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1982-04-21 第96回国会 衆議院 文教委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十一日(水曜日)     午後一時四分開議  出席委員    委員長 青木 正久君    理事 石橋 一弥君 理事 中村喜四郎君    理事 西岡 武夫君 理事 三塚  博君    理事 佐藤  誼君 理事 長谷川正三君    理事 鍛冶  清君 理事 三浦  隆君       臼井日出男君    浦野 烋興君       狩野 明男君    久保田円次君       高村 正彦君    谷川 和穗君       野上  徹君    船田  元君       渡辺 栄一君    中西 績介君       山口 鶴男君    湯山  勇君       有島 重武君    栗田  翠君       山原健二郎君    河野 洋平君  出席国務大臣         文 部 大 臣 小川 平二君  出席政府委員         文部政務次官  玉生 孝久君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部大臣官房審         議官      宮野 禮一君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      別府  哲君         文部省体育局長 高石 邦男君         文部省管理局長 柳川 覺治君  委員外出席者         議     員 西岡 武夫君         議     員 中村喜四郎君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ————————————— 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   湯山  勇君     小林  進君 同日  辞任         補欠選任   小林  進君     湯山  勇君     ————————————— 四月二十一日  身体障害児に対する学校教育改善に関する請願  (田邊誠紹介)(第二四五五号)  高校新増設費国庫補助増額等に関する請願(中  島武敏紹介)(第二四九三号)  私学の助成に関する請願外十四件(馬場昇君紹  介)(第二四九四号)  同(久保等紹介)(第二五三八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  私立学校振興助成法の一部を改正する法律案(  石橋一弥君外三名提出、衆法第五号)  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 青木正久

    青木委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、去る九日の委員会における山原委員及び山口委員に対する答弁に関連して、政府から発言を求められておりますので、これを許します。小川文部大臣
  3. 小川平二

    小川国務大臣 去る四月九日の衆議院文教委員会におきまして、教科書検定第二次訴訟最高裁判決に対する政府委員答弁に関し不十分な点がございましたので、この際、政府委員より補足、訂正をいたさせます。
  4. 三角哲生

    三角政府委員 去る四月九日の衆議院文教委員会において、教科書検定第二次訴訟最高裁判決に関連し、山原委員より一連の御発言があり、その中で「原判決破棄というのは、それでは第一審も第二審もすべて破棄されたと思っておられるのですか。」という御質問に対し、「そのとおりでございます。」などの答弁をし、その後、山口委員からの「一審判決はどうなったと思っているわけですか。」という御質問に対しては、一審判決は、中略しまして、「形式的にはなお存在いたしますけれども現実的な意味を持っておらない」旨、答弁いたしました。しかし、この答弁は、山原委員に対する答弁と一致していないと山口委員から御指摘がありました。山原委員への答弁に関しては、第二審判決については答弁のとおりでありますが、第二審判決破棄された結果として、第一審に対し控訴した状態に戻っており、その意味において第一審判決については訴訟法上正確な答弁ではありませんでしたので、これらの不正確な点については訂正させていただきたいと存じます。  以上でございます。
  5. 青木正久

    青木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中西績介君。
  6. 中西績介

    中西(績)委員 いまの答弁を聞いておりますと、先般から論議されてまいりました点について、特にいま大臣釈明がございましたけれども教科書検定第二次訴訟最高裁判決に対する初中局長答弁が「不十分」なためと、こういう表現になっていますね、したがって政府委員から申し上げますというような言い方になっておりますけれども、先般から何が一番問題になったかということが、これではまた隠されてしまうのではないかと思う。ですから私は率直に申し上げて、これはもう全員そうではないかと思うのですけれども、このように混乱してきた経緯考えますと、不適切あるいは不的確な発言があっているわけです。挙げていきますと、もう数限りなくありますね、初中局長発言の中には。私、これを見てまいりまして、実に驚いたのです。この文書、ずっと抜粋したものがここにございますけれども、もう言いたいほうだいのことを言っていますね。そうしたことが、結局この委員会がとまったことの原因になったし、ですから、そのことを私は率直に認めなくてはならぬと思います。しかもこの前、法務省訟務局上野行政訟務第課長並びに法制局の第一部長ともに明確にこの一審の杉本判決についての見解は明らかにしたわけです。それは最終的には法制局打ち合わせをしてということを言っておるわけでありますから、そうであればあるほど、混乱したそうした問題については、やはり行政府側文部省側は率直にその点をおわびをしなくてはならぬのではないかと、私は常識的には考えるのですが、この点はどうでしょう。
  7. 三角哲生

    三角政府委員 去る四月九日の委員会におきましては、山原委員から、検定違憲性あるいは違法性につきましてはすでに第一審、第二審で明らかでありまして最高裁国側の上告を棄却して国民の教育権を擁護すべき当然の責務があるというような御見解やあるいは第一審、第二審の判決は形式上も精神上も実質上も今度の最高裁判決によってはいささかも傷つけられていない、その精神は生きておるという判断をすべきが当然だという御見解を述べられまして、第一審判決と第二審判決とをあわせてその現在における意味を問うというものでございましたので、実質的な観点から申し上げて、考えまして一審判決と二審判決のいずれも意味を失ったものである、そういうふうに考えられることを申し上げたものでございます。その後に行われました山口委員質疑では、一審判決と二審判決とを区別して一審判決の存在の有無について問うものでございましたので、一審判決は形式的には存在するが実質的には意味がないという旨のことを申し上げたものでございます。それに対しまして山口委員におかれましては、最高裁判決と一審判決との関係について答弁に一致しない点があるという御指摘がございまして御質問を続行されなかった、こういう経緯でございますので、その後私どもといたしましては、最高裁判決と一、二審判決との関係についてはさらに改めてより詳しい見解をまとめるなどして当委員会でも申し上げさせていただいた、そういう次第でございますので御了解をいただきたいと思うのでございます。
  8. 中西績介

    中西(績)委員 委員長はそのようにおとりになっていますか。
  9. 青木正久

    青木委員長 もう一度質問してください。
  10. 中西績介

    中西(績)委員 この前から問題になりまして、ここでの審議は中断いたしまして、その結果それぞれいろいろな角度から持ち寄られまして理事会なりで論議をしたと思いますけれども、いま答えられたような事柄によって前回はここの審議がとまって最終的には委員長理事会に任せてくれ、こう言っておるわけですから、理事会に任せられた。そして今度は委員長預かりか何かになったのでしょう。そうなってまいりますと、いまのような経過であって、文部省答弁の中には全然瑕疵がなかったという判断ですか、そこをお聞かせください。
  11. 青木正久

    青木委員長 その点につきましては、昨日の理事懇を初めとして何回かの会合で理事先生方打ち合わせをした結果に基づいて委員会を開いておりますので、御了承賜りたいと思います。
  12. 中西績介

    中西(績)委員 私が聞くのは、理事会にそれを持ち込んで、論議の結果委員長預かりになったと思うのですけれども、いまのように文部省、一方的に物を言っているわけです。私は、時間がありませんからこれを全部読み上げませんけれども、たくさんの問題があるわけです。いまのような言い方ではないのです。この中には、一審も二審もこの判決法律意味のないものになったとか、いろいろなことをずっと述べておるから、この前から私たちが言っておるように、わざわざ法務省見解を聞きますと、「二審の畔上判決破棄されましたが、一審の杉本判決は取り消されたわけではありませんから、杉本判決訴訟手続上は存在するわけでございます。」、このことについて法制局の第一部長も認めておる。そうしたことは全然この前は言っていなかったのですね。一審も全部破棄されています、それは破って捨てたのですとか、いろいろなことを言っていますよ。  その点が問題になっての答弁ですから、私があなたにお聞きしておるのは、そのように全然問題がなかった、不十分だけであった、だからこの前ここが混乱して中断して理事会にお任せするという手続をとったかどうかをどのように御理解いただいておるかということをお答えいただけませんか、こう言っているわけです。
  13. 青木正久

    青木委員長 中西君に申し上げます。  この問題は、きのうの理事懇談会の決定に基づいて本日の委員会を運営しているのでございまして、なお御不審な点がございましたら文部省側質問をしていただきたいと思います。
  14. 中西績介

    中西(績)委員 いや、私があれしているのは、少なくとも行政府答弁が大変混乱して、あのまま議事録に残ったのでは行政府としては大変じゃないかと私は思っております。しかし、行政府はそうは思わぬということです。そのように彼らは理解して言っているわけですから、われわれはそう考えてここは中断し、わざわざ時間をかけて御審議いただいたわけです。それなのに不十分であるということだけで、一言で片づけられています。こういうことで立法府の、審議機関である私たちのこの場がよろしいかどうかということを私は委員長にお伺い申し上げておるわけです。政府意見じゃありません。(発言する者あり)
  15. 青木正久

    青木委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止
  16. 青木正久

    青木委員長 速記を起こしてください。  中西君。
  17. 中西績介

    中西(績)委員 その見解についてはどうでしょう。私がいままで申し上げた立法府としてどうなのですか、こう聞いているわけですから。(「議事をさばくのが委員長だ。一々委員長見解を聞くのはおかしい。答弁の必要なし 進行」と呼ぶ者あり)
  18. 青木正久

    青木委員長 中西君、質問を続けてください。
  19. 中西績介

    中西(績)委員 ここをさばいていただく場合には少なくとも委員長としての見解があるはずですから、その見解についてお尋ねすることを禁止する何物もないわけですよ。それを禁止するのですか。
  20. 青木正久

    青木委員長 中西君の御質問があったことは認めます。しかし、その内容につきましては、きのうの理事懇談会の御相談のとおり一般質疑を通じて明らかにすることになっておりますので、質疑を続けてください。
  21. 中西績介

    中西(績)委員 だから、一般質疑をする際に、われわれのこの委員会の中での見解として、行政府に対するわれわれ立法府としての態度はどう持つべきだろうかということを、委員長が預けられたわけですから、私は委員長にその見解をお伺いしておるわけですよ。それをされていなければまた別ですけれども、そのようにされておるから聞いておるのです。
  22. 青木正久

    青木委員長 立法府立法府権威を守らなければなりませんし、行政府行政府権威を守らなくてはならないと思います。
  23. 中西績介

    中西(績)委員 だから私はこのことについて、先般からこれがとまっていた経緯がありますから、その経緯を踏まえて、なぜとまったかということを考えれば、先ほど見解が述べられましたけれども、そのことによって私たち立法府としてはこれを容認するわけにはいかぬと思うのです。少なくともそうした点で、この点についてお預かりいただいた委員長がどういう見解をお持ちになっておさばきいただけるかということを聞かなければ、私はあのまま見過ごすわけにいかぬから言っているわけです。
  24. 青木正久

    青木委員長 委員長も、立法府権威を守ることにつきましては人後に落ちないつもりでございます。
  25. 中西績介

    中西(績)委員 それでは、法務省訟務局上野行政訟務第課長あるいは法制局の第一部長、こうした方々の言われたことについては、先般の質問の中では文部省はお認めになっておると言うのだけれども、この点については認めていますか。
  26. 三角哲生

    三角政府委員 一審判決というものは当事者を拘束するものでもなく、また、今後の審理を拘束するものでもないという意味判決としての効力を持っておりませんが、訴訟手続上は形式的に存在するものである、こういうふうに考えております。
  27. 中西績介

    中西(績)委員 それでは、法務省課長並びに法制局の第一部長はどのようにこの前ここでお答えになりましたか、どのようにお聞きになっていますか。
  28. 三角哲生

    三角政府委員 ただいま私から申し上げた内容と同趣旨のお答えをしたと思っております。
  29. 中西績介

    中西(績)委員 二審の判決、「畔上判決破棄されましたが、一審の杉本判決は取り消されたわけではありませんから、杉本判決訴訟手続上は存在するわけでございます。」、こういうふうに答えたと私たちは記述しています。さっきから何回も言うけれども、この点は否定されるのですか。
  30. 三角哲生

    三角政府委員 いま御引用になったとおりでございますが、さらに続けて「当事者を拘束するものではない、」という考えも示されておったと思います。
  31. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、いまこうした文章で明らかになっておりますように、これを認めるということになれば、前回からいろいろずっと言っておることが先ほど答弁のあったようなことで、釈明があったようなことで果たして済まされるとお考えでしょうか、文部大臣
  32. 小川平二

    小川国務大臣 先ほど政府委員答弁を申し上げておりますように、山原委員から一審、二審をあわせてその意味を問われたのに対しまして、一審、二審とも実質的には意味がないという答弁を申し上げたわけでございます。さらに、これに続いて山口委員から特に一審について御質問がありましたので、形式的にはなお存在しているが実質的には効力を失っておる、かような答弁をいたしたわけで、私自身もそのとおりだと考えておるわけでございます。
  33. 中西績介

    中西(績)委員 これは速記録ですが、山原さんが「原判決破棄というのは、それでは第一審も第二審もすべて破棄されたと思っておられるのですか。」と、そのとおりですと言っておるのです。だからこうしたことを明確にしなければいかぬと思うのです。結局それが誤りであるということを明らかにしなければならぬのに、いま大臣が言うのには、「不十分な点」があったので政府委員からそれを釈明するということになっておる。だからこの点については不的確な発言をいたしておるわけですよ。ですから、正確な発言をすることが、いままでのあの中における、すべて言ってこられた、たくさんそういう誤りがあるわけでありますから、不的確、不適切な答弁がたくさんあるわけでありますから、それをいま全部修正をするということになれば、あるいは抜くということは大変なことですよ。だから、今度はそれを一言で改めるということになればその点を明確に言っていただく、そしていままで長いことこうして混乱をしてきたことに対しておわびくらいは言わなければこれは落ちつきませんよ。  私は、自民党の皆さんがそのことを容認されるという大変な御寛容な態度に対しては敬意じゃなしにちょっと不審に思います。不思議に思います。特定のことだけはそうして寛容さを示されるようでありますけれども、この点、私はどうしても脇に落ちません。だからこの中の一つずつを、それじゃ全部を訂正をしますか。
  34. 三角哲生

    三角政府委員 一連の非常に長い御質疑だったわけでございまして、その節ただいま中西委員指摘のようにいろいろな応答があったわけでございまして、その際私必ずしも法律用語だけでお答えもしておりませんから、その一々のお答え意味合いなりなんなりについてこの際全部にわたってもう一度説明をし直せという御指示であればそういうこともせざるを得ないかなという気もいたしますが、全体として、先ほど申し上げましたように、要約いたしますと、第一審判決については訴訟法上正確な答弁ではありませんでしたので、これらの不正確な点については訂正をさせていただきたいというお願いを申し上げたのでございます。
  35. 中西績介

    中西(績)委員 いま訂正をして云々ということでありますから、私は、ここにありますように「原判決破棄というのは、破り捨てるということでございますから、それはなくなった、こういうことだというふうに聞いておりますし、そのように考えるのが正しいと思っております。」(「それは二審についてですよ。」と呼ぶ者あり)いや、これは違うのだ、一審だよ。第一審、第二審すべてがなくなってしまったというような判定は少なくとも誤りですよ、こう言って、一審が入っているんだ。あなたたちは味方をするから、あなたたちを説得しなければいかぬ。すべてがこういうような内容になっておるわけだ。だから、これはもう本当に政府答弁として恥ずかしいきわみなんだ。しかも最初のうちは初中局統一見解と言った。後になって初中局統一見解文部省統一見解です、こういうことまで言っている。文部省統一見解というのは政府統一見解ですよ。こういう私たちが驚くようなことを平気であのときには言っておるわけだ。だから、私たち文部省の、行政者としてこんなむちゃくちゃなことがあってよろしいだろうかということを考えた場合には、むしろ最初にそうしたことが誤りでしたということを率直に認めることの方がより良心的だし行政府のあり方ではないだろうか。そうしたいままでの経過からいたしましても、初中局局長が答え、そしてそれは初中局意見だ、こう言っておったものを文部省意見だ、こう途中ですりかえる、しかもたくさんのこうした問題が出ておるときであるだけに、率直にそうした問題についてはいち早くこれを、先ほど最後に言われましたように訂正するなりあるいはそれを一括してやるとすれば、もう少し事実に基づいてその点を明らかにしておった方がいいのだろう、こう考えるから私は指摘をしておるわけであります。  ところが、先ほど言っておるのを聞いておりますと、一審判決は「「形式的にはなお存在いたしますけれども現実的な意味は持っておらない」旨、答弁いたしました。しかし、この答弁山原議員に対する答弁と一致してないと山口議員から御指摘がありました。」、ただ一致しておらないということだけでなしに前段にそうしたすべての問題があるということでありますから、この点を明確にする必要があるということを私は言っておるわけであります。この点で政府はいまなおそうしたものを固執し続けるということであればこうした不正確、不的確な発言をいまなお認めるということにしかつながらないという、私は私なりにとらえればそうなりますから、この点についてもう一度修正するなり態度を明らかにしてやるべきではないか、これが一つ。  それからもう一つは、釈明をすると同時に、この場の混乱に対して、この点についてはおわびをする一言をやはり言うべきではないか、こう思っています。この点どうですか。
  36. 三角哲生

    三角政府委員 私の山原委員に対するお答えにつきましては訴訟法上厳密な意味合いで正確ではなかった、こういうことで先ほどお願いをしているわけでございます。  ただ、山原委員の御質疑の中におきましてもいわゆる第一審の杉本判決が生きておるというかそういうようなくだり、あるいは畔上判決破棄されていないという意味合いくだり、そういう個所がかなりございまして、それを全体として見ました場合に、私どもはそういう理解は一般に対して誤解を生ずるおそれがある、こういう観点から実質的な意味合いお答えをしたつもりでございまして、その意味で私は恥ずべき答弁をしたというふうな認識は持っておりません。  それから、国会運営の方は、これは必ずしも私どもの手のうちだけにあることではございません、国会の問題でございますので、私どもはその後直ちに文部省としての見解を調整をしてお示しをするなどいろいろな意味で努力をさせていただいたつもりでございます。     〔佐藤誼君「関連質問」と呼ぶ〕
  37. 青木正久

    青木委員長 関連質問につきましてはあらかじめ委員長に御通告を願います。——関連質問通告がありますので、中西委員の持ち時間内で御発言を許します。佐藤誼君。
  38. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 わが党の山口鶴男発言を契機といたしまして、簡単に言えばその問題の扱い、収拾については委員長発言理事会で預かり、しかも、そこで議論して対処するということになったわけですね。それについて、理事皆さんは御承知なんですけれども、その収拾について与党と文部省、つまり政府との間で議論された原案というのが出されたわけです。それに対しまして、日本社会党はそれでは不十分だということで私の方からこれを出した。これで意見がまとまらずして、それじゃ答弁をする政府がこれらの案件を十分参酌し、議論も参考にしながら文部省としてしかるべき案を出すというふうに出したのがこれなんです。これに対しまして、私たち社会党理事は、この文部省の出した議案というものをそれなりに生かしながら、しかもわれわれの主張する点を組み入れるという形で二カ所の修正をして議論したわけであります。なお、そのときに文部大臣初め三角初等中等局長についてはやはりしかじかの陳謝、訂正ということがあってしかるべきだという主張もいたしました。ところが、その点については、委員長承知のとおり理事会の中で完全な意見の一致を見ることはできませんでした。  したがって、その進め方については、意見は違うが、その間の議論なり資料をもとにして、そして文部大臣並びに三角初等中等局長がきょう答弁をする、そのことに対して疑義があれば十分そこで議論してもらう、場合によってはまた理事会に差し戻しになるかもしれぬというかぎ括弧つきのことを委員長も言われた。そこのところは別にいたしまして、そういう明確な経過になっているということは委員長認められますね。
  39. 青木正久

    青木委員長 ただいまの佐藤君の御発言は、そのとおり認めます。
  40. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そこのところの土俵をはっきりしておいて、私はわが党の中西委員質問したことについてはっきりしていきます。中途半端なことを言ってもらってはかえってさらに委員会混乱させるもとだと私は思います。  そこで一番中心になりますところの、このことの確認大臣なり局長から答弁いただきます。それは先ほどから再三言っているような法務省訟務局、それからそれを追認した形で法制局第一部長が追認している内容であります。皆さん確認をいただきたいという内容は次のとおりであります。「二審の畔上判決破棄されましたが、一審の杉本判決は取り消されたわけではありませんから、杉本判決訴訟手続上は存在するわけでございます。」、このことについてなお念のために大臣並びに初等中等局長はこれを追認なされますね。
  41. 小川平二

    小川国務大臣 そのとおりでございます。
  42. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 局長
  43. 三角哲生

    三角政府委員 先ほど中西委員からの同じ質問に対してお答えしましたとおりでございます。
  44. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは、いまの点が明確に認められましたから、これ以外の部分については誤りだということ、そしてまたそれ以外のことをしゃべったことについては誤りですから取り消し、訂正ということはあってしかるべきで、当然だと思うのです。この点どうですか。
  45. 三角哲生

    三角政府委員 法務省法制局見解におきましては先ほど御引用のほかに、さらに二審で争っている状態になりますので、いまだ一審の杉本判決は確定しておらず、訴訟当事者を拘束するものではありません、こういうことを述べておられるわけで、私は実質的な意味合いから考えまして、いわゆる杉本判決の論旨は意味を持っておらない、こういうふうに思っておりますので、その趣旨でいろいろ申し上げておったわけでございます。
  46. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私が先ほど言ったことは、文部大臣は明快に「そのとおりでございます。」ということですから、これが文部省統一見解、そしていま局長が言われたことは、あなたの個人的な見解ということに私は理解したいと思う、行政上。  そこで、この部分について確認されたわけですから、過去の議事録でこれにもとるものについては、これはやはり取り消し、訂正という肝心の部分があってしかるべきだと思うので、私は皆は言いません、肝心の部分だけ議事録に基づいて申し上げます。  それはこういうことなんです。  山原委員質問、「原判決破棄ということをどういうふうに受けとめておられるか、」ということに対しまして、三角局長は、「原判決破棄されたわけでございますから、いわゆる杉本判決畔上判決は消えたと申しますか、」、こういうような言い方をしました。これは先ほど文部大臣も言われましたように、取り消されたわけではありませんということで言っているわけですから、この「消えたと申しますか、」という部分ははっきりしてもらわなければならぬし、その部分は取り消し、訂正ということが当然だと思うので、これが一点。  それから次、第二点は、山原委員の「原判決破棄というのは、それでは第一審も第二審もすべて破棄されたと思っておられるのですか。」、これに対しては「そのとおりでございます。」、こういう答弁をしております。このことについては先ほど確認されましたように「杉本判決訴訟手続上は存在するわけでございます。」、この点を確認しておるわけでございます。つまり、ここで言う「第一審も」という部分に対して「そのとおりでございます。」という答弁誤りでありますから、取り消し、訂正をしてしかるべきだというふうに思います。  それから第三点は、これは長くなりますから肝心の最後の部分だけ申し上げますけれども一連の流れの中で「原判決破棄というのは、破り捨てるということでございますから、それはなくなった、こういうことだというふうに聞いております」以下云々とあります。これは内容もさることながら、こういう子供じみた答弁というものは私は不適切だと思うのです。同じ答えるならば、もっと物事に対して正確な答弁をすべきだと私は理解をいたします。したがって、この「原判決破棄というのは、破り捨てるということ」であるから云々ということは、不適切な答弁であるので、取り消されてしかるべきではないか。  以上、三点ですが、どうですか。
  47. 三角哲生

    三角政府委員 第一点につきましては、消えたというのは比喩的な表現でございまして、その後すぐに、「法律意味がなくなった」というふうに言いかえております。  ところで、一審判決は、先ほど来申し上げておりますが、訴訟手続上は形式的には存在すると言えますが、これは当事者を拘束するものでもなく、また、今後の審理を拘束するものでもないという意味におきまして、判決としての効力は持っていないこと、並びに、特に本件の場合は、一審判決の論旨は、今回の最高裁判決のような判断あるいは昭和五十一年の最高裁学力調査判決から見て、実質的な意味を持っていないと考えられることをあわせて考えますと、一審判決法律意味がないと言えるのでございまして、その意味では必ずしも誤りとは言えないものであると私は思っております。しかし、「消えた」という表現が、一審判決が形式的にも全くなくなってしまったともとれるということを考えますと、その限りにおいて厳密に正確ではなかった、こう考えますけれども、私はこれについては、こういう説明の仕方というものが絶対あってはならないというふうに考えないのでございます。  第二点につきましては、先ほどこの会議の冒頭に申し上げたとおりでございます。  それから第三点は、原判決破棄ということの意味を御説明申し上げただけでございまして、「原判決破棄というのは、破り捨てるということでございますから、それはなくなった、」、原判決ということで申し上げておりまして、それだけのことであると思っております。
  48. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 いままでの流れから言うと、本当にまともに答えるつもりがあるのかどうか、われわれ委員をなめているのじゃないかという感じがしてならないわけです、これは私の感想ですが。  そこで、一番ここで問題になったのは、一審判決破棄されたのかどうか、法律上存在するのかどうか、はっきり言えばこれが争点なんですよ。つまり、法律上存在する云々ということは、訴訟法上、もっと厳密に言えば、訴訟手続上存在するかどうかということに集約されていくと思うのです。そういう点から言えば、先ほど認められたように、杉本判決、第一審判決訴訟手続上存在するということを言っているのですから、これは法律上存在するし、破棄されたものではないというふうに見るのが当然だと思う。それを形式的とか実質的なんという言葉で言うから答弁として紛らわしくなっているのであって、議論の焦点は法律上それが存在するのかどうかということですから、ここのところははっきりしてもらわなくてはならぬ。いみじくもあなたはそのことについて、杉本判決訴訟手続上存在するということを言っているのですから、当然これは法律上存在するということで、ここで言うところの「消えたと申しますか、」云々ということは、流れから言えば当然取り消さなければならぬことになる。そんなにかたくなに考えなくたっていいじゃないですか、いたずらに混乱させるつもりだったら話は別ですけれども。  二番目の、「第一審、第二審もすべて破棄されたと思っておられるのですか。」ということに対しては、「そのとおりでございます。」と言っているのですから、第一審も破棄というふうに、「そのとおりでございます。」とあなたは言っているわけですから、これは先ほど確認から言えば誤りですので、「そのとおりでございます。」というのは取り消してもらわなければならぬわけですよ。重ねて、どうなんですか。
  49. 三角哲生

    三角政府委員 訴訟法上の解釈は、先ほど来御引用の訴訟法の主管の当局からの御答弁、これでございます。  ただ、「現実的な意味を持たない」ということは、杉本判決が生きているとかあるいは杉本判決精神が生きているとかいうことに対しては、私ども先ほど来申し上げておりますように、効力を生じておりませんので、実質的な、現実的な意味を持っていないという意味で申し上げたわけでございますが、訴訟法上は、先ほど来おっしゃられているとおりであると思っております。したがいまして、冒頭、訂正をさせていただきたいというお願いを申し上げた、そういうことでございます。
  50. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それですから、私の方で聞かないことを余りくどくどと言ってもらうと、かえって事を混乱させるわけです。  局長杉本判決訴訟手続上存在する、これはそのとおりですね。
  51. 三角哲生

    三角政府委員 一審判決当事者を拘束するものでもなく、今後の審理を拘束するものでもないという意味で、判決としての効力を持っておりませんが、おっしゃいますように、訴訟手続上は形式的には存在すると考えております。
  52. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そういう前後の尾ひれをつけて私は聞いているわけじゃないのです。杉本判決訴訟手続上存在するというこの前後の文章を入れて、あなたは先ほど確認されたのじゃないですか。
  53. 三角哲生

    三角政府委員 部分的にだけとらえますと一般の理解を誤るおそれがあろうかと存じまして、私は、より丹念にお答えしているつもりでございます。
  54. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうしますと、重ねて言いますが、先ほどの、「二審の畔上判決は」以下ずっと行きまして「わけでございます。」ということは、文部大臣は「そのとおりでございます。」と簡明直蔵に答弁されたのですが、その点は間違いないですね、局長
  55. 三角哲生

    三角政府委員 一連の文章のある部分だけを切り取って、そこにそう書いてあるかという御質問であれば、そのとおりということになります。
  56. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 文部大臣が「そのとおりでございます。」と言うのに、何で局長が尾ひれをつけて誤解を招くようなことを言うのですか。文部大臣局長、そこを統一してくださいよ。
  57. 小川平二

    小川国務大臣 私は、御指摘のあった部分について、「そのとおりでございます。」こう申し上げたわけでございます。どうぞ誤解のなきようにお願いいたします。
  58. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 いや、誤解はしていないのです。読んだとおり、あなたが「そのとおりでございます。」ということですから、これに基づいて言っているわけですから、それに局長が尾ひれをつけられたのじゃ、これはかえって混乱するわけです。  そこで、もう一度私は言いますけれども、あとはバトンタッチいたしますが、先ほど私の言った三カ所、いま重ねて文部大臣はこのことについて確認されましたから、当然このことから言えば、「消えたと申しますか、」という「消えた」という部分を取り消し訂正をすべきだ。それから、一審、二審も破棄された、「そのとおりでございます。」というこの部分は、少なくとも一審の破棄ということにはなりませんし、いまも言ったように、訴訟手続上存在するわけですから、「そのとおりでございます。」という答弁は取り消すべきだ。ただ、最後の破棄、「破り捨てる」云々ということは、これは見解の相違、答弁のニュアンスの問題もありますから、私の方は改めてそこまではいま言及しませんけれども、いま申し上げた第一点と第二点は少なくとも取り消し訂正をしてもらわなければ、私たちは納得できないというふうに思います。重ねて文部大臣、どうですか。
  59. 小川平二

    小川国務大臣 同じことの繰り返しになりますが、山原委員の御質問に対しましては、初中局長は実質に着目をして答弁申し上げておるのでございます。その後、山口委員から特に第一審について御質疑がございましたので、再三申し上げておりますように、訴訟法上はなお生きているけれども当事者を拘束するものでない、その意味で現実的な意味を持たない、かような答弁をいたしておるわけでございます。
  60. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 後段のくだりは、わざわざ何であそこをつけるのですか、どういう趣旨でつけるのですか。訴訟法上は存在するという、このことがいま争点で議論し、質問しているのですから、いま文部大臣が後段でつけ加えたことは、何も私の方では質問しておりませんし、訴訟法上そんなことは当然のことですから、あえて私は答弁を求めているわけじゃないのです。だから私は、論争になっている焦点についてずばっと文部大臣に言ってもらえればいいのであって、いたずらに尾ひれをつけると誤解を招きますので、そういうように私は考えるのですが、なぜわざわざ後半のをくっつけるのですか、むしろ要らないじゃないかということを私は言っているのです。
  61. 小川平二

    小川国務大臣 実質に着目をいたしまして、消えたというような、あるいは、誤解を招くかもしれない不十分の答弁をしておるわけでございますから、最終的な答弁におきましては、訴訟法上は、言いかえれば、形式的にはなお生きておる、かような答弁をいたしておるわけでございます。
  62. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは、先ほど言った、「二審の畔上判決」以下「ございます。」という、つまり、「杉本判決訴訟手続上は存在するわけでございます。」、この部分はこのとおり、いいですね、文部大臣
  63. 小川平二

    小川国務大臣 訴訟手続上は存在をいたしておりますということは、この場で今日繰り返し答弁を申し上げている、そのとおりでございます。
  64. 中西績介

    中西(績)委員 いま佐藤委員から、ずっと文部省態度について、さらに内容的なものについて触れてまいりましたけれども、いずれにしましても、一般常識的には文部省行政者としてのあり方として、こうしたことを平気で言い、主観を申し述べることについては、これから慎重な態度で臨んでほしいと思うのですが、この点、大臣、どうでしょう。
  65. 小川平二

    小川国務大臣 慎重な態度で臨むつもりでございます。
  66. 中西績介

    中西(績)委員 特に連日の新聞等に、文部省当局、だれかが発言をする際に、絶えず主観的にこうしたものを申し述べていくというようなかっこうになりますと、これは文部省態度がそうだということで、国民すべてが報道機関を通じて、私たちみたいに直接聞くわけにいきませんから、そうなりますと、大変大きな誤りを犯すことになるわけです。ですからこの点は少なくとも、いままで言ってこられたことに対して幾つかの点をつけ加え、修正し、そして最終的には不十分であったから、こうこうこうだというような言い方をいましておりますけれども、このような態度というのは、私は行政としては大変誤りだと思います。  なぜなら、行政府というのは、そうした法というものを中心にして措置していかなければならぬというたてまえがありますから、この点だけはちゃんとこれから心得ていただくように強く要望すると同時に、最初から私が申し上げましたように、このように長時間にわたる論議を呼ぶようなことを起こしたことに対しては、やはり大臣から遺憾の意を表明すべきではないかと私は思いますが、その点はどうですか。
  67. 小川平二

    小川国務大臣 答弁に不十分な点がございましたことを私は本日この場で率直に認めておるわけでございます。
  68. 中西績介

    中西(績)委員 そうしたときには、普通不十分な場合あるいは的確性を欠くということになった場合には、少なくとも大臣なり責任者が一番先にそのことについて、あるいは発言者が直接、この点については誤りであった、あるいは不的確であった、あなたが言う不十分なら不十分であった、こういうことを言うことと同時に、少なくともこの場に対して、この点についての混乱については、やはりおわびをすべきだと私は考えます。これが常識だと私思いますよ。この点、もう一度重ねてお伺いします。
  69. 小川平二

    小川国務大臣 不十分でありました点は、発言をした者が率直にこれを認めておるわけでございまして、私自身もこれを追認いたしておる次第でございます。  また、発言者の真意につきましては、先ほどからるる答弁を申し上げたところで十分御理解いただいておると私は思っておるのでございまして、陳謝すべしという御要求でございますけれども初中局長は、たとえば国会を軽視するような発言があったというようなわけでございませんから、陳謝をするということは、ひとつこの際御容赦をいただきとうございます。
  70. 中西績介

    中西(績)委員 自民党だけ、了解するといま言っているのだけれども、われわれは了解はしておりませんからね。その点は明確にしなければなりません。  いずれにしましても、私は、このような、不謹慎と申し上げていいと思うのですけれども発言をするということについては、やはり不十分だということを認めておるわけですから、その点は率直に言うのが常識なんです。文部省は非常識ですから、そういうことを言わないだろうと思って、私は、これより以上追及はしません。しかし、その非常識さがいかに行政のいろいろな手だてなり何なりを誤らせていくかということを大変私は危惧をいたしますから、この点だけはひとつここに並んでおられる皆さん、この点を十分認識しておらないと、いよいよ社会からの遊離というのが必ず起こるわけです。この点だけは明確にしなければいかぬと思いますから、この点は厳重に申し入れしておきます。  それでは、次に入ります。  四月十九日の読売新聞の一面トップに、これは読売新聞だけしか出ておらなかったようでありますけれども、「「指導書」こっそり手直し 文部省」「自民の意受けた形」「小中学社会科「公民分野」中心に」こういう大きな見出しで一面トップに出ております。これ、御存じですか。
  71. 三角哲生

    三角政府委員 見ております。
  72. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、私、そういう機構の中での論議の仕方、あるいはこのような手直し等について詳しくは存じませんので、お聞きします。  これを見ますと、「補訂版が発行されることが十八日わかった。」ということになっていますが、いつ改めたか。
  73. 三角哲生

    三角政府委員 これは、大阪書籍株式会社の発行で、編さんはもちろん私ども文部省でございますが、発行日付は、五十七年三月二十五日ということで、これが第九版発行一部補訂版でございます。ただ、現実にこの本が一般に出たのはごく最近だというふうに聞いております。
  74. 中西績介

    中西(績)委員 そうすると、三月にこうした補訂版が発行されたということですか。
  75. 三角哲生

    三角政府委員 発行日付は三月二十五日でございます。
  76. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、これには「補訂版が出されるのは極めて異例なこと。」、こういうふうに書かれておりますね。これは、異例なことですか。
  77. 三角哲生

    三角政府委員 必要に応じてこういうことをやるのでございますけれども、そう頻繁ではないということから見ますと、異例という字が当たるかどうか、異例とも申せませんけれども、通常たびたびやるということでもございません。
  78. 中西績介

    中西(績)委員 ちょっとわかりませんけれども、通常たびたびやることではない、そうすると、これは指導要領か何か改訂したときぐらいにやるのが普通であって、その他のときにやることはないと考えてよろしいですか。
  79. 三角哲生

    三角政府委員 指導要領が改訂になりますと指導書も全部改めてつくり直しますので、これは新しい指導書の作成になるわけでございます。その状況においてどういうふうな手直しをするかということは、またそれとは別のことでございます。
  80. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、いまの答弁では、指導要領が出たときには新しいものを作成して提出をする、それはわかりました。そうすると、ここにありますように、いままで、たとえば前回の指導要領改訂があって今回の指導要領の改訂なりがあるまでの間、何回くらいこうした補訂の事実がございますか。
  81. 三角哲生

    三角政府委員 回数の確かなところはいまつまびらかにしておりませんが、たとえば一つの例としましては、公害基本法が制定になったというような場合に、公害に関する指導のあり方について補訂をするというようなことがあったわけでございます。
  82. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、いま言われたのは、確かに法律なりが出てくるということになれば、いままでの既成のものよりもうんと変わってくるわけですね。ですから、そうしたときにはそうしたものが出てくるということはうなずけますけれども、いま特別こうしてやらなければならなかった理由としては、その後の方にこういうことが言われておりますね。文部省では「”わかりにくい”という苦情が多かった。そのため、補訂版を出すことにしたもの。」、こういうぐあいに説明をしたと、こう書いてありますけれども、これは本当ですか。
  83. 三角哲生

    三角政府委員 現場などにおきます取り組みの状況から見まして、教育課程に関係いたしますいろいろな研修会、講習会等の場で、わかりにくいと申しますか、より適切な理解を助けるための記述が望ましいというような意見が出た、こういうふうに聞いております。
  84. 中西績介

    中西(績)委員 講習会と何ですか。
  85. 三角哲生

    三角政府委員 研究会、研修会等、社会科の関係のいろいろなそういう集まりでございます。
  86. 中西績介

    中西(績)委員 結局わかりにくいという苦情は、いま言うように講習会あるいは研修会、そういうところで記述すべきだと言ったということですね。そうしますと、何か五カ所訂正をしておると、このことは本当ですか。
  87. 三角哲生

    三角政府委員 今回補正をいたしましたところは、小学校につきましては六カ所で内容的には四点に集約できるかと存じます。それから、中学校につきましては六点についての補正を行っております。
  88. 中西績介

    中西(績)委員 そうすると、この新聞記事はうそですね。
  89. 三角哲生

    三角政府委員 うそといいますか、新聞の取材の場合にはいろいろのソースからいろいろお聞きになりまして、それをおまとめになるわけでございますから、そして一定の時間に限られておまとめになるわけですから、うそときめつけるのはどうかという気がいたします。
  90. 中西績介

    中西(績)委員 五か所と、こう書いてあるわけですね。「小、中学校とも各五か所」と、こう書いてあるから、違いがあるでしょう。
  91. 三角哲生

    三角政府委員 私どもの整理では、さっき申し上げましたとおり小学校が六カ所四点、それから中学校が六点でございますが、この新聞でどこか似たものを一つにくっつけて五カ所としたかどうか、これはちょっともう一回ここで読み直さないと正確な御答弁ができにくいのでございます。
  92. 中西績介

    中西(績)委員 いや、ここに書いてある。見出しのところの「手直し部分は小、中学校とも各五か所で、中学校版は、」云々、こういうように書いてますから、それで聞いているわけです。というのは、私たちの手にはその材料は何もないのです。ですから委員長、要求しますけれども、資料でどこがどういうように手直しされたか明らかになるように、いま言うように小学校六カ所四点、中学校六点、この点について資料として提出をされるように要求しますが、よろしいですか。
  93. 三角哲生

    三角政府委員 資料を提出いたします。ただ、中学校の方はちょっとまだ出ておりませんので、その点を若干検討させていただきたいと存じますが、小学校の万は直ちに御提出いたします。
  94. 中西績介

    中西(績)委員 ではそれを出していただいて、いままでは新聞によってしか私は知る余地がありませんでしたからその点でお聞きをし、ただしたわけでありますから、今度新しく出されて、その内容について正確にしていきたいと思います。  きょう後で私が質問するところと関連がございますのでその点お聞きしたいと思いますが、その前にもう一つだけちょっと聞いておきましょう。新聞の一番最後のところになりますけれども、「追加補充の内容は自民党の教科書「偏向」論議で触れられたものばかり。しかも、文部省が指導書の補訂作業を始めたのは、自民党教科書問題小委員会が昨年六月「教科書作成の基準となっている学習指導要領について必要な検討を行う」とぶち上げた直後。自民党の強い意向を受けての異例の補訂版発行と見られる。」、こういうように記述をしてありますけれども、この点についてはうそですか本当ですか。
  95. 三角哲生

    三角政府委員 「「偏向」論議で触れられたものばかり。」ということでもないのじゃないかと思いますが、見方によりますと、脈絡をつけて見るということは全然できないというふうにも申せないかと存じます。それから、作業は私どもは昨年の八月ころからだと思いますので、その点のすれがちょっとあるかと存じます。最後のくだりの「と見られる。」というのは、これは新聞の方の主観的な考えでございますから、ちょっとコメントは差し控えたいと存じます。
  96. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、いま言う中身は、脈絡をつければつけられるということが一つ、もう一つは、六月というのが八月ということで違いがある、それから一番最後の、「見られる。」というのは主観的なものだからこれについてはコメントを避ける、こういうように理解してよろしいですね。
  97. 三角哲生

    三角政府委員 脈絡の云々は、私が脈絡をつけたわけではございません。これは記事の方の側のお考えでそういうことがあり得るか、こういうことを申し上げたのでございます。
  98. 中西績介

    中西(績)委員 じゃあ、あとのところはどうですか。
  99. 三角哲生

    三角政府委員 あとは結構でございます。
  100. 中西績介

    中西(績)委員 そうなってまいりますと、いま言うように、新聞社側から言うとそうした脈絡がつけられる、こういうことですね。つけられるだろうということは、大体指摘をしておるところが大部分だということを意味しているわけですか。
  101. 三角哲生

    三角政府委員 これは教科書小委員会の方とは別に関係がないわけでございまして、私どもは、先ほど申し上げましたように、いろいろな会議等の場を通じまして、現在の指導要領の記述の理解をより適切ならしめるために、その解説でございます指導書の記述をもう少し敷衍して書いた方が望ましい、そういう意見や希望が出ましたので、それらのうち、ほかにもあったわけでございますけれども、適切だと思われるものを考えましてこのような補訂を行ったのでございます。
  102. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、今度そうした内容が出ましてから、また機会があればこの点についてはお聞きしたいと思っております。  そこで、後の質問とのかかわりがございますから、この点があったかどうかだけひとつお答えください。「例えば、小学校版の「第6学年の目標及び内容」のうち政治の仕組みの説明では、日本国憲法は主権が国民にあることを「宣言している」と現行版ではなっているのに対し、「明示している」と訂正。この後に「天皇の地位に関する指導に当たっては、歴史に関する学習との関連も図りながら、天皇についての理解と敬愛の念を深めるように指導することが必要である」と追加した。」、この前段と後段、追加した部分と修正をした部分、これはそのとおりでございますか。
  103. 三角哲生

    三角政府委員 いま早口でお読みになりましたのであれでございますが、私の耳で聞き取った限りではそのとおりと申し上げていいと思います。
  104. 中西績介

    中西(績)委員 それからほかのところでもう一つあれをしたいと思いますけれども、「日本国憲法に関する学習においては「憲法の条文解釈に深く立ち入る必要はなく」とした記述」、これは六年生じゃないかと思いますが、(六年)と書いてありますからね。これはそのとおりですか。
  105. 三角哲生

    三角政府委員 そのとおりでございまして、そしてその後に従来と同じ、「以上のような日本国憲法の基本的理念が民主政治の根底を支えていることを理解させることが大切である」、前は「理解させる必要がある」とありましたけれども、「理解させることが大切である」というふうに直して、もとの文章、第一版からあります文章が続いております。
  106. 中西績介

    中西(績)委員 私がいま確認しましたように、日本国憲法にかかわる部分についてもいろいろ指摘がしてあるようでありますが、この分については、また、現物を入手いたしまして、そして正確を期して論議をしないと後で論議がまた重なりますから、その程度でおさめておきます。  そこで、先般から質問を申し上げておりました平和教育の問題ですね、平和教育。この点でお聞かせをいただきたいと思います。  先般お聞きした際に、一つは憲法前文について改善意見云々ということでずいぶん時間をかけて論議をいたしましたけれども、この点については再調査しましたか、それともまだしてないか。時間がありませんから、したかしないかだけ答えてください。
  107. 三角哲生

    三角政府委員 御指摘の教科書に関する検定の具体的内容につきまして、先般の御論議がございましたので、改めて調査をいたしました。
  108. 中西績介

    中西(績)委員 それじゃ、その調査した中身について文章で提示していただけますか。
  109. 三角哲生

    三角政府委員 ここで御説明を申し上げることはいたしたいと存じますが、文章でお出しすることについては差し控えさせていただきたいと存じます。
  110. 中西績介

    中西(績)委員 それでは調査したその調査結果、中身について資料で提出を要求いたしますが、委員長、取り計らってください。
  111. 三角哲生

    三角政府委員 検定内容に立ち入ることになりますので、資料という形でお出しすることは御勘弁願いたいと思います。
  112. 中西績介

    中西(績)委員 いつもそういう状況になるわけですね。肝心なところになると資料も何もこっちには手渡らない。こういうことになっていきますと、先般からあれほど時間をかけて論議したことが、調査をするということになり、調査した結果が資料として提出をされないということになると、先ほどから私が申し上げるように、この立法の審議をする場としていかがかと私は思っておるわけであります。委員長、この点ぜひ取り計らいをしていただきたいと思います。
  113. 青木正久

    青木委員長 中西君のお申し出の点につきましては、理事会で御相談いたします。
  114. 中西績介

    中西(績)委員 これは理事会で取り計らいをするということでありますから、理事会にお任せをしますけれども権威のためにもぜひこの点を実現させていただくことを強く要求をしておきます。  そこでその次の問題でありますけれども、原爆などを含みまして戦後の教科書内容を改訂時期ごとにできるだけお示しいただきたいということを申し上げておりましたけれども、この点についても提示をするということになっておりますが、きょうはこれは聞きません。したがって、この分もあわせまして資料として御提供いただければと思っています。ですから、委員長、この点もあわせて御討議いただけますか。
  115. 三角哲生

    三角政府委員 ただいまの件は調べさせていただきたいと存じますが、私ども文部省内に前の教科書全部は取りそろっておりませんので、時間をちょっとちょうだいいたしたいと存じます。
  116. 中西績介

    中西(績)委員 大臣、先般もこうして提示をするということのお約束をいただいていますから、これはぜひ実現をさせていただきたいと思うのです。では、いま答弁ございましたので、一定の期間かかることはわかりますが、しかし、できるだけ早い時期に実現をさせていただくようにお願いをしたいと思います。委員長、この点よろしくお願いを申し上げたいと思います。  そこで、この部分でもう一つ、私は問題として出しておりましたが、先般、長崎における数等についていろいろお調べをいただいておったようでありますけれども、その点で、出されました、答弁のありました中身が、五十六年度の実施校が八日が三百八、九日が六十、そして十日が五十二、こういうことで、そこだけを総合計いたしますと三百六十校。学校数からいいますと六百七校あるわけでありますから、そうした数が出ておりましたけれども、私の方で調べましらそれがちょっと数字的に違っておるので、ひとつその点についての確認を簡単にしたいと思います。私たちが調べたところでは、九日六十校というのが八十校になっています。そのほかのところでは大体似通っておるわけであります。そのほかの八日一日、五日、六日、それから十一日、そういうところが全部入っておりまして、大体実施したかしないかがわかる仕組みになっています。文部省からは三日間だけをこの前答弁いただきましたので、いまそのほかのところがありますか。
  117. 三角哲生

    三角政府委員 そのほかのところは私ども聞いておりません。もし必要があれば、私どもの方からも調べてもいいと思います。
  118. 中西績介

    中西(績)委員 当日だけがうんと違いが出ておりまして、ほかのところ、八日、十日もわずか違いがありますけれども、いずれにしましても、ほかのところが入れば三百六十に対しまして大体全体的な数が出てくるのではないかと思いますので、そのことについてはもう触れる必要はないと思います。  そこで、私がなぜこのことをこのようにして指摘をするかということでありますけれども大臣、ぜひお聞きいただきたいと思いますのは、こうして八月九日が長崎に原子爆弾が落とされた日であるというのは御承知のとおりであろうと思います。そこで、なぜこのようなことが起こってきたかということをさかのぼって調べてみました。結局、十年間のこうした平和教育というものを行う日が大体決定をいたしまして、やったのですけれども、なぜこれが起こったかというと、長崎に原爆が落とされたのは八月九日であるという正解者の数が、これはもう例だけでありますけれども、たとえば小学校五年を例に挙げますと一七%しか正解者がなかったというのですね。それから中学一年で二七・一%、中学三年で三八・五%。それから何時何分であったのか正解者を調べたところが、小学校五年で一六・七%、中学一年で二五・八%、中学三年で二七・六%という数字になっていて、すでにこの八月九日というのが風化されつつあるということがだんだんわかってきた。こういうことから、これでは問題があるのではないかということでもって教育の日として設定をすべきではないか、そして、全員が学校に集まって、十一時二分に鳴らされるサイレンとともにすべての子たちがその日にその場で一斉にそのことをもう一度思い起こそう、そして、戦争の悲惨さと原爆の問題について皆さんが本当に知り合おう、こういうことが図られたのがこの事の起こりであります。  ところが、実際にやり始めたところがいろいろな支障が出てきた。これに対して一番支障になったのは、実施をするに当たって問題になったのは何かというと、夏休み中における学校の登校日決定に当たって、平和教育などというものは平常やればいいのだから特設する必要はないという声、結局、こういうことによって登校日設定のときにこれがまず第一に消されていく、こうしたことを教師が提案をしても消されていく。それはどこからくるかというと、結局、校長、教頭、あたりからそのことが言われてやられるということであります。さらに去年の場合が一番顕著でありますね。それは何と申しましても日曜日に当たったということでありますので、これが大変問題になって、この前同僚の佐藤君の方から指摘がございましたように、いろいろ問題が出てきた。結局、いままで一〇〇%近くやっておったところだって、管理運営面からいろいろ事情があるからそれは取りやめるべきであるということを主張したわけです。  ところが、この八月九日にやることの意味というのを、文部省が設定する場合になぜその日を祝祭日にするのかということを考えてみた場合に、歴史的なものから実際にあった日、あるいはすべてが本当に身に体してそのことをお互いに認識し合うというためにはその当日が一番いいということははっきりしているわけですから、こうしたことに対して実施をしようとすることに対して、たとえば天皇誕生日が、日曜日だからそれならあくる日にしましょうとか、こういうことにはなかなかならないと思うのですね。  ですからこうしたことを考えてまいりますと、私は何としても、こうしたことを学校で話し合いをして職員会議で校長さんも含んで決定をしておっても、地教委からの通達によってそれが全部消されていく、そのために今度は管理職である校長、教頭さんが非常に苦しい立場に立たせられて、態度変更して、いままで決定しておったけれども地教委の指示があるから登校は認められない、そうして生徒出校については管理上思わしくないとかなんとか理由をつけてこういうようなことが消されていくということになると、これは大変な問題ではないだろうか、こういうように私は考えますので、長々と申し上げましたけれども、この点についてむしろ教育の中に生かしてほしいという長崎市長のアピールの中にもありますように、ぜひそうしたことが当日取り組まれることが一番よろしいのではないか。むしろほかの事情によって、主体になっておる生徒あるいは教師、そういう人たちがどうしてもそこはできないというならまだしも、しようじゃないかと言ったってそれが消されていくということになると、主体はだれだろうか、教育委員会のための原爆投下の反省日であろうかということになってくるのではないかと私は思うのです。そういうことを考えますと、大臣、どのような御見解をこの点についてお持ちでしょうか。
  119. 小川平二

    小川国務大臣 ただいまのお仰せになりました御論旨は私にも十分理解のできることでございます。具体的にどのようにするか、たまたま日曜にかかっておるときどのような扱いをするかということにつきましては、地教委の指導のもとに現場の学校が決定すべきことと存じております。ただいま仰せのように、学校においては八月九日に行おうとしておるのを地教委が指導して一日延ばさせたという事実があるかどうか、これは承知いたしておりませんので調べてみないとわからないことでございますが、仰せの御趣旨は十分理解いたしておるつもりでございます。
  120. 中西績介

    中西(績)委員 それでは、これまた大変恐縮ですけれども、いま言うように地教委なり学校で決定をしておっても、それは後になって通達と称して変えさせるとかいろいろなことが出てきておりますから、学校で一番いい日だ、日曜日であってもみんなで努力しようということでやっておるのに、それを変えさしたことについて、そうした具体的な事象等についてまだ調べておらないということでありますが、一昨年の実施された数、去年の実施された数を見ると歴然としておるわけですから、そうしたことがおわかりにならなければ、いまここで論議するにも困難でありますから、そうした点について一〇〇%近くは八月九日にやっておるのに、それが本年になって大変な混乱が起こったということ自体が問題でありますから、もう一度ぜひ調べていただきたいと思います。  私はなぜこのことを申し上げるかといいますと、そうした歴史的事実なりなんなり、このことを大事にしなくてはならぬということを申し上げたかったからであります。この前も西独のことをちょっと例に挙げまして説明申し上げましたけれども、そうした現実、歴史的事実、それから目をふさいだり、耳をふさいだり、あるいはそうしたものの研究を、あるいはそのことの事象を認めようとすることを抑制あるいは抑止することが大変危険ではないかという気がしますからこのことを申し上げておりますので、この点はきょう論議にありませんでしたけれども、ひとつ十分御検討をいただきたいと思っています。これもまた後日になると思いますけれども、何かの質問でもあればその際にお聞きいたしますので、この点はお調べいただきたいと思っています。  それから、わずか時間が残っておりますので。これはまだ十分でありませんから、大変残念なんですけれども、先般の研修問題で最後にお聞きをしたのですが、この点だけは御認識いただきたいと思いますが、予算書についてはこれから後、具体的に提出をしていただいて、私たちが調べる際にわかるようにしていただきたいと思いますので、この点のお約束をいただけますか。
  121. 三角哲生

    三角政府委員 予算書は、お手元にお届けできると思います。
  122. 中西績介

    中西(績)委員 私は、少なくとも文教委員であれば、予算委員会でないからといって軽視することなく、具体的にあるわけですから、できるだけそうしたものを私たちが要求する前に御提出をいただくことをお願いを申し上げておきます。  次に入ります。  先般、「教員研修の充実について」という八項目にわたるものにつきましては変わっておらないということを確認をいただきましたので、そのように理解してよろしいですか。
  123. 三角哲生

    三角政府委員 先般というのはいつの先般でございましょうか。かなり前の……(中西(績)委員「いいえ、違いますよ。この前の、一週間前ですかね。——一週間ではありません」と呼ぶ)そうでございますか。私。ちょっと記憶にございませんけれども、いま御指摘の八項目は、恐らく昭和五十三年四月当時に当国会での御論議に基づいてまとめたものかと思いますが、その基本は私ども変えておりません。
  124. 中西績介

    中西(績)委員 この前、文部大臣からそういう御回答をいただいたのですけれども、それでは変わってないということでしたら私申し上げますけれども、私、文部省からいただいた資料で、文部省主催のもの、それから助成するもの、いろいろあるわけであります。そうしたものについて細かくきょうは質問を申し上げようと思って参っておりましたが、それができなくなりましたから、この点一つだけお聞きをしたいと思います。  文部省の主催をする中央研修方式ですね、あるいは講座と言うのですか何と言うか知りませんけれども文部省主催のものです。これは参加方式はどうなっておるのでしょう。
  125. 三角哲生

    三角政府委員 ただいま御指摘の講座といいますか、これは幼稚園小中学校、高等学校及び特殊教育諸学校の校長、教頭及び中堅教員を対象にやっておるものであると思いますが、これらは、それぞれの都道府県の教育委員会の推薦に基づいて参加者を私どもは参集していただいております。
  126. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと参加の方式は強制参加でありますか。言いかえますと、業務命令によって出されるものですか。それから、旅費はどうなっているのでしょう。
  127. 三角哲生

    三角政府委員 これらの研修はかなりの期間にわたるものでございますので、それぞれの教育委員会からこの講座への参加を出張という形でやっておりますから、出張というのは任命権者の命令に基づいて出張するわけでございまして、それに伴いまして旅費、日当等も支給される、そういう形で行われていると思います。
  128. 中西績介

    中西(績)委員 だから命令研修だということですね。命令で研修をさせるということ。  それから旅費は文部省が払うのですか。
  129. 三角哲生

    三角政府委員 研修参加の経費でございますけれども、この研修に要します、宿泊研修でございますので食事代などもあるわけでございます。それから施設の利用料それから交通費、これらの実費額を負担する県が多いようでございます。  なお、都道府県が支出しますこういった費用は、小中学校の教員につきましては義務教育費国庫負担法で、それから高等学校の教員につきましては地方交付税措置で積算をいたしまして、財源的な措置をいたしております。
  130. 中西績介

    中西(績)委員 直接文部省から支払いはしないけれども、自治省のそうした措置によって措置されている、こういうことですね。  そこで問題は幾つかのあれがあるでしょうが、そうした中で私が聞いておる中で大変不可解と思われるようなことを聞くわけであります。参加をされる人の発表するレポート、これを、本人が発表しようと思ってその学校の実態等中身についてずっと書いておると、それを全部チェックされて、書きかえさせられる、県教委の指導主事あるいは学校長、こういう人に数回にわたって書きかえさせられて、内容的には本人が言おうとすることと全然異なったようなレポートを持って参加をさせられたという例が幾つかあります。県名は申し上げません。こうなってまいりますと、この講座だとか研修というものが、「教員研修の充実について」という中の第一項目に「教員研修一般については、教員の自主的な意欲を重んじ、上意下達に陥らぬよう留意する。」、こうあるわけですね。そしてその後の「文部省が主催する中堅教員を対象とした研修講座については、従来からその充実を図ってきたところであるが、今後とも、講座及び対象人員の増に努める。」という中で、この充実を図るということが大変大きな意味を持っておるのではないか。ですからお聞きをしますけれども、いま言うような実態があるとすると、この充実を図るということは、内容的に全部変更さして、文部省が画一的あるいは統制的な研修にしておるということを言うのですか。
  131. 三角哲生

    三角政府委員 講座の内容ないしは規模の充実ということが考えられますが、規模は当時といまとそう変わっていないのじゃないかと思います。内容は、講師をどういう方に頼むかとかあるいは一般教養的な内容をどのようなぐあいに盛り込むかとか、いろいろこれは参加した方たち意見も聞きながら、年々改善を図っていくべきだ、こう思っております。  なお、ただいま御指摘になりましたが、レポートのようなものを私どもは義務づけて出してもらうというような運営はしていないようでございます。
  132. 中西績介

    中西(績)委員 これに参加した人がそうしたレポートなんかを全部出した際に、県の教育指導主事あるいは校長、そういうところから指摘されて何回かにわたって書きかえさせられて提出をさせられた、こういうことを言っておるのです。数県にわたってそういうものが出てきておる。だから、このことを考えますと、先ほど私が指摘をしましたように、その充実を図ってきたということは、画一的であり統制的なものを考えておらないと言うけれども、その事実は事実としてあるわけですから、この点が大変問題だと私は思っておるわけであります。  この点を、いま言われたことではちょっと納得しかねますので、その事実を調査していただけますか。
  133. 三角哲生

    三角政府委員 私どもは、こういう講座に、たとえば文部省の研究指定校の研究結果の発表会といいますか、それのための協議研究会のようなことでございますと、これは当然ですが、研究の経過並びにその成果といいますか、そういうものについてまとめたものを持ち寄って研究して、同士でまた検討し合う、こういうことがございますけれども、こういう研修講座でレポートを義務づけているということはございません。したがいまして、ただいま中西委員指摘のような何かを用意したらそれを指導主事が内容について注文をつけたという話も聞いておりません。  ただ、四週間とかそういう出張でございますから、私どものような一般行政職の場合も同様でございますが、出張に行って帰りますと、復命書と申しますか出張報告書のようなものを書いて任命権者のもとに出す、こういうことはあると思いますが、そのことかどうかもわかりませんけれども、もしそういうものでございますとすれば、これは私どもが調べたりする性質の事柄ではないのじゃないか、こういうふうに思うのでございます。
  134. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、これを見ますと、レポートについては校長、教頭がチェックをし、最後に県教委がそうしたことをチェックをし指導をする、そして本人が知らぬ間に文章が変えられたりした例があり、その意図が変わっておるというようなことがあるわけです。これは文部省主催の講習会の中で出てきた問題でありますけれども、そうしたことがいまないと強弁しておりますが、いまの現場の実態では、いろいろなところでやられる研修会なりについてもそうした事態が出てくる可能性というのは非常に強いことを私は指摘をしておきたいと思います。これから後、研究指定校の問題であっても、実態について明らかにしなければならぬのに、その数を改ざんしたり何かすることによってごまかすという、見せるための研究をやるというようなことになったのでは何にもならないわけであります。  そうした問題があるということを私は調べてきたわけですから、ぜひ大臣もこの点を認識していただいて、自後そうならないようにぜひすべきだと思いますけれども、この点についての御意見をお聞かせください。
  135. 小川平二

    小川国務大臣 仰せのような事実が仮にあるといたしますれば、これは申すまでもなく研修本来の趣旨にもとることでございますから、今後是正を図ってまいります。
  136. 中西績介

    中西(績)委員 研修問題で最後に。  そのほか私、ずっと調べましたところが、新任研、新任者採用の研修あるいは教職五年経験者研修、いろいろあるわけです。この中身をつぶさに見ますと、たとえば中堅と申しますか五年経験の研修、四日間なら四日間のものを見てみます。そうすると、五年間経験した人たちがまた再び、この一方的な、さっき私が指摘をしましたように「教員研修一般については、教員の自主的な意欲を重んじ、上意下達に陥らぬよう」とあるけれども、そうなってない。これを見ますと、一日目の九時三十分からずっと受け付けが始まりまして、いろいろな行事日程が組まれている。これを見ると自主的なものは何もないのですね。全部一方的に、講師がおって、それを決めていくというやり方です。これはある県の例です。ここに印刷した例がありますけれども、これは間違いじゃない。  それから新任研についても、たとえばこれは校内でやれという通知が出ています。「新規採用教員の校内研修について」という通知が教育長名で各学校長に対して出ています。これは高等学校です。この日程等中身を細かくずっと見ていきますと、一般研修から始まりまして授業研修と、こうあるわけですけれども、その中身を見ると本当にやらなければならないようなことはほとんどやられてなくて、この内密は余りにも法律法律、すべてをみんなどう理解するかということで押し込んでいくというような上意下達方式以外にはないですね。  それから別の県の新任研のこれを見ました。これは小中学校であります。これは今度、学校でやるのでなくてどこかに集めてやる分だと思いますけれども、この分をずっと細かく、つぶさに全部読ませてもらいました。そうしますと、これもやはりそうですね。ですから私、いま細かくこれを指摘する時間がございませんので、こうしたものを見てみますと、本当に先ほど言われました「教員研修一般については、教員の自主的な意欲を重んじ、上意下達に陥らぬよう留意する。」ということが骨抜きどころか、中身はなくなっていっておると言っても過言ではありません。  それと、新任研、新採用の場合また特に言えることではないかと思っておりますけれども内容的にこれとはまた別に、文部省が五十二年三月十八日に確認をされた資料がございます。いまここで読み上げる時間がございませんから申し上げるわけにはいきませんけれども、「新規採用教員等研修事業について」という中身がございますけれども、これも本当に実態に即応したものになっていません。この文章どおりにはなっていません。  そうしたことを考えますと、私はぜひこうした問題について、時間があればもう少し具体的にこれらの点について指摘をしていきたいと思っておりますけれども皆さんが出されたこうした確認された事項を内容的に本当にみずからが守るという姿勢になってもらわないと、この研修そのものが大変形骸化されていく、また、やることが結局一定の枠の中でしか物を発想しないという教員をつくり上げていく、すべての皆さんの創意工夫、そうした発想というものを抑制することになるわけでありますから、こうした点をぜひなくしていただくよう要請をいたしたいと思いますが、大臣どうでしょう。
  137. 小川平二

    小川国務大臣 研修が、ただいま上意下達というお言葉をお用いになりましたが、そのような形式主義の弊害を招きませんように、本来の趣旨を実現できるような実りある研修たらしめるように努力をする所存でございます。
  138. 中西績介

    中西(績)委員 今度は文部省の研究指定校の問題です。  文部省の研究指定校のあり方について、どのようにして割り当てをしているかということをいまから実態を申し上げます、時間がありませんから。  これは文部省、県あたりで、県に何校だということが決まれば、今度は県教委の方で、これはどこでやるかはそれぞれの県教委によって違いがあると思いますけれども、それぞれの県教委において指導係がどこどこに何校だとかということを全部決定をするそうであります。そして小中学校、高等学校、そういうところの県の校長会を集めまして、これを今度は、市町村単位かあるいは一つの行政区画単位か知りませんけれども、そこの校長会にこれを伝達をするのだそうであります。県の指導係あたりで決定をする、そのことは、地方に行きますと教育事務所というのがございますから、そこにも伝えられて、そのことが県校長会のものと一緒になって一つの行政区画単位における校長会でそれが流されて、そこで決定される、こういう形式になっておるようであります。  ですから、そうなってまいりますと、一つの学校が文部省の指定校にされますと年限は三年ですね、これは間違いないと思いますが、この点をひとつ御回答いただきたいと思います。ここには幾らの助成金を出しておるのかお聞かせください。
  139. 三角哲生

    三角政府委員 研究指定校の指定期間は二年でございます。経費は、そのときどきの予算のつきました時期等の状況によって必ずしも全部一律じゃございませんけれども、大体一件当たり十万円ぐらいのところでございます。一件というのは研究校一校。
  140. 中西績介

    中西(績)委員 いま言われましたように、私がいたころは三年であったから、私三年と申し上げましたけれども、これが二年だということですね。そしてその学校に十万円の助成金がいくということ。  まず、この金額の方から先にいきましょう。十万円でそうした研究するということが大変困難だということ御存じですか。
  141. 三角哲生

    三角政府委員 文部省の経費のほかに、そのほかの県なりあるいは市町村等での予算等も活用の仕方があろうかと存じますが、私ども、十万円では非常に困るという御意見は必ずしも聞いておりません。ただ、御指摘のように、研究の進め方なりやり方なりによっては経費がより多い方が望ましい場合もあろうかと存じます。
  142. 中西績介

    中西(績)委員 県だとか市町村がそれに対して云々だとかいう前に、指定校として研究されたことを集約して、文部省は、そうした全国的な教育活動、教科の面からあるいは問題研究からいろいろあるわけでありますから、そうしたものに対する十万円というものがいまいかにみじめな金であるかということをもう一度お気づきをいただきたいということが一つ。と同時に、今度、これを受け入れた場合に、特定の時間設定をしないと、こうしたものが実際に、研究行為なり授業から全部の面がかかわってくるわけでありますから、カリキュラム編成しておりますけれども、そのカリキュラムどおりを改めて別途のものを組まなければこうした研究ができないということを御存じですか。
  143. 三角哲生

    三角政府委員 研究指定校としてテーマを取り決められましていろいろな角度からのアプローチと申しますか研究をこなしていく、そしてまたそれを分担し、分担した方々がいろいろな突き合わせをまたする、こういう一つの研究に対する学校としての取り組みをつくるわけでございますから、そういう意味合いで、これはやり方によって区々ではあると存じますけれども、全然何もしない場合の学校運営とはその期間、異なる体制と申しますか、カリキュラムとおっしゃいましたけれども、授業の時間割りの割り振りその他もいろいろな工夫が必要になってくる場合が現実問題としては多いだろうと思います。
  144. 中西績介

    中西(績)委員 そのことが今度は生徒全般にあるいは学校全体に、全教科的に見ますと大変なひずみを生じておるということを県教委からお聞きになったことでございますか、それとも校長会なり何なりからお聞きになったことございますか。
  145. 三角哲生

    三角政府委員 ただいまのお話でございますけれども、私どもはいま御指摘のようなことは承っておりませんし、むしろ研究指定校として非常に意欲的に、そして何と申しますか先生方が大変積極的に取り組んでやっていただいておる、そういうむしろ逆の意味合いのお話を聞いております。
  146. 中西績介

    中西(績)委員 だから私は聞いたのですね。文部省は積極面あるいはいい面があるということだけしか聞いておらないということでしょう。そう理解してよろしいですね。
  147. 三角哲生

    三角政府委員 皆さん大変喜んで取り組んでいただいておるというふうに理解しております。
  148. 中西績介

    中西(績)委員 そのことが間違いだということをぜひお気づきをいただきたいということです。私もかつてそれをやってきた一人でありますから、その点を十分知ってます。ですから結局、い言まわれておるようなことは本当の現場の実態でなしに、全部校長なら校長を通じて出てきておる面、あるいは県教委から出てきておる面を強調していまお話しいただいたと思うのですね。そこが一番問題だろうと私思います。ですから、たとえば学校の中における予算の配分はその教科に対して全面的にほかの教科の分も回さなくちゃならぬという結果が出てきているわけですね。その結果は今度はよその学校がその学校に対する全体的な——一〇〇なら一〇〇の予算しかないわけでありますから、よその分を平均して削ってそこに集中させてもってくるという方式。学校の中がそうだ、他の学校の受ける影響、予算面で私が言いましたのはそこにあるわけです。全部がそういう形で、そしてよかった、よかったという話になっておるわけです。これでは他の学校における生徒をどうするかという視点からの論議になってないということをぜひお気づきいただきたいということを私は申し上げたかったわけであります。  ですから、こうした問題についての予算措置の問題あるいは年限の問題そしてさらにまた、その内容がどうなっておるかということの実態を私はぜひ知っていただきたいと思いますので、大臣に、あわせてこの点の御理解をいただきたいと思いますが、この点について再度、本当にそうなっておるかどうか、全教職員がそうしたことをいま喜んでおられるということでありますけれども、そうなっておるのかどうか、そうした問題等について再検討をしていただきたいということを申し上げて、私は終わります。
  149. 三角哲生

    三角政府委員 研究指定校はいろいろなものがあるわけでございますが、これはそれぞれの地域でそういう研究をしようというところ、適切なところを決めまして推薦がありまして指定をさせていただく、そして二年ということでございますから、また違うテーマなり違う学校なりで取り組んでいただく、こういう仕組みにおのずからなっております。研究の結果はその学校だけでなくてその市町村の他の学校にもこれを活用していただく、そういう意味では一つの当番と申しますか代表みたいな色合いがございます。したがいまして、教育委員会等で教育委員会の予算の中からやりくりをしてその学校に厚みをつけてやる、こういう運用が行われることはある意味で自然であり、かつ必要であろうかと存じます。ただ、委員指摘のように、それがほかの学校の子供たちの経費を非常に圧迫するというようなことがありますれば好ましくない、要はその度合いの問題であろうかと存じます。  御指摘もございましたので、研究指定校を指定いたしますと、これから私どもは指定校の協議会というようなものをいたしますし、県の指導主事等にも来ていただきますので、その人たちからも実態についていろいろさらに聞いてみたい、こういうふうに思う次第でございます。
  150. 中西績介

    中西(績)委員 私は、実態を聞けというのは、そこにいらっしゃる教職員なり何なり——だからこそ先ほど文部省が出されておる文書なり確認されたことを忠実に守っておるかどうかということが一番の問題だと私は思うのです。そこではいわゆる指導主事だとか特定の人だけが来てそうしたことに参加をしていく、そのために入ってくる中身というのは、先ほども言いましたように一般の教員が書いておるレポートなりそうしたことを書きかえさせるような人たちが集まってきて論議したって、これは中身はもう全然出てきてないということになるわけです。  だから、研修そのもの、そうした講座の持ち方そのものを主体的にだれが中心になってやるか、そしてその中身は何なのか、テーマ設定はだれがするかといった場合に、皆さんがなさるのでなくてやはりそこに参加する人が主体的にそれを決めていくということにならぬと本当の研修にはなり得ない、あるいは地域における問題であればあるほど、今度は地域のそうした者が主体的にならないとそれはかき消されてしまう、教育にならぬ、こうしたところが一番の問題点であるということをこの前から私は主張しているわけです。ですから、そうした意味で、いま言われたような特定の人だけの御意見ということでなくて、ぜひそのようにしてすべてのそうした人たち意見が入り得るように、そしてそうしたものが主体的に構築されるようにした研修にしていただきたいということを申し上げて、私は終わります。
  151. 青木正久

  152. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 今九十六国会が今年に入って再開されまして、そして去る二月二十四日に文教委員会が開かれ、この席で大臣から所信の表明があり、予算の説明等があったわけでありますが、それ以降大臣に対し、また文部省全体に対しまして各党各委員から御質問があり、多くの点での貴重な質疑が展開されているわけでありますが、私いまだその機会を持たせていただけませんでしたので、きょうは文部大臣にお聞きすることをまず冒頭に一言申し上げまして、後、衆議院文教委員会の過去数年の歩んだ道を振り返って少しく意見を申しながら見解をただしてみたい、こういうふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず大臣があのごあいさつ、所信表明の冒頭で「私は、教育、学術、文化の振興を図ることは、国政の基本であると考えます。」、こういうお言葉から始まりまして、高邁な理想を述べられたわけでありますが、特にその中で私、非常にこれは大事なところと思いましたのは、「現下の厳しい財政事情のもとにおいても、文教行政の遅滞はいっときたりとも許されないという覚悟をもって、長期的展望のもとに、以下の施策を総合的に進めていく所存であります。」、こうおっしゃいまして具体的な条項を列挙され、所信を述べられたわけであります。そしてその中で現状の青少年の非行化、暴力化等の問題、こういうものにも触れて憂慮の情を述べられ、その方策を述べられておりますが、いま私が申し上げた言葉の「現下の厳しい財政事情のもとにおいても、」というこの点は、私どもがいま非常に重大に考えているところでございます。  と申しますのは、率直に申し上げまして、過去の自民党政府の赤字国債等をどんどん発行しての放漫財政の結果、ここで大きく行政改革をして整理をしなければならないという事態に立ち至った。ところが率直に言わしていただきますと、あの衆参ダブル選挙で自民党が衆参多数を占めて以降、そのやり方が、私どもから言わすと非常に財界主導の行革ではないか、そういう中で一番しわ寄せを受けようとしているのが教育であり福祉であり、そして地方財政ではないか、そしてそれは減税の問題にも絡んでまいりますが、国民生活にあらゆる角度からひしひしと重圧を加え、前途に大きな不安を与えてきているのではないか、こういうことを非常に憂えておる中で、小川文部大臣が就任のごあいさつの中で「現下の厳しい財政事情のもとにおいても、」というのは、いま私が申し上げたようなことを恐らく総括しておっしゃっておるのではないかと思います。「文教行政の遅滞はいっときたりとも許されないという覚悟をもって、長期的展望のもとに、以下の施策を総合的に進めていく所存であります。」、こうおっしゃったと思うのでありますが、この御決意に小川大臣の日ごろ私どもが伺っておる御人格とあわせて一縷の光明を見出したと申しますか、大きな頼りとしてひとつ大臣に御奮闘いただきたいということを、このお言葉を伺ったときに私は率直に考えたのでございます。  しかし、その後、今年度の予算から、来年度の予算編成も近づくわけでありますけれども、恐らく大臣としても非常に事志にたがうような部分も多々あるのではないかとお察しをしておりますが、この御決意についてはみじんも後退させない、困難であればあるほど教育を守ってみせるという御決意をお持ちであるだろうと思うのでありますが、この点について冒頭、大臣の御決意をもう一度承りたいと思います。
  153. 小川平二

    小川国務大臣 私が所信表明において述べました決意にはいささかも変わるところはございません。しかし、財政再建ということは日本の政治が直面をいたしております最大の課題であり、いわば至上命令だと信じております。これが財界の主導のもとに行われたという御批判は、私は必ずしもそのままちょうだいできないわけでございますが、いずれにいたしましても、財政が崩壊をいたしました暁にはもとより文教政策も福祉政策もないわけでございますから、財政の再建には文部省としても協力せざるを得ないと考えております。  しかし、どのように厳しい財政状況のもとにおきましても、文教政策を後退させるようなことがあってはならないと信じまして、改めて申し上げるまでもないことでございますが、私も及ばずながら努力をいたしまして、予算の一般歳出を超える予算をどうにか獲得できた次第でございます。今後も同じ気持ちで努力をするつもりでございます。
  154. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ただいまの御決意をぜひ堅持していただくよう、再度御要請を申し上げます。  そこで、ただいま中西委員からも現在の文教行政の現場における状況、研修の問題あるいは研究指定校の問題等についてるる報告があり、これに関する御質問があったわけでありますが、私もこれらの問題に関連して文部行政にぜひ考えていただきたいということは多々あるのでございますけれども、一応これはひとまずおきまして、過去数年、ほぼ五十年代以降の本文教委員会におきまして、委員会として特に教育の問題に関して上げた決議、あるいは各種法案を審議し、これを議了する際につけた附帯決議、これを一通りこの場で、先に進むために過去をもう一度洗い直して、率直に、それぞれがどう扱われ、どう実現してきたか、どこが足りないか、そういう点を明らかにして、今後の日本の文教行政の実りある発展に資することができればと念願いたしまして、そういう角度からただいまから御質問申し上げたいと思います。  まず、委員会決議につきましては五十二年の十一月十六日、第八十二国会におきまして、大学入試改善に関する決議、かなり長文の決議がなされております。これについて、その概略をもう一度おさらいをしながら、その一つ一つがどのように実行されてきておるか、どの部面が実行できないまま残されているのか、これをできるだけ丁寧に御説明をいただきたいと思います。それぞれ担当の部門の方からで結構でございますから、できるだけひとつわかりやすくお願いいたします。
  155. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 お尋ねの大学入試改善に関する決議、御指摘のように五十二年十一月十六日に行われておりますが、これは、背景といたしましては入試問題に関する小委員会がこの文教委員会に設置されまして、そこで審議をされ、その結果を取りまとめられたものでございます。  項目としては、全体的に六点について指摘がございます。まず、それらについて概括的に御説明し、さらに細部にわたってまた御説明いたしたいと思います。  この決議におきましては、まず第一に、共通一次試験の実施時期について最善の配慮をすること、第二点として、いわゆる二段階選抜の実施を避けること、第三点として、二次試験について受験生の過重な負担にならないようにすることなどの六点にわたって指摘されているわけでございます。  文部省といたしましては、この決議の趣旨を十分尊重し、共通一次試験の実施が決定されて以来、大学入試方法改善経費を配分する等、必要な措置を講ずるとともに、国立大学協会、大学入試センター及び各国立大学にも種々検討を願ってきたところでございます。  その結果、まず共通一次試験の時期でございますけれども、高等学校における教育への影響も配慮いたしまして、当初予定いたしておりましたのは十二月下旬というようなことで議論がされていたわけでございますけれども、それを、実施に当たりましては最大限におくらせることといたしまして、一月中旬というところに繰り下げて実施をすることにしたわけでございます。そして、次のいわゆる二段階選抜についてでございますけれども、これは徐々にではございますが実施大学が減少してきているというのが現状でございます。そして、各大学の二次試験についても科目数が減少し、それにかわりまして面接、小論文、実技試験などを課する等、選抜方法に工夫が行われたことによりまして、この改革については一定の成果が上がったもの、かように考えております。  しかしながら、なお現状必ずしも十分ではないというぐあいに私どもも認識いたしております。そして、この新しい入試の実施結果については、四回の経験を踏まえたということでもございますので、今後とも各大学においていままでの実施の経験を生かした改善が図られることを私どもとしても期待をしておりますし、また、文部省といたしましても入試改善会議等で今後の改善についても関係者にお集まりいただいて議論をしていただいているというのが現状でございます。  なお、さらに御指摘の点で、なるだけ細かく説明をというお話でございますので、さらに補足して申し上げますと、その問題点は、一つには、実施時期についてはいま概括御説明をした点でございますけれども、たとえば大学側において入学時期を変更させるなどの措置も含めた最善の配慮をすべきであるというようなことが指摘をされているわけでございますが、この点につていは、たとえば次のような問題点がございましてなお慎重な検討を要するかと考えております。それは、一つには高校卒業から大学入学までの期間の、その青年をどのように扱うかという点が一つ問題がございます。それから第二点として、高校卒業者の進学と就職の時期との関連がやはり関係が出てくるわけでございます。それから一つには、大学卒業までの期間がそれだけ長くなることになりまして、それに伴う家計の負担などをどう考えればいいかというような問題がございます。さらに、たとえば具体的に、四月から九月に入学時期を移すというようなことになりますと、私立大学の場合については、その間の問題として、空白期間についての財政的な影響をどう考えるかというようなことがございますし、ほかにも、たとえば入学時期を統一的にずらすということについては、たとえば会計年度とのずれをどのように調整するかというような問題がございまして、入学時期の変更ということについては、これらの点についてなお十分慎重な配慮が必要なわけでございます。  なお、現在、学校教育法施行規則の七十二条二項では「大学は、特別の必要があり、かつ、教育上支障がないときは、」いわゆる学年について、学年の途中において学期の区分に従って、学生を入学させるという措置は、具体的には、たとえば九月入学というような形で帰国子女でございますとか、そういうような者については具体的に実施はしているわけでございますけれども、統一的な入学時期の変更ということについては、いま申し上げたような点について問題点があるわけでございます。したがって、この点は、私ども今後ともなお慎重に検討を進めさせていただきたい、かように考えております。  それから、第二点で御説明しました二段階選抜の問題でございますけれども、これらについては、先ほども申し上げましたように、ごくわずかではございますが、減ってきている傾向にはございますが、なお現実には、たとえば五十七年度の場合で申し上げますと、実際に二段階選抜をするということをあらかじめ決めておりました大学が三十二大学八十九学部で、実際に実施をしました大学としては十三大学二十五学部というような状況になっております。これらの点については、なお今後とも努力をいたしたい、かように考えております。  なお、いわゆる二段階選抜というのは、たとえば募集定員の三倍で切るとか、あるいは東大で申し上げますと、二・八倍ないし三倍で切るというような形で実施をしているところが多いわけでございますが、中には、たとえば京都大学の法学部のように、四百点以上という点数で切る場合もあるわけでございます。  なお、関連して申し上げますと、推薦入学を実施する大学は現実問題としては増加の傾向にございまして、たとえば五十七年度の推薦入学を実施しております国立大学で申しますと、五十四大学八十九学部というような状況になっております。ちなみに、これは五十四年度では四十六大学七十五学部でありましたものが、そういうぐあいに順次ふえてきているというのが現状でございます。  さらに、面接、小論文を課する大学も増加する傾向にございまして、国立大学の場合、五十四年度で二十七大学三十三学部でございましたものが、五十七年度では三十四大学四十六学部というような状況になってきております。小論文も同様でございます。  それから第三点の、二次試験が過重な負担とならないように学力検査科目の減少などに努めるという点でございますが、二次試験において学力検査を課さない大学学部の状況は、全体的にはふえてきておるような状況でございます。五十四年度の国立の場合、四十四大学六十六学部でございましたものが四十六大学七十一学部というような状況になってきております。  なお、平均的な二次試験における受験科目の状況でございますが、これは共通一次実施前ですと、国立が七ないし八科目でございましたが、五十四年度からは、共通一次実施後の二次試験の科目の平均でございますが、国立の場合、五十四年度が二・九科目でありましたものが、五十七年度二・八科目というような状況になっておりまして、これはほぼ横ばいというような状況にございます。この点では、たとえば東大の二次試験の科目がまだ大変多いではないかというような御指摘もあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、全体的な状況としては、ただいま申し上げたような状況にございます。これらの点もなお今後努力を重ねてまいりたいと思います。  それから第四点の、受験生に受験の機会を確保するため、二次募集方式を実施するという点でございますが、定員を留保して二次募集を行っております大学学部等の状況でございますけれども、国立の場合、五十四年度は四大学五学部でございましたものが、五十七年度では十七大学二十学部ということで、それらの点は相当進捗を見ているということが言えるかと思うわけでございます。  第五点でございますが、共通一次試験への私立大学の参加実現について努力をするという問題点でございますけれども、私ども、もちろんこの大学入学者選抜の改善というのは、国公私立大学を通じて全体として考えるべきものと思っておりまして、私立大学に対しても呼びかけをいたしておるわけでございますが、具体的には五十七年度入試から産業医科大学がこれに参加するという点が改善を見た一点でございます。しかしながら、まだ参加の問題についてはいろいろ私学側の意見として、たとえば試験科目のあり方や実施時期その他、なお検討調整を要する点が多々あるわけでございまして、これらは今後とも私立大学側とも十分話し合いを進めていく必要があろうか、かように考えております。  それから第六点で言われております、共通一次試験の実施と大学入試制度の改善について広く国民の理解を求めて、受験準備の過熱防止に努力するということ、これは、御指摘のことは当然のことでございまして、私どもも、先ほど申しましたように、入試改善会議というようなところで関係者にお集まりいただいて、いろいろ議論もいただいているわけでございますが、入試の改善については、単に大学入試の問題だけではなくて、全般的にやはり学歴偏重の社会的風潮というものがまず是正されることが必要であり、そして各大学がそれぞれ特色のある充実整備を図るということも必要なわけでございます。それらが全体的な施策として行われることが必要ではないか、かように考えております。  入試に関する問題では以上でございます。
  156. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 概略のことはよくわかりましたが、いまの五点目の私学の参加というのが、いまの御答弁だと、ことし一校加わったということですか。     〔委員長退席、中村(喜)委員長代理着席〕
  157. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 さようでございます。
  158. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 そうすると、まだこの五項目についてはほとんど生かされていない。これは私学側のいろいろな御意見があってこうなっておると思うのですが、この将来の見通し、それから特に、一番解決しなければならない問題点はどこにあるとお考えですか。
  159. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のように、私学の参加問題については、指摘されてい点が、なおことし一校加わったということでは、実現にはるか遠い現状にあるかと思います。  やはり、基本的には私学については、私学自体がまず独自性といいますか、私学の独自性ということがやはり非常に私学人の意識としては強くあるわけでございまして、したがって、私学の大学入試について私学がみずからの独自の判断で基本的にやるという気分が根底にはあるのではないか、かように考えます。もちろん、その点は私どもも尊重しなければならない点であろうかと思いますが、全体的に大学入試全体について考える問題点としては、もちろん国公私立を通じて考えなければならぬ課題でございますし、したがって、共通一次に私立が参加する問題点については、先ほども申しましたような入試の実施時期の問題でございますとか、あるいは特に試験科目のあり方、たとえば私学の入試でございますと大体三ないし四科目程度で現在行われているのに対しまして、共通一次はその科目が広がる。技術的な問題としてはその辺が問題点であろう、かように考えます。
  160. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 六番目の項目の中に、「受験準備の過熱の防止について極力努力すべきである。」、実はこの問題は、共通一次あるいは大学入試という問題でなしに、今日の教育の荒廃という問題にも非常に深いかかわりのある点ではないかと思います。これは非常に重要な点でありますが、これについてどういう工夫をされておるのか、これは一大学局だけの問題ではないと思うのですが、その点具体的ないままでの施策をお聞きしたいと思います。
  161. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 基本的な点は先ほど答弁申し上げたとおりでございますけれども、大学局で対応しております事柄といたしましては、先ほども申し上げましたが、入試改善会議ということで、これは国公私立の関係者または高等学校を代表する方々にもお加わりいただきまして、入試にまつわるいろいろな問題点を御検討いただいているわけでございます。そしてそれらを踏まえまして、共通一次の内容につきましてもそれぞれ手直しできる部分については年々改善を図ってきているわけでございますが、基本的には受験準備の過熱防止ということについてどういう対応をしているかという点でございますけれども、全体的な状況で大学への進学者の数というのは、倍率で申せば、志望者に対してほぼ七割の方が大学に入っているわけでございますが、やはり一部の特定の大学に受験生が殺到するという現象が過熱な受験準備に駆り立てているということが言えるのではないかと思います。したがって、先ほども申しましたように、それぞれの大学が特色を持った充実整備を図り、その特色に応じた進路指導も適切に行われるということが高等学校の進路指導に当たりましても必要ではないか、かように考えます。  先ほども申しましたように、入試の問題は、入試の問題の改善としてはもちろん努力しなければならぬ点は多々あるわけでございますが、全般的に特定の有名大学に集中するということについては、基本的には学歴偏重というような社会的な風潮と申しますか、あるいは全体の、これは教育の問題だけには限らない社会全体の課題になろうかとも思いますし、そういうことが根底にあるわけでございますから、根本策としてはまずそういうところから改善されてこなければ、入試の問題だけですべてを解決することは無理ではないか、かように考えます。
  162. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ただいまの御答弁にもありますように、この問題は日本の社会に深く根づいているといいますか、巣くっているといいますか、いまお話しの学歴偏重、もう一つ言わせていただければ学閥優先、こういった体質というものが牢固としてなかなか抜けない、そういうものが一つの根底にあるということは御指摘のとおりだと思います。ですからこれは総合的な施策で対処しなければならないことは明らかであります。しかし、それにしてもこの受験準備の過熱というものについては、やはり直接文教行政に当たる文部当局に大きな責任があると思うのです。  ここでちょっとこの答申そのものからは外れるかもしれませんけれども、ただいまのこの言葉からは非常に密接な関係のある、つまり受験準備の過熱の防止という問題に関連して、最近週刊誌なんかが、入学期を過ぎますと、いろいろな統計報告を出していますね。その中に、東大を初め早稲田、慶応等いわゆる有名校への進学状況等が、どこの高校はどうだというようなことが盛んに出るのです。その中に国立大学の附属高校が相当数載っているように思いますが、こういう現状についてどういう御認識をお持ちですか。
  163. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘は、一部の附属の高等学校が結果としていわゆる有名大学への進学者が大変多くを占めているということについてのどう考えるかというお尋ねでございますが、附属高等学校についてもそれぞれ附属高校としての使命があるわけでございまして、教育学部、教員養成の基本をなすのが附属でございますが、しかしながら現実問題として附属高等学校について入学選抜を行う際に、高等学校ではなくてたとえば附属の小学校でございますとか幼稚園の段階では、それぞれ選抜に当たりまして、たとえば抽せん制度というようなものも取り入れて、そういう意味では機会を公平に考えるというとり方もいたしておるわけでございますが、やはり高等学校レベルになれば当然に学力を見るということも大事なことでございますし、附属の高等学校へ来ている生徒が結果として優秀な生徒が入っている、そのことが結果として有名大学に入学者もたくさん出るという結果になっているわけでございまして、私どもとしては決して高等学校全体がそういうことになるというぐあいに考えるべきではないことは当然でございますけれども、しかしながらそういう附属の高等学校のあり方について、ただいま文部省として具体的にどうこうということを申し上げるのはいかがか、かように考えております。
  164. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私の記憶では、私がかつて小学校の教師をしていたときの教え子が東大を出まして一時書籍会社に就職したのですが、どうしても学校の先生になりたいということで東大の附属の高等学校に参りました。現在は秋田大学の教授をしておりますが、そのときに東大の附属高校のあり方を聞きまして、私はなるほどなと思って、これはやはり本当に教育を研究する、あるいは学問を探究する国立大学の附属高校のあり方というものの一つの形を示し、いい意味で私は感心したのであります。それは決して優秀な子供だけを集めるのではなくて、いわゆる教育的な研究という課題のもとに生徒を入れておる。現在どうでありますか私存じませんが、あの当時の東大では、たとえば一卵性双生児、二卵性双生児、そういうようなお子さんをそれぞれ入れて、その子供たちがどういうふうに成長するかというふうなことを十分、教育の中であわせて研究している。私は、国立大学の附属ということでわざわざ附属の小学校なり幼稚園なりあるいは高校なりを置くとすれば、これは単なる一般の高校と競争するといいますか、そういうのでなくて、国としては一つの研究視点とかそういうものを持って、それぞれに任務を与えたそういう附属のあり方というのが、特に国立大学において率先そういうことを工夫されることがむしろ本筋でなくてはいけないのではないか。ところが、教育、教師専門のような大学、国立大学の附属も、同じように受験競争の戦列の中の高校というような位置づけの学校が多いのではないかということを私は感じまして、いま宮地局長はこの点についてはそう容喙すべきでないかのようなおっしゃり方だけれども、これはちょっと反省をしていただく必要があるのじゃないか、こういうふうに思いますが、もう一度ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  165. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の東大の附属高等学校については、おっしゃるように一卵性双生児、二卵性双生児というような子供を入れる、そして比較、研究をするというような基本的な使命を持った高等学校であるというように理解をいたしております。ほかの附属高等学校についても、それぞれ具体的にもっと附属高等学校のあり方としては、教育、研究の観点から、それぞれ目的なりそういうものをしっかり持った上で考えるべきではないかという御指摘でございまして、御指摘の点は十分私どももお考えとしてはそういうお考えも承るわけでございますけれども、ただ、現実にやはり学校というものは歴史なり伝統なり、そういうものがそれぞれあるわけでございまして、そのことを無視して改善、改革を図ってもなかなかうまくいかないというのが現実問題ではないか、かように考えます。そういう点で、御指摘の点は一つの課題ではあろうかと思いますが、私どもも今後慎重に検討さしていただきたい、かように考えます。
  166. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私いま質問申し上げながら、また思い出しているのですが、私、当時の東京高等師範、今日の東京教育大学、その附属の高等科というのがありまして、そこを卒業してそして豊島師範学校に進んだのですが、そのときにあの学校でも一般の附属はやや恵まれた家庭のお子さんがそろっているような附属小学校ではありましたけれども、その中にこの高等小学校というのをちゃんと設けてありまして、これは原則として上の学校へ行くというような希望の者でなく、あの当時の国民生活の中で、高等小学校を終わるとそれぞれでっち奉公に行くとか、商売の跡を継ぐとか、そういう層が非常に多かったわけです。これからもう出たらすぐ社会に出なければならない子供の教育を高等科二年間でやるのだ、そういう方針で生徒をとり、私はそういう方針に外れて一応師範学校に進んでしまったわけですけれども、そういうちゃんとした一つの方針を持っておりました。もう一つ、大変印象に残っておりますのは、東京高等師範の附属第五部というのがございまして、これは昨年国際障害者年というようなものも設けられるところまできておりますが、あの当時からすでに知恵おくれの子供たちをそこに集めて特別の教育というものについて非常に草分け的な研究と実践をされていたのではないか、やはり国立大学というのはそういう点にちゃんとした一つの、常に教育の本質に立ち、しかも先見性のあるそういう施策というものを進めることが私は重要じゃないかと思いますので、いまそれを思い出したわけです。  宮地局長の言う校風もあるし、伝統もあるから、そうにわかにいかぬとおっしゃいますけれども、私は国立大学の附属についてはこの辺でもう一遍十分根本から考え直していただくことが必要ではないかというふうに思います。この点について、できれば大臣からひとつお答えをいただければと思います。
  167. 小川平二

    小川国務大臣 国立大学の附属高校等の本来あるべき姿についてただいま御意見の開陳がございました。御趣旨は十分了解できるところでございます。ただ、早急にこれを実現いたします上においていろいろ問題点がありますことは、ただいま局長から答弁を申し上げたとおりでございますが、今後それらの問題点を逐次解決いたしまして、本来あるべき姿に持っていきたい、こう考えております。
  168. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 大学入試改善に関する決議に関しましては一応終わりまして、その次の委員会決議として、第九十一国会で上がりました学級編制及び教職員定数改善計画促進に関する件がございます。この点について、その経過、この決議のその後の実践、そういうものについての御報告をお願いします。
  169. 三角哲生

    三角政府委員 昭和五十五年の公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の改正に際しまして、「四十人学級編制及び教職員定数改善計画について、概ね三年後に、各般の状況を勘案し、その後の計画につき検討を行い、昭和四十九年標準法改正案に対する本委員会の附帯決議の趣旨を尊重し、最善の努力を行うべきである。」との附帯決議が本委員会においてなされたわけでございます。  そういうことでございますが、この計画の見直しの問題につきましては、その後さきの国会において成立いたしましたいわゆる行革関連特例法によりまして、特例適用期間中は改善規模を財政事情を考慮して抑制する、こういうぐあいにされたところでありますので、行政府であります文部省といたしましては、この特例適用期間中の改善規模につきましては、この法律の趣旨に沿って運用していく必要があるだろう、こういうふうに考えております。
  170. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 ただいま御答弁になった点は、われわれとしては非常に残念であったわけでありますが、すでにそういう行革のあらしの中でやむを得ない事態になったと思いますが、しかし、この「概ね三年後」いう件については、今日でも生きているとお思いですか。
  171. 三角哲生

    三角政府委員 この特例適用期間中の改善措置の抑制ということでございますが、これは御指摘の附帯決議もございましたし、それから御承知のような自民党と社会、公明、民社の三党の間の公党間の約束、こういうものもあったわけでございますけれども、そういう経緯も踏まえまして、この特例期間中、毎年度の改善規模を定めるに当たりましては特に国の財政事情を考慮するという旨を法律の中に明記をして、法律上の義務という形に持っていった、こういう経過になっておるわけでございます。そういうことで、わざわざこの行革関連特例法という中に入れまして国会にお諮りして実施される、こういう運びになったというふうに私も理解しておりますので、公党間のお約束というものはあるわけでございますけれども、四十人学級などの定数改善計画の実施については、やはり私どもはこの法律の定めに沿ってやらざるを得ない、こういうふうに思うのでございます。  おおむね三年後の見直しということは、経緯について申せというお話でございましたから振り返ってみますと、財政再建に対処するという方針について、御承知のように臨時行政調査会の答申が出されたわけでございます。したがいまして、この御決議がありました五十五年当時から見ると、その点はまた一つの新たな事態が生じた、こういうことでございまして、このような事態を踏まえまして、国の財政の非常事態に緊急に対処するために特例適用期間中に国の歳出の規模の縮減策をとる、その一環として、せっかくお決めいただきましたのでございますが、この定数法に基づく教職員定数増についても抑制せざるを得ないという状況にございますので、政府側としては、先ほども申しましたことの繰り返しになりますが、行革関連特例法の趣旨に沿ってこの期間中は対処していくほかはない、こういうふうに思うのでございます。
  172. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 多少心細い御答弁のように伺うのですが、この行革期間中四十名学級への年次計画をおくらせるといいますか、制限するという事態に追い込まれておると思います。しかしそのときも、たしか本委員会で、どなたであったか記憶ありませんがいろいろやりとりを伺う中で、全体の十二年という計画については動かさない、これは必ず行うという明確な御答弁があったように存じておりますが、その態度は変わっておりませんか。
  173. 三角哲生

    三角政府委員 これは行革関連特例法の審議の際にも御質疑があったことでございます。私どもとしては、今回の学級編制及び定数改善の全体計画の規模と申しますか、並びにただいま御質問の十二年間という期間、これは変更をいたさないという方針でございまして、いまも変わりございません。     〔中村(喜)委員長代理退席、委員長着席〕
  174. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 私は、本当は十二年間ということを念を押すために質問したくはなかったのですが、結果的に少なくとも十二年は動かさないということでございますから、それはそれとして伺いますが、この附帯決議につけた「概ね三年後」という意味は、この十二年間というのをさらに縮める、それを検討する時期として三年後というふうに考えたのが当時の委員会の大勢ではなかったかと私は思いますが、そうじゃありませんでしたか。
  175. 三角哲生

    三角政府委員 「各般の状況を勘案し、その後の計画につき検討を行い、」ということでございますので、これは読み方はその方、その方のお立場なりお考えでできるわけでございますけれども、長谷川委員のお立場ではそういう見方をなさるだろうということはよく理解できます。
  176. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 行革のために十二年も怪しくなったのでは大変でありますが、十二年は堅持する、しかし三年後に検討するというあのときの趣旨は、私どもとしては十二年は悠長過ぎる、もっともっと、本当はむしろ中学あたりから先にやらないといけない。いまの教育の荒廃というようなことをにらみますと、一番感じやすい、また大きく揺れ動きやすい時期の方を先にしてほしいくらいな状況もあるわけでありますから、そういう意味で、総合的に三年後に検討するというこの精神はひとつぜひ銘記されまして、いろいろ困難がありましょうけれども前向きの姿勢で今後対処していただきますように強く要望したいと思います。この点について文部大臣一言御決意を伺います。
  177. 小川平二

    小川国務大臣 第五次定数改善計画全体の規模におきましても、これを達成するために必要な期間についても変更を加えておらないことは改めて申し上げるまでもございません。財政再建期間終了の時点でその後の計画を検討いたすわけでございますが、財政の前途を展望いたしますと、いわゆる再建期間が終了した後におきましても非常に逼迫した状況がなお続くものと考えざるを得ないと判断はいたしております。そのような状況下で果たして十二年という期間をさらに短縮できるかどうか、いまの時点でこれはなかなか申し上げかねるわけでございますが、申すまでもなく諸状況が許しますのならば、少しでも早く目標を達成したいと考えておる次第でございます。
  178. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 委員会決議の二件については一応以上で終わりまして、今度は、その後委員会の各法案を審議した中でつけられた附帯決議について御質問申し上げたいのですが、すでにもう時間が来ておりますのでどうしましょうか。いままで過去五年ほどの委員会の法案審議の際につけられた附帯決議を概略御説明願えますか。これは一件一件ないと無理でしょうか。——それじゃ一つずつで、残ったところはまた次の機会ということにしましょう。  第七十五回国会、昭和五十年三月二十六日の委員会で国立学校設置法の一部を改正する法律案審議された際につけられた附帯決議について、その内容とその後の取り扱い、今日までの努力の跡について御報告願います。
  179. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 国立学校設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議で、いま私ども伺っておりますのは、五十一年五月十二日の附帯決議ということで通告を伺っておったわけでございますけれども、それからでよろしゅうございましょうか。
  180. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 いま私が聞いたのは、五十年三月二十六日のなんです。  内容を申し上げなかったのですが、これはこういう決議です。「分子科学研究所等国立大学共同利用機関の運用にあたって」という決議です。本文を見ますと、   政府は、分子科学研究所等国立大学共同利用機関の運用にあたっては、その設置の趣旨にかんがみ、国立大学教員に加えて、公・私立大学教員等の研究者が一層現状より容易に共同利用できるよう特段の配慮を加えるべきである。   右決議する。こういう分子科学研究所等の共同機関の利用についての決議です。
  181. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大変恐縮でございますが、五十年の決議のことについて事前に御通告いただいておりませんでして、所管が学術国際局の所管事項になりますので、その点については私から答弁申し上げるのはちょっと困難でございますが、事柄としては、十分その趣旨を尊重して生かされておるものと、かように考えております。
  182. 長谷川正三

    ○長谷川(正)委員 それでは、その次の五十年五月二十三日も通告してありませんか。これは昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議です。これは綿々として今日まで続いている問題ですが、このときの内容、そしてその後の努力、これはどなたか用意してありませんか。——通告を私の方はしておったつもりですが、ちょっと前半抜けておるようですから、これはたくさんありますので、今度また次の機会をいただいてまとめて御質問することにして、本日の私の質問はこれで終わります。      ————◇—————
  183. 青木正久

    青木委員長 次に、石橋一弥君外三名提出、私立学校振興助成法の一部を改正する法律案及びこれに対する石橋一弥君外三名提出に係る修正案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三浦隆君。
  184. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これまでの質疑の中で、学校法人化をできなかった理由として幾つか挙げられました。たとえば幼児の減少が当初の予測よりも大幅なものとなっており、今後の幼稚園経営に深刻な不安が生じている、あるいは学校法人について本山など宗教法人の場合の同意が得られない、あるいは法定相続人となる家族の同意が得られない、あるいはまた学校法人化に必要な園地の取得または借用について地主との交渉が難航している、または必要な資金確保が困難である、あるいは現状のままでは幼稚園設置基準に満たない、あるいは法人化等の認可申請のための準備がおくれ、時間的に間に合わないとか、幾つかの理由が挙げられております。  そしてまた、私の方の手元には、地元の幼稚園経営者の方から、たとえばこの手紙をよこした人は学校法人化をすでになし終わっているのですが、「小生の園のように三十年代に学法化しているところの関係者としては放置してもよい筈なのですが、」、学法化しない「その園は何十年も地域に根付き、街の一角を成し、数千人の卒園児がいることを思うと、そうはいかないのです。」、何とか三年延長してほしいというようなことがあるわけです。私も気持ちとしては十分にわかりますけれども、しかし五年といういわゆる期限を限っていて、そして果たして三年というのをそのまま延長してよいものかどうかということについては、やはり慎重に考えなければならない問題である、少なくともこのままの法案だけで通すことは困難じゃないだろうかという気がしております。  特に憲法八十九条と私学助成関係について、何らかの整合性を図っていく必要があるだろうと思います。そこで、憲法八十九条というのは、御承知のように、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは團體の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に對し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」、こうありますが、これについては当初から、私学助成は憲法違反であるといったようなきわめて厳格な解釈が存在したわけであります。特に憲法学界としては、宮澤学説を初めとして大変有力な見解が当初から、現在もですが、そういうようにあるわけです。  たとえばこの解釈によりますと、「「公の支配」とは、国または地方公共団体の支配の意味である。「支配」とはその事業の予算を定め、その執行を監督し、さらにその人事に関与するなど、その事業の根本的な方向に重大な影響をおよぼすことのできる権力を有することをいう。」そして「ここにいう「公の支配」に属する、といいうるためには、国または地方公共団体が単なる「勧告」的権限だけでなく、慈善等の事業の根本方向を動かすような権力をもつていることが必要であろう。」、そしてまた、さらに本条後段の解釈として、「公金をある事業に支出し、または、その他の公の財産をある事業の利用に供する場合、国または地方公共団体は、その金の使い道または財産の利用方法について、納税者たる国民に重大な責任を負うのであるから、その責任をはたす必要上、それらの事業に対し、じゅうぶん実質的な監督権を有しなくてはならない。」といたしまして、「私立学校法および社会福祉事業法が、学校法人および社会福祉法人に対して、どこまでも活動の自主性をみとめつつ、これに補助金または貸付金を与えようとしているのは、本條に違反すると見るのほかはない。」「私立学校についていえば、私立学校に対していかなる意味においても、財政的援助をすることを禁止する。」というふうな趣旨で、大変はっきりとしたいわゆる違憲論というものが有力に展開されてきたということなんです。  この厳格説に立つ見解としましては、学説だけでなしに、国の見解もそうでして、たとえば法務省見解として、憲法八十九条の解釈についてでありますが、「「公の支配」に属しない事業とは、国・地方公共団体の機関がこれに対して決定的な支配力を持たない事業を意味する。いいかえれば、その構成・人事・内容および財政等について公の機関から具体的に発言・指導または干渉されず、事業者が自らこれを行なうものをいうと解する。(昭二四・二・一法務調査意見長官)」というふうに大変厳しい立場をとっております。  これらの見解は、公金の乱費あるいは国による不当な干渉、政教分離原則の違反などの事態を避けることにあったというふうに書いてあり、またそう言われてきたわけですが、文部大臣はこのような論議があったことを御存じであったでしょうか。
  185. 小川平二

    小川国務大臣 当時種々の御論議があったということは伺っております。
  186. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 以下、文部大臣お答えいただきたいのですが、文部大臣にふさわしくないときにはどなたかかわりの方にお答えいただきたいと思います。  さて、この厳格説が実情に合わなかろうということから、緩和説が述べられてまいりました。その緩和説の原型というのは、憲法制定時における国会質疑において、当時の金森国務大臣が当時の日本進歩党の山崎岩男議員に対する答えの中にも実は示されております。質問の主意は、公の支配に属しない教育等の事業に対しては公金その他のものを使ってはならぬとあるが、それでは私立学校に対しては補助金は出ないことになるのかという問いに対しまして、金森答弁は、公の支配に属するということは、やりっ放しのやり方のままに学校が置かれていれば、それは補助金を出してはならない、しかし国家の定むる法令を基礎として、国家がそれを十分監督とか管理というような方法をとっているならば補助金を出してもいいのであるというふうに答えていたわけです。しかしこの緩和説によりましても、旧来の私立学校法に基づいて学校法人としての幼稚園というような明確な枠をはめてきていたわけでして、明確な枠をはめたということは、厳格説というものが有力に存在するということを前提にしていたわけだと思います。  そういう意味では、今回問題としております非学法幼稚園に対する助成措置というのは、当初から本当は大変な問題であったというふうに思います。というわけで、改めて憲法八十九条との整合性というものが問われなくてはならないのだというふうに理解いたします。厳格説では、国または地方公共団体は単なる勧告ではなく実質的な監督権を有しなくてはならないとしておりますし、緩和説においても、金森答弁でも言っておりますように、法令を基礎として国家がそれを十分に監督とかあるいは管理しなくてはならないとあるわけでして、単なる勧告すら行われない、また法令を守らぬ幼稚園に対して法令を守らしめようという監督、管理もないままに再延長が図られようとするならば、どちらの説をとるにしても大きな問題ではないのかと思いますが、大臣はいかがお考えでしょうか。
  187. 小川平二

    小川国務大臣 憲法八十九条についてはいろいろな御論議がある規定と存じますが、一般的には教育の事業と申しますのは、その事柄自体が申すまでもなくよいことでありますので、ややもすればそういう美名のもとで乱費されるおそれがある、したがって、公の支配に属するものに限っていかなければならない、こういう趣旨だろうと八十九条を理解しております。幼稚園につきましては、学校法人立の場合はもちろん個人立の場合も含めまして学校教育法、私立学校法及び私立学校振興助成法でいわゆる公の支配に属していると考えられており、個人立の幼稚園に対する助成が八十九条の規定に違反するものだとは考えておりません。
  188. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 問題になりますのは、学法化しなければならないとあるのですが実際には学法化しない、言うならば学法化を目指すという志向園ではなくて当初から学法化しない非志向園というものが現実に存することであり、しかも少なからずある。学法化しようとしてし得ないのではなく、当初から学法化しないのだと言っている数が、ここに挙がっているだけでもかなりの数に上っているわけです。とするならば、当然それに対して先ほどの厳格説に立つにせよ緩和説に立つにせよ何らかの措置をしなければならなかった、それをしないということは絶対に公の支配というものの意味をなしていない、少なくともこれまではなしていなかったと思うのです。そうした中には非志向園もあれば、当初は志向園、志向していたのだけれども中途からは辞退園というか辞退してしまったものもあります。と同時にまた今日三年延長したからといって志向園の数がふえるという根拠はほとんどない。なぜならば、そういうふうに答えがかなり有力なものとして上がってきているからであります。そういうふうなものも踏まえて、なおかつ公の支配と言う以上は、所轄庁だけではなくて文部省としても深くお考えいただかないと、いまの答弁だけでは説得力がないのじゃないかと思うのです。  当初から、たとえば前の法ができたときですが、永井国務大臣がこのように発言しております。「学校法人化の促進につきましては、法律の趣旨に沿い、また設置者の誠意に期待し、適切な処置を講じてその促進を図る所存であります。」と言っているわけで、この言葉の中には学法化の促進については設置者の誠意というふうなものをまず期待しているし、また単なる期待ではなくて国として所轄庁を指導監督しながら何らかの措置を図らせるという積極的な意思表明があって辛くも公の支配というものを、条件を満たそうという趣旨があったと思うのです。それにしてはこの五年間何もしてこなかったじゃないかということです。こうした永井発言に対して、文相はどういうふうにお考えでしょうか。
  189. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 五年の期間にわたりまして、この法律の立法政策を踏まえまして、文部省といたしましては都道府県に対しまして、学校法人化促進のための認可条件の緩和その他の措置を講じまして強力な進め方をしてまいったわけでございます。その結果、それぞれの幼稚園におかれましてそれなりの学校法人化への志向をいたしまして努力を重ねておられるわけでございますが、中途にしてまだ法人化が実現しないというところが六百園というような状態であるわけでございます。これに対しまして、このたびの立法措置によりましてさらに若干の猶予を置いてより立法政策の実現を図るということの御趣旨と思いますので、これからもそういうような指導を強化してまいりたいと思います。
  190. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これは細かいことで、教育の理念というか、大変かかってもおりますので、文相からもお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  191. 小川平二

    小川国務大臣 それぞれの幼稚園、法律の趣旨を踏まえ、また助成の趣旨を踏まえまして努力をいたしておる、かように承知いたしておるわけであります。
  192. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 実際には、たとえばある大きな市において現時点で学法化しない、半分にも達していない、そういうところがあるし、また少なからぬ数が先ほど言ったように非志向園というか、しないと答えております。いまの文部省答弁がもし額面どおり受け取れるものならば、少なくとも非志向園なんという言葉が出てくるわけがないじゃないか。言うなれば、法というものは、あくまでも学法化しなければならないのだといって、それを一つの条件というか義務的なものとして押さえて、そうさせることによって援助しようとしているわけです。ところが、明確に非志向園だと言っておるのです。それに対して具体的にどういうふうに働きかけたのか。単に抽象的な答弁だけでは同じ状態が続くというのです。それでは、三年たったら全部学法化できるという自信が文部省にはあるのでしょうか。いまの答弁の引き続きとしてお聞かせいただきましょう。
  193. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 昭和五十一年度から補助を受けておりまして引き続き五十五年度も補助対象となっている幼稚園で、五十五年度末におきまして学校法人化の措置が行われていませんものが六百三十二園ございます。このうち五十六年度中に学校法人化を行うであろうと予測されますものが百数十園になりますので、五百園程度がまだ学校法人化できないという状態で残るのではないかと見込まれております。これらにつきましては、私ども、できる限り一層の学校法人化促進を図るということで対処していきたいと思っておるわけでございます。
  194. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 その答えが現実的でないと先ほどから言っておるのです。学法化を志していて何らかの理由で学法化し得ないというのと、当初から学法化を志向していないというのとは前提条件が全然違っておるのです。当初から学法化する意思がなければ三年待ったって学法化するわけがないじゃないかと私は言っておるわけです。しかも、それがかなりの数に及んでいると言っているのです。そんな統計はとっくに文部省はわかっているはすじゃないかということなのです。わかっていながらそういう答弁が出るということは、答弁自体に誠実さがないな、むしろそういうふうに考えざるを得ないような気がしてくるのです。そういうふうな答弁を伺っているとますます、このままではこの法案を通すわけにいかないじゃないかという気持ちの方が逆につのってきてします。法案を通す方向へ努力したいなと一方では思いながら、そういうふうな答弁を聞いていると、これはやはりこのままじゃだめだなというふうな気持ちになってしまうということです。  だから、もし御答弁いただくならば、非学法化、学法化しない、そういう気持ちを持っていないところに対して、学法化させるのだ、そういう気持ちを持ちなさい、そういう気持ちがなければ助成金は出しませんよというくらいのことを言っておかないと、最初から学法化する意思もないのにお金をもらっていて、三年間なり五年間もらっただけ得だというふうなことをやっていたのでは、先ほど言った憲法八十九条にこれは明らかにひっかかる問題じゃないかというふうに考えるのです。よろしいでしょうか。  時間がないので、同じ答弁を繰り返しても意味がないから、先に進みます。  今度は、こうした法律があるということは、憲法七十三条は内閣の事務として法律を誠実に執行することというふうに規定しているわけですね。あたりまえのことだと思うのですけれども文部大臣あるいは文部省は、当然のごとく文教に関する法令は誠実に執行する義務を負っているものというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  195. 小川平二

    小川国務大臣 仰せのいわゆる信義、誠実の原則と申しますものは、あらゆる社会生活において重んじられなければならない原則だ、このように考えております。
  196. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 とすれば、私立学校振興助成法の附則二条の五項のところ、「学校法人以外の私立の学校の設置者で」途中省略しまして、「補助金の交付を受けるものは、」「五年以内に、」「学校法人によつて設置されるように措置しなければならない。」、いわゆる学法化するように措置しなければならない、こうはっきりとうたっているわけであります。ですから、当然この非学法幼稚園の設置者は学法化すべく措置しなければならない責務があるわけです。  と同時に、法令用語として一般に「ねばならない」というのと「何々するものとする」というのは明確に一線を画して違っておるわけであります。どちらにしても拘束力を持つことは同じでありますが、強い、弱いという意味では使い分け上違う。これは前回西岡先生の答弁のときにも出てきたわけです。ですから、「措置しなければならない。」あるいは「措置するものとする。」、また改めて「措置しなければならない。」というふうに二転、三転して変わってきたことは、やはり憲法八十九条の「公の支配」というものを恐らく意識されていて、憲法との整合性ということからそう言わざるを得ない、そう法規は書かざるを得なかったのだろうというふうに思うのですね。本当ならば学法化してから、公の支配というものに対していわゆる規定に合ってから金は渡すべきなんだけれども、それではいまのいま間に合わないから、学法化を五年以内にはするのだ、させるのだという前提で前渡し的な性格を持ってやってきたのだろう、こう思うのですね。  ですから、この法令用語の理解としては、「ねばならない」もあるいは「ものとする」というものも、ともに拘束的意味を持つ、だけれども、後者の方が若干弱いというふうな形で、これは物の解説本には載ってくるところであります。ということで、強い調子で「ねばならない」というふうに言っているということですね、そのことを設置者はもとより所轄省、文部省もそういうふうに理解してやっていただかなければ困るんだというふうに思うのですが、文部大臣としてこの「措置しなければならない。」ということの言葉の持つ重さの意味というものについての御答弁お願いしたいと思います。
  197. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 先生いま御指摘のとおり、この規定の趣旨は、学校法人化のための助成を受けた幼稚園の単なる努力義務を規定したものではございませんで、実際に学校法人化しなければならない旨の義務を課したものと私どもも理解しておるところでございます。
  198. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 とすれば、先ほど来、同じことをまた繰り返すのですけれども、「措置しなければならない。」とあって、措置するどころか、学法化を志向しないという存在が出てくること自体大変おかしなこととお考えになりませんか。
  199. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 各都道府県におきまして、この個人立幼稚園に対します助成措置を行うに当たりましては、学校法人化を志向しておる幼稚園に対して助成がなされておるというように承知しております。
  200. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いまもお言葉があったが、法と道徳とは明確に違う点、似ている点もあるけれども違う点がある。少なくともこの規定のように何々しなければならないといういわゆる拘束的な言葉を持った場合には、それなりの法における実力というか、いわゆる実効性というものが当然出てこなければならないのでして、これは厳しく言えば刑法のようなものといいましょうか、そうしたものに違反した場合にはそれぞれの何らかの処罰というか、何らかの実力行使というものも伴ってくるわけですね。  この場合には刑法ではないけれども、しかしそうした拘束力があるにもかかわらず、そうした拘束力を無視したといっては言い過ぎかもしらぬけれども最初から、てんから頭に浮かべていないで、たとえば五年間何もしなくても一応もらってきた、今度も三年間何もしなくても同じようにもらえるだろうといったのでは、それこそ法ではないし、道徳で理解してもおかしい。しなければならないのにしなかった。約束なら約束を守らなかった。当然そういう守るという前提があってもらわなければならない。  ですから、ある人がこの私学の助成というのと結婚するときの結納金の授受と対照して何か書いたのがありました。それをちょっと私なりに補足すると、こういう分類があるいはできるのじゃないか。いわゆるこれまでの幼稚園と補助金との関係についてなんですが、一つは学校教育法の百二条園で当初から行くので、いわゆる学法化しないのだ、百二条園でもう当初から行くから学法化しない、だから補助金は要らない。言うなら結婚しないから結納金は要らないということだと思いますね。次は、この附則二条の五項に言うように、五年以内に学法化しなければならない、だけれどもいろいろな条件を考えて、とてもうちはできそうもない、いわゆる学法化する自信がない、むずかしい、だから補助金は要らない、受け取らない。これは結婚したくてもできないからやはり結納金はもらえないと言っているようなことだと思いますね。三番目には、この附則二条の五項に基づいて学法化するつもりであったのだけれども、どうしても達成し得なかった。言うなら、これは結婚するつもりであったから結納金はもらった、受け取った、ただ何らかの理由で結婚はしなかったということでしょうね。第四番目には、この時限立法というか、これが五年で本当に切れるものか、延びるものかを判断いたしまして、どうしてもこれが本当に延びない、学法化しなければもらえないというならばその時点で学法化に踏み切る。そうしたのはいわゆる補助金はやはりもらうわけで、これは結納金的なものはもらっただけ得だから、もらえるものなら一度ならず二度までももらいたい、こんな考えだと思います。それから同じく附則二条の五項で学法化する意思はない、返還も言われないからもらっただけ得だという考え方、これは一番無責任で、結婚する意思もないのに結納金だけもらってしまう、結納金は返さない。本来なら結婚を前提にする結納金の場合には、結婚しなければ返さなければならぬ、場合によっては慰謝料ともどもに返さなければならぬ、だけれどももらっただけ得だから返さない、こういうのもあるかもしれませんね。それから、学法化が困難であると思ったので補助金はもらわなかった、だけれども何とか努力して学法化した、むしろきわめて良心的というか、法に忠実に従ったグループであります。  言うならば、この法規の対応については大変に善意で対処する幼稚園と、善意とは言えない、むしろ悪意と言ってはなんであるかもしれないけれども、当初から学法化する意思がない、それだけれどもあえて学法化するかのように思わせて金だけもらうというのとは大変な隔たりがあるわけであります。ただし内心に関することはわからない。少なくとも法と道徳の関係、道徳であるならば、外面的な行為にあらわれなくても、自分の考えたことが恥ずかしい、良心の苛責に責められるというのはあるのですが、法の場合はそこまでは言っておりません。法の場合は外に出る行為を問題にしたいわけであります。  だから、そう考えてみますと、この民法一条二項の信義、誠実の原則というふうなもの、文相からもお答えがありましたけれども、これは信義と言い、誠実と呼ばれるものは、きわめて倫理的色彩の濃い考え方だ。そして何が信義であり誠実であるかということは、時と場所に応じてあるいは社会的、経験的に決めるほかはない。しかしそれが道徳ではなくて、法律の世界のことである限りは、権利者や義務者の主観的な心理状態、意識内容に対する要求ではなくして、外部にあらわれる人間行動に対する要求であることは言うまでもない。ですから、この学法化するかしないかというふうなことが外部にわかるようにしてくれなくてはならない。また、設置者が、私は学法化しますよということが、文書でも結構です、何らかの方法によってわかるようにしておかなければならない、あるいは文部省は第三者に説得力を持たせるためにはそういうふうに指導して外部にわかるように文書化させなければならない。そうでないと、学法化する意思があるかないかだけの論議では第三者はわからないのだということなんです。  そういうふうに考えていただいて、この信義誠実の原則は法解釈の基本にあるものだと思うので、明らかに先ほど行政府としての法律は誠実に守らなければならないという、この誠実という概念も民法の信義則の概念もこうしたものは必要なものだろうと思います。ですから、今回もまた同じように非学法化のままで、本来する意思がないのに、もらい得だというふうな人たちが出てしまっては、本当にまじめにやってきた人との間に不公平感が出てきてどうにもならない。それだけでなくて、法の実効性という問題で大変に問題になってしまうのじゃないか。言うなら、確実に守らなければならない法と、守っても守らなくても構わないものと使い分けになってしまったのでは大変困った現象になると思います。  さてそこで、今度は私学振興助成法についての問題なんですが、旧来学法化し得ないという理由は一番初めに述べたわけですけれども、この条件は、今後も同じような条件が続くものも少なくないはずですね。解決し得ない、そうした場合に、三年延長しても結論的には同じになるのじゃなかろうかと考えますが、これは文部省からでも結構です。
  201. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 当初立法化されました期限が五年以内という限定をされました。その間に種々の条件で遺憾ながら学校法人化が進まないところにつきましては、いま先生種々御示唆を賜りました、三年延長の間に学校法人化へのあらゆる条件を学校側が、また行政側も十分実態を踏まえまして対策を講じて、より実効あらしめるということが今回の再延長の趣旨に行政としてこたえる責任であろうというふうに感じております。
  202. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 その答弁はいいのですが、再三言うように、現実に果たしてその答弁が即応し得るものかどうか。たとえば前回の文教委員会質問にもあったのですけれども、幼児の側に立って考えれば経常費補助はいいことだったのだから、仮に五年の期限が来たからといって補助金は返す必要がないのだというふうなことを、法の期限が切れてから言ったのではなくて、期限が切れる前にすでにそういうふうな情報が流れてしまっている。それじゃ、当初学法化をしゃにむにしなければならないなと思った人も、もらっても大丈夫だということで学法化をやめてしまうという人が出たかもしれないし、現在非志向園が出てきた背景も私はそこにあったと思います。少なくともいまの答弁で、積極的に文部省が所轄庁のしりをたたきながら、所轄庁がそれぞれ個々の幼稚園に対して学法化しなさい、しなさいと言うのとは全くうらはらであって、法の期限がまだ切れないうちから返す必要はありませんよと言ったのでは、全く答弁が食い違ってしまうのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  203. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 旧来補助を受けまして学校法人化に最大の努力をされた幼稚園の中には、具体に学校法人化が不可能であるという状況判断のもとに自後の助成金を辞退された幼稚園もございます。都道府県で助成するに当たりまして、幼稚園側から学校法人化をいつの時点までに進めるということを文書で提出させておるところもございますし、また、その辺は口頭での確認で行っておるというように多様でございますが、今後監督庁の取り組みにつきまして、この面の実態を十分把握いたしまして、より法人化への促進が図られる方向で指導してまいりたいと考えております。
  204. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 仮に延長したとして、三年たった後再延長はしないというふうな御答弁があったと思うのですが、もう一度御確認をいただきたいと思います。
  205. 西岡武夫

    西岡議員 お答えいたします。そのとおりでございます。
  206. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 としますと、現時点において学法化しないで残っている幼稚園があると同じように、三年たっても同じくそういうケースがたくさん残るかもしれないわけですね。いま困っているのだというなら、三年後だってやっぱりその幼稚園は困っているかもしれませんね。同じ条件だろうと思うのですよ。ちょうどいまにも弱っている人に注射を打って、これを打てば一日もつかもしらぬ、二日もつかもしらぬと言っても、薬が切れちゃったら同じことになってしまうというのでは、それだけでは余り意味がないのじゃないか。基本的にもっと違う何かの考えを示さなければいけないのじゃないかというふうに思います。  もう一つには、仮に学法化を志向している幼稚園の中も、ある都市によっては全園が志向すると答えているところもあるのですが、その明細を見ると、設置基準をもっと甘くしてくれ、あるいはもっと補助金をふやしてくれという条件というか、大変甘い期待があると思います。学法化を志す人の中でもこんな気持ちがあるわけで、経営者の側に立ってみれば全くそうかもしれないのですけれども、これはそう簡単にいいとは言い切れないわけですね。学校教育で幼稚園設置基準を認めたりあるいは小学校、中学、高校、大学が設置基準を認めているのは、むしろそれは最低の基準として、それ以上よりよい教育環境条件をつくっていくべきだ、幼児教育のためには幼児の側に立つのであって、経営者の側に立つのじゃない。経営者としては設置基準を上回るようないい施設をつくればつくるほどお金がかかっていくのであって、経営者にとってはつらいことなんです。だけれども、設置基準としては最低を示したものだから上げるように持っていくことが幼児教育本来の姿なのであって、下げることは決して好ましいことではないと思います。これは助成の問題を外れて幼児教育全般、基本的な問題だろう、このように思うのです。ところが、現在ですらも幼稚園設置基準になかなか合わないというか、だんだん緩和の傾向にあるわけですね。大変に私は問題だというふうに思っております。  幼稚園の問題については、ここの本題ではありませんけれども、仮に義務教育の年齢を引き下げたらどうであるかとか、あるはまた、公立幼稚園がもっとふえたらどうかという問題も出てきますね。これは必ずしも経営者側にとってはいい考えではないのでしょうけれども、幼児の教育という点では、いいか悪いかの論議はまた別にしましても、そういう考え方もあると思います。ですから、こうした補助金助成というのはあくまでも教育の公的な性格、性質というものを中心にお考えいただきたい。単に幼稚園が貧しいか貧しくないか、そんなことの見地ではなくて、幼児教育にとっての幼稚園の存在意義、いかにあるべきか、そういう観点からやっていただきたい。ですから、先ほど来の文部省の御答弁にもありましたけれども、本当にそれだけの言葉でなくやっていただきたい。  それからもう一つ、では五年と期限を区切った理由はどこにあったでしょう。五年という時限立法にした意味、どなたでも結構です。
  207. 西岡武夫

    西岡議員 お答えいたします。  当時、幼稚園の果たしている役割りというものを考えたときに、できることならばすべての幼稚園が学校法人化されることが望ましい、そういう状況の中でいわば誘導的な政策としても、かつまた当時の幼稚園経営の状況というものを考えたときに、政策的にも、この際、個人立、宗教法人立に対する財政的な援助を行うことによって幼稚園に対する学校法人化を促進するということが幼稚園についての教育行政として適切であろう。一方、三浦委員も御承知のとおり、国の施策が行われる以前の段階で、都道府県において個人立幼稚園に対する財政援助がすでに行われているという事実が、これは数としてはそれほど多くございませんけれども、発生しつつあるわけでございます。  そうした状況の中で、少なくとも無期限にそういう援助を行うということは、先ほどから三浦委員指摘の、憲法八十九条の厳格な解釈の面から申しましても、また私立学校法等の精神から申しましても、これは望ましくないだろう。五年間というのは、具体的に五年でなければならないという理論的な根拠は、率直に申し上げて、当時あったわけではありませんが、五年間の年限があれば、設置基準の若干の緩和等を並行して行うことによって学校法人化を促進することができ、また、幼稚園の経営に対する財政的な援助を行うことによって子供たちの教育環境というものを整えていくという二つの面から、五年間の年限というものが、時限を切るとすれば適当な年限ではないか、このように当時考えたわけでございます。
  208. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 一般に時限立法というのは大変珍しいケースでありまして、反対者が大変強い、でも何とか通したいというふうな——ですから、よく治安立法の形式のときに時限立法という形で出やすいわけですね。永久法で出すと治安立法は反対である、だけれども、時限を切って、いまのいわゆる混乱の一時期を乗り切るための本当の過渡期的なものだからいいじゃないかというふうにつくっておいて、実はそれを永久法化する。よくあったことなのですね。  この法律の場合はそうではありませんけれども、時限立法となった理由は、やはり憲法八十九条にあったと私は思います。先ほどのように、大変有力な学説として厳格説に立つ者が現実にあったわけですね。そして、それらの人もある程度説得する論拠が欲しかった。だから、本当ならば完全に公の支配に服し得るような教育、いわゆる正規の学校法人の幼稚園というものに限りたかったのだけれども、それだけではどうしても実情に合わないので困るということから、必ずと言ってもいいくらい五年以内に措置するから、措置するものとするではなく、措置しなければならないというふうに言い切って、これは絶対学法化させるのだからいいじゃないかというふうなことで、五年以内に努力するから、それが当初法案の通った大きな理由であったのではないか。私は当時おらなかったからわからないのですが、何となくそんな気がするわけであります。とするならば、先ほど来言うように、それほどの努力をしたとはとても思えない。思えないから、現在も同じようなことを論議せざるを得ない。  ですから、仮に、学法化する意思があるのだ、あるいは過去に、この五年間にあったのだ、だけれども、これこれしかじかでできなかったのだと言われれば、これも仕方がないと言えば仕方がないですが、やはりそれを言葉の上で文書の形にして、たとえば報告書とか経過説明書でも結構ですが、この法案が通ってからわが園は学法化を志したのだけれども、これこれしかじかの理由によりましてどうしても学法化することができませんでしたと、時限立法ですから、いわゆる一つの区切りでありますので、一応その文書を出していただく。それから、将来に向かって、改めて三年延長になったことを契機として、わが園は学法化を志します、だから補助金はもらいたい、ついては、学法化達し得なかった理由は、前はこれこれしかじかだったけれども、これこれこういうふうな筋道を通って、乗り切って学法化していくつもりですというふうな何か文書化ですね。そうすると、その人の気持ちが、心の中で思っていたとか云々ではなくて、皆さんにもわかるわけです。その時点になってあるいはできないかもしれません。しかし、その時点で本当にするつもりであったのがどうしてもできなかったのだというのが皆さんにわかれば、それはまたそれで一つの理由になるだろう。  ただ、私が再三言うように、最初から学法化する意思がないと仮に考えた場合、そこに助成をすることは法に合わない、法規定に明らかに違反してしまう。法規定に違反するだけではない、憲法上も許し得ない。特に、この行革の厳しい流れの中においての補助金でありますから、これは国の責務としてこの補助金の流れというものを十分検討しなければならないものだと思うのです。  そういう意味では、一応の期限が来ました。そしてこれまでの五年間の経過説明書というか報告書、そうしたものを補助金を受け取った人は出していただきたい。これは公金ですからね。特に公金というものは、どのように使ってきたかという経過は出しても決しておかしくない。私的な財産のことについては触れませんから。公金を受け取った以上は、その公金を受け取ったことの経過説明というか、そうしたものを一応お出しいただきたい。  それから、今後、改めてまた三年間延びたとして、補助金を受け取られるならば、私たちは非学法化ではない、学法化幼稚園ですとはっきり言っていただきたい。あるいはまた、学法化しないのなら、むしろ良心的に最初から受け取らない、そういうふうに踏み切れないものかどうか、御答弁をいただきたい。
  209. 西岡武夫

    西岡議員 これは文部省の行政の立場からお答えをすべき事柄と思いますが、提案者といたしまして、若干これまでの経緯も踏まえましてお話を申し上げたいと思うわけであります。  先ほど来、三浦委員から数々の御指摘がございました点は、一々ごもっともの御指摘でございまして、この延長をお願いするもとの五年間の時限立法を提案いたしました立場から、これまでの五年間の努力が足りなかったという点について反省をいたしているわけでございます。  ただ、幾つかの点で御理解をいただきたいと思いますのは、昭和五十三年に個人立、宗教法人立等から学校法人化をいたしました園の数が百四十三ございました。五十四年に百六十三、五十五年に百九十二園が法人化をしてきているわけでございまして、そういう意味ではかなりの努力が——三浦委員指摘のとおりにだんだん五年が迫ってくる中で、もらい得だというような形で理解をされていたとすれば、そういう学法化が行われる数がふえてきているということにはならなかったのではないか、それなりの努力が一方においてはなされていたというふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それからもう一つは、私学振興助成法の中で、特に、五年以内に法人化を措置しなければならないという規定を設けましたのと並行いたしまして、附則の二条の三項にこういう規定も設けられているわけでございます。「当該助成に係る学校の経営に関する会計を」、個人立等の法人化していない幼稚園が受けた場合に、この会計を「他の会計から区分し、特別の会計として経理しなければならない。」という規定を設けて特別に厳しく、その補助金の使途については学校法人以上に厳しい規定を設けているということも御理解をいただきたいと思うわけでございます。  そうしたことを総体として考えまして、三年間延長をさらにお願いをいたしまして、さらに学校法人化を進めるという一方において、前回質疑の中でもお答えを申し上げましたように、幼児教育についての行政のあり方というものを、この際、この三年間に根本的に考える時間ともしたいという気持ちが提案者としてはあるわけでございまして、そうしたことはこれからの問題でございますけれども、そういう意味合いも含めまして、この際あえて三年間の延長を行って、現に幼児の教育のために貢献をしていただいている個人立、宗教法人立の幼稚園の経営に対して国としては財政的な援助を行うのが適切であろう。それについての判断は、都道府県における補助が行われている場合に国の補助が行われるわけでございますので、都道府県の行っております補助というものが適正に行われているであろうということを前提としてこの施策を進めてまいりたい、このように私どもとしては考えているわけでございます。
  210. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 この補助金の交付に当たりましては、設置者が学校法人化のための措置をすることを前提に各県とも補助をしてきておるわけでございまして、先生御指摘のとおり、信義、誠実の原則に立ってそれぞれ努力が払われてきておるわけでございますが、その過程におきまして、毎年度七月一日現在で、各県におきましては学校法人化への努力の状況報告をとっております。私どもも、それを送付を受けておるわけでございまして、その状況報告によりまして設置者が学校法人化のための努力を払っていないという状態が認められる場合におきましては自後の補助金につきまして補助金算定の基礎としないというような扱いをしておるわけでございまして、この法案の延長に際しまして、先生いま御指摘のこの面の努力の実情、また実態につきましては、この状況報告につきまして検討いたしまして、十分この面の実態が把握でき、さらにこの補助金が、幼稚園が将来にわたって学校法人化を実現いたしまして幼稚園教育のより充実に資するという趣旨の補助金でございますので、その補助金のより実効の上がります方向への努力をいたしたいと思っております。
  211. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 一部の答弁、私は文書化の問題を御質問したのですが、どうでしょうか。
  212. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 実情報告を求めておりますので、この実情報告書の形でするか別途の形をとるか、監督庁である都道府県とも十分協議いたしまして、適切な措置を考えてまいりたいと思っております。
  213. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 どういう方法をとられるかはお任せするとしまして、とにかく公金を受け取った幼稚園、これに対して、学法化をなし得なかった園については、すべてに対してこれまでの経過報告書というか実情報告書、名称は何でも結構ですが、まず、それを確実にお取りいただくということをお約束いただきたい。第二点、これから学法化を志しますという意思をはっきりとしていただきたい。  その二点、文書化いかがですか。文部大臣もその二つについてお約束いただけますか。
  214. 小川平二

    小川国務大臣 仰せの最初の点につきましては、管理局長から答弁申し上げたとおりでございます。  後段につきましても、御趣旨は十分理解いたしますので、研究をさせていただきたいと思います。
  215. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 提案者の方、西岡先生いかがでしょうか。
  216. 西岡武夫

    西岡議員 お答えいたします。  私どもといたしましても、三浦委員指摘のとおりの措置がとられるべきである、このように考えております。
  217. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 その御答弁を、それこそ信義、誠実の原則に従ってお守りをいただきたいと、このように考えております。  それで、いま西岡先生の御答弁の中にありましたが、確かに学法化する幼稚園の数はふえてまいりました。しかし、その後が続かないのじゃないかという有力な見解もあるのです。それは、当初から学法化を志していた幼稚園が、いろいろと困難を乗り越え、乗り越えてだんだんふえてきた。ところが、当初から学法化を望まない幼稚園の場合には努力するわけもないのであって、ですから、はっきり言ってもう本年以降新規に志向園数が増加する傾向は認められないと。名古屋の場合が例外なんですが、ただし、これは先ほど言ったように、幼稚園設置基準を甘くしてほしいとか補助金をもっとふやしてほしいという意味での、大変虫のいい志向園志向でありまして、そうでないところは必ずしも志向園の方向性をとっていない。ですから、この事実は、ある一定の志向園が学法化を済ませた後は、後続する園がなく、その時点で学法園が頭打ちに近い状態になるのじゃないかというふうな意見もあるということをこの際述べておきたいというふうに思います。  質問時間があと五分ということでございますので、一つ一つでは間に合いませんので、一括こういう点をお尋ねしたいということを言いまして、後で資料の形で御答弁、御説明にかえていただきたいというふうに思います。  まず、私学振興助成法の一条関係であります。  その一は、「教育条件の維持及び向上」について、この五年間でどのように向上したのか。二番目には、「修学上の経済的負担の軽減」とありますけれども、この五年間における父兄の負担はどのようになっているのか。第三点、私学経営の健全化について、どのように健全化されたと思われているのか。これが一条についてです。  次は十二条関係についてであります。  その一号ですが、一つは、「助成に関し必要があると認める場合」とありますけれども、「必要があると認める場合」とはどのような基準に基づくものなのか。二番目、学校法人に対して、業務状況に関し、報告を徴したことがこれまであったかなかったか。あったとすればどういう内容、形式をもってされたのかということ。三番目には、学校法人に対し、会計状況について、その報告を徴したことの有無と、その場合に特に気づいた点はどういう点であったか。それから第四点は、学校法人の関係者に対し、職員を通じて質問させたことがこれまであったかなかったか。その内容、形式、手続という点についてお答えいただきたい。第五点、学校法人の関係者に対し、職員を通じて帳簿等物件の検査をさせたことがこれまであったのかなかったのか、これが十二条の一号関係であります。  次いで二号関係は、幼稚園における入園者の現状と今後の見通しについてお尋ねしたいわけです。  確かに入園者はいま減りつつございますが、六十一年を底として、人口は再び増加の傾向をたどるのではないかというふうな見通しもありますので、そうした点を絡めながらお答えをいただきたい。  その次は十二条の三号関係について。  第一点は、予算の組み方について、不適当であると認めたその件数、具体的にどのようなことであるのか。第二点、予算の組み方について不適当であると、必要な変更をすべき旨の勧告をしたことの事例のあるなし、そしてその件数についてお尋ねします。  それから、十二条の四号関係。  第一点、法令違反により役員に解職すべき旨の勧告をしたことの事例がこれまであったのかなかったのか、あるとすればその理由あるいはその効果の問題について。第二点、所轄庁は法令の規定に基づいて、附則の二条五項の規定に基づいて学法化への措置を促すべく、これまでどのような形式、熱意、誠実さを持って行ってきたか。先ほど質問したことでありますが、それについて。第三点、附則二条五項の規定により学法化しなかった幼稚園は、この限りにおいては明らかに法令の規定に違反していることになるのではなかったか。第四点、もしそうとするならば、地教行法五十二条の一項により文相は所轄庁に対し必要な措置要求をなすべきではなかったのか。そのほかにも、文言は省略いたしますが、同法の四十八条一項の文部省の所轄庁に対する指導、助言、援助の規定、あるいは五十三条の調査の規定、五十四条の資料及び報告の規定などの問題点、それから地方自治法百四十六条の問題点など、これまで何をされていたのかという点についてお尋ねをしたい。  それから、次には十三条関係について。  第一点、弁明の機会供与という点について、その弁明の機会というのはどのような方法をとられたのか。第二点、弁明の機会供与について、弁明の件数は何件ぐらいか。こちらが出向いたのか相手を呼んだのか、立ち会った人数はどのくらいなのか、その方法論について。第三点、「私立学校審議会の意見を聴かなければならない。」とあるわけですが、私学審に意見を聞いたことがあるのかないのか。第四点、私学審はこのために会合を開いたとすれば、一件当たり何回ぐらい会合を開いてきたのか。  それから四番目の質問として、今度は一条、十二条、十三条とは関係なく一般的にしまして、附則二条五項は学法化への義務を課しての助成措置であると思うけれども、改めてこれについての御意見を伺いたい。そしてこの機関を行政行為の無効及び取り消し原因としての問題と触れてお答えいただきたい。  五番目。とすれば、学法化しなかった設置者は先ほどの民法一条の信義則違反にも該当するおそれがありはしなかったかどうか。  六番目。今回の改正も当然設置者が学法化へ努力するものとしての前提に立っての延長措置と思うので、真に努力する意思があるかないかを明らかにしていただくべく、先ほど質問しましたように文書をもって努力への決意をさせてほしい。御答弁のとおりひとつお願いいたしたいと思います。  七番目。正直にこれまで学法化したもの、あるいは学法化をできないからと助成金補助を受けなかったもの、そういう幼稚園の間の不公平さが現実にありますので、具体的にこれをどのように考え、どのように対処されようとするのかという点についてお尋ねします。  なお、わが党案というのもありますが、時間でありますので、これは次回に譲りたいと思います。  以上をもって質問を終わらせていただきます。
  218. 青木正久

    青木委員長 栗田翠君。
  219. 栗田翠

    ○栗田委員 初めに、提案者に伺います。  今度の法改正で三年延長の、この三年という期間の根拠は何ですか。
  220. 西岡武夫

    西岡議員 お答えいたします。  率直に申し上げまして、三年ということの理論的な根拠はございません。さきの法律が五年間の時限を定めておりまして、それがなお、まだその目的を達成していないというふうに判断をいたしまして、その再延長をお願いする以上、五年という年限を切っておりましたので、今回これを三年程度の間に学校法人化を目指していただくということ、また、前回委員会で御答弁申し上げましたように、人口動態の変化等の中で幼児教育についての行政のあり方というものを十分検討をしなければいけない時期に来ている、そのための検討の期間として三年の時間はかかるのではないか、そういう考え方で御提案を申し上げているわけでございます。
  221. 栗田翠

    ○栗田委員 助成の期間を延ばしていわゆる学校法人化するための猶予期間を延ばすという考え方に立ちますと、六十年で切るということは、園によって三年延びるところ、二年のところ、一年のところ、中には全く延びないところ、五年間で六十年に達してしまうところ、いろいろ出てくるわけです。ですから、園の側の立場に立った猶予期間としますと、非常にアンバランスで不公平とでもいいますか、あと三年の猶予があるところ、全然猶予のないところが出てくるわけです。その辺をどうお考えになるのか。  そしてもう一つは、この間から大変気になっているのですが、学校法人化を進めていくために、それぞれの幼稚園の立場に立って延長しているということに重きがあるのか、幼児教育のあり方を見直すことに重きがあるのかという問題ですね。この猶予期間がばらばらだということを見て、どちらに重きがあるのかということが気になるのですが、そこらについてお答えをいただきたいと思います。
  222. 西岡武夫

    西岡議員 お答えいたします。  後段の御質問でございますが、これは、この三年間の延長をしていただきました場合に、三年間の間に幼児教育についての行政のあり方全般についての検討をいたしたいということが今回御提案申し上げました一つの背景として存在をしているということでございまして、今回御提案を申し上げております三年延長の法改正そのものは、あくまでも学校法人化を前提とした個人立、宗教法人立に対する都道府県の補助事業に対する国の助成措置を行うということが目的でございます。  なお、前段の御質問につきましては、今回の改正によりましてこれから助成を受けるという場合に、若干のばらつきが出てくるということは御指摘のとおりでございます。
  223. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 御提案されております法案によりますと、学校法人化の期限を昭和六十年三月三十一日まで延長しようとするものでございますので、したがいまして、先生御指摘のとおり、補助金を、交付を受けましてから八年あるいは七年、六年というような期間にばらつきが出ますが、いずれも現在の改正によりまして、今後三年後の六十年三月三十一日までということで、今回のこの時点からとりますと、三年の猶予期間を同じにいたしたということで、その間に法人化への促進を期待するという御趣旨によるものと解しております。
  224. 栗田翠

    ○栗田委員 園によって助成を受け始めた年度が違いますからね。ですから、八年間かかって法人化が保障されるところと五年のところ、六年のところというふうにあるわけで、非常にアンバランスではないか、猶予期間としては不公平ではないかということを申し上げたのです。これを伺ったのも、一つは一体幼稚園が法人化していく立場に立って援助していくということよりも、幼児教育のあり方を見直すとかおっしゃったことに重きがあるのだとすると、これは大変だという感じをはっきり持っているわけです。助成が打ち切られることによって父母負担が急激にふえるから助成を続けてほしいとか、営々として努力をしたけれどもまだ学校法人化できないために何とか続けてほしいという幼稚園関係者の声というのは尊重したいと思っております。思っておりますけれども、一面で、その三年延長の中に私たちが賛成できないような幼児教育の見直しなどが計画されているのだとしますとこれは大変だ、はっきり申し上げてこういう二つの思いがあるわけですね。  それで、この間からあり方の見直しということをしきりにおっしゃるのですけれども、簡単にはその内容をおっしゃっていましたけれども、たとえば父母負担のあり方とか、それから運営のあり方だとか、それからいろいろおっしゃっていましたね。だけれども、もうちょっと、一歩進んで何か提案者として具体的なビションを持っていらっしゃるのですか。
  225. 西岡武夫

    西岡議員 結論から申し上げますと、目標とする着地点というものをあらかじめ定めてこれから取り組もうとしているわけではございません。しかし、前回の各党の御質問に対してお答えを申し上げましたので尽きているわけでございますけれども、重複することをお許しいただきましてお答えをいたしますが、厚生省の人口問題研究所等のこれまでの人口動態の推定というものがかなり予測を上回る勢いで人口の動態が変化をしてきている、そういう状況に対して幼稚園のみならず保育所も含めて就学前児童の児童数の激減という状態にさらされている、そうした中で一方における幼稚園と保育所とのそれぞれの発生の沿革というものはあるわけでございますけれども、御承知のとおり幼稚園に対する保育所としての要請、あるいは保育所に対して幼稚園の役割りを求めるというような傾向が出てきている中で、これは世界的な傾向でもあるようでございますけれども、どういう行政のあり方が望ましいのか、父兄負担のあり方という問題も家計負担のあり方という問題も含めて、この際根本的にやはり考えなければいけない時期に来ているのではないかということを申し上げたわけでございまして、繰り返しになりますけれども、あらかじめこういう方向に持ってまいりたいという考え方をいまこの時点で持っているわけではございません。
  226. 栗田翠

    ○栗田委員 文部省に伺います。  自民党はしきりに幼児教育のあり方ということをおっしゃるのですけれども、当然これは文部省としては、やはり、どう考えていらっしゃるのかということでのビジョンですか、そういうものをお持ちなのではないかと思うのです。特に気になりますのは、先日、十九日月曜日、NHKのニュースで、文部省が六・三・三・四制の見直しや、それから四、五歳児の義務化について検討を始めたという報道がされまして、あの法案と関係があるのだろうかと私などは大変注目をしたわけですけれども、特に何か新しい取り組みなどはしていらっしゃるのですか。
  227. 三角哲生

    三角政府委員 文部省は、御承知のように、昭和四十六年に幼稚園教育振興計画というものを策定いたしまして、五十七年度当初までに入園を希望するすべての四歳児と五歳児が幼稚園に就園できるようにする、こういうことを目標にいたしまして、幼稚園の計画的整備を進めてまいったわけでございます。  その結果といたしまして、五十六年五月現在の調査では、就園率は五歳児が約六五%、四歳児が約五〇%、三歳児が約一〇%、こういう結果でございます。  五歳児につきましては、幼稚園がなかったり少なかったりする地域で保育所へ行っている幼児のことを考えますと、かなり当初の目標に近い線まで行ったと存じますが、なお四歳児の問題が残っている次第でございます。  したがいまして、昨年度でこの幼稚園振興計画がその期間を一応終了いたしましたけれども、私どもは、さらにこの当初の計画の目標に近づけますように、幼稚園の普及充実に努めていこう、こういうふうに思っておるわけでございます。  そのためには、やはり今後とも、幼稚園未設置市町村や幼稚園の不足する地域を中心として整備を促進していく、それから、これまでやってきましたような、保護者の経済的負担の軽減、これを努力していかなきゃならないと思いますが、今回のこの法律の御提案がございましたので、そのあり方については、与えられました三年の期間をフルに活用して検討をしなければならない、こういうふうに思っておるわけでございます。  一方、教育内容、方法の面につきましては、子供を取り巻く環境の変化あるいは幼児教育の普及に対応して、一層の改善充実を図るべく、これにつきましても取り組んでまいる所存でございます。  ただいま御指摘の義務化の問題につきましては、これはそのように報道されたそうでございますけれども、私どもとしては、まだそこまで具体的な課題として取り組んでいるということではございません。
  228. 栗田翠

    ○栗田委員 引き続いて文部省に伺いますが、昨年の中教審の諮問の中で、就学前教育についても諮問をしていらっしゃるわけですけれども、これは具体的にどんな諮問をなさったのか、そしてまた、小委員会として教育内容の小委員会がありますけれども、その中で就学前教育についても答申がされるように段取りが進んでいますのでしょうか、それともそうではないのでしょうか、その点を伺いたいと思います。
  229. 三角哲生

    三角政府委員 今回の中央教育審議会に対しましては、時代の変化に対応する初等中等教育の教育内容などの基本的なあり方について審議お願いしております。そしてその際には、関連して就学前の幼児の教育のあり方、これについても検討していただく、こういうことにしておりますが、中央教育審議会では、このために教育内容等小委員会というのを設けて審議をお始めいただき、いま進めていただいておるところでございますが、この就学前の幼児教育のあり方について検討するにあたりまして、特にそのための小委員会を設けるかどうか、これは審議会がお考えになることでございますけれども、私どもの理解としては、そのような御予定はないように考えております。
  230. 栗田翠

    ○栗田委員 提案者に伺いますが、幼稚園関係者の中の一部に、個人立幼稚園が直ちに学校法人化しなくても、いままで公教育に果たした役割りを評価して、当分は助成せよという意見もありますね。これについて、どういうお考えを持っていらっしゃいますか。
  231. 西岡武夫

    西岡議員 お答えいたします。  今回御提案を申し上げております私立学校振興助成法の改正の法の趣旨からは、それに沿った御意見とは思いませんけれども一つのお考え方である、このように考えております。
  232. 栗田翠

    ○栗田委員 それでは、いままで五年間で学校法人化がなかなか進まなかったということで、すでにいままでもいろいろ論議されております。そして、前回委員会でしたか、西岡さんが、行政が五年間にちゃんとした手だてをとらなかったからいけないのだというようなことをおっしゃっておりましたけれども、促進のために一体どんな手だてが必要だと考えていらっしゃいますか。
  233. 西岡武夫

    西岡議員 お答えいたします。  ただいまの御指摘は大変むずかしい問題でございまして、一言お答えすることは至難のことでございますが、かねてから幼保の行政の一元化というような問題等も、根本的な問題としては提起をされているわけでございます。また、先ほどからるる申し上げておりますように、人口動態の変化という中で、幼児教育についての行政のあり方というものに対して、やはりきちっとした方針、方向というものを行政が示してこなかった、少なくともこの五年間にこれから先の幼児教育についての行政の方向づけというものを検討して、少なくとも指針を示すべきではなかっただろうか、そういう点で、率直に申し上げて取り組みがおくれているのではないだろうか。また、先ほど指摘がございました、たとえば義務教育についての年齢を満五歳からにすべきであるというような意見、これは先ほど初等中等局長からそういう考えはないという御答弁があったわけでございますけれども、昭和四十六年の中教審の答申の中にそういう方向が盛り込まれたことによって、幼稚園経営の関係者の皆さん方に義務教育の年齢が引き下げられるという可能性があるのではないかという経営上の不安感が何となく底流としてあって、そのことが学法化というものをおくらせてきた一つの要因としてあったのではないだろうか。そうしたことについて、どちらの方向をとるにいたしましても、やはり行政がきちっとした方向というものを示すべきではなかったか、そういう意味で申し上げているわけでございます。
  234. 栗田翠

    ○栗田委員 そうですか。これが直接学校法人化促進の障害になっていたのかどうかということでは、ちょっといまのお答えで私は疑問を感じますけれども、私の方から具体的に幾つかの学校法人化促進のための提案をしたいと思います。  一つは、やはり基準のさらに一部緩和をすることができないだろうかという提案でございます。いま団地自治会などでつくっている幼稚園がかなりあります。特に人口急増地で団地がたくさんできたところ、東京都でいいますと三多摩のようなところですけれども、こういうところにかなり大きな、しかも歴史のある幼稚園もできてきているのですけれども、住宅公団に土地を借りていますために学校法人になれないということで、そのまま幼稚園とも名のらずにやっているところがかなりあります。国が出した学法化の認可基準等についてというものを見ますと、たとえ全部が借地であっても、国または地方公共団体からの借用であり、所有権を移転することが困難であるけれども安定性があるというような場合、こういう場合には例外としてよいということがあるわけですが、こういう団地自治会が経営している幼稚園のようなもので、住宅公団などの土地を借りていて、しかし安定性があり、設置基準にも合っているようなところは、学校法人として認可もよいのではないだろうかと思うのですが、その辺は文部省としてどうお考えになりますか。
  235. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 先生御指摘のとおり、学校法人化の促進が大変困難ということのまず第一の点は、学校法人は、その必要な校地、校舎を自己所有しなければならぬという原則がございますので、それにつきましてなかなかこの面の自己所有あるいは個人の所有をキープするということの困難性があるわけでございますが、いま御指摘のとおり、五十一年十二月に認可基準を緩和いたしまして通達を出しました。御指摘のように、国や地方公共団体に借りる場合、あるいは宗教法人の土地であって所有権の移転が事実上できない、安定した状態にある、あるいは旧設置者から借用しておりまして、この所有権を幼稚園側が取得することがきわめて困難な事由があるというような場合においては、緩和措置を講じまして円滑な学校法人化を図るというようにしたわけでございます。  御指摘の住宅公団の場合につきましては、これらの緩和措置の趣旨から見まして、一部の県におきましては、この面の緩和措置の一環として取り組んであるというようにも聞いておりますが、具体的な事情につきましてはよく調べまして、都道府県の意見もお聞きした上で、同通達の弾力的な運用の一環として扱えるのではないかという観点から検討してまいりたいと思っております。
  236. 栗田翠

    ○栗田委員 次に、幼児の減少によって経営が不安定になっているということが学校法人化に大変障害になっています。経営安定のための施策をどう講じていったらよいのかという問題が大きな問題としてあるわけですけれども、たとえば地方自治体で学級単位に助成しようという立場で検討しているところが出てきているわけですね。それはたとえ四十人でなくても、たとえば三十人で学級をつくっていても、学級単位に助成をしようという考え方に立っておりまして、神奈川などでは検討が進んでいるというふうに聞いております。こういう自治体の努力というのは評価すべきだと思いますが、国としてどうお考えになるか。
  237. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 各都道府県におかれましては、幼稚園教育のより充実という観点に立ちまして、それぞれ補助金の取り組みをしておるわけでございます。先生御指摘のとおり、学級数を配分上の要素としている県もございますが、神奈川県などでは教員数の算出に当たりまして、教員数は学級数と園長分ということで算出をしております。また、幼児の数等を基本配分の基礎にすることは当然でございますが、そのような形で私立幼稚園の永続性、あるいは安定性に資するという取り組みをしておるわけでございまして、また県によりましては、教員実数そのものを補助の基礎数字にするという扱いで、実際に教育の維持向上を図っていくという取り組みをそれぞれ工夫されておるわけでございまして、各県におきましてこの面の適切な配分方法がそれなりに進んできておるということは喜ばしいことでございます。また、何と申しましても幼稚園教育の充実安定を図るためにはこの経常費助成の持つ意味は大変大きいと思うわけでございまして、各幼稚園が本来の姿と申しますか、学校法人によって設置されるという原則に立ちまして、その原則の学校法人化を実現いたしまして、今後とも経常費助成が十分行き渡りまして幼稚園教育のより一層の安定と経営の健全化が図られるということが一番期待されるところであろうと思います。このたびの法改正の、しばらく猶予期間を置いてよりこの面の実効を期すということの御趣旨もそこにあると思う次第でございます。
  238. 栗田翠

    ○栗田委員 いま全国的に各県の様子を聞いてみますと、県が認可する学校法人の学級数なんですが、四学級くらいにならないとなかなか認可しないというところが多いですね。一学級はおろか二学級でもだめである、安定性という立場に立って四学級くらいにならないと認可をしないというところが多いのですが、法的には一学級でも設置基準には合っているわけですね。そうしますと、地方自治の考え方から言って県にあれこれ言えませんが、四学級まで整えなければ学校法人になれないということ、これは非常に小さな園にとっては負担になっているように私は見受けました。この辺の問題について実態をどう見ていらっしゃるかということや、それからどうお考えになるかということですね。簡潔で結構ですが、お願いします。
  239. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 先生御指摘のとおり、認可に当たりましては一般的には二学級以上とするところが多いようでございますが、四学級以上とする県もあるようでございます。私ども文部省といたしましては、この面につきましては必ずしも統一的な指導はいたしておりませんで、各県の地域の実態に即した対応にゆだねておるわけでございます。  なお、御指摘の学校法人化に当たりましての認可に際しましても、四学級以上でなければ認可しないというような基準を定めている事例は私どもいま承知しておらないわけでございますが、いずれにいたしましても、それぞれの従来の経緯また地域の実態は多種多様でございますが、文部省といたしましては、積極的に学校法人化が図られる方向でこの面の施策が進められるよう、都道府県に対して接触してまいりたいと思っております。
  240. 栗田翠

    ○栗田委員 次に、障害児受け入れ園の助成基準の緩和の問題で意見を申し上げたいと思います。  いま国は八人以上障害児を受け入れたときに初めて園に助成をしていると思います。けれども、実際には障害児が一つの幼稚園に八人集まるというのはなかなか大変なことです。全国平均で見ましても一園二人くらいの平均になっておりますし、特に障害児という特殊性から考えても、なおさら余り遠方まで通園するのでなく、最も地元の幼稚園に通って帰宅してからも地域の子たちと一緒に遊べるような、そういう状態を保障することが障害児の発育のためにも大変必要だと思うのですね。そうなりますと、八人集まらないと助成されないということが障害になってなかなか障害児の受け入れができないという実態も出ております。また、努力して受け入れていらっしゃるところの話を聞きますと、最近は大変情緒障害児などもふえて自閉症の子供なども多くなってきておりますけれども、ある東京の幼稚園では、一人の自閉症児を受け入れたために付き添いが必要になって、結局その一人分の人件費が出せないために親御さんから四万円特別に出してもらったけれども、裕福でない家庭の場合には大変それも気の毒である、こういう訴えも出ておりまして、八人でなくてももっと緩和してほしい、七人、六人、できれば一人に対して、国が出している単価がありますが、三十四万三千円ですね、これを一人ごとに出すようにしてもらえないだろうかという、かなり切実な要望もあります。  自治体で調べてみますと、札幌市が一人に対して十万円、それから神奈川県は一人に対しても県としては三十四万三千円出していますね。それから静岡県あたりでも年間一人六万円出しています。こういう自治体の努力がいま進んでいるわけなんですけれども、この基準の緩和、八人以下でも出すということ、このことについても、園の経営を安定させていくという意味からも、障害児の幼児教育を進めるという意味からもぜひとも努力をしていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  241. 三角哲生

    三角政府委員 いま御指摘のこの補助は、私立の幼稚園におきまして心身障害児の就学の機会を確保して適切な教育の実施を図るために心身障害児の教育に係る経常費について補助を行う、こういうものでございまして、お話にもございましたように、都道府県がそのような方向でこの面の充実を図っていくために国もそれに協力する、そしてそういう方向を奨励していこう、こういう趣旨のものでございます。  御指摘もあったわけでございますが、やはり一定数以上の心身障害児を就園させている場合には、これに対して適切な教育を行おうといたしますと、やはり教員の増員あるいは教材の整備等まとまったかなりの金が必要になってくる、そういうことを考慮いたしまして、そういった必要な経費について補助を行う、こういうことでございますので、そのような趣旨から現在は、ただいまも申されましたように、一幼稚園当たり八人以上の心身障害児を就園させているという幼稚園を補助の対象にしているところでございます。  御承知と思いますが、この制度を始めましてから五十一年度までは十人以上、こうしておりましたのを、いろいろな状況を勘案しまして八人以上というふうに改善を図ったところでございます。趣旨が趣旨でございますので、やはりそのようなところに一応の線を引いて、そして都道府県ないしはそれぞれの幼稚園の御努力を奨励をしていこう、こういうことでございます。現在の状況下におきまして、これについて御提案のような趣旨の改善を図ることは非常に困難だと思っておりますが、ただ私どもとしては、今後とも都道府県段階での補助の実態等をよく見きわめながら必要な検討は行ってまいりたい、こう思っております。
  242. 栗田翠

    ○栗田委員 学校法人化を進めよと言うからには、国はそれなりの努力をしなければいけないのですね。それで、だんだんに障害児の数が少なくても補助をするようになっているとおっしゃいますけれども、いま私が例を挙げたように、たった一人でも介添えが必要な例もあり、その犠牲を覚悟で一人の障害児でも受け入れて一人の先生をつけている園もあるわけですから、そういう意味では園側に学校法人化を強く要請するばかりでなく国としても最大の努力をするべきだと思いますね。そういうことで、いま、今後検討するとおっしゃっておりますので、ぜひとも積極的な検討を進めていただいて、一日も早く改善をしていっていただきたいというふうに思います。  ところで、幼稚園やまた保育園などの就学前教育や保育施設で障害児を教育していく、保育をしていくという問題について、文部省はどんな研究をいましていらっしゃるのでしょうか。その到達点とか施策の計画など、時間が余りありませんので簡潔に要点をお答えいただきたいと思います。
  243. 三角哲生

    三角政府委員 幼稚園におきます心身障害幼児については、五十五年三月にその受け入れの実態について調査を行ったのでございますが、全国の幼稚園の三五・一%、これが障害幼児を受け入れておりまして、受け入れ幼稚園一園当たりにいたしますと平均二・四人の障害幼児が入園しているということがわかったのでございます。文部省としては、このような状況にかんがみまして、幼稚園におけるこれらの幼児のためにどのような教育の内容や方法が望ましいのか、それから幼稚園と医療機関等他機関との連絡のあり方をどうするかというようなことが大事だと思いまして、このために専門家の先生方に御協力をお願いいたしまして、ただいま調査研究協力者会議というのを設けております。そして、そこで具体的、実践的な調査研究をいま進めていただいておりまして、そしてその上でこういった障害のある幼児の指導のための教師用参考資料の作成を進めておるところでございます。
  244. 栗田翠

    ○栗田委員 その資料はいつごろできるのでしょうか。
  245. 三角哲生

    三角政府委員 ただいま、この夏、できれば八月ぐらいを目途に、先生方にいろいろと御苦心いただいておるところでございます。
  246. 栗田翠

    ○栗田委員 次に、学校法人の志向園にもなれない幼稚園の問題ですが、先ほどからそういうところもあるではないかというお話がずいぶん出ておりますけれども、私は、園の立場に立ってちょっと物を言いたいと思います。  それは、ならないのでなくてなれないということ、しかもなりたくてもとてもむずかしいという園がありますね。ところが戦後の歴史を見ますと、最初本当に小さな幼稚園を個人でつくられて、地域の幼児教育に貢献していこうということで営々と努力してこられたような小さな園がたくさんあるのですね。百二条で例外規定が設けられているのもそういう個人立幼稚園の歴史というのを勘案しての規定だと思いますけれども、今度のように学校法人化を進めていきますと、最後まで学校法人になれない、しかし良心的な、地域から慕われているような園がつぶれていくのではないだろうか、いわゆる小さなそういう園のスクラップ化に一面で通ずるのではないだろうかという思いもあるわけです。やはりこれらの園にも、そこには子供が育てられており、歴史があり、小さいから幼児教育として不十分かといえば必ずしもそうではないという園があるわけですから、そういうものについてやはり行政としての施策、行政措置というのがあって当然だと思うのですね。これはどうお考えになっていらっしゃるのか、文部省とそれから提案者と両方に伺いますが、簡潔にお願いいたします。
  247. 西岡武夫

    西岡議員 お答えいたします。  ただいま御指摘の問題、まさに今回御提案を申し上げました三年延長の問題にもかかわる核心の問題でございまして、私どももそうした長い歴史を持った小さな個人立の幼稚園の果たしてこられた役割りというものをどう評価し、それがさらにこれからも役割りを果たしていただくための施策がどうあるべきであるかということを、一方において法人化を促進するという施策と並行して、この三年間に結論を出さなければいけない、このように考えております。
  248. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 先生御指摘のとおり、必ずしも学校法人としてのいわゆる志向園になっておらない幼稚園につきましては、それぞれ自主的な努力によって経営がなされておるわけでございまして、いま国の補助は及んでおらないわけでございます。この問題につきましては別途就園奨励費補助等の措置も行われておりますが、文部省といたしましてはできる限り学校法人化の緩和措置等も進め、また公私立の均衡のとれた適正配置ということにつきまして、各県、各市町村での御努力を期待していくというようなことも含めまして、現行の法制のたてまえでございます学校法人化によりまして安定した国の助成策が及ぶということの実現を図るということの現行体系のもとで努力をしていきたいというように考えております。
  249. 栗田翠

    ○栗田委員 次に、学校法人といいますと、上は大学から下は幼稚園まであるわけですね。そして、ある幼稚園関係者の御意見をそのまま言いますと、早稲田、慶応と同じに個人立の小さな幼稚園を扱う、同じ学校法人として当てはめていくのははなはだ無理があるのではないかという御意見もあるわけですね。そして、これは三井、三菱などの大企業と町工場のような零細企業を同じようにやっていけというのと同じではないかといった種類の御意見も出ております。これは御意見として私も聞いて、では具体的にどうせよというところまでまだ政策を持っているわけではありませんけれども、しかし学校法人の中の特別の幼稚園法人などというたてまえで幼稚園にふさわしい学校法人のあり方を考えるべきではないかという御意見は確かに検討に値すると思うわけですね。早稲田や慶応はすぐに廃校するわけではないですが、小さな幼稚園だったら、うっかりすれば法人化してもすぐに廃園してしまう可能性もある。そのときその財産はそっくり提供しなければならないのかとか、いろいろな問題が、これがまた学校法人化を阻んでいる一つの大きな要因になっていますけれども、こういうものについてどうお考えになっていらっしゃいますか。
  250. 西岡武夫

    西岡議員 お答えいたします。  これまたきわめてむずかしい問題の御提起でございますが、私どももただいま御意見のございました、幼稚園だけを持っている学校法人のあり方として特別の幼稚園の独自の法人の姿というものが考えられないかということについて、議論をいまから五年前にいたしたこともございます。したがいまして、ただいまの御意見一つの御見識であろうと思いますし、貴重な御意見と私どもも参考にさせていただきたいと思います。
  251. 栗田翠

    ○栗田委員 文部省はどうお考えになりますか。
  252. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 戦後、学校教育法が制定されました。その際に、従来私立学校につきましては財団法人という形をとっておりましたが、より私学の自主性を尊重するとともに、より公共性を高めていくということの観点に立ちまして、新たに学校法人という法人格が設定されました。第一条の「学校」は、この学校法人のみが設置者になりまして、学校の管理、経費負担の責任を果たしていくということの法人格が生み出されたわけでございます。その際にも現行の百二条の経過措置が置かれまして、先生御指摘のとおり、歴史と伝統を持ちながら、しかも小規模で内容のある教育が行われる個人立あるいは宗教法人立の幼稚園の存在の実態が大きくあったわけでございますので、果たしてこの学校法人そのものを全面的に適用するということにつきましては問題がありまして、あのような経過規定が残されておりまして、現実にいま私立幼稚園の四二%が個人立あるいは宗教法人立という実態でございます。そのような経緯でございますが、学校法人という法人格の中に実際の上で、先ほど来先生も御指摘になられました、また私どもも御答弁申し上げましたとおり、幼稚園につきましてはそれなりの学校法人としての緩和策等も講じまして、できる限り幼稚園の歴史あるいは実態に即した学校法人化が図られるという方向での取り組みをいましているところでございます。学校法人の中に幼稚園の実態に即した学校法人としての態様という方向で取り組みをしておる次第でございまして、現行体系のもとではそのような形で取り組みまして、私学の幼稚園の経営安定に資していくということが一応私ども現行法規の中での考え方でございます。
  253. 栗田翠

    ○栗田委員 私、学校法人志向園になりながら、そして条件を十分持ちながら助成のもらい得を目指している園の具体的例なども調べまして、そういうところへの行政の対処を実は質問したいと思いましたが、時間がなくなってまいりました。  それで、それはちょっと後に残して一つ提案したいのですが、このように学校法人化をめぐる問題でも、園の規模それからいろいろないままでの経営の状態、それから経営者のいろんな立場、いろんなことがありまして、いろんな問題をはらんでいますけれども、この法案の審議に当たって、関係者を参考人としてぜひお呼びして具体的な現場からの御意見を伺ったらどうかと思いますが、委員長いかがでしょうか。
  254. 青木正久

    青木委員長 ただいまの御提案につきましては、後刻理事会で諮って決定をいたします。
  255. 栗田翠

    ○栗田委員 それでは次に、幼稚園の教育内容について少し触れてみたいと思います。  いま幼稚園各地を見ますと、幼児教育にいかにもふさわしいよい教育をしている幼稚園がたくさんあります。自然の中ではだしで遊べる子なんというのをスローガンにしている幼稚園だとか、伸び伸びとお友達と仲よくできる子供とかそういうのがスローガンになっている幼稚園もあるのですが、また一方で非常に問題があるなと思うものも出てきているわけですね。学歴社会の中での受験地獄が問題になっていますが、最近は登校拒否じゃなくて登園拒否児童というのが幼稚園に大分出始めました。そして、なぜ登園拒否を起こすのだろうかと思って調べてみますと、なるほどと思われるような教育がされている園もかなりあります。いま幼児の数が減ったために何か特色ある教育をということで幼稚園が目玉を掲げるわけなんですが、幼児教育のあり方という抜本的なものよりも特色の方に力が入ってしまって、悪い言葉で言えば売り込みに力が入ってしまって逸脱してしまった、そんな例も大変見られるのですね。  私はその例をちょっと挙げまして、大臣のお考えも伺いたいし、これは見逃すことのできないゆゆしい問題だと思いますので、文部省としての適切な御指導についてのお考えを伺いたいと思うのですね。私は例もたくさん持ってまいりましたけれども、特徴的なものにしぼります。  一つの例は千葉県船橋市にある二和ひつじ幼稚園というところなんですね。ここは公教育の機関でありながらこういう労務管理をしているのだろうかという問題と、それと結びついた教育問題があるのですね。簡単にお話しいたしますと、五十一年当時子供がどんどんふえていたとき、この幼稚園では園児五十六人に対して先生一人、そういう設置基準をはるかに上回った状態だったのです。能力のある先生は六十人でも持てるといつもおっしゃるような園長であった。当時職員室もなく、給与をもらうときには給与明細がなくて園長の気分でふえたり減ったりした、こういう幼稚園だったそうです。  それで、たまりかねて十七名の先生が五十一年一月二十五日に組合を結成しました。そして、まず最初の要望が一クラスせめて四十五名以下にせよという、これも設置基準よりは多いのですけれども、そういう要望を掲げたそうです。ところが組合がつくられた後、次々と担任が外されていくわけですね。組合員を担任から外していきました。園長が言うのには、無資格者でも人格者なら有資格者よりもよい、こういう考え方でどんどん外していって教室へ入ることを禁止してしまった。逆にバスの添乗員で無資格の主婦などをクラス担任にしていくということをやっていったわけですね。現在、三月一日付で人員整理の勧告があり、組合員それからいままでかなり前からいた方たちが大ぜい整理されてしまって、全く新しい方たちにほとんど変わって、現在七クラスのうち五人が無資格者である、こういう状態になっているわけです。このことについても御意見を伺いたいと思いますが、時間の関係がありますので、もう一つ続けて申し上げます。  これがまた保育の内容にかかわってきております。結局、園長も専門としての幼児教育についての教育はいままで受けてこなかった方、そしていま言ったように七名中五名が無資格者という中で構成されて、子供に非常にしわ寄せが出てきたそうです。この幼稚園は目玉が、つまりその特色がメロディオンを演奏することと絵をかくということで、これを幼稚園の保育の重点にしていたわけですね。メロディオンというのは御存じでしょうか。口で息を吹いて両手で演奏します。小学校なんかでこのごろやっているのですけれども、この演奏を厳しく指導するものですから、まだ四、五歳児で両手で弾けない子供がいるのですね。器用な子は弾きますが弾けない子供がいるのですね。そうすると、しっかりやりなさいとぴしゃっと手をたたいて徹底的に教え込む。こういう実態の中で、小学校へ入ってからメロディオンを見るとさわれなくなってしまったという子供が何人か出た。学校でメロディオンを出されると手を後ろに回してしまってさわれなくなった子供、それから絵の方も徹底したたたき込みがやられたために円形脱毛症の幼児、それから顔面神経痛の子供、それから登園拒否児は多数出た。それで、ある日先生がトイレに入ったら幼稚園の幼い子供がトイレで会話を交わしていたというのですね。それは、幼稚園というのは大変なところだね、だけれども一度入ったらやめられないんだってね、うん僕年長さんになるのは嫌だなという話をしているのだそうですね。それで絵なんかを徹底的に習わせるものだから、帰るときになって子供が青空の下へ出て、ああ久しぶりだな外へ出るのは、そういうことを言う状態が出てきたわけですね。ある日、お母さんが幼児を連れて暗くなってから運動場で鉄棒の逆上がりを練習さしているのだそうです。どうしたのかと思ったら、あすまでに逆上がりができないと外へ出してあげないと先生に言われて、子供が家へ帰ってお母さんに話して、お母さんがこれは大変だというので夜連れてきて逆上がりの練習をやっているわけですね。こういうことまで起こっているということです。  これは幼児教育についての専門の教育を受け、幼児の発達段階に沿った教育という立場に立たずに、目玉を大いに徹底して仕込んでいこうという、これだけになりますと、こういうことが起こってくるという問題があります。  私は、いま一つの幼稚園の例を挙げましたけれども、これはある特定の幼稚園だけではなく、かなり同様のことがあちこちに見られるのではないかということもありまして、私、大臣に御意見やら御指導をお願いするわけなんです。非常にいい教育をしている園もあるけれども、この手の教育というのはいまかなり広がっておりまして、これは親の側にも責任があります。目玉があるから、特色があるから入れるのだ、漢字を教えてくださいとか俳句を教える幼稚園なんというのもあるそうで、俳句を短冊に書いてそこらじゅうに張っておいて子供に暗記させるのだそうですよ、あなた、はい言ってごらんなさいといって。そういう幼稚園もあるとかね。それから、私自身が経験しましたが、私の住んでいる静岡の家の近所のお子さんが登園拒否を起こしまして、朝泣くのです。お母さんが困っているのです、連れていくのに。どういうことなのかと思って聞いたらば、その子はほっそりした子で食欲がなくてお昼のお弁当を残すのです。そうしたら、残してはいけないというので、何回か残したら倉庫へ入れられてしまったそうです。お仕置きなんです。それでその子は幼稚園に行くのがいやになってしまって、お昼になると緊張するもので、よけい食べられなくなって、商店の忙しいお母さんでしたけれども、お昼になるとお母さんが幼稚園まで行って子供のそばへ座って食べさせる指導をやっているのですね。そうしないとまた倉庫へ入れられるというので親子緊張して、朝なんか大騒ぎになっている家がありました。その話をしましたら、うちのところでもそうですよという話もあって、お弁当を残したらあなたは年長さんには置いておけませんといって、お仕置きに年少の組に引っ張っていくなんというのがあるのです。こういう種類の、小学校なんかのいわゆる詰め込み教育に準ずるような、詰め込みの低年齢化が見られ始めているという傾向があります。全部がそうだとは決して申しません。大変いい教育をしていらっしゃるところたくさんありますけれども。これは私はゆゆしい問題だと思うのです。いま自閉症だとか登校拒否だとか、非行の問題も出ておりますけれども、幼児のときの発達は一生に大きな足跡を残すわけですから、そのときにこういう形で幼児の発達にふさわしくない教育がかなりの幼稚園でやられたとしますと、これは教育上大変な問題を残すと思います。幼稚園教育要領を見ますと、発達段階にそぐわない詰め込みをしてはいけないといった趣旨のことも書いてありますけれども、実態はそうでないところがかなりあり、そして義務教育でないために十分な指導が及んでいないという点が一面で指摘されると思います。大臣こういう問題をどうお考えになりますか。
  256. 小川平二

    小川国務大臣 仰せのとおりに幼児期は人間形成にとってきわめて大事な時期でございます。いわば人間形成の基礎を培う時期でございますから、この時期において適切な教育を行うことが子供の成長にとって非常に大切なことだと考えておりますので、文部省といたしましては、幼稚園教育要領に従いまして地域の実情あるいは子供の心身の発達の程度に対応した適切な教育が行われることを期待いたしておるわけでございます。今日の実情から見て、仰せのような何かセールスポイントをつくらなければならない、その動機はわからないじゃございませんけれども、漢字を教えたり、さっきおっしゃいました楽器を無理に詰め込み教育をして、その結果登校拒否が起こるということは非常に好ましくないことだと信じておりますので、教育要領にのっとりました正しい幼稚園教育が行われますように都道府県を通じて指導をしてまいりたいと存じます。
  257. 栗田翠

    ○栗田委員 最後に一言。  もう一つは、やはり先生方が良心に従って、幼児の発達段階に沿ったよい教育を幼稚園の中でしていけるような状態をつくらなければいけないし、先生たち意見が伸び伸びと、園の中で子供をどう育てるかという立場で自由に出せて、お互いに努力し合っていけるような雰囲気がいまのような状態をなくすためには大変必要だと思うのです。  ここにある幼稚園の就業規則を持ってきたのですけれども、もう時間がないので簡単にいたしますけれども、使用者側だけで決めたもので、ページの四割が禁止、懲戒、服務規程なんですね。中には、懲戒解雇の要件として、幼稚園の教育方針を公然と批判しあるいは教育方針に違反する行為を行い、または行わせようとした者は懲戒免職ですね。それから、職制を通じて発表した事項を故意に中傷誹謗し、幼稚園の業務に悪影響を及ぼした者なんというのはみんな懲戒の事項になっているのですね。非常に厳しい中身がずらずら並んでいますが、これでは自分の考えはこうだけれどもこう教育したらよいのではないかとか、このような教育はやはり問題ではないかといった、専門家たち、先生たちの自由な意見が出せなくなると思いますね。だから教育基本法の六条にも保障されているように、教育者としての教育の自主性を尊重していくためにも身分の安定とかそういうものの保障はどうしてもしていかなければならないのではないか、それと相まってよい幼稚園教育ができるのだろうと私は思っております。こういうことなどもあわせてお考えいただき、御指導いただきたいと思います。  きょうの法案は自民党議員立法の法案ではありましたけれども、正しい幼児教育のあり方、学校法人化を進めていくためにいかに援助をしていくかという問題は、自民党待ちではなく、私の提案したことも含めまして文部省が広く幼稚園や関係者、父母、いろいろな方たち意見をお聞きになって積極的な対策を立てていっていただきたいと思います。そのことについて、最後に一言大臣のお考えを伺って質問を終わります。
  258. 小川平二

    小川国務大臣 幼稚園教育に限らず学校教育は、現場の教職員の自主性あるいは創意工夫にまつところが大きいと存じます。同時にしかし、現場の教職員が一体となって子供の教育に当たらなければなりませんから、職場には職場の規律がなければならない。この規律に明らかに背反するような行為というものは慎んでいただかなければならないと考えております。  文部省といたしましては、さきに申し上げましたように、自民党御提案のこの法律の成立を期待いたしておるわけでございますが、これが成立いたしました暁には、当委員会でお述べになりました委員各位の御意見をも踏まえて、適切な幼稚園教育が行われますように努力をしてまいるつもりでございます。
  259. 栗田翠

    ○栗田委員 終わります。
  260. 青木正久

    青木委員長 次回は、来る二十三日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時八分散会