○河本国務
大臣 これまで
アメリカ政府は、インフレがおさまれば金利は下がりますし、また下げますということをたびたび私
どもにも言ってきました。国際
会議でも言っておりますし、個別会談でもそういうことを言ってきたわけであります。それに対して、ヨーロッパも日本も、いまのような
状態では国内
対策が全然お手上げの
状態だから、
アメリカも自分のところだけを
考えないで、世界全体のことを
考えながら金融
政策をやってもらいたいということを強く要請してまいったのでございます。
ところが最近は、
物価は幸いに安定の方向に来ております。最近は八%台という
物価水準になっておりまして、
アメリカ政府の目標を見ますと、一九八二年は七・三%水準である、こういうことを言っておりますから、これからだんだん下がってくるのだと思います。年末には六%近くになるのではないかと思います。そして、年度間を通じて平均して七・三%、来年は六%だと言っておりますが、最近の
物価の
動きから見ますと、あるいはこの水準は
達成できるのではないか、労使交渉も去年のようなことはないようでありますから、
物価に関する限りはまずまず峠を越したと思うのです。
アメリカ政府のこれまでの言い分から言いますと、これで金利は下がらなければならぬのですが、金利が下がらないというのは、やはり最近の予算教書、一般教書あたりで、赤字幅が意外に大きい、一千億ドル前後の赤字幅がしばらく続くということが発表になりましたので、そこで
産業界等におきましても、もしそういう大きな赤字が続くならば
産業資金が将来借りにくくなるということから、最近借り急ぎをいたしまして、いまは資金は要らないのですけれ
ども、預金という形でこれを置いておく、こういう
動きが非常に強くなったようであります。そういうことのために金利が下がらない。しかし、赤字幅が九百億ドルとか千億ドルとかいいましても、
アメリカの
経済の規模、実力から見ますと、
アメリカで貯蓄がもう少しふえればそれはそんなに驚くほどの赤字幅ではない、実はこう思っておるのです。
アメリカの
経済政策の中心は、大
減税をして、それによって貯蓄をふやしていく、その資金を
産業の近代化に回して、生産性を上げて、
アメリカ経済の競争力を高めていく、同時に
物価も安定してくるのだ、こういうのがレーガン
政策の基本になっておるわけでありますが、ただいまのところなかなか貯蓄はふえないようであります。昨年は四%ぐらいの水準で、建国以来史上最低の水準だと言っておりましたが、最近は幾らかふえまして六%台に
回復しておるようであります。しかしなかなか思うようにこれがふえない。だから、赤字を解消するかあるいは赤字幅をもう少し減らすか、それがいろいろな
政策上むずかしいというならば、もう少し強力な貯蓄がふえるような
政策をやれば、
アメリカの金利は、
物価は下がったのですから下がる方向にいくのではないか。しかし、余り突っ込んだ話をしますとこれは内政干渉にもなりますので、現段階では、
アメリカの
経済政策を評価しながら、とにかく一刻も早く金利を下げるべきである、こういう要請を続けておるというのが
現状でございます。
それから、
アメリカの
経済が
アメリカ政府は後半
回復する、こう言っておりますし、先ほ
ども御
指摘のように、OECDあたりも四%見当に
回復する、しかし上半期が悪いから年度間を通じての
成長は低い、こういうことを言っておるわけでございます。来年は五・二%
成長に持っていくんだ、こういうことを言っておりますが、学者とか評論家あるいは専門家は、そうは言ってもそれは大変むずかしいんじゃないかということを言う人が多いのですが、時間的なずれ、あるいは
回復の規模、こういうものは多少は
政府の
見通しどおりいかないかもわかりませんが、大勢としてはレーガン
政策は成功するのではないか、
景気は
回復の方向にいくのではないか、実は私はこう思っておるのです。
それはなぜかといいますと、
一つは、先ほど御
指摘ございました非常に大規模な
減税を、去年もやりましたがことしはさらに大規模な
減税をやる、来年はさらにその規模が大きくなる、こういうことであります。
アメリカの
経済は相当大きいのですけれ
ども、それでも
所得減税を七百五十億ドルやる、
企業減税を二百三十億ドルやる、それから来年は
所得減税が千百五十億ドルになる、こう言っております。もっとも、少しやり過ぎたから来年はやめたらどうだ、こういうことを言う人もあるようですけれ
ども、レーガンはやめない、これは
政府の基本的な
政策だから
減税政策は予定どおりやる、こう言っております。とにかく、これだけ大規模な
減税をやりますと、これは日本の
経済に当てはめてみますと大体の見当がつくのですけれ
ども、やはり非常に大きな効果がある。
景気回復の大きな起爆剤になるであろう。それから、大規模な軍事予算も消化しなければなりませんし、昨年来
石油の統制価格を外しておりますので、
石油掘削分が非常に活発に続いております。そういう幾つかの起爆剤がございます。
日本は残念ながらいま起爆剤というものがない、
ヨーロッパ経済も起爆剤というものがない、
アメリカは大決断をして大きな起爆剤を三つ、四つ持っておる、そういうことでありますから、整合性をやかましく言われる学者の理論などが当たらぬで、レーガンさんの
見通しの方が当たるのではないか。大決断の場合には理外の理というものが生まれてくるであろう。このように私は
考えまして、
アメリカの
経済は多分
回復の方向に行くであろう。こういう
見通しを私なりに言っておるのでございます。