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1982-02-23 第96回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十三日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君   理事 小宮山重四郎君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 鈴切 康雄君    理事 大内 啓伍君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       浦野 烋興君    小渕 恵三君       大村 襄治君    海部 俊樹君       片岡 清一君    金子 一平君       鴨田利太郎君    後藤田正晴君       近藤 元次君    塩川正十郎君       澁谷 直藏君    砂田 重民君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    渡辺 栄一君       稲葉 誠一君    大出  俊君       大原  亨君    岡田 利春君       木島喜兵衞君    野坂 浩賢君       武藤 山治君    山田 耻目君       横路 孝弘君    市川 雄一君       草川 昭三君    岡田 正勝君       木下敬之助君    竹本 孫一君       米沢  隆君    金子 満広君       瀬崎 博義君    中路 雅弘君       依田  実君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 小川 平二君         通商産業大臣  安倍晋太郎君         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君         労 働 大 臣 初村滝一郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      田邉 國男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         国防会議事務局         長       伊藤 圭一君         内閣総理大臣官         房管理室長   海老原義彦君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 吉野  実君         防衛施設庁次長 多田 欣二君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         科学技術庁研究         調整局長    加藤 泰丸君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省関税局長 垣水 孝一君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局次長     大場 智満君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商業省産業         政策局長    杉山 和男君         通商産業省基礎         産業局長    真野  温君         通商産業省生活         産業局長    志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁石油部長   野々内 隆君         運輸省海運局長 永井  浩君         海上保安庁長官 妹尾 弘人君         労働省職業安定         局長      関  英夫君  委員外出席者         経済企画庁調整         局審議官    小谷善四郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   上村千一郎君     近藤 元次君   武藤 嘉文君     片岡 清一君   村山 達雄君     浦野 烋興君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   矢野 絢也君     市川 雄一君   木下敬之助君     米沢  隆君   竹本 孫一君     岡田 正勝君   小沢 和秋君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     村山 達雄君   片岡 清一君     武藤 嘉文君   鴨田利太郎君     渡辺 栄一君   近藤 元次君     上村千一郎君   市川 雄一君     矢野 絢也君   岡田 正勝君     竹本 孫一君   米沢  隆君     木下敬之助君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度一般会計予算  昭和五十七年度特別会計予算  昭和五十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度一般会計予算昭和五十七年度特別会計予算昭和五十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市川雄一君。
  3. 市川雄一

    市川委員 外務大臣に最初にお伺いしたいのですが、鈴木総理が昨年の五月訪米をいたしましてレーガン米大統領との首脳会談を行って、その際、五月八日にプレスクラブ演説を行い、その演説の後質疑を行いました。そこで総理が、日本庭先であるこの海域日本が守るのは当然であり、日本周辺数百海里の範囲内と、そしてシーレーンについては千海里にわたり、憲法の条項とも照らし合わせて、自衛範囲内として守っていく政策を今後とも強めていく考えである、こういうことをお述べになった。  先日、米国ワインバーガー国防長官国防報告を発表しましたが、シーレーン防衛、千海里の防衛ということが、国防報告の中に日本がその責任を果たすよう期待を込めた文章が載っておりますが、どうも総理発言、それからアメリカの今回発表した国防報告を拝見しますと、何か日本が正式にアメリカにお約束をした、千海里のシーレーン防衛日本が必ずやりますということを日本アメリカ約束をした、どうも公約をしたように受け取れるのですが、そういう公約という位置づけのものなんですか、どうなんですか。
  4. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 市川委員がおっしゃいましたように、総理プレスクラブでの発言は質問に応じてのことであったと思うのですね。そして、海外からの資源海上交通路の安全を図ることは死活的に重要な問題である、こういうことをおっしゃりながら、いまの周辺海域数百マイル及びシーレーンについては約一千マイルについて、憲法を踏まえつつ、自衛範囲内で防衛力を強化するとの政策を推進している、総理発言は全く自主的な発言でございます。  ただ、これに関連して今回の国防報告のことにお触れでございますが、国防報告の方は、これはその部分はこういう表現になっていますね。「みずからの空海防衛力の強化及び一千海里に及ぶ海上交通路防衛能力整備によって、地域の安定のための貢献を強化することを望んでいる。」いわばこれは国防報告の中で米側としての理解と同時に期待を表明しておるものと受け取れることでございまして、これをもって何か約束をしたとかというようなことでは私はないと思うのです。あくまでも総理の自主的な発言をされた、このように踏まえております。
  5. 市川雄一

    市川委員 そういうふうにお答えになるだろうと思っていたのですが、大河原駐米大使が毎日新聞のインタービューに答えて、昨日の紙面に載っておりましたが、やはり同じ趣旨のことを記者に聞かれて、こう答えているのですね。「公約かどうかは別にして、訪米した際にナショナルプレスクラブという場で発言されたことは、これは厳粛な事実。」だ、こういうことを言っておられる。「公約かどうかは別にして、」ということを言っておりますが、しかし、総理が訪米して首脳会談を行い、しかもその後にナショナルプレスクラブという場所で千海里防衛について発言したことは、「これは厳粛な事実。」だ、半ばアメリカとの約束を肯定するようなことをおっしゃっているわけですね。したがって、この国防報告でも確かに希望するということにはなっていますけれども、もちろんこれはアメリカだって日本に対して、やれとか命令はできないと思うのですけれども、しかしこれも何か公然と千海里の海域分担約束日本がしたのだ、こういう雰囲気になってきていると思うのですが、それはあくまでもそういうことではないということですか、どうですか。あくまでも日本が自主的に判断して決めるのだということですか。
  6. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま大臣が御答弁されたとおりでございまして、憲法範囲内とか憲法の規定の中でということを総理は繰り返して申し上げております。したがって、この件に対してわが方が防衛整備を図っていくというのは、あくまでも自主的にやる、こういうことでございます。
  7. 市川雄一

    市川委員 防衛庁長官にお伺いしますが、この問題を防衛庁長官としてはどういうふうに受けとめておられますか。
  8. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先生お触れになりましたけれども、四方を海に囲まれた狭小な国土に多くの人口を抱え、エネルギー食糧等資源の大部分海外に依存するわが国が生存と発展を続けていくためには、わが国生命線とも言える海上交通路の安全が確保されることはきわめて重要なことと考えておりますし、総理の御発言は、こういうことを踏まえまして、自主的な防衛力整備を進めてまいりたいという自主的な御発言であると考えております。
  9. 市川雄一

    市川委員 外務大臣、いま御答弁ございましたけれども、しかしこの駐米大使発言は、やはり総理発言は「厳粛な事実。」だと。総理がわざわざアメリカへ行って首脳会談をして、ナショナルプレスクラブという場所で千海里防衛を言ったのは厳粛な事実だ。言ってみれば、それでアメリカ約束をしたんだということを言外に込めているわけです。この大使発言を、外務大臣はこれは単なる事実を指摘した発言だという程度のお受けとめ方ですか、どうですか。
  10. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御承知のように、ワシントンのナショナルプレスクラブにおける要人の発言というものはそれなりに非常に重要視されておるわけでございます。そこで、その発言そのものは私もやはり厳粛なる事実だと思うのですね、そういう席で総理発言をされたということは。  しかしながら、いま市川委員のおっしゃることは、何かアメリカ約束したのかどうかというところが重点だと思うのでありますが、総理の御発言を検討していただきますならば、あくまでも総理が自主的に考えておられる、あるいは日本憲法というものを踏まえてやるのだということが明白であるわけですね。したがいまして、私はこのことが何かアメリカとの間の約束事だ、そういうふうにはとらないのであります。総理は、少なくとも日本庭先である周辺海域を自分で守るのは当然のことである、こういうふうにおっしゃっておるのでありますから、私は、総理が御自身のお考えを率直に述べられた、こういうふうに受けとめております。
  11. 市川雄一

    市川委員 しつこいようですが、次のシーレーンの問題に入る前段としてもう一度お伺いしたいのですが、ナショナルプレスクラブという場所が非常に国際的にも重要な場所である。そこでの発言は非常に重要な発言だ。アメリカにしてみれば、そういう場所日本総理大臣がそういう発言をしたのですから、当然アメリカに向けて約束をしたというふうに受け取られてもやむを得ないのじゃないかというように思うのです。それでは、そういう約束はしてない、公約でもないしそういう約束は一切してない、こういうふうに今後米側に対してもはっきり言えますか。大臣にこれは伺っているわけだ。はっきりアメリカに対して、千海里シーレーン防衛はこれからまた日本が検討して決めることであって日本が決して約束したことではない、昨年の共同声明やその後の首相発言約束したことではありませんと、こういうことがはっきり言えますか、どうですか。
  12. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは、ナショナルプレスクラブにおける発言が英文でも発表されておりますが、私は、この発言をそのとおりに受けとめていくというのが正しいのではないか、これはあくまでも日本総理としての責任を持っての発言であって、また、日本憲法範囲の中で考えていくということで、これも全く自主的におっしゃっておる、こういうことだと思います。
  13. 市川雄一

    市川委員 そこでシーレーンという問題をお尋ねしたいのですが、防衛庁では千海里のシーレーン確保ということを言っていらっしゃるわけですけれども、しかし、このシーレーンというのは、御承知のように、何も千海里だけじゃないわけですね。そこで念のために運輸省数字を確認しておきたいのです。  日本は非常に海洋海運あるいは貿易に依存している、この依存度がいま非常に大きいわけですが、世界における海上貿易、大体この何%を日本シェアを占めているか。一九七九年で約二一・九%、一九八〇年で二二・九%、世界海上貿易の約五分の一を日本が占めている。あるいはこれを品目別に見ますと、一九七九年一年間で世界海上輸送された鉄鉱石のうちの五六・六%を日本が占めている。石炭で言うと五二・七%。これは一九八〇年になりますと、石炭が四六・六%で鉄鉱石が五六・八%ですか、多少数字は落ちておりますが。  それからルートですね、シーレーンの長さ。鉄鉱石オーストラリアに約五〇%依存していますが、オーストラリアのダンビアとかジェラルトンとか向こうの主な積み出し港から横浜までの距離が大体六千二百キロ、八千キロ、ブラジルのツバロンから二万一千六百キロ、南アのポートエリザベスから約一万五百キロ、大体平均しますと鉄鉱石海上輸送平均距離が一万一千九百キロ。鉄鉱石確保するために平均輸送距離で約一万一千九百キロの海上シーレーン日本は利用している、依存している。これは、アメリカに比べますと、アメリカが大体鉄鉱石平均輸送距離が四千四百キロ、イギリスが六千九百キロ、西独が八千七百キロ、日本がずば抜けて長いということが言えるわけです。特にこれは原油、石油でも全く条件は変わらない。ほとんどが、七割近くがホルムズ海峡経由ですから、大体平均して一万一千キロの輸送距離石油確保するために持っているわけですね。  したがって、そういう石炭とか鉄鉱石とか石油、どの品目をとっても、日本輸入している国の主要積み出し港から日本の港に入ってくるまで約一万キロ以上の海上ルートを使わなければ日本に入ってこない。これが私はシーレーンだと思うのです。こういうシーレーンのいま私が挙げた数字ですが、運輸省の方でどうですか、確認をしたいのですが。
  14. 永井浩

    永井政府委員 いま先生お示しの数字、おおむねそのような数字になっております。
  15. 市川雄一

    市川委員 もう一つ、じゃ確認しておきますが、日本海上貿易で使っている船籍の割合ですね、日本船籍は何%で外国船籍は何%という数はわかりますか。
  16. 永井浩

    永井政府委員 日本海上貿易に従事いたします船籍別輸送シェアでございますが、わが国商船隊、これは日本籍船とそれから日本船会社が用船いたしております外国の船、これを合わせまして日本商船隊と申しておりますが、この日本商船隊輸送シェア輸出で五五%ぐらい、輸入で七〇%ぐらいでございます。このうち日本船籍を持っておりますいわゆる日の丸の旗を上げております船は、輸出におきましてその五五%のさらに四〇%、おおむね二〇%前後でございます。それから輸入で七〇%の半分、三六、七%、これが日本船籍の船によって運ばれたシェアでございます。
  17. 市川雄一

    市川委員 外務省に伺いますが、マラッカ海峡通航に関して大型タンカー通航に関する規制がたしか始まっていると聞いておりますが、どういう規制がいつから始まったのかお伺いしたいと思います。
  18. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 昨年五月一日からマレーシア、インドネシア、シンガポール三国による大型タンカーに対する通航規制が実施されております。その内容は、一つには、マラッカ海峡通航分離方式を導入する、一つには、喫水十五メートル以上の深喫水船及び十五万トン以上のタンカー余裕水深三一五メートル以上を保持するとともに速力十二ノット以下で航行すること、そういうような規制でございます。
  19. 市川雄一

    市川委員 海洋法会議の行方ということもありますが、現実にオイルルートの一番頻繁に日本が使うマラッカ海峡でこういういま外務大臣からお答えのあったような規制が始まっておるわけですね。これがひょっとすると将来海洋ナショナリズムというか群島国家原則、たくさんの島でできておる国の場合、一番外縁にある島で領海を決めてしまう、こういう動きも強くあるわけですね。そうなってきますと、マラッカ海峡とかロンボク海峡とか、あの辺は要するに領海になってしまって日本が通れない、こういうことも考えられる。  したがって、日本は非常に輸出入に依存している、そういう意味では海洋に依存している、またシーレーン経済が全面的に依存しているわけですよ。ですから、このシーレーン確保ということは非常に重要なことだと私も思うのです。シーレーン確保ということを全く要らないということを言っているわけじゃなくて、シーレーン確保ということは非常に重要だと思うのです。しかし、一万一千キロとか、石油にしても石炭にしても鉄鉱石にしても、そういう長大な距離なんですよね。その一万一千キロのシーレーンをどうするのかということでなければ余り意味をなさないのじゃないですか。  防衛庁がおっしゃっているような庭先の、まあ千海里が庭先かどうか知りませんが、千海里を、しかも軍事的に守ろうということにどんな意味があるのかということに非常に疑問を持っているわけですが、このシーレーンというものを、出発地原料を積み出す港、それからマラッカ海峡とかロンボク海峡とかそういう海上ルート、それから日本の港で積みおろしをする、この積み出し港、途中の海上ルート、それから積みおろし、こういうトータルのシステムでシーレーンというものを考えた場合に日本としてどうするのか、シーレーン確保という問題。  政府防衛庁も、シーレーン確保シーレーン確保ということをおっしゃっているわけですが、じゃお尋ねいたしますが、そういうトータルシステムでのシーレーン確保ということを真剣に討議されておられるのかどうか。  鈴木総理になられましてから総合安全保障閣僚会議というのが発足したやに伺っております。きょうそのメンバーになっていらっしゃる大臣に来ていただいているわけですが、そこでそういう日本の平和と安全を総合的に検討しよう、そういう総合安全保障閣僚会議が発足した。通産大臣、そういうメンバーの一員としてのお立場も踏まえながらお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。トータルシステムとしてのシーレーンというものをどのようにお考えになっていらっしゃるのか。——お見えになっていない。それでは運輸大臣いかがですか。
  20. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま市川委員の御指摘の点は、きわめて重要な日本経済安全保障問題点であることはよく認識をいたしております。したがいまして、具体的には、貿易物資輸送経路に当たる重要海峡を初めとするわが国への海上輸送ルート船舶航行確保対策わが国商船隊維持整備日本人船員対策等、諸対策が必要であると考えておるところであります。また、こうした問題に関連しまして、現在、運輸政策審議会においても運輸政策上の見地からの総合安全保障確保のあり方というものも審議をしてもらっておるところでございますが、その結果を踏まえながら関係行政機関と連携して所要の措置を講じたいというのが運輸省の態度であります。
  21. 市川雄一

    市川委員 何か余りはっきり聞こえなかったし、余りはっきりしないのですが、外務大臣、どうですか。トータルシステムシーレーンというものをどんなふうにお考えになっていますか。
  22. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 シーレーン安全確保重要性は、市川委員がいまいろいろ申されましたが、私も全く同感でございます。エネルギー食糧等の大半を輸入するなど、貿易海運にその存立を大きく依存するわが国にとってきわめて重要なことでございまして、このことは、われわれ外交の衝にある者として外交の重要な柱として考えていかなければならない。  シーレーンの安全が脅かされるようなそういう事態を招かないようにするためにはどうするか、それは平素から平和で安定した国際環境維持に努める、こういうことだと思うのですね。特に海峡沿岸諸国等との友好協力関係の増進を図る、これが一番重要なのではないか、このように思うのであります。おっしゃるように、原料の積み出しのその関係諸国、また、それから長距離シーレーン関係諸国といいましょうか、場合によると沿岸諸国、そういう諸国との間の平和友好を常に維持をするという外交上の努力をするということが、おっしゃるトータルシステムとしてのシーレーン確保ではないか、こう思います。
  23. 市川雄一

    市川委員 非常に抽象的な御答弁ばかりなんです。  そこで、通産大臣見えになったのですが、私がお尋ねしているのは、要するにシーレーンシーレーンということを政府はおっしゃっているのですが、それが千海里のシーレーン、しかもその千海里を防衛力でやっていくのだ、こういう趣旨をずっとおっしゃっている。ところが、千海里、千海里とおっしゃいますが、シーレーンは実際には一万一千キロとか非常に長いわけでして、千海里というのはごく一部にすぎない。しかもそれを軍事力で守ろうとしていらっしゃる。このことの一つは、位置づけというものをどの程度閣僚の皆さんが持っていらっしゃるのか、その辺を一つはお尋ねしたいと思って一生懸命聞いているわけです。ですから、一万一千キロに及ぶような鉄鉱石石油石炭シーレーンに対してどういう脅威があるのか。軍事的脅威だけですか。海洋ナショナリズムという一つのことも、日本にとっては、脅威というと語弊がありますが、シーレーンの大きな阻害要因になってきているわけですね。そういういろいろなものが予想される。そういうことに対して、シーレーン確保ということ、日本としてどうするのか、総合安全保障という立場で。これはもうちょっと何か具体的な、大臣からの迫力のある御意見が伺えるのかなと思って期待していたのですが、どうも作文をちょっとお読みになっている程度の御意見しかないようにお見受けするのですが、どうなんでしょうか。こんなことでシーレーンが守れるのですか、どうなんですか。  そこで通産大臣、おくれて参りましたが、その点どうですか。
  24. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 わが国は御承知のように貿易立国であります。したがって、さまざまな重要物資というのは諸外国から輸入をしなければなりません。大変な輸入量でございます。同時にまた工業製品は輸出をする。こういうことによってわが国の存立があるわけでございますので、そういう意味におきまして、いわゆる安定的な輸送を確保するということは経済安全保障という面からもきわめて重要であるわけでございますが、こうした安全保障という、いわゆる海路の安全保障ということは、ただ単に防衛ということじゃなくて、政治の面あるいは外交面、そういうものを総合的に踏まえた中で確保していくということが最も肝要なことではないか、こういうふうに思っております。そういう面から、わが国は政治、外交あるいは経済協力、そうした問題を通じまして積極的な対応をひとつ進めていかなければならない、こういうふうに私は考えておるわけであります。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕
  25. 市川雄一

    市川委員 それでは、総合安全保障閣僚会議の座長でいらっしゃる官房長官、いままでの各大臣お答えを総括しながら、どうですか、今後総合安全保障閣僚会議の重要なテーマとしてやっていかれるのかどうかという点も含めてお答えをいただきたいと思います。
  26. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま関係閣僚からお答えがございましたように、海上輸送が安定して平和のうちに確保されているということは、わが国のような国にとっては先ほど市川委員も御指摘のように最も大切なことであります。それが現に平和のうちに安定的に確保されているということは、実は大変な各方面の努力の結果であって、まず基本的には世界が平和であるということから始まるわけでございますけれども、決して無為にしてそのような安定と平和が確保されているのではない。わが国ばかりではありませんけれども、各国のそういう努力の結果であるというふうに考えておるわけでございまして、何もしていないということではない。ドラマチックなことはありませんけれども、非常にじみちな、しかし大変な努力の集積であるというふうに認識すべきだと思います。  それから次に総合安全保障会議でございますけれども、これは、各省庁が与えられた仕事を日常の業務としてやっておりますけれども、それを総合安全保障の観点からひとつとらえてみる、そういう目的で開かれたわけでございまして、すでに過去六回会議をいたしております。したがって、その会議の中で特にシーレーンといってテーマを設けたことはいままでにございませんけれども、おのおのの閣僚がこの会議に集まって目指しておりますことは、問題意識としてはやはりそういうものが確かに入っておる。特にテーマとして掲げたことはございませんけれども、そういうことも重要な問題意識の一つとしてこの会議は行われている、このように考えてよろしいと思います。
  27. 市川雄一

    市川委員 外務省にお伺いしますが、国際法から見て、次のようなケースの場合はどういうことになるのか、お尋ねしたいと思います。  外国籍の船が日本の物資を輸送している場合、この船に第三国から攻撃があった。このケースで、攻撃した国と船籍国との関係はどうなるのか。それから、その外国籍に物資の輸送を頼んでいる、日本の物資が積んであるわけですが、日本との関係はどうなるのか。まずこの二点、どうですか。
  28. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  市川先生の御質問は、国際法上の自衛権行使との関連での御質問だろうと思いますが、純粋の国際法上の御質問でございますので法律論としてお答えさせていただきます。  現実に先生御質問のような状況というものがどういう状態のもとで発生するかということは、観念的にはわかりましても、現実の問題としてなかなか想定しにくい問題だろうと思いますので、一応そういうことを全部捨象いたしまして全くの純粋の法律論としてお聞き取り願いたいと思いますが、いま御質問のような事態でございますれば、自衛権の行使との関連では、攻撃を受けた船舶の旗国、その船の船籍国が当然のことながらその船舶に対する外国からの武力攻撃を排除する、そのための自衛権を行使するという立場に立つわけでございまして、そこに積んである貨物が日本向けのものであるからということで、わが国自衛権を行使するという立場には立ち得ない、法律的にはそういうことでございます。
  29. 市川雄一

    市川委員 その船籍国との関係はどうですか。
  30. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 船籍国との関係という御質問、ちょっと先生の御質問の趣旨を私……(市川委員「攻撃した国と船籍国との関係はどういうことになるのか」と呼ぶ)その点は、先ほど申し上げましたように、その船舶が攻撃を受けた国が、当然のことながら、これはその国に対します不法な武力行使であるということでございますので、国際法上は自衛権を行使してその攻撃を排除する、そういう立場に立つわけでございます。
  31. 市川雄一

    市川委員 防衛庁にお伺いします。  防衛庁の言う千海里のシーレーン確保という問題ですが、これは日本通商航路というか通商が破壊される、商船隊が破壊されて、タンカーとかそういう商船が破壊される、そういう破壊を目的にした攻撃から日本の商船を守るのだ、こういう想定でお考えになっていらっしゃるのか、それとも、日本通商破壊を目指した攻撃から守るということではなくて、ある国が軍事的な必要から一定の海上支配力を持とうということで出てくる、それを排除しようということなのか、どういうことを想定していらっしゃるのですか。
  32. 塩田章

    ○塩田政府委員 私どもがシーレーン防衛と言っております場合は、先生のいまの御指摘の前段の、わが国海上交通路の保護ということを考えておるものでございます。
  33. 市川雄一

    市川委員 そうしますと、外国籍の船に日本の物資が積んである場合、これは先ほど外務省から、いろいろな想定があって一概には言えないけれども純法律的にということでお答えがあったのですが、防衛庁はどういうふうにお考えになっていますか。
  34. 塩田章

    ○塩田政府委員 外国の船に日本の物資が積んである、その船が攻撃をされたという場合につきましては、ただいま外務省からお答えがございましたように、それは日本の船ではございませんので、日本自衛権を考える場合の対象にはならないというふうに了解しております。
  35. 市川雄一

    市川委員 大体、輸出入の合計だろうと思うのですけれども、海上貿易日本の場合、外国籍が五五%、日本籍が四五%だ、こう言われておるのですが、そうすると、五五%の外国籍については何があっても何もしません、四五%の日本籍については防衛するのです、こういうことでよろしいわけですか。
  36. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども外務省政府委員からお答えの中で発言をしておりましたけれども、実際にそういう事態が起こるのかどうかということはなかなか考えられないのじゃないかと思うのですが、御指摘がもし日本の荷物を積んでいる外国の船というふうに限定してのお尋ねであれば、先ほどお答え申し上げたとおりでございます。日本の船ではございませんから、日本の船が攻撃された場合のように自衛権の行使を考える対象にはならないというふうに思います。
  37. 市川雄一

    市川委員 外務省にお伺いします。  船籍国が原則として自衛権を行使する、こういう御答弁だったのですが、物資を積んでいる国というのは、攻撃した国に対して抗議するとかそういう国際法的な関係というのは必ず生まれてくると思うのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  38. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほどの先生の御質問に対して私がお答え申し上げましたのは、あくまでも実力の行使としての自衛権というもの、自衛権の行使というものとの関連でわが国がどういう立場に立つかということを法律的に申し上げたわけでございまして、いま先生の御質問のような事態、非常に現実の問題としては考えにくいわけでございますが、日本籍の船が攻撃をされずに、日本向けの物資を積んでいる外国の船だけが攻撃をされるという事態、これは非常に考えにくいわけでございますが、仮にもそういう事態が考えられるとして、そういう場合に当然わが国としては非常ないろいろな影響を受けるわけでございますから、いろいろそういう事態を防止するための外交的な相手国に対します申し入れでありますとか、その他いろいろな外交的な措置というものは講じられる余地が十分あろうかと思います。
  39. 市川雄一

    市川委員 ですから、いま単純な例で言ったのですが、事態はもっと複雑だと思うのです。日本籍の船に日本だけの物資じゃない、外国の物資を積んでいる場合もあるわけですから、あるいは外国籍の船に日本の物資だけじゃない、ほかの外国の物資を積んでいる場合もある。そういう非常に事態はもっと込み入ってくると思うのです。ですから、通商破壊と、こう簡単に防衛庁おっしゃるのですが、攻撃する側はそう簡単なことでは、容易ならざる決意がなければ、言ってみれば世界を相手に戦う結果になりかねないわけですから、そういう御認識があるのかどうかという意味で伺ったわけです。これは一応わかりました。  次の想定をお伺いしますが、防衛庁で言っているシーレーン確保というのは通商破壊から守るのだ、その通商破壊というのは、海上自衛隊の制服の元OBとかそういう方の論文や何かを拝見していますと、シンガポール方面とか千海里方面で、ある日日本の商船が潜水艦から攻撃を受けた、その報告があるや否やすぐ日本から護衛艦が駆けつけて直ちにこれを撃破してしまうのだということも書いていらっしゃるわけですけれども、そういうものを読んでいますと、何か海賊的なものから守ることを考えているのかな、平時にそういうことが起きるというふうに考えているのかなというふうに思うのですが、どうなんですか。海賊的な、日本の物資を盗んでやろうという盗賊的な働きから守ろうというのか、それともちょっとわからないように日本を妨害してやろうというゲリラ的な攻撃から守ろうとしているのか、それとも明らかに組織的な計画的侵攻という意思を持って日本通商破壊を目指してくる、そういう本格的な通商破壊から守ろうということなのか、どういう想定ですか。
  40. 塩田章

    ○塩田政府委員 私たちがシーレーン防衛と言います場合は、まず基本的な考え方としましては、最後に言われました組織的、計画的な日本に対する攻撃という中でシーレーン防衛考えているわけでございますが、いまその前におっしゃいましたたとえば海賊的なものあるいはゲリラ的なもの、これは実態がどういうものかなかなかっかみにくいわけでございますが、まだ、いわゆる平時の時点においてそういうものがあった場合にはどうするかということにつきましては、第一義的には海上保安庁の任務になろうかと思います。その間に八十二条によりまして海上警備行動が発令される。海上保安庁だけでは手に負えないといいますか、そういう状況のときに八十二条が発動されるという事態は考えられます。そういう意味でならば平時におきます海上警備行動によるところの海上交通路の保護ということもあり得ますけれども、通常私どもがシーレーン防衛と言っておりますものは、最初に申し上げました組織的、計画的な武力侵攻によるところの海上交通の破壊に対する保護ということを考えておるものでございます。
  41. 市川雄一

    市川委員 もう一つ想定をお伺いしますが、第三国が単独で日本通商破壊をするという想定なのか、米ソ戦に巻き込まれる形で、何かそういうグローバルな戦争に巻き込まれる形で通商破壊が起きる、こういうことなのか、その辺はどうですか。
  42. 塩田章

    ○塩田政府委員 そういう実際に起こる形がどういう形で起こるかということを、いまここで私ども、どういう場合があるだろうというようなことを想定することは困難でございまして、いずれにしましても、私どもが申し上げているのは、日本に対する組織的、計画的な攻撃ということがあるかどうかという問題でございまして、それ以上、いまのようなどういう形のもので発生するかということについていまここで申し上げることは困難でございます。
  43. 市川雄一

    市川委員 それはずいぶんその想定によって変わってくるのじゃないかと思うのですよ、シーレーン防衛ということが。  ちょっと時間も過ぎていますので、もっと本題の方へいきなり入っていきたいと思います。  防衛庁にちょっとお伺いしますが、本土への攻撃が全くなされてなくて、なおかつ通商シーレーンにおける日本の商船に対する攻撃が行われた。それが、どういう基準で判断されるのかわかりませんが、組織的、計画的侵攻である、こう判断した場合は防衛出動するわけですか、防衛庁長官
  44. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 公海上における他国からわが国船舶に対して行われる攻撃が、御指摘のようにわが国に対する組織的、計画的なものであると認定された場合には防衛出動が下令されることとなると考えております。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 市川雄一

    市川委員 防衛庁長官、その組織的、計画的侵攻だという判断は、何か基準を持っていらっしゃるのですか。こういう条件、こういう条件と、何かありますか。
  46. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御指摘の船舶に対する攻撃が組織的、計画的な武力攻撃であると見るか否かの判断は、そのときどきにおけるもろもろの状況、相手の意図等を総合的に勘案して行われるものでございます。
  47. 市川雄一

    市川委員 その場合、日本独自の対処では持ちこたえられない、こういう場合は、外務大臣、安保条約は発動されるのですか、どうなんですか。
  48. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 安保条約の五条の発動は、それはございません。
  49. 市川雄一

    市川委員 日本では持ちこたえられない、防衛庁、米軍に来援を要請しますか、どうですか。
  50. 塩田章

    ○塩田政府委員 四条による協議ということになろうかと思います。
  51. 市川雄一

    市川委員 協議の結果米軍に来援を要請しますかと言うのです、持ちこたえられなかったら。
  52. 塩田章

    ○塩田政府委員 御承知のように、まだ安保条約の発動の以前の状態でございますから、米軍が実際に来援をしてくれるかどうかということは別にしまして、わが国の方から来援を要請すること自体はできるわけでございますから、そのときの状況によって判断をすることになろうかと思います。
  53. 市川雄一

    市川委員 法制局にお伺いしたいのですが、憲法の許す自衛権の範囲、いままで政府は、自衛範囲は必ずしも領海、領空、領土のみではなく、場合によっては公海、公空にも及ぶのだ、こういう答弁をされてきた。その場合、自衛のための必要最小限度の範囲内でなければならない、こういう御答弁をされてきたと思うのですが、防衛庁が言っておられる千海里、これは領海をはるかに越えているわけですね。憲法から考えてみてなぜその千海里防衛ということが許容されるのか、この正当化された理由というか、それを一つお伺いしたいわけでございます。  それからもう一点は、自衛のための必要最小限度の範囲というものはだれがどういう手続でどういう基準で判断をされるのか。時の総理大臣が判断すれば伸縮が自在なのかどうか、そういう性質のものなのか。憲法上の解釈としての一定の歯どめというものを全く持たないものなのかどうなのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  54. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 最初の御質問は、シーレーン千海里という問題に関連しての御質問だと思います。  本来、シーレーン千海里というのは、防衛庁の方からたびたび御説明申し上げているように、それ自体は海上防衛力整備目標として言われていることであって、憲法上の自衛権の行使の地理的範囲として言われているものではないと思いますが、結局、御質問の趣旨は、自衛権の行使の範囲として公海あるいは公空上に及び得るかどうかということだろうと思います。そこで、われわれ政府としては、憲法解釈として、自衛権の行使についてはいわゆる集団的自衛権を認めない、また個別的自衛権についても必要最小限度のものに限るということをかねがね申し上げているわけであります。  そこで、個別的自衛権の行使の問題を考える場合に、普通自衛権の本質としては、国家に対する侵害があったときにそれを実力をもって排除するというふうに言われているわけでありますが、その場合、国家に対する侵害として最も重要なものは言うまでもなく国家の領土や独立に対するものであると思いますが、同時に、その国の艦船とか航空機に対する危害の排除ということも当然含まれるというのが普通の考え方であろうと思います。そういう意味で私どもは、個別的自衛権を行使する場合においても必ずしも領海、領空、領域内に限らず、公海、公空にも及び得るというふうに考えているわけであります。もっともその場合でも、公海、公空に及び得るとしてもどこまでもいけるというわけではなくて、あくまで、その場合においてもわが国防衛するため必要最小限度の実力行使のみが許されるという憲法考え方に従って、そこには限界があるということも繰り返し述べてきたところであります。  そこで、最後の次の質問として、しからば自衛権の及ぶ公海、公空の範囲を具体的に憲法上の限界として示さなければ歯どめがないじゃないかということだろうと思いますが、それは確かに憲法規範としてそれを一義的にどこまでであるかということは、これは示すことは困難だと思います。個々の状況に応じていろいろ違うと思いますので、それは一概には言えないと思います。  ただ、先ほど御質問の中にありましたように、総理大臣考え方というようなものによって恣意的に変わるというようなものではなくて、憲法規範としては必要最小限度の範囲という枠そのものは厳然として存する、ただしそれを具体的に示すことは憲法規範としてはそれ以上はなかなかむずかしいのじゃないかと思います。それを担保するものは、結局、先ほど来市川委員のお話にもありましたような総合安全保障であるとか、あるいはさらにシビリアンコントロールとか、そういうものによって実質的に担保していくということ以外には言えないのじゃないかと思います。
  55. 市川雄一

    市川委員 もう一つお伺いします。  いまの点もちょっと伺いたいのですが、防衛庁はシーコントロールということを言っていらっしゃるわけですね。私は、必ずしもまだ明確に防衛庁のおっしゃっているシーコントロールという概念が把握できておりませんが、国会の答弁等を聞いておりますと、一定の期間一定の海域において優勢を保つのだ、そしてその海域における通商の安定を図るんだ、こういう趣旨だと思うんですね。  そこで法制局にお伺いするのですが、憲法の言う専守防衛というのは、あくまでも、日本の本土に攻撃がある、それに対して守る場合に、必ずしも領海、領空に限らず公海、公空に及ぶんだという趣旨はわかるのですけれども、これが千海里あるいは南東航路、南西航路という二本のシーレーンを想定して、西太平洋というか北西太平洋の面、一定の期間一定の海域、公海上に一定の期間一定の日本軍事力を裏打ちした海上支配力を及ぼそうということですよね、考え方としては。ということは、言ってみれば公海上防衛力によって海上支配力を持った領海的なものをつくってしまおうこういう考え方だろうと思うのですが、こういうことが憲法の言う最小自衛範囲に入るのかどうか。要するに公海上領海をつくってしまうということ、どうですかこの点は。
  56. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 個別的自衛権の本質として、直接領域を守るだけでなくて、公海上にある船舶あるいは公空上にある航空機を守ることも認められるのではないかということは先ほど御答弁申し上げたわけでありますが、それを前提として、しからば公海上において一定の期間一定の海域をコントロールすることが憲法で言う必要最小限度に入るのかという御質問だと思います。  必要最小限度の実力を行使することができるというその実力行使の態様は、先ほども申し上げましたように、具体的状況に応じ千差万別でありますから一概には言えないと思いますが、海上交通路確保するための実力行使であって、どういう場合であってもそれが領海と同じような意味の支配権を確立するということではないと私どもは理解しております。したがって、交通路を確保するための実力行使がわが国防衛するための必要最小限度の範囲内にとどまる、そういうものである限りはそれは許されると思いますが、全く領海と同じような権利をそこにわが国が確立をするということではないというふうに考えております。
  57. 市川雄一

    市川委員 領海をつくろうという、それはちょっとわかりやすく言っただけで、領海をつくろうとしているということじゃないことは私もわかっているわけです。そういう一定の公海上海域の支配力ですね、要するに優勢を保つということは。そういうことはどうなのかということを聞いているわけです。  そこで、防衛庁にお伺いしますが、防衛庁が言うこのシーコントロール、一定の海域で一定の期間優勢を保つんだ、こう言っているのですが、この優勢というのは、私が思うにはシーレーンというのを守るということ、日本語で守る、こう言うのですが、守るということの意味、これは非常にあいまいだと思うのですね。優勢と言うけれども、優勢ということは相手が完全にノックアウトされたということではないのですから、また攻撃が行われる可能性があるというふうにも思えるわけですね。そうなってきますと、そういう優勢を保っているというような、相手は完全にノックアウトはされていない、こっちは優勢だ、そういう状況の中で果たして商船が、タンカーが通れるのかどうか、その辺のことはどういうふうにお考えになっているのですか。
  58. 塩田章

    ○塩田政府委員 シーコントロールというのはどういう意味か、いろいろ表現の仕方はあると思いますけれども、いま先生のおっしゃいましたような、一定の期間、一定の海域を支配するという意味のことを私は申し上げたと思います。要するに、その期間ある海域を排他的に利用できるようにするということであろうかと思います。  端的に考えますと、たとえばわが国の船団なら船団が日本の港に帰ってくるというようなことを考えました場合に、それを海上自衛隊が護衛するという状態を考えてみますと、その船団に対して仮に攻撃しようとする相手方の勢力があればそれを排除する、そして目的どおり日本の港に帰ってくることができるようにするという意味においては、排他的な海洋利用ということになるわけでありますが、そういう目的のためにその船団が通る海域を、船団が通る期間は無事に通れるようにするというようなことが具体的には考えられるわけでありまして、それをどういう表現をするかということは、優勢を保つと言ってもよろしいかと思いますが、実体的な意味はいま申し上げたような意味で御理解をいただければよろしいんじゃないかと思います。
  59. 市川雄一

    市川委員 防衛庁の、海上自衛隊の持っている護衛艦とかその装備、そういうものから考えますと、シーレーン確保というのは防衛庁の方は潜水艦を主な対象としている。言ってみれば、だけと言うと語弊がありますが、どうもだけ、だけにも見えるような感じなんですが、その点はどうですか。シーレーンを脅かすのは潜水艦だけではない。それ以外の水上艦艇、航空機による脅威というものも当然あるわけですが、それも考えていらっしゃるわけですか。そういう脅威に対処するとなると膨大な予算が必要になってきますが、そういう点はどうなんですか。
  60. 塩田章

    ○塩田政府委員 まさに水中、水上、航空、三つの攻撃態様が考えられますから、いずれに対しても防御したいということでございますが、もし先生がその中で主なものは対潜だとおっしゃるのであれば、それは一般的にそういうふうにお考えいただいてよろしいんじゃないかと思います。ただ、私どもは、だから航空攻撃あるいは水上艦艇による攻撃がないと思っているわけではございませんで、そういうことについても当然考えておかなければならないというふうに思っております。
  61. 市川雄一

    市川委員 そうじゃなしに、まあいいや。防衛庁は潜水艦対策しかいまない。これは潜水艦対策でも相当金がかかるわけですよね。ある専門家の分析によりますと、一隻の原子力潜水艦を沈めるには、対潜水艦という水上艦艇十隻、対潜哨戒機二十機、この集中した力がないと一隻の原子力潜水艦を沈めることができない。これは専門家によって意見が変わるとは思いますが、いかに潜水艦を沈めることがむずかしいかということだと思うのです。ですから、潜水艦を簡単にやっつけると言うけれども、やっつけることだって相当予算を食った防衛力を持たなければならない。そこへまた水上艦艇からの攻撃だ、航空機からの攻撃だ、これにも対処するんだということになったら、これはシーレーン防衛だけで日本防衛予算全部吹っ飛んでしまうと僕は思うのです。そういうことだと思うのですね。  そういうことをおっしゃるならお伺いするのですが、では防衛庁にはそういう計算があるのですか。何隻の護衛艦、何機の航空機、戦闘機と対潜哨戒機があれば、何隻の船舶の護衛がどの程度の広さの海域で、何機の侵略側の航空機、何隻の侵略側の水上艦艇、潜水艦に対してどの程度防衛効果が確保できるのか、こういう何か具体的な説明ができますか。
  62. 塩田章

    ○塩田政府委員 お尋ねのような具体的な防衛効果というようなことを、もちろん防衛庁としては常日ごろ研究をしておるわけでございますが、何分にもこれは侵略側のそのときにおける艦艇、潜水艦あるいは航空機といったものの脅威の具体的な態様、様相ということを初めとしまして、いろんな要因がございますので、一概にあるいは具体的な数字的な形で申し上げることはもうきわめて困難であります。そういった点はぜひ御理解をいただきたいと思いますが、いずれにしましても、対潜水上艦艇あるいは対潜哨戒機あるいは対潜ヘリコプター、こういったものは現在逐次近代化したものを装備させていただいておりますけれども、「防衛計画の大綱」の別表に定める勢力規模というものをいま目標にいたしまして整備をいたしておりますが、こういった勢力の規模に幸いにして達することができるという状態になり、かつそれを支援するための体制、後方支援体制というものもできるという状態を考えますと、私どもは、かねてから申し上げておりますように、わが国周辺数百海里、航路帯を設ける場合にあっては一千海里という目標につきまして、相当に効果のある防衛ができるというふうに考えておるわけであります。
  63. 市川雄一

    市川委員 相当に効果があるとかおっしゃっても、そういう具体的なものがないとだれも納得しないと思うのです。  ちょっと角度を変えてお伺いしますが、ソ連の太平洋艦隊の潜水艦の数を防衛庁に問い合わせましたら、ここでお答えいただきたいと思っておりましたが、時間がありませんので、百三十五隻、うち原子力潜水艦が六十五隻という防衛庁からのお答えがございました。あわせて、ソ連の潜水艦の可動率はいかにというお問い合わせをしましたら、大体一五%と言われている、こういう御返事がございました。  そこでお伺いしますが、潜水艦の種類を聞いても恐らくお答えにならないと思うので私の方で伺いますが、恐らくソ連の太平洋艦隊の持っている潜水艦は、SSBN、それからSSN、SSGN、それからSS、SSG、SSB、この六種類の潜水艦と思いますが、この点は間違いございませんか、どうですか。
  64. 新井弘一

    ○新井政府委員 私どももそのように考えております。
  65. 市川雄一

    市川委員 SSBNは原子力エンジン、これは核ミサイル搭載の潜水艦。したがって、言ってみればアメリカとの核戦略用の潜水艦。SSN、これも原子力エンジンですが、これは通常アンチSSBN、相手のSSBNを攻撃するための潜水艦あるいは自分の国のSSBNを守るための潜水艦、アンチあるいはプロSSBN、一部通商破壊という目的も持っておると思いますが、そう言われております。こういう各潜水艦それぞれに役割りがあるわけですね。たとえばSSGNですと巡航ミサイルを積んでいる。もちろんこれも原子力推進。これは大体水上艦艇攻撃用です。この六種類のソ連の極東艦隊の潜水艦のうち、日本通商破壊に恐らく向けてくるであろう潜水艦というのは、専門家の意見はSSNかSSか、大体このどちらかではないか、こういう分析を多くの方はしておりますが、防衛庁、これはどうですか、この見方は間違っていますか。
  66. 新井弘一

    ○新井政府委員 そのような見方のあることは承知しております。
  67. 市川雄一

    市川委員 じゃ防衛庁はどう見ていますか。
  68. 新井弘一

    ○新井政府委員 おっしゃいますとおり、SSN、SS、これは魚雷発射でございます。他方SSGNそれからSSG、これは対艦船でございます。したがいましてSSNあるいはSSだけがシーレーンの破壊というふうに断定することは困難かと思います。
  69. 市川雄一

    市川委員 ただ、通商破壊ということを考えた場合はどうですか、まさかSSNなんというのを使わないでしょう。もうSSBNを守るのに精いっぱい、あるいは相手のSSBNを攻撃するのに精いっぱいという状況だと思うのですよ。SSGNを通商破壊に向けてくることはまず軍事的にあり得ないでしょう。巡航ミサイルをまさかタンカーに向けてきますか。向けてこないでしょう。SSG、これはやはり通常エンジンですが、巡航ミサイルです。やはり相手の艦艇攻撃ですよね。巡航ミサイルをタンカーに向けませんな。SSB、これは弾道ミサイル、対地攻撃だと思うのですよ。こうやって考えてみますと、SSしかないんじゃないですか。  大体ソ連は、最近極東艦隊の潜水艦の数がふえていますけれども、ふえた中身は原子力潜水艦がふえたので、SSBN、SSN、SSGNがふえたのであって、通常型はむしろ減っているわけですね。しかもこれは旧型、一九六〇年代のものが多い。したがって可動率は一五%、もっと落ちるんじゃないか。しかもSSはウラジオストクやペトロパブロフスクの二つの彼らの基地を守る、港湾あるいは基地防衛の任務もSSというのは持っているわけです。そうなってきますと、可動率を計算しますと、通商破壊なんかに、言ってみれば本来の任務から遊んでいられない、こういう状況が考えられると思うのです。その辺に、どうも防衛庁の言っている通商破壊ということが理解できないのですが、実際ソ連の持っている潜水艦の種類から考えてみて、じゃほかのどの潜水艦が通商破壊に出てくるのですか、それをちょっと言ってみてください。
  70. 塩田章

    ○塩田政府委員 まさにいま先生いろいろ御指摘のような議論がございますということは、私どももよく承知いたしております。私いまその御議論に肯定も否定もいたしませんけれども、いずれにしましても相手方の意図の問題でもございますし、そういった日本通商破壊にどういった兵力が向けられるであろうかというようなことは、私どもの立場といたしましては最も軍事的な機密度の高い一つの想定でございまして、それをここで私どもどう考えておるというようなことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  71. 市川雄一

    市川委員 肝心な話になると全部差し控えさせていただきたいというのが防衛問題の議論なんですが、結局、ジェーン年鑑と英戦略研の数字で分析してみますと、通商破壊に向けるであろうというのはSSNとSS。これは何隻かというと、SSNが十五隻。可動率を計算に入れますと動けるのが二隻。SSが三十四隻。可動率を計算に入れますと、これは一五%では高過ぎるのですが、それで計算しても五隻。二つの基地の防衛に回すと通商破壊に回せるゆとりなし、こういうことになるわけです。  そこで、本当は先に質問しておかなければいけなかったのですが、ソ連の太平洋艦隊の役割りというか、任務、これをどう把握しておられるのかということをまずお伺いしたいのですが、大体アメリカの海軍でもソ連の極東艦隊が通商破壊を考えておるなんという分析はしてないのです。いままでのずっと発表になってきた軍事情勢報告を拝見してみますと、当時のハロウェー作戦部長だとかいろいろな方が言っておりますが、大体優先順位から言うと通商破壊なんてずっと下の方。したがって、アメリカ海軍では、日本の千海里云々の通商破壊なんということはむしろやめた方がいいじゃないかということを言っている方もいらっしゃるくらいで、ソ連の太平洋艦隊の役割り、任務からいって日本通商破壊なんかをやっておるゆとりがあるのかどうか。その辺のことを含めてどう見ておられるのか、これをお伺いしたいと思います。
  72. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ソ連の太平洋艦隊の役割り等での御指摘でございますけれども、ソ連の太平洋艦隊はソ連の四つの艦隊のうちで最大の艦隊であると承知しております。その任務につきましては、ゴルシコフ提督によりますと、一つ戦略核攻撃、一つ海上防衛一つ海上交通路の遮断、地上部隊の支援及び全面戦争に至らない状況における輸送等の支援、さらに国家政策の支援であるとされておりますが、太平洋艦隊もこのような任務を有しているものと考えられます。
  73. 市川雄一

    市川委員 海上交通の遮断ということなんですけれども、これは通商破壊じゃないですよ。アメリカの海軍だって海上ということを言っておるのですが、これは通商破壊じゃなくて、軍事上戦略上の海上輸送あるいは海上支配力の確保を言っておるのです。  要するに私が申し上げたいことは、原子力潜水艦が出現して海軍の任務というものは本質的に変わってしまったのです。いかに原子力潜水艦に核の発射に当たって安定した海域を提供するか、これが主要な任務だと思うのです。ですから、相手の攻撃から自分の国の原子力潜水艦をいかに守るか、相手の原子力潜水艦をいかに妨害するか、そして自国の原子力潜水艦の核発射の安定した海域をいかに確保するか、これが言ってみればいまの米海軍、ソ連海軍の一番メーンの任務なんです。そう私は思うのです。それが常識だと思うのです。  ですから、ソ連太平洋艦隊の海軍力が著しく増強された、だから日本に対して脅威だ、こう言うのですが、それはちょっと違っておるのじゃないですか。ソ連太平洋艦隊の役割りや任務をわざと取り違えておるのじゃないですか。ポラリス潜水艦の射程が伸びた一九六五年ごろですか、原子力潜水艦がインド洋からモスクワをねらえるようになった。そこからソ連の太平洋艦隊の増強というのは始まっておるわけです。要するに、通商破壊なんというゆとりなんてないはずです。あったとしても、全然考えてないかといえば、相手が考えていることですから、絶対にないとは否定はできませんけれども、優先順位はずっと下の方です。そういうことについて、通商破壊を全く同じようなあるいは優先順位の非常に高いものだというふうに見ておられるわけですか。防衛庁というのはいろいろな軍事的な常識と全く反する見方をしていらっしゃるわけですか。どうですか、防衛庁長官。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕
  74. 新井弘一

    ○新井政府委員 先ほど防衛庁長官からゴルシコフの発言について御説明がございましたけれども、私どもソ連の文献等、政策その他これを検討いたしまして、依然として海上交通の破壊というのは海軍が持つ重要な任務の一つであるというふうに判断しております。
  75. 市川雄一

    市川委員 ソ連というのはいろんな文献を出していますからね、そのときどきの文献によって言い方は変わってくるし、海上交通の破壊というよりも、むしろ第七艦隊をねらっているんだという発言をしている文献だってあるわけでして、ただ文献の種類とかそういうことによって変わってくると思うのです。大体およそ世界的にいま海軍の役割りというのはそういうことじゃないのですか。ですから、極東艦隊を全部通商破壊に向ければ、それは莫大な破壊力を持っていますよね。全部か一部かを向ければね。しかし、SSBNの擁護、それに、尽きてしまうのじゃないか。ですから、そういう意味防衛庁のおっしゃっている千海里の防衛というのは、ソ連太平洋艦隊の任務をわざと取り違えて過大に言っていることが一つ。  それから、もし本当に守るとしても守りようがないのじゃないか、要するに実際問題として。さっきも何隻の何機のと出しましたけれども。ですから、そういう意味においてどうもあいまいな点が多いわけです。  それでは、シーレーンのことの締めくくりとして、長い間お待ちいただいて大変恐縮なんですが、シーレーンというのは、いま千海里ということを限られた時間の中でちょっとやりとりしたのですが、もうちょっと時間が欲しかったのですけれども、要するに非常に不確実な要素がたくさんあるわけですね、防衛力でただ確保するということ自体。守れるのか守れないのか。守るとなると膨大な予算がかかる。しかし、先ほど申し上げましたように、シーレーンというのは何も千海里だけではない。要するに一万一千キロという積み出し港から海上ルートから日本の港まで遠大な距離なわけです。それをどう確保するかということの方が重要なんであって、その議論がむしろ先行していなきゃいけないと思うのですよ、官房長官。その議論が先行していて、その一部として千海里を防衛庁がどうするかということが言われているのならまだまだ百歩譲って話はわかるのですが、この海上輸送ということをどうするのかという議論は余りなされないで、ただ千海里千海里ということで、突然千海里というものが出てきて、それを防衛力で守るんだ守るんだという話だけが非常に先行している。こういうシーレーンに対する考え方に対して非常に疑問を持っているわけですが、今後重要なテーマとして総合安全保障閣僚会議で検討していかれるということを先ほどおっしゃっておりましたが、こうしたことについて、どうですか、これからもっとトータルシステムシーレーンというものの議論を政府でやるべきじゃないですか。何かシーレーンというと防衛庁の専売特許で千海里、こうなっていますが、ちょっと一部肥大症じゃないですか。これからのあり方について、官房長官に締めくくりでお伺いしておきたいと思います。
  76. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 問題を御指摘になっておられる点は、私はまさに正しいと思います。そのとおりであると存じますが、先ほど運輸大臣からお答えがございましたように、現在この海上輸送路が平和に安定して確保されているということには、いろいろな努力があってそうなっておるのであって、決して無為にしてそれが生まれておるわけではないと思うのでございます。そして、いざというときに防衛するということはもう大変な至難のことでございますから、そういう事態が起こらないようにすることがまさしく総合安全保障の目的であって、先ほどトータルシステムというふうに言われましたが、私はそのとおりであると思います。その点で問題の御指摘は私はまことに正しいと思いますし、政府としてもそのために努力を毎日しておると申しても過言ではないと思います。ただ、万一の場合にどうするかということにも備えをしておかなければならないのは、先ほど防衛庁長官が言われましたとおりと思います。総合安全保障会議で従来シーレーンという特定のテーマで議論をしたことはございませんが、まさに先ほどおっしゃいましたように、トータルシステムとしてそういうものを安全に確保していくということに努力をいたすべきだと思います。
  77. 市川雄一

    市川委員 施設庁長官見えになっていますか。——防衛施設庁の元高官が天下りした建設会社が施設庁が発注した米軍人用高層住宅建設工事を落札した。談合の疑惑が持たれている。ある新聞にかなり大きく報道されてきましたが、この米軍人用高層住宅建設、横須賀につくられるわけですが、これによって横須賀にある米軍の施設が返還される、この工事が終わって米軍住宅ができると、長井住宅地区ですか、横須賀の米軍がいま接収しているものが返還される、こういう関係になっているわけでして、その返還が地元でも非常に強く望まれている。順調にこの工事が進んでいけば返還されるということで期待を持っていたわけですが、こういう疑惑が持たれておるわけです。現時点でどういう調査をし、調査の結果はどうなっているのか。  それから、今後こうした事態に対して施設庁として、やっぱり防衛のコンセンサスを固めていくという上においては、防衛庁というのはほかの官庁とまた違った倫理観というものを私は求められると思うのですが、そういう点で施設庁長官はこの事件に対して今後これを教訓としてどういう方針をとっていかれるのか。  それから、これによって三施設のうちの長井住宅の返還時期に影響が出てくるものなのかどうなのか。その辺のお考えをお聞きしたいと思います。
  78. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 先生御指摘のように、ある新聞に本件の工事に絡んで疑惑があるのではないかというような記載がありましたので、早速契約を留保いたしまして、いろいろな事実関係を調査をしている段階でございます。一部調査を一応終わったところもありますが、全体としてまだ中途のところでございますので、調査の内容についてはいまここで申し上げるわけにまいりませんが、いずれにいたしましてもこういうことを記事にされたわけでございますので、われわれとしては、従来も適正な執行に努力をしてきたつもりでありますけれども、なおこの機会に庁全体が大きな反省をいたしまして、行動原理なりあるいはもう少し具体的な点につきまして、全庁挙げて、防衛大臣にお諮りの上そういう指示をいずれいたしたい、調査の結果によりますけれども、その後でいたしたい、こういうふうに考えておるわけです。先生御指摘のように防衛予算が非常にクローズアップされているような時期におきまして、仮にもこういうような疑いの目をかけられるということはまことに遺憾なことでございますので、御趣旨まことに賛成でございまして、私の方としても万全の措置を今後とりたい、こう考えておるわけであります。  次に、長井住宅の返還の予定がこれによって影響されるということになったら大変ではないか、こういう御指摘だと存じますけれども、先般の国会で先生の御質問に対して私自身お答えいたしましたように、長井地区の返還は来年の年度末前後ということに予定しているということを申し上げました。前提といたしまして、この住宅の建設が年度末に終わる、こういうことを予定しているということもその際申し上げたとおりでございますけれども、いま先ほど申しましたように調査をしている段階でございますけれども、調査をなるべく早くストップをするといいますか、完了いたしまして、五十七年度末に本件工事が完成するように最善の努力をいたしますし、その見通しもありますので、長井地区の返還問題に支障を起こすということは万々ないと考えております。
  79. 市川雄一

    市川委員 以上で終わります。
  80. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 これにて市川君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  81. 米沢隆

    米沢委員 私は、最近の経済政策の手詰まりの問題、それから不況にあえぐ素材産業対策にしばりまして、関係大臣に若干の質疑をさせていただきたいと思います。  御案内のとおり、昨年の経済白書は、日本経済は二度にわたる石油危機をみごとに切り抜けて穏やかに回復に向かいつつあると述べております。確かに、卸売物価、消費者物価あるいは経常収支等を見る限りにおきましては、石油インフレ、石油赤字はみごとに克服いたしておりますし、またマクロの指標を見る限り、経済成長率、失業率、物価上昇率、国際収支の状況等、いずれを見ましても、欧米諸国に比べましてわが国経済パフォーマンスは良好であると言ってもいいと思います。しかし、どうも経済指標の数字と肌で感じる景気実感とが余りにも違い過ぎる。現在の経済の現状は、景気回復過程とは言いながらも余りにも冷え冷えとしているというのが実感だろうと思うのであります。確かに、在庫調整の完了で昨年秋ごろから生産は上向きに転じているものの、内需全体の回復力は依然として弱い。個人消費や民間設備投資が本格的に回復するまで一つのつなぎ役を果たしてもらわねばならない輸出という問題も、御承知のとおり、昨年十一月以降は円安にもかかわらず急激に減少いたしておりまして、このままでは景気の息切れさえ心配になってきたのではないかと考えます。  現在、そういう意味では、実質の経済成長率は瞬間風速ではひょっとしたらゼロかマイナスになってしまっているのではなかろうか。このままいけば、五十六年度の実質成長率も政府改定見通し四・一%にも達せず、三%前後に落ち込む可能性が十分あると思うのでありますが、政府は、政府の改定見通し四・一%の見通し達成に自信がおありですか。
  82. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまいろいろ御指摘がございましたが、日本経済一つの現在の特徴を申し上げますと、回復力が非常に弱い、スローテンポである、そういうことのために非常に厳しいばらつきが各方面に見られるということであります。業種ごとに、あるいは地域ごとに、あるいは企業の規模等によりまして、非常に厳しい差が見られるということが一つでございます。  それからもう一つは、内需の回復がはかばかしくないところにもつてきまして、昨年の第三・四半期以降輸出が急速に落ち込みまして、輸入がふえる、こういうことで外需の状態が非常に悪い状態になってしまいました。当初は外需の力は内需がある程度回復するまで続くであろう、このように判断をしておったのでございますが、何分にも世界経済全体の状態が非常に悪い、世界全体の購買力が激減をしておる、こういうこと等もございまして、円安という背景はございますが、輸出が伸び悩んでおる。こういう見込み違いもございまして、わが国経済、いまゼロ成長前後ではないか、こういうお話がございましたが、どうも昨年の第三・四半期見当はほぼそういう状態でなかろうか、私どもも大変心配しておるというのが現状でございます。
  83. 米沢隆

    米沢委員 それで、四・一%の成長は確実に達成できる自信はおありですか。
  84. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 もうすでに政府の方で発表いたしました指標では、第一・四半期が一・二%成長、それから第二・四半期が〇・六%成長になっております。第三・四半期は来月の中旬になろうがと考えております。そしてまた、第四・四半期のこともございますので、四・一%成長が確実に達成できるかどうかということについては、まだ断定的に申し上げる段階ではございませんが、やはり最近の経済動向から見ますと、問題が非常に多い、こういう点を私どもは大変心配しているということでございます。
  85. 米沢隆

    米沢委員 大変むずかしいということでありますが、といって、いまのようなアメリカの高金利、円安の情勢では、金融政策を景気刺激に充てることはできない。その上、財政までが赤字国債の発行をゼロにする五十九年度までの財政再建期間中は余り動けないということでは、これはもう経済政策をとる余地はないに等しいと私は考えるのです。  政府は、公共事業を五十七年度上期に八割近く前倒しにしてしのごうとしていらっしゃいますけれども、これだとまた下期の方に公共事業が息切れするおそれは十分にあります。御承知のとおり、五十六年度の場合も上期に集中した結果、下期では公共事業依存率の高い特に地方経済が深刻な内需不足に陥りたごとは御案内のとおりであります。つまり、わが国経済運営は、次第にそういう意味では手詰まり感を強めて、硬直化の方向に向かいつつあると言っても過言ではないと思うのでございます。したがって、現在の日本経済は、内需がさえないというとの景気不振、それから対外経済摩擦が激化しておる、加えて、五十九年までに赤字国債の発行をゼロにするという、いわゆる財政再建問題も完全にもたついておるという新しいトリレンマに悩まされておる。その上また、最近の円安まで加わりまして、まさに四重苦にあえいでいて、そして経済政策の選択場の縮小を余儀なくされていると言っても、これは言い過ぎではないと思うのであります。そういう意味で、現在の日本経済は、政策の面で一種の閉塞状態に陥っておると思われるのでありますが、この点、経企庁の判断と、そしてこの混迷した経済運営のむずかしさからどういうかっこうで経企庁として脱却をし、いわゆるどのような道筋でこの経済政策の手詰まり状況から脱却をして、打開をされて、五十七年度の五・二%成長を確保していくのか、この点について御見解を承りたいと思います。
  86. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま日本経済を取り巻く幾つかの環境の中で、一番厳しい条件は、世界経済の回復が大変おくれておるということだと思います。アメリカ、ヨーロッパの経済は現在はゼロ成長またはマイナス成長である、昨年の後半からことしの前半へかけてが一番厳しい状態である、このように言われております。一説によりますと、アメリカ経済の現状は、一九三〇年大恐慌以来の厳しい状態であるとさえ言われております。しかし、ことしの後半以降は、第二次石油危機が起こりましてもう三年経過いたしますので、だんだんと回復の方向に向かうのではなかろうか、こういう見通しが権威ある国際機関やそれから各国政府からも発表されておりますが、多少の時期的なずれあるいは回復の規模等については見込み違い等もあろうかと思いますが、大勢としては私はそういう方向にいくのではなかろうかと期待をいたしております。また、石油の需給関係も非常に安定をしておりまして、最近は価格は下がる傾向にございまして、エネルギーの分野ではある程度やりやすくなっておる、こういう背景はありますが、しかし、いま御指摘のように、金融政策アメリカの高金利のために思うように展開できない、財政の力は非常に弱くなっておる、こういうことで、景気回復のための政策の選択の幅というものは非常に狭められておりますし、力が弱くなっております。  ただしかし、欧米経済と比べてみますと、日本には欧米経済にない幾つかの力がございます。たとえば、失業の問題、あるいはインフレの問題、あるいは労使関係、それから貯蓄率、それから金利水準、あるいは国際競争力、こういう幾つかの分野を調べてみますと、はるかに有利な条件にあるわけでございまして、私どもも、もし日本が欧米と同じような条件に置かれておるならば、日本もゼロ成長とかマイナス成長ということだと思いますが、そういう有利な条件を生かしまして、国際情勢の変化に応じて政策を機動的かつ適切に運営をしていきますならば、政府の成長目標の達成は可能である、このように判断をいたしております。
  87. 米沢隆

    米沢委員 いま経済政策の手詰まりの問題として、やはり財政が有効に使えない、これが基本的に大きな問題だと私は思います。もともとこの財政再建というのは、高度成長時代に定着をしておりましたむだの多い歳出構造や不合理な歳入の仕組みを改革するということに力点があったわけでありまして、財政の健全性をそういうことで改革することによって取り戻していこうということであったと思うのです。  他方、この五十九年度赤字国債ゼロという目標は、その目標年次を五十九年に設定をして、それまでは財政をしぼり込むことによって、行政改革の緊張感や行革のエネルギーを高めるという一つの手段であったというふうに私は理解をするのでございます。  ところが、このごろ、この赤字国債ゼロというのが、手段ではなくて政治目標に転化しておりまして、政治生命をかけて五十九年度までに達成するなんて総理大臣がおっしゃるものですから、まさにいまや政治目標にすりかわってしまっておりますために、財政が景気対策経済政策の指標として有効に使われなくなっておる。これが経済運営の混迷を助長する一つの大きな要因だと私は考えます。そして、結果的には、そのことが日本経済の名目成長率を低下さしてしまう、またそのことが税収の伸びを鈍化させる、そして意図に反して財政再建の足を引っ張るという、こういうジレンマにいま経済指標は陥っておるのではないかという危惧の念を持つのでございます。  いま日本経済の名目成長率の低下による税収の伸びの鈍化で、果たして五十九年度の赤字国債ゼロの実現が本当にできるだろうか。大方の方は、それは困難であろうと考えていらっしゃるのじゃありませんか。逆に、これに固執することによりまして、政策の選択の自由を奪う。下手をすると、極端な赤字国債減らしで経済全体が縮小均衡に陥ってしまうのではないかという一部の声が強まりつつありますけれども、大蔵大臣、経企庁長官の見解はいかがなものか、お尋ねいたしたいと思うのです。
  88. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 赤字国債を減らすということは、いみじくもあなたがおっしゃったように、歳出を切れということと同じことになるわけです。つまり、歳出を守るために国債が発行されているわけですから、税金で賄うべきものを借金で賄っている。したがって、歳出が減ればその分赤字国債は要らないという論理も一つ成り立つわけでございます。したがって、ともかくだぶだぶの高度経済成長下にできた歳出構造、これに徹底的なメスを入れるという意味一つが行革でございます。したがって、行革を徹底させろということは、裏から言えば、赤字国債を少なくしろということともつながっていると言っても過言ではございません。  そこで、赤字国債をもっと発行して、脱却はもっと後へ延びたっていいじゃないかという議論のあることも事実でございます。しかしながら、そういうような考えに立つと、さなきだに、歳出のカットということは、それによって利益を受けておった人から見れば月給の値下げぐらい厳しいものに今度は立場を変えるとなるわけでございますから、抵抗が非常に強い。したがって、なかなか歳出が切れないということにもなる。そこで、やはり五十九年度までに赤字国債を発行しなくしますという、一つの出口をふさいで、それで歳出カットに全力を挙げるという、そういうような意味があると私は思います。経済は生き物でございますから、そう言っても必ずしもそのとおりできるかどうか、それはわからない。わかりませんけれども、しかし、最大限にそれにもう精力をつぎ込んでまずやるという、そういうような意思表示と受け取っていただいて結構だと思います。
  89. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 わが国経済政策は何を根拠に行われておるかといいますと、昭和五十四年の八月に決定をいたしました経済社会発展七カ年計画を基礎にいたしております。この七カ年計画の目指す目標は何ぞやといいますと、いろいろ書いてありますが、要約をいたしますと、第一には、わが国の国民生活を充実向上させることである、第二が、わが国が国際社会で貢献できるようなそういう力を養うことである、こういうことが二つの目標として掲げられておるのでございます。これが政治の目標である、経済政策の目標である、こういう観点に立ちまして経済政策を進めておるわけでございますが、この目標を実現するために幾つかの政策があるわけでございます。  ただいま、この問題と赤字国債との関連においての御質問がございましたが、赤字国債の残されておる金額は四兆円ばかりでございますので、赤字国債を五十九年にこれをゼロにするというこの政策と、先ほど私が申し上げました七年計画が掲げる二つの政策目標、これに整合性を持たせまして現在の財政再建政策を進めるということ、これを成功させるということは、やり方いかんでは十分可能である、このように私は考えております。
  90. 米沢隆

    米沢委員 先ほどから言っておりますように、財政再建というものは、高度成長時代に水ぶくれした歳出構造にメスを入れる、そして不合理な歳入の仕組みを改革するということでありますから、徹底的にそれはやってもらって赤字国債をゼロにする努力はしなければなりません。同時に、赤字国債をゼロにするからといって、建設国債そのものまで一緒になって選択の幅の一つの指標として使えないということであれば、やはり問題ではないかと私は指摘をしておるわけであります。  したがって、そういう意味では、今後、逆に五十九年度に赤字国債をゼロにするというものが大きな阻害要件であるとするならば、少々延ばしてもいいというぐらいの感覚でこの経済運営をうまくやってもらわないと、景気のこの不振というものは一向に立ち直りを見せないのではないかと考えるわけでございます。したがって、そういう余裕の幅を持ってこの問題を考えるならば、やはり今後の、たとえば公共事業の前倒し、あるいはもし年度途中で経済成長がはかばかしくないということであれば補正予算を組む、そしてまた、いま要請されておる所得減税等にも取り組むという、そういうもう少し自由な経済運営のあり方というものを追求してもらわないとだめなんではないかと思うのであります。大蔵大臣、いかがですか。
  91. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 赤字国債と建設国債は性格が違う、それは御指摘のとおりだと、私もそう思います。しかしながら、国債であるという点においては同じなわけでありまして、どちらも同じ利息がかかるということも事実でございます。したがって、建設国債だからどんどんふやしてもいいのだといっても、やはりそれは利息をつけて返済しなければならない債務である点については同じでございます。したがって、われわれといたしましては、当面建設国債は横ばいという方針をとっておるわけであります。  しかしながら、一方、景気との絡みについては、その中でも特に住宅政策を初めきめ細かいことをいろいろやっておるわけでございますし、そのほか政府内部においても、公共事業の大幅前倒しという点については、目下いろいろと検討をしておるところでございます。したがって、そんなに一遍にふやしたからといって事業ができるわけのものではございませんので、やはりかなりのものが四−九、十とできるということになれば、それによって景気浮揚に役立つことは間違いない。  その後それでは前倒しをした後が足りなくなるじゃないかというような御議論でございますけれども、これは河本長官も言っているように、世界経済はことしの後半から立ち直るというのが大体一致した見方でございます。これは、日本経済世界経済と離れて単独で一人歩きできるという筋合いのものでもありません。これはつながっておるわけでございます。しかし、そういうような世界経済の明るい見通しというものがあれば、その間つないでいかなければならぬということも事実でございます。しかしながら、日本だけが世界経済と全く無関係にいつまでも繁栄するのだということは、これはあり得ないことでございます。したがって、われわれは、世界経済との連動というものも考えて、機動的に政策運営はやって、所期の目的を達するように努力をしていきたいと考えております。
  92. 米沢隆

    米沢委員 世界経済が年度後半は明るい見通しであるということでありますけれども、そういうかっこうにならなかった場合、では世界経済が大変なんだから日本経済も大変で結構ですということにはならないと思うのですね。世界経済日本経済が密接不可分な状況にあることはよくわかりますけれども、かといって、世界経済が一向にはかばかしくないからといって、イコール日本経済もはかばかしくなくてもおれたちの責任ではないという議論をされては困る。  そういう意味で、少なくとも、建設国債等というものは赤字国債と中身は同じであったとしても、政策選択の幅を広げるという意味で、建設国債等の発行についてはもっと自由な発想で取り組んで、少なくとも年度後半に日本経済がおかしくなる段階においては、補正予算を組んででも五・二%の経済成長を達成する、そういう意気込みを私は語ってもらいたいと思うのです。大蔵大臣、いかがですか。
  93. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いままでも、世界経済が悪いのに日本経済は比較的に言えばきわめていい状態にきていることは御承知のとおりです。しかしながら、世界で一番財政事情の悪い国は先進国の中では日本だ。これも御承知のとおりでございます。財政事情はどんなに悪くなってもいいのだということもこれは言えないのでございまして、仮に建設国債大量発行ということになれば、一体だれが引き受けるのだ。買ってくれる人はだれなんだ。それが買わないということになれば、結局国債は暴落ということになるわけですから、そうすれば、結局金利でもうんと上げるほかないということになるわけであって、金利をうんと上げるということになれば、建設事業をするために金利を上げると、金利というのは連動していますから、それは全体の金利の値上げにつながっていく。金利を大幅にここで値上げをして、そして景気刺激策になるとも私は考えておらない。したがって、それらの点はやはり断定的に言えない。全体との横並びの形で、どういうふうなメリット、デメリットがあるかということを慎重に見きわめながらやっていかなければならない。  そこで、私といたしましては、やはり前半において重点を置いて、後半の問題については、全体の経済上の情勢を勘案した上で、必要があれば必要の措置をとるということが大切ではないかと思っております。
  94. 米沢隆

    米沢委員 そこで、もう一つ。こういうむずかしい経済情勢の中で日本経済構造を横断的に見ましたときに、先ほど経企庁長官もおっしゃいましたように、業種間の格差、それから企業の規模の格差、あるいは地域間格差等、さまざまな跛行性があらわれてそれが拡大する方向にある。このことは将来の健全な経済パフォーマンスの確保という観点からも重大な問題で、放置できない問題であると私たちは考えるわけであります。  そこで、まず経企庁長官にお伺いしたいのでありますが、このようなわが国経済の業種間の跛行性、企業規模間の跛行性、地域間の版行性の解消のために、今後どのような方針で経済運営のかじ取りをなされるおつもりか、このことをちょっと聞かせていただきたいと思います。
  95. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまのお話の、わが国経済各方面に厳しい跛行性が見られるという御指摘の背景は、やはり経済、景気の回復力が大変弱い、これがもうすべての原因でなかろうか、私はこう思っております。したがいまして、景気がある程度回復をして経済が活力を回復いたしますと、大抵の問題は解決できるのではなかろうか、このように判断をしております。  そこで、いま大蔵大臣からもお話がございましたが、住宅政策も新しい条件の一部を一月から繰り上げて実施をしております。これはある程度成績がいいようでございますし、それからまた、公共事業も技術的に繰り上げられる可能なところまで繰り上げて実施をしてみようということで、いま政府部内で調整をしておるところでございます。後々の問題がございますが、とにもかくにも、いまのような状態ではどうにもならぬ、何とかしなければならぬということで、いろいろ工夫をいたしておりますが、それ以外にも幾つか考えられる方法があるのではないかということで、政府部内で寄り寄り相談を始めておるところでございます。
  96. 米沢隆

    米沢委員 さて、いま日本経済構造に起こりつつありますさまざまな跛行性の中で最も大きな問題は、やはり業種間の跛行性、すなわち欧米諸国通商摩擦を生じるほど好調な加工組み立て産業に比べまして、深刻な構造不況に陥り産業そのものの存在さえ脅かされております素材産業の問題であります。  御承知のとおり、現在わが国のアルミ製錬、石油化学、石油、紙パルプ、塩化ビニール、カーバイド、苛性ソーダ等の素材産業は、世界的に最もすぐれた技術を持ちながら、石油高騰に伴う原燃料のコストの増大と電力料金の高騰並びに需要の停滞等、深刻な構造不況に陥っておりまして、産業そのものの存立さえ脅かされていると言っても過言ではありません。国際競争力におきましても、生産コストの国際比価が決定的に高くなったことによりまして輸出が著しく減少しただけではなくて、逆に輸入が激増して、数量、価格の両面から国内市場を圧迫するなど、その危機を一層深めておるわけであります。素材産業の安定というものは、わが国の加工産業の一層の発展というものにもかかわっておるわけでありますし、さらにこれらの産業の持つ技術開発力というものは、日本経済の総合的な技術力になって輸入品に対する価格交渉力を維持し、安定供給を確保するためにも大きな役割りを果たすものとわれわれは考えます。したがって、かかる素材産業の健全な回復を図ることは、バランスある日本経済の構築と経済安全保障確保する観点から緊急不可欠の課題と言わねばなりません。万が一現状を放置するようなことがあれば、雇用、生産額、設備投資等、これら素材産業が日本経済に占める重要性にかんがみ、その経済的なあるいは社会的な悪影響ははかり知れないものがある。そういう観点から、この不況産業対策というものに強力なてこ入れをしていただくということを要請しつつ質問をさせていただきたいと思うのであります。  この問題につきましてはすでに通産省等も御検討いただき、それぞれ個別対策的なものは実施されておりますけれども、しかし未曽有の不況にありますこの素材産業をてこ入れするには、従来型の行政指導ではむずかしい。また業界の自主的な努力も、いろいろと業界自身の問題を言いたいことはありますけれども、業界の自主的努力もすでに限界に来ているというのが実態でありまして、これら産業の立ち直りのためには、その対策を推進する総合的な受け皿を早急につくる必要があります。これがまた業界の強い要望でもあるわけです。  そこで、通産大臣にお尋ねをしますけれども、今国会におきまして現行の特定不況産業安定臨時措置法を抜本的に改正してこれを早く受けてもらいたい、本法の切れる五十八年六月三十日を待ってその後代案をつくるというのでは遅きに失するということで早期改正を要請してきたわけでありますけれども、さきの同僚の大内質問に対する答弁でも、実は迷っているとの答弁でありましたけれども、結論はついたのでありましょうか。
  97. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 特定不況産業安定臨時措置法につきましては、各素材産業の対策が出そろった段階でこれらの対策につきまして法律上の措置の必要性を具体的に検討し、新しい事態に対応した基礎産業全般の対策のために必要なものにすることが適切であると基本的に考えておるわけでありますが、いまお話しの早期改正につきましては、こうした各素材産業の対策が出そろうタイミングの問題もございます。いま産業構造審議会にかけて答申をいただきつつあるわけでございますが、そうしたタイミングもあり、また改正する以上は新しい事態に対応した基礎産業全般の対策のためのものにする必要もあるためになかなかこれは困難な問題もある、こういうふうに考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、御指摘がございましたように、この基礎素材産業につきましては原材料あるいはまたエネルギーコストの低減、さらに供給規模の適正化等の構造改善対策が必要であるわけですが、こうした対策を通じまして各素材産業の基盤の強化が図られるべきであるというふうに考えております。  来年この特安法の期限が切れるわけでございまして、いま実は紙パルプ等の個々の産業につきましても来年まで待ち切れない、そこで個別に対策を進める上においても早期改正を図るべきである、こういう強い要請もあるわけでございますが、来年切れるわけで、来年につきましては、私たちとしては先ほど申し上げましたように何とか法的な措置が必要じゃないかと考えておりますけれども、いまここですぐそれじゃ早期改正をするかどうかということになりますと、先ほど申し上げましたような全体の問題もありますので、いまのところ結論を出していない、こういうことでございます。
  98. 米沢隆

    米沢委員 今国会で特安法の抜本改正ができない理由は、いま通産大臣がおっしゃいましたように、いろいろな業界が不況に悩んでおるから、そのあらゆる業界の不況対策が出そろうのを待つ、あるいはまた、従来の特安以上に発想の転換をしてかなり手広くその総合対策をつくろう、そのために結果的には、今度の国会で小さな改正ではなくて、期限切れの段階で新法として出すというふうに私は受け取るのでありますけれども、実際は確かに総合立法をつくっていただくことも結構でありますが、そこまでいかない間に一刻を争う素材産業がたくさんあるというこの事実をどういうふうに受けとめていくのかという問題が大事ではないかと思います。新法を六月三十日までにつくるということでありましても、その間、日に日に事態は一刻一刻深刻になっておるわけでありまして、そういう意味では、中長期的な対策についてはその新法の中で包含してもらって結構だと思いますけれども、短期的に即応的に、財政が要らない段階での不況対策みたいなものは、法的な準備が必要であるとするならば、やはり今国会でその分だけでも早く出してもらうということが筋ではないかと思うのです。いかがでしょうか。
  99. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはいろいろと考え方があると思います。確かにいま基礎素材産業というものは全体的に情勢が非常に悪化しておるわけでございますから、これに対する対策は急がなければならない、そういうことで個別的にはいま事態に応じて対策を講じつつあるわけで、たとえばアルミ等につきましては関税措置であるとか、あるいはまた電力の低減措置であるとか、そういった対策を講じておりますし、あるいはまた設備の縮小といった問題につきましてもいま進められておるわけでございますし、その他紙パルプであるとかあるいは石油化学等につきましてもそれぞれ具体的な検討をいま進め、そしてこれを実施しなければならない状況にきておるわけでございますが、しかしこの基礎素材産業全体は、やはり日本経済の基幹とも言うべき産業でございますから、もっと中長期的に見た総合的な根本的な対策ということもやはりここで考える必要があるのじゃないか。それには産業構造審議会等の議論をひとつ尽くしてもらって、そして根本的な改革を図るための一つの方策の答申を得て、そして決意を持って実行しなければならない、こういうふうに思うわけでございます。
  100. 米沢隆

    米沢委員 大臣の御答弁を聞いておりますと、結局今国会で特安法の改正はできない、すべて新法制定まで待つという結論のようですけれども、そういうことでいいのですね。  そうなった場合、たとえば新法ができるまでに刻一刻とかなり深刻な状況になっておるその問題に対して、どう対応するかという問題がまた浮かび上がってくると思うのです。  そこでまずお聞かせいただきえいのは、現在、不況対策として行政が介入して、あるいは行政の指導がなされていろいろと手段が講じられておる業界はどういうものがありますか。そしてそれに対して、新法につなぐまで政府がとろうとしておるその業界ごとの対策をここで明らかにしていただきたいと思います。
  101. 杉山和男

    ○杉山(和)政府委員 お答え申し上げます。  諸産業の現在の苦況は、先ほど来先生のお話にありましたとおり、大体原因が四つぐらいあるというふうに考えております。第一が、経済企画庁長官が申し上げましたような、内需の停滞、これが非常に痛く響いている。第二がエネルギーコストの上昇。第三が、このエネルギーから派生する問題でございますが、国際競争力の低下による輸出の減少、輸入の増大。第四が、それぞれの業界にあります過当競争体質であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  中長期の問題と短期の問題と両方あるわけでございます。私ども、その切迫しました状況に応じまして、各業種の実態に応じて当面の対策を講ずるとともに、先ほど大臣が申し上げましたように、産構審等の審議を通じまして国民的なコンセンサスを得まして、各業種の中長期的な対策というものを検討しておるところでございます。  そのうち、御質問の当面の対策といたしましては、まず塩ビ、中低圧ポリエチレン等につきまして不況カルテルの活用をやっておる。そのほか、紙など需給調整協議会をつくりまして、当面の短期的な需給調整措置を実施しているところでございます。  また、電力の多消費産業につきましては、需給調整契約の見直しというふうなことを通じまして電力コストの低減に努めておるところでございます。  また、先ほど大臣も申しましたように、アルミ製錬業につきましては、産構審の答申というものに基づきまして電力コストの低減、あるいは関税の免除措置というものを実施していくということにしておるわけでございます。  そういうことで、中長期的な話といたしましては、法律体系をどうするか、あるいは税制、金融上の措置を含め現在の特定不況基金の活用をどうするか、それから独禁法との関係をどう考えるか等、かなり慎重に検討を要する問題がございます。鋭意検討しておるところでございますが、当面、考えられる対策につきましては次々に速やかに実施していくということで考えておるところでございます。
  102. 米沢隆

    米沢委員 たとえば紙パルプ業界ですね。御承知のとおり業界は、生き残っていくために何とか設備廃棄をお互いにやっていこうではないか、そういう結論を得て、たとえば上質紙、コート紙、クラフト紙の主力三品種を対象にして過剰設備の処理を進める方針を決定をされて、その準備に取りかかっておる。できれば今国会で特安法の改正をして、それを受けてもらいたいという要望があったにもかかわらず、そういうかっこうで新法待ちになって、紙パ業界というのは、こう言ったら怒られますけれども、そんなに結合力の強いところではありませんから、やっと過剰設備を廃棄しようという気持ちになったにもかかわらず、これでまたひょっとしたら御破算になっていくかもしれないという危惧の念もあるわけであります。  それで、いまおっしゃいましたように紙パについては需給協議会というものをつくって、今後何とか需給調整をやっていくというような方向にいま聞かしてもらいましたけれども、果たしてそういうようなかっこうで本当に設備投資の凍結、あるいは自主的に廃棄しようというものが確保できるのかどうか、大変私は疑問に思うわけでございます。御承知のとおり、この紙パ業界は従来まで、需要増がないにもかかわらずシェア競争などから設備投資意欲は大変旺盛なところでありますし、常に過剰な設備能力、自己資本率の低下、あるいは財務体質の弱体化等を招いて、企業経営をますます苦しくしているという状況にあったところでありますから、需給協議会あたりをやっただけで、そういう設備の凍結、あるいは設備を廃棄しようという気持ちを固めながら新法にまでつなぐことができるかどうかという非常にむずかしい問題があるのですが、いかがお考えですか。
  103. 志賀学

    ○志賀政府委員 お答え申し上げます。  現在の紙パルプ業界は非常に困難な状況に陥っておるわけでございますけれども、その要因といたしましては、短期的な要因とそれから構造的な要因と二つがあろうかと思っております。  短期的な要因といたしまして、五十五年の半ばぐらいから国内経済の一般的な停滞と軌を一にいたしまして内需が停滞した、それによって主要三品種、すなわち上級紙、コーテッド紙、両更クラフト紙、この三品種につきまして特に需給状況が悪くなったということがございました。これに対しましては、御案内のように不況カルテルを実施したわけでございます。その結果、最近に至りまして在庫調整がほぼ完了したということで不況カルテルも終了したわけでございますけれども、その後、先生からお話がございましたようにこの業界は非常に競争体質でございます。適正な需給状況、需給の均衡をいかにしていくかということは大変重要でございまして、そういう観点から紙需給協議会というものを設けまして、的確な需給見通しを立て、業界にガイドラインとして提示することによりまして、業界におきます自主的な需給均衡のための努力に対して側面から支援をしてまいろう、こういうことで私ども努力をしておるところでございます。  ただ同時に、あわせまして構造的な要因として、第一次オイルショック以降内需の伸びがその前に比べまして非常に屈折をした、落ちたわけでございますが、その結果、過剰設備の問題というのが非常に顕在化したという状況が構造的な要因としてあるわけでございますけれども、そういう問題に対しましては昨年の九月、すでに私どもの産業構造審議会紙・パルプ部会に諮りまして、二年間設備の新増設を自粛するという申し合わせ決定をいたしまして、それに基づいて業界を指導しているところでございます。確かに先生からお話がございましたように、紙パルプ業界において現在過剰設備処理についてそのおおよその方向が出ているわけでございまして、具体的な問題についてなお業界の方におきまして検討しているところでございます。業界側はできるだけ早く法律を直してほしいという要望があるということは私どもといたしましては承知しておりますけれども、その点につきましては、先ほど大臣から申し上げたような状況にございます。  ただ、いずれにいたしましても、需給協議会の設置によるガイドラインの提示及び設備投資の二年間の自粛というような指導を通じまして、当面の対応は私どもとしてはとっているというふうに存じております。
  104. 米沢隆

    米沢委員 次はアルミ製錬の問題でありますが、御承知のとおりことしの特に緊急な問題として提起しなければならぬのはこのアルミではないかと思いますね。業界六社の売上高が年間四千億、借入金が一兆円、利子が一千億、債務超過額は一千億、業界の操業率四〇%、本来ならばみんなぶっつぶれておるような会社になってしまっておるわけです。ことにことしは産構審の方針によりまして、現在の設備を五〇%方廃棄をして七十万トン体制にする必要に迫られておるわけでありますが、もう一社、二社が一緒になるくらいでは生き延びていけないという状況に来ておるのではないかと思うのですね。そういう業界に対して、特安法の改正をして受け皿もつくらないということであれば、本当に新法ができるまでこれは生き延びることができるのですか。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕
  105. 真野温

    ○真野政府委員 先生御指摘のとおり、いま日本のアルミ産業というのが非常な苦況に悩んでおる点は、いろいろ御指摘の数字のような点にあらわれていると思います。  ただ、このアルミ産業につきましては前回も設備処理をいたしてお力まして、これは現在特安法の指定業種になっておりますので、それに基づきまして、実は前回六十万トンの設備の廃棄をいたしたわけでございます。さらに七十万トン体制ということで、今後四十万トン前後の設備の廃棄をいたすわけでございますが、これにつきましては現在の特安法に基づく計画によりまして、七十万トンという目標を持って早急にそういう設備の処理をいたすということが可能になろうかと考えております。
  106. 米沢隆

    米沢委員 しかしながら、このアルミ業界が抱えている問題は、いまおっしゃったような対策で果たしてうまく乗り切れるかというと、ちょっと無理ですね。やはり企業の合併とかあるいは大合同とか、そういう形でないともう乗り切れない状況じゃないのですか。そういうものは少なくとも現在の設備廃棄を計画的にやりましょうということでは対処できない問題に発展しつつあるという認識を通産省に持ってもらいたいと思うのでござ  います。  それから塩ビの問題でありますけれども、先般、塩ビ業界が構造改善策として検討中のグループ化による共同販売計画につきまして、公取委員会が、一グループだけなら認めるが、四グループ化による市場分割は競争制限につながるので独禁政策上認めがたいという見解を示したそうでありますが、その理由を教えてもらいたい。同時に、塩ビ業界がたとえば構造改善事業として共同販売計画を実施しようとした場合に、どういうところを手直しすれば公取委員会はオーケーを出してくれるのか、そのことを明らかにしてもらいたい。
  107. 橋口收

    ○橋口政府委員 塩ビ業界につきましては、先ほど通産省からお答えもございましたように、現在不況カルテルを実施中でございますが、これは二月いっぱいで結了する見通しでございます。塩ビ業界の構造改善問題に関連しまして、いわゆる共販体制をしきたいという御希望があるやに伺っておりますし、また産構審の答申の中にもそういう趣旨があらわれておるわけでございまして、私心もといたしましても検討いたしておるところでございます。  申すまでもございませんが、共販会社は販売活動を全面的に共同化するという趣旨のものでございますから、販売面につきましては合併ないし営業譲り受けと同じような効果を持つものでございます。したがって、その規模あるいは市場占拠率、共販会社の運用いかんによりましては競争制限的な効果が発生する場合もあるわけでございまして、国民経済的に弊害のある場合も予想されるわけでございますから、共販会社の設立につきましては従来からの方針に基づきましてケース・バイ・ケースで審査をいたしておるところでございます。たとえば、化合繊につきましても比較的最近に共販会社を認めたケースがございます。  当面の塩ビの問題につきましては、ABCDと四つのグループがあるやに承知をいたしておりますが、そのうちのDグループである日本ゼオン株式会社ほか三社のグループ化につきまして、共販会社の設立について独禁法上の問題点につきまして事前相談があったわけでございますが、本件につきましては先ほど来申し上げておりますような塩ビ業界の過剰設備の問題、あるいは全般的な国際競争力の低下、国際市場における日本企業の敗退の傾向、また国内に対する輸入量の増加の傾向等から見まして、またメーカーの数も十七社と多い等の事情も考慮いたしますと、Dグループの共販会社の設立につきましては、直ちに競争制限的な問題は生じないということで、問題がない旨を回答いたしたわけでございます。  そこで次の問題でございますが、四グループの集約化の問題につきましては、仮に業界全体、十七社を生産体制を温存したまま四つの共販グループに市場分割をするということになりますと、これは独禁法上の問題が生ずるわけでございますから、ケース・バイ・ケースなりステップ・バイ・ステップと申しますか、漸進的にこの問題に対しては対処するべきではないかということを通産御当局にも申し上げておるところでございまして、今後、事態の推移に応じて適切に処理をいたしてまいりたいと考えております。
  108. 米沢隆

    米沢委員 塩ビにかかわらず特に石油化学関係は御承知のとおりコンビナートを組んでおります関係で、たとえば設備を廃棄するといいましても、そこの部分を何割か廃棄したならば、その他の連産品との関係でどうもうまくすっきりと何%カットとかということにならない、全部つぶせということにもならない、そういうきわめてむずかしい状況が他の産業と比べてあるということをぜひ公取の方にも御理解をいただきたいと思うのです。そのあたりは、賢明な委員長でありますからもうすでにわかっていらっしゃると思いますけれども、たとえば肥料会社をつぶすときでも、御承知のとおり最新鋭の設備をつぶさないと設備廃棄にならないというような具体的な例もございました。  そういう意味で、設備廃棄によってこの不況を乗り切ることも考えられるけれども、その設備廃棄そのものはコンビナートの関係で非常にむずかしい。したがって、その代案として、原料購入であるとか製品の販売、生産品種の調整あるいは新規設備投資の調整とかというものを共同行為でやらねばならないという宿命みたいなものをこの化学工業等は持っておる、その点について公取委員長はどういう御認識なんでしょうか。
  109. 橋口收

    ○橋口政府委員 ナフサの分解過程における得率の関係等から、需要の強い生産が少なくなって需要の少ない製品のみができる、こういう関係にあるという程度の知識は持っておるわけでございますが、それ以上詳細な知識はむしろ先生から教えていただきたいと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほどもちょっと塩ビについて申し上げましたように、十七社の生産体制なりいまの設備能力をそのままにしておいて販売面の調整だけを行う、販売面の調整を行うことによってどの程度合理化が生まれるか、あるいはたとえば交錯輸送等の解消という問題もあろうかと思います。  いずれにしましても、共販体制をとることによりまして実質的にどのくらい合理化が行われ、また将来の生産集中体制の問題に対してどういうふうにつながっていくかという長期の展望が必要になるわけでございます。また、先ほど来御議論がございますような特安法の新版の問題に関連いたしましても、現在の特安法のように設備の共同廃棄だけの内容では八〇年代の新特安法としては私は内容が乏しいのではないかという感じを持っているわけでございまして、そういう全体の考え方の中で共販問題につきましても適正な判断をしたいと思っているわけでございます。
  110. 米沢隆

    米沢委員 過日、日本経済新聞に報道されたところによりますと、通産省は現在の特安法の代替として特定産業再活性化臨時措置法をつくる方針を決められて、その内容を検討中であるというふうに伝えられております。その記事によりますと、国産ナフサへの石油税の軽減、電気料金への政策料金制度導入などエネルギー原料価格の負担軽減問題を盛り込む、それから設備廃棄、共同販売など共同行為の独禁法除外の問題を盛り挟む、それから特定不況産業信用基金の拡充強化など財政金融上の優遇策を講じる、基本的にはこの三つの方針が入れられるというふうに報道がなされておるわけです。  これを見ますと、きわめて意欲的な内容であることをわれわれは痛感をするのでありますが、個個の問題については後で触れさせてもらいますが、エネルギー優先の政策体系を是正するとか、現行の特安法は設備廃棄のカルテルだけが独禁法の除外例でありますが、その他のいろいろな共同行為についても独禁法の適用除外を考えていこう、いま公取委員長がその含みのある、理解のある話をちょっとされましたけれども、そういうものも考えていこう、あるいは信用基金を拡充して債務保証の対象を技術開発投資や開発輸入などにも拡充する。きわめて意欲的な内容で、もしこれができたら相当の効果があると私は考えるのでありますけれども、まず最初に、この事実関係、本当にこういうものを検討されておるのかどうか、そのあたりからちょっと聞かしてもらいたいと思うのです。
  111. 杉山和男

    ○杉山(和)政府委員 御質問の特定産業再活性化臨時措置法というものが新聞に報道されておりますが、その内容につきましては私どもそういう点すべて検討を進めております。省内で勉強会をしたり、あるいは産構審の場におきまして勉強しておるわけでございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、究極的な観点から各業種を総合するような対策というのは何であるか、またその中で法律事項となり得るものは何であるかということを考えますと、この記事は考えられることをみんな書いておるという感じでございまして、必ずしもこういう法律でもって位置づけなければならないと思われない事項も書いてあるわけでございまして、私どもまだ、その法律の名前はもとよりのこと、その内容にいたしましても鋭意検討しておるということでございます。
  112. 米沢隆

    米沢委員 やれることはみんな、やらねばならぬようなことはみんな書いてあるということでありますが、またそれをいま精査されておる最中であるというふうにいま御答弁をいただきましたが、この内容を見てみますと、確かに取捨選択をされる部分があるかもしれませんが、内容を見る限り現在の特安法以上にかなり意欲的な問題が盛り込まれて、かなり手広く不況産業対策に対応しようという意欲は私はよくわかるのでございます。ただ、心配いたしますのは、こういう総合立法みたいな形になりますと、それこそ従来の特安法でも公取の関係、いろいろもめましたけれども、公取だとか、あるいは外務省あたりからも、こんなのをつくってまた日本株式会社を発展させるのかという外からの横やりが入ったり、いろいろなところから、この新法の意欲はわかっても、内容も歓迎すべきものではあったとしても、外からまたいろいろな問題が提起をされて、総合立法みたいなことを考えておると、次の六月三十日で期限が切れる、一体それに間に合うだろうかという心配を実際はするわけでございます。  皆さんも御承知のとおりでありますけれども、昭和三十年代の末期に特振法というのが問題になりました。特定産業振興法というものですね。どうもこれのモデルチェンジみたいなものがその新しく発想されておる新法のような気がするのでありますが、これは御承知のとおり、余りにも官僚統制が強いということで、あるいはその他のいろんなところからの横やりが入りまして、三度国会に提案したにもかかわらず流産してしまったというそういう経緯がありますね。私はこれをちょっと心配するのでございます。確かに経済状態が変化をし、物の発想も少しずつ変わってきた。素材産業の不況はまさに深刻そのものであるというそういう背景のもとにこういう立法をつくっていただくことは結構でありますが、余りにも盛りだくさんに入れ込みますと、結果的には逆にいろいろな方面からの横やりが多くなって、来年じゅうにはできないんじゃないかという心配をするのですが、その点は本当に大丈夫なんでしょうね。
  113. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま基礎素材産業の立て直しにつきましては、基本的にはやはり大前提として内需を振興して、特に住宅建設等を予定どおり進める、こういうことが基本的に必要なことである。日本経済をよくしなければならぬわけでございますが、しかし、現在の情勢の中で構造的な問題を含んでおるわけですから、短期的には、先ほどから事務当局から申し上げましたように、個別対策としていろいろな措置を講じていくわけですが、中長期的に見れば、やはり法的な対応が必要ではないだろうか、こういうふうに私は考えておるわけでございます。しかし、その法的な対応をする場合においても、いま御指摘がありましたように、独禁法との関係であるとか、あるいは税制、あるいはまた金融といった面で調整もまた重要な課題としてあることは事実でございまして、なかなか困難な問題は抱えておるわけでございますが、何といっても基礎素材産業というものが日本経済を支える大きなウエートを持っておるわけでございますし、これはやはり中長期的に安定した方向にその路線を進めていくということがどうしても必要ではないだろうか。それにはやはり何らかの法的な対応というものはここで考えなければならぬ、そういうふうに思います。  しかし、いま現在産構審でこれらの問題をあわせていろいろと御議論していただいておりまして、その産構審の御答申をいただいて早期にひとつ結論を出して、少なくとも、いまの特安法が期限切れになる、間に合わないというお話でありますが、期限切れになる前にその結論は出さなければならぬと、こういうふうに思っておるわけです。
  114. 米沢隆

    米沢委員 不況産業の対策は、その短期的な即効性のある対策と、基本的な体質を考える中長期対策があると思うのですが、やはり新法でこの両方とも盛り込むということは、先ほどから何回も言っておりますように、また外圧を非常に強くする一面もありまして、下手をすると、新法そのものがずるずる流産でもしていきますとますます不況産業は救えない、耐えられない、こういうことでありますから、特にその点は留意を置いて今後立法措置等についての準備をしてもらいたいということであります。  再三申し上げますけれども、中長期的な対策についてはやはり腰を据えてやらねばならない。ひょっとしたら来年の六月に間に合わないという事態があったとしてもまだ救われますけれども、短期的なものについてはやはり今国会で間に合うものは間に合わす。金が要らないものはさっさっとやるという、そういう意味で特安法の改正を一部でもこの国会に提案をされて、やはり不況産業というものの救済のために時間がなかったなんということがないように努力をしてもらいたいということを再度要請をさしていただきたいと思うのでございます。  公正取引委員長、もう結構です。ありがとうございました。  それから、不況産業にかかわる雇用の問題であります。  こういうかっこうで今後は設備処理というものが急激なスピードで行われていくであろうということが予想されます。そういう意味ではそこで働いている人々は雇用不安になっていることはもう事実でありまして、現に石油業界の再編成に伴う合理化提案等が再々会社の方から行われておることはもう御承知のとおりであります。もとより企業の労働条件の問題でありますから、その企業の労使問題と言ってもいいと思いますけれども、しかし、こういうかっこうで大量に離職を余儀なくされる、大量に転職が余儀なくされるということが必至な情勢を前にしまして、やはり政府としても失業の予防、雇用の安定からもっとまじめに、積極的にこの対案を考えてもらいたい。特に労働省はそれにどう対応するかというのは大きな問題だと私は指摘をしなければなりません。  そこで、まず労働大臣に聞きたいのでありますが、現在の素材産業の雇用状況を一体どう見ておられますか。
  115. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 お答えいたします。  お尋ねの素材産業については、いまお話がありましたとおりに、石油ショックを背景として、それでエネルギーの価格が非常に高くなった。あわせて国内需要の低迷ですね。さらには、資源輸出国の貿易政策等によって非常に厳しい情勢になっておることはわかっております。特にいま話がありましたアルミ製錬、紙パルプ等の業種においては、雇用面においてもいろいろとこの影響が出てきております。そこで一部には配置転換をしたり、あるいは出向等の雇用調整が実施されていることも承知いたしております。これら業種の雇用動向については十分注意を払ってきたところでありますが、今後とも重大な関心を持ってこれを眺めておる次第であります。できるだけの処置をいたしたいと思っております。
  116. 米沢隆

    米沢委員 素材産業政策の立案に当たりまして、これは雇用と密接不可分な関係にあることはいまおっしゃったとおりでありますが、従来までの労働行政を見ておりますと、ややもすると、往往にして結局受けるという形の対応しかないのですね、起こってからそれを受ける。しかし、いま新法の制定の具体的な検討がなされておるそのさなかにおいて、大量に離職者が出る、それを受けるという形ではなくて、そういうものを念頭に置かれた、新法に対して労働省としてもうちょっと積極的に介入できるぐらいの積極性があっていいと私は思うのですね。ところが、出てみなければわからぬというのがわれわれの感ずる労働行政でありまして、どうも後追い行政、事後対策、そういうものに終始する。この前の特安法のときにもその議論が大変大きく議論されましたけれども、あのときも何か人がつくっておるんだからという感じのものがあったですね。私はそういうものを改めてもらいたいと思うのですね、労働大臣
  117. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 労働行政は後追いをしておるようなお話がありましたが、私どもは、できるだけ積極的に先取り行政をやろうということで実はやっておるわけであります。したがって、新法問題等につきましても、通産省が申しておるような方向で私どもも強い発言を持って今後雇用の安定につながるように努力する考え方でございます。
  118. 米沢隆

    米沢委員 気持ちじゃなくて、具体的に何かやってもらわないと、人には見えないんですよ、そんなものは。特安法の制定のときも、僕は何か後追いという感覚を否めませんでしたね。最後になって、労働大臣と協議するとかしないとかそういう問題があったでしょう。私は、できる限り今後の新法の制定に当たっても、もっと積極的に雇用の確保あるいは離職者対策等々含めて、マクロな意味で雇用対策をその新法の中に織り込んでいく、そういう積極姿勢を持っていただきたいことをお願いしたいと思います。  次は、石油化学等の素材産業に共通する問題でありますが、原料ナフサの課税の問題をちょっと質問してみたいと思います。  先ほど来、新法の中に、こういう問題もすでに検討されておるというふうにいま確認をさしていただきましたけれども、現在わが国原料ナフサのみに課されております関税及び石油税につきましては、それは財源問題や他の品目とのバランスを配慮しなければなりませんが、国際的な原料非課税の原則に照らして、原則撤廃の方向をもうこのあたりで確認してもらいたい。これは大蔵大臣に聞きたいと思うのです。  同時に、厳しい国際競争にさらされて苦境にあります石油化学工業等の現状を考えましたときに、輸入ナフサにかかわる石油税の非課税措置の延長は当然といたしまして、さらに国産ナフサにかかわる分についても免除あるいは減免の措置をとるべきである。これも従来からしつこく要請がなされてきた問題であります。あるいはまた、原料用国産ナフサの石油税負担分の石油化学工業への還付制度を創設してもらいたい、こういう問題について、いま新法の検討のさなかでありましょうが、一体どういうふうにこれを受けとめておられるのか。でき得れば原料ナフサに対する課税は減免するのが当然であるという気持ちを持っておるのでありますけれども、当局の見解を聞かせてもらいたいと思うのです。
  119. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結論から申しますと、現在の段階で、石油税の課税軽減をするということは非常に困難であるということでございます。御承知のとおり、石油税の税収は石油対策石油代替エネルギー対策の財源に充てるために、目的税じゃありませんが、まあそういうような目的でつくったものであります。  国産ナフサについては、減免、還付をする場合には、その油種の利用者は受益だけを受けるというところに問題がございます。ことにそういうようなエネルギー対策はまた重要で、しかも今回の予算でもそういう特殊な財源を用いて、特別な別枠扱いをしてきておるわけでございますから、それぐらい政府としては重要な政策として掲げておるので、せっかくのなんでございますが、当面これを減免をするということはいたしかねるわけでございます。
  120. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  現在の石油化学が原料高の問題で非常に苦慮しているという実情については私どもも理解しておりますし、さらに、業界の方から石油税の減免問題についても要請がなされているということも事実でございます。ただ、先ほど来先生の御指摘にもございましたし、また大蔵大臣からるる答弁させていただきましたように、石油税そのものはエネルギー財源の貴重な財源ということになっておりまして、この問題については、相当慎重に検討せざるを得ない状況にございます。  特に、輸入ナフサについては、臨時的な措置として減免が行われておりまして、これとの関連という問題はございますけれども、私どもといたしましては、ナフサについては、できるだけ国産ナフサにつきましての得率の減少、その他も考えながら国際価格に近づける努力をするということで、石油化学業界との調整はとっていきたいというふうに考えております。こういうことで対処するということがまず基本であるということでございます。  いずれにいたしましても、石油化学工業対策につきましては、現在、産構審の化学工業部会において検討されておりますので、その石油化学工業対策全般の問題の一環として、ナフサの価格をできるだけ国際価格に近づける問題についても検討してまいりたい、かように考えております。
  121. 米沢隆

    米沢委員 先ほど、特安法にかわる新法の検討段階の中で、いま原料の非課税の問題、輸入ナフサの問題等々が検討の最中だと聞いておりますけれども、その点は今後大蔵省と詰めていかなければなりませんが、石油関連で大体三兆円ぐらいの税金を取られて、石油で三百億も取られる。その分がみんな石化業界に負担となって押しかかるという問題は、現在の石油化学工業等が直面しておる深刻な状況の中では、ある程度考えてもらわなければ困る問題だと私は思うのですね。通産大臣、もう一回その点について積極的な大蔵省との交渉をやるというような答弁をいただきたいのです。
  122. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国産ナフサにかかわるところの石油税につきましては、いま非常に悪化しております石化業界からは、何とかしてひとつ免税をしてほしいという非常に強い要望が出ておるわけでございますが、しかし、先ほど大蔵大臣答弁をいたしましたように、石油税という財源確保の問題もあるわけで、なかなかその辺にむずかしい問題もはらんでおります。また、石油税によってエネルギー対策を推進しているという面ももちろんあるわけでございます。  したがって、いまも長官が答弁いたしましたように、こうした問題も踏まえながら、いま産構審でいろいろと論議をされておるわけでございます。私たちとしても、この産構審の論議、審議を踏まえながら答申をいただいて、ひとつ積極的に対応していかなければならない。当面は、いま国産のナフサが、要するに国際競争にたえ得るような価格に持っていけるようにいろいろと通産省としても石油業界等とも相談をしながら、あるいは指導しながら、そういう方向に近づけるように努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  123. 米沢隆

    米沢委員 この原料非課税の問題と先ほどから話が出ております原料ナフサ輸入に関する問題、これは結論は産構審の石油化学工業部会で六月ぐらいに答申が出る。その答申の中でどういうかっこうで出てくるか知りませんけれども、これは業界にとっても相当大きな従来からの懸案事項でありますから、ぜひ通産大臣としても前向きに解決していただきますように要請をさせてもらいます。  そこで、この原料ナフサの輸入の問題でありますけれども、去る二月の上旬に石化大手会社がもうしびれを切らせまして、今月末までにナフサを自力調達するため、石油業法に基づく石油輸入業開始届け出をする、こういうことを確認して話題になりました。その後通産幹部と接触が持たれて、その際、業界のナフサ輸入自由化を中心に石油化学不況を打開するための抜本的な原料対策の改善要望に対しまして、通産省は三月末までに輸入ナフサ拡大策や割高となっております国産ナフサを輸入ナフサと同等の条件で買える新しい仕組みを作成すると約束なさったと報じられておるわけでありますが、この部分は六月の最終答申とは関係ないのか。と同時に、三月末までに果たして成案を得られるめどが実際あるのかどうか。それから、具体的にはどういう点をどういう仕組みでこういう要請に対応されようとしておるのか、その仕組みだけでも結構ですから、そのベースを話してもらいたい。  それから、その場合ナフサの使用比率、現在国産が五五、六%、輸入が四四、五%ですが、大体どれぐらいをめどにしてこの使用比率を改定していくのか、その点を御説明いただきたいと思います。
  124. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  石油化学業界から石油ナフサの輸入問題、それから先ほどお話の出ました石油税の減免問題、それから備蓄義務の撤廃の問題、この三つにつきまして要望があったことは事実でございます。  その要望に対しまして、私どもとしては、現在石油化学工業の今後のあり方について産構審の場で検討しているわけでございますので、その検討の場でそういう問題については十分おこたえできるように努力をいたそうというお話をしたわけでございます。  その段階で、ただ六月までといっても非常に長いので、できるだけやれるものは早くというお話もございまして、私どもとしてもやれるものからやろうということで、いま省内関係部局と調整を図り、いろいろ勉強をしている最中でございますが、現実に石油業界との話も進め、石油業界を指導しながら、現に先ほど先生からお話がございましたように輸入ナフサについては、すでに四四、五%というところまで輸入ナフサが入るというような状況になってきております。そういう中で今後もできるだけ国産ナフサについては得率を減少させるとか、国産ナフサについては他の用途その他の問題についての検討も進める、こういうことで国産ナフサの比率をできるだけ下げる努力は今後とも六月を待つということではなくてやっていこうということでございます。  さらに、ナフサの輸入の問題につきましても、現在石油業界と石化業界の間で具体的な話も進められておりますので、これについても石化業界の要望にできるだけこたえられるように、実質的に輸入が相当できるような配慮も今後進める。こういう問題は答申を待たずしてもできる問題でございますので、今後ともその調整をしながらやれるものからやっていくというのが現在の状況でございます。  将来、国産と輸入ナフサの比率がどうであったらいいか。これは非常にむずかしい問題でございますし、これは業界の努力、それから今後の研究成果によってまた違ってくるわけでございますが、ただ、いずれにいたしましても、石油の場合には石油の安定供給ということで、原油を分解しますといろいろの関連製品が出てくるわけでございますので、その関連製品との関係、たとえばナフサとかC重油は現在相当余ってナフサネックとかC重油ネックというような問題があるわけですので、そういう需要構造の変化に対応していくためには、石油業界自身もそれに対応できるような供給体制、供給設備、またそのための研究開発というようなことも進めていかなければいかぬわけでございます。そういう問題、石油業界の立場からどこまで協力し、どこまでそういう意味での体制整備ができるか。また、石化業界の実情を踏まえて両業界の調整をどうするか。それからさらに必要な場合には国としてどういう施策が講ぜられるか。こういう問題を総合的に検討して、最終結論は六月の石油化学工業部会の答申を待つ。ただ、具体的に行政措置としてできるもの、また業界の話し合いないしは協力の関係でできるものはできるものから進める、こういうことでいろいろの努力をしているわけでございます。
  125. 米沢隆

    米沢委員 一月に、日米石油化学摩擦について話し合うために日米石油化学スタディーグループの初会合があったという記事があります。その中で、アメリカがついてきた問題は、日本石油税の課税、備蓄コストの負担、石油業法と行政指導でナフサ輸入の自由化を認めていない、この三つの点を指摘をして、結局それは日本国内の政策不況ではないかというような反論をしたというふうに聞いておりますけれども、特に第三点、石油業法と行政指導でナフサ輸入の自由化を認めてない、これはガットのライセンスコードに違反するのではないかという疑念を表明したというふうに伝えられておりますが、その点について日本はどういうふうにお答えになったのか、その点が一つです。  それからもう一点は、備蓄の義務の問題です。これも世界に例のない問題でありますけれども、原料であるナフサにやはり備蓄義務を課しておりまして、この負担は化学工業全体では年間約二百億と言われております。そういう意味では、この備蓄にかかわる費用の分は当然のこととしてこれは生産費に大きな影響を与えるわけでありますから、少なくとも原料の備蓄義務というものは一回見直してもらえないだろうか。それは確かに企業そのものとして持っておかねばならぬ部分がありますが、その他の部分まで備蓄義務を課せられて、その部分の負担が相当量に上るということは、やはりこれまた原料非課税の問題と同じように重要な問題であると思いますが、その二点だけお答えいただきたいと思います。
  126. 真野温

    ○真野政府委員 まず第一点につきまして、私の方からお答えを申し上げます。  日米石化スタディーグループというのは、御指摘のようにこの一月の六日、七日、ワシントンで行われました。その際、御指摘のようなナフサ輸入のあり方について、ガットとの関連で意見が出されたのは事実でございます。ただ、私どもの基本的な考え方は、現在の日本、ヨーロッパを含めまして、ナフサを使用している石油化学に対しまして、天然ガスを原料とするアメリカ、カナダにおける人為的な価格統制、これが問題であると、それの格差を問題にしたわけでございまして、わが方のナフサ輸入の制度そのものによって何ほどの価格差があろうが、やはり基本的には天然ガスの価格統制による格差の方がはるかに大きいわけでありまして、現実は、われわれの方はそこをついて、向こうに指摘して、天然ガスの価格統制についての撤廃を要請したわけでございまして、その点について向こう側が答えるかわりに反論としていまのようなことを申してきたということであります。  ただ、御承知のようにこのスタディーグループは第一回でございまして、引き続き四月にも第二回をいたすことになろうかと思いますが、一般的に申し上げまして、ガットのもとでのエネルギーなり石油についてはやや特殊な扱いになっておるのは事実でございますし、また従来、石油をめぐる国際管理が非常に進展するのに伴いまして、各国の協調がサミット、IEA等で行われているわけでありまして、こういう意味でいままでそういう会合においてアメリカエネルギー当局から日本輸入管理システムについて言われたことはないというのもまた事実でございます。したがって、むしろわれわれの指摘はいまのナフサと天然ガスの価格統制による人為的な介入、これに対してわれわれの方のクレームと申しますか、向こうに対する批判をしておる点でありまして、引き続きそういうような観点から、向こう側に対して政策の変更なり改善を要請していくという立場でございます。
  127. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のナフサについての備蓄義務を免除したらどうかというお話でございますけれども、確かに石化業界にとってみて備蓄の負担があるということは事実でございますが、日本の場合には、先生承知のようにエネルギー構造がきわめて脆弱でございまして、こういう国にとりましては一定の備蓄を持つということが重要でございます。そういうことで、原油につきましては九十日の備蓄義務が現在課されておりますし、他の石油関連製品については、現在の備蓄日が若干軽減されて七十日になっておるというのが実情でございます。  確かに備蓄の問題というのは、石油その他を含めて供給者サイドから見ますとコストが負担であると同時に、需給面にいろいろ影響を与えるということで決して評判のいい制度ではございませんけれども、石油ないしは石油関連製品の安定供給、また国際的に原油事情が非常に変動する中にございまして、日本の場合には、どうしても備蓄量を一定量確保するということはエネルギー政策としても非常に大事な問題でございますので、この点について、特定製品だけについて軽減するというのは非常にむずかしいのじゃないかというふうに思っております。
  128. 米沢隆

    米沢委員 時間も参りましたが、先ほどの特安法にかわる新法については、相当抜本的な発想で改革に取り組まれておるというようなことをお聞きして、大変喜んでおるわけであります。しかし、個々の問題について答弁を聞かせてもらうと、結局寒々としたものしかありませんね。こういうものだったら、新法をつくると言われても、特安法の改正を早くやってもらった方がいいな。いろいろな検討がなされておることはよく聞いておりますけれども、個々の問題で答弁していただく中身は、全然期待にこたえてない答弁ばかりですね。そういう意味では、私は今度の問題はまさに政策不況だと言われても仕方がないと思う。そういう意味で私は新法に期待をかげながらも、どうもその新法に盛り込まれる個々の問題についてはいま御答弁のように何もないということでありますから、結局そんなのは時間かせぎにすぎない。その間に素材産業はどんどん倒産を繰り返す、こういうものであってはならないと私は思いますね。そのあたりをもう一回抜本的に発想の転換をしてもらいたい。もっと強く従来の個々の問題について踏み込んで解決する意欲を持ってもらいたいというのがいままでの質疑の私の感想でございます。  あと、電力コストの問題だとかあるいは輸入増の問題、設備廃棄の問題、それから石油業界の問題等々積み残しましたけれども、また後の時間をちょうだいして今後皆さん方にお尋ねをしていきたいと思います。  これで終わりたいと思います。
  129. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  午後三時より再開することとし、休憩いたします。     午後一時三分休憩      ————◇—————     午後三時二十九分開議
  130. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横路孝弘君。
  131. 横路孝弘

    ○横路委員 各大臣の時間の都合もあるようでございますから、初めに官房長官に、きょうの午前中も議論がございましたが、総合安全保障関係閣僚会議について若干御質問をいたしたいと思います。  総合安全保障ということでこの会議ができまして一年ちょっとたつわけですが、今日までどういうことをやってきたのかということを資料を取り寄せてみますと、どうも単なる情勢の報告だけをやってそれで終わりという印象でございますね。これは所期の目的を達成しているというようにお考えですか。
  132. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 総合安全保障関係閣僚会議を設けましたのは、けさほども申し上げましたが、各省庁が所掌の業務をやりますときに、国の安全保障という観点から所掌の業務を考えたときにどうなるかという観点から物を考える、そういう趣旨をもって設けたものでございます。もちろんそのもとの思想、基本になります思想は、国の安全というものはただ狭い意味での防衛力によって確保されるものではないという思想から出ておるわけでございますが、そういう思想に立って、各省庁の毎日の通常の業務を国の安全保障という観点から考えろ、こういうことで設けたものでございますので、そういう観点から申しますと、過去六回でございますか会議を開いて目的を達しておると考えておりますのは、つまりそういうふうな物の考え方、そういうふうな業務の仕方を各省庁でやっていけということをこの会議を通じて推進しつつある、そういう意味で、私は十分その役割りを果たしておるというふうに考えております。
  133. 横路孝弘

    ○横路委員 この会議に対する私の方の期待が大き過ぎたのかもしれませんが、経過を見ますと、いわば国の安全保障というのは、単に軍事的な問題としてではなくて、多角的な平和外交であるとかあるいは対外経済協力、あるいは食糧、エネルギーなどの総合的な政策の組み立てが必要である、一つはそういう意味でのお互いの情報交換と調整ということがこの会議の目的だったと思うわけです。  そういたしますと、たとえば予算編成に当たって五十七年度予算をどうするかという場合に、やはりわが国にとって一番基本となる、そういういわば政策調整というのはこの会議でやるというのがもともとの趣旨じゃないんでしょうか。そんな意味で言いますと、この予算の編成に当たってこの会議が開かれて、そういう意味で来年度予算はわが国のこういう政策のもとで予算の配分を考えてやろうというような議論をしたという形跡は全くないのでございますが、これはちょっと期待のし過ぎなんでしょうか。
  134. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、図式としてはそういうふうにお考えになられるのかもしれませんけれども、各省庁がそういう一つの観点、目的意識を持っておれば、おのずから各省庁の予算要求なり予算編成がそういうことを頭に置いて進んでいくはずなのであって、この会議でそれを組み立てて、そうしてそれを各省庁におろす、そういうふうなことには確かにいたしておりません。また、そういうふうなことは、なかなかこれだけ大きな政府の図式になりますと、簡単にはできないのではないか。ただ、今年度も予算編成の際に、総合安全保障関連の施策について、いつでございましたか、十月の半ばには協議しておりますけれども、それは幾つかの問題を取り上げたというわけでありまして、ここがそれを総合調整するというような役割りは必ずしも適当ではないのではないかと思います。
  135. 横路孝弘

    ○横路委員 日本外交にとって必要なのは、よその国から見た場合に日本政策の予測がある程度可能だということも、これは大変大事な要素なわけです。  そこで、私、直接この総合安全保障閣僚会議にかかわり合いを持つかどうかわからないんですが、一点お尋ねしたいと思うのは、たとえば昨年、日米間で自動車の問題がございましたね。ちょうど三月に私アメリカへ行っておったのですが、アメリカ人から、一体日本の窓口というのはどこで、だれが責任を持ってやっているのかさっぱりわからないという意見を何人かから聞かされたわけでございます。特に私がびっくりしたのは、通産省の方で、このわが国の基本的な方針がまだ決まっていない段階で、一体自動車の輸出規制というのはどのぐらいの台数で抑え込んだらアメリカは納得してもらえるのかというような、いわば御用聞き外交をやっておって、これが大変ひんしゅくを買っておったというようなことがあるわけです。今日、この日米間の経済摩擦の問題が起きておりまして、短期的並びに中長期的にやはり日本としてきちっと統一的に対応するということがいま大変問われているわけですね。  そこで、初めに官房長官に、そんな意味では総合安全保障と言わないまでも、やはり外交というのは一元化して行うということがこれ大事なことで、特に問題が複雑になればなるほど、やはり責任というものをはっきりさせてやっていかなければ各国に対して誤解を与えるのではないかというふうに思うのですが、この昨年のことを含めて、この辺のところをいかがお考えになっているのか。私は、安全保障関係閣僚会議というのは情報交換だけではなくて、ある程度政策の調整もやって、そういう意味でのわが国の対外的な政策を明確にする、戦略を明確にした上で明確にするということをここでやるのかなというように期待をしておりまして、それとの関連でお尋ねをするのですが、この点に関していかがお考えでしょうか。     〔委員長退席、越智(通)委員長代理着席〕
  136. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように、わが国の行政の仕組みで申しますと、行政における最終的な意思決定の機関は閣議でございます。そういう意味では、この安全保障会議はそれにかわるものではございませんで、意見の交換はいたしますけれども、総合調整の決定そのものは閣議で行われるということでございます。  それで、昨年の自動車問題についてただいま横路委員から御指摘がございましたが、そういう対外経済政策の第一次的な責任の窓口は外務省でございます。ただ、外務省ではございますけれども、この問題については一番関連の深い行政庁は通産省でございますから、御承知のようにしょっちゅうそういう各省庁の間で協議なり連絡が行われておりまして、私はそういう意味では、外国から見るとわかりにくいかもしれませんが、わが国の行政各部というものはかなり上手に連絡調整をして動いておるというふうに見ております。自動車の場合には、いっときちょっと権限問題で足並みのもう一つというところがございましたけれども、すぐにそれも改めましたので、まあうまくやっている方ではないかと思っております。
  137. 横路孝弘

    ○横路委員 それで、現在の貿易摩擦問題と言われるものに対する日本の対応についてちょっとお尋ねをしたいんですが、通産省の方でも何か通産省の顧問をどなたか派遣されたというようなことを聞いておりますが、これは外務省と通産省といいますか、どういうように対応されておられるのか。どこがこれ、あれですか。アメリカのいわば短期的な問題、中長期な問題、それからいろいろとお互いの誤解を解消するというようなすそ野の広い問題からいろいろあると思うのですけれども、これは通産、外務の方からそれぞれひとつお答えをいただきたいと思うのです。外務大臣、まず、いかがですか。これは外務省としてはどう対応するつもりなんでしょうか。
  138. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 通産省と緊密な連絡の上に、歩調を合わせて臨んでおる次第でございます。
  139. 横路孝弘

    ○横路委員 では、通産大臣から。
  140. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 外務省と大変密接な協力関係を結んでやっております。  それから、さっきお話がございました、通産省からアメリカへ派遣しているんじゃないか、天谷顧問を派遣しておりますが、これは別に交渉とかいうことじゃなくて、いまの貿易摩擦に関連をして、アメリカの学界とか財界、有識者との意見交換あるいは大学、商工会議所等の主催によるところのスピーチ、大変英語のうまい人でありますから、スピーチ等やってもらっておる、こういうことであります。
  141. 横路孝弘

    ○横路委員 アメリカの方の公聴会も始まるわけですね。これは官房長官、いずれにせよ、日本政府としてどういうぐあいに対応するかというのはやはり大変重要な問題でございますし、しかも、何か自動車というように突出している問題があって、それをめぐる問題ということでないだけに、なかなかこの対応はむずかしいというように思うのです。  そこで、どうも外務大臣もまだこの問題ぴんときておられないというところを見ると、そう内部で議論されているというようにも思いませんが、これは通産省が中心にやるべき問題ですか。二国間のあり方にかかわる問題ですから、これはやはりきちんとされた方がいいのじゃないかと思います。
  142. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が聞いておりますところでは、アメリカの議会における公聴会にどういうふうに対処すべきかということについては、ワシントンのわが国大使館、大河原大使のもとに各省庁から出ておりますけれども、そこでいろいろ検討しておるようでございます。
  143. 横路孝弘

    ○横路委員 通産大臣の方も何か時間がないというように聞いておりますのでこれ以上議論いたしませんが、いずれにしても、余り外務省、通産省でそれぞれてんでんばらばらに展開するということではなくて、この議会の公聴会というのも影響が大きいですから、対応を日本政府としてもしっかりやるということで、外務大臣、そういう基本的観点に立ってひとつ通産省としっかり調整されながらやっていただきたいというように思うわけです。通産大臣、結構です。  そこで、総合安全保障閣僚会議についてもうちょっとお尋ねしますが、私、前に総理大臣に安保の特別委員会で議論したときに、いわば総合安全保障政策の柱として軍縮の問題を考えていきたい、こういうお答えがあったわけです。いままでの総合安全保障関係閣僚会議は、主に国際情勢を中心とした意見の交換に終わっておりまして、そういう状況の中で日本としてどんな点を検討しなければいけないのかというような点の議論や整理もまだなされていないのじゃないでしょうか。  たとえば、よくエネルギーの問題に関しては中東情勢の報告がございますが、中東の国際情勢の報告あるいはIEAの様子というような程度でございまして、もう少し、エネルギーにしても、あるいは食糧問題であるとか軍縮、軍備規制というような問題についても、すぐそこから方針を出すということではなくて、もうちょっとどういう点の問題があるかというような洗い直しをしで、それをここら辺で少し各省庁に割り振りをして研究をさせるというようなことぐらいやらなければ、総合安全保障関係閣僚会議ということにはならないのじゃないでしまうか。
  144. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 過去数回この会議を開きました実績について私考えておりますことは、まず、この会議を開きますときに会議のテーマを決めるわけでございますが、そのテーマについて各閣僚が発言される段階で各省庁の間での意思統一、意見交換が行われております。これが一つの成果でございますが、そして、いざ会議が開かれまして、各閣僚が発言をされ、その間にいろいろ論議がございまして、出た問題をまたもう一遍各省庁が持って帰って検討をする。つまり行き道と帰り道といいますか、会議が開かれるまでの段階、開かれました結果を受け取った段階、両方で各省庁の間の意見の調整が行われている、そういうふうな仕組みとして役立っておると存じます。そして、何か決定が必要になりましたときは、閣議に持っていくということになっておるわけでございます。  もっとも、まだ数回会議を開いただけでございますので、横路委員の言われますように、いまのところ意見交換あるいは情勢分析という色彩が確かに強うございますが、もう少しこれをやっていきますと、ただいま申し上げましたような会議に至るまでの過程、それから会議後の過程におきまして各省庁の連絡調整、その結果の政策決定というものが生まれるような、そういう場として私は育っていくのじゃないかと考えております。
  145. 横路孝弘

    ○横路委員 まだこれからの課題だということなのですが、官房長官も時間があるようでございますから、ちょっと一、二点だけ、総理大臣の施政方針演説に関連してお尋ねをしておきたいと思うのです。  この施政方針演説の中で「安全保障と軍縮」という一項目を起こしていますね。その中におけるいわば軍縮と軍備管理という中に、従来日本の場合、どちらかというと核軍縮の問題を扱ってきておったわけでございますが、問題は核軍縮ばかりではなくて、通常兵器の分野についてもやはり軍縮の問題あるいは軍備規制の問題というのは考えられるわけです。したがって、総理が施政方針演説の中で言っているこの中には通常兵器も入っているのかどうか。  それからもう一つ、力の均衡が必要だ、しかし、その水準を低くする努力を続けなければならない、こうおっしゃっているわけでございます。これはわかるようでなかなかわからないわけなんですが、この水準をできるだけ低くする努力というのは、施政方針演説の中でどういうことを頭の中に置いて言われているのか。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 鈴木内閣にとりまして、軍縮というのは大きな、大切な課題でございます。ことに、わが国が核の唯一の被災国であるということからも、おのずから核軍縮についてわが国の説得力が強いわけでございますが、しかし、申しておりますことは、核軍縮ばかりではありません、通常兵器についても同様に軍縮の必要を唱えておるわけでございます。  それから、均衡の水準を高いところでなく低いところへ誘導していくべきだという意味は、いわゆるエスカレーションということはよろしくない、その逆のディエスカレーションでなければいけないという意味でございますが、具体的に、たとえばヨーロッパにおける仮に戦域核について両方が水準を下げていこう、あるいはゼロオプションから出発しようといったようなことは、物の考え方としてはなるべく低いところ低いところで均衡を下げていこうという、そういうようなことがたとえば一つの例だと思います。
  147. 横路孝弘

    ○横路委員 この総合安全保障閣僚会議に関連して、ちょっと国防会議のことについても議論をしたいと思います。  先日、総理大臣が、防衛出動の可否というのは防衛庁設置法で国防会議にかけるように決まっておるわけでございますが、その前段のいわば七十七条の待機についても諮りたい、これは歴代の総理大臣答弁は大体そういう意向を過去も表明してきたというように思います。  そこで最初に、ちょっと国防会議の方にもお尋ねしたいのですが、防衛出動の可否だけいきなりかけることになっていますね。しかし、これはいきなりかけられたって、可否に答えを出すといっても、これはなかなかむずかしい。やはり前段からのいろいろな流れというのが必要だと思います。ただ、要件が法律で決まっているものですから、問題はここの五号の、総理大臣が必要と認める重要事項というものの解釈をどのように行うかというところに関してくるわけですが、待機命令に関する総理大臣のこの間の答弁とあわせて、そこのところを国防会議としてどのようにお考えになっているか、お尋ねをしたいと思います。
  148. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 法律上は「防衛出動の可否」ということになっておりますけれども、いろいろ状況がございますので、これを一回こっきりというふうにも私どもは考えておりません。  そしてまた、そのほかの法律事項につきましても、たとえば「防衛計画の大綱」というのは国防会議で決定するということになっておりますけれども、大綱の決定につきましても、その前に何回か審議をしまして、そして大綱の決定ということになっているわけでございまして、そこに書いてございますのは、最終の締めくくりの諮問、それから国防会議の意思決定の答申、その事項が法律に書かれているというふうに考えておりますので、状況の変化に応じて必要な都度、国防会議が開かれるというふうに考えているわけでございます。
  149. 横路孝弘

    ○横路委員 官房長官、ちょっと突然の質問で恐縮なんですが、この国防会議に関連して。  いま日米のガイドラインの話が進められていますね。このガイドラインの中で、先日も議論したように、シビリアンコントロールという観点から見て、これを制服に全く自由にやらせるということにはいろいろな危険性を伴う。その場合、一つ防衛庁長官並びに内閣総理大臣ということになるわけですが、一つの機構として国防会議があるわけですね。その国防会議防衛出動の可否という大変重要なところを諮る機関になっているわけですが、ここを見て一つ欠けているのは、いわばオペレーションの部分ですね。オペレーションの部分をシビリアンがコントロールするシステムが全くないのですね。外国、特にアメリカなんかの場合はまさにそこのところをしっかりシビリアンがコントロールしているわけでございまして、これはなかなか運用でやるというわけにはいかないのでしょうが、ガイドラインの話がかなり細々としたものを含めて動いているだけに、私はそこのところが非常に気になるわけでございまして、やはりオペレーションについても何らかのチェックするシステムというものをつくっていかなければいけないという場合に、国防会議というものをどのように活用していくかという問題があるように私には思われるわけなんですが、突然の質問で恐縮なんですが、そこら辺のところをどのようにお考えですか。
  150. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど、防衛出動の可否につきましては防衛庁設置法六十二条で国防会議に付議をするということ、それから自衛隊法七十七条の関係でも、せんだって総理は国防会議に付議をしたい、こういうふうに申し上げたと思います。したがいまして、防衛出動そのもの、あるいは待機命令もそうでございますが、そのことについてまず国防会議の議に付せられる、これがオペレーションの基本になるものだと思います。  その次に、具体的なオペレーションについては、総理大臣の指揮を得て防衛庁長官がオペレーションを行うわけでございますから、そういう意味では文民統制がそこで通っておる、こういうふうに考えます。
  151. 横路孝弘

    ○横路委員 官房長官、結構でございます。  国防会議の方にちょっといまの点御答弁をいただきたいと思うのですが、防衛出動の可否ということだけいきなりかけられても、それは前段の相談というのがほかの事例から勘案してあるんだということでございますが、私が心配しているのはガイドラインの関係なんで、まず最初、日米のガイドラインについて国防会議は何らかの報告みたいなものを受けているのかどうかということと、あわせていまの点をお答えいただければと思います。
  152. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 最初の点の、ガイドラインについて国防会議審議しているかという点でございますが、これは御存じのように、五十年の七月に、坂田長官のときに二つの今後の方針というものをお考えになりました。一つは、防衛庁長官と国防長官との首脳会談を毎年やりたいということ、もう一つは、オペレーションについて日米の軍事当局者の間で詰めておきたいということをお考えになりました。そして、国防会議で五十年の七月にそれを報告し、御審議いただいております。その際に、首脳会談をやるということについて了承されると同時に、もう一つのガイドラインの研究については、現在日米安保協議委員会というものがあるのでその枠内でやりなさいということを言われまして、五十一年の七月八日に日米安保協議委員会を開きまして、研究を始めるということを相談いたしまして、その後、一週間後だったと思いますが、国防会議がございまして、その席で防衛庁長官から、こういう形で今後研究を進めてまいりますという報告を受けております。そして、これができました五十三年の七月の時点で、日米協議委員会で報告を受けて、こういうガイドラインに従って今後専門的な研究を始めますという報告を受けているわけでございます。  それから、二番目のオペレーションの問題でございますが、先生がおっしゃっておられるオペレーションというのが、私、概念がはっきりしないのですが、私の理解している範囲で申し上げますと、自衛隊というのは、本当のオペレーションというのは防衛出動が下令されたときにするのがオペレーションだと思うのです。それから、平時におきます教育訓練に伴う部隊の移動その他はいわゆる本当のオペレーションというふうには考えていないわけでございます。したがいまして、これは隊務の運用というふうに考えておりますので、そのオペレーションの点につきましては、防衛出動の可否、それからそれに類するような重要事項というものは国防会議にかけるということだろうと考えております。
  153. 横路孝弘

    ○横路委員 そのガイドラインの内容ですね。たとえば、五条についてのシナリオが日米間ででき上がっているというようなことになっていますが、その内容については国防会議ないしはその事務局の方に報告はあるものなんですか、ないものなんですか。
  154. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 その内容につきましては、非常に具体的なものになると私は想像しているわけです。現在作業が進んでいるわけですけれども、かなり機密にわたるようなことがあると思いますので、国防会議がその内容そのものを報告を受けるというふうには考えておりません。ただ、もちろんその最高指揮官であります総理の方には御報告があると思いますけれども、国防会議に報告されたガイドラインの範囲の中で研究が進められるものというふうに理解しているわけでございます。
  155. 横路孝弘

    ○横路委員 防衛庁がやっている防衛研究についてはどうなんですか、報告があるのですか、国防会議の方に。
  156. 塩田章

    ○塩田政府委員 防衛研究は防衛庁長官限りの研究でございまして、特段に国防会議に報告しておりません。
  157. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、軍事的なガイドラインでやっているのは、有事の事態を想定して、そこに至る日米間の手続の問題、それからもう一つは、具体的な事態にどう日米が共同で対処するかという問題をやっているわけですね。私はやはりその内容を、内容的にですよ、その枠組みは知っているとしても、これは枠組みはわれわれも聞いているわけですが、その内容を全く知らないで防衛出動の可否だけ問われて、それですぐ答えを出すということになるのかどうか。いまの現行法の枠の中でできるかどうか、国防会議の設置法の六十二条で。ただ、この五号を考えて「国防に関する重要事項」ということになりますと、やはり概略ぐらいは国防会議の担当の事務局ぐらいで——全く知らないでその出動の可否だけかけられて議論するというのもこれは素人考えでもよく理解ができないわけでして、ひとつそこら辺のところも国防会議でも検討されてみたらどうですか。何か国会で問題になったときだけ国防会議というのが出てくる存在で、ふだん何をやっているのか、私らもよくわからぬわけですが、やはりふだんそういう基本的なことをしっかり勉強しておってもらうということも大事なことだと思うのですが、いかがですか。
  158. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 国防会議の事務局といたしましては国防に関する重要な問題について研究することになっておりますので、そういう意味では、機密にわたらない範囲では必要なものは国防会議の事務局としては勉強いたしておるわけでございます。
  159. 横路孝弘

    ○横路委員 そこのところを少し防衛庁とも相談されて、私は、実質有事になったときのオペレーションにしたって、全くミリタリーに全部任せるということよりは、それはやはり大枠についてシビリアンがある程度、特に専守防衛と言っているわけですから、これに対するいろんな意見がミリタリーの中から出てきているときですから、それだけに専守防衛のいろんなシステムというものを明確にさせるということはやはり国防会議一つの仕事でもあるというように考えますので、防衛庁長官防衛庁長官は直接国防会議とは関係がないのかな、それでは国防会議の方でぜひ検討されんことを再度ひとつお答えをいただきたいと思います。
  160. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいまのお話でございますけれども、一つは、防衛庁の中に内局というのがございます。したがって、ミリタリーだけで判断しているというわけではないわけでございますから、その点は内局は十分検討しておると思います。しかし、防衛出動の可否を判断するに当たって国防会議で判断していただくような事項につきましては、今後防衛庁の方と話し合って必要なものを勉強していきたいというように考えております。
  161. 横路孝弘

    ○横路委員 国防会議、結構でございます。  それで、一つガイドラインについて、この前の議論の続きになるのですが、日米の調整機関というのが設けられますね。これはどの段階で調整機関が設けられるのかということなんですが、この趣旨にかんがみてやはり七十七条事態から後の事態というように考えられるのですが、ここら辺のところは防衛庁の方はどのようにお考えになっておられますか。
  162. 塩田章

    ○塩田政府委員 趣旨にかんがみて七十七条以降ではないかという御指摘でございますが、その辺、私ども同感の感じはいたしますけれども、具体的に調整機関の日米の研究そのものをいまやっておるところでございまして、調整機関の中身、それから調整機関でどういうふうに調整するかということ等を含めて、いつから設置するかということも実はまだ今後の検討課題として現在検討中でございまして、具体的にいまどういう案だというように申し上げられる段階にございません。
  163. 横路孝弘

    ○横路委員 そこら辺に関連してくるのですが、日本側の現状の警戒区分、これは大体従来の答弁ですと、空の関係が五段階、それから陸と海の関係が三段階ということになっているのですが、これは横の調整みたいなものはあるのですか。つまり、どういう段階の場合に陸も海も空も一つずつ上がるとか、そういう横の統一はされているのですか。
  164. 塩田章

    ○塩田政府委員 現状は、いまお話がございましたように、航空自衛隊の場合の領空侵犯対処のための段階区分と、陸海それぞれ三つの段階区分を持ったものがございますけれども、実はそういうことを含めまして、防衛研究の中で警戒態勢区分の研究はいたしたわけでございます。それを受けまして三つの自衛隊を通ずる警戒態勢区分というものを実際に今後考えていかなくてはいけないわけでございますが、その部面の作業としてはまだ進んでおりません。したがいまして、現状のままでございます。
  165. 横路孝弘

    ○横路委員 最初の区分が上がるというのは、どういう状況なんでしょうか。差しさわりがあるとあれですが、何か国際情勢が緊迫化するというようなかなり抽象的なところで段階区分が上がっていくのですか。最初は多分外出が禁止になるとかというようなところであるとか、あるいは待機の状況が、飛行機の場合ですと機数が少し多くなるとか、人間が多くなるとかというようなことだろうと思うのですが、最初の上がるきっかけというのは、どういう状況がきっかけになっておりますか。
  166. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在まで自衛隊がいま先生のおっしゃいます態勢区分を上げたことがございませんので、具体的にどういう場合にという例がまだございません。(横路委員「キューバのときに上げたんじゃないの、航空自衛隊」と呼ぶ)キューバのときには上げておりません。そういうことで、具体的には実例としてこういう例があるというふうには申し上げられません。したがいまして、いまの段階で抽象的なお答えしかできないということでございます。
  167. 横路孝弘

    ○横路委員 その抽象的な答えをしてみてください。
  168. 塩田章

    ○塩田政府委員 陸上自衛隊で申しますと、現在の状況下におきましては、災害派遣ということが必要になる場合が予想されるというような場合に考えられるということが一つ言えるのではないかと思います。  それから、海上自衛隊につきましては、わが国の船舶、航空機に対する不法行為等の発生が憂慮される、不慮の事態が憂慮されるというような事態がありますとすれば、そういうときに考えられるということで、いずれも、具体的にこういう場合という事例は、ちょっといま申し上げられるようなものを持ち合わせておりません。  航空自衛隊の場合は、先ほどおっしゃいましたのは対領空侵犯措置のための段階区分でございまして、陸と海のような警戒態勢のための区分ではございませんので、ちょっと目的が違います。
  169. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、いま、日米間の作戦準備のためのいわば共通の警戒区分を今度はつくろうというわけでしょう。そうすると、これはまず日本のやつをつくってからアメリカとすり合わせをするということになるのですか。作業としてはどういう作業になりますか。
  170. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど自衛隊が上げたことはないと言いましたけれども、災害に関しましてはありますので、それは訂正させていただきます。  いまのアメリカとの間の関係でございますが、おっしゃいますように、日本日本で当然自分の態勢区分をつくる、アメリカはすでに持っていると思います。そうして両者がそれぞれあるものを持ち合わせて共通のものを検討していくということになるわけでございまして、将来の検討課題としてそういうふうなことは考えておるわけであります。
  171. 横路孝弘

    ○横路委員 これは従来から指摘をしているわけですが、アメリカの場合の警戒区分というのは、何も日本を取り巻く状況だけじゃなくて、世界じゅうどこかで何かがあっても、共通のものとして上がっていくわけですね。その場合、だから単純にアメリカの警戒区分と日本の警戒区分とを連結させますと、今度はアメリカの警戒区分が上がれば日本が上がるということになるわけで、そこのところは前から国会で議論があるところですが、やはりある意味では断ち切らなければ日本が危険湾ということも想定されるわけですね。そこのところはどういうように考えていますか。配慮するお考えはございますか。
  172. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のとおりでございまして、日本の態勢区分とアメリカの態勢区分を連結させるという意味ではございません。それぞれがそれぞれ持つべきものだということをまず申し上げて、アメリカはすでに持っていると思います。日本はまだ持っておりません。それを日米間で今度は共通のものを新しくつくらなければいけないということでございまして、アメリカのいま持っているものに連結させるというものではございませんので、その点はぜひそのように御理解いただきたいと思います。
  173. 横路孝弘

    ○横路委員 だんだんわかってくるわけです。したがって、先日議論した防衛準備に入るか入らないかという決断のところがやはり大きな問題になってくるわけでございます。  一番私たちが心配しているのは、特にアメリカ側と議論してみると、日本に対して直接たとえばソビエトが侵略する、侵攻するというような可能性はほとんどないよと、これはみんな言うわけですね。むしろ、やはり中東で何か起きたときにどういう日米間の協力関係があるのか、特にガイドラインというのはそういうものとしてアメリカ側ではかなり強く意識されている。だから、このガイドラインに対するアメリカの評価というのは大変高いのですね。われわれアメリカ側の話を聞いて、正直言ってもう一度ガイドラインを勉強し直した、こういうようなことでございまして、よく見ていけば見ていくほど、大変問題が多いということがわかってくるわけでございます。  そんな意味で、そこのところは大変ポイントになるところでございますから、いま連動させないということですが、しかし、共通の警戒区分をつくっていけば、やはりそこは連動してくる危険性がある。そうすると、問題は、日本がいつの段階で防衛準備に入るかというところが一番大きなポイントになってくるのではないかというように思うわけで、そこら辺のところをひとつ十分に考えていただきたいというように思いますが、再度御答弁いただきたい。
  174. 塩田章

    ○塩田政府委員 ただいまの御趣旨は私ども同感でございますので、今後の研究に当たりまして配慮してまいりたいと思います。
  175. 横路孝弘

    ○横路委員 一点、ついでですので、ちょっと極東有事についてお尋ねします。  アメリカ側の方の、これはだれでしたか、ドネリー空軍中将か何かの記者会見で、極東有事、この六条の便宜供与について、朝鮮戦争のときの先例にならってお願いをしたいというような発言があったようでございますが、じゃ、朝鮮戦争のときどんな協力を日本政府がしたのか。これは何か外務省並びに防衛庁の方は記録は残っておるのでしょうか。
  176. 塩田章

    ○塩田政府委員 防衛庁といたしましては、現在の防衛施設庁の前身であります特別調達庁が当時調達をしたものはどういうものかといったようなことは、当時の特別調達史といったような、ちょっと正確な名前はいま覚えておりませんが、そういう本がございまして、記録は見ることができますが、通常、朝鮮戦争が始まる前と同じような調達をしておる。ただ、それが物資の量がどういうふうに変化したかということがある程度うかがえるという程度でございまして、調達庁自身がいわゆる間接調達でございまして、米軍自身が調達されたものは一切記録にございませんので、そういう意味では全容を見るということはとてもできないというようなものでございます。そういうものの記録はございますが、それ以上のことはいまちょっと私どもにもわかりかねるというのが実態でございます。
  177. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、具体的に話が始まってアメリカ側の方から持ち出されてみないとわからない、こういうことですね。そうですね。時間がございませんので、結構でございます。  それでは、ガイドラインについてはこれで終わりまして、五六中業に関して一、二点だけちょっとお尋ねしたいと思うのです。  資料をお配りしてありますが、これは昨年の予算委員会で私の方で試算をいたしまして提出をいたしましたと同じような計算を今度またしてみたわけです。前提は、試算の方法はここに書いてございますが、八二年度以前の契約に基づく八三年度以降の歳出化額は防衛庁発表の数字です。それから、八三年度以降の物件費については、五六中業に関する従来の新聞報道の正面装備六兆円ということを前提にして計算をしてございます。それを八三年−八七年に均等に分割をして、年五%ずつ上昇するデフレーターを乗じて各年の歳出額としております。それから、国庫債務負担行為によって取得する装備は、八三年−八七年の五年間で、そこに挙げているように、八二年度価格でいたしまして、その歳出化の割合は過去の実績によっています。これは毎年毎年実績が違いますけれども、いまのところで計算をした。それから、名目GNPは年九%ということにして計算をしてみますと、どうしてもこれは五十八年度からGNP一%を超えてしまうわけです。  そこで、この五六中業についてなんですが、皆さんの方もいま苦労をされているのはそこだと思うのですね。大体この正面装備六兆円というようなあたりで計算すると、どんなぐあいに配分してみても、GNP一%を超してしまうということになるのじゃありませんか。いかがですか。
  178. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 横路先生承知のとおり、五六中業につきましては、昨年の国防会議で了承された方針に基づきまして「防衛計画の大綱」に定めております防衛力の水準を達成することを基本として現在作業を進めておりまして、いろいろ御指摘もございましたが、現段階ではその事業内容等が固まっておりません。また、GNPの成長率も流動的でございますので、期間内の防衛関係費や対GNP比がどのようになるかにつきましてお答えできる段階にないということを御理解賜りたいと思います。  ただ、GNP一%に関する閣議決定が現に存在をしておるわけでございまして、五六中業は、効率的かつ節度ある整備に留意をいたしまして、GNP一%に関する閣議決定を念頭に置いて、大綱水準の達成が図られるようにぎりぎりの努力をする必要があるものと考えておる次第でございます。
  179. 横路孝弘

    ○横路委員 GNPは大体九%よりむしろ下がり目にいくわけですよ。下がり目にいけば、対GNP比というのはむしろ上がっていくわけですね。  そこで、防衛局長、結局総理大臣も言っておりますし、方針があって、いま皆さんのところはなかなかGNP一%内におさまらぬというところに苦労があるのだろうと思うのですが、私の方でちょっと試算しましたところによりますと、これは前提の置きようでもっていろいろな計算ができるわけでございますから、これが絶対だというわけではございませんが、昭和五十八年がGNP一・〇二、五十九年で一、〇六、六十年で一・一一、これはむしろ低目だと私は思うのです。では、これだけでも一%に抑え込んでみると金額はどのくらいになるかというと、やはり六千億くらいの差が出てくるのですね、五十八年、五十九年、六十年の三カ年だけで。  防衛局長、どうですか。正面装備六兆円で計算すれば、大体私の方で試算したような数字になるのではないですか。つまり、いまどうこうと言っているわけではない。六兆円くらいで計算すると大体こういうことになるのではないか。
  180. 塩田章

    ○塩田政府委員 先生の方で試算されたものをいま拝見をしておるわけでございますが、先ほども大臣からお答えいたしましたように、いまの時点で、中業の作業そのものがどうなっていくか、あるいはGNPそのものがどうなっていくか、いろいろ変動要因もございますし、現在せっかく作業の最中でございますので、今後の見通しをいまここで申し上げることは困難かと思われますので、御了解賜りたいと思います。
  181. 横路孝弘

    ○横路委員 しかし、GNPがどうなるかわからぬといっても、これは政府の計画を前提にしてしか計算できぬわけでしょう。そうすると、大体六兆円だということになる。私はこの六兆という数字を前提に言っているわけで、これがどうなるかということが問題になるわけです。したがって、これを削らなければならぬということに結論としてはなるわけですが、六兆円を前提にすれば大体こんなところだということは言えるでしょう。これはそんなでたらめな計算ではないのです。
  182. 塩田章

    ○塩田政府委員 先生の方で御試算された一つの試算として見させていただきますが、それに対しまする論評は差し控えさせていただきます。
  183. 横路孝弘

    ○横路委員 大分ガードがかたいわけですが、これは新聞の報道を前提にしてやっているわけですから、それが当たっている数字なのかどうなのか、私はわかりませんよ。それでも大体五兆七、八千億ぐらいのところじゃないかと思いますが、六兆円を前提にしてやれば、これはもうGNP一%を超えてしまうわけで、総理大臣のあの答弁からいうと、やはりそこのところを削って落とすしか、いかに均等にしようと歳出化額の出し方を苦労してみても、それは無理だということだけは明確に指摘をしておきたいと思います。防衛庁長官、だからこれはやはりそこのところを削るしかないのですよ。あなたもこれからの作業に当たってそこのところをしっかり頭に入れておってください。  それで、次の質問にいたしますが、軍縮の問題についてこの間ちょっと残しましたので、幾つかお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど官房長官の方から、日本が言っている軍縮、軍備管理というのは何も核ばかりではない、通常兵器も含むのだということでのお話があったわけですが、これを具体的に日本の安全保障としてどのように考えていったらいいのだろうかということについて、少し御質問をいたしたいというように思います。  先日も話しましたように、軍縮という場合に、対象としては戦略核、戦域核、通常兵器あるいはお互いの信頼的な関係をどうするかというような問題がございますし、アジアの中では戦略核では米ソが対峙をしている、戦域核ではソビエトが中国とアメリカと対峙をしている、それから通常兵器の分野では中ソ国境と朝鮮半島の南北朝鮮、それから日本日本海とオホーツク海を隔ててソビエトと、まあ軍事的に対峙しているとは必ずしも言えないと思いますが、そういう状況にあるわけで、こういうものをトータルに考えて軍備管理あるいは軍縮の問題をどうするかというようなことを具体的に検討するような時期に来ているのではないかというように私は思うのです。  それで、これは外務省にお尋ねしていいのか防衛庁にお尋ねしていいのかわかりませんが、一般的な国連で議論される軍縮ということは明確に別認識を持ってもらって、アジアにおいてどうするかということをそろそろ研究する時期に来ているのではないかと私は思うのですが、そこのところはいかがでしょうか。これは外務大臣ですか、防衛庁長官ですか。
  184. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  軍縮の問題は、平和、安全の維持、この問題とうらはらをなしているわけでございます。横路委員お述べになられましたように、わが国は唯一の被災国である。また、平和憲法維持しております。非核三原則を堅持いたしております。このような国情を踏まえまして、いわゆる軍縮外交を積極的に推進しておりまして、これは核兵器の分野のみならず通常兵器においても当てはまるわけでございます。  このような観点から、最近のアジア及びヨーロッパ、グローバルなベースにおける平和、安全の維持、これと軍縮の問題、これは絶えず念頭に置きながら検討しているわけでございまして、政府におきます軍縮対応策は、ひとり国連の場というものに限られず、広く世界の動きに目を向けて対応いたしておるということでございます。
  185. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、これは本来国連局が答弁すべき問題ではないわけですね。ただ、軍縮の問題を安全保障政策の中にするという場合にどこが対応するのかということになりますと、つまり、まだそういう方針がありませんから、防衛庁がどうも答弁に出てこないということになるわけですが、たとえば信頼醸成措置、CBMと言われるものについて、これは一九七九年の国連決議に基づいて、いま幾つかの国が集まって信頼醸成措置に関する議論というのが行われておりますね。多分次の国連の総会までに報告するということになっていると思うのです。各国がいろいろな案を出しています。  この日本政府の見解というものを見てみますと、たとえば軍縮条約の検証のための国際手段の強化であるとか、偶発や誤認に基づく紛争勃発防止のための緊急地域におけるホットラインの設置などによる通信手段の改善であるとか、軍事費の公開を初めとする軍事に関する情報の交換であるとか、隣国、周辺国の警戒心を惹起するような軍事行動の自制というようなことを日本政府は提示しています。  これはほかの国よりもやや抽象的なわけで、もうちょっとアメリカにしても西ドイツにしてもいろいろな具体的な案というものを提示をしているわけですが、たとえばこういうような信頼醸成措置というのを、これは日本政府が軍縮委員会の場で主張しておる問題ですね。軍縮委員会だったか、このための特別の会議だったかもしれません。信頼醸成措置のための特別の会議が設けられて、そこの場所の議論だったかと思いますが、こういう提起をしておるわけですね。だから、一般論としてではなくて、今日の日本を取り巻く状況の中で、では、わが国政策としてこういうものが出せないだろうかというように思うのです。  たとえば、ひとつこれは外務大臣に感想をいただきたいのですが、韓国の全斗煥大統領が演習の公開を北朝鮮の方に提起していますね。お互いに演習を公開しようじゃないかという提案をしましたね。これについては外務大臣、どのようにお考えですか。
  186. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大規模なあるいは中規模なとも申し上げられると思うのでありますが、演習をする場合にお互いに公開をしよう、そして視察というのか観察というのか、そういうために所要の人を派遣したらどうかというようなことは、私はそれなりの効果があると思うのでありまして、これは私の記憶に間違いがなければ、国連軍としてそのようなことが提唱された、こう思うのでありまして、このようなことは緊張緩和の上に非常に役立つと思います。
  187. 横路孝弘

    ○横路委員 たとえば日本でも、日本海でソビエトも日本のすぐそばまでやってきて軍事演習をやっていますし、それに対抗するような形で日米が去年やりまして、はえ縄を切断したというような事故を惹起しているわけですね。たとえば、こういうような日本海の演習についても、お互いに海域を決めるとかあるいは制限をするとかが考えられるわけですね。外務大臣考えられるわけです。何かそういうようなもの、あるいはいま、たとえばソビエトの飛行機がベトナムに向かって飛んでいけば、みんなこれはスクランブルをかけているわけでしょう。そうすると、こういうようなものについても、たとえば航路みたいなものを決めて通報してもらうとか、いろいろな手段、方法というのは考えられるわけですね。いずれにせよ、お互いの周辺諸国家のいろいろな行動というものは皆それぞれ見ているわけでありまして、誤解をなくすための提案というのも一つの方法として考えられるのじゃないかというように私は思うのです。     〔越智(通)委員長代理退席、委員長着席〕  つまり、私が先ほどから言っているのは、国連でいろいろ議論をするということも大いに結構だ。しかし、同時に日本の安全保障政策としてそういう政策考えていくべき時期に来ているのではないか。だから、それを少なくとも検討してみる。これは外務省でやるべき問題なのか、防衛庁でやるべき問題なのかよくわかりませんが、私はやはり総合的に考えるべきではないかというように思うのですが、いかがですか。
  188. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのような信頼醸成措置が具体化していくことは、これは好もしいことは言うまでもないと思います。そこで、日本としてもどういう措置がよろしいかということについては研究をいたしておるところでございまして、その研究を待って具体的に措置をしたい。ただ、いまの極東の情勢は、信頼醸成措置をやるにふさわしい環境であるかどうかということになりますと、ちょっと私は懸念を持つのであります。SS20の極東の配置、まあ4も5もあるようですが、それから北方領土の軍事基地のようなことを考えると多少懸念をする面がございますけれども、しかし、信頼醸成措置につきまして具体的な研究を積極的にやるということについては、私もそれは非常によいことだと思っています。
  189. 横路孝弘

    ○横路委員 実はこの間猪木正道さんがこの予算委員会の公述人で参りまして、アジアの軍備規制について研究の委託を受けている、外務省の方から委託を受けて研究をなさっているということをここでお述べになっておられました。いまは信頼醸成措置なんですが、軍備規制についても、これは日本を含めて考えられるわけですし、たとえば中ソ国境であるとか朝鮮半島であるとかいうようなことについて、日本としてどういうことが望ましいのかということを考えることは、私は大変大事なことだと思うのです。  たとえば朝鮮半島についても、これはちょっと見解を承っておきたいのですが、後の経済協力にも関連してまいりますが、どうもアメリカもそうですし、日本政府も、何か韓国というものを一種の日本にとっての安全保障の緩衝地帯みたいに位置づけている考え方なんですね。しかし、朝鮮半島全体を見てみますと、北朝鮮のポジションというのは、中ソ対立という中では、むしろ中ソ対立に対して中立的な立場を北朝鮮はとっているのです。私は、そこのところが実は大変重要なことであって、韓国に対して一方的に軍事的、経済的なてこ入れをするということは、今日の状況の中で、朝鮮民主主義人民共和国の方が中国に寄っていくというよりは、むしろソビエトとの関係を深めるということにしか結果としてならないのですね、今日のアメリカと中国の関係日本と中国の関係というものを考えますと。したがって、問題は朝鮮半島をどう考えるのか、あるいは韓国だけ取り出して考えるのかというところに、実はこの立場の違いがあるように私は思うわけですが、私は、やはり全体として朝鮮半島が軍事的にお互いの軍拡競争をやらないで、ある意味では落ちついている、固定化しているということが日本にとっては望ましいことではないかというように考えるのです。したがって、韓国に対する一方的なてこ入れというのはむしろ朝鮮半島の緊張を高めることにしかならないのじゃないかというように思うのですが、そういうようなことを、たとえば朝鮮半島の軍備規制というのをわれわれがどう考えるかというような政策の一環として議論すれば、対韓経済援助あるいは協力と言われるようなものも、いま政府がお持ちになっている視点とちょっと違った視点が出てくるのではないかと私は考えるわけですが、外務大臣、いかがですか。
  190. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 最初の方の御質問で、猪木さんの研究所のお話がございました。これは猪木さん御自身が公聴会で言われたことで、外務省としても、アジアにおける軍備規制について調査研究をお願いしておる。また、信頼醸成措置につきましても、予算通過後にこういうものもこの研究所にお願いしたらばどうかというような、そういう心づもりを持っております。  それから、朝鮮半島の緊張緩和のお話でございますが、従来わが国のとっておる経済協力は、当該国の社会経済安定を来す、こういうことを目的としておるのでございますから、そのことが何か緊張を激化せしめる原因になるというようなことは全く考えておらないところでありまして、また、基本的にわが国が朝鮮半島の南北の統一を念願し、また、緊張緩和が速やかにできることを期待しておることは言うまでもないことでございます。
  191. 横路孝弘

    ○横路委員 その軍備規制ですね。広い意味では軍縮、軍備縮小それから軍備規制それから信頼醸成措置ということについて研究をやっておられるということでございまして、それが具体的な日本政策となって、特にアジア政策となってあらわれてくることを私は非常に強く期待をしているものであります。  それは、一つは、何も外務省だけじゃなくて、防衛庁もやはり同じようにこの点は研究すべき問題だ。何もあなたの方、軍備拡大することだけが防衛庁の仕事じゃないわけです。そういうようなこともしっかり考えるのもこれまた防衛庁としてやるべき仕事だと私は思いますが、いかがですか。
  192. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先生御指摘のように、わが国の安全をより確固としたものにするためには、国際社会をより平和で安定したものとしていくことが肝要でございまして、国連等の場を通じる国際的な軍縮、軍備管理の促進は、このための努力の重要な一環をなすものであると認識をしております。  御指摘の、わが国独自の軍縮と安全保障全体にわたる研究につきましての御提言等につきましては、貴重な御意見として承っておきたいと思います。
  193. 横路孝弘

    ○横路委員 貴重な御意見じゃなくて、研究している方、防衛庁の中にももちろんいるわけです。ただ、それがなかなか政策として高められてくるというようなことになっていないのです。どうもまだ個人的な研究にとどまっているわけです。それを外務省の方はやや組織的に活動を始めたということです。だから、防衛庁の方もそれに対応して、いまどこですか、これはどこでやっているのですか、担当してやっているような人。たとえば、信頼醸成措置なんというのはたしか防衛庁から国際会議に人が出ていってやっているはずですよ。だから、その国際会議で言うだけじゃなくて、自分の問題としてどうするかということをあわせて考えなければ意味はないわけで、意見を承るだけじゃなくて、防衛庁長官、それを皆さんの中で少し検討されて、そういうことを研究するちゃんとしたところをつくったらどうですか。あるいはどこの担当でやることになるのですか。これは防衛局でやることになるのですか。防衛局長、どうですか。
  194. 塩田章

    ○塩田政府委員 防衛庁の中の現在の組織での担当は防衛局でございます。  いま御指摘の点につきましては、外務大臣からも、研究していくという御趣旨の御答弁がございましたが、私どもも、外務省とは従来からよく連絡をとっておりまして、今後とも密接に連携をとってまいりたいと思っております。
  195. 横路孝弘

    ○横路委員 次は、経済協力の問題に移りますが、総論の議論をしている時間が全くなくなりましたので、具体的な問題からすぐ入っていきたいというように思います。  去年は南北サミットも開かれまして、そこの場でも、それから先進国サミットの場でも中期目標と言われるものが日本政策として言われているわけです。そこで、質問をしたいと思うのですが、この中期目標というのは中身が幾つかあるわけです。たとえばGNP比率の改善を図るということがこの公約の中の一つになっていますね。それからもう一つは、一九八〇年代前半五カ年のODAの実績総額を七〇年代後半五カ年の総額の倍以上にするということが目標ですね。そのために一般会計云々ということになっているわけです。  結論からひとつ言いますと、確かに国の予算、一般会計の方のやつは、大体去年が一二・七の伸びですから、これから残りを計算すると大体一一・四ということで、これはまあまあいいということなんでありますが、では、GNP比率の改善というのはどうなるのですか。これは低下するんじゃないですか。
  196. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 GNPに対しましては、いまここに一九八〇年の数字がございますが……(横路委員「来年度予算、五十七年度予算」と呼ぶ)五十七年度予算、それはちょっといま持ってないのですが、大体八〇年の分は〇・三二、先進国平均が〇・三七、目標は〇・七、こういうことになっていますね。
  197. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、それはわかっているんですが、つまり、先進国サミットと南北サミットで公約しているわけでしょう。対外的に言っているわけですね。GNPの比率の改善を図ると言っているけれども、どうなのか。たとえばODAの五十七年度事業予算を見ますと、伸び率六%でしょう。そうしますと、名目成長率八・四ですから、これはどうなのかといえば、名目成長率より伸び率が低いということは、GNP比は改善されないで悪くなる、これはこういうことになるんじゃないですか、大蔵大臣
  198. 松下康雄

    ○松下政府委員 予算上の私どもの見積もりの数字で申し上げますと、五十六年度GNP比、これは政府開発援助合計でございますが、五・八%の見込みに対しまして、五十七年度におきましては六・〇%とやや上昇する計算をいたしております。
  199. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、私が言っているのは、対GNP比が改善されることになるかどうかということを言っているのであって、それは伸び率は五・八から六・〇に伸びているんだけれども、六といっても、名目成長率はそれを上回っているから、結局GNPの比率は下がるんじゃないか、こう言っているわけです。
  200. 松下康雄

    ○松下政府委員 大変失礼をいたしました。数字を間違えました。  GNP比で申し上げますと、五十六年度〇・三三六%に対しまして、来年度〇・三四〇%と見込んでございます。
  201. 横路孝弘

    ○横路委員 これは、外務省の方にちょっとお尋ねしてから大蔵省に議論した方がいいようであります。問題は、一般会計でなくて、この中期目標でいうODAの実績の方ですね。七六年−八〇年が百七億ドルですから、大体倍で二百十四億ドルということになるわけですが、この実績の場合問題になるのは、やはりたとえば借款が一体どうなるのかというようなことが実績としては問題になってくるわけですね。そうすると、かなり一般会計は伸びているわけですが、財投そのほか見ますと、五十七年度では大分これは、伸び率は一〇%くらい、減っていますね。そうしますと、かなり実績の方はむずかしくなるんじゃないですか。いかがですか。
  202. 柳健一

    ○柳政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、五十七年度のODAの事業予算は、一般会計では、厳しい財政状況のもとにもかかわらず一一・四%という伸びを見せておりますが、事業予算全体といたしましては六%になっている。その一つの大きな原因は、国際開発金融機関に対する出資金等、これの伸びが落ちている。これはたまたま増資をする時期に当たっておりまして、先進諸国とも御承知のようにいろいろと財政厳しい時期で、増資の問題のいろいろの話し合いがまだまとまっておりませんところが幾つかございます。そういうこともございまして、五十七年度の事業予算全体の伸びは、せっかく一般会計で一一・四%伸ばしているにもかかわらず、六%の伸びになってしまっている、こういうことでございます。
  203. 横路孝弘

    ○横路委員 だから、これはGNP比の改善にもならないし、この国際公約に向かってどうなのかなという点が一つ問題じゃないかと思うのです。  たとえば、一つお尋ねしておきますが、五十六年度の、これは海外経済協力基金ですか、四千四百五十億ですね。これは一体いまどんな貸付契約をされて、どんな支出状況でございますか。
  204. 小谷善四郎

    ○小谷説明員 お答え申し上げます。  海外経済協力基金の予算の執行状況でございますけれども、実は投融資の実行というものが相手国における事業の進捗状況に応じて行われるものでございますから、そういう意味から五十六年度の執行状況というものを現時点において確実につかむということは困難な面もございますけれども、一応大ざっぱに言って昨年並みの七〇%程度の執行になるのではないか、このように考えております。
  205. 横路孝弘

    ○横路委員 だから、そこでいきますと、実績としての数字はやはり落ちてくるわけですね、執行率が悪くなると。ODA全体の実績総額を倍以上とするという、それが国際公約なんですよね。そして、そのために国の一般会計の予算は倍というやつが入ってくるわけです。ですから、大蔵省、大蔵大臣でも大蔵省の担当の方でもいいですが、そこのところは全体を見ていかないといけないのですよ。あれだけサミットでぶち上げて、やったけれども、やってみたら全然そこにいってなかったということになると、これは大きな問題になりますよ。  だから、これは大蔵ばかりじゃなくて、国際的な問題があるわけですよ。一つは、アメリカの姿勢の問題があるわけですね。アメリカは東西対立という観点に立って、いわばマルチよりも二国間の援助を、内容的にも開発援助よりもいわば外交の手段的な援助というのをふやしているわけで、そこのところは日本もしっかり、アメリカに対して批判するところは批判する。最近日米間で経済協力をめぐっての会議が開かれたのじゃないですか。そういう場でしっかり、批判する点は、アメリカ経済援助政策について意見を言うということが私は大事だと思うのですが、ちょっと、大蔵省に答弁をもらう前にまずそこの点を外務省の方から。
  206. 柳健一

    ○柳政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、去る二月一日から三日まで三日間、第三回目の日米の援助に関する政策協議というものをいたしました。その際アメリカ側は、御指摘のように、援助の国の選択に当たりましてはアメリカ外交的な見地から重要な国を選んでいくということ、そういう意味では多数国間の援助よりも二国間の援助をより重視していくという点を述べておりましたが、同時に援助の中身は、そういうことにすればするほどまた逆に民生の安定、福祉というものを重視したBHN的な援助をやっていきたい、こういうことを言っておりました。わが方も、アメリカ側が余りバイに偏り過ぎないように、もっとマルチの援助も重要であるということ、それからBHN的基礎生活援助も重要であるということをアメリカ側に強く申しまして、アメリカ側も決して巷間伝えられるほどそんなに偏った援助をするつもりはないということを申しておりました。
  207. 横路孝弘

    ○横路委員 たとえば世銀であるとかIDAの関係ですね、これは開発途上国に大変喜ばれておるわけです。そういうものが対前年度比で見てかなりダウンしていますので、つまり一般会計の方は伸びているけれども、ODAの事業予算全体として見た場合にはなかなかむずかしい状況にありますよ、大蔵省。この国際公約を達成するためにはこれからもよっぽどがんばってもらわなければならぬですよ。いかがですか。
  208. 松下康雄

    ○松下政府委員 先生も御指摘ございましたように、私どもも一般会計の予算上ODAの充実につきましては、来年度厳しい財政事情の中で非常に努力をいたしたところでございます。ただ、いまの国際的な環境からいたしますところの国際機関出資等が減少いたしたこと、借款等につきまして現在必ずしも消化の状況が順調でございませんので、むしろ枠を拡大をするよりも現在のある枠を円滑、適正に消化をしていくということに努力をすべきことといったような状態がございまして、御指摘のように、ODAの総額といたしましては一般会計の伸びたほどは伸びてないわけでございます。  ただ私どもも、経済開発援助の中期目標そのものに掲げてございますように、この中期目標を確実に達成いたしますためには、全般的に世界経済が円滑に運営をされるというようなことも必要でございますし、また受け入れ国側の援助に対する受け入れ体制が一層整備されることというようなことも期待しながら、そういう前提のもとにおきまして、財政措置としてもいまの倍増の計画をお立てをしておるわけでございます。御指摘のように、総合的な目的実現のための努力が必要であると思っております。
  209. 横路孝弘

    ○横路委員 外務大臣、大蔵大臣、いま日本の国内で多分国民の間にコンセンサスがあるのは、日本経済力が大きくなったことだし、世界のさまざまな国に依存して日本経済というのは成り立っているんだからそれなりの責任を果たせ、特に経済協力を進めるべきだとい塾のが総理府の昨年の調査などでも七割から八割という国民の合意を得ているわけですね。ところが、よく議論されることですが、つまり軍事大国にならない、経済協力で出言うわけだけれども、言っている割りには経済協力の量も質も十分ではないではないかという議論もあるわけです。確かに先進十七九国の中身を見てみても、内容的にもさまざまな問題があるというのははっきりしているのではないかというように私は思うのです。  そこで、これからの経済協力の方向性なんですが、鈴木総理大臣は南北サミットの場で、できるだけ、おくれた開発途上国、後発の開発途上国に対する援助を重点的にしていきたいんだという点が一つと、それからもう一つは、二国間援助の内容についても、いわば従来はどちらかといいますと、日本資源や市場確保という観点からのものが多くて、たとえば公共事業だとか鉱工業、建設なんというものが多いわけですが、社会的なインフラであるとか教育であるとか保健であるとかいうような分野に内容を高めていきたいという発言をされているわけですが、この方向性については外務大臣、そういうことでよろしいんでしょうか。
  210. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 最初にちょっと経済協力の全般的なことについてお答えをしておきたいと思うのです。  それは日本経済協力は、ただいま大変厳しい御批判をちょうだいいたしましたが、円借款についてこれが三十数%しか達成されておらないと、しかし、技術協力あるいは無償協力についてはほぼ目的を果たしておるわけであります。そして、円借款の関係につきましては、これは四、五年かかるのでありますからどうしても実施がおくれる、こういうようなことでありますが、他の機関、世銀であるとか第二世銀とかアジア開銀等々と比較してみますと、日本の実施ははるかにいい傾向を持っておるということをちょっと御参考に申し上げでおきます。  それから、ただいまのお尋ねは何でございましたか。言いたい方を言って……。
  211. 横路孝弘

    ○横路委員 重点が、後発の、おくれた開発途上国、そして内容はできるだけそこのたとえばインフラなどを中心にしてやっていきたいという総理大臣発言は間違いありませんねということです。
  212. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 総理がそのように表明しておるわけでございまして、私どもはそれに基づいて実施をしていかなければならない、こう思います。
  213. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、ちょっといま問題になっております対韓経済援助なんですが、これは六十億ドルとか四十億ドルとか言われておりますね。これから五年間の倍増計画、つまり七〇年代後半百七億ドルを八〇年代前半で二百十四億ドルというわけです。そうしますと、これは韓国だけに四十億ドルないし六十億ドルを取られてしまいますと、一体ほかの国に対する援助がどうなるかということが問題になるんですね。大蔵省がその分をふやすということを考えておられるのか。私は大変大きな問題だというように思うのです。  というのは、日本の対外援助は、たとえば所得階層別に見てみますと、七九年の数字で言いますと、四百ドル以下というところ、それから一千ドルから四百ドルというところにほぼ集中しているわけです。そして、一千ドル以上なんというのは数%にしかすぎないわけです、いままでの配分は。韓国に四十億ドルにせよ六十億ドルにせよぽんとやると、その配分を大きく変えて、そして本来鈴木総理大臣が一番必要だと言っている後発開発途上国に対する援助というのがきわめてカットされるか、他のASEAN諸国に対する援助がカットされるか、いずれにしても財政が大きい中で韓国だけにこういう経済協力を行うというのはやはり大変問題なわけです。  そこで、企画庁長官にちょっと来ていただいているので一言だけお尋ねいたしますが、韓国との関係は、これは韓国が力をつけてきたからだんだん民間ベースに移していくんだということを従来何回も確認しているのじゃありませんか。
  214. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 昨年の秋、日韓閣僚会議がございましたが、その三年前に第十回の会議がございまして、その際は、韓国も中進国になってきて経済も大いに発展したので、これからは韓国との経済協力は民間を主体にやっていこう、こういうことを共同声明で出しております。その声明は、いまなお生きておると私ども考えております。
  215. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、河本さんにもう一言お尋ねしたいのです。  いま私が指摘したような点、五年間倍増という計画の中で、いずれにせよ韓国がどうなるかというのはこれからの話なんですが、四十億ドルとか六十億ドルとかいいますと、これだけで倍増五年間のトータルの二割も三割も占めてしまうわけです。私は、日本経済協力というものをいわば国際社会に対する責任を果たすものの一つとして考えておるならば、何も経済的に力のついたこういう国に日本経済協力の二割も三割もぽんとやるというのは、いろいろなしわ寄せがいろいろな国に行くわけですから、基本的にそこら辺のところは経済協力のあり方として政府の中で十分に検討すべきだというように思いますよ。これは河本さんいかがですか。
  216. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 わが国経済協力の内訳を見ますと、ほぼ七割がアジア地区になっております。したがいまして、倍増いたしますと二百十四億ドルという数字になりますけれども、従来の方針が続けられますとアジア地区で大体五カ年で百五十億ドル、こういう数字になろうかと思います。韓国はこれまでほぼ一年一億ドルぐらいずつ出ておったと思いますので、そういう数字等を参考にしながら、他国とのバランス、整合性等を考えながら結論を出すべきである、私はこのように考えておりますが、現在の話し合いの内容も、政府援助を中心とする経済協力、それと輸銀を中心とする民間経済協力、この二つの方法で進められておるように聞いております。したがいまして、これまでの方針を堅持しながら韓国との経済協力をどのように進めていくかということは、これから決まることでございますが、私はいまおっしゃるような数字にはならぬ、こう思っております。
  217. 横路孝弘

    ○横路委員 ひとりそういうことで外務大臣の方も、大蔵大臣はこの間答弁いただいたから結構ですが、考えていただきたいというように思うのです。  それでもう一つ、時間がなくなりましたが、パキスタンに対する援助についてひとつお尋ねをしたいと思うのです。  鈴木総理大臣が西ヨーロッパに昨年行きましたときの記者会見で、援助を受けたら核開発をするというのは常識離れだという発言をいたしまして、これは暗にパキスタンが核開発をするとかしないとかいううわさがあるものですから、日本からの経済協力で金をやって余裕ができて核開発をするのでは、日本の核政策の立場、つまり非核三原則という立場からいっても問題だという御発言で、私は当然じゃないかというように思いますが、ここのところはどのようにお考えですか。
  218. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 またちょっと先によけいなことを言わしていただきます。ちょっと参考に申し上げるだけです。  韓国の関係はいろいろいまやっておるのですが、一昨年の韓国の非常に経済の落ち込みの実情からする切なる要望もあるので、そういうようなことも勘案しながらいま具体的に詰めておる、こういうことでございます。  それから、パキスタンに対する援助で、パキスタンが核開発をしておる、そういうところに援助はどうか、そういう御批判ではないか、こう思うのでありますが、パキスタンとの従来の二国間の関係、またパキスタンの現在の社会経済状況、そういうものを考えながらどのように経済協力をするのだ、そういう基本には間違いがないわけでございます。ただ、お話しのような点につきましては、わが国が被爆国としての苦い経験を持っておる、そういう立場からすると、核開発をしておるということにつきましてはマイナス要因として頭に置かなければならないと思いますが、しかし、現在パキスタンの南西アジアにおける国情からして、また周辺の状況からいたしますと、経済協力の必要性があるのではないかと思っております。
  219. 横路孝弘

    ○横路委員 問題は、たとえばパキスタン、トルコ、あるいはスーダンというようなところをアメリカは挙げているわけで、日本も多分そういうアメリカ側の要請に基づいてこれを行っているのではないかと思いますが、ただ、たとえばパキスタンに対するアメリカの武器援助がインドを刺激をしている、トルコに対するてこ入れがギリシャを刺激をするというように、アメリカの単純な対ソ政策というのが実は周辺諸国間の緊張を高める役割りを他方で果たしてしまうということも現実の政策としてあるわけでございまして、私は、その辺のところも十分に考えていただきたいと思います。  時間がございませんので、最後に、これで終わりにいたしますが、いずれにせよ、経済協力も金額として大変大きな額になっていっています。財政も厳しくなればそれなりに、いまのところ私は国民のコンセンサスがあると思いますが、これからも経済協力を有効に行うために、これは外務省の方でもいま一つ一つのプロジェクトについてのチェックを行っているようでございますが、そのチェックの結果をぜひ国会にも公表していただきまして、ただ、これはいろいろな外国との関係でございますから、その国のいろいろな事情にあるいは触れるような問題もあろうかと思いますが、しかし、われわれの審議の参考にさせていただくためにその点検の結果をぜひ公表して、国会に報告をしてもらいたい。最後にひとつ御答弁願いまして、私の質問を終わりにします。
  220. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 評価の点でございますが、国際協力事業団あるいは経済協力基金の協力を求めて、現在ASEAN諸国等についての、また南西アジア等につきましても同様でありますが、評価を行っております。そして、いまの御要望の公表ということにつきましては、これらの評価の結果をまとめて公表する考えを持っております。
  221. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて横路君の質疑は終了いたしました。  次に、中路雅弘君。
  222. 中路雅弘

    中路委員 最初に、先日行われました建国記念日の奉祝式典の問題について、幾つか御質問したいと思います。  新聞等の報道によりますと、ことしの総理府と文部省が後援された建国記念日奉祝式典は、かつて総理府が後援を決定される際に宗教的な色彩が強いというので、会場も明治神宮会館から国立劇場あるいは日本青年館に変えられたわけですが、昨年から再び会場も明治神宮会館へ戻して、ことしもまたここで行われています。昨年と同様に、式典に先立って紀元祭をとり行って、この式典が紀元祭という明治神宮の宗教行事と連動して行われているわけですが、それだけではなくて、昨年の黙祷にかわって、式典次第を見ますと拝礼という宗教的な儀式もあらわれてきています。  主催者、奉祝の運営委員会の団体のほとんどが、天皇の元首化とか自主憲法制定、特に、この式典が改憲運動の重要な一環だといろいろ公言している団体も中心になっているわけですが、その中で黛運営委員長が、これは新聞でも報道されていましたが、出席されました五人の閣僚のうち総務長官、文部大臣外務大臣はきょう御出席ですけれども、その前で、八紘一宇の精神を賛美するあいさつもやっておられるわけです。総務長官は当日、この委員長のあいさつの後、祝辞を述べておられますが、黛運営委員長が賛美した八紘一宇という精神についてどのように理解されていますか、総務長官に最初にお尋ねしたい。
  223. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 お答えをいたします。  御指摘の発言でございますが、黛委員長個人として八紘一宇という精神は友愛と協調の精神であると述べられましたので、私としては、その趣旨は御指摘のようなものではないと理解をいたしております。     〔委員長退席、堀内委員長代理着席〕
  224. 中路雅弘

    中路委員 文部大臣にお聞きしますが、文部省はかつて戦前、この八紘一宇ということについてどのように教育されておられたか、御存じですか。
  225. 小川平二

    ○小川国務大臣 戦前にこの言葉についてどのような教育をいたしておったか記憶いたしておりませんが、会合の席上、個人の発言としてこの言葉が使われたことは事実のようでございます。ただ、この言葉を引用することによって戦争を肯定するというような論旨でなかったことは明らかでございますので、格別問題にするに足らない、こう考えております。
  226. 中路雅弘

    中路委員 戦前の国定教科書を持ってきたんですが、修身の教科書ですが、その中で八紘一宇について述べています。「八紘(あめのした)を掩(おほ)ひて宇(いへ)と為(せ)む。」という八紘一宇ですが、その八紘一宇の一番のあらわれが大東亜戦争だと戦前の国定教科書で述べているわけです。「大東亜戦争は、そのあらはれであります。大日本の真意を解しようとしないものをこらしめて、東亜の安定を求め、世界の平和をはからうとするものであります。私たちは、国の守りを固め、皇軍の威力をしめして、道義を貫ぬかなければなりません。」ずっと書いてありますが、大東亜戦争がこの八紘一宇の最大のあらわれなんだということを、私たちが戦前に習った国定教科書で述べているわけですが、文部大臣、思い出していただけませんか。いかがでしょうか。
  227. 小川平二

    ○小川国務大臣 いま朗読なさった文章については私、存じておりませんが、大東亜戦争を理由づけるために、正当化するためにこの言葉が引用されておったということは、事実だと存じます。
  228. 中路雅弘

    中路委員 先ほど総務長官は、友愛と協調の精神だとおっしゃいましたけれども、黛委員長は新聞記者の会見でもこの八紘一宇の精神、戦前の精神のこととして話しておられるわけですね、この教科書で述べておる。そして、いま神武建国とかあるいはこの八紘一宇、こういう戦前へのアレルギーが強過ぎるんだというふうに語っておられるわけですが、この委員長が八紘一宇ということをこういう意味で使っておられることは事実なわけです。総務長官もその席に出席をされておったわけですが、こうした意味での黛委員長発言、これはどうお考えですか。肯定されますか。文部大臣、それから総務長官、両方。
  229. 小川平二

    ○小川国務大臣 黛委員長は、あいさつに際して神武天皇に言及いたしましたときに、神武天皇は建国の事業を達成する際に自分の理想として八紘一宇ということを言っておられる、ただ、この言葉は本来平和主義の理念を言おうとした言葉である、こういうことを言っておるだけでございまして、重ねて申しますが、この言葉を引用することによってかつての戦争を肯定するというような言い方をしておりません。したがいまして、さして問題にするに当たらない、こう考えております。
  230. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 小川文部大臣と同じ考え方でございます。
  231. 中路雅弘

    中路委員 大変危険な発言がいま——運営委員長が言っている、いわゆる戦前のアレルギーが強過ぎる、まさに戦前の八紘一宇の精神を肯定されるような発言が続いているわけですが、もう一度お伺いしますが、この八紘一宇の精神、いわゆる黛委員長の言っている精神というのは、現憲法に照らしてこれは肯定されるものですか。
  232. 小川平二

    ○小川国務大臣 八紘一宇という言葉をこの文字に即してどう解釈すべきかは存じませんが、これが平和主義の理念を表現した言葉であるというのも一つの解釈でございましょう。憲法にこの言葉自体がずばり抵触するなどとは全く考えておりません。
  233. 中路雅弘

    中路委員 戦前の国定教科書で、八紘一宇というのは、大東亜戦争がそのあらわれであって、皇国臣民は、大御心を安んじ奉るために、断固として皇軍の威力を示さなければならないというふうに述べているわけです。これ自身も詭弁で、肯定されるということは、私は、改憲を中心にした団体が集まっているこの集会に政府が後援する、憲法を厳守しなければならない閣僚が出席をする、大きな問題だと思いますが、もう一点お伺いします。  この式典を後援された総理府と文部省ですが、それぞれ総理府、文部省の大臣にお伺いしますが、後援をされる場合の承認基準というのが各省にあるわけですね。総理府は、その後援等の基準はどういう基準ですか。文部省はどういう基準を持っておられますか。
  234. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 お答えをいたします。  承認基準は、「総理府所管行政の推進、普及または啓蒙並びに国民の生活、教養の向上に寄与する行事であること。但し、営利を目的とするもの及び政党色や宗教色のある行事を除く。」「行事等が広い地域を対象とするものであり、資金計画が十分なものであること。」以上であります。
  235. 小川平二

    ○小川国務大臣 後援名義の使用を許可するに際しましての基準は、事業の目的が教育、学術、文化の普及向上に寄与し、また広い地域を対象として行われるような規模の行事であること、これが基準でございます。
  236. 中路雅弘

    中路委員 文部大臣は基準の後のところだけしか言ってない。文部省後援名義の使用許可基準の第一番に掲げられているのは、主催者については、「官庁」「地方公共団体」「公益法人及びこれに準ずる団体」であることと明記されているわけです。これの運営委員会は、いま言った官庁、地方公共団体、公益法人、どれに当たるのですか。
  237. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 文部省の後援名義使用基準につきましては、「主催者についての許可基準」と「事業内容についての許可基準」とございまして、ただいま大臣が申し上げましたのは後者の「事業内容についての許可基準」でございます。主催者につきましては、「官庁」「学校及び学校の連合体」「地方公共団体」「公共組合」「公益法人及びこれに準ずる団体(ただし宗教法人を除く。)」それから六が「新聞社、映画社等」でございまして、私どもとしては、ただいまの奉祝式典の団体は五の「公益法人及びこれに準ずる団体」というところに該当するかと存じます。
  238. 中路雅弘

    中路委員 それは全く詭弁で、生長の家だとかいろいろ団体が加わっていますけれども、これは公益法人ということは言えないんじゃないですか。全く許可基準にも合致をしない。  もう一度総務長官にお尋ねしますが、営利を目的とするものもいけない、宗教的な、政治的なものもだめだというわけですね。新聞でも報道されていますが、この式典で名刺広告がずいぶん集められているわけですね。営利を目的とするものの行事を除くとあるのですが、こうしたことは皆さんの基準からいっても許されることですか。
  239. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 この行事は、営利を目的としたものではないと判断をいたしております。
  240. 中路雅弘

    中路委員 現実に広告を集めたりして、これは新聞でも報道されています。政府後援で営利という新聞報道もされていますが、明らかにこうした文部省や総理府の承認基準にも反する、当てはまらないこういう団体を後援し、何よりも禁止をされている政党色、宗教色が年々大変エスカレートして強くなってきている。こういう問題について後援をする、あるいは閣僚が五人も出席をする。きょう出席以外の閣僚も、郵政大臣、労働大臣もたしか出席されています。  ちょうど後の質問の関係外務大臣おられますが、外務大臣も出席しておられますが、先ほどの八紘一宇の精神を賛美するこうした集会に閣僚として出席されて、いかがですか。
  241. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御質問を受けるのが私はわからないんですね。国民の祝日に喜んで出席をして祝う、それがどこが悪いのかということについては、私はちょっと考えられないですね。
  242. 中路雅弘

    中路委員 現職閣僚がこうした集会に出席するということは、憲法で言われている政教分離の原則にも明らかに反することでありますし、こうした式典の前には共産党の議員団で宮澤官房長官にも申し入れをしてありますが、政府の後援それから閣僚の出席はやめるべきだと思います。  最後に総務長官、もう一度御答弁願います。
  243. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 この祝日、お祝いの日は国民挙げて祝うべきものでありまして、総理府総務長官としてこういう席に出ることは、進んで出るべきものであると私は考えております。
  244. 中路雅弘

    中路委員 改憲を叫ぶこうした集会に現職の、憲法を遵守しなければいけない閣僚が出席をするということ自身が、大変憲法にも反する重要な問題だと私は思います。  重ねて抗議をして——この問題について、先ほど後援の基準等についてのお話がありましたが、要請しても文部省、総理府も基準の要旨しか出してこないんですね。ゆうべ持ってきた場合も要旨しか持ってこない。基準については、きちっと提出をしていただきたいと思います。  次に、きょうはF4ファントムの問題を少し時間をかけて御質問するつもりだったのですが、大蔵大臣の御都合等もありまして、一問二問、若干その関係防衛予算、軍事費の問題について、御質問を先にさせていただきたいと思います。  大蔵大臣また総理も、防衛予算については聖域にしないということのお話をしばしばされています。また、この国会でも大蔵大臣は、財政が非常に厳しい、五十八年度も緊縮型の徹底したゼロシーリングでやるという発言もされておりますが、この軍事費を聖域にしないというお考えは、もう一度この点確認をしておきたいと思います。
  245. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 防衛費だからといって、予算要求があればそれをまるのみにするというようなことはいたしません。そういう意味で私は、聖域としないということを言っておるわけであります。
  246. 中路雅弘

    中路委員 私が試算をしてみたんですが、この防衛予算、軍事費の五十八年度の問題を考えてみたんですが、五十七年度の防衛予算の中でのいわゆる後年度負担歳出分を除いたものに同じ伸び率を掛けて五十八年度計算をして、そして五十八年度すでに歳出化が決まっている後年度負担を加えてみたんです。五十七年度は前年に比べて七・七五%の増ですが、これで計算しますと五十八年度は一〇・八%、一〇%を超えるわけです。  五十七年度では、一般歳出の増加分は総額で五千六百九十六億円ですが、防衛予算、軍事費がこの三分の一、千八百六十二億を占めているわけですね。これが五十八年度になりますと、大蔵省の出された財政中期展望で見ますと、一般の歳出の増加分、これは非常に少ない、約千百億ぐらいしか伸びないという予想ですが、防衛予算の方は、後年度負担の歳出化分だけでも八千五百六十二億円になりますし、五十七年度は七千十五億ですか、だから、この後年度負担の伸びだけでも千五百四十七億円となりますから、今度五十八年になりますと、五十七年は一般の増加分の中の三分の一を軍事費が占めたんですが、五十八年度予想されるのは、一般の財源の増加分、これを軍事予算だけが全部食ってしまうだけではなくて、まだ四百億ぐらいオーバーしてしまうわけですね。だから、大蔵大臣ゼロシーリングとおっしゃっているんですが、ゼロシーリングどころではない、国民生活の分野はマイナスシーリングになってしまうというのが状況ではないかと思います。  特に、私はこの中で一点指摘しておきたいのですが、たとえば五十七年度出されている陸上自衛隊の分の予算の大綱を見ますと、十七項目あるんですが、金がついているものは一項目だけですね。あと十六項目は全部ゼロ、全部五十八年以降になっている。たとえば七五式百五十五ミリ自走りゅう弾砲三十四門、これもゼロです、五十七年の要求額が。七四式戦車七十二両、これもゼロです。装輪装甲車十両、これもゼロです。こうして十七、項目のうち十六項目までゼロです。  財政法上の論議はするつもりはないのですけれども、予算というのは、普通素人が考えれば、歳出があって収入があって成り立っていくんですが、これは契約承諾書みたいなものですね、実際出されている予算書というのは。そして、全部約束をしてやっておればあとは後年度負担。艦船の場合だと、年次別の支払いの計画は一応ありますけれども、これはそういう欄もついていない。こうして五十八年にはP3CやF15を含めて大きな後年度負担が加わって、このままで予想すれば、さっき言ったように国民生活の分野ではマイナスシーリングになってしまいます。  また、大蔵大臣はこの予算の折衝のときに、防衛庁長官と口頭了解ということですが、連続してP3C、F15についてはひとつ配慮しましょうということも約束されているそうですが、こういう状況では軍事費が事実上聖域とされて、国民生活が文字どおりマイナスシーリングになってしまうという状況じゃないですか。大蔵大臣いかがですか。
  247. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 防衛予算の査定に当たりましては、わが国の置かれている国際情勢、そういうものをまず念頭に置いて防衛力の着実な整備を図るという見地から、真に必要最小限度の経費を計上するという考えでやってまいりましたし、今後もそうしたいと思っております。しかしながら、これには時の経済事情、財政事情、これは当然入ってくるわけでございまして、他の費目とのバランスという問題もございます。したがって、いまのような伸び方をすればという一つの仮定のもとで中路委員のお話だと思いますが、これは五十八年度予算編成の段階において、全体から見てそれで防衛予算を決めていくということにいたしますから、防衛予算だけが十数%伸びるということには恐らくならないだろうと思っております。
  248. 中路雅弘

    中路委員 いま、減税の問題も非常に強い要求になっていることは御存じだと思いますし、特に国民生活の福祉や教育の予算がこれ以上削減されるということについては、大変大きな不安をみんな持っています。そういう点で、やはり国民生活を守っていくという点でも、先ほど軍事予算、防衛予算は聖域化しないということを繰り返し言っておられるわけですから、私はこうした国民の要求を実現していく上でも、やはり防衛論議もありますが、生活の立場から見ても、軍事費の問題の大幅な削減なしにこの要求は実現できない。そういう点で、先ほどお話ししましたけれども、来年度の予算についても、一応口頭了解という形ですけれども配慮もするという約束をされている。こういうことはきっぱりとやめるべきだと思いますが、いかがですか。
  249. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 約束したわけではありません。防衛庁の方から、いろんな新しい正面装備についての後年度負担になる契約をしたいというふうなお話がありましたが、ある年度に集中することは財政上の見地から困るわけでございます。ところが、これについて、それじゃ残余については明年度においてあるいはそれ以降ひとつ認めてくれないかというお話がありました。これはもちろん、予算は単年度主義でございますから、お約束するわけにはまいりません。しかし、それが真に必要な、防衛力整備に欠くことのできないものであるかどうかを含めまして検討しなければなりませんが、防衛庁長官のお申し入れのことは頭に入れておきますという意味でございます。配意をいたします、頭に入れておきますと。
  250. 中路雅弘

    中路委員 防衛庁長官もおられますからもう一問お聞きしたいのですが、この防衛予算については、御存じのようにアメリカからは非常に、きわめて強い対日圧力というものがかかってきています。一つ一つ挙げませんが、たとえばザブロツキの決議案、五十七年防衛予算に対するヘイグの書簡、またアメリカの最近報道されましたが議会調査報告、これを見ますと、内政干渉とも言うべきものですね、この議会報告は。日本防衛予算はGNP二%を超さなければならないということをこの議会報告でも明記をされています。そうして、こうした論議の中心の問題はGNPの一%に焦点が当てられていますけれども、この要求の根拠は、去年の鈴木総理とレーガン大統領の共同声明の中の「なお一層の努力」ということがその根拠になっています。  防衛庁長官に一問お聞きをしたいのですが、これは昨年の十二月二十一日に、長官が就任された直後ですね、衆議院の内閣委員会で私がお尋ねしました。当時総理が国会で答弁されている、五六中業の作業に当たっては、GNPの一%を超えない方針のもとに「防衛計画の大綱」を達成する、この方針に変わりはない、山中議員への参議院での答弁ですけれども、この問題について防衛庁長官の見解をお尋ねしまして、防衛庁長官も、「総理大臣答弁されたとおり」だという、「総理大臣答弁のかさの中」ですからという答弁がありますけれども、この総理答弁、指示に基づいて防衛庁長官は今後進められていくお考えですか、改めてお聞きしておきます。
  251. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 総理の御答弁、またすでに閣議決定になっておりますGNPの一%以内ということを念頭に置きまして防衛庁としてただいま作業を進め、またその方針で進めてまいりたいと思っております。
  252. 中路雅弘

    中路委員 この問題についてはまた改めてさらに御質問したいと思いますが、時間も私お約束したものですから、この問題、一応これで切りたいと思います。  これから後、主としてF4の問題について、先ごろ公表されました防衛庁のF4の改修計画概要というのがありますが、この問題を中心にしてお尋ねしたいと思います。  最初にお聞きしたいのですが、F15ですね、導入されたF15について対地の攻撃訓練はやられるわけですか。また、計画はありますか。
  253. 塩田章

    ○塩田政府委員 F15はまだ入ったばかりでございますが、これから対地訓練につきましても行いたいと思っております。
  254. 中路雅弘

    中路委員 対地訓練も、F15ですが、やるといま御答弁なんですが、訓練時間の振り割りですね、空対空のあれと空対地の、こういうことは、計画はまだ具体的にされていませんか。
  255. 塩田章

    ○塩田政府委員 ただいまの点、今後決めることになります。
  256. 中路雅弘

    中路委員 いまF15の対地攻撃訓練をやるという御答弁ですが、これは私は重要な問題だと思うのですね。かつてF15が導入されるときの論議で、F15は主として迎撃が中心なんだ、爆撃装置はついているけれども、だから増田見解には反しないんだ。F4は爆撃装置を外したわけですね。F15は迎撃の能力が主なんですね。また、そういう任務で導入するんだからという御答弁だったと思うのですが、導入して、これからF15も対地攻撃訓練をやるということは、導入のときの国会の論議から言っても問題ではないかと思うのですが、いかがですか、もう一遍。
  257. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま先生の御指摘の中にございましたように、主として要撃戦闘機であることは事実そのとおりでございます。しかし、主として要撃戦闘機であるということは、対地攻撃能力をもちろん持ってもおりますし、訓練につきましても、これはそれに応じてある程度の訓練をするということは私は当然ではないかと思います。
  258. 中路雅弘

    中路委員 生田目空幕長が発言されている中で、このF15についている爆撃の能力はF4以上に強力な爆撃能力を持っているということを制服が言っているわけです。皆さんは、導入するときには、F15はF4よりもその能力では低いのだ、付随的なんだ、そして、これは迎撃が主として任務だからという国会の答弁の中でF15を導入されたのですが、きょうの私の質問で、このF15も対地の攻撃訓練もやるんだということになってきますと、F15の導入のときの皆さんの国会の答弁はごまかしということになりますね。
  259. 塩田章

    ○塩田政府委員 F15導入の当時の文書にも、付随的に対地攻撃機能を持っていることは述べてありますし、先ほど来申し上げておりますように、その対地訓練につきましても私どもは訓練をしていくことがむしろ当然ではないかと思っております。
  260. 中路雅弘

    中路委員 能力を持っているということは述べておられるのですが、しかし、その能力は、F4に比べて対地能力、爆撃能力は非常に低いんだ、しかも迎撃が専門、空対空が中心なんだから、制空がですね、だから、これは付随的にその能力はあるけれどもF4と違うんだ、F4は地上爆撃が加わっていたからこの装置は外すんだというお話だったのですが、そういう詭弁で国会を通しておいて、今度は爆撃の訓練もやるんだと言うことは、いまF4のことが問題になっていますが、F15の導入の際の皆さんの導入の仕方についても、国会自身の論議をごまかして出てきたということになるわけですね。(「二重のごまかしだ」と呼ぶ者あり)これは、いま後ろからありましたけれども、二重のごまかしということになって、F4とF15を交互に使い分けながら、詭弁を使ってこのF4からの爆撃装置、この復活をやる、それからF15も爆撃訓練をやるということになると思うのですが、防衛庁長官、いかがでしょう。
  261. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども申し上げましたけれども、五十三年三月四日の衆議院予算委員会に提出いたしました資料でも、「航空自衛隊の有する支援戦闘機の数は、必ずしも十分でないので、これを補うため、要撃戦闘機は、付随的に対地攻撃機能を有することを必要とし、従来とも限定的ではあるが、この機能を維持して来たものである。」と述べました後、「F−15も、ある程度の対地攻撃機能を付随的に併有しているが、」云々とありまして、このことを当然に当時の文書でも明記しております。私どもは、この付随的な対地攻撃機能は持ったものをF−15は当然持っていることをお認めいただいた上で採用をお認めいただいていると思っておりますし、そのための訓練をすることは当然ではないかと思います。
  262. 中路雅弘

    中路委員 いまの御答弁、全く納得できないですね。これは、能力について、導入してから後制服がたびたび発言していますけれども、F4よりも爆撃能力は強力なんだということを言っているわけです。F4の爆撃装置を外すならば当然F15も問題になるわけです。こうしてごまかして、その場で国会をごまかして通過させる、導入する、これは全く許せないことだと思います。  もう一つお尋ねしますけれども、F16ですね、F16について、これはスイングファイターということで最近言われていますけれども、F16がどのような能力を持っているか、簡潔にお願いします。
  263. 塩田章

    ○塩田政府委員 F16でございますが、乗員は一人、全長十四・五メートル、全幅九・五メートル、全高五・〇メートル、最大速度二・〇マッハ、最大推力一万八百キログラム、爆弾搭載量十九発、ASMはなし。これは日本のことですから当然——アメリカの飛行機ですからございません。最大航続距離三千七百キロメートル、以上でございます。
  264. 中路雅弘

    中路委員 私の質問に全然とんちんかんな答弁ですが、スイングファイター、スイング、振り分けですね。スイングファイター構想というのはアメリカの議会でもやられていますが、F16の能力の最も特徴はスイングファイター、スイング戦闘機だということを言っているわけです。振り分けなんですね。私はこの問題について、能力についてお聞きしておるのです。
  265. 塩田章

    ○塩田政府委員 お尋ねの御趣旨がよくわかりませんけれども、多用途目的機であるということを御指摘になっているかと思いますが、私どもそれ以上のことはよくわかりません。
  266. 中路雅弘

    中路委員 後でお尋ねしますけれども、このF16からあなた方はこの改修計画で火器管制レーダーを取りつけようというわけでしょう。そのF16について、能力についても防衛局長がほとんど知らない。この公表されたF4の改修計画の中で言われている火器管制レーダーがどういう能力を持っているかということも十分御存じない。あるいは隠しておられるということの証明じゃないかと思うのです。スイングファイター、文字どおり空対空と空対地、このどちらにも使える戦闘機だということから、振り分け、スイング戦闘機だということも言われているわけです。空対空はF15にはやや及ばないけれども、特に空対地、地上爆撃の任務は大変大きな爆撃能力を持っている。空対地の爆撃能力については大きな役割りを持っているということを、私きょう持ってきたのですが、アメリカの上院の軍事委員会で詳しくF16の性能について空軍の研究開発部長が証言をしております。いま触れました、F16が空対空の能力とともに特に地上爆撃能力について非常に大きな役割りを果たす能力を持っている、これは確認されますか。
  267. 塩田章

    ○塩田政府委員 空対地につきましても相当の能力を持っているものであるということは承知いたしております。
  268. 中路雅弘

    中路委員 二十日に公表された防衛庁のF4ファントムの改修計画、この計画の中には火器管制レーダーにいまお話ししましたF16のAPG66を搭載するということになっていますが、この公表された防衛庁の文書を見ますと、F16の火器管制レーダーを導入するのにルックダウン能力ということをここで挙げています。いわゆる低空の監視能力の向上ということをその理由に挙げておられるわけですが、これは全くおかしいと思うのですね。F16の火器管制レーダーを搭載するのに、ルックダウン能力の向上だけを理由に挙げているということは私は全くインチキだと思うのですが、他の能力向上の理由について説明していただきたい。
  269. 塩田章

    ○塩田政府委員 F16のAPG66レーダーを採用いたしましたことば、主たるねらいといたしましてルックダウン能力であるということは従来から御説明を申し上げてきたとおりであります。  そのほかにどういう能力があるかというお尋ねでございますが、いまのルックダウン能力のほかに目標地点までの距離、方位等をはかるという能力がございますけれども、飛行機能も航法におきましては有効な能力でございますけれども、このことが対地攻撃という点では直接にそんなに意味のあるものではないというふうに私どもは理解いたしております。今度の私どもの主たるねらいがルックダウン能力にあるということは従来御説明申し上げたとおりであります。
  270. 中路雅弘

    中路委員 もう一度ちょっと戻りますけれども、F16というのは七九年の一月に実戦配備された攻撃機でありますけれども、このF16の、ミッションについて、アメリカの議会で、上院の軍事委員会でスレー空軍研究開発部長が詳しく述べています。その中に、このF16というのは空対空の航空打撃力ではF15を補完し、この次に、近接航空支援、戦場阻止能力、飛行場攻撃能力などの地上攻撃能力ではA10、これは対戦車用の攻撃機ですが、A10攻撃機やF4、F111爆撃機を補強するということで地上攻撃能力が大変高いということを明白に述べていますが、F16の火器管制レーダーでこうした能力向上が図られるということではありませんか。
  271. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま御指摘のような能力をF16が持っているということでございますが、いまの御指摘のような能力は、いずれもF16の持っておりますコンピューターによるものでございまして、今度私どもがF16から取り入れようとしておりますレーダーは、先ほど申し上げましたように、そういった機能には直接の関係を持つものではないということでございます。
  272. 中路雅弘

    中路委員 そういう答弁をされるだろうと思っていたのですが、これは全くごまかしなんですね。  いま持ってきていますこれは、このF16そのものについてアメリカの議会で詳しく能力を言っているわけですが、その中で、いまの火器管制レーダーについてどういう能力がつくかということを詳しく述べているのです。私はその点を要約して翻訳したところを読みますと、この火器管制レーダーがどういう能力を持っているかというところですが、火器管制レーダーを持っている。それからあと、それは射程は小さいが、空対空戦闘においても大変威力があり、それから正確な空対地爆撃能力を与える。それらの同様の特性はA10を補強するために許された地上攻撃能力を与えるとともに、飛行場攻撃能力同様戦場阻止能力を与える。その意味でF4、F111を補完する。結局、F16はもちろんF4の主たる地位を後継するということで、F4の後継機はF16だということをアメリカの議会証言でも言っているわけです。そして、いま読みましたように、このF16の火器管制レーダー、防衛庁が今度F4の改修で取り入れようとしている火器管制レーダーがいま言った能力を持っているということを言っておるわけです。ルックダウン能力だけの向上なんということはとんでもないごまかしなんですね。いかがですか。
  273. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、F16におきましてもF15におきましても、爆撃能力の問題はコンピューターによるものでございまして、今度私たちが取り入れようとしているF16のレーダーもF15のレーダーと同等程度のものでございまして、先生が先ほど来御指摘のように対地攻撃能力がこのレーダーによって特に意義があるものではないと私どもは承知いたしております。もちろん、対地攻撃能力の面でこのレーダーが全然関係がないとは申しません。申しませんが、主として爆撃能力、対地攻撃能力の計算はコンピューターによるものでございまして、レーダーによって能力が特に高まるといったような、そういう結びつきのものではないというふうに私どもは承知いたしております。
  274. 中路雅弘

    中路委員 コンピューターの話は後からしますけれども、この防衛庁の公表された改修計画にいまおっしゃったことが書かれているわけです。F15が搭載しているAPG63型に比べ、今度の改修計画、F4J改のAPG66、F16からとるこのレーダーの射程、精度はほとんど差がないと書いてある。差がないと書きながら、なぜF16から持ってきたのかということがここには明確に書いてない。だから、私たちは、アメリカの開発した、アメリカの議会で証言をしているF16のミッションに基づいて詳しく皆さんにお尋ねしているわけです。それを見ますと、いま言ったように、F16の火器管制レーダーは地上爆撃では大変な能力を持っている。そうでなければ、なぜF15のコンピューターを入れて、火器管制レーダーをF16から持ってくるのですか。いかがですか。
  275. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまも申し上げましたように、F16のレーダーはF15のレーダーと性能的にほぼ同等のものであるというふうに申し上げましたが、しからばなぜF15のレーダーを採用しなかったのかということでございますが、サイズとか重量の点で、今回のF4EJの改修に当たりまして、搭載可能なもののうち、性能、整備性、所要経費等を勘案いたしまして、最も適当と判断されるいま申し上げましたAPG66を採用いたしたわけでございます。  具体的に申し上げますと、F15のレーダーは今度のF4の機体の中に入らないという点もございまして、F15のレーダーを採用することはできなかったということでございます。
  276. 中路雅弘

    中路委員 いま機体の中に入らないということをおっしゃいましたけれども、まさにF4の後継機がアメリカが言っているようにF16なんですね。それを、F15とF4の改修とをいつも比較して、能力がどうだとかF15の範囲内だとか、そういうことでこの計画をごまかそうとしているわけです。まさに系列から言えば、F4の系列というのはF16にいくわけです。だから、F16のすぐれた火器管制レーダーをここに持ってきているということになるわけであります。私は、こうした能力について知らないというよりも、防衛庁は隠して、そして、ただルックダウン能力がこれで向上しますということでこの改修をごまかそうとされているというふうに思うわけですが、その点でこの公表された改修計画そのものが全くでたらめな文書だと思います。  いまコンピューターの話が出ましたけれども、F15のセントラルコンピューター、これと、F16から導入してきた火器管制レーダー、これがリンクされたときに大変な能力を持つわけなんです。そういう意味で、いわばファントム機が、片方では迎撃能力、制空能力としてはF15の方に発展し、そして地上爆撃能力もつけたいわゆるスイング戦闘機としてはF16の方へ改造され、つくられていった。この両方の能力のいいところ、F15のセントラルコンピューターとF16の火器管制レーダー、これを今度連動させて改修しようということじゃないですか。しかも、それにF15あるいはF4にもなかったASM1という空対艦ミサイル、これも新しく装備するということになるわけですから、これは改修というよりも全く違った機能を持った航空機をつくり出していくことになるわけですね。  防衛庁長官にお尋ねしますけれども、この公表されたF4改修計画、ここで述べられているのは、F15やF16を開発して持っているアメリカ自身が、その能力について議会で証言しているのと全く違う、でたらめな能力の見解をここで述べて改修計画を出している文書ですが、防衛庁長官、これを一度撤回させて、改めてその改修の能力を明らかにしてほしい。いかがですか。
  277. 塩田章

    ○塩田政府委員 F16のレーダーとF15のコンピューターを今回搭載しようとしていることは事実でございます。  先ほどから何回も申し上げておりますように、そのレーダーの方はルックダウン能力を主とした改修でありますということを申し上げております。対地爆撃能力の計算ができるようになりますのは、セントラルコンピューターの方の能力によるものであります。  今度の改修はまるきり違った機種をつくるようなものではないかというふうにおっしゃいましたが、現在のファントムのスピードでありますとか上昇力でありますとか旋回能力でありますとか、飛行機そのものを改修するわけでは全然ございませんで、中身を、延命に伴いまして、近代的なF15の持っておりますような機能に少しでも近づけて延命をしていきたいという私どもの計画でございます。  今回この改修が成功いたしましてF4改、そういう名前になるかどうかわかりませんけれども、F4改になりましても、対地爆撃能力につきましてはやはりF15の方が総合的には上でありまして、先生のおっしゃいますように全然違った飛行機を新しくつくるようなものだというような御指摘、あるいは特にF16のレーダーを入れること、そのことが対地爆撃能力の向上に直接結びつけて考えておるのだというふうな御指摘は私は当たらないと思います。
  278. 中路雅弘

    中路委員 御指摘は当たらないと言っても、私は、F16のミッションについて中身を皆さんに話して確認を求めているのですよ。防衛庁がそういう能力を、じゃアメリカの議会でF16のミッションについて述べていることを皆さんは否定するのですか。     〔堀内委員長代理退席、委員長着席〕
  279. 塩田章

    ○塩田政府委員 F16自体の、ミッションにつきまして、私は何も否定いたしておりません。
  280. 中路雅弘

    中路委員 重ねて聞きますけれども、F16の皆さんが導入しようとしている火器管制レーダーの能力について、私は議会証言からお話をしている。それについて御存じですか。改めてお聞きしている。
  281. 塩田章

    ○塩田政府委員 その点につきましては、先ほど来申し上げておりますように、私どもは対地攻撃能力のアップにつきまして、F16のレーダーの採用ということが無関係だとは申しませんけれども、直接的に結びつくものではないというふうに理解をいたしております。
  282. 中路雅弘

    中路委員 私は部分的にお話ししていますが、これは空軍省のスレー研究開発部部長の証言です。F16ミッションについて一応訳したものですが、一九八〇年代の戦術部隊を構成する特殊化された戦闘機を補強するということで、航空打撃力、これは空対空についてはF15を補強する、地上攻撃力では近接航空支援、これはA10を補完できる、地上阻止、飛行場攻撃ですね、これではF4、F111、これは爆撃機ですが、これを補完するということがこのF16ミッションで明確に書かれています。そして、先ほど読みましたように、この中の火器管制レーダーは、特に地上の大変大きな爆撃能力を持っているということがこのF16ミッションで明確にされているわけです。  皆さんは、少なくともF16の火器管制レーダーについては今度取りつけようというわけですから、その能力について全く知らないで取りつける、それは全くごまかしなんですね。いま言ったF16のミッションについて、火器管制能力について御存じなんですか。
  283. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま御指摘の点は、F16の改良計画を現在米空軍が持っておるようでございますが、そのことをおっしゃっているのではないかと思いますが、それも私どもが承知いたしておりますのは、内容的には、レーダーによりまして空対空の能力アップを中心に考えておるという計画を持っておるというふうには聞いております。
  284. 中路雅弘

    中路委員 先ほどからお話ししていますように、F16のこの火器管制レーダーが導入されるということがどれほど大きな対地攻撃力を備えるかということは、F16のミッションで明らかなわけですね。それに今度の改修は、F15の航空打撃力、セントラルコンピューターですね、これとリンクをさせるということですから、先ほど違った機種をつくる、そんなことは考えていないと言われるが、明白に新しくF15のセントラルコンピューターとF16のこうした対地攻撃能力を持った火器管制レーダーを一緒にリンクをさせる、さらにそれにF4もF15も持っていないASM1というのを装備するわけですから、全く新しい機種の航空機をつくるのと違わないじゃないですか。いかがですか。
  285. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど来申し上げておりますように、今回の計画によりまして付加しようといたします能力につきましては、いまお話があったとおり私はそれを否定いたしません。特にASM1はF15にもないものであるということはそのとおりでございますが、飛行機そのものがF15に比べましてやはり一世代前の飛行機でございまして、そういう意味で、中身の能力アップをできる限り図ろうというふうに考えていま計画しておりますけれども、飛行特性そのものが変わるわけではございませんので、飛行機のスピードでありますとか上昇能力でありますとか航続距離でありますとか、そういうようなことは今回変えようとしておるわけではございません。あくまでも要撃戦闘能力を中心にいたしまして、地上爆撃能力の付随的な付加及びASM1の装置等を考えておるものでございます。
  286. 中路雅弘

    中路委員 もう一度確認しますけれども、答弁されている防衛局長は、いま持ってきていますが、このF16のミッションはごらんになっているのですか、承知の上でお話をされているのですか。
  287. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま先生が読んでおられる資料そのものは、私見ておりません。
  288. 中路雅弘

    中路委員 いまはっきりしたのですが、防衛庁が改修計画の中に導入されようとしている中心の問題である火器管制レーダー、この能力についてF16のミッションも読んでいない、見ていないということで、この改修計画の概要の中にこうした能力について書かれている。公表された文書は本当にお話にならない全くでたらめな文書だということが明らかになってきたのではないかと思うのです。  そういう点で、防衛庁長官はずっと座っておられますけれども、この前のテレビにもあなたは出ていない、国会でも全然答弁してない。防衛庁長官は物を言う責任者なのにどうなんですか。少し答弁に立ったらどうですか。
  289. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま、アメリカのF16のミッションに関します記述を読んでないのはおかしいではないかとおっしゃっておられますけれども、私どもが今度のF4の改修計画におきまして考えました点におきましては、そのようなF16の持っておりますミッションあるいはそれをどういうふうに改良しようかというふうなことは私ども関係がございませんで、私どもは、F16の持っておりますレーダーの能力に着目いたしまして、これを採用したいと申し上げているわけであります。
  290. 中路雅弘

    中路委員 だから、繰り返し言っているじゃないですか。皆さんが導入しようとしているのは、そのF16が搭載するAPG66レーダーでしょう。だから私は、このレーダーについてF16のミッションの中で詳しく述べているところを読んでいないでこのレーダーを導入するという計画は、全くでたらめじゃないかと言っているのです。
  291. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 今度のF4の改修にF16に使いますAPG団を選んだ理由でございますが、私どもが比較いたしましたのはF15のAPG63、それからF16のAPG66、F18のAPG65、この三つのFCSを対象といたしまして選んだわけでございますが、先ほど来防衛局長が言っておりますように、まずF15用のAPG63につきましては、これは容量が大き過ぎてF4の小さな頭のノーズのところにどうしても入らない、こういうことでございます。それから、F18のAPG65につきましても、これは入ることは入りますが、ばらさないと入らないということで非常に手間もかかります。そういう理由がございます。と同時に、一番大事なことは、今度選びましたF16のAPG66が価格的に一番安かったということが大きな決め手でございます。これは圧倒的に安いということを申し上げておきます。
  292. 中路雅弘

    中路委員 全くふざけた答弁ですね。私は能力の問題について質問しているのです。そして、防衛局長がF16の搭載しているこのAPG66レーダーについての能力も知らない、アメリカのそのミッションも読んでいないというお話ですから、それでどうしてこんな改修計画が出るのだということを聞いているのですが、いまの装備局長答弁は値段が安いと言うだけで、私はそんなことを聞いているんじゃないのです。能力について聞いているのです。あなたは読まれたのですか、このミッションについて。私がお話しした火器管制レーダーの能力について、装備局長は確認されましたか。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕
  293. 塩田章

    ○塩田政府委員 先生は盛んにアメリカの方の改良計画のことを言っておられるようでございますが、私どもは、アメリカの改良計画というものは、空対空の目標対処能力のアップということでアメリカが計画しているというふうに聞いております。  私たちは、先ほど来申し上げておりますように、F4の改修に当たりまして、いま装備局長が言いましたような理由でこのF16のレーダーを選びまして、そのレーダーによりまして低空対処能力のアップを図っている、こういうことでございまして、アメリカ先生御指摘の計画というものは、私どもには今回の選択に当たっては関係がないわけでございまして、先ほど来申し上げているような理由でF16のレーダーを考えたわけであります。
  294. 中路雅弘

    中路委員 一つこの問題で私、要請をしたいのですが、いまはっきりしたことは、このF16が搭載しているAPG66レーダーをこの改修でつけられるわけですね。重要な問題なんです。しかし、この能力について、もとのアメリカのミッションも見てもいないし、いま能力について御存じもない。その上でこうした改修計画が出されている文書ですから、私は、改めてこの改修計画についてはどういう能力を持っているのかということを報告していただきたい。それからでないと論議ができないという、いま状態なんですね。  私が言っているのは、F15のセントラルコンピューターの航空打撃力とF16の大変能力の高い対地攻撃能力を備えたこうしたものを二つミックスして、そうして今度の改修計画の中心が出されている、これはもう明らかに増田発言からも大きく変わるものですね。取り払った爆撃装置なんかよりはるかに能力が高いものを今度つけるわけですから、新しい機種をつくるのと同じじゃないかということを言っているのですが、読んでもいないということではこれは論議になりませんから、改めて防衛庁長官に、このF4改修計画概要というのは一遍撤回をして、能力について正確な報告を願いたい。いかがですか。
  295. 塩田章

    ○塩田政府委員 F16のミッション云々と盛んにおっしゃいますけれども、私たちは、F16の持っているレーダーにつきましてどういうレーダーかということを十分検討いたしまして、先ほど装備局長が言いましたような理由で選択をしたものでございまして、アメリカの方のF16の改良計画がどうであるかということは、私どもには関係がないということを先ほど来申し上げております。F16のレーダーにつきましては、その能力がいかなるものか、十分研究して今回の採用を考えたわけであります。
  296. 中路雅弘

    中路委員 読んでいない、見てもいないということで、こういうレーダーについて導入の計画書を出すということ自身が論議にならないわけです。もう局長はいいですよ。防衛庁長官、あなたは本当に答弁されないのですが、このでたらめな計画書は撤回して、もう一度正確な能力について報告してほしい。
  297. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 私は、私の事務当局を信頼もしておりますし、増田発言の、他国に侵略的攻撃、脅威を与えるようなものとの誤解を生じさせるおそれはないとも確信をしておりますし、わが国の基本的な防衛政策にのっとって本件F4の試改修を行うことが必要と判断をし、五十六年度に引き続き、五十七年度予算においても所要の経費を計上することとしたわけでございますので、撤回をする考えはございません。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕
  298. 中路雅弘

    中路委員 これはF4の取り払った爆撃装置と比べものにならないはるかに大きな能力を持つ、文字どおり新しい機種を導入するに等しい問題であります。そういう点で私は、増田見解、憲法の制約、そして攻撃的、侵略的なものは取り外すという見解からいっても全く許せない問題です。改めて、こうしたでたらめな計画は撤回をして、正確に能力も報告していただくということを重ねて要求をしておきたいと思います。  質問の最初のところでもうずいぶん時間をとってしまって、質問項目がほとんどできないのですが、あと短い時間で二、三お聞きしたいと思うのです。  極東有事問題に関連してお聞きしたいのですが、端的にお聞きをしていきます。  ガイドラインの極東有事ですね。三項、日本以外の極東有事の事態で日本の安全に重要な影響を与える場合と、ガイドラインの二項の一、日本有事のところの一、「日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合」、これは全く同じということはないにしても、重なってくるという場合が当然考えられるわけですが、いわゆる日本有事の事態、日本以外の有事の事態が日本に波及してくるという場合ですね。これはそういうことは十分想定されていると思うのですが、いかがですか。
  299. 塩田章

    ○塩田政府委員 私たちは二項におきまして、御指摘のように、日本が攻撃を受ける場合あるいは受けるおそれがある場合ということで、二項についての研究を現在すでに開始しております。  その研究に当たりまして、しばしば申し上げておりますように、一定のシナリオを設けまして研究をしております。そのシナリオの中で、どういう事態から日本が攻撃を受けるようになるかというようなことにつきまして、いまの御指摘ですと、三項の方の極東有事の事態と重なる場合もあるのではないかというお尋ねでございますが、私どもは、二項は二項として、日本が攻撃を受ける場合、または受けるおそれのある場合ということで、区別して研究をしていきたいというふうに考えております。  ただ現在、次の新しいシナリオにどういう時期にどういうシナリオで入るかというようなことはまだ決めておりませんし、どういうシナリオを採用するかということも、事柄の性質上申し上げることはできないわけでございます。
  300. 中路雅弘

    中路委員 では、もう少し一般的にお聞きしましょう。いわゆる日本以外の事態ですね、極東有事というような。そういう事態が日本に波及してくるという事態というのは当然考えられますね。日本有事の立場から考えても、直接日本が攻撃される場合もあるし、日本以外の事態が波及してくるという場合がありますね。
  301. 塩田章

    ○塩田政府委員 事態としていろいろな事態が考えられるという意味では、御指摘のようなことも言えるかと思います。
  302. 中路雅弘

    中路委員 いまお認めになったように、たとえば日本以外の事態、極東有事の事態が日本の有事の事態に波及してくる。まだ研究されていないということですけれども、このガイドラインで言う二項一のおそれの場合と重なる場合が出てくるというのは、当然これはお認めになるとおりだと思います。  このガイドラインの二項一のおそれの場合には、まだ二項二の日本有事ではないわけですけれども、この二項一の中で、おそれのある場合に警戒監視のための態勢からいろいろ段階区分がありまして、戦闘準備の態勢の最大限の強化に至るまでの日米の準備段階、作戦準備を実施するということが書かれてありますが、この中には当然情報活動の問題も明記をされています。  二月二日の予算委員会で不破委員が、六年前の内閣委員会での答弁で、P3Cの問題で、P3Cが手に入れた情報をアメリカに提供できるのは、当時、安保の第五条、日本有事の際の事態になったときだ、平時の場合は提供しないということを明確にされた問題について質問があって、P3Cが手に入れた情報を交換するのかという質問に対して、答弁されなかった。しかし、いまお話があったように、日本有事の場合、ここのガイドラインで言う二項一のおそれの段階とダブる場合があるということになれば、当然、二項一で言う情報活動、日米の共同作戦準備ということは行われるわけですから、この場合には、このガイドラインに明記されているように、情報の交換というのは当然行われるわけですね。
  303. 塩田章

    ○塩田政府委員 事態として重なる事態はあり得ると申し上げましたが、いずれにしましても、二項の、私たちが現在やっております共同作戦計画の研究からいきますと、どのような事態からわが国に波及するにいたしましても、わが国が直接攻撃を受けるような事態でありましても、要するに、わが国にとっておそれがある場合、防衛準備態勢にいつから入っていく、どういう段階で入っていくかということでございまして、それだけのことであろうかと思います。  それから、それに関連いたしまして、その段階における情報の交換という点でございますが、これは先般も私立の委員会でお答えいたしましたが、私どもの基本的なスタンスは、平時であると有事であるとを問わず、わが国はいろいろな情報を集めております。また、その集めた情報をいろいろ処理いたしております。処理といいますのは、特定の国と、どのような国とどういう種類の情報なら交換するとかしないとか、そういうようなことはふだん行っておりますが、事柄の性質上、平時であると有事であるとを問わず、情報の収集分析、その交換といったようなことを、その内容を公表する性質のものではないというのが私どもの基本的なスタンスであります。
  304. 中路雅弘

    中路委員 議事録がありますが、不破委員も、手に入れた情報を公開しろとか、情報の個々の中身について聞いているわけじゃないのです。情報交換をやるのかということを聞いているわけですね。  いま、重なる場合があるということを確認されましたから、そのおそれの段階では、このガイドラインでは、情報交換を含めて日米の戦闘準備の態勢の最大限の強化に至るまでの作戦準備の態勢をとるということですから、明白に、このおそれの段階というのはまだ日本は平時です、日本の場合ですね。自衛隊法の七十六条も発動されていない、五条も発動になっていない、日本有事でない事態ですから。ガイドラインの研究というのは、こういう極東有事で日本がまだ平時の場合にも、日米で情報交換を含めたこうした作戦準備の最高の段階ですね、準備をやるということを明記されておる、こういう研究なんですね。  ガイドラインの研究自身が、憲法にも大きく抵触する、集団自衛権の行使を禁止している、重要な問題が含まれている。なぜ不破委員に答えなかったのか。もし情報交換をやらないということになれば、ガイドラインそのものが、研究がもう最初から成り立たない。やるということになれば、こうした集団自衛権の問題も、不破委員が追及しています日本が戦争に巻き込まれる危険もある、こういう立場から答弁を断られた。私は、この前の答弁を拒否された問題はそういう点で非常に重要な問題だと思いますし、ガイドラインの持っている危険な性格をいまもう一つ浮き彫りにした問題ではないかと思うのです。このことを強く、時間もあれなので、この論議を深くやりませんが、指摘をしておいて……。  最後にもう一、二問、この問題でどうしてもお聞きしておきたいのですが、ガイドラインの研究の中で、極東有事の際に、まずどういう研究をやるかというごとは別にして、いままで防衛庁の皆さんが具体的に挙げているのは、たとえば自衛隊の基地の使用、共同使用という問題についてはおっしゃっていますが、現行法内で研究するというこの自衛隊の基地の使用というのは、現行法の地位協定、たとえばどの規定でやるのでしょうか。
  305. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いわゆる六条の事態での研究の内容についてはこれから始まるわけでございまして、いま私の答弁は一般的でございます。  そこで、仮に自衛隊の基地を共同使用ということになれば、地位協定の二十五条に書いてございます合同委員会というものがございます。合同委員会の手続を経て、二条によって、共同使用ということで二4(b)ということに相なると思います。
  306. 中路雅弘

    中路委員 いまの現行法では二4(b)だということを局長答弁されたのですが、提供している米軍基地からも極東有事の際に米軍が戦闘行動に出る。事前協議でイエスということになれば、これは日本の国の政府の意思が加わったことでありますから、これ自身が非常に重要な問題だと思うのですが、まして自衛隊基地、この共同使用ということになりますと、自衛隊の基地は本来目的が自衛隊のために滑走路をつくり、それで管制塔も持ち、隊舎も持っているわけです。この自衛隊基地を米軍が極東有事の際に共同使用する。いまおっしゃったように二4(b)ということになれば、管理権は日本にあるわけです、共同使用の形態が。その中で戦闘行動に出るということになれば、事実上この戦闘行動に加担するということになると思うのですが、これはいかがですか。
  307. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 二4(a)であれ二4(b)であれ、アメリカわが国の施設、区域を使いまして作戦行動に出る場合には、これは当然事前協議の対象になるわけでございます。したがって、その際に日本政府に対して協議があって、その場合、日本政府が応諾、イエスあるいはノーと言う、こういうことでございます。
  308. 中路雅弘

    中路委員 どちらも問題ですが、特に二4(b)の場合は、いま言ったように、日本に管理権がある。自衛隊に管理権がある基地から、その施設を使って戦闘行動に、事前協議でイエスと言えば参加するわけですから、これは当然国際法上からいってもわが国が報復攻撃を受ける、やむを得ない立場に立たされると思うわけです。この米軍による自衛隊基地の使用は、そういう点でも日本を文字どおり戦争に巻き込んでいく危険な事態になると私は思いますが、こうした自衛隊基地の使用は認めるべきでないと思います。外務大臣、いかがですか。
  309. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この事前協議で同意をしたからといって、その場合、攻撃を受けるということ、私は、国連憲章から見てそれは正当なものでない、やはりそれは違法の行為である、こう思うのです。
  310. 中路雅弘

    中路委員 おかしい。それは日本の管理権がある基地ですよ。米軍の基地は提供している基地ですね。これ自身だって、ここからイエスを言って出れば、政府の意思が加わっていくということになるわけですが、日本が管理している自衛隊の基地、自衛隊の目的のためにつくられた滑走路や自衛隊の施設を使って米軍が戦闘行動に入るということになれば、この戦闘に加担したということになるのは当然じゃないですか。いまの外務大臣答弁、大変重要だと思うのです。
  311. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 自衛隊の基地を使うというときには、共同使用の手続がとられてからのことだと思うのですね。それで、しかしながら、その基地から出ていったからということで、これは米軍が個別的なあるいは集団的な自衛権を行使することは、不当な行為があるからやるのでしょう。その不当の行為をやっておるのについて米軍が事前協議で出動した。しかし、それによって日本が攻撃を受けるという正当な理由はありません。
  312. 中路雅弘

    中路委員 いま外務大臣は私の質問の中心のところをそらしておるのですが、先ほどアメリカ局長が言ったように、現行法では共同使用の場合は二4(b)の形態になるだろうと言っている。二4(b)というのは、日本が管理権を持っているのですよ。米軍が戦闘行動に出るこの基地は、自衛隊の管理、日本政府の管理の基地から飛び出す。米軍の基地から直接出るのとまた場合が違ってくるのです。日本の国民の意思が、政府の意思が加わるのは当然じゃないですか。
  313. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほどから大臣から御答弁申し上げておるとおりでございまして、米軍の行動は、先生承知のとおりに、いずれにいたしましても、安保条約の第一条にも書いてございますように、国連憲章に従って行動する、すなわち憲章で禁止されておるような一般に武力行使というものが行われる、すなわち、侵略と一口に申し上げましたが、申し上げれば、侵略という事態が起こったときに、アメリカの、侵略を排除するための行動ということが大前提でございます。それで、その前提のもとでアメリカ日本の施設、区域を使用する場合に、その施設、区域が本来アメリカに、米軍に提供されているものでありましょうと、それとも、ただいま申し上げましたように二4(b)によって提供されたものでありましょうと、法的にそこは何ら差異がないわけでございまして、国際法の面から申し上げますれば、そういうアメリカ自衛権行使に対しまして、仮にもその対象になっております国がさらに米軍の基地を攻撃してくる、日本にある米軍の基地を攻撃してくるということでございますれば、これは、当初の侵略行為のいわば拡張、延長でございますので、先生のおっしゃられたような、その国が当然国際法上報復的な攻撃をやる権利が出てくるというようなことでは毛頭ございません。
  314. 中路雅弘

    中路委員 時間ですので終わりますが、大変重要な答弁だと私は思います。日本は全く有事じゃないんですよ。日本有事の事態じゃないんですよ。日本は平時であって、そして日本以外のところで事態が起きている。たとえば極東有事ですね。その際に自衛隊の管理している基地から米軍が戦闘行動に出ていく、これも合法化していくということになれば、全く戦闘行動に、極東有事の段階から日本有事ですね、日本が戦争にストレートに巻き込まれていくじゃないですか。私は、極東有事研究がこうした問題を、ガイドラインが研究をやられているというところに、大変危険な研究だと思うのです。まさに極東有事と日本有事を連動させて、アメリカは極東有事こそが本命なんだ。それは、日本自衛隊をどう共同作戦に参加させようかというところにこのガイドラインの最大のねらいがあるわけですから、まだ極東有事の問題、質問の本当に最初の一問のところで、残念ながら終わらざるを得ないのですが、時間ですから、このことを強く指摘して、終わりたいと思います。
  315. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて中路君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十四分散会