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1982-02-18 第96回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月十八日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君   理事 小宮山重四郎君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 鈴切 康雄君       上村千一郎君    小渕 恵三君       大原 一三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    狩野 明男君       海部 俊樹君    亀井 善之君       岸田 文武君    後藤田正晴君       塩川正十郎君    澁谷 直藏君       砂田 重民君    瀬戸山三男君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    藤尾 正行君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       宮下 創平君    武藤 嘉文君       渡辺 栄一君    稲葉 誠一君       大出  俊君    大原  亨君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       野坂 浩賢君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       正木 良明君    矢野 絢也君       木下敬之助君    竹本 孫一君       栗田  翠君    瀬崎 博義君       東中 光雄君    楢崎弥之助君       依田  実君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 坂田 道太君         外 務 大 臣 櫻内 義雄君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 小川 平二君         厚 生 大 臣 森下 元晴君         農林水産大臣  田澤 吉郎君         通商産業大臣  安倍晋太郎君         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君         郵 政 大 臣 箕輪  登君         労 働 大 臣 初村滝一郎君         建 設 大 臣 始関 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     世耕 政隆君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      田邉 國男君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 原 文兵衛君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     松野 幸泰君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  石川  周君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局審査部長 伊従  寛君         警察庁刑事局長 中平 和水君         行政管理庁行政         監理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 和田  裕君         経済企画庁調整         局審議官    大竹 宏繁君         環境庁長官官房         長       山崎  圭君         国土庁長官官房         会計課長    中村 博英君         国土庁計画・調         整局長     白井 和徳君         国土庁水資源局         長       高秀 秀信君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         大蔵省関税局長 垣水 孝一君         大蔵省理財局次         長       酒井 健三君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁調査査察         部長      岸田 俊輔君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部大臣官房審         議官      宮野 禮一君         文部大臣官房会         計課長     植木  浩君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省管理局長 柳川 覺治君         文化庁長官   佐野文一郎君         文化庁次長   山中 昌裕君         厚生大臣官房総         務審議官    正木  馨君         厚生大臣官房審         議官      吉原 健二君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁医療         保険部長    入江  慧君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁石油部長   野々内 隆君         運輸大臣官房観         光部長     西村 康雄君         運輸省船舶局長 野口  節君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省航空局長 松井 和治君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君         労働省労政局長 吉本  実君         労働省労働基準         局長      石井 甲二君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 吉田 公二君         建設省都市局長 加瀬 正蔵君         建設省河川局長 川本 正知君         建設省道路局長 渡辺 修自君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治大臣官房審         議官      小林 悦夫君         自治大臣官房審         議官      矢野浩一郎君         自治省行政局公         務員部長    大嶋  孝君         自治省行政局選         挙部長     大林 勝臣君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第四局長  高橋  良君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員の異動 二月十八日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     大原 一三君   金子 一平君     岸田 文武君   正示啓次郎君     宮下 創平君   村山 達雄君     狩野 明男君   渡辺 栄一君     亀井 善之君   石橋 政嗣君     武藤 山治君   金子 満広君     東中 光雄君   中路 雅弘君     栗田  翠君   依田  実君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   大原 一三君     宇野 宗佑君   狩野 明男君     村山 達雄君   亀井 善之君     渡辺 栄一君   岸田 文武君     金子 一平君   宮下 創平君     正示啓次郎君   栗田  翠君     金子 満広君   東中 光雄君     藤原ひろ子君   楢崎弥之助君     依田  実君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度一般会計予算  昭和五十七年度特別会計予算  昭和五十七年度政府関係機関予算      ――――◇―――――
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度一般会計予算昭和五十七年度特別会計予算昭和五十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田耻目君
  3. 山田耻目

    山田(耻)委員 実は、昨日の参議院予算委員会におきまして、総理並びに防衛庁長官からの答弁を聞いておりますと、衆議院の本委員会で一応与野党妥結いたした内容とはかなり異なった答弁総理からなされておりますので、この事実をまず確認をして、審議に加わりたいと思います。  衆議院予算委員会におきまして決めたのは、F4ファントムの五十六年度予算、その中の十三億円の取り扱いは、伊藤防衛庁長官答弁の形で、今回のF4ファントム試験改修の五十六年度予算についてはその執行を停止し、その取り扱いについては今後引き続き審議をするとなっておりますが、間違いはございませんか。
  4. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 間違いはございません。
  5. 山田耻目

    山田(耻)委員 総理大臣参議院予算委員会におきまして、三月三十一日までに執行しないといけない問題なのでぜひ年度内に執行に移したいと述べておられるが、これは総理願望を述べられたことと理解してよろしゅうございますか。
  6. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政府としてはぜひそうお願いをしたいという私の願望を述べたものでございます。
  7. 山田耻目

    山田(耻)委員 したがって、わが社会党は、今後引き続き審議するという本委員会の取り決めによりまして今後十分なる審議をいたすことをつけ加えて、本問題に対する総理の所信の解明については終わります。  それでは、引き続き質疑に入りたいと思いますが、まず最初に、五十七年度経済見通しについてお伺いをいたしたいと思います。  五十七年度の政府経済見通しは、実質経済成長率を五・二%と見込み、五十六年度の実績見込みの四.一%よりか一・一%高く見込んでおりますが、名目成長もまた、昨年の七%より高い八・四%を見込んでおります。そして、消費者物価指数は四・七%、昨年見込みの四・五%よりも高く見込まれており、卸売物価指数は三%の上昇を見込んでおられます。経常収支は百二十億ドルの黒字で、昨年の百億ドルの見込みをはるかに超えているという状態でございます。  この見通しのとおりに景気拡大してくれば、ある程度税収の増も期待できるし、また逆に、緊縮型予算でこの見通しのように民間内需増加中心にした景気回復が可能になるということなら、予算財政再建にとっても喜ばしいことではありますが、しかし、そうは問屋が卸さないと私は思っています。なぜなら、政府経済見通しには問題点整合性が欠けている点が幾つかあります。  その第一は、この経済見通しは新経済社会七カ年計画の五十六年度見直し結果に対応するものでありますが、この七カ年計画自体に問題があります。すなわち、七カ年計画基本的前提として、昭和六十年度の完全失業率を一・七%程度と見ておる。租税負担率は二六・五%、消費者物価上昇率年平均五%程度で据え置かれたまま見直しが行われておりますが、租税負担率二六・五%は昭和六十年に到達する目標でございますけれども、この試算で進んでまいりますと、昭和五十八年度に計画より二年早く達成されてしまいます。これは経企庁での試算でございます。  また、財政再建途上で、昭和六十年までの公共投資額は百九十兆円に維持されておりますため、五十八年-六十年度間の年平均公共投資額増加率は一〇・四%増加するように見込まれておりまして、したがって、予算公共事業費昭和五十八年以降一〇%を超えて増加しなければなりませんが、しかし、現今の財政見通しではそのような可能性はあり得ないと私は思います。大蔵経企庁、いかがでございましょうか。大臣の所見を求めたいと思います。  二つ目は、財政規模増加率が御存じのように六・二でございます。経済名目成長率八・四%よりも低いときに、所得減税もなく、公共事業増大もなしに、民間内需中心景気拡大が可能になる条件は整っていないと判断をされます。  次に、住宅投資は急増する要因がきわめて少ないと思います。住宅に対して強力な政策金融措置をとられても、賃金上昇率が低く抑えられて、将来の予想所得上昇も低く予見されるとき、住宅価格の高い現状では、住宅需要が潜在的に強くとも、現実の需要にはなってまいりません。このような実情では、住宅投資が急増することはとうてい考えられないのであります。  そして三つ目には、政府見通しでは経常収支黒字が百二十億ドルとかなり大きいにもかかわらず、五十七年度のレートを五十六年度末の水準一ドル二百十九円に固定して見通しを立てておられます。このような国際収支黒字を出していながら対外経済摩擦が緩和できるかどうか、きわめて疑問が残るのであります。  また、経常収支黒字から円高になるとなれば、物価上昇率政府見通しよりも低くなってきます。名目成長率が八・四%より小さくなる。名目成長率が下がれば、五十七年度予算における税収見込みは達成されません。したがって、歳入欠陥が大きくなりまして、財政全体のフレームは狂ってしまいます。  また、円レートを不変に想定することは、円高の場合の交易条件の改善に伴う海外からのりパーカッション効果を考えないことになります。  最後でございますが、政府経済見通し民間の多くの予測のどれよりも高い。政府は五・二%でありますが、民間はこれから一、二%低い状態予測を立てています。政府住宅投資設備投資の伸びを異常に大きく見込んでおられますが、金融政策のかじ取りを欧米の金利をにらみながら行わねばならないという制約がありますときに、金融政策中心に、弱い財政需要刺激効果でこのような高い内需増大効果が出てぐるかどうなのか、本当に疑問に思います。もっとも、貿易摩擦を考慮して経常収支黒字を実際より小幅に抑え、内需転換のゼスチュアないしは粉飾を示したものであるといううがった見方も出ておりますが、いずれにしても、政府経済見通しに問題があることは間違いございません。  長くなりましたが、以上四点について、大蔵経企、通産各大臣の御意見を伺いたいと思います。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 まず第一に、七年計画お話がございましたが、七年計画はいまから二年半前、昭和五十四年の八月に政府の方で正式に決定した計画でございますが、しかし、これは毎年フォローアップをいたしまして、経済実情に合わせまして見直しをいたしております。もうすでに五十五年の一月、それから五十六年の一月、それから本年の一月と、三回にわたりまして経済実情に合わせて数字等調整いたしております。  それから、昭和五十七年度の経済見通しについてのお話がございましたが、いま世界経済全体が最悪状態にある、私はこう思っております。一説によりますと、一九三〇年以来最悪状態にある、こういう解説をする人すらあるわけでございます。それは、第二次石油危機の厳しい影響世界全体を覆っておる、その悪い影響が全面的に広がっておる、そういう背景があるからだと思いますが、しかし、第二次石油危機も三年経過いたしまして、世界各国政府並びに権威ある国際機関等見通しを見ますと、ことしの後半からだんだんと世界経済も立ち直るであろう、そういう背景がございます。  昨年の年末に出ましたOECDの見通しなどを見ましても、現在は先進工業国全体がゼロ成長またはマイナス成長に近いが、ことしの後半には三%強の成長回復するであろう、こういう見通しも出ておりますし、アメリカ政府見通しなどを見ましても、現在はゼロ成長であるけれども、後半からだんだん立ち直って、来年は五・二%成長名目一一%成長、こういうことを想定をしておりまして、いまはどん底であるが、ことしの後半から世界経済全体が立ち直りの方向に行くであろう、こういう判断は、大体私も間違いないのではなかろうか、時期等の若干のずれは今後出てくるかもわかりませんけれども、経済の大勢の流れとしては大体そのように判断していいのではなかろうか、このように考えております。  そういう中におきまして日本経済運営するわけでございますが、ことしの経済運営の一番の柱は、やはりいま御指摘がございましたが、内需拡大に置いておるのでございます。個人消費住宅、それから中小企業投資公共事業、こういうことを中心にいろいろ政策を練っておりますが、たとえば消費拡大するために引き続いて物価安定政策を強力に進めてまいりたいと思っておりますし、それから住宅政策につきましては、これはもうすでに御案内のとおり、相当思い切った内容住宅政策をいま進めております。一部分一月から繰り上げてこれを実行することにいたしております。  それから、金融政策は、残念ながらアメリカ金利の動向がいま非常に高くなっておりますので、非常にやりにくいということでございますが、しかし、アメリカ物価が相当安定してきておりますので、八%台になっておりますので、私は、こういう状態はそう長く続かぬのではなかろうか、このように判断をいたしております。  公共事業取り扱いにつきましては、できるだけ上半期に集中して執行したい、こう思っておりまして、いま関係各省の間で調整をしておるところでございます。  幾つかの政策に手詰まりが見られますけれども、その中におきまして工夫を加えながらわが国経済安定成長路線に定着させる、そういう方向経済政策を進めてまいりたいと思っておりますけれども、ただ申し上げたいことは、いま経済激動期でございます。世界経済もそうでございますが、日本経済激動期であると考えております。それだけ機動的に適切な経済運営を進めていくことが肝心だ、このように考えております。
  9. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 企画庁長官から詳しくお話がありましたから、簡潔にお答えを申し上げます。  御質問の要点は、私の理解するところ、経済成長がうまくいかなければ所定の税収が入らぬのではないか、こういうような御要点だと思います。まことにそのとおりでございます。日本世界の中の日本でございまして、日本経済世界経済と連動いたしております。かなり大きな生産力は持っておりますが、世界の全体の経済と無関係ではあり得ない、実は密接な関係がございます。そういう中にあって、現在のところ、先進諸国の中では一番いい経済的な条件を備えておることも事実でございます。これをどうして維持発展させていくかというところに問題がございます。  自由主義経済下において経済見通しを立てることは非常にむずかしいことでございます。いままでいろいろな経済見通しが立てられたが、なかなか百発百中というわけにはまいりません。しかし、総じて申し上げますと、民間見通しよりも政府見通しの方が大体結果的に当たりに近かったということも事実でございます。  しかしながら、経済見通しが結果がいつもぴたっと当たらないように、税収見積もりもそれに連動いたしておりますから、なかなかむずかしいのであります。ことに所得税法人税、特に法人税が好、不況に大きな影響がありまして、変動いたします。したがって、それだけに一層税収見積もりがむずかしいということが言えるわけでございますが、ただいま企画庁長官からお答えのとおり、いろいろな手段を講じて所期経済見通しを達成するように努力してまいりますから、税収見積もりについても何とか所期のとおりいけるというように私は考えておるわけであります。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 経企庁長官大蔵大臣からお話もありましたように、いま当面の経済運営の最大の課題は、何といいましても、御指摘のようにいかにして内需拡大していくかということであろうと思いますが、内需を支える最も大きな要素は中小企業でございますが、この中小企業現状の姿を見ると、よくない。景況感も非常に悪いということでございます。したがって、この中小企業の振興をいかにして図っていくかということがすなわち内需拡大につながっていくわけでありますので、いま中小企業対策としては、金融の面につきましても、制度金融としては、金利につきましても長期プライムよりは〇・三%下げておりますし、資金量も確保いたしておるわけでございますが、そうした制度金融を機動的に活用するとともに、その他の諸施策を精力的にきめ細かに実施いたしまして、何としても中小企業景気回復を図っていかなければならぬ。  また、倒産が非常に高い率を占めておるわけでございます。この倒産対策等につきましても、全体的にいままでの制度等も駆使して倒産の防止と倒産対策を図っていかなければならないと思います。  また同時に、いま素材基礎産業というのが非常に悪いわけでございます。これはなかなかすそ野が広い産業でございまして、いま不況産業に対しましては通産省でも産構審でいろいろと議論を重ねておりまして、対策がこれから出てくる段階にありますが、この対策を今後とも実行いたしまして、総合的、個別的に不況産業の救済を図っていかなければならない、こういうふうに考えておりますが、全体的には、現在の経済運営実情から見ますと、非常にむずかしい事態に来ておることは事実であります。それに対してあらゆる政策的努力を集中しなければならない時期である、こういうふうに考えております。
  11. 山田耻目

    山田(耻)委員 いま御三人から御説明がありましたが、多くの疑問が解決されたとは思いません。しかし、きょうは欲張りまして多くの問題に対して御質疑を申したいと思いますので、次に進んでまいります。  国債の減額がゼロシーリングの枠よりかなり修正をされてきましたが、私が心配するのは、このまま推移すると、国債減額を修正して、そして挫折をしていくのじゃないか。五十九年度で特例国債をゼロにするという政府の方針は決められておりますが、これが挫折をしていくのではないかということを非常に気にいたしておりますので、国債関係について少し大蔵大臣総理にお伺いしたいと思います。  五十六年度は特例国債を二兆円減額されまして、一応特例国債の減額というものは軌道に乗ったかに見えました。昭和五十七年、本年度の予算に当たりましても、ゼロシーリングの枠におきまして特例国債を一兆八千三百億、四条国債を前年度同額に据え置くとされていました。それがいろいろな事情で変わってまいりまして、特例国債の減額において一兆五千六百十億、四条国債は二千六百九十億円、合計一兆八千三百億円の国債減額となってまいりました。五十六年度の予算におきましても、税収の落ち込み約四千五百億円をカバーするために、三千七百五十億円の特例国債を追加し、災害復旧費の財源として四条国債を二千五百五十億円追加をいたしております。  税収不足は、物価の予想以上の安定、景気の年度半ばからの、お話がありました素材産業等の停滞によるものとされておりますが、昭和五十六年度当初予算、同補正予算及び五十七年度の当初予算における国債発行額は、整理すると次のようになります。  結局、昭和五十六年度当初二兆円の特例公債減額は、一兆六千二百五十億円の減額と縮小されてまいりました。五十七年度当初予算においても一兆八千三百億の予定が一兆五千六百十億円と減額をされ、縮小されてまいりました。当初の予定どおり五十九年度末までに特例国債発行をゼロにするには、五十八年、五十九年両年度でそれぞれ一兆九千六百二十億円の特例国債を減額しなければなりません。しかし、このような特例公債減額は、最近の経済及び財政の状況から見てきわめて困難な、あるいは本当に不可能となってしまっておるような気がいたしております。昭和五十九年度末までに特例公債から脱却するという計画は挫折してしまったのではないかと思います。脱却の時期を将来に一時延期するにせよ、国債減額計画を再検討せざるを得ないところへ追い込まれている現状ではないでしょうか。  なぜそのようになってきたのか。理由の第一は、最近における税収の落ち込みが予想以上に大きく、昭和五十六年度における補正予算ではカバーし切れない見通しとなってきたことであります。五十六年度の税収不足は少なく見積もってみても一兆円を超え、多い場合には二兆円を超えるかもしれないという見込みがなされております。税収不足が一兆円の場合には、補正分を差し引いた残り約六千億については、大蔵大臣の見解でもかつて述べられたことがございますが、決算調整資金の取り崩し約二千五百億、国債整理基金からの借り入れ約三千五百億円が予定されておるようでございますが、一兆円を超えた場合にはさらに歳入欠陥の補てん策が必要になってまいります。これは将来の国債減額の力を大きくそぐ原因となってくるのであります。  二つ目の理由は、昭和五十六年度の税収不足が大幅に生じますと、昭和五十七年度の税収予算で見込んだ額が達成されなくなりますために、五十七年度も大幅な歳入欠陥が生じ、しかもことしの秋には特例国債の追加発行に追い込まれる可能性が大きくなってきていると思います。政府は五十七年度税収を三十六兆六千二百四十億円と見込んでおられますが、増税分の三千四百八十億円を差し引いた三十六兆二千七百六十億円は、五十六年度税収予算額の三十二兆二千八百四十億円に三兆九千九百二十億円の自然増収を見込んでいることになります。税収増加率は増税込みだと一三・四%、増税を除くと一二・三七%となります。GNPが名目八・四%増となっているので、GNPに対する税収弾性値は一・四七となります。この弾性値自体は最近十年平均一・一程度から見ますと、高過ぎます。名目GNP成長率が八%であった昭和五十五年度には一・七でございました。五十六年度税収が一兆円不足した場合、三十一兆二千八百四十億円では、仮に政府の弾性値を想定しても五十七年度の税収は一兆一千二百二十二億円不足をいたします。この場合には弾性値がもっと低くなるのが整合的でありますが、一・二を想定をしますと、一兆八千三百八十六億円の税収不足となります。五十六年度の税収不足が一兆五千億円の場合には、政府の弾性値一・四七を想定しても、一兆六千八百四十億円の税収不足が生じております。弾性値が一・二の場合には、二兆三千八百九十億円の税収不足となります。  理由の三つ目は、成長率が見通しどおりに達成されないことにございます。さきに述べた税収の場合の数字でありますが、成長率の達成がなかなか困難な見込みなので、名目成長率が下がればさらに税収不足は大幅になってまいります。成長率が一%低下して七・四%になった場合には、弾性値一・四七の場合でも四千七百九十五億円の不足が生じ、弾性値一・二の場合には一兆一千二百五十二億円の不足になります。五十七年度の成長率が見通しより低下いたしまして、五十六年度の税収不足が生ずるという複合した場合が現実に実現される可能性が最も大きいのです。この場合には二兆二千億ないし二兆五千億の税収不足が五十七年度には生じます。特例国債減額どころではなく、特例国債の追加発行が必要になってくるのであります。  私は、このような現状を踏まえてまいりまして、五十七年度の税制改正の課題は、前年度の大幅増税によって増税の限界にまで近づいてきた後だけに、次のような点を考慮すべきではないかと思います。  新規増税を行わずに歳出の削減、合理化、抑制を図ること。二つ目には、税負担の公平確保については制度面、執行面の改善に一層の努力を傾注すること。三つ目には、租税特別措置についてはさらに厳しい見直しを行うこと。  しかし、増税なき財政再建と言われながら、課税最低限をそのままにして所得税の減税を五年間しないことによって、実質増税を放置しております。不公平税制の是正については、医師優遇税制にはノータッチ、退職給与引当金の改正は引っ込めてしまった、交際費課税の強化も中小企業の定額控除分はそのままにしておる。租税特別措置については、当初来年度に期限が来る二十六項目を中心に一律三割を縮減するとされていましたが、この方針も大きく後退してまいりました。このほかに、次のような増税、価格変動準備金の一部積み立て廃止、これで六百三十億、交際費課税強化、定額部分を除いて全額課税四百六十億、貸し倒れ引当金、二年間で二〇%の縮減、これで九百五十億、法人税の延納の圧縮、これで千四百四十億、合計三千四百八十億円がなされていますが、七千億円の自然増収見通し減を補てんするために、予算に今日盛り込まれております。  これからは課税最低限据え置きによります実質増税のゆがみをどうするかにかかってまいります。所得税の負担のゆがみの実態は、たとえば昭和五十二年度以降課税最低限が据え置きでありますために、この間の年収は四〇%増加しておりますが、税負担は年収三百万円世帯で大体三倍になっております。四百万、五百万、六百万の世帯の税負担はほぼ二倍になっております。このような負担は、マクロ的に見ましても、昭和五十八年度に国民所得の二六・五%の税負担になることを意味しておりまして、新経済社会七カ年計画昭和六十年度に到達すべき税負担率が二年早く実現されていることになります。このまま放置しておきますと、予定どおり七カ年計画の終わる昭和六十年度には、二六・五%ではございません、三〇%の負担率になってまいると予見されます。  このような所得税だけの自然増税による負担増とゆがみは是正する必要があると思います。そのためには、所得税減税はどうしても必要でございます。これは自然増税、名目所得増による増税を調整する意味での減税根拠の第一でございます。特に四年間で二三%の物価上昇によって、六兆六千五百億円の税収増をいたしておりますが、このうち一兆五千億円が物価上昇によるものでございます。物価調整的な減税は最低限必要でございます。  所得税減税の第二の根拠は、自然増税によって生じる他の申告所得税法人税、間接税との間の不公平、クロヨンでございますね、これによる給与所得者、商工業者、農民等の間の税負担の不公平を是正する必要があるという点でございます。不公平是正のためには減税が必要でございます。  第三の減税の根拠は、減税によって景気回復の効果を強めていくというものでございます。減税を一兆円する、公共投資を一兆円ふやす、金利の引き下げによって、これをいたしましたら、五十七年度には九千億円の財政赤字になりますが、昭和五十八年度には、二兆八千億円の財政赤字改善効果が出てくるという予測も成り立っております。  しかし、所得減税をする場合、かわりの財源をどこに求めるかという問題が残ります。政府や一部財界人の言うような大型間接税を導入するということは、余りにも安易な、租税理論を配慮しない案でございまして、租税理論から言えば、直間比率論などには科学的根拠は存在しません。政治的に間接税が取りやすく、税収が安定しているだけという目安でございます。不公平な税制を是正するのが第一先決の条件です。きちんと不公平税制を是正した後で、今日の租税構造全体を洗い直す、そして新しい税体系を考えるべきではないか。歳出の徹底した洗い直しと同時に、税や歳入全体の徹底した洗い直しも必要でございます。  その場合、いろいろな案が出されてくると思いますが、すでに出されている提案の検討のほかに、所得税法人税の統合問題、累進構造を持つ支出税、これは直税でございますが、などの長所や短所を十分に検討してみることも必要であろうかと思います。最先端の税制が現実の予算編成や税制改正の場で検討されない点は、どうしても不満が残ります。国民のコンセンサスを得るために根本的な問題の解決を先へ先へと一年延ばしを考えずに、根本的な問題に抜本的に取り組んでいただかなければならないと思います。  減税につきましても、各野党から近く一斉に出そろってくると思いますが、申し上げたようないろいろな税収見通しなり財政現状を踏まえられて、大蔵大臣にも総理大臣にも、これからの日本の将来の財政収入を本当にお考えになりまして、経済安定を図る立場から、私は率直大胆にいまの税収見通し等について見解をお述べいただきたいと思います。
  12. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 国家財政の将来に関しましていろんな角度からいろんな数字をもとにして真剣な御検討、また御意見を賜っておることについて、私はまず敬意を表したいと考えます。  われわれも国家の財政の前途については非常に心配を実はしておるわけでございます。先ほど言ったように、経済は生き物でございまして、なかなか固定的には考えられないということも事実でございます。しかし現実の問題として、すでに八十三兆円から今度は九十三兆円というような国債の残高、累計残高が巨大な数字になって、その利払い及び元利払いのためにすでに七兆八千億円というような多額の国債費を予算に計上しなければならないという現状でございます。したがって、安易に国債を発行して歳出に充てていくというやり方は、結局、いままではそれなりの、失業者を救い、あるいは公共投資を行うことによって景気を持ち上げ、あるいは社会福祉や文教の増額を直接租税負担にすべてを頼らないで、国債を発行しながらも向上させたというメリットも一方ございます。ございますが、当然その中には租税負担で賄うべきものを国債で賄ってきたと言われても仕方のない面もあると私は思います。したがいまして、このような財政状況になりますと、どうしてもほかのことができなくなりますから財政が硬直化をしてしまう。したがって、国債依存率をまず減らしていくということが必要だという点から、一時は三九%もあった国債依存率を順次減らしてまいりました。三三%、二六%、五十七年度予算は二一%にしたいということで予算を組んでおるわけでございます。  そこへもってまいりまして、昨年の税収の伸び悩み、一方、台風その他思いがけない歳出の増加へこういうことがあって、二兆円赤字国債を減額しようと思って努力をしたが、そういう点から三千七百億円ばかり目標を下回った、これも残念ながら事実でございます。  また、五十九年度までの赤字国債の脱却というのは、二千七百億円をあと二年間で上乗せするのだということになってまいりますから、さなきだに、一兆八千億円ずつ減らすのだってむずかしいのじゃないか、そこへもってきてさらに上乗せしてやることは非常に困難ではないかという御指摘でございます。私も容易な道だとは思っておりません。しかし、ここでそれを、赤字国債をさらに十年間延ばせるのだから、さらに増発してそれを後回しにしてしまうというやり方も一つの方法かもしれませんが、それはいまの段階では安易に過ぎるではないか。したがって、不退転の決意でそれは上乗せしてでも五十九年度までに赤字国債依存の体質から脱却するという基本目標に向かって進めという総理の御方針でもありますし、われわれもそのことの方が、安易につくよりはつらいけれども、やはり歳出の削減というような点を考えれば、やはりそこに縛りをかけておいた方がいいというふうに考えまして、その道を選んだわけでございます。  そうして、いま御指摘のように、現在の歳出構造というのは、これは高度経済成長下にできたものが非常に多いわけでございます。なかなか高度経済成長というものは望めないということになってくれば、現在の歳出構造にも抜本的な発想の転換をして、もう一遍見直していくということが大切だと思います。そのことはすでに臨調第一次答申の中で指摘をされておる点でございまして、それをわれわれは忠実にやってまいりましたが、現実の問題としては、限りある予算編成の時間の中で一〇〇%歳出の徹底削減ができたとは私、思っておりません。しかし、それは初年度でございますから、逐次その削減の深度を深めていくということは私は必要だと思います。  しかしながら、歳出の削減というものは、受益者にとっては月給の値下げぐらい苦痛を伴うものでございますから、なかなかこれは言うべくして大変なことであります。それには国民の理解と協力を得なければならない。したがって、ある程度納得してもらいながらやるわけですから、時間もかかるということはやむを得ないものだ、そう思っております。  それから、税の負担の公平を期せということでございますが、これもごもっともなことでございまして、われわれとしては、極力その趣旨に沿って、税制の改正等に当たりましては、負担公正というものをきちっとやるように年々見直しをし、ことしもそれをやってきたわけであります。  退職給与引当金については、いろいろこれは議論があるところでありまして、なかなか了解点に達しなくて、本年度はそれの繰入率を引き下げるというところまでいかなかった、これも事実でございます。これは別に使用者側だけでなくて、労働組合の中からも反対の声もございます。しかしながら、現実の問題として繰入率と実際の支払い額とには差があるのだから、そういう点は御納得いただきたいということで、さらにこれは話を進めていきたいというふうに私は考えております。  その他、所得税の減税問題でございますが、これは確かに日本の税の全体の構造というものが直接税中心主義になっております。したがって、歳出の方はばさっと減ることはなかなかないわけですから、ある程度どうしても全体として見れば現状維持をできれば精いっぱいぐらいな話になります。それはもう年金にしろ医療費にしろ、どうしてもこれはふえていく、これは切りようがない点があります。合理化はもちろんいたしますよ。しかしながら、そういうように、なかなか人件費等もこれはばさっと切ると言っても、これは人事院勧告を守る守らぬだけであの大きな騒ぎになるわけですから、言うべくしてそう簡単に実はできるものではない。ということになりますと、どうしてもある一定の歳入は確保しなければならない。歳出のために歳入が必要なわけでございます。歳出が切れれば歳入も減らせるわけでございます。したがって、その切ることやあるいは歳出を抑えることに努力はいたしますが、その上でもなおかつある程度の財源は必要だ、一方、国債の減額はしていくし償還期にもぶつかってくるということですから、非常に大変な時期を迎えるわけであります。  そのためには景気の維持拡大が必要だ、それでいろいろ公共事業あるいは減税というふうなお話もあったわけであります。これも一つの私は考え方であると思います。思いますが、その一方、二百七十七兆というようなGNPの中で一兆円程度公共事業を国がふやしたとしても、果たして現実的にどの程度GNP全体に対する影響があるかということも考えてみなければなりません。しかし現実には公共事業財源というものは租税によって求めることはまずできない。ということになれば、建設国債の増発ということになるわけであります。しかもこの建設国債も赤字国債も利息は同じでありまして、建設国債なら利息が安くなるとかどうということはない。その利払いがふえてくるということは同じなわけでございまして、それらの両面を考えて、現在の景気の動向については、もう少し様子を見ないとわからない。したがって、公共事業等につきましては、前倒し執行とかあるいは土地代に金のかからないようなところに向けるとか、あるいは住宅政策に重きを置くとか、いろいろたくさんございますが、いろいろなことをまず前半にやって、景気拡大、持続というものを図ってみることが先決だというように私は考えておるわけであります。そのうち経済は、これは生き物でございますから断定的なことを私は申し上げることはできませんが、現在はそういうような方針のもとに進めていこう。  財政再建は、決して崩れたものではありません。財政再建のレールはもう敷かれたわけでございまして、そのレールを走っておるわけですが、それは雨の日もあれば風の日もあるし、上り坂もあれば下り坂もあるし、そのスピードはある程度緩急があることはやむを得ないことだ、しかし終着点には向けて走るということを申し上げたいと思います。
  13. 山田耻目

    山田(耻)委員 財政再建という命題に向かっても、税収見通しを確保するという予算上の重要な歳入条件は、希望的観測というものに尽きておるように思えるのです。私は端的に伺いますけれども、五十七年度国家予算は、歳入においていままでは貿易収支に多く頼ってきた日本経済でございましたが、特に去年、ことし、来年は貿易摩擦が大変熾烈化してきましてなかなかむずかしいと思いますし、そして政府の方も名目成長八・四%、実質五・二%は内需中心景気刺激政策をとるのだと方向を示しておられます。いまの大蔵大臣お話の中にも片りんが十分うかがえたわけです。  端的に私お伺いするのですが、いまの五十七年度予算で、内需景気刺激を強める予算項目というのは一体どこにあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  14. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは先ほども申し上げましたように、一つは執行のやり方、たとえば公共事業というような問題についてもこれは一年分組んであるわけでございますけれども、世界的に見ても、ことしの前半は景気成長がそんなに伸びない、後半はアメリカを初め伸びるという見通しでございます。日本経済世界経済とある程度連動をしておるわけでございますから、われわれといたしましてはまず前半に注意をしなければならぬ。そのためには、経企庁、建設省その他の関係省庁と連絡をとって、公共事業等の執行は前倒しでまずやっていこうじゃないかということは一つの景気対策。その中でも、たとえば金融問題等あるいは税制問題等で、やはり住宅の建設というものが波及効果が一番大きい。しかしながら、現実には着工件数が数年前より減っておるということも事実でございますから、何とか――これはもう持ち家というのは大体六〇%になってしまうと空き家ができるし、持ち家という制度そのものが頭打ちじゃないかという見方もございます。なるほど七〇%持ち家といっても、世界に余りそういう例もないしするから、それは無理じゃないのか。ドイツのように三三%ぐらいの持ち家比率だと空き家は少ないが、アメリカあたりになると空き家がうんと出てくるという点で無理じゃないかと言う人もありますが、まだまだ日本の場合は、持ち家を初め賃貸も含めて住宅不足というものも、空き家があっても一方には偏在している空き家という問題もあるわけですから、需要もあるはずであるという点から、それについてはいろいろな、たとえば住宅公庫の戸数の問題あるいは低金利の幅を六百二十万円まで引き上げるとか、厚生年金の還元融資までも大幅に今回は活用するとか、財形貯蓄も住宅に使うとか、その他細かいのは幾つもいろいろな手だてを全部そろえて、それによってやっていこうというようなことを柱に私は考えているわけでございます。  その他の問題については、事務当局から説明をいたさせます。
  15. 松下康雄

    ○松下政府委員 五十七年度予算経済との関係につきましては、ただいま大蔵大臣から詳細な御説明がございましたが、私どもも、全体的に予算の規模を拡大する、量的な面からの経済に対する刺激を考えるということは、現在そういうものの結果のいわば後遺症のようなものからの脱却を図っておるところでございますから、これは予算上とり得ないところでございますけれども、その限られた全体の財源の中で、景気対策に資するような配慮をいたしたところでございます。  幾つか申し上げますと、狭義の一般会計予算だけではございませんけれども、建設関係の事業におきましては道路公団等建設関係九公団で民間資金を活用する、政保債を活用するということで事業量を確保するという措置、あるいは国ではございませんが、地方財政におきまして地方単独事業の活用の措置、地方単独事業は昨年は八%程度増加を見込んでおりましたが、五十七年度予算におきましては八・五%程度増加を見込んでいるところでございます。あるいは事業効果の高い事業への重点的な配分、すなわち用地代のウエートがなるべく軽い事業に対しまして事業費を重点的に振り向けていくことによって、土地代は経済成長にかかわりがございませんので、その事業費の方へ事業費を持っていくという配分の方針等を講じておるところでございます。  なお、住宅につきましても、大臣がお触れになりましたけれども、具体的に申し上げますれば、戸数につきまして住宅公庫の戸数を五十一万戸から五十四万戸にふやしていく、あるいは制度的にも、住宅公庫からお金を借りられる方に対してこれが利用できやすいように、なるべく初めのうちの負担をやや下げながら、後の方へ負担をずらしていくことでの利用の拡大を図る。貨付限度額につきましても五百五十万を六百二十万へ、これは一般的なケースでございますけれども、拡大をする、それらのいろいろの措置を講じますほか、たとえば従来とっておりませんでした財形貯蓄を活用しますところの持ち家融資の活用、拡充を図る、あるいは年金福祉事業団から年金被保険者の住宅融資につきまして限度額の拡大金利の引き下げを行う、そのような措置を講じたところでございます。  これらのほかいろいろときめの細かい景気対策への配慮というのを考えた次第でございます。
  16. 山田耻目

    山田(耻)委員 お答えになる方もなかなか苦しい実情というものがわかりまして、今年度予算の中にはごく一項か二項かしか内需刺激を高めていく予算方式というものは見当たらないやに私も承知しております。  しかし、この問題で、特に内需刺激効果を高める方策として、企画庁長官が先ほど申されたように、消費動向を強めることが大事だと思います。この消費動向を強める、その根底には勤労者の可処分所得をふやす、これは方程式どおりすぐ答えが出まして、減税ということになります。こうした問題には恐らく意図して触れられなかったのだと思いますが、こうした問題は改めて本委員会開会中に明らかにして、政府の翻意を求めることになろうかと思いますので、きょうはこの段階で終わっておきたいと思います。  時間もございませんから、次に進んでまいります。  労働大臣にまずお伺いいたしますが、貿易の摩擦が、申し上げたように両三年、非常に厳しくなってまいりました。いまの大蔵大臣の話にもありましたように、国際経済の中の日本、孤立することは許されません。いまのアメリカとの関係でも、ヨーロッパ、ECとの関係でも、やはり日本経済の生産コストの比較はいつも議論されております。こういう時代に今日直ちに直面するとは私も想定しませんでしたが、やはり何と申しましても世界の生産労働者の勤労時間、それと日本の勤労者の労働時間、かてて加えて有給休暇の実施の状態、これは国際会議でもいつも議論されてきたところでございます。私はこの問題を昨年の本委員会でもやりましたが、大蔵委員会ではすでに六、七年前から続けてきている問題でございます。それは時間短縮、もっと端的にいえば週休二日制の問題でございます。  恥ずかしながら今日、OECD、先進国では、近くECに加盟しようとするスペインと、そして世界経済大国の中ではトップの座を争っておる日本、この二つだけが週休二日制に入っておりません。世界経済がだんだんと国際化しております中で、こうした先進諸国にある金融機関に、日本から金を振り込むこともできないというのがいまの現状です。  大蔵大臣の所管になります金融制度調査会に銀行法の改正が出されまして久しゅうございます。一昨々年五月に答申が出ましたが、その中で銀行法の十八条は改正をされました。従来、日曜、祝祭日、地方の祭日、これだけを十八条では定めておりましたが、これを政令で定めるという方向に変えまして、土曜休日を政令でいつでも挿入して実行できる状態にまで法律的には体制が整備をしてまいっております。  さて、そういう中で、古い新しい話でございますが、労働省の日本の各界、経済各層に対する時間短縮、週休二日制の説得行動は非常に活発でございました。そういう立場から、まず労働大臣にお伺いしますが、今日までの御労苦は多といたしますが、しかし、政治家というのはプロセスだけ大事にするものではありません。結論を大事にいたします。そういう意味から、御努力は多としますが、週休二日に至る過程は一体いつなさるのか、その判断を、あなたの見解で結構ですから、お話しいただきたいと思います。
  17. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 お答えいたします。  先生が先般の委員会において、いろいろといまお話しのように労働時間の短縮の問題とかあるいは週休二日制のことについて御質問をされたことは了解いたしております。  そこで、いま私どもはよく統計を見ておるのでございますが、最近の労働時間は長期的には短縮傾向にあるわけです。しかし、石油危機後の景気回復を反映をいたしまして、一時増加をしたのでございます。しかしながら、ここ二年間は再び短縮いたしまして、昭和五十六年の年間総実労働時間は二千百一時間になっております。また、五十五年においては、何らかの形で週休二日制の適用を受ける労働者の割合は七四%に達しております。したがって、私どもは、今後とも週休二日制等労働時間対策推進計画に基づいて、積極的に取り組んでいく考え方でございます。
  18. 山田耻目

    山田(耻)委員 積極的にお取り組みになるということは、私もそうだろうと思って信じています。しかし、積極的に取り組んでおられるというだけでは私への答弁としては実は不十分だと思うのです。たとえば、いつの年度を目標として設定されて鋭意努力をなさっておるのか、それは積み重ねていく努力の結果到来するものだというふうに、そこには指導性がないのか、その点をひとつお伺いしたいと思います。
  19. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 物事は、やはり当事者の積極的な姿勢にあろうかと思います。そこで私どもは、まず初めに、先ほどもお話がありましたとおりに、できやすいところから週休二日制をやっていきたい、こういう考え方について、銀行の週休二日制をやっていかなければいけないという考え方から、月一回の土曜日閉店制による週休二日制の実施を検討しております。私は、金融機関における完全週休二日制実現へのこれが第一歩ではなかろうかと考えております。金融機関関係の完全週休二日制が速やかに実現しますように、私どもは金融関係の各機関に働きかけをしてきたわけでありますが、今後とも関係方面に積極的に働きかけていきたい。これは要するに国民のコンセンサスの形成について努力しなければだめなんだという立場から、できるだけ早く、なじんだ週休二日制をやっていきたい、こういう考え方でございます。
  20. 山田耻目

    山田(耻)委員 なかなか到達年次はお示しになりませんが、やはり進めていくプロセスとして大蔵大臣所管の金融関係機関から週休二日に入ってくれ、こういう御見解でございます。私はかつて、昭和五十一年でございましたか、大平さんが大蔵大臣のときに金融機関の週休二日、一両年中にやるよ、こういう文書交換を大蔵委員会で、ちょうどこの第一委員室でやりましたときにいたしたことがあります。それでその後、大平さんが総理になられて、あなたの一両年というのはどういうことなのか、三年を指しておるのか五年を指しておるのか、私は浅学でございますが、一両年というのは一、二年という判断と考えておるのだがどうだということを申しましたら、いまの労働大臣の御意見を逆さまにして言っています。それは金融機関をやるにしても財界のコンセンサスを得なくちゃならぬし、特に金融機関同士でも郵便局だとかあるいは相銀、信金、農協金融機関と合意を得て、やるのなら、一緒にやらねばならぬから、なかなか一両年がおくれておるのだ、こういうことを言われております。  この一両年の文書の案文は、本委員会の与党の委員でございます村山さんが、そのとき大蔵委員会理事でございまして案文をつくられて、大蔵大臣と私と三者で確認した文書でございます。それ以来、あれからもう六、七年になりますが、いまだに金融機関の週休二日制にはなかなか到達するという段階には至っておりません。  やはり労働大臣が言われたいまの答弁の中にも、私は一つの真理があると思う。やはり日本の財界というのは金融機関の動向というものを非常に注意しております。また、現実に経済活動をやるにしても、預金引き出しの問題だけではございません、小切手法なり手形法の問題もございますし、為替法関係もございます。こうした問題は、全部土曜日休日にするということになりますとやはりかなりの混迷があろうかと思いますが、欧米諸国の現実を私はずっと見てまいりましたが、やはり決断なんですよ。その段階に至る過程ではいろいろの、各層の人たちの意見というものは混線をしておりますが、一たび政治の分野で決断をいたしますと比較的スムーズにおさまった、今日のヨーロッパ、EC関係の諸国全体の姿がそうですし、アメリカでもそうでございました。  そういう意味から、大蔵大臣金融制度調査会に銀行法改正を出されて、それは銀行局の諸君もずいぶん苦労したと思いますが、十八条は政令をもって土曜日を休日と定めることが可能だということにいま決まってきたのです。それは昨年の五月二十五日です。あれからすでに一年近くたとうとしておりますが、一体、今日の国際経済現状を眺めてみまして、貿易摩擦も考えてみましたときに、ウサギ小屋に住む日本の生産労働者、休まずに働くことばかりさせておる日本の労働者、ここで生産される品物と国際市場で争いなく争えるのか、かなり批判が出てきております。  私は、至りませんがゆえに、問題提起をして国会審議の軌道に乗せて六年も七年もこの問題を解決し得なかった中で今日の時間を迎えたということは本当に申しわけないことだと思いますので、大蔵大臣もことしの四月一日には政令をお出しになるのでしょう。私は、政令をお出しになるのに、それは金融当局だけ、金融機関だけは完全週休二日に入る、土曜日を休日にする、そういう政令をお出しになることも不可能でも不自然でもないと思うのです。ただしかし、そういう関係になることは、私の承知をしておる段階ではなかなか踏み切りがきかないようにも思えてなりません。  そこで、郵便局を持っておる公務員の四週五休の週休二日制の段階実施、それらの問題について踏み切ることは、私はおしなべて可能だと思うのです。そして昨年の審議のときにございましたように、昭和六十年度をめどに日本の労働時間は西ドイツ並みにしたいということを労働大臣の方から述べられております。  私は、ついせんだってフランスに行ってまいりました。フランスはかなり混乱しておるのですよ。それでも経済の活性化の方向を第一、第二番目には失業の解消、第三には分権化の議題でございましたが、この第二番目の失業の解消の中に、労働時間を一九八五年には週三十五時間にする、来年の八三年度までに三十八時間を実行する、こういうことを総理が閣議で述べておられました。ヨーロッパ、ECの中心でございますフランスはそうした立場から着々として失業問題に手を加えておりますが、日本はいまそれとは別に貿易摩擦を解消する、世界経済条件にならしていく、そういう立場から労働者の労働条件の問題、コストの問題、あわせてやる措置の一つとして、時間短縮、週休二日をもう踏み切っていかねばなりませんから、大蔵大臣に重ねてお伺いいたしますが、八二年、ことしの年度内には金融機関を含めて完全週休二日制に踏み切る用意があるかどうか。少なくとも公務員並びという言葉がいままでしばしば出てきていましたから、四月一日の政令では四週五休制度を全金融機関にも実施をする、こういう政令になりますか、大蔵大臣のお考えを聞きたいと思います。
  21. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 週休二日制は大勢であると私も理解をいたしております。銀行法は御承知のとおり改正されまして、政令によって日曜日以外のたとえば土曜日等も休日にすることが可能になったことは事実でございます。  問題は中小企業なんです。農民なんです。要するに、信用組合とか信用金庫というものは会員制、組合員制、そういうものはおれたちが毎日働いているんだ、あなた方の月給も出しているんじゃないか、おれたちの便利は関係なく休むのかという抵抗が一つあります。  それから、特に農協の場合は、販売、購買、利用とかいろいろあって、そのほかに金融部門というのがあります。金融担当者だけ休むのか、おれたちは休めないのか。農民の側からすれば、おれたちは朝早くから夜遅くまで昼もなく夜もなく働いている、農繁期でも何でも、われわれの方から組合費を取っている者が自分たちだけ先に休んじゃうのかという抵抗があるのも事実です。  そこで問題は、大手銀行、郵便局というようなことにもなるでしょう。そういうようなものとの間で現実的なものは何だということを、一挙にと言ってもこれはかなりの抵抗、反発が出ますから、出資者、利用者から見ればまた別な意見がある。しかし、大勢は大勢でもあるということになれば、山田さんがいみじくもおっしゃったようなことが一つの現実的な、一挙にと言っても無理な場合があるわけですから、一つのここで断定するまで私はまだ腹が固まってないのです。固まってないのですが、これはやはり一つの現実的な案として精力的に詰める必要があるというように思っています。予算で精いっぱいなものですから、いまこれが終わったならば少し詰めなければならぬと思っております。  以上で大体御推察がつくんじゃないか。それ以上はまだ申し上げる段階ではございません。
  22. 山田耻目

    山田(耻)委員 渡辺大蔵大臣の御答弁は私は正直だと思うのです。私も長く大蔵にいましたから、この間の発生から今日の現状をよく承知をしています。あなたがおっしゃるように、いずれ暇を見てということではございません、大事な政治課題ですから。当面の緊急政治課題である予算、この予算が一応目安がつきましたら、この政令の作成について私は二点申し上げておきましたから、そうした点について細かく詰めていただきまして、四月一日の政令提出までにひとつ明るいお話をお聞きしたいものだというふうに承知をいたしまして、この問題を終わりたいと思います。  次に、高木総裁もお見えになっていますから、国鉄の問題について入りたいと思います。  まず運輸大臣にお伺いするわけでございますが、一昨年本国会で国鉄再建法は、臨時措置法でございますが、成立をいたしました。私たちはもちろん、当時の実情から見てなかなか実施が困難であろう、しかも与える弊害も大きいという立場から反対をいたしてきたのでございますが、この再建整備特別措置法が通りましてもう一年有半まるまるたちました。運輸大臣も国鉄当局もこれらの実施についてかなり御苦労なさっていると思いますが、運輸大臣は、最近総理の郷里岩手県で新しい自治体運営の方策ができ上がりまして、認可書をお渡しになるところをテレビが放映いたしておりました。それは初めての出来事でございまして、どういうふうにセクター運営が可能であるかということを国民は注意深く見守っておるところでございます。  いずれにいたしましても、国鉄財政というのは本年度もまた一兆円を超える赤字が累積されてまいります。放置しておくということは国民に迷惑をかけることにもなりますから、私はその立場からお伺いいたしますが、国鉄再建特別措置法はどのような速度で、どのような展望を立てられて進めておられるのか、それらについてお伺いをいたしたいと思います。
  23. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 国鉄再建問題でありますが、ただいまお話に出ました特別措置法に基づいて昨年の五月に決定されました再建計画、経営改善計画、これを当面は着実に実施していくということが一番適当であると考えております。私はこうした一つの計画の、昭和六十年度まずさしあたりは約一万二千キロに及ぶ基幹的な部門の幹線の収支のバランスをとること、これが一つの具体的な方策と考えておりますが、同時にまた、これを達成するためにも相当な国鉄内部の合理化と申しますか、一種の現在立っております非常な危機感、こうしたものをこの再建計画のために十分に精力的に投入していく必要があるというふうに思うております。  なお、国鉄の赤字の大きな原因でありますものの中での年金問題、これは非常に大きな負担を国鉄の経営に与えておりますが、これにつきましても大蔵省に設けられました共済年金制度基本問題研究会に諮っておるところでございまして、予定では本年の六、七月には一応の結論を出すという方向で進んでおるやに聞いておりますけれども、しかし現在の国鉄の持っておりまする緊急性から考えますと、この審議をできるだけ早く促進してもらいたいという希望を現在持っております。  それから退職金問題でありますが、非常な大量の退職者が毎年出ておりまして、その部分が非常な大きな負担として国鉄経営に与えておる影響は看過できませんが、しかし、この退職金問題も昭和六十四年度になりますると一応の平生な状態になっていくということでございまして、この問題につきましては六十四年度までの期間これに対する対策を十分詰めてまいりたいし、この間の財政的な措置を講じていかなければならぬだろう。  それから、先ほども岩手県の第三セクターによる地方交通線問題の第一号を山田先生お示しになりましたが、やはりこうした第三セクターへの移行という問題についても、今後所要の財政措置を踏まえながら着実に実践していく。  いま申し上げたことなどが再建計画にとっての重要な柱になると考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、現在国鉄の持っておる非常に大きな赤字は、概括的に申し上げますと、収入が三兆円ぐらいでありまして、支出が約四兆を超すわけでございます。それに対して、約六千六百億もの一般会計からの補助が出ておるわけでありますから、国鉄自身の年間の収支を見ますと約二兆円の赤字になる。これが累積をされておるわけでありまして、こうした問題を考えます場合に、やはりこの問題は解決を急がなければならぬということは当然でございますが、いま申し上げたような諸種の問題を含めながらも、六十年度において一応幹線部門だけの収支とんとんの実態を確立したいということを考えておるのが現状でございます。
  24. 山田耻目

    山田(耻)委員 再建特別措置法に対する努力の経過を大臣お述べになりましたが、国鉄総裁、そうした一つの現状で六十年には幹線関係の収益でプラス・マイナス・ゼロ、こういう健全経営に立ち直っていけるという方向が確定度としてどの程度高いものか、そういう一つの再建計画方向について御意見をいただきたいと思います。
  25. 高木文雄

    ○高木説明員 昨年の五月に御承認いただきました経営改善計画におきまして、幹線部門で六十年度時点で原則として黒にする、ただ、東北・上越新幹線の開業に伴う資本費負担が六十年時点では非常に大きなものになりますので、これは臨時なものでございますからちょっと別に考えさせていただきたいという案で御承認いただいたことは、ただいまの御指摘でもお示しのとおりでございます。  私どもとしては、これはぜひともそこまではやらなければならない最小限度のことだというふうに考えておりますが、その後の動向といたしましては、一つの問題はやはり思ったよりも貨物の輸送量が落ちておるということでございまして、貨物輸送に伴うところの収入がありまして、貨物輸送も相当部分幹線部門に属する部分がございますので、こうした問題について非常に苦慮いたしております。いろいろとそれに対する対策を立てながらこの経営改善計画の実現ということに、お約束どおり幹線の黒字達成ということに取り組んでまいりたいと考えております。
  26. 山田耻目

    山田(耻)委員 時間が多くございませんので結論めいたものをお尋ねいたします。  前の運輸大臣、自由民主党の国鉄の基本問題の調査会長でありました田村元さんが見解を述べておられます。いまの国鉄総裁が申されておられますようなあのような考え方、それを基本にして国鉄再建計画を進めていこうという考え方は、田村さんも同じ立場に立って論文を書かれております。私は、やはり運輸大臣も総裁も申したように、幹線関係だけは少なくとも赤字をなくして黒字に転化をしたい、この意気込みは、いまの国鉄の経営現状を見てみますと、そこに視点を当てる以外にはないような気がします。国鉄再建法案も、大体ローカル線を国鉄から離していくという考え方の根底にも、そういう一つの発想があったものと思います。  いまの国鉄のそうした現状は、これを行革で言われておるように九つに分割して民営にしたらいいだろう、そうしたら赤字がなくなっていくだろうというお考えを持っておられるやに仄聞するわけですが、失礼ですけれども、国鉄経営の現状について余りよく御承知ないのではないかという気が私ひとりしているわけでございます。まあ国鉄というのは、民間の私鉄と違って、総裁や理事たちが集まって、会社の重役たちが集まって、同じような立場で、今度はどこへ鉄道をつくろうよ、今度はどこをどういうふうに直そうよといって決まるものじゃないのです。国鉄の線路の拡張、新線建設というのは、国民の意思を代表して、経済的効率から国民の文化生活までも基調に置いて、国会が決めてきたのです。だから、構造上の欠陥によって生じた赤字というのは私は国家が見ていかなければならぬと思います。  その立場から、今日の国鉄には累積の赤字十数兆ございますし、その金利だけでも八千億を超えるような状態ですむ早く落ちつけてやらないと、経営者も国民の生命財産を預かって働いておる職員にも私は本当に気の毒だというふうに思いますので、やはり構造上の欠陥部分、その部分は国が見る。いま約六、七千億で見ておるわけでございますが、新幹線関係中心にした残余の国鉄機構については、もっと経営者に自主的管理能力を持たせて、そこで働く労働者、労働組合の皆さんに企業責任者と同様に責任を持ってもらってそうした国鉄の運営に懸命に努力して当たっていただくことが、国民からお預かりした国鉄のまじめな運営政策でなければならないと思います。  先日この委員会で同僚議員の皆さんから、国鉄のよからぬ協定あるいは現場交渉単位等について大変なそしりがございました。私は国鉄の経営、労働者の状態について多少承知している人間の一人でございますが、古き時代の国鉄労使関係だけを見て今日に当てはめて説を立てるということには、私は若干の誤解を生ずる危険があると思います。だから、これからの国鉄再建計画は文字どおり軌道に乗せていきたいし、その立場で幹線関係だけ、構造欠損部分は切りのけて国庫の負担として残余で国鉄予算を立てる。その予算の実行に関しては国鉄労使が責任を持ってその運営に当たっていく。  そこで、再建計画で言われているように職員構成三十五万人がちょっと多い、ここは減らしたい、ここはふやしたい、こういう問題が出ましたら、労使の関係で責任を持って協議をしてその措置に当たっていく。私は従事をしている組合の皆さんたちにもそのことはよく申し上げておるのです。そういう気持ちに私たちもなって、早く国鉄を再建して、安心できる状態で国鉄の将来を見守っていきたいという非常に建設的な意見も出ています。  いま私が申し上げた構造欠損部分は外して、そうして国鉄労使が真剣になって取り決める体制だけ予算運営財政運営をさせていくという方向に進めていくということは不可能でございましょうかね。運輸大臣、ひとつ御見解を、国鉄総裁もあわせて伺いたいと思います。
  27. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま山田議員の仰せられましたことはまことに傾聴に値するお言葉だと私は思います。しかし、また一面から申しますと、現在のような状態、ただ国の財政だけに依存していく、それがあたりまえだと思うどころに今日の国鉄の問題があるようにも思います。私は、そうしたことをする前に国鉄労使ともに現状に対して厳しく自己批判をしてもらいたいし、また、そうした自己批判をただ求めるだけでなく、今日までのわれわれの姿勢も反省しなければならぬ。  いずれにいたしましても、この問題は、先ほど来も大蔵大臣とあなたとのいろいろな討論を伺っておりましたが、日本財政状態というものは非常な事態である、またその大きな事態にさらに一つの大きな負担をかけているというのは確かに国鉄の補助金の額だろうと思います。私は、そうした意味において、いまここで日本の全体の問題の一環として国鉄の労使がそのような考え方で真剣にこの問題に取り組んでいくという、まず基本的な合意と実践と努力というもの、運輸省としてはぜひともそうしたものが早く成長するような方向を、またそうした気持ちが大きく成長するように努力をし協力をしてまいりたい、そのように思っておるところでございます。
  28. 高木文雄

    ○高木説明員 年度末までもう四、五十日しかございませんわけですが、現在お約束の一万二千人の要員削減計画を実施いたすべく日夜取り組んでおります。そうした取り組みの中で、具体的に労使とも現状の厳しさということを痛感いたしておるわけでございまして、そうしたものを毎日毎年積み重ねていくことがいま大事なことではないかと考えて取り組んでいるわけでございます。まあ職員諸君といいますか組合といいますか、次第に意識の変革が見られると思っておりますけれども、問題はそのスピードの問題というようなこともございまして、これからのわれわれの取り組みはきわめて重要であると考えております。
  29. 山田耻目

    山田(耻)委員 あと一問、高齢化社会を残しておるわけです。これは官房長官にお伺いするのですが、高齢化社会の問題いろいろ議論もありまして、特に中心が年金関係と老人の健康保険の関係でございます。私は前回の本委員会で、非常に大きく分かれておるものを二つにまとめる、そうして被用者年金と国民年金の二本柱にしていきたい、こう申し上げたわけでございますが、国会でも八つ、九つの委員会に分かれておりますから統一した議論というのはなかなかむずかしいようでございます。  そこで、高齢化社会のこうした大きな問題、間もなく来るのですから、高齢化社会問題対策特別委員会を国会に設置していただきたいという気持ちを私は強く持っておりますので、前段の理由なりその他については省略いたしますが、そういう委員会を設置して高齢化社会に対処する道を誤ってはならぬ、こういう方向で設置を求めるわけですが、いかがでございましょうか。
  30. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題につきましては政府山田委員と同様に問題の非常に重要なことをよく感じておりまして、そのゆえに総理大臣の施政方針演説におきましても、昨年も今年もこの来るべき高齢化社会についての問題の提起を行っておるわけでございます。政府といたしまして、非常に大きな問題で御指摘のようにむずかしい問題でございますが、総合的に将来を踏んまえて考えていかなければならない問題であると存じております。また、国会におかれましてどのようにお考えでございますか、これは国会で御決定になることと存じますが、政府といたしましても、この問題については将来を展望して各省庁一緒になりまして総合的に検討いたさなければならない問題だと考えております。
  31. 山田耻目

    山田(耻)委員 以上で終わります。
  32. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて山田君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ――――◇―――――     午後一時三分開議
  33. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。栗田翠君。
  34. 栗田翠

    栗田委員 私は、まず初めに、二月の九日に起こりました日本航空の航空機事故問題について、安全衛生上の問題から伺います。  今回の事故は、二十四人の方が亡くなり、残る方も重軽傷を負われまして、本当に心からお悔やみを申し上げます。しかも、今度の事故の原因の調査が進むにつれまして、事故原因が機長の異常操縦であったという事態の特異さが浮き彫りになって、いま注目を集めております。機長の責任、そして副操縦士を初めとする乗員の責任を追及する声も高まっているようですけれども、果たして乗務員だけの責任追及で終わっていいのかどうか、会社の責任が大きいのではないだろうかと私は思っております。  今回の事故に関して運輸省は、会社に対して厳重注意をなさったというふうに伺っております。この事故は、会社の健康管理、労務管理などの事業計画に大きくかかわる問題でございますけれども、このような原因で事故が起こっている場合に、会社の責任は航空法上どの規定によって問われることになるのかということ。  それからもう一つは、さきに行われたといいます厳重注意の勧告というのは、どういう効果を持つものかということを初めに伺います。
  35. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 今回の日本航空の事故の発生につきましては、犠牲になられました方々に対しても、心から哀悼の意を表したいと思いますし、また、けがをされた方々の一日も早い御回復を心から願っておるところでございます。  私たちといたしましては、まず運航安全がきわめて重要な使命である航空運送業者がこのような事故を起こしたという、その社会的責任はきわめて重大であるというふうに認識をいたしております。したがいまして、今後日本航空が安全体制を確立してその社会的責任を果たすよう、政府といたしましても十二分に監督をし、指導をしてまいる所存でございます。  また、政府といたしましても、今後事故原因を速やかに究明いたしますとともに、再発防止に全力を尽くして責任を果たしてまいりたい、そのように考えております。
  36. 栗田翠

    栗田委員 私、伺いましたことは、今度のような事故の場合に、会社の責任は航空法上どのような規定で問われるのだろうかということと、それから厳重注意の効果はどういうものなのかということを伺っておりますが、重ねてお答えをお願いいたします。
  37. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣からもお答え申し上げましたとおり、現在運輸省の航空事故調査委員会におきまして事故原因の究明に努めておるところでございまして、まだ事故原因を断定するというには、かなりの時日が必要かと考えております。  会社の責任、航空法上の責任というお尋ねでございますが、その事故原因がどのようなものと断定されるかということによってまた変わってくると思いますし、現時点で会社がどういう法律上の責任を負うということについては、お答えを控えさせていただきます。  なお、勧告の効果ということでございますが、私ども、事故が起こりましてから、事故の重大性にかんがみまして、直ちに会社に対して、事故原因のいかんを問わず安全運航の徹底を図るよう、あるいは整備、運航の両面における再検討をするよう指示をしたところでございます。これはいわば、いわゆる行政指導でございまして、今後、現在行っております立入検査、これは今週の月曜日から行っておりますが、この立入検査の結果を見まして、その結果に基づいて必要な措置をとることを考えております。
  38. 栗田翠

    栗田委員 では、重ねて伺いますが、一般論として、会社の管理などに重大な責任があると見られる場合には、どのような規定で責任を問うことができますか。
  39. 世耕政隆

    世耕国務大臣 お答えいたします。  警察庁としましては、警視庁に特別捜査本部を置きまして、主に、あの事故の原因究明で刑事犯になり得るかどうかという面から詳しく調査、捜査を開始しております。
  40. 栗田翠

    栗田委員 時間がございませんので、質問に端的にお答えいただきたいと思うのですけれども、航空法上の規定はあるかないかと伺っております。端的にお答えください。
  41. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 航空法上、会社が航空法の違反を犯しました際には、たとえば事業の停止あるいは免許の取り消しというような行政処分をする条項がございます。
  42. 栗田翠

    栗田委員 いまから私、今度の事故をめぐるさまざまな管理の問題、二、三指摘をしたいと思いますけれども、そういう事実の中で、会社の責任が浮かび上がり、また国としても責任を問われなければならない問題として認識されるようでしたら、十分な指導をしていただかなければいけないというふうに思っているわけでございます。  まず最初に、安全な操縦ができる、そういう勤務条件を保障するということは、これは一労働者としての問題だけではなく、このような企業の場合には、乗客の生命の安全にかかわる問題ですから、非常に重大だと思っております。  七八年三月にこの日航内の労働組合、日本航空乗員組合がとったアンケートによりましても、機長の八〇%が安全運航体制に不安を表明しているわけでございまして、そういう意味でも、会社の責任は非常に重いものがあると思っております。  ところで、伺いますけれども、これは労働大臣に伺いますが、この日航は、労働安全衛生法で義務づけられた安全委員会、衛生委員会がまだ設置されていなくて、そのために最寄りの労基署が幾たびか設置の勧告をしているというふうに私、調査で知りましたけれども、そうでしょうか。
  43. 石井甲二

    ○石井(甲)政府委員 お答えいたします。  日本航空の場合に、成田地区にございますので、その監督機関は佐原労働基準監督署でございます。  そこで、昭和五十五年六月に佐原監督署が監督をいたしまして、その結果、安全委員会、衛生委員会が設けられているかどうかを調べたわけでございますが、成田地区には事業所全体を統一した委員会の設置がございませんでして、しかし、実質的には、各職場におきまして労使協議会小委員会というものでその安全衛生に関する審議が行われたわけでございますが、安全衛生法上統一をした委員会の設置が必要でございますので、その設置について勧告をいたしました。その結果、現在、会社側は安全衛生小委員会というものを設けておりまして、そこで実質的な統一した安全衛生に関する審議を行っておるわけでございます。  ただ、安全衛生委員会の構成要件といたしまして幾つかございますが、その中に、労働組合がある場合には労働組合の過半数を代表する者をその中に入れるという規定がございます。これにつきましては、現在、日航労組は四つの組合がございます。その四つの組合の全体の、一つの総意をもってそこに参加をしてもらうということで、会社側がその推薦をお願いをしているわけでございますが、全体的にまだまとまってございませんので、現在は安全衛生委員会という名称ではございませんで、安全衛生小委員会という形で当面、実質的な審議を行っているというのが現状でございます。
  44. 栗田翠

    栗田委員 重ねて伺いますが、いま小委員会とおっしゃいましたけれども、これは労働安全衛生法の規定に沿った、合致したものになるのですか。
  45. 石井甲二

    ○石井(甲)政府委員 安全衛生法におきましては、御存じのように、安全委員会につきまして申し上げますと、第十七条でございます。  その中で、事業場ごとにまず設置をしなさいということ、それから全体として、一つは、総括安全衛生管理者をその中に入れなさい、それから安全管理者のうちから事業者が指名する者、それから当該事業場の労働者で、安全に関し経験を有するもののうちから事業主が指名した者、こういうことになっております。  現在、私が申し上げました中で、安全衛生小委員会という形で実質審議を行っているわけでございますが、つまり、労働者の過半数を満たすものの参加につきまして必ずしも十分な条件を備えておりません。したがって、現在、先ほど申し上げましたように、日航側では、各労働組合全体の参加をという意味で、参加するようにお願いをしているということでございますので、その状態が非常に好ましいことでございますから、それを私の方としてはできるだけ早く行って、正式の安全委員会、衛生委員会を設置するように指導している、こういう現状でございます。
  46. 栗田翠

    栗田委員 そうしますと、いまのお答えでも、安全衛生法に沿った委員会をつくっていく条件としては、労働組合が言っているように、労働者の過半数の参加を会社側が認めていくということで、そこを認めれば設置ができるという状態だけれども、まだそれがされていないということなのですね。
  47. 石井甲二

    ○石井(甲)政府委員 会社としては、正式の安全委員会、衛生委員会を設置するように努力しているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、組合から委員の推薦を求めておるわけでございます。しかし、一部の組合から委員の推薦がなされていない状況でございますので、これを進めていくということを努力している最中でございます。  労働省としましても、早くそれを進めて正式の委員会に移行してもらいたいということを指導している、こういうことでございます。
  48. 栗田翠

    栗田委員 これは、労働組合の側が応じないというふうにいまおっしゃっていますけれども、私の調査では、労基署、これは成田管轄の佐原労基署とそれから羽田管轄の大田労基署、それぞれ口頭での指導で、佐原の方では、機長を含めた乗員の声が反映される形にすべきだと指導していらっしゃるし、羽田管轄の大田労基署でも、機長も安全衛生法上の労働者である、そして、そういう意味で機長の安全衛生についても委員会の中で話し合うべきであるとか、また、安全衛生委員会は乗員の声が反映される形にすべきである、そういう勧告を幾度かしていらっしゃるというふうに聞いております。――うなずいていらっしゃいますのでそうだと思いますが、ところが、なかなかそれができない。これは労働組合側が委員を出さないというだけではなく、会社側が組合側の言っているような委員の数を認めていない。羽田、成田で一人ずつというようなことが最初出ていたそうですが、そういう問題でもあるというふうに私は聞いているわけでございます。  これとあわせまして、もう一つお答えいただきたいのは、専任の産業医を置くことも、当時、八〇年六月に佐原労基署が勧告をしていらっしゃるようですが、きょうの新聞などを見ましても、まだ正式の産業医が置かれていないということです。この辺はどうなっておりますか。
  49. 石井甲二

    ○石井(甲)政府委員 佐原監督署の監督の時点におきましては、専任の産業医が選任されておりませんでしたけれども、その後、専任の、専属の産業医を選出、設置をしているというふうに承っております。
  50. 栗田翠

    栗田委員 開業医と兼ねていらっしゃったという報道ですが、その点はいかがですか。
  51. 石井甲二

    ○石井(甲)政府委員 開業医と兼ねております。
  52. 栗田翠

    栗田委員 専任、専属ということと、この兼務とは矛盾するのじゃありませんか。
  53. 石井甲二

    ○石井(甲)政府委員 産業医の専属という意味でございますが、私どもは、産業医としては、その事業場における産業医の業務、たとえば健康管理あるいは健康の増進、あるいは病気の原因の探求あるいは再発防止といったような産業医の業務のみに従事できるものを言っておるというふうに理解しております。  それから、業務の遂行に当たりましては、事業場の具体的な実情に応じて業務に従事する時間は異なっておりまして、必ずしも毎日業務に従事する必要がない場合もございます。また、事業場の所定の労働時間、業務に従事する必要がない場合もございます。したがいまして、産業医の活動に支障がない限り、必ずしも他の医療行動を禁ずる趣旨ではございません。しかし、他の医療の活動が主であってはならない、こういうふうに私どもは理解しております。したがいまして、ほかの医療活動を行っておりましても、それだけによってそれは産業医の資格、条件を備えていないということは言えないと思います。
  54. 栗田翠

    栗田委員 労働大臣に伺いますが、いま安全衛生委員会を設けるということについて、まだ正規のものが設けられていない。それが勧告を受けてからすでに二年間たっているわけです。いまの局長の御答弁でもわかりますように、労基署自身ももっと乗員の声を反映させるべきであるという指導をしているにもかかわらず、それが解決しないために正規の安全衛生委員会が設けられていないというのがいまの日航の状態です。こういうことは労使間の話し合いを早く進め、しかも会社側も十分に安全衛生の立場に立った譲歩もして、こういうものを一日も早く正規につくっていくように指導なさるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  55. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 いまの問題につきましては、よく法に照らし合わして、法を守るように強く指導していきたいと思います。
  56. 栗田翠

    栗田委員 次に、日航では労使協定で、フライトからフライトの間十二時間は休まなければならないというふうに決めてあるそうです。ところがこのような休養をめぐる問題その他では違反が続出していて、今度の事故の場合にも、福岡に最終便で着き、次の日始発で来て、休養時間七時間であったということはもう周知の事実ですけれども、このような休養をめぐる問題その他の労使協定違反が、八一年の十二月に百二回、八二年一月に三十三回、二月に四十六回もあるということが言われているわけでございます。  これとあわせて定期健康診断などについても、これは航空法で年二回義務づけられているわけですけれども、これが私の聞いたところでは、八〇年の七月までは何と有料でやられていて、会社側が出すものは光熱費と医師の通勤費と消耗費だけで、あと検査料、謝礼などは一人二千五百円から二千八百円ぐらい、当時、乗組員が出していたということを聞いております。八〇年七月に労使の交渉の中でやっとこれが無料になったけれども、現在でも健診の時間というのは何と多く時間外であって、乗務の合間とか休みの日に健診をしなければならない実態になっているというふうに私は聞いているわけでございます。事実はどうでしょうか。
  57. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 お答え申し上げます。  運輸省は、労働関係の個別具体的な事案に言及すべき立場ではございませんけれども、ただいまお尋ねの点につきまして日航に問い合わせましたところ、いわゆる一般の定期健康診断につきましては時間外に行うというようなことは全くございませんし、また有料で行うということもございません。この一般の定期健康診断と別の、いわゆる運航乗務員に対しましては航空身体検査証明という制度がございまして、これは航空機の乗組員自身の責任においてその身体検査証明を国の指定する医療機関、国の指定する指定医の証明を受けて運輸大臣に提出するという制度でございます。この身体検査証明のために必要な身体検査の必要経費約二万円のうち、先生御指摘の二千五百円程度を自己負担していたということは事実でございますけれども、現時点ではそれも無料にいたしております。  なお、原則的に時間内に検査をするということにいたしておりますけれども、診療日が一週間のうち特定の曜日に限定されているという関係もございまして、乗務員の勤務がかなり不規則でございます関係から、その乗務の都合上時間外に受診するというケースは一部についてあるようでございます。
  58. 栗田翠

    栗田委員 しかし、乗員の健診というのも義務づけられているわけですから、特に、さっきから出ていますように、休憩時間も十分にとれないような乗務の中で時間外でやれということになれば、当然非常に負担がかかってくるのではないかと思うのです。こういうものも時間内できちっとやらせていくようにすべきだと私は考えるわけです。  時間がありませんので、この点についての御意見は伺いませんけれども、続いて、機長が管理職になっているという問題、これについて伺いたいと思います。  実は、機長を管理職にせずに、もっと自由に物が言える立場にすべきではないかということで、日本航空乗員組合はかねてから幾度も主張をしているようでございます。私、ここに三冊のパンフレットを持ってきましたけれども、八一年の十月十五日、十月二十二日、それから事故が起こった三日後に発行された八二年二月十二日のパンフレット、それぞれそういう問題が書かれておりまして、「機長統一を実現しよう」、この「機長統一」というのは非常に特殊な言葉なんですが、機長も乗員と統一した条件でということのようです。「機長統一で安全運航の確立を」などということが全部書かれております。この二月十二日のパンフも事故が起きたから出したのではなくて、もうすでに準備して印刷していたそうです。そうしたらそういう事故が起きたというふうに聞いております。  ところで、なぜこういうことが問題になるのか。二つ理由があるようです。一つは、乗員が自由に機長に対しても物を言ったり、時に異常な操縦などがあればそれについても意見を言ったり自分で修正することが自由にできる状態。そのためには、機長が管理職であとが管理される立場ではなかなかできないのだという切実な声があるわけでございます。  ここに私は一枚の紙を持ってまいりましたが、これは実は副操縦士がいつも持っている勤務評定の用紙だそうでございます。  委員長、ちょっと総理初めお目にかけたいのですが、よろしゅうございますか。ちょっとこれをお目にかけたいのですけれども……。これは副操縦士が持っている勤務評定の用紙なんですけれども、二十二項目の書き入れる場所がありまして、乗務するときに副操縦士が持っていくのですが、これは管理職である機長が、一回飛ぶたびに副操縦士の勤務を評定してそこに入れるのだそうです。私もそれを聞いてなるほどと思いまして、先日も事故機の副操縦士が、機長に試されたという言葉を、その前日の異常な旋回をしたことについて言っていたのを新聞で読みましたが、なるほど、そのたびにこういう評定をされるのでは、試されたと感じるのかなと私は思ったわけです。狭い操縦室で並んで協力関係にある機長、副操縦士、それが管理する者と管理される立場で、そのたびに勤務評定をやられるということになりましたら、副操縦士は自由に物が言えないのではないか。おかしな旋回の仕方をしたといって直ちに電話で本社へ連絡するなどということも、これはなかなかしがたいのではないだろうかと、私はその実態を見て思ったわけです。そうして、そのようなことが組合からの要求の中にしばしば書かれております。しかも、このようなことは今度始まったばかりではなく、アンカレジの空港の事故のときにも、それからクアラルンプールの事故のときにもやはり機長の操縦に問題があって、それに対して副操縦士が物を言えなかった、こういう状況があるわけで、ここのところについては乗員が自由に物を言えるようにと、クアラルンプール事故の調査をしたマレーシアの事故調査委員会が制度改善を勧告しているという事実さえあるわけでございます。  それからもう一つは、なぜこのような管理職の状態にしているのかという問題ですけれども、会社側の発言を見ますと、管理職であったらば、乗員と同じような勤務体制でなくてもがまんをせよということを発言されているようで、これは五十三年十一月十八日の「乗員速報」に載っております。当時副社長であった高木氏が団体交渉の中で、「機長が、協定以上飛んでも、スチュワーデスより低い労働条件で飛ぶのも運航本部が、そう判断するならそれが経営姿勢だ。」というふうに答えています。がまんせよということなんですね。これでは機長の十分な休養、健康管理はできないと私は思います。  以上のような事実が続々と出ているわけです。本当に国民の生命の安全のためには、このようないまの体制を改善することを検討する必要があるのではないかと思いますし、これは一企業内の労使関係の問題ではなく、国民の生命の安全にかかわる問題だと思います。そういう意味で、指導責任を持っており、また免許権を持っていらっしゃる国の責任という立場から運輸大臣の御意見、それから、総理の行政指導上の責任についての御感想を伺いたいと思います。
  59. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま非常にいろいろな資料に基づいての御発言をいただきまして、大変ありがとうございました。われわれも、事故発生の事態にかんがみまして、直ちに立入検査をやっておりまして、十五日から十九日までいたしておりますが、その間において、当然また、いま御指摘のような諸点についても十分な資料を求め、その内容をチェックいたしていることと思いますので、それをまた十分に見ましてから、しかるべく善処をしてまいりたいというふうに思います。
  60. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま運輸大臣からも申し上げましたが、事故の原因を徹底的に究明をいたしまして、そして、このような事故が再発しないように、これは政府の責任としてやってまいりたい、このように考えております。
  61. 栗田翠

    栗田委員 それでは、いまのお答えに沿って本当に十分な慎重な調査、今後の対策を立てていただくということをお願いいたしまして、次の問題に移ります。  これは先日来問題になっています情実入学にかかわる問題でございます。初めに総理とそれから文部大臣に伺いますけれども、いま憲法の第十四条では「すべて國民は、法の下に平等であって、」云々という、いわゆる法のもとの平等を決めた規定があって、これは性別、門地、経済的、社会的なさまざまな立場によって差別をされないということが決められておりますし、また教育基本法では教育の機会均等ということがうたわれているのは御存じだと思います。情実によって、つまり特別なコネクションによって、社会的な地位のある方、経済的に豊かな方、そんないろいろな条件で、点数の低い人がそれより高い人を押しのけて入学をするというようなことは、やはり憲法で言いますこの平等の規定に反するし、また教育の機会均等という立場に反すると思いますが、その点いかがでございましょうか。
  62. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 憲法の精神からいたしまして、そのとおりと認識しております。
  63. 小川平二

    ○小川国務大臣 憲法の定めております教育の機会均等ということは、入学者の選抜ということに関して申しますれば、能力以外の理由によって進学に際して差別を受けない、差別をしてはならないということでございましょうから、今回明るみに出ました青山学院のとりました措置は、この観点から見て問題なしとしない、かように考えております。
  64. 栗田翠

    栗田委員 問題があるというお答えでございますが、あわせて文部大臣にもう一つ伺います。  青山の院長が、公立と私立は違うのだというふうにおっしゃいました。しかし、私立の学校でありましょうとも公教育の一環であるし、また、そういう立場から国の大きな私学助成も受けているわけですから、そういう点でも違いはございませんよね。いかがですか。
  65. 小川平二

    ○小川国務大臣 ひとしく公教育の担い手であるという点については官公立、私立の大学の間に何ら差別はないと存じます。  ただ、私学におきましては、それぞれの建学の精神あるいは独自の学風を伸ばして多種多様な活動をすべきものであって、国民の期待もこの点にあると存じます。その点が私学の特殊性と申しますか、官学と異なるところだと考えております。
  66. 栗田翠

    栗田委員 教育的な立場に立っての特殊性ということをおっしゃったと思います。  それでは、ちょっと私、資料を、本当は全部にお配りしたかったのですが、総理と、それから文部大臣にちょっと資料をお目にかけたいと思いますが、お願いいたします。  実は青山学院の情実入学の問題で、大学、それから、幼稚園、短大などが問題になりましたが、ある新聞の報道などでは、高等部は比較的正常にやっているようであるということが報道されておりました。ところが、私がいろいろ調べましたところ、高等部もその例外ではなかったということがわかったわけでございます。いまお渡しした資料、実は高等部で毎年判定委員会というのがありますときに、黒板に克明に補欠入学について書かれるそうです。お書きになるのは教頭先生、ここに院長も御出席になるそうでございます。五十一年から五十六年の判定委員会の分までのメモが全部出てまいりました。私はメモの全部を持っておりますけれども、お渡ししたのは個人の生徒の名前は全部伏せました。  それで、この中身を見ますと、補欠にもいろいろありまして、特補、特一補、特二補、特三補、一補、二補と、何と六種類の補欠がございます。それぞれ有力な補欠と、そうでないのとあるようでして、特補というのは院長推薦、この中で、政治家や財界、院長関係者のいろいろな依頼が入っております。特一補というのは専任教職員の子弟の関係、これもなかなか強力でございます。特二補は在校生や校友関係、特三補は海外帰国子女関係、そして特のついていません一補というのはいわゆる普通の点数による補欠、二補というのは上記以外の一般人からの依頼、こういうふうになっているわけでございます。  この資料をざっと見ましたところ、五十一年から五十六年まで合格者の中で、補欠入学者は四十人から八十人くらいおりまして、率で言いますと、全合格者の一割から二割を占めるという非常に大量なものなのでございます。  その中で、いろいろな特徴があるのですけれども、何と院長に依頼をなさった大臣経験者、また現職の大臣がたくさんいらっしゃるということがわかりました。たとえば昭和五十三年を見ますと、これは特補、院長推薦でG子さんという方が入っているのですが、福田赳夫氏より依頼、松野幸泰議員関係、この方は、このときの合格点が女子の場合二百三十二点、男女で三十数点合格点も差があるのですけれども、男子が百九十五点、女子二百三十二点、この二百三十二点の半分以下の百十四点の方が入っていらっしゃいます。福田元総理の推薦で、現国土庁長官関係の方が入学していらして、しかも一度不合格になったけれども特に巻き返して逆転して入学になった、こういうことになっているようでございます。  次に、五十四年、この年は総選挙があった年ですか何ですか、ずいぶんたくさんの方が関係していらっしゃるのですが、たとえば坂田道太氏の親戚C君、百七十八点で入っています。このとき男子百九十二点、女子二百二十三点以上でないと合格しなかったのですが。それから、福田赳夫氏の推薦のD君百二十点、それからG子さん、福田赳夫氏より、百七十七点で入っています。それから、H子さん、これは文部省の審議官の親戚の方ですね。それから、I子さん、これが船田中氏より推薦。それから、L君、櫻内義雄氏より、百五十二点で入っております。それから、M君、坂田道太氏より、百七十三点。特にL君とM君は、一度落ちたのを第二次の補欠で巻き返して合格している。こういう方が入っているわけです。  それから、昭和五十五年になりますと、やはり特補、中曽根康弘氏よりA子さん。このA子さんは二百六点ですが、女子は二百二十二点以上で、落ちているのですが、補欠で入っています。  五十六年、奥野氏、百七十一点でA子さんが入っているわけです。  また、こういう大臣経験者または現職大臣の推薦による入学とあわせまして、非常にひどい例もあります。たとえば七十六点だとか九十五点だとかという二けたで入っている方がありまして、そういう方の入学について、「高等部長と話し合い、発表については考慮する(補欠の中に入れる)」ことにした。つまり、正規に合格と発表したのでは余りに非常識で、一般的に見ても、どうしてあの人が入るのだろうかという状態の人を入れるのにいろいろ苦慮していらっしゃる跡もありありと出ております。その他非常に細かくいろいろなことがわかるわけですけれども、こういう状態になっているわけなのですね。  それで、高等学校の、最初にお話しいたしました黒板に毎年書いている。先生たちは、判定会議のために全部メモしているということですから、私は調査していただきたいと思いますけれども、こういう状態の中で高等部の先生たちに非常に不満が出ています。つまり、非常に点の低い子供たち、二けたなどという子供までが入った場合、本人にとっても幸せではないのではないか。授業をしていくのに、余りに差があった場合に授業が非常にやりにくい。高等学校の場合にはそういう問題が出てまいりますけれども、教育上も一体これでいいのであろうかという声がいま出ているわけなのです。  そこで伺いますけれども、まず坂田法務大臣に伺います。  先日、参議院の決算委員会でわが党の安武議員が質問したのに対しまして坂田法務大臣は、みんなやっていることである、これは常識だと思うというふうにおっしゃいましたけれども、この事実をごらんになりまして、やはりそうお思いになりますか。
  67. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 お答えいたします。  安武委員の御質問に対して私はこう答えているのです。「自分の選挙区の人たちが大学を受けたい、大学の事情はどうかというようなことを聞いてくるときに紹介をするというようなことは、やっぱりこれは常識じゃないだろうかというふうに思っておるんです。しかし、それが金銭をもらうとか、何とかというようなことにつながれば、これは問題だと私は思いますけれども、大学当局がやはりそこは入れてもこれはどうにもならない、あるいはほかとの均衡上これは余りにも成績が悪いという場合は、恐らく入れてはいただけないものだというふうに思っておるわけです。」というふうに申し上げておるわけでございまして、情実入学そのものが常識だというふうには言っておらない。やはり選挙区等から皆さん方もお頼みになられるというときに、青山大学というのはこういう大学ですよ、上智大学というのはこういう大学ですよ、あなたの高等学校の成績はどうですか、それは無理ではありませんかというような進学指導をやるということは、やはり必要ではないだろうかというふうに思うのでございます。  実は私も高等学校のときに、当時の五高に二回落第いたしまして、私立に救われたわけでございます。非行青少年とかなんとかいろいろ出ますけれども、ただペーパーテストだけで入るということはどうなのだろうか、もう少しその人の人間性とか、あるいはその他のいろいろな面の能力ですね、やはり適性を取り上げるということを一定のルールのもとに、そして、きちんとした全学的意思を表明された上で、たとえば身体障害者を若干入れるとか、外国から帰った子女に対しては特別に考えるとかいうようなことはあってもいいのではないかというふうに私は思ったものでございますから、そのように申し上げた次第でございます。
  68. 栗田翠

    栗田委員 いまの御答弁ですけれども、前におっしゃったときには、それほど非常識なことはやらないだろうとおっしゃっていた。ところが、それぞれの有力な大臣などの御推薦がありますと、さっきちょっと申し上げたように、合格点の半分以下とか、中には二けたで入っている。ということになりますと、これは非常識という以外にはないと私は思います。  それと同時に、いまのお答えですが、それは確かに点数だけで切り捨てるということに問題が全くないわけではないけれども、しかし、この青山学院高等部のやり方というのはそうじゃないのですね。たとえば昭和五十二年などは特補の中で三人落ちていますが、注がついております。「“これはいいから、あとのものを入れてほしい”ということで切られた三名。」というふうになっておりまして、その三人、補欠の中では非常に点数のいい人も切られています。百八十二点のI君が落ちていまして、百四十点のE子さんなんという方が入っているんですね。  こういうことになってくると、いま坂田さんのおっしゃったような問題だけでは済まないわけです。落とされる子供が出てくる。それも正規の点数で補欠で入れる子供までが落とされていくということも考えていただかなければならぬ。何と言っても、文部大臣総理大臣のさっきのお答えとは矛盾をしていると思うわけでございますが、いかがですか。
  69. 坂田道太

    ○坂田国務大臣 私の申し上げましたような気持ちは、私、変わらないわけでございます。
  70. 栗田翠

    栗田委員 文部大臣、さっき情実入学よろしくないとおっしゃったのですが、法務大臣はいいとおっしゃるのですが、どうしたらよろしいのでしょうか。おかしいと思いますけれども、文部大臣、どうなさいますか。法務大臣と文部大臣と、おっしゃったことが違うのですけれどもね。
  71. 小川平二

    ○小川国務大臣 私の所掌は、学校、つまり頼まれる側を所掌いたしておるわけです。ただいまの頼む方の側の問題、閣内で席を並べております同僚の発言に対して論評せよとの御要求で、まことにこれは過酷な御要求でございます。これはひとつ御容赦、御勘弁を願いたいと思います。
  72. 栗田翠

    栗田委員 それは頼まれる側も問題ですね、こういう入れ方は。しかし、頼む側というのも、それは教育的な配慮に立ち、不正入学などの端緒をつくらないようにしなければいけないと思います。文部大臣、いま過酷だとおっしゃったけれども、それは内心ではぐあいが悪いとお思いだけれども、同僚でいらっしゃるからそれをおっしゃれないというふうに解してよろしいわけですね。――うなずいていらっしゃいますから、そういうふうに私は解釈いたします。  あと、中曽根長官、櫻内外務大臣、そして国土庁長官関係していらっしゃいますが、それぞれどうお考えになりますか。
  73. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私も選挙区の方に頼まれましてお願いしたことはございます。よろしくお願いいたしますと言いますと、いい点数をとらせてください、それで、これは判定会議で決まるのですからはいれるとは限りません、そういう御返事でございました。
  74. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 きょう、ただいまの私の紹介もあるという御指摘で、ああ、そういうことがあったのかなと、こう思うのですが、私は小学校一年から大学まで慶応なので、青山学院は学校も行ったこともなければ、先生も知っている人はないのです。しかし、私の事務所でいつも選挙区の人は大切にしろ、親切にしろ、こう言ってありますから、恐らくうちの秘書連中が、郷里から出てきて学校がわからなければ連れていくとか、頼んでくれと言えば私の名前で手紙を出したのじゃないかと思うのです。はっきりした資料でおっしゃっておりますから、私はそれを否定するものではございませんが、その結果がいろいろ教育の機会均等などに触れるという御批判があれば、御批判は甘んじて受けます。
  75. 栗田翠

    栗田委員 国土庁長官、それでは、おいでにならないようですから時間の関係で――いらっしゃいましたか。でも結構です。いま戻っていらして何を質問しているかおわかりにならないと思いますから。  それで、総理に伺いますが、総理は所信表明のときに、いまの青少年の非行の問題に触れられまして、「青少年の健全な育成に幼児のころから心がける必要がある」とおっしゃってきたのです。こういう事態の中で子供はいろいろな差別を感じ、そして、がんばったってコネがなければ落ちちゃうんだとか、いろんなことでの矛盾も感じるようになっているわけで、そういうことを頼む方だって間違っていると私は思いますが、さっきの最初のお答えとあわせまして、総理の青少年の健全な育成を期していくという立場から、この事態についてどうお考えになるか、おっしゃっていただきたいと思います。
  76. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 選挙区の方からたっての依頼があって、それを学校当局に御紹介をした、こういうことのようでございます。それを受けて学校側がどういう審査をやり、基準で採用されたか、それは学校の自主的な御判断によって決まることであろう、こう思うわけでありまして、別に圧力をかけてそして公正な選考を曲げようとか、そういう意図はなかった、選挙区の依頼にこたえてそしてお願いをした、後は学校当局の御審査にゆだねる、こういうことであったと私は思うわけでございます。
  77. 栗田翠

    栗田委員 私は、そういうお考えの中にやはり子供たちが曲がっていくような要素を政治の中に入れていくことになると思います。これは特に閣僚として公正でなければならないと私は思うのです。ただ、時間もありませんので、このことでのやりとりをいましていますと、後の時間がなくなってきますから、まことに残念ですが、もう少し正々堂々としたあり方というのを主張していただきたいと考えております。  最後にひとつ、青山学院長は率先してこういう情実入学をやっておられるようです。圧力をかけなかったとおっしゃるけれども、実際には非常な圧力になって、不当な点数といいますか、余りにこれではついていけないと思われる点数のお子さんまで特別な人の場合入れているということになるわけです。この学院長はいま文部省の私立大学審議会の会長を務めていらっしゃいますけれども、こういう公的な審議会会長がこういう感度でいらっしゃるということは、私は本当に問題だと思います。文部大臣は会長を任命していらっしゃる任命権者でいらっしゃるのですけれども、大木院長を会長からやめていただくべきではありませんか、いかがでございますか。
  78. 小川平二

    ○小川国務大臣 青山学院において大学の入学者の選別に際しまして、学内関係者から推薦のあった者について優先的な評価を行った、このことはまことに適切を欠いた措置だと考えておりますが、このことにつきまして非常に強い世論の批判、指弾を受けて、院長はもとより大学の当事者は深刻に反省をいたしております。私学には私学に独自の選別方法があるべきでございますが、青山学院においては今年度については推薦入学を一切やらない。今後公正な客観的な基準、教育関係者をも納得させるに足る選抜の方法を鋭意研究する、こういうことでございます。  大木院長は、今日まで公教育の担い手として非常に大きな貢献をしてきた私学の団体の会長を務めておられまして、今日まで非常に大きな功績も上げておられます。今後私学を振興する上において、この方の御協力に大いに期待をいたしてもおるわけでございますから、私といたしましては、既往のことを深くとがめず、むしろ青山学院はもとより、私学全体について合理的な公正な選抜方法を確立するために御協力をいただきたい、かように考えておりますので、辞任を求める等のことは考えておりません。
  79. 栗田翠

    栗田委員 私、大変いまのお答え不満ですが、時間がありませんので、政治倫理の問題に関連して東中議員から質問していただきます。
  80. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、東中君より関連質疑の申し出があります。栗田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。東中光雄君。
  81. 東中光雄

    東中委員 私は、去る十日の日に公選法百九十九条、二百条問題について総理にいろいろお伺いをいたしました。  総理は、取り締まり当局が法に照らして取り調べをする、調査をするということについては、これはやっていただきたいと思います、こういうお話でありました。逃げも隠れもいたしておりません、こうまでおっしゃったのですが、明くる日の読売新聞を見ますと、首相は、公選法に基づく届け出から、政治資金規正法による寄附行為として届け出をし直すというふうな方向をとられておるようだというふうなことが四段見出しで報道されておりますので、これに関連しまして、この際、公選法関係の所管であります選挙部長にまずお伺いをしておきたいのであります。  選挙運動費用収支報告書というのは、公選法上選挙運動に関する寄附はすべて届け出なければならない。そして、その届け出には、はっきりと、真実を記載されておるものでありますという誓約書までつけて届け出るのだ。選挙運動に関する寄附をもらっておりながら、届けなかったら犯罪になる。これは内容が虚偽であればやはり犯罪になる、こういう性質のものであります。だから、総理の出納責任者が選挙運動に関する寄附を、東北ブルトーザーから五十万円もらったのであるということを届け出るのは、選挙運動に関する寄附であるということを、もらったときの経緯を見て、責任者としてそういうふうに事実を認定して、それを申請しているという性質のものだと思うのですが、選挙部長どうでしょうか。
  82. 大林勝臣

    ○大林政府委員 選挙の収支報告書と申しますのは、選挙運動に関する収入あるいは支出、これを報告をいたしまして、その報告書に先ほど申されましたような誓約文言を書いて出すものであります。したがいまして、通常、一般的には選挙の収支報告書の中に収入として掲げられておるものにつきましては、選挙運動に関する収入であるという推定は成り立つであろうと思います。ただそれが、この種の事件が起こりますたびに、いろいろ思い違いでありますとかあるいは書き間違いでありますとか、これは政治資金規正法面においてもよくあることでありますけれども、結局は、そこに書かれておりますのが法律違反の問題になるかどうかという問題は個々の寄附の事実関係、これを具体的に調べた上でないと、収支報告書に書いてあるからすぐ即違反になるというふうに断定することはできないと思います。
  83. 東中光雄

    東中委員 少なくとも、収支報告書に真実の記載でございますという誓約書をつけて出納責任者が、要するに寄附をもらった人自身がそういうふうに事実関係を認定して出しているのだから、少なくともその人は選挙運動に関する寄附をもらいましたということ、いわば自認といいますか自白といいますか、という性質を、もしこれが公選法違反の事件ということになれば、自認なり自白なりの性質を持ってくる、こういうものだと思うのですが、そうじゃないですか。
  84. 大林勝臣

    ○大林政府委員 報告をされました時点におきましてはそういうふうに判断をされたから報告されたのだろうと思いますけれども、そこが誤解があったというようなこともあろうかと思います。
  85. 東中光雄

    東中委員 それから、選挙運動に関する寄附はすべて、現に国からの受注をしている企業が百九十九条の寄附に該当する寄附をした場合、百九十九条に言う当該選挙に関し寄附をする――選挙に関する寄附というのは、選挙運動に関する寄附は全部含まれる。それから、選挙運動に関する寄附以外のものであっても、選挙に際し、選挙に関する事項を動機として、いわば選挙に関連する寄附であるということになれば、それは政治資金の届け出をしてあってもやはり百九十九条にひっかかってくる、百九十九条というのはそういう規定であるということは、大林さん自身が自治省選挙部として出されている分厚い著書の中に書いてますが、そういうものじゃないですか。
  86. 大林勝臣

    ○大林政府委員 選挙に関する寄附というのは御指摘のような寄附を申すわけであります。したがいまして、報告の態様がどうであるかこうであるかということではなくて、それぞれの事実が選挙に関する寄附であれば選挙に関する寄附ということになるわけであります。
  87. 東中光雄

    東中委員 あなたが認められたように、選挙に関する寄附は選挙運動に関する寄附よりも広いんです。政治資金規正法で届け出してあるだけのものであってもやっぱり禁止されておるものに該当することがあるんだということをいま認められたわけでありますが、そうだとすれば、届け出の間違いの問題ではないんです。事実関係が問題なんです。その事実関係について、鈴木総理が選任された出納責任者が、これは選挙運動に関する寄附でありますと、こういうことを言っておられるわけなんで、したがってまた、百九十九条に言う選挙に関する寄附になることは明白だ、それが請負工事をやっている以上ははっきりと二百条違反になってくる、こういう関係になるんであります。  そういう点で、総理、政治資金規正法で届け出をし直すというふうなことをお考えになっているのかどうかということと、それから、そうされてもこの事実関係というのは変わらないんだということについて御承知の上でやられようとしておるのかどうかという点をお伺いしたいわけであります。
  88. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 村上さんからお話を伺いまして私は初めてわかったわけでありますが、そこで早速盛岡の事務所の方に連絡をいたしまして、調査をしてみてくれ、そういうことをお願いしておいたわけでございます。  中間的な報告でございますが、いろいろ当時仕事がふくそうしておった関係、それから公職選挙法並びに資金規正法等に対する勉強不足、理解不足の点もあり、処理上ミスがあったというようなことで、県の選管等に対してその事実関係をいまお話をして、お調べや御指導をいただいておる段階でございますと、こういう中間的な報告を受けております。
  89. 東中光雄

    東中委員 公職選挙法に基づく収支報告書は、これは法務省の刑事局長にお聞きしたいのですが、もしこれが百九十九条及び二百条違反ということで取り調べがされて、起訴事件になった場合に、出納責任者が判こを押して届け出た文書というのは、刑事訴訟法の三百二十二条なり三百二十四条なりによるこの書面自体が証拠能力を持ってくるという性質のものだと思うのですが、法務省の見解をお聞きしたいと思います。
  90. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘の報告書自体は、証拠能力と申しますか、その面では持つかと思いますけれども、事はそれで片づくわけではございませんで、内容が問題であろうかと思いますし、先ほど自治省からもお話がございましたように、報告書の記載自体から直ちに判断になるとかどうかという問題ではなくて、要するに実態、事実関係が問題である、こういうことでございます。
  91. 東中光雄

    東中委員 刑事局長は、事実関係が問題である、まさにそのとおりであります。その事実関係を認めるのには、証拠によって認めるわけです。その証拠にするのに、この書面は、報告書は証拠能力を持つ、結局証拠になり得る重要な書類であるということをいま言われているわけであります。それを今度は訂正するんだというふうなことになってくると、これははなはだもって穏やかでない、そういう動きになるのじゃないか、こう思うわけであります。  それで、警察庁の中平刑事局長はこの前、証拠に基づいて調べる、調べるべきであれば調べる、こういうふうにおっしゃったのですが、調べておられるのですか、どうでしょうか。
  92. 中平和水

    ○中平政府委員 お答えします。  先般私が申し上げた趣旨は、一応選挙に関する報告としてなされている以上、選挙に関する寄附としての推定が働く、こういう趣旨で申し上げたわけでございまして、それが直ちに法に触れるという断定はしておりません。したがいまして、その辺の事実関係を明らかにし、その上でやはり考えるべき問題である、このように考えておるわけでございまして、ただいまこの問題をめぐって関係者の方でいろいろな、その事実が何であるかということについての選管等についての御説明もなされておるようでございますから、そういうものも踏まえまして、仮にそれが事実であれば、これは当然犯罪は構成しないわけでございますから、その辺の事実を踏まえながら慎重に対処してまいる、こういうことでございます。
  93. 東中光雄

    東中委員 私は、調べているのか、調べていないのかと聞いているのです。  警察は不偏不党、公正中立を職務執行の趣旨にしなければいかぬというのは警察法の二条に書いてあるとおりでありますが、こういう問題が起こっているのですから、それも指摘したのはたくさん指摘してあります。それについて疑いがあるというふうに、ちらっと見た範囲でも疑いがあるということを言われたのだから、公報を、収支報告書あるいは寄附をした人、企業、こういうものについて調査をしているのですか、していないのですかということをお聞きしておるわけであります。いかがですか。
  94. 中平和水

    ○中平政府委員 諸般の事情を見きわめつつある段階でございます。
  95. 東中光雄

    東中委員 犯罪があるという疑いが出た場合に、それは調査をし、捜査をするということが、これが警察の職務なんですよ。諸般の状況を見ておると言うて、殺人事件があったときに犯人がどこへ行ったか諸般の事情を見ておるなんということはないでしょうが。詐欺事件があったときに詐欺事件かどうか、これは違反になるのかならないのかということを含めて事実を調べなければ結論は出ないのでしょうが。その調べもしてないのですか、警察はそういう態度ですか、どうです。
  96. 中平和水

    ○中平政府委員 先生も弁護士ですから御案内だと思いますが、刑事訴訟法では犯罪の捜査をするものとするということになっておりまして、することは必ずしも義務づけられておりません。したがいまして、私どもはこの問題につきましては、そういう諸般の情勢を見つつ、やはり適切な対応をしてまいりたい、このように考えております。
  97. 東中光雄

    東中委員 するものとするというのは、警察の職務がそうでありますよということなんです。するものとするとなっておるから、そういうものは疑いはあるけれども諸般の状況を見て証拠隠滅するまで待っておろうかというのだったら、これは警察の態度としては許されぬことですよ。どっちにしても、適切な対処をするという、それは警察の態度としてはきわめて不偏不党というあるいは中立公正という態度からいってこれはおかしい。検察庁はどうでしょうか。
  98. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 犯罪の疑いがあります場合に捜査をすることは当然でございます。先ほど来お話がございますように、警察当局におかれましてそれなりの措置をとられるということでございますから、検察当局といたしましては、その結果を待って対応したいと考えております。
  99. 東中光雄

    東中委員 では、告発でもあったらするということですか。告発があったら当然疑いがあるということはもう警察庁刑事局長は前にも言っておるわけですから、だから疑いがあったら捜査するのは当然であると法務省の刑事局長はそう言った。それならば当然のことを警察がまだやらない、日和見をしているというのであれば、告発があったらするということですか。告発があったらしなきゃいかぬでしょう。その点はどうでしょう。
  100. 中平和水

    ○中平政府委員 警察は具体的な事実を証拠によって認定してまいる仕事をするわけでございます。したがって、取り調べとかなんとかいうこと以外の方法でもいろいろ事実関係の把握の方法はあるわけでございます。
  101. 東中光雄

    東中委員 その証拠を調べなさいということを言っておるわけであります。  時間がありませんので、この前ちょっと聞きました櫻内さんの関係ですが、私たちは選挙公報で特定しておるものとして株式会社佐藤組を取り上げました。ところが、公報がきわめて特定してなかったということがわかりまして、櫻内さんの言われた株式会社佐藤組についてはそうだということがわかりました。  しかし、同じ五十五年六月選挙の際に出された出納責任者石田浩造さんというのですかの収支報告書によりますと、千歳電気工業株式会社から二十万の選挙運動に関する寄附を受けたというふうに書かれております。この千歳電気工業株式会社は東京都の会社であります。この会社の工事経歴書を調べてみますと、ちょうどその選挙の最中に、日本国有鉄道東北新幹線百四十八キロメーターから百七十二キロメーターまでの饋電線新設工事その他の工事、これは二億六千七百九十万円で受注をしています。そのほか広島大学、それから国鉄の北海道、山口大学、郵政省、国鉄、こういうふうにその期間に現に受注をしているということがわかりましたので、これは明白に百九十九条違反の寄附だという、それこそ疑いがきわめて明らかになってきたわけでありますが、その点はいかがでしょうか。
  102. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 佐藤組のことはお調べいただいてありがとうございました。  千歳電気の話でございますが、昨日、質問の通告をちょうだいして私なりに事務所で調べてみまして、これは東中委員おっしゃるように、千歳電気工業が国の仕事をやっておる、これは明らかでございます。したがって、この間の御指摘の届け出については、公選法百九十九条の疑いがあるという御指摘については、それは私もよくわかりました。  そこで、これはそのままですとこの関係者にいろいろ影響が出ますので、ひとつ私に一応の説明をさせていただきたいと思うのです。  それは、この千歳電気工業の当時の専務の沢田寿延さんというのは、私と出身地を同じくいたします島根県能義郡広瀬町の出身で、出世をしてこの会社の専務になったのであります。そしてこの選挙は、この前申し上げましたように、私は幹事長として選挙区の方へ帰ることがほとんどできずに、その間にこの同郷の沢田さんが選挙事務所を訪ねて、そして二十万円を、これを先生に上げてくれと言って去られたそうであります。それをそのまま出納責任者はこれを選挙のためにお届けをいただいたものとして届け出た、こういうことがあの報告書に記載されておるわけでございます。  ただそれだけのことを、その経緯を申し上げておくことは、その専務さんの連絡によりますと、自分はその当時この会社からその金をもらっているものではない、私は自分として行ったのだ、そのときに千歳電気工業の専務の名刺を付しておったのでそのようにおとりになったのではないですか、こういうようなことも言っておりますかち、したがって、この事実は、御指摘のところはもうすべて私はきょうはかぶとを脱いでおきます。しかし、いまのことだけ言っておかぬと、後、問題が残りますから、以上の説明だけはしておきますから。
  103. 東中光雄

    東中委員 もう一点、これは選挙部長に聞いておきたいのですが、百九十九条なり二百条なりの違反の罪というのは、そのほかにも若干ありますけれども、いわゆる犯意がない、認識がないという場合であっても公選法の二百五十条によって処罰されるという特別な規定がありますね。選挙部長の出しておる本によりますと、これは千三百九十九ページから書いてありますが、「本来選挙犯罪は過失犯は処罰しないことを原則とするものであるが、百九十九条や二百条の違反の犯罪については、過失を理由として免責を認めていては、選挙運動費用を規制しまたは寄附行為を禁止しようとする法律の目的を達成することに支障を来すから、過失でも重過失であれば処罰するのだ」、現にそういう規定があるのです。その点は選挙部長、間違いないでしょうね。
  104. 大林勝臣

    ○大林政府委員 寄附の問題につきまして、これは昭和二十三年以来こういう規定になっておるわけであります。従来から寄附する側あるいは寄附を受ける側それぞれにつきましていろいろな要件がございまして、こういう要件を持っている者は寄附してはいかぬとか寄附を受けてはいかぬ、こういうふうになっております。逆に言いますと、寄附を受ける側にとりましては、相手がよくわからないではないかという場合もまたあるわけであります。したがいまして、寄附を受ける側についての罰則というのはおかしいではないかという議論も従来からあったわけでありますが、しかしながら、寄附をする側と受ける側とやはり両方規制をしておかないと法律体系としてはぐあいが悪いだろう。そうかといって、過失によってそれを犯した者全部を処罰の対象とするというのはこれまた大変なことである。したがって、重大な過失については処罰の対象とするという程度に現在の法律がなっておるというふうに聞いております。
  105. 東中光雄

    東中委員 だから、普通の犯罪と違うんだ。これは知らなかったんだとかなんとかと言って逃げやすいから、それではしり抜けになってしまう。だからこそ、いわゆる故意犯でなくても、過失犯でも重過失なら処罰する、こういうことになっている性質のものですから、それだけに何か届け出の間違いだとかなんとかというようなことあるいは法律を知らなかったからというようなことでやったんでは、選挙資金あるいは政治資金というものの規制ということから、特に一般の選挙規定とは違う、選挙犯罪と違う、わざわざ過失犯も処罰するという規定になっているのだということだけははっきりと御認識を願って、総理、こういうことについて、逃げも隠れもせぬ、調べを受ける、こうおっしゃったんですから、総理自身を調べると言っているわけではないですよ、この出納関係についてやはりはっきりとすべきじゃないか。あのとき、二年四カ月前のときにはそう思っておったけれども、いま国会で問題になったからあれを思い返してみるんだというのは、これはおかしな話なんですね。だから、責任者が選挙運動に関する寄附だとそのときは思っておった、ずっと先になって、二年四カ月もたってからこれはおかしかったと言って、それで何か選管と相談をする、これはどうも趣旨からいっておかしいように思いますので、その点を姿勢を正していただきたいというように思うのですが、最後にいかがでしょう。
  106. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど申し上げたとおり、盛岡の現地でいろいろ取り調べ等もあるのではないか、こう思っております。
  107. 東中光雄

    東中委員 ファントム関係についてお聞きしたいと思っておったのですが、ちょっとどうもなりませんので、この問題は重要でございますので、ぜひ次のしかるべき集中審議なりをやらしていただくようにお願いをして、私の関連質問を終わりたいと思います。
  108. 栗田翠

    栗田委員 次の質問に入りますが、時間がほとんどなくなってしまいました。  それで、厚生大臣に伺いますが、いま行革が進む中で特に福祉、教育の予算などが大きく削減をされているわけでございます。この中で、二百万近い子供たちが保育所にいま入っています。この保育所の問題が、所得税減税がないことなども含めて、保育料金それから保母さんの定員の問題、また入所の問題など、最近はさまざま矛盾が激化しているわけでございます。  そこで、厚生大臣に伺いますけれども、保育所は児童福祉法によって保育に欠ける子供は措置しなければならないと義務づけられている施設ですけれども、現在、国が保育所に出している予算、特に児童一人当たりに国が出している国庫負担金と、それから公立の幼稚園の児童一人当たりに公的に出している――もうちょっと言い直しますと、保育所に入っている子供一人に出されている公的な負担金と、それから公立幼稚園に出されている公的な負担金と、どちらが多いとお考えになりますか。また、どちらが多くあるべきだとお考えになりますか。――厚生大臣に伺っているんですが。
  109. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 昭和五十六年で申し上げまして、これは年齢によりましてそれぞれ単価が違いますけれども、仮に四歳以上の子供をとりますと、これの保育単価は二万九十二円でございます。それのうちで国及び地方で負担をいたしております割合はその五六%、こういうことに相なっているわけでございます。幼稚園につきましては文部省の所管でございますので、私から申し上げられますのは、幼稚園と保育所はそれぞれ機能が異なるわけでございまして、幼稚園は四歳、五歳の子供を対象にいたしますし、保育所はゼロ歳から五歳までの子供を対象にいたしております。また、時間にいたしましても、保育所は八時間保育というのが原則でございますが、幼稚園は四時間といったようなこと、あるいは保育の内容についても異なるわけでございまして、一概の比較は意味がないもの、かように考えます。
  110. 栗田翠

    栗田委員 時間がありませんから、私は資料に沿ってちょっと申し上げますと、これは文部省の文部統計要覧及び厚生省が出してくださいました資料に沿って、お出しいただいたのが、比較できるものは五十四年しかないのですけれども、実績を見ますと、公立幼稚園児童一人当たりの単価、平均年間二十五万六千八百五十三円、ところが親の納入金三万三千四百四十九円、公立幼稚園の公的負担は一年間で平均しまして二十二万三千四百四円出ております。ところが、何と保育園の方は四、五歳児でその実績を平均いたしますと一人当たり三十万五千三百六十七円、保護者の納入金が十二万八千四百三十九円、公的負担が十七万六千九百二十八円になりまして、いま何と保育所に入っている児童一人に対する公的負担の方が公立幼稚園に入っている児童一人に対する公的負担より少ないのでございます。ついにこれは逆転いたしました。それは、いま実績で申しましたが、国の単価でいっても、やはり公立幼稚園と保育園では、保育園の方が児童一人当たりで少ないという事態にいまなっております。  なぜこのようなことになってきたのか、これは年々、所得税減税がされないために、保育料金のランクがどんどん税金の額によって上がっておりまして、数年前に保育料金が、これは保育料金、ABCDの階層に分かれているのですけれども、D2ぐらいのランクだった方がDの5ぐらいになってしまっている。ぐんぐん上がっているわけでございます。現在、一カ月の夫婦で働いている収入が十七万円、たとえば夫十万、妻七万ぐらいの収入の方が税金を五万四千三百円ぐらい払っておりまして、その保育料金D4ランク、何と三歳未満児ですと一万五千九百円払っております。これは資料を全部つくってまいりまして、所得の全部引かれているいろいろな控除も計算していきますと、まさにこのとおりになっているわけでございます。一カ月の保育料負担が、月の手取りにして考えますと一〇・六%、年間七・四%という重い状態になっているわけです。  私、本当はこの問題をずっと詳しく資料に沿って伺っていきたいと思ったのですけれども、非常に残念なことに時間がございません。いま総理大臣なども、幼児からの保育ということが非常に重要だということをおっしゃっておりましたけれども、この所得税減税がない中でどんどんと自動的に上がっていく保育料金、こういうことを考えてみまして、五十七年度の国基準の保育料金を下げるべきではないだろうか、少なくとも据え置きにするべきではないだろうかと考えますが、この点についての大臣の御見解を伺いたいと思います。
  111. 森下元晴

    ○森下国務大臣 乳幼児の教育につきましては、これは非常に大切な問題でございまして、特に御指摘ありました負担の問題この問題につきましては、厚生省といたしまして、例年、保育内容の改善、保護者の負担能力、これを勘案、改定しておりまして、今後とも無理のないような改定を行っていきたい。ただ問題は、地方の単独の負担の問題がございまして、おっしゃいましたように、一概に国だけでは取り決められない問題が残っておることは事実でございます。
  112. 栗田翠

    栗田委員 あと一問だけ質問させていただきたいと思います。  所得税減税がないということは、所得税の負担がふえるばかりでなく、実は社会福祉施設のいろいろな料金も、これは全部応能負担で所得税で決まりますので、減税がないとどんどん自動的に上がっていくわけですね。こういう問題。それから、国保税その他の料金も上がってまいります。そういう二重三重の負担があるという、これがいまの実態で、大蔵大臣、ここまでぜひ所得税減税の影響というものに目を向けていただきたいと思うのです。  いま消費支出が減ってきていますけれども、財政再建という立場からも所得税減税はどうしてもいまやっていただきたいと思うのですが、その点について、こういう保育料金などまでが上がっていく問題を含めてお考えを述べていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  113. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 所得税は累進構造になっておりますから、所得が上がれば税が上がるということは、これはもうやむを得ないことであります。しかしながら、毎回言っているように、幾つかの条件が重ならなければ現在所得税減税ができる状態でないということは、かねがね申し上げておるとおりでございます。
  114. 栗田翠

    栗田委員 ただ、私いま申しましたのは、単に税金が上がるだけでなく、社会福祉施設などの料金までが上がるということですね。このことについては配慮していただきたい、そういうことについての対策を十分考慮していただきたいということを含めて伺ったので、その点をちょっとおっしゃっていただきたい。
  115. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 社会保障関係でいろいろな所得制限というものもございますが、これも所得が高くなれば制限を受けるというような、そういう仕組みになっておるわけでございます。したがって、いろいろな、保育所等でもその段階を幾らの所得の者は幾らまでというふうに直すことは、それはあり得るでしょう。それは所得税の問題ではございません。
  116. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて栗田君、東中君の質疑は終了いたしました。  次に、木島喜兵衞君。
  117. 木島喜兵衞

    ○木島委員 総理は、最初の施政方針の中で「青少年の心をむしばむおそれのあるような社会環境を改善しなければなりません。」あるいは「覚せい剤等の乱用が蔓延し、犯罪が頻発するような社会にならないよう」というようなことがお話にありましたけれども、そういう社会環境、そうならないような社会の中で一番気をつけなければならない、一番大事なものを何だとお考えになっていらっしゃいますか。
  118. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 施政方針演説であの問題を取り上げました際に、いろいろ内部でも議論をいたしました。その際に、幼児教育ということも一つ大事な問題として取り上げなければならない、幼児の時期に人間の品位の基礎、基盤が決まってくるというようなことで、乳児時代から家庭あるいは学校、社会、そういう人間形成に必要なよりよい環境をつくるということに力を入れなければならないということで触れたわけでございます。
  119. 木島喜兵衞

    ○木島委員 学校や家庭や社会とおっしゃいました。たとえば社会で言うならば、金権体質という言葉が古く言い古されております。けれども、それにかかわる、その病根にかかわる事件が起こりますと、とかくその事件というものは、特殊な社会における特殊な人の特殊な事件として扱われる可能性が大変強くて、そのために、いま総理大臣がおっしゃいましたように、その社会の根本にある病原に対してメスが入らない、そういうことを一般にお感じになりませんか。
  120. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 現代社会は非常に複雑多岐でございまして、また大変生活環境が厳しい、俗な言葉で言いますと過当競争、こういう感じがするわけでございます。それは職場におきましても、学校の受験等におきましても、スポーツ界におきましても、あるいは芸術界におきましても、いろいろな分野で非常に激しい競争が行われておる。ここで勝ち抜いていくというために、とかく手段を選ばないという、利用できるものは何でも利用して、そして、その競争に勝ち抜いていこう、こういうことが往々にして行われるわけであります。そういう際に金銭もまた一つの手段としてそれが使われるということが往々にしてあるわけでありますが、私は、そのような社会は好ましくない社会である、そういう環境は是正しなければならない、このように考えています。
  121. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま最後に、いろいろな手段の中に金がというお話がございました。かつて社会学者のマックス・ウェーバーが、資本主義がだんだん発達していくと精神のない分業による専門家あるいは情操のない享楽人が生まれると言いましたが、まさに今日そういう傾向をお感じになりませんか。
  122. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そういう風潮、そういう傾向、まさになきにしもあらずという感じがいたします。
  123. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そこで、まずスポーツ界から入りましょう。  文部大臣、甲子園に三回出場しております、そして、ときにはベストエイトにもなったことのある野球の名門校である大分県の日田林工が、昨年の十二月二十一日に野球部を解散いたしました。これは多くのいろいろな問題を含んでおりますけれども、その直接の原因は何かといいますと、Aというエースが阪神タイガースのドラフトの一位に指名をされた。それは学生野球憲章からしますと問題が出てまいりまして、彼は佐賀県の人間でありますが、大分県に入りました。そして、大変なスカウト合戦がありまして、まあいろいろうわさがあります。金が渡ったのではないかとか、いろいろありますが、少なくとも明らかになったことは、学生寮、野球寮に入る寮費が三年間免除されたことが明らかになったために、野球部は解散をすることになりました。  この問題ではいろいろな問題がありますが、私はもうこの問題を追及するつもりはありません。しかし、この種のことは今日高校野球の中においてはほとんど常識化されておるのではないか。常識化されているにかかわらず、それにメスが加えられることなくして、そして、こういう事件が起こると、特殊の学校の特殊の人間の特殊の事件としてその事件だけが終わっていってしまっておるのじゃないのか。こういう事実をいままで御存じになっていらっしゃったのでありましょうか。そのことだけを最初にお聞きしましょう。
  124. 小川平二

    ○小川国務大臣 ただいま仰せのことにつきましては、私もかねて概略のことを聞き及んでおります。
  125. 木島喜兵衞

    ○木島委員 概略のことを知っておって、それで放置していいということにはなりません。しかし、それはもう追及しません。  ただ、それではこれが野球だけなのだろうか。他のスポーツにこういう状態がないだろうか。これはいわば学校教育の一環としてのスポーツが、そのある選手が金によって買われたということです。その学校の名誉のためとかあるいは勝利のために、金によって買われたということであります。  たとえばバレーなどは、大きな企業がバレーチームを持っておる。その企業が全国の高校の優秀なる選手に目をつけて、そしてそれを、多くは私立でありますけれども、私立高校に入れる。その入れるのに金が出る。そして、そのことは、その高校を出た後にその企業のチームに入るという約束であります。これはまさに人買いであり、企業の奴隷であって、準義務教育化と言われるところの高校教育に対しては大変問題があると私は思う。この事実を御存じであるか、同時に、このことに対してどのように対処なさいますか、お聞きいたします。
  126. 小川平二

    ○小川国務大臣 有望な新人を発掘いたしますためにスカウトが行われておる。スカウト自体に問題はないと存じまするが、これが金で買われるというようなことがございますと、それによって本来明朗でなければならないスポーツが毒される、教育に及ぼす影響も非常に大きなものである、こう考えております。  根本的にはスポーツ関係各種団体の自粛にまつほかない問題でございますが、文部省といたしましても機会あるごとにこの問題に対して注意を喚起してまいっておるわけでございます。これからもそのつもりでまいるつもりでございます。
  127. 木島喜兵衞

    ○木島委員 先ほど総理大臣がおっしゃいましたように、金によってスポーツ界が左右されておるという一つの例を申し上げたのでありますから、私はこの事件を深追いするつもりはありません。ただ、いま大臣は、いわば自浄作用ということをおっしゃったのだと思うのであります。賛成であります。  たとえば先ほどもお話がございましたように、青山学院等私立大学の不正入学等は、これは私立であるから余り公権力の介入は好ましくない。とすれば、大学の自浄作用、私立大学によるところの自浄作用をどう高めていくかというところが、文部省が一番重視しなければならない政策中心だと思うのであります。そういうものがなかなかないものでありますから、まさに常識のごとく私立大学の不正入試ということが言われながらも、起こったときの青山なら青山、早稲田なら早稲田という特殊の学校の特殊の人たちの特殊の事件として葬られていく、常にメスが入ってないということになるのではないかと思うのであります。  そういう問題では、たとえば金に左右されるところのスポーツということで言えば、これは確かにアマとプロの限界というのはなかなかむずかしくなってまいりました。そのことは私はきょうは言いません。しかし、アマの総本山であるたとえば体協にいたしましても、競馬、競輪、オートレース、モーターボートのああいう四大ギャンブルから成る資金を得ていますね。資金を得ているものですから、たとえば幾つかの競技団体が加盟を申し込んでおります、しかし、加盟の規定に満たないからといってできておらないのでありますけれども、その加盟の規定に満たないところのたとえば全日本空手道連盟は、会長が笹川良一氏であるがゆえにこそ、申請後二カ月でもって加盟が承認されております。これはアマのスポーツの総本山である体協そのものが、金に左右されておると言われてもいたし方ない問題でありましょう。あるいはその体協加盟の各競技団体にいたしましても、ことに球技などが多いのでありましょうけれども、スポーツ用品、用具の公認の検定料で資金を賄っておる。これは実際にはその検定をしておらない。業者任せであります。したがって、いわばそれが小売値に乗せられますから、それを使用する国民からするならば、スポーツ税を取られるというようなものであります。これは追及いたしません。  そういう意味では、スポーツ全体がまた金に左右されているということの一つの例を申し上げたのでありますけれども、私はそのことを言いませんが、少なくとも私は、もうここまで来ると、スポーツ省なりスポーツ庁なりがつくられて、これほど国民の中に浸透したのでありますから、もう一回スポーツ界というものがそれらのことを洗い直さなければならぬと考えますが、御答弁は要りません。  次に、音楽界の問題に入ります。  昨年暮れから芸大のガダニーニの問題が大変問題になりました。この事件では、擬装盗難絡みの保険金詐欺や鑑定書の偽造事件あるいは贈収賄事件、背任、横領、脱税等の問題がありますけれども、これも私はいま事件を追いません。ただ言えることは、芸術というものは自己の表現であります。自己に誠実であり、自己を誠実に表現するのが芸術であるのに、もし仮に金に左右されておるとするならば、それは芸術は芸術たり得ないのではないか。ところが、このガダニーニの問題は、単に芸大だけの問題ではなくて、この問題は古くからもはや常識的に言われていることであった。なのに、これに対するところのメスが入っておらない。そして、繰り返しますけれども、芸大という特殊な学校の、そして特殊な海野という人の特殊な事件として処理されながら、音楽界全体へのメスというものが入らないのじゃないのか、そこを私はおそれるのです。だから、事件は追わないのでありますが、大臣、これはもう常識だったということは御存じでございましたか。
  128. 小川平二

    ○小川国務大臣 芸大におきまして現職の教官が逮捕され、次いで起訴される、まことに慨嘆すべき事態が生じております。芸大においては深刻に反省して対応を考えておるわけでございますが、ただいま仰せのとおり、いわばこれは一つの病理現象であって、根本にやはり今日のことごとくを金銭の尺度ではかろうとする価値観、あるいはまた、ひたすら物質的欲望の追求に走る倫理性を欠いた昨今の風潮ということに根本的な原因がある、これまた仰せのとおりだと存じます。  かねてからこの種のうわさを、民間においていろんな問題があるということは耳にいたしておりますが、根本は、そういう風潮を是正しないことにはなかなか根本的な解決は期待できない、かように考えております。
  129. 木島喜兵衞

    ○木島委員 入学謝礼だとか毎年の盆暮れの謝礼、卒業謝礼、ホームレッスンの謝礼、楽器あっせんの謝礼等、これはもうずっと言い古されてきたのであって、これは単に芸大だけではありません。百十五校の、短大を含めた音楽大学の中に常に言われてきたことであります。たとえば、有名な話で、ホームレッスンの謝礼をある教授が、お礼は物にしないでください、金にしてくださいという張り紙を出したという有名な話、あれは十数年前ですよ。同じ十数年前で言うならば、あの学生紛争のときに、団体交渉でこれらのことがすべてことごとく指摘されておる。だのに、これが今日まで放置されてきて、そして、いまガダニーニ問題でもってこれが特殊な事件として葬り去られていいんだろうか。  いま大臣は、いろいろ反省をというお話がございました。確かにそうです。たとえば入学前の個人指導はやめよう、これはまさにそう言われればそのとおりであります。いわば、芸大に入るなら芸大の先生が試験官になるわけでありますから、それを個人指導するのは、それは入試問題の漏洩事件と同じような感じがしますからね。それは結構です。しかし一方、国立の唯一の芸術家養成機関というものは、日本の国を背負うところの音楽家を見つけたいというなら、音楽というものは若いときからやらなければならぬわけでありますから、そういう使命感に燃えておれば、それは金銭とかそういうものにかかわりなく育てるでしょう。こういう矛盾というものがそもそもあると思うのです。これ、どうお考えになりますか。
  130. 小川平二

    ○小川国務大臣 仰せの点は多分に同感でございます。音楽の教育、ことに実技を習得させる場合には、個人対個人の個人レッスン、不可欠と申してよかろうと思うのでございます。そこで、今回芸大があのような決定をいたしましたことについて、教授の間にも批判がある、あるいは世間で、これは角を矯めて牛を殺すやり方である、牛の角は本来曲がっておるのが正常な姿なんで、音楽の場合、個人レッスンは牛の角である、このような批判も出ております。確かに一つの問題点であると私は考えております。しからば、いかようにしてこれに対処するか、うまい考えも浮かばずにおるというのが正直のところであります。
  131. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いまの問題、どうしたらいいか、いい考えが浮かばぬというお話でございますが、芸大もいろいろ苦労をしておるのですよ。たとえば昭和四十五年から、入学願書には中学卒業後から受験までの間に実技を指導されたところの教官の名前を書け、というのは、それがたまたま芸大なら芸大の教官である場合には試験官からそれを外す、その点数から外すと、努力をしているのです。しかし、それが守られるかというと、なかなか魅力あることですから、虚偽の記載も出てきますね。  ですから、こういう決めをしたからというのじゃなしに、こういうものを解決するためには、たとえば体操の競技は、最高点と最低点を除いて平均するのですよね。採点のとき、ソ連とアメリカとなると、やはりソ連はソ連の点数をよくしたいし、アメリカにはなるだけ低くつけたいとするでしょう。逆のこともあるでしょう。最高点と最低点を除いて点をつけるというようなことも一つの例でありますが、そういう基本のところにメスを入れないで、やめましょうということだけでは私は解決しないだろうということの一つの例として申し上げておるのです。  教授会は、当分の間ホームレッスンをやめると言う。おっしゃるとおり、まさに芸術教育というのはマンツーマン、個人指導が生命であります。ただ、じゃ夜うちまで行って習わなければならぬというのは、これは一体、大学という名のついておるものというのでは、ちょっと変なんですね。そうでなければ実力がつかぬで卒業できないんだと言えば、どの大学だって学校の中で一定の授業時間の中でやるものであって、うちまで行かなければ卒業する力がつかないというのは、これは異常ですね。だけれども、芸術教育においては個人指導は生命なんです。  だから、そういう意味では、もし原則的に、学校でどのくらい時間が必要なのか、それがなぜできないか、できないならばそれは教官をふやせばいい。他のカリキュラムの関係でもって教官だけでだめなら、私はむしろ、医学部が六年制であるごとく、芸大は六年制の、二年延長の制度にしてもいいんじゃないか、そういうことをすべて考えないと解決しないのじゃないかという感じがするのですが、いかがですか。
  132. 小川平二

    ○小川国務大臣 個人レッスンを禁止することが問題の根本的解決にはなり得ないだろうという御意見には、多分に共感を覚えるところがございます。そこで、教官の数をふやせばあるいは教育年限を延長すれば、あるいは根本的な解決になるかもしれませんが、今日のようなこの財政状況下で、これはなかなか簡単にできないことであろうかと思います。  いま、スポーツの国際、国内の競技においてやっておりますように、最高点、最低点を無視するというやり方を導入したらどうかという御提案でございます。これは確かに一つの解決方法であろうかと考えておりますので、当面、文部省といたしましては芸大の対応を見守っておるわけでございますが、文部省としても研究をさしていただきたいと思います。
  133. 木島喜兵衞

    ○木島委員 芸大の先生方は、教育者と同時に芸術家でありますから、ホームレッスンがなくなれば、それだけまたその人の芸術が成長することができる。同時に、先ほど言いましたように、いま音楽大学出というのは、毎年一万人出るのですね。器楽では三千人なんです、短大も含めて。皆さん、演奏活動するには、大変狭いものでありますから、四年ではなかなかすぐに演奏家になれないものでありますから、したがって、みんな大学院を希望する。希望するけれども、定員が少ないものですから、したがって入れない。そんなものですから、勢い外国へ行ってだれだれに師事し、何々コンクールに入賞でないとだめになる。いわば、そういう意味では、まさに国立の唯一の芸術家養成の機関が外国へ行くところの予備校になっているんじゃないかとすら考えるほどであります。そうなれば、外国に行けるという金持ちでなければ芸術家になれないという、音楽界も金次第ということになるのだろうか。まあ多くを語りませんが、そういうことを含めて、私は年限の延長というものを強く主張するものであります。  大臣、これは芸大の話と別ですが、音楽コンクール、これは日本の音楽家の新人の登竜門でありますけれども、このコンクールが行われる前に上位入賞者が決まっておるといううわさがずいぶん前からあります。これは何によるのでしょうか。どうお考えになりますか。
  134. 小川平二

    ○小川国務大臣 そのようなことがあるといたしますと、これはまことに不明朗な、いとうべきことだと考えるわけで、よって来るところが何であるかという仰せに対しては、ちょっとこれはお答えいたしかねます。
  135. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私も時間を見ながらしゃべっているものでありますから省きますけれども、一つは、音楽界というもの、これは美術界もそうでありますが、一つは、家元制度と一言に言われますけれども、私は疑似家元制度だと思うのです。お花やお茶と必ずしもイコールじゃありません。そういう意味では、疑似ということで言えば日本棋院も諸道館も、たとえば実力がなくても碁の段を金でくれるじゃありませんか。差し支えありますか。(「僕は五段だ、実力は六段だよ」と呼ぶ者あり)あなたは実力があるから、そういう意味ではいいのでしょうが、しかし、いずれにしても実は家元制度の幾つかのピラミッドがある。ですから、コンクールなど、その家元の権威を高めるために一種の談合が行われる。だから、事前に決まる。これは、私は家元制度全体を否定するつもりはありません。これは先ほどから繰り返しますけれども、芸術というものは個人的な関係でありますから、そういう関係が出ますけれども、実力と無関係な、金によって左右される芸術というものの一つの制度である点は、そこに全体としてメスを入れなければならないと思うのであります。そういうことではいろいろ問題がありますけれども、時間の関係で先へ行きます。  同じように、美術界においても、たとえば日展を初め多くの公募展では、審査員の持ち株制度のように上位入賞者が事前に決まるといううわさもまたあります。私はうわさと言っておきます。そのうわさというのは、大臣、日展タクシーという言葉があるのです。私は見たことがないのです。御存じですか。
  136. 小川平二

    ○小川国務大臣 初めて承る言葉でございます。
  137. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私も知りません。けれども、日展タクシーという言葉が前から私の耳に入っているということは、きっと火のないところに煙は立たぬのだろうと思うのでありますけれども、これは、私なら私が日展に出そうとすると、そのタクシーは各審査員を知っておる。格づけを知っておる。それで家に車をつけて、運転手に頼むと各審査員の家を回る。そして、御批判をいただきたい、そうすると、その格づけを知っているから、ここは先生、幾ら批判料を出しなさいと言うわけ。それで入るということです。これもうわさです。だが、そういう特殊な言葉が出るということは、まさにこれは金によって美術が左右されるということの証左ではないのか、これが芸術と言えるのか、こういうところにメスを入れずして、日本の芸術が、文化が栄えるわけがないじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  138. 小川平二

    ○小川国務大臣 仰せのようなうわさを雑誌等で見ないわけではございません。そのようなことがあってほしくないと願っておりますが、芸術院におきましてはかねてから申し合わせをしておると聞いております。(木島委員「まだ芸術院の話をしていないんだ」と呼ぶ)  それでは、後刻改めて……。
  139. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いままだ私は公募展の話ですから……。  金による美術の問題では、一つは、画商とかその他の問題もあります。たとえば美術年鑑というのが十種類ぐらいあるのじゃないですか。これは画家の値段が出ているんですよ、号幾らって。ところが、掲載料によって額が変わってくるんだよ。私がもし画家だとすると、少し金をよけいやると、私が号一万円だとしても、これは五万円になる。それは十冊全部出せば私は五万円だということになるわけ。それを私は渡辺大蔵大臣に、おれは五万だけれども――本当は一万だけれども、三万にまけてやると言うと、渡辺大臣は、ああこれはもうけものだと買うわけ。  これはなかなか困難な問題だけれども、こういうこととか、あるいは画商の贋作売り、これは元財界出身の大物政治家――小坂さんじゃありませんよ、大物政治家にルノアールを、その画商は贋作であることを知って売りました。それが盗難に遭った。そのとき画商は、贋作だということをみんな知っておるものだから、出なければいい、出なければいいと言っておったのでありますけれども、出てきちゃった。大変誠実な方でありますから、世間を騒がして申しわけなかったからと言って、国立の西洋美術館へ御寄附なさいました。けれども、西洋美術館は、それが贋作だということを知っているから、今日倉庫の中に贋作の参考品として確保されておりますけれども、そういうことというのは、たとえば画商が展覧会をやる、即売をやる。そういうものの外国の品物の中には非常ににせものが多いと言われております。これは大変困難だけれども、一体どうするか。私は、やはり文化行政として根本にメスを入れなければならぬだろう。  私は、結論を申します、時間がありませんから。やはり資料センターというものを整備する必要があります。たとえば、日本の美術の場合だって、かつて昭和三十四年でありますが、文化財保護委員会は鎌倉時代の「永仁のつぼ」を文化財に指定しましたけれども、これはわが党の高津元議員が指摘して、これはにせものだと。昭和の陶工の加藤唐九郎の作品だということがわかりまして、解除しました。もし外国から日本美術に対する照会があったときに、日本の文化財保護委員会が鎌倉時代と昭和の時代を間違えるということは何かといえば、これは資料がないからです。しょせん真贋は資料に基づくわけでありますから、それがないのでありますから、外国から照会をされて権威あるところの回答ができるわけがない。かつて西洋美術館がルグロという画商からロダンの「ロンドンの橋」、ジュリーの「アンジュ湾」という二枚の絵を買いました。これはまたわが党の小林武参議院議員が参議院で、にせものじゃないかと。そのとき大変な努力をして外国に照会をしたのです。けれども、そのことは、いまはにせかどうかはわからぬけれども、かけてありません。参考品として倉庫の中にあります。照会するときに、一定の権威あるところの資料に基づいて、そして、わが国の一定の見解を述べて照会するならいいけれども、そうはならない。資料がないからです。この資料センターというものを、今日ある国立の美術館のどこでもいいですから、そこに併置をすることによって基本的な解決の糸口にせねばならぬじゃないかという感じがします。ことにこのごろ、県立美術館等がちょっとブームの感じでしょう。これはその美術館の中におけるところの、一点大作主義とわれわれは言っておりますけれども、何か目玉商品を外国から、大変たくさんの金をかけて入れておる。最近、大変新聞に出たものも、専門家の中には、あれはにせものじゃないかという説もあります。そういうものをどう正すかという基本の問題を解決しないと日本美術は一体どうなるのだろうかと私は懸念をするのです。  あと問題ありますけれども、やめておきます。  次に、学校教育であります。総理大臣、お眠りになると悪いからちょっとお聞きしますが、黒柳徹子の「窓ぎわのトットちゃん」は四百万部も売れたってね。お読みになりましたか。――ないですか。いや、いいのですよ。ないからと責めるつもりはないのです。文部大臣、どう、読んだ。――なぜ四百万部も売れたかというところが私は大変興味があるのです。あれは終戦直後、戦争中の学校です。なのに大変自由でした。個性が尊重されておりました。だから、のんびりしておりました。いまのようにがりがりびいびいしているのではないのです。だから「窓ぎわのトットちゃん」を読みますと、私ごとき国会の窓際族のおとっちゃんは、おじいちゃんか、そういう意味では大変郷愁を感ずるのでありますけれども、なぜ四百万部も売れたかということを考えると、総理大臣、どうでしょうか、いまの学校教育の中でもって一番基本的な問題点、問題たくさんあると思います、思いますけれども、一番教育の問題点は一体どこにあるのだろうとお考えになりますか。
  140. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いろいろな角度から見なければならないし、また指摘しなければならないと思いますが、私は師弟の情愛といいますか、教師と生徒、子供との間の心のつながり、情愛というものが教育の根本だ、そういう点が欠けておるのではないかという感じを強くしておるわけであります。
  141. 木島喜兵衞

    ○木島委員 おっしゃるとおりだと思います。ただ、情愛を込めて教師が子供に接しようとしても、それをさせないもっと大きな原因があるように思うのです。  いま日本の社会は、学歴によって構成されるから学歴社会とも言われております。すなわち、より上級の学校、より有名校、より一流校に入ることによってより高い地位につき、高い待遇を受ける、あるいはよりよき職場が選べる。そういうように学歴によって構成されておりますが、それがことに戦後の進学率の上昇によってなおさら入試競争を激しくします。入試競争によってそれを突破しなければ一流校に行けないわけでありますから、したがって高校以下の学校は受験中心の教育になりがちであります。受験教育中心になりますから、したがって高校は大学の予備校に、中学校は高校の予備校化のようになっていきます。したがって、それらの学校においては、少し図式的でありますけれども、テスト、テストを繰り返し、テストによって点数をつけ、点数によって順番をつけて、君はどこの学校へと学校の選別をするということになっておるのではないでしょうか。したがって、基本的な人間形成という教育の目的が果たせないのではないか。いま大臣は愛情だとおっしゃいました。情愛だとおっしゃいました。もし仮に私が教師だとして、情愛かけてゆっくりやったら、「窓ぎわのトットちゃん」のようにやったら、私の教えた子供たちは入試にきっと落ちるでしょう。そうしたら、父母から私は排斥を受けないでしょうか。そういうところに一番基本があるのではないか。その根底には、やはり国民の中に金が最高の価値だという価値観というものが定着しているのではないか、これが一番基本なのではないか、学校教育を荒廃せしめている一番の原因ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  142. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私が申し上げたことの背景には、木島さんおっしゃるような学歴社会、有名大学でなければ世の中へ出て出世をしないとか、そういうことが学校教育に対して大きな影響をもたらしておるということも事実であろう、こう思います。
  143. 木島喜兵衞

    ○木島委員 現在の教育の一番大きな欠陥がそこにあると仮にしますと、私はいろいろな問題が出てくるという感じがします。  ある中学生が図書館である参考書の一ページを破こうとした。そうしたらそれを係が見つけて、いま幾らでもコピーできるじゃないの、なぜ破くのと言ったら、この本は自分で持っているのです、ただこのところは非常に大事なところだから、私の同級生がそれを読んだらテストでいい点を取る、だから、これを破いて自分のクラスの子供に見せないという事件がありました。入試というものは競争でありますが、競争というのはやはり排他の思想を持っています。同級生をけ落とそうとする。社会の構成員をつくる教育でありますが、社会というのはいろいろな人間が集まって協力し、助け合う、それがしゃばであります。しかし、同級生という中で、その同級生をけ落としても自分だけがという、ここに社会の構成員になるところの資格が欠けると大臣思いませんか。文部大臣ですか。私、わかりました。じゃ総理大臣に限りません。ただ教育の問題ですから、すべての基本でありますから、何も文部大臣と私の問題でなくて、渡辺さんどうですか。ニューリーダー。教育は未来ですから、未来の方、どうですか。
  144. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 あなたのおっしゃることは、要するに、物質文明だけ進んで、そこにギャップができていろいろな問題が起きている、一言で言えばそうじゃないのか。これはやはり「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色」でいかなければならない。それが色即是色になっておるからおかしなことになってしまっている。道徳教育反対なんというのもその一つの原因であると私は思います。
  145. 木島喜兵衞

    ○木島委員 きのう各省の方々がいらっしゃいましたが、私が結論を申し上げたわけでありますからきっとおっしゃったのだろうと思うのでありますが……。  たとえば、これは非行、暴力と言われています。受験中心なものですから急がなければなりません。じっくりとわかるまで教えて――ついていけない子は残してもいかなければならない。だから、落ちこぼれか落ちこぼしかという言葉も出てくるのでありますけれども、そういう子供は先生に相手にされない。ですから、勢いそのうっぷんがときに積極的な子は校内暴力になるし、内気な子は登校を拒否したりあるいは家庭内暴力になる。いま今日の非行、暴力がすべてそうだと言うのじゃありませんけれども、そこに今日の受験中心の教育、学歴社会というもの、その背景には確かに大臣のおっしゃるとおり金が最高の価値という価値観があるものですからそこにいくのだと思うのです。  いま言ったとおり、入試のための教育というものは点数至上主義でありますから、どうしても宿題やあるいは塾に行くということが多くなってくる。だから、遊びを忘れます。集団的な遊びを禁じられます。餓鬼大将がなくなりました。あの餓鬼大将に象徴される子供の社会というのは、無意識の間に遊びの中で実は社会生活の原則を知っていくことだと思うのです。こういうものがない社会、この子供たちが大人になったときにその社会は一体どうなるのだろうかと私はいまの教育から憂うるのであります。  宮澤さん、官房長官、入試というのは過去の文化をより多く、より正確に覚えた方が勝ちますね。ところが、人間の脳というのは、脳のメカニズムは三歳まで六〇%、十歳で九五%、そして二十で大体メカニズムは完成する。後はいかにデータを入れるかです。すると、脳のメカニズムが完成する、そこまで記憶だけに使っておるものでありますから、創造の力がなくなります、つきません。それを一番よく記憶した人間が一番有名校、一流校へ入るわけです。その方が日本の指導者になり支配者になったとするならば、この国の未来に創造というものに欠けるおそれはないだろうか。これは単に学校教育だとかそれだけの問題じゃなくて、日本の将来というものをこの教育のあり方が左右しはしないか、私はそれを恐れるのですが、官房長官いかがでしょう。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のとおりだと思います。
  147. 木島喜兵衞

    ○木島委員 もうそういう質問はいたしませんが、いずれにしましても、学歴社会というものは歴史があります。徳川の終わりに黒船が来て、その刺激によって日本世界を見渡したときに近代がある。その欧米に追いつき追い越そうとして、そのために指導者の養成が必要だったから、したがって、そのために学歴社会というものが出てきたと思います。けれども、その欧米に追いつき、いま追い越さんとしているときに、明治の最初の学制の中でもってできたこの教育のあり方というものをいま直さなかったならば、一体日本の将来はどうなるのかと思うのです。  文部大臣、自民党の圧力によって中教審に教科書をかけるのもよし、あるいは六・三・三制の区切りをどうするかというのを考えるのもよし。けれども、区切りを直したところで基本的には変わらない。入試がある限り学歴社会は変わらない。これをどうするかということをいま日本が考えること、それは中教審であるのかあるいは文部大臣の諮問の機関としてもっと広いものであるかどうかは別として、そういうことを考えなかったら、――いま私はそのチャンスだろう、そうしなければならぬだろうと思うのでありますが、これは総理大臣でも文部大臣でも結構ですが、お答えをいただきたいと思います。
  148. 小川平二

    ○小川国務大臣 仰せはことごとく御同感でございます。学歴社会を打破する、また、よって来るところの非常に苛烈な受験競争の現状、これを是正するために及ばずながら文部省としても努力をいたしておるところでございます。
  149. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私、ずっといままで質問しながら、根本にメスを入れろ、メスを入れろと言いながら、私がそれではどうしていいかわからないようなことを聞いているつもりはないものですから、たとえばという言葉を使いながら、若干の対策みたいなこともしゃべりながら実は聞いておるつもりであります。  いま大臣も御同感とおっしゃいましたけれども、この学歴社会、そのことは入試があるから、そのために受験中心の教育になっていくところからいろいろな問題が起こると申しました。それの  一服の良薬というのはないのです、ないだろうと思う。けれども、少なくとも当面、たとえばこんなことはどうですかと思うのであります。  私、昭和五十一年、ちょっと古いのでありますけれども、あのときにちょっと調査をいたしまして、一つの算式をつくり出したのです。(1+0.3)×3.44=4.5これは何かと申しますと、一といいうのはその年の、現在でも大体変わりないのでありますが、高校からの大学受験数と大学の入学許可数がイコールなんです、同じです。その限りでは入試地獄はないのです。ところが、〇・三というのは、実は予備校、浪人です。一・三なんです。この一・三をどうするかという問題と、それに三・四四を掛けるというのは、実は平均して三・四四校の受験をしているのです。多いのは十二、三校受けているのがありますね。ですから、平均すると四・五倍の競争率になるのです。四・五倍から五十倍もあれば、定員に満たないこともあります。そういう算式を私は得たのです。ですから、それでは二つの問題があると思う。一つは、浪人をどうするか、すなわち高校からストレートに入らなくてもいいように、どうするかという問題。もう一つは、大学の格差、大学の数ほど格差があると言われておるわけでありますから、その大学格差をどうなくするかということ。これは大変むずかしいのでありますけれども、この二つを多少思い切ってかかったら、その問題の解決の糸口が出ないかと私は考えるのです。  そこで、浪人をどうするかというのは、先ほどちょっと申しましたように、すべてが十八歳の春にストレートで入らなければならない。入れないから浪人をする。そうではなしに、生涯のいつの日でも、たとえば、いまの大学生は多分に、どこでもいいわという、自己の適性を考えないで無目的進学が多いけれども、一たん職場へ出て、それで自分の適性を見抜いて、そのときに大学に入ればいい、入れる制度があったらいい。ところが、そのときは就職しておりますから退職しなければ入れない。だから、有給教育休暇というものをわが党は前々から主張し尽くしておるのであります。  今度放送大学ができます。放送大学ができますけれども、いままでの実験でもってわかっているごとく、教育の有給休暇がなかったら、三分の一がスクーリングでありますから、スクーリングに行けないのです。だから、どうしても、そういうことからも必要になってくる。とすれば、高校を出てストレートで入る人もあるでしょう。あるいは一たん職場へ行って、そこで有給ないしは無給であっても休暇の保障が得られれば、その数は大して多くないのですから、そうすれば〇・三が多分に解決すると思うのです。このことをやりませんか。  これは総理大臣かな、あるいは労働大臣ですか。労働大臣いらっしゃいますか。――これは一九七四年にILO百四十号条約でもってあるのですね。ところが、日本は批准していない。これに、はいろいろ理屈があるからいいです。しかし、批准をしなくたって、批准したところでもって国内法を変えなければいかぬですから、日本の可能な範囲でもってやるつもりはありませんか。これは労働大臣でも文部大臣でも結構です。
  150. 小川平二

    ○小川国務大臣 有給の教育休暇ということは非常に結構なことだと考えておりまするし、生涯教育という観点からもきわめて望ましいことだと存じております。  いまILOの条約についてお言葉がございましたが、私が聞いておりますところでは、これを実行する際に、労使不干渉の原則という観点から問題がある、そこで批准がなかなかできずにおるということのようでございます。労働省においては奨励金を支出するという方法で実質的に、実態的に有給教育休暇というところへ持っていこうという努力をなさっておると聞いております。もとより、このことは文部省限りで解決することができる問題ではございませんから、労働省のおやりになっておることの成果をも見きわめ、かつ労働省とも御相談をして対処してまいりたい。非常に望ましいことだと考えまして実現を期待しておるわけであります。
  151. 木島喜兵衞

    ○木島委員 この問題についてはいままで何回もやりましたけれども、一番積極的な御答弁ですね。ただ、私さっきも言ったのですが、ILOの条約を批准せいと言いますと、これは労働省もちょっと問題があると言うのです。けれども、そんなことを解決するまでの間にやはり深刻な問題が出てきておりますから、したがってILOの批准をしたところで国内法を変えなければならぬのですから、教育なら教育だけでもって考えて手をつけていくということを要望しておきます。  それからもう一つは、どう大学の格差をなくするか。格差があるものですから一流校、有名校に行くわけですから、それがなければもう入試地獄なんてないのです。これをどうなくするか。これは確かに歴史があり、非常に困難な問題です。第一、国立大学の中でもってずいぶん格差があるのですからね。だけれども、たとえば、すでに文部省もやっておるのでありますけれども単位互換制度、これをおざなりでなくて、とことんやってみてはどうでしょう。  たとえば、小川文部大臣が東大の政治学の教授だとして、私があなたの教え子でもって、私は名もなく清く美しい大学の教官をしておるとしましょうか。私は、私の教え子に対して教えておる政治学なら政治学を先生と連絡をとって、このレベルならば政治学は東大の単位に値するといって東大の単位を取ることができる。同じ子供が、経済学なら経済学を九州大学に、何々なら京都大学に行って取ったときに、そうなればその学生は私の大学に籍を置いたところで、単位は東大から取り九州大学から取り京都大学から取り、でありますから、私の名もなく清く美しい大学の卒業生にはならない。とすれば、それは固有名詞のない、大学を出たという大学卒業証明だけになる、とことん思い切ってやれば。  いまもやっておるのです。だから、やってないと言っているのじゃありません。大変おざなりである。これをもっと徹底的にやったら、それでもってすべてが解決と言っているのじゃありませんが、少なくとも緩和するのじゃないだろうか。これが今日、繰り返して言いますけれども、教育が荒廃している、荒廃していると言われる一番基本がそこにあるとすれば、その解決として、私は具体的にいま一つ二つの例だけを言ったのでありますが、大臣いかがですか。
  152. 小川平二

    ○小川国務大臣 単位互換制度は、今日の受験競争を緩和する、そのために大学間の格差を減らしていくという点で、非常に役立つ制度であろうと存じております。  一口に申しますと、ただいまようやく緒についたという段階でございましょう。大学院間の互換あるいは日本と外国との間の単位互換は相当に進んでおるようでございますが、大学同士の単位互換というのがなかなか進まずにおる。とかく有名校の単位を取ろうということになるようでございまして、具体的な例を引いていかがかと存じますが、北海道大学と小樽の大学との間を見ますると、北海道の単位を取りたいというのが十二人に対して、逆に北海道の学生で小樽の単位を取りたいというのが一人だけというような、なかなかむずかしい問題も出てきておるようでございます。しかし、これはいろいろの困難があろうとも、ぜひ努力をして物にしたい制度だと考えております。
  153. 木島喜兵衞

    ○木島委員 以上、私は、体育とかあるいは音楽とかあるいは美術、学校教育におけるところのこれらの問題点指摘しながら、これらの幾つかの問題というのは、さっきから繰り返して申しますけれども、根本にメスが入れられないで、ややもすれば特殊な事件として扱われているところに、事件が生ずべくして生じておるという感じがするわけです。  ですから、私は先ほどから言うのでありますが、若干の提案であるけれども、たとえば、こういうところにメスを入れなければということも申し述べつつ言っているつもりであります。学校教育の問題等では、わが党は数年前に、国際シンポジウム等でもってこのことを中心にしての政策も発表しておりますけれども、いま私は、当面このことぐらいやれないかということだけを申し上げておるのであります。しかし、そういう社会の根底にあるものは何かと言えば、さっきもちょっと触れましたけれども、金が最高の価値だという価値観が国民の中に根づいておることが一番大きいのではないか、そのために芸術も体育も毒されているのではないのか。  もちろん私は、金が要らないと言っているのじゃありません。金は絶対に必要であります。しかし、金は手段であって目的ではありません。だのに、この手段である金が目的のごとくなっておるところに、社会のいろいろな問題点が出てきているのじゃないだろうか、私はそんな感じがするのですが、それを先ほど大蔵大臣がおっしゃったことと理解してよろしゅうございますか。お聞きになっていらっしゃるかどうかわかりませんが、うなずいていらっしゃるから、そういうことにしましょう。  では、これは総理大臣に聞きましょうか。じゃ、そのような金が最高の価値という価値観が、どこからどうして生まれてきたのでございましょう。
  154. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 きょうは木島さんから、教育の根本の問題についていろいろ貴重な御意見を拝聴いたしましたが、いまの御質問は、私は現在の社会が非常に過当競争、これは物質文明の結果かもしれませんが、非常に激甚な競争を強いられておる、そこであらゆるものを駆使してその競争に勝ち抜こうとする、その一つの手段が金である、こういうことが往々にして社会を毒しておる、こういうことを冒頭にお答えをしたわけでありますが、いろいろお話しなさっておる間に、問題はやっぱりそこに帰着するという結論のように伺ったわけでございます。
  155. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま総理がおっしゃいましたように、いわば近代合理主義とでも言うのでありましょうか、あえて近代をつけます。合理主義というのは、どの時代にもその時代に生きた人たちは、その時代は合理主義だと思っておったに違いありませんから、現在は現在として、ですから近代合理主義という言葉を使いますけれども、近代合理主義、そこからおっしゃる物質文明が出ておる。だから、産業社会と使ってもいいわけでしょう。この産業社会は、おっしゃるように過当競争なりいろいろなことがございますから、したがって金が最高の価値という価値観を生んでくる。それがさつきからずっと私が言っておりますところの弊害を生んでおる。これはひずみと言ってもいいでしょうし、何と呼ぶのかわかりませんが。だから、最初言いましたように、ウェーバーの言う精神のない分業化された専門家、情操のない享楽人というのが、まさに先ほど総理大臣もお認めになりましたように、そういう傾向としては強いと思う。これがいろいろなところに出てやしないか。現在の近代文明というもの、近代合理主義というもの産業社会というもの、これが今日いろいろなところに問題を起こしておらないだろうか。  私、だから資本主義が悪くて社会主義でなければならぬなんということを言うつもりはないのであります。なぜなら、たとえば資本主義は集中の原則があります。集中し、大きくなるほど効率が上がってくる、おっしゃるように寡占になる。社会主義は、最終的には国家管理、一番大きいわけですね。集中ですね。それが効率だと言っているわけでありますから、その限りでは社会主義も資本主義もないわけであります。だから、そういう意味で、私はいま資本主義が悪いのだ、社会主義だということを言っているつもりはありませんけれども、しかし、いまの産業社会の中からいろいろな弊害が生まれている。その一つが、金が最高の価値だということです。  これは労働大臣にお聞きしましょうか。先ほど言いましたように、ウェーバーの分業化された専門家、それが精神がなくなると言った。確かに分業化されます。それは単に機械労働や何かだけではなしに、役所にしたってあるいは研究にしたって、だんだんと進歩とともに細分化されてくる。しかし、仕事は細分化し、その仕事でもって時には何のためにおれはこれをつくっているのか、そのつくったものが一体何になるかわからないようなことをやっているかもしれない。それを毎日繰り返しておる。だけれども、それは生活の糧を取るためには仕方ないかもしれない。けれど、人生は、生きざまは、総合の中に生きているわけです。全体的な中でもって、総合の中でもって判断をし、知覚をし、生きておるのです。一方、仕事はだんだんと細分化される。しかし、生きざまは総合の中に、しかも先ほど総理大臣おっしゃるように複雑になりますから、複雑になるほどの総合というものを求めなければ生きていけない、こういうものは労働においてどうお考えになりますか、労働大臣
  156. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 なかなかむずかしい質問のようでございますが、時代が変わっていきますと、やはりそれに合うた機械化あるいは現在はやっておるようなロボット時代がやってくる、ロボット化すると労使関係の問題等が起きてくるというようなことで、やはり時代に沿った労働問題というものを私ども重要視していかなければいけないというふうに考えております。
  157. 木島喜兵衞

    ○木島委員 よろしゅうございます。皆さんおわかりいただきましたから、それで結構でございます。  そういう文化という総合の中で――それなら文部大臣に聞きましょうか。たとえば赤や黄色や緑や灰色のいろいろな色紙を置いて、そして、その色紙に、たとえば芭蕉の俳句の「枯れ枝に鳥のとまりけり秋の暮れ」、これは何色だと言ったら、大臣、何色と御指摘になりますか。(発言する者あり)失礼だという話だからやめます。やはり灰色と言いますね。赤や緑と言いませんね、「枯れ枝に鳥のとまりけり……」(小川国務大臣「そう申し上げるつもりでした」と呼ぶ)ああそうですが、失礼しました。  たとえば、黄色の大きい玉と赤い小さい玉でもってどちらが高い音かと言ったら、安倍さん、どうですか。――御無理なさらぬでいいです。やはり低い方が、黄色い方が……。  たとえば教育だってそうだと思うのですよ。美術もあるいは文学も音楽も共通点があるわけです。美というものが一つなのに、国民は何も絵かきになり音楽家になるわけじゃないわけね。だのに、絵がうまいから五点だ十点だとかいって、声がいいからとかいって、しかし、それはおのおの専門家になるのじゃないですよ。だが、明治の初めに入ってきた外国のそれをそのまま受けておるわけです。その間に日本の資本主義というものが発達していって細分化される。だから国民は、美という総合した中の知覚が必要なんです。だのに、それがそのまま使われておる。そういう問題もまた、分業という問題の人間の心へのひずみという点では考えねばならない要素の一つとして申し上げたのです。  そういう人生全体というものを総合に生きるためには、仕事は細分化して、何のためにおれはこんなことを毎日毎日、繰り返し繰り返しやっているのかわからないけれども、先ほど言いますように、社会が複雑になりますから、総合する範囲が狭くなる。だからこのごろ、生涯教育ということが盛んに言われるようになりましたね。さっき大臣の小川さんがおっしゃったとおりです。だのに文部省は、極端に言うならば学校教育省の感じがする。もっと生涯全体というものを、こういう社会の変化の中から文部省は、たとえば生涯教育省とでもいうような性格をもっと強化しなければならぬという問題も、いま分業という中からは出てくる感じがいたします。これはもうお聞きしません。  先ほど産業社会の集中というお話をいたしましたが、これは自治大臣にお聞きします。  近代産業産業社会は、集中の一つの原則を持っておりますから、それは資本を集中すると同時に都市に集中します。都市に集中するものでありますから、人もまた都市に集中します。そこに過密過疎が生まれます。過疎はただ数の問題だけでなしに、ことに若い者から始まります。それがたとえば都会に大部分大学が集中しておりますから、その都会に出て帰らないものでありますから、したがって、過疎の中でも質的な過疎からいうならば頭脳の過疎という問題も出てくる。大学を出たから頭脳がいいというのじゃありません。技術なら技術、知識なら知識を得た、そういう者が帰ってこないという意味の頭脳の過疎であります。それが民主主義の基盤をなす地方自治体の中におけるところの将来の貧困さ、あるいは地方文化の衰退というものをいまの産業社会はつくって  いくんではないか、つくりつつあるのではないか。そして、自然を失ったところの、たとえば都市に集中する。都市砂漠、東京砂漠は、だから時に衝動的な意味のわからない犯罪が起こっておるのではないか。そういう凶悪犯罪が起こっておるところの背景に、今日の産業社会の病理というものがあるのではないかと感じますが、いかがでございましょうか。
  158. 世耕政隆

    世耕国務大臣 これは大変むずかしい問題で、都市空間における文化のあり方、それから地方つまり郷土、まあ過疎地帯における文化のあり方、こういう相互のあれに問題がいろいろあると思うのでございますが、御質問のあれからいって、私自身が考えていることを若干申し上げたいと思います。  文化のことに関しまして従来から言われておるのは、つまり民族学的な立場から言われているのは、基礎文化と表層文化ということが言われております。  表層文化は、これは大体その国を代表する文化でありまして、仮に日本で言うなれば能文化とか、それから音楽で言えば長うたとか義太夫とか、絵画で言えば水墨画とか、いろいろな日本文化特有のものが表層文化として言われておりまして、これが世界的に通ずるかどうかはわかりません。それから、基礎文化の方は、郷土とか僻村とか山間僻地とか、いろいろないわゆる田舎というところに残されているもので、これが表層文化の一番根源をなすと言われております。  御指摘のように、文化が文明の発展につれて、郷土にあった基礎的なものも都会に移って、だんだん都会の中で育っていくときもあるのですが、それが移るために地方のいろいろな文化、風習、民俗的な慣習、言葉、住まい、道路、そういうものが壊れていく可能性が十分にあるわけでございます。人の移動もさることながら、人の移動とともに頭脳の移動があるというふうにおっしゃる。頭脳も、大学だけのいまインテリ的知識ではなくて、もっと広い意味の頭脳、もっと土着の考え方、きわめて素朴な発想、郷土文化に密着したもの、そういうものもだんだん都会に移っていく可能性がある。その上で都会でそういうものが廃絶していく、そういう欠陥を現代というものは持っているというふうに私は理解しております。その上に立って今度は、新しい地方自治行政はどうあるべきかということをわれわれはいま考えているところでございます。  御質問の趣旨に沿えるかどうかはわかりませんが、大変むずかしい問題なので、以上でございます。
  159. 木島喜兵衞

    ○木島委員 自治大臣の大変高邁なる文化論。いま日本の文化のお話がございましたが、確かに資本主義産業社会というのは効率を一つの価値基準にしますから、だから、どうしても効率、効率ということになりますから、ゆとりというのか余裕というのか、いわゆる精神文化をつくるところの遊びがなくなってきたわけです、いま大臣のおっしゃることで言うと。それは過疎になってきておることがどうなるかということもつながりますが、それは先ほどお答えいただいたからいいとしましょうか。  ちょうどいまあなたは日本の芸術のこともおっしゃいましたけれども、日本画の空白、余白、かかないところに日本の精神文化があるわけですね。近代合理主義はそういうものがなくなってくる。そして、物質文明は進む。ここに、産業社会が進むに従って物質文明と精神文明といいましょうか、そのアンバランスがますます拡大していくことが、将来のこの国を、あるいは地球をと言ってもようございますが、どういう方向に持っていくかということを私は心配するのですが、いま大変該博なるところの文化論をお述べいただきました自治大臣にお聞かせ願えますか。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕
  160. 世耕政隆

    世耕国務大臣 これも大変むずかしいあれで、何かテストを受けているような感じもするのでございますが、私の感じていることを申し上げます。  都市空間がだんだん欠乏してくる。それから都市空間、都市空間と申し上げますが、地方にも空間があるわけで、日本の文化は、御指摘のように俳句とか短歌とか山水画を見ておりましても、その実像のところよりも、文字の上にあるものよりも、その文字と文字との、言葉と言葉との間にある空間が非常に大切で、そこが本質になっていると思うのでございます。  それから、日本の文化論をここで述べる気もないのですが、全般に空間的なもの、間とか大きな空間帯を非常に尊重しているものだと思うのでございます。その意味で、私なども、現在行われている都市建設、それから町づくり、それから地方の市町村の空間、こういうところにもつと何か美しいものが必要ではないか、人間が住んでいくのに、目に親しんだり心の中でなごんだり、いろいろなそういったものが生まれてくる住まいの空間、町の空間、そういうことが今後いろいろな情操とか人間の心の荒廃を食いとめるのに必要ではないか、そのように強く考えているものでございます。
  161. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私も、いまちょっと間を置いたのであります。余り早口だと日本文化になじまないと言われますが、いろいろな問題が起こりつつあると思うのです。たとえば物質文明なり産業社会というものは、規格化、画一化をします。一方においては分業の分化をしながらも、生活様式では逆に画一化される、そういう一つの傾向を持ちます。それはマスコミ教育等も含めまして、人間がだんだんと画一化される。民主主義というものは、異質の人たちが集まるがゆえにこそ民主主義が必要であるのであるが、もし生活様式なり物の考え方がみんな画一化されたら、これは民主主義を否定することになるのじゃないのか。これはどなたにお聞きしたらいいかわかりませんが、そういう傾向を持つと思うのですが。どうぞ。
  162. 世耕政隆

    世耕国務大臣 あるいはこれはほかの閣僚、同僚がお答えすべきかもしれませんが、民主主義の発足というのは、いま御指摘になったとおりだと思うのでございます。しかしながら、民主主義がだんだんそのままずっと年代がたって、時間がたっていきますと、結果としては、わりあい平穏無事であるけれども、画一主義というものが起こってくる可能性が十分ある。その危惧が現代にも若干、若干どころか、かなり見られるのではないか、そういうふうに思っております。
  163. 木島喜兵衞

    ○木島委員 これは今度、通産大臣にお聞きします。  このごろ、先進国病と言われますね、たとえばイギリスならイギリス。これは一時的、一過性のものなんだろうか、あるいは不治の病なんだろうか。確かに、物が豊かになるということは、人間が情操なき享楽人になると言われたウェーバーの言葉のごとく、先進国病といわれるものはそういうもののあらわれなんだろうか。  日本が戦争に敗れたときに、文化国家という言葉を使いました。文化国家というのは、あのときにおいては、軍事を捨てた、軍備を捨てた、軍国主義にはならないのだという意味で、文化国家という言葉になったと思うのであります。ところが、いまや軍備もふえていますが、それはきょうは議論抜きにしますが、物が豊かになったということが文化国家になったというように多分にとられているような風潮がある。  このごろ、文化国家なんという言葉が出てこなくなりました。そういう物が豊かになることによって人間が情操なき享楽人になっていくとするならば、いまないけれども、あるいはいまの日本の労働者は大変に模範生だと世界から、他の先進国から言われているかもしれないけれども、やがてこの国の人たちも、たとえばイギリスならイギリス病と言われるような先進国病になる可能性というものを持っておるのだろうか、変わらないのだろうか。物質文明というものはそういうものをつくっていく、このあたりはどう通産大臣はお考えになっていらっしゃいますか。
  164. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非常な戦後の、特に物質文明万能主義といいますか、そういうものが進んでいる中で、やはりあれだけの歴史と伝統を持ったイギリスにおきましても、あるいはフランスにおきましても、価値の多様化といいますか、その中であるいは伝統の退廃といいますか、そういうことでなかなか回復することのできないいわゆる文明病といいますか、そういうものに陥っておる、こういうふうに思いますし、またアメリカ自体が最近ではそういう姿を呈し始めておるというふうな感じを率直に持っております。  そういう中で、やはり日本の場合も、いままではとにかく戦後の歴史の中で、あの敗戦、そして再建復興、そしてまた繁栄というものを遂げてきたわけでございますが、そういう状態の中で、今日やはり日本の文化そのものから見ましても、一つのむしばまれた状況といいますか、あるいは人間の倫理、日本人のそうした倫理という面からもむしばまれた情勢というものがだんだんと出ておりますし、日本も、そういう意味では非常に危険な症状に陥っておるのじゃないかと私は思う。特に、いま先端技術なんというのが盛んに言われておりますけれども、バイオテクノロジーだとか、あるいはコンピューターであるとかファインセラミックスだとか、そういう先端技術が極度に発達する方向にあるわけですが、そういうものとの関連の中で、やはり人間の、日本人として持たなければならないものがだんだんと失われていく可能性はあるのじゃないか。この辺でよほどしっかりしなければいかぬという感じを率直に持っております。
  165. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま通産大臣からコンピューター等も含めて先端技術と。  そこで、科学技術庁長官、ちょうどそういう話が出ましたから。  近代文明というのは科学技術によって物質的な生産が無限に増大すること、これが人間の幸福を拡大するのだという神話が、もはや神話であって崩れつつあるのじゃないのか。たとえば二〇二〇年には世界の人口が百億になると言われますね。そして、その九〇%が第三世界ですよね。いま、たとえばエネルギーだけで言っても、先進国と低開発国、未開発国では百三十分の一だとも言われておるわけです。いまの先進国の人たちが使うエネルギーをそのままにしても、その人たちのレベルを上げるとすれば、科学技術の進歩というものが、物質が国民を豊かにする、人類を豊かにするとすれば、それは不可能になってくる。そういう意味では、オイルショックというものはそのことを意味したのじゃないか。科学技術によって物質的な生産がよけいになればなるほど国民は幸せになるのだというその神話にオイルショックというものは警告を与えたのじゃないか、あるいは破綻を意味したのじゃないか、そんな感じがするのですが、どう思いますか。
  166. 中川一郎

    ○中川国務大臣 資源が豊富な時代には、それほど科学技術というものは大きな使命を持っておらなかった。しかし、資源が有限になってくるということを考えてくると、科学技術というものを取り入れていかなければ、これからの人口、世界じゅうの人口が生き抜いていけない。これはエネルギーが象徴的でありますし、海洋開発あるいは宇宙開発等々、あるいは将来はバイオマス等もやっていかなければいけないのではないか、こう言われているわけです。したがって、人類が生き抜くためにも科学技術は必要である、こういうことは言えると思います。  同時に、私は、科学技術を担当しておりまして、これが平和利用に使われるときはいいが、心が伴わないで悪用されていくとえらい恐ろしいことになるのじゃないか、こういう心配もいたしておりまして、いま物質万能の世の中ではあるが、精神文明というものも並行していかなければ、必要なものではあるけれども、将来恐ろしいものになるのかなと心配をいたしております。
  167. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いまちょっと、各大臣には大変失礼な御質問を申し上げたと思うのでありますけれども、いずれにしても、私がいま申し上げたようなことは、近代ということからくるいわゆる近代合理主義、そこから産業社会、それがいろいろなひずみを出しておる。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕 確かにいま中川大臣がおっしゃったように、私も、これから将来どうなるかというと、むしろ逆に、高度な科学技術が進まなければならないけれども、いま大臣が心が伴わないととおっしゃったように、そういう意味では、価値判断、価値体系の変化というのでしょうかな、そういうものが一方非常に必要になってきておるのだと思うのであります。  しかし、総理大臣、私、いまこういう大変失礼なことを聞いたのでありますが、一体現代というものは、未来を考えたときに、未来は現代の産業社会の延長線上にあって、そして、そこにひずみがあるのだが、そのひずみは修正できるひずみであるというのか、あるいは一つの時代が終わって一つの新しい時代が生まれる兆しなんだろうか。かつて、メソポタミアやエジプトの文化が栄え、かつ消えていったように、現代の文明社会というものが、歴史の法則のように一つの時代が栄えて、しかし、これらの問題が出たということは、新しい時代になるんだろうか。私もわからないのですが、総理大臣、どうお考えになりますか。  なぜ私がこんなことを言うかといいますと、とかく政治というのは、何というのですか、隘路打開の政治というのでありましょうか、何か経済摩擦なら経済摩擦が起こったというと、それをどうしようかというようなことだけに終わって、長期の、いや超長期の展望というものを、一方そういう哲学を持たないと、日本の未来、しかもその変化が激しいわけでありますから、私はいまひずみという言葉を使ったのでありますけれども、一体このひずみというのは、未来もまた今日の延長線上のものなのか、新しい時代が来るその兆しなのか、この辺が実は私わからないのですけれども、総理大臣、どうお考えになりますか。
  168. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど来、木島さんを中心に各閣僚と文明論についての議論が展開をされてまいりましたが、近代の文明、ある意味では物質文明、そしてそれが大きく開化発展をして産業社会、そして物質的にも豊かさを増してきた。しかし、ここまで来ましても人類は必ずしもそれで満足をしていない。やはり満たされないものがある。それに対応いたしまして、精神文明と申しますか、または東洋文化といいますか、自然との共存の上に立つところの東洋文明、こういうものに対する郷愁というものが一方において生まれてきておる。そういう意味で、西洋文明と東洋文化との調和、物質文明と精神文明との調和、これが私は、これからの政治の面でも私どもが考えていかなければならない課題ではないだろうか、こう思います。
  169. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いまの総理大臣お答え、私と大変に似ているというよりも、あるいはむしろ同じ考え方であると心底から思っております。  人類が発生したのには、学問上いろいろありますけれども、二百五十万年と言われておりますね。そのうちの二百四十九万年というのが狩猟採取時代、一万年が農耕時代、そして産業社会は三百年ですね。この三百年というのは大変急激な変化、上昇をしているわけです。そのために、いま総理大臣がおっしゃったように、精神文化がついていけない要素がそこに生まれてきておる。いま大臣おっしゃるように、私は一つの新しい価値観なり新しい文化、新しいそういう意味の時代が生まれつつあるのだろうと思っておるのです。しかし、それは時間がかるかでしょう。たとえば、ヨーロッパの中世の宗教支配からルネッサンスという自我の発見に至るまでの間には長い時間かかったし、そして試行錯誤もあったわけですから、すぐにそうなるということはないかもしれないけれども、私は、何となく新しい一つの時代が来つつあるんだろう、それはどのくらい大きな変化をするかということはだれもわからないことだろうと思う。いろいろな予想がついています。それは、未来学もあればあるいは人類の滅亡論もありますね。しかし、そういうことを抜きにして、大きな変化があるんだろうと私は思っておるのです。  そこで、いま総理大臣がおっしゃった、そこだと思うんですね。たとえば、ことしの一月だと思うんですけれども、アメリカのある州でもってこういう教育裁判の判決が出ました。天地創造派と進化論派なんですね。旧約聖書によるキリスト教の思想、これから言うと、神、人間、動物というものを峻別しておりますし、進化論は、人間が猿の同類系統、われらの祖先は猿かいということですから、旧教の思想からするならば進化論を認めることはできない。その裁判でありますが、これは連邦地裁では進化論に軍配を上げました。  私は、こういうことから、たとえば日本におけるところの神話を挿入せいというようなこと、雲の上から剣でこうやったら日本国土ができたなんというのは、これは天地創造論。そういう意味では、建国記念日というものに対しても私は疑問を持ちますが、それは除きます。嫌なこと言うななんて笑っていらっしゃいますから除きますが、ただ、そのことはヨーロッパの近代文明なり近代合理化の一つの思想になっておる。だから、神、人間、動物というのを峻別しますから、動物というのは人間のためにある、人間のために存在する、これを利用することで人間がより幸せになることが可能なんだという思想です。自然を利用し、自然を侵略し、自然を征服して、そして物質文明を人間のためにという思想だと思うんです。  それに対して、いま総理がおっしゃいますように、東洋文化は自然と人間の共存の論理です。もし、いま、世界が新しい価値観を求めるとするならば、西洋文明ではなしに、あるいはその価値基準ではなしに、東洋の思想が、もし新しい時代が来るとするならば、それが世界の価値基準となり、文明となっていく、世界を支配していくところの思想ではないのか。そうでなければ、総理大臣の和の精神もおかしくなるのかもしれません。  ですから、そういう意味で、アジアというものに対する日本の、外交という狭い範囲でなしに、外交もそうなんですけれども、アジア全体に対する日本の目というものをもっと、いままで明治以来ずっと、先ほど言いますように、西洋文化に追いつき追い越せというそのことだけにきたんだけれども、それを乗り越えた、もう一回アジアというものを見直す、洗い直す、そのことが必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  170. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど来のお話をさらに発展をさせると、そういうアジアの重要性、アジアの文化、東洋の文明、これが今後の新しい時代の政治の理念になってくる必要がある。そして、物質文明、西洋文明との調和という観点から考えますと、私は、太平洋をめぐるところのアジア並びにアメリカ、カナダあるいは大洋州等の環太平洋諸国、これが一体になった形の新しい時代が到来をする、これがまさに具体的には東洋文明と西洋文化との結びついたもの、こういう形が考えられると思っております。
  171. 木島喜兵衞

    ○木島委員 大変問題のある言葉もありましたようですけれども、大筋では一致していると思うんです。だから、そういうアジアの文化の基礎になりますものは自然との共存でありますから、これは進化論の立場なんですね。  だから、私こう思うんです。いま環太平洋というようなことをおっしゃいましたから、その中には一つ防衛というものも入りますが、三十五億年前に地球上に一つの細胞が生まれて、それが植物と動物に分かれ、やがてそれが昆虫のようなものになり、脊椎動物ができ、それが魚になり、鳥になり、けものになり、やがて霊長類になり、人間になってきたわけです。その限りでは人間も生物の一つであります。動物の一つであります。だから、よく言われますように、動物の場合には本能として性欲、食欲があると言われる点では、また同じことであります。食欲によって個体を維持し、そして性欲によって子孫を繁栄させるという点ではこれは一緒であります。同じでしょう。けれども、一つ違うのは、動物は同種の間では殺し合わない、そこが違う。  その前にあるのは同じものだけれども、人間が、じゃ動物と同じかというと、そこは発展しておるのです。先ほど言いますように、二百五十万年前に人類ができたと言いますが、その間狩猟時代が一応長かった。狩猟時代が長かったから跳んだりはねたりして獲物をとったのでありますから、それを人間の文化としたものはスポーツでありましょう。動物と違うところは、四つ足が二つになったのですから、手があいたものですから植えることを覚えた。植える道具をつくることを覚えた。道具をつくるところの道具、機械をつくるようになった。そして交換する、貨幣、貿易、金融ということになってくる。経済の論理はその限りでは食欲からでしょう。性欲、美、得たときの歓喜、踊り、叫び、失ったときの慟哭、これは芸術の原点でしょう。そういう意味では、同じ本能を持っておるけれども、しかし、人間はその上に立ってそういう文化をつくったという意味で大変に進んだ動物であります。  ところが、先ほどちょっと言いましたけれども、動物は同じ種では殺し合わない。猫は猫、犬は犬、よく牛の角突きなんていうのでも、力負けでも殺さないでしょう。だのに、なぜ人間同士殺すんだろう。その限りでは、ずいぶんと新しい文化をつくったけれども、人間は動物以下の動物だということになるんだろうか。個人的なものについては各国は刑法でもってあれするけれども、戦争ということに対する、大量な殺人行為というものに対する決まりがない。だから、そういう意味では、日本国憲法というのは、人間が動物から発展したものであるけれども、動物では同種同士殺さないんだから、せめて動物並みになろうではないかというのが日本国憲法ではないんだろうかと思うんですが、進化論の立場に立つ、東洋文化の基礎であるところの進化論に立つとするならば、そのように総理大臣、お考えになりませんか。
  172. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど来いろいろの角度から議論が展開されておるわけでありますが、いまの物質文明がここまで発展をしてきた、ミサイルもできた、宇宙へのロケットもできた、これは人類の自然への挑戦、私はそう思うのですが、とにかく洪水から自分たちの住んでいるところを守って、そして耕地を耕して食糧を増産する、あるいは、冬は暖かく夏は涼しくというために、いろいろな建物をつくり、そして冷暖房をやるとか、いろいろな自然環境をよりよくするために変えていく。これは私は自然への挑戦だと、こう思います。これが物質文明が今日に至っておるものだと思います。一方において、先ほども申し上げましたように、東洋文化、東洋文明、特に花鳥風月を愛する日本の文化、伝統というのは、私は、自然との調和、共存の上に立っておる、こう思います。だから、この両文明が今後融合していくことが新しい文明、第三の文明を築くものである、また政治も、そういう方向を考えながら、どうあるべきかということを対応していかなければいけないのではないか、こう感じておるわけでございます。
  173. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そこはさっき一致したわけさ。そこで、動物同士は殺し合わないのに人間だけはなぜ殺し合うのだろうか。個人的には刑法がある。だから、日本国憲法というのはただ一つの憲法だと言われるけれども、それがせめて動物並みに、同じ人類が、同じ動物同士で殺さない動物並みになりましょうよという、そういう見方はできないでしょうかとお聞きしているのです。
  174. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 非常にむずかしいことなんですが、私は、日本人が人間としてそうならなければならない、動物になる必要はない、人間としてそうなるように努力しなければいけないこう考えています。
  175. 木島喜兵衞

    ○木島委員 ちょっとよくわからなかったのですけれども、いずれにしても人間は殺し合わない方がいいということでしょう。いまのお話は、そううなずかれましたから……。  もう最後でありますが、この予算委員会の最初に、わが党の武藤さんの質問に、核は絶対悪だとおっしゃいました。ところが、それじゃ国連の核兵器の不使用及び核戦争の防止の決議についてはなぜ反対したかというと、いわば核均衡論の立場からおっしゃったわけでありますから、そうなると、これは必要悪であって絶対悪じゃなくなるわけですね。もし、いまおっしゃいますように、人間同士が殺し合わないということを前提にするならば、そして、あなたが絶対悪だとするならば、それは均衡論に立つ場合は必要悪でありますから、そうならないんじゃないだろうかという感じがするのですが、もう時間がありませんから、まとめて言います。  五十三年の国連の軍縮総会に向けて、衆議院は、国際連合軍縮特別総会に関する決議を五十三年の五月二十三日に衆議院の本会議で上げました。その中で、いま申しましたところの四つがあります。「総会において核兵器の窮極的廃絶、」あとは除きますが、を「早急に実現するよう強く訴えること。」あるいは「非核武装地帯構想が、世界の平和」云々とありますが、こういう点はアジアにおいてどれほどの努力をしたのだろうか。あるいは「通常兵器の国際的移転の規制、軍事費の削減を各国に強く訴えること。」日本がふやしておって、訴えることになるのだろうか。あるいは「国際的移転」ということになれば、兵器の技術輸出ということは一体どうなんだろうか。これは国会が政府に強く「誠実に努力するよう要請する。」と求めたものでありますけれども、大ざっぱな言い方でありますけれども、この決議に忠実ではなかったのではないか。  もし大臣が、人間同士が殺し合うことがいけないんだ、せめて動物並みになろうじゃないかという人類の長い歴史というものを考えたときに、こういう決議をもっと忠実に、もっと誠実に履行することの努力というものが欠けておったのではないか、それはあなたの時代にあったか否かは別といたしまして、そう感ずるのでありますが、そのことを最後にまとめて御答弁いただきまして、私の質問を終わります。
  176. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 核軍縮に関する国会の決議、これは大変崇高な理念の上に立っておるものでございまして、政府におきましても、この国会の決議を最大限に尊重いたしまして、今日まで努力をいたしておるわけでございます。  この決議の中にもありますように、核軍縮、究極において核の廃絶ということをお示しになっておるわけでありますが、その究極において核の廃絶まで持っていくためには、やはり現実を踏まえながらそれが可能な形において進めていく必要があると、こういう考え方に立ってやっておるものでございまして、国会決議につきましては、全幅の、私どもはそれを体して努力をいたしておるということをはっきりと申し上げておきたいと思います。
  177. 木島喜兵衞

    ○木島委員 終わります。
  178. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。  この際、始関建設大臣より発言を求められておりますので、これを許します。始関建設大臣
  179. 始関伊平

    始関国務大臣 先般矢野委員お示しの資料について、再度当時の関係者から事情を聞いたところ、大型ダム事業のように大規模で計画段階から工事段階までに長年月を要する事業については、計画内容が地元等関係者並びに共同事業者に広く説明されており、業界においても事業個所、事業規模等は把握され得るものであり、この資料は、これらを参考に昭和四十七年ごろ合理化委員会関係各社においてあらかじめ調査研究していた、特に希望の強いものを整理したものであるとのことであり、落札予定者を決めたものとは認められなかったのであります。  しかしながら、入札について御指摘のような疑惑が持たれるような資料が作成されたことは、まことに遺憾であります。直ちに大手建設業者が加入している土工協に対して、今後このようなことのないよう、傘下の各社に厳重に注意するよう要請いたしました。  入札制度の合理化対策については、現在、中央建設業審議会において、入札方式、入札結果の公表、業者選定事務等について審議されているところであります。建設省としては、同審議会ができるだけ速やかに結論を得られ、答申いただけるようお願いするとともに、答申の内容の実現に努めてまいる所存であります。  なお、同審議会が最終的な結論を得られる以前にも改善策を中間答申という形でいただき、可及的速やかに実行に移してまいりたいと考えておる次第でございます。
  180. 栗原祐幸

  181. 矢野絢也

    矢野委員 再質問の機会を与えていただきました委員長並びに委員会の皆さんに、御礼を申し上げたいと思います。  それで、前回お願いしておいたことについての調査、いま御報告があったわけですけれども、本気になって建設大臣、お調べになったのかどうか、全くこれはもう納得できない御回答でございます。  しかし、いまのお話を承っておりますと、私が示しました資料については、ほぼ十年ほど前に土工協の裏組織である、また談合組織と言われておる合理化委員会において作成されたものであるということはお認めになった。そして丸のついておる、つまり本命とされておるあのリストの業者については、談合ではないが、特に希望の強い業者をリストアップしたものである、こういう御説明でございまして、落札予定者を決めたものではない、こういう態度、こういう考えでございます。しかし、そういう疑い、私が指摘した疑いというのは談合の疑いでございます。この談合の疑いがあるという点についてはほぼお認めになったような御説明でございました。  そこで二、三伺っておきたいのですけれども、この合理化委員会においてこの談合表が作成されたことはもう確認をされたわけでございますが、このリストは一体だれによってつくられたものであるか、どういう手順によってつくられたものであるか、御説明願いたい。
  182. 川本正知

    ○川本政府委員 お答えいたします。  この御提示いただきました資料につきましては、当時の土工協の関係者によってつくられたということでございまして……(矢野委員「だれですか」と呼ぶ)その当時副会長をしておりました木村氏でございます。  それで、先ほどお話しいたしましたように、当時合理化委員会というものがございましたが、その中で関係のある人たちが集っていろいろとダムの施工に関しまして希望があったわけでございますが、それぞれが希望しておったわけでございます。そういった希望の強いものを整理したというふうに聞いております。
  183. 矢野絢也

    矢野委員 特に希望の強い業者をセレクトして丸印をつけてある。わかったようなわからぬようなお話ですけれども、こういう巨大なダム工事については、いやしくも施工能力を持つ業者は全部強い希望を持っているのです。このリストにあるように一社か二社か三社か、そんな少ない業者が希望するわけじゃない。たくさんの業者が希望しているわけです。そのたくさんの業者の中から、一体だれがどういう基準でどういう手順で、この会社が特に希望が強いということを決めたんですか。みんな希望しているんですよ。みんな希望している中で特に希望が強い、みんな私が一番特に希望が強いと言うに決まっているのです。その中から三社を選ぶ。だれかが何らかの基準をもって、何らかの話し合い、手順をもって決めなければ、決まらないじゃありませんか。それを調整とか談合とか言うんですよ。特に希望の強い業者を書いてあるんだと。だれがどういう基準で、どういう手順で特に希望の強い業者を決めたのか、もう一遍説明してください。
  184. 川本正知

    ○川本政府委員 お答えいたします。  ダム工事といいますものは御承知のように非常に大規模な工事でございまして、これが施工しようということになりますと、相当長年月をかけて調査し、検討しなければいけない、また、もしもその工事の施工で失敗等がありましたら、これは工事の大規模なるがゆえに、会社の経営を左右されることにもなりかねないような影響もあるわけでございます。そういったことで、ダム工事を施工する会社というものは長年月にわたりまして熱心な調査をし、検討をするというのが通例でございます。そういったことで、当時、先ほど申し上げた方が各社の希望を聞きまして、希望が大変多いものもありましたようでございますが、そういったものの中でも、特にそれじゃ希望をしぼって聞かしでくださいというふうなことで希望を聞いたということでございます。
  185. 矢野絢也

    矢野委員 説明になりませんね。そうしたら、私が特に強く希望しているのですと業者が言えば、それで丸つけでもらえるのですか。そうでしょう。やはり希望する業者の中で、このダムはそれじゃA社だ、そのかわりこちらのダムはB社だ、次のダムは、A、Bはもう決まっているからC社だ、いままでの実績とかあれやこれや勘案して、つまり調整をしているのじゃありませんか。その調整を談合と言うのじゃありませんか。これは委員長、納得できませんぞ。  もう一つ聞きましょう。  その後、この十年間で四十八のダムのうち十九件が発注されておる。そのうちこの談合表のとおり落札している。完全に一致しているのは十三ある。メインになる業者はそのままでジョイントのパートナーがかわった、つまりほぼ一致しているとみなし得るものが五つあって、十九件の発注のうち十八件がこの談合表のとおりに落札されているのです。これは指名競争入札という制度で発注されておるわけでございますから、十九件のうち十八件をこの表のとおり落札するためには、それ以外の業者が落札予定者の入れる値段よりも高い価格の入札をしなければ、つまり予定されておる業者が一番低い価格にならなければこの表のとおりにならない。そうでしょう。幾ら特に希望の強い業者が丸がついてあったって、おれはそんなもの認めないのだ、どうしてもあの工事が欲しいのだとなれば、その予定されている業者よりも安い値段で入れるかもわからぬ。ところが、物のみごとにこの予定表のとおりになっているということは、その発注の直前において指名業者たちが相談をし、本命とされておる業者の値段よりももう少し上の値段に入れましょうという申し合わせをしなければ、こんなきれいに予定どおりに入札ができるはずがないのです。これはどう思いますか。
  186. 川本正知

    ○川本政府委員 私ども、先生からの御指摘がございまして事情聴取をしたわけでございますが、いま申し上げましたように、当時の各会社のいろいろな要望を整理して一覧表にしたということでございまして、先生御指摘のような結果が、十九件のうちおおむね――完全に合っておるのは、私どもの方では八件というふうに考えておりますが、おおむね合っているものまで入れまして十八件ということではございますけれども、そういったことに対しまして、先ほど申し上げましたように、ダムといいますのは大変長年月にわたって研究してやっておりますので、そういったものがやはり競争力が自然に強くなったものではないかというふうに思います。いろいろと事情聴取いたしました段階でも、そういったことで先ほどお話しいたしましたように落札予定者を決めたものではない、そういうふうに聞いておりますので、そういったことで御報告をいたしていただいたわけでございます。
  187. 矢野絢也

    矢野委員 元来、建設省は国の予算公共事業、たとえばこの場合はダムですけれども、発注されておるわけでございます。御自分の金で好きなものをつくっていらっしゃるんじゃない。税金で発注されているわけです。したがって、私がここで大きな声を出して言うこのことは、建設省が業者に対して言わなくてはならぬせりふなんです。ところが、いまのお話を聞いておると、大変失礼でございますが、本来監督をし、そして公正な価格でりっぱな仕事をさせなくちゃならない建設省が業者の立場を代弁しておるのじゃないか、こう受け取らざるを得ない、まことにこれは残念なことです。  いま申し上げたように、発注の時点においても、予定されておる本命業者を最低の価格にさせるための事前の申し合わせはなかったと断言されますか。全くの偶然の一致でこのような落札結果になったと言われますか。もう一遍、返事願いたい。
  188. 川本正知

    ○川本政府委員 お答えいたします。  私どもが事情を聞きました範囲では、そういった先生御指摘の事実は確認できなかった、そういうふうに申し上げておるわけでございます。
  189. 矢野絢也

    矢野委員 ここでこれは河川局長に言うても、何かだんだん気の毒のような気がしてくるし、この際でございますから、公正取引委員会国家公安委員会、それから法務省に御見解を伺いたいと思います。  お聞きのようなことでございまして、私が示しました資料は、建設省でお調べの結果、にせものではない、四十七年時点で合理化委員会関係者によって作成されたものである、これはお認めになりました。しかし、それは特に希望の強い業者をリストアップしたんだなんといういいかげんなお話なんですけれども、たくさんの業者の中で、どういう基準で、だれがどういう手順でそんなことを選ぶことができるのか、まさか抽せんで決めたわけでもあるまいしという疑惑があるわけでございまして、その時点において向こう十年間のダムについての基本的な談合というものが行われておる。  そして発注の時点において、本命とされた業者を最低価格にさせるために、それ以外の指名業者がそれ以上の価格を入れるという操作がどうしても必要になってくる。偶然の一致でこんなうまいこと予定どおり落ちるはずがない。その時点においても、その入札価格についての調整、つまり談合が行われておると私たちは判断せざるを得ないわけであります。しかも、十九件のうちほぼ十八件がそのとおりになっておって、しかも全部で四十八のダムが、まだほとんどがこれから発注される。去年、一昨年発注された工事もあるわけです。この表のとおり落札されておる、この表はまだ生きておる、こういう状況でございまして、まあ私たちはこれはもう談合であると言わざるを得ないわけでございますが、建設省の御答弁、いろいろと御事情がおありとみえて、歯切れがきわめて悪いわけでございますが、こんなことで済まされる問題ではない。  いま申し上げた公正取引委員会国家公安委員会、法務省に順次この問題についての御判断、御所見を伺いたいと思います。
  190. 橋口收

    ○橋口政府委員 ただいま矢野委員政府側の質疑応答は、耳を澄ませて伺っておったわけでございます。建設省の方からは公式にお答えがあったわけでございますから、問題はそれが起点でございます。あと、公正取引委員会としてどういう措置をとるかという問題でございますが、その前に若干御説明申し上げておきたいと思います。  官公庁が行う物品の発注あるいは工事関係の受注に関連しまして、事業者が集まってあるいは事業者団体の場を使っていわゆる入札談合を行い、受注予定者を決定しあるいは受注価格を調整するという行為によりまして一定の取引分野が制限されます場合には、これは独占禁止法違反になるわけでございまして、私どもといたしましても、最近五年間でもこの種の事件がすでに十件あるわけでございまして、課徴金も十二億九千万円余を徴求をいたしております。  そういう実績の上に立ちまして、本件につきましては建設省から正式にお答えがございましたので、私どもといたしましては、まず事実関係の実態の解明が先であるというふうに考えでおるわけでございまして、いま先生が御指摘になりましたような事実が本当にあったかどうかにつきまして、たとえば土工協の組織の問題であるとかあるいは合理化委員会の構成メンバーの問題であるとか、いろいろ問題がございます。それから、お話の中にもございましたように、昭和四十七年ごろから行われていることでございますから、独禁法の規定の適用の問題としまして、談合行為が結了した後一年を経過いたしますと、これは事件として取り扱うことができないというふうに法で決められておりますので、そういう制約もございます。いずれにいたしましても、そういうすべての条件を踏まえまして、これから後、建設省とも御相談して、まず事実関係の実態の究明をいたしたいというふうに考えておるところでございます。
  191. 中平和水

    ○中平政府委員 一連の最近の談合問題に対する私どもの基本的な立場というのは、刑罰権の適正な行使を通じて結果として公共工事の公正な執行に寄与してまいる、こういう立場に立っておりまして、したがって、いま各都道府県警にそれぞれ積極的な情報収集、証拠上明白なものについては積極的な検挙を行うように措置をしてまいっておりまして、すでに幾つかの県におきまして談合事件の捜査、検挙をしておる状況でございます。  ただいま御指摘の問題につきましても、私ども事実関係を十分把握いたしておりませんので、ここで断定的なことは申し上げられない次第でございますが、それが公正な価格を害し、不正の利益をもってした談合であるということが具体的事実に基づいて証拠上明らかになれば、それなりに厳正な処置をしてまいりたい、このように考えております。
  192. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま警察庁の方からお答えがありましたところともほとんど重複しているかと思いますけれども、私どもに対するお尋ねでございますから、犯罪の成否ということであろうかと思うわけでございます。  これは一般論的なようなお答えになりますけれども、いま警察からもお話がございましたように、犯罪の成否ということになりますと、事実関係が確定された上でなければ責任のあるお答えはいたしかねるわけでございまして、特に、いまも御答弁の中にありましたように、いわゆる談合罪というのは、談合行為だけで処罰されるというわけではございませんで、他の要件もあるわけでございますから、そういう要件が事実上満たされておるということによって犯罪を成立するかどうかということになるわけでございます。
  193. 矢野絢也

    矢野委員 私の与えられました時間も終わりましたので、これで終わりたいと思います。  お聞きのとおりのことでございまして、私は建設省の御回答には満足をいたしておりません。これは納得できません。したがいまして、本委員会におきまして、建設省に対してさらに事実関係についての徹底した調査を要求していただきたい。また、本委員会においても、関係者よりの事情聴取など実態の調査をお進めいただきますことをお願いを申し上げたいと思います。委員長の御所見を承りとうございます。
  194. 栗原祐幸

    栗原委員長 後刻理事会で協議をいたしまして、適切な処置をいたしたいと思います。
  195. 矢野絢也

    矢野委員 どうもありがとうございました。
  196. 栗原祐幸

    栗原委員長 次に、草川昭三君。
  197. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  当初皆様のお手元の方にお渡しをいたしました財政投融資の問題については、また別の機会にお伺いをするということにいたしまして、中近東外交について政府のお考えをお伺いしたい、こう思うわけであります。  中東和平という問題については、私どもにとってもきわめて重要な問題であることは言うまでもございません。大変恐縮でございますけれども、私も、ここ最近ではございますが、毎年プライベートな、個人的な立場から中東諸国をお伺いをしておるわけでございますけれども、長い歴史と民族あるいは宗教の対立等が絡み合っておりますところの中東紛争というものは大変複雑なものであるだけに、日本にとって従来オイル、油の国あるいはそれを買うだけの国というようなつき合いをしておっただけではだめだ、本当の意味での友好関係が必要だということを肌身をもって感じておるわけであります。  そういう意味では、特にいまイスラエルの動きというものがきわめて重要な問題になっておるわけでございまして、来月のシナイ半島の返還等の問題もございまして非常に重要でございますけれども、イスラエルがゴラン高原の併合をしたことについてはきわめて私は問題があると思うわけであります。そういう意味では外務大臣も一つの見解を表明されておられますけれども、その後、国連の安保理事会でイスラエル非難、制裁要求の決議案が出ておるわけでございますが、これは一月二十日の場合、日本は棄権をいたしております。しかし、この二月五日の同じようなゴラン高原の緊急特別総会での制裁要求には反対投票をしておりまして、アラブ各国からもかなり強い失望を受けておるわけでございます。  この問題について、外務省の中でもいろいろな御意見があったようにお伺いをいたしておりますけれども、中近東局長の方から、今回のこのような一連の決定というものに対するアラブ側のいわゆるリアクションというのでしょうか、具体的な動きはないかどうか、あるいはまた今後の態度についてどういう方向になるのであろうか、御質問をしたいと思います。
  198. 村田良平

    ○村田政府委員 このわが国の投票に関しましては、東京あるいはアラブ各国の首都におきまして、幾つかの国からわが国の投票態度に関しまして不満が表明されております。ただし、今後アラブ諸国がこのわが国の投票に関してどういうふうな態度をとってくるかということは、まだ必ずしも明らかでないというのが現状でございます。
  199. 草川昭三

    ○草川委員 二月十二日、十三日にいわゆるアラブリーグというのでしょうか、アラブ二十二カ国によって結成をされておりますアラブ連盟が主催をいたしまして外相理事会というのを開いておるわけでございます。これはイスラエルに対する対応、あるいは二番目の重要な議題として、アメリカの提案に賛成をした国に対する関係を見直す委員会をつくろう、こんなようなことを言っておるわけでございますし、この言葉の中で、来日予定のクリビ・アラブ連盟事務総長は、日本と一部の西欧の国と名指しで遺憾の意を表明しておるわけでございます。その点についてはどうでしょう。
  200. 村田良平

    ○村田政府委員 この緊急外相会議におきましてこの問題が取り上げられたことは、先生御指摘のとおりでございます。そうして、七カ国から成る委員会をつくりまして、この委員会がヨーロッパ諸国及び日本とアラブ諸国との政治的及び経済的な関係を今後検討するという任務を帯びるということが決まったわけでございます。
  201. 草川昭三

    ○草川委員 アラブ連盟の事務総長が来週本来ならばお見えになる予定であったわけでございますけれども、これが外相会議の根回し等で忙しいという理由ではございますけれども、来日が延期になっております。私も一昨年クリビ事務総長にチュニジアでお会いをいたしまして、大変親日家でございまして、日本の役割りというものを非常に高く評価をされておみえになるだけに、私は来日が延期をされたことはきわめて残念なことだと思うわけであります。  そういう意味で、実はこれは外務大臣にもお伺いをしたいわけでございますけれども、昨年アラファト議長がお見えになって、総理もいろいろと長時間にわたって議長と御歓談なすっておみえになる。本来ならば、ファハド皇太子がお見えになりあるいはまたクリビ事務総長がお見えになることを機会として、積極的な中東外交というものを日本独自の立場から展開しようと考えておみえになったと承るわけでございます。私は、ひとつ総理も外相も、向こうがお見えになる以前に積極的な中東訪問をなさるべきではないだろうかと思うわけでございますが、その点について外務大臣総理から御見解を賜りたい、こう思います。
  202. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 草川委員のおっしゃるとおりに、わが国として中東外交がきわめて重要である、これは資源その他の経済関係を並べるまでもないことでございます。したがいまして、今回のクリビ事務総長が見えないということについてはそれなりに残念な面もございますが、当面、アラブの諸国の関係で延期をされておるのでございまして、私は、必ず近い機会においでになるということを期待をしておるわけでございます。  また同時に、中東地域の重要性にかんがみまして、機会があれば外務大臣として歴訪をすることが必要であるということは痛感いたしておりますけれども、現在では、まだ日程その他を考えておらないところでございます。
  203. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま外務大臣からも申し上げましたように、中東の真の恒久和平を確立するということは、ただにあの地域の平和安定のためだけでなしに、世界の平和安定のために不可欠の重要な問題でございます。わが国は、近年、中東地域の国々とは友好信頼関係を年とともに増進をいたしております。ただ石油資源を輸入をしておるというだけでなしに、わが国も経済あるいは技術協力等もいたしまして、友好関係を強化発展をさせておるところでございます。  そういう中で、私はアラファトさんにもお目にかかりました。そしてその際申し上げたことは、真の中東の和平はイスラエルの生存権、パレスチナの民族自決権、これをお互いに認め合うことだということまで、私は率直に提案申し上げたような次第でございます。そういう際におきましてイスラエルがゴラン高原の併合をやったということで、わが国は外務大臣談話を発表いたしまして、厳しくその態度を批判をしたわけでございます。  その後におきましてイスラエルについての国連の決議が出されましたが、その決議の内容が、断交であるとかあるいは経済制裁であるとか、いろんな非常に厳しい内容のものが含まれておるわけでございます。私は、前段に申し上げたように、真の中東の恒久平和を確立するためにはパレスチナもイスラエルも互譲の精神で相互の立場を認め合うことが必要だ、そういうことに対してわれわれも協力したいという気持ちがあるものでございますから、残念ながらあの決議には賛成しかねた、こういう事情でございます。今後とも私どもは、中東和平のために日本の可能な限りの協力をやってまいりたい、努力を払っていきたい、この方針には変わりがございません。  それで、私もできるだけ適当な機会を持ちまして中東諸国を訪問し、各国の首脳と会談をして一層の友好関係の強化を図ってまいりたい、こう念願をいたしておるところでございます。
  204. 草川昭三

    ○草川委員 総理のおっしゃるとおりでございますが、だからこそ、国連の緊急総会では棄権をすべきではなかっただろうか。賛成をするというのは、いま総理がおっしゃったような次元があるわけですから、せめて棄権の態度がとれなかったかというところに私は問題があるのではないだろうかへこう思います。しかも、中東諸国といいましてもたくさんあるわけですから、そう簡単に総理も御訪問なされるということはできないと思いますけれども、ヨーロッパの元首あるいは首相クラスの方々は、本当にかばん一つ持って、いわゆるそこの、友好国の総理の誕生日には電報を打ったり、自分みずからが行くとかというような人間的なつながりが中東との関係で太いパイプであり、いま総理がおっしゃったようなことが実現できると思うのです。だから、この狭い日本だけにいて幾ら中東に向かって理想を説いたって、中東和平の達成に日本は寄与できない、私はこういう意見なんです。だから、もう少し強く中東訪問の意思があるかないか、一言総理にお伺いしたいと思います。
  205. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、中東訪問の熱意を持ち、また、そのことが今後の中東諸国と日本関係を発展をさせる上から非常に有意義である、このように考えておりまして、できるだけ早い機会に実現したいもの、このように希望しております。
  206. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひ実現をお願い申し上げたいと思うのです。  そこで、いま総理の方の御答弁の中にもありましたように、いわゆるイスラエルのゴラン高原に対する併合問題について、政府も、悪いことは悪いということで明確に外相も答弁なすっておみえになりますが、翻って考えてまいりますと、日本の国内でイスラエルに対する物の見方というのが非常に無神経過ぎるような事柄が余りにも多過ぎるのではないかという問題提起を若干したいと思うのです。  実は、世界各国の海軍の艦艇、装備を詳しく載せているところの雑誌というのですか、年鑑がございます。いわゆる英国のジェーン年鑑というのですけれども、これは非常に権威のある海軍年鑑だと思うのですが、ちょっとこれは防衛庁の方から、どのような評価をなすっておみえになるか、お伺いをします。
  207. 新井弘一

    ○新井政府委員 お答えいたします。  ジェーン年鑑につきましては、海軍年鑑、武器年鑑、航空年鑑等十種類ございます。特に武器関係について強いというのが定評でございますけれども、いずれも一般的に数ある軍事資料の中では高い評価を受けている資料である、そういうふうに理解をいたしております。
  208. 草川昭三

    ○草川委員 実は、その年鑑の一九八一年から八二年を見ますと、二十ミリの機関砲二門を搭載した哨戒艇が四隻載っておるわけでありますけれども、それはいわゆる日本製ということになって記録をされておるわけであります。これは昭和四十三年八月から四十四年二月にかけて日本の東栄ボートという会社が建造したものでございますけれども、約五十トン、長さ二十・四メーター、ディーゼルエンジン二基、千五百四十馬力、最高速度二十四ノットというようなことが載っておるわけですが、これは事実かどうか。事実でございますが、とりあえず、当時この輸出検査の対象であったわけでございますから、運輸省から事実かどうかということだけをお伺いしたいと思います。
  209. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいま御指摘の英国のジェーン年鑑に、八一年-八二年度版に、イスラエルの沿岸パトロール艇四隻が日本で建造されたとの記載があることは事実であります。
  210. 草川昭三

    ○草川委員 これも、武器輸出の問題でいろいろな議論が出ておるところでございますから、繰り返しません。繰り返しませんけれども、私どもも、設計をされた方々の御意見だとか、いろいろな方々の調査をいたしたわけでございますが、実は、建造中に特別注文で船首と船尾に直径六十センチの穴をあけて銃座をはめ込みましたという証言もとっておるわけでございます。特に中東海域では小型艦艇の戦術的な効果というのも非常に威力を発揮しておるわけでございまして、私は、これも非常に無神経過ぎる輸出をしたのではないだろうかと思うわけです。  これは外務省にもお伺いをしますが、事実、一九六八年二月、当時カイロにございましたアラブ連盟のハスーナ事務総長の方からも調査依頼が日本にあったわけであります、一体どうなんだという。ところが、当時外務省の方は、武器を積んでございません、ただ税関ボートでございます、軍用目的ではないという答弁をしておるわけでございますが、いまでもアラブ諸国はこの問題を非常に気にいたしまして、一体どのような経過からこのようなものに対して日本が協力をしたのかということにずいぶん深い関心を持っておるわけでございますが、その点、運輸省の方として、あるいは通産省にお伺いをした方がいいと思いますけれども、どういう経過であったのか、お伺いしたいと思います。
  211. 野口節

    ○野口政府委員 先生御指摘のように、昭和四十三年から四十四年にかけまして、私どもの方でイスラエル向けの税関監視艇の輸出検査というのをやってございます。  ただ、この輸出検査というのは、輸出される船舶の品質がある一定の基準に適合しているかどうかということを検査するものでございまして、これが武器であるかどうかというようなことを判定するという趣旨ではございません。  武器輸出三原則のようなものに抵触するかどうかというような問題は、私どもとしては輸出貿易管理令の方でチェックされているというふうに理解しております。
  212. 草川昭三

    ○草川委員 この問題について、時間もございませんから、私は、現実に海軍年鑑に記載をされるような船舶の輸出については、そういう方法があるならば、慎重な上にも慎重な配慮をするということが大切ではないだろうか、このことを強く申し上げておきます。  なお、これも運輸省にお伺いをいたしますけれども、ただいまのところ、日本の国からイスラエル向けにいろいろな多目的の貨物船等が輸出をされておるわけでございますが、どのように把握をしておみえになるか。  ついでに答弁をお願いをいたしますが、運輸省からイスラエル向けに出たという資料だけでは、実はその正確な船の数というのはわかりません。そこで、現在世界的な権威になっておりますところのロイドの船級協会、レジスター・オブ・シップという船籍名簿がありますけれども、それの千八百三十ページに書いてある日本製の多目的の船舶なりその他の船舶は何杯あるのかお答えを願いたい、こう思います。
  213. 野口節

    ○野口政府委員 イスラエル向けの貨物船の件でございますが、私どもでは、一定の範囲の船舶につきまして、その船舶を建造することが国際海運の立場から見て適当かどうかということをチェックしておるわけでございます。このチェックしております実績からとりますと、現在までにイスラエルに向かって直接輸出された貨物船というのは七隻ございます。  それから、第二点のロイド統計の件でございますけれども、ロイド統計に載っております資料を調べてみますと、造船所では船をつくりますときに、船体番号、建造番号というのがございますが、この建造番号が一致しておるというふうなことから、あるいは、たとえばほかのリベリアというような国に輸出されたものが後ほどイスラエル向けに変更になったのではないかというふうに考えられるわけでございます。そういう船舶が何隻あるかということは正確に把握しにくいのでございますけれども、私どもがいろいろな資料から調べました限りでは、約九隻ぐらい存在するのではないかというふうに見ております。
  214. 草川昭三

    ○草川委員 それで、実はこの船を日本の造船所の方々が建造するわけでございますが、普通の場合は商社経由で、特にイスラエル向けの多目的だとか自動車専用のローローカーゴーなんというのを受けるわけでございますが、どの商社もアラブ諸国に遠慮をいたしまして、アラブボイコットということがございますので、手を引いておるわけです。中小企業の方々で非常に苦しい立場の方々がこのイスラエル向けの船舶を受注をしておみえになります。しかも、一々申し上げませんけれども、自動車運搬船とはいうものの外板がオープンになりまして戦車がどんどん入ってくるとか、戦車輸送を現実にイスラエルに向けて行われておるわけでありますし、多目的な船舶といいましてもかなりの弾薬等も輸送しておるわけでございまして、これも船籍名簿に載っておる、船の戸籍に載っておる、それがほとんど日本製だ、こういうことになって、アラブ諸国の方々も日本の中東姿勢というのは一体どちらにスタンスがあるのだろうか、こういうような疑問をわれわれも率直に受けるわけでありまして、私どももお答えをするのに非常に苦しい問題がございます。  ですから、私は、運輸省のいまの答弁では、その先は知らない、それはそれで現実のことかもわかりませんけれども、事中東という問題についてはもう少し慎重な配慮があってもいいのではないだろうかということを強くこれは指摘をして、もう一つ、次の問題に移りたいと思います。  実は、「中東軍事研修団」というのが、これは民間のツアーでございますが、これはちょっと総理見ていただきたいのですが、太平洋観光という旅行会社が「軍備研修ツアー 中東に行こう 自衛官のための国防研修シリーズ」といって自衛官に向けて軍備研修ツアーを過去何回かやっておるわけであります。防衛大学の生徒もこれに参加をしておるわけでございますし、詳しく申し上げませんけれども、ゴラン高原まで行っておるわけですね。こういう事実があるかないか、防衛庁にお伺いします。
  215. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘の太平洋観光によりますところの戦史研修ツアーあるいは戦跡めぐりという企画をもって行われておりますこのパッケージツアーに、自衛隊関係者が参加したことは過去においてございます。たとえば一九八〇年、昭和五十五年十一月二十三日から十二月一日まで、イスラエル・ツアーに一等陸佐が参加をした。五十六年三月二十五日から三月二十八日まで、韓国の戦史視察ツァーに自衛官四名、OB一名、計五名が参加した事実がございます。また五十六年八月十一日から八月十四日まで、韓国国防研修シリーズというツアーに防大生と自衛官含めまして四十五名。それからただいまお尋ねのイスラエル・ツアーでございますが、これは五十六年十二月二十六日から五十七年一月五日まで、戦史軍備研修ツアーという企画に、冬休みを利用いたしまして、私費で防大生六名、防大の教官一名、一等陸佐一名の計八名が参加をいたしております。
  216. 草川昭三

    ○草川委員 もちろん海外旅行は、国家公務員の場合は、当然のことながら所属の省庁の海外渡航承認書をつけて一回旅券で行かれておると思うのです。もちろん個人的なツアーだからいいとはいいますけれども、行ったところは紛争地であります。その紛争地にいわゆる防衛大学の学生だとか防大の教官が参加をするということは、私はこれは非常に無神経だと思うのです、紛争当事国でありますから。しかもゴラン高原まで行こう、そして前回の場合はゴラン高原からいわゆるフリーレバノン、レバノンへ行こうというような提案がその参加者の中からあったというわけです。もちろん旅券でございますから、旅券法違反であります、そのこと自身が。私はこういうことを簡単に計画をする観光会社も観光会社だと思うし、許可をした防衛庁にも責任があると思うのです。これは一回運輸省の方から、今後もNATO軍ツアーだとか対ゲリラ戦ツアーだとか、言うことがエスカレートしてどこでどうなるかわかりませんけれども、そんなところに重要な未来を担うところの防衛大の生徒が行っていいのかどうか、二つの省からお伺いします。
  217. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  自衛官もしくは防大生の海外旅行につきましては、防衛行政そのものが非常に国際的な性格を帯びたものでございますので、防衛庁といたしましては、たとえば今回の例のように休暇を利用して私費で旅行をする場合、国際感覚を養い、あるいは特に今回の場合軍事史研究部というメンバーでございまして、戦史を勉強したい、こういうまじめな動機からの参加でございまして、紛争当事国ではございますが、現在は情勢が静まっておる、国連監視軍も常駐をして両軍の引き分けもやっておる、イスラエルの一般の関係者も観光ツアー旅行として、ここは観光旅行のコースになっておる等の事情がございましたので、この海外旅行承認権者である防大校長が諸般の事情を勘案してこれを許可したものでございます。  なお、防大生の旅行に関しましては、初めての海外旅行等の場合、混乱があってもいけません、安全のためもございますので、パッケージツアーに参加するように指導をいたしておりまして、本件につきましてはそういう観点から許可をして出したものでございます。
  218. 西村康雄

    ○西村政府委員 運輸省の観光部から、旅行業を監督する立場から申し上げます。  現在、海外旅行は年間約九万件ございます。したがいまして、このような多数の海外旅行につきましては、どのようなところへ旅行するか、どういう旅行目的を持ってするかにつきましては、旅行業者の自主的な判断に一応任せるということでございますし、また参加する方もそれらの事情を十分理解した上で参加するというのがたてまえだと思います。ただ、旅行業者あるいは旅行社の方に、その旅行先がどんなふうに安全上問題があるかどうか、不明な場合には、たとえば戒厳令が急に出されるというような事態におきましては、これまでも旅行業者に対して注意を喚起しております。いま御指摘のような件につきましては、ケース・バイ・ケースでこれから措置してまいりたいと思います。
  219. 草川昭三

    ○草川委員 もう時間がございませんから、いまの防衛庁の答弁は、ゴラン高原は観光ツアーだから十分安全だというような御発言がございましたけれども、私はかかる無神経的な中東に対する感覚では大変なことになるのではないだろうか、こう思います。この観光会社は同様なツアーをやめるということを言っておりますから、私がその実情だけ申し上げておきますけれども、慎重な上にも慎重な配慮をとるという答弁をするのが私は当然ではないだろうか、こう思います。  次に、中東ではございません、いわゆるアラブではございませんけれども、イランの問題について、IJPCの問題がいま非常に大詰めの状況になってきております。二月の二十七日には日本側の企業の方も元金を二十五億円返済をしなければいけないという時期になってまいりました。そしてイラン側の方は、いろんな経過があったようでございますけれども、日本に対して返すべきものは返すというような段階になってまいりました。私も実は一昨年このIJPCの現地へ行ってまいりました。現地の伊藤建設本部長とも現地のサイトでゆっくりとお話をしまして、日本側の苦労ということは十分承知をしてきたつもりではございますけれども、いまのIJPCの置かれている立場というものは、何らかの方法を、政府が少し前面に出て解決しない限り私はこの問題は解決しないと思うのです。  そういう意味で、現在のところ通産大臣として、この二十七日に元金を返さなければいけないわけでありますけれども、輸出保険あるいは事業継続ということを前提にするのかという点について、簡単で結構ですから、まず御答弁を願いたいと思うのです。
  220. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 IJPCにつきましては事業が中断して今日に至っておりますし、御案内のように、いま三井側が基本契約の解約を向こうの方へ迫っておるわけでありますが、イラン側としてはぜひともひとつこれを完成をしたいということで、全く交渉が中断をしておる、こういう状況でございます。私の聞いているところでは、近々三井側も交渉団を送るのではないか、送るというふうに聞いておるわけでありますが、これはなかなかむずかしい情勢になっておりますが、できれば、両国間の非常に重要なプロジェクトでありますから、完成させることが望ましいとは考えております。しかし、長い間の中断とか、あるいは六回にわたる爆撃で大変な被害を受けておるということでございますし、民間企業である日本側当事者が無制限に資金を投入できないという立場にも立っておるわけでございます。いずれにいたしましても、進むにいたしましても退くにいたしましても、当事者間に大きな摩擦のないような形で行っていただきたいということでございます。  そのためには、これからもやはり交渉を中断することなしに続けてもらいたいということでありますが、何としても民間が主力でありますから、政府としてはその推移を見守ってまいりたい、こういうふうに考えておりますし、保険金の問題については、実はまだ三井側の方からも何らの請求も出ておりません。そういう段階でございますから、通産省としてまだ何らの検討もしてないというのが実情であります。
  221. 草川昭三

    ○草川委員 通産省の態度が、前の通産大臣と安倍さんになられてからの態度が少し違うというようなことを私どもも聞いております。ぜひ私は、これは国全体として指導すべき点は指導する、あるいはまた日本の高度成長時代にシャーの国王と結んだような、あの膨大な間違った経済援助についても反省すべきは反省しながら、そして今日の革命政権に対する協力をすべきはすべきだと思います。  そういう中で、実は昨年、前通産大臣の田中さんがバニサドル大統領とラジャイ首相に対する親書を極秘裏に山下英明イラン化学開発の社長に託したということが世上うわさされておるわけです。これはいわゆる正規の外交ルートを経ずして、民間会社の社長の手によって相手側に渡されたということになっておるわけでありますが、そのことは事実かどうか、まず外務省にお伺いをしたいと思います。
  222. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 お尋ねの件につきましては、外務省としては田中前通産大臣が発出したと言われる書簡自体を入手しておるわけではございませんで、したがいまして、外交上の配慮の上でコメントを避けたいと思います。
  223. 草川昭三

    ○草川委員 外交上の配慮からコメントを避けられるということは、あったというふうに理解していいのですか。
  224. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 実はこの問題につきましては、田中前大臣に私から確かめたわけでございます。確かに手紙はことづけた、ICDCの当時の山下社長にことづけたわけである。しかし、これはイラン側要人に会う際の添え状ということでことづけたということでございますが、いろいろと報道もされておりますような、経済協力に関して後に尾を引くような具体的なことは一切言っていない。また、紛争解決については、私が何かお役に立つことがあれば幸いである、こういうことを書いておるということでございまして、したがって、この問題で後に引くようなことはないというふうに直接聞いておるわけであります。
  225. 草川昭三

    ○草川委員 直接聞いておみえになるというのは、安倍大臣が前大臣にお会いになって確認されたということでございますか。
  226. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私が田中前大臣に会いまして、田中前大臣から直接聞いたことでございます。
  227. 草川昭三

    ○草川委員 そうしますと、総理にお伺いをしますが、この親書の中には、総理がある程度御了解をなすっておみえになるやのごとき話が伝わっておるわけでございますが、総理としてはどのようなお話をこの親書に託されたのでしょうか、事実についてお伺いしたいと思います。
  228. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は全然この問題には関知いたしておりません。田中君の私信であった、添え状であったということを聞いております。
  229. 草川昭三

    ○草川委員 私信、添え状という形でいま御答弁があるわけでございますが、それにしても、私は問題提起がきわめて重要だと思います。田中前大臣がIJPCの問題を心配なされるのはきわめて当然でありますし、伝えられるシャットル・アラブ川流域全体の地域開発、あるいはまたその中での三井を中心とするところの復興計画そしてまた日本は双方に手を汚していないわけでありますから、日本の国全体が積極的にイ・イ戦争の仲介に乗り出すべきだという意見を私は持っております。だから、私は決して田中書簡を批判するつもりはありません。当然のことだと思うのです。しかじ問題は、なぜ前大臣が一民間企業にその添え文を出したのか、そのことをなぜ日本の外務省というルートを通じてしなかったのか、私はここに根本的な間違いがあると思うのです。だから、中東というものがわかっていない、中近東というものを理解なすっておみえにならない。だから、そういう立場からこのようなことをされることは、かえって外交上混乱を起こすと思うのです。だから、私はこれは明らかに二元外交だと思うのですけれども、官房長官の方から御意見を賜りたいと思うのです。
  230. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど安倍通産大臣お話しになりましたことが事実のようでございますから、したがいまして、御指摘のようなことはなかろうと存じます。
  231. 草川昭三

    ○草川委員 私は、いま指摘をしたのは二元外交だと思いますけれども、外務省は外交的な配慮からというので非常に歯切れの悪い御答弁をなすっておみえになります。外務大臣、もう一回答弁をしてください。
  232. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほど通産大臣が山下社長が持参した添え状だという説明をしておられますが、対外的に、一般論で言えば、それは一貫性及び整合性のある外交を一元的に進めることが好もしいのでございまして、そのことは外務省としても常に配慮しておるところでございます。
  233. 草川昭三

    ○草川委員 私は、何回か申し上げますけれども、明らかにこれは二元外交だと思います。イランという国の内部も大変いま問題になっておるわけでございますから、もしもとれがバニサドル大統領あるいはラジャイ首相の手に渡っておったとするならば、IJPC問題というものはもっと別の角度でいま交渉が行われるごとになるわけでございまして、私は慎重の上にも慎重な態度をとられることを強く切望いたします。この点についてもう一回、中東問題全体あるいは中近東政策、イラン・イラク戦争、こういうものを含めて二度とこういうことのないように私は要望申し上げたいわけでございますが、総理から総括的な御答弁を願いたいと思います。
  234. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 中東問題に対する、非常に重要な地域であり、日本との関係はきわめて深い関係にある、その中東の真の和平、イランを含めまして中近東でございますが、そういう認識のもとにわが国としてできるだけのことをやっていかなければならない、このように考えておるわけでございます。  田中前通産大臣の手紙というものは、私、後で調べさせたのでありますが、通産省にも全然コピーもない、通産省の事務当局に立案させたものでもない、全くの私信であるということでございまして、私は二元外交というようなことはあり得ないことだ、このように考えております。
  235. 草川昭三

    ○草川委員 そうなると、またちょっと私は言いたいのですけれども、個人の立場だからというふうにすりかえておみえになりますけれども、それでは済まないわけです。少なくともアラブの国々あるいはペルシャの国々、少なくともIJPCをつくった建設の過程があって、いまだ工場は建設されていないのに金は返さなければいかぬという時期、しかもあの十二の膨大なプラントが雨ざらしになっておるわけですよ。これはだれが何と言ったって真剣に考える、そういう一つの手紙が行った。一民間企業の山下さんはもう何回か会っておるわけですから、添え文なんか要らないのですよ、ラジャイにあるいはバニサドルにだって。わざわざ大臣の紹介を持って会いに行くようなそういう立場じゃない。明らかにそれは通産の一つの問題提起であったわけですよ。だから、これはだれがどうあったって私は二元外交だと思う。  しかも、国家は永遠なんですよ。いまのイランがどうあろうと、イランという国は将来とも日本はつき合わなければいかぬのですよ。だからこそ私は、慎重の上にも慎重な配慮をすべきだということを言っておるわけです。私のいま言っておることは間違っておりますか。
  236. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 イランとの関係を大事にせにゃいかぬということについては全く同感であります。それと二元外交ということは、全然問題が違うということを明確に申し上げておきます。
  237. 草川昭三

    ○草川委員 これは押し問答になりますが、私は一般的な国民の立場から言うならば、通産省も知らなかった、全く個人的なことだ、こうおっしゃっておられますけれども、外務省も知らなかったけれども、事の中身は実は非常に重要な問題提起があるわけでありますから、私はこれは今後ともいろいろな意味で尾を引くと思いますが、二度とかかることがないよう強く要望して、時間がございませんので、次の問題に移りたいと思います。  資料を皆さんのお手元にお配りをいたしましたけれども、談合問題がいま非常に話題になっておりますが、実は医療問題というのは第二臨調の中でも大変大きな話題になりまして、特に医療費の抑制ということは去年の秋の中間答申にも出ておるわけでございます。国民の総医療費というものも十二兆円を超して、十三兆円を超そうとしております。しかも、その中で薬剤費の額というのは四兆六千億、つい最近の社会医療診療行為別の調査では、薬剤費率というのは三八%を超したと言われております。  厚生省の方も薬価調査を去年の暮れからやっておりまして、また昨年の六月には薬の値段を一八・六%下げたわけです。このために大変大きな効果もあったわけでございますけれども、実は去年の六月から十二月の間にメーカーの方は卸の問屋さんと話し合いをしまして、取引する価格をつり上げてきておるわけです。これは去年の秋の行革国会のときにも、実勢価格、取引の価格が、抗生物質では四割も上がりましたよというデータを私は出しました。  なかなかメーカーの方が強いわけでございまして、薬の値段というのはどこで決まるかといいますと、第一番目に東大病院で決まるわけです。その次に国立の病院で薬の値段が決まるわけです。三番目に地方自治体だとか赤十字病院というところで決まっていきまして、やがて町の開業医の方々が大体の相場を決めて取引をするという流れが現実の問題としてあるわけです。  いま皆さんのお手元にお渡しをいたしました資料は、私が指摘をいたしました東京大学の薬の購入品でございます。これが去年の十二月八日でございますが、外科なら外科の二十三品目、内科なら内科の三十九品目というものをそれぞれ入札をしたという資料であります。  それからもう一つの資料は国立病院の方で、これは日本で一番大きい国立病院医療センターで、去年の十二月に契約をした、内科なら内科、外科なら外科という形の一つの山で購入した入札内容です。それから国立第二病院と日本で一番大きいがんセンターの実態表でございますが、この資料はそれぞれ私ども突き合わせをした資料でございますので、まず文部省と厚生省の方から、この資料は事実かどうか、お伺いをいたします。
  238. 植木浩

    ○植木政府委員 文部省関係、国立の東京大学附属病院の資料についてお答え申し上げます。  いま先生が御指摘になりました分は、事実でございます。
  239. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 厚生省関係も、先生御指摘のとおりでございます。
  240. 草川昭三

    ○草川委員 それで、さらに東京大学の分について文部省にお伺いをいたしますが、ちょっと皆さん方御理解なさるのにむずかしい問題だと思うので、わかりやすく言いますと、一カ月に一回、入札をするわけです。あるいは二カ月に一回、入札をするのですが、一山というのは、外科の先生の分、内科の先生の分あるいは整形外科の先生の分といって、一々一本一本の薬の入札ということはむずかしいわけですから、一カ月分の入札をするわけであります。ですから、これらいま出した資料はそのうちの一つにすぎません。外科なら外科、内科なら内科だけの資料になります。  ところが、東京大学でも国立病院でもたくさんの科があるわけでありますから、たとえば私、いまから東京大学の例を申し上げますと、これは五十五年の十一月二十一日、二年前の話になりますが、薬価が昔の時代でございます。十一月二十一日の指名競争はどういう形でやられておるかといいますと、一つの入札をする八つの山がございました。それに対して一番こちらの外科の分については、全部で五つの会社が入札をするわけです。今度はこちらの一つの山の内科の山は、四つの問屋さんが入札をするわけです。整形外科の方は五つ別の会社が入札をする、こういうやり方をやっておりまして、一つの山は、外科なら外科はA社が落札をしました、そして内科の方はB社が落札をしました、整形外科の第三番目の方はJ社が落札をしましたということで、八つの山をそれぞれの会社が落札をしたわけでございますけれども、全部で十七業者が入札をいたしまして、順番に落札をしたのが全部で六社、二つ落札をしたのが二社、こういう形になっておるわけですが、その事実についてお伺いします。
  241. 植木浩

    ○植木政府委員 ただいま先生御指摘のとおりでございます。
  242. 草川昭三

    ○草川委員 いまの三つの資料で私が何を指摘をしたいかといいますと、実は薬の値段というのは一番低いところから百の薬がありますと、九十番目の値段が薬価に収載をされる。これが九〇%バルクラインと言われるものです。ですから一割だけメーカーは高くしておけば、その高い値段が薬価に収載をされます。いわゆる健康保険に払う値段になるわけです。それを厚生省は薬価ということで認めるわけです。  ですから、勢いメーカーは東大と国立病院の購入の薬だけは高くつり上げるわけです。それが証拠に、去年の六月に薬の値段が下がったのですけれども、その取引価格は六月から十二月までの間、一回も契約は成立していないのです。十二月に初めて薬の値段が決まったんです。半年間、薬の値段が決まらなかったのです。仮納入をしておったんです。この事実について認めますかどうか。
  243. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 全国的な統計では、改定前年度と余り変わっておりません。
  244. 草川昭三

    ○草川委員 いや、もう一回はっきり言いますよ。去年の六月に薬価が下がって、それから十二月までの間に正式な契約をしたんですか。この私がいただいた資料が初めてではないでしょうか。十二月四日が薬価改定後初めての契約ではないでしょうか。こういうことです。
  245. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 若干話し合いがあったとは聞いておりますけれども、私どもの受けております報告の統計では、前年度と比べましてそんなにおくれているというふうにはなっておらないわけでございます。
  246. 草川昭三

    ○草川委員 いやいや、私の質問に答えてください。半年間の間、契約をしたのか、十二月四日が初めてなのか。
  247. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 初めてではございません。契約もいたしております。
  248. 草川昭三

    ○草川委員 私どもが事前に厚生省なり東大の方々とお話をしたのでは、十二月四日が初めてだということなんです。  では、東大の方に聞いてみましょう。薬価改定後の契約というのは、これが初めてではないか。そうでなければ、では、厚生省にもお伺いをしますが、値引き率、東大は二〇%、指名競争二回目は一八%ということになっております。国立病院は一五%、明らかに差がありますね。東大は二〇%引きで買い、国立病院は一五%引きで買っておるわけですよ。この差をどうお考えになられますか。
  249. 植木浩

    ○植木政府委員 お答え申し上げます。  十二月の前に九月に一度、東大では契約をいたしております。
  250. 草川昭三

    ○草川委員 その九月は前年度の分の値引き率、すなわち薬価改正の前の値引き率を参考にして契約をしておるにすぎません。ですから、東大の場合は、そのときの値引き率は二〇%だったですか。
  251. 植木浩

    ○植木政府委員 九月の契約の分の値引き率につきましては、ちょっといま資料を持ち合わせておりませんので、お答えいたしかねます。
  252. 草川昭三

    ○草川委員 私どもが、東大のその資料について最初にここでお伺いをしたときには、実は大変苦労をして、公正取引委員会の方が十一月にいわゆるやみカルテル、やみ再販で立入調査をしたわけです。立入調査をしたので、東大の方も、これはいけないというので一生懸命努力をして、ようやく値引き率を二〇%にしたという資料が、いま皆さんのお手元にある資料であります。そして国立病院の方は、同じ十二月に契約をしておるわけでありますけれども、東大の値引き率が決まっておりませんから一五%引き、一四・四とか一四・九、一五・〇で値引きをしておるわけですよ。こういう事実があるわけでございます。  なぜ製薬メーカーは、こんなにまでして半年間も契約を渋ったのか。しかも、その渋ったというのは、いま薬価調査というのをやっておるものですから、去年一八・六%下げられたのは大変こわい、また薬価調査をして薬の値段が下げられては大変だというので、物すごいやみ再販というんですか、あるいはカルテル行為をして突き上げてきておるわけです。それが証拠に、京都の私立病院協会は、公取に対してカルテルだといって訴えておるわけですね。あるいは国立大学も私立大学もその他の大学も、東大のこの二〇%引きということを横目に見ながら仮納入、仮納入ということで、実は正規に取引ができていないわけですよ。  これは自治体病院なんかも全部関係することですから、このことを私は自治省の方も聞いておっていただきたいわけでございますが、薬の納入というのはどういう契約かといいますと、たまたまこの国立医療センターの項を見ていただきますと、第一回目、十五社が外科なら外科の山の入札をします。これが最低から最高を見ますと二百五十万円ライン。本来の薬価基準というのは二百七十七万八千円ですよという正規の値段というのがあるわけですから、これからいかに安く買うかというのが会計課長の腕で、一回目の入札をしますが、最高から最低までの差は百円刻みです、二百五十万円ラインは。  そこで、これは予算上問題だというので第二回目の入札をしますと、三つの問屋さんがもう辞退をしてしまう。そして第二回目の入札を見ますと、百円単位の入札ではなくて、もう千円単位に切り上げてしまうわけです。もうめんどうくさい、君はどうせ落とすんだから、おれは千円単位で入れるよというので、百円単位の入札はなくなってしまうわけです。  今度は三回目の入札になると、また二社が辞退をする。四回目で、またその他の問屋さんが全部辞退をしてしまう。そして、この右肩を見ていただいておわかりのとおりに、二百四十万八千円という同じ問屋さんが二社あるのですけれども、話し合いで辞退をしてしまいまして、二百四十万七千円のO社だけが残るわけです。ですから、ここで落札ということになります。  ところが、これではちょっとおかしいというので、会計課長が呼んで、おい、少し値引きをしろやというので、いわゆる不落随意契約という形で二百七十七万八千円から値引きをして、国立医療センターはこれで落札をするわけです。一五%引きであります。このときに東大病院は、二〇%引きで契約をしておるわけです。だから、東大病院の二〇%が決まると、これは国立病院も二〇%といってまねをするわけですね。  それをひとつやっていくわけでございますけれども、第二病院の場合も、メーカーがどういうやり方をしたかわかりませんけれども、一回目はここにありますような形で十一社の方々が入札に応ずる。ところが、第二回目の場合は二社が辞退し、三回目は全員が話し合いでK社に譲ってしまう。このK社を呼んで、三千八百円ほど引いて九百七十八万一千円という不落随意契約になるわけです。随意契約でも落ちないから、もう一回話をして、個別契約になってしまうわけです。こういう不落随意契約というのは、建設省関係では余りないようであります。辞退をした場合にはペナルティーを科して、もう指名をやめさせるというようなことを建設省あたりではやっておるようでございますけれども、薬の場合はそうではない。  こういうわけでございまして、国立がんセンターの場合でも、これは外科なら外科の一つの例でございますけれども、一千八百万円という大きい金額ですけれども、最後は二千八百五万四千円の会社がL社、M社、二つあるのですけれども、一社が辞退をしてしまう。この辞退をした問屋さんはどこへ行くかというと、今度は内科の方へ行くわけです。あるいは内科でも落ちなければ、今度は整形外科の山をもらうわけですよ。これが先ほど東大の例で、私が東大からいただいた資料で申し上げますように、十七の企業があるんだけれども、七業者がお互いに話し合いをして、一山、二山、三山、外科をとるならおれは内科をとるよ、ぼくは整形外科をとりますよ、その次はその他の薬をもらいますよという、いわゆる談合的な問題がここの中で明らかになってきておるわけであります。  この薬の値段の決め方というのは、全国で四兆円から五兆円になろうとする薬が、一部の、東大の大学病院のこの交渉によって右へならえで決まり、国立病院がそれに追従をする。しかも、私が何回か申し上げておりますように、これだけいま薬漬けだとかいろいろなことが言われておるわけでございますけれども、薬の入札ということ、あるいは大手の病院に対する取引の談合的な話し合いということについて、当局はいま少し関心を持つべきだと思うのです。その点について、厚生大臣の見解を賜りたいと思います。
  253. 森下元晴

    ○森下国務大臣 ただいま、詳細な資料で詳細な御説明をいただいたわけでございますが、薬の行政というものは非常に複雑でございます。昨年、御指摘の一八・六%薬価基準を下げたことによっての流通機構での多少の混乱はあったように私も聞いております。そういうことでございますけれども、資料に示されておる内容について談合があったということの確定、確認は私はしたくないわけでございますけれども、今後、薬価調査を毎年実施する、臨調でも示されておりますし、市場の価格の適正な把握に努めまして、その結果をもとに薬価基準の改定を行うように努めていきたい、こういう決意でございます。
  254. 草川昭三

    ○草川委員 きょうは公正取引委員会の方もおいでになっておられると思うので、公正取引委員会の方は、昨年大手メーカーのカルテルあるいはやみ再販の問題について調査をなすっておみえになるわけでございますから、本件について直接のコメントは別といたしまして、このような事例についてはすでに把握をしておみえになるのか、あるいはまたこれはどのようにお考えになるのか、見解を賜りたいと思います。
  255. 橋口收

    ○橋口政府委員 昨年の十一月十日、十一日の両日にわたりまして、主として栃木県を中心として、医薬品製造業者が医薬品の価格の維持または再販価格の維持を図っているという疑いで広範に調査をいたしたのでございますが、その結果といたしまして、収集した資料の中から、全国的なベースで同じような共同行為が行われているという疑いが濃厚になりましたので、十二月の十五日から全国的な規模で調査を開始いたしたわけでございまして、留置物件も二千件を超えておりますし、関係者も多数おるわけでございますから、現在事情の聴取を行っている最中でございます。  いま御提示のありました資料を拝見いたしまして、直ちに正式の見解を申し上げるのははばかるところでございますが、いかにも説得性のあるデータでございまして、私どもいまいたしておりますのは、主として医薬品メーカーの行為が中心でございますけれども、卸業者も関与いたしておりますし、この問題が仮に入札談合的な行為であるとすれば、これは卸売業者の行為でございますから、いま私どもが調査をいたしております事件とやや次元を異にする問題でございまして、こういう事実につきましてはいろいろうわさとしては、山買いの東大価格とかいろいろなことは承知をいたしておりますが、これほど詳細な資料というものは初めて拝見したわけでございまして、今後の事件の審査の参考にさせていただきたいと思います。
  256. 草川昭三

    ○草川委員 警察庁の方も、この談合罪になるかならないかということの即答は別といたしまして、私はきわめてその疑いが多いと思うのでございますが、見解はどうでしょう。
  257. 中平和水

    ○中平政府委員 ただいま御指摘の事案につきましては、ただいま実はお伺いしたばかりでございまして、事実関係を十分把握しておりませんので、これが談合罪に当たるかどうかについては、直ちに判断はすることを差し控えさせていただきたいと思います。  しかしながら、先ほども御指摘のありましたように、国公立の病院でそういう疑惑を持たれるような行為がかなりあるとしますと、警察といたしましても、積極的な関心を持ってその実態の把握に努め、そこに刑事責任を問うべき事実があればそれなりに対処してまいりたい、このように考えております。
  258. 草川昭三

    ○草川委員 それでは、やはり国公立の大学病院あるいは国立病院にも関係するわけでございますから、会計検査院として、このようなことを放置をすれば、どうしても薬というのは高値で安定するわけでございますが、どのようなお考えを持っておみえになりますか。
  259. 高橋良

    ○高橋会計検査院説明員 先生御指摘の点につきましては、五十六年度の問題でございまして、これから検査いたすわけでございます。私ども、談合そのものにつきましては、これを検査するような強権は持ち合わせておりませんけれども、私どもの権限の範囲内におきまして、予定価格が適正であるかどうか、あるいは会計手続が適正であるかどうか、こういった観点から十分検査をしてまいりたいと思います。
  260. 草川昭三

    ○草川委員 実は、厚生省は去年の暮れから、薬価調査というのを全国の医療機関でやっておるわけです。ところが、このように薬の値段が、まだ東大が年末にようやく決まったところですから、実際の取引価格が決まっておりません。ですから、一部の医療機関は、私ここに一つの資料を持っておりますが、薬価の値段をそのまま調査に書き込んでおるわけです。これでは、せっかくお金を使って薬価調査をしても私は意味がないのではないか、こう思うのであります。ここら辺は、私は非常に重要な問題だと思うので、ぜひお考えを願いたいと思います。  実は、きょうは時間がないので申し上げられませんけれども、薬の値段は、薬そのものについてはかぜをひいて抗生物質を打ちますが、たくさんのメーカーがあるんですが、同じ内容で、同じ効能で、これは厚生大臣が同じ内容ですよ、同じ効き目がありますよと言って認定をしても、上下の幅が、A価格、B価格、C価格といって四倍の差があるんです。これを銘柄別と言うんです。一番下の安い薬をつくっておるメーカーは、もうつくるのはいやだと言ってやめようとしておるわけです。結局、高値安定になります。中小の製薬メーカーがいまつぶれようとしておるわけです。  私はこれは非常に重要だと思うのですが、この点について、厚生省の御意見よりも、これはちょっと渡辺大蔵大臣に、これは医療費全体の問題であり、臨調の問題でもありますから、医療費抑制の問題について、大蔵大臣は過去の経歴からいっても非常にお詳しいわけでありますから、少なくともこの医療費を抑える、あるいはその中の薬漬けの問題、薬の価格の問題について意見があると思うのですけれども、私はぜひ意見を賜りたいと思うのです。
  261. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私も、あなたほどは詳しくございません。もう厚生大臣やめて数年たちまして、不勉強なところがございますから、こうということは申し上げられませんが、御指摘のような問題については、やはり検討を深めていく必要があると思っております。
  262. 草川昭三

    ○草川委員 時間がございませんので、最後に総理にお伺いをいたします。  実は、総理になぜこの薬の問題をお伺いするかといいますと、たしかあれは昭和四十三年でございますか、総理が自民党の医療問題調査会でございますか、それの……(発言する者あり)いま橋本先生がおっしゃったように、それの会長をなすっておみえになったときに、実は製薬メーカーが薬の中身をメーカー別に値段を変えてもらいたい、いわゆる銘柄別収載にしていただきたいということが機会になって、いまのような薬の問題点というのが浮かび上がっておるんです。だから私は、厚生省には、銘柄別の収載というのはやめて、同じ内容の薬なんだから値段は一本にしなさい、こういう提案をしておるんですけれども、その点について、これは厚生省は、まだ決めてからわずか二年から三年だからもとへ戻すわけにはまいらぬ。大蔵省の中ではいろんな意見があるようであります。いろんな意見があるようですけれども、この問題が、私は一つの問題を解くかぎだと思っております。過去に厚生大臣も経験なすっておみえになり、自民党の中でもこの薬の問題については大変お詳しい総理から御見解を賜って私の質問を終わりたい、こう思います。
  263. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御指摘のように昭和四十三年当時でございましたか、私、自由民主党の医療基本問題調査会長をやっておりました。そして、約一年がかりで国民医療対策大綱という、自民党の医療保険から医療制度の基本方針を確立をしたわけでございますが、その当時陳情があったかどうか、いま記憶にございませんが、草川さんも御承知のように、これは中央医療協議会、中医協で決まるわけでございます。中医協というのは、診療者側と、それから総評その他支払い者側、それに学識経験者、三者構成になっておりまして、この医療費の問題等についてはもうけんけんがくがくで、利害も対立するわけでございまして、そう簡単に決まるものではございません。そういうような真剣な討議を経て中医協においてこの方式がとられた、こういうことでございまして、厚生大臣にも検討をお願いをいたしますけれども、中医協で採択された方針、これを急に変えることができるかどうか。私も、この薬価の問題は非常に重要な問題だ、こう考えておりますから、なお研究をしてもらうようにいたします。
  264. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  265. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて矢野君、草川君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君の質疑に入ります。  この際、先日調査を要請されました問題につきまして、政府より発言を求められておりますので、これを許します。宮澤内閣官房長官。
  266. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 去る二月十日の当委員会におきまして楢崎議員から御質問のございました、昭和三十二年から昭和三十七年にかけて行われました修理保全のための韓国軍用機のわが国への入国手続に関する問題でございますが、調査をいたしましてお答えを申し上げるというふうにお約束を申し上げました。  何分にも大変古いことでございまして、関係文書の保存期間等との関係もございまして、各省庁最大限の努力をいたしましたが、まことに申しわけございませんが、余り十分な御報告を申し上げることができません。各省庁にわたっておりますので、ただいまから政府委員から御説明を申し上げますので、お聞き取りをお願いいたします。
  267. 豊島格

    ○豊島政府委員 二月十日の当委員会におきまして、米軍の飛行機の修理実績に関し、私から「たとえば日本飛行機ですと十九機とか、三菱ですと八機とか」それぐらいございますとの説明をいたしましたが、それぞれ十九機種及び八機種のことでございます。
  268. 小松国男

    ○小松政府委員 二月十日の当委員会において楢崎委員より調査の御要求のありましたペトロミンの公告その他の件につきましては、現在、当省において調査中でございます。
  269. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまの報告については後ほど質問をいたしたいと思いますが、まず、問題のファントムの試改修問題から質問に入りたいと思います。  この問題が起こりましてからいろいろ新しい事柄が明らかにされました。防衛庁はこちらから聞かないとそれを答えないから、このF4の試改修費と改修計画について、時間がないから以下私の方から言いますから、もしどこか違っておることがあった場合にのみここに出てきなさい。  では申し上げますが、まず、五十六年度のファントム試改修費は約二十億である。そして、これは五十六年、五十七年、二年間にわたる国庫債務負担行為となっておる。まず、この五十六年度の試改修費は二つから成っておる。  一つは、機体の延命のための改修である。それは二つから成っておる。まず一つは、機体に積んで各種データを集める器材、VGHレコーダー。Vとはベロシティーというのでしょうか速度、GはいわゆるGがかかるというG、Hはハイト、高さであります。もう一つは、このVGHレコーダーで得たものを地上で評価する器材、コンピューター、この二つが機体延命のための費用である。総額約七億二千万。そして、その中にプログラムが入っておる。そのプログラムとはコンピューターが疲労度を算定するプログラム、つまりノーハウ、情報である。このプログラムの分だけが米軍使用中のものを買う。費用約二千万円。あとは全部国産。だから、国産の分は、七億二千万から二千万を引くと約七億。機体延命の費用はそうである。七億二千万。  次に、能力向上の分、これが十三億。これは全部基本設計費である。どういう基本設計費であるかというと、火器管制装置、搭載ミサイル、計測装置等々である。まず、それだけで五十六年度は二十億円。この能力向上の分は十三億円。  次に、五十七年度予算、これは機体延命分はない、能力向上分だけ。それの改修費、器材等を買うため、これが約八十五億。そして、これは五十六年度と違って五十七年度から三年間の国庫債務負担行為、したがって五十七年度から五十九年度まで。さらに、この試改修完了時期はしたがって五十九年度まで。そして一機を完全に試改修する。したがって、いわゆる量産、これは六十年度以降に量産の予算請求が行われるはずである。一機約十億、百機ですから約千億。  以上間違いないか。
  270. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 延命の方でございますが、それにつきまして五十七年度に二億五千万円ばかり予定しております。その分だけが欠けております。あとはおっしゃったとおりでございます。
  271. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体私が報告したとおりで、さらに五十七年度には機体延命の分が二億何がし入っておるということが明らかになった。  能力を向上する意味は、機体の寿命が延命されなくては意味がない。したがって、この機体延命と能力向上は一体のものである。それが証拠に、鈴木総理は十三日、記者団にこう語っておる。十億円程度でこのF4の耐用年数を十年ほど延ばせるというし、能力アップになるというので、行政改革の折でもあり、F15を新しく買うより結構なことである。つまり、総理自身も、この十億で機体延命と能力向上は外せない一体のものとしての認識を持たれておる。したがって、もしこの試改修分、五十六年度の十三億だけ、能力向上分だけを執行停止するのは意味がない。二十億全部執行停止しなければ意味がない。まずそれが第一点。  そしてさらに、五十六年度はすでに通っておるからこれは執行停止を単に参議院審議のあるまででよろしいなどというようなことはだめ。本来装備というものは、その年度の三月三十一日近くにするものであって、いまからそれまで停止をしようとしまいと関係ないものなんです。だから意味がない、この執行停止を参議院予算審議中などということを言ってみたって。だから、これは執行を停止し、不用額にする、五十六年度は。そして、五十七年度はこれを削減する。そうしなければ論理が一貫しないわけです。(「反対」と呼ぶ者あり)いや、反対でもよろしい、論理は一貫しない。それで、私は社会党時代からこれはやってきたから、私はあの増田長官答弁を支持する、それははっきりしておきます。そこで、問題は論理を一貫しなければならない。どうも今度の紛争は意味がわからない。  そこで私はさらに、きのうも明らかになったとおり、総理、これをあれしたらF15を買わぬで済むような問題じゃないのです。総理は恐らく御存じなかったと思う。きのうはっきりしたでしょう。これはF1の後継機、三種秦委員が挙げましたね、ファントムを改修するか、いまのF1を改修するか、もしくはF16もしくはF18。とりあえずこのファントムの改修が成功したらF1の後継機になる、そういうものでして、これを改修成功したらF15が少なくて済むのですか。私はそういうことはないと思います。だからこれは関係ない。  次に、私は時間がありませんから、詰めのことは時間をたくさん持っていらっしゃる野党の方にやってもらいたい。そこで問題は、私がいまから言いたいことはこういうことなんですよ。なぜこんなにもめたか。  まず、官房長官にお伺いをしておきますけれども、どうもあなた、二月十五日の記者会見あるいは二月十六日の参議院理事会、きのうの参議院予算委員会、聞いておりますと、この禁止事項や政策変更につながるようなものでも、単に研究開発、実験であれば防衛庁は自由にやれるごとき印象を与える発言をなさいました。そうですか。
  272. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もとより日本国憲法の定める範囲のことでございますが、この場合、試改修ということであれば、これは成功するか、まあすることを祈りますけれども、その結果によって量産するかしないかを決めるわけでございますから、総理大臣がそれについて判断をされるのは、その時期でも決して遅くない。文民としての防衛庁長官が監督しておられればそれで足りる、こう考えております。
  273. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは官房長官、間違いであります。何回もやってきたことである。つまり研究開発、実験でも、禁止されておることはやってはいけない。なぜならば、これはおたくの資料、防衛庁の。研究開発するときにはどうするか、その研究開発の項目選定基準がある。その中の一つに、装備の可能性大なるものしかしない。まあやってみてどうなるかわからぬ、そういうものはやらないのです。いいですか、装備の可能性大なるもの。  そこで、私は、昭和四十三年に、ここにあります、これはマル秘資料です、第三次防の技術研究開発計画。この中で、AMMというものを研究対象にしておった。AMMとは何か。アンチミサイルミサイルです。つまりABM、アンチバリステイックミサイルのその前のやつで、これは核以外はないのです。そうでしょう。アメリカではナイキジュース、これが代表的なものです。そしてこれからだんだんABMになっていくのです。そしてさらにそれが発達して、大気圏外用のスパルタンあるいは大気圏内用のスプリント、こういうふうに発展していく。AMMはまさに核兵器の研究である。だからここでもめた。もめて、この技術研究開発計画から外した。だめなんですよ、禁止事項をやっちゃ。これは私は明確にしてもらいたい。  それで、さらに私今度混乱したのは、大体こういうやつは、こんなに三年もまたがるやつは、一つの航空自衛隊のファントムの中へちょろちょろと入れるのじゃなしに、技術研究開発の費用の中に、技研の費用の中に入れれば明確になるのですよ。それをこういう処理をしているからわからない。これは注意しておきます。  だから、本来ならば、もし技研の項目に入っておれば――いろいろあるのですよ。技試、技術試験ですね。それから部試、部分試作。研試、研究試作。所試、所内試験。所研、これは所内研究。実試、実用試験。特研、これは特別研究。委託、これは技術調査委託。そういうものがきちっと決められておる。それをごまかそうとするから、試改修などというわからぬ言葉をわざわざ持ってきた。それが真相であります。今後はそういうふうにしなくてはいけないと私は思います。  さらに、官房長官にお伺いをしておきますが、量産過程になればこれは当然国防会議に諮られるべきものであろう、こういうあれをなさっております。これは国防会議の検討対象事項になる、そう官房長官は言われておる。この意味は、量産過程になれば政策変更、すなわち増田答弁の修正につながる可能性があるから国防会議の検討事項になる、そういう意味に解していいのですか。
  274. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどわが国憲法と申し上げましたが、それは代表的な意味で申し上げたことでございまして、憲法のもとに政府幾つかの重大な政策がございます。非核三原則などもその一つでありますことを申し添えておきます。  なお、量産云々と申しましたのは、試改修が成功いたしまして仮に相当の機数をつくるということになりますれば、これはわが国の防衛力のかなりの変化でございますから、そのような意味で国防会議の議に付するのが適当であろう、こう考えておるわけでございます。
  275. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まだ政策変更ということは考えていらっしゃらないのですね。  では質問を続けます。  執行停止の解除の条件がよくわからない。先ほど申し上げたとおりです。これは参議院審議審議しさえすればいいということなのか、それとも完全に疑問が解明されなくてはだめだということなのか。もし審議すればいいということであれば、いわゆる予算委員会の了承を求めるということを解除条件にはなさらないわけですか。どうでしょう。
  276. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私の記者会見に関係しておりますので、私から便宜お答えをいたします。  この執行停止をいたしましたのは、政府の責任におきましていたしたわけでございます。その背景には、当委員会におけるいろいろの御質疑等々がございまして、そういうことを考えまして政府として政治的な決断をいたしました。これは法律上の措置ではございませんが、事実上政治的な決断でございます。  次に、参議院におきまして御議論がございまして、参議院予算委員長が仲介をせられまして、補正予算の御審議終了後しばらく参議院予算委員会は開かれませんが、本予算審議をする段階においてこの問題についてはもう一度議論をしたい、したがって云々という委員長のお計らいでございますから、その点につきましてもごもっともなことと思いまして、政府はそのような政治的決断をいたしました。そのような信義は重んじてまいらなければならないと考えております。  しかし、いずれにいたしましても、これは政府の決断、政治的な決断でいたしたことであり、執行権は与えられておるわけでございますので、御理解を得ました上で、遅くなりません段階で執行させていただきたい、かように考えておるわけでございます。
  277. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それだと、わざわざあなたの方からそうおっしゃらなくても、五十七年度の審議中、衆参にわたって審議はできるのです、この問題について。わざわざそっちからお許しをいただかなくても、審議できる。そして三月三十一日までにあなた方は強行なさるのだったら、じゃ、それまでの執行停止というのは何の意味があるのです。さっきから言うたとおりです。もともと、執行停止があろうとなかろうと、これは三月三十一日近くに契約するのです。だから私は、この辺でこの混乱をはっきりさせるために、これは一体増田答弁は今後も生き続けるのか、それとも政策の変更につながるのか、はっきりしてください。
  278. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これにつきましては、過日の当委員会におきまして防衛庁長官が、政府部内において十分検討の上お答えを申し上げるということを申し上げております。まだ検討を了しておりませんので、しばらくお待ちをお願いしたいと思います。
  279. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではお約束してください。その検討ができたときには、機会をつくっていただいて、私にもひとつ御答弁をいただきたい。  次に、私は、先ほど御報告のありました韓国機の改修問題に入りたいと思いますけれども、何か一部でも資料残っておるのですか。
  280. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど官房長官から御答弁したとおりでございまして、全部について具体的に資料を発掘することはできませんでした。しかし、修理保全のために韓国軍用機がわが国に入国します際の手続として、三十五年六月以前については、入国しようとする航空機の機種等について日米合同委員会の場で事前にアメリカ側より日本政府に対して通報があり、この米側からの通報に、外務省より、運輸省また防衛庁が領空侵犯に対する措置の実施を開始した後は、防衛庁を含め関係省庁に対して通報されていたわけでございます。  三十五年六月以降については、改定せられた手続のもとで、航空機の機種、機体番号、入国予定等が合同委員会においてアメリカ側から日本政府に通報されるとともに、通常の外交経路により韓国側から日本政府に対して韓国軍用機の入国のための必要手続がとられ、これらは外務省から運輸省、防衛庁等関係省庁に対し通報し、これらの省庁において必要な処理を行うこととなってございます。たまたま政府部内に残存していました一部の記録によっても、すでに述べましたような手続に基づいて日本政府部内での処理が行われていることが確認されておりまして、ただいまの御質問に対してお答えになるかと思います。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 たまたま残存しておるその資料というのは、韓国のいかなる機種であって、日本に持ってくるときにはどういう日本の基地に運ばれたか、経路を明らかにしてください。
  282. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 機種はT33でございます。ルートはAの2、Rの11、Gの4、Bの12というルートを通ってきたわけでございます。その他、フライトナンバー、コールサイン等がついております。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、大事な点です、どこに着きましたか、どこを経由して。
  284. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 失礼いたしました。  板付経由で岐阜に入っております。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは二機である。それは三菱重工の小牧基地ではない分である。恐らく川崎でしょう。  いまお聞きのとおり。板付-岐阜、岐阜というのは航空自衛隊岐阜基地である。これは昭和三十六年に米軍から全面返還されて、いま米軍の提供地域、施設はない。現在、自衛隊の実験航空団等がある。私がこの前指摘したF86あるいはRF86、あの百三十五機はどこの飛行場に着きましたか。そしてどこから出ていきましたか。
  286. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お答えいたします。  先ほどもお答えしましたように、外務省の文書規定によりましても、あるいはその他関係省庁の規定を見ましても、そのときの記録が保存されておりません。したがって、いまお尋ねのF86について残念ながら記録が残っておりません。
  287. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この百三十五機は、現在の名古屋空港――航空自衛隊が共同使用しております。航空自衛隊では航空自衛隊小牧基地と言っている。民間と共同使用である。ここにも米軍の提供施設区域あるいは施設はない。完全なる自衛隊基地である。  いいですか。私は何も古い問題をいじっているのじゃない。今日的な問題があるからです。日米防衛協力ガイドラインによる極東有事の際に、一体どういうことが予想されるか。いままでの答弁によれば、極東有事の際に、自衛隊が米軍に協力し得るものはせいぜい自衛隊基地の使用提供だと言われておる。そのためには、もし提供使用させるためにはどういう手続が必要ですか。こっちから先に言いましょうか。合同委員会にかける、合同委員会からよろしかろうということになれば、地位協定二条一項(a)によって全部取り上げるか、あるいは自衛隊の場合は二条四項(b)によって使用させる。間違いない。間違いないでしょう。
  288. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 そのとおりです。
  289. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だからこれは名古屋空港も、この航空自衛隊小牧基地も、岐阜基地も自衛隊プロパーの基地である。そのような手続がとられたでしょうか。地位協定の何条によってこれは使わしたのですか。
  290. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 正確に記憶していれば、厚木は二4(b)でございます。したがって、その共同使用ということでできるわけでございます。  それから岐阜についてあるいは小牧については、これはそのときの入ってきた飛行機は韓国でございますが、MAPという飛行機であれば、自衛隊基地についてそれぞれの手続を踏んで日本政府が許可をすればはいれるわけでございます。
  291. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは私、言っているでしょう。手続をすれば、はいれる。その手続をしたかと聞いている。大事な点です。だから私は、済んだことはしようがないが、総理、これからこういうことは厳重に手続を踏まないとだめです。  しかも、いいですか、総理、一九六九年十一月の日米会談後の佐藤総理のプレスクラブにおける演説は、あなたは継承されますか、あの内容は。いや、総理は継承されますかと聞いておる。  じゃ、時間がありませんから、私の方から言いましょう。  私が特に問題にしておるのは、このプレスクラブの演説で、これは共同声明と一体のものであると言われておる。これはアメリカの上院の委員会、公聴会でも確認されている。一体のものである。ここで最も重要なことは、もし「万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍が日本国内の施設・区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立って、事前協議に対し前向きにかつすみやかに態度を決定する方針であります。」ここです、特に問題なのは。継承されますか。
  292. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 日本以外の極東の地域におきまして有事という事態が発生をいたしまして、そしてわが国の安全に大きな影響を持つという場合におきまして、米軍に対してどのような便宜を供与するかという問題になるわけでございまして、いまその問題等につきまして日米間において協議が始まったばかりでございます。その結果を見なければなりませんが、いずれにいたしましても、憲法その他の制約もございます。そういう点を厳密にわが方としては検討してまいりたい、こう思っております。
  293. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 お聞きのとおり、私の質問に答えられておりませんね。この佐藤総理のプレスクラブにおけるこの個所は、政策として継承されますかということを聞いておる。
  294. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そういう内容に触れる佐藤さんの発言でございますから、いま私が申し上げたとおり対処していきたい、こういうことです。
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 継承されるということですか。(発言する者あり)いや、わからないのです。
  296. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 佐藤さんのおっしゃっておるのは、極東有事の場合のことです。
  297. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、そうじゃありません。ちゃんと書いてあるんです。韓国に万一武力攻撃が発生した場合には、前向きかつ速やかに……
  298. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 韓国も日本以外の極東の地域でございます。その事態がわが国の安全に重大な影響を及ぼすという場合におきましては、どのような便宜供与ができるかということをいま検討中でございます。
  299. 栗原祐幸

    栗原委員長 時間でございます。
  300. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の質問に答えられておればあれですけれども(「答えておる」と呼ぶ者あり)じゃ、これは継承されるわけですね。それで……(「検討していると言っている」と呼ぶ者あり)
  301. 栗原祐幸

    栗原委員長 時間です。
  302. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうですか。じゃ、検討されるということは、これの……(「ガイドライン」と呼ぶ者あり)ガイドラインを言っているんじゃないのです。このプレスクラブにおける演説の内容政策として継承されますかと聞いたのに対して、いま検討中だ、そういう答弁でしょう。じゃ、継承するかどうかを検討中なんですか。いや、大事な点ですから。私は、五分も十分もと言っているんじゃないのですよ。大事な点ですから。
  303. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 佐藤さんがお触れになった問題も極東有事の事項の中に入るわけでございます。そういう点をいませっかく検討中である、こういうことを申し上げておるわけです。
  304. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、最後に意見だけ申させてください。つまり、この「前向きにかつすみやかに」というのは、英語でポジティブリーになっておる。これは直接出撃はイエスということだ。それはもう何回も確認されておる。私が心配するのは、日本の米軍基地からそういう場合に直接発進するのもイエスだ、自衛隊基地からも直接発進する余地がこれでできたということを私は指摘したい。そういう事態を総理は十分考慮されまして、いわゆる慎重に対処をしていただきたい。  これで終わります。
  305. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、試改修という言葉につきまして装備局長から発言を求められておりますので、これを許します。和田装備局長
  306. 和田裕

    ○和田(裕)政府委員 まことに申しわけありませんが、ちょっと訂正させていただきます。  先ほど先生が、延命と能力向上の両方を試改修という名前で最初触れられたことによく気がつきませんで、私は延命について申し上げたわけでございますが、その趣旨は、能力向上と延命というものは私ども別物である、そういう認識で御説明したわけでございます。  なお、五十七年度というふうに申し上げましたけれども、それは五十八年度以降考えておる、防衛庁限りで考えておる予算、こういう意味でございます。  以上です。
  307. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 委員長、だめですよ。最後に、私が時間がなくなってそんなことを言ったってだめですよ、あなた。何言っているのですか。一体のものであるということを私が言ったんだ。総理もそう認識されている。いまごろ、私の時間がなくなってそんなことを訂正してもらっては困りますよ、あなた。
  308. 栗原祐幸

    栗原委員長 楢崎君、時間でございます。
  309. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何言っているのですか、冗談じゃないですよ、あなた。
  310. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十九日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。   午後六時三十七分散会