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1982-04-09 第96回国会 衆議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月九日(金曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 青木 正久君    理事 石橋 一弥君 理事 中村喜四郎君    理事 西岡 武夫君 理事 三塚  博君    理事 佐藤  誼君 理事 長谷川正三君    理事 鍛冶  清君 理事 三浦  隆君       臼井日出男君    浦野 烋興君       狩野 明男君    高村 正彦君       谷川 和穗君    野上  徹君       船田  元君    渡辺 栄一君       中西 積介君    山口 鶴男君       湯山  勇君    有島 重武君       山原健二郎君    河野 洋平君  出席国務大臣         文 部 大 臣 小川 平二君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      味村  治君         文部政務次官  玉生 孝久君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部大臣官房審         議官      宮野 禮一君         文部大臣官房会         計課長     植木  浩君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      松浦泰次郎君         文部省社会教育         局長      別府  哲君         文部省体育局長 高石 邦男君         文部省管理局長 柳川 覺治君         文化庁次長   山中 昌裕君  委員外出席者         青少年対策本部         参事官     阿南 一成君         警察庁刑事局捜         査第二課長   森広 英一君         大蔵省主計局主         計官      浜本 英輔君         厚生省児童家庭         局母子衛生課長 谷  修一君         運輸省船舶局監         理課長     早川  章君         自治省行政局選         挙部選挙課長  岩田  脩君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ————————————— 四月九日  国立又は公立の大学における外国人教員の任用  等に関する特別措置法案石橋一弥君外四名提  出、衆法第一四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 青木正久

    青木委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山原健二郎君。
  3. 山原健二郎

    山原委員 昨日行われましたいわゆる教科書裁判最高裁第一小法廷判決につきましてお伺いをしたいと思います。  この判決は、訴え利益有無判断とするに十分でないとの理由原判決破棄東京高裁差し戻し判決となっております。検定違憲性あるいは違法性につきましてはすでに第一審、第二審で明らかでありまして、最高裁国側上告を棄却して国民教育権を擁護すべき当然の責務があると思いますが、このことには触れておりません。そういう意味で、最高裁判決が真正面からいわゆる国民教育権問題を初めとして憲法問題との関連での判定を放棄したことは、私は不当であると思っております。それから同時に、訴え利益有無をもって裁判を引き延ばしたということは現行検定を黙認することにつながりかねないわけでありまして、そういう意味では政治的判断ではないかということも考えられまして、この点では私どもは非常に大きな不当性を感じておるわけであります。同時に、この十数年にわたる裁判の中で、国民の間にはいわゆる教育自主性の尊重あるいは教育権の保障の問題について、民主主義教育の発展の根幹をなすものであるということを明らかにしてまいりました。  そういう経過から見まして、まず第一番に、今回のこの判決について、上告をされました文部省としてはどういう評価をされておるか。これは文部大臣からお伺いをしたいのです。
  4. 小川平二

    小川国務大臣 文部省はかねてから、学習指導要領改訂によりまして旧学習指導要領による改訂検定の余地は全くなくなっておる、したがって、訴え利益はすでに失われているのだという主張をいたしておったわけでございますが、今回の判決文部省主張原則的に認め原判決破棄したものでございますから、きわめて妥当な判決だと考えておるわけでございます。
  5. 山原健二郎

    山原委員 文部省上告されました理由の第一点ですね、これは家永三郎氏は原告としての適格性がないということで文部省としては当然、これはいわば裁判言葉で言えば門前払いというものを要求したのだと思います。これは文部省の第一審、第二審のときから、当初からの要求であるわけですが、当然この見解は第一審、第二審においても却下されております。  今度の場合も、この第一点につきましては最高裁判決文部省の言い分を退けているわけですね。この点はお認めになりますか。
  6. 小川平二

    小川国務大臣 仰せのとおりでございます。
  7. 山原健二郎

    山原委員 第一点につきましては、いま文部大臣がお認めになったとおりです。  第二点ですが、これはいわゆる第二審の畔上判決部分改訂検定の問題で、改訂する個所が改訂前より改善されているか少なくとも同程度であることという運用上の合否判定の基準が存在をしている、それを認めなかったという点について畔上判決が法に基づかない恣意的な処分としたのは誤っているという点でありますが、この点については判決文の中で、「その余の点についての判断省略し、」こうなっておりますが、この点もお認めになりますか。
  8. 三角哲生

    三角政府委員 第二点については判断をされておらないということでございます。その上で、判断をされずに原判決破棄した、そういうことでございます。
  9. 山原健二郎

    山原委員 文部省上告は、法に基づかない恣意的な処分畔上判決がしたのは誤っているということでございますが、いま三角局長が御答弁になりましたように、それについては判定省略しておるということですね。これは二つ目の結論です。  第三点の問題ですが、いわゆる訴え利益の問題でございます。これは、一九七六年四月一日からは七〇年版の高校指導要領が完全実施されるので、六〇年版指導要領による教科書について部分改訂検定の不合格処分を取り消す訴え利益は失われていると。これにつきましては、私どもがどういうふうに見ているかといいますと、この裁判最高裁に入りましてから後に起こった問題であります。しかも文部省は、自分改訂したことによって生じた問題を理由にしてこの訴訟意味がなくなったと主張をしているわけでありますが、この点については一第一点の訴訟自体をなくしようとする意図に基づいて出されたことだろうと思います。この点については、ずいぶん今日まで裁判所の中でも争われてきたわけでございますが、いまは触れません。しかし判決は、原則として認められたということになっておりますが、同時に、「取り消しの訴え利益を失わないということができる」という文言も入っておりまして、引き続いて審理する、いわゆる右の点の審理を尽くさせるための差し戻しということになっておるわけでございます。  この上告の三点を見ますと、第一点はいわば文部省見解は却下されたかっこうになっています。第二点については省略。第三点につきましては今後審理を尽くしていくという点で、少なくとも文部省上告主張ストレートには通っていないというふうに判断をすべきだと思いますが、そういう判断をしてよろしいですか。
  10. 三角哲生

    三角政府委員 ただいまお話のございました第三点につきまして、文部省主張原則的に正しい、こういう判断でございます。  ただ、きわめて例外的に、前の指導要領とその後の指導要領の間の変動が微小な場合には、なお訴え利益を失わない可能性がなきにしもあらず、こういうことで、差し戻しというわけでございまして、原判決破棄されておりますので、私どもとしては、国側主張が通った、こういうふうに判断をしておるのでございます。
  11. 山原健二郎

    山原委員 少なくとも、ストレートには通っていないということは言えますね。  三つ上告理由を挙げまして一つ二つ三つと聞いてきたわけですが、三番目の一番問題になるところですけれども、それは、文部省としてはこの主張をされてきたわけですけれども原則として認めるということは確かに判決文の中に書かれております。しかし同時に、例外という言葉もございます。ストレートには通っていない。だから、差し戻しをしてその点については審理を尽くすべきである、こういう差し戻し命令になっているわけですが、その点はお認めになりますね。
  12. 三角哲生

    三角政府委員 ストレートに通った判決だと思っております。ただ、きわめて例外的に、先ほど申し上げましたような可能性というものが考えられなくはない、こういうことでございますから、それはどういう言葉で申し上げたら的確かは存じませんが、一〇〇%とは申しませんけれどもストレートには通っていると思っております。
  13. 山原健二郎

    山原委員 ストレートに通ったのだったら、高等裁判所へ差し戻すことはないわけです。審理を尽くしなさいということで第二審の方に差し戻しをするわけですから、そこでまた、言うならば新たな法廷におけるやりとりが行われるわけでしょう。ストレートに通るということであれば、この点は利益がないのだからということで、原告側に対していわばすべての原判決破棄するということになるわけですからね。そうじゃなくて、第二審に戻す、そしてその点についての審理を尽くしなさいということですから、それをストレート——あなたは一〇〇%とは言わないと言っておりますが、必ずしも、新聞に出ておりますように文部省が万々歳じゃないですよ。何かもうすべて勝訴したようなことを発言されておるようですけれども、そうではない、やはり第二審において再び審理が行われるということはお認めになるわけでしょう。
  14. 三角哲生

    三角政府委員 真っすぐな判断を下されたというふうに思いますので、私は、ストレートに通った、こういうふうに考えるのでございます。
  15. 山原健二郎

    山原委員 原判決破棄ということをどういうふうに受けとめておられるか、ちょっと聞いておきたいのですが、これはどうですか。
  16. 三角哲生

    三角政府委員 原判決破棄されたわけでございますから、いわゆる杉本判決畔上判決は消えたと申しますか、法律意味がなくなったということで、まあ文献的な意味では残るかもしれませんが法律上は消えた、こういうことだと思っております。
  17. 山原健二郎

    山原委員 これは法制局かどこかがおればいいのだけれども、呼んでおりませんが、そうじゃないのですね。差し戻しの場合には必ず事務的、技術的にも原判決破棄という言葉がつくわけで、それはあくまでも利益があるかどうかのいわゆる裁判における窓口のところで行われているわけですから、原判決破棄という言葉は、内容には触れていないのです。それを第一審も第二審も破棄されたという受け取り方は、少なくとも官庁としての受け取り方ではないと私は思います。もっと厳密に法制上の明確な立場をとらなければならぬと思います。そういう判定はどこにもないのですね。その点どうですか。
  18. 三角哲生

    三角政府委員 原判決破棄ということは、先ほど申し上げましたように、一審、二審の判決法律意味のないものになった、こういうことでございまして、改めて差し戻された東京高裁において新たな判断がなされる、こういうことだと思っております。
  19. 山原健二郎

    山原委員 差し戻された高等裁判所において新たな判断をするということは、これは間違いないと思うのです。いわゆる差し戻し審理を尽くせという命令でございますから、それは間違いないわけですけれども、では、一審、二審がすべて破棄されたかというと、そうではないのです。その証拠には、この第二点につきましても、畔上判決については、これは最高裁はわざわざ判定省略しているわけです。生きているのですよ。また、第一審の杉本判決につきまして、これはもう違憲判決、それから畔上判決は、これは御承知のように違法判決でありますけれども、これについて一言も触れてないのですね。言うならば、第一審、第二審の判決精神あるいは形式形式上も精神上も実質上も今度の最高裁判決によってはいささかも傷つけられてはいない、その精神は生きておるという判断をすべきが当然だと私は思っております。その点はもう一回聞いておきますが、すべてなくなったというふうに思っておられるのですか。
  20. 三角哲生

    三角政府委員 ただいまの山原委員お話は、やはり現在の状況に対する判断としてはいかがかと思うのでございます。  判断省略した云々とございますけれども、これはもう全然白紙の話でございまして、原判決破棄されたわけでございますし、新たに差し戻された高等裁判所において改めた判断がなされる、こういうことでございます。
  21. 山原健二郎

    山原委員 それも不正確だけれども、それはいいといたしましょう。高等裁判所において新たな判断がなされるというその言葉からすれば、これ以上言わなくても、全面的な判断の争いになると思いますけれども。  原判決破棄というのは、それでは第一審も第二審もすべて破棄されたと思っておられるのですか。
  22. 三角哲生

    三角政府委員 そのとおりでございます。
  23. 山原健二郎

    山原委員 それはどこへ書いてありますか。少なくとも畔上判決については省略しているわけでしょう。破棄してないのですよ、この文章の中からも。それからまた、そういう判断はすべきものではないのです。第二審も第一審も破棄されるなんという解釈はどこにもないのです。
  24. 三角哲生

    三角政府委員 これは、原判決破棄するという言葉についていまの委員のようにお考えになると誤った判断になるのではないかと思います。あくまでも今後の東京高等裁判所においては、その点について白紙でまた審理をされ、判断をされる、こういうことでございまして、一審、二審は、先ほど来申し上げておりますように、この原判決破棄の結果として法律的には全く意味のないものになっておる、こういうことでございます。
  25. 山原健二郎

    山原委員 それははっきりさせておきたいのですが、これは文部省の統一した見解ですか。あるいは政府の間で、法律上の用語としても、また裁判のあり方としても、そういう判定をしておられるのですか。
  26. 三角哲生

    三角政府委員 申し上げましたような考え方が正しい、こういうふうに私どもは思っております。
  27. 山原健二郎

    山原委員 それは文部省初中局見解ですか。こういう裁判所判決に対する初中局判断ですか。
  28. 三角哲生

    三角政府委員 初中局としてそのように考えております。
  29. 山原健二郎

    山原委員 これは完全な間違いであります。これは、これだけ重要な判決でありますね。十数年間闘われた判決ですから、その点は明らかにしなければなりませんが、三角局長の言っておられる第一点は、第二審においてすべて判断をするということは、これはいいですよ、すべてを判断するということなら。それはお聞きしておきましょう。しかし、原判決破棄ということは、第一審、第二審すべてがパアになってしまった、歴史的文献になったというようなものじゃないのです。そこには触れてないのです。一言も触れてないでしょう。触れてないばかりか、畔上判決の一部、それはあなた方が上告の第二点については論評してないという、省略しているのです。これをお読みになったらわかりますように、畔上判決については否定もしてないのですね。にもかかわらず、第一審、第二審すべてがなくなってしまったというような判定は少なくとも誤りですよ。これはもっと検討してください。初中局だけの、自分たちに都合のいい判断では裁判の問題はいきませんからね。もちろん、私ども裁判の問題、素人ですから詳しいことはわかりませんけれども、どなたに聞いても、第一審、第二審のすべてがパアになったなどという見解は出ておりません。いいですか。もう一回聞いておきましょう。それは誤りですから、明らかにしてください。
  30. 三角哲生

    三角政府委員 裁判制度の立て方、仕組みの上から、私どもは先ほど来申し上げました考え方が正しいのだ、こういうふうに思っておるのでございます。また、判決全体の判決理由を見ましても、学習指導要領というものを前提にし、そしてそれに基づく検定処分というものも土台にした上の判断もなされておりまして、これは実態論の方になるわけでございますけれども、そういうこともあるわけでございます。
  31. 山原健二郎

    山原委員 ちょっと話をそらしましたね。今度の最高裁判決がいわゆる憲法の問題その他について避けているということはどの新聞も書いておりますし、恐らくそれは当然の見方だろうと思います。けれども、たとえばそれなりに、杉本判決における違憲判決否定もしてないのです。否定してないどころか、どこにも触れてないのですからね。それから畔上判決違法性の指摘についても触れておりません。触れておるのはあなた方が上告されたところですね。それは、懇意的な検定は違法であるということについては出ておりますけれども、それははっきりと、「その余の点についての」、その余の点というのは、一と二と三と出ておりますから、上告の第二点、これがその余のところになるわけですが、その余の点については判断省略し、こうなっている。そして、原判決破棄し、こうなっている。  だから、肝心の違法性の問題については最高裁判所判定を出していない。省略しておるということが書いてあるにかかわらず、それをわざわざ、原判決、第二審の判決も第一審の判決もすべてパアになった、こんな横着な解釈はないですよ。パアになったということなら省略するという言葉も要らないじゃないですか。わざわざ、上告している第二点については省略すると、判定を出していない。それがすべてパアになったということになったら、こんなこと書かなくていいじゃないですか。そういう点から見ましても、初中局見解矛盾があります。どうです。
  32. 三角哲生

    三角政府委員 この判決におきましては、まず訴え利益の問題ということで、その点につきまして原則的に国側主張認めておりまして、その結果としても破棄をするということでございますから、一々全部についてここで御判断をお示しにならなかった、こういうことだろうと思いますが、原判決破棄されておるわけでございますから、差し戻された裁判所で新たにまた御判断をなさる、こういうことになるのでございます。
  33. 山原健二郎

    山原委員 差し戻された第二審において新たに判断を下すというところはまあいいのですけれども、あなたのおっしゃること、矛盾がありゃしませんか。たとえば原判決破棄したから、破棄と書いてあるから全部破棄されたんだというのだったら、あなた方の上告している第二点についてなぜわざわざここを省略したか。破棄したのだったら書かなくていいでしょう。細かい問題のようですけれども、そういう点からもうちょっと厳密に判決文を見ていただいて、文部省としての統一した見解を出してもらいたいと思うのです。そういう初中局のお考えであれば、出すのがいいのかどうかわかりませんけれども、しかし、少なくともそんなこともしないで勝った勝ったというようなことを言うことは、文部省としては正確な態度じゃないと思います。何かありますか。
  34. 三角哲生

    三角政府委員 次の東京高等裁判所での裁判というものは、先ほど来おっしゃっておられます畔上判決なり杉本判決なりには拘束されると申しますかとらわれると申しますか、そういうことなく独自にまた審理が行われる、こういうことでございます。  それから、先ほど来私、初中局長として、政府委員として出ておりますので、初中局考えと申しましたけれども、これは文部省考えというふうにお受け取りいただいても結構でございます。
  35. 山原健二郎

    山原委員 もう一つ矛盾したことを言っておられるのですけれどもね。差し戻された第二審において、第一審の判決あるいは第二審の判決にとらわれることなく新たな判断を下すという全面的な御見解を示されたわけですね。第二審における裁判というのは、これらにとらわれはしないけれども、全面的な裁判、全面的な論争といいますか、そういうことをやるのだということをおっしゃっていますね。それはいいですね。
  36. 三角哲生

    三角政府委員 第三点と申しますか、指導要領改訂に関連して、その改訂状況によりまして原告側訴え利益があるかどうか、これが審理の事項になる、こう思いますけれども、それは裁判でございますから、どういうふうに展開するかということは、いまここで考えても仕方のないことでございます。それは原告側被告側、それぞれどういうふうな訴訟の方法を展開するか、そういうことにもよると思います。
  37. 山原健二郎

    山原委員 非常に不正確な——たとえば原判決というと第二審のことなのか、そんなことまで聞きたくなるのですよ。あなたは全部だと、こうおっしゃっていますけれども、第一審の判決と第二審の判決と違うのですよ。
  38. 三角哲生

    三角政府委員 原判決というのは第二審の判決でございますけれども、第二審の判決は第一審の判決を経てその上で行われておるわけでございますから、第二審の判決破棄されておるということは当然それまでの第一審の判決も含めて、先ほど来申し上げておりますように法律的に意味のないものになった、こういうことでございます。
  39. 山原健二郎

    山原委員 余り細かいことに入りたくないのですが、第一審の判決は、いわば簡単に言えば誤記、誤植等以上のものについては違憲判決ということですね。第二審の判決畔上判決というのはそのことには触れてないのです。触れてなくて、第一審の原判決、主文の第二項、費用の問題ですが、それは取り消す。これは第二審判決の中に出ています。そういうことと、それから文部省の恣意的な検定行政は違法であるというのがあるのです。これはあなたは全部破棄されてなくなったのだとおっしゃるけれども、それは今度の判決文の中には省略省略ということで判定を下してないのですよ。ということは、全部あなたのおっしゃるようなすべてがなくなるというようなことじゃないのです。率直に言えば、憲法上の問題からすれば杉本判決は生きている。それから畔上判決も、これは判定省略しておるということですから、この畔上判決についても全く今回の判決は言及もしておりません。もちろん肯定もしておりま  せんが、否定もしておりません。だから、そういう意味では、これは議論のあるところかもしれませんけれども、第一審の判決、第二審の判決というのが今度の最高裁判決によって一定の制約を受ける部分があるとすれば、第二項のところのいわゆる恣意の違法性については、これは強いて言えばそこは省略判定を下してないということであって、すべてが破棄されたからすべてがパーになってしまったのだという解釈は何と考えても了承できないわけです。  その点についてはこれから各党の皆さんもやられると思いますので、この程度でおきますけれども、あなたは、新聞を読みますと、昨日のテレビを見ますと、今度の判決文部省検定が合憲だということを前提として判断を下されておるというお話をされたように、私もきのうも二回聞いたのですが、誤っておったら指摘していただきたいのですが、そういうふうに考えておるわけですか。
  40. 三角哲生

    三角政府委員 先ほど来の一審、二審の問題でございますが、これは訴訟制度に係る問題でございますので、その意味では、そのことを主管する官庁もありますので、お確かめいただければいいかと思いますが、私ども原判決破棄というのは、破り捨てるということでございますから、それはなくなった、こういうことだというふうに聞いておりますし、そのように考えるのが正しいと思っております。  それから、ただいまのお尋ねの件は、私はそのように思っておりますので、そういうふうに報道関係の方に申し上げたわけでございます。
  41. 山原健二郎

    山原委員 やはり判決を見ます場合に、それぞれの立場はあると思いますけれども、少なくとも文部省上告した御本人ですからね、そして裁判をやってきたわけですから、そういう点は正確な把握をしていかないと、私の方はこう思う、だけではいかぬと私は思います。ことに第一審の杉本判決は違憲という判決。第二審の畔上判決は、第一審の憲法論は論ずる余地はないということで、文部省の行いました違法性についての指摘をしているわけです。第二審の場合は憲法論議ないのですね。しかも今度の判決では、いわゆる憲法というような問題については触れておりません。それを、憲法前提としたわれわれの検定が認定されたのだというこの解釈も、かなり強引な解釈であると言わざるを得ないと思います。  そういう点を考えてみますと、やはり教育行政の最高の府として今回の判決については非常に正確な判断をしていただき、そして、少なくとも第一審、第二審において文部省は敗訴しているわけですからね、今度の場合はそこのところにほとんど触れてない、しかも、さらに下級審で審理をしなさいということですから、文部省としては必ずしも勝利をしたとか、それからその上につけ加えて合憲性が認められたとか、あるいは検定認められたとかいうふうな拡大解釈をして進むべきではないと思うのです。むしろ第一審の杉本判決やあるいは第二審の畔上判決というものに対して本当に耳を傾けていくという中で、教育行政をどういうふうに担当していくかという謙虚さが必要だろうと私は思いますが、この点はいかがですか。
  42. 三角哲生

    三角政府委員 杉本判決におきます憲法に関係しますいろいろな論議は、これは理想論と申しますか、あるいは学問的な一つ主張というような感じでは読めるわけでございますけれども、私どもとしてはとうていこれは承服できないところであったわけでございます。そして、その杉本判決のいろいろな憲法論議につきましては、いわゆる高津判決におきましても否定をされておりますし、畔上判決におきましてもその趣旨なりは否定をされておる、こう見ておりますし、五十一年の学力テストに関する最高裁判決においても否定をされておる、こういうふうに考えております。  畔上判決につきまして謙虚に受けとめてということでございましたが、私どもとしては改訂検定という制度なりこれまでの慣行についての審理が十分尽くされておらなかった、こういうふうなことでありまして、そういうことで上告をした次第なわけでございます。そして昨日の判決におきましても、理由書を見ますと、学習指導要領というものを前提とし、そしてそれを土台にした教科書検定の正当性なり必要性なり、これをも前提とした判決でございますので、第一審でいろいろ論ぜられました憲法論議というものはすでにいろいろな判決否定されたというふうに私どもは受けとめておりますけれども、この判決でもそういうことがさらに確かになった、こういうふうに考えざるを得ないのでございます。
  43. 山原健二郎

    山原委員 率直にお聞きしますが、この判決の中で、合憲であるということをどこで確かめられたのですか。
  44. 三角哲生

    三角政府委員 ただいま申し上げましたように、学習指導要領なり教科書検定制度なり、これについて、これが必要だ、こういう前提に立っているというふうに私は判決全文を見てそのように受け取るのが正しい読み方である、こういうふうに考えるのでございます。
  45. 山原健二郎

    山原委員 杉本判決について、理想論であるとか学問的な主張であるとか、裁判判決ですからね、それに承服しがたいということはわかるのですよ。文部省が承服しがたいということで上告してきたのですから。それはわかるのですけれども、少なくともこれが否定されていないということは、文章全体から判定するのだというお話ですけれども、あえて判決憲法論議その他には触れておりません。そこが、国民の中にあるところの、この判決が優柔不断であるとかあるいは勇気を持って正面から取り組んでいないという、むしろ抗議のあるところでございまして、それに触れてない。触れてないことについては、おれたちは合憲だと認識をするのだというこの考え方もかなり強引な考え方だと思います。  それからもう一つ大事なことは、こういう判決が出まして、そして言うならば勝負は先へ延ばされたわけですね。いまあなたもおっしゃるように、第二審に差し戻しをしまして、いわば新しい判断の下される場所ができ、そのために先へ延びる。そこのところでこの判決を勝手に解釈をして、そして、おれたちは勝ったのだ、だから思い切ったことをやるのだと言うこの傲慢さといいますか、そういったものが出てくることを私たちは憂慮しています。  それからこの裁判判決については当然正当な論議を続けていかなければならぬと思いますが、最近の教科書問題をめぐる動きというもの、これはまさにいわゆる検閲的検定にまで伸びている。文部省自体が決めました検定基準をも逸脱するような方向に向かっております。それはいままで各委員がここで指摘をしましたように、たとえば広島原爆の記述が原発の記述に変えられる。あるいはノーモア・ヒロシマという言葉が消える。あるいはこれなども本当に学校の先生方も困ると思いますが、この四月から北方領土が日本領土に地図の上でも塗りかえられて日本国面積がふえる。それは、北方四島に限られて千島はどうなるのかという問題も出てくるし、それから、現に北方領土返還の運動が起こっておるときに先生方もどう取り扱っていいのか。実際、国民がこの北方領土の返還を要求しておるときに、すでに教科書の上ではこれは日本国領土になっておるというようなこと、これもやはり相当国民的な合意がないと、教育の現場における人たち、先生方はどういうふうに対処していいかわからぬという問題まで出てくると思うのです。そんなことが次々と起こってきております。  そして、今度は中教審です。きょうのテレビなどによりますと七月には教科書に対する中教審答申を出すというようなところまで来ているわけです。そして、その中教審答申を待って一挙に教科書問題の解決、いま出ておりますのは有償化の問題であるとか広域採択の問題あるいは都道府県単位の採択の問題とかいうような、いままで論争してきた問題が一挙に解決していくのだ、そういうふうな動きが出てきているわけです。その点を私たちは、まさに政治介入、あるいは政権政党がこの裁判判決を利用して一挙に日本の教科書行政を、私から言わせるならば反動化の方向に導こうとしている動きがあるのではないかと憂慮いたしているわけです。そういうことをやってはならぬと思っているわけですが、文部大臣一つはこの判決文部大臣として正確に判断をしていくための努力をしていただきたいと同時に、そういう動きに対しては文部行政の責任者としてそんなことはやらないということが言えるかどうか、伺っておきたいのです。
  46. 三角哲生

    三角政府委員 私どもは今回の判決をきわめて客観的に真っすぐ受けとめたいと思っておりますので、勝手でかつ傲慢であるという御指摘でございましたが、これは主観の問題ですからいたし方はないと思いますけれども、そのような考え方なり姿勢は持っておりません。  それから、検閲的検定だというようなことも仰せになりましたが、核の脅威の問題にしても原発の問題にしても北方領土の問題にいたしましても、いずれも私どもは、それらが教科書に適切に記述されるように、偏った形で子供たちに誤った理解が及ばないようにという立場から検定を進めておるわけでございまして、そのやり方については、よく全体を見ていただける方にはおわかりいただける、こういうふうに思っておりまして、検閲的検定などはこれまでもいたしておりませんし、今後もそういう考えはございません。  以上、大臣がお答えになる前に補足をいたします。
  47. 小川平二

    小川国務大臣 今回の判決につきましては、私どもは、訴訟を提起する利益なしというかねてからの文部省主張原則的に認められたものと理解をいたしております。私も最高裁判決を論評する自由を持っておりますから、この判決を妥当な判決であると申し上げておるわけでございますが、勝ったとか万々歳というようなことは一言半句も申しておりませんから、この点誤解なきようにお願いを申し上げます。  それから、教科書の問題でございますが、かねてから時代の変化に対応する初中教育のあり方いかんということを中教審に諮問申し上げておるわけでございまして、その際、教育内容と密接な関連を持っております教科書についても検定、採択あるいは給与の面も含めて白紙で検討をお願いいたしておるわけでございます。先ほど一挙に云々というお言葉がございましたが、私どもは、答申をいただきましたならば謙虚にこれを受けとめてその時点で判断をしよう、こう考えておるだけでございまして、仰せのような意図を持って諮問を申し上げておるわけではございません。
  48. 山原健二郎

    山原委員 中教審の問題が出てきましたけれども、栗田議員がこの前に中教審メンバーについて意見を申し上げました。今度の中教審が非常に重要な役割りを持っておることは明らかです。この人選は現文部大臣がやられたのではないと思いますけれども、これはかつてない大変偏った人選、これで本当に、教科書行政についての公正を期せられているという御発言がこの前もあったわけですが、そういうものになるのか。たとえば改憲論者がほとんどでしょう。英霊にこたえる会という改憲運動を具体的にやっている呼びかけ人、それから日本を守る国民会議という、いわば右翼的な団体の呼びかけ人、さらには吉本二郎さんの場合ですけれども、この方は今回の裁判文部省側の証人、それからある方は「疑問だらけの中学教科書」の賛美者、ある方は軍拡論者であり防衛庁を国防省に昇格させる論者である、それから率直に言って自民党糸の知事や教育長で構成されている。  だれが見ても、これほど偏った教科書論議をする第十三期中央教育審議会のメンバーというのは、納得しません。結論はわかっているのじゃないか。同じ文教委員の皆さん、名前が出てきて恐縮ですけれども、これは新聞の記事でございますから正確度については私は確認しておりませんが、恐らく間違った言葉ではないと思います。「書けといわれれば、答申は、いまでも書けないことはありません。でも、それじゃ、委員さんたちに失礼になりますからね」、これは諸澤次官が言っているのです。それから高村中教審会長は、「教科書なんか大した問題じゃない。早く仕上げて、教育内容に全力で取り組みたい。これは、大問題だよ」と言っております。それから人選につきましても、これは西岡さんに悪いのですが、西岡武夫政調副会長はこういうふうに言っておられます。「中教審というものは、文部省が困るような答申を出すはずがない。第一、高村さんに中教審の会長就任を頼みに行ったのは、ぼくと藤波さんなんだよ」、こういうことを見ましても、これは公正な中央教育審議会の編成ではない。しかも、七月に答申を出す。長年にわたって論議をし、国会においても論議をしてきた問題が、こういうメンバー、私は全部個人個人が悪いと言っているのじゃありませんよ、しかし、ほとんどそういうメンバーによって構成されている、しかも文部省に悪いものは出てこない、こうなってまいりますと、これはどんなに公平に見ても国民の納得できるものじゃないと思う。  教育が不当な支配に服することなく、教育を論ずる場合にはあらゆる思想、信条あるいはあらゆる意見が出て、そして国民的な合意が得られる、そういう中教審ならばわかりますけれども、本当に自分たちの気に入った者だけが集まって答申を出してくる、その答申に基づいて文部行政が行われるということになりますと、これは恐るべきことですね。そんなところまでいまの教育行政は来ているのか。私は、小川文部大臣の時代に戦前において子供たちを犠牲にし、国民を犠牲に追い込んだような教育にいささかでも逆戻りするようなことを許すならば、小川文部大臣は歴史に汚点を残すことになるのじゃないかという心配すらしております。こういう人選が正しいと思っておられるかどうか、ついでで申しわけないけれども、たまたま中教審の名前が出ましたからこのことを伺っておきたいのですが、いかがですか。
  49. 小川平二

    小川国務大臣 委員に委嘱申し上げました方々、個人としてどのような御意見をお持ちかは存じませんが、公の立場で教育のあり方について御審議なさいまする場合に、憲法は現に存在をいたしておるわけでございますし、憲法精神を受けて教育基本法も存在をいたしておるのでございますから、これに違背するような答申が出るとは考えておらないわけでございます。  また、私が戦前の教育に後戻りをさせるようなことがあってはならない、仰せのとおりでございまして、さようなつもりは毛頭ありません。
  50. 山原健二郎

    山原委員 私は今度の最高裁判決との関連でいろいろ申し上げてきたわけですが、もちろん文部省、特に三角局長のこの判決解釈については納得をしません。しかし、これは今後の争いの問題だと思います。  ただ、いまこの中教審のメンバーの問題を出しましたけれども、ここに見られますように、少なくとも、文部省はいま相当偏った動きをし始めている、これは指摘しておく必要があると思うのですよ。  ではなぜこういう大事な問題を取り扱う中教審メンバーあるいは教科書委員会のメンバーをつくるときに、反対の意見の人を入れないのですか。それで論議をしたらいいじゃないですか。実際にいま憲法精神に違反するような結論は出ないと思いますと文部大臣はおっしゃいましたけれども、改憲論者です。むしろこの議員の皆さんより、議員の皆さんの中に改憲論者がおいでになるかもしれませんが、もっと積極的に呼びかけ人になり、憲法改正の実行動をやっておる人たちが集まるわけでしょう。幾ら期待したって、憲法に対する憎しみと憎悪の念を持っておる人たちが集まって、そしてこの教科書行政を論ずるということになりますと、これは文部省は反省してもらいたい。ここで反省しなかったら、一挙にもとの姿に突っ走っていきますよ。これはまさに、戦前の教育の反省の上に立って営々として築いた戦後の日本の民主主義教育、少なくとも民主的で自主性を持った、少なくとも憲法教育基本法に基づいた教育を実現しようとしてきた日本国民の三十数年の努力、これを水の泡にしかねない内容を持った動きをいま文部省がしておるということについては、私は厳格に警告をしておきたいと思います。幾ら弁解をされましても納得しません。なぜこういうメンバーをつくるか。十人なら十人つくるときには、それぞれの学者もおるわけですね。それぞれの見解を持っている人がおるわけです。そこで丁々発止と論議をされる中央教育審議会ならまだわかりますけれども、ほとんど一色の人たちを集めてやるというその結論、答申というものがもうどんなものになるかということ、しかも先ほど読み上げましたように、もう自民党の枠、文部省の枠から出ないのだとなめ切っているのですよ。なめられ切った中央教育審議会、それがあうんの呼吸で日本の教育行政を握っていくとするならば、これは歯どめがかからない方向に向かっていく可能性を持っています。その点はどんなことがあっても警告をしておきたいと思うのです。  文部大臣、その点、これは私の警告が正当だと思って私は主張しているのですが、断じてそういうことを許してはならぬという決意を持っていただきたい。いかがですか。
  51. 小川平二

    小川国務大臣 一挙に後ろ向きの方向に突っ走る懸念が多分にあるという御判断でございますが、私はそのようには考えておりません。必ず中正な、かつ妥当な答申をいただけるものと期待いたしております。
  52. 山原健二郎

    山原委員 あえて申し上げますけれども、今度の判決をもっていろいろな拡大した解釈をすることなく、またそのことによって、率直に言っておごり高ぶる気持ちで教育行政をやっていただかないように切に要望をしておきます。  そして、今度の判決は、もちろん私どもにとりましても抗議すべき内容を持っております。真っ正面から憲法論その他に取り組まなかったという点については、最高裁判決について私どもなりに非常に抗議をしたいという気持ちも持っております。しかしこの判決を見ましても、すべて文部省が勝ったわけではない。上告の第一点は、これはもう明らかに拒絶されている。第二点は判定を出されていない。留保されている。あるいは「省略」という言葉を使われている。第三点については、原則認めるけれども、しかしこの点は審理が不十分だから高等裁判所においてもう一回審理を尽くしなさい、こういうことですから、決してあなた方は全面的な勝利あるいはストレートに勝利したものではないということを申し上げておきたいと思うのです。  教科書の問題はそれだけにしまして、次に一昨日、お名前を出して恐縮ですが、三浦議員の方から京都の学校の先生のことしの広島教研集会におけるレポートの問題が出されましたので、私もちょっとお聞きしておりまして意外な感じを受けまして、私なりにレポートを取り寄せてみました。これらの問題についても当然それぞれの議員に意見があるところだと思います。しかし同時に、こういう問題の取り扱いについては少なくとも教育の観点から取り上げていくという原則を忘れてはならぬと私は思っているわけですが、その意味でこのレポートを見ますと、このレポートは十五ページにわたる詳細なレポートなんです。その中で指摘されました点、それは約一ページなんです。それはここの非行の問題のところが出ておるわけでございまして、そういう点で記述そのものが正確であるかどうかという点は、これは私にもよくわかりません。それから一つの学校の問題でなくて幾つもの学校の問題を書いたというようなこともあると思いますが、しかしそれがこのレポートの主ではないということですね。  それでたとえば「竹っ子学級の物語」という報告書になっておりますが、この先生に会うたこともありませんけれども、この報告書を見る限り、小学校の非行の実態というところが問題にされておるわけですけれども、そのほかのところでは、この先生がHという子供さん、これは万引きをした子供が見つかりまして、それを母親とともにスーパーへ返しに行くところから始まっておりますが、その母親が白内障、体が弱いということで、この子供はその母親をばかにして、ときには包丁を振りかざして殺してやるとかいうようなことをしている子供、この子供の、ときには尼崎へ逃亡する、おばあさんのところへ行ったそうですが、そういうところまで追われていきまして、この子供のために何とかこの子供を立ち上がらせようとする努力の記録、これがこのレポートのほとんどの部分を占めておるわけです。私は読んでみましたけれども、これはやはり教育者としてのまさに一つの血のにじむ努力の中身ではないか。ときにはもう自分教育の失敗もみずから掘り出しておりますし、それからまたHという子供のさびしさというものをどういうふうにつかまえていくかということ、また子供たち、仲間同士がどういうふうにHをがんばらしていくかという中で、最後には非行のあらしの中でこのHという子供が図書委員になったり、班長に立候補したりしていく、そういう子供たちの成長の姿、非行を克服していく教師と子供の姿が描かれているわけです。その子供だけでなくてM・Hの話、T・Kの話というふうに、学級の中で成長していく子供たちの姿を描いたものであります。  そういう点から見ますと、部分的に確かにオーバーな表現その他があると思いますが、たとえば万引きの問題にしましても、実はこれは私の現在おる町のある学校です。りっぱな学校です。ところがここでも、これはそこに勤める若い先生が書いた本でありますけれども、実は、クラスの四分の三近い子供が何らかの形で四年生までに盗みをしている事実を知ったとき、私は子供の置かれている状況がこれほど深刻だったとは思いもしなかったというのがあって、私もショックを受けまして実際調べてみたのです、これは今度の問題からじゃありませんが。ところが、近くにニチイという巨大スーパーができまして、そこへ子供たちはほんとに気軽に行ってさっと釣り具なんかをとってくるわけですね。そうして成功しますと、君も行けという形で行く、その次にはお菓子を大量にとってくるというようなことが犯罪意識なしにずっと行われている。ところがこれがなかなか見つからない。それはなぜかというと、自分の担任の先生に心を許し切ることができないと子供は黙っているわけです。しかし担任の先生とつながりが深まってきて先生を信頼すると、私もこういうことをやったと作文にみんな書いているのです。そこから今度盗み、窃盗という非行に対する対策が生まれてくるわけでして、いまの小学校における現状、大都市圏における現状というのは、オーバーな表現というよりもむしろそういうことがあるわけです。それを隠すことなく解決していく、こういう立場でこのものが書かれたのではないか。三浦先生が指摘されましたところにつきましては誤り部分誤りとして正確を期さなければなりませんが、このレポートの主たる中身はそうではないということを私は認識したわけでございます、これはまた後で申し上げたいと思いますが。  ところがこの先生が、この問題がこういうふうに大きくなりますと、若い独身の先生でございますからやはり相当精神的なショックも受けているのだろうと思いますが、ずいぶん疲れてもいて、一昨日校長先生のところへ年休をとりに行ったわけですが年休はもらえない。校長先生から、本日国会で追及をされるからそれに対応して質問があるかもしれぬから待機せよという返事が来るわけです。それから校長さんから、わび状を書いておけ、迷惑をかけたことについて改めてわび状を書きなさいということを言われておりますが、彼はこのとき年休を出して欠勤をしております。家で寝ているわけですね。ところがそこへ地方教育委員会教育課長それから学校の教頭先生が来ました。彼はかぎをかけて鎖も入れて家で休んでおるわけですがそこへ来まして、管理人も呼びまして隣の家に入って、そして裏からガラスを破って入っているわけです。ずいぶん変なことになるものだなと思う。これは明らかに不法侵入でありますけれども、そういう事態まで起こり、そして文書訓告、それから担任は外される。処分という問題も学校の教師にないわけではありませんが、しかし、少なくともその辺の問題については全面的に把握をして、そしてそれが教育的にどうなのかという問題から考えないといけないのじゃないかというふうに私は思っているわけです。  これは一言申し上げておきたいと思いますが、この点については文部省、御調査になりましたでしょうか、それでどういう判断をされておりますか。
  53. 三角哲生

    三角政府委員 この問題につきましては、なお、現在、京都府教育委員会を通じて事実関係等を照会中でございますので、まだ詳細は承知しておりません。京都府の方では来週になりましてから報告を下さるというようなお話になっております。  ただ、私どもとしては、こういった事柄は、やはりその先生なり学校なりを直接に服務について監督をしたり、あるいは学校につきましての管理運営をしております当該市の教育委員会、ここが状況について把握をしました上で適切な措置を講ずる問題であろうと思いまして、地域における判断なりあるいは措置なりを見守ってまいりたい、こういうことが基本であろうと思っております。  ただ、この間も申し上げましたが、当該の教諭は、去る三月三十一日に文書訓告という処分を受けておりますし、それからいろいろな関係で、新学期の学級担任、これは六年生になりますが外されておるということで、現地ではそれなりの対応があるかと思いますが、その状況については来週になりましてから報告をいただく、こういうことでございます。  いろいろレポートの中の内容にただいま御紹介がありましたようなことがあったようでございますが、一般論で申し上げますと、やはりそのレポートの中の一部分でありましても、事実を余りに誇張したり歪曲して公表するということは、レポート全体の信用にもかかわるのみならず、教職という立場にある人の信頼性にもかかわる問題になるのじゃなかろうかと思いますが、なお詳細は、報告を聞いた上で私どもとしても把握をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  54. 山原健二郎

    山原委員 教研集会という、日本教職員組合が——恐らく世界でもあれだけの規模の自主的な教育研究集会というのはないと思います、二十九年もそれが続くという、その中で話されるレポート、それを一つ一つ取り上げて問題にするということになると大変なことだと思いますが、この場合は余りにも有名になったためにそういうことになったと思うのですけれども、実践の仕方についてはいろいろ賛否両論があると思います。私はこういうやり方でやる、しかしそれについてはそれはだめだという意見もあると思うのですね。そういうことならばこれはもちろんいいわけです。誤ったところについては指摘もしなければなりません。しかし、それが処分の対象になるということ、少なくとも私はそういうふうには考えない。そしてこういうものを見る場合にはやはり全面的に見ていく、そして教育上どういう成果を上げ、どういうふうな活動をしているかというような点が論じられて、誤りが指摘される、こういうことをとるのがわれわれのあり方ではなかろうかと私は思っております。  この先生がどういう方か、よくわかりませんけれども、必ずしも大うそつきであるとかあるいは教育者として不適格であるとかいうような人物とは幾らこのレポートを見ましても思えないのです。教育的な立場で校長なら校長がこの点を指摘する、あるいは同僚たちが誤りを指摘する、それで解決できるぐらいの問題ではなかろうか。事実関係についてはその一ページ分のところのことはよくわかりませんが、そういうふうに思っているわけです。  厳罰主義あるいは処罰で問題が解決するものではないと私は思っているわけです。この点は、いままで私どもも非行問題、校内暴力の問題についてしばしば論議をしてきましたから大臣もおわかりになってくださっておると思いますが、やはり教育的な立場で問題を見ていくということが必要ではないかと思いますが、文部大臣、その点はどんなふうにお考えでしょうか。
  55. 小川平二

    小川国務大臣 政府委員から答弁申し上げましたように、まだ教育委員会から詳細な報告をもらっていないわけでございますが、仮に、伝えられますように、仰せのような世界にもまれな大規模な集会の場で捏造した報告をしたということが事実であるといたしますと、これはまことに驚くべき行為であって弁護の余地は全くない、いかにその教師が反面において非行を犯した少年を指導するというような、教職員として当然の職責を尽くしておったからといってその責任がいささかも軽減されるものではないと私は考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、教育委員会から全体の状況について報告を受けておりませんので、私といたしましては、この際論評は差し控えさせていただきます。
  56. 山原健二郎

    山原委員 私の意見とはちょっと違いますけれども、そういうえらい大騒ぎをするような問題ではなかろう、誤りということも必ずしもそうではないようですね。  もう一つお聞きをしておきますが、この四月五日に横浜におきまして、横浜の管理職組合ですか、学校の校長先生、副校長先生によって構成されている浜管組、その執行委員長の大室一正さんという方が各学校に対して文書を出されている。新聞には怪文書と出ております。これは今度の選挙に絡んだものでありますが、その中で私が非常に意外に思いますのは、この組織で、ある候補者の支持を決定しまして、そしてそれに対する措置が出されています。四月九日に学校放送を通じ、父母並びに有権者が投票に行くよう児童生徒によく話すこと、次は、組合員の票集めのことが書かれております。  いまここで私が問題にしたいのは、学校放送を通じて子供たちに、父母、有権者にそういうことをすることはどうなのかということでございます。この事実はお調べになっておるかどうか、一つは自治省、一つは警察庁の方にお伺いをしたいと思います。  この四月二日に役員部長会でそういう決定をしておるということがこの文書の中に書かれておりますが、それが事実であるかどうかということ、四月九日の学校放送は行われたのかということ、しかも、この文書を用務員の方が教育委員会の文書と一緒に配付をしたということも出ているわけで、教育委員会も関係しておるのではないかと思うわけであります。これは事実は確認はいたしておりませんが、その辺についての事実関係を御報告いただきたいのです。
  57. 岩田脩

    ○岩田説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のありました四月五日の浜管組の書類のことにつきましては、新聞などを読んでその限りにおいては承知しておりますけれども、何しろ事件といいますか案件が横浜市選挙管理委員会が管理いたします横浜市の市長選挙に関することでございますし、さらには選挙運動に関することでもございますので、私どもの方で事情を調査するといった立場にございませんものですから、具体的な事実関係については承知をいたしておりません。  以上、お答え申し上げます。
  58. 森広英一

    森広説明員 お答えします。  ただいまお尋ねの文書が配られた事案につきましては、一昨日の法務委員会でも御質問がございまして、そういう事案があったことは承知しております。  ただし、警察といたしましては、公職選挙法違反の取り締まりに当たる立場上、事実を確認していない事柄について、これが違反容疑があるかどうかとかあるいは捜査をしているかどうかとか、これから捜査するかどうかとか、こういうことについて現段階でお答えをするということはできませんので、さよう御了承をいただきたいと思います。
  59. 山原健二郎

    山原委員 では、新聞に出ておることについては全くお調べになっていないということですね。
  60. 森広英一

    森広説明員 警察は犯罪があると思量したときには捜査をするわけでございますが、いま捜査を開始しておるかいないかということをお答えするといろいろ誤解も生ずるわけでございまして、犯罪の捜査が完了していない、あるいはまだ犯罪になるかならないかわからないような段階におきまして、捜査を開始したとか、しておりますとかいうことを御答弁することは差し支えがございますので控えたい、かように申し上げておるわけでございます。
  61. 山原健二郎

    山原委員 文部省の方へお伺いしますが、こういうことを学校放送を通じてやるということはどうでしょうか。しかも、ほとんどの学校が関係する。ただ、そういうことを出した覚えはないという大室さんのお話新聞に出ておりますが、しかし一方では、筆跡、形式からいって、いままで出てきたこの組織の文書と同じであるということも出ております。さらに、用務員を通じてそういうことが行われるということ、これはいままで余り経験したことのないことですが、この点はお調べになっておりますか、それとも、こういうことについては、結構なことだというふうにお考えでしょうか。
  62. 三角哲生

    三角政府委員 文部省としましても、まだこのことについて詳しいことは承知しておりません。  ただ、権限のある機関から棄権防止のようなことについて働きかけがありまして、これを学校の場で、そういう放送を通じますか、あるいは子供たちの教育の一環として棄権防止とか公明な選挙を進めるとか、こういうことが行われても特段非難されるべきことでもございませんし、これは差し支えないことでございます。  ただ、特定の候補者云々ということになりますと、これは学校教育の政治的中立なりあるいは教育公務員のあり方として問題があろう、こう思うわけでございますが、本件につきましては、怪文書というようなことで伝えられておりますけれども、まだその詳細、具体的な状況については承知をしておらないのでございます。
  63. 山原健二郎

    山原委員 この問題はこれ以上言いませんけれども、ずいぶん緩急よろしきを得た立場をとっておられると思いますね。私も選挙には関係していますけれども、学校放送を通じてやる、しかも非常に意図的な、投票率が低ければ危ないとかいうようなことの文書が流れる、教育委員会が用務員を使ってこれを配るなんということは、ちょっと常識では考えられないことなんですよ。  少なくとも、管理職、校長、教頭でしょう。管理ということがこういうところにひずみを持ってあらわれてきているわけですね。そういうことについては案外文部省はのんきな姿勢をとっておられるので、ちょっとびっくりしましたね。やはりこれは、一番常識的な、管理運営についてはベテランの人たちがそういう誤りを犯すはずがないと私は思いますけれども、こういうことについては御調査をいただいて、今後の指針として明らかにすべきではなかろうかと思います。  もう時間がございませんので、たくさんお聞きしたいことがあるのですが、最後に、時間の範囲で一つだけ伺っておきます。  東海大学におきますところの医学部の裏口入学詐欺問題というのが新聞に出ておりまして、これは、東海大学の総長さんの元秘書の古賀さんという方が、東海大学の医学部に入学させてあげましょうということで、数名の方から相当金額のお金を集めておられるのです。ところが、そのうちの四名の受験生が全員不合格となるという事態が起こりまして、これは詐欺ではないかというような問題が新聞紙上に報道されているわけであります。そしてこの元の秘書の方の問題については、東海大学の山田渉という東海大事業本部副本部長のお話によりますと、なぜこのようなことをしたのか、厳しくしかったということが出ておりまして、そして事実をお認めになったような発言になっておるわけです。  ところで、この方がいまなお嘱託として同大学におられるということでございますが、この点については警視庁も事情聴取をされたというような記事になっておりますが、こういう事実がありますでしょうか。現在どういう進行状況でしょうか。
  64. 森広英一

    森広説明員 お答えいたします。  いまお尋ねのような記事が一部の新聞に掲載されたことは承知しております。警察は原則といたしまして、捜査をしている場合に、捜査というものは捜査上の都合、捜査を全うするためにも、また関係者の名誉を保護するためにも、捜査が完了しない段階で、捜査の過程なり捜査の状況なりを公表するというわけにまいらないことは御理解いただきたいと思います。  ただ、一般論で申し上げまして、こういった事犯について、事が公になりますと捜査というものはなかなかうまくいきませんし、また関係者、たとえば詐欺の被害者というようなものも、被害の状況をつぶさに警察に話してくれるということも阻害されるということで、大変捜査がむずかしくなる場合が多いということは言えようと思っております。
  65. 山原健二郎

    山原委員 文部省としては何らか話をお聞きになっておりますか。
  66. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の点につきまして昨日東海大学に問い合わせたわけでございますが、大学からの説明によりますと、この三月三十一日付で嘱託契約の解約を決定したということを伺っております。  そして、御指摘の者が入学者選抜とは全く関係のない者であるということを大学側においても説明しておりまして、その者の行為で入学者選抜の公平さがいささかも影響は受けていないというぐあいに大学側から伺っております。
  67. 山原健二郎

    山原委員 終わります。
  68. 青木正久

    青木委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後一時五分開議
  69. 青木正久

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河野洋平君。
  70. 河野洋平

    ○河野委員 私の手元に、大変古い資料でございますが、昭和四十四年に総理府の青少年対策本部が行った「社会環境の浄化に関する世論調査」という資料がございます。この調査は、つまり青少年を取り巻く社会環境についていろいろなアンケート調査をしたものでございます。総理府おいでをいただいておりますので、実はこの世論調査について少し御質問をいたしたいのですが、最初にお尋ねをします。  こうした青少年を取り巻く社会環境についての調査を昭和四十四年以降なさっておられるかどうか、おわかりでしょうか。
  71. 阿南一成

    ○阿南説明員 お答えいたします。  四十四年にいま先生がおっしゃいました調査をした以降の調査でございますが、四十八年に「青少年に影響を与えた性表現及び社会的要因の研究」、昭和五十一年に「青少年の人格形成に影響を及ぼす諸要因に関する研究調査」、それから昭和五十二年に「雑誌等自動販売機に関する青少年の意識調査」というようなものについて調査を行っているところでございます。
  72. 河野洋平

    ○河野委員 その四十四年の調査を見ましても、青少年を取り巻く社会環境というのはかなり心配があるという調査になっているわけですが、総理府から四十四年の調査について、少しその内容の主なところを御説明をいただくと同時に、できれば、いまお話しのように四十八年、五十一年、五十二年と、もし調査が引き続き行われているならば、その調査の結果、青少年を取り巻く環境はよくなってきているのか悪くなってきているのか、そこらについても少し御答弁をいただきたいと思うのですが。
  73. 阿南一成

    ○阿南説明員 お答えいたします。  四十四年の調査でございますが、この調査目的は「青少年をとりまく社会環境についての認識、有害社会環境からの保護策等に関する大人の意見を調査して、青少年対策の参考とする。」ということでございました。  調査対象は、人口五万人以上の市に居住する二十五歳から六十九歳の男女三千人、無作為抽出法によって行っております。  調査の時期は、四十四年の七月八日から十四日。調査方法は、調査員による面接聴取方法となっております。有効回数が八二%でございます。  いろいろ調査をしておりますが、その主なものについて御説明を申し上げたいと思います。  まず「青少年をとりまく社会環境についての認識」についてでございますが、「青少年は、大人に比べて特に心身の修養や鍛練に心がけねばならないと思う」がどうかという質問を二十五歳以上の大人にしておるわけでありますが、「思う」という答えが七五%、「そうは思わない」というのが八%になっております。それから「青少年にとって、今の社会の全体の環境や雰囲気は享楽的すぎると思う」が六二%、「そんなことはない(それほどではない)」が二六%になっております。それから「今の社会は、お金やレジャーなどの物質的な豊かさに比べて精神的な充実に欠けていると思う」が六七%、思わないが九%となっております。さらに「今の日本では、俗悪な映画や雑誌などが氾濫していて日本人の道徳観が低下していると思う」が六六%、思わないが一〇%というふうになっております。さらに「青少年に対する保護策についての考え方」ということで、最近のそういった俗悪な映画や週刊誌等のマスコミのはんらんの中で青少年に対してどのような方向の保護策が支持が多いかということを調査をしたわけでありますが、このような映画や週刊誌を「青少年にはなるべく見せないようにした方がよい」という意見が五四%、逆に「とくべつに目かくしする必要はない」という意見が三四%でございました。さらにこのような映画や週刊誌を規制することは「出版や表現の自由をおかすことになる」という者が一四%、「そんなことはない」と答えた者が三六%、「一にいえない」という者が二五%、「わからない」という者が二五%でございました。  なお、いま先生御指摘の、それではいまの状況はどうかということでございますが、これにつきましては実は手元にちょっと調査の資料を持ち合わせておりませんが、一般的に青少年の方の答えはそう心配することはない、それから大人の方は大変心配である、こういう形のものが大体の傾向であるというふうに考えております。
  74. 河野洋平

    ○河野委員 社会局見えていますか。——いま総理府から調査の概要についてお話がありましたが、文部省はいまの児童生徒を取り巻く環境について非常に悪くなってきているというふうな認識でしょうか。それとも、いやいやそうでない、大分よくなってきているという認識でしょうか。一般的な認識で結構ですが、文部省としての認識をお答えをいただきたい。
  75. 別府哲

    ○別府政府委員 お答え申し上げます。  大変一般的な問題でございますのでなんでございますが、ただいま先生御指摘のような社会環境という点、たとえば映画でございますとかあるいはその他の出版物でございますとかそういった問題については、御指摘になりました調査が行われた四十四年当時といまとを比べてみますと、必ずしもよくなったとは言い切れない状態にあるのではなかろうかという感じがいたします。さらにそういったマスコミ関係だけでなくて、他の一般の青少年が健全に育つ条件というものから考えてみますと、だんだんと都市化が進んで青少年を取り巻く自然が少なくなってくるとか、あるいは交通問題につきましてもますます厳しくなってくるとか、そういった諸般の情勢を考えますと、決していい方向ではないような感じがするわけでございます。  ただ、関係者はそういった状況の中でも青少年のためにどのようにすべきであるかという点についていろいろ考えて、環境が悪くなる中でいかに健全な青少年を育成するとかいう点について、たとえて申しますと、自然が少なくなる中で子供たちが大自然の中で遊ぶような少年自然の家が次々につくられるとか、そういったもろもろの施策についてはかなり進んできておる、このように感じておるわけでございます。きわめて一般論でございますが……。
  76. 河野洋平

    ○河野委員 文部省考え方は、悪いものを規制するということよりも、むしろそうでない非常に健全な健康的な場を提供したり児童生徒の関心をそういう健全な方に向けるということに主眼が置かれているというふうにいまの答弁から受けとめましたが、それはそれで結構だと私は思うのです。結構だと思いますが、しかし、一般的にいって子供を取り巻く人為的な悪い環境というものは相当ひどくなってきているというふうに私は思っているわけです。  たとえば、小中学校の通学路にぎらぎらと置かれている映画のポスターあるいは俗悪と言われる雑誌の自動販売機、こういったようなものについて、これは通学路なんですからこういうものは少し自粛を求めるということは教育にかかわる人間としてやるべきじゃないか。もちろん表現の自由とかこういうものとの接点、非常にむずかしい接点もあろうかと思いますけれども、少なくとも心身未発達な児童生徒の毎日学校に登下校するときに通る通学路等においては自粛を願うという作業はできないものなんでしょうか。あるいはやられているけれども成果が上がらないのか、あるいはやれないのか、あるいはまた文部省はそんなことをやる気がないのか、そこらはどうでしょうか。
  77. 別府哲

    ○別府政府委員 ただいま例としてお挙げになりました雑誌等の自動販売機の問題につきましては、特にPTAなど地域の団体が中心となって関係業者の御理解をいただきながら、できる限り子供たちに悪影響を与えないような方法をとっていただくという点について従来からじみちな努力が長く続けられておりますし、文部省といたしましても、そのような動きについてはいろいろな形で協力をしているところでございます。
  78. 河野洋平

    ○河野委員 総理府に伺いますが、いま文部省はじみちな長い努力があってそれを評価し協力するのだと言っておられるが、こうした問題をもしやるとすれば総理府がその調整機関としての役割りを担うことになるのじゃないかと思うのですが、総理府いかがですか。
  79. 阿南一成

    ○阿南説明員 お答えいたします。  青少年の健全育成を阻害するそのような自動販売機における有害出版物の規制その他につきましては、総理府といたしましてもいろいろな関係省庁に相談を申し上げましてやっておるところでございますが、特に一部の出版物、いわゆるアウトサイダーなんでありますが、これが非常にひどいわけでございます。こういった青少年の健全育成上好ましくない出版物につきましては、私どもといたしましてはいわゆる刑法によるわいせつ文書図画の取り締まりということで取り締まり当局にもお願いをいたしておるところであります。  さらに、各都道府県に青少年の保護育成条例というものがございますが、これによる規制をやっていただくということで非行対策関係省庁連絡会議等でもお願いをし、また全国の青少年主管課長会議というのが総理府で主宰をされておりますけれども、この席でもお願いをいたしておるところであります。  さらに住民運動、地域運動ということにつきましては、これは私どもの方では各県に青少年育成県民会議というものがございまして、ここのルートを通しましてできる限り住民の地域運動によってそのような有害環境の排除に努力をしていただくようにお願いを申し上げておるということでございます。  さらにもう一つは、こういった問題につきましては、結局はいわゆる一部の利益のみを追求する業者、本当の真のマスコミではなくて全く利益を追求するための業者が非常にアウトサイダー的にそういうことをやっておるということでございますので、そういった業者の良心にすべての判断をゆだねるということはおかしいわけでございます。したがいまして、その業者の自主規制というものがうまくいかなければ結局法規制というものに移るのではないかということを申し上げつつ業界の自主規制を促すという形をとっています。具体的には青少年育成国民会議というのがございますが、ここで毎年二月にマスコミの方、出版の方、映画の方それからいろいろな地域の青少年健全育成のために御活躍をいただいておられる方にお集まりをいただきまして、そこでいわゆるディスカッションをしながらそういった問題について詰めていっておる、そこに私どもはオブザーバーの形で参加をしながら言うべきことを申し上げておるというのが現状でございます。
  80. 河野洋平

    ○河野委員 御苦労、御苦心は非常によくわかるのですが、私は毎回ここで質問に立たせていただくたびに青少年の健全育成のことをばかの一つ覚えのように申し上げているのです。営業の自由とか表現の自由とか一それはそれなりになかなかむずかしい問題があることはわかるのですが、おっしゃるように毎年二月にディスカスをやります何をやりますとおっしゃるけれども、結果的には毎年毎年環境は悪くなってきているという事実がありますね。実効が全くないとは私は言いません。実効の上がっている地域、上がっている部分もあるのだろうと思います。しかし一般的あるいは総体的に言って青少年を取り巻く環境というものが悪くなっている。  もちろん余り過保護になって、全部そういうものはだめだめ、こう言って何も見ないようにすればいいというものでもないでしょう。ないのだと思いますけれども、少なくとも常識的に考えて行き過ぎている部分が相当ある。それにもかかわらず依然として毎年二月にディスカスをやりますというだけでは、これは少しなまぬるいぞという批判が相当強く出ても仕方がないのじゃないか。  校内暴力あるいは家庭内暴力、あるいは青少年の非常な暴力団とのつながりすら言われるような暴力事件があちこちに起こっているいま、この問題をもう少ししゃんとした姿勢でやる必要があるのではないか、もうそういう時期に来たのではないか。できることなら自粛をお願いして自主規制をして、法規制なんということでないようにいくことが私はいいと思います。いいと思いますが、しかしここまで来ると、非常に用心をし慎重な上にも慎重な配慮の上で法規制ということももうそろそろ考えざるを得ないのじゃないかというふうに思うのです。  これはいきなりそういうことを伺ってもどうかと思いますが、文部省の感覚で、ここまで来ると環境問題は何とかせにゃいかぬという御判断にはまだなっていないのでしょうか。まだ大丈夫だ、もう少し自主規制、自粛を促しながら、もう少ししんぼうしよう、良識が目覚めるのをもうちょっと待とうという感じでしょうか。それとも、いやもうそろそろやはり法規制の検討ぐらいはしなきゃいけないというところまで来ているのでしょうか。どうでしょうか。  これはできれば、事務当局からお答えをいただいて、あと大臣からもこの点の大臣のお気持ちをお聞かせをいただきたいと思うのですが。事務当局から先に答えてください。
  81. 別府哲

    ○別府政府委員 まだ大丈夫だというわけにはなかなかまいらないような状況であろうと思われるわけでございます。文部省といたしまして、規制の問題について文部省限りで御意見を申し上げるということはなかなかむずかしい問題でございまして、いま各界におきましてそれぞれ自主規制の努力が続けられておりますし、また一般社会におきましても、そういった業界との協力を結びながら子弟の教育のためにいろいろと配慮が行われているわけでございまして、文部省といたしましては、そのような社会一般の努力というものに期待いたしながら文部省としてなすべきことをやっていかなければならないと考えているところでございます。
  82. 小川平二

    小川国務大臣 私はきわめて率直に申し上げるのでございますが、先日予算委員会におきまして、まことに驚くような雑誌を野党の方から見せていただいたわけで、こういうものをどうして警察が取り締まらないのだろうと考えたわけでございます。これは文部大臣に就任以前からしょっちゅうそういう気持ちを抱き続けておったのです。警察には警察のそれなりの理由があるに違いない。前回も申し上げましたが、この種のことは一種の国際的な相場とも申すべきものがあるわけでございましょう。仮に強い規制を加えて訴訟を提起された場合勝てるかどうかわからぬというような種類の判断もあるのかもしれませんが、私は非常に不思議なことだという感じを抱いておるわけでございます。  警察が規制をするまでに至らない、残された分野に実際いろいろなまことに好ましからざる問題があるわけです。文部省といたしましては、できることは、マスコミ、出版の業界等に自粛をしてもらう、良識に基づいた行動をしてもらう、同時にまた、そういう環境の乱れによって容易に汚染されないような健やかな心を育てる、それが文部省のできる仕事の限界でございます。そういう分野におきましては、これからも総理府とも協力いたしましてできるだけの努力をしてまいりたいと思います。
  83. 河野洋平

    ○河野委員 この問題は、まさに社会教育局長がおっしゃったように、社会一般の問題としてとらえなきゃいかぬという、全くそうだと思うのです。ただ、そうだと思いますだけに最終責任がどこにあるかわからない。この問題がこれ以上悪化していくという場合にはどこが責任を負うのだ。文部省じゃない。警察庁か、警察庁はいま大臣おっしゃるようになかなかむずかしい問題もあるのかもしれない。しかし、確実に児童生徒がいろいろな影響を受けているということだけはデータで出てきている。ということになると、まさに社会一般の問題としてどこか一カ所だけが突出してやるというわけにはなかなかいかないのかもしれませんが、しかし、これは最終的にどこが責任を負うのかと言えば、児童生徒の問題ということになれば、小学校、中学校、文部省は相当最終責任を負う覚悟でこの問題に取り組むべきじゃないか。  とりわけ、日本じゅうの問題として取り組む前に、少なくとも小学校への通学路とか、学童が利用する学校通学路というのでしょうか、これらについてはそうした概念規定というものがあって、通学路には特定の国は補助金を出して歩道を設置しようとか、いろいろそういう概念もかなり定まってきているのじゃないかと思うのですが、まずとりあえずは一定の区域の通学路ぐらいはそうした俗悪図書図画の自動販売機を置かないとか、あるいはアウトサイダーの映画の看板はそこからは外へ出すというわけにはいかないのでしょうか。文教地区というものが設定をされて、その中で特定の業種が許可がおりないとか、そういうことはあるわけでしょう。そこぐらいまでは少し踏み込まれたらどうでしょうか。そういうことは事務的に非常にむずかしいことですか。
  84. 別府哲

    ○別府政府委員 ただいま先生御指摘のこと、文部省あるいは地域の教育委員会が実施をするという点についてはなかなかむずかしい問題があるわけでございまして、たとえばPTAの活動といたしまして通学路からいろいろな出版物の自動販売機等についてそれを撤去する運動を行う、それを置いてあるお店の御協力をいただいてそれを外していただくというようなことは、大変長い時間をかけてうまく成功したと喜んでおりますと、しばらくすると今度は別の場所にそれがまた設置をされていたというようなイタチごっこが繰り返されているという事例などもPTAの研究会などで発表もされておりますけれども文部省あるいは教育委員会限りで直ちにそのような一定の範囲を定めて規制を行うということは、実際問題としてはなかなかむずかしい問題でございまして、いろいろな方々の御協力、御理解をいただきながらそのような運動を進めておるというのが実態でございます。
  85. 河野洋平

    ○河野委員 文部省はギブアップという感じですね。しかし、この問題を文部省がギブアップするのはどんなものでしょうか。文部省だけではできないというふうに受け取らしていただきます。文部省だけではできないということになれば総理府が関係各省との調整を引き受けて、総理府にもう一度ボールが投げられるということになるものですが、きょう私は、調査の概要だけ総理府から説明を伺おうと思っていたので、これ以上の質問はいたしませんが、私はひとつ予告しておきます。  次回は総理府とこの問題は相当突っ込んだ議論をしたいと思うので、総理府さん準備をして出てきてくださいよ。私はどうしても、子供の教育を学校教育に少し過大に期待を寄せ過ぎている、社会教育、家庭教育というものがもっと一緒にならなければ子供の教育というものはちゃんとできないということを考えると、文部省がいまのように文部省だけじゃできませんと言い出したら、あとはやはり総理府の青少年対策本部にがんばってもらわなければいかぬ。この程度のことができないようなら、青少年対策本部なんというのは要らないのじゃないかというふうに私は思いますから、ひとつ次回に総理府と少し議論したいと思うのです。その前に何かきょう言っておくものがあればおっしゃって、もうそれで私は総理府に対する質問をやめますから。もし発言があれば発言して、それで帰ってください。——特になければいいです。  それでは次の質問に移りますから、総理府どうぞもう結構です。  別に文部大臣をおどかしたり試したりするつもりはありませんけれども、四月十八日、これは再来週の日曜日になりますが、四月十八日という日は何の日だか——余り御存じないと思いますが、四月十八日は実は発明の日でございます。これはちょっと大臣に御記憶を願いたいと思って申し上げました。四月十八日でございます。  この四月十八日、発明の日というのは、私も印刷物を見てみましたところが、科学技術週間というのがあって、その中の一日、四月十八日を発明の日、こう決めているのだそうです。これは主として特許庁が旗振りをしまして、科学技術庁も一緒になっていろいろ企画があるようでございます。文部省は特に関係はないのかと思いましたら、この中には文部大臣の賞状も何枚か出ておりますから、大臣は直接知っておられないかもしれませんけれども文部省にも縁のない話ではございません。と申しますのは、日本のように資源のない国は、国民の英知あるいは勤勉な労働、そういったものが日本の国を支えているわけですが、とりわけ先進国と言われる今日、もっともっと国民の間からアイデアがどんどん出てこなければいけない。新しい発明が出てきてほしい。これは恐らく文部省教育の中にも、子供たちに自由な発想からさまざまな新しいアイデアが出てくる、そういうことは教育一つのねらいであろうと思うのです。  そこで発明——これは児童生徒にも発明展なんというのを企画して、子供たちの自由な発想を導き出すような作業がなされておるのですが、せんだって私はある方にお目にかかりましたら、河野さん、あなたは発明と特許というものをちゃんと分けて考えているだろうね、こう聞かれましてどぎまぎいたしました。近ごろいろいろな方に聞いてみると、発明というのはそれなりにわかるけれども、特許についてはどうも他人事のような感じが非常にしておる。特許というものについてもう少し国民的な理解が欲しい。発明の日をつくって、みんなでもっと発明しようじゃないかとか新しいアイデアをみんなでしぼろうじゃないかと言うけれども、結局どんな発明が行われても特許という制度についての理解がないと、発明というのは頭の中で一人で考えるだけ。しかし、仮に特許という制度にそれがきちっとはまれば発明がオープンになっていろいろな人にさまざまな利益をもたらすことになるわけで、この発明というのは表裏一体といいますか、発明があっても特許がなければ、その発明が社会的なプラスにならない、こういうことのようでございますね。  そこでいろいろ調べていただきますと、文部省の所管の教科書の中に特許についての記載がない。発明についてはいろいろある。豊田佐吉が織機を考え出したとかいろいろある。発明について教育が奨励をする、あるいは新しいアイデアを導き出そうとするけれども、新しいアイデアを考えても、それは考えただけで終わってしまったのでは近代社会あるいは国際社会の中の先進国としての日本というのはだめなわけで、特許制度というものについてもう少しみんなが理解をする必要があるのではないか、私もそう思うのですが、どうも教科書の中に特許について説明をするきっかけになり、あるいは場になるべきものが何にもない。  ところが、昭和四十六年に、その特許についての世話役である弁理士会の方々が中学校、高等学校の学習指導要領に工業所有権制度等に関する事項をもう少し入れてほしという依頼を初中局長あるいは文部大臣にお願いをしているのですね。ところが、文部省側の説明を聞くと、それらは普通科ではやっていない、しかし工業科ですか、そういうところでは多少やっているという御返事で、それはそれきりになっているのですね。しかし、私はもうそろそろそうした点は考慮すべき時期に来ていると思うのですが、これはまず初中局長伺いましょうか。初中局長からこの点、できれば四十六年当時からのいきさつについてももし御説明いただければ御説明いただいて、いまどうなのかということについて御説明ください。
  86. 三角哲生

    三角政府委員 ただいま御指摘の問題につきまして弁理士会の会長さんの方から昭和四十六年十月に初等中等教育局長あてといたしまして、「中学校、高等学校の学習指導要領に工業所有権制度等に関する事項の採択方依頼について」、こういう要望書が出されておったわけでございます。そして、その要望書の表題は学習指導要領にということでございますが、要望の趣旨は、いま仰せになりましたように、工業所有権の制度に関する事項が一層広く各教科書に掲げられるように配慮をしてほしい、こういうことでございました。  文部省のただいまの考え方でございますけれども、まず中学校について申し上げますと、これはやはり当然、小中学校、高等学校の一貫性というものを考慮しなければいけませんが、教育内容につきましては、やはり物事の基本的な意味を理解させる、こういうことに配慮をいたしまして、その結果として、いろいろな一々の細かい事項やそれから程度の高い事柄、これに深入りをしないように、それから専門的な用語などにつきましても、同じような見地から、これを余りたくさん用いる、こういうことを避けておるわけでございます。したがいまして、工業所有権制度なりあるいは特許の制度につきましては、中学校では取り扱っておらないわけでございます。  それから、高等学校におきましても、一般教科におきましては工業所有権等を具体的に取り上げることはしておりませんで、事柄は若干違いますけれども、著作権といった問題についても同じようなことでございます。それはやはり高等学校の方も九四%を超える進学率となりまして、生徒の能力、適性等が非常に多様化しております関係から、今回の指導要領改訂におきましても、従来以上に事柄を精選するということにいたしたわけでございます。したがいまして、ただいま御指摘の特許権というようなものは科学技術の振興でございますとか、あるいは産業、経済の発展に非常に重要な役割りをしておる制度でございますけれども、一般教科の中身の扱いとしては、社会科の「政治・経済」という中で、大項目として「日本経済の現状と国民福祉」というような項目がございまして、その中の小項目の中で「科学技術の発展と資源・エネルギーの活用」、これについて指導するということは書いてございますけれども、何せ政経全部で一ページ半ぐらいの指導要領の記述の分量でございますので、特許権というようなところまで言及をすることができないわけでございます。  それから、その指導要領の解説書の段階になりますと、海外の科学技術だけに依存するのではなく、国内においても積極的に技術を開発する必要のあることを理解させることを指導するというふうに解説を施してございますけれども、そういったことから、高等学校におきましても、工業所有権ということを端的に専門的な内容として取り扱うということにしておりませんものでございますから、教科書の方にも出てこない。これは著作権も同じぐあいになっておるのでございますが、状況はそういうことでございます。  それで、なお、たとえば商業になりますと、商業法規というような科目がございまして、その中では無体財産権ということで、工業所有権の各種の、特許権、商標権、実用新案権といいますか、あるいは著作権等についても取り上げる、こういう状況になっております。
  87. 河野洋平

    ○河野委員 少し細かい話をさせていただきますが、文部省は、小学校、中学校教育で、発明する、新しい知恵をみんなで生み出すということを子供たちに期待していますか、期待していませんか。
  88. 三角哲生

    三角政府委員 やはり人間としての非常にクリエイティブな頭と申しますか、創造力といいますか、それを養うのは非常に重要なことであるということを基本に持っております。
  89. 河野洋平

    ○河野委員 創意工夫というか、創造力を養うということが小学校、中学校、まあ高等学校もそうでしょうけれども教育にとって非常に重要だ。義務教育の中で創造力を養い、新しいアイデア、物をみんなが考え出すということを奨励しているというとおかしいけれども、そういうことを期待しているわけですね。それはつまり、発明を期待しているわけです。発明をさせるだけさせても——私は、その特許という言葉とか特許制度なんというむずかしい制度を教えよと言っているのじゃないのです。考えるだけ考えただけでは、それだけでは十分ではないだろう、そういうものを考えた後で、それが社会一般にどういう形で使われていくか、社会の人の利益になるためには、その考え方一つ制度で固定をして、確定をして、そして、どうぞ皆さんお使いくださいと言って、大げさに言えば世界的に、あるいは社会的にそういった新しいアイデアが普遍的に使われていくようにする、それがつまり発明であり、特許というものなんだと思うのですね。創意工夫を期待しながら、創造力を期待しながら、考えました、夏休みの休み中の成果でいろいろなものを考え出しました、そうか、展覧会にだけ出して、ああいいものを考えたな、終わりというのじゃなくて、そこで、こういうものは一つ制度があって、こういうことで登録をする。特許制度というものにそれが載って、制度として保護される。一つ考え方が、あなたの考え方は世界的に保護された、その考え方をほかの人が使うためには、たとえば、あなたに対して断りなく使えないのだ、そういう次のステップまで教えていくということは、これは大事なことじゃありませんか。ただ発明、創造力だけを期待して、その期待した創造力が発明を生んで、生みっ放しでいいのですか。そこはどうでしょうか。
  90. 三角哲生

    三角政府委員 確かに、発明と申しますか技術と申しますか、それがただ個人の範囲の中の一種の形のない財産と申しますか、そういうものでなくして、これを特許という仕組みによりましてほかの人もこれを使えるといいますか、そういうことにするための制度として大事なことである、こう思いますが、やはり学校教育の基本としては、その発明をすることができるような発想なりあるいは頭脳の開発なり、それがまずもって必要である、こういうふうに思うのでございまして、教科で言うと、理科とか数学とかいうものが関係してくると思いますが、一方、先ほどの創造力ということになりますと、文学的な創造あるいは美術的な面もございますし、体育の面もあると思いますし、音楽で曲をつくったり演奏したり、こういうのも一つのクリエイティブな活動でございますが、やはり小中高等学校の基礎の教育においては、まずもってそちらを培っていく、こういうことでございまして、専門的な教科になりますと、そういう世の中の仕組みとして、無体財産をどのように有効に用いていくか、あるいは形のある財産につきましても、いろいろな制度として、それを活用していくどういう道があるかということが出てくるのだろう、こういうふうに思うのでございます。
  91. 河野洋平

    ○河野委員 初中局長、少し頭をやわらかくして、近代社会にマッチしたような発想をしてもらわないと困る。これは小中学校で、つまり社会的なルールも教えなければいけませんよ。いままでは目に見える財産を保全する、つまり人の物をとってはいけないとか、人の土地に勝手に家を建ててはいけないとか、そういう議論というものはあった。しかし、近代社会、知的社会になると、知的財産の保護というものは非常に重要だと思いませんか。  あなたがまさにおっしゃったように、工業、商業はわかるけれども、体操とか音楽とか、いろいろなものがあって、いい曲をつくるとかなんとかというけれども、つまり、いま若い人たちの中で知的財産という概念というものは非常に強くなりました。たとえば、作曲をする、作詞をする若者たち、多くなりましたね。自作自演で歌を自分で歌う。ああいう若者たちにとっては、盗作、人の曲を盗む、人のメロディーを盗む、詞を盗む、そういうことは困るわけです。そういうことから、著作権なんというものが若者たちにとっても非常に重要な権利になってきているのですね。近ごろ学校の先生が論文の盗作をやったとか、いろいろな話があるでしょう。こういうものは、つまりいわゆる無体財産、知的財産について近代社会、知的社会というものが非常に重要な財産としてもっと考えないといけない。ただ単に自転車を盗まれたとか盗んだとか、自転車はとってはいけませんということを小中学校で教えるだけではなくて、無体財産、言葉はむずかしいですよ、耳なれないからそれだってむずかしいのです。言葉はむずかしいけれども、この近代社会、知的社会の中における知的財産というものの存在というものをもっと教えていくということをやらなかったら、これは、これからの若者たちが社会人として成長していったときに、価値観が違うのだから、そういう新しい概念というものを教えるということは非常に重要だ。  小中学校、つまり義務教育教育制度の中においては、少なくとも社会人としてやっていいこととやって悪いことは教えるわけでしょう。こういう制度があって、人の考え出したこういうものは無断で使ってはいけないのだとか、こういうものを使おうと思ったら、どこそこへ行ってこうしなければ使えない、あるいはこうすればこういうものは使えるのだ、それは教えなかったらどうするのですか。だれが教えるのですか。これは少なくとも義務教育で教えなければならない。あるいはせめて高等学校で教えなければならない。社会人として生きていくルールの中で非常に重要なパートを占めるようになると思いますが、そこらはどうですか。
  92. 三角哲生

    三角政府委員 世の中で目に見えないものに非常に重要な価値があるということはまずあると思いまして、目に見えないものの大事さというものは、これは学校教育で、小学校においても当然実施しなければいけないことだと思うのでございます。  ただ、その目に見えないものの中で、財産価値としてあらわし得るものと、およそ財産価値よりはさらに高度でとうといものとか、いろいろございますけれども、目に見えないもので、それを財産価値にあらわすというものと、いま御指摘のような権利などになるわけでございますが、これは確かにただいま仰せのとおり、そういうものも目に見える財産と同じで、これを、無断で権利を侵害したり、そういうようなことはいけない。これは目に見える財産と同じ原理でございますから、そういう教育は必要だと思うのでございますが、ただ、目に見えないものをどういうふうに財産価値にし、その保全をどういうぐあいにするとか、その登録をどうこうするとかいうことになりますと、これはかなり専門的、技術的な内容になりますので、そういう権利の詳細につきまして、これを指導要領に載せたり、あるいは教科書に載せるということについては、なお慎重に検討を要する事柄ではないか、こういうように思うのでございます。
  93. 河野洋平

    ○河野委員 私は、そんな詳細なことを教科書に書きなさいとか、教えなさいとか言っているのじゃないのです。そんなことまで言っているのじゃないのです。少なくとも創意工夫、創造力を期待して、そしてとにかく発明の日なんというものをつくって、文部大臣の賞状まで出して、発明こそ無資源国日本を支えている非常に重要なものじゃないか。社会一般、そうでしょう。そしてしかも教育の中でも、そうした子供たちの創造力、創意工夫というものをみんなで期待をし、導き出すための努力をしているならば、そういう発明の中にやはり一つの保護、権利、そういうものもあるのだよということを発明の最後に一言言っておく必要があるじゃないか。簡単に言えば、それだけのことですよ。あなたがこういういい知恵でいいものを考え出したのか、ではこれは世界的にすでにだれかがもう考え出したものなのか、それとも、全くあなたの独自の工夫で、世界に類を見ないものなのか、そういうことも調べなければいけないよ、そして全く新しい創造であるならばこれはひとつ特許として申請をして、そういうものが制度に乗って確定をし、保護されれば、これはみんなに知らせて、みんなでどんどん使ってもらうことによって日本の社会は進歩するのですから。一分か二分の説明じゃありませんか。私は何も、特許制度が何とかでございまして、どうとかこうとかでなんて教科書に書けなんて言っているのじゃないのです。そうじゃなくて、しかし発明を期待するならば、その発明をさらにもう一歩進めるためには、一つのアイデアは制度に乗って確定して、保護されて、そしてそれがまたさらに大ぜいの人に利用されて、次の進歩を生んでいくという仕組みは少なくとも説明しておく必要がある。  だから、目に見えない価値のあるものはいっぱいあるけれども、その中で、だれかのものだというものもあるわけです。だれのものでもない、所有権のない、空気みたいなものもあるけれども、目に見えないけれども価値があり、しかもだれかの財産、所有権がだれかにあるというものがあるのですよということを子供たちに教えておく必要はあるでしょう。そういうことを教えたらどうですか。その教える取っかかりになるのには、一行——一行なんて言いません、五文字か六文字、教科書のどこかにそういう制度というものを記載する、そうすれば、それが手がかりになって、先生によっては、豊田佐吉から説き起こして、一時間、発明の重要性、そしてその発明が特許となって、世界じゅうの人たちを幸福にした、それがまた基盤になって次の進歩を生みましたという話をなさる方もあるだろうし、さあっと行ってしまう人もあるかもしれない。  少なくとも四月十八日の発明の日というのを見ると、日本に特許制度かなんかが生まれてもうじき、もう一、二年で百年になるというのでしょう。そこまでやって、大々的に、発明の日だ、何とかの週間だ、こうやっているのだから、そのくらいの配慮をしないと、大変御無礼な言い方だけれども、いまの初中局長さん、あなた程度の特許に対する知識では困るわけです。もう少しみんなが発明とか特許ということについて知るために、少なくとも社会人としての、私は、最低のと言いませんけれども、当然持つべきルールとして、若い次の世代の子供たちには教えていく重要性、必要性を非常に感じているのです。慎重に検討するというけれども、もっと前向きに検討すると答えてください。
  94. 三角哲生

    三角政府委員 大変御批判をいただきまして恐縮でございます。  トランジスタの原理である半導体とか、ゼロックスの原理はアメリカのバーディーンという方が一人で両方発明なさいまして、二回ノーベル賞を受けておるということを聞いたことがございます。それから、RCAという会社が日本に支社をつくっておりますけれども、RCAは現実に電気の器具を日本では売ることは全然ないが、パテントと申しますかライセンスと申しますか、そういうものが日本で買われるので日本に会社があるというようなことでございまして、そういうことを考えますと、ただいまの河野委員の御指摘は一々大事なことでございます。特に、形あるものと形ないものとについてその所有なり、その所有に対する敬意を払うなり大切にする、こういうことは全然変わらないことでございますから、当然たとえば道徳教育、単に政経の問題でなくて、道徳教育の内容としても必要なことであろうと思います。文部省では道徳教育の資料なども逐次つくっておるわけでございますけれども、ただいまの何と申しますか、御趣旨をよく考えまして、研究させていただきます。
  95. 河野洋平

    ○河野委員 すでに商業科とか工業科ではやっているのでしょう、局長。だけれども、それはそういう知的財産を所有している側に立つであろう人たちにそういうことは教えているけれども、つまり一般の生徒に教えろというのは、それを利用する側にも教えておいた方がいいですよということを私は言いたいのです。きょうは議論しませんが、たとえば例の貸しレコードの問題なんかにしても、つまり著作権という目に見えない、いわば権利というものがどういうふうに利用されていくかというのは、昭和の初めに大学を出た人にはなかなかわからないような世の中になってきておる。だから、やはり知的財産、無体財産というものは、言葉は聞きなれないからむずかしいけれども、若い子供たちにはごくあたりまえのことになるのだから、これは教えておいて、人の自転車をとっちゃいけないのと同じように、こういうものは使うときにはこういう手順、手続をしなければ使えないのだよというごくあたりまえのことを教える、それは商業科とか工業科だけに教えるのじゃなくて、一般的に教える、使う側、利用する側にも教えておく必要があるというふうに思うのですね。それはやや、研究まで来たから半歩前進したけれども、もう少し思い切って前進してもらいたい、これは最後は希望だけにします。私はしつこいから、一回言うと、できるまで何回でもやりますから、研究したら、研究の成果は一遍ぜひ適当な時期に聞きますから、研究してください。  それから大学局長さん、大学局長には、つまりいま申し上げました貸しレコードや何かの問題に絡んで、やはり著作権というものが非常にむずかしくなりましたね。解釈がむずかしい。あるいはどういうふうに従来の著作権というものを進めていくか非常にむずかしい。このむずかしいものを進歩させていくために、著作権についてのレベルの高い学者が相当必要なんですね。その著作権についての権威ある学者がたくさんいれば、この著作権法というものも進んでいく。同じように、いまお聞きをいただいたと思うけれども、無体財産権法というものについての学者の数、これはもっとふやす必要が出てくると思うのです。いまはどうかわかりませんが、将来必ず出てくる。この知的財産に関するさまざまな問題は必ず出てくる。そのためにはどうするかというと、もう少し大学にこうしたものを教える講座をいまからたくさんつくっておいた方がいい。私立の大学ではかなりありますね。私立の大学では、たとえば理工学部にも講座があるし、法学部にも講座があるなんという大学がある。つまり、一つ大学で法学部と工学部の両方に講座を持って、両方の角度から研究をしている私立大学がある一方で、国立大学は意外に少ないように思いましたね。大学局にお調べをいただいたのですが、これを見ると、東京大学、小樽商科大学、大阪大学、神戸大学、新潟大学、特に新潟大学はこれは著作権法ですからね。無体財産権についての講座というのは四大学あるという御報告をいただきましたけれども、これは少し少ないのじゃないか。  これから日本がもっと知的な分野で世界をリードしていこうと思ったら、こうした知的財産に関する、無体財産に関する講座というものはもう少しふやしていく努力というものをしてほしい、これは御要望だけ申し上げておきます。いずれ、そんな急に言ったって、こんな講座はすぐに二つ返事で、はいわかりました、ふやしましょうというわけにはいかないでしょうから、これはひとつ大学局長さん、御要望申し上げておきますから、こうした無体財産に関する講座をひとつふやすという努力をぜひしていただきたいというふうにお願いをしておきます。  そこでもう一つ、きょうはユネスコについて少し御質問をしたいと思います。  ユネスコ活動というものは、私は非常に大事なものだ、国際社会の中における日本の地位、日本の立場、国際社会に日本が積極的に貢献していこうという決意があれば、ユネスコ活動というものは非常に重要だと思います。日本は国際的にユネスコに対する拠出金、これは外務省に伺うのが筋かもわかりませんが、国際的に財政的にどのくらい寄与しているか、文部省からちょっと御答弁いただけますか。
  96. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 先生御指摘のとおり、この拠出金は外務省予算に計上されておるものでございますが、申し上げますと、日本円で申し上げまして一年当たり四十三億二千三百六十万円というような額に上っておりまして、アメリカ、ソ連に次ぎまして、世界三番目でございます。
  97. 河野洋平

    ○河野委員 ユネスコに対する拠出も、日本の経済力をもってすれば、世界第三位というのも、それは当然のこととは言いながら、ずいぶん積極的に寄与しているというふうに評価していいのでしょう。  これはどうでしょうか、ユネスコの当局からすれば、もっとやってくれていいのじゃないかなと思っているのでしょうか、それともまあまあよくやってくれていると思っているのでしょうか。何かそれについて、日本はGNP考えればもうちょっとよけい出してほしいとユネスコから言ってきていますか、それとも、いやいやずいぶん、応分に出していただいてありがとうという感触でしょうか。いやそれは外務省だから、文部省じゃわからぬとおっしゃるのか。もしわかれば御答弁ください。
  98. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 実は先ほど申し上げましたのは、義務的に割り当てを受けまして拠出しているものでございますが、それ以外に、日本としまして任意に積極的に拠出しておるもの、あるいは信託基金として出しておるものがございますが、それが約二億円ございます。これは文部省予算と外務省予算と両方に計上しておるものでございます。  それで、それに対する加盟国の評価としましては、日本は非常に貢献しておるというような評価が一般的に強いように聞いております。
  99. 河野洋平

    ○河野委員 仮に自画自賛としても、悪い評価じゃないというふうに考えていいのでしょう。  そこで、非常に積極的に四十億を超えるお金をユネスコに拠出をしているわけですけれども、一体ユネスコ活動というものを日本国民はどの程度知っているのだろうか、ユネスコというものをどのくらい日本人は理解しているか、どう思いますか。この間ある場所で、ユネスコとユニセフとどこが違うだろうかという話をしたら、だれも知っている人がいなかったのですね。ユネスコとユニセフの違いなんか全然わからぬ。そんなことはどうでもいいのかもしれませんけれども、ユネスコ活動というものが国内的にどのくらい評価されているか、あるいは評価してもらうためにどんな啓蒙運動をしていらっしゃるか、少し御説明を願いましょう。
  100. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 国内でどのくらい知られておるかという点につきましては、学校教育におきましても取り上げておりますので、ユネスコという言葉とか、それに近いような単純といいますか素朴な理解は得ておると思うのでございますが、ただ、御指摘のように、その精神とか具体的活動が非常によく国民一般に理解されておるかと申しますと、なお不十分な点があるのじゃないかと思います。ただ、これもやや手前みそでございますけれども、諸外国におきましては、教育の不十分ということもありまして、国民がユネスコという言葉自体も知らないというような国が多いようでございますが、日本はそれに比べますと一般的には普及しておる。  それからもう一つ、これに関しましてややむずかしい問題としましては、ユネスコの基本的な活動分野でございます教育とか科学とか文化という面につきまして、日本がかなり水準が高いものでございますから、国内におきましてそれをさらに高めるというような分野がやや限られてくるということでございます。そういうことで、日本のユネスコ活動も、先ほど御質問のございました拠出金とか、あるいはアジア地域を中心とした活動とか、あるいは外国の方々を日本にお招きしていろいろ理解を深めるというようなことがかなり主要な分野でございまして、国内におきましては、先生がいま御質問ございましたような、広く国民がユネスコの精神を理解し、外国の文化に対してももっともっと、いま以上に理解を深めまして、相互理解の上でユネスコの目的とします平和とか福祉のために活動を進めていくという気持ちが非常に大切なわけでございます。その点につきましては、遺憾でございますけれども、なおなお今後大いに努力をしなければならぬ分野だと心得ている次第でございます。  文部省といたしましては、そのようなことから、「ユネスコと日本」というような啓蒙とか、その他の普及資料を刊行いたしましたり、あるいは都道府県とか指定都市に委嘱しまして、補助金を出しましてユネスコ関係の活動者の研修事業を開催いたすというようなこともやっております。また、都道府県、指定都市等の主管課長会を開きまして、ユネスコの活動の現状を御説明したり、今後の活動の展開に対する知識を深めていただくというようなこと、それから国内のユネスコ関係の指導者を外国に派遣するということも、わずかではございますが、やっておるわけでございます。  そのようなことで、日本国内には民間団体としましてもユネスコ関係の協会というものが、日本がユネスコに加盟する前から発足しまして、かなりな活動をやっておるわけでございますが、ただ、もっと相互の連絡をとりながら一般国民に広く理解していただく活動を、さらに今後とも協力していかなければならぬと考えている次第でございます。
  101. 河野洋平

    ○河野委員 国内のユネスコ活動の啓蒙はそれなりに相当やっていらっしゃる。いただいた資料だと、国内のユネスコ協会連盟にも二、三千万の金を出して、啓蒙運動に資する努力をしていらっしゃるというのは非常によくわかります。努力は評価します。  ただ、実際のユネスコ活動、国内におけるユネスコへの啓蒙活動は、官製といいますか、お役所主導でいくものですから、本当の民間の方々にユネスコの啓蒙活動がずっと浸透しているというふうには見えないのですね。国から県へ、あるいは地方自治体へ、そして地方自治体が教育委員会を使って教育者だけ集めて、啓蒙運動と称して講演会をやる。やはりもっと広く、青少年を含めて多くのユネスコに関心を持っている人もいると思うので、そういう人たちにも呼びかける必要があるし、それから青少年にユネスコというものを理解させる努力が必要なんじゃないか。民間でユネスコ活動を一生懸命やろうとしている団体も幾つかあるわけですよ。それはもう全く民間で。そういう人たちは非常に善意の集まりで一生懸命やっている。ところが、その上に乗っかっているユネスコ協会連盟ですか、あるいは国内ユネスコ委員会になると、これは本当にお役所、官製のものになってしまう。もともと国際的には政府がかかわっていくわけですから、それはお役所がやるのはやむを得ないのかもしれませんけれども、どうももう一つ民間のユネスコへの関心あるいは協力というものをもっと大きくしていく努力がまだ十分でない。もっとやってほしい。私はきょう激励したいと思って申し上げているのですが、ユネスコ協会連盟、これは加盟団体その他はふえていますか、減っていますか。どうですか。
  102. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 ユネスコ協会と言われます団体、機関でございますが、全国に二百五十ほどございますが、大体横ばいという状況でございます。
  103. 河野洋平

    ○河野委員 非常に残念なことなんですけれども、私のところに印刷物が一つ昨年届きまして、この印刷物に、ユネスコ協会連盟にもっとしっかりやってほしいということを一生懸命書いてきておるわけです。  この文章には、この人は昨年国際障害者年を記念してパリのユネスコ本部でしょうか、パリに日本の障害者たちを連れていって向こうでいろいろなデモンストレートをするという団体の団長としてパリへ行った人なんですが、その人がパリから帰ってきて、その人が見たパリ展の問題点という原稿をユネスコ新聞の八月号に書けと言われて書いて出したところが、この原稿はユネスコ新聞に掲載するのには不適当だと言われて没になった。したがって、パリ・フェスティバルに関係するいろいろな問題は、ユネスコの会員の人に何も知らされないでやみからやみに葬られそうになっている。しかし、パリまで行った障害者の人たちがどのくらい苦労したか、これは日本ユネスコ協会連盟の事務局に反省を求めたいという文章なんです。反省を求めたいという文章を、これはユネスコ新聞の方から八月号に掲載をするから原稿を書けと言われて書いたら、この原稿はだめだと言われて没にされちゃった。つまり、何か事務局が余りめんどうを見てくれなかったという意味の原稿を書いたところが、そういう原稿を出しては困ると没にされちゃった。一生懸命苦労して行った人たち、ユネスコ活動を一生懸命やる人たちの苦労の報告書を、何か事務局に都合が悪いと没にしてしまうというのは納得ができないと言って、私のところへ送ってきたのです。  もう少しユネスコ協会連盟も——さっき申し上げたように、文部省から何千万も補助金まで出して、事務局の方もずいぶん大ぜいおられて、これを見ると事務局の人はパリまで一緒に行っているのですよ。しかも先乗りで、準備すると言って先にパリへ行っているのです。行っているのだけれども、結局は何にも準備してくれなかったと言って非常に嘆いている。こういう報告は何か聞いていますか。また、こういう報告が来るような仕組みじゃないのかな。それはどうですか。
  104. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 先生のお話しのございましたのは、岡山県の「たけのこ村」という、非常に熱心な方が知能障害児の教育に携わっておられますが、そこでいろいろ備前焼の埴輪などをつくっておられまして、それをユネスコ本部のパリへ持っていきまして、国際障害者年の記念事業の一環にしたいというようなことで行われたものだと存ずる次第でございます。  これにつきましては、当初の計画の段階で、いま御指摘の協会連盟とその団体との間の連絡がやや不十分であって一いろいろ金額的な負担の関係で問題があったと聞いております。また、それにつきましては、河野先生も特別な御尽力をいただきまして、埴輪などの梱包、運送代数百万円を日本航空の方で持っていただくように御尽力いただいたということを聞いておる次第でございますが、その事業自体は、最終的には実際にパリで実行されまして、相当数のフランスの方々などにこれを見ていただくことが実現されたというように聞いておるのでございますが、ただいま御指摘の点につきましては、私ども実は詳細に存じませんでした。今回調べまして、少し状況がわかった次第でございますが、その点、そのとおりであるとしますと、大変遺憾なことだと存ずる次第でございます。  ただ、ユネスコ協会連盟、民間団体としては非常に積極的に戦後推進してきた団体であるわけでございますけれども、事務局が十名ぐらいで約二千万円から三千万円くらいの事業を行っているというような点がございまして、何か事務的に不都合な点もあったのじゃないかと思う次第でございますが、調べまして、私どもしかるべく指導してまいりたいと存ずる次第でございます。
  105. 河野洋平

    ○河野委員 これは、日本ユネスコ協会連盟の理事会がこの「たけのこ村」をパリに派遣するということを決めたのですね。あなたを派遣します——普通、派遣しますと、こう言われれば、何か多少は、たとえば運賃を多少出してくれるとか、何か多少の便宜を図ってくれると思っていたところが、派遣するとだけ決めて、あとは旅費から何から全部自分持ち。聞いてみると、行きたがってたから派遣するという肩書きだけつけてやったのだと言わんばかりの話だ。これは少し乱暴だ。しかも、その「たけのこ村」たるや財政的には非常に貧しい、非常につらい状況の団体ですよ。それをユネスコ協会連盟なんというのが派遣するなんと言っておいて、それで行けるのかと思ったら、全部自分で行けというのですから、それなら何も派遣するなんて言われなくたって自分で行きますがね。行く前からどうもそういうすったもんだが多少ありまして、私もそのころ少し聞いていて、これはうまくやってくれればいいがなと思っていたこともあるのです。  ところが、これを見ると、日本ユネスコ協会連盟の人が一週間前に先乗りでパリに行っていた。事前に一週間準備のためということで行っていた担当職員がいたにもかかわらず、たとえば広報も、たとえば障害者施設、ボランティア団体との連絡も何もなかった。また、展示のための準備すべきものも何もないといった状況で、一緒に行った人たち、これはもう全く自費で自分たちが、まあ強いて言えば団体を組むと安くなるからということで多少引っ張り込んだような人もいて、団体を組んで自費で行った人たちを全部集めて、彼らに会場のセットから何からみんなさせたというのですよ。それだってずいぶんひどいことをするじゃないかと思うけれども、そんなことでございましたという報告書すら握りつぶして、ユネスコの会報にはこれは出せませんと言ってつぶしてしまうというのは、どうも穏やかじゃない。そんなことをしていたらユネスコ活動は健全な発展を遂げないよ。だからもう少し——まあここにはだれが親切だったとか不親切だったとかと書いてあるけれども、それは私は言いません。言いませんけれども、とにかく不親切な人がいたことは事実だな。それから少し気配りが足らなかったことは事実なんですから。  しかし文部省の方に文句を言ってみたって、これはしようがないことなんでしょう。ユネスコ協会連盟の人に申し上げなきゃいけないことなんでしょうけれども。しかし局長の下にユネスコ国際部があって、そこでユネスコの問題を担当しておられるから、私はこういう形で局長さんに申し上げることがいいかどうかずいぶん迷ったのです。これは去年の八月のことですから、ずいぶん迷いましたけれども、その後どうもうまくいってないように思うものだから、きょう思い切って申し上げるのですが、こういうことを申し上げてみると、こういうことを全く御存じなかったでしょう。そういうことを全く御存じなくてまた予算がついて、そして予算化されてユネスコ協会連盟というものの運営がなされていく。表向きはこういういいパンフレットをつくって、非常にうまくいっている、いっていると言うけれども、中はなかなかそうではないですよ。そして官製の運動というものは、報告書とかそういうものは実にうまくできるけれども、実態がそんなに意欲的、積極的にうまくいっているかどうかということは多少問題があるのですよ。  私は、ユネスコ活動ということは非常に大事だし、もっと積極的にやってほしいと思うために申し上げた。だから、それは補助金が足らないからだめなんだと言うなら、補助金をもう少したくさん出す努力をしてもいいぐらいに私はユネスコ活動というものは応援したい。みんなで応援すべきものだ。しかしそれが、みんなで応援しておるのに、一番末端の本当に努力して、フランス語も通じないのに町へ出て、画びょう一つ買うのにもずいぶん苦労したとか、方角もわからないのにとんで歩いて、もう本当に苦労した、そういう人たちが末端で努力をしているのに、それが途中で抑え込まれてしまう。そういう努力がちっとも伝わっていかないということじゃ困りますから。ユネスコ本部に四十億お金を出す、これは大変なことだけれども、お金を出せばそれはお金を出したという行為でできるけれども、やはり国際障害者年で日本から障害者の団体を連れてパリへ行くなんというのは、お金の多寡じゃない、大変な努力、大変な苦労があるのですよ。大変な苦労があると思うんだ。そういう人たちの苦労をもう少し親身にわかってあげる必要がある。そうしないと、ユネスコ活動というものは名前だけで実のないものになってしまうから、ぜひもう少し細かい配慮をお願いしたい。  ユネスコ協会連盟についても、ひとつもう一度実態を調査してもらいたい。私はいまさら、だれが責任者で、だれがどうとかいうことを追及しようとかなんとか言うのじゃないのですよ。みんながもっと気持ちよくユネスコ活動ができるように、ひとつ風通しのいい組織になるように指導してほしいと思いますが、どうですか。
  106. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 先生御指摘のとおりでございますので、私どもさらに事情を調べまして、もう少し指導してまいりたいと思います。またユネスコの活動につきましても、御指摘のような風通しのいいものになりますよう民間の方々の理解も深めるように努力してまいりたいと存ずる次第でございます。
  107. 河野洋平

    ○河野委員 大臣、こういうことでございまして、ユネスコ活動等非常に重要なものだという認識を私たちも持っておりますので、ぜひ健全なユネスコ活動が発展するように御指導をいただきたいということを最後に御要望申し上げておきたいと思います。
  108. 小川平二

    小川国務大臣 ユネスコの活動を活発ならしめますためには、ユネスコの基本理念を国民の各層に正しく理解してもらい支持してもらう必要がある、かように心得まして、文部省として各種の啓蒙活動も行い、必要な助成もいたしてきたわけでございます。ただいま、よくそこまでやったというお褒めの言葉をいただきました反面、配慮において欠けているではないかというきついおしかりもいただいたわけでございます。実情を見直しまして、これから先も鋭意努力をしていくつもりでございます。
  109. 河野洋平

    ○河野委員 私は、最後にもう一言だけつけ加えて質問を終わりますが、国内委員にしても何にしても、名前だけ並べてユネスコの何たるか全然わかっていない。名前だけずらずら並べておけばいいというものじゃないから、国内委員なんかももう一度見直されたらどうですか。そして本当にユネスコというものに理解があり、ユネスコ活動に意欲があり、もっと一生懸命やろうとする人、全国各地のユネスキャンたちは手弁当で日曜返上で一生懸命留学生との交流をやるとか、一生懸命やっていますよ。それに比べれば、国内委員なんて名前だけで、ユネスコなんて何だかよくわからない、肩書きの一つだぐらいに考えているような人選はだめだ。もう一度そういうこともよく、ユネスコに対する理解があり意欲がある、そういう人たちにお願いをして、そして健全活動をやってもらうように、そこまで配慮してもらいたいということを最後にお願いをして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  110. 青木正久

    青木委員長 山口鶴男君。
  111. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 大臣にまずお伺いしますが、きょうは閣議の日ですね。閣議で大臣何かおっしゃいましたか。
  112. 小川平二

    小川国務大臣 何か発言したかという仰せでございますが、閣議で発言をいたしましたのは、自治大臣から、昨日出されました最高裁判決について解説をせよ、こういう趣旨の御発言がございましたので、簡単に御説明をいたしたわけでございます。
  113. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 ほかの御発言はありませんでしたか。
  114. 小川平二

    小川国務大臣 ほかには何も発言はいたしておりません。
  115. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 お答えになりました発言の部分につきましては、また後でお尋ねしたいと思うのですが、それ以外に御発言がなかったというのは私、残念な気がするのです。と申しますのは、運輸審議会が運賃の値上げについて答申をされました。そうして本日、運輸省は物価問題関係閣僚会議で了承を得た上でこの認可をするということが報道されておるわけです。  今回、国鉄運賃の値上げにつきましては、改定率が六・一%、増収率が五・三%です。ところが、通学定期旅客運賃につきましては、四月二十日平均六・七%の改定、さらに九月一日からは割引率を七四・三%から七一・三%に引き下げる、これによって平均一一・七%改定される。したがって、一般の旅客運賃の改定率が六・一%に対して、通学定期だけは合わぜまして九月からは一九・二%も改定をされるということにもなるわけです。通勤定期の場合はおおむね企業がそれを負担します。公務員につきましても通勤手当というものがあります。ところが、通学の場合はまさに父母の負担になるわけです。それが、全体の旅客運賃六・一%の改定というのに対して一九・二%も改定される、こういうことについて文部大臣として一言あってしかるべきじゃないかと私は思うのです。このような通学定期の異常な引き上げ、しかも申し上げますと五十三年から今日まで国鉄運賃は五〇%高くなったわけですけれども、通学定期に関しては実に二・七倍という異常な増額なのです。こういうものについて文部省が何にもおっしゃらない、文句もつけないということではいかがかな、こういう気が私はするのです。後から私は教科書問題についてお尋ねをいたしたいと思いますけれども、それは確かに教科書問題も大いに重要なことです。閣議でいろいろ御説明されることも大いに結構だと思います。同時に、これだけの負担がある、しかも文部省はことしは授業料も大幅に改定をされたわけです、そういう中で父母の負担、通学の負担が非常にふえているということを、ただそのまま放置しておくというのですか、沈黙を守っておるということでは残念だな、小川さんらしくないな、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  116. 小川平二

    小川国務大臣 閣議で何か発言をしたかというお尋ねでございましたので先ほど申し上げましたようにお答えいたしたわけでございますが、この問題につきましては、文部省といたしましてかねてから関係各方面に対しまして割引率の引き下げを極力小幅にとどめてもらうように強く要請をいたしておったわけでございます。本日は、運賃問題に対して運輸大臣から報告がございまして、それによって最終的な結論を出すための閣僚並びに与党の三役を交えての会議でございました。  冒頭に運輸大臣から運賃引き上げのやむを得ざる理由の説明がございました。これを受けて経済企画庁長官から、国鉄においては改善計画に基づいて人減らしも実行しようとしておることでもあり、同時にまた、学生定期の割引率の引き下げを九月まで延ばすという特段の措置も講じておることであるので私としてはやむを得ざる措置だという発言があったわけでございます。  これを受けまして私は、文部省の立場として今回の値上げはまことに残念であるけれども、これを九号まで実行を延ばすという特別の配慮も行われておることだからやむを得ざることとしてこれを了承する、ただし今後もこの問題については引き続いて十分慎重に対処してほしい、このような発言をいたしたわけでございます。
  117. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 関係閣僚会議ではそのような御発言をされたということですね。先ほど私申し上げたのですけれども、今回一九・二%の改定ですが、五十三年から今日までの改定率を見ますと五〇%の改定ですけれども、通学定期については二・七倍という異常な改定である、こういうことについて今日まで歴代の文部省は怠慢過ぎたのではないかな、私はこういう気持ちがするわけです。私も各新聞の運賃値上げに対する社説等をずっと拝見したのですけれども、通学定期の値上げ率は非常に高過ぎるのではないか、他に比べて異常ではないかということをいずれも筆をそろえて指摘しておるわけです。ですから、今回そういう御発言になったということは、残念ですが、済んだことですからそのことは蒸し返してというわけにはまいらぬだろうと思いますが、今後は、先ほど言いましたように、通勤の場合は企業の負担になるが、通学の場合はまさに個人の負担と申しますか父母の負担になるわけでございますから、その意味では文部省はもっとしゃんとして対処していただきたい、私はこう思うのです。小川さんのお父さんはかつて鉄道大臣もされた方ですから鉄道には御縁もあるだろうと思いますけれども、子供たちの授業料も上がる、通学もほかから見ると異常に上がる、とにかくこういうものを放置する手はないと思うのです。もう少しきちっとした姿勢を今後とっていただきたいなと思うのですが、いかがでございますか。
  118. 小川平二

    小川国務大臣 御趣旨を体しまして努力いたします。
  119. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 こういう問題は文部省の方ではどこが担当しているのですか。
  120. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 文部省では、大学生については大学局学生課で所管をいたしているわけでございます。  なお、若干補足させていただきますと、御指摘のように授業料引き上げ、国鉄運賃の引き上げ等で確かに負担が重くなっているわけでございますが、文部省側の従来からの対応といたしましては、もちろん運輸省当局に対して事務的な折衝というものはいろいろ行っているわけでございますが、学生生活費全体について教育の機会均等の確保ということは非常に大事なことでございます。そのための施策といたしましては、文教施策全体の中でたとえば私立大学に対する助成の問題でございますとか、あるいは育英奨学金の貸与あるいは授業料の免除というような事柄で対応してきておるわけでございます。たとえば国立大学の授業料値上げがことしございましたが、それに対して授業料の免除枠の拡大を図るというような事柄で、施策全体の中で教育の機会均等を確保するように私どもとしても努力をいたしているところでございます。  御指摘のように、特に通学定期の引き上げが、法定割引率を相当上回って現在割り引かれていることにつきまして、国鉄の再建問題に絡みまして、いわゆる公共負担と申しておりますけれども、それの負担をどうするかの問題については従来から議論のあるところでございますが、割引率の引き下げに伴う通学定期の値上げ率というのは、御指摘のようなことで二・七倍になっていることも事実でございます。それらの対応につきましては、ただいまの文部大臣の御答弁のとおり私どもとしても今後努力をいたしたい、かように考えております。
  121. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 高等学校の生徒等の問題は、そうすると初中局長ということになるのでしょうが、一々お答えは求めませんけれども、とにかく全般の運賃の改定率が五〇%に対して、この通学定期の方が二・七倍というのは余りにもひど過ぎる。もちろん割引率というものがあるから、いままで優遇されておったのだから上げるのもやむを得ないというようなことをお考えになるのかどうかわかりませんけれども、少なくとも文部省はそういうお考えには立っていないだろうと思うのです。そういう意味で、今後はもっと慎重な、断固たる姿勢で対処していただきたいなということを申し上げまして、この問題は終わっておきましょう。  初中局長さんにお尋ねしたいと思うのですが、きょうの新聞を見ますと初中局長さんが大いに活躍をしておられまして、座談会で御発言になっておるのを拝見もいたしましたし、また記者会見をされまして昨日の教科書裁判についていろいろな御発言をしているのを拝見をいたしました。これを見ますと、何か昨日の最高裁判決について文部省は勝訴と歓迎している、勝った勝ったと大変喜んでおられるようであります。  中身を拝見いたしますと、検定制度の合憲、違憲については畔上判決、学テ判決で事実上決着済みと思う、最高裁判決はこれを前提としている、違法とした二審判決もこれで破棄された、こう発言したと出ておるのですが、そういう御発言はされたのですか。
  122. 三角哲生

    三角政府委員 昨日の最高裁判決につきましては、これは私どもの、文部省側の主張が、「原則的」にという字がかぶってはおりますけれども、通ったというふうに私ども判決を読んでおりますので、その意味で妥当な判決である、こういうふうに報道の方々には申し上げたのでございます。  それからもう一つの点でございますが、御承知のように一審の裁判でいろいろ憲法の論議がありまして、その結論として一審の判決というものがあったわけでございますが、その実質的内容はただいまおっしゃいましたような五十一年の学力テストに関する最高裁判決なりあるいは一部、本件裁判の第二審において異なる見解が出されております。そういう状況でもございますし、それからなお、今回の判決全体を見ますと、私どもとしては、これは教科書検定の合憲性というものを前提としたものである、こういうふうな読み方をしておる、こういうことは申し上げたのでございます。
  123. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 私の尋ねたことに正確にお答えしていただきたいと思うのですが、違法とした二審判決もこれで破棄されたというふうに御発言になったのですか。
  124. 三角哲生

    三角政府委員 その記事のその部分が私が昨日いろいろ申し上げましたところのどこの発言に対応しているかちょっとわかりませんのですが、二審判決では改訂検定というもののやり方に一貫性を欠くという判断で、そこで法律の適用を誤っておると申しますか、そのような判断があったと思います。  私どもは、それについては第二審においては必ずしも審理が尽くされていないではないか、こういうことで控訴をしたわけでございますから、そしてその結果として昨日の判決で原審破棄、こういうことになりましたので、その趣旨を申し上げたのではないかと思います。
  125. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 それじゃ、ちょっと角度を変えてお尋ねしましょう。  ある新聞で座談会に局長さんが出ておられるわけですが、これを見ますと最初に局長さんが発言をしている。そしてその後、堀尾さんという方が発言しているわけですが、「逆に言えば一、二審で認められた検定についての違法性を、消極的な形で認めたとも解釈できる。」、こういう御発言があります。これに対して局長さんは別に否定もしていないわけですが、このことは肯定されたわけですか。
  126. 三角哲生

    三角政府委員 私としてはこのことは肯定するつもりはございませんが、そしてこの座談会はこの新聞社の求めがございましたので、私はその求めに応じて参加したわけでございますが、たしかずいぶん長時間にわたりましていろいろなお話が出たのでございます。それを、新聞社の方々はプロでございますから、その中からピックアップされましてこのようにコンパクトにおまとめになったわけでございまして、私も当時このお話をお聞きして、何をおっしゃっているかちょっと直ちには意味を解しかねたと申しますか、理解しがたい御発言であるというぐあいに受け取りまして、それに対して私すぐその場で打って返しのように発言したかどうか記憶はございませんけれども、このような見方はちょっと理解できない判決の読み方だというふうな感じを昨日持った次第でございます。
  127. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 はい、わかりました。そうしますと、堀尾さんの言われた「一、二審で認められた検定についての違法性を、消極的な形で認めたとも解釈できる。」というのは間違いであって、この一、二審で認められた検定についての違法性最高裁否定をしたのだというふうに受け取られたという趣旨でしょうね。ということになると、違法とした二審判決もこれで破棄されたという意味がよくわかるような気がするわけです。そういうことでよろしいわけですね。
  128. 三角哲生

    三角政府委員 ただいま御指摘のように違法というふうに指摘した二審判決破棄されたわけでございますので、そういう二審判決がなくなった、こういうふうに判断しております。
  129. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 一審判決はどうなったと思っているわけですか。
  130. 三角哲生

    三角政府委員 二審判決破棄されたという意味に対比して考えますと、形式的には一審判決というものはなお存在していると思いますけれども、ただ一審判決というものは、依然として争われている段階にございますから当事者を拘束しないと申しますか、効力を持っていないということ、それから今後の差し戻し審が東京高裁で行われます場合には、先ほどもお答え申し上げましたが、その審理については、これは何物にも拘束されずに行われるものでございますから、私どもとしては、形式的にはなお存在いたしますけれども現実的な意味を持っておらないということ、さらには、先ほど仰せになりました学テの最高裁判決あるいは二審判決のいわゆる畔上判決等で憲法判断というものについては異なる見解が出されておりますので、その意味からも現実的な意味を持たないものになっている、こういうふうに思っているのでございます。
  131. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 尋ねたことに正確に答えていただきたいと思うのですが、そうしますと一審判決は存在しているということなんですね。先ほど「一、二審で認められた検定についての違法性を、消極的な形で認めたとも解釈できる。」という堀尾さんの発言は、これは局長さんとしては認めない、それは誤っている、こういうふうにお考えになっている、こうおっしゃったわけなんでして、ただいまは、そうすると一審の判決は存在している、こういうふうにおっしゃられたわけで、同じ方が時間を数分しか違わないで違うことをおっしゃられても、私みたいな大体議運ばかりやっておって頭の粗雑な人間は混乱をするばかりでありまして、大変迷惑をするわけであります。一体どっちです。
  132. 三角哲生

    三角政府委員 二審判決破棄された、こういうことでございます。一審判決につきましては形式的には存在をするということだと思いますけれども、実質的には意味がなくなっておる。二審の畔上判決におきましても、一審判決教科書検定に関しまして憲法判断に及んだわけでございますが、このことについて二審判決が批判をし、そしてこれを取り上げていないわけでございます。そうしてその上で最高裁へ持ち込まれた、こういう順序でございますので、先ほどのような御答弁を私は申し上げたのでございます。
  133. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 先ほど共産党の山原さんの質問を私も聞いておりましたけれども、山原さんの質問に対して、一、二審判決は一体どうなんだ、これはなくなったのです、これは文部省の統一見解です、こういう趣旨の発言をされましたね。そうすると、ただいまの発言は山原さんの質問に対する御答弁と全く違っているわけですよ。文部省の統一見解というのは一体どうなんですか、大臣ひとつはっきりしてください。
  134. 三角哲生

    三角政府委員 申し上げましたように、一審の杉本判決というものが憲法判断にまで及んだわけでございますが、二審の畔上判決はこれについて批判し、そしてこれをあえて取り上げない、こういうことでございます。文部省としましては、その上で行われました今回の最高裁判決につきましても、この点につきましては教科書検定の合憲性を前提としたものというふうに考えておりますので、その意味で先刻の発言をしたわけでございます。
  135. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 答弁のたびにくるくる変わったんじゃ困ると思うのですね。休憩しても結構ですからひとつきちっとした——とにかく先ほど山原さんの質問に対しては一審、二審ともなくなった、こう言ったわけです。それで私の質問に対しては、この堀尾さんの発言は、これは文部省としては、局長としてはとらぬ、これは違うのだ、とうたわれた。一、二審とも消極的な形で認められたというのはこれは誤りだ、こういうふうにお答えになった。次に今度は一審判決は存在して恥いる、こうお答えになった。こうくるくる答弁が変わっては困るじゃないですか。私は先ほど申し上げたように、議運ばかりやっておって、大体法案をつるしたり何かしているのが仕事でして、細かいことはよくわかりません。とにかく、存在していると言ったり、していないと言ったり、そういう基本的なことをくるくる変えて答弁してもらっちゃ困るですね、はっきりしてください。
  136. 三角哲生

    三角政府委員 私は、一審判決につきましても、先ほど来申し上げたところでございますけれども、そういう意味合いで効力を持たず、意味を持たないものであるというふうに判断しておる、そういうことを申し上げておるのでございます。
  137. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 一、二審とも要するになくなったのだと、こう言われたわけですよね。いままた効力がないような御発言をされたのですが、なくなった、存在していない、存在している、この言葉自体きわめて概念ははっきりしていると思うのですね、そのことについてお答えになっておって、今度は言い方を変えてもらったのでは困ると私は思うのですね。一体この一審判決は存在していると思っているのですか、いないと思っているのですか。山原さんの質問に対する答弁は取り消すのですか取り消さないのですか。この点はっきりしてください。
  138. 三角哲生

    三角政府委員 厳密な物の言い方ということにいたしますと御批判をいただいてもやむを得ない点があったかと思います。私も訴訟法の方の専門家ではないのでございますので。ただ私が申し上げましたのは、形式的には一審というものは存在しておるけれども、実質的な観点からは意味を持たない、こういうことで申し上げたつもりでございます。
  139. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 ひとつ速記を調べてもらって、山原さんの質問に対する答弁あると思うから、この点は速記を調べてもらった上でどうするかはっきりしてください。それまで休憩してください。質問できませんね。
  140. 青木正久

    青木委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  141. 青木正久

    青木委員長 では、起こしてください。  この際、暫時休憩いたします。     午後三時四分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕