○国務大臣(
小坂徳三郎君) ただいま議題となりました
船員法及び
船舶職員法の一部を
改正する
法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。
海技
資格、当直部員の
要件等わが国の船員
制度は、近年の国際的及び国内的な要因により、これを再検討する必要に迫られております。
まず、昭和四十二年に英仏海峡において発生したタンカー、トリー・キャニオン号の座礁事故を契機として、船員の
資質の向上についての国際的な要請が高まりました。今国会に別途提出されている千九百七十八年の船員の
訓練及び
資格証山並びに当直の
基準に関する国際条約、いわゆるSTCW条約は、このような背景のもとに、昭和五十三年七月に採択された条約であり、船員の技能に関する国際
基準を設定することにより、人的な面から海上における人命及び財産の安全を増進することを
目的とするものであります。主要な海運国であるわが国としても、海上における航行の安全の確保の見地から同条約の批准を急ぐ必要があり、今国会において別途承認を求めているところであります。
次に、
日本船の国際競争力の低下が昭和四十年代の後半から顕著になってきましたが、わが国の外航海運は、これに対処するため、船舶における技術革新を推進する一方、外国用船への依存傾向を強めてきました。しかし、外国用船への依存傾向がこのまま進みますと、
日本人船員の雇用の場がますます縮小するのみならず、わが国の経済的安全保障上の要請にも対応できなくなるおそれがあり、いまや、
日本船の国際競争力の回復が緊急の課題となっております。
船員
制度の近代化は、このような
日本海運の置かれた環境を踏まえ、かつ、近年の船舶の技術革新にも対応して、わが胴の船員が快適な労働環境のもとでそのすぐれた技能を十分に活用し、意欲的に
職務を遂行することができる新しい
職務体制を確立するとともに、これにより、
日本人船員が運航する
日本船舶が国際海運界において比重を増し、
日本人船員の職域が確保される条件を整備することを
目的とするものであります。
以上のとおり、STCW条約の国内
実施を図るとともに、船員
制度の近代化を円滑に推進するため、今回、この
法律案を提案することとした次第であります。
次に、この
法律案の概要について御説明申し上げます。
第一に、条約の
内容の国内
実施を図るため、航海当直に関し遵守すべき事項、航海当直を担当する部員の
要件、タンカーに乗り組む
職員等の要作、
船舶職員法の適用に関する旗国主義の採用、条約の
要件を満たした新たな海技
資格、海技免状の五年ごとの更新制、外国船に対する監督等について定めることにしております。
第二に、船員
制度の近代化を推進するため、設備等について
一定の
基準に適合する船舶に関し、条約の定める
要件との整合性を確保しつつ、航海当直体制の
特例、新しいタイプの船舶
職員である運航士
制度などを設けるとともに、船舶
職員の乗り組み
基準を政令で定めることとしております。なお、この機会に、明治以来維持してきた船舶
職員資格の名称を近代的なものに改めることといたしました。
以上が、この
法律案を提案する地中であります。
何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
船員災害防止協会等に関する
法律の一部を
改正する
法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。
最近、MO化を初めとして大型化、専用船化など船舶の技術革新はまことに著しいものがあり、それに対応して乗組員の少数精鋭化が進んでおり、また、漁船におきましても、漁場の遠隔化、漁労期間の長期化が著しくなってきております。しかも、そのような状況のもとで、船員災害の発生率は陸上に比べ依然として高く、従来の減少傾向がここ数年鈍化し、横ばいの状況を示すようになってまいりました。
このような船員を取り巻く労働環境の変化に対処し、船員災害防止対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、安全衛生
管理体制の確立その他の船員災害の防止を
目的とする船舶所有者の自主的な活動を促進する措置等を講ずることとした次第一であります。
次に、この
法律案の概要について御説山申し上げます。
第一に、船員災害防止活動の主体となるべき船舶所有者及び船員についてそれぞれの責務を立言するとともに、属の援助等について規定することとしております。
第二に、船舶所有者に総括安全衛生担当背の
選任、安全衛生
委員会の設置、船員に対する安全衛生教育の体制の整備を行わせることにより安全衛生
管理体制の確立を図ることとしております。
第三に、運輸大臣は、船員災害が多発していること等により総合的な
改善措置が必要な船舶所有者に対し、安全衛生
改善計画の作成を指示し、またはその変更を命ずることができることとしました。
なお、以上のような
改正点を踏まえ、
法律の題名もこれに相応するように
改正することとしております。
以上が、この
法律案を提案する理由であります。
何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。