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1982-08-06 第96回国会 衆議院 文教委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年八月六日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 青木 正久君    理事 石橋 一弥君 理事 中村喜四郎君    理事 西岡 武夫君 理事 三塚  博君    理事 佐藤  誼君 理事 長谷川正三君    理事 三浦  隆君       赤城 宗徳君    臼井日出男君       浦野 烋興君    狩野 明男君       高村 正彦君    谷川 和穗君       船田  元君    渡辺 栄一君       木島喜兵衞君    嶋崎  譲君       中西 積介君    湯山  勇君       有島 重武君    栗田  翠君       山原健二郎君    河野 洋平君  出席国務大臣         文 部 大 臣 小川 平二君  出席政府委員         文部政務次官  玉生 孝久君         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         文部省大学局長 宮地 貫一君  委員外出席者         警察庁警備局公         安第二課長   西村  勝君         外務大臣官房外         務参事官    長谷川和年君         外務大臣官房外         務参事官    渡辺 泰造君         外務省条約局法         規課長     河村 武和君         文部省初等中等         教育局審議官  菱村 幸彦君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ————————————— 委員の異動 八月六日  辞任         補欠選任   山口 鶴男君     木島喜兵衞君 同日  辞任         補欠選任   木島喜兵衞君     山口 鶴男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件(教科書検定問  題)      ————◇—————
  2. 青木正久

    青木委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件、特に教科書検定にかかわる問題について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯山勇君。
  3. 湯山勇

    湯山委員 現在非常に問題になっております教科書問題について御質問申し上げます。  いろいろ今日までの経過を見ますと、日本政府といいますか、文部省側説明にもかかわらず、その後次第に事態は悪化しつつあるといいますか、激しくなりつつある。中国からは外務次官抗議といいますか、申し入れがございましたし、韓国は国会でこれに対して決議を行ったということが伝えられております。こう見てまいりますと、今回の中国並び韓国申し入れもしくは抗議というものは両国の国民感情世論というものが背景になっておりまして、私はけさの広島の原爆記念日の放送を見ておりまして、日本においてもこういう状態だということを考えますと、これはきわめて重大な問題だ、国を挙げて日本も対応しなければならないし、しかも、それは一日延びれば一日だけ状態は悪くなっていくという心配さえもございます。なおまた、台湾でもこれを問題にしているということも伝えられておりまして、アジア全域あるいは国際的な大きな問題にも発展しかねない問題でございまして、緊急にこれに対しては日本として解決のために全力を尽くす段階ではないかということを考え、痛感します。大臣はどのように御把握でしょうか。
  4. 小川平二

    小川国務大臣 ますます厳しい状況が出てきておりますことについては心から憂慮いたしております。したがいまして、事はすでに外交問題になっておるわけでございますから、外務省とも協議いたしまして、さらに当方立場当方真意を正しく理解してもらうための方途を研究するつもりでございます。
  5. 湯山勇

    湯山委員 いずれこのことにつきましてはお尋ねする機会も持ちたいと思っております。が、この発端は教科書の問題であるし、そして焦点もまた同様に教科書の問題でございます。したがって、教科書責任は全部文部大臣にあるわけでございますから、この際、文部大臣決断がきわめて重大であるということを前回御指摘申し上げましたが、この点についても同様に御理解になっておられるかどうか、重ねてお伺いいたしたいと思います。
  6. 小川平二

    小川国務大臣 教科書検定文部省権限並びに責任において行っておるわけでございますから、もとよりこれを回避したり、あるいはそのように誤解されておるようで残念でございますが、民間の企業に転嫁しようというようなつもりはさらさらございません。ただいま決断というお言葉がございましたが、私の考えておりますることは、先般来るる申し上げておりますように、当方立場当方真意を正しく理解してもらうために全力を傾注する、それによって問題を解決したい、このように考えておるわけでございます。
  7. 湯山勇

    湯山委員 時間の関係もありますから、はしょって申し上げますが、大臣はいま、文部省責任とおっしゃいましたが、そうじゃございません。法律に明確に文部大臣と規定しております。文部省責任ではなくて、文部大臣責任と申し上げたのは、文部大臣に全責任がある、検定の終わった教科書については全責任文部大臣にあるということを御自覚の上で質問をお聞き願いたいと思います。
  8. 小川平二

    小川国務大臣 答弁が適切を欠いておったと存じます、恐縮でございます。文部大臣責任並びに権限において検定を行ったわけでございます。
  9. 湯山勇

    湯山委員 そうです。そこで、今日までの文部省の対応、それからいろいろ述べておること、それと経過とを合わしてみて、文部省大臣部下が努力しておることが逆効果がずいぶんある。説明したことが逆に世論を刺激し、そしてまた怒りを買っているということを向こうの政府筋指摘しておるわけです。ここで一遍それらのことを反省してみなければならない、検討してみなければならない。  私は、そういう観点から見てまいりますと、今日まで言ったりやったりしてきたこと、これは非常に問題が多いと思います。たとえば韓国の場合、神社参拝強制したという「強制」を削除さしている。しかし、強制さしたことは事実で、このことに関しては私もその渦中にいましたから、その資料も大臣にお届けしております。しかし、強制してないというような判断、あるいはこれを削除するというようなこと、あるいはまた神社参拝を拒否して投獄されたというような事実があるわけですが、これについては検定課長は知らないというようなことを言っておる。これも昨日聞いたら、やっぱり知らないと言ったということです。こうなりますと、一体神社参拝強制ということがあったのか、なかったのか、どう考えますか。
  10. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 湯山先生指摘の点につきましては、韓国李公使との会談におきまして、私ども立場としては一貫して日韓友好精神に基づいて、学校教育におきましても教科書記述におきましても、そういう精神が一貫しているべきであって、教科書の全体の記述をごらんいただくならばこの点が理解されるのではないかという観点から、教科書を差し上げるとともに、検定制度につきまして個々の具体的な事実には触れないで、わが国の検定制度の仕組みについて詳しく御説明を申し上げて理解を求めたような次第でございます。その点が先生指摘のように文部省検定当局としての責任を回避するように受け取られておるということでございますれば、私ども真意ではございませんし、その点についてはただいま大臣が申し上げたとおりでございます。  なお、その個々の問題につきましては、私ども自体としてこのことについて正規に韓国ないし中国関係者とお話し合いをしたということはございません。いま一例をお挙げになりました、たとえば韓国における神社参拝強制等につきましては、これはやはり客観的に正確を期するという見地から、日韓併合終戦までにわたる長い期間において強制というふうに表現されておりますので、そういう事実はあったと思うけれども、それを客観的に長い時代にわたって一様に行われたかということについては、正確を期するために史料に当たっていただきたいという見地から申し上げたのでございまして、特にその点について削除を命ずるとかそういう趣旨ではなかったのでございます。
  11. 湯山勇

    湯山委員 局長、いまの御答弁は、あなたの答弁じゃないのです。調査官の言ったことをそのまま言っておるのでしょう、ただいまの神社参拝については。あなたが責任持って言えることではないでしょう。というのは、事実を確かめてやったことでないと思うのです。というのは、神社を建てたというのも同じように書いてある。じゃ、期間を通じて神社を建てましたか。じゃないのです。しかも日本人というのは、行き先、行ったら神社を建てるのは普通なんで、自分たち自分たちの先祖の神社を建てた神社もたくさんあります。全期間を通じて神社を建てたわけじゃないので、これは全く、強制した事実を認めながらも、それを期間がどうとかということで言って、それを削除するというようなことはこれは間違いです。強制という事実があったかどうかだけ、大臣お認めになるかどうか、大臣から御答弁願います。
  12. 小川平二

    小川国務大臣 私みずから史実について調査いたしたわけでもございませんし、私が自分検定の衝に当たったわけでもございません。検定については部下の報告を聞いておるだけでございますが、神社参拝強制したという事実はあったということを認めざるを得ないと思うのでございます。ただ、これが朝鮮統治の全期間を通じてそのようなことを強制したと申すとこれは歴史の事実ではないという判断調査官は持っておったのじゃなかろうか、こう考えております。
  13. 湯山勇

    湯山委員 調査官、間違いですよ。これは日本の名前に変えよというのも今度のに書いてあります。全期間やったのではありません。私は昭和十三年までおりましたけれども、その間に日本名に変えるということはありませんでした。昭和十三年、それ以後です。それは書いてある。これは全期間じゃありません。お宮を建てた、これも全期間建てたわけじゃありません。ですから、これは間違いです。いま言う理由も間違い、それから強制しなかった、消さしたことも間違い。指摘しておきます。  それから、「侵略」を「進出」と訂正させる理由として、価値観が入ってはいけないという説明がありました。それならば、たとえば今度の独立運動です、朝鮮独立運動、三・一の。これは「暴動」と書きかえさしておりますね。一体、いいですか、暴動という言葉には価値観がないのですか。
  14. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 三・一独立運動に関するお尋ねかと思いますが、この点につきましては、検定において、三・一独立運動そのもの暴動であるというようなことを記述するという観点から意見を付することはございませんし、現に検定済み教科書におきましても三・一独立運動のことは詳細に触れておりますが、暴動というような定義をしているものはないわけでございます。
  15. 湯山勇

    湯山委員 高等学校日本史」、東京出版原稿本では「集会デモがおこなわれ」と、こうあります。見本本では「デモ暴動朝鮮全土に波及した」、こうあります。御存じないのですか。なければないでいいです。
  16. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 御指摘教科書につきましては、暴動デモという表現が使われておったかと思いますが、歴史的な事実といたしまして、デモ集会、それに伴う騒擾というような状態をあらわす表現といたしまして暴動という言葉が使用されたものかと思います。
  17. 湯山勇

    湯山委員 なぜ「暴動」としたのですか。
  18. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 これにつきましては、この歴史的な事実をより客観的に公正にあらわすために、デモ集会だけではなくて、そういう状態、これは状態をあらわすことでございますが、そういうことがあったのではないかということで、これが、意見が付されたのだと思います。
  19. 湯山勇

    湯山委員 時間がありませんから、余り一々の問答をいたしませんけれども、「集会デモ」を「暴動デモ」としたということは、やはり価値観の導入です。「侵略」と「進出」には価値観を排除するという理由をつけながら、ここでは価値観を入れております。  その上非常に問題なのは、韓国の場合は、韓国の民衆は被支配者です。それから、このときに出た日本軍隊、警察は支配者の側です。支配者価値観と被支配者価値観は真っ向から違います。ことに独立運動というのは、被支配者にとっては最高価値を持っている。アメリカのワシントンがそうです。それを今度は、当時の支配者価値観からこれを暴動と決めつける。こういうことをやっておって、幾ら説明してもこれはだめです。大臣、同じ現象を、これを「集会」というのを「暴動」に変えるというのは、両方の価値観の非常に大きな差のあるところ、それをあえて持っていっている。理由は、軍隊が出たのだから暴動だと言っておるのです。これは許せませんよ。大体、価値観を入れないと言いながら、暴動というのは明らかに価値観が入っています。首尾一貫しません。  それから、まだ申し上げれば、価値観を入れないという方針、一体歴史の事実で価値観と全然無縁なものというのはあるのでしょうか。人間の行為の結集したもの、そういう歴史上の事実で、これはもう価値観が全然無関係だというようなものがあるだろうか。これは、近代史を書く場合に、学者立場でいろいろな状況が変わって、近代史は変化中ですから、価値観の評価が変わる。たとえば今度の大東亜戦争なら大東亜戦争も、初め聖戦と言っておった。侵略戦争ということに戦後変わった。価値観は変わります。だから、近代史にはなるべく価値観表現は使わない方がいいということは歴史学者立場。ここは明らかに、日本はこのことに関してちゃんと、大変中国国民に御迷惑をかけたと深く反省しているという事実が背景にあれば、これは価値観が出るのは当然なんです。それをあえて「進出」にした。  なおまた、「進出」にしたという理由で幾らか考えられるのは、用語統一を図ったということです。それならば、用語統一というのは概念がきちっとしていなければ、これはだめなんですが、進出侵略概念はどう違うのですか。概念規定があるのですか。
  20. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 お答えいたします前に、デモ暴動関係でございますが、これは「デモ」を「暴動」としたということではございませんで、(湯山委員「「デモ」を「暴動」じゃないですよ。「集会」を「暴動」にした」と呼ぶ一失礼いたしました。「集会がおこなわれ、デモ暴動が」というように併記して書いてございまして、一つ状態をあらわす場合に、より客観的に歴史的な事実としてそれを表現することかどうかということでなったものでございます。  それから、恐縮でございますが、独立運動そのものにつきましては、「独立の気運が強まり、」とか、そういう表現を用いておりまして、独立運動そのものにつきましては理解が届くような表現がなされているわけでございます。  ただいまめ侵略という言葉でございますが、これにつきましては、進出ないし侵入という、より客観的な表現歴史記述においては使うことが望ましいということでございまして、時代がごく近接しております近代史において、中国に対する欧米諸国戦争等行為については「進出」と書き、日本中国に対する行為については「侵略」と書いている場合に、より客観的な表現に変えたらどうかということで、改善意見が使われたものでございます。  進出と申しますのは、あるいは軍事行動等の形態によりまして、これは個々記述によって違うわけでございますが、時間的、地理的に特定をして進み出たというふうな事実を事実として表現する場合には、より客観的な表現となるというふうなことでございましょうし、また「侵略」という言葉につきましては、これは価値観というよりも抽象的な操作を経た言葉であろうと思いますので、その意味では「進出」の方がより客観的ではないかというようなことで、表記統一を図ったというのが趣旨でございます。
  21. 湯山勇

    湯山委員 答えは、暴動は本当にあったのかどうか、これが一つです。  それから、いまの進出侵略という言葉ですけれども、ことに中国は文字の国です。概念が、進出はどういうこと、侵略はどういうこと、この概念規定をきちっとしておるか、していないか。この二つ、簡単に答えてください。
  22. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 概念規定をどうこうということではございませんで、その個々の御指摘になりましたような、たとえば図表におきまして「日本中国侵略」と書いている表記について、より客観的な表現がないかということで、その結果改まりまして、たとえば「侵入」というふうな表現になったものでございます。
  23. 湯山勇

    湯山委員 暴動はあったかないか。
  24. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 暴動があったかなかったかということでございますが、単なる「集会デモ」と記述されておりますだけではなくて、そのほか何らか一の形め騒擾状態が一般的な、歴史的な事実としてはあったのではないかということで求めまして、そういう表現が入ったということでございます。
  25. 湯山勇

    湯山委員 いまのように、暴動があったということを確認していません。あったのではないかと。しかし、これは日本支配者言葉です、暴動というものの判断は。だから、これは大変あいまいです。暴動があったということを確かめていない。  それから、言葉を変えるのに言葉概念がきちっとしていないで、ただ漠然と、この方がいいのじゃないかというようなことで変えたということ、これも説得力全然ありません。こういう調査官は、調査官としての資格はないと思うのです。概念を明確にしないで、勝手に、こうやった方がより客観的じゃないかというようなことでやるということは、これは許されない。軍隊を用いて他国に進出するのが侵略軍隊を用いないで経済とか文化とか、そういうもので出ていくのが進出、仮にこういう定義をして、それによって統一するというのならわかります。そうじゃなくて、ここはほかに使っておるからこうだろう、より客観的、こんなことで検定するとすれば、これは誤りです。指摘しておきます。  まだいろいろあり過ぎるのですけれども、きょうは時間がないようですから。とにかく、いま指摘したように、事実も確かめないでいいかげんにやっておる。言葉も、概念をきちっとしないでいいかげんに改めておる。こういう事実は明確です。こういう姿勢で幾ら説明しても、それは納得得られない。  次にお聞きしたいのは、これは大臣にお聞きいたします。この「侵略」を「進出」と書いたことについては、これは改善意見であって修正意見でないから強制ではない、したがって、受け入れたところもあるし受け入れないところもある、むしろ受け入れないで書きかえない方が多い、しかしどちらでも別に、そうだからといってこれは教科書をだめにするというようなことはしていない、このことについては文部省としてはきわめて柔軟に対処しておって、他意はないのだということをしきりに御説明になっておりますが、そういう理解でよろしゅうございますか。
  26. 小川平二

    小川国務大臣 これは改善意見でございますから、申すまでもなく、これに従わなかったからといって教科書会社が不利益を受けるわけではございません。改善意見に従わなかった著作者も幾つかあるわけでございます。格別そのことを強調するつもりもございませんけれども、事実をありのまま申し上げておるわけです。
  27. 湯山勇

    湯山委員 もっと平たく言えば、こうしてもらった方がいいけれどもどちらでもいいということですか。
  28. 小川平二

    小川国務大臣 この方がよりよいと思いますがいかがでございましょうかという言い方で、調査官著作者側意見を述べたものと考えられます。
  29. 湯山勇

    湯山委員 ですから、聞いても聞かぬでもいい、聞かない方が多いけれども、それはそのままでいっている、これは非常に大事な点ですから、一つだけ。これにはこだわっていない、——いや、大臣にお聞きしておるのですから、あなたはいいです。いや、いいです、次に移ります。最高責任者大臣ですからね。  それから次です。  この問題は、この前に河野委員も御指摘になりましたけれども、外交的に重大な問題であるのと同時に国内的にも重要な問題です。それはどういう点かといいますと、これだけ大きい問題になっています、したがって、これがこのまま教科書として使われた場合には日本教育あるいは教科の授業を進めていく上に支障があると私は思います。これは河野委員も御指摘になって、大臣もそのことについては、あるいは肯定、否定はないけれども、了解されたような御答弁あったように思いますけれども。  というのは「進出」に直っている教科書を見て、ある人は、また日本流で敗戦を終戦と言ったり、軍事基地を施設と言いかえたり、軍隊自衛隊と言ったり、いつもの手法でやっているなという理解もあるでしょう。それから、これは侵略と言っておったけれども進出に変わった、やはり大分年数がたてば正当化されるのかなというのもあるでしょう。あるいは沖繩県民のように憤慨する、けしからぬという人も出てくるでしょう。あるいは子供がそういう教科書を持っているのを家庭で見て、親と子の間に問答になってということもあるでしょう。あるいは子供たちが、はて、進出といって、悪いことをしたわけでもないか、というように感じることもあると思います。ところが、そのときに一体どうなのか。  ここで一つお聞きしておきますが、自衛隊については合憲違憲両論併記ですね、教科書は。これは検定審議会の決定によって両論併記調査官はそれへ必ず、自衛隊自衛隊法によってつくられた、合法だということを書けという指導をしています。一体合憲違憲両方認めておいて、自衛隊法によってできた合法的なものだと言うけれども憲法に違反だというのを認めて合法ということがあり得るでしょうか。違憲合法ということがあり得るでしょうか。憲法九十八条には法律、命令その他憲法に反したものは効力を有しないとある。そういうことがあり得ますか。大臣、どうお考えでしょう。
  30. 小川平二

    小川国務大臣 自衛隊自衛隊法の成立をまってでき上がっておる、これは湯山先生も否定なさることのできない事実だと考えている。事実を事実として記載することを求めた。現にしかし、違憲論があることも事実でございます。両論併記するのが教科書として正しい書き方である、客観的な記述であるから両論併記をも認めておるわけでございます。
  31. 湯山勇

    湯山委員 自衛隊については両論併記でないのです。憲法両論併記。しかし、合法という点は一方的です。だからその場合は、たとえば多数決で決めたか何かなければ客観的でない。こういう点も神経が届いてないのです、その検定には。  そこで問題は、中国韓国からのいまの申し入れ、論議されておる内容、これは韓国では何十項目指摘して、きょう新聞に出ています。それに対していままでのようなことでは納得させられないということもありますけれども国内授業を進めていくときにいまのような問題が起こったならば、それは、たとえば日中なら日中の基本姿勢は変わってないと言っても、この教科書からはそのとおり読めません。読めないから抗議が来ている。その抗議に対して、共同声明が変わっていないことはここだけ見たのじゃわからないけれども、「侵略」「進出」だけ見たのじゃわからないが、教科書全部見てもらえばわかる、この一冊読んでもらえばわかりますというので持っていったわけです。しかもその一冊だけではわからない。日本史世界史十冊も持っていって、これを全部見てもらえば了解できます、それはそうとしましょう。国内で同じような疑問が起こります。先生たちにも起こります。そういう意見がたくさんあるから、国内でそもそも出た問題ですからそういう疑問はあるわけです。さて、それを全部読んだらわかるというので、授業中に、いや、この本一冊読んだらわかるからというので、そこでその本一冊読めるかというと、あれは一冊一年間かかって扱う教材、そこだけで全部読まなければわからない、これじゃ授業は困るのです。まして先生でもこの一冊じゃわからない。日本史なら全部十冊読まなければいかぬ。こうしてもらえばわかるということは、よその国だけじゃなくて国内も同じです。こういう記述授業を進める上の支障になりませんか、大臣。——大臣です。いやいや、初中局長授業しないのだから、あなたに聞きません。ちょっと待ってください。大臣、進める支障になりませんか。
  32. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 大臣がお答えになります前に私からお答えさせていただきます。  「侵略」という言葉が仮に「侵入」という言葉になったということにつきまして教育上支障があるかということでございます。それにつきましては、意見を付して修正された検定済み教科書につきましては満州事変とか日華事変等の日本中国大陸進出の事実が書かれてございますし、またそれが中国に大きな損害を与えたことにつきましても記述しているわけでございます。これらの記述を通しまして生徒が日本の過去の戦争について考察し、判断することは十分可能なのではないかと思いますので、支障があるということは言えないのではないかと思います。
  33. 湯山勇

    湯山委員 大臣にもう一遍お聞きします。ああいう答弁では納得できないのです。  いま真意理解してもらうためにはこの一冊全部読んでもらえば真意はわかりますからというので持っていったのでしょう、事実は。一冊全部持っていかなければ真意がわからないというのは日本中国も同じでしょう。一冊全部読まなければ真意がわからない。これで一体、そういうものを授業をしていくときに、ここに問題が起こった、これを全部読まぬといかぬということですね、これは授業の支障になりませんかと言うのだから、これだけわかりやすく聞いておるのですから、大臣からひとつお答え願います。
  34. 小川平二

    小川国務大臣 教科書は、かつての行為に対する厳しい反省に立脚して世界の平和を築いていかなければならない、そういう姿勢を貫いておるわけでございまして、歴史教科書におきましては、そのような認識のよって来るところの事実を客観的な表現で書いておるわけでございます。さような意味で全体を見ていただけばわかる、こう申しておるわけであります。
  35. 湯山勇

    湯山委員 ですから、「進出」という言葉にひっかかったとき、これはやはり全部読まないとわからないということですね、大臣
  36. 小川平二

    小川国務大臣 これは、全部を読まないで歴史教科書だけを読んだ場合には、客観的な事実を知ってもらえばよろしいわけでございます。  日本の行いましたことが、たとえば国際正義の観点から申しまして大いに批判すべき余地がありや否やは読んだ者が判断をする、これが歴史教育というものだろう、こう考えております。
  37. 湯山勇

    湯山委員 教科書とというのは一般の著書ではありません。時間を区切って順次教えていくものです。したがって全部読めばということは子供たち教科書にとってはあり得ないことなんです。国語の教科書であろうが算数であろうが歴史であろうが地理であろうが、この本一冊を読めば真意はわかりますといっても、一冊読むということは一年の終わりなんです、いいですか。このことを一つ申し上げる。  いま文部省韓国中国に対して説明しておる説明の仕方というものはそれは外交的に結構です。それはいいとして、もともと問題は国内から起こったのです、内容指摘も。国内でそういう場合に、これはいまのように文部省だって、全部読んでもらえばわかる、これをたくさん持っていかなければならない、そういうことをしなければならないような事態というのは非常に困ります、授業を進めていく上で困ります。  そこで、これの書きかえについて初中局長なり菱村審議官は、これは書きかえできないということを常に言っております。きのうもそういうお答えをしたようです。大臣はそうではなくて、若干ニュアンスが違っておりまして、書きかえないというようなことを自分は言ってはいない、書き直しに応ずる気持ちがないというつもりで申し上げているのではないというような御発言がありました。  今度は初中局長にお聞きします。今後これらの教科書について正誤訂正もあり得ないのですか。
  38. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 この正誤訂正について私どもとしては、ただいまお挙げになりました例は改善意見を付して改められましてそれをさらにもとに戻すという趣旨のものであれば、これは正誤訂正の趣旨になじまないということを申し上げたわけでございまして、正誤訂正の申請があれば受け付けないということを申し上げたわけではございません。
  39. 湯山勇

    湯山委員 正誤訂正を受け付けるということは正誤訂正があり得ることが前提でしょう。ない場合もありますけれども、正誤訂正を受け付けるというのは正誤訂正があり得ることが前提、そうでなければおかしいじゃないですか。
  40. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 正誤訂正の申請があった場合にそれを受理しないということではございませんで、もともと、ただいま申し上げましたように、一度改善意見を入れて直しましたものを正誤訂正によってもとに戻すということは、これは検定趣旨に反するのでなじまないということを申し上げたわけでございまして、受理した後の判断としては正誤訂正の要件に照らしまして判断をする、そういうことでございます。
  41. 湯山勇

    湯山委員 正誤訂正というのは、修正意見を入れて修正したものであろうが、それを正誤訂正、本当は正誤訂正じゃないのですけれども訂正した例があるのです。それは、いまの高校の何だったか、公害企業名。修正意見で直さなきゃ不合格にするといって企業名を符号に直した。ところがほかの教科書には企業名が書いてあるものだから、今度は正誤訂正でまた企業名を書かせている。そんなのを局長知っておるのでしょう。知っておるか知ってないかだけ、時間がないですから。
  42. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 正誤訂正手続につきましては、私どもとしてはお答えいたしまして、一応形式的な要件としてはなじまないけれども受理する場合があるということを申し上げたわけでございますし、ただいまの原子力発電所に関する件に……(湯山委員「原子力発電所じゃないです。公害企業です」と呼ぶ)公害企業の件につきましては経緯は存じております。
  43. 湯山勇

    湯山委員 したがっていまと同じですよ。公害企業の名前を書いて原稿は出ておった。それを修正意見で削ったのです。名前を出すことは利害関係があるということで削って記号にした。ほかの方が皆企業名を書いておるものですから今度は、どういう操作をしたのかは存じませんが、正誤訂正で、修正したものをもとへ戻しておるのですよ。改善だからできないなんて、そんな不ぞろいのことは受け取れない、そうでしょう。
  44. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 御指摘の件につきましては、これはその前年度の検定との不整合という事情があったこと、及びいわゆる四大公害の企業名は公然の事実となっており、事実を的確に把握させるためにはこれを掲載しなければ学習上の支障を生ずることも考えられるという観点から改めて検討いたしまして、必要に応じて公害企業名の掲載を認めるという前年度の取り扱いをとったわけでございまして、今回のケースとは異なるものというふうに考えております。
  45. 湯山勇

    湯山委員 異ならぬですよ。いいですか、改善で直したものをもとへ戻すということはできないと言うのですよ、ところが修正で修正したものをもとへ戻しておる。こういうわかってない答弁は受け付けられません。  それから、正誤訂正というのは年じゅういつでも受け付けられる、そうでしょう局長。正誤訂正は検定教科書については年じゅういつでも受け付けられる、法律はそうなっておりますね。
  46. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 三年間の後の新規改訂の間に正誤訂正に該当する要件がございますれば受理するということでございます。
  47. 湯山勇

    湯山委員 そこで大臣、私はきょう御質問をある構想のもとに申し上げました。それは、この内容変更について調査官が言っておること、きょうの局長答弁で見ても事実を確かめないで、それから価値観は入れないと言いながら、しかも支配者価値観を入れている、それから統一すると言いながら用語統一概念はちっとも決めてないでいいかげんに統一している。それなら進出侵略としたって、あの時代のヨーロッパ各国の進出は全部侵略だという人もあります。有色人種に対する侵略だ、こう規定しておる人さえあるのです。進出統一しなくても、統一なら侵略統一でも決して悪いことはない、一つの見識です。これも不明確。用語概念統一しないでやるなんということも第一許されない。  それからその次、いまやっておることにはそういう欠陥を持っている。それから進出侵略については、大臣がおっしゃったように、望ましいのはこうだけれども余りこだわらない、端的に言えばこの方が望ましいがどちらでもやむを得ない、現実がそうなっている、このことを説明している、それに余りこだわるのじゃないのですということが一つ。  それからその次、改訂については、外国から言われたからやるとか、だれか、部会から言われたからやるというのはありませんけれども授業に支障があるということであればこれは当然検定後においても正誤の対象になる、正誤の申請があれば局長は受け付ける、ここまでできておるのですね。そうすると問題は、出版会社が、この国会の論議、それからいろいろのを見て、ああなるほどこれは重大な支障がある、一冊読まなければならぬ、これも困るし、一人の先生が十冊も持つわけじゃない、これはやはり正誤訂正しようというので持ってきて、その理由が正しければ大臣は認めざるを得ないと思いますが、いかがですか、大臣大臣の承認を得てとある。
  48. 小川平二

    小川国務大臣 一般的に申しまして、一たび改善意見なり修正意見を受け入れて原稿を改訂したものをもとの姿に戻せという申請は認めがたいと  いうのが検定に臨む基本的な姿勢だと存じております。  ただいまいろいろお尋ねがございましたけれども検定という仕事は何分きわめて技術的な分野でございますので、私がことごとくこれを知悉しておるわけではございません。したがいまして、この点につきましては改めて初中局長から答弁をいたさせます。
  49. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 改善意見につきまして大臣がお答えいたしました趣旨は、改めることがより望ましいという観点から意見を付しまして、それについて著者と合意が得られて直したものでございます。そのことについてさらに正誤訂正という形でもとに戻すということは、正誤訂正の趣旨検定制度がよりよきものを目指すという全体の趣旨から見ましてこれはなじまないということはたびたび申し上げているわけでございます。
  50. 湯山勇

    湯山委員 一般論で、改善意見改善したものをもとへ戻すということはないけれども改善よりもっと強い修正で同じようなことが行われておることを知っておって言うとすればそれはおかしいです。それからまた、一般的にはないけれども正誤の場合はあり得るのです。それはないという規則は検定規則のどこにありますか、あなたのいま言ったようなことは。ないのですよ。正誤は厳重に決められておって、だから正誤の場合は、いま修正意見で直したのを戻すのも正誤でやっている。正誤訂正というのはやらなければならない。それで、それについて出たものを、なるほどこれは四項に当たる、字が違っておるのまで直しちゃいかぬとは言えないでしょう、何ぼ直したところでも。印刷の間違いもあるのです、人間のやることだから。数字の間違いが起こることもあります、改善意見で直しても修正意見で直しても。それもやらさないというようなことはないのです。それは四項目に当てはまればやれる。その中で適用すれば四号目の、教授を進めていく上に支障があって改めなければならないのだから、出版会社から出て受け付ける、受け付けた後審査して、もっともだということになれば文部大臣は認める、一般論としてそうでしょう、正誤訂正とは。
  51. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 私は、ただいま問題になっております「侵略」が「侵入」になったようなケースについて、これを正誤訂正として受け付けるかというような観点から、検定制度全体の趣旨としてはなじまないということを申し上げたわけでございまして、正誤申請の要件は、お挙げになりましたような客観的な統計資料でございますとか字句の修正でございますとか、その他予備条項として、学習上支障があるというふうなこともございますけれども、それもやはり正誤訂正の範囲といたしましてはおのずから限定されている、そういう意味で趣旨になじまないということを私は申し上げたわけでございます。
  52. 湯山勇

    湯山委員 答弁になっていないのです。正誤訂正というのは厳重に規定されておるのですよ。ですから、出すのは出版会社が出す。それを文部大臣が機構を通じて審査しなければならない。そして条件に合っておれば認めなければならない。いいですか、これは出版会社はしなければならないと義務づけられている。なじまないとかなじむとかいうような、そんなことでやることは間違いです。ただ受け付けて審査するというのですから、した上で決めるというのが正しいのです。  時間がありませんから一言で申します。大体いまのようなことが、検定規則を正しく理解しないで、なじむとかなじまないとかいうようなことでこれをどうもしないのだというような姿勢がかえって他国を刺激しておる、ここに問題があるのですよ。大臣できることなんです、いま申し上げましたように。侵略進出という言葉にそう重きを置いておるのではない。概念規定さえはっきりしないでいいかげんにやっておる。一方において、授業には支障があるということは考えられる。そこで、検定済みのものについては正誤申請を出す、出すことを受け付ける、ここまでいったらあと審査して、その上で規則に合っておればもちろん認めなければならない。当然でしょう、大臣。いかがですか。こういう、なじむ、なじまないとか受け付けない、こんなことを言うから事態はますます悪くなるばかりです。ここの姿勢を変えるというのは文部大臣の第一段階目の決断です。大臣、いかがですか。重大な問題ですから、大臣答弁を。
  53. 小川平二

    小川国務大臣 文部省一つの組織体でございますので、調査官が心得ていなければならないことのことごとくを私が心得ておるというわけにはなかなかまいりかねるわけでございます。お説は傾聴いたしておりますが、もう一度初中局長から答弁を申し上げさせていただきます。
  54. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 いま大臣の御指示がございましたので、一音だけ申し上げますが、具体的に「侵略」が「侵入」になったという件につきまして、これを正誤でやることがどうかということでございまして、その点について正誤訂正の要件とかそれから検定制度全体の趣旨から見まして、これを改善意見という形で受け入れたその字句でございますから、それをもとに戻すということは、正誤訂正の趣旨から言いましてもなじまないということをたびたび申し上げているわけでございます。
  55. 湯山勇

    湯山委員 違うのです。ああいう答弁だから大臣にお聞きしたのです。間違っておるのですよ、局長。あなたの前任の局長は、いまの中学社会科を三年後に、部分改訂のを全面改訂します、三年後に全面改訂するというのを申し入れがあったときにそれは受け付けます、やります、審査しますと答えておるのです。出てこない、まだわかりもしない、使い出したばかりの中学の、三年後には一部改訂で六年目に全面改訂を、三年後にやるのかと言ったら、それはやりますと。出てこぬとわからぬじゃないかと言ったら、向こうが出すと言うのだから当然です、こう答えておるのです。まことに前後ふぞろい。これはおかわりになったばかりですから無理もないと思うし、調査官の言うままですからあなたの御意見はきょうもほとんどないと思うのです。しかし、調査官というのはでたらめですよ、いま言ったように。侵略進出用語概念統一もしないで用語統一なんて、そんなばかなことありますか、あなたの答弁によって……。暴動というのは支配者の論理です。それを証拠もないことで、あっただろうで入れた、こんなことで事は通りません。ただ機械的に言っても、正誤の申請があれば検討して、それが正しければ当然受け入れるというのが文部省検定規則じゃないですか。規則ではそうなっていませんか、内容は別にして。
  56. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 検定規則十六条は、正誤訂正の内容を定めておりまして、これは先生お挙げになりましたような四つの要件を定めているわけでございます。その要件に該当すれば当然正誤申請の手続があるということでございます。
  57. 湯山勇

    湯山委員 はい、それで結構です。一般論としてやっと局長もわかったようですから。ひとつ大臣、私がいま申し上げたのは、大臣はいま御発言のように、そういうことを言った覚えはないし、おっしゃってない。けれども、あなたの部下はいまのように、これだけ言わなければきちっと検定規則どおりの答弁が出てこない。ここに問題があるのです。ここを大臣決断でひとつ——これは総理大臣が言ったからといってやれるものじゃないのですよ、正誤訂正は。総理大臣大臣に命令したって正誤訂正はできることではありません。あなたが、出てきたらこうするという決断しかないのです。それは部下が検討して条件に合っておれば——たった四つの条件、合っておれは修正後であろうが改善後であろうが、いま言ったとおりやらなければならない。このことを御理解願って、この問題も含めて大臣、ひとつ十分御検討願いたいと思います。いかがでしょう。
  58. 小川平二

    小川国務大臣 ただいまの問題が正誤訂正の要件に該当するや否やということについては、なお十分検討しなければならない問題だと考えておりますので、この場で私の意見を申し上げるということは差し控えさせていただきたいと思います。
  59. 湯山勇

    湯山委員 時間が参りましたので、これはまだ重大な問題がたくさんありますが、ただ、こういう緊迫したときですからしぼって申し上げましたので、また機会を得て質問することにして、きょうはこれで私の分は終わります。
  60. 青木正久

  61. 木島喜兵衞

    ○木島委員 本日は官房長官の御出席を求めたのでありますけれども、人事院勧告等の関係があって出てこれないということであります。しかし官房長官から、一定のことは小川文部大臣も官房長官の意を体してお答えいただけるようにということでございますので、そういうことも含めてお聞きいたします。  大臣はこの前の委員会で、予期せざる事態に心を痛めておるとおっしゃいました。これは大臣及び大臣の一族の中国とのかかわりを知る私からするならば、大臣がいかに心を痛めていらっしゃるかがよくわかる気がいたします。心を痛めていらっしゃいますけれども、しかし、いまここまでこういうように問題が大きくなりますと、いま反省して大臣は、起こるべくして起こった事態とお考えになりませんか。
  62. 小川平二

    小川国務大臣 文部省検定をいたしましたのは、申すまでもなく軍国主義を復活しようとか歴史を改ざんしようという意図のもとに行ったわけではないのでございまして、問題になっておるのは主として歴史教科書でございますが、歴史記述は客観的であることが望ましいという観点から検定を行ったわけでございます。同時に、中国について言いまするならば、日中共同声明趣旨等についてはことごとくの教科書が繰り返し説いておるわけでございまするから、このことがこのような非常にむずかしい事態に発展しようとは予期していなかったわけでございます。  しかし、当面の事態は両国の友好親善を進めていかなければならないという観点から見ましてまことにむずかしい状況が出てきておると考えておりますので、当方立場当方真意を誠意をもってこれから先も説明をいたしまして理解を得ることによって問題を解決したい、こう考えておるわけでございます。
  63. 木島喜兵衞

    ○木島委員 時間が大変ないのだそうでありますから、もうはしょります。  あなたが、かかる事態になったことに心を痛めているということの、しかし、心を痛めていながらこのようなことになったことの原因は一体何かということを分析しないとこの問題の解決にならないのだろうと思います。しかし、ここが時間がかかりますから省きますが、ただ、いままで文部省は、たとえば中国なら中国に対して、一つは、共同声明は尊重する、学校教育においてもそれは重視する、第二は、謙虚に耳を傾ける、第三は、誤解を解くように真意を伝える、この三項目ですね。  そこで、まず第一の共同声明でありますけれども責任を痛感し、深く反省するとは、何に対して責任を痛感し、深く反省するというのでありますか。共同声明の、責任を痛感し、深く反省するとは、一体何に対して痛感するのですか、反省するのですか。
  64. 小川平二

    小川国務大臣 かつての戦争におきまして中国に対して甚大な損害を与えたということに対する責任を反省する、申すまでもなくそのような意味でございます。
  65. 木島喜兵衞

    ○木島委員 そのことはまさにおっしゃるとおり共同声明の文章そのものであります。過去において日本国が戦争を通じてという、この過去における日本国の戦争というものは日本にとって正当なるところの戦いであったと御認識でありますか。
  66. 小川平二

    小川国務大臣 私は、きわめて率直に申しますが、これは弁護することのできない戦争であったと考えております。
  67. 木島喜兵衞

    ○木島委員 それを侵略戦争とお考えでありますか。
  68. 小川平二

    小川国務大臣 私は、弁護することのできない戦争と申しましたが、この言葉を他のいかなる言葉に置きかえていただこうとも結構でございます。
  69. 木島喜兵衞

    ○木島委員 結構ということは、侵略戦争と考えてよろしゅうございますか。
  70. 小川平二

    小川国務大臣 御自由でございます。
  71. 木島喜兵衞

    ○木島委員 御自由、どのように理解しても御自由ということでありますけれども大臣侵略戦争とお考えになっていらっしゃると考えてよろしゅうございますか。
  72. 小川平二

    小川国務大臣 私の申しましたことをいかなる他の言葉表現なさっていただこうとも御自由でございます。
  73. 木島喜兵衞

    ○木島委員 確かに第二次世界大戦後の世界情勢によると進撃とか進出ということが当てはまることがきっと多いのでしょう。なぜかと申しますと、侵略というのは武力による進出あるいは侵攻とその支配というものが侵略というものの世界的な常識であります。通説であります。だから、支配がなければ侵攻とか進出ということになるかもしれません。日中戦争という十五年戦争は、大臣御案内のとおり、完全に武力によるところの進出であると同時に、支配をした。したがって、それは侵略である。このことはまた、日本学者の通説でもあることは文部省も認めておる。  だから、文部大臣はどういう言葉でもって御理解くださっても御自由ですとおっしゃるけれども、あなた自身はこれを侵略戦争と思っているのか、思っておらないのか。——いや、大臣、そんな役人に相談したって始まらぬのだよ。大臣、僕は、きょう、さっき最初に言いましたように、宮澤さんの代理という意味も含めて、事務的なことでなしに、まさに政治家の、政治問題になっているのですから政治家の話をしたいと思っているのです。そういう意味で、この問題に対するところの、ことに中国通のあなたにとって心を痛めていらっしゃる、その政府の方針の第一が共同声明を尊重するという、その共同声明という、その戦争を通じて中国人民に与えた大きな損害に対して「責任を痛感し、深く反省する。」というその戦争とは一体何か。そのことが明確でないことが今日の一番大きな問題なんでしょう。そうなんじゃないのですか。だからこそ、これを侵略と考えておらないから、調査官等はこれを進出でも侵入でもいいじゃないかということになっておる。そこに問題がある。ここは政治問題になっておるのですから、政治家としての、ことに中国通の小川大臣真意を聞きたい。
  74. 小川平二

    小川国務大臣 私は弁護の余地なき戦争と申し上げましたが、どうしてもそれで御満足なさらないということであれば、侵略であったと申し上げます。これでよろしゅうございましょうか。
  75. 木島喜兵衞

    ○木島委員 はい、結構です。  そこで、中国侵略戦争であるということを前提にして、そして国交が回復され、したがって共同声明では、中国は一千万人以上の人たちが生命を失った、五百億ドル以上の損害をこうむった、そういう賠償も放棄をして、そこから国交が回復した。言うなれば、日中の関係というものはここから出発しておる。この共同声明から出発している。この共同声明は、日本からすれば侵略戦争であったということ、そのことが日中両国の国交の出発点であり、基本原則であると思うのです。そのように理解してよろしゅうございますか。
  76. 小川平二

    小川国務大臣 仰せのとおりと思っております。
  77. 木島喜兵衞

    ○木島委員 最近、新聞によりますと、政府は、どんな形かわからないけれども共同声明の再確認をするというようなことがありますけれども、その場合、たとえば再確認するとどうなるかわかりませんけれども、その場合も、侵略戦争であるということを明確にしなければこの問題の解決はないと私は思うのです。共同声明そのものの理解。そうでないと、この問題は解決しないと思うのですが、どうですか。
  78. 小川平二

    小川国務大臣 共同声明には、仰せの趣旨がきわめて明白にあらわれておると理解しております。
  79. 木島喜兵衞

    ○木島委員 時間を急ぎますから、侵略戦争であるということをお認めになりましたから、そこで、先ほど申しました政府が中国に伝えた三つの、その三つ目の、誤解を解く、理解を求めるということは、これは鈴木局長と王暁雲との会見を見れば、検定制度のあり方を説明する、それでもって解決するだろうということに尽きるように、結果から見て感じます。  その前提は何かというと、中国日本検定制度を知らないという前提に立っておると思う。そうなんだろうか。私は決してそんなものじゃないと思う。だから、鈴木局長説明に対して、王暁雲はその場ですぐに賛成しかねると言ったのもそこでありましょう。知っておる。今日の検定の実態などというものは、改善でもって、強制力ないのだからなどということでもって、中国が知らないなんという前提、そういう前提に立っている文部省の物の考え方が政府の方針となって中国に伝えた、そのことがますます問題をこじらせたということになるのだろうと思うのです。それはもう聞きません、事実で明らかなんだから。  そこで、二番目の、謙虚に耳を傾けるというのは、謙虚に耳を傾けて、共同声明を尊重する、その基本は侵略戦争だといまおっしゃった。そして、こちらは進出だ、侵入だ、しかし、中国に謙虚に耳を傾ける。傾けてどうするのですか。再改訂はしないという。謙虚に耳を傾けるとは一体いかなることなんですか、お聞きいたします。政府の方針でありますから、大臣
  80. 小川平二

    小川国務大臣 たとえば先方の申し入れに対しましても、このことは国内問題であるから聞く耳持たぬというようなことはまことに高飛車な、謙虚ならざる態度でございましょう。そういう態度を私はとってはならないと考えておるわけでございます。中国の最初の申し入れにも、マスコミ、新聞の報道によればという文句が冒頭に書いてあるわけでございますが、わが国の検定の制度等について十分の知識を持っておらない人が、検定の行われた直後の新聞報道を見ますれば、あたかも、問題になっております進出侵略という言葉にいたしましても、文部省が強権を用いてことごとくの原稿から侵略という言葉を削除せしめたかのごとくに受け取ったとしてもきわめて無理からないことだと存じます。そういうことを念頭に置きまして、先方の言い分を素直に聞く、こういうことを謙虚という言葉で申し上げた。
  81. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから、しょせん文字の国の中国に文字をもてあそんでいるという印象しか与えませんね。  侵略戦争である、だけれども検定制度が違うのだから御存じないだろう、だから侵略進出侵入と書いたって、それは説明すればわかっていただける、だが謙虚に耳を傾ける。謙虚に耳を傾けるといったって、ただ聞きおくだけだ、聞かなかったら失礼だから。言葉遊びですね。中国政府に対する三つの、その一つが謙虚に耳を傾けるという、それは言葉遊びだったのですか。ただ失礼に当たるからよくお聞きしますよ、そういうことなんですか。
  82. 小川平二

    小川国務大臣 私がそういう言葉を使いました趣旨につきましてま、ただいま申し上げましたように御理解願いたいものでございます。
  83. 木島喜兵衞

    ○木島委員 要するに、今日起こっている問題は、教科書検定問題から起こっているけれども、むしろそうではなしに、そこから出発する両国外交のその姿勢の基本が問われているのでしょう。その基本を問うている中国に対して、検定制度のあり方という形式でもって答えておる、ここが問題をますますこじらせたところの原因と考えませんか。今日までの経緯をそう反省しませんか、大臣。どうですか、政治家として。
  84. 小川平二

    小川国務大臣 私は御質疑に対して、冒頭に申し上げましたような態度で検定を行っておるわけでございます。また、かつて中国に対してなした行為を厳しく反省して日中友好を進めていこうという精神にはいささかも変わりはないわけでございますから、十分時間をかけて説明をいたしますれば理解が得られるに違いない、こう考えておるわけでございます。
  85. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私、先ほど申したように、事検定から始まったけれども、日中両国——いま中国だけに限定して申しておりますが、から言えば、国交の出発点の共同声明、それは侵略戦争、そこが出発点であったのだから、そこで両国の外交上の基本原則が問われておるのですから、だんだんと、文部省が相手だったものが政府全体の責任が問われてくることになったわけでしょう。だから、心配しますのは、中国通の小川文部大臣の訪中を拒否したことが、文部省が対象のときにはそうだったが、政府全体の問題になってきたときに鈴木総理の訪中の拒否の可能性なきか、それが起こったときに一体どういうことになるのか、私はそれを大変恐れるのです。そういう観点でいま政治家は大きな決断をしなければならぬときではないのか。まして、責任を痛感し、深く反省をするところから出発した日中十年間の、その中の最大の問題を起こしておるこのときに、われわれが誤って、鈴木総理の訪中を拒否されることになったならば、それはどうなるだろう。安倍通産大臣が近く訪中されるとも聞いております。安倍通産大臣は、この前の自民党の政調会長のときに、あの自民党の教科書委員会ですか、ができて、そして検定に攻撃をかけたところの責任者でもありますから、そういう意味では安倍通産大臣もまた拒否されるという可能性も出てくるかもしれない。その可能性がないと感じますか。
  86. 小川平二

    小川国務大臣 可能性が絶無だとは存じておりませんので、さようなことがありませんように全力を傾注するつもりでおります。
  87. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いま大臣は、誤解を解くために真意を伝えるとおっしゃいましたね。しょせん政府が最初に出した三つ、共同声明を尊重する、謙虚に耳を傾ける、そして検定制度の中身を説明し、日本教科書の中にあることを説明すればわかってくれるとおっしゃるのだが、それをやりながら今日ますます問題が大きくなり、文部省中国の問題が中国日本の政府の問題になっているときに、なお真意を伝えて解決すると安易にお考えになるのですか、率直に言って。国民はいら立っているのですよ。
  88. 小川平二

    小川国務大臣 たとえば、過般、検定制度の仕組みについて初中局長が王暁雲公使に説明を申し上げたわけでございますが、文部省責任を民間企業に押しつけようとしているというふうに受けとめられている、かような事実から考えますると、まだ努力が足りなかったということを痛感しているわけでございます。したがいまして、今後あらゆる機会に当方真意理解してもらう努力をするつもりでございます。そのような努力によって問題を解決する余地はまだ十分残っておると私は考えておりますので、全力を挙げるつもりでおります。
  89. 木島喜兵衞

    ○木島委員 昨日、韓国は国会の決議をしたそうです。その国会の決議は再改訂であります。きょうの新聞によると、特使を両国に出されるという話であります。いま大臣がおっしゃるように、その説明や何かでこの問題が解決する、そのように思っているところがますます問題を大きくしているのではないですか。特使を出される、何をされようとも、こういう問題は両国が納得するものでなければ——納得しないものを出すからこじれてしまうのでしょう。どういう形であれ、納得するものは再改訂以外にないのじゃないですか。再改訂をせずにこの問題が解決するとまだ思っていらっしゃるのですか。もうお答えにならぬならならぬでいいですよ、これはますます将来の責任が出てくるのだから。本気でそう思っていらっしゃるのですか。中国通の小川さんはそう思っていらっしゃるのですか。
  90. 小川平二

    小川国務大臣 そう思っておりまするからこそ、及ばずながら懸命に努力をいたしておるわけでございます。木島先生はそのような可能性は絶無だという判断をお持ちかもしれませんが、私は先生とは考え方を異にしておるわけであります。
  91. 木島喜兵衞

    ○木島委員 まさに先ほどの話の価値判断の問題かもしれませんが、しかしそういうことによってますます大きくなったら、あなたの責任だけでなしに、共同声明で痛みを痛感し深く反省するといって出発したところの日中のこの問題が、事検定問題から起こっているだけに文部省責任は大きい、その大臣責任はきわめて大きい。いま私は、再改訂なくしては解決できないと思ったが、あなたはそうではないとおっしゃる。それはわからないことですから議論はしないで済むかもしれません。  ただ、たとえば三年後の改訂のときに、どういう表現であれ再改訂をせねば相手は納得せぬと私は思うが、たとえば日本が声明を出すなら出す、特使を出すなら特使を出す、その中で三年後なら三年後に、どういう表現だか知らないけれども、そういうことが向こうにわかるような再改訂をするのだというようなことが少なくともなければ、向こうは納得しないのじゃございませんか。そう思いませんか。
  92. 小川平二

    小川国務大臣 話し合いがまだ始まったばかりでございまして、そのように断定することはいかがだろうかと私は思っております。
  93. 木島喜兵衞

    ○木島委員 さっきの湯山さんの正誤訂正の話がございましたね。きのうの参議院でも、原子力発電所の場合は正誤訂正をした、これは性格が違うと言っている。しかし改善意見によって改善したものを訂正したら改善の意味がなくなるからだめだ、こうおっしゃる。この前から局長はそうおっしゃっている。改善意見というのは強制力を持たないと、それは中国に繰り返し繰り返し言っていらっしゃるわけでしょう。強制力を持たない改善意見でもって改善したのをもう一回もとへ戻そうとしたらそれはだめだと言うならば、強制力を持ったということになるのですか。改善意見強制力を持ったということになりやしませんか。ましてや改善意見で、強制力を持たない中でもって内容を書きかえた執筆者、出版社は、このように大きな問題になったことによっての自責の念を持っているだろう、執筆者に学者としての良心があるならば、このような大きな問題になって当然責任を感じているだろう。それが反省をして、強制力を持たないところの改善意見によって変えたものをもう一回変えたいと言って正誤訂正することを、このような大きな問題になっているときに、しかも先ほどお話ございますように、公害の企業名においては修正意見ですらも正誤で直している。先ほど大臣侵略戦争という言葉に置きかえるべきだとおっしゃいましたが、そういう立場に立つならば、より好ましい表現侵略でなければならない、こういう問題になっているのだから。それがなぜ正誤訂正できないのですか。文部省の恣意もいいかげんにしてほしい。文部省の恣意によって、企業からなら原発ならいいがこれはだめだというのは、まさに文部省の恣意ではないのか、そこに検定制度全体の問題があるのじゃないのかいこの辺はどうなんですか。
  94. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 改善意見によりまして一たん改訂されたものは、一つ教科書として実体ができたものでございます。それを改める手続といたしまして、正誤訂正という形式によってもとに戻すかどうかということにつきましては、たびたび申し上げましたように、一度教科書としてできましたものは著者がその意見を受け入れて改善したものでございますから、それをまたもとに戻すということは改善にはならない、そういう意味で正誤訂正にはなじみませんし、改訂検定には該当しないということを申し上げておるわけでございます。
  95. 木島喜兵衞

    ○木島委員 だから出版社や執筆者が正誤訂正で出したときに、客観的に見たら、いまそれが文部省から言ったら一番の救いなんじゃないですか。局長、あなたはいままでの検定制度のあり方全体からお考えなんでありましょうけれども大臣、私はむしろ、そういう出版社が出してくるかこないかわかりませんけれども、出してきたとすれば、まさに政府はそのことこそ救いの神であるとすら私は思う。政治家としてどうですか。
  96. 小川平二

    小川国務大臣 私は先ほど来申し上げておりますような気持ちで努力をいたしておりまするので、教科書を改訂するということを考えておらないわけでございます。また、その関連でいろいろ御質疑がございましたが、これはひとつ専門家から答弁を申し上げさせます。
  97. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 たびたび申し上げておりますように、要するに日中戦争が侵略戦争であるかどうかという戦争の性格論ではございませんで、これは一つ教科書歴史記述におきます歴史的な事実をどう書くかという点において、これは「日本中国侵略」という表現について、他の欧米諸国中国に対する行為については「進出」と書いてある点について、用語統一という観点から改善意見を付し、それに従って侵入等と改めたものでございまして、単に正誤訂正になじむかどうかというふうに考えますと、そのことについてはいま申し上げましたような一定の経過を経て出てきたものでございまして、それは正誤とか間違っているとかということではないわけでございます。
  98. 木島喜兵衞

    ○木島委員 あと五分ぐらいしか時間がないので、いま戦争の性格じゃなくて表現統一だという式の物の考え方がこのように問題を大きくしているということをわからない限りにおいては、どうにもならない。小川さん、お互いにわれわれ人間は過ち多きものである。その人間が運営する国家もまた、どの国においても過ちを犯すであろう。その過ちをどう未来に生かすかが、歴史教育というのは史実の記録ではなくて、過去を知ることによって、その反省が未来を創造するというところに歴史教育という原則があるのだろうと思うのです。それに対して、単に戦争の性質のものではないのだ、表現統一なんだということなどで、そのことからこのように大きな問題になっているのに、それでいいのだろうか。  先ほど価値判断が入る、入らないの問題がありました。あの戦争に対する価値判断があるから、だから価値判断には悪いことをしたという意識があり、進出にはその意識がないのだ、価値判断が入らない。価値判断が入っておるから、だから共同声明でもって「責任を痛感し、深く反省する」という、価値判断があるからこそそういう表現が出てきたのでしょう。そこから出発点なんでしょう。そのことがどうしてできないのでしょう。言葉統一とおっしゃいますけれども、第二次世界大戦を前後したところのドイツやイタリア、これは侵略であり、アヘン戦争は進出だから、今度は進出侵入でいい、この辺の意識がわからないのです。  たとえば二つありましょう。日本が黒船に進撃されたとき、十九世紀後半、欧米に追いつき追い越せ。それはその先進国たちは植民地を求めて、黒船が日本にも来た。それを近代国家と言った。それに追いつき追い越すためには、日本は植民地を持たなければならない、そういう意識が一つあった。だからそれは、アヘン戦争は侵入だから侵入だという理解に入るのか。第一次大戦以後国際連盟ができ、不戦条約もでき、国際法上自衛以外の戦いは違法だと決めた。だから、第一次大戦以降のイタリアやドイツの侵略は、これを侵略と書いておる。とすれば、日中十五年戦争、これは第一次世界大戦以後のことですから、不法だから、そうなれば中国への侵略であり、ドイツ、イタリアが侵略だと同時に、同じことになる。その辺は、価値判断でないとおっしゃるけれども、そういう事例はどう分析されていらっしゃるのですか。
  99. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 中国に対する日本の例で挙げますと、上海事変、満州事変を項目として一括する場合に、「日本中国侵略」というふうに表記してあることについての具体的な記述についての意見でございまして、一般的に侵略進出ということを問題にしているわけではございませんで、歴史的な叙述の中で、中国に対する列強の進出については、アヘン戦争の例もございますけれども、それを進出と書いており、同じ地域における中国については、比較的近接した時代におきまして侵略と書いておる。この記述の一貫性を図らなければ、歴史教育におけるできるだけ客観的な表現で一貫した記述を行うという観点から望ましくない、そういう意味で申しておるものでございます。
  100. 木島喜兵衞

    ○木島委員 私は、記述統一というのは、だからイタリアやドイツが侵略だ、アヘン戦争は侵入だ、それでは、統一の区分する論理は一体何かということを、私はいま二つの見方がありますがと言ったのです。いいです。もう時間がありませんからやめます。  また言いますが、大臣理解でしょうけれども、被害者の痛みは、加害者はしょせんわからない。だからこそ被害者の痛みに対して、加害者は深い配慮を加えねばなりません。私は、中国の東北地方に、加害者としての立場からの調査に入ったこともあります。私は戦争に行かなかったけれども、それは少しでも被害者の痛みを知ろうと思ったのです。中国は、あの侵略の痛みはいろいろあった、現在もある、だけれども、しかしそれは日本の軍国主義のなせるわざであって、日本国民日本の今日の政府の責任ではない。それは中国国民からすればたえられないことだろうけれども、しかしそのように指導をして、そこから日中友好が始まったわけでしょう。その痛みがわからない。ここに問題の基本が一つある。私はそういう意味で、もう答弁は要りませんけれども、素直に考えましょう。小手先はやめましょう。私は、この問題が解決しない限り、日本人の心の中にまだ戦後は終わってないという感すら持つのです。最初に申しましたように、小川大臣の個人及び小川さんの一族の中国との深いかかわりを知っている私からするならば、その小川さんの聡明なる御判断が、いまこの大きな問題を過つか過たないかの岐路にあると思うのです。  最後に小川さんの決意をお聞きして、私の質問を終わります。
  101. 小川平二

    小川国務大臣 御意見はしかと承りましたので、これを念頭におきまして、このむずかしい問題を打開すべく努力を続けるつもりでございます。
  102. 青木正久

    青木委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時九分開議
  103. 青木正久

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。有島重武君。
  104. 有島重武

    ○有島委員 きょうはこの席をかりて、小川文部大臣に対しまして、一つには、内閣を代表なさる閣僚のお一人として、一つには、国内教育責任をお持ちになる文部大臣として、第三番目には、憲法のもとにこうして生きております日本人の一人あるいは国民を代表する練達の政治家のお一人として、そうした三つの立場でもっての話し合いをしたいし、質疑を申し上げたい。よろしゅうございましょうか。
  105. 小川平二

    小川国務大臣 どうぞ忌憚なき御意見をお述べいただきとう存じます。
  106. 有島重武

    ○有島委員 きょう、八月六日で広島被爆三十七年ということでございます。被爆者の方々ないしはその家族の方々、心から追悼と、これを保護し、そうして日本の平和ということを超えた人類の平和を誓い合う、そういう日に、たまたまアメリカの方では実験をやっておる。こういったことにつきまして、きょうは金曜日で閣議もおありになったと思うのですね、閣議の話題にもそういったことが出たのじゃないだろうかと思います。小川文部大臣、閣僚のお一人としてこのことについてどのようにお考えになっておるか、最初に承っておきたい。
  107. 小川平二

    小川国務大臣 日本は唯一の被爆国でございます。かようなことを二度と繰り返してはなりませんから、教科書におきましても、当時の被爆地の実態等をきわめて詳細に記述いたしました当時の新聞等の報道を記載いたしまして、かようなことを二度と繰り返さないために、平和国家の建設、平和の維持に全力を注ぐべきことを繰り返して説いておるところだと考えております。
  108. 有島重武

    ○有島委員 たまたまけさアメリカの方でもって実験をしたということが報道されておりますね。このことについて閣僚のお一人としてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。突っ込んで言えば、ここに何らか抗議を申し込むというような御用意はおありになるのかどうか、その辺を伺っているわけです。
  109. 小川平二

    小川国務大臣 わが国といたしましては、あくまで平和主義の立場を維持していきたいと考えております。したがいまして、超大国が互いに核兵器を競い合うというような状況はまことに好ましくないと考えておるわけでございますが、当面の問題について日本政府として抗議を申し込むべきか否か、これはむしろ外交政策の問題でございますので、私としてはお答えを控えさせていただきます。
  110. 有島重武

    ○有島委員 政府を代表する閣僚のお一人としての御意見としてはいかがですか。
  111. 小川平二

    小川国務大臣 抗議をするかしないかというきわめて具体的な措置について文部大臣判断をお求めになりましても、ちょっと私といたしては当惑することになるわけでございます。
  112. 有島重武

    ○有島委員 わかりました。閣議でそれほど話題にはならなかったということでございますね。  八月五日の夕方に、報道によれば総理大臣にお会いになった。そしてその際、文部大臣として、「検定によって記述を改定した部分を元に戻すことは、長年積み上げてきた教科書制度の根幹を揺るがすことになるから応じられない」、こういうことを言われたということが報道されております。これは事実ですね。
  113. 小川平二

    小川国務大臣 総理にお目にかかりまして、現行の検定の制度の仕組みあるいはまた問題点として指摘されておりまするそれぞれの事項等について詳細に御説明をいたしてまいりましたが、私といたしましては、当委員会でもしばしば表明をいたしておりますように、わが方の真意を誠意を持って説明することによって問題を円満に解決したいと考えておりますので、教科書原稿本の記載どおりに改めることがよいか悪いか、簡単なことであるかむずかしいことであるかというようなことについては総理に申し上げておりません。  事務当局に対しましては若干のお尋ねがございました。簡略な事務当局の見解をお耳に入れたと記憶しております。
  114. 有島重武

    ○有島委員 私伺っておりますのは、「長年積み上げてきた教科書制度の根幹を揺るがすことになるから応じられない」、このようなことを言われた。これは大臣
  115. 小川平二

    小川国務大臣 初中局長を帯同いたしてまいりましたので、その点については初中局長からお答えをいたします。
  116. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 私ども説明いたしました検定の仕組みにつきまして、これは教科書検定制度が戦後の教育改革の一環として行われてまいりまして、その間幾多の貴重な経験を経ながら運営されてきたわけでございまして、この運用の一つ一つ検定制度を支えているものでございます。たとえば正誤訂正をどう扱うかとか、改訂検定をどうするかというふうなことは、一つの単なる手続ではございませんで、よりよき教科書をつくるという検定制度趣旨を達成するために積み上げてきたものでございまして、その趣旨がよく理解されて、現在起こっている問題につきましてもその中の一つの問題であるというようなことを御説明申し上げたわけでございます。
  117. 有島重武

    ○有島委員 大臣、これですね、いま起こっております問題の中で、「改定した部分を元に戻すことは、長年積み上げてきた教科書制度の根幹を揺るがすことになるから応じられない」と言った、こう伝えられているわけですけれども、これは事実ですか、これを聞いているのです。
  118. 小川平二

    小川国務大臣 私が繰り返して申し上げておりまするように、当方立場当方真意を誠意を持って説明することによって問題を解決したい、こう考えておるわけでございますから、ただいま御指摘の点には総理に対しても触れておらないわけでございます。  事務当局に対しましてはその点についてお尋ねがあり、事務当局は事務当局としての見解をお耳に入れた、こう記憶いたしております。
  119. 有島重武

    ○有島委員 「長年積み上げてきた教科書制度の根幹を揺るがすことになるから応じられない」と、そういう御見解であった、これは事実でございますね、こういうことを聞いているのです。
  120. 小川平二

    小川国務大臣 それはどのような発表になっておるか存じませんが、これは次官あるいは初中局長が事務当局としての見解を総理のお耳に入れた、私はその点に言及をいたしておりません。
  121. 有島重武

    ○有島委員 そうすると、大臣はそのことについては責任はお持ちにならぬわけだ。お持ちにならないのですか、お持ちになるのですか。
  122. 小川平二

    小川国務大臣 責任という御質疑はちょっと意味を理解しかねるのでございますが、これは事務当局が事務当局としての説明をいたしたわけでございまして、これは私の部下でございますから、もとより私が責任を持つわけでございますが、私自身はその点に触れておらないということを申し上げました。
  123. 有島重武

    ○有島委員 それでは改めて御確認をいたします。「教科書制度の根幹を揺るがすことになるから応じられない」、これは大臣も同意なさる、お認めになる、このように解釈してよろしいのですか。
  124. 小川平二

    小川国務大臣 私自身はその点に触れておりませんが、事務当局が説明を申し上げた趣旨理解をいたしております。
  125. 有島重武

    ○有島委員 理解をして、同意をしていらっしゃるのかどうかということを聞いておるわけです。
  126. 小川平二

    小川国務大臣 少なくとも当面そのことを私は考えておりません。したがいまして、事務当局との間に問題を詰めて検討したことがございません。事務当局の説明説明として聞いておる、これがありのままのことでございます。
  127. 有島重武

    ○有島委員 それじゃ、これはこれから大臣が認めるか認めないかという話でもって、責任のあることではないのだということでございますね。
  128. 小川平二

    小川国務大臣 そのような方法によってしか問題の解決ができないという判断に立ち至りました場合に、改めて事務当局の見解を聞いてみるつもりでございます。ただいまそのような判断に立っておりませんので、掘り下げた検討をいたしておらないわけでございます。
  129. 有島重武

    ○有島委員 こんなことで時間は余りとりたくないのですけれども、いま国民は、と言うと少しおこがましいような言い方かもしれないけれども、ずいぶん頑固だな、かたくなだな、そういった印象を受けていると思うのです。長野県の方でも、恐らくそういった印象がずいぶんあるのじゃなかろうかと思います。この発言は、「教科書制度の根幹を揺るがす」、こういうことが報道されているのですよ。これが「根幹を揺るがす」ということは、学校教育法をすっ飛ばして憲法まで揺るがすような勢いのお話に聞こえるのだけれども、こういうことは余り穏やかな表現ではない。これは何かこれからお話しになるらしいけれども、これは御注意申し上げておきます。よろしゅうございますね。そういうふうに伝わっているのですよ。  それから、文部大臣は後の記者会見で「次のスチップを実行」するとおっしゃった。「次のステップ」というのはどういうことなのでしょうか。伝えられるところによると、官房長や局長級を中国韓国に派遣をすることであるとかというようなことを指しておるのでしょうか。
  130. 小川平二

    小川国務大臣 現状では当方立場当方真意が十分理解されておるとは判断できません。大いに努力の余地があると考えておりますので、しからばさらにどのような手を打つか、これは外務省とも協議して検討をしなければならない問題だ、かようなことをきのう申したわけでございます。
  131. 有島重武

    ○有島委員 特使派遣についてはどういうお考えですか。
  132. 小川平二

    小川国務大臣 そのような構想もあると聞いております。
  133. 有島重武

    ○有島委員 聞いているということは、文部大臣のお考えではなかった、これは政府全体としてといいますか、というのは一体どういうことになりますか。
  134. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘の問題につきましては、教科書問題解決のために政府の部内でいろいろ検討しておりまして、その検討している方策の一つとして、たとえば政府職員派遣というようなことも検討されておる次第でございます。
  135. 有島重武

    ○有島委員 私どもせんだって、八月二日でございますけれども、総理大臣に対して申し入れをいたしました。その総理に申し入れをした後、文部省にも参りまして同じ文書を提出いたしました。このことはお耳に入っておりますね。
  136. 小川平二

    小川国務大臣 承っております。
  137. 有島重武

    ○有島委員 私たちは文部省の問題と、それから日本国全体というか政府レベルの問題と、分けて考えるべきものであると思っております。  それで、政府は事務レベルの説明説明として、これだけでもって事が済むとはどうしても思っていません。国内の何らかの具体的な措置、修正指示というようなことを含んだ、あるいは再検定ということも含んだ、こういった何か具体的な措置を踏まえた誠意ある回答を急ぐべきである、このように私どもは考えておる、このことを総理にお伝えし、文部大臣にも申し上げたわけです。  ところで、いまのお話を聞きますと、具体的な措置はとらないで現状を話し合う、ないしは理解を求める、こういうことでもって事が済むというふうにいま文部大臣としては確信を持っていらっしゃる、そういうことですか。
  138. 小川平二

    小川国務大臣 繰り返して申し上げておりまするような努力を積み重ねることによりまして問題を解決したい、必ずできるに違いないと信じております。
  139. 有島重武

    ○有島委員 それは文部大臣のお立場ですか、それとも政府の方針ですか。
  140. 小川平二

    小川国務大臣 申すまでもなく私自身の心構え、方針でございます。
  141. 有島重武

    ○有島委員 政府全体としてはどうですか。
  142. 小川平二

    小川国務大臣 これは政府全体の方針だと考えております。
  143. 有島重武

    ○有島委員 そうなりますと、これはやはり総理大臣にお越しいただかなければならぬな。当委員会に総理大臣もお越しいただくといったこと、これは院の問題でございますから、委員長にお願いして理事会に諮ることでございますけれども文部大臣としてはそう考えている、政府としても多分そうであろうというような、ちょっとあいまいなんでございますね。  前回の質疑のときに、文部大臣に質疑申し上げてこのことにつきまして確認をした。一つには、国内で使われている教科書については責任回避する余地なく、これは文部大臣責任である。このことは御確認になった。それから日中戦争というものが、あるいは満州事変も含んでこれは侵略であった、南京事件は非常に残忍なる行為であった、このことはお認めになったわけです。あのときの認め方は、御説のとおりです、こうおっしゃったわけです。きょう午前中に木島委員からの質問によって、侵略です、こう申せばいいのですかというような、何かちょっと投げやりなお答えであった。これは気になります。  まず、文部大臣としてめお立場の以前に、いま一人の政治家の立場として、小川代議士はこの日中戦争を侵略行為であった、このように心から思っていらっしゃるのか、あるいは心の幾分かどこかには、いやあれは正当防衛の面も少しあったのだ、こういうふうにお考えでいらっしゃるのか、それを確かめておきたい。どうです。
  144. 小川平二

    小川国務大臣 私は心にもないことを申し上げたつもりはさらさらございません。
  145. 有島重武

    ○有島委員 したがって——はっきり言っていただきたい。
  146. 小川平二

    小川国務大臣 ちょっと御質疑の意味をはかりかねております。どういうことでございましょう。
  147. 有島重武

    ○有島委員 日中戦争をどのように評価していらっしゃいますか。
  148. 小川平二

    小川国務大臣 先ほど申し上げたとおりとお答をいたしたつもりでございます。
  149. 有島重武

    ○有島委員 それをはっきり言っていただきたい。
  150. 小川平二

    小川国務大臣 侵略戦争であるということを明白に申し上げました。
  151. 有島重武

    ○有島委員 文部大臣というお立場としてもう一遍言っていただけますか。
  152. 小川平二

    小川国務大臣 文部大臣立場でそのように認識している、こう申し上げます。
  153. 有島重武

    ○有島委員 閣僚の一人としてというのはしつこいみたいだけれども、これはいまの内閣の方々は皆そのように認識をしていらっしゃる、そういうように評価していらっしゃる、そう考えてよろしゅうございますね。
  154. 小川平二

    小川国務大臣 これは私がとやかく申し上げる立場じゃございません。恐らくおおむね同様の御認識ではなかろうかと推察をいたしております。
  155. 有島重武

    ○有島委員 文部大臣、いまいろいろ問題になっておるこのことについては、文部大臣として、日本教育界に向けて、内外に向けてでもよろしい、正式に日中戦争は侵略戦争であったというような声明を発せられる、そういう御用意はありますか。
  156. 小川平二

    小川国務大臣 ただいま特別に声明を発するというような気持ちはございません。
  157. 有島重武

    ○有島委員 御承知のように来年四月から新しい教科書が高校で用いられるわけですね。それで、教室内でいろんな問答があるでしょう。これはこう書いてあるのだけれどもこれは侵略なんだよ、こういうふうに、本音とたてまえといいますか、二重に教えるというようなことが起こってくるでしょうな。そういうことは好ましいことかどうか。
  158. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 日中戦争が侵略戦争であるかどうかということと教科書におきます個々記述が「侵略」と表記することが適当かどうかということは別個の問題ではないかと考えます。これはるる申し上げておりますように、問題になっておりますのは、個々表記の検討の際にこの表記の仕方が歴史的な記述といたしまして適当かどうかという文脈から判断をすることが検定のやり方でございまして、たとえば事実の記述の文脈等に即し、その用語が適切かどうかということを判断すべきものでございます。  その際、同一教科書の中の表現のバランス、個々の事実の表記の仕方などにつきましては、客観的かつ教育的に見て適切かどうかという観点から検定を行っているものでございます。  歴史学習という観点から見ますと、戦争につきましては一般に原因と結果を客観的に学習するということが眼目でございますから、そういう点から申しますと、侵略進出という用語だけではなくて、実際書いております中身が現在の教科書におきましてそういう観点から十分記述されているかどうかということが問題でございますが、そういう点につきましては十分な記述がなされているというふうに考えるものでございます。
  159. 有島重武

    ○有島委員 これはたびたび伺っているから、もうそういった説明は結構なんですよ。要らないんですわ。侵略よりも進出の方が客観的な表現であって、歴史というものはなるべく客観的なふうにやればいいというふうな御意見がありました。この御意見はわれわれもとても納得できないのだ、それのみならず、この説明を幾ら繰り返しても外国には通用しない論理なんだ、そういうこともそろそろおわかりじゃないかと思うのだけれども、まだまだこの線でいけばわかるだろうと思っていらっしゃるらしい。  ところで、検定はまた年をめぐって三年後にあるわけですね。その際も今回と同趣旨改善意見を付されるつもりですか。
  160. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 その個々記述について具体的な判断をするということでございますから、その文脈に沿って歴史的な事実がどういうふうに表現されているかという観点から、改訂の場合にはよりよき改善という観点から検討いたしまして、必要な意見を付するということでございます。
  161. 有島重武

    ○有島委員 侵略ということを書いてきたら、これはやはり進出の方が客観的だね、こういうような改善意見を付するように文部大臣は指示なさいますか。
  162. 小川平二

    小川国務大臣 侵略という言葉を一般的に排除いたしておるわけではございません。何度も説明を申し上げておりまするように、ある教科書記述において中国と諸外国との間の戦争一般について記述をいたしておりまする場合に「進出」という言葉を使い、わが国と中国との戦争についてだけ「侵略」という言葉が使われている、歴史教科書ですから表現統一なさったらいかがでしょうか、その際、「進出」という言葉がより客観的な表現ではないでしょうか、かような改善意見を出したことは事実でございます。  したがいまして、今後のことについてのお尋ねでございますが、これは具体的に原稿本が出てきた時点で判断をすべき事柄でございまして、一般的に侵略という言葉を一切排斥する、拒否するというようなつもりはございません。
  163. 有島重武

    ○有島委員 そうすると、今回と同趣旨改善意見を付する、こういうことですな。
  164. 小川平二

    小川国務大臣 さようなことを申したつもりはございません。
  165. 有島重武

    ○有島委員 変わるのですか、大臣
  166. 小川平二

    小川国務大臣 繰り返して申し上げておりますような姿勢検定をいたすつもりでございます。
  167. 有島重武

    ○有島委員 今回と同趣旨改善意見を今後も一貫して付します、こういうことなんですかと言ったら、それはそうじゃないとおっしゃったから、では変わるのですかと聞いたのです。
  168. 小川平二

    小川国務大臣 同一の教科書原稿本について今回のような記載がなされております場合は、今回同様の改善意見を付することになります。
  169. 有島重武

    ○有島委員 今回同様の改善意見を付すると。もう一遍聞きます、大臣に。
  170. 小川平二

    小川国務大臣 仰せのとおりでございます。
  171. 有島重武

    ○有島委員 そこが問題ですな。そういう態度について、非常に独善的というような印象を非常に強く受けますね。これだけ国内も騒いでおる、外国においても問題が起こっておる。これは中国だけではない、韓国においても、他のアジア諸国においても、またアジアを越えた地域においても問題になるでしょう。  もう一遍伺いますよ。今回と全く同じ態度で改善意見というものは付していくのだ、侵略というのは、進出の方が客観的だからこの方がよろしいでしょう、こういうようなことを言われるのですな。
  172. 小川平二

    小川国務大臣 特定の教科書記述について、  「侵略」という言葉に関連して改善意見を出しました事情、文部省判断につきましては、何度も申し上げたとおりでございます。内容が全く同様な原稿本が出てまいりました場合には、同じような改善意見を出すつもりでございます。
  173. 有島重武

    ○有島委員 面をそろえてと言ったらおかしいけれども、粒をそろえてずっと侵略侵略侵略と書いてあった、そうなれば別に文句がない、改善意見の余地はない、こういうことになりますな。
  174. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 私の方から補足をさせていただきますが、大臣のお答えになりましたのは、個々記述におきます場合の改善意見等の一般的な考え方といたしましては、いま例に挙げました侵略については、表記統一、欧米列強のアジア進出というふうなものと用語統一をしたらどうかという観点から申し上げましたので、改訂の場合に、そういうような表記の不統一ということがございますれば、同じような観点から改善意見を付するという趣旨を御説明申し上げたのでございます。
  175. 有島重武

    ○有島委員 いまわりあいとおとなしく言っているわけですけれども文部省の中に、侵略ということはやや価値判断を含むというか、悪いことをしたという意味が強過ぎるから、この際、日本としてそんなに自虐することはないではないか、だから進出の方がいいのじゃなかろうか、そういったようなお気持ちが今回はずっと流れていた、これはどういうふうに言いくるめようと大方の見るところであります。次のときもその態度は一貫して変わりがないのだ、こういうことであるというふうに受け取ってよろしいわけですね。
  176. 小川平二

    小川国務大臣 これも繰り返して申し上げたことでございますが、歴史教科書におきましては、信通すべき史料の裏づけを持つ史実を客観的に考察し判断する力を養うということを旨とすべきものだと考えております。したがって用語につきましても、できることならば、客観的な用語価値判断を伴わざる用語を用いる方が適当ではなかろうか、そのような認識のもとに検定をいたすつもりでございます。
  177. 有島重武

    ○有島委員 検定の時期でございますけれども、三年、六年ということになっておりますが、これは法律事項じゃございませんね、局長さん。
  178. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 文部省告示で定めておりま問題ではない。文部大臣の御認識はいかがでしょうか。
  179. 小川平二

    小川国務大臣 最終的に法律に根拠を置く告示でございますから、もとより文部大臣の恣意によって左右されるべきものではございません。
  180. 有島重武

    ○有島委員 ですから、改訂を早めるということは絶対に不可能ではない、何か絶対的に不可能な条件があるわけではない、そのように考えるのはあたりまえですね。初中局長ではなく文部大臣のお考えを。
  181. 小川平二

    小川国務大臣 これは告示ではございますが、従来制度としてずっとやってきておることでございますから、そう安易に改訂できるものとは思っておりません。
  182. 有島重武

    ○有島委員 私は、安易にとかそんなことを言っているのじゃないのですよ、絶対にできないという条件は別にありませんねと。
  183. 小川平二

    小川国務大臣 三年ごとに改訂をするということを行政の面で積み上げてきて今日に至っておるわけでございますから、一挙にこれを一年に変えるというようなことはよほど慎重を要する、簡単にできることとは考えておりません。
  184. 有島重武

    ○有島委員 ですから、不可能であるという絶対的な条件ということはないわけですな。
  185. 小川平二

    小川国務大臣 文部大臣権限に属することでございますから、申すまでもなく不可能だなどと申すつもりはございません。
  186. 有島重武

    ○有島委員 問題があるたびごとに、教科書だとか検定だとかに関するいろいろな報道がございます。今度の中国にしろ韓国にしろ報道によって中身を知った。われわれも報道によって以前もいろいろ知って、そこから一生懸命資料を取ったり何かしてやっておるというような状態である。これはこの前も言いましたように、国民検定というものは非常に暗い印象を与えておる。密室でやっておるという印象を受けさせておる。これは好ましいことではない。これは大臣もお認めになったことです。それで、そういった印象を与えているのならば何らかの措置をとらなければならない、こう言われた。  そこで、こんなところで言うのは恥ずかしい話なんですけれども、実は私もその問題になっている二十一冊の現物を持ってないのですよ。これは委員の諸君も持ってないのですよ。それで王暁雲さんはお持ちになっているのですよ。それで文部省にお願いすると、これは冊数が足りないから出さぬ、こう言うのだな。そこで、これはちょっとまずいことだと思うから、この席でもってこれは大臣にお願いするわけです。資料としてこのぐらいのものはおそろえになって出してもらいたい。これをひとつ。事務当局にお願いしても出てこないのですよ。ゼロックスか何か出してくれた。これはおかしい話だから、事務当局に御相談なさらなくてもいいから、大臣それは出すのは当然でしょう。それから後のことは、今後文部省、全教科書の常時閲覧の施設を設けて、資格を問わないでこれを閲覧させなさいませ。これは文部大臣に対する申し入れでもって申し上げたことだ。これはまた今後詰めていってよろしいことですけれども、さしあたってそのことだけはひとつ約束してください。——大臣にお願いしておる。
  187. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 王暁雲公使に対しまして渡したじゃないかということでございますが、これは私ども教科書会社から購入いたしまして、必要な資料として王公使にわが国の教科書全体の記述についての理解を得るために渡したものでございます。文教委員会にお配りするかどうかということにつきましては、また御相談をさせていただきます。
  188. 有島重武

    ○有島委員 時間が来てしまったけれども、満州事変、日中戦争、南京虐殺あるいは三・一事件、これは韓国ですね、それからその他のこういったことを含めて、いま日本教科書が問題になっておりますけれども、外国の教科書日本に関する記載がどのようになっておるか、このことについては調査を進めていらっしゃると思います。この資料も出していただきたい。いかがでしょうか。
  189. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 有島先生から御質問がございまして調べたわけですが、いまのところ検定制度の諸外国のあり方とかそういうようなものはございますが、ほかのものは調査しておりません。
  190. 有島重武

    ○有島委員 これはお調べになるべきじゃないかと思うけれども、ほかの国の教科書で、これはヨーロッパを含めてもいいです。アメリカ、ヨーロッパを全部含めて日本のことをどういうふうに書かれておるか、このことを文部省内で調査なさる、これは当然だと思うのですけれども文部大臣いかがでしょうか。
  191. 小川平二

    小川国務大臣 御趣旨は十分理解いたしますが、きわめて正直に申し上げまして、まだそこまで文部省は手が回りかねておるというのが実情のようでございます。
  192. 有島重武

    ○有島委員 これは外務省任せにするところから、これからこういった問題、いまの日本教科書も国際的な問題になっておる。これは逆に向こうはどういう認識をしておるのだというところに踏み込んでいく。もう文部大臣も所信表明のところで今回も、国際人として国民を育成しなければならぬ、そういうことを言っておられるわけでありまして、一つけたを広げてもらいたい。残念ながらこうなっておらぬという話がございましたけれども、今後ひとつ外務省と一緒になってリンクしても構わぬけれども、そういったことは調査をお進めになるべきだ。それからなお、そういうところにおいて明らかにこれは事実の歪曲であるというようなことがあれば、これはこちらからも、どういうルートを通してか、いろいろあるでしょう、これは言わなければならないことでありましょう。それで従来もそういった例がありました。それはしかし、時間がなくなったからきょうはやめますけれども、そういったことが今後必要であるというふうに私は思います。  大臣いかがでしょうか。それだけ伺って、きょうの質問は終わることにします。
  193. 小川平二

    小川国務大臣 御趣旨は十分理解できますので、一挙にというわけにまいりますまいけれども、おいおいそのような調査も実行してまいりたいと考えます。
  194. 青木正久

    青木委員長 三浦隆君。
  195. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 文部大臣にお尋ねいたします。  このところ、いろいろと大変に御苦労の連続でお疲れのことだと思います。私とは党派を異にしますし、見解も異にするところもありますが、いま日本教育にとって大切なことを問われているときですので、ひとつ十分にお体の方には気をつけてがんばっていただきたいと思います。  さて、その上でお尋ねをしたいと思います。  韓国では、国会決議で教科書記述を改めるようにとの決議が採択され、国会審議の中の発言では、ある議員は、駐韓日本企業の追放や国交断絶も辞せずと語ります。また、ある大臣は、これが日本人全体ですか政府ですか、特定の人か不明でありますが、彼らに人道的な思考方式を期待することは初めからむずかしいと述べたようです。  また、中国からも、人民日報紙上で軍国主義復活への逆流と激しく批判されて、中国教科書修正に向けまして希望から要求へとエスカレートしております。  そこで、これからの日中、日韓との話し合いをどのようにお進めになるおつもりでしょうか。
  196. 小川平二

    小川国務大臣 事態がここまでのことに立ち至りましたことについては、心から憂慮いたしております。先ほども申し上げましたが、当方立場当方真意を正しく理解してもらいまするためになお努力をする余地が大いに残っておると考えますので、しからばどのような措置をとるべきかということにつきましては、外務省とも十分協議をいたしまして決定をしていきたいと考えております。ただいま直ちにこのようなことを実行したいという具体案は持っておらないわけであります。
  197. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 少なくともこれまでの説明の繰り返しだけではどうにもならないのだろうというふうに思います。  さて、総理大臣外務省との間の話し合い、これまで大分お詰めになられたと思うのですが、現在どこまで進んでいるのでしょうか。また、そうした話し合いの中で総理大臣は今回の事件に対してどのような見解を述べられ、大臣にどのような指示をなされたのでしょうか。
  198. 小川平二

    小川国務大臣 総理大臣も今回のことについてはきわめて強い憂慮の念を表明なさっております。私に対しまして、友好親善め関係を損なうことがないように全力を挙げて当方立場理解に努めてほしい、このようなお言葉でございました。
  199. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いま一日本ではなくて、中国韓国との関係を踏まえて大変大きな事態に立ち至っております。そのとき単に総理大臣が憂慮の念を示しただけでは、何ら具体的の処方せんにならないのじゃないか。やはり一国の首相としてのはっきりした一つ判断というものがあるのじゃないかというふうに思うのですが、ここに総理大臣がおりませんので聞くことができません。大変に残念であります。  さて、首相の九月訪中が迫ってきておりますが、それまでに決着のつく見通しがあるのでしょうか。
  200. 小川平二

    小川国務大臣 総理が訪中されるまでにぜひとも円満な形で解決をいたしたいと思っておりますが、話し合いはようやく緒についたばかりでございますので、ただいま的確な見通しを申し上げることができないわけでございます。
  201. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 首相がはっきりとした一つの考え方を持たないときに、仮に九月中国に出かけて何をどう話されるのでしょうか。私は行ってプラスなのかマイナスなのかわからないようなきわめて不安を感ぜざるを得ません。  さて、一部には文相の責任を追及して文相の辞任を求めて、教科書の問題個所の訂正を求めようとする動きがございます。大臣の出処進退を踏まえてどのようにお考えでございましょうか。
  202. 小川平二

    小川国務大臣 私がこの問題に対処いたしまする心構えにつきましては、るる申し上げておるとおりでございます。これが御批判を受けるということでありますれば、これは甘んじて受けるつもりでございます。
  203. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 文部省にお尋ねをしたいと思います。  過去に四大公害裁判の加害企業名を復活させるように指示した例もありまして、正誤訂正の形式で、先ほど来からも質問が出ておりますが、国民の中にも改訂ができるめではないかと思っている者もたくさんおります。この際、正誤訂正ができるのかできないかという限界について、譲れる譲れないという限界について明確に御説明を願いたいと思うのです。  検定規則の十六条では、検定を経た図書については、たとえば「学習を進める上に支障となる記載」、これは文部大臣の承認を得れば訂正が可能であるというふうになっているのですが、これでできるのかできないのか、その限界をはっきりとひとつお答えをいただきたいと思います。
  204. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 正誤訂正の趣旨検定一つの手続上の問題でございまして、そこに書いてあります四項目は、客観的に明らかに誤字、脱字があるとか統計資料が不備であるとか、そういうような明らかに正誤として扱われるものが中心でございまして、予備条項といたしまして、その他学習に支障があり、緊急を要するものというふうになっておりまして、その場合の予備条項の第四項につきましても、おのずから正誤申請に係る趣旨の限定があるわけでございまして、それほど幅のあるものではございません。  その点につきましては、先ほどから申し上げておりますように、当委員会で問題になっておりますようなケースについて改善意見を付し、それに応じて修正をいたしましたものを、正誤申請という形でこれを持ってくるということにつきましては、正誤申請の手続の趣旨になじまない、そういうことを申し上げているわけでございます。
  205. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 その説明が大変わかりにくいのです。といいますのは、十六条はいま言いました、はっきりと要件を踏まえておりまして、「検定を経た図書について」、はと、まずありますから、それはどういう意味なのかということです。  それから「学習を進める上に支障となる記載」とあるのですが、「学習を進める上に支障」だけではきわめて抽象的でして、どのようにでも変わる可能性を持っているわけであります。また、今回いわゆる公害裁判の記述と今度のいわゆる中国韓国に対する記載は、必ずしも同じではないものですから、そうしたことを踏まえて、明確な、もう少し何かはっきりとしたお答えというものが出ないものでしょうか。
  206. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 この第四項については、これは正誤申請の予備条項として書いているものでございまして、学習上支障があり緊急を要するという観点につきましても、それほど幅のあるものではないと申し上げましたのは、どうしても正誤という手続をやらなければならないような学習上の支障があるというような観点でございまして、そういう点につきまして、緊急を要するというふうな場合にのみ該当するということでございまして、ただいま検定済みになって見本本として出ておりますようなものを、この当該の争点となっているものについて、さらに同じような点から正誤という形で手続をするということは、たびたび申し上げておりますように、この制度の趣旨ではないということを申し上げておるわけでございます。
  207. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 主語は「発行者は、」ということになっておりますので、本来ですと大臣とかその他の見解ではなくて、発行者はだれでもできるはずなんですね。ただ、たまたまそれが「文部大臣の承認を受け、」となっている場合のこの文部大臣という、持つ重みが大変事実上大きくなってしまっている。むしろ「発行者」が主語なのかどうかがわからないというふうな実情が現にあるのじゃないでしょうか。そこにむしろ不安を私自身は考えております。  というのは、たとえば今回仮に改訂がなされたといたします。そうすると、改訂なされるかなされないかということがきわめて恣意的にやられる可能性が出てくることはこわいことだと私自身は思っております。すなわち、問題によっていわゆる恣意的な検定の道を開くということは、今回のことだけではなくて、将来のこと等も考えますというと、簡単に改訂自身にも賛成いたしかねる。そういう気持ちが出てくるのは、あるときは変える、あるときは変えないというのが常に文部省の主観的な判断だけで動かされるというのでは、これはやはり問題だ。それが先ほど御質問者にもありましたように、法律ではない形でできていますし、言葉が、規定がきわめて抽象的にできている。こういう大切なことは、後ほど質問を繰り返しますが、法律で決めるべきであって、しかもなるべく具体性を持った規定に変えなければならない。それが今日のように法律の形ではない、しかも規定は抽象的でどうにでもなるというところに大変大きな問題がある、このように思っております。  次に、中国から日本軍国主義の復活という言葉も出てきたわけです。日本は戦後一貫して平和主義を基調とする憲法のもとに再生して、平和国家の国民として生きる誇りを持ってきょうまで歩んできたつもりでございます。その意味では、日本軍国主義復活という中国の発言は、私は少なくとも誤解だと思います。しかし、誤解されている以上は、誤解は可能な限りほどかなければならないわけであります。そして、その具体的に誤解をほどく一つの問題でありますが、たとえば再軍備強化の一環として憲法改正という声が上がっておりますが、そうした声の中にあって、大臣見解としてこれを明確に否定されるというふうな御意見を伺うことができるでしょうか。
  208. 小川平二

    小川国務大臣 これはかねて総理大臣が国会におきまして表明いたしておりますように、現内閣は憲法改定をする意図は全く持っておりません。私も閣僚として同様の答弁を申し上げます。
  209. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 現内閣はと限定されますと、内閣がかわるとどうなるかわからないというふうにも理解されかねないということでは、日本国民は仮に説得し得たとしましても、まだまだ外国の方は納得し得ない、このように思うのです。そこが一つの大きな問題だと思います。  次に、これは文部省だけでできる問題でございますのでぜひ前向きにお答えいただきたいのは、再三実は質問をいたしておりますが、教員養成の科目の中に当初憲法が必須科目であったわけですが、いま外されているわけであります。これを以前に戻して必須科目に直してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  210. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 前回、国立学校設置法の改正案のときも先生からお尋ねがございましてお答えを申し上げたわけでございますが、四十八年の教育職員免許法の改正に際しまして一般教育科目の最低修得単位数の規定が削除されまして、それに伴っての改正が行われたわけでございます。しかしながら、もちろん憲法について、教員となる者の一般的、基礎的教養として十分身につけさせることが必要であることはもとよりでございますので、四十八年の改正の際に当時の大学学術局長名で念のため重ねて通知を出したわけでございます。したがって、私ども一般教育科目としてそれらの修得が行われていると理解をしているわけでございますが、前回の先生の御質問の際にも、法学というようなことで民法などが行われているケースが多いではないか、現場の実態とその点はやや乖離しているのではないかというようなお尋ねもございました。したがいまして、私どもとしましては、たとえば私立大学の教職課程の研究協議会でございますとか、あるいは教育大学協会等の会合の際にその趣旨を十分徹底をさらにさせたいと思っております。  それともう一つは、あるいは課程認定をされておりますそれらの大学の一般教育の取り方について、全体の実態も一度把握をするように調査をいたしたいと思っております。一般教育の科目で憲法の修得について十分趣旨の徹底を図るようにするつもりでございます。ただいま申しましたような実態も一度調査をしまして対応を十分いたしたい、かように考えております。
  211. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 日本憲法というのは、全世界どこにも類例を見ない平和に徹した憲法の規定でございます。そういう意味では、教員養成の科目の中にかつて憲法を必須として置いていたわけでして、これをいま復活させていただくということは、直接には今度の教科書問題では関係ないのですが、やはり日本の文教の姿勢一つを示すものとして相手の国を説得させる一つの有力な論拠になり得るものと思うのです。いまの御説明でありましても、決して教員養成の中で憲法を軽視されているとは私には思えませんでした。ならば、かつて法規の中で認めていたのですから、それを単に外して行政指導にしないでもとの法規に変えるということはきわめて簡単なことなんじゃないかということなのです。簡単なことなのですから、ひとつ大臣決断をもってこれだけはおまとめいただきたいと思うのです。だれもこれがだめだとはお答えになってないのですから、きわめて簡単にできることなのですから、何とかできないものでしょうか。大臣からお答えいただきたいと思います。
  212. 小川平二

    小川国務大臣 憲法について教えるということの意義については、私は十分認識いたしておるつもりでございます。ただいま局長から答弁申し上げましたように、このことを決して軽視しておる趣旨ではございませんけれども、ただいまの御意見はきわめてごもっともでございますので、研究をさしていただくつもりでございます。
  213. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 研究をしていただくことも大変ありがたいのですが、ただ研究をするでは期限が切られているわけではないわけです。そしてまた仮にでも大臣がやめられますと、それでおしまいになってしまうわけであります。ですから、こうしたことは決めようと思えばすぐにでもできることなんでして、即断をしていただきたい。たとえば、いま中国韓国からしきりと言われているときに、こんな日本国内でそれこそ他のどことも関係しないで文部省だけで、大臣一存だけでもできることすら答えられないようでは、とても中国韓国の人を納得させることは私はできないのじゃないかというふうに思いますので、重ねてひとつ、単に研究するだけではなくてもう一つ、緊急にとか処置するとか、何かもっと歯切れのいいお答えをいただけないでしょうか。
  214. 小川平二

    小川国務大臣 いろいろの経緯もあるようでございますから、早速これを取り調べまして、御期待の方向で研究をいたすつもりでございます。
  215. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 実は前回の質問のときにもそうした似たようなお答えをいただいたのですが、それなりにまだ進んでいないと思うのです。ですから、前回からもうかなりの日時がたっていることでございますので、単に研究するではなくて——本当にできるのです、これは。そしてまた事実、先ほども局長お答えになっていますね。憲法をできるだけ取るようにさせたいと言っているわけでして、妨げになる要因は何もないわけです。ですから、これぐらいせめて指示いただけないものか。  むしろ、教育は何のためにあるのかといえば、それこそ憲法の理想を教育において実現したいのだということにかかっていますから、だからこそ教える教員にとっては何よりもかによりも、他のどんな科目を勉強するよりも、極端に言えば何も勉強しなくてもいいから憲法だけでも勉強してほしいというぐらいの願いが当初あったはずであります。そういうことを踏まえて、むしろ日時を切って、たとえばもう緊急に年内には少なくとも改定しますというふうなお答えを、大臣そして局長からもいただきたいと思います。
  216. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほど大臣がお答えしたとおりでございまして、私どもとしてもその問題について、教員養成の問題自体が大変いろいろほかの面でも議論があるわけでございますから、その中で検討さしていただきたい、かように考えております。  ただ、経緯を申し上げますと、前回も御説明したわけでございますけれども昭和四十八年の法律改正前におきましては、一般教育の履修方法が具体的には省令で書いてあったわけでございますけれども、人文、社会及び自然の三分野にわたって履修するということ、その中に日本憲法二単位を修得することという規定がございまして、小学校及び中学校の教員の普通免許状を取得する場合には倫理学、哲学または宗教学の中から一科目二単位を修得するということで、いわば修得の仕方について相当細かく省令で書いてあったわけでございます。それが四十八年の法改正で一般教育について、一般教育の修得の仕方については各大学が弾力的にやり得る余地をなるべく広くするということで改正が行われてきたわけでございます。その法律改正に伴って省令に書いてございました点が削除されたというのが経緯でございます。  したがって、先ほど来御説明をしている点で免許状の授与の所要資格としては、大学の課程認定の際に、一般教育の科目のあり方については大学自体で弾力的な判断をし得る余地を広くするという方向での改正であったわけでございまして、憲法の履修の重要なことについてはその際も一般通達の後にさらに別途特に通知も出して注意を喚起してきたのが従来の法改正の経緯でございますが、御指摘の点でもございますので、私ども十分その検討について対応さしていただきたいと思います。
  217. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 その答えがまずいのです。弾力的であってはいけないのですよ。弾力的だということは裁量の幅があることを言っているのでして、性格的には、極端には覊束行為と言ってもいいくらいです。何はとらなくても憲法は最優先でとれ、こうしなければならないわけですよ。中国の方で言っているのは、日本軍国主義の復活ではないかとまで言われているときに、前回文教委員会のときでも言いましたように、この憲法は前文ではっきりと、「政府の行爲によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」、あるいは「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して」、そういうふうにはっきりと言い切っているものですから、この憲法をはっきりと教育の上でもとに戻すということは大変すばらしいことなんです。  せっかく大臣中国と親しくしたい、中国通と名が通っている大臣を、文部省がなぜあえて窮地に陥れるのか、なぜ大臣を助けようと発言されないのか私にはきわめて不可解であります。旧来の経緯を聞いているのではなくて、こういう事態が起こっているのだから、文部省として大臣を助ける一助になればいいのだということでもって、即座にでも、九月訪中すら言われておるわけですから、早く改めますと、もう一言その決意を、中途半端な答えじゃなくて、もし大臣を助ける意思があるならば、はっきりと答えていただきたいと思います。
  218. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の点については、私ども、教員養成の問題自体がただいま検討課題になっておりますので、そういう意味で積極的な姿勢で対応を検討させていただきたいと思います。私どもとしては少なくとも年内には結論を出すようにい  たしたいと思います。
  219. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いま年内に答えが出されるということだけでも大変結構だと思うのですが、ひとつ大臣からも年内に決着をつけるというふうなお答えをいただいて、もしそれがあれば九月訪中に向けて、いますぐに当たらなくても、改めるという強い姿勢表明があっただけでも大きな違いがあるというふうに思いますので、大臣の見解をお尋ねしたい。
  220. 小川平二

    小川国務大臣 御意見趣旨は十分理解いたしましたから、遅くも年内に、それまでに十分検討いたしまして、結論をお耳に入れるつもりでございます。
  221. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 ぜひそうお願いしたいと思います。  さて、訂正指示意見の中には、ほんの一例ですけれども、確かに怪しげなところもないではありません。たとえば、旧憲法下で三権分立であったというふうに書きなさいと指示意見があったようでございますけれども、これは必ずしも通説とは言えないのです。御承知のように、旧憲法下では天皇が統治権の総撹者の立場にありましたし、天皇が立法権者であって、帝国議会は翼賛議会であり、そして議員は翼賛議員であった。あるいは、内閣における大臣は輔翼するだけの立場であったし、また司法権は天皇の名によって行われていたのだ、いわゆる権力は天皇にあったのであって、明治憲法下では機能の分立とは言えたかもしれないが、権力の分立とは言えないというのがむしろ通説だ、このように思います。それに対して今日の国会は、立法権は国会にある、行政権は内閣にある、司法権は裁判所にあるとはっきり明記しているから、三権分立なんだと思うのですが、このようにして、事実を客観的にとかいうふうに言っておりますが、指示意見の中には必ずしもそうとは言い切れないものがあろうかと思うのです。また、社会科の中においてこういうふうな意見が出てくるということ自体やはり問題だな、恐らくそれは社会科の検定に携わる人々の選び方の中に見直しをされなければならない点があるのじゃないのかな。  たとえば、聞くところによりますと、いわゆる皇国史観というものをお持ちの方もいらっしゃるようでございまして、むしろ戦後の教育は皇国史観の間違いを正して現行の歴史教育なり公民というものが語られているわけですから、公然と皇国史観を今日も保持するという人がかりそめにも検定調査官の中におられるということは大変問題でして、個人としての思想はいかなることをお考えでも自由でありますけれども、この検定に携わる委員という角度から考えると不適格なんではないかなというふうに思うのですが、これについて大臣はいかがお考えでしょうか。
  222. 小川平二

    小川国務大臣 憲法について御発言がございましたが、これは専門家の御意見でございますから、私は傾聴いたしたわけでございます。  明治憲法について三権分立ということを書いたからと申しまして、現行憲法を廃止して明治憲法に戻れというような趣旨ではございませんし、明治憲法を礼賛したわけでもございません。ただしかし、明治の維新というものは、封建国家、封建体制を打倒して近代国家を生誕させた変革でございましょうから、近代国家の骨格を定めた憲法には進歩的な側面もあった、これは否定できないと思うのでございます。いささかでもそういう点について書くと、これは何か非常に反動的なやり方であるような御批判をいただくということは残念に思っておるわけでございます。  なお、調査官の人選につきましては適正に行ってきているつもりでございまして、何か超国家主義的な思想を持っておる者が現に検定の仕事に携わっておるという事実はないと信じておるわけであります。
  223. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 もし現実にいらしたという事実が明らかであったら、どうなるのでしょうか。
  224. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 調査官の任命につきましては、大臣が申し上げましたように広く選考いたしまして、学界、大学等からの選考を受けてやっております。また、思想傾向がどうこうということではございませんが、調査官としての職責に照らしまして、法令に照らし、法令に従い、公正に仕事を執行するということにつきましては、公務員としての心構えにつきまして他の公務員と変わるところはないというふうに考えております。
  225. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 私のお尋ねしたのはそういう抽象的な見解ではないのでありまして、現実に中国韓国からそういう日本の皇国史観的なことが歴史教育に反映するのじゃないかということの批判がなされているわけですから、もし現実にそういう方がいたら、好ましいとか好ましくないとか、そういう答えだけを聞きたいのでして、ほかのことを聞いているわけではありません。時間ですから、簡単にひとつ。
  226. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 いわゆる皇国史観を持った学者がいるかということでございますが、そういう学者はおりません。
  227. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 私の手元にはあるのですけれども、いまここでその方の名前を挙げることもいかがかと思いますので、時間の都合もあり、これはまた、ひとつ御相談をしたい。もしそういう方がいた場合に、仮定ですね、ひとつ十分お気をつけいただきたい。やはりこれも九月訪中に向けて、相手の国がそういう疑問を投げかけている以上は、疑問に対して明確に答える姿勢がなくてはいけない。ただ説明する、説明すると言っても、相手の疑っているところに何ら答えないで、表面的なことだけ答えてもどうにもならないということです。  それからもう一つに、確かに大臣も先ほど言われたように、明治憲法のすばらしい、よい点もあるのですけれども、しかし三権分立論云々というのは、末節の問題ではありません。天皇が昔の神勅主義に基づいての主権者としての天皇の地位にあった時代と、今日のように単なる象徴の地位にとどまられて、国政に関する権能を持ち得ないで国事に関する行為のみを行われるようになったということは、同じ天皇という名前を使われていても、天皇の果たす役割りは明確に変わられていなければならないわけです。その基本認識からして、三権は分立であるのか、それが権力の分立であるか、機能的分立であるかというのは枝葉末節の問題ではないということでありまして、こういうことから少しずつ崩れていこうとすることがあらぬ疑いを招くことになるのじゃないかと思っております。お答えもいただきたいですが、実はたくさん残っておりますから、進めざるを得ません。  次は、外務省にお尋ねをいたします。簡単で結構ですので、お答えをいただきます。  実は、きのうの夕刊によりますと、外務省のアジア局長が国会内で自民党四役に対して首相訪米前に決着をつけたいというふうに述べられた由ですが、そのとおりでしょうか。
  228. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 外務省としましては、文部省とも御協議いたしましてできるだけ早くこの問題につきまして円満に解決ができるよう努力していく所存でございます。
  229. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 きのうの夕刊の同じ紙上に載っていたわけですが、もし外務省文部省との間で論議が平行線をたどったとするならば、言うならば協議が整わなかったとするならば、首相の九月訪中というのはどういうことになるのでしょうか。もし外務省文部省との間で協議が整わなかったとするならばであります。
  230. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 この問題は文部省の御所管の問題でございますけれども外務省文部省と協力いたしまして何らかの対応策を現在の制度の中で見出すべく、現在せっかく努力しているところでございまして、こういった努力を今後とも続けまして早期に解決したいと念じているところでございます。
  231. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 この場合、決着をつけるということは、教科書記述を書きかえるという意味でしょうか、お尋ねいたします。
  232. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えします。  先ほどお答えしたしたとおり、この問題は文部省の御所管の問題でございますので、そのような御判断文部省がなされることだと思います。
  233. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 そうすると、文部省がどうしても書きかえないと言った場合には決着がつかないことになると思うのですけれども、いかがでしょうか。
  234. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 先ほどもお答え申しましたとおり、外務省としましては、この問題につきまして先方の理解も得、円満に解決するようにせっかく努力していきたいと思っております。
  235. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 先方にではなくて国内で話し合いがつかなかった場合、そのときに訪中を行うのですか行わないのですかということであります。
  236. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 御質問でございますが、現在両省でせっかく努力している最中でございまして、そのような御質問に私はお答えすることは残念ながらできません。
  237. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 この教科書問題は国内的問題であって、中国韓国等に関することは外交的な問題であるから外交の方が優先すべきだという論理を述べる方もいらっしゃいます。外務省はどうお考えでしょうか。
  238. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 委員指摘のとおり確かにこの問題につきましては国際的な面もございますが、本質的には文部省御所管の問題でございまして、そういった両面があるというふうに私たちは了解しております。
  239. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 私は、外交もきわめて大切なことだと思いますけれども、あわせて教育もきわめて大切であります。  時間の制約もありまして触れることができませんが、たとえば明治二十四年の大津湖南事件というのを思い出しましたときにも、当時の日本は大変ひ弱でありまして、またそうしたロシアの皇太子を警官が傷つけたことでロシアから何の無理難題を言われるか、むしろこの際はその警官を死刑にした方が日本の国益に合う、危ないからという意見があったようでありますが、それを当時の大審院長、児島院長ははねのけたというふうに言われて、いわゆる司法権の独立を切り開いたというふうに聞いております。  また、戦後の国会におきましても国政調査権との関係で司法権との問題が浦和充子事件でも言われておるところですが、私は、立法権、行政権、司法権と並んで今日教育権というのは、まだ四権独立とまではいきませんけれども、それは大変に高い地位を占めているものだ、このように思います。外交的配慮もきわめて重要ではありますけれども日本のこれからのことも踏まえて教育権の独立ということもきわめて大切だ。この点ではむしろがんばっていただきたいと思うのです。  ただ、私が言わんとするのは、がんばるにはがんばり得るだけの理論性、根拠性を持ってほしいということなんです。すなわち、がんばるに値しないようなことをただ何となく無理やりにがんばり続けるというか、それだけではとても説得力がない。むしろ教育がきわめて危ない状況に置かれるということを不安に思うものであります。  さてその上で、教科書検定制度の問題についてお話をしたいのですが、時間も迫っておりますので、まず先に一括して、質問をいたそうかなと思った要点を述べさせていただきたいと思います。それで改めて振り返って時間がありましたときに要点についてお答えをいただきたいと思います。  教科書検定制度につきましてお尋ねしたかった第一点は、まず制度のあり方であります。  現在、教科書制度にはソ連を中心とします社会主義国家群あるいはかつての日本における国定教科書の採用があり、日本や西ドイツなどにおけるいわゆる検定教科書のグループがあり、またアメリカ二十四州、フランス、イギリスなどの認定制度をとっているところがあるわけです。  さて、そこで今日の検定制度の仕組みがどのようになっていて、そしてそれが国定教科書にまさる理由はどこにあるのだろうか。一般に国定教科書と言われているものは、教科書の作成は国が行うことと国定教科書以外は使えないということにあろうかと思うのですが、今日の検定教科書というものは、検定という名におきながら、実質的に文部省主導型の国定教科書に近くなっておるのではないか、あるいは採択の過程の中で広がっていく過程あるいは期間が延びていく過程の中でもだんだんと実質的に国定化していくのではないか、そういう疑いもありますので、それに対する御見解が聞きたかったわけです。  次に、教科用図書検定調査審議会の委員はだれが、いつ、どこで、どのような基準で決めるのでしょうかということ。それから現在どのような人が選ばれているのか、その人数、氏名、身分、待遇について明らかにしていただきたい。時間があれば、これだけでもお尋ねしたいのです。そしてその法的根拠はどこにあるのか。  それから教科書調査官におきましても同じでありまして、むしろ検定の実質的役割りを担う重要な立場にあられようかと思うのですが、この方たちはどのような人が選ばれているのか、そうした人数なり氏名なり身分なり待遇を踏まえて、だれが、いつ、どこで、どのような基準で決めるのか明らかにしていただきたい。  同じようにまた、調査員という制度もございますけれども、この調査員についても同じことをお尋ねしたいと思うのです。  もう一つには、この審議会の委員調査員の場合には教科用図書検定調査審議会令というもので決まって、教科書調査官の場合には文部省設置法の施行規則五条の二で決まるようになっております。なぜこれだけが違った取り扱いを受けるのかという問題点。  それからまた、これが正確な記事かどうかわかりませんが、私の知り得た範囲内で今日問題となっております社会科関係の実は検定に携われた人九名のリストアップがございます。これを見ますと、高校教員一、高専教授二、大学助手一、大学助教授四、文部省初中局一というふうな振り分けになっております。としますと、現行の社会科の教科書を大学の教授が自信を持って書いた場合に、その大学の教授の書き方が過ちであると指摘するのが、いま言った先生方には申しわけないのですけれども、こうした高校の先生なり大学の助手さんにやられたのでは、教授にとっても何となく釈然としなかろう、やはり教科書を書くのがもし仮に教授であるならば、その教授に対して十分なる反論ができるぐらいの学識を持つ人をこそ選んでいかなければならぬのじゃないかというふうな気がするわけであります。  それからこの教科書法律による行政の関係です。今日教科書に係る法律には、教科書の発行に関する臨時措置法、文部省著作教科書の出版権等に関する法律、義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律、私の知り得ている限り、教科書に係る法律はこれしかないわけであります。すなわち教科書法ないし教科書検定法といったものが現在ないということであります。現在教科書検定については教科用図書検定規則といった昭和五十二年の、たとえば文部省令三十二号という命令があるのにとどまっております。きわめて大切なことを法律ではなく命令にゆだねるということはきわめておかしいのではないか、このように思うわけであります。  この教科書検定については文部省設置法の五条一項、いわゆる「文部省権限」で「教科用図書の検定を行うこと。」とあります。また同じ法律の八条十三の二では「初等中等教育局の事務」として「教科用図書の検定を行うこと。」とあるのですけれども文部省設置法はもともと組織法でありまして行為法ではございません。また、二つの規定ともどもに「法律に従ってなされなければならない。」とあるわけですから、同法は検定における根拠法とはならないわけです。別に法律がなくてはいけません。  そこで、法的根拠として援用されるのが学校教育法二十一条等でございますが、その二十一条、これは「小学校においては、文部大臣検定を経た教科用図書又は文部省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。」と規定するだけでありまして、教科書検定について何らの具体性を持つ規定ではないわけであります。したがって、根拠法とはこれまたなり得ないのじゃないかというふうに思います。  すなわち、現在のわが国の体制は、かつてのナチスの授権法や旧日本におきます総動員法のごとく白紙委任立法はもとより認めることのできないところでございます。しかるに教科書検定については、かつて行政権が天皇の名を援用すればほとんど無限大の、無定量の権限を行使することができたということから言うならば、天皇の名を文部省と置きかえますと、同じようにどのようにでも検定作業を進めることができ、合否の決定ができると思われるように至ったのではないかというふうに思います。こうしたことから、文部大臣に圧力を加えればあるいは文部大臣をやめさせ、かえれば教科書改訂がなし得るというムードが起こってきたのではないか、このように思うわけです。  そこで、教科用図書検定規則は命令形式なのですから、本来は授権法があって、その法律の補充的規定、特例的規定及び解釈的規定にとどまるべきが通説だと思うのです。  また、同時にこの教科書検定規則の中に八条三項、十条二項に「議を経て、」とございますが、教育公務員特例法四条二項の「教授会の議に基き、」という似たような言葉があります。「議を経て、」と「議に基き、」との違い、これもやはり大きなことかと思います。  さて、現行教科書検定制度は、法律による行政ではなく、戦前的な命令、通達による行政というふうに言えようかと思います。これを基本的に改めて、教科書検定制度というものも法律による行政を貫くべきじゃないか、そのように考えるわけです。  そういうわけで、今後の対応としましては、まず教科書法あるいは教科書検定法というものを制定促進する必要があるということです。  ただし、かつて昭和三十一年教科書法案というふうなものが出され、廃案になっております。これはきわめて不十分なところが多かったからであります。そこでこの際、教科書検定についての検定、採択等を踏まえて、国民及び諸外国の人々にも納得のいく法律をつくる必要がございます。  昭和三十一年の教科書法案第五条には、「検定の基準」として、「教科書検定の基準は、文部大臣教科書検定審議会に諮問して定める。」とあります。しかし、地方教育行政法、例の地教行法の規定によります「教育委員会の設置及び組織」の整った諸規定に比べますと大変に不十分であります。すなわちこの地教行法の教育委員会規定によりますと、教育委員に関しての任命の規定、任期の規定、兼職禁止の規定、罷免の規定、解職請求の規定、失職の規定、辞職の規定、服務の規定、会議の規定など、重要な規定が述べられておるのに、いわゆる教科書法案には全く欠けていたということであります。そのことは、現在行われている教科書検定の規則、こうした命令も同じでありますので、正さなければならないと思います。  同じようにして、教科用図書検定調査審議会の委員の選任が現行では文部大臣のみにかかっているわけであります。これも前回文教委員会で質問しましたが、これを直ちに国会がその委員の任命に対してかかわりを持てるように審議会のあり方を基本的に改めた方がよい、こう思うのでございます。前回、文部省の見解は余り乗り気でなかったようであります。すなわち教育に対する国会の干渉と受けとめたのかもしれませんが、これは明確な過ちであります。たとえばNHKの経営委員、国鉄の経営委員、運輸審議会委員等、明確に国会がかかわりを持って任命を決めているわけでして、教育というふうなものは、NHK以上に、国鉄以上に、国家の命運を左右するくらいの大きな意味を持つものであるならば、明確にこれは改めた方がよろしいと思うのであります。少なくとも、これを改めるだけであっても、今後中国なり韓国への説明の過程において、文部省の方針がかなり変わってきたということになろうかと思います。  相手は説明してもだめだと言ってますますこぶしを高く振り上げておるわけであります。これで決着がつかないと、文部省なりに圧力をかけてきて、一挙に、しゃにむに、極端に言えば超法規的にでも改めようとする動きが出てきてしまいます。そこで、この問題を打開するために、いわゆる中国韓国の言っていることを前向きに検討いたしますと言うためにも、教科書検定の制度そのものを基本的に改めてそこでの再検討をするということをぜひともやっていただきたい。  そのことが文部大臣としてもきっと話し合いができやすい条件づくりになると思いますし、また文部省も、積極的に大臣を維持していくようなそうした前向きな検討をぜひともすることを心からお願い申し上げまして、時間が過ぎましたので、これで質問を終わらせていただきます。
  240. 青木正久

  241. 山原健二郎

    ○山原委員 警察庁おいでくださっていると思いますが、この教科書論議が始まりまして、右翼団体からの脅迫状が幾つか来ております。他の党の方にも来ておるかもしれません。これは恐らく星野亨斉という人物だろうと思いますが、現職の衆議院議員戸沢政方私設秘書あるいは横浜、森田弁護士事務所事務局長、元衆議院予算委員長尾崎末吉秘書というような名義でございまして、こういう中身なんです。  私の党の松本善明議員、さらに参議院の佐藤昭夫議員に対するものでありますが、「我が大日本帝国は、神代このかた一度たりと侵略戦争を起こした事はない。」という書き方で、「即刻、国会議員を辞職すべし」あるいは「過ちを天下に謝罪すべし」さらに「即刻、ソ連にでも移住すべし」というような幼稚な中身ではありますが、さらにこの中に宣誓書なるものがありまして、「私は過去の過ちをすべて反省し、今後一切の反日売国行為を中止し真の日本人に生れ変わる事を堅く誓います。」、住所、氏名を書いて、大日本殉皇会守備隊によこせ、そしてこの書いたものについては係員がとりにいくからそのときに渡せというようなものが来ているのです。  教科書問題は確かに非常に緊迫した情勢の中でお互いが話し合っているわけですが、こういう事態が続き、国会議員に対してこのような右翼によるところの脅迫が続くとすれば、これはきわめて重大な問題でありまして、昨日も本会議において右翼暴力取り締まりの緊急質疑が行われた状態でございますので、この点について警察庁としてはどういう態度をとられようとしておるか、最初に伺いたいと思います。
  242. 西村勝

    ○西村説明員 ただいま御指摘になりました文書につきましては、国会の事務当局筋から警視庁の方に連絡ございまして、警察といたしましてもその文書は了知しておるところでございます。  さて、この文書の文言、ただいまお読みいただきましたような内容の趣旨が盛り込まれておるわけでございますが、この文書自体が直ちに脅迫その他の犯罪構成要件に該当するとも限らぬような、きわめてそのあたりの法律解釈上困難な問題もあるような文書でございます。しかしながら、この文書を発出した団体等につきましては警察においても調べておるわけでございます。この調べによりますと、自分らの主義主張を訴える意味でこの文書も送ったものであり、決して危害を加えるような意思はないというようなことも申しておりますし、その際、警察の方からも厳重に、このような行為については、少なくとも議員に対しこのような文書を発することは違法になるおそれがあるのでということで、強い警告をいたしておるところであります。このような実情でございますので、それ自体犯罪行為に該当するというものではございませんけれども、警察庁といたしましては、現在教科書問題が非常に大きな論議を呼んでおる実情でもありますので、右翼団体においても最近街宣活動など次第に活発化しておるという実情なども見まして、これら団体の違法行為の未然防止を図るために警備、警戒を強化しておるという実情でございます。
  243. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題については時間がありませんからこれ以上お尋ねいたしませんが、今日の情勢の中でこういう動きがあることは事実でありますから、これについては十分な対策をとるように要請をいたしまして、警察庁はお帰りいただいて結構です。  さて文部大臣、まず今回の教科書検定に関する諸問題でございますが、これはどこから起こったかといいますと、まず最初に日本国民の間から起こっておるということです。文部省教科書検定についての批判は非常に強いものがあります。また、執筆者あるいは出版会社、この方たちによるところの抵抗もあったことは御承知のとおりであります。さらに、教科書裁判における杉本判決、畔上判決、高津判決にいたしましても、文部省の恣意的な教科書検定については違法性を明確にいたしております。ところが、こういう批判に対して文部省は、これを無視し、さらに左翼的学者のたわごとである、そういう考え方で、きわめて傲慢な態度をとってきた。全くこれに対して耳をかそうとしなかったことが第一点です。  第二点は、近隣諸国からの批判が起こってまいりました。この特徴は、たとえば中国韓国、台湾、香港、朝鮮民主主義人民共和国等において起こっているわけでございますが、社会体制の違う国々から起こっているということですね。しかもその焦点は同じものです。社会主義の国から批判が来ておるだけでなくて、韓国のような国からも来ている。しかもその批判の焦点が、日本侵略、そして長期にわたる植民地支配に対する批判として出てきているということですね。  もう一つは、これらの批判が日本の内政に干渉する批判ではないということです。日本の政府がとっている、たとえば原子力政策に対してこうこうせよという批判ではありません。長年にわたって被害を受けた人民を代表してのその怒りの声が今日出ておるということをはっきりと認識しなければなりません。この点を明らかにしておきたいと思います。  この点について文部大臣はどういうふうに受けとめておられるか、伺っておきたいのであります。
  244. 小川平二

    小川国務大臣 これはことごとくの教科書も記載いたしておりますように、日本が過去において行ったことに対するきわめて厳しい反省の上に立って世界の平和を築き世界の平和に貢献していかなければならない、これが基本的な国策である、こう信じておるわけでございます。
  245. 山原健二郎

    ○山原委員 きょう文部大臣は、いわゆる日中戦争を初めとして今回の戦争に対して侵略戦争であるという発言をされました。私は、閣僚の中でこういう明確な侵略戦争という規定を、発言をした大臣は恐らく小川文部大臣が初めてではなかろうかと思いまして、その点については評価したいと思います。  ところが、歴代の総理大臣に対して、わが党は、総理大臣が交代をするたびに日中戦争などについて、これは侵略戦争ではないかということを質問してまいりましたが、その点を率直に認めようとした総理大臣はいままでいないのであります。これはいわゆる戦争への無反省あるいはその反動的性格、姿勢を示したものであると思うのです。そのことがいま問われている。したがって、けさからも問題になっておりますように小手先で解決できる問題ではありません。もっと本質的なものが今回の近隣諸国からの批判として出ておるのでございまして、言うならば日本政治の根幹が問われている。  しかもそのことはわが国の今日の日本憲法と合致する批判でもあるというところに特徴があるわけでございまして、この批判に対して、これを訂正するということは、決して外国に屈服したとかあるいは恥辱であるとかいうようなものではなくて、むしろ雨降って地固まるの国際友好への基礎を再構築するものであるというふうに考えまして、この点について日本国政府は、いままではともかく、勇気ある戦争に対する反省の立場を貫くべきだと思いますが、文部大臣の所見を承りたいのであります。
  246. 小川平二

    小川国務大臣 戦争に対する反省の立場を貫くべきだという御意見には私も全く御同感でございます。
  247. 山原健二郎

    ○山原委員 文部大臣は満州七三一部隊のことを御承知でしょうか。
  248. 小川平二

    小川国務大臣 寡聞にして存じておりません。
  249. 山原健二郎

    ○山原委員 これはいわゆる人体実験を行ったところの細菌兵器部隊、石井部隊とも呼ばれておりまして、これは長く隠蔽をされておりましたが、最近、森村誠一氏等によりましてこれが発掘をされておるわけでございます。その中身は実に恐るべきものでございまして、各報道機関、新聞はもとよりテレビを通じなどいたしましてこの実態が次第に明らかになりつつあるわけでありますが、この七三一部隊に示されるところの戦慄すべき中身こそが侵略の具体的なあらわれであるということを私は考えておりますが、文部大臣はそのことを新聞やテレビで御承知ないのでございましょうか。
  250. 小川平二

    小川国務大臣 細菌戦術とかあるいは人体実験ということにつきまして断片的に記述されたものをかつて読んだ記憶がございますが、ただいま御指摘のことについて詳細のことは存じておりません。
  251. 山原健二郎

    ○山原委員 長期にわたり銃剣によって他国を支配する、これは侵略以外の何物でもありません。どんな弁解の余地もないわけです。だからこそ文部大臣は、先ほど木島議員の質問に対して侵略戦争であるということを言われたと思うのです。  宗教は神社を参拝せよ、さらには日本名に名前を変えろ、東方遥拝をせよ、天皇を崇拝せよ、天皇に対する忠誠を誓わす、「君が代」の斉唱、言語を日本語に変えていく、あるいは文字を変えていく、土地の取り上げ、食糧の調達、このために何万もの人が餓死しておる事実がアジア諸国にあの戦争中にあったわけでございます。そして、特に朝鮮に対するあの侵略、実に長い長い侵略、植民地支配の中で三・一事件が起こったのです。いわゆる万歳事件と呼ばれるものは、あの長期にわたる朝鮮に対する軍事支配の中で起こったところのまさに爆発的な民衆の独立を求める運動であったわけです。しかも、韓国その他の記事を見ますと、これは平和的な示威行為であったということに対する日本軍と憲兵の大弾圧であったことは紛れもない事実なんです。  そのことを隠蔽するこういう教科書記述。単に侵略の問題だけではありません。その流れる背景、これが今日まで文部省がとってきておる態度です。あなたは中国韓国に対して真意を伝えると言いますけれども真意は、そこまであばき出したならば決して相手の側を満足さすものではもちろんありませんし、一層事態は紛糾をすることは必至であります。この文部行政の今日までのあり方について、どういうふうな反省をしておられますか。
  252. 小川平二

    小川国務大臣 文部省は、検定に際しまして、過去の事実を隠蔽する、ただいまそういうお言葉でございましたが、あるいは歪曲する、このような意図を持って検定を行った事実はない、こう承知しております。
  253. 山原健二郎

    ○山原委員 私は具体的に申し上げたいと思いますが、委員長の許可をいただきまして四枚の教科書のこれを見ていただきますと、これは実教出版の例でございますけれども、「日本中国侵略」、これがいわゆるB意見ですね、改善意見を付されまして第一枚にありますように地図の方でもそして見出しも右側のように変わってしまいます。二枚目の紙を見ていただきますと、ここでは「ドイツ・イタリアの対外侵略」ということが出ておるのでございまして、そしてこれについては意見がついておりません。したがって、それはそのまま右側に移行するわけですね。三枚目の紙を見ていただきますと、今度は単に最近の日中戦争あるいは太平洋戦争だけでなくて、「豊臣秀吉の朝鮮侵略がはじまった。」という一番上のものがこれについてもB条項の条件が付されまして、これが右側のように「豊臣秀吉の朝鮮侵入がはじまった。」、こういうふうに変わるわけです。これは私は一例として出しましたけれども日本の行った行為についてはすべて侵略という言葉が消えています。倭寇の侵略侵入になっています。だから、こういうものをつけるものですから、いまの三枚目の紙でございますが、下の脚注のところにおきましてもここは「日本侵略」という言葉が、豊臣秀吉の時代ですが、これは「侵攻」となります。したがって、こういうことをやるものですから、用語統一どころじゃありません。いまのページですね、三つの言葉が出てくるのです。「侵入」と「侵略」と「侵攻」という言葉が出てくるのです。これは教育上重大な問題なんです。豊臣秀吉の侵入、そしてその後に出てまいりますところのいわゆる満州族の朝鮮への侵略ですね。それから最後の脚注にありますところの日本の侵攻、用語統一のために侵略という言葉侵入に変えたなどということは、これは今回の問題が起こりましてからまさにつくり上げたところの言いわけにすぎないということだと思いますが、文部大臣はこの点について矛盾をお感じにならないのでしょうか。
  254. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 ただいまお尋ねになりました件につきましては、侵略という具体的な用語について、この記述の流れの中でどういうふうに表記についての検討をするかということでございまして、先生がお挙げになりましたような件につきましては、この図表とともにアジア諸国に対する列強の進出という表現とあわせまして用語統一を図ったらどうかという観点から修正意見を出しまして、より客観的な「満州事変・上海事変」という用語が使われ、さらに「侵入」という用語が使われているわけでございます。  なお、このドイツ、イタリアにつきましては、ただいま申し上げましたような列強の中国進出と日中戦争というようなごく近接した地域におきます時代における記述の一貫性という観点とは異なりますので、このような事情がないためにつけていないということでございます。  また、「秀吉の朝鮮侵略」につきましては、当時の歴史的な事実を踏まえて客観的に記述する観点からこのような意見を付したものと思われます。
  255. 山原健二郎

    ○山原委員 文部大臣、よく初中局長答弁を聞いておっていただきたいと思いますが、余り矛盾に満ちたことを理屈をつけておるのじゃ問題の解決になりませんから、そういう意味で私言っているわけですが、それならアヘン戦争について、これを侵略と書いてある本があるのですよ、世界史の中に。そして日本侵略侵入と書いている。一冊の本の中に用語統一がないのです。ちょうどいま持ち合わせありませんけれども世界史の中にあるのですね。  それから、こういう事態が起こることを考えてみますと、実に古代、中世、近代にかけまして日本行為についてはすべて侵略ではないと、記述の変更を求めていることです。非常に大きな問題を持っていますね。だから、単なる言いわけじゃなくて、この背景に流れる侵略を何とかして消そう、特に最近の日中戦争あるいは太平洋戦争については日本軍の、日本帝国主義の軍隊の犯罪的な行為を何とか薄めていこうという気持ちがあらわれているから問題になるのでしょう。ここのところに対してどう対処するかということがなければ、その処方せんがなければ問題の解決にはならぬわけです。  それで、これは三省堂の場合ですけれども、時間がありませんけれどもこの例を少し申し上げてみたいと私は思うのです。  これは沖繩県の問題ですが、沖繩が一九一二年、明治四十五年まで衆議院選挙が行われなかったという差別の問題を書いてありますが、これは改善意見がついてこれが修正をされるという事態が起こっております。これは一度修正意見に対して修正拒否の理由を出します。また再修正の意見が出てまいります。またそれに対して再度修正拒否の意見を出しているわけですね。つまり書きかえが行われる。すなわち、明治政府が行ったところの沖繩政策について、その瑕疵を何とか擁護しようという立場で修正が行われるわけでございます。  それからもう一つの問題は侵略の問題ですが、これは、「中国では、西安事件をきっかけとして、国民政府と共産党の抗日統一戦線が成立し、日本侵略に対抗して中国の主権を回復しようとする態度が強硬にあらわれてきた。」という記述に対して改善意見が出されまして、これは何遍も何遍もやりとりが行われているわけですね。これは大変なことだと思うのです。こうして修正拒否の理由書が出ておりますが、「中国侵略は客観的事実であり、単なる評価ではないから、修正しない。「武力進出」などというのは、「退却」を「転進」、「敗戦」を「終戦」というのと同じごまかしであって、神聖な教育の場でそのようなごまかしをすべきではない。自国の過誤は率直にこれを認め、ふたたび過誤をくり返さないように努力することこそ真の愛国心の発露である。」、こういう形でこの修正を拒否しますと、今度はまた修正要求が出てまいりまして、「「日本侵略」とあるが、「侵略」は評価のある語なので、外国が日本侵略をいっているようにすればよいが、日本が主語で侵略をいうのはどうか。中国が「侵略」とみるのはかまわない。全体を通して侵略統一されているならともかく、欧米諸国進出といった使い方をしているので、日本だけ侵略とするのはこまる。」というふうに、こう出てくるわけですね。そしてさらに、これに対して執筆者と会社側は法理論、学問的基準に基づいて反論をしています。その中には、国際法の横田喜三郎氏の論文あるいは田畑茂二郎氏の国際法の論文などを綿密に出しまして、明らかに侵略ではないかということを、それをごまかすことは教育上正しくないのだということを言っているわけでありますが、ついにこの侵略の文言が消されるわけです。  それから、南京大虐殺につきましても、「南京占領直後、日本軍は多数の中国軍民を殺害した。南京大虐殺とよばれる。」というところが、これはもう申し上げるまでもなくいま問題になっておるところでありますが、これが消される場合に使われているのが、調査官の方ではいろいろ言っておりますけれども、このときに鈴木明氏の「南京大虐殺のまぼろし」という本を使って、こういうものもあるのだ。あるいは松本重治氏の著書ですね、これを使って、こういうものもあるのだという反論をいたしておりまして、この大虐殺の項の記述の変更を求めるわけです。これに対して執筆者は、これまた非常な事実の例を挙げております。時間がありませんから申し上げませんが、鈴木明氏の「南京大虐殺のまぼろし」などという本は完膚なきまでに反論を受けているのです。その著者の中には、これは小川文部大臣の御尊父の関係文書まで出てくるのです。「小川平吉関係文書」所収昭和十三年四月十八日日記、こういう御尊父の日記まできちんと使って、そのほかに文献たくさん出ておるのですが、その中で南京大虐殺の事実を執筆者は明らかにしています。それが変えられるのですね。  小川さんも中国のことをよく御承知でしょうけれども、私もかつて中国へ参りましたときに、北京の軍事博物館は日本人になるべく見せないようにしているのですね。なぜなら、あそこには日本軍隊の行った残虐行為が写真で出ているからなのです。それを見せることによって昔を思い出して日中友好の気持ちを阻害するようなことをしたくないと遠慮しているのです。南京へ行きましたら、歴然と南京虐殺の跡が残っておりますけれども、なるべくそれに触れない。それだけ遠慮しているのですよ。それを、この虐殺行為に対してある調査官は、日本軍に対する誹謗だ、そういうことを言っているのです。この事実がわかったら大変ですよ。しかも、これはもうすでに週刊朝日、毎日新聞その他の新聞にも出ておるわけですから。これだけ向こうは、戦前にやったことを何とか隠して戦後の平和友好を構築しようとしておるときに、今度の事件はとうとうあの写真が出てきたじゃないですか。南京における虐殺の写真が新聞に出てくる、そういうものを引き出す、これは重大な日本側の責任問題です。私は、本当にこれは許しがたいことだと思っています。  もちろん、日本軍隊といえども中には美談もあります。私の知り合いの人物は、陸軍士官学校に進みまして優秀な陸軍中尉、中隊長をしておったわけですが、それがあるとき、道を教えてくれた老人が殺されておった、それを見て彼は、これは戦争してはだめだということで、上官に対して戦争をすることはやめろということを言いましたために、彼は幽閉をされまして、陸軍の歴史では変死ということになっておるわけでありますが、ついに彼は自刃をしたわけです。最近に至りましてこの同期の人たちが集まりまして、この西山中尉の死をむだにしてはならぬ、彼は平和のために戦って死んだのだということで、この顕彰の文集ができたことが読売新聞にも出ておったのでございますけれども、そういうことはたくさんあるのです。西山君はクリスチャンでありましたけれども、そういうことはたくさんある。あるけれども、総じて日本軍隊は銃剣をもって長期にわたって外国を侵略した事実は隠すことはできない。このことを日本政府が認めるかどうかが、いま問われているのです。  私はその点について、閣僚の一員としまして小川文部大臣侵略戦争であると言われましたから、これは当然閣議において発言をされまして、日本鈴木内閣の見解として表明される必要があると思うのでありますが、その点についての文部大臣の御決意を伺っておきたいのであります。
  256. 小川平二

    小川国務大臣 日本中国との間に起こしました戦争の性格につきましては、人それぞれ評価、判断を異にしておると思います。私自身は、自分の考えておりますこと、先ほど率直にこの場で申し述べたわけでございますが、まあ当面、閣議においてこれが侵略戦争であったという政府の統一見解を求めようというような気持ちまでは持っておりません。
  257. 山原健二郎

    ○山原委員 それは後でまた伺います。  ところで、侵略ということについて、たとえば極東裁判におけるキーナン検察官の論告があるわけでございますが、これは明らかに侵略戦争というふうに書きまして、かなり綿密に書かれているわけですね。特に「南京占領は俘虜、一般人、婦女子数万に対する組織的かつ残忍なる虐殺、暴行並びに拷問及びおおよそ軍事的必要を超えたる家屋、財産の放らつ無差別なる大量破壊を特徴としております。この行為は、普通南京略奪暴行事件と呼ばれているが、近代戦争においては、これに匹敵する例はないのであります。」と述べておりまして、「南京は日本人が、彼らの侵略計画の一部として、その性質と規模においてほとんど信じがたいほどの過酷な残虐行為を遂行することにより、人民の戦意を破砕しようとした幾多の中華民国都市中の一つにすぎないのであります。」、南京事件というのは、一つの都市の事件にすぎないのであって、これは幾つもあるということを言っております。  もちろん戦勝者による裁判だからそんなことは当てにならぬと言われますから、その次に私はサンフランシスコ講和会議におきまして、これは全部名前を挙げれば時間がありませんが、たとえばアメリカは、「中国日本侵略のため最も手痛い打撃を受けました。」と、この講和会議において発言をいたしております。イギリスは、「英連邦のわれわれは、日本侵略に付随した残虐行為及び暴行を忘れたと申しているのではありません。」、あるいはラオスその他、ずっとセイロン、ベルギー、パキスタン、ニュージーランド、全部侵略という言葉が出ているのです。そして、その上に立って講和条約に対する調印がなされたわけですね。  これも戦後間もないときのことですからそれは了承できないと言うならば、今度は国連憲章、これでは、外務省も先日認めましたように、わが国は、イタリアファシズムとナチスドイツと日本軍国主義は敵国条項の中に入っておるということが明確になっております。そしてさらに、一九七四年十二月十四日でございますが、これはわずか八年前ですが、もうすでに平和が回復された後におきますところの第二十九回国連総会が採択をいたしました侵略定義侵略とは何か、「侵略とは、国家による他の国家の主権、領土保全もしくは政治的独立に対するまたは国際連合の目的と両立しないその他の方法による武力の行使であって、この定義に述べられているものをいう。」ということで、第一条にずっと侵略とは何かと書いてある。これは全部日本行為に適用されるわけでございまして、この国連総会におけるところの侵略定義について、日本政府は満足すべきコンセンサスを得ているということが出ているわけでございますが、この点について、外務省お見えになっておると思いますが、どういう態度をおとりになりましたか。
  258. 河村武和

    ○河村説明員 お答えいたします。  侵略定義を含む決議は昭和四十九年、一九七四年十二月十四日に決議三三一四号として、国連総会において投票に付されることなく、加盟国のコンセンサスにより採択されましたところ、わが国もこのコンセンサスによる採択に参加しております。
  259. 山原健二郎

    ○山原委員 わが国が国際的に表明した侵略に対する定義に賛成しているのです。そしていま幾つかの国際条約の問題を挙げましたが、その意味におきましてわが国は中国に対する侵略を行ったということは政府は国際的には認めているのです。ところが国内的にはどうしても侵略という言葉をお使いにならない、そういうところに問題があるということを指摘をしておきたいと思います。  そこで、こういう侵略という言葉侵入と変えるなどというかっての軍国主義の行いました犯罪的な行為に対する隠蔽、それが子供たちにどういう影響を与えているか。私は一つの高校生の文章を持ってきましたから読み上げてみたいと思うのです。この高校生は、「東京大空襲や原爆についての話だったのだ。だから私は、まるで日本人はおとなしい幼児のように罪もないのに理不尽にも殺されたのだと思ってしまっていた。しかし日本人は猫や羊のように突然おそいかかったバクダンでわけもなく殺されたのではなかったのである。日本人は侵略をしていたのである。戦争をしかけていたのである。これはショックなことであった。殺す側に立っていたという事実を知ったこともひどくショックであったが、それ以上に、一度戦争がおわると殺す側にたったという事実の方は語りつごうとしない、その態度がおそろしかったのである。」というふうに書いてあります。これはまだずっと長い文章になっておるわけでございますけれども子供たち、高校生に過去の日本の真実を教えることは恥でも何でもありません。そして、その真実を教えることによってさらに国際友好の立場が生まれてくるでしょう。  そういう点で、戦争に対する反省というものが非常に希薄である。これが歴代の自民党政府の一貫した態度ではないかと思いますと大変情けなくなるわけでございますが、あえてこの点について重ねて小川文部大臣に伺っておきたいのであります。
  260. 小川平二

    小川国務大臣 かつての戦争が、それについてわれわれが重大な責任を感じなければならない行為であったと同時に、厳しく反省しなければならない行為であるということにつきましては、ことごとくの教科書が書いているところでございます。そのような認識の裏づけとして南京事件を含めて歴史教科書は客観的な記載をしておる、このように私は考えておるわけであります。
  261. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つの問題は、これは教科用図書検定調査審議会委員あるいは調査官、これはやはり考えてもらわなければなりません。これは別のところに私も書いたことがありますが、今度週刊朝日その他にも出ておりますけれども、名前を申してもこれは雑誌、新聞に出ておりますから、たとえば渡辺茂さん、この方は審議会の中の有力なメンバーでありますが、「「侵略」を「進出」に変えたのですか。」と聞くのに対して渡辺さんは「審議会でそのことを話し合った記憶はない。暗黙の了解ですかな。」と言っておるわけであります。それから「南京大虐殺については?」「書く必要がない。」ということをはっきりこの方はおっしゃっております。「米ソについては一、二行なのに、南京大虐殺は三行も五行も書く。これでは、日本人がいかに残酷かをいうためだと受けとれる。日本軍への誹謗だよ。」ということを言っておるのでございまして、引き続いて、「ボクは記述の正誤より著者の態度を問題に」せよと言っておる。これは時間がありませんからあれしますが、「憲法も改正ですか?、もちろん。」、憲法教育基本法も指導要領も変える必要がある、こういう考え方です。  さらに調査官の中には、これは朱光会のメンバーが系統的に入っておるということが幾つかの新聞に出ておるわけでございますが、朱光会の綱領「一、吾人は天皇中心主義を信奉す 一、吾人は皇道に基づき人格の完成を期す 一、吾人は建国の精神に則り日本の建設を期す 一、吾人は大日本精神を宇内に宣布せんことを誓う」ということが出ているわけですね。これは村尾次郎さん、あるいは山口康助さん、現中教審委員でありますが、それから現在主任教科書調査官の時野谷滋さんがこの朱光会のメンバーの一員であるということも書かれておるわけであります。皇国史観の問題が先ほど出ておりましたけれども、そこまでは言わないとしても、こういう感覚で教科書検定がしかも密室の中で行われるということはきわめて重大な問題であります。  私は検定そのものが違憲だということを主張してまいりましたが、こういう密室検定はやめるべきであって、少なくとも公開をし、国民の目の前で公然と行ってもらいたいということです。  そこで、時間が参りましたので最後に申し上げますが、文部大臣侵略ということをお認めになりました。これは先ほど評価したわけでありますが、それならばその文部大臣のお考えに基づく具体化が必要だと思うのです。それは今日求められておる問題は、いろいろ言いましても侵略という文言を進出というふうに変えたこと自体をどうするかという問題がいま問われておると思うわけであります。検定最高責任者文部大臣であります。私はその点で、いま文部省の行ってきた検定が、文部大臣の認識と違いのある検定を行ってきたというふうに思わざるを得ません。そうして、この問題は文部大臣の決意で解決をしていただきたい。これは総理の問題も出ておりますけれども、総理の決断よりも、文部大臣がこの問題についてはきちんと解決をするという相当の解決への決意を示す必要があると思うのであります。  まさに朝鮮解放の八月十五日が目の前に迫っておるわけでございます。特使の派遣などの問題がありますけれども、単なる事態の説明ではこれは解決できないことはもはや明らかです。ここに幻想を持つことはできません。したがって、いま問われておりますのは、いま焦点となっておる侵略という言葉進出侵入などと変えたことを反省して、これを直すことだと思います。そういう決意を文部大臣が持つかどうかが、いまの問題解決の大きなモメントになっておるのではないかと思いますが、この点について文部大臣の決意をはっきりと伺いたいと思います。
  262. 小川平二

    小川国務大臣 かつての戦争が弁護することのできない戦争である、正当化することのできない戦争であるということについては、ことごとくの教科書が書いておるのでございます。繰り返しになりますが、そのような認識の裏づけとして歴史教科書は客観的な事実を記載いたしておるわけでございまして、たとえばある教科書において「日本侵略」という見出しが「日支事変・上海事変」と改めましても、この見出しのもとになされておる記述そのものには全く改変が加えられていないわけでございますから、これは十分説明することによって先方の理解を求めることができるに違いない、こう私は信じておるわけでございます。したがいまして、これも繰り返しになりまするが、ただいま教科書記述原稿本のとおりに改めるということは考えておらないのでございます。
  263. 山原健二郎

    ○山原委員 改訂をする方法はあるわけです。いままでも問題に出ました十六条の正誤訂正の問題にしましても、その四で「その他学習を進める上に支障となる記載で緊急に訂正を要するものがあることを発見したとき。」という問題ですね。私はこれはどう考えても、たとえばあのチッソの名前を修正意見で消しまして、Tという名前に変えた、そして見本本をさらに変えたという事実があるわけですね。あのときそれほど緊急なものであったか、あるいは学習指導に支障があったかという問題は別にいたしまして、今度の問題はまさに「学習を進める上に支障となる」問題であります。さらに「緊急に訂正を要する」問題としての条件を踏まえておると思います。その点からするならば、正誤訂正の形ででも問題の処理は絶対できないはずはない。これは文部大臣の決意にかかっておると思うわけです。また、そこからこの問題の解決の方法が生まれてくると思うわけでございますが、そういう点についての踏み込んだ御討議あるいは御自分のお考えがありましたら述べていただきたいのであります。
  264. 小川平二

    小川国務大臣 たとえば「進出」という言葉原稿本のとおり「侵略」と改めることが現に行われております正誤訂正のルールに乗るか乗らないかということについては、先ほど来いろいろこの場で御論議のあったところでございます。私はさようなことを問題にいたしておるわけではないのでございます。現行の制度に乗せることができないから、したがって中国側の要求に応じられないというようなことを申すつもりはないのでございまして、るる申し上げておりますように、当方立場当方真意を誠意を持って説明することによって問題が解決できる、こう考えておりますので、ただいま改訂については考えておらない、かような次第でございます。
  265. 山原健二郎

    ○山原委員 一言。いまおっしゃることは予想としてはあれですけれども、実際それでは私は解決できないと思います。だからいつかは決断をしなければならないときがあると思うのですね。しかもそれは、よその国に言われて決断をするというよりも、むしろ私が最初からるる述べましたように、内からあるものとして修正をする、これがやはり日本憲法を守る道だと私は思っておりますから、その点で文部大臣の一層の解決への決意、これだけの国際問題になった場合に、恐らく相当の決意が必要だと思うのですが、それはよろしいですね。
  266. 小川平二

    小川国務大臣 御意見趣旨も念頭に置きまして、円満な解決のために全力を傾注してまいりたいと思っております。
  267. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  268. 青木正久

    青木委員長 河野洋平君。
  269. 河野洋平

    河野委員 今回の教科書の問題で閣議でいろいろな御議論があったということを新聞で拝見をいたしました。一部の閣僚から、これは内政干渉ではないかという意見があったと新聞が伝えておりますが、大臣中国側のこうした意見を内政干渉だとお考えになりますか。いかがですか。
  270. 小川平二

    小川国務大臣 内政干渉だと思うかどうかという御質問でございますが、それに先立ちまして、私は問題を望ましい姿で解決する上において、先方の申し入れに対してこれを内政干渉という言葉で批判することはきわめて好ましくないことだと考えております。
  271. 河野洋平

    河野委員 外務省お見えでしょうか。——外務大臣は外務委員会で、これは内政干渉ではないと答弁しておられるというふうにこれも新聞に出ておりますが、確認できますか。
  272. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 お答えします。  中国側の申し入れというのは、先方から口頭をもってわが方に北京において申し入れがあったことでございまして、これはいわゆる国際法上に言う、武力をもって行う、こういった外国による内政干渉、これに当たらないものと思います。
  273. 河野洋平

    河野委員 八月四日の新聞を読みますと、宮澤外務大臣時代理は衆議院の外務委員会で、中国申し入れば内政干渉には当たらない、こう述べておられる旨新聞が報道しております。  今度の問題が、もちろん本質では非常な問題があるわけでございますけれども、その本質の問題にプラス感情的な部分が相当あったのじゃないか、その感情問題は、閣議における閣僚のきわめて不用意な発言が中国側の感情を逆なでした。繰り返し申し上げますが、本質の問題は問題として、その本質の問題にプラスこうした不用意な発言というものが閣議で行われたというところに非常に問題があると私は思うのですが、大臣、他の閣僚の発言について御所見を伺うのはどうかと思いますけれども、そうお思いになりませんか。
  274. 小川平二

    小川国務大臣 こういう問題を解決いたしますためには、互いに思いやりを持ち合わなければいけないと考えておるわけでございます。そういう意味で私は、中国なり韓国の要求を謙虚に受けとめておるわけでございます。私自身はそのような気持ちでございますということをただいま申し上げるのでございまして、同僚の発言を真正面から批判をするということはひとつ御容赦いただきたいと思います。
  275. 河野洋平

    河野委員 いま私は、八月四日付の新聞から私が見た一部を申し上げたわけですが、八月五日の新聞にもまた、これは政務次官会議でいろいろ議論がある、この政務次官会議の議論の中には「「侵略」も「侵入」も「侵」の字が入っており、外国がいうほどの大問題ではないのではないか。」というような発言がある。こういう発言は問題を解決することに全くプラスにならないのじゃないか。いずれにせよ、問題を解決することに全くプラスにならないのじゃないかというふうに思うのです。  この政務次官会議には文部省の政務次官も出席をしておられたはずでございまして、もちろん文部省の政務次官はそんな発言に同調なさったとは思いませんけれども、政務次官会議のやりとりも新聞に出れば、これは政務次官会議のやりとりとして海外にも伝えられるわけでございまして、こうした政務次官会議のやりとりは、文部省、どなたか把握していますか。
  276. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 この件に関する新聞報道はすべて収集しておりますけれども、いまの件はちょっと寡聞にして承知しておりませんでした。
  277. 河野洋平

    河野委員 やはりこういう政務次官会議のやりとりなどは相当慎重に把握する必要があるのじゃないでしょうか。これはもう本来から言えば、中で完全に把握され、外に出るときには非常に注意深く出すということでなければならないのに、きわめて不注意に外に出て、中では全く把握されていないというのでは、これは話にも何もならぬと私は思うのですね。こうした点で政務次官会議での発言については、各省の政務次官が集まってフリートーキングをされるわけですから、ただ何にも意味もなしに政務次官会議があるのだというのではなくて、やはりこうした問題は外務省の政務次官はこう言った、何省の政務次官はこういう意見を持っておったということは把握する必要があると私は思うのです。  さてそこで、外務省においでいただいているので外務省に伺います。  現在非常に厳しい状況になっている日本中国日本韓国の問題でございますが、日中、日韓以外の分野でこの教科書にかかわるいろいろな問題が出ておりましょうか、おわかりでしたら御答弁いただきたいと思います。
  278. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 日中、日韓以外でこういった問題が出ておりますのは、たとえば東南アジアではインドネシアそれからビルマ、タイ、シンガポール、スリランカ、またフィリピン、こういったところで日本教科書問題に関するあるいは批判あるいは外電の転載というかっこうで事実問題の報道を行っております。また、香港あるいは台湾等においてもこの問題に関する報道ないしは評論等が出ております。
  279. 河野洋平

    河野委員 いまの外務省の御説明はそれは報道機関が報道をしているということであって、いまお話しのような国の政府とか公の立場の人が何をしたということではないと受けとめていいですか。(発言する者あり)
  280. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 そのとおりでございます。
  281. 河野洋平

    河野委員 しかしこれは非常に大事なことですから正確に言ってもらわないと困るのですね。こういうASEAN諸国でのいろいろな不協和音あるいは不安、心配、そういったものを余り隠していると問題が起こったときにまた解決をむずかしくするわけですから、できるだけ未然に防ぐ意味でも外務省はこの際はネットワークをできるだけ敏感に張りめぐらして、さまざまな情報については把握をする必要があると私は思うのです。  それで、いま東南アジアのほとんどの国の報道機関が報道をしているということですが、どうでしょう、外務省、その報道の中で、国によって非常に政府に近い報道機関もあればそうでない報道機関もあると思うのですね。そうした分析は外務省できますか。
  282. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 特にその国によって政府に近い報道であるとかあるいはかけ離れた報道であるとかそういうことはなくて、ただ一般的に報道をしているということでございます。
  283. 河野洋平

    河野委員 まあ社会主義国の報道機関ならば政府とほとんど表裏一体をなすと考えていいでしょうし、その報道機関の種類、従来の論調を見れば、これがどの程度公的な機関の考えに近いものかということは、外務省は恐らく実際は把握しておられるのだと思うのです。ここで言いにくければおっしゃらなくて結構ですけれども、公の機関かち文句がついてからあわてて説明に行くとかということではなくて、誤解があるとすれば、それを事前にできるだけ早くキャッチして誤解を解くような努力というものが必要だと思うのです。  いま外務省からお話しになったような国々の報道について、文部省は何か把握していますか。
  284. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 報道等によりまして把握はいたしております。また、ケースによりましては検定の実情について照会をいたしてくるケースもございます。
  285. 河野洋平

    河野委員 できるだけ早手回しに誤解を解く努力をすると同時に、もう一つは、やはり誤解を受けないやり方を考えるということがどうしても必要だろうと思います。  そこで大臣、先ほど来検定問題にかかる議論の中で検定官の人たちの話がいろいろ話題に出ている。いまさらここで検定官についていろいろ言うこともどうかと私は思いますけれども、これも新聞で読んで実は私もちょっとショックを受けたものですから、大臣には知っておいていただかなければなりませんので少し申し上げるのですが、これは写真入りの記事で、名前も写真も出ているのです。村尾次郎さんという元調査官がおりまして、この村尾さんは八月四日の新聞のインタビューのやりとりの記事の中でこう言っているのですね。  「私は現憲法を認めない立場です。」と非常にはっきり言っている。そして「調査官に就任が決まり、人事課長日本憲法に忠実に従うという誓約書にサインしろと言われたときはまいった。」というのですね、私は現憲法を認めない立場だから。そこで「私は憲法を単なる行政実務上の物差しとしてのみ忠実に使用することにし、署名したんだ。音読しろというので、これ以上は低く出せないというほどの細い声で読んだよ。ハッハッハ」という記事なのです。これはもうやめた人ですからいまさら言ってみてもしようがない。しかし現実にこういう人がいたのですね。この事実はやはり大臣には知っておいていただかないといかぬ。  そこで、何といってもわれわれは信用したいという気持ちがありますから、いろいろの意見はあっても、いや、やはりそれらの人々は誠実にやってくれるはずだと信頼をしつつ私は見ていました。しかしこういうふうに新聞に出て、ここまではっきり言われると、これは少し残念な気がします。残念な気がするというと非常に弱い言い方ですけれども、私は正直、相当ショックを受けました。そして、この人はやめた人だけれども、いまお話があるように、これに近い人はいま現役にいるというのですね。これは大臣、ちょっと考えていただかなければいかぬ。先ほどもそういう人がいたらどうするかという質問に対して、そういう人はいませんというお答えを初中局長はなさった。しかし、いないことを望みますけれども、やはりこういう人は検定官、調査官にはふさわしくないのではないでしょうか。いかがでしょうか。
  286. 小川平二

    小川国務大臣 教科書検定は中正な、偏らない態度で行わなければならないことは当然でございますから、調査官の選任につきましては従来とも十分意を用いておると考えております。ただいま仰せのことはこの場で初めて承ることでございます。引用なさった印刷物が信憑すべきものであるかどうか存じませんが、これが事実だといたしますればまことに驚くべきことと申さなければならないと思います。これから先も調査官の任用につきましては十分留意をしてまいるつもりでございます。
  287. 河野洋平

    河野委員 知らされると驚くことがたくさんあるのです。最近この検定問題がこれだけやかましくなりますと、新聞各社は盛んにその問題に触れて記事を書きますからいろいろなことが目につきます。私の目につくということは日本全国それに関心のある人はみんな目につくはずでございまして、しかもこれ一つだけじゃない、まだたくさんありますから、幾つか御紹介いたします。  これも八月四日の記事ですけれども、現役の教科書検定審議会委員です。この方はいろいろおっしゃった後で、最後に「そのためには憲法の改正を行うべきだ」ということを断定しておっしゃっている。名前こそ書いてありませんが、「七十二歳になるというこの委員歴史学者(私立大学名誉教授)である。」、そこまで書けばだれだかすぐわかってしまう。まあ、いろいろ書いてありますから最後のそこだけ読むのは多少問題があるかもしれませんが、しかしこの方は、とにかく憲法の改正を行うべきだということを書いているということを新聞は報道して、これでいいのだろうかという疑問を投げかけているのです。  あるいはまた、その前日の八月三日にもこういうことがあるのです。八月三日の記事は、教科書の編集担当者にある人がインタビューした。「教科書の編集担当者は「朝鮮語が禁止され、神社参拝強制されたと書いたが、文部省に書き換えを要求された」と話してくれた。文部省教科書検定課長に会うと、「朝鮮語の使用禁止は一時期だけ」「神社参拝を拒否して多数の朝鮮人が投獄された事実は知らなかった」と弁解した。「訂正はできない」といい、「生徒にウソを教えるのか」と突っ込むと、「仕方がない」と答えた」、これはどう解釈していいか私にはよくわかりません。この記事の信憑性をどの程度考えるのかということについて私はわかりません。わかりませんけれども、言ってみれば、少なくとも日本で権威のある新聞がこういう記事を書いているのです。ここまで書かれ、ここまでおっしゃると、やはり調査官に対する不信感が生まれる、検定制度に対する不信感が生まれるのではないでしょうか。  私はもう明らかに、日中関係をこれ以上悪くしないために今度のこの問題は早く処理をしなければいけない、処理をするために、大臣は誠心誠意当たられると私は思います。大臣を信頼します。しかし、その解決を間違えるといろいろな意味でマイナスの大きなショックが出てくる可能性があるのじゃないでしょうか。私は、先ほどからやりとりを伺っていて多少ニュアンスに違いがあると思うのは、外務省文部省とで、外務省は早期決着ということに非常にウエートを置いて考えておられるように思うのですが、一方文部省はどちらかというとじっくり、何も長くなっていいという意味ではありませんけれども、じっくり行こう、じっくり説明をして理解を求めてじっくり行こうというニュアンスの方が、ちょっとそこが外務省文部省と違うように思うのです。もちろんだれだって、こんな不愉快なよくない関係がいつまでも続いていいと思っている人はだれもいないわけですから、早いにこしたことはないのだけれども、その解決への心構えは、外務省の方が早期解決が国益上得策と考えているのに対して、文部省はただ早ければいいというものじゃないというふうに考える、私はそれはそれなりに文部省立場としてわかるのですよ、わかるのですけれども、どうもそこは文部省外務省と少し違うなと思うのですが、これは文部、外務両省の打ち合わせその他で多少歩み寄りができるのでしょうか。
  288. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 この問題が発生いたしましてから、外務省とは緊密な連絡をとりまして、たとえば在日大使館の公使に私ども説明をするタイミングとかいろいろな場面で外務省と十分な連絡をとりまして、連携をとりながらやっております。私ども、もともと教科書検定の問題について、この問題を重要と考えて、誤解を招かないように慎重に対応するということではございますけれども、しかし、このことによって日中友好の精神が損なわれるというようなことがあってはならないということから、外務省の外交的な立場からの御意見も十分拝聴しながら、協力してやっているということでございまして、今後とも基本的にはそういう立場は変わらないというふうに考えております。
  289. 河野洋平

    河野委員 これは外務省に伺うのがいいのか文部省に伺うのがいいのかわかりませんが、今度の中国側からの意見は、教科書検定制度について中国側が異議を言っているのではなくて、教科書記述の問題について異議を言っているのでしょうか。それとも、ああいうふうに記述を変えてしまうような検定のあり方に異議を言っているのでしょうか。どれでしょうか。
  290. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 発表されました中国外交部の肖向前局長の内容を承りますと、日本の新聞の報道によればということが前提についておりまして、お挙げになりました例として、たとえば華北侵略が華北進出と書き改められるというふうになっておりまして、そのことが直接検定教科書記述が改められたということを指しているのか、あるいは検定の仕組みによりまして国家が関与をしでそういうふうに書き直させたというふうに理解しているのか、そこのところは十分にその文面からだけではわからないわけでございまして、そういう点で私ども検定の仕組みを含めてわが国の教科書の制度の問題を御説明をすることに重点を置いたわけでございます。
  291. 河野洋平

    河野委員 外務省に伺います。  どうなんでしょうか外務省、いま文部省答弁はああいう答弁ですけれども教科書検定制度というものが正確に中国側に理解されれば、この記述がこのままでも、中国側はなるほどそうだったのかということでオーケーになると思いますか。
  292. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 ただいま鈴木局長が御答弁なさったことと同感でございます。
  293. 河野洋平

    河野委員 もう一回事実関係だけ伺いましょう。  中国側からの申し入れ記述についてでしょうか、検定制度あるいは検定制度によって改められたという行為、どれでしょうか。
  294. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 事実についてお答えいたします。  中国側の申し入れの内容というのは、幾つか例を挙げまして、たとえば九二八事件とか、あるいはその侵略言葉の使い方とか、こういう問題を挙げまして、こういったことは日中共同声明あるいは平和友好条約の精神にもとる、そうしておりまして、それで検定教科書の誤りを正すよう要望する、そういう申し入れでございました。
  295. 河野洋平

    河野委員 何を申し入れられているのかが正確にわからないのじゃ解決策が出ないのじゃないですか。何について申し入れを受けているのでしょうか。いま私が少なくとも外務省の御答弁を承ったのでは、やはり記述のようにも聞こえましたね。記述がおかしい、こういうおかしいことを記載している検定教科書は直せ、こういうふうに聞こえましたが、これは違いますか。
  296. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 書かれているところから解釈いたしますと、これは検定された教科書記述そのものではなくて、検定の過程を経てそれがそうなった、原稿本におきましては、検定前には侵略となっていたものが進出となったというふうな、そういうことでございますから、記述そのものというよりも、むしろ検定によってそうなったということを問題にしているようにも解されるわけでございますし、また、記述を直せと言っているところから見ますと、記述そのものを問題にしているというふうに解される点もあるわけでございます。
  297. 河野洋平

    河野委員 これは、ここで議論していてもなかなかわからないのかもしれませんが、外務省、お気の毒ですけれどももう一度答えてほしいのです。たとえばいまの日本中国とのやりとりから言えば、中国指摘している記述だけ直すと問題は全部解決するでしょうか。どうですか。
  298. 長谷川和年

    ○長谷川説明員 御指摘の点でございますけれども、先方は検定教科書の誤りを正すよう切望するということを言っております。もちろんその裏には認識の問題もあると思いますけれども当方が了解している限りにおいては、教科書記述を直すように希望する、あるいは切望するというふうに言っております。(河野委員教科書記述を直すように要望すると」と呼ぶ)はい、誤りをと言っております。
  299. 河野洋平

    河野委員 当然認識が一番大事——一番大事というより基礎なんですから。ただこの認識については、大臣が繰り返し繰り返し、日中共同声明精神というものが一番重要な基礎だということは確認しておられるわけです。その認識が具体的な行動としてあらわれてきていないと見えている、あるいは見ている、そこに問題があるように思うのです。私どもも外から見ていて、どうも靴の上から足の裏をかいているような感じで、私は、もう率直に記述は直さなければならぬし、直すべきだと思います。  いまここまで来て、記述だけ直したということで問題が解決するのか、あるいは検定という制度の中で、文部省のお役人さんが、侵略と書かれてきた原稿に、侵入にしなさいよ、侵入にかえた方がよくないか、侵略でない方がいいのではないかと改善意見を付した、そこのところが改まらなければということは、つまり文部省の、大臣の認識だけではなくて、検定官、調査官を含めた人たちの認識、そういうものが改まることが大事だと考えるのか。私はその両方だと思いますけれども、そこら辺は、いま文部省はそれこそどういう認識なんでしょうね、問題解決のために。
  300. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 新聞報道によればということでございまして、新聞報道が中国側の認識の基礎になっておると思います。そこでは「侵略」が「進出」になったという表現でございますし、またそれが、文部省検定を通じてそうなったというふうにありますから、そのできました教科書指摘されている個所を直せばそれで済むのかどうかという点につきましては、私としては、やはり検定の過程を十分に理解していただかなければ、これはただ字句修正だけではなくて、そこのところの理解が得られなければ、基本的な共通の認識は得られないのではないかというふうに考えまして、そういう観点から、日本における検定教科書制度の仕組みというものを、これは国定教科書の国とは違って、いろいろな組織なり手続を経てこうなっておりますというふうなことを詳しく説明させていただいたということでございます。
  301. 河野洋平

    河野委員 ひとつ一日も早くこの問題が解決されるように、文部省外務省、力を合わせて取り組んでいただきたい。この問題は、一日延びれば延びるだけ非常に解決が困難になると同時に、国内にも混乱が起こる。私は、前回の質問でも申し上げましたように、こうした問題をこのまま長引かせれば、必ず教える先生立場に立っても非常にむずかしくなるだろうというふうに思うのです。できるだけ早期に解決すべく、これは文部省、メンツだとかそういうものは別として、最大限の努力をしていただかなければならぬというふうに思います。  最後に、文部大臣教科書調査官はもう一度見直されるべきだと私は思います。つまり、さまざまな背景があるようですから、これは見直してごらんになる必要があると思いますが、いかがですか。
  302. 小川平二

    小川国務大臣 検定という非常に大切な仕事に当たります調査官につきましては、それにふさわしい人材を得ることができるように、またあわせて処遇についても、今回のことも一つの契機といたしまして、真剣に研究してまいりたいと思います。
  303. 河野洋平

    河野委員 終わります。
  304. 青木正久

    青木委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時六分散会