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1982-07-13 第96回国会 衆議院 農林水産委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年七月十三日(火曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 羽田  孜君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 戸井田三郎君 理事 渡辺 省一君    理事 新盛 辰雄君 理事 松沢 俊昭君    理事 稲富 稜人君       上草 義輝君    太田 誠一君       川田 正則君    木村 守男君       岸田 文武君    北口  博君       北村 義和君    近藤 元次君       佐藤  隆君    志賀  節君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       保利 耕輔君    三池  信君      三ツ林弥太郎君    山崎平八郎君       小川 国彦君    串原 義直君       島田 琢郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    安井 吉典君       渡部 行雄君    神田  厚君       寺前  巖君    藤田 スミ君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  田澤 吉郎君  出席政府委員         農林水産政務次         官       玉沢徳一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         食糧庁次長   中山  昇君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      千野 忠男君         農林水産省経済         局統計情報部長 関  英二君         建設省河川局開         発課長     広瀬 利雄君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十三日  辞任         補欠選任   島田 琢郎君     渡部 行雄君   日野 市朗君     小野 信一君 同日  辞任         補欠選任   小野 信一君     日野 市朗君   渡部 行雄君     島田 琢郎君     ――――――――――――― 七月一日  農家経営の救済に関する請願新村勝雄君紹  介)(第四一四五号)  農業に対する各種補助金の一律削減反対等に関  する請願土井たか子紹介)(第四一四六  号)  同(武部文紹介)(第四二五〇号)  食糧自給率の向上に関する請願横山利秋君紹  介)(第四二〇五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月三十日  九州西方海域における韓国漁船操業規制に関  する陳情書外一件  (第二九七号)  チチュウカイミバエの侵入防止対策強化に関  する陳情書  (第二九八号)  林業振興に関する陳情書  (第二九九号)  食糧管理制度拡充に関する陳情書  (第三〇〇号)  農林漁業金融公庫における土地改良資金の貸付  限度額引き上げに関する陳情書  (第三〇  一号)  農林漁業対策拡充推進に関する陳情書  (第三〇二号)  農山村の生産基盤及び環境整備の促進に関する  陳情書  (第三〇三号)  農業経営安定対策に関する陳情書  (第三〇四号)  水田利用再編対策充実強化に関する陳情書外  二件  (第三〇五号)  農畜産物輸入自由化反対等に関する陳情書外  四十七件  (第三〇六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(昭和五十七年産  米穀政府買価格等)      ――――◇―――――
  2. 羽田孜

    羽田委員長 これより会議を開きます。  この際、一言申し上げます。  先刻来、公明党・国民会議所属委員出席を要請しておりますが、いまだに御出席がありません。  理事会協議に基づき、やむを得ず議事を進めます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、昭和五十七年産米穀政府買い入れ価格米価審議会への諮問及び昭和五十六年産米生産費統計調査結果について政府から説明を聴取いたします。中山食糧庁次長
  3. 中山昇

    中山政府委員 それでは、昭和五十七年産米政府買い入れ価格諮問について御説明を申し上げます。  「諮問」につきましてまず朗読申し上げます。(発言する者あり)
  4. 羽田孜

    羽田委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止
  5. 羽田孜

    羽田委員長 再開します。  中山食糧庁次長
  6. 中山昇

    中山政府委員 昭和五十七年産米政府買い入れ価格諮問について御説明を申し上げます。  まず、「諮問」と「諮問についての説明」を朗読いたします。      諮  問   昭和五十七年産米穀政府買価格について、米穀需給均衡を図るための対策が行われている需給事情に即応して生産費及び所得を考慮して決定することにつき、米価審議会意見を求める。   昭和五十七年七月十三日          農林水産大臣 田澤 吉郎  次に、「諮問についての説明」でございます。   米穀政府買価格は、食糧管理法第三条第二項の規定により、生産費及び物価その他の経済事情を参酌し、米穀の再生産の確保を図ることを旨として定めることになっており、その算定については、昭和三十五年以降生産費及び所得補償方式により行ってきたところであります。   米穀政府買価格につきましては、昭和五十三年産以降その水準を据え置く等近年の米穀需給事情を考慮した決定を行ってきたところであります。また、一方で水田利用再編対策及び米消費拡大対策を中心とする各種施策を通じて米需給均衡を回復するための努力が続けられております。   しかしながら、最近の米需給実情は、昨年及び一昨年の冷害等影響による米の減産にもかかわらず、基調としては、米の生産力が高い水準にある一方で米消費の減退がなお引き続いており、過剰傾向は強まってきております。また、米の管理に係わる財政運営も、国家財政が深刻な状況にある中で、極めて困難な局面に直面しております。   今後の米の管理におきましては、以上のような事情に対処し、米需給均衡の回復に一層努めるとともに、各般の面にわたり合理化努力を強めていく必要があるものと考えられます。   一方、最近の稲作経営実情をみますと、稲作生産性及び収益性において作付規模により大きな差がみられるようになってきております   一方、兼業化進展等に伴い、稲作所得収入の多くを依存しないような農家が増えてきているという状況にあります。   本年産米穀政府買価格につきましては、以上の事情にかんがみ、現下米穀需給事情に即応し、生産費及び所得補償方式により算定することとしてはどうかということであります。  次に、「昭和五十七年産米穀政府買価格試算」について御説明を申し上げます。  まず、この算定の基本的な考え方といたしましては、従来どおり生産費及び所得補償方式によることといたしまして、対象農家平均生産費につきまして、物財雇用労働費等実際に支払う費用につきましては、生産費調査結果を最近の時点まで物価修正をいたしますとともに、自家労働部分につきましては都市均衡労賃評価がえをし、この評価がえ生産費平均単収で除して、求める価格、いわゆる庭先での米の価格でございますが、これを算出いたします。なお、都市均衡労賃等算定要素とり方につきましては、前年と同様のやり方によっているところでございます。  次に、対象農家とり方につきましては、従来と異なり、二通りの考え方をとって算定をいたしております。  「昭和五十七年産米穀政府買価格試算」という資料をごらんいただきたいと思いますが、その一ページの上から六行目くらいのところに(1)というのがございます。  これは、「対象農家生産費の低いものからのその累積生産数量比率価格決定年米穀需給事情基礎として定める比率になるまでのものとした値」でございまして、従来から、米価算定当たりましては、生産費の全体の平均ではございませんで、需給事情を反映して、コストの安いものから順に並べまして、その累積数量が一定の比率になるところまでのものをとってきておるところでございます。  この比率といたしましては、従来は実績出回り数量に対する必要出回り数量、具体的に申しますと予約限度数量でございますが、この比率をとって算定をしてきました。ただ、この従来とってまいりましたやり方によりますと、生産調整が所期のとおり行われますと、出回り量と必要量との割合が同じということになりまして、比率が一となりまして、結果的には、米の生産調整をやっておりますという潜在的な需給ギャップ拡大をしていきまして、さらにその生産調整強化していかなければならないというような事情米価算定当たりまして全く反映をされないというような問題があるわけでございます。したがいまして、最近のように潜在的な需給ギャップというのが拡大をしておりまして生産調整を強めねばならないというような状況のもとでは、そこで適切な米価算定を行いますためには、この比率として潜在需給ギャップをそのまま反映させる必要があります。  その場合にどういう指標をとるかということでございますが、この指標といたしましては、潜在生産量に対する総需要量比率、本年はこれをとることといたしたわけでございます。五十七年産米に即して申し上げますと、潜在生産量は千三百七十五万トンでございます。これに対しまして、総需要量は、二十五万トンの在庫積み増しを加えますと、千五十五万トンに二十五万トンを足しまして千八十万トンになるということでございますので、この比率七九%というのをとっております。  こうした考え方によります算定値は、求める価格運搬賃を加えましたいわゆる政府指定倉庫渡し価格になるわけでございますが、基準価格で六十キログラム当たり一万七千四百七十八円ということになりまして、昨年に比べまして基準価格で九円の引き下げ、率にいたしまして〇・一%の減というようなことになるわけでございます。  次に、算定の(2)でございますが、算定の(2)は「対象農家を、水稲作付面積一ヘクタール以上のものとした値」でございます。  最近の稲作経営実情を見ますと、稲作生産性及び収益性におきまして、作付規模によりまして非常に大きな差が見られるようになってきておりますし、また一方、兼業進展等に伴いまして稲作所得収入の多くを依存しないというような農家がふえてきております。  たとえば、水稲作付規模が一ヘクタール未満の層では、農家所得に占める稲作所得割合というのが稲作単一経営で見ましても一割に満たないとか、あるいは農外所得だけで家計費を賄えるというような状況にございますし、また、生産費の面でも、一ヘクタール未満の層といいますのは、農家が外へ支払ういろいろな費用でございますが、支払った地代でございますとか支払った利子を加えましたものでも米価水準を上回っておりますが、そういうことにもかかわりませず生産が継続されておるという状況にございます。  また、農地権利移動の面で見ましても、一ヘクタール未満層というのが農地の出し手となっておりまして、こういうことからいきますと、作付規模が一ヘクタール未満規模農家といいますものは、米価に対する関係の度合いにおきまして一ヘクタール規模以上の農家に比べまして薄いのではないかというふうに考える次第であります。  したがいまして、このような稲作経営の実態から見ますと、現下過剰基調のもとで補償すべき合理的な価格水準を求めるに当たりましては、これら一ヘクタール未満農家算定対象から除外して得られる水準というのを求めることがより合理的であると考えたものでございます。  こうした考え方でいたしますと、水稲作付規模一ヘクタール以上の農家をとり算定をいたしますと、基準価格で六十キログラム当たり一万七千十円ということになりまして、昨年に比べ四百七十七円の引き下げ、二・七%という引き下げ率になるわけでございます。  以上の二つの算定値と、それから昨年の基準価格が一万七千四百八十七円でございましたので、これらを勘案いたしまして、基準米価は前年と同額の一万七千四百八十七円といたしたというのが政府試算の内容でございます。  それから、この基準価格の案に基づきまして、ウルチ玄米一−五類、一−二等平均包装込み生産者手取り価格、いわゆる基本米価というのを算出をいたしますと、これが二ページの3というところでございまして、それの一番最後にございますように、いわゆる基本米価が一万七千七百五十七円ということになりまして、これは昨年の一万七千七百五十六円に比べて一円の相違がございまして、一円の引き上げとなっておりますが、これは包装代が前年から一円上がったことによるものでございます。類別、等級別価格は、三ページにございますように、これは五十六年産と全く同様でございます。なお、算出の細かい基礎につきましては、前年のやり方と同じでございますので、省略をさせていただきます。  最後に、後ろから二ページを見ていただきますと、「過去の米価と諸要素との関係からする試算」というのがございます。これは、過去におきます米価決定要素といたしまして、過去の物価なり賃金あるいは生産性需給事情変化決定されました米価との関係を計数的に求めまして、この関係式から本年の米価水準試算したものでございます。生産者米価決定する場合に考慮すべき要素といたしましては、物価なりあるいは賃金なり、そういうものの変化のほかに、生産性指標としての単収、それから需給事情、潜在的な需給ギャップというものがございますので、これらをとりまして、この関係式を使いまして、本年の物価値上がりあるいは賃金値上がり、単収の動向、それから潜在需給ギャップを入れて計算をいたしますと、2のところにございますように、本年の米価理論値は昨年の決定米価よりも〇・七%引き下げとなるということに相なるわけでございます。これは検討ということで、検証材料ということで出したわけでございまして、これから見る限り、さきの試算価格といいますものはおおむね妥当な水準ではなかろうかというふうに思うわけでございます。  以上で説明を終わります。
  7. 羽田孜

  8. 関英二

    関説明員 五十六年産米生産費について御説明いたします。  五十六年産米生産費につきましては、十アール当たり平均生産費で十六万五千九百九十一円、七千九百五十六円の対前年上昇でございまして、率にして五%でございます。六十キログラム当たり生産費につきましては二万三百七十八円でございまして、対前年九百八十七円、率にして五・一%の上昇でございます。  米の生産費費目別構成比を見てみますと、労働費農機具費肥料費賃借料及び料金、この四費目を加えますと八二%になっております。さらに、これに農業薬剤費光熱動力費を加えますと九〇%、九割を占めております。  これらの主要費目動向につきまして御説明いたしますと、まず四〇・五%を占めます労働費でございますが、五万五千七十五円でございまして、対前年二千三百九十四円、四・五%の上昇でございます。これは、十アール当たり労働時間は六十三・九時間と、対前年〇・八%減少をしたのでございますが、労賃単価が五・八%アップしたために、四・五%の上昇ということになったわけでございます。  それから農機具費につきましては三万八千八十円で、前年を五・一%上回りました。これは、主として自脱型コンバイン乗用トラクター動力田植え機などの装備率のアップなり、更新時に大型なり高性能の機械を入れるという傾向がございまして、それに伴う償却費増加でございます。  それから肥料費につきましては一万八百十六円で、前年を一四・三%上回っております。この生産費調査期間は一月から十二月まででございますが、水稲生産に使用する肥料の購入時期というのはおおむね一月から五月ぐらいまでが普通でございます。その期間肥料価格がかなり高騰をしておりまして、物価賃金調査の結果によりますと二〇%強価格上昇しておるのでございますが、一方、施用量減少ということがございまして一四・三%の上昇ということになったわけでございます。  それから賃借料及び料金につきましては七千四百七円で、前年を八・二%上回っております。これは、田植えなり収穫、調製段階ライスセンター、カントリーエレベーターというものの作業委託増加したことと賃借料及び料金単価上昇した結果でございます。  それから農業薬剤費につきましては六千六百六円で、前年を八・六%上回っております。これは、主としまして農薬の価格上昇した結果、それから多少施用量増加をいたしております。  それから光熱動力費でございますが、四千二百三十五円で、前年を一三・九%上回っております。これは、燃料価格上昇に加えまして、田植え機なりバインダー、トラクターのような機械装備台数増加によるところの使用量増加の、両方の結果でございます。  それから地代は二万八千八百三十五円でございまして、前年を四・九%上回っております。  それから水稲作収益性につきましては、十アール当たり収益は十五万四千七百九円で、前年を二・六%、金額にして三千九百七十六円上回っております。これは、主とした理由といたしましては自主流通米のウエートの高まりということでございます。十アール当たり所得、すなわち粗収益から物財費等を控除した額でございますが、これは七万二千八百二十一円でございまして、前年を一・四%下回るということの結果になっております。  以上、米の生産費の結果について御説明いたしました。
  9. 羽田孜

    羽田委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  10. 羽田孜

    羽田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川田正則君。
  11. 川田正則

    川田委員 限られた時間でございますので、率直に申し上げたいと思います。  自民党の農振協、農村振興議員協議会というのがございます。会員数は二百数十名で、いまこの時期でありますだけに、非常に活発に行動しているわけでありますが、先般、その会議をやっておりました席で、先輩のある議員の方が、今回の米価というのはわれわれ政治家に対して政治とは一体何かを問われているきわめて大変なときに来ているよ、そういう発言をされたわけであります。私は、それを聞いておりまして非常に感銘を受けたわけでありますけれども大臣もこの時期になりまして何度も陳情を聞かれていると思いますし、もう耳にたこができているかもしれませんが、今回の要求米価というのは、御存じのように、農民の皆さんにとりましては本当にぎりぎりの線だと私ども理解をしております。従来でありますと、長年続いてまいりました生産費所得補償方式によって算定をする。これも御存じのように、今回もその式でいきますと二九・二%、約三〇%になんなんとする要求米価になりますものを、単に物価労賃の最近の一年間のスライドを見て四・三七、そういうぎりぎりの線で要求をしてきていたわけであります。  したがって、それを受けた私どもも本当に背水の陣で、これだけは何としても通してやらなければだめだ、そうしなければこれからの日本農政にもう大変な食い違いが出てくるのではなかろうかということでいままで協議をし、相当早くから行動を起こしておりました。大臣御存じのように、大臣のところにも陳情に上がりましたし、大蔵大臣鈴木総理、党三役、くまなく回りました。きょうまた昼から回るわけでありますけれども、そういったときに、けさ諮問案据え置きということであります。そういうことについて、私どもけさから非常に紛糾した会議を重ねてまいりました。  農林大臣政治家でございます。非常に失礼な物の言い方でありますけれども、いま大臣でなかったら、私は恐らく大臣は私どもの先頭にたってがんばってくれているだろうというふうに考えているわけでありますが、諮問据え置きとなった段階で、私は農林水産大臣のお考えというものをまずお聞きしたいと思うわけであります。
  12. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 生産者団体要求米価、これについては、ただいま川田委員から御指摘がありましたように、確かにこれまでの生産費所得補償方式をこちらに棚上げしまして、そして賃金物価スライド方式算定された要求をしたということは、それなりに一つの大きな評価はしてよろしいと思うのです。  ただ、それだけで米価決定するのはいささか問題があるだろう、こう思いまして、私たちとしては、いま米をめぐる事情をいろいろ検討した結果、結論的に言いますと据え置き諮問をせざるを得なかったわけでございますが、その第一は、川田委員承知のように、去年まで二カ年凶作に遭いました。しかし、それは本質的な米の需給にそんなに影響は与えなかったということ、そして、むしろ潜在的な生産力というものが非常に成長いたしておりまして、逆に需要が非常に停滞しているということで、依然として米は過剰基調にあるということが第一でございます。  それからもう一つは、財政再建、いわゆる財政が非常に厳しい、ゼロシーリングと言われている中での米のいわゆる管理費の問題をどうするかという大きい課題があるわけでございますが、その中で私たちがいま抱えておるのが過剰米の処理問題でございます。これもかなり進行いたしております。それから水田利用再編対策、この費用も六十年がピークでございますので、これもかなり高まってまいります。そういう中で、米のいわゆる管理費財政の中でつくり上げていくとすれば、大変むずかしい問題でございますので、私たちはできるだけ米の需給のバランスをとる、そして合理的な経費の節減を図って管理費節減を図りたいという考え。  もう一つは、これは川田委員承知のように、米作のいわゆる経営の面からでございますが、いま米作生産性だとかあるいは収益性というものが作付規模によって非常に差があるということなんですね。それで、一方では兼業化されることによりまして、稲作所得収入というものの農家所得に占める率というのが非常に低くなってきているというような状況もございます。  そういうようなことを勘案いたしまして、そして米の需給を配慮しながら、三十五年以来採用してまいりました生産費所得補償方式を採用して、その上で計算した結果でございますので、私も政治家として、いま農家実情あるいはこの米の価格をめぐるいろいろな問題についてはわからぬわけではございませんけれども、私は冷静に見て、冷静に判断してこれが妥当なものと思いまして諮問をいたしているような状況でございますので、川田委員の温かい御理解をお願い申し上げる次第でございます。
  13. 川田正則

    川田委員 お気持ちとしてはわからないわけでもございませんけれども、やはり与党としても、本当にその辺は私はわかりません。特にけさ問題になりましたのは、算定方式のことであります。いままで、去年の場合特にそうでありますけれども、前年度と同様にして算定をしなければ、これはもう農家人たち不信感を与えるだけだということで昨年は終わったわけでありますけれども、今年もまた違う方式でやる、このことについては党内でも非常に強い不信感がございます。仮に去年と同様にやったとすると、けさも発表になりましたけれども、九・四%上げるということになる。それがまた据え置きということについては、とても納得できないし、農家皆さんにも説明がつかない。  そしてまた、もう一つ強く意見として出ましたことは、これはやり方によって、最初に据え置きと決めてしまえば、後はもう逆算方式でどういう算定方式もつくれるのではなかろうか。これに対してもきわめて強い不満が出たわけであります。ですから、私は強くそのことを感じると同時に、こういうことで日本のこれからの農政というのが果たしていいのかどうなのか、非常に疑問に思います。  ちょうど生産調整を始めたころでございますけれども、私の大先輩の方がいみじくもおっしゃいました。生産調整による土の荒廃というのは時間とお金をかければもとに戻るかもしれぬけれども、農民の心の荒廃というのは幾ら時間をかけたり金をかけても治るものでないぞということを言われたことを思い出すわけでありますが、私は、米価のこのいまの大事なときに、農民の皆さんの心を荒廃させてしまうようなやり方はうまくないのではないか、そういうことを強く感ずるわけであります。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕  それから、もう時間がありませんので、もう一つ言わなければなりませんのは、政府の一部で経済の原則ということを言われます。お米が過剰だから、余るから価格を下げなければならぬという理由はどうしても納得がいきません。仮に企業にたとえてみましても、たとえば赤字でどうにもならない大変な国鉄のような場合に、赤字であっても、ほかの三公社五現業、あれと同じようにベースアップをしなければならぬのは、私は庶民的な感情からいきましても、どうも経済の原則にそちらの方がむしろ当てはまらないのではなかろうかという気がしてならないわけでございます。  そんなことで、一部では公務員のベースアップと農家のこの米価とは趣旨が違う、性格が違うという意見もあるようでありますけれども、私どもは、素直に考えてみた場合に、どうしても違うものとは思えないわけであります。ですから、今回米価が上がらなければ、これはもうそちらの方に影響することも当然でありますし、また、最後までがんばるわけでありますけれども、うまくいかない場合は米価を決める時期をおくらせてもやむを得ないのではないかという意見も相当強くあるわけであります。しかし、きょう米審が始まった第一日目でありますから、その経緯というものは十分見守っていかなければならないわけでありますけれども、今回はとにかく自由民主党としても背水の陣で、ぎりぎりの線で農民の皆さんの心を荒れ果てさせないためにもがんばる決意でございます。  同時に、与党のあり方についても今回ずいぶん反省をされまして、従来の与党というのはどうも政府を守ることばかりに固執をしていた嫌いがあるようでありますけれども、それはそうではなくて、むしろ政府の進むべき方向に過ちのないように持っていくということが本当の与党のあり方だろうと確信をするわけでありまして、最後まで私どももがんばります。もうお答えは結構でございますが、どうか農林水産大臣最後までがんばっていただきたいと思います。  時間が参りましたので、これで終わりにいたします。
  14. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、安井吉典君。
  15. 安井吉典

    ○安井委員 先ほど食糧庁次長から御説明のありました内容について、初めに二、三お尋ねをしてまいりたいと思います。  昨年の方式試算した場合はどういう数字になるのか。それから、一昨年の方式で計算したらどういうことになるのか。すぐお答え願えればすぐ、あるいは時間がかかれば後でも結構です。
  16. 中山昇

    中山政府委員 昨年の米価算定と同様のやり方で計算いたしました場合は九・四%の引き上げになるということでございます。  一昨年の方式につきましては、ただいまちょっと手元にございませんので、後ほどお答えさせていただきたいと思います。
  17. 安井吉典

    ○安井委員 ありますか。
  18. 中山昇

    中山政府委員 一昨年の買い入れ価格試算の方法と同様の方法によりまして算定をいたしますと、二〇・六%の引き上げに相なります。
  19. 安井吉典

    ○安井委員 それから、一ヘクタール未満農家生産費は算入していないわけでありますが、念のため、全水稲作農家の数と算定に入った一ヘクタール以上の農家の数、その比率をちょっと教えてください。
  20. 中山昇

    中山政府委員 水田の全農家の数は約二百六十万戸でございます。それから、一ヘクタール未満の販売戸数のシェアは、五十六年産でございますと七九%の戸数になっておるわけでございます。それから、販売量で見ますと約四割でございます。
  21. 安井吉典

    ○安井委員 中核農家を主として考えていくという方針を初めお持ちだったようでありますが、一ヘクタールというのを中核農家というふうに考えておられるわけですか。
  22. 中山昇

    中山政府委員 先ほど諮問説明のときに申し上げましたように、私ども一ヘクタール以上のものをもちまして中核農家というふうには考えておりません。私ども米価算定いたします場合に、米価に応じまして生産が継続をされるということが、一ヘクタール未満の層でございますと、米価のいかんを問わず、生産費のいかんを問わずその生産が継続をされるというようなことがございますので、そういう層はやはり米価算定の場合には基礎とするのに適当ではないのではないかということで除外をしたということだけでございまして、一ヘクタール以上の水稲作農家がそのまま中核的な農家というふうに私ども考えてこういう算定をしたわけではございません。
  23. 安井吉典

    ○安井委員 いまお話がございましたが、この第一の方式にしても第二の方式にしても、単に米価を据え置くための逆算で出された式だとしか思えないわけであります。あとのその他のファクターは大体いままでと同じようなかっこうでやっているようですね、私も時間がありませんからまだ全部見ておりませんけれども。ただ、従来までと同じような方式なんだが、対象農家というのを限定することによって米価を下げようという、その意図だけが働いた逆算方式だと言ってもいいのではないかと私は思います。  だから、この方式は一ヘクタールでも一・二ヘクタールでも何でもいいんですよ、あなたの方は。ただ現在よりも下がった数字が出さえすればいいんですよ。もうそういう意図が働いているんだと私は思わざるを得ないわけです。中核農家ということを念頭に置いてやったという、そういう理論的根拠があればまた別ですよ。そうじゃないんじゃないですか。ただ一ヘクタールぐらいにしたらいまのこの数字のように計算が四百七十七円下がるのだ。そこが目安でやったにすぎない。あるいはまた、その一方式のうちの七九%の数字の出し方だって、どうもそういう気がしてならないわけであります。  大臣、いずれにしてもこれは毎年毎年算式が変わって、去年の方式でやれば九一四%アップ、おととしのでやれば二〇・六%アップ、ことしはまた算式を変えて引き下げ。こんなばかげたやり方を繰り返している限り、農政に対する農民の不信は高まるばかりではないかと思います。どうですか。
  24. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 川田委員にお答えしたのを繰り返すのでございますが、御承知のように、米が過剰基調にあるということ、あるいは財政の面が非常に厳しいということ、その中で水田利用再編対策だとか過剰米の処理をしていかなければならない。さらには、いま御指摘になりましたが、農家稲作経営の実態はやはり作付規模によってかなりその生産性だとかあるいは収益性というものに変化がある。ことに、兼業化が進むに従って、いわゆる稲作所得収入が、それで支えられている農家というものは必ずしも多い状況じゃないというような状況をも判断いたしまして、それで今回この算定方式を決めたわけでございますが、安井委員承知のように、食管法によりますと生産費及び物価その他の経済的事情を参酌して米穀の再生産を確保することを旨とするということになっているわけでございますので、基本的には具体的な計算方式というのはない。具体的にはあらわれていないわけでございます。しかし、三十五年度以来いわゆる生産費所得補償方式というものはそのときの米の事情を参酌しながらそれぞれ進められてきているわけでございますので、そういう点では、これまでのこの生産費所得補償方式を基本として算定されたものだということを御理解いただきたい。  問題は、いま日本農業の置かれている現状というのは、もちろん価格も重要な要素でございますけれども、それと同時に、もう一つは、いわゆる食管法を堅持しながら、あるいはまた水田利用再編対策を基本とした生産調整を進めながら、いかに国民のニーズにこたえる政策をつくり上げて、たくましい日本農業をつくるかということにあると私は思いますので、そういう点に力を入れた一つ方式であるということを御理解いただきたいと思うのでございます。
  25. 安井吉典

    ○安井委員 算式の細かな問題についてまだ時間があればと思ったのですが、何しろ短い割り当てですから、後でまた質問が続くと思いますから、私は細かく触れませんが、大臣がいま御答弁になって、ずいぶんいろいろなことを勘案したとおっしゃるが、一つ大事な点を言い忘れてはいませんかと私は言いたいわけであります。  それは、たとえば生産費の問題です。  先ほど統計情報部の方から御説明がありましたね、生産費調査。昨年の米の平均生産費は二万三百七十八円ですよ。同じこの席で、統計調査の方では去年はこれだけかかりました、二万円以上ですよ、こう言いながら、出てきた米価は去年と同じ、据え置きですよ。これでだれが納得しますか。特に最近の状況から言いますと、三ヘクタール以上の大きな農家を含めて、米の生産費は全部現行米価を上回っていますよ。こんな異常なかっこうが今日出てきました。昔は大規模農家は余裕があったのですが、去年からみんな価格よりも生産費が高いという状況があらわれているじゃないですか。こういう大事な点の勘案をお忘れになっているのではないか。  特に、稲作収益性はどんどん下がるばかり。十アール当たり五十三年度九万二千円台から、五十六年産米では七万三千円台に下がっていますね。所得率は五〇%を切って、四七%というのが去年の数字であります。稲作農家所得にいたしましても、五十二年度は一千万円ぐらいあったものが、その半分に減ってきています。とりわけそのことは中核農家への打撃が大きいということではないかと思います。零細農家の方を切ってしまえば中核農家が助かるんだという論理は、実は当たっていないのですよ。中核農家の方が先にまいってきているという状況があるじゃないですか。だから、若い後継者がどんどん農村を去っていく。  私の地元の農民連盟の青年部の諸君が毎年生産費調査をやっているわけで、その若い諸君がこれからさらに営農を推し進めよう、そういうような気持ちで毎年の生産費調査ではじき出した数字からは、六十キロ当たり二万五千二百八十五円はなければやれません、こういう数字が出てきているという実態も、私は一つつけ加えて申し上げておきたいと思います。  こういう状態が農村の購買力を減少させて、今日景気が後退し、内需の拡大が必要だ、こういうところにまた据え置きという形。据え置きというのは、去年と同額じゃないのですよ。去年よりも諸物価値上がりだけは実質所得が下がったということですから、これは大変なことなんです。あなたはいま据え置きと出したけれども、実際は農家の人は下がったとしか意識しないわけですよ。だから、これは今日の景気の状況にマイナス要素になることも間違いないと思うわけであります。  さらに、大臣は食管法の三条に基づいて、こう言われますけれども、あの条文をずっと最後まで読んでごらんなさい。生産費とか物価その他の経済事情を参酌して、そういうような中で、最後に「米穀ノ再生産ヲ確保スルコトヲ旨トシテ」こう書いてありますよ。すべての問題を処理して、そして再生産の確保を旨として決めるというのですよ。だとすれば、私が言ったような生産費所得状況、そういうようなものを無視した決め方というのは、これはまさに食管法違反ではないですか。私はそうとしか言いようがありません。どうですか。
  26. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、農家稲作経営の面から考えてみますと、安井議員承知のように、生産性だとか収益性というものはその作付規模によって非常に差ができているということは御理解いただけると思うのです。しかも、兼業農家というのは全体のかなりの部分、七〇%を占めるようになってきている現状ということを考えますと、これからの農業というものを本当に活気あるものにしていくためには、食管法を維持しながら、堅持しながら食管制度というものを堅持してまいらなければなりませんけれども、同時に、いま、価格よりも、将来農業が安定しなければならない、将来の安定のために努力をしていかなければならない非常に重要なときにあろうと私は思いますので、そういう点で、私は、いまこそ農業にとって一番重要な時期じゃないだろうか、かように考えますのでこういう算定方式にいたしたわけでございまして、決して再生産というものをこっちに置いて計算したというわけじゃございません。常にその点も配慮しながらしているということを御理解いただきたいと思うのでございます。
  27. 安井吉典

    ○安井委員 再生産を配慮してないからこういう数字が出るので、配慮していたらこんな数字にならないですよ。  それじゃ伺いますけれども、今度のこの生産費調査の中でもはっきり書いてありますよ。農機具費は五・一%アップ、肥料代は一四・三%アップ、農業薬剤費は八・六%アップ、ガソリン代などの光熱動力費は一二・九%アップ。さっき部長が説明しました。これだけ上がっているじゃないですか。そして農家のふところに入るお金は同じだということになったら、これはおかしいじゃないですか。  じゃ、据え置きなら、少なくも物財費、こういったようなものは去年よりも上げない、あるいは下げますというお約束ができますか。
  28. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 物財費その他については、私はできるだけ抑制をしてまいるという方向に努力をいたします。
  29. 安井吉典

    ○安井委員 何か具体的な方策はありますか。
  30. 小島和義

    ○小島政府委員 農業資材につきましては、農産物価格のように私どもは直接価格決定するという立場にはないわけでございます。ただ、御承知のように、肥料、農薬、農業機械等の価格につきましては、最大のユーザー団体でありますところの全農が各メーカーと取り決めます価格が市場の支配的な価格になっているという実情にございます。したがいまして、価格取り決めに当たりましては、特定の肥料につきましては行政関与の道はございますけれども、そのほかのものにつきましても、生産者団体に対する指導を通じまして極力抑制するようにいたしたいと思います。  また、肥料などの生産所管の行政機関であります通産省に対しても、企業の体質強化、合理化を通じましてできるだけ生産企業がコストを低くいたしまして農業に供給できるように要請してまいりたいと思っておるわけでございます。  五十六年度の生産費につきましては、御承知のように五十四年、五十五年が第二次石油ショックでございまして、石油の価格が三倍近くまで値上がりした時期でございます。肥料、農薬とも原材料及びエネルギー源としまして石油に大変多くを依存いたしております中で極力抑制に努めまして、肥料の方は一五%前後の値上がりになりましたが、農薬等につきましては八%前後ということで、極力抑制いたしました結果、このような価格水準に相なっておるわけでございます。幸いにいたしまして石油の価格水準も落ちついてまいりましたので、今後はこのような事態を繰り返すことはなかろう、かように考えております。
  31. 安井吉典

    ○安井委員 余り頼りになるようなお答えではないようでありますけれども、しかし、これはやってもらわなければいけませんね。できるだけひとつやってもらわなければいかぬが、しかし、どうもそんな頼りにならないようなお答えがあるから据え置きでもいいなどという論理にはなりませんよ、これはどう考えても。  もう一つ、ちょっと伺っておきたいのは、自主流通米に対する助成金、これはもっと後の時期で普通は決めているのですけれども、今度は決めてしまって、それは引き下げる方向でやりたい、こういう御意向を農林水産省はお持ちだという話が伝わっておりますが、いかがですか。
  32. 中山昇

    中山政府委員 自主流通米につきましては、これまで政府米に非常な売買逆ざやが存在をしておるということでございましたので、自主流通が政府米に比べましてハンディキャップを持っておるということがございました。そこで、その円滑な流通を確保するという趣旨で、各種の奨励金を出しまして助成をいたしたわけでございます。最近は、こういう助成の効果もございまして、全体の量の中の四割近くが自主流通へ流れるというようなことになってきたわけでございます。  この自主流通の助成の取り扱いでございますけれども、良質米奨励措置というようなものの拡充もございまして、この自主流通助成の金額、財政負担額というのは五十六年度の見込みで約千四百億を超えるような額ということになっておりますし、また、政府米の売買逆ざやというものも漸次縮小をいたしてまいりましたので、だんだんと政府米の財政負担と自主流通米財政負担とが接近をしてまいりまして、場合によりますと自主流通の方がむしろ財政負担がかかるというような状況もないでもないわけでございます。  また、それとともに、先ほども生産費調査のときにお触れになりましたけれども自主流通米の取引価格あるいは生産者の手取り価格というものもまた上昇を来しておりまして、こういうような状況考えますと、五十七年産米の自主流通助成につきましては、自主流通のこういうような実態やあるいは政府米の財政負担との関係その他を踏まえまして、自主流通制度というのがこれから健全な発展を図るように、そういう見地でひとつ初心に立ち返りまして検討をする、見直しをする必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  33. 安井吉典

    ○安井委員 この問題は、いまのようなお答えは大変重大な結果を呼ぶと思います。私は、後の質問もありますから、これは私どもの後の委員に譲ります。  そこで、次に、米価の問題に対して外部からさまざまな圧力がかかっている問題について、二、三取り上げてみたいと思います。  一つは、臨時行政調査会が第一部会報告の中で「重要行政施策の在り方」として農政の問題を取り上げ、いま七月末を目指して取りまとめ作業が行われているわけでありますが、恐らくこの第一部会報告と同じようなかっこうで結論が出るのじゃないかと伝えられております。  たとえば、食管制度の問題については、このままでいけばもうほとんど食管制度はその機能を失うのではないかとさえ思われるような中身になっています。売買逆ざやの問題もまた去年に引き続いて書いていますけれども、売買逆ざやだって、一ころかなりあったのが最近はぐっと減っていますよね。それにもかかわらず、またなくせと言う。これは、なくなってしまえば食管制度はいらないのですからね。あるいはまた、自主流通米の問題は、いまの御説明も大体この線に沿っているような気がするのですけれども、助成の縮減合理化を図り、量的な拡大を図れとあったり、中核農家のコストと所得を基準とする方向で米価を決めなさいとか、何かこう先ほど来の食糧庁あるいは農林水産大臣説明は、大体臨調の方針でやっているのかとさえ思わざるを得ないような中身になっているわけであります。  そのほかいろいろありますけれども、こういうようなものを農林水産省は容認してこれからの米価を初め農政に対応していこうというおつもりなんですか。大臣、どうですか。
  34. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 第二臨調の基本答申はこれから出てまいることになりますが、私たちはできるだけそれは尊重していかなければならないというのが内閣としての方針でございます。しかしながら、ただいま御指摘のように、いわゆる食管制度について私たちは堅持していかなければいけない。逆ざやはある程度解消してまいらなければなりませんけれども、いわゆるコスト逆ざやというのは、食管制度がある限りこれは堅持してまいらなければならない、かように考えております。  また、農業は過保護だというような考え方等もいろいろ指摘しておりますが、私は、農業の持ついわゆる体質から、これまでいろんな補助金、奨励金等で政策を進めてきたこの体質はやはり急激に変えるわけにはまいらない状況にございますので、そういう点では、私たちの主張はできるだけ主張して今後の農政に大きな前進をもたらしたい、かように考えております。
  35. 安井吉典

    ○安井委員 前進する答申ならいいのですけれども、後退の中身がかなり多いものですから、私は心配しているわけであります。大臣もいろんな大臣がおられるけれども、臨調の答申に徹底的に抵抗する構えを見せております大臣もいますね。ひとつ農業や農民にマイナスになるような答申には、やはり農林水産大臣はきちっと反対なら反対と対応してもらわなければならぬと思いますが、重ねて、どうですか。
  36. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 農政の基本を守るために、農林水産省としての主張はあくまでも主張してまいりたいと考えております。
  37. 安井吉典

    ○安井委員 それはもっとがんばってくださいよ。  それからもう一つは、外からの圧力として、農産物の輸入自由化のアメリカやEC等からの強要とでも言うべきものがあります。この間うちのやりとりは、農林水産物については一応かすり傷程度で過ぎて、しかし十月以降に問題は持ち越されているということであります。ですから、それをきちっとはねのけなければ日本の農業や農民の将来はないのだと私は思わざるを得ないわけであります。  ところで、七月五日付の朝日の記事で食糧問題の企画記事があり、これは十一面に載っているものですから私も気がつかないで、きのう言われて初めて読んでみますと、これはかなり大事な問題ではないかと思うわけであります。  その内容は、五月のOECD閣僚理事会出席したアメリカのブロック通商代表、この人から櫻内外務大臣に書簡が渡されました。その書簡の中には、農産物は一部でも自由化せよという内容を含めて細かな品目にわたって市場開放要求をするという長文の本文があり、そして追って書きでは、自由化第二弾を発表するときには、日本政府は鈴木首相の宣言文もつけなさい、その中では日本の姿勢を世界に宣言する、つまり「輸出は善、輸入は悪という考え方からの脱却」ということを世界に宣言してください、こう書いてある手紙であります。ほかの国、アメリカの官僚から日本の総理大臣にこうしてくださいという内容まで含めた、その案文まで加えた手紙というのは、私は問題だと思うわけであります。  しかも、もっと問題なのは、このブロック書簡というのは、実は日本の通産省がこの案文をつくった。これは、どうも官房長やらあるいは局の次長やらの発案だというのでありますけれども、ブロック書簡の内容を通産省でつくって、それを通産省で英訳をして、女の通訳官だそうですけれども、そして栗原審議官がアメリカに行ってUSTRの幹部と会って極秘裏に手はずを進めてきたものだ、こういうわけであります。アメリカから来るのもおかしいけれども、しかし、それをつくったのが日本の通産省の官僚で、向こうにやって、こういう手紙を日本の外務省の方におまえさんの方から出しなさい、そうすればいまの貿易摩擦の問題はうまくいきますよ、根回しというのはこういうのですかね。  貿易摩擦を解消するためには農産物の自由化さえすればいいんだと通産官僚は骨の髄まで考えているのかもしれませんけれども、自分だけで考えているならまだましですが、それをアメリカに根回しをして手紙をよこさせるなどという、そういうあり方を許しておいていいのかということですよ。これは、日本の主権国家のあり方についてのきわめて重大な問題になるのではないかと私は思いますから、別な機会に取り上げなければならないと思います。しかし、きょうは大臣に対して、このようなあり方は私は許されないと思うのだが、大臣はどうお考えなのか。そして、この点については、農林水産省としても、私の方もちゃんとしますけれども、やはりきちっとお調べおきをいただきたいと思います。どうですか。
  38. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 三月の日米貿易小委員会以来数回にわたって日米間の農産物の協議を進めたのでございまして、その間にいろいろな問題がございました。しかし、最終的に五月二十八日、農林水産省が窓口で協議を進め、窓口で結論を得て、第二弾対策のための合意が成り立ったということは高く評価してよろしいと私は思うのです。  いま御指摘のような新聞等を私も見ました。それは、かつては外務省あるいは通産省がそれぞれの意向でアメリカにアプローチしたこともあったかもしれません。しかし、いまの段階では、日米農産物交渉については農林水産省が窓口で、農林水産省が責任を持って交渉に当たるということに相なっておりますので、その点、御理解いただきたいと思うのでございます。  今後、私たちは、十月の牛肉、柑橘を含めて、他の農産物の協議を進めてまいりますけれども、アメリカから自由化の要請はあるかもしれません。しかし、私たちは、日本の農業の発展を維持するため、あるいは食糧安全保障の面から、あくまでも日本の農林水産業の実態を説明する、あるいはまたいままで農産物市場開放の措置はずいぶんやっておりますので、それを説明いたしまして、理解を得て、そして自由化に手を染めずに措置ができるように努力をいたしたい。しかも、先ほど申し上げましたように、農産物についての交渉はあくまでも農林水産省の責任においてこれを交渉し、結論を得るということでいままでもまいりましたし、今後もまいりたい、かように考えております。
  39. 安井吉典

    ○安井委員 この問題についても、ひとつちゃんとお調べおきいただきたいと思います。  そしてまた、この中にもありますけれども、たとえば「国際化に対応した農業問題懇談会」の席で、ソニーの井深名誉会長は、農業はむしろそっくり東南アジアへ移した方がいい。日本の農業はやめてしまえばいいというわけですね。競争力を失ったものを国内に抱え込んでおくことは国民的な損失である、計算すると、農家には農産物をつくってもらうより金を渡して遊んでいてもらった方が得だ、大体農業と工業とでは単位面積当たり生産性で千五百倍もの大きな開きがあると発言している。それはそうかもしれませんね。しかし、このような発言があって、これが財界の底流なのですよ。その財界の底流が臨調にもそのままずっといっている。つまり、いまの農産物の自由化要求と臨調の答申とはそこでつながっているのですよ、日本の経済界の基本的な考え方で。私は、そのことを明確にしない限り、農業をしっかり守る道というのは開かれないのではないかと思うわけであります。  時間が大分なくなってまいりましたから、この問題は一応そういう指摘だけにとどめておきますけれども農業をめぐる外からと内からとの圧力に対していかに耐えてそれを切り抜けていくかということが最大の問題だということを、ひとつ農林水産大臣以下農林水産省の幹部の皆さんは肝に銘じておいていただきたいと思います。  あと、備蓄の問題だとかいろいろありますけれども、備蓄のことだけちょっと聞いておきます。  農林水産省の説明によりますと、五十八米穀年度への持ち越しは、ことしずっとやってきて供給量千百二十万トン、需要量千六十万トンで、差し引けば六十万トンは来年に回すことができる、こういう御説明を聞きました。さあ、その六十万トンというのは政府米なのか自主流通米なのか、それとも農家手持ち米なのか。これは合計ですからね。それはどれでお考えなんですか。その点を伺います。
  40. 中山昇

    中山政府委員 本年の米の需給につきましては、先生御指摘のように、昨年の十一月一日の持ち越しが九十一万トンでございまして、国内の生産量が千二十六万トン、需要量が五十七米穀年度で約千六十万トンということでございますから、ことしの十月末に約六十万トンの持ち越し量があるということになるわけでございます。九十一万トンと申しますのは政府の在庫でございまするけれども、これは恐らく六十万トンと申します本米穀年度末の在庫も政府で持ち越せることになるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  41. 安井吉典

    ○安井委員 それにしても、月需要量は六十万トンから六十五万トン要るのでしょう。そうすると、持ち越し一カ月あるかなしかというようなことでは、二百万トン備蓄などというかつての計画もありましたけれども、たとえそれに届かなくたって、そんなので大丈夫なのかということをみんな心配するわけですよ。どうですか。
  42. 中山昇

    中山政府委員 ただいま申し上げました約六十万トンの備蓄と申しますのは、政府米の持ち越しということになりますと、一カ月間の政府米の需要量というのは約三十万トンでございます。したがいまして、そのほかに自主流通があるわけでございますから、自主流通を除きました政府米の需要量一カ月当たり約三十万トンということからいたしますと、二カ月分の古米の持ち越しがあるということになるわけでございます。  さらに、今年産米につきましては、五十五、五十六年と二年続きました不作の影響等を配慮いたしまして四万六千ヘクタール転作目標面積を減らしましたことによりまして、ことし平年作でございますれば、来米穀年度末の来年十月三十日には約九十万トン程度の持ち越しができるというふうに考えておるわけでございまして、そういうことからいたしましても、本年の米の需給には私ども心配を持っておりません。
  43. 安井吉典

    ○安井委員 備蓄の問題はどうですか。
  44. 中山昇

    中山政府委員 備蓄ということにつきましては、ただいま農政審議会でも御議論をいただいているところでございますが、私ども、従来、先生おっしゃいましたような約二百万トンの回転備蓄というようなことを考えたことがございます。また、現実に一昨年の古米の売却量は約百七十八万トン程度でございましたから、その程度の備蓄を持ってそれを翌米穀年度に食べさしたということはあるわけでございますけれども、一昨年のような非常な不作の年は別といたしまして、持ち越しました備蓄を全部回転をいたしまして翌米穀年度で消費をするということになりますと、古米の消費量が新米の消費量に比べまして非常に大きくなるということから、消費者の納得もなかなか得られないというようなことがございまして、回転備蓄の方式というのについてはいろいろ問題があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  このほかに、棚上げ備蓄と申しまして、一定の量の備蓄をいたしておきましたものを、低温保管をいたしまして二年なり三年なりたちましてから原材料の用途に供して処理をしていくというような方法も考えられるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、現在の非常な需給のアンバランス、過剰のもとにおきまして備蓄のための量をふやすということになりますと、それが生産調整に及ぼす影響というのは非常に懸念をいたすわけでございます。生産調整あるいは需給均衡化ということに影響を与えないようなことで、新しい備蓄の方法について鋭意検討いたしているところでございます。
  45. 安井吉典

    ○安井委員 あと、農家の負債対策の問題も取り上げたかったわけですが、ちょっと時間が足りなくなりましたので、これは別な機会にしたいと思います。  私は、きょうのこの米価についての集中審議の結末として、ここで全体で米価の問題に対する決議をするということが必要ではないかと思います。理事会の中でも提案をしているところでありますが、野党は全体同じ意見になっています。問題は自民党だと私は思っておったのですが、さっきの川田委員の質問の状況から言えば、自民党の方も据え置きは反対である、据え置きで反対ということは引き上げということでありますから、去年もおととしも決議は不成立に終わりましたけれども、ことしはどうもできそうな気がするわけであります。これは自民党からお答えを願うわけにもいかぬので、ひとつ委員長においてきちっとお取りまとめをいただきたいと思いますが、どうですか。
  46. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 後ほど理事会におきまして協議をさせていただきたいと思います。
  47. 安井吉典

    ○安井委員 最後に、農林水産大臣に申し上げておきたいわけでありますが、私、後半でいろんな問題を取り上げましたけれども、前半で申し上げましたことしの諮問米価のあり方というのはどの道からいったって筋の通らないものであって、単なる財政技術論あるいはまた米過剰を恐れる、米過剰というのも財政的な問題なんですけれども財政の問題が大事だということは私どももわかりますが、それによって農民の生活を崩すということはどうしてもわれわれは認めるわけにはまいりません。したがって、これは米価審議会の方でもいろいろ問題が提起されているのではないかと思いますが、こういう筋の通らないものはもう一度引っ込めて新たに諮問をし直すという必要があるのではないかと思います。私はそのことを要求したいと思いますが、どうですか。
  48. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、食管法には米価決定に際しては生産費及び物価その他の経済事情を配慮して、さらに穀物の再生産を旨とするという条項がございまして、しかも、具体的ないわゆる算定方式が示されていないわけでございます。  そこで、三十五年以来採用されておりました生産費所得補償方式、これにただいままでのいろんな事情を勘案して算定いたしたわけでございますので、私たちとしてはこれが妥当な諮問案であると考えておりますので、撤回する意思はございません。
  49. 安井吉典

    ○安井委員 食管法はなるほど生産費所得補償の方式と書いてありますけれども生産費所得補償と名前がつけば何でもいいというわけではないわけですよ。最後のとどめの言葉、再生産を旨とするというのが大切なんです。このいまの諮問が再生産を果たすようなものだとは私どもは絶対に考えられません。  重ねて出直し、再提出を要求して、終わります。
  50. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、稲富稜人君
  51. 稲富稜人

    ○稲富委員 私の質問時間はわずか十三分でございますので、小さいことはほっておきまして、本年度の米価決定の問題を中心といたしまして、大局的な問題につきまして大臣にお尋ねしたい、かように考えております。  先刻から大臣の御答弁を聞いておりますと、今年度の米価決定に当たって諮問された要旨というものは、将来の日本農業というものを健全にしていく、こういうことを含んで諮問をしたんだ、こういうことも強く主張されておるのであります。  そこで、私はここで大臣に特にお聞きしたいと思うことは、一体政府は将来の日本農業というものをどういうような形、位置づけでいこうとしているのか、この点をひとつ率直に承りたいと思うのでございます。
  52. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 わが国農業は非常に厳しい環境にあります。そういう中で、やはり食糧の安定供給、さらには地域の就労の場、さらには国土あるいは自然の環境の保全という役割りを果たしてまいらなければならない。そのためには、何としても生産性の向上が一番重要なんでございます。  そこで、生産性を向上するに当たっても、やはり食糧の安全保障という観点から、国内で生産できるものはできるだけ国内で賄うという基本ですね。それからもう一つは、やはり国民の需要動向に従ったいわゆる農業の再編成を行わなければいかぬ。ですから、お米が過剰になっている現象というのは、戦後起きた現象でございます。それは、生活様式が変わった、そのことによって食糧の嗜好が変わってまいりまして、国民全体が米よりもパンあるいは肉、野菜に移行してきているわけですね。このことを、これはだれが悪いから何とかしなさいと言ったってなかなか否定できないものでございまして、私たちは米飯の消費拡大のために最善を尽くしておりますけれども、国民のニーズは米飯の消費拡大というものに、なかなかその方向に行っていない。だとすれば、国民のニーズに従って農業の再編成をしていかなければならない。そういう基本に立って進めるとすれば、やはり水田利用再編対策という、一つ生産調整という面でここにある一定の補助金を与えて、そこで新しい農業をつくろうという決意でいまいるわけでございます。それを基本にして基盤整備をする、あるいは技術開発をする、経営規模拡大する、あるいは先ほど来お話しの農業資材を安定供給するという、いろんな要素をそこに集中して、日本の新しい農業の姿をつくりたい、かように考えているわけでございます。  特に、私は価格の面で今回こういう諮問をいたしたのは、確かに農家の方々は苦しいです、厳しゅうございます。しかし、いま厳しいけれども、将来の農業のためにいろんな客観情勢を勘案し、日本農業理解してもらうためにある程度農家の方が負担をしていただいて、将来のためにいま本当に新しい農政をつくらなければならないときだ、こう私は考えますがゆえに申し上げておるのでございます。第二種兼業だとか老齢化している日本のいまの農業の現状を見ますと、もっと活力ある若い人が思い切って飛び込んで新しい農業が盛り上がるような形にしたいというのが私の願いでございます。
  53. 稲富稜人

    ○稲富委員 私の持ち時間は十三分でございますから、大臣の答弁の方が長うございますので、質問の時間がなくなります。  それで、いま大臣もおっしゃったように、農業の基本というものは、国民にいかに食糧を安全に供給するか、ここに重大な使命があると私は思うのです。ところが、御承知のとおり、現在日本の食糧の自給率というものは低下しております。国会では、二年前に食糧自給率強化に関する決議をいたしました。衆参両院ともに食糧の自給率向上に対する安全保障の立場から決議いたしましたけれども、その実、食糧の自給率は低下いたしております。この事実はどこにあると御認識になっているか、まずこの点を承りたい。
  54. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 これは、先生、私から御説明申し上げるまでもありません。私たちの国は豊葦原の瑞穂の国でございますから、お米が、稲作が一番よろしいのですよ。ところが、最近はお米が余って、そして大体自給できるものは果樹、肉、野菜でございますが、あと小麦、トウモロコシ、大豆は輸入に依存しなければならないという現状、これは食生活から来ていることなんです。私たちは、これを解消するためには、何としても先ほど申し上げましたいわゆる水田利用再編対策を大きく活用して、これで定着し、集団化していかなければならない、かように考えているわけでございますので、この体質を何としても直していかなければいけない、こう思うのでございます。
  55. 稲富稜人

    ○稲富委員 いま大臣もおっしゃったように、食糧というものを確保していかなければいけない。それがために、日本人といたしまして食糧を最も大きく担うものは米作でございます。この米作をどう持っていくかということも非常に重大な問題であると思うわけでございます。この点に対して、米作というものがもっと伸びなければいけないのじゃないか。いまではいろんな関係上減反等をやられておりますけれども、これでいいのであるか、こういうことに対してはどうお考えになっているか、承りたい。
  56. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 米作については、わが国としては当然に進めなければならない、一番適した作物でございますから。さらに、自然環境の面から言っても国土保全の面から言っても、水田の役割りというのは非常に大きいのです。水資源あるいは災害、そういう点から言って、また豊かな土壌をつくるという面から言っても、水田の役割りというのは非常に大きいわけでございますから、水田、特に稲作というものの価値は非常に高いのでございますので、これの奨励のために私たち努力をしていかなければならない、かように考えます。
  57. 稲富稜人

    ○稲富委員 大臣米作の必要というものを非常に認識していらっしゃるということは、非常に結構なことであります。  それで、われわれが考えなくちゃいけないことは、しからば米作というものを非常に安定化するためには、決めるものは米価の問題なんです。米価がどう決定するかということが、米作の発展にも非常に影響することであります。そういう点から、本年度の米価に対しましても、私たちはやはり農民が希望を持って米作に従事し得るようなことをするために、まず価格問題を片づけなければいけないと思うのでございます。  もう時間がありませんので、簡単に結論から申し上げますが、ところが政府は、本年度の要求米価に対しても据え置きをなされたということ、しかも、先刻から御説明を聞いておりますと、食管法に基づいて米価決定をやられたということは御説明のとおりでございます。ところが、その食管法の解釈の仕方ですね。御承知のとおり、食管法の第三条には「生産費物価其ノ他ノ経済事情」とある。生産費物価が主体である。ところが、生産費物価が大事でなければいけないけれども、その他の経済事情を先に参酌されている。経済事情を先に参酌しながら米価算定というものをだんだん少なくするような、いわゆる据え置きにするということに合わせるような算定方式をとられているということ、これでいいのであるかということであります。この点、私たちは非常に考えなくちゃいけないことなんです。  たとえば、昨年の米価でもそうでございましょう。御承知のとおり、政府から発表されております五十六年度の六十キロ当たりの米の平均生産費は、二万三百七十八円ということを発表されております。ところが、実際決められたものは一万七千四百八十七円なんです。これを決めるときは生産費を補償するということで決められたかもしらぬけれども、やはり平均生産費は非常に上がっているのですよ。この点から言うと、その米価決定したときはどういう算定をされたか。いま言うように、経済事情のみを考えてやられるからこういうような安い算定をされた。ところが、事実において、結果においては五十六年度は六十キロに対して二万三百七十八円生産費がかかっているんだと農林省が発表されているのです。  これでいいのであるか。農民から見ましては非常に不満でしょう。やはり何を生産するにいたしましても、生産する者には生産した報酬というものが払われなければ生産されません。生産費にも満たないような価格決定するということは、再生産を促すことにはならないということになってくる。口では再生産をなせるような価格決定すると言いながら、生産費を償わないような価格決定するということは、これは価格決定に対して大きな間違いがあったということなんです。本年もそれと同じようなことになると思うのでございますが、これに対してはどういうような解釈をしていらっしゃるか、承りたいと思います。
  58. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 繰り返すことになりますけれども、食管法では、生産費及び物価その他の経済事情を勘案してとあります。しかも、これまでもそのときどきのいわゆる米をめぐる事情を勘案しながら生産費所得補償方式というものを進めてまいったわけでございますので、今回も、米をめぐる諸事情というのは非常に厳しい、そういう中で米価を決めるに当たっては、もちろん生産費あるいは再生産というものは十分念頭に置きながら、その事情というものをよく考えながら米価というものを決定しなければならない、私はそういう意味で今回この諮問案をお願いしているわけでございまして、決して農家の方々の再生産を大きく抑圧するというような意欲でやっているものじゃないということだけは御理解いただきたいと思うのです。
  59. 稲富稜人

    ○稲富委員 もちろん大臣の気持ちはそうでございましょう。そうでないとおっしゃったら大きな問題でございます。  問題は、いま申しますように、据え置きにするということを前提として逆算したような算定方式をやられますと、ことしもその算定方式でやられているでございましょう。そうすると、その結果は生産費をも償わないような、来年の計算だってそうなってくるのですよ。こういうような矛盾が生じてくる。  それで、これに対しては率直に生産費は幾らかかるのだということを言う。生産費をなるべく下げるような逆算した計算ではなくして、正直に、物価も上がるであろうということを基準にして、今年度の算定によって生産費はこれほどかかるのだ、本来から言うならば次期生産を確保するためには食管法の定めるところにおいてこれこれの値段で政府は買い上げるべきである、しかしながら経済事情を参酌してこれだけでがまんをしてもらおう、これで政府諮問するのだとおっしゃれば、農民は政府に米を売るために非常な犠牲を払っているのだということを一般の国民も理解すると思うのです。ところがそれは言わないで、本年は農民は要求する方も非常に遠慮をした価格を出しているのに、政府は依然として据え置きだ、物価は上がったけれども据え置きだとおっしゃる。そうすると、一般国民から言うと、いかにも農民が無理な要求をやっているような感じを与える。これに対して、農民に対する過保護であるというような言葉も出てくるのです。しかも、最後にはわずかばかりのつかみ銭で、与党のおかげでこれだけもらいましたということで片づけてごまかしてしまう。これが農業の基本を誤る結果になると私は思う。  本当に生産費はこれほどかかるのだ、しかしながら農民にはがまんをしてもらうのだ、経済事情その他の事情があるからこれでがまんしてください、こういうことをこの米価決定に当たって政府は率直に言ってやるわけにはいかないか。これくらいの誠意を持ってやらなければ、農民は生産する意欲も希望もなくなるのです。初めからおまえたちの言うのはだめだ、無理なんだでは生産意欲はわきませんよ。農民も本当にそれだけ生産費がかかっておりましょう、しかし国の経済事情はかくかくの事情だからこれでがまんしてもらいたいと言えば、農民は納得しますよ。なぜこれをおやりにならないのか。そうすることが農民が生産意欲を持つことであり、農業に希望を持つゆえんもそこにあると私は思うのです。これをやらないから農民はだんだん農業というものに希望をなくしていくのです。私は、これは米価決定に対しても非常に必要なことである、かように考えます。こういうことに対してどういうようにお考えか。農林大臣農業を思い、農民のことは十分に知っていらっしゃるから、率直に農林大臣の気持ちを承りたいと思うのでございます。
  60. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 私、いま考えておるのでございますが、いまお米を生産する人たちに本当に意欲を燃やしていただくのは一体何なのか。もちろん米価というものは高いほどよろしゅうございましょうけれども、国際価格その他を考えますと、日本は単に日本として世界の中で孤立しているわけにいかぬ状況にございます。そういうようなことも配慮いたしますと、やはり生産性を向上してできるだけコストの安い米をつくるということは、これは単に第二臨調が言ったとか経団連が言ったということではなくして、農家みずからが新しい農業のためにコストの安いお米をつくるという意欲がなければ日本農業の確立はないと私は思うのでございます。そういう意味で、将来ともこの米価は据えおくことによって大きな負担になるでございましょう。しかし、このことによって農家の方が、消費者、国民全体が理解して、農業振興のための諸施策を思い切ってやりなさいというような雰囲気をつくることが、むしろ新しい農業をつくるための土台であろうと私は考えますので、今回はあえて据え置き諮問をいたしたような状況でございます。こういう点も、稲富先生、ひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  61. 稲富稜人

    ○稲富委員 時間が来ましたから、結論に入ります。  私は、本当に農民が希望を持つようにするのならば、こういうことをするから農民は希望を持ちなさい、ただしこれに対しては生産コストが下がるような方法をやりなさい、国としてもそういう希望に対してはできるだけ応じましょうということで、農民に対する強力な指導力あるいは協力を政府みずからがやって生産コストを下げるという方法をやっていかなければならないと思うのだが、それはやらないで、できた米は安くさせて買い上げればいいのだ、これでは農民が希望をなくすのです。これは、日本の農政においては非常に必要なことであると私は思う。希望を与えながら国策に沿うような価格でやっていくということ、これが農政の最も必要なものだ、かように私は考えます。  現に、本日のこの米価に対しましても、据え置きだということに対して農民は失望いたしておりますよ。そういう点から、いま農林大臣がおっしゃるように、本当に農民を思い、日本の農村を思うような気持ちであるならば、ことしの米価審議会に対する諮問は実はこういうことでやったのだ、間違っておるかわからぬ、将来考えるのだ、こういうようなことまではっきりして農林大臣が対処されるということが農民が政府を信頼するゆえんであり、また農林大臣を信頼するゆえんであり、ひいては農民が生産に意欲を持つゆえんであると私は思うのです。これがなくしてただ抑えつけさえすればいいのだというようなことでは、農村の発展なり農民に希望を持たせることは決してできないと私は思うのです。  この点に対して、ひとつ農林大臣は心を新たにして農民対策というものを考えていただきたい、こういうことを私は強く要望いたして、さらに、今回の諮問米価はそういう点からやはり考えるべきものである、そのままではなくして考えるべき必要があるということは農林大臣も十分考えて処していただきたい、このことを最後にお尋ねし、大臣のこれに対する考え方を率直に承りまして、私の質問を終わります。
  62. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先ほど来申し上げておりますが、いま農業の置かれている現状というのは非常に厳しいと私は思うのです。私も農業をやっている一員でございますが、私の部落は二百戸の部落でございます。昔は二百戸の人が全部農業をやっておりました。いまは農業をやっている人が半分よりいなくなっているのです。兼業農家です、混住化です、老齢化です。こういう中で農業をどうしなければいけないかということは、しかも、米の需要がだんだん落ちてくるという中で大きな転換を必要とする。その大きな転換は悩みですよ、苦労ですよ。汗をかかなければできないと私は思う。  私は、そういう意味で今回の米価農家の経済からいっても非常に厳しい、また現状も厳しゅうございましょうけれども、その中から新しいものを国民の理解の中でつくっていくということがいま一番重要なときだと思いますから、あえてお願いをいたしているのでございますので、先生の温かい御理解をさらにお願いいたします。
  63. 稲富稜人

    ○稲富委員 一言だけ。実は私は、農林大臣農業の問題に関係していらっしゃる、非常に造詣が深いということを知っておるだけに、従来の農林大臣と違って、農民もあなたに対する期待は非常に大きかったのですよ。今回の米価決定において、その農林大臣の意思がここに注がれるであろうということを全国の農民は期待をしていた。ところが、今回の据え置き米価に対して農林大臣に対する期待外れがあるということは、逆に農民は農業の将来に失望するということになるのです。それだけに、農林大臣の使命は大きいわけでございます。あなたに期待をし、あなたを信頼しておるだけに、農民のこれに対する希望がなくなるので、その点、農林大臣は非常に責任があると思います。そのことを十分考えながら、農民の期待に反しないような農政、そういう対策をやっていただきたいということを強く農林大臣に要望いたしまして、私の質問を終わります。
  64. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、藤田スミ君。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕
  65. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 けさ、この「昭和五十七年産米穀政府買価格試算」というのをいただいたわけですが、その「基準価格」のところに(1)、(2)、(3)として、特に算定1、算定2と二本立てにして、それで出してきた試算と三番目の「前年の基準価格」とを並べてあって、つまりそれを勘案して決めるということなのですが、結論は据え置きということになっているわけですね。私は、これ自身、数字合わせとか逆算方式だとか先ほどから言われておりますが、全く理解に苦しむわけです。昨年も算定要素を大幅に改悪して、本来一一・七%の引き上げになるものをゼロにした。そして、引き続いてことしもさらに改悪をして、九・四%になるはずのものをゼロにした。先ほど御説明の農水省の統計情報部の資料を見ましても、五十六年度の生産費は明らかに五・一%引き上げられていて、六十キロ当たり二万三百七十八円かかるのだというふうに言われておりながら、こういうふうな五年も連続した据え置きという決められ方は全く納得がいかないわけです。  私は、大臣が以前から夢のある農業をと言われ、先ほどからも農業に将来あれということで非常にりっぱな御発言がありますけれども、しかし、果たしてこれで農業に夢が持てるだろうか、どういった夢を持てと言われるのか、そう言いたくなりますし、冷静に判断をしてこの諮問の内容を決めたのだと先ほど大臣の御発言にありました。私は、冷静に判断をしてという大臣のお言葉を聞きながら、冷酷に判断されたというふうに言葉をかえなければいけないなと考えたわけです。  そこで、私は最初に、この諮問は撤回をしていただきたいということを申し上げたいと思います。  それからもう一つ、この中で潜在需給ギャップという大変耳なれのしない言葉がありまして、生産調整なかりせばということを前提にして生産量を使っているわけですが、このやり方は、第一に、事実上は強制転作であって、農民には米をつくる自由というものがあるのでしょうか。現在はないのでしょう。そういうことを全く無視したものである。それと同時に、もう一回開き直って、これでは、米価は転作がないという仮定の上で計算されるものなんだから、転作はやらない、米は自由につくってもらってもいいということになっていくのかというふうに聞きたくなるわけです。水田利用の再編対策にまじめに農民の皆さん努力をしてこられました。それを全く否定するようなこういうやり方に納得がいきません。  同時に、潜在需給ギャップの問題で二番目の問題は、この論法でいけば、転作が続く限り米価は将来とも抑制されていくというふうにならざるを得ないのではなかろうか。それは、あの方式の中で、政府の見通しでは米の需要は今後とも減り続ける。ところが、面積当たりの収量の方は今後とも上がり続けていくわけですから、転作は続いても面積当たりの収量は上がって、一方、米の需要は今後とも減っていくとなると、結局、米価は将来にわたって抑制され続けていく状態にならざるを得ないのではないかと考えますが、この二点、お伺いをしたいわけです。
  66. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今回の諮問案は、先ほど来御説明申し上げておりますとおり、米の過剰基調、さらにはまた財政が非常に厳しい中で、私たちはこれまで進めてまいりました水田利用再編対策だとかあるいは過剰米の処理その他を進めてまいらなければいけない、また、農家経営の面から見ても、最近は作付規模によって非常に大きな変化生産性においても収益性においてもある、こういう点を勘案しながらつくられた諮問案でございますので、撤回する意思はないということを申し上げます。  また、潜在生産力の問題についても、いまの農業の実態というのは潜在的な生産力が非常に強くて、それで需要が非常に落ちている。たとえば潜在的な生産は千三百七十五万トン、それに対して需要は千八十万トンでございますから、その間のギャップを一応考え米価の基本的な考え方にしてみても意義がないわけじゃない。むしろ大きな、正しい米価決定一つ要素になるのじゃないかということでこれを提示しているわけでございますので、そういう点もひとつ御理解をいただきたいと思います。
  67. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 現実的に対応してこうなったんだというふうにおっしゃっていらっしゃるわけですが、昨年までの生産量というのはこれは現実ですから、きわめて現実的だと私は思うのです。しかし、今度取り入れられたのはあくまでも架空でしょう。生産調整なかりせば、こうくるわけですから、架空の話を置いて、それで数字をはじいていくというやり方は全く納得できません。  もう一点ですが、都府県では一ヘクタール以上の農家はわずかに一四・五%ですが、なぜ一ヘクタール以下の農家生産費を償わなくてもよいというのか、その理由が全くわからないわけです。しかも、五十五年度で見ますと、結果としては一・五ヘクタール以下の農家生産費を償っていない、そういう資料もございます。実際そういうことなんですが、一ヘクタール以上の平均では、もっと大規模農家がむしろ生産費も償えないというような状況になっていくのではなかろうか。そういう点では、諮問した米価で一体何ヘクタール層の生産費がカバーされるというふうにお考えなのか、この点が一点です。  時間がありませんので、続けます。  もう一点は、五十六年度の、前の生産費で言うと、家族の労働報酬は一日当たり四千六百七十四円、つまり一時間当たりで五百八十四円二十五銭なんです。これは、昨年の米価算定に当たって九百四十八円八十九銭を補償するはずであったことからすれば、わずか六一・六%にすぎないわけです。これは、町へ行ったらせいぜいパートタイマーくらいの水準にすぎないわけです。この上、さらにことし据え置きになりますと、先ほどでは千二円七十九銭という数字が出されておりましたけれども、実際にはもっと労働報酬が低くなっていくのじゃなかろうか。農民の汗に報いていく労賃というものをこういうふうに低くしてもいいというのは一体どういう考えに基づいてのことなのか、ここのところがよくわからないわけです。
  68. 中山昇

    中山政府委員 ただいま、米価算定する場合に一ヘクタール未満の層を落としたことについてどういうことであろうか、そういうお尋ねだろうと思います。  私、先ほど御説明申し上げましたように、一ヘクタール未満の層と申しますのは農家所得の中に占めます稲作所得割合も一割に満たないというようなものでございまして、また、農外所得だけで家計費を賄っているというような状況にございますし、また、生産費の面でも一ヘクタール未満の層といいますのは経営の外部に支払いますいろいろな費用、それにさらに支払いました地代、支払いました利子、それらを全部支払いました後で、そういたしましたときに、その総額が米価水準よりも上にある、いわばコストを償っていない、そういうことにあるにもかかわりませず生産が続けられておるというような状況でございます。  それから、農地権利移動の面から申しましても農地の出し手になっておるというようなことでございまして、こういう層と申しますのは、それ以上の規模のものに比べて米価に対する関係の度合いというものは非常に少ないということがございます。  現在、水田利用再編ということで生産調整をやっております場合に、いかなる米価水準を設定したらよろしいかというものを考えますときに、何でもかんでも、非常に高い生産費をかけている農家まで償うようなことをというわけにはまいらぬというふうに思うわけでございまして、そういう面からいたしますと、こういう一ヘクタール未満の層というのは米価算定の場合に除外をして考える方が、生産調整ということをやって、非常に過剰な需給のもとにある場合の価格水準としては適当なのではないかというふうに考えてやっているわけでございます。  その結果といたしまして、決められた米価で、先生のお話のような、恐らく第二次生産費でございましょうけれども、そういうものを償わない農家が出てくるというのは、それはしようがないことだというふうに私は思っております。と申しますのは、生産費というのは、個々の農家にとりまして非常に高いものから安いものまでいろいろある、その中でどの農家までをことしあるいは昨年の米価でカバーをしていけばよろしいかというのは、米価水準は、そういう生産費だけではなくて、そのときどきの需給事情なりあるいは物価賃金動向なり、その上で決められるものでございますから、何といいましても物の値段でございますから、すべての農家生産費を補償しなければならないというふうには私ども考えておらないわけでございます。  そういうことからいたしますと、やはり一定の米価を決めた以上は、それによって適切な作付規模、たとえばことしで言えば一ヘクタール以上の農家のようなものが米価生産費を賄えるというようなことに結果的になってくるのはやむを得ないことではないかというふうに思っております。
  69. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 労働報酬の問題は。
  70. 中山昇

    中山政府委員 したがいまして、家族労働報酬と申しますのは、一時間当たりの家族労働報酬あるいは一戸当たりの家族労働報酬に従いましても、これは収益から費用を差し引いたその残渣として出てまいるわけでございますので、米価を決めて粗収益が決まり、その残渣としての家族労働報酬が結果的にどうなるかということに相なるわけでございます。  その際に、いろいろな経営によりまして、その家族労働報酬が一定の米価を決めました際に相違が出てきて、あるいは非常に小さな額になるという生産者が出てくるということは、それはやむを得ないことではないかというふうに思っておる次第でございます。
  71. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間がありませんので、また午後やっていきたいと思いますが、ずいぶん乱暴な話だと思うのです。結果的にそうなるのは仕方がないということで、結局、大半の農家農業をやっていくにもやっていけなくなる。先ほどから、農業はもっと活気のあるものにしていきたい、そして将来安定させていきたいとどんなに力説されていても、これではもう農業をやっていけない。若い者が飛びつけるようなはずがありませんよ。せっかくこういう資料の中に何ぼ労働報酬の価格が書かれていても、結果的に相違が出てきたら仕方がないんだというのではどうにもならないわけです。こういうことでは日本の食糧問題というのは本当に憂えなければならない、私はむしろ消費者の一人として、そのことを深刻に考えざるを得ません。  きょうのこの諮問はもう一度改めて再諮問していただきたい、撤回していただきたいということを最後にもう一度申し上げまして、終わりたいと思います。
  72. 羽田孜

    羽田委員長 午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十五分休憩      ————◇—————     午後二時一分開議
  73. 羽田孜

    羽田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。太田誠一君。
  74. 太田誠一

    ○太田委員 本日、米価政府諮問案が発表されまして、私ども農家の現状を憂える国会議員といたしましてはまことに不満足な諮問案が出されたわけでございます。この米価算定当たりまして、どういうお考えでこのような米価決定をされたか、広くわが国の農政全体から見た玉沢政務次官の御所見を賜りたいと思います。
  75. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 今回の米価決定当たりましては、まず最初に米の需給関係というものを見ますと、昨年、一昨年の冷害にもかかわりませず、米の生産力というものは依然として高い状態にある。一方、米の消費の方を見ますときわめてこれが減退をしておるという、きわめて米の過剰状態が引き続き存在をいたしておるということでございます。さらにはまた、米の過剰状態を解消をする、あるいは食管における赤字の問題等、財政問題を考えてまいりますと、これからの財政事情におきましては、マイナスシーリングも予想されるなど財政事情もきわめて厳しい状況にあるわけでございます。こうした状況に対処しまして、均衡ある需給関係を維持していく、こうしたことも一つ大きな観点に立っておるわけでございます。さらにはまた、農家の現状を見ましても、二種兼業あるいは兼業化というものが相当進行しておるわけでございまして、稲作における所得の問題等につきましてもいろいろな段階がある。  こうしたことを米価算定当たりまして諸要素の中に取り入れまして、そして今回の諮問、こういうことに相なったわけでございます。
  76. 太田誠一

    ○太田委員 ことしの政府米価算定の幾つかの根拠が、昭和五十七年産米価の政府試算、ここに三つ書いてありまして、一つは、対象農家を、生産費の低いものからのその累積生産数量比率が五十七年の需給事情基礎として定める比率になるまでのものとしたということですが、これはいわゆる必要量生産費補償方式であるというふうに理解をいたしております。必要量生産費補償方式というのは、これはいわば一つの供給曲線みたいなものを考えているわけでありまして、供給曲線を考え必要量までの数量をとって、その最後のところで、七九%ということでありますから、潜在的な生産量に比べると必要量というのは実際には七九%しかないということでありますから、七九%をとって、七九%目のところで打ち切って全体の平均費用を出すという算定の仕方をするわけであります。  ところが、これが供給曲線であるということになりますと、この供給曲線は実は七九%までの平均をとったらいけないわけでありまして、七九%目でとらなければいけないということになるわけであります。そうしなければ理論的に言うと必要量は確保できないということになるわけでありますけれども、その辺はどういうふうにお考えになっておられるのでしょうか。
  77. 中山昇

    中山政府委員 先生のお尋ねは、七九%という生産費のところでいわゆる限界生産費をとって、それで米価算定したらよろしいのではないか、こういうお尋ねではないかというふうに思うわけでございます。  私ども試算におきましては、七九%までの生産費農家の全体の平均平均生産費をもって算定をいたしておるわけでございますが、なぜ限界生産費でとらなかったかと申しますと、昔、米価算定におきましても限界生産費的な考え方算定をしたことがございますが、そのときは米の需給事情がいまと変わりまして非常な逼迫の状況でございまして、平均生産費をもってしては米の供給が確保できないというような事情があったからでございます。現在のように非常な過剰でございまして、先ほど来申し上げておりますように、非常な多額の財政負担をしてまで転作を行わなければならないという状況のもとで、限界生産費をもって米価を決めるということは非常に高い米価水準を形成することになりまして、そういうことは現在の米をめぐる需給状況その他から見て適切でないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  78. 太田誠一

    ○太田委員 ちょっと技術的な話に入り過ぎて恐縮でありますけれども、もう一回重ねてお尋ねいたします。  この必要量生産費所得方式というのはあくまでも必要量なんですから、どこまでを確保するかということであります。つまり、これ自体が需要供給の関係というものを考慮して必要量という言葉をここで使っているわけであります。いまの答弁というのは、これは去年までのように全体の生産費平均をとるという算定の仕方から必要量生産費所得補償方式にことし切りかえたことの説明になるわけであって、必要量所得補償方式の中で限界費用をとらずに平均費用をとるということが正当化される理屈だというふうには理解ができないわけであります。  私は、いまおっしゃった、この限界費用をとるということになると非常に高く米価が出てくるということはわかりますけれども、そういう論理は首尾一貫をしていないということは間違いがないわけであります。普通の、通常の供給曲線というものをかいて、そして供給曲線というのは一般にはこれは限界生産費に等しいものとして並べていくわけです。そうすると、供給曲線のあるところまで必要であるという需要の方をここで決めると、供給曲線のあるところでもって、七九%なら七九%で決まるわけであります。そうしたら、そのときの生産費というのは限界生産費でなければならないわけであります。ですから、理屈からいいますと、これは限界費用でとらなければいけないということになるわけでありますけれども、そうすると、いまおっしゃったように高目の米価に決まるということになるわけです。  ですから、米価算定方式について余りいろいろなことをされ過ぎるのではないか。従来の米価決定、毎年毎年算定方式が変わっております。変わるたびにいろいろな説明をしていかれるわけですけれども、特にことし、かつて使われた必要量生産費所得方式というものをまたほこりを払って持ち出してこられた。この方式においても、やはり需給事情を勘案をしてこういうふうに決めたということも、論理的にはまた一つの矛盾に突き当たるのではないかというふうに思うわけですけれども、いかがでしょう。
  79. 中山昇

    中山政府委員 昨年も必要量生産費方式米価算定したということについては変わりはないわけでございますが、ただいま先生御指摘のように、限界生産費価格が決まるというのは、まさに一般の自由市場経済ではそのとおりだろうと思います。  私ども米価算定当たりまして限界生産費をとらないもう一つの理由に、生産費及び所得補償方式ということでございまして、生産費だけではなくて、そのほかに家族労働部分につきまして都市均衡労賃評価がえをするということで、いわば所得を付与している部分があるわけでございます。そういうところがございますと、そういうものを含めました供給曲線というのは、これは架空のものでございまして、現実の生産費曲線、供給曲線とはちょっと異なるものである。そこで、それにさらにそういう所得付与をしましたような生産費の供給曲線の求められまする限界生産費価格を決めるというのは、これはどうも現在の米価決定の仕方としては適切でないのではないかというふうに考えている次第でございます。
  80. 太田誠一

    ○太田委員 いまの御答弁はよくわからないのですけれども、余り深くこういう話に入ってもなんだと思いますので、もう一つ、今度の米価決定に当たって大きくウエートを置いて考慮されたのは、ただいま政務次官からもお話がありましたとおり、一つ需給事情であって、もう一つ財政事情であるというふうに説明をされるわけであります。  五十八年度予算についてはいざ知らず、本年ここで決定を求められている米価というのは、五十七年度予算において考慮をされることになると思うわけでありまして、五十七年度予算においては、この政府諮問案どおりに米価引き上げないという前提で予算が決定をされておるわけでございます。ただ、ここで私ども少しこれはどうかなと思う部分があるわけでありまして、それは、過剰米処理の費用というものが、五十六年度予算に比べまして五十七年度予算というのは、倍にはなりませんけれども、ほぼ倍近い急増をしているわけであります。それはまた、従来の過剰米処理の方式というものは、七年間にわたって分散をして計上していくというやり方にのっとっているわけでありますけれども、短期間の間にこういうある特定の食管会計に絡む費用項目が急増するというやり方が、農政、農林省の予算全体の考え方からして、あるいは農政の継続性という考え方からしていかがなものかという気がするわけでありますが、そこはどうでしょうか。
  81. 中山昇

    中山政府委員 先生のお尋ね、過剰米処理に伴います費用についての食管会計における処理の仕方のお尋ねでございます。  過剰米処理につきましては、御存じのように、五十年産から五十三年産米までの過剰米につきましておおむね五年間に処理をするということで、一遍に処理をいたしますと、それに伴います財政負担というものは、えさ用なり加工用なり輸出用に充てるということになりますと、大変巨額の、一兆何千億、二兆何千億という巨額の費用がかかるわけでございます。それを一遍にある年度だけに補てんをするということになりますと、これは特別会計としても非常に問題があるということで、先生御指摘のように、七年間に繰り延べ処理をするということにいたしたわけでございます。  この過剰米の処理に伴う損失がただいまふえておるという先生の御指摘でございますが、これは、実は五十四年に処理をいたしたもの、それから五十五年に処理をいたしたもの、五十六年に処理をいたしたものと、過去のものがだんだんと累増してくるということに伴いましてふえてきているわけでございまして、もし一遍に過剰米処理の損失を計上するということになればもっと巨額の額に相なるということになりまして、食管特別会計の編成上も問題になる、こういうふうに考えている次第でございます。
  82. 太田誠一

    ○太田委員 私がいま申し上げておりましたのは、ことしから急に急増する。これは、ちょっと数字を詳しく覚えておりませんけれども、千四百億ぐらいにことしからなる。去年までが七百何十億か八百億くらいだと思うのですが、急増するということは、これはいわば去年の消費者米価を上げたことによる売買逆ざやというものが縮小した分がここに充当されるというような形になると思うのですけれども、このように急に過剰米処理の費用をここに急増しないで、ここを何とか調整してなだらかなものにすることはできないだろうか、なだらかなものにすることができれば、そこからまた米価引き上げるための財源を見つけることができるのではないかというふうな印象を持っておるということでございます。
  83. 中山昇

    中山政府委員 先生お尋ねのように、過剰米処理の損失を長く繰り延べいたしますと、その年の食管特別会計の繰り入れ額を平準化することは、それは可能であると思っているわけでございます。  ただ、一方におきまして、過剰米処理を非常に長期にわたってやるということになりますと、過剰米を保管しているための金利なりあるいは保管料なりというものの増高を来すということがございます。したがいまして、全体としての過剰米処理の損失額、約二兆二千億とか言っている額がこれまたふえてくるということになりまして、過剰米の処理を繰り延べたからといって、食管特別会計全体として、長い期間で見まして必ずしも会計が楽になるということではないというふうに考えておりますので、過剰米の処理につきましてはやはり計画的な処理をし、計画的な繰り入れをする方がよろしいのではないかと考えている次第でございます。
  84. 太田誠一

    ○太田委員 時間がありませんので、ただいま私が申し上げたことをもう一回確認いたしまして、この質問を終わりますけれども、いまのは五十七年度予算の話をしているわけでありますから、五十八年度予算がマイナスシーリングになるとかなんとかいうことは、これはことしの米価決定する場合には関係のない話だというふうに理解をいたしております。したがって、この過剰米処理の方で少し調整をすれば、米価引き上げる財源がここに出てくるのではないかということを先ほどから私は指摘をいたしておるわけでございます。これはしかし御検討いただくことにいたしまして、次に移りたいと思います。  ただいま、福岡県を中心といたしまして、北部九州一帯が気象台設置以来の干害といいますか、干ばつに見舞われているところでございまして、この件につきまして若干質問をさせていただきます。  六月以降の降雨量は、昭和九年に四十八・六ミリという、大変少ない、最小降雨量の記録がありましたけれども、これを上回って、四十五ミリのわずかな降雨量になっているわけでありまして、河川は極度に流下量が減少して、ため池の貯水量も刻々減少しつつあるという状態であります。福岡県においては六月二十九日に渇水対策本部を設けて、かつて五十三年、四年前に同じような干ばつに見舞われたときと同じような対策をとろうとしているわけでございます。  私も五日ほど前に地元の地域で現地を視察してまいりましたけれども、それぞれの場所で農家の方々が、川からポンプで水を揚げ、そして水を揚げたものが次のたんぼに移っていかないためにまたそこからポンプで水を揚げて、さらに用水から離れたたんぼに水を引いていくというふうなことをして、まことに悲壮な状況にあるわけであります。私が見ました河川は、三本の河川を見ましたけれども、そのうち二本は完全にかれておりまして、川底を掘り返して地下水をそこから確保しているというふうな状況でございます。この二、三日の間に若干雨が降りまして、ただいまの段階では情勢はかなり好転していると思いますけれども、しかしそれにもかかわらず、今日に至るまでの、この五月から六月にかけての干ばつの被害、あるいは干ばつに対処していろいろなことをやった農家の方々にかなりの負担がかかってきているわけでございます。  これにつきまして、ただいま田植えの予定面積のうち、七月五日現在で田植えがまだできていないところが四百六十七・九ヘクタール、全く不可能であるところは二百九十五・九ヘクタール。そしてまた、田植えをしたところにおきましても、黒く乾燥している黒乾面積というのが四千八百三十八ヘクタール、全体の田植え予定面積の八・一%でありまして、白乾、白く乾燥しているところが百八十四・六ヘクタール。そしてまた、塩害が起こっております。塩害は、海の近くの、特に福岡市のようなところでありますけれども、海の近くに行きますと用水の中にだんだん外から塩分が浸透をしてきて、知らずに塩分を含んだ水をたんぼに使ってしまう。あるいは井戸を掘って、どんどん深く掘っていくと下から塩分の濃い水が出てきて、それをまた知らずに使ってしまうというふうなことが頻発をしているわけであります。  こういう状況にありまして、五十三年度のときには、地方自治体の農家に対する救済策を国が背後からバックアップをする形をとっていただいたわけでありますけれども、ことしはどうであろうかということを現地では心配をいたしているところでございます。五十三年度にどういうふうな形でもって救済あるいは補助金といいますか、そういう措置をとっていただいたのか、再度ここで確認をさしていただきたいと思います。
  85. 森実孝郎

    森実政府委員 五十三年度におきましては、全国的に梅雨期間が非常に短くて、長期にわたって降水量が少なかった。この異常干ばつのために、各地域におきまして自主的に井戸の掘削や揚水機の設置等の事業が行われた経過がございます。干ばつが非常に長期でかつ全国的な規模である、また、多数の府県がこれに対して県単の助成を行ったという経過がございますので、いわゆる臨時特例的な干害の応急対策事業を予備費から支出して実施した経過がございます。  その内容は、関係県二十九県でございまして、対象面積は約七万七千ヘクタール、総事業費六十五億円というふうになっております。
  86. 太田誠一

    ○太田委員 五十三年度には、合計しまして井戸を千百五十八本掘ったわけでありまして、そしてポンプを四千七十七台設置したということでございます。そして五十七年度、ことしに至りまして、福岡気象台始まって以来の降雨量の少なさというものにかんがみて、五十三年度に設置した分に加えまして、すでに新設をいたしております。井戸は四百七十六本追加をして掘っております。ポンプは一千四十三台を追加して新設をいたしております。  このような現況にありまして、県の方はさらにまたこれに加えて、確定をしているかどうかはまだ定かではありませんけれども、ポンプに使用するための油代というふうなものも補助をするというところに来ているわけでございます。今後の気象の状況の推移というものを見守らなければならないということは事実としてあるわけでございますけれども、すでに現在の段階でもって巨額の負担がそれぞれの農家にかかってきているという現実を踏まえていただきまして、今後温情ある措置をおとりいただきますことを、この席をかりましてお願いをいたす次第でございます。  国からのバックアップということにつきましては、以上で質問を終わらしていただきます。  これに加えまして、すでに干ばつの状況というのが一月程度続いておりますので、今後田植えがおくれていることに対する対策、あるいは稲の生育に今後影響が出てくるというふうに思われるわけでありますけれども、いもち病の発生あるいはさまざまな害虫の発生に対して農家がそれぞれの立場で対応していかなければいけないわけでありまして、これに対して農林省として何か指導をしておられるかどうか、そこをお伺いいたしたいと思います。
  87. 小島和義

    ○小島政府委員 まず、ことしの空梅雨によります田植えについての影響でございますけれども、七月十二日現在で、九州管内で約七百二十ヘクタール、まだ田植えの済んでないところがございます。同様に、雨量の少ない中国四国農政局管内で約四百五十ヘクタールの田植えが済んでないところがございます。いずれも管内の作付予定面積全体から眺めますと〇・三ないし〇・二%ということで、全体の中ではそれほど多いものではございませんけれども、そういう状況に相なっております。  九州の管内につきましては、七月十一日以来の雨によりまして、水不足によって田植えがおくれているという事情は解消するものというふうに考えておりますが、中国四国農政局管内におきましては一部もうすでに田植えの適期を失しているというところがございまして、別な作物を植えつけなければならないという事態も出ておるように聞いております。  これまでとっております対策でございますけれども、県及び農政局で保有いたしておりますポンプの貸し付け等によりまして用水を確保する、あるいは先ほどお話ございましたような、水を順番に使用するというふうなかっこうで水利を調整いたしておりますところ、さらに節水栽培、さらに田植えがおくれました場合の予備苗の確保、苗の再仕立てといった、被害を最小限にとどめる対策もとっておるわけでございます。  また、野菜等につきましては、こういう乾いている時期におきましてはアブラムシ類あるいはハダニ類等が発生しやすい状況にございますので、病害虫の適期防除ということに心がけておるわけでございます。  おくれて田植えをいたしましたところの今後の稲作でございますけれども、過去の経験等に照らしますれば、今後の気象状況の推移によりましては多少のおくれは十分取り戻せるというぐあいに考えておりますが、一部の地域のようにもうすでにこれから田植えをしたのでは時期おくれであるというところにつきましては、かわります作物の作付を指導するということによりまして、できるだけ農家全体の被害が最小限にとどまるように指導してまいりたいと思っております。
  88. 太田誠一

    ○太田委員 いま取り上げておりますのは応急の対策でありますけれども、日本のいろいろなところには渇水に対して大変弱い体質を持った地域があるわけでございまして、特に九州北部においては五十三年も大変な渇水に見舞われた。今回また渇水を経験しているところでありますけれども、長い目で見て新しい水源というものを確保しておく必要があると思うわけでございます。この意味におきまして、大分前から計画があって、しかもなかなか完成しない筑後大ぜきというものがあるわけでありまして、筑後大ぜきは福岡市の都市用水を確保するについては大きな力になるということが言われておりますけれども農業用水の確保というのは、この筑後大ぜき完成後大丈夫なのでしょうか、どうでしょうか。
  89. 森実孝郎

    森実政府委員 御指摘の筑後川下流流域の筑後大ぜき事業、これに関連いたします一連の土地改良事業は、この低平地におきます用水の安定供給という視点から私ども非常に重要な問題であろうというように思っております。  御案内のように、この筑後大ぜきの事業というのは複合的な目的を持った事業でございまして、治水と河川の流水機能の正常化ということと、それからただいまも御指摘がございました水道用水を中心にした新規用水の確保、さらに農業自体の立場で考えましても、土地改良事業の取水の安定と同時に、一部新規の水源造成の役割りを果たしているわけでございまして、これに連携いたしまして、基本的な導水路というものにつきましては、ことしから公団事業で実施すると同時に、また国営、県営、団体営等の水路の整備を進めているところでございます。  なかなか予算情勢も厳しい状況がございましたし、さらに一部補償問題等で難航した経過もございますが、はっきり申し上げると、現時点でかなりのめどがついてきたと思います。これからの予算措置を通じまして、補正も含めて、そういった問題も含めて事業の促進を図ることが必要だろうと思っておりますし、また、事業の実施に当たりましては、農業用水の取水の安定、それから排水の改良ということに重点を置いて、これからさらに具体的な計画を仕上げてまいりたいと思っております。
  90. 太田誠一

    ○太田委員 ありがとうございました。  もう一つ、建設省、ただいま筑後大ぜきの問題についてはお伺いをいたしましたけれども、渇水時における建設省の対策として、経年貯留ダムというものを今後つくっていこうという計画があるように伺っておりますけれども、今後どういう順序で経年貯留ダムをつくっていくのか。そしてまた、そういう水道に対する対策の中で、農業用水についてもこれは考えていただかなければならないわけでありますけれども、この辺のところを建設省からお伺いをいたしたいと思います。
  91. 広瀬利雄

    ○広瀬説明員 お答え申し上げます。  渇水ダムあるいは経年貯留ダムというダムの建設の順序等についてお尋ねでございますが、私ども建設省といたしましては、鋭意水問題に取り組んでおります。  たとえば、福岡県内の水問題にかかわるダム工事といたしまして、現在われわれ建設省直轄事業としましては、遠賀川河口ぜき、耶馬渓ダム、それから水資源開発公団事業となりますけれども、筑後大ぜき。それから県の補助多目的ダム事業としましては、犬鳴ダム、伊良原ダム、福智山ダム、それから那珂川・御笠川総合開発、鳴淵及び猪野ダム等の事業を執行しておりますが、これらの事業はすべて治水に関係いたしまして、そのほか新規の都市用水並びに既得の沿岸の農業用水の取水が安定的に行われるように、いわゆるわれわれ不特定補給という表現で言っておりますが、不特定補給を目的として事業を実施しておるわけでございます。  それで、私どもは、今回の渇水に際しまして、この五日になりますが、九州地建に渇水対策本部を設置して、関係利水者の水利調整を円滑に行って、それで合理的な水使用の推進が図れるように、連絡調整をしているわけでございます。しかしながら、水需要、水供給を考えますと、何はともあれダムを建設することが最善最良の道でございまして、先ほど申し上げましたように、私どものダム事業を誠心誠意遂行していく考えでございます。  そこで、お尋ねの経年貯留ダム、渇水ダムということになるわけでございますが、私ども考え方といたしましては、通常の水需給に関しましては、私ども現在行っておりますような目的の多目的ダム等の水資源開発施設を建設するということをまず第一番目に置いているわけでございまして、先生お尋ねの渇水対策ダムといいますのは、五十三年等の異常渇水のときにも、生活用水でいきますと生活に必要不可欠の水、そういうものを目的として水を備蓄していこう、こういう発想のものでございます。  それで、お尋ねのように農業用水も対象の中に入るかということでございますが、私ども、異常渇水ダムをどのような構想でどのようにつくっていったらいいかということを現在検討中でございます。ちょっとさかのぼりますが、実は四年ほど前から大蔵省の方に同種のものを要求しているわけでございますけれども、なかなか私どもの方の主張が認められませんで、残念ながら見送りになっているわけでございますが、本年また北部九州は異常渇水でございますので、また心を新たにいたしまして、地元の方々等と御相談をして水資源開発に推進してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  92. 太田誠一

    ○太田委員 どうもありがとうございました。
  93. 羽田孜

    羽田委員長 太田君の質疑はこれで終わりました。  新盛辰雄君。
  94. 新盛辰雄

    ○新盛委員 まず大蔵省にお伺いをしておきたいと思います。  今回の米価決定をきょう米審の方で引き続いてやっているわけでありますが、財政上非常に厳しい、こうした理由によってマイナスシーリングというのも出てきたわけですが、今回の米価決定に当たっての、大蔵省がこれまで言われてきた財政的なという事情について、冒頭お聞かせをいただきたいと思うのです。
  95. 千野忠男

    ○千野説明員 財政事情でございますが、御承知のように、最近の経済事情を反映しました税収の落ち込みとか、あるいはもともとオイルショック以降の何年間かにわたる財政支出の増加とそして税収の落ち込み、こういったものの結果、いま非常に苦しい状況にあることは御存じのとおりでございます。そういう状況のもとで、五十八年度予算につきましては、すでに御承知のように、マイナスシーリングというようないままでにない厳しい枠を概算要求に設定をいたしておるところでございます。  こういう中で、今後どのようにわが国農業の発展のために必要な経費を効率的に支出していくか、この辺がわれわれの最大の関心事でございます。
  96. 新盛辰雄

    ○新盛委員 とするならば、農民の切実な要求として米価要求が出されておりますし、また、生所方式と言われる食管法に基づく正規の手続を経て、当然、要求がされてきているわけであります。  財政的な全体的状況が変わった。防衛とかエネルギーとか一連の科学技術の問題等は別枠にしてありますけれども農業を守っていくためには、この財政的な事情、たとえば臨調米価と言われている昨今の事情であります。それだけに、奨励金のカットをする、抑制をする、あるいはまたそれぞれの補助金、こうしたことについても切り詰めていこう、そういう趣旨になっているようでありますが、一体この辺はどういうようにお考えですか。
  97. 千野忠男

    ○千野説明員 このような財政事情のもとでございますので、農政のみならず、全般にわたって厳しい見直しが必要になると思うのでございます。農政の分野におきましても、限られた財源を最も効率的に使うということになりますと、たとえば米価でございますが、これはわれわれ必ずしも財政事情からだけ申し上げておるわけではございませんけれども、米の深刻な構造的な過剰の状況、それからそれに対処するためにこれまで生産調整などによりまして巨額の財政資金を投入してきた事実、そういうような状況の中で考えますと、従来以上に厳しさといいますか、慎重さを持って対応せざるを得ないというふうに財政当局としては考えておるわけでございます。  また、先ほどお話も出ました奨励金、たとえば自主流通米の奨励金でございますけれども、これにつきましても、実態を見ますと、昭和四十四年度に制度が始まりまして以来助成の額がどんどんふえまして、自主流通米比率も大体四割ぐらいにまで来た。ここで農家自主流通米の手取りなどを考えた場合に、果たして現在のような助成の水準が本当に必要なのかどうか、その辺は見直しをしなければならぬだろう、こういうふうなことで、米価、それからいま申し上げた自主流通米の助成、いずれも一つの例でございますけれども、全般にわたって効率的な使い方をいままで以上に考えていかなければならぬのではないか、かように思っております。
  98. 新盛辰雄

    ○新盛委員 いま以上に考えられるということは、結果的には圧縮をするとか補助金をカットしていくとかということを指しているのですか。
  99. 千野忠男

    ○千野説明員 生産者米価につきましては、農林水産省が所管官庁として責任を持って米価審議会諮問をし、米価審議会の審議を経て政府決定するということになっておるわけでございますが、財政当局といたしましても、その審議の過程で財政当局の立場からの意見はいままでいろいろ申し上げてきておるわけでございます。     〔委員長退席、加藤(紘)委員長代理着席〕 いろいろと議論はございましたけれどもけさ米価審議会農林水産大臣から具体的に諮問されたということでございまして、諮問された米価の案というものは、いままで政府の中で非常に真剣な議論を重ねてきた結果でございますので、われわれとしてはこれが最善のものである、かように考えております。  また、先ほどの自主流通米の奨励金でございますが、これにつきましては、私どもはこれから農林省といろいろ御協議を申し上げて決めていかなければならない問題でございます。たとえば、流通促進奨励金というような売買逆ざやの一部を見るという奨励金につきましては、現在の売買逆ざやが非常に小さなところまで縮小されてきておりますし、流通の実態から考えますと、もはやこれはやめてもよろしいのではないか。あるいは良質米奨励金につきましては、これも現在の良質米の出回り状況あるいは取引価格状況などを考えますと、奨励金の単価をかなり圧縮してもよろしいのではないかといったようなことで、農林省に御相談をしておることは事実でございます。
  100. 新盛辰雄

    ○新盛委員 財政的な理由ということが今回の米価決定するに当たってきわめて高いウエートを持っておるわけですね。そういう面で、食管法に基づく生産費及び所得補償方式という従来の計算の中では、もう先ほどから議論されておりますように、現実四・三七%という要求もございますけれども生産費自体でも五%の上昇を見せている。あるいは、九%という数字も現実に計算をしてみれば出てくる。そのことが財政的理由でもってなかなか実現できない。逆ざやの問題もありますけれども、年々解消されているのではないかと思うのです。  また、奨励金の問題についても、法律で決めて自主流通を奨励させていくという中で出てきましたけれども、四〇%云々という話もありますが、もし実際にこれをやめていけばどうなるか。不正規流通の関係が生まれてきますし、かえって財政的な混乱を起こすのではないかというので、大蔵省に対して削減反対の強い声が上がっていることは事実です。  このことを踏まえて、大蔵省としてはどう考えているか、明確にお答えいただきたいと思うのです。
  101. 千野忠男

    ○千野説明員 まず生産者米価でございますが、生産者米価の取り扱いにつきましては、食糧管理法の規定に従って決定をするということでございますので、生産費及び物価その他の経済事情を参酌して米価審議会の議を経て適正に決定するということでございます。その場合に、生産費及び物価その他の経済事情という言葉の中には、当然財政事情もあるし、需給事情もございます。そういったことも参酌しながら検討していくということであろうかと思います。  したがいまして、私どもは必ずしも財政の立場からだけ申し上げているというわけではございません。現在の米の構造的な過剰という需給事情、それからそれに基づいていままで三千五百億円もかけて行っている生産調整、こういうものを一方で考えながら、かつまた、需要動向に即した生産の再編成をどういうふうにしていくのかといったような農政の面の見地からも考えてまいりますと、こういう状況の中でぎりぎりけさのような諮問になるのじゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。  次に、自主流通米の助成でございますが、これは、おっしゃるように、自主流通が財政援助の効果もありましていままで伸びてきた、これを一遍に切ってしまったら混乱が生ずるではないか、そういう懸念、もちろん一遍に切った場合にそういうことがあるかもしれないということは、われわれも十分考えなければいかぬことかと思います。ただ、現在の自主流通米農家の手取り価格政府米の手取り価格といったような、いわゆる自主流通米生産者メリットの大きさというようなものの実態を考えますと、たとえば良質米奨励金、現在A1の部分で千八百五十円というようなものでございますが、果たしてこれが一部切れないものであるかどうか、これは十分検討していいものではないか、こういうふうに思うわけでございます。いずれにしましても、この辺は農林水産省とこれからよく相談をさせていただきたいと思います。
  102. 新盛辰雄

    ○新盛委員 きれいごとを言ってもらっては困るのですが、現実問題として、大蔵省には今回の米価に当たっては引き下げろという意見があったのでしょう。そういうことに私どもは非常に不満を持っておるわけです。財政的な理由ということについて、三千五百億円、確かに奨励金の関係では水田利用再編対策としてこれは生まれたことでございますし、また、そのことによって今日の第二期対策が進捗していると思うのです。しかし、もうこれ以上財政的に云々というのなら、これは後ほど農林省の方に聞くわけですが、転作は考える必要はない、もうこれ以上水田利用再編対策はやるべきじゃない、こういうことになってくるわけです。その点については、大蔵省に聞いてみたってしようがないですが、金を減らす、あるいは引き下げるという前提に立って、初めに据え置きあり、あるいはまた引き下げあり得る、こういう理解の仕方は納得できないのです。  だから、そのことについては、政務次官が来ておられるようですが、まずお答えいただいて、大蔵の方からもその面についての答えをいただきたいと思います。
  103. 中山昇

    中山政府委員 本年産米生産者米価決定につきましては、けさほど御説明を申し上げましたように、現下の米をめぐるいろいろな情勢、特に生産調整を大幅にやらねばならないという需給事情、あるいはただいま大蔵省の方からお話のございましたような財政事情その他もろもろのことを勘案いたしまして、本年産米については昨年産米政府買い入れ価格どおり据え置くことにいたした次第でございます。
  104. 新盛辰雄

    ○新盛委員 あなた、食糧庁におられるのでしょう。次長でしょう。あなたが大蔵省のようなことを言っておったって困るのですよ。生産農家がどう考えているかということをすぐ敏感に受けてこれからの政策を決めなければならないのが、私が言っているように初めに据え置きありき、それを前提にした議論なら、逆ざやがどうのこうのじゃないのです。今回の米価諮問をされている中身は、理屈を合わせる、いわゆる据え置きにするがゆえに理屈を合わせる、そういうやり方でしょう。そういうことで、果たしてこの米審の結論ということは、これからどうなるかわかりませんけれども、出てくるあれはないですよ。  それで、大蔵省、もう一度これだけは確かめておきますが、系統の皆さん方からも要求されておりますし、それぞれわれわれも生産費所得補償方式を中心にして、これは法律で決められているのですから、それで算出をしてほしいという意見を持っているのです。それの出た金額というのは、巷間伝えられているように人勧だとかあるいは仲裁裁定とか、そういうものと絡めてこれは考えるべきだという意見どもあります。しかし、異質のものではあるのですが、大蔵省はこれについてはどういう見解を持っていますか。
  105. 千野忠男

    ○千野説明員 米価だけではございません、米価を初めとして各種の農産物価格、これに関する政策の運用につきましては、生産費などのほかに需給事情とか生産性向上の状況とか、あるいは需要に応じた農業生産の再編成、こういったようなことを総合勘案して行われなければならないと考えております。したがいまして、米価と給与というものは必ずしも同列に論じ得ないと思います。  ただ、いずれの決定当たりましても、現下の厳しい財政事情というものは十分に考慮されるべきものと考えております。
  106. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それはどういうことですか。現下の情勢において考慮されるべきことだということは、これからの推移状況がいろいろあるのでしょうが、財政担当者としてどう見るかということを申し上げたのです、性格の問題ですから。そういうことも考慮するということは、結局は連動である、米価と仲裁あるいは公務員の給与というものは連動である、こういう理解ですか、そうでないのか、明確にしてください。
  107. 千野忠男

    ○千野説明員 米価は物の価格でございますから、生産性状況とか需給状況とか、あるいは農政の方向をいろいろ考えながら決めるものでございます。そうしてまた、給与の方は、たとえば公務員給与の取り扱いにつきましては、人事院勧告がどうなるのか、仮に人事院勧告が出たとすれば、その段階で厳しい財政事情など諸般の事情を総合的に勘案して判断することになります。また、仲裁裁定につきましては、国会に議決案件として付議しているところでございます。したがいまして、この取り扱いについては国会の判断を待つことになるわけでございます。  そういうことで、米価と公務員給与等とは、これは同列に論ずることはできないと思いますが、いずれにいたしましても、これらの決定当たりましては、現在の厳しい財政事情等は十分に考慮されるべきであると考えております。
  108. 新盛辰雄

    ○新盛委員 米価の問題、算定基礎のことについて質問をいたしますが、この算定の因子となるべき中核農家、これは一体どういう内容のものですか。
  109. 中山昇

    中山政府委員 けさほど政府試算説明のときに申し上げましたように、私ども今回の米価試算をいたしました際に、必ずしも中核農家というものをあらかじめ想定をいたしましてそれで米価決定したということではございません。従来から申しておりますように、米の価格算定当たりまして、一ヘクタール以下の層と申しますのは最近農外所得でもって家計を賄っているというような事情にございますし、また、そういう農家米価のいかんにかかわらず米の生産を続けておるというようなこともございます。  それからまた、こういう一ヘクタール以下の層と申しまするものは、農地の貸し借りをいたしますときの貸し手の方になるというようなこともございまして、こういう一ヘクタール以下の層というものが米価と余り関係のあるような状況にないということがございますので、米価算定いたします平均生産費をとる場合の対象農家から外して物を考えていったらどうかということで算定をしておるわけでございまして、必ずしも一ヘクタール以上の農家層が中核農家であるというふうに決めておるわけではございません。
  110. 新盛辰雄

    ○新盛委員 この中核農家というものの定義の問題は、いま御説明のあった内容だとすれば、一体中核農家の生活状況、いわゆる所得、可処分所得は幾らになるのか、この辺のことも、一般の勤労者の統計をとる場合にも、四人家族で幾ら、こういうようになるわけですが、中核農家の生活基準、そういうものについて数値を出しておられますか。
  111. 中山昇

    中山政府委員 先ほど来御説明申し上げておりますように、私ども今回の米価算定で中核農家というものを特にとらまえまして価格決定をいたしているわけではございませんので、中核農家について幾ら幾らの額の所得を補償するというふうには考えておるわけではございません。  ただ、私ども申し上げておりますのは、一ヘクタール以上の生産農家平均生産費をとりまして、その場合には家族労働につきまして都市均衡労賃が補償されるような算定をいたしているということでございます。
  112. 新盛辰雄

    ○新盛委員 農林省は農家をしぼり込んで、算定基礎の中に、言うなら据え置きが前提ですから、数字を合わせていくためにしぼり込んでいくんだということは、一つの流れとして持っておられると思うんですよ。そうでなければこういう計算にはならない。物財費とか労働費上昇というのは、きょう発表されました統計情報部の五十六年産米生産費の中に明確に出ているんです。だから、こういう状況にあるならば、確かに食管法の第三条第二項の厳正なる基準に当てはめるとするなら、当然ここに数字が出てくるはずなんですね。農家をしぼり込んでいるから、計算の基礎がどうも不明確になってくる。そういうしぼり込もうという流れを御存じなんでしょう。これは、農林省の方でそういうことにしていこうということで、一ヘクタール農家、中核、それ未満はだめ。しかし、七〇%、八〇%に近いと言われているこういう皆さん状況について、やはり把握をしなければならないわけでしょう。どうですか。
  113. 中山昇

    中山政府委員 けさほど来申し上げておりますように、この一ヘクタール以上の層をとりまして必要量生産費というようなことを考えておりますのは、現在のように米の需給が非常に過剰でございまして、そういう状況のもとで、たとえば非常に高い生産費がかかる農家まで含めてこの米価算定基礎になる生産費を計算して、その上で米価算定をするということはいささか問題があろうかと考えておるわけでございます。その意味におきまして、先ほどお示しをいたしました算定方式の1というものにつきましては、いままでの必要量の見方のときの生産調整をやった結果として出てきました比率を用いておりますと、結果的に生産量、出回り量と必要量需要量とが同じになるということでございますると、幾ら生産調整をやっておりましてもそういう需給事情米価に反映をされてこない。そういうことでございますると、やはりそれは米価算定としては適切ではないのではないか。いつまでたっても過剰という問題が反映されずに、あるいは米価が上がって生産刺激的になりましてさらに過剰を累積をする、そういうおそれもないわけではないというふうなことがございます。したがいまして、私ども現在生産調整をやっているという実態に即しまして、潜在的な需給ギャップというものを反映をさせた米価算定というのが現時点では合理的なのではないかというふうに考えまして、今回のような算定の方法をとったわけでございます。
  114. 新盛辰雄

    ○新盛委員 どうも納得できません。同じところを言っておってもしようがないのですが、これからの問題でありますから、米の需給見通しについて質問しておきます。  けさほどの質疑応答の中では、新しい備蓄方式考えていかなければならない、こういう状況報告がありました。低温保管だとかあるいは棚上げなどの需給対策、こうしたことについて、需給にアンバランスがあるからそうなるんだ、政府が計算したところでは来年度持ち越しは六十万トンである、こういうふうに言っておるわけであります。しかし、六十万トンと言えば、一カ月の国民の消費が五、六十万トンなんですから、消えてしまうのですね。ところが、政府米は三十万トンだ、これは一カ月分ぐらいだ、また九十万トンぐらい将来は出るであろう、何かごろごろと坂道を車が転がっていくような話の仕方でございます。  昨年度内のあれですが、需給の見通しの中で、いま政府の買い入れでは四百七十万トン。ところが、これは食糧庁が出している資料の中にあるんですが、現実は三百五十四万トンしかない。ところが、逆に自主流通米は二百九十万トンの予定に対して三百二十万トン、これはどんどん増大をしている。こうした中における全量管理というのがこの一つの大きな点になるわけです。だから、この全量管理を崩していくかのごとき状況でこの備蓄の問題ということも考えなければいけない。この備蓄は、実は二百万トンの回転備蓄をどうするか。しかも、国会では自給率、備蓄の決議がございます。だから、こうしたことを踏まえていま新しい備蓄方式考えなきゃならない。しかし、私は、五十四年から五十三年米、古々々米というんでしょうか、これらの消化の内容を見ましても、非常時における備蓄、こうしたものと飼料に回すもの、三百十万トンぐらい、こう言っているのだそうですが、こうしたことは、もはやこれから、米過剰、過剰基調にあるという説明が大半財政事情と絡んで出てきているのですけれども、そうはいかないのじゃないか。現実、実は米は不足しているのじゃないか。  食糧庁は、これは示達をしたのかどうかわかりませんが、私の地元鹿児島では、食糧事務所が農協の倉庫を全部あけて余り米は出してくれ、供出をしてくれという。これは全国的だろうと思いますが、悉皆調査というのか、そういうことまでしなければならない現状である。だから、こうしたことについて、米が余っている、過剰基調であるということは、どうしても国民は納得できないのじゃないかと思うのです。こうして、米づくりをさせないために、水田利用再編成を徹底的に推し進めるために、逆にそういうふうな面において政府は隠しているのじゃないかということも言われているのですが、一体これはどういうことなんですか。
  115. 中山昇

    中山政府委員 米の需給事情と備蓄についてのお尋ねでございます。  米につきまして、昨年産米につきましては千二十六万トンの生産でございまして、昨年の十月末に約九十一万トンの政府の在庫がございました。これに対しまして、昨年の十一月からことしの十月までの需要量は約千六十万トンでございまするので、ことしの十月末の持ち越しは、先生御指摘のように六十万トン程度になるということでございます。この持ち越し量につきましては、先ほども御答弁申し上げましたように、政府米の一カ月の需要量というのは三十万トン程度でございまするので、これで大体二カ月分の持ち越しになろうかということでございます。  本年産米につきましては、昨年、一昨年と不作が続いたというふうなこともございまして、米の生産調整につきまして、転作等目標面積を四万六千ヘクタール軽減をいたしまして、生産量を二十五万トン相当程度増加をする。平年の作柄でございますれば、来年の十月末には九十万トン程度の供給余力を持つということになりまするので、仮にことし不作であったとしても、特に需給上心配はないというふうな状況にあるわけでございます。  それから、備蓄の話と絡みまして、いま集荷に非常に力を注いでいるのではないかというお尋ねでございます。  私ども、米につきましては先年お願いをいたしました新しい食糧管理法に基づきまして、全量政府管理をするという大原則のもとに、自主流通米政府米もあわせまして政府管理をしていくという方針で臨んでおるわけでございます。したがいまして、国民が必要とする米は確実に正規の流通ルートに乗せるということでやっておるわけでございまして、もし先生御指摘のように一部の地域におきまして余り米の集荷をするというふうなことがやられておるということでございますれば、これは、いま申し上げましたような食糧管理の立場から、全量政府管理をしていくという上でできるだけ不正規な流通ルートに乗せることなく、余り米でございましても全部その正規のルートに乗せるというようなことをやっておるわけでございまして、私ども米が足りないからそういうことをやっておるという状況にあるわけではございません。
  116. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最後に、この水田利用再編対策の問題で、これまで六十七万七千ヘクタール、今度四万六千ヘクタール例の冷害等で差し控えられたとおっしゃっているのですが、三千五百億に当たる膨大な利用再編対策の奨励金等が出ているわけで、そこに着眼をして、財政的な問題と絡めてきている。この水田利用再編は、もはや転作していく中でもたんぼはもう非常に荒れてしまっている。このまま推移していくと日本の農業は壊滅をするというふうにも言われているわけです。そういう実情からいきますと、えさ米などのこれからの利用拡大は大きくなるであろう。加工用米もそうでありますが、そういうことについて、これまで何回も主張してきたのでありますが、これからの対策をどういうふうに考えているのか。  それとまた、将来の農家が魅力ある農業へ、そういうような面の生産意欲をかき立てるものは何か。後継者の問題でもあるわけです。水田利用再編成でどんどんつぶされていってしまって、変わるものも定かではない。そうして荒廃の中に犯されている中核農家、先ほどの説明では、これはだんだん消えてなくなる運命である。農業は結局日本からなくなる、こういうことにつながっていくわけですから、三期対策はもうやめなさい。もはや二期対策の今日の条件の中で、米が過剰であるという理由についても非常に薄弱である。だから、そうしたことのいわゆる食糧管理、ある意味では総合的な食糧管理をやらなければならないという新しい農政への位置づけがだんだん大きくなりつつあるのですね。  そういうことに対して、これからどういうふうに展望をお持ちになるのか。これはぜひ政務次官にもお答えをいただきたいと思いますが、まさしく米価をめぐる問題から、全体的にはいまや農業の危機、この要求が入れられなければもはや生活への展望も何もないという切実な要望が出されているし、行動も起こっております。それにこたえて、きょういま米審にかかっているそうでありますが、再諮問をする気はないのか、そのことを申し上げて、ぜひ御回答いただきたいと思うのです。
  117. 小島和義

    ○小島政府委員 米につきましては、国民の基本的な食糧でございますし、また、農業生産のうち約三割を占めておる、農家経営にとっても重要な作物でございます。したがいまして、今後とも必要量を安定的につくっていくという観点から米に関する政策は進めるべきもの、かように考えておるわけでございますが、過去におきましても大変な過剰をつくりまして、そのために大変膨大な国家財政負担を必要としたという経緯もございます。そういうことを踏まえまして、三たびそのような時代をつくり出すまいということで、今日の水田利用再編対策を進めておるわけでございます。  第三期対策不要というふうな御意見もございましたけれども、私どもは、これまでやってまいりました対策を踏まえて、さらに今後の米の需給事情、転作の定着化の動き、こういうものを踏まえながら、第三期の対策というものも進めていかなきゃならないというふうに考えておるわけでございます。
  118. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 米の水田利用再編対策でございますが、要するに、つくった米が全量消費をされれば何も転作をする必要はないと思いますし、過剰対策に二兆二千億円も七年もかけて払う必要はないわけでございます。したがいまして、まず第一に、農林省としまして消費拡大に御協力をいただくということにいたしておるわけでございます。しかしながら、どうしても消費が供給、生産体制に合わない、過剰基調が続けられていくということでありますれば、これは転作等におきましても農民の皆さんにお願いをしなければならぬ、こういう事情にあるわけでございます。  その体制におきまして、なおそれが定着をするような基盤づくりというものは進めていかなければならぬのではないか。つまり、規模拡大すれば小麦におきましても大豆におきましても十分所得は得られる、こういう側面がもう一つあると思います。  また、米の問題におきましても、現在の価格におきましても、たとえば規模拡大しまして、五町歩以上というような規模において耕作していくことができるという環境が整備されてまいりますならば、農家の将来におきましては大変明るい展望があると私は思うわけでございます。したがいまして、農用地利用増進事業を通じまして規模拡大等にも努めておるわけでございますし、その方向もいま逐年増大をいたしてきておるわけでございます。  また、価格ばかりではなくして、構造改善あるいは土地利用基盤の体制等を通じまして、生産性の向上により一層の努力を重ねていく、これが大事ではないか、このように考えておる次第であります。
  119. 新盛辰雄

    ○新盛委員 終わります。     〔加藤(紘)委員長代理退席、委員長着席〕
  120. 羽田孜

    羽田委員長 新盛君の質疑は終わります。串原義直君。
  121. 串原義直

    ○串原委員 五十六年産米生産費の数字が出ました。それによりますと、六十キロ当たり二万三百七十八円。これは、よほど大規模農家でも米価を上回ったところの生産費になるのではないか。  この生産費から計算いたしますと、現行の米価生産費所得の補償される農家規模は何ヘクタール以上になると計算されていらっしゃるか、教えてもらいたい。
  122. 中山昇

    中山政府委員 お尋ねのように、五十六年産米生産費が統計情報部の方から発表になりまして、六十キログラム当たりの第二次生産費では、二・五ヘクタールから一二ヘクタールの層を除きまして、生産費の方が米価を上回っているというような状況でございます。ただ、この第二次生産費の中には、いろいろ議論のございます自己資本利子でございますとか自作地地代でございますとかというふうなものが入っておりますので、それを除きました第一次生産費で見てみますと、〇・五ヘクタール未満の層を除きまして、すべての層で米価の方が生産費を上回っておるというふうな状況にあるわけでございます。  もし先生が、五十六年産米生産費につきまして経営規模別に物価修正をいたし、それから自家労働部分について都市均衡労賃評価がえをして、一体どれくらいの層をカバーしているのであるかというふうなお尋ねであるといたしますと、五十六年産米生産費所得を補償する経営規模というふうなものを私どもただいま手元で計算をしたようなものはございませんので、お答えできないわけでございます。
  123. 串原義直

    ○串原委員 それは、あなた、無責任な答弁だな。冗談じゃない。食糧庁、あなたのところで出した資料に載っているじゃないか。私の計算するところ、私の見るところでは、この第二次生産費で勘定に合う農家経営規模というと二町歩以上ということになるんだ。そうじゃないですか。見当つけてないなんて、冗談じゃない。
  124. 中山昇

    中山政府委員 単純に経営規模でどれくらいかということでございますと、ただいま先生が御指摘になりましたとおりでございます。
  125. 串原義直

    ○串原委員 だから、私はそれを聞いたんですよ。それをすっと、あなた、返事すればいいんだ。  したがって、私の聞きたいのは、二ヘクタールくらい以上でないと赤字の米価である、逆に言うとそういうことになりますね。でありますから、逆に言うと今回の諮問米価据え置きである。据え置きにした。したがって、二ヘクタール以下の農家経営規模皆さんは米づくりは赤字なんだ。これを認めるわけですか。どうです。
  126. 中山昇

    中山政府委員 五十六年産米生産費につきましては、五十六年が御存じのような不作というような状況もございまして、多少生産費は平年よりかかっておるのではないかというふうに思うわけではございますが、確かにお尋ねのように二ヘクタール以下の層の方は米価生産費を下回っておるというふうなことは事実でございます。  ただ、その場合に、先生おっしゃっております生産費というのは第二次生産費でございまして、その中には、経営外に支払うもの以外に自己資本なり自作地の地代なりというのが入った生産費である。そこの部分が多少米価によって額が大きくなったり小さくなったりしているということはあろうかと思います。
  127. 串原義直

    ○串原委員 つまり、それは若干の解説であっ   ずばり申し上げますならば、二ヘクタール以下の米作農家は、金額はわかりませんけれども赤字になるんだ、こういう結果が明らかになったわけですよ。これを私は重大な事項として確認をして、次の質問に移りたいと思っているわけであります。  そこで、けさほど解説をしてくださいました「五十七年産米穀政府買価格試算」があります。これは、時間がないからそれぞれ詳しく質問はできませんが、一ページの第(2)、算定2のところは「対象農家を、水稲作付面積一ヘクタール以上のものとした値」ということになっているわけでありますが、これは、私は実は重大だと思っているのです。  つまり、一つ確認をしておきたいのでありますが、これまでは、小規模農家を除外したといたしましても、大体五俵未満農家を除外したにすぎなかった。ところが、この算定には除外規模を大幅に引き上げて一ヘクタール、つまり、これは平均でいろいろだからわかりませんが、おおよそ九十俵ぐらい、百俵のところもあるでしょうが、八十五俵のところもあるでしょうけれども、一ヘクタール九十俵程度に農家経営規模引き上げた、こういうことであるというふうに私は理解するのですけれども、どうですか。
  128. 中山昇

    中山政府委員 ちょっと先生の御質問の御趣旨が私よく理解をできなかったわけでございますけれども、今回の米価算定におきまして一ヘクタール以上というようなことで算定をいたしました趣旨は、先ほど来申し上げておりますように、そういう一ヘクタール未満農家を全く除外をして考える、政策の対象外に考えるということではなくて、米価算定のときに当たりまして、こういう過剰の中で非常に生産費のかかる農家まで入れて米価算定するのは適切でないということで考え算定をしたわけでございます。  そういうことでございまするから、これはもう私どもいままで米価算定当たりまして、販売農家の中で、たとえば五俵以上の販売農家生産費をとるというふうなことをいたしたこともございますし、そういうのと同じような意味におきまして、やはり現在の米をめぐる事情の中で適切と思われる生産農家対象として生産費を計算をしていくというのが適切ではないかというふうに考えてやっておる次第でございます。
  129. 串原義直

    ○串原委員 つまり、いままでも小さな規模農家、五俵、六俵という経営の小さな農家は除外していましたね、計算の場合。それは五、六俵のところを除外していたにすぎなかった。今度は、私が考えるとおよそ九十俵前後生産をする農家まで除外対象引き上げた、こういうふうになってきているわけですから、私の申し上げたいことは、一ヘクタール未満農家といえども稲作所得家計費に充てているわけですよ。農家経営に大きく寄与させているわけですね。したがって、その農家の存在を無視することにつながらないか。いま一つは、先ほどもどなたかの答弁にございましたが、一ヘクタール未満農家が日本の米の総生産のおよそ四〇%を担っている、こういう話がございましたが、その大きな役割りを担っている農家の立場をも無視することにつながらないか、こういうことを聞いているわけなんです。いかがです。
  130. 中山昇

    中山政府委員 ただいま一ヘクタール未満農家で米の生産のうちの約四割を占めておるということは事実でございます。そういう農家が現実にあって、その農家のおかげで国民の必要とする食糧が供給をされておるということを、私、否定をするつもりはさらさらございません。  ただ、私、先ほど来申し上げておりますのは、現在のように非常に米が過剰で、そういう中にありまして生産調整をやらなければならないというふうな事情が一方でございます。その中で米の価格水準というのを決めようとしておるわけでございますが、そのときに一体どんなに高い生産費のものでも算入をして平均値を出して、それで生産費として計算をしていくという方法があろうかと思いまするけれども、やはりそういう道というのは現在の事情のもとでは適切でないんではないか。  また、一ヘクタール未満の層と申しまするものが、現在、おっしゃるように経営の外にいろいろ費用をかけておるわけでございます。農機具でございますとか、薬剤でございますとか、あるいは、それに支払い地代なり支払い利子をかけましたり、そういういろいろなかかった費用を全部足しますと米価よりも上回っておる。にもかかわらず、生産は継続をされておるというような状況でございます。と申しますことは、逆に言えば、そういう農家層というのは米価水準に余り直接的に関係を持たないのではないか、関心を持たないのではないかというようなことも考えられるわけでございますし、また、そういう層では農外所得だけで家計費が十分賄えるというような状況もあるわけでございますので、そのような一ヘクタール未満の層というような比較的生産費の高い農家まで入れて計算をするということは、やはり米価算定として現在では適切でないのではないかというふうに考えるわけでございます。(「その認識はおかしい」と呼び、その他発言する者あり)
  131. 串原義直

    ○串原委員 まさにいまの答弁、認識は誤りだと私は思う。いま委員のほとんどの皆さんから、その認識は誤りだという指摘があった。私も全くそうだと思う。このことだけで時間をとることはできないのはまことに残念ですが、このことは後で質問される皆さんに譲っていきたいと思いますけれども、全く認識が違っている。極端な表現を申し上げますならば、その認識はとんでもない話だ、私はこう思っているわけです。  そこで、大臣がいないから、私は次官に大臣のかわりにお聞きをいたしますけれども、ことしは諮問米価据え置きであった。去年の算定方式でやると九・四%上がるはずだ。おととしの算定方式でやりますと二〇・六%の米価値上げになるわけでございます。こういうわけですね。ところが、据え置き諮問をなさった。これは、言われるところの全く逆算の米価である。どんなに解説をしても、この資料の数字を入れていただいてみても、どんなふうに言われても逆算米価である、農民の期待にこたえないものである、再生産に見合う米価でないと言えるわけである、こういうふうに私は断ぜざるを得ないわけですね。つまり、食管法という法律によって米価を決めていかなければならぬわけでありますが、私は、法を守らない立場での諮問米価である、こう言いたいわけですよ。つまり、もっと言うならば、適切な表現じゃないかしれぬけれども、何かごまかされた感じのする米価である、こんな感じがするわけであります。  したがいまして、五年もこんなかっこうで続いてきたということに対する農民の不満に対して、あなた、政治家としてこの席でぴしゃっと明確な御答弁を願いたい。
  132. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 先生ただいま御指摘のように、価格決定するに当たりましては、食管法第三条二項によって生所方式ということに相なっておるわけでございますが、しかし、その算定方式そのものは決して固定をしておらないということはお認めをいただけると思うのであります。つまり、もししからば食管法がないということを想定をした場合におきまして、一年間生産をし供給をしております一千万トン前後の米、これに対しまして六百万トンの米が余ったということを想定して、需要と供給の関係だけで米価が決まるということにいたした場合におきましては、これは米価が大暴落をする。しかも、過剰な六百万トンというものに対しまして二兆二千億円という巨大な政府の資金を投入しないで放置した場合におきましては、私は大変な事態が考えられると思うわけでございます。  しかしながら、食管制度というものはなぜいいかといいますと、これは、不測な事態が生じましても平均的に国民にお米を供給する、過剰な事態になってもそれ以上の大変な大混乱になることを防いでいる、こういう観点に立って、単なる需給関係だけではなくして、やはり農家そのものも現在の状態の中において生産を続行していくことができる。こういう観点に立っての食管制度というものの存在があるということを申し上げたいと思うわけでございます。  したがいまして、私は、価格の点におきましても、上げればそれは農家皆さんにも大変喜んでいただけるかと思うわけでございます。しかし、政治家としまして判断をした場合におきましては、ことしの十月はアメリカとの関係において農産物の自由化の問題、いままで一生懸命努力をしてまいったわけでございますが、外国との交渉をする場合におきまして、もし日本の国内において意見が二つも三つも分かれて、アメリカの米が安いんだからどんどん輸入しろというようなこと、きょうも社会党の委員の方から政府の答えが統一しないんじゃないかということがありましたが、一つの交渉において足元からはっきりまとまらない、こういうようなことがあったならば、政治家として自由化から守るということについてもきわめて困難な状況にあるということも率直に申し上げておかなければならぬと思うわけでございます。したがいまして、われわれとしましては、食管制度を通じまして今日の米の生産体制を維持していく、同時に、日本の農業の根幹でありますところの主要食糧品は日本の農民の手によって確保する、そのためには貿易の自由化に対しても断固として闘う、こういうことを明確に申し上げまして、答弁にさせていただきます。
  133. 串原義直

    ○串原委員 次官、自由化の問題等につきましては、私はまた改めた機会に譲りたいと思っています。  もう一度、次官、聞きますけれども、私の申し上げたいのは、米価算定方式が余りにも御都合主義ではないか、そういうことを言っているのですよ。つまり、去年の算定方式でことしの米価を計算すると九・四%上がるというのですね。おととしの算定方式でやりますと二〇・六%上がるはずでございます。それが、ことしはまた算定方式を変えて据え置きになりましたということでは、算定方式というのはあるのかないのか、霧みたいな話だということに実はなりかねないわけですね。したがって、算定方式というものが定まっていない。御都合主義と言われてもやむを得ないようなかっこうで、算定方式がこういう文章になってくるということを、政治家の次官としてはいいことだなと思わないでしょうということを私は聞いているのですよ。いかがです。
  134. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 確かに算定方式というものが常に正しく、正しくというよりも、つまり一つ方式でだれにもすぐびんとわかる、こういうことで終始をしていけば、先生のおっしゃるとおりに、私もそれが一番いいと思います。  しかしながら、要するに、需要と供給のアンバランスが依然として存在をしておる。しかも、国内の財政事情がきわめて逼圧をしてきている。マイナスシーリングということになってまいりますと、農林省全体の予算ということを考えてみましても、この米価及び米だけが農業政策のすべてではない、こういうことも総合的に判断せざるを得ないわけでございまして、そういう観点から、今回いろいろな条件を加味いたしまして決定したのが諮問案である、こういうことを申し上げたいと存じます。
  135. 串原義直

    ○串原委員 いま一度次官に伺います。  次官の言わんとすることも、私、わからないわけではない。したがって、私の言わんとすることは、需要供給ということもある。ないとは言いません。あるでしょう。しかし、基本的なレール、汽車で言うならばレールと私は申し上げますが、レールである算定方式がそのたびにぐらぐらしている。一体千葉へ行くのか埼玉へ行くのかわからないというような、ちょっとそういう言い方では極端かもしれませんね。しかし、それにしても四、五年たったらとんでもない方向へ行っちゃったというかっこうになりかねないようなことでは困る。特別なことがあれば別といたしまして、通常、需要供給のことは別に処理をする方法を考えるとしても、通常な段階である限り、おおよそのレールというものは、こういう算定方式でいくべきだというレールというものはそう変わってはいけない、こう私は思う。そのレールの上を走る列車は、特急の場合もあるし、特急でない各駅停車もあるでしょう。レールはそんなに変わってはいけませんよ、こう思うのです。だから、そういう方式をそろそろ考えていく時期に来ているのではないか。次官、どうです。
  136. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 基本としましては生所方式ということになっておるわけでございますが、今回の米価におきましても、決してその基本を外れたものであるという認識は持たないわけでございます。その方式を貫きながら、なおかつ諸情勢を勘案をして決定をした、こういうことでございます。
  137. 串原義直

    ○串原委員 生所方式を勘案しながらといっても、たったおととしの計算方式をことし当てはめたら二一%の格差ができるなんという話は、次官、とてもぐあいのよろしい算定方式とはどうも言いがたい。もう少しわかりやすい、生産者も納得のできるようなスマートな算定方式というものをレールとして確立しておくべきではないか、こう思うのですよ。生所方式というものを全然加味してないと私は言っておるのじゃないですよ。そうではあろうけれども、その上になおかつこんなに年とともに変わってしまっては困るじゃないか。もうちょっと信頼のできるようなかっこうで、これは法によって決めるわけですから、信頼のできる方向で算定方式を明確にする時期に来ているのではないか。ぴしゃっと決まるというわけじゃないでしょうけれども、その方向を模索すべきだと私は思います。次官にそれを聞いておるわけです。
  138. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 数学の公式は一つでありますけれども、いろいろな諸情勢というものが経済の中にはあるわけでございますので、一つの固定した方式というものはできるだけ模索するといたしましても、最善なものに対して努力するということは確かに必要でありますけれども、今回の諮問米価におきましても決して軌道を外れたものではない、こういうことを申し上げたいと存じます。
  139. 串原義直

    ○串原委員 したがって、私は全然脱線したものだという立場を言っておるのじゃない。そうではなくて、生所方式という立場を堅持しつつもと言いながら、こんなかっこうで、さっきから繰り返しておりますように、去年、おととしと比較すると大変なことになっている。こういうかっこうにならないものを、生所方式という枠をきちっとしておきながらも、その中で年とともにずいぶん大きな格差のできるような算定方式でないものを模索すべきではないか。そういうことを検討する時期に来たのではありませんか。次官、こういうことを私は申し上げておるわけです。同感でしょう。いかがですか。
  140. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 基本方針も確かにそうだと思いますけれども、そのためには、米の過剰の状態、こういうものが解消されていって、生産と供給というものがバランスをとる。それから同時に、財政におきましてもそういうものが許される、こういう事情が加味されなければ、安定した恒久的な方式というものが確立することはなかなかむずかしいではないか、こう思うわけです。
  141. 串原義直

    ○串原委員 このことだけで時間をとったのではちょっと困りますから、私は、そろそろ年とともに算定方式が違うということでないものをぜひ模索する努力をされるように強く期待をしておきたいと思っているところでございます。  そこで、大蔵省に伺いますが、大蔵省は、米価算定に当たって、財政事情等々の都合から米価を下げたらどうか、こういうことを強調されたと報道されているのですけれども、本当ですか。
  142. 千野忠男

    ○千野説明員 諮問案がけさ提出されたわけでございますが、諮問案が農水省において検討されます過程におきまして、大蔵省も財政当局としての立場からいろいろと御協議にあずかりまして、それなりの御意見も申し述べてきたところでございます。  ただ、政府部内の検討の過程でどんなことを言ったかということは、一々申し上げることは差し控えさせていただきますけれども財政当局といたしましては、先ほど来話が出ておりますような米の深刻な、構造的な過剰基調、それから、それに対処するために生産調整等に巨額の財政資金を投入してきたこと、それから、五十八年度予算に関して言えば、例のないマイナスシーリングというような厳しい状況に直面していること、こういったことをいろいろ勘案いたしますと、生産者米価の取り扱いにつきましては、これまで以上の厳しさ、慎重さを持って運用しなければならない、かような考え方を申し述べてきたところでございます。
  143. 串原義直

    ○串原委員 そこで、大蔵省に続いて伺いますが、大蔵省は、食糧管理制度、食糧管理の政策、この基本をどのようにお考えになっていらっしゃるか、思っていることをすぱっと言ってもらいたい。食糧の自給率を向上させるということが一番大事なんですよ、そういうふうに私は思っているのです。大蔵省はどうですか。
  144. 千野忠男

    ○千野説明員 大正七年に米騒動がございました。その後、いまの食管法のずっと前身の法律がそういったいろいろな事態の反省に立ってつくられた。その後、いろいろ検討を重ね、経験を積みまして、現在のような食管法ができてきておるわけでございます。  その基本は、何と申し上げましても、主要食糧である米の安定供給ということでございます。したがいまして、私は、このような目的のために食管制度があるということは非常に大事なことである、かように思っております。  ただ、この食管制度の運用あるいは制度そのもののあり方につきましては、基本的な目的のためにどういうことが正しいのか、どういうような改善の余地があるのか、こういう観点から常に見直しを厳しくしていかなければならぬと考えております。
  145. 串原義直

    ○串原委員 実は、時間があればあと二、三大蔵省とも意見を交換したい、質問したいと思っていたのですが、時間がありませんから、先へ進みます。  私が大蔵省に最後に強く要請をしておきたいのは、とりわけ米価の問題については、食管法の趣旨、いま答弁の中にも若干含まれておりましたが、食糧政策をまず優先させる、そういうかっこうで農林省と連携をとりながら検討していくという姿勢を貫いてもらいたい。まず財政優先では困る。財政だけ心配していると食糧は大変なときが来る、私はこういう心配を持っている者の一人ですから、このことを強調させておいていただきたいと思います。次に移ります。  臨調の部会報告が過般ございました。それと関連して、米価について伺います。  臨調部会では食管制度と米価について幾つも触れておられまするけれども、まずその中で伺いたいのは、去年の第一次答申は農林省は忠実に実行されたようでありますけれども、ことしは臨調部会報告の内容を大きく言ってどんなぐあいに受けとめられているか、御答弁願えませんか。
  146. 中山昇

    中山政府委員 けさども大臣から御答弁がございましたように、臨調第一部会の部会報告が出ておるわけでございますが、その後、本調査会の答申を経て私ども最終的に意見を申し上げたいというふうに思うわけでございまするけれども、臨調の部会報告の中で、食糧管理制度関係でいろいろな御指摘があるわけでございます。  その中で、一つ生産者米価については、生産抑制的に定めていけというような御指摘、あるいは「中核農家のコストと所得を基準とする方向で改善を図る。」というような御指摘もございます。それから、売買逆ざやを早期に解消しろというような御指摘もございます。また、中長期的には食糧管理制度、現在の全量管理方式の見直しを行えというような、いろいろな観点からの指摘がなされておるわけでございます。  私どもといたしましては、食糧管理制度につきまして、現在、新しい食糧管理法が改正されたばかりでございまして、その新食糧管理法に基づきます食糧管理を適切に運営をしていくという立場で、いろいろ御指摘がある中で、取り入れられるべきものは取り入れまするけれども、検討いたしまして取り入れられないものは取り入れないというつもりでございます。
  147. 串原義直

    ○串原委員 いま御答弁がありましたように、日本の将来の食糧確保という立場から、信念と自信を持って、取り入れられないなと思ったら自信を持って進んでもらいたい。  これを注文しておいて、次の質問に移ります。  いまちょっと触れられましたけれども、売買逆ざやは早期に解消するようにという意味の提言が臨調からあるわけですね。といたしますと、この提言を受けるというようなかっこうで、ことしも消費者米価というのは引き上げるということを、後半、検討されるのですか。
  148. 中山昇

    中山政府委員 米の売買逆ざやにつきましては、物の値段といたしまして、買い入れ価格の方が売り渡し価格よりも高いという状況は適切なものではございませんので、売買逆ざやについては解消していくというような方向で従来から売り渡し価格、買い入れ価格の運営をいたしてきたわけでございます。  ただ、本年の米の政府の売り渡し価格をどうするかという点につきましては、全くまだ何も決めておらない段階でございます。
  149. 串原義直

    ○串原委員 つまり、消費者米価については、いまのところ何も考えていない、上げるということを考えていない、こういうことでいいですか。
  150. 中山昇

    中山政府委員 ただいま本年産生産者米価につきまして御諮問を申し上げて、御討議をいただいている段階でございます。米の政府売り渡し価格をどうするかという点につきましては、食管財政全体の運営の合理化等々の問題とともに、これから先、米なり麦なりの買い入れ量がどういうふうになるか、あるいは外麦の価格がどうなるか、食糧管理をめぐりまする諸般の事情を見きわめた上でなければ決定をすることはできないというふうに思っておるわけでございまして、まだ政府買い入れ価格すら決まっていないいまの段階におきましては、上げるとも下げるとも全く考えておりません。
  151. 串原義直

    ○串原委員 つまり、政府の買い入れ価格の方は去年と同じにしたいと思います、こういうかっこうでいま諮問しているからね。そういう立場から、逆ざやを解消するということになりますと、消費者米価を上げるということになっていくのですか、こういう立場で聞いているわけですよ。確かにまだ生産者米価は決まっていません。けれども、去年と同じでいきます、いきたいのですよ、こう言われているので、その上に立った売買逆ざや解消ということになると、消費者米価はどうなるのですか、こう聞いているわけです。したがって、それはいまの段階では全然考えていません、こういう理解でいいですか、こう聞いているのです。
  152. 中山昇

    中山政府委員 現段階におきましては、本年の政府売り渡し価格をどうするかという点については考えておりません。
  153. 串原義直

    ○串原委員 売買逆ざやの問題について、もう一つ触れておきたいわけでございますが、食管法の存在というのは、実は逆ざやがあるところに大きな存在意義があると私は理解しているところでございます。逆ざやが全然ないんだということになりますと、食管法の存在意義那辺にありやということになるのではないか、こう思っているわけでございます。そういう意味で、売買逆ざやをなくして、コスト逆ざやまでなくしたら、どうもこれまた食管法の検討というような話になりかねない議論に発展すると考えていますので、それに対する農林省の考え方を明確に承っておきたいと思うのです。
  154. 中山昇

    中山政府委員 現在、食糧管理法におきまして、政府の買い入れ価格につきましては、生産費物価その他の経済事情を参酌し米穀の再生産を確保することを旨として定める、それから政府の売り渡し価格につきましては、相同様に、消費者家計の安定を旨として定めるということになっておりまして、その結果として、現在、両米価の間にいわゆる売買逆ざやが生じておるということでございます。ただ、従来、食糧管理法を運営をいたしておりまして、売買逆ざやがなかったという状況もございまして、買い入れ価格、売り渡し価格、それぞれのルールに基づきまして決定をいたしました結果、売買逆ざやが存在したり存在しなかったりというようなことになるわけでございます。  したがいまして、両米価をこういう食管法の規定に従いまして決定したからといって、直ちにそれが売買逆ざやの存在を前提とするものであるというふうには私ども考えておるわけではございません。売買逆ざやにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、買い入れ価格の方が売り渡し価格よりも高いというようなことでございますと、物の値段のあり方としてどうも不自然であるということでございますので、これは解消に努める必要がある、そういうふうに考えておりますけれども、先生の御指摘がありましたようなコスト逆ざやというようなことになりますると、これは食糧管理全般に相当影響を及ぼしまして、この場合につきましては、売買逆ざやの解消という問題とは逆に、相当慎重な検討を要するのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  155. 串原義直

    ○串原委員 そういたしますと、売買逆ざやについては情勢が変わることもあり得るけれども、コスト逆ざやというものについてはなかなかそんなわけにはいかない、食管法の精神、存在意義からいって、むしろあって当然といいますか、そんな売買逆ざやを解消するような考え方とは別に考えていかなければならぬ、こういう理解でいいわけですね。
  156. 中山昇

    中山政府委員 先生おっしゃいますように、売買逆ざやの解消という問題とコスト逆ざやの解消という問題の間には相当性格的に違いがございまして、売買逆ざやの解消の方はともかくといたしまして、コスト逆ざやの解消ということになりますと、私どもこれを軽々にやるわけにはいかぬだろう、食糧管理全般に及ぼす影響を十分慎重に検討した上でないと簡単には踏み切れないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  157. 串原義直

    ○串原委員 次の質問に移ります。  自主流通米助成についてでございますが、これは臨調でも指摘をいたしておりますけれども自主流通米の助成を圧縮する、縮小するということになりますならば、ついこの間決定をいたしました食管法改正の際に、売買逆ざやと流通経費を政府が負担している中で自主流通米が流通するというハンディキャップがあるため、今後とも適正な助成措置は継続する必要がある、こういうふうに言われてあの際食管法の議決等々もあったというふうに私は理解をしているわけであります。そういたしますと、自主流通米助成をこの際圧縮していくということになると、食管法審議の際の立場と矛盾してくるのじゃないか。これが質問の第一。  それからいま一つは、もし自流米助成の縮小を図ったとするならば、同じ質の米の流通でありますならば、政府米の方が有利になる、これは当然のことだというふうに思っているわけでありますが、そういう方向になっていって自主流通米の流通に支障が出てくるのではないか。これが二つ目。  そうなるとすると、ことに私の心配いたしますのは、Bランク米はかなり値崩れになるのではないか、こういうことも憂慮するわけであります。したがって、これは、経過もずっとあったわけでありまして、自主流通米助成についても軽々に取り扱うべき筋のものではない、こう私は判断するのですけれども、いかがでしょうか。
  158. 中山昇

    中山政府委員 自主流通米の助成につきましては、自主流通米助成を始めましたときにありました売買逆ざやというものに比べまして最近は非常に売買逆ざやが縮小をいたしてまいりまして、一類銘柄というようなものを見てまいりますと、むしろ売買逆ざやがなくなってきておるというような状況もございます。自主流通助成を始めましたときは、自主流通の方にも相当のハンディキャップがございますので、その円滑な流通を確保する上でどうしても必要な財政措置はとらざるを得ないであろうということでやってきたわけでございまするけれども、最近のように自主流通の割合も全流通量の中の四割近くにもなってきておるというような状況もございますし、自主流通米の建て値も最近上がっておるというような状況からいたしますと、自主流通助成についてもう一度見直しをする必要はあるのではないかというふうに考えている次第でございます。  ただ、御指摘のように、自主流通米の助成をなくしました場合に、それが現実の自主流通の円滑な流通に混乱を生ずるというようなことがあってはならないのでございまして、そういうような点も十分考えながら、自主流通制度といいますものが健全に発達をいたしまして、政府米とあわせまして、自主流通米と一緒になりまして、米という食糧の供給の確保ができるようにするというのが今回の食糧管理法改正の趣旨でもございましたから、したがいまして、自主流通助成というものにつきましては、そういう意味合いも込めまして慎重に検討してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  159. 串原義直

    ○串原委員 自主流通米助成がなくなるなんということはとてもとても許されることではありませんが、いずれにしても、いま答弁のように、いろんな種類もありますから、いささか検討をする時期に来ていると考えている、見直しといいますか、検討をする時期に来ていると思うけれども、それはまさに、従来と同じように、あるいはより以上に健全な自流米の流通、これが行われるために検討する、こういう理解でいいわけですね。一部どこかで自主流通米を減らそうというような報道が幾日か前にございましたが、そういう立場ではなくて、自流米の健全な流通を促進をしていくために検討をする、こういうふうにいまの答弁を理解してよろしいか。どうですか。
  160. 中山昇

    中山政府委員 自主流通米につきましては、全体の政府管理すべき米穀の中で四割近くなってきたというような状況がございまして、もし政府米の割合というものがどんどんと減ってまいりまして、自主流通米の方がどんどん大きくなりまして、過半を自主流通米が占めるというようなことになりますと、これはまた食糧管理、全量管理という面からいたしましていろいろ問題も生じてくるというようなこともあわせ考えなければいけないというふうには思いまするけれども、この助成措置の一部に伝えられているような削減というようなことを考えます場合でも、円滑な自主流通に非常に支障を来す、自主流通がどんどん減っていくということになっては、これはまた問題が残るかと思うわけでございまして、いずれにいたしましても、そういうことのないように、自主流通米に関する助成を始めましたときの本来の姿を十分考えた上で、今後におきまする自主流通助成というものを考えてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  161. 串原義直

    ○串原委員 時間が参りまして、まことに恐縮ですけれども最後に、次官、一言。  何かこのところ、アメリカあたりで米が生産をされて、政策を誤るならば大変なことになるがごとき報道も伝わっている。どんな事態になろうとも米だけは国内で自給をする、輸入をしない、ぴしっとしていくべきだと思うわけでございますが、あなたに責任者として農林省の考え方をきちっと聞いておきたい。
  162. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 農林水産省は、大臣けさほどから決意を申し述べておりますように、主要農産物につきましては日本の農民の手によって確保する、このことを絶対守っていく、こういう決意でございます。したがって、米の問題につきましてもあくまでも自給体制を確立する、このことは決して変わっておりませんので、今後とも御協力のほどをお願い申し上げます。
  163. 串原義直

    ○串原委員 終わります。
  164. 羽田孜

    羽田委員長 串原君の質疑は終了いたしました。  神田厚君。
  165. 神田厚

    ○神田委員 米価の集中審議が行われているわけでありますが、委員長にちょっと注目をしていただきたいのは、自民党の筆頭理事さんはおりますけれども、自民党の出席が非常に悪い。これは米価の集中審議ですから、やはりもうちょっと出席を熱心にやってもらわないと困ると思うのですがね。決議に対しても後ろ向きだし、そういう意味では、ちょっと困りますから、もう少し熱心に取り組んでいただきますようにお願いをしたいと思っております。  ところで、食糧庁の方に御質問を申し上げます。  全中を初めとする統一要求米価は四・三七%、きわめて控え目な要求をしているわけであります。そういう中で、われわれは、政府が今回出されました諮問据え置き諮問、こういう形で米価決定されますと、実質五年間にわたりまして据え置きがされるわけでありまして、きわめて遺憾であります。そういう中で、政府が今回も米価算定方式の変更をしたわけでありますが、算定方式変更の根拠をひとつ御説明を願いたいと思います。
  166. 中山昇

    中山政府委員 けさほど来お答え申し上げておりますように、今回の米価算定当たりましても、生産費及び所得補償方式という方式を変更をいたしたわけではございません。その中で、生産費及び所得補償方式によりながら、対象となる生産費農家とり方のところを、最近におきます米をめぐりますいろいろな事情を踏まえまして、従来と異なるものを採用をしたということでございます。
  167. 神田厚

    ○神田委員 そうすると、昨年と比べて具体的にどのところをどういうふうに変更して、なぜそういう変更をしたのか、理由をはっきりとお答えいただきたい。
  168. 中山昇

    中山政府委員 けさほど来政府試算について御説明申し上げておりますように、今年の政府試算の内容につきましては、対象となる生産費とり方、このところの変更をいたしただけでございまして、そのほかの計算についてはすべて昨年と同様の方式でやっておるということでございます。  試算のところで(1)と(2)と二つとりまして、いわゆる対象農家というものをとります場合に、先ほど来申し上げておりますように、最近におきます需給過剰基調というものがございまして、大量の需給調整、生産調整をやっていなければならないという事情が的確に反映されますように、この生産費対象農家とり方を改めたというのが第一の方式やり方でございます。  それから第二の方式やり方と申しますのも、やはり最近の稲作の実態を見てまいりますと、一ヘクタール未満層と一ヘクタール以上層の間では、稲作と申しましても相当の差がある。一ヘクタール未満層というのは、家計費を賄うのに農外所得でやっておるというような実態にもございますし、また、支払っておる生産費米価水準を上回っておるにもかかわらず生産が継続されておるというようなこともございまして、こういう一ヘクタール以下の層というのは米価に対する関係の度合いが、それ以上の農家と比べてどうもやや違うのではないか、こういうような状況がございますので、一ヘクタール未満の層を生産費算定当たります対象農家に入れないというようなことをやったわけでございます。  そういうようなことで、最近の需給なりあるいは稲作状況なり一般的な米をめぐります情勢をより的確に反映するために、こういうような算出をいたしたわけでございます。
  169. 神田厚

    ○神田委員 説明を聞いていても、昨年からことしにかけて、なぜこういう形で変えなければならないかという必然的な考え方はない。米の需給関係の問題や、そういうことが問題であるならば、当然昨年においてもこういう問題は指摘をされていてもいいわけでありますけれども、やはり年々諮問米価据え置きに合わせて逆算米価をつくっているということであると言わざるを得ないわけでありまして、現在、米審会場におきましては、生産者代表が再諮問要求をして中断をされているようでありますが、われわれといたしましても、これから後、再諮問要求をして、農林大臣に対する申し入れその他を行うつもりでありますけれども算定方式そのものがやはり非常に問題であるということを指摘をしておきたいと思うわけであります。こういうことをやっていたのでは、いつまでたったってこれはだめですよ。  政務次官にお聞きするのですが、政務次官も米作の中心のところにいるわけでありますが、実質五年間米価が据え置かれている農家状況を見て、どういうふうにお考えでありますか。私は、先日も秋田に行ってまいりました。あるいは青森へ行ってまいりました。そして聞く声は、米価がこれだけ据え置かれて、しかも不作続きのために、地方経済が非常にまいっている、そして農家は本当にもうどうしようもない状況だ、こういうことを切々と訴えられておる。政務次官も同じ米の生産地域から選出をされている国会議員として、その辺のところをどういうふうにお考えでありますか。
  170. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 できることでありますならば、米価を上げて農家皆さんにも喜んでいただきたい。しかしながら、先ほど来から述べておりますように、米の過剰基調の現状にございまして、どうしてもその財政負担というものは拡大をしていく、こういう状況にありますと、つまり多額なる食管の赤字とかそういうものにおきまして、やはり納税者という立場からも相当の批判が出てくるでありましょうし、全体というものを考えました場合には、今回のような形で諮問をするということに相なったわけでございます。
  171. 神田厚

    ○神田委員 それは、そういうふうになったのはわかっているけれども、次官としてはどう思うのだということを聞いているわけです。  この四年間にしましても、いわゆる勤労者の所得は三〇%近く上がっている。それから、物価にしろ二十数%だ。こういう中で、生産者米価だけわずかな値上げでがまんせざるを得ないという状況は、やはり政権政党と政府の責任ですよ。そういう意味では、農家をこれだけ追い詰めたのは政府、政権政党の責任だということを強く自覚をしていただかなければ困ると思っております。  ところで、食管の問題に移りますけれども、いま食糧庁の方からいろいろ考え方が示されておりますが、まず第一に、これは何度も言われていますけれども、食管の中において、食管の根幹を守るという気持ちがあるのかどうか、食糧庁からひとつ御答弁いただきたい。
  172. 中山昇

    中山政府委員 私どもといたしましては、自主流通米も含めまして、国民の必要とする米を国が責任を持って管理をすることによりまして、生産者に対しましても、また消費者に対しましても、国民の基本である食糧を適正に管理をしていくということは非常に重要なことだと考えております。  このような制度の基本というのは、過剰あるいは不足、いかなる食糧事態のもとでもこういう制度が必要であろうと私ども考えておりまして、この制度が的確にその役割りを果たし得るように、従来から、昨年食糧管理法を改正したわけでございますけれども、今回のこの新食糧管理法のもとで、国民に対する米の安定供給が確保されますように、この新しい食糧管理制度を適切に運用して、国民の負託にこたえたいと思っている次第でございます。
  173. 神田厚

    ○神田委員 つまり、食管の根幹というものについては今後もきちんと守っていく、そういうふうなお考えでありますか。
  174. 中山昇

    中山政府委員 昨年改正をいたしました食糧管理法に基づきまして、現在の食糧管理制度、根幹も枝葉もあるかもしれません、両方とも堅持をいたしてまいりたいと思っている次第でございます。
  175. 神田厚

    ○神田委員 根幹も枝葉も全部堅持をするということであるならば、価格の問題は食管の根幹になるのか枝葉になるのかわかりませんけれども、この価格問題についても、当然食管法の精神にのっとってきちんと守っていくということでありますね。
  176. 中山昇

    中山政府委員 先生御指摘のとおり、食糧管理法の規定に従いまして政府の買い入れ価格政府の売り渡し価格決定をいたしておるところでございますし、今後ともそういたしてまいりたいと思っている次第でございます。
  177. 神田厚

    ○神田委員 そういうことでありますと、先ほど議論になりましたけれども、食管法の第三条に、生産者米価は再生産を確保することを旨としてこれを定めるというふうに決められておりますね。その点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  178. 中山昇

    中山政府委員 食糧管理法の第一二条には、政府の買入れ価格生産費物価その他の経済事情を参酌し米穀の再生産を確保することを旨として定めるというふうに規定をされておりまして、私ども、この規定に従って価格決定をいたしてまいりたいと思っている次第でございます。
  179. 神田厚

    ○神田委員 それでは、農林省の方から発表されました、生産費が昨年度に比べて五・一%上がっている、こういう状況から考えまして、ことしの試算米価によりますと、日本の農家の何%が再生産を確保できる数字になるでありましょうか。
  180. 中山昇

    中山政府委員 お尋ねのように、ことしの米価でことしの生産費をどれくらいカバーしておるかということになりますと、まだ五十七年産米生産費が出ておりませんので、五十六年産米生産費米価関係で申し上げますと、第二次生産費で見ますと、五十六年産では、米価が一八%の農家生産費をカバーいたしておるというようなことになっておるわけでございます。これは第二次生産費でございます。
  181. 神田厚

    ○神田委員 私ども調査では、約四〇%の農家は、この試算米価のいわゆる生産費の問題からしますと、生産費を下回るといいますか、大変問題があるというように考えておりますが、いま、第二次生産費で一八%というふうなお答えでありますが、それで間違いありませんか。
  182. 中山昇

    中山政府委員 先生御指摘の四〇%とおっしゃいますのは、一ヘクタール以下の農家生産費米価を上回っておるということだ、そのように理解いたしております。
  183. 神田厚

    ○神田委員 そういう状況であれば、いわゆる食管の精神であります再生産を確保することができる米価だとはわれわれは考えていないわけでありますが、その辺はどういうふうに考えておるわけですか。
  184. 中山昇

    中山政府委員 米穀の再生産の確保という趣旨でございますけれども、この再生産の確保ということは、すべての農家生産費の全部を価格で償うというようなことを意味しているものではないと私ども考えておるわけでございまして、確かに生産費米価を上回る農家というのが相当な数に上っていることは事実でございますけれども、実態的には、こういうような米価水準のもとでもこれらの農家稲作を継続しておりますし、国民の必要とする米の再生産に現在のところ支障がないというようなことでございますし、さらにまた、大幅な生産調整をやらなければならないというような実態にあるわけでございまして、五十六年産米米価水準というものが米の再生産の確保を図れなかったというようなことには私ども考えておらない次第でございます。
  185. 神田厚

    ○神田委員 どうも食糧庁の言っていることはよくわからないのでありますが、全体的に米の再生産が確保されればいいというふうな観点に立つのか。少なくともわれわれとしましては、個々の農家の問題を取り上げて、農家経済その他の関係の中で再生産が確保できるような形にならなければいけないのではないかというようなことを思っているわけでありますが、いま話を聞いておりますと、こういう形になりますと、規模の小さい農家というのはどんどん切り捨てられていってしまう状況だということで、大変心配をしているのでありますが、食糧庁、農林省の方針としては、そういう小規模農家というのはやはりなくなってもいいという考え方を持っているのですか。
  186. 中山昇

    中山政府委員 私ども米価を決めますときに、米の生産農家生産費を一体どういうふうに考えるかというようなことも非常に重要なファクターであると考えているわけでございます。生産事情と申しますか、生産費と申しますか、それが重要なファクターであるということを否定いたすわけではございません。ただ、それとともに、経済事情と申しますか、需給事情と申しますか、そういうものも十分勘案した上で米価水準というのは決めなければならないであろうと思っているわけでございます。  私ども、一ヘクタール以上の生産費農家対象農家として今回の試算米価算定をいたしたわけでございますけれども、その趣旨は、一ヘクタール以下の層をこれから切り捨てるとか切り捨てないとか、そういうふうなことを考えているわけではございませんで、生産費の低い順から並べまして、やはりこういう過剰基調のもとで、非常に大きな過剰があるというもとで米価を決めます場合には、一ヘクタール未満層のような比較的米価に関心が特に深くないというような層のものまで入れ込みまして、高い生産費基礎として価格を計算をしていくというようなことは適切ではないのではないかというふうに考えて、今回の算定をしたわけでございます。
  187. 神田厚

    ○神田委員 米価に余り関係ないと言いますけれども、それは相対的な評価でありますから、説明にならないと思うのであります。結局、こういうふうな形でとっていっても、最終的には米価を長年据え置いていくというような状況でありますと、同時に、中核農家と言われている農家もまいってしまっているというのが現状であるわけでありまして、政務次官にお尋ねしますけれども、食管を堅持をする、食管の幹も枝も堅持をするんだということであるならば、これはやはり農家が再生産を確保できるような米価を決めなければいけないんだ。少なくとも、五年も連続実質据え置きのような米価決定をしておきながら食管の根幹が守れるというような論理は、これはきわめて矛盾をした論理だというふうに思うわけでありますが、その点、食管についての考え方米価についての考え方はどうでありますか。     〔委員長退席、加藤(紘)委員長代理着席〕
  188. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 食管制度の持つ意義といいますものは、米が不足の場合におきましても過剰な場合におきましても再生産を確保する、こういう趣旨にあるということは、先ほど来から申し述べてきたところでございます。  さて、そこで今後の問題でございますが、やはり日本の米作農家における最大の問題点といいますのは、全体の七七%が二種兼業農家である。ということは、約一町歩以下の農家が大体七〇%ぐらいで、同じ数字になるわけでございますが、つまり、経営規模が小さいことにおきましては、十分それで生活をしていくことができない。しからばどうするか。やはりこれは経営規模拡大をする、そしてそのもとで専業農家というものが発展をしていくという道を探っていくことが大事ではないか。  したがいまして、農地三法等の国会成立に伴いまして、農用地利用増進事業も推進をいたしておるわけでございますし、農地の流動化というものも逐次進んでおるわけでございますから、こうした規模拡大農業団体におきましても、たとえば東日本におきましては五ヘクタール、西日本においては三ヘクタールというものを一つの専業農家の基準として今後目指していくんだ、そういう目標もあるわけでございます。したがいまして、土地の基盤の整備ももちろんでありますし、構造政策も同時に進行をすべきであると考えておるわけでございますが、規模拡大も重要である、こういうことを申し上げたいと存じます。
  189. 神田厚

    ○神田委員 規模拡大はもちろんできればいいことでありますが、なかなかむずかしいわけですね。ただ、規模拡大されればそれじゃ理想的な農業ができるのかというと、決してそればかりで言えるわけではありませんし、要するに、現在でも、昭和四十年には六万八千名もいた後継者がすでに六千人、これもだんだん切るような形になってくると言われている。こういう中で、なぜ農家に担い手がいなくなってしまったのか、あるいは農業就業者が高齢化しているのか、こういうことは農業に対する未来の展望がないからだということであるわけでありまして、そういう状況の中で、やはりこの際、私どもはきょうの大臣の答弁等も聞いておりますと、こういう米価政府がとり続けることが日本の農業の体質強化につながるんだという暴論を吐いているようであります。  そういうことを考えてみますと、一体農林省は日本の農政についてどういうことを考えているんだろうか。つまり、こういうふうに米価を据え置いていくことが日本の農業の将来のためにいいんだというような答弁を午前中にずっとしていた。こういうことでは、根本的にやはり農業に対する考え方が違うというふうに私は思っております。したがって、これから第三期の転作問題やあるいは臨調の提唱しております自主流通米助成、良質米奨励等の奨励金の削減等の問題が具体的に出てくるわけでありますが、そういうふうなことをしてしまって一体日本の農業は本当に大丈夫なんだろうか、稲作をこれまでこういう形で追い込んできて、さらに日本の農業の中心である稲作に対するはっきりした具体的な展望もなくして、中途半端な農政をこういうふうな形で続けていっていいんだろうかという反省をやはり持ってこなければならないのではないかと思っているわけであります。  時間もありませんので、最後に、第三期のいわゆる減反に対する問題、それから米の需給問題に対しましては、一つは、消費拡大努力なくして非常に消極的ないわゆる需要見通しをしていることについては、これは変えなければならない。その需要見通しをしていく中では、やはり精いっぱいの消費拡大の運動を並行しながらこれをやっていかなければ、ますます農業縮小の論理に陥ってしまうわけでありますから、そういう点では、これに対する努力が非常に足らないのではないか。  さらには、転作等の問題につきましても、これをこのまま行いますれば農家はますます農業に対する展望を見失っていってしまう。そして、いまや休耕補償なんということはもう国民から理解をされません。休耕補償ではなくて、転作に対する補償をきちんとしていく中でやはり過渡的な稲作農業を救っていくという道をとらなければならないわけでありますが、その辺のところについての考え方と、それから臨調が提唱している自主流通米の助成の削減あるいは良質米奨励金の削減の問題、これについて農林省としてはどういうふうにして対応していくのか。  この三点をお聞かせいただきまして、質問を終わります。
  190. 小島和義

    ○小島政府委員 水田利用再編対策の今後の進め方、課題につきまして、私からお答え申し上げまして、あとの問題は他の方からお答えいただきます。  ただいまの米需給が潜在的に過剰基調を深めております中で、米の過剰を回避いたしまして、自給力向上のためにもつと必要な作物をつくっていくということは、今後の農政の一つの大きな柱でございます。全国各地、非常にむずかしい状況の中で御苦労して取り組んでいただいておるわけでございますから、そういう状況を踏まえまして、また、今後の米の需給がどうなるか、転作の定着化の動向がどうかということを十分に勘案いたしまして、第三期の対策につきましても真剣に検討し、取り組んでまいりたい、かように考えております。
  191. 中山昇

    中山政府委員 自主流通米に対します助成につきましては、先ほど来お答え申し上げておりますように、臨調の報告のあるなしにかかわりませず、自主流通米は総流通量の四割近くを占めるに至っておりますこと、また、政府米の売買逆ざやが非常に縮小してまいりましたこと等々の事情考えながら、自主流通米政府米とあわせて政府管理する米穀として適正な流通ができますような観点に立ちまして、もう一度自主流通助成の見直しをいたしたいというふうに考えている次第でございます。  それから、先生御指摘の米の消費の問題でございまするけれども、確かに長期見通しにおきまして今後とも需要が減るというふうな見通しをいたしたわけでございますが、これにつきましては、私ども決して消費拡大努力をしないというわけではございませんで、消費拡大のためのいろいろな施策、努力をいたした上で、どうも客観的にこういうふうになるのではないかということで見通したわけでございます。先生御指摘のように、米の消費拡大というのは非常に重要な問題でございまして、食用、飯として食べる以外の用途も含めまして、これから先なお消費拡大には努力をいたしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  192. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員長代理 次に、藤田スミ君。
  193. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 午前中の御答弁の中でも、午後の中でも、一ヘクタール以下を切り捨てて、私はそういうふうに言いたいのですが、それがベターであるかのような御答弁が一貫しておりました。しかし、たとえば大阪に例をとってみますと、稲作農家というのは四万二千四百四十二戸ございますが、その中で、一ヘクタール以上層というのは〇・九%なんです。三百八十二戸。その三百八十二戸の生産費だけを対象にするということになるわけですね。これは、京都の場合を見ましても、稲作農家は五万八千三百十六戸ありますが、一ヘクタール以上で見ますと四・五%、戸数でわずか二千八百七十三戸です。だから、九五・五%というのは、これは結局どうなってもいいというふうに言っていらっしゃると考えざるを得ないわけです。また、一ヘクタール以下層というのは、生産費のうち支払い費用の方が米価を上回ってしまっている、すなわち絶対的な赤字を抱えて生産を続けているわけなんですが、だから無視してもよいというふうになっていくのでしょうか。けれども、一体だれが今日これほどの赤字を一ヘクタール未満人たちに押しつけてきたのかというと、結局そのことは、ほかならぬ政府米価据え置き、実質引き下げをやってきてそういう状態をつくってきたんじゃないでしょうか。  大臣は盛んに、将来の明るい未来のために、こういう言葉を使われて、生産性の向上のためにいま農民はがまんをしてくれというように強調されたわけですが、これは、私は二重のごまかしに過ぎないというふうに思うわけです。生産性向上というけれども米価の抑制、引き下げは、生産性向上の担い手になるべき、そういう階層の経営こそ直撃していくのではなかろうか。もちろん下も大変ですが、しかし、上の方も大変になるのじゃなかろうか。そういう点で、一ヘクタール以上層の農家だけを基準とすることについての影響を、どこまで慎重な検討をされての上なのか、このことについてまずお伺いをしたいと思います。
  194. 中山昇

    中山政府委員 先生御指摘のように、一ヘクタール未満の階層の農家というのが全体の農家の中で非常に数が多いということも事実でございます。ただ、私、今朝来申し上げておりますように、一ヘクタール未満農家層と申しますのは、一ヘクタール以上の農家層と比べまして稲作に対する依存度というのは非常に少ないということでございまして、一ヘクタール未満農家所得の中に占めます稲作所得割合というのは六ないし六%以下というような状況になっておりまして、家計費農外所得で賄っておるというのが実態でございます。そういうような稲作農家実情からいたしまして、本年産米政府買い入れ価格を決めます米価水準といたしましては、生産費を安い方から並べましてとる、その最後のところということになりますと、どうしてもそういう農家まで入れることは、こういう米の需給が過剰である基調のもとではいささかいかがなものかということで、こういう措置をとっておる次第でございます。  先生おっしゃいますように、一ヘクタール以上の農家につきましても、累年にわたります米価据え置きということで、確かに経営的にはやや問題を生じておると申しますか、昨年、一昨年と不作でございました関係もございまして、いろいろとむずかしい状況が出てきておるということまで否定をいたすつもりは、私、さらさらございませんけれども、一ヘクタール以上の層のところまでの平均生産費をとりまして米価算定をしておくということをいたしますれば、やはりこれから先の国民の必要とする米を十分確保できるような米価水準でもあるというふうに私ども考えておる次第でございます。
  195. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私の申し上げているのは、そういうことで結局米価を抑制していくことが自己矛盾を持っていくのじゃなかろうかということを申し上げているわけです。  ここに私は農水省の農業総合研究所の須永芳顕さんという方が「農業総合研究」という雑誌の八二年一月号に載せられた論文を持っていますが、ここで非常におもしろい試算をしているわけですね。仮に米価が三〇%低下したとして、そのことに対する影響は「例えば五ヘクタールの水稲単作専業農家の場合には、米価が三〇%低下すると稲作所得は四五〜五〇%も減少し(農家の性格上もともと稲作以外の農業所得農外所得が著しく少ないので)、農家経済が破綻の危機に直面することは必定である。」こう書いているわけです。だから、私は、こういうふうに一ヘクタール未満を切り捨てるというようなときに、それ以上に対してもそれ以下に対しても、農業に対して、農家に対してどういう影響が出てくるのかということをどこまで慎重に検討されたのかということを言いたいわけです。  これは、臨調が、中核農家育成のためにと言い、そのために価格抑制策をと、こう言っているわけですが、実は中核農家経営そのものを最初に直撃するという自己矛盾を示している。この試算はそういうことを示しているというふうに考えます。農水省も臨調に対して同じような説明をしているというふうにも聞いてはおりますけれども、一体この中核農家基準の米価ということに対してどういう見解を持っていらっしゃるのか。どういう検討をされておられるのか。
  196. 中山昇

    中山政府委員 今朝来申し上げておりますように、稲作中核農家というものを想定をいたしまして私ども年産米価算定をしているということではございませんで、たとえば災害を非常に受けた農家を外すのと同じように、私ども、一ヘクタール以下の層と一ヘクタール以上の層と比べてみますと、米価に対する関連の度合いというもの、あるいは兼業で家計を賄っておるとか、そういう違いがございますので、そういう層はやはり米価算定基礎に算入をしていかない方がいいのではないか、生産費の安い方から順番に並べていきます場合に、そこの層まで入れて米価算定するということは、非常に高い米価水準になってしまいまして、それは現在の過剰のもとでは適切ではないのではないかというふうに考えておるところでございます。  それから、御指摘のような米価を三割も引き下げるというような前提のお話でございますと、それは相当の影響農家経済にある、あるいは稲作農家にあるという、それは当然のことだというふうに私考えまするけれども、こういうことで計算をいたしましてやはり昨年並みの米価水準というものが算出をされたわけでございまして、今後物価なりあるいは賃金なりがどの程度動くかということもございましょうけれども、こういうことであれば、稲作農家、特に専業的な農家に対しましてそう大きな打撃を与えるというようなことは、私ども考えておらない次第でございます。
  197. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私の尋ねていることにまともに答えていらっしゃらないわけなんです。結局、それほどに十分に検討をされないで今度の諮問のこのいろいろの数字が出てきたというふうに考えざるを得ませんし、政府の目的とすることも結局みずからのやり方の中で破綻をしていくであろう、私はそういうふうに思います。  次の問題に移りますが、やみ米業者の取り締まりについてお伺いをしたいわけです。  昨年の食管法の改正の際に強調されたのは、守れる食管制度にするということだったと思うわけです。つまり、米穀通帳などが一億総違反というような状態を法律上でなくして、だれもが守れる制度にしていこうというのが一つのポイントでした。そのかわりに、やみ米流通、不正規流通については法改正によって取り締まりを行っていきたい、こういうことで、そういう問題が起こったときにも、単に都道府県に任せないで、農水省、食糧事務所も力を入れていきたいということもまた言われていたところです。  ところで、食糧庁長官は昨年の十月十二日に「米穀の不正規流通防止について」という通達を出されています。さらに、三月二十七日にも通達を出して、「無許可販売業者に対して講ずる措置」として、一つは、警告書の交付、出頭を求めて厳重注意、誓約書の提出指示、無許可販売の即時中止のための指導、二番目には、反復して大量の不正規流通を行っている業者に対しては、名称の公表、警察への告発、こういう手順を踏んで取り締まりをやっていくのだというふうなことになっているわけなんですが、昨年十月、最初の通達を出されてからもはや九カ月たちました。再通達が出てからも、もう三月半たっているわけです。やみ業者は依然として後を絶っていないというふうに思うのですが、指導に従わない悪質業者の氏名の公表や警察への告発は何件に上っているか、お伺いをします。
  198. 中山昇

    中山政府委員 昨年の食糧管理法の改正に伴いまして、米穀の流通業務に携わる者につきましては、販売業者につきましては許可制度を施行いたしたわけでございます。この趣旨は、米穀につきましてはやはりそういう特定のルートを通じて国民に供給するのが適切ではないかということでこういう改正をいたしたわけでございまして、それ以来、私どもといたしましては、不正規流通というものができる限りなくなるように行政指導を強めている次第でございます。  不正規流通でございまするから、それを営む者があるわけでございまするし、それに対します指導といたしましては、厳正にやっておるつもりでございまするけれども、先生御指摘のように、昨年の十月以来半年ばかりの年月を経過いたしまして、まず最初に私どもといたしますれば中止の指導をやる、その上で、なかなか中止に従わない者、販売中止をしない者につきまして、いま先生おっしゃいましたような氏名の公表あるいは警察への告発というような手続を順次やっていくということでございまするけれども、当初に比べまして大体三分の二はその不正規流通を私どもの指導に従いまして中止をしたというような結果になっておるわけでございます。  なお、これから先告発をする者がどれぐらいあるか、いままでにどれだけ告発する者があったかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、やはり行政指導でできる限りこれについては不正規流通をなくすようにさらに指導をいたしました上で、それからどうしても必要なものについては告発をいたすつもりにいたしておりますので、いまのところ警察に告発をしたものはまだございません。
  199. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、それが非常に甘い姿勢だと思うわけです。  先日、杉並区のお米屋さんの御案内で、やみ販売の実態というのを見てきたわけです。  新宿区に本社を置いている丸正食品というチェーン店なんですが、この食品スーパーが、東京、神奈川、埼玉三県にまたがって六十五店の支店を持っています。そこでは、やみ米を堂々と売っているわけですね。その中の一つの、杉並区永福一丁目三十八の九というところにあります丸正食品永福町店は、入口を入ってすぐ、レジの前で売っているわけです。非常に目立ったところに置いているのです。月に何と二千五百キロ売っているというのですが、この丸正食品から一二百メートルと離れていないところに正規のお米屋さんがありまして、そこはもう息子さんを後継ぎにして非常に積極的な商売をしているのですが、丸正食品ができたために売り上げは半分くらいに落ちたということで嘆いておられます。  もう一つ行きましたところが、また驚きました。杉並区の方南にあります丸正方南綜合店というところなんですが、これは、正規のお米屋さんの一軒置いて隣に丸正食品があって、そして、何とその丸正食品の運び込んでくる米のトラックがその正規のお米屋さんの家の前へとまって、そこから丸正へ運んでいくというようなとんでもないやり方なんです。それで、やはり三割方売り上げが落ちているということでした。  両方とも、米屋さんの抗議だとか区役所あるいは東京都の注意に対して、本店の方の指導で米を売っているのだからおれには関係がないのだと、反省の色さえ示そうとしないわけです。永福町店の方は月に二回、朝市といって大変な売り出しをやるのですが、そこにも積んでいるわけです。  こういうふうな、無法状態と言うのでしょうか、これは、通達で言う、この指導の措置にもかかわらずなお反復して大量の不正規流通を行っている無登録販売業者、特に悪質な者そのものではないですか。どうしてこの氏名の公表だとかあるいは警察への告発ということを行わないのか。こういうところに対しては一体どういう措置をとられるつもりなのか。そちらの方に写真もこの広告もお渡ししていますので、六十五店がどこにあって、どういう状態かということは具体的に御存じのはずです。できるだけ簡単に御答弁をお願いします。
  200. 中山昇

    中山政府委員 先生御指摘の丸正チェーン商事という無許可販売業者があるということは私ども承知をいたしておりまして、ただいま、関係をいたします東京都あるいは東京食糧事務所、埼玉食糧事務所相互に連絡をとりながら口頭指導を一回いたしましたし、さらに、五月三十一日に知事名で警告書の発出をいたしました。これで警告に従わないというようなことでございますれば、今後さらに強い措置をとりたいというふうに思って、関係の都なりあるいは食糧事務所を指導いたすことにしております。
  201. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そういう措置が甘いということを米屋さんの皆さんも言っておられるわけです。先ほど、七割近くの不正規流通を扱っている商店は中止をしたということですが、米屋さんに言わしたら、七割の販売店はなるほど減ったかもしれないけれども、七割の不正規流通米が残っている、こういうふうに大きいところが残っていると言っておられるわけです。  私も行って、なるほどそのとおりだというふうに思いました。チェーン店が六十五店もあって、しかも三県にまたがって、店長は雇われ店長で、本社の指示でやっているわけですから、どこから何を言ってこられても、それより本社の指示の方が大事なわけです。  しかも、この丸正食品に米を卸しているのは武蔵糧穀、これも私、米の袋を全部点検してきましたが、ここのしか入っていませんね。武蔵糧穀です。武蔵糧穀で、この丸正が売っている米の袋にも全部そういうことを書いてあって、この武蔵糧穀というのは一体どういうところなんだろうといろいろ調べてみましたら、これは埼玉県の業者で、やみ米商、通称そういうふうに言われますが、正式には関東普通外米雑穀商業協同組合、こういう名前ですが、そこの組合員で、農水省がくず米扱いの業者として認めている、そういう業者なんですね。しかも、このくず米業者は、「取り締まりにもめげず」「意気軒高」と、これは米穀新聞なんですが、ここにこんなふうに書いているわけです。  六月二十四日付の報道なんですが、この中で、埼玉の業者ですね、私は多分これが武蔵糧穀かなというふうにも思うのですが、「命がけで商売やっているのだ。」つまり、やみ米の商売をやっているのだ。「無許可業者の組合を作ろう、という動きもある。」政府の指導によって「人の引いたあとへ攻めて行くのだ。罰金は支払う。群馬へも攻め込む。」こういうふうにこの記事の中で堂々と言っているわけです。  こういうふうになりますと、いつまでもこういう状態を放置しておきますと、本当に食管制度が有名無実のものになってしまうでしょうし、しかも、改正前の食管法では取り締まることができないからこそ法改正をやったわけでありまして、この丸正本社と武蔵糧穀に対してはもっと本気になって指導、氏名の公表、告発の措置ということをとっていかなければ、逆に政府がなめられてしまって、そしてどうにもならなくなる。本当に大もとを断ち切っていく気がおありなのかどうか、もう一度御答弁を願いたいわけです。
  202. 中山昇

    中山政府委員 不正規販売業者の取り締まりにつきましては、事実を確認をいたしました上で厳正なる処置をとりたい、かように存じています。
  203. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 最後になりましたので、もう一問だけお願いをいたします。  精米流通研究会というのが四月から検討を開始しているとお伺いしておりますが、これは一体何を検討し、そしていつごろ結果を出して、その結論をどう扱っていこうというお考えなのか、お伺いをしておきたいわけです。  気になりますのは、研究会の中で標準価格米の存廃が一つのテーマになっていると聞いております。これも五月二十七日の米穀新聞は「単品販売をやめて、ブレンド販売とする。ついで、標準価格米も廃止という方向のようだ。」こういうふうに報道をしているわけですが、どういう検討状況なのか。  昨年五月、食管法改正案の審議の中で、当時の食糧庁長官は、将来にわたって標準価格米を絶対的にこのままに継続するのかどうかということについては検討の余地があるけれども、標準価格米が一般消費者の間に定着してきているというような事情考えて、当面この制度を存続していく考えである、こういうふうに言っていらっしゃるわけです。  私は、標準価格米の制度というのは単なる消費者の問題ではなしに、むしろ米の全量と価格管理していくという制度の根幹にかかわる問題であるというふうに考えております。特に、五十四年十二月の米審では、この標準価格米については、銘柄米の混入など、その品質の改善を図るべきである、そういう意見さえ出されていたわけでありまして、味をどんどん落としておいて、その結果売れなくなったから廃止するということではなしに、品質の改善も含めて、消費者に役立つ制度として在続されていくような姿勢をとっていくべきではなかろうかと考えます。
  204. 中山昇

    中山政府委員 精米流通研究会は、私どもがこれから先消費者の需要に応じました品質の精米の供給のあり方をどういうふうにしたらよろしいのかということで、米価審議会におきましてもしばしば精米の流通のあり方について御意見がございましたので、ひとつ庁内において勉強をいたそうということで、四月以来やっているわけでございます。  そのテーマの一つに標準価格米の問題もございまするけれども、私どもといたしますると、昨年の十二月に米価審議会におきましても、標準価格米についてはその存廃も含め抜本的な検討を加えるべきであるというような御指摘もございまして、私ども、一体これから先の精米流通のあり方、これから先良質米の需要が一方で非常に強いということとあわせまして、良質米の供給というのには、おのずから産地の制約もございまして限りがあるというようなことからいたしまして、一体どういうような供給のあり方をしたらいいのかという点について検討いたしているわけでございます。
  205. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたので、これで終わりますが、それはあくまでも参考の検討というふうに聞いておいてよろしゅうございますね。そこで方針を決めていくということではございませんね。
  206. 中山昇

    中山政府委員 精米の流通の問題につきましては、食糧庁が責任を持って決定をするということでございますので、この研究会でいろいろ御意見を伺いながら私どもで最終的な決定をいたしたいと思っておる次第でございます。
  207. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 終わります。
  208. 加藤紘一

    ○加藤(紘)委員長代理 次に、阿部昭吾君。
  209. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 いままで各委員から、今度の米価に関する質疑がいろんな角度から出ました。したがって、私は、若干ただしてみたいと思うのでありますが、大蔵省。  実は、私、第三世界、開発途上国のいろんな皆さんと最近お話をする機会がございました。     〔加藤(紘)委員長代理退席、委員長着席〕 この皆さんが、日本はいまや世界でダントツに穀物を輸入する国である。そのために、第三世界は御案内のように飢餓と栄養失調に苦しんでいる。日本がどんどん世界の穀物市場に群を抜いて買いに出るというような事態になりましてから、第三世界の側ではなかなか食糧困難で苦しんでおるわけですが、金はなし、いろんな条件はない、従来のようにアメリカ大陸その他からどんどん食べ物を送ってもらえるという状態はますます困難になってきた。日本は世界で有数の先進国家ではないか。工業は確かにもうかる。農業、食糧農産品というのは、これはもうからぬ。だから、そっちの方はどんどん縮小して、彼らは日本で減反政策をやっておるなどということには大変なショックを受けておるようであります。したがって、この第三世界の側から言わせると、先進国日本はせめてヨーロッパのEC諸国ぐらいの穀物、農産品の自給のための努力をやるのが当然ではないか、こういう批判が第三世界側から非常に強い。これは、私は非常に強烈な印象でありました。  確かに、いま財政が容易でない事情もまさにそのとおりであります。しかし、この日本農業というのは、率直に言って、この狭い国土に、耕地比率も非常に低い。この中での農業生産というのは、率直に言って、コスト主義だけでは行き切れないハンディを負っておることは、これは条件として残念ながら、この単位面積当たりの収穫を上げておるという意味では、日本の稲作農業などというのは大変なものではないか。しかし、それだけにまたコストの面でもやはり大変なんですね。  したがって、そういう意味で考えますと、今度の米価をめぐるいろいろな情勢、私も国際相場の四倍という米価がどこまでもウナギ登り、どこまで行ってもいいなどという、そんな単純な考え方は持っておりません。おりませんが、よく物価は安定しておると言われるのでありますけれども物価安定の内容を私なりにいろいろ吟味をしてみると、生鮮食料品が最近は非常に安定しておるわけです。生鮮食料品というものは、大体農業と漁業の関係のものが主であります。この方の側が必要とする生産資材その他は、全般的に言うと、生鮮食料品の価格安定とはうらはらに、じりじりとこの近年ずっと上がってきておることも事実なんです。したがって、この事実は、端的に言えば、農協などの組合員の金の流れを見ると、預貸率がどんどん悪化をしてきておるこの姿の中に端的にあらわれておるのですね。しかし、財政で何ぼでも突っ込めばいいのだというほど私は単純ではありません。  しかし、農林省の側は、中山次長、申しわけないけれども、私が、モチ米は近年どのような流れになっておるか、ちょっと資料を出してくれと言ったら、その資料は残念ながらございません、はっきりしたものが出ません、こう言うのですね。近年は輸入だけでも相当のものを入れておるわけですよ。したがって、転換とか転作とかいろいろなことをやらすというならば、さっき次長は、少なくとも米に関する限りは完全自給で、農林省はこれを根幹としていくと言っておきながら、モチ米なども最近需要が相当あるというのならば、どんどんモチ米の作付をきちっとした指導をやってやらせるということがなければいかぬのだろうと思うのですよ。そういうこともない。  したがって、私は第三世界の話を先ほど申し上げましたけれども、このままでいくと、やはり他産業従事者の賃金などはずっと上がっていっておるし、物価も依然としてずっと上がっておるのです。しかし、米価だけは、過剰基調があるというなら過剰にならぬようにする手は、きのうきょう過剰が始まったのじゃないので、やる気になれば何ぼでもあるのであります。だから、やはりそこには的確なものがなければならぬのでありますが、私は、農林省の政策も政府全般の政策もここに的確なものはちっともはまってきておらぬだろうと思うのです。  そういう中で、大蔵省あたりは日本農業というものに対するどういう基本認識を持っておられるのか。構わぬ、経済合理主義で突っ切っちゃえという認識を持っておられるのか。その辺のところの基本認識についてちょっとお聞きしたい。そうでないと、もうかるからこのまま工業は突っ走るよ、農業のようなものはもうからぬところだから経済合理主義でじりじりと縮小さしていくよ、これだけで行ったら、第三世界やその他で苦しんでおる国々から日本という民族国家の基本姿勢を問われ始めておるというのが、実は私の考え方であります。大蔵省と私どもとでは相当違うのかどうか、お聞きしておきたいのであります。
  210. 千野忠男

    ○千野説明員 非常に大所高所の、また広範な御質問でございますので、答え方がなかなかむずかしいのでございますが、農林水産業についての基本的な認識いかんということにしぼって申し上げれば、私どもは日本の農林水産業というものは決して容易な環境のもとにない、非常に厳しい状況のもとにあると考えております。  まず、農業でございますが、農業については、御承知のような需給事情が農産物についていろいろ問題がございまして、どちらかというと過剰傾向がございます。生産性の面でも、土地の狭さというものが非常に基本的な制約になっておりますので、土地に依存をしないもの、たとえば施設園芸でありますとか、あるいは鶏であるとか豚であるとかといったようなものについては、国際競争力の非常にあるようなりっぱな水準になっておるわけでありますけれども、土地依存型の農業については、何といいましてもほかの国と比べまして土地の狭さの制約のもとでなかなか生産性が上がらない。これをどういうふうにしたらいいかという、基本的な非常にむずかしい問題がございます。  林業、水産業については省略をいたしますが、そういうところで、一体これからどういうふうにしていくのか。私は、基本的にはやはり農業というものは国の政策の中でも最もベーシックなものである、これがしっかりしていないと、国の独立というものも国民の社会生活の安定、平和というものもなかなかあり得ない、だから、農業はしっかり守っていかなければいかぬと思っております。  ただ、先ほど申し上げましたような土地条件の制約その他があるものですから、国内で自給を十分できるものと、なかなか国内で自給できないものとがございます。自給できるものについてはもっと力を入れてしっかりとつくっていく、自給がなかなかしにくいものについては安定的な輸入を図る、結局そういうことで考えざるを得ないのだろうと思っております。
  211. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 政務次官、私は、田澤農水大臣が所信表明を行われたそのときに、田澤農政というのは何であるのかはっきりさせてもらいたいと言った。それは政策ですからずっと前からの継続性が必要だろうと思うのです。しかしながら、今度の田澤農水大臣というのは、一体日本農業をどういうふうにしようとするのか、どこが従来の所信表明と今度の大臣とは違うのか、はっきりさせてくれと言ったら、この国会が終わるまでの間には必ず出すようにいたしますと言っておるのですが、まだちっとも……。田澤農相は依然として五年据え置き物価賃金も何もみんな上がっていくという中で、これを安易に抑え込もうとする姿勢みたいであります、今度の諮問を見ると。どこが変わろうとしておるのか、ちっとも明らかでない。したがって、これはぜひお約束どおり、国会が終わるまでの間に、田澤農政はこれだというものをやはりきちっと出してもらわなければいかぬということを政務次官に希望しておきます。  それから、いま第二期の減反、転作がどこに定着しておるか。いま冷害や何かの関係もあって、六十四万七千、この中でも、私は現場ですから、ずっといろいろな意味で、しさいに、この転作をどこに定着させるのかというので、目を光らせていろいろな議論をしておる。転作は残念ながら余り定着をしておりませんね。したがって、私の認識では、この定着がもし先ほどの大蔵省の頭の大変すごく切れるお役人の方の御答弁のように、施設園芸ならいいとおっしゃる。みんな施設園芸をやったら、野菜の方の市場がパンクしますね。果樹にみんな六十四万七千かわってしまえと言ったら、果樹の方はいまでも市場は限界に来ておるので、パンクしますわ。したがって、水田再編だ、水田再編だというて莫大な金を突っ込んできた。きたけれども、定着はしておらぬのですよ。これもやはりどうやって本当に定着をさせるのか、ここのところにいくならば、政治の総力を挙げて、ここのところは必ず責任を持つよというものが出てこなければならぬはずだろう。それが政治というものじゃないか。  たとえば算式などもずるずるといつでも変えていく。だから、いま農民が求めておるのは、ここしんぼうしろというならば、せつないけれども耐えましょう。しかしながら、農政というものはちっとも先行きに対する責任がないじゃないか。いまもきつい。いまもみんな限界に来ておるわけです。私の地域などは良質米地帯で、このあたりでいい米をつくれ、つくれば何とかなるよ、何とかするよという話で、銘柄米だか自主流通米だか始まってきたんですよ。今度はそいつはあるところまで来たらはしごを外しますよ、こうですね。これでは、やはり政治ですから相互間に一定の信頼関係というものがなければ、残念ながら農業はじりじりと後退せざるを得なくなっていく。第三世界の側からの批判も、一面においては、そうばかばかりいるわけじゃないので、やはり冷静に日本を見詰めておるわけですよ。そういう意味で、もっときっちりしたことをやらないといけないんじゃないかというふうに私は思うのです。  たとえば、モチ米などどういう需給関係になっておるか資料を出せと言ったら、そんな資料はちょっと整ったのはありません、こう言うのですね。そして、少なくとも米に関する限りは全部自給をやるんですとさっき中山次長は胸を張った答弁をされましたけれども、調べてみると、輸入だって、ここ近年十何万トンも輸入しておるわけだ。だから、私はやはりここには一貫性がないと思うんだ。政権政党として、また政府として、ここにはやはりしっかりした決まるものがなければいけないんじゃないかと私は思うのですね。行き当たりばったりというんじゃ、これはかなわぬだろうと思うのです。そういう意味で、ぜひひとつ基本的な考え方を明らかにしてもらわなければいかぬと思うのです。
  212. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 田澤農林大臣の姿勢いかん、こういうことでございますが、政務次官でございますけれども、基本的な問題につきまして申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、世界の飢餓状態に対処するために日本が外国から農産物を買わないで自給しろという御議論でございますが、私は、これは若干問題があると思います。と申しますのは、むしろ後進国の国々は、日本にもっと農産物を買ってくれという要求の方がはるかに強いんじゃないかと思うのですよ。日本が自給をしますと、現在買っておるものも買わなくなる、こういう問題もあるわけでございます。だから、私はそういう点を、食糧を輸入する問題あるいは国内で自給する問題、これはやはりきちっと分けて論じていかなければならぬと思うのであります。  したがいまして、まず第一に、主要農産物につきましてはできるだけ自給体制をとっていく、この方針は絶対変わっておらないわけでございます。しかして、日本の国内におきまして、三十七万平方キロの中におきまして畜産も酪農も同時に振興していく、こういうことになってまいりますと飼料穀物が足りなくなる。現在、アメリカ等の国々から二千万トン近いものを買っておるわけでございますが、これを全部国内で自給するということになりますと八百八十万町歩の面積が必要である。こういうものはとても手当ができない。したがいまして、これは輸入せざるを得ない。したがいまして、主要食糧品につきましては国内の自給体制というものをできるだけ一生懸命努力をしていく、こういうことでございますから、アメリカ等から要求されておりますところの二十二品目の農産物の自由化に対しましては、断固としてこれはアメリカの理解を求めまして自由化させないということで努力をしてきておるわけでございますので、この根幹は御理解をいただけると思うわけでございます。  したがいまして、今後のことでございますが、米の問題等におきましても自給体制をとっていく。しかしながら、国内の食生活等の変化もございまして、米の生産に見合った消費というものが拡大されない。消費の拡大に全力を挙げておるわけでございますけれども、なかなかそれが進んでおらない。こういう問題に直面しながら、需給関係を何とかバランスをとるようにしまして食管制度を堅持しながら進めていく、こういうところに現在の大きな問題点があると思うわけでございます。したがいまして、こういう方針は今後とも堅持をしていく、こういうことを申し上げておきたいと存じます。
  213. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 政務次官、声は大きいけれども、ちょっとすれ違ってしまっているんだな。開発途上国だって、食べ物で余り困ってない国、困っておる国、いろいろあるんですよ。こういう国々の中で、いま五億とも言われ、六億とも言われる飢餓と栄養失調の人々がいます。しかし、さらにもっと広く十億を超える、このくらいの人々が食糧の問題で苦しんでおるのです。日本のような先進国が世界の穀物市場でもう群を抜いてどんどん買いあさるために、いま困難に直面しておる国々は、金はないし、なかなか食糧が回ってこないようになってきた。先進国日本はそれなりの努力をもっとすべきだ。自給率を上げる努力をすべきだ。農業はもうからぬかもしれないけれども、もうかることだけやって、もうからぬことから手を抜くようなことをやってはいかぬ、こういう批判が第三世界の側から、特に飢餓と空腹で苦しんでおる国々から日本に向けられておる一つの批判なんです。この批判に対してこたえなければならぬのじゃないか。  そこで、いまの二千万トンに近い、麦、大豆を含めると三千万トンになんなんとする飼料穀物の輸入、これは世界でダントツなんですよ。コストの面ではいろいろあるんですよ。あるんですが、私はやはりそれなりの努力はしなければいけない問題点だと思うのです。もちろん生産者の側も、コストなんかどうなってもいいやというわけにはいかぬと思う。裏作と表作の組み立て方をどのようにするとか、いろんな努力が必要です。それにしても、政策的な整合性のある組み立てば、いままでの長い間の政権党、政府の政策では残念ながら十分だとは言えない。この反省の上に立って進められなければならぬだろうと私は思うのです。その意味で言うと、今度の米価ども非常にイージーゴーイングな、しようがないや、投げやりなものじゃないかというような感じが私はいたします。  時間が来ましたから、政務次官、それだけ、もう一遍大きい声で御答弁を願いたいと思います。
  214. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 世界の飢餓状態をいかに救うかという問題で、ちょっと議論があるようでございます。  私は、先般、農林大臣のかわりに世界食糧理事会閣僚会合に出席をしてまいりましたが、後進国の国々も含めまして、先進国が食糧の輸入に対して障壁を設けておるということに対しまして相当の批判があったということを踏まえて私は言っておるわけでございます。したがいまして、日本が自給して穀物を買わなくなればその分は後進国の国々に回っていくという議論は賛成しがたいということを申し述べておるわけでございます。むしろ後進国の国々の飢餓状態を救うためには、ただ外国からの食糧援助ということを待つのではなく、自分みずからの努力によって、そういう飢餓状態の国々はそれぞれの国の可能性を持っておるわけでございますから、食糧生産の可能性に対して挑戦をできるように、自分の力で自分の国の飢餓状態を救えるような、そういう自主努力を日本として大いに応援をしていくべきである、こういうことを主張し、また、日本もそのための開発援助に対しましては莫大な経済協力資金を用意をして応援をしておる、こういう事実は率直に認めていただいてよろしいんではないかと思うわけでございます。  なおまた、食糧の問題でございますけれども、食管制度の持つ意義といいますのは、国民の消費が一千万トン、しかしながら、それに六割近い六百万トンの過剰米が出た。もし食管制度というものがなくなった場合におきましては、本来の需要と供給という点だけで価格が決まるということになりますと、この過剰な状態というものは全く絶望的な状態に陥るだろう。しかしながら、食管制度があるために、六百万トンになんなんとする過剰米の処理は、長年の時間をかけまして、二兆二千億円の資金を投入しましてこれを買い支えておる、こういう努力も食管制度を堅持しながらやっておるんだ、こういう面は積極的に評価すべきだと私は考えておるわけでございます。  同時にまた、今回の問題につきましても、これは決して値下げをしたんではありませんで、諸般の事情をよく検討しまして諮問案を出した、こういうことを強調いたしておる次第でございます。
  215. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 時間が来ました。ちょっとすれ違っていますので、改めての機会にまたお聞きをしたいと思います。
  216. 羽田孜

    羽田委員長 阿部君の質疑はこれで終わりました。  新盛辰雄君。
  217. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最後の質問になりましたが、これまで本日の衆議院農林水産委員会は、昭和五十七年産生産者米価決定にかかわる問題で審議をしてまいりました。  そこで、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合の五党は、かねがね相談をして、共同提案として、昭和五十七年産生産者米価に関する件のいわゆる決議案を理事会に提案をし、話し合ってまいりましたが、遺憾ながら自由民主党だけが反対をされ、これの決議を行うに至りませんでしたので、私の方からこの案文を朗読をしてみたいと思います。     昭和五十七年産生産者米価決定に関する件(案)   政府は、本日米価審議会に対し、本年産生産者米価据え置き諮問を行った。   この諮問米価は、物財費、労働費生産費上昇を正当に評価しておらず、生産農民の切実な要望を無視したものである。   この据え置き諮問の背景とされる米生産過剰基調論については、米需給の現状が二ケ年連続の冷災害下において、政府需給を極めて窮屈なものとしており、また財政負担の増大論についても昭和五十三年以来の生産者米価の抑制や五十一年以来の売買逆ザヤの解消等により年々軽減されており、米の国際比価論を含め、政府の指摘する理由はいずれも納得し難いものがある。   よって、政府は、本年産米価の決定に当たっては、これらの事情を十分に斟酌し、食糧管理法第三条第二項の厳正な運用を図り、生産費及び所得が十分に補償され、米の再生産が確保されるよう適正な水準生産者米価引き上げるべきである。   右決議する。  以上の決議案は実は不発に終わったわけですが、本委員会を厳しく見守っております稲作生産農家の切実な願いであるこの米価引き上げ要求を満たすことを考え合わせてまいりますならば、野党側が提案をいたしましたこの決議案について、農林水産政務次官のお考えを率直にお聞かせいただきたいと思います。
  218. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 ただいまお述べいただきました御意見につきましては、本日の委員会におきましても種々御論議のあったところでございますが、現在、米価審議会で審議が続行されておりますので、その答申を得て適正に決定してまいりたいと存ずる次第であります。
  219. 新盛辰雄

    ○新盛委員 きょうは、いずれにしても米審の方で論議が交わされておるわけですが、私どもこれまで議論をしてまいりましたこの状況の中では、まことに不可解な据え置き諮問である。したがって、こうしたことについては、やはり食管法に基づいて、ぜひとも生産農家の意欲をわき立たせるように、これから農政の問題を含めてぜひともこの引き上げの方についてがんばっていかなければならぬ。これは政府の方が腹を決めるわけですけれども政治加算などというきわめて不測の状況が生まれないように、やはり基本米価引き上げる、このことについてぜひとも政府、そしてまた反対をされました自民党側の方でももう一回再考慮いただいて善処していただきますよう要望して、質問を終わります。(拍手)
  220. 羽田孜

    羽田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十五分散会