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1981-12-22 第96回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十二月二十二日(火曜日)    午前十時三分開会     —————————————   委員氏名     委員長         稲嶺 一郎君     理 事         大石 武一君     理 事         鳩山威一郎君     理 事         松前 達郎君     理 事         渋谷 邦彦君                 安孫子藤吉君                 大鷹 淑子君                 中山 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 細川 護熙君                 町村 金五君                 宮澤  弘君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君                 山田  勇君     —————————————    委員の異動  十二月二十一日     辞任         補欠選任      立木  洋君     下田 京子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         稲嶺 一郎君     理 事                 大石 武一君                 鳩山威一郎君                 松前 達郎君                 渋谷 邦彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 大鷹 淑子君                 中山 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 細川 護熙君                 宮澤  弘君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 宮崎 正義君                 下田 京子君                 木島 則夫君                 宇都宮徳馬君                 山田  勇君    国務大臣        外 務 大 臣  櫻内 義雄君    政府委員        外務政務次官   辻  英雄君        外務大臣官房長  伊達 宗起君        外務省アジア局  木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省中近東ア        フリカ局長    村田 良平君        水産庁長官    松浦  昭君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省条約局外        務参事官     都甲 岳洋君     —————————————   本日の会議に付した案件調査承認要求に関する件 ○北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦の  地先沖合における千九百七十七年の漁業に関す  る日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦  政府との間の協定有効期間延長に関する議  定書締結について承認を求めるの件(内閣提  出、衆議院送付) ○日本国地先沖合における千九百七十七年の漁  業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共  和国連邦政府との間の協定有効期間延長に  関する議定書締結について承認を求めるの件  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国際情勢等に関する調査を行うこととし、この旨の調査承認要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 稲嶺一郎

  6. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先般の内閣改造に伴いまして、外務大臣を任命された櫻内義雄でございます。よろしくお願い申し上げます。  厳しい国際情勢の中で、外務省の担う責務は大きいと思うのであります。まことにふつつかな者でございますが、多年外交問題に御造詣の深い本委員会皆様方の御指導、御鞭撻のもとに、大過なくこの職責を果たしてまいりたいと思いますので、この上ともどうぞよろしくお願い申し上げまして就任のごあいさつといたします。(拍手
  7. 稲嶺一郎

  8. 辻英雄

    政府委員辻英雄君) このたび外務政務次官を拝命いたしました辻英雄でございます。  大変大切な時期に大切な仕事を仰せつかりまして、責任を痛感いたしておりまして、大臣の御指示を受けまして、外務省の諸君と協力しまして重責を果たしたいと考えておる次第でございます。  委員長さん初め委員皆様方に格別の御指導、御鞭撻をいただきますようお願い申し上げましてごあいさつといたします。(拍手)     —————————————
  9. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件、日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次説明を聴取いたします。櫻内外務大臣
  10. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいま議題となりました北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件及び日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件の二件につきまして、提案理由を御説明いたします。この二件は、それぞれ別個の案件ではありますが、経緯上も内容的にも互いに密接な関係にありますので、一括して御説明いたします。  昭和五十二年五月二十七日にモスクワで署名されました北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定及び昭和五十二年八月四日に東京で署名されました日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間は、昭和五十二年末、昭和五十三年末及び昭和五十四年末に署名された議定書によって延長されましたが、さらに昭和五十五年末に東京で署名された二つ議定書によって一年間延長されました。したがって、両協定有効期間は、ともに本年十二月三十一日に満了しますので、政府は、ソ連邦政府との間にこの有効期間をさらに延長する議定書締結するため、本年十一月十九日以来モスクワにおいて交渉を行いました。その結果、本年十二月十六日にモスクワにおいて、わが方魚本駐ソ連邦大使先方カーメンツェフ漁業大臣との間でこの二つ議定書の署名を行った次第であります。  この二つ議定書は、いずれも二カ条から成っており、それぞれ右に述べました協定有効期間を明年十二月三十一日まで延長すること、両政府代表者は明後年以降の漁獲の問題に関して明年十一月二十四日までに会合し協議すること等を定めております。  この二つ議定書締結によりまして、一方では、わが国漁船ソ連邦沖合い水域において引き続き明年末まで操業することが確保されることとなり、他方では、わが国は、ソ連邦漁船が明年においてもわが国漁業水域においてわが国の法令に従って操業することを認めることとなります。漁獲割り当て等実体的事項につきましては、両国水産当局間の書簡にその詳細が掲げられておりますが、今回の交渉の結果、明年のわが方漁獲割り当て総量として本年と同じく七十五万トンを確保し、他方ソ連邦に対する明年の漁獲割り当て量につきましても、本年と同じく六十五万トンを定め、また、操業水域については、日ソ相互に従来の水域に加えて新たに水域を設定することを定めた次第であります。  この二つ議定書締結は、互いに相まって、日ソ両国の二百海里水域における円滑な漁業秩序を確保するものであると考えております。  よって、ここに、これらの議定書締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  11. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 以上で趣旨説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  12. 松前達郎

    松前達郎君 ただいま議題となりました、日ソソ日漁業暫定協定、これは長いですからそういうふうに言わしていただきますが、これについて、その経過等を含めてお伺いをしておきたいと思うんです。  今回の延長議定書、その合意の中に新たな漁区が設定をされていると思います。この新たな漁区と、魚種も多少追加されたりしておりますけれども、これらについていろいろと議論があったんじゃないかと思いますし、また相互主張があったと思います。その経過についてお知らせいただければと思います。
  13. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 今回の交渉におきましてソ連側は、特に日本水域におきまするところのソ連漁船漁獲の実績がここ二年にわたりましてきわめて低調でございまして、ソ連側に与えておりますクォータを消化できないという状況に陥っていたわけでございまして、このために、太平洋におけるソ連漁船操業条件緩和及び日本海入域というものを強く要求してまいった次第でございます。  このほかにも、ソ側としましては、特にスケトウダラの資源の悪化を理由にいたしまして、本年度は二十九万トンの日本側クォータがあるわけでございますが、これを十八万五千トンということで、四割程度切ってくるといったような要求を出してきたわけでございます。  このようなソ側要求に対しまして日本側といたしましては、ソ連漁船操業条件緩和は国内の漁業の調整上きわめて困難が伴うものでございまして、むしろソ連漁船がその操業度を上げましてクォータを完全に消化するといったことが問題の解決に資するのではないかということを述べると同時に、特に日本海の一部入域につきましては、わが国漁船がこの水域をきわめて稠密に利用しているということで、この開放には困難であるという態度をとっておったわけでございます。  ところが、ソ側もなかなかその主張を変えようということをいたさなかったわけでございまして、これに対しまして、わが方よりさらにソ連漁船操業度向上のために、海況、漁況といったようなことをソ側に通報してあげる、そのような協力によりましてソ側操業度向上を図ったらいいのではないかということを申しましたが、特にソ連側は、ことしの夏、日本海におきまして、これは自国の二百海里でございますが、その中でマイワシ漁獲がかなりよかった。特に大きな形のマイワシがとれたということで、日本海水域が非常にいい水域であるということを考えまして、この開放に執着してきたというのが交渉の途中の経過でございます。  このために交渉はきわめて難航いたしまして、交渉の時間切れという状況に陥ったわけでございますが、この協定が失効いたしまして予想される事態といたしましては、明年一月以降、日本側ソ連側双方操業が全く不可能となるという最悪事態になるということが考えられたわけでございます。このような最悪事態を迎えるということになりますると、長期にわたって積み上げられてまいりました日ソ漁業関係をきわめてむずかしくする事態が生じますし、またこのことは日ソ両国にとりまして好ましくないということを考えまして、このような事態を回避するために最後の努力をいたしたわけでございますが、そのような状況から日本海水域につきましては日ソ双方中間線に沿った細長い一部の水域ソ連漁船に、まき網船だけにつきまして開放するということをいたしましたわけでございます。  一方におきまして日本側といたしましては、日本海におきまして特に競合が考えられますところのイカ釣り漁船につきまして、従来まではベルキナ岬というとごろから東に延ばしました線以北には入ることができなかったわけでございますが、その以北に非常によい漁場がございますので、これを四十七度までソ側拡大を認めさせました。また東樺太におきましては四十九度から五十度の線の間にカニ、ツブの漁業を営んでおったわけでございますけれども、これ以外の魚種につきましても水域拡大をするということをいたしまして、これをもちまして日本海の一部ソ連漁船への入域承認ということは埋め合わせがついたというふうに考えまして交渉を妥結したという次第でございます。  なお、これに伴いまして、先ほど申し上げました二十九万トンのスケトウクォータももとに戻すことができました。これによりまして減船を避けるということができた次第でございます。
  14. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、かつての漁業交渉の中では資源保護という意味からの漁獲制限という、そういうのが非常に強調されていたと思うんですけれども、どうもいまの経過を伺いますと、操業能率の問題とか、とにかく漁獲目標を達成するための努力というのが相互に行われていたんじゃないか。今回のその交渉の中で資源保護の話といいますか、資源保護の面からの検討というのはほとんど出ていなかったわけですか。
  15. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 今回の交渉に当たりましては、もちろん資源の問題も出たわけでございます。特に問題が出ましたのは、スケトウにつきまして資源保護を図る上においてクォータを減少させるということをソ側が提案してきたということは事実でございますが、しかしながら交渉の主流は資源問題ではございませんでした。むしろ問題は、先ほど申しました操業規制緩和という点でございました。水域、漁期、あるいは漁具といったようなものにつきまして、いかにするかということが主要な交渉の対象であったわけでございます。  このような事態になりましたのは何かと申しますと、従来までは先生も御指摘のように資源問題が中心で、クォータ中心であったわけでございますが、むしろ今回の問題の中心は、ソ連漁船が従来のクォータを消化できないという事態に陥っていたというところに問題があるわけでございまして、さような点から、先ほど申しましたような交渉経過をたどりまして、特に水域中心にしました操業規制緩和の問題が双方にとって大きな問題であったということでございます。
  16. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、今後の漁業交渉に当たって大体トータルの漁獲量等については、もう資源保護ということは出てきそうもない。出てきそうもないというのは、ある程度是認されたかっこうで総漁獲量が決められてきているんじゃないかと思うので、大分その様子が変わってきていますね。特に操業効率の問題、これはソビエト操業効率が悪いからというので、こっちがそれらをバックアップする必要もないと思うんですけれども、その辺の問題なども含めて新たな交渉の内容に少しずつ入ってきている、こういうように解釈していいんじゃないか、こういうふうに伺ったわけですけれども、これからまたこれは毎年行われていくわけですから、その面も含めてよっぽど綿密な計画のもとに交渉に当たっていくべきじゃないかと、かように思うわけですが。  魚族の増殖の問題なんですけれども、前向きのこれらについての資源保護等も含めての検討がその中で行われてない、ないといいますか、ほとんどそういう問題が出てない、こういうことでありますけれども、ちょっと今回のとは違いますが、たとえばサケマス等においても増殖の問題ですね、これをいろいろと努力をしてきたその結果、サケマスの量がふえてきたんじゃなかろうかと、こういうことを聞いておるわけですが、このサケマス等についてのふ化養殖ですね、こういったようなものについてわれわれとして、日本側としてどういう努力をしているのか、これについて一言だけ。
  17. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) サケマスにつきましては、ことしは史上最高の量になったわけでございまして、これは長年の水産庁並びに業界の努力がようやくその成果をあらわしてきたというふうに考えるわけでございます。また同時に、このサケマスふ化放流事業にとりまして非常に重要なことは、やはり河川あるいは海面が汚染されていないということでございまして、これは国民の皆様方努力をしていただきまして、大分河川がきれいになったということからこのような大量の回帰ができたということであろうというふうに思います。実際、豊平川にサケが上がってきたり、また多摩川までサケが上がってくるというような非常に改善された事態になってきております。  これまでやってまいりました事業といたしましては、特に来遊するサケマスにつきましては、ほとんどがサケマスふ化放流事業によりまして造成されたものというふうにお考えいただいて結構でございます。この放流量増大及び放流技術向上に伴いまして、本邦系サケマス来遊量はことし史上最高になったわけでございます。五十六年のサケマス来遊量は十二月の十日現在で全国で約二千七百万尾と考えられておりまして、前年同期の比率で申しますと一四三%ということでございます。またこれまでの最高でございました五十四年度来遊量二千四百二万尾をも大きく上回っているという状況でございます。このようなことで、トン数から申しましても恐らくこれは史上最高ということになろうかと思います。水産庁としましては、従来までやってまいりました仕事は五十四年度を初年度といたしまして、最終年度五十八年度までにサケの稚魚を二十一億五千万尾放流するという計画を持っておりまして、これによりますと六十二年には三千八百六十万尾、トン数にいたしますと約十四万トンの回帰を期待するということができるのではないかというふうに考えておりまして、このような資源増大計画を策定しまして、目下鋭意努力をしているという段階でございます。なお、回帰率につきましては、これも非常に高い回帰率でございまして、去年の回帰率は二・八%、北海道におきましては実に三%、百匹に三匹のサケが帰ってくるという状況になっております。
  18. 松前達郎

    松前達郎君 この努力ですね、これについてはソビエト側はこういった努力をやはりやっているんでしょうか。ということはこれは櫻内大臣、恐らく以前に日ソ間での増殖問題について、私自身もその中に入ってシンポジウム等ずっとやってまいって昨年まで続けてきたわけですけれども、そういったような努力の中に、日本側日本側でいまのようなお話のようにやっている、ソビエト側は果たしてやっているかどうか、その辺おわかりでしたら、簡単で結構です。
  19. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) ソビエト側サケマス増殖につきましては相当な努力をいたしていることは事実でございます。ただ、ソビエトの場合にはふ化放流事業と申しますよりも帰ってくる河川をより良好な状態に保つという自然回帰状態をより促進するというところに重点が置かれておるようでございます。ただ、このごろはふ化放流事業にも非常に関心がございまして、ソ側はわが方からふ化放流事業に必要な施設、これにつきましていろいろな協力を求めてきているという段階でございまして、まだ全体としては日本の水準には達しておりませんけれども、ソ側努力をしているというのが現状でございます。
  20. 松前達郎

    松前達郎君 この問題は、恐らく櫻内さんが農林大臣のころに始まった話だったと思います。その後努力が続けられているという乙とですが、今後また交渉があるわけですけれども、これらについても積極的に主張していただきたい。努力をしているんだということですね。それを言いませんと……。さっき私申し上げたのは総漁獲量自然保護の面からの制約の問題、そういう問題と絡んでくるわけですから、その辺をひとつ十分踏まえておいていただきたい、かように思っております。    〔委員長退席理事大石武一着席〕  それでは次に移らせていただきますが、漁業暫定協定の問題についてはそのぐらいにいたしまして、ポーランド事態が非常に緊張しているということですが、つい最近まではポーランド状況についての情報把握というのがいろんな面から、旅行者情報ですとかを含めていろんな種類の情報が入ってきたんですが、日本政府としてその情報収集に当たってどういう収集の仕方をされているのか、あるいはその収集した情報を送り出すといいますか、その方法としてどういう方法をとられていたのか、この辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  21. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 去る十三日に非常事態宣言が発布され、軍政に移行して以来ポーランド国外との通信は一切途絶されまして、わが方大使館との連絡も封鎖された次第でございます。そのため、現地在留邦人の動静とかあるいは状況の判断に非常な不自由を感じたことは御案内のとおりでございます。いろいろな手段を講じまして必要最小限度連絡はとってきたわけでございますが、その間、十五日に在京ポーランド大使外務省に招致いたしまして、ぜひとも通信の再開を早く実現してほしいということを強く要望いたしました。その結果であろうと思われますが、去る十九日より、これはポーランド発電局を通ずる一般回線でございますが、ワルシャワから東京への電報が入電いたしております。逆に東京からワルシャワへの発電も二十日以降実現されております。ただこれは専用回線でございませんで、一般回線を使う電報でございますので、やはり機微にわたる情報の交換というのはまだ不自由を感じている、かような状況でございます。  そのほか、現地との連絡を確保するためにポーランド大使館の館員を随時国外近隣諸国に出張せしめまして、そういう人たち情報とか連絡事項を通報させる、かような手段も講じております。    〔理事大石武一退席委員長着席〕 また同時に、ポーランド情勢を的確に把握するために、近隣諸国を動員いたしまして各種の情報を細大漏らさず収集するように努めている次第でございます。
  22. 松前達郎

    松前達郎君 有線の回線はどこかで切られてしまえばこれはもう全然話になりませんですね。よくあちこちの大使館で伺うんですけれども、無線設備を持っていて、それによって通信をするというところが幾つかあるというふうに伺っていますが、わが国の場合は、在外公館無線設備を入れて、それによって通信するということはいまのところ考えていないわけですか。
  23. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) 無線通信施設の設置の問題でございますが、確かにこのような緊急な事態が生じますと、やはり無線通信設備でもって連絡をとるということが必要であるということは言うまでもございません。ただ、わが国在外公館にこの無線通信施設を設けるということにつきましては若干の問題がございます。まず当該の外国の政府の許可をとらなければならない。多くの国が許可制度をしいておりますので許可をとらなければならないこと、そしてその多くの国は相互主義をたてまえとするのが通例でございます。ポーランドの場合を申し上げれば、ポーランド相互主義をとっているという状況でございますが、わが国では電波法の関係もございまして、外国政府またはその代表者というものにわが国内からの無線発信は許可しないというたてまえをとっておるものでございますから、先方の相互主義の要求に応ずることができないという問題がございます。  それからもう一つは、テクニカルな問題でございますけれども、やはりアンテナを設置いたします場合に、アンテナを設けるだけの設備と申しますかスペースがあるかどうかの問題、あるいは立地条件によりまして、無線を設備しましてもその通信が果たして有効に作動するかどうかの問題、そういう点はございます。ただ、私どもといたしましてはかなり前からこの必要性というものは、特に東欧ないしアフリカ、東南アジアの地域で、中東も含めてでございますが必要性は痛感しておりまして、若干の国との間で相互主義を条件としないようなところにつきましては設けている場合もございますが、今後とも努力をいたしまして設置に努めてまいりたいと思っております。
  24. 松前達郎

    松前達郎君 東京あたりでもあちこちの外国の大使館なり何なり見ていますと、アンテナが堂々と屋上にありますね。それで聞いてみますと、どうやら電波を出していると。ところが、立ち入りしてそこを調査するわけにいかないものですから、結局出していても知らぬ顔せざるを得ない、そういう状況だということだったのですけれども、そこまでやれということじゃなくて、やはり緊急通信みたいな場合でどうしても必要だと。これはポーランドの場合もアマチュア無線がたしか活躍しているんだと思います。これは恐らくああいう状態でもそれをコントロールできないわけですね、たかだか十ワット程度のものでヨーロッパじゅう届きますから。その辺もひとつ検討していただければというふうに思うわけです。  それから、もう時間がないものですからあと一つだけ伺いますが、最近いろいろと核の問題で、これは淺尾さん、また繰り返しになりますけれども、核の問題でイントロデュースという問題ですね、それからトランシットの問題、これは前にもこの委員会で私申し上げたのが相変わらず議論になっていて、全然そこはすれ違いになったままになっている。いずれこれについてもはっきりしていかなきゃならない面もあると思います。きょうはそれよりももっと原則的なことで、わが国がアメリカの核のかさのもとにいるということがよく言われているんですが、どうも最近になりますとICBMそのものは使われない兵器であるということになってくる、お互いに使えない、使えるのは何かというと、いわゆる中距離のミサイルを中心とした戦域核であると、こういうふうにだんだんなってきたわけですね。そうすると核のかさというものが一体具体的に何を指して言うのかちょっとぼけてくる、あるいはもっと明確になってくる、はっきり言えば、逆に言えばそういうことになりますが。その辺について核のかさというのは現時点でどういうふうに、具体的にどういうものを指すのか、それについて御見解をお伺いしたいと思います。
  25. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 核のかさというふうに俗に言っておりますけれども、要するに核の抑止力でございまして、核兵器というものは一たん使われてしまえばそれは人類の破滅になるということで、戦争を抑止するための兵器ということでございます。それではアメリカの核の抑止力というものがどういうふうに作用するかという問題でございますけれども、確かにこれは時代の変遷があって、ICBMという、大陸間弾道弾というのだけが核兵器の時代であったこともございます。それから最近のように、戦術核あるいは戦域核というものができてきている時代であるわけでございますが、要するにそういうすべての核兵器を含めたものが有効に作用することによって戦争を抑止するということで、その点についてはいろいろ新しい核兵器というものができてくるにしても、やはり抑止という性格というものは変わっていないというふうに考えています。
  26. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、あらゆるものを含むかっこうになりますね、核というもの全体を。そうしますとどうしてもトランシットの問題が絡んでくるわけであります。これについてはまたいずれの機会かにお伺いしたいと思いますが、私は絡んでくると思うのです。特にあと数年たってからのアメリカのミサイル——中距離ミサイルの配備、巡航ミサイルも含めてですね。それに対して一体われわれはどういうふうに対応していくのかというそういう大きな問題選択をせざるを得ない時期が来るのじゃないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。これが最後ですから。
  27. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いまの御質問は、核の抑止力に依存するということは日本の領土、領海に核兵器を入れなければアメリカの核の抑止力というものが作用しないという前提で考えられているかと思いますけれども、アメリカの核の抑止力に依存するということと日本の領土、領海にアメリカの核兵器を持ち込ませるということはやはり別個の問題ではないかと思います。必ずしも核兵器が日本の領土、領海に入らなければ抑止力として作用しないということは言えないというふうに考えております。
  28. 戸叶武

    戸叶武君 今度のポーランドの軍の軍事的制圧に関しては、ポーランドだけではなく世界各国に大きな反響を呼んでいると思います。その中でもポーランド外交界のベテランと言われたポーランド駐米大使がアメリカに亡命したというようなことは、このポーランド問題が非常に長引くのではないか、絶望的な状態にまで導かれる危険性があるというような見通しの上に立ってなされたのかと思いますが、外務省の方ではこの反響をどのように受けとめておりますか。
  29. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 非常事態宣言という事態が長引くのではないかという点につきましては、確かに長引くという見方が支配的なようでございます。ひょっとすると来年いっぱいこの状態が続くのではないかというような見通しも各地にございます。ただ、ポーランド政府当局は、軍政府による鎮圧がほぼ成功しつつあるというようなことで説明をしているようでございます。
  30. 戸叶武

    戸叶武君 軍政府による制圧が成功しているかあるいは逆作用な結果を生むかは今後にかかると思いますが、外務省当局では、見通しとしてどのような見通しを持っておりますか。
  31. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 軍政府当局による鎮圧がある程度まで功を奏しているということは事実でございますが、強硬手段の結果逮捕者がかなり出ておる、死傷者の数も若干出ておると。十八日のポーランド外務大臣説明によりますと、逮捕者は四千名ということでございます。その後の情報でも死傷者は数百名に上るというような数字も出ております。このように軍政府当局による鎮圧はある程度成功しているように見えますけれども、その反動といたしましてこういう死傷者が出るとか自由の抑圧に対抗するために労働者がストライキに訴えるという事態も続いているわけでございます。したがいまして、軍政府当局と労働者との対決という状態は今後しばらく続くのではないか。その結果どうなるかということはまだ予断を許さない状況にあると、かように考えております。
  32. 戸叶武

    戸叶武君 ポーランドに起きた不幸な出来事は、ポーランド自体を大きく揺すぶっているだけでなく、直ちにこのことがヨーロッパ各国にも影響をもたらす危険性がありというので、EC関係の国々も、東欧においてもバルト海をめぐる北欧諸国においても、非常に神経質に問題と取っ組んで、その言動がきわめて慎重でございますが、問題は、ソ連が直接この問題に軍事介入をするというようなことはアフガンの問題もあるし、軽率な行動はとらないと見られますが、外務大臣は細かいところに非常に気を配っている方ですが、どのようにこれを見通しておりますか。
  33. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 戸叶委員がいま御所見を加えられておりましたが、私もソ連がいま直接に軍事介入をする、そういう挙には出ないんではないかと見ておるわけであります。ただ、ポーランド問題が相当長期にわたっていろいろ注目を浴びておるわけで、その間には間接的な影響力を与えておるようにとれる節は、これはあると思いますが、いまこの段階で軍事介入をする、直接行動に出るというふうには見ておりません。
  34. 戸叶武

    戸叶武君 ヨーロッパの不安というものがきわめて直接的なので、この問題を分散させようとするような考え方から、イスラエルとアラブ関係の問題をさらに紛争させるような傾向にイスラエルのごときはそういう行動に出ておりますし、またこの間の日米合同演習というようなものも、北東アジアにおける韓国を引き込んでの何か揺すぶりをかけられているような、日本に対してもデモンストレーションが行われているような、結果的には余り好感を持たれなかったような結末で終わっておりますが、ああいうようなことが——櫻内外務大臣はベトナムのことについても率先してむずかしいところに自分が飛び込んで体で問題を受けとめておりますが、イスラエルとアラブとの関係及び韓国を拠点とする北東アジアの揺すぶり及びベトナムへの影響、そういうものをどのように櫻内外務大臣は受けとめておりますか。
  35. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 御質問は即文字どおり複雑な、むずかしい国際情勢をお取り上げのようでございまして、これに対して明快なお答えをすることはなかなかむずかしい、こう思います。  わが国が、わが国自身の平和と安定を望む上におきましては、国際間の問題についてもまた平和と安定を望むように考えていかなければならないと思うんであります。いま三地点をお取り上げになりまして、いずれも問題のある地点でございまして、その扱いいかんでは大きな問題にもなりかねないわけでありますが、しかし日本としては、そういうむずかしい地域に対しては一層細心の注意を払いながら、平和と安定に向かうようにしむけていくことが必要ではないか、このように基本的には考えます。
  36. 戸叶武

    戸叶武君 ポーランド問題を、ポーランド問題の中に埋没して取り扱うことのできないような国際的な影響のある問題だと思いますが、この問題が起きているにもかかわらず、米ソ間においては核兵器の根絶までは行かないにしても、その制限を目指して明年の国連軍縮総会にどう具体的に対応しようかという模索がなされている模様でありますが、明年の軍縮総会というものはきわめて日本にも各国にも影響のある問題であり、いままでのような形とは違って、一つの国際的な連帯によって平和を求めようという動きが出てくるのではないかと思いますが、櫻内外務大臣は明年の国連軍縮総会、それからサミットへの道、これが世界の戦争かデタントかへの岐路に立っていると思いますが、あなたはどのようにこれを受けとめ、かつ対処しようと考えておられますか。
  37. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 戸叶委員のおっしゃるとおりに、明年の国連の軍縮総会は第二回目でございますが、これはきわめて重要な意義を持っておると認識しております。それがために、日本としては鈴木首相も率先出席をされようと、こういうわけでございますが、日本といたしましては非核三原則を堅持しつつ、国際間における軍縮が効果的に進むことを期待をするわけでございます。  ただいまお話の中にもありましたように、米ソ間におきましても戦略核兵器についての制限交渉をする、こういう事態でありますし、またオタワ・サミットをごらんいただきましても、低いレベルでの軍事力の均衡を求める、できるだけ低いところを求め、そうして対話はお互いに進めようじゃないか、こういうことも言われて、そういうことが米ソの対話にもつながったのではないか、こういうふうに思うんでありますが、いずれにしても、この軍縮特別総会を場といたしまして、世界の平和、安定の上にいかにして軍縮を進めていくかということについて各国が知恵を出し合う、腹蔵のない話し合いをするということはまことに時宜を得たものであると、かように見ておる次第でございます。
  38. 戸叶武

    戸叶武君 先ほど松前理事から詳細に、時間がないから詳細とも言えませんが、日ソ漁業協定に関しても質問がありましたが、今回の漁業協定に関しては、従来の方向を原則的に守ることに終始し、ソ連例もきわめて日本との関係を悪化させまいというふうに注意深い配慮はなされているようですが、領土問題はこの漁業問題のように簡単にはいかないかもしれませんけれども、やはり戦時中における軍事謀略協定を、次の平和条約を結ぶのに当たってはこれを解消して、しかる後に次の平和を保障すべき平和条約を結ぶというのが国際的な通念になっておりますが、これをヤルタ協定においては米英ソ三国とも破っているわけであります。ソ連だけを責めることができない点はこの点であり、われわれがこの問題を、困難な問題をいきなり開き直って物を言っても問題がこんがらかるだけと思いますけれども、やはり米英ソ三国がみずから、この間違った、次の世界秩序に前進させることを阻害しているような悪例をみずから解消して、グローバルな時代における世界における新しいやはり秩序をつくり上げなければならないという点においては、このポーランド問題においてでも、あるいはアラブPLOを国連に加入させる問題にしても、すべてこの問題と関連があり、中ソの長い間のあの論争を経ての一つの対立が激化していったこともこれに起因すると思いますが、簡単でもよろしゅうございますが、その原則は原則として、あくまでも米英ソ三国の一九四五年二月十一日に結んだ戦時中の軍事謀略協定は、原則的にそれらの国々が戦争が終わり、次の平和条約を結ぶに当たっては解消してもらいたいという線は崩さないと思いますが、ごくソフトに外交をやろうとしている櫻内さんの苦労のしどころはここいらにあると思いますが、どうですか。
  39. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 戸叶委員のおっしゃっておられることは、一つの御見識として傾聴をいたしました。現実には、ヤルタ協定をどうしろこうしろということを日本が言うべきかどうかということになりますと、これはよく考えなければならない問題だと思いますが、いまの御所見に基づいての将来の国際情勢の展望ということにつきましては、私も参考にさせていただきます。
  40. 戸叶武

    戸叶武君 じゃ最後に一言だけ、これは返事がなくてもよろしゅうございます。  やはり私は、政府が北方領土の日を二月七日に決めたときに、おかしなことを決めたものだとして、怪奇な眼でこれをながめたのですが、御承知のように、いまと同じような深刻な状態でアメリカと帝政ロシアとが黒船を持ってきて、神奈川条約、下田条約を幕府の腰の抜けているところをけ飛ばして、威喝してつくり上げたところのかなり一方的な条約でございます。  時間が来たからやめますが、やはり一九四五年の二月十一日のヤルタ協定が、現在の日本の領土変更に対する起点であるということは忘れないように、その点を政府みずからが、二月七日などと言わないで、徳川幕府も崩れ、ロマノフ王朝も崩れてしまって、どこに責任を持っていったらいいかわからないような不始末な状態が、主体性のない外交の中から結果的には両方に生まれてきているんです。どうぞそういう意味において、二月十一日という生々しい現実を回避して、刺激してはいけないからといってさすってばっかりいると、かえってさすってけがを大きくする危険性があるから、その辺はずばりと申すべきものは申して、急がずじっくりと取っ組んでいくだけの私は態度が必要と思いますが、その辺の腰の使い方はどうですか。
  41. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) 先生御指摘のヤルタ協定につきまして、政府の考え方を述べさせていただきたいと思いますけれども、御承知のように、ヤルタ協定日本政府が関知していない米英ソの間の密約でございまして、いずれにしても日本政府としては、これは領土の最終的な帰属をもたらすような協定ではないというふうに考えております。その点だけ御指摘させていただきたいと思います。
  42. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 初めに、漁業暫定協定について確認をしながらお尋ねをしたいと思います。  先ほど松浦さんから、今回の交渉経過について概要御説明がございました。伺っておりますと、年々歳々この交渉というものの厳しさが強まってきているのではあるまいかという印象を、伺いながらそう感じたわけであります。今回の一大特徴というものを考えてみますと、やはり日本海における漁業水域を認めたということではなかろうかというふうに思えてならないわけであります。短絡的にこれを判断いたしますれば、大変屈辱的なと言っても言い過ぎではない譲歩ではなかったのか、こう感じざるを得ないんでありますが、この辺の受けとめ方、大変御苦労なさってきたと思うんですよ。それを踏まえながらも、その点についてどう受けとめてその当時折衝に当たられたか。
  43. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) ただいま御指摘のように、日本海につきましてソ連船の一部入域を認めたということは、従来まで日本海開放していなかっただけに、先生のお感じにつきましては私もよくわかる点でございます。しかしながら、今回ソ連が特に日本海入域に固執してきた理由といたしましては、これはやはり先ほども御説明いたしましたように、クォータの消化が十分でないということから、太平洋岸においてはなかなか日本操業条件を改善をできないという状況もございまして、どうしても日本海においてイワシをとりたい、しかも、ここでは自分たちも、自分の二百海里内において操業をいたし、それによってかなりの漁獲実績も得たということから、特にこの水域についての入域を固執してきたというふうに考えるわけでございます。  そこで、先ほども申しましたように、この交渉を何とかまとめますためには、これを認めるということにせざるを得ないというふうに判断をいたしたわけでございますが、一方において、ただいま屈辱的というお話もございましたけれども、私どもといたしましては、この日本海入域を認める以上はこれに関連するわが方の漁船、この操業を改善しなきゃいかぬという強い決意のもとに、先ほども申しましたように、特に関連のあるイカ釣り船につきましては北緯四十七度までの操業の海域を拡大させる、そしてまた同時に、樺太の東部におきましても、その海域の一部を開放させるということにいたしまして双方埋め合わせがつくということによりまして、この入域を認めたという経緯でございまして、その点につきましてのわが方の決心と、それからまた、わが方の最後の努力というものについては、これはひとつ御理解をいただきたいというふうに考える次第でございます。
  44. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 いまも申されたとおり、それは専門的な立場に立って見た場合の判断の仕方というものと、国民の感覚的な面から見た場合というのは大分ギャップが出てきますね。ソ連の言い分というのは非常に一方的ではあるまいか。クォータに対する充足率が足りないから何とかせいということで日本海を認めろと、そこには恐らくソ連の何かの欠陥というものがあるのではないだろうか。事実、太平洋においては漁獲量というものが年々歳々減っていっているのか、資源が枯渇しているのか。マイワシにいたしましても、あれは回遊魚でございましょう。いつでもそこでとれるという保証はないはずだと思うんです。たまたまことしは大変ソビエト側主張によればとれたと、だから日本海水域をひとつ譲歩しろと、これではどう考えても、論理的に言っても当たらないんではなかろうかという感じがするのでありますけれども、その辺も十分わきまえた上での交渉であったろうというふうに思うわけです。ただ、いまイカの話も出ましたけれども、たまたま七月から十二月の漁期に入りますと、あの辺はイカの最盛漁期になるわけでしょう、ぶつかり合う。完全にぶつかりますね、あの日本海水域においては。  そこで、われわれが非常に心配することは、やはりトラブルが起こる危険性というものは十分考えられはしまいか。一隻や二隻の漁船が出るわけではないわけですから、大量の漁船日本からも出るわけですから。向こうも出てくるだろう。何らかのそこでトラブルが起きはしまいかという問題、日本漁船が、イカ漁に対して非常な障害を受けないかという問題については、どういうふうにそれを整理されて交渉に臨まれたのか。
  45. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 私がこの問題に関しまして念頭に置きましたことは二つでございまして、まず第一は、この水域においてははえなわ漁業によりまして、また流し網漁業によりましてサケマスをとっております。この漁船がわが方にございます。これとの競合を避けるということが非常に必要であるというように考えまして、ソ連の入域につきましてはサケマスのはえなわ、流し網についてはその漁期を外すということにいたしまして、これを調整した次第でございます。  いま一つは、そだいま先生御指摘になりましたイカつりの問題でございます。何とかこのトラブルを発生させないようにということを私ども考えた末に、先ほど申し上げましたベルキナ岬から以北四十七度までの日本海の、主として樺太の西岸でございますが、この水域はかなり広大な水域でございまして、しかも、この中には約五百杯ぐらいのイカ釣り船が入り得る。それからまた、漁獲トン数も八千トンから一万トンをとり得るという水域でございます。この水域開放させますことによりまして、わが方がその水域の中に入っていきますれば、当然トラブルが少なくとも減少し得るということをまず考えました。その観点から特にこの水域拡大につきまして、わが方は強い要求をしたということでございます。  しかしながら、なお先生御指摘のように、今回開放した水域の中におきましても、なお、わが方のイカ釣り漁船操業すると思います。その点ももちろん考えましたわけでございますが、その場合に同一漁場をソ側日本側とが利用するということになるわけでございますけれども、ソ側の船はイワシを目的としたまき網船でございます。したがいまして、これが同時操業二十五杯ということで決着を見たわけでございますが、その決着を見るに当たりましても、ソ連側に対しましては、この漁場において非常にイカ釣り船が稠密に漁場を利用するということは、向こう側に十分申してございまして、トラブルは避けてくれるようにということを申し入れました。また同時に、われわれの判断といたしましては、実は北海道の東岸におきまして、ソ連のまき網船はすでに活動をいたしております。しかしながら、その水域におきましても、わが方のイカ釣り船が相当出ているという状況でございます。しかしながら、幸いにして現在のところは日ソ、ソ日の漁業協定ができまして以降、ほとんどトラブルは起こっておりません。したがいまして、ソ連の入域隻数と、それからわが方の操業隻数との対比をいたしまして、その間のバランスをとりますれば、道東の沖合いとほとんど同上の状態であると考えまして、そのような意味におきましても、この操業のトラブルはほとんど起こらないであろうという判断をいたしたわけでございます。  ただ、万が一トラブルが発生いたしました場合には、当然ソ側に対しましても操業上の規制を要求するつもりでございますし、また同時に、不幸にして被害が発生いたしました場合には、漁具等の被害につきましては、日ソの間に漁業損害賠償請求処理委員会というのがございますので、これによりましてその措置をとっていくということを考えた次第でございます。
  46. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 安全操業という上で、これはいつでも問題になる一つのポイントですけれども、もう一つは各国——各国と言った方がいいのか、限定してもいいと思うんですよ。艦艇による被害というものについては、これから十分いままで以上に起き得る危険性というものはありはしまいか。もうつい先ごろもはえなわの漁網切断という問題があったばかりであります。あれもこの委員会でいろいろと問題提起をされながら、大丈夫だ大丈夫だと言いながら、ああいう問題が起こった。やはり万が一ということを絶えず万全の措置をとる上から、対応措置の一環として考えなきゃならぬだろうと、そういう点についてはいかがですか。
  47. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) この点につきましては、本年五月の日本海秋田沖における外国漁船による漁具の切断事故というのは、私ども非常に身にしみて感じた次第でございまして、問題は、外国艦艇による漁船への危険ということは、やはり事前にこれを防止するということが一番肝心かというふうに思うわけでございます。したがいまして、今後は海上自衛隊が外国軍隊と共同して行う訓練につきましては、防衛庁と農林水産省の間で事前によく協議連絡をいたしまして、漁具被害等の再発防止をするということが非常に重要であるというふうに考えている次第でございまして、実はこのことにつきましては、防衛庁と農林水産省との間で目下折衝いたしておりまして、ほとんど最終的な詰めの段階まで来ております。これによりまして、未然に外国艦艇によりますところの漁船への危険、漁具の競合被害といったような問題を解決したいというふうに考えております。  ただ、不幸にして事故が発生いたしました場合には、今回同様やはり一般の民間ルートによる損害賠償の請求という事態になると思う次第でございます。
  48. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 ただ、いまおっしゃったのは、日米合同演習を想定された判断に立っての御説明であろうと思うんですね。これは浮いている船ですからわかりますわね。もぐっているやつがありますよ、これについては事前になんて言ったって未然に防ぎようがない。そういった点は、果たしてこの交渉経過の中で具体的にいろいろ、これはできなかったであろうというふうに思えてならないんですけれども、しかし、そういったことも万が一の中に組み込みながら、政府として当然その補償措置というものも出てくるはずでございますので、考える問題の一つではなかろうか。これはいま直ちにどうこうという問題じゃありませんよ。けれども、やはりそういった問題も常に頭に描きながら、対応措置というものは敏速にできるという体制をとる必要があろうというふうに思えてならないわけです。その点どんなふうに。簡単で結構ですから……限られた時間ですから。
  49. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) この点に関しましては、先ほど申しましたように、少なくともわれわれが予知し得る事故については防衛庁とも十分話をして連絡を密にしながら措置をしたいというふうに考えておりますが、不幸にして予知できない事故につきましては、御案内のように、日本海の秋田沖の操業につきましても諸般の措置を政府としてもとったわけでございますので、できるだけの対策をとっていくというふうになるのではないかというふうに思うわけでございます。
  50. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 それからもう一つ心配な問題があるのは、いわゆる操業水域が将来拡大されるおそれがないかどうか。まあ、一応来年限りであるという条件を付されたというのでありますけれども、それは口頭了解によるものなのか、文書による了解であるものなのか、そういうふうな約束を取り交わしておりましても、またいろんな新しいソビエト側からの問題提起がなされて、どうしてもその水域拡大せざるを得ないという方向に行きはしまいかという心配をするわけなんですが、その辺の、なかなか見通しというのは立たないとは思うんですけれども、心配ありませんか。
  51. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 今回の交渉におきまして、日本海水域の一部に入域を認めたわけでございますが、これがさらに拡大するかという問題でございます。もちろん、もしもイワシを彼らが十分とりますればこの問題は解決するわけでございますけれども、そのとれるかとれないかという問題につきましては、われわれが十分これを予知できるという状況ではないということは事実でございます。  そこで、私も先般の交渉に当たりまして、再三再四日本海は非常に稠密に操業しておって、この水域拡大することは困難だということを向こう側に申し入れてきたわけでございますが、さらに、交渉の最終段階におきまして先方のクドリャフツェフ第一次官に対しまして、もはや明年以降はこの水域拡大はできないという旨をはっきり向こう側に言ってきたわけでございます。これに対しまして先方は、当然この協定は一年限りの協定でございますので、その先を約束できる立場にはございません。したがいまして、向こうはこれに対しましてテークノートするという状態にとどまったわけでございますが、われわれといたしましては、今後そのような問題が持ち上がりましても、粘り強い交渉によりましてこの水域拡大を食いとめるということでがんばってまいりたいというふうに考える次第でございます。
  52. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 もう一つ、うらはらに、将来、場合によっては今回認めた漁業水域というものを縮小するということも考えられますか。
  53. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) これはそのときそのときの交渉でございますので、いまそれを予知することはできませんが、もし資源状態その他の状況からいってこれを縮小しなければならぬという事態がありました場合には、そのような交渉態度で臨むこともあり得るというふうに考えております。
  54. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 二百海里水域が設定されてからの漁船の拿捕というものは、現状においてもまだ続いているんであろうというふうに思うんでありますが、拿捕された以後の解決の仕方というものはスピーディーに円満にいっておりますかどうか、それも簡潔で結構でございますから。
  55. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) ソ連との関係におきます違反漁船はかなり最近多くなってきておりますけれども、私どもといたしましては、できる限り外務省の外交ルートも通じまして早期の釈放なりあるいは罰金の金額につきましての支払いにつきまして先方とも話し合いをいたしまして、できるだけ早期にこれを処理するという方針でやっております。
  56. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 もう一つ、これも将来展望の上に立った問題点であろうと思うんですが、ソビエトと協調して漁業資源の共同調査というものが考えられるのかどうなのか、現状においては、その見通しはどうなのか。
  57. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 交渉の基礎になりまするところの資源状態につきましては、往々にして日ソ間におきまして科学者の間で見解の相違が出てきて、それが交渉上いろいろな影響が起こるということは事実でございます。さような意味から、先生御指摘の共同調査ということは非常に重要であるというふうに考えておりまして、すでに資源調査につきましては、日ソ双方資源状況の見解が接近するように、実は日ソ漁業協力協定というのがございますが、これに基づきまして、サンマ、サバ、マイワシにつきましてはすでに日ソの共同調査を実施している次第でございます。これによりまして、かなりこれらの魚種につきましてはその評価が接近しているというふうに考えております。  他方、今後残された問題といたしましてはサケマス、さらにはスケトウ、イカといったような魚種があるわけでございますが、今回の日ソ漁業委員会におきまして双方協議をいたしまして、一九八二年にはサケマスの共同調査をやる予定にしておりますし、さらに一九八三年には、今後の日ソの協議にまつところでありますけれども、スケトウダラに及びイカにつきまして新たに共同調査の対象魚種に追加するということを予定している次第でございます。今後ともこのような共同調査拡大、充実を図りまして、双方資源状況の見解が一致するように努めていきたいというふうに考えております。
  58. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 これも、いつも繰り返しの問題点になる長期協定への見込みはどうですか。簡潔でいいです。できる、できないでも結構ですから。
  59. 都甲岳洋

    説明員(都甲岳洋君) この点につきましては、ずっと従来とも長期協定にすることが望ましいということで主張しておりますけれども、ソ連側がまだ応じておりませんので、ソ連側は特に二つの点を主張しております。それは、最高会議幹部会令が二百海里漁業水域を定めておるわけでございますが、それが暫定措置であること、それから国連海洋法会議の見通しがまだ立っていないこと、この二つ理由を挙げてこれに応じておりません。わが方としては、二百海里水域における漁業というものがもうすでに国際的に定着しているのであるから、日ソ関係の安定のためにもこれを長期化するようにという主張を重ねて行っておりますし、今後ともやっていこうと思いますけれども、ただ、いまのようなソ連側の基本的な見解に立っている限り、見通しは必ずしも明るくないという感じがいたしております。
  60. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 漁業暫定協定の問題については以上で打ち切ります。  次に、ポーランドの問題に少しく触れたいと思います。これは四、五日前でしたか、鈴木総理が加藤欧亜局長に対して大変厳しい口調で言われたと新聞報道等では伝えられておるんですが、できるだけ多くの情報を集めろと、そしてその情報に基づいた対応措置をというお考えがあったのであろうというふうに思うんです。ところが、先ほど伊達さんからの御説明があったように、その情報収集というものがきわめて定かでない。もういら立ちを覚えるような状況ではあるまいかという実は感じがしてならないわけです。こうした問題が起きるたびに、外務省としてどうしてその情報収集というものがいつも緩慢というというか、非常におくれた状況の中で掌握をしている。これは今後、きわめて複雑そしてもう激変する国際情勢に対応しようという場合に、一体日本外交として常に後手に回らなければならない、そういう手の打ち方というものを非常に心配する一人なんであります。  実は、そういう点についてもっともっと諸外国に見るようないろんな方法を通じて情報収集に当たり、敏速に適切な措置をとるようなありようを諸外国において見るにつけ、非常に残念に思うことがあるんですね。まずその基本的なそうした問題について、情報をできるだけ細かく集めろと言ったって、現状として私はできないはずだと言うんです。伊達さんの説明をまつまでもなく。それをまず根本的に改革をすることが、今後の日本外交を機敏に作動していく上において、大きな私は一つのポイントになるのではないだろうかというふうに思えてならないんです。これは外務大臣就任早々で大変恐縮でございますけれども、その辺、今後の日本外交を進める上において、このポーランド問題にいま視点をしぼりながら申し上げているわけでありますけれども、大変遺憾な点が多いのではないか。その辺、所感で結構でございますからお話しをいただければと思うわけでございます。
  61. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 迅速かつ的確な情報収集が外交の基本である、その点は渋谷委員の御指摘どおりに私も認識しております。  そこで外務省としては、今回のポーランドの事件に際しても、非常に情報源等多角的な接触はしておると思います。現に、まずその当初二、三日の状況を見ておりますと、十倍ぐらいの電報等がどんどん入ってきておりました。近隣のわが方の大使館を通じて入ってくるものもございましたし、またアメリカからの連絡もあるということで、私は、今度の問題が起きて、おっしゃるとおりに、情報収集は綿密にそして的確に求める必要がありますが、まあ、ある程度の情報が入り、判断の材料になったと、このように思っておりますが、おっしゃるとおりに、今後の外交活動の上には一層情報収集の上に丹念にいろいろな手を打っていかなければならない、このように思います。
  62. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 恐らく、いま申し上げている問題は相当思い切った大改革をしない限りはほかのアメリカはもとよりヨーロッパ各国と肩を並べて対応できないんではないかという、そういう心配がございますので、すでに過去においてはオイルショックのときにもそうでありました。打つ手がすべて後手後手であります。それで日本外交の真価をその都度問われなければならない、こんなことではやはりきわめてまずい。私は、いまそういう問題に関連して、もうすでに外務省としても大変強力に郵政省あたりにも申し入れをして、しかしそれが実現に至っていない電波法第五条の改正等の問題、これなんかもやはり、適切に可能な限りその方向に向かって改革への足がかりをつけることが必要ではあるまいか。そういったところから突破口を開くことによって、相互主義という形においてもっともっと情報源というものが得られるであろうという考えが、私の頭の中に常にあるわけでございまして、これは別に答弁は要りません、その点を御考慮なさって今後の日本外交の一助にしていただければというふうに思うわけであります。  さて、ポーランドの問題、時々刻々テレビニュースであるとか新聞報道によりますと、大変緊迫した状況が伝えられる、毎日毎日やっぱりその情勢が変化しているようであります。また、先ほど欧亜局長が答弁されましたように、このような事態というものは来年一年ぐらい続くのではあるまいか。果たして、一年続くその中でもどういうふうに続いていくのか、食糧も、もう飢餓状態に恐らく追い込まれていくであろうという、そういうことも考えられますし、そういうふうな追い詰められた状況にいった場合に、あるいは内乱という事態が起きはしまいか、そうなった場合にヤルゼルスキは、ついにたまりかねてソビエトに要請をせざるを得ないというような、かつてのアフガンと同じような形態を踏むのではあるまいかという心配、もうすでにチェコだとかハンガリーにおいてそういう前例があるわけでありますから、そうなると第三次大戦への引き金になりかねないという危険というものが非常にいまのポーランド中心としてはらんでいるように思えてならない。  さてそこで、日本として果たさなければならない役割りは一体何であろうか。そういった点については、断片的に入ってくる情報を恐らく分析もされているでありましょうし、あるいは国連を通じて、あるいは日本が独自の外交展開の上で今後ポーランドに対して一体何をなさんとしているのか。食糧援助も、もうすでに契約分については、米についてはいままでどおり送るというそれだけで果たして済まされる問題であろうか等々、いろいろと疑問が起こってくるわけであります。今日起こっている問題は、平和に対する重大な脅威とやはり受けとめ、ざるを得ないであろう。ならば、やはり日本としては、どこまでも平和を掲げて進むというのが基本路線でありますから、それは日本としては当然ポーランドに対する対応措置というものは、ただ情勢の静観ということだけで果たしていいんであろうか。それは静観しなければならぬ場合もありましょう、事態の変化というものが十分読み取れないという場合がございましょうけれども、しかし、事態は決してなまやさしい状況ではあるまいと思う。入ってくる情報も、先ほどの四千人の死傷者という話があるかと思えば、一方においては四万人という報道もあるわけです。そういう大きなずれの中で、そういう問題がだんだん広がりを見せれば、一層激しい抵抗というものが予測されないではない。一体解決の道はどう考えたらいいのか。それはアメリカといろいろ相談することもありましょう、あるいはヨーロッパの主要な国々と相談して、その対応というものを考える場合もございましょう。現時点において、いま日本政府として何を考え、どうすれば一体日本として、先進国家の一翼を担った役割りが果たせるのか、その点についてお述べをいただければありがたいと思います。
  63. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) ただいま先生のお話に出ましたアメリカあるいは諸外国の見方でございますが、まず、アメリカの見方を御紹介いたします。  二十日にヘイグ国務長官が大体四点、次のようなことを言っております。  ポーランドの戒厳令——現在の事態でございますね、現在の事態はソ連の協力と支持によって行われたことは明らかであると、これが第一点でございます。  第二点といたしまして、しかしながらアメリカとしては過剰反応を避けるべきである、そして諸般の措置について注意深い配慮が必要であるということを述べております。  第三点として、事態は今後さらに悪化するおそれもあるということも言っております。  さらに第四番目に、教会がこのポーランド事態について——カトリック教会でございますが、教会がこの事態について果たす役割りに期待すると、こういう趣旨のことを述べております。  まあ間接介入という表現がいいかどうかわかりませんが、今回の事態についてソ連が暗黙に支援を与えておったとか、あるいは後ろから糸を引いておったという見方をとる国はかなりの数ございます。ただ、私ども日本政府といたしましては、そういう間接的なソ連の介入があったという事態を肯定する材料も否定する材料も持っていないというのが現状でございます。また、よく言われますソ連の直接介入でございますね、軍事力による介入ということにつきましてもいろいろな情報がございますけれども、そういう介入が間近であるということを予想させるような確たる具体的な徴候には接していないと、こういう状況でございます。そういう諸般の情勢を分析した結果、わが国といたしましては、やはり基本的にはもうしばらく慎重に、かつ注意深く事態の推移を見るということに徹する以外方法はないのではないかというふうに考えている次第でございます。  ただ、具体的な措置といたしましては、ポーランドの安定、回復という観点及び人道的な考慮ということから、食糧援助といったそういうものは引き続き行っていきたいと考えております。ただ、これにもいろいろ条件がございまして、たとえばせっかく食糧を援助しても、それが果たしてポーランドの国民に届くのかどうか。その配給システムでございますか、そういうことも考えなければいけない。また、政府援助という形ではなくて、民間の慈善団体あるいは赤十字、さらにはカトリック教会、そういう経路を使って援助した方があるいは効果的ではないか、そういうことも現在検討を進めている段階でございます。
  64. 渋谷邦彦

    渋谷邦彦君 予定の時間がもう参っておりますので、最後に一つだけ。この問題は、いずれまた情勢の変化等もございましょう。あるいは休会中にもやらねばならないかもしれない事態がありますので、そのときにまた譲らさせていただきたいと思います。  イスラエルのゴラン高原併合の問題、これに対する政府の見解はすでに述べられております。ただ非難しただけで問題解決にはならぬ。日本としてさらに、一体どういう具体的な措置というものが望まれるのか。このゴラン高原の併合に対する日本政府の見解とそれから具体的な措置というものが現在考えられているのかどうなのか。その具体的な措置というものは一体どういうものであるのか。この一点だけをお伺いしたいと思います。
  65. 村田良平

    政府委員(村田良平君) この事態に対するわが国の措置としましては、やはりわが国は現在安全保障理事会の非常任理事国でございますので、恐らく予想される明年一月五日までに行われる安保理の場におきましてわが国の態度を表明するということになると思います。その際に、たとえばいかなる具体的な措置をイスラエルにとるかということが国連の場において出てくるかということはまだはっきりいたしておりませんので、今後関係諸国と十分協議しながら、わが国の態度を固めていきたいと思っております。現時点においてわが国が具体的な措置をすでに固めておるということではございません。
  66. 下田京子

    下田京子君 日ソソ日漁業暫定協定の質問に入る前に、当面する急を要する外交問題の一つであります核配備問題でお尋ねしたいと思います。  御承知のように、十八日ワシントンの共同電が伝えた中身によりますと、核兵器積載米艦船の日本寄港や同航空機の日本立ち寄りが行われる場合でも、それを日本政府に通告をしないのが米国の一貫した政策であるというふうな見解が述べられたわけであります。これは、日本は安保条約に基づく事前協議制度ということがいままで確認されてきたわけでありますけれども、改めてその日本への核持ち込みが事実上自由にできるというふうなことを述べた新たな見解であるということで、大変これは重要な意味を持つものではないかと思うんです。   〔委員長退席、理事鳩山威一郎着席〕 この点につきましては、昨日の衆議院の外務委員会においても質問がありまして、それに対しまして淺尾局長が、米国に対して、国防総省当局者がどういう文脈の中で核持ち込みについて触れたのか、実情を調べて関係委員会などに報告すると、こういうふうに報道されているわけなんですが、当然これは調査をし、報告をいただくことは必要だと思います。  同時に、米側の見解はそのままにしておくということになりますと、これは入港を容認するということになりまして、外交上非常に問題が残るんではないか。具体的にどういう対応を考えられているのか、外務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  67. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは下田委員が十分御承知のように、匿名の高官の話と、こういうことになっておりますね。それで、言っておることは、これは従来米政府がとってきた方針と私は違っておらないと思うんですね。米政府は核の存在について、これは肯定も否定もしないという、そういう方針をとっておる。そして、一方において日本は、御承知のように安保条約に基づく事前協議制というものがあって、核の問題についてはその対象であるし、また持ち込みの相談があれば、そういう場合にはノーと言うんだということもはっきりしておるわけであります。そして、アメリカ政府も従来、この安保条約に基づくことは忠実に履行してきておるということも繰り返し言っておるわけでございまして、そういうことを総合して判断する場合、今度の匿名の高官が何か言った、そのことによって疑問とか不安とかというものは、私は起きてこないと、このように判断をしておるわけです。
  68. 下田京子

    下田京子君 匿名高官が述べられていることであるし、まあ特段変わっていないんで心配ないと、こういうことですけれども、特に今回の共同電の中身は、立ち寄りの定義の問題についても触れているわけですね。時間がないから細かく言いませんけれども、この寄港問題の定義ということはいままでもいろいろ議論がされてきたけれども、明らかになっていない。そういう中で米側が自由に日本に入れるんだ、持ち込みがもう自由なんだと、こういうふうに言われていることに心配を感じないということは、非常に問題ではないかと思うんです。  特に、それはなぜかといいますと、大臣も御承知のようにレーガン米大統領が十月十六日、あるいは十一月十日の二回にわたって、かつてなく公然と、限定核戦争を肯定する発言をしてきていると思うんです。それに前後しまして、ロストウ米軍備管理軍縮局長が、わが国に新たに戦域核ミサイルを配備することもあり得るんだ、検討中だと、こういうふうに述べておるわけなんです。  ということになりますと、この辺の経緯をやはり具体的に米側に問い合わせていく必要があるんではないか。特にそのことは、十一月十八日でございましたけれども、行特委員会でうちの上田議員が質問した際に、鈴木総理がこのように答弁されているんです。「戦域核の配備は世界のいずれの地域におきましても、そういうことがなされるということは好ましいことではない、」新外務大臣も当然この鈴木総理の態度を受け継いでいかれると思うんですね。  とすれば、事前協議の対象であればなおのこと、アメリカに対しましてこの核持ち込み云々がどうなのかということで要求すべきではないかと思うわけです。要求すれば、アメリカはそれに対応しなければならないでしょうし、もし拒否するということになれば、それは日本政府が非核三原則の立場から、もう核を積んでいるということが明確であるならば入港を拒否するというふうな態度をとれると、こう考えるわけなんです。
  69. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 下田委員、すべて御承知で御質問なさっておることだと思うんですが、このイントロデュースの問題については、しばしば本委員会においても御論議がされて、政府側は明白に藤山・マッカーサーの口頭了解でそういうことは認めておらないと。そして、現在でもそのことがアメリカ政府においても守られておると、このように申し上げておるわけでございます。   〔理事鳩山威一郎退席委員長着席〕  それから、ロストウ発言をお取り上げになりましたが、これも十分御承知であろうと思いますが、新聞記者の質問に答えておっしゃったことでありますが、いまはそういうことは考えておらないということがその記録の最後にはっきりしておると思うんであります。  それから、鈴木総理の戦域核の配備について御所見があった。これは私も当然同じような所見を持っておるのでございまして、総括して申し上げまして、現在、アジア諸地域に戦域核の配備がされるという現実的な問題は起こっておらないと、こういうふうに思いますし、またいろいろな報道がございましても、それらについては詳細に検討していきますと、従来日本政府のとっておる方針にたがうものではない。あるいは、この発言それ自体が心配されるものでないと、このように承知をしておるわけでございます。
  70. 下田京子

    下田京子君 外務大臣は、すべて当面心配はないよと、こういうお話でございますが、時間がないから突っ込んでお話しする機会もなくて残念なんですけれども、レーガン構想によれば一九八四年に、より具体的に言えばSSNですね、核装備したSSNを配備するというふうなことを言っているわけです。当面ということにはならないけれども、一九八四年ということを具体的に言っているわけですね。としますと、この核巡航ミサイルを装備したSSNが仮にも日本に寄港、通航というふうなことを、それじゃ心配ないよということで黙っておれるのかどうか。非核三原則を国是とするわが国の立場からいけば、当然こういうことは認められないということをはっきり明言すべきではないか、こう思うんですが、この点はどうでしょうか。
  71. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ただいま御質問になりました点は、レーガン大統領がアメリカの核戦力の近代化という中で述べている点でございますが、ただ巡航ミサイルについてはまだアメリカで開発中でございます。その巡航ミサイルを攻撃型潜水鑑に配備するというふうには言っておりますけれども、その後の国防総省の背景説明では、アメリカ政府において実際の配備は一九八四年以降ということになっておりますし、また具体的にどういうふうに展開させるかという点については何ら決定は下されていない、こういうのが現状でございます。したがって、そういうような状況のもとで日本への寄港、あるいは入港等について日本政府がどういうふうに対処するかということを申し上げるのは時期尚早であると考えます。  ただ、わが国との関係について言えば、いま下田委員も御指摘になりましたように、安保条約上いかなる核兵器のわが国への持ち込みも事前協議の対象になる。で、事前協議が行われた場合には政府としてはこれを拒否するということは従来から答弁している点でございまして、この日本政府の考え方というものはアメリカ政府も十分承知しているということでございます。したがって、まだ具体的な問題が起きていない状況で、日本政府がそのような状態になったときにいかなる具体的な措置をとるかということについてここで申し上げるというのは、若干時期尚早であるということを繰り返させていただきます。
  72. 下田京子

    下田京子君 SSNに核巡航ミサイルを装備するかどうかということではまだ定かでないから時期尚早だと、こういう御見解かと思うんですが、逆な意味で言えば、核巡航ミサイルを常時装備したそのSSNが仮にも日本に寄港、通航というふうな場合が想定されれば、これは明確に非核三原則の立場から当然拒否するというふうに受け取ってよろしいですか。
  73. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 一般論として申し上げれば、それはやはり核兵器を搭載した艦船の日本への立ち寄りということで事前協議の対象になります。したがって、事前協議の対象になった場合に、日本政府としてはこれまでと同様な立場、すなわち核の持ち込みは拒否するというのが日本政府の立場でございます。
  74. 下田京子

    下田京子君 まあ一般的ではあるけれども、核巡航ミサイルを装備したSSNの寄港あるいは通航ということについては拒否をする、ただし事前協議の過程でということですが、その問題は、もう時間がありませんから申し上げませんけれども、その事前協議の存在そもそもが事実上意味を持たないという形での指摘が、今回の匿名によるという高官の話であると思うんです。それだけに、調査をされると、こう言っておりますから、調査をし、報告することはもとより、同時に何らかの手を打つべきだということについては重ねて主張しておきたいと、こう思います。  次に、日ソ、ソ日の漁業暫定協定に移りたいと思うんですが、これは他の委員からもいろいろお話ございました。今回の協定の中で一番やはり問題なのは操業区域が変更されたということだと思うんです。  私は具体的に申し上げたいんですけれども、実は青森県の小泊漁協の組合長さんでしたが、どんな事態が出るかいまはまだ予想されない、しかしスケトウに影響が出るんじゃないか、こういうことで心配の声を訴えてきております。それから北海道の道南地域なんですけれども、乙部、大成、松前などの漁協関係者が、イカ漁業に被害が出ると今回の妥結内容に大きな不満を訴えてきているわけです。  先ほど他の委員に答えまして、できるだけ日本漁業とのトラブルだとか、資源への影響などないように考えていきたいと、そういうことを前提に置いて相手とも話し合いをしてきたんだと、こういうことなんでございますけれども、日本が見返りに拡大されました東樺太方面の漁場というのは遠いんですね、かなり。ですから小型船の操業というのは大変無理だと。松前漁協関係者の話ですと、あそこに行けるのは三隻ぐらいだろう、こういうふうなお話でございました。となりますと、全体的な資源の問題等ということもやっぱり考えなければなりませんし、同時に、残された小型のイカ釣りなどが近くで操業するわけですよね。そうしますと、その中でやはり漁具被害の問題であるとか、あるいはそれと関係しての安定した経営の問題であるとか、いろいろ出てくると思うんです。そういう点で、やはり万全の対応をとると、こういうお話でございますけれども、重ねてこれは多くの問題を残したんだという意識でもって対応をいただきたいと思うわけですが……。
  75. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) まず、青森県の漁協の方から話がございましたというスケトウでございますけれども、あの水域はほとんどスケトウはいないはずでございます。水深も深いところでございます。またスケトウをとりに行っている漁船もおりません。また同時に、ソ連側の船はまき網船でございますからスケトウはとうていとれないというふうに考えます。  その次に、松前周辺の漁協の方々が、イカ釣りについて御心配をなさっておるというお話でございますが、これは私も十分頭に入れて交渉いたしました。特に、あの今回開放いたしました水域につきましては、いわゆる奥尻堆というのがございまして、そこにわりあい小型の船がイカ釣りに行っているということは私も承知しております。ただ、奥尻堆に行ける船というのは、これは、かなりここは遠いところでございますので、三十トン以上の船でなければ恐らく行けないと思います。そうであるとすれば、その船は今回開放された水域にも入れるはずでございまして、その意味では私は今回の対応措置によりましてそこまで行ける船は何とか対応できるんじゃないかというふうに考えております。  ただ、問題はそこまで行けない船であろうと思いますが、ここはもちろんソ側に譲った経緯は全くございませんし、特に北海道沿岸の利尻、礼文海域、あるいは武蔵堆、さらには奥尻島周辺の小型イカ釣り漁船の好漁場、これは全く譲っておりませんので、小型のイカ釣り漁船操業は私どもとしてはほとんど影響がないというふうに考えてこの措置をとったつもりでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、従来の水域を使う漁船もかなりおるということは事実でございますから、その点につきましては漁具の競合がないようにソ側に対しましても十分申し入れを行いましたし、またこの水域にわが方の水産庁の船を向ける等、トラブルが起こらないように最大の努力をするつもりでございます。また同時に、不幸にして万が一トラブルが起こりました場合には、日ソ漁業損害賠償請求処理委員会、これを使いましてその補償を求めていくという対応策をとってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  76. 下田京子

    下田京子君 十分の対応をということなんですが、それにしましても先ほど言いました小泊漁協の組合長さんが、今回の操業区域の変更問題については、やっぱり自分たちに何の相談もなかったという点で不満を述べておりました。来年以降もやはりソ連側スケトウなどの日本漁獲量の削減というふうなことと絡めまして、かなりいろんな形で主張してくることが十分予想されるんじゃないかと思うんです。一方、現地に私参りまして、釧路の機船組合員の方々なんかともいろいろ懇談しましたら、いや、日本の方だって問題があるんだと、北に二度、東に二度拡大していただいたらもっとよくなるんだと、こういう主張もしているわけなんですよ。こういう主張をすれば、むしろまた向こうが水域拡大ということを言ってくるというふうな経緯もございますだけに、この操業区域変更ということは、今回のことを十分にやっぱり教訓として生かして、今後、事前に十分相談をして対処していくことが大事ではないか、一つの教訓として受けとめてほしいという点で、念を押してお答えを願いたい。簡単に……
  77. 松浦昭

    政府委員松浦昭君) 今回の交渉につきましては、前広に意見を聞いて出かけたことは事実でございます。ただ、いまも先生御指摘のように、日ソ交渉相互主義のもとにやっておりますから、ギブ・アンド・テークでございます。したがいまして、もちろん北転船がカムチャッカの南のところにございます北緯五十度の水域に入れた、これは操業の改善になるわけでございますが、ギブをした以上はまたテークもあるということは当然考えざるを得ないということでございますし、また、おのおのの業界が言っておいでになりますことは、総合的な意見を申されるわけじゃなくて、おのおのの業界の意見を申してこられますわけでございますから、水産庁として総合的にこれを判断するという以外にはないわけでございます。したがいまして、今後の交渉につきましては、もちろん業界の意見も十分に聞いて出るつもりでございますが、また現場におりますところの顧問の方々に十分相談をいたしまして今回の措置をいたした次第でございますし、また、最後の交渉の妥結に当たりましては道県とも十分に相談をいたしてこの措置をとった次第でございまして、最終段階交渉というのはきわめてつばぜり合いの段階で、時間もなく処置をいたすということもございますので、さような事態も御理解いただきたいと思います。ただ、先生が申されましたように、今回のこのような交渉が非常に難航をいたしたという事実もございますので、それは十分に頭に入れまして、今後の教訓として措置をいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  78. 下田京子

    下田京子君 最後に一言だけ。  時間になりましたので終わりたいと思いますが、別途漁業再建問題等で、また他の委員会でお願いすることにして終わりたいと思います。
  79. 木島則夫

    木島則夫君 内閣改造でどなたが外相につかれるか世界が注目をしていたところでございますが、櫻内外相がお決まりになったわけでございます。ひとつよろしくお願いをしたいと思います。  外相就任早々、駐日韓国崔大使との会談を行っておられます。話し合い解決の糸口がほの見えたかの感じを私抱きました。それから日ソ事務レベル協議も一月に再開されることになっております。これからを大いに期待を申し上げたいわけでありますが、まず問題のポーランドでございます。同僚議員もいろんな角度から質問をされておりますので、私も要点だけ一、二申し上げたい。  武力によって民主化運動の抑圧に乗り出したポーランドの軍事政権は、世界に大きな衝撃をもたらすとともに、今後の東西関係にも重大な影響を及ぼそうとしております。ポーランドのヤルゼルスキ政権がなぜ武力行使という非常手段に出たのか、そのことはポーランド政府自体が独自で行ったのか、それともソ連から、ソ連の介入を受け入れるか、それともみずからの手で武力を行使をするかという悪魔の選択を迫られた結果、そういう行動を起こしたのか、まさにこの辺が議論の中心であろうと思いますけれど、重複するかもしれません、外務省の見方を率直に聞かしていただきたい。
  80. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) ただいま先生が悪魔の選択という表現をとられましたけれども、確かに一方ではヤルゼルスキは、軍政府によって国内の情勢、治安の回復に成功しない場合にはソ連の直接介入を招くと、したがってソ連の介入というものを防止するために、いまわれわれつまりポーランドの軍政府が労働組合のはね上がりを押さえ、国内の安定化をしなければならないと、こういうことを言っているわけでございます。他方、欧米の見方といたしましては、そういう軍政府ポーランド自身の手で治安を回復するということは結構だが、それが行き過ぎて強制手段により多数の人命の損傷とか自由の抑圧をすることはこれは非常に問題であるということで、恐らくポーランド自身もそれから周りにある欧米の諸国も一種の板ばさみの状態にいるのではないかと、かように判断しているわけでございます。ソ連の行動が今回のヤルゼルスキの背後にあってこれに理解と協力を示しているという見方がかなり広まっておりますけれども、実際にそうであると私どもが断定するにはもう一歩、もう一つ材料が足りないとこういう感じを持っております。  先ほども御紹介いたしましたとおり、アメリカあたりはかなりはっきりとソ連の間接介入ということを言っておりますが、これはアメリカとポーランドとの関係ポーランドの大使が亡命いたしましたとか、何百万というポーランド系アメリカ人がいるとか、そういうポーランド関係から私どもよりもはるかに豊富な情報と判断材料を持っている結果出てきたものかもしれないと、かように考えております。
  81. 木島則夫

    木島則夫君 そうすると、現在外務省としては事態の推移というものを、成り行きというものを見守るという態度なんでしょうか。ということになりますと、経済援助そのほかを含めてポーランドに対する日本の態度というものもやはり何というか変わってこざるを得ない、いかがでしょうか。
  82. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) 一言で申しますれば、事態の推移を注意深く見守るということでございますが、ポーランドの問題は、もしこれが非常な混乱に陥る場合、さらにはソ連の介入というような事態を招くような場合には、これは国際情勢に非常に深刻な影響を与えるものでございます。そこで私どもは、西欧諸国、欧米諸国と常時意見、情報の交換というものを行いつつ、日本として独自の判断を見出すように努めているわけでございます。ただ、こういうポーランド問題に対する対処の仕方と申しましても各国、各国の独自の立場というものがございます。アメリカにつきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、たとえばフランスにつきましては、伝統的にポーランドと非常に深い関係がある、かつ現在のフランスの政権は社会党政権であり、労働組合の上に立っている、こういう性格上フランス独自の対応を示しているわけでございます。こういうふうに各国はおのおのの置かれた政治状況というものも踏まえて対処方法を考えているだろうと思いますが、私どもといたしましても、日本の置かれた情勢というものを考えて、対応の仕方に誤りなきを期したいと思っております。
  83. 木島則夫

    木島則夫君 いずれにしてもポーランドは厳冬ですね、食糧の不足を初め経済の破綻は想像を上回るものがあるということのようでございます。いま言った経済援助の問題をどうするかということも含めて、日本ポーランドの今後について、またポーランドに在住している日本人を現在のままで置いておくのか、あるいはどうするのかということも含めて聞かしていただきたい。
  84. 加藤吉弥

    政府委員加藤吉弥君) ついきのうきょうのポーランド情勢につきましては、ワルシャワ大使館から報告が入っております。戒厳令のもとで、軍政府が食糧の供給確保その他にいろいろ力を尽くしているけれども、現在のところまだ目立った効果はあらわれておらず、例年にない大雪と零下十度の街角に忍耐強く行列している市民の表情は暗いというワルシャワの町でございますね、こういうふうにやはり、平静であると、暴動はないとは言いながら非常に暗い空気が漂っているというのが現状ではないかと思います。  そこで、在留邦人の問題でございますが、すでに数名の方々は航空便あるいは列車、自動車等によって国外に出ております。現在のところ正確な数字は把握しておりませんが、かつて二百十六名と言われておった邦人が現在恐らく百八十名程度に減少しているのではないかと思います。わが在ポーランド大使館といたしましては、連日のように日本人会の代表者日本人学校の先生、その他関係者と連絡を密にして、いざという場合の体制を協議かつ準備しているという状況でございますし、かつ地方にも館員を派遣いたしまして、地方におられる在留邦人の動静等も調べているという状況でございます。
  85. 木島則夫

    木島則夫君 櫻内外相にお伺いしたいんでありますけれど、外相は就任早々、駐日韓国崔大使とお会いになった際に、これは新聞報道でありますけれど、私は外相であるだけではなくて韓国の友人でもあるというニュアンスのことを述べられたようでございます。日韓はいま、六十億ドルの経済援助の問題をめぐって膠着状態を脱し切っていないというのが実態です。  先ごろ私どもの党が訪韓団を送りまして、要路の人たちと率直な意見交換を行ってまいりました。野党としてのけじめの中で行ったことはもちろんでございます。これまでの経済援助問題は、日本側が個々のプロジェクトについて検討をして、それを積み上げていくという方式を提示をしてきたのに対して、韓国は一括方式でこれに臨んできた。最近では、韓国側に安全保障への見返りという雰囲気が薄れて、単純に韓国の経済再建のための援助をお願いをしたいという感じにさま変わりをしてきていることも事実でございます。  海外援助については日本としての原則があり、この原則にのっとって自主的に行うことは当然でございますけれど、来年早々スタートする韓国の経済五カ年計画について、この計画が達成されるためにはやっぱり日本からの借款が欠かせない条件であることも事実でございます。したがって、六十億ドルという額を押し立てている韓国側にもはっきりとしたゴールがあるということです。したがって、この日韓経済協力の問題を解決するための外相のお考えを聞かしていただきたい。日本は官僚主導型による積み上げ方式、あちらは一括方式、大きな隔たりがございます。どうもらちが明かない。この問題を外務大臣はどういうふうに解決をされていくおつもりでございますか。率直なお考えを聞かしていただきたいんであります。
  86. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 木島委員がいろいろ御分析されましたが、大体おっしゃるように私も受けとめておるわけであります。  韓国が今後の五カ年計画を遂行する上にわが国の経済協力を必要としておる、これは十分われわれも理解を示していいことだと思うんであります。ただ、当初来六十億ドルということが先行いたしまして、いま御分析いただいたように、日本は積み上げ方式、韓国側は総枠方式というようなことがずっと言われてまいりましたが、この点については私は丹念に御説明申し上げておるつもりです。それは、日本ではそういうつかみでどうということは国会の審議も経なけりゃならない、やはり裏づけがどうだということがないとそれは通りにくいことではないんですかと、そういう点は御理解が願えるんじゃないですかというようなことを非公式に申し上げたりしてまいっております。  先方は、自分らの五カ年計画を遂行する上に日本がどの程度応援してくれるのか、援助してくれるのかということに基づいてその五カ年計画をしっかりしたものにしたいというような、そういうお考えも持っておるようでありますが、だんだんその辺はわれわれの主張を聞いてくださるような、そういう方向にきておると思うのであります。  それで、外相会議などでひとつ解決したい、こういうことを御希望されておるように見られます。それも結構なことでありますけれども、それにはそれなりの、やはり準備がなくて、ただのっけにはやれないじゃないかということも申しておるというわけで、御指摘のように、全く対立した姿ではなく、何かここに打開ができるようなそういう徴候を示しておるというのが現在の段階でございますし、また、日本としては、経済的に社会的にいろんな苦労をして五カ年計画をこれからやっていこうという韓国の実情について、十分な理解は持って臨んでいかなけりゃならないと、こういうふうに思っております。
  87. 木島則夫

    木島則夫君 外相会談もいいだろうけれど、いきなりやってもどうかと、その前になすべきことがあるんだと、どういった条件がそろえば外相会談が行われることになるわけでございましょうか。
  88. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいま申し上げましたように、われわれとしてはやはり五カ年計画というものを韓国がどういうふうに考えておるかということ、それから日本協力はどういう問題について協力するか、相当概略的なことはおっしゃってはおるわけでございますけれども、それでは私どもがこれだけの援助を考えたいという結論を出す上にはなかなかむずかしい点がありますから、ですから、大方こういうプロジェクトについてこの程度のことになるというようなものがつかめないと、外相同士でまあこの辺はもう少し考えてくれとか、いやそれは考えられぬとかというわけにはいかないと思うので、いわばまあ常識的な準備が整わないとまずいのではないかと、このように思います。
  89. 木島則夫

    木島則夫君 時間がございませんけれど、韓国側としては経済五カ年計画は韓国の経済再建のためにはどうしても欠かせないものである、しかもそれは来年早々スタートするんだと、日本も六十億ドルという額はともかくとして、やっぱり経済援助は日本も積極的にするんだという、そういった共通の場が設けられたわけでありますから、後はいま外務大臣がお話しになったように個々の詰めを行うということで、大体外相会談というか、お会いになるのはいつごろになる予定でございますか、もしお差し支えなくば……。
  90. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 御承知のように、日本側の本年度の分というのもペンディングになっておるわけですね。それで、五カ年計画の方は韓国側は明年一月からということなんですね。そうするとわれわれとしては、日本側年度、先方の年度の始まりとのちょうど重なる一月から三月までの間、乙の間には両国が合意に達することがいいんじゃないか。当然早い方がいいということも言われましょうが、まあそのぎりぎりのところはそういう範囲の中で何とか円満妥結をしたいと、こう思っております。
  91. 木島則夫

    木島則夫君 日韓は非常に近いところにあって、必ずしもそのつき合い方、それぞれの国で行う世論調査などを見ましてもどうもきらいな国の上位をお互いに占めているというような間柄でございます。したがって、やはり日韓の友好というものが、アジアの平和の中でも大変重要な位置づけをしていることを考えますと、ひとつ新外務大臣就任されました櫻内さんに、積極的にお取り組みをいただきたいというふうに考えるわけでございます。まあ日米の関係などを伺いたいと思っておったんですけれど、どうも時間がございませんので、こういった方針というか、こういった心づもりでやっていただきたいということを私申し述べて結びとしたいと思います。  外交を行っていく上で大事なことは、一つはバランス感覚ということだろうと思いますね。それから信頼が最も大事であろうというふうに思います。ことに日米の友好関係をさらに強固なものにしていくためには、こういったものが必要不可欠である、そして、それはまた世界の孤児に日本がならないための最低条件でもあるというふうに私は思います。日米関係の最大の懸案は、日米貿易摩擦に絡ませたアメリカの日本への防衛努力要請、これは来年もさらに大きな外圧となって日本にかぶさってくるだろうというのは疑いないところでございます。それだけではなくて、西側が強く求めている対外援助協力などこういった課題は、行革で果たそうとしている日本の財政再建、緊縮財政と必ずしも一致はしない、むしろ矛盾することになる点もあるわけでございます。しかしまあ、日本が西欧の一員として生きていくためには、このバランスも重視していかなければいけない。国内での財政制約がそれを果たして許すかどうか、そういったものをどう解決をしていくかというときに外務大臣就任をなさったわけでありますので、日米関係をもっともっとより強固なものに友好関係をしていくために十分なひとつお取り組みをいただきたいと、そのことだけを要望をいたしまして私の質問を終わりたいと思います。よろしくひとつお取り組みをいただきたいと思います。
  92. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 櫻内外相は非常に困難なむずかしい時期に就任されまして、全く御苦労さんだと思います。先ほどから外圧という言葉がございまするけれども、現在確かに幾つかの外圧が来ております。とにかく軍備をふやせという外圧がある、その他いろいろありますが、貿易問題等とも絡んで外圧は確かに強い状態になっていますけれども、しかし、日本主張すべきことはきちっと私は主張しなきゃいかぬ、こう思っているんですね。まあアメリカ人なんかしばしば申します、日本人は何言っているんだかわからない、そう思っているかと思って押していくと、反対のことを言うというようなことを言いますが、とにかくやはり率直に主張すべきことは主張しなきゃいかぬと私は思います。  そして鈴木内閣は、私はその外圧の中でやはり日本国民にとっていいことをやってきたと思いますね、そのために外務大臣が二人もかわったのかもしれませんけれども。とにかく憲法はもう絶対にこれは守るんだという主張、それから非核三原則はこれはまた断じて守るんだという主張、つまり原則を守るという主張を一貫してとってこられたわけですね。アメリカからいろんな外圧もあるし、それから日本の財界あるいは自民党内あるいは野党内からもいろんな圧力があるということはわれわれ知っていますけれども、しかし、いままで鈴木内閣がとってきた方針、平和憲法の原則は守る、非核三原則は守る、こういう原則は、外相がかわられても私は絶対に変わらぬものと確信しますけれども、それについてひとつお答え願いたいと思います。
  93. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 宇都宮委員から最も基本的な点についてのお尋ねでございます。私どもが現行憲法をこれを遵守していくことは当然のことでございますし、また非核三原則は歴代自民党内閣が守ってきたことはもとより、これが国会の決議になっておるということも考えますときに、こういう大事な基本的なことは、私も当然遵守する、厳守していくということを申し上げておきます。
  94. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 国際情勢は非常に絶えず動きますから、一つの原則、憲法にしろ非核三原則にしろ、いろんな外圧その他によって曲げられそうになる、また事実上それが損なわれるというようなことがあり得ると思いますけれども、しかし、原則がやっぱりきちっと守られることは民族の理想が守られることでもありまするから、これはしっかりやっていただきたい。そしてその原則に従うように、日本の政治はむしろ世界の政治を変えていくと、そういう気魄を持ってひとつやっていただきたいと思いますが、それについてどうですか。来年は国際軍縮年でもありますし、それから国連の軍縮に関する総会等も開かれるわけでありますが、むしろその非核三原則とかそれから平和憲法を事実上曲げていくような国際的な情勢をよい方に変えていく、憲法に合い、非核三原則がそこで生存できるような方に変えていくという努力は、当然国民が日本の外交に求めていることであると、こう存じますが、どう考えられますか。
  95. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私は、日本は御指摘のような原則を守ってそして進んでいく。ただ宇都宮委員のおっしゃるように、それが結果として国際情勢も変わっていくということは大変好もしいことだと思うんですね。しかし日本が変えるんだと、そういう立場をとることがいいのかどうかですね。私どもが原則を守り、そしてわれわれの主張をしっかりしていくことによって、結果として好ましい国際情勢になったということの方が私はよりベターではないか。おっしゃるところはそういうところだと思うんですが、ちょっととりょうによると、日本がリーダーシップをとって何でもかんでもやるというと、やっぱりこれは、出るくぎは打たれるようなことになってはどうかというような気がちょっといたしましたが、御趣旨は十分理解をするところでございます。  また、軍縮会議についてお触れになりました。この軍縮会議については、最近の国際情勢の中で一番私が注目をしておるのは、西欧諸国が特に東西の力の均衡ということを言うが、それはでき得る限り低いレベルでということを言われております。その低いレベルが、一番いい結果はゼロが一番いいのであって、それはもう宇都宮委員が最も理想とするところではないかと思います。この低いレベルに均衡をさせる、そしてまた、それがためには対話をしようと、こういうことが国際的に言われておるのでありまして、今度の軍縮会議に臨むに当たりましても、そういう国際的な一つの風潮を大事にしながら、わが国主張すべきことを主張すると、このように踏まえておるわけであります。
  96. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 平和憲法を守り非核三原則を守る以上はそれにふさわしい国際情勢を、何も突っ張ってやる必要もないかもしれませんが、とにかくそういう情勢をつくっていく努力はこれはもう政府として当然しなきゃならぬことであると思うんで、その点は全く大臣も同意見だと私は思います、先ほどから聞いていましてね。ただ、いますぐ何か目標を考えて、そして世界をリードしていくというようなことはできないかもしれませんけれども、やはり基本的にはそういう気魄が日本の外交に求められておる、また世界もそれを求めていると思います。  アメリカ人のうちにもいろんな意見はあるわけですけれども、アメリカも現在ちょっと突出しているんですね、本当を言いますと。アメリカも孤立しないとは限らない、そういう心配はアメリカ人の中にもありますね。たとえばジョージ・ケナンなんかごく最近のあれで次のようなことを言っている。それは、  今日の怖るべき核兵器開発の主役を演じてきたのは、われわれアメリカ人であることを銘記しなければならないからです。核兵器を最初に生産し、実験したのはわれわれです。水素爆弾を開発し、破壊力の威力を高めたのもわれわれです。複数弾頭弾を開発したのもわれわれです。「第一撃」の戦略を放棄すべしという提案を悉く斥けたのもわれわれです。他国の何十万という非戦闘員に対し核兵器を使用したのもわれわれです。  これは広島、長崎のことを言っているわけですが、そして、たとえばアメリカの大統領などでも、この核兵器の使用についてアイゼンハウァもカーターも常に反対してきたということを言って、警戒してきたということを言っていますね。  過去三十年余にわたり、聡明で先見性のある人びとは核戦争の不毛さと核兵器研究開発に伴う危険について絶えず警告してきました。このことを聲を大にして訴えた初期の人びとはアルバート・アインシュタインのような卓越した偉大な科学者たちでした。さりとて他の人びとも除外するわけにはまいりません。D・アイゼンハウァからJ・カーターに至る米大統領は孰れも「核戦争では勝者はない」と警告を発してきました。その他多くの著名な人びとも同様な意見を述べてきました。  これはアメリカのやはり社会の底辺に広く存在している、上層から下にわたって、そういう見解であって、現在のレーガン政権をいたずらにわれわれ非難しませんけれども、その政策がいつまでも続くものであるとは言えない、これは非常に危険なことですからね。そういう状況であるものですから、現在の外圧というもの、これは十分慎重に対処しなければいかぬと思います。特にその外圧をよりどころにして、何か日本人の中で日本の政治を変えようとする傾向があるのは非常にこれは危険ですね、非核三原則にしろ、それから平和憲法にしろ。この点はひとつ十分お考えになって、外圧そのものも変化するものであるということを常にお考え願いたいと思います。  櫻内さんは私どもとともに非常に早く保守党議員としてソ連に行ったことがあります。と同時に中国にも行かれました。中国にわれわれが行ったころは、アメリカ人は中国の脅威というものを非常に唱えていて、日中関係の改善に対して非常に強い反対意向をたびたび表明されたことがありますね。しかし、現在日中関係は御承知のとおりイデオロギーが違うにもかかわらず、社会体制が違うにもかかわらず良好であり、また米中関係さえ当時と比較にならぬほどきわめて良好な状態になっている。ですから、やはり外圧の背景になっている外交思想というものはときどき変わりますからね、やっぱり一国の外交というものは自分をよく見詰めて、自分はこれで動かぬというものを持ちませんといかぬと、このように私は思いますが、外務大臣はどうお考えですか。
  97. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 前段にアメリカが核兵器の開発、核戦争についての反省をしなきゃならないという一文を御引用になりました。私はそれを承っておりますと、日本もまた反省をしなきゃならない、やはり真珠湾の奇襲攻撃に始まって、それにはあらゆる面で対処しよう、そういうことが恐るべき兵器の開発にもつながったのではないか、また東西勢力の対立がややもするとエスカレートして、しかも核の開発が抑止力になるというようなことで相互に開発を急いだというようなことが現在の国際情勢の中に大きく影を投げかけておるんではないかと、こう思うのであります。したがって、相手も謙虚に反省する、われわれもまた謙虚に反省するということで、しかも日本は敗戦後におっしゃったような大きな原則を持っておるのでございますから、このわれわれの気持ちを十分理解してもらいながら今後の外交を進めていく必要があるんではないかと思います。  そして、時代の変遷とともに、いま中国との関係を一つの例でお挙げになりました。こういう大きく流動していくということもいままでにもあったことでございますから、今後においても、そういう大きな変化をやはり頭に置きながら外交の衝に当たっていかなきゃならない、かように思います。
  98. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 それでは問題を変えますけれども、いまの外圧のほかに外圧に関連して一つの圧力、これはやっぱり韓国から来ている経済借款の問題ですね、経済援助の問題があります。  私は、韓国のやり方は大変まずかったと思います。つまり日本の安全保障に関連させ、それから日本を韓国の軍事力で守ってやるというような基本的な考え方で相当膨大な額の援助をいきなり求めてきたというやり方は私は非常にまずかったと思いますね。一国が他の一国と仲よくするためにはやっぱり節度は考えませんと、援助といっても国民の税金ですから、政府が何か理屈の通らないことでおどかされて出すというようなわけにはいきません。そして園田外相に対する態度なども非常に不遜で、よろしくなかったんですね。ですからそういうことじゃなしに純粋の経済援助として最初から出発していれば、問題はこのように私はこじれなかったと思う。私はやっぱりそういうことは率直に韓国にも言う必要がある。  私は、朝鮮問題に対しては特別な関心を持っているんです。金大中事件のような事件ですね、これは韓国のすぐれた政治家で、ただ民主主義者という理由だけで不当な弾圧を受け、しかも日本から不当な方法で拉致されたというようなこともあって、韓国と親しいから韓国人のそういう問題に対しても深入りしたわけでありますけれども、それと同時に、私は日本の外交というものは、常に朝鮮半島全体を視野に入れてやる必要があると思う。その韓国と北朝鮮の共和国と二つに割れているわけですね、国が。しかし、これは朝鮮民族の国家で新羅以来千数百年統一を維持していた民族が、第二次大戦の結果、何の、どの協定で割れたのかもしらぬし、ヤルタ協定かもしらぬし、あるいは他の協定かもしりませんが、二つに分断されて、それで韓国が自由主義体制、北が社会主義体制ということになって、その体制の差を理由に、非常な対立がある、戦争にもなったわけですね。その対立そのものは体制の差を理由にしているけれども、決して朝鮮の半分の民衆が社会主義を望んだわけでもないし、半分の民衆が必ずしも自由主義を望んだわけでもなく、分断されて争っているわけでありますから、私どもこの南北朝鮮の問題を絶えず念頭に考えながら、援助の問題等は考えないと、朝鮮民族の殺し合いのためのお金を出しているというようなことにもなりかねません。そうすると、これは日本の国民の税金がかえって日本と朝鮮民族との関係を長い目で見ると悪くする。そういうふうになりますから、この点を十分にお考えの上に、必ずしも現在の外圧、一連の外圧の一つですけれども、その外圧に負けないでやっていただきたいと、そういうことをお願いしますが、まあひとつ、一言でもいいから御返事いただきたい。
  99. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 原則的にはどなたも韓半島と申しましょうか、朝鮮半島の緊張激化を望むものはないと、こう思いますけれども、これは宇都宮委員も御同意を願える。また二つのああいう国になっておるという事態は恐らくどちらから見ても不幸な事態である、何とか統一されることが好ましいということも、これも間違いのないことだと思うんです。そういうようなことを念頭に置いて、そしていま当面の韓国との関係の問題については、韓国がこれからの五カ年計画をやる上において、経済的に社会的に、本当に必要なものであるならば、日本は大きな経済協力に対する方針を持っておるのでありますから、その方針の中で温かい理解を示す、そのことは私は緊張激化などにつながるものではない、またそういうことであってはならないと、かように認識をしておるわけでございます。
  100. 宇都宮徳馬

    宇都宮徳馬君 終わります。
  101. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 他に御発言もないようでございますので、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようでございますので、これより直ちに採決に入ります。  まず、北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  102. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  103. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 稲嶺一郎

    委員長稲嶺一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十六分散会      —————・—————