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1982-06-23 第96回国会 衆議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年六月二十三日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君   理事 小宮山重四郎君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       上村千一郎君    小渕 恵三君       大村 襄治君    奧野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       亀井 善之君    鴨田利太郎君       川崎 二郎君    後藤田正晴君       近藤 元次君    塩川正十郎君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       砂田 重民君    瀬戸山三男君       橋本龍太郎君    浜田卓二郎君       原田  憲君    平沼 赳夫君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    渡辺 栄一君       稲葉 誠一君    大出  俊君       大原  亨君    岡田 利春君       木島喜兵衞君    野坂 浩賢君       山田 耻目君    横路 孝弘君       草川 昭三君    正木 良明君       木下敬之助君    竹本 孫一君       金子 満広君    瀬崎 博義君       正森 成二君    三浦  久君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 坂田 道太君         外 務 大 臣 櫻内 義雄君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)事務代理  小川 平二君         厚 生 大 臣 森下 元晴君         農林水産大臣  田澤 吉郎君         通商産業大臣  安倍晋太郎君         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君         郵 政 大 臣 箕輪  登君         労 働 大 臣 初村滝一郎君         建 設 大 臣 始関 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     世耕 政隆君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      田邉 國男君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 原 文兵衛君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     松野 幸泰君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         臨時行政調査会         事務局首席調査         員       山本 貞雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         国土庁土地局長 小笠原正男君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         林野庁長官   秋山 智英君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         通商産業省通商         政策局次長   黒田  真君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省基礎         産業局長    植田 守昭君         通商産業省基礎         産業局アルコー         ル事業部長   石川不二夫君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         中小企業庁長官 神谷 和男君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省航空局長 松井 和治君         郵政省電気通信         政策局長    守住 有信君         郵政省人事局長 奥田 量三君         労働省労政局長 吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省財政局長 土屋 佳照君  委員外出席者         日本専売公社副         総裁      長岡  實君         日本国有鉄道副         総裁      馬渡 一眞君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         参  考  人         (公共企業体等         労働委員会会         長)      中西  實君         参  考  人         (日本銀行総裁前川 春雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員異動 三月十八日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     塚田 庄平君   木下敬之助君     永末 英一君   瀬崎 博義君     寺前  巖君   依田  実君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   塚田 庄平君     稲葉 誠一君   永末 英一君     木下敬之助君   寺前  巖君     瀬崎 博義君 同月十九日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     山花 貞夫君   瀬崎 博義君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   山花 貞夫君     稲葉 誠一君 同月二十三日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     齋藤 邦吉君   稲葉 誠一君     勝間田清一君   木下敬之助君     西田 八郎君 同日  辞任         補欠選任   齋藤 邦吉君     上村千一郎君   勝間田清一君     稲葉 誠一君   西田 八郎君     木下敬之助君 同月二十四日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     中島 武敏君 同日  辞任         補欠選任   中島 武敏君     瀬崎 博義君 同月二十五日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     永末 英一君 同月三十日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     草川 昭三君 四月一日  辞任         補欠選任   橋本龍太郎君     田村  元君 同月六日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     西中  清君 同日  辞任         補欠選任   西中  清君     草川 昭三君 同月九日  辞任         補欠選任   正木 良明君     渡部 一郎君 同月十三日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     西中  清君 同日  辞任         補欠選任   西中  清君     草川 昭三君 同月十五日  辞任         補欠選任   大原  亨君     田口 一男君 同日  辞任         補欠選任   田口 一男君     大原  亨君 同月二十日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     草川 昭三君 同月二十一日  辞任         補欠選任   奧野 誠亮君     平泉  渉君   金子 一平君     毛利 松平君   村山 達雄君     柳沢 伯夫君   草川 昭三君     浅井 美幸君   竹本 孫一君     玉置 一弥君 同日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     草川 昭三君 同月二十二日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     田邊  誠君   大原  亨君     池端 清一君 同日  辞任         補欠選任   池端 清一君     大原  亨君   田邊  誠君     稲葉 誠一君 同月二十三日  辞任         補欠選任   木島喜兵衞君     嶋崎  譲君 同日  辞任         補欠選任   嶋崎  譲君     木島喜兵衞君 同月二十七日  辞任         補欠選任   大原  亨君     川俣健二郎君 同日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     大原  亨君 同月二十八日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     湯山  勇君   木島喜兵衞君     嶋崎  譲君 同日  辞任         補欠選任   嶋崎  譲君     木島喜兵衞君   湯山  勇君     稲葉 誠一君 五月六日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     坂井 弘一君 同日  辞任         補欠選任   坂井 弘一君     草川 昭三君 同月七日  辞任         補欠選任   平泉  渉君     奧野 誠亮君   毛利 松平君     金子 一平君   柳沢 伯夫君     村山 達雄君   玉置 一弥君     竹本 孫一君 同月十一日  辞任         補欠選任   奧野 誠亮君     平泉  渉君   金子 一平君     毛利 松平君   村山 達雄君     柳沢 伯夫君   竹本 孫一君     玉置 一弥君 同日  辞任         補欠選任   平泉  渉君     奧野 誠亮君   毛利 松平君     金子 一平君   柳沢 伯夫君     村山 達雄君   玉置 一弥君     竹本 孫一君 同月十二日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     安井 吉典君   木島喜兵衞君     嶋崎  譲君   野坂 浩賢君     日野 市朗君   草川 昭三君     大久保直彦君 同日  辞任         補欠選任   嶋崎  譲君     木島喜兵衞君   日野 市朗君     野坂 浩賢君   安井 吉典君     稲葉 誠一君 同月十四日  辞任         補欠選任   稲葉 誠一君     前川  旦君   木島喜兵衞君     嶋崎  譲君 同日  辞任         補欠選任   嶋崎  譲君     木島喜兵衞君   前川  旦君     稲葉 誠一君 同月十九日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     草川 昭三君 同月二十七日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     大久保直彦君 同日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     草川 昭三君 六月十五日  辞任         補欠選任   田村  元君     橋本龍太郎君   鈴切 康雄君     坂井 弘一君 同月十七日  辞任         補欠選任   村山 達雄君     柳沢 伯夫君   竹本 孫一君     玉置 一弥君   山口 敏夫君     小杉  隆君 同日  辞任         補欠選任   柳沢 伯夫君     村山 達雄君   玉置 一弥君     竹本 孫一君   小杉  隆君     山口 敏夫君 同月十八日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     楢崎弥之助君 同月二十三日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     亀井 善之君   根本龍太郎君     近藤 元次君   橋本龍太郎君     浜田卓二郎君   藤尾 正行君     平沼 赳夫君   村山 達雄君     川崎 二郎君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   渡部 一郎君     正木 良明君   永末 英一君     木下敬之助君   不破 哲三君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     宇野 宗佑君   鴨田利太郎君     渡辺 栄一君   川崎 二郎君     村山 達雄君   近藤 元次君     根本龍太郎君   浜田卓二郎君     橋本龍太郎君   平沼 赳夫君     藤尾 正行君   正森 成二君     三浦  久君 同日  理事鈴切康雄君同月十五日委員辞任につき、そ  の補欠として坂井弘一君が理事に当選した。     ————————————— 三月十日  一兆円減税のため予算組み替えに関する請願(  井岡大治紹介)(第一一二九号)  同(井上泉紹介)(第一一三〇号)  一兆円減税中心とする昭和五十七年度予算修  正等に関する請願(辻第一君紹介)(第一二一  七号) 同月十五日  一兆円減税中心とする昭和五十七年度予算修  正等に関する請願鳥居一雄紹介)(第一三  一五号)  一兆円減税のため予算組み替えに関する請願(  竹内猛紹介)(第一三七七号) 同月二十三日  一兆円減税中心とする昭和五十七年度予算修  正等に関する請願鳥居一雄紹介)(第一四  五九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任の件についてお諮りをいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、坂井弘一君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 栗原祐幸

    栗原委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項につきまして、議長に承認を求めることとし、その手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ————◇—————
  6. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、予算実施状況に関する件の調査のため、日本銀行並びに公団、事業団等いわゆる特殊法人について、参考人出席を求める必要が生じた場合、その人選等諸般手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、本日、参考人として公共企業体等労働委員会会長中西實君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  9. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  10. 大出俊

    大出委員 たくさん、問題を明らかにしなければならない、国民皆さんに責任をどうしても負わなければならぬ問題が山積をいたしています。したがいまして、その一つ一つを決着をつけたい。政治倫理の問題、ロッキード全日空ルート判決も出ておりまして、これも政治姿勢でございますから、国民皆さんにとってもまさに大きな関心の的と言っていい問題でもございますから、これも明らかにしたい。  また、かつてない大変な歳入欠陥税収欠陥という形でございまして、八十二兆にも及ぶ国債が発行されている今日でございますから、どういうふうにこの国の財政を再建をすればいいのかという、国債依存から脱却をする道筋は、あるいはかくのごとく落ち込む税収欠陥というのは一体どこから来るのか。大変な円安という問題もございます。これもまた未曽有円安でございましょう。そうすると、日本経済というのは一体どっち向いて走ればいいんだという問題が出てまいります。これも明らかにいたしたいと思っております。  さらに、消費不況と言われ、住宅不況と言われ、中小企業不況と言われる不況が続いているわけでありまして、出口がない。この中における個人消費を伸ばす非常に大きなファクターになっております賃金の問題、特に仲裁裁定議決案件としてほとんど慣例のごとくまた国会に出されています。これも何とかいたしたい。  さらに、総理が行っておいでになりましたベルサイユ・サミットにかかわる問題もあり、あるいは反核・軍縮というニューヨークにおける特別総会の中身を含めての問題もございます。  また、最近頻発をする——コンドラチェフという有名なソビエトの学者がおいでになりますが、長期波動説というのがございまして、四十年、五十年周期に大変な経済恐慌が来るが、これを乗り切る方法は一体幾つあるんだ、一つ技術革新であり、一つ戦争だ、そして一つは金だ。いまで言えばマネーサプライなんでしょうけれども、こういう問題と絡む戦争頻発という問題がございます。  ここらを当たりたいのでありますが、何よりもまず基本となるものは議会制民主主義の根幹に触れる政治姿勢でございますから、ロッキード全日空ルート判決をめぐる問題についてまずもって総理の所信を承りたいのであります。  政治倫理確立ということを総理就任をされた施政方針の演説で明らかになさいました。これはあなたの中心的な公約でございましょう。一昨日の本会議質問に対する答弁を聞いておりますと、これは全く白々しさが残るという一語に尽きる、私はそう感じていました。  そこで、政治倫理というのは一体何だ、総理は一体どう考えておいでになるのか、努力してきたとおっしゃるが、何をおやりになったのか、いまやらなければならぬ政治倫理確立とは一体何だ、この三点についてとりあえず承りたいのであります。
  11. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御指摘がございますように、政治倫理確立をする、政界の浄化と刷新を図るということは民主政治議会政治を守ってまいります原点でもございます。私は就任以来、その点につきましては自分を含めて自由民主党党員諸君にも、常に自粛自戒をして、いやしくも国民の指弾を受けないように心がけていかなければいけない、このように申しております。党におきましても倫理憲章等も発出をいたしまして、党員はその誓いを新たにして努力をいたしておるところでございます。  これを進めてまいりますためには、いろいろな面から検討をしなければならないことは御指摘のとおりでございます。しかし、やはり政治倫理の問題は、政治家個々人がそのことに対して常に気を引き締めて取り組んでいくということが一番根本であろうか、こう思います。ただ、しからば制度的に何もしないでいいかということでは、そういう意味ではございません。制度的にもそういうことが改善されるようにわれわれはお互いに努力しなければならない、こう思います。  そういう意味合いから、政治にはとかく金がかかりますが、選挙の際には最も多く資金がかかるというようなこと等もございます。政治と金との関連、こういう点もわれわれは十分考えて、金のできるだけかからないような選挙制度、そういうものについてもやはり改善を加える必要があるということで、これも国会で御審議をいただいておるということでございます。  また、個人に対する献金の問題につきましても、政治資金規正法の一部改正もお願いをしたというようなことで、今日まで皆さんの御協力を得ながら進めてまいっておるところでございます。
  12. 大出俊

    大出委員 いま総理答弁をなさいましたのを聞いていますと、何をおっしゃっているのかさっぱりわからぬ。金のかからない選挙をやろう、あたりまえなことであります。だから、法定選挙費用もあるのでしょう。当然なことでしょう。倫理憲章皆さんの党でおつくりになった。これもおのおの自戒をして、政治に携わる者は身辺をきれいにしよう、あたりまえ。いま問われているのは、あなたのいま言うあなたの党の倫理憲章、この倫理憲章違反をした方々がそれならば何人もおいでになるということでしょう。そうでしょう。今回問われている裁判の結果というのは、あなたの党の倫理憲章に合致するのですか。違反でしょう。いかがですか。
  13. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 かつて自由民主党党員でありました橋本佐藤両君に対しましては、先般、六月八日に第一審の判決がございました。このことを私は厳粛に受けとめておるところでございます。  また、いわゆる灰色高官という問題で国会でも御論議がなされてきておるわけでございますが、この証人としての喚問の問題あるいは倫理委員会の設置の問題、こういう問題は各党間において話し合いが進められており、昨日来当委員会におきましても話し合いが進んでおるということを、私、報告を受けておるわけでございますが、これが議会制度協議会等国会全体としてそのことが御決定になり、円満に進行することを私も期待をいたしておるところでございます。
  14. 大出俊

    大出委員 総理、私の質問にお答えにならないじゃないですか。私は一つしか聞いていない。あなたがさっき答弁をされた中で倫理憲章とおっしゃるから、いま判決という形で表に出ておる皆さんは、かつて自民党の党員であったといまおっしゃいましたが、この事件が起こって起訴をされたというようなことでお離れになっただけのことであって、やがてもしもシロになるというならば党にお帰りになるんでしょう。それだけのことでしょう。だから、倫理憲章違反であったかどうかと聞いただけ。あなたは厳粛に受けとめておる。では、厳粛に受けとめるという意味はどういうことなんですか。違反なんですか、違反でないんですか。一審だからというならばそう言ってください。はっきりしてください。
  15. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 自由民主党倫理憲章を党大会で決定いたしましたのは一昨年の大会であったわけでありますが、このロッキード事件が出ましたのはその以前のことでございます。しかし、いま大出さんがお聞きになっておるのは、そういう後でできた倫理憲章ではあるけれども、先に起こったその問題も倫理憲章の精神に反しておるのではないか、こういうお尋ねであれば、まさに私は、さっき申し上げたように、そのことは遺憾である、こう思っております。
  16. 大出俊

    大出委員 総理総理は、議会制民主主義という名がついておりまして、政党政治でございますから、総理であると同時に政権与党の総裁でいらっしゃる。ならば、もっと積極的に、国民に責任を負う政権与党の総裁というお立場もあるんだから、国民が求めているそのものずばり、ここに処置もし、物も言い、姿勢も正して、国民政治信頼を回復するという意味での期待にこたえるという姿勢がなければいかぬじゃないですか。そうでしょう。  そこで、時間がありませんから申し上げますが、昨日の本会議のあなたの答弁、いまで言うと衆議院は一昨日になりますか、どの新聞を見たって、どう書いてあるかというと、「首相「政治倫理」に消極姿勢 “灰色幹事長”かばう」、これは毎日、「首相「政治倫理」逃げに終始 “喚問”各党協議で 二階堂氏を擁護 佐藤議員の辞職勧告反対」、でかでかと見出し、これは読売ですが、挙げれば切りがない。みんなどこもそう。あなたが全くいまの政治倫理確立の焦点であるこの判決、六・八判決をめぐる問題に対するとらえ方からすべて逃げているからであります。  そこで、この判決を一体どう考えているか。あなたの一昨日の答弁によると、判決で名前が出たと言うが、それは二階堂幹事長に対する判決ではない、これはとんでもない間違い。司法的にはすでに決着済みのもので、証人喚問は自民党総裁としての責任ではないかと問われると、事柄の性質上、各党間で協議して結論を出してもらいたい、人ごとのようなことを言う。  そこで、今度の六・八判決というのは一体しからば何だ、どういう判決なんだ。全日空ルート、つまりロッキード事件が起こって、この中に幾つかの流れがありますが、今回の判決はこのロッキード事件の中の全日空ルートの三十ユニットにかかわる事件の判決であります。受託収賄事件の判決であります。三十ユニットとはしからば何か。三千万円という金額の金が用意をされた。全日空の要請に基づいてロッキード社が三千万の金を用意して丸紅に届けた。この三千万円の金が配分をされて一人一人に運ばれた、渡された、受け取った。お二人の方はその職務権限との絡みで、請託があってこれを受託した、だから受託収賄が成り立つ、五年である、時効になっていない、だから起訴をされた。だが、七名のうちお二人はそうなんだが、あと五名の方々は職務権限等々の絡みもございますけれども、単純な収賄であるということになるとこれは三年だから時効である、職務権限と時効という問題がそこに出てくる、したがって起訴ができない、これだけのことであります。三十ユニット、三千万の金が七名の方に流された、渡された、この限りこれは全く同罪です。  だから、今度の判決の中身というのは、この三千万の金がどこで謀議をされて、何のために、だれに、だれがどう届けたか。職務権限に照らし受託収賄罪が成立するお二人の方にそれぞれ断罪が下された。だから、ほかの方々にはかくのごとく金が流されて、渡されているということを書いてある。同じじゃないですか。二階堂さんの判決でないとおっしゃる。御本人が否定されておる。それはそれとして、法治国家の一審判決という名においては、七名の方々に金が全部配付され、流された。だれが、どこで、どういう謀議をしてどう流された、明らかになっているじゃないですか。  この点を総理は先ほどの倫理憲章違反だと言うならば、もうと具体的にどう対処をなさるのかという点を明らかにしなければ国民に対する責任は負えないでしょう。いかがでございますか。
  17. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御質問の中で、私が本会議の場におきまして、二階堂氏らについては司法的には決着済みだ、こういうことを申し上げたことにつきましてお触れになりまして、実態的には同じじゃないか、こういうお話がございましたが、二階堂氏が司法的に決着済みであると申し述べたのは、多分、昭和五十一年の十一月二日のロッキード調査特別委員会で、法務省の刑事局長が収賄罪の成立は認められない、こう答弁をいたしたのでありますが、私は、そういうことに基づきまして、二階堂氏らの問題は司法的には決着済みである、こういうことを本会議で御答弁を申し上げたということでございます。  そういう検察の認定等につきましては、司法当局の方から答弁をさせます。
  18. 大出俊

    大出委員 総理の御答弁を聞いていますと、どうも何を答えておられるのか、さっぱりわからぬで、私どもが困惑をするのです。  そこで、それならばひとつこれは明らかにしたいのでありますが、この判決の理由を含めまして、これは判決要旨、判決文があって、骨子があって、判決の要旨がある。この要旨を、総理、お読みになりましたか。いかがでございますか。
  19. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 このロッキード事件にかかわる橋本、佐藤両氏についての第一審判決、これは長期にわたって慎重に審理をされてきた結果下された判決でございますから、私としても、これを厳粛に受けとめておるところでございます。(「読んだかどうか聞いている」と呼ぶ者あり)  その法律的な、その判決の中身等につきましては、これは法務省当局から説明をいたさせます。
  20. 大出俊

    大出委員 総理、私が聞いたのは、よく聞いていてくださいよ、そうびびらないで。これじゃ質問にも何にもならないじゃないですか。私が聞いたのは、判決をお読みになったかどうかと聞いているんです、要旨を。だから、私はいま、ちゃんとここに判決骨子というのもくっついております、判決文もあります。判決要旨、これは最高裁が印刷したんでしょう、現物そのものですが。お読みになったかと聞いているんです。それだけのこと。しかし、あなた、きちっとお答えになるところは答えてくれぬと、これは予算委員会なんですから私の方も迷惑です。  そこで、らちが明きませんから刑事局長前田さんに承りたいのですが、この事件、今回の判決要旨に書いてあります、もちろん判決文がございまして骨子もついておりますが、この全日空ルート、つまりロッキード事件の全日空ルートの三十ユニット関連、大久保利春さんが署名をしている、サインをしている受け取り、三十ユニットございまして、かつてここで問題になりました。金が三十ユニットというのは三千万円。この金が謀議をされて渡されたんですけれども、どういう目的でこの金が配られたのかというこの事件、つまりどういう事件だったかという点を概略、簡単でいいですけれども、聞いている方々にわからぬという心配もございますから、お答えをいただきたいのであります。
  21. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの過日判決がございました全日空ルートの事案でございますが、ただいまお尋ねの中にもございましたように、いわゆる三十ユニットというものが合計七名の政治家の方に配られたという形の事案でございます。  これは内容はいろいろとあるわけでございますが、いわゆる大型機の導入問題に関連いたしましていろいろと行政指導等も行われたというような前提がございまして、そして全日空におきましてはいわゆる一〇一一という飛行機を導入することに内定をした、こういうことでございまして、そういう機会に全日空側でいろいろとお世話になった方々にお礼をしようというような考えで、先ほど申しましたようなことが行われたというのが概要でございます。
  22. 大出俊

    大出委員 これは刑事局長、昨年七月でございましたが、あなたの方の検察側の論告がここにございます。「橋本登美三郎及び佐藤孝行に対する受託収賄被告事件論告要旨」というのがございます。このほとんどを認めている判決要旨がここにあるわけであります。  そして、事は四十七年、つまり四十三年から五年、このころに万国博等もございまして、この時期に大変に航空旅客がふえ過ぎて、羽田における発着便がどんどんふえる。監督官庁である運輸省が発着の規制をする。何回にしろというようなことでいろいろ指導をした。この時期に、航空三社、当時四社あったのですが、三社のうち日航が四十七年に国際便に使っていたボーイング747を国内線に三機持ってくる、こういうことで運輸省と折衝をしておおむね許可をとる。あわせて機材を、つまり飛行機を、穴があきますから改めて発注をする。この認可も受ける。  さて、これと対抗している会社、全日空はどうなったかというと、日航に国内便に大型ジャンボ機を入れられるということになると、お客をみんなそっちにとられる。全日空は大変な不利益をこうむるということで、同じ四十七年に同じように国内線に大型機が入れられるか。ところが、パイロットの数その他準備ができない。どうしても四十九年にならなければこれはできない。社内でそういう方針になっていた。  そうすると、政治的に、四十七年に日航に、日本航空に先を越されてジャンボ機を国内線に回されたんじゃ困るから、これを何とか阻止して四十九年まで、二年ばかり延ばさせる。ここに橋本登美三郎さんに関する問題としては、彼が運輸大臣であったとき、受託収賄といわれる請託を受けて受託をした、そのための金の受け渡しというのが一年十カ月おくれているわけです。つまり、とうとう運輸大臣の権限、行政指導その他通じまして、丹羽さんに大臣がかわったりいろいろいたしました。さらに、佐々木秀世さんにかわるのですが、丹羽さんのときには佐藤孝行さんが政務次官でしょう。彼の活躍で、これは請託を全日空から、若狭さん以下から受けて、しまいには通達も全部出されることになる、こういうことなんですが、結果的に、つまり全日空の側に寄った運輸行政というものが一番てっぺんで行われて、四十七年の日航の大型機導入をついに抑えて四十九年まで延ばさした。あわせて、やがて沖縄復帰で沖縄線は国内線になるわけでありますが、そこにジャンボを使いたいという日航の動き、これに対してもダブルトラッキングという問題もございますが、二つの会社が一緒にということなんですけれども、そこらも含めて全日空が不利にならぬように、通達の中にその文言をつけ加えてもらって全日空は利益を守る、そのことを運輸行政の面で、大臣、政務次官というところでやらせよう、こういうことをやって、結果的に成功した。  そこで、いまお話がございましたトライスターL一〇一一、ロッキード社のL一〇一一というのは、これはトライスターでございます。これに決めた、内定をしたというところから、お世話になった方々に——お世話になった自民党の方々にと書いてある。この論告の文章の中にも明確に出てまいります。時間がありませんから余り詳しいことを、実は明らかにしたいのだが避けますが、刑事局長、いま私が申し上げていることは間違いございませんね。  ここで若狭社長が中心になって、自民党のお世話になった方々に配分をする。その金を全日空の藤原亨一企画室長が、若狭さんから命令を受けまして、丸紅の航空機部長をやっておりました松井さん、亡くなっておられますが、松井直さんに話をする。松井さんが大久保利春丸紅の当時の常務取締役に話をする。そして、丸紅の大久保常務取締役が、ちょうど来日してホテル・オークラに泊まっていたロッキードの社長コーチャンに話をいたしまして、コーチャンが東京の支社長であるクラッターに、東京で持っている金三千万を丸紅に届けろという命令をして、伊藤当時の社長室長以下立ち会いのもとに丸紅に三千万が持ち込まれて、最終的な配分は丸紅が任されて、全日空からもらった七人の方へ、メモは六人になっているようでありますが、田中総理がもう一人おいでになる。  そういうことで、丸紅が別にするかあるいはこの中からするか、丸紅に任せるということで、最終的な配分を丸紅側が決めたのでございますけれども、この中で、前田刑事局長、間違いございませんな。
  23. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま大出委員が仰せになりましたようなことは、先ほど来御指摘判決要旨の中にも触れられているところでございまして、おおむねそのとおりでございます。
  24. 大出俊

    大出委員 これはいま申し上げたように、この事件の「橋本登美三郎及び佐藤孝行に対する受託収賄被告事件論告要旨」という公のものでございますが、ここに、「そこで若狭は、」これは全日空の社長さん、いまの会長さんでございましょう。「右幹部役員会を開催した昭和四七年一〇月二八日土曜日の午後、社長室において藤原に対し、」企画室長でありますが、「同月三〇日月曜日に開催予定の取締役会の段取りや運輸大臣への機種決定報告に関する日航との打合せ等につき指示する一方、丸紅側と折衝すべき契約の最終的な詰めの一つとして、「自民党の主だった方々にお礼をしたいので、うちがトライスターに決めた時には、航空関係議員その他しかるべき政治家に全日空の名前でしかるべき挨拶をしてもらえんだろうかと、丸紅側に話してくれ。金は丸紅でもロッキード社でもどちらが出してくれてもいいので、丸紅にまかせなさい。お礼を渡す時、全日空から持って来たと必ず言ってもらうように」と指示した。藤原は、若狭の前記意図を了解し、若狭に「相手は誰で金額はどれ位にしますか」と尋ねたところ、若狭は「全日空としては橋本幹事長、二階堂官房長官、佐々木運輸大臣、加藤運輸政務次官、佐藤交通部会長、福永航空対策特別委員長というところだろう」と答え、藤原もこれに同調した。また若狭は、これら六名については、全日空として大変世話になっておりその謝礼にふさわしい額でなければならないが、相手方の格ということもあるので、金額の点につき藤原と話し合った結果、藤原に対し」企画室長でありますが、「「幹事長と官房長官が五〇〇万円、次いで大臣が三〇〇万円、それに交通部会長、航空対策特別委員長、政務次官が二〇〇万円くらいだと思うが、丸紅には専門家もいるだろうから丸紅とよく相談して下さい。丸紅側でも田中総理その他世話になった人達には独自に差し上げるだろう」と申し向け」た。これが金の流れの出発であります。  これは申し上げると切りがありませんから、時間の関係もございますから、事の性格を明らかにする意味でお聞きをいただいたわけでありまして、これはほかならぬ昨年七月の検察側のこの事件の論告要旨に明記されているのであります。この点、刑事局長、間違いないですな、おたくの側の論告ですから。
  25. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘のように、検察官の論告におきましてただいまお読み上げのような内容のことを申しておることは事実でございますが、論告は論告でございまして、その後先ほども御指摘判決要旨というのがあるわけでございます。ですから、むしろ判決要旨で現在はお考えいただいた方がいいと思いますが、判決要旨は要旨でございまして、判決書の全文というものはまだ裁判所から示されていない。私どもも入手していないという状況でございます。したがいまして、要旨は若干要約されておると思いますけれども、その要旨の方には、先ほどお読み上げの内容のように詳しくは出ておりませんけれども、大体それに近いようなことが書かれておるわけでございます。
  26. 大出俊

    大出委員 なぜ私が論告の方を読んだかといいますと、判決は出されましたが、要旨でなく全体がそろうのはまだ大分時間がかかります。時間がかかってへ確定して判決で出てくれば大変長いものになっておると思いますが、いま要旨でございますから、そこで決まっている昨年七月の論告の方を読んだということでございます。  さて、もう一点、いま判決の方がとおっしゃるから判決を申し上げますが、大久保利春という方が直接全日空の藤原企画室長から言われてコーチャン、クラッターという手順を踏んだわけでございます。  そこで、判決の方を申し上げます。「藤原は『明日L一〇一一を」、トライスターであります。ロッキード社の一〇一一という飛行機、これを「決定したいと思っているが、それに先立って全日空がこの件でお世話になっている方々にお礼をしたい。」先ほどの論告の趣旨と全く同じであります。「それを全日空からということを明示して丸紅側で渡してほしい。』と言っている。」と聞いた旨証言している」。ちゃんと証言している。そのことを判決は、この論告をそのとおり受けて書いております。同じことであります。簡略に書いておるだけであります。  さて、もう一つ、これは判決の要旨の八十八ページであります。伊藤宏当時の丸紅の社長室長、それから松井直航空機部長二人が、いろいろな配分の案が出ましたが、最終的に金額の配分を決めた。「その場で伊藤及び松井の両名は、全日空側からの右依頼の趣旨に基づいて配付金額を協議した結果、被告人橋本と二階堂に各五〇〇万円、佐々木と福永に各三〇〇万円、被告人佐藤と加藤に各二〇〇万円とし、残る一、〇〇〇万円は別途丸紅からの謝礼として総理大臣田中角榮に供与することを決めた。そのすぐ後、伊藤は副島を呼び、」副島というのは丸紅の社長室の秘書課長であります。「副島を呼び、佐々木、福永に各三〇〇万円、被告人佐藤、加藤に各二〇〇万円を届けること及び金を届けるときは直接本人に会って全日空からのお礼である旨を述べて手渡すべきことを指示し、なお、二階堂及び被告人橋本には自ら届けることを告げた。」判決文の要旨に明確に書いてあります。  つまり、二階堂さんと橋本さんには伊藤宏社長室長が自分で届ける。その他の皆さん、佐藤孝行氏と加藤六月さんあるいは福永、佐々木という方々に副島君、君が持っていってくれ。  ついでに申し上げておきますが、後の項に詳しく書いておりますが、冗長に流れますから引用いたしませんが、もう一人田中さんに対する一千万というのは伊藤宏さんが届ける。これが料亭「木の下」で榎本さんに届けるという場面になる。副島社長室秘書課長が同席をしているわけでありますが、そういう流れがここに明確にうたわれているわけであります。この点も間違いないですな、刑事局長
  27. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 判決要旨の、先ほど御指摘のありましたように、八十八ページから八十九ページにかけまして、先ほどお読み上げになりましたような判決文といいますか、記載があることは事実でございます。  なお、田中角榮氏に関する一千万円の供与事実につきましては、判決要旨自体では触れておりません。
  28. 大出俊

    大出委員 ここはあなたの方から答えていただきたいのでございますが、金を届けるくだり、この判決の中にこの金を届けるくだりが載っておりますが、つまり橋本さん、そして、その中に12345と、こうございまして、あわせて流れとして二階堂さん、こういうふうになっているわけでありますが、そこのところはどういうふうに書いてありますか、判決文は。前田さん。
  29. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 大出委員の流れとおっしゃいますのは、実際に金を交付したといいますか、手交したということについてであろうと思いますが、改めて申し上げるまでもございませんが、この判決は被告人とされております橋本、佐藤両氏に対するものでございまして、その両氏に対する事実関係は詳細に書いてあるわけでございます。これは当然のことでございますが、他の関係者の方々につきましては、その両名の被告人とされている方々の事実認定に関係のある限度で言及するというのが、判決としての当然のたてまえであろうと思うわけでございます。  したがいまして、他の方々につきましては、伊藤宏証人あるいは副島証人の調書の信用性ということに関します裁判所の判断を示しているくだりにおきまして若干触れている程度でございます。
  30. 大出俊

    大出委員 私の方から言いましょう、いま要約しておっしゃいましたから。判決文の百三十九ページ。百三十八ページから続いているわけでございますけれども、「伊藤の供述する」——1から申しましょう。「関係各証拠を総合すれば、伊藤が茂木を介し被告人橋本に現金五〇〇万円を手交するに至った経緯について、判示(第六・一ないし五)の事実が認められること」。  「2 伊藤の供述する被告人橋本の私邸の状況は同私邸の写真とおおむね符合している」。つまり、橋本さんのお宅に行ってお渡しをしようと思ったら、橋本さん御自身が、後から秘書の茂木がおたくの会社に参りますと言った、持って帰ってきた、このくだりであります。  「3 伊藤の使用していた名刺整理箱の中にあった茂木の名刺は、伊藤の「茂木に対し本件五〇〇万円を手交した際、初対面であった同人と名刺交換をしたと思う。同人とはその時一回だけしか会っていない。」旨の証言を裏付けるものであること」。  4、ここに出てくるわけであります。「被告人橋本のほか、自己が金員の配付方を分担した二階堂についても、その交付状況等を具体的に供述していること」。ここに出てくる。橋本さんのものはきわめて詳細に受け渡しがここに書かれています。いま刑事局長いみじくもおっしゃいましたように、起訴されているのは橋本さんと佐藤さんと二人だから、ここのところを詳細に書くのはあたりまえ。だが、先ほど冒頭に私が申し上げましたように、この事件は同じところにポイントがある。三千万の金をいかに配分をし、いかに届けたか、だれが何のためにどこへ、この流れを明らかにする責任があるから書いている。「4 被告人橋本のほか、自己が金員の配付方を分担した二階堂についても、その交付状況等を具体的に供述していること」。  「5 伊藤の本件金員授受に関する前記証言は、被告人橋本にとって刑事責任上極めて不利益なものであるところ、伊藤には、同被告人と利害が対立しているなど虚構をねつ造してまで右証言をしなければならないような事情は全く認められないうえ、本件金員の授受を全面的に否認している同被告人の面前において、あえて右証言をしていることなどに徴し、十分信用に値いするものと言わなければならない。」伊藤証言の信用性をきわめて高く評価をして判決の理由に書いている。  この真ん中に二階堂さんに渡すところのくだりが出ているんだが、「交付状況等を具体的に供述している」というふうにまとめて書いてある。  しからば、一体どう供述しているか。ここに「ロッキード法廷全記録」というのがございます。ここに載っております。  ここで要約をして申し上げますと——要約といっても中身はそのとおりでありますが、これは日にちは昭和五十三年四月三日、全日空ルート第四十七回公判の公判廷であります。   検事 二階堂先生とは公邸で会ったのです  か。   伊藤 応接間だったと思います。先生は鹿児  島出身で、以前から丸紅には鹿児島の埋立地に  畜産、養鶏のえさ工場をつくる話がありました  ので、そういう話を説明かたがた申し上げまし  た。   検事 二階堂先生は受け取ったのですか。   伊藤 受け取っていただきました。   検事 受け取るのに抵抗がある様子でした  か。   伊藤 ございません。   検事 逆に喜んで受け取った状況ですか。   伊藤 きわめて自然に受け取っていただきま  した。   検事 先生とは初対面だったのですか。   伊藤 そうです。   検事 本人に間違いないですか。   伊藤 当時の官房長官でもあるし、パーテ  ィーなどでお見かけし、顔は知っていました。  御本人に間違いございません。  これが二階堂さんにかかわる法廷の記録であります。  刑事局長、本来法廷記録というものは、裁判が結審をいたしておりません、終結をいたしておりませんから、傍聴をしている人たちの記憶にとどまった範囲、これは認められていますね。メモをとることは認められていない。だから、いま私どもが出ていって、この法廷記録を見せてくれとなかなか言いにくい。だが、傍聴人があって、公開されている法廷でございますから、詳細のものが出てくるのは当然であります。  前田さん、この件、お認めになりますか。
  31. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいまお尋ねの点は、大出委員の仰せになるとおりでございまして、公判記録そのものは裁判所の管理にある、まだ現に裁判係属中のものでございますから、それ自体は公にしがたいわけでございますけれども、当時もちろん傍聴人もおられたわけでございますし、新聞記者も入っていたわけでございまして、その新聞記者が記事にするということも当然あり得るわけでございまして、そういう意味におきまして、その内容は、その限度で公になっているというふうに理解されるわけでございます。  先ほど御引用の報道記事、まあ言葉の細かいところまで正確かどうかということになりますと、そこまでは申しかねますけれども、実質的にはそのとおりであったというふうに思います。
  32. 大出俊

    大出委員 いま私の同僚稲葉さんに御助言をいただいたわけでございますが、御経験の本来ある稲葉さんでございますから、いま新聞記者の皆さんは法廷でメモをとることを認められているということでございましたから、そうでございます。だから、これは間違うはずはないのでありまして、刑事局長もお認めでございます。  これが先ほど私が判決文の方で読み上げました「交付状況等を具体的に供述していること」という具体的の中身であります。  さて、副島さんという方、先ほど来申し上げております社長室秘書課長さん、この方が、以下、福永さんに対する、届けたときのやりとりのいきさつ、それから佐藤孝行さんの部屋に行ったときのいきさつ、それから加藤六月さんに対するいきさつ、皆述べております。  ほかは省略をいたしまして、加藤さんの件だけ申し上げますと、午後一時ごろ——これは公判廷が伊藤さんのときとは違います。念のために申し上げておきますが、五十三年三月六日、第四十三回公判でございます。ここで、午後一時ごろ、運輸省の政務次官室で加藤六月さんにお渡しをした、こういうわけでありますが、副島「秘書官に取り次ぎを頼むと、秘書官は、右側のドアをあけて入っていき、私も招じ入れられました。先生と思われる方に頭を下げ、全日空から預かっているものだと言って渡しました。」こういうふうにここで証言をいたしているのでございます。  これももう重複をいたしますから刑事局長に承りませんが、先ほどと同じ、つまりこの公判廷は、任意性のきわめて高い、こういう言葉がよく使われますが、身柄拘束をされているわけではない、証人という資格で出ている公判廷でございますから、否認をすることも何ら差し支えない、自由でございます。自由でございますが、先ほど判決文を読み上げましたように、被告人御本人がいる前で、特段捏造しなければならぬ何らの理由のないままにありのままを話をした、こういうふうに裁判長は断じているわけでございまして、これで総理にもおわかりをいただけたし、お聞きの皆さんにもおわかりをいただけたと思う。  御本人たちが否定をなさる、これはまた別な問題でございます。法治国家の一審の判決でございますから、この判決が今日ある限り、この点をわれわれは先ほどのいろいろな方のお話のように、厳粛に受けとめてと総理もおっしゃいましたが、そう受けとめざるを得ない。  だから、今日的政治倫理確立というのは一体何か。この焦点になっている、検事求刑以来判決の理由の中にここまで明確に書かれている金の授受、何のためにだれがどこで相談をして、どう配分をして、だれがどこに、だれに届けたかという点が全部明らかにされている。これが三十ユニット、ロッキード事件全日空ルートの判決だ。同じなんですよ。ただし、職務権限その他を含めて請託があり、受託をした、受託収賄なら五年だから、単純収賄なら三年だから、片っ方は時効だが片っ方は時効でない、だから起訴、不起訴にする、こういうことになるだけのことです。  したがって、いま問われているのは、どこの新聞の社説を見たってみんなそうですけれども、ほとんどの新聞どれを見たって、例のいまの私が申し述べているところを否定されているわけでございますから、明らかにしてもらいたい、そうしなければ政治倫理確立はできないではないかというのがほとんどの新聞の社説です。  もう一点申し上げます。  昭和五十六年七月十四日に二階堂さんから上申書が出されました。議運の理事会あるいは委員会を通じたか知りませんが、議事録に残すことになって、「参照」という表題が入っておりますが、議事録に全部載っております。この二階堂さんの上申書の中で、「本員にいささかなりとも身に覚えのあることであれば、国会議員という公的立場にある者として、どのような処置も甘受しなければならないのは当然です。」こういうようにおうたいになられまして、「事実を公表する以上は、その議員に、資料の検討、反論、反対立証の機会を十分保障し、国会の責任において事実の確認の手続をとる必要があると思います。」これは当然でしょう。議論の余地はありません。二階堂さんのおっしゃっているとおりです。新聞にも言っておりますけれども、死刑になったって無罪になる人もいる。そのとおりであります。おっしゃるとおりです。「資料の検討、反論、反対立証の機会を十分保障し、国会の責任において事実の確認の手続をとる必要があると思います。」おっしゃるとおりです。間違いありません。「国会は検察当局に抽象的な報告を求めるべきではなく、全資料の提出を求めるべきであり、検察当局の一方的判断に基づく報告を許すべきではないと思います。」つまり、これも御意見としてわかります。だから、検察が一方的に断じたのであるということになった、そうではないという反論を事実をもってお考えになっておいでになるなら、検察のこの判断に対する反論をして当然です。前段にある反論の場がだから必要になる、当然のことです。  かつまた、加藤六月さんの方も同様でございまして、再三再四新聞にもおっしゃっておいでになりますが、また周辺の方から私に、いずれにしても証言の場所をこしらえてもらいたいというお話が公式にあったりいたしましたが、確かに一方的な認定、断罪は困る、反論の場所を与えろ、こうおっしゃっておいでになる、加藤さんも。  ここまで来ておるのに、総裁であり総理である鈴木さんが、あなたが一体なぜ一昨日のような全く他人ごとの答弁をなさるのですか。事の焦点は明確ではないですか。なぜあなたは前に出て、総裁として、今日のこの議会の——確かに行政府でございますが、最高の責任者です。今日の民主的な議会制民主主義が正当に進むかどうかということに対する一方の最大の責任が、総理としてあなたにはおありになる。なぜお逃げになるか。あなたが積極的に証人喚問の場所をつくる努力をするとなぜおっしゃらないのか。それでなければ総理の責任を負えない。ここではっきり積極的に、御両人がおっしゃっているのだから、証言の場所をつくる、黒白をつける場所をつくる、努力をすると、総理として、総裁として明確に答えてください。いかがでございますか。
  33. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 何か大出さんは、私が逃げておる、こういうように受けとめていらっしゃるようでございますが、決してさようなことはございません。すでに私は、倫理委員会の設置の問題あるいは議院証言法の改正の問題、そういう問題を含めてこれらの問題に対して国民の疑惑を晴らすという政治的、道義的な問題については、党に対しても、執行部に対して指示をして、各党と十分話し合いをして進めるようにということを言っておるわけでございます。  もうここで申し上げるまでもないことでございますが、私は、総理大臣でありますと同時に党総裁でもございます。しかし、三権分立の立場におきまして、その事柄をわきまえながら、党総裁の立場としては、党執行部に対してそれを指示し、そして各党と十分協議をしてこれを進めるように、こういうことを言っておるわけでございます。
  34. 大出俊

    大出委員 まず、予算理事会もずいぶん苦労して問題を詰めておいでになった。また、衆議院の議院運営委員会、また議運の理事会も大変に苦労して事をお詰めになってこられた。  さて、その前に法務委員会に小委員会等がつくられまして、法務委員会の証言に関する小委員会、小委員長上村千一郎さん、そして五十五年四月四日に議運の理事会に上村千一郎さんが出席をして、法務委員会の証言法改正に関する小委員会、ここから議運の方に、証言法改正のために合計二年間かかっているのですけれども、あとを譲り渡す、なぜならば本来議運の所管だからであります。五十五年四月四日に議運理事会に上村小委員長出席をして、小委員会としては六項目を各党で合意した。八項目ございますが、ここにございます八項目の中で六項目合意をした。二項目については意見が分かれております。したがって、意見が分かれているこの点を、あとは議運で取りまとめてくださいと説明をして、議運の所管に戻したわけであります。  そこで、議長の諮問機関である議会制度協議会で、正副議長が出席をして、議長が物を言って、新聞に出ているとおりであります。ここで、そちらで引き取って協議が今日まで続けられてきている。しかも、この過程には、六項目は合意している、二項目は意見が分かれているということでずっと進んでまいりまして、国対委員長会談におきましても六月十日に、与野党国対委員長会談でございますが、議院証言法については六項目が合意されている、二項目について意見が分かれている、だったら何とか努力すればまとまるな、これは田村自民党国対委員長さんの発言であります。記録はございませんが、メモがございます。公的なものとして、この六項目合意、二項目が合意していないということでずっと進んできて、予算理事会でも昨晩遅くまでかかって、何とかこの国会で間に合うように、いまも私が申し上げた六月十日、「六月十日の与野党国会対策委員長会談の合意に基づき、現在、議会制度協議会小委員会に於て検討中の議院証言法の改正等については、これを促進することを要望し、証人喚問が今国会中に実現出来るよう鋭意努力する。」ゆうべ苦労されてまとまった予算理事会の文言です。  さて皆さん、ところが、けさの新聞にでかでかとこういうものが載っかってたんじゃ——私は、この間予算理事会で理事の代理で出ましたときに、ここに三原さんもおいでになるけれども、引き延ばされようといういまの姿勢は納得できぬと言ったら私は大変怒られた。だけれども、けさの新聞ごらんなさい。皆さん、これはどうなんです。「証言法改正 自民また引き延ばし 「協議中の案は私案」」どこでこれを明らかにしたかというと、二回開かれております議院証言法改正並びに国政調査権行使に関する調査特別委員会、昨日の午後四時、自民党院内役員室において開かれた。確かに皆さんの中の問題には違いない。違いないけれども、これは読売新聞だが、読売だけじゃない、毎日にも東京にも朝日にも全部載っかっている。ていよくわれわれはペテンにかかった。言葉が悪いかもしらぬけれども、ペテンとあえて言いたい。  なぜならば、いままで延々と二年にわたって一生懸命お互い努力をしてまとめようとしてきた議院証言法改正の問題が、しかも、この間にアメリカにまで国費を使って皆さんが足を運んで研究をされておる。西ドイツからもイギリスからも議院証言法にかかわる資料を全部とって、みんなこれは議会から金が出ているでしょう。そうして、五十二年九月十七日には皆さんがアメリカに行っているでしょう。そこまで努力をして、やっと六項まとまっているな、あと二項残っているなとなっているのに、今日までこの八項目の自民党案でいいということできたのに、何といままでの八項目は森美秀君の私案である、自民党の案ではないと、こう言う。自民党の案は二十五日までに決めると、こう言う。振り出し以前に戻るじゃないですか。二年間何やったんだ。こういうことをやられて、これは黙って引き下がれぬ。  あなたは先ほど、総裁でもあるとちゃんとお述べになった。あなたは、逃げようとしてないと私に反論された。あなたの党がこんな逃げ方になっているのを、いまここで直ちに党にお帰りになって竹下委員会と称するこの委員会の、いままでこんなに各党が努力したものは全部私案、森君の案であって自民党案でない、自民党案は改めて二十五日までにつくる、こんなばかげた話は直していらっしゃい。そうでなければ、私はこれ以上質問を継続できない。答えてください。
  35. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま大出さんから、引き延ばしに当たっているのではないか、こういう御質問がございましたが、私は、自由民主党は決して引き延ばしを図っているものではない、このように考えておりますし、その辺の詳しい事情はまだ私、報告を聞いておりません。しかし、決して引き延ばしをしたりすべき性質のものでございませんから、誠意を持ってこれに対処するように、私からも改めて指示をいたします。
  36. 大出俊

    大出委員 これは一体どういうことなんですか。この私案というのはどういうことですか。みんな一生懸命各党の方々が努力してきたのを、こまで来て、しかもゆうべ、予算委員会をきょうから開くということのためにやっとこさっとこ、まとまったのじゃないですか、これは。各党意見あるところを、各党理事が苦心惨たんしてやっとまとめて書いてあるじゃないですか。六月十日の与野党国対委員長会談、さっき私が申し上げたでしょう。六項目合意しているんだなとおたくの田村国対委員長も認めて、二項目が合意してないんだな、それなら精力的にやればまとまるなと合意した。それを「六月十日の与野党国会対策委員長会談の合意に基づき、現在、議会制度協議会小委員会に於て検討中の議院証言法の改正等については、」きのう予算理事会だって公に合意しているじゃないですか。それが何ですか、私案、森君の案だというのは。官房長官でも総理でもだれでもいいから何か言ってくださいよ。このままで引き下がれぬじゃないですか。これじゃこの国会に間に合いっこないじゃないですか、そんなことで引き下がれますか。
  37. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私の理解をしております限りでは、森美秀氏の私案と申し上げましたのは、正式には党の議を経ていないということを申し上げたわけであって、そのことは全く個人の、党に関係ない案だという意味ではございません。そういうふうには考えておりません。その証拠といたしまして、いま党内でこれを議論しております委員会、その竹下委員長自身が、六項目については各党の間で事実上合意をしているという認識は自分は持っている、こう申しておりますので、そこで明らかと思います。
  38. 大出俊

    大出委員 竹下委員長が——これは結局、いまのお話、言葉の上ではなかなかすらっとお述べになるけれども、宮澤流で、後になると何もなかったりするのがあなたのよくやることだから、これは信用できぬ。こっちをつかまえればこっちから抜けて、こっちをつかまえれば向こうに抜けちゃう、あなたの言っていることは。後になってよく見たらさっぱりわからない、これが宮澤流ですよ。それは大政治家なるゆえんかもしらぬけれども、もう一遍はっきりしてください。どういうことなんですか、これは自民党案と考えていいのか悪いのか。いけないのでしょう、党の機関の議を経ていないというのだから。どうなんですか。そんないいかげんな答弁がありますか。私案で通るわけないじゃないですか、国対委員長会談で合意しているのに。
  39. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 党議を経ていないという意味では、私案と申し上げるのが正確であるかもしれないが、そのときに実際話になりました六項目というものは、いまこの問題の委員長であります竹下氏自身が、六項目については合意がすでにあっておるという認識は自分は持っておる、こう言っております。その後に、ただ、そのときから二年近い時間がたっておりますから、事情の変更というものはあるだろうけれども、六項目については各党で合意しているという認識は持っている、竹下委員長自身がそう言っておりますから、したがいまして、その発端そのものは党の合意は得ておりませんでも、当然そういう認識を持ちつつ自民党としてはこの問題を取り扱っている、こうお考えいただいてよろしいと思います。
  40. 大出俊

    大出委員 きわめて不明快でございます。いま明快というやじが飛びましたが、明快じゃない。なぜならば、二十五日までに自民党案を改めてつくると、こう言う。改めてつくるというなら、いまのは私案じゃないですか。ちっとも明快じゃないじゃないですか。二十五日までに改めてつくるというのはどういうことなんですか。あなた、そんないいかげんな答弁がありますか。
  41. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私の承知しております限りでは、二十五日までに、今度は党の責任において案を提出するということでございまして、そのことが前の六項目と全く違っておりましたら、これはただいま御批判のようなことがあろうと思いますけれども、事実上六項目というものを踏んまえつつ党の案をつくる。全く同じであることはないと思いますけれども、私はそういうふうに考えております。
  42. 大出俊

    大出委員 官房長官、全く同じではないと思うけれどもとおっしゃる。明らかに今日のものは私案であって、議運でも、そこに議運の理事山口さんもいるけれども、また法務委員会で苦労された稲葉さんもいるけれども、二年もかかってやってきた。外国にまで行ってこの案を土台にしてやってきて、それが私案であって二十五日に新しいものをつくる、それは全く同じではない。  大変むずかしい問題なんだ。議院証言法に基づいて証人喚問が行われた、質問をする、この質問について重複する質問は認めないというふうにたとえばするとすると、これだって考えようによってはいろいろなことができる。証言に立った方に近い方が先に質問をして全部聞いてしまった、後から聞けば、あれはさっき質問したのと同じじゃないか、質問しようがないじゃないですか。それは角度を変えて質問をするという苦心もすればあるいはできるかもしらぬが、大きく制約されるでしょう。ちょっと違ったって、この議院証言法というものは、事の真相を明らかにすることができないということにさえつながる。  そういうことだから二年間もかかっている。外国に行ったりいろいろして、本当に長い期間、法務委員会に小委員会をつくってやってきた、議運でやった、今度議運に議長の諮問機関である小委員会をつくってやってきた。それをあっさり、それは私案だ、それじゃいままで何をやったんだ。そこで改めて案をつくる、その案は全く同じものではなかろうとあなたはおっしゃる。だから、新聞は引き延ばしと書くんですよ、私が言わぬでも。言っているじゃないですか、これは。そういう宮澤答弁、いいかげんな答弁で私はうんと言えない。私は、きょうは後のこともあるから、事の中心がわかればいいと思ってここに立っているのです、正直言って、本当に。答えてください。
  43. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私案と呼んでおりますのは、党議を経ていないからでございますが、実質上そういうものを基礎にいたしまして、そして、いま大出委員の言われましたようなことをこれから議会制度協議会で御協議になる、こういうことに了解をしております。
  44. 大出俊

    大出委員 総理、ひとつ総理からはっきり答えてください。どうするんですか、これは。
  45. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま大出さんと官房長官の質疑応答を私、伺っておりまして、この八項目のうち六項目については各党で意見の一致を見ておる、二項目が残っておる、こういう現状であるようでございます。  そこで、私案とか私案でないとかいう問題でなしに、これは今度自由民主党の中に設置されましたそのための責任機関である竹下議長が、六項目については十分党としてもこれを認めておる、確認しておる。残余の問題が党内でもいろいろ議論があるわけでございますが、そういうものを含めて、早急に結論を出して、そして議会制度協議会で御決定を願う、こういうことでございまして、決して引き延ばしのためにやっているというようなことでないことは御理解を願いたい、こう思います。
  46. 大出俊

    大出委員 当時の関係者の方々が、傍聴されたり委員で出てきたりしておいでになりますが、総理、これはこんなに長い間苦心惨たんしてきて、しかも、この国会の会期中に改正をして、改正をしたら証人喚問を否定しないということになっているのだから。そうでしょう。だから、一生懸命やっているのでしょう。それがどうしてもまとまらぬようなことにしようということになるとすれば、引き延ばしと言わざるを得ぬじゃないですか。だから物を言っているので、国民注視の的になっているこの問題の決着をつけなければならない、政治信頼の回復につながらない、だからというので一生懸命やっているのだから。  私も、きのうこの予算委員会のこれがまとまったときに、ならば、それでいいと思った。思ったら、けさ各紙にこう書かれたのでは放任できないでしょう。だから、六項目、さらに二項目、八項目というのは自民党さんの案に間違いはないのだということをここで確認願えるなら、あなたは総裁なんだから、それならそれでいいんですよ。そして、あなたがさっきお話しになったように、早急に証言法改正をまとめるようにあなたが指示をする、この二つをおっしゃるなら、この八項目に二年間もやってきたのだから、これはいろいろと手続上の不備はあったが自民党のものであるということをお認めになって、なお各種の合意がございますが、それに基づいて一日も早く証言法をまとめるように私も指示をすると、二つおっしゃっていただけませんか。でなければ、進めようがないじゃないですか。(「法務委員会をなめておるのか、法務委員会は国費を使って行ったんだぞ」と呼ぶ者あり)
  47. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 余り興奮せぬでください。  お答えいたします。  昨夕遅くまでかかって予算委員会で合意されたことを、私、非常に重く見ております。そして、これを議長の諮問機関である議会制度協議会等に対して実現方を御要請になっておる。そして、これを何とかこの国会中に実現をして喚問ができるようにしよう、予算委員会でもこういうお話し合いがなされた。これは各党の、共産党さんは別のようでございますけれども、信頼関係の上に立った話し合いであろう、こう思っております。  そこで、これを受けて自由民主党でも早急に党議をまとめなければなりません。したがって私は、引き延ばしのためにそういうことをやっているとか、そういうものでないことだけは明らかにいたしておきたい、こう思いますし、この申し合わせというものは各党の信義の上に立ってなされたものであるから、こういうことを尊重しながら自由民主党としても早急に結論を出し、この国会中に喚問等がなされるようにするようにということを指示したい、こう思っております。
  48. 大出俊

    大出委員 これは法務委員会の議事録第十二号でございますが、官房長官も先ほど自民党案ではないとおっしゃっておるのですが、この法務委員会の議事録によりますと、自民党案になっておるのですよ。   小委員会は、この申し合わせにより提出され  た各党の要綱及び小委員長私案として提出され  た「議院証言法等の改正要綱」を検討し、ま  た、参考人として学識経験者、弁護士等から意  見を聴取する等の審査を行い、さらに第八十七  回国会においては、自民党案として小委員長か  ら提出された「議院証言法等の改正要綱(案)」  について、文書による各党の意見が表明される  等審査を重ねてきましたが、結論を得るに至ら  なかったのであります。自民党案として小委員長から提出された、それがいまの八項目です。そして、これはどういう経緯でここに述べられているかというと、昭和五十五年四月四日に法務委員会が開かれまして、そこで「証人及び証言等に関する小委員長山崎武三郎君から発言を求められておりますので、これを許します。山崎武三郎君。」これが木村委員長の発言です。これに従って、いま私が読み上げた部分を山崎武三郎小委員長がお述べになっている。  もう一遍言いますが、「さらに第八十七回国会においては、自民党案として小委員長から提出された「議院証言法等の改正要綱(案)」について、文書による各党の意見が表明される等審査を重ねてきましたが、結論を得るに至らなかったのであります。」自民党案なんであります。どういうことなんですか、ここは。
  49. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は、大出委員の言われるとおりに了解をいたしております。先ほど、その私案云々というお話がございましたから、それを申し上げましたのは、議会制度協議会に提出されたもの、それは私案云々、こう言われましたから、そう承知しております。しかしながら、法務委員会で御議論になりましたものは、これは自民党の責任においてなされたものであります。
  50. 大出俊

    大出委員 宮澤さん、それがどうも困る。宮澤さんの御答弁というのは、先ほどから申し上げておるように、常にそうなるのだけれども、同じものなんですよ。ここで自民党案と言って山崎武三郎さんが出したものを、これが議運に行って経過を報告をされて、法務委員会の小委員会から議運に引き継いだ。同じものを持っていって引き継いだ。それがいま議会制度協議会の小委員会の案になっている。それが私案だというのですよ、これは。同じものなんです。違うものじゃない。いまあなたは、法務委員会の方は自民党の案だ、議会制度協議会の方に出ているのは別なもので私案だ。そうじゃない、同じものだ。はっきりしてくださいよ。
  51. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから一貫してお答えをしておるつもりなんでございますが、つまり、この問題には実体と形式の両方がございまして、実体的にはずっと法務委員会のときから同じ問題が問題になっているのだろう。八項目と六項目の区別はございますけれども、その点はそうだと私どもは考えているわけです。  でございますから、ずっと実体的には継続した御議論があって、そして法務委員会では八項目ございましたけれども、六項目の御合意だけがあって二項目について問題が残りましたので、そのときは自民党の責任の自民党案を御議論になっておった。しかし、結論が出ませんでした。今度議会制度協議会で、実体は同じ問題なんでございます、もう一遍議がございましたときに、いわゆる森案というもので御議論が始まった。それは法務委員会の御議論を実体的には踏んまえておるものでございますから、自民党が責任を持っておる案かとおっしゃれば、私はそうだとお答えするのに別にやぶさかではございませんが、八項目が六項目になって合意がございませんでしたから、そこで一遍形式的には事は切れているわけであって、改めて議会制度協議会に出しましたものは形式的には私案である、実体的には前を踏んまえておる、こういうことだと思います。
  52. 大出俊

    大出委員 いまの御答弁じゃ、その衝に当たった方はだれも納得しない。いいですか。いまの御答弁じゃ、その衝に当たった方はだれも納得ができないのですよ。自民党案ということで、小委員長報告にございますように二年もやってきて、それを引き継いだのだから同じものなんだ。だから、議会制度協議会の方に出されているものも山崎武三郎小委員長が自民党案と言っているものも同じものであり、同じ取り扱いなんだということをお認めになるなら、それでまとめる方法がある。同じものである、そういうふうにお認めになるなら、つまり法務委員会で自民党案と言われているもの、明らかになっているものを議会制度協議会に持ち込んだのですから、同じものであるということをお認めいただきたい。  そして、自民党案だ、だから、そこまで言ってしまうとまた言いにくいかもしらぬが、同じものだ。同じものを、片方は自民党案なんだから、だから同じものだということをお認めになって、そして目的は、一日も早く国民皆さんが注視の焦点に置いている議院証言法を改正して、ここで事の決着を明らかにする証人の喚問という問題でございますが、そこに事を運ぶ、そこに目的があるのですから、したがって一日も早くまとめるように、総裁であり総理なんですから、鈴木さんから党にそのことを強く御指示をいただけるということであるとすればまとめたいのですが、いかがでございますか。
  53. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御答弁申し上げます。  いま私も、当時の上村千一郎法務委員長からその当時の事情もお聞きをいたしました。で、自民党案として法務委員会に提案をいたしましたのは八項目でございます。そのうち六項目につきましては各党合意をされておるので、二項目だけがまだペンディングになって各党の調整を要する、こういう形になっておるということでございます。  そこで、いまその二項目の問題を含めて、自由民主党では竹下氏のもとにそれを急いでおる、そして議会制度協議会に正式に提案をして早急に結論を出したい、そして予算委員会理事会でお決めになった御趣旨に沿うようにしたい、こういうことを申し上げておるのでありまして、これは党対党の信義の上に進めたことでございますから、私としてはそれを尊重してそのように運びたい、そのように指示をしてまいるということにいたします。
  54. 大出俊

    大出委員 つまり、上村さんがお話ししたようですけれども、ここにございますが、八項目あるのですが、丸がついているのは合意のものでございまして、バツがついているのが未合意のものなんです。六つ丸がついていて、二つバツがついているんです。したがいまして、これが自民党案として法務委員会に出されて、これがいまの議会制度協議会の方に持ち込まれたわけですから、同じものであると最後にひとつ結論を出してください、同じものであると。そして、一日も早くひとつ証言法改正ができるように極力指示をする、こうおっしゃってください。
  55. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 その八項目につきましては同じものである、こういうことでございます。
  56. 大出俊

    大出委員 それじゃ、焦点はおわかりでございましょうから、総理おいでになると同時に総裁でございますから、党に極力ひとつ早急にまとめるように御指示を願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  57. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのように運びます。
  58. 大出俊

    大出委員 いまここで当時の責任者でございました横山利秋さんからもお話がございましたが、当時は八項目以外のものはなかったんだ、いろいろな話があったが、問題がしぼられて八つになった、こういうことでございますから、念のためにつけ加えさしていただきます。  以上、もろもろ申し上げましたが、事は議会制民主主義の根幹に触れる政治倫理確立ということでございますので、少し長く時間をとりましたが、ぜひひとつ意のあるところはお酌み取りいただいて、いろいろな意味の国民の注視、疑惑等ございましょうから、これを晴らして政治信頼を回復するという方向で御努力を願いたい、こう存じます。  ロッキード事件、三十ユニット、全日空関係の問題に関する六・八判決に関します質問をこれで終わります。  次に、経済関係の問題に入らしていただきたいと存じます。  新聞紙上ではいろいろと書かれております。また、いろいろな場所で述べられておりますが、簡単に言って歳入欠陥と称するものは、これは私は大きな政治責任がある、こう思っております。大体五十六年度四月までの資料がここにございますが、歳入欠陥と称するものはどれだけ出てくるのか。やれ一〇%の初めの方だとか終わりの方だとか大蔵大臣言っておられるようでありますけれども、そこらを含めまして決着のところはどういうことになるのか、そこらについてまずもってお答えいただきたい。
  59. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結論から申しますと、七月に入らないと確定したことはわかりません。わかりませんが、いままでの納付状況、それから五月の法人の申告、これは全部わかっておりませんので、何社かについてつまんで聞き取り調査をしてみました。そういうものから推定をいたしますと、税収については当初の予算見積もりよりも一〇%ちょっと、一一にはなるまい、一〇%二になるか三になるか四になるか、そこらのところはよくわからぬですが、大体二兆九千億プラス・マイナス千五百か千かという、これは想定でありますから、そこらの懸念があるということであって、詳しいことはまだわからない。  その次は、もう一つは、税収が減ればいろいろなところに影響があります。また、いろいろな税外収入の問題、それから不用額の問題、埋め合わせができますから、その結果差し引きいわゆる歳入欠陥というのは幾らになるかということは、税収の見積もりについてはある程度読めますが、そこらのところはまだはっきりわかりません。  また、委細については事務当局から説明させます。
  60. 大出俊

    大出委員 いまの件でもう一つ承りたいのですが、これはつまり減額補正以後ということになりますか。当初で計算すると幾らになるのですか。
  61. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私が申し上げたのは当初からのものを申し上げておりますから、それから当然減額の四千五百億円というものはすでに補正をいたしておりますから、それを引いた残りという問題が実際問題としては問題になってくるだろう、そう思っております。
  62. 大出俊

    大出委員 そうすると、これはまだわからぬ要素が少し残っておりますが、二兆四、五千億、補正以後足りなくなったということですな。何かつけ加えることがありますか、いまのその数字。
  63. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いま私が言った大体一〇%ちょっとというのは当初に対して申し上げた数字で、それから、二兆九千プラス・マイナス千か千五百億かというのは補正後の数字であります。二兆九千プラス・マイナス一千億円……(大出委員「それは補正以後ですか」と呼ぶ)その数字は補正後。
  64. 大出俊

    大出委員 ちょっとそれじゃ議事録に載っかっているんだからはっきりしてくださいよ。二兆九千億は当初だと最初お答えになった。だから、私が減額補正以後どうなったんだ、当初か減額補正以後かと言ったら、四千五百二十四億ですかな、減額補正をしておりますが、当然これからそれを差し引くんだと、こうおっしゃった。ところが、いまの話は何か逆のような感じがするんだが、私は三兆を超えるのだろうと思っておったので、これは減額以後ではないかと思っておるのです、この二兆九千億というのは。そこをはっきりしてください。
  65. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私が言ったのは全体の一〇%、一〇%というのは三十二兆何がしに対して言ったわけであって、それで減額補正をしております。したがって、五十六年度の減額補正後ということになると二兆九千億円プラス・マイナス千か千五百か、そこらのところはまだよくわからないということを申し上げたわけであります。
  66. 大出俊

    大出委員 当初から、三十二兆ぐらいですから、一〇%なら三兆二千億ですね。だから、これは恐らく減額補正以後の数字をあなたは言っておるのだろうと、こう思ったわけですがね。  そこで、なぜ一体こういうことになったのですかね、理由。
  67. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり、この税収の見積もりというものは大体一年半ぐらい前にやるわけであります。大体十月、十一月ぐらいのデータで十二月に最終見積もりを決めるわけでございます。当時としてはやはり経済見通し、これはどういうふうにこれからの経済が見通されるかということがもちろん一応基準になります、経済に関係がありますから。そういう経済見通しを、旧ベースで九・一というような名目経済成長を見通しておりまして、民間では大体一〇・一、低いところで七・八というような見積もりでございました。そういうようなことの見積もりの中で、いろいろ細かい専門的なやり方は知りませんが、主計局で見積もって、それで一応税収の見積もりを出した。  ところが、その後になりまして、特に去年の後半に至ってから世界経済の予想外の停滞、特に十二月過ぎてからの貿易の急激な落ち込みというようなこともあり、要するに経済の伸び悩みといいますか、足踏み状態、物価の意外な、予想外の鎮静、そういうもののために急激に後になって落ち込んでいったというのが実態でございます。  委細については事務当局から説明させます。
  68. 大出俊

    大出委員 事務当局は後で細かく聞きますからいまのところはいいのですが、どうも渡辺大蔵大臣のこの問題をめぐる発言はまことに乱暴で、暴言ですな、これは。大蔵大臣がこんなことを言っちゃってはおさまりついたものではないですよ。これなどは、とにかく五十六年度の物価が下がったから責任もヘチマもないと言うのでしょう、あなた。責任もヘチマもない、これは最初に、自分で言ったことがわかっているのだろうから、ひとつ何でこんなことを言ったのか。予想外に物価がどんどん下がってしまったのだから、印紙税が落っこったり物品税が落っこったり、そんなのはあたりまえだ、そんなもの一々責任とっていたらたまったものじゃない、責任もヘチマもない、そんなことを大蔵大臣が言っちゃったら、後で経済企画庁の河本さんの方のだれか知らぬけれども、物価が下がったことが悪であるかのようなことを言われたら困ると抗議をしたとかなんとかいうのだけれども、そりゃ私はあなたの性格を知らぬわけではないけれども、これはどうも幾ら何でもひど過ぎると思うのだが、あなたは自分で言ってどう思っていますか。
  69. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 言葉遣いにつきましては深く反省をいたしております。  私は、税収というのが実質というよりもむしろ名目成長に非常に大きな関係がある。税金というのは名目に課税をいたしますから、たとえば所得税にしても、物価が上がったからといって引き算してくれるわけじゃありません、名目所得に課税をする。したがって、名目成長というのは税収に非常に密接な関係がございます。  そこで、御承知のとおり、物価の中でも、後で私、調べてみたのですが、過去にも税収の見込み違いといった年がたくさんございます。そういうようなときを幾つか拾ってみると、物価が……(発言する者あり)私、言ったことの真意をいま説明しているわけですから、ちょっとひとつ聞いてください。物価が異常に鎮静したときには意外に税収が減るという事実関係が実際ある。たとえて言えば、昭和四十八年の狂乱物価という年がございます。このときは、予算を組むときには卸売物価二%平均と実は見ちゃったわけです、途中であんなに狂乱になるとはだれも思っておりませんから。ところが、二二%というような卸売物価になった。したがって、名目GNPも一六・四が二一になった。その年は税収は当初に対して二〇・六%余分に入ってきた。要するに十一兆と見込んだものが十三兆三千も入ったということが一つございます。  それに似たようなのが四十九年、狂乱物価の続きの年。そのときも名目で一二・九の成長を見込んだところが一八になった。卸売物価が一四・六と思ったのが二三・五になった。このときも税収は九・三%ばかり余分に、予想外に伸びがあったわけであります。  ところが、その反動を受けまして、昭和五十年という年を見ますと、実は当初十七兆を見込んだわけです。そのときはまだ狂乱物価の後影響があるだろう、まだ続くだろうと思って七・九%の卸売物価、名目GNPは一五・九を見込んで予算を組んだわけです。ところが、結果はどうであるかというと、卸売物価は急速に減って一・九になっちゃった。そういうときにはまた逆に二〇・七という税収不足ということで、十七兆が十三兆しか入らぬ。三兆五千億から八千億足りないというようなことがあるものですから、ことしの問題につきましても、要するに名目成長というものが九・一九ベースでやったものが五・二、これは物価の予想外の安定で、卸売物価も四・一と見たら一・四になった。このこと自体は消費者物価にも非常に影響してくるわけですが、国民生活の安定に役立ったことは事実です。しかしながら、先ほど言ったように物品税、印紙税というようなものがへこむということになるし、あるいは消費者物価が落ちつくとやはり賃上げ要求というものもなだらかになることも事実でございます。もちろん賃上げという問題等にも影響があります。したがって、そういうことがみんな重なって予想外に減ったんだということをわかりやすく申し上げた点でございますから、あしからず御了承を願いたいと存じます。
  70. 大出俊

    大出委員 こんなに大変な歳入欠陥が生じて、しまったと思って——藤田理事の当時の質問の議事録などを読みますと、ずいぶん大きなことを言っていますよ、あなた。あなたのところの主税局長の福田何がしなどはここで憤然として、そのとおりにならなければすべて私の責任ですなんということを言って、さすがに藤田氏は逆に腹を立てて物を言っております。あの福田何がしという主税局長さんがここは私が責任をとると言ったのだから、たんかを切ったとここに書いてありますけれども、この人は責任をとってもらわなければ困る。どこかで何とか局長になったというのだけれども、こんなばかな話はないので、ここへ来てもらって、当時、私が責任を負うと言ったのだから負ってもらわなければ困る。後で呼んでください、ここにいるかいないか知らぬけれども。  あなたの暴言には許しがたいことが数々ある。まずここで、記者があなたが言ったとおりに書いているのを言いますが、五十六年度は卸売物価が四・一%上がると思ったが一・四%になっちゃった、その結果、月給も上がらなかったけれども物価はもっと上がらなかった、月給が上がり損ねた分だけ源泉税が減った、物価が上がり損ねた分だけ法人税と物品税と印紙税が減った、これは簡単明快なんですよ、政治責任もヘチマもないんだよ、こう言う。あなた、こういうむちゃくちゃなことを言ってはいけませんですよ。  河本さん、賃金は、賃金そのものずばりではありませんけれども、個人所得の伸びですね。あなたの方は一体これはどういうふうに見ておったのですか。どのくらいあると思ったの、賃金がえらい下がってしまったと言うけれども。
  71. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 五十六年度の雇用者所得、一人当たり七・五と見ておりました。雇用者の数が約一・六%ふえると想定をしておりましたので、その分を加えますと雇用者全体の所得は九・二%ふえる、このように考えておりましたが、大企業の方はおおむねそういう数字になったと思いますけれども、中小企業の状態が予想外に悪くて、中小企業の雇用者所得というものが非常に大幅に減ったように思います。そこで、当初考えておりました一人当たりの平均の雇用者所得並びに全体としての雇用者所得は相当減った、こういうことでございます。
  72. 大出俊

    大出委員 それから、物品税だの印紙税だのとあなたは言うのだけれども、これは初めからわかっていたのじゃないの。消費者物価だって何回か下方修正しているでしょう。成長率を下方修正したたびに物価の方も五・五%から四・五に落としているでしょう、あなたの方は。河本さん、成長率を下方修正したその都度、私もおたくの物価調査課等に電話をかけて聞いてみたけれども、やはりその都度修正して落としてきている。あなた方の方はわかっているから、先ほど私が言った責任をとってもらわなければならぬ福田幸何がしというのが、ここで言っているのです。  この五十五年の物価動向その他をずっと見てきて、下方修正を途中になって二回もしているんだから、そこで予想よりもどうも物価が、幾らも違わない、最後は四’五と修正して四なんだから、したがって、物価の影響を受ける名目に対してかかる物品税の従価税的なもの、それから印紙税というような物価の影響を受けやすいものについてはどうもこの辺で何とか手直しをしなければしようがないなというふうに考えたから、源泉の方も、もう中小企業が少し落ちているというふうに考えたからこれは手直しをせざるを得ないというので、四千億何がしになったけれども減額補正を出したのです、こう言っているのです。だから、ちゃんと途中でわかっていてやることをやっているので、何もいきなり、あなたがここで言うように物価がどうのこうの、そんなこと初めからわかっておる。  そこで、問題の争点をもう一つ、あなたの責任を追及してもしようがないから、問題は何とかしなければいけない方に重点がありますから申し上げておきたいのですが、私がなぜこういう暴言は迷惑だと言っているかと言うと、あなたの方で先ほど長い答弁をされて、ぐあいの悪いときには長い答弁をされるのがあなたのくせだから長い答弁をされたが、では一体今日赤字国債というもの、あるいは四条国債、特例国債両方含めてですが、これから先行き一体どういうことになるか、二、三承っておきたいのです。  いま赤字国債あるいは特例国債あるいは四条国債含めて国債全体で、これがこれから一体どういうふうに回転していって、六十年から十年間払うわけですけれども、どういうことになるか。そこにまた、ここで大変な財政欠陥を生じたわけですけれども、上積みをされる。どこからどう考えてもそこに頼らざるを得なくなるというふうに思っているので、その前提となる、これから六十年以降元利の償還が始まるわけですが、国債費を含めて一体どういうことになるか、事務当局から答えてください。  時間がございませんから私の方から申し上げますが、私は、これ本当に政党政派の立場を離れても何とかしなければならぬという気が痛切にするのです。大変にゆゆしいことになったという気がするのです。  なぜかと言いますと、今日ここに、この間の予算委員会に大蔵省がお出しになった数字がございます。この数字を見ると、「昭和五十七〜六十九年度における国債償還額、国債残高、利払費についての仮定計算」、これは方々でよく使われている資料ですが、この仮定計算を見ると、五十七年、本年の年度末国債残高、時間がかかるから私が言いますが、九十二兆八千億、これはこの中に特例国債が三十七兆二千億ありますが、利払い費は一体幾らかというと六兆五千億ですよ。公共事業並みでしょう。公共事業費が六兆七千億ぐらいでしょう。五十八年、これは百兆超えてしまう。百兆九千億。五十九年が百六兆八千億。六十年、これはここまでくると百十兆五千億。それから、六十一年が百十二兆八千億、六十二年が百十三兆八千億、六十三年が百十五兆八千億、六十四年が百十五兆三千億。ついでだから言いますが、六十五年が百十三兆八千億、六十六年が百十三兆七千億、六十七年が百十五兆一千億、その次百十八兆四千億、六十九年百二十三兆四千億、こういうことになるのですね。これは利払い費だけ見ていってもいまの六兆五千億は来年七兆三千億になり、再来年七兆九千億になる。  一体、いまの六兆五千億、国債の年度末残高九十二兆八千億ということになると、国民一人当たりどのくらいの額になるのですか、だれか答えてください。
  73. 山口光秀

    山口(光)政府委員 五十七年度末の国民一人当たり公債残高は、約八十七万円でございます。
  74. 大出俊

    大出委員 利払い費が年間六兆五千億、九十二兆八千億円の五十七年度末の発行残高。これを国民一人当たりに割るというと八十七万ですか、私の方の計算で言うと七十八万円になりますが、大した変わりはない、おおむね八十万円前後ですね。このくらいになる。  これは一年三百六十五日ありますが、一日当たりどのくらいになるかと思って計算してみたのだが、計算したことありますか、一日当たり利払い。
  75. 山口光秀

    山口(光)政府委員 同じく五十七年度で一日当たりの利払い費は約百七十五億円でございます。
  76. 大出俊

    大出委員 これは計算してみてさすがに驚きましたが、何と五十七年末九十二兆八千億円、約九十三兆の国債が発行されている、発行残高。そこで、この年間利息をどれだけ払うのかと思って調べてみたら六兆五千億円。  公共事業費、この予算で一体幾らになっていますか、だれか答えてください。
  77. 山口光秀

    山口(光)政府委員 五十七年度の当初予算でございますが、六兆六千五百五十四億円でございます。
  78. 大出俊

    大出委員 六兆六千億ですね、いまのお話は。国債の利払いだけで年間六兆五千億。公共事業費、いま前倒しを一生懸命やってきたのでしょう。前倒しやってあとどうするのか、さっぱり皆さんお決めにならぬから、私の周辺の、地方の地場産業の一つである建設会社その他は何を言ってくるかというと、先行き不安で、いまもらった仕事を、あと仕事がないから食いつないでいかなければしようがないというわけです。あと追加発注を何かしてくれるのならいま何とかここで片づけたい、しかし、いまうっかりやっちゃったらあと仕事がありゃせぬ、どういうことに先生なりそうなんですかと聞いてくる。答えようがないでしょう。皆さん、どっち向いて走っているのかさっぱりわからぬのだから。  そういう状況の中でただ前倒しをしている、騒ぎになった後、追加がいいの悪いの言っている公共事業、この事業費が六兆六千億だというのに、九十二兆八千億円もいまこの年度末に残高として残る国債、この利息だけで、公共事業六兆六千億に対して六兆五千億円。穏やかでないですね。そして、国民一人当たり約八十万円の負担になる。どこかで税金で取られるわけです。当然でしょう。そこへ持ってきて、これは念のためにおわかりいただけやすいように計算をしてみたら、一日当たりの利払い費が何と百七十五億円。一日たったら百七十五億利払いをしていくのです。冗談じゃないですね。  こういう状況の中で、大変大きな歳入欠陥がまたまた起こったというわけですね。だから、物価が予想外に下がっちゃったんだとかなんとかいうことで、責任もヘチマもない、そんなことを言っていられる筋合いのものじゃないのだ、今日的状態というのは。これから一体国債というのはどういうことになっていくか。現状変更がない限りは、いまさっき私が大蔵省の数字に基づいて物を言ったとおりの大変なことになる。  そこで、念のためにもう一つ承っておきたいのですが、いまの鈴木総理政治生命をかけた、政治責任をかけたと言っておいでになる財政再建、特例国債からの脱却、こういうせりふからすると、仮にそれが可能になったとして六十年からの元利償還、五十九年までに国債依存体質を脱却するというのだから六十年からの元利の返還、これは一体どういうことになりますか。幾らくらい、ちょっとわずか十年間くらいなんだから、数字を言ってください。おたくの数字は持っているけれども、あなたの方から言ってもらいたいのだ。局長、初答弁なんだから答えてください。
  79. 山口光秀

    山口(光)政府委員 ことしの二月に本委員会に提出申し上げました資料、いろいろな仮定がございます。仮定に基づいた計算でございますが、先ほど大出委員が御紹介になりましたとおりでございます。  それで、六十年の要償還額が幾らになるかということでございますが、その一つのケースの場合でございますが、九兆六千七百億でございまして、四条債が七兆三千九百億、特例債が二兆二千八百億、こういうことになっております。
  80. 大出俊

    大出委員 ちょっといま私、聞き損ないましたが、少ししか聞けなかったのですが、私の手元にあるおたくの資料によると、つまり元利を含めまして六十年から返していく。ただ、これは主に三十八兆が特例国債でございまして、あとの四条国債というのは、六分の五は借りかえでございますから六分の一、その合計ということになりますね。  そして、これに対する元利償還、六十年が私の方の計算では三兆一千五百億、六十一年が四兆五千三百億、六十二年が五兆八千七百億、六十三年が四兆八千三百億、何と六十四年、六十五年なんかになりますと大変なこと、六十四年が七兆四千七百億払うのですよ。何と六十五年は八兆三千七百億円返さなければいかぬのですよ。ことしの予算の公共事業費は六兆六千億でしょう。六十五年八兆三千七百億、六十六年は六兆九千八百億、六十七年は五兆五千百億、六十八年が三兆七千五百億、六十九年が一兆九千七百億で、あと発行する条件がこの十年間全くなくなっているとすればこれで終わり。  皆さんがどうお考えになったって、幾ら総理政治生命をおかけになったって、四条国債にせよ特例国債にせよ、今日の状況で発行しないで済む環境はございませんね。  そうなると、こういう問題を抱えているところで三兆円近い歳入欠陥が起こった、そんなものは物価が予想外に下がったんだからしようがない、これはそういうわけにはいかないのだ。その意味の政治責任というのは一体どういうふうにお考えになるのか、総理に承りたい。いかがでございますか。
  81. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 五十六年度の税収が予想に反して非常に大きな税収欠陥が生じましたことは、まことに残念でございます。この処理につきましては、法律のお許しが出ておりますところの措置によりまして、国会の御承認を得て措置しなければならない、このように考えておるわけでございますが、五十七年度につきましても、げたがそれだけ低くなってまいりますから、五十七年度におきましても相当大きな税収の減ということが見込まれるわけでございます。したがって、これに対応いたしますためには、何といっても思い切った歳出等の見直し、また税収外の収入の確保等あらゆる工夫をこらしまして、できるだけこの肥大化してまいりましたところの財政体質というものをこの際改善をする、こういうことに全力を尽くしたい、このように考えておるわけでございます。  特に、御指摘のように、特例公債は六十年度から償還が始まります。したがって、この特例公債の償還をまた特例公債を発行しながら償還をしていくということでは、これは全くの悪循環であり、財政の体質の改善になりません。そこで、少なくとも特例公債につきましては、五十九年度までに特例公債依存の体質から脱却をしたい、そういう目標を掲げまして、それに向かって全力を尽くしておるというのが私のいまの考えでございます。
  82. 大出俊

    大出委員 これは私たくさん問題を抱えておりますから時間がありませんけれども、午後ひとつ、公約である総理の五十九年国債依存体質から脱却をすると言っているこの件については改めてまた承りたいと思っておりますが、午前中のところ、時間でございますから、とりあえずこれで途中で終わらせていただきます。
  83. 栗原祐幸

    栗原委員長 午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  84. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大出俊君。
  85. 大出俊

    大出委員 午前中、思わぬところで四、五十分時間がかかりまして、これは私の責任じゃないのだが、被害者でございますが、時間がなくなりました。  そこで、前川日銀総裁、大変お待たせをいたしましたので、冒頭にちょっと承っておきたいことがございます。  二、三点ございますが、一つは、これは六月二十一日の新聞でございますけれども、一時期円が二百五十七円六十銭だという、最安値ということになるのだと思うのであります。ベルサイユ・サミットで総理は成果を強調されておりますが、私は大失敗じゃないかという気がするのです。なぜかというと、アメリカのべらぼうな高金利、一六%くらいになったなんというようなのを、新聞紙上で見ますと激論はしたようでありますけれども、確かにアメリカもインフレを鎮静させようという努力をしていることはわからぬわけではないが、異常でございまして、そのことが各国通貨にストレートではね返る、株価を見ていればわかるわけでありますね。  そういう意味で、これは一体これからどういうことになるのか、どういう見通しをお持ちか。きょうの総理以下皆さんに、企画庁長官河本さん、大蔵大臣含めまして、これからの経済政策、景気対策を含めて、一体どっち向いて走るのだと聞きたいのですよ。その方針がないと、大きな企業はいいとして、中小零細企業などは、私が中小企業金融公庫の調査部長さんその他からいろいろな資料をいただいて見たら、本当に四苦八苦でありまして、明るいなというのは二年間で三カ月しかございません、数字を見まして。利益率は落ちっ放し、在庫はどんどんたまっていく。積み増しを考えるところというのは、在庫がたまり過ぎて積み増せないというところが三〇%ぐらいあって、何とか積み増しができるというのは一〇%足らず。数字がここに全部ありますが、細かく申し上げている時間がもうなくなりましたが、そういう状況でもございますから、格段の円安というものについてどういう見通しをお持ちなのか、どういうふうに対処をなさろうというのか。これからの経済運営のポイントの一つでありますから、お考えを承りたい。  どういうわけか、ここに幾つかの資料がありますが、いまのでなく、少し先の方がいいと思って、三月二日の日銀の企業短期経済観測調査、いわゆる短観ですね。これなんか見ますと、主要企業、製造業の五十六年十月−十二月の生産売上高は前回を非常に上回った、したがいまして、どうやら景気は心配したことはない、非常に楽観論を述べておられます。企業収益を見ると、五十六年度下期の製造業、これは石油を除いておりますが、非製造業も含めまして、前回調査よりは大分上方に修正される、そういう状況で上がってきているわけですね。だから、短観を見る限りは、不況風なんかはないですね。大変に楽観的な見通しがこう続く。大企業の指標を重視するという行き方は、私は感心しないと思うのです、中小企業の今日的状況を放任はできないと思うから。そういう意味で、なぜこう楽観的な短観、つまり経済見通しばかりをお出しになるのか。そこらのところをいまになって考えてみて、一体どうなんだということを承りたいと思う。  もう一つ、どうも理解しかねることが二つあるのです。一方では、これは二月の段階でありますけれども、前川さんが、成長率を高めるために無理な政策運営は行わないようにしてもらいたい、避けていただきたいということを相当強調されておりますね。時間がありませんから、中身は細かく言いませんけれども。  ところで、五月の末になってまいりますと、増税が許されないのなら国債の増発しかないんじゃないかというような空気が出てきて、前川さんが、赤字国債の増発による現実的な対応、何となくそう受け取れる物の言い方がまたここで出てくる。  なぜこれを聞いておきたいかといいますと、どうも大臣諸公おっしゃることがそれぞれ違うので、だから一体どっちを向いて、どういう経済政策をとっているのかということがはっきりしない。これじゃ、一億総がまんだというなら、総がまんという法だってある。なくはない。ところが、現実に起こっている経済状況、企業状況、企業収益、企業利益、中小零細企業など見ると、失業率もどんどんふえている、爆発をしかねないという要素もある、そういう状況を抱えているわけですからね。  そういう意味で、いま三点承りたいと申し上げたのだが、ひとつ率直にお話しいただけないか、こう思うのです。
  86. 前川春雄

    前川参考人 第一の円相場の問題でございますが、円相場につきましては、アメリカの高金利はなかなか下がらない。アメリカのインフレ率が六%台まで下がったわけですから、当然アメリカの金利は下がる筋合いであろうというふうに思います。ところが、案に相違して、金利は逆に上がっておるという環境が一番大きな背景であろうと思います。  それでは、なぜアメリカの金利が下がらないのか。これはいろいろ説明がございます。アメリカの財政の赤字が大きい。両院協議会の妥協ができましたけれども、赤字は依然として千億ドルを超えている。千億ドルというのは二十五兆円ですから、非常に大きな金額である。しかも、それはさらに八四年、五年と続くであろうということから、金利の先高感が出ておるということが一つ。  第二は、アメリカはああいうふうな金融の引き締め政策をとっておりまするけれども、マネーサプライがなかなか減らない。したがいまして、マネーサプライがふえますと、金融政策はさらに強化されるのではないかという心理状態が働きまして金利が上がるという、経済的に見まするとなかなか説明できない状況が続いておるわけでございます。  この二つの要素があるということから申しますると、いまのアメリカの金利は確かに高過ぎると思います。それから最近、過去一週間くらいの上がり方もまた異常であるというふうに思います。したがいまして、いまのアメリカのインフレ率がこういうふうに落ちついておる限り、あるいはアメリカの経済活動がリセッションで失業が多いということから言いますれば、当然下がるべき筋合いにあるというふうに考えております。  そういうことから申しますると、内外金利差というものも、これ以上は広がらないで済むことを私どもは期待しておるわけでございまして、そういう点から、いまの円安というのは——円だけではございません、ドイツマルクもほかの通貨もみんな安いわけでございまするが、アメリカのドル高というものにも恐らく限界があるだろうということを、期待を持って予想しておるわけでございます。  第二の成長率について、前に私が申し上げたことは、高い成長が実現できることは望ましいことである。雇用の点からいっても望ましいことだと思います。しかも、内需と外需との間の均衡のとれた成長が実現できることは望ましいと思います。ただ、成長率というものを経済計画の前提に立てたために、それを実現するために無理な政策をとることはインフレにつながるから、それは十分気をつけていただきたいというのが私の真意でございました。そういう意味で、成長率が低い方がいいというふうには思っておりません。高い方がいいと思っております。内需、外需の均衡がとれた成長が実現できることが望ましいというふうに考えておるわけでございます。これからの状況につきましても私は同様に考えております。ただ、成長率にとらわれる余り、物価あるいはその他の点で不合理な点が起こらないようにすることは十分気をつけてもらわなければいけないというふうに考えておるわけでございます。  最後に、短観についてでございまするが、短観は毎四半期ごとに発表しておりまするが、あれはもう過去三十年にわたりまして日本銀行が企業からちょうだいしておるアンケートの集計でございまして、日本銀行の判断が入っておるわけではございません。その時点において企業がどういうふうに見ておるかということの集計でございます。  その集計によりますると、確かに現在の経済状況は停滞基調が続くように皆さん見ておられる。しかし、それでは経済の回復基盤がここで損なわれているかという点につきましては、あのアンケートをちょうだいしてそれを集計した限りにおいては、経済回復の基盤自体は大きく損なわれてはいないというのがあのアンケートの結果でございます。  中小企業につきましては、大企業とは若干違う数字が出ております。やや悲観的な数字が出ております。これは中小企業は、御承知のように、個人の消費であるとかあるいは住宅関連のものが多いわけでございまするので、どうしてもいまのように消費、住宅が不振な折から、中小企業にそのしわが寄っているということはこれは否定できない事実であろうというふうに思っております。したがいまして、中小企業の状況につきましては、必ずしも現在満足すべき状態ではないという点は私どもも同感でございます。  経済のこれからの発展につきましては、そういう点も含めまして十分に注意してまいるつもりでございます。
  87. 大出俊

    大出委員 もう一、二質問がございますので、それを申し上げて、ひとつ御退席いただきたいと思うのでありますが、高過ぎる成長率を見通しに織り込むことは非常に危険な要素がある。私どもも党の内部で、金融政策委員会その他いろいろございまして議論をしましたが、やはり失業率、現実に失業者あるいは中小企業の状況等を考えますと、とは言いながら二・七%などということになったんではこれはどうもまずい、やはり四%くらいはなければいかぬだろうというわれわれの考え方も実はあるのです。  そこで、いまお話ございましたように、この中小企業などを見まして、これはどういう資料かといいますと「中小企業景況調査概要」、中小企業金融公庫六月一日のものでございますが、首都圏四百五十社、中京圏で百三十社、近畿圏で三百二十社、有効回答企業数五百六十一社、回答率六二・三%ということでございます。これを見ますと、四月下旬から五月上旬の売り上げは減少傾向にある、その企業割合が二二・四%。前月が一五・七。これは急激に増加したというのですね。非常に悪い。そして、増加傾向にある企業というのは一〇・五%。実はその前期は一八・五%あったのが一〇・五に落ちてしまった。これは業種も全部ここに書かれています。紙・紙加工品あるいは窯業・土石製品、生コン、砕石などでございますが、鉄鋼、鍛工品、線材品、磨き棒鋼あるいは精密機械、金属材料卸など大方の業種で減少した。これは非常に細かい精密なものでございまして、在庫の積み増しあるいは減少その他ずっと載っております。そして、利益率、利益も大変に減少している。三カ月先を見通して、なお一層減少するであろうというんです。余裕企業の割合というのは六・三%しかないんですね、資金繰りなんかを含めても。  すると、これは非常に中小企業はいま危機状況にある。ここに指標が幾つもございますけれども、この指標によりますと、何と二年間でどうやら明るかったなというのはわずか三カ月間しかないんですね。これはひどいものでして、だから、ずいぶん私も自分の選挙区でいろいろ聞いてみますけれども、これは本当に中小企業の皆さんの方向を向かないといかぬなという気持ちが最近痛切にしているのです。ここにお見せするように、これは数字が出ておりますが、この指標はわずか三カ月だけなんですね、二年間で。あとは全部つまり水面下に落ちちゃっている。明るさがないということ。細かく申し上げるともう時間がありませんから申し上げませんが、そういう状況ですから、短期観測わからぬわけではないけれども、もう少し中小企業の皆さんの立場に立って日銀も物を表へ出していただきたい。そうしないと、どうも大企業を中心に指標をとられていくということになりかねないですね。  そういう点を私は心配をしますので、御意見があれば承りたいのと、あわせて、いまの極端な円安。さっきお話がございましたが、マネーサプライなども、つい最近のアメリカの新聞で見る限りでございますけれども、減ると思ったら、インフレ率が鎮静していますから減るだろうと思ったら、逆に急激にふえている。ならば、引き締めをさらに強化しなければならぬ、あたりまえでございましょう。相当これが長期にわたるとすると対策はないということになりますか。この大変な円安対策というのはあるのかないのか、見ているよりしようがないのか、こういうことになりますか。そこの二つをお答えいただきたいのです。
  88. 前川春雄

    前川参考人 中小企業問題につきましては、大企業と同様に経済活動のかなりの部分を占めておるわけでございます。しかも、いま申し上げましたように、中小企業には消費あるいは住宅の不振というものがそのまま反映しがちであるということから、いまのような状況では特に中小企業に問題が起こりつつあるということはそのとおりであろうと思います。日本銀行のいたしまするのはマクロの全体の金融総量でいたしまするので、個々の業種別の金融施策というものをとるのは政府系の金融機関にお願いしておるわけでございます。  私ども、現在金融政策につきましては、基調といたしまして緩和政策をもうすでに二年半続けておる。財政が御承知のような状況でございまするので、財政からなかなか期待ができないというところでございまするので、金融面では緩和政策をとっておるわけでございます。その結果マネーサプライ、いわゆる日本のマネーサプライにつきましては、M2で見ておりまするけれども、前年に比べまして、三月までは過去六カ月問ぐらい大体前年比一〇%ぐらい高いところを走っておりました。四月から五月、ちょっとそれが下がって九%台でございます。マネーサプライが九とか一〇とかいうのは、いまの経済活動自身から申しますると危険な状態だとは申しません。申しませんけれども、許容できる最上限にあるというふうに思います。それは金融緩和政策の結果であって、私どもはそういう意味では十分金融全体としては緩和しておるというふうに考えております。いまのところではこの調子を続けていくつもりでおります。  ただ心配なのは、いまお話がございました円安でございまして、円安につきましては、内外金利差が非常に大きいためにどうしても資本が流出しがちであるということから、相場は為替の需給でございますから資金が流出をいたしまして外貨に対する需要が多ければどうしても円安になるというわけでございます。  そういう意味におきまして、私どもはもちろん、さっき申し上げましたように、アメリカの金利が当然下がるべき筋合いであろうと思いますし、下がることを期待しておりまするが、私どもの対応といたしましては、これ以上内外金利差が広がらないようにするということが最小限必要なことではないかというふうに考えております。短期の市場金利につきまして、私どもは三月以来きつ目に資金操作をしておるわけでございまして、そういう操作も、目的は内外金利差がこれ以上広がらないようにする、円安がこれ以上進まないようにするという考え方からやっておるわけでございまして、今後もそういう考え方を続けるつもりでございます。
  89. 大出俊

    大出委員 なおいろいろ申し上げなければならぬ点がございますが、時間の関係もございますから承るだけにいたします。  そこで、いま住宅の話も出ましたが、時間がありませんから端的にお答えいただきたいのですが、一体皆さんはこのべらぼうな三兆近い歳入欠陥、これをどうしようと考えているのか。あわせて五十七年度、これは放任できない。いま住宅の話が出ましたから住宅の数字を申し上げますと、五十年基準にいたしまして、当初見通し、住宅十六兆四千億、こういうことだった。この当初見通しというのは五十六年一月二十六日、実績見込みが五十六年十二月二十一日で十五兆五千億。実績で五十七年の六月、本年六月で十五兆。ところが、この五十七年度のつまり見通しは、住宅——私は、いま消費不況住宅不況、そして中小企業不況、こう言いたい、率直に言って。この住宅、これを十七兆七千億というふうに見ているのです、経済見通しでは。どうして、では十七兆七千億の数字が出てくるかと言うと、いま申し上げた五十七年六月十一日付のこれを見ると実績では十五兆円である、これに一四・三%を掛けた、そして十七兆七千億という数字が出てきた。百三十万戸。そうすると、五十六年でこれだけ落ち込んでしまっているものを、この十五兆五千億というところを、十六兆四千億から落ち込んできているところで、十七兆七千億という政策目標をお立てになうたって、こんなところへ行きっこないじゃないですか。いま前川さんもおっしゃっているように、住宅不況ですよ。そうすると、このまた五・二%の成長見通しというものについても大きな狂いが出てくることは、発射台が発射台なんだからなおのことそうなることは明らかだ。そうなると、ここで四兆もあるいは五兆も、一つ間違ったら歳入欠陥をまた再び生じかねないというふうに考えなければいかぬ。そうなると、合わせて、やれ六兆だ七兆だということだってあり得る。  さて、そこで承りたい。この経済見通し全般をどうするのかということ。あわせて、前半に公共事業の前倒しをやってきたのだから後、穴があくに違いない、だから経済効率は上がらない。なぜならば、穴があいたら仕事がなくなるのだからということで食い延ばして仕事をしているのだとすれば、前倒しの効果はない。それは総理外遊しておられて帰ってこないから政策決定できない、それで済むものではない。皆さん選挙区に行ってお聞きになればわかる。どうしたらよかんべえということになっている。そういう状態で、建設業なんか端的な例だが、放任はできないでしょう。  そうすると、方法は三つしかない。歳出の削減というのが一つある。増税というのが一つある。直間比率などをとらえて渡辺さんはまさに増税せんばかりのことをおっしゃったりしている。しかし、片方からは、増税はいけませんよという臨調の物の言い方もある。さてそこで、もう一つは赤字国債しかないでしょう。特例国債しかないでしょう、これは。そういうことになると、一体どっちの方向に行くのですか。  さて、宮澤さんは帰ってこられた総理のところへ行って、大幅な赤字国債を発行するよりしようがない、特例国債を出すよりしようがないでしょう、穴埋めするなら、公共事業じゃないのだから。その中には減税国債だ、われわれの方も取り込まなければうまくいかないからということかもしれません。しれませんが、そういう新聞記事がございますよ。私、後から申し上げたいのだが、大変なこれは所得税の取り過ぎだから減税はどうしてもやってもらわなければ困る、こう考えております。  そこで、経済企画庁長官の方は何を言うかと思えば、何とか後、追加発注を見込んで、四条国債でも出して景気刺激をしたい、こういうふうに物をおっしゃる。通産大臣の安倍さんの方もどうやらそういうことをおっしゃる。政調会長田中さんの方もそう言っておいでになる。ところが、大蔵省の方は、そんなことを言ったって、そんなことをすればまたまたもって国債の累積になってしまう。確かに、穴を掘るのも公共事業だといって福田総理のときに三二%も公共事業費を上げて、国債を結果的に増発した。公共事業というものがどういうふうにはね返るかという比率もここにある。その年だけだったわけですよ。ここで一兆円の国債を出して公共投資をすれば、その税収増加効果は一年目に二千億円ないし三千億円、二年目以降は減って、三カ年を累計しても五千億円そこそこという調査もある。つまり、いままでどんどんどんどん——ここに書いてありますのは、福田さんがそう言ったと書いてあるのだけれども、げっぷが出るほど公共事業をくっつけた、穴を掘るのも公共事業だ。結果的に、さっき私が数字を挙げましたように、べらぼうな国債の累積でしょう。  この三つ申し上げましたが、一体どっちに行くのですか、答えてください。総理、お答え願いたい。この穴をどうしようというのですか。そして、五十九年で赤字国債から脱却をすると言うが、断じてできない。そこのところ、藤田さんの質問で、あなたは政治責任を負うとおっしゃったが、負っていただかなければならぬ、そこにいま来ている。お答え願いたい。経企庁長官からで結構です。時間がありませんので簡単に。
  90. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 景気の動向は相当厳しい状態になっておりますので、さしあたっては公共事業の思い切った前倒しをやろう、こういうことでいま作業を進めております。これが誘い水になりまして、さらに後半は世界経済もある程度回復すると言っておりますので、民間経済に力が回復をいたしますならば後半はそのまま軌道に乗っていく、こう思っておりますが、そのとおりいかない、民間に力が出てこない、こういう場合には、これは公共事業を上半期に八割近くも前倒しをしますと後半は二割ぐらいでございますからどかんといってしまいます、経済の力が一遍に弱くなってくる。それではせっかく軌道に乗りかけてもまたもとに逆戻りということになりますので、そういう場合には需要が落ち込みをしないようにその時点におきまして対策を考えていこう、こういう基本的な考え方でございます。
  91. 大出俊

    大出委員 実は仲裁裁定問題等がありますからここでもう時間を使えないのですけれども、そういうお答えが出てくると申し上げざるを得ないのですね。  前にここで力んで答弁をなさった福田幸弘さんですか、主税局長さんですか、この方がやめて国税庁長官になってから物を言っているのだけれども、何でこんなにべらぼうな歳入欠陥ができたのだ、そうしたら、これは経済企画庁の経済見通しが悪いのだと言うわけだ。とんでもない高い経済見通しを立てるものだから、それで税金を集めようとしたって集まりはしない、実際はそこにないのだから、そう言うわけだ。そうしたら、今度は経済企画庁の方は何を言っているかというと、冗談言ってはいけない、最後の方になって何とか高い経済見通しにしてくれと言ってきたのはどこだ、大蔵省じゃないか、大蔵省は経済企画庁に、もうちょっと高くしてくれなければ、失業問題やその他を含めて諸般の情勢から見てこれはとてもじゃないが運営できなくなってしまう、だから、もうちょっと大蔵省側は上げてもらいたい、言ったのは大蔵省じゃないか、こうだ。これは一体どうなっているのだ。それじゃ、どっちを向いて走っていいかさっぱりわからぬ。  渡辺さん、あなた自身だってそうじゃないですか。経済企画庁の成長率、成長見通し五・二%、三%、そんなものは当たったことがない、当たったことがないものを相手にやっているのだから税収欠陥だってできる、あなた言っているじゃないか。新聞に書いてある。それでは、これは一体どっちを向いているの。片方の、そこから半分の方は、渡辺さんを含めて、景気刺激も一切そんなものは黙っていればいいのだ、臨調に任せておけ。そんなことを言ったって、三兆も五兆も六兆もの歳出削減なんかできやしませんよ。そんなことははっきりしているでしょう。だから、私はさっきわが党でも四%ぐらいの成長が必要だと言っていると申し上げている。わかりますか。それから、経済企画庁長官から、そこに通産大臣安倍さんいるけれども、そっちの方は、今度は何とか追加需要が必要だから、前倒しをしたのだから後の方、四条国債でも出してと、こう。そこに、中に挟まって官房長官までそっちの方に向いて物を言う。それで何もしないでこんなになってしまっているのでは——だから一億総がまんならがまん、それも一つの見識だと言うのだ、政策だと言うのだ。そうじゃなくて、中小企業以下こんなに落っこちてしまっているのだから、困るのだから何とかしなければと言うのならまた別の方法が出てくると言う。そこをあなた方がはっきりせぬでだれが一体責任を負うのですか。はっきりしてください。総理、いかがですか。
  92. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま大出議員のお話しになったことは、全く私そのとおりだと思うのです。これは本当に三すくみといいますか、実際問題として景気はよくしたい、だれでもそう思っております。じゃ、どうすればいいのだという問題にすぐぶつかるわけでありまして、世界じゅうどこの国も物価は抑えたい、景気はよくしたい、失業はなくしたい。世界じゅうみんなして考えておる問題でございますが、なかなか思うに任せないというのも現実の姿でございます。  そこで問題は、やはりある程度は時間も稼がなければならぬこともあるでしょう。日本だけが、世界の景気が上向かないときに、みんなマイナス成長だというときに、日本は幸い、残念かもしらぬが、二・七%成長できている、雇用もまあ世界では一番いい、物価も安定だ、それよりもまだまだ歳入欠陥というまずい問題がある、これも事実なんです。(「言いわけを聞いているんじゃない」と呼ぶ者あり)言いわけじゃなくて、そういう状態の中で……(「どうするんだ」と呼ぶ者あり)どうするんだ、そこなんですよ、問題は。  だから、そういう中で仮に余りあわてて成長をさらに伸ばそうとしてもなかなかむずかしい問題がございまして、インフレの問題との関係もないわけじゃありません。幸い、いま世の中静かなのは、物価が安定しているから静かなのであって、そこでしかし、賃金と物価との問題の間に実質初めてことしになってから——去年はもうかすかすかマイナスだ。実質賃金がマイナスだ。勤労者世帯では二月から三月にかけて実質収入が伸びているわけですね、三%、四%。実質消費支出も伸び始まっている。これが継続されれば景気につながることは間違いないわけでございまして、早急に、一カ月、二カ月とはいかないけれども、半年、一年かかる場合もございましょう。だから、そういう状態の中でそれをさらに加速するというやり方を——やり方によってはせっかくの物価の安定を押し上げてしまうというやり方もございます。しかし、じっとがまんをして世界の経済の動きというものの波に乗るような、そのつなぎの間は何かしなければならぬということで、それでやっていくという、中途半端かもしれぬけれども、それよりほかにないのじゃないか。あなたがおっしゃったとおりだと私も思うのです、実際問題として。
  93. 大出俊

    大出委員 これ以上申し上げるとあとの時間がなくなりますので、大変残念ですけれども、そこから先に非常に重要な問題がございますが、三すくみだからじっとしていると、こう言う。これだけじゃ、世の中まじめに働いている人も、中小零細企業、商店の皆さんも、みんな困る。だからそこで、私はここでひとつ聞いておきたいことがございまして、もう時間がありませんから、ほかの方にこれは譲ることにいたしまして、わが党で後で財政、経済あるいは税制問題を質問する予定の人もいますから、引き継いでいただくことにいたします。  そこで、仲裁裁定がいま議決案件で出ているわけでありまして、人数からいきますというと景気に非常に大きく絡むファクターを持っているわけでありまして、きょうは、どうもこの議決案件が恒例、慣例のようになってきましてまことに遺憾でございますが、会長の中西さんに、公労委の会長さんにお見えいただいておりますから、会長さんが今度の仲裁裁定は格段に、談話をお出しになった一番最後に、「終りに、委員会は、」公労委でありますが、「関係政府機関の格別な配慮により、本裁定が速やかに完全実施されるよう要望します。」と、わざわざこれはつけ加えておいでになる。これは慣例のごとくになっているということについて考えれば、このくらいのことを表にお出しになることはむしろ当然だという気が私はするわけであります。  ここでひとつ念を押しておきますが、ここにこの制度始まって以来の表がございます。三十六年以降、三十六年に補正予算によって裁定が成立をしています。ところが、それ以後十七年、十六年ばかりの間、毎年仲裁裁定が出ておりますけれども、補正によって成立をしたことは一度もない。ここのところ三年連続議決案件になっておりますが、すべて三公社五現業の内部の移用、流用によって実施が行われているわけであります。つまり、十六年間補正予算を組んで実施したという例はない。もちろんそれについては、本当なら、時間があれば、労働省、大蔵省、公労委それぞれに承りたいのでありますけれども、何で一体給与原資、賃金原資を一%なんてことにしたのかというところからまず始まらなければならぬわけでありまして、給与関係の閣僚会議、公労協のやつをお開きになって金の話が出るが、予算の組み方がそうなんだからしようがない。  そこで、まずもって中西さんにこの七項をお加えになったお気持ちをひとつぜひお述べをいただきたいのと、あわせて国鉄の総裁高木さんが、きょうは東北新幹線の車が走るというので六県知事を集めたというのですから、そっちへおいでになることを認めましたが、かわって馬渡副総裁お見えでございましょう。そしてまた、電電公社は真藤総裁、お忙しいところをおいでいただきました。また、泉総裁の御都合が悪くて長岡副総裁、辞令が私は長岡さんに出ているのだと思ったらまだ出てないようでありますが、専売公社総裁だと思って長岡さんに電話をかけたらそうじゃないと言うけれども、長岡さんお見えでございます。それと、あとは郵政省の所管の箕輪さんになりますか、それぞれ簡単にお答えをいただきたいのでございます。  私の言わんとするところは、三公社の場合に給与総額を抑制をする、抑える、これは当然でございます。民間の企業であっても給与総額は抑えたい。あたりまえである。業績がなければ上がらない。あたりまえなんです。だから、それは私は認める。だけれども、給与総額の抑制に努力するのはいいが、その中身の一人一人まじめに働いている職員の方々の給与単価について、これを削るとかなんとかよけいなことを言うことは迷惑。何とならば、スト権にかわる代償機関、ILOも明確に認めている日本の制度。賃金を公正に決定して出してくるところは公労委しか三公五現に関してはない。民間準拠という前提に立っている。  そこで、労働省の調べで一万三千六百十三円、七・〇一%というのがことしの民間の賃上げの水準です。日経連調べで中小企業、これが一万一千四百六十三円、六・九二%。約九〇%、皆もう金をもらっちゃっています。にもかかわらず、三公五現は棚上げ。じゃ一体、三公五現の賃金はどういうふうに決めたかといえば、加重平均で一万三千四百三十四円、かくて六・九%。中小企業は日経連調べでは六・九二、労働省調べで、民間の大手、大どころは七・〇一。いずれよりも低いのだから、民間準拠、先憂後楽であっても当然な金額じゃないか。  そういう意味で、ひとつ皆さんの内部でおできになるはずなんで、お答えいただきたいと存じます。公労委会長からお答えください。国鉄の皆さん、電電公社の皆さん、専売の皆さん、郵政省というようにお答え願いたいのです。
  94. 中西實

    中西参考人 仲裁裁定を出した者としまして、いつもでございますけれども、当然できるだけ早く完全実施をお願いしたいというのは変わらないところでございます。  額等は、これは公労委の公益委員七人おりますが、十分にいろいろなことを検討いたしまして、そうして出した結論でございます。そうして、あの時点におきましてまさに最もいいものであるということで出たわけでございまして、高い、低いということをいろいろ言われましょうけれども、あの時点におきまして、また、いまから考えましても、われわれとしては妥当なものだというふうに考えております。
  95. 馬渡一眞

    ○馬渡説明員 国鉄の仲裁裁定に絡みます考え方を申し上げます。  先ほど先生がおっしゃいましたように、仲裁裁定につきましてはぜひそのとおり実施をお願いをしたい。私どもは、やはり一人当たりの単価につきましては人並みの形でお願いをし、しかし、給与総額につきましては、特に現在の国鉄の財政事情でございます。すでに五十五、五十六年度におきましては一万一千、一万二千という合理化をいたしまして、それを次の年度の予算人員にはね返して節約をいたしておるところでございますが、五十七年度につきましても、すでにお約束しております一万四千に加えまして二万人を超える合理化を実施し、それが結果として来年度の予算人員に響いて、ベースアップがございましょうとも総額がふえないという形で取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  96. 真藤恒

    ○真藤説明員 電電公社の御説明を申し上げます。  電電公社は、仲裁裁定にお示しいただきました給与改定をいたしますと、給与総額では五十七年度の予算の中では賄えません。しかしながら、いろいろ経常費について合理化が進んでおりますので、予算総額の中では賄える見込みをしております。  ただし、私どものところは、御存じのように、いまようやく勤労意欲も出てきまして、五十六年度の決算も相当の数字を得ましたし、五十七年度もそれ以上のことをやろうとしておりますが、予算よりもかなりの大きな黒字を出しておりますので、この仲裁裁定の問題はできるだけ早く解決していただきませんと、せっかく出てきましたみんなの勤労意欲というものがまたここで挫折するということになりますと、ネガティブの影響の方が非常に出てくる危険性がございますので、この点、ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
  97. 長岡實

    ○長岡説明員 お答え申し上げます。  基本的な考え方といたしまして、具体的な給与の水準等につきましては、当然のことながら仲裁裁定の趣旨を一〇〇%尊重して早期実施という考え方でおります。ただ、給与総額についてでき得る限り創意工夫をこらして圧縮していくということも当然であろうかと存じます。  現実の問題といたしまして、現時点におきましては専売公社といたしまして予算上可能という数字にはなっておりませんけれども、今後職員が一丸となりましてあらゆる企業努力を積み重ねた結果、何とかそれだけの財源を確保するように努力いたしたいと考えております。
  98. 箕輪登

    ○箕輪国務大臣 お答えをいたします。  仲裁裁定、これは公労法三十五条の精神を十分踏まえて慎重に検討いたしたところでございます。これは尊重しなければならないことは言をまちません。しかし、仲裁裁定が出たのは五十七年度予算が成立して約一カ月くらいのところでございました。したがって、厳しい予算情勢の中でございますし、さて仲裁裁定を可能にするための財源をどこに求めるかということで苦慮いたしましたけれども、その財源捻出のめどを断定できないという判断のもとで、やむを得ず十六条第二項に基づいて国会議決案件にしたわけでありますけれども、何とかこれを早く国会で意思決定をしていただいて、自分たちの努力によって財源をつくり、完全実施をしたい、こう考えておるところでございます。
  99. 大出俊

    大出委員 大体承りましたので、三公五現、四現の皆さんおいでになりますが、五現業を代表していただいて郵政大臣に御答弁をいただいた形になりますので、要するに、いま私が挙げましたように補正を当てにして実施をした例というのは十六年間ないですから、だから、慣例にはなっておりますけれども、これは皆さんの意思で、政府の意思でできる、あるいは議会の意思でできるわけであります、これを政治的に利用しようとなさらぬ限りは。したがいまして、本来賃金でございますから、ぜひひとつそういうことでなく、早急な実施をおできになるという皆さんのお話でございまして、五現業も郵政はできるがほかはやらないというようなことはいまだかつてないのでありまして、ぜひひとつそういうことでお進みをいただきたいとお願いをしたいのですが、総理、これはいかがでございますか。
  100. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 公労委は、公企体職員等の労働基本権の制約の代替措置として設けられた機関でございまして、政府としてもその重要性というものを認識をいたしております。  そして、その公労委から出た仲裁裁定の実施の問題でございますが、これは関係閣僚会議を開きましていろいろ慎重な検討をやってもらったわけでございます。しかしながら、御承知のような財政事情下におきまして、これを完全に実施することについての確たる見通しがいまのところつかないというような事情もございまして、国会議決案件として上程をし、そして国会の御判断をお願いをする、こういう措置をとらざるを得なかったわけでございます。  政府といたしましても、前段で申し上げたような趣旨を踏まえまして、最善の努力を今後尽くしていきたい、こう思っております。
  101. 大出俊

    大出委員 一番最後の御答弁がございましたから総理の気持ちはわかりますが、実はILOの六月総会等もありまして、関係者が何人もILOに行っておりまして、きょうここで取り上げて皆さん答弁を承ってみて、事と次第によっては提訴手続をとろう、こういうようなことだったわけであります。  そこで申し上げますが、国鉄の問題に関する提訴がございまして、百三十九というILOのテークノートされた見解がございます。六百八十六号事件と言われるものでありますが、念のために結論を読み上げておきます。  「百三十九、特にストライキ権については、委員会は、この権利が国鉄労働者に否定されているので、」つまり国鉄労働者にストライキ権がない、だからというわけであります。「仲裁制度が迅速に適用され、かつ、裁定が何らの制約を受けることなく両当事者を拘束すべきであると考える。委員会は、国鉄労働者に賃上げを与えるべき一九七二年五月の公労委の仲裁裁定を実施するために現に考えられている措置について政府が提供した説明に留意した。これに関連して、委員会は、立法機関に対する予算上の権限の留保が強制仲裁裁判所が行った裁定の条件の履行を阻害する効果を持つべきではないとすでに指摘したが、ここにこれを再び繰り返し指摘する。」  提訴をすると、恐らく重ねて、何らの制約を受けずにやりなさいという答えが出てくると私は思っているわけでありまして、昨年私はこの席で宮澤さんに申し上げたのですが、これは組合側がILOに持ち込むだろうということで想定問答集などをつくって、これは相当骨が折れるだろうなんて書いてありましたが、そういう考えにお立ちにならぬで、臨調は臨調として先ほど申し上げました予算総則の枠組みというのを抑制する努力はこれは必要でございましょうけれども、個々の給与単価に手を触れるということは避けなければ、家族を含めての生活費でございまして、これは民間準拠という大原則に立って進めているわけでありますから。  そこで最後に、もう一遍中西さんに承りたいのですが、私が冒頭に申し上げましたように、ことしの仲裁裁定は加重平均で言って六・九でございますから、そういう意味で言うと、七・〇一という一般の民間の方々あるいは六・九二という中小企業の日経連調べがありますが、その方々に比べて高いわけではない、妥当な金額だと思っておるのですけれども、そこのところを最後にお尋ねいたしたいのです。
  102. 中西實

    中西参考人 統計というものは、これはもう専門家の方は皆さん御承知ですが、比較は非常にむずかしいので、そこで、大きく狂えばですけれども、小数点、コンマ以下というのはとり方によってどうともなるのでありまして、われわれとしてはいまだにまずまず妥当なところだ、こういうふうに考えておりますので、どうぞひとつよろしくお願いします。
  103. 大出俊

    大出委員 どうもありがとうございました。  時間が参りましたから、終わりにいたします。
  104. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  次に、渡辺栄一君。
  105. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 私は、与党の立場から質問をいたします。時間が非常に少のうございますので、私も簡潔に御質問いたしますが、なるべく簡潔に、また、できる限り国民にわかりやすい御答弁をお願いいたします。  今回のサミットは、世界経済の直面しております失業やインフレ、保護主義の動きなどの深刻な事態をいかに打開して経済の再活性化を実現するかという大きな問題と、対ソ問題、フォークランド紛争、イスラエル軍のレバノン侵攻、イラン・イラク戦争による中東の緊迫など、国際緊張が一段と高まる中で開催をされたわけであります。それだけに対ソ戦略をめぐる西側陣営の利害対立あるいは世界経済の低迷の中での各国の経済政策の対立には厳しいものがあったに違いないと想像しておるのであります。  そうした中で、鈴木総理が冒頭発言において、多様性の中の結束を固めていく必要性を訴えて、各国首脳の理解と賛同を得られましたことを私は高く評価をしておるものでございます。また、宣言にも示されておりまするように、将来に向けての協力を確認し、行動の目標を定めたことは大きな成果であった、かように私は考えております。  一昨日の本会議総理の帰国報告を伺ったのでありますが、ここに二、三お尋ねをいたしまして総理の率直な所信を伺いたい、かように存ずる次第でございます。  サミットは、第一次石油危機の後、主要先進国間の協調と連帯なしでは乗り切れないという西側諸国の危機的情勢を背景に生まれたものでございますが、そういう意味で、今回、サミット参加国が、科学技術の振興、通貨の安定、自由貿易の堅持等で協調を図る決意を確認し合われましたことは、西側先進国間の相互依存関係からいいまして当然なこととはいえ、非常に有意義なことであると考えるものであります。特に私は、わが国がコンセンサスづくりに積極的な役割りを果たされたということにつきまして高く評価をいたしておりますが、現在の世界情勢を考えますときに、相互依存関係はいまや西側内部のみでなく東西双方にまたがっておりまして、西側先進国間の協調と連帯だけでは乗り切れない状況へと事態は深刻さを増しておるのではないでありましょうか。また、南北関係、ことに開発途上国に対する取り組みもますます複雑さを増しておるのであります。  総理は、こうした世界情勢をどう認識されておりますか。さらにまた、サミットの今後のあり方等につきましてまず御見解を伺いたいと思うのであります。
  106. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま渡辺さんから御指摘がございましたように、今回のベルサイユ・サミットは、世界的な、かつてない厳しい国際情勢、経済情勢のもとに開催をされました。したがいまして、その成果につきましては、関係国だけでなしに、世界各国が大きな関心と注目を払っておったところでございます。したがいまして、どうしてもこのサミットは、お互いに自分の主張だけを述べるのではなしに、協調と連帯という高い立場からこれに取り組んでいかなければいけない、世界の経済の再活性化に向かって、さらにまた、保護貿易主義の圧力が高まっておりますから、自由経済体制を維持拡大をする、こういう二大目標に向かって一致協力をして進まなければならない、こういうことを確認し合ったわけであります。これは宣言の中にも発表されておりまして、その点は私は大きな成果があった、このように考えるものでございます。  特に、わが国は、この自由貿易の拡大強化ということが世界経済の活性化のために必要であるという観点から、率先して、国会の御協力をいただきまして、そして第一次、第二次にわたる市場開放対策を思い切ってやったわけであります。これは各国の首脳からも高く評価をされております。私どもは、今後このことをフォローアップをいたしまして、実効の上がるようにしていく責任がある、このように考えるものでございます。  と同時に、科学技術の振興を図る、共同研究開発をする、技術革新によって仕事をふやす、需要を拡大する、そういうことが必要でございますので、この点につきましても、日本やアメリカあるいはフランス、西独等も私どもの意見に全く賛成でございまして、そういう方向に向かって作業部会を設置して、来年のサミットまでの間に方向づけをしていこう、こういうことも確認できたわけでございます。  と同時に、いま御指摘がございましたように、ただ先進諸国だけの力だけでは世界経済の全体の景気の回復は不可能である、どうしても第三世界、開発途上国等の力もつけていかなければいけない、そういうような観点から、この対外経済協力というようなことにつきましても力を合わせて努力していこうではないか、そういう方策につきまして合意を見たことは大きな成果であった、このように考えております。
  107. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 次に、総理は、貿易問題につきまして、わが国の市場開放に対するECの批判に対しまして、六項目にわたりまして反論するなど、わが国の考え方、立場というものを積極的に主張されたというふうに聞いておりまして、評価をいたしております。西独、フランスなど、総理発言を支持したというふうにも聞いておりますが、ミッテラン・フランス大統領は、日本の市場開放策は第一歩であるというふうに表現をいたしまして、今後もさらに要求するであろうというようなことを示唆しておるというふうに私どもは聞いております。これに対しまして、安倍通産大臣は、記者会見で第三弾は考えていないということを言い切ったというふうに伝えられておりますが、どういう雰囲気の中でどういうやりとりがあったのか、さらに市場開放の要求があった場合のわが国の対応はどうするのかということにつきまして、お伺いしたいと思っております。  なお、十月には日米農産物交渉が行われる予定になっておりますが、われわれは国会の自給力強化の決議を踏まえまして、わが国の食糧自給率向上の見地から、また、ひいては食糧安全保障の観点から、農産物自由化には絶対に反対であるということを、政府もよく認識をしておられると思いますが、この交渉に臨んでいただきたいと思うのでありまして、農林水産大臣の決意も伺っておきたいと思うのでございます。
  108. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 世界の自由貿易を守っていくためにわが国としてもあらゆる努力をしなければならぬということで、御案内のように、第一弾、第二弾の市場開放対策をとったわけでありますが、第二弾につきましては、御承知のように、工業製品等については九十六品目も無税にするというふうな非常に大胆な開放策を打ち出したわけで、これはずいぶん苦労をいたしたわけであります。  こうしたわが国の第二弾の市場開放措置は、これはアメリカだけではなくてヨーロッパにおいても非常に評価をされまして、サミットにおいて、いま御指摘のありましたように、ドイツそれからフランスからも正しい方向であるという評価がなされたわけでございます。われわれ日本の市場開放への誠意といいますか努力が大きく認められたわけでございますし、われわれとしては最善の努力を払ったわけでございますから、包括的ないわゆる開放対策としてはこれは第二弾で打ちどめ、これ以上やるものはないですから第二弾で打ちどめということであります。しかし、個々には問題も残っておりますから、それはケース・バイ・ケースで今後の各国間の折衝でこれに対しては対応していくということであろう、そういう意味においては、私は、包括的な対策としては第二弾で打ち切りだ、こういうことを申したわけであります。
  109. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 今回の第二弾対策は、困難な国内事情の中でわが国としては最大の努力をした成果でございまして、ただいまお話がありましたように、ベルサイユ・サミットでも各国で高く評価されているところでございます。  秋に行われます牛肉、柑橘類に関する日米の農産物協議につきましては再度アメリカ側からは貿易の自由化について強い要請があるものと予想されます。したがいまして、私たちといたしましては、いま御指摘のように、わが国の農林水産業を守る意味においても、あるいはまた食糧の安全保障という見地からも、わが国の農林水産業の実態あるいは農産物の市場開放の措置等を説明をし、理解をいただいて、私は自由化に対して手を染めずに対処してまいりたい、かように考えております。
  110. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 ただいまの御答弁でございますが、私どもも大変力強く拝聴いたしておりまして、海外へお出かけになりまして大変御尽力願っておりますが、大変重大な問題でございますので、それぞれひとつ最後までしっかりやっていただきたいとお願いしておきたいと思います。  次に、サミットの帰途、第二回国連軍縮特別総会におきまして、総理は、唯一の被爆国として、平和憲法のもとに非核三原則を堅持し、平和国家としての道を歩むわが国独自の立場から、核の惨禍が二度と繰り返されることのないよう核軍縮を中心とする軍縮の促進を世界各国に訴えられたのでございます。唯一の被爆国であるわが国が軍縮の分野で果たし得る役割りに対しましては世界各国から大きな期待が寄せられておるというふうに私どもは考えておるわけであります。  今回の演説で総理が、国家間の相互信頼を深めて軍縮とりわけ核軍縮を促進すること、軍縮によりまして生じた余力をもって諸国民の民生の安定、経済の発展を図ること、国連の平和維持機能を強化することの軍縮を通ずる平和の三原則を提唱されまして、具体的措置として六項目を提唱されましたのは、わが国が平和国家に徹するという基本的な立場から世界の平和と軍縮促進に向けて努力しているわが国の積極的姿勢を内外に明らかにしたものであるというふうに評価できるのでございます。  軍縮に対する米ソ間の相違が非常に大きい現在、一定の軍縮案に合意するということははなはだむずかしいことであろうと私ども思っておりますけれども、唯一の被爆国としてわが国が積極的にまとめ役を買って出るべきではないかというふうに私は考えておりまして、首相の御決意を承りたいと思うのであります。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕
  111. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 第二回の国連軍縮特別総会出席をいたしまして、さきに本院が決議されました決議の趣旨を踏まえ、また、出発前に国内の各種団体あるいは各党の代表の皆さんの御意見等も十分お聞きいたしまして、それを踏まえて、全国民的な立場で私は軍縮に対する日本の立場というものを率直に表明をいたしたわけでございます。いまお話をいただきましたように、軍縮に関する平和三原則というものにまとめましてこれを強く訴えたところでございます。  さらに、やはり現実の厳しい国際情勢の中で軍縮を具体的に進めてまいりますということはなかなか困難な問題ではございますけれども、これは粘り強く一つ一つ努力を積み重ねてやっていかなければならない、米ソ核超大国を初めといたしまして人類全体の核の惨禍を二度と繰り返してはいけないというこの平和への期待、これにこたえるように私は特に米ソ両国にこのことを強く訴えたいと考えておるわけでございます。  ベルサイユ・サミットにおきまして、レーガン大統領とは個別的に会談をいたしました。その際、軍縮総会に臨むわが国の立場というものをレーガン大統領にも私お話しをいたしまして、大局的な立場、また、人類の利害と世界の平和のためにこの際率先して軍縮に向かって努力をしてほしい、こういうことを強く求めたところでございます。  それから、もう一つ申し上げたことは、欧州におけるところの戦域核交渉において、SS20を欧州で縮減をさしても、撤廃をさしても、それをアジアに、極東に配備させるというようなことがあってはならない、これは日本国民が一番深刻に考えておる問題であるということを訴えまして、米ソの交渉におきましてはこの点に特に留意をしてもらうように強く要請をいたしたところでございます。  日本といたしましては、世界における唯一の被爆国であるという立場から、今後あらゆる機会をとらえまして一つ一つ具体的に軍縮へ向かっての努力を積み重ねていきたい、このように考えております。
  112. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 ただいま総理の御答弁で非常に私どもも熱意を感じたのでありますが、唯一の被爆国として、お話のとおり責任を持ってひとつ最後まで御努力を願いたいとお願いしておきたいと思います。  次に、東アジア・太平洋地域の経済発展を考えますときに、わが国とASEAN諸国との友好協力関係は一段と緊密の度を加えておるものと思います。櫻内外相がこのたびASEAN拡大外相会議出席されましたこともきわめて有意義であったというふうに私は考えておるのであります。会議の冒頭あいさつで、外相は、ASEAN重視をわが国の対外政策の柱とし、経済協力面でもASEAN諸国を最重点地域として経済社会への自助努力を支援していくことを改めて表明しておられますが、特に外相の提唱されました民間の活力利用、自由貿易体制の強化、一次産品貿易の安定と拡大、経済・技術協力の強化、日本・ASEAN双方の経済の長期的展望の確立の五項目は、わが国がこれまで同様にASEAN重視の立場を貫くことを長期的観点から改めて表明したものであると私は評価しておるのでございます。  しかし、外相会議では、わが国の市場開放策が米欧寄りというような批判も相次いだというようなふうに言われておりまして、また、わが国の約束した工業プロジェクトへの資金協力の具体化、産業再配置による国際分業の推進等につきましても意見が出たというふうに承っておるのでございます。  各国外相の対日要請、ことに熱帯産品の市場開放要求等の内容、また、これに対しまする外相の見解等を承りたいと思うのであります。
  113. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 近年ASEAN諸国は、世界不況の影響を受けて種々経済困難を抱えており、世界的な保護主義傾向に懸念を深めておる、そういうことが今回の外相会議でも認められました。こうした危機感を背景として、ASEAN諸国は、先進諸国に対し、自由貿易体制の維持強化のため一層の努力を行うよう要請した次第でございます。  ただいまお尋ねの、ASEAN諸国が熱帯産品や製品の輸入拡大について要請した、この事実はございますが、具体的な品目を挙げてこのようにしてくれというようなふうな触れ方はしないで、一般的な発言をいたしておりました。  なお、わが国の市場開放措置につきましては、これは欧米に偏するということではなく、関税障壁、非関税障壁の撤廃にいたしましても、また東京ラウンドの前倒しにいたしましても、これは全般に公正にやっておることで、ASEAN諸国においてもこれらの措置を十分活用してもらいたいということも申し上げた次第でございます。  なお、工業プロジェクトについてのお尋ねでございますが、すでに資金協力が具体化しておるインドネシア及びマレーシアのプロジェクトに加えて、タイ及びフィリピンの具体的プロジェクトに対しても協力を検討する用意がある旨を伝えました。  産業再配置につきましては、従来より日本、ASEAN諸国間において市場メカニズムを通じまして投資、技術移転、産業協力等の展開によって再配置が進んでおるのでございまして、わが国としては今後とも民間を主としてかかる協力を奨励してまいりたいということを申した次第でございます。  大体以上のような諸点が今回の拡大外相会議の中での、特に日本とASEAN諸国との間の会議で取り上げられた問題点でございます。
  114. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 外交問題でもう一点承りたいと思うのであります。  総理は、今回の一連の旅行の帰途、ハワイに立ち寄られまして、「太平洋時代の到来」と題する講演を行われまして、太平洋地域が世界の中でも最も活力とダイナミズムにあふれ、かつ、一層の発展の可能性を秘めた地域であり、この地域の活力及びその発展が世界経済の再活性化、世界の平和と繁栄を確保していくための原動力となり得ることを強調されまして、さらにまた、各国が太平洋時代到来の認識のもとに太平洋連帯の努力が必要であるとして、平和の海、自由の海、多様の海、互恵の海、開かれた海の五原則を提起をしておられますが、どのような考え方からこれを提唱されましたのか、また今後、具体的にどう太平洋連帯を進めていくのか。相当時間がかかると思いますので、きわめて簡潔で結構でございます。
  115. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、今回の外遊の締めくくりの意味におきまして、ハワイにおいて、いまお話がございましたような「太平洋時代の到来」という課題につきまして講演をいたしたところでございます。  御承知のように、アジア・太平洋地域は、二十世紀におきましても、世界のどの地域に比べましても、すばらしい成長と発展と繁栄を遂げた、こういうことが言われると思います。人口も非常に多い、また資源も豊富である、そして各民族がいろいろな文化を持っております。そして、地域の協調という精神もあふれておる、自助の活力も出てきておるわけでございます。二十一世紀を迎えるに当たりまして、世界全体の平和と繁栄のためにも、このアジア・太平洋地域の果たすべき役割りというものは非常に大きいものがある、私はこのように思うわけでございます。  しかし、これはある政治的意図を持って進めるようなことがあっては、かえって各国が協調すべきものもむずかしくなるということであろうかと私は思うわけでありまして、民間を中心に本当に各国、各民族の連帯と協調、理解の上に立って、これが自然に盛り上がってくるような姿が望ましいのではないか、そういう意味で五つの海というものを目標に掲げまして、私の真意を訴えたところでございます。  今後これを、わが国が常に開発途上国等に対しましては特に経済技術協力等を通じまして支援をしておるというこの政策をさらに拡大する意味合いからもいたしまして努力をしていきたいものと考えております。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  116. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 外交面で大変御活躍をいただいたわけでありますが、時間の関係がございますので、まだいろいろ承りたいことがございますが、経済問題に入らせていただきたいと思います。  経済企画庁が発表いたしました国民所得統計によりますと、一−三月期の実質経済成長率は前期に比べまして〇・八%増とプラスになっておりますけれども、予想よりははるかに悪いのでありまして、この結果、五十六年度の実質成長率は二・七%となり、政府実績見込みの四・一%を大きく下回ることとなったのは事実であります。これは第一次石油危機の直撃でマイナス〇・二%の成長となりました四十九年以来の低い数字でございます。  一−三月期の中身を見てみますと、輸出は依然停滞ぎみである。また、民間の企業設備、住宅などが軒並みに前期に比べまして実質マイナスとなっておるのに対しまして、最終消費支出のみは一・九%増と三年ぶりの高い伸びを見せているのでございます。これは昨年春以来の消費の落ち込みの反動とも見られます。経済企画庁は消費の面で幾分明るい兆しが出てきたというようなことを強調しておられるのでありますけれども、個人所得そのものが大幅に伸びていないという現実に即しまして、果たして手放しで楽観できるのであろうか、私ども疑いを差し挟むのであります。  また、本年度上半期の経済も回復がそれほど期待されておりません。もし、この一—三月期並みの〇・八%という緩やかな成長が続くとすれば、年度後半において相当景気が上向き、いわゆる瞬間風速にいたしまして年率七—八%以上のスピードでの成長が実現しない限り、政府当初見通しの五・二%はおろか四%も無理ではないか、五十六年度並みになるのではないかというのが私はほぼ大方の見方ではないかと思っておるのでございます。  このような事態に対しまして、いろいろな意見が述べられておりますけれども、私は、アメリカの高金利の影響もありまして有効な金融政策をとり得ない現在、残されました唯一の財政手段としましては下期に公共投資を追加いたしまする景気対策が必要ではないかと考えておるのでございます。鈴木内閣及びわが党は、目下財政再建を目指し、行政改革を最重要の政治課題としてこれに取り組んでおるのでありまして、行政改革を遂行するために財政面の負担となる景気対策に消極的な意見が一部にあることも事実でありますが、景気の回復を図ることは決して行政改革と矛盾するものではないと私どもは確信をいたしておるのである、むしろ景気の回復を図り、税収を確保することが財政再建の必要条件でもある、このように考えるのでございます。  わが自由民主党の建設、商工、運輸の合同部会は、補正予算で下期に公共投資を三兆円程度追加すべしということを提唱いたしております。現在、公共事業は上期七七・三%の前倒しを実施中でありまして、順調に進んでおるのであります。これが完全に実行されますと、国と地方を合わせました公共事業二十四兆円のうち上期に十九兆円分が消化をされまして、下期には五兆円しか残らないことになるのであります。したがって、補正予算の提出が早急には困難であるということもわかりますけれども、せめてこの時点において、政府は公共事業による景気対策の用意があることを明示して関係者の不安を解消し、下期の息切れ防止と経済の円滑な運営を期すべきではないかと考えるのでありますが、政府の見解はいかがでありましよう。
  117. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 経済の現状の認識は政府の方も同じでございます。そこで、さしあたり景気対策をやらなければなりませんので、公共事業の前倒しを今回することにいたしました。技術的に可能な限りの最大限度はどこかということをいろいろ検討いたしました結果、七七%強まではいけるのではないか、八〇%弱でございます。かつてこれだけの前倒しをやったことはございませんので、政府といたしましては景気対策に対しまして非常に大きな関心を持っておるということはこの点からもおわかりいただけると思うのでございます。  ただ問題は、八〇%近い前倒しをしようという計画をしましても、それが順調に進まないとどうにもならない。やはり一番大事な点は、その前倒し計画が順調に消化されるということが一番のキーポイントだと思います。そのためには後半の仕事の量が落ち込まないということがはっきりしませんと、前倒しをしようといたしましても、仕事の割り当てをした場合にそれを後半に繰り延ばす、こういうことにもなろうかと思うのです。  そこで、さしあたっては前倒しに全力を挙げておりますけれども、後半、この前倒しの効果が出まして民間経済全体が力を回復する、そういうことになりますと、全体としての仕事の量がふえてまいりますから、後半の公共事業の量が減りましてもそれは何とかやっていけるわけでございますが、民間経済全体の力が出てこないということになりますと、いま御指摘がございましたように、前半は十九兆の公共事業、後半は五兆の公共事業ということになりますから、むしろどかんと落ち込んでしまうということになりまして、せっかく景気回復の芽が出ましてもその芽が摘み取られてしまうということになりますので、政府といたしましてはもう少し様子を見まして、この前倒しによりましてどの程度景気回復に効果が出てくるか、全体として景気が回復するという方向に行けば大変結構でございますが、そうでない場合には、後半何らかの形で最終需要が追加されるようなそういう政策を適当な時期に判断をしなければならぬ、このように考えております。  それでは、判断のできる時期はいつかといいますと、五十六年度の経済の実績がわかったのはついこの間でございまして、六月十一日でございます。第一・四半期のいろいろな経済の実績が出てまいりますのは九月の初めだと思っております。それからまた、日本銀行などのいわゆる短観が出されるのも九月の初めごろだ、こう思っておりますので、そのころになりますと、その新しい指標によりまして経済動向がどのように進んでおるかということが判断もできますし、また、国際経済の動きも変わると言われておりますが、どのように変わるのか、その判断もおよそ見当がつくのではなかろうか、こう思っておりますので、いまの段階ではとりあえず前倒しに全力を挙げる、後半は何らかの形で仕事の量は減さないようにする、そういうことで消化に協力をしていただきまして今後の経済政策を進めてまいりたい、このように考えております。
  118. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 ただいまのお話で、ある程度お考えになっておるということも大体わかるわけであります。しかし、経済というものは生き物でありますし、時期というものが非常に大事ではないか。従来ややもすれば後手後手に回ってきた。いろいろな統計の資料等も確かに必要だと思いますが、統計等の数字がはっきりいたしますときはすでにもう相当時間が経過をしておるわけでありまして、そういうことも参考にしなければなりませんが、余りそれにこだわっておることは実際の効果を上げることにならないのではないかという心配を私は実はいたしておるわけであります。特に、ただいま順調にいっておりますが、四、五、六月と約三カ月間の前倒しが進んできておるわけであります。これからまだ九月までに三カ月残っておりますが、こういうときに、厳しい財政事情でありますだけにどうなるだろうかという心配が実際は発注者側にもありましょうし、業者にもあろうと思うのでありますが、そういうことがこれから三カ月間の実績に相当響いてくるのではないか、私はこれを心配しています。  だから、この時点で補正予算を組むとかいうようなことはもちろん時期的に無理であろうと私ども思っておりますし、それを急ぐ必要はありませんが、われわれ三兆円と言っておる根拠もはっきりあるわけでございますけれども、その数字はともあれといたしまして、少なくともある程度下半期には公共事業を追加をするということを政府が明確になさることが、せっかく前倒しの成果を上げることでもあるし、今後目的を達成する大きな要因になるのではないか。これをいたずらに先に延ばしていくということは実際は失敗に終わることになるのではないか、私はこれを実は心配いたしておりますので、あえてもう一度御答弁を願いたいと思います。
  119. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 問題を整理して考えますと、二つあると思うのです。第一は、上半期の前倒し計画をいかに順調に消化していくか、これが第一点だと思います。それから第二点は、後半仕事の量が減らない、断層が起こらないように、そういう配慮をしていかなければならぬ、この二つだと思います。  そこで、いまのお話は、後半もし全体としての経済の力が弱い、こういう場合には公共事業等を中心として仕事の量を追加する、そういうことを明確にせよ、それをはっきりしておかないとなかなか上半期の消化に皆協力をしない、こういうお話だと思います。  実はそこが問題点だと思うのですが、しかし、ただいままでのところ政府部内で合意を得ておりますのは、仕事に断層は生じないようにしなければならぬ、そのためにはまずもう少し経済の実情を見てみよう、こういうところまでは合意をしておりますが、いまお話しの点はごもっともな点もございますので、さらに政府部内で十分相談をさせていただくことにいたします。
  120. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま経済企画庁長官からお話がございましたように、景気全体の動向というものについて注意深く見守っていきながら適当な時点でよく相談をしていきたいと考えます。
  121. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 渡辺さんも御指摘がございましたように、いま世界経済が激動しておる中で日本の経済のかじ取りを誤りなく進めていくということは非常にむずかしい問題でございます。私は長く留守をいたしておりまして、その点を帰りまして早々、大蔵大臣及び経企庁長官にお目にかかりまして留守中の報告を聞くと同時に、今後の経済、財政の運営の問題につきまして先般篤と御相談もし、意見の交換もいたしたところでございます。  いま経企庁長官から申し上げたように、五十七年度予算の執行に当たりまして景気の浮揚を図るという観点から、公共事業の思い切った前倒しを実行いたしておるところでございます。また、住宅対策にも力を入れて、渡辺先生等には特に御努力を願っておるところでございますが、それが下期になって息切れをしたというようなことになりますと、これはせっかく公共事業七七・三%というような前倒しをしながら実際上実行はできないというようなことになってもいけない、こう考えております。常に財政運営あるいは金融の問題等、機動的に効率的にこれがいくように細心の注意を払いながら財政、経済運営をやってまいります。御心配をかけないように党とも十分相談をして進めていきたい、こう思っております。
  122. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 いまの御答弁でございますが、私は現時点で、大蔵大臣が非常に慎重な御発言になっておるということは十分わかるわけでございます。また、経企庁長官の御発言の中に、断層のないというような表現もございますけれども、総理の御発言等総合いたしましても、とにかく七七・三%ということになりますと、下半期には二二%しか残らぬわけでありますから、これは言うまでもなく下半期に追加があるということは、われわれはよくわかるわけでありますが、国民は非常に心配いたしておると私は思うわけであります。  やはり生きた政治というのは、いま下半期には追加しますと言えば上半期の前倒しも順調にいくのではないか、それが景気回復に役立つのではないかと申し上げておりますけれども、政府の立場として、表現上いろいろ苦労していらっしゃることはよくわかりますが、御発言から推察をいたしまして、政府は、数字はそのときの情勢もございましょうけれども、下半期は追加をやる、だから思い切って上半期は政府の要請しておるように前倒しをしっかりやってくれ、こうおっしゃっておると私は解釈をいたしまして進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  次に、昨年の夏以来の景気の停滞でございますが、大変内需に大きく依存しておりまする中小企業に対しましては、より大きく影響いたしておると私は思っております。特に、商工中金や中小公庫の中小企業の業況判断によりましても、一向に好転の兆しが見えないと言っておるわけでありますし、今後も売り上げの減少、採算の悪化が懸念されておるように思うのであります。企業倒産は、危機ラインとされまする千五百件を若干下回ってはおりますけれども、実際には中小零細企業を中心といたしました倒産はなお続いておりますし、なおまた小口化あるいは販売不振、売掛金未回収というような問題がございまして、いわゆる不況型倒産というものが増加をしておるわけであります。その内容は一層悪くなっておると見るべきではないかと私は思います。  こうした中でございますので、私は、下請中小建設業あるいは各地の地場産業、そういうものの経営が特に苦しくなっておりまして、経営安定のための対策が急がれておりますが、中小企業の景気の情勢を通産大臣は一体どのように認識をしておられるのか、また、これに対しましていかなる対策をとろうとしておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  123. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまおっしゃられるように、中小企業は私は非常に悪いと思っております。特に、最近の生産の状況、出荷の状況等も落ち込んでおりますし、またさらに倒産件数については、四月は前年度を上回るということで憂慮いたしたわけですが、五月は前年度以下ということに相なったわけでございますけれども、しかし決して今後油断ができる状況ではない。特に、いまお話がありました商工中金、中小企業金融公庫等の窓口でも融資の相談件数が去年よりはうんと減っておる、あるいはまた融資の枠の消化も予定どおり行われていない、こういうことですから、これは中小企業が設備投資等について意欲を失ったということであろうと思います。  これはやはり先行きの不安、先行き一体景気がどうなるかという不安から、中小企業自体は相当設備も老朽化しておりまして、設備更新の時期に来ておる、そういうふうに考えておるわけですが、しかし、その設備投資が進まないというのはやはり先行きの不安があるんじゃないだろうか、こういうふうに思っておるわけで、業況、景況は悪い、こういうふうに判断せざるを得ないわけでございます。そういう状況でございますから、われわれとしても、特に注意深く今後の中小企業の状況を見守りながら対策等を進めていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。地方公共団体等とも相談をしながら、危ない中小企業に対しては緊急の融資を行うとか、下請の企業に対するいろいろな制度上確立されておる措置を積極的にとっていくとか、あるいはまた官公需につきましても、やはり中小企業に重点を置いた官公需の発注を求めていくとか、いろいろなことを今後中小企業に対してはやっていかなければならぬ。中小企業についての予算も成立をいたしましたわけですから、こうした予算もフルに活用いたしまして、われわれとしてもこの対策に万全を期したいと思います。  基本的には消費を高めていくといいますか、あるいはまた住宅につきましても、たとえば政府が見通しを立てておりますように、百三十万戸というふうな住宅がずっと建設が進んでいけば中小企業の景気の立ち直りということもできるわけでありますから、基本的にはそうした全体的に景気をよくしていくということであろうと思います。  いま経済企画庁長官のお話のような、公共事業前倒しの措置等もとっておるわけでありますが、われわれとしてもいろいろと知恵をしぼって中小企業対策は個別的に対策をとりながら、全体的な景気対策というものも今後の情勢を見ながら考慮していかなければならない、そういう状況に来ておる、そういうふうに判断しております。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕
  124. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 いまお話がございましたが、通産大臣も先般名古屋においでになったときも御発言になっておりますが、やはり公共事業の追加発注はある程度必要であるということをお認めになっておるように私は聞いておるわけであります。実際私は、公共事業等の仕事が進みますれば、これは素材産業に非常に関係が深いわけであります、また中小企業、零細企業に非常に関係が深いわけでありますから、この問題がいまお話しの問題にもある程度絡んでくるのではないかと思っておりまして、いま総理、大蔵大臣、経企庁長官のお話もございましたが、この機会に通産大臣の御意見も承れれば幸いだと思います。
  125. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 公共事業につきましては、御承知のように、七七・三%という前倒しを上半期に行うわけでありますが、先ほどからお話しのように、それでは下半期どうするんだ、これが息切れをするとか、先ほどのお話のように、断層ができるとか、こういうことになれば中小企業の設備投資一つをとってみても意欲が落ちてくるということでありますから、やはり先行きに一つの見通しといいますか、明るさを与えなければならないのじゃないか、そういうふうな状況に来ておる。世界の、アメリカでもあるいはEC等で話を聞いてみても、来年ぐらいには景気はよくなっていくだろうということですから、上半期に思い切って政策を集中するとともに、下半期についても一つの明るさを与えるようなそういう材料が私は必要ではないか。これは今後の四、五、六といった景気の状況等も見なければなりませんけれども、しかし渡辺委員もお話しのように、経済運営はやはり時期を失すると大変ですから、その辺のところを政府としても見守り、見詰めながら、時期を失しないような対策というものを考えなければならぬ、こういうふうに考えております。
  126. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 ただいまお話を承りまして、総理以下それぞれ御心配いただいていることは大体よくわかりましたので、ぜひ閣内でよく御相談もいただきまして、機を失しないということにつきましては特にお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、わが国は二十一世紀になりますと、世界のどの国も経験しなかったようないわゆる高齢化社会を迎えるわけでありまして、当然日本型福祉社会にわれわれは配慮せねばならぬわけでありますし、あるいは医療、保険、年金、福祉、住宅、それらの問題にも万全を期してまいらねばなりませんが、同時にまた、高齢化社会に対応いたしました社会資本の整備あるいは蓄積というものも緊急課題ではないかと思うのであります。  さらにまた、二十年後のことを考えますと、たとえば現在三人に一台でございまして約四千万台の車を持っておるわけでありますが、二十一世紀になりますと五千八百万台、大体二・二人に一台の車を保有するということはほぼ想像ができるわけでありまして、大変な車社会を迎えるわけでございます。  また、地方圏の都市化に対応いたしまして、長期的な観点から将来の都市形成の根幹となりますような道路でありますとか公園でありますとか、そういうようなものの空間の先行的、計画的整備を図ることもまた私は必要になってくるだろうと思うのであります。  こういうような点につきまして、実は具体的にいろいろ論議をいただくとよろしいと思うのでありますが、本日は限られました時間でありましてそういう時間がございませんので、私がたまたま委員長をやっておりまする住宅の問題につきまして、若干政府の見解をお聞きしたいと思うのであります。  それは、今年度の予算では、御承知のように、公的資金によりまする住宅が約六十万戸、民間資金によりまする住宅が七十万戸、合わせて百三十万戸をめどといたしまして、それは五・二%につながるという大変大きな役割りを担わされておるわけでございます。これは総理を初め関係閣僚等関係の皆様の大変な御理解によりまして、融資限度額を引き上げるとか所得制限を緩和するとか、いろいろこういう財政の厳しい中にかかわりませず相当画期的な緊急対策が実現をいたしまして、そのおかげをもちまして、たとえば先般の四月の住宅金融公庫の募集等も非常に順調にいっております。したがいまして、公的資金によりまする住宅の問題は、ほぼ軌道に乗っておるのではないかと思うのであります。  ただ、問題は民間資金による住宅でございまして、これは御承知のように、住宅ローンの金利が一向に下がっておらぬわけであります。これは大蔵大臣も大変御苦労いただきまして、先般〇・一二下げてもらいました。したがって、いま八・二二という銀行ローンの金利でございます。しかし、これはかつて七・八九という時代もあったわけでありまして、銀行ローンの金利はやはり八%を切らなければいけないと私は実は思っております。  そういう意味では、アメリカの金利も下がるであろう、いまごろはある程度そういう意味では住宅ローンの金利も下げられるであろうというような感触もあったのでありますが、最近の情勢をいろいろ承っておりますと、なかなかそんな状態ではない。むしろ金利は上がりそうでございます。そういうことになってまいりますと、民間資金による住宅建設を促進する手だてというものはいまほとんどない時代でございます。  また一方では、環境が暗い、将来への見通しはない。そして、住宅の取得能力というもの、要するに住宅価格と可処分所得との関係でございますが、これも最近ではマイナス一七%、大変下がっておるわけでございます。そういう情勢でいわゆる民間資金による住宅ができるわけはないわけであります。  そこで、いろいろ私どもも検討いたしておるのでありますが、いまこの際、たとえば融資限度額をもっと上げるといいましても大変な金額になるわけでありまして、検討はいたしましてもこれはなかなか容易ではないのではないか。  そこで、私はひとつ提言を申し上げたいと思うのでありますが、大変これは山中委員長の御尽力を願いまして、来年の一月一日から、御承知のごとく住宅の取得控除、ローン等に対しまする配慮を願いまして、七%、限度五万円というものが実現をするわけでございます。しかし、それではとても追いつかぬわけであります。われわれが当初要求いたしましたのは一四%ぐらいでありますが、約十万円ということでお願いしておったわけであります。いま設備投資減税というようなことも言われておるわけでありますが、これはそう長い間やる必要はありませんので、たとえば三年なら三年間の時限といたしまして、そういうものにつきましては、いま五万となっておりますのをたとえば三年に限り十万円ぐらいの取得控除をする、そのぐらいの手だてをしなければ私は民間住宅資金というものは大変至難ではないか。五十六年度も百十四万戸になりましたが、これは一月募集いたしました住宅金融公庫の募集が、御承知のとおり緊急対策の結果であそこまでいっただけでありまして、実際は百十万戸を切っておったはずでございますから、そういうことを思いますと、せっかく公的資金の住宅は進みましても民間資金住宅というものは大変厳しい状態にある、こういうことであります。  まあ大変財政厳しい中でありますから、われわれもあえてそういう問題につきましては勇気を持って申し上げておりますが、何か手を打たなければならぬということであれば、この際そういう問題についても改めて御検討願ったらどうであろうか、こういうことを考えておる次第であります。この点、建設大臣おいででありますれば、御意見を承らせていただきたいと思います。
  127. 始関伊平

    始関国務大臣 わが国の住宅建設は、昭和五十五年度を境にいたしまして、自来低水準で推移いたしております。  昨年の暮れに、渡辺先生にも大変知恵を出していただいて、また御協力いただいて新しい政策を掲げた新住宅建設計画でございますが、これもただいま御指摘のように、公的金融による方の住宅は相当申し込みが多くて盛んでございますけれども、いわゆる民間住宅の方でございますが、これはどうも余りぱっといたしませんで、全体として百三十万戸を達成できるかどうか、ちょっと私も心配をいたしております。  そこで、これはいま御指摘のように、地価の上昇があったり何かするのに、一方所得は伸び悩んでおる。いわゆる住宅価格と国民の住宅取得能力との乖離によるものだというように考えておりますが、そのような立場から、そういう状況を改善いたしまして住宅建設を促進するために、昭和五十七年度予算において住宅金融公庫を中心とした公的住宅金融の拡充を図るとともに、五十七年度の税制改正におきまして住宅、土地税制の大幅な改正を行うなど、各般の施策を講じたところでございます。  特に、ただいま御提案のございました住宅取得控除につきましては、当時皆様の御協力で、住宅取得能力の向上を図る観点から、借入金の償還金等に係る控除率を五%から七%にいたしました。また、控除限度額を三万円から五万円にいたしまして、来年の一月一日から施行するということにさせていただいたわけでございますが、ただいまの渡辺先生の御提案はそれをさらに一歩進めて、いわゆる民間住宅の方については金利を下げるということもできませんし、ほかに打つ手がないから、控除額を一四%、限度額を十万円にしたらどうか、こういう御提案と承知いたしましたが、建設省といたしましては、住宅取得能力の一層の向上を図るための貴重な御提案といたしまして鋭意検討させていただきたい、かように存じております。
  128. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 こういう財政の厳しいときでありますから、なかなかいい手だてといいましてもむずかしいわけでございますし、住宅金融公庫の融資の限度をまた上げるとしましても恐らく百数十万円上げなければならぬことになりまして、それは何兆円ということになるわけでありますから、住宅という問題はなかなか大変な問題だと思っておりますが、いま御提案申しましたのは一案にすぎませんが、何とかそれらの手当てを早急にやってまいりますれば、必ずしも私は百三十万戸というものが夢の数字ではない、実現可能な数字であると思っておりますので、総理、ぜひひとつ御検討願いまして今後ともお進め願いたい、御希望申し上げておきます。  次でございますが、私はいま雇用問題を大変心配をいたしておりまして、労働大臣もおいでを願っておると思うのでございますが、いまお話しのように、三%程度の経済成長ということでございますと、いろいろな影響が出てぐるのではないかと私は思うのであります。特に、第一に雇用面の悪化、第二番目に歳入欠陥の増加あるいは貿易摩擦の再燃という問題が懸念をされると私は思う。  わが国の雇用情勢というのは、御案内のとおり欧米諸国に比べますれば大変良好な状態にございます。その点われわれも十分承知をいたしておりますが、本年に入りまして非常に悪化をしてきたというふうに聞いております。季節調整値によりましても二・三五%、頭数にいたしまして百四十三万人と聞いておるわけでありますが、こういうような数字は、恐らく最悪でございました五十三年度の二・二%、百二十二万人を上回るものではないかと思っております。現在のところは、一軒の世帯主でありますとかそういうような方々までは及んでいないという面もある。あるいはまた、労働省の求人開拓等もありまして、表立った緊急事態までは至っておりませんけれども、内容をいろいろ精査いたしてみますと大変心配をされる問題があるのであります。その事態が憂慮されておるわけであります。  私は、そういう意味で、物価も大事でございますが、雇用の維持というものが肝要ではないか、そういう意味におきましては、経済成長をある程度確保するということが労働政策の上におきましてももう捨ておけない事態になっておるのではないか、こういうふうに考えておりまして、きょうは労働大臣からも御意見を承れれば幸せだと思うわけであります。
  129. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 お答えいたします。  御指摘のとおりに、最近の雇用失業情勢というものが何といっても景気の動向に反映するわけであります。したがって、労働力の需給が弱含みの動きが目立っておりまして、いまお話がありましたとおりに高水準の失業状態が続いておるわけで、私が労働省を預かってから二十四万人失業者がふえておるわけです。これに非常に頭を痛めておるわけでありますけれども、何といっても経済運営の基本的な拡大を図ってもらわなければいけない、そういうことで、先ほど来お話がありましたとおりに公共事業の前倒しをやっておるのが実情であります。  そこで、特に雇用対策としては雇用調整助成金制度の機動的な活用、さらに特別な求人開拓の実施、あるいはまた再就職の促進等で積極的に取り組んでおる次第であります。しかしながら、最近の状況から見ますと、非常に産業界の不振、中でも輸出が非常に鈍化しておる関係から、機械関連の業種からもじわじわ離職者がふえてきておるというふうなことで、非常に先行き楽観を許さない状況にありますので心配しておるわけであります。したがって、いまお話がありましたとおりに経済運営をもっとしっかりやってもらわなければいけない。いま、総理を初め関係閣僚が申し上げましたとおりに、公共事業の前倒しをやったけれども後半に息切れがするのではなかろうか、こういうことを私はやはり早目に、後半においてはこれこれこれぐらいのことはやるんだよという一つの目標を立ててやることが、雇用情勢にも非常に効果的なつながりが出てくるということでございますので、一層の経済運営を期待して、今後の雇用政策を強く推し進めていくという気持ちでございます。
  130. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 大体御意見を承りましたが、私は先ほど申しましたような感じを持ったのでありますけれども、やはり時期が非常に大事である、時期を失しますと前倒しもできなくなるのではないかと思っておりますので、いろいろな御意見を総合されまして対処せられんことを希望いたしておきます。  次に、円相場でございますが、サミット終了後のドルは全面高になっております。また、そういう意味におきまして円は大変低落傾向をたどっております。去る十四日には一ドル二百五十円の大台を超えておりましたけれども、その後急落を続けまして、一昨二十一日には、ついに二百五十七円にまで落ち込みました。しかも、これは乱高下をいたしておるわけであります。その最大の原因とされておりますアメリカの高金利も、物価は鎮静化したといいながら膨大な財政赤字を抱えておりまして、容易には改まらないであろうと言われておるわけでございます。  大蔵大臣並びに日銀当局の御見解はどのようなものであるか、後ほど承りたいと思っておりますが、また、アメリカの高金利の影響で苦しんでおりますのはわが国のみでなく、これはヨーロッパもそうでありますし、各国とも同じでありますが、総理のサミットの報告によりますと、通貨問題に関しまして「通貨当局間の協力の一層の強化が約され、中長期的な観点から対応策を検討すべきことが合意された。」大変むずかしい表現になっておるわけでございますが、一体その具体的なスケジュールというものはどういうことになっておるのかということと、また円安の直接的な影響としまして、輸入物価の上昇並びにその卸売価格と消費者物価への波及というものが懸念をされております。これに対する御意見。  もう一つは、産業界では引き続きまして合理化を進めておられる、そして、そういう合理化の努力によりまして輸入コストを吸収しようという御努力を願っておるようでありますが、これもおのずから限界があると私は思うのでありまして、これらに対しましてどのような御認識のもとに対策を立てようとしておられるのか、私は大変大きな問題だと思うのであります。ぜひ御答弁ください。
  131. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私から、ベルサイユ・サミットの際におきます各国首脳間でアメリカの高金利を中心にいろいろ意見の交換をし、またアメリカに対して強く善処方を求めた、その経過を簡単に申し上げるのでありますが、アメリカの高金利につきましては、各国とも強くその改善方、引き下げ方を要求をしたわけでございます。これに対しまして米政府代表は、物価も鎮静化しつつあるから、近く金利も下がる方向に向くであろう、こういうことで、いましばらくわれわれの努力をひとつ見守ってほしい、こういう意見であったわけでありますが、それに対して各国の代表から、いつまで待ったらいいんだ、もっと具体的の措置を講ずべきである、こういう強い意見がございまして、米側といたしましても、これに対しては善処をとにかくしなければいけないということで、各国の通貨当局間で今後さらに緊密な連絡をとりながら対策を進めていこうということで、首脳間で合意を見た、こういうことでございまして、これは共同宣言の中にも盛られておるところでございます。  その後におけるアメリカの金利のさらに高騰、これはわれわれとして非常に予想外のことでございますが、その原因等につきましては、大蔵大臣等から説明をいたさせます。(渡辺(栄)委員「簡潔で結構です」と呼ぶ)     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕
  132. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 では、簡単に申し上げます。  ただいま総理からありましたように、やはりアメリカ高金利の引き下げということは各国からの強い要望、この金利格差が円安の最大原因になっております。もう一つは、やはりドルが強いというのは、動乱のときどうしても、過去の傾向を見ると、理由のいかんを問わずドルが強いということがございます。したがって、これは余り動乱がないようにしてもらうということは、日本にとっても私は非常に大事なことじゃないか。  それから、やはり初めて国際通貨の安定ということが首脳部会議で協議されたということは、私は大きな意義を持つのじゃないか。その中で、やはり為替に対しても安定的にとるための何らかの方策をお互いに検討していこうということになったし、IMFで決められた市場の乱高下に対する介入というものも、お互いが介入する用意があるよというような宣言もやってきたことは一段の前進ではないか、かように思っております。  何といってもやはりアメリカの実質高金利をやらなければならない最大の原因は、政府の財政需要、先まで膨大な赤字が続くということではなかなか金利が下がらない、したがって一刻も早くその膨大な財政需要を縮小して政府の資金需要を少なくする、こういうことが大切だということが各国の認識でありますし、日本においても同様だ、そう考えております。
  133. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これだけの円安になりますと、一番困りますことは、やはり金融政策を機動的に運営できなくなる、こういうことだと思います。  それからもう一つは、物価に対する影響、せっかく物価が安定をいたしまして、ことしになりましてから実質可処分所得も二年ぶりにふえ始めた、こういう傾向が出ておりますのに、卸売物価、消費者物価に悪影響が出てまいりますと、これは大変でございますので、これをどのように最小限度にとどめるか、そういう問題もこれからの課題だと思います。  いずれにいたしましても、今回の円安は、金利差もございますが、やはり国際情勢、それから投機資金等、いろいろ背景がございまして円が不当に評価されておる、こういう事態でございますので、事態の推移を十分見守りながら最善の方策を立てていきたい、このように思います。
  134. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 経済問題はまだいろいろお伺いしたいことがたくさんございますが、時間も大分追ってまいりましたので、財政問題でいろいろお伺いをしてまいりたいと思います。  四月末現在におきまする五十六年度分の税収は、五十六年度補正予算で見込みました伸び率をかなり下回っております。この結果、五十六年度の税収不足額は補正後で二兆八千億円程度に達するであろうというふうに聞いておるわけでありますが、最終的に五十六年度の税収不足額は幾らぐらいになると見通しをしておられるのか。新聞その他では拝見しておりますが、承りたいと思います。  なお、時間の関係で一括して御答弁を願えれば結構でございますが、五十六年度の歳入欠陥につきましては、まず決算調整資金約二千五百億を取り崩し、また不足分を、約三兆五千億と言われます国債整理基金、これから資金に繰り入れるということによって処理するというふうになるわけでありますが、国債整理基金から繰り入れる分につきましては五十八年度までには返済しなければならない、こういうふうになっておるわけでございます。この基金の埋め戻しにつきまして、どういう方針をおとりになろうとしておるのか。あるいは赤字公債の増発によるのか、それとも他に方法があるのか、また五十七年度の補正で行うのか、五十八年度総予算で行うのか、この点、大蔵大臣の所見も承りたいと思います。  もう一つ、五十七年度の税収の見通しについてでございますが、景気の現状と五十六年度の大幅な歳入欠陥、こういうことからまいりますと、約五兆円を超えるような税収不足になるのではないだろうか、こういうように考えられるわけでありまして、これらにつきまする政府の見通しあるいは御見解、大変厳しい情勢でございますが、これは何としても解決をしてまいらねばならない重大な問題でありますので、まず大蔵大臣から承りたい。
  135. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほども午前中質問がございましたが、税収の最終見積もりは、確定的なことはまだわかりません、わかりませんが、想像されるところでは、当初予算に対して一〇%ちょっと上、まあ額にして二兆九千億円プラス・マイナス千億ないし千五百億円ぐらいではないか。これはまだ予想でございます。  それの処理は、これも総理からもお話があったかと思いますが、決算調整資金国債整理基金等の法律で定められたものがございますから、それの活用ということで五十六年度の締め切りをやってまいりたい。  そこで、法律によれば、五十七年ないし五十八年中にはその分は返済しなければならぬようになっているではないかということであります。これをどうするかという問題につきましては、五十七年の今後の後半の景気の動向、経済の情勢、こういう問題との絡みもございます。また、五十八年度の見通しというような問題もございますから、それらをひっくるめて五十七年中にするか、八年中にするかという問題はいまだ未定でございます。経済情勢によって対処する。  それで、五十七年度についてはどうなのかというようなお話でございますが、これはまだともかく実際上六月からの収入でございまして、一カ月も経ていないというような状態で、来年の五月いっぱいの収入を待たなければならぬ。こういうような情勢から、景気の維持発展というためには、先ほどから河本長官が言っているようないろいろな手だてをわれわれは講じていくつもりでございますので、世界の景気の今後の後半における回復の状況等も見なければ一概に何とも申せないということであって、これらに対する補正云々のことはまだ考えておらないということであります。
  136. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 まあ大臣のおっしゃることもよくわかりますが、私は、大事な問題は、ある程度事実を国民によく知らせて、そうして理解と協力を求める、これは非常に大事なことでありますから、ひた隠しにして隠しておったということではかえって国民の誤解を生ずると思うわけですから、それは今後の問題であるといたしましても、御留意を願った方がいいのではないかと私は思うわけであります。  それから、こういうことになってまいりますと、いろいろな意見が出てまいりますけれども、大変なことになってきたので、あるいは増税をされるのではないかと国民は大分心配をしておるのではないかと私は思うのであります。かねて総理は、五十九年には赤字公債から脱却するのだ、増税なき再建をやるのだとおっしゃっておるわけでありますが、その点につきましては変わりはないものと私は思っておりますけれども、国民に安心をさせる意味で、総理から一言御答弁いただきたいと思います。
  137. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 渡辺さん御指摘のように、税収が不振である、大きな歳入欠陥等も出てきておるというようなこと等で、非常に状況は厳しく相なっておりますことは御指摘のとおりでございます。しかし、私どもは、五十七年度予算の運営、さらに五十八年度予算の編成、五十九年度予算等を展望をいたしまして、そして終局的に五十九年度中に特例公債依存の体質から脱却をするという国民皆さんに対する公約を是が非でも達成をしたい、このように考えております。  何といっても、それをいたしますためには、まずもってこの肥大化した行財政を思い切った見直しをする、節減合理化を図るということが第一であるわけでございまして、そのような観点から五十七年度の予算の編成におきましてはかつてなかったゼロシーリングという手法をとったわけでございますが、五十八年度予算におきましてはさらに厳しい姿勢で私どもはこれに臨まざるを得ない、このように考えておりますし、税外収入等につきましてもあらゆるものを洗い直す、見直しをするということにいたしまして、一般消費税等のような大型新税というようなものを念頭に置かずに、このような既定の方針で財政再建に向かって全力を尽くしたい、こう考えております。
  138. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 われわれもある程度想像はいたしておりますが、五十八年度は大変厳しい予算編成になるであろうというお話でございます。  そこで、マイナスシーリングというお話も出ておりますが、昨年はたしか六月初旬に五十七年度のゼロシーリングの方針が決定をされたと記憶いたしておるわけでありますが、ことしはいつごろにこれを決定される予定でありますか、また、どの程度のものにする予定でありますか。きょうお話ができなければやむを得ませんが、できれば承りたいと思います。  また、昨年はゼロシーリングの例外といたしまして人件費その他五項目ほどが挙げられておったと私は思っておるのであります。それにつきまして、私は来年度のシーリングにつきましてもこの五項目は例外とされるであろうと想像をいたしておりますけれども、この機会に、このほか特に先ほど来お話がありまするように、公共事業のような果実を生むもの、こういう投資的な経費につきましては何らかの配慮をされるべきではないか、それがむしろ行革、財政再建を成功させる道ではないかと私は考えておりまして、この点をお願いしておきたいと思うのであります。  御承知のとおり、わが国の社会資本は整備がまだまだ立ちおくれております。数字を申し上げてもよろしいが、時間の関係で省略をいたしますが、そういう意味で、公共事業は五十五年、私が大臣をやらしていただきましたときからゼロシーリングが続いておりまして、実質的にはマイナス一一%ぐらいになっておるのではないかと私は想像いたしております。これは地方単独等で若干補っておられることも事実でございますが、そのために用地費等が見られませんので、もう用地のストックはなくなってしまっておるのではないか、こういうことも思っておるわけでございます。また、そういう実質的に一一%も減っておるということ自体がいろいろ景気の足を引っ張っておることにもなっておるのだろうと私は思うのでありまして、そういう意味では、公共投資の拡大というのは、現在では他の政策手段によるわけにいきませんので、結局当面とれる一つの手段ではないか、しかも、それは一面におきましては税収にもつながってくるということでございますので、赤字公債と建設公債を全く同じように扱うということはこの際一遍検討してみていただく必要があるのではないかと私は思っております。それがまた財政再建を図る上にも有効な手段ではないか、こう思っておりますので、大蔵大臣の所見を承っておきたいと思います。
  139. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 シーリング、来年の予算編成の問題でございますが、時期をいつにするか、これは実は、ことしは国会の延長という問題もございますし、そうかといって国会終わるまで待っているというわけにもまいりません。早くに終わるところは早く詰めていただいて、われわれとしては月が変わればなるべく早くと思っておるわけであります。上、中旬、その中でもできるだけ早くというように考えております。  それで、枠はどうなんだということでございますが、御承知のとおり、たとえば経済の成長が緩やかでもあるとして、法人税、所得税、酒税がふえれば、それに伴って自動的に歳出の地方交付税はふえるわけですから、抑えようがないものがあります。国債費、借金がふえれば利息がふえる、これも抑えようがない。ということで、あとはその他の一般歳出ということでございますが、この中でも、抑えろといっても、人件費というような問題についてはマイナスにするといっても現実的ではない。これはみんなでともかく身分保障、上げろという声の方が圧倒的に多いわけですから。そういう問題があります。年金の問題も、年度中途で変わった問題については、それはやはり上げざるを得ないだろう。ある程度の別枠というものは考えられる。それから、防衛費の問題についても、これは国際条約に基づいて歳出化されるものについては途中でそれを変更してしまうということはなかなかできない。それから、海外経済協力の問題もしかり。あるいはエネルギーの問題をどうするのかというような問題ももちろんございますし、そういうような問題を考えますと、これも極力抑えてはまいりますが、マイナスにするということは言うべくしてむずかしいのじゃないか。ということになれば、それ以外のものでそれらのふえる分をはめ込んでいくということになると、マイナスシーリング以外にはないということになってまいります。したがって、ことしはかなりきつい予算のシーリングにならざるを得ないし、そうしなければ要するに来年も多量の赤字国債を出さざるを得ないというような状態になりますので、それらの兼ね合いというものでわれわれとしては非常に厳しい態度で予算のシーリングを設定したい、そう考えております。まだ数字については詰まっておりません。
  140. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 この問題はいろいろ議論をしたいところでありますが、時間がございませんので、今後また党内等におきましてもいろいろ議論をさせていただきたいと思います。ただ、私はこの際、やはり建設公債と赤字公債というものに対する考え方を根本的に検討される時期が来ておるのではないか、このまま進めてまいりますれば経済は縮小均衡に陥ってしまうのではないか。賢明な大蔵大臣、いろいろお考えだろうと思うのでありますが、今後におきまして十分御検討願いたいと思うのであります。  時間がございませんので次に進みたいと思うのでありますが、それは政治倫理の問題でございます。  今日難局に直面しておりまする財政再建を確立し、また鈴木総理政治生命をかけると言っておられまする行政改革を遂行するためには、まず国民の理解と納得を得なければならぬと思うのであります。その前提として、責任ある与党、自由民主党のまず一致結束が肝要であることは言うまでもないと私は思うのでございます。  私の座右の銘には、信なくんば立たずというのがあります。三十七年間の政治生活は、私はそれで通してきたつもりでございますが、国民の信頼を確保することが政治の要諦であろうと思うのであります。総理は、政治は最高の道徳であると言っておられますが、私は、およそ国会議員たる者は、常にみずからを厳しく律し、まさに李下に冠を正さず、こういう気構えで国民の期待と信頼にこたえなければならぬと思うのであります。そして、日夜努力を重ねねばならないと思うのであります。  ただいま国会で問題になっておりまする議院証言法の改正問題は、鈴木総裁の指示に基づきまして倫理委員会の設置問題とともに一昨五十五年に議会制度協議会で取り上げられまして、与野党の真剣な検討が重ねられてきたものでございますが、去る六月十日の与野党国会対策委員長会談におきまするわが党の田村委員長の発言によりまして改正の作業が一段と促進をされることとなりました。次いで十六日には、福田衆議院議長が同協議会において、議院証言法の改正と倫理委員会の設置について各党間において十分審議を尽くし、鋭意その実現に努力されるよう要請されたのでございますが、わが党内におきましても議院証言法改正並びに国政調査権行使に関する調査特別委員会を設置しまして、議長の意向に沿うべく意見取りまとめに全力を挙げておるところでございます。  議院証言法の改正に当たりましては、証人の人権の尊重、真実の発見、調査目的の達成を目指すほか、将来いかなる政党が多数を占めようと少数党抑圧の具とならないよう慎重な配慮が必要であることは申すまでもないと思うのであります。多数の議員を擁する自由民主党にはそれだけにさまざまの意見があるのも事実でありますが、これを早期に取りまとめるため懸命の努力を続けておる次第でございます。  議院証言法の検討に関しましては、現在なお与野党間で問題を詰めておられると聞いておるのでありますが、私は、証人とは、非難をされ糾弾さるべき存在ではなくて、真実を見出すための協力者であるはずだと思うのでございます。民事訴訟法、刑事訴訟法にも詳細な規定が定められておりまして、これは証人の人権を守り、真実を発見しやすくするためのものであるというふうに理解をいたしておるわけでございます。  われわれといたしましては、国会の権威の高揚のためにも鋭意努力を尽くしまして、野党各党の同意を得て早期改正をぜひ実現をいたしまして、証人の人権を尊重し名誉を傷つけないためのルールを確立するということが大前提でありまして、その上に立って証人喚問を行うべきではないかと思うのでございます。  鈴木総理におかれましては、就任後いち早く政治倫理の必要性を提唱されたところでもあり、今後なお一層の指導力を発揮されまして、政治倫理確立のために勇断を持って臨まれるよう希望いたしますが、この際、総理のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  141. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政治倫理確立の問題は、渡辺議員のただいまの御意見と私は全く同感でございます。特に、六月八日の判決がございまして、国会はもとより世論もこの政治倫理の問題を明確にせよという強い声が高まっておるわけでございます。そういう意味合いから、昨日、当予算委員会におきまして各党間の御意見が一致をされ、それを議長の諮問機関である議会制度協議会に要請をされまして、それを中心にいま早急に議院証言法の改正の問題等の審議が促進される機運に相なっておる、それを踏んまえてできるだけ早く証人喚問の問題等も行われるというようなことになりましたことは私は大変結構なことである、このように考えておるわけでございます。  ただ私は、その際に特に私ども注意をしなければならない問題は、これは国会の権威の問題であり、また議員の身分の問題でございます。そういう関係から、いずれの政党がどういう立場に立とうとも、これが公平に公正に、そして国民が真に納得されるような形で運営されるように、そして議会政治の刷新と擁護につながるようにしていかなければならない、政略的に、政治的にそれが利用されるということは議会制民主主義の自殺につながる問題にもなりかねないわけでございまして、そういう点を十分注意しながらやってまいらなければならぬもの、このように考えるわけでございます。
  142. 渡辺栄一

    渡辺(栄)委員 時間が参りましたのでこれでやめますが、実は私、行政改革あるいは防衛、文教等につきましても御質問いたしたいと思って準備をしてまいりましたが、いずれ次の機会に譲りたいと思います。  ただ、いま総理のお話のように、ぜひとも政治倫理確立につきましては格段のお取り組みを願いたいと思います。  最後に、総理はベルサイユ・サミットなど一連の外遊で大変な指導力を発揮されました。各国の首脳からも激賞されたというふうに聞いておりますが、どうかこの国際舞台で発揮されました政治的な識見と力量を今後とも十二分に発揮をされまして、わが日本丸の航行に誤りなきよう、ひとつがんばっていただきたい。以上お願いいたしまして、質問を終わることにいたしたいと思います。  ありがとうございました。
  143. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて渡辺君の質疑は終了いたしました。  次に、阿部助哉君
  144. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 初めに、本日、日立製作所、三菱電機の社員が、IBMの企業秘密を盗み出して、FBIのおとり捜査で逮捕されるという事件が報道されております。  この事件は、日米経済戦争をさらに大きく大火事にするおそれのある大変大きな問題だと私は思うのですが、その問題について、政府に対して、アメリカから何らかの連絡を受けておると思うのですが、その内容を明らかにされたい。  もう一つは、日本政府は、アメリカから犯罪捜査について協力を求められた場合に、どのような態度をとるのか。これだけをまずお伺いしたいと思います。
  145. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 外務省の方で把握しております事実関係だけについて御答弁申し上げます。  詳細につきましては、目下ワシントンにありますわが方の大使館を通じ調査中でございますが、とりあえず判明しております事実につきましては、昨二十二日、米国の司法省の発表によりますると、日立製作所、それから三菱電機の社員六名が、米国IBM社よりコンピューター関係の企業秘密を盗む目的でIBM社員を装ったFBI捜査員に金を贈り、それにより逮捕された、こういう由でございます。  さらにつけ加えさせていただきますと、同じ司法省の発表によりますると、別途、日本に在住しております日立、三菱両社の社員十二名に対しましても、本件に関係したという理由で逮捕状が発出されておる、こういうことでございます。  さらに、同発表によりますると、本件捜査は昨年十一月から開始されておったということでございまして、また、先ほど申し上げましたIBM社員を装ったFBIの捜査員に贈られた金額は、日立製作所より六十二万二千ドル、三菱電機からは二万六千ドル、こういうことでございまして、この事実関係の詳細、真相につきましては、先ほど申し上げましたように、目下、在米大使館を通じて米国政府からさらに詳細を聴取するということをしております。
  146. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 通産省におきましては、十一時から日立、十二時過ぎから三菱の両社の担当役員を呼びまして、本件につきましての事情を聞いたわけでありますが、日立の説明によれば、米当局が発表した者が社員であることを確認をいたしましたが、それ以上の事実関係については十分つかめておらない、そこで調査を鋭意続けるということでございました。  なお、三菱の役員の説明によりますれば、従来から情報収集には慎重な態度をとっており、発表のような事実は考えられないところであるが、まだ十分な事実関係がつかめていないので、今後調査を続けたい、こういうことでございました。
  147. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大変不幸な問題であります。しかし、まだ詳細がわかりませんので、本論の質問に入りたいと思います。  総理総理就任以来政治倫理確立、そして、ただいまもまた渡辺委員の質問に答えて倫理確立の問題をおっしゃっております。しかし、就任以来、総理、具体的に一体何をおやりになったのだろう。私たちにはさっぱりわからない。国民にわかるように、こういう手を打ってきましたということを具体的にお示しをいただきたいと思います。
  148. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、過去に起こりました不幸な事件、ああいうようなことが二度と起こらないように、そのような反省の上に立って政治倫理確立に向かって、私を含めて、政治家たる者はみんな努力をしていかなければならない、こういうことで、特に政権政党であります自由民主党におきましては、一昨年、党大会におきまして倫理憲章を制定し、党員相励まし合いながら、自粛自戒をして、政治倫理確立に努力をしておる、こういう問題でございます。  なお、国会にお諮りをした案件といたしましては、従来、政治資金規正法の中で、政治団体に対するところの政治献金は報告義務等が明確にあったわけでありますが、個人に対する献金等につきましては十分でなかった点が指摘をされておりました。そういう点に対する改正の措置につきましても国会の御承認を得てやったところでございます。  また、政治において一番金のかかるのは選挙の問題でございますから、金のかからない選挙制度確立するということで、皆さんの御理解、御協力を得ながらこれを進めていく、こういうことでございます。  私は、阿部さんは、過去に起こった事件の問題に関して、私のやっておることが全くなまぬるいのではないか、こういうことをおっしゃろうとしておられるのではないか、こう思うわけでございますが、この点につきましては、私は、三権分立の中におきまして、総理大臣の立場と党総裁の立場、それから国会にお願いをして国会でやっていただく問題、そういう問題を十分心得ながらやっていかなければ、総理大臣が大きな権力を背景にして、いろいろ立法なりあるいは司法の面に影響力を及ぼすというようなことは厳に慎んでいかなければいけない問題である、こういうぐあいに考えておるところでございます。
  149. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 選挙法を提案したという程度でありますが、あなたは無力な一市民ではない。憲法の規定によれば、大変大きな権能を有しておられる。また、党総裁としては、役員の任免権をお持ちになっておられる。そういう立場からいって、いまの総理倫理観というものが国民には納得できない。私自身も納得できない。  昔は、免れて恥なしということは、ひきょう者だということなのであります。近ごろは一体どうなのです。明らかになっても開き直りじゃないですか。こんなことが許されて、政治の世界がきれいになる、政治倫理確立するなんということは私は考えられない。  総理は、先ほどあなた自身がおっしゃるように、大きな権能をお持ちなのであります。その権能を、なぜ政治倫理確立に向けてやらないのです。灰色高官を証人に立てる。これは現行法で不可能なことはないのであります。ましてや、灰色高官と言われる人を党の要衝の役員につけるなんということは、私は鈴木総理政治倫理観を疑わざるを得ないのであります。  今日、政治家がこう非難を受けるのは、やはり政治家自体、われわれ自身お互いに誇りがなくなったのじゃないだろうか。もう一つは、羞恥心がなくなったのじゃないだろうか。政治家が責任をとるというのは、やはりその議員をやめることでありますよ。羞恥心がなくなり、誇りがなくなったら、これは動物であります。人間じゃなくなるのであります。私は、いま日本の政治家の中で一番問題は、やはり政治家としての誇りであり、羞恥心だと思うのでありますが、総理はその点どうお考えになっておられますか。
  150. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 その点については、基本的に同感でございます。
  151. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなた、同感をされたのでありますが、それならば、あなたのところの幹事長なんという、いま私は個人的には何も憎しみも何もありませんけれども、一個の政治家として、一応身を引くぐらいのことがなければ、私は、日本の中でこれから一番責任のある政治家として、二階堂さんのためにもならないと思うのであります。その点を明確にしないで、子供たちの教育がどうだ、やれ非行がどうだ、何がどうだとおっしゃってみたって、世の中はきれいにはならぬと思います。私たちの場合、どうしてももう一遍考えなければいかぬのは、免れて恥なしではいかぬのであります。免れても、やはり自分の良心にこたえて出処進退を明らかにするというぐらいの気持ちがなければ、私は日本の政治はよくならぬと思うのであります。  そういう点で、もう一度、総理が、大きな権能をお持ちになっておる総裁として、あの幹事長なんというものをつけておくということは、これは国民が理解できないところなんでありますから、あなたはやはりやめさせるべきです。そして、運営のいかんによって、野党だってそんなに何もむちゃをやるわけはないのであります。基本的人権の尊重は、われわれ野党が一番真剣に唱えてきた問題なんでありますから。現行法の枠の中で証人に立とうとする人もあるのだから、証人に立てて、そして身の潔白なら潔白をあらわせばいいし、私は、証人に立つ勇気がなければいかぬし、また、立てるべきだと思うのですが、総理、どうですか。
  152. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国会におきまして各党、各会派で真摯なお話し合いが行われて、近く、議長の諮問機関である議会制度協議会におきましても、議院証言法の問題、議員の喚問の問題等も結論を早く出していただいて、そして堂々とそこで自分の潔白、信じるところを述べていただく、そういうような機会がきわめて近い機会にぜひ実現をすることを私は期待をいたしておりますし、党に対しましても、そのように、各党と協調して、早く実現できるようにということで指示をいたしておるところでございます。
  153. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 議院証言法の改正がなければできないというものじゃないのです。いまわれわれに課せられた一番大きな問題は、私はやはり政治倫理確立の問題だと思います。国民が議会を信用しなくなれば、議会制民主主義は崩壊する以外にありません。私は、財政問題についても、総理がいかにおっしゃってみても、やはり国民には納得のできないことばかりだと思います。そういう点でこれからお伺いします。  先ほど、五十六年度予算においては二兆八千億程度、多少の上がり下がりはあるでしょうけれども、税収欠落が生ずることをお話になりました。五十七年度は、いまのところ皆さんも大体の見当をつけておられるようでありますが、経済の見通しは実質三・三%程度、名目でまあ五%から六%。となると、これは政府見通しより大分下がってまいります。大蔵省の方で、五十七年度は大体五兆一千億から五兆四千億ぐらいの赤字が出ると見込んでおるのじゃないですか、どうなんです。
  154. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大蔵大臣の答弁にもございましたように、五十六年度の税収不足額は、現時点で、これは大胆な推計でございますが、二兆八千億ないし二兆九千億、補正後でございます、を中心といたしまして、前後一千億なり一千五百億の幅をお許し願わなければならないわけですが、その程度の相当規模の減収は避けられないということでございます。したがいまして、五十七年度につきましては、発射台と申しますか土台減、これだけの巨額の不足額が五十七年度の税収に相当な影響を持ってくることは、これは御指摘のとおりでございます。  しからば、五十七年度、現時点におきまして当初予算に見込みました税収額がどれぐらいの欠減になるのか、あるいはどれぐらいの当初見込みからの変更を生ずるかということでございますけれども、これは阿部委員御案内のとおり、税収面ではこの月に入ってまいります税収が実は新年度の税収の始まりということでございまして、この計数がわかりますのがやはり八月の時点ということになりますと、私ども事務当局といたしましては、もちろんその背景に実体経済がどういうふうな展開を示すかという点もございますけれども、まことに申しわけないのでございますけれども、現時点で計数面で確たることを申し上げる段階にはないということをぜひ御了解願いたいと思います。
  155. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんはこの予算委員会の場を何と心得ておるのですかな。私は大変不愉快なのは、この前もそうです、大蔵大臣は、この予算委員会ではわかりません、わかりませんと、こう言っておりながら、予算が通過した次の日に、財政欠落は二兆円程度だという発表をしておるのですね。そうすると、この予算委員会は、あれだけ一カ月以上にわたって予算審議をしてきても何にも根拠のない空虚なことをやっておることになるのじゃないですか。予算が終わった次の日にわかるものを、大見当でもいいから、なぜこの場で言わぬのです。予算委員会を侮辱するのですか、大蔵大臣。私は、こんなことでこの国会で真剣に予算審議なんというのはできないと思うのですよ。余りにもわれわれを愚弄しておる。これは野党だけじゃない、与党の議員も同様であります。予算審議をしておるときはわかりません、予算が通過した次の日には、もう今度は二兆円ぐらいの赤字になります、そういう発表をするというのは一体どういう神経なんです。議会制民主主義を尊重するとか予算委員会を尊重すると言うならば、もう少しお互いにざっくばらんに話し合いができないのですか。私はあの新聞報道を見たときに、何かもう予算委員会というのはやめたくなった。何か踏みつけられたような気がしてならぬのであります。  大蔵大臣、こういう答弁ではだめなんですよ。われわれも真剣に財政再建に協力もしなければいかぬし、考えなければいかぬのですよ。ただわからない、わからない、この予算委員会を素通りさえすればいいという考えでおったら、この予算委員会はナンセンスであります。大蔵大臣、どうなんです。
  156. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 この前の話は四月の……(阿部(助)委員「六日です」と呼ぶ)八日じゃなかったかな。衆議院の予算委員会は三月の何日でございまして、二月分の税収が四月の八日ごろの発表……(「七日だよ」と呼ぶ者あり)七日か八日か、私はそこ一日ぐらいわかりませんが、そういうことを発表することになりまして、私さえも実ははっきりした数字は持っていなかったわけでございます。したがって、それも確定数字を言ったわけでなくて、おおよその見当の話が上がってきたので、そういう予想を、残念ながら手元の内々の数字を見るとこうだということを言ったことは事実でございます。  ただいま主税局から、五十六年度が少なくなれば当然五十七年が少なくなるだろう、これは常識的にそういう想像がつくのは当然だと私は思います。問題は、それは経済の状態が同じという前提があるわけでありますから、経済がもっと悪くなればもっと違いが出てくる、よくなればもっとよくなるという動きがあるわけであります。したがって、前提が同じだとすればそれぐらいの数字の違いが出てくるのじゃないかという御質問もあってしかるべき問題だと思います。  しかし、予算の問題ということになりますと、当然にそういう違いが出れば直すべきじゃないかという話がすぐ出るわけでございますから、そうなりますと、ともかく年に三回も四回も直すということは事実上できません、国会にかけなければ直らぬわけでございますから。そこで、一応現在の見積もりというのは、経済成長の見込みというものを前提にして仕組んでございます。したがって、この経済成長について世界の経済の動向等も見ながら、もし直す必要がある——例年九月末に一部手直しが行われているのも事実でございまして、そういうような問題が出たときに今度はわれわれもよほど真剣にあらかじめ考えていかなければならぬ、そう思っておるわけでございます。  したがって、そういうふうにおそれがあるということは私は言えると思いますが、それじゃ幾ら幾ら違いが出る、予算で直すということになれば金額でやはり表示しなければならぬという問題がございますから、それは事務当局としても、おそれはあるかもしれないけれどもまだ六月の収入が半月しか入っていない、来年の五月までの収入の問題でありますから、したがって現在で全体にどれだけ不足するということを申し上げることはできませんという御答弁、これもまた仕方のないところではないか。御了承願いたいと存じます。
  157. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまのお話ならばある程度わかるのですよ。しかし、この前のあなたの答弁はそうではなかったのですよ。われわれだって一銭一厘まで間違わないのを出せって、そんなむちゃなことは言っていないのですよ。各党ともそれぞれ何ぼかの差はあるけれども、それぞれが試算をし、大蔵省の試算を踏まえ、そして各党ともがこの程度になるのじゃないかという質問に対して、あなたの方はわからない、わからないの一点張りだった。そして、予算が終わった次の日に大蔵委員会で発表しておる、八日の日には院外でそれを発表しておるということになりますと、私はこの予算委員会自体を踏みにじっておるのじゃないだろうかという気がするのです。いまおっしゃるようなお話ならば、私はわからぬじゃないのです。  ところで、そういうことになりますと、五十七年度はまた大きな財政欠落をすることはおおむね明らかだ。となると、一体この補正というものはいつごろお組みになるのです。
  158. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 したがいまして、経済見通しについて企画庁とよく相談をいたしまして、経済見通しでどうしても現在のものを変えざるを得ないというような段階になれば、そのときにすべき問題である。しかしながら、経済企画庁長官の答弁のように、やりようによって現在の経済見通しでやっていける、こういうような見解もございますし、まだ四月、五月しか月が経過していないし、ことしの後半は世界じゅうの景気も回復するというIMFとかいろいろな、そういうふうな一般的な見通しでございますから、だれが当たったか当たらないかといっても、世界じゅうなかなか当たらないというのもこれも事実なんですよ。去年あたりは、去年の後半から回復するわけだったわけですから、後になってから改定しちゃっているというようなこともございますから、断定的なことを私は申し上げられませんが、いずれもう少し様子を見させてもらわぬと、ここで、いつどうこうということを約束することはできないということを申した次第でございます。それは慎重に、謙虚によく判断をしてまいりたいと考えております。
  159. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それでは、企画庁長官にお伺いしますが、新経済七カ年計画は、これはいま直すために検討しておりますね。
  160. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この中期経済計画の問題でありますが、現在の計画は、昭和五十四年の八月に正式に決定をいたしまして、ちょうどことしで四年目になります。そこで、昨年の五月に経済審議会に二十一世紀を展望いたしました長期展望委員会というものをつくっていただきまして、これからの世界はどう変わるか、日本はどう変わるかということにつきまして、いろいろな角度から検討していただきました。非常に大きく変わる、こういう答申をつい先ごろいただきましたので、それを受けまして来月から新五カ年計画をつくり直したい、こういうことで作業を進めることにいたしております。五十八年度を初年度とする六十二年度を最終年度とする新五カ年計画、それに移行していきたい、このように考えております。
  161. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これからやるのですが、ただ、言えることは、成長率が今日決められておるよりも、皆さんが見込んだよりも低目になることだけは、これは間違いがないのですね。どうです。
  162. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在実施中の新七カ年計画というものは、昭和五十四年から昭和六十年までの七カ年間、平均実質経済成長率五・一%と、このように想定をされております。来年以降の新五カ年計画がどうなりますかは、これは約二百人の専門家に委嘱いたしまして、六つの部会に分けまして、いまから作業をすることにいたしております。そこで、専門家の作業に任せたい、このように思っておりまして、いま私の方からこれぐらいになるだろうということにつきましては、全く白紙でございまして、申し上げる段階ではございません。  いまお述べになっておりますのは五十七年度のことでありますならば、これはいま大蔵大臣が言われましたように、直すか直さぬかという問題につきましては、もう少しこの経済の情勢を見ました上で判断をしたい、このように考えております。
  163. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 逃げの答弁だけでありますが、安倍通産大臣は、これは二十三日、きょうの新聞だな、五十七年度もこのままでは五・二%の見通しに対して三・三%程度にしかならないと、こう見通しておるのですよ。こうおっしゃっておるのですよ。企画庁長官ともあろうものが、お任せしてあるから私はわかりませんじゃ、これはもう子供の走り使いみたいなものじゃないですか。私は、何%になるかなんという具体的な数字は言ってない。いままで立てた成長率よりも低くなるということだけは間違いないのじゃないかと、この経済情勢の中で。あなた、それぐらいのことが言えなければ、総理大臣になろうなんといったって、これはちょっと無理ですな。私は、低くなるだろうと、こう言っただけで、何%になるかということまで細かい数字を聞いておるのじゃないですよ。じゃ、高くなるということは言えるのですか。低くなるのでしょうが。
  164. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 どうも、ちょっと混同しておるようでございまして、いま当初お述べになりましたのは、五十八年度以降の新計画は現在の計画よりも低くなるのかと、このような質問でございましたから、それはこれから委員を委嘱して作業をするので、それは低くなるとか高くなるとか、あるいはこの程度になるとかいうことを申し上げる段階ではまだないと、私はこういうことを言ったわけでございます。それと別に、五十七年度の経済の問題はどうかというお話でありますならば、これはもう少し経済の様子を見ました上で判断をしたいと、こういうことを言ったわけでございます。ただ、一−三月の数字は、この六月に発表いたしましたが、一−三月は年率に直しますと三・三%成長でございまして、これはこのまま推移いたしますと困りますので、そこで政府の方ではいろいろな対策を進めておる、こういうことでございます。
  165. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまの情勢の中で、だれが見たって高くなるなんということは考えられないのですよ。私は、その点もう少しフランクにお話しになってもいいんじゃないかと思うのですがね。  今度の七カ年計画を実現しようとすれば、五十七年度以降年率一二%なんという名目成長が必要になってくる。このように高い成長率ができなければ、総理がおっしゃるような増税なき財政再建など、幾ら言ってみたって税金収入は上がらないのですよ。このような成長が可能だと企画庁長官はお考えになりますか。
  166. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在の世界経済と日本経済の認識の問題でございますが、御案内のように、最近一連の国際会議もございましたが、その会議では、現状は戦後最悪の状態であると、大体こういう認識で一致しておると思っております。また、事実ほとんど欧米先進工業国はゼロ成長またはマイナス成長になっておりまして、失業者も先進工業国だけで三千万と、こういうことでございますから、私はその認識は間違っていないと、このように考えております。  そういう中におきまして日本経済は三%前後の成長が続いておるわけでございまして、ただ現時点は戦後最悪の状態であると、こういう認識でございますから、この最悪の状態がずっと続くということでは困るわけでございまして、そこで世界各国ともこの最悪の状態を何とか抜け出したいというのが最大の、かつ共通の課題になっておるわけでございます。だから、私どもも現状がこのままずっと続くとは考えておりません。何しろこういうかつてない激動期でございますから、いまはどん底であっても、やはりこれからはある程度よくなる条件はだんだんと熟してくるのではないだろうか。でありますから、激動期は激動期なりにこの経済というものを見ていかなければならぬと、このように思います。
  167. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私も、この質問をするにはただやみくもに質問しておるのじゃないのですよ。あなたのところの企画庁にも電話してみて、連絡をしてみて、大体作業を始めている、それで、これは低目の方向に向かって作業をしておるというぐらいのことは私も承知の上で聞いておるのですよ。それを大臣がただここで言い逃れをしようなんということをおっしゃるから私は少しおもしろくないだけであって、私はやみくもに聞いておるわけじゃないんだな。その辺を考えて、もう少しお互いにここで真剣に討論するならする、そうしながらよりいい道を見出していこうという態度が私は欲しいと思うのであります。  どっちにしたところで、これは低くなることは間違いない。総理自体そう思うでしょう。これはこれ以上、いままでの計画よりも成長率が高くなるなんというのは、そんなうまいことはできるわけがない。そうすると、これは増税なき財政再建というのは前提がもう崩れてしまったということじゃないのですか。総理、その辺はどうお考えになっておるのですか。
  168. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、財政の再建、そして行政改革、これは日本の現状からいたしまして最優先の政治課題だ、また、これは政府の課題だけでなしに国民的な重大な課題である。先ほど来、いろいろ御意見がございました。このままでいった場合には、とにかく公債費の利息の支払いだけでも大変なことになるというような御指摘もあったわけでございます。そこで、私といたしましては、昭和六十年から特例公債の支払いが始まるわけでございますので、少なくとも五十九年度までに特例公債依存の財政体質から脱却をしたい、こういう目標を立てまして、これを国民皆さんに対する公約としてきたわけでございます。  二月の予算委員会藤田さんの御質問に対しまして私はお約束をいたしました。それを私は常に肝に銘じて言っておるわけでございます。ここに記録がございますが、「私の財政再建についての国民皆さんに対する公約は、五十九年度に特例公債依存の体質から脱却する、こういうことです。私の国民皆さんに対する公約は、今後五十七年、五十八年、五十九年を通じてこれを必ず実行する、それについては政治責任を持つ、こういうことを申し上げておる。」これは私はただこのとき言い逃れで言っておるのじゃありませんで、十分とのことは肝に銘じまして、それに向かって全力を尽くしておるということだけを申し上げておきます。
  169. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあ総理の決意表明はわからぬではありません。希望的な決意表明はしかとわかります。しかし、あなたは臨調答申を尊重すると言う。臨調は予算のカット、カットじゃないですか。予算はカットしていく。そして、片っ方で、ベルサイユでは内需を上げるとか雇用を拡大するという約束をしておいでになる。財政を縮小して景気を刺激して税収を確保するなんという精神分裂的なことが一体あるのだろうか。私は、財政を縮小して、そして景気を浮揚したり税収をよけい上げたりした例が国際的にでもあったら一遍出してみて見せてもらいたい。国内で一体あったら教えていただきたい。少なくとも私は寡聞にしてそういう例を知りませんので、総理、それがあったらひとつ出してみてください。
  170. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、ベルサイユ・サミットで各国の首脳に対しまして日本の財政、経済の運営について説明をいたした際に、そういうことを申し上げました。それは五十七年度予算国会で御承認をいただいた予算案の審議でも明らかにしておりますように、外需中心でなしに内需中心で経済の運営をやっていきたい。成長率五・二%につきまして、内需を四・一%、外需を一・一%程度、こういうことで五十七年度予算審議をお願いをして、そして、いまその予算を私どもは実行に移しておるわけでございます。そういうことを私はサミットにおきまして、とかく日本は貿易中心で経済成長を図っているというような誤解がございますし、過去においてそういうことも確かにあったということでございますので、この五十七年度予算で日本政府がとったそういう政策を説明を申し上げた、こういうことでございます。
  171. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、私がお伺いしておるのは、臨調は予算のカットであります。あなたはそれを尊重する。片っ方は財政の赤字をなくして五十九年度は赤字公債ゼロにするという財政再建、これが矛盾しないとお考えになっているとすれば、私はどうもおかしいのではないかと思うのですがね。これは明らかに矛盾しておるのですよ。景気の落ち込みで税収は欠落するのは明快なんです。そうかといって、この歳出だってそう切れはしませんけれどもね。それで、片方で税収を上げる以外に財政再建の道はないのでしょう。この明らかな矛盾が総理にはおわかりにならぬのですかね。だから私、世界的に例があったら教えてくれ、こう言っておるのです。
  172. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ともかくこの間サミットで話し合われたことは、要するに、アメリカの高金利という問題、その最大の原因は何だ、財政赤字である。したがって、世界どの国も、フランスは別だと言っているのですが、ほかの国はみんな財政赤字をまず抑制する、それによって政府の資金需要を少なくする、そういうことが金利を低下させる一番の近道である、これは一致しているわけです。  そこで、日本でも財政赤字をなくすようにやっていこう。そのためには水ぶくれしているところがあると言われているわけですから、昔は必要なものであっても、いまはともかくなくてもがまんできるじゃないかとか、あるいは全部政府と言わなくても受益者負担に切りかえてもいいじゃないかとか、そういうような面は、大部分の国民が政府の歳出をもっと切り詰めろという点については、私は大体御支持が得られておると思っておるわけです。  しかし、その内需というものの景気をよくするという問題については、やはり政府が優先的に金をたくさんどんどん吸い上げていくというやり方、しかも、それが借金として残っちゃって後までいろいろ後遺症を残すというやり方は、これは阿部委員が前から指摘するように国債がどんどんふえていってしまう、それはわれわれ非常に心配しているわけです。だからそれは、内需の拡大と言っても、やたらに国債を発行して内需の拡大をするということはやらない。まず、われわれとしては歳出をカットして、民間活力をもっと生めるようにやっていこうじゃないかということを基本としてやりましょう。これはもう歳出と歳入の問題ですから、カットすると言ってもどこまでカットするんだ、問題はこれがその分かれ道になってくるわけですよ。どこまでカットするんだ。カットはもうこれ以上困ると言うのならば、では負担はだれがするんだというその次の話になるわけですから、それは御相談ということであって、われわれは歳出カットするに当たっては、まず御相談よりも先に歳出カットをみずからやって、その後でなければ相談のしようがない、したがって、それを先にやろうというのがきょう現在の心境でございます。(「野党の意見なんか聞いたことないじゃないか」と呼ぶ者あり)いやいや、それは十分皆さんの言い分を聞いてやっているつもりでございます。
  173. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあ皆さん歳出カットと言うけれども、今度マイナスシーリングと言っても目標が五%ぐらいでしょう。それ以上はできない。そうかといって、いまの赤字公債をゼロにするためには一〇%以上の削減がなければできないと私は思う。それならば税収の方が上がっていくかというと、総理は増税はしないとみずから手を縛っておられる。そうすると、片っ方では歳出のカットはなかなか思うに任せない、そうして増税はいたしません、そんなかっこうのいいことで一体財政再建ができるはずがないじゃないですか。これは明らかに矛盾じゃないですか。私、この矛盾がわからないのか、こう言っておるのですよ。  この矛盾をどうするのか。私はその点で、いまのようなやり方で総理がいかに最大の公約である増税なき財政再建をやる、こうおっしゃってみても、それは確かに総理の希望であるかもわからぬけれども、目標ではあるかもわからぬけれども、国民は現実的に生活をしておるのだ、その国民がいまやもうこれはできないというふうに見ておるのじゃないですか。ただ、それが何か五十九年度まで居座ればいいんだということになれば、そのときになったらぶん投げればいいんだということじゃ困るのでして、国民の生活は鈴木内閣がなくなったって続いていかなければいかぬのです。そのときにぶん投げてしまえばいいというわけにはいかない。  この矛盾をどう解決されようとするのか、具体的にそれを言ってくれなければ国民は、増税なき財政再建なんという、確かにスローガンとしては大変にうまいスローガンを上げた、こう私は思うけれども、実現の可能性は全くないと言って、これは明白ですよ、明々白々ですよ。それをまだ五十九年度の目標に向かって行くんです、行くんですという精神訓話みたいなことを聞かされたって、国民は納得しない、そこをどうしてくれるんだ、私はこう言うのです。それがなければ、この委員会審議なんかしたってもうこれは意味をなさないじゃないですか。そこを一体総理、どうされるのですか。
  174. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 財政の話ですから、総理がお答えする前に私からお答えさせてもらいます。  正直のところ、それは先生のような御主張の方が見識ある方の中にたくさんいることは事実でございます。われわれは真剣にそういう人の話も聞いています。現実の問題としてそれはなかなか、増税をしなければ財政再建むずかしいじゃないか。要するに、国債発行というのは税金の先取りですからね。先取って使っちゃったわけだから。税金の範囲内で福祉にしても教育にしてもやるべきものを、不況時代にともかくどんと税収が落ち込んで、急にいままでの水準を下げるわけにはいかない、むしろ伸ばしていくという段階で国債が発行されてきたのは事実でございます。したがって、ある意味では私は税金の先使いだという言い方もされても仕方がないんじゃないか、そう思っております。  しかしながら、一方においては、やはりぶくぶくした、そんな税金を取るなんという前にみずから切るものを切れよという強い民間の主張がある。これも事実なんです、実際は。  そこで、なるほど言われてみればいろいろ改革しなければならない問題もいっぱいある。そこを行革で全部えぐり出して、表に出して、こういうものはこういうふうに直したらどうだという議論がいま展開されておる。そのさなか、それはもうともかく増税をやるんですというようなことは言えるわけがない。行革の精神としては、それは増税はなくして、そういうものを切り詰めて、そして、ともかく活気を持たして財政をよくしていくんだというのが行革の精神ですから、できればそれが一番いいことであります。  もう一つは、やはり経済の問題でございまして、経済が思ったようにどんどん進んでいけば、それは自然増収、いわゆる税制改正の増税でなくて自然増収がうんと取れるというような時期になれば、それはまた思いがけない風に乗って、それは世界じゅうの動き、これだってだれも断言するわけにいかない、そういうことだってないとも断言はできない。だから、経済は持続させなければならぬということになりますと、われわれとしてはまず歳出カットを優先して、増税という、大型の新型増税というものを最初から予定してしまったら歳出カットがぐらぐらになってしまいますから、そういうものを予想しないで最大限の努力をしてみよう。赤字国債を五十九年度までにともかくなくすということはむずかしいんじゃないかという懸念があっても当然のことだと私は思うのです。しかしながら、それは不可能だと、いま白旗を上げなければならない状態でもないわけでございますから、目標というものはやや高目にとっておかなければ、すぐ手の届くところじゃ目標じゃないのですから、何とかその目標に向かって最大限の努力をまず精魂込めてやってみようという段階でございますので、もうしばらくごしんぼうして御支援を願いたいと考えております。  以上でございます。
  175. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 全く雲をつかむみたいな話ばかりされても、国民は現実の生活をしておるのですよ。歳出のカット、これは臨調の言う歳出のカットを幾らやってみたって、あなたがいつでもおっしゃるように、そう何もかにも切れるものじゃない。しかも、皆さんは防衛費はさらにふやそうとかいろいろなことをやっておって、何がそんなに切れるのです。切れるわけがない。それは、むだを節約するのは結構です。だけれども、現実にそれは切れない。そうかといって、いまの景気の動向の中から増税なしで予算が組めるはずがない。皆さん、今度基金から金を取ってみたりあっちから取ってみたり、みんないままでの蓄積を食い荒らして、財政法四条の精神はもう規律も何もなくなってしまおうとしておる、この危機なんです。  私は、いつでもこの委員会で言わないことがないほど、財政法は平和憲法の九条を保障するものだと思っておるから、毎国会、ここで財政法をもっと厳重に守っていくべきだということを言い続けてきた。それもいまめちゃくちゃになっていく。そういう中で歳出のカットは、やるのは結構だけれども、そうはできない。これは大蔵大臣がいつでも言っている。そういっぱいできるわけがない。私は、それは現実だと思います。  そうしながら総理の方は、増税しろとは言わないけれども、増税なき財政再建ということで片方の手をくくってしまって、それで五十九年度に赤字公債ゼロ、いわゆる財政再建が可能だというようなことは、もう国民をこれ以上だましてはいかぬのだと思うのです。私は、希望やいろいろな点は高く掲げることは結構であります。しかし、現実の政治家がその見通しが全くなくなった段階でまだ国民にうそをつき通すということは、これは間違いだ、こう私は指摘しておるので、何が私の意見が無理だ、私は一つも無理なことを言っているわけではない。だから、そこでもう転換すべきものは転換をしないと、五十九年度になって経済が全く失速してから総理が投げ出されても、後が困るだろうと思うのです。国民が困るのです。私はその辺、もう少し真剣に現実を見てもいいんじゃないか、こう言っておるのです。どうですか。
  176. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 阿部さんのおっしゃることはまあわからぬでもないのですが、阿部さんも一般消費税のような大型増税をやれ、こういう御趣旨じゃないと思うのです。そういうことを念頭に置かずに、私どもはとにかく高度経済成長時代に肥大化した行財政の体質をこの際思い切って改革をする、縮減をする、まずそういうことで財政の再建をやっていこう、こういうことを申し上げております。私は、国民皆さんも大部分、大型増税で簡単に増税をして、それで財政再建ができたなどということは評価をされない、こう思いますよ。そういうことでございまして、阿部さんの言っている一面はわかるのですけれども、それじゃ増税をしろという意味をおっしゃっているのかどうかということになると、そうでもないようだ、こう私は思いますよ。  そこで、とにかく二百六十兆なり二百七十兆の日本のGNPの中で、何といっても政府の財政支出を一兆円や二兆円ふやすこともさることながら、私はやはり民間の需要、民間の活力を大きく引き出すようなことをしながら、一方において行財政の改革をしながら、そういう手法でやっていきたい、このように考えておるところでございます。
  177. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 総理は、じゃ、おまえやってみろと言わんばかりに、増税するのかと言うなら、私がやってみせるからあなたはやめなさい。それならやめなさい。私がやってみせます。だけれども、だれが増税しろと言ったんです。ただ、あなたが増税なきと言うから、私は、増税をしないでできるのか、こう聞いておるのです。じゃ、増税なき財政再建ができるなら、その方策を具体的に示してごらんなさい。  カットすると言ったって、そうカットができるわけがないというのは、大蔵大臣が幾たびか、あらゆるところで言っておるように、私は、カットするのは結構だけれども、そう一〇%も十何%も、いまの現状の中でカットできるものじゃない。そんなことはもうイロハです。給料だとかいろいろな自然増的な経費のかかることも、万人が認めるところなんです。そうすれば、予算総体としてそう大きなカットができるわけがないぐらいのことは、大蔵大臣がいつでも言っておるところであります。そうすればどこまでカットできるのだ、そして増税なき財政再建という具体的な方策を示してください。  ただ精神条項のようなことを言ったって、もう増税なき財政再建なんというのは不可能だと万人が見ておるじゃないですか。あなたの公約はもうだめだということを万人が認めておる。主張し続けておるのは政府だけです。これはある意味で経済音痴だということです。私は、わからないから総理は突っ張っておるんじゃないだろうかという不安を持っておる。日本の総理大臣がこれぐらい経済をわからずに財政運営しておるんかいなという不安を国民は持っておるんだから、具体的にそれを示してごらんなさい。
  178. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 日本の政府が経済音痴かどうかわかりませんが、いま多難な世界経済の中で、とにかく国民皆さんの協力を得ながら自由民主党内閣がこのような経済の順調な発展、運営をしておるということは、世界の人々がみんな認めておるところでございますよ。  それで、財政の問題がいま言われておる。それがこういう五十六年の税収がへこんだ。そういうようなことで、いま阿部さんは、税収欠陥歳入欠陥がこんなに出たんだから、もうできっこないじゃないか、白旗を上げろ、こういう御議論、これは先ほど来申し上げておるように、世界経済と日本経済は、これはもうつながっておるんですよ。でありますから、経済音痴と言われても、日本が一番うまくやっていることは、これは明らかなんだから、その点は評価をして、そして財政の問題について私どもはまずとにかく歳出の思い切った縮減合理化を図る、そこから出発する、こういうことです。
  179. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 歳出カットの点はわかるのです。しかし、それにも限界があると私は言っておる。総理、よく聞いてくださいよ。歳出カットはわかります。しかし、それにも限界がある。そうよけい切れるわけがない。大蔵省のこの次の予算のあれを見たってわかりますよ。そうよけい切れるものじゃない。そうすると、増税なき財政再建というのはどうやってやるのかと言っている。国際的にどうだこうだなんて私は聞いているんじゃないのです。現実的にあなたの公約がどう実現できるかということです。そこを聞いておる。  もう一遍、じゃ総理、具体的に——これは総理の公約だからね。総理がそれぐらいのことを言えなくちゃどうしようもない。音痴と言われたってしようがないじゃないですか。
  180. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 阿部議員の言う考え方は、識者の中にはたくさんいるということは事実なんですよ。決して私はそれを否定しているんじゃないのです。しかしながらまた、行革で幾らでもできるじゃないかと言う識者のいることも事実なんですよ。両方いるんですよ。どっちが本当かといっても、どっちが満点ということになるかどうかわかりませんが、いずれにしても行革が必要だということは、これはだれも認めるんですね。ですから、まずそれをやってみることが先決であって、まずやってみる。  それで、ともかくどこまで切れるか。これはすぐに八月前にシーリング枠を出しますから、これは実際かなり厳しいものでございますから、そういうふうな反省の中でどういうように持っていくのか、何ぼ切れたのか、また景気の動向がございますから、これはそれだけでなくてやはり収入の方が思いがけなくよくなってくれば、またずっといい場合もございますから……(「思いがけないことを期待したってだめだ」と呼ぶ者あり)だから、思いがけないことまで期待をしないで、まず歳出カットを最大限にやる、そういう姿勢で臨みましょう。  最終的に五十九年度の旗をという話がありますが、これはやはり歳出カットをやるのに、これは一応の中期目標ですよ。もう中期のというよりごく短な目標、その目標に向かって歳出カットをやるわけですから、できるかできないか、実際の話がやってみなければわからない。だから……(阿部(助)委員「それじゃ困る」と呼ぶ)いやいや、それは困ると言ったって、現実問題としてはどこまで受忍できるか、受け入れられるかという問題でございますから、それをやってみて、そして私は、もう一〇〇%赤字国債から脱却ができれば一番いいこと、それを目標にしているのですから。一〇〇%本当にできるか、いや九〇%で終わるんじゃないか、八〇で終わるんじゃないかと言われましても、いまの段階でそういう予測を申し上げることはできません。やはりそういう目標があるんですから、その目標に向かって最大限の努力をしてみましょう、努力をいたします、そういうことを言っておるわけです。  だから、まずそういう努力をして赤字国債をなくすことについては賛成です。阿部議員も賛成でしょう。だから、阿部議員の賛成の方向に向かって最大限の努力をやってみるということなんです。
  181. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 まあ皆さんは、ある意味で言うと、私は悲しくなるんだけれども、本当に何か精神的なものだけ。経済の話をしておるんですよ。それで、私は初めから成長率だ、いろいろな話をして、それで五十六年度もこれだけの赤字が出たじゃないか、発射台の低いこの五十七年度は同じようにまた赤字が出るんじゃないか、しかも、こういう段階で一体どうするんだ、私は具体的にこれができないんじゃないかと言っているんですよ。しかも、この歳出カットは臨調がどう言ってみたところで、大蔵は現実にはそう一〇%も切れるものじゃない。これもまた現実なんです。そうすれば、私は増税しろなんて言わぬけれども、増税なき財政再建、こうおっしゃって、うまいことを言っておるのだから、一体そんなうまいことができるのか。これは天勝みたいな奇術師だって仕掛けがあるんだから。それをどうやってやるんだ。そこで国民は不安なんですよ。それは国民のためなんだ。こんなことをやって、五十九年度にならぬじゃわかりません、それまでにうまく景気がよくなるかもわかりませんじゃ、これは困るので、その時点になってバンザイしてもらっても国民はどうしようもないから、私はしつこくこの問題を申し上げておるのはそれなんでして、何か具体的に示してもらわぬと、ただ希望的な観測、精神的な、努力をしますなんと言うだけでは、国民は納得しない段階に来ておるんじゃないですか。もう国民をだますのもいいかげんにして、この辺でやめてもらいたいと私は思うのですよ。  だから、具体的な点があったら言ってくれ、具体的な策があるなら示すべきだ、私はこう言っておるのですが、総理も大蔵大臣も何か精神的な目標でございます、努力しますと言うだけなんですよ、集約すると。これじゃ困るんじゃないですか。現実に出ておるのだから、その辺をもう少し具体的に言ってみてください。
  182. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、阿部議員の言うことはよくわかるのですよ。私が言いたいようなことを言っておるわけですから、実際問題として。しかし、現実問題として、増税の問題というのは、景気の問題とも関係があるわけですよ。したがって、こういう景気が低迷しているというときに増税をするということは、これまた将来の税収という問題に影響がある、こう見なければならない、ということになれば、やはり当面は増税というものは考えられない。だから、そうなりますと、われわれといたしましてはまず景気の持続というものを考え、その前に歳出カットというものを、足らないと言われておるわけですから、これをもっと、本当にそんなに切られては困るという声が全国から出るくらいに一遍やってみないことにはわからぬわけですよ。それをやって、そこで選択の問題になってくるわけですから。そんなことを言ったって、国の経営をするのに、国からのサービスは維持したい、しかし現実には負担はしたくない、借金はこれ以上ふやせない、これはできっこないわけですね。したがって、そういう問題は与野党を通じて国の財政ということを考えればおのずから一致点が出てくると私は思っておるのです。ですから、それには手順がある。まずやるべきことをやらないで、最初から増税だなんてだれも承知しませんから、だから、まずやるべきことをやる。それで全部うまくいけば万々歳ですから、ですから、まずそれをやらしてください。そこから先まで私にいま言えといっても、それは御無理じゃありませんかということを言っておるわけです。
  183. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 何も無理なことを言ってないですよ。あなたが一つも、私が具体的な方策を言えと言っても一つも出てこない。ただ、臨調が出てきたら歳出カットをするというわけだ。しかし、歳出カットをすれば、だから、さっき聞いたように景気が落ち込みますよ。歳出カットで景気が上がった国があったら教えてくれと言っても、これは皆さん出てこないでしょう。そんなものないのですよ。そう片っ方でやりながら——ある意味で、今日までの鈴木内閣の経済政策の失敗だと私は思うのですよ。その失敗を反省をしないできたからここへ来たのです。そして、このスローガンだけはりっぱな増税なき財政再建なんて言っておるから、国民はますます悪いと思う。  私は、現実を踏まえれば、まず一番責任のある政治家が姿勢を正して、政治資金なんというものはもっと厳重にこれを規制する、そして政治倫理確立する、そういう中から国民にも場合によれば負担を求めカットをしていくというならば順序があると思うのですよ。それもしないで、政治倫理はむちゃくちゃだ、財政はめちゃくちゃだ、経済は不景気にした、五十九年度には増税なき財政再建をいたしますなんておっしゃるから私はしつこくお伺いしておるんでして、どうもどこか抜けておるんじゃないか。  私はこれ以上やってみたって、総理はもう答えられないのでしょうからね。総理、それとも答えますか。増税なき財政再建、具体的な方策いかん、こういうことで何遍も言っておるんだが、一つも具体的に出てこないでしょう。歳出カットは一つわかりましたよ。それは幾らかと聞いておるんですが、幾らになるんです。あとどうするんです。あと一体どうするんでしょう。それだけではだめなんですから、これはそれだけでは足らないということは大蔵大臣も言っておるんだから、それでは足らない。あと一体どうされるんですか。それを具体的に私は聞いている。それができなければもうだめだということですよ。
  184. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 歳出カットしたら不景気になるじゃないか、歳出カットしなかったらどうなんだ、経費がますます増大していくじゃないか、それじゃその金はどこから集めるんだ、借金は余りふやすな、増税は反対だと言われてもそれはできないですね、実際問題として。(阿部(助)委員「できないことはやめちゃったらいい」と呼ぶ)だれがやったってそれはできないんですよ。だから、われわれはまず歳出カットをやります、できるだけやってみますということを言っているわけですよ。それから、経済の方も落ち込まないようにいろいろ努力をします。(阿部(助)委員「いろいろじゃわからない」と呼ぶ)いろいろといったってそれは長くなりますから、時間の関係もありますから、私は結論だけを言うわけですけれども、いずれにいたしましても、世界じゅうがマイナス成長で失業とインフレで悩んでいるんですよ。世界の経済はつながっていて、日本だけが別格官幣社でいられるということは実際はむずかしいんですから。ともかく貿易の落ち込みというものは、結局財政にうんと響いたということは、十二月以降急激な落ち込みになった。世界の経済とのつながりもありますから、日本だけで思うようにと言ってもなかなか現実はむずかしい。これも御了解をいただかなければならぬと私は思うのです。したがって、私どもは決して経済の政策の失敗だと思っておりません。世界の中では一番いいことに間違いありませんから。ですから、その中でもさらによくするのにどうするかということについては、野党の皆さん方ともよく相談をしながら今後運営をしていきたい、そう思っておるわけであります。
  185. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だから、私も相談をしようと思って一生懸命聞くけれども、一つも出てこないじゃないですか。先ほど来話をしましたように、五十六年には約二兆八千億、五十七年には約五兆、それでその調子でいけば五十八年にはまた四兆も出るとなると、これはもう十兆から十二兆という赤字が出てくるんですよ。それに対して皆さんはどうおやりになるのです。歳出カットでどれだけやって、あと残りをどうやって赤字公債ゼロにするんですという具体的なものを一つも出さずに、目標だけを掲げて国民をだましていくということは間違いないんじゃないか、私はこう言って、具体的なんですよ。皆さんの方は精神条項だけであって、私の方は皆さんの数字を挙げて具体的に、こうなっている現実に対してどうなさるんですか、こう聞いておるんだから、皆さんの方も、世界経済も何も当時はもう議論したんですから、だから、そんなことを言わぬで、いま具体的に、増税なき財政再建の方途はどうなんだ、こう聞いておる。
  186. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは阿部委員の持論なんですよ。私は、いままで何回も聞いているんです。それは、要するに財政のこれだけの、九十兆からの借金を持っている。その借金の返済について、要するに具体的に毎年償還の表をきちっとしたものをつくれということにつながる話だと私は思います。しかしながら、現実の問題として、それは数字で書くことはできるでしょう、できるでしょうけれども、早い話が一年先の経済の見通しさえもしっかりしたものというのは世界じゅうだれもできない。そのときに、今年度でこれだけ収入が減って、歳出があって、幾ら剰余金をつくって、どういうようにきちんと返していくのだというようなことは、これは言うべくしてできない。したがって、財政計画を出せという皆さんの御要求に対して、大蔵省がお断りしている理由はそこにある。(「問題を外してはいかぬよ」と呼ぶ者あり)決して外していないのです。  そこで、たとえば財政見通しですね、中期展望、これはやはりいろいろな条件を置いて、もしこういう条件で、一定の条件でいけばこうなりますという仮定の条件ですね、いままでの経験値も踏まえたところで「財政の中期展望」というものは出しておりますが、それ以上のものはなかなか出せない、それが現実の姿でございます。したがって、具体的にそれだけ借りた金をそれではどういうふうに財政で返還をしていくのか、税金を幾ら上げて、幾ら歳出カットして何をどれだけに抑えていくのか、もっと具体性を持ったものを出しなさいと言われましても、それは中期展望以上のものは実際問題として正確なものを出すことはできませんということを申し上げているわけでございますから、御了承願いたいと存じます。
  187. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうなってくると、もう政府の方はでたらめにこの予算をつくったということなんですか。そんなことはないでしょう。この国会でも予算委員会審議において、われわれはこうなるであろうということを指摘してきた。そして、皆さんの方は、福田政府委員は、これは見積もりとしては正しいということを藤田議員の質問に何遍も何遍も答えているのですよ。そうして、最後にあなたは、私の責任において見積もっておる、だから当然私は責任を持って決着をつける、こう言っておる。そうして、さらに藤田議員の追及に対して「結論が出てから、私がしかるべき責任をとります。」とまで言っている。私はこれはりっぱなことだと思うのですよ。政治家はやはり見通しの誤り、そのときには潔く責任をとるということは政治倫理のまず第一歩だと私は思うのですよ。  私は、渡辺大蔵大臣は、もう少し磨きがかかれば総理大臣になる人だと思っている。ところがこれが、これだけ明言をしながらまだ居座ろうなんというのは、私はもうこれはどうしようもない。本当にこれはどうしようもないです。どうなんです、これは。明らかに皆さん藤田議員の質問に約束された事態に来ておるわけです。福田さんは何遍も何遍も言っておるのですから、一遍や二遍じゃないんだから。この速記録を見てごらんなさい、何遍も何遍も言っておる。そうして、その締めくくりとしてあなたが、いま言ったように、二度にわたって、私が責任をとります、こうおっしゃっておる。ところが、藤田委員また野党の委員が質問をし懸念を示したとおり、二兆八千億という大きな赤字が出たわけです。これに責任を感じられないのですか。
  188. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは事務当局が別にうそを言っているわけではなくて、たとえば予算審議のころの数字というのはちょうど十二月の数字なんかが入ってくるのです、二カ月ぐらいおくれますから。十二月ごろの税収の伸びというものは二月ごろに入ってくる、一三・八%伸びる。一月が一二%というものが伸びてきているわけです。それが二月になって、四月の発表になってがたっと五・四に落ちるわけですよ。それは操作したわけでも何でもない。貿易の問題なんかの影響が非常にあったわけでして、少しの心配はございまして、予算委員会で私うそを言っているわけでなくて、三月中にも、たとえば参議院で三月の末のころも中野さんという方に私がお答えしています。それは非常に心配しているのですよ、多いときは二〇%上下違ったことがあります、普通は一〇%から五%の違いというものもこれはよくあるので、いまの段階ではわかりませんが、実は心配はあるのですとか、四月一日にも六日にも衆参両院の大蔵委員会でも私は心配があることは実は言ってきておるわけであります。四月七日に、これは正森さんだ、第六感だけれども、一〇%はないが数%にあるいはなるかもわからぬ、パーセントも高い方だと言っておりまして、決して突然信託大会で発表したわけじゃないのです。その次が信託大会。数%というのは掛け算すればすぐわかるわけですよ。六%といえば、三十二兆に五、六%掛けたら何ぼとか。それを新聞が大きな見出しで書いたというだけであって、国会で全然そういう話がなく突如として信託大会で全部を私が発表した、そういうことはないということは御了承願いたい。したがって、事務当局もその過程においてはうそを言おうとかいうのではなくて、そういうように、三月の末までは非常にいいと思っていたわけですから、それが二月の統計から半分以下にどんと下がったわけですから、その点もひとつ御了解をいただきたいと存じます。そういう点でひとつ御同情を願いたいと思います。
  189. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いや、それならそれらしい答弁をしておくべきですよ。多少のこれはあるけれども、こうだというなら別だけれども、何遍も何遍も断言して抑えつけるような発言をしておるのですよ。そこで、藤田議員も何遍も同じことを繰り返し質問している。  当時質問に当たった藤田さんに関連質問をお願いしたいと思います。
  190. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、藤田高敏君より関連質疑の申し出があります。阿部君の持ち時間の範囲内でこれを許します。藤田高敏君。
  191. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、率直に申し上げて関連質問をやる予定ではございませんでした。しかし、先ほどからの応答を聞いておりますと、私の二月三日の本委員会における予算審議の中身が具体的に問題になってまいりまして、私とのやりとりの真意が必ずしも的確にいま大蔵大臣に代表されるような御答弁の中にはあらわれてない、このことを率直に言って遺憾に思います。それだけに関連質問に立たしてもらいました。  私は、大蔵大臣あるいは総理政治責任を追及して、端的な言い方をすれば大臣の政治責任を追及して首を切るなんということ自体を目的にして質問をしたわけではございません。これは阿部委員からも再三質問をいたしておりますように、わが党は、今日のわが国の財政事情というものは非常に深刻な事態になっておるじゃないか、この深刻な事態をいかなる具体的な処方せんによって解決をするのか、そうして国民に協力を求めるものは協力を求めていく、こういう姿勢で国会審議をやるべきじゃないか、こういうところへ焦点を置いて私どもは議論を展開したつもりであります。事の成り行き上、いま大蔵大臣の御答弁ではございませんが、税収の見通しにつきましては、五十六年度は実績並びに実績を中心にした今後の税収見通し、推移、そういうものあるいは経済指標、福田前主税局長の御答弁では、もうあらゆる資料を検討した結果、五十六年度で言いますと、その当時は補正いたしました当初の税収見積もりですね、これについてはもう絶対と言っていいくらい間違いはないんだ、正しいんだということをもう三度、四度強調するものですから、私どもはいろいろな角度から検討した結果、見通しからいくと二兆円ないしそれ以上の歳入欠陥ができるのじゃないか、そういうことになれば、五十六年度にそういう歳入欠陥が生まれますと、五十六年度を前提にして五十七年度の予算も歳入の上に大きな欠陥が出てくる、これを私どもが指摘した。それが結果的には、五十六年は二兆八千億、五十七年度はいまの御答弁を聞いても、政府のこの名目成長率八・四をそのままにいたしておきますと、これは五兆五千億ぐらい赤字が出ることになるのですよ。これを一定の下方修正をやって、成長率が一定のダウンをするということで策定をしても、これは五兆円以上の赤字が出ることは大体はっきりしてきておるのですよ。  そうすると、五十六年が二兆八千億、五十七年が約五兆円、そして先ほどから御答弁がありますけれども、この基本的なペースを崩さないで、五十八年度は、大蔵当局が出しておる財政収支試算表でいけば、これまた四兆円ぐらいの赤字が出る計算になってくるのですよ。そうすると、三年間の間に十兆から十二兆円からの膨大な赤字が出る。これは民間会社だったりしたら、社長以下重役は全部それこそ責任をとってやめなければいかぬ、そういう事態になってきておる。そういう事態になってきておるにもかかわらず、いまの大蔵大臣に代表される御答弁を聞いておると、何だか歳出カットだけで問題が処理できるようなことを強調されておるが、それだけではできないじゃありませんか。  ですから、私はここでかちっとしたものを出せなんて言うていない。少なくとも、そういう深刻な状態になってきておる。そうすれば、歳出カットでどれくらいいけるのだ。これは余りいい方法じゃありませんけれども、国債整理基金を崩す、あるいは決算調整資金を崩す、あるいはわれわれが減税の財源として出した補助貨幣の積立金に手をつける、いろいろなことがあるのでしょう。そういうものを全体にくるめて、政府としては決定的なものじゃないけれども、そういう全体の構図の中で当面は切り抜けていきたいというくらいのものは、この予算委員会に議論の条件として、材料として出すのが当然じゃありませんか。このことは、委員長も御承知のように、私は先日来からの予算理事会において、少なくともそういう材料は政府をして出さすように与党の議員からも政府に要請してもらいたい。私どもは補正予算を早く組めという要求をしておるわけですから、そういうことをわれわれは言っておるわけですね。したがって、いま阿部議員の質問にも関連いたしますが、そういう意味合いの財政再建の処方せんを今日の深刻な事態の中でぜひ出してもらいたい、こう思うわけですよ。これが私どもの基本的な主張であることをはっきり申し上げる。  それと、そういうところへまじめに焦点を合わさないでのらりくらりおっしゃるのであれば、これは私はこの二月三日の議事録の推移からいって、これは何らかの具体的な政治責任をとってもらわなければならぬと思うのですよ。鈴木総理はなかなかベテランだから、一番最後の——さっき議事録をお読みになられてなにしていますけれども、この質問の流れからいったら、大きな五十六年度歳入欠陥ができただけでも何らかの形の政治責任をとるということを、大蔵大臣までははっきり言っておるのだ。だから、そういう逃げの答弁をなさらないで、もっとまじめにひとつ議論をしてもらいたい。この注文をつけて御答弁を求めたいと思います。
  192. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いずれ補正予算を組むという段階までには当然に、もし、そういうことが起きればそういうものは検討されるものだろう。それから、五十八年度予算編成の問題とも絡めまして、いま藤田議員のおっしゃったようなことはすべて検討しなければならない問題であります。
  193. 藤田高敏

    藤田(高)委員 予算委員会もまだあと二日半あるわけでありますから、少なくとも私がいま主張いたしておりますようなことは、骨格的なものくらいはできると思うのですよ。なぜなれば、私は新聞や何かの材料だけで言おうと思いませんけれども、新聞や何かのそういう経済関係の諸雑誌を見ても、大蔵当局は大体こういう方向に沿って模索しつつあるのじゃないかという処方せんが一案、二案それぞれやられておるじゃありませんか。そういうものをやはりこの委員会に出して、かちっとした補正予算なんかは出せと言ってみたって無理です。この三日半の予算委員会では無理でしょう。しかし、まだあと二日半あるのですから、いま私が主張しておるような基本的なものだけは具体的に出して審議の材料にしてもらいたい、このことを強く要請します。どうですか。
  194. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほどからお話があるように、五十七年度の問題については、補正予算を組むということは決めても何もしていないわけですから、これはもう少し様子を見てみないと、ともかく税収の問題にしても景気の動向にしても九月ごろまでの様子を見ないと、まだ二カ月ぐらいでは何とも申し上げられませんということを申し上げているのです。したがって、そういうような様子を見た結果、いろいろいま言ったようなことは検討していかなければならないことは当然だ、そういうふうに考えております。
  195. 藤田高敏

    藤田(高)委員 重ねて申し上げます。そういういま私が具体的に要請しておるようなものが出ないと、これは本当の予算審議にはならないのじゃないですか。そして、結果的にはそういう無責任な態度であるならば、この議事録で言うところの政治責任じゃないけれども、現実的にあなたらは五十六年度、私どもがその当時二月三日時点で主張したような大きな歳入欠陥が出たときには、政治責任をとると言っておるじゃありませんか。鈴木総理の議事録の朗読じゃありませんが、その前段を読んでみてくださいよ。私は読む時間がないから言わないけれども、この責任はそれじゃどうしてくれるのですか。その責任を具体的にとることが嫌であれば、私がいま言っておるようなものを出して、そして野党の合意も求めて、財政再建の道をみんなで考えるべきじゃないですか。私はそういう意味で、大蔵大臣やあるいは主税局長の一人の首を切ってみたってどうしようもないのです、極端に言えば。われわれの目的は、財政再建をいかにしてやるか、そこが中心ですよ。しかし、そのまじめさがなければ、われわれだってこれは議事録に基づく重大な政治責任、議事録に載るような発言をされておることについてはそれなりの政治責任を求めますよ、これは。どちらですか。それぐらいのことはできるでしょう。補正予算を出せと言ったってそれは無理でしょうが。  これは事務当局だったって当然だ。絶対間違いないとまで断言しておるのですからね。総理、そうでしょう。いまここで御相談しているけれども、これは三カ所なんですよ。
  196. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほどから話がありますように、補正予算を組むというように決めているわけではありませんから。二カ月しかたってないし世界の景気の動向もわからない、これからの問題もどうなるかわからぬというような段階で、決めているわけじゃない。決めているわけじゃないが、要するに心配があるだろうという御主張について、それは心配がないとは言えませんね、それは常に心配をいたしておりますから。  そういうようなときに、たとえば歳入確保というような点でどんなものが考えられるんだ、幾つか検討の材料になるものがあるじゃないかということでしたらば、まあこんなものが将来万一の場合には検討の材料としてはありますという程度のことは私は言えるのじゃないか、そう思います。ただ、それをどうするかということはまだ決まっておりませんから、当然これらは検討の材料にして、どうするかはまた今後の相談でございますけれども、万一の場合にはこんなものが考えられる……(「いま言ったらいい」と呼ぶ者あり)いやいや、まだよくわかりませんから、内部で調べていますから。その程度のものは出せるだろう、隠すものは何もないわけですから。ただ、税収については確定的なことを、いままだ二カ月しか過ぎないものを幾ら足りなくなるとかどうとかということは、それは言えない。しかし、検討の材料としてはこういうものがあるというものは、それは出せると思います。
  197. 藤田高敏

    藤田(高)委員 わかりました。私どもも、きょうだだいまの段階で政府が補正予算を組むとか組まぬとか、そういう断定的な答弁を求めておるものではございません。したがって、いま大蔵大臣から御答弁になられたような趣旨に沿って、残されたあと二日半の審議が十分できるような、真剣に討議のできる目安材料といいますか、そういうものを提示してもらいたいということを要請いたしたいと思います。そのためには、二日半ということを言っておりますのは、大蔵大臣はちゃんと頭の中にも腹の中にも構想はあると思うのですよ。ですから、十分あすの朝の審議に間に合うようにひとつお出しを願いたい。その点の確認をしておきます。それが出るまでの欄は、議事録に基づく政治責任の問題は留保させてもらいたいと思います。  以上です。どうですか。
  198. 山口光秀

    山口(光)政府委員 ただいま大臣が申し上げました点につきましては、鋭意検討いたしますが、あしたの朝と言われましてもちょっと自信がございませんので、その辺も含めて、なるべく早くやりますので、検討させていただきたいと思います。
  199. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、私の関連質問を終わります。
  200. 栗原祐幸

    栗原委員長 藤田君の関連質問は終わります。  阿部君。
  201. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あしたの朝そういうのが出るそうでありますから、それからまたわれわれも考えます。私は、時間がもう少しありますけれども、倫理の問題も、いまの財政再建の問題も考えまして、大変これは失礼だけれども、やはり総理自体も、内閣自体も、国民をもう少し見ながら、国民に立脚をしてやってもらいたい。大変失礼だけれども、何か感じは目白の方にだけ顔が向いておって、国民の方は全然無視されておるのじゃないだろうか。ある意味で、かいらい的な内閣なのじゃないだろうか。だから、倫理の問題も何一つ前進をしない、財政再建の問題も何一つ前進をしないというところに今日の事態があるのじゃないだろうか。国民に対して責任を持つ内閣、しかも今日世界的にいろいろな複雑な、むずかしい情勢の中であるだけに、いまこの内閣がそれでは私は困ると思うのです。  私は、財政再建一つとってみても、いままでの総理答弁には一つも納得するところがない。具体的なものが一つもない。ただ一生懸命やります、努力をしますと言うだけでは、この総理というもの、また内閣というものが国民の期待にこたえる道ではないと私は思います。そういう点で、国民はいまの財政再建の問題、そして日本の景気の問題、この問題に非常に大きな不安と関心を持っておることは事実であります。それにひとつもこたえることができないことは大変残念だと私は思います。  多少時間を残しましたけれども、私の質問は終わります。
  202. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五分散会