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1982-03-25 第96回国会 衆議院 物価問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月二十五日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 武部  文君    理事 狩野 明男君 理事 中島源太郎君    理事 牧野 隆守君 理事 井上  泉君    理事 小野 信一君 理事 長田 武士君       亀井 善之君    熊川 次男君       長野 祐也君    吹田  愰君       金子 みつ君    新村 勝雄君       春田 重昭君    中野 寛成君       岩佐 恵美君    依田  実君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         経済企画政務次         官       湯川  宏君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         外務省中南米局         長       枝村 純郎君         食糧庁次長   中山  昇君         資源エネルギー         庁石油部長   野々内 隆君  委員外出席者         経済企画庁調査         局審議官    横溝 雅夫君         法務省人権擁護         局調査課長   水流 正彦君         外務大臣官房外         務参事官    佐藤 嘉恭君         通商産業省機械         情報産業局自動         車課長     西中真二郎君         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       鎌田 吉郎君         資源エネルギー         庁石油部流通課         長       長田 英機君         資源エネルギー         庁公益事業部計         画課長     荒尾 保一君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     植松  敏君         資源エネルギー         庁公益事業部開         発課長     渡辺 光夫君         建設大臣官房政         策課長     佐藤 和男君         建設省計画局調         査統計課長   斉藤  衛君         特別委員会第二         調査室長    秋山陽一郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等に関する件      ――――◇―――――
  2. 武部文

    武部委員長 これより会議を開きます。  物価問題等に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野信一君。
  3. 小野信一

    小野委員 昨年の十月から十二月までの第三・四半期実質経済成長率マイナス〇・九、年率換算して三・六とも三・七とも言われておりますけれども、この数字が発表になってから、わが国経済の先行きに対して国民の間に非常に大きな不安感が出ております。政府実質経済成長率目標数字四・一の達成は、すでに困難になったことは確実だろうと思います。民間調査機関あるいは研究所等の試算によりますと、三%台あり、あるいは三%も割って二%台になるのではないかという予想すら出ております。  経企庁ではことしの実質経済成長率見通しをどの程度と算定しておるのか、現在の条件の中でどのように試算しておるのか、発表していただきたいと思います。
  4. 井川博

    井川政府委員 一-三月の数字統計が大変遅うございまして、特にGNPの半分以上を占めます消費等については、まだ非常に古い数字しかわかっていないというふうな状況でございます。したがいまして、一-三月の数字がどうなるかというのはなかなか予測が困難でございます。  先生承知のように、十-十二月につきましても、こんな大きいマイナスになるというふうなことは、私たち政府といたしましても民間といたしましても予想してなかったわけでございますが、現実に統計で精査をしてみますと、マイナス〇・九という非常に大きいマイナスが出たわけでございます。  一-三月については、まだ一月の家計調査も出てないというふうな現状でございまして、一-三月がどういうかっこうで出るかは全然予測を許しません。  ただ、われわれとしては、実は十-十二の数字は、先生も御承知のように外需が大幅なマイナス前期比マイナス一・三、これだけでもう年率にいたしますとマイナス五%というふうな非常に大きいマイナスになっておるわけでございます。しかし、これは船舶輸出が、出るべきものが一-三月にずれ込んだという特殊要因もあるというふうなことでございまして、一-三月については外需がそういう大きいマイナスになることはないというふうに想像されるわけでございます。  内需につきましては、すでに十-十二月期が前期比で、緩やかではございますがプラスというふうな趨勢が出ている。こういう趨勢が続くとすると、一-三月がマイナスということはあり得ないので、プラスであろう。ただ問題は、どの程度プラスかということが全然わからないというのが実情でございます。  しかし、いまお話にございましたように、五十六年度の改定見通しを四・一%というふうに出してございますが、この達成はきわめてむずかしい、ほとんど不可能であろうというふうな感じでございまして、われわれといたしましては、先ほど申しましたように一-三月の数値によって違いますけれども、やはり三%前後は免れないのではないかという感じを持っているわけでございます。
  5. 小野信一

    小野委員 なかなか慎重な答弁でして、今後どのような対策を立てるべきかについても、はっきりと数字が示されないと私の方も質問に困るわけですけれども、いまの答弁の中から言えることは、十月から十二月までの実質経済成長率マイナス〇・九というのは、船舶発注等の特殊な事情があった、こう言っております。それらの特殊事情が解決したとしても、この第三・四半期経済趨勢が、今後の経済状態スタート、要するにマイナス成長に入る徴候として考えるべきなのか、それとも今後は上向きになっていくと考えるべきなのか、あるいはこの現象は一時的な現象であって、一月以降あるいは五十七年度には、もとの四%台なり五・二%あるいは五・三%の経済成長率に戻るだけの内容を含んでおるとお考えになっておるのか、意見を聞かしてもらいたい。
  6. 井川博

    井川政府委員 マイナス〇・九といいますと、年率に直しますとマイナス三・五でございます。これは前期比、いわば瞬間風速というかっこうであらわされておるわけでございますが、われわれはマイナス三・五というふうなのが現在の実勢とは考えておりません。これはやはり前期比というかっこうで、先ほど申し上げたような特殊的な原因で出てきているというふうに考えておるわけでございます。  と申しますのは、先ほど申しましたように海外需要寄与度マイナス一・三、これがプラスになるかゼロになるかはともかく、こういう大幅なマイナスではないというふうに考えておるわけでございます。そういたしますと、国内民間需要寄与度で〇・七のプラスということになっておるわけでございます。国内需要のうち公的需要マイナス〇・三ということで下がっておりまして、国内需要としては〇・四、いずれにいたしましても国内民間需要ないし国内需要プラスということになっておりますので、現在の趨勢はそのプラスという面を考えていけばいい。そういたしますと、国内需要が十-十二月もプラス、今後もそういう趨勢をたどる、ただ大幅な回復ということになるのは一-三月では期待薄ではございますけれども、緩やかではございましょうがそういう趨勢をたどり、しかも海外需要マイナスマイナスでなくなるということになりますと、プラスということを考えていっていいのではないか。したがいまして、先生ただいま五十七年度のお話がございましたけれども、われわれといたしましては趨勢としてはそうしたプラス趨勢をたどっていく、こういうふうに考えていいのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  7. 小野信一

    小野委員 五十六年度の第三・四半期のこれらの数字は特殊な事情だ、こう考えたとしても、一月以降の回復はやはり非常に緩やかな数字であろう。もしこう考えられるとするならば、五十七年度の五・二%の経済成長率達成は非常にむずかしいということになるだろうと思います。もちろん大臣も、五十七年度の経済成長率目標は、ほうっておいては達成されるものではなくて、あらゆる政策を施したときに達成される数字だ、こう言っておりますけれども、もし景気政策を行わないとするならば三%達成も無理じゃないのか、こういう現在の趨勢ではないのかと判断されるのですけれども経企庁としてはどう判断しておりますか。
  8. 井川博

    井川政府委員 現在の趨勢自体は、海外需要自体を除きまして、国内民間需要自体、十-十二月の数字ですと寄与度で〇・七、先ほど申したとおりでございます。それで、〇・七という数字前期比プラスで、私としては、先ほど申し上げたように、そうしたプラス要因考えられると申しますものの、これを瞬間風速に直しますと三%前後ということになるわけでございます。したがいまして、現状はやはり厳しいと言わざるを得ません。  大臣も始終申しておりますように、政府としていろいろな政策手段、しかしそれは、財政も金融も手を縛られておりますけれども、縛られた上で、できる限りの政策手段駆使をして、その駆使をしていくことによって見通しの五・二%を実現していくということでございまして、おっしゃるように現状は決して楽観を許さないという状況でございます。
  9. 小野信一

    小野委員 厳しい経済成長率、三%程度と予想するとしても、国際的に比較した場合にはまだ非常に高い経済成長率を維持しておる。世界各国とも二ケタに近いインフレーションあるいはマイナス成長の中で、三%の経済成長率というのはかなり評価される経済成長率なんですけれども経済企画庁はこの経済実態不況考えるのですか、それとも、底とは考えるけれども灰色の経済、好景気とはもちろん言えなくても、不景気とは言えない状態だと考えるのですか。どう判断しておりますか。
  10. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 わが国経済は、御存じのとおり第二次石油危機影響を受けまして、景気のかげりが濃かったわけでございますが、昨年の半ばまでに第二次石油危機影響は大底を打ったのではないかというふうに判断しているわけでございます。昨年の半ば以降、緩やかながら回復を見せているという実態ではないかというふうに判断しているわけでございます。  ただ、先ほど来お話がございましたように、昨年末輸出増勢鈍化いたしまして、全体として見ますと若干足踏み的な状況が見られますけれども、ことしに入って、そういった状況が続いてございますが、全体として見ると、緩やかな回復の中で足踏み状況が見られるということかと思います。  しかも、そうした回復ではございますけれども業種別に見ますと、素材型産業加工型産業格差がございます。また、規模別に見まして大企業中小企業格差があるということでございますし、また、地域別にも跛行性が見られるということかと思います。  しかも、企業別に見ましても、大企業設備投資は比較的堅調でございますけれども中小企業設備投資停滞しておりますし、また、輸出はいままで比較的堅調でございましたが、ただいま申し上げましたように、若干鈍化が見られるということかと思います。  加えまして、個人消費住宅一進一退という状況でございまして、需要面でもそういった跛行性が見られますけれども、総じて見ますと、緩やかな回復過程の中で現在は若干の足踏み状態ということではないか、かように考えております。
  11. 小野信一

    小野委員 要するに、不況だと判断する指標経済指標の中にあるのですか。それとも、回復期に入っているので不況ではないと判断しておられるのですか。
  12. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 何を不況と言うかという定義が大変むずかしゅうございますので、ただいま申し上げました指標についての判断が大変にむずかしいかと思います。たとえばこういった需要の中でも、大企業設備投資のように比較的堅調なものと、そうでなくて、停滞を示し一進一退のものといったものがあるという状況ではないかと考えております。
  13. 小野信一

    小野委員 経済企画庁では昨年の春に底入れ宣言を行いました。しかし、底入れ宣言を行ったにもかかわらず、経済成長率伸びなかった。秋にまた再び底入れ宣言を行ったような言葉を発表いたしております。要するに現在の経済状態が底だとするならば、去年の春の、あるいは秋の底入れ宣言は早まったのではないか、そう判断せざるを得ないのですけれども、それらに対するお考えをお聞きいたします。
  14. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 石油危機影響によります国際収支あるいは物価景気に対する影響等考えてみますと、物価卸売物価消費者物価とも一昨年春-秋に峠を越しておりますし、国際収支の面で見ますと、昨年の第二・四半期以降黒字に転じているということかと思います。  一方、実態経済景気に与える影響で見ますと、実質所得実質国民総生産動きは、昨年の半ばにはそういった格差も縮小していくという状況でございますので、いわゆる石油危機の直接的な影響は、昨年の半ばまでにはほぼ解消しているのではないかというふうに判断されるわけでございます。  ただ、御指摘のとおり、石油危機のいわば後遺症素材型産業なり、あるいは中小企業というものになお強く残っております。それが、あるいは個人消費なり、中小企業設備投資なり、あるいは住宅需要等影響を与えているということではございますが、しかし、全体として見ますと昨年の半ばまでに大底を打ちまして、緩やかな回復過程の中で足踏み状況が最近では見られているということではないかと判断しております。
  15. 小野信一

    小野委員 経企庁は昨年の春に景気底入れ宣言を行いました。秋にもまた、これから徐々に回復していくだろう、こういう発言をいたしました。そして五十七年度の四月には今度は景気対策を行わなければならないといって、公共投資の七五%以上の前期発注を決定いたしました。金利の引き下げも検討中だと聞いております。  こう考えてみますと、昨年の春の底入れ宣言は明らかに早まった宣言じゃなかったのかと国民考えるのは当然だと思うのですけれども、なぜそれらに対するそのような宣言が行われ、なぜそのような見通しの誤りが出てきたのか、その判断をお聞きいたします。
  16. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 ただいまも申し上げましたとおり、実質所得実質国民総生産との乖離が、一般的に申しますと、石油価格上昇によりますデフレ効果ではないかというふうに判断されるわけでございますが、そういった観点から見ましても、昨年の半ばまでにはその差がほとんどなくなっているという意味から申しますと、石油危機によるトリレンマと言われます景気面でも、一応昨年の半ばにはそれが終わっていると判断されるわけでございます。その後の動きを見ましても、生産指数雇用動き、あるいは企業収益等を見ましても、緩やかではございますけれども徐々に増加しているという状況でございます。ただ、先ほども申し上げましたとおり、昨年末に至りまして、輸出増勢鈍化を主な要因といたしまして、景気に若干の足踏みが見られるということは事実かと思っております。  ただ、そうした緩やかな回復にはございますけれども、先ほど来御議論ございますように、政府が期待しているような成長のスピードにはなっていないことは事実でございます。その意味で、今般公共事業前倒し等を主体とする景気対策をとろうというふうに政府考えていると理解しております。
  17. 小野信一

    小野委員 政府は、物価が安定すれば消費が拡大する、消費が拡大することによって内需中心経済回転し始める、こういうシナリオを書いて五十六年度の経済を運営してまいったと思います。  確かに過去の経済運営の場合には、物価が安定しますと景気回復するというパターンが行われましたけれども、今回の五十六年度の場合にはそのような回転が行われなかった、パターンにならなかったということだろうと思います。なぜ五十六年度に政府が当初書いた経済回転パターンが行われなかったのか、その判断を説明していただきたい。
  18. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 先生指摘のとおり、物価が安定いたしますと個人消費回復すると私ども考えていたわけでございます。しかし、その後の足取りを見てみますと、何分にも実収入の伸びが非常に低いということでございます。  春闘は七・七%ということでございますけれども、毎月勤労統計あるいは家計調査で見ますと、所得伸びは五ないし六%でございます。したがいまして、業種にもよりますけれども、大企業所得伸びは比較的高うございましたけれども中小企業あるいは中小サービス業等に勤務する雇用者所得伸びが低いということでございまして、全体として所得伸び期待どおりにいっていないという状況がございます。  加えまして、税ないし税外負担の非消費支出のウエートが若干高まっておりまして、可処分所得伸びが低かったという実情にございまして、実質のベースで見ましても、このところ可処分所得は前年を下回るという状況にございます。  その結果、そのことを大きな主因にしているかと思われますけれども個人消費停滞が続いているということかと思います。  ただ、個人消費動きを見ますと、消費性向という面で見ますと、昨年は一昨年に比べましてわずかに上昇してございまして、したがって、消費者マインド自身としてはそう冷え込んでいなかったのではないかと思いますけれども何分にも所得増加が期待したとおりになっていなかったというのが大きな原因ではなかったかと考えております。
  19. 小野信一

    小野委員 いまの説明で明らかになったと思うのですけれども経企庁判断は大企業輸出産業基調にした経済回復を余りにも過大視し過ぎたのではないか。逆に言うと、中小企業なり農業なり漁業の持っておる回復力を全然無視したのではないか、回復ができないにもかかわらず大企業パターンでその他の産業回復力を計算したのではないか、そういう気がいたします。  もう一つは、五十二年度から減税を行わないために可処分所得が減少してきた。  もう一つは、財政再建計画行政改革景気に与える影響を過小評価したのじゃないか、財政再建経済に与える影響を無視したのではないかという気がいたします。  この三つの原因によって、物価が安定すれば景気回復するというパターンが崩れ去ったのではないかという気がいたしますけれども、いかがなものですか。
  20. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 私ども経済判断する際に、大企業のみならず、中小企業あるいはその他の業種についての動向も十分注意しているつもりでございます。  しかし、何分にも石油危機後遺症が尾を引いてございまして、中小企業あるいはその他の産業に与えた影響がなお残っているという状況かと思います。特に農業等につきましては、気候不順等がございまして何分にも状況が悪うございますし、製造業の中でも、石油相対価格が非常に上がりました結果、素材型産業状況がよくないということが続いているわけでございます。そういった結果、私どもが当初に期待していたような形での回復になっていないというのが現状ではないかと思います。  一方、行政改革というお話がございましたけれども行政改革という面ではまだ緒についたばかりでございますし、公共投資につきましては今年度も前倒しを実施いたしましてその執行の機動性を確保しているわけでございますし、いまのところ、そういった意味でのデフレ的な影響というのは実態的にはそう大きなものではないのではないか。もちろん心理的な要因は無視できないかと思われますけれども、そういった状況にあるのではないかと考えております。
  21. 小野信一

    小野委員 第二次石油危機後遺症を過小評価した、第二は減税見送りによって可処分所得増加をもたらすことができなかった、財政再建景気に与える影響を余りにも過小評価したのではないか、こういうことを考えてみますと、五十七年度の経済も三%以上伸びる要素が生まれないのではないか、こういう気がしてまいります。特に五十六年度の第一・四半期GNP伸び率が三・七、第二・四半期が三・二、第三・四半期マイナスとなりました。民間在庫投資も五十五年の四月から五十六年の六月まで五期連続マイナスになっておる。個人消費も前年対比一%以下だとするならば、五十七年度の景気だって三%を割るのじゃないか、私はこういう気がしてくるのですけれども、五十六年度の第三・四半期よりも一月から以降の経済がよくなるという条件はどこから生まれるのでしょう。
  22. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 幾つかの要因があろうかと思いますが、一つには、何と申しましても在庫調整が全体として昨年の末に終わっているわけでございます。いま御指摘のとおり在庫投資が昨年七月から順次始まっておりますし、十-十二月期にも在庫投資が見られているわけでございます。したがいまして、五十七年度のスタートといたしましては在庫調整の終了というのは大きなプラス材料ではないかというふうに、第一には考えられるわけでございます。  また物価面で見ましても、このところ、石油価格動き等に見られますように、円安という要因はございますけれども物価安定基調消費者物価卸売物価ともなお続くのではないかというふうに考えられるわけでございます。  加えまして、海外的な要因考えますと、アメリカ経済は第一・四半期、昨年の第四・四半期同様マイナス成長という見通しでございますけれども、その後順次持ち直し、年央以降はアメリカにおきましても在庫調整が終わり、減税が実施されるということもございまして、景気回復するであろうという見通しでございます。ヨーロッパ経済を見ましても、年央以降緩やかに回復するのではないかというのがOECDの見通しでもございます。したがいまして、国際環境の面でも漸次好転が見られるというような要因があるのではないかというふうに考えられます。  したがいまして、五十七年度につきましては、そうした諸要因考えますと、従来に比べましてプラス要因が付加されていくのではないかというふうに考えている次第でございます。
  23. 小野信一

    小野委員 私は、昨年の春に景気底入れ宣言を行ったのは早過ぎたのではないか、こういう感じがいたしております。それは、先ほど申し上げましたように第一・四半期が三・七%の実質経済成長、第二・四半期が三・二、第三・四半期マイナス、完全に実質経済成長率が急カーブで落ち込んでおるのに、景気回復はこれから上向きである、こういうことを数字を無視して経済企画庁が言っておったところに、今回の不景気に落ち込んだ、要するに対策が立ちおくれた大きな原因がここにあると思う。政府の責任は不景気対策としては大きなものがあると私は感じます。  そこで、政務次官にお尋ねいたしますけれども公共投資七五%以上の前倒し、国、地方を総計して二十四兆円と言われますけれども、この前倒し実質的にどの程度わが国経済を押し上げる力となっていくのか、どのような計算をしておるのかお尋ねいたします。
  24. 湯川宏

    湯川政府委員 ただいま小野先生のいろいろお述べになりました経済動向についての御心配、私どももいろいろ意を用いておるところでございます。したがって、ただいま今日の段階におきまして、この経済運営を的確なものにするために、いま御指摘公共事業の七五%以上の前倒しを上半期においてなすという決定がなされておるわけであります。中央地方を通じまして約二十四兆円に当たるこの事業を、できるだけ精力的に可能な範囲に前倒しをすることによりまして、ただいま調査局長の申し上げましたように、アメリカ経済の今後の動向なりあるいはOECD諸国の動向等をも絡み合わせながら、前半に景気の振興を最大限効果あらしめるような努力をしていきたいということでございまして、何と申しましても、景気浮揚に非常に大きな効果があります公共事業を最重点的に進めることで、相当な効果を望みたいという考え方でございます。
  25. 小野信一

    小野委員 局長の方から、七五%以上の前倒しが具体的にどうわが国経済を押し上げるのか、もし数字がありましたら教えていただきたい。
  26. 井川博

    井川政府委員 モデルに入れますとそれぞれの数値は出ます。しかしながら、先生承知のように、モデルというのは平均的な数値でございまして、そのときそのときの状況によっても違いますし、また数値がひとり歩きをするというようなこともございまして、われわれそれを外には発表いたしておりません。  しかし、常識的に考えますと、公共事業は大体六五%というのが通常でございます。場合によれば六〇%少々ということもございますし、あるいは六七%ということもございますが、過去の例を見てみますと通常の場合六五%でございます。これが、七五%以上ということを、去る十六日の閣議で、河本長官及び大蔵大臣の方から、そういう方針で今後政府部内で詰めたい、こういうことになって作業をいたしているわけでございます。予算が通過いたしますと閣議で具体的な数値を決めるわけですが、そのときにこの七五%以上というのがどうなるか、まだ現在作業中でございます。したがって、以上がどれぐらいになるかはわかりませんが、仮に七五%といたしますと、六五%に対して一〇%多く上期に持ってくる、こういうことになるわけでございます。  政務次官から申し上げましたけれどもGNPの中で政府投資は二十四兆円余ということになっております。ただし、これは土地代がはまっておりません。GNP統計には土地代がはまってないのですが、土地代を入れますと、中央地方を合わせますと三十兆弱になるわけでございます。しかしこれはややこしゅうございますので、土地代を除いたGNPベースで申し上げて二十四兆円でございますが、その一割ということになると、二兆四千億が上期にふだんの年よりも多く使われるということになるわけでございます。半年間に二兆四千億、それだけ多い事業が出ていくということになると、これはやはり相当大きい効果があると考えることができると思います。
  27. 小野信一

    小野委員 心配なのは、上半期に七五%以上の工事を発注しますと、当然上半期の景気はある程度押し上げられるとしても、後半は非常に心配になってまいります。前半の七五%の公共投資の発注によって、一年間を維持するだけの経済力の回転がつくならばそれはいいわけですけれども、後半は息切れするのではないか、こういうのが全般の判断であり空気であります。  したがって、政務次官にお尋ねしますけれども、いま下半期の景気に対してどのようなことを予定し、どのようなことを検討しておるのか。もしそれらについて意見がありましたならば、お聞かせ願いたいと思います。
  28. 湯川宏

    湯川政府委員 当面の目標としましては、五十七年度の前半において、少なくとも秋ごろまでの間に、わが国景気状況を明るいものにしたいという努力でございます。  いま御心配の年度後半のことに関する御質問でございますが、私ども、先ほど申し上げましたように、この景気状況は世界経済との絡みで非常に大きな動きがあるわけでございます。したがって、先ほども触れましたように、欧米諸国の今後の動き等にもある程度の期待もしながら、前半の経済政策によりまして、引き続いて年度いっぱい明るい成長が期待し得るように望んでおるところでございますが、何といたしましても、今日の段階では、年度後半をどうするかということよりも、前半にどれだけの成果を上げるかということに集中して努力をしてまいりたいと考えております。
  29. 小野信一

    小野委員 私は、政府が、経済企画庁不況ということをなかなか認めてくれないのは、一つ行政改革との関係があるのではないか、非常に政治判断が先行しておるのではないかという気がいたしております。  確かに、マクロなり数字上からいきますと、三%程度経済成長率を維持するとは思いますけれども、先ほど申し上げたように、第三次産業の卸小売、金融、建設業の実態は、戦後最大の不景気ではないかと思われるほどの緊迫感を持っております。もしも、これらの実態を直視して、これらの実態の上に経企庁経済政策を行おうとするならば、まずやらなければならないのは不況宣言だろう。不況宣言を行って、その上に当然不況対策が出てこなければならない。ところが、いま答弁を聞きましても、不況だという実態をなかなか認めていただけない。数字がそのような実態を示しておるのに、不景気だということを認めてもらえないというのは、行政改革との関係で政治判断が先行しておるからではないのか、私はそういう気がいたしております。  たとえば昨年の春に底入れ宣言を行ったにもかかわらず、昨年の暮れに金利の引き下げを行いました。〇・七五%下げました。この金利引き下げがわが国経済にどんな影響を及ぼしたとお考えになっておりますか。
  30. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 ただいま御指摘のとおり、金利の引き下げをいたしました結果、全国銀行の貸出約定平均金利といいますと、十二月が七・五五七でございますが、一月には七・四五六と、金利面では順次低下を見せているわけでございます。  一方、金融当局の政策姿勢を見ましても、日銀の窓口規制につきましては、大銀行につきましても自主的判断に任せるということでございますので、全般的に金融がある意味で緩和の状況にあるのではないかというふうに思います。  ただ、先生が御指摘のとおり、中小企業等を中心に見ますと、何分にもなお設備投資意欲等が起こっておりませんので、その意味での効果と申しますと、必ずしも十分なものであったかどうかという点はなお確かではございません。
  31. 小野信一

    小野委員 政務次官にお尋ねしますけれども不景気対策として今後金利の引き下げを検討する御意思はございますか。
  32. 湯川宏

    湯川政府委員 不景気対策というよりも、この景気をいかにしてさらに浮揚するかという対策としていろいろの方策があると思いますが、過般の閣議決定におきましても、金融政策の機動的、適切な運営をしていくということが決められておるわけでございます。  ただ、この金利の問題につきましては、御承知のようにアメリカの高金利の問題その他、日本の実情のみで独自に決めがたいいろいろの事情もあるように聞いております。と申しますのは、直ちに円安になる可能性を含まないか、そうするとまた、例の日本の輸出攻勢がさらに円安によって云々というふうな外国の態度等も懸念されるわけでございますから、外国、特に先進諸国の状況等もにらみ合わせながら金利政策を今後は進めなければならない、むずかしい状況であるというふうに考えられておるわけでございます。したがいまして、金利の問題につきましては非常に慎重な態度でなお臨んでいかなきゃならぬというふうに考えております。
  33. 小野信一

    小野委員 局長にお尋ねしますけれども、いま政務次官が申されましたように、公定歩合を下げると内外の金利差が広がる、そうしますと輸入物価が高くなるという形でむしろ貿易摩擦が大きくなるのじゃないか、再燃するのじゃないかという心配があります。  同時に、マネーサプライを見ますと、増加率は一一%台を維持しております。瞬間風速は一二%。これらを見ますと、量的には解決しておるのじゃないかという気がいたしております。にもかかわらず、中小企業なり第三次産業の卸が戦後最大の不景気に見舞われているという中で金利が引き下げられるということは、どういう意味を持つのだろうかという心配があるのですけれども局長の方から専門的な立場での御意見を聞かせていただきたいし、四月初旬ですか半ばですか、経済運営の基本方針なり経済政策を決定すると聞いておりますけれども、その中でこれらの意見がどのような判断のもとに行われようとしておるのか、お聞かせ願いたい、こう思います。
  34. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 まず、金利がどういう影響を与えるかという点について申し上げたいと思います。  御指摘のとおり、内外金利差がレートに現在非常に影響を与えているのは事実でございます。アメリカの高金利が続いております中でわが国が若干金利を下げているということが、円安一つ要因になっていることは事実でございますけれども、レートを決定いたします要因は、先生御存じのとおり、少し長い目で見ますと、それぞれの国の経済のファンダメンタルズに規定される部分がかなりあるわけでございます。最近の動きを見ましても、アメリカの金利が下がっている中で日本ないしヨーロッパの通貨が若干下がっておりますのは、といいますのは内外金利差が若干縮小しているわけでございますけれども、そこはたとえば、貿易摩擦のいま御指摘のような問題がある、あるいはポーランドの問題があるといったようなことが作用しているわけでございます。したがいまして、金利を動かすことによってレートが直ちに動くというわけにはまいりませんけれども、その大きな背景になっていることは事実でございます。  その結果、レートが安くなりますと輸出増加する、ほかの条件が変わりませんと輸出増加するということでございますし、また輸入面では、価格が高くなりますので物価に悪影響を与えるという要因があることは事実でございます。加えまして、交易条件が悪化するわけでございますので、石油価格上昇と同じように、国内にデフレ的な影響を与えるという状況があろうかと思います。  一方、国内の企業に与える影響で見ますと、設備投資につきましては、なお中小企業設備投資意欲が弱い結果、必ずしもそういった面での効果は十分に設定しがたいわけでございますけれども、金利負担という面で見ますとかなりの効果があるのではないかというふうに判断されるわけでございます。  先般発表されました日銀の主要企業短期経済観測によりますと、五十六年度の下期に若干経常利益が増加するわけでございますが、その経常利益の増加する寄与度のうち約三割は金融費用の低下ということでございます。やはり企業経営負担に与える影響は、プラス面はかなりのものがあるというふうに判断されるわけでございます。
  35. 井川博

    井川政府委員 先生の後半にお話がございました、景気回復対策として金利を下げるという問題でございますが、御承知のように、現在政府の中では、大蔵省を中心にいたしまして国債の金利、長期プライムレート等々を下げることを検討中でございます。まだこれはあくまで検討中でございます。これは、先ほどお話がございました公定歩合を昨年末五・五に下げたわけでございますが、そのときの実勢の状況から、国債あるいは長期プライムをそう大幅には下げられなかったというふうな状況がございます。現段階では実勢からいって下げられる、下げられるのであれば国内の状況から下げるべきであろうというたてまえで検討いたしまして、これも、去る十六日の閣議で公共事業を七五%以上前倒しというのを決定しました際に、そのほかに、金融について弾力的運営をやろうというその一環でございます。しかしながら、その場合にも、お話がございましたように、海外との金利差というのは十分考えていかないといけない。海外との金利差が余り大幅に開きますと結局これは円安になっていく。むしろ海外では、われわれ政府及び日銀の意図とは反対に、円安誘導しているのではないか、これはもういわれなきいわば誤解でございますけれども、われわれとしても、現在、少し円の価値としては安きに過ぎる、もう少し円高にいく方がベターだと思っていろいろな努力をしておるわけでございますが、そういうふうな言葉さえ出てくる状況でございますので、そこらをにらみながら、しかも国内景気状況をにらんでやっていかなくちゃならぬ、そういう苦しい状況でございます。
  36. 小野信一

    小野委員 金利を下げて金利負担を下げたい、ところが金利を下げると貿易摩擦が再燃する可能性が大きい、非常にむずかしい事態に入っていると思います。  同時に、鈴木内閣の大きな目標の中に貿易摩擦の解消と行政改革、この二つがあります。そこで、その中でこの二つを同時に解決する一つの方法は円高にすることだろうと思います。ところが、わが国の二百億ドルの黒字の内容を見ますと、OPEC四百億ドルの赤字、貿易外収支百五十億ドルの赤字、五百五十億ドルになります。したがって、貿易黒字は七百五十億という莫大な数字になっております。したがって、円高で貿易収支の均衡を保つということは非常にむずかしいものではないか。  途中経過の説明は省きますけれども、この七百五十億ドルの貿易収支の黒字をどんな形で解決しようとするのか、あるいはこの解決のために円高にしようとするならば、幾ら程度の円高にするとこれらの問題が解決するのか、数字としてどのように算定しておりますか。
  37. 井川博

    井川政府委員 われわれとしましては、実は貿易収支で均衡というわけにはまいりません。そのほかに、輸送その他を入れました経常収支というものがございます。それから、わが国としては基礎収支というものを問題にしたいと思うわけでございますが、一般的に経常収支ということで問題になる。わが国がいま黒字基調をたどっているというのも、実はその経常収支が従来のマイナスから黒字になっているということでございます。ということになりますと、貿易収支はある程度の黒字はこれはやむを得ない。貿易立国であるわが国のそういう立場は、海外に十分理解してもらわないといけないと思うのです。  ただ、これが余りにも大幅になりますと、やはり貿易摩擦というのが起きてくる。したがって、われわれといたしましては、それが一国に余りに大幅になるということにはある程度注意をしていかなければならぬ、こういう考え方で従来もやっておるわけでございます。しかもこれは、国別に議論をしていきますと、われわれとしては産油国に対しては完全な、先ほど先生もおっしゃいましたような大幅な赤字にならざるを得ないわけでございます。国別の貿易収支の均衡、これはとうていわれわれとして是認するわけにはいかない、そういう立場で、マイルドなかっこうでそういうものを持っていきたい、こういう考え方でいっているわけでございます。  その場合の円レートの数値というのは、これは購買力平価等々の問題がありまして、しかも、日本政府として幾らだということではなくて、基本的には市場の実勢に任す、これがフロート制の真髄でございますので、日本政府として幾らがどうこうということは申し上げるわけにもいきませんけれども、しかし、現段階の二百四十数円というのは、これは日本の実力からいってもやはり少し円の過小評価ではないか、円安に過ぎておるんではないかというふうに考えておるわけでございます。
  38. 小野信一

    小野委員 五十-四年のオイルショックの後の景気対策を見ますと、金利で五十年から五十三年までに八回下げております。九%から三・五%まで下がっております。今回も同じように不景気でありますけれども、いまのような貿易摩擦の関係から金利もそれほど引き下げられない。財政的にも当時とは違って投資が非常にむずかしい。こうなってまいりますと、内需を何によって喚起すればいいのか、非常にむずかしい事態になっておる。経済企画庁とすれば、この内需の喚起を、少なくとも、五十七年度に政府目標である五・二%の実質経済成長率を維持するために、内需は何を中心にして行うべきだ、こういう方針をきちっと国民の前に提示していただきたいんですけれども、いかがなものです。
  39. 井川博

    井川政府委員 一番最初にも申し上げましたように、財政につきましても、あるいはまた、ただいま先生お話のございましたように、金融についてもある程度縛られたかっこうでございます。したがって、かつてのようにそれを自在に駆使してというわけにはまいりません。結局は、できる限りの手段を、あらゆるものを動員してその相乗効果をねらっていくということより、やり方はないというふうに考えておるわけでございます。  内需で、特に住宅投資が百五十万戸前後から現在百十数万戸、非常に落ち込みが激しい。こうした住宅投資を回復するために、政府としましては、金融対策あるいはまた税制対策の上で、現段階でできる限りの対策を講じ、現に、先般五十六年度の第四次の住宅金融公庫の募集をやったわけでございますが、一部の緩和処置の前倒しをやりました結果、ここ数年にない、応募が二倍というふうな状況でわれわれもやや愁眉を開いているわけでございますが、こうした対策を講ずることによって住宅建設の回復をねらいたい、これが一つ。  それからもう一つは、先ほどからもお話がございましたけれども財政再建という中で、公共事業については、中央の公共事業は一応名目で横ばいというような状況でございますけれども、そうした政府投資につきましても、できるだけ土地代に食われない、事業量が実質上大きくなるような方向、あるいはまた地方の民間資金を活用してということで工夫をしたわけでございますが、その公共事業前倒しをすることによって上半期に効果を出していきたいというふうなこと。  さらには今回、先ほど、わが国物価状況からいいますればもう少し下がってもいいと言いましたが、海外の状況もあって大幅な下げはなかなかむずかしゅうございますけれども、長期プライム等々長期金利も少し下げていくというふうな方向によって、中小企業設備投資についても、意欲はあるけれども一歩踏み出せないというようなことについて、さらに好材料として一つつけ加えていくというふうなこと等々。  あらゆるそうした手段を総合することによって五・二%を実現していく。また、そういう各種のできる限りの手段をやっていく以外に、決め手となるきわめて大きい方法というものはないというふうに考えておるわけでございます。
  40. 小野信一

    小野委員 政務次官にお尋ねいたしますけれども、いまから公表なり自分の意見とすれば非常にむずかしい答えになると思いますけれども、後半にもし建設国債の発行によって有効需要の創造を意図した場合、一兆円なり一兆五千億を予想した場合に、現在の国債市場においてこれを受け入れるだけの資金力があるとお考えになりますか。
  41. 湯川宏

    湯川政府委員 建設国債の年度途中における増発の御質問でございますが、先ほどお答え申し上げましたように、何としても前半にあらゆる努力を傾注することによりまして、今日の停滞しております景気浮揚を図ることに全力を注いでいきたいという考え方であります。  今後の建設国債につきましては、いまの段階では私としては何とも申し上げかねる状態でございます。
  42. 小野信一

    小野委員 中小企業なり建設業なり第三次産業に従事する国民にとっては、現在の不況は戦後最大だと身にしみて感じております。ある意味からいくと、財政再建の方を、行革の方を少々おくらせても、現在のわれわれの窮状を救ってほしいという意見の方が圧倒的に強いわけですから、そういう意見も十分経企庁の方で頭の中に入れておいて、今後の経済運営に専念していただきたいことをお願いして、終わります。
  43. 武部文

    武部委員長 井上泉君。
  44. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私は、農林省関係の米の関係、通産省関係の油の関係、この二点についてお尋ねしたいと思っておるわけですけれども、いま手元にいただいた農林水産省のこの委員会に出席をする方は、農産課長と企画課長で、政府委員が一人も来ていないので、こんな委員会を軽視した農林水産省の委員会に対する態度はなっておらぬと思う。政府委員が出席するまで、農林水産省への質問は後回ししたいと思います。  委員会の運営に当たっては、私は特にきょうは大臣のいないところで質問をするわけでありますし、政策決定をする責任のある大臣が存在しない中での委員会の審議というものは、何かしら拍子抜け、気合い抜けがすることは否みがたい事実だと思います。優秀な政務次官が出席はしておりますけれども政策決定の最高責任者である長官の出席のない中での委員会の審議に、不満を感じながらも質問をするわけでありますが、経済企画庁で、長官の存在というか、長官の政策決定に当たってはそれぞれの局長がそれに対する補佐的な役割りを果たすと思うわけですが、長官と局長との関係はどういうふうに把握をしておるのか。これはひとつ物価局長にお尋ねしたいと思います。
  45. 廣江運弘

    廣江政府委員 先生が言われましたように、経済企画庁の意思決定を行いますのは行政機関の長としての大臣にあるわけでございまして、私ども職員はその大臣を補佐するというのが原則でございます。  お尋ねになりましたのは、一体どの程度の事案でどういうふうにするのだというような、もう少し細部にわたっての御質問かと思いますが、おのずから事の軽重によりまして、私どもの段階で委任をされている事務もございますが、少なくとも経済政策の基本にかかわりますこと、物価政策の基本にかかわりますことにつきましては、長官の意思決定によって行われるものである、こう思います。
  46. 井上泉

    ○井上(泉)委員 その長官の意思決定をするに当たって、事務当局としてはいろいろな面から資料も豊富に持っておるし、そしてまた関係の職員もたくさんおるから、私は十分把握をしておると思うわけですが、そこで、いま小野委員の質問の中にも、公共事業前倒しをして景気を刺激するということが、一つ景気回復の決め手のようなことになっておるわけでありますが、私はこれが特効薬的な効果をあらわすとは考えられないわけで、いわば公共事業前倒しというのは公的な内需の拡大を図るということであって、本当に景気回復をするためには、民需の拡大を図らねば景気回復の刺激剤にならぬではないか、こういうふうに思うのですが、これを担当しておる局長に、私のその見解は誤りであるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  47. 廣江運弘

    廣江政府委員 担当の局長がおりませんので私から便宜お答えをさせていただきますが、国民経済の総需要の中で、先生も御高承のように最も大きなものが民間消費支出でございますし、さらに民間企業設備投資があります。住宅投資、在庫投資を含めまして、そういうものを全部含めました民間需要の持つウエートは非常に大きいわけであります。そういうものと並びまして公的な需要というのがあるわけでございますから、大体大きさによりまして、事の軽重の判断をいただきますと、大体そういうふうに出ると思います。そういう意味では、先生指摘のとおり、民間需要の喚起をするというのは非常に大きな意味を持つということも事実でございます。  ただ、需要喚起をいたしますときに、一体政策手段はどういうものがあるかという点から考えますときに、民間需要だけではなくて、公的な需要というものも大いに考えてやらなければいけない、これもまた事実だろうと思います。
  48. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこで、民間需要を拡大する政策をいまとっておるのかどうか。こういうことを言いますと、とっておるとは思えないわけですが、これはとっておるとお考えになっておるでしょうか。
  49. 廣江運弘

    廣江政府委員 経済政策全体は総合的に考えていただかなければならないわけでございます。  そこで、御質問は民間需要の喚起をするような経済政策をとっておるのか、こういう御質問でございますが、先ほどもお答えいたしましたように、全体として経済政策というのを考えていただくというわけでございます。たとえば、公的な需要を喚起いたしましても、それはめぐりめぐってまた民間需要を点火する役目もあるわけでございます。相対的に見ますと全体としての経済を活発にする、そういう政策をとっておるということは事実だと思います。そして、もうちょっと具体的に申し上げていきますと、たとえば、先ほど来小野先生のときにお答えいたしましたように、公共事業をより重点的に行うということによりまして需要を喚起するということは、ひとり公共事業にとどまりませず、これが大きな意味民間需要に及ぼすということも御承知のとおりだと思いますし、また、そのときの答弁にも触れましたのですが、住宅建設をこの一月からより前倒し的に実施すること自体も、民間需要の喚起にかなりの影響を持つだろうということも事実でございます。そして、もう少し大きく見てまいりますときに、たとえばそうした全体の政策公共事業等々の政策からしまして民間需要が喚起されるということになりますと、ひいては消費といった面にも出てくるわけでありますし、金融政策の機動的な運用ということも、全体として見ますと民間需要ひいては経済全体の需要の掘り起こしといいますか、喚起につながってくるということも御高承のところだと思います。
  50. 井上泉

    ○井上(泉)委員 回り回っては民間需要を喚起するということになるでありましょうけれども、直接的な民間需要を喚起する政策ではない、間接的に民間需要を刺激してくる、こういうことになることは局長もいまの説明の中で認めておると思うわけですが、これは局長の責任でも何でもないわけですけれども経済を運営し国民生活の安定を念願とする庁としては、民間需要の拡大を求める政策というものを積極的にとるべきではないか。その点からも、このたび見送られた減税、あるいはいま春闘の闘いが、闘いという表現はこの場合当てはまるかどうかはなんですけれども、春闘が闘われておるわけですが、この減税と賃上げ、それから福祉政策を、後退でなしにもつと充実する。この三つの政策というものをどうしても積極的にとらなければ、日本の内需を拡大することにならぬ、こういうふうに思うわけで、局長にその見解を求めてどうこう言うと気の毒にも思うわけですが、これはひとつ政務次官、どうですか。政務次官も地方自治体の長としてずいぶん扱っておったわけですから、私の意見というものについて……。
  51. 湯川宏

    湯川政府委員 民間需要を拡大、強化、振興しなければならぬことはお述べのとおりでございますが、御指摘減税云々の問題につきましては、過般来、予算委員会等々でいろいろ御議論のあったところでございまして、当面政府としては、公共事業前倒しその他によりまして、即効的に景気浮揚を図りたいということで努力を重ねておるところでございます。  春闘の問題につきましては、ただいま労使間で自主的に交渉をされておるところでございますが、適切な結果が得られるようにわれわれも期待しているところでございます。  なおまた、福祉の問題等につきましては、医療を含めまして諸般の福祉対策があるわけでございますが、これに対しましても、九兆幾らという膨大な予算を計上いたしまして努力が重ねられておるところでございます。いずれにいたしましても、あらゆる施策を統合活用いたしまして、内需の振興に努力をしてまいりたいと思います。
  52. 井上泉

    ○井上(泉)委員 政府の施策が減税をやらないということに決まっておっても、やはり経済企画庁担当の政務次官としては、あなたも政治家としての一つの見識というものはあるはずですから、こういう状態の中で、減税を三年も四年もやらずに実質増税になってきておるような状態は好ましくない、そういう考えは持っておるのかどうか。政府が意思決定する場合にも、それぞれの行政の担当の政治家の見識というものが大きく反映をするわけで、その点、長官も、外ではそういうことを言うけれども、いざ政府部内でこういう点を強く主張しておるであろうかどうか、いわば内向きと外向きと使い分けておるんじゃないか、私はこういうふうに思うわけなので、あえて政務次官の見識ということでこの問題を取り上げ、お尋ねをしておるわけであります。  今度、これは長官が出席をしたときに、なお景気浮揚の策についての両面の策、つまり公的な内需の拡大、そして国民内需消費の拡大、この政策を相まってとるべきである、公的な内需の拡大が回り回って国民内需の拡大に通ずるということは、いわば西風が吹けばおけ屋がもうかるという論法に通ずることであって、こんな回りくどいことでは今日の景気回復はおぼつかないわけでありますので、そういう点について、景気回復の具体策を国民はいま熱望しておるのです。国民は今日のこの不況の深刻化にほとほと希望を見失っている、こういう状態です。それはあなたにしても、局長にしても、国家公務員としての給料をもらって、日本の経済が少々不況になろうがどうなろうが関係ないという中におるけれども、国家公務員として最高の地位にある人は、大多数の国民の生活をどうやって守っていくかということを絶えず念頭に置いて業務をしてもらわないと困るわけで、政府の決定に対しても、少々不満があれば不満がある、そしてこれはこうすべきであればこうすべきだと、こういう骨のある行政マンとしての活動を期待するわけであります。  そこで、私は資源エネルギー庁にお尋ねをするわけであります。  これはきのうの新聞だったと思うわけですけれども、日石が一キロ平均三千円幅の申請をなされた、石油業界最大手の石油会社が申請をされた、こういうことでありますが、これは事実でありますか。
  53. 長田英機

    長田説明員 先生の御質問の点につきましては、個々の具体的な企業の関係になりますので、詳細な点は説明を差し控えさせていただきたいと思いますが、日本石油から正式にシーリングの改定を行いたい旨の申し入れがありましたのは事実でございます。
  54. 井上泉

    ○井上(泉)委員 個々の企業のことであるから控えさせていただきますということについて、私は納得できないわけですが、この間、私は、シーリングプライスを撤廃するということはしてはならない、こういうことを言ったわけです。ところが、聞くところによると、各石油メーカーで上限価格というものが違っておる。日石はこれ、丸善はこれ、シェルはこれというふうに違っておるということを聞いて、自分の不勉強さを恥ずかしく思うたわけですが、この上限価格の制度というものはそういうふうになっていますか。
  55. 長田英機

    長田説明員 先生指摘のとおりでございまして、各企業ごとにチェックをしておりますから、その水準は企業ごとに違っています。
  56. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そうなりますと、これはシーリング制度撤廃と同じことじゃないですか。日石はいまの線でいくと、三千円上げるということによって、上限価格を上に上げなければならぬから申請してくる、他の石油会社はまだ上限価格が高いから三千円上げてもこれには関係ない、こういうことになっておるわけで、結局、この上限価格というものは、いわば形骸化した存在、形骸化した扱いであり、各企業の都合によってそれぞれ設定をするというのですから、それぞれ変えていく、こういうことになるわけで、これは何でそう  いうことになっておるのですか。
  57. 長田英機

    長田説明員 このシーリング制度と申しますのは、そもそも便乗をチェックするという観点から通産省がチェックしているわけでございまして、これ以上の価格になった場合には便乗である、こういう趣旨でございます。したがいまして、実勢価格はまた市場原則によって形成をされまして、そのシーリングよりも下の水準にあるというようなことは、現にあるような状態でございます。そういうシーリング制度という性質と申しますか、その内容から見まして、そういうような状況に当然なるわけでございます。
  58. 井上泉

    ○井上(泉)委員 これは各社の、たとえば日本石油の上限価格は、他社より安かったことから、他の元売各社に比べて低く設定されておった。各社はもう事実上、この水準で石油製品を販売する状態になっておる。すでに出光、丸善などは仕切り値を一キロリットル当たり三千円程度値上げする旨、特約店に通告しておる。日石の上限価格の引き上げは今週末に認められる見通しで、これによって四月初めから各社一斉に石油製品が値上がりをする、こういうふうな新聞記事でありますが、この上限価格を十三社別にそれぞれ発表することはできないですか。
  59. 長田英機

    長田説明員 繰り返しになりますが、この上限価格の制度は、各社からの申し出に基づきまして、そのコストをチェックして、それ以上上回ると便乗であるということでございまして、それ自身を公表することは、各社の企業の秘密に関連することでございますので、私どもとしては非常に困難でございます。  なお、先生指摘の点でございますが、この便乗チェックの性質といたしまして、各社ともコストをチェックする。したがいまして、各社がコストを実現するところまで市場価格を上げるというようなことは、それ自身として否定できないことでやむを得ないことだと思っておりまして、そういう点から、いろいろ各社によって水準が違いますが、実際の実勢との価格差がありましても、その価格の差をさらに各社が値上げをしていくということはやむを得ないことだ、こういうふうに考えております。
  60. 井上泉

    ○井上(泉)委員 各社のそういう上限価格をどうしておるかということの発表ができないということになりますというと、石油の価格というものが、原油価格から消費者に渡るまでの間にどういう価格の変遷があるのか、そして通産省のいわゆる上限価格はどうなっておるかということは国民のために明らかにするのが、これが行政であり政治である、こういうふうに私は思うわけですが、それが企業の秘密に属するから言えないというような、そんなむちゃくちゃな話はないと私は思うのです。国会で調査するというものがそんなことによって妨げられていいものでしょうか。これは私は納得いかぬのですね。なぜそれくらいのことが発表できないか。  それから、石油企業の収益の動向というもの、これもきのう通産省からいただいたわけですが、これは民族系と外資系に分かれておるが、そうすれば民族系のこの会社はどうなる、この会社はどうなる、こういうふうに個別に出すことも当然できるはずだと思うが、そういうことについては、これは一体どこで、国民のために、今日石油はだぶついておるのに石油を値上げしなければならないような状態になっておるかということを説明するのか、何をもとに説明するのか。これはわれわれとしてはやりようがないでしょう。  国会の調査というものは、こういう委員会の審議というものは、そのことを明らかにすることによって国民に納得し、あるいは理解をしてもらえる行政の進め方をしてもらうために、われわれ国会議員はその任務を背負っておるわけですから、われわれ国会議員の任務を行政官僚が封じ込んでしまうようなことは納得できない。こういう制度を設けた以上は、その制度がどうなっておるかということ、その制度の実態を明らかにするのは当然の責任じゃないですか。これは、課長はそんなことでがんばっておるけれども、そんなものじゃないと思うのですよ。これはだれが答弁するのだ。
  61. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘のとおり、石油製品というのは非常に重要な物資でございますので、その価格の動向については当然国民も関心を持ち、私ども政府も関心を持っておるわけでございます。ただ、日本の経済体制におきまして、個別の企業についてそのコストを公表するというのはこれはまた大変な問題でございまして、各企業ともそれぞれのコストというのは秘密になっておりまして、できるだけそのコストを低くして、他の企業との競争に打ちかちたいということを考えておるわけです。法律上も私ども企業にコストを公表させるというような権限を持っておりません。ただ、五十三年のイラン石油ショックのときに国際的に原油の価格が暴騰いたしまして、それが国内の石油製品にどのように影響するかということで、便乗的な動きがないように、法律上の根拠はございませんけれども、行政指導という形で企業を指導いたしまして、コスト以上の値上げを防ぎたいということで行いました非常に臨時的な措置でございます。したがいまして、法律上私ども石油会社に対してコストを公表させるというような強制的なものではございません。万一国家的に非常に緊急事態が発生をした場合には、もちろんそのほかの、国民生活の安定に関する法律とか石油の需給の適正化法というような法律によりまして、強制的に石油会社の価格を国が干渉するということはあり得るかもしれませんが、現段階におきましてはまだまだそのような情勢でもございませんので、強制的な介入によって石油各社のコストを云々するというような状態ではないのじゃないか、かように考えております。
  62. 井上泉

    ○井上(泉)委員 石油の上限価格の制度、これに基づいて日石が上限価格を上げてくれ、こういう申請が出てきておるのでしょう。そうすると、その言ってきておる価格が果たして適当なものであるかどうかということを審査するのでしょう。ただ無条件にやるのじゃないでしょう。審査するのでしょう。審査するに当たっては、それぞれ企業から書類が出てきておる。そして、原油価格はこうなって、企業はこういう経営状態であって、こうなってくるから、これは三千円なら三千円上げなければしようがございませんから、ぜひ上限価格を引き上げてください、こういう石油会社からの申し入れだから、その申し出がいいか悪いかという判断は、あなたたちだけがするのじゃなしに、この国会もするようなことで、国会もこれを審議するのが国会のあり方、任務じゃないか、こういうように思うわけですが、政務次官、どうですか。
  63. 野々内隆

    ○野々内政府委員 それは、現在のわが国経済情勢というものが、法律的あるいは強制的に個別の企業のコストなり価格をチェックするような、緊急的あるいは非常に急迫をした状態であるかどうかという判断がその前提にあるのではないかと思います。石油審議会の答申あるいは最近の臨調の動き等を見ましても、できるだけ個別の介入を排除するという形で意見が出ております。私どもも、このシーリング制度につきましては、五十三年の緊急事態とは異なる非常に安定をした、むしろ非常に緩んだ状態であるということで、早急に撤廃をしたいというふうに考えておるわけでございますが、先般の当委員会における井上先生の御意見もあり、最近値上がりの動きがあるときに撤廃をするというのはいかがかという御意向もございまして、私ども実は早期撤廃を若干延ばしまして、いま値動きのありますものにつきまして、便乗的な動きがないかどうかということをチェックして、国民の皆さんに御安心いただきたい、そしてそれから撤廃をしたい、かように考えておるわけでございます。
  64. 井上泉

    ○井上(泉)委員 通産省は石油業界のために行政をしておるのじゃないでしょう。国民のために石油行政というもの、石油産業というものはどうあるべきかということで行政をしておるのでしょう。どっちですか。
  65. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘のとおり日本経済がいかにうまく回転をし、国民生活が安定をするかという観点から、私ども行政をやっているつもりでございます。
  66. 井上泉

    ○井上(泉)委員 その行政をやっておればなおさらのこと、今日の石油産業というものはどういう状態になっておるか、これは個々の会社名を挙げなくてもA、B、C、Dでいいですよ。それで、公開ということがだめならこの委員会を非公開でやってもいいですよ。これは委員長、そういうふうに計らったらいいと思う。だから、やっぱり国民のために石油行政というものをやっておるならば、国民の代表としてわれわれはこの国会というものに出ておるわけだから、その中で、便乗値上げであるのかどうか、国民のために石油産業は非常に大事な産業だが、その石油産業実態はどうかということぐらいは私は把握をしなければ、これは石油資本と結託をした通産官僚と言われてもしようがないじゃないですか。どうですか。
  67. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘のどおり非常に石油産業は重要な産業でございますので、できるだけその実態を把握し、国民経済意味のある行政を行いたいと思っております。  ただ問題は、先生指摘のように、個別の企業のコストあるいは価格についてどこまで介入をするか、どこまでそれをまたオープンにするかという問題かと思います。これは、現在の経済情勢等から見まして、それがいまの段階で必要があるかどうかという問題かと思っております。
  68. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それじゃ、われわれはどうするのですか。われわれは、国民のために、いまの石油産業はどうなっておるか、それがためにはいろいろな資料も欲しいということを要求する、そのわれわれの国会の審議はどうなるのですか。あなたたちだけが、石油の業界が非常に苦しい、これではいかぬから上げてやらなければならぬ、これはこういう手当てをしてやらなければいかぬ、こう言ってやるということは、これは資本のためにやっておることであって、国民のためにやっておるという理解が得られぬじゃないですか。少なくとも、われわれにも、そういうあなたたちが承知をされておるぐらいの石油産業実態というものは承知をさしてしかるべきではないか、こういうふうに思うわけですけれども、それはもう、国会議ども黙っておれ、こういうことですか。
  69. 野々内隆

    ○野々内政府委員 できるだけ石油産業実態国民の皆さんに御理解をいただくということは非常に重要なことだと思いますので、そういう方向でいろいろな資料の提供もしたいと思っておりますが、ただ、個別のコストにつきましては、私ども、強制力ではなしに、相手方との間で公表しないという合意のもとにいただいておりますので、もしそれを公表するとなりますと、相手の了解あるいは、もしその了解がない場合には法律上の強制力というような問題が発生をするかと思います。現段階ではまだ、そのような必要があるほど石油情勢というものが緊迫をしていないのではないかというような判断をいたしております。  いずれにいたしましても、石油産業現状あるいはそれと国際情勢、あるいは国内の経済に及ぼす影響、いろいろな問題について、今後とも幅広く国民の理解が得られるように私どもとしては努力をいたしたいと思っております。
  70. 井上泉

    ○井上(泉)委員 あなたたちが努力をするのはそれは当然ですが、あなたたちはそういう役人として努力をするわけですけれども、われわれ国民の代表として出てきておる者が取り組みようがないじゃないですか。それで、できるだけの資料を公開する、しかし会社名は言わない。それなら、会社名を言うことができなければ言わなくてもいいですから、A、B、C、Dでいいですから、各社ごとの、いや、各社とは言いません、大体何種類の上限価格を定めておるのか。こういう資料は出せますか。
  71. 野々内隆

    ○野々内政府委員 シーリングは各社によって違いますので、各社の数だけシーリングがあるわけでございますが、個別のコストについての公表というのは御容赦いただきたいと思います。
  72. 井上泉

    ○井上(泉)委員 では、平均して幾らになるのですか。
  73. 長田英機

    長田説明員 私どもは、現在のところ、この制度はそもそも各社ごとのチェックでございますので、平均して幾らというような数字はいま持っておりません。
  74. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そんなばかなことを言いなさぬな。平均して大体これぐらいになっておる、そうすれば、われわれは、三十四ドルの原油を買うて日本国内へ来て、消費者に渡るときに、石油資本が卸売に出すときに、これが大体平均してどれくらいの上限価格になっておるかということぐらいはすぐできますよ。そろばんですすっとやったらできる。それはもうそろばんじゃなくて、非常に速い計算の方法もあるのですから。これはもっとまじめにやってもらわないと困るね。それくらいのことができぬ、言えないというようなことはあり得ぬじゃないですか。
  75. 長田英機

    長田説明員 先生指摘のように、物理的にはもちろん計算すれば平均が出ますけれども、問題はその数字が持っている意味でございまして、たとえばそういう数字が外に出た場合に、一例で申しますと、現実の市況が非常にそれに沿って動く、たとえば現在低い市況が高くそちらの数字に寄っていくというような、いろいろな社会現象というものが起こるのではないか、こう考えておりまして、そういう平均としての数字を外に出すことも、われわれとしては非常に慎重に対処しているところでございます。
  76. 井上泉

    ○井上(泉)委員 外へ出す、外へ出すと言うけれども、これは銀座の街角で発表するのじゃないですよ。これは国会というこの場で、あなたたち行政の関係の者とわれわれ国会とが、両方が相まって、国民の信頼にこたえた日本の国政というものを動かしていかねばならぬのじゃないですか。それを、あなたたちひとりの個人の官僚の意思でそういう支配をするということはもってのほかですね。一遍通産大臣と相談をして、次の機会にでもこれについての返事をしなさい。  それから、これもできないですか。石油企業の収益の動向ですが、これもきのういただいた資料で、なるほど五十六年度の上期には民族系、外資系合わせて四千六百七十五億という赤字が計上されておる。それから五十六年度の下期がどうなるか、まだ決算が出てないというからわからないわけですけれども、当然赤字が出ておる。ところがいままで、五十年は赤字だったけれども、五十一年、五十二年、それで五十三年に若干、五十四年、それから五十五年上期は、石油資本は大きな利益を上げておる。そういう利益を上げておる中で、この前のときに、余りにも円高で利益を上げておることに対して、当委員会では武部委員長石油連盟の代表者に利益を還元せよと強く言うたけれども、なかなか頑として一たんふところへ入ったものは出そうとしない。そういう中で、今度赤字になってきた。赤字を克服するためには政府にいろいろな施策を要求する。あるいはまた値上げを要求する。こういう数字が出ておるわけですが、これを各社別といっても、これらは恐らく株式市場にも上場されておる会社ですから、決算書というものは公表されておるわけだから、これくらいのことは通産省としては掌握しておると思う。少なくとも民族系、外資系それぞれの代表的な石油産業五社ぐらいずつ、ごく最近の決算書を委員会に資料として出してもらうこともできないですか。
  77. 鎌田吉郎

    ○鎌田説明員 石油企業の中には上場企業もございますし、また、たとえば外資系一〇〇%の会社のように非上場会社もございます。上場会社につきましては、これは法律の規定によりまして決算が発表されております。ただ、非上場会社につきましては、ほとんどの会社が一切対外的な数字は発表してないというような状況でございます。  ただいまの先生お話でございますが、上場会社につきましては、これは公表されておりますので、私どもとしては、上場会社の分につきましてはまとめて何か資料を御提出できるように考えております。
  78. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それをひとつ早急に、公表できる範囲のことでいいですが、しかし、いま私が前段に言うた石油の上限価格について、国会の中で各社の上限価格を明らかにできないということについては、私としては納得できぬわけですから、ひとつ石油部長、帰って長官なり大臣と話をして、あくまでも出せないというのかどうか、その辺を明らかにしてもらいたい。そしてまた、これに対する当委員会としての対応の仕方を、委員長理事会なり何なりでひとつ検討していただきたい、こういうことを要望しておきたいと思います。
  79. 武部文

    武部委員長 わかりました。  ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  80. 武部文

    武部委員長 速記を始めて。
  81. 井上泉

    ○井上(泉)委員 通産省、帰ってもらって結構です。  そこで、私は、農林省に質問をする前に、四月一日から消費者米価が三・九%か値上がりをする、国鉄運賃が値上がりをする。不況国民が沈み切っておるときに、こうした公共料金が値上げの口火を切る、しかも一番毎日われわれが食べておる米から口火を切るというのは、これは心理的な影響も非常に大きいと思うわけですが、これの及ぼす物価へのはね返りは物価局としてはどういうふうに把握をしておるのか、その点御説明をいただきたい。
  82. 廣江運弘

    廣江政府委員 御指摘のありました四月から改定が予定されております公共料金でございますが、予算関連のものは、消費者米価、国鉄運賃、それからもう一つ、国立学校の授業料等の値上げがございます。これらによります消費者物価指数への影響、これは年度平均の寄与度でございますが、〇・二%程度と試算をいたしております。  これは直接的なものでございますが、料金改定による間接的な影響もあるだろうというお尋ねもあろうかと思いますが、その間接的な影響はそのときどきの需給関係によって決まるということも事実でございますし、また、それぞれの企業が生産性向上等の努力をすることによりましても大きく左右されるところでございますので、一概にこれを定量的に把握することはむずかしゅうございます。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、予算関連の公共料金の五十七年度消費者物価に及ぼします寄与度といたしますと、〇・二%程度考えております。
  83. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこで、物価に及ぼす影響としては〇・二%というわけでありますが、直接米を商品として販売をしておる者についてはとても〇・二%ぐらいの値上げではおさまらない、こういうように思うのですが、これは大体どういうふうに考えておるのですか。たとえばライスカレーだとか親子どんぶりだとか、こういう米製品の値上がりはどうなんですか。
  84. 中山昇

    ○中山政府委員 消費者米価を改定いたしました場合の消費者物価に及ぼす影響でございますが、先生指摘のように、米を上げますと米そのものの価格が上がるという問題と、それから米を使いました外食その他のものに影響を及ぼすということがあるわけでございます。本年四月からの三・九%の米の政府売り渡し価格の引き上げに伴いまして、直接的な影響は〇・〇九%程度見込んでおるわけでございますけれども、外食など関連品目に対します影響は約〇・〇一%程度見込んでおりますので、これらを合わせますと、全体としての米の値上げの物価への影響と申しますのは〇・一一%程度になるのではないだろうか、こういうふうに見ておるわけでございます。
  85. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そういうあなたたちの見通しどおりにいけば結構ですけれども、現実に、いま三百円の親子どんぶりが三円ぐらいの値上げじゃとても済まぬと私は思うわけですが、現実の現場ではそういう結果にはならない。恐らく三百円の親子どんぶりが三百五十円になり、あるいはちょっと加工、手を加えることによって四百円、五百円というようにかなりな値上げになる、こういうように思うわけなので、それと同時に、せっかく政府が意図しておる米の消費拡大とは逆な方向にいきはしないか、こういうように思うわけですが、この点についての御心配は食糧庁としてはしていないかどうか。
  86. 中山昇

    ○中山政府委員 確かに先生指摘のように、外食に及ぼす影響といたしましては、米の値上がりに伴う分のほか、人件費その他いろいろな問題、コストアップという問題があろうかと存じます。そこで、外食に対しましては、私どもといたしましても監視、指導を強めまして、できる限り米の値上げに伴います便乗値上げが発生をいたさないように、十分これからも関係業界を指導してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。  それから、米の消費拡大に悪影響を及ぼすのではないかという御心配でございますけれども、私どもといたしますと、物の値段を上げればそれは消費影響を及ぼすではないかという御指摘一つあるわけでございますけれども、最近の米の消費動向を見てまいりますと、やはり構造的に需要が減退をしておるという問題がございまして、今回政府の売り渡し価格を引き上げるに当たりまして、家計に及ぼす影響等々につきましては十分考慮をいたしまして値上げの幅を決定した次第でございまして、これから先も、消費の減退の方につきましては、私どもといたしまして各種の消費拡大の努力を続けてまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  87. 井上泉

    ○井上(泉)委員 三・九%値上げということは、標準米の価格が幾らになるということになるのですか。
  88. 中山昇

    ○中山政府委員 今回、四月から平均いたしまして三・九%、政府の売り渡し価格を引き上げるわけでございますが、消費者がお買いになる標準価格米の値段といたしましては、府県別に多少のギャップはございますけれども、小売指導価格といたしましては、現在の精米十キログラム当たりの標準価格米に対しまして百三十二円引き上がるというふうに私ども見ておるわけでございまして、大体、現在三千三百五十円のものが改定後は十キログラム当たり三千四百八十二円になるというふうに見込んでおる次第でございます。
  89. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこで、もう時間がありませんし、私は十分間早う切り上げるつもりでやっておったんですけれども、食糧庁に対する質問を先にやるつもりなのが、食糧庁の次長は政府委員ですが、大体、委員会の質問に課長で事足らすようなことは農林省もしないようにしてもらいたいと思うのです。その点、しかるべき担当の省の政府委員を必ず出席さすというようなことにするのが常識だと思うわけです。次長に当たってえらい悪いですけれども、次長、今後そういうことにしてもらいたいのですが、どうですか。
  90. 中山昇

    ○中山政府委員 国会に対する答弁につきましては、しかるべき者が答弁をするように従来からも心がけている次第でございまして、今後とも先生の御趣旨を体しまして、関係の部課ともよく相談をして善処をいたしたいというふうに存じます。
  91. 井上泉

    ○井上(泉)委員 事務的なことをお尋ねする場合と、いわゆる行政の姿勢をただす場合とあるわけですから、事務的なことについてはあなたより農産課長なりあるいは企画課長なりあたりが詳しいかもしれぬけれども、行政の中心にあって国会との関係は政府委員というものをそこで位置づけておるわけですから、そういうふうに取り計らってもらいたい、またすべきであると思うわけでありますので、厳重に注意をしておきます。  そこで、資料として要求をしておきたいと思うのですが、現在の米の在庫状況、それからその在庫の米の消費、それをどういうふうにして解消していくという計画を持っておるのか、その計画。  それからさらに、米屋の店頭価格の表示というものが非常に不十分だと私は思うわけです。東京都内にもあちこち米屋がありますし、高知の市内にも米屋があるわけですけれども、どこへ行ってもササニシキとかコシヒカリの広告が出ておるわけですけれども、米の価格というものが、昔なら、僕たちが子供のときに米屋さんへ米を買いに行くときには、一つの容器の中に、これは一升何ぼの米、これは一升何ぼの米というように、ちゃんと米と価格とがその場に消費者として見やすいように、それで、何ぼの米を買うてこいよと言うことによって使いができたわけです。ところが、いま子供を米屋へ使いにやっても、価格と品物の表示がないわけですが、こういうふうなものに対する指導というものももっと徹底化してもらいたいということ。  それから、標準米は全部、米屋さんには卸から白米で卸すことになっておるのですか。
  92. 中山昇

    ○中山政府委員 卸から小売に対しましては、玄米で参ります場合と卸から白米にして小売に流す場合と両方ございまして、どちらをとれという指導はいたしているわけではございません。
  93. 井上泉

    ○井上(泉)委員 どちらをとれという指導をしてないと言われるわけですけれども、卸問屋というのは、小野君の家は卸屋だから卸問屋としてのなにもあるかもしらぬけれども、米屋さんが玄米でもらいたいと言ったら玄米で送らなければいかぬ。それを標準米はほとんど白米で卸してくる。これは調べてみなさい。標準米を玄米で卸しているところがあるかどうか。
  94. 中山昇

    ○中山政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、一般的な米の売買について申し上げましたけれども、標準価格米につきましてはその中身を正確に表示をさせる、また、価格についても一定の額以上に売ってはいかぬということで指導をいたすということがございますので、私どもとしては、できる限り白米にして中身を表示をさせたもの、そして価格、品質その他がはっきりしたものを小売、消費者にお届けするというふうな指導をいたしておるところでございます。
  95. 井上泉

    ○井上(泉)委員 それならさっき言ったことと違うじゃないですか。標準米は白米にして小売へ出しておるというようなことは指導してないと言うのと、違うじゃないですか。やはり標準米は白米で出しておる、こういうことじゃないですか。
  96. 中山昇

    ○中山政府委員 先ほど私、先生の御質問の趣旨を取り違えまして、一般的な米の流通で御返事を申し上げましたのでそういうことになりましたけれども、標準価格米につきましてはできる限り白米で袋詰めをし、表示をして販売をする、流通をさせるという指導をいたしておるところでございます。
  97. 井上泉

    ○井上(泉)委員 そこには消費者に対してはどういう便利があるのですか。消費者の方としては、米屋さんの小売店の話によると、やはり標準米も玄米でもらってきて、そこのうちでお客さんの需要に応じて一〇〇%精白にする、八〇にする、六〇にするというような形で販売したいけれども、標準米というものは全部精白で来る、これは非常に迷惑だ、こういうふうに言っておるのですが、どうですか、これは。
  98. 中山昇

    ○中山政府委員 標準価格米につきましては、原料玄米がそのまま確実に白米になって消費者の手に渡るかどうかという点についてのチェックをしていくことが必要ではないかというふうに思っておりまして、そこで先ほど申し上げましたように、できる限り大型の搗精工場で白米にいたしまして、それを袋詰めをいたします場合に、その袋には、搗精月日なり、あるいは原料玄米の中身なり、あるいは販売価格なり、正味重量なりというものを十分明確に表示をさせた袋入りのものを小売屋さんに販売をしていただくというようなことが、一番標準価格米の趣旨に即するのではないかということで私ども指導いたしておる次第でございます。
  99. 井上泉

    ○井上(泉)委員 農林省の方ではそういう指導をされておるでありましょうけれども、末端の米屋さんで、米屋さんが言うのは、米屋の利益が守れないから言うのかどうかは知りませんけれども、やはりこの標準米にしても精白の度合いというもの、消費者が最近二升お米を持ってきてくれというようなところまである、そういうバイク代も出ないというような中で、この米ははげ過ぎておる、もっとこれは七分づきにしてもらいたい、あるいは八分づきにしてもらいたい、そういう声、消費者の要求というものを踏まえて、精白をして消費者に渡すようにするのが、米屋の小売店としての商売にかける当然の愛情だと思うわけで、そういう点を、上から居ながら、標準米は精白にしてそのまま出せというようなことは、これは卸保護じゃないですか。
  100. 中山昇

    ○中山政府委員 先ほど来申し上げておりますように、標準価格米につきましては、一定の価格で一定の品質のものを価格指導いたしまして、指導価格を設定して、その価格で売るという条件のもとに相当の財政負担をして私ども販売をしておるということからいたしまして、やはり卸小売を通じまして消費者に、その価格で直接中身が検定をされたものが渡るということが一番大事だというふうに考えておる次第でございます。  その他、一般的なそのほかの米につきましては、消費者の希望に応じまして、あるいは胚芽精米でございますとか、あるいはさらに白度を高めたものでございますとか、そういう御要望があればそれに応じて、小売屋さんがそういう精米を仕立てるということもあろうかと思いまするけれども、標準価格米のように私どもが行政指導をして価格指導をやっている米については、一定の制限が課せられるというのはやむを得ないことではないかというふうに思っておる次第でございます。
  101. 井上泉

    ○井上(泉)委員 米屋の米の問題は、これは私は、国民がだれしも毎日少量でも摂取をしておる基礎食料品でありますので、この問題についてはなお次回の委員会で審議をさせてもらいたい、かように思うわけでありますので、農林省の方に要求をしておくのは、米の需給状況の中で、標準米あるいは徳用米、それから徳用米にも二通りあるが、それの量的な比率、区分をひとつ資料として出していただき、そして、その価格表も提出をしていただき、そして、現実に米屋さんの店頭にそういう表示がきちんとなされておるかどうか、なお私も調査をしますが、農林省の方も調査をして、その辺のことが十分説明のできるようにして、次回の委員会に臨んでいただくようにお願いをして、私の質問を終わります。
  102. 武部文

    武部委員長 この際、暫時休憩をいたします。     午後零時二十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時二分開議
  103. 武部文

    武部委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。春田重昭君。
  104. 春田重昭

    ○春田委員 私は、きょうは日米の貿易摩擦の問題と国内景気の問題、この二点にしぼって質問していきたいと思っております。  まず、日米の貿易摩擦の問題でございますが、実は、私も日米青年議員交流の一員として、先週ワシントンに行って、政府、議会、多くの方々と会談してきたわけでございます。それらを踏まえて質問したいと思いますし、また、私の御意見等も質問の中で延べていきたいと思います。  まず最初に、外務省の方にお尋ねしますけれども、この日米貿易摩擦問題はいま大きな政治課題となっているわけでございます。そこで、櫻内外務大臣が訪米されたわけでございますが、訪米前と会談を終えた今日では、いかなる点で環境が変化したといいますか、変わってきたか。また、外務省としてはいかなる対応が必要と考えているのか。この点からまず御説明いただきたいと思うのです。
  105. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)説明員 外務大臣は、きょうの夕刻帰国いたすわけでございます。ワシントン滞在中には、レーガン大統領を初めヘイグ国務長官、リーガン財務長官その他の枢要な経済閣僚と懇談をされ、また同時に、下院並びに上院の関係議員との懇談も持ったわけでございます。その間の事情につきましては、かなり詳しく報道にも出ているわけでございますが、私どもとしては、この外務大臣の訪米を通じまして、アメリカの最高首脳、レーガン大統領、また対外関係において責任を持つヘイグ国務長官などから、日米間の貿易問題の重要性といいますか、日米関係においてのみならず、世界の通商問題に占める重要性ということをまず確認をし合ったわけでございます。したがいまして、現在の状況のもとでいわば摩擦と言われるようないろいろな問題が起こっていることにつきましては、できるだけ早くこの鎮静化と申しましょうか、問題の解決を図っていくことが、日米関係の面においてのみならず、世界の通商問題の面あるいは世界の経済問題の観点において重要であるという共通の認識に至ったわけでございます。  アメリカ側の要求につきましては、貿易の関税面あるいは非関税面、多岐にわたっております。サービス貿易の促進あるいは投資面における問題の解決といったような分野にも及んでおりまして、非常に多くの問題を抱えているわけでございますが、アメリカ側としては、いまのこのむずかしい経済状況というものを背景にいたしまして、日本の持っている経済力というものをもっと積極的に国際経済の全体のために役割りを果たしてもらえないだろうか、そういう意見の交換であったわけでございます。  私どもとしては、状況は非常に厳しい状況であると認識しておりまして、外務大臣の御指示を仰ぎながら今後対応を考えていきたいと思っておるわけであります。
  106. 春田重昭

    ○春田委員 その厳しい状況を踏まえて、外務省としてはどう対応するのか、これは大臣が帰っておられませんのでむずかしいと思いますけれども、外務省としてはどう具体的な対応をするのか、いまお考えになっているのか、その点お聞きしたと思います。
  107. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)説明員 まず、この個別の問題についてどう対応していくのかという問題と、それから若干長期的な日米関係を考えながらの対応、いわば短期の面と長期の面と両方あるのではないかと考えているわけでございます。  去る三月初旬におきます日米の貿易小委員会におきまして、関税の問題あるいは農産物の通商上の諸問題、あるいは日米間のたばこの問題あるいはスタンダード、規格基準と申しますか輸入検査手続の改善と申しますか、そういう各般の問題について問題提起が出ておるわけでございますので、私どもとしては、まずこういう個別に出ている問題につきまして、関係省庁と御相談をしながら対応していかねばならないかと思います。  また、長期の問題につきましては、非常に問題がむずかしゅうございますが、基本的には日本の経済運営と申しましょうか、内需の拡大を図ることによって日本の輸入に対する、輸入力を高めるということにつながる意味での内需の拡大ということも必要になってこようかと思いますが、同時に、産業構造の調整の問題でございますとか、OECDあたりで論議されている、こういった長期的な問題もございますので、そういうことも念頭に置きながら対応していきたいと思っております。
  108. 春田重昭

    ○春田委員 短期的な対応策でございますけれども、外務大臣は、レーガン大統領との会談で、サミット前を念頭に置きながらあらゆる努力をする、こうおっしゃっているわけでございますけれども佐藤さん、参事官でございますけれども、どうですか、この時期というのは大体いつぐらいなのか、お答えできますか。
  109. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)説明員 六月にサミットがあるわけでございますが、御案内のとおり、毎年行われておりますこのサミットにおきましては、世界経済の運営にかかわる重要な問題について、七カ国の首脳が意見を交換されるという場になっておるわけでございます。そういうことでございますので、その時点における世界経済が直面している重要な問題、これは当然各首脳が討議の対象になさりたいということだと思うわけでございます。  そこで、現在の世界経済情勢を眺めてみますと、やはり先進諸国経済停滞と申しましょうか、冷え切った景気状況、そういう状況を背景にして、どうして世界経済の活性化を図るか、あるいは自由貿易の原則のもとに世界貿易をいかにして拡大をしていくか、こういうことがいろいろな角度から議論されるということになろうかと思うわけでございます。  そういうことを念頭に置きますと、わが国がいま直面しておりますいろいろな貿易の問題というものも、サミットの場でということでは必ずしもないと思うのでございますが、サミットを念頭に置きながらいろいろなことを考えていくことが必要であろうかというふうに思っております。
  110. 春田重昭

    ○春田委員 もっと具体的に言えば、ブッシュ副大統領が四月の下旬訪日されるとも報道されているわけでございますので、その時点で出さなかったらかなり厳しいのじゃないか、こういうことも出ているわけでございますが、この点どうでしょうか。簡単で結構です。
  111. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)説明員 ブッシュ副大統領の来日につきましては、今度の外相の訪米に当たりましてそういう方向での話し合いが進んでいるわけでございますが、私どもといたしましては、日米間の間断なき対話の一環としてブッシュ副大統領をお迎えするということでございます。したがいまして、御来日になるということであれば当然日米間のいろいろな問題についてのお話し合いが進むわけでございますので、私どもとしては、そういう機会を逃さずに日米間で大きな問題にならないよう対話は進めてまいりたい、こう考えております。
  112. 春田重昭

    ○春田委員 河本長官にお伺いしますけれども、長官は対外経済対策閣僚メンバーの一員でございますし、重要な位置にあるわけでございますので、この問題につきまして長官の御所見をお伺いしたいと思います。
  113. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これからのスケジュールは、三十日に経済対策閣僚会議を開きまして、外務大臣の報告とそれから江崎ミッションの報告を聞くことにいたしております。その報告を詳しく聞きまして、そしてその上でどう対応したらよいかということを判断をする、そういうスケジュールを組んでおります。
  114. 春田重昭

    ○春田委員 経企庁としては、この貿易摩擦問題につきましていろいろな対応を講じられているわけでございます。その中の一つに、市場開放問題苦情処理推進本部ですか、オンブズマンの制度を導入されているわけでございますけれども、この処理状況をひとつ簡単に御説明いただきたいと思います。
  115. 井川博

    井川政府委員 市場開放問題苦情処理推進本部は、翁内閣官房副長官を長といたしまして、関係各省の事務次官を本部員というかっこうでございますが、そこの事務局を経済企画庁調整局が受け持っているということでございます。その下に実際上苦情を受け付ける窓口をこしらえておりますが、包括窓口として、何でも言ってきて結構だという窓口を私たち経済企画庁に置いております。そのほか外務省、大蔵省、通産省その他の関係各省にそういう窓口を置いているわけでございます。  実は、一月三十日に経済対策閣僚協でこの設置が決まりまして、実際の受け付けが二月の一日から始まっているわけでございますけれども、この二月中に、事実上、私の方及び一部関係各省でございますが、申請がございましたのが十一件でございます。その後三月に入りましてからおとといまでの間に十二件、計二十三件参っております。  実は、この処理は先ほど言った本部を中心にいたしましてやるわけでございますが、できるだけ迅速にやるということですでに十五件ばかり処理をいたしております。国内の輸入関係の業者、それから一部海外の事業者等々からございます。そういうふうに迅速にそうしたいろいろな問題を処理していくということで、現在、ただいま残りました八案件を懸命に処理しているという状況でございます。
  116. 春田重昭

    ○春田委員 この推進本部は臨時仮設の本部である、こう思うのでございますけれども、これは常設機関として対応する必要があるのではないかと私は思いますけれども、どうでしょうか。
  117. 井川博

    井川政府委員 一応、経済対策閣僚会議の決定では、国際的な摩擦が解消するまでの間ということになっております。摩擦解消をいつと見るか、やはり相当程度というふうなことに見るかという問題と、それから、ここの窓口に実際上出てくる苦情が、現段階で一カ月十数件ということで相当なテンポで出てまいっておりますが、どういうふうに出てくるか、そこらあたりの状況を見て考えていかなくてはならないものというふうに考えております。
  118. 春田重昭

    ○春田委員 この対外摩擦問題というのは、日本が貿易立国であるという宿命を担っている以上、アメリカだけではございませんし、ECからも出てまいります。また、その他各国からも今後出てくるのじゃないかと思うのです。そういった面からも、この本部ないし制度といいますか機関というものは、常設して対外経済協力に専念する、こういうことが必要じゃないかと思うのです。だからやはり、日本の置かれる立場ということを考えてみた場合、臨時的なものではなくして、いわゆる恒久的な機関として私は据え置くべきである、こう思っておりますけれども、長官、どう思いますか。
  119. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま貿易摩擦が非常に厳しい状態になっておりますのは、世界的な深刻な不況というものが背景にありまして、各国の購買力が落ち込んでおる、ここに一番大きな原因があるわけであります。  そこで、先ほども外務省の方から、世界経済の再活性化が次のサミットの課題になるであろう、こういうお話もございましたし、それから、自由貿易体制を守りながら貿易の拡大均衡の方向に持っていかなければならない、こういうお話もございました。なおそのほかに、やはりわが国の国内の購買力を高めていかなければならぬ。外国から物を買うといいましても、購買力がなければこれは買えないわけでありますから、そういう問題もあります。それから、円安になりますと高い物を買わなければなりませんから、どうしてもこれは輸入拡大ということがやりにくい。だから、この為替レートの問題についても重大な関心を払っていかなければならぬ、こういうことで、これからも引き続いて大きな課題としてしばらくの間続くであろう、こう思っております。  それで前回の貿易摩擦、昭和五十二、三年にも非常に大きな黒字が出まして、そのときも相当摩擦が起こったわけでありますが、そのときは、そういう貿易摩擦のほかに、東京ラウンドの最終仕上げの年であるということで、その方面の外交案件が非常にたくさんございましたので、その方面の処理をするための担当大臣、牛場さんがなられたわけでありますが、東京ラウンドは一応五十三年に終結をいたしております。したがって、いまの段階は、以上申し上げましたような貿易摩擦をどう解決するかということでありますが、これは現在の仕組みで十分対応できるのではないか、このように思っております。  いまのお話は、恒久機関を別につくれ、こういうお話かと思いますが、その必要はいまの段階ではないのではないか、このように思っております。
  120. 春田重昭

    ○春田委員 次に進みます。  昨年の十二月十六日、経済対策閣僚会議の中で決定されました、対外経済対策一つに挙げられております輸出対策でございますけれども、時間がございませんので、具体的な問題にもう進んでいきたいと思うのです。  この個別問題として、自動車の問題についてお尋ねしたいと思いますが、自動車の問題につきましては、乗用車の米国への輸出が、昨年の四月から今年の三月三十一日まで、自主規制ということで台数にして百六十八万台が決まったわけでございますけれども、五十七年度につきましては通産省としてはどうお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  121. 西中真二郎

    ○西中説明員 昨年の五月一日に、通産大臣発表という形で対米自主規制の概要を決めたわけでございますが、その概要によりますと、第一年目の昭和五十六年度におきましては百六十八万台、ただいま先生指摘数字でございます。それから二年目につきましては、アメリカ需要動向等も勘案しながら、市場の拡大等も勘案しながら、二年目の数字は別途決めるということになっております。それから三年目につきましては、やるかやらないか、二年目の終わりに検討するということにいたしております。したがいまして、二年目につきまして自主規制を続行する、数量規制をやるということは、すでに昨年の五月の既定方針で決まっておるわけでございまして、現在、二年目の数字をどうするかということを私ども内部で検討中の段階でございます。
  122. 春田重昭

    ○春田委員 私も、一週間の短い期間でございますけれども、いろいろな人に会いました。また、米国に進出しているトヨタの幹部の方にも会いましたけれども、米国内でもいろいろな意見があるというのですね。日本車は非常に低燃費であるし、安全性、確実性があるということで、利用者にとってみればどんどん輸入してほしいという声があるのです。一方、自動車関連企業等は、大体いまアメリカの失業率が八%台でございますし、その中で自動車産業業界は二〇%という非常に高い失業率が出ておりますから、当然これは輸入規制という形で厳しい言い方をしてきている。こうした両論相まっての意見があるけれども国民としては、利用者としては非常に願っている面もあるのです、こういう言い方なのですね。  そこで、検討するということでございますけれども、通産省としては、昨年並みに維持したいのか。それとも、当然アメリカ国民の利用者の期待にこたえて伸ばしたいのか。しかし、いま貿易摩擦の問題もございますから、その点も勘案して減らしたいのか。その辺の感触はどうお考えになりますか。
  123. 西中真二郎

    ○西中説明員 まず、私どもといたしましては、去年の百六十八万台という数量は底であるというように考えております。これを減らすということは絶対考えないということで現在検討いたしておりますし、恐らくアメリカの方からも、減らさなくちゃいかぬという声は出てこないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、ふえるかどうかということでございますが、私どもといたしましては、通産省という立場、あるいは原局の立場、あるいは業界の立場としますれば、当然多い方が好ましいわけでございますけれども、他方、アメリカの自動車産業、去年はかなりの回復を見るのではないかという予測もあったわけでございますけれども、結果としましてはおととしよりさらに大幅に落ち込んだというふうな実態もございますし、ただいま先生指摘ございましたような失業の問題等もございますので、ふやすかどうか、またふやすとしたらどの程度かというあたりにつきましては、現在内部で検討中ということでございますが、初めに申しましたように、減らすということは絶対にしないということで対処しておるところでございます。
  124. 春田重昭

    ○春田委員 長官にこの点でお伺いしたいのですが、昨年の十月から十二月の実質経済成長はコンマ九%マイナスになっている。その原因は外的要因ということになっておるわけでございます。さらに今年一月になりましても、輸出鈍化いたしましてマイナスになっております。そういう点で、国内の景気を上げるためにも、この輸出は非常に重要になってくると思うのです。  そこで、車の自主規制という問題について長官としてはどういう御所見をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
  125. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これは相手のあることでありますから、日本だけのことはなかなか思うように通らないと思いますが、日本の立場だけで物を言うわけにはいかぬと思います。そこで、いま通産省からお話があったわけですが、私から言えることは、通産省しっかりやってください、こういうことでございます。
  126. 春田重昭

    ○春田委員 次に、具体的な問題で、何回も会談した中で向こうも非常に抽象的な問題を言うわけです。具体的には何をやってほしいのかと言いましたら、政府、議会のある人は、次の三点である、牛肉、オレンジ、そしてたばこだ、この三点が大きな柱である、こういう言い方をしているわけでございますけれども、この点につきまして長官の御所見をお伺いしたいと思います。
  127. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、日本として具体的にどう対応するかは何も決まっていないのです。いろいろな人がいろいろなことを言っておるようでありますが、これはそれぞれの判断において意見を開陳しておられるのだ、こう思いますけれども政府としてのまとめた判断は、三十日に経済対策閣僚会議を開いて、外務大臣と江崎ミッションの報告を詳細に聞く、その上で総合的な判断をする、こういうことでございますので、具体的な対応はいまは決まっていない、こういうことでございます。
  128. 春田重昭

    ○春田委員 それから、この点もお伺いしたいのですが、一部言われておりました輸出課徴金の問題ですね。この点につきましては、長官はどういう御所見ですか。
  129. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ああいう考え方は、私は、むしろ相手国の保護貿易的な考え方を助長する、このようにも思いますので、ああいう考え方には賛成できないのでございますが、現在はあの意見はおさまった、こう思っております。
  130. 春田重昭

    ○春田委員 また、ある専門家は、牛肉が完全に自由化になった場合に市価の半値ぐらいになるだろう、したがって、消費者はそれだけ安く手に入り、需要も約八割ぐらいふえるだろう、こういう見方もあるわけでございます。したがって、自由化することによって畜産農家が非常に被害をこうむる、その被害をこうむった面は消費者が、量がふえますし、また値段も安くなる、その分の何%ぐらいかを負担して、いわゆる畜産農家の方にバックをしたらどうかという考え方を持っておる方もあるようでございますけれども、この点の考え方については長官、どういうようにお考えでしょうか。
  131. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 やはりアメリカとの関係は農産物が最大の課題だ、このように私ども考えております。そこで、党の方からも農林部会長に特別に江崎ミッションに加わっていただいておりますし、それだけではなお不十分だということで、総合農政調査会長にも参加をしていただく、こういうことで行っていただいたわけでございます。しかし、それでは牛肉の問題はどうするのか、オレンジの問題はどうするのかということになりますと、これも、先ほど申し上げましたように全体の動きを見ながら、その中においてどう対応したらよいかということをこれから判断をする、そういうスケジュールでございますから、いまなおその対応は決まっていない、こういうことであります。  牛肉の問題についていろいろお話がございましたが、あるいはそういうことも可能かと思いますが、いずれにいたしましても国内の仕組みがどう変わるかということが前提条件でございますから、対外関係からだけで議論するわけにいかぬ、こう思っております。
  132. 春田重昭

    ○春田委員 本来、自由貿易体制ということは拡大均衡であるべきであると私は思うわけであります。したがって、自動車の面とかこうした輸出を規制するということは、縮小均衡という保護貿易に近い流れになってくるわけでございます。しかし、車の輸出が米国の車産業不況につながり、それがわが国の畜産業農業にも自由化という形ではね返ってくることもあるわけですから、非常にむずかしいわけでございますけれども、私は、今回自分が訪米いたしまして、議会、政府、いろいろな畜産の代表の方にも会いまして話し合った結果、市場開放は自由化まではいかなくてもある程度やらねばならないのではないか、劇的な措置でなくても可能な範囲で少しずつの積み上げをやる必要があるのではなかろうかという感触で帰ってきたわけでございます。どうか政府におきましても、日米友好を保持するためにも、この問題につきましては慎重の上にも真剣にひとつ御検討いただきたい、このように要望しておきます。  さらに、貿易摩擦とリンクしていると私は思いますが、レーガン大統領が提唱しております同盟国への、中米カリブ海開発構想への経済援助の問題でございますけれども、この点につきまして外務省の御見解をお伺いしたいと思います。
  133. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私ども、中米カリブの現在起こっておるエルサルバドルでございますとかグアテマラでございますとか、ああいう政治的、社会的な混乱、それの基本にございますものは、やはりああいう国における経済開発のおくれあるいは社会的不公正の存在、そういうことだと考えておりましたので、アメリカに対してもかねてから、基本的にそういう問題に中長期的な観点から取り組む必要があるのではないか、そういうことを指摘してまいったわけでございます。  したがいまして、六月になりましてロペス・ポルチーヨ・メキシコ大統領の訪米というようなことを契機といたしまして、御承知のようにメキシコあたりはアメリカとは中米カリブの政策についてはずいぶん意見が違うわけでございまして、共通項として、そういう社会的、政治的不安の基本的な原因である経済開発のおくれ、あるいは社会的不公正の存在というものに共同で取り組もうじゃないか、志を同じくするカナダ、ベネズエラも語らって、いわゆるナッソーで昨年の七月十一日に四カ国外相会議が開かれた、その当時から、私どもは、先ほど申し上げましたようなかねてからの私どもの中米カリブに対する考え方に基づいて、大変結構なことじゃないか、特にそういう政治的な意見が違う域内の関係国が話し合って事を進める、これは大変結構だ。その後、中米の国々あるいはカリブの国々とそれぞれ、昨年九月-十月でございますが協議などが行われまして、だんだん形が整ってきておる。そこで、ことしになって二月二十四日に、御指摘のレーガン大統領の演説があったわけでございます。これはあくまで、そこで初めてレーガン大統領さんが中米カリブ開発構想を打ち出したというのじゃございませんで、中米カリブ開発構想というのは、そういう国際的な協調の流れがあったわけでございます。それに対して、アメリカとしては、貿易上、投資促進上、あるいは援助の上で、こういうことをやるということをそこで打ち出したわけでございます。したがって、私どもとしては、あくまでそういうものとして受けとめておりまして、そういう中米カリブの不安定の根本的な大きな原因である経済問題、社会問題、そういうものに取り組む構想、これは歓迎して、そういったものが具体化していく過程において、私どもなりにいろいろな協議にはぜひ参加したいと思っておりますし、あるいは具体的な援助というような形でどういうことができるか、それは検討していきたい、こういうふうに思っております。
  134. 春田重昭

    ○春田委員 経済協力基金がこの地域に過去かなりの実績が出されておるわけでございますけれども、これは、経済企画庁の方から過去の実績を御説明いただきたいと思います。
  135. 井川博

    井川政府委員 すでにプレッジをしておりますのが、ホンジュラスに対しまして百七十八億円、それからドミニカに対して三十四億円、ジャマイカに二十一億円、これだけ供与をしておる。したがって、二百億円強ということになるわけでございます。
  136. 春田重昭

    ○春田委員 一九七三年のコスタリカ、一九七四年のエルサルバドル、これについてはどうなんですか。円借款、出ているんじゃないですか。
  137. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 エルサルバドルにつきましては、新国際空港建設計画ということで、七四年に御指摘のとおり五十七億円をプレッジしておりまして、これはもう完成いたしております。コスタリカにつきましては、カルデラ港の建設ということで、一九七三年に四十三億円、追加融資としまして、一九七六年にさらに二十五億円いたしております。経企庁からの御説明は恐らく最近のものをお取り上げになったもので、古いものはいまのとおりでございます。
  138. 春田重昭

    ○春田委員 全体の円借款といいますか経済協力基金の額からすれば、この地域については微々たる額でございますけれども、日米間のきずなが非常にまずくなっているときに、これはリンクしないとは表面上言っているかもしれませんけれども、私たちも行きまして、防衛と貿易摩擦はどうなんだと言ったら、ある人は全然リンクしないんだと言うけれども、片方の方はリンクするようなことを言っているわけですね。そういう点で、表面上はリンクしないと言っても、こうしたまずいときは、水面下で、リンクするような形を向こうだって言ってくるわけですね。そういう点で、新たに二月二十四日に同盟国へ呼びかけて、何とか協力してくれ、こう言っているレーガン大統領にこたえるためには、五十七年度以降、特に五十七年度予算でも若干考える必要があるんじゃないかという考え方を持っておりますけれども、これは外務省としてはどう考えていますか。
  139. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 御指摘の点はもっともなところでございますが、大変エピソードめいて恐縮なんでございますけれども、実は日本の新聞が余りに対米協力、特にアメリカの戦略に対して協力するというような角度から取り上げておりますために、たとえば、ああいう新聞が出ました後、私どものところへ、知り合いのラテンアメリカ系の通信社とか新聞、テレビなどから電話がかかって、こういうことでいいのか、日本の援助が中米カリブの人たちのためでなくてアメリカの協力のためにやられるということでいいのか、こういう照会がございまして、いや、外務省としてはかねてから先ほど申し上げたようなことでやっておるので、レーガン大統領が演説したからどうというようなことではない、対中南米政策というのはかねてより一貫したものである、こういうことで説明いたしております。もちろん、そういう日本の中米カリブに対する援助を結果としてアメリカが感謝してくれる、これはもう大変結構なことでございますけれども、私どもの大きな目的としては、そういう中長期的観点から中南米、この場合中米カリブでございますけれども、諸国民の福祉の向上と経済開発のためという看板はしっかり掲げておきたい、こういうふうに思っております。
  140. 春田重昭

    ○春田委員 ところで、特にアメリカ側が望んでいるエルサルバドルの援助の問題でございますけれども、きのう隣国のグアテマラでクーデターが起こりましたね。御存じだと思うのです。それから、エルサルバドルではゲリラが騒動を起こして大変な状況になっている、こう聞いておるわけでございますけれども、エルサルバドルに対する援助というものは、いま向こうからプロジェクトといいますか商品借款といいますか、そういう何か具体案が出てきているのですか。
  141. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 先ほどお話し申し上げましたとおり、新国際空港建設、これは済んでおりまして、大きなプロジェクトというものは懸案のものはございませんが、実は昨年の十月に、先方からいわゆる第二KR援助ということの一環で肥料を供与してくれないか、向こうの数字では約三億三千七百万円だったと思いますが、これは特に向こうとして農地改革を進める、そのために必要な肥料であるので何とか考えてくれないか、こういう要請がございました。
  142. 春田重昭

    ○春田委員 いずれにいたしましても、政情が非常に不安定な地域でございますので、ここで社会経済面の発展のために援助すると言っても、紛争に巻き込まれないとも限らないわけでございますので、そういう点は十分配慮しながら、技術また円借款の協力をやっていただきたい、このように切望しておきます。  外務省の方はもう結構でございます。どうもありがとうございました。  ところで長官、日米貿易摩擦の問題でございますけれども、一月に通産大臣が訪米され、この三月にいま外務大臣が訪米されているわけでございますけれども、日米間の経済問題ということで率直に意見を交わすために、長官みずからも訪米されたらいかがかと私は思うのでございますけれども、長官のお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  143. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまのところはそういう計画はございません。
  144. 春田重昭

    ○春田委員 それでは、時間がちょっと過ぎましたので、国内の景気の問題についてお尋ねしておきたいと思います。  先ほども言いましたように、五十六年の十月から十二月期、これは実質経済成長マイナス〇・九%ということで、四十九年以来の大きなマイナス成長となり、非常に最悪の状態になったと私は思っているわけでございますけれども、長官は、この原因は外的な要因であるということで国会でも答弁なさっているわけでございますけれども、その外的要因の具体的な輸出品目はどういうものが挙げられるのか、お伺いしたいと思います。
  145. 井川博

    井川政府委員 船舶が十二月までに輸出されるはずのところ、一月以降にずれ込んだというふうな状況が一番大きい特殊性でございます。
  146. 春田重昭

    ○春田委員 この第三・四半期基調というものが五十七年の一-三月期にはどう出てくるのか、非常に心配されているわけでございますけれども経企庁としてはどう分析されているのですか。
  147. 井川博

    井川政府委員 御案内のようにいろいろな統計が出そろわないとなかなか予測できない、十-十二月につきましてもマイナス〇・九というふうな大きいマイナスが出ようとはだれも想像してなかったというふうなところでございます。したがいまして、一-三月の趨勢をいまから予測することはきわめて困難でございます。現にGNPの半分以上を占めます消費につきましては、家計調査自体まだ一月もわかっていないというふうな状況でございますので、予測は非常にむずかしゅうございますけれども、ただいま先生からもお話がございました、海外需要についてそういう特殊要因がございます。したがって、一月以降にその船舶が出たわけでございますし、対前期比、これが大きいマイナスを示すということはないというふうに考えられるわけでございます。それじゃプラスになるのか、プラス幾らになるのかというふうな点は、もう少し計数がわかってみないとわかりません。  一方、内需でございますけれども、御承知のように内需前期比寄与度〇・四というふうなプラスを示しております。七-九月期が前期に対してマイナス〇・一ということでございますが、今回は〇・四というプラスを示しております。この〇・四の中身をよく見てみますと、国内民間需要プラス〇・七、それから公的需要政府支出でマイナス〇・三、要するに国内民間需要としては〇・七というプラスになっておるわけでございます。ただ、言われますように、このプラスというのがそう大きいものではないというふうなことはございますけれども、一-三月もやはりこうした傾向は持続するであろうというふうな考え方を持っているわけでございます。そういたしますと、一-三月としてはプラスになるが、さてそれがどの程度プラスになるか、これはなかなか予測困難というふうに考えておるわけでございます。
  148. 春田重昭

    ○春田委員 特に五十七年の一月期の輸出につきましては、先行指標では対前年同期比がマイナス三・五という形で出ているわけですね。いま局長の説明では、十二月にとまっていた船舶が出るからプラスになるのではなかろうかというお話がございましたけれども輸出信用状の推移では、予測ではマイナスになってくるのじゃないかということで、かなり一-三月も厳しいのじゃないかという見方もされているわけでございます。  そこで、五十六年度の実質経済成長でございますが、当初政府目標は四・七%、下方修正されて四・一%になったわけでございますが、この第三・四半期が非常に厳しい状況になったということで、四・一%の維持もむずかしいのじゃないか、三%台も割るのではないかという意見も出ているわけでございますけれども、この点について御所見を伺いたいと思います。
  149. 井川博

    井川政府委員 ただいま申し上げましたように、一-三月の状況いかんによりますけれども、四・一%の維持というのはきわめて厳しいというふうな状況でございます。むしろ状況によって三%前後になるのじゃなかろうかというふうなことはよく言われているところでございます。
  150. 春田重昭

    ○春田委員 三%台を割るということは考えられませんか。
  151. 井川博

    井川政府委員 一-三の状況いかんによってはそれもあり得る。しかし、先ほど申し上げましたように、これはある程度統計が出てみないとわかりませんので、いまから申し上げることはちょっとむずかしかろうというように思うわけでございます。
  152. 春田重昭

    ○春田委員 三%台の線には、一-三月で前期比二・一%の成長がなかったらいけないということが言われておりますので、この点もかなり厳しくなってきているのじゃないかと私は思っているわけでございます。  そこで、五十七年度の経済成長目標は五・二%でございますが、五十六年度が三%台ということで非常に厳しい状況になってきたということで、確かに、高目の意欲的な経済成長政府が出しておるわけでございますが、それだけ成長しなかったらいわゆる自然増収等も入ってこないわけですから、当然高目の成長を目指すのはわかりますけれども、こうした状況からして五十六年度、五十七年度、そう環境は変わってないのじゃないかという見方もあるわけでございます。これはいまから言うのはまだ早いのですけれども、五・二も厳しいのじゃないかという声が出ているのですね。この点どうお考えになりますか。
  153. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まだ五十六年度が終わっておりませんで、五十七年度というと来年度でございますので、なかなか正確な見通しは立てにくいのですが、ただ、昨年の年末にこの目標を設定いたしましたときには、私どもはこの目標を達成するために一つ条件をつけております。それは、経済が激動期でございますから、その変化に即応して機敏で適切な対策をとっていく、それを前提条件にしておるのでございます。世の中が変わっておるのに何もしないでじっと見ておるということでは、とても目標は達成できないわけでございます。  ただ、特に申し上げておきたいのは、昨年の後半からことしの前半にかけては、私は世界経済の落ち込みが最もひどい時期ではないかと思っておるのです。いろいろな統計を見ましても、各国の成長の模様、国際収支の模様、失業者の模様、インフレの模様等を見まして総合的に判断して、一番厳しい状態になっている。これはやはり石油危機の厳しい影響が全世界を覆ってきた、こういう背景があるからだと思います。しかし、その一番深い谷底もようやく後半から立ち直るのではないか、こういう見通しをほとんど全部の政府が立てております。権威のある国際機関も立てております。深い谷底からそういう展望がなかなかしにくいという面もございますけれども、しかし経済というものは激しく動いておる、相当高目の成長になったかと思うとマイナス成長になる、こういうことは往々にしてあることでございます。たとえばアメリカ経済などは、第一次石油危機の場合は比較的早く立ち直りまして、四、五%という相当高目の成長を相当長期間続けておりました。ところが第二次石油危機の対応を、アメリカは、私は間違ったとは申し上げませんが、対応が不十分であった。こういうことからいま非常に悪い状態になっておる。しかし、アメリカ政府の発表、OECDの発表を見ますと、後半から立ち直ってくる、いまはマイナス成長だけれども後半立ち直るであろう、来年は五・二%成長である、名目は一一%成長である、こう言っております。アメリカ政府のいまやっておるいろいろな政策を分析いたしますとこれは可能なのではないか、私はこう思っておるのです。  そういうことでございますから、これから一番大事なことは、変化に即応する適切な対策をとるということではなかろうか、こう思っております。
  154. 春田重昭

    ○春田委員 OECDはアメリカ経済の後半の成長を四%と出しておりますけれども、これは夏に減税をするということで景気回復をするということでございまして、そういうことでは減税が大きなインパクトにアメリカはなっていくのじゃなかろうかと予測されているのであって、非常に減税の効果が大きいと私は見ているわけでございます。この問題は後でやりますけれども、いずれにしても全体的に非常に厳しい状況になっておるわけでございます。  そこで、もう一点だけお尋ねしますけれども景気動向の指数の見直しというものが経企庁の中で作業に入りかけておるということを聞いておるわけですけれども、この点どうですか。
  155. 横溝雅夫

    ○横溝説明員 当庁でつくっております景気動向指数、現在五〇を上回って推移しておりまして、景気回復過程をたどっておることを示しておるわけでございます。この景気動向指数の見方といたしましては、景気の山と谷を判定する材料でございまして、景気回復スピードは必ずしも景気動向指数ではあらわしてないわけでございます。回復スピードはそう高くはないと思っておりますが、昨年夏ごろから回復しておると考えておるわけでございますが、第二次オイルショックの後、景気の変動がございましたので景気の山と谷をつけなければいけない、第二次オイルショックの後の景気の下降過程というのは、いつからいつまでであったかということをつけなければいけない時期に来ておりまして、その山、谷をつけるためには、やはり御指摘のように、景気動向指数の内容について、最近の石油危機後の景気情勢に照らしまして経済動きをうまく反映しているかどうか再検討して、内容的にも組みかえるかどうかということもあわせて検討いたしたいと思います。
  156. 春田重昭

    ○春田委員 その検討の中に個人消費民間住宅建設、この指数は入っているのか。
  157. 横溝雅夫

    ○横溝説明員 これから検討に入ろうといたしておるところでございますので、具体的に何がということは、――とにかく景気動向指数は二十五系列でございますが、それを選ぶためには、何百系列という指標を検討した上で二十五系列にしぼっておるわけでございますので、当然消費住宅、いろいろな系列も検討した上で見直しということになろうかと思います。
  158. 春田重昭

    ○春田委員 三月十六日の閣議で決定されました景気対策でございますが、大きく三点あると思うのです。第一点が公共事業の上半期七五%の前倒し、第二点が金融政策の機動的な運用、第三点が公的資金による住宅建設の促進、こうだと思うのですが、第一点の公共事業前倒し、この上半期で七五%前倒しをやりまして、もし景気回復しなかった場合、再三言われておりますけれども、後半に建設国債を発行するかという問題でございますが、この点長官、簡単で結構でございますから、御所見をいただきたいと思います。
  159. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 上半期七五%以上、こういうことでございまして、技術的に可能な限り最大限上半期に執行していこうということでございます。  いま公共事業は、中央の関係で一般会計と財投を合わせまして土地代を除きまして十四兆、地方の関係で約十兆、二十四兆ございます。それを七五%以上、八〇%近くまでやるということになりますと、ざっと一九兆上半期にやる、下半期は五兆しかない。そこで、いまのように、下半期の事業量というものが非常に少ないではないか、もし景気回復しなければどうするのだ、こういうお話でございますが、その点につきましては、私どもは後半は回復するであろうと判断は一応しておるのです。しかし、万一ということがございますので、そこで、依然として景気が低迷を続けるという場合には、これはほうっておくわけにはまいりません。やはり何らかの適切な対応が必要だと思っておりますが、さて、具体的にどう対応するかということにつきましては、目下のところはまだ未定でございます。
  160. 春田重昭

    ○春田委員 公共事業前倒しについては私も賛成でございますが、しかし中身について一言言わせていただければ、次の三点を配慮していただきたいと要望しておきます。  一つは、生活関連の事業を重視していただきたい。第二点としては、効果的にするために土地代のかからない公共事業をやっていただきたい。第三点には、中小企業にも重点的に配慮した事業を回す。この点を要望しておきます。  第二点の金融政策の機動的運用でございますが、長期プライム、住宅金利を〇・一%ないし〇・二%下げる話が出ておりますけれども、私は、設備投資、特に中小企業設備投資の意欲を促進するため、また住宅の取得の条件を緩和するためには、もっと引き下げるべきじゃないかという考え方を持っているわけでございますけれども、この点について長官はどうお考えになっておりますか。
  161. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまの段階で金融政策を機動的に運用するという意味は、条件が許せばできるだけ金利を低い水準に持っていきたい、こういうことでございます。  しかしながら、アメリカの金利水準がわが国の金融政策の非常な手かせ足かせになっておりまして、なかなかやりにくい面もございます。そこで、御案内のように、第三次公定歩合の引き下げ、第四次の公定歩合の引き下げは行いましたけれども、そう大きな効果は出ていないのじゃないかという感じがいたします。しかし、最近は少し条件も変わりましたので、ごくわずか下げる方向にいっておるんだと思いますが、もちろんこの程度のことで景気がよくなるとかそういう影響はほとんどない、事務的な微調整であろう、このように私どもは理解をいたしております。  物価の水準が非常に安定をしておりまして、現在は三%台でずっと続いておりますし、国際収支の関係もよくなっておりますので、わが国だけの条件考えますと相当大規模に金利は下げられる条件にございまして、私ども景気を刺激する、回復させる大きなてこといたしましてやりたいと思っておるのですが、現実の問題としては、アメリカの金利が下がらない限りこれはなかなかむずかしい、こういう状況でございます。
  162. 春田重昭

    ○春田委員 今回のこの景気対策の中では、個人消費を伸ばす対策は私はないと思うのです。いま必要なのは、景気の約半分を占めます個人消費伸びといいますか、回復でございます。十一月にやっと五カ月ぶりに可処分所得プラスになったわけでございますけれども、十二月にはまたマイナスになったわけでございまして、二年連続可処分所得マイナスという状況になっているわけでございます。これが景気低迷の大きな原因ではなかろうかと私は思うわけでございまして、そのためにも一兆円規模の減税、春闘によるベースアップが必要になってくるわけでございますけれども、この点について長官の御所見を、簡単で結構でございますから、お伺いしたいと思います。
  163. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 可処分所得が過去二年間伸び悩みになっておりまして、それが個人消費に非常に大きな影響が出ておりますし、住宅建設にも非常に大きな影響が出ております。したがって、可処分所得がうんとふえれば景気はこれで相当よくなるということは理解できるのでございますが、しかし、そのためには所得そのものも相当ふえなければなりませんし、それから公的負担も減らなければならぬ、もちろん物価も安定しなければならぬということでございますが、所得伸びにつきましては、政府は、来年度の経済見通しを立てるために、雇用者所得はおよそこの見当伸びるであろうという見通しを発表しております。一人一人の雇用者、それから全体としての雇用者所得伸び、これは一応の見通しは立ててはおりますが、直接ベースアップとは関係のない数字でございます。ベースアップにつきましては、労使の交渉を見守っておるというのが現状でございます。  それから、減税問題につきましては、これは議長の見解が出まして、御案内のように、予算が成立した段階で大蔵委員会に小委員会を設けて、その見解を尊重するということでありますから、言葉をかえて言いますと、政府には減税問題についてのこれまでの考え方はあったけれども、それよりも大蔵委員会の結論を優先して尊重しますということでございますから、その結論待ちということでございます。  いま政府として直接やれる政策というのは、物価の安定のために全力を挙げる、これしかございませんので、あとの問題につきましては様子を見ておる、こういうことでございます。
  164. 春田重昭

    ○春田委員 アメリカ景気回復減税が大きな要因になると言われておるわけですね。そういう点でも、私は、わが国景気回復減税が大きなインパクトになると思いますので、議長見解でも示されておりますが、五十七年度早期にやるということでございますから、政府でも努力をしていただきたいと思っておるわけでございます。  また、ベースアップの問題につきましても、全体の雇用者所得伸びが八・六%、一人当たり六・九ということで政府は見ているわけでございますし、ベースアップは所定内賃金でございますから、全体の賃金の約半分であるから必ずしもそれにリンクしないということはわかりますけれども、非常に高い雇用者全体の伸び、一人当たりの伸びを見ているわけでございますから、当然ベースアップがなかったら八・六ないし六・九の伸びはないわけでございますから、側面的にそういった面でも政府が応援をしていただきたい、このように要望しておきます。  最後に、財界等でもいろいろな論議がされておりますけれども景気か行革かということでございますが、これは両論両立が非常に理想的なんでございますけれども、これも非常にむずかしい面があるわけでございまして、長官は、この景気、行革、強いて言えば、どちらを優先すると問われればどうお答えになりますか。
  165. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 実は、これまで行財政改革という言葉がございましたが、それでは非常に混乱をいたしますので、そこで昨年の末以来、行管庁では、行政改革という概念と財政再建という概念を区別されまして、これは全然別個のものである。行政改革というのは、もともと小さな政府をつくる、行政そのものの改革である。その結果、財政再建に貢献する分野も相当出てくるでありましょう。しかし、行政改革が成功したからといって財政再建がそのまま成功するわけではない。おのずから別個の問題だ。財政再建を成功させるためにはおのずから別の課題もやっていかなければならない。別の課題とは何ぞやといいますと、それは景気回復して税収がある程度確保できるような、そういう経済に持っていく、こういうことでございます。  そこで、行政改革はあくまで成功しなければならぬと私どもは思っておりますし、財政再建もこれまたやり遂げなければならぬと思っておりますが、そのためにはやはり、景気回復とそれから行政改革の成功、この二つが二本柱、こう思っておるわけなんです。だから、両方が並行しませんとこの財政再建というものは成功しない。  ところが巷間、行政改革だけやれば財政再建が成功するような意見がなお民間の一部に残っております。政府は、先ほど申し上げましたように十二月からこの点は明確に分類をいたしまして、以上申し上げましたような見解をとっておるわけでございます。したがいまして、現時点ではどちらを優先するか、このように言われましても、並行してやっていかないと成功しない、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  166. 春田重昭

    ○春田委員 終わります。
  167. 武部文

    武部委員長 次に、中野寛成君。
  168. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 不景気な話ばかりがどうしても続くわけでありますが、最初に、少し楽しい話から私は入りたいと思います。それは、河本総理待望論をまず少し展開してみたいなと思うわけであります。  先ほど来、政府は、七年ぶりのマイナス成長転落ということで、大変この問題がクローズアップされて、そして、先般来当委員会でも話題になっているわけでありますが、これを受けて十六日の閣議で、五十七年度の公共事業の上期集中契約等を決めた、こういうふうになっているわけであります。ただ、先ほど来の同僚議員に対する御答弁もお聞きしながら私が思いますのは、経済というのは申し上げるまでもなく心理学だ、こう言われる。政府が、いかに先行き見通しが立ち、そして望ましい展望があるのだということを国民に示すことによって、やはり経済対策というのは大きな効果を発揮する、これは申し上げるまでもないと思うわけであります。  ちなみに、先般も、最近のこの景気の落ち込みの状況についてこういうふうに書かれているわけですね。単に、国際的な条件やまたは消費者可処分所得が減ったことやそういうことだけではなくて、むしろ将来に対する展望が立たないというところから、家計の消費活動も完全に萎縮してしまっている、そして、消費に頼る度合いの大きい中小企業も身を縮めて必死に耐えているだけだ、こういうふうに書かれているわけであります。そしてその対策として、先ほど申し上げた公共事業前倒しにつきましても、その前倒しをやった後、今度は下期に、補正予算を組んで建設国債を増発して公共事業を追加するんだというふうな展望を明確にするということでなければ、単に前倒ししただけでは果たして効果があるだろうか、見通し難で萎縮している民間業界は、将来の追加がはっきりしない公共事業前倒しには、受注工事の食い延ばしで対応するのみだろう、こういう指摘もあるわけであります。そういう意味で、政府として前向きの姿勢を常に示していく、このことが何よりも肝要だということが指摘もされておりますし、私どももまたそう思うわけであります。  そういう意味で、今日まで河本長官がとり続けてこられた姿勢、これは大変積極的な経済政策を展開しようとする言動が私どもの目にはついてきたわけであります。そして、そのことに対して国民も大きな期待を持っているということも事実だと思うのであります。待ちの政治、和の政治、だれかが何かを言い出す、または社会情勢、経済情勢がどのように動いていくかそれを見きわめながら、交通整理をするのが総理の仕事だと広言しているようなのんびりした状態でないというのがいまの状態ではないだろうか。  そういう観点から、冒頭申し上げましたように、その政策の実行の仕方について、河本流のやり方、言いかえれば河本総理待望論というのがあるんではないだろうか、こういうふうにも思うわけであります。  また、先般この委員会で同僚議員の質問に答えて、こうおっしゃいました。減税の問題も、一兆円減税というのでは、これを別の観点からとらまえるならいざ知らず、景気回復に寄与するための減税ということであるならば一兆円では余り意味がない、やるならば四兆円なり五兆円なり、もっと大幅にやらなければ意味がないと思うと軽くいなされました。私は、その御答弁を聞きながら、おっしゃるそのことの一つ一つの御答弁はもっともな御答弁だと思いました。そういう意味で、きょうここで減税論を展開しようとは思いませんが、ただ、いま申し上げましたような観点から、もっともっと今後の対策について長官が前向きの、かつ、しっかりした展望を国民に植えつけることのできる、またそうしなければ効果がない経済対策というもの、景気策というものをお示しいただきたい、こういうふうに私は考えるわけであります。  去る十六日の閣議で、この公共事業前倒しを発表した後、これは先週ですか、もうこれ以上打つ手がないから、四月にもう一度景気対策をやる考えはないというふうに長官が言明をされて、四月の総合策は立ち消えになりそうな気配だというふうな報道もなされております。そしてこれを受けて、産業界には大変落胆の声も聞かれる。しかし一方、政府部内でも、河本長官がこのまま放置するはずはない、政策を打ち出すタイミングを慎重にうかがっているだけであろう。そのタイミングとしては、たとえば米国の金利が下がるのを待っているとか、五十六年度の税収不足が明らかになる六月ごろをねらっているのだとか、または暮れの自民党総裁選をにらんで秋口に景気対策をぶち上げるのではないかとか、いろいろな憶測が飛んでいます。しかし、この憶測は憶測といたしまして、その憶測が生まれてくる要因は、あの河本長官がこのままのめのめと無策のままでほうっておくはずがないというみんなの期待が、こういう憶測を生んだと私は見ることができると思うのであります。  そういう意味で、私は、冒頭、今後の景気策について国民に明るい希望を与えるための御答弁をお願いしたいと思います。
  169. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御案内のように、ことしの中央地方を通じての公共事業は二十四兆であるということはたびたび申し上げておりますが、それを上半期に、技術的に可能な限り最大限前倒ししていこう、こういう考え方でございます。これまでの例は、昭和五十二年、五十三年に七三%という上半期前倒し目標を設定をいたしまして、実績は、五十二年度が七五%、五十三年度が七六%、こういう実績がございますが、それを当初から七五%以上できるだけ大きく、こういうことを打ち出しておるわけでございますが、それは残念ながら、財政政策としては、いま考えられる対策としては、この繰り上げ執行と、それから、ことし政府が百三十万戸住宅を建てようとしておりますが、その約半分が公的または公的資金による住宅でございますが、これを上半期にできるだけ繰り上げてみよう、こういう対策のほか、金融政策は、一応条件が整えばもっと低い水準にしたいという意思表示はしておりますけれども、現在の時点ではそれができないということでございますので、現時点ではとり得る対策としてはこれしかないのではないか。もっとも、個々の中小企業対策とかあるいは構造不況業種に対する個別対策とか、これはもう当然やらなければなりませんし、それはやりましょうということは昨年の秋にもうすでに決めておりまして、現に進んでおりますので、これは繰り返して言わなかったのでございます。  やはり、世間でもいろいろな心配がございまして、それじゃ、予定どおり上半期に執行してしまえば後半はごくわずかしか残らない、もし万が一うまくいかない場合には後半非常に困るので、本当に政府は適切な対応をしてくれるのであろうか、こういう心配があることは事実であります。  私どもは、後半は民間経済がある程度活力を回復するであろう、実はこう思っておるのです。その場合の景気対策一つの大きな柱として設備投資考えておりますが、特にこの中小企業設備投資を非常に重要に考えておるのです。五十六年度の設備投資見通しは大企業で約十九兆円、それから中小企業で約二十二兆円ぐらいあるだろうという想定をしておりました。大企業の方は予定どおり進んでおりますが、中小企業の方は、まだ最終的にはわかりませんが、三兆ないし四兆ぐらい計画よりも落ち込むのではないか。みんな設備の近代化投資をしたい、省エネルギー投資をしたいという計画はあるのですけれども、いまのお話のようにまだ金利も十分下がらない、景気見通しもなお明確でない、こういうことから様子を見てみようという人がいま相当ある、こういうことでございます。しかし、三兆ないし四兆という投資が落ち込むということは経済の足を非常に大きく引っ張ることになりまして、現在の景気の低迷の一つの大きな原因になっておると思います。  幸いに、後半民間の力がある程度回復をいたしますと、中小企業設備投資どもある程度できるようになる、実はこう思っておりますし、社会経済回復の方向にいけば、貿易も現在のようなことはない、こう思っておるのです。したがって、後半わが国経済が立ち直る方向にいくということを私どもは期待をしておりますが、しかし万一ということがございますので、その場合にはやはり経済の落ち込みを防ぐための何らかの適切な対策を立てませんと、これは税収も減ってしまいますし、失業者もふえる、貿易摩擦はさらに拡大をする、こういうことにもなりまして、財政再建も大変困難になる、こういうことになりますので、その時点で何らかの適切な対応をいたしますということは、これは私だけではなく大蔵大臣も言っておるところでございまして、それじゃ何をするんだということになりますと、いまの段階で、これとこれとをやりますと言うところまでは、政府部内の打ち合わせも進んでおりませんし、もう少しいまやっております仕事のいろいろな効果を見たい、その時点で十分な相談をしていきたい、実はこう思っておるところでございます。
  170. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 少しこれに関連をするのですが、話題を変えまして、建設省にお聞きをしたいと思います。  これは三月二十三日、一昨日ですか、建設省の方でお出しになったのだと思うのですが、「建設投資が与える諸影響」ということでおまとめになっておられます。政府の建設投資が一兆円増加した場合どうなるかということの想定で、この影響について試算をされているわけであります。これをお出しになりました背景といいますか、これはやはり景気に関連をして内容が組まれていると思いますが、そういうことについて少々御説明いただきたいと思います。
  171. 斉藤衛

    ○斉藤説明員 いま先生御質問の第一点の、どういう目的、ねらいがあってかということから御説明申し上げます。  公共投資の効果そのものにつきましてはいろいろと議論されているところでございますが、建設省の方といたしましても、常に効率的な執行ということも考えておりまして、その効果についてはいろいろと内部で研究しているところでございます。いま御指摘のございましたのはその中の一環であろうかと思います。  そして第二点の、具体的な影響面を見てまいりますと、税収ですとかあるいは産業に与える面とかいろいろございますが、一、二具体的に申し上げますと、税収関係につきましてはいろいろな見方があろうかと思いますが、お手元にございますのは、公共投資一兆円を投資いたしますと、いろいろな乗数等を使いまして試算をいたしますと、初年度で約二千四百億円、それから次年度にも三年度にもいろいろと効果が出ていくわけでございますが、三年間で累計をいたしますと約五千億円ぐらいの増が出るという試算でございます。  それから、そのほか具体的なものとしてお手元にございますのは、生産あるいは雇用に対します影響等があろうかと思いますが、それにつきましては、先生御案内の産業連関表を使いまして、これは一時的な直接的な効果が出るわけでございますが、これで見てまいりますと、建設投資が一兆円増加をいたしますと、生産額にいたしまして約二兆一千億円余のものが出る。また、雇用の誘発効果につきましても、直接間接分を含みまして十九万人余の数字が出る。こういうようなものの試算をしたのでございます。
  172. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 私は、この時期にこれが出されたということは、まだ五十七年度予算審議中ですから、補正予算のこと等々について付言することはどうかという考え方があることはよくわかるのです。しかしながら、現在の経済情勢というのは猶予ならぬ状態にあるということも事実だと私は思います。そして、これはわれわれの早とちりかもしれませんけれども、先ほど河本長官にお尋ねいたしましたけれども、たとえば五十七年度の公共事業予算を前倒しして使う、しかしそれだけじゃないんだ、あと継続して公共事業の追加等補正予算で建設国債の発行も含めて考慮するんだ、その準備を建設省としてもあわせて研究をしているんだというニュアンスがちょっと漏れた感じのものではないだろうか、もしそうでないとしてもそうあってほしいものだという期待をむしろ私は持っているわけであります。  確かに五十七年度予算の審議中なんですけれども、その後のことについても、われわれは審議をし、また政府は御答弁をいただいても構わないのではないか。政治というのは、行政というのは継続して行われるものです。あとどういう対応が五十七年度予算に継続して進んでいくかということの見通しや将来の展望を立てることによって、五十七年度予算そのものが生きて使われてくるわけでありますから、私はそれはそれで許されるものではないかという気持ちもするわけであります。そういう観点からお聞きをしたわけでありますけれども、建設省としてはどうお考えですか、まずお伺いしたいと思います。
  173. 佐藤和男

    佐藤(和)説明員 お答えいたします。  先ほど河本長官からもお話がありましたように、先ごろの閣議で、五十七年度の公共事業につきまして七五%以上できる限り前倒しして執行するという方向での、政府部内の検討を始めたところでございます。建設省といたしましても、その方向で、現在地元公共団体等含めて鋭意その実行の方途について検討いたしているところでございます。お尋ねの下半期のことも、先ほど御答弁ありましたように、当然のことながら、今後の景気動向を見守りまして、情勢の推移に応じて機動的かつ適切な対応がなされるものというふうに期待いたしております。
  174. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 長官にもう一度お聞きしたいと思いますが、この前倒しをやってみて、それで効果はあると思うけれども万一ということもあるから、その後まだいろいろなことを考えなければならぬとおっしゃいました。いまお尋ねをさせていただきましたような、たとえば補正予算等で公共事業の追加ということも検討課題の一つに多分その段階では入る、検討の材料として当然検討がなされるというふうに考えてもよろしいでしょうか。
  175. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まだ、この間この前倒しを決めたばかりでございまして、私どもはその効果が出てくることを期待しておる段階で、しかもその準備中である、こういうことですから、補正予算を組むか組まないか、そんなことはまだ政府部内では検討したことはございません。したがいまして、適正な対応は何ぞやということについての中身は、いまの段階ではまだ白紙の状態でございます。しかし、建設省が、建設国債を出して公共事業をふやした場合には一体どうなるかという研究をされるということは、私は大変いいことだと思います。私どもも、建設国債を出すということはまだ何も決めておりませんが、絶えずいろいろな研究をしておくということはいかなる場合でも大切なことではなかろうか、こう思います。
  176. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 くどいようですけれども、私、先ほど申し上げましたように、たとえば前倒し発注にいたしましても、下半期以後の展望を明確にしておいてそれを執行し、または受注する、それがその企業のまたは産業界の計画や展望をつくり上げていくということにつながるわけでありますから、そういう一つの裏づけといいますかそういうものがなければ、せっかくの前倒しという思い切った事業も大きな効果を発揮しないのではないか。これを効果あらしめるための裏づけとしての、下半期以後の展望について私としては先ほど来強調さしていただいているわけでありますけれども、このことについて長官、いかがお考えでしょうか。
  177. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この建設投資というのはいろいろなものがあると思うのです。先ほど申し上げましたように、公共事業の関係は二十四兆ということを言いましたが、これはGNPに対して約九%くらいになります。それから民間設備投資、これはざっと一六%くらいあると思っております。それから住宅投資が約六%見当でなかろうか、こう思っておるのです。それから在庫投資が若干、ごくわずかでありますが一、二%あるであろう、一%前後でしょうか、こう思っておるのですが、全部合わせますと三〇%を超える三二、三%になるわけでありまして、そういう全体の動きを見た上で判断をしたい、こういうことを先ほども言ったわけであります。  つまり、公共事業前倒しが誘い水になりまして民間の活力等が生まれてまいりますと、一六%と想定しておる設備投資も軌道に乗ってくる、こういうことでございますから、国全体としての仕事の量が確保できればいいわけでありまして、必ずしも公共事業に限らない、こういうことでございますから、政府といたしましては、もし景気が思うように回復しない場合には、いろいろな方法を総合的に適切に考えていきますということを言っておりまして、いまの段階で建設国債を出すのか出さないのか、こう聞かれましても、それに対しまして明確な答弁はできないわけです、まだ検討しておらぬわけですから。  しかし、いずれにいたしましても、景気回復しないとこれは税収も減りますし、財政再建もできないわけですから、また、本当の意味での貿易摩擦を解決するためにも、内需が拡大しないと貿易摩擦は解決しない、私どももこのように考えております。そういうことでございますから、いまできるだけのことをやりながらもう少し様子を見たいということでございまして、関係業界に対しましても、その趣旨のことを建設省などからよく説明をしていただきまして、安心をして上半期の仕事をしていただきたい、こう思っております。
  178. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 この問題についてはこれで終わりたいと思いますので、建設省の皆さん、どうもありがとうございました。  次に、国際経済の問題ですが、とりわけ円安対策についてお伺いをしたいと思います。  きょうの新聞によりますと、「政府は米政府に対して、経済運営の基本方向を変えるよう強く求めていくことになった。」こう報道されているわけであります。「具体的には、国防費を減らし、歳出を削減するとともに個人所得減税の実施テンポを遅らせるなど、大幅な財政赤字の解消に努力してほしいという内容。」これは新聞報道でありますけれども、この内容についてはこれからお尋ねをさせていただきたいと思いますが、私は、こういうふうに積極的にアメリカ経済に対してもその運営に対しても注文をつけていく、このことは大変大切だと思いますし、きょうの新聞にもし載っていなくても、私はぜひ御要望申し上げたいと実は思っておった内容でございます。  いま円安の傾向が続いているわけでありますけれども、円高こそ日本を取り巻く経済問題を解決する唯一の特効薬である、少々オーバーかもしれませんが、そういうふうにさえ言う方もいらっしゃいます。貿易摩擦を解消する上においても、円高ということは一つの大きな役割りを果たすであろう。また物価対策もしかりでございます。しかしそのためには、アメリカ不況から脱出してもらわないといけない、物価が安定しないといけない、金利の低下が必要だ、少なくとも日米間の金利の差が五%以内に縮まらないと、アメリカの方へ国際流通資金は流れていく、五%以内に縮まれば日本の方へこれは還流してくるのではないか、こういう予測をする方もいらっしゃいます。その辺のことを絡み合わせながら、国内の金利対策も金融政策考えていくことになるわけでありましょうけれども、この見通し、とりわけアメリカの今後の動向、そしてまた日本としては、来るべきサミット等へ向けて、ヨーロッパからは日本の円安対策はけしからぬと言われている、円安を誘導していると批判されている、これは大変遺憾なことだとおっしゃられたが、私も、むしろ日本は円高こそいまは願っている状態だと思うときですから、欧州からのこういうクレームというのは大変方向違いな指摘だと思っておりますが、しかし、いずれにせよ、その理解を相手にさせながら、協力してアメリカ対策というものを十分やっていかないといけないのではないかというふうに思うわけでありますが、そのことについてお伺いをしたいと思います。  それから、この新聞報道のとおりだとしますと、たとえば国防費を減らし歳出を削減するということになりますと、日本に肩がわり要請、こうなってくるのではないかと、まずこれが心配の種になってくるのも事実であります。個人所得減税の問題などというのは、なかなかアメリカだって、日本以上に厳しい状態の中で、これまた減税のテンポをおくらせるわけですから、政府としてはうれしいことかもしれませんけれども国民感情を逆なでするという感じにもなりかねません。これらのことを踏まえまして、どう対応しようとされているのか、お尋ねをしたいと思います。
  179. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 為替レートの一番背景には、やはり日本の経済力とアメリカ経済力の比較が当然あるわけであります。したがって、日本の経済の基礎的な条件がよくなれば円高になるという一応の条件が出てくるわけでありますが、残念ながら最近はマイナス成長になっておるということ、いろいろ説明すれば説明はできますけれども、しかし、総合的に見ますとマイナス成長になっておるということは厳然たる事実でありますから、それなりの評価しかできないということだと私は思います。  それからアメリカの高金利、これも大きな背景でございまして、依然としてこれは為替を動かしておる最大の要因ではなかろうかと思っております。  もう一つは、やはり国際情勢の変化に応じまして為替が相当動いております。ヨーロッパ情勢の変化に応じても動きますが、特に中東情勢の変化に応じて為替が非常に変動する。油の関係が背景にあるわけでございますが、そのほかに投機資金が動いてくるということでございまして、最近は非常に複雑な要素が絡み合って為替レートが動いておるということであります。  したがいまして、日本銀行が円高誘導といいましても、そう簡単にはできない。うっかり始めますとすぐに投機資金が出てくる、袋だたきに遭う、こういうことでございますから、なかなかやりにくいと思いますが、やはり何と申しましても、いま一番大事なことは、私は、日本の経済の基礎的条件をよくするということと、アメリカの高金利政策を何とかこの辺で軌道修正してもらう、この二つが最大の要件ではなかろうかというふうに考えております。
  180. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 おっしゃるとおりだと思いますし、そういうようなことはわかるわけです。日本の経済の基礎を固める、これも先ほど来私も御指摘申し上げましたし、先ほど来の話題はすべてそこに尽きていると言っても過言ではないと思います。  そこで、私がいまあなたにお聞きしておりますのは、アメリカの高金利政策に対してどう対応していくか。それに対して、欧州等々と協力をしながらどう是正を求めていくか。また、その可能性についてアメリカの現在の経済情勢等々をどう分析しているか。先ほど来の長官の御答弁の中にも、いまアメリカがとっている政策というのは、後半アメリカ景気回復させるために効果があるのではないかと、自分が分析してもそう思うという御答弁がたしかあったと思いますが、その内容、根拠等につきましても、かいつまんで御答弁をいただければありがたいと思います。     〔委員長退席、井上(泉)委員長代理着席〕
  181. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これまでアメリカ政府は、インフレがおさまれば金利は下がりますし、また下げますということをたびたび私どもにも言ってきました。国際会議でも言っておりますし、個別会談でもそういうことを言ってきたわけであります。それに対して、ヨーロッパも日本も、いまのような状態では国内対策が全然お手上げの状態だから、アメリカも自分のところだけを考えないで、世界全体のことを考えながら金融政策をやってもらいたいということを強く要請してまいったのでございます。  ところが最近は、物価は幸いに安定の方向に来ております。最近は八%台という物価水準になっておりまして、アメリカ政府の目標を見ますと、一九八二年は七・三%水準である、こういうことを言っておりますから、これからだんだん下がってくるのだと思います。年末には六%近くになるのではないかと思います。そして、年度間を通じて平均して七・三%、来年は六%だと言っておりますが、最近の物価動きから見ますと、あるいはこの水準は達成できるのではないか、労使交渉も去年のようなことはないようでありますから、物価に関する限りはまずまず峠を越したと思うのです。  アメリカ政府のこれまでの言い分から言いますと、これで金利は下がらなければならぬのですが、金利が下がらないというのは、やはり最近の予算教書、一般教書あたりで、赤字幅が意外に大きい、一千億ドル前後の赤字幅がしばらく続くということが発表になりましたので、そこで産業界等におきましても、もしそういう大きな赤字が続くならば産業資金が将来借りにくくなるということから、最近借り急ぎをいたしまして、いまは資金は要らないのですけれども、預金という形でこれを置いておく、こういう動きが非常に強くなったようであります。そういうことのために金利が下がらない。しかし、赤字幅が九百億ドルとか千億ドルとかいいましても、アメリカ経済の規模、実力から見ますと、アメリカで貯蓄がもう少しふえればそれはそんなに驚くほどの赤字幅ではない、実はこう思っておるのです。  アメリカ経済政策の中心は、大減税をして、それによって貯蓄をふやしていく、その資金を産業の近代化に回して、生産性を上げて、アメリカ経済の競争力を高めていく、同時に物価も安定してくるのだ、こういうのがレーガン政策の基本になっておるわけでありますが、ただいまのところなかなか貯蓄はふえないようであります。昨年は四%ぐらいの水準で、建国以来史上最低の水準だと言っておりましたが、最近は幾らかふえまして六%台に回復しておるようであります。しかしなかなか思うようにこれがふえない。だから、赤字を解消するかあるいは赤字幅をもう少し減らすか、それがいろいろな政策上むずかしいというならば、もう少し強力な貯蓄がふえるような政策をやれば、アメリカの金利は、物価は下がったのですから下がる方向にいくのではないか。しかし、余り突っ込んだ話をしますとこれは内政干渉にもなりますので、現段階では、アメリカ経済政策を評価しながら、とにかく一刻も早く金利を下げるべきである、こういう要請を続けておるというのが現状でございます。  それから、アメリカ経済アメリカ政府は後半回復する、こう言っておりますし、先ほども指摘のように、OECDあたりも四%見当に回復する、しかし上半期が悪いから年度間を通じての成長は低い、こういうことを言っておるわけでございます。来年は五・二%成長に持っていくんだ、こういうことを言っておりますが、学者とか評論家あるいは専門家は、そうは言ってもそれは大変むずかしいんじゃないかということを言う人が多いのですが、時間的なずれ、あるいは回復の規模、こういうものは多少は政府見通しどおりいかないかもわかりませんが、大勢としてはレーガン政策は成功するのではないか、景気回復の方向にいくのではないか、実は私はこう思っておるのです。  それはなぜかといいますと、一つは、先ほど御指摘ございました非常に大規模な減税を、去年もやりましたがことしはさらに大規模な減税をやる、来年はさらにその規模が大きくなる、こういうことであります。  アメリカ経済は相当大きいのですけれども、それでも所得減税を七百五十億ドルやる、企業減税を二百三十億ドルやる、それから来年は所得減税が千百五十億ドルになる、こう言っております。もっとも、少しやり過ぎたから来年はやめたらどうだ、こういうことを言う人もあるようですけれども、レーガンはやめない、これは政府の基本的な政策だから減税政策は予定どおりやる、こう言っております。とにかく、これだけ大規模な減税をやりますと、これは日本の経済に当てはめてみますと大体の見当がつくのですけれども、やはり非常に大きな効果がある。景気回復の大きな起爆剤になるであろう。それから、大規模な軍事予算も消化しなければなりませんし、昨年来石油の統制価格を外しておりますので、石油掘削分が非常に活発に続いております。そういう幾つかの起爆剤がございます。  日本は残念ながらいま起爆剤というものがない、ヨーロッパ経済も起爆剤というものがない、アメリカは大決断をして大きな起爆剤を三つ、四つ持っておる、そういうことでありますから、整合性をやかましく言われる学者の理論などが当たらぬで、レーガンさんの見通しの方が当たるのではないか。大決断の場合には理外の理というものが生まれてくるであろう。このように私は考えまして、アメリカ経済は多分回復の方向に行くであろう。こういう見通しを私なりに言っておるのでございます。
  182. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 御答弁を聞きながら、別に皮肉を言おうというわけじゃないのですが、アメリカの大決断、それじゃ日本は大決断できないのか、河本さんならやるのかしらという印象を持って聞いたりしておりましたけれども、根本的にその決断をやれる条件が違うのですか。それとも、決断をやる必要が日本ではアメリカに比べてまだそれほどいってないということでしょうか。それとも、総理なり政府なりの決断の仕方の違いというふうに受けとめていいのでしょうか。ちょっとこれ一言だけお伺いしておきます。
  183. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 前の大統領の四年間は決断しておりませんから、やはりレーガン大統領の決断だと思います。ニューディールによりまして五十年前の大恐慌からアメリカを救ったのもルーズベルト大統領の決断でございまして、大統領が決断をした、こういうことだと思いますが、しかし、いまずっと世界の動きを見ておりますと、こういう思い切った決断のできる国はアメリカしかない、こういう感じがいたします。そういう意味で、なお積極進取の気風は衰えないということで、私はアメリカを評価しておるものでございます。     〔井上(泉)委員長代理退席、委員長着席〕
  184. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 決して、よその国のことだから安易に見ておればいいということで、決断を単に評価するだけではなくて、そこに何か、河本長官と一脈相通ずるものがあるのではなかろうかと思って聞かせていただきましたが、さて、ここで、基本的な問題をもう時間もございませんので少し聞いておきます。  五十六年度の消費者物価上昇率、これは政府実績見込みは四・五%でありますが、これはもうそろそろ集計ができるころかと思いますが、どのくらいになるのかということと、もう一つ、二月の卸売物価が半年ぶりに上昇に転じました。円安影響によるというふうに私も思うわけでありますが、今後この円安が国内における製品の高騰につながるおそれはないだろうか、また、消費者物価に波及することはないだろうかということがまず何よりも心配になってくるわけでありますが、このことについてお伺いしたいと思います。
  185. 廣江運弘

    廣江政府委員 最初に本年度の、五十六年度の消費者物価は平均してどのくらいになるだろうかというお尋ねでございますが、まだ明日、三月の東京都区部速報並びに二月の全国の数字が発表される段階でございまして、今日現在では全国の数字は一月まででございますので、これこれになるということを確定的に申し上げることはできませんが、まず一月までの本年の平均値は四・二%でございます。政府は四・五%程度見通しを発表いたしておるわけでございますが、一月までの平均が四・二でございますし、さらに二月の東京都区部速報、この東京都区部速報と全国とはある程度の相関が数字の上ではあろうかと思いますが、これが三・四でございます。そうして、その後の状況を見てみますのに、まず季節商品等なかんずく生鮮野菜等につきましては、非常に天候条件にも恵まれておりますし、さらにいろいろの対策を過去の苦い経験に徴しましてとっておりますが、そういうことがもろもろ重なりまして、今日までの段階では非常に潤沢に出回っておりますし、価格も、日々の新聞報道等を徴して見る限り、落ちついた推移をいたしております。  もう一度申し上げますと、二月の東京都区部速報が三・四ぐらいで、かつ、生鮮食品等の動きも落ちついておるということ、そして三月も非常に落ちついて推移していて、基本的に余り変わった情勢があろうとは考えられません。  したがいまして、本年度の見通しということになりますと、ちょっとまだいろいろの要因がございますし、計数も出ておりませんが、四・五%程度のほぼ下の方でおさまるだろう、こういうことは言えるだろうと思います。  次に、卸売物価が二月に〇・五%、前月に対して上昇いたしました。これを少し分析いたしますと、為替要因が〇・六というふうに算定されます。国内品はまだ落ちついておりますが、輸出入品が少し上がっておるというのが現状でございます。  こうしたものが一体どういうふうに影響が出てくるかというお尋ねでございますが、輸入品はほとんど原材料でございます。そして、この原材料が円安影響によって上がり、それが加工過程を通じ、中間品となり、完成品となって、価格上昇につながってくるということは考えられるわけでございます。ただ、それがどういうふうな程度で、いつごろどういうふうにあらわれてくるかということになりますと、需給の関係というのが非常に大きな要因になろうかと思います。コストの要因が上がりましても、それは需給関係を通じてあらわれるわけでございます。さらにその間におきまして、各企業が競争の過程の中で生産性の向上を図るということになりますと、一層影響は縮小されてくるというわけでございまして、原材料のコスト要因が上がりましても、それが需給関係、生産性向上の過程の中では、どういうふうに具体的にあらわれてくるかというのは、これを定量的、一義的には申しかねますけれども、まず現在の段階で見る限りそういう影響はかなり消されておるのではないかと思います。これが全然影響しないと私ども考えませんし、その辺は今後も注意深く見なければいけないと思いますし、現在物価問題におきましてやはり一番の問題は、そういう円安の問題が、輸入品等を通じまして卸売物価に及ぼす影響かと思っております。
  186. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 最後に、長官にお尋ねをしたいと思います。  先ほどの話のぶり返しになってしまいますが、サミット等へ向けまして、このアメリカの高金利政策等々についての注文をつけていくということになるのでしょうけれども、またこれは、経企庁の直接御担当される分野ではないとは思いますけれども、しかしながら、米国そしてまた欧州に対して、今後のこういう為替の問題や、またひいては貿易摩擦等の問題について、日本がどういう役割りを果たしていくのか、また日本がどういうふうに積極的に相手に要望をしていくのか、そのことについての経企庁としての御意見なり、御決意なりを最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  187. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 総理は、予算委員会等を通じて、サミットに参加する基本的な考え方をある程度述べておられます。  その一つは、世界経済の再活性化が当面最大の課題である、このために参加各国が協力するように呼びかけたい、こういうことを言っておられます。  世界経済の再活性化を図るためには、それぞれの国でそれぞれの国の経済情勢がうまくいくような、つまり内需拡大というものをやらなければ、失業者も吸収できないわけですから、当然そういう対応が必要になろうかとも思いますし、それから自由貿易体制を守っていかなければならない。戦後、世界が発展してきたのはガット、IMF体制、そういう体制のもとで自由貿易がずっと維持されてきたから、こういうことで保護貿易的傾向が出たのでは困る。だから、あくまで保護貿易を排して自由貿易の原則を守り通す、これが世界の発展の基本である。こういう趣旨のことを言っておられます。  そこで、そのためには、わが国といたしましては、やはり率先して市場の開放体制というものをつくらなければならない。できない言いわけばかりしておっても前向きに進まないわけでありますから、だから保護貿易主義を具体化させない、こういう意味において、やはり日本が率先をしてある程度のことをやっていかなければならない、私はこう思っておりますが、この問題につきましては、先ほども申し上げましたように、この三十日に外務大臣と江崎ミッションの報告を聞きまして、具体的にどうするかということは相談することにいたしております。  そのほかに、準備会議等で出ました問題は、南北問題とかあるいは発展途上国の累積債務とか通貨問題、エネルギー政策、こういう問題等が出ておりますが、これは、なおもう一回準備会議を開きまして、最終的にどういうスケジュールでサミットで議論されるか、こういうことが近く本決まりになるであろう、こう思っておりますが、日本としての問題点は以上二点であろう、こう思っております。
  188. 中野寛成

    ○中野(寛)委員 終わりにします。
  189. 武部文

    武部委員長 岩佐恵美君。
  190. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 まず、電力料金の問題について伺いたいと思います。  総理府の家計調査報告によりますと、国民生活は、昨年一年間の勤労者の可処分所得、自営業者や農家を含む全世帯の消費支出は、いずれも一昨年に引き続いて二年連続のマイナスとなっています。非常に深刻な状況にあるわけです。このような状態に加えて、消費支出の中でも固定的な役割りを果たしている公共料金の引き上げ、これがさらに家計を圧迫する結果となっています。  たとえば、所得五分位階級別公共料金の消費支出の中に占める割合を見ますと、一番所得の低い所得第一分位では、昭和四十八年に一六・九%だったものが一九%にまでふえている。消費支出の二割近くが公共料金で占められるという状態では生活はますます苦しくなるのは当然ですし、消費支出伸びないという結果になります。  特に電力料金の引き上げ、これは五十六年は前年比一一・二%と、かなり高くなっているわけです。国民生活を守り、国民消費支出を伸ばすという観点から見れば電力料金の値上げはない方がいい、そう考えるのは当然だと思いますけれども、まず長官のお考えを伺いたいと思います。
  191. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 電力料金の問題につきましては通産省からお答えがあると思いますが、公共料金に対する基本的な取り扱いの方針でありますが、やはりこういうような経済情勢のもとでありますから、ある程度の値上げがそれぞれの分野で起こるのはやむを得ないと思うのです。しかし、その場合に政府としての対応は、徹底してその企業体の合理化をしてもらう、そういうことをまず第一に考えております。それから国民生活に大きな影響が出ますので、値上げ幅は最小限に当然抑えなければならぬと思っておりますし、それから値上げの時期等につきましても総合的によく判断をしなければならぬ、こう思っております。  以上のような三点を考えながら、公共料金をどうするかということについての結論を出すというのが基本的な考え方でございます。
  192. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 電力料金の値上げの問題について、五十七年度の見通しについて通産省から伺いたいと思います。
  193. 植松敏

    ○植松説明員 現在のところは、まだ五十六年度の決算期も終わってないという状況でございまして、五十七年度を予想することは非常にむずかしゅうございますが、五十六年度までのところ、現段階までのところでは、石油の原油価格の動向は比較的落ちついた動向を示しております。それから、五十六年につきましては、出水率あるいは原子力の稼働率等を勘案しますと、五十五年度に比べますとかなり利益幅が落ちるにいたしましても、相応の決算ができるのじゃないか。五十七年度につきましては、現在までのところ、国際石油情勢も比較的安定して推移されるということが見通されますが、一方で、為替レートの方が現在でも相当の円安になっておるというようなことで、為替レートの動向がはっきりいたしません。加えまして、五十五、五十六年度と出水率が相対的に豊水で推移してまいりましたが、五十七年度についてはまだ現段階では全く見通せない状況でございます。またその他の、従来好決算の要因となりました原子力の稼働率等もまだはっきりいたさない状況でございますので、現段階何とも申し上げられませんが、ただ、私どもといたしましては、従来からも、電力会社に対しましては、できるだけ現行料金が一日でも長く維持できるようにということで、企業の努力を要請してまいっておりますし、五十七年度につきましても、できるだけそういう方向で現行料金を維持するように努力をしてもらいたいということで常々要請をいたしておりますし、また、そういうことを維持してもらえるのではないかという強い期待と願いをもって当たっておる次第でございます。
  194. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 ことしの予算の分科会で安部通産大臣が、電力会社の現在の経営の状況からすれば五十七年度においては電力料金を据え置いていけるのじゃないか、こういうふうに考えているという答弁をしておられますが、新聞報道によりますと、電力各社は、需要の低下や電源立地のおくれなどにより当初計画より一六%、七千億円の設備投資の削減、九月修正に対して五千億円の削減、これを考えているというふうに伝えられていますが、この点についての事実関係について伺いたいと思います。
  195. 渡辺光夫

    ○渡辺説明員 五十七年度の電気事業者の施設計画につきましては、現在取りまとめ中でございますので確たる数字を申し上げかねる状況でございますが、ただいま先生指摘のございました投資額の削減として伝えられておりますのは、昨年の三月の段階で電気事業者が五十七年度の見込み額として予想したものに対する比率だ、こういうことでございまして、その数字先生の御指摘のあったような数字でございます。
  196. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 電力各社が現在想定している以上の設備投資、これを行わなければならないというふうになりますと、結果的に総括原価を押し上げ、料金上の圧迫要因になって電力料金の値上げを早める、そういうことになるのではないかというふうに考えられるわけです。通産省は、景気浮揚のために電力各社に設備投資の拡大を要請するという考えであるのかどうか、伺いたいと思います。
  197. 渡辺光夫

    ○渡辺説明員 電気事業者の設備投資につきましては、長期的な需要動向というものを踏まえまして、着実な、計画的な投資を行っていくということが非常に大事なことだと考えております。そのことが結果的に、景気に対しても非常にいい影響を与えていくということはあると私ども考えております。いずれにしましても、長期的な需給の安定を図るということが一番の重要なポイントでございますので、そういう観点を踏まえまして、現在各電力会社の計画の内容を聞いておる段階でございますので、適切なものになるように指導していくというふうに考えております。
  198. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 もう少し端的に伺いたいのですけれども、いま電力業界は、すでに立てている設備計画そのものも減らさなきゃならないという状況に置かれている中で、景気対策のために、もっと設備投資を拡大しなさいということで要請する気があるのかどうかということを伺っているわけです。
  199. 渡辺光夫

    ○渡辺説明員 先ほど申し上げましたように、当初計画を削減すると言われておりますのは、昨年の三月の時点で見積もりました五十七年度の投資額から見ての話でございます。  私どもがいま聞いておりますのは、電気事業者が現在考えております五十七年度の計画でございます。昨年度計画との比較で申しますと、この一年間に設備投資の前提となるいろいろな条件が変わってきておるという面もございますので、その計画がそのまま五十七年度の実際の計画になるということは、いろいろむずかしい点があるというふうに私ども考えております。  しかし、現段階で五十七年度の投資額として考えておるというものにつきましては、内容を十分検討いたしまして適切なものになるように指導してまいる、こういう考え方でございます。
  200. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 長官に伺いたいわけですが、前の委員会で、景気対策のために電力設備投資の拡大を考えたいということを述べておられましたけれども、料金の値上げと無関係に、こういう設備投資の拡大だけが果たして可能なのかどうか。料金引き上げという国民生活への圧迫を来す形での景気対策、これに非常に不安を持つわけでありますけれども、長官のお考えを改めて端的に伺っておきたいと思います。
  201. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 電力事業というのは、工事の着工から完成までずいぶん時間のかかる仕事であります。そこで、政府ども、この電力の需給関係を考えます場合には相当長期にわたって考えております。特に原子力などは、ここに発電所をつくりたいという計画ができましてから完成まで、十年を超えるという例もまれではございません。そこで、電力需要がふえそうだということで、ときにあわててこの計画の拡大をしたり、あるいはちょっと景気が悪くなって減りそうだということであわててまた縮小する、そういうことになりますと、長期的な電力の需給関係は混乱をいたしますので、政府の方といたしましては、そういう長期の観点から電力投資を進めてもらうことを常に期待をしておる、こういうことでございます。  そういうことでございますから、いまも通産省からお話がございましたが、現在の情勢を考えながら、しかも将来を展望しつつ適切な指導をしたい、こういうことを言っておられますので、通産省としても、長期的な電力の需給関係を考えながら、適切な指導をされるものだと私は期待をしております。
  202. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 次に、法務省に来ていただいておりますけれども、伺っていきたいと思います。  国民一般、地域住民一人一人に対し、私生活にわたる事項を調査することが許されるのかどうかですね。行政の場合、私企業の場合、それぞれどうかということについて伺いたいと思います。
  203. 水流正彦

    ○水流説明員 抽象的な形でしかお答えいたしかねるかと思うのでございますが、結局、そういうような調査をされる目的が、どういう目的で、それが妥当か相当かという問題、それからその調査の手段、方法と申しますか、これが四六時中つけ回してやるとかいう場合、あるいはそうでない場合、いろいろあろうかと思いますが、その調査方法の相当性の問題、それから集められた調査結果をどういうふうに使うのかという、その調査結果の使用の実態と申しますか、そういった事柄を総合的に勘案しないと、ちょっと一概に、私企業とか行政が調査をしてはすべてだめだとか、あるいはすべてよろしいとかいうようなことは申し上げかねるのではないか、こういうふうに考えております。
  204. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私企業がたとえば次のような事項を調査する、そういうことについてどうかということを伺いたいと思います。  「官公庁に対する陳情、反対運動の動向」あるいは「町会、PTA等自治団体の動向、動静」「工業団体、商業団体等の動静」「地域オピニオンリーダー、特殊需要家の動静」あるいはある一定の「管内の組織体の紛争およびその状況」というような事項について、たとえばその町会の例で言えば、どこどこ付近の町会長はX氏であるけれども、Y氏とは仲たがいの関係にある、そういう調査をしていたり、それから「生協・消費者リーダーなどとの接触強化のサービス訪問」ということで計画を立ててそれを実施していく、こういうような例でございますけれども、こういう事例について一体どういうふうに考えるのか、どこに問題があるのかということについて伺いたいと思います。
  205. 水流正彦

    ○水流説明員 大変むずかしい御質問でございましてお答えに戸惑うわけでございますが、私どもといたしましては、たとえばある企業が、自分たちの行っている業務の遂行というものに対して反対とか賛成とか、特定の行動をなさる個人とか団体がおありになる、それに対して、そういう人たちがどういう者で構成されてどういう動きをしておるのか、どうしてそういう反対運動をするのか、今後どうなっていくのだろうかということについてそれなりの資料の収集をなさるということは、これが即違法であるということはなかなか言いにくいのじゃなかろうか。その資料の入手をされる手段がどういう手段なのか、内容がどういうことなのかということが具体的に明らかになりませんと、なかなか結論が出にくいのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。非常にあいまいな形で申しわけないのでございますが、そういうふうに考えております。
  206. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私がいま申し上げましたのは東京電力の例でございます。東京電力は、どうも営業活動とは直接関係のない調査を行っているというふうに思える状況があるわけです。たとえば「情報収集対象図」というのをつくりまして、そしてこれを図式化をしているわけですね。一部資料をお渡ししてありますけれども、たとえば報道関係、新聞関係、区役所、それから交通、防犯というと警察、それから自治は自治団体、防災は消防、教育は区役所、そしてずっと右の方へいくと、教育委員会とか区立の小学校長会とか区立小中学校PTA、そういうところまで含まれる。経済で言えば区役所、商業、産業、建設、婦人は婦人団体、主婦連、各地区婦人団体、それから電気の場合は、これは東電独自の関係のようですけれども需要家、その他というように、かなり広範囲にわたっているわけですね。  しかも、たとえば支社長は、国会議員に当たれ、都会議員に当たれ、商店会の連合会の会長だとか、特別の需要家、これはよくわかりませんけれども、そういう者に当たれ。それから総務課は、区役所とか官庁関係ということで、警察署にも当たれ、あるいは消防署、管内中学校とか高等学校、職安、これは人事係だから当然のことなのかもしれませんが、そういうところに当たれ。それから労務課の課長は、警察の公安課長というようなところだとか、そういう者に当たれ。こういうふうに非常にきめ細かに、あらゆる分野にわたって対応するよう指示がされているわけです。  それから、これは皆様方のお手元に資料としてまだいっていませんけれども、ある営業所の「業務計画遂行表」というものがあるわけですが、これによりますと、消費者リーダー宅を訪問しなさい、月別の目標が掲げられて、それに従って実績欄というのが下にありまして、一体どうなっているかというと、これは十、十一、十二、一、二、三ですから半年間の期間ですけれども消費者リーダー宅訪問が目標三十に対して実績六十六です。それから生協リーダー、団地役員訪問、こういうのもあるわけですが、目標三十五に対して実績は四十七、実績の方がはるかに上回っているわけです。それから団地知識者に対する意識調査というのもやっていて、目標六十に対して実績が九十六、こういうふうに非常に広範囲に情報を収集している。一体これが営業活動上必要と言えるのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  207. 水流正彦

    ○水流説明員 営業上必要であるかどうかは、私ども法務省でございますので、ちょっとお答えいたしかねるのでございますが……。
  208. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 通産省に来ていただいているので、伺いたいと思います。
  209. 荒尾保一

    ○荒尾説明員 ただいま先生からお話を実は初めて伺ったわけでございますが、いまお話を伺っている限りで私なりに考えますと、物によりましてはもちろん営業上業務の円滑な遂行のために必要であると考えられるものもありますが、全部が全部営業活動のために必要であるかどうかにつきましては、いま伺ったばかりでちょっと判断をしかねるところでございます。
  210. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 これは後でよく検討していただければわかるように、東電の企業活動から逸脱した一般情報活動だというふうに言えると思います。しかも、先ほど指摘された情報収集の仕方の問題であるわけですけれども、委託集検針員、そういう人たちにカードを交付してそれに記入させる、そういう手段によって情報把握をしているわけですね。集検針というのは、本当に各戸にずっと行くわけですから、ほとんど個人の皆様方の動静がつかめる、そういうことになるわけです。こうしたことがいいんだというような法律的根拠はあるのでしょうか。
  211. 水流正彦

    ○水流説明員 電力業界の方の話に絡みますと、そういう関係ではどういう法律がどうなっているのかということは私、存じませんので、ちょっと申し上げかねるのでございますが、一般論として申しますと、こういうことをしていいあるいはいけないという、そういった形の法律というものはないのではなかろうか。もちろんその手段、方法が相当性を欠いてきますと、刑法の規定に触れたりその他の法令に触れるという場合もあるわけでございますけれども、特にこういった調査に関して許容するとかあるいは禁止するとかいう法律はないのではなかろうか、こういうふうに思います。
  212. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 行政による国民一人一人を対象とした情報活動、これについては憲法第三十五条違反だというのが定説だと聞いているわけです。この点について伺いたいと思います。
  213. 水流正彦

    ○水流説明員 私、法律と申しましたのは、いわゆるわれわれが法律と称している次元で考えておりましたので、先ほど申し上げたように申したわけでございますが、確かに個人のプライバシーと申しますか、そういう問題であろうかと思うわけでございます。  プライバシーに関しては、いま行政管理庁が主になっていろいろ研究会で検討しておられるようですけれども、いまのところ、いわゆる法律次元としてはプライバシー規制法みたいな独自のものはないわけでございます。しかし、憲法の精神ということを考えていきますと、確かに憲法の精神からはプライバシーは守られるべきであるということは出てくるわけでありまして、そういう意味で、憲法に規定があるということは先生指摘のとおりであろうかと思います。
  214. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 昭和三十年の四月二十七日に、最高裁の大法廷での判決が一つあります。それからまた四十四年十二月二十四日、同じ最高裁の大法廷で、憲法十三条違反というそういう判決もあるわけでございますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  215. 水流正彦

    ○水流説明員 ちょっと突然のお話でありましたものですから、的確にお答えいたしかねるわけですけれども、先ほど来先生お尋ねの、国民個々人の私生活の秘密と申しますか、そういうものに対して行政とかあるいは私企業調査することがどの程度許されるか、それはどういう根拠によって許されないのかという御質問だと理解して答えさせていただきたいのでございますが、確かに先生指摘のように、プライバシーの保護に関する判例等はあった、こういうふうに記憶いたしますが、いまのところちょっとそれ以上のことは申し上げかねるわけであります。
  216. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そういう判例があるわけですけれども、東電の調査というのは、私はまさにプライバシーに関するものだと思うわけです。それは、たとえば生協のリーダーに対する対応の仕方ですね。これを見てみますと、「生協・消費者リーダーなどとの接触強化のサービス訪問」という先ほど申し上げた事項ですけれども、こういう報告が来ているわけです。「生協リーダーについては従来ほとんど接触もなく、訪問すると奇怪な態度で迎えられた。訪問目的と対話を進めるうちに、逆に当社の話し合いの積極姿勢とサービス意欲に対し、非常に好感を寄せられ、今後ともいろいろ相談に乗ることはもちろん、協力も期待できると思われる。訪問相手は主婦が多く、ごく普通な主婦が多く、近所にはマル共と見られることを秘としている。」そういう例があるわけです。  あるいは、これもある支所のやっていることですけれども、アンケートによる意識調査というのをやっているわけですね。これは不特定多数に対してやっているわけです。アンケートをやること自身が、内容等の問題からいろいろあると思うのですけれども、これはアンケート調査を行った結果、回答に対してどういう態度をとるかということによって、またいろいろと対応を考えていくという一つの資料にする、つまり選別のための資料にもし得るわけですね。しかもその内容はどうかというと、「最近の東京電力のサービスはどうですか。」「家庭用電気料金は、三段階料金となっているのを御存じですか。」あるいは「おたくでは電気を大切に使うよう気を配っていますか。」この辺はごくごく普通のアンケートみたいに見えるわけですけれども、次に、今度は「おたくでは何かのサークル活動に加入していますか。」あるいは「おたくでは生活問題などで陳情に参加したことがありますか。」その人のいろいろな行動を聞いているわけですね。  これと付随しまして、東電が各営業所に対してこういう指示を出しているわけです。これは三月十六日付の新聞等にも広く紹介をされておりますけれども、利用者を記号でもって分けるわけですね。それで電算機に登録をするということで、たとえば「運動区分」というのがあって、「現在の運動区分を記入する。」「現在運動していない」というのは0で、1は「振り込み解約」2は「振りかえ解約」3は「少額不払い」4は「全額不払い」5は「旧料金払い」9は「その他」こういうふうになっている。また、過去の運動経歴もちゃんと記入しなさいということで、同じような形で記入をする。  新聞報道によれば、これは東電版の総背番号制だというふうな言い方をされる方もおられるほど、大変不特定多数に対して、消費者が知らないうちにカードにぼんぼんと数字が打ち込まれ、引っ越しをすれば引っ越ししたで訂正をされて、それが同じように保管をされていくという形になっているわけです。  さらに、こういう調査をもとに、じゃ一体どういうことをしているのかというふうなことでの資料も詳細に見ていくと出てくるわけですが、ある人についての報告書があるわけです。  その人は小グループを結成して公害問題を取り上げ、良識派から乖離をしている。グループ構成員の実態把握を今後しますというふうな報告をされている人物について、今度は別の報告書を見ると、その人について、火力見学会の計画についてその人物を除外する方向で検討中であるという旨がコーディネーター、東電の社員、係長、副長待遇の方らしいのですが、そういう人から説明があった、こういう記載があるわけです。明らかに組織内に介入をして、特定の需要家を選別的、差別的に扱っているんじゃないか、そういうことがうかがわれるわけです。  ですから、こういうふうに不特定多数に対してアンケート調査を行ったり、あるいは本人が知らないうちに電算機に登録をされたり動静をずっとうかがわれているということ、このこと自体東電の営業と一体どれだけ関係があるのか、まさに私たち国民がしてほしくない、プライバシーに関するそういうことまでも、たとえばあの人とあの人とけんかしているよみたいなことまで全部調べられる、こういうことは許されていいことじゃない。本当に安心して暮らしていけないのではないかというふうに思うわけでございますけれども考えを伺いたいと思います。
  217. 水流正彦

    ○水流説明員 プライバシーの問題につきましては、大きな意味で二つに分けて、プライバシー侵害になるかどうかの基準は考えなければいかぬのではないかと思っているわけでございます。  一つは、個人の知られたくない事項あるいは個人に関する事項について、どういう手段でどういう事項について資料を集めたかという、その資料収集の段階の問題でございます。それからもう一つは、そういう収集された資料あるいは知った知識をどういう形でオープンにしていくか。結局、知られたくないことを一般不特定多数の人にオープンにしていく。こういう二つの面から考えていかなければいかぬのではないかと考えているわけです。  そうしますと、範囲的には後者の方、いわゆるオープンにする部門については、知られたくないことを公にしてはいけないということで、かなり広い範囲のものが出てくるだろう。先生がいま御指摘になりました事項は、そういう形では、もしそれをオープンにしたということであれば問題になる場合が非常に多いのではないかと思うわけでございます。  ところが、それをいわゆる社内の何らかの営業政策、あるいは何か業務遂行のために必要だということで集めたという段階の問題になると、いわゆるオープンにすることは違法でも、ただ適法な形で自分のところで資料を収集するというだけなら許されるものもかなりあるのではないかという気がいたすわけでございます。  ただいま御質問になりました事項につきましては、本日ただいま初めて伺うことがほとんどでございますので、それがプライバシー侵害になるかならないかという点については一々お答えいたしかねるわけでございますけれども、東電が、そういう何らかの業務遂行に必要だということでお集めになって、帳簿とか電算機で整理なされておるだけでございましたら、かなりのところ、もちろん問題のあるものもあるかもしれませんけれども、ちょっと問題にしにくい、少なくともわれわれ人権擁護機関としては問題にしにくい問題がかなりあるのではなかろうか、こういう印象を受けたわけでございます。
  218. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 何かずいぶん東電寄りのあれで、そうだとすると、大企業の資金力あるいは人的なそういう組織力というものをもってして消費者に対して当たってきた場合に、消費者は全く無力であるということになってしまうわけですね。自分が知られたくないこと、そういうことまでも勝手に調べられて、そうしてそれが、オープンにされないと言いますけれども、しかしそれは、社内でもって資料が利用され、そしてまたそういう人たちを乖離していると判断する、その乖離させるために、ほかの人たちにもそういう資料が利用されていくという危険性だって十分あるわけですね。個人が知られたくないそういう問題を、大企業が勝手に組織的にしかも計画的にやるということを野放しにしていいのかどうか。そういうことになったら、それこそ憲法十四条の法の下の平等という規定が踏みにじられてしまうことになると思うのです。そういうことはとうてい許されないのではないか。  だから、人権擁護の立場からいって、この問題は本当に真っ正面に取り組んでいただかないと、これは救いようがない問題だというふうに思うわけですけれども、再度そこら辺を確かめておきたいと思うのです。
  219. 水流正彦

    ○水流説明員 先ほど来申し上げましたように、目的とか手段の相当性とか、その集積結果をどう使うかとかいったことを総合的に判断しませんと、いわゆる人権侵害事件となるかどうかということは決められないわけでございまして、いまお伺いした段階ではどちらとも言いかねますし、また非常にむずかしい問題があるのじゃないかという気がいたすのではございますけれども、何せいまお聞きしただけでございまして、そこらの事情がどうなっているのか、ちょっとわれわれもわかりませんので、もう少しわれわれの方でもいろんな形でそういう資料を集めまして、われわれが人権侵犯事件だということで介入していかなきゃならぬかどうかということを検討してみたいというふうに思っておるわけです。もちろん、そういうことで問題があるということであれば適切な何らかの調査とかいったことをしなければならぬことは当然であろうか、こういうふうに考えております。
  220. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私どもに入った資料というものは恐らくごくごく一部だというふうに思うのですね。ただ、ごくごく一部であろうと、非常に広範な人々に対して、委託の集金員あるいは検針員、そういう人たちを使いながら、あるいはアンケート調査等を使いながら、いま言ったように、運動にあなたは参加したのかとかしないのかというようなことまで調べていって選別をする。さらに加えては、先ほど申し上げましたように、いろいろな行政機関とか警察、そういうところとも連絡をとりながら、恐らく警察や何かにアタックをするという場合に情報をいろいろと交換するということだって十分あり得る。何でさっきの生協のリーダーのところにマル共というのが出てくるのか、私なんかよくわからないわけですね。本当に東電が利用者の実態を知りたいというだけであるならば、一般の普通の主婦だよ、何のあれもないごくごく普通の人なんだということを言っておきながら、マル共であるということを近所に秘匿したがっているということまで言わなきゃいけないのか。そんな調査が許されていいのかどうか。これはいまの答弁では非常になまぬるい。こんな状態消費者あるいは一般の国民が置かれている、ごくごく一般の主婦が置かれているということは許されざることだというふうに思うのですね。  いま言ったように、私どもだって資料が全部手にきちっと入っているわけではありません。しかし、入っているだけだっていま申し上げたように種々問題があるわけですから、ちゃんと積極的に資料を収集して、そして対処するということをきちんと約束してもらいたいと思うのです。
  221. 水流正彦

    ○水流説明員 先生承知だと思いますが、われわれ人権擁護機関と申しますのはいわゆる啓発機関でございまして、人権擁護の思想を広く一般に周知徹底する、啓蒙するという啓蒙機関というのが基本でございます。いわゆる調査機関と申しますか捜査機関と申しますか、そういう機関と違いますし、権限も、相手方の協力を得て、納得を得て、その範囲内でしかできないという機関でございますので、いま先生おっしゃいましたようにきちっとした調査ができるかどうかという点につきましては、そういう実情も御理解いただきたいと思うわけです。  それで、もう一つ申し上げておきたいのは、われわれは電力会社に対する直接の監督機関ではないわけでございます。いわゆる人権侵害事件という相当な疑いが出てくる、濃厚な疑いが出てきた場合に初めて、人権の啓発の一つとして、相手方に接触して、それで御納得を得て、御理解を得ながらその調査に協力していただくという形でやるものでございますので、そこらのわれわれの限界というあたりも御理解をいただきたい。  われわれの方も、そういうことで入れるかどうか、われわれが入ることが許されるケースかどうかということをまず調査して検討したい、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  222. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そこで、監督官庁である通産省に伺っておきたいわけですけれども、いまのような状況で、私は、電力会社がこういうふうに需要家に対して不当なプライバシーに関する調査を行っていること自体、許されないことだというふうに思うのですね。通産省としてどういう対応をされていかれるのか。きょうちゃんとした考えを聞いておきたいということで、できる限りお答えをいただきたい。  それから、経済企画庁に対しましても、経企庁消費者問題の所管官庁でもございます。そうした意味ではこれは私は大変な問題だというふうに思いますし、経済企画庁としてもこれをどう考えていかれるのか、伺っておきたいと思います。
  223. 荒尾保一

    ○荒尾説明員 お答え申し上げます。  私どもは電力会社を所管するという立場でございますが、所管しておりますのは、電気事業法に基づいて所管をいたしておるわけでございます。電気の供給を安定化させる、それから電気についての保安を確保するということで、会社全体をまるまる所管をしておるという立場ではないわけでございます。したがいまして、法律に基づく調査等はこういった問題についてどこまで権限が及ぶかということにつきましては、いろいろ問題があろうかと思います。  ただ、いま先生から御指摘がございましたような諸事項が、業務の円滑な遂行のためにどこまで必要であろうか、私どもお伺いをいたしておりながら、業務の遂行上必要なものというのもあろうかと思いますし、あるいはたとえば不払いが起こったものについてこれを記録しておくというふうなことも必要なことでございますが、全部が全部そうであるかどうか等につきましては、いますぐに申し上げることもできないわけですけれども、業務の遂行上果たしてどこまで必要であろうか、あるいはそれを超えて誤解を招くようなことがないかどうかという点につきまして、適切な指導をしていきたいというふうに考えます。
  224. 小金芳弘

    ○小金政府委員 いまの件につきましては、われわれの方といたしましては、消費者の守られるべき利益がこれで侵害されているかどうかという事実関係につきましてつかんでおりませんので、現在の段階におきましてはちょっとお答え申し上げかねます。
  225. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 政務次官、先ほど大臣は退席なされましたが、この点、経済企画庁としても、消費者が一番頼りにしている官庁でございますので、そこのところをぜひ積極的に対応していただくようにお願いをしておきたいというふうに思います。  次に、時間もなくなりましたので、石油の問題について伺いたいと思います。  シーリング撤廃問題については先ほども議論があったところですけれども、需給が弱含みだからもう外しても大丈夫というような状況だという御判断のようでございますけれども石油業界は、日石などのアラムコ系以外は赤字であって、大幅の値上げが必要と考えていると思います。また日石も、先ほどからの議論にあるようにキロリットル当たり三千円の値上げが必要ということで、通産省にもすでに話がいっている。金額の点については先ほどは言われなかったようですけれども、報道ではそうなっている。こういう事態を見ても、もしシーリングを外せば、為替を初め未達成部分の値上げ、そういうものの要因というのがコストアップにつながっていく。業界から見れば、これもコストアップ要因、あれもコストアップ要因ということが言えるんじゃないか。その点について、時間がありませんので、端的にお答えいただきたいと思います。
  226. 長田英機

    長田説明員 先生から御指摘がありましたように、日石の値上げにつきましては、申し出を受けまして現在審査をしているところでございます。この日石の値上げの審査は価格シーリング制の発動になるわけでございますが、この価格シーリング制につきましては、イランショック、五十三年末のイラン政変以降の異常な事態に対処するために創設されました特別な制度でございまして、最近の原油事情の安定化傾向という点から考えまして、基本的に廃止していくことが望ましいというふうに考えているわけでございます。  特に、今回のOPECの臨時総会の結果を受けまして、私どもとしては、この結果、今回の合意が原油の需給状況に大きな影響を与えることにはならないというような点から、可及的速やかにこれを廃止する方向で考えたい、こういうふうに考えているわけです。  ただ、OPECとしての初めての合意による減産の実施でもありますし、今後の事態の推移も注視する必要があるということで、しばらくの間これを存置しまして、そして、現在日石に対しましてチェックをやっているように、厳正なチェックをしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  227. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私が聞いているのはそうじゃなくて、為替の問題もありますし、それから未達成部分もあるでしょう。それから、今後ほかのコストアップ要因だということを新たに業界が持ち出してくる、そういうことがあるんじゃないですか、ただ、OPECの価格だけが値上げ要因ということではないんじゃないですか、ということを伺っているわけなんです。
  228. 長田英機

    長田説明員 価格シーリング制が廃止されました場合には、企業はそれぞれマーケットメカニズムに基づきまして価格形成をやってまいるわけでございます。その場合に、為替レートの問題あるいは原油価格あるいは通常の経費、販売費、精製費、そういうようないろんな点を踏まえまして企業が値上げを打ち出していく、そして市場を通じて価格形成がなされてまいりますが、私どもは、現在の市況の状況その他から考えまして、価格シーリング制を近く撤廃したといたしましても、異常な便乗的な価格が形成されていくというふうには考えていないわけでございます。
  229. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 シーリングが実施されているときは値上げはほぼ各油種間同額で行われていたわけですけれども、これが取っ外されますと、それこそ自由に価格が、油種間で値上げ分も開いていくということはあり得るわけですね。
  230. 長田英機

    長田説明員 先生おっしゃいますとおりでございまして、これが撤廃されますと、マーケットメカニズムによって価格形成が行われますので、そのメカニズムを通じて油種間の、油種ごとの価格が形成されていく、こういうことでございます。
  231. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうすると、いままでの値上げの経緯から見まして、C重油、ナフサというのはいつも値上げが通りにくい。また、通ったとしても値上げ時期が大幅におくれる、こういうことは何回もこの委員会でも指摘をしてきたところですけれども、結局シーリング価格が外れるということになりますと、重油、ナフサのコスト転嫁、これができない分が当然力の弱い消費者需要家である灯油とかあるいはガソリン、そういうところに来るだろう。あるいは未達成部分のコスト、これも同額でいこうとしていたのが、今度はやはりそういう油種間の力の弱いところにがさっといくということを招くんではないだろうか。自由にするんですからそういうことになりませんか。
  232. 長田英機

    長田説明員 先生いま御指摘なさいましたC重油の値段がなかなか取れない、したがって灯油の値段が非常に高くなっていく、こういうような議論がございましたが、これはいろいろな時点のとり方にもよりますけれども、過去の実績を見てみますと、一概にそういうふうにはなっていないわけでございます。  それから、いま先生が御指摘になりましたシーリング撤廃後に、C重油、ナフサの取れない分が民生用のものにいくという点につきましては、先ほども御説明しましたように、あくまでもシーリング撤廃後はマーケットメカニズムで価格が決まってまいりますから、一概に先生がおっしゃるようなことになるとは言えないんではないか、こう思います。さらに、シーリング撤廃後におきましても、小売価格の届け出などによりましてその価格監視ということを続け、不当な価格が出ないようにしていく、こういう考えでございます。
  233. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 その小売価格の届け出によって価格監視をしていく、そうすると、末端の小売を届けさせてやるということは、結局卸にもはね返っていくということで何か指導を続けるということなんですか、灯油については。
  234. 長田英機

    長田説明員 小売価格の監視と申しますのは、私どもモニター調査によりまして小売価格を調査しておりますが、その調査結果を踏まえまして、異常なような状況が出てまいるというようなことがあれば、そういうことがないようにチェックし指導していく、こういうことでございます。
  235. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 そうすると、その異常、便乗というようなことについては、今後そういうことがあれば、指摘をされればチェックをしていくんだということで、結局シーリングが外されていても価格についての通産省のいままでどおりの、いままでどおりといいますかある一定の監視といいますか指導といいますか、そういうものは存在するんだというふうに理解をしていいわけですか。
  236. 長田英機

    長田説明員 先生指摘のとおりでございまして、事前チェック制としましてのこのシーリング制度が廃止になりましたといたしましても、自後の小売価格の調査等によりまして価格の動向は監視し、問題のケースが出るようであれば、そういうことがないようにケースごとに指導していく、こういうことでございます。
  237. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 私は、そこの点が、どこが便乗と言い、どこを異常と言うか、どうもいままでの議論でC重油、ナフサの価格が取れない分が灯油にかかっていると私ども消費者の立場から指摘しても、通産省がいや、そうではないということで、かなりの値上げが浸透するんじゃないかということを非常に心配をするわけですけれども、絶対にそういうことはないようにするということを、せっかく石油部長お見えいただいているわけで、そこのところでお約束をいただいてよろしいわけでございますね。
  238. 野々内隆

    ○野々内政府委員 石油製品は非常に重要な製品でございますので、この値上げの分につきましては今後十分監視を続けていきたいと思っております。  ただ、経済行為としてコストが上がった分について当然のことながら末端価格に反映させたいということ、これは当然かと思いますが、社会的に非難をされるようなそういうことがないように、今後とも指導を続けていきたいと思っております。
  239. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 時間もなくなりましたので、ちょっと核燃料の処理の問題について伺っておきたいと思っております。  核燃料の処理のコストについてですけれども、現在まで再処理をされている、あるいは再処理の方法、行先が決まっているそういうものが五百トン、金額にして六百七十五億円相当がある。それから毎年毎年再処理費用が、現在の原発の稼働力でいくと六百億円程度出ていく。これを通産省が新たに電力料金に加算をしていくというような考えでいるということが、いま消費者の中で非常に不安になり、これはもともと、大体この処理料金を消費者が料金として負担するという話じゃなかったじゃないか、通産省は態度を豹変させて、何も釈明もしないで、こんな無責任なことあるかというような怒りが高まっているわけですけれども、この点について、今度の料金からこういった考え方を入れていくのかどうか、伺っておきたいと思います。
  240. 植松敏

    ○植松説明員 お答えいたします。  使用済み核燃料の再処理費用の電気料金原価上の扱いの問題でございますが、従来、再処理費用につきましては、まだ原子力発電がそれほど一般化せず、かつ、特に使用済み核燃料再処理自体が本格化していなかったこともございまして、原価に織り込んでなかったわけでございますが、最近に至りまして、使用済み核燃料の再処理自身が、国内でも動燃において、また、海外でもイギリスやフランスの核燃料公社に日本の各電力会社が委託をいたしまして、具体的に商業契約を結びまして再処理を委託するという段階に入ってまいりました。  原子力発電をいたしますと当然核燃料を燃やすわけでございます。燃やしますと、その結果といたしまして、完全には燃え尽くしません、まだ有効成分として残っておりますウラン、濃縮ウランの若干濃縮度が減ったものでございますが、それを回収し、まだ有効に使わなければならない。さらに、各原子炉で発電中にまたこれも再度燃料として使えますプルトニウムも発生するというようなことで、そういった有効成分を回収し、かつ、同時に出てまいります高レベルの放射性廃棄物、これを最終的には安全に処分しなければいけないわけでございますが、それを分離いたしまして、さらにできるだけコンパクトな形に処理し、最終処分がしやすく、かつ、安全に処分できるようにするというのが再処理の工程でございますが、この再処理費用というものが、従来考えておりましたのは、回収されました有効なウランあるいはプルトニウムの価値と同等程度ではないかという予測があったわけでございます。最近に至りまして、再処理費用は、実際には回収されるウラン、プルトニウムの価値よりもかなり高額になるということが、そういった商業契約等の実態から判明してまいりました。  片や、原子力発電のウエートは千五百万キロワットを超えるという段階になりまして、この再処理費用をいまのままにしておきますことは――結果として再処理は相当まだ先になる、実際に原子力発電をいたします時点と、それから再処理が行われ、再処理費用を支払います時点との間に、相当の時間的なラグがございますものですから、原子力発電をされまして、その電気を売っている段階で企業経営上もその部分を費用として処理しておきませんと、企業経営上も後へツケを残すことになりますし、かつ、料金面におきましても、たとえば十年後に再処理が行われますと、その段階の消費者に十年前発電いたしました電気代のツケを回すということになりましては、消費者の負担の面からいっても、負担の不公平が起こるのではないかという議論が具体化してきたわけでございます。  この点、電気事業審議会で昨年来審議をしていただきまして、結果として、再処理費用を原子力発電が行われている段階で費用として見るのが適当であるという答申をいただいているわけでございます。  具体的にこれから料金原価に織り込むかどうかにつきましては、実際に現在料金改定の申請を受けておりませんので、今後の問題になるわけでございますが、いま申しました事情から申しまして、電気事業審議会の答申を尊重いたしましてこの問題を処理してまいりませんと、行く行くは後世代の消費者が過重な負担を強いられる、こういうようなことになってはいけないのじゃなかろうかということで、その点は、答申に沿って今後問題の解決を図っていかなければならないかと思っております。  ただ、具体的にどのくらいの再処理費用を入れるかということにつきましては、これから具体的に、そういった料金改定等の事態が参りましたときに、厳正に査定をして、取り扱いを決めてまいりたいと考えております。
  241. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 その際に、すでに五百トンは行き先が決まっている。再処理の決まっているものがありますけれども、そういうものまでもコストに入れるのかどうか。約六百億の年間出てくる費用自身までもコストに入れていくということは不当だと思いますけれども、その上さらに五百トン、六百七十五億円も入れるといったら、ますますとんでもない話だというふうに思うのですが、その点いかがなんですか。
  242. 植松敏

    ○植松説明員 いま御指摘のすでに使用済み核燃料として発生しておりますものの再処理費用の取り扱いでございますが、まさに先生指摘の点、私どもとしても今後重要な問題点になろうかと思います。  先ほど一般論として申しましたのは、当然のことながら、電気料金を査定いたします場合に、原価計算期間を設けまして、その原価計算期間中における原価としてそこで発電されるものについて申し上げましたのでありますが、過去の累積されたものについての処理の仕方というのは、料金原価面、それからさらにその前提になります企業経理面、これからさらに慎重に検討していかなければならないと考えておりまして、特に、料金原価に織り込む場合にはきわめて慎重な態度で臨まなければならないというふうに考えております。
  243. 岩佐恵美

    ○岩佐委員 もう時間がありませんので終わりますけれども、原子力は安いというふうに言われてきているわけですけれども、こういうふうに後から再処理の費用が出てきたりそれから廃炉コストが出てきたり、大変消費者にとって負担がかさむということになってくるわけで、こういうことはないようにということを私どもは強く要望しまして、質問を終わりたいと思います。
  244. 武部文

    武部委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十五分散会