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1982-03-24 第96回国会 衆議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月二十四日(水曜日)     午前九時三十八分開議  出席委員    委員長 羽田  孜君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 戸井田三郎君 理事 新盛 辰雄君    理事 松沢 俊昭君 理事 武田 一夫君       上草 義輝君    太田 誠一君       川田 正則君    岸田 文武君       北川 石松君    北口  博君       北村 義和君    近藤 元次君       志賀  節君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    丹羽 兵助君       丹羽 雄哉君    平沼 赳夫君       保利 耕輔君   三ツ林弥太郎君       山崎平八郎君    小川 国彦君       串原 義直君    島田 琢郎君       田中 恒利君    竹内  猛君       日野 市朗君    水田  稔君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       小沢 貞孝君    神田  厚君       藤田 スミ君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  田澤 吉郎君  出席政府委員         農林水産政務次         官       玉沢徳一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         農林水産技術会         議事務局長   岸  國平君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         農林水産省構造         改善局次長   浅原 辰夫君         海上保安庁警備         救難部救難課長 藤原 康夫君         参  考  人         (精糖工業会会         長)      川内 武典君         参  考  人         (日本糖化工業         会会長)    坂部 順一君         参  考  人         (日本ビート糖         業協会会長)  坂野 吉辰君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   岸田 文武君     丹羽 雄哉君   菅波  茂君     北川 石松君   高橋 辰夫君     平沼 赳夫君   日野 市朗君     水田  稔君   近藤  豊君     小沢 貞孝君   林  百郎君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   北川 石松君     菅波  茂君   丹羽 雄哉君     岸田 文武君   平沼 赳夫君     高橋 辰夫君   水田  稔君     日野 市朗君   小沢 貞孝君     近藤  豊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  砂糖価格安定等に関する法律の一部を改正す  る法律案内閣提出第六九号)      ————◇—————
  2. 羽田孜

    羽田委員長 これより会議を開きます。  砂糖価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため、参考人として精糖工業会会長川内武典君、日本糖化工業会会長坂部順一君、日本ビート糖業協会会長坂野吉辰君、以上三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りまして、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、川内参考人坂部参考人坂野参考人順序で、お一人十分程度の御意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、川内参考人にお願いいたします。
  3. 川内武典

    川内参考人 精糖工業会川内でございます。  本日は、このような機会を与えていただきましたことを厚くお礼申し上げます。  また、私ども精製糖業界の安定につきまして、平素、格段の御配慮をいただいてまいりましたことを重ねてお礼申し上げます。  また、この四年間特例法運用によりまして私ども精製糖業界体質改善が急速に進展いたしてまいりましたこと、これをあわせて深甚の感謝の意を表するものでございます。  それでは、ただいまから説明に移らしていただきます。  私ども業界は、この二、三年間甘味離れによる砂糖消費の大幅な減少、さらに異性化糖の急激な進出とビート糖増産の挟撃に遭いまして苦吟してまいりました。  しかも、その原因は、甘味行政制度の不均衡、不公平によるものが大きいと考えまして、異性化糖を含めた甘味行政全般の見直しを内容とする総合甘味対策の樹立を昨年秋以来、陳情いたしてまいったわけでございます。このほど農水省御当局より、糖安法改正案が国会に上程され、当委員会において本日御審議の運びとなりましたことは、ようやく私ども長年の念願の一端がかなえられることになり、心から謝意を表するものでございます。  特に私どもといたしましては、今日まで税制及び課徴金制度アンバランスによりまして異性化糖との価格差に苦しんでまいったものでございます。このたび初めて異性化糖糖安法の対象となり、異性化糖への調整金の新たな賦課、これによりまして砂糖と同じ土俵の上で行政運用がなされることになりました。それによって砂糖調整金単価上昇に歯どめをかけることができた、これは消費者価格引き下げ観点からも大変喜ばしいこと、かように考えております。  しかしながら、今回の措置をもってしてもまだ税制面による異性化糖との価格差は大きな隔たりがございます。また、国産糖に対する措置も従来路線を踏襲しているため、精製糖生産基盤、すなわち輸入糖減少の歯どめが今後どの程度実現し得るか、いささか危惧の念を禁じ得ないものがあるというのが率直な私の現在における印象でございます。すなわち、私どもといたしましては、今後、精製糖ビート糖異性化糖の三甘味がそれぞれ共存共栄の道を歩んでいくことが国民経済的な観点から必要である、こういう考えのもとに、三甘味間の分野調整必要性をお願いしてまいったものでございます。今回の措置では分野間の需給調整が定かでございませんので、いささか懸念の念を禁じ得ないものでございます。  ここで若干当業界現状問題点について御説明申し上げたいと思います。  まず一つは、昨今の生産基盤減少の経過でございますが、精製糖昭和五十三年から五十五年、三カ年の間にその生産量年間二百三十一万トンから百六十二万トンと、実に七十万トンという一挙に三割五分の減少を見ております。これに対しまして、逆にこの間ビート糖は十六万トン、異性化糖は二十三万トンの増産となっております。  このような私ども生産基盤減少によって、設備過剰と固定費上昇による採算割れに苦悩しているのが私ども現状でございます。特例法期間中の四年間主要各社十一社の資産売却が合計六百十三億円に及んだにもかかわらず、いまだ昨年九月期においてこの十一社の持っておる累積損失は二百九億円に達しており、この赤字を擁していまもなお苦しんでおる状況にございます。  このような中にありまして、業界といたしましては構造改善推進努力すべく、今日まで各企業ごと設備廃棄を初めとしてコスト低下のためのあらゆる合理化を鋭意推進してまいりましたが、最近の生産基盤減少を初めとする環境の急激な変化は私どもの予想をはるかに超えており、残念ながら業界自助努力のみではなかなか追いつきがたいというのが現在の実態でございます。  次に、このような環境に加えまして、もともと砂糖相場性が強く、若干の需給アンバランスがあっても価格は大幅に下落する傾向が強いため、実は今回の新しい制度上フリーになっております第二課徴金運用いかんでは、価格長期にわたる大幅低迷が懸念され、業界が未曽有危機に直面するかもしれない、こういう危惧を持っているものでございます。  このような観点から、特例法がなくなることは、一部にはこれを望んでいる向きも業界の中にもございましたけれども業界の大多数は延長を希望いたしておりましただけに、これが実現を見なかったことについては非常に残念に思っておる次第でございます。  もちろん、業界といたしましては、今後新しい糖価安定法下、極力業界協調に努め、秩序ある安定供給努力してまいる所存でございます。この点、今後行政指導等運用面での十分な御配慮を得たく、この席をおかりして懇願申し上げる次第でございます。  なお、最後になりましたが、私どもといたしましては、今後さらに企業体質改善構造改善推進努力してまいる覚悟でございますが、今後とも税の減免等糖価水準引き下げのための措置につきまして特段の御高配を賜りますようお願い申し上げまして、私の説明を終わらしていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手
  4. 羽田孜

    羽田委員長 ありがとうございました。  次に、坂部参考人にお願いいたします。
  5. 坂部順一

    坂部参考人 私、日本糖化工業会会長をやっております坂部でございます。  まず最初に、当業界のあり方を御説明申し上げますと、日本糖化工業会は、会員数は現在申し込み中のものを含めまして十二社でございます。これはコーンスターチもつくり、水あめ、ブドウ糖、異性化糖、そういう糖類も一緒につくっておるいわゆる一貫兼業と称する組合でございまして、糖化製品の全体の中における当業界のシニアは八〇%を超えております。当業界のほかに全日本糖化工業会というのがございますが、これはコーンスターチをつくっておりません。私どもよりさらに小さい糖化業者の方が集まってつくっておられます。  先般、農林水産省より本法案の骨子を御説明いただきました。早速当業界役員会を開催いたしまして種々協議いたしました結果、この法案が施行されるとしても、詳細な点についてまだ全然私どもに不明な点が多く、その細則を見てみませんと何とも申し上げられないのでございますが、大筋においては会員各社の御了解を得て今日に至っております。これはひとえに日本の直面している経済の実態からして、ひとりだけがよくなるということはできないという広い見地に立った了解であると評価しております。  当業界は戦後の水あめ製造から発展して今日に至った業界でございまして、規模も小さい、企業体質も弱い業界であります。伝統ある砂糖業界とは規模においても企業体質においても格段の差があるわけでございます。  異性化糖は、異性化酵素の発見とその酵素固定化という新しい技術によって開発された甘味料でございまして、この技術革新という大きな事実を見逃すわけにいかないわけでございます。  本格的にこの異性化糖品質が評価され、低廉であることを評価されたのは昭和五十三年ごろからでございまして、現在、昨年度の実績では砂糖と同じ固形ベース換算で五十二万ないし三万トンが生産され、消費されております。品質の特性が液状であること、熱に弱いなどの欠点がございまして主に清涼飲料水向けに使用されておりますので、夏場の七、八、九月ぐらいが大体稼働率一〇〇%でございます。が、冬場は三〇%ぐらいの稼働率になりまして、年間にして平均いたしますと五〇ないし六〇%の操業率と相なります。  したがって、お願いしたいのは、私ども原料面国産芋でん粉の消化のために大きな負担をしょっておる上に、今回砂糖と同じ範疇に入れられましてさらに調整金を徴収されることは、企業にとっても大きな負担となると同時に、消費者に対してそれだけの負担をおかけすることになるわけでございますので、私ども並びに消費者のためにできるだけ負担を軽くしていただきたいと思う次第でございます。と同時に、前述いたしましたように、中小の脆弱な企業が多いために、お客様にこの調整金負担していただけないという立場も憂慮しているわけでございまして、もちろん私ども企業、最大の努力を払ってお客様に納得していただくようにいたしますけれども価格上昇については消費者にも御理解が得られるように特に御配慮いただければ幸甚であると存じます。  最後に、本法案日本総合甘味対策として打ち出された法案でございますので、国が定める生産の総枠については私ども何とも申しませんが、これは各個異性化糖何トン、砂糖何トン、国産糖何トンというような計画をおつくりになると聞いておりますが、私どもはその数量についてがたがた言う意思はございませんが、需要者の強い要望もあることでございますので、総量として実績を下回ることのないように御配慮をお願いしたいと思います。  ありがとうございました。(拍手
  6. 羽田孜

    羽田委員長 ありがとうございました。  次に、坂野参考人にお願いいたします。
  7. 坂野吉辰

    坂野参考人 ただいま御紹介にあずかりました日本ビート糖業協会会長坂野でございます。  平素は南の方の甘蔗糖、北の方のビート糖国産糖につきまして多大の御配慮、御協力をいただいておりますことを厚くこの席をおかりいたしまして御礼申し上げます。  さて、いまの糖安法でございますけれども、これは昭和四十年に制定されまして、当時におきますところの砂糖業界実態ということによりましてなかなか形成糖価と市価との一致を見るに至らず、相当乖離した市況が出てきているわけでございます。  そのような状態のもとにおきまして、南の甘蔗、北のビート糖業者あわせまして国内におけるところの需給調整を図っていただいて、そして法の趣旨に沿う糖価安定というものをやっていただけるように再三お願いした次第でございます。しかしながら、やはり製糖業界におきますところの過当競争輸入糖の増大ということによりまして糖価はなかなか安定することができませんで、昭和四十九年から五十一年にかけますところの国際糖価の暴騰と、さらにまた、豪州からの長期契約によるところの高値原糖の買い付け、こういうこと、さらにその後におきますところの暴落ということによりまして砂糖業界一大混乱を生じましたし、また、国産糖におきましても一大危機を感じていたわけでございます。そのときにおきまして、昭和五十三年二月から特例法というものが発動されまして、さらに一年半延長されてことしの三月まで第二次の特例法延長ということになった次第でございます。それによりまして糖価の安定を得られましたし、また、業界といたしましても小康状態を得るに至りましたことにつきましては、厚く感謝申し上げている次第でございます。  最近におきまして、さらにこの二、三年におきまして特に大きな現象といたしましては、砂糖に対する甘味離れでございます。さらに異性化糖の五十万トン程度数量が出てきた、急激なる増加ということによりまして輸入糖というものが相当減らされてまいりました。  先生方御承知のとおり、国産糖振興につきましては、国からの交付金と同時に輸入糖によりますところの調整金ということによりまして国産糖が保護育成されているわけでございます。その原資となりますところの調整金がなくなってくる、あるいは少なくなってくるということにつきましては、これは北海道におきましていまビート生産しておりますところの農家が約二万五千ほどございますし、面積も七万三千ヘクタールと、北海道における寒地農業としては切り離すことができない農業でございます。さらに南の甘蔗におきましても南西諸島、沖縄におきまして、ほかに作物は、多少できるかもしれませんけれども、やはり甘蔗を離れましての農業というものは成り立たないというわけでございます。こういうふうに基幹作物であるところの農業振興につきましては、いまの調整金原資が少なくなるということは生産者にとりましても多大の不安を生ずるわけでございます。  さらにまた、ことしの三月末におきまして糖価安定を考えられておりましたところの特例法がなくなるということによりまして、われわれ業界としても多大の不安を持っていたわけでございます。しかしながら、その特例法延長ということはなかなか無理であるということもわれわれも理解することができております。これにかわるべきところの糖安法改正ということはぜひお願いいたしたいと思います。  今度の法案につきまして、総合甘味対策といたしまして、輸入糖、それから異性化糖国産糖全部を包含いたしましての総合甘味対策というものをお図り願うことになるように聞いておりますし、さらにまた糖価の安定ということもこの法律によりましてひとつ実現していただくようにぜひお願いいたしたいと思う次第でございます。  最後に臨みまして、この機会を与えていただきましたことを厚く御礼申し上げまして私の話を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手
  8. 羽田孜

    羽田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 羽田孜

    羽田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  10. 島田琢郎

    島田委員 参考人の皆さんには、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございます。  この際、糖安法の一部改正に当たりまして、ぜひこの点は聞いておきたいという点が二、三ございますので、重ねて御意見が拝聴できますれば大変ありがたく思います。  川内参考人がリファイナーの立場から、積極的な体質改善ということに取り組んでいるのではあるけれどもなかなか口で言うほどたやすいものではなくてむずかしい、こう前提を置きながら、そのためには新制度のもとで行政指導やあるいは運用の適正をぜひ図ってほしい、こういう御要望があったわけでございます。特に糖価引き下げについて特段の努力をしてほしい、こういうことを最後につけ加えられたわけであります。  私どもも、体質改善というのは、今日的な砂糖をめぐります状況のもとでは避けて通れない大事な点だ、こういうふうに考えますが、ただ、長い歴史を持っております精糖企業の中において、そう簡単にいかないというところはそれなりに私は推察ができます。というのは、そこで働いている人たちや家族の人たちがおるわけでありますから、やはりそれに十分な責任を負っていかなければならないという点では、大変御苦労の多いことだと思いますし、また私自身も、せっかく長い間努力された中で、仮にも生首が飛ぶようなことが伴う体質改善というのは極力避けなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。もう少し悩みのほどをお聞かせいただければありがたい、こう思うのです。
  11. 川内武典

    川内参考人 ただいま島田先生から御質問をちょうだいいたしましたが、構造改善の問題は、元来が個々企業経営者がそれの判断に基づき決断して実行に移すものでございます。ただ、先ほど申し上げたように、各個企業としては懸命の努力を重ねております。  工業会としても、これは工業会のマターではないかもしれませんけれども業界指導するために、特例法延長になりました五十五年に、当時の生産能力が四百万トンあったものを、十年後を想定しまして三百二十万トンにしよう、この数字もいまから見ると甘いのですけれども、それで八十万トンを設備廃棄しようという計画を立てたわけです。そして三年間でこれを実施しよう、そういうことで昨年の六月までは順調に、八十万トン、日産で言えば約三千トンでございますが、このうちの千三百トンの設備廃棄を実施いたしたわけでございます。ところが、業界環境が急角度に生産基盤が小さくなってまいった、さようなことで、ちょっと合理化構造改善目安を一ころ見失った。それで、先ほど申し上げたように、今度新しい糖価安定法の中で一つ目安をつけて、また進めてまいりたい。  ただ、工業会としてはそういう指導をしてまいりましたが、個々企業での実績を合わせますと、一日三千トンのうち目標千三百トンを達したのですが、個々企業努力を合わせますと、四千三百トン・パー・デーの設備廃棄に現在なっております。それでもなお輸入糖が、先ほど申し上げたように一ころの二百三十万トンから百七十万トン弱に減った現在では、大変な過剰設備を抱えておるという現状にございます。  それから、当然構造改善の中で雇用の問題が出てまいります。私ども企業経営責任に当たる経営者といたしましては、企業というものは当然のことながら従業員あって存在するものでございます。そういう意味で、経営といたしましては、人の雇用の問題については細心の注意を払っておるものでございます。  今後、私ども構造改善はいやおうなしに進めてまいらなければならないと思いますが、先生から御指摘のありました点は十分頭に置きながら、多角化その他のことで体質改善を図ってまいりたい、かように考えております。  以上で終わります。
  12. 島田琢郎

    島田委員 坂部参考人は、改正案についてはまだ十分理解のできない、わからないところも多いのではあるけれども、しかしひとりだけいい思いをする、こういうことは許されないという大変高次元判断に基づいて、今回の法改正に積極的な参加も表明されていらっしゃる。私はこの点は深く敬意を表したい、こう思います。とりわけ、零細な企業からこれまた血のにじむような努力を重ねて、今日異性化糖という技術革新の中で努力をされてきた、この点は私はよく理解をできるところであります。  したがいまして、ぜひこの新制度のもとにおける運用に積極的な重ねての御参加を私は期待するわけでありますが、まあ私自身も、実はこの後法案審議をするわけでありますが、表面に出てきている部分と、これからの運用部分でかなりわからないところもあります。ですから、参考人立場では一層わからないというのがまさに適切な御感想だろう、こう思っているのでありますが、この際この点だけはやはりはっきりさせておいてほしい、こういう点が先ほどのお話の中で三点大まかに分けますとございましたが、そのほかにつけ加えることがございますれば、せっかくのこういう場所でございますから、存分にひとつ思ったことをおっしゃっていただく方が私ども非常に参考になる、こう思っています。  特に、輸入糖と同じ負担をいきなりやられたのではとてもたえられないという第一点のお話も同感でございますし、それから中小の脆弱な企業が多いという実態の中では、消費者、ユーザーに対して十分の責任を持っていかなければならないということを考えると、この点についても十分の配慮がほしい。  また、実績はせめてひとつ守ってもらわなければならぬと、かなり具体的な御要望を述べておられますし、私どもも十分この点は傾聴に値する点であるというふうに考えているわけでございますが、そのほかにつけ加えること、またお考えがございますれば、率直な御感想なり御意見を賜っておきたい、こう思います。
  13. 坂部順一

    坂部参考人 ただいま島田委員からお褒めのお言葉をいただきましてありがとうございました。  異性化糖といたしましては、今回が初めてでございまして、この施行細則によりますと、調整金賦課は十月一日からというふうにうたわれております。砂糖の方が五月と聞いておりますが、何分にも初めてのことでございまして、砂糖に見習ってやっていかなければいかぬかなというふうに考えておりますが、砂糖異性化糖調整金の徴収の仕方その他についても非常に紛らわしい点があるわけです。お客様はきょう持ってこいというような声で、すぐ持っていかなければならぬ。ところがあの法律によりますと、調整金は出荷をする前に払うということになっております。間に合わないような事態もあるのじゃないか。何から何まで初めてのことでございまして、これからひとつ行政御当局といろいろ私たちの持っている問題点を拾い上げて、非常に細かいことになるかもしれませんが、運用をうまくやらせていただきたいというふうに思っております。  私の要求いたしましたことは大体先生のおっしゃった三点に尽きるということで、あとは細かいことになるかと思います。それだけでございます。ありがとうございました。
  14. 島田琢郎

    島田委員 坂野参考人立場からは、糖安法というのはそもそも国内の生産振興あるいは糖業の育成、こういうことをねらいに置いてつくられているものなんで、この法が曲げられないようにしてほしいということに尽きると思うのであります。その中で特に最近の傾向から言いますと、輸入糖が大幅に減ってくることによって財源としての一つの大事な柱である調整金財源が大変心配である、この点の確保はぜひしてほしい、こういう御意見でございました。  そもそも私は、国内の生産振興あるいは糖業の育成というのは政治的に大変責任を持たなければならない分野であるというふうに思うのであります。調整金というのはできるだけそこに依存する形を、交付金という、いわゆる政府の責任にしていくということが正しいと私は思っております。ただ、糖価メカニズムの中で一つ制度的なものがありまして、そういう中から調整金というのが出てくるという仕組みも一つあるわけでございますから、その点から言いますとやはり一定程度負担をしていただくということも制度上としてはやむを得ないことだ、私はこう思っておりますが、おっしゃるように調整金の方だけを向いて財源確保というのには問題がある、私はこういうふうに考えていますから、やはり皆さんの立場からも政府に対して責任を強く要求する。ですから交付金財源を減らすようなことがないようにというような点はやはり主として考えておかなければならない点だと私は思っております。もちろん糖安法運用は、法の精神がそういうところにあるわけでございますから、皆さんの御心配になるような、財源が不足することによって生産振興や糖業の育成にかげりが出るようなことがあってはならぬという立場で、われわれもこの法律をしっかり守っていかなければならぬ、こう思っております。  重ねて、総合甘味対策に賛成する立場から御意見がございましたので、国内の糖業の健全なる育成発展を目指してがんばっていただかなければならぬ立場としてお考えがあればつけ加えていただきたい、こう思ってお尋ねをいたします。
  15. 坂野吉辰

    坂野参考人 ただいまの先生お話、全くそのとおりでございます。やはり国からの交付金というものの金額をよけいにしていただきたいということはいつも考えている点でございますけれども、やはり国の財政上の措置その他によりまして交付金調整金との比率が決められてくるというような状態になっております。  ただ、国産糖立場から申し上げますと、何もかもそういうふうにお願いするのではなくて、またビート糖業あるいは南西、沖縄におきますところの甘蔗さえよくなれば、精製糖あるいは異性化糖業界が少しぐらい悪くなっても構わないがというような気持ちは全然ございません。やはり全部の企業が一律に成り立っていくように何とかしていかなければいけないし、またしていただきたいというふうに考えております。  それがために、この生産量の問題が一番今後の問題になると思います。これは一昨年の五十五年に農林省におきまして一応協議されました六十五年度におきますところの国産糖の見通し、その中におきまして、ビートといたしましては一応七万七千ヘクタール、六十一万トンという数量、これが考えられている線でございますが、現在におきましてすでにビートは七万三千八百十ヘクタール。本年度におきましては恐らくそれまではいかないかとも思いますけれども、それに近いような数字が植えつけ面積として一応出てくるのじゃないだろうかというふうにも感じられるわけでございます。われわれといたしましては、あくまでこの六十五年の七万七千ヘクタールというものをめどにいたしまして、これから毎年計画的安定的にこれを生産するようになっていってほしい、こういうふうにまたわれわれとしても指導している次第でございます。  さらにもう一つお願い申し上げておきたい点は、価格の安定の点でございます。今度の法案におきまして、その価格の安定という点もいろいろ御配慮願っての法案には間違いないと思いますけれども、その点につきまして、われわれとしても内容的には存じておりません。ただ御信頼申し上げている次第でございますけれども、やはりそういう点で十分なる機能の発揮ができますように、ひとつお願いいたしたい、こういうふうに考えている次第でございます。どうもありがとうございました。
  16. 島田琢郎

    島田委員 どうもありがとうございました。
  17. 羽田孜

    羽田委員長 吉浦忠治君。
  18. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 砂糖価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、参考人の方々朝早くから貴重な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。  今度の法律案につきまして、端的に私は三参考人の方々に御意見をいただきたいわけでございますが、異性化糖課徴金を課すことは、この砂糖価格競争条件に公平を期すということでやむを得ないことだろうというふうにも思いますけれども異性化糖関係の方々についてはどうもきついのじゃないかというような気もいたすわけでございます。その点についでどのようなお考えをお持ちでございますか。順次川内参考人から御意見をいただきたいと思います。
  19. 川内武典

    川内参考人 ただいま先生から御質問ちょうだいしましたが、私ども異性化糖産業がここまで伸びてきたのに、ここで異性化糖糖安法の中に組み入れてくれということは、ある意味では甘味類としては同業者でございまして、これは忍びないものがございます。ただ、国産糖ビートがふえ、異性化糖がますますふえる趨勢にございます。ということは、いまの糖価安定法の仕組みからいいますと、私ども国産糖補助金、課徴金がますますふえていく。それは即砂糖の値段が上がっていくということで、私ども業界が困るということだけにとどまらず、消費者のためにもならないし、ここまで伸びてきた異性化糖業界だから片棒を担いでください、こうお願いしておるわけでございます。
  20. 坂部順一

    坂部参考人 異性化糖が急激に昨年伸びまして、先ほど申し上げたとおり、砂糖固形ベースで五十二、三万トンに伸びているわけでございます。この伸びた理由というのが、安いということと、それからカロリーからいって、糖尿病とか健康の見地からいって、異性化糖は消化するのにインシュリンが要らないわけでございます。そういった保健の意味もございまして急激にふえたわけでございますが、片一方に砂糖業界の困惑と申しますか、苦しみを見ておりまして、一方に国産糖というものもございまして、やはり砂糖業界から提案のありました、あるいは行政当局かもしれませんが、甘味総合対策としての中に繰り入れられる数量になった、お互いにハッピーになっていくには、その中でやっていくしかないというのが大体の会員の気持ちになっております。  したがって、課徴金を課せられるということは、異性化糖の伸びを抑えることにもつながると思いますが、砂糖と同じような大きな負担をかけられないという前提で、しかも国産芋でん粉をしょっておりますので、そういうこともあわせて、負担はできるだけ少なくしていただきたいというのが当業界のお願いでございます。  そのほかに、これからますます技術革新が行われまして新しい糖が出てくる、これも一つあわせて将来は考えていかなければいけないのじゃないか。これは行政御当局の方にはよく申し上げてございますが、まだ二、三大量に出てくるものが潜在しているということは御承知おき願いたいと思います。
  21. 坂野吉辰

    坂野参考人 ただいまの御質問でございますけれども、この糖安法の制定されました昭和四十年におきましては、糖安法の中にはブドウ糖は入っておりますけれども異性化糖というのは入っておりません。したがいまして、糖安法の内部組成から申し上げましても、新しく入ってきて、しかも数量が五十万トン以上にもなるということになりますと、やはりそれだけ輸入糖が減ってくる。やはり調整金の分担ということにつきましても、単に精糖業界だけで負担するということは、これはなかなか容易ではなくなってくるわけでございます。それにつきまして応分の負担金をやはりお願いできればというふうなのが、われわれの考え方でございます。  同時に、砂糖価格異性化糖価格との間におきまして相当の値差が生じてきておるというような点につきましては、先般砂糖の消費税の引き下げという点につきましていろいろお願い申し上げておきましたけれども、先般におきましては、これの実現を見るに至っていないわけでございます。砂糖価格との間のバランスをとっていただく、こういう点につきまして、この調整金が幾らになるか、これはわれわれはよくわかりません。ただ、農水の関係のお方がよくわかっている点でございますから、そういう点につきまして、ひとつお願いいたしたいというふうに考えているわけでございます。  以上でございます。
  22. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 坂部参考人にお尋ねをいたしますけれども砂糖異性化糖需給調整の実施によりますと、この糖価の下落防止を図ることはできるわけでありますが、このために、精糖業界や国内の甘味資源生産農家からは切望されている点だろうというふうに思いますけれども異性化糖関係あるいは食品加工業者あるいは消費者の方々から、また一部の精糖業者からも大変厳しいじゃないかというふうな点もあろうかと思いますが、この点についていかがお考えでございますか、お答えいただきたいと思います。
  23. 坂部順一

    坂部参考人 御承知のように消費者は、特に清涼飲料の消費というものは非常に減っておるというのが現状でございまして、私どもの一番のユーザーでございます清涼飲料のエンドユーザーの方々は、一銭でも安い甘い物が欲しいんだ、これは本音だと思います。したがって、これから異性化糖にかけられる調整金が幾らになるか存じませんが、やはり高くなれば、新しい甘味を探していくというのが経済の原則だと思います。したがって、その新しい甘味が出ない間は、やはり一番安い甘味として異性化糖を使えるような御配慮をぜひお願いしたいというのが本音でございます。
  24. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に三参考人に一言ずつで結構でございますが御意見を伺いたいのは、一般的ないまの傾向として甘味離れをとめさせる方法はどうすれば、皆さん方貴重なお時間でございますので、どういうふうな対策をとれば国民の嗜好に合えるようになるか、あるいは健康的な面あるいはその消費拡大の面でどういう対策が必要というふうにお考えになっていらっしゃるか、最後にお答えをいただきたいと思います。
  25. 川内武典

    川内参考人 私どもは非常に頭を痛めている対策でございますが、砂糖離れの風潮がアメリカからこちらへ移ってまいり、いまではアメリカでは大分下火になっております。私どもとしてはこれの対応は、工業会としまして年間一億の予算を組み、このPRと、そういう砂糖離れを避けるための運動はかなり強くやっておりますが、今後とも異性化糖あるいは国産糖を含めてこの運動を強めてまいりたい、かように考えております。
  26. 坂部順一

    坂部参考人 お答え申し上げます。  私、砂糖業者じゃないわけでございますが、先ほども申したとおり、砂糖というのはブドウ糖と果糖とが一体になっているわけで、これを体内で消化するにはインシュリンが要るわけでございます。ところが異性化糖というのは、ブトウ糖と果糖が分かれておりまして、インシュリンが要らない。保健上にもよろしい。この甘味も、のど元を通ればそれだけでいいんだという甘味も開発されております。のどを通るときは、虎屋のようかんでも何でも大変おいしいんだが、おなかの中に入って一つも吸収されないというような糖も出てきております。現に私らの方で開発しております。  そういうことで、人々の考え方が、やはり食い過ぎ、甘味のとり過ぎ、保健的に非常に健康コンシャスになっておるわけで、これは川内さんの前ですが、減るのは当然じゃないかというふうに私は考えております。
  27. 坂野吉辰

    坂野参考人 ただいまの御質問、なかなか厳しい御質問で、正直申し上げまして何とお答え申し上げていいのか、ちょっと困っているわけでございます。この三、四年におきまして特に顕著な例といたしましては、砂糖を食べるとやはり歯によくないとか、あるいは特に若い御婦人の間におきましては美容上よくないとか、あるいは肥満児型になるとかいろいろそういう点が大きく流布されてきているわけでございます。これのうちの恐らく半分ぐらいはいろいろ話し合いでもって打開できる問題ではないかというふうには考えておりますけれども、これを消すということはなかなか容易でございません。先ほど申し上げました消費税その他を下げていただきまして、砂糖価格が下がってきた。下がったからそれでは消費が増加するかということになりますと、ある点は期待できますけれども、全部が全部というわけにはいかないのじゃないかというふうに私は思っております。  私は社内的にも、砂糖の新しい利用法というものを積極的に研究してくれということを社員によく話しております。いまの単に菓子だとか飲料水だとかそういうものだけじゃなくて、もっと別途の用途があるのではないだろうか、そういう用途についてはもうちょっと検討してもらいたい。それは、アルコール類とかなんとかそういうものはあります。ありますけれども、それは企業的、採算的にもなかなか成り立ちません。そういうものも研究しなければいけませんけれども、そのほかにももっともっと何かあるのじゃないかというふうに考えているわけでございます。  それが先生に対する御回答になるかどうかわかりませんけれども、以上が私の考えている点でございます。どうもありがとうございました。
  28. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 終わります。
  29. 羽田孜

    羽田委員長 神田厚君。
  30. 神田厚

    ○神田委員 参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。貴重な御意見をお聞かせいただきました。限られた時間でありますので、簡潔に御質問を申し上げます。  まず最初に、精糖工業会川内会長さんにお尋ね申し上げます。  現在、糖安法延長もありまして、特にその一番の骨子は構造改善、これをどういうふうに進めるかという問題でありましたが、この点では現状どういうふうになっておりましょう。また、今後どういうふうな形でこの構造改善というのをお進めになるおつもりでございますか。
  31. 川内武典

    川内参考人 精糖業界構造改善について現在までの姿を少し詳しく説明申し上げたいと思います。  五十五年五月に特例法延長された際に、業界はそれから十年の六十五年度の年間必要溶糖量を約三百二十五万トンと推定しました。これはいまから見ると非常に甘い推定でございますが、その時点の年間溶糖能力は業界として四百二万トンございました。だから四百二万トンと三百二十五万トンの差七十七万トンを過剰能力と策定いたしました。これは一日当たりでは約二千九百トンの生産能力になりますが、この過剰設備の削減を目標として業界指導してまいったわけでございます。その後、現在まで設備の撤去または封印並びに工場閉鎖による削減、それから日産溶糖能力は約千六百トンに達しております。しかしながら、約三百二十五万トンと推定した年間必要溶糖能力は、異性化糖の急増あるいは先ほどの甘味離れビート糖増産等々で大幅に減少してまいり、現在ではさらに過剰設備の削減をしなければならない事態に追い込まれております。  ところで、御質問にありましたこれからの問題でございますが、実はこの計画は中途で、先ほど申し上げました輸入糖が二百三十万トンから百六十万トンに減ったというこの二年間の急激な環境の変化で、私ども構造改善目安がちょっとつかない、見失った状況でございました。今度新しい糖価安定法のもとに、私どもなりにこれからの目安をつけまして、そして新しい気持ちで構造改善に取り組んでまいりたい、かように考えております。  そしてまた、本来構造改善というものは各企業が、経営者それ自体が判断しまして、そしてその決断によってやるべきものでございますけれども工業会としてもこれを側面的に推進できるような方法を考えてまいりたい。いますぐ具体策をちょっと申し上げかねますけれども、あるいは業界内で積立金を積んでそういう構造改善を側面的に業界として支援するとか、あるいは業界企業同士で共同で多角化的な、ほかの事業を考えてみるとか、いろいろなことを工業会としても今後運営し、その中で指導してまいりたい、かように思っております。  以上でございます。
  32. 神田厚

    ○神田委員 それではもう一点お尋ねしますが、税金の問題です。砂糖消費税、これはずっと論議になっているのですが、現状のような段階では大蔵省の方としてもなかなか手をつけるような様子がないのであります。やはりこの砂糖消費税の問題は、価格の問題その他を含めて考えていかなければならない問題だと私どもは思っておるのですが、その辺のところは具体的にどういうふうにお考えでありますか。
  33. 川内武典

    川内参考人 御承知のとおり、生活必需品であります砂糖消費者からいつも高いと言われて私どもとしては非常に困っておりますが、これはいろいろな事情もございますが、先生も御存じのように、砂糖に対する消費税、関税あるいは国産糖の補助金というものは世界に例を見ないぐらいに高いわけでございます。日本砂糖の値段の中にそういった諸税、課徴金が大体四割になっております。アメリカあるいはヨーロッパの先進国では一五%から五%ぐらいで、それが即それぞれの国で販売される砂糖の値段の格差としてあらわれております。だから私どもとしましては、いま大変な国家財政の中で非常に申し上げにくいことではございますが、生活必需物資であるだけに何をおいても優先的に次回には何とか消費税の減免がお願いできたら、かように切望しておるものでございます。
  34. 神田厚

    ○神田委員 次に、日本糖化工業会坂部会長さんにお尋ねいたします。  先ほどのお話によりますと、この法案は、詳細な点では不明であるけれども、大筋は了解をして協力しなければならない、こういうふうなお話でございましたが、糖化工業会はもう一つ全日本糖化工業会もございますね。それらを含めまして、どういうふうな形でこの新しい糖安法改正問題についてお話し合いをなさって、大体の一致点の方向をお見出しでありますか。
  35. 坂部順一

    坂部参考人 全日本糖化工業会とは事務局を通じて話し合っております。私の耳には、全日本糖化工業会からの異論というものは聞いておりません。
  36. 神田厚

    ○神田委員 私どもお話を聞いておりますと、異性化糖企業はそれほど大企業でもないということで、課徴金いかんによりましては企業経営が非常に圧迫をされるといいますか、悪化をするようなことも懸念されるということもあるやに聞いておりますが、その辺の企業実態といいますか、それからこの課徴金との関係といいますか、その辺はどういうふうにお考えでございますか。
  37. 坂部順一

    坂部参考人 先ほども申し上げたとおり、戦後の水あめ製造業者から今日に至った業界でございまして、まだまだ家業として零細な規模で、いまはもう装置産業になりましたので、バッチで麦芽糖をつくるとかそういうことはなくなって、全部機械の装置産業になっておりますが、それでも企業地盤は非常に小さい。したがってお客様の方が常に上位にあるわけでございますね。いまでも小さい業者はキロで一円、二円、トンで千円とか二千円割り引きをして売らなければならぬというところへもってきて、またこういうものがかかってまいりますと、どうしても負担を自分でしょって売り回らなければならぬようなことも考えられるわけでございます。したがって、こういう賦課法律としてかけられてきた場合には、消費者の皆様方によく御理解をいただいて、消費者負担というふうに持っていければ私たちはいいわけでございますが、そこができるかどうか、これが私の一番懸念しているところでございます。
  38. 神田厚

    ○神田委員 取引先の関係等でコスト転換がなかなかできないとかいろいろな話も聞いております。それで、大体におきまして私どもは安易に課徴金をかけるというような法律をたくさんつくるべきではない、こういうふうに基本的には考えているわけでありますが、これから後の審議の中でいろいろ審議をしていきたいと思っております。  次に、ビート糖業協会の坂野会長さんにお尋ねいたしますが、ビート北海道の基幹産業として定着をして、二万五千戸に上る農家がビートをつくっている、こういうことで、ビートも非常に伸びておるようでありますが、これはもうすでに六十五年見通しの上限近くに来ているわけでありますから、そういう意味では適正な輪作ということからいいましても、この辺でビートの問題、これから先どういうふうに政策誘導していったらいいのか、いろいろ工夫が要るところだと思うのでありますが、その辺はどういうふうにお考えになりますか。
  39. 坂野吉辰

    坂野参考人 ただいま御指摘がありました点につきまして、私どももいろいろ頭を悩ましている点でございます。  いまお話がありましたように、北海道におきますところのビートは、一つは畑作の中に入っているビート、それからもう一つ水田の転換あるいは酪農によりますところの転換ということが考えられるわけでございます。この畑地帯におきましては、いま申し上げました輪作形態の確保ということになりますと、大体四年輪作でまいりますれば、現状を、あるいは多少ふえるところがいっぱいいっぱいではないだろうか。ただし水田につきましては、毎年政府の政策によりまして水田の面積が少しずつ減らされてくる。そうするとその後作の問題につきまして、やはり植えるものになりますというと小麦あるいはビート、豆、バレイショ、こういうものになってまいります。したがいまして、この地域におきますところの増加というものが近来特に目立ってきたわけでございますけれども、たまたま昨年の夏から三たびにわたりますところの豪雨によりまして相当の被害を受けました。本年度の面積におきましては、その地区においては多少減るのではないかというふうに考えております。  六十五年におきますところの一応の目標面積が七万七千ヘクタールで、先ほど御指摘がありましたように、大体あと四千ヘクタール弱しか残っていないわけでございますけれども、この間におきまして急激なる膨張というものは、畑作形態、輪作形態というものを乱してもいけませんし、そういう点につきましてわれわれは原料事務所を通じまして農家と十分な接触を保ち、そして計画的、安定的にぼつぼつふやしていただくというふうに進めているのが現状でございます。  以上でございます。
  40. 神田厚

    ○神田委員 それでは最後にお三方にお聞かせいただきたいのでありますが、法律が成立しました中で、その法案に盛り込めなかったことを附帯決議という形で、私どもよくそれをつけて行政の参考にさせているわけでありますが、一言、どいううことをこの附帯決議的なものとしてお考えでありますか、一番重要なところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  41. 川内武典

    川内参考人 雇用の安定という重大課題がございますので、私どもとしては先ほど申し上げましたように、異性化糖ビート、われわれ輸入糖分野調整という問題を、行政の指導の中でも結構ですが、これをぜひお願いしたいと思います。
  42. 坂部順一

    坂部参考人 結局世の中はどんどん動ていくわけでございまして、需要の傾向、これに抗するわけにいかないわけでございます。したがって、総合甘味対策として毎年各国内産糖、砂糖異性化糖、この需給をよく適正に決めていただきたいというのが私たちのお願いでございます。
  43. 坂野吉辰

    坂野参考人 糖安法の趣旨そのもの、すなわち糖価安定でございますが、いままでは、特例法のないときにおきましては、糖安法といいましても糖価の安定が確実に施行されておりませんでした。それが特例法によりまして大体におきましてこの安定を得るような状態になったわけでございますから、新しい法律もこの点を十分に配慮していただきまして、特例法があると同じような効果のある、そういう法律にひとつお願いいたしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  44. 神田厚

    ○神田委員 どうもありがとうございました。
  45. 羽田孜

    羽田委員長 藤田スミ君。
  46. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 参考人の皆さん、きょうは私どもが急な要請をいたしましたのに御足労いただき、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。  せっかくの機会でございますので、きょうは私は特に、新たに調整金をかけられる立場に立たれた異性化糖業界の皆さんから御意見をお伺いをしておきたいと思います。  業界の方でもいろいろと御協議をされて、そして非常に大きな立場から今回この調整金がかけられるという問題についてもおおむね了解をされたというふうにお伺いをして、私は皆さんのそういう姿勢に大変感動をしているわけでございますけれども、しかし私たちは先ほど来の意見にもたくさんありましたように、国産糖を本当に守っていく、自給率を高めていくというこの課題を全うしていくためには、やはり政府が交付金という形で本来は責任を持つべきものである、ここのところは私どももそういうふうに考えております。  ただ、にもかかわらず、今回一定の需給調整を図っていくためにこういうふうな措置をとらなければならないわけですが、皆さんの御協議の中で日本糖化工業会ともう一つ、一貫した生産ではないでん粉糖から異性化糖に変える全日本糖化工業会との間の御協議というのは、いまお伺いをしたところでは、まだお話し合いが十分ではないのかなというふうに、大変失礼ですが私聞いたわけですが、皆さんのお話し合いの中に、一貫生産の中で異性化糖をつくっていらっしゃる業者の皆さんとでん粉糖から異性化糖に変えていらっしゃる皆さんとでは、おのずとそのコストの差があるかと思います。そういうコストの差があるところに調整金が加えられていくというこの問題についてはどういう意見が出たのか、お伺いをしたいと思います。
  47. 坂部順一

    坂部参考人 お答えいたします。  まことにお粗末な話なんですが、業界が二つございます。御説明申し上げますと、日本糖化工業会というのはコーンスターチから糖化へいっているわけです。全日本糖化工業会というのは糖化だけ専業でございます。これもいろんな歴史がございまして、一貫にならなかったというのはそれだけ規模が小さいわけでございますが、これにもちゃんとしたでん粉の割当がございまして、リンク比率もございます。あるときはでん粉屋さんが強いときもあるし、あるときは糖化業者が非常に強いときがあるというような歴史を繰り返しておりまして、一概にどちらが有利ということは言えないかと思います。
  48. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 最近大手のメーカーなど、食品メーカーなんかに対して取引上において納入価格の割引だとか、あるいは販売促進費だとか協賛金を要求したりして、早く言ったら買いたたき、そういうような行き過ぎの取引があるということを聞いております。異性化糖メーカーではそういうふうなユーザーとの取引の中でそういう問題がいま起こっていないのかどうかお伺いをしたいのと、それから今度この調整金をかけられることによって、いわば価格の基準がオープンになってまいります。そのことによって、あるいはこういう買いたたき、バイイングパワーというのが改善につながるのではなかろうかという期待の声も反面、私聞いておりますが、この点についてはいかがなものでございましょうか。
  49. 坂部順一

    坂部参考人 お答え申し上げます。  実はこれは予測でございまして、私どもこの十月から調整金をかけられる、幾らになるか、私存じませんけれども、かけられるということでまだおそればかり頭の中にある。先生がおっしゃった買いたたかれるんじゃなかろうかとか、そういうおそれはございます。しかし、ここまで法律で私どもを規制するということになれば、これは業界の問題でございまして、業界で秩序よく売っていこうじゃないかということがやはり大切じゃないか。できるかできないかわかりませんけれども、そういう秩序立ったものをつくっていきたいというふうに考えております。
  50. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 先ほどのお話にもありましたが、業界の進出がこの際ということでふえてくるのではなかろうかということも聞いているわけなんですが、これが第二の砂糖業界のような危惧にもつながっていくわけでございます。今日、この法案で施設については届け出をしなければならないという制度が新たにできるわけでございますが、こういうことが効を奏するだろうかということに対しては、どのように期待をされていらっしゃいますか。
  51. 坂部順一

    坂部参考人 お答え申し上げます。  でん粉、コーンスターチの歴史というのは非常に長い歴史がございまして、終戦後まだ芋でん粉が各所でたくさんできていたころは微々たる産業でございました。昭和二十四年でございます。それから国産芋でん粉生産量がどんどん減ってまいりまして、それにかわってコーンスターチ企業がふえてきたということで、現在、設備から申し上げますと、でん粉もすでに過剰でございます。それから異性化糖設備も過剰でございます。  そういう中でどう秩序立てていくかというのは、これからわれわれは知恵を出して考えていかなければならぬ。私はわりあいに建設的に考えておりますが、できるだけ建設的な雰囲気をつくりまして、業界の繁栄をつくっていきたいというふうに考えております。
  52. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 異性化糖調整金を課すということは、どの程度課せられるかというのは現状ではわかりませんけれども、しかしそのことは消費者から見れば、これを機会にたとえばジュースだとかコカコーラだとかそういったものも値上げになるんじゃなかろうかなという不安が出てまいります。しかしながら、私、メーカーの方に異性化糖がどの程度使われているかというようなことなども細かくただしてまいりましたところ、その程度によるでしょうけれども、それが一缶について一円とか二円とかといったような数字になるようには思えないわけです。  そうしますと、これはユーザーとの関係の中でかなり消化がされ得るのではなかろうかというふうに私は考えます。これはゆめゆめ、だから皆さんが全部消化すればいいのだと言っているのではございませんが、そういう点で御努力、同時に、政府に対して指導の御要望もおありかと思いますが、この際この点についてお伺いをしたいと思います。
  53. 坂部順一

    坂部参考人 幾らになるかというのが私どもの最大の関心事でございますが、消費者とも私ども話しておりまして、どのくらいならいまの値段で負担ができるんですかというようなこともいろいろ調べております。この程度だったら消費者価格を、要するに清涼飲料の値を上げなくても負担ができるだろうというような範囲は幾らなんでしょうかと、まあ本音はなかなか聞けませんけれども、しかしいろいろ聞いてみると大体こつんと当たるところがある。その程度にやってくだされば私どももほっとするわけなんでございますが、どうなりますか、ここは私どもの一番関心があるところでございます。
  54. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 最後に、きょうは日本ビート糖業協会坂野さんにも御足労をお願いしておりますが、ビート業界ですから、あるいは私がお尋ねすることは少し的外れになるかもしれませんが、きょうは甘蔗糖業界の方からはお見えではございませんので、御理解をいただいて、おわかりの範囲でお答えを願いたいと思います。  砂糖の売戻し特例法が今月いっぱいで失効となるわけですが、前の特例法によって、国産糖のメーカーが精製糖メーカーに値を買いたたかれるというようなことはなくなったというふうに私どもは聞いているわけです。これは甘蔗糖に関係すると思いますが、事業団のこの売戻し価格で取引がされるようになった、つまりこういうふうによくなったということを聞いているわけです。  今回この特例法がなくなって、新法案によりまして変わりなくそういう売買が維持されるであろうかという問題について、どういうふうに考えていらっしゃるでしょうか。  これをあわせて、最後精糖工業会会長さんからもお答えをいただきたいと思います。
  55. 坂野吉辰

    坂野参考人 ただいま先生の御指摘のとおり、ビートの方が本業でございますので、南の方の問題につきましては多少推測あるいは間違いがあってもいけないかと思いますけれども特例法下におきましては、甘蔗粗糖の売り戻しにつきましては、これは間違いなく公定価格といいますか、そのとおり実行されてきたわけでございますけれども、これがなくなりました四月以降におきましては、その不安が生じてくるわけでございます。甘蔗糖の方の業界におきましても、その点は多大のおそれといいますか、不安を持っているわけでございますから、そういう点につきまして、早くこの法律が制定されまして、一日も早く施行されるようにお願いしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  56. 川内武典

    川内参考人 ただいま藤田先生からお話がございました沖縄、南西の国産糖でございますが、あれは粗糖でございますので、私ども精製糖業界が全部買い上げさせていただいております。  御指摘のように、特例法下ではあれがスムーズに取引できる仕組みになっておりましたが、四月以降、まだそういう法の明細がちょっとわかりかねますので、さようなことにならないようにと念願いたしておるわけでございます。
  57. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 どうもありがとうございました。
  58. 羽田孜

    羽田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、貴重な御意見をお述べいただきました。まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。(拍手)     —————————————
  59. 羽田孜

    羽田委員長 質疑を続行いたします。水田稔君。
  60. 水田稔

    水田委員 一つは、砂糖価格の安定に関する法律、これは国内のビート、国内産糖と輸入糖との関係で、いままで調整をしてきたわけでありますけれども異性化糖をなぜ今回この枠内に入れて考えようとするのか。一体砂糖異性化糖というのは同じものなのかどうか。また、これは糖安法でありますから、糖価の安定に関する法律でありますが、総合的な甘味対策としての機能を果たすのかどうか。その点をまずお伺いしたいと思います。
  61. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 今回の制度改正に当たって、異性化糖をなぜ糖安法の対象にするかということのお尋ねでございますが、先生十分御承知のように、現在の国内産糖は、北海道で約五十数万トン、それから沖縄、それから鹿児島の南西諸島で二十数万トン、年によりましても違いますが、合計七十ないし八十万トン前後の生産があるわけでございます。一方、輸入糖は二百数十万トン、合わせまして三百万トン強あったわけでありますが、国際糖価というものは、御案内のように短期間に五倍、六倍に大幅に変動をいたします。国民の消費生活の基本物資でございます砂糖価格変動が、国際糖価の変動のままに国内に持ち込まれるということを何とか防ぎたい、国際糖価の変動を国内の価格に反映させないで安定させるというねらいが一つ。  それから、生産合理化には努力はいたしておりますが、まだまだ輸入糖に比べまして割り高でございます。ビート糖ないしは国産甘蔗糖につきましての輸入糖との価格調整を行う不足払いの財源の一部を、いわゆる輸入糖からの可変課徴金によって賄うという二つのねらいを持って現在糖価安定制度が仕組まれておるわけでございますが、一方、ここ数年間砂糖をめぐります情勢の変化を見ますと、ベースにございます甘い物離れ、まあ健康志向といいますか、そういったことを背景にしました甘い物離れということに加えまして、昔、国産でん粉の主要な需要先として政府といたしましても育成をしてまいりましたブドウ糖産業が、その後の技術革新によりましてブドウ糖の一部を果糖に変性させることに成功いたしまして、現在果糖とブドウ糖の混合液糖という形で流通しております異性化糖が数年前から徐々にふえてまいったわけであります。特に、五十五年の春に果糖の含有率の高い高果糖異性化糖というものがさらに開発されまして、一方、当時国際糖価上昇傾向にありましたために、国内の砂糖異性化糖との価格関係が、異性化糖に非常に有利に働いたということもございまして、異性化糖が、暦年で申しますと五十五年に急激にふえたわけでございます。  現在、御案内のように、実数で七十数万トン、固形換算でも五十万トン前後の需要にここ数年間でふえてまいって、そのことがとりもなおさず輸入糖の激減につながるわけでありますが、先ほど申しましたように、現行の糖価安定法のメカニズムが、輸入糖からいただいております可変課徴金によりまして国内産糖の不足払いの財源の一部を賄うという仕組みになっております関係上、輸入糖の単位当たり負担していただいておりますいわゆる売買差額が非常にふえてまいりまして、現在二十数円にまで至るに至ったわけでございます。そういう意味で、糖価安定制度の円滑な運営にもなかなか問題を抱えるに至ったということもあるわけでございます。  一方、先ほど来の参考人の御意見の中にも一部ございましたように、ビート糖の作付面積がやはりここ数年急激にふえてまいったこともありまして、国産糖増産がこの間二十万トンばかりございました。そのこともまた輸入糖の激減につながってきたわけであります。  一方、価格関係からいいますと、異性化糖は御案内のように、実数で百二、三十円で流通しておりますし、これを固形ベースに換算いたしましても、換算の仕方はいろいろございますが、百六十円ないし百七十円という価格でございます。一方、いわゆる砂糖の方は二百二、三十円ということでございますので、価格関係も非常に異性化糖に有利に働いたということも原因となりまして、異性化糖が急激に伸びてきて、先ほど申しましたような糖安法上深刻な問題を抱えるに至ったということに相なったわけであります。  そこで、異性化糖を今回糖安法の対象とするように考えましたのは、一つは、そういった糖価安定法のメカニズムを維持しなければいけない、激減した輸入糖あるいはその結果としましての単位当たりに課されます調整金の額が多額に上りますと、そのまま国内の砂糖の値段が上がるということにも相なるわけであります。一方、精製糖メーカーからは、現在の関税、消費税あるいは糖価安定制度に基づきます課徴金の額に対しまして、砂糖の中でおおむね九十円近いものをわれわれは負担をしている、一方、異性化糖は、確かに国内産でん粉の負担には協力はしているけれども、その結果ですら価格関係ははるかに有利に働いている、やはり不公平ではないかという御議論もございます。一方、北海道ないしは沖縄の甘味資源作物生産農家からは、このままでは糖価安定制度の円滑な運営が確保できない、非常に心配である、したがって異性化糖を含めた総合的な甘味対策というものをぜひ早急につくるべきであるという強い御要望もございまして、私どもそういった情勢を踏まえまして、今回異性化糖を糖化安定制度の対象とすることにつきましてのお願いをしておるわけであります。  いま先生ちょっとお触れになりました、異性化糖砂糖と同じかということでございますが、これはあるいは先生の方がお詳しいかもしれませんが、御案内のように、砂糖、ブドウ糖あるいは果糖あるいはその混合であります異性化糖も、いわゆる糖ということで水素と炭素と酸素の化合物、砂糖の場合は、分子式でごらんになるとわかりますように、HとOとの関係が二対一の比率になっているものを私どもみんな炭水化物、糖と言っておりますが、そういう意味では砂糖も糖でございますし異性化糖、すなわちブドウ糖、果糖の混合物であります異性化糖も糖でございます。それから数量も、先ほど申しましたように数十万トンという域になりますと量的にも相当な重さを持ってくる。そういったことを総合判断をいたしまして、異性化糖につきまして今回法の対象としてお願いしているわけでございます。
  62. 水田稔

    水田委員 時間が限られていますので、答弁はひとつできるだけ簡潔にお願いしたいと思います。  いまのお話によりますと、一つ砂糖の代替品として使えるということと量が多くなったということなんですが、あくまでもこれは糖安法でありますから砂糖中心でありましょう。しかし甘味ということで考えれば、これはいろいろ論議があるかもしれませんが、たとえば砂糖がないときはサッカリン——ズルチンはいまは使いませんけれども、その混合で砂糖の味を出したということもありますし、あるいは砂糖より百倍以上も甘いというステビアの開発がすでにできております。あるいはアミノ酸甘味料というのはアメリカ、カナダではすでに認可されておる。あるいは国内でもすでに開発をしているわけでありますね。そうすると甘味品を総合的に扱うというのはそういうたてりの法律にならなければならぬし、甘味品の総合的なと言いながら、実は砂糖を中心にした価格の安定のために異性化糖だけを枠内に入れて調整金を取るというのは、全体的な代替品ということで考えれば不公平ではないかという気持ちがいたしますが、いかがですか。
  63. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御案内のように、現在新しいといいますか、昔からあるものもありますが、サッカリンあるいは御指摘のステビア、それからアミノ酸の一種でありますアスパラギン酸からつくられましたアスパルチーム、そういったものもできております。  そのうちサッカリンにつきましては、十年前ぐらいからのデータを私どもとっておりますが、数量的には現在まで横ばいないし若干減っているわけでございます。その用途も食品衛生法の関係によりまして、使い得る分野あるいはその使用基準等が決められております。量的にも横ばいないし微減でございますし使用方法も限定されているという意味におきまして、糖価安定制度との絡みにおきましては特に大きな問題を最近抱えてきたというふうには私ども認識をしておらないわけでございます。  ステビアも、御指摘のように最近で約八十トンできております。これは百倍ぐらいということでございますから、仮に砂糖に換算いたしますと約八千トンという程度になろうかと思いますが、これもいままでのところ私どもの知見では、一般的な甘味料として今後異性化糖と同じような形で非常に伸びるというふうには私ども考えておらないわけでございます。  それからアスパルテームにつきましても、現在のところ国内ではまだ使用することができない状態になっているというふうに理解しております。  ただ、こういった問題が将来の技術開発の結果非常に大きな数量になり、現糖価安定制度の運営に支障を来すということになれば、その時点におきまして私ども適切な対処をしなければならないとは思っておりますが、現時点におきましては、そういった状況にあるというふうには考えておらないわけでございます。
  64. 水田稔

    水田委員 それでは別の観点からお伺いしたいのですが、砂糖というのは粗糖を輸入してクリーニングするという産業なんですね。異性化糖というのはまさにこれからの時代を担ういわばバイオマスの産業とも言えるわけであります。そういう点、こういう形で糖価の調整ということだけで同じ枠内で負担をかけるということは、産業に対する見方というのが一体どうなんだろうか。代替品あるいは価格差があるという点だけからこれは法律の枠内に入れていこう、こういう考え方のようですが、どうもそういう点が、これからの日本の産業構造というものを考えたときにそれでいいのだろうか、そういう点を含めて精糖業界異性化糖業界というのをどういうぐあいに農林水産省としては見ておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  65. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘のように精製糖は外国から粗糖を輸入しましてそれを精製するということでございますし、異性化糖は一口に言えば、技術革新の結果、長年の関係者の努力によりまして現在の地歩を築いたということは大きく評価をしなければいけないというふうに考えておるわけであります。しかし、先ほど来やや詳しく申し上げましたように、現段階で考えてみますと異性化糖はやはり甘味料としましては大きな地位を確立しておりますし、その成分あるいは甘味度におきましても砂糖と同じようなものだというのが私どもの認識でございますし、一方、現在糖価安定制度の外にあるということから、国内産糖の価格支持の負担という面では、砂糖と比べて非常に有利な立場に立っている。先ほども詳しく申し上げたようなことでございます。  さらに申し上げますと、現在糖価安定制度によりまして砂糖はいわゆる下限価格以下には下がらない仕組みになっておるわけでありますが、異性化糖はそういう仕組みの外にあるために、砂糖との絡みにおきましては糖価安定制度価格形成上は恩恵を受けている、反射的な利益を受けているという評価もあるわけであります。それから国内産糖業者あるいは精製糖メーカーからの強い要望糖価安定制度の現在の、先ほど申しましたような問題というようなことを総合的に判断いたしまして、今回、事業団売買の対象に異性化糖もお願いしたということでございます。その点につきましてはぜひ御理解をいただきたいと思うわけであります。
  66. 水田稔

    水田委員 私は、この異性化糖というのは、農林水産省、これから産業としてまだまだ無限に発展する素地を持った産業なんですね。そういう点をどういうぐあいに理解しておるかということを実は聞きたかったのです。  御承知のように、たとえば岡山の林原生物化学研究所、これは小さいけれども非常にすぐれた研究をやっておるわけです。これは水あめから出発して、特許だけでも三百から取っている。異性化糖業界もここの技術を入れてやったというところなんです。この林原は、そういう研究を重ねていま世界でも最高の単位のインターフェロンをつくるというところまでいっておるわけです。そういうものを持った産業、しかしほとんどが中小零細業者、ようやく基盤が少しできかけたということなんですね。  そうしますと、これからの日本の産業構造を考えたときに、そういう新しい分野での研究開発も大変大事なことです。そしてもう一つは、企業として大変な努力をしてきた、これはよく通産なんかでも、総理大臣も言うのですが、民間の活力を生かしていくということを言うのですね。まさにそういう努力をしてきた業界に対してペナルティーを課する、いわゆる調整金を課するということは、そういう意欲をそぐのではないかという心配をするわけですね。だから、糖価ということだけで見るのではなくて、そういう面を一体どういうぐあいに考えられておるかということをお伺いしたいわけです。
  67. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 今回こういった案を考えるに際しまして私ども一番頭を痛めたのも御指摘のような点でございます。確かに日本の経済全体を見ましても、技術の発展というのが日本の経済全体を支えている基本になっておるわけであります。そういう長年の積み重ねの技術革新技術研究の結果できた、その地歩を固めつつある異性化糖に対しまして、今回こういった措置をとるにつきましてどう評価すべきかという点につきましては、大変私も悩んだわけであります。  一方、考えてみますと、それは確かにそうではあるけれども、もし裸でこれを考えてみますと、そのような技術革新の結果であります異性化糖でも、価格では百六十円ないし百七十円になるわけであります。一方砂糖は、各種の関係で関税、消費税、糖価安定制度上のメカニズムからいきます調整金等を加えますと、約九十円前後の負担を負っている。現在の砂糖にその九十円の負担がもしないとすれば、異性化糖は確かに技術革新の結果できた大変りっぱな製品であるにしましても、価格の面では砂糖には太刀打ちできなかったということも計算の上では出てまいるわけであります。そういった意味ではやはり御協力をいただかざるを得ないのではないかというふうに判断をいたしたわけであります。
  68. 水田稔

    水田委員 私は、価格の差があるからということだけを理解してくれというようなことでは納得できないのですよ。ですから、農林水産省としてこういう業界を、たとえばここでは負担をかけるけれども、じゃ研究開発にはぼこっと百億でも二百億でも、やはり伸ばさなければいかぬというなら——ここは異性化糖だけではないのです。いろいろな種類のものをつくって、中にはファインケミカルまでいっておるものがあるわけですね。片一方でかけるなら金を出しましょうよ、くらいのそういう考え方は出てこないのか、そういう業界をどういうぐあいに見ておるか、聞きたいのはそういうことなんですよ。  価格差があるということは知っておる。砂糖業界は大変苦しいし、そこで働く労働者が大変な目に遭っている。私はよく知っておる。だからといって、異性化糖が代替品としての役割りを果たす、そして量が多いから入れるという見方ではなくて、そういうところまでちゃんと踏まえて、農水省としてはこの業界に対してはこういう無理も言うけれども、じゃこういうことはやらなければならぬ、もっと元気を出して伸びてもらいたい、こういう考え方がないのかと聞いているのです。
  69. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘の点は私ども十分念頭に置いているつもりでございますが、結果的には、一つは、いわゆる食品産業だけではございませんが、そういった企業に対しましての技術面での援助ないしは助成というものを、私ども技術会議を中心に、あるいは私どもの局でも若干でございますが、そういった努力は続けております。今後ともそういう努力は続けていきたいとは思っております。  一方、当面の問題といたしまして、異性化糖に御協力願うに際しましてもそういった経過を踏まえまして、これに御協力いただきます金額につきましてはできるだけそういったことを踏まえました適正なものにするように努力をしたいというふうに考えているわけであります。
  70. 水田稔

    水田委員 もう一つ、私は、砂糖の問題というのはそこに働く人たちのことを大変心配しておるわけであります。実はほかでたくさん私は不況業種の問題と取り組んでおります。その中で、やはり科学技術の進歩によって素材の転換なり使うものが変わってくる。これはやむを得ない一面があるわけですね。  たとえば、いま紙パルプが大変悪いのですが、クラフト紙が悪い。それはスーパーで使う紙袋が全部塩ビなりポリエチの袋に変わっていったという素材転換がある。自動車の部品でもそうですし、そしてたとえば、ことしは特にガラスの瓶の業界というのは、瓶が缶に変わっていく、あるいはアルミの缶に変わっていく。あるいは、ことし、ことにビールなどは昨年までの缶が、昨年やってみるとアルミのたるが非常によかったわけです。それでことしは一挙に十倍になるというのですね。製瓶業界は大変だろうということもあるわけです。それはそういうぐあいに変わっていくわけです。それじゃ缶の業界が瓶の業界のために幾らか負担しろということにはならないわけですね。それなりのやはり努力もしなければならぬし、何らかの政策的な雇用対策等も含めてやらなければならぬというものがあるわけですね。  ですから、いま砂糖が一部ずっと異性化糖なりビート増産によって侵食されていくということも、一面言えば、残念ながらそういうぐあいに日本の産業構造が全体的に変わっていっているということも考えながら対応策を考えていかなければならぬのじゃないか。そういう点からいって、これは調整金の率の問題、額の問題等については、当然こういう産業構造の変化もあるのだという中で、一つ砂糖業界の立ち行く方法というのは一体何なのか、あるいは国内のビートなり沖縄、鹿児島のサトウキビはどうやって守っていくのかという問題等をぜひ考えてもらいたい、そういうぐあいに思うわけであります。  それから次は、一つは、異性化糖というのはこれまですでに、トウモロコシの輸入に当たっては北海道産のバレイショの割当を受けております。これはいま生産量によって違うわけでありますけれども、馬でんの使用を義務づけられておる。一対五・三で、ことしはどうなるかわかりませんが、そういう負担をすでに受けておるわけですね。そしてまた今度調整金ということを受けるなら、この業界だけ二重の負担を受ける、そういうぐあいに思うわけです。だから、それだけこの業界にそういう犠牲を強いなければならないのかどうか疑問に思うわけです。二重に負担をかけることについていかがですか。
  71. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘のように現在異性化糖メーカーには北海道のバレイショでん粉と鹿児島のカンショでん粉、合計年間二十万トン前後のものを糖化業界全体としてお引き取り願っておるわけであります。御案内のように、国産のでん粉は、輸入トウモロコシからつくられますコーンスターチに比べますと約倍以上割り高なものとなっておるわけであります。このために関税割り当て制度運用によりまして、国産芋でん粉を一定数量引き取りますと、それの五・何倍かのコーンスターチ用のトウモロコシの関税を免除する。私ども抱き合わせ関税割り当て制度といっておりますが、そういったことをやっておるわけでして、それによりまして割り高な国内の芋でん粉の円滑な消化に努力をしておるわけであります。この抱き合わせ制度によりまして、メーカーはトウモロコシの関税の免除を受けるかわりに割り高な芋でん粉を引き取るということによる負担も確かに負っておるわけであります。これはいろいろな計算がございますが、もし仮に異性化糖メーカーが割り高な国産でん粉を引き取らないで二次税率を負担するとしますと、その負担額と割り高な国内芋でん粉を引き取ったことに伴う負担額とを、比較することがいいか悪いかは別にしまして、仮に、数字の上で比較をいたしますと、関税の減免額の方がやや上回るという状況にもなっておりまして、そういう意味では、今回お願いをいたします調整金負担と合わせて二重の負担になるというのは数字の上では必ずしもそうならないのではないか。  しかし、いずれにいたしましても、先ほど来先生御指摘のようなこともございますので、私どもといたしましては異性化糖メーカーに御負担願う調整金額につきましては、極力そういった実態を踏まえました適正なものにしたいというふうに考えておるわけであります。
  72. 水田稔

    水田委員 現在、馬でんを使うことによってそのコストの上で負担業界全体で年間どのぐらいのものを負担しておるわけですか。
  73. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 これは年によって違いますが、国産でん粉の引き取りを願う数字が昨年ですと二十六万トンでありますが、前々年はたしか二十万トン前後だと思います。ことしも多分二十万トン前後だろうと思いますが、それを二十万トンというふうに置きまして、国産でん粉の値段が十七万七千円ばかりになります。それの約四割ぐらいが異性化糖メーカーさんがお使いになる量ではないかと思いますので、その差、コーンスターチは八万円でございますから、十七万七千円の国産でん粉とコーンスターチ八万円との差がもし仮に負担額だといたしますと、それに仮に二十万トンをかけまして、その約四割程度異性化糖メーカーだと仮定をいたしますと、その総額は八十億弱になろうかと思います。  一方、それを二十万トンに見合いますトウモロコシの約四割の異性化糖分が関税がいま免除されておるわけでありますが、それに仮に一万五千円の税金がかかるといたしますと、負担額は百十億を若干超すことに相なるわけであります。  ただ、こういった比較があるからおまえら負担してもいいのだということではもちろんないわけでありますが、単に計算をいたしてみますと、見合うといいますか、税の負担額の減の方がやや上回る、計算上はさようになろうかと思います。
  74. 水田稔

    水田委員 異性化糖というのは、先ほど来言いますように独自の努力をして技術開発して進んできた業界なんですね。糖価安定のためにぜひ法律の枠内に入れてもらいたいとお願いしたわけではないわけです。私は、北海道の農家の、国内の農産物の生産が大事なこともよく知っております。あるいは砂糖業界大変だ。その働く労働者の問題でたくさん問題が起こっておるということも知っております。しかし、どうしても入れるんだ、いやだと言っても入れるわけですね、法律で押しつけるわけですから。そうすると一面何か、逆に言えばこういう点は、さっきの技術開発の問題についても後でちょっと触れますけれども、メリットがなければやらずぶったくりということになるわけでしょう。たとえばそのことによっていま異性化糖業界というのは、先ほどの参考人意見にもありましたように、過剰設備、そして過当競争、そしてアウトサイダーといいますか新規参入がどんどん入ってくる。そして、価格も保証がないわけですね。そういう問題があるわけです。そして、そこに働いておる労働者、決して日本のレベル以上の賃金をもらっているわけじゃない。大変企業努力をする中小零細ですから、いわば一般よりは少し少ないぐらいの賃金で歯を食いしばってがんばってきてこのぐらいに伸ばしてきたということですから、一面言えば、調整金を課すというなら逆の面でこういう点ではメリットが業界にはあるということでなければ納得できないと思うのですが、そういう点はどういうメリットがあると考えたらいいのですか。
  75. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 私ども異性化糖のメーカーの方々とお会いしましていろいろお話を伺いますと、砂糖の場合に指摘されますと同じような業界の体質といいますか、そういう特色があるわけであります。言わずもがなのことでございますが、やはり装置産業であるとか、あるいは各メーカーごとにできます製品に会社ごとに非常に特別な差がない、みんな似たようなものであるとか、それから異性化糖の需要が夏場に偏るというようなことからいきまして、基本的に何か過当競争的な体質にならざるを得ない本質があるような感じがいたします。しかし一方、芋作農家の保護、南九州、北海道のそういった農家の保護の観点からいきますと、国産でん粉の主要な需要先でございますこういった異性化糖産業全体の健全な発達を図るということは私ども大変大事なことだと思っておりますし、従来も関税割り当て制度運用の過程におきましてもできるだけそういった配慮はしてきたつもりでございますし、これからもやっていかなければいけないというふうに考えておるわけであります。  今回、糖価安定制度の対象にしていただきたいというふうに考えておるわけでありますが、そのことを契機にいたしまして全体の需給の調整といいますか、砂糖との関係、あるいは異性化糖の中だけでもそういった業界全体の競争の中にも需要に見合った生産をつくっていくようなそういった体質づくりというものにも私どもできるだけ手をかしていきたいというふうに考えておるわけであります。
  76. 水田稔

    水田委員 価格の点はいかがですか。異性化糖、これは競争体質ですから、実際には値段の競争というのは激しいわけですね。その点についての機能というのはどうなんですか。
  77. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 これはいままでのところは価格につきまして特別の指導、そういったことはやらなかったわけであります。今度、砂糖の場合を例にとって申しますと、砂糖の場合も糖価安定法の対象になりました四十年以降、コストの中身というものが、事業団の売買をする場合の差額に使います調整率というものを算定する過程でどうしてもコスト計算というものがオープンになるわけであります。これはもちろん平均的な加工販売経費等あるいは原料代等をベースにした計算になるわけでございますが、そういった結果出てきました、私どもいわゆる形成糖価と言っておりますが、そういった形成糖価ができればそれが一番適正な砂糖価格水準であるということを、役所としましてもPRをするように努めてきたわけであります。  今回、異性化糖糖安法の対象になりますれば、形成異性化糖価といいますか、糖安法上算定されます異性化糖の平均的な価格、あるべき市価水準と申しますか、そういったものを私どもとしましても法律を背景といたしまして業界、ユーザーの方にも指導といいますか、そういったことは十分申し上げて、砂糖の場合に行ったと同じような行政的な指導に努めてまいりたい。そのことにつきましては、異性化糖メーカーの方からもそういったことをぜひ糖安法に入った以上は同じようにやっていただきたいという申し出があるわけであります。
  78. 水田稔

    水田委員 ずっとお伺いしまして、非常に狭い視野で物を考えられておる。たとえば異性化糖をそういうように考える場合、先ほども努力していく、そのことについてどういうぐあいに見るのだということをお伺いしたのですが、伸ばしていけば、たとえば北海道農業、これは値段の点がありますけれども、バレイショはある限界がある。だけれどもビートとの輪作というようなこと、そういうところまで目を広げていけば、いま日本では自動車は全部ガソリンで走っておるわけです。ブラジルはアルコール一〇〇%で、いま半分ぐらいいっておりますね。石油のとれるアメリカでさえアルコールを二割ほど使え、ガソホールということを言っておるわけですね。すると、これは今度アルコール専売を新エネ機構へ持っていって燃料アルコールの開発と、こう言っておるのです。バイオマスというのはいまセルローズからとにかくアルコールをとろうというようなことを言っておるのですが、これはアルコールは全部いけるわけですね。日本でも技術は世界最高のものがあるわけですね。たとえば糖みつも使えますし、ミカンが余ったからといって木を切らぬでも、ミカンをしぼるのは全部しぼるのじゃなくてある程度残さないと苦くなりますから、そういう発想をして、この業界が生きていけるための研究開発等相当かけていきますよというそういう前向きの、一つ糖価考える中でもそういうものを、農水省の枠内でたくさんあるわけですから、そういうことをぜひ考えていただきたいと思うのです。  時間が参りましたから、最後にこの調整金の具体的な数字というのは、率、額は政令に任されておって明らかでないわけでありますけれども、これまでずっと申し上げましたように、異性化糖業界というのはまさにこれからの産業でありますし、研究開発や企業努力をやってもらわなければならぬわけでありますから、その意欲をそぐようなことのないような、そして現実に馬でんの負担をしておるわけでありますから、過重な犠牲を押しつけないような慎重な配慮が必要だろうと思います。  またもう一つは、一面で言えば、消費者立場から言えば、糖価安定ということで消費者に過重な、いわゆる物価の点で非常に負担をかけるようなことのないような配慮が必要だと思うのですね。その点、新しい年度が十月一日ということでありますから、その間に相当詰められるとは思うわけでありますけれども、ぜひ慎重に考えてもらいたいし、これまで私申し上げました異性化糖業界実態なりこれからの将来展望というものを考えた十分な配慮の上で決定してもらいたい、こういうぐあいに思うわけでありますが、その点について最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  79. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 異性化糖調整金の額でございますが、これは先生ただいま御指摘のように、原料でん粉の価格あるいは製造販売経費を基準として定めます異性化糖価格法案では平均移出価格と言っておりますが、その平均移出価格が国内産糖合理化目標価格異性化糖ベースに換算をいたしました価格に満たない場合に、その差額に一定率を乗じて算出する、これは砂糖と同じようなやり方なわけであります。しかし、その場合の一定率は、国内産糖の自給率その他のほかに、異性化糖砂糖価格形成に及ぼす影響を示す数値というものを別にまたつくりまして、それを乗じて定めるというふうに法案にもなっておりますように、砂糖に比べまして相当程度減額といいますか、非常に低いものにしたいというのが法案の趣旨にもなっておるわけであります。ただいま先生からるる御指摘のありました点につきましては、私十分念頭に置きまして、適正なものにいたしたいというふうに考えます。
  80. 水田稔

    水田委員 終わります。
  81. 羽田孜

    羽田委員長 新盛辰雄君。
  82. 新盛辰雄

    ○新盛委員 糖安法改正案に入りまして、特に鹿児島県南西諸島及び沖縄県における農業基幹作物でございますサトウキビ及び甘蔗糖等について、的をしぼっていまから若干の質問をしたいと思っております。  まず、サトウキビの生産対策についてですけれども、御承知のように収穫面積は、四十年をピークにしてその後は非常に減少傾向に来ているわけです。いま、ようやく回復してきたのかなという動きでございますけれども、五十六年度の収穫見込み面積、鹿児島県では一万二千五百五十四ヘクタール、沖縄県では二万二千四百五十二ヘクタール、全体で三万五千六ヘクタール程度作付しているわけです。これが今日の推移でございますが、政府がさきにサトウキビの作付面積を六十五年目標として長期見通しをお立てになりました。これは三万八千ヘクタールということでございますが、これらの年次計画、これは一体どういうふうに推定されているのか、そこから聞かしていただきたいと思います。
  83. 小島和義

    ○小島政府委員 六十五年見通しは基準年次を五十三年度に置いておりますが、その間の年度別の目標値のようなものは、サトウキビに限らず各作目とも設定をいたしておりません。ただ、サトウキビの場合には、ただいまの収穫面積三万五千ヘクタールというのは長期見通しの目標の線に沿って着実に前進しておる、かように見ておるわけでございます。
  84. 新盛辰雄

    ○新盛委員 そうしますと、三万八千ヘクタール、これはいろいろな状況も変わってきているとは思うのです。が、いまおっしゃったような形の中で現実問題として遂行できるというか、いわゆる維持できる、こういうことなんですか。
  85. 小島和義

    ○小島政府委員 面積の増大のためには、ああいう島でございますので、サトウキビの作付面積を増加いたしますためには、新しい農用地の造成開発ということも当然伴わなければならないわけでございます。ただ、目標に対する接近ということから申しますと、実は面積よりはむしろ単収の方に問題があるような気がいたしております。  サトウキビの単収でございますが、過去におきまして新しい品種の導入によって飛躍的に増加した時期がございますが、その後の経過をながめてみますと、大体十アール当たり六トン、いい年で七トンぐらいということで推移をいたしておりまして、長期見通しの単収は八・五トンという水準を想定いたしておりますので、この単収増加に相当な努力が必要ではないか、かように考えております。
  86. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、労働生産性の問題ですけれども、御承知のように一戸当たりの作付面積が非常に零細である。従来からもそうでしたが、労働生産性が非常に低い、こう言われて、今日までその改善のために御努力をいただいてきておるんですが、労働時間の改善などについてはその後どういうふうに努力をされたか。毎回これは附帯決議では出しておるんですけれども、なかなか進展が見られないのですが、状況はどうでしょうかね。
  87. 小島和義

    ○小島政府委員 サトウキビ関係につきましては、これまでもトラクターでありますとか防除用の機械でありますとか各種の機械を補助いたしてきておりますが、問題はサトウキビ作の投下労働時間のうち、鹿児島で申しますと大体三分の二ぐらい、沖縄で半分を占めております収穫労働時間の短縮がなかなかできないというところが泣きどころでございまして、世界的にサトウキビ生産は、どちらかといいますと大規模粗放型の作物でございまして、それをわが国におきましては、御承知のような非常に限られた面積の中で零細な経営が担当しておる、こういう特徴があるわけでございます。     〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕  そこで機械を導入する場合におきましても、何といたしましても一つの集団的な対応というものを考えてまいらなければならないと思っております。特に収穫の機械につきましては、多年の懸案でございましたが、ごく最近に至りまして、農業機械化研究所などの努力が実りまして、どうやら実用に供し得るのではないかという収穫機がすでに開発されております。それを中心にいたしまして、地域の圃場の整備、さらにはその生産集団の結成、そのほか機械化のためには機械化によって浮いた労働力の活用という問題がございますので、畜産でありますとか野菜でありますとか、そういう他の作物との組み合わせによる複合的な営農、そういった条件を逐次整備しながら機械の導入を進めてまいりまして、収穫作業にいままで要しておりました労働量というものを大幅に縮減して生産をやっていけるようにしたいと思っておるわけでございます。
  88. 新盛辰雄

    ○新盛委員 聞こうと思っていたことを先にお答えになったのですが、この労働時間の短縮は改善が進んでいないということ、それに対する機械化の問題等補足をされたのですが、現実に十アール当たりの所要時間を見ても百七十時間に及んでいる、こういう現状なんです。したがって五十七年度の予算案でグリーン・チョッピング・ハーベスターの導入、補助金の導入をしておられるのですが、こういう問題の中でサトウキビ機械化によって出てくる労働時間の短縮、こういうような状況説明もございましたが、五十七年度の予算の面では額として一体どういうふうになっているのか、ご説明いただきたいと思うのです。
  89. 小島和義

    ○小島政府委員 いわゆるグリーン・チョッピング・ハーベスターの導入につきましては、五十七年度が初めてでございまして、大体三十ヘクタールぐらいの団地を想定いたしましてモデル的に導入をしてみたいと考えております。予算といたしましては、一地域当たり二千万円の補助金を予定いたしておりまして、五地区、総額で一億円を計上いたしております。
  90. 新盛辰雄

    ○新盛委員 さらに、今度は土地改良の関係です。特に耕土の改良、これは基盤整備という面でも従来から主張されてきておったことですし、これもまた予算措置的にも十分加味されていかなければならないことでありますが、この辺はどうなっていますか。
  91. 浅原辰夫

    ○浅原説明員 基盤整備関係について申し上げますと、サトウキビの主要生産地でございます奄美、沖縄の農業基盤整備につきましては、当該地域の畑作物生産振興に資するために、灌漑排水施設、農道及び圃場整備等の各種事業によって基盤の整備を実施しておるところでございます。  なお、奄美、沖縄の農業基盤整備事業につきましては、採択基準、補助率、予算について優遇措置を講じて積極的な推進を図っておるところでございます。  昭和五十七年度予算につきましては、基盤整備全体といたしましては対前年比一〇〇%でございますが、奄美につきましては、国費の総額五十四億八千万円、対前年比は一〇三・〇%ということになっております。沖縄におきましては、国費の総額が二百十億一千万円、対前年比一〇四・四%ということをもちまして各種の基盤整備を実施する予定でございまして、今後とも強力に促進してまいる所存でございます。
  92. 新盛辰雄

    ○新盛委員 このようにサトウキビ関係の予算というのは横ばいかあるいは減少しているという状況ですね。だから、先ほども指摘をしましたように、六十五年の見通しが達成できるのか。この現状、財政的にも非常に厳しい状況にございますが、こうした問題を含めて、私どもとしても、これからの見通しを明確にしていくためにも予算措置を十分に講じなければならないと思っているわけです。それの面では一体どういうふうに指導されるのか。これは当該地域の基幹的な作物であります。それだけに、農林行政の中でサトウキビというのは一体どういう位置づけをしていくものなのか。  従来からもよく言われておることですが、こうした予算の対応策という面について、大臣が見えておられないのですが、次官がいらっしゃるようですから、この辺、政府の将来の見通し、決意をひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  93. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 サトウキビは、わが国にとりましててん菜糖と並ぶ貴重な甘味資源であるとともに、鹿児島県南西諸島及び沖縄県農業基幹作物としてきわめて重要なものであると考えております。  このため、国は、甘味資源特別措置法に基づきまして、これらの地域をサトウキビの生産振興地域に指定し、従来から各種の施策を進めてきたところでありますが、五十七年度におきましては、地域の実態に応じて、生産者の創意により農業生産振興が図られますように、従来の施策を新地域農業生産総合振興対策として統合メニュー化したところでありまして、サトウキビ作につきましても、この予算の活用によりましてその生産性の一層の向上を図ってまいりたい、このように認識をいたしております。
  94. 新盛辰雄

    ○新盛委員 模範答弁で、お書きになったのをお読みになっただけです。きのうまでは次官も一生懸命みずからの決意を言っておられたのですが、軽く見たというわけじゃないのでしょうが、やはり日本の南西諸島ではこれが重要な要素を持っているという認識はぜひ持っていただきたい。  いまお読みになったそれはまた裏返しにして、決意を込めてこれからの対応を図っていただきたいと思います。
  95. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 答弁は、紙を持とうがあるいはメモを見なくても、やはり農林水産省立場といたしまして、私、政務次官ではございますが、大臣を補佐するという立場におきまして、日本甘味資源といたしましてサトウキビ作は非常に重要である、そのための振興、開発につきましては十分に配慮をしていかなければならない、このように感じておりますので、再度決意を表明をいたしまして、御理解をいただきたいと存じます。
  96. 新盛辰雄

    ○新盛委員 改正法案の問題に関連をして一つ二つ聞いておきたいと思います。  今回の改正案では、市価がある一定水準以下に下落した場合に通常年の売買数量を超える数量について市価参酌調整金というのを課することになっているわけです。これは需給調整効果をある程度上げるということではないかと理解をしているのですが、市価参酌を適用する際の大臣の定める企業ごとの通常年におけるいわゆる数量、これはどの程度のことをお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  97. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘のように、このたびお願いをいたしております改正案の中では、砂糖の市価が形成糖価を下回るあるいは下回って推移するおそれがある、その結果事業団の円滑な運営に支障があるというような場合には市価参酌をして国内産糖の売戻し価格を決定するということにかんがみて、市価参酌用の財源に充てるために、そのための調整金賦課することができるようにお願いをしておるわけであります。  その場合、各社ごとに、各精製糖メーカーあるいは異性化糖メーカーーごとに決めます一定数量の決め方でございますが、これは、一言で言えば過去の実績を基準にして決めるということに相なろうかと思いますが、その場合におきましても、過去の実績で見ましても、非常に国際糖価が乱高下をし、そのために国内糖の価格も非常に動いたというような年を実績としてとることは決して適当ではないと思いますので、特例法の場合もそうであったわけでありますが、通常年におきます事業団の売買数量等を基準にしてその数字を決めるということにいたしております。  この場合の通常年の考え方でありますが、いまも触れましたように、国際的な需給が大幅に動いた年あるいはそのために価格が異常に変動したような年は除いて、文字どおり通常の需給が保たれ、通常の価格が保たれた年の数字というものを基礎に農林大臣の数値を決めたいというふうに考えておるわけであります。
  98. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最後に、国内産糖の優先消化、言うなら、これは全体的な問題を含めて十分配慮しなければならないのですが、これからどういう配慮をされていくのかを明らかにしていただきたいと思います。
  99. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 国内産糖は、北海道ビート糖はいわゆる耕地白糖と申しまして、最終製品が生産地でできてしまうわけでありますが、沖縄等南西諸島の場合には原料粗糖ができるわけであります。それで、同じように事業団売買を行う過程におきまして、いわゆるコストと形成糖価の差を不足払いをしておるわけでありますが、その形成糖価と市価の乖離がある場合に、市価を参酌してその差を埋めるという努力をしておるわけであります。  それで、糖価安定法ができました四十年以降、いわゆる日豪砂糖長期取り決めができます五十年ごろまでは、もちろん年によりまして需給の変動によって市価が形成糖価を上下したということはあったわけでありますが、さほど深刻な問題はなかったわけであります。日豪砂糖協定が五十年にできまして、二百三、四十ポンドの、年間六十万トンの契約糖を引き取らなければいけない。ところが、値決めをした五、六百ポンドしたときと違いまして、契約が実行に入りました五十年の秋以降、国際糖価が暴落をいたしまして百ポンド水準になりましてから、内地の精製糖メーカーが経営上大変苦況に陥りまして、精製糖メーカーに販売をしております南の粗糖が、言葉は悪いのですが買いたたきに遭いまして、いわゆる再販問題というものを生じたわけであります。特にひどかったのは、五十年から五十二年までの間、そういった非常な混乱があったわけでありますが、特例法期間中は輸入糖数量規制を行い、国産糖につきましてはそういったことは行わなかったということもありまして、再販問題は一切なくなりまして、適正な価格での引き取りが行われたというふうになっておるわけであります。  今回、諸般の情勢によりまして、特例法の政府提案によります延長はお願いしておらないわけでありますが、改正法案におきましても、一定数量を上回る数量につきまして市価参酌財源用の調整金をお願いしますのは輸入糖についてだけでございますし、先ほど申しました混乱の最大の問題でありました日豪砂糖協定は昨年の六月に失効をしております。そういったことを考えますと、かつて問題になりましたようないわゆる再販問題というのはもちろん起きないというふうに私ども考えておりますし、先生の御指摘のそれを抜きにしましても、南の島の適正な価格によります精製糖企業への引き取りの指導というものには、当然私どもは努めてまいりたいというふうに考えております。
  100. 新盛辰雄

    ○新盛委員 終わります。
  101. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 次に、島田琢郎君。
  102. 島田琢郎

    島田委員 糖安法改正に当たりまして大事な基本線は、何といっても情勢が正確に把握され、それに正確に対応するというものでなければ法律改正の意味がない、こういうことになるわけであります。砂糖をめぐる情勢というものを政府としてはどのように認識しているのか、まずその点をお聞きしたいと思います。
  103. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 最近におきます砂糖をめぐります情勢の変化につきましては、もう先生も十分御案内だろうと思いますが、幾つか際立った動きがあるわけであります。  その一つは、数年前からございますいわゆる甘い物離れ、一般的な国民の甘味離れというものが進む中で、甘味料としましては砂糖と同様な、果糖分の含有率の高い高果糖異性化糖というものの生産が五十五年春から本格化をいたしました。またその時期に、時期を同じくしまして国際糖価が高騰したということもございまして、価格関係が異性化糖の方に有利に動いたということもございまして、清涼飲料メーカーを中心に、砂糖から異性化糖への需要の切りかえというものが急激に進んだということがやはり一番大きなことではないかと思います。さらに、国産糖の自給力の向上というものも並行してございます。以上申しましたようなことを背景といたしまして、輸入糖が激減をいたしたわけであります。  特に、一昨年から昨年にかけまして、通関ベースで言いますと二百三十万トンから百六十万トン前後に激減をしたわけであります。これは数字の上では、一昨々年も二百三、四十万トン、一昨年も二百三十万トン前後で、昨年が百六十万トンというふうに出ておりますが、一昨年の二百三十万トンがある意味では、異性化糖がこれほどまでにふえるというふうに思わなかったために入り過ぎたということも一部ございますので、それを割り引いて考えますと、実際の姿としましては、二百三十万トン、二百十万トン、百八、九十万トンというのが実際の姿ではないかと思いますが、数字の上ではいずれにしましても、通関ベースでは二百三十から一年間で百六十に下がるという激減をいたしたわけであります。  そういう意味では、砂糖をめぐります情勢は、国内産糖の側にとりましても精製糖業界にとりましても大変厳しいものになっているというふうに私どもは承知をしておるわけであります。
  104. 島田琢郎

    島田委員 そういう需給の動向というのは正確に把握をしないといけないわけであります。甘味離れ、こういうふうに一口に言うわけですが、砂糖離れというのと甘味離れというのとを同じ次元で判断をするということが必ずしも正しいかどうかには一つの疑問があると思います。いま、砂糖分野における動きというものが大変変化を来してきた、それが即砂糖構造の変化として受けとめられるかどうかという点で言えば、必ずしもそうではないのではないか。  たとえば、甘味品ということになりますれば、これはお菓子も入ります。ビスケット、クッキーがどんなふうになっているのか、以下、甘味品と言われるお菓子の類を見てまいりますと、昭和五十一年度で三千六百四十四トンありましたビスケット、クッキーは、五十三年には四千七十九トンとふえています。キャンデー類はどうかというと、五十年ごろには五千六百八十四トンでありましたものが、五十三年には一万二千八百九十八トンとふえているのですね。またココア調製品、これはしばしば牛乳のところでも問題になるのですけれども、これも同じ五十一年ごろには一万二千トンでありましたものが、最近では一万三千トンを超えるという状態になっている、これは輸入品でありますけれども。それから練りあんになりますと、五十一年に千九百トンしかなかったものが五十五年には一万五千トンとふえているのですね。そういたしますと、必ずしも国民の甘味離れというふうにきめつけることは妥当ではないのでないか、こういうふうに私は見ているのであります。ですから、砂糖はどんどん減っているのだというふうにに見ますと、これは大変狂うわけです。  ですから、一つには、いまの挙げました数字によっておわかりのとおり、垣根なしにぼんぼん入ってくるチョコレートだとかあるいはココア調製品といったようなたぐいのものは、正直言えば日本のわれわれにとって見れば、砂糖を入れてほしくないのです。ココアでくればいいのであって、これに何も砂糖まで入れて持ってきてくれなくたってうちはちゃんと調製をするのでありますが、これが垣根なしになっている。そうすれば砂糖の消費にそんなに大きなかげりが出るとは私は思えない。逆に、こうした加糖調製品の輸入増加というものが、甘味全体として考えてまいりますと、消費減どころか実は若干ではあるけれどもふえていると見ていいと思うのです。  そうしますと、糖安法そのものの持っている機能でこれができるということにはならない分野があるにもせよ、総体の対応というものは輸入甘味品も含めて対応するという姿勢が基本にないと、私は、砂糖問題の取り組みに正確ではないと言われてもこれは仕方がないのじゃないか、こういうふうに思うのです。私のこういう考え方は間違っているのでしょうか。
  105. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいまの先生の御指摘は御指摘として私もよく理解できます。菓子類あるいはココア調製品、糖分を含みました加糖あん等の輸入数字、それぞれその年々の事情はございますが、横ばいないし増加のものもあるわけでありますが、一方その中に含んでおります砂糖は、そのもの自体として見ますと、やはり砂糖としてとらえて糖価安定制度上大変な影響を及ぼすというほどのものではないというのが私どもの認識でございまして、国際的な貿易摩擦の現在の状況等も踏まえますと、現在程度の輸入動向というものは、それなりにいたし方のない姿ではないかというふうにとらえておるわけであります。  しかし、ベースとしての先生の御指摘で、そういったものも踏まえた砂糖全体の需給動向を正確につかみ、それを踏まえた行政を展開すべきであるという御指摘は、私よく承りたいと存じます。
  106. 島田琢郎

    島田委員 それがつまり砂糖政策というもののいわゆる基本であって、減っていくのはいたし方がないというところから始まると、砂糖は際限もなくあるいは減っていくかもしれないということが十分心配されます。ですから、きょうは糖安法審議でございますから、私はそこのところに深く入るつもりはありません。しかし、情勢の認識の中にそれをしっかり提起させておいてもらいたい、こういう希望を私は持っているのであります。  そういう中で、構造の変化というのは、局長もいまお触れになっているように、生産状況に大きく変化が起こっているということが一つ言える。それは何かと言えば、異性化糖が意外に増産される傾向にある。しかも、それが市場にも相当大きくシェアに食い込むという状態が出てきた。これが一つ変化としてとらえられるでしょう。  それからもう一つは、北海道におけるてん菜糖の増産ということが挙げられると思うのですが、これは私は、昨年の秋の畑作物価格決定に当たって、かなり厳しく指摘をいたしました。てん菜糖の原料のつまりビートは、実は政府が考えている六十五年見通しで言うならば、かなりノーマルなものなんですね。異常ではないのです。しかしながら、現在七万四千ヘクタールに達しているという現況は、これは事実として否定するわけにはいかない。そうすると、畑作経営における進捗の状況というのはきわめて正常であるというのならば、どこが不正常なのかということになる。それはまさに北海道に対する稲転の不当なまでの強行策、それによってビートに転作せざるを得なかったという、これがずいぶん面積としてあるわけです。約一万ヘクタールにも及ぶ。しかも酪農家は五十二年以来、きのうも論議にありましたように乳価据え置き、しかもこれまた非情なまでの生産調整が強いられている。酪農家の経営を維持するためには、手っ取り早く換金作物に依存せざるを得ない、こういう状況に現地では相なってきます。そうした酪農家がビートをつくるという状態も、いまのような乳価抑制、生産調整の強行といったようなことが続いてまいりますと、これまた予想もしない方向に面積が拡大されていく危険性は十分持っている。ここを忘れて構造の変化というふうにとらえると、これは行政当局としてきわめて無責任、もう少し同情的に申し上げれば、渡邉局長のところは被害を一身に受けているということも言える。食糧庁の責任を負わされている、あるいは畜産局の無責任責任をあなたの方がしょわされている、こんなことにもなっていると私は思う。北海道に対してビート増産は余り急角度で伸びるようなことはやめてほしいということを幾ら言ったって、現地は生きなければなりません。死ぬわけにはいかないのでありますから、ビートの面積拡大の方向に向かわざるを得ない。できたビートは確実に砂糖にして売り切っていかなければなりませんから、またてん菜糖のいわゆる販売にまでかかわって苦労がついて回る、こういうことになる。ここをしっかり情勢といいますか、今日置かれている大事な問題点として踏まえて、この糖安法改正というものが考えられているのかどうか、私は改めてこの席からお聞きをしておきたい。
  107. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいま国産糖増産、特に北海道ビート生産状況につきましては、るる先生から御指摘があったわけであります。先生の御指摘の中身、私十分理解できるわけであります。  ただ、一つだけ申し上げさせていただくとすれば、六十五年の生産見通し七万七千ヘクタールに対しまして、現状の七万四千ヘクタール、その枠内でありまして、決して不正常ではないというのはそのとおりだろうと思いますが、若干不幸な出来事と言ってしまえばそれまでではありますが、その過程におきまして、二、三年前に高果糖の異性化糖ができまして、それが従来のビートの需要先でございました清涼飲料業界の需要を相当食ってしまったという現実があるわけであります。  そういう意味では、ビートが若干その需要先を失ったという時期に、たまたま時期を同じくしまして、これは単収等の問題もございますが、ビートが大増産されたということがありまして、二重の意味でビートがその時点におきましては市場の混乱要因になったということも、これも事実でございまして、私どもそういった意味では、北海道の農家の方には、ビート増産は大変結構ではあるけれども異性化糖状況というものも踏まえてモデレートに自分の販売力の強化のテンポに見合った姿での増産が行われればさらにベターではないかということを申し上げているわけであります。しかし、いずれにしましても、北海道農業の置かれた現在の姿の中で、ビート農業生産の重要性というものは御指摘のとおりでございまして、そこは私十分踏まえているつもりでございます。  今回の糖安法改正に当たりましてはそういった事態も踏まえまして、先ほども若干触れましたが、異性化糖増産が余り急激にふえますと、またそれをそのままにいたしておきますと、現在の糖価安定法のメカニズムが根本から崩れるおそれがあるわけであります。放置すればその時期は決して遠いことではなくて、近い時期にそういった事態が十分予想されるということで今回措置をお願いしているわけでありますが、それも、糖価安定のメカニズムの基本でございます可変課徴金によります不足払いの財源確保という一翼を異性化糖メーカーの方にも担っていただくということによりまして制度の基本をきちんとしたい。そのことがまた北海道ビート生産の安定的な姿を確保するためにもぜひとも必要ではないかという認識のもとにお願いをしているわけであります。
  108. 島田琢郎

    島田委員 局長がお述べになっている点は、私は否定するものではありません。そういう努力はこの新しい制度のもとでぜひ確立をしてほしいという期待を持っていまお話をしているわけであります。  重ねて私は大臣にお聞きをしたいのでありますが、北海道は決して畑作地帯におけるビートの面積が異常に伸びているわけではない。今日七万四千ヘクタールで七万七千ヘクタールにあごがつかえるようなところまで来たというのは、非常な稲転によって強制させられているという実態があり、乳価や畜産物の価格抑制によって、そこに生き延びなければならないという現地のせつないまでのぎりぎり追い詰められたところからそういった実態があらわれている。このまま放置していけば大変な面積拡大につながっていくだろう。局長がおっしゃるように、それぞれの分野が正常なきわめて調整のとれたものにしていかなければならない、そういう考え方があって総合甘味対策というものが打ち出されたという点に、私は大変大きな意義を感ずるのであります。大事な基本のところが崩れてしまいますと、異性化糖が悪者になってみたり、北海道ビート、てん菜のつくり過ぎがいけないと言われてみたり、こういうことになってしまうのであります。この現場における苦しみをどのように認識されておられるのか、大臣から一言承っておきたいと私は思うのです。
  109. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 申し上げるまでもございませんけれども、いまの甘味状況というのは、先ほど来お話がありましたように、一般的に甘味離れの傾向が非常に強い。これは私たちでも、どうも砂糖をとることによって太り過ぎになりやしないかとか、糖尿になりやしないかというようなことで、全体的にやはり甘味離れというものが出てきているわけでございます。この傾向と、それから、いまお話しのようにてん菜糖あるいはまたビートが非常に伸びてまいったというようなことで、生産が非常に伸びてまいっているわけです。反対に輸入糖が非常に減少している。それに異性化糖というものが五十二年以来ずっと大きく伸びて、五十四年、五十五年、五十六年に至ってはもう物すごい勢いで生産が伸びているわけでございます。こういう状況というのは、やはりこれまでのメカニズムを完全に変化さしているわけでございますから、この際、私たちは総合的な甘味対策を立てることによって糖価の安定を図ろうということで、今回この法律をお願いしているわけでございますが、その背景には、やはり国内産糖の保護育成というものを私たちは常に考えていかなければならないわけでございますから、そういう点、ただいま島田委員御指摘のような点は十分配慮しながら私たちは今後も甘味対策を考えていかなければならない、かように考えております。
  110. 島田琢郎

    島田委員 大臣は、私が冒頭で申し上げた甘味離れという点について私とはずいぶん認識が違うようであります。確かに健康に悪いから甘味はなるべく控えた方がいい、そういう風潮のもとに置かれていることも事実です。しかし現実はそうなっておらぬ。砂糖でべろべろなめるかお菓子にして食べるか、いずれにしても甘い物を体に入れていることは事実なんですね。トータルでいえば、さっき私が言いましたように、甘味は依然国民全体で消化している分は減っていないのです。甘味離れ甘味離れとおっしゃるが、それならお菓子を食べるのも減っていればいいのですが、減っていない。こういう状況の認識というのは、余り大きく狂いますと砂糖政策という問題に大きなそごを来すのではないでしょうか。砂糖だけの分野で言えば、確かにおっしゃるとおり、そうなっています。私が先ほど指摘した大事な点は、外国から限りなしに入ってくるような状態もきちっと整理してもらわないと困ります。たとえば、その一番王様と言われるのはココア調整品、いわゆる加糖の輸入であります。あるいはチョコレート、ビスケットのたぐいのものであります。いずれも砂糖が入っているのであります。その入っている量はどうかわかりませんが、あるいは昔のビスケットからいえば甘味が薄くなっているということはあるかもしれません。チョコレートも昔ほど甘くなくて少し薄くなっているかもしれない。しかし、そういう一つの事実というものをしっかり認識しておきませんと、単純に甘味離れだというふうにきめつけてかかったのでは、私はこれは間違いではないか、こう思うのです。  後段の部分は大臣の決意のほどでございますから、それにいちゃもんをつけるつもりはさらさらございません。どうかその気持ちでぜひひとつ……。糖安法というのは、何も改めて私が申し上げるまでもございませんが、国内の保護というところに目的を置いた法律でございますから、それを正確に適切に運用していくということについて、私は否やを申し上げているのではありません。ただ、現状の認識にそんな狂いがあっては困ります。まあ時間の関係で大臣の重ねての答弁は求めないことにいたします。  さて、そういう点を踏まえまして、現在、それからこれから長期的にどういうふうに見通していくのか。需給の関係で言えば見通しが正確に近いものであってほしい。それは長期的に十年でやるのか、五年でやるのか、単年度ごとにやるのか、いろいろの手法を組み合わせていかないと正確を期することができないということが言えると思います。ただ厳然たる事実は、閣議で北海道のてん菜は七万七千ヘクタールということを認めているのですね。六十一万トンの砂糖ができますということもこれは認めていらっしゃる。ここは動かせないのであります。ところが、現状のまま放置していけば、やがては七万七千ヘクタールをオーバーしていくような結果になりはせぬか。これは北海道にとっても必ずしも幸せなことではありません。ましてや総合対策を構えるということになりますれば、それぞれ分野ごとに節度ある行動が必要であることは言うまでもないわけであります。  ところが、片一方に政策の不合理が残っておりますれば、なだれを打つということになるのであります。ですから、精製糖のところに大変な犠牲を強い、異性化糖にもそのリスクをしょわせておきながら、北海道でばんばん面積が上がっていくなんていうことになったら、これはやはりこの糖安法さえもおかしくなってくるということになりかねないから、やはり一定程度の節度を北海道としても望んでいる。決して何十万ヘクタールもつくらしてくれなどということを言っているのではないのでありまして、そういう整理され、一定の方向にきちっと政府が期待しているような数字で動いていくことが最も望ましいのであります。特に北海道は三十八万ヘクタールの畑作面積を持っています。こういう中で畑作農家の皆さんが金科玉条として踏まえているのは、輪作体系を崩してはいけないということであります。それが崩さざるを得ないような状態になったとしたら、これは大変なことだ。われわれ北海道の農民にとって自殺行為になりかねません。ですから、そこのところの対策はきちっとしてもらわなければならない、私はそう思うのです。  そこで、需給見通しというものをどのような手法でお立てになると考えていらっしゃるか、具体的なことをお聞きしておきたいと思います。
  111. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 これは長期的な場合と、今後、糖安法が成立いたしまして毎年の運用の場合と、二つあろうかと思いますが、長期的な場合を想定をしてみた場合は、ただいま先生からも御指摘がございますが、甘い物全体に対します国民の消費の動向というものが今後ふえるというふうには見通すのはなかなかむずかしいわけでありまして、横ばいないし微減ではないかととらえた方が正確ではないかと感じるわけであります。  それから輸入糖とか国産糖の各分野別の問題になりますと、北海道につきましては先ほど先生御指摘のような七万七千ヘクタールという六十五年の目標に沿った姿を前提とするのは当然だろうと思います。南の甘蔗糖の場合もそれを前提とした数字を置いて物を考えていくべきであろうというのは当然でありますが、一番問題になりますのは異性化糖であるわけであります。  特に今回このような改正案をお願いした要素の一番大きなものは異性化糖の存在、動向でありまして、いま異性化糖については、たしか昨年の春のこの席で先生の御指摘に対して私御答弁申した記憶がございますが、熱に弱いとかリキッドの状態でしか流通できないという品質的な問題もございますので、すべての砂糖分野を云々するというわけにはなかなかまいらないと思いますが、清涼飲料メーカーにはかなり今後も入り込んでいくのではないかということは当時予想申し上げたわけであります。当時におきましては、一部の大手の清涼飲料メーカーを除きまして相当の分野異性化糖が進出したわけでありますが、残されましたある大手メーカーも最近、異性化糖を使うという社の方針を決めたやに報告を受けております。そういったことを考えますと、一昨年から昨年にかけてのような大幅な増加はもちろんないとは思いますが、今後とも異性化糖の需要というのは、徐々にではありますが、ふえていくのではないかと考えておるわけであります。  もちろん国民一人当たりの需要量というのは先ほど申しましたような傾向かもしれませんが、人口増その他を考えますれば、長期的に見ますと輸入糖現状ないしやや減るような形で推移するのではないかというふうに見ざるを得ないのではないかと考えておるわけであります。  一方、短期の問題といたしましては、法律を成立をさせていただきましてから、私ども具体的には輸入糖あるいは異性化糖にかけます調整金の算定の基礎といたしまして調整率を使うわけでありますが、その調整率の算出の過程で年々の生産量等を、あるいは需要量等を数字をつくるわけでありますが、これは秋の十月一日以降の新しい砂糖年度に適用されるものとしてつくるわけでありますが、年々の作付面積の動向あるいは単収の動向等を踏まえて国産糖生産量を置き、一方、異性化糖につきましても、従来はそういうことをやっておりませんでしたけれども異性化糖も従来の実績等を踏まえて適正な生産見込み量というものを置き、輸入糖もそういった同じような手法で算定されますものを置きまして調整率を算定し、そういう過程で各分野がそれぞれ何とか成り立つような形での法の運用というものをやっていきたいというふうに考えておるわけであります。
  112. 島田琢郎

    島田委員 ところで、小島農蚕園芸局長がおいででございますから、北海道ビートについてどのように現状を分析し、見通しを立てていらっしゃるか、そこのところをお聞きしておきたい。
  113. 小島和義

    ○小島政府委員 先ほど先生が引用されましたように、北海道の普通畑面積は約四十万ヘクタールございますが、作物別の作付面積を見ますと、ビート、バレイショ、小麦、それから豆類、さらに青刈りのトウモロコシ、そういったものの作付面積は大体五万ないし六万ヘクタールということで、物別に達観をいたしますと、大体バランスのとれた作付比率になっておると思っております。ただ、部分的に眺めてみますと、ビートの作付比率が四割を超えるというふうな市町村もあるわけでございまして、現在過作の弊害が出ておるということではございませんけれども、地域別にはなお作付の内容というものを考えていったらいいんじゃないかと思う点が多々ございます。  それから転作との関係でございますけれども長期見通しの七万七千ヘクタールというのは決して普通畑だけで想定をいたしたものではございませんで、水田転作、さらには牧草地の転換といったものも、数量的には幾らと決めておりませんけれども、内容としては取り込んだものとして七万七千を決めておるわけでございますから、現状の約九千ヘクタールぐらいの水田転作がビート作に加わっておるということは決して過大なものとは考えておらないわけでございます。  物別に申し上げますと、ビートは、先ほど来御議論がありましたように、急速に伸びたということがその加工段階あるいは製品の流通販売段階でいろいろまだ問題があるようでございますけれども、他面におきましては、作物の中にはいま少し気張ってくれてもいいんではないか、こういうものも決してないわけではございませんので、そういったものも十分加味し、北海道全体としての畑作の作付体系が総合的にうまくいくように今後とも努めてまいりたいと考えております。
  114. 島田琢郎

    島田委員 小島局長がお話しされておりますように、北海道の畑作の立場で言えば、そんなに大きく輪作体系が崩れているという現況にはない。ただ、水田の転作によりますビートが九千ヘクタールを超える、こういう状況にある。酪農家のつくっているビートも四、五千ありますから、それを引きますと、大体六万ヘクタールちょぼちょぼのところですね。これはバレイショあるいは麦、豆類、こういうふうに並べていきますと、若干の凸凹はあるにせよ、ややいいところにおさまっているのが北海道の畑作の現況でありますから、これは北海道畑作農民にとってはこういう形を崩さないでいきたい、こういう期待が強くあります。  ただ、ここで一つ、ついでですから指摘をしておきますが、豆のところがちょっと少ない、下がる傾向にある。ここのところは農蚕園芸局の今後の力の入れどころだろう、こう思っております。悪くすると小豆づくりやめてビート、こういうことになっていったら困ります。それを北海道の農民は望んでいないのでありますから、だからそういう畑作政策の確立というのはいまこの糖安法審議に当たっても非常に大事なもう一つの私の主張点であります。幸いなるかな、それは崩れていないのだが、稲転が出てきている。それがまた第三次の稲転でもって北海道に傾斜配分なんということになりますれば、これは畑作体系が崩れていくということになりかねない。ここは、もう一遍もとへ戻って悪いのですが、長期の見通しなりあるいは短期の見通しなりという点で常に話題になる点でありますから、先ほどの渡邉局長の御答弁に対して、その点を十分配慮していくということが必要だという観点に立って、ここは専門の畑作の小島局長のところとよく整合性ある協議がなされていかなくてはならない大事な点だ。それが崩れますと見通しが全く狂ってくる、こういうことになりますから、そこはしっかり踏まえておいてほしい、こう思うのです。  ところで、入り口の論議ばかり繰り返してまいりましたが、私はいま需給見通しの策定という問題について考えを伺いました。ただ、新法の運用に当たりまして、私は多少懸念がございます。今後、政省令やあるいは施行規則などが出てくるわけでありますが、法案の中身で見る限り、かなり従来と違って、今度大臣の権限が大幅になっています。したがって、これは本質的には大臣が権限を振り回してやれるというものではないにせよ、そういった点が今後運用の上で災いになるようなことがあってはなりませんから、私は、これはかなり民主的な手法を取り入れていかなければならないだろう、こう思うのです。その場合には関係者の利害の調整を図っていくというのもずいぶん大事な仕事になるでしょう。そしてまた、消費者の皆さん方の御意見も十分そんたくをする、こういうことになりますれば、広範な関係者の意見を聴取するということは、大変大事なことであります。  その場合に、そうした広範な関係者の意見が聴取され、しかもそれの利害関係が整理される、調整が図られるというためには、現在ある需給協議会の機能では不十分だと私は思うのですが、この需給協議会のことについてお考えがあれば聞かしてほしいと思います。
  115. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 現在まで行っておりました需給協議会は、特例法を施行するに当たりまして設けたわけであります。  少しさかのぼりますと、実は国内の形成糖価砂糖の市価が乖離していた時期に、特例法のようなバックではなかったわけでありますが、全く任意の集まりということで関係者にお集まりいただきまして、役所も入りまして、時期時期の需給の見通しをそれぞれ出し合い、協議をし、これも公表して、それに基づいてメーカーあるいは国産糖の場合はその販売の月別の数字の調整等を図る事実上の需給協議会というものをやった時期もあったわけでありますが、最初のころは皆さんそれを念頭に置いて需給調整に協力をしていただけるわけでありますが、なかなかメーカーの中が一本にまとまらなくて、余り効果が上がらずに途中でやめたというようなかつての歴史的な経過があるわけであります。  しかし、それはそれといたしまして、特例法ができましてから、毎四半期ごとの輸入数量を決める。特例法では、決められた数字だけは瞬間タッチで売り戻すという形をとっておったわけであります。そのために、四半期に一遍ずつ需給協議会というものを開きまして、消費者あるいは国産糖、これも北と南と、それから精製糖業者、学識経験者あるいは報道関係の方も入っていただきまして、四半期に一遍ずつ数字を決めてきたわけでありますが、今回、特例法がなくなりました後の問題といたしまして、率直に言いまして、私、この需給協議会を続けるかどうか、若干まだ迷っているわけであります。  と申しますのは、特例法では御案内のように、農林大臣が決めました数字以上の数字は事実上入れることができないという、かなり強い規制であるわけでありますが、今回私どもお願いしておりますのは、諸般の情勢からいきまして、そのような強い需給調整措置というものを糖安法の中に仕組むことはなかなかむずかしいということで、別途、市価参酌用の財源を確保するという視点での技術一つとしまして、一定数量を上回るものにつきまして、市価参酌用の財源としての調整金をちょうだいするという仕組みにしたために、特例法と同じような、法律の背景というものがそれと同じような重さがあるかどうかということにつきまして、私もまだ判断しかねているのが現状でございます。しかし、できればそういったものが何かあった方がいいんではないかというふうにも、もちろん考えておるわけではありますが、継続するかしないか、あるいは別な形にするかしないか等につきましては、まだ最終的に考えがまとまっておらないのが現状でございます。
  116. 島田琢郎

    島田委員 これは運用に当たって、私はやはりそれを否定しちゃいけないと思うのです。いままでやってきた経験に照らせば、どうもそれがうまくいくかどうか、大変不安もあるので、もう少し考えたいというお話であります。しかし、それじゃ具体的に言いますと、市価参酌調整金お話がございまして、その中で、法律では、通常年における一定期間の売り戻し数量について決める、こうなっていますね。その精製糖メーカーや異性化糖メーカーに対して、一体何を基準に決めていこうとお考えになっているのでしょうか。  また、ついでですから。数量に変更がある場合だってありますね。その場合にはどういう条件といいますか、どういう考えに基づいて変更するということになるのか、その辺のところもあわせてお尋ねをしておきたいと思います。
  117. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいま御指摘のように、今回お願いしております法律案では、過去の通常年におきます輸入糖をベースにして申し上げますと、通常年におきます各メーカーごとの事業団売買の数字を農林大臣として定め、それを上回る分につきましては市価参酌用の調整金を通常の調整金にプラスして納めていただくことにしておるわけでありますが、先ほども御答弁申し上げましたように、通常年と申しますのは、国際的な砂糖の需給に大きな変動があったような年を除くというふうに私ども理解しておりまして、特例法のときと表現はほぼ同じようにしておるわけでありますが、そのときも同じような方法をとったわけであります。逆に言いますと、需給がおおむねバランスがとれ、価格の面でもおおむね適正であったと思われる年の数値として農林大臣が各メーカーごとに数字を決めるという形で行っていきたいと思っておるわけでございます。  変更云々の話でございますが、これはできれば三カ月に一遍そういった数字を固定といいますか、単位に物事を判断していきたいと思っておりますので、その間に国際的に非常に大きな変動があったというときには、これを変更しなければ国内のユーザー等にも大変迷惑をかけることになるわけでありますので、そういった異常な国際的な事情の変動があったということを念頭に置いて、そういった場合にはこれを変更する場合もあり得るというふうに考えているわけでございます。
  118. 島田琢郎

    島田委員 そもそも総合甘味対策、こう言う限りはやはり総合的な立場に立って皆さんも御参加されるというふうに常識的には考えるわけです。しかし、市価参酌調整金ということになりますればこの運用がかなり問題になってまいります。これもきわめて常識的に判断をするならば、一定の需給調整機能というものに目標を置いてそういう方向でこれが運営されていかないと、せっかくの市価参酌調整金運用できない、こういうことになります。それにはペナルティー的なものが加わってこないとこれは機能しないということも言えると思うのですが、そういうお考えでおやりになるのですね。     〔戸井田委員長代理退席、亀井(善)委員     長代理着席〕
  119. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 特例法の場合と比較をして御判断いただけると一番御理解いただけるのではないかと思いますが、特例法の場合には、私からいまさら申し上げるまでもなく、五十二年に長期契約三年目に入ったところでございますが、国際糖価の暴落によりまして割高な豪州糖を引き取ることができないほどに国内の精製糖メーカーが疲弊したということがありまして、豪州糖の契約に基づく砂糖の引き取りを拒否をした、日豪間の大きな政治経済的な問題になったことは御案内のとおりでございまして、それを解決するためにまさに臨時かつ特例の措置としてああいったかなり強い需給調整措置を講じたわけであります。砂糖に関する国際的な取り決めの円滑な履行に資するためというように特例法の目的に書いてあるのはそういった意味でございます。現在、日豪砂糖協定は昨年六月に消えておりますし、そういった意味で現時点においてあれと同じような意味の需給調整措置を講ずることはなかなかむずかしいということは御理解いただけると思うわけであります。  別途、現在お願いしております市価参酌用調整金ということにつきましての措置は、先ほど来申し上げておりますように、最近におきます砂糖をめぐります情勢の変化に対応いたしまして、事業団の円滑な運営あるいは国内産糖の保護に欠けるところがないようにするために、市価参酌用の調整金を確保する必要があるという認識でお願いをしておるわけであります。その場合、市価参酌用調整金をもし仮にどんな輸入糖からも徴収するということになりますと、それは即砂糖価格の引き上げにもつながるということでとるべき措置ではない、やはり一定数量以上供給が行われた場合に価格が下がり市価参酌の必要性が生ずるという現象面に着目いたしまして、各社ごとに決められました数字を上回る操業をなさる方から、若干ではありますが必要な額をちょうだいいたすという仕組みにしたわけであります。したがいまして、需給調整そのものを目標としたわけではございませんが、先生御指摘のようにその効果といいますか、運用の結果といたしましてそういった効果が起こるということはある程度考えられるわけでありますが、需給調整措置そのものを目標としたものではないという点は御理解を賜りたいと思うわけであります。  さらに運用に当たりましても、趣旨はそうかもしれないけれども、やはりそういった全体の需給がうまくバランスがとれるようなことを念頭に置いて運用した方が、あるいは運用すべきではないかという御指摘につきましては、私もその点は十分理解できるところであります。
  120. 島田琢郎

    島田委員 ところで、先ほど参考人の御意見を拝聴いたしました。特に、異性化糖業界を代表して坂部参考人は、業界が必ずしも全部一本にまとまっているわけではない、組織的に言えば日本糖化工業会全日本糖化工業会、またそのどちらにも所属していない企業もある、また、内容的に言えば専業のところもあり一貫メーカーもありますし、あるいは先発、後発といったようなメーカーに分類もされている、お聞きをいたしますとなかなか複雑であります。やはり生き残っていくための企業間競争もかなり激しい、こういう体質を持っているわけであります。何といっても、今度の総合対策の中で望まれるのは、こうした単一業界における協調的な体制が確立されないことにはどうしようもありません。その場合にやはり適切な行政指導が必要だと考えるのですが、それはいかがなさるおつもりですか。
  121. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 異性化糖メーカーの現在の姿は、御案内のように輸入トウモロコシからパイプでつなげて最終製品までできるという意味での一貫メーカーと、従来、水あめ、ブドウ糖、でん粉を購入して糖化製品をつくっていたという意味での、私ども専業メーカーと言っておりますが、そういうグループとに大別されるわけであります。それぞれ利害が微妙に相反している面がございまして、なかなか業界が一本にまとまっていないというのが現実であります。  しかし、業界全体として、もちろん一部に異論を唱える方もおられるわけでありますし、別なお考えをお持ちの方もおられるわけでありますが、私の感じといたしましては、業界の大部分の方は、現在われわれ異性化糖メーカーも装置産業であり、各社別の商品特性がないあるいは季節別に需要が非常に偏在するというようなことからいきまして、このままでいきますと、過当競争体質のままでいきますと過剰設備になり、数年後には業界全体として大変な苦境に陥ることも十分予想されるので、この際、糖価安定制度の中に取り込んでいただき、入った上でわれわれとしてはその運用の面において役所の行政指導を受けながら業界全体としての秩序ある発展を図っていきたいという希望を申し出る方も現に大ぜいおられるわけでありまして、私どももそういったことを背景といたしまして業界指導には努めてまいりたいと思っているわけでございます。  一つの例として申し上げますと、現在砂糖につきましては糖価安定法運用の過程で形成糖価という数字が出てまいるわけでありますが、そういったものにつきましてユーザーあるいは消費者一般にも御理解をいただくという努力を、役所としてもその一翼を担っているつもりでありますが、異性化糖につきましてもことしの十月以降糖安法の対象となった以降は、そういうことを通じましても業界の全体としての発展にお手伝いを申し上げたいと考えておるわけでございます。
  122. 島田琢郎

    島田委員 特に業界からは、かなり強力な行政指導が欲しいということもきょうは訴えておるわけであります。期待する、そうあってほしいというだけで、あなたがお考えになっているような目的が達成されるかどうか、私は大変疑念のあるところであります。具体的に十分御検討願いたい。  同時に、この法律によりますれば、異性化糖の実際の事業団買い入れが始まるのは十月一日、この秋の五十七砂糖年度からということになります。そういたしますと、その間に、素人的考えかもしれませんが、駆け込み輸入、あるいはそれらの生産の拡大等によりまして、企業間に有利、不利というそういう損得が生じてくるという心配も私は持っています。その対策には万遺漏なきを期している、こういうことでございますか。
  123. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 これはある時期を限りまして、その時期以降はある種の規制と申しますか、従来なかった姿になるということになりますと、その時期が来るまでの間に多少の混乱が生ずるというのはある意味ではやむを得ないところであります。私の経験によりましても、特例法をつくりまして、それを施行いたしましたのが五十三年の二月でございましたが、施行されるまでの間にいわゆる駆け込み輸入というものが相当ございまして、せっかくできました特例法が実質的な効果を発揮するまでに、その間また何カ月かを消費したという、見方によりましては大変むだな現象があったことは事実でございます。今回も御指摘のようなことは十分心配されるわけでありますし、心ある異性化糖メーカーさんは、そういうことがあってはならない、われわれが自主的に業界内部でその点は十分注意したいというふうにおっしゃっておられる方ももちろん大ぜいおられますが、反面、それほど多くはないかもしれませんが、やはりそういった駆け込み的な混乱のもとをつくるような方も絶無であるということはなかなか期待しにくいのではないかというふうに思っておるわけであります。もちろん、御指摘のように役所としましてはできるだけそういったことのないように、業界全体が秩序ある行動をとるように、法律が施行されました以降機会あるごとに業界指導には全力を挙げていきたいというふうに考えております。
  124. 島田琢郎

    島田委員 現行のトウモロコシの関税割り当て制度、これは国産でん粉との抱き合わせによる無税のトウモロコシになっているわけでありますが、このトウモロコシからつくるコーンスターチと比較いたしますと、単純にコーンスターチをつくっていく場合にも一万五千円という関税が、片や無税関税に対して、無税コンスに対してつくられているわけであります。  しかし、現実問題としてもう一つ心配されますのは、この関税の差というのは、無税との差は現実に余りないのですね。私の計算によりますと、実際には一万三千円に対して一万四千円程度になる。そうすると、こんなわずかな差しかないということになりますと、関税という問題も考え直していかないとこれは整合性がなく、あるいは先ほど指摘をいたしましたように、企業間における有利、不利あるいは損得などというような問題に結果的にはなっていくという心配があるのであります。  特にきょうの参考人の御意見の中では、大変中小が多いために脆弱な企業が大宗をなしている、そのことによって消費者やユーザーに対する迷惑がかからないように配慮するというのがわれわれ業界における最も大事な点なんであります、ですから、法の運用の中で、あるいはこの実際の施行に当たるまでの半年間というのは大変大事な点だ、これが正確に消費者やユーザーの期待にこたえ得ないような、つまり平たく言えば間に合わないような事態があっては困るということを言っておられました。私はなるほどその点は大変心配になる点だな、こう思って聞いたのであります。  いま私が言いましたような点から考えますと、もう一つそういう心配がございます。そのためにどうしてもやはり駆け込み輸入といったような問題については、異性化糖業界の節度という面から言いますれば、かなり注意を払っておかなければならない点ではないか。どうもいまのままですと、関税を払って輸入して生産したコーンスターチが、駆け込みによって既得権となっていくというようなことになりますれば、これは業界の期待しないところになるのではないか、きょうの御意見を聞いていまして、こう思うのです。  つまり本当に長い歴史をかけ、技術革新を行い、今日の異性化糖というすさまじいまでの装置産業、私も現地を見てまいりました。これは単純企業ではありませんね。大変な、装置産業といったって本当にこれはもう群を抜いている装置産業だ。それにはもう人間の知恵を、ありとあらゆるものを突っ込むという、そういう技術革新の中から今日の異性化糖というものが生まれている。こうなりますと、やはり感情的にも、こうやって一生懸命やってきて、われわれは開発して今日こういう状態をつくり上げてきた。悪く言えば新参者が乗り込んできて、茶の間だけではなくて奥の院まで土足で入り込まれて業界を乱されてはかなわぬという気持ちが言外にあったのではないか、私はこういうふうに先ほどの参考人意見を聞きました。  ですから、との辺のいわゆる経過期間中におきます措置というのが、大変重要なポイントではないでしょうか。特例法をつくったのはほかならぬ渡邉局長であります。そのあなたが苦い経験を持っていますと述懐されておりますような事態が再び起きないようにするというのも、やはりこの法律の持っておりますもう一つの大事な点ではないかと私は思うのですが、どうもいまお話を聞いておりまして、それで大丈夫なのかなという点に、いまひとつ納得がいかぬのであります。
  125. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 御指摘の点は私よくわかります。ぜひともそういうことがないように努力をするのが私の役目だというふうに強く受けとめてはおるわけであります。  異性化糖の場合に予想される姿というのは、砂糖特例法の場合とは少し違いまして、特例法の場合にはまさに駆け込み輸入であったわけでありますが、自由なうちに通関をしてしまおうという姿であったわけでありますが、今回はむしろそうではなくて、工場から移出する場合に製品が事業団の売買の対象になるということでございますから、トウモロコシの駆け込み輸入というよりも、むしろすでに輸入されたトウモロコシを使っての製品をたくさんつくってストックするかあるいは売るということではないか、そういう形での対応が一部行われるのではないかというふうに思うわけであります。  私もいまいろいろ心を痛めておりまして勉強しておるわけでありますが、製品になりましてからのストックの能力あるいは貯蔵の間における品質の変化等もあるようでございますので、特例法のときのような、何といいますか、あれほどの姿にはあるいはならないかとは思いますが、それにいたしましてもメーカーが特例法の場合におきます精製糖メーカーのように一様ではございませんでして、一貫加工メーカーあるいは糖化専業メーカーというように差がございますし、メーカーの中には砂糖と違いまして単品生産ではなくて、製粉、製油あるいはえさ、あるいはメーカーによりましては合成樹脂までやっておるような方が一つの部門として異性化糖をつくっておられるというメーカーもたくさんあるわけでありますので、そういった違いが砂糖の場合とどういうように違った形で出てくるかということをまだ十分見通せませんが、先生ただいま御指摘の点は十分念頭に置きまして、できるだけの努力はしてみたいというふうに考えております。
  126. 島田琢郎

    島田委員 重ねて私は、悪貨が良貨を駆逐するなどというようなことにならないように、業界もそれを強く望んでいるということを頭に置きながら運用に当たってほしい、こう思いますが、いまの段階ではまだ施行にかかわります具体的な点が明らかになっていない。この点は私は現段階ではこの法律に限り一定の理解を示しておきたいと思うのです。本来はそうであってはいけないのです。法律が出てきたときには、政省令、施行令、施行規則なるものがきちっと整備されて、かくかくしかじかでやりますよ、こういうことにならなければいけないものであります。ところが、今回の場合は若干異質な感じでありまして、われわれも実は、今後一体どう動いていくのかということに関心はありながらも、本当のところは、それじゃおまえどんな知恵があるかと言われれば、これはなかなか出しにくいところがある。だから、その点は百歩譲って、あなた方の悩みもそこにあるんだろうという理解をきょうは示すにとどめておきたいと思うのですが、本当はそうあってはいけないわけなんですね。  特に、この点は事実関係としてお尋ねをしておきますが、異性化糖生産施設の関係は、新増設は現在時点で一体どんなふうになっていますか。
  127. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 現在、異性化糖メーカーは、会社としましては十六社ございます。そのほかに二社、近いうちに操業を行いたいということで私どもの方に連絡がございます。それから、昨年は二、三の会社がかなり設備を増強したという報告を受けております。  逆に申しますと、昨年の夏が非常に順調であったために、清涼飲料の生産あるいは需要に対しまして異性化糖メーカーの供給がなかなか追いつかなかったというようなことがございまして、そういったことを背景に、いま申しましたような現象が起きているのではないかというふうに考えております。
  128. 島田琢郎

    島田委員 異性化糖に対して調整金を課するというのが法案一つの柱でもありますが、本来、調整金を取らないで済むのであれば取らない方がいい、むしろ今日の国内の甘味作物甘味品の生産振興あるいは糖業の育成等に当たっては、これは政府が全面責任を負うものだ、私はそういう主張を崩しておりません。  ただ、まことに頭のいい人がつくった糖価安定メカニズムという制度のもとで、これは当たらないかもしれぬが、裏返すと、副次的に調整金というものが出てきた、そういうことも言える。だからそれは、国庫に召し上げられるのはばからしい話だから生産振興に使おう、こういう発想もなかったとは言えない。ところが、悪くしますと、人のふところから取る方にだんだんウエートがかかって、国の方は、財政再建だなんだとかということで、こんな厳しい情勢のもとだからなどというようなこともこれあり、次第に政府の責任を後退させていくというようなことになりかねない。つまり、交付金を削っていくなんということになってはいけないと私は思うのです。一定程度調整金に依存せざるを得ないという現況は私は理解するものの、それは主ではない、あくまでも国が責任を持ってやるべき分野であるという、このいわゆる不文律はいささかも変わるものでないという点については、大臣、大丈夫ですね。
  129. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 いま局長から御説明申し上げたように、これまでの糖価甘味全体のメカニズムというのは非常に複雑な状況にございますので、果たして糖価の安定を図るためにこのメカニズムをどういうふうに運用していくかというのは大変むずかしい問題なんですね。その中に調整金があり交付金があるわけでございますから、その中で私たちは、政府が常に行政指導のできる体制をあくまでも維持していかなければならない、今回の異性化糖を中心にした改正ではございますけれども、そういう点は十分配慮していかなければいかぬ、今後もそういう点に十分行政指導ができるような体制を整えていかなければいかぬ、かように考えております。
  130. 島田琢郎

    島田委員 次に、農林水産大臣が定めます価格の指標についてなんでありますが、農水省が決めた五十六砂糖年度の精製糖業の加工販売経費というのは、業界紙の指摘によりますと、「これは実態にそぐわない、かなり低い水準に算定することによって、一向に進まない構造改善について合法的に圧力をかけた」云々という記事が載っておりました。  これは、それを裏づけるような意見があちこちからあるのでありますが、新法によって、従来からのこうした諸価格指標の算定に加えて、異性化糖調整金輸入糖異性化糖に対する市価参酌調整金を新たに大臣が定めることになるわけでありますが、これは言いかえますと、砂糖異性化糖業界、さらにはそれら企業の生殺与奪の権を握っていると言っても過言ではない、こういう見方も一方ではできるわけであります。そのことによって、業界は人員整理を含む合理化が強要される。これはいままでにもたくさんの事例があるわけであります。  少なくとも、それが引き金になって業界全体に大混乱が起こる、過当競争よりもっと深刻な事態が起こるというようなことになってはいかぬと思うのであります。妥当な諸価格指標というものを決めていくべきだと私は思っているのですが、政府はどういうお考えを持っておられるか、この際お聞きをしておきます。
  131. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいま一つの例示としまして、精製糖企業の加工販売経費に言及されたわけでございますが、これも一つの例としてお聞きいただきたいと思います。  糖安法運用の過程で、各種のそういったものが積算の基礎に使われることは御承知のとおりでございます。ただいま御指摘の精製糖の加工販売経費につきましても、昨年の十月に改定をいたした際に、その前の年に比べまして約八円アップしまして六十四円というふうにいたしたわけでございますが、これにつきましては、ユーザーの側と、直接関係しておられます精製糖メーカーと両方からかなり手厳しい御批判をいただいた経験がございます。  ユーザーの方は、たとえば菓子メーカーの場合でありますと、その人たちの言い分としましては、私どもは血のにじむような合理化努力をして加工経費の切り詰めに日夜努力をしている、ところが精製糖メーカーは、役所の庇護のもとに、五十六円のものが六十四円というように八円も、十数%も引き上げてもらえる、これは精製糖メーカーに対して甘過ぎるのではないかというかなり強いクレームを数度にわたって私はちょうだいをいたしております。  反面、精製糖メーカーからは、現在、異性化糖メーカーの異性化糖生産が非常にふえたために砂糖生産が減って、われわれの操業度は五割近くにまでも落ちてきているではないか、これはとりもなおさず製品当たりの固定費負担が非常に高くなることを意味しているわけであって、とても六十四円というようなものではないのであるという強い御不満が述べられたわけであります。  いずれにしましても、そういった幾つかの指標となるべき数字がそれぞれの業界にとりまして大変大きな意味を持っているものであるということは私は十分承知をしているわけでありまして、今後の法律運用に当たりましても、そういった異性化糖調整金も含めまして、数字の決定に当たりましては、慎重の上にも慎重を期し、できるだけ客観的なデータに基づきまして適正に決定していく努力をより一層続けたいというふうに考えております。
  132. 島田琢郎

    島田委員 業界体質改善という問題とリンクする話でありますが、私は、少なくともこういう事態にあります現況を正確に把握し、そのために必要な行政指導が的確に行われることがまず大事でありましょうし、同時にまた業界内においても十分労使間の話し合いを持っていく、こういうことが大事だと思うのです。確かに企業の中では、同じように火の粉をかぶってくれば、それは真剣な話し合いが行われるのは当然であります。しかし、業界全体という問題になってまいりますから、そうなりますれば、やはりそこで働く労働者の皆さん方のところに相当しわ寄せがされるという懸念だって十分あるわけでありますから、そういう点では、そういう労使間の話し合いというものも含めて、行政は十分な指導を必要とするのではないかと考えますので、ぜひこの点も、業界レベルにおける労使間の話し合いを積極的に指導していくという点もいまのお考えに含めておいてほしい、これは希望として申し上げておきます。  時間がだんだんなくなってまいりましたが、この際、砂糖消費税の問題についても触れておきたいと思います。  この砂糖消費税というのは、言ってみれば砂糖はぜいたくだと言った時代から始まっているわけでありますが、いまではもう生活になくてはならない必需品でありますから、この消費税というのはそろそろ考え直していいのではないかと私は思うのです。撤廃すべきだと私は思います。しかし直ちに撤廃といったら、この厳しい状況のもとでは大臣も汗かくでしょうから、まあ漸減もやむを得ませんが、しかし、この問題は真剣に考えてみなければならないと思います。わが党は、かつて砂糖消費税の撤廃法というのを国会に提出した経緯がございます。何といってもわれわれ自身も、砂糖はコストを下げて、国内糖で言えば合理化目標価格を何としても実現したいものだと思っても、物価や資材や人件費や、後ろからどんどん追いかけられていて、なかなかこれは思うようにいかないのであります。しかし、われわれの大事な任務は、消費者の皆さん方にできるだけ安い砂糖を供給するという、この点は忘れてならない点でございますから、大人だけしか飲まないコーヒーに砂糖を使っているのだからこれはまだぜいたく品だなんという、そんなへ理屈を言わないで、いまは子供だってばんばんコーヒーを飲んでいるのでありますから、そういうことを考えますれば、砂糖消費税はこの際考え直すべきだと私は思います。これは大臣からお聞きします。
  133. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 砂糖消費税の撤廃については、精製糖業界あるいはユーザー団体から強い要請があるのでございますので、私たちといたしましては、これは大蔵省に強くこの撤廃を要請してきておるのでございますが、最近の財政事情から、大蔵省はなかなかこれに応じる態度をとっていないというのが現状でございます。したがいまして、農林水産省としては、今後もこの消費税の撤廃について大蔵省に強く要請してまいりたい、かように考えております。
  134. 島田琢郎

    島田委員 そうした大臣のお考えを受けて、渡邉局長のところは具体的にどのようにしようとお考えになっているか、お考えがあれば聞かしていただきたい。
  135. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 消費税につきましては、ただいま大臣からもお話があったとおりでございまして、昨年の税制改正に当たりましても、大臣の御指示をいただきまして、強く財政当局と協議をいたしたわけであります。数年前から、消費税につきましては御議論のあるところでございますし、昨年の春のこの委員会におきましても同様の御指摘があったことを私も十分踏まえて、昨年の暮れも大蔵省と協議をいたしたわけでありますが、いかんせん現在の財政事情のもとにおきまして、今年度は見直しが行われなかったという結果になったわけであります。御指摘のように、私どもは、消費税自体につきましては御指摘のような問題があるということは十分承知しているつもりでございますので、今後とも、予算の時期に税制改正につきまして財政当局に要望いたすわけでありますが、事務的にもさらに事情をよく財政当局に理解をしてもらう努力一つ一つ積み重ねて、何としてでも本問題の解決を図るように努めてみたいと考えているわけであります。
  136. 島田琢郎

    島田委員 念を押しておきますが、だからといって、というのは、総合対策をやっていきますと、いろいろ不公平だなどという問題が出てまいりますと、これは困るわけですね、内輪から言えば。また、外側から言えば、大蔵省はこの際、異性化糖からも消費税を取ってやろうかなんという話になったらえらいことでありまして、それは絶対、私はそういうことを言っているのではないし、そういう方向に行ったらこれは大変であります。ですから、私はあえて大臣のお考えをお聞きしたのであります。少なくとも公平化を図っていくとするならば、むしろかけられている消費税を減らして公平化を図っていくという方向に向かってもらうということについて、腹はきちっとしていてもらえるんでしょうな。大丈夫ですね。
  137. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 精製糖メーカーが、自分たちの負っておる公の負担としての関税、消費税あるいは課徴金異性化糖メーカーにかかっていないのは不公平である、だから向こうに消費税もかけるべきであるというふうに精製糖メーカーも言ってはおりません、税金に関しましては。調整金に関しましては同様な負担を負ってもらいたいということは言っておりますが、税金に関しましては精製糖メーカーも、自分たちにかかっている税金をまけるべきであるという主張をしているわけでありまして、私どももその点は十分踏まえているつもりでございます。
  138. 島田琢郎

    島田委員 さて、私の質問の持ち時間が終わりになりましたが、冒頭で私は、この糖安法の持っている目的、趣旨、これはまさに国内における砂糖の自給度を向上させていく、そこにある。それが損なわれればこの法律としては意味をなさないのであります。しかも豪州糖等の問題があって、特例法が五年間続いてまいりました。いまそれにかわって、糖安法に一定程度のこうした機能を付与するという方向でかなり知恵をしぼったという点で、私は先ほどの答弁を了とするものであります。この目的あるいは趣旨にそぐわないような運用は厳に慎んでいただきたい。また、北海道が置かれている現状も大臣はとくときょうは御理解がいただけたと私は思います。ぜひせっかくのこの法案がこれから日本砂糖全体を整合性あるものにし、その運用の中から消費者の皆さん方が喜んで砂糖の消費にとりついていただけるようなものであってほしいということを願いながら、きょうは幾つかの問題点を指摘しつつ、お考えを聞かしてもらったのであります。どうか、重ねて大臣に、この糖安法の趣旨が損なわれることのないようにしてほしいという私の強い希望に対して御所見を伺って、私の質問を終わりたいと思うのであります。
  139. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、甘味全体のメカニズムが一つ変化したわけでございますので、しかも売戻し特例が三月三十一日で期限が切れるという現状で、新たに糖価安定のために総合対策、甘味対策のためのこの法律をお願いしているわけでございますので、これを基本にしながら、今後糖価安定のために、また国内産糖の維持のために私たちは最善を尽くしてまいりたい、かように考えます。
  140. 島田琢郎

    島田委員 終わります。
  141. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、吉浦忠治君。
  142. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長時間でございますので、ちゃちゃを入れるわけじゃございませんが、本場所開催中でもございますので、水入りということで水の問題をちょっとだけ、大事な糖価の問題の中で申しわけございませんが、緊急に質問をさせていただきたいと思うわけでございます。御了承いただきたいと思います。  いまニュース等で連日報道されておりますが、パナマ船籍の石炭運搬船アカデミースター号という船が千葉県の千倉町の千田海岸の五百メートル沖、近くは二百メートルくらいのところというふうに漁民の方も言っておりますが、そこに座礁しまして大量の重油、いわゆるC重油が流れ出しているわけであります。また、座礁したその後から亀裂を生じて新たな重油が流れ出ている。その範囲が五十キロにも及びまして、南の方は館山沖、布良沖から勝浦沖まで拡散をしておりまして、魚介類に壊滅的な被害を与えている。その被害額も算定するのは大変困難であります。  この質問を私いま申し上げておりますのは、来週も委員会がございませんし、再来週でまた法案審議が続きますので、地元が大変困っておりますものですから、この問題を緊急にお願いしたわけでございますが、まず海上保安庁にお尋ねをしますが、今回の海難事故についてその経緯のほどを御説明をいただきたいと思います。
  143. 藤原康夫

    ○藤原説明員 アカデミースター号の海難事故についての経緯ということでございますが、昭和五十七年三月十九日アカデミースター号は石炭をほぼ満載いたしましてロサンゼルスから水島港向け航行しておりましたが、同日午前三時ごろ、千葉県の野島崎南東二百十海里付近におきまして船体に亀裂が発生し、四番船倉と五番船倉に浸水いたしまして、船体が約十五度傾斜したという要急通信を発信してまいりました。  当庁は、直ちに巡視船三隻それから航空機二機を出動させまして、同日午前十時二十七分航空機が、それから午後零時三十分には巡視船が該船と会合いたしまして、さらに特殊救難隊員を午後二時五十五分に該船に派遣いたしまして浸水状況を調査いたしましたところ、全船倉に相当の浸水があるということが判明いたしましたので、また低気圧が接近してまいっておりましたので、同日の午後十時十八分に船長及び船主側の同意を得まして、該船の乗組員全員を巡視船に揚収をいたしております。  二十日の午前十時ごろには、船主側と船体の救助について契約を結んでおりました日本サルヴェージ株式会社の第十二昭邦丸、それから同日の午後十時には同社の曳船でございます航洋丸というのが現場に到着いたしまして曳航を試みておりますが、海上はしけ模様でございまして、作業は困難だったようでございます。  二十一日の午前五時三十分ごろに至りまして、該船は船体の沈下が進み始めてまいりまして、陸岸にも接近いたしておりましたので、日本サルヴェージ株式会社の曳船に対しまして再三曳航を指導するとともに、午前七時三十分ごろ巡視船による緊急曳航を決定いたしまして、曇りで南東の風が約十二メートル吹いておりまして、視界も一マイル以下、あるいはうねりも四メートルというような非常に悪条件下でございましたが、特殊救難隊員二名を該船に派遣いたしまして、巡視船により曳航作業を試みたわけですが、圧流をされまして、同日の午前八時四十一分ごろに千葉県千倉海岸沖合いに乗り上げたものでございます。  該船は燃料油を約千三百キロリットル積載しておりましたが、乗り上げ後から流出いたしまして、先ほど先生がおっしゃいましたような海域に滞留いたしております。現在、当庁の巡視艇、地元民、それから海上災害防止センター、日本サルヴェージ株式会社などが防除作業に当たっているところでございます。
  144. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 これは未確認の情報ですけれども、このまま船体を放棄するのではないかというふうなうわさが流れております。このままで放置されたら大変なことになるわけでございますが、海上保安庁として、撤去についてどういうふうな処置をお考えなさっているのか。きょうの昼のニュースを私は聞いてまいりましたけれども、何かサルベージを使って抜き取りを始めようというようなことがニュースとしては流れておりましたけれども、この点いかが対処されようとなさっているのか、一言お伺いしたい。
  145. 藤原康夫

    ○藤原説明員 海上保安庁といたしましては、船舶所有者が船体を放棄するというような情報は現在のところ得ておりません。  それで船体の撤去についてでございますが、撤去可能な船舶を放棄するというのは、これは海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の四十三条に違反いたしますので、船舶所有者は当該船舶を撤去するものと考えております。なお、船舶所有者が所有権を放棄した場合でも船体撤去の義務は免れないというふうに考えております。  また、同法の第四十三条一項ただし書きというのがございまして、遭難した船舶などで除去することが困難な船舶を放棄するのはやむを得ぬというような——これは趣旨でございます。条文のとおりではございません。やむを得ないというような規定がございますけれども、現在の船体引き揚げに関する一般的な技術水準から見て、除去することが客観的に困難というようなものについては、これはまあやむを得ない。しかし、経済的な面から引き揚げが困難というものは含まれないというふうに考えております。したがいまして、当庁といたしましては船舶所有者に対して早急に船体を撤去するように指導するつもりであります。
  146. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 もう一点、海上保安庁にお尋ねいたします。  巡視船が二隻とサルベージ船二隻が監視していたにもかかわらず、どうして座礁という事故につながっていったのかということの不審が一つあるわけでございます。この周辺の漁場はすべて油びたしになっていて、磯漁業はもう壊滅というほど被害を受けているわけであります。この南部漁協の例をとりましても、今回の事故でヒジキとかアワビ、特にアワビ等は解禁前でありまして、四百人の海女さん等は生活の場所を失うというような結果になってしまう死活問題だと思うわけでございます。今回の海難事故は海上保安庁の判断に誤りがあったのではないか。初期浸水発生時から座礁に至るまで相当時間があったわけでありまして、この三十一名全員を退船させた後も座礁までの間に約二日間あるわけですから、早目に対応すれば事故は起きなかったのじゃないかというふうに思いますけれども、この点どういうふうにとらえていらっしゃるのですか。
  147. 藤原康夫

    ○藤原説明員 先ほどもちょっと触れましたけれども、三月十九日の午後十時十八分ごろ乗組員を全員救助いたしました後、二十日の午前十時ごろに日本サルヴェージの曳船第十二昭邦丸が現場に着いております。それから同じ二十日の午後十時ごろには曳船の航洋丸これは二千百トンあるわけですが、これが現場に着いております。それで船体の救助につきましては、船主側とこの船の所有者でございます日本サルヴェージ株式会社との間で船体救助の契約が成立いたしておりまして、巡視船の方は警戒監視に当たっておったというようなことでございます。  それで、二十一日の午前五時三十分ごろになりまして船体が沈み始めた、それから陸岸にも非常に接近いたしておりましたので、海上保安庁といたしましても再三このサルベージの曳船に対しまして曳航を指導しておったわけですが、悪天候のためにどうも作業は進まないというので、午前七時三十分に至りまして巡視船が緊急曳航すべきだと決定いたしまして作業を始めたわけですが、視界も不良でございまして、ついに八時四十一分に乗り上げたということでございます。
  148. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 水産庁にお尋ねいたしますけれども、今回のこのパナマ船の重油流出事故において、先ほど申し上げましたように、アワビとかサザエとかヒジキ、イセエビ等に被害が出ておるわけでございます。当初五億円という報道もされておりますし、それぞれ報道が的確な掌握がまだできてなくて、いま対策本部が現地にできてその場所で種々検討されておるようです。その報道がいろいろありますけれども、拡散するにつきその被害がまた相当急激にふえやしないかという心配をいたしておるわけです。この点についてどのように把握なされておられますか、お伺いいたしておきたい。
  149. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 水産庁といたしましては、今回の事故に当たりまして現地にすでに係官を派遣しております。そこで防除の指導あるいは漁業被害の把握等に当たらせておるところでございますが、その派遣いたしました係官からの報告によりますと、現在、アカデミースター号が座礁しております千倉町及び白浜町を中心にいたしまして、同船から流出いたしました重油が南は布良から北は御宿まで、先生さっきおっしゃいましたように五十キロにわたりまして漂着しつつあり、かなりの部分についてはすでに漂着していると聞いております。  この沿岸一体は、アワビ、サザエ、イセエビ、ヒジキ、テングサ等のいわゆる磯根の資源が非常に豊富なところでございまして、大体この五十キロの範囲内全部で約六千トンぐらいの磯根の水揚げがございます。特に、今回の油の漂着のひどい千倉南部から白浜にかけましては、昭和五十五年の統計によりますと千二百トンから三百トン程度の水揚げがありまして、その金額が大体十一億程度に上っていると聞いておる次第でございます。  以上が水揚げでございますが、何分にも被害を食いとめることが先決でございますので、現在の段階では、同船から流出いたしました重油の拡散防止と回収除去に努めているところでございまして、海上保安庁巡視船あるいは漁船が海上で防除作業を行っているほか、漁民も出まして、沿岸に漂着しました油の除去を行っているところでございまして、水産庁の係官も保安庁等と協力いたしまして防除の指導に当たっている段階でございます。  ちょっと手前みそになりますが、水産庁で補助いたしまして千葉県に購入させましたオイルマットがございますが、これが回収に当たりまして効果が出ているということでございます。  ただ、このような防除作業を懸命にやっておりますけれども、なお漂着しました重油等によりまして磯根資源に被害が出ていることは事実でございます。まだ油が流出しておりますので、現在のところ、係官も漁民もまず防除に当たっているという状況でございまして、まだ被害の細かな資料を集めるという段階まで至っていないというのが現状でございます。  何分にも防除効果がどれだけ出るかということも一つございますし、それから海中の水産資源につきましては、特に、与えた影響の把握にはある程度の時間がかかりますので、現在、被害数量あるいは金額につきましてはまだ把握をしておりません。逐次、係官自身あるいは県庁とも連絡はとっておりますが、まだわかっておりませんので、今後できるだけ早く被害状況の把握をいたしまして、早期にその被害をつかみたいと考えている次第でございます。
  150. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に長官に、この被害の状況は的確に早くつかんでいただきたいわけでございますが、私もなるべく早く現地に行ってその実情を見たいと考えておりますけれども、どちらにしても、こういう問題が起こりますと、あと補償の問題になろうと思うわけでございます。因果関係がはっきりしているわけでございますから、こういう点の過去の例等もお考えになって、この補償対策にどのように取り組まれるおつもりなのか、その点をひとつお尋ねをいたしたい。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕
  151. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 原因者が不明の場合の油濁の被害につきましては、漁場油濁被害救済基金によりまして救済措置をとるということにいたしておりますけれども、ただいま先生おっしゃいましたように、今回の事故はきわめて明白に原因がわかっておるわけで、しかも原因者も特定できるわけでございます。このような場合には、当然関係当事者間の話し合いによりまして、損害賠償によりましてこれは解決すべき問題であると考えております。もしも、これが折り合いがつかない場合には、当然裁判によっての決着をつけるという問題であろうと思います。  なお、係官からの報告によりますと、千葉県の漁連がすでに弁護士を指定いたしまして現地に派遣しておるようでございますし、また船の方の、加害船の方でございますが、代理人等も現地で所要の調査を始めているようでございます。  そこで、私ども調べたところによりますと、このアカデミースター号はノルウェーのPI保険、船主責任保険に入っているそうでございます。この保険にすでに入っているということもわかっておりますし、また、事故に伴う被害のうちで、もちろん油による魚介類の斃死あるいは着臭等による商品価値の低下等に対します直接的漁業被害、あるいは油の防除、清掃に要した費用あるいは油濁期間中の休漁による逸失利益といったようなものが当然損害賠償の中に入ってまいりますので、これをできるだけ早く決着をつけるということが第一だと思います。  私どもとしましては、このような両者の話し合いが民事のベースでできるだけスムーズにいくということが期待されるわけでございまして、この話し合いの推移を見ながら、必要とあれば交渉が円滑にいきますように、千葉県庁を通じまして指導したいと考えております。
  152. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 水産庁、海上保安庁、どうもありがとうございました。貴重な時間、本当に申しわけございません。ありがとうございました。  砂糖価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。  改正案提案の背景ともなっておるわけでございますが、砂糖をめぐる諸情勢についてどのような認識を持っておられますか。この点から先にお尋ねをいたしたいと思います。
  153. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 最近の砂糖をめぐります情勢でございますが、先ほど来御議論がございますが、一つは、一番大きな現象面としてございますのは、異性化糖の急激な増加というものがございます。  これは、やや具体的に申し上げますと、数年前からブドウ糖にイソメラーゼという酵素をかけることによりましてその一部を果糖に変え、その結果、甘さが非常にふえまして砂糖と同じような甘さになるということで、数年前からそういう商品が出回っておるわけであります。特に、五十五年の春からその果糖分の構成比率の高い高果糖異性化糖生産が本格化したこともございまして、清涼飲料業界の相当部分が、従来の砂糖の需要から異性化糖に変わったということが一番大きな問題としてあるわけでございます。  それから、国産糖増産が進むあるいは国民の一般的な健康志向といいますか、甘い物を余りなめなくなるということもございまして、そういった中で輸入糖が激減をするという現象が起きておるわけであります。特に、輸入糖の激減は、一昨年から昨年にかけての激減が非常に目立っておりまして、二百三十万トンくらいございましたものが百六十万トンくらいに減るということで、糖安法を含めまして大変大きな問題を生ずるに至っておるわけであります。
  154. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 異性化糖を含む甘味全体の今後の需要動向というものをどういうふうにとらえていらっしゃるのか、その見通しを示していただきたいわけです。特に、甘味離れの傾向をどういうふうに分析なさっているのか、次の三つの点をまとめてお答えをいただきたいと思います。  一つは、国民の食生活の現状から見て、砂糖はとり過ぎなのかどうかということが一つです。第二番目には、甘味離れの風潮をもたらしているものに砂糖有害論があるようでありますが、当否についてどうお考えなのか。第三点は、今回の改正糖価安定制度上必要な措置であると思いますが、これのみでは、こうした甘味退潮の中での縮小均衡的方向で終わってしまうだろう、こう思うわけでございます。今後、多くは望めないにしても、単に風潮ないしムードによる甘味離れの面について、正しい知識の普及及び努力による打開の道はないものかどうか、この三つの点をお答えいただきたいと思います。
  155. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 最近の砂糖をめぐります情勢は、ただいま御報告申し上げたところでございますが、いま申しましたような事情が今後どのように変化していくかという見通しをはっきり立てることはなかなかむずかしいわけであります。  大まかに申しますと、国民一人あたりの砂糖の消費量がふえるということはなかなか望めないのではなかろうか。人口増等もございますから、全体としてどうかということになりますといろいろあれでございますが、一人当たりの消費量は、やはり微減傾向がしばらくは続くのではなかろうかと思っております。  それから、一方、異性化糖の消費でございますが、先ほども若干触れましたように、清涼飲料向けの需要が一巡したということもございますので、昨年起きましたような異性化糖の非常に大幅な増は今後は余りない。しかし、やはり異性化糖は今後少しずつふえていくのではなかろうかと思っておるわけでありまして、人口増加等の要因も含めて考えますと、甘味資源全体としての消費はほぼ現状程度ではないかというふうに私ども見ておるわけであります。  それから、三点につきまして御指摘があったわけでありまして、砂糖はとり過ぎではないかという御指摘でございますが、日本人の食生活の現状を見ますと、食事の中身は、先生御案内のように、炭水化物の摂取バランスあるいは摂取量、たん白質、脂質の摂取量等、いわゆるPFCバランスと私ども言っておりますが、そのバランスがとれた世界じゅうで一番望ましい姿になっておるというふうに私ども認識しております。そういった望ましい食生活の姿の中で、一昨年でございますと、日本人一人当たりの砂糖の消費量は年間二十五キログラムというようになっております。この二十五キログラムという数字は、欧米の一人当たりの消費量が大体四十ないし四十数キログラムでございますので、それに比較いたしますと六〇ないし六四、五%、欧米の砂糖の摂取量に比べますとはるかに低い水準であるわけでありまして、別途、よく言われます心臓病とか糖尿病というようないわゆる成人病の死亡率も、欧米等と比較しますと日本の場合非常に下回っているという事実がございます。そういった事実から判断いたしますと、わが国の砂糖の摂取量は妥当ではないか、そういう病気の発生状況から判断しましても、わが国の砂糖の摂取量の妥当性というものは、一応いまの姿というものは決しておかしくない、いい姿ではないかということを判断する一つの材料ではないかというふうに私、考えておるわけであります。  それから、二番目に御指摘ありました、砂糖が有害ではないかということを言う人がおることについておまえどう思うかということについてでございますが、確かに、最近の食生活全体あるいはその中身に入りましての国民の関心の高まりを拝見いたしまして、各方面から、砂糖を含みます甘味料につきまして、医学面あるいは栄養面からいろいろ意見が出されておることは私ども十分承知をしております。確かに、栄養面のバランスが崩れるような砂糖のとり方は、私、問題があると思います。また、個別に医者から注意されているような場合は別ではございますが、平均的に言いまして、先ほど申しましたようなことも含めて判断いたしますと、現状程度の摂取量で特に問題があるというふうに私思っておりません。むしろ砂糖というものは食生活を豊かにするといいますか、ゆとりあるものにする、あるいは子供のときの成長の面にも大きな役割りを果たしておるということからいたしますと、そういうことも考え合わせまして、いま程度砂糖の摂取量というのは適正な水準ではなかろうかというふうに私は考えておるわけであります。  それから三番目に、甘味離れの傾向があるけれども、それは少し行き過ぎではないか、むしろ正しい知識を普及して、そういった物の考え方を改める努力をすべきではないかという御指摘でございますが、私も同じように考えておりまして、昨今におきます砂糖消費の急激な減少に対しまして、砂糖についての正しい知識を普及するとか、あるいはバランスのとれた食生活の中で砂糖消費の増進を図る必要があるというようなことを役所から直接やるということはいろいろ問題もございますが、精製糖企業の団体でございます精糖工業会を中心といたしまして、わかりやすいパンフレット等をいろいろつくって関係者に配布をしておりますが、私どもも、そういった砂糖消費の動向も横でにらみながらそういった知識の普及につきまして、あるいは砂糖の健康的なとり方という観点につきましての協力は惜しまないつもりでおります。
  156. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今回の改正を検討するに当たって、原料生産農家とか、精製糖業界国産糖業界異性化糖業界、菓子の組合あるいは清涼飲料水等のユーザー等各関係の団体から、特例法延長の賛否、あるいは糖価安定法改正の賛否等種々の意見が寄せられたと思うわけでありますが、今回の改正案をまとめるに当たって、それにどのような配慮をなさったのか、お尋ねをいたしたい。
  157. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 今回の法改正に当たります前から、最近の砂糖をめぐります情勢の変化を背景といたしまして、各方面から大変御意見が寄せられておるわけであります。  たとえば精糖工業会。これは外国から粗糖を輸入してリファインする企業でございますが、あるいは北海道ビート生産農家、ビート糖のメーカー、あるいは沖縄、南西諸島のサトウキビの生産農家等々から、異性化糖を含めた総合的な甘味対策をぜひやってくれ。繰り返しになりますが、精製糖メーカーと国内産糖メーカーないしは関係農家からは、異性化糖をぜひ糖安法の対象にしてほしい。それから精製糖メーカーの一部は意見を異にしておりますが、別途、精製糖企業からは、異性化糖と自分たちの負担している公的な負担に著しい不公平があるのでその是正を図ってほしいという御意見もつけ加えられております。  一方、特例法の問題につきましては、精製糖業界ないし国産糖メーカー、特に、国産糖メーカーからは特例法延長、もしそれができない場合にはこれにかわるべき需給調整措置を何とか糖安法の中へつくってほしいという強い要請がなされておるわけであります。  一方、菓子産業あるいは一般の実需者団体からは、特例法延長は結論的には反対である、なぜならば、特定の企業が法の保護のもとにその経営を維持する姿というのは、現在の自由主義経済の中ではおかしいではないか、特例法というのは、日豪砂糖をめぐりますあの時点における政治的あるいは経済的な国際紛争を解決するためのものとしてわれわれも了解したけれども、その日豪砂糖協定も今日ないわけであるから、特例法延長あるいはそれにかわるべき需給調整措置糖安法の中で考えることについては了承できない、かなり強い意見を申し出ているわけであります。一方、そういったことを聞かされた異性化糖メーカー筋からは、自分たちは確かに税金等につきましては国には納めてはいないかもしれないけれども、国のでん粉行政には全面的に協力をしているし、それに応じてそれなりの経済的な負担もしている。であるから調整金をかけろということは議論としてはわからぬではないけれども、その水準については慎重の上にも慎重を期すべきではないか、一部の異性化糖メーカーはそれでも調整金をかけることには了承できないという御意見を含めましての要望が寄せられているわけであります。  そのように、昨今の砂糖をめぐります情勢の変化を踏まえました各関係業界意見というものは、むしろ正反対といいますか、まちまちでございまして、これらの要請を踏まえまして、一つ制度の姿をつくり上げるということに私大変苦慮したわけでございますが、幸い、関係方面の御理解もおおむねちょうだいをいたしまして、今回の法改正をお願いしたわけでございます。  結論的には、特例法延長というものは政府としては提案はいたさない、しかし一方、異性化糖は糖安制度の中にぜひ入っていただき、御協力をいただきたい、しかしながら、調整金の水準につきましては、異性化糖をめぐる実態というものを十分反映した適正な水準にしなければいけないということにしてあるわけでございます。  さらに、需給調整措置をやってほしいという国産糖メーカーないしは精製糖メーカーの大部分の御要望に対しましては、それはやはり現在の糖価安定のメカニズムにはなかなかなじみがたいということで取り入れなかったわけでございますが、別途、砂糖の市価が低迷している場合などにおける市価参酌に伴う調整金の財源を確保するという意味での一定数量を超える場合の売戻し価格の特例措置というものを新たに糖価安定法の中に仕組みまして、制度改正をお願いしているわけであります。
  158. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、先ほどから質問が出ておりますが、異性化糖業界現状というものはどのようになっておりますか。異性化糖の今後の需要の動向なりあるいは糖化業界現状と同業界に対する経営面の指導方針、あるいは甘味全体の需要の中で相当な地位を占めております異性化糖業界現状というものについてお答えをいただきたい。
  159. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 現在いわゆる異性化糖を製造しております企業が十六社ございます。このうち、会社の規模で申し上げますと、九社は資本金一億円以下のいわゆる中小企業の範疇に入るわけでございます。その他の七社のうち、上場企業は三社というのが会社の規模でございます。  経営の中身でございますが、異性化糖メーカーは総じて他の甘味料でございます水あめ、あるいはブドウ糖というような、私ども糖化製品と言っておりますが、そういったものを並行してつくっておりまして、十六社の平均で、これらの会社の総売上高に対します異性化糖の売上高の比率というのは約二〇%ということになっております。逆に言いますと、異性化糖単品ではございませんで、それ以外に多くの他の糖化製品、もしくは会社によりまして差がございますが、他のでん粉加工品あるいは製粉、製油、場合によりましてはプラスチックまでつくっている会社もあるわけであります。  それから異性化糖の会社のタイプでございますが、けさほどの参考人の話にもございましたように大きく分けて二つございまして、輸入されましたトウモロコシから一貫して異性化糖をつくる、工程的には、輸入されましたトウモロコシからまずでん粉をつくりまして、でん粉からブドウ糖をつくりまして、そのブドウ糖をさらに異性化して異性化糖をつくるというのを一貫してやります一貫メーカーが八社でございます。これが全体の異性化糖生産量の約八割、大部分がこの一貫メーカーの人たち生産量になるわけであります。他の八社は、ほかからコーンスターチなどのでん粉を購入しまして異性化糖を製造する、いわゆる糖化専業メーカーと私たち言っております。しかし、これは異性化糖の総出荷額の中では二割程度のシェアになっているのが現実でございます。  一方、経営状況でございますが、いま申しましたように、異性化糖メーカーといいましても一つのタイプではございませんでして、その製造形態によりまして相当経営の中身にも相違がございます。ただ、異性化糖部門だけとってみれば、一般に一昨年、昨年と大変需要が拡大してきているということを背景にいたしまして、一応良好な状態ではないかというふうに考えておりますが、ただ、収益率という面からいきますと、ユーザーの方が、たとえば清涼飲料メーカーの場合、多量に消費してくれるユーザーの中にはかなり大きなメーカーもございますので、力関係といいますか、売り手としましてなかなか希望する値が通らないというような現状もあるようでございますが、また、逆に言いますと、会社の数からいきましてもかなり激しい新規参入もございますし、激しい販売競争を背景に、収益性という面ではなかなか高いものではないのではないかというふうに認識をしております。  それから異性化糖生産量ないし今後の見通しでございます。五十二年以降生産量が目覚ましくふえてきておるわけでありますが、五十四年度の数字を申し上げますと、製品実数で五十三万一千トン、これは砂糖を除きました固形換算で十一万七千トンというようになっております。砂糖が一部含まれておりますのは、異性化糖の中で果糖の含有率の低い異性化糖につきましては砂糖を混入して出荷するという場合がございますので、いまのような数字に相なるわけであります。  それから五十五砂糖年度におきましては、五十三万一千トンから七十五万二千トンというふうに急激にふえております。固形換算で言いますと約五十万トンということで、前年度に比べまして製品実数で二十二万トン、固形換算で言いますと約十七万トン強の増加になっているわけであります。今後におきましては、先ほども若干触れましたように、大どころの清涼飲料メーカーが異性化糖の切りかえがある程度進んでおりますので、一部まだ残ってはおりますが、昨年あるいは一昨年のような大幅な増加はないだろうと思っておりますが、少しずつ異性化糖の需要が今後ともふえるということはあるのではないかと見通しております。
  160. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今回の改正案について、糖価安定制度上、国内産糖の価格支持に関して輸入糖の単位当たりの負担急増、また、市価参酌等に伴う事業団収支の政策について適切な対応が必要だというふうに説明されておるわけであります。そこで輸入糖調整金単位の推移と、もう一つは事業団の調整金収支の状況について説明していただきたいと思います。
  161. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 輸入糖負担しております調整金単価は、御指摘のようにここ近年急激にふえております。若干数字を申させていただきますと、これは単価自体は輸入糖が高騰した場合には調整金がゼロになるという場合もございますので、幅で申し上げさせていただきたいと思いますが、昨年の十月からことしの三月までをとりますと、安いときでキロ当たり二十二円三十銭ぐらいから高いときで二十八円ぐらいになっております。それから五十五砂糖年度につきましては、国際糖価が四百ポンドぐらい上がった時期が入っておりますので、その時期はゼロでございましたが、高いときには十五円、五十四年度も同様でございまして、高いときには十七円というような数字になっておりますが、三、四年前になりますと、五十一年、五十二年のころは、国際糖価の動向もございますが、おしなべて数円、高いときでも八円台ということでございます。裏返して申しますと、数年前には数円の調整金単価でありましたものが、その後は国産糖増産輸入糖の激減という逆の現象によりまして、単価としましては数倍にふえざるを得なかったということでございます。  それから、別途、もう一つお尋ねのございました事業団の調整金の収支状況でございますが、収支状況は、国際糖価が高騰した時期が、五十五年の十一月の前後に大変暴騰いたしました。そういったことを背景に、それがうまく見通せなかったということもございまして、国内の形成糖価が上がった反面、実際の市価がついていかなかったということもございまして、五十五年度末の事業団の収支状況は約百七十億円の赤字ということになっております。それから、五十五砂糖年度末でございます昨年の九月末では、それが若干ふえまして約二百億に相なっております。
  162. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 今後の国産糖生産に関連をいたしまして、砂糖の国際需給及び価格の動向について、現状と今後の見通しをどのようにとらえていらっしゃるか、これが第一点。  第二点に、今後においても砂糖の国際的な動向については不安定要素があることは否定できないわけでありますけれども、したがって国内産糖の供給確保、すなわち、自給力の向上は甘味資源作物生産振興上大変大事な点だ、こういうように思いますが、この点についてお答えをいただきたい。
  163. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 砂糖の国際需給でございますが、最近の事情を申し上げますと、五十一年から五十四年の夏ごろまでの約三年間は供給過剰傾向でございましたが、五十四年から五十五年にかけましてソ連、キューバ、タイなどの主要なサトウキビの生産国が減産した関係もございまして、その年は全体の生産量が世界の消費量を約五百万トン下回ったということがございまして、大変な引き締まり状況になり、国際糖価もある時期暴騰したわけであります。ところが、五十五年から五十六年にかけましても、若干の回復はいたしましたが、ソ連、キューバ等の生産が思わしくないというようなこともございまして、五十五年から五十六年に、逆に言いますと過去の一年間におきましてもやはり生産量が消費量を五十万トン程度下回ったということでございまして、若干タイトぎみであったわけであります。しかし、昨年からことしにかけまして、五十六、五十七年度にかけましては、ECを初めインド、タイ、豪州など、ソ連を除きます主要な生産国が大変増産されたということもございまして、世界の生産量は九千五百万トンということでございまして、消費量を逆に四百万トンも上回るという事態になったわけであります。その結果、期末在庫も、通常二五%程度であるものが三〇%の期末在庫を抱えるというようなことになったのであります。  そういった生産と消費の動向を背景に国際糖価も動いてきたわけでありますが、ごく最近の情勢を申し上げますと、いま申しました、過去一年間生産、消費の関係が非常に好転したということもございまして、ここ数カ月の動きを見ますと非常に落ちついておりますし、ごく最近では、商品市況全体もそうでございますが、若干下がりぎみになっております。  今後の動向をどう見通すかということは大変むずかしゅうございます。農産物の生産でございますのでむずかしいわけでございますが、感じといたしましては、いまのような横ばいないしやや下がりぎみの糖価水準あるいは需給というものが続くのではないかというのが私どもの見方でございます。
  164. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間がなくなってまいりましたので、この砂糖売戻し特例法の期限切れとあるいは改正案施行までの空白期間における需給関係に混乱を生ずるおそれはないのかということを心配いたしておりますが、その点はいかがでしょうか。
  165. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 これは率直に言いまして、心配がないかと言われますと、ありませんというふうに確信を持って答えるわけにはなかなかまいらない要素があります。と申しますのは、砂糖の売戻し特例法を五十二年につくりましたときも同様でございましたが、各メーカーといたしましては制度が変わって何らかの負担が予想される場合には、どうしても駆け込み的な生産あるいは輸入というものに走る現象があるわけでございます。その当時も、そういうことがないようにということで私どもできるだけの指導をいたしたつもりでございましたが、やはり一部そういった現象がございまして、せっかくの特例法がしばらく効果を発揮しなかったという苦い経験も持っております。  先生のただいまの御指摘は、特に異性化糖等も含めてのお話であろうと思いますが、適用される前に、そういったことを踏まえて業界に混乱が起きないように役所がしっかり指導するようにという御指摘であろうと思いますが、私どももその問題は十分に念頭にあるわけでございまして、できるだけ業界指導に努めまして混乱を少なくするように努力をしたいというふうに考えております。
  166. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、大臣にお尋ねをして終わりたいと思いますが、この砂糖異性化糖需給調整というものが実施されますと、いわゆる糖価の下落防止を図るということには大きく役立つわけでありますけれども異性化糖関係者とかあるいは食品加工業者、いわゆる弱い立場のお菓子屋さんであるとか飲料関係者とかあるいは商社、一部業者には反対する意見もあるわけでございます。また技術の面や何かからしますと、これは新規参入者が参加できないようなおそれもありますし、公平な市場競争の確保ということにも支障を来すような気もするわけでございます。そういう面で、大臣としてこの法案のもとに弱い立場の方々をどういうふうに守って糖価推進をなさろうとなさっているのか、決意のほどをお伺いして終わりたいと思います。
  167. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 御承知のように、甘味現状は、先ほど来局長から答弁させておりますように、いろいろな見方もございますけれども、一般的に甘味離れの傾向にある。いま一つは国内産糖の増産、それに反して輸入糖の激減という現象、加えて、異性化糖が五十二年以来急速に伸びてまいった、こういうことがやはりこれまでのメカニズムを大きく変化させたわけでございまして、この中で私たちはあくまでも糖価の安定を図らなければならない。特に、国内産糖を常に維持する、保護するという立場でこれを進めてまいらなければならないために、この法改正をお願いしているわけでございます。したがいまして、総合的な甘味資源対策のもとに、ただいま御指摘のようなことのないようにいたしたい、かように考えております。
  168. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 終わります。
  169. 羽田孜

    羽田委員長 神田厚君。
  170. 神田厚

    ○神田委員 砂糖価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御質問を申し上げます。  この法案は、新たに異性化糖調整金を課するという問題でありますが、まず最初に、異性化糖を含めました今後の甘味全体の需給動向と、これに対します対策をどのようにお考えでございましょうか。
  171. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 最近の砂糖全体あるいは甘味資源全体をめぐります需給状況を見ますと、やはり一番大きな現象としましては異性化糖の急増という問題がございます。特に、五十五年の春から本格化しました高果糖異性化糖生産、それから需要面では清涼飲料メーカーの砂糖需要がこの方面に移ったというようなことが一つ挙げられると思います。それから、ベースとしましてやはり健康志向といいますか、そういう意味での砂糖離れ、甘いもの離れというものがあろうかと思います。それから国産糖の自給率の向上ということもございまして、一番大きな現象としましては、輸入糖が激減しているということがあるわけであります。そういう意味で、輸入糖を扱っておられます精製糖メーカーにとりましても、輸入糖から調整金をいただいて不足払いの財源の一部に充てていただいている国産糖メーカーからいたしましても、事態は大変厳しくなっているというのが現状ではないかというふうに考えておるわけであります。  そういった事情からいたしまして、今後、砂糖の対策といたしましては、糖安法上生じてきております二つの問題、一つは、反射的に輸入糖調整金単価が非常に上がってくるという問題、あるいは市価参酌用の財源の円滑な調達の問題等を今回の法改正の主眼としておるわけでございまして、そういった新しい法体制のもとで今後の需給調整といいますか、円滑な甘味資源の確保等に努めていきたいというふうに考えておるわけであります。
  172. 神田厚

    ○神田委員 大臣にお伺いしますが、異性化糖メーカーは弱小中小零細企業が大変多いということでありまして、この課徴金のかけぐあいによりましては経営の悪化やあるいは経営内容が非常に悪くなるという心配がされているわけでありますが、その辺のところはどういうふうに御認識でございますか。
  173. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 異性化糖の進出は昭和五十二年から急増してまいったのでございまして、五十四年、五十五年当時輸入糖がある程度高値を示した関係からして、国内糖価全体が高水準になった。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕 そこで、清涼飲料メーカーが異性化糖を使用するようになったわけでございまして、今回、この異性化糖を含めての総合対策を考える意味での法改正なんでございますが、私たちとしては異性化糖への調整金については極力全体を見て、これまでの異性化糖の役割りも非常に大きいのでございますから、そういう点は十分全体を配慮しながら進めてまいりたい、かように考えております。
  174. 神田厚

    ○神田委員 いま大臣の答弁でもちょっと触れられましたが、異性化糖調整金の水準、これを少し具体的にどういうふうな方向でお考えになっているのかお聞かせをいただきたいのでありますが、その前に、この異性化糖のメーカー等に調整金の問題等についてはどの程度かの話し合いなり、相手が大筋で納得のいくような説明をしたと思うのでありますが、その辺の経緯はどういうふうになっておるのか。  私どもは、砂糖のこの現状というのは放置はできない状況でありますけれども、そうは言っても新たに調整金を課するということは大問題であります。そういう意味で、安易に調整金制度というものを設けたりすることについてはこれはきわめて問題だと思っているわけでありますが、その辺のところも含めましてひとつ御答弁をお願いいたします。
  175. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 先ほど来申し上げましたようなことを背景に、異性化糖にも御協力をいただかざるを得ないというふうに私ども判断をいたしまして、異性化糖メーカーの意見を打診をしたわけであります。もちろん、そういった話し合いの前段におきましては、自分たちは国内の高い芋でん粉を消化をしている、そういう意味では、税金という目に見えたものではないけれども公的な負担は負っているから、異性化糖業界としては調整金に協力することはなかなかむずかしいという感じが強かったわけでありますが、その後だんだん話し合いの過程で、私どもも、もし仮に調整金をお願いするといたしましても、その後の制度の運営を円滑にするためには、やはり業界理解というものがなければなかなか円滑な運営は期しがたいということがあるわけでございますので、関係業界異性化糖業界に対する物の見方、あるいは現在の糖価安定制度上持っている異性化糖との絡みでの問題等々、いろいろ話し合いをしながら今日に至ったわけであります。そのときに、では具体的に、精製糖メーカーが苦しいからそれを助けるために異性化糖メーカーとして協力するというのでは納得できないけれども糖価安定制度全体が非常に困っておる、いわばお国のためだということならわれわれも考えないではないという段階に至りましたころから、一体その水準はどれくらいになるのかというような御質問があったわけであります。これは私ども率直に申し上げまして、異性化糖をもしやるといたしましても、どうしても十月の施行に準備期間も要るわけであります。それから、やはり調整金をいただくといたしましても、砂糖の場合と同じようなメカニズムでやらざるを得ない。砂糖の場合には御案内のように、合理化目標価格と平均輸入価格との差に調整率を乗じて得た額を売買差額としてちょうだいするという仕組みになっているものでございますから、そういった意味で、合理化目標価格に見合う異性化糖のいわば合理化目標価格的なものと、平均輸入価格に見合う異性化糖のコスト価格的みたいなものの数字をまずつくりまして、その差に砂糖に使われていると同じような意味での調整率を乗ずるというのが制度の原型になるわけであります。しかし、強い御要望もございますし、そのままでいきますとほぼ砂糖と同じ調整金額になるわけでございますから、そのようなことは異性化糖経営実態からいっても、実態に合わないということは私どもも十分認識しておりますので、法案にもございますように、異性化糖砂糖価格形成に及ぼす影響の程度を示すものとして、農林大臣が定めた率をその得られた数字にさらに乗ずるという仕組みにいたしたわけでございます。そうしますとその数字は、やはり価格に及ぼす影響の度合いといいますと、どうしても数量比的なものにならざるを得ないと思いますので、そういった数字を前提にいたしますと、ある数字は出てまいるわけでありますが、問題は根っこの合理化目標価格が十月に改定されますし、それに見合う異性化糖の見合い価格も変わりますし、これから半年後のトウモロコシの価格がどうなるかということもわかりません。その価格に見合ったコスト価格異性化糖合理化目標価格的なものとの差に調整率を乗じ、さらにいま申しましたような意味での減額のための農林大臣の定める率を掛けるということでありますと、その根っこの数字が、あと半年後の数字がわかりませんと正確なことを申し上げるわけにまいらないという点はぜひ御理解を賜りたいと思うわけであります。  しかし、いずれにしましても、農林大臣が定める一定の率をさらに乗ずるという仕組みにしております関係上、精製糖メーカーの単位当たりの課徴金の額の何分の一かになることだけは間違いのないところであります。
  176. 神田厚

    ○神田委員 ただいまちょっとお話がありましたが、本年十月から異性化糖調整金ということでありますが、それまでの間に駆け込み販売など市場が混乱するのではないかという心配もされておりますが、その辺の点はいかがでありますか。本当は調整金の問題、もう少し詰めたいのでありますが、やはり根底の数字が出ないと何とも言えないということであります。しかし、大臣もおっしゃっておりますように、異性化糖メーカーが最初の試練でありますから、その立ち上がりの時期に調整金によって経営ができなくなってしまうというようなことがないように、ひとつ十分な配慮はお願いをしたいというように思っております。
  177. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 最初に、調整金の数字につきましては、根っこの数字が出ないということで具体的な数字を申し上げられない点は大変私も申しわけなく存じますが、ただいまの先生の御指摘の点を十分踏まえまして、適切な数字に決めることにいたしたいと思っております。  それから、十月から施行されるということで、それまでの間に駆け込み販売等によって市場が混乱しないかという点の御指摘につきましては、やや具体的になって恐縮でございますが、ことしの場合、春から夏にかけまして、異性化糖の需要は気温の上昇程度によりまして大きく影響を受けるというのが従来の私どもの経験でございます。裏返して言いますと、通常の夏のように気温が上がりまして、清涼飲料の需要がふえる場合には非常に順調に需要が伸びまして、生産が需要に追いつかないというようなこともあろうかと思いますし、逆の場合には逆な現象になるわけでありますが、昨年の場合には夏に、まさに製造が需要に追いつけなかったというようなことがあったわけであります。  したがいまして、異性化糖業界のいわゆる販売競争というものは、ことしの夏から秋にかけましてどの程度のものになるかということが必ずしも十分見通せないわけでありますが、いずれにいたしましても、先生御指摘のように、制度ができるまでの間に業界が無用な混乱を起こす、あるいは駆け込み等がありまして、かつて特例法時代にあったようなまずい状態が起きないようにという御注意は十分念頭に置きまして業界指導に当たってまいりたいというように考えております。
  178. 神田厚

    ○神田委員 少し内容の方に入っていきますと、まず第一に、市価参酌用調整金運用につきましては、通常年はどういうふうにこれをとっていくつもりでありますか。
  179. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 市価参酌は、市価参酌用の財源をいただくという意味で考えた仕組みであるわけであります。その場合、企業ごとに定められます一定数量を上回る輸入糖あるいは異性化糖の製造数量に対しましてお願いをするということになるわけでありますが、その一定数量は、指定糖の輸入の申告者あるいは異性化糖の製造者ごとに、通常年におきます事業団の売戻し数量として大臣が定めて通知するという法案にいたしてあるわけであります。  なお、異性化糖につきましては、まだ事業団の売買数量がございませんものですから、三年間は過去の製造数量を基礎として定めるということにいたしておるわけであります。この場合の通常年の考え方が一番問題になるわけでありますが、通常年の数量としましては、私ども砂糖年度ごとに判断をしたいと思っておりますが、過去の一定の期間のうちで、砂糖の異常な需給あるいは価格の変動があった年はその通常年の判断の要素から除くというふうに政令で定めたいと考えております。逆に言いますと、需給その他が一応正常であった年を基準にしてそれぞれのメーカーの数量を設定してみたいというように考えております。
  180. 神田厚

    ○神田委員 市価参酌用調整金につきまして、ただいま一定量を超える数量にも賦課をするというようなお話でございますが、そういうことになると、一つ心配されますのは、甘味価格全体の高騰を呼ばないかということでありますが、その点はどういうふうにお考えでありますか。
  181. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 市価参酌用の調整金をもし仮に一般の調整金に上乗せをするということになれば、御指摘のようなことに相なろうかと思うわけでありますが、私どもはそうではなくて、市価参酌に伴う調整金は、いま申しましたような意味での、一定数量を超えて輸入あるいは製造しようとされる場合に、その超える部分について課せられるものでありまして、たとえば、特例法との比較において見ていただくと一番よくわかると思いますが、特例法の場合には、一定数量を超えて輸入しても、一年間は事実上一定数量しか使えなかったわけでありますが、今後は、一定数量を超えて輸入あるいは製造してもいいということに相なるわけでありまして、それはまさに個々企業が自分の判断によってなされるということに相なるわけであります。  したがって、市価参酌に伴う調整金が課されても、当該企業によりましては、その部分だけコストアップになるという見方もありますし、その企業としましては逆に、操業度が上がることによってコストがダウンするので、市価がそのために若干下がったとしても自分はやっていけるというふうに判断されるならば、恐らくおやりになるだろうと思うわけであります。そういう意味で、個々企業の自己の判断によってなされるというふうに考えておりますので、最終製品であります砂糖あるいは異性化糖価格のアップにはつながらないというふうに考えております。
  182. 神田厚

    ○神田委員 この糖安法の制定以来、お菓子屋さんのメーカーや砂糖のユーザーから、これまたいろいろな意見が出ておりますけれども、そういうものに対する配慮といいますか対策はどのようになっておるのか、さらに、きょうの参考人の方々の意見からも、いわゆる砂糖消費税の問題について、これは先ほども質問にありましたけれども、何としてでもこの砂糖消費税の減免を要求をしたいということでありますが、それらについての農林大臣のお考え、この二点についてひとつお伺いします。
  183. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 砂糖消費税の減免については、これまでも精糖業者あるいはまたユーザー団体から非常に要求があったのでございまして、農林水産省としては常に大蔵省に強く要請をしておるのでございますが、財源その他、いわゆる財政再建等の関係から、今日、この目的が達成されないままになっているわけでございますので、今後農林水産省としては、この税の減免についてさらに努力をしてまいりたい、こういうように考えております。
  184. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 糖安法の運営、特に新法の運営に当たって、ユーザーの立場というものをどう配慮するのかという御指摘でございます。  私ども、過去二、三年来、先ほど申しましたような異性化糖の急増、輸入糖の急減、それから国産糖増産という動きの中で一番困ったことは、その結果末端の砂糖価格が上がるということであったわけであります。  それはどういうメカニズムでそうなるかと申しますと、国産糖の不足払いの一部を輸入糖調整金によって賄っておるわけでありますが、国産糖がふえる、逆に、そういう意味での調整金負担する輸入糖が減り、しかし、必要となる不足払いの総額は変わらない、ないしはふえるということになりますと、輸入糖から納めていただきます調整金の単位当たりの単価は急増するわけであります。たとえば、先ほど申しましたように、数年前は一キログラム当たり数円であった調整金単価が、現在は二十円、二十八円ぐらいにまで上がってくる。調整金単価が上がりますとそのまま形成糖価のアップにつながりまして、それが砂糖価格の引き上げにつながるというのが、大変頭の痛いことであったわけであります。  今回の改正法によりますと、必要とする調整金総額には余り変わりがないとすれば、異性化糖メーカーに御負担いただく調整金分だけ輸入糖メーカーの調整金負担は減る仕組みにしてございますので、その分だけ砂糖の値段は下がるわけでありまのす。それから、異性化糖の値段は若干コストアップになるわけでありますが、いずれにしましても、もし異性化糖だけを使っているユーザーがいるとすれば若干御負担をいただくことになりますが、砂糖あるいは異性化糖、あるいは砂糖だけを使っているユーザーにしてみれば、従来よりも砂糖の値段が下がるという意味でのメリットはあろうかと思います。いずれにしましても、ユーザーあっての生産であるということを私ども十分踏まえておりますので、新法の運用に当たりましても御指摘の点は十分念頭に置いて努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  185. 神田厚

    ○神田委員 大臣の御答弁にありましたように、消費税の問題につきましても大体砂糖価格の四〇%が消費税だ。アメリカやヨーロッパでは五%から一五%、これは諸外国に比べましても非常に多いわけであります。したがいまして、財政再建の厳しい状況でありますが、砂糖にかけられております消費税につきましてはこれまでもいろいろな問題が指摘をされているわけでありますから、どうぞひとつ減免の方向で強力に運動していただきたい、こういうふうにお願いをしておきます。  続きまして、輸入糖の問題でありますが、輸入糖が大変減ってきているということであります。この輸入糖負担をどうするかという問題で糖安法はあったわけでありますが、この負担を軽減するために砂糖の上下限の安定価格帯の見直しをすべきではないか、つまり、これを圧縮したらどうかという意見が一部ございますが、この辺についてはどういうふうにお考えでありますか。
  186. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 現在の糖価安定法は、御承知のように、変動する国際糖価から遮断をして国内糖価糖価水準を安定させるということが一つのねらいになっておるわけでありますが、そのために上下限の価格の中に国内糖価を安定させるという仕組みをとっているわけであります。その場合の上下限の価格の決め方は、やはり国際糖価の通常の変動の幅といいますか、過去における経験的な変動の幅というものを念頭に置いて決めざるを得ないということでありまして、運用といたしましては過去の一定期間におきます国際糖価の平均的な数字、それからそれの変動の幅というものを組み合わせまして、その平均的な数字を上下に開くという形で運用してきておるわけであります。したがいまして、国際糖価が非常に安定した期間が長期にわたって続く場合には上下限の幅というのは非常に狭くなるわけでございますが、オイルショックの前後あるいは一昨年の三年続きの国際的な生産減によります国際糖価の暴騰というような最近におきます要素を加えて計算いたしますと、どうしてもその幅はそれを反映させる関係上ある程度の幅にならざるを得ないわけであります。いずれにしましても、九月中旬までに輸入に係る砂糖価格を適正に安定させるためのいわゆる上下限価格というものを決めるわけでございます。本年もまた同じような作業を秋にいたすわけでございますが、できるだけ客観的なデータを正確に反映させるように努力をしてみたいというふうに考えております。
  187. 神田厚

    ○神田委員 続いて、てん菜の問題につきまして二、三お伺いします。  てん菜はいま北海道の基幹産業として二万五千戸もの農家がこれを行っている。しかしながら、その面積等におきましてもすでにもう六十五年見通しの上限近くまで来ているわけでありますが、このてん菜の計画生産の見通しと適正な輪作体系の観点からこれらの問題につきましてはどういうふうにお考えでありますか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  188. 小島和義

    ○小島政府委員 六十五年見通しにおきましてはてん菜の作付面積を七万七千ヘクタールというふうに見ておるわけでありますが、昨年七万四千ヘクタール程度の作付が現に行われておるわけでございます。六十五年見通しとの関係からいいますと大分天井近くまで来ておるということではございますけれども、見通しの線を踏み外しておるということでは決してないわけでございます。  内容的に眺めてみますと、北海道のてん菜の主な作付地は十勝、北見などのいわゆる普通畑作地帯が主でございまして、ここで約四十万ヘクタールばかりの畑地があるわけでございます。その中でてん菜が作付けられております面積が六万ヘクタール強ということで、残りは水田転作と牧草地の一時的な転換による作付面積でございます。四十万ヘクタールの中の六万ヘクタールということでございますから、畑作のローテーション、合理的な輪作という面から見ましても、全体としてはほぼ適正な面積になっておる、かように見ておるわけでございます。ただ、部分的には非常に偏った作付をしておるところがございまして、長期的には是正を図っていかなければならぬ面もあるわけでございます。  また、この作物は寒冷地に非常に向いた作物ということで、過去長きにわたりましての努力によって単収も向上し、また労働生産性も著しく上がっております作物で、北海道の畑作物の中に定着をしておるというふうに見ておりますが、今後の課題といたしましても、この転作体系を維持しながら、またあわせて最終的にはこれは砂糖をつくる作物でございますから、産糖歩どまりの高い作物をつくっていくということが生産面の課題であろう、かように考えております。
  189. 神田厚

    ○神田委員 時間が参りましたので最後に大臣にお伺いしますが、この精製糖企業構造改善、これは糖安法でずっとやってきたわけでありますが、今後これをどのように進めていき、どういうふうに指導していくのか。この精製糖企業構造改善につきましては、精糖工業会などは企業の合併、統合、委託加工、ブランドの統一、海外市場の開拓、というものを考えているようでありますけれども、農林省としてはどういうふうな御指導で、大臣としてはどういうふうにこれを行政指導していくお考えでありますか。
  190. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 基本的には過当競争のないような状況をつくっていきたい、かように考えているわけでございますが、具体的には局長から答弁をさせます。
  191. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 精製糖企業のいわゆる構造改善でございますが、一昨々年でございますか、精糖工業会が明らかにしました「精糖業界構造改善について」という考え方がございますが、その中におきまして、構造改善推進のための方策といたしまして、ただいま先生から御指摘がございましたように、生産の集約あるいは業務提携、雇用問題についてその考え方を明らかにしております。さらに、海外市場の開拓とか委託加工とかブランドの統一等も議論されておるわけであります。  そのうち、現在までに具体的に実施されてきているものは、生産集約につきましては二十二社中九社が五十六年中に自主的に一部の設備を削減いたしまして、削減量で合計日産千トン程度に相なっております。それから業務提携につきましては、そのうちの委託加工についてはすでに十数社間で実施されております。また、ブランドの統一につきましても、商社グループの中で実施されているという例も出てきております。それから雇用問題につきましては、設備削減に伴う雇用の不安を解消するために、相当数の企業におきまして、たとえば、他の兼営部門、不動産業とか倉庫業とかあるいは包装資材の製造業等の経営多角化を進め、その中で雇用の吸収を図っていくというような努力がなされておるわけであります。  構造改善必要性先生の御指摘どおりであるわけでありまして、時間がかかるかもしれませんし、さらに一社一工場であり、なかなか他の経営多角化といっても一朝一夕にできがたいという事情もあろうかと思いますが、ぜひとも労使双方で十分話し合いなりよき結果が得られるように、私どもとしても側面から御協力を申し上げたいというふうに考えておるわけであります。
  192. 神田厚

    ○神田委員 特に、この際要望しておきますことは、雇用問題で労使の紛争がかなりありますし、そういうところをひとつ特に、雇用確保の面も含めまして、行政の指導をお願いをいたしまして質問を終わります。
  193. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 藤田スミ君。
  194. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 提案されております法律案の中で一番大きな柱は、何といっても異性化糖調整金をかける、ここにあるかと思いますので、私は、異性化糖メーカーの問題からお尋ねをしたいと思います。  異性化糖業界というのは、砂糖業界とは違いましてずいぶん中身が複雑なようでありますし、第一中小零細メーカーが非常に多いわけでございます。一方、この異性化糖を使用するユーザーの方はコカコーラだとかキリンジュースだとか大手の清涼飲料メーカーが多い。こういう中で両者の取引形態は、農水省の方の御説明でも、それからけさほどの参考人お話でも、大手ユーザーの方が値を決める権限さえ握っていると言われるような状態であります。異性化糖業界について大臣はどのように実態を承知していらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。
  195. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 ただいま先生御指摘のように、異性化糖メーカーは一色ではないわけであります。一つには、経営の形態からしましても、輸入トウモロコシから一貫して最終製品である異性化糖までつくり出すメーカーもありますし、それから一方、ほかからでん粉を購入してきてそれから異性化糖をつくる糖化専業メーカーもございますし、それから発生史的にもでん粉糖、水あめあるいはブドウ糖からそういう形に発展してきたメーカーもございますし、反面、新規参入で、他の多くの兼業部門を持ちながら異性化糖を始めるという動きをしてきたメーカーもございます。  しかし、おしなべて言いますと、砂糖の場合と同じような幾つかの特徴的な面があるわけでありまして、一つは、いわゆる装置産業であるあるいはその製品である異性化糖自体が、いろいろ種類はございますがやはり品質的に各メーカーごとにそれほど大きな品質の差がないというようなこともあります。それから、需要が季節的に大幅に変動するというようなことがありまして、やや過当競争的な体質を根っこに持っているということは否めないだろうと思います。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕  それから一方、経営の面では、販売先が全部が全部大手メーカーであるということではありませんが、異性化糖の販売の半分以上は清涼飲料メーカーであるわけでありますが、その清涼飲料メーカーの中にはかなり名の通った大手メーカーもあるというようなことで、激しい販売競争があるということはあるだろうと思います。その中で、なかなか思ったような値が通らないという経験をするメーカーもあるだろうとは思いますが、いずれにしましても、それは自由な経済活動の中の問題であるわけであります。しかし、私どもといたしましては、異性化糖メーカーが、そのすそ野でありますブドウ糖あるいは水あめを含めまして北海道のバレイショでん粉あるいは南九州のカンショでん粉の大きな需要先でもございますので、これらの糖化メーカーが健全に発展していくということは、私どもにとりましても大変重大な関心を持っているところでございますので、これは新しい今回の法改正によりまして糖安法の対象になりましたことを契機といたしまして、業界全体がうまく成り立つような行政指導に努めてまいりたいというふうに考えているわけであります。
  196. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そのことは非常に大事なことですので、もう少し具体的にお尋ねしますが、異性化糖メーカーと大手ユーザーの関係というのは決して対等、平等ではない。先ほどもそういうふうに認識をしていらっしゃるというふうに承知しましたけれども、先ほどおっしゃったように、経営形態もずいぶん違うわけですね。そこではおのずと、一つはコストバランスが違うのじゃないか、これをどうとるのかという問題があると思うのです。今度、平均移出価格を決められるわけですが、ある企業は非常にコストが重くなっている、ある企業は比較的軽く済んでいるという、この辺のバランスをどういうふうにとっていかれようとするのか、この点が一点です。  もう一つは、異性化糖メーカーが大手の清涼飲料ユーザーとの取引価格を決める際に、現状のままでは事業団の売戻し価格を下回ってしまうような心配も業界の中にはあるわけです。こんなことになったら、まるっきり赤字販売ですからとても経営は成り立たなくなるわけですが、現状ではこういう危険性も考えられないことはないわけです。そこで、そういう問題に対してどういうふうに行政指導をされていかれるのか、この点をもう少しはっきり答えていただきたいのです。
  197. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 異性化糖メーカーの中に、現在十六社あるわけでありますが、それぞれ会社によりまして加工経費、いわゆるコストに差があるというのはおっしゃるとおりでございます。しかし、これは何も異性化糖メーカーだけではございませんでして、三十社前後ございます精製糖メーカーにおきましても、しさいに内容を見てみますとかなり大きなコストの差があるというのは現実でございまして、異性化糖メーカーが特にひどいということはないというふうに私ども考えております。  ただ、異性化糖メーカーの中に、精製糖企業と違って若干差があるとしますと、一貫メーカーの場合と他からでん粉を購入してきて異性化糖等をつくりますいわゆる専業メーカーとの場合に、乾燥とかあるいは輸送とかという加工の部門部門につきまして差が出てくるというのは現実にありますし、その差も時によって、いろいろ人によって言い方が違う面もありますが、キロにしまして十円前後の差があるのではないかという人もおるわけであります。しかし、反面、そういう場合でも一貫メーカーも専業メーカーも併存して成り立っているということは、やはり専業メーカーの場合には、先ほど参考人お話にもございましたように、原料であるでん粉の手当ての面において、一貫メーカーにはない何かメリットを持っている場合にそれが成り立っているわけであります。  逆に言いますと、コーンスターチの専業メーカーというのはまた別にございまして、コーンスターチの販売競争の過程でうまく原料手当てができれば、異性化糖の専業メーカーも異性化糖の一貫メーカーに対して決してひけをとらない操業あるいは経営が成り立つわけでございますし、また成り立っているからこそ現在併存しているというふうに私ども見ておるわけであります。  それから大手の取引との関係でございますが、もちろん自由経済のもとでございますから、自由な販売競争の過程で、力関係によりまして、時により値が通らずに経営上支障を来すような取引をせざるを得ないような場合もあるいは生ずるかもしれませんが、今回の糖安法改正によりまして、異性化糖メーカーにお願いをいたします課徴金の額というのは、先ほども申しましたように、実態を踏まえた適正なものとするつもりでございますので、そのことによって特に経営上大変な支障が生ずる、あるいは大手との取引の関係で、売り戻し価格水準すら維持できないというようなことが起こるというふうには私ども考えておりません。
  198. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 つまり、その平均移出価格を決めるので、それが不当な買いたたきの防止にも一定の役割りを果たしていくだろうという期待を持っているというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  199. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 改正されます糖安法異性化糖に関して出てきます幾つかの指標的な数字がございますが、それはただいま先生がおっしゃられましたように、事業団の売買に当たりまして、精製糖の場合には平均輸入価格と国内産糖合理化目標価格との差に一定の率、調整率と言っておりますが、これは実体的には国産糖の自給率になるわけですが、それを乗じて得たものを売買差額としてちょうだいするということになっているわけでございます。それと同じようなことを異性化糖についてもやろうとしているわけでございます。したがいまして、合理化目標価格異性化糖に換算した標準価格と、それから輸入糖の平均輸入価格に見合います異性化糖価格水準、これは当然でん粉の価格に平均的な加工経費を加えたものとしてのコスト価格としてつくろうとしているわけでありますが、その価格との差に、先ほど来申し上げておりますような減額されました調整率を乗じまして、適正な調整金単価をはじくという操作の過程で出てまいります数字でございます。したがいまして、売買のときに事業団の買う価格が即その異性化糖メーカーにとりまして販売額と結びつくということではございませんでして、私ども考えておりますのは、砂糖の場合も同様でございますが、調整金を乗せました価格がその業界の平均的なコスト価格である、砂糖の場合は形成糖価というふうに私ども言っておりますが、異性化糖につきましてもそういったものが秋以降には出てまいりますので、その数字につきましてはこれが適正な価格水準だということを役所としましても関係者によく申し上げて御理解をいただくように努力をするということでございます。
  200. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 特にこの大手ユーザーの問題については適切な行政指導というのでしょうか、その面からの指導をよろしくお願いしたいと思います。  次に、この異性化糖業者の届け出の問題なんですが、この法律は公布から一カ月以内に施行されることになっているわけなんですが、新たに異性化糖メーカーがこの間に進出してくるのではないか。駆け込み参入の心配があるわけです。これに対してどういうふうに対応していかれるのか。現在、もうすでに異性化糖業界過当競争ぎみだと言われておりますが、これを放置していくと第二の砂糖業界になるわけで、しかも今回、調整金をかけるということでこの業界とのかかわりが出てまいります。その点では私は、やはりきちんとした行政側の対応があってしかるべきだと思います。十八条の八で届け出がありますけれども、これで調整を図られようとするのか。私は、この間異性化糖メーカーの方に御意見を聞きましたし、きょうも朝、参考人の方にお伺いしたわけですが、要するに、異性化糖メーカーは調整金をかけられるといういわばデメリットというのですか、そういう条件が出てくるけれども、しかし、それは大局的に日本の経済から見てやむを得ないことだと言っていらっしゃるわけです。しかし一方では、そのことによって異性化糖業界が持っている最大の危惧過当競争、第二の砂糖業界のようになりはしないかというその危惧が、行政の指導どもあわせて一定抑えていく方向に向くのじゃなかろうか、そういう期待もあってのことだ、デメリットに対して逆の期待するメリットというのでしょうか、期待するものはそういうことじゃなかろうかという点で、私はこの届け出制の問題に対しての御見解を、特に大事な問題だと思いますので、お伺いいたします。
  201. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 端的に申し上げまして、今度の改正法律によりまして届け出制をお願いしておるわけであります。届け出制でございますから、届け出を受理しないというような形で新規参入を防止するということはできないわけであります。届け出さえあれば新規参入は制度的には十分可能なわけであります。また、そういうことで新規参入を防止するというような法改正というのは現在の経済体制の中ではなかなかできないだろうと思います。ただ反面、新規参入の場合には、過去の通常年、あるいは一定数量、あるいは実績、そういったものがないわけでございますので、恐らく操業当初から一般の課徴金以外の市価参酌用の課徴金を負った形での操業に入らざるを得ないという意味ではやや不利な状態に置かれる、そういう意味で、新規参入が抑制されるのではないかというふうに関係の業界がお考えになるということはあるいはあるかもしれませんが、制度的にそれをもって新規参入はだめだというふうには仕組んでないわけであります。  それからもう一点、それに関連をいたしまして、異性化糖メーカーがこの際、糖価安定制度全体のために協力しようというにしても、何らかのメリットを期待しているともしいたしますと、それは、やはり自分たちが同じく装置産業であり、砂糖産業のようなひどい過当競争状態にいずれなるのではないかということをみずから恐れているために、何らかの意味でこの際、需給調整的な機能を、協力する以上はそういうメリットを享受したいという御希望がある、そういうことは私もよく承知しております。しかし、たてまえといたしましては需給調整措置自体を目指すものではないわけであります。ただ、二次的な課徴金制度というものの存在が、何かの意味でそういうことに寄与するのではないかという業界の御希望は、私どももよく念頭に置いておるつもりでございます。
  202. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 業界のその希望を念頭に置いておくということで、十分念頭に置いてこれからの対応をお願いしたいと思います。  これは条文の中身ですが、十八条の六の二項の調整率、それから三十二条の異性化糖に対する市価参酌調整金額なんですが、これは異性化糖メーカーは、先ほどから何度も言いますように、非常に零細業者も含まれていることですので、そうした企業への負担になるようなことになっては困る。この辺に対してはどういうふうに考えていらっしゃるのか。  あわせて、一定数量を超える供給分に課す市価参酌金の一定数量については、今後どのようにこの数量を決めていかれてそれを運用していこうとされるのか。
  203. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 市価参酌用の調整金の算定の考え方でございますが、御指摘のように法案の三十一条の一項におきまして、「砂糖の供給数量の増加が砂糖の市価並びに国内産糖及び国内産ぶどう糖の事業団の売戻しの価格に及ぼす影響の程度を参酌して」定めるということに相なっているわけであります。具体的には、過去におきます砂糖の供給量の増加というものが砂糖の市価にどの程度影響したか、供給量が増加したために砂糖の市価がどれくらい下がったかというような過去の経験値、弾力性係数といいますか、そういったものあるいは市価参酌の割合、それともう一つ大事なことは、市価参酌の対象となります国内産糖の出回り数量の見込み額というようなものに基づきまして、そういった参酌率を算定したいと考えているわけであります。具体的な数字につきましては、現在かなり膨大な過去のデータを操作しての作業中でございますので、あとしばらくお時間をいただきたいと思うわけであります。  それから、そのベースになります一定数量判断でございますが、これも法律案に明記してございますように、過去の通常年におきます売戻し数量あるいは輸入数量というようなものをベースに考えるわけでありますが、通常年というものは、先ほども申しましたように、国際的な需給の大きな変動等によりまして価格、需給等に大幅な変動があった年を除く、逆に言いますと適正な年、そういうものを使用したいと考えているわけでございます。
  204. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 特に、異性化糖に新たに市価参酌調整金に伴う数量を決めるという点では、これは新しいわけですから、特に、業界の皆さんも実績を十分確保できるようにその点は特段の御配慮をいただきたいということでございますので、私も申し添えておきたいと思います。  次に、消費者の問題なんですが、消費者立場からしたら、砂糖というのはずいぶん高く買わされているなという実感をぬぐうことはできません。この間もNHKでずっと一時間物で砂糖の番組がありましたけれども、ここでも、原料と販売加工料がその砂糖の値段のわずか六〇%だ、残り四〇%が関税であり、調整金であり、消費税、こういうふうに言われますと、それは本当に高いものを買わされているなと思わざるを得ないわけです。加えて、今回この異性化糖調整金が課せられることで、たとえばコカコーラだとかジュースだとかああいうたぐいも、最近、何かチャンスがあったら上げてやろうかと考えているわけですが、そういうものがこういうことに便乗して消費者負担にもろにかぶってくるということはたまらないわけです。砂糖調整金が多少下がりましても、これは恐らく台所にまで響いてこないでしょう。それは全くどこかで吸収されてしまって、私たちには影響ないと思うのです。そうすると今度は、かぶる側の心配だけが出てまいります。  そこで私は、この間、雪印の方にお問い合わせをしまして、一缶のジュースで異性化糖がどれほど使われているのかということを細かく聞いてみました。そうしたら、これはえらい細かいですが、一缶について三十二・九二五グラムその異性化糖を使っていて、三円九十五銭に値するそうです。この三円九十五銭、大方三十三グラムを使っている異性化糖に、今回仮に調整金が一キログラムについて十円かけられたといたしましょう。そうしますと、私の計算では一缶当たり三十三銭くらいになるわけですね。だから、これを一円に改めてしても百一円で、自動販売機の機械を調整するだけでも邪魔くさいような話で、これはそこのところはユーザーの側がよく理解をして、だからということで異性化糖メーカーのような小さいところでこれを吸収することはできないと私は思いますけれども、ここのところはひとつ、そういうメーカーがこれを機会に便乗値上げというようなことがゆめゆめないように、関係の官庁としてもよく対応していただきたいということを特に申し上げたいわけですが、いかがでしょうか。
  205. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 現在、砂糖価格の中に占める公的な負担が四割くらいになるという意味で高いという御指摘でございますが、これは御指摘のとおり内容的にはそれくらいの公的な負担が入っておると思いますが、反面、そのために果たしております、糖価安定法、国内産糖の確保等のために果たしている機能というものも、そこの点は十分評価をしていただきたいと思うわけであります。  一方、雪印のジュースの一缶の中の異性化糖の分につきましての御指摘がございましたが、異性化糖の値段というのは、課徴金の額によって決まるというほど課徴金の額をたくさんかけるということはとてもできるものでもございませんし、やるべきでもないと私ども考えております。むしろ、異性化糖価格を左右します一番大きな原因は、原料であるでん粉の値段あるいは輸入トウモロコシの値段が異性化糖価格の決定の大きなファクターを持っておるわけであります。  たとえば、ことしから来年にかけまして、あるいは来年から再来年にかけまして、年々によってもちろん違うわけでありますが、国内産でん粉の生産状況がどうなっているのかというようなことがまた、微妙に異性化糖価格にも直に反映しておるというのが実態でございますので、この際、今回御指摘のあります調整金の単価につきましては、私ども十分慎重に考え、適正な価格に水準を決めたいと思っておりますが、そのことが製品の値上がりにつながるということは万々ないように、いまの例のような場合はよく注意をしてまいりたいと考えております。
  206. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 砂糖への消費税についてはずいぶんここでも取り上げられました。大体、明治三十四年に戦費を支弁するために設けられた、えらいむずかしい言葉を使いましたが、そう書いてあるわけです。昔、奢侈税と言ったそうです。つまり、砂糖はぜいたく品だということの扱いが、今日、ここまで文化水準が高まった世の中になっているにもかかわらずそのまま使われている。私は、だれもいまごろ砂糖はぜいたく品だなんて思っている人はないので、必需品であることは間違いないわけですね。だから、消費者の側から言えば、砂糖がさまざまな負担で不利になっているなら、政府は真っ先に消費税を外してやるべきじゃないか、これは消費者としては何としても言いたくなる声なんです。消費税について先ほどから大臣が何度もお答えになっていらっしゃいますので、私はここでそれを繰り返して御答弁を求めるということはやめたいと思いますが、要するに、大蔵にも農水省としてはその撤廃を求めてがんばっている、こういうことであったかと思います。  ところで、この高い砂糖を買わされて泣いているのは消費者だけではありません。お菓子業者の皆さんもまたこれで怒っているわけです。最近、輸入菓子製品が、これは私の調査ですが、三万一千トンと四十八年に比べると二倍にふえてきていると言われております。しかも、いまECから菓子の輸入の関税引き下げの要求が非常に厳しくなってまいりまして、そういうものも受け入れられていくとするならば、もっとふえていくでしょう。そのことによって高い砂糖を使っている日本の菓子業界はますます競争上不利な立場に立たされていくわけなんです。ここのところについて、私は、一体農水省はどういうふうにお考えなのか、お伺いをしておきたいと思います。  もう一つは、そういう関税引き下げというようなことになったとするならば、やはり何としても、菓子業界のためにもひとつここは消費税の引き下げということと差しかえて、消費税の撤廃をして、どうしてもこの時期にはやってもらわなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  207. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 日本の菓子産業の持っております一番の悩みといいますか問題は、原料の大宗を占めます小麦粉、酪農製品、牛乳、ミルク、バター、砂糖価格がいずれも国際的な水準に比べて高い、要するに、原料が高いということであります。一方、外国からの輸入製品に使われております原材料、菓子の材料は安いということであれば、裸ではとても競争できないということで、私どもは適正な関税率を設けまして、国内の菓子産業を保護しているというのが現実でございます。  確かに、先生御指摘のように、EC加盟国の一部からチョコレート、ビスケット等につきまして関税が高過ぎるではないかという指摘はございますが、私どもとしましては国内のそういった農業政策上の必要性をるる説明をし、その理解を得つつあるわけであります。しかし、いずれにしましてもそういったこともあり、砂糖の消費税については問題があるということは、私も、大臣からも先ほど御答弁申し上げたとおりでございますので、私どもとしましてはさらにこの問題の解決には一層の努力を払ってまいりたいと考えております。
  208. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 次に三十一条なんですが、三十一条は一定数量を超える輸入糖に対して市価参酌金を課すという場合、「農林水産大臣が定めてその者及び事業団に通知した数量」括弧をつけまして「(その数量によることが著しく不適当であると認められる場合において、)」こういうふうに書かれております。この括弧の中の言葉はどのような場合のことを想定されていらっしやるのか、御説明を願いたいわけです。
  209. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、通常年におきます売戻し数量というのは、砂糖年度ごとに過去の一定の期間のうちで砂糖価格変動等が余りなかった、逆に言いますとあった年は除く、通常の年の売戻し数量というものを念頭に置いて判断するわけでありますが、このことによって採用される通常年が限定されるわけでありますが、この場合とられました期間の一部に、これは私ども無売買と言っておりますが、現在の糖価安定法では、基本的には国際糖価合理化目標価格以下のときに初めて売買が行われ、調整金の徴収が行われるわけですが、二年ほど前とか五年ほど前にありましたように国際糖価が暴騰した場合には事業団の売買というのはございません。その必要がないわけでございます。そういう期間が入ってまいりますと、売戻し数量を使うといっても、売戻し自体がないために、しかし、現実に輸入の数字はあるわけでございますので、そういう場合には売戻し数量ではなくて輸入数量を使うことがあるのだというような趣旨で書いてあるわけでございます。
  210. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ひどくわかりにくかったのですが、需要量そのものが大きく変わったときですね、その変わったときという場合、想定するに、輸入糖価がだんだん上がりつつある、いまのうちに買うておいたら、もっと上がったらもうかるかもしれぬという場合が一つございますね。それから国内の需要量そのものがふえた、しかし、これはいきなりどの家もぜんざいをたくとか、そんな話もありませんし、そういう場合は考えられない。もう一つは、国内産糖がふえたとき、これが考えられると思うのです。現実的には国産糖がふえるとき、そのときこの括孤の中が活用されるというふうに私は理解をするわけですね。その可能性が一番強いだろう。つまり、国産糖を優先するということでこの括弧つきがかなり考えられていると理解していいのかどうか。
  211. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 先ほど私は法律上の非常に形式的なお話を申し上げたわけでありまして、そう書いたゆえんの一つの例としましては、無売買のような場合を想定して法律的にはそういうことをしたわけでありますが、御指摘のように、たとえば国産糖が非常にふえたとか、あるいは不幸にして減ったとかというようなことで需給が大きく変動するというような場合に、過去の売戻し数量をそのまま適用するということは必ずしも適当でないということは考えるわけであります。そういったような場合には、法律の趣旨も生かしながら適切に対応、運用していくということは当然だというふうに考えております。
  212. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 結構です。  それでは国産糖の問題に話を移したいと思います。先ほどからも問題になっておりましたが、国産糖というのは、国際投機商品である砂糖の特性から考えても、それからこの島国という地理的なものを考えてみても、国民生活上必需品として欠くことのできない商品になっているということを考えても、国内での自給率は高めていかなければいけないというふうに考えるわけですが、大臣の御見解をお願いしたいのと、それから沖縄のサトウキビ、甘蔗糖に対してどういうふうな位置づけで今後の発展を考えていらっしゃるのか、この二点。簡単で結構です、まだございますので。
  213. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 先生御指摘のように、沖縄、南西諸島におきましては、その気候、土地条件からいきまして、サトウキビというのは欠くことのできない基幹的な作物でございますので、農林省も従来からその生産振興生産性の向上等については努めてきたわけであります。さらに国民の生活必需物資であります甘味資源作物も一定量は確保するというのはぜひとも必要だということも考えあわせまして、今後とも沖縄のサトウキビの生産性の向上等には努力してまいりたいというふうに考えております。
  214. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、この間沖縄県に行ってきたのです。サトウキビをずっと見てまいりまして、そして生産者の皆さんともいろいろ懇談をしてまいりました。なるほど、沖縄県というのはああいう気象条件からしてもサトウキビというのはまさに基幹作物であって、沖縄県そのものの経済にも重要な役割りを果たしているということを改めて認識をいたしました。けさほどの議論でも、沖縄県のサトウキビについては特に単収を引き上げるという点で努力をしていきたいというような御答弁がありました。機械化もそうでしょうが、単収を引き上げるために努力をしていきたい。私も沖縄県に参りまして、そこのところを一番気にしていたのです。どうすれば単収量を引き上げていくことができるだろうか。そこで農民の皆さんとお話し合いをしまして、私は、いまこのキビづくりで生活が十分できないということが一番問題だと思いました。それは政府の出しております統計を見ましても、大体沖縄県は一戸当たり六十一・五アール、これが面積の平均ですね。年間粗収益は八十八万八千六百二十五円。この粗収益からいろいろなものを引きまして、農水省の資料でも、所得は年間当たり何と六十四万円、こういうふうになっているわけです。六十四万円ですから、平均しますと、一カ月に五万円というような状態です。これでは生活できないということでみんな兼業農家になっていく。そこで働き手がお母ちゃんが多いというような状態がある。おまけに圃場の整備がおくれているものですから、なかなか機械化が進んでいない。機械化が進まないものですから、ますますあそこの場合は刈り取りまでにも手を入れていかなければ根腐れが出たり、ネズミが繁殖したり、ハブが出てきたりといういろいろな困難を抱えている。そういう状態の中で生産者は、まさに生産費を引き上げてもらいたい、もう少し収入をよくしてもらいたい、その補償を高めてほしいという要求は、単収当たりを引き上げていくことと車の両輪になるのだということを言われました。時間がありませんのでまとめて言いますが、そういうことなんです。政府自身、農水省の生産費調査では、二万五千六十二円とトン当たりの数字をはじいていらっしゃるのに、奨励金を含む五十六年度の生産費は二万一千四百十円と、三千六百五十二円も低い。この現状が、いま単収を積極的に引き上げることができない大きな要因になっているということを申し上げて、お考えをお伺いしたい。  もう一つは、サトウキビをもっと単収当たりもよくして、そして自給率を高める大きな一翼を担っているあの地域を発展させていこうというふうに本当にお考えなら、どうして国立の農業試験場の支場を沖縄県に設置されないのかと思います。台風や干ばつあるいは黒穂病というふうに、いろいろと病害虫を抱えて困難を来しておりますし、そういう中で、そういうものに強い品種の改良というのは切実な声になっているわけです。この点では、てん菜と並んで国産糖生産地である沖縄県に、国立農業試験場の支場の設置を考えていってはどうか。北海道では国立の農業試験場の支場が、初めは農民の旅行途中の見学の場でありました。しかし、いまは違うのです。日常の相談の場に変わっています。そして、そういう中で、世界でもトップクラスと言われるような収穫を持つという成果を見るに至っているわけです。そういうことを考えるならば、当然沖縄県への支場の設置を検討されてしかるべきではないかというふうに思います。
  215. 渡邉文雄

    ○渡邉(文)政府委員 沖縄のサトウキビ生産者価格が、調査の結果の生産費よりも下回っているということについての御指摘でございますが、現実に数字の上ではそのようになっております。ただ、一つぜひとも御理解をいただきたいのは、同じような作業条件でございます南西諸島と比較しますと、沖縄の生産費が際立って高いのは、御案内の剥葉労働というのがあるわけであります。なぜ、剥葉労働が沖縄で行われ、南西諸島で行われていないかということについては、歴史的な経過としか言いようがないわけでして、よくわからないのでありますが、生産費を下回るという結果になっていることは事実であります。  しかし、反当の所得で見てみますと、これは五十五年産でございますが、同じ畑作物の中で、サトウキビは九万六千二百円、沖縄では十万三千円が十アール当たりの所得でございまして、他のてん菜、大豆等が五万円とか二万何千円とか、あるいは小麦でありましても三万八千円とかということに比べますと、反当の所得といたしましてははるかに有利な作物ということは、逆に言いますと言えるわけであります。  いずれにしましても、農家の所得の向上のためには、こういった価格政策のほかに、現在沖縄でも非常に強く要望しております基盤整備あるいは生産性の向上対策等につきまして、あわせて努力しながら、総合的な視点で所得の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。
  216. 岸國平

    ○岸政府委員 試験研究の問題についてお答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のように、生産性を上げるために、品種の改良その他の研究が大変大事だということは私ども考えておりまして、そのために、現在も試験研究を実施いたしております。沖縄石垣島に熱帯農業研究センターの支所を設けております。そこでもサトウキビに関する試験をいたしておりますし、また、九州農業試験場の研究室を種子島に置いておりまして、そこではもっぱら品種改良をいたしております。それからまた沖縄県には、指定試験として、国の委託で品種改良、それから害虫の試験などを置いております。そのほかいろいろな補助もいたしておりますので、この問題につきましては今後ともそういう方向で一層の努力をしていくつもりでございまして、先生御指摘の国立の、このためだけの支場をということは現在のところ考えておりませんので、御了承願いたいと思います。
  217. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  218. 羽田孜

    羽田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  219. 羽田孜

    羽田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  砂糖価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  220. 羽田孜

    羽田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)     —————————————
  221. 羽田孜

    羽田委員長 この際、本案に対し、亀井善之君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。島田琢郎君。
  222. 島田琢郎

    島田委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、砂糖価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     砂糖価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、砂糖の国際需給等の不安定な動向に対処し、国内における砂糖の安定的な供給を確保するため、今後とも、自給力の向上を基本とする諸施策を進め、甘味資源作物生産振興と国内産糖業の育成を図り、併せて本改正案の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。      記  一 輸入糖及び異性化糖の事業団の売戻価格の特例措置については、これが、的確な甘味の需給見通し等に基づいて、円滑かつ適切に運営されるよう、需給協議会等を強化し、関係者の意見が反映されるよう措置すること。    また、一般消費者及び関連事業者の利益が不当に損われることのないよう十分留意すること。  二 総合的な甘味対策を講ずるに当たっては、糖化業界国産でん粉の円滑な消化に寄与していること等にも留意し、同業界の秩序ある健全な発展を図るとともに、本法施行までの経過期間を含め、適切な指導を行うこと。  三 精糖業界体質改善については、経営多角化等に対する各般の措置を講じ、関係商社、企業努力を助長するとともに、雇用の安定、労働条件の改善等についての業界段階における労使の話合いが円滑に行われるよう指導すること。  四 国内甘味資源作物生産性の向上及び長期生産見通しを達成するため   (一) てん菜については、合理的な輪作体系の確立等により生産の安定化を図るとともに、てん菜の生産に対応した原料処理体制について遺憾なきを期すること。   (二) さとうきびについては、土地基盤整備の促進強化、優良種苗の開発・普及、病害虫防除対策の充実及び機械化作業体系の確立等実効ある生産対策を講じ、さとうきび作を基幹とした複合経営推進に努めること。    右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じ、委員各位の十分御承知のところであると存じますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手
  223. 羽田孜

    羽田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  亀井善之君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  224. 羽田孜

    羽田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について、田澤農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。田澤農林水産大臣
  225. 田澤吉郎

    ○田澤国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努めてまいりたいと存じます。     —————————————
  226. 羽田孜

    羽田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 羽田孜

    羽田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  228. 羽田孜

    羽田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十一分散会