○岩垂
委員 私はここで、最近の雑誌「世界」に寄稿された自民党の石田博英氏の論文の一部を
紹介させていただきたいと思うのです。
伊藤さんは、旧三木派であるだけでなしに、
政治家としては石田博英さんにずっと私淑をしてこられたということをあなたの略歴の中で拝見をいたしましたので、少し文章が長くなりますが、ぜひしっかり聞いていただきたいと思うのです。
専守
防衛、志願兵制度、非核三原則、武器禁輸、GNP比一%以内の
防衛費など
防衛政策上の諸原則は、
国民の間に広く定着している憲法の平和主義の理念と、現実の国際政治上の拘束との相剋——それは
防衛論争という長く困難な政治過程に象徴されている——の中で形成されてきた
国民の英知ともいうべきものである。基盤的
防衛力構想にもとづく「
防衛計画の大綱」は、これらの憲法とそこから派生した諸原則を前提として成立したものである。その最大の意義は、ありうべき「危機」についての評価を極小化し、
防衛力に上限を設定したことである。しかも、この「大綱」の達成は、GNP対比一%以下の
防衛予算の範囲で
実現するものとした。
私は、「
防衛計画の大綱」作成の際の精神は、外に対しては
日本の軍事大国化拒否の宣言であり、内に対しては軍事合理性の名のもとに
防衛費が財政や
国民経済を歪めないよう歯止めをかけ、産軍複合体の弊害の現出を未然に防ぐことにあったと
理解している。 近頃、ソ連の脅威を根拠とし、軍拡論者が「大綱」を目の敵にしているのも故なしとしない。逆にそれ故にこそ、私はこれを高く評価しているのである。「大綱」やその前提にある諸制約を取り除こうという議論は、平和
国家を志向する
国民的合意を裏切り、いたずらに国内政治を混乱させるだけで何の益もない。
また、本来不可分であるべき「大綱」と「GNP比一%以内の
防衛費」の二つの
閣議決定を分離し、「大綱」を軍備拡張への踏み台にしようと考えている向きがある。GNP比一%以下の予算では「大綱」を達成できないとの論拠で、「一%以内」の制約を取り除こうという動きは、「大綱」の精神を
理解しない危険な発想といわなければならない。
云々というふうに書いてあるわけであります。
「
防衛計画の大綱」は五十一年十月。先ほど申し上げたようにこれと不可分な関係において
防衛費GNP対比一%の上限は、五十一年十一月。いずれも三木
内閣のもとでの
閣議決定であります。当時石田博英氏は運輸大臣を務めておられました。あなたも旧三木派、石田氏は三木派の先輩であり、先輩の教訓ともいうべきこの論文を、その
趣旨を生かすことこそがあなたの所信である男子の本懐を貫くことだというふうにはお考えになりませんか。
石田さんがいみじくも「専守
防衛、志願兵制度」云々というふうにまとめていらっしゃる。ここを強調しておられるのは、憲法が改悪されない限り、大臣や
内閣がかわるたびに
防衛問題のスタンスがくるくると変わったのではたまったものではないという
意味を申し上げていることでもあります。あなたはこの
言葉をどのように受けとめられますか、率直な感想を伺いたいと思います。