六十おってもいいぐらいな国連に対して分担金も出しておると。また、その他の国連各種の機関を見ましても、どうも秦野委員のおっしゃるように日本人職員の数が少ない。まあ国連あるいは国連の機関にどんどん日本人を送っておくということが日本を理解してもらうゆえんでもあるし、また日本国連機関をたくさん置いておくことが日本に対する理解を深めてもらう、あるいはお話のあったようにそのことが日本安全保障上にも寄与すると、大変結構なお話を承りましたので、私もまた政府の中で大いにこのような方策をとることを進めてみたいと思います。
  24. 秦野章

    秦野章君 次に、海洋法会議がいま開かれていますが、海洋法会議がまとまるのかどうか、かなりむずかしいような話もあるんだけれども、海洋法の問題について将来国連機関をつくるというような場合には日本に持ってくる、そういう立候補をすべきだというように思います。  それからいま一つ、エネルギーについてまだ国連の国際機関がないんですよ。これについて私も通産省に聞いてみたんです。そうしたら、まだないんだと。大来さんに聞いたら、確かにそういうものは日本に来るといいがなあという話でしたが、外務省はどうですか、そこらの問題は。立候補は早くじないとだめなんです。そういう問題についてさしあたり私が気がついたのは海洋法の問題とエネルギー問題なんだけれども、これは確かに国と国との利害が、たとえば産油国とそうでない国とか、まあ南北問題、東西問題いろいろ複雑ではあるけれども、いわばそういう国際機関を将来つくっていかなきゃならぬという方向であることは間違いないらしいので、もしそうであるならば日本へ持ってくる、そんなものは事務所があるよというぐらいのことで立候補する必要があると思うんだけれども、これはおくれちゃだめなんですよ。国連局あたりどうですか、そこらの情報なり、あるいはまた展望なり意欲なりは。
  25. 門田省三

    政府委員門田省三君) ただいま御指摘ございましたように、新再生可能エネルギー、これは石油を含むのでございますが、石油資源の枯渇を見通した上での新しいエネルギー源を開発しようということで、昨年ケニアのナイロビで国連主催の会議が開かれたわけでございます。その際にも、この問題を強力に進めていくためにはやはり新しい機関——事務局を含むわけでございますが、これを設置する必要があるという意向がかなり強かったのでございますけれども、最近の各国に共通の財政的な制約ということがございまして、特に先進国あるいは大きないわゆる超大国を含めまして、新機関の設置というものには消極的な態度であったということで、まだこの新しい機構をつくるという点については軌道に乗っていないというのが実情でございます。  しかしながら、ただいま委員が申されました御趣旨、これは十分承らせていただきまして、今後念頭に置いてまいりたい、かように考えております。
  26. 秦野章

    秦野章君 そういう機関を将来国連でつくる場合に、ぜひひとつ必ず立候補して日本に持ってくるんだというぐらいの運動というか、意欲を持って進めてもらうことは大変大事だと思いますの。で、ひとつこれは格別要望しておきたいと思います。一  それから、少し話がまたちょっと戻るのですが、文化交流の関連で、例のイギリスから年間四十人か若干の費用を負担して、文部省が英語教師を呼んでいる。キングスイングリッシュか、イギリス様が一番いいらしいんだけれども、それを呼んでやっている。これはたった四十人ばかりでなく、向こう失業者が多くて弱っているんだからもっと呼んだらいい。それから、あんまりキングスイングリッシュばかり呼ばないで、アメリカのイングリッシュでもいいんで、若干日本人の英語の先生の就職問題に影響はあるかもしらぬが、向こうはすごいですからね、就職は。だから、四十人なんというのは話にならない。けたが違うのかと思うんだけれどもね。四千人ぐらいなら話はわかる。アメリカから一万人とかね。こっちの学校先生が困るということもあるから、そう大量にはいかぬにしても、これは、日本に入りにくい体質ということがあるということに対する一つの手だてとして、中学校、高校、まあ大学でもいいが学校先生が、アメリカ人、イギリス人、もっとうんと来ていいんですよ。そして一年日本語やって、あと二年間こっちにいる、三年ぐらいの計画でできるんです。昔は旧制中学はいたんですよね、英語の先生が。私らはイギリス人がいたのです。だんだん経済は拡大再生産で世界じゅうに広がって、文化は縮小再生産していったという、教育世界なんか特にそうだ。東京大学だって外国人が教えていた。そういうことを考えるとイカサマおくれている、その辺がね。文化というものは国によって違うし、個性があっていいんだけれども、しかし国際化時代というものを迎えたら、お互いに理解する態度をやっぱり積極化しなければだめなんで、経済摩擦背景にそういうことがあるからうまくいかない。だから、文部省外務省が相談をして、英語の先生なんかはちょっと日本もしんぼうして——先進国三千万の失業者は大変ですよ、それはもう、ちょっと想像つかないですよ、日本のこの完全雇用社会では。それは日本だって失業者はあると言えばあるんだけども、ちょっと落とせば皆就職できるのを落とさないでがんばっているから。とにかく飯が食えない、職がないというこの人間の原点的な体験というもの、飯が食えない、口がない、こうなってしまうと、これはもうとにかく戦争でもいいや、ヒトラーでもいいや、共産党でもいいや、こうなるんですよ。そういうものなんです、人間というものは、食うということになったら。だから、政治の世界では失業とか飯を食うという問題は、歴史を分けるんですよ、民族の。そこのところは現代日本はちょっともう完全雇用、一〇%以上の成長率を十年以上もぶっ続けたという人類始まって以来の高度成長の中では、この感覚はゼロである。しかも、水ぶくれの国をつくって国民をつくって、みくな人間ができてない。ある程度緊張した人間をつくっていかなきゃいかぬけれども、緊張なんかあるわけない。だからいまの失業者三千万だ千万だという実感が私はないだろうと思うんですよ、日本人には。だけれど、これは大変なことなんです。私は、何も先進国を西側の一員だというので同情ばかりしているんじゃないけれども、政治というものはやっぱり飯を食わせるということがなきゃだめなんです、職を与えるということがなきゃだめなんだ。そうするともう歴史が変わっちゃうんだから。  そういうことを考えると、ちょっとがまんをしてでもできることは、アメリカ大学を出た若い青年が口がないというのなら日本に来いよと。色が黒くたって構わない、三年間英語の先生やってみなさいと。政府自治体で金を四、五百万出せば一人間に合っちゃうんです。何十億か何か知らぬけれども、とにかく千人ぐらい平ちゃらなんです。それで、千人ぐらい日本が助けても向こうの失業にあまり影響ないけれども、気分というものが違いますよ。これがもう摩擦を一切解消し、日本の体質というものを変える目を向こうに持たせることになる。これはやろうと思えば、文部省外務省予算を取ればわけないですよ。この予算は本当に大したことないんですよ、千億なんか要らないんだから。五十億、百億、二百億。四十人なんてみみっちいことやらないで、せめて来年は最低千人、できたら一万人。フランスからも来い、西ドイツからも来い、こっちは数少ないだろうけれども。そういうふうにしてやったら非常に安いんですよ、長い目で見て。だから、この次はもうこれを直すということをひとつ確約してくれませんかな。そして、もっと思い切ってふやしていく。これはいろんないい意味の波及効果があるというふうに思うんですよ。大臣いかがでしょうか。私は間違いないと思うんですが。それは米がどうの、ミカンがどうのということも大いにやったらいいけれども、その根底になる体質問題だから、長い目で日本のためにいいことじゃないですか。
  27. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 特にお話の重点は、アメリカから英語教師をどんどん日本に入れろ、こういうお話であったと思うんですが、お話の基調になっておる日米摩擦あるいは日欧摩擦の一番大事なところは、秦野委員のおっしゃるとおりの大量の失業者、これが摩擦の最大の原因だということは秦野委員のおっしゃるとおりですね。そういうことがお話の基調にあったわけでございますが、それもわれわれとしてよく考えなければならない問題であり、またこの英語教師をいまイギリスだけ、それもきわめてわずかな人間である。これをアメリカに拡大して思い切って英語教師を日本に入れる。これがいろんな効果があるぞということは大変傾聴いたしました。また、明年度以降のこの問題に対してどう取り組むか、文部省の方とも協議をいたしまして御趣旨の線に沿って努力をいたしたいと、こう思います。
  28. 秦野章

    秦野章君 大臣外務省予算をとるのが下手なんですよ。われわれもできるだけ協力するけれども、ぜひひとつこれは一つの目玉ぐらいにお考えいただいて、ほかにも目玉いっぱいあるけれどもお願いをしたい、やってもらったらいいんじゃないかと思うんです。そしてそれはかなり効果がある。アメリカの英語じゃだめだなんて余りしゃれたこと言うことはないんですよ。アメリカにいま日本の商社の若手の猛烈社員その他が恐らく三万ぐらい行っているんじゃないかと思うんですよ。これは通産省統計なんか見ると相当行っている。これは何もキングスイングリッシュばっかりじゃない、そういうことで突破口として思い切ったあれをやれば、それは日本人がいいんじゃなくて、向こうから日本へ来たアメリカ人が日本を見て日本を理解する、こういう効果の意味で非常にいいんだろうと、こう思うわけです。ぜひお願いをしておきたいと思います。  それから臨調といいますか行政改革、これはまあいままではある程度大蔵省の上に乗っかったような臨調があってそれも悪いことじゃない、財政再建でいいかもしれませんけれども、やはり本当の臨調、行政改革というのはトータルとして人を減らす、ふやすところは優先順位でふやし、要らないところはつぶす。チープガバメント、こういう論理が明確にならぬといかぬ。私は福田内閣のときに行政改革論があって総理に国会でその質問をしたら、そのとおりと、こう言ったけれども、これは大体間違いないだろうと思うんです。だけれども最近のを見ていると、何だか臨調というものが、その辺の人を減らすとか役所を整理するとかということが、どっかすっぽ抜けてしまったような感じがするが、まあ時間がかかるのかもしれませんけれども、しかし、少なくともそういう理念の方向で考えていったときに外務省はわりあいいい株なんだ、これはふやさなきゃいかぬ方だから、手が足らぬのだから。  そこで、きょうは私の意見もいろいろあるが余り詳しいことは申し上げませんけれども、外務省の機能の中でやっぱり情報収集機能というものが非常に弱いということは間違いない。これからの日本考えたときに、国内情報を取り損なって日本がつぶれるということは私はないと思う。海外情報、国際情報を取り損なってひどい日に遭って危ないことになったということはあり得るわけです。御承知のとおり、釈迦に説法で申しわけないけれども、南樺太を拾った話というのが外交秘話の中にありますね。樺太はとてもソ連はくれないだろうと小村外交考えた。小村寿太郎というのは偉い外務大臣かと思ったら、やっぱりミスもあるんですよね。ところが、実は当時帝政のニコライ二世がイギリスの大使としゃべったときに、まあ要求されりゃ樺太はやらなきゃしようがないかもしらぬなという情報を、当時の外務省の石井局長が宴会の席でとって、それはえらいこっちゃというのでぱっと電報を入れた。アメリカからも別の似たような情報をもらったということで、樺太をよこせということで南樺太を拾った話ということで外交秘話になっているわけです。  だから、外交の問題というものは情報をどうとるかという問題、これは下の方もあるし上の方もあるし、そういう問題については占領下の外交でずっと今日までやってきて、外務省というものはそういうことについて必ずしも得手でもないし、それが重点だとも思ってない。アメリカに聞けばわかるみたいな話が結構あるわけです。また、聞かなきゃわからないこともあるんですね。北方四島に軍隊がいたってちっとも日本じゃわからない。横っちょから飛行機で見たってよくわからないから、アメリカの宇宙衛星からもらった写真を見せてもらうのだけれども、これはいい写真は見せてくれない。あたりまえです、秘密なんか守れないんだから、日本はろくな情報はくれませんよ、アメリカだって。そういうことは独立国としてエゴでも何でもない。日本が独立して平和と安全に国際社会に生存を全うするためには世の中のことがわからにゃいか海、世界のことが。その情報というものがだめなんですよね。出先の外交官の数は少ないし、それで五千人体制だハチの頭だと言っているけれども、あんなもの十年たったって二十年たったって、なりはしませんよ。そこで臨調にひっかけて、この問題をやっぱり打開していかなきゃならない、私はそう思うんです。そういうことで部内でも私ども相談をしていきたいと思うんですけれども、外務省も、そこはかとなく理想的な日本の国益あるいは国際社会に生存を全うするための、外務省というものほかくあらねばならぬということについては、内々ひとつ検討してもらいたいと思います。これは、一外務省の問題というよりも日本の国の問題である、あるいは世界の問題である、そのくらい考えていいですよ。外務省なんか局ふやそうが何しようがそんなものへっちゃらですよ、どこかつぶせばいいんだから。そういうふうにやらないと行政改革じゃないと私は思います。これは余り具体的にはきょうは言いませんけれども、ひとつ内々その覚悟で研究してもらいたい、これは大きな政治の課題です。この荷物をいまの鈴木内閣がしょってくれるかどうかわからぬけれども、ひとつよろしく御検討だけはしていただきたい。理想的にはこういうものが要る、こうあらねばならぬと、よその外務省を見ていてわかるのだから。情報だといったら何かスパイみたいなことをすぐ考えるけれども、情報がなかったら、盲目が高速道路を歩くようなものですよ。盲目が高速道路を歩くようなことはできないんで、やっぱり世の中のこと、世界のことがわからなければ、平和も安全もへったくれもないわけだから、結構、国家というものはエゴなんです。これはもう未来永劫変わらないんです。平和愛好国だハチの頭だと言ったって、そんなことはあるわけない。下手まごつけば侵略だというのが現実です。人類始まって以来人間の本性なんていうものは変わるわけないですよ。技術は変わり、学問は進んだと言うけれども、人間はやっぱり、男は女が好きで名誉が好きで、お金が好きだ、この本性は変わらないという人間の性を神様がこしらえたのだから、だめなんだ。そういうことで私は非武装中立なんかでいけるとはゆめ思いませんがねひしかし、そうかといって、こっちからしかけることはない、しかけちゃだめだ。しかけないけれども、平和と安全でなきゃ日本そのものがもたないんだから、これだけ国際依存をしたんだから。そういう意味において、いま申し上げた問題はひとつ内々の御検討をしていただきたい、このことを最後に注文して、このくらいでやめます。
  29. 松前達郎

    ○松前達郎君 最初に、「昭和五十七年度外務省予算重点事項」という紙をここにもらったわけですけれども、その中で特に五十七年度の予算としてプラスになっている面、前年度に比べてプラスになっている面、それを見てみますと、「政府開発援助(ODA)の拡充強化と効果的援助の実施」という点で非常にプラスになっている面が一つありますね。それからもう一つは「広報文化活動の展開」、特に「国際文化交流事業の展開」、これらについても一二・四%ぐらいのプラスになっている。まあ、こういうふうなことなんですが、最初にその「ODAの拡充強化」さらに「効果的援助の実施」ということに関して、具体的に一体これはどういうものが新たに盛り込まれているのか、それについてまず最初にお伺いしたいと思います。
  30. 柳健一

    政府委員(柳健一君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、五十七年度の予算政府原案におきましては、一般会計分といたしましてODAは四千四百十七億円、対前年度比一一・四%増を計上しております。この中身は二国間贈与が二千四百七億円になっておりまして、さらにその中がいわゆる私どもが無償援助と呼んでおります経済開発等の援助、これが九百二十億円、これは発展途上国に無償で供与いたしまして、学校を建てましたり、病院を建てましたり等々する資金でございます。それから食糧増産等援助、これは二つに分かれておりまして、食糧そのものを供与するいわゆるKR援助というものと、それから食糧の増産に役立つような農機具とか肥料とかそういうものを供与する増産のための援助と二つございますが、これが合わせまして四百九十六億円、まあ主な点を申し上げますとそういうことになっております。それから、国際機関への出資拠出でございますが、これは一般会計及び国債と両方ございますが、合わせて二千二百九十七億円、さらに借款は、これも一般会計と財政投融資と両方から成り立っておりますが、借款で五千二百八十八億円、こういう形になっております。そこで、いまの国債及び財政投融資も全部合わせまして五十七年度の事業予算の案は総額で九千四百十八億円、これは対前年度比が六%増となっております。  次に、私どもが五十七年度の予算、特にODA予算で重点分野として考えておりますのは、ただいま御指摘がございましたが食糧、保健医療とか、家族計画と申しますような発展途上国の住民の生活向上に直接裨益するような基礎生活援助ということ。それから、発展途上国の国づくりの基礎となる人づくり協力、それから効果的な援助を実施するための援助評価、この三つに分かれて、三つが私どものODA予算の重点分野と、こういうことになっております。
  31. 松前達郎

    ○松前達郎君 いまの、金額的には確かにプラスになって重点的に行っていくということでしょうけれども、いままであちこちで私いろいろ見ていますと、たとえば学校を建てるとか病院を建設する、あるいは医療サービスを援助するとかいろんなことが行われているのですが、「効果的援助の実施」というふうにここに書いてあるんですけれども、私はこの効果的な援助が果たしてできているかどうかというんですね。病院を建てて非常にすぐれた日本の医療機械を持っていって置いてあるけれども、実際に使える人がいない、医師がいないということもありましょう。あるいは学校を建ててみても、その建物はできるんですが実際に実効的に教育活動が行われがたい、非常にそれがスムーズに行われていない。特に技術的な学校、そういった問題で何回か実例があったわけですね。ですから、金を投入すればそれで済むのだという考え方じゃなくて、やはりそれに対してフォローをしながら実効が上がるということを努力しないと、せっかくつくったものが全部効果的に使われない、こういうことになるんじゃないか、こういう実例がもうあっちこっちであるわけですね。ですから、そういうことに対して果たして外務省として今後どういうふうに対応していくのか、これについてちょっとお伺いしたいんですが。
  32. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ただいまの先生のお言葉ではございますけれども、実は私どもわが国の実施しております援助を分野別に分類してみますと、いわゆるインフラ、社会インフラ部門でございますね。これは道をつくったり鉄道をつくったり、それから港をつくったりとかというそういう社会インフラ部門とか、農村、農業開発部門でございますね。それから保健分野と、こういうのがもう大宗を占めておりまして、私どもの考え方といたしましては、こういう分野が直接、何と申しますか発展途上国の住民の生活の安定と福祉の向上につながるものではないかということを考えまして、実際にいろいろと努力いたしておりますのは、援助を実施する際に事前に被援助国とも十分協議する。実は現在では、もう主要な援助国との間では年次協議と申しまして、定期的に協議をするという場もつくっておりますが、あるいはまた調査団を派遣するとか、そういうことをしながら、私どもの力の及ぶ限り発展途上国側の真のニーズというものを把握するようにという努力をしておることが一つと、それからもう一つは、これは最近この二年間ぐらい特に力を入れてやっておるのでございますが、援助が終了したものについてのフォローアップあるいはその評価ということをやっております。過去二年間ぐらいの間にASEAN諸国を中心としまして、すでに幾つかの国について経済協力案件の評価をいたしました。ただいままでのところは、これはやっぱり相手国の発展段階の状況によっていろいろ違いますし、かつ自助努力という問題がございます。なるほど相手国側の手当てをしなきゃならないという問題もあって、若干そういうことで不十分であったりすることもありますが、概して私どものいままでの評価ではうまくいっているのじゃないかと、こういうふうに考えております。  もちろん御指摘のように、所期の目的が必ずしも十分に達成されてないというプロジェクトもございますから、これにつきましてはさらに相手国とも十分協議をしながら、さらに改善していきたいと思っておりますが、大部分が、うまくいってないというようなことは私どもないというふうに考えております。
  33. 松前達郎

    ○松前達郎君 まあ会議等ではそういうふうに出てくると思うんですよね。ところが現実にそこに行ってみて、そこにいる人たちに実際どうなっているのかと聞いてみると、なかなかそう簡単にうまくいっているとは言えないというふうな答えが必ず返ってくるわけですね。ですから、そこのところまでフォローしてひとつ調査をしていただいて、うまくいってないところがあれば、これは大したことないですから、すぐ対応できるような態勢をひとつつくっていただきたい、まあこういうふうに思うんですが、とりわけその中で重要なのは、これは恐らく外務省がやること、あるいは文部省も関連するかもしれませんが、教育援助ですね、教育に対する援助。金でもってとにかく援助をしていって、それでその国の生活が安定する、まあそれも一つの何といいますか瞬間的なショートレンジでのやり方かもしれませんが、ロングレンジで見たときにはやはり教育援助というのが必要なんじゃないか、これは各国から盛んにそういうものは言ってくるわけですね。これは要望ですからまとめてみると、相当もういろんな種類のものが入ってくるんですけれども、まあしかし、こういった教育援助をやるということは、特にアジアの諸国等については、私はその国の経済レベルを上げる基礎になるんじゃないか。経済レベルを上げるということは、ある意味じゃ日本がそれに対して援助をしながら上げていくということが、将来いわゆる集団的な安全保障につながっていくということも考えられる。そういう意味で、まあアメリカとかソビエトばかり見ているのもなんですから、そうじゃなくて、われわれの足元を見ていくということですね。そういう意味でのいわゆる教育援助というものがやはり重点的に行われていいんじゃなかろうかと、やはりそれぞれの国々のレベルが上がりませんと、お互いに経済その他の面で助け合っていくという相手にはならないわけですから。特に最近の貿易摩擦等も見てみますと、ある一定の国だけ相手にしていたってだめなわけで、将来恐らくわれわれとしては大きな選択をしなきゃならない時期が来る。そのときに、じゃアジアの国を一体どうしていたんだということになれば、やはりこれは大変な問題になってくるんじゃないかと私は思っておるわけなんです。そういう意味で、食糧ももちろんそうだと思いますが、特にそれぞれの国の実力を上げるための教育援助、これがやはり基本になるんじゃないか、かように思っているのです。日本の場合でもいわゆる経済成長が戦後、特に最近になって急速に成長したということに言われているのですけれども、これは科学技術の力だというふうに判断してもいいかもしれませんが、その基礎にあるのはやはり教育なんですね。ですから、そういう意味で、この援助の内容等についても、教育というものを相当重視して考えていっていただければと、こういうふうに思っておるわけです。そういう意味で、今後のせっかくこうやって予算がふえていますから、それに対して効果的援助ということであれば、これについて十分な配慮をしていただきたい、これを要望したいと思うんです。  それから、さらにもう一つの「広報文化活動の展開」、これも相当プラスになっているわけですね、アップされているわけです。これについては、具体的にどういう部門で力を入れていこうとしているのか、それについて問題がありましたら教えていただきたいと思うんですが。
  34. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) わが国の政治、経済社会文化の実態につきましての正確なる情報資料をできるだけ効果的に各国に流しているということとともに、もう一つは、わが国の実情につきまして誤解を持っておられる向きが、欧米初め発展途上国も含めましてございますので、その誤解を解くための努力ということが一つでございます。  もう一つ文化でございますが、わが国の伝統文化、あるいは現代の文化をできるだけ外国の皆様方に知っていただくための努力、これが第二の柱でございます。  それから第三に、あるいはこの第三の方が緊急性としましてはいま一番大事なのかもしれませんが、日本を理解していただくのに一番早道は、実際に世界各国の中堅指導者あるいはオピニオンリーダー、つまりもっと具体的に申し上げますと、マスコミのリーダー、中核的な人でありますとかあるいは各国におきますところの市長さんだとか、あるいは地方の議員さんでありますとか、そういう政治家、それから財界人、こういう非常に広い、広範ないわゆるオピニオンリーダー、あるいはその中堅指導者という方々を日本に招聘いたしまして、日本の実態を御自分の目で見ていただくというこの招聘事業計画、これを特に重視いたしまして、以上の三本柱でございます。
  35. 松前達郎

    ○松前達郎君 いま三本立てということでおっしゃいましたけれども、この三番目の招聘計画というのは私は非常に重要だと思うんですね。たとえば日本文化を紹介する、これは紹介の仕方はいろいろあると思うんですが、とりわけヨーロッパあたり、あるいはアメリカでやっているのは、たとえば歌舞伎を持っていくとか、それから能だとか、そういった日本古来の——歌舞伎は古来でもないかもしれませんが、そういった文化芸能等を紹介する、これもいいでしょうけれども、私自身もそういう活動をやってみて一番痛感するのは、いまの日本の生活を知らないんですよ、外国人が。外国から偉い人が来るともっぱら料理屋へ連れていったり、とにかくわれわれの大衆生活と関係ないところで接待をする。ですからそんなものだと思って帰る。この辺にやはり実際の状況が理解されないという大きな障害があるんではないか。ですからやはり、一週間、二週間じゃなくて長期滞在のできるような外国の指導者、これを大いに招聘するべきだと、かように私考えておるわけなんです。こういったような招聘が日本の場合、外務省として招聘するのか、あるいはその他の団体等を使って招聘していくのか、その辺は一体どうなっていますか。
  36. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) 外務省が、先ほど申し上げたとおりに各方面の指導者あるいはオピニオンリーダーを招聘する予算をいただいておりますが、役所で申し上げますと、私が存じておる限りでは総理府にも多少予算がついております。それから民間では、財界初め各種団体においていろいろな方々を御招待、あるいは招聘事業計画がございます。それで、私ども民間の各種招聘計画につきましてもできるだけの側面的な御協力を申し上げている次第でございまして、一つの卑近な例で申し上げますと、たとえば先ほどもちょっと触れましたけれども、外国の場合、その国の最高の指導者と申しますか、国会議員でございますね、アメリカの例で申し上げますと、アメリカ国会議員先生方は、外務省あるいは日本政府が直接御招待ということですとお受けにならない例がほとんどでございます。その場合は民間の各種の団体が御招待する。御招待する場合には、外務省日本政府が表に出ないで、側面的、裏から御協力を申し上げると、こういう仕組みで動いておるのが実情でございます。
  37. 松前達郎

    ○松前達郎君 これは最近の例なんですけれども、私自身の関与しているある財団で西ドイツの議員を招聘したのです。これは二、三日じゃなくて一カ月近くの間ですね。名前を言えばロィシェンバッハという、これは前のブラントさんの秘書をやっていた人で、いま社会民主党の議員ですけれども、彼から聞いてみますと、やはりいま私が申し上げたことと同じようなことを言ってるんですけれども、一週間くらい日本に来て、それで帰るのだとすれば、私は日本に対する評価といいますか、来た感想とか、そういうものが言えるでしょうと。ところが、一カ月近くいてみてそれが言えなくなったと言うんですよ。なぜかと言ったら、日本がたとえば貿易摩擦その他でいまいろいろやっていることも十分わかる、日本はとにかく外国からいわゆる原材料を輸入して、それを加工して付加価値を上げて、付加価値で食っていかなきゃ日本は生きる道がないということが十分わかった。だから、もっとあなた方は堂々とそういうことを外国に対して主張しなさいと言って彼は帰っているわけですね。  ですから、やはりそういった点も、これは実例としていま申し上げたわけですが、招聘の仕方ももっと詳しく、いわゆる観光旅行的にちらちらっと見て帰るんじゃなくて、ちらちらっと見ると何といいますか、特異なところだけしか見て帰りませんから、やはりもっと実際の問題についていろいろな人と意見交換ができる、そういう形で帰ってもらった方が、洗脳するわけじゃないんですけれども、十分に日本の状態を知ってもらえるのじゃないか、理解をしてもらえる。そういうことでいま実例を申し上げたのですが、確かに各種の招聘計画というものですね、これが非常に重要だというふうに思うわけなんです。たとえばドイツにいたしますと、フンボルトという財団がありますね。これは恐らくいまの政治家の方々でもそこへ招聘された人もたくさんいるはずです。それからアメリカだったら、一例ですが、フルブライトという財団もある。こういうところが非常に数多くの人を招聘をしている。特に日本人は非常に多いわけです。ところが逆に、じゃ日本がその国から招聘している数はというと、恐らく十分の一以下じゃないか。その辺がやはりいままでの相互理解に対する問題点じゃなかったかと私は思っているんです。  それで、誤解を解くということなんですが、誤解を招くというのは、そういう努力が日ごろないから誤解が出てくるので、一遍できた誤解を解くというのはそれ以上のエネルギーが必要なんです。ですから、そういう意味から考えますと、やはりこういった活動を日ごろ強化しておく。そしてやはり若い、特に将来指導的役割りにつきそうな人たちをねらい撃ちして、それを日本に呼んできて長期滞在さして、日本の事情というものを十分理解させる、そしてひもをつけないで帰してやると、これがやはりわれわれとしてやるべきことじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけですが、そういう点でひとつこの招聘計画ですね、これについてもいろいろ直接いま呼べばなかなか来てくれないという話ですけれども、呼び方はいろいろあると思いますから、その辺ひとつ力を入れてやっていただきたいということと、それについて何かございましたら。
  38. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) ただいまの松前先生の御指摘一々。もっともと存じますので、御趣旨に沿って今後とも努力してまいりたいと考えております。
  39. 松前達郎

    ○松前達郎君 それから広報活動なんですが、これもどうも日本に対する認識は外国に行ってみますと何といいますか、日本に関心のある人は非常によく認識してもらっている、実情も大体ある程度わかってもらっている。ところが、日本に関心のない人が大部分ですね。アメリカの田舎なんかへ行ったら、日本なんてどこにあるのかというような人もいるんですから。そういうことも踏まえて考えたときに、やはりまだこれからの活動というのはたくさんやることがあるんじゃないか。これもお金がかかるかもしれませんが、しかしこれは積極的にやりませんと、いろいろな問題がそれを基礎にして起き上がってくる可能性がある。  たとえば教科書ですね。これは教科書と言っても、外国の教科書の問題を見ても、世界の教科書を集めて見てみますと、日本についてほとんど書いてないのもあるし、これはちょっと前の話ですがたまたま書いてあると、いまだに人力車が走っているんですね。芸者と人力車と、そういったようなことが出ている。こういうふうな問題もやはり積極的に解消していきませんと、そうやって教育された連中が大きくなっていろいろと国内世論をつくっていくわけですから、その点をやはりわれわれとしては、これは気の長い話ですが、いまやっておかなければならないことだろう。こういうこともひとつ調査していただいて、実態を見て対処をしていただきたい。ただ、一度外国の方でそういう日本に対する教科書の取り扱いが非常に適当でないという申し入れを外務省としてされたということもちょっと伺いましたけれども、その辺をやはりもっと強力にやっていかないと、これは将来非常にうまくないんじゃないかと、かように思っているので、これも一つ要望として申し上げておきますが、その点は最近何か具体的に活動されましたか。
  40. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) 教科書の点について御報告いたしますと、国際教育情報センターというのがいまから十年ほど前に外務省の協力のもとでつくられまして、そこに賀陽さんという人が中心になって活動しておられますが、全世界の教科書をずっと目を光らしておりまして、そこで日本に関する間違いの記事あるいは写真その他がございますと、在外公館と協力いたしましてこれをできるだけ早く発見をいたしまして、そこで外務省といま申し上げました国際教育情報センターとが協力いたしまして、再び在外公館を通じまして訂正方を申し入れるという努力を続けておる次第でございます。一〇〇%見つけているかどうかについては必ずしも自信がございませんけれども、今後ともこの努力は続けてまいりたいとかように考えております。
  41. 松前達郎

    ○松前達郎君 じゃ、その点はひとつ今後も努力を続けていただくということで、われわれとしても協力いたしますから、ひとつその点はよろしくお願いしたいと思います。  話が変わるのですが、韓国との問題ですね。最近、韓国とアメリカのワインバーガー国防長官との会談がある。そういう中で、これは米韓安保会議という会議ですね、これが最近行われたわけですが、その内容を見てみますと、恐らくこれは韓国の軍備の近代化の問題が相当強く打ち出されてきていると思うんですね。それとリンクするのではないかと私は憶測をしているのですが、韓国の対日六十億ドルの経済協力の申し入れですね。これについてもどういう形で協力をするのか、それについて大枠でもってというふうな話があったわけですが、具体的にその後の進捗状況、それといわゆる米韓安保会議の結果、韓国の軍事力の近代化というのとリンクするかしないか、これはすると昼言えないと思いますが、特にどうしてそういうことを言うかといいますと、韓国からの対日経済協力要求というものがどうも裏に何かありそうな、さしがねがありそうな感じを私持っておるわけなんです。その点について外務大臣いかがでしょうか。どういうふうにお考えでしょうか。
  42. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 先般韓国で米韓安保協議が持たれたことは、松前委員御指摘のとおりでございます。そこで韓国軍の近代化の問題が論議されたことも御指摘のとおりでございます。ただし、この米韓安保協議と経済発展五カ年計画とは関係はないわけでございまして、韓国軍の近代化につきましては別途第二次五カ年計画というものが持たれて、そのフレームワークの中で近代化が行われ、これに対して米国も応分の協力をしておるということになっておるわけでございます。  先般来韓国が日本側に要請いたしております六十億ドルの経済協力の問題は、この第二次の軍の近代化とは無関係でございまして、第五次経済社会発展五カ年計画との関連におきまして、そこでもくろまれております社会インフラ等の事業に対する協力要請ということで日本側に申し越してきておるものでございます。
  43. 松前達郎

    ○松前達郎君 全然関連ないということをはっきり言っていいんですかね。というのは、一番最初に韓国から日本に対して申し入れがあり、その当時のことをいま思い出してみると、韓国そのものが日本の防衛に関して、安全に関して相当の負担をしているんだと、軍事的に。そういうことを最初に言っているわけですね、韓国側が。その後で、じゃ実際にどうなのかというその内容についてだんだん詰めていくうちに、しばらく待ってくれというのでそれが変わってきた、こういう経過があるんですね。それで、しかも日本側としては、その協力の内容というのはどういうふうな内容でやっていったらいいのかというのを恐らく考えたはずである。これは経過から見て、全然関係ないということは僕はないんじゃないかというふうに思っているのですけれども、いかがでしょうか。
  44. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 韓国におきましては、GNPの六%を国防費に割いておりますし、また予算では三五%前後を国防費に充当をいたしておるわけでございます。かように国防費の占める割合が非常に大きいために財政がきわめて硬直しておる、したがいまして経済の運用においても非常に苦しいんだという、そういった事情を私どもに大変強く訴えてきておりました背景があるわけでございまして、その関連におきまして安保経協ではないかという御判断が出てくるのかと思います。しかしながら、昨年の八月に韓国側が私どもに要請してまいりましたいろいろなプロジェクトの内容を見ましても、それからその後閣僚会議の際に要請いたしておりました諸プロジェクトを見ましても、これはすべて民生の安定あるいは経済の発展につながる諸事業でございまして、これをしさいに目下検討させていただいておりまして、これが十分民生の安定につながるという判断が成り立つ場合には、これに誠意をもって協力するということに相なっておるわけでございます。
  45. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、そのプロジェクト、これが具体的なこういうものに使うのだとか、あるいはこういうことをやるのだとか、そういうプロジェクトが韓国側からもうある程度提示されていますね。それがされて、それに対して日本の方から援助をするということで、これはどうなんですか、援助の仕方というのはどういうふうな仕方になりますか。
  46. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 援助の仕方につきましては、累次韓国側に申し上げておるとおりの方式、すなわち、先般閣僚会議の際に発表されまし共同新聞発表にも、日本側は経済協力基本的な方針に即して誠意をもって対応する。と申しますことは、これが人道上の考慮であるとか民生の安定であるとか、それからやはり単年度主義で、しかもプロジェクトに即して積み上げ方式でやっていかなければならないというのがこの一般的な、韓国のみならず、グローバルに持たれております方式でございまして、この仕組みに乗っかりまして韓国に対応していくということははっきりいたしておるものと考えております。
  47. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、対応に関してはまた具体的に決定的なものは出てない。これからいろいろと一つ一つ取り上げながらやっていこうと、こういう状況にあるということですか。
  48. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 三月十九日に東京及びソウルにおきまして、外務省あるいは在ソウル大使館から先方に申し伝えましたことは、先般の協力要請のうちで、商品借款が六十億ドルのうち二十五億ドルを占めておるわけでございますけれども、これを取り上げることは大変むずかしいという日本側の意見を表明してございます。それから残る十一のプロジェクト、これは上下水道であるとか道路、多目的ダムあるいは医療施設、LNGのターミナルといったような十一のものがございますが、そのうちで収益性の高いもの、そういった事業はむしろ輸出入銀行の御融資がふさわしい。ダムであるとか非常に時間のかかる収益性の少ない民生安定につながる事業は円借款で検討の対象となり得るということを申し伝えでございます。かたがた二月の中旬に行いました実務者協議の際に、いろいろ詳細な御説明を伺ったわけでございますが、にもかかわらず、もう少し資料の追加的要請を行う必要のある事項もございまして、追加的な資料の提供ないし説明の補足をお願いしておる、そういう状況でございます。
  49. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと一言で言えば、これから詰めていくというふうな考えでよろしゅうございますか。
  50. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) すでに相当詰めさせていただいておりまして、しかしなおそれだけでは不十分だということでございます。
  51. 松前達郎

    ○松前達郎君 それじゃ次に移りますけれども、ちょっとこれは米国の食糧戦略の問題なんですけれども、たとえばアメリカがソビエトに対して制裁措置と言ったら大げさかもしれませんが、それに近いようなことで日本にいろいろなことを要望してきている。これは何も日本だけじゃなくて西側諸国にも要望してきている。ヨーロッパではそれがどうもうまく一〇〇%いってない。そういうふうなことを要望しているやさきに、対ソ穀物輸出を解除して行った。こういうふうなことで、しかも最近になってはそれに追加して三十五万トンさらに入れていくというふうなことが報道されているわけなんですね。これについて私は、恐らく今後ソビエトの食糧生産が急速に何といいますか、不足を解消できるような状態にはないと思うのです。恐らくこれは今後ずっと続いていくんじゃないか。冷害だとか、やれ気候不順だとか言っていますけれども、どうも原因はそこじゃない、何といいますか基礎的なところに、体制の問題で食糧生産がニーズに追いつかない。これはもう当然だと思うのですね。そうなってくると、常時ソビエトとしては外国から穀物輸入をせざるを得ない。  そういうふうに見ているのですけれども、そうすると、あるいはアメリカは穀物の安定供給をソビエトに対して裏で約束しているんじゃなかろうか。安定供給をするということは、アメリカにとってみると農民の圧力というものもありますし、アメリカそのものが農産国、そういうふうに見てもいいと思うのですが、そういう意味では貿易上の問題等も含めて非常に重要な課題であろう。安定供給をするということになれば、逆に考えますとソビエトの農業開発、これの能率の向上を抑える役割りになるんじゃないか。これは非常に戦略的な話なんですが、そういうことで私は見ているわけなんですけれども、やはり食糧というのは戦略物資になっていますから、そういう面での見方というものですね、私は個人的にはそう見ておりますが、外務省として食糧戦略についてどういう見方をされているか。それをお伺いしたいんですが。
  52. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) ソ連農業は大体一九七五年ごろから非常な不振に陥っておりまして、諸外国から輸入せざるを得ない状況に達していることは先生の御指摘のとおりでございます。アメリカがソ連に対して食糧の安定供給の約束を裏でしているのではないかというお話でございますが、私どもの認識ではそのような事実はないと考えております。今回のポーランド事態にかんがみまして、アメリカとしては新しい長期穀物取り決め締結交渉を延期するということを打ち出しております。御案内のとおり、米ソ間には五年の長期穀物協定がございまして、昨年はそれを一年延長したわけでございますが、今後の新しい長期取り決めの交渉は、当分見合わせるということをひとつ打ち出したわけでございます。アメリカはアフガンのときに一たん穀物の禁輸ということを行いまして、協定に約束されている上限八百万トン以上の輸出は全部これを取り消したという経緯がございます。しかし、最近におきまして、三月の二十二日でございますが、レーガン大統領はアメリカの農業代表者及び農業関係の新聞記者に対する演説の中で、米国の安全保障が脅かされ、また対ソ全面禁輸を必要とする事態になれば穀物の対ソ禁輸を宣言するであろうということを言っております。このようにアメリカとしては、まず第一には長期取り決めは当分見合わせるということ。それから第二には事態の進展に応じて穀物の全面禁輸の余地は残しておく、こういうことを言っております。これから考えましても、米ソ間に安定供給の裏約束があるというようなことはないと、かように認識しております。
  53. 松前達郎

    ○松前達郎君 現時点ではそういう状況ですね。恐らく、いますぐそういうことが起こるとは限らないと思いますけれども、安定供給というのはそういう戦略的意味も持っているんだ、ちょっと勘ぐり過ぎていると言うかもしれませんけれども、そういった外交上のいろいろな問題というのが非常に戦略的な意味で裏返して考えたりしなければならないようなことがずいぶん多くなってきつつある。先ほども質問の中にありましたけれども、情報を収集するということもその判断を間違えないようにするための非常に重要なことである。こういうふうなことを考えますと、これからの外交そのものが非常に複雑多岐になるし、何といいますか素直な状況で行えないような、そういう外交状況が展開されていくんじゃなかろうか。こういうふうに思うわけなんです。  いま私が申し上げたのは私個人の見解ですから別にどうということないんですけれども、これから先の外交展開に当たっての見方ですね、それをひとつ十分情報をもとにして見ていただきながら展開をしていただきたい。これを申し上げたいと思うのです。  時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。
  54. 戸叶武

    戸叶武君 きょうはエープリルフールの日で、冗談に人をだましても四月ばかと言って問題が済む日ですが、私はその迷信を破って、きょうは本当のことを言いたいと思いますから、ばかなことを言うなとは言わないでください。  それは、私は六回ほど世界を駆けずり回って、五十何年かの間に、考古学や政治学を研究するだけでなく、自分の趣味として馬とシカの食べ物を研究してまいりました。それは道のあるところに文化の流れが流れていくのでありまして、古代における馬の東西文化の交流における役割りは非常に大きかったと思います。そういう意味において、きょうは私は本当のことを苦労人である櫻内外務大臣に訴えたいと思うんです。それは、私はグローバルな時代におけるそれにふさわしい世界新秩序をつくるという決意なしには、今後の外交は成り立たないと思うからであります。  非常な素朴な発言かもしれませんが、私は昭和二十年二月からちょうど六月にかけて幾たびか中国日本との間を往来しましたが、要するに軍部は勝つことだけに力を入れているが、孫子の兵法というものはクラウゼウイッツの兵法と違って負けても勝つという不滅の戦略が込められているのであって、兵は凶器なりという前提のもとに、負けても民族のエネルギーを絶滅させないようにという考え方を持っており、戦いにおいても相手の退路を遮断することなく活路を与えなければならない。日本の孫子の兵法を勉強したという人たちに文明史観と哲学が欠けているのであって、勝てばいいと言って包囲戦をやって、徐州でもあるいは南京でも全部失敗しております。相手の退路を遮断したからでありまして、この軍の偏した一つの物の考え方というもの、無条件降伏への敗戦の原点はそこから発しておるのであり、明治憲法における伊藤博文という人は相当な人だが、やはり明治十四年の政変を中心として大隈重信や福沢諭吉、こういう進歩的なイギリス風の憲法をつくり上げようという考え方にクーデターを与え、そうして、余り利口でないがビスマルクを神格化して尊敬していたドイツのカイザーのプロシア憲法よりももっと絶対主義的な明治憲法をつくり上げ、天皇の軍隊と称し、明治憲法を中心として世界に類例のない時代錯誤的な憲法をつくったのですが、それが、日本があの戦争に負けるということが明らかになっても、何らの一つの活路を開く憲法なり外交にならずして、無条件降伏という、伊藤博文や山県らが考えたやり方を全部御破算にするだけでなく、日本を窮地に陥れた原点は明治憲法です。  無条件降伏というのは民族として非常にぶざまな負け方です。それに戻りたいというような考え方は、一体、戦争の悲劇というものを本当に見きわめてのそれか、それとも、他国の軍部なり軍需産業なりメジャーなり、そういうものにあおられて、そしてこれに従っていくならば五万ドル程度の金はいつでもコミッションとしていただけるというような、これはイタリアもドイツもそういう被害を受けているようですが、そういう行き方でもって日本の国というものが今後世界に信用されるかどうか考えてもらいたい。私は、あなたが、憲法改正論というものに押し流されつつも、ここいらでもっと深く考えなけりゃならないという配慮を持っている方であり、鈴木さんもそうですが、日本憲法はマッカーサー憲法じゃありません、戦争をもう再びしまいといって、反省の上に立って国連がつくられたときの、あの国連の宣言というものが、国連を通じて世界の人々を挙げて戦争はもうしまいという決意をして、日本をそのモデル国家として私はつくったのだと思います。  いま、戦時中の軍部に圧力が加えられて、米英ソ三国の首脳のルーズベルト、チャーチルあるいはスターリンが結んだヤルタ協定どこの国連憲章とを比較するならば、ヤルタ協定は戦時中の軍事謀略協定ではありませんか。われわれは知らない。認めるわけにもいかない。いま、ポーランド問題が深刻なときに当たって、ソ連にツーツーのポーランドの軍部ですらも、ポーランドに対してソ連が軍事介入するときには、ポーランドは、ヤルタ協定清算を要求して新しい世界新秩序を求めるために死にもの狂いの戦いをしていたときのように、ソ連領に入っている諸民族や、あるいは東欧や、フィンランドから——バルト三国からスカンジナビア半島に至るまで全部揺すぶられていく。一緒に軍事謀略的戦時協定というものを結んだ、ソ連にはソ連なりの、あるいはアメリカにはアメリカなりの、戦争をこれ以上続けることができないから、目的のためには手段を選ばすという形のこの種の軍事協定はいつも戦争につきまとっておりますが、第一次大戦後の平和条約締結の際においてウッドロー・ウィルソンが示したように、勝った国が負けた国の主権を無視して領土を奪うというようなことでは次の平和条約、健全な条約はつくれないといって一九一五年イタリアを連合国に加担させるためにつくった連合国とイタリアとのこの秘密協定、ロンドン協定は、ベルサイユ講和会議においてイタリアの代表が国連を脱退する土いってわめいても頑として列国側が承知しないで、一応国際法の理念というものは前進したんじゃないですか。国際法の理念に沿ってアトランチックチャーターもできて、英米はもう戦争をしないということを世界に宣言しながら、やったことは何ですか。私たちはいま要求するのではない。実質的にソ連やアメリカやイギリスがヤルタ協定を精算するという謙虚な態度ができなければ私は次の世界新秩序は確立しないと思うんです。  そこで簡単な点。あなたは国連を守っていく日本外交に重点を置くか、ヤルタ協定に対して北方領土を返せというような形でソ連にだけ問題をぶつけるようなやり方で日本の防衛強化をねらおうとする方に加担するのか。私は、武器なきポーランドの人たちが何の罪もなくていまのようなやり方で虐げられている姿は人道的に許しがたいものであると思うんですが、櫻内さん、あなたは桜の心をば持った方ですから、どうぞそういう意味において、どういう道が日本外交基本的な路線か、余りかすみをかけないで率直に私は世界の中における日本の進路を決定づけるような一つの御見解を承りたいと思いますが、ぜひともその問題から私は入りたいと思います。
  55. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私どもはかねがね、ただいまお話に出ましたヤルタ体制については、これは別段北方領土の問題からどうこうじゃなくて、そういうものは認めておらない。いまおっしゃったように三者の間で軍事謀略的な話し合いが行われたのであって、ただ日本としては、日本に触れる面がありますから、ヤルタ協定といういうものは認めない、その結果領土問題については云々と、こういうことですが、ただそれだけではないんです。ヤルタ体制、ヤルタ協定そのものをわれわれはおっしゃるとおりにそういう謀略的なものは認めないという姿勢できておるわけです。  それから日本外交の大事な点として国連というものを重視していく、これはもう言うまでもないことでありまして、国連外交というものは今後これをみんなで育てて、この国連憲章に基づく国際間のお互いの交流をしていくと、こういうことが最も大事だと認識しております。
  56. 戸叶武

    戸叶武君 私は昭和二十年の二月から六月にかけて中国日本の間を往復しましたが時期がおくれておりましたが、北京、上海、南京においてピストルも刀も持たずこっちが死ぬつもりでやりましたけれども、あのときに私が感じたのは、一国の総理大臣が特に軍備を強めるということよりも武器なき民衆の先頭に立って戦争をなくさせる外交を展開する見識と決断がなければ、今後の世界平和は維持できないという見解です。あのときにもルーズベルトの病重しというので、ソ連側から徐々に、ヤルタ協定の秘密協定の真相というものは、ルーズベルトが死んだ後にチャーチルという老獪な政治家一人だけになっちゃっては大変だというので漏らし出したのでありまして、中国外交を担当している朱子文すら、アメリカとソ連との間にヤルタ協定というものがつくられているらしいという情報をキャッチしてから米ソの間を往来して、そして真相をつかまえようとしたが、日本が八月十五日に無条件降伏への道、天皇みずからが人間天皇を宣言した後においてこの和平に踏み切ったという以外にいわゆる和平運動や軍部、支那浪人と称する、ときにはあの宮崎滔天や北一輝のような本物はおらないで、何か軍の金やいかがわしい形における影佐さんのような人でも一がどの政治家になってしまって、繆斌工作などという二重スパイに操られて、緒方先輩ですらも、朝日の緒方さんから問われたが私は言えなかったけれども、繆斌なんというのは南京でも北京でも信じてない、信用のない二重スパイです。そういうものに操られて、それはさっき秦野さんが言ったように情報の正確を期することができなかったからそういうことになったのですが、いま私はタイミングだと思うんです。われわれが要求するのではない。ソ連やアメリカ、イギリスがヤルタ協定をみずからの責任において解消するというだけの考え方を持たないで、国連をおろそかにして核兵器を持っているヤルタ協定参加の強国によって核兵器の問題をほかに漏らさないようにして問題を片づけようとか、こういうことではいつまでたっても軍縮でなく軍拡になってしまいます。タイミングじゃありませんか。われわれは要求するのじゃない、ポーランド問題に名をかりての私はあのような非情な痛めつけ方は人類としてイデオロギーを抜きにして許しがたいものだと思います。ポーランドを窮地に陥れて世界に禍乱を誘発させるのなら別だが、そんなことをやったら収拾がつかなくなってしまいます。  どうですか、ポーランドをもっと積極的に、余って腐らせている米なんかみんな吐き出して飢えたるポーランドの人々にこれをやって、応援するのがどこが悪いんですか。総評でも約束してきたはずだが、さっぱりその後私たちは、日本の農民から労働組合から、政府外交を征しているがゆえに、民間からそのようなことがミリタントなヒューマニズムとして火を噴かないでいつまでもいられるかどうか。アメリカにくっついてソ連に嫌がらせをやり、ソ連の第五列になって北方領土の問題に対しても明快な党としての方針が定まらないような、ぶざまな者に外交を論ずる資格はないと思うんです。そういう意味においてあなたはいまのタイミングを逸しては、火事が起きてから拍子木をたたいているのでは間に合わないんですが、どうでしょうか。
  57. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 一つは、いまポーランドに対しての御所見でございまして、ポーランドに対しましては人道上の見地に基づく食糧の援助はするということで、またそれが本当に因っておる方々の手に届くように、たとえば赤十字を通じてやるという配慮をしながら、この食糧の援助は継続をする、こういうことにしておるわけでございます。  それからソ連の非道な行き方、そういうことから、ヤルタ体制のこれをどうするかということについての御意見で、このヤルタ体制のことは先ほども申したとおり、私どもはそういうものはもう絶体に認めておらないんでありますから、現在改めてヤルタ体制をどうというよりも、もう終始一貫、そういうおっしゃるとおりの謀略的なものは私どもは了承しない、こういう姿勢でおるわけでございます。
  58. 戸叶武

    戸叶武君 問題は、一国の外交の中において一番重要なのは、やはり領土の問題です。民族の自主独立というものが民族運動の原点です。それにもかかわらず外務省は慎重ですが、おととしの十二月、自民党の機関誌の月刊誌に聡明な通産官僚に書かせている、北方領土の原点は下田条約にありというような間違った考え方は外務省も賛成しないと思うが、自民党においては一つの憲法改正のそれが領土返還のエネルギーの根源とでも思っているような仕方をしますが、この黒船外交の桐喝に屈して日本外交が自主性を失ったのは、ハリフと結んだところの神奈川条約。それ以上に屈辱を与えられたのは、帝政ロシアの冒険主義者によって下田に軍艦を集めての威嚇に屈した井伊掃部頭の腰抜け外交です。下田条約のどこが北方領土の問題に対する原点と心得ているか。  外務省にはそのような臓抜けはいないと思いますが、日本の北方問題に対する歴史は古いのでありまして、帝政ロシアが無理をやったことを、これを打開しなければ永遠に紛争は絶えないと思ってポーツマス条約において、日本人は小村寿太郎のことだけを挙げておりますけれども、小村寿太郎さんはかたくなって、日本がうっかりすると焼打ちを食らうというような状態だから、伸び伸びとして問題を論ぜられなかった。けれども、ウィッテ伯は軍部にたたかれて野に下った人ですが、ウィッテ以外に敗戦における講和条約を結び得る人物はないとして起用されて、ポーツマス条約の立役者となったときに、副島種臣の外交、あるいは日本におけるところの樺太・千島交換条約前後の問題。  それより前に、井伊掃部頭のやった主体性を失った腰抜け外交を是正しなけりゃならぬと言って、幕府の外交官でも竹内下野守、松平石見守は、井伊大老が殺された後、直ちにペテルスブルグ——いまのレーングラードへ入ってグリニッジ天文台のイギリスでつくった地図によって南樺太は日本領土だとされているのを証拠に、時の崩れ行く帝政ロシアのマキャベリズムの外交に対して一撃を与えて、そうして帰ってきているじゃありませんか。  そういう外交上の記録があって、それを全部承知した上でウィッテは無理をしないで、やはりポーツマス条約において禍根を断ち切るために、とにかく日本に譲歩すべきものは譲歩し、無理をしないようにした。帝政ロシアが滅びるということを彼は知っていたからこそ晩年においてその回想秘録を真実を書いて、フランスの銀行に預けて回想秘録を残しているのであります。  戦後、鳩山さんとともに日ソ間の調整に努めたところの防衛庁長官であった杉原荒太君は外務省きっての読書人であり、私とは一晩眠れないでウィッテの回想録を読んで、ロシアの中にもやっぱり悪いことは悪い、間違ったことは改めなけりゃならないという良識者もあるんだが、帝政ロシアは冒険主義者によってこれは崩壊するという冷徹な眼で記録を残しているんです。そういう意味において、下田条約は日本の腰抜け外交であって領土問題の原点ではない、あそこにおける帝政ロシアすらも、これだけの歯舞、色丹、国後、択捉までは認めたとか認めないとかというような小細工じゃなくて、私はあのときにおける日本の自主外交の本当の魂をぶち込んでくれた人は、海外に眼を開いておった開国論者の佐久間象山と攘夷党のリーダーであった吉田松陰の出会いだと思うんです。開国論者であったが佐久間象山は、崩れ行く徳川幕府、主体性のない、民族が支持しないような腰抜け外交でもって外交はできぬ。攘夷党の中にはばかばかりおるかと思ったら吉田松陰のような純粋な男がいる。命をかけて海外に渡航し、外国の事情を知った上でわれわれの外交を確立しようと、だから佐久間象山は攘夷党のリーダーであった純粋な吉田松陰というものを激励してやったのじゃないですか。あのために井伊大老は桜田門でもって一いまの憲政記念館のそばが井伊家の屋敷ですが、三月三日に殺されたのです。安藤老中も井伊掃部頭よりは柔軟な外交専門家であったが、坂下門事変で要撃を受けたのは、主体性のない外交、これをぶち破らなければ日本外交外国から侮りを受けるだけで信用されないと思ったがゆえに、大橋訥庵その他がやはりこれを要撃したのです。われわれは要撃する必要はない。  国民が自覚して、国民の手に外交を奪還するならば、私は憲法改正で外堀を埋めさしたり、あるいは下田条約などという、腰抜け政治家が帝政ロシアの冒険主義者の前にあわてふためいて卑屈な条約を結んだようなことはしなかったと思うんです。いまやはり日本にいろいろな思想や立場が違っても、吉田松陰や佐久間象山だけの見識を持って、国の運命を外交によって決する人が出なければ、ベトナムにおいて麻薬を飲ませられながら前線で突撃させられた黒人の奴隷戦争のような目に日本が遣わないとだれが保証できるのですか。そういう意味において、国連を守りながら外交をやろうという決意が、恐らくはいまの総理大臣の鈴木さんにもあなたにも——あなたはどこにでも突っ込んで、危ない火種になるようなところへ、ベトナムでもどこへでも行って、体で危機を感じてきている人であります。  私は自民党を責めない。けれども、日本みずからの主体性の確立ができないような国の外交がいつまで続くと思うか。この機会にわれわれは北方領土の返還を——北方領土の問題は戦争が起きたときのヤルタ協定からです。二月十一日は領土問題だけれど、それもいまは言わない。むしろポーランドにおける問題がきっかけとなって、われわれは見るに忍びない、フランス中国も戦力が劣ったといって除外されてつくられたのがヤルタ協定です。だから原爆なしには発言ができなくなるといって、ドゴール体制のもとにおけるフランスもやはり原爆をつくったり、中国においても原爆を開発したりしたのはそのときの私は自衛的な態度からやむを得なかったと思うんです。そういう意味において、いま際限なく続くこの核兵器の問題をめぐっての人類の破滅を、危機をだれがブレーキをかけるかできないようなときに、ポーランドの人々は武器なき抵抗をやって世界の反省を求めているんじゃないかと思うんです。  私は山田三良博士から、彼がウィーンにおいて国際法を研究した時分に日露戦争が起きて、ポーランド独立の秘密結社に大学内の地下室に連れられていって、日本がロシアと戦ってくれ、戦ってくれなければポーランド独立はできない。しかもわれわれポーランド人は、足を鎖でくぎづけられながら二〇三高地や旅順において第一線でもって日本と戦わせられているんだ。奴隷戦争だ。これから解放されなけりゃならないということを彼らに言われたが、京城大学の総長から学士院長にまでなったあの国際法の先覚者から切々として当時の話を聞いたときに、私はいま日本人は本当にポーランドを救うやっぱり責任はあると思うんです。  どうぞそういう意味において、国連を守って、国連をして核軍縮をも達成させるような炎がアメリカのフィラデルフィアからもドイツからも、フランスからも起きているじゃありませんか。このときに国連のモデル国家としてつくられた日本が、何を理由として憲法を改正するのか。国連に入っていて国連の精神に背くようなことをやって、それが国連を尊敬するところの日本外交家、日本の政治家であるか、経綸がない。話せばわかる。地獄へは落ちたくない。われわれがいまブレーキが効かなくなった世界新秩序に対して方向づけをやるためには、日本民族が中国をも変えさせて、そうして発想の質的転換によって排他的な民族主義、戦争への道を歩ませないようなことをする以外に日本が信用を保つことはできないと思うんですが、来るべき軍縮総会、国連にどういう態度で腹を決めて総理大臣なり外務大臣は行くか、問題は、武器なき国民の戦いは、一国を担う政治家の使命にかかわっているのですから、どうぞ桜の心をもあなたは大体わかってきている苦労人ですから、ひとつ……きょうはほかには触れられなかったのですが、後でまた御返事によって、政治家として最後の日本民族決起のときを促すために私は総理大臣外務大臣におけ至言動を今後人民とともに監視して、グローバルな時代における、世界の中における日本外交進路というものを明確にすることを要請したいのです。  私は日本の総理大臣外務大臣の言うことによってアメリカでもソ連でもブレジネフやいまのレーガンさんが生きている間に、私はコペルニクス的な発想の転換が権力でない、真理は永遠に正しいというものが出てくると思うので、ひとつあなたから今度の国連総会において、サミットの会議において、来るべき国連総会において、軍縮総会を初めとして世界がどういう動きを東西南北からするか、それを見定めて、見定めるだけじゃなく、日本みずからがその先頭に立って偉そうに言うんじゃない、ヨーロッパでも世界でも東西南北から火の手が上がっているじゃありませんか。グローバルな時代に新しい発想のもとにおける新秩序をつくり上げなければ世界は地獄です。地獄へ民族をやり、日本民族だけじゃない、世界のためにわれわれは、いま果たさなければならない人間としての役割りをしなければならないと思いますが、鈴木さんは約束したのだから堂々とやるだろうし、あなたも鈴木さん以上に苦労人であるから、世界の国々の人々の憂えを憂えとして、日本民族はこれをどう打開しようとしているか、世界の中の日本外交進路を、判断でもよろしいですから承りたいと思います。
  59. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 大変貴重な御所見をありがとうございました。  大体私は、三点ほど戸叶委員のおっしゃることについて感じたところがございます。  一つは領土問題について歴史的経緯を踏まえての御論議でございました。これは貴重な御論議として私も勉強さしていただきます。  また、ポーランド問題を契機としての今後の新しい展望についてお話がございました。これは私の外交面で非常に参考になりました。特に一貫して言われておることは、月本外交に主体性を持てという、そういう御所信であったと思うのであります。  なお、特別軍縮総会に臨むに当たって、ただいま大変御激励をいただいたわけでございますが、世界各国に先んじて鈴木総理がみずからこの総会へ出て、核軍縮を初めとして軍縮の徹底を期したいと、こういうことでございますので、私もそれに沿っての努力をしてまいりたいと思います。
  60. 戸叶武

    戸叶武君 これで終わります。
  61. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩します、    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時二十一分開会
  62. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、予算委員会から審査を委嘱された昭和五十七年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  63. 田中寿美子

    田中寿美子君 午前中に松前委員から外務省予算に触れられた御質問をしていただきました。  私は一昨日、外務大臣並びに防衛庁の防衛局長とシーレーン一千海里の防衛の問題で質疑をいたしました後、まだどうもぴりっとしていない気持ちでございました。それで昨日三十一日の読売新聞紙上にあの折の外務大臣のお答えを、さらに防衛局長考え方も要約して二つの記事が載っておりました。外務大臣のお答えは、鈴木総理が昨年の五月アメリカで共同声明の後ナショナル・プレス・クラブで発言されたそのシーレーン一千海里に関して、外務大臣はどう思われるかということを申し上げたのに対して、一国の総理が発言したことであるから当然責任を負うべきである。日本に必要な石油、物資を運んでいるシーレーンを日本が防衛するのは常識であり、シーレーンを通る船舶が多くなれば防衛努力も多くなるというふうに答えられたというふうにこれは要約してあるわけですね。私も外務大臣がその一千海里というのを守る意思表明をなさったように思っております。  一方防衛庁の防衛局長は、その後多分新聞記者に、防衛局長のお答えからさらに防衛庁当局の考え方として、一千海里の洋上防空の構想というのはこれはとてもその要求に応じられるものじゃない。余りに過大で非現実的だというふうに言われたということが昨日の読売新聞紙上に出ております。この見解に関して外務大臣はどのようにお考えになっておりますか。私はそこのところにニュアンスの違いがあるというふうに思うわけです。いまの状況では防衛庁としては、ワインバーガー国防長官が要求しているような広範な海域における洋上防空というようなことはできないというふうに考えているのが防衛庁当局の考えである。  またけさの朝日新聞では、シーレーンの防衛能力に関して制服組の方で矢田統合幕僚会議議長は、極東のソ連軍の海、空軍力の増強、これに対して対抗していくのには防衛計画の大綱ではちょっとむずかしいというような意味のことを発表しております。大綱水準ではシーレーンの一千海里というのは無理だと、先日ワインバーガー国防長官が伊藤防衛庁長官にシーレーンの防衛を強く要請したけれども、自衛隊の能力ではちょっと無理なんであって、そのアメリカの要求を満たしていくためには水上艦艇とP3Cなどの対潜哨戒機で作戦をするつもりだけれども、防衛計画の大綱ではそれにはちょっと足りないというニュアンスのことを発言されたということがきょうの朝日新聞にも載っているわけですね。三とおりニュアンスがそれぞれ違うわけです。外務大臣は、日本が有事の際に日本の船が石油とか物資を輸送していくのを、その航路帯を一千海里まで守っていくのは当然だというふうにお答えになる。防衛局長の方は、それに幾らか否定的な考え方があったのではないか。そして防衛庁の政策立案当局の人たち、これはそのようなことは応じられないというふうに言っている。しかし制服組の方は、それに応じるのには防衛計画の大綱を手直ししなければやっていけないと言わんばかりの発言であると。この三とおりの発言がされているわけですね。外務大臣としてはそれをどのようにお考えになり、まとめられますでしょうか。
  64. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 大臣からお答えいただく前に若干、事実関係でございますので私の方から申し上げたいと思います。  防衛局長が従来国会で答弁しておりますのは、まず周辺空域、それについては航空自衛隊が航空侵攻などに対応するために必要な範囲を一般的に指すものであると、しかし、レーダーサイトの探知能力あるいは要撃戦闘機の行動半径によってみずから制約されるものである、したがって、一定の空域を具体的に特定して考えているわけでない、これが第一点でございます。  それから、第二のシーレーンの場合ですけれども、海上自衛隊の任務として、周辺海域における海上交通の安全を確保することを目的として、周辺水域数百海里、それから航路帯を設ける場合には約一千海里、これを目標にして防衛力の整備を図っております。海上自衛隊が活動する範囲内で、海上自衛隊の中に当然航空機も持っているわけでございまして、その航空機が、いま申し上げましたような海域とか航路帯の上で行動すること、それは含まれるものである、こういうのが従来からの防衛庁の答弁であって、先般の防衛局長の答弁もまさにそのとおりだと思います。  それから、制服組の発言に言及されましたけれども、現在の防衛計画の大綱の中で、現状でも、あるいはそれが達成されても、いま岡中委員が言われたように航路帯千海里の上を戦闘機を飛ばして制空権を持つことはできないということを言っているのかと思います。したがって、防衛局長と制服の方との答弁の間には何ら相違はないということでございます。  大臣が言われたのは、後から大臣御答弁になると思いますけれども、いわゆる一般論を言われたわけでございまして、その一定の航路帯の上の防空圏まで日本が持つということまでは言っておられないというふうに私は了解しております。
  65. 田中寿美子

    田中寿美子君 大臣いかがですか。それでよろしいですか。
  66. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは、私が防衛上の専門家でありませんから、この間の答弁でも常識上云々というふうに申し上げておるのでございまして、また総理は、現在この周辺数百海里あるいはシーレーンを守り得ているような体制というのでなくて、今後防衛大綱にのっとって自主的にやっていくその一つの目標を言っておられたものと思うんですね。ですから、先般も申し上げたとおりに、私は総理の言われたことあるいは御指摘のような防衛庁の見解などを踏まえましても、日本が石油であるとかその他の物資を日本の船で運んでくるあるいは日本の船で持っていく、こういう場合に、そのシーレーンを守るということは常識じゃないか、こういうことでございます。
  67. 田中寿美子

    田中寿美子君 それじゃ、もう一遍はっきりさしていただきたいと思いますけれども、ワインバーガー国防長官が要求しているものは、常識として伝えられているのはグアム島以西、フィリピン以北の海域全体の守りをやってもらいたい、アメリカの第七艦隊が留守になったときにそこのところを守ってもらいたいという洋上の防空を要望している、しかし日本側は両全体を守るだけのそういう約束をしているわけじゃなくて、そこを非常の際に通る船とそれからいままでの防空識別圏と、さらに船が通るときに海上自衛隊の船がそれを守るために飛んでいく、それの範囲が一千海里内で、一千海里というふうな表現でされているのである。つまり、アメリカの要求とは違うのだ、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  68. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 田中委員が御指摘になったように、ワインバーガーは確かに昨年の五月の鈴木総理との会談に先立って伊東外務大臣が訪米された際には、いま田中委員が御指摘になったようにグアム以西、フィリピン以北という言葉を使って、いわゆる海域分担的なことを明確に言ったわけでございます。それに対して伊東大臣の方から、もし誤解があってはいけないからということで集団的自衛権の行使及び防衛計画の大綱からそれはできないということを言っているわけでございまして、その後アメリカ側が言っているのは、そういう特定の海域を日本が分担してやってくれということでなくて、日本が憲法の範囲内でシーレーンの防衛あるいは周辺海空域の防衛をしてくれ、こういうふうに言っているというふうに私は了解しております。  ただ、最近の防衛庁とワインバーガーとの会談の内容について、私たちは詳細承知しておりませんので、この点についてはここで責任を持った御答弁はできないということは御理解いただきたいと思います。
  69. 田中寿美子

    田中寿美子君 きょうは外務委員会予算審議の場ですから、私はもちろん防衛庁の方をここにお願いはしなかったわけなんですけれども、この新聞の記事によりますと、ワインバーガー国防長官が今回もシーレーンの防衛を強く要請したと、それに対して統幕議長の意見としてここに報道されているものは、防衛計画の大綱でもそういう要望に対しては約十年間でやってくれというような要望だけれども、それにはとても間に合わない、そのためには水上艦艇とP3Cなんかを強化しなければいけないというようなことを言っているわけですね。ということは、その海域における艦艇をもっと強化したり、それからP3Cをもっと多くして対潜哨戒に当たらせるというようなことでない限りそれにはこたえられないんだというふうに理解できるわけですね。いま、その内容は知らないからとおっしゃいましたが、今度ハワイで夏に具体的に詰めていくわけですね。そういうときにそういう要求があって、つまりこの海域全体を面として守っていくのか、そうじゃない、そこに入ってくる日本の船艦を守るという線ですね、そういう一千海里というふうに理解していいのかどうか。もし面としての洋上の防空を要求されたときには、外務大臣、それはお断りになるわけですか。
  70. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いま言われましたハワイの会談、これは安保事務レベルの会談を指しておられると思います。安保事務レベルの会談が何月に行われるか、場所もハワイかということは、まだ決定しておりません。  それからこの会談の性質上、議題を特定して議論するわけでございませんで、従来の慣例から言えば、アメリカ側から国際軍事情勢の説明があり、日本側から日本の防衛意識なりあるいは防衛努力について説明をする、あるいは防衛協力について話をするというのが大きなテーマということは従来からの慣行でございます。したがって、アメリカ側からいま田中委員が指摘されましたような要求が出るのかどうか、これはいまのところ全く推測の域を出ないわけでございます。したがって、その場合にどうこうということを申し上げるのは若干時期尚早であると思いますけれども、日本側の立場というものは、あくまでも日本が攻撃された場合に日本の自衛隊が活動する範囲、それは周辺数百海里と航路帯千海里ということであるわけでございまして、特定の面を防衛するということはできない、それはもうはっきりしておると思います。
  71. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま、両全体を防衛するような立場にないと言われましたので、私は、そのような方向でもしもそういう要求があったときにはお断りになるものというふうに推測をいたします。当然外務省もお立ち会いになる会議だろうと思いますので、その点はちゃんとしていただかなければならないと思います。それでよろしいですか、外務大臣
  72. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 面の防衛まで関与するということになりますと御承知のように集団自衛権になりますから、憲法の上からもそれは考えられないと、こういうことです。
  73. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは次に移りますけれども、前回もちょっと言いかけまして時間がなくなりましたが、三月二十八日の朝日新聞に載っておりましたが、二十七日に鈴木・ワインバーガー会談がありました。そこでもって総理大臣が当面の国際政治、経済摩擦に対するわが国基本見解四項目というのを手渡されたわけですね、その四項目の中身というのは非常に重大なものであると思いますが、小さな記事で出ているわけです。  その第一点は、「西側が軍事力の面で優位に立つことは、軍事抑止力となり、軍縮交渉にも役立つと理解している」。この点は松前委員もお触れになりました。西側が軍事的に優位に立つことが軍事的な抑止力となり軍縮交渉にも役立つというこの考え方なんですね。これはレーガン政権の一貫した軍拡路線を全面的に支持した言い方ではないかと思うんです。西側が優位に立つというためにはこれは軍拡をしなければならなくなるだろう。現在、東西の関係で軍事力はバランスがとれているとお考えなのか、それとも東側ソ連の方が非常に優位に立っている、だから西側が優位に立つ努力をしなければいけないと、こうお考えなんでしょうか。外務大臣、やっぱりこれは外務省としても外交方針に関連することですから。
  74. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これはたしか官房長官がブリーフしたのだと思いますが、西側が軍事力の面で増強を図ることは抑止力になるし、軍縮を進める上で交渉上役立つとの理解でアメリカがおられると承知しておると、こういうことですね、アメリカが。総理の方は西側の結束が重要であると、こういうことを言っておられるんだと、こう思うんです。御指摘の点については私は言われておるとおりだと思うんですが、ソ連がデタントと言いながら核兵器を中心としてずっと増強してきたことは事実であるわけですね。それでそのことを放置しておれば、これもアメリカの所見によると一九八〇年中葉になるとこれはほうっておけばバランスが崩れる、ソ連が優位に立つ趨勢にあるというそういうことを言っておりますね。そういうことは軍事力の均衡が破れることでそこに大きな不安が醸成される、こういう考えに立っておると思うのであります。ただし、一方において私どもは常にバランスという必要性はあるが、それはできるだけ低いレベルでいってもらいたいということを強調しておるわけでありますし、また米ソ間におきましてはそのための中距離核戦力の削減交渉、これは昨年の十一月三十日から交渉されておる。あるいは近くSTARTの交渉をすると、こういうことで日本としてはその交渉がうまく行って、そして低いレベルに持っていってもらうことを期待しておると、こういうことですね。
  75. 田中寿美子

    田中寿美子君 そうしますと、これに発表されている基本見解四項目というのはこの文章そのままではないんですか、これは要約されたものだというふうに考えるのですか。そしてこれによりますと、「西側が軍事力の面で優位に立つことは、軍事的抑止力となり、軍縮交渉にも役立つと理解している」。これは日本の側の、わが国基本見解ということで出されておるわけです。ですから、それはかねてアメリカ考えておることと同じことで、レーガンの軍事政策と全面的に一致して、西側の優位性を保てということに協力の意思発表をしたということに私には思えるわけなんですがね。そういうことになりますと、アメリカは一国で西側の優位性を保つわけにはいきませんから、ですから西側全部と、日本も西側の中に入っているから日本の防衛力の方もうんと増強していくということを要求されるその根拠にもなるわけですね。ここに発表されていることはこれは別の文書があるわけですか。
  76. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ワインバーガー長官が総理のところへ来られて会議をされたその後、官房長官がブリーフされたそれが記事になっているというふうに私は承知しております。大臣国会の都合があって途中で退席されておりますし、私もその場に居合わしておりませんので、実際の会議のやりとりについては承知しておりませんけれども、われわれが官房長官のブリーフというものを聞いておるところは、いま大臣が言われたようにアメリカ側が、ワインバーガーがここ十年ぐらいが非常に重要な時期であると、その前提は米ソの軍事力の比較がありまして、その後いまの四点というのが出てきまして、西側が軍事力の面で増強を図ることは抑止力になるし、軍縮をする上で交渉上役立つとの理解でアメリカがおられると承知している、アメリカがそうやっていると、こういうふうに言っておるわけです。
  77. 田中寿美子

    田中寿美子君 それは文書で渡されたものでしょうか。口頭の基本原則、基本見解ということでございますか。
  78. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 私が伺っているところでは、口頭でやりとりの中でワインバーガーさんとまず軍事情勢の何かの話がございまして、その後で総理がワインバーガーさんに、あなたはレーガン大統領と特に親しい人だからここで四点申し上げるということで言われたもので、紙はないと思います。
  79. 田中寿美子

    田中寿美子君 それでは外務大臣にお尋ねいたしますけれども、この見解と同意見でいらっしゃいますか。つまり西側が軍事力の優位を保っていくことが軍事的抑止力になり、軍縮交渉に役立つと、こういうふうにお考えですか。
  80. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先ほど申し上げたように、ソ連が軍事力の強化、核戦力を中心としてデタントと言われながらもこの十年増強しておって、そしてこのままほうっておけば一九八〇年中葉にはソ連の方が優位に立ってバランスが崩れるのじゃないかと、そういう考えを持っておるわけですね。それに対して、軍事力の面で増強を図ることは抑止力になる、境強を図って軍事力のバランスをとりたい、そのとるということが抑止力になる、しかしその抑止力については日本としては、あるいは西欧諸国はオタワ・サミットでも話し合ってそれをできるだけ低いレベルにしてくれと、それからまたソ連との対話はやってくれと、それで米ソ間では中距離核戦力の問題、STARTの問題で対話をしておるし、またしようとしておりますと、こう御説明申し上げたわけです。
  81. 田中寿美子

    田中寿美子君 西側が優位に立とうと、いまおっしゃったようにソ連は非常に軍事力を強化している、だから八四年ぐらいまでにそれよりももっと優位にしなけりゃいけないと。そうするとまた今度は東側が劣勢になるから、向こうも増強のためにやる。つまり、軍事的抑止力になり軍縮に役立つどころか、反対に軍拡競争をどんどん進めていくという方向に向かっていく。いま外務大臣が言われたように、低いレベルのバランスどころか、ソ連が高くしていくからこっちももっと高くして優勢に立つ、そうするとそれよりまた向こうは優勢に立とうとする。だから、軍縮どころか軍拡競争を誘発していくので、私は日本としてはそういうことに賛成し、また同調すべきではないというふうに思うのですけれども、いかがですか。
  82. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) アメリカが、西側が軍事力の面で増強を図ること云々と、こう言っておるところの取り方が、これがおっしゃるように、もうソ連に負けないようにソ連よりも優位に立てと、こういう取り方をすればお話のようなことになるが、ほっとけばバランスが崩れるから、そこで西側がやはり増強しなきゃいけない。しかし、それはそれで置いといて増強しなきゃならない。というのは均衡ですね、均衡を図る。それが抑止力ですね。だけれども、一方において低いレベルと、それから交渉もしておる。だから、それはわれわれ軍縮をやれとかいうときにその成果を非常に期待しておるわけです。だから、まあ先生のような進め方をすればなるほどそういう懸念は出てくるけれども、私らはちょっとそうでなく、やっぱり均衡というのが抑止力、それでそれは低いレベルと、こういう考え方です。
  83. 田中寿美子

    田中寿美子君 いま米ソが戦略核兵器、あるいは戦域核兵器両方について凍結の交渉をしようというようなことを双方で言ってはいる。だけれども、アメリカはソ連の脅威ということを非常に宣伝しているわけですね。ですからソ連は、非常に西側よりは東側が優位に立っているという判断のもとで軍備の増強を主張してきていること、これはだれでも常識としてよく知っていることだと思います。それで現状をどう見るかはこれは軍事専門家でないとはっきりはわかりませんけれども、それでも一九八一年から二年の「ミリタリー・バランス」というのの中に出ているアメリカとソ連の軍事力の比較で見ますと、確かに戦略ミサイルとか戦域ミサイルとか、そういうものの数はアメリカよりソ連の方が多いわけですが、その数だけから言ってソ連が優位であるというふうに見ることは簡単にはできない。質的にどれだけの力があるかということもこれはよくはっきりわからない面がありますね。だけれども、もう一つはソ連という国の国境線にはずっとヨーロッパの諸国があるわけです。そして、そのNATOの国の中にはアメリカが戦域核をすでに配備しようとしている。パーシング五をあそこに持ってこようとしている。ソ連はSS2〇を置いている。そういう関係で軍事的な優位性を保つということは、そのSS2〇に対抗してパーシングIIを配備していくことだというのがアメリカ考え方じゃないかと思うんですね。そのためにそれを日本が全面的に支持するということは非常に問題であって、軍縮よりは軍拡をどんどん進める役割り日本が果たしていくというふうに思います。  それで、時間がなくなりますから一つだけ最後にお尋ねしておきますけれども、わが党の飛鳥田委員長が衆議院の代表質問で、政府国連総会で核不使用の決議に初めのうちは賛成していた、それがその後棄権から反対へと回った。さらに中性子爆弾の禁止決議に反対した。これはアメリカ以外にはないわけですね。中性子爆弾をつくろうとしている。それはどういう意味かとただしたのに対して、核不使用決議についてはそれが真に実効性を有するか否か、安全保障上いかなる意味合いを持つかを考慮しつつ、そのときどきの決議案の内容、提案国の意図、国際情勢との関連などを総合して投票を行ってきたと。まあその投票の状況は私も見てみましたけれども、最初一九六一年に一度核兵器の使用禁止宣言に賛成しただけで、あとは棄権になり反対になっているんですね。そしてその理由が全く私には腑に落ちない理由なんですね。今度も中性子爆弾の製造禁止とかいうようなものが出れば政府はまた同じように、これはアメリカがやることに対しては、これを禁止しようという動きに対しては反対なさるだろうというふうに思います。そうすると、軍縮特別総会に、それこそ広島、長崎という非常に平和や軍縮にとってシンボルとも言うべきものを抱えている日本政府が、軍縮特別総会でどのような演説をなさるか、私は今後もう少しうかがいたいと思っておりますけれども、実際に国連で核兵器の禁止、あるいは使用禁止、あるいは製造禁止などの決議案が出たときに、西側と一緒になってずうっと反対投票をしてきている、これを続けるということは私は非常に日本としてすべきことではないというふうに思うんですけれども、このことについて外務大臣にお答えをいただいて、もう時間が参りますのでまた次の機会でもうちょっと内容を詰めさしていただきます。
  84. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 核不使用決議についての御指摘はそのとおりでございますが、鈴木総理もしばしばお答えを申し上げておるように、提出者の意図とか、その折の背景、また国際情勢、そういうことを勘案して賛成、反対を決めたと。いまの核不使用決議の場合で見ますと、昨年と一昨年に反対をしておるわけでございますが、これは御承知のように、アフガニスタン問題でソ連のああいう侵攻があって、そしてその後国際情勢が非常に悪くなっておる、そういうような背景を踏まえて、当時西側の諸国が一致して反対をした。こういうことでそのことは総理も答弁で御説明申し上げておるところだと思います。今後におきましても、核軍縮と核廃絶とかと言う前に、一体何が必要か。日本としては被爆国の悲惨な体験を得ておるのでありますから、実効の上がることと——その実効が上がることということについては、一つには核実験をまずやめてもらいたい、あるいは核軍縮を実行してもらいたい、削減をしてもらいたい、あるいは核不拡散条約をこれを徹底してもらいたい、あるいは新たな生物兵器のようなものはこれは禁止してもらいたい、こういうことを申し上げておりまして、実効の上がる措置をとってもらいたいということでまいっておるわけでございます。
  85. 田中寿美子

    田中寿美子君 一言だけ。  軍縮というのは、それは現在の状況からまずとめるというのが第一歩だと思いますね。すぐになくなってしまう、なくしてしまうということは不可能ですから。ですから、現状を凍結し、それから今度はそのほかいまおっしゃった拡散を防止するとか幾つもあると思います。それで、それがどのような国が提案したかということでもって決めるのじゃなくて、一歩でも進めるためには日本などが率先して提案者となるべきものだと思うんですけれども、いろいろと理屈をつけて、もう何年も常に核兵器使用禁止の決議案だとか、そういうものをみんな反対に回っているというのは日本としてはまことに恥すべきことだと私は思っておりますので、今度の国連軍縮総会に向かって政府がどういう態度をおとりになるのかについて、さらに今後お尋ねしていきたいと思います。  きょうはこれで終わります。
  86. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 初めに、対外経済協力について若干確認をしながらお尋ねをしてまいりたいと存じます。  今年度の政府開発援助の一般会計を拝見をいたしますと四千四百十七億円、これは外務省所管だけではないわけです。数えてみたら十四省庁にまたがるという、それを合算してその金額になる。そこで、経済協力についてはいまさら申し上げるまでもないことであり、今後、世界秩序の確立と平和というものを具体的な実現の方向で取り組むとするならば、わが国としては非常に重要な政策の分野であることは論をまたないところでありますだけに、今後、これが機能的にそして経済協力が進められるということはだれしもが願望しているところであろうというふうに思います。ただその際に、慎重に厳格に弾力的に、まあこれは当然のことだと思うんですね。そこで、今後その要請というものが高まるにつれ、対外援助額も相当その枠がふえてまいっております。まあ国民の税金を使うわけでありますから、その辺の配慮というものは十分考慮しながら取り組んでいかなければならない。それで、こうして拝見しますと、対外経済協力というのは最終段階でどこが一体責任を持つんだと、こういう疑問が一つ起こるのです。なぜこれが一本化できないんだろうというささやかな疑問が起こってきます。恐らく窓口になるのは常に外務省であろうとこう思えてならないわけです。しかし、いろいろとやっかいな問題が横たわっているようでございます。  その辺からお尋ねをしてまいりたいと思うんですが、これは最近意見書あるいは答申が出ているかどうか私はわかりません。二、三年前の対外経済協力審議会の答申を拝見いたしましても、一元化することが望ましい、できることならば経済協力省なるものをつくってという提言すら行われている。しかし、いま行政改革をやらなければならぬという厳しい側面もあるわけでございますので、これをどう一体整理をしながら、この問題をさらに強化していく必要があるのであろうか。これは私のみならずどなたも抱いている、御関心のある方はお持ちになっている事柄ではなかろうか。外務大臣、これは政治的判断を要請されますので、この辺については過去においても予算委員会等でどの程度のやりとりが行われたか私はつまびらかにしておりませんけれども、現段階でどのような今後の経済協力のあり方を、いま申し上げた点を踏まえてお考えになっていらっしゃるか。その点からまずお伺いしていきたいと思います。
  87. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 渋谷委員の御指摘どおりに確かに十四省庁に計上されておりますが、中身をごらん願うと、大体外務省と大蔵省の二省に集中しておると思うんですね。九五%ぐらいになると思うんです。そこで、この援助予算の執行をする上には、総括的でかつ効率的な援助を行う必要がある、こういう観点で関係省庁と十分連絡協議をしながらその実施に当たっておるというのが実情でございます。いまおっしゃったような批判のあることは私どもも十分承知しておりますから、分散しておって不都合なことのないように、その点は鋭意われわれは努力をしておるところでございます。
  88. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはおっしゃることはわかるのですけれども、これは今回初めてこういうものが出てきたわけじゃないんですね。もう長い間の一つの習慣といった方がいいのかわかりませんけれども、それぞれ所管する各省庁が、それぞれに役割りを持って経済協力の側面を担おうということは理解できないわけじゃありません。しかし、最終段階には一体どこが責任を持つのか。いろんな外交的な折衝問題が必ず起こると思うんです、対外ですから。その都度たとえば通産省がやる、農林省がやる、文部省がやる、厚生省がやる、運輸省がやる、こんなふうになるのでしょうか。行管庁もあるんですよ、対外援助は。これでは非常に混乱が増幅するだけでありまして、私は冒頭に述べましたように機能的な力というものは発揮できないのではないだろうか、弾力的な対応というものはできないんじゃないかという心配をするわけでございます。  これは予算書を見れば、確かに外務と大蔵は圧倒的に多い金額である。しかし、その地やっぱり何百億とか何十億というのが全部ついているわけです。こういう細切れになっておるような状況の中で、やはり整理された方がやりやすいのではないだろうか。ときには敏速に手が打てるのではないだろうかというふうに感じてならないんですけれども、これは今後とも、まあたまたま臨調の答申がどんな形で出るかわかりませんけれども、しかし政府としてもこれは臨調の答申が出る出ないにかかわらずお考えになって、これを具体化して整理をされた方が仕事の面としてはやりやすいのではないだろうか、こんなふうに思えてならないのですが、これはあくまで素人的な発想でしょうか。
  89. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先生御指摘のとおり、予算は各省庁に分かれておりますが、政府開発援助予算でございますね、これは俗にODAと言われているものでございますが、これは中身を見ますと、大ざっぱに言いまして贈与とそれから借款に分かれるわけでございます。その中で贈与でも、二国間贈与と国際機関に対する拠出金なり出資金がございます。二国間贈与にまたこれが無償資金協力と言われている無償供与とそれから技術協力とあるわけでございますが、この無償資金協力と技術協力に関しましては、外務省中心になりまして外務省が全部予算を持っておりまして、一部食糧援助関係だけが大蔵省にございますが、あとは外務省予算になっておりまして、これが関係省庁と相談しながら外務省予算として処理していく、こういう体制をとっております。  それから円借款の方でございますね、円借款の方はこれは四省庁体制というのがございまして、御承知のように海外経済協力基金法にはっきりと書いてあるわけでございますが、外務省と大蔵省と、それから通商産業省と経済企画庁、この四省庁で協議して決めていくと、こういうことになっております。  それで予算は、経済協力基金の一般会計の予算は大蔵省でございます。それから、国際開発金融機関等含めた国際機関に対する拠出なり出資でございますね。これは国際金融局が持っていると。その結果として先ほど大臣からも申し上げましたように、ODA予算の九五%余りがもう外務省と大蔵省に集中しております。名残りの十二省庁が持っております予算というのは、一部、国際機関に対する分担金みたいなものもございますし、それからあるいは日本民間の企業に対する、いわば何といいますか経済協力の補助金とか奨励するようなお金、そういうものが若干ずつある。こういうのがございまして、何と申しますか、政府ベースでやる、政府政府交渉してやるその予算というのはほとんど外務省または大蔵省に集中しているというのが現状でございますので、ちょっと現状を申し上げました。
  90. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 要するに、現状でもやりやすいというわけですか。
  91. 柳健一

    政府委員(柳健一君) いや、先ほど大臣も言われましたように、十四省庁には散らばっているけれども、九五%が外務と大蔵に集中しておるわけでございますし、私どもといたしましては、当面やはり先生御指摘のとおり総括的かつ効率的な執行というのは大事だと思っておりますので、運用面においてそういう関係省庁と連絡をとりながら、十分その実を上げるように今後も努力していきたいと、こう考えておるわけでございます。
  92. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それはいままでも努力なさっていると思うんですよ。決して不真正面に拱手傍観されているはずはないと思うんです。今後、努力をされるというのは、どういう方向へ努力をされるのか。まあ、どだいいつも問題提起になる一つのあり方は、各省庁で話し合いという場合、それが円滑にいく場合となかなかぎすぎすしてその結論が出ない場合と、お互い省庁間の目に見えない対立というものがある。この辺で、外務省の肩を持つわけじゃないけれども外務省は相当苦労するのじゃないかと思うんです。本来ならば対外ですからね、対内より対外なんですから。そこに視点を注ぐならば、そういう非常に足並みのそろわない、お互いの話し合いは、それは時間をかければできるんでしょうけれども、そういうむだな労力を費すよりも、集中的に外務省なら外務省、まあ、大蔵省があっても結構だと思いますよ。あえて言うならば、大蔵省と外務省の両省で最終的にはこの対外協力援助については責任を持つという形になるんでしょうか、そうじゃないんでしょう。各省にそれぞれ予算がつけられているわけですから、各省庁においてもこの執行状況については責任を持たなくちゃならぬわけでしょう。
  93. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先ほど申し上げましたように、政府ベースの予算というのはもうほとんど外務省と大蔵省についておりますので、かつ先ほど申し上げましたように、無償資金協力及び技術協力につきましては外務省予算であり、かつ外務省中心になって関係省庁と相談しながらやっていくという体制をとっておるわけでございます。  それから、円借款もさっき申し上げましたように四省庁体制、しかしやはり結局は出口、入り口、窓口は外務省でございますし、外務省は設置法上も御承知のように外交政策としての経済協力を所管するということになっておりますので、外務省中心になりましてこれを整理しながらやっていくということを、もうすでに努力していろいろやっているわけでございます。
  94. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 柳さんのおっしゃることよくわかるんですよ、僕は。それで、審議会の答申が、意見書がわざわざ出るわけがないんですよ、一元化した方がやりやすいという、そういう提言が出ているんですから。やっぱり、そういう意見というものは尊重して、そういう方向へ向けていくことの方が仕事の面としてやりやすいんじゃないかと僕は申し上げておるわけです。  これに関連した問題として、いま経済協力局の中には各省から出向している人は何人いますか。
  95. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 申しわけございません。正確には覚えておりませんけれども、少なくとも三十人ぐらいのオーダーでおられるのじゃないかと思います。
  96. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 何でその必要性があるのですか。
  97. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先生御案内のように、経済協力の中身は農林業開発であったり、それから電気通信であったり運輸部面であったり、いろいろな人間生活の各分野にずっとわたっているわけでございます。  そこで、そういう社会経済の発展に必要な各分野について、やはり単に外務省職員だけではカバーし切れない分野がございますので、各省の関係者に出向していただいて、そしてまあそこで、外務省職員では及ばないところを手伝っていただいていると、こういうことでございます。
  98. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 この経済協力関係仕事が始まってもう相当年数がたっているんでしょう。だから、省内においても非常に能力のある外務省の方々が私は育ってきているのじゃないかと思うんですよ。いまなお各省からの出向をまたなければ、円滑な取り組みというものができない状況にあるのでしょうか。
  99. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先ほど申し上げましたように、一つにはある程度専門的な知識を持った職員が、たとえば調査団を派遣するとかいうようなときにいていただくことが非常に重要であるということとともに、かつ各省の出向者の方々に外務省において援助仕事をやっていただいて、そして援助仕事に経験を持っていただく。私ども援助をやる場合には結局は各省庁の協力を得ながらやらなければなりませんから、そこでまあ各省庁の方々が外務省での援助の経験も積んで帰っていただいてまた御協力を今後いただく、まあいろいろな効果があるのではないかと私は考えております。
  100. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 その面もあるでしょうね。ただ、やっぱりこの種の協力というものは公正を期さなければならないことは言うまでもありませんけれども、やっぱり自分の省から出向しておりますとね、少しでもというようなことで混乱が起きませんか。
  101. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 私、実はもう経済協力局には十年前からおりまして、途中ちょっと抜けましたけれども、かなり長く経験しておりますが、私の経験している範囲内では各省から出向された方々というのは、出向されると本当に外務省立場に立って対外政策の一環としての援助というもののために一生懸命働いていただいているというふうに私は考えております。
  102. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは外務省としては、そういうお立場で物を言わなければならないということになるだろうと僕は思うんですよね。しかし考えてみると、まあどういう身分になっているのかわかりませんけれども、週三十名なら三十名入れば、それは外務省職員としての枠に入るのですか、それはもとの省の定員の中に入るのですか、どういうことになるのですか、それは、
  103. 柳健一

    政府委員(柳健一君) さっき私、三十名と申し上げましたが、ちょっとこれは申しわけないんですが、数が間違っているかもしれません。ただ、ステータスの問題、地位の問題を申し上げますと、外務省に出向された場合は外務公務員として、外務省定員の枠の中でやっていただいております。
  104. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 じゃ、むしろ将来ともにその人を外務公務員として置いた方がいいような感じもしますね。それでなくても外務省の本省の職員の数が足りない、五千名にしろなんという話が出ているそのさなかにおいて、私は買いかぶって物を言っているわけじゃありませんけれども、もう十二分に、能力的には外務省本省の方々でも、出向仰がなくても話し合いなんかいつでもできるのですから、その人たちがいたから便利だとかそういうことじゃないでしょう。これはできないわけはないじゃないか。そういうところにもきちんと外務省外務省、一元化して効果をむしろより以上高めていくということの方が私は可能性が強いんじゃないかというその考え方に立っていま申し上げているわけなんです。何も支障がなくて、何もわだかまりがないというならば私はあえてこれに対する反論をしようとは思いません。要は円滑に進めばいいわけでございますので、そういうような阻害要因がないということであれば私は一向に構わない。  ただ、無償援助の場合と有償援助の場合、有償の方ですか、あれは四つの省庁の協議をまった上で決めるというのは。これは現在までずっと円滑に進められてまいりましたか。
  105. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 完全にちゃんと円滑に動いているかというもし御質問であれば、非常に率直に申し上げますと、それはやはり協議に手間を取ることがあるとかいろいろと意見がいませんと、四省庁の意見が完全に合わなければこれはまとまらないわけでございますから、その意味では今やはり協議に手間取るとか、いろいろと御批判は確かにあると思いますし、実際にもそういうこともあったと思います。  ただ全体的に眺めてみまして、非常に四省庁体制のために何もかも動かなくなってしまって困ったとか、動きもにっちもさっちもいかなくなったというようなことは私余り記憶しておりません。
  106. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは動かなくなったら重大事でございまして、それは非常に時間がかかり過ぎる、結論が出るまで手間取ったということになってもまずい場合もあるわけでしょう、いままでの長い外務省の経験の上に立脚して考えれば。しかも今度、先ほど申し上げたようにどんどんふえていく、有償額にしても無償援助にしても。そういった場合に対応の仕方に確かにいろんな議論が出るでしょう。まとまりがつくまで相当の時間がかかる場合があるだろう。いま非常に機敏に行動を移さないと、逆に日本に対する評価というものが悪くなるという場合なきにしもあらずだと私思うのです。海外に行って約束はしてきた、約束はしたけれども半年も一年間もナシのつぶてであるというようなことが過去においては実際あったわけです。そういったところから日本という国は一体何だと、少しも約束した信義を守らないということに将来ともならないという保障は何にもないわけです、はっきり言って。その辺は櫻内さんどのように判断されて今後の経済協力の有償、無償についてのありよう、特にこの有償四閣僚会議でこれからもいろいろ取り決めや実行、そういうことが進められていくと思うのですけれども、いまやりとりをお聞きになっていただいて——むしろ改善しなければならないという私は印象を受けたわけです。外務省海外の動向というものについては一番よく知悉し理解をしているはずであります。と同時に、それと裏表でもってやはり外務省がその主導的な立場に立ってそれを運営する、あるいは推進をするということが私は非常に必要じゃないかと思う。もっと外務省自体が独自性というものを発揮してよろしいのではないのか、いかがでしょう。
  107. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 大変貴重な御意見をちょうだいいたしましてありがとうございます。私は、この経済協力現実に扱っていく場合に、どうしても現地の大使館、また外務省経済協力の機構というものがすべての場合に携わらなければこれは物事が進んでいかないと思うのですね。頭越してはそれはやれないと思うのです。でありますから、外務省がやはり関係の各省に配慮をしながら、しかし外務省自身が熱意を持って、それからいろいろ問題があればあるなりの努力をしながら、外務省自身がやはり真剣に総括的に考えながら努力をする、その気力というものが大事だと思うのですね。ですから、いろいろ経済協力の問題に御批判があれば、それはまず第一に私どもが批判を受けておるということで改善すべきところは改善して、そして実効の上がるようにすべきではないかと、こう思います。
  108. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まさにそのとおりだと思いますけれども、四者が協議した場合に、最終的にはやっぱり総理が責任をお持ちになるのですか、外務省ですか、大蔵省ですか、経企庁ですか。
  109. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 最終的には内閣総理大臣でございます。
  110. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 内閣総理大臣ですね。
  111. 柳健一

    政府委員(柳健一君) はい。
  112. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 次にそういった有償、無償の問題、これからも円滑を期してという期待を持っている一人でありますので、さて今度は、協力をした、援助をしたその効果が一体どういうふうにあらわれているのかということをチェックすることも重要な課題の一つではなかろうか。これは当然のことですね、これは税金を使ってやるのですから。いろいろな援助の仕方があるようですね、そのいろいろな援助の仕方のある中で、最近の報道によりましても指摘されております商品援助というのがある。これはもうすでに数年前衆議院の予算委員会で議論された経過があるようであります。これは、援助する方は出しっ放しというわけにいかないわけですから、われわれとしても十分監視をする責任があるわけです。  最近においては外務大臣が訪米される直前に、中米・カリブ海に対して特に援助強化という考え方をまとめられて継続的にそれを行うという決定をされたようであります。昨年もすでにジャマイカに対して商品援助がなされている。何もこれはジャマイカというのは一つの例でございまして、ほかの中進国に対していろいろな形態の中で商品援助と目されるものはずいぶんございます。ここにも資料がございますけれども、その実態はどうなっていますか。
  113. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 商品援助と申しますのは、先生御案内のように国際収支が非常に困難がございまして民生の安定に必要な物資すら輸入できないというような状況になったときに、その国の必要な輸入品を購入するために緊急的に援助するというのが商品援助でございます。ただいまお話がございましたが、ジャマイカの場合は昨年一千万ドル、二十一億円の商品援助を出したわけでございますが、これは当時ジャマイカが非常に極度の経済困難に直面しておりまして、たとえばIMFによりましても、同国の外貨不足を補うために昨年一年間でもって七億五千万ドルの緊急援助が必要であるという判断をいたしまして、これに基づいて世銀等の主催のもとに開かれました援助会議、これに協力して日本も出した。こういう経緯がございます。
  114. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 商品援助ですから、それは国によってその要請がそれぞれ異なるでありましょう。緊急に援助しなければならぬ、また相手国からもこういうものをと要請があるでしょう。一概に、一律にこういう商品がということは言えないにしても、従来、大体共通性のあるものとしてはどういう商品が多かったのでしょうか。
  115. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 商品援助の内容は、私どもとしては発展途上国と話をいたしますときに、軍事的な目的に使われるものは一切いけませんと、こういういわば除外すべきものをはっきり明示いたしまして、それ以外はその国が最も必要としているものということで、ありとあらゆる分野のものにわたって実際に商品援助を受ける国がリストをつくりまして私どもの方に出してまいるわけでございます。それを私どもの方でチェックいたしまして、承認してその上で出すと、こういうやり方にいたしております。  どの分野のものが多かったかという御質問について、ちょっと私はいま分類されたあれを持っておりませんが、相当広範囲な物資にわたっておりますが、生活安定のための物資というものが主として中心になっております。
  116. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それは軍事を目的としたことではない。これは協力それ自体が、もうしばしばここでやりとりがありますように、それは民生安定ということが土台になっているわけでございますから、それをあえて聞こうとは思わないのですが、聞くところによりますと、肥料とか繊維が相当主要な商品として出されているというふうにも聞いております。これは聞いた話ですから確実なものであるかどうかわかりません。その他いろいろな各種のものがあります。それを消化した場合にどうなりますか。消化した先は。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕
  117. 柳健一

    政府委員(柳健一君) その前にちょっと一言申し上げますと、商品援助は現在でわが国では一般アンタイと称しまして、国際入札に付しておりますので、ですから、当該国がどこの国から買うかは、これは最も安くていいものを調達できる国から買うと、こういうシステムになっております。それが一つ。  それから、商品援助を通じまして購入いたしました発展途上国の政府は、その物資を国内で売るわけでございます。売りました資金を積み立てます。これを積み立てておいてその国の経済社会開発のために使うと、こういう仕組みになっております。そのときに、その積み立てました金を一般的にその国内経済社会開発に使うこともございますし、それから中国の例のように、特定のプロジェクトに対して使うということもございます。みんな話し合いでいたしておるわけでございます。
  118. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そこで、気がかりになる問題があるんです。なるほど積み立てられるでしょう、どういう金額で売ったかということまで全部チェックできますか。それでどのくらいの売り上げ金になったかということまでチェックできる仕趣みになっているんでしょうか。報告書というのは向こうから来たやつをそのまま信用する以外にないわけでしょう。
  119. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 御指摘の点は、確かに余り人の国の財布の中までのぞいて、これがどうなったか、ああなったかと言ってどこまでそれは追及できるかは疑問でございますし、それはある程度向こう政府を信用してやるという以外にないのじゃないかとは思っております。
  120. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そのとおりだと思うんですね。  そこで問題になるのは、売り上げた金を戦略的に使われるおそれがないのかということがしばしば疑惑の目を持って向けられるわけです。それは、中進国や発展途上国というのはやはり武器がほしいですからね、あるいはその国情にもよるでしょうけれども。そこまでわれわれが不信感を持って、じゃ今後は、どうもあの国は信頼性が乏しいという判断に立つこともむずかしい問題であろうし、一切いまおっしゃったように御信頼を申し上げて商品援助をする以外にないけれども、売り上げた代金はいまおっしゃったとおり積み立てる、その積み立てた額が本当に正当な一体金額であるのかどうなのか、これもわからない。あるいは、そのほかに転用されるおそれもないとは言えない。申し上げるまでもないことでありますけれども、中進国とか発展途上国というのはことに政情不安定、社会情勢もきわめて不安定であります。いつクーデターが起こるかわからないというそういう不安材料を持ちながら、現在もなおいろいろな問題がくすぶっている。そういう状況の中でわれわれがあくまでも信頼ということを大前提にして、それ以上のことはとうてい不可能であるという、それで割り切っていいのかなというやはり疑問がどこまでいっても解消できない。  だから先ほど同僚議員が質問した中でも、それは韓国に対する援助なんかにおいても現在いろいろな仕組みが私はあるんだろうと思うんですよ。それは政府としては間違っても、口が裂けたってそんなことはおっしゃれないと思うんです。それはもう方針が、軍事的なそういう名目でもって協力をするということになっていないんですから。民生安定というのが土台なんですから。しかし、こういうふうに激変しているような情勢の中で、それだけをわれわれがうのみにしていいものだろうか。何とか適切なチェックの方法がないものだろうか、ということを考えても決してむだなことではなかろうというふうに私は思うんですが、やはり事実上困難でございましょうか。また、そういったことの可能性が全くないというふうにお受けとめになりましょうか。
  121. 柳健一

    政府委員(柳健一君) まず商品援助というのは、先ほど申し上げましたように、非常に特定の限られた場合に緊急やむを得ず出すという基本的な考え方がございますし、実績としても商品援助わが国の円借款の中で占めるシェアというのは減ってきております。  その次に、いま委員の御質問になりました商品援助の結果、積み立てられた円貨が転用、悪用されるおそれが全くないと言い切れるかという御質問については、私どもとしましてはもちろん向こう政府に乗り込んでいって全部帳簿をチェックするということはできないにしても、一応は報告も出してもらったり、それから使い道も大体明らかにしてもらっておりますから、ですから、さっき申し上げたことに戻ってしまいますけれども、結局向こう政府の申しますことを信頼してやっていくということ以外に仕方ないと思います。
  122. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もうそれしな言いようがありませんね。
  123. 柳健一

    政府委員(柳健一君) はい。
  124. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 けれども、そういう危険性があるという、そういう含みをもったということだけは答弁の中に考えられるということですよ。それで、これは三木さんが総理大臣のころに答弁されているのですが、やはり検討の必要があるということを述べられているところがあるんです。いまは商品援助が相当多いというようなことについては、いろいろとこれは援助のあり方としては検討する余地はありますけれども、方向としては一つの方向だろうと、こういう内容のことであり、十分にそこに検討する必要があるということを過去において述べられているんですね。したがって、それは一つ政府の方向として受けとめざるを得ないわけです。けれども、その後検討されたということを聞いてはいないわけです。だから、しばしばここでこの当外務委員会において問題になりますように、あるいは安保絡みではないのかあるいは軍事的に転用されるおそれはないのかということは決してゆえなきことではない。ただもう突拍子もない発想でもって述べている問題ではなかろうということなんです。特にいま中米・カリブ海援助強化ということについて、いまおっしゃったように二十一億ドル昨年ジャマイカに対してやりましたね。こういった点についても、あの周辺の国々にはエルサルバドルを控え、ニカラグアを控えている大変不穏な情勢の国が控えているわけですね。いろいろな見方がある。あるいはキューバを基地にして、ソビエトの介入を防ぐ一環としてその周辺の地域に対する援助アメリカに同調しながら、また、アメリカの要請にこたえながらやるんだと、これは新聞報道でございますけれども。  そうなると、一々アメリカの要請にこたえてそういう疑いをかけられながらも、今後やはりそういうような援助の仕方というものを続けなければならぬのかどうなのか、また側面的にそういうような問題が新たに提起されているのではなかろうかという心配が実はあるわけですね。そういう点についてはどういうふうに分析をされて、今後のそうした発展途上国に対する援助のあり方をお考えになっていらっしゃるのか。だから非常に微妙になるわけですね。その周辺地域を共産圏にしない。これはかってトルコにおいてもそうであった、パキスタンにおいてもそうであった。そこに援助をする、それは名目は緊急を要請された商品援助である場合もございましょう。パキスタンなんか特に多いんですから、バングラデシュも多いんですから。その周辺地域を見ると、相当やっぱりソビエトの支配下にある国々が周りを取り囲んでいる。と、やっぱりその防波堤の一環としての役割りを果たすためにというような、これは非常にうがった考え方にあるいはなるかもしれませんけれども、しかしあながちにそうと至言えない要素というものも含んでいるのではないだろうか。いま柳さんおっしゃったでしょう、チェックの機関もないのだからどういうふうに金が使われているかわからないわけだ。転用のおそれが絶対ないという保証は何もない。ということになると、そういうことも連動して考えられはしまいか。どうでしょう。
  125. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 私は非常に率直に先生いろいろおっしゃっていただいているのはよくわかります。わかりますが、わが国援助はやはりあくまでも南北問題の根底にある相互依存と人道的な考慮と、ここからやっておるのでございまして、そしてかつ先ほどから申し上げておりますようにそもそも商品援助を出すこと自体をきちんと考えて出していくと、本当に必要であるかどうかということを考えて出していく。その結果使われるお金も積み立てた内貨も、私正直に全くとことんまで追及する手段はないと申し上げましたけれども、さりとて向こう政府との間でかなりいろいろと話し合っておりますし、私どもはいままでの経験上では、向こう政府はこれをたとえば軍事的な用途に転用したとかそういうことはまずないと確信しておるわけでございます。それはおまえ確信していてもだめじゃないかとおっしゃられたらそれっきりなんですけれども、私どもといたしましてはかなりいろいろ話し合いながらやっておりますので、その過程を通じまして、これはやはりその国の経済社会開発のために使われているという確信を持っているつもりでございますので……。
  126. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これ以上申し上げましても水かけ論になるだろうと思うんですよね。けれども、そういうおそれはないということを全く否定するわけには、確信はおありになると言ったってそうはいきませんよ。あしたのことはわからないんですから。そういう点にも十分やっぱり、これからの援助形態というものももう一遍洗い直して、すべてを洗い直す必要はないにしてもその辺ももう一遍考え直してもいいのではあるまいか。それから話し合い、それは話し合いといっても向こうのトップか何かが来て話し合うだけであって、中間にいる実際に仕事をする連中がそれを実際に認識をして、理解をしてお互いの信頼関係に結ばれたそういう方向に向かって日本からの商品援助に対して運用していく、そういう理想論ばかり言えない問題もあるのではないかなということを心配するわけであります。  そこで、せっかく枝村さんもおいでになっておりますので、中米・カリブ海援助強化という問題、いまそうした問題に絡めてこれからの展望と、どうしてもあの辺はアメリカの影響力というものは非常に強い国柄でありますだけに、まだいろんなアメリカ自身の戦略的な意図というものも当然ございましょうし、別の面からそうしたアメリカの戦略的な意図に日本が組み込まれて、不承不承と言った方がいいのか、その辺は何とも表現の仕方がないんでありますが、そういうものに同調して、しまったというようなそういう後悔を残すようなことは全くないかどうか、その辺の状況についてかいつまんでおっしゃっていただければありがたいと思います。
  127. 枝村純郎

    政府委員(枝村純郎君) ただいまの御質問先ほどからの脈絡で、まず中米・カリブ開発構想ということ、これに日本は前向きといいますか、積極的に関心を持って動きをフォローしているわけでございます。これについてアメリカのレーガン大統領の演説というようなことがございまして、そういう構想に協力すること自身が何かアメリカの軍事的戦略的な構想の中に組み込まれるのではなかろうかというふうな心配も表明されているようでございますけれども、この中米・カリブ開発構想と申しますのは、私どもがかねてこの地域の不安定の根本的な原因である経済開発のおくれでありますとか、社会的不公正の存在でありますとか、そういった問題を基本的に根本的に解決しようじゃないかと。したがいましてメキシコでありますとか、ベネズエラでありますとか、カナダでありますとか、それぞれアメリカとはこの地域に対する対策、その政策、そういったものが違う国のそういう長期的な不安定の原因に対して対処する必要がある。そういうことをいわば共通項としまして、昨年の七月にナッソーでこの四カ国の外務大臣が集まって、お互い政治的にこの構想を利用することはよそうじゃないか、あるいは軍事的な援助はよそうじゃないか、そういうふうなことで一つの大きな協力の枠組みをつくった。そういう線上で援助の対象国になります中米の国であるとかカリブの国であるとかとも話し合いながら、あるいは日本も含めてそのほか関心のある国々とも連絡をしながら進められておる構想でございます。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕  この構想自体非常に柔軟など申しますか、特に先ほど申し上げましたように特定の方向に参加するものを縛るというよりも、いわば各国がそれぞれの考えてこの地域により大きな関心を払いながら援助していこう、それも並行的な努力というようなことでございますので、まず申し上げますことは、こういうことについて仮に日本が関心を持ってフォローしていく、今後具体的にそれじゃ何ができるかと、これもあくまで日本の先ほど来柳局長からも申し上げておりますような人道的な考慮とか相互依存というようなことが基本にあって協力していくわけでございますから、それがアメリカの構想、アメリカの何か戦略の中に組み込まれていくのじゃないかという、そういう心配はないというふうに思うわけでございます。
  128. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いまお答えいただいたように、われわれとしても願望としてはそういう方向へいってもらいたい。もう切なるものがあります。さて次の問題として、実際に今度経済協力がなされた、援助されたという実効についてどういう状況になっているのだろうか。金は出したけれども少しも実りがなかった、かってそういう話が頻繁としてわれわれの耳にも入ったことがあります。民生安定というわれわれの基本的な目標とは全然うらはらに、少しも民生の安定に寄与されていなかったという事実関係も、特にASEAN諸国あたりからの経過として聞いております。いろんなプロジェクトチームがつくられて実施される、そういう測定効果というものについてこれは十分政府としても、先ほどの柳さんの答弁ではございませんが、報告書をもらったり、実際の推移について掌握をされておられるんだろうと思うんですよ。とするならば、当該委員会においてもし要求があれば公表することも必要ではあるまいか。どれだけの金を使って、どれだけの人的資源を使ってどれだけの一体効果があったのか等々、そういう問題もございましょう。そういう点についてはどういうお考え方を持っておられましょうか。
  129. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先生御指摘の援助資金が効率的にきちんと効果を上げているかどうかというのはまことにごもっともでございまして、私どもといたしましてもかねてから、実はもちろん援助を始めたときから、たとえば無償資金協力については外務省でと、それから技術協力につきましては、もとは海外技術協力事業団、現在では国際協力事業団、円借款については基金と、そういうふうにそれぞれ効果測定というのはいたしておったわけでございますが、一昨年以来これを、外務省の中に経済協力評価委員会というのをつくりまして、これは、従来行ってきております評価を総合的に総括すると。総括して、かつ外務省からも直接調査団を出しまして、この一年半ぐらいの間にもうかなりASEANを中心にして幾つか出しました。その結果によりましてさらに新しいプロジェクトに、いままでで間違っていたこと、うまくいかなかったこと等いろいろございますけれども、そういうものをフィードバックして使っていくということをすると同時に、在外公館をもっと活用しようということにいたしまして、これもいまお願いしておる予算の中に入っておるわけでございますが、在外公館が現地にあるわけでございますから^そこでもってたとえば実際に資金を供与すれば、その資金でもって農場ができたり建物ができたりするわけでございますから、それがどうなっているかというようなこともきちんと定期的に評価して報告をもらうと、こういうことをいたしております。それで、個々のプロジェクトの評価はそれといたしまして、私どもいま考えておりますのは、近い将来、この一年半ぐらいにわたって行いました評価によって総合的な評価報告書をつくろうと思っておりまして、それができましたら提出いたしたいと、こういうふうに考えております。
  130. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 それから、この国際経済協力についていろんな協力の仕方というものがございます。こういったことも総合的にこれからも進めていかなければならないものであろう。  一つは、これもいつも問題になる点ですが、特に発展途上国の産品の輸入を促進する問題、これは言うべくしてなかなか困難な場合があるようでございます。しかし、それもやはり一つの課題としてこれからも短期、中期、長期の展望の上に立ては考えていかなければならない課題であろうと思います。あるいは技術協力の問題、それから海外移住と国際協力の問題、それから、それを包括的にもっともっとより効果を高からしめるためには、それぞれの発展途上国に対する人づくり、国づくり、これもすでに対外経済協力審議会で意見書が出ておるとおりでございます。まさしくそのとおりだと私は思うんです。しかし、言うべくしてなかなかそれが進まないという状況ではなかろうか。予算書の中にも、いま項目別に一つ一つチェックをする時間はありませんけれども、こういった点、まだまだ問題点が残されているような感じがしてならないわけですね。  輸入の問題は、これはいろいろ問題がありますのでちょっと後に残しますが、この技術協力の問題、これもしばしば提起されながら果たして相当強力に推進されているのかなあという目で見ておりますと、意外や意外相当のいろんな障害がある。相手国からいろんな研修生を招いて日本でもって技術を習得させるという場合もございましょうし、また逆に日本から相手国に参りまして技術開発のお役に立てると、こんなことになろうかと思うんですが、それにはなかなか、人的にもう百年河清を待つような状況じゃないかなあという感じがしてならぬのですね。  これは古いデータですから何とも言えないんですが、昭和五十四年か五十五年ですか、一年間に日本から派遣した人員が約六千名だそうですね。最近のデータ知りませんよ。これは二、三年前ぐらいのデータです。これはここに審議会の意見書としてあるんですから。それで、今度海外から入ってきた人間が一万二千人だと。もうきわめて道が遠いなあということを、数の上だけですぐ判断するのはいかがかとは思いますけれども、何せ発展途上国というのは大体パーセンテージで割り出すと全体の九二%あるというんでしょう。だから相当の国と人がいろんな問題であえいでいる。それをやはり改革するために人づくり、国づくりというのが急務であることは、これはもう常識でございましょう。その中で一番要求されるものはやはり総称的に言って技術協力ですね。これは果たしてこれからの展開を考えた場合に、あと二十年というともう二十一世紀に差しかかっちゃうんですけれども、二十一世紀までの間に十数億の人口がどんどんふえちゃう、貧困地帯がまた激増しちゃうという、こういうようなものが相矛盾しながら常にこの世界上において起こるわけでございまして、幾ら自主努力といっても、これは限界があるわけですね。  だから、能力の相違、さまざまなそういう歴史的な経過というものもございましょうし、日本として、これは日本だけ幾ら力んでみてもやることはできないと思います。各国とも協調しながらやらざるを得ないのだろうと思うんですが、日本としてこれからどういうビジョンを持ちながら、特にすぐれた頭脳を持った優秀な日本人の技術協力というものができるものなのかどうなのか。考えてみますと、そういう障害要因の中には、こちらから派遣される人のいろんな社会的地位の保障であるとか生活条件の問題であるとか、そういうものが絡み合ってなかなか行きたがらない、こういうような背景もあるやに伺っております。それらを整理しまして、もうお金の問題だとか何かはわかる、限度があるわけですからね。出せるところまでは出せるけれども、それ以上は出せない。いわんや財政硬直の中で、相当やはり政府としても無理をしながら今度の枠を広げているわけですから、そればかりでは実効というものはなかなか上がらない。やっぱりそういう側面のものも予算も組まれているわけでございますので、その予算の枠の中でどこまで効果を上げていくことができるのかどうなのか、その辺の展望を聞かしてもらいたいと私は思うんですね。
  131. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 技術協力の重要性につきましてはただいま先生御指摘のとおりだと思います。私どもといたしましては、技術協力というものが開発の担い手となる人づくり、その人たちに技術を移転するという重要性と同時に、人と人との接触を通じて相互理解を深めていく、これが平和主義で生きていく日本にとっては最も重要なことだと考えまして、であればこそ昨年、鈴木総理大臣もASEANに行かれましたときに、人づくり協力を重点事項の一つにするとおっしゃいましたし、私どもも御審議願っている五十七年度予算の中でも人づくり予算を特に重点を置いてお願いしているわけでございます。  一体じゃ具体的にどうするのだというお言葉でございますが、これも先生いま御指摘のとおり、一挙にすぐにばっといくわけにはいかないわけでございます。たとえば日本から出て行く専門家につきまして言葉の問題がございます。これは、私どももこれが一つの大きな障害であるということを十分認識しておりまして、専門家に出ていただく場合には事前に派遣前研修というものをやりまして、語学を集中的に勉強していただくとかいろいろとやっております。  それからもう一つ問題になるのは、派遣専門家の子弟の教育の問題もございます。これは何も専門家に限らず、国家公務員、それから民間の企業の方々も同じだと思いますけれども、この子弟の教育問題につきましても子女教育手当をつくったり、それから日本人学校のないところに働いておられるような専門家のためにはもっと追加額を認めるとか、非常に細かい話ばかりでございますが、何とかして日本から専門家が海外へ出ていって働きやすく後顧の憂えなく働いていただけるような細かい仕組みをいろいろと工夫してやっておるわけでございます。それからもう一つの最後のポイントは、先生御指摘のとおり、日本には終身雇用制という慣行がございましてなかなか人が出ていただけない、言葉と能力、技術と両方備わった方も少ない、それから帰ってきても身分の不安があると、こういう問題がございます。これにつきましては、ただいまわれわれが派遣しておる政府ベースの専門家のうち約三割ぐらいは民間でございますね。それから六%ぐらいが無職の方でございます。こういう方々が帰られた後で、特に無職の方は帰られた後もう一遍海外に行きたいという希望を持っておられましたら、国際協力事業団でこれを特別嘱託として一年なら一年そこにいていただいてまた派遣していただくとか、そういうことも考えております。  それからさらには、日本国内でどうしてもリクルート、募集することができない、求めることのできない専門家がございます。そういうものは、いま私ども検討しておるわけでございますが、画際協力事業団の中に総合研修所みたいなものをつくりまして、どうしても日本国内では募ることのできない分野の専門家をそこで養成していくと。これは協力隊のOBなんかも対象に考えながらそういう者を養成する。そうすることによって、少しでも大ぜいの方々が海外へ出て、技術協力の仕事に携わっていただけるような雰囲気をつくる、環境もつくっていくということに努めております。
  132. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしたいまのお話というのは、これも大分前から出ているんですね。しかしながら、残念なことに改善されたということを聞きません。まさしくそのとおりだと思うんです。ほとんどそういう方は単身赴任なんですね。これは短期の場合、一、二年はいいでしょう。これが五年以上なんかになって単身だったらどないしますか。というのは、自分の生活がかかっていますからね。だから、そういう点をもう一遍きれいに洗い直して、その人たちが希望と勇気を持って日本の将来の方向に従って仕事ができるという環境をつくってあげるということが、いま緊急の私は課題であろうと思うんですよ。これだっていまここで結論が出たからといってあしたにできるわけじゃないんですよ。やっぱりそういう人たちが行くためにはいろんな調整も図らなきゃならない、半年なり一年かかるかもしれない、そのための啓発運動もしなきゃならないというふうな時間的問題がある。いますぐに手がけませんと、これがまた五年先、十年先になっちゃう、そういうような心配が出てまいります。その点では、櫻内さんどうでしょうかね、この重要性については、いまやりとりお聞きになっていても、これは政治的判断にまつ以外にないという点がございますよ。相当思い切った判断を持って、決意をして実行に取り組みませんと動きませんよ。これは非常に大事なことですから。
  133. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 相手国から見ましても、日本の現在の経済力あるいは高い技術水準からいたしまして技術協力を非常に求めてくる。またわが国から申しまして、経済協力の中で技術協力を今後重点的に考えていくべきである、こういうふうに思います。そこでこの技術協力の上で、ただいまお答えを申し上げておるような、いわば派遣される方々の環境整備と申しましょうか、それらの問題が非常に重要であるということは言うまでもないことでございますから、技術協力に重点を置くといたしますれば、言葉の問題やまた子女教育の問題やあるいは待遇の問題や、そういうようなことを外務省として配慮をいたし、対策を十分立てるということの必要性は非常にあるという認識を得た次第でございます。
  134. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 限られた時間もだんだん少なくなってまいりましたので、もう一つ海外移住と国際協力のあり方、これについてはいまどういう方針をお持ちになっていらっしゃいますか。
  135. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先生御案内のように昭和四十九年、当時の海外技術協力事業団と海外移住事業団とが合体いたしまして国際協力事業団ができたわけでございます。そのときに移住事業団を国際協力の一環として国際協力事業団に取り入れた。その考え方は、これも御案内のとおりでございますが、わが国の邦人が海外に移住して、そしてそこの地域社会の発展のために貢献をしていくということ、これが結局は国際協力につながっていくものであるという考え方に立って合併したわけでございますし、むしろそういう哲学のもとにつくったものでございます。私どもただいまでもその考え方に基づきまして現在国際協力事業団の中で海外移住の仕事をいたしておりますけれども、これは海外移住者を私どもが支援するということ、それがひいてはその国の地域社会の繁栄と発展に役立ち、それが日本と当該国との国際協力に貢献していくと、こういう考え方に立っていたしております。
  136. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 柳さんは国際協力事業団におられましたからその辺のいきさつというものは十分承知をされているはずでございますが、特に海外移住というと中南米が圧倒的に多い地域で、伝統もあり歴史もございますね。まあその他カナダとアメリカというふうにあるわけですけれども、まさしくそのとおりだと思うんですね。間接的な国際経済協力ということになるかもしれませんけれども、むしろいま言われたように一世、二世、三世を問わずその人たちが裨益するといいますか、その人たちがその国において貢献をしていくようなそういう配慮というものが、むしろ経済協力に大きな役割りを果たしていくことにつながるであろう。しかし果たして現状でいいのであろうかという、またここにインタロゲーションマークがつくんです。きょうは海外協力事業団の方はお見えになっておりませんからきょうはやりませんけれども、その点についてはもっと所管管庁である外務省が、いま言われたような方向に向かって移住者それ自体のレベルアップを図るということがイコール、場合によってはイコールですよ、特に中南米地域を対象に一つの例として申し上げる場合には、相当の貢献をするであろうという配慮もぜひこれから推進をしていってもらいたい、あらゆる面で。融資の問題からあるいは物の援助の問題からやってもらいたい。この点は櫻内さんお約束できますか。
  137. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これはお約束というよりも、そういうふうに推進していかなければならないと、こういうふうに思います。具体的にどういうふうにやっていくかということにつきまして、これはよく研究さしていただきたいと思います。
  138. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 国際協力の問題は、きょうは大ざっぱなやりとりでおしまいになるわけでありますが、肝心の予算書の中でまだ一、二聞きたいことがあるわけです。  これも私は要望申し上げておきたいのですが、国連機関の分担金の問題で約百五十九億あるわけです。相当数あります、国連機関は、数え立てられないほど。ところが先ほど答弁を聞いておりましたら二千何名ですか、専門職の方が。それから高級職員が六十何名ですか、そういう数字であったろうと思うんですね。そういった機関に日本から派遣されている人が非常に少ない。少ないことの方がいいのか、国連の機能というものを重視し、国連中心主義をとっている政府の方向としてはこれで果たしていいんだろうかと、むしろ日本自体がイニシアチブをとって、もっともっと国連の力というものを高める上からも、日本職員というものがそこに常駐をするというような必要性というものはあるのではなかろうかというふうに思えてならないんですけれども、この点はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。重ねて私はお聞きしておきます。
  139. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは先ほどもはっきりお答えしたつもりですが、分担金が三番目で、しかし職員は八十人、これを分担金に比例していきますと最小限度百六十人は超えるべきだというような、数字から言うとそんなことになりますけれども、渋谷委員のおっしゃるとおりに、でき得る限り国連機関日本人職員をふやし、また日本国連の機関も設置し国連の既存の各機関に協力をする、国連機能強化する、そういう方向で考えていきたいと思いますが、いつもいろいろアメリカの例が出ますが、アメリカはどちらかというと二国間援助の方に重点を置いておる、こういうようなことで、今回の経済協力の全体の予算の規模からいたしますと一般会計では一一・四伸びておるが、しかしどうも減っているじゃないかと。それは国際機関に対する協力が進んでおらないということから、そういう経済協力全般が下がったような傾向を持っておりますが、私はこれは改善すべきであると。お話のように国連機関職員あるいは分担金、これはもう日本として協力のできることは協力をしていくと、そういう見地に立っております。
  140. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま申し述べましたように政府もそうでありますし、私どもも国連中心という考え方は同じなんです。二国間で交渉なんかさせますと、米ソのように軍拡の方へいったりあるいは南北問題についても障害が起こるといういわゆるさまざまな波紋を今日まで露呈しております。したがって、せっかくの国際間において話し合いのできる国連という機関があるわけですから、そういう国連機関の機構というものを強化する上からも、日本の代表者が先頭に立ってこれを取り仕切っていくぐらいの決意があってしかるべきであり、そのための配置というものが必要であろう。ただ、その場合に政府から登用されて向こうへ派遣される場合と、あるいは民間から登用される場合といろいろあるだろうと私は思うんです。ただ、国連職員をやめた場合に日本へ戻ってくる、そのときの待遇は一体どうなるのかということで、なかなか思うようにそういう道も開けていないというようなことも聞いておりますけれども、そういうことは全く杞憂でございますか。それは五年も六年も、あるいは十年も行っていると——別に明石さんの例を言うわけじゃないけれども、もとへ戻ってきた、後輩の人がどんどんえらくなっちゃった、じゃ自分はどこの一体ポストに座ればいいんだと、変な話ですけれども、そういうような身分保障等々の問題がやはり前面にひっかかるためになかなか容易に出ていこうという、また言われても行けないというそういうような要因もあるやに聞いておりますけれども、そういう問題は心配ないんでございましょうか。
  141. 門田省三

    政府委員門田省三君) ただいま渋谷委員が仰せられました点は、従来の経験に徴しますと確かにあると思います。したがいまして国連に出た暁には、もうそのまま国連における職務にとどまるという御決心のついた方が出られるというふうなことになります。したがいまして、候補者を求めますときにその問題がやはり一つの要件になっているわけでございますので、この邦人の国連あるいはその他国際機関への送り込みに際しましては、そういった点も十分考えてまいる必要があろうと思っております。
  142. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もうこれ以上申し上げません。  それで、せっかく恩田さんいらっしゃいますので、ずっと予算書を拝見しますと、国連の分担金の中でわれわれの全然なじみのないものが大分入っているんですね。たとえばアトランチックインスティチュート拠出金ですか、それから常設仲裁裁判所分担金、これは金額にすれば百万台ですね。微々たるものと言えばそれまでかもしれませんけれども、そういったような拠出で、いろんな国が拠出するわけですから総額にすればもっと多くはなるだろう。だけれども、日本を基準にして考えてみた場合にそう多くはない。そういったことでこういうような機構が機能するんでしょうか。
  143. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 先生御指摘の常設仲裁裁判所分担金でございますが、常設仲裁裁判所というのは国際紛争平和的処理条約によって設けられた常設仲裁裁判所の事務局のための経費でございますが、これは常設仲裁裁判所の裁判官は常時事務所に詰めていない、各国にいてリストだけをつくってあるという形の小さな事務所でございますので、経費としては大ざっぱに申し上げますと日本円で二千万円ぐらい年間でございます。わが国の拠出金は英米独仏等主要な諸国と同様の全額でございまして、百三十二万四千円でございますが、大体八十分の五程度の分担率ということになっております。  それからアトランチックインスティチュートの拠出金でございますが、これは民間の拠出を主体としてOECD諸国の共通するような問題点、賢易、経済政策その他の問題点を議論するために設けられた機関でございまして、わが国の拠出は英仏独等と並んで政府としてもこのような有効な活動に協力する必要があるという趣旨でのものでございます。したがって、この拠出金は非常に少のうございますが、全体の予算は一億五千万円程度、かなり大きなものでございます。
  144. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これ以上申し上げることももうできなくなりましたけれども、特に常設の仲裁裁判所あたりなんかは、最近国際紛争がいろいろたくさんあるんですね、ここで扱うわけでしょう、常設裁判所で。それにしてはずいぶん少ない予算の枠で、ただじっと手をこまねいて見ているだけなのかなという、そういう疑問があったものですから——それは何か問題が起これば各国から集まって裁判所が開かれるという、そういう仕組みだろうと私は思うんです。それにしても果たして機能できるのかなと、これは答弁要りません、そういう疑問点が残るわけです。金額の多少によらず有効的にやっぱり国連の分担金というものは考えるべきじゃないかというその視点に立っていま申し上げました。  最後に、橋本さんには本当は国際交流基金の問題を初めとしてお尋ねしたかったのですけれど一も、一つだけ、情報文化関係予算案を見ましても、いろいろ苦心の跡があるようです。ただし私に言わしめれば、文化交流というものを中心に据えてこれからの平和外交を展開しようとするならば、果たして現状で十分であろうかどうか、予算というものは幾らあってもいいでしょうけれども。いろいろ私は問題を持っておりまして、きょうは提言をしたかったのです、はっきり申し上げて相当やはり苦労しながら専門誌をつくり、また海外にもパンフレット等を配布されている事実も知っております。しかし残念なことに、それに対する評価というものはまだ依然として低い。先ほども同僚議員の方からそうした問題点について若干の指摘を交えた質疑がございました。やっぱり日本を紹介する場合に、また知ってもらう場合に、現状ではまだまだ私は隆路があり過ぎるというふうに思っているのです。知らな過ぎる。逆に言うと、海外に最近旅行する日本人が非常に多くなって知ったようなふうに思えるんでしょうけれども、実は少しも本来のことは知らない。歴史的な経過だとか文化的の程度であるとか、どういう能力を持っているのかというようなことまで深く立ち入っていかないと、本当にその国の実態というものを認識し、評価することはできない。イギリスの例が先ほども出されました。私も非常に憤慨している一人なんです。他国の文化を低く、軽べつするということでは、それはいつまでたっても友好親善の外交というものは展開できない、僕はそういう信念を持っているんです。そういうことを改善させるためには、やはりそういう点についても、外務省文部省に任せることもあるかもしれませんよ。だけれど、やっぱり主導的な立場に立って、日本文化の紹介を中心として、日本という国はこういう国だという、正当な評価を下してもらえるようなこれからの広報活動というものが、非常に情報文化局にとっては必要じゃなかろうかという点が一つ。  それから最近、民間の中でもすぐれた日本の伝統工芸あるいは伝統美術品というものを海外に紹介して、日本というものを知ってもらおうという民間レベルでの交流を図ろうとしている空気が強くなってまいりました。私が知っている徳川美術館長なんかもその一人でございます。ところが、結局お金の問題がかかる。やりたいけれどもできないという、そういう側面がある。そういった点で、もし補助金というものを正当に使うならば、もっと効果的に使おうとするならば、そういう方向へもっともっと配慮していただきたいなという、この二点だけについて答弁を求めて、私の質疑を終わりにしたいと思います。
  145. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) 渋谷先生がただいま御指摘になりました諸点につきましては一々ごもっともだと存じます。それで、私どもも今後とも御指摘の御趣旨を十分頭に入れまして、外務省だけではなくて関係各省とも、それから民間文化交流その他活発にやっておられる関係方面とも十分協力をいたしまして、大いに努力してまいりたい、このように考えております。
  146. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、この三年来、国際情勢というのはいろいろ緊張の度合いが高まってきておりますし、そうした中で、改めて軍縮の重要性が叫ばれているというふうに思うんですが、第二回国連軍縮特別総会を前にして、改めて大臣の御所見をお伺いしたいんですが、日本外交の中で軍縮というものをどういうふうに位置づけておいでになるのか、そこからお尋ねをしたいと思います。
  147. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 日本が唯一の被爆国であると、こういう立場からいたしまして核軍縮を徹底したい、また核廃絶に持っていきたい、こういう考えを当然持つべきであるとこう思っております。また、国際紛争を解決する手段として戦争には訴えないということを世界に誓っておる国柄でございまして、そういう立場からいたしまして、各国が不必要な軍備をする、それについてのかりそめにも競争をするというようなことであってはいけない、もし軍事力が必要であるとしても、それは低いレベルの均衡ということが好ましい、こういうような立場でございまして、したがって第一回の国連軍縮総会、また今度の第二回の国連軍縮総会につきましては、日本は率先した行動をとる必要がある、こういうことで、各国の中では一番早く鈴木総理みずからが今度の総会へ出席をして軍縮の効果を上げたい、この総会を成果あらしめたい、このように思っておるところでございます。
  148. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、それでもう一つですが、日本政府としては、しばしば国連を重視するという姿勢が強調されてきましたけれども、国連重視という姿勢はお変わりにならないのか。日本外交の中で国連というものをどういうふうに位置づけ、考えておられるのか、この点も最初にお伺いしておきたい。
  149. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) わが国外交の中で国連を重点的に考える、国連外交の必要性というごとはしばしば申し上げておるところでございます。
  150. 立木洋

    ○立木洋君 軍縮をきわめて重視するということを大臣おっしゃったわけですが、たとえば外務省仕事の中で、具体的に軍縮という形でどういう仕事をなされているのか。これの研究あるいは調査、あるいは宣伝その他、また、それにどれぐらいの力の配分をなさっておられるというふうに考えているのか、いかがでしょうか。
  151. 門田省三

    政府委員門田省三君) 軍縮に関する国際的な活動につきましては、御承知いただいておりますように、国連におきましては毎年秋の総会におきまして第一委員会が軍縮をもっぱら取り上げるという活動を行っております。また、第一回特総の後に行われました決定によりまして国連軍縮委員会が設置されまして、毎年五月に全加盟国の参加による軍縮問題の討論、討議を行っております。他方、ジュネーブにおきましては四十カ国の軍縮委員会がございまして、これは軍縮問題に関する交渉の場として活動を行っているわけでございます。わが国はこれらの国際的な軍縮諸会議に参加いたしておりまして、先ほど大臣からお述べになられましたように、核兵器の廃絶を究極的な目的としながら、核兵器の軍縮を中心とする軍縮外交を積極的に進めているわけでございます。しばしばこの委員会におきましても御説明申し上げているところでございます。  このような活動を支える体制といたしましては、外務省国際連合局の中に軍縮課がございます。また、軍縮に関する広報活動に関しましては、実質的な問題は先ほど述べました軍縮課においてこれを担当いたし、これを外に啓発、発表するに際しましては情報文化局がこれを実施しているという状況でございます。なお、在外公館におきましては、先ほど申し上げました諸会議とは別に、たとえばヨーロッパにおきますところのMBFRの問題あるいはヘルシンキ宣言に基づきますところのCSCEの会議のフォローの問題とか、これをいたしておるのでございます。
  152. 立木洋

    ○立木洋君 軍縮課というのは、何名おられますか。
  153. 門田省三

    政府委員門田省三君) 現在のところ、課長以下九名でございます。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 第一回の国連軍縮特別総会以後、橋本さん、これはもう見せていただきましたけれども、これ以外に軍縮の問題で広報活動したのはどういうのがありますでしょうか。
  155. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) ただいま先生御指摘の冊子のほかに、新聞紙面を買い取りましてそこで政府考え方を……
  156. 立木洋

    ○立木洋君 広告ね。それ一回だけ。
  157. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) はい、一回でございます。
  158. 立木洋

    ○立木洋君 外務省に顧問の方が数名おられますが、顧問の方なんかに集まっていただいて、軍縮問題なんかを検討し、議論するというふうな会合をお持ちになったことがありますでしょうか。
  159. 門田省三

    政府委員門田省三君) ございます。
  160. 立木洋

    ○立木洋君 何回ぐらいありますか。
  161. 門田省三

    政府委員門田省三君) 必要に応じて行っておりますが、最近におきましては数回、月に一度ぐらいの割合でございます。
  162. 立木洋

    ○立木洋君 そういうものは提供していただけるのでしょうか、まとめて。
  163. 門田省三

    政府委員門田省三君) これは内部の執務参考に供するための集まり、御意見を承ることにいたしておりますので、外にお出しすることは差し控えさしていただきたいというふうに考えます。
  164. 立木洋

    ○立木洋君 加藤さんにちょっと質問しますけれども、国連の場以外でソ連と軍縮問題で交渉、会談を積極的に行ったことがございますか、主要テーマとして。
  165. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) しばしばございます。一番最近の例は、一月の二十日がち二十二日までソ連で行われた事務レベル会議でございます。この場におきまして、わが方は米ソ両軍事大国の間の関係世界の平和と安定に非常に大きな死活的な重要性を持つという観点から、現在米ソで進められている中距離核兵器削減交渉、これを進めてほしい。特にSS2〇といったような中距離ミサイルが極東にも配備されている、こういう状況日本として容認しがたいので、この交渉を通じて極東配備のものも含めて中距離ミサイルの削減及び撤廃を進めてほしいという問題を提起しております。ソ連側は、それに対してもちろんこれを留意すると同時に、軍縮の問題については国連の場、それから軍縮委員会の場等を通じて今後とも日ソ間で緊密な協議をしていきたいという要望を出しております。
  166. 立木洋

    ○立木洋君 淺尾さん、アメリカとは軍縮問題を主要テーマにして会談を行ったり交渉したり、国連の場以外で行ったことはございますか。あったとしたら、いつごろ、どういう内容で交渉されたか。
  167. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) この点については、私がお答えするよりも国連局長から答えていただいた方がいいかと思います。というのは、アメリカとの間では各問題について、地域問題、たとえばいまの国連問題について定期的な協議が行われておりますので、その会合についてはむしろ担当の局長の方が詳しい内容あるいは解説を承知していると思います。
  168. 門田省三

    政府委員門田省三君) 最近では、大臣が御訪米になられた際にこの問題をお取り上げになっておられます。そのほかには、昨年の秋にジュネーブに在勤いたしております大川大使、わが国の軍縮問題に関する専門の大使でございますが、大川大使がワシントンにおいてロストウ軍備管理軍縮局長と意見交換をしておりますし、また本年一月には、私もワシントンにおいてロストウ氏と意見交換をしたことがございます。
  169. 立木洋

    ○立木洋君 その内容です。どういうことをこちらが提起し、アメリカ側からどういうふうな回答がありましたか。
  170. 門田省三

    政府委員門田省三君) 大川大使は、ロストウ氏との会談において、わが国が従来とも努力をしておりますところの核兵器の全面禁止条約の早期成立、これを日本としては今後も強く目指していきたいと、そのために必要な協力を求めたいということを中心に話し合っております。また私も本年一月の機会におきましては、日本はこの核兵器の実験全面禁止を非常に重視している点を申し上げるとともに、今度の第二回軍縮特別総会に臨むに当たりまして、わが国としましては特別の経験、国情を持っていることにかんがみて、その考えというものを明らかにするであろうということを先方にもお伝えしてございます。
  171. 立木洋

    ○立木洋君 さっき大臣が指摘されたのは、やっぱり核軍縮というのはきわめて重視しなければならない。いま聞いていますと、加藤さんの交渉の内容では、ソ連側には削減を要求し、SS2〇の配備を撤去するように。ところがアメリカ側との交渉では包括的な核実験を中心に述べて、核の削減だとか配備の撤去だとかいう問題は一言もお話しにならないわけですか。その違いはどこから出てくるというふうに理解したらいいでしょうか。
  172. 門田省三

    政府委員門田省三君) 核兵器の削減の問題につきましては、すでに大臣のレベルにおいて先方に十分申しておられることもございますし、また総会における大臣の演説の中におきましてもこの点明らかにし、かつ強く訴えております。そのほか先ほどから申しておりますような、たとえばジュネーブの軍縮委員会におきましてもこの問題を機会あるごとに取り上げて訴えているということでございますし、もちろん、先ほど申しました大川大使あるいは私の先方との会談におきましても、やはりそういうことを当然の問題として取り上げているわけで、先ほど申し上げましたのは、特に軍縮特総に臨むポイントとして取り上げたというふうに御理解いただきたいと思います。
  173. 立木洋

    ○立木洋君 ソ連の場合には、核削減や不配備の問題を提起したら留意すると言われたと、アメリカの場合はそういう削減の問題について提案したときにはどういう回答ですか。
  174. 門田省三

    政府委員門田省三君) 日本の御趣旨は解するということでございます。
  175. 立木洋

    ○立木洋君 外務大臣が特にその点では詳しくお述べになっているのでというふうに言われましたが、外務大臣、何か特に詳しく軍縮の問題で今回お話しなさいましたか。
  176. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今度の軍縮総会を成功させる上に日本は積極的な姿勢をとっておる、鈴木総理が率先出席をするようにしておるが、ついては成果を得る上に事前に協議もしたい、こういうことを申し、それについての同意を得ております。また、削減の問題につきましては、当方より中距離核戦力の削減交渉を、日本としてはその成果の上がることを期待しておるのだが、という話をいたしましたところ、昨年来の米ソ間の交渉状況とこの三月まで休会に至った経緯、それから今後STARTについて交渉することについての種々説明がございまして、私の受けた感じとしては、アメリカはこれらの交渉に熱意を持っておる、そのように感じました。
  177. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、今度第二回特別総会が開催されるわけですが、いまの時点で第一回国連軍縮特別総会を振り返ってごらんになって、どういうふうに第一回の場合を評価されておられますか。第二回に臨むに当たっての第一回目のいまの評価。
  178. 門田省三

    政府委員門田省三君) 第一回特別総会においては最終文書が全会一致で採択された、また軍縮に関する宣言も採択された、これは画期的な出来事であったと評価いたしております。
  179. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、第一回で採択された最終文書ですね、もちろん第二回の場合には当然第一回の国連軍縮特別総会を基礎にして、さらに前進をかち取るべきであるということは私は当然のことであろうというふうに思いますが、第一回から後退するようなことがあってはならない、そのために日本としてはどういう態度をおとりになるのか、そのことを一言。
  180. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) いま第一回総会の最終文書のことが話に出ましたが、私は少なくともそのことを再確認はしてもらいたい。それから、第一回後の履行状況などの再検討を通じて、公平かつ相互的で検証可能な軍縮、軍備管理を進める、こういう必要があると思います。  残念ながら、この第一回以後、相互信頼を欠くようないろいろな問題が起きておるという現実というものは大変遺憾でありますが、それだけに今度の特別総会においては、いま申し上げたような再確認から検証可能な軍縮、軍備管理、そういうことを目指したい。
  181. 立木洋

    ○立木洋君 第一回特別総会が行われてその最終文書に従っていわゆる国連の軍縮交渉委員会が設置された。四十カ国で構成され、そこではいろいろ作業を進めて、そして最終文書に基づいて七つにわたるアドホック作業グループが設置された、そこで検討されているわけですが、つまり第一回総回の趣旨に基づいてそれが国際的な何らかの取り決めにまとめることができるかどうか、そういう作業をしておるというふうに承知しているわけですが、設置されているのはどういう作業グルループなのか、また設置されていないものがどういうものなのか、その点まず最初にお伺いしたい。
  182. 門田省三

    政府委員門田省三君) 設置されておりますのは、化学兵器の禁止に関する条約、それから放射性兵器、非核兵器国の安全保障、包括的軍縮計画、この四つの議題につきまして作業部会が設置されております。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 グループが設置されていないのは……。
  184. 門田省三

    政府委員門田省三君) 設置されていないのは核実験禁止、核軍備競争の停止及び核軍縮、宇宙空間における軍備競争防止、この三つの議題についてでございます。
  185. 立木洋

    ○立木洋君 この作業グループがそういう形で最終文書に基づいて設置されて、そこで検討するということになっているのですが、そのグループが設置されないのは一体どういう理由なんですか。どこが反対して設置されないんですか。
  186. 門田省三

    政府委員門田省三君) 四十カ国軍縮委員会のメンバーが合意に達しないということでございます。つまり、このジュネーブの四十カ国軍縮委員会におきましては、すべての決定はコンセンサス、全会一致ということになっております。
  187. 立木洋

    ○立木洋君 それはそうですよ門田さん。だから、どこが反対して作業グループができないのか。やっぱり反対しているところがあるからコンセンサスが一致しないんでしょう。だからどこが反対しているのかということを聞いているんですよ。
  188. 門田省三

    政府委員門田省三君) それぞれの議題について、どの国が反対したかという点につきましてはつまびらかにいたしておりません。
  189. 立木洋

    ○立木洋君 それはやっぱりあれですか、軍縮課が九人しかおらぬから調べることができないんですか。
  190. 門田省三

    政府委員門田省三君) 必ずしもそういう理由ではございません。
  191. 立木洋

    ○立木洋君 どうも皮肉も伝わらないようでございますが。  これはもう包括的核実験禁止というのは日本政府が盛んに主張してきた、これを目玉にするぐらい強調してきたわけでしょう、ところが反対しているのはアメリカとイギリスだったということはこれははっきり新聞でも報道されているんですよ。それからまた、この核軍縮の目玉である核軍備競争の停止と核軍縮、これは第一回国連軍縮特別総会の最終文書の中でも最優先がうたわれている課題であるわけですね。この問題が昨年の国連総会でこういうグループを早く設置して実質的な検討をするようにという提案がありましたね。その決議に対して反対したのはどこですか。
  192. 門田省三

    政府委員門田省三君) お尋ねの第一点の核実験禁止の点につきましては、まず米ソ英の三カ国が協議をして合意に達した上で、その後で一般のメンバーが討議に参加し得るような作業部会を設置するということでまいっていたのでございます。ところが米ソ英三カ国による協議、これが進まないということで作業部会の設置がおくれていたのでございますが、つい先日といいますか、数週間前にアメリカ及び英国は検証及び遵守という問題について討議をするため作業部会を設置することに同意するという意向を明らかにいたしまして、これを契機にこの核実験の全面禁止の問題は新しく展開していくのではないかというふうに観測されるのでございます。  それから第二のお尋ねの点の、核軍備競争の停止及び核軍縮の問題につきましては、具体的に何を軍備競争停止の対象にするかという点について必ずしも明らかでないということで、そのような具体的な措置、この点での意見がまとまらないということで作業部会が設置されていないと、そういう事情がございます。
  193. 立木洋

    ○立木洋君 何を検討するかわからないって、あらゆる側面から見た核兵器というこの中で明確に提起しているじゃないですか。ここでは第十回特別総会つまり第一回国連軍縮特別総会ですね、この最終文書第五十項の規定により、高い優先順位を置いた問題として核兵器の生産の停止について、またその完全な破壊に至るまでこれを含めて貯蔵の漸進的削減について交渉を開始することが必要と考える、つまり第一回国連軍縮特別総会が優先順位を置いたつまり高い優先順位を決めたこの核削減の問題、この問題で交渉を開始することが必要だと考える。だから軍縮交渉委員会で、核軍拡競争の停止と核軍縮に関する議題について充実した検討を再開するという決定に注目をして、この軍縮交渉委員会がこれについての特定の作業グループを速やかに設置をして、そこで優先順位として決められておるこの問題の実質に関する交渉を早く始めるようにということを内容とした決議なんですね。だから核軍縮をやると。これは決められているのだから、この問題についての作業グループをつくってその実質的な内容を早く検討するようにしてくださいよと。これにアメリカ、イギリス、日本が反対しているんですよ。なぜ反対するのか。つまり今日、第一回国連軍縮特別総会で決められた内容に基づいて作業グループをつくって、それで実質的な検討を進めるようにして第二回の成果が上がるようにその最優先順位を決めておる核軍縮、外務大臣もこれは最も重要な問題だと言っている核軍縮、これを早く検討しましょう、作業グループつくりましょうというのになぜ反対するんですか。
  194. 門田省三

    政府委員門田省三君) 作業グループをつくる場合に具体的にどういう軍縮措置をとるのか、またどういう対応でそういう措置を行っていくのかという点が、やはり明らかになる必要があるわけでございます。たとえば核兵器生産を停止するといいますけれども、どのような核兵器についてどういう具体的な計画で停止していくのか、そういった点についての検討なくして、ただ一般的に核兵器生産の停止とかあるいは貯蔵核兵器の漸進的削減等々を申しましてもその実効性が本当にあるのかどうか。加えまして検証といった問題、これも非常に重要な要素でございますが、そういった点に触れずにあらゆる側面から見た核兵器の削減をやろう、作業部会設置ということになりましても問題があるのではないかということで、確かに御指摘のようにわが国もこの決議案には反対いたしておりますが、全部で十八カ国が反対しているということでございます。
  195. 立木洋

    ○立木洋君 局長、答弁になっていないですよ。それはそのほかの最もむずかしいものの一つにはたとえば包括的な軍縮計画の問題もあります。これは日本などが入って五ヵ国で提案しているという内容もあるでしょうし、二十一カ国が提案しているという内容もあるでしょう。しかし、それが交渉の過程でどう詰められていくかというのはこれからの課題でしょう。ほかの作業グループでもみんなそうなんですよ。ところが最も優先順位が与えられた核軍縮、この問題について御承知のように国連総会で作業グループをつくって早く実質的な検討をやるようにしてくださいよというのが出された。外務大臣どうして反対されたのですか。外務大臣——門田さん、あなたの答弁を聞いているのじゃなくて、外務大臣が核軍縮を優先順位とし、第一回よりも第二回の方をより発展させるそのかなめになっておるアドホック作業グループをつくって実質的な検討を進めるようにというその窓口で反対された。それはどういう理由で反対されたのですか。その中身で、審議をする過程でこういう場合はああだとかああいう場合はこうだとか言われる議論をするというならまだわかるけれども、窓口で反対された。外務大臣、いかがでしょうか。
  196. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私には、詳細はいま御質問でわかりませんが、作業部会設置が全会一致によって行われるという際におきまして、少なくとも日本と外に十七カ国がこの設置に反対である。ということは設置ができないと、こういうことになるのでありまして、日本は西側の諸国と常に協調しておりますから、そういう点で各国に協調して反対したものと思います。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 結局西側が反対したから反対をされた、アメリカが反対をしたから反対をされたというふうにいまの御答弁を理解していいですか。
  198. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) そういう単純なとり方は困りますね。私が一番重点を置いたのは、全会一致でなければ作業部会が設置できない、こういうことを念頭に置くときに、これは作業部会ができない状況にあるのですから、そこで二段目に西側と協調したと。
  199. 立木洋

    ○立木洋君 そうしたら、仮にいま大臣が言われたことを額面どおり受けとって、総会の場でそういう反対者がいるから作業グループは設置できないので共同の立場をとられた。そうしたら、作業グループが設置できるように核軍縮を優先順位として最も重視する課題として考えるならば、それが一致できるような働きかけは、反対した諸国に対して行ったのでしょうか。
  200. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 立木委員は私の言うことをすんなり受けてもらわないと困るのですね。私はいまここで御質問を受けて、そしてよくこの内容等についてはわからない。局長の方からの御説明は、あなたはそれをお受けになってないんですね。それで私の方へどうかと言うから、そこで全会一致でなければつくれない作業部会でかるから云々と、こう申し上げておるわけでございます。また、この七つの部会が全会一致で四十カ国軍縮委員会で取り上げられるということになりますれば、それは好ましいことであると思います。
  201. 立木洋

    ○立木洋君 大臣は先ほど、核軍縮をやっぱり最も重視しなければならないということを強調されました。軍縮を日本外交の中でどういう位置づけをするかということも承って、重視されておるという感触を私も得ました、御答弁の中で。国連でその問題に関して、重要なやっぱり軍縮問題に関する国連事務総長の報告だとかその他出されておりますが、大臣、お読みに当然なっていただけているだろうと思いますが、いかがでしょうか。
  202. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) いまのお尋ねについて、何か文書なり何なりを読んだのかと、こういうことでございますが、お尋ねのことはちょっと私、念頭にございません。
  203. 立木洋

    ○立木洋君 第三十五回国連総会で、国連事務総長の報告である核兵器に関する包括的な研究というきわめて内容の豊富な重要な問題が指摘されている報告があります。また三十六回国連総会では、同じく国連事務総長の報告で、軍縮と国際安全保障関係に関する研究というのも出されております。これらの問題は、外務省としてはすでに三十五回国連総会ですから日本文として翻訳されているでしょうし、軍縮に特別重視をされるという観点であれば三十六回の国連総会も当然この国連事務総長の報告は翻訳をされ、必要なところには配付されるなり読んでいただくなりの措置をとっていると思いますが、いかがですか。
  204. 門田省三

    政府委員門田省三君) いたしておりません。
  205. 立木洋

    ○立木洋君 なされない理由は何ですか。
  206. 門田省三

    政府委員門田省三君) それを翻訳して配付していない理由は、やはり時間的あるいは人的な制約があるということだろうと思います。
  207. 立木洋

    ○立木洋君 外務大臣、お聞きのような状態なんですよね。英語を直接読める方は、これは原文で読むということも可能でしょう。しかし、これはきわめて重要な第二回国連軍縮特別総会を目前にして、国連事務総長がきわめて重要な包括的な報告をされたり、軍縮にかかわる問題での研究発表がなされている。これらについては、外務大臣が完全に英語をマスターされているかどうかというようなことはお尋ねしませんけれども、やはり日本語で十分にお読みになった方がよくわかるわけです。鈴木総理にも必要なら読んでいただく。国連軍縮特別総会に行くのにまだ翻訳されていないんだから、お目にかけていないということに私はなるだろうと思う。そうするならば、国連でどのような重要な問題が提起されていてどうなっているのかということについては、日本の主要な閣僚の方々には十分にわからない、そういうことに結果としてはならざるを得なくなるんじゃないですか、どうなんですか。
  208. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) それは立木委員のおっしゃるような措置がとられていけば行き届いたことだと思いますね。
  209. 立木洋

    ○立木洋君 今回の第二回国連軍縮特別総会を迎えるに当たって総理大臣がおいでになる、そして日本の見解をお述べになる、それはそれなりの意味があるというふうに解される方もおられるかもしれない。しかし本当の意味では、第二回国連軍縮特別総会が本当に成果あらしめるかどうかというのは、第一回の国連軍縮特別総会の内容に基づいて十分な作業がこの三年間の間になされてきたかどうかということを私は見るべきだと思うんですよ。そういう点で見るならば、最も重要なあの国連軍縮特別総会の最終文書の中でも、「世論を動員し」というふうにして述べられてある。本当に日本の国民の中に、いまの軍縮の重要性、そういうことをもっとやっぱり私は宣伝し知らしめていく必要があるだろうと思う。で、見てみますと、どれほど外務省の中で重視されているかというと、外務省の中では訳としては全部で六十幾つかあるわけですが、六十分の一ですよね。九名の職員では翻訳するにもできない。最も重要なそういう文書が主要な閣僚の方にも行き届いていないような状態になっている。やっぱり国連を重視し、そして軍縮を日本外交の重要な位置に置くならば、当然外務省として取り組むべきあり方があるだろうということが一つ。  それからもう一つは、この作業を進める過程の中で、遺憾ながら私が先ほども言いましたように、最も基本的な点で日本政府が反対するような態度国連の中で現にとっておる。つまり、第二回国連軍縮特別総会が成功して開かれるべき作業を進める手順を、日本政府がみずから反対をしてしまう。それを積極的に進めるという方向をとるのではなくて、逆な態度をとられるということについては、大臣のお話があっても私はどうしてもやっぱり依然として納得しかねると思うんです。残された期間きわめて短いので、これらのいろいろな問題についても積極的な打開の道を講じられて、第二回が本当に成功するようになさる、どういう点で第二回軍縮特別総会が成功するように日本政府としては努力をされるのか、残された期間、六月七日まであとわずかしかありませんが、その点最後にお尋ねして私の質問を終わります。
  210. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 基本的に軍縮の必要のあるのは私は日本の方じゃないと思うんですね、これは認めるでしょう。だから、あなたの方は日本国内の方へ重点を向けておられるけれども、そうでない本当の軍縮をやるにはやはり実効性のあるアプローチがないと、私はそれはなかなかやれぬ、だからそういう点について配慮をしながら軍縮総会に臨む、または軍縮を訴えていく、こういうことです。
  211. 立木洋

    ○立木洋君 一言だけ。  大臣、お言葉をお返しするようですが、やはりアメリカに対してもソ連に対しても、いわゆる削減の交渉をしていくということは当然のことだし、この三年間イランの問題、アフガンの問題、ポーランドの問題、中米の問題、いろいろな問題があるわけで、そういう複雑な情勢の中で軍縮がなぜ重要なのかということを私はそういう意味で最初にお尋ねをしたわけです。ですから、日本政府がそうした状況の中でどう努力すべきかということがお尋ねをした意味ですから、そのことは十分に理解していただきたいと思うんです。
  212. 木島則夫

    ○木島則夫君 初めに、日中事務レベル協議が三十一日に終わりました。当面の焦点であるアメリカの台湾に対する武器供与の問題で相当突っ込んだ話し合いが行われたそうでございます。協議の場で中国側が、アメリカの台湾への武器供与は内政干渉だとして、このことで米中関係が後退することもあり得るという、こういった可能性にも言及し、また一方で、このことのために中国基本姿勢が変わることはあるまいということにも言及をしたそうでございます。  外務省に伺いますけれど、感触と内容はどうだったのですか、簡潔で結構です。
  213. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) この問題はいまなかなか微妙な状況でございまして、先般の事務レベル協議におきましても、中国側は御案内のとおりきわめて厳しい態度を表明をいたしたわけでございます。すなわち、中国としましては米中関係が後退するのもやむを得ない、そういう心構えを持たざるを得ないということ至言明した次第でございます。
  214. 木島則夫

    ○木島則夫君 その一方で、だからといってこのことのために、中国基本姿勢を変えることにもなるまいという言及がございましたでしょうか。
  215. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 中国の対外政策、そのうちの一つの大変大きな要素は対ソ政策でございますが、この問題は米中関係とは別個の次元でとらえておりまして、やはりきわめて厳しい評価を同時にいたしておるわけでございます。すなわち、一部新聞にも報道されましたとおり、ソ連は言行不一致であるというような表現もあったわけでございます。
  216. 木島則夫

    ○木島則夫君 今度の事務レベル協議の中での中国側の考え方を外務省アメリカ政府に伝えて、米中間を武器供与の問題でこれ以上冷却をさせないというためにも私は積極的に働きかけをしてもらいたい、こういうふうに思うわけでございます。実はおとといの当委員会でも私外務大臣にこのことをお尋ねをいたしました。外務大臣は、側面から米中改善のために努力をするという、こういうおっしゃり方をしたわけでございます。私はもちろんこれでいいんでありますけれど、今回の日中事務レベル協議を踏まえてアメリカへの働きかけというものはより積極的であってほしい。とにかく日米の関係は同盟関係でもあり、友好関係は揺るぎのないものであるから、言うべきことは率直に言ってもらいたいという観点からすれば、側面からというような消極的なお立場でなく、むしろ積極的にこれをアプローチをしていただきたいと思うのでありますけれど、これは外務大臣から伺いたいのでありますが、いかがでしょうか。
  217. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 外交はなかなかむずかしいところがございまして、まず木島委員のそういう御意見を承ると、中国は中華人民共和国また台湾側いずれも一つ中国ということは非常な原則なんですね。それについて積極的にというと、正面切ってこれでアメリカに対して云々ということは、これはなかなか中華人民共和国あるいは台湾の理解を得る上にはむずかしい私は問題だと思います。そのことが、かえって日本が何らか配意をしなければならない、米中がうまくいくことがアジアのためである、それを望んでおるのが、あるいはそういうことによってかえって裏目になるようなことがあってもいけない、こういうことでございまして、御意見は御意見として、また私は何か消極的な御答弁をいたしたわけではございますが、しかし大事な問題でありますから、慎重に扱っていきたいと思います。
  218. 木島則夫

    ○木島則夫君 聞くところによりますと、アメリカ政府は、昨年暮れに決定をしました九千七百万ドルの台湾向けの武器供与をアメリカ議会に通告するとも伝えられております。したがって、やはりタイミングとしても非常に大事な時期であろうというふうに思うわけでございます。そして、先ほど直言及がありましたように、先月末のブレジネフ演説での米中へのくさびの打ち込みもあったわけでありますから、この辺は日本がやはり配慮の上にも相当なアプローチをしていった方がいいのではないかという意味でお尋ねをしたわけでございます。もし具体的なアプローチの方法を考えていらっしゃるとしたらば、その片りんでも結構でございますので伺いたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  219. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ただいま大臣が申されましたとおり、この問題は大変微妙な問題でございまして、したがいましてこの第三国間同士の関係が良好であることを期待しつつも、そのアプローチについてはきわめて慎重ならざるを得ないわけでございます。まずさしあたりなすべきことは、中国がどのように考えておるか、あるいは米側がどのように考えておるか、そういった事実をそれぞれの国にお伝えするということがまず手始めかど考えられるわけでございます。そのような努力はすでに随時やっておりまして、一昨日と昨日の日中事務レベル協議の内容につきましては、米側も大変関心を持っておられまして、すでに米側にはお伝えした次第でございます。
  220. 木島則夫

    ○木島則夫君 外務大臣でなくて結構でございますが、日中事務レベル協議におきまして、中国側が日本に対してアメリカ政府へこのことを訴えてほしいという要請も相当私は積極性をもっていたやに伺っておりますけれど、それにこたえて外務省としては今後どうなさるおつもりですか。
  221. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 先ほども申し上げましたとおり、すでに協議の内容、中国側の心配ないし懸念等は米側にお伝えしてあるわけでございます。中国側は積極的に日本側に伝えてほしいということの希望は表明いたしませんでしたが、言外にそのことを期待していることは十分うかがえることでございますし、また一見相矛盾するような事柄でございますが、中国側は良好なる日米関係を期待するという発言もございました。
  222. 木島則夫

    ○木島則夫君 これはなかなか微妙な問題でございますので、もちろん日本立場は自主的に、しかもアメリカとのあるいは中国との関係も考慮をしながら、ひとつまあ私に言わせると積極的に進めていただきたいという御提言を申し上げておきたいと思います。  せんだっての外務大臣の訪米、本当に御苦労様でございました。重大な時期に外務大臣が訪米をなさるということ自体、きわめて意義は大きいというふうに御評価を申し上げたい。しかし、行かれるからには相手を説得させるだけの切り札と申しますか中身がなければいけない。今度の訪米に当たりまして私痛感をしたことでありますけれど、政府・与党内の政策決定の調整がつかないままに、あるいは利益代表者間の御意見が消化されないままに外務大臣が舞台にお立ちになったのではないだろうか。むしろ大変御苦労されたというそういう印象を持ったわけでございます。で、せっかくその外交の舞台にお立ちになっても、いつも国内の要因である政府・与党内の政策不調和であるとか各省間の利害のコントロールができない、こういう状態で相手と対しますと、どうしてもタイミングを逸するとかフリーハンドで行動できないとか、こういった制約がつきまとうわけでございます。  したがって、私も素人の立場ではございますけれど、これから先摩擦が話し合いによって終わるとも思われませんし、アメリカはもとよりヨーロッパ、あるいは発展途上国との間でこういった問題がこれから中期あるいは長期の立場に立っても起こることが当然予想されるわけであります。したがって、そのためには日ごろから国内の省庁間におきまして情報、意見調整が必要であることはもちろんでございます。それから、たとえば政策の総合性を図るために、外務省関係省庁との間の事務レベルの会議などが定期的に設定される必要もあるだろうし、また対外的に関係の深い閣僚レベルでのしかるべき対応の場も持った方がいいのではないだろうかというふうに考えるわけでございます。  そうしてもう一点、一番大事な日本外交姿勢がぐらぐらしたりばらばらであってはいけませんので、最終的な国家意思、日本国家の意思発表は外務省が行うというようにしませんと外交の一元化というものもできない。したがって私は、せんだっての訪米を機会に、外交の体質と申しますか、日本の政治から来るものでもちろんありますけれど、そういうものの改善のために、いま私が申し上げたようなことどもについて御配慮をこれからしていただけるかどうか、外務大臣ひとつこれは積極的にお答えをいただきたいのでありますが、いかがでございましょうか。
  223. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 大変有益な御高見を賜ったわけでございます。  そこで現実の動きからいたしまして、事務レベルで何か問題があって、局長クラスとかあるいは次官クラスとか、これは問題があれば常に連絡調整をとることは言うまでもございません。それから閣僚の場合ですね、特に問題が多い場合には経済対策閣僚会議のようなものが設けられて、そしてその関係の閣僚だけが寄る、こういうことによって処理されておりますが、外交問題になりますと、これは総理のリーダーシップで閣議の問題だと、こう思いますね。したがって、私が出かけて帰ってまいりますれば早速に閣議に報告をする、あるいは党の主要役員には報告をする、行く前には行く前で意見をちょうだいすると、こういうことで私は対応できておると思うのであります。ただいまおっしゃった国の意思発表というものが一元的であるべきである、それは外務省中心であるべきである、それが一元外交である、これはもう言うまでもないことでございます。今回、ヘイグ国務長官との会談の折にも、特に重要な問題については私とあなたの間でと、これはヘイグさんも言われましたし私からも申し上げまして、迅速に連絡をとりましょうというようなことで、外交一元化につきましては御意見のとおりでございます。
  224. 木島則夫

    ○木島則夫君 この問題に関してもう一つだけ伺わさせていただきたいんでありますけれど、臨調でもいま私が申し上げたようなことをお考えのようでございます。櫻内外務大臣がおっしゃった、最終的には総理のリーダーシップで事を決めるということはよくわかります。しかし、行かれる前の段階での政府部内の意見調整、各省庁間での政策のコントロール、こういうものがつかないままに外交の舞台にお立ちになることがどうも日本外交の特質であるように私は思っておったものですから、この辺を解消するために対症療法的な受け方をするのでなくて、むしろ先んじて中期あるいは長期のそういった場をお持ちになった方がいいのではないかという意味で申し上げました。ある時期には対外経済相というようなものも置かれておったわけでありますから、もう一度外務大臣にお尋ねをいたしますけれど、どうでしょうか。そういうものを、長中期の観点に立った対応の場をきちっとふだんからつくっておく必要があるんじゃないかと思うのですけれど、この辺はいかがなものでしょうか。
  225. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 過去を顧みて、本当に国策上の重要な問題で交渉にどなたが当たられる、これは外務大臣が当たるなら当たるで、そういう場合には政府、党を挙げての意思の疎通を図る、あるいはときには国会の御意思も徴する、こういうことが過去の事例であると思います。今回の私の訪米をごらんいただきますと、国民の皆さんの重大関心事が、また両国の間の問題として経済問題が大変クローズアップされておりましたために、おっしゃるような党の意見調整も不十分なままに、また利害関係者のいろいろな意見のあるままに行ってやりにくかったろうと、そういう見方もできると思いますが、私としては繰り返し申し上げておるように、そういう交渉事というよりも、重点が日米間のいわば定期外相会議をやるようなそういう前提で今回行っておりますから、問題を取り上げると、確かにそれは私として非常にむずかしい場面がございましたけれども、これは私の今回の訪米の主たる目的ということでなのんであって、先方の意向を徴してきてそれを日本へ持って帰って、こういう意見を言っておったぞということで、いまいろいろある問題がこなれて進む。サミットを前にして、もっと市場の開放をせよという大変強い姿勢であったと、だから日本としては考えなきゃいけないよと、これが使命である。いろいろ忌憚のない話をしてまいった結果であるわけでございます。おっしゃるように、重要な問題で意見の一致を見るようなその努力を、木島委員は何か閣僚会議でも持ったらどうか、こういうことでございますが、従来の例で言えば閣議がそれに当たっておると……。
  226. 木島則夫

    ○木島則夫君 もう少しこの問題で詰めたいのでありますけれど、きょうは外務省関連の予算のことについても伺わなければなりませんので、問題を移してまいりたいと思います。  ODAの問題については同僚委員からそれぞれの視点でお話がございましたので、私は額の問題だけにしぼって、その見通しが達成できるのかどうか、目標が達成できるのかどうか、この点の御質問をしたいと思うのです。  わが国に課せられた国際的な責任を果たして南北問題の解決に資するために、厳しい財政再建途上ではありますけれど、経済大国としての分相応の責任を果たす上で重要な分野が政府開発援助であることは言を待ちません。政府はODAを積極的に拡充をして、引き続いてGNP比率の改善を図って、一九八〇年代前半五カ年間のODA実績総額を、一九七〇年代後半五年間の総額の倍以上とするように努めると、こういう目標を立てておいでであります。確かに一九七七年の時点に立って三年で倍増をするという目標は達成をされております。GNP比率〇・三二、しかしこれとても国際目標〇・七%には及んでいない、こういうことですね。したがって中期目標では一九八〇年代前半五カ年間のODA実績総額を、一九七〇年代後半五カ年間の総額百七億の倍以上にするような努力をする、こういうことになるのでありますけれと、このやり方自体が私は前の三年間で倍増をするという、こういうやり方よりも一歩後退をしている、しかも百七億ドルの倍といえば二百十四億ドル必要になるわけでありますけれど、一体この目標が達成できるのかどうか、達成されたとしても国際目標よりもまだ低いというこの辺の調整をどう進めていくか、経済大国分相応の責任分担が厳しく問われている折から、ひとつ具体的にお答えをいただきたい。
  227. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 新しい中期目標の五年倍増計画というのは先生御指摘のとおりでございまして、御案内のように、五十七年度の予算でこれだけ厳しい財政事情であるにもかかわらず、一般会計といたしましては新中期目標達成のために対前年度比一一・四%増、こういうのを確保しております。私どもはこの新しい中期目標を達成するためには、まず第一にいま申し上げましたように、一般会計の予算をしっかりと伸ばしていくということと同時に、国際開発金融機関に対する出資金、拠出金というのがございますが、これが御承知のような事情でややいま先進国の間で協議がおくれております用意思決定に至るプロセス、手続でおくれております。これを早く合意が成立するようにということを日本も強く働きかけて、これを早くまとめるようにしていくということ、それから第二に、円借款ですね、政府の借款、これをもっと拡充していかなければいけないというふうに考えております。これが非常に大事な要素だと思っております。  そこで先生御質問の、一体本当にできるのかどうなんだという御質問につきましては、対GNP比はいまおっしゃったように〇・三二%が八〇年度の記録であって、先進国の平均が〇・三七%なわけです。御案内のように、対GNP比というものは今後の日本のGNPの伸び率とか、それから為替レートの問題とか、約束しております倍増計画というのはドル建てでございますから、ドルで約束しておりますから、そういうものに依存いたしますので、とても確たることをいま申し上げるわけにはまいりません。ただ先ほどから申し上げましたようなことを具体的にやっていきたいと、こう考えておるわけでございます。
  228. 木島則夫

    ○木島則夫君 私としては非常にこれむずかしいと思うんですね。ですからよほどの努力をされないとこの達成というものはむずかしい。たとえ達成されたとしても一九八〇年代に一体できるのかどうかと思われるくらい予算を拝見しましても私はむずかしいと思うのだけれど、これ以上のお答えは結構ですから、ひとつ積極的に日本経済大国としての世界への貢献度の役割り、こういうものの上に立ってやっていただきたいという、これは外務大臣からもひとつお答えをいただきたいんでありますけれど、いかがでございましょうか。
  229. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいま説明があったように、一般会計の上から見ると前向きにいっておるわけですが、国際機関に対しての協力関係がどうもうまくいっておらないと、こういうことでございます。単年度単年度でよく検討しながら進んでいくべきでありますが、今後の努力次第で、まだまだあと大分長く残っておるのですから、大事なことでありますので、約束を実施できるように相努めたいと思います。
  230. 木島則夫

    ○木島則夫君 外務大臣にお伺いしたいんでありますけれど、どうでしょうか、アメリカはともかくとしてヨーロッパですね、それからASEAN諸国、世界をお回りになった感じで、日本は理解をされているか、日本に対する認識というものは相当程度のものであるというお受け取りをなさるか、いやいやまだまだだというような受け取り方をされるか、これは感触で結構なんでありますけれど、外務大臣日本のいま受け取られ方が、まあ大体いいところにいっている、いやいやとてもまだまだ不十分である、十分でない——どんな感触をお持ちでありますか。
  231. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 正直申し上げまして私は最近まだヨーロッパ、ASEAN各方面に行っておりません。しかし、就任以来ずいぶん多くのヨーロッパ関係アジア関係の方々をお迎えをしておりますし、また毎日出先の大使館からの電報を見ておるわけでございます。また、当然のことながら新聞などに注目をしておるわけでございますが、特に最近江崎ミッションが帰りましてヨーロッパの模様を承りましたが、なかなか日本に対する理解というものは十分でない、むしろ誤解に基づく日本に対する批判が非常に強くなっておるんではないかと。そういうような点からいたしますと、これからの日本の広報活動というものは非常に重要である、外務省内におきましても広報活動を一層強めたいという相談を先般いたしたところでございます。
  232. 木島則夫

    ○木島則夫君 いま外務大臣から、はしなくもおっしゃっていただいた海外広報活動あるいは国際交流文化事業、この点について少し具体的に伺っていきたいんでありますけれど、あらゆる面で外務省は努力をされていることはわかるんですね。しかし、やっぱり先立つものは何といっても金と言っては言い過ぎかもしれないけれど、裏づけである予算、その予算措置を見ると、必ずしもというよりも非常に不十分だと言わなきゃならない。一体こういう予算文化国家としての体面上許されるかどうかというようなことにもなってくるわけでありますけれど、ひとつ国際交流文化事業、それから広報活動、この裏づけとなる予算について簡潔で結構ですから説明してください。
  233. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) 確かに先生御指摘のとおり十分ではございませんけれども、結論的に申し上げますと、該会計年度におきましてもし国会で御承認をいただきますならば、海外広報関係予算では五・四%増、それから文化関係予算におきましては、国際交流基金の出資金を除きますと、つまり事業ベースだけで申し上げますと十数%、たしか一三%だったと思いますが、伸びておることになっております。
  234. 木島則夫

    ○木島則夫君 予算の内容を拝見しますと、たとえば国際交流基金の出資金が五十四年度五十億であったものが五十七年度ゼロですね。これは何か含みがあるのですか。
  235. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) これは、私正直に申し上げましてだんだん減っていき、かつ明年度ゼロということは大変悲しいことでございます。しかしながら、これは最大といいますかほとんど唯一の理由は、先生御承知のとおりに現在の非常に厳しい財政事情にございまして、そこでこの財政事情のもとで何とか文化の活動の面におきましても御協力申し上げるということで、出資金はゼロになりましたが、しかしながら先ほど申し上げましたようにそのかわりに、そのかわりといってもなんですけれども、実際に文化活動の事業をする実体の部分については、十分とは申しかねますけれども相当部分一二%という大きな伸びを認めていただけるということになりました。
  236. 木島則夫

    ○木島則夫君 あなたにこれ以上聞くと酷ですから私も伺いません。財政事情が厳しいこともよくわかっている。わかっているんだけれど、やっぱり文化国家日本が平和に生きていこうという一つの顔でしょう。そういうところから見ますと、やっぱりたてまえ上もきちっとしたものが備わっていなければいけない。そして大蔵省はきょう呼ばなかったけれど、とかく文化というのは盲腸みたいなものと考えているんじゃないですか。金があればつけましょう、金がなければこれは何かほかのもので代替してくださいというようなそんな考えじゃないか、違いますか、局長。あなたにこういうことを聞いても何ですが、どうですか、大蔵省の考えをちょっと率直に言ってください。
  237. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) よそ様のお役所のことでございますので、私自身の考えで申し上げますと文化というのは盲腸ではなくて、私は大脳か小脳が、その辺のところだと思います。
  238. 木島則夫

    ○木島則夫君 だからもし大蔵省が盲腸だというふうな考え方を持っていたら、幾ら貿易摩擦の問題を局所的に解決しようと思ったってこれはできるものじゃないですよ、こんなものは。やはりもっと広範囲な基礎になるベースの問題ですから、これは基本になる問題ですから。私はやっぱりこういうところで、よそ様の問題であるからなんて御遠慮なさらないで積極的に御発言をしていただいて、こういう場でいかなる考え方が大蔵省にあるのか、そういうことも知らしめていただいて積極的なアプローチを試みたいと思っているんです。いずれにしても時間がないので具体的に聞きます。  諸外国との相互理解を増進する方法といたしまして海外広報活動がある、当然ですね。この予算について、まあ予算の額はいいです。どこに重点を置いているか、重点項目二つ三つ挙げてください。
  239. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) 視聴覚教育、つまりテレビ利用ということが一つございます。それからもう一つは人物招聘、つまり外国から各界の指導者の方をできるだけたくさん日本にお呼びする。この二つでございます。
  240. 木島則夫

    ○木島則夫君 私も賛成ですね。やっぱりマスメディアを使って日本を紹介をするということはこれは大いに必要。そしてあちらからオピニオンリーダーを呼ぶ、それから報道関係者なども徹底して呼んでもらいたい。しかし、さっきから言っているように金がかかる、そうでしょう。そしてこの視聴覚を利用するということも、ただ単に日本の伝統芸術とか伝統美術とか古典だけを紹介するのじゃなく、やはり現代の先端技術もいいでしょう。ただ、そういう短編だけでなくてもっと日常の草の根的な、というのは、日常日本で放送されているようなテレビドラマなどがもっともっと向こうのネットに乗らなきゃだめだというのが私の論理なんですね。向こうにも公共放送がある、PBS。しかし三大ネットワークなどに日本の長時間ドラマなど乗せようとすると、これは大変です。そのアプローチも大変ですよ。私は何もNHKだけの番組をここで挙げて、NHKがいいなんて言っているわけじゃないんだけれど、たとえば「マリコ」とか「ポーツマスの旗」とかいろいろあるでしょう。ああいうドラマが一般の日本の国民の皆さんから高視聴率を上げて見られているんだから、むしろそういうものを積極的に向こうに送る努力というのは外務省としてなさっていますか。もちろん、民間放送なり民間のテレビ局あるいは放送局に政府色が介入するということについては、向こうもアレルギーを持っていることは私もよく知っている。その辺の御認識はどんなものですか。
  241. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) 木島先生御指摘のとおりに、草の根ということになりますと、何といいましても視聴覚そのものに訴えるテレビの持つ威力が一番私は重要だと存じます。そこで、先生御指摘のように、日本政府外務省というものが生の形でそのまま入っていくということにつきましては、アメリカ初め各方面によってそれぞれ抵抗があろうかと存じます。しかしながら、たとえばアメリカの例で言いますと、民間の有線テレビ局が小さいのがいろいろございますし、それからいわゆる独立局というようなものもございますし、これは全国ネットじゃございませんけれども、そういうものに対しまして、外務省が表に立つのがまずい場合は、中間の人あるいは関係方面を介しましてできる限りの浸透を図っていきたい、こういうことで努力している最中でございます。
  242. 木島則夫

    ○木島則夫君 時間がありますと私もう少しこの問題を、私も専門としてきたところでございますから具体的にお話をしたいんですけれど、仰せもうあと数分しかございません。重点項目わかりましたから、よくそれにのっとってひとつそれが実るような形での交流をしていただきたいと思うんですね。文化事業は何といっても私は人と人との交流が必要だと思いますけれど、この辺ではどういう重点を考えていらっしゃるんですか。重点項目というか、文化事業。
  243. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) 文化事業につきましては、やはり一つは人の交流でございますが、木島委員時間がないようでございますので項目だけ申し上げます。  まず、人の交流、つまりできるだけりっぱな人を呼ぶ。それから、諸外国におきます日本研究、これを大いに奨励といいますか助成といいますか、協力する。それからもう一つの柱は日本教育を充実する。最近、大変ありがたいことでございますが、東南アジアを初めとしまして日本語熱がだんだん高まってまいりましたので、ここで各国の日本教育。それから、その他資料とか本とかございますが、大きな柱は以上のようなことかと存じます。
  244. 木島則夫

    ○木島則夫君 大変結構なことだと思うんですね。ことにアジア中心とした日本あるいは日本語への向こうの熱が大変高まっているということであります。たとえば中国なんかでも日本研究あるいは日本語研究が高まっている。なるほど中国日本語を教えられる先生もいるけれど、昔の日本しか知らない先生日本語だけを教えているというような実態もございます。したがって、現在の生の日本を知らしめるような機会も私は必要だと思う。  で、これから一、二提案をしたいんでありますけれど、どうなんでしょうか、先ほども秦野先生が人物交流は四十人やそこらでなくて四千人にしろとおっしゃった。特に若い若年層の交流というのが必要でしてね、高校生をお互いに交換をする、これも百名やそこらじゃなくて、少なくとも五百名ぐらいやったらどうかと。しかも、その泊まるところは民宿というかホームステイ、こういうものが必要じゃないかと思うのですね。  それからもう一点、たとえば日本の高校生なんかが修学旅行をする。もう国内はやめて、と言うと語弊があるけれど、まあ近いところだったらそう旅費も違わないと思うのです、国内と。したがって、少しPRなさったらいかがですか。たとえば、韓国とか台湾へ行くというとすぐにアレルギーを起こす人がいるけれど、見ないでアレルギーを起こしたってこれは話にならないんで、まず行くべきところは行くと、そして帰ってきてその認識を、悪ければ悪い、よければいいと発表するわけで、この辺は具体的な提言なんだけれど、どうですか、何も文部省の所管だとか何とかいうことでなしに、外務省も積極的にこういう問題についての認識を皆さんに持ってもらうようにしていただいたらいいんじゃないか、どんなものでしょうか。
  245. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) 簡潔に結論だけお答えいたします。  大変有効かつ適切なるアイデアだと思いますので、真剣に検討さしていただきます。
  246. 木島則夫

    ○木島則夫君 有効適切なアイデアだから慎重に検討というのはこれは……
  247. 橋本恕

    政府委員橋本恕君) 発言が悪くて申し訳ございません。慎重でなくて真剣でございます。真剣に検討いたします。
  248. 木島則夫

    ○木島則夫君 耳が悪くて申しわけありませんでした。  外務大臣、いま私が申し上げたようなこと外務大臣としてももちろん御賛成いただけますでしょう、どんなものでしょうか。
  249. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) おっしゃる方向で私どもも協力をいたしたいと思います。
  250. 木島則夫

    ○木島則夫君 大変失礼しました。これで終わります。
  251. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 レーガン政権の補佐官であったアレンさんが韓国からの帰途日本に寄りまして、そして日本の対韓借款の問題に対して幾つかの発言をしておられるようですね。私どもは韓国問題、朝鮮問題、たとえば金大中事件とかいろいろ深くかかわりまして、非常にこれは関心を持っているわけです。アレンさんが補佐官をやめた一私人として日本に来て韓国の意向をいろいろ伝えているようですけれども、どういう意向が伝えられているか、これは御存じの方があったらひとつ教えていただきたいと思います。
  252. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) リチャード・アレン氏が訪韓いたしました後、本邦に立ち寄られたことは宇都宮委員御指摘のとおりでございます。韓国に対しましては、恐らくワインバーガー訪韓の地ならしということも彼の任務の一つであり得たかというふうに推測もされるわけでございます。日本に立ち寄られましたときに、それでは日韓経済協力の問題にいろいろ注文をつけるというようなことがあったかどうかということにつきましては、そういうことは一切ないわけでございまして、私どもが自主的な判断でこの問題を進めておるということは、アメリカ側の関係者はすべて御承知のはずでございます。
  253. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 新聞によりますると、例の六十億ドルの韓国の借款要求、日本円にしますと一兆三千億円ですね。その借款要求について韓国の要求を聞き日本政府にサジェストしたと、こういうようなことが出ていますが、そういうことはないんですか。
  254. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) そのような事実は一切ございません。
  255. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 この問題については後からもう少し詳しく聞きますけれども、名前の出たワインバーガー国防長官ですか、あの人が今度は韓国に行く。途中で寄って、そしてこれは新聞によるものですから正否は正確にはわかりませんけれども、とにかくアメリカの韓国政策は全く変わった、ニクソン時代とも変わりカーター時代とも変わったと。つまり、在韓米軍の引き揚げはしない、それから韓国に対する援助は、軍事援助経済援助ともに強化するということをワインバーガーさんが日本政府に言ったということが伝えられていますけれども、それはそのとおりですか。
  256. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 本邦滞在中にそういうことは話題になりませんが、私どもとしましては、アメリカの対韓政策がどのようなものであるかということは、レーガン・全斗煥大統領のときのやりとり、あるいは昨年の米韓安保協議、本年の米韓安保協議を通じて承知いたしておるわけでございます。レーガン政権になりましてから対韓政策が著しく変わったということはございませんで、もともとはニクソン政権時代に在韓米軍を削減するという行動に出たわけでございます。カーター大統領もこれを踏襲しようといたしたわけでございます。しかしながら、その過程におきまして北朝鮮の兵力の著しい増強というものが見られましたために、カーター政権は在韓米軍の削減を取りやめた経緯がございまして、レーガン政権もその延長線上に乗りまして対韓政策を進めておるものと考えられるわけでございます。
  257. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 そうすると、フォードそれからカーター、まあガーターの中途から大分変わりましたけれども、ニクソン、フォード政権、それからカーター初期から著しく変わったということはないという御認識ですね。
  258. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) そのように認識いたしております。
  259. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 そうすると、ワインバーガーさんの新聞発表で伝えられることはうそですね。
  260. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) ワインバーガー国防長官の訪韓に際しまして発表されました米韓共同コミュニケ、これは従来からのアメリカの対韓政策に即したコミュニケであるというふうに理解いたしております。
  261. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それでは、韓国の借款と言うんですか、そういう要求について伺いますけれども、いずれにしても政府は二十億ドルと言いあるいは三十億ドルと言いあるいは四十億ドルと言い、韓国側は六十億ドルと、そういう借款の話があることは間違いないですね。それで、これらの借款をするとすれば本年度中になされるわけですか。
  262. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 対日経済協力の大きな要請がございますことは、宇都宮委員御指摘のとおりでございます。私どもといたしましては、この要請につきましてすでに検討を始めておりまして、どのような対応ができるかということを目下検討中でございます。現実の問題として、すでに五十六年度は終わりまして五十七年度に入っておるわけでございますが、この数ヵ月以内ということであれば、五十六年度分ということで、五十五年度の経済協力に引き続きまして取り決めに到達することは時間的に依然可能であるかと思っております。
  263. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 この韓国に対する経済協力は、本年度予算審議とはどういう関係になりますか。
  264. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 現在、韓国との間で問題になっております円借款につきましては、これは経済協力基金の資金で賄うわけでございまして、毎年一般会計からの繰り入れとそれから経済協力基金の自己資金で賄われるわけでございます。したがいまして、厳密に会計年度内に執行されなければならないということはございませんで、数カ月の幅というものは許容されるというふうにお考えいただけるものと思います。しかしながら、この経済協力基金によります経済協力は、やはり予算年度と大きくかけ離れて考えられることは現実の問題として無理があるということは、これまた事実でございます。
  265. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 一国に対する経済協力で六十億ドルというような金額は非常に大きなものだと思いますね。ですから当然、つまりいままでの海外経済協力に対する予算の総枠はふやさなきゃいかぬということになると思いますが、そういうことは本年度予算に出てきますか。
  266. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 本委員会でもたびたび話題になりましたとおり、一九八一年から五カ年間にかけまして七〇年代後半の倍以上に政府開発援助をふやそうという中期目標があるわけでございまして、したがいまして韓国に対する経済協力もこの考え方の枠組みの中で、ほかの国とのバランスも考えつつ拡大される余地はあるわけでございます。しかしながら、宇都宮委員御指摘のとおり、それでは六十という数字の実行が可能であるかどうかということになりますと、これは大変むずかしい問題であること御承知のとおりでございます。
  267. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 外務大臣に伺いますけれども、朝鮮半島が南北に分断されているわけですけれども、その状況はいずれにしても私どもは非常に不幸なことであると思っているわけです。それで、北も南も最近は話し合おうということでいろいろやっているわけですが、例の朴正煕政権時代にお互いに共同声明などを出しまして、平和統一に対する三原則のようなものを出したわけであります。ところが、そのときにそれを非常に阻害した、つまり北の方を非常に警戒させた事件というのは、やはり金大中事件ですね。あの事件が起こりまして、しかも新憲法でいろいろな形で人権をあれするものですから、韓国の国民の中にもいろいろな反発が起こって、それでできなかったわけです。まあ金大中事件というのは日本にも関係のあるもちろん事件ですけれども、今後の経済援助の増額と関連いたしましてああいう金大中事件とか、それから金大中事件に関連して起こって、まあその真相は正確にわかりませんけれども、相当な民衆弾圧が行われたという光州事変なんというものがあるわけですが、そういうことはどういうふうに考えるか、いま日本政府はもう忘れていいというふうにお考えですか。
  268. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 宇都宮委員のおっしゃられましたとおり、朴政権時代、一九七二年に南北の共同声明が発出されまして、南北対話の機運が醸成されたことはおっしゃられるとおりでございます。しかしながら、これも御指摘のとおり、金大中事件というものが発生しまして、北側がそれに籍口しましてせっかくの南北対話を中断してしまったといういきさつがあったこともそのとおりでございます、その後金大中氏は、朴大統領暗殺後の新しい事態のもとにおきまして、一ころは完全に自由な身柄になりまして、金鍾泌氏あるいは金泳三氏とともに大統領に立候補するというところまで至ったわけでございます。ただし、その後光州事件等々の事件がございまして金大中氏の裁判が持たれたわけでございますが、その過程におきまして、私ども大変関心を払いまして、極端なことにならないようにということで種々韓国当局の御配慮をお願いした経緯があることは宇都宮委員御承知のとおりでございます。いずれにしましても、金大中氏の判決というもの、これが無期懲役ということに相なり、また最近の事態でさらに減刑になったということを私ども承知いたしております。この問題はすぐれて韓国の国内問題でございますが、私どもとしましてはこのような韓国当局のとられた措置というものを一応評価いたしておる次第でございます。
  269. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 単なる国内問題じゃなくて、朴大統領の政敵として日本から強制的に拉致された、公権力がやったということはいろいろごまかしてもいますけれども明らかなんであって、そういう意味で主権侵害事件である。主権侵害というのは、領土の主権も侵害でありますけれども、やっぱり同列のものですが、そういうことが外交的に決着されたということになっていますけれども、しかし金大中が光州事件で死刑になるなんというときには、自民党なんかの相当な幹部も、ああいうことをやったのじゃ、とにかく今後韓国に経済援助なんかする場合、国民の税金を出す場合に国民感情が許さないということを言っていた人もあります。それで、つまり金大中が、死刑が無期になり二十年になったということは、やっぱり日本国民にはのどに何かつまっておる感じで釈然としないものがあるわけです。政府は、こういう巨額な経済援助等を求めるときに、韓国はみずから自由主義国家と言っているんですから、特に全斗煥政権になって民主主義を打ち立てるということを言っておるわけですから、朴政権時代と違って。だから日本と韓国を緊密化する前にこういう非人道的な事件、金大中事件だけでありません。また金大中事件だけが主権侵害と見られるものでもない。いろいろやっぱり疑わしい事件が多いわけですが、そういうことを政府はもう少しすっきりさせるという必要が私はあると思いますけれども、これは政府間の仲がいいだけじゃやっぱり本当に仲がいいとは言えない。それから代議士同士が仲がいいだけじゃ仲がいいとは言えない。やっぱり国民感情の中にしこりを残さぬようにして税金を出さぬとおかしなことになると思いますが、そういうことに対して心の中に何らかのお考えを持って交渉に臨まれるかどうか、これを伺いたいと思います。
  270. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 金大中氏事件に関連いたしまして、わが国の主権が侵害されたという事実が明らかになった場合には、累次本委員会でも政府のお考えを申し上げておりますとおり、改めて韓国側と折衝しなければならなくなるということは当然のことでございます。  それから、現在の韓国の国内の動向につきまして、これはやはり私どもがとやかくコメントすることは差し控えるべきでございますが、先ほど触れましたとおり、金大中氏の減刑というものが実現いたしましたし、さらにはいわゆる在日韓国人政治犯の減刑というものもございましたし、また、これは全然質の違う問題かもしれませんが、夜間外出禁止令等も撤廃される等、苦しいながらもだんだん明るい方向に、雰囲気が良好になっておるのじゃないかという見方もあるわけでございます。
  271. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私は金大中事件の当時の模様をよく知っているものですから、韓国の公権力がやった、つまり政敵がやった、政敵というのはやっぱり権力を持っている政敵がやったと思っていますから、主権侵害じゃないという説には賛成できない。賛成できないけれども、主権侵害じゃないんだと言われればどうにもしようがないけれども。  しからばどうなんですか、もう一つ主権の問題に関連して聞きますけれども、竹島の現状はどうなっているんです。
  272. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 竹島の問題につきましては、遺憾ながら韓国側の不法占拠の事態が続いておるということになっておるわけでございます。
  273. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 あくまでも日韓条約の際には竹島の問題は棚上げで解決されたものですか。はっきりして解決したものですか、日韓条約を結ぶとき。
  274. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 日韓国交正常化のときにこの問題を棚上げにしたという事実はございませんで、正常化の際に取り交わしました紛争の平和的解決に関する交換公文に即しまして平和的にかつ外交的にこの問題を解決しなければならない、そのように私どもは考えておるわけでございます。ただし、遺憾ながらその後の現実を見てまいりますと、韓国側はこの問題は存在しないという態度に徹しておりまして、せっかくのこの交換公文にもかかわらず十分なやりとりが行われていないということにつきましては、私ども大変遺憾に存じておる次第でございます。
  275. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 この日本の領土問題というのは、北方領土の問題とそれからあえて言えば尖閣列島の問題ですね。それと竹島の問題とあるわけです。竹島は非常に小さい島ですから影響力はないように見えるけれども、やっぱり最近のように経済水域とかそういう問題がうるさくなりますると相当これは重要な問題であると思います。経済水域の問題になりますると、これは両国の相当大きな利害関係になってきます、漁業上もその他も。ですから、六十億ドルを向こうが請求する根拠は、一つ安全保障上の理由、つまり日本の安全は韓国の防衛努力によって保たれているというようなそういうような主張、これに関しましてはこの前の園田外相時代に、この援助に関してはそういう安全保障、防衛の問題とは絡めないということを日本が主張いたしまして、それに対して韓国はいろんなことを、非常に感情的なことも言ったようですけれども、この問題はどうなっているのですか、伺いたいですね。園田外相は安全保障問題に絶対にこれは絡めないとこう言っている。そのまま話が始まっているわけですけれども、これはどうなっているんですか。
  276. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 韓国側は、自国の非常に厳しい経済の実情、すなわちせっかく良好な経済運営を図りたいにもかかわらずGNPの六%、あるいは予算の三五%を国防費に費さなければならないんだと、したがいまして財政もおのずから硬直いたしまして、せっかく景気刺激策をとろうにもとれないという苦衷を訴えておるわけでございます。したがいまして、その関連におきまして韓国の対日要請が安保経協であるという感じにともれた事実は過去にございます。またその前に全斗煥大統領がワシントンのナショナル・プレス・クラブにおいて昨年の二月初めに、韓国はアメリカ日本のとりでであるということも訴えられたいきさつと結びつきましてそのような見方が出てくるわけでございますが、園田前大臣が韓国の当局者と会談されましたときも、日本側の立場から、この安全保障上の見地からの協力はできないんだということをるる訴えられまして、その点は現在きわめてはっきりいたしておるものと私ども考えております。
  277. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 もしも安全保障問題を絡めまして日本援助する場合には、朝鮮民族が二つに分断されていまして、安全保障問題というのは北朝鮮に対する安全保障。ですから、戦争になった場合に日本援助した武器を持って朝鮮民族同士が殺し合うということになるわけですからね。だから、片っ方の朝鮮民族にはよくても片っ方の朝鮮民族には非常に悪い。だから、日本と朝鮮民族との関係からいうと、安全保障に絡んだ援助というものは私は非常によくない、こういうふうに思いますが櫻内外務大臣、その点はどう考えられますか。
  278. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私の就任後に、宇都宮委員の御懸念されるような安全保障に絡んだ何か要望を受けたという事実はございません。
  279. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 あなたの御意見を聞いているんです。安全保障に絡めて援助を出すということは、これは朝鮮民族が分断されて、結局戦争が起これば一つの民族の殺し合いですからね。そういうことのために援助を出すということは、今後の日本の大きな意味の朝鮮政策という点にいろんな障害が出る、長く見ますと。そういうふうに考えますが、恐らく前園田外相もそういう観点だったと思いますよ。あなたはどう考えられますかとあなたの御意見を聞いているわけですよ。
  280. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私は朝鮮半島が安定した平和な姿になることを望んでおるわけでございます。北朝鮮、韓国ともに統一の呼びかけをしておりますが、そのときそのときに相互に相入れないような呼びかけ方になっておることを大変残念に思うわけでございます。そこで、この朝鮮半島の統一のためにできるならば国連事務総長でも動いていただくということを期待をいたしますし、あるいは両方が国連に加盟して、そして国連の場で話し合うことも一つの方途ではないかというようなことを考えたりしておるわけでございまして、いずれにしても朝鮮半島の統一が速やかにできる、あるいは朝鮮半島が何らかの形で平和な安定した姿になるということを極力望んでおる次第でございます。
  281. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 私が伺っているのは、そういう統一とか平和、少なくとも緊張緩和のためにいずれの国の武装に対してもお金を日本が出すということは、要するに朝鮮民族の殺し合いを助長し緊張を激化することだから、そういう観点から経済援助をすべきでないと。それに対してあなたはどう思われますかということを聞いているわけです。
  282. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 御質問がよくわからないのでありますが、現在、韓国が要請しておる経済協力の問題であるといたしますならば、韓国の八〇年、八一年の経済状況あるいは国民生活の状況から考えますと、隣国から協力の要請があるのでございますから、これらについてそういう社会経済の不安定を除去する上におきまして何らかのその要請にこたえることができるならば、それはこたえでいいものだと思っております。
  283. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 安全保障上の理由で経済援助等をしないということは変わらないんでしょうね。
  284. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) それは先ほども申し上げましたように、この要請について安全保障のことが絡んでおりませんから、そのことはそのことではっきりしておりますので、この要請をよく検討をして、できるならばそれにこたえようと、こういう姿勢をとっておるわけでございます。
  285. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 わかりました。  それからもう一つ、韓国側としては、日本はとにかく韓国が経済的に困っているとか困っていないとかは別として、この前日韓条約を結ぶときに一種の賠償的な意味で有償、無償供与というものを出したわけですね、五億ドル出した。それで一応片がついているはずなんですけれども、しかし植民地時代のいろんな問題を持ち出して、そしてああいうことがあったのだから出すのがあたりまえだという主張があるということが新聞等で伝えられておりますけれども、アジア局長どうなんですか。
  286. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 韓国内の一部にそういう考え方があることは事実と思われます。すなわち、朴大統領が殺害された後の新世代というものはきわめて気負った世代であられまして、過去の日韓関係というものから離れて新しい日韓関係を構築すべきだと、そのようなコンテクストからただいま申されたような考え方が韓国に存在し得るわけでございますが、政府といたしましては韓国の政府から、あのときは取り方が少なかったからもっとよこせというような御要請に接しておることはございません。
  287. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それでは、なおいろいろ質問したいことがあるんですけれども、韓国のそういう要請が一部にある。これは政府筋にもあるわけですか。
  288. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 先ほど申し上げましたとおり、一部にそういう考え方があるという場合には政府関係者も含まれるわけでございますが、日本に対する要請としましては、韓国政府からそのような観点に立っての要請はないということを申し上げた次第でございます。
  289. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 この問題は非常に微妙なのは、やっぱり日本の植民地支配を受けたのは南の朝鮮半分も受けているけれども、北も受けているわけですね。だから、やっぱりかつての朝鮮の植民地支配を考える場合には、その被害とかなんとかいう場合には、やっぱり北の問題も考えませんと非常におかしなことになるので、韓国に関してはあれで一応済んだということにして、それで北との国交の正常化の場合にやはりそれに応じたことをするということで、そういう経済問題としての始末はつくわけだと思うんです。これはやっぱり絶えず頭に浮かべておく必要があることだと思いますね。  それからもう一つ、中進国いわゆる途上国に対して日本経済援助をする。その経済援助というものは、それが返らないという危険も伴いますから、だから、よほどこれは注意しなきゃならぬものですけれども、しかし途上国それから中進国も含めて、特に日本といろんな関係がある国に対して経済援助をするということは、これは必要なことだと思います。しかし、いろんな理由である一国に余りに多くして公平感を失うと、日本経済援助というものは国際的な場面で何か素直に受け取られないようなことになりますから、一つの国に対する巨額の援助というものは、援助を出している、あるいは出すべき国とのバランスというものを常に考えなきゃいかぬと私は思います。ですから、いろんな理由で韓国が援助を請求するということはわかるけれども、しかし援助総体のバランスというものをよく考えてやりませんと、韓国は喜ぶけれども、ほかの国がこの日本援助に対して明朗な印象を受けないということになりますから、この点は十分御注意願いたいと思うのですが、ひとつ大臣の御意見を承りたいと思います。
  290. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 宇都宮委員御承知のように、日本経済協力方針というものを明らかにしております。それから、中期計画としての現在倍増計画というものも打ち出しておるわけでございまして、その中でおっしゃるように、他と公平を欠くようなことのないように十分配慮しながら、また隣国である韓国との関係というものも頭に置きながら、韓国の要請に対してよく検討をして結論を出したいと、こういう考えに立っております。
  291. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 終わります。
  292. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) これをもって昭和五十七年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、この委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  293. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十八分散会      —————・—————