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1982-02-22 第96回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十二日(月曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君   理事 小宮山重四郎君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 鈴切 康雄君    理事 大内 啓伍君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       植竹 繁雄君    小渕 恵三君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       鴨田利太郎君    北川 石松君       後藤田正晴君    塩川正十郎君       砂田 重民君    瀬戸山三男君       登坂重次郎君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    宮下 創平君       武藤 嘉文君    稲葉 誠一君       大出  俊君    大原  亨君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       鈴木  強君    野坂 浩賢君       山田 耻目君    横路 孝弘君       竹本 孫一君    中野 寛成君       小沢 和秋君    金子 満広君       瀬崎 博義君    依田  実君  出席国務大臣         法 務 大 臣 坂田 道太君         外 務 大 臣 櫻内 義雄君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 小川 平二君         厚 生 大 臣 森下 元晴君         農林水産大臣  田澤 吉郎君         通商産業大臣  安倍晋太郎君         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君         建 設 大 臣 始関 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     世耕 政隆君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      田邉 國男君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         総理府人事局長 山地  進君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局審査部長 伊従  寛君         警察庁刑事局長 中平 和水君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 吉野  実君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         水産庁次長   山内 静夫君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省基礎         産業局長    真野  温君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁次長     柴田 益男君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       高橋  宏君         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君         運輸省船舶局長 野口  節君         運輸省船員局長 鈴木  登君         運輸省航空局長 松井 和治君         海上保安庁次長 勝目久二郎君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 吉田 公二君         建設省都市局長 加瀬 正蔵君         建設省河川局長 川本 正知君         建設省道路局長 渡辺 修自君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         消防庁長官   石見 隆三君  委員外出席者         会計検査院長  大村 筆雄君         参  考  人         (日本道路公団         総裁)     高橋国一郎君         参  考  人         (水資源開発公         団総裁)    山本 三郎君         参  考  人         (水資源開発公         団理事)    福沢 達一君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ————————————— 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   金子 一平君     宮下 創平君   澁谷 直藏君     北川 石松君   正示啓次郎君     登坂重次郎君   村山 達雄君     植竹 繁雄君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   武藤 山治君     鈴木  強君   木下敬之助君     中野 寛成君   渡辺  貢君     小沢 和秋君 同日  辞任         補欠選任   植竹 繁雄君     村山 達雄君   鴨田利太郎君     渡辺 栄一君   北川 石松君     澁谷 直藏君   登坂重次郎君     正示啓次郎君   宮下 創平君     金子 一平君   鈴木  強君     武藤 山治君   中野 寛成君     木下敬之助君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度一般会計予算  昭和五十七年度特別会計予算  昭和五十七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度一般会計予算昭和五十七年度特別会計予算昭和五十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大内啓伍君。
  3. 大内啓伍

    大内委員 私は、二月五日の本委員会におきまして、武器等共同開発について若干の質疑をさしていただきました。その際に、やはりこの問題の是非を論ずるに当たりましては、政府責任を持って統一見解を出す必要がある、あの段階におきましては、防衛庁長官長官としての定義というものは伺ったのでありますが、それだけでは問題は解決しないということから、政府としての統一見解というものをできるだけ早く整備するように、こういう要望を申し上げておきました。仄聞いたしますと、ほぼその検討も終了されまして、大体武器等共同開発についての政府としての統一見解というものがまとまったやに聞いておりますので、この際、防衛庁長官の方から御発表いただきたいと思います。
  4. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 お答えを申し上げます。武器共同研究開発定義についての見解は、次のとおりでございます。  一つ。武器共同研究開発という用語は、法令上の定義があるわけではございませんが、一般的に言えば、二つ以上のものが特定の武器研究開発について、必要な構想、技術技術者運用者資金試験設備等の面で協力して実施する活動を言い、協力態様により種々の形態がございます。すなわち、双方の技術をプールし、責任分担を調整し、かつ必要資金を分担するといった本格的とも言える形態のものから、協力がごく一部に限られるといった形態のものまでございます。  二番目。いずれにいたしましても、武器共同研究開発につきましては、それに伴って、武器輸出または武器技術提供が行われるということになりますならば、その部分につきまして、個々ケースに即し、武器輸出原則政府方針に基づいて対処することとなりますのは言うまでもございません。  以上でございます。
  5. 大内啓伍

    大内委員 そういたしますと、二月五日本委員会防衛庁長官がお述べになりましたこの定義よりか、もっと幅の広い定義がいま述べられたわけでございまして、当時の防衛庁長官定義とこれとは変わるものである、つまり当時の防衛庁長官が述べられた定義は消滅する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  6. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 お答えいたします。  先般の委員会で私がお答え申し上げましたのは、先ほど見解として御答弁申し上げましたもののうち、最も本格的な形態のものについて述べたまででございます。
  7. 大内啓伍

    大内委員 しかし、きょう述べられたのが正式の定義ですね。ですから、そういうふうに伺ってよろしいですね。あなたの述べられた先般の定義は、その中の一部にしかすぎない、こういうことでよろしいですね。
  8. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 そう御理解していただいて結構でございます。
  9. 大内啓伍

    大内委員 通産大臣にお伺いいたしますが、いま私は読み上げられたものを聞いただけでございますから、正確な文言は必ずしも把握しておりませんが、いま述べられました定義運用に当たりまして、武器輸出原則との関係についてはどういう見解をお持ちなのか、一応改めてお伺いをしておきたいと思います。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま防衛庁長官から御答弁いたしましたように、武器共同研究開発についてはいろいろ態様があるわけでございますが、これに伴いまして、武器輸出または武器技術提供が行われるということになれば、その部分について、個々ケースに即し、武器輸出原則政府方針に基づき対処するということになることは言うまでもないわけであります。
  11. 大内啓伍

    大内委員 この問題につきましては、私は、この前、ライセンス生産等の問題も引き合いに出しましていろいろ議論をいたしましたが、いまこの定義が述べられたばかりでございますので、後ほどそれをちょうだいして、十分吟味し、改めてこの問題については質問したいと思っております。したがいまして、きょうは、本論でございます次の問題に移らしていただきます。通産大臣、結構でございます。ありがとうございました。  主として防衛庁長官にお伺いをいたしますが、この十日から十六日未明にかけて、F4ファントムの問題について国会がストップしてしまった。これはやはり重大な事態を引き起こしたわけでありまして、防衛庁長官としても、担当大臣として責任をお感じになっていると思うのでありますが、私はその披瀝をいただく前に、防衛庁長官は二月十六日未明のこの予算委員会におきまして、F4試改修にかかる五十六年度予算、すなわち十三億円の執行停止をみずから言明されましたけれども、これは政党間の話し合いいかんによっては、それを不用額として凍結してしまう、あるいは処理してしまう、そういうこともいたし方ない、そういう決意を秘めて執行停止言明されたのか、その辺をまずお伺いしたいと思います。
  12. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 お答えを申し上げます。  先般、F4EJ試改修のための五十六年度予算執行を停止することといたしましたのは、本件をめぐりまして補正予算審議が中断するという異例事態となりましたので、この事態打開するために、きわめて異例措置ではございますが、F4EJ試改修のための契約締結を一時見合わせることとしたものでございます。
  13. 大内啓伍

    大内委員 いま防衛庁長官がお述べになりましたのは、補正審議も停滞してしまうという異例事態であるから、一時見合わせるという意味執行を停止した。私が聞きましたのは、その中の中心的な問題である、執行停止という以上は、各党間の話し合いにゆだねられる、あるいは二党間の話し合いにゆだねられる、そして話し合いがつかないその場合には、これが不用額となってしまうという場合もあり得る、少なくとも五十六年度の予算の性格からいって三月三十一日を越せばそういうことになる。ですから、そういう決意を秘めて執行停止をこの院で言明されたのかという一点を聞いているのです。いかがですか。
  14. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ただいま申し上げた事情で一時見合わせることにしたわけでございますけれども、本件につきましては、すでに国会議決を了さしていただいておりますので、所期の目的が達し得ることができますよう、一日も早く契約をできますようにいたしたいと熱望しておるところでございます。
  15. 大内啓伍

    大内委員 そうしますと、論理的には不用額にするという意思はなかった、こういうことですか。
  16. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 何とか防衛庁業務が円滑に執行できるように期待もし、希望もし、熱望もしておるところでございます。
  17. 大内啓伍

    大内委員 防衛庁長官自分予算について執行停止言明するなどということは、よほどのことでなければ言い得ることではない。しかも、この五十六年度予算審議中の予算ではない。すでに衆参の議決を経た、つまり国会意思によって決定された予算である。それを執行停止と言われる以上は、これはよほど重大な決意をもってしなければならぬ。あなたは、院の議決を経た予算をあなたの意思執行停止できると思っているのですか。
  18. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほど申し上げ、また同じようなことを申し上げるわけでございますけれども、異例事態打開のために、異例措置でございますけれども、一時見合わせた次第でございまして、一日も早く執行ができるように御理解を賜りたい、このように熱望し、また御期待を申し上げているところでございます。
  19. 大内啓伍

    大内委員 私の質問に正確に答えてもらいたい。これは非常に重要な問題なんです。場合によってはあなたの政治的な責任にも関することなんです。院の議決を経た予算をあなたが執行停止なんということが責任を持って言えるのですかと聞いているのです。いかがです。
  20. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 何度も繰り返してまことに申しわけありませんけれども、異例事態打開のために、一時見合わせたわけでございますけれども、すでに国会議決を了しておりますので、御理解をいただきながら一日も早く防衛庁業務支障がないように執行できますように熱望もし、御期待を申し上げているところでございます。
  21. 大内啓伍

    大内委員 それは答弁にならぬ。いいですか。内閣国会意思決定によってその執行をゆだねられた予算というものを執行停止する場合には、院の議決を必要とするのですよ。ですから、たとえばいま政府から出されている五十六年度の補正予算においても、約六百億円の行政費節約という問題が、これが事実上執行停止という形で節約が出されているのです。これは補正予算という形で院の議決を求めているじゃありませんか。あなたがもし自分議決していただいた予算についてこれを執行停止すると言うなら、内閣意思としてそういうことを申されているのでしょう。どうして補正予算を出してこないのです。口先だけで、その場限りで一時的にだけその執行停止をするということになったら、まさにごまかしじゃありませんか。どうして補正予算を提出してこないのです。それが論理的な筋道じゃございませんか。防衛庁長官、いかがです。これは想定問答集には出ていない。
  22. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 再三申し上げておりますとおり、すでに国会議決を了しているものでございまして、その執行は私の権限責任で行い得るものでございますが、本件をめぐって補正予算審議が中断するという異例事態となりましたこと、さらにまた、この機会に国民理解が得られるように引き続き御説明を申し上げて、円滑な形でこの予算執行を図りたいことなど、総合的に勘案をいたしまして、きわめて異例措置ではございますが、F4EJ試改修のための契約締結を一時見合わせることとし、現在本件契約関連業務を停止しているところでございます。私としては、本件予算は、いま申し上げたような事情でありますが、すでに国会議決を了しておりますので、政府として執行する責務もございますので、十分御説明を申し上げ、防衛庁業務の遂行に支障のないように、一日も早くこの契約ができることを切望しておるということを申し上げるわけでございます。
  23. 大内啓伍

    大内委員 できるだけ的確に私の問うていることに答えていただかないと、なかなか審議が停滞してしまう場合もありますので、問題をもっと十分把握して答えていただきたいと思うのです。  少し好意的に防衛庁長官答弁を整理してみますと、自分としては決まった予算だからこれを執行したい、そして防衛庁の正常な業務支障のないようにしたい。つまり裏返せば、この予算不用額にしたくはない、しかし一応国会の中で論議が出ているので、不用額にしない範囲で一時執行停止をしたい、こういう意思ですね。これは非常に好意的にあなたをバックアップしているんですよ。(「そうでもないよ」と呼ぶ者あり)じゃ、いじめましょうか。やりましょうか、それなら。本当にやりましょうか。そんなくだらぬやじを言うものじゃありません。いま本当に大事な問題で真剣勝負しているんだ。答えなさい。
  24. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 何度も申し上げますけれども、私の権限責任執行できるわけでございますけれども、異例事態でもございましたので、諸般の事情を総合的に勘案をして一時見合わせたわけでございますけれども、防衛庁業務執行支障がないように、一日も早く御理解を得ながら円滑な執行ができるように希望し、期待も申し上げているところでございます。
  25. 大内啓伍

    大内委員 私は、防衛庁長官にこの予算不用額にしたいのかしたくないのかという一点だけを聞いている。その答えができなければ審議なんかできるはずがないじゃありませんか。  ちゃんと命じてください。私が大事なことを聞いているのは、不用額にすることを防衛庁長官は望んでいるのか望んでないのかということを聞いているんだ。
  26. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ぜひとも年度内執行させていただきたいものと念願をしております。
  27. 大内啓伍

    大内委員 そういう希望を持ちながら、じゃ、どうして執行停止言明されたのですか。あなたは、この予算執行したい、そして防衛庁の正常な業務支障なからしめるようにしたい。じゃ、どうして執行停止をしたのですか。あなたが言明されたのですか、ここで。その理由をはっきりしなさい。
  28. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 このことも先ほど来申し上げておりますとおり、私の権限責任でぜひやりたいし、やらねばならないことでございますけれども、異例事態でございましたので、一時執行を見合わせて、円滑な形でこの執行年度内にできますように希望もし、期待もし、切望もしているところでございます。
  29. 大内啓伍

    大内委員 大体わかりました。そうすると、あの執行停止という防衛庁長官言明というのは、心にもない言明であった、そういうことですね。
  30. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 国会異例事態に対処するために、異例なことではございますけれども、一時その執行を見合わせたということでございます。
  31. 大内啓伍

    大内委員 先ほど来申されたことは、実は十二日の閣議でも防衛庁長官がずっと述べられたと伝えられたのです。つまり防衛庁長官言明された執行停止というのは、防衛庁の正常な業務に全く支障はない。つまり見通しとしても、また期待願望という意味でも支障がない。つまりそうした約束をしても、それは早晩ほごになるであろう、こういういわば相手を見くびった言明であった。これほど実は愚弄した話はないのですよ。ですから、方々から八百長的ではないかと言われるのですよ。つまり、そう約束しても早晩それはほごになる、そういう考え方に立っているというのがあなたの先ほど来の説明でしょう。それ以外に受け取りようがないじゃありませんか。それじゃ、それを交渉した相手は一体どうなるのです。防衛庁長官、いかがです。
  32. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 閣議での発言は、いまも申し上げますとおり、ああいう事態になりまして、まだこの委員会で私が執行停止することを申し述べる前の段階のことでございましたけれども、こういう状態になっております、しかし、何とかして防衛庁業務執行支障がないように、ぜひこれからも善処をしてまいりたいという防衛庁長官としての私の願望閣議で申し述べまして、そのことが閣議でも御了承いただいたということでございます。
  33. 大内啓伍

    大内委員 つまり初めから執行停止などという、つまりその予算不用額にするなどという意思はない、しかし、一応国会対策執行停止というものを言ってみる、そしてそれは早晩、つまり三月三十一日以前に解除になる、だからその間はざんごうの中に入ってそれはがまんする、そしてその結果、院によって決定されたこの予算、それを執行停止などということによって愚弄しても、そんなことは関係ない、そういう姿勢ですな。あなたは防衛庁長官として一体どういう責任を感じてそんなことを言っておるのです。これは他党を愚弄し、そして院の議決を愚弄し、そして国民を愚弄した言明じゃありませんか。一時的な方便じゃありませんか。その点を防衛庁長官は一体どう思っておるのです。同じことを繰り返して言わないでください。いかがです。
  34. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 いま大内先生お話しのような気持ちなり考え方は私は持っていないわけでございまして、また同じことを申し上げるわけでございますけれども、異例事態打開するためのきわめて異例措置として契約締結を一時見合わせたわけでございますけれども、防衛庁長官としては、ぜひとも防衛庁業務執行支障がないように善処したいという気持ちでいっぱいであったわけでございます。
  35. 大内啓伍

    大内委員 ちょっと角度を変えてみましょうか。  これはあるいは宮澤官房長官かもしれませんが、総理大臣は、十七日の参議院における予算委員会で、わが党の栗林議員に対してこの執行停止の問題でこう答えておるのですね。「執行政府権限責任であり、一日も早く行いたい。三月三十一日までにはこれを実行に移したい」これは総理発言ですが、政府意思として受け取ってよろしゅうございますか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府はぜひそういたしたいという希望を持っておる、及び意思を持っておるというふうにおとりくだすって結構でございます。
  37. 大内啓伍

    大内委員 同じ十七日の夕方、官房長官は記者会見でこう言ったと伝えられているのです。「停止を解除し予算執行するには、政府が政治的情勢判断をすればよく、野党の同意は必要としない」これは間違いございませんか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 少し補足して申し上げることをお許しいただきたいと思います。  防衛庁長官が言われますとおり、きわめて異例事態が生じましたので、それを打開するために、きわめて異例措置を決心したという長官の答えでございます。それに対しまして大内委員は、そうすれば、この予算執行不能になってもいいのか、そういう気持ちであるかということを再三お尋ねになり、防衛庁長官は、政府としてはそうならないこと、すなわち年度内執行できるようになることを心から望んでおりますということを再三、きわめて慎重ではありますが、そういう意味のことを答えておられまして、そうしますと、それは何か政府国会を愚弄したような態度ではないかというおしかりが何度かございましたが、しかしながら、そういう異例事態に立って異例措置をすることがやはり政治的にいいのではないかという、これは法律上の判断でなく政治上の判断を政府がいたした、その結果、このようにいろいろ御議論になっておるわけでございますから、決して無意味なことあるいはただ一時逃れのことを、いわんや愚弄というような意図でしたのでないことはひとつお認めをいただきたい。きわめて異例な困った事態になって、困ったあげくにいたしたことには違いございませんけれども、愚弄とかごまかすとかの気持ちでなかったことは、この点だけはひとつお認めいただきたいと思うのでございます。  それで、お尋ねの点でございますが、そのような政治的な判断でいたしたことでございますので、したがいまして、その政治的な判断の背景になりました事態、その事態が変化いたしてまいりますれば、おのずからもう一度政治的な判断によっていわばこの執行停止を解除するというようなことは考えられることであって、そのことについては、政府国会に対する、あるいは国会の御審議に対する信義は十分守るつもりでございますけれども、しかし、停止そのものが政府の政治的な独自の判断で行われたものでございますことの結果として、その解除も政府責任においていたさなければならない、またいたしたいと考えております。
  39. 大内啓伍

    大内委員 そうしますと、たとえば政府あるいは与党と一部の野党との間に話し合いが調わない、というのはこの問題は別に全野党が要求しているわけじゃありませんからね、話し合いが調わないという場合においては、別に野党と同意を必要としないで、政府の政治的な判断で執行せざるを得ない、こういう意味でございますね。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 厳密に申しますと、この措置そのものが国会内における各党派あるいは各党派の一部とのお話し合いの上で決められたことではない、政府の一方的な責任において申し上げたことでございますので、したがいまして、厳密に申せば政府だけの判断でそれを解除するということになるわけでございますけれども、それは非常に厳密に申した表現であって、このような異例なことをいたすにつきましては、政府としても国会内における各党派のいろいろな動き、お考えというものは当然政治的には考えております。考えておりますから、同じような意味で、やはり政治的な判断をしながら解除をさせていただきたいということは事実問題としてはあろうと存じます。
  41. 大内啓伍

    大内委員 宮澤長官からるるお話がございましたが、前半の説明は私どもは同意することはもちろんできません。院で決まったものを執行停止、一時的にせよ、話し合いのもつれによっては不用額にもなってしまうというような問題を政府の一方的な見解でこれを執行を停止するなどということが院の権威を愚弄するものであることは間違いないと思うのです。そして、それを避けようとするならば、政府は法律に従ってこれを不用額にするとか、あるいは執行停止というものが年度が終わる前に政府意思として決まっている場合には、まさに今回の補正予算と同じような措置をとるということがあたりまえの筋道であります。それが理の当然というものであります。そして、そのくらいの決意を持って対応してくるなら、私は、これはまじめな執行停止の提案として受けとめますが、これはあくまでも一時的な、国会の紛糾を収拾するための国会対策上の方便であり、それも政治的には意味があるんだ、こういうお話でございますが、そういうやり方は本当に国民を愚弄するものです。それは見解の相違になるかもしれませんが、そのことははっきり申し上げておきたいと思うのです。  大蔵大臣、こういう形で五十六年度予算執行停止というものが防衛庁長官発言という形で言明されたわけなんです。これについてはどういうふうに所感をお持ちですか。
  42. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 予算の問題につきましては、財政法の三十一条で「予算の配賦」という項目がございます。そこで、予算が成立したときには、内閣は、国会議決したところに従って、各省庁の長に対し、その執行の責に任ずべき歳入歳出予算、それから継続費及び国庫債務負担行為を配賦する。結局、各省庁にそれだけの歳出権限を配賦するわけですから、配賦された以上は、各省庁の予算執行責任者がその権限責任において執行するということだと思います。
  43. 大内啓伍

    大内委員 いまの説明でわかりましたのは、大蔵省としては予算執行停止措置はとってない、こういうことですな。
  44. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり、予算は要求があって大蔵省でまず編成をするわけですから、編成した、成立したものを各省庁に配賦をしてあるわけです。したがって、その執行権は各省庁の予算執行権者にあるということでございまして、それ以上、たとえば不用額とかなんとかという要請は出てきておりません。
  45. 大内啓伍

    大内委員 すでに大蔵省は当該予算の国庫債務負担行為については十一月に防衛庁に引き渡しているんですね。ですから、大蔵省としてはこの執行停止をチェックしょうがない、こういうことですか。
  46. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私としては、その執行権者の判断が最優先するものだ、そういうふうに思っております。
  47. 大内啓伍

    大内委員 この問題、幾らでも議論できますが、それでは中身の議論ができませんので、大体問題の概要は、執行停止にかかわる概要というのは私は明らかにされたように思いますので、次の問題に入ります。  二月十六日の未明、この衆議院の予算委員会質疑の中で、防衛庁長官昭和四十三年の増田防衛庁長官答弁はいまでも生きていますか、これは社会党の大出委員の質問だったと思います。これに対しまして防衛庁長官は、今後検討して答えたい、こう答えられています。あれから一週間近くたったわけですが、検討の成果を明らかにしていただきたい。
  48. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ただいま鋭意検討を詰めておるところでございますけれども、まだ成果が出ておりませんので、あとしばらくひとつお時間をかしていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
  49. 大内啓伍

    大内委員 私はあのやりとりを聞いていて、よくあんな答弁で満足したなと思って聞いておりました。本当にわれわれが聞いて、どうしてあんなやりとりで満足できるんだろう、国民の一人としてそう思いますよ。しかも、一週間もたってなお検討中というのは、これ一体何です。何を検討しているんです。どこに疑問があるんです。言ってください。冗談じゃありません。
  50. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 何とぞ、あとしばらくお時間をかしていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
  51. 大内啓伍

    大内委員 この問題について検討中ということは、こういうことになるのですね。昭和四十三年時に、F4Eファントムに爆撃装置はつけない、それも当時の増田長官はこう言っているのですよ、私は爆撃装置を施さないということだけは、厳重にどの機種についても徹底いたします。F4ファントムだけじゃないのです、どの機種についても徹底いたします。すなわち、F4ファントムのみならずどの機種についてもそうしますと答弁した国会の約束事ですね、これを守るのか守らないのか決めかねているという状態が検討中という意味ですね。そうですね。
  52. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 また同じことを申し上げて恐縮でございますけれども、あとしばらくひとつお時間をかしていただきますように、重ねてお願いを申し上げたいと思います。
  53. 大内啓伍

    大内委員 本当だったら、ここで審議が完全にストップしますよ。こんな答弁をされて、これは満足できるものじゃありませんよ。いま私はその検討中の意味をびしっと聞いているのですよ。どうしますかね、これ……。これは本当だったら——まあいいですよ、もうちょっとやりましょうか。余り審議ストップや何かしたら悪いでしょうから。  これは、私は防衛庁長官にできるだけ正確に聞こうとしているのですよ。検討中という御苦労も、実はわからないことはないのですよ。しかしそれは、その当時の増田防衛庁長官のいま申し上げたこういう国会に対する約束事を守るのか守らないのか、どうしたらいいのか決めかねているんだ、そういう意味で検討中というなら、検討中の悩みというのはわかるのだ。だから、その点についてはやはり答えないと、審議を続けるわけにいかないのですよ、あたりまえのことを聞いているのですから。どうでしょう。
  54. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 いまの段階では、今回の試改修によりセントラルコンピューターを搭載することとしておりますが、将来これが装備されることになれば、同コンピューターが爆弾投下計算を行うこととなる結果、目視照準が正確になり、爆撃機能が改善されるのは事実でございます。  いずれにしても、この爆撃機能が改善されることが御指摘の増田長官発言を変更することになるかどうかという点については、政府として目下鋭意検討中でございまして、もうしばらくお時間をかしていただきたい、そういうことでございますので、何とぞ御理解を賜りたいとお願いをいたします。
  55. 大内啓伍

    大内委員 きょうは防衛庁長官は、検討中で逃げまくるということの意思を固めたようですけれども、そうしますと、ちょっと矛盾が起こるのは、決めかねているのに、その約束答弁を事実上ほごにするような予算が五十六年度予算の十三億です、あるいは七億二千万円かもしれません。そして、今度の五十七年度の八十五億なんですね。決めかねているのに、その約束答弁と全く違う予算をどうして要求するのです。おかしいじゃありませんか。いかがです。
  56. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 試改修をする、またその執行をしたいというのはすでに決まっておりまして、一時見合わせてはおりますけれども、何とかひとつ円滑に執行さしていただきたいという防衛庁の方針はすでに決まっておるわけでございますので、そういうことで御理解を賜りたいと思います。
  57. 大内啓伍

    大内委員 そんな子供じみた答弁で、どうして納得できますか。増田防衛庁長官が爆撃装置を外すという中には、セントラルコンピューターを外すという問題が明らかに含まれているのです。したがって、そのセントラルコンピューターをF4ファントムにつける、そのための改修をやるということは、あくまでも増田防衛庁長官のこの国会における約束事を変えるという意味ですよ。だからこそ、他の野党が執行停止を要求しているんじゃありませんか。しかも、その問題については、いま防衛庁長官が再三おっしゃったように検討中で、わからない。わからないのに、五十六年度予算を可決さして、そして、五十七年度の予算では八十五億円もこれを提案するということは不見識じゃありませんか。全く、こんな予算委員会のやりとりで、野党の委員が満足しているなんというのは耐えられないことですよ。こんな論理的な矛盾なんというものはあるもんじゃありませんよ。それを押し通そうというのは、無理が通れば道理が引っ込むというものですよ。方針が決まらないのに、どうして予算が出てくるのです。五十七年度予算については撤回されますか。
  58. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 撤回する意思はございません。
  59. 大内啓伍

    大内委員 それでは、その検討中という、方針が定まらない、定まらないで、増田防衛庁長官の評価ができないで、どうして予算化ができるのです、それを事実上ほごにするような。増田防衛庁長官が外すと言った爆撃装置、それは技術的な問題ではいろいろな種類の問題やなんかがございましょう、しかし、増田防衛庁長官が外すと約束したこの爆撃装置というのは、いいですか、盲爆飛行から、計器によって的確に地上の物体、ターゲットというものを爆撃し得る、そういう装置は、足が長いことにもかんがみて、それが侵略的、攻撃的脅威のおそれを相手に与えるかもしれない、だから外すんだと言ったのです。実は二十日の防衛庁のレクチャーの中でそのことが全部出ているのですよ、順々に議論いたしますが。それでは論理的に一貫性がないじゃありませんか、不見識じゃありませんか。でなければ、検討中という問題をちゃんと御破算にしなければ、論理的に筋道が合わないじゃありませんか。いかがです。
  60. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 昭和四十三年の増田長官答弁は、先生もいま御指摘になられたわけでございますけれども、その答弁の趣旨は、わが国は他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるような装備は持たないという基本的な方針を述べ、さらに、このような観点に立ち、当時の軍事技術の水準と諸般の情勢を考慮して、次期戦闘機には他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものとの誤解を生じかねないような爆撃装置を施さないという旨を述べられたものと理解をしております。
  61. 大内啓伍

    大内委員 では別のことで聞きましょうか。侵略的、攻撃的兵器の中に、爆撃装置を施したF4ファントムは含まれますか、含まれませんか。
  62. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま大臣からお答えを申し上げましたように、F4の原型機といいますか、アメリカがつくっておる当時のF4につきましては、いま大臣からお答えいたしましたように、おそれがある、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものとの誤解を生じかねないという配慮で、当時撤去するということに決められたように承知しております。
  63. 大内啓伍

    大内委員 大臣も政府委員も質問と全然違ったことを答弁して帰っていく。  侵略的、攻撃的兵器は他国に脅威を与えるおそれがあるからそういうものは保有しない、そんなことは増田防衛庁長官の前段の問題ですよ。そのために、たとえばF4ファントムについては爆撃装置を施さない、こう言ったのでしょう。ですから、その保有しないということはわかっています。そんなことは専守防衛の立場をとればあたりまえのことですよ、そんなこと聞かなくたって。だから、その攻撃的、侵略的兵器の中に、爆撃装置を施したF4ファントムは入りますか入りませんかと聞いているのです。
  64. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほど大臣がお答えいたしましたが、増田長官が当時基本的な方針を述べられた後、このような観点に立って、当時の軍事技術の水準等諸般の情勢を考慮して、当時米軍が持っておるF4の爆撃装置は誤解を生じかねないおそれがあるということで撤去ということになったわけでございますから、当時のようなF4の爆撃装置であれば、当時におきましては、これはそういうおそれがあるというふうに認定された、こういうことでございます。
  65. 大内啓伍

    大内委員 現在ではどうですか。
  66. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在、今回の試改修予算をお願いいたしておりますが、試改修に伴いまして、今後これが量産開始に入るというような問題になっていきます場合に、その辺をどう判断するかという政府見解につきまして、ただいま検討中でありますということを先ほど来大臣がお答え申し上げているわけであります。
  67. 大内啓伍

    大内委員 方針が決まらないのに予算を要求する。しかも、それは量産を目的としている。たとえば、機体延命については百三十二機全機を予定している。それから試改修、つまり能力向上については百機を予定している。そんな予算を提起することは不見識じゃありませんか。どうですか。
  68. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、この爆撃機能が改善されることが御指摘の増田元長官発言を変更することになるかどうかにつきまして、政府として目下検討中でございますので、もうしばらくお時間をかしていただきたい、このことを申し上げたいと思います。
  69. 大内啓伍

    大内委員 全くこういう三百代言的な答弁で切り抜けようなんていう、本当に誠意を疑いますよ。われわれはまじめに議論をしようとしているのに、そういう姿勢で切り抜けようなんて、本当に誠意を疑いますよ。しかし、まあ少し先を急いでみましょうか。  官房長官鈴木総理は、二月十六日に記者団に対してこう言っているのですよ、いまの問題で。この問題はF15を導入する際さんざん議論しており、実態的にクリアしたものだと。もし、こういう総理発言政府の本当の考え方であるというなら、予算化というのは一つの筋道なんですよ。この問題はF15を導入する際クリアしたものだ、これは総理が明言されている。各紙にみんな出たのです。私は確かめたのです。この発言にまず間違いないですか。これはいかがですか。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その発言は私、確認をいたしておりません。正式記者会見等が行われておりませんことは確かでございます。
  71. 大内啓伍

    大内委員 それでは、この総理発言について、まあこれがあったという前提に立ちまして、官房長官としてはどういうお考えでしょうか。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今日といえども、政府は他国に攻撃的、侵略的な意図を持っておると危惧を与えるような装備等はいたさない、こういうことを意味するものと存じます。
  73. 大内啓伍

    大内委員 官房長官は非常に頭のいい方ですから、私の質問の趣旨はよくわかっていると思うんですがね。五十六年度予算というものを提案し、五十七年度予算というものを試改修という形で提案してきた。これは後でも論じますけれども、F15に積む同じコンピュー夕ーをファントムにも積む、言うまでもなくこういう内容のものでございますね。そして、その問題について増田長官は、そういうセントラルコンピューター、つまり爆撃装置はそれだけではありません、御存じのようにたくさんあるわけです、それは非常に重要な部分ですね、それをどの機種についても装備いたしません、こういう発言を後段にやっているんですね。  そうすると、この問題について予算を要求するということは、増田防衛庁長官発言というものはあったけれども、それとは違う考え方を持つに至った、したがってそうした爆撃装置の再装備をやりたい、したがって予算化をする、これが論理的な筋道なんですね。  ところが、いっ、どこでそれが変わってきたのかわからない。そこのところを総理が聞かれたときに、いや、それは昭和五十二年にF15につけました、その段階国会審議もいただきました、さんざん議論もいたしました、したがってその段階でクリアしたのです、こう言っていることについて、官房長官はどういう見解をお持ちですか。つまり、増田防衛庁長官が前段で言っている侵略的、攻撃的脅威を与えるようなそういう兵器は保有しないというような問題を私はいま問うているわけではない。そんなことは専守防衛の立場に立てばあたりまえのことで、問答するに当たらないと思っておるわけです。いかがですか。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど来防衛庁長官に対しまして、昭和四十三年の増田防衛庁長官見解は今日政府は変えたのかどうかということを再三お尋ねがございまして、それについてはなお検討いたしておりますのでしばらく御猶予をお願いしたいということを再三お答えしておるわけでございますが、ただいまのお尋ねは、多少そのことに関係をしてくるお尋ねのように思いますので、したがいまして、もとの問題につきましての見解防衛庁長官が御検討でございますから、私、それには直接関与をいたさない立場であるということをまず申し上げておきます。  次に増田防衛庁長官が言われましたことの趣旨は、恐らく総理大臣理解をそんたくいたしますと、これはそんたくでございますが、他国に侵略的、攻撃的意図を与えるような装備はしないということが大切なことであって、そのことは今日といえども政府考え方として変わっていない、このことを総理大臣は記者団に述べたものというふうに私は考えておるわけでございます。
  75. 大内啓伍

    大内委員 これは堂々めぐりになりますからね。それじゃ宮澤長官に簡単にお伺いしましょうか。  爆撃装置の再装備、これはF15の導入の際にクリアしたものとは言えない、今度は逆の聞き方をしているんですが、そういうことで受け取っていいですか。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、総理大臣がそういうことを言われましたかどうかが実は先ほど申しましたように明確でございませんので、総理考え方として申し上げるわけにはまいりません。  次に、問題そのものは、そのような、ただいまの言葉で申しますと試改修でございますが、試改修に仮に成功いたしまして、そして量産に入るということになりますれば、その点は、私は、国防会議の議を経るべきもの、こういうふうに考えております。
  77. 大内啓伍

    大内委員 私は相当端的に聞いているつもりなんですが、それをくるむような答弁をされているわけですね。そうすると、私の理解としては、試改修の中の重要な部分である爆撃装置の再装備は、昭和五十三年のF15の爆撃装置の導入によってクリアされたとは必ずしも考えていない、こういう趣旨で受け取ってよろしいかどうか。よいか悪いかということだけはちょっと答えていただかなければならぬと思うのです。
  78. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたことは、試改修の結果として量産をするということになりますれば、わが国の防衛力の装備に相当大きな変化を生ずることでもございますので、国防会議に付議をするのが適当であろう、こういうふうに私としては考えておるということでございまして、ただいまのお尋ねの意味は、論理的には私はわからないわけではございませんが、私自身、正確にお答えをすることができません。
  79. 大内啓伍

    大内委員 そうすると、正確に答えられないということは、これは重要なニュアンスを持っているのですね。やっぱりペンディングで、その可能性もある、つまり、総理が十六日に記者団に対して語ったそういう解釈も成り立つという含みを持っているという意味で、いま答えられないという意味では、非常に重要なニュアンスを持っていると思うのです。  そこで、二月二十日の防衛庁の発表、これは防衛課長ら内局の方々が二時間半にわたってこのF4ファントム試改修計画について説明しているのですが、ここでは、地上目的に対する爆撃能力は、当初F4ファントムに予定された爆撃装置と試改修によってファントムに新たに取りつけようとする装置とほとんど大差はない、つまり同じものですから、そういうふうに指摘されておりますが、防衛庁長官、間違いありませんか。
  80. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 技術にわたることでございますので、防衛局長から答弁させていただくことをお許しいただきたいと思います。
  81. 塩田章

    ○塩田政府委員 ただいま御指摘のような趣旨のブリーフィングをいたしております。
  82. 大内啓伍

    大内委員 そして、今度は対艦攻撃もできることから、F15よりF4改修機の方が上回るということを明らかにしているように思いますが、部分的にはそういうことですか。
  83. 塩田章

    ○塩田政府委員 対艦攻撃につきましては、今度のセントラルコンピューターを採用いたしました場合にF4に搭載することを研究対象にいたしております、したがいまして、F15はミサイルをもって攻撃するという意味では対艦攻撃能力を持っておりませんので、その部分に関する限りは、今度のF4の方が上回るということは事実でございます。
  84. 大内啓伍

    大内委員 二月十二日、生田目空幕長は記者会見でこう言っているのですね。F4当初の爆撃装置よりか今度の試改修によってF4に装備されるこの爆撃装置の方が相当よくなるであろう、つまりF4に装備する予定であったあの爆撃装置よりか、今度のF15のを装備することによって今度の方がよりよくなるであろう、これは間違いありませんね。
  85. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のとおり、その間に時代の進歩、科学技術の進歩等がございまして、今回のF15の持っておりますコンピューターによる装置の方が、命中精度その他においてすぐれたものであるということは当然言えると思います。
  86. 大内啓伍

    大内委員 以上の二、三の問答でおわかりのように、今度の試改修によりまして、F15と同じセントラルコンピューターあるいはF16の火器管制装置というものを同時につけることによって、少なくともF15よりか対艦攻撃という分野においてはよりすぐれた機能を持つに至った。つまり、その迎撃能力においては幾らか落ちるかもしれないけれども、少なくとも対地支援関係、つまり対地上及び対艦戦においてはそれを上回るような試改修というものが行われようとしている。もう一つは、その結果は、あの当時問題になった、F4ファントムに取りつけをやめにした爆撃装置を積んだものよりか、さらにすぐれたものになる。そういうことですね、いま私が整理したのは。それじゃ増田防衛庁長官国会における約束事というのは、事実上ほごになっちゃうじゃありませんか。そうでしょう。
  87. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの先生の御発言のうち、今回の試改修が成功した後のF4とF15の比較のことでございますが、全般的に申し上げますと、もともとの飛行機として、F15の方が新しい、すぐれた飛行機でございますから、要撃戦性能全般につきましてはやはりF15の方が今後ともすぐれておるということは言えると思います、一般論でございますが。  それから対地支援につきましては、先ほども申し上げましたように、対艦能力という点におきましては今回の試改修後のF4の方がすぐれていることはそのとおりでございますが、対地支援につきましては同じセントラルコンピューターでございますから、一般論的に言えばまず同じ程度の能力になるだろうということは言えますが、F4の方が対地支援においてもすぐれておるというふうには言えない。むしろ同等なものになると考えるのが常識的ではないかと思います。
  88. 大内啓伍

    大内委員 そんなことはわかっていますよ。だから、私はその趣旨のことを申し上げている。しかし、少なくとも今回の試改修によって、あの四十三年当時のF4のプラス爆撃装置よりかもつとすぐれたものになるということが一つと、それから、大体対地支援関係においてはF15並みの水準、そして対艦関係においてはF15の持ってないような機能を保有するに至るという意味では、まさに増田防衛庁長官答弁をほごにするもの以外の何物でもない、そういうふうに思いますが、いかがですか。(「大臣、答弁」と呼ぶ者あり)いや、これは大臣、答弁してください、これはそうなるに決まっているんだから。
  89. 塩田章

    ○塩田政府委員 試改修後のF4とF15との比較につきましては先ほど申し上げましたが、先生の御指摘のように、改修前のF4より、あるいは原型機といいますか、F4の原型機よりよくなるかどうかという点につきましては、御承知のように、原型機のF4の持っておりますトス爆撃の能力といったようなものは今後もうできません。そういう意味においては違いますけれども、科学技術の進歩等によりますいろいろなコンピューター等の進歩等がございますから、そういう面でよくなるといいますか、改善されることは事実でございます。
  90. 大内啓伍

    大内委員 本当は、そんなことは細かく論じるとすぐ立証できるんですけれどもね。  防衛庁長官、これだけは聞いておきたいと思うのです。防衛庁長官としては、専守防衛という基本に立って、今後F4ファントムは地上爆撃装置を持つことが必要である、こういうふうに考えているかいないか、これはいかがです。
  91. 塩田章

    ○塩田政府委員 わが国の戦闘機の現状等を考えました場合に、要撃戦闘機と支援戦闘機と二種類持っておりますけれども、すべての戦闘機につきまして、要撃戦闘機につきましてもでき得べくんば対地支援の能力があった方が望ましいという気持ちは私ども持っております。現にF4につきましても、御承知のように目視照準による地上爆撃はできる能力は持っておりますが、これが今回の試改修によりましてコンピューターによるところの計算装置がつくということは、私どもとしては望ましいことであるというふうに考えておるところでございます。
  92. 大内啓伍

    大内委員 つまり、防衛庁政府としては、F4については対地支援能力というものを専守防衛という立場から考えても持つことが必要である、こういうふうな考えでいるということが明らかになったわけでありますが、二月二十日の防衛庁の発表した内容を聞いてみますと、一つは、地上目標の爆撃能力は、搭載している中央計算機つまりセントラルコンピューターが同じであることから、F15と比べた場合にほぼ同等である、こういうことを言っていますね。それからもう一つは、艦船に対する攻撃能力では、F4改修機の方がASMつまり空対地ミサイルを搭載するのに、F15は装備できないことから、その点ではF4改修機の方が上回る、したがって、対地攻撃と対艦攻撃をあわせた支援戦闘能力ではF4改修機の方が上回る、こういうことを言っておられますが、これは間違いありませんね、先ほど来からちょっと議論しましたが。
  93. 塩田章

    ○塩田政府委員 対地攻撃能力と対艦攻撃能力におきまして、それぞれ違った面がございますから、その点を踏まえた上で総合的にいってどちらが上回っているということは一概に言えないかと思いますが、対艦攻撃能力だけを見れば、片一方にないわけですから、そういう意味では上回っている。しかし、それでは総合的に見て対地攻撃能力につきましてはどうかということになりますと、これはやはりF15のすぐれた飛行特性といいますか、そういったものもございますので、対地攻撃能力につきまして総合的に見てどちらが上回っているというふうに言うことはむずかしいのじゃないか。総合的に見た場合に、いま先生御指摘のように、トータルではほぼ同じようなものであるという評価であれば、それは私どももそのように思います。
  94. 大内啓伍

    大内委員 本当は胸囲と背丈とを比較することはできないのです。だから、総合的になんというのは、本来おかしな物の言い方なんですよ。ですから、たとえば対地関係においてはこういう面ですぐれているとか、迎撃関係においてはこういう点ですぐれているんだ、こういうことがその戦闘機の評価になるわけですね。しかし、私の見るところでは、このF4改修によって対地、対艦あるいは迎撃、三つが非常にバランスのとれた高性能の戦闘機として生まれ変わる、そういう意味を持っているのが今度の試改修だと思うのですね。そして、その内容についてはもうすでに新聞等でよく出ておりますから論じませんが、ただ、この結果こういうことが出てくるのですね。  まず、最新鋭のAIM9Lサイドワインダーミサイルの搭載が可能になるということですね。それからもう一つは、ASM1、空対艦ミサイルが新たに装備されるということ。それから三つ目には、地上爆撃のための爆撃照準が、従来のパイロットの目視つまり盲爆から、計算機による自動照準器に変わるということが非常に大きな特徴なんですね。したがって、一つは、ミグ25のような低高度の侵入機に対する的確な対応ができるようになる。それから二つ目には、先ほど来申し上げているように、いままでできなかった対艦攻撃ができる。三つ目には、地上支援戦闘能力が飛躍的に向上する。これが実は今度の試改修の中身なんですよ。つまり、部分的には明らかにF4改修機がF15の能力を上回る分野というものがあるのですよ。これは認めていただかなければ——うん、うんと言っておりますから、時間が余りないからそれで認めていただいていると理解をして、もしそうでなければ後で反論してもらいたいのです。  そこで、問題は、たとえばセントラルコンピューターがF15と同じものだからF15の枠内のものだという言い方があったのですよ。これは防衛局長もちょっとやってきた。これはやっぱり正確じゃないのです。F15の持っているセントラルコンピューターを同じようにF4ファントムにつけるという場合には、F4ファントムの持っている特性がそれに付加されてくるのですよ。たとえばF15というのは単座式なんです。F4ファントムというのは複座なんです。これは対地支援に最も適しているのです。ですから、たとえばF15と同じコンピューターをF4に積むということは、F15以上の対地支援能力というものを持ってくるのです。ですから、そういう特性というものがあり、それはもちろん対地攻撃に対する爆弾の搭載能力も違う。したがって、F4改修機の能力というのは、F15のコンピューターを載せる、それにプラスF4の特性がそこに付加されるという意味での能力がF4改修機の能力である。そういう意味ではF15よりかすぐれている分野が当然出てくる。したがって、F15の枠内であるというこれまでの防衛庁見解というものは正確ではない、こう思いますが、いかがでしょうか。
  95. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま御指摘の点は、同じコンピューターを使うにしても、それぞれの本来の飛行機の特性があるではないかということは御指摘のとおりであります。したがいまして、F4の場合は複座でございますから、複座によって持っているところの利点というものがある、これは否定できません。当然そうだと思います。しかし、また一方、元来F15の方が飛行性能がすぐれておりますから、飛行性能自体は今回の改修では変わりませんので、たとえば攻撃した後の、旋回して避退するというような場合の性能から言えばやはりF15の方がすぐれているとか、それぞれございます。  またもう一点、搭載能力の点も御指摘になりましたが、御承知のように、短い距離であればファントムの方が搭載能力が多いということは言えますし、また、標準装備で言えばF15の方が遠くへ飛べるといったような点もございますので、一概に言えませんが、御指摘のように、特性が付加されることによって、すぐれた点、そうでない点、いろいろ出てくるということは、そのとおりだと思います。
  96. 大内啓伍

    大内委員 正直に答えられましたので、その点はいいと思うのです。  それから、この爆撃装置に並びまして、空中給油装置というものを外したのですね。しかし、日本政府はこの空中給油装置を買っちゃったんですね。そして、現在これは入間の第二補給処に、いつでも使えるような状態で保管されていますね。その状況、数量を明らかにしてください。
  97. 塩田章

    ○塩田政府委員 いま入間とおっしゃいましたけれども、私は岐阜というふうに承知しております。岐阜の第二補給処に、八十八個保管いたしております。
  98. 大内啓伍

    大内委員 この空中給油装置の再装備は考えていますか。
  99. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在考えておりません。
  100. 大内啓伍

    大内委員 私がなぜそういうことを聞くかというと、今度の爆撃装置の再装備に続いて、空中給油装置の再装備という問題が出てくる可能性がある。というのは、F4ファントムがたとえば爆弾を満載し、そして油をいっぱいに積みますと、ちょっとした飛行場では飛び立てないのです。ですからアメリカ軍は、たとえばあのベトナムにおける戦争等におきまして、油をずっと抜くのです。そして、爆弾を満載して空中に飛び上がり、空中給油装置をつけることによって所定の距離を確保する、そういう問題が実は空中給油装置だったと思うのです。しかし、これについては再装備しないという言明がございましたので、それをそのまま受けとめておきたいと思うのでありますが、しかし実際にはいま岐阜の第二補給処にこれがいつでも使える状態で保管されているということだけはわれわれとして留意しておきたい、こういうふうに思っております。  官房長官が記者会見で出られたわけなんですが、一つだけ防衛庁長官に聞いておきたいのは、その二十日の防衛庁の発表で、この試改修というものを正式に決定した、こういうふうに発表されているのですね。これはいつ、どの機関で正式に決定されたのか、お答えいただきます。
  101. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ちょっと正確に私、把握しておりませんので、政府委員から答弁させていただきます。
  102. 塩田章

    ○塩田政府委員 防衛庁といたしましては、五十六年度の概算要求をいたしました五十五年八月の、ちょっといま日にちを覚えておりませんが、防衛庁庁議で決めたということでございます。
  103. 大内啓伍

    大内委員 今回の試改修というのは、いま防衛庁が五十五年の八月に庁議で正式に決定したと言われるように、これは相当綿密な検討と調査に基づいて計画されたものですね。ですから、昭和五十五年の五月には空幕の幹部三人から成る調査団が訪米をいたしまして、改修の可能性をあらゆる角度から検討していますね。そして、この調査団の報告で、いま述べられましたように八月の段階防衛庁が正式に決定し、これを五十六年度、五十七年度の予算化という形で要求しているわけですね。そして、この基本設計についてはマクダネル・ダグラス社、そしてFCS関係、つまり火器管制装置関係ではウエスチングハウス社で、ともども設計が現実に進んでいるのですね。調べてみました。つまり、これから設計に入るのじゃなくて、設計はすでに進んでいるのですね。もちろんそうでなければ五十六年度内契約なんかできるはずがありません。設計図も見ないで契約はできませんものね。つまり、事態は進んでいるのですよ。  ですから、二月十三日に総理は、この試改修については全然聞いていなかったという発言をされる一方で、これは不思議なことに、一機十億円で戦力アップになる、そういうふうに聞いていた。これは試改修が大量に行われた場合の値段なんですね。ですから、総理は聞いていなかったと言いながら、試改修に基づく大量生産はちゃんと聞いているのですよ。そして、その点をついていくと、今度は総理は、これは宮澤官房長官も、いま一機の試改修だから、これは本格的にやるかどうかはまだ決まっていないのでどうなるかわかりはしない。総理はこう言っていますよ、本格的にやるかどうかめどが立たない、まだ立っていない。冗談じゃありませんよ。綿密な計画の上に、これはもう九五%必ずそうなるという一つの前提に立ってこの試改修が行われ、約百億の予算がここにつけられてきた。つまり、先行き不明の試改修じゃなくて、確実に量産に向かうための試改修である。もしその見通しがなければ予算のむだ遣いになってしまう。私は、このことを総理も知っていたと思う。  もう一つの問題は、今回の試改修は一部の試改修といったものではなくて、これははらわたを全部かえるのです。外周りだけを残して中を全部かえるという大改革なんです。ある意味では新しい飛行機につくり直すということなんです。それが今度の試改修意味なんです。  ですから、はっきりした量産というものを目標とした試改修であり、その試改修の内容というのは、新しい飛行機を生み出すための試改修であるという重大な問題を含む、しかもそのことが昭和四十三年の増田防衛庁長官答弁以来重要な政治問題化していた。したがって、これらの背景を持つこのF4ファントム試改修については、総理に言うことはもちろんのこと、国会に対してもそれを報告し、そして国防会議にも説明をするぐらいのそういう配慮があって当然であったと私は思うのですよ。試改修で、一機でどうなるかわからぬといったようなレトリックでこの問題を過ごさせるには余りにも重大な背景、見通しというものに立った試改修であった。この問題に対する防衛庁長官の取り組みに落ち度があったのではありませんか。いかがでしょうか。
  104. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 ただいまの大内委員の御意見は、シビリアンコントロールというものの機能の重要性を真摯に強調されたものと理解をしております。この点については同感でございまして、貴重な御意見として承らせていただきたいと思います。
  105. 大内啓伍

    大内委員 きょうは中野委員が関連質問する予定でございましたにもかかわりませず、非常にデリケートな重要な問題でやりとりが続きまして、政府答弁も必ずしも私の意に即したような的確な答弁がなされずに、したがって長引いてしまいました。わざわざお見えいただきました関連の諸大臣に対しまして大変御迷惑をかけましたことを、深くおわびを申し上げます。また、同僚の中野委員に対してもおわびをしなければならぬわけなんですが、最後に、一分少々、二分ほど残っておりますが、いま防衛庁長官は率直に、この問題に対する取り扱いというものは必ずしもよくはなかったという趣旨の反省を述べられた、これは私は大事な姿勢として受けとめておきます。  問題は、試改修というものを本格化する段階でどういう措置をこういうシビリアンコントロールという面でとろうとされるのか、今後の取り扱いについての方針をお伺いしたいと思います。
  106. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、またこの問題に限らず防衛の問題で一番大事なことは、シビリアンコントロールをなお一層確立することにあると、大内委員同様、私もかたく信じておりますので、その確立になお一層全力をふるってまいりますとともに、先ほど官房長官からもお答えいたしましたとおり、この試改修がもし成功いたしますならば、その段階で、今後の検討の問題で、ぜひ国防会議等にもかけて、シビリアンコントロールの大きな形をつくり上げてまいりたいと思っております。
  107. 大内啓伍

    大内委員 もう時間が一分足らずしかありませんので、一言だけ申し上げておきます。  私は、今度の問題を通じてしみじみと感じましたことは、政府の方針あるいは態度というものが、こういう大事な問題についてやはり的確にその方針というものが正しく国会の中で述べられない、そのために国民に対しても非常な大きな混乱を与える、そして、その場限りの国会対策上の言い逃れでこういう重要問題を逃れようとする。こういうことでは、やはり安全保障といったような大事な問題について国民のコンセンサスを得ることはなかなかむずかしい。いろいろありましょうけれども、防衛庁長官におかれましても、できるだけこういう大事な問題については率直に物を言う、本当に政府の方針を正確に伝えようとする、こういう努力を尽くすという姿勢がなければ、まじめにこういう問題を議論することはむずかしくなる。そして、そういう問題をめぐって国論というものがどんどんどんどん分極化していく。それは安全保障にとって国民のコンセンサスをつくり得る道ではない。  いま方針変更の問題についても検討中ということでございますけれども、恐らく政府は、試改修という問題を提案した段階において、方針、腹は決まっているはずなんですよ。にもかかわらず、それを検討中という形でこの場を切り抜けなければならぬということ自身が、私は、政府の方針としてやはり反省すべきものがあるように思うのです。あるいは見解の相違かもしれません。そういう点について、なお、防衛庁長官が最高責任者として任務を果たされますように、責任のある行動をとられますよう要望して、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  108. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  次に、瀬崎博義君。
  109. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 まず、委員長、資料を配って……。  大蔵大臣に伺いたいと思うのです。  いま減税は国民の切実な要求になっていることは十分御存じだと思うのですが、渡辺大蔵大臣も、五年連続課税最低限だとかあるいは税率区分が据え置きになっているのは不合理だ、こうとれる発言はされつつも、一方で、要は、歳出カットもこれ以上できない、財源がないから実行不可能なんだと拒否をしてこられたわけです。  私たち共産党は、軍事費一兆円以上の削減、また、大企業に対する補助金とかあるいは大企業優遇の不公平税制というものの是正、それから公共工事のあり方など、思い切って改善すれば十分財源はあり得る、こういう考え方を申し入れもしているし、主張もしているわけですね。  特に、いま世論の厳しい批判を受けている大手建設会社中心の談合問題、これを徹底究明して、入札制度の改善や公共工事発注のあり方を変えていけば有力な財源は生まれる、一兆円減税の。そう思っているわけなんです。渡辺大蔵大臣は、この談合問題の究明とか公共工事の発注のあり方に抜本的な検討を加えて、減税財源を生み出そうというお考えがあるのかないのか、伺っておきたいと思います。
  110. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 予算執行は有効に、効率的にやっていただかなければなりません。がしかし、大蔵省は事業官庁じゃございませんから、直接契約をしたり入札したりというようなことは余りございません。したがって、各省庁に対しましては、とかく批判を受けないように、談合等については、それによって、何と言いますかね、利益がいっぱい出るような入札はいかぬよ、これはもう競争さして、それで安くていいものを買うようにしなさいということは、強く常日ごろ要請をしておるところでございます。  だからといって、それじゃ、それをやって幾ら幾ら財源がここで出るんだといっても、それはとても、数字的に幾ら出るということは、いまの段階において私は見積もる方法がありません。
  111. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、いろいろとわれわれが究明していって、確かにむだがあってそれは浮いてくる、そういうことになるならば、そういうものは減税の有力財源、こういうお考えはお持ちですね。
  112. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはやってみないことにはわかりませんから、仮にことしやってうんと浮いたということになれば、私は、不用額が出て大変嬉しいことであります。
  113. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 すべてが国民の税金、あるいは国民から預かっているお金によって賄われているのが公共事業の特徴なんですね。  そこで、中曽根行管庁長官伺いたいのでありますが、景気対策とかいろいろ言われる中で、行革だけは断固やり抜くという決意表明をしていらっしゃいますし、これまでもこの談合問題には言及されております。この談合問題の解決を具体的に行革の対象とお考えになっているのかどうかを伺っておきたいと思います。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕
  114. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 公務員の綱紀粛正という面からも、この問題は厳しく監督していかなければならぬ、そういうことで行政管理庁としても扱っております。  昭和五十五年から入札制度の監査をやりまして、昨年の八月に各省庁に対しまして勧告を行いました。それに対する回答も得て、一つ一つ具体的に詰めを行っているという状況でございます。
  115. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いま綱紀の粛正というとらえ方を示されたのですが、しかし、行管庁の示している提起というのは入札制度の改善だと思うのですね。その点を大臣はどちらにウエートを置いて考えていらっしゃるのでしょうか。
  116. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは、予算執行の監査、監督という面からも、もちろんやっております。
  117. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 意味不明の答弁でありました。  会計検査院は、決算報告書で、工事予定価格の積算に関する指摘を行っていますね。五十一年度から五十五年度までの五年間で八十八件、百七億六千九百八十四万円に達しているわけであります。これは全体の八%、重要事項については三〇%の調査の結果ということでありますが、会計検査院が調査の対象にしなかった工事に不当な積算がなかったと言い切れますか。
  118. 大村筆雄

    大村会計検査院長 検査院の現在の能力といたしまして、平均いたしまして全体の八%、重要な個所につきましては約三割の検査をやっているわけでございますけれども、その結果、相当数の御指摘のような積算の問題あるいは施工不良その他の問題を公共工事につきまして指摘しておるわけでございますけれども、その残りのうちの分につきましても、もちろんこれは検査いたしましてみれば何らかの指摘が出るのかと思いますが、現状の検査院の能力からいたしますと全部はとてもカバーできませんし、現在の行革その他の点からいきましても、必ずしもそれは得策であるとは考えておりません。  ただ、私どもが期待しておりますのは、私どもの検査は全体の一つの点にすぎないわけでございますから、この点を指摘された機会に、指摘された各機関が、そのよって来る原因を究明されることによりまして、その検査を受けない個所につきましても同じような事態があるのではないかというのを、ひとつ徹底的に自己監査をやっていただきますことによって全体の改善を図っていただく、そのことを期待しておるわけでございます。
  119. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 現在、政府官庁の方は、勇退にしろ退職勧奨、肩たたきにしろ、問題になっている高級官僚とともに、一定の地位以上の管理職が大体五十歳から五十五歳でやめていくわけですね。世間一般の常識で考えますと、こうした高齢者の再就職というものはきわめて困難なはずなのですよ。社会問題にもなっているくらいですね。ところが、この官僚の場合は、中央省庁はもちろん、出先も含めて年々相当数の管理職退職者があるにもかかわらず、見たところ大変スムーズに民間で再就職が可能になっているわけですが、これには特別な仕組みがない限りちょっと考え得ないことではないかと思うのですが、お答えは人事院でしょうか。
  120. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 これは必ずしも人事院の所管であるかどうかわかりませんが、私から便宜お答えをいたしたいと思います。  いま御指摘になりましたように、一般的にも高齢化の現象というものは非常に進んできております。その点は公務員の場合においても同様のことが言えるわけでございまして、一ころと違って、公務員の場合にも非常に高齢化の現象が進んできておるということは事実でございます。それだけに、各省庁といたしましては、その点大変高齢者が上の方にひしめき合うというような状況になってまいりますと、人事管理上もいろいろ問題もございますし、また職場の清新さを保つというような面からいってもこれまた考えていかなければならぬということから、非常に苦心をいたしまして、年次的にいろいろ考えて計画を立てて、その人事管理計画にのっとって毎年度の人事の扱いを決めておるというのが現状であろうかと思います。  そういうことで大変苦心をしておりますために、いま御指摘になりましたようなことというものが、わりあい表面から見ますとスムーズにいっておるという面がこれは事実あると思いますが、これは各省庁がそれぞれ苦心をしておる結果だと思いますし、それと、昨年成立をいたしました定年制がございますので、六十年を目途ということで、さらにこの問題については積極的に対処するということに相なろうかと思います。
  121. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 問題はその苦心の中身で、これはまた後で具体的にお話をいたします。  そこで、共産党がすでに証人喚問を要求しております前土工協副会長の飛島建設会長である植良祐政氏は、朝日新聞のインタビューにこう答えているのです。「役人の再就職のお世話をしていることも事実だ。」と答えているのですが、建設大臣どうですか。こういう事実はあるのですか、お世話してもらっているという。
  122. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 役所をやめられた方が業界に入っているという事実はございますが、これはこちらからお願いしているのではなくて、むしろ業界の方から、いままでの役人のときの経験を生かして仕事に従事してもらいたいということで、業界から要請してくる場合が全部でございます。
  123. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 業界の要請する場合が全部かどうか、これも後で具体的事実をもって示します。  ここにあります冊子は、表紙には何にも書いてないのですね。中身は建設省を中心として、あと運輸省港湾局、農林水産省漁港部の退職者名簿なんですね。発行所も何にも書いてないのですね。奥付も何にもない、こういう本なんです。いまの三省部局のだれがどの会社にどの地位で現在勤務しているか、これが網羅されているわけですね。約千五百社載っているのです。一部、部内資料的なものではないかと思われます。多分こういうものをごらんになるのは皆さんも初めてだろうと思うし、明るみに出るのも初めてだろうと思います。これは主として役所あるいは地方自治体が持っておるところから見ますと、指名の際とか発注の際あるいは天下り先の打診のときに、大変都合のよいようにつくられているように思えるのですね。  それからもう一つ、「技術者名簿」というこういう部厚い本があるわけです。これは一応市販されております。この存在については、たしか読売新聞だったと思いますが、昨年十二月に紹介しております。これが現物なんですね。市販とはいいながら、これは、じゃ普通の本屋で買えるかというと、そうはいかぬのですね。特殊なルートでないとこれが求められない。この名簿は、建設省を中心として運輸省港湾局、農水省漁港部と関係公団、事業団及び政令指定都市の建設関係、つまり相当規模の公共工事発注官庁の現職の管理職を網羅しているのですね。これだけですと各官庁や自治体の職員名簿を集めてきたらそれはできるというようなものなんですが、この特徴は、われわれが聞いても絶対公表しない本人の俸給の号俸、等級がすべて記載されて、後ろにその表がついているのですよ。だから、照らし合わせれば、どなたが現在給料幾らというのが一目瞭然わかるようになっているわけですね。そして、これの持ち込まれている先がほとんど業界なんです。こっちは、業界がこの天下りについて、先ほど業界からのと言われたそのときに、希望する人がいないかなと物色するのに都合のよいようにつくられているなと私は思うわけですね。  実は、こういうものが手に入りましたので、こういうものをもとにしながら、有価証券報告書その他のいろいろな資料を非常に苦労して分析調査をいたしまして、ただいまお配りいたしました資料一をつくったわけであります。これは、天下りと政治献金とそして公共事業受注の状況と、その相関関係を総括的に示す表だと思っております。  時間の関係で簡単に私どもが感じている特徴を申し上げますと、第一には、大手建設業界がいかに公共事業に大きく依存しているかが一目瞭然わかるわけですね。上位十社を平均してみますと、大体完工工事高の半分は公共工事で占められている。二兆円近いものになります。  第二は、この天下った高級官僚が厚遇されまして、企業が公共事業を受注するのに大変都合のよい、役に立つポストに適材適所に配置されているのです。例を挙げていくとおもしろいのでありますが、これは省略いたします。つまり、もとの役人時代の地位に最も密接な関係のあるポストに民間会社でついている、こういう結果がよくわかります。  第三は、官公需の比率の高い企業ほど天下りの率も多くなっている、こういう特徴を持っています。  第四に、やはり政治献金高もこの公共事業の受注に大いに関係しているということが見受けられるのですね。  官房長官に、いま私が申し上げましたこの特徴を官房長官はどう見られるかということを含めつつ、現在、現行法でも、この間村上委員が指摘しましたように、選挙に関して公共工事を受注している企業から政治資金をもらうことを禁止するとか、あるいは公務員法、人事院規則で天下りを規制するとかをやっているのですから、この二つが談合問題のきわめて重要な要素であるという認識はもともとあると思うのですよ。したがって、いま中建審にこの入札制度の改善を頼んでいる、こんなことで解決しようと思ってもできるものではない。やはり問題は、政治献金、それから高級官僚の天下り、こういうものにメスを入れなければだめなんだ、こう思うのですね。そうなりますと、これは省庁任せではだめなので、政府が全体としてこういう認識を持って取り組んでいるのかどうかが問題になると思うのです。この点をお答えいただきたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般来、公共工事の発注に関しましていろいろの疑惑が指摘されておりますことは、まことに残念なことであります。政府としても一層綱紀の粛正に努める必要がございます。  また、建設業界に対する指導の問題あるいは入札等の問題につきましては、御指摘のようにいろいろな検討が行われてまいりました。  なお、官界からのいわゆる天下り等につきましては、人事院におきましていろいろ制約を設定されて、弊害が少ないように御努力をしていただいておるところでございます。
  125. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局、政府の本腰が入っていないというふうに見受けられるのですね。  建設大臣に伺いますが、実は約千五百社でまず六千人天下りがあるんですよ。しかも、国からも地方自治体からも、関係機関からも集めているわけですね。したがって、こういう高級官僚の天下りももらえない、受け入れる余裕がない、政治献金もする力がない、こういう中小企業が必然的に公共事業から締め出されざるを得ないのではないか、この点が一点ですね。  それから、この表を見ておわかりのように、大成建設のような、あるいは鹿島建設のような超大手でも、相当数の天下りをとってはやはり有力ポストにはめ込んでいくわけですね。五洋建設のような特別官公需比の高いところをごらんください。やはりずば抜けて天下りの採り方が大きいのですね。奥村組とかもその例なんですが。だから、いやおうなしにこの天下りと公共工事は因果関係を持っている、こう見ざるを得ないと思うのですがね。建設大臣、どう見られますか。
  126. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 建設省におきましては、個々の工事を発注する場合には、次官通達で定められました指名基準に従いまして、適正に指名を行っているところでございます。この場合におきましては、技術的適性であるとか地理的条件であるとか経営内容等を勘案いたしまして、指名が偏らないように配慮しているところでございまして、天下りがあるとか、あるいは政治献金があるとかないとか、そういうことは一切指名に当たっては配慮をしていないところでございます。
  127. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 その言ったことを忘れないようにして、これからの話を聞いていただきたいと思うのであります。  資料の三をごらんいただきたいのですね。資料の三と四というのは、実は三井建設の営業報告のコピーなんですね。まず資料の三、営業報告者は宮城好弘という方でありますが、この人は三井建設の取締役土木営業第二部長であります。この宮城氏は農林省の出身です。昭和二十一年に東大卒後すぐ農林省の建設部門に入り、そのままずっと農林省、東北農政局建設部長を最後に昭和四十七年退官をされている。二十六年間農林省一筋です。それで、農林省と契約関係にある三井建設に天下るわけですから、普通ならここで人事院の審査が必要になってくるのでありますが、昭和四十七年七月から五十年六月までの三年間、水資源公団に在職されている。それで、あの民間就職二年間の禁止をうまく避けているのですね。三井へ行ってからはいわゆる取締役営業部長として、最初は取締役じゃありませんが、もっぱら農林省関係の営業に回るわけなんです。そういう点でも、現在の規制が全くざるだということがはっきりわかるのであります。  そこで、三の一の資料であります。矢印の方向に見ていっていただきたいと思うのです。  まず、五十三年の一月十四日の報告書によれば、相手方が「東北農政局」となっておりまして、「昨年失敗した人事割愛の件、新しい人を考えて、今度は押付けられる形となりそう。」、こうあるわけですね。農林省にも人事割愛ということがあるということがこれではっきりしました。  続いて、五十三年一月三十日のをごらんください。「人事の件、引続き工事課長クラスの人をお願い中、むしろ今回は押しつけの傾向が強い。」となっているんですね。役所側からなんですよ。その下に「仕事は五十三年度安積、能代となる見込み」と書かれておる。これはおみやげですね一こんなことが、いわゆる天下りのやりとりを最初からされているのですよ。  そして次、五十四年の一月二十日、「割愛人事現平川事業所長」、正確には平川農業水利事業所ですが、「「楠修治」三重高農昭二十三」、卒ということでしょう、「になる可能性が強い。」、三井側は課長クラスを望んだが、所長を農林省から押しつけられてくる経過がよくおわかりだと思うのです。  五十四年三月二日、「仙台支店割愛申請中の「楠修治」四月二日からに決定。」、そして一番最後の五十四年九月十日のをごらんいただきたい。「七月六日能代一億八千九百五十万円、七月十二日 小田川一億三千五百万円、八月十七日 安積二億二千九百三十万円、計五億四千三百八十万円」、その下に「「楠」君を仙台に採用して半年で五億を確保することが出来た。」、  どうですか、これは一体。これは、それぞれの工事はいずれもこのとおりに発注されております。農林大臣、こうした事態をどういうふうにごらんになりますか。なぜこういうことが起こるのですか。
  128. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 農林水産省において、いわゆる天下りと先生御指摘のような、いわゆる再就職の状況でございますが、これは人事院の承認を得て再就職した者は……(瀬崎委員「これは人事院の再就職承認をとっていないのです。この件だけ答えてください」と呼ぶ)一応参考までに申し上げますが、五年間で五十二名、それから十年間で九十八名なんですよ。  そこで、この問題については私たちはこう考えているのですよ。いわゆる農業水利事業だとか、いわゆる農業土木事業というのは非常に専門的な面が多いものですから、したがいまして、これはどうも官庁の方に専門家が多いんですね。民間よりも官庁の方に多いものですから、民間の方ではいまは極力官界からその専門的な技術を必要とする、ぜひお願いしたいという希望が多いのでして、こういう形はむしろおかしいと私は見ているのでございますがね。
  129. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうすると、田澤農林大臣の見解によれば、これはたまたまおかしいケースだった、こういうことなんですね。そう理解していいのですか。——まあいいです。  これは、とにかく天下った宮城という人御本人のみずから交渉してきた経過のまさに記録なんですよ。これが本物なんですよ。いままであなた方が言ってきたことは皆たてまえだったということをこれははっきり証明しているんですね。公共工事を手みやげに天下りというのは、決して作り話ではないんですよ。そうしないと公共工事がもらえない仕組みになっておる、このことを示しているのです。  私は、ここでまた人事院総裁伺いたいのですが、営利企業への就職制限制度についての説明の中で、法律が私企業への就職について絶対禁止のたてまえをとっていないことについて、つまり承認制をとっていることについて、憲法に保障する職業選択の自由、勤労の権利等の基本的人権と公共の福祉との接点について調整を図るんだ、こういう趣旨のことを述べていますね。  私がいま示したこの事例の場合どうでしょうか。楠という方は、職業選択の自由な意思でもないのに、また逆に言えば、三井建設は課長を希望しておるのに所長という人が行くわけでしょう。だから、企業の希望でもないわけですね。この点明瞭なんです。結局農林省が、上の方から押しつける。そのために、国民の税金で賄われている公共事業というみやげを出した。だから、天下る側から言うならば、まさに持参金つき天下りであり、受け入れる三井の側から言えば、工事欲しさに天下りを受けた、好きでもないのに財産目当てに財産家の娘さんをもらった、こういうふうなものではないかと思うのですよ。ですから、ここには、言うところの天下りさせられた本人の職業選択の自由もなければ、国民の税金で賄われた公共工事が持参金がわりに使われているという点で、公共の福祉も全然守られていないわけでしょう。両方とも踏みにじられているのではないか、こういうふうに思うのですね。いかがですか。
  130. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 いわゆる天下り規制についての百三条の規定は、いまお話にもございましたように、職業選択の自由とそれから公務の公正なる執行、それのバランスをどのようにとるかという接点において設けられ、また運用をしてまいってきておる案件でございます。いま具体的にお話のありましたもの等については、われわれ人事院といたしましては、持参金つきとかなんとかというそういう話は無論当初からあるわけのものでもございません。ただ、本人がそういうことで行きたいということで了承を求めてくるというかっこうになるものでございますので、それを受けてわれわれとしては審査をする。それから、在職をしたときとそれの関係企業との癒着等があっては困りますので、それの関連をしさいに検討いたしまして、密接な関係はないという判定のもとに審査についての承認を与えておるということでございます。
  131. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いよいよもって人事院の審査というものが現在の現実とはかけ離れてしまっていることをみずから証明されたのですね。  次の資料三の二を見てください。五十三年七月十七日の営業報告書。これは九州農政局ですね。対象工事が「後川向」と書いてありますが、正しくは後川内だと思います。「岸本組(佐賀県)を裏に。が天の声らしい。九月末発注の予定。道は完全に開けた。」とあるわけですね。そしてこれはずばりそのとおりになっているのですよ。五十三年九月発注で、正式名称は後川内ダム附帯仮排水路工事で落札者三井建設、落札金額一億九千二百三十万円、これは入札以前に事実上工事の落札者が決定され、かつそのことが落札予定者に通知されているということを示すのでしょう。これは一体農林大臣、どうごらんになります。なぜこんなことが起こるのですか。一つや二つじゃないのですよ。
  132. 森実孝郎

    森実政府委員 初めていま資料をいただきまして拝見いたしましたので、よく十分事情は調べてみたいと思っております。ただ、私どもといたしましては、指名競争で入札が行われて、三井建設がこのダムを落札しているということは事実でございますが、しかし、こういう話は初めて伺いましたので、よく調べさしていただきます。
  133. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それじゃ大臣、よく調べて、これがもし事実であった、いわゆる入札の以前に決定が通知されておった、これがわかったときにはどういう処置をとりますか。
  134. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 いま局長からも答弁ありましたように、この事実は初めてのことでございますので、今後十分調査をして、もしそういうようなことがございますならば、厳重なる措置をしたいと考えております。
  135. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 次、五十三年二月十三日のを見ていただきたいのです。今度は水資公団の三重用水、「幹線水路四工区その二(第一期)工事は三月末頃発注予定。三井確約」とあるんですね。  水資公団、この工事の発注年月日、落札者、契約金額——こちらで申し上げましょう、調べてありますから。これはここに書かれているとおりであります。五十三年三月末発注、三重用水、幹線水路四工区その二(第一期)工事でありまして、三井建設が一億八千四百万円で落札しております。公団総裁、なぜ水資公団にもこういうことが起こってくるんですか。
  136. 山本三郎

    ○山本参考人 お答え申し上げます。  ただいまの工事につきましては、先生のおっしゃるとおり、三井建設が落札をいたしております。しかし、その資料にありますような「確約」というようなことは、私ども耳にしておりません。よく承知はいたしておりません。
  137. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは契約の当事者が書いていることなんですよ。一方がそう言っているのに、発注者の方がそうではありません、そんなことで通りますか。もう一遍答えなさい。そんな姿勢だからいつまでたっても談合が続くんだよ。どうするんだ。
  138. 山本三郎

    ○山本参考人 私どもの方のいままでの知見においては承知しておりません。
  139. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 総裁、じゃこの件について調査もしないということなんですか、こういう事実があっても。
  140. 山本三郎

    ○山本参考人 ただいまお話しでございますので、私ども調査をいたしまして、もし事実がありますれば処置をしたいと考えております。
  141. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 次、資料の四の方に移っていきたいと思います。今度は井田至春という人の営業報告書であります。これは先ほどのよりもっとひどいんです。  この井田至春という人は、現在三井建設の取締役土木営業第一部長であります。昭和二十一年北大工学部の卒業で、すぐ内務省に入り、その後建設省に移って、昭和四十七年四月、東北地方建設局河川部長で退職して三井建設に就職となっております。この場合は、当然、三井は建設省と契約関係にあるわけですから、人事院の審査を受けていると思います。当然、条件がつかなければ認められないケースと思いますが、承認の条件にどういうことがありましたか。
  142. 金井八郎

    ○金井政府委員 この井田至春氏につきましては、昭和四十七年の四月一日に離職予定ということで人事院の方には申請が参りまして、私どもで四月十一日付で承認をしたわけでございますが、承認の理由といたしまして、この方は離職前五年間に在職した官職が、東北地建の山形工事事務所長、地建の室長、それから河川部長等を歴任しておるわけでございます。  それで、建設省との関係につきましては、建設業法による関係は、過去五年間の在職中ございません。あるのは、山形工事事務所長時代に、東北地建とこの三井建設との間に土木工事に関する契約がございましたが、この契約関係が、全体といたしまして軽微ということでございまして、役員になるのは御遠慮願いたい、一般の会社の職員であればよろしいということで、人事院といたしましては承認したわけでございます。
  143. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そこに「つく地位が技術的事項担当の非役員であること。」という条件がついていますね。これは一体何年間守らなければいかぬのですか。
  144. 金井八郎

    ○金井政府委員 公務員法の規定では、離職後二年間は密接な関係のある企業につくことを……(瀬崎委員「この条件は何年間拘束するのですか」と呼ぶ)二年間でございます。
  145. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 二年間の間に、技術的事項担当以外の職務につく場合はどういう手続が必要になるのですか。
  146. 金井八郎

    ○金井政府委員 私どもの方では、二年間の間に、その職員が企業につきまして地位と職務内容が変わった場合には、再度人事院の方に承認をとることを必要としております。
  147. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それではこの井田氏、その手続とっていますか。
  148. 金井八郎

    ○金井政府委員 今回御指摘がございましたので私の方でも調べましたが、この方は七年後に取締役土木営業第一部長になっておることがわかりまして、二年間の間には地位の変更はございません。
  149. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 冗談ではありませんよ。経歴書によれば、技術担当から一年目に営業担当にかわっておるわけですよ。一年後の四十八年四月に土木営業第四部長に就任しているわけなんです。いいかげんなことを言っては困りますよ。しかもこの井田氏は、今度はもっぱら自分の出身官庁である建設省の営業ばかり担当するわけですね。以下、その営業報告書であります。  まず第一の特徴は、三井建設への発注の確定がすべて入札を待たずに決定され、そのことが発注者側、つまり建設省側から事前に伝えられているのですね。  簡単に要点だけ申し上げていきますと、まず1ですが、五十三年二月四日、これは北陸地建ですね。蒲原大堰であります。「Aの応答によると三井、国土の線が強く、福田は後退している。当社はこれ一本で背水の態勢」こうなっているでしょう。その横の五十四年九月十七日をごらんください。「九月十八日現説、」現地説明ですね。「九月二十八日入札、確実」とある。そして五十四年九月二十八日、予定どおり三井と国土のJV、ジョイントベンチャーに十一億二千五百万円で落ちており、おまけに二期、三期は三井、国土に随契になっております。  次、4の五十三年三月二十七日の一番下をごらんください。これは中部地建です。犀川排水機場、「最近西松が動いていたが、先週末河川部長鈴木)より名古屋支店石田に口頭で、西松に決定として宣告された」。この鈴木という人は鈴木富千代氏で、現在はすでに退職済みですね。「当社には三重工事、河原田排水機場を割り当てられた」発注者である河川部長から、西松に決定とか、そのかわりに河原田排水機場を割り当てる、こんなことが行われているのですね。もうこうなったら、入札なんて全く儀式ですよ。  次、五十三年の七月十日、5を見ていただきたい。近畿地建です。大和高田高架橋、「七月十日入札、確実」とありますが、これはもう建設省自身お調べになっているはずで、そのとおりであります。そこに与謝トンネル(福知山)、「五十三年度年度末二月ごろ発注予定、確実」これもそのとおりなんです。  それから次、四の三の6、ちょっとこれは順番入れかわっておりますが、ごらんください。五十三年十一月十三日、四国地建、大洲西トンネル、仲間トンネル、中村工事事務所の分ですね。「四国出張、大洲工事平田所長、本局木谷局長面接。左記二本の内一本、五十三年度獲得に見通し明るい。」この平田氏は平田道昭氏、現香川工事事務所長。木谷地建局長は現在渡辺組に天下りして顧問になっていますね。  この続きが七番です。五十四年三月十二日、四国地建、仲間トンネル、「木谷局長面談。突然の情報変化。仲間トンネルは表を鹿島建設、裏を三井建設との決定的宣言あり。」そしてこの結果を見ますと、この言葉どおり鹿島建設が六億四千九百万円で落札をしているわけであります。発注相手の変更を直接面接した局長が宣言しているのですね。しかも決定的宣言を受けたと、こうまであるわけでしょう。  それから8、五十三年十一月二十八日、東北地建、千代大橋下部、「十二月二十七日局長面接。決定的回答は得られていないが手ごたえは充分。」とあります。これは次のページに続きます。  9、五十三年十二月十六日「当局の確言が得られ、当社の獲得確実、近日中指名、年内契約」  それからその次、10の五十三年十二月二十五日「当社獲得決定。十二月二十七日現説、十二月二十八日入札」、こういうことが二十五日の日にちゃんともうわかっているのですね。そしてこれは三井建設が七千八百四十万円で落札になっております。  これ、ずっと読み上げるといいのですが、時間の関係がありますから、見てもらえば全部そのとおりなんです。もうごらんのように、そのすべてが入札以前、それも相当以前にどこに発注されるかが決められる、かつ発注相手にそれが伝えられるのですね。それが二つか三つならそれは間違いかいなということもありますが、すべてが事前決定、事前通知、また一たん内定したものが途中で変更される場合があると、それもちゃんと伝えられて、かつ代替措置が講ぜられるのですね。これらの決定が、先ほどの農林省の場合はだれが伝えたか書いてないけれども、これにははっきりとだれが伝えたかということが書いてある。これでも、先ほどの丸山官房長でしたか、何が公正に行われているかと言わざるを得ぬじゃないですか。こういう事実を見て、建設省は一体どういうふうに措置しますか。
  150. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 いま初めて拝見したところでございますから、十分調査いたしたいと思いますけれども、いま先生のお挙げになりました中で、入札をいつやるとか、いつごろ現説をやるとかいうことは秘密の事項ではございませんから、それは……(瀬崎委員「一月も二月も前にわかっているのがあるじゃないか」と呼ぶ)それは別に秘密ではございませんので、たまたま井田さんという人が来られて、地建の方でいろいろ話があったということは問題はないと思います。しかしながら、ここにありますように、具体的にいま御指摘のような事態が果たしてどういう理由で起こったかということは、調査の上、もしそこに違法行為等がございましたら、厳正に処分をいたしたいと考えております。
  151. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 公取、おいでいただいていますね。入札以前に落札業者が決められている、通知もされている、こうなってくると、公正な競争は全然ありませんね。独禁法違反の疑いがあるのじゃないでしょうか。公取はどうします。
  152. 伊従寛

    伊従政府委員 お答えいたします。  独禁法の見地からは、入札後になりまして、その入札で競争があったかなかったかを検討するわけでございますが、御指摘のように、最初に決まっておるということが確実でありますと、競争が実質的に制限されている疑いが強いのではないかと思います。
  153. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは公取はどうするのですか。こういうのははっきり証拠も挙がっているわけですから。
  154. 橋口收

    ○橋口政府委員 法律問題につきましては、いま伊従審査部長からお答えをしたところでございますが、ただいま拝見しました資料は昭和五十三年の事件でございまして、独禁法の規定によりますと、ある種の独占禁止法違反行為がございまして、それから一年以上経過をいたしますと独禁法的な処置がとれないということになっております。したがいまして、ただいま拝見しました資料に関しまして、直ちに法律違反の処置をとることはむずかしいというふうに考えております。
  155. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それではいいです。一年以内の事実を示せば、それは公取は調査に入れますね。それだけ確認しておきます。
  156. 橋口收

    ○橋口政府委員 独禁法の規定によりますと、事業者または事業者団体の行う競争制限的な行為によりまして一定の取引分野の競争が制限されました場合には、独占禁止法違反になるわけでございます。したがいまして、個別的なある種の談合事件がございまして、それが偶発的な理由によって生じたものにつきましては、これは法上の問題にすることはむずかしいわけでございます。したがいまして、個々の事件につきまして独禁法との関係がどうなるか、これは具体的な調査をしないと確たることは申し上げられないわけでございます。
  157. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それと、いま私が読み上げている中にあったのでお気づきだと思いますけれども、仲間トンネルの場合ですと表を鹿島、裏を三井、こういうふうに言っているわけですね。つまりこれは表ジョイント、裏ジョイントということなんですよ。  もう一つは、いまちょっと読み上げませんでしたが、総山トンネルというのがございます。これは今度逆でありまして、表を三井、裏が小松、こうなっておるわけですね。総山トンネルというのは、一番最後13の近畿地建のやつですね。これは「七月発注予定、一時、当社の年度受注総額の関係から問題があったが、その後問題なし。但し当局の内意により小松を裏JVにする。」とはっきり書かれておるのですね。  建設省に伺いますが、こういう裏ジョイントを組んだ業者は建設業法の二十八条「請負契約に関し不誠実な行為をした」、これに該当するのではないかと思うのですが、そのことと、それから、もしこれを建設省側が指示しているとしたらより重大な事態だと思うのですが、どうですか。
  158. 吉田公二

    ○吉田(公)政府委員 ただいま御指摘のように、建設業法第二十八条の一項二号におきましては、「請負契約に関し不誠実な行為をしたとき。」という規定がございます。その実態がどうであるかということを具体に調べまして、この裏ジョイントそれ自体が、請負契約に不誠実な行為をしたということが明らかであれば、これは先般にも一件処分した例がございますが、実態を究明した上で判断すべきものと思います。
  159. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 指示した建設省側は。
  160. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 建設省側からそういう指示をするようなことはあり得ないと考えますが、もしそういう事実が明らかにあった場合には処分をいたします。
  161. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それから第三の特徴は、12をちょっと見ていただきたいのです。これの一番上です。中国地建、上河原改良工事、「前年度に引き続き受注出来る。(目下当社員が当局の要請により設計を手伝っている)尚五十五年度にも継続工事がある見通しである」と報告されているのです。こうなってきますと、発注者と請負業者は完全にぐる、なれ合いですね。設計段階から一緒にやっているわけでしょう。これは建設省としてはどんな申し開きもできない事態だと思いますが、あるいはこれがしょっちゅうやられていることかな、こういう感じさえするのであります。どうなっていますか。
  162. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 そういうことは絶対にないように厳に注意をしているところでございますが、もしそういう事態があったといたしましたらこれはゆゆしい問題でありますから、十分に調査の上、厳正なる措置をいたしたいと考えております。  ただし、一言言わしていただきたいのですが、これはいま拝見したものでございますし、なお個人の報告書でございますから、この事実をもってすべてが正しいかどうかということは非常に疑問があると考えております。
  163. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 調べればそれはわかることだと思います。これも結局、三井のたしか宮下氏は専務取締役、これが決裁しているのですからね。  もう一つの第四の特徴は、これはいろいろ理事会で意見が出て配慮したからA、8、Cとなっているのでありますが、1のAというのは、増岡参議と原文にはあるのです。「増岡参議の応答によると、三井、国土の線が強く、福田は後退している。」こういうことになります。  それから4のBの原文の方は田村先生となっているのです。「(但し田村先生対策の宿題あり)」こういうことであります。  それから5のCのところは上田稔参議院議員であります。「上田稔参議院議員に御願することを突破口としたい」  6それから7のD、これは当時ですが、今井代議士というのが原文に入っているのです。  それから14のE、これは原文の方ではこうなっています。田中先生(角榮)と書いてあります。「地建、局長部長に対し、当社が正式に田中先生(角榮)にも御願する旨、申し入れて置いた。」こういうことなんですね。こういうふうに政治家に強く働きかけているのが特徴なんです。  この点では、その次の15、16も見ていただきたい。これはまた人が違うのです。中本正則氏、この人は今度は自治体の土木畑をずっと歩いてきた人なんです。広島、和歌山、栃木、奈良、山梨、愛知、こういうところの課長や土木部長を歴任して三井に入っておりますね。  15の方の二月十五日Fと書いてあるのは、金丸信先生と原文はなっております。山梨県の今後の受注計画について「指示をお願いした。」  16をごらんください。Cのところは、渡辺美智雄代議士と実は原文はなっておるわけであります。「東荒川ダムを受注したい。」「JVに加えられたい旨要求した。代議士は知事と相談する。谷川秘書には「カの平島支店長に電話かで三井を頼むようお願いする。」次のHは小沢辰男代議士でございまして、新津下水道。  ここにおいでになるので、やはり一言伺わないわけにいかぬと思いますが、大臣はこの中本氏とお知り合いなのか。また、こういう陳情はちょいちょい受けていらっしゃるのですか。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 お答えいたします。  中本さんというのは九州大学かどこか出た人で、農林省に勤めておって、農林省ですね。(瀬崎委員「地方自治体の栃木県の……」と呼ぶ)ええ、栃木県にもいたことあります。この人知っています。しかし、東荒川のことはよく知りませんね、私これは知りません。
  165. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これはどうも渡辺大臣の口ききが余り強くなかったと見えて、実は三井はジョイントに加えてもらえてないんですね。ただし、問題なのは、三月十二日の時点で鹿島が本命ということははっきりしているわけですね。受注したのはやはり鹿島で、ただジョイントに加わっているのが大日本土木と渡辺建設だったと思いますね。次の小沢辰男代議士の新津下水道、これはずばり三井建設が受注しているのです。この方はずいぶん効果があったものと見られるのですね。  こういう点で、本当に入札を厳正にやれというのなら、私は政治家がいろいろ働きかけること自身が間違いだと思うのです。ましてや国の予算を預かっている大蔵大臣としては、いささかでも疑惑を招くようなことがあっては予算の公正な執行ができないと思うのですね。みずから範を示すという決意をはっきりしておいてほしいと思う。
  166. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは昭和五十五年のころだそうですね。私はよく記憶ありませんが、少なくとも大蔵大臣としては、こういうことはいたしておりません。みずから範を示したいと思っております。
  167. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 時間がないので少し急ぎますが、次の資料五であります。  これは昭和五十六年度の日本道路公団発注の大規模な工事に対する三井建設のいわゆる希望個所願なんです。下にありますのが社内文書で、上の方が正式な提出文書になっていますね。希望順位がきちっと打ってありますし、具体的に工事の名前が書いてあります。道路公団が五十六年度の具体的な発注工事個所を受注希望会社に知らせたのはいつですか。
  168. 高橋国一郎

    高橋参考人 具体的な個所を示しますのは、年に大体五回ないし六回、二カ月に一度ずつ区切りまして、ある個所についてジョイントの希望のあるものにつきましてあらかじめジョイントの希望を申し出るようにいたすのが第一でございますので、大体工事の発注の一カ月半ぐらい前じゃないかと思っております。
  169. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうしますと、このうちの希望順位でいきますと四番目と五番目はまだ入札していないわけなんですね。これから入札をやる。それが一カ月半どころか一年も前に三井にわかっていたということになるわけでしょう。  それから、文書をごらんになってわかりますように、社内の決裁も係から二専務一常務二部長まで決裁しているマル秘の印をついた重要文書なんですね。われわれ常識的に考えますと、発注者に対してこれこれの工事を希望しますのでよろしくと、あいさつ状でも送っているんなら理解できるんです。筋が通らぬでもない。しかし、本来ならこの大成建設というのは、入札において場合によっては三井の競争相手となる会社なんでしょう。当然三井としては、三井がどこの工事を一番ねらっているかどうかなんていうことは大成には知られたくないはず、また知らしてはならぬはずですね。そうじゃないでしょうか。
  170. 高橋国一郎

    高橋参考人 大成建設にあてまして三井建設からそういうふうな文書が出ていたことは私どもは知りませんでした。
  171. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 しかし、現に出ているのですね。三井の会社がこういう公式な文書というものを大成建設に出しているというのは紛れもない事実です。なぜこういうものをする必要があるんだろう、こういうことを考えざるを得ないのですね。何ですか、道路公団としては、大成建設を経由して発注するとか、あるいは大成建設と相談しながら発注するとか、こういう事実があるからこんなことが起こるんですか。
  172. 高橋国一郎

    高橋参考人 そういう事実はありません。
  173. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 では、これは全く説明がつかないのですね。結局こういうことにならざるを得ないと思うのですよ。すでに村上議員が証人喚問を要求しております土工協の前田忠次前会長、植良祐政前副会長、こういう人たちが工事配分の元締めだと言われてきたのですよ。今回は、いままで新聞等では無傷と言われておった土工協のもう一人の副会長だった岡田政三氏の名前も出てきたわけですね。結局、土工協の元会長、二人の副会長、全部やはり元締めだったということがこれで証明されてきた。結局、第一には、土工協が受注調整、いわゆる談合の組織であり、副会長の岡田氏が前田、植良両氏とともにその談合、工事配分を取り仕切っておった、こういうことを前提にしないとこの手紙は理解できない。  第二には、その目的というのは、大手間で競争から来る利益の低下を防ぐために、以前から恒常的、組織的にこういうことが行われていたことをこれははっきり示している。そうしないと理解できない。  それから第三には、前田氏の率いる鹿島建設、岡田氏の率いる大成建設、これは大手の中の超大手として業界に君臨する地位を占めていること。それから、朝日のインタビューで、田中角榮元首相と親しいと聞くがと問われて、三十年来の知己だと答えた植良氏。こういう業界のボス、こういう人たちがいわば支配権を握っている。こういうことがなければこんな手紙が大成に出る、こんなことは考えられないのですね。  そこで、すでに入札を終わっている四工事であります。権現山トンネルそれから初石工事、聞いている時間がありませんから、私どもで調べた範囲で言いますと、これがまたもののみごとに三井建設に落札されているのですね。まさに効果てきめんだった、こういうことなんでしょう。これは明らかに受注調整、競争排除、談合が行われている証拠なんです。  これは現に、まだ入札の行われる可能性のあるもの、二月とか三月に控えているものもあるが、いずれも工事中のものであります。独禁法違反の疑いが十分持たれると思いますが、公取、どうですか。
  174. 橋口收

    ○橋口政府委員 昨年の秋、静岡県の建設業協会その他五団体に対しまして立ち入り調査を行いましてから以降、マスコミ等でも幾多の情報が提供されておりますし、またマスコミと関係なく当委員会に対しましても幾多の情報が提供されておるわけでございまして、私どもといたしましては、情報の確度、情報の価値、有効性につきまして現在慎重に検討をいたしておるところでございますが、一般的に申しまして、公開された情報の価値は相対的に低いわけでございます。ただ、そうは申しましても、一定の組織として、あるいは制度として、システムとして、ある種の入札調整行為が行われている可能性はあるわけでございますから、そういうものにつきましては現在関心を持っておるところでございまして、矢野委員の質問にもお答えをいたしましたように、当委員会等で提供されました資料につきましても、貴重な材料として今後の法施行の参考にさせていただきたいと考えております。
  175. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 委員長にお願いしておきたいのでありますが、先般村上議員が要求いたしました証人喚問要求に加えて、この岡田政三大成建設副社長、土工協前副会長の証人喚問をお願いしたいということ。そうして、事がこれほど深刻だということは、この事実を通じて委員長も御理解いただいたと思うのです。現在まだ証人喚問が実現するのかしないのかは決まっておりません。委員長としてもその実現のために全力を尽くしていただきたい、このことも要請をしておきたいと思うのです。
  176. 栗原祐幸

    栗原委員長 理事会で協議いたしたいと思います。
  177. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いろいろな調査があって、この土工協を中心にもし現に三井、大成などが談合しておったということがわかってきた場合、道路公団総裁はどういう措置をとりますか。  そのことと、あと入札が二月と三月に二つ残されていますね。この入札は、こういう事実が出た場合はどう処置しますか。
  178. 高橋国一郎

    高橋参考人 おっしゃるとおりなことでございましたら、厳正に処置いたします。
  179. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 入札の方はどうします。入札は予定どおりやるのか、とめるのか、どうするのか。
  180. 高橋国一郎

    高橋参考人 入札はそのとおりになるかどうかは存じません。調査したいと思います。
  181. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは明らかに事実なんですね。ですから、調査するのはよいが、調査の結論が出るまでに入札をやっちゃったらだめですね。僕は入札を延期して調査すべきだと思います。はっきりしてください。
  182. 高橋国一郎

    高橋参考人 できるだけ早急に調査いたします。
  183. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 先般も前道路公団総裁時代の不正の疑いを村上議員が指摘した。いまのような態度だから道路公団はなめられて土工協がこういうことをやるわけですね。事実は小説より奇なりとよく言いますけれども、いまわれわれが示した資料というのは、まさにそれに当たっていると思うのですね。今日の入札制度が全く虚像であることを示したと思います。  公共工事発注の実際のシステムは一体どうなっているのか。こういうことから、あるいは先ほど私が示した表等から言えることは、まず大手の業界の支配者と発注官庁のトップと有力政治家で各公共工事ごとの本命業者を決定する、天の声です。この決定は、本省や地建、農政局の幹部から本命業者に伝えられる。天の声の伝達です。次いで、発注官庁が指名権を利用して本命中心に談合グループを指名するわけなんです。入札に当たっては、指名を受けたグループにはもちろん先ほどの決定が伝えられ、それに従って談合が行われる。入札は儀式にすぎない。本命以外の指名業者は、指示に従っておけば別の公共工事を受注できる確認がその筋からちゃんともらえているから、別段普通なら紛争も起きない。したがって、公共工事全体を通じて見れば、超大手を中心に、会社の規模、政治献金の規模、天下りの規模などに見合って、莫大な利潤とともに工事が山分けされていく、こういうシステムなんですね。こういうことをきちっと政府が認識して取り組む以外に、この問題というものは絶対に根を断つことはできないと思うのです。もちろん入札制度の改善も必要だけれども、建設省があくまで指名入札に固執するのは、指名権さえ握っておったら、この談合グループだけの指名で終われるからなんですね。たとえ制限つきにもせよ条件つきにもせよ、一般競争入札にすると談合は崩れてしまうわけですね。事前の決定もできなくなる。こういうことを恐れるからなんです。この点で、入札制度の改善と、こういう政官財癒着を断ち切ることと、これはまさに車の両輪、この点きちっとやるということを官房長官に答えてもらいたいと思うのですね。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府といたしまして十分注意をいたしまして、御趣旨に沿うようにいたします。(「建設大臣はどうした」と呼ぶ者あり)
  185. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 じゃ、声がかかっています。建設大臣、中建審に任して、入札制度や予定価格の公表問題をちょっとどうしたからといって決して直るものじゃない、このことをはっきり理解したかどうか、そのことを伺っておきたいと思います。  そして、建設省自身にいま疑惑がかかっているのですが、これに対する処置を大臣としてはどうするのか、はっきりしておいてください。
  186. 始関伊平

    始関国務大臣 ただいまは私としてはにわかに信じがたいような内容を含む詳細な資料を御提示になりました。談合に絡んでいろんな問題が起こってまいりますが、いま御指摘のように、あの資料につきましては慎重に調査をいたさなければなりませんが、もし御指摘のような事実があれば、これは公務員法、あるいは建設省には建設業法がございますが、そういう規定に照らしまして厳重に処断するというふうに申したいと思います。  なおまた、いま指名競争入札が諸悪の根源だという御指摘がございましたが、この点につきましては、もう御承知のとおり、中央建設業審議会にただいま諮問いたしておるところでございまして、その中にいまお話のございました制限つき一般競争入札が余りむやみと数が多くなりますとどうにもなりませんので、制限づきでどの程度やれるものか、またどの程度やるのが適当かというようなことも審議をお願いしておる事項の一つでございまして、その答申を待って善処してまいりたい、かように存じています。  私どもの方は行政機関でございまして、司法機関ないしは準司法機関ではございませんが、いま申しましたとおり、建設業法とか地方公務員法とか、そういうものに触れる場合があれば厳正に処断する、こういうふうに申しておきたいと思います。
  187. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 建設省はその指名競争入札のみ採用する理由として、中小企業の仕事を守るために大手の参入を防いでいるんだ、こう言ってきたんですが、実はそれが全く逆になっていることが滋賀国道工事事務所の五十五年度の発注状況を調べてわかりました。これが資料の六であります。これはごらんいただけば一目瞭然であります。全体で五十二億三千万の工事のうち県外大手、県外大手というのはほとんどが資本金一億円以上の大手でありますが、これが約四十億、七六%をとってしまうわけなんですね。県内の地元の中小というのはわずかに八億にすぎないのであります。件数はなるほど八十六件、多いように見えますが、金額はわずかにそういうこと。一件当たりに直すと九百二十七万、一千万にも満たないようないわば邪魔くさい工事だけ地元業者に押しつけられている、こういうことが非常にはっきり出ているのですね。  建設省に言わせれば、いや、施工能力の関係だ、こう言うかもしれませんが、この入札に指名した業者を見ますと、これはたとえば一号線の土山地区舗装修繕工事ですが、この中には昭建とか平和建設、田中建設、森舗道など地元業者も約半分入れているのですが、約半分は日本鋪道、佐藤道路、奥村組土木興業、住建道路、こういう大手を入れるわけなんですね。結局、指名制度によって大手を導き入れ、地元を圧迫しているという姿があるわけなんです。決してこれは施工能力の問題ではない。ない証拠に地元も指名しているんですから。  こういうふうなことについても政府見解をきちっと求めたいと思っておりましたが、時間がないので一言。これなどは直ちに改めようとしたら地元優先に切りかえられる問題だ。この点で、実行するかどうかだけ聞いておきたいと思います。
  188. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 中小企業の受注確保につきましては、発注標準の遵守あるいは分割発注の推進あるいはジョイントベンチャーの活用というような形で極力努めているところでございまして、建設省の直轄事業につきましては約四五%が中小、それから県事業につきましては七割近くが中小という形になっております。  しかしながら、いま御指摘のように、滋賀県の場合には三割に満たないという実情でございます。これは当時国体がございまして比較的大規模な工事が多かったということによるわけでございまして、全国的な例にはならないものと考えておりますが、これからは中小企業の対策につきましては極力努力してまいりたいと考えております。
  189. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 逆でね、指名によって大手と中小業者を競争させるように持っていっているじゃないか、こういうことを私は指摘しているんですよ。理屈になりません。  時間がないので、あとF4ファントム改修問題について伺いたいと思います。  一昨日、防衛庁F4ファントムの改修計画を発表しました。その内容は、改修が完了した場合、F15と比較して、空対空の要撃戦闘能力はやや低いが、対艦、対地攻撃を合わせた爆撃能力ではF4改修の方が上になる、こういう重大な内容を含んでいるわけですね。同時に、五十五年五月には調査団を米国に派遣している、こういうことも発表しているわけですね。国会でこれほどまでにF4改修問題が大問題になっているのに、防衛庁はこれだけ明確な防衛計画をなぜ国会に隠し続けてきたんですか。
  190. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 事実関係、また事実にわたることでもございますので、政府委員から答弁させていただきますことをお許しいただきたいと思います。
  191. 塩田章

    ○塩田政府委員 ただいま五十五年度の調査のことも触れられましたが、五十五年度の調査はASIPと申しまして、延命ができるかどうかということにつきまして調査をいたしたことは事実でございます。  それから、その後どこにも説明しないできたではないかという御指摘でございますが、私どもといたしましては、五十六年度の予算要求の際の業務計画以来その要点は公表いたしてきてまいっておりますし、今後とも御説明を申し上げて御理解をいただきたいと思っております。
  192. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 何を言っているのですか。私が聞いたのは、一昨日防衛庁が発表した改修計画について、なぜこれをきちっと国会でも言わなかったのか、この国会でこれだけ議論になっている中で一言も言わなかったのはなぜか、ここを聞いているんです。理由を聞いているんだ、理由を。
  193. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御指摘のあれは、防衛庁の記者クラブから御要求がありまして御説明をしたわけでございますけれども、国会でも十分誠意を尽くして御説明を続けてまいりたいと思います。
  194. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 いままで何回もこの問題が国会で質問されているのに、それに対してなぜ答えてこなかったのか、このことを聞いているんですよ。その理由は。
  195. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 瀬崎委員の御質問などを通じまして“誠意を持って今後御説明を申し上げてまいります。
  196. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 これは官房長官に聞くんですが、政府は、F4の改修はF15の性能の範囲、そのF15が専守防衛の範囲だからF4も問題ない、こう言っていたわけでしょう。こういう政府発言は、今回の防衛庁が発表した改修計画を知った上でそう答えておったのか、知らないでそう答えておったのか、どっちですか。
  197. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府は、他国に侵略あるいは攻撃的な意図ととられるようなつもりは一切いたさない、こういう基本方針を持っておりまして、別にただいま15とか4とかということの関連で事を言ったわけではございません。(「質問通告がないじゃないか、やみ討ちはいかぬぞ」と呼ぶ者あり)
  198. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 やみ討ちでも何でもないんですね。土曜日、こっちが質問通告を出した後の話です。  私が聞いているのは、一昨日の防衛庁が発表した改修計画を承知の上で、先ほど言っている政府発言が行われておったのかどうかということを聞いているのです。一言で答えられるはずの問題です。
  199. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ファントムとF15との比較につきまして、政府が公式に、何か発言とおっしゃいましたが、申し上げて比較をしたことはちょっと私記憶をいたしません。
  200. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 それでは、鈴木首相はF4試改修を知らなかったとこの間言ったわけなんですが、今回防衛庁が発表した五十五年五月の米国への調査団派遣、これについては首相は知っていたんですか、知らなかったのですか。
  201. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は、たびたび申し上げておりますとおり、試改修そのものはいわばテストでございますから、それが幸いにして成功をして、そしていざ生産をするということになりましたら、これは防衛力に関する重要な事項でございます。しかし、それが試改修である限り、あるいはその準備段階である限り、一つ一つ総理大臣が知っておられる必要はない。文民である防衛庁長官の指揮監督のもとに行われれば、それでよろしいと私は思っております。
  202. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 五十五年度の予算に調査費がのっているんですね。そのことについて防衛庁総理説明しなかった、する必要はない、こういうことですか。
  203. 塩田章

    ○塩田政府委員 先ほども申し上げましたように、五十五年度の調査費は、延命についてその可能性をアメリカに行って調査をしてまいった経費でございますが、そのような点に至るまで総理大臣に御説明したわけではございません。
  204. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 政府国会も知らない間に試改修をどんどんどんどん進めていって、百機の本格改修の一切の段取りができてから、つまり既成事実が完全につくられて後戻りができないような状態になって報告して追認を事実上迫る、こういうことになってくれば、これはもう実際上シビリアンコントロールは有名無実になってしまうんですね。そういう点をわれわれは非常に懸念しているのですが、先ほど宮澤長官は、この程度のことは、試改修に入ることは一切総理に報告をする必要はないなんて言われたのです。これはきわめて重大だと思うのですね。シビリアンコントロールを一体どう考えているのか、改めて伺っておきたいと思います。
  205. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理大臣予算の編成、執行全般について、あるいは国政全般について責任を負っているものでございますけれども、そのことは直ちに一つ一つの施策全部を総理大臣が知っていなければならないということではないだろうと私は思う。そのために文民であります各閣僚が各省庁を指揮しておるのでございますから、それで十分である、その中で特に重要なことについて総理大臣自分で判断をする、あるいはこの場合にはやがて国防会議等に付議される、そういうことで十分と思います。
  206. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 結局いまの政府の態度でいくと、報告が公式に行われるときには事実上もう既成事実はつくられておる、こういうことになるのですね。そういう点でもシビリアンコントロールを政府みずから無視している、こう言わざるを得ないと思う。  四十三年の増田発言については、四十七年のときに、結局爆撃装置をつけるということは憲法違反になるからできない、こういうことが国会ではっきり言われているわけですね。この答弁はそのまま実行をされて今日に来たわけでありますが、ここへきて政府は、試改修がうまくいけば百機の本格改修に進む意図を持ってその試改修にかかっているわけでしょう。ということは、憲法の解釈まで政府は変えたということなんですか。
  207. 塩田章

    ○塩田政府委員 当然憲法の範囲内で私どもは考えているものでございます。
  208. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 そうしますと、増原長官が憲法の制約があるからと、こう言っておったにかかわらず、憲法は同じなのに今回は違ったことをしてなお憲法の範囲内だということになれば、解釈を変えたというように言わざるを得ぬじゃないですか。防衛庁長官、どうですか。
  209. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 増田長官答弁は、先ほども御答弁申し上げましたけれども、わが国は他国に侵略的な、また攻撃的な脅威を与えるような装備は持たないという基本方針を述べられまして、このような観点に立って、当時の軍事技術の水準等諸般の情勢を考慮して、次期戦闘機には、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるようなものとの誤解を生じかねないような爆撃装置は施さないということを述べたものでございまして、今回のことによっていかなる見解をわれわれが皆様方にお示しするかということにつきましては、目下鋭意検討中でございますので、しばらく時間をかしていただきたいというのが現状でございます。
  210. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 同じことばかり繰り返しているのですが、私は違うことを聞いているのですよ。増田長官がそういう発言をせざるを得なかったのは憲法の制約があるからだと、今度は四十七年に増原長官が言っているわけですよ。ところが、そのやることは防衛庁がはっきり変えてきているのだけれども、なお憲法の範囲内だ、こういうことになるならば、憲法は変わってないのですから、今度は憲法に対する解釈を政府が変えてきたのか、こう私は尋ねているのです。そこを答えていただきたいのです、長官
  211. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御指摘の増田長官発言を変更することになるかどうかという点については、政府として目下鋭意検討中であり、もうしばらく時間をかしていただきたい。
  212. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 検討中、検討中と言って、憲法にかかわるようなこういう重要事項について、国会を欺いたり、国会には隠すとか、こういうことでどんどん既成事実をつくる。そして、こういう防衛庁政府のやり方に対して国会がチェックできないようなことになってきたら、議会制民主主義は全然役立たぬ、こうなる。これはわれわれ国会議員として主権者である国民にその責任を果たしてないことにもなるわけですね。事がここまで来ますと、これは一党や二党の問題ではない。まさに国会全体の問題、重大事だと思うのです。  そういう点では、こういう政府答弁なら本来審議は進められないということになるのだけれども、われわれとしては、先般も理事会で要求して、緊急にこのF4ファントム試改修問題について集中審議をやるべきだ、ここでじっくり時間をかけて論議して、シビリアンコントロールと議会制民主主義に基づく究明をきちっとしておかなければならないと思うのですね。こういう点改めて委員長に要求しておきたいと思うのです。
  213. 栗原祐幸

    栗原委員長 理事会で協議をいたします。
  214. 塩田章

    ○塩田政府委員 四十七年に当時の増原防衛庁長官がお述べになった中に、憲法違反であるというふうに明確に解釈をしたというものではございませんということをはっきり申しておられます。  私どもは、今回の試改修に当たりまして、今度のF4の改修が他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるものであるということについては全然そういうことはないと考えておりまして、ただ先ほど長官からお答え申し上げましたように、増田発言に対する見解につきましては現在検討中、こういうことでございます。
  215. 栗原祐幸

    栗原委員長 時間です。
  216. 瀬崎博義

    ○瀬崎委員 私の持ち時間の範囲内ではこれ以上究明できませんから、集中審議をお願いしたし、あわせて住宅の問題もやる予定でしたが、時間の関係でできませんでした。出席の政府委員には失礼いたしました。
  217. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて瀬崎君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、休憩いたします。     午後一時四分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  218. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
  219. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 最初に、ホテル・ニュージャパンとそれから日航関係の刑事責任の問題から入りたいというふうに思います。  昭和五十五年十一月二十日に川治のプリンスホテルというところで火事がありまして、そこで亡くなった方が四十五名、それからけがした方が二十二名ということであったわけですが、このときに会社の社長をやっていた奥さん、それからコンツェルンみたいになっておりまして、そのコンツェルンの責任者であっただんなさん、この二人が逮捕されて勾留をされ、延長になって勾留のまま起訴になっておるわけですね。どういう一つの過失責任というか、そういうふうなものが問われたのかを法務省の方から御説明願いたいと思います。
  220. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの川治のホテルの事件でございますが、いまお尋ねの起訴された方は、有限会社川治プリンスホテルの役員二名についてであろうと思います。先ほどお話のございましたように、五十六年七月十八日に公判請求が付されておるわけでございますが、その役員の二人の方につきましては、いわゆる経営者として建物の管理に当たる者でありますが、いずれもその建物が耐火用の構造としては不十分である、また通路に防火用の扉の設備がないとか、そういうような防火上の措置が不十分であるというような点、また火災が発生した場合に十分お客さんが避難できないというような構造であるというようなことがございましたのに、そういう点についての十分適切な措置を講じていなかったという点が過失に問われているように思います。
  221. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私がいまお尋ねしましたように、これは二人とも逮捕、勾留されて、そして起訴されたこと、これは間違いないわけですが、それとホテル・ニュージャパンの火事とを比較してみて、どこが一体、どういう点に問題があるかということを、これはわかっている範囲で結構ですが、ただ、私の言いたいのは、その事件では直接の責任者は奥さんなんです、これは逆に。だんなさんの方はコンツェルンの責任者みたいなのですが、それがそういう状況にあるというのと均衡を失しないように、このホテル・ニュージャパンの火災の刑事責任というものも当然関わるべきものである、こういうふうに私は考えるのですが、それについてはどういうふうに考えておるか。
  222. 中平和水

    ○中平政府委員 お答えいたします。  死傷者を伴うホテルの火災の捜査につきましては、出火の原因それから出火の行為者、出火時におけるホテルの従業員の措置、防火管理者による防火設備の設置管理の状況等の事実関係を解明いたしまして、この事実関係に基づきまして、刑事責任の有無とその範囲を明確にするために所要の捜査を行っておる、こういうことでございます。  今回のホテル・ニュージャパンの火災につきましても、現在、出火原因、出火の行為者、出火時の措置、防火設備の設置管理の状況等の事実関係を解明するために、現在、現場検証、関係者に対する事情の聴取等の所要の捜査を行っているわけでございまして、その結果、先般の川治プリンスホテルと同様に、管理者についての責任が明白になれば、それなりに警察は厳正に対処してまいる、このような考えでおるわけでございます。
  223. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 日本航空の事故ですね、これについては、いま警察の方ではどういうふうに取り組んでいるというんですか、現状はどういう状況でしょうか。
  224. 中平和水

    ○中平政府委員 現在、先ほど申し上げました各捜査の要目について、鋭意捜査中でございます。(稲葉委員「日本航空の事故」と呼ぶ)  日航の問題につきましても、警視庁といたしましては、即日、特別捜査本部を置きまして、乗務員、乗客、航空業務関係者からの事情聴取による事故原因の究明、それから現場付近における目撃者からの事情聴取による事故原因の解明、それから事故機の検証による事故原因の究明、こういうものを重点に現在鋭意捜査中でございまして、特にこのうちの、この事故機を操縦しておりました片桐機長に対する事情聴取につきましては、事故発生当日からすでに十数回にわたって、これは時間制限の上、医師立ち会いのもとに、行っておるわけでございます。また、同乗しておりました石川副操縦士につきましても、同様、十数回にわたって事情の聴取を行っている、こういうところでございますが、現在までの事情聴取の結果では、機長の操縦ミスに起因する事故の疑いが認められ、刑事責任の有無について鋭意捜査中でございます。  私どもといたしましては、高速交通機関による多数の死傷者を伴う重大な事故でございますので、できるだけ早く事故原因を究明し、関係者の刑事責任の有無を明らかにすべく鋭意捜査を推進しているところでございます。
  225. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いまの二つの事故についての、これは刑事責任の問題ですから、これ以上ここではお聞きをいたしません。  外務大臣と運輸大臣に要望をしておきます。  それは、片方の方は外国人が被害者になっておりますから、外交問題に発展をするということも考えられますから、十分その点は配慮をして外務省としても当たっていただきたいということですね。  それから、片方の方は、これは運輸省の監督下にあるわけですから、その補償の問題についても十分今後運輸省が日本航空を督励してその解決に当たっていただきたい。これは当然のことですから、要望だけしておきます。  特に外国人に対して一応何か二千万円という表示があったとかないとかということですが、これは非常に補償額が安いというか問題になりますから、この点は外務省としても十分今後注意をして対処していただきたい、温かい目でやっていただきたいということをお二人に要望しておきます。  運輸大臣、いろいろ聞きたかったのですけれども、ほかのものがあるものですから、結構です。運輸省と自治省、結構です。  そこで、もう一つ別の問題といいますか、これは千葉の事件なんですが、いま現職の泰道三八という代議士がおられるようなんです。私は会ったことはありません。どういう人か知りませんが、この人の選挙違反事件について、まず最初にこの人自身の名前が出てきて、関与したというふうに千葉地検で——五十五年十一月十二日に冒頭陳述で法廷でこのことを述べておるわけですね。このところだけをひとつ読んで説明を願いたいと思います。
  226. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 かつて衆議院の法務委員会で稲葉委員からそのお尋ねを受けました際に、御指摘の冒陳はその後訂正されているということを申し上げましたところ、前のときのことを言えというお尋ねであったいきさつがございますが、いま申しましたように五十五年の十一月十二日に冒頭陳述をいたしましたけれども、その後同月の二十五日に訂正をしておるわけでございますので、前の分はいわば消えてしまった、こういうことに相なるわけでございます。
  227. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 消えてしまったと言ったって、一たん法廷で述べたのでしょう。述べなかったのなら話は別ですよ。一たん述べたのはどういうものかということをはっきりさせていただきたい、こういうふうに言っているのです。そんなものは隠す必要ないのじゃないですか。恐らく、冒陳ですから、これは主任検事が書いたのでしょうけれども、次席検事なり検事正の決裁を経て法廷で述べているはずですよ。だから、それを発表するのは、何もあなた遠慮することはないのじゃないでしょうか。  あなたの方で言わなければこっちで言う以外にないのだけれども、結局こういうことでしょう。五十五年五月十七日に船橋の自宅に選対幹部三人を呼び、これは起訴されている三人ですね、呼んで、前回もナニした例のやつは今回はどうするかねえ、こう相談したのでしょう。こういうふうに述べたことは間違いないでしょう。この部分を取り消したのでしょう。
  228. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 そういうことに相なっております。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕
  229. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そういうことに相なっているのなら、あなた読みなさい。そんなもの隠すことないでしょうが。現職の代議士というのはそんなにこわいのかね。(発言する者あり)よけいなこと言わないでくれ、だめだよ。  それはそれとして、そこで、告発があって、十一月二十五日にそれが削除になって、十二月二十二日に不起訴処分がありましたね。そして、五十五年十二月二十三日、次の日に検察審査会へ審査の申し立てがあった。この事実は間違いございませんか。
  230. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘のような経過でございます。
  231. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、検察審査会は十回ほど審査をした。  まず、検察審査会というのは一体どういうふうなものであるかということを説明願いたい、こう思うのです。そして、十回ほど審査をしたことが事実かどうか。そして、本年の一月二十九日に——泰道代議士を不起訴にしたわけですね、それに対する審査の申し立てだと思いますが、それに対して検察審査会はどういう意見を付して検察庁へ送付したか。この間の事情説明願いたい。
  232. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 検察審査会制度というのは、改めて申し上げるまでもないと思いますけれども、検察官が不起訴処分にいたしました場合に、告訴人であるとかそういう被害者的な立場にある方が不服を持ちました場合に、検察審査会という別な機関がございますので、そこへ申し立てをする、そうすると審査会が審査をいたしまして、検察官の処分の当否を判断する、こういう制度であるわけでございます。  それで、お尋ねの事件につきましては、ただいま御指摘のような経過で、去る一月二十九日に千葉の検察審査会におきまして不起訴不当、つまり検察官の不起訴にした処分が適当でない、こういう議決をしておるわけでございます。
  233. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、検察審査会が、その泰道代議士に対する不起訴を不当とした理由、これは十回も調べているのでしょう。その理由はどういう理由からですか。
  234. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 審査会の議決書でいろいろと述べられておるわけでございますが、先ほど稲葉委員からも仰せになりましたような関係者の供述等を若干引用いたしまして、被疑者の立場にある泰道氏が共犯である疑いがあるというふうに言っているのじゃないかと思いますけれども、そういう意味で検察官が不起訴にしたのは不当であるということでございまして、余りどこがどういうふうにおかしいというようなことは述べておられないわけでございます。
  235. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それは、検察審査会は国民の代表で、率直に言うと素人の人の集まりですから、そう法律的な精査した意見書というのは出ていないかもわかりませんが、その中で結局いま私が申し上げたように、自宅に三人呼んで、三人起訴されていますね、前回もナニした例のやつは今回はどうするかねえと相談したとき、選対幹部らは「ナニ」とは買収のことだろうと受けとめていた。これはあたりまえの話だね。前回もナニした例のやつは今回はどうするかねえということだな。だから、それが共謀だということで一たん冒陳をやりながら一これは法廷でやったのですよ。いま言ったように、口頭で一たん述べたのでしょう。そして、その後で取り消して、そのことに関連をして、いま言ったような形で審査会が出て、不起訴にしたのは不当だということになってきたということは、裏返して言うと、いま私が読み上げた、最初に検察官が冒陳で言ったことが事実として認められるという可能性が非常に強い。これが認められれば共謀による一つの選挙違反というものが当然そこに出てくる、常識的にこういう理解の仕方をしていいのじゃないでしょうか。
  236. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど申し上げましたように、冒頭陳述が事後に訂正されているわけでございますが、その訂正前の御指摘の冒頭陳述自体におきましても、泰道氏が共犯であるとか共謀であるとかというところまでは実は言っていないわけでございます。先ほど御引用のような表現があったという事実は確かに一部述べておるわけでございますけれども、それが共犯になるとか共謀であるとかというまでの断定的なことは言っておりませんで、要するに、三人の人が起訴されているわけでございますけれども、その人たちがいわゆる買収をするに至った経過の初めの段階のような、経過の一段階のこととして述べているにとどまっているわけでございます。
  237. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 共謀であるとか共犯だということは冒陳で書けば起訴せざるを得ないでしょうが、起訴していないのだから、そこまではっきり書かなかったのはあたりまえの話じゃないですか、法律的に言って。  そこで、検察審査会がそういう意見を出して検察庁に送りましたね。そうすると、検察審査会法の四十一条というのがありますね。「検事正は、前条の規定により議決書謄本の送付があった場合において、その議決を参考にし、公訴を提起すべきものと思料するときは、起訴の手続をしなければならない。」こういうふうになっているわけです。もちろん日本の場合は起訴便宜主義をとっているわけですから、起訴、不起訴は検事の専権であることはそのとおりですが、それを国民の目からチェックするために検察審査会という制度ができておることは、それはもう私から申し上げるまでもないわけです。  そこで、この検察審査会法に基づいて、その議決を参考にして今後早急にどういう捜査をやるのか。これは二月一日に代表の人というか、告発人側が会ったときに次席検事がそれに応答しているわけですね。だから、検察庁としては一体どういう態度をこの検察審査会の議決を踏まえてやっていくのかということについて、これは法務大臣が答えるべき筋合いのものじゃないかな。
  238. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 検察審査会に対しまして私がどうこうというふうには申し上げられない、検察審査会の考え方というものは一応尊重しなければならないとは思います。しかしながら、先生御承知のとおりに、検察は検察独自の判断によってやるわけでございますから、御了承をいただきたいと思います。
  239. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 法務大臣が検察審査会に対してかれこれ言えない、あたりまえの話ですよ。検察審査会は裁判所の中にあるわけですから、あたりまえの話です。まああなたはドイツ文学の専門家だから余り言うと悪いけれども。今度はゲーテの話でもしましょうよ。  それはそれとして、そこで、いま言ったようなことで次席検事に会って話したときに、早急に部長クラスを主任検事にして捜査をやり直す、そういうようなことを次席検事は述べておるようですね。この間の経過をお話し願いたいのと、早急にこの捜査に着手をし一この事件で検察庁に対する不信の念が非常に起きていますよ。だってそこまで、いま私が読んだのははっきりとした共謀による共同正犯の前提でそういう冒陳ができているのですよ。こういうふうに後から取り消したにしても、一たん法廷で読んでしまったのですから、それを取り消せるかどうかちょっと疑問だとぼくは思いますが、それは別にして、そういうふうに言っているのですから、これを不起訴にしたということで、しかも検察審査会へ出して検察審査会で素人の人の、国民の健全な常識から見て検事が泰道代議士を不起訴にしたのはおかしい、起訴すべきだという意見をつけているわけですからね。不起訴不相当という意見と起訴すべきとちょっと違うかもしれませんけれども、いずれにしてもそういう意見をつけているわけですから、これについては早急に、「その議決を参考にし、」と検察審査会法であるのですから、これを受けて、何か部長クラスの検事を主任検事にして、検察審査会の審査を尊重し、もう一度白紙から慎重に検討するというふうに語った、こういうことですが、この間の経緯と今後の検察庁側のこの事件に対する態度、これについてひとつ決意のほどを御説明願いたいと思います。
  240. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 この事件に限らず、検察審査会で先ほど申し上げましたような趣旨で検察官の処分について審査をされて、そして検察官の処分が適当でないということになりました場合には、検察庁といたしましても、その審査会の御意見を十分尊重してそれに対処するということは当然でございまして、これはあらゆる場合に共通の問題であるわけでございます。  したがいまして、今回の議決につきましても、一月二十九日にそういう議決があったわけでございまして、起訴すべしというまでの表現はないわけでございますけれども、不起訴が適当でないということでございますから、当然、検察庁といたしましては、その意見を尊重して対処せざるを得ないわけでございます。したがいまして、しかるべき者を主任検事に改めて任命をいたしまして、手続的にも一たん事件は処理済みでございますから、それを改めて立件するという手続もとりまして、内容を検討し、その上で必要があれば再捜査もし、そして適切な結論を出す、こういうことに相なるわけでございます。
  241. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 どうも千葉県というのは、千葉県全部じゃないでしょうけれども、いろいろな話題を提供するところですが、ごとにこの事件に関連をして千葉地検のとった態度というものは、国民の非常な疑惑を招いていますからね。この疑惑を晴らすためにもしっかりとした捜査をやっていただきたいということを私は切望しておきます。これはあたりまえの話ですからね。法務大臣、その点だけしっかり答えてください。
  242. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 そのとおりだと考えております。
  243. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 この問題その他については、また法務委員会などで、ほかのものも含めて詳しく質問をしたいと思います。いまの問題についてはいま法務大臣の言ったようにあるいは刑事局長の言ったような形で早急にしっかりとした捜査を遂げて、国民の納得するような結論を出してもらいたいということを申し上げておきます。  そこで、きょうは、いまの問題等はまた別の機会にすることにして、問題として私は、二十日の日に発表になったF1、F4、F15、F16、それからセントリー、これらのものについての性能等については土曜日に質問通告しておきましたし、その前からこのことについては私は聞いているわけですね。ですから、そのことについては聞きますけれども、それは一まず後において、私はここに、「日米共同開発をめぐる法律問題」というので、防衛大学校教授の安田寛さんという人が、一九八〇年十月、「現代の安全保障」に論文を書いて、共同開発の条約上の根拠その他のことをずっと述べておるわけです。そこで、この問題をしばらくというか、項を追ってお聞かせ願いたいというふうに思います。  そこで、この「共同技術研究開発については、」「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定がその条約上の根拠となる。」MDAですか、これはあたりまえの話ですね。これがまず第一点ですね。こう書いてありますが、これは事実かどうか。  それから、昭和四十一年に「両国の防衛当局の間で「共同研究開発に関する覚書」が交換されている。」これがありますが、こういう覚書があるのかないのか。第二点ですね。あるとすれば、このMDAと覚書との間には交換公文があるわけですね。そういうわけですね。いきなり覚書があるわけじゃありませんから。その交換公文は一体どれなのかということを説明願いたいと思います。
  244. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 稲葉委員、法務大臣はよろしゅうございますか。
  245. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 結構です。
  246. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 では法務大臣、御退席で結構です。
  247. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 いまの安田先生の論文でございますが、これは別にMDA、日米相互防衛援助協定に基づきますものではございませんで、その当時たまたま日米の防衛当局者間が、資料交換等を効率的に行う等、研究開発に関しまして担当者間でいろいろな考え方を述べ合ったわけでございますが、そのことを記録として取りまとめましたいわば議事録的なものでございます。したがいまして、MDAと関係ございませんし、ということは、普通でございますとMDAの中間になりますところの交換公文といったものも当然ございません。そういう関係にございます。
  248. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いや、私は、これは参考にするけれども、ここに書いてあることが事実かどうかということを聞いているのですよ。ちょっと待ってください。この共同研究開発に関する覚書が交換されている、一九六六年と書いてあるのだから。この覚書というのはあるのですかないのですかと、こう聞いているのですよ。
  249. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 名前がちょっと違うのでございますが、共同というのはございません。研究開発に関する覚書というのは確かにございます。
  250. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だけれども、この人は前に防衛庁の法制関係責任者であったわけですね。防衛庁の法制調査官をやって、防衛庁の代表の法律顧問をやったのですよ、この人は。その人が書いているもので、共同研究開発に関する覚書というのは同条約に基づいて一九六六年に交換されたと言っているのですよ、これは。だから、そういう事実があるのかないのか、ないのなら、この人の言っていることは間違いなんですから。防衛庁の法制調査官の、法律の責任者が間違いを論文に書いているということになるのですよ。間違いが人間はあることはしようがないから、それならそれでもいいけれども、どうなんです。
  251. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 この覚書につきまして、実は安田先生にも直接お会いいたしましてお伺いいたしましたところ、非常に古いことを書きまして記憶違いによる点があるかもしれないとおっしゃっておりました。そのように御本人も認めておられますように、私どもチェックいたしましたけれども、全体としてこの論文の覚書に関します部分が正確と言うには、残念ながらほど遠いということを申し上げざるを得ません。
  252. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは、だけれども一九八〇年の十月の論文ですよ。ずっと昔の論文ならばそういう意見があるかもしれませんが、一九八〇年十月の論文なので、私は一つの参考としてこれを聞いているわけですから、そこのところを理解してください。覚書があることはあるというふうにあなたは言われましたね。そうすると、どういう覚書なのか。私も、実はどういう交換公文に基づくものかということを疑問に思っておるわけですよ。真ん中がないのですから、この書き方は。それで聞いているわけなので、では、覚書があるというならばその覚書のフルネームを言っていただいて、それをここへ出してください。
  253. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 これはいま申し上げましたように、研究開発に関する覚書というのがフルネームでございます。その内容につきましては、実は当委員会におきましても資料の御要求がございまして、早速アメリカ側にその趣旨を申し入れまして、これにつきまして一体どのくらい内容が言えるものかということにつきましていま鋭意折衝をしている段階でございます。
  254. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それでは、あなた、公的なものじゃないですか。あなたの話を聞くと、やけに私的なもののように聞こえるわけです。政府が言いたいのはわかるのですよ。この覚書に基づいては武器や何かの共同開発をやっておりません、これは死文化しております、こういうことでしょう、言いたいのは。違いますか。
  255. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 まず、この覚書が、日米間で共同研究開発ということを義務づけたものではございません。それとまた、この覚書に従いまして共同研究開発が行われたという事実は一切ございません。  死文化したかどうかという点でございますが、死文化というのは、ちょっとその言葉は使うのは遠慮させていただきますが、事実上これは長いこと動いていなかった、いわば休眠化しておったという状態にあったことは申し上げられると思います。
  256. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 では、日本では休眠化していて、アメリカではどうなっているのですか、これは。アメリカでは休眠化しておるのですか、動いておるのですか。どうなっておるの、アメリカで。
  257. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 この覚書は日米間の資料交換を効率的に行う等、いわば日本とアメリカの防衛当局間での考え方を述べ合ったものでございますから、いま私が申し上げましたように、休眠化しているということは、日本に対してもそうでございますし、アメリカに対しても同じようなことが言えるということでございます。
  258. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 では、休眠化している理由を述べてください。そして、休眠化しているのなら出したっていいんじゃないですか。
  259. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 理由でございますが、何せ非常に古いことでございますので、これが結ばれた当時どういうことであったかということについては必ずしもつまびらかにいたしませんが、少なくとも最近の時点におきましては全く休眠化しておるということは、はっきり申し上げられるわけでございます。  それから、仮に休眠化しておるなら出せるのではないかという仰せでございますが、何せアメリカとの間でこれは公表しないということで当時約束されたものでもございますので、一応は公表できないということでございますが、しかし、当委員会でもこの内容について基本的には秘であるということを申し上げつつも、これにつきまして一体どれだけのことを申し上げられるか、われわれとしては努力をするということを申し上げたことでもございますし、すでにそういったことでアメリカ側と折衝を開始しておる、こういう状況でございます。
  260. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 どうもよくわからないのですね。休眠化していて、大してもう役に立たない、実際使われてないというなら、何も拘束力がないということで問題にならないんじゃないですか。それを隠すという、向こうがああだこうだ言うのがおかしいんで、これはたとえばアメリカの例の特許法の関係とか、いろいろ問題があるのではないかと思いますが、それは別の問題として聞きますが、これは私はぜひ出していただきたいということを要求しておきます。  それでは、次に移りましょう。  そこで、アメリカの方から相互武器開発計画というふうなものが軍事援助の一環として提案をされて、そして日本に示されたことは、あることはあるのですね。あるとすれば、どんな内容ですか。これは日本では拒否したようですが、その理由。
  261. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま稲葉委員の御指摘のは、一九五六年の相互武器開発計画、MWDP、これをお尋ねかと思います。  この計画は、一九五四年のアメリカの相互安全保障法、いわゆるMSAに基づいてアメリカが発足させたものでございますが、自由主義諸国間の防衛能力の向上のために各国が行う新しい装備の研究開発に対して、アメリカが財政的援助を行うことをその内容としたものでございます。それで、この計画に基づいて、主としてNATOの諸国との間で実施されているものでございます。  ただ、日本との関係について申し上げれば、そういう話はあったわけでございますけれども、その後アメリカのドル防衛という見地からこの話は取りやめになりまして、現在は全くこの話は、それこそ死文化しているというか、なくなっているわけでございます。
  262. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そのとおりですね。これは死文化しているわけでしょう。そのかわりに、私が前に言った共同研究開発に関する覚書というものが出てきたんだ、こういうふうにはっきり言っているんじゃないですか。これは中止になりましたね、いまのものは。それはそのとおり。そこでこの覚書というものが出てきたんだ、これははっきり言っているんじゃないですか。覚書というものはアメリカ国防省の通常の研究開発予算の効率的な運用を目的としているんだ、計画とは違うんだと。だから、この計画と覚書とは一体どう違うのですか。
  263. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 MWDPの方は、いま北米局長から御説明したとおり、アメリカが当時資金援助しようということまで言った、非常にアメリカ側でファンドをもって資金的援助をする、そういったたぐいのものだったというふうに聞いております。  覚書の方は、先ほど来申し上げましたように、研究開発に関しまして担当者間の考え方を述べたというものでございまして、安田先生はどうおっしゃっているか別にいたしまして、MWDPがなくなったから覚書をつくった、そういうことではないというふうに承知しております。
  264. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 あなたの話を聞くと、いまのMWDP、これがなくなったから提案したというのは私は言ってませんよ。すぐそこへ問題をすりかえていくんだな。そんなことを言っているんじゃなくて、それが中止になって改めてこの覚書が提案をされてきたんだ。時間的にはそういうふうになるでしょう、その経過をはっきりさしてごらんなさいよ。
  265. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 時間的な経過から申し上げますと、まずMWDPの方が当初出ましたのは昭和三十年ごろからでございまして、そのころから各国に呼びかけておりました。それが昭和三十七年ごろになりまして、ドル防衛の見地からこの種の協定の締結は中止したいという申し入れがあったわけでございます。  資料交換取り決めの方は……(稲葉委員「資料交換じゃないよ、共同研究開発に関する覚書だよ」と呼ぶ)共同研究開発の覚書の時間関係につきまして、時系列が正確にちょっと申し上げられません。いま調べさせまして御答弁いたします。
  266. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 あなた、僕が後から聞くのは大体わかっているわけだね。だから、資料交換取り決めの話を盛んにしているのだよ。そんな話はまだしてないでしょう、僕は。これからするところなんだよ。いまするところなんだよ、これは。  そこでわかったのは、覚書によって共同研究開発を実施した事例がない、これはわかったのですよ。いま休眠化しているというか、わかった。ところが、覚書よりも四年前の昭和三十七年に防衛資料交換計画というものがあって、これに参加しておるわけですね。合意されたプロジェクトに基づいて資料の交換を約束しているというのですね。防衛資料交換計画というもの、DDEP、これは一体どういうふうなものなんですかということですね。覚書よりも前、覚書は四十一年でしょう、三十七年に資料交換計画というものができているのでしょう。できているのか、参加しているのか、そこら辺の経過を説明をしてください。
  267. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 まず、先ほど申しおくれました時間的な経過について申し上げます。  MWDPの方は、先ほど申しましたように、向こうの方から三十七年にこれについて中止したいという申し入れがあったわけでございます。一方、研究開発に関する覚書でございますが、四十一年の六月にこれにつきまして取りまとめをしておる、こういう関係にございます。  それから、いまDDEPにつきまして御質問があったかと思いますが、これは防衛開発交換計画というふうに呼ばれておりまして、昭和三十六年の十二月に外務省の方に口上書が来ておるというふうに承知をしております。
  268. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 日本語の訳はどうでもいいですけれども、これは正確には防衛資料じゃないですか。データという言葉が使ってあるから、防衛資料交換計画というのが正しいのじゃないでしょうか。三十六年十二月にどういう経過でできて、どうして日本がこれに参加したのですか。実際に資料の交換はどういうふうに行われているの。
  269. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 DDEP自体は外務省の御所管かと存じますが、一体どういうふうに資料交換が行われているかという後段の方の御質問にお答えいたします。  資料交換につきましては、データ・エクスチェンジ・アグリーメント、いわゆるDEAというものに基づきまして行われるわけでございますが、これにつきましては、日米双方が合意しますところの研究開発項目につきまして、技術資料あるいは技術情報の交換、あるいは人の交流等を行うということでやっておりまして、正確な数字はちょっと秘ということで申しわけございませんが、これまで数十の項目につきまして一応研究開発項目の設定を行っている、こういうことでございます。
  270. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 何が秘だって、よくわからない。秘で、数十の項目について研究開発が行われているというのですね。防衛資料交換計画というのは前からあったんですか。それに日本が参加したという意味なんですか、あるいは改めて日本とアメリカとの間で結んだ、こういう意味なんですか。どういう経過か、そこがはっきりしませんね。数十の項目というのはどんな項目ですか。
  271. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 後段の部分は私の方からお答えいたします。  この資料交換取り決めの内容自体は秘ということでございますので、本席でもたびたび申し上げておりますように公表は差し控えさしていただきますが……(稲葉委員「たびたびなんて、この問題は前から出ていますか」と呼ぶ)はい。交換取り決めに関しまして中身を出していただきたいという御要請がございまして、それにつきまして概要を取りまとめまして御提出さしていただいたことがございます、昨年十一月かと存じますけれども。  いずれにいたしましても、日米双方が合意しますところの研究開発項目というのを設定するわけでございますが、それが三十七年十一月十五日に発効いたしまして以来、今日に至りますまでの間に数十項目につきまして設定されておりまして、それに従いまして技術資料及び技術情報の交換、人の交流、こういったものが行われている、こういう状況でございます。
  272. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 このMDAの一条に基づくところのいろいろな交換公文がありますね。その中の、たとえば六は特許権ですね。防衛特許権等の交流のための協定が六でしょう。十二に防衛目的のための技術資料及び情報の交換公文というのがありますね、ナンバー十二。これと、いま言った防衛資料計画というのかな、交換計画というのかな、これとはどういう関係になるのですか。
  273. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御質問の相互防衛援助協定に基づきます二つの附属取り決めのうち、相互援助協定の第四条に基づきます防衛目的のためのいわゆる技術交流の協定、これと、いま先生御質問の日米間の防衛開発交換計画というものに言及しておられると思いますが、これとは直接関係がございません。  他方、先ほど防衛庁の方から累次御説明がございます昭和三十七年にできました防衛目的のためのいわゆる資料交換取り決めでございますが、その交換公文の中で、先生御案内のように、「日本国とアメリカ合衆国との間に防衛開発交換計画を樹立するための必要な取り決め」という言及がございまして、この防衛開発交換計画というものを先ほどから先生いろいろ御質問になっておられるというふうに理解しておりますが、この防衛開発交換計画というのは、あらかじめ何か固有の計画がアメリカの方にございまして、それを実施するためにこの交換公文ができたというものではございませんで、この交換公文に基づきまして防衛当局、防衛庁とアメリカの国防省との間で行われますところの種々の資料、情報の交換、その協力関係の全体を総合的にあらわすものとして、便宜的に防衛開発交換計画という言葉をこの交換公文の中で使っておるということでございまして、あらかじめ何かアメリカ側のたとえばMSA法でありますとか何かに基づきまして固有の計画があってそれを実施するために交換公文ができた、こういうことではございません。
  274. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いまいろいろお聞きしたのですが、覚書交換の四年前というか、三十七年と言っていますね、口上書は三十六年十二月ですが、三十七年にできたこのいま言った防衛開発交換計画かな、これに基づいて「アメリカから日本への一方通行の感があった資料の流れも徐々に双方通行の姿になっている。今日のところ日本とアメリカとの間の防衛上の技術協力は、もっぱらこの「計画」を通じてなされていると言ってよいであろう。」と、防衛庁の法制調査官で法律の責任者だった人がこう言っているわけです。これは間違いなんですか、間違いでないんですか、どうなんです。現在はこれに基づいて技術協力がされているのだ、この計画に基づいてされているのだ、こういうことでしょう。その内容は秘だ、数十項目、項目があるというのでしょう。その点はどうなんです。
  275. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 結論から言いますと、安田先生がそこで一方的なものが徐々に相互的なものになっているとおっしゃっているようでございますが、それはある意味におきましては資料交換取り決めでございまして、これは一応アメリカから日本に出すだけではございませんで、日本からもアメリカに出すということになってきたわけでございますから、その限りでは形の上では確かに相互交流になっておりますし、また、事実私どもの方からもアメリカに対して、若干ではございますが技術資料、技術情報を出しております。それ以前の状態に比べますと、アメリカから一方的に学ぶばっかりでございまして、こちらからは一切出さない——一切というのはちょっとあれでございますが、事実上ほとんど出てなかったという状態でございましたから、そういう状態に比べますと形の上では少なくとも交換というベースになりましたし、また、そういう枠組みができたことによりまして、少しではございますけれどもこちらから出しておるという意味におきましては、確かに全くの一方通行から若干交換ベースの方へ移ってきたという記述は正しいかと思います。  しかし、一方、アメリカからもらっているものとこちらから出しているものとの量と質というものを率直に申し上げますと、アメリカからのもらい分の方が圧倒的に多いということもまた事実でございます。それは、アメリカの方の研究開発費が日本の防衛庁研究開発費の百数十倍あるというような実態が根本にあるかと思いますけれども、実態ベースといたしましてはアメリカの方が圧倒的に日本に多くのものを与えておって、われわれの方からは非常に少ないという事実もございます。そういうような実態でございます。
  276. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 あなたの方は、後の方で自分の都合のいいところはずっと宣伝するのだね。それはそれでいいです。それは言論の自由だからいいけれども。  ちょっと話を変えましょうか。  防衛庁長官、ファントムと言うでしょう。ファントムというのはどういうような意味ですか。——防衛庁長官、そんなこと知らないで防衛庁長官務まるのかな。ファントムというのはどういう意味。ファントムと言うでしょう。飛行機。どういう意味。ちょっと間を置いてあなたに聞いたのだ。あなた答えなさいよ。
  277. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 伊藤防衛庁長官。せっかくですからどうぞ御答弁を。
  278. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 幽霊とか、そういうような意味だと思います。
  279. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そのくらい知ってなさいよ。妖怪変化とか幽霊とかという意味でしょう、ファントムというのは。そんなことを知らないで防衛庁長官、まあいいや、それは。あなたを余り責めるのも気の毒だからその程度にしておきますが、もう少ししっかりしてください。  そこで、いま言った話はこういうことでしょう。アメリカと日本との場合、それは予算は違うのだからあたりまえの話ですよ。一方交通であったのが一方交通でなくなったわけだ。それはそうなんだ。これに対してアメリカから金が入ってきていますね。その金は一体、いつごろからどのくらい入ってどこにということで大蔵省の方では処理しているのですか。
  280. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 ちょっと質問の御趣旨を的確に把握しかねましたのでございますが、研究開発関係での御質問かと思いますが、現在のところ、研究開発に関しましてアメリカから日本が資金の援助を受けているといったことはございません。
  281. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そんなことを聞いているのじゃないですよ。あなたは、アメリカから日本へ技術が入ってくる、日本からもこのごろアメリカへ行っていると言うのでしょう。行っている。ただじゃないでしょう。向こうから金が入ってくるのでしょう、分担金が。このアメリカの分担金が国庫の雑収入として入っているのでしょう。だから、その内容を具体的に明らかにしなさいと言うのですよ。何年から幾らずつ入っているのか、明らかにしなさいと言うのですよ。
  282. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 まず、資料交換取り決めに基づきまして技術資料、技術情報の交換をやっておりますが、これは実は金銭的対価を伴っておりません。アメリカからもただでもらっておりますし、こちらからもただで出しておる、その限りでは金の移動というものは伴ってない、こういう状況でございます。
  283. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 しかし、おかしいですね。この人の論文を読むと、アメリカ側の分担金の受け入れ方法も問題だ、こう言っているじゃないですか。雑収入として国庫に入ってしまう、こう言っているじゃないですか。かつての臨時軍事費の悪夢を想起させているからこれを特別会計や何かにするのは不可能なんだ、だから、そういう雑収入として入れているのだとはっきり言っているじゃないですか。だって、自分防衛庁の法制調査官として防衛庁代表の法律顧問の役目として、相手方といろいろ交渉していると言っているじゃないですか。そんなこと言ったのじゃだめですよ。アメリカから分担金が入っているじゃないですか。ということは、技術交流は有償で行われているということを意味しているのじゃないですか。実態を明らかにしてください。
  284. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 安田先生のその部分に関します記述は間違いでございます。
  285. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 間違いだと言う。それは人間だから間違いがありますけれども、自分防衛庁の法制調査官として防衛庁代表の法律顧問でこれはやったと言うのですよ。そんなことを、防衛大学の教授がそんな間違いを雑誌にどんどん発表していて一体いいのですか。おかしいね、これは。それは人間だから間違いはあるから、防衛大学というのはどの程度権威があるかわからぬけれども、防衛大学校というのだからあれだろうけれども、そうすると、ここに書いてあることは全部間違い、そういうふうな金が入っていることはない、こういうことですね。では、なぜこういうことを書いたのでしょうか。勘違いですか。そんなばかな話はないでしょう、防衛大学の先生がわざわざ雑誌の論文を書くのに。そんなに権威ないの。それならやめてもらったらいいじゃないですか、この先生。あたりまえだよ、そんなことはあたりまえですよ。事実を隠してはいかぬですよ。雑収入の中に入っていると言っているんだから、ちゃんと書いているんだもの。それは事実かどうかは別として、書いてあるんだから、それはうそだというなら、間違えたことを書いたというなら、こんな教授はやめてもらいなさいよ。防衛庁長官、こんなのは大学の教授の資格はないよ。こんな者、やめてもらいなさいよ。こういう論文を書いて発表しておいて、意識的にこれを発表したのかどうか、これに対して質問すると、皆そういう事実は間違いだ間違いだと言う。そんなばかな話があるものか。間違いならやめてもらいなさいよ、こんなことを書く教授は。——あなた、そんなこと相談することないじゃないか、間違いなら。
  286. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 相談が調いましたら、なるべく早く御答弁を。
  287. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 先ほどから装備局長お答え申し上げておりますとおり、あの論文のほとんどが記憶違いによるものが多いということでございますので、先生の御趣旨を踏まえまして善処をしてまいりたいと思います。
  288. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 しかし、この人は「防衛法概論」という本も書いているのですよ。「防衛法概論」という厚い本があるでしょう。それがずっと前の古い論文なら記憶違いもいいかもわからぬけれども、一九八〇年十月に書いた論文ですからね。一九八〇年十月に書いた論文が記憶違いでみんな間違いだというのは、これはおかしいですよ。しかし、しょうがないですよ。こんな間違いを平気で書く大学教授がいるのならば、あなたの方の部下ならば、あなた善処すると言うんだから、善処してその結果を報告してください。いいですか。それでなければ納得しませんよ。人の首を切るのが目的じゃありませんから、そんな非道なことは余りやりたくないからあれですけれども、おかしいですよ。これは間違いではないですよ。あなたの方からは、これを発表されるとちょっとぐあいが悪いのですよ。僕はこういう答えかと思っておったんだ。前はやっておりましたけれども、武器禁輸の三原則ができてからやらなくなりましたという答えかと思ったのですよ。どうもそれと違うようですね。私は納得しません。よく調べてください。  そうすると、さっき話があったMDA協定によるナンバー十二の防衛開発交換計画というのがありますね。これの子供というか孫というかな、これに関連する覚書というのはまだできてないのですか、できているのですか、どっちなんですか。
  289. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 防衛開発交換計画に基づきまして交換公文というのが出されておりますが、それに基づきまして資料交換に関する取り決めというのが昭和三十七年十一月十五日に結ばれておる、こういうことでございます。
  290. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 私の言っているのはMDAの一条1の「細目取極」の話をしているのですよ。そうすると、それがあるのですね。じゃ、それを具体的な資料として提出願いたいのと、いま言ったナンバー十二ですね、研究開発交換計画というのは私が質問したものとは違うと言うのでしょう。あなたの方では資料交換計画とは違うと言うのでしょう。じゃ、どういうふうなものなんですか。それに、その後具体的にどういうふうな行動をこれに関連して起こしているのですか。
  291. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  資料情報交換の交換公文に基づきまして防衛庁とアメリカの国防省との間に当局間の取り決めがございますが、この内容につきましては、従来から、防衛庁の方から概要については御説明申し上げておりますが、取り決めの内容そのものは不公表扱いにするということについて日米間に合意されておりますので、内容そのものをお出しすることはできないということを申し上げております。その点御了承願いたいと思います。  それから、もう一つの技術交流協定につきましては、この協定自身は御案内のように国会の御承認をいただいて締結したものでございますが、その協定に基づきまして何か細目の取り決めがあるかのような御質問でございますが、私どもの承知しておる限り、この協定の細目、さらにそのまた細目というようなものは存在しておりません。
  292. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 時間の関係がありますから、この問題については私はどうもまだ大きな問題、いろいろな問題が隠されていると思うのですよ。  そこで、これは官房長官おいでになりましたのでお聞きをいたしたいのですが、去年、鈴木・レーガン会談がありましたね。それから、共同声明があったでしょう。それから、八十項目かでホノルルでワインバーガー・大村会談がありましたね。それは間違いない。行く前に閣議でどういう話があったのか。それは秘密かもわからぬけれども、ある程度の話。  それから、まだ帰ってこない前に、七月二日に閣議があって、そして、その日の夕方か何か、あなたが、全部の記者会見か一部の人の記者会見かちょっとはっきりしませんけれども、大村防衛庁長官とワインバーガーの会談を通じて、アメリカ側が、通信、電子機器などを中心に軍事関連技術の対米供与を求めてきたので、大村長官が帰国したならば先方の具体的な希望の趣旨を聞き、武器輸出原則などの関連を含めて防衛、通産、外務など関係省庁の事務レベルで前向きに検討してはどうかと考えているというふうに述べたと伝えられているのですが、この間の経過で、何かあなたが三原則については弾力的に運用するようなことを言われたように報道されているのですね。この間の経過をお話し願いたいわけです。
  293. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘の昭和五十六年七月二日夕方の記者会見でそういう話をいたしております。  ただ、前提になっておりますアメリカ側の言ってきたこと自身、それは翌日の新聞に通信、電子機器技術云々とございますのは、これは実ははっきりいたしておりませんのですけれども、何かそういう話があったということはもちろんございます。それが前提で、私はその質問に対して、大村さんが帰ってこられたら先方の具体的希望の中身を聞き、こちらの法規、協定などとどういう関係があるのか、武器輸出原則との関係がどうかなど一連の問題を含め、大村さんが帰国後、防衛、通産、外務、科学技術庁もあるかもしれない、等々の関係省庁で相談をしてみてはどうかと思っている、こういうことを申しまして、その後で、基本的なわが国の立場はどうなるのかという質問がございまして、一九五四年かと思うが、相互援助協定があるはずだが、自分としては中身がちょっといまはっきり記憶にない、それらのこともあるので、各省庁事務的にひとつこの問題は検討してもらってはどうか、私はさしずめそう思っておるということを申しております。
  294. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そして、大村さんが帰ってきてから話を聞いて、三省間で話の取りまとめは官房長官が当たるということになっているわけですね。それで、七月の話ですから、これはその後、たとえば外務省プラス防衛庁対通産省というか、いろいろな関係があってその調整をしたのでしょうが、事実上これはもうまとまっておるのではないでしょうか。いいですか、それが一つ。  まとまっていないとすれば、まだどういう点が煮詰まらないのかということが第二点。  それから、これはあれじゃないのですか、いまの予算委員会で質問されるとあれだから、通ってしまってから結論をいずれにしても発表しよう、こういうことじゃないの、あなた。そういうふうにとれますがね。
  295. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、政府としては、基本的には米国についても武器輸出原則及び昭和五十一年二月十七日の武器輸出に関する政府方針に基づき対処する考えでございます。ただし、対米関係については、日米安保条約との関連もありますので、目下この点につき関係各省庁で引き続き検討を行っているところでございますということをこの国会で申し上げております。そこで、実はこのとおりでございまして、稲葉委員の御洞察のようなことでは実はございません。  昨年の七月に私がそういうことを申しまして、その後アメリカ側が具体的に何を考えておるのかということがかなり長いことはっきりせず、いまでも必ずしも明確でないのでございますけれども、年末ごろにかけまして各省庁でそれに対応する方法をいろいろに研究をいたしてまいりました。私は、最後に私のところでまとめようということをあらかじめ申したのではございませんで、もし各省庁の間で意見が一緒にならなければそれもやむを得ないかなと思ってずっとまいったのでございますけれども、各省庁の間でまだ私のところへ持ってくるまでにその意見の相違点というものが明確になっておりません。したがいまして、私としては、まだこの問題に手を触れておらないというのが今日までの実情でございます。  どの点が問題になるのかというお尋ねはごもっともでございますが、それがはっきりわかりますと調整ができることになりますので、調整ができませんのは、実はその点についても必ずしも各省庁の意見が一致しておらないということがございます。  しかし、それだけではなかなか御満足でないと思いますが、私も具体的にどこということは全部存じておりません。しかし、たとえば、いつぞやこの委員会で、安保条約並びにMDA等の条約で、具体的にある技術協力について日本側が義務づけられておると思うかというお尋ねがございましたときに、外務省の政府委員から、具体的な義務づけを負っておるとは思わないということを申し上げ、しかし、その後で、ただし一切合財のことを断るというような立場ということは、これはそれらの条約、協定の考え方と相入れないのではないかと思う、そういうことをまたその後で申し上げておる経緯は御存じだと思いますけれども、その辺のところなどがやはりかなりこの問題のむずかしいところではないか。私、全部を存じておりませんが、たとえばそのような点があるように存じます。
  296. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 時間の関係で、これは試改修の問題をめぐって私どもの方で集中審議を要求しておりますから、恐らく集中審議があると思うので、その一つの足がかりのことだけお聞きをしておきます。  まず、試改修ということ。試しはわかる。しかし、改修というのは、百億近い金をかけて一体これは何をするのですか。わかるようによく説明をしてくださいよ。百億も金をかけるのでしょう。普通の改修ならこんなにかかるわけがないのだから、わかるように、それだけの金がどうして必要なのか、説明をしてください。
  297. 塩田章

    ○塩田政府委員 試改修で考えております中身の概要でございますが、まず中の器材の換装を行いますが、その換装等を行います主な装置といたしまして、レーダーを中心とするものでございますが、火器管制装置、それからヘッドアップディスプレー、これはパイロットが目視線上に各種の情報を表示して見れるようにするものでございます。それから、ミサイル制御装置、これはASM1の発射制御を行うためのものであります。それから、慣性航法装置、これは飛行機が飛びますときに、自分の位置あるいは対地速度、そういったものを計算する装置でございます。それから、セントラルコンピューター、これは各種の情報処理のための計算ということでございます。  以上のようなものを装置いたしまして、保有する機能といたしましては、火器管制装置によりましては、航空機及び艦船の探知、追尾、測距、地形の概略の表示及びウエポンコントロールのための各種の情報の表示、そういうことができるように火器管制装置の換装を考えておるわけであります。ヘッドアップディスプレーにつきましては、先ほど申し上げたような機能を考えております。ミサイル制御装置につきましても、先ほど申し上げましたように、ASM1の発射制御を行うミサイル制御装置であります。それから、慣性航法装置も、先ほど申し上げたように、自分の位置等の計算のためのものであります。  以上のような装置を換装いたしまして、いま申し上げましたような機能を保有するということを現在の試改修の内容として考えておるわけであります。
  298. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それはわかっているのですよ。わかっているというか、いま説明を聞きましたけれども、どうしてそれに百億もの金がかかるのですかと聞いているわけです。  その説明はないのですが、それは一応説明を願うことにして、そこで、この前聞いたときの説明というか、内閣と外務部会の合同のヒヤリングのときに私が防衛課長から聞いたのは、これはF4の百二十機と言っていましたよ。それで、その延命は七、八年という説明でしたよ。あそこではそういう説明だった。それが今度は変わってきたのですか。百機というのは、百二十機をやってロスか何か起きて百機をやる、こういうことになるわけですか。  それから、いま試改修に一機十億ぐらいかかると言うが、実際は十五億から十七、八億ぐらいかかるのじゃないのですか。結局、試改修だけでぐんと金がふえていくのじゃないですか。どういうことになっているのです。
  299. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、機数の問題でございますが、現在ファントムは百三十二機ございまして、これがいまからの試改修が仮に成功して量産を開始するということになりますと、まあ六十一年ごろからというふうにいまのところ考えられております。そうしますと、その間に現在のファントムのリタイアしていく機数等もございますので——失礼しました。落ちていく機数等もございますので、百三十二機のうちおおむね百機前後を改修できたらしたいというような、まだその程度のめどを持っているという段階でございます。  それから、十億というのはもっとかかるのではないかというようなことでございましたが、いま申し上げましたように、一応仮に百機といたしまして、これはまだ本当にわからないのでございますけれども、いまの時点の価格でおおむねの推測といたしまして、千億から千百億ぐらいではなかろうかというような予測を持っております。そうしますと、一機当たりいま十億から十一億程度のところでできるのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。
  300. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 二十日の日に発表したのを見てみますと、問題点が幾つかあるわけですね。さっきも出ておったのですが、この試改修というものの結果F4の能力というものがF15の枠内にとどまるというふうなことを言ったことが防衛庁としては一体あるのですか、ないのですか、これがまず第一点、それを聞きましょう。  それから、防衛の「装備年鑑」を見ますと、F1は支援戦闘機ですね。それから、F4は要撃戦闘機ですね。そう書いてあります。それから、F15も要撃戦闘機、こういうふうに出ているわけです。さっきの説明を聞いたりこれを見てみますと、一番大きな点は——能力向上のねらいは三つあって、一つは、火器管制装置、FCSレーダーですか。二番目が、搭載ミサイルの拡大、近代化でしょう。三番目が、爆撃機能の改善ということになっていますね。さっきからの話を聞いておりますと、この爆撃機能の改善ということによって対地支援機にF4が実際上は転用されるような印象を受けますね。そうすると、F1が支援戦闘機、F4が要撃戦闘機として「装備年鑑」には出ておるのですが、この改修の結果、F4は対地支援機の一つの機能というか、それを非常に拡大をしてくる、こういうことになるのではないでしょうか。したがって、F1の後継機というのはF4ということになるという、あの生田目幕僚長の発言がここで正当性を帯びてくるのではないですか。どうです、いいですか。
  301. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず第一点の、総合的に今度の改修に成功した後のF4がF15の範囲内であるということをだれが言ったのかということでございますが、まず私がそういうことを申した覚えがございます。  その意味は、もちろん、F15と今度仮に改修に成功した場合のF4を比較します場合に、同じ戦闘機でございますけれども、当然F15の方が新しい世代の戦闘機でございまして、いろいろな意味で、速力にしましても、上昇力にしましても、旋回性能にしましてもすぐれた飛行機であるということは、当然今後も変わりません。F4を改装しましても、そういうところではF4はかなわないわけであります。  ただ、問題になっておりますのは、今度の改修によりまして、F15と同じセントラルコンピューターを入れるものですから、F15と同じような能力がその限りにおいては持てることになります。対地支援につきましても、爆撃の計算装置能力なんかはF15とまず同等のものができると考えてよろしいわけであります。しかも、先ほども御説明いたしましたが、別にF15が現在持っていない対艦ミサイル、これを搭載できることも考えておりますので、そういう点はむしろF15よりも、ないものを持っているというようなことにもなるわけであります。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕  そういうことで、どこの面がどうということを一つ一つ比べていきまして議論をすればいろいろ各個所によってはあるかと思いますけれども、総合的にF15の範囲内であろうというふうに私どもはいまでも考えておるわけであります。  それから、F1は支援戦闘機、F4、F15は要撃戦闘機と言っているが、それが今度のF4の改修内容から見ると対地支援に非常にウエートを置いた改修をしておるではないか、したがって、対地支援転用の可能性といいますか、そういう考え方があるのではないかというお尋ねでございます。これも過去当委員会でもお答えしたと思いますが、戦闘機というものは、要撃戦闘機にせよ支援能力は大なり小なり持っておりますし、支援戦闘機も逆に要撃の能力を持っております。そういう意味では、両者それぞれ多少の片一方の能力をあわせ持っているというのが実情でありまして、御承知のように、F4は要撃戦闘機でございますが、今回、F4のこの改修は、第一義的には、やはり要撃戦闘機としての能力のアップを図っていくということで、ミサイルも新しいミサイルにしますというような、あるいはいまのいろいろなレーダーにしましても低空対処能力を持つというような改装を考えております。同時に、セントラルコンピューターを入れることによりまして対地爆撃能力も付加されるという点は事実でございますが、あくまでも要撃戦闘機としての改修ということを主眼として考えておりまして、そのこと自体をもって、これを直ちに対地支援戦闘用に転用ということを考えておるわけではございません。  なお、別途、いずれにしてもF4の後継機をどうするかという問題はありますけれども、これは別途の検討でございまして、現在の時点でF4の改修したものをF1の後継機にするというふうに決めておるわけではございません。
  302. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 防衛庁長官、あなた長官になられたでしょう。そのときは非常に喜んで、人間だから当然うれしそうな顔をしてテレビに映っていたのを見て、それはそれなんですけれども、後から局長の御進講があったでしょう。そのときに、試改修の問題について局長からあなたに対してどういう話があったのですか。これは爆撃の機能を拡大するというのでしょう、いま言ったように。三つの中の一番大きな問題ですね。そうなってくれば、当然、これをやれば増田発言なり増原発言との関連で問題が起きてくるということについて、一体防衛局長から御進講があったのですか、ないのですか。どうなんです。いやいや、あなたに聞くわけです。あなた、聞いた方なのだから。言った方じゃない、聞いた方に聞くのだよ。あなたが聞いたんでしょうが。
  303. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 付随的な機能として爆撃装置の問題があるということは聞きました。
  304. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 付随的な機能として爆撃装置がどういうふうにあるというの。それを取り外すかどうかということが前から問題となって、そのことも国会で問題になるということについては話があったのでしょう。どうなんです。
  305. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 増田発言の、攻撃的な、侵略的なものではないというような趣旨の説明を受けました。
  306. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、あなたとしてはそういう説明を受けた、こういうわけですね。それはわかりました。  そうすると、それに伴って爆撃の問題、これはこの中の一番大きな問題です。これをどうするかということについては、爆撃機能の改善というのは大きな柱になっているでしょう、そういうふうに書いてあるのだから間違いありませんね。そうすると、それは現実には、抽象論はわかっているのだからいいですよ、具体的にはどういうふうにしようというのですか。今度の改修によってあなたはどういうふうにしようというのですか。これをつけることが今度の目的じゃないのですか。爆撃能力をふやして対地支援の様相を深くしていこう、これが今度の試改修の目的ではないのですか。当然、常識的にそういうふうに考えられるのじゃないですか。
  307. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 付随的に爆撃機能の改善が行われるようになるという説明を受けました。
  308. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 付随的になるということで、それに対してあなたの方は何らの疑問を持たなかったわけですか。
  309. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 付随的に爆撃機能の改善が図られるということで、そのまま理解をいたしました。
  310. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは後で問題になりますよ、いまのあなたの。付随的でも何でもないですよ。これを目的としているんですよ。目的としているからこそ試改修するんですよ。まあ後で恐らく集中審議があると思います。そのときまたいろんな人からこれは聞かれますよ。いいですか。これが目的であることはもう明らかです、常識的に見て。それだからこそたくさんの金をかけてやるのですから。その点、いまの答弁は、付随的ということではだれが見ても納得できませんよ。いいですか。  そこで、もう時間もなくなりましたので、まだいろいろ聞きたいことがあるのですが、私は質問だけしておいて、後であなたの方で別の機会に答えてもらいたいのですが、前からF15にしろP3Cにしろ、ロイアルティーという言葉を使って問題を提起していますね。一体、ロイアルティーというのは何と何と何が入るのをロイアルティーと言うのですか。交換公文の覚書によると、研究開発費の回収という言葉が第三項に両方ありますよ。ロイアルティーというのは一体何と何なんだ。特許料だけでなく、そのほかのものも入っているのか。研究開発費の回収というのは一体何なのか。いままで日本がアメリカのそういう研究開発費を、向こうから言えば回収、こっちから言えば支払ったことがあるのかないのか、そこら辺のところはどうですか。
  311. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 まず、ロイアルティーが何かという御質問でございますが、ロイアルティーというのは、P3Cを導入いたしますときに結びますところの了解覚書、いわゆるMOUでございますが、了解覚書のもとで、その傘の下で民間対民間で技術援助契約を結びます。それによりまして、日本のライセンス生産を行います企業がアメリカからいろいろな技術を入れておるわけでございますが、そのときにロイアルティーあるいはイニシアルペイメントというかっこうで、いわば相手から受けますところの技術あるいは技術資料といったものの対価として支払うものでございます。  一方、RアンドDでございますが、これはMOU自体で扱っておりまして、アメリカ政府が持っております特許あるいはその他の技術上のノーハウであるとか、あるいは技術上のデータパッケージと呼んでおりますが、そういったような種々の技術資料、技術情報、こういったものの対価をRアンドDというふうに普通呼んでおる、こういう状況でございます。
  312. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 質問を終わりますが、いまの質問ではまだ私納得しないところもあるし、たくさん問題が残っていて、これは別の機会にまたやらしていただきたいというふうに思います。  時間が来たので、これをもって終わります。
  313. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて稲葉君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田利春君。
  314. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昨年の十月十六日に北炭夕張で災害がございまして、九十三名の方々が亡くなっておるわけです。そして、年を越えて一月六日、ベーリング海において第二十八あけぼの丸の転覆事故がございまして、一名だけが奇跡的に生還をして三十二名が亡くなられておるわけです。そして、二月九日には日航機の事故があって、二十四名の方々が生命を奪われておるわけです。いわば大変ショッキングな事故が続いておるわけであります。特に北洋海域における海難事故は、ここ数年来重大な災害が続いておるわけでありますが、最近になっても北洋における災害は依然として続いておるわけであります。  私は、まず初めに、北洋海域におけるここ一年半程度における災害はどういう災害が起きておるのか、お聞きいたしたい、こう思います。
  315. 勝目久二郎

    ○勝目政府委員 北洋海域におきまして五十五年、五十六年二カ年間で発生をいたしました漁船の救助を要する海難隻数は百三十隻でございます。このうち百トン以上の漁船が転覆をいたしました海難は二隻でございまして、これに伴います死亡、行方不明者の数は二十八名となっております。
  316. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 五十五年十月六日には、アリューシャン南方海域において第二十八寅丸、これが事故を起こし転覆をする、また八戸の第六十一源栄丸、五十九トンでありますけれども、これまた転覆事故で、それぞれ十四名、十一名の二十五名が行方不明、死亡いたしておるわけです。また、五十六年三月十三日はベーリング海において稚内の第五十五大東丸、三百四十九トンでありますが、これが沈没をして二十六名が行方不明になっておるわけです。また、太平洋のサケ・マスの操業海域では山形の第三十三手扇丸、四十九トンが、これは衝突沈没で十名が行方不明になっておるわけです。五十六年十二月十四日には、釧路沖千三百三十キロ北洋で広尾の大勢丸、九十六トンが交信が途絶をして十名が行方不明になっておるわけです。ざっと、今度の事故を含めて考えますと、この五件の事故で百三名の生命が失われておる、実はこういう数字になるわけであります。  特に、海難事故の中でも漁船における事故が非常に多い。五十五年の実績でも、四七%程度は漁船における事故であります。あるいはまた、五十六年の暦年で見ても、百九十九名の方々が海難事故で死者、行方不明になっておるわけであります。この近代社会において、特に海洋国家日本として、このような事故が頻繁に依然として続いている、私はきわめて不名誉なことであると思いますし、そこに今日のわが国の近海、遠洋の漁業政策の問題点も含まれておる、こう明確に指摘せざるを得ないのであります。  特に私は、第二十八あけぼの丸は日魯漁業所属であって、しかも五百四十九トン、わが国の最新鋭の遠洋トロール船であるということにまた注目をしなければならない、こう思うのであります。従来であれば、事故が起きて船が沈没をする、乗組員全員が死亡、行方不明になるということで、原因の解明もなかなかむずかしかったのでありますけれども、今回の場合は黒田さんという奇跡的な生還者がおるわけであります。したがって、すでにいろんな証言がなされておるわけでありますから、この遭難原因については従来と違って究明しやすいし、その遭難原因についても当然推定されるものと判断をするわけでありますけれども、この第二十八あけぼの丸の遭難原因についてはどういう受けとめ方をされておるか、承りたいと思います。
  317. 勝目久二郎

    ○勝目政府委員 ただいま先生御指摘ございましたように、あけぼの丸の事故につきましては、三等航海士一名生存いたしております。さらに、僚船には同型の船もあるわけでございます。現在、生存者からの事情聴取、また、同時期に同海域に行っておりました僚船の関係者から当時の状況を聴取をするというようなことで調査を進めておりますし、また、北海道大学の川島教授に鑑定の依頼もいたし、現在究明中でございます。したがいまして、今後の調査結果、鑑定結果というものを待たなければ最終的な判断はいたしかねるわけでございますが、当時の気象、海象の状況、また操業の方法ということにつきまして、現在までにいろいろ調査をいたしました状況から考えられますことは、次のような三点について重点的に調べなければならないのではないかというように考えております。  一つは、漁獲物の積み方が右舷側に偏っておりました。その際、左舷の真横から風を受けておるという状況の中で揚網を始めておるということ、それから二番目には、多量の漁獲物の入った網を船体が傾いた状態で甲板に引き揚げておるというようなこと、第三点といたしましては、船体の傾斜が右側に増しつつあったわけでございます。そのような状況下でスピードを上げ左方向へ転舵をした、要するに傾斜がよけい増すような方向での操船がなされたのではないか、以上三点につきまして重点的に今後調査をいたしたいというように考えております。
  318. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 黒田さんがもうすでにいろいろ証言されておるわけでありますけれども、当時の海上の状況については黒田証言で明確に証明されるし、僚船もおるわけでありますから、もう調査する必要もない、私はこう思うわけです。  証言等によりますと、当時は風速が十五メーター、そして波高が大体五メーター程度、いわば左からまともに波風を受ける危険な操業状況であった、こう承知をいたしておるわけであります。特にまた、この転覆した時点は、スリップウエーにコットが巻き上げられておって、しかもコットの中には普通の二倍以上の漁獲量、大体四十二トン程度があった、そういうような関係で、右側に傾いておるのを左方に直すというのを、逆に右の方に切って転覆をした。加工場の魚倉の差し板が外れて荷崩れをしたという点についても、すでにいろいろ言われておる点でありますけれども、いま私が述べた点はすでに黒田さんの証言でも明らかだ、こう思うわけであります。そういたしますと、この事故は人災である、こう明確にまず断定することができる、私はこう思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  319. 勝目久二郎

    ○勝目政府委員 現在までの調査の状況は先ほど申し上げましたとおりでございます。そのほか、ただいま先生の御指摘なさいましたような点につきましても承知をいたしておりますので、それらの点をあわせて総合的に原因を究明いたしたいというように考えております。
  320. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま私が述べたように、風速が十五メーター、しかも波高が五メーター程度、こういうような荒天の状況の中で、いわば大型トロール船といえども、普通一般的には操業停止をして漂流するというのが、私は安全上きわめて重大ではないか、こう思うわけであります。いわば、こういう状況の中で、原因が他にあるにせよ、操業をしておること自体に問題がないのか、こう言わざるを得ないわけです。北洋における操業の安全基準というものは別に定められていないわけですから、安全かどうかというのはだれが一体判断をするのでしょうか。この点はいかがですか。
  321. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  船員法という法律がございまして、船長が一応判断することに法律上はなってございます。
  322. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、もちろん船長が判断をするという以外に今日ではない、こう思うのです。しかし、これだけ頻繁に海難事故が続いてくると、単に船長の判断にゆだねるというだけでいいのでしょうか。先ほど述べられたように、この事件が一件ではないわけです。しかも、船もろとも人命は帰らない、非常に多くの例がそうであります。それだけに、安全係数はより高いものでなければならないわけですね。したがって、船長の判断とはいえ、船長が判断する安全基準というものはある程度示してしかるべきではないのか、私はそう思うのであります。そうでなければ、どうも北洋の漁業の場合にはクォータが決まってオリンピック方式である、したがって各漁船が無理をして操業をする、こういう傾向が続くしへまた、他の外国漁船から見ても、日本の漁船の操業の仕方はきわめて特攻的であるという評判も国際的に高いのであります。  そうしますと、この事故対策としては当面何をやるべきなのか、一定の安全的な基準を示す、そういう方向性を、ガイドラインのようなものを示すということが、当面北洋における安全操業の対策でなければならぬのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  323. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます前に、岡田委員に、実は先般の二月九日の日航機墜落のときには、お許しをいただきまして、羽田空港まで出向かせていただきましたことを厚く御礼申し上げます。  ただいまの御質問でございますが、このところ北洋における操業によって相当の犠牲が出ていることは事実でございますが、特に今回の問題になっております船の設計その他については、十分転覆の可能性は防げるんだというような構造的な結論を皆持っておるようでございますけれども、同時にまた、いま御指摘のように、大変無理な操業があったんではないかというようなお話もございましたが、われわれとしましては、先ほども船員局長から御答弁申し上げたように、船員法において明確に船長の行動基準が示されておるわけでございます。したがいまして、まず一義的には、この船員法の八条、十条、十二条に明記されています点について船長がそれを厳重に守っていくということを励行せしめることが第一であると思いますが、しかし、ただいま御指摘のような問題がこのところ北洋において続けて起こっているということ自体で、実は本日、運輸省としては役所と労使、学識経験者にお集まりいただきまして、北洋海域における海難防止のための関係者懇談会というものを開いておりますが、これはいま委員の御指摘になりました安全確保対策ということを重点的にこの会議においてよく話し合い、そしてまた、それによって必要な措置を講じていこうということをただいま実践しておるところでございます。
  324. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、日魯漁業所属の第二十八あけぼの丸が転覆をしたということは、非常にショッキングな事件だと思うのですね。これは非常に優秀な漁船であって、しかも、それぞれ船体構造は密室になって、水もなかなか入らぬというような装置になっている船でありますから、この船が転覆をするということは、他の百トン程度の、あるいは北転船であれば三百六十四トン型ですか、この程度の船であれば、無理をすればいつでも転覆、沈没するということに判断できる、私はこう思うわけであります。  もちろん、それぞれ操業海域の問題もございますけれども、そうなってまいりますと、やはりいま大臣が言われましたけれども、安全操業基準といいますか安全操業要領といいますか、そういうものを定めてやはり船主を指導するとか、また責任のある船長もそういう指導要領の教育を受けて安全操業を図る、このくちいの積極的な姿勢がないと海難事故というものは防げないと私は思うのですね。いま大臣からそういうせっかくの答弁がありましたけれども、この点一歩進めて、そういう私の提案のような方向で対処する気持ちはありませんか。
  325. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 ただいま運輸大臣の方から御答弁のございましたように、私ども本日第一回の会議を持ってございますので、いま先生御指摘のような点を議題として取り上げて十二分に検討してまいりたいと思います。
  326. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 運輸省は今日までずいぶんいろいろな勧告を漁船関係にはなしておるわけでありますが、なかなか実効は上がっていないという傾向もあるわけです。たとえば魚倉と居住室の関係、こういう点についてもせっかく指導をしておるけれども、なかなかそのとおりいってないという問題もわれわれは具体的に見ておりますし、あるいはまた、現在の賃金制度そのものに問題がある。したがって、固定部分を五〇%にして出来高部分を五〇%、フィフティー・フィフティーにするという指導も運輸省ではなされておりますけれども、全体としてまだそういっていない。したがって、オリンピック方式でどうしても無理をするという操業が賃金体系の中から出てくるという問題もまだ残っていると私は思います。同時にまた、船がよければわが国の造船技術に対する過信も出てまいりますし、あるいはまた、船そのものについてもいろいろ構造上問題があるのではないかと私は思うわけです。  そういう意味では、北洋とか遠洋で安全操業をするという場合に、わが国のそういう政策を一つ一つもう一度見直して積み重ねていく、そして問題点があればこれを是正していくということをやらないと、これは来年も起きますよ。また再来年も起きるわけですね。いま産業別に一番災害率の高いのは、一次産業としては漁船による漁業であります。これ以上高いものはないと私は思うわけですね。そういう点では、もう八〇年代に入って近代社会においてこの海難事故がしょっちゅう新聞の紙上をにぎわすというのであれば、経済大国日本、漁業国日本とはいうけれども、そろそろ物笑いの種にもなりかねない状況に入ってきているのではないのか。  そういう点では、これは運輸省だけの責任ではないわけですね。しかし、海の労働省は運輸省でありますから、やはり運輸省の主体的な責任があるわけですけれども、農林水産省としてもそういう面に対応していく、こういう両省の姿勢がないとこの問題は解決しない、こう思うわけであります。そういう意味で、これらの問題に対処する今後の方向として姿勢を、私もいま幾つかの提案を含めて御質問申し上げておりますので、運輸大臣と農林水産大臣から見解を承りたいと思います。
  327. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいまの岡田委員の御所見、われわれは心して今後の行政の中に生かしてまいりたいというふうに考えております。
  328. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 二百海里の規制強化あるいは燃油価格の高騰等、いま水産業の置かれている状況は非常に厳しい。その中での遠洋漁業でございますから、岡田議員の御指摘のような状況が出てまいると思いますので、今後そういう点に十分配慮しながら指導してまいりたい、かように考えております。
  329. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、羽田の日航機事件について二、三点御質問いたしておきたいと思うのです。  すでに十九日に中間報告がなされておるわけであります。このことは直接触れておりませんけれども、やはりパイロットの操縦ミスという面が中間報告からうかがわれるわけであります。いずれ調査の結果が報告になると思いますけれども、ただここで一つ問題なのは、わが国国内航空の面で見ますと、日航とそれから全日空あるいは国内航空、三社があるわけですが、この場合、パイロットの労働条件に差があるわけですね。  日航の労使協定によれば、二日にまたがる場合には休息時間は十二時間と定められておるわけです。そして、パイロットの場合は管理者でありますからこの適用は受けませんが、しかし、日航内にある業務関係の内容を見ますとただし書きがあって、ただし書き準用で日航の場合には行われているようであります。ところが、室内のたとえばスチュワーデスは十二時間必ず休憩できる、パイロットは例外規定を採用することによってそれが十時間だとかいうことになるわけですね。今度の場合には、とにかく羽田に着くのが九時四十分ですか、そして朝の八時に飛んで九時四十分着ですか。そうすると、睡眠時間を計算すると、さっと寝ても機長としてよくとっても六時間程度よりとれないのではないかということが容易に想像つくわけです。  しかし、わが日航の場合には国の資本が約三割、三四%出資をされておる航空会社でもまたあるわけです。この点、純民間の場合と比較してこういう点についてすでに差があるということ自体が非常に負担がかかっておるということは、比較論から言えば理解できるわけですね。そういう意味で管理体制の欠陥というものがあるのではないのか、これは外国に比べてもそうではないかと私は思うわけです。もちろん、その後出ている専任の医師が専従で設けられていないとか、いろいろありますけれども、私は、いわば日航の管理体制からまず一つの今回の原因というものを考えざるを得ない、こう思うわけであります。もちろん、機長のいろいろな問題が出ておりますけれども、その問題はその問題としても、やはりそういう問題が一般的に言えるのではないか、こう思うわけであります。  したがって、日航のそういう管理体制に問題があるということは、運輸省の航空局にも問題があると言わざるを得ないし、同時にまた、特に国が出資をしている政策的な航空会社であるという点においても責任は非常に重いと言わざるを得ないのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  330. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 今回の事故によりまして亡くなられた方には深く弔意を表したいと思っております。また、負傷された方々の御全快を祈っておるわけでありますが、いま御意見ございました点につきましては、この十五日から十九日までの間、日航に対して立入検査をやっております。これはもちろん、管理機構並びに乗務員すべてについてのきわめて厳正な調査を実行しておりまして、この報告をまだ受けておりませんけれども、その報告の内容によって、さらに日航内部の諸問題について適正に処置をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  331. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 国が出資をして日本航空、わが国民間航空の発展を今日まで図ってまいったわけで、同時に、それはわが国の航空界における先導的な役割りが任務づけられておりますし、同時にまた、技術、安全面においてもそういう先導的な役割りを持っている、こういう認識はきわめて当然ではないかと私は思うのですが、そういう認識は間違いでしょうか。
  332. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 航空行政の最も重要な点は安全確保であると私は思っております。そうした意味におきまして、いま御指摘のように、日本航空は日本における最も大きな航空会社であるし、また政府も、国際線を運用させるという意味でそれに対して出資をしておると思うのでありますが、そうした意味においての安全政策というもの、安全の確保ということはきわめて重要な、非常に大切な任務であるというふうに考えておりまして、こうしたことの実現のためには、運輸省としましても、今後さらに一段と気を引き締めてこの事故防止に当たりたい、そのようなつもりでおります。
  333. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは局長の御答弁で結構ですけれども、私が指摘をした業務規程の内容が、特にパイロットに関して、日航、全日空、そして国内航空それぞれ違いがある。いわば日航が一番過酷である、こういうことが言えるわけでありますが、そのことを承知であったのかどうかという点を答えてください。  同時に、日本航空の責任限度額に関する運送約款は、十二月十八日に認可をされて今年の四月一日から適用される。いわばかつての二千三百万円を限度とする頭打ちが青天井に実はなっておるわけであります。そういう意味で、いわば認可から適用までの経過の中で今度の事故は起きておる。こういう意味ではすでに日航の社長も、補償については誠意を尽くすということを述べられておりますし、また、そういうすでに十二月十八日にこの約款の改正の認可があったという面から見ても、私は、いわば認可の精神に基づいて遺族と話し合いをし、補償がされるべきだ、こう思うのですが、この二点についていかがでしょうか。
  334. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点でございまして、航空三社の乗務員の勤務状況に差があるのではないかという御質問でございました。日本航空、全日空、東亜国内航空それぞれ、連続する二十四時間中の乗務時間あるいは一暦月当たりの乗務時間、三暦月当たりの乗務時間等々を定めておりますが、二十四時間中の乗務時間は、いずれの会社も八時間ということでございます。  なお、組合との協定上、さらにそれを若干しぼった運用をしておるようでございますが、三社いずれも差はございません。  また、一暦月あるいは三暦月の時間につきましても、むしろ日本航空は一暦月の時間としましては、全日空あるいは東亜国内航空より若干少ない時間を決めておるようでございます。  それから、第二点のお尋ねでございまして、賠償の点でございます。これは御指摘のように、現在の運送約款上は、賠償限度額が二千三百万円、これは七万五千ドルというアメリカの基準を当時三百円という円レートで換算をして決められたということでございますが、この賠償限度額はこの四月一日から撤廃をすることになっております。そういうことを決めたやさきの事故でもございますし、日本航空としてもこの限度額には一切こだわらないで誠意を持って遺族との交渉に臨みたい、こう言っておりますので、役所としてもできるだけ早く円満な解決が図られるように指導してまいりたいと思っております。
  335. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 社内の業務規程というのは、労働契約があれば労働契約が優先をするわけであります。私が指摘をしましたのは、二日にまたがる場合の休息時間が全日空は十四時間で、日航は十二時間になっている。そうでしょう。そして、パイロットに関しては違うわけですよ。ただし書きを適用しておるわけです。ですから、普通の室内の乗務員の場合には、二日にまたがる場合には十二時間なんです。全日空の場合には十四時間なんです。そういう規程については御存じありませんか。知らなければ知らなくてもいいのですけれども。わからなければわからないでいいですよ。
  336. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 お答え申し上げます。  社内の運航規程の細かい数字、特に全日空の数字についていま承知いたしておりませんが、日本航空の場合には、先生お尋ねの十二時間の休養といいますのは、これは常にという意味ではございませんで、ある機長がほかの機長の操縦する飛行機でその勤務地まで出かける、そして、そこから新しい任務につくというケースの場合には十二時間以上休養をとらせる、こういうことになっておりまして、その他は先ほど申し上げましたような連続する二十四時間における勤務状況ということで定めておるというふうに承知いたしております。  全日空についての休養時間の規程につきましては、申しわけございませんが、ただいまのところ承知しておりません。
  337. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私も別に誤解しているのじゃないのです。結局、二日にまたがって出先でもって宿泊をする場合、その休養時間について取り決めがあるわけです。それが差があると言っているのですよ。わからなければわからなくてもいいのですけれども、それは私どもは組合からも聞いておりますから間違いがないと思うのですね。  いずれにしても、そういう点についても十分ひとつ内容を検討されるように期待をいたしておきたいと思います。  時間がございませんので、次の問題に進みたいと思います。  次に、私は酪農問題についてこの機会に承っておきたいと思うわけです。  私は、最近のわが国の畜産業の実態は危機的な状況に立ち至っている、こういう実は認識をいたしておるわけであります。すでに昭和五十七年度の牛乳生産の数量及び需給の計画等については中央酪農会議では決定をいたしておるわけであります。しかし、昨年と違って昨今の乳製品の需給の関係も大分変わってきておるのではないか、私はこう思うのであります。したがって、まずこの機会に昭和五十七年度の牛乳の需給の見通しについて承っておきたい、こう思います。
  338. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 五十七年度の生乳の需給見通しでございますが、先生いまお話がございましたように、中央酪農会議におきましては生乳の需要を対前年比で二%弱と見込んでおります。その中で、飲用乳につきましては二・五%程度、それから乳製品に充てられます加工原料乳につきましては一%を割る数字を予測しているわけでございます。これは酪農会議の需給予測でございまして、私どもこういうものも参考にしながら目下需給の見通しを作成中でございますが、生乳の見通しにつきましては、この二・五%というものは比較的妥当な数字に近いのではないかと思っております。  加工乳の見方につきましては、これはいろいろございまして、たとえば昨年と違いますのは、市中に在庫しておりました乳製品が減少いたしております。この点は若干昨年と異なりますけれども、一方、従来生乳から充てられました部門、たとえばヨーグルト等の原料が脱脂乳から充てられましたものが、最近若干加工原料乳の方を一度回りましてから来るというような事情もございまして、この辺につきましては今後よく検討していかなければならないと思っております。     〔委員長退席、越智(通)委員長代理着席〕
  339. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、第一次石油ショックの時代と第二次石油ショックの時代では非常に状況が違うのではないかと思うのです。第一次ショックの場合には物価が上がって、同時にまた賃金も上がる、農産物価格もリンクして上昇した、こういうのが第一次ショック後の状況だったと思うのです。ところが、第二次ショックのもとでは、物価は上昇する、あるいはまた工業製品は値上げが行われるけれども、第一次産品の場合には価格が比較的抑えられた、こういう点では第一次と第二次の違いがあるのだと私は思うのです。そういう面から考えて、今日の農業一般及び酪農の交易条件というものは一体どう変化しているのか、私は非常に悪化していると受けとめておるわけです。この点について数字でひとつお答え願いたいと思うのです。
  340. 角道謙一

    角道政府委員 お答えを申し上げます。  第一次石油ショックの際におきます資材価格の上昇は、先生御指摘のとおり、その後の農産物価格の上昇によって転化されて吸収されてきたわけでございますが、最近、全般的に農産物の需給が緩和傾向にあるというところから、農産物価格の上昇は比較的小幅でございまして、大体年四、五%程度の上昇になっております。反面、農業生産資材の価格は五十四年度から五十五年度にかけまして原油価格の上昇なり海外飼料穀物の値上がり、円安等の影響によりまして配合飼料あるいは肥料等、全般的に上昇しております。  そこで、お尋ねの交易指数でございますが、農業生産物の生産者価格と、それから農業生産資材の価格指数の比較でございますが、たとえば五十年度を一〇〇といたしますと、五十二年度におきましては一〇一・五、五十三年度は一〇八・六となったわけでございますが、五十四年度は一〇六・八、これが五十五年度になりまして九九・一というように悪化をしております。しかしながら、五十六年度に入りまして、海外の原材料価格が若干弱含みで推移している、また、アメリカも農産物が史上最高の豊作であるというようなこともございまして、配合飼料の工場建て値も七月に五・一%、五十七年一月には六・三%、また、肥料の生産者販売価格も五十六年七月に〇・五%、農薬の販売価格も十二月に〇・四%、それぞれ引き下げられてきておりまして、生産資材の価格上昇も若干落ちつきを見せてきております。  その関係で、五十五年度の四−十二と五十六年度の四−十二というぐあいに二つの時期を考えてみますと、生産資材価格に対する生産者価格の比率は若干改善をされてきておりまして、実数で申し上げますと、五十五年度の四−十二月九七・九から五十六年度四−十二では九八・九と一ポイント上昇しております。
  341. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 第二次石油ショック、昭和五十三年と比較してみますと、卸売物価では二九%と大幅上昇し、農業生産資材は一九%、それから飼料価格は二五%上昇して、農産物の価格全体では九%アップし、総合乳価の面では統計上三・三%マイナスである、こういう数字があるわけですが、この数字についてはいかがですか。
  342. 角道謙一

    角道政府委員 いまお尋ねの物価指数は、手元にございませんが、大体傾向としてそのようなものではないかと承知しております。
  343. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 農家経済調査に基づく酪農専業経営の農業所得率、そしてまた乳飼率はどういう変化をたどっておるのか。ちょうど乳価が据え置きになったのは五十三年以降でありますから、五十三年に対して、この酪専の所得率と乳飼率はどういう変化をいたしていますか。
  344. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 農家経済調査によりますところの経済動向でございますが、御承知のように、五十四年までは大変順調に伸びてまいりました。特に、北海道等の大型経営では対前年比相当の規模で上がってきたわけでございますが、先ほどの官房長答弁にございましたように、五十五年にえさが大変値上がりをいたしまして、そのことが経営にマイナスに働きまして、五十五年度は、所得で対前年比で約二割ばかりのダウンをするという形になっております。ただ、この場合でも、一日当たりの家族労働費で見ますと、それほど大きい落ち込みはございません。  それからもう一つ、牛乳の価格と飼料、特に配合飼料との比率で経営条件を見るという考え方がございまして、これによりますと、えさの安かった五十三年当時、これなんかは一八一という大変有利な条件がございますが、いま申し上げましたような、えさが高騰してくる、しかし市乳価格は過剰で上がってこないということの中で、一四〇台の数字にまで実は落ち込んできております。  ただこれは、御承知のとおり、酪農の場合は配合飼料の第二次生産費に占めます比率が約一六%程度でございまして、これだけでは経営の実態は必ずしも把握しかねますので、他の生産性向上とかあるいは一日当たりの家族労働費等に見ますと、これほど大きな差は出てまいりません。
  345. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 安い数字、安い数字という説明答弁として出てくるわけですが、一応農業所得率では、五十三年は三六・二、五十四年は三五・五、五十五年は二六・七、乳飼率は、五十三年二七・六、五十四年二九・五、五十五年三二・四、こういう数字が農家経済調査に基づいて出ておるわけであります。これをあるモデルの単協で私は調査をしましたら、五十三年の酪専の所得率は二八・五、五十六年の末では一八・九、こういう数字が出ているわけです。乳飼率では、五十三年には二七・六、五十六年には三五・四、こういう数字が実は出ておるわけです。  そこで私は、五十六年の九月に、北海道において酪農経営の実態調査が行われて報告されていることは農林省も御承知か、こう思うのであります。この調査では、一万五千三百六十戸の調査をしまして、二千五十二戸、調査に対して八戸に一戸の割合で、平均で五百三十万円の赤字経営である、倒産状態に近い状態にあるということが報告されておるわけです。  したがって、この内容を見ますと、約定償還利息及び約定還元金の支払い可能な者は四四%で六千七百四十五戸、平均するとプラス百七十二万四千円、これがAグループであります。Bグループの場合には、三千八百九十二戸で二五%で、これはマイナス百五十四万三千円。そして、Cグループの場合には、一八%で二千六百七十二月、マイナス三百六十一万九千円。こういう、特に原料乳生産の北海道の酪農家の実態が実は詳しく報告をされているわけです。この点の評価については、農林省はどう思いますか。
  346. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 昨年北海道が行いました負債調査によりまして、北海道の農業経営の中で非常に急速に拡大をいたしておりまして、その中でいわば設備投資というものが非常に速いテンポで拡大をした。このことは一面におきましては、資本装備を高めましてそれだけ資産もふえたことになるわけでございますが、御指摘のように、うまく循環しない資金が出ていることは事実でございます。  この調査の結果、酪農家自身につきましても、経営の実態を自分でよく確かめたということになりまして、いわば経営者マインドを育成して、本当にどうやって今後経営するかというような点に大変プラスになったと考えております。  私ども、こういう調査の内容を踏まえまして、この中でも、いわば制度的に何か支えをしなければ順調な償還ができませんC層あるいはD層につきまして、御承知のように、長期低利の負債整理資金を昨年十二月に貸し付けを行いまして経営改善に努めているわけでございますが、これはもちろんそういう資金を貸すだけではなくて、やはり今後における経営を強化するための各種の体質改善も必要でございます。そういうことをやりますことによって、このC、D階層の中で、融資措置で転換可能な者につきまして、極力今後経営が安定するように努めてまいりたいと考えております。
  347. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 政府も、指定乳製品の貿易管理あるいはまた擬装乳製品の輸入規制、こういう点について努力を払って、生乳換算では、五十四年に八千トン、五十五年には十三万トン、五十六年には約十七万トン、それぞれ減になっておるわけであります。しかしながら、擬装の方は逆にふえておって、五十四年にはプラス四%、五十五年は対前年度プラス一六%、五十六年は大体プラス五%、こういう数字が出て、特にその中でもココア調製品は、無糖物は一九%、加糖物は四三%増加をしているという統計数字がすでに出ておるわけであります。そして、一方においては、酪農民は需給の均衡に努力するために、五十四年には二十一万トン生産を調整し、五十五年には三十万トン、五十六年にも同様三十万トンの生産制限で、大変農民の犠牲も大きく払われておるという状況であります。  こういう状況の中で、私は、昭和五十三年度以降、大手乳業三社の売上高の利益率は一体どうなっておるのか、同時にまた、原料乳の入荷価格はこの大手三社の場合どういう推移をたどっておるのか、この機会に承っておきたいと思うのです。
  348. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 擬装乳製品でございますが、御承知のように、一番大きい調製油脂につきましては対前年比八十数%台に調整をいたしておるわけでございますが、ココア調製品、これは無糖、加糖を含めまして、いわばチョコレートの半製品というようなものでございますので、いろいろ自粛を求めておりますが、若干前年を上回った水準でございます。  いま御指摘の乳業各社の利益でございますが、これは御承知のように、乳業全体といたしましては、他の産業、特に食品産業の中でも非常にいわば売上高経常利益率が低いところに位置しておりまして、五十三、五十四、五十五共通で大手三社を含めまして一%台でございます。これは産業全体の二ないし二・五%あるいは食品業の二ないし三%の水準を下回る水準となっております。  それから、もう一点御指摘の、どれくらいの価格で原料乳を入れているかという御指摘でございますが、これは乳業のところで会社が幾らでとったかという数字は、実はなかなかとりがたいわけでございますが、生産者がどのくらいの価格で入れているかという生乳の価格の水準で申しますと、五十三年で平均的に見まして百二円ちょっと、五十四年が百一円、五十五年になりますと百円、五十六年度になりますと九十九円台というぐあいに漸次下がってきております。
  349. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私の言う売上高利益率というのは、売上高と売上原価、そして売上総利益というもので出してみますと、五十三年以降乳価が据え置かれておるわけですが、五十二年度に比べるといずれも改善されておるということだけは明らかではないでしょうか。一つのY社という会社をとりますと、五十三年には二一・四九、そして五十五年には二一・七〇、こういう数字が出ておるわけです。五十二年の場合には一九・九七であります。大体各社とも、こういう点ではむしろ五十二年当時よりも改善されておるというのが実態ではないか、こう思います。  また入手価格についても、私は有価証券から割り出しておるわけです。これで見ますと、Y社の場合には五十三年には九十一円三十一銭、五十四年が八十九円四十六銭、五十五年は八十八円五十八銭、五十六年の三月で見ますと八十六円九十六銭、もちろんM社は百三円五十七銭、それからもう一つの会社、これもM社でありますが、百四円四十三銭、こういう数字が実は出てくるわけです。  いまあなたが答弁されたのは平均を述べられておるわけですが、特に原料乳に依存しておる乳業メーカーで見ると、私がいま申し上げた数字は有価証券からとっておりますから間違いがないと思うわけであります。いずれにしても安定的な経営の状況にある、こう言っていいのではないでしょうか。
  350. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 私、いま答弁いたしましたのは、いわば生乳の原価ということで申し上げましたが、先生おっしゃいました数字は多分、たとえば加工原料乳でございますと不足払いの二十数円を引きました六十何円というので計算して、そういう平均になったかと思います。  ただ、私ども見ますところ、生乳の世界、これは牛乳全体の六百五十万トンのうちの四百五十万トンが生乳の世界でございますから、その生乳の世界で五十三年以降非常に製品の安売りということが行われまして、生乳の中ではなかなか利益を得にくいという状況がございます。  それから、加工原料乳等につきましても、かつて支払っておりましたいろいろな優遇措置をとってはとても経営ができないということで、そういうものをカットしておるという動きもございまして、先生御指摘のような、十分やっていけるというにはなかなか問題ではなかろうか。たとえば、加工原料乳の不足払いの際、安定指標価格を算定いたします際の製造経費等も実はずっと据え置いておりまして、その種のものに経費がかかるというような指摘も乳業会社から行われているような状況でございます。
  351. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 北海道における指定団体、いわゆるホクレンでありますけれども、ホクレンと乳業会社の取引条件というものの変化をずっと見てまいりますと、これは五十三年には約五十一億円、五十四年には十九億円、五十五年にはゼロ、五十六年には、送乳費が指定団体持ちでありますから、大体五十五銭に匹敵しまして十一億円、こういう取引諸条件というものが変わってきておるわけですね。これを合計しますと、七十億円に十一億円でありますから八十一億円、いわば乳価政策の中でこういう取引条件の改善が乳業会社から行われておるわけです。こういう数字が出ておるわけですが、この数字については認知いただけますか。
  352. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御指摘のような事情は、五十三年以降メーカーとホクレン等の間の取引条件の中で、たとえば御指摘の五十三年でございますと、基本乳価のほかに乳質改善対策費とか、あるいはクーラーステーションとかバルククーラーの運営費とか、あるいは酪農振興対策費といったような名目で支払われておりましたものが、こういうものを支払っていたのではなかなか経営が成り立たないというようなことから、カットをされたような事情がございます。御指摘の総額自身、私いま確かめておりませんが、そういう形で五十三年にはキロ四円程度とか、あるいは五十四年にはキロ一円程度の、そういう形で支払われたものが支払われなくなったという事情はございます。
  353. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 道指定団体の乳代の単価で見ますと、キロ当たり五十二年で九十九円三十銭、五十五年で九十三円四十銭、したがってキロ当たりマイナス五円九十銭、そういう数字になるわけであります。五十三年に比較するとマイナス四円八十銭、こういう手取り減になっておるわけです。大体六%程度落ち込んでいるという数字が出ているわけですが、こういう傾向については、これは指定団体の数字でありますから間違いがないでしょう。いかがですか。
  354. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 そのような傾向でございます。
  355. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最近、北海道において乳業会社から大幅増量の申し入れが実は行われておるわけであります。Y社の場合には五万トン程度、あるいはまたそれ以外の三社からも一ないし五万トン程度の増量申し入れ、大体これは第四次の酪農近代化計画の年間平均の増産率が四%でありますけれども、これを上回るものであります。これはやはり民間の乳製品の在庫というものが非常に減ってきている。ことしもし暑い夏が来れば、むしろ在庫は完全に払底をして事業団在庫、いま四十五万トンございますけれども、これにも手をつける可能性があると言われておるわけですが、今日のこの民間在庫の状況はどういう状況でしょうか。
  356. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 いま先生御指摘の、北海道につきまして加工原料乳の量をふやしたいという要請があるということでございますが、私どもいろいろ調べておりますが、実は総量をふやしてくれというような要請ではございませんで、どちらかというと、安定的に確保できる北海道の量はふやす、そのかわり内地の量を減らしてくれというようなニュアンスが強うございまして、北海道に対する増量申し入れがすべての増加に、需要増ということには必ずしも言えないかと思います。  もう一つ御指摘の民間在庫でございますが、昨年十月末で推計をいたしますと、バターにつきまして約二・四カ月分、これは一万三千トンくらい、それから脱粉につきましては、二・二カ月分、約二万三千トンばかりに、過去に比べて減ってまいってきております。  ただ、御承知のように、事業団にはなお大量の在庫を持っておりまして、脱粉は四・二カ月分の四万四千トンございますし、バターにつきましても、御承知のように、約二・一カ月分の一万二千トンを在庫しておるわけでございまして、この在庫が、結果的には安定指標価格の上になかなか価格が出ない。安定指標価格に近づいてきますと、この種の製品の価格が下がってくるというようなことで、やはりこの重圧は相当なものではなかろうかと考えております。
  357. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 生産制限、生産抑制をする場合には、これ以前の在庫で、事業団在庫はそれ以前の在庫だから、一応これはさておいて、当面の需給のバランスをとる、こういうことで生産者側は生産の制限を行ってきた。こういう点から見れば、今日の民間在庫で見る限りにおいては、需給の関係というものは大変改善をされている。これは今年の秋ごろには、むしろ在庫は払底する状況すら予想される。これは天候次第という問題もありますけれども、そういうことが予想される。一面ではずいぶんさま変わりだという点は明らかだ、私はこう思うのです。  そこで、私は申し上げたいのは、もう一つ例を申し上げますと、モデルの農協でとったのですが、五十三年度以降の酪専だけの経営で見ますと、所得率でマイナス九・六ポイント、粗収入では二三・九%増、経営費では四〇・五%増、飼料代では五六・五%増、乳飼率では七・八ポイント増、こういう単協の数字が出ておるわけであります。そして、昨年負債整理をやりましたけれども、この単協の場合には、五十五年で五億八千七百万の組合勘定の残高があったが、五十六年末には八億六千四百万円の組合勘定残高、これはモデルになる単協の数字であります。これは農家数からいっても、約二百戸程度の酪農専業農家がある組合の場合の数字であります。私は、非常に象徴的な数字ではないかな、こう考えておるわけであります。したがって、最近の指標を見ましても、もし政府側の昨年同様の生産者所得方式で算定した場合といえども、価格の上昇というものは、結果として数字が出るのではないか。  もちろん、先ほど述べられているように、飼料費の値下がりで流通飼料費の関係が八%ダウンした、家族労働時間の減少で約七%のダウンだ、資本利子の場合には約一〇%のダウンだ、しかしながら逆に、賃上げによる評価がえ賃金が七%増、あるいはまた飼料作物費が約二%、光熱動燃費が約一二%、乳量の場合には一%減ですね。これは北海道の原料乳価をとっておりますけれども、一〇%ダウンだという点をもし素直に計算すれば、乳価というものは当然上がらざるを得ないというのが私の判断であります。  そこで、私は、時間がありませんので率直に申し上げますけれども、いずれ本件は五十七年度の問題として審議会に付議をされると思うのでありますが、今日の酪農危機を救う場合には、やはり三方一両損の方式で問題を解決しなければ日本の酪農は重大な危機に陥るのではないか、私はこう思うのであります。  そこで、その三方一両損の方式とは何かと言えば、一つは、この段階において基準取引価格、もちろん取引条件がずいぶん四年間で変わってきておるのでありますから、そういう面から考えて、基準取引価格の水準あるいはまた取引関係の改善、こういうような点でやはり考えなければいかぬのではないか。第二に、政府として、従来の指定乳製品の問題や貿易管理の問題や擬装乳製品の輸入の規制は引き続き進めていく。そういう意味で、従来ずっと据え置かれておる需給関係の面から考えても、限度数量、まあ百九十三万トンでありますけれども、これらの改善、基準乳価との関係で保証乳価の関係が当然出てまいるわけであります。そうして、生産者の場合には、今年も厳しい生産の需給調整をやっているわけでありますから、引き続き生産の制限は積極的に従来路線で協力をしていく。いわばそういう三位一体の関係といいますか、三方一両損の方式といいますか、こういう方式でなければこの酪農危機を救えないのではないか、こう私は率直に問題点を指摘しておきたいと思うのですが、この点は農林大臣から率直な感想を求めたいと思います。
  358. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 原料乳価の決定につきましては、この三月に畜産振興審議会の意見を聞きながら決定するわけでございますが、先ほど、畜産の生産費所得補償方式の中で下げ要素としては、確かに御指摘のように、配合飼料価格の値下げだとかあるいは合理化等による生産性の向上、一方また上げ要素としては、製造業労働賃金の上昇だとか子牛の価格の値下げ等という要素があるわけでございます。また、先ほど来岡田委員から御指摘のような現在の酪農の状況ということをもよく配慮しながら、私たちは、先ほど申し上げましたように、畜産振興審議会の意見を聞きながら適正な価格を決定してまいりたい、かように考えております。
  359. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほどもある単協の例を私は申し上げましたけれども、北海道の調査と抽出した単協の調査を検討しますと、変わらないわけであります。実態は全く同じであります。先ほど述べました約二百戸程度の酪農の農家の所在している農協で見ましても、五十三年のときには単年度で賄えるものと賄えないものは大体フィフティー・フィフティーなんですね。五〇%、五〇%なんです。ところが、五十五年に入ってまいりますと、六三%強のものはもう賄えないのですね。この北海道の調査とやはり非常に整合性があるわけであります。ですから、大体十戸のうち七戸近い農家は採算上赤字であるという状況が、そういう抽出調査を見ても北海道の全体調査を見ても、これは同じなわけです。その傾向は、もちろん条件が違いますけれども、そういう傾向にあるのだ、こう私は思うわけです。  一方、外圧の問題も非常に強いのでありますけれども、何といっても牛乳の自給率は非常に高いわけですし、また肉の自給率も、これはわが国の農政の中では高い方であります。あるいはまた他のブロイラーとか卵のごときは、一〇〇%自給率があるという点です。豚については、大体国際価格にいま近づきつつある。牛については、実勢価格というものを安定させる。ただ、一つは、飲料乳の価格が非常に乱れておりますけれども、第二次石油ショックを経験した後五年間もすべて価格を抑えるということは、やはり大変なひずみができて、後から多少の手直しをしてもこれは救えない、こういう危機感を私自身持っておるわけであります。  そういう意味で、いませっかく農林大臣から答弁がありましたし、審議会に付託する事項でありますから、質問の中で明確なあれは出ないと思いますけれども、この点を十分踏まえてこの五十七年度の畜産審議会の運営を図るべきだ。そういう意味では、いままでのこの四年間の畜産審議会よりも非常に重要である、こう私は思うのですが、そういう、重要であるという認識は一致しますか。
  360. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 御指摘のように、第一次オイルショック以来、いわゆる畜産危機と言われた時代から、その後五十年代に入って、大体畜産の頭数がふえてまいったわけでございますね。それで、五十一年から五十三年までには、生乳においても生産が非常にふえてまいった。しかし、五十三年の後半ごろから需要が鈍化してまいりまして、五十二年から五十四年までの間に生産過剰になった。そこで、五十四年度から計画生産を進めて現在に至っているわけでございます。大体四年程度経過したわけでございますが、私たちはかつての七%以上の上昇というものは望むことができない。ですけれども、何とか二%前後の上昇を望みながら、今後計画的にこの生産を進めてまいりたいということを考えているわけでございますので、そういうことを十分配慮しながら、今後乳価の決定に当たってはそういう背景を踏まえながら進めてまいりたい、かように考えております。
  361. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、昨年も一つの提案としていまの農政のあり方、補助金政策、そうしてまた融資政策がとられておるわけですが、いわばここまで来ると、ECだっていま平均飼育頭数は十四、五頭でしょう。北海道のごときはもう三十四頭平均ですから、全国平均してもEC並みの規模になっているわけですね。そういう段階に来て依然として規模拡大と同じ政策でいいのかどうか。そのためにこの補助金政策というのが正しいのかどうか。それよりもむしろ農民の選択の幅のある、もう少し融資制度を大きくウエートを持ってやっていく。そうすると、単年度の財政の支出は違うはずなんですね。しかし、農民の側にとってはむしろ非常に効率的だ、こういう新しい局面を迎えているのではないかと思うのです。  そういう面で、ぜひこの点も検討してほしいし、あるいはまたアメリカが自由化だ自由化だと言うけれども、これはチルドビーフの場合には非自由化であって、コールドだけが自由化なんですね。もし双方これをやったって、これはオーストラリアの方は大変な喜びをするけれども、アメリカだって大変でしょう。そういう専門的な問題が内在しておるということもわれわれは忘れてはならないと思うのです。そういう意味で、時間がありませんので、私はその点特に田澤農政に強い期待をして、まずこの点は終わりたいと思います。  次に、私は残された時間、ちょっとエネルギー問題について伺っておきたいと思うのであります。  政府の長期エネルギー需給暫定見通しの作業は、昨年末という一応の目標であったわけです。ところが、残念ながらこの答申がまだ行われていないわけです。今日策定がもたついているということは、一体何が問題点なのか。そして、策定の時期は、一体いつになったら答申ができるのか。この点を通産大臣から伺っておきたいと思います。
  362. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 長期エネルギー需給暫定見通しにつきましては、現在総合エネルギー調査会の需給部会におきまして、需給の両面にわたって検討をいたしておるわけでありますが、御承知のように、わが国のエネルギー構造、エネルギー需給には相当の変化が見られておるわけでございます。特に、省エネルギー等が非常に進んだというようなこと等もありまして、非常な構造的な変化が見られておる。これを的確に見きわめる必要もありますので、これは十分な検討をした上で、できるだけ早い時期に報告をいただく、このようなことで同部会に対して依頼をいたしておるわけでございます。私は、できるだけ早い時期ということで、大体ことしの春ごろまでには何とか御報告をいただきたい、こういうふうに依頼をいたしておるわけでございます。
  363. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 新経済社会発展七カ年計画自体もいろいろ問題があるわけですね。そういう状況の中で、六十五年を見通す長期エネルギーの需給計画の見通しをつくることは大変だ、こう私は思うわけです。問題は経済成長率をどう見るか、こういう問題も当然あるわけです。ただ、いままで何回も何回も、朝令暮改とは言わないけれども、エネルギーの暫定見通しは改定されているわけです。したがって、政府の見通しに対する信頼感というのは全くない、むしろ私はそう申し上げてもいいのではないかと思うのです。  ですから、経済の成長率を一体この十年間どう見るかということをびしつとしなければ、暫定見通しもきちっと立たないだろう、こう思うのです。すでにエネルギー研究所の場合には、この点について昭和六十五年、一九九〇年の見通しを出しているわけですね。この場合には、経済の成長率は四・三%、こうとって、そしてGNPの弾性率は〇・六三、そして一次エネルギーでは、五億四千五百万キロリッターの石油換算の一次エネルギーの量を出しているわけです。これは従来の政府の見通しから言えば一億五千五百万キロリッターの減で、マイナス二〇%、二割ダウン、こういうエネ研の見通しも出ておるわけであります。  私は、そういう面から考えると、この際経済成長率の関係がありますけれども、相当今回の暫定見通しの答申というものは、少なくとも従来のような、余り狂わない数字を出す、こういう面において非常に重大な責任がある、こう思うのであります。大臣は三月ごろと言っておりますけれども、果たして三月ごろはっきり出せるのでしょうか。また、この暫定見通しが出た場合には、石油代替エネルギーの供給目標あるいはまた年度末の電源構成目標、これらの取り扱いは一体その場合にはどうされるおつもりか、この点もあわせて伺っておきたいのであります。
  364. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、経済の見通しももちろん関連があるわけでありますが、石油の需給構造そのものに大きな変化が見られておる、こういうことでございます。そういう中で、いまお話のございましたように、わが国としては昭和六十五年までに石油のウエートを五〇%に持っていくということでいま政策を進めておるわけでございますが、すでに御承知のように、五十五年度で七割のウエートを切ることができた。石油依存を七割から今度の五十五年ではすでに切ったということであります。また、そういうふうに非常な燃料の転換が急速度に進んでおりますし、省エネルギーも五十四年、五十五年、五十六年というふうに予想以上といいますか、計画以上に進んでおる状況でございますので、その辺のところを至急需給部会で十分ひとつ見きわめながら暫定見通しというものを立てていただきたい、こういうことで依頼をいたしておりまして、大体私は春ごろまでには一応の成案を得て答申をいただけるもの、こういうふうに判断をいたして、お願いもいたしておるわけであります。
  365. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最近の石油情勢というのはずいぶんさま変わりでありますけれども、わが国の石油備蓄量と主要国の石油の備蓄量というのはどういう状況にありますか。
  366. 小松国男

    ○小松政府委員 お答えを申し上げます。  日本の場合には、民間と政府備蓄合わせまして大体現在百二十日前後、百二十一日でございます。諸外国の場合、特に先進国の場合には、各国によって若干状況が変わりますし、国家備蓄を持っているところもありますが、大体百五十日程度は持っているということで、日本の場合、まだ先進諸国に比べて石油備蓄量が少ない、かような状況でございます。
  367. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 長官答弁と私の持っているデータではちょっと違いがあるのですが。日本は、これは八一年の十月現在で百二十三日分、そしてイタリアで百二十日分、西ドイツで百四十二日分、フランスで百十八日分。最近はOECD関係は、備蓄量は戦略的に余り発表しない、こういうようなIEAでも合意があるらしいのでありますけれども、これから見ると、わが国の備蓄量はヨーロッパに比べて、大体ヨーロッパ並みに到達している、こう見るのが本当じゃないでしょうか。
  368. 小松国男

    ○小松政府委員 最近石油の消費量が落ち込んでおりますので、その消費量に見合って備蓄の日数を計算しておりますので、なかなかむずかしいわけでございますが、大体精製段階それから消費段階、特に消費段階の備蓄量というのは把握することはなかなかむずかしいわけでございます。ただ、国家備蓄ということになりますと、日本の場合はかなり努力しておりますが、アメリカのように戦略備蓄で非常に大量に持っている国もあるということで、民間備蓄ということで比較した場合には、まだヨーロッパ諸国の方が日本よりは量の面で上回っておるというのが実情でございます。
  369. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ここ一、二年、ヨーロッパでも相当備蓄量を取り崩して第二次オイルショックに対処したというのが大体一つの流れでしょう。ただ、その場合、わが国の石油の需給構造というものは今日大変な変化をいたしておるわけです。特に、石油化学は不況産業でありまして、いま通産でもいろいろ問題になっているわけですが、わが国の場合、大体ナフサの得率が八%弱、しかし、石化業界からはナフサの輸入が強く要望されている。恐らく半分以下ぐらいにしなければ、四%程度にしなければ、なかなかわが国の石油化学も成り立たないのではないか、こう私は思うわけであります。同時にまた、C重油で見ますと、五十六年度二千二百キロリットルの過剰が出る。これはC重油供給量の三分の一に実は相当するわけであります。  そういう状況の中で、わが国の石油業界がこのままでいいという話はないわけです。やはり業界の再編合理化を進めて、リーディングカンパニーをつくり上げるとか、また石油業法についても、この段階に来るとやはり見直しをしなければ、石油業界の話だって、業法ではびしっと押さえられておるが、輸入は結局は石油精製会社に任せなければならないということに業法上なるわけであります。そうすると、石油業法の見直しもするという新しい石油の需給構造の中でどう対応するかという点は、石油のウエートがまだ高いわけでありますから、非常に重要であると思うわけです。この点の見解を承っておきたいと思います。
  370. 小松国男

    ○小松政府委員 お答えを申し上げます。  先生御指摘のように、最近の石油の需要構造というものが大きく変わってまいりまして、それに石油業界が対応していかなければいかぬということで、特に先ほど御指摘がございましたように、石油化学その他素材産業が不振でございますので、ナフサの需要量が非常に落ち込んでおるという状況がございます。それから一方、重油の方も石炭転換その他が進みました。こういうこともございまして、C重油を初めとして需要が非常に落ち込んでおる、こういうことで需要構造が大きく変わっておりますので、これに対応した形で供給構造の方も変える必要があるということでございます。  そういうことで、ナフサにつきましては、先ほど御指摘がございましたように、得率を減らすとか、また価格問題でも、石油業界として、当然できるだけ国際価格に近づけるような努力をしてナフサを売っていくという体制をもちろん今後つくっていかなければなりませんし、重油の問題につきましては、そういう需要構造の変化の中で、一方ガソリンそれからさらに中間留分の需要がかなり強いわけでございますので、重油を分解して中間留分の需要にこたえていく、こういう努力も同時にしていくということでございます。  こういうことと同時に、石油業界自身の当然それに見合った体質改善、それから、そういう需要構造に対する供給体制をつくっていくためにも石油業界自身の体質改善が必要なわけでございますし、一方、先ほどお話がございました国際化の波の中で石油業界が十分成り立っていく、この安定供給とあわせて、同時に国際競争力を持った石油業界をつくっていくことが今後の課題だろうというふうに思います。昨年の石油審議会の答申でも、石油産業につきましての体質改善策が打ち出されておりますので、それをベースにしまして、私どもとしても今後石油産業の体質改善を可及的に速く進めてまいりたい、かように考えております。
  371. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 五十七年度から、従来行っていた石油の節約目標、これは五十四年には五%、五十五年には七%、五十六年には数量で二千五百万キロリットル、五十七年度は数量の表示をやめると伺っているのですが、やめるのですか。やめるなら、どういう理由でしょうか。
  372. 小松国男

    ○小松政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、昭和五十四年から石油の節減目標というものを決めてまいったわけでございますが、昭和五十四年にはIEAで国際約束で、各国五%の節約をしようということが決まりましたので、それを受けまして、当時の石油消費量は三億キロリットルというふうに想定しまして、五%、千五百万キロリットルを五十四年に決めたわけでございます。それから、五十五年には、これを受けまして、七%、二千万キロリットルというものを決めたわけでございますが、その後、実は五十五年度以降日本の石油の消費量は急速に落ち込んでまいりまして、五十五年、五十六年と石油の消費が二年継続して落ち込んでいるわけでございまして、そういうことを受けまして、五十六年度は、そういう基礎になる石油消費量が落ち込んだということで、パーセンテージをやめまして、前年の二千万キロリットルに対して二千五百万キロリットルを節約目標ということで決めたわけでございます。  今年度はこの数字をさらにやめましたのは、そういうことで民生部門、産業部門を含みまして具体的な消費節約の対策、それから、そのやり方その他につきましては相当その方向が定着してまいりましたので、具体的に今後ともその措置は続けてもらうということが一つございます。  それから、基礎にする数字がなかなか算定しにくいという問題もございますが、同時に、今後の省エネルギーというのは、省エネのための相当大型の技術開発をやって省エネルギーを図っていくとか、また設備投資を行いまして、それによって省エネルギーを図っていくということで、単に単年度ではございませんで、相当長期にわたった消費節約対策も講じていく、そういうこともございまして、決して、石油の需給が緩んだので石油消費節減をする必要がないということではございませんで、日本の場合には省エネルギーというのはエネルギー政策の、対策のまさに三本柱の一つでございますし、今後ともそういう総合的な観点からエネルギー政策を進め、その定着を図っていくということでございまして、数字をやめたということは決して省エネルギー政策を軽視したり、また対策の方向をトーンダウンするような、そういうものではございません。今後とも強力に進めてまいりたい、かように考えております。
  373. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、八〇年代のエネルギー政策というのは、われわれ日本人の生活価値観というものをどう変えていくのか、生活価値観の変更にかかわる問題だ、こう思うのです。したがって、たとえば省エネルギーの問題であっても、有限の資源であり、しかも九九・八%輸入している石油の節約も、そういう面で継続していくということに意義があるわけですね。それを変更するということは非常に問題だと思うわけです。私はそういう意味で、いま答弁もありましたけれども、進めていかなければならない問題だと思うのです。  大蔵大臣、恐縮ですけれども、今月はどういう月か御存じですか。二月という月はどういう月か御存じですか。これは省エネルギー月間なんですね。ことしは何をやっているのでしょうか。
  374. 小松国男

    ○小松政府委員 まず、一番大きな行事としては、省エネルギー関係の展示会をやっておりますが、同時に、その省エネ月間の最初に当たりましては、全国的な省エネルギーの功労者の表彰も行っております。それからさらに、省エネルギー関係のいろいろのPRを、ラジオその他一般の広報機関を通じてその周知徹底を図るとか、いろいろの行事を全国的に国民運動という形で展開しておるわけでございます。
  375. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 どうもトーンが落ちていることを私は心配いたしているわけです。私は、省エネルギーの面で見ると、鉄は国家なりという言葉がありますけれども、まさしく省エネルギーの面で見ると、わが国の鉄鋼業界は国家的な、一つの国的な省エネルギーに実績が上がっていると思うのです。もちろん、鉄鋼生産、粗鋼生産も抑えられておりますけれども、大体四〇%ぐらいのエネルギーを節約している、こういう数字が出ておるわけであります。そういう意味で、省エネルギーは新しいエネルギーを生み出す、創造するという観点からも、この点はやはり、これも継続的に、初心を忘るるべからずで進めるべきであるということを申し上げておきたいと思います。  特に、この機会に九電力における燃料のカロリー価格というものは発表できますか。九電力会社のたとえばC重油、LNG、石炭のキロカロリー価格は幾らかということを発表できますか。
  376. 小松国男

    ○小松政府委員 先生言われるのは原料段階でございますか。これは各電力会社によってもかなり違いますし、それから時期によってもかなり違ってまいります。そういう意味でコストの内容にもわたる問題でございますので、私自身、現在ここに数字を持ち合わせておりませんが、一般的には公表いたしておりません。
  377. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私の調査では、五十六年度の燃料のキロカロリー価格は、低硫黄のC重油は六円十銭、LNGは四円九十銭、石炭は二円六十銭というのが私の数字でありますから、間違いはないだろうと思うのです。発表できないと言われますけれども、私の手元にはそういう数字があるということを申し上げておきたいと思います。  時間がありませんから、ひとつ、沖縄返還十年になりますけれども、沖縄電力は一体どうするのでしょうか。九電力につけるという話もありますし、これは電力業界の大変な問題だと思うのです。
  378. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 沖縄電力につきましては御承知のようにああした離島の関係でございますし、また石油に頼っているということもありまして、非常な赤字が続いておる現状でございますが、何としてもこれは維持して、そして県民に対する電力の安定供給を図っていかなければならないわけでございます。  そういう観点に立ってもこのままでは置いておけないということで、実は閣議でも本年じゅうに沖縄電力のあり方について結論を出すという方向で、どういう形にしたらいいのか、目下検討を進めております。これは政府としても検討を進めるわけでございますが、同時にまた、九電力においてもそれらのあり方について御研究をお願いいたしておるという状況であります。夏までには何とか結論を出したいと考えております。
  379. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は、この沖縄電力の帰趨というのはいろいろな意味で問題だと思うのです。九州電力につけるとすれば、いま一番電力料金の高いのは九州電力、北海道電力でありますから、そういう意味で問題が残るでしょう。では、たとえばそれだけのマイナス分を他の八社が補てんするといっても、これはなかなか問題でしょう。  私は、九電力の問題かもしれませんけれども、やはり一番いい方法は、特殊法人ですから、むしろ電発の一つの事業部門としてこれを抱かせる、そして沖縄の平準的な電気料金を考えていくということが一番手っ取り早くていいと思うのですね。せっかく今後検討するということでありますけれども、私はそういう一つの意見を持っている。現在の九電力がこれに反対すればまたむずかしいのでしょうけれども、そうすることが一番いいのではないか、こういう意見があることを私は申し添えておきたいと思います。  私は、本来であれば、原子力の安全性ではなくして、原子力の経済性という問題について議論したかったのですが、時間がありませんから後日に譲りたいと思います。  そこで最後に、これからのわが国の産業政策の観点に立って考える場合、日本の電気料金というのは、国際比較からいって非常に割り高であるということは率直に言えると思うのです。もちろん、西ドイツのような場合には電力会社がたくさんあって、わが国の素材産業のようなところに供給する電気は専門の電気会社があるという点で、非常にうまく組み合わせができているわけです。わが国の場合には九電力のテリトリーの体系にあるわけですし、そういう意味運用上も非常に問題がある。しかし、いままでの原価主義でずっとやっていくと——投資はどんどんしてもらわなければならぬ。いま大手の産業投資で見ると大体三分の一は電力投資ですからね。この投資がなければ経済が成長しないという問題があるから、もう前倒しで投資を奨励する。通産大臣も電力業界に投資を要請したという問題もあるでしょう。私はそういうことでいくと、電気料金はずんずん割り高になっていくと思うのです。いわば産業におけるアップストリーム、上流部門が不況構造になっていて、下流部門が正常化するはずがないわけですね。そういう関係にあるわけです、エネルギーと産業の関係から言えば。したがって、そういう意味でわが国の電力政策をどうするかということは、私はこれからのわが国の産業政策にとって非常に重要だと思うのです。     〔越智(通)委員長代理退席、委員長着席〕  もちろん、いま専門家の考えているのをずっと検討してまいりますと、発電の設備をできるだけスケールメリットを引き出していく、そして言うならば開発についても共同輪番制にするとか、したがって電源基地をつくって一千万キロワットぐらいの火力発電所の立地を将来つくっていく。むつ小川原なんかはそういうような構想で実現になったということもあるわけですね。そうなってまいりますと、いまの九電力の体制との問題もあるし、九電力の電気料金の平準化、こういう問題も当然出てくるわけです。いずれにしても、そういう意味で考えますと、われわれは、一つにおいては需要者側の立場に立って、産業の糧である電気をどう供給するかということを考えなければならない。それには大きいものと小さいものとをそれぞれの地域において多様に組み合わせるという視点がなければならないのだ、こう私は思うのです。あるいはまた、東京でごみをたいて発電をした、これを東電に卸すと、原価主義だからものすごく安く買いたたかれるわけですね。せっかくのこういうエネルギーを開発する場合においても、こういう問題点が出てきている。あるいはまた、ローカルエネルギーの場合においてもそうだと思うのです。  そうしますと、八〇年代のわが国の課題として、電力の供給体制というものをどうするか、石油の問題もさることながら、わが国の九電力体制というものはどうなのか、このことは私は避けて通られないのではないか、こう思うのであります。私はその意味で、わが国の経済の成長においてもいろいろ八〇年代は問題がありますけれども、わが国のエネルギー政策全般にとっても、この八〇年代というものはまさしく正念場だ、こういう認識を持っているのですが、最後に通産大臣見解を承って、質問を終わりたいと思います。
  380. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまお話がございましたように、八〇年代のエネルギー問題をどう考えるかということは、まさにわが民族の命運を決めるとも言える大きな課題であると思っております。現在、石油の需給は緩んでおるわけでございますが、しかし、いつどういう事態になるかわからない。第一次石油ショック、第二次石油ショックは何とか切り抜けたとしても、第三次石油ショックが起きたときに果たしてこれを切り抜けられるかどうかということを考えますと、そういう事態が起こらないとも限らない情勢でございますので、まさに八〇年代はそうした意味で、エネルギー問題、特にわが国にとってはこのエネルギー問題をどういうふうに対処していくかということは最大の課題の一つであろうと私は思うわけであります。  そういう意味で、このエネルギー問題というのは中長期的な視点に立ってもいろいろと検討を加えていかなければならないわけでございますが、そういう中で電力のいまの体制のあり方をどうするかということもまた一つの課題であろうと思います。九電力に分割をされまして今日に至っておりますが、これは私は、分割というものが今日の日本の産業、国民生活を支え、電力の安定供給を確保してきた一つの大きなメリットではあったわけでございますが、さあ、これからああいう形でそのまま行けるかどうかということもまさに検討の課題ではある、こういうふうにも思うわけでございます。  ともかくも電力につきましては、何といいましてもこれからの国民生活あるいは経済政策を支える大きな柱でございますから、これを確保していくためにはあらゆる角度から検討を進めなければならぬわけで、いまの電力のあり方も、いままでは石油に依存をしてきたわけでありますが、石油が非常に高くなった、こういうことで、一番安いのは原発である、その次には石炭である、そして石油であるということで、非常に石炭転換に動いております。あるいはまた、安全性を確保しながらの原発の推進等も行っておるわけでございますが、そういう中で、先ほどもお話がありましたいろいろの構造の変化等もありますので、どういう方向で進めていくかということは、いろいろと国民の衆知を集めながら、われわれとしても間違いのない方向を探っていかなければならない、こういうふうに考えております。まさに岡田委員のおっしゃるように、エネルギー問題、電力問題は八〇年代の日本を決する最も大きな課題の一つである、こういうふうな認識に立っておるわけであります。
  381. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  382. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木強君。
  383. 鈴木強

    鈴木(強)委員 お許しをいただきましたので、私は防衛問題を中心にしてお尋ねいたします。  防衛庁長官にお伺いしますが、昨年五月のレーガン・鈴木両首脳会談の結果、共同声明が発表されました。それを拝見しますと、日米間に新たな同盟という関係が打ち立てられておるわけであります。同時に、国際情勢の認識についても日米間で一致をした、こうございます。  そこで、私は伊藤防衛庁長官にお尋ねしたいのでありますが、この共同声明に盛られた同盟という意味をあなたはどのように解釈されておられますか。この声明の同盟ということによってわが国の防衛政策に何らかの変化をもたらすことになるのかどうか。また、国際情勢の認識の一致というふうに言われておりますが、これは時間がかかるかもしれませんが、一口に言いましたらどういうものであるか、そういうことを御認識の上で防衛庁を担当されておられると思いますが、御所見をお伺いしたいのでございます。
  384. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 お答えをいたします。  御指摘の同盟関係意味につきましては、共同声明にもございますように、民主主義及び自由という両国が共有をしております価値の上に築かれた総合的な日米関係をとらえまして表現したものであると理解をしております。このような総合的な関係の中には、政治、経済、文化等の関係とともに、軍事面も含め、日米安保条約に基づく日米関係ももとより排除されていないものと理解をしております。  防衛庁といたしましては、共同声明において、日米両国が世界の平和と繁栄を目指し、緊密に協力していくことを約し、また両国が以上述べましたような同盟関係にあることを認め、両国間の連帯、友好及び相互信頼を確認したことは、日米安保条約の重要性が再確認されていることと相まって、わが国の防衛の基調をなす日米安保体制の信頼性を一段と高め、わが国の安全、そして極東及び世界の平和と安定のためにも非常に好ましいものであると考えております。
  385. 鈴木強

    鈴木(強)委員 国際情勢の認識の面ですが、これは非常にむずかしい問題だと思います。たとえば極東における安全をどうして守るか、そういった意味からの問題あるいは全世界的な立場に立っての国際情勢の分析、こういったものがなされたと思いますが、特に極東についての情勢分析の一致した点というのはどういうところだったでしょうか、この点、どなたでもいいです、答えていただきたいと思います。
  386. 新井弘一

    ○新井政府委員 お答えいたします。  御承知のとおり、近年、これは世界的な傾向ではございますけれども、特に極東におきましても、ソ連の質量ともに両面にわたる軍備増強というものが非常に劇的に展開されている。そういうことから、この極東も全世界的なソ連の政策の一環でございますけれども、その結果として東西のバランスが放置しておくと将来西側にとってはなはだ不利になる、要するに情勢は厳しいという点において日米間に基本的な認識が一致してあるということ、そういうことかと思います。
  387. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それで、いま極東に配備されている米ソの軍備、軍力というのは一体どういうバランスになっているのか、それをひとつ説明してください。
  388. 新井弘一

    ○新井政府委員 まず極東における米ソの軍備状況につき、ソ連軍から簡単に御説明いたします。  ただいま申し上げましたように、質量両面にわたる顕著な増強がある。具体的に申しますと、地上兵力につきましては、五十一個師団、約四十六万人を主として中ソ国境付近に展開し、そのうち極東地域でございますね、これはおおむねバイカル湖以東でございますけれども、ここには三十九個師団、三十六万人が展開をしております。それから航空兵力につきましては、約二千二百十機が極東におります。その内訳を申しますと、爆撃機約四百五十機、戦闘機約千六百機、哨戒機約百六十機でございます。それから海上兵力は御承知のとおり太平洋艦隊がおりますが、その規模は約八百隻、百五十八万トンでございます。  これに対するに、極東地域の米軍でございますが、装備の近代化には最近非常に重点を置いておりますが、量的にはほぼ横ばいの状態でございます。それで具体的には、米軍は韓国、日本、フィリピン、グアム等に配備されておりますが、その勢力を御紹介いたしますと、地上兵力は陸軍、海兵隊合わせまして二個師団、約五万五千人、それから空軍の作戦機は三百二十機でございまして、その内訳は戦闘機が二百四十六機、爆撃機十四機、その他哨戒機等約六十機でございます。海軍は第七艦隊の艦艇六十隻、六十五万トン、作戦機三百四十機という内訳になっております。  以上でよろしゅうございましょうか。
  389. 鈴木強

    鈴木(強)委員 SS20はどうなっておりますか。
  390. 新井弘一

    ○新井政府委員 私は、主として通常兵力について申しましたけれども、ソ連の核戦力について述べますと、戦略核戦力につきましては、ソ連の持つ現有数の約三分の一が極東地域に展開されている。それから戦域核につきましては、まずSS20でございますけれども、ソ連が現在持っている数が全土で約二百五十以上でございます。そのうちの三分の一ないし四分の一が極東地域。それから例のバックファイア爆撃機でございますが、これは全土に約百五十機以上、そのうち、同じく三分の一ないし四分の一が極東地域に配備されている、そういうふうに承知しております。
  391. 鈴木強

    鈴木(強)委員 すると、概念的に米ソの力関係を比較した場合には、均衡上、簡単に言ったらソ連の方がいいとかあるいは対等であるとか、アメリカが有利だとか、そういうことはどうなりますか。
  392. 新井弘一

    ○新井政府委員 ただいま先生がおっしゃったように、単純に両者の戦力を、たとえば海軍のトン数とか隻数で算術計算することは不可能でございます。もちろん戦闘の海域その他そういった要素、あるいは兵員の練度等、当然勘案しなければならないということは御説のとおりでございます。  にもかかわらず、あえてたとえば海軍について御参考までに述べますと、ソ連の太平洋艦隊、これは四つの艦隊がございますけれども、外洋に出るのに地理的な制約を受けているということのほか、いろいろな条件を考えますと、日本海とかオホーツク海、そういう内海においてはソ連の立場が強いであろう。ところが、太平洋のような外洋におきましては、御承知のとおり、第七艦隊がさらに太平洋艦隊の支援も受けることができますし、補給その他の点からより有利な立場にあるということは言えるかと思います。したがいまして、個々の具体的なケースで判断しませんと、一概にはどっちがどっちということの断定はできないということは言えるかと思います。
  393. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そうしますと、世界全体を含めまして、極東も含めてソ連の兵力が非常にアメリカに追いつき追い越せというような立場をとっておりますね。そしてレーガンが積極的な軍拡をやっておるわけですが、この国際情勢の認識で一致したという場合に、そういう点に対して、これは総理とレーガンとの間でやったわけですからあなたに伺ってもどうかと思いますけれども、しかし、防衛庁としては、日本の国を守るという立場に立って重大な使命を担っておるわけですから、そういうふうな国際情勢の認識については日米間でどういうふうに話がされたのか、そういう現状認識というものをやっておかないといけないのじゃないですか。そういう意味で伺ったのですが、これはどうでしょうか、防衛庁長官
  394. 新井弘一

    ○新井政府委員 現状認識でございますけれども、私、一番最初に申し上げましたように、ソ連のきわめて顕著な軍備力の増強というものがあって、このまま放置すればその趨勢は西側にとってはなはだ不利になる、そういう意味で厳しい情勢にあるということ、この点について日米間に基本的な認識の相違がない。たとえば海軍につきましても、今回国防白書の中でも述べておりますけれども、アメリカの太平洋における海軍力というのは一九六五年以来最低になっている。ところが問題は、ソ連が過去十年、二十年以来、猛烈な急ピッチで追いつき追い越せということで戦力を高めてきた。そこに非常に大きな問題があるということでございます。
  395. 鈴木強

    鈴木(強)委員 大体わかりました。  それで防衛庁長官、いまさっきお答えの中で、同盟という内容に安保条約上の安全問題も入るわけですと言っておりましたが、要するに軍事的な面も含めておる、こういうふうに認識していいのですか。
  396. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 そのように理解をしております。
  397. 鈴木強

    鈴木(強)委員 鈴木総理がアメリカからお帰りになった後、国会における御説明その他を伺って私の感じておりましたのは、少なくとも軍事的な面についてはこの同盟という中に入っておらないというようなニュアンスに受けとめておったわけです。いま軍事面が入っているということでよくわかりましたが、当時、伊東外務大臣、衝に当たりましたが、総理とのこの声明をめぐる意識の不統一といいますか、そういうことから首を切られたいきさつがございますね。高島事務次官も追随してやめた。こういうようなことで、どうも総理のおっしゃっている話の中に軍事面がないと言うけれども、事実はあっただろうというふうに私たちは考えておったわけです。いま防衛庁長官からそういう御所信がはっきりいたしましたので、国民は、どうも総理国民をごまかしながら軍拡をやってきているな、こういうようなふうに認識をしたと思いますが、大体それで意図がわかったような気が私はいたします。  それで、アメリカの第七艦隊の空母の機動部隊十四隻が今月の初旬の、日はわかりませんが、数日間、日本海で大演習を行ったということが一昨日の二十日になって明らかになった、こういう新聞報道がなされております。このアメリカの演習が、公海上で行われるものですからあえてわが国に対して何かの連絡をするということはなくてもいいのかもしれませんが、少なくとも昨年日本海で日米合同訓練が行われまして、御承知のようなはえ縄漁船の大変な被害を生ずるというふうな事件も起きておるわけであります。  そういういきさつもありますし、また昨年の十二月二日に佐世保市で、アメリカの第七艦隊司令官のホルカム中将が、第七艦隊の戦力配備の重点を従来のインド洋から北太平洋そして日本海方面に移したいという表明もされておるわけでありまして、アメリカが出しております、いまお話のありましたような極東の最重視、こういう姿勢が早くも日本海での機動部隊の演習にあらわれているのではないか、こう私は思うのでございます。  そこで防衛庁長官、今日になりましてもこの演習についてはアメリカ側から日本に対して何らの連絡もないわけですか。どうでしょう。
  398. 新井弘一

    ○新井政府委員 今回の演習につきましては、米側より外務省に対し連絡があったということを承知しております。私どもは外務省よりその事実を承知いたしております。
  399. 鈴木強

    鈴木(強)委員 いつ外務省からありましたか。
  400. 新井弘一

    ○新井政府委員 何月何日ということについては私、目下記憶ございませんけれども、演習に先立ちあったというふうに理解しております。
  401. 鈴木強

    鈴木(強)委員 後からまたこの日米の合同演習に対してお伺いをいたしますが、いずれにいたしましても、さっきお話がありましたように、ソ連に対する一つの威嚇的な、示威的な演習であるということは、これは間違いないことだと思います。そういう連絡が防衛庁に外務省を通じてありましたときに、防衛庁としては、この問題に対してはこの演習をたとえば見学するとか、そういうようなことは全然しないものですか。
  402. 新井弘一

    ○新井政府委員 お答えいたします。  そういうことは考えておりません。
  403. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そうしますと、少なくとも事前に通知があったわけですから、昨年のはえ縄漁船が大変な被害を受けて日本の国民の頭から不満がまだ抜けてない時期だと思うのですね。これは昨年の五月であったわけですからね。ところが、そういう問題がありましても、日本海において漁業その他をやっております日本の漁民等に対して何らの演習をするということの通知をやらない、知らせをしない、こういうことは非常に問題ではないでしょうか。やはり演習でありますからどういう事態が起こるかわかりませんし、いまは領海二百海里というようなことも言われている時期でありますし、これは非常に重大な問題だと思うわけであります。国際法上そういう点についての問題が不明確だと思いますけれども、少なくとも日本の防衛庁であれば、そういう演習があることを事前に聞いたらば、沿岸の漁民等に対して、一応の注意するような連絡を出すのがあたりまえではないかと思うのですけれども、その点どうなんですか。
  404. 新井弘一

    ○新井政府委員 私どもは、米側から外務省に対し本件演習の事実につき通報があったということを外務省から聴取している、そういうことでございますので、さらに具体的に今回の演習に関連してどのようにその艦艇が日本海に展開したのか、具体的状況はつまびらかにしておりません。したがいまして、適宜外務省の方からむしろお聞きなされてしかるべきかと思います。
  405. 鈴木強

    鈴木(強)委員 きょうは外務大臣は呼んでおりませんからわかりませんが、しかし、これは少なくとも国を守るという立場ですから、やはり防衛庁としてそれを知り得た以上は、国民に対して、この前の事件があるだけに、注意を喚起してできるだけ周知をするということをすべきではないでしょうか。それはアメリカのことですから、よく話をすれば、そういうことを発表して悪いというようなこともないんじゃないでしょうか。ですから、これは防衛庁長官、今後のこともありますしするので、ああいう事件がなければまだいいのですけれども、あったわけですからね、ぜひその点に対してもっとちゃんと配慮をしてほしい、こう思います。長官の意見を聞きたい。
  406. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 外務省なり農林水産省とよく連絡をとりまして、御報告を申し上げたいと思います。
  407. 鈴木強

    鈴木(強)委員 この問題について最後のあれですけれども、結局その同盟の中に軍備拡張も入っているわけでありまして、そのことによって七・七五%という防衛費の突出も出てきたわけでございます。それから、これから防衛計画その他についてもいろいろ論議を呼ぶでございましょう。  二月二十二日、きょうの毎日新聞を見ますと、大河原駐米大使と毎日新聞社とのインタビューの内容が載っております。その中で大河原大使が貿易摩擦と軍事面について触れておるのですけれども、大使はこう言っておられますね。  鈴木総理が昨年五月訪米の際、ナショナルプレスセンターで発言された千海里防衛問題は米国では日本の公約と受け取られていて、ワインバーガー国防長官の国防報告に明記されている。これは厳粛な事実となっている。こういうふうに述べておるわけです。また、昨年の共同声明での同盟については、まあ「防衛計画の大綱」を早期に達成するしかないだろう、こういうふうに述べて、やはり日本の防衛拡充ということについてもう少しピッチを上げてやるべきではないか、こういうふうなことを言われておるわけであります。  したがって、一連の軍備拡張、そして私たちが最も憎む戦争への道というものを一歩一歩進めていこうというこういう政策に対して、私はいま心から憤激を覚えておるわけであります。国を守るということは大事でありますが、一方には日本の憲法があります。そういう意味でひとつこの点は十分に配慮をして今後やっていただきたい、こう思いまして、長官お答え伺います。
  408. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 私どもは、憲法その他防衛の枠組みの中で守らねばならない数々の制約を十分守りながら、あくまでも自主的に基盤的な防衛力を一日も早く達成したい、そのことにいま専念をしておるわけでございまして、その点ぜひ御理解を賜りたいと思います。
  409. 鈴木強

    鈴木(強)委員 次に、五十七年度中に日米間で合同訓練あるいは合同演習と申しますか、これをやろうとする計画がございますか。陸海空別に、ございましたらひとつ教えていただきたい。
  410. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 五十六年度に引き続きまして、海上自衛隊については対潜訓練等を、航空自衛隊につきましては対戦闘機戦闘訓練等の日米共同訓練を積極的に実施することを考えております。陸上自衛隊につきましては、昭和五十六年度に初めて小規模な通信訓練及び指揮所訓練を実施したところでございますが、来年度は、五十七年度はこれらの訓練に加えまして、実動訓練も実施したいと考えているところでございます。なお、その具体的訓練内容につきましては、実施場所も含めまして現在検討中のところでございます。
  411. 鈴木強

    鈴木(強)委員 きょうは時間の関係で全部についてお伺いできませんので、陸上の方について特にお伺いしたいのですが、いま長官のお話ですと、陸上については実動訓練をやる、しかし、まだその規模とか場所とか、時期については考えておらない、こういうふうなお答えであったと思います。  そこで、昨年私はやはり予算委員会でずっと質問をしたことがあるのですが、通信訓練、これは昨年の夏に東富士演習場で行われました。これは初歩的な連絡訓練だと聞いております。それから、ことしの二月十五日から五日間、やはり東富士演習場におきまして関東有事を想定した日米合同指揮所訓練、図上演習ですね、山桜作戦と一応呼んでおったようですが、これが行われております。この山桜作戦については日本から千名、それからアメリカから五百名の指揮者が集まって、かなり大きな訓練をやったようでございますね。実動部隊に直すと、何か六万か七万くらいの部隊を指揮するというような作戦だと聞いております。  この訓練の目的、それから特に関東有事を想定した理由、それから青、緑、赤、こう分けまして、青軍は自衛隊、緑軍は米国、それから赤軍は侵入軍、赤色ですね、そういう区分けをしてやったようでございます。いま申し上げましたこれはもうやったことでありますから、日米でしかもやったわけですから、この訓練の目的、なぜ関東有事を想定したか。これはまさに本土決戦ですね。第二次戦争の場合でも沖縄に上陸をしましたけれども、なぜあえてこの関東で陸軍が戦わなければならぬようなそういう想定をしたのか、仮想敵国、敵軍はどこだったのか、これをひとつ示してもらいたいのです。
  412. 石崎昭

    ○石崎政府委員 まず、この日米共同指揮所訓練の目的でございますが、これは陸上自衛隊と米陸軍の間の共同して部隊を動かす場合の調整要領、連係要領というものに習熟しよう、いろいろな想定を設けてそういう訓練をやることによって、いざというときに意思疎通が円滑に行われ、部隊運営が円滑に行われるために演練をする、これが目的でございます。  それから、次の関東有事云々でございますが、関東有事ということが盛んに新聞などに書かれまして、その後、私どものところへも若干問い合わせもありましたけれども、関東有事という言葉は、ちょうどいい機会ですから御説明申し上げたいのでありますが、これは防衛庁が関東地方に武力侵攻があるというような情勢の見積もりをやった上で、そういう情勢見積もりに基づいて今回の訓練を行ったというようなことではございませんで、たまたま日米共同訓練の日本側の今回出しました部隊が東部方面隊、つまり関東甲信越を警備区域とする東部方面隊でございましたので、一番土地の事情になれている場所といえばその管轄区域でございますので、関東甲信越の地図を使って訓練をやるということで、東部方面区内が演練の図上の場所として選ばれたということでございまして、もしこれが中部方面隊であれば、中部方面区内の適当な場所が選ばれたでありましょうし、北部方面隊が日本側の部隊として登場する場合には、北海道のどこかの地点が場所地になったでありましょうし、そういうわけでありまして、関東有事ということが、防衛庁の行っておる情勢見積もりで関東地方に武力侵攻があるというようなそういう見積もりをした、それに基づいて想定がつくられたということでは全くないのでございまして、登場した部隊の習熟している場所を演練の場所に選定した、こういうことでございます。  全体としまして、指揮所訓練でありますから、これは御案内のとおり地図を使いましてその上へこまを並べて演練するということで、実際の部隊を動かすものでは全くないわけでございます。  そこで、六万云々という規模につきましては、これは今回は幕僚だけが参加して司令部の演練をやっただけでありますので、もしその参加した司令部に属しております部隊が全部そろった場合にはどのくらいの規模かというのが六万云々というようなことでございまして、これは頭の中でそれだけの部隊を動員して使ったということでありまして、もちろん実際に動いたわけでないことは、もう再々申し上げているとおりでございます。
  413. 鈴木強

    鈴木(強)委員 五十七年度の実動部隊を動かしての共同訓練というものを前にして、最初にやったこの図上作戦でございます。海については、今度またリムパック82というようなものを想定されているようですが、かなり積極的な合同演習が行われておりましたが、陸上の方は、さっきおっしゃったように去年から始まったわけです。この演習には、米軍部隊は六日から十六日にかけてハワイとかあるいは米国本土からさみだれ的に日本に来ておる。そして東富士演習場の米海兵隊施設キャンプ富士に集結をしてやっておられる。ですから相当大規模の作戦計画だったと思います。しかも一千五百人に及ぶ指揮者が集まっているわけですから、相当なものを考えていると思うのです。  そこで、私はお伺いしたいのですが、さっき五十七年度に実動訓練をやる、こういう話でございますね。いま防衛庁長官のお話ですと、まだ具体的なことは決まっておらない、こういうようなお話でございますが、実はこれは新聞報道ですが、十四日に陸上幕僚監部がちょっと明らかにしたということで新聞報道されておるのですが、実動訓練は陸上自衛隊は大体大隊規模、米軍の地上軍は中隊規模を想定している、こういうようなことがちょっと載っているわけですね。すでに中堅幹部の合同ゼミとかあるいは下士官クラスの合同宿舎などの下準備が進んでおると聞いております。しかも予算には七千万円の予算を組んでおる。  したがって、陸上の共同合同演習について七千万の予算を組んでいる以上は、規模はどういうものなのか、場所はどこにしようか、日時はいつにしようかというようなことも大体考えて、それから予算積算をしたんじゃないでしょうかね。ここでちょっと言うのがまずいから皆さん言わないんであって、すでに決まっているんじゃないかと私は思うんです。もちろん、米側との話し合いもあるでしょうから、日本だけが勝手に決めていくということにはならぬでございましょう。そういう点はよくわかります。  しかし、あえてここで私が伺おうとするのは、後ほども触れます演習場の場所等もどこになるのか、これは非常に問題になるところでございまして、そういう積算根拠からしてここで言えるものと言えないものとあるんでしょうけれども、言えるものもあるんでしょう。どういう規模でおやりになるんです。大体時期はいつごろなのか、どういうふうにしてアメリカといま相談をしているのか、そういう手続的なことも含めて明らかにできるところは明らかにしてくださいよ。
  414. 石崎昭

    ○石崎政府委員 五十七年度にやりたいと思っております実動訓練については、目下時期、場所、参加規模、いずれも検討している段階でありまして、まだ決まっておりません。大臣がお答えしたとおりであります。  私どもは、訓練をやる場合にその訓練の内容を広く国民に知っていただいて、その理解協力を得たいということを絶えず考えております。したがって、決まって公表できる段階になれば喜んで公表して理解と御支持を得たい、こう思っております。何分決まっておりませんからまだ申し上げる点が全然ないということでありまして、これから防衛庁の内部でわが方の都合をよく検討し、それから米側の都合等とも突き合わせをしまして、慎重に決めていきたいと思っております。
  415. 鈴木強

    鈴木(強)委員 だから参事官、よく聞いておいてください。アメリカとの間で合同演習をやる場合には、いろいろ打ち合わせもあるでしょう、その手続的なものもあるでしょう。ですからそういう点は、予算との関係もありますから、大体めどとして、時期、場所、規模それから参加人員、こういったようなものがいつごろ煮詰まって国民の前に明らかにできるんですか。まだいまのところは雲をつかむようなもので、七千万の予算だけはとにかく組んだけれども、通ったらそれから考えるんだ、こういうような無責任予算の出し方なんですか、そうじゃないでしょう。
  416. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 大変失礼でございますけれども、予算は二千万円を計上させていただいておるわけでございまして、それは戦況を表示するのに必要な地図、部隊の陣地構築のための資材等を購入するための経費でございます。昭和五十七年度予算には二千万円を計上させていただいております。こういうことでございますけれども、いま私も御答弁申し上げ、また政府委員からも申し上げましたとおり、予算が決まりましたならばいま政府委員が申し上げたような手順で検討を進め、場所、時期等は決めさせていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  417. 鈴木強

    鈴木(強)委員 納得できないですね、それでは。だから、金額は私七千万と思ってたんですが、二千万でございますか。二千万、お答えが正しいと思いますから、これは訂正をさせていただきます。  そこで、時期的に予算が通過した後いつごろ大体そういうものが煮詰まっていくのか、その時期だけでも明らかにできませんか。
  418. 石崎昭

    ○石崎政府委員 なるべく早く明らかにしたいと私どもも思っております。思っておりますが、米側との話が完全にまとまらない間は残念ながらわからないのでありまして、未定であるとしか申し上げられないのでございます。
  419. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それでは、私がひとつここで提案というとおかしいのですが、要望的に申し上げておきたいのでありますが、恐らく実動部隊を伴う訓練というのは、現在ございます三つの自衛隊の演習場、陸上としては大体そこらに落ちつくのではないかと思うわけです。何かきのう、おとといですか、横路委員の質問に対して、総括のようでしたけれども、北海道でやることも可能性としてはあり得る、そういうふうな新聞記事を見ました。議事録はまだ見ておりませんが。  私は、選挙区が山梨だから言うわけではありませんが、静岡、山梨は直接の被害を受けるような場所になっておりまして、五十六年度の図上演習、通信訓練は、静岡の人にはあれだったのですが、静岡の東富士で行われたわけであります。北富士は御承知のようにやはり富士山のふもとでして、霊峰富士のふもとで、どうも毎日毎日実弾が着弾地にぶち込まれておりまして、富士の姿が変わるじゃないか、こういう心配もしておりますし、たくさんの観光客も来ておるわけでして、演習場の選定については、北富士演習場等については特段の配慮をしておいていただきたい、こういうことを申し上げるわけであります。その点について、お答えはできないと思いますけれども、十分頭の中へ入れておいていただきたい、こういうふうに思いますが、これは長官、いかがでしょうか。
  420. 石崎昭

    ○石崎政府委員 おっしゃるとおり慎重に検討いたしまして、一番訓練効果が上がり、地元の皆さんの納得も得られるような、あらゆる点を考慮に入れまして慎重に場所は選びたいと思っております。
  421. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それから、海上自衛隊の訓練の方ですが、環太平洋合同演習、リムパック80には参加いたしました。この82にまた参加するということを聞いておりますけれども、これは参加するかしないか、これだけ明らかにしてくれませんか。
  422. 石崎昭

    ○石崎政府委員 リムパックは、前回の80に参加いたしまして、海上自衛隊にとっては大変意義のある訓練でございましたので、82にも参加する予定でございます。
  423. 鈴木強

    鈴木(強)委員 これは慎重にやってもらいたいですね。  それで次に移りますが、この北富士演習場の問題は、このところ戦後ずっと国会におきましても論議を重ねてきておるわけでありまして、あそこを全面返還してもらいたい、そして平和利用させていただきたい、こういうことは山梨県八十万の県民の願いであり、また静岡県民の願いであり、全国民の願いであると思うのです。シンボル富士山、日本のシンボルでありますから、何とかあそこを平和的に後世に受け継いでいただきたい、こういう気持ちを持っておるわけであります。ところが、なかなか全面返還、平和利用をさせてくれないわけですね。  この問題について、これは防衛施設庁長官になるのでしょうか、先般五十三年の第二次使用協定の改正に際して、たしか二百十四ヘクタールを返還していただきました。ところが、その後その第二次使用協定を結ぶに対していろいろと閣議の了解事項等もついておりますが、これはまた後からお伺いしますけれども、ほとんどその問題は無視されて今日に来ているわけであります。来年四月はまた第三次の改定の時期にもなるわけでございますが、何とかこのわれわれの願いである全面返還、平和利用の方向にもう少し積極的にひとつ動いていただきたい、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  424. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 北富士演習場は、御存じのように東富士演習場と並びまして長距離射程訓練ができる自衛隊及び米軍にとって必要な演習場でありますので、防衛施設庁といたしましては、本演習場の使用と周辺地域の発展とを両立するための必要な措置を講じ、その安定的使用が図れるように努力してまいったことは先生御存じのとおりであります。その一環といたしまして、昭和四十八年、本演習場が自衛隊施設に使用転換をされるのを契機にいたしまして、同演習場の機能を損なわない範囲で、地元の要望を踏まえ、話し合いの上、その一部の返還を実施してきたところでありますのは、いま先生から御指摘をいただいたところであります。今後とも、返還問題については地元と協議の上対処してまいる所存でございますので、御了承いただきたいと思います。
  425. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それで、第二次の北富士演習場使用協定締結に際して、入会権問題が非常に問題なのです。これは東も北も同じなのですけれども、特にこの協定締結に際して入会権問題について、一つは、「国は、北富士演習場国有地に地元関係入会住民が旧来から有する入会慣行を確認し、これを将来にわたって尊重する。」これは当然のことですね。それから第二番目、「国は、演習場内国有地について今後関係者と協議し、一年以内に別途入会協定を締結する。」こういうことで当時の金丸防衛庁長官との間に調印がなされておるわけでありますね。したがって、この協定締結後すでにもう三年になるわけでありますが、ほかにも四つの条件がついております。  これは閣議で了解されていることでありますが、特にこの二つの問題について、後から申し上げる東富士有料道路の通過路線内における入会権の問題、これは大変な難問題があるわけであります。したがって、特に第二の「一年以内に別途入会協定を締結する。」という確認がされておるにかかわらず、これができなかったのはどういうわけだったのか、これをひとつ明らかにしておいていただきたい。
  426. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 入会協定を締結するようにいたしましょうという確認がなされたことは存じておりますが、私の方もこれに対してリラクタントではないわけでありまして、地元でいろいろ調整が残っているもののようでございますので、そういう調整が済み次第、私の方はこれを受けて前向きに検討をいたしたい、こういうふうに思っております。
  427. 鈴木強

    鈴木(強)委員 長官のおっしゃるように、私は一方的に施設庁を責めようとは思っておらないのです。これは地元には演対協というのがございまして、これが中心になって演習場問題についてはいろいろ相談をし、協議をし、決定をして、これを実行に移していくというシステムをとっておりますから、一方的に防衛施設庁が悪い、こう言うだけではないのですけれども、地方の演対協待ちということではなくて、これは非常に入り組んだ問題でありますし、この入会協定をめぐっての訴訟というのも長きに行われておりまして、これは大変な問題でありますから、もう少し積極的に地元との関係を密にして、こういうせっかくの閣議決定の確認書というものが交わされている以上は、それが忠実に実行されるような配慮をすべきではないか。その点に対する努力が足りなかった、私はそう思うのです。  ですから、その点を含めて、来年の四月十日には第三次の使用協定の締結の時期に来ているわけですので、やはりちゃんと地元と話し合いをして決めたことは実行してもらう、地元の方でもたもたしておったら、もう少し積極的に出かけていって、そして知恵を出して協力し合っていくというような親切な態度をとるべきではないかと私は思うのですがね。そういう点、私はそう思うのだけれども、どうですか。
  428. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 私の方といたしましても、先生の御趣旨を体しまして、来年になりますと使用協定の改定の問題、更改の問題がありますから、善処いたしたいと思います。
  429. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それから、そのときに確認された閣議決定の中に四項目ありまして、その中に諏訪の森というのがございますね。この諏訪の森と沖新畑という国有地については、有効利用と、国立公園特別地区になっておりますが、特にその一部を地元に利用さしてもらいたい、こういうふうな確認がなされておるわけです。かつて、皆さん御承知の訴訟問題を防衛庁が取り上げて、その代償というとおかしいわけですが、二百十四ヘクタールの問題も関連がなきにしもあらず、そういうこともありました。したがって、第二次の返還の地点としてこの諏訪の森、沖新畑、この国有地の有効利用ということについて、そういう意味も私は多少含まれているような気がするのでございますね。とりあえずはこういうふうにしていただいて、やがてそこはひとつ返していただきたい。まあ良畑でありますから、そういう意味からいって、これは大蔵省の方の関係になるのかもわかりませんが、防衛庁といたしましてもそういう点について、演習場を使うのはやはり防衛庁でございますからね、そういうような配慮をともにやっていくべきではなかったかと思うのですけれども、所管が違うからこれはそのままであった、こういうふうにおっしゃるのかどうなのか、この点ちょっと伺っておきたいのです。
  430. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 先生のおっしゃるとおり所管は違うのでございますが、要するに、基地が円滑に利用されて活用されて民生の上から地元の理解を得るという立場で、全然無関心ではありませんので、御趣旨は関係当局にお伝えをいたしたいと思います。
  431. 鈴木強

    鈴木(強)委員 それから、北富士演習場の演習の状況を調べてみたのですが、北富士演習場が民法上の期限が切れまして地元に返還をされる、そしてまた新しく使用協定によってあの演習場を使う、こういう歴史的な経過がございます。それで、昭和四十八年に第一次使用協定が結ばれたのですが、その当時の年間の自衛隊と米軍の使用状況を見ておりますと、四十八年は八十六日で、自衛隊が二十日、米軍が六十六日、五十三年の第二次になりますと百七十七日、自衛隊が百六十二日、そして米軍が十五日。ずっとふえてまいりまして、昭和五十六年、昨年は二百十七日間、一年間に使っておるわけですね。そして自衛隊が二百二日、米軍は十五日と、まあ米軍の方は非常に少ないわけでございます。  ここで私は指摘をして防衛庁の意見を聞いておきたいのは、あの使用協定の中には、富士山は御承知のように霊峰富士でございまして国民のシンボル、したがって、夏場になりますとかなり登山者があるわけですね、久須志岳の崩壊等がありまして去年は若干減ったようですけれども、それにしてもかなりの登山客があるわけですね、したがって、そういうシーズンにはできるだけ自衛隊も米軍も実弾演習はあそこでやらぬようにする、配慮する、こういう項目があったと思うのですね。ところが、どうも月別にちょっと調べてみましても、夏のシーズンがそんなに減ってないような気がするのですけれども、今後、この協定の趣旨を十分生かして、夏場、登山客の多いシーズンはできるだけ演習をやらないようにしてほしい、こう思うのですが、その点ひとつ答えてくれませんか。
  432. 石崎昭

    ○石崎政府委員 北富士演習場における演習の実情を調べてみますと、確かに夏の七月、八月、九月ごろ、例月に比べて若干多いという状況は認められるのでございますが、ちょうど自衛隊の部隊の運用関係で、わが方もこれは最盛期になるというような不幸な一致がございます。ただ、細かい数字を一つ一つ見てまいりますと、若干多目ではありますけれども、例月に比べて特に盛夏期が異常に多いというようなことではございません。冬と比べますと、まあ確かに平均して多いことは言えますけれども、春、秋のその他の月と比べてみてそう異常突出というようなことではございません。  ただ、おっしゃるような霊峰富士のふもとであるということはわれわれも十分認識しておりますので、使用協定にのっとって、従来も、早朝、深夜とかあるいは地元で観光のいろいろな行事が行われるときには射撃などは自粛してやってきておるのでございますが、今後もそういう点は十分配意して、世界じゅうの人が富士山へやってくる時期に訓練が大きな妨げにならないような配慮はできる限りしてやっていきたいと思っております。
  433. 鈴木強

    鈴木(強)委員 だから防衛庁長官、ちょっと聞いておいてください。使用協定を締結する際に、七月ないし八月、シーズンの時期には実弾射撃というものをできるだけ控えてもらうようにという、そういう趣旨の含みをもってあの締結が結ばれているのですよ。私たちも立ち会っていますから知っていますからね。それにもかかわらず——確かに時期的には夏場ですから、冬はちょっとなかなかうまくいかぬというので、おっしゃるように自衛隊の方としてもその時期にやりたいのでございましょう。しかし、やはり登山者の来る時期にはできるだけ少なくしなさい、こういう趣旨のもとに締結されているのですから、その趣旨を尊重してもらわなければこれは困るんだよ。そうしないと、次にわれわれがこの問題をいろいろ相談を受けましても、防衛庁というのは大体決めたことを守らぬじゃないか、こういうことになったらどうにもなりませんよ。いいですか。だから、ちゃんと決めたことを守ってもらわなければ、自分の御都合だけでもって決めたことを破っていくということじゃ困るわけですよ。ですから、そこのところはちゃんとしてもらわなければ困るということを私は言っているのだから、いまのような答弁では納得できないのです。
  434. 吉野実

    ○吉野(実)政府委員 自衛隊の北富士演習場の夏季の間における演習の話は、いま参事官から話があったところでありまして、できるだけ趣旨に沿うように努力しているのだろうと思いますが、私の方は、米軍を褒めるわけではありませんけれども、北富士演習場の夏季における使用状況をちょっと調べてみました。七月、八月だけをとってまいりますと、五十五年が十二回使っておりますが、五十六年度は七月、八月ゼロでございます。これは一般の演習もそうですし、射撃演習もゼロであります。九月に入りますと、五十六年が四回やっておりますけれども、以上のような状態で、及ばずながら努力している跡が見えるように見えます。
  435. 鈴木強

    鈴木(強)委員 これは米軍の方が守っているんだよ。米軍の方がまじめに守っているんだ。ところが、自衛隊が守っていないんだ。これはアメリカ軍を褒めても、自分のやっていることはだめだということなんだ。  確かに、使用を夏季についてできるだけ小型のものにするとかなんとかいう配慮はしているかもしれません。しかし、あそこに来る人たちから見ると、ズドン、ズドンと、あの弾の音を聞くと、これは嫌になっちゃうんだ。だから、そういう意味も含めて夏季シーズンの期間はできるだけ演習は少なくするように、こういう配慮のもとにあの協定が結ばれているということの趣旨をちゃんと尊重してくれということを私は言っているんだ。防衛庁長官、これは政治的問題かもしらぬけれども、政治的でもない、決まったことだ。あなたからちゃんと答えてください。そうしないとこれは進まないよ。
  436. 石崎昭

    ○石崎政府委員 自衛隊の訓練は、国民理解と支持が絶対の要件でありますので、私どもは地元の皆さん方の納得、御支持というものを常に必要としております。したがいまして、いま御指摘の問題については十分この御趣旨を体して慎重に、なるべく登山者に迷惑のかからないように十分な配慮をしてやりたいと思います。
  437. 鈴木強

    鈴木(強)委員 わかりました。来年またこういう質問がないようにちゃんとしておいてください。  それから、閣僚の皆さん、お待たせして大変恐縮ですが、防衛問題を中心にやっているものですから……。通産大臣がいらっしゃいました。お待たせしては済みませんので、ちょっとそれを先にやりましよう。  実はレーガン米大統領が昨年の秋に、八〇年代の米国の核戦略強化政策の一環としてレーダーに捕えられない見えない戦闘爆撃機というものの開発計画を発表しております。この新聞報道によりますと、アメリカ政府は、昨年の末に駐日米大使館を通じて、この開発のかなめでありますレーダー電波の吸収材でございます特殊合金フェライトというものが入っておる塗料一ガロンをサンプルとして提供してほしい、こういうことをTDK、これは東京電気化学工業株式会社ですが、これに申し入れをしてきた、こういうふうに聞いておりますが、防衛庁、通産省はこれを知っておりますか。
  438. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 TDK、東京電気化学工業によりますと、昨年末、本件電波吸収塗料につきまして米大使館から照会があったというお話でございます。ただ、それが何に使われるかという点については、私ども詳細には承知しておりません。
  439. 真野温

    ○真野政府委員 私どもも、本件につきましてTDKの担当者から、さような一般的な照会があったというふうに聞いております。
  440. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そうしますと、こういう報道もなされているわけですが、このフェライトという特殊合金ですね、この特性に対して防衛庁もかなり前から大変な注目をして、八年前にTDKに研究を委託した、そして五十二年にマイクロ波帯の電波吸収塗料として特許を取得し、公開している、こういうふうに述べておりますが、そうするとこれは間違いだ、こういうことになるわけですか。
  441. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 いまおっしゃいましたマイクロ波電波吸収塗料でございますが、これにつきましては、確かに四十九年十月でございますが、東京電気化学工業を相手方といたしまして契約しました電波吸収材の調査研究というものからこの発明というものは出てまいりまして、それによりまして、防衛庁といたしましては契約条項に従いまして特許を受ける権利というものを同会社から承継いたしました。その上で、昭和五十一年三月十五日に防衛庁技術研究本部長を出願人といたしまして特許出願をしてございます。  その後、昭和五十二年九月十六日に特許法第六十五条の二によります出願公開、それから昭和五十六年六月二十二日に同法第五十一条による出願公告が行われ現在に至っている、こういう状況でございます。
  442. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そうしますと、若干年数は違いますが、防衛庁もこの問題についてはTDKに研究を委託してやっておったことが事実だということがわかったわけですね。  そこで、外務省がおりませんから、駐米大使館を通じて東京電気化学工業会社にどういうものが来ているかということは、これは私も新聞で知ったわけですから、その点の確認はできませんが、いずれにいたしましても、一ガロンか二ガロンか知りませんが、通産大臣、アメリカからサンプルとして提供してもらいたい、こういう要請が来ると思うのです。来ているというふうに私は信じているんですけれどもね。そこで、防衛庁としては日米軍事技術協力という意味において、これをアメリカに提供するのかしないのか、こういう点が一つ問題になると思うのですが、これは防衛庁と通産省、通産大臣どういうふうに処理しようとされているのですか。
  443. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまの電波吸収材の問題につきましては、照会があったということは先ほど答弁をいたしましたが、これを輸出するとか提供するというふうなことになれば、その段階で検討しなければならない。御承知のように三原則、そして政府の基本方針があるわけでございますので、それを踏まえて対処する、こういうことになるわけですが、現在のところ単なる照会、こういうふうに聞いております。
  444. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 防衛庁のこれに関係いたしますことは、ただいま申し上げましたように防衛庁がこれにつきまして特許上の権利を持っている、こういうことでございますので、東京電気化学工業の方からこれの特許の実施権の許諾の承認が出てまいりました場合にそれを承認するかどうか、そういう関係でございますが、私どもといたしましては、これは一般的に言いまして、特許権も国有財産でございますし、国有財産を円滑に利用するという観点、それから本件につきましては、東京電気化学工業に委託してできました発明である、そういったようなこと、そういったことを踏まえまして、仮に東京電気化学工業の方から、本件特許に関します実施権の許諾申請があった場合には、それを許諾する上で大きな問題はないのではないか、そういうように考えております。
  445. 鈴木強

    鈴木(強)委員 防衛庁はこの研究のためにTDKに委託費として幾ら金を払っているのですか。
  446. 冨田泉

    ○冨田政府委員 お答えいたします。  昭和四十八年度に約九百万円でございます。それから四十九年度に約一千二百万円、以上が委託研究の契約費でございます。
  447. 鈴木強

    鈴木(強)委員 これは通産大臣防衛庁長官も聞いておいていただきたいのですが、これはこれからの戦争の大革命になるものですね、航空戦においては。レーガン、こういうものをひとつ核戦略強化の政策の一環として取り入れようという計画を発表したのですが、さすがだと思うんですね。いまの電子戦争では、高い空を飛んでいる軍用機を発見するためには、レーダーからマイクロ波を発射して、これが敵機の機体に反射することによって電波が捕捉できてレーダーに入ってくる。こういうものですが、この塗料を塗りますと戦闘爆撃機はレーダーに入ってこないわけですから、これは将来ミサイルなんかにも当然使えるものでしょうし、潜水艦なんかでもこれを塗って走るようになったら、P3Cなんか買ってみたってこれは役に立たぬのだ、そういう時期がここに来ている。特許権の方については公告発表まで来ているのですからね。ですから、これは時期の問題ですよ。したがって、これからの航空戦における戦略的な大革命に通ずるような資材だと私は思うわけです。  もちろん、汎用的にも、たとえばNHKの電波が散乱するというようなときに、高層建物にこれを塗りますと、その散乱電波はなくなってしまう。そんな汎用的な面もあると思うのです。ですから、なかなかこれは軍用だと決めつけてしまうことも無理だと思いますけれども、少なくともいまの経過を見てもわかりますように、防衛庁がいち早くそこへ目をつけて二千二百万の金を投じて研究をしてもらっている、こういうことにかんがみたときに、その面においてはやはりアメリカよりか日本の方がすぐれておった、これは自動車もそうですけれども、何でも日本の方がアメリカよりか進んでいる。そういうわけでございまして、この扱いというのは非常に慎重にやっていただかなければいけない、こう私は思います。ですから、サンプルの提供の問題についてもいま大臣からも御発言がございました。その時点でということでありますが、ぜひ、武器輸出禁止の三原則との関連等も十分考慮していただいて慎重な配慮をひとつしていただくように、閣内の統一問題等もあるのでございましょうけれども、ひとつ慎重に配慮していただきたい、こういうことをお願いしておきます。  それから、電電公社の方でもエレクトロニクス、特に光ファイバーというものの研究をどんどんしておるわけですけれども、私は、アメリカの方でも光ファイバーは日本に負けないだけのことをやっておると思うのです。いずれにしても、電電公社の通信開放政策の中にも両国で合同で研究しよう、これはあくまでも平和利用の問題でございますけれどもね。しかし、これが一朝誤ると軍事通信の中でどういうものになるのか、これもちょっといまの問題と同じような点があります。ですから、私たちは何でもかんでも反対だということではないのですけれども、そういう戦略的な軍事上の重大な武器になる可能性というのは十分あるわけですから、その点を考えると、アメリカとの技術協定の中で慎重の上にも慎重を期して配慮していただきたい、こういうことを大臣に特にお願いしておくわけですが、ちょっと御所見を……。
  448. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題につきましてはまさに慎重に判断をしなければならない。軍事技術であるかあるいは汎用品であるか、客観的に見まして慎重に判断して三原則あるいは政府方針との関連で対処していきたい、こういうふうに考えております。
  449. 鈴木強

    鈴木(強)委員 じゃ大臣は結構です。  それでは次に移りますが、建設大臣、大変お待たせして恐縮でございました。  東富士有料道路の問題ですが、これも使用協定の中の一項目でありまして、幸い一月二十七日に施工命令がおりまして、目下日本道路公団が建設に取りかかっていただいております。  私、先般文書質問をいたしたこともありますが、問題は、最初に建設大臣に聞きたいのは、須走から河口湖中央自動車インターまでの十九・八キロの距離ですが、用地は四車線買ったわけですね。ところが二車線で開通しよう、こういうことなんですが、なぜこれを最初から四車線にしなかったのでしょうか。  かつて中央自動車道建設のときに、私は幹線自動車道審議会の委員をしておりまして、四車線でやるべきだ、こう言ったところが、通行量その他の面から見て二車線でいいと言ってやったのですよ。ところが、二年もたたないうちにもうだめになっちゃって、それから工事をまた四車線にやった。これは経費のむだじゃないですか。ですから、なぜこれを四車線で最初からやらないのか。土地は四車線買うそうですから、そういう基本的な点について建設省としての考え方は、なぜ二車線にしたのか、これをひとつ私は伺っておきたい。
  450. 渡辺修自

    渡辺(修)政府委員 お答えいたします。  先生のお話にありましたように、非常に込んでおります百三十八号のバイパスとして始めるわけでございます。用地も実はこれから買収をするわけでございます。買収時点におきましては、お話のありましたように四車線で買収をいたします。ただ、二車線で当面やろうと考えておりますのは、やはり自然環境保全上の配慮がありますことと、それから採算性の問題がございます。最近は非常に工事費が上がっておりますので、その辺を勘案いたしまして、事業費はなるべく削減を図りたいということで、当面交通需要の少ない間は二車線にいたしたい、こういう趣旨のものでございまして、用地は四車線を買収いたしますので、必要な時点には直ちに対応できるようにいたしたいというふうに考えております。
  451. 鈴木強

    鈴木(強)委員 そうすると、二車線で仮にやる。これは六十一年国体もありますから、その関係もあるでしょうが、二車線で完成するのはいつなのか、そして引き続いて四車線にしていくわけでしょう。その時期はどういうふうに考えていますか。
  452. 渡辺修自

    渡辺(修)政府委員 ただいま道路公団の申請に対しまして認可をいたしております内容は、五十六年度から六十三年度ということにいたしております。つまり、いまのところの完成の予定は六十四年三月、こう予定をいたしております。それが二車線でございます。(鈴木(強)委員「四車線は」と呼ぶ)  四車線につきましては、建設後の状況を見ながら判断をするわけでございます。  ただ、先ほど御指摘のございました富士吉田線の例がございましたが、これは用地が必ずしも全部買えていなかったわけでございますが、今回はそういうことはございませんので、敏速な対応は図ってまいりたいと考えております。
  453. 鈴木強

    鈴木(強)委員 せっかく認可したのですから、公団の方にも全力を尽くしてやってもらいたいと思うのです。ただ、私はここではっきりしておきたいのは、さっきも関連で言いましたように、入会権の問題を中心にしていま予定されておりますこのルートの中で七つの係争事件がございます。山中の浅間神社社有地、富士山自動車道の問題、これは控訴されておりますけれどもね。それから北富士県有地の中における土丸尾地区、それから永小作権あるいは入会権、こういった問題をめぐって合計七つの紛争事件がございます。それと別に、このルートの中に懸案処理の問題として全然手がついていない檜丸尾という問題があるのです。こういう困難な事情があるので、これから土地の買収そして二車線の建設をやるわけでありまして、大変至難なことだと私は思います。  ですから、さっきも申し上げましたように、入会権に絡む問題についてはもう少し政府の方が先手を打ってやっておくべきではなかったかということを痛切に感ずるわけですけれども、公団側として、一体これをどういうふうに地元との関係を調整してやっていこうとしているのか、非常に至難な問題であります。したがって、建設大臣が認可をして公団がやるわけですから、建設省、公団、そして防衛庁、それぞれ所管の省庁が中心になってこの問題については積極的に努力をしなければいかぬと私は思います。もちろん山梨県、静岡県側の協力も絶対必要でありますけれども、そういうような努力をして何とかこれを早期に実現できるようにしてほしいと思うのですが、ひとつ建設大臣からも、こういった紛争のあることは御承知だと思いますので、御所信を承っておきたい。両大臣からひとつお願いします。
  454. 渡辺修自

    渡辺(修)政府委員 先生の御指摘になりましたとおり、七件の係争中の事件がございます。大変困難な問題であろうかと思っております。しかしながら、やはりあの現状を見ますと、これはどうしてもやらなければいけない道路でございますので、県当局あるいは関係機関と十分協議をいたしまして、慎重にかつ円滑に進めるように、道路公団等につきましても十分指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  455. 高橋国一郎

    高橋参考人 ただいま道路局長が御答弁いたしましたように、通過する路線の中には入会権が入り乱れたり、あるいは現在係争中の事件が七件もあって、非常に大変な問題というふうに認識しております。御指摘のように非常に困難な問題をたくさん抱えておりますけれども、山梨県及び関係機関と十分に協議を行いまして、慎重に進めてまいりたいと存じております。
  456. 鈴木強

    鈴木(強)委員 土地の買収については、公団は県の方に買収を委託して、県が中心になって買収交渉に当たる、昔そういうような方法をとっておりましたが、いまもやはりそうなのですか。
  457. 高橋国一郎

    高橋参考人 用地買収につきましては、県と委託契約いたしまして、県が中心になってやることになっております。ただ、入会権その他の問題につきましては、個々に相談申し上げていきたいというふうに考えております。
  458. 鈴木強

    鈴木(強)委員 六十一年国体に何とか間に合わせてもらいたいということを一面にらんでおったわけですが、六十一年には、これは二車線も間に合わぬということだね。一三八号線の混雑は皆さん御承知のとおり。六十四年三月供用開始という目標なんですか。これをもう一遍確認したいのですよ。
  459. 高橋国一郎

    高橋参考人 全線の開通は六十四年三月を目途にしておりますが、これには地元の協力が必要でございます。地元の協力がございまして、また、いろいろな訴訟問題等も円滑に解決すれば、六十・四年三月には開通できるということでございます。
  460. 鈴木強

    鈴木(強)委員 何のためにこれをやるのですか。建設大臣、そんななまぬるいことを言っているのですけれども、それじゃちっとも意味がないですよ。いま一三八号線に行ってごらんなさいよ、どれだけふくそうするか。  そういう意味で、早期にやれるようにというので、防衛庁が第二次の使用協定改定の際に、特に閣議決定で四項目の中の一つに入れたのだからね。それが延び延びになってしまって、そしていま六十一年国体ということをめどにして、われわれは、六十一年に全国から集まってくる方に富士のすそ野を見てもらうのにいまのようなことでは困るわけですから、せめてこの有料道路ができたらと願っておったわけですが、六十四年なんということじゃこれは話にならぬですよ。もう少し促進するように大臣ちゃんとやってくださいよ。これはだめだ。
  461. 渡辺修自

    渡辺(修)政府委員 先ほど申し上げましたのは、全体のいま認可しております内容でございます。ただ、六十一年国体につきましては、私ども十分承知をいたしております。したがいまして、地元の御協力等が得られ、円滑に用地買収等が進んでいくならば、大きなトンネルを要しない、たとえば河口湖−山中湖間等につきましては、あるいは部分的に供用できるかもしれないということもございますので、今後も私ども一生懸命努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  462. 鈴木強

    鈴木(強)委員 始関建設大臣は、座ったままでちっとも答えないですね。みんな官僚任せなんですか。こういう大事なことは、やはり大臣から答えてもらいたいですね。  それでは、もう時間がありませんから、最後になりますが、演習場があって、どんどん爆弾を富士山に撃ち込まれて、下の方は大分姿が変わってきているのですよ。それと同時に、国民のシンボルである富士山が姿を変えようとしている。これはもういま始まったことでなくして、何回か国会でも論議されたことでありますが、御承知のような富士山の大沢川というのがありまして、大沢崩れと通称言っているのですけれども、これが大崩壊しているわけですね。この抜本的な対策を立てなければ、百年たつとこの亀裂がだんだん大きくなってしまいまして、富士山の上まで、要するに二子山みたいになってしまうのですよ、山が二つの山になってしまう。そういうことですから、早く対策を立ててほしいということでずいぶん私もやったことがあるのですけれども、その後立ち消えのような形になっておりました。  それで今度、幸い建設省が、八合目付近の大沢川の岩樋というところにとりあえず調査ダムをつくってくれるということを決めたように聞いております。大体事業費一億一千万円くらいを計上して五十八年度中には完成したい、こういうふうに言われております。これは地元の、私の地区の山梨日日新聞という新聞に大きな見出しで出ておるのだけれども、富士山が本当に——これは大臣、ちょっと見てください。ですから、ひとつ早急にこの問題については手を打ってもらって、今度の調査ダムだけでなくて頂上までずっとやはりダムをやって、そして崩壊を防ぐというようにしてもらいたいと思うのです。  これはただ山梨県人とかなんとかいうことでなくて、富士山というのは日本の富士山であるし、世界の富士山であるし、日本人のシンボルなのだから、そういう意味において、この姿を二子山のような形にすることは耐えられないのです。われわれの時代にそういうことはしたくない。だから、技術的にどんな困難があっても、かなりの金を使ってもやはりやってほしい。環境庁あたりは、百年先にそういう富士山が変わることがわかっておっても、何か反対反対と言っていい顔をしないようだけれども、これも間違いだ。自然を守るためにわれわれはやるのだからね。そういうことをひとつ考えて、大臣、勇気と決断を持って富士山を守ってくださいよ。後世に名が残りますよ。大臣の決意を聞かしてください。
  463. 始関伊平

    始関国務大臣 御指摘の大沢崩れの問題は、富士山の景観を壊す、美観を壊すというような点からいたしましても、重要性のほどはわれわれもっとに認識をいたしておるところでございます。これにつきましてはいろいろと技術的にむずかしい点もあるようでございますので、具体的には、時間も余りないようでございますが、簡単に河川局長からちょっと御説明をいたさせます。
  464. 川本正知

    ○川本政府委員 ただいま大臣からもお答え申し上げましたように、また先生から先ほど来お話しいただきましたように、大沢崩れ対策というものは、日本のシンボルでございます富士山の形状保全ということはもちろんでございますし、また、下流流域の住民の生命、財産を守るという大変重要な目的も持っておるわけでございます。  従来は、下流の扇状地におきまして遊砂池を設けまして流出土砂を捕捉する工事とか、あるいは遊砂池から下流の流路工の工事とか、そういったものを主体にやってきたわけでございますが、下流への土砂の流出、これは火山灰と溶岩との互層で形成されております源頭部の部分の滝がところどころございまして落差がございますが、そういったものの後退が主原因でありますので、この滝の後退を防ぐことが重要な課題でございます。  しかし、源頭部は標高二千メートル以上といったような地域でございますし、これまでにこのような気象条件のもとで、あるいは地形、地質の条件のもとで直接こういった工事を施工した実績がございませんので、いま先生がおっしゃいましたようにまず調査工事をやろうという考えでございまして、これまでに基礎調査を実施いたしまして、また関係省庁、文化庁とかあるいは環境庁といったところとの協議も完了しております。この調査工事を五十七年と五十八年、二カ年にわたりましてやっていきたい。今後、この調査工事の成果を踏まえまして本格的な源頭部対策に着手する、こういうことで努力してまいりたいと思っております。
  465. 鈴木強

    鈴木(強)委員 わかりました。ひとつ、ぜひ今後積極的に推進していただきたいと思います。  それで、時間がちょうど来ましたものですから、国鉄関係の皆さんにおいでいただいているのに質問ができなくて大変恐縮でしたが、いずれまた分科会等でやらしていただきたいと思いますので、これで終わります。  どうもありがとうございました。
  466. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十一分散会