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1982-04-01 第96回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月一日(木曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 石井  一君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 田名部匡省君 理事 山崎  拓君    理事 上田 卓三君 理事 渡部 行雄君    理事 市川 雄一君 理事 小沢 貞孝君       有馬 元治君    上草 義輝君       小渡 三郎君    亀井 善之君       倉成  正君    塚原 俊平君       吹田  愰君    細田 吉藏君       宮崎 茂一君    岩垂寿喜男君       上原 康助君    木下敬之助君       中路 雅弘君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田邉 國男君  出席政府委員         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         内閣総理大臣官         房審議室長   石川  周君         内閣総理大臣官         房管理室長   海老原義彦君         総理府人事局長 山地  進君         総理府恩給局長 島村 史郎君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君  委員外出席者         総理府恩給局恩         給問題審議室長 鳥山 郁男君         臨時行政調査会         事務局主任調査         員       新野  博君         臨時行政調査会         事務局主任調査         員       緒方勇一郎君         法務省民事局参         事官      大森 政輔君         厚生省社会局保         護課長     加藤 栄一君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         厚生省援護局援         護課長     沢江 禎夫君         厚生省援護局業         務第一課長   森山喜久雄君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ――――――――――――― 委員の異動 四月一日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     堀内 光雄君   田村  元君     川崎 二郎君     ――――――――――――― 三月三十一日  障害に関する用語の整理に関する法律案内閣  提出第七五号) 四月一日  公務員賃金抑制定員削減中止に関する請願  (安藤巖紹介)(第一八一八号)  国民生活を守る制度の後退する行政改革反対に  関する請願東中光雄紹介)(第一八一九  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  三六号)      ――――◇―――――
  2. 石井一

    石井委員長 これより会議を開きます。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 まだ余り目も覚めないのですが、少し質問を続けさせていただきたいと思います。  すでにいろいろお尋ねがあったと思うのですが、最初恩給法の一部改正について趣旨説明がなされましたが、今回の改正する主要な点というか、要点ですね、それと、何に重点を置いて改正をなさろうとしているのか、もう少しその点を明らかにしていただきたいと思います。
  4. 島村史郎

    島村政府委員 今回の恩給法改正に当たりまして私どもが心がけた点は主に二点でございまして、第一点は、恩給受給者恩給金額実質価値を維持しますために、それに対して公務員給与ベースアップに準じた措置をとったことが第一点でございます。それから第二点といたしまして、公務扶助料あるいは傷病恩給というような非常に底辺にあると申しますか、そういう生活の苦しい方に対しまして特別の増額措置を講じたというのが第二点でございます。  第一点の恩給実質価値の維持につきましては、兵のクラスにつきましては大体五・五%のアップ率考えております。それから傷病恩給あるいは公務扶助料等の実質的な増額というものにつきましては、公務扶助料につきまして月額現行十万三千円でございますのを十一万円まで引き上げまして、なお傷病恩給につきましてもそれに準じた措置をとったものでございます。
  5. 上原康助

    上原委員 いま御説明があったのですが、そこで仮定俸給額引き上げを、国家公務員給与改善に基づいて、国家公務員行政職俸給表(一)の平均改善率の五%をおっしゃるように基礎にして改定していく。後ほどまた実施時期の問題についてお尋ねしたいわけですが、ここで三十三号俸までは五・五%、三十四号俸以上は四・五%プラス一万二千八百円ですか、上げていますね。この格差をつけたことの意味は、要するに上厚下薄にならぬように、これは長いこと議論されてまいりましたので、これを幾分調整しようというねらいがあると理解するわけですが、五・五%を四・五%にしたその考え方、基準といいますか、それに、四・五%プラス一万二千八百円というのは、これをパーセンテージにすると幾らになるのか、ここらを含めて説明してください。
  6. 島村史郎

    島村政府委員 これは国家公務員給与ベースアップを私ども回帰方程式をつくりまして分析をしたものでございます。  御存じのように回帰方程式というのはy=ax+bということでございまして、この四・五%というのはこのaxの中のaに当たります。それから、一万二千八百円というのがbに当たるわけでありまして、このax+bの四・五%プラス一万二千八百円というのが、号俸によって違いますけれども、大体四・六%ぐらいから五・五%ぐらいまでの間に当たるわけでございます。百二十八万円未満の三十二号俸以下の人につきましては、この回帰方程式を当てはめたときの最高のアップ率を使って五・五%、こういうふうにしたわけでございます。したがって、先生指摘のように、上の方には薄く下の方には厚いということになっておるわけでございます。
  7. 上原康助

    上原委員 余りむずかしい方程式を言われてもわからないのですが、結局、さほど上厚下薄是正になっていないのじゃないのかという感じがするわけですね。あたかもやったような説明とか改定内容だということをおっしゃりながら、実質的には五・五%と、四・六から五・五%の範囲というから、そういうところになお改善余地がないのかどうか。いまおっしゃるax+bという方程式、そういった算定方式というのか基礎計算方式というのか、そういうのが必ずしも上厚下薄是正をすることになり得ない状況に来ているのじゃないのか、詳しいことはよくわかりませんが。そういう点に対しての御見解があればお聞かせいただきたいと思いますし、また、それでなお調整が大変むずかしくなっているということであるなら、今後そういう方法改善していくおつもりがあるのかどうか、それもあわせてお聞かせください。
  8. 島村史郎

    島村政府委員 この回帰方程式を使いますのも私どもとしては現段階では非常にいい方法ではないかというふうに考えておるわけでございますが、これは要するに、人事院勧告態様にも非常によるわけでございます。したがいまして、人事院勧告態様によっては、この回帰方程式というものはあるいは必ずしも適当でない場合が生ずることもあるというふうに実は考えておりまして、この辺は毎年毎年、人事院勧告の中身の態様を見ながら検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  9. 上原康助

    上原委員 それともう一点、この改定の中での基本的なことでお尋ねしますが、たしか引き上げ額が二十二万八百円を限度としておると思うのですね。七十七号俸五百八万二千三百円以上の仮定俸給にあってはさらに逓減調整となっていると思うのです。そこで、この二十二万八百円を限度とされている人は何名いるのか。五百八万二千三百円以上の仮定俸給をさらに逓減調整している。これは国家公務員のいわゆる給与抑制措置が一年間とられましたね、それを準用といいますか、それに横並びにするためにそういう措置をとったと思うのですが、これに該当する方々はどのくらいいるのか、御説明をいただきたいと思います。
  10. 島村史郎

    島村政府委員 二十二万幾ら停止をかけた人数につきましては、いま手持ちの資料を実は持っておりませんが、これは非常に少ない人数だというふうに考えております。
  11. 上原康助

    上原委員 少ないと余り節約にも何もならぬじゃないですか。しかし、そのくらいお調べになっておいていただかないと困りますね。どのくらいいるのですか、大体でもいいですよ。
  12. 鳥山郁男

    鳥山説明員 ただいま先生後段お尋ねの六十六号俸以上の普通恩給につきまして、三分の一停止をかけました対象人員は、文官が五千六百五十六人でございます。それから軍人が四百三十五人でございます。
  13. 上原康助

    上原委員 そうしますと、この三分の一抑制というか逓減措置をとった、それは金額にするとどのくらいかおわかりですか。もしわかれば御説明いただきたいと思います。
  14. 鳥山郁男

    鳥山説明員 五十七年度予算で申し上げますと、約一億四千二百万でございます。
  15. 上原康助

    上原委員 さほど大きな比重は占めていないという感じがいたしますね。一兆七千億から一億四千二百万、お金は大きいと言えば大きいかもしれませんが。  いま改定内容疑問点等、もう少し理解をするために知りたい点をお尋ねしたわけです。後ほど具体的な点はお伺いをしてまいりますが、この恩給法というか恩給あり方は、例年議論をされながらもなかなかむずかしい面がございます。専門家でないとこれはなかなか容易に理解できない。また、よけいむずかしくして、一般余りわからせないように役人さんも努めていらっしゃるんじゃないかという感じさえするわけです。  それは別として、たしか島村さん、恩給局長さんでしたね。この「恩給」という五十七年三月号、ナンバー百二十五号で、五十七年度恩給予算を獲得なさる、獲得というか要求していくのに、ここでいろいろ問題を出しているわけです。  要するに五十七年度以降は恩給曲がり角の年なんだ。おっしゃりたいお気持ちはわかるような気もするのですが、ここで言っておる曲がり角の年というのはどういう意味なのか。まず、ここに書いてあるものよりは率直に聞いた方がより実感があるかもしれませんから、五十七年度はどういう御認識でそういう位置づけといいますか、とらえ方をなされたのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  16. 島村史郎

    島村政府委員 私どもは、恩給を、長期展望に立ちましたときに、行政改革財政再建という現在の問題もございますし、それから恩給制度もそういう行財政改革趣旨を踏まえましていろいろの制度あり方についても検討を進めていく必要があるのではないか、長期的な展望から考える必要があるのではないかというふうに考えておるわけであります。  そこで私ども考えておりますのは、要するに恩給制度において、一つには辞退制度という方式を導入することも考えられるのではないか。それから、たとえば恩給年金との間の、要するに重複して受給をされているという問題がございますので、そういう問題も解消していくということをいろいろ検討する必要があるのではないか。実はこれらの問題は非常にむずかしい問題でございますけれども、私どもはこういう問題について検討を進めていく必要があるのではないかということで曲がり角、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  17. 上原康助

    上原委員 確かにここにもお書きになっていらっしゃいますね。行財政改革問題、これは後ほどちょっと触れますが、いまおっしゃった、たとえば辞退制度の問題など幾つかの制度的課題について検討を進める必要がある。この辞退制度制度というんだから一つのシステムをこれからつくるわけですね。一体どういう場合に辞退ということになり得るのか。これはあくまで、権利のある人が自主的に辞退をしなければそういうことにはならないと思うのです。これまで辞退をした人々がおるのかどうかということ。  もう一つは、これもきのう事務当局からもいろいろ聞いてみたわけですが、恩給受給する資格のある人々というのは、これは一つ権利ですから、これについてとやかく言われる筋のものではない。人のふところに手を突っ込むようなことはだれだってやりたくないし、またやるべきでもないと思う。しかし、反面、公的立場あるいは現在の行財政改革なりいろいろな面で姿勢が問われているときにおいては、いまおっしゃいましたように恩給年金を重複してもらっている、しかもその人が現に公務員であるとか国会議員であるとか、そういう人々だっていると私は思うのです。しかし、それはどこでそういう面を掌握しているかということを聞いてみると、どこもやってないと言うのです。どこもやってない仕事総理府がやるんじゃないかと言うと、いや、総理府はそんなことはしません。後で総務長官に聞きたいのですが、そういうことなんで、いま局長がおっしゃいましたように、この辞退制度に対してどういうふうな、たとえばこういうことがあり得るんじゃないのかという考えがあれば聞かしていただきたいと思いますし、同時に、恩給をもらうあるいは年金をもらう、しかも現に公務員であるとか上級公務員であるとか議員であるとか、そういう者については何らかの検討をしてみる必要があると私は思うのです。後で触れますが、老齢福祉年金恩給の併給さえもやらないというふうに下の方はばっさばっさ抑制の網をかけながら、上の方は天井知らずで、国民理解を得ることができない問題が、よく調べてみないと何とも言えませんが、確たることは言えませんが、一般の風評としてそういう問題があるということはわれわれも漠然と知っている。そういう点を検討なさったことがあるのかどうか。いまの二点についてぜひひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  18. 島村史郎

    島村政府委員 この辞退制度と申しますのは、現在そういう恩給辞退されている人というのはわずか数人ぐらいおられます。しかし、この恩給法のたてまえからいきますと、一度辞退しますと、あと生涯恩給支給されないという問題があるわけでございます。そのために年寄りになっても恩給をもらえないのではないかということで、現在高額所得がありながらなお恩給をもらっていくということになっておるんではないかというふうに実は考えるわけです。     〔委員長退席佐藤(信)委員長代理着席〕  したがって、私どもとしては、そういう恩給をもらっておりながらいろいろな会社の重役とか社長なんかやられて非常に高額をもらっておるという方については、その一定の期間、そういう社会的に活動しておられる時期については恩給辞退していただいて、そして老齢になってまた生活に困る、働けなくなるというようなときには恩給を差し上げるということを考えたらどうかというのが私の個人的な感じでございますが、これも前に申しましたように非常にむずかしいいろいろな問題が伏在しておりますので、これはそう簡単にはできない問題でございますが、これは慎重に私ども検討してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  19. 上原康助

    上原委員 そうしますと、さっきお答えがありました、恩給年金重複支給というか重複受給はどのくらいあるか、それは掌握なさっていますか。
  20. 島村史郎

    島村政府委員 恩給年金重複受給と申しますのは、軍人恩給をもらいまして、そうしますと要するに最低保障額をもらう、しかもまた厚生年金をもらう。こちらで最低保障額をもらいながらさらに厚生年金をもらっているというのは必ずしも適当ではないんではないかというふうに実は私ども考えるわけでございまして、軍人の方の大体七割ぐらいはそういう厚生年金を受けておられるんではなかろうかというふうに推定をしているわけでございます。
  21. 上原康助

    上原委員 確かにこれはいろいろ利害得失が絡むだけにむずかしい問題だと思いますよ。私も、何も権利を剥奪する必要はないと思うのです。しかし、一線でまだばりばり働いているのに恩給ももらう、給与ももらう、ほかのものももらう、ほかのものといったらあれですが、そういうことはやはり少し検討してみる必要があるのじゃないのか。それがかなりの高額のランクにいる方々、そういう面は野放しにしておって、行財政改革とかいろいろな、〇・〇一までいま削ろうという世の中だから、それはいささか矛盾していると思うのですね。ですから、そういう面で、お仕事を離れた段階においてはまたその権利を復活して支給するとか、これはできない相談じゃないと思うのですね。  そこで、総務長官、いままでこう局長とやったことについて、こういう問題についても今後どういう形で御検討なさるかわかりませんが、総理府なり恩給局としてよく調査をしていただいて、改善すべき点が私はあるんじゃないかという気がするわけですが、いかがでしょう。
  22. 田邉國男

    田邉国務大臣 お尋ね恩給制度の問題でございますが、私も実は地方行政の長をやった経験がございます。そうしますと地方共済年金がある。ところが現在国会に出ておりますと、国会議員としての歳費がある。私どもはそれは総合課税でやはり取られることになれば、むしろ地方公務員共済年金というものに対しては辞退をしたい。ところが辞退すると再び復活しないという現状でございます。そういうことを考えますと、この制度はずいぶんいままでいろいろと議論もされてまいりましたし、この行革のいろいろ議論がされているさなかでございますから、私どももこの問題については真剣に取り組んでまいらなければならぬときが来た、こう判断をいたしております。
  23. 上原康助

    上原委員 大変失礼申し上げました。何も総務長官がそういうお立場にあるからこの質問をしているわけじゃないですから、誤解なさらぬでください。  ですから、それはいろいろ総合課税の問題もあるでしょうし、やはりもらっている方も、権利とはいえ、良心的な人はそれでいいのかなというお気持ちがあると思うのです。そうでない人もざらにいると思うのですがね。何言っているか、おれは権利があるのだから幾らでももらうという人がいらっしゃるかもしれぬ。しかしやはり国会議員であるとかいろいろな上級公務員とか、変な言い方ですが、高給の、高い地位にあって給与ランクの高い人々については何らかの抑制措置をこの際検討してみる必要がある。しかもそれは、おっしゃるように権利を剥奪するのではなくして、仕事都合とか生活都合があってどうしてもまた一定必要性が出たときにはそれを復活して、それ相応のまた手だてもしていく、もっと筋の通ることをやはりやらないといけないんだということをここで申し上げておきたいと思うのです。御検討してみるということですから、ぜひひとつ前向きに、また関係者の意向も尊重しながら、できれば改善をしていただきたい。  そこで次に、いまのこととも関連するんですが、私も素人で絶えずお尋ねもしてまいりましたが、いまだになかなか釈然としない。要するに恩給性格についてどう理解をするかという問題なんですね。  これはなかなかいろいろ意見があるようで、恩給というのは過去の勤務に対する、何といいますか、給与支給だということ、あるいはその支給額については最終給与といいますか俸給というか、それと勤務年限算定基礎にして支給する、これがいまの仕組みですね。しかし、そうだからといって、全く生活保障というか、これは働いた本人だけではなくして、その家族なり、あるいは要するに社会的生活を維持していくための保障的面も十分加味されたものでなければいけないと思うのです。このことについてはなかなか意見の分かれているところでありまして、去年も私この議論をちょっとやったんですよ。そうしますと、前中山総務長官は「一応総理府といたしましても、機会を見て有識者の御意見も聞きながら今後検討させていただきたいと考えております。」これは最低保障の問題とも関連をしてのことですがね。そういう面で、この恩給制度曲がり角に来ている、先ほどの問題等もあっていろいろ検討をしなければいかない制度の面、支給面等ということがあるならば、恩給性格というかその概念位置づけということについてももう少しお考えになってみる必要がありはしないのか。  いまだに恩給法はかたかなで、大正十二年にできた、刑法と並んで明治憲法時代の、これは遺物と言ったら怒られるかもしらぬが、そういった古い慣習に基礎を置いた法律になっているわけですね。そういうことを含めて、どうなんでしょう、御検討をする余地はないのかどうか。恩給制度性格恩給受給者生活面から見た場合は一体どういうふうに考えればいいのか、その点もひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  24. 島村史郎

    島村政府委員 最初に、恩給とは何ぞやということにつきましては、恩給法というものが大正十二年にできましてからいろいろ学説がございまして、いまでも五つか六つくらいの学説がございます。その中でこれは通説というのはないのでございます。大半の学者の方がこれに傾いているという定説までいっている概念というのはございませんで、通説に近い概念としていま挙げられていますのが、一つ功労説と、もう一つ経済能力喪失に対する報償説、この二つがわりに多くの学者に認められた説ではないかということで、私どももこの二つを中心に実は考えておるということだと思うのです。  先生の御指摘のように、生活に困るような要するにそういう恩給が出ているんじゃないか、こういう御指摘がございますが、一面ではそういう面もございますし、また一面では必ずしもそれにとらわれなくてもいいのではないかという考え方もございます。私どもは、たとえば公務扶助料は、夫が戦死して奥さんだけで生きていかなければいけない、こういう人についてはその生活保障というものはしていく必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。しかし、戦役に行かれまして三年かあるいは四年くらいで加算年を含めまして十二年になる、それで戦争が終わりましてからさらに会社に勤めておられるという方については、そういう方についてまで要するに生活を全部保障していかなければいけないのかということについては私どもも若干疑問がある。したがって、そういう人については何もすべての生活ができるようにまで考える必要はないのではないか。むしろいろいろのバランスを考えてそういう人の恩給考えるべきではないか、こういう基本的な考えでおるわけでございます。
  25. 上原康助

    上原委員 あるいはいまそうかもしれませんが、要するにあなたがおっしゃるようになると、退職手当だって功労説報償説がありますよ。僕は退職手当制度をつくるのに相当苦労したからこれだけは少しわかる。退職手当だって権利だと言う方と、いや、やめていく人に権利があるかなんていう学説だってあるのです、報償説功労説。  しかし、現代の社会からいうと、やはりそれは生活の問題に私たちとしては比重を置きたいわけですね。そんな議論はしたくありませんが、通説定説というものがないということであると、確かにあなたがおっしゃるのも否定できない面もあるわけですね。公務扶助料の問題だって、ずいぶん議論をしてようやくいまの水準まで来た。四、五年前まではなかなか皆さんやろうとしなかった。半分に達するまでにもこれは相当時間がかかったのです。僕らが一生懸命議論をしてみんな改善されていったら、あとはみんななくなってしまうのですね、正直申し上げてこの恩給というのも。そういうことで、もう少しそういった生活という面あるいは老後というか退職後の、公務員関係についてはいまそれぞれの年金制度がありますからね、共済年金制度があるから別かもしりませんが、やはり性格的位置づけというものはもっと、一面では社会保障というか生活保障というかそういう面も十分加味した恩給制度あり方恩給の内容改善というものをぜひやるようにさらに御努力をいただきたいと思うのです。  そこで次に進みたいと思うのですが、二番目に、最低保障額の問題もいまのことと関連しますが、普通恩給と普通扶助料ですね。それと、これも例年取り上げてきたことなんですが、厚生省も覚えていると思いますが、生活保護基準との比較の問題。  これもいまの局長の御答弁からすると、恩給性格というものが必ずしも完全に生活保障ということでないのだ、やはりほかにまた部分的な収入があるかもしらぬ。もちろんそれにもいろいろ制限が出ますね。そういうことからすると、生活保護基準問題と恩給最低保障額との比較というものは妥当性を欠く面もあろうかもしりませんが、しかし何といっても生活保護法だってこれは最低保障ですからね。生活保護の基準だって生活保護法に基づいた、憲法に基づいた一つの目安があってやっているわけであります。一方の恩給における最低保障というのも、これは性格においては違いないと思うのですね。これがやはりいまだに差があるということについてはどのようにお考えなのか。これは何も生活保護基準がいいと言うわけじゃないですよ。これももっと改善しなければいけませんが、どうも相互にもたれ合いをして、恩給の方はむしろ低いのだと一方では言っているかもしらぬし、そういう関連性を持たせますと、私は例年この点を指摘しているわけですが、少なくともそれを下回るような最低保障あり方というのは疑問を持たざるを得ない。やはり改善をすべきだと思うのですね。どうなんでしょう。
  26. 島村史郎

    島村政府委員 私どもは、生活保護は、そういういろいろの資産の面からいっても生活能力の面からいっても仕事の能力からいっても非常に生活が困窮している人に対して、これは実は救貧措置としてそういう生活保護費を出しているわけでございまして、いわゆる社会保障的な見地から出しているわけでございます。一方、恩給は国家補償ということで、そういう勤務年限あるいは勤務態様というものに対してある程度の恩給支給するということで、一つ基本的な考え方が違うわけでございます。したがって、最初質問生活保護費と普通恩給最低保障、この最低保障という意味がすぐ生活最低保障というところにひっつけて考えられがちでございますけれども、私はそれの比較は必ずしも当たっていないのではないかというふうに考えておるのでございます。  むしろこの普通恩給最低保障共済年金最低保障というものと比較さるべきものでございまして、共済年金最低保障というのは、大体二十年勤められてそしてやめられた方の最低保障ということでございます。むしろそれと比較されてしかるべきではないかというふうに実は考えておるわけでございまして、現在私どもも、共済年金最低保障額とそれほど開きのあるものではございません、大体同じ水準にあるというふうに実は考えているわけでございます。
  27. 上原康助

    上原委員 厚生省おいでかと思うのですが、生活保護基準は五十七年度予算ベースにしてどのくらいになりますか、二人世帯で夫が七十二歳、妻が六十七歳という場合の月額と年額。
  28. 加藤栄一

    ○加藤説明員 老人の二人世帯でございますが、男が七十歳以上、妻が六十五歳以上ということでお答えいたします。  生活保護の中には七種類の扶助がございまして、生活扶助が一番基本的なものでございますが、それに各種の身体の態様等に伴いまして加算がつきます。また住宅が借家でありますと住宅扶助、また病気になっておりますと医療扶助、その他出産、葬祭、生業といった各種扶助がございます。そういうもののいろいろな組み合わせで必ずしも一律ではございませんが、生活扶助の一類費と二類費というのが最も基本になりますので、これで考えてまいりますと、五十七年度の予算ベースでこの二人世帯でございますと、東京都のような一級地の場合、月額八万五千五百七十円ということになります。
  29. 上原康助

    上原委員 八万五千円ですか。いまのは五十六年度じゃないの。
  30. 加藤栄一

    ○加藤説明員 五十七年度でございますが、いろいろな計算がございますから、この中で最も基本になります額で、二人世帯の場合月額で、一類費各個人別の経費が、これは二人分でございますが五万七千九十円、それから二類費、これは二人世帯の共通経費、たとえば光熱水とかそういうものでございますが、二万八千四百八十円、これを足しますと八万五千五百七十円。このほか、もしも各種の加算がつくとかあるいは病気になっておる、住宅が借家であるということになりますと、それぞれの加算がついてまいりますからさらに上がりますが、基本的なものとしては八万五千五百七十円ということになります。
  31. 上原康助

    上原委員 それぞれの加算をつけた場合はどのくらいになりますか。
  32. 加藤栄一

    ○加藤説明員 この場合考えられますのは、老齢加算が七十歳以上の方にだけつきますので、それをつけますと月額九万九千八百七十円ということになります。
  33. 上原康助

    上原委員 基本で八万五千五百七十円、それぞれの加算を入れると九万九千円、約十万円。私の手元の資料ではもう少し多目の額になっているのじゃないかと思うのですが、そういう説明ですから。東京、一級地の場合、これとて必ずしもいい水準とは言えない面もあると思うのですね。  そうしますと、普通恩給最低保障額はいま幾らですか。今度改善されるもの。
  34. 島村史郎

    島村政府委員 月額六万八千五百円でございます。――間違えました。六万五千八百五十円でございます。
  35. 上原康助

    上原委員 三千円多く言っている。六万五千八百五十円でしょう。六万八千円じゃないよ。そうするとずいぶん差があるじゃないか。
  36. 島村史郎

    島村政府委員 六万五千八百五十円でございます。
  37. 上原康助

    上原委員 一方は八万五千円でしょう。そうすると、さっきの共済年金最低保障額と大体横並びだというと、共済年金最低保障額幾らですか。
  38. 島村史郎

    島村政府委員 現在、これは月額にしてございませんが、年額にいたしまして、私ども普通恩給最低保障額が七十九万円でございますが、共済年金の方が大体七十五万円ぐらいでございます。
  39. 上原康助

    上原委員 きょう大蔵は来ていらっしゃらないですね。後でまた議論しますが、共済年金の方が大体普通恩給最低保障額と横並び、ちょっと疑問もあるのですが、そこは、きょうはこれとの比較をやってまいりましたので後ほど調べてみますが、そうだからということで、いま厚生省からもお答えがありましたように相当の開きが依然としてあるわけですね。これは二人世帯の場合。単身者の場合だってあるかもしらぬ。ありますね、単身、七十歳として。  これはさっき申し上げましたように、やはり生活保護基準というものの性格普通恩給最低保障というものの性格が違うから額が必ずしも同一でない、違ってもいいんだというような御見解でしたが、国民立場からといいますか、あるいはわれわれから見て、さっき性格の面でも申し上げたように、恩給受給者は長年公務に従事してこられた、それに対しての功労的なものあるいは生活保障的面だということになりますと、一般概念としては生活保護基準よりも普通恩給最低保障額が低いということについての疑問は出ますよね。そのことを例年指摘しているわけですよ。何も生活保護基準がいいとか、あるいはそういう人々はもっと質素な生活をしていいという立場で私は言っているわけじゃないのです。それはそれなりに当然保障をもっと改善していかなければいけません。しかし反面、恩給受給者というのは長年公務に従事をしてこられた、社会的にそれ相応の――人間だれでもプライドがあるわけです。だから、おれの恩給最低保障というものは一般的に言われているそれよりも低い水準にしかないということになると、やはりそこに割り切れなさを持つのはこれまた人情だと私は思うのですね。そのことは改善をしてもらいたいということを強く毎年言ってきたら、さっき引用しましたように前総務長官はおっしゃっている。だからこのことも、さっきの恩給重複支給問題あるいはあり方の問題を検討する場合に、どうでしょうかね総務長官、「一応総理府といたしましても、機会を見て有識者の御意見も聞きながら今後検討させていただきたいと考えております。」こう前任者は答えておられるわけだから、最低保障あり方の問題、生活保護基準との関係、あるいは普通恩給、それから普通扶助料もそうですね、普通扶助料と単身世帯の比較でも落ちている。低いですね。そこは一挙にできないにしましても、もう少し検討して底上げをしていく余地は私はあると思うので、その点御検討いただけませんか。
  40. 田邉國男

    田邉国務大臣 先ほどからいろいろのお話がございまして、私も拝聴いたしておりまして、恩給とそしてまた生活保護基準、こういうものを比較をいたしましたときに、これを比較するということは私は大変問題があろうとは思いますけれども、しかし恩給というものが忠実に公務に専念をした公務員退職後の生活を支える、こういうことでございますけれども、現実問題として生活保護基準よりも低いというような実態となった場合、これはある程度の一定額を保障する措置を講じてあげる必要があるのではないであろうか、こう考えるわけであります。したがいまして、この問題につきましてもやはり今後改善をしてまいり、そして適当な対応をしていく検討をしなければならない、こう考えております。
  41. 上原康助

    上原委員 ぜひひとつ御検討をいただきたいと思います。  ちょっと話が前後して恐縮ですが、臨調事務局来ていらっしゃると思いますが、さっきの恩給あり方見直しで、これはいずれ許認可その他でまた臨調なり行管にはお尋ねしたいと思うのですが、臨調の公的年金改革案の骨子というのが二、三日前でしたか、三十日にまとめたのだからおとといですか、発表されましたね。  そこで、ここでちょっとだけお尋ねをしておきたいわけですが、さっきから重複支給の問題とかいまの最低保障問題等々を総理府としても御検討していくということで、それはそれなりにお願いをしたいわけですが、確かに公的年金の一元化ということは、これは総論はみんな賛成ですね。だがしかし、その制度ができた時点も違うし内容も違うし、いろいろ個々の共済年金には赤字でもう倒産寸前になっているところもある、黒字のところもある。そうなると、これはまた利害得失が絡むわけで、なかなか理屈どおりにいかない面があると思うのですね。それを、あえて政治生命をかけて行革をやっていくというわけだから鈴木内閣はやるかもしれませんが、公的年金の一元化方針を打ち出した考え方、それを事務当局に聞くのもどうかとは思うのですが、その骨子をまとめた経緯とか方向性というものを聞かせていただきたいと思いますし、同時に、恩給制度についても「恩給制度については現在年金制度と別個の体系のものとされているが、年金制度の抜本的見直しが行われるのに即応して見直しを行うものとし、他の年金制度とバランスのとれたものに改革する。」これは、答申が出てその後政府がどうしていくかという、あるいは国会なり全体の問題かもしれませんが、現段階で作業を進めている臨調事務局として、いま私が指摘をした問題についてはどのようにお考えなのか、お答えできる範囲でいいですから聞かしておいていただきたいと思います。
  42. 新野博

    ○新野説明員 お答えいたします。  まず、公的年金制度検討の問題でございますけれども、これにつきましては、年金制度をその制度趣旨に即しまして長期的に安定した制度として存立させていく必要がある、こういうことにつきましては臨調の検討段階で、第一次答申のときにもそうした観点で給付と負担の適正なあり方について十分な検討が必要であるということで政府の方にも検討を求めてきていたところでございますけれども、現在のところ、将来を展望した年金制度というものはやはり重要な問題であるということで臨調においても審議を進めておるところでございます。  現在、審議は四つの部会で分散してやっておりますが、第一部会におきまして、行政の果たすべき役割りと重要行政施策のあり方という観点から、年金制度面に重点を置いた審議を行っております。それとともに第二部会では、行政組織、運営面ということがうらはらの問題になりますので、これに重点を置いて検討いたしております。  これら各部会におきます基本的な問題意識といたしましては、第一に、現在の公的年金制度というのは先生のおっしゃったように幾つかの制度に分立しておる、しかしこの制度ごとの負担と給付の水準や内容にはばらつきがあるのではないだろうかということが、一つの問題意識でございます。いま一つは、今後の人口の高齢化なり制度の成熟化というのを見通しましたときに、やはりいまから手を打つ必要があるのではないか、こういう問題意識のもとに現在幅広い審議が行われておりますが、現在のところ改革の考え方等について自由討議を重ねている最中でございまして、そこでまだ具体的な改革案をまとめる段階にまでは至っておりません。  それと、お尋ね恩給の問題でございますけれども、それにつきましても幅広い議論の中で、たとえば在職老齢年金制度をどう持っていくか、あるいはそういう給与との関係だの給付の所得制限をどう考えていくか、あるいは共済とその他の制度等の併給調整をどうやっていくか、こういうような問題についてかなり議論を詰めておる段階でございます。  以上でございます。
  43. 上原康助

    上原委員 確かにそれは、一次答申あるいはこれから本格答申に向けて、いまおっしゃった点が非常に重要な分野であるというのはわれわれも理解をいたしますが、大変むずかしいと思いますよ。それをどうかじ取りをしていかれようとするのか、われわれも関心を持ちながら、また議論にも参加していきたいと思うのです。  総務長官考えますと確かに恩給総理府ですね。退職手当関係は、今度は人事院ですよね。それから公務員共済は大蔵ですか、あと五現業その他はそれぞれで分離している。まず公務員関係から言っても、ばらばらで行政をやっているというところには若干疑問がありますね。そこに人手も多くかかっているでしょうし、予算の面でも問題があると思うのですね。ですから、そういう面の行政の改革というかあり方検討する、これは一つ考え方として私は成り立つと思うのです。その中で、恩給なり年金なりの長期的展望に立った健全性を見通した運営というものを考えるということは、当然やらなければいけない重要な課題ですね。そこいらは総務長官としてはどういうような御認識で、今後どういうように進めていかれようとするのか。先ほどの臨調事務局のお話もありましたので、ひとつお考えがあれば聞かしていただきたいと思うのです。
  44. 田邉國男

    田邉国務大臣 お尋ねの問題でございますが、いま臨時行政調査会において各種の公的な年金等のあり方について検討をしておると仄聞をいたしておりますが、現在のところ正式には答申も出されておらない段階でございます。これについていま私ども意見を申し上げることは差し控えたいと思いますが、仮に臨調の答申において年金制度また恩給制度について何らかの具体的な意見が示されたとするならば、その時点で私どもは慎重に対応をしなければならない、こう考えております。
  45. 上原康助

    上原委員 いまの点は、本格答申が出た段階、あるいはこれから逐次許認可法案等も審議されていくと思いますから、そのときにまた進めていきたいと思います。そこで、さっきの最低保障の件については長官の方から検討してみたいというお答えでしたので、重ねて改善をするように求めておきたいと思うのです。  これとの関係もありますが、厚生省、これも去年のこの法案審議の場でも私若干触れました、またほかの委員会でも触れられているのですが、生活保護費の男女差別の問題です。  きのうもちょっと御説明がありましたが、中央社会福祉審議会からも「生活扶助基準における男女差についての意見」というのが出された。そこで改善をするということでやってはいるようですが、依然として男女差が出てきている。これも、ずいぶん以前からの話のようですね。日本の男女区別というか差別の、一つの典型というか例だと思うのですが、今後この答申に基づいてどのように改善をしていかれようとするのか。何か、千円ぐらいの差をなくしていく。  そうすると、いまどのくらいの差があって、どういうふうな見通しでこれの男女区別がなくなるようにやっていこうとしているのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  46. 加藤栄一

    ○加藤説明員 御説明申し上げます。  昨年の当委員会でも、上原先生から御指摘があったところでございます。その後、各種の男女の生計調査資料を検討いたしまして、男女の消費実態を把握することに可能な限り努力したわけでございます。  生活保護につきましては御承知のとおりでございまして、年齢別とか個人別、世帯別の需要に対応してそれぞれ必要な最低限度の額を保障するというたてまえになっておりまして、私ども従来の考え方では、男性と女性におきましては毎日の生活をしていく上においての摂取カロリー量に当時の栄養審議会等の調査によりましても差があるということに基づきまして、一日の生活上の必要額に差が出てまいる、こういう考え方から、生活扶助基準の一類、個人的な経費につきまして各年齢別に男女の金額の差をつけてまいったところでございますが、これは決して私どもといたしましては女性を不当に差別するという趣旨ではございません。また、女性につきまして、特別に女性のための必要な需要がありますればこれはつけておりまして、妊婦、産婦の場合は特別にカロリーを摂取する必要があるので特別に加算をするといったような考慮もしております。  そういう趣旨でございますが、昨年も御説明申し上げましたように、最近におきまして男女の生活実態が変わってきているのではないか、こういう問題意識から調査したわけでございます。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕  生活扶助基準につきましては、従来から中央社会福祉審議会の御意見によりまして改善を図ってきているところでございます。各種の調査資料等も御検討いただきまして、最終的には本年一月二十三日に同審議会から意見具申をいただきました。  この意見具申によりますと、各種の資料ございまして、単純に男性一人、女性一人の分の消費実態をとるということはなかなかむずかしいわけでございますが、各種の資料を総合して判断いたしますと、まず男女の消費実態につきましては、食費については事実といたしまして男女の消費額に差がございます。やはり平均的には男性の方が女性よりは食費として消費する額が多いという実態でございます。また、食費以外の経費につきましては、被服費でありますとか理容衛生費でございますか、そういうものにつきましては女子の方が伸びが大きいということであります。ただ、これらを総合いたしまして生活扶助に対応する内容の消費支出額全体を比べてみますと、この十年間で男女の消費支出額の差が次第に縮小傾向にございます。  内容的には以上のとおりでございますが、この縮小傾向をとらえまして、総体として一般国民生活の実態に合わせていく、これが生活保護の基準のあり方である、こういう御判断でございまして、特に全国消費実態調査報告の独身世帯の家計調査におきまして、生活扶助相当経費は、男性を一〇〇とした場合に、四十四年、前回の調査では女性の生計費支出額が八〇%程度であったわけでございますが、直近の、昨年公表されました全国消費実態調査報告におきましては九〇%程度まで縮小してきております。これに基づきまして生活扶助基準につきましても、個人的な経費でございます生活扶助基準一類の格差、現在約八五%程度に直してございますが、これを五十七年度で九〇%程度にまで縮小してまいりたいというふうに考えております。この結果、一番標準的な二十歳から四十歳の年齢層におきまして約千円程度従来よりも男女の格差が月額で縮小しておりますが、まだ残る男女の額の差額と申しますか、これが三千七百七十円ほどでございます。  また、今後につきましては、中央社会福祉審議会の御意見におきましても、この格差の縮小傾向は今後も続いていくと推定されるというふうにおっしゃっておられます。私どももさらに新しい資料を集めまして、その時点その時点の実態に対応して改定を図ってまいりたいというふうに考えております。
  47. 上原康助

    上原委員 何事も理詰めの根拠がないと改善しないというのもいささかどうかと思うのですけれども、いまあなたがおっしゃることもよくわかるような気がしますが、疑問はありますね。実際、時間の都合もありますが、いまもおっしゃいましたように、二十歳から四十歳の年齢層はまだ三千七百七十円の差がある。しかし、中央社会福祉審議会の答申というのか意見骨子というのは、全部は申し上げませんが、一、二、三あって「以上の傾向に鑑み、生活扶助基準の男女差は速やかにその実態に応じて是正するとともに、今後とも男女の消費実態の変化を正しくとらえそれに対応することが必要である。」「速やかに」ですよ。余り速やかじゃないですね。千円ぐらい。  この資料、申し上げるまでもないですが、十五歳から十七歳が男が三万六千二百四十円、女が三万一千九百七十円、四千二百七十円の差。十八歳から十九歳三万二千二百十円と二万八千三百四十円、三千八百七十円の差。いまあなたがおっしゃった二十歳から四十歳、この層が一番差が大きいですね。三万一千二百二十円、二万六千四百五十円、差が四千七百七十円。千円ぐらい改善しても、御答弁ありましたようにやはり三千七百七十円の差があるわけです。  これは速やかに直すと言っているんだ。実態調査も必要でしょうが、そんな第一種類とか第二種類とか分けて理詰めでやらぬでいいんです。同じ人間だよ、あなた。食べ物とかそういうのは引き締めても、また一方でお化粧したいと思っているかもしらぬしね。その分を衣服類に回そうと思っている。だから、あなたがおっしゃるように食料費以外の方では女性の方がだんだん消費がかさんでいるということでしょう。そうすると、AとBを合わせれば大体とんとんだということです、人間男も女だって。もう少しフェミニストになったらどうですか厚生省も。総務長官もどうですか。厚生省、もう少し早目に改善してよ。
  48. 加藤栄一

    ○加藤説明員 ただいま御指摘がありましたように、中央社会福祉審議会の御意見では、「速やかにその実態に応じて是正を図る」ということでございまして、私ども御答申を最終的にいただきましたのは一月に入ってからでございますが、この前にこの答申のもとになりました分科会の御意見というものが十二月に出たわけでございまして、この段階で私ども財政当局とも協議いたしまして五十七年度の予算に間に合わせたということで、私どもとして非常に、それなりに速やかにやるように努力したわけでございます。  また、男女差につきましては縮小傾向にあるということでございまして、完全に男女の消費支出額が同一になったという審議会の御判断ないしは実態ではございません。したがいまして、この縮小化傾向に合わせて私どもの方で是正を図ってまいりたいということでございます。それで、現在の段階では男女の格差が十年前の八〇%から九〇%に縮まりまして、これをとらえましてそれに対応した改定を図ったということでございますが、今後の動向も私どもといたしましてはとらえまして、その結果、必要があればそれに対応するように努力してまいりたいと考えております。
  49. 上原康助

    上原委員 今度改善してもまだ差があるということは、お認めになるわけですね。そうであれば、完全に男女の消費傾向というか消費支出が一律というか同じだということにはならぬと思うので、一挙にはできないにしても早目にその差がなくなるように努力はしますね。その点はっきりさせてください。
  50. 加藤栄一

    ○加藤説明員 今後の男女の格差の縮小化傾向、これを把握した上で対応しなければならないと存じますが、今後ともその実態の把握には努力いたしまして、これに対応してまいるようにいたしたいと思っております。
  51. 上原康助

    上原委員 あなたは課長さんだからそういう答弁でいいかもしれぬが、あなたは政治家だったら絶対婦人票はもらえなくなるよ。そんな、実態調査をやって、後それに基づいてなんて、格差があるというのはわかるじゃないか。これは総務長官、答えたらどうですか。
  52. 田邉國男

    田邉国務大臣 いま厚生省からお答えがありましたけれども、私といたしましてはこの男女の差が歴然としておるということであるならば、やはり是正することに前向きに検討しなければならない、こう考えております。
  53. 上原康助

    上原委員 これは議員と役人の違い、そこにあるんだよ。それはしかし大臣がお答えになったのだから、あなた国務大臣としてそのことは厚生大臣ともひとつ連携をとりながらぜひこのことに御努力をいただきたいと思うのです。  次に進みたいと思いますが、きょう二時間も質問あるかなと思ったら、まだたくさん残っております。  実施時期の問題をお尋ねしたいのですが、これは今度五月になっていますね。恩給法、よくはわかりませんが、これまでずいぶん実施時期の問題も議論されてまいりました。十月実施、九月実施、ありますね。あるいは七月というふうに、かつては人事院勧告もそうでしたが、要するに、たしか五十二年から四月一日実施になったんじゃないかと思うのですね。  そのころは、さっき改定の基本の中でも申し上げましたが、大変上厚下薄だった。これも内閣委員会で、かつてわが党の大出先生がこういう面非常に御専門でやっておられた。私もあのころ出だしでしたが、いろいろ聞いておって、四十七、八年ごろから恩給問題というのは非常にわれわれも努力をしたのですよ。たしか四十八年から五十一年までは一律方式をとっておったと思うのです。だから一律方式になりますと上厚下薄だということでどんどん上の方が高くなっていく。だから、社会党なり野党はずいぶん恩給問題を改善するためには努力をしてきている。選挙になると票はみんな自民党が持っていく。おかしなもので、本当にわれわれも一生懸命努力している。この問題はまさに社会党なり野党が提案をしたからなくなったんだよ、上厚下薄の問題にしても実施時期の問題にしても、さっき言った最低保障の問題にしても、扶助料の問題にしても。まあPRが足りないからそうなっているかもしらぬけれども、もう少しわれわれもこれからPRしようと思っている。それは本当なんだ、事実なんですよ。  今度はいろいろ問題があったということはわかりますが、実施時期を一カ月値切っている。しかも、これはほかの年金制度に与える影響大なりなんですよ。総務長官恩給がそうなるから、五月一日実施だからうちの方もとなっている、向こうに言わすと。また皆さんは、いや年金がそうなるからこっちもということで、どっちももたれ合いというのか責任の転嫁ということになっている。なぜ五月一日にしたのか、まずこれから聞きたい。お答えをいただきたいと思うのです。
  54. 田邉國男

    田邉国務大臣 恩給ベースアップの問題でございますが、当初におきましては、この恩給につきまして年度当初からベースアップをするということが妥当である、こういう考え方でまいったわけでございます。前年度は公務員給与改善基礎といたしまして、いま御指摘がございましたように五十二年から以降は四月実施で実はやってきたところでございます。しかしながら、五十六年度におきましては公務員給与ベースアップにつきまして実質的にかなりの抑制措置が講じられたわけでございます。また同時に、臨調の第一次答申においても五十七年度においてはやはり恩給の増加を極力抑制をしろ、こういう御指摘がございました。また同時に、例年にない厳しい財政事情のもとにおいてやむを得ない措置をとったわけでございます。したがいまして、五十七年度においては恩給ベースアップの実施月につきましても、他の公的年金のスライド実施月と横並びで一カ月繰り下げるということに相なったわけでございまして、私といたしましてはまことに残念だと思っております。
  55. 上原康助

    上原委員 御心中のほどはわかりますが、われわれは確かに行革なりいろんな財政の抑制、むだな支出を省くということは基本的に賛成です。しかし、福祉を後退させていかないという前提があるわけですね、基本があるのです。恩給に対しても、先ほどから議論しておりますように、その性格とかいろんな旧軍人恩給あり方とか問題はあるにしても、しかしそれはやはり生活保障であることには間違いない。社会保障的性格を持っているのもまた私は否定できないと思うのですね。そうだとすると、ほかの年金にしても、国民年金あるいは厚生年金その他の共済年金にしても、社会福祉を後退をさせた形の行革とか、特に弱い立場にある人々にしわ寄せをするようなことは断じてあってはいかぬとわれわれは思うのですね。そういう面からこの実施時期の問題も、せっかく定着をしている中で五月一日にまた変更していくということは、総務長官の残念だというお気持ちはわかるが、われわれとしてはこれは承服しがたい、この点を強く指摘をしておきたいと思います。  そこで、これは一カ月繰り下げたというのでしょうね。四月一日に繰り上げてすると、初年度、平年度どのくらいの負担増、予算がかかるのですか。
  56. 島村史郎

    島村政府委員 一カ月繰り上げますと、約七十億円必要であるというふうに考えております。
  57. 上原康助

    上原委員 全体で七十億円ですか。
  58. 島村史郎

    島村政府委員 ベースアップ部分だけでございます。
  59. 上原康助

    上原委員 ですから、初年度、平年度分まで通して五十七年度全体で七十億ですね。そうしますと、総務長官、七十億という、大きいといえば大きいですね、こういうことで、恩給関係者何百万でしたかの方々に非常に御不満を持たれるというのはどうなんでしょうね。その点の改善余地はないですか。現在二百四十七万ですか……。
  60. 田邉國男

    田邉国務大臣 四月に繰り上げの問題でございますが、実は私といたしましては先ほど申しましたようにまことに残念でございますが、しかし政府全体といたしましては、財政事情の問題もあり、また国民全体がこういう厳しい財政の中でお互いに苦しみを痛み分けする、こういう観点に立ってこういうやむを得ない今回の措置をとったわけでございますから、その点につきましてはぜひ御理解をいただきたいと思います。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席
  61. 上原康助

    上原委員 それはそれなりの政府のお考えでしょうが、われわれとしてはやはり福祉を後退させてはいかぬ、せっかくいろいろな積み上げで努力をして四月一日実施ということを制度化というか方向づけをしたわけですから、行政改革、財政というようなことがあるにしてもこれをまた繰り下げるというようなことは納得がいきません。予算高にしても七十億、そういうのは防衛費のどこか少しぐらい、羽ぐらい落とすだけで出てきますよ。これはまたいずれやりますが、そういう姿勢を問題にしておきたいと思います。この実施時期は全般的に四月一日にやれということが従来からのわれわれの主張だった。いまでも一部については九月一日実施もあるわけでしょう。それはすべて四月一日に持ってこい。しかも、公務員給与改定に準ずるといっても、これは実態的には一年おくれなんですね。総務長官としては大変苦しいお立場だったかもしれませんが、強い不満があるということは、これは何も社会党だけの言い分じゃないと思いますので、ぜひお含みをいただきたいと思います。  時間がなくなっても困りますから次に進みたいと思いますが、せっかく厚生省も呼んでありますので、これもこれと関連しますからちょっと先に聞いておきたいのですが、沖縄の六歳未満の援護措置の問題です。これは長い経緯がありまして、あるいは一々申し上げるまでもないかと思うのですが、若干指摘をさせていただきたいのです。  八〇年、五十五年三月四日、私、予算の分科会でこれを取り上げて、当時野呂さんが厚生大臣をしておられた。野呂さんは、戦後処理について今日の制度で処理できないものをどうするか、総務長官とも十分に話し合ってみる、沖縄における六歳未満の援護法の適用について、戦場になったことであることからして当然国の責任で援護措置を講ずる必要があると思う。ここからこの問題は、長い戦後処理問題としてあったのですが、一歩一歩前進をしてきたわけですね。  八一年、五十六年の八月段階で、国から六歳未満にも援護法を適用できるかどうかを検討したいという連絡が県になされておるのですね。これは総務長官は沖縄開発庁長官でもありますから……。八一年の十月から八二年、ことしの一月にかけて沖縄県は全県二十五会場で援護法適用についての説明会を持っておる。その後、市町村を通じて障害年金なりあるいは弔慰金等の請求手続を受けられるかどうか、その請求手続をしておるということが現状のようなんです。  そこで問題は、いろいろ報道されている点あるいは関係者が懸念をしている点は、どうもこの実態掌握というのが大変むずかしいので、一応六歳未満の援護措置的なことが可能だということを政府もこれまでしばしば国会でもあるいは県にも通告しておきながら、該当者の補償措置ができないのじゃないかという心配を最近に至って非常に持たれているわけですね。私はそういうことは万々あり得ないと思いますし、少なくとも国会で担当の大臣がはっきり答弁をした以上はそういうことにはならないと期待をしているわけですが、これはたしか厚生省の援護局ですね。現段階でこの問題についてどういうふうな作業を進めて、県側とはどういうお話し合いをしておられるのか、またこれの解決の見通し等含めてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  62. 沢江禎夫

    ○沢江説明員 お答え申し上げます。  六歳未満の方々につきましては、地元の新聞によりましても援護法適用ゼロかというような報道もあったようでございますが、私ども決してそういうふうには考えておりません。現在県におきまして関係の資料を整備中ということで、国にはまだ進達がないということでございます。御承知のようにスタートしてまだ間もないということでございまして、私どもといたしましては、県からの進達があり次第、できるだけ早く裁定の事務を進めたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、資料の整備等につきましてはなかなかむずかしいというような状況もあるわけでございますが、必要な書類につきましてはやはりまず御本人にお集めいただくということでございますけれども、御承知のように沖縄につきましては全島が戦場になったというようなこともございまして、なかなか関係の資料の整備がむずかしいということでございます。私どもといたしましては、そういった状況、特殊性を十分踏まえまして、必要に応じまして助力を行うということで適切に対処していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  63. 上原康助

    上原委員 これは長い経過がありますし、特に援護法の適用というのは援護法の趣旨、目的という一定の枠があるからなんでしょうが、しかし、いまおっしゃいましたように戦場になったということ、特殊な事情にあるということを含めて考えますと、援護法的措置というものは運用面なりでいろいろ考慮できる面も出てくると私は思うのですね。したがって、そういうことを念頭に入れていただいてぜひ早目に解決をしていただきたい。いま、県からの進達がまだなされていないからやらないだけであって、この問題をうやむやにするつもりはないという御答弁でほっとするわけです。  そこで要望を含めて。県側も援護課あたりでいろいろとやっているようですから、よく連絡をとっていただいて早目に解決をするように、まあどの程度の助言なり行政指導ができるかわかりませんが、やっていただきたいというのが一つ。  二点目に、現存している方々の中には障害者もいらっしゃると思うのですね。そういう障害者等できる者から随時やっていく、優先順位なり決めて資料の整った者から進達をさせていく、それが二点目です。  三点目は、この問題をいつまでという期限を決めて打ち切るとか、そういうことはないと思うのですが、やはりいろいろと新たな資料なり証拠といいますか、それを申請できるような手続をとらなければいかないという面があると思うので、そういうことについてはどういうお考えなのかということ。  もう一つ、漏れ聞くところによりますと、いろいろな面で事務手続が非常にうるさいということを言っているのですね。もしそうであるとすると、そういう該当者、受けよう、進達しようとする人々の意欲を大変阻害をしていくのじゃないかという感じがします。その点は県あたりがやると思いますが、たとえば戦闘参加者申し立て書とか戸籍とか診断書など十種類ばかりの書類が必要になっているというのですね。だからめんどうくさがって、ああもうやめた、こうなりかねない向きもあるということですので、そういう面を含めて簡素化できる面は少し簡素化をしていただく、あるいはもっと親身になって世話をしてあげるとかやるべきだと思うのですが、その点はいかがでしょう。     〔愛野委員長代理退席、田名部委員長代理着席
  64. 沢江禎夫

    ○沢江説明員 十種類ほどの資料が必要だということでございますが、いずれも基本的な資料でございまして、決して過酷といいますか、無理な資料ではないというふうに考えております。ただ、先ほども申し上げましたように、たとえば証人集めとか資料集め等につきましては沖縄の特殊性から非常にむずかしい点もあるわけでございますので、それにつきましては必要な助力を行いたいと考えておるわけでございます。  それから御質問の第一点でございますが、進達がおくれておるわけでございます。それにつきましては連携を密にしまして、進達促進についてお願いしたいと思っております。  第二点は、障害者につきまして早目にやったらどうかというような御趣旨と思いますけれども、御趣旨の方向で進めてまいりたいと思っております。  それから申請の期限等があるのかどうかということでございますが、特にございません。たてまえとしまして時効がございますけれども、それにつきましては時効宥恕というようなことも考えられるわけでございますので、適正に運用していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  65. 上原康助

    上原委員 それは基本的な資料というか手続書類は必要かもしれませんが、そのことが難点になってせっかくの措置ができなくなるようなことがないようにぜひ御配慮いただきたい。  それと、以前に戦没者の遺族の皆さんが見舞い金請求の際に国に提出した資料ですね、いま言う基礎資料、基本資料というか、そういうものを今回の手続の参考のため返してほしい、あるいはそれを利用できるようにしてほしいという要請をしているようなんだが、国の方はそれに応じていないということも聞かされているのですけれども、その点はどうなんですか。もう処分して、ないのか、物理的にできないのか、どうなのか。
  66. 沢江禎夫

    ○沢江説明員 過去に戦闘参加者ということで援護法を適用するに際しまして、県を通じまして調べた資料はございます。ただ、あくまでも実態把握のための資料でございますので一般には公開しないということでございますが、先ほど来申し上げておりますように、資料集めが非常に困難だというような状況がございましたならば、個々の事例に即しまして情報を提供するということで対応していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  67. 上原康助

    上原委員 そうしますと、ケースによってはそれを利用することも考慮なさるということですね。
  68. 沢江禎夫

    ○沢江説明員 おっしゃるとおりでございます。
  69. 上原康助

    上原委員 そこで総務長官、あなたは沖縄開発庁長官でもありますし、また先ほど引用いたしましたが、野呂厚生大臣のときもそういうお答えをしておりますし、総務長官とも十分連絡をとって早目に解決したいということですから、これはもう長い間の懸案なんですよ、正直申し上げて。せっかくみんなの努力によって実現可能な段階まで来たのに、またひょっとするとゼロになるんじゃないかという心配をしているわけですね。相当の関係者がいらっしゃる。そういう面で総務長官としても厚生大臣ともよく相談をなさって、いま援護課長の答弁もありましたので、県にも助言なさるところは助言をしていただいて、早目にできるものから一つ一つこの六歳未満の方々についての解決策をやっていただきたい。長官としても特段の御配慮と決意をお願いしたいわけですが、お答えをいただきたいと思うのです。
  70. 田邉國男

    田邉国務大臣 援護措置の問題でございますが、ただいま厚生省の方からいろいろと答弁がございまして、私も聞いておりましたけれども、厚生大臣とも十分その内容を打ち合わせ、そしてこの対応をしていかなければならない、こう考えております。
  71. 上原康助

    上原委員 ぜひひとつ早急に処理できるように改めて要望申し上げておきたいと思います。  法務省いらしておると思うので、このこととの関連で沖縄の戸籍の訂正問題がたくさん出ていると聞かされているわけですね。全土の二割から三割近い申請になっているという報道もありますが、そういう実態がどうなっているのか。  特に例を申し上げますと、終戦直後といいますか、昭和で言うとたしか二十五、六年ころじゃないかと思いますが、読みやすい名前に変えていく、そういう風潮というか傾向があったわけです。たとえば沖縄でむずかしいような名前で「仲渠村」というのがありますが、これを「仲村」に変えるとか、「諸見里」だったら「諸見」に変えるとか、一つの例ですが、そういう面があったのです。それがゆえに、いろいろ社会生活が落ちついてみて相続権の問題とか、いま言う戦災補償の問題とか、いろいろな権利関係が出て、やはり元のものに戻さぬと系図とかそういうものもできなくなるということで、改めて訂正をした方々もたくさんおられると思うのですね。そういう面でいま実態はどうなっておるのか、もしおわかりであればお聞かせをいただきたいと思いますし、また戸籍の訂正というものは、ちょっと戸籍法の二十四条を私も見てみたのですが、あの面からするとそんなにむずかしいことでもないような感じもしますが、仮に訂正をしようという申請をしてもできない場合はどういう場合なのか。そういう面、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  72. 大森政輔

    ○大森説明員 お答えいたします。  まず、沖縄関係の戸籍訂正件数でございますが、私どもの把握しておりますところによりますと、最も最近の昭和五十五年度で四千三百八件になっております。沖縄がいわゆる復帰いたしまして、四十七年以降私ども統計数字を持っているわけでございますが、四十七年が四千五百三件、それ以降六千件から四千件の間を上下しているというような実情でございます。  それから、沖縄で四千から六千件に達しているその原因は何かということでございますが、御承知のとおり沖縄の戸籍は戦災によりまして大半が滅失いたしました。そして、昭和二十七年の四月一日に戸籍整備法という特別法が制定されまして、二十九年の三月一日から再製作業が始められたわけでございます。何分にも届け書あるいは戸籍副本その他の再製資料がほとんどない、しかも関係者も非常にたくさん死亡してしまっている、そういう非常に困難な状態のもとで、文字どおり関係者は血のにじむような努力をいたしまして、一応昭和四十五年末に海外移住者で沖縄に在籍している者を除いて、ほぼ可能な者は再製作業が完了したというふうに私どもは報告を受けております。しかしながら、いま申し上げましたように非常に不完全な資料に基づいて再製されましたために、必然的に日本本土におけるものよりも戸籍訂正数と申しますか戸籍訂正率が非常に高くなっているという実情になっております。これはある意味ではやむを得ないことではなかろうかと私ども考えているわけでございます。  次に、誤りが戸籍の記載にございますと、これは戸籍法の理想から申しましてできるだけ速やかにこれを訂正するという措置が必要でございます。そのために現行戸籍法はいろいろな手続を予定しておりまして、最も基本的なものが戸籍法百十三条、すなわち家庭裁判所の戸籍訂正の許可審判をとりまして、それに基づいて戸籍訂正の申請をするというのが現行戸籍法が予定している最も基本的な手続でございます。そのほかに、紛争解決に関する判決が確定した、その内容と戸籍の記載がそごしている場合には、そういう判決に基づく戸籍訂正ということも予定しているわけでございます。  なお、ただいま先生指摘の戸籍法二十四条の職権訂正、いわゆる市町村長の職権による訂正の問題でございますが、この規定に基づく訂正措置と申しますのは、非常に戸籍の記載の誤りであることが明白である、そして軽微であるという場合に限られる規定であるというふうに立法当初から解されております。したがいまして、戸籍面から見て誤りであることが一見明白である、あるいは届け書が残っておりまして、その届け書と戸籍の記載を対比すれば誤りが一見明白である、そのような場合には市町村長が監督局の許可を得て職権で訂正することができるという、あくまで例外的な規定でございます。  したがいまして、先ほど非常に読みやすい名前を申告して戸籍を再製された方が多いということでございますが、そういう方々が先祖伝来の氏あるいは名前に直したいと思われるときに、そういう非常に一見明白に記載が誤りであるという資料がございますれば、その資料を添付して市町村長に職権訂正の申し入れをしていただければ訂正できるわけでございますが、通常の場合はやはり地縁、血縁、証人の証言等に基づいて家庭裁判所で審理をいただき、その許可を得てその戸籍訂正をしていただくということに相なろうかというふうに考えております。  以上でございます。
  73. 上原康助

    上原委員 私もいま聞いて大変びっくりしたのですが、四千件から六千件もある。いかに戸籍の面でも戦争の後遺症というか戦後処理としてまだ残っているか。本当に何もなかったのですから。  そうしますと、いまの御説明からすると、戸籍を訂正したいあるいは修正というかやりたいという意思表示をすれば、一定のルールを踏めばできないことはないということですね。  私がなぜこういうことを聞いたかといいますと、さっきの六歳未満の補償問題、その他の戦災補償の問題でも、たとえば家族が五名おられて、二人は戦争で亡くなった、三名でもいいですね、子供さんの場合は戸籍に載っけないで申告したという例もあるわけですね。新たに、これはおれの子供だった、家族だったという証明をやろうという問題なども今回出てきている。そうするのに時間がかかっている面もあるわけで、これはぜひ厚生省も法務省も、そういった事情等については申告者というか申請者の意向などを十分聞いて遺憾なきを期すようにしていただきたいわけですが、修正したい、訂正したいという場合は、その点はそんなに問題はないですね。
  74. 大森政輔

    ○大森説明員 ただいま御質問の件は、いわゆる再製の一部異動と私どもが申している類型に当たるのであろうと思います。一応戸籍としては再製されたけれども、本来記載されていたあるいは記載さるべきものの一部が記載されずに現在に至っている、そういう場合の措置の件であろうというふうに判断するわけでございますが、この件に関しましても、それに対する対処は、先ほど申し上げました一般原則によっていただく以外にいたし方ないわけでございます。  二十四条二項の職権訂正でできる場合と申しますのは、たまたま以前交付を受けていた戸籍謄本を所持している、記載事項証明を所持している、あるいは届け出の受理証明書を所持している、そういうような資料があれば一番簡単でございます。  さらに、戦闘参加予定者該当者名簿というものがあるようでございますので、それに記載されているという旨の記載事項証明をお出しいただければ、この件に限っては二十四条の職権訂正でいいということを、昭和三十七年に民事局長が回答を出しておりまして、これは現在もそのように取り計らっていいものと私ども考えております。  以上申し上げましたような資料がない場合は、やはり家庭裁判所で御審理を願った上で訂正申請をしていただかないことには、どうもこちらとしていかんとも対応のしようがないということでございます。
  75. 上原康助

    上原委員 戸籍台帳というのは基本的な問題ですから、大変慎重を期さなければいかぬし、また正確を期さなければいかぬということはよくわかります。要するに、戦災によって戸籍台帳も消滅をして再製をしなければいけなかった、それだけに、いまでも四千件以上のそういった訂正なり追加というか異動というのが出ているというこの実態は、総務長官関係者も御理解をいただいて、さっきの問題等との関連もありますから、早目にこういう問題も解決をするように、ぜひひとつ特段の御努力をお願いをしておきたいと思います。  そこで、時間もだんだん迫って参りましたので次に移りますが、総務長官にちょっとお尋ねをしておきたいのです。  せんだって三月二十五日に、戦没者追悼の日に関する懇談会から報告書が出されておりますね。これは、中山前長官のときにこの懇談会が設置をされて今回の意見をまとめたということになっているわけです。これは私もちょっと目を通してみましたが、この文章というのはなかなかの知能犯ですね。しかし、そのねらいとするところは、われわれは絶対に賛成しがたい。  戦没者を追悼し平和を祈念する日を国が行う行事として設定する、これについて一体どういうお考えを持っておられるのかということが一つ。  それと、近々、閣議了解になるのか閣議決定になるのかよくわかりませんが、そういう方向にいま進みつつあるんじゃないかと私たちは見て懸念をしているわけですが、そういうことについての御所見があれば伺っておきたいと思います。
  76. 田邉國男

    田邉国務大臣 御指摘のように、去る三月二十五日に戦没者追悼の日に関する懇談会から提出をされました報告書によりますと、政府が先の大戦において亡くなられた方々を追悼し平和を祈念するための日を新たに設けることは適切な措置であるという結論に達したわけでございます。  私どもはこの報告書を受け取りまして――いままで毎年八月十五日は、戦没者の霊を慰める、こういうことで行事が続けられ、そしてそれは毎年閣議決定事項として行われた行事でございます。こういう問題につきましてどういうように今後やるべきか、こういうことで、実は戦没者追悼の日に関する懇談会というものが昨年の八月から催されまして、九回に及んでそれぞれの委員の皆さんが自由な発言の中でいろいろと討議をされ、そして、それぞれの人たちの意見というものが同じ結論に達した、こういうことでございます。したがいまして私どもは、この八月十五日を戦没者を追悼し平和を祈念する日として閣議決定をすることが適当ではないか、こう考えております。政府といたしましては、懇談会の報告の趣旨を尊重をいたしまして必要な措置をとってまいりたい、かように考えておる次第であります。
  77. 上原康助

    上原委員 懇談会設置の段階から私たちはこれは注目をしておったわけで、その懇談会のメンバーを見ても、果たして公正、公平というか、そういう意見書が出るかどうか、偏ったものになると思ったのです。案の定そういう方向にいま来ている。それは見解の相違とかそういうことではなくして、確かにおっしゃるように過ぐる大戦で犠牲になられた方々を追悼する、あるいはその犠牲者に対して国が補償するとか、国民としてもそういうことが再び起こらないように誓い合うということは必要なことですね。その点まで私は否定をしようとは思わない。また社会党もそういう基本理念を持っておる。だが、きょうはもう多くは触れませんが、いま総務長官はそういうものは尊重していきたい、近々閣議でもこの意見書に基づいた日の設定というものをやっていきたいということなんだが、そのねらいとするところをわれわれは注目、重視をせざるを得ないわけですね。  いまお答えがありましたように、従来八月十五日に全国戦没者追悼式というのが持たれてきたことはおっしゃるとおりなんです。しかし、その持たれたすぐその足で靖国神社に総理以下閣僚が参拝をする。これなども、ずいぶんこの国会でも議論をされておりますが、私的だとか公的だとか、一体一国の総理大臣が総理大臣というふうに記帳までして、なお私的行為だなんて、そんなばかな論議があるかというのだ、本当に。そういうことを、ぬけぬけという表現をしていいかどうかわかりませんが、やっておきながら、なお私的行為だとか、玉ぐし料をポケットから出せば公的行為ではないのだとか、総務長官、良識のある人ならそういう論理は成り立ちませんよ。これは靖国神社の国家護持を目的としていることは間違いない、このねらいとするところは。そういうことは私たちとしては断じて承服できないし、また国民もそこまで――私がさっき言ったように、これはなかなか考えた文章であることは間違いない。簡単に読むと、いいことが書いてあると言うかもしらぬ。実際、それほど考えた文章なんです。しかし、その背景というもの、目的としているのは何かということをわれわれは見抜かざるを得ない。そのことをきょう強く指摘しておきたいと思うのですね。  それと関連をして、最近たとえば総理が反核決議に対してツルの一声で、地方の時代と言いながら、そんなのをやってはだめだ、反米になるからやめろということになると、今度自民党本部からそういう指令を出したら、地方でもどんどんあれが出ていますね。そういう政治のあり方というのは、民主主義を封殺するものです。圧殺するものなんだよ。それはよろしくないです。自民党にだっていろいろな方々がいらっしゃる、良識的な方々もいる、地方には地方考え方があるわけだから、そういうところまで中央権力が介入するという政治の仕組みなり構造なり考えというものは、これは民主主義に逆行するものだと強く指摘しておきたい。  同時に、なぜ私がこの問題をきょう簡単に持ち出すかというと、三月二十四日の大阪地裁の判決があるでしょう。忠魂碑の敷地を自治体が無償で貸したり移転費用を公費で負担することは違憲だ、憲法の政教分離の原則に反する、憲法の二十条、八十九条に。だから、新聞の社説においても「閣僚の靖国参拝など政教分離の原則を軽視し、なし崩しにしようとする傾向が強まっている折だけに、この判決は時流への警鐘として評価されるであろう。」こういう指摘もあるわけですよ。  こういうときに、あなたがおっしゃるように、これは懇談会で九回にもわたって検討したことだから閣議でそれを尊重していきたいということは、いささかどうかと思う。この点は単なる見解の相違とかあるいはそうではないのだということだけで片づけられる問題ではないと私たちは大変重要視をし注目をしておるということも申し上げておきたいわけですが、いま私が引用した、あるいは申し上げたことに対して、総務長官はどういうお考えなのか。特に、三月二十四日の大阪地裁の判決等についてはどのように見ておられるのか、これとの関係でこれはどう思うのか、改めて御所見を聞かせていただきたいと思います。
  78. 田邉國男

    田邉国務大臣 ただいま戦没者を追悼し平和を祈念する日を設ける、この問題につきましていろいろと御意見がございました。私は、日本の国民である以上、さきの大戦において多くの同胞を失った、その人たちに対して心から追悼をし平和を願う、今日の平和があるのはこの人方の、多くの人たちの犠牲の上にあるのだということを心に銘記する、これは国民ひとしく同じ感情ではないか、心情ではないか、私はこう思っております。したがいまして、この問題と靖国神社の問題を結びつけられるのですが、私はこれは別問題だと思います。  ただ私は、靖国神社にたまたま亡くなられた同胞の方たちがおいでになる、そこに個人としてその追悼の意を表す、そして平和を祈念するということについては、何ら抵触するものではない、私はこう考えております。また同時に、この問題は宗教とかそしてまた宗派だとか、いろいろのものに関係ないものである、私はこう判断をいたしております。多くの良識ある国民は、私はそう理解をしておると思います。  また同時に、先般の大阪の判決の問題につきましてもいろいろ御指摘がございましたけれども、またこの判決については大変に大きな波乱を呼んでおる、またこれに対するいろいろの意見国民の中に多くあることも事実であるということを御理解をいただきたいと思います。  以上です。
  79. 上原康助

    上原委員 きょうはこれが本題じゃありませんからこの程度でとめますが、しかしあなたが後段でおっしゃったように、大阪地裁の判決に対して国民の間でも反応がある、いろいろの意見もある。逆に前段の方もいろいろの意見があるということもおわかりいただかなければいけませんよ。あっちだけの意見を聞いて、ぼくらが言っている意見意見じゃないと見られても困るのです。  そこで、確かに終戦というか、八月十五日というものを、平和を願うという面は共通するのです。しかし、平和を願いながら一方では核軍縮も反対だ、核軍縮を決議するのもけしからぬと言ってみたり、どんどん軍備を拡張していく、それが本当に平和を願う心ですかね。しかも問題は、この八月十五日、沖縄なんて八月十五日は関係ありませんよ。玉音放送なんてぼくらは聞かなかった。そんな状態ではなかった。むしろ玉砕だと沖縄は言っておった。そういうところに、国家権力で、沖縄の戦争犠牲者まで含めて一緒にやれということでしょう、これは。局地的なことは持ち出したくありませんけれども、そういう意見だって十分正当性があるのですよ、長官。だから、これは問題なんだということ。八月十五日なんて本当に関係ないですよ。そういういろいろな、この問題については非常に問題があるということと、あなたは靖国神社とは関係ないとおっしゃるけれども、これは政府国家権力で密接不可分の関係をつくろうとしていることだけは間違いない。そのことを私たちとしては承服できないということを改めて申し上げて、この点は、きょうの段階はこれでとめておきたいと思います。  そこで、時間が参りましたから、あと一、二分でもう終えたいのですが、旧日赤看護婦の問題と、それから旧陸海軍従軍看護婦の件ですね。  これもみんな苦労して、ようやくいまの段階にまで持ってきた。もう詳しいことを申し上げませんが、ほかの方々からもお尋ねがあったかと思いますが、これも十万から三十万の範囲でやって、関係者にとっては、この点についてもやっと少しは報いられたというお気持ちだろうと思うのですが、恩給制度になじまないとか、あるいは年金的なものでないからいまのような支給限度しかできぬということだと思うのです。しかし、これは早急に改善をする必要があると思うのですね、総務長官。やはり該当者にしてみれば、それだけではなかなかあのときの御苦労に報いているというふうには受け取っていないと私は思う。  そういう面で、財政問題、いろいろあるでしょうが、やはり政治とか行政というものは、一番目の当たらないところに絶えず、あなた方がこの間沖特でもそういうことをおっしゃっていたけれども、日の当たらないところに政治の光を当てるというのが政治の理念でなければならない、その点は全く同じなんですよ。上は、高給取りは何も考えないでも自然とだんだん上がっていく。実際、厚味がある。だから、下の方をどう改善していくかということがやはり基本でなければいけないと私は思いますので、むずかしいことがあるということはわかりますが、この旧日赤看護婦さんの問題や旧陸海軍看護婦さんの方々のいわゆる給付金についても漸次改善をしていかれるように特段の御努力をいただきたいと思いますが、この点についてはひとつ長官の方からお答えを賜りたいと思います。
  80. 海老原義彦

    ○海老原政府委員 旧日赤救護看護婦、それから旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金は、いま先生お示しのように、女性の身でありながら、軍の命令等によりまして戦地あるいは事変地に派遣されて戦時衛生勤務に従事したという特殊事情を考慮いたしまして、日本赤十字社が支給することとしたものでございます。この経緯を考えまするとき、これによって所得の保障を図るというような、いわゆる年金的な性格を有するものではないと考えられることも、いま先生お示しのとおりでございます。  しかしながら一方、前第九十四国会におきましての附帯決議の御趣旨もあったことでございます。慰労給付金の増額ということにつきましては検討いたしましたけれども、何分、いま申し述べましたような慰労給付金の基本的な性格ということから見まして増額というのは大変むずかしい問題でございまして、現在のところ、慰労給付金の額を改定するというようなことは考えていない次第でございます。
  81. 上原康助

    上原委員 現在のところというから、いつまでもということではないと思いますが、これも長官、事務当局ではそういうお考えかもしれませんが、政治の話として、さっきの最低保障の問題にしても、こういうわずか十万から三十万――年間ですよ、これは。これでやるということではないと思いますから、さっき申し上げたように、もう少しそういった苦労なさった方々に対しては、それこそやるべきなんですよ、本当は。そういうこともりっぱにやっておればあれかもしれないが、そういうこと、犠牲者の補償というものはやらぬで、どんどん、何かここあたりから流しているような、進軍ラッパを吹くような、そんな政治なんて長続きしませんよ。  その点については、いま事務当局からありましたが、ひとつ国務大臣というお立場でよく関係者とも御相談をして、直ちにできなければ、漸次というか随時そういうことも改善措置をとるように御努力をいただきたいのですが、最後に長官の方からお答えいただきたい。  きょうは、もう一つ老齢福祉年金と併給支給問題等も触れたかったのですが、この件については、恩給、そういう面の重複支給とかということで御検討するということですから、これもあわせてやっていただくということをつけ加えて、いまの件について長官としてどういうふうにお考えなのか、また改善措置をとっていただきたいと思うのですが、お答えをちょうだいして、質問を終わりたいと思います。
  82. 田邉國男

    田邉国務大臣 慰労給付金の問題でございますが、先ほど局長からお話がございましたように、年金だとかそれから恩給だとか共済年金とは性格を異にしておる、これは事実はそうでございます。ただ、経済情勢の変化の中で、片方が上がっていくのにこの問題だけが据え置かれているということについては、何かやはり不自然な感じがいたします。そういう意味では、私どもも日赤等とも十分相談をいたしまして、これが改善されることができ得るならばその方向で対応をしてまいりたい、こう考えております。
  83. 上原康助

    上原委員 終わります。
  84. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 午後一時三十分再開することとして、この際、休憩いたします。     午後零時四十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十四分開議
  85. 石井一

    石井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木下敬之助君。
  86. 木下敬之助

    ○木下委員 まず、今回の恩給改善に当たってどういった考え方改定を行おうとしているのか、基本的な考え方をお聞かせください。
  87. 田邉國男

    田邉国務大臣 昭和五十七年度における恩給改善措置は、例年にない厳しい財政事情のもとに、公務員給与抑制やまた臨調の答申を勘案しつつ、第一には、経済情勢の変化に伴い、年金恩給の実質的な価値を維持するため、公務員給与改善基礎として恩給年額を増額するということ。第二には、戦没者の遺族に支給する公務扶助料や傷病者の恩給改善をして、これらの者に対する国家補償の一層の充実を図ること。こういうことを基本的な考え方として、この趣旨にのっとって所要の改善措置を講ずることといたしておるわけでございます。
  88. 島村史郎

    島村政府委員 いま大臣が申し上げたとおりでございますが、これを具体的に若干数字的に御説明申し上げますと、最初恩給年額の公務員ベースによります増額につきましては、仮定俸給を、百二十八万円以上の方々に対しましては四・五%プラス一万二千八百円ということで増額をし、百二十八万円未満の方につきましては五・五%ということで増額を図ったわけでございます。  なお、公務扶助料につきましては、月額現行十万三千円のものを十一万円まで六・八%引き上げをいたしますし、また、傷病恩給につきましては、この公務扶助料に対応いたしましてそれぞれの引き上げを図ったのでございます。
  89. 木下敬之助

    ○木下委員 この恩給については四月から実施すべきだという国会における論議が長い間行われ、附帯決議も繰り返し付されて、ようやく昭和五十二年以降四月実施が定着したところでありますが、今回それを五月から実施するとした理由はどこにあるのでございましょうか。
  90. 島村史郎

    島村政府委員 先生がいま御指摘のように、昭和五十二年からずっと四月実施でやってまいったわけでございますが、特に昭和五十七年度につきましては、一つには、臨調の答申がございまして、その臨調の答申には昭和五十七年度においては恩給費の増加を極力抑制すべきである、こういう趣旨の答申が出されておるわけでございます。一方、国家公務員給与ベースアップにつきましても実質的にかなりの抑制措置がとられているということもございます。一方また、財政的にも非常にむずかしい状況にございますので、やむを得ない措置として今回四月のものを一カ月ずらしてまいったということでございます。
  91. 木下敬之助

    ○木下委員 いろいろな事情でしたのでしょうし、いまの理由もお聞きいたしましたが、五月と一月おくれにした理由というのはどこにあるのですか。
  92. 島村史郎

    島村政府委員 私どももできる限り期間を短縮いたしまして最小限にとどめたいということで四月を五月にいたしたのでございまして、この議論の過程の中においては、七月にすべきであるとかあるいは六月にすべきであるとかいろいろ議論がございましたが、恩給受給者のことも考え、一番短い期間をとったということでございます。
  93. 木下敬之助

    ○木下委員 現在の恩給受給者の実情はどうなっているのか、五十七年の受給者の人員また予算額をお伺いします。
  94. 島村史郎

    島村政府委員 昭和五十七年度予算におきます恩給支給対象人員が二百四十七万人でございまして、所要額が一兆七千二百五十億円でございます。このうち年金恩給支給対象人員が二百三十七万人、所要額が一兆七千二百十九億円ということでございます。  さらにその内訳を申し上げますと、普通恩給受給者数が百二十一万八千人、それに対します所要額が五千七百六億円、傷病恩給が十二万七千人でございまして、それの所要額が千九百五億円でございます。また、扶助料は受給対象者数が百一万五千人でございまして、所要額が九千五百七十七億、傷病者遺族特別年金が一万人でございまして、それに対します所要額が三十一億円ということでございます。
  95. 木下敬之助

    ○木下委員 一カ月繰り上げて四月から実施した場合にはどのくらい要るようになりますか。増加分で結構です。
  96. 島村史郎

    島村政府委員 所要額が大体七十億円というふうに私どもは見込んでおります。
  97. 木下敬之助

    ○木下委員 現職公務員給与改定は一部据え置かれましたが、実施時期は四月から行われております。恩給の個別改善は見送られていますが、これは別問題としても、実施時期は公務員と同時期に四月からとすべきではなかったか。現職公務員と同じ扱いであったらおくれても納得がいくと思うのですが、この点どうお考えになりますか。
  98. 島村史郎

    島村政府委員 いまさっきも申しましたように、昭和五十七年度につきましては、臨調の答申で恩給費の増額について極力抑制しろ、こういうことでございます。これを抑制いたしますためには二つ方法考えられるわけでございまして、一つは増加率を抑制する方法と、もう一つは時期をずらす方法、この二つしか考えられないということでございます。  いろいろ恩給受給者のことを考えますと、私どもとしては恩給受給者のためには増加率を抑制すべきではない。これは後年に非常にいろいろ影響を及ぼす問題でございます。したがいまして、私どもとしては増加率でこれを抑制するという方法はとりたくはないということでございます。そうしますと、時期でこれを抑制する以外に方法はない。しかもそれを最短期間の一カ月をとったということでございまして、国家公務員につきましては、確かに四月から実施されておるわけでございますけれどもベースアップにつきましては、ボーナスについてこれが抑制をされておるわけでございまして、そういう意味からも、国家公務員については四月から実施されておりますけれども、今回の臨調の答申に基づいて恩給公務員のいろいろの実情を判断しながら、私どもは最善の方策をとったというふうに考えておるわけでございます。
  99. 木下敬之助

    ○木下委員 いま、臨調の答申にそのとおりに従ったときに二つあると言われましたけれども、ベース自体が全体の経済の動きの中で抑制されておれば、一応恩給抑制されたと見れるのじゃないですか。率を変えたり実施時期をずらしたりしなくても、そのもともとのベースが抑制されていけば抑制されたと見れるのじゃないかと思いますし、また、臨調の答申にできるだけ沿ってやろうという国民の意思でございますから尊重していかなければなりませんけれども、やはりその論議というのは限界もございますでしょうから、この問題はこの問題で従来から検討されてきた四月で実施しようという考え方があるわけですから、それにこだわった短絡的な最小限の一月にしたというのは、どうも私どもには言いわけ的にしか考えられないわけです。  なかなか納得できませんので少し確認さしていただきたいと思いますが、四月に実施してきたのは、昭和四十八年は十月で、だんだんと段階的に実施時期を早めてきて、五十二年から四月ですね。こうやって早めてきたというのはどういう理由で早めてきたのか、四月実施を定着させた理由というのは何であったのか、お聞きいたしたいと思うのです。
  100. 島村史郎

    島村政府委員 私ども恩給費のベースアップ考えます場合に、いかなる指標をとるかということが問題でございまして、これは昭和四十八年から公務員給与ベースアップという率を使って実はスライドをしてきておるわけでございます。そうしますと、この公務員給与ベースアップの率を使うということになりますと、それの一番直近の指標は要するに前年度の指標であるということで、前年度の指標を使います場合に、恩給法の二条ノ二で、速やかに要するに改善措置をとるべきである、こういうことが書いてございますので、したがって、それによって一番近いところは四月からだということで、逐次、五十二年から十月のものを九月にし、八月にし、七月にし、それから四月にしてまいったということでございます。
  101. 木下敬之助

    ○木下委員 ですから、四月が最適であるというその事情は、現在も少しも変わってないと言えますね。
  102. 島村史郎

    島村政府委員 そのとおりでございます。
  103. 木下敬之助

    ○木下委員 一月おくらせる理由と四月から実施すべきだという考え方とはそれぞれに理由のあることだと考えて、この二つの事情の、いまの順番で言うと前者の理由ということになりますか、一月おくらせるという理由の方を優先した理由は何ですか。
  104. 島村史郎

    島村政府委員 いま申しましたように、増加率を抑制する方法と時期的にそれをずらしていくという方法二つ方法をとった場合、時期的なものは一時的なものでございますが、要するに率的なものは、これはずっと翌年度にも翌々年度にも影響を及ぼしていくということで、私どもは時期的なものを選んだということでございまして、何回も申し上げるようでございますが、それの最短期間の一カ月のおくらせをとったということでございます。
  105. 木下敬之助

    ○木下委員 公務員給与ベースアップされて、それをもとにして計算して算定しているわけでしょうが、公務員給与自体が臨調の答申等に従って、できるだけ抑えられるという方向で決まってきておるのじゃないか。もうそのベースが下げられた時点で、臨調の言おうとした恩給をできるだけ抑えるというところが反映しているのじゃないですか。いまさら一月変える必要はなかったのじゃないか。どうしてもこの問題については納得できないものを感じるわけです。  特に、公務員については抑制をされたといっても、それは一時金といいますかボーナス等の問題であって、最低の生活をこれに頼ってやっている人たちの気持ち、これしか収入がないという高齢者の人たちの気持ちを、十分にその立場に立って考えた解決の方法であったと思えないのです。数字の上でここをこうやっておればわかりやすいからという感じで適当に一月、最小限でしたという、これなら言いわけが立つという形でやられるよりも、やはりもっと基本的に、その人たちが一体物価の上昇の中でどういう生活状態にあるのか、最低これだけは必要ではないかといった、一番弱者の立場に立った考えでこういった問題には取り組んでいただきたいと申し上げたいと思います。  最後に、ことしはそういうことでございますが、来年はこの実施時期についてどういうふうにお考えになっておられますでしょうか。
  106. 田邉國男

    田邉国務大臣 五十七年度の恩給ベースアップを五月に実施することにいたしましたのは、先ほど局長から御説明を申し上げたとおりでございますが、五十八年度以降はどうするかということでございますが、もちろん財政事情を初めとする諸般の情勢というものを十分踏まえつつ慎重に対応をしなければならない、こう考えております。しかし、総務長官としては五十八年度以降は従来どおり四月に実施するように努力をしてまいりたい、そう考えております。
  107. 木下敬之助

    ○木下委員 長官のお考えを聞きまして、私も安心してこの問題に対する質問は終わりたいと思います。  次に、この法案の概要説明の参考のところにございますが、戦後処理問題の検討経費として「昭和五十七年度総理府予算に、戦後処理問題について検討するための経費として、五〇〇万円が計上されている。これは、総理府総務長官の私的諮問機関として有識者による懇談会を設け、戦後処理問題を検討しようとするものである。」こういうふうに書いておられました。これは衆議院は通過した予算のことでございますけれども、お聞きいたしたいと思います。  戦後処理問題とは具体的に何を指すのか、できるだけ詳しく、できればわかっているものを列挙していただきたいと思うのです。
  108. 石川周

    ○石川(周)政府委員 戦後処理問題というのは、法律上の定義とか、明確にされたようなものはあるわけではございません。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕 戦後処理問題と意識される方々の問題ということになりましょうか、明確な問題はございませんが、最近におきまして戦後処理問題として特に議論されたものといたしましては、ソ連強制抑留者の方々の問題、あるいはいわゆる恩給欠格の問題等指摘されているところでございます。ただ、何をもって戦後処理とするか、それは物の見方、考え方によってある程度さまざまなものがあり得ると考えております。
  109. 木下敬之助

    ○木下委員 それで、そういった問題は具体的にどういう状況ではっきりしてくるわけですか。今後ともそういった何かわからないような状況のままで進むのですか。
  110. 石川周

    ○石川(周)政府委員 戦後処理問題懇談会の運営のいたし方、検討のいたし方といたしましては、私どもは、懇談会には戦後処理問題についてどのように考えるべきかという、いわば包括的な検討のお願いの仕方をする考えでおります。その場合に個別の戦後処理問題をどのように取り上げるか、これは懇談会の先生方々検討の仕方、運営の仕方、そのお気持ち考え方によるものと考えております。ただ、この種の懇談会の通常の運営のやり方といたしましては、その先生方は、いろいろな問題を持っておられる方々にヒヤリングをされる、そういうことを通じましていろいろな勉強の仕方をされるのだろう、こう予想いたしております。
  111. 木下敬之助

    ○木下委員 第九十四国会の昭和五十六年三月三十一日の内閣委員会における恩給に関する附帯決議で、この戦後処理に関する問題も決議されておるようでございます。そういった関係で、私もいま問題となっております元日本兵台湾人補償問題についてお伺いをいたしたいと思います。  東京地裁において、戦死傷者への補償は国の立法政策の問題と、棄却しておるようです。私は、人道上の立場から元日本兵台湾人を救済すべきだと考え、その方法を模索しておる一人でございます。本来この問題は、現行法では救済できないのであれば、立法して補償しなければならない立法の義務が国にあると考えるのですが、現在台湾との外交がないなどその他複雑な状況の中で、補償を受けるべき人たちが高齢化していっております。このことを考えると、余り理屈にこだわらずに、一日も早く実現できるようにあらゆる方法検討したいと考えておる次第です。  外務省にお伺いをいたしたいと思います。  台湾の現地ではこの問題についてどのような現状なのでしょうか。この問題に関する台湾の状況をお聞かせください。
  112. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 去る二月に東京地裁の判決が出まして、台湾の新聞なども社会面でございますけれども、かなり大きく本件を取り上げております。取り上げ方といたしましては、日本がかなり冷酷であるという論調が多いようでございます。さらに、いろいろな民間団体がありますのをできるだけ一本化して、整理して日本に本件の要望を提出する必要があるのではないかということが指摘されております。
  113. 木下敬之助

    ○木下委員 外交関係のない現状において、日本はどんな対応をしているのでしょうか。外務省、引き続いてお答えいただきたい。
  114. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 本件は、先生御存じのとおり、片や人道問題であり、さらに国際信義の問題と申しますか、きわめて重大な問題だと認識しております。同時に、他の分離地域の人々との公平の問題、それから日台間全体の請求権の問題、これがまだ未解決でございます。すなわち、わが国民の台湾に対する残置財産等を含めまして請求権の問題が未解決であるということ、それからわが国の財政事情等諸般の問題がございます。これにつきまして関係各省とも寄り寄り集まりまして、あらゆる面から検討しておるわけでございますけれども、きわめてむずかしい問題であるということでございます。  他方、外交関係が存在しません台湾との間でございますけれども、わが方は交流協会、先方は亜東関係協会が事務的な調査あっせん、渉外事務の調査あっせんということをやっておるわけでございますが、この間で一般的な照会等はしておりますけれども、問題の性質上と申しますか機構の性質上、詰めた話し合いはまだ行われておりません。
  115. 木下敬之助

    ○木下委員 むずかしい状況は推察はできるわけですけれども、外務省から見た場合、何か解決方法考えられないのか。中国に対する配慮も含めて外務省としてこれからの取り組みというか、また外務省自身が取り組めなくても、こういった考えがあるんじゃないかとか、何かございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  116. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 この問題は、ことしの二月に判決が出ます前からの大きな問題でございまして、特にことしの二月に地裁段階でございますけれども判決が出まして、法的救済の道が一応閉ざされたということもございましたし、と同時に、戦後処理という一つの区切りの時期ということもございまして、改めて真剣にこの問題と取り組んでいくという気持ちでございます。  しかしながら、すでにこの問題が長く今日まで存在しておったという一事を見てもおわかりのように、関係の各省と申しましても、総理府、法務省、大蔵省、厚生省、郵政省等々にわたりますきわめて複雑多岐の問題でございますので、今日ただいまこういう解決方法があるということを外務省が持っておれば非常に幸いでございますけれども、残念ながらそういう状況にはございません。しかしながら、先ほども申しましたように、さらに今後検討していきたいということでございます。
  117. 木下敬之助

    ○木下委員 どこかが責任を持って、責任を持ってというか責任を感じてこの問題に取り組まない限り、なかなか解決できない問題だと考えております。どこに責任があるのかと追及してもまだまだ固まっておらない状況のようですが、私は日本人の一人として、国民の世論としてこれは国民全体が責任を持って解決しなければならない問題であるという認識をつくっていくのがいま一番必要なことだと思って、私たちも各委員会で機会あるごとにこの問題を――時間がこれ以上たってしまったらもう何のことかわからない、現実の人たちは亡くなってしまうのだというぎりぎりの時点に来つつあるところで、いま決意しなければならない時期だ、こういうように思っています。各省庁それぞれですが、外務省は外務省なりに、外務省としての責任を十分自覚されて、全部の責任はないにしても、やるだけのことはやらなければという腹でやっていただきたいと思います。  総理府にお伺いいたしたいのですが、この問題は、いまは死傷者の話をいたしましたけれども、そのほかにも未払い給与や郵便貯金等未解決のままの問題が幾つかあります。担当部局が、いまも外務省の方申されましたように、外務と厚生、郵政とか、いろんな各省に分かれているのが統一的な解決策の立案を妨げているのではないかとも思われております。この際、総理府が中心となって早期完全解決を図るべきではないかと考えるのですが、長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  118. 石川周

    ○石川(周)政府委員 各省の連絡の問題、事務的に御説明させていただきたいと思いますが、現在台湾の御指摘の未払い給与とか未払い郵便貯金等の問題につきまして、外務省におきまして関係各省庁の連絡会議が開かれております。私どもも参加させていただいておりますが、そこで各省庁の情報交換、意見調整というようなことを務めておりまして、御指摘のような問題はないようにそれぞれの立場で努力はしているつもりでございます。総理府といたしましても、必要に応じましてそういう連絡、意思調整に遺漏のないように努力してきているつもりでございます。
  119. 木下敬之助

    ○木下委員 最終的にこういった問題というのは、やはり解決しなければならないという意思と、自分がやらなければという責任の所在だと思います。そういった意味で、この機会にやはりどこかが責任持ってやらなければというこういう感じを持っておりまして、やはりいまの状況では、まず総理府がこの問題は責任持って解決しなければならないという位置に当たるのではないかと思いますので、そういった基本的な認識を持ってやれるようにいろんな内部でのお話し合い等をしていただきたいと思います。  続きまして、やはり附帯決議等にも出てまいりました従軍看護婦の問題についてお伺いいたしたいと思います。  この従軍看護婦の慰労給付金についてですが、旧日赤救護婦等に対する慰労給付金の支給状況と対象人員及び所要額についてお伺いいたしたいと思います。
  120. 海老原義彦

    ○海老原政府委員 旧日赤救護看護婦等の慰労給付金の対象人員と所要額という御質問でございますので、二つに分けて申しますと、まず日赤の方でございます。旧日赤救護看護婦、昭和五十七年度の予算案の中で、数字を申しますと、支給対象者数が千百三十九人、その所要額は約一億四千万円計上しております。それから旧陸海軍従軍看護婦、こちらの方に対しまして、慰労給付金の支給対象者千五十三人でございまして、その所要額約一億三千万円計上しております。
  121. 木下敬之助

    ○木下委員 その後者の陸海軍看護婦の方は五十六年度の実施、制度化であると思いますが、該当者の請求及び支給事務は順調に進んでいるのですか。
  122. 海老原義彦

    ○海老原政府委員 先生いまお示しのとおり、旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金の支給措置は昭和五十六年から始められたわけでございます。したがいまして、この年度が初年度でございますので、関係機関と一緒になりまして早期支給に努めまして、通常の支給月は十二月と六月、年二回ということになっておりますけれども、この十二月に五百六十七人に対して支給し、さらにその後年度内に出てきました申請に対しまして三月末に三百七十三人分支給しておりまして、総計九百四十人に支給を終えており、きわめて順調に進んでいると言えるものと考えております。  なお、今後の支給事務につきましても、関係機関と緊密な連絡をとりまして、支給に遺漏のないよう努力してまいりたいと存じております。
  123. 木下敬之助

    ○木下委員 その従軍看護婦に対する慰労金の給付ですが、その額は十万円から三十万円と大変低額なんです。低額に据え置かれているままですが、これは改善すべきではないかと思うのですが、今後の方針を明らかにしていただきたいと思います。
  124. 海老原義彦

    ○海老原政府委員 この旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金は、お示しのとおり十万円から三十万円まで、戦地における勤務期間に応じて段階があるわけでございますが、この慰労給付金のつくられました趣旨考えますと、これは兵役の義務のない女性の身でありながら、軍の命令などがございまして、戦地あるいは事変地に派遣されて戦時衛生勤務に従事したという、非常に特殊な事情を考慮しまして日本赤十字社が支給することとしたものでございまして、言うなれば、このような戦時中非常に特別な御苦労をかけたということに対し何らかのお慰め、感謝の心をあらわすという意味の給付でございまして、これによって老後の所得の保障を図るというような、通常の年金恩給とかあるいは厚生年金が果たしておる役割りとはその基本的性格においてちょっと異なるところがあるわけでございます。こういったような慰労給付金の性格にかんがみまして、現在のところ慰労給付金の額を改定するということは考えておらない次第でございます。
  125. 木下敬之助

    ○木下委員 軍人と状況が違うということでありましょうけれども、やはりあの戦争の状況を見ましたときに、そのときの身分の制度は違ったといたしましても、あの大きな戦争の渦の中で軍人と何ら変わらない役割りを果たした、また何ら変わらない心情でもって働きをした、こういうふうに考えておりますので、この点差をつけるというのは私は納得いきかねるのです。軍人に準じた報い方をすべきだと考えております。  特に、この方々からの請願を受けておるわけですが、その中にも、終戦後不本意ながら外地で長期抑留生活を余儀なくされ、婚期を逸し、一人でやっと明け暮れている多数の者、また、体を悪くし、就職も思うに任せずにいる者、こういった人たちはやはり戦争の傷跡であり、また国として従軍してもらった、国として従軍を命じた結果の現在の生活だと思うのです。だから、現在の生活に責任を持つような性質の金でないというのなら、やはり責任を持たなければならない理由もあるのではないかというところをいま一度お考えいただきたいのですが、この点どういうふうに思われますか。
  126. 田邉國男

    田邉国務大臣 従軍看護婦の慰労給付金の問題でございますが、この問題につきましては、いま室長から答弁をしたような内容ではございますが、しかし考えてみますと、年金だとか、そしてまた厚生年金等と性質は異なるにいたしましても、社会情勢の変化、そしてまた物価等の情勢変化等を考えてみましたときに、やはり考慮すべき問題があるのではないか。したがいまして、私といたしましては、日赤等とも十分打ち合わせをいたしまして配慮できるかどうか、その点について十分検討をさしていただきたいと思う次第であります。
  127. 木下敬之助

    ○木下委員 いま慰労金をもらっている方々は、一応勤務が十二年以上というふうに算定された方のようです。十二年未満の方は、この慰労金の対象となっていない。この人たちについて幾つかの要望が来ているわけですが、その一つに、国民年金厚生年金に通算できないか、こういう考え方があるのですが、厚生省お見えでしたらお答えいただきたい。
  128. 山口剛彦

    山口(剛)説明員 先生十分御承知のことだと思いますけれども、旧陸海軍の共済組合といわゆる旧令共済組合の組合員の期間につきましては、厚生年金国民年金等で若干の特例措置を置いております。ただ、御要請の中にございます、たとえば外地に行ってその組合員期間でもなかった、したがいまして社会保険としての拠出もしておられないというような期間につきまして、社会保険システムをとっております厚生年金国民年金制度の中で特例的な対処をするということは、せっかくのお尋ねでございますけれども、私どもとしては大変むずかしいというふうにお答えをせざるを得ないと思います。
  129. 木下敬之助

    ○木下委員 その要望としては、外地在職の期間を年金に通算してくれということが要望になっているわけです。いろいろとむずかしい点もあるでしょうけれども、本人たちの意思にかかわらずこういう状態が起こったのですから、その辺は考え方一つでやれるのではないかと思います。掛ける意思が十分あったにしても掛けられないような状況で外地に持っていかれたんだという解釈のもとに、何か考え方を変えさえすれば私はできるのではないかと思いますので、一層の検討をお願いいたしたいと思います。  総理府においては、この十二年未満の人たちに対してどういうことを考えられるのでしょうか。
  130. 海老原義彦

    ○海老原政府委員 先ほどから私が十二年以上ということを申しておりますのは、恩給法に準ずるような加算年を含めて十二年以上ということでございまして、実際の勤務期間は、戦地へ行きますと三倍の加算がつきますので戦地に三年勤務するということが基本的な要件になるわけでございます。これを決めましたときには、恩給制度の思想に見習って決めたわけでございまして、いろいろな年金制度の中で恩給制度、ことに兵に対する処遇というのが一番短い在職年数で年金がつくというものでございまして、軍人、特に兵の場合には戦地に三年いれば恩給がつく、これを見習ったものでございます。したがいまして、勤務期間がこれに至らないという方々に対しましてさらに何らかの処遇をということは非常にむずかしい問題でございまして、なかなか考えられない問題だというふうに申し上げざるを得ないと思います。
  131. 木下敬之助

    ○木下委員 いろいろなケースがあるのだろうと思いますから極端なケースについてまでとは申しませんが、一つ一つの例をよく洗われて、かつての戦争で軍人と変わらない同じような働きをした人たちに、変わらない報い方をするということを基本に考えて当たっていただきたいと思います。重ねて皆さんに対する慰労の措置改善をお願いいたします。  あと、少しほかの附帯決議についてもお聞きしようと思っておったのですが、ちょっと時間の関係もございまして、これで私の質問を終わらしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  132. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 中路雅弘君。
  133. 中路雅弘

    ○中路委員 最初に法案で一、二問お聞きしておきたいのですが、昨年の九十四国会でも恩給法改正の際に附帯決議がつけられているわけですが、恩給については毎回同じような附帯決議がつけられているわけです。最初に大臣に、国会での附帯決議についてどのような認識をお持ちですか、お聞きしておきたい。
  134. 田邉國男

    田邉国務大臣 国会の附帯決議でございますが、この附帯決議は国権の最高機関であります国会の御意思でもございます。改善の指針となるべきものでありますから、政府といたしましてはこれを十分尊重をいたしまして、その実現にはできる限りの努力を払っているところでございます。
  135. 中路雅弘

    ○中路委員 いまおっしゃったように国権の最高機関の国会での意思なわけですから、その実現のために十分努力するという当然のお話だと思いますが、恩給法改正で九十四国会の附帯決議を見ますと、「恩給の実施時期については、現職公務員給与より一年の遅れがあるので、遅れをなくすよう特段の配慮をする」云々という附帯決議がついています。今回の改正案を見ますと、この附帯決議の実現の努力というどころか、逆に改善の実施時期をさらに一カ月おくらせようというものなわけです。現職公務員給与改正の場合に、五十六年度において、一部を除いて四月にさかのぼって実施になったにかかわらず、恩給引き上げについては一カ月おくらせるということは、四月実施がすでに定着してきた現状の中でとうてい容認できるものじゃないと思うのです。恩給法でも第二条ノ二で、国家公務員給与、物価等の変動が生じた場合、速やかに改定措置を講ずることを政府に義務づけているわけですが、今度一カ月おくらした理由についてお尋ねしたいと思います。
  136. 島村史郎

    島村政府委員 先生がいま申せられましたように、恩給ベースアップは年度当初から行うことが妥当だということで、前年度の公務員給与改善基礎といたしまして昭和五十二年以降毎年四月から実施してきたものでございます。しかし、いま先生がおっしゃいましたように、五十七年度について一カ月おくらさざるを得なかったのは、一つには、昭和五十六年度において公務員給与ベースアップが四月からとはなっておりますけれども、実質的にはボーナス等につきましてかなりの抑制措置が講ぜられておりますことと、それからもう一つは、臨調の第一次答申におきまして、昭和五十七年度においては恩給費の増加を極力抑制すべき旨が指摘されております。この臨調の答申を尊重するというのは国民各層の御要望でもございますので、現在の厳しい財政状況のもとにおきましてやむを得ない措置として、五十七年度においては恩給ベースアップを一カ月ずらしたということでございます。
  137. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほど附帯決議との関連でお話ししましたが、大臣も附帯決議というのは国権の最高機関で決められた問題なのでこれは十分尊重して実現に努力をするというお答えですが、その附帯決議の実現どころか逆行するという問題が、臨調の答申だからということで、いまお答えになって一つの理由に挙げられていますが、私はこの点は大変問題だと思うのですね。臨調の答申が出れば、国権の最高機関である国会の意思も、事実上それが今度のように抑制どころか逆行するという問題が起きているわけです。関係団体、たとえば私のところにも全国市町村職員年金者連盟や各自治体の職員退職者協議会等から、改定の実施時期について、長年にわたって築いてきた実施時期を容赦なく延期することは経済的にも精神的にも大きな打撃であるとして重大な関心が持たれ、四月から実施するよう修正を図ることという要請書がたくさん来ています。政府がこの点に関して、やはりこうした関係の皆さんの意思にこたえるべきであるというふうに私は考えますが、いかがお考えですか。また、これは今回限りの措置なのかどうか、その点についてもあわせてお伺いしておきたいと思います。
  138. 島村史郎

    島村政府委員 私どもは、昭和五十七年度におきます恩給ベースアップの時期につきまして、非常に厳しい財政事情のもとでやむを得ない措置として五月実施をせざるを得ないというふうに実は判断したのでございまして、現在のところ、法律案を四月に修正する考え方はございません。しかし、これは臨調の答申を読んでいただきますとおわかりかと思いますが、恩給につきましては五十七年度ということが書いてございます。ほかのことにつきましては、五十七年度という期限づけのものはほとんど書いてございません。そういう意味から言って、この問題は五十七年度限りにしたいというふうに私は考えておるわけでございます。
  139. 中路雅弘

    ○中路委員 大臣にこの点に関連してもう一問確認しておきたいのです。  総務長官は三月三十日の本委員会でも、またいまお話しのように、臨調の一次答申は五十七年度の恩給改正についてのいわば勧告だ、五十八年度については四月実施とするよう努力するという答弁をされているわけですけれども、臨調の、次に予定されている基本答申の中でも一層抑制が強く出されるということが予想されるわけですが、そういう中でやはり担当の大臣として五十八年度は四月実施にするということについて、もう一度大臣の決意といいますか確約といいますか、お伺いしておきたいと思います。
  140. 田邉國男

    田邉国務大臣 恩給ベースアップを五十八年度以降どうするかについては、いま局長からもお話がございましたように、諸般の情勢というものを考慮し慎重に検討をする必要がある、こう考えておりますけれども、担当大臣といたしましては、やはり五十八年以降は従来どおり四月実施するように努力をしてまいりたい、こう考えております。
  141. 中路雅弘

    ○中路委員 臨調の方、お見えになっていますか。関連して、次に、特に第二部会のことでお伺いしたいのです。  新聞の報道によりますと、臨調の第一部会は基礎年金へ向けての各種年金の統合案、第二部会が各種年金恩給水準の引き下げなどを骨子とする公的年金の改革案の骨子をまとめて、基本答申に盛り込むべくいま部会報告として提出するようにされているということでありますけれども、公的年金の給付水準と負担の関係についてどういう検討がされてきたのか、部会報告に盛り込む基本的な方向というものはこうした新聞報道のとおりなのかどうか、説明いただきたい。
  142. 新野博

    ○新野説明員 お答え申し上げます。  年金につきましては、第一次答申でも先ほどのお話のように触れております。年金制度がその制度趣旨に即しまして長期的に安定した制度として今後存立していく場合に、給付と負担との適正なあり方についての検討が十分必要であるということを、第一次答申でも政府に検討を求める形で言っておるところでございますが、臨調の方でも将来の重要課題といたしましてやはり年金制度あり方について審議をする必要があるということで、現在審議を進めております。  現在四つの部会で検討いたしておりますが、特に年金につきましては、第一部会におきまして、行政の果たすべき役割りと重要行政施策のあり方という観点から、年金制度面に重点を置いた審議が行われております。また第二部会におきましては、行政の組織、運営面ということに重点を置きまして検討いたしております。  それで、これら各部会における基本的な問題認識でございますが、一点は、現在の公的年金制度が幾つかの制度に分立しておる、これにつきまして、制度ごとに負担と給付水準なり内容とのバランスをどうとっていくかという問題でございます。第二は、今後の人口の高齢化なり制度の成熟化ということを考えます場合に、安定した年金制度を保つことは非常に困難であるということで、早急な改革をいま行っていく必要があるという点でございます。  これらの問題意識をもとにそれぞれの部会におきまして幅広い審議が行われておりますが、目下改革の考え方についての自由討議を重ねておる最中でございまして、部会といたしまして具体的な改革案の方向を出す段階にはまだ至っておりません。  以上でございます。
  143. 中路雅弘

    ○中路委員 これから報告が出されるわけですけれども恩給年金の給付水準の引き下げという問題や制度問題等が織り込まれてくることはほぼ確実になっておるのじゃないかと思うのです。先ほど大臣は、恩給について五十八年度は四月実施に努力すると言っておられますが、そうだとすれば、いま予想される臨調の答申、こうしたことについて、やはり担当大臣としてもはっきり物を言わなければいけない問題があるのじゃないかと私は思うのですが、この問題についてもう一度、恩給の担当大臣としての見解をお伺いしておきたいと思います。
  144. 田邉國男

    田邉国務大臣 臨時行政調査会におきまして各種の年金等のあり方について検討が行われておると仄聞をいたしております。しかし、現在のところ正式な答申もございませんので、現在の段階でこれを申し上げることは差し控えたいと実は考えております。仮に、臨調の答申におきまして恩給制度についても何らかの意思が示されるとするならば、私は、その答申の出された時点において慎重に検討をさせていただきたい、そしてその対応をしたいと考えております。
  145. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、やはり担当の大臣としてこうした給付の引き下げ、そうした問題についてははっきりと物を言わなければいけない、五十八年度たとえば四月実施というふうに努力するにしても、このことがぜひ必要だろうということを重ねて指摘しておきたいと思うのです。  ずっと臨調の方にお聞きしていきますが、第二部会で行政組織及び基本的な行政制度あり方を基本的な分担事項として、報道ですと三月二十九日の調査会では、行政組織、総合調整機能、それから二番目に予算編成及び財政投融資等、三番目に公務員制度等、四番目に行政情報の公開と管理、行政手続等を七月の基本答申に向けて主要な検討課題にすることを決められているわけですが、この際、第二部会の分担分野全体についてどのような審議がされてきたのか、部会報告にどういう方向を盛り込む予定なのかということを説明していただきたいと思います。
  146. 新野博

    ○新野説明員 お答えいたします。  第二部会におきましては、行政組織及び基本的行政制度あり方について調査審議を行うということでございまして、昨年の七月二十七日に調査会から部会の設置及び分担というのが定まっておりますが、その場合の主要検討課題としては六点ございます。  一つが、省庁組織の見直しでございます。第二点が、行政機関に対する総合調整機能のあり方及び管理諸機能の合理化。第三点が、行政に対する監察、監査機能の改善。この三点につきましては第二部会自体が扱うことといたしております。それから、公務倫理の向上と新たに情勢に対応した公務員制度の確立というのは、第一分科会というのを設置いたしまして、審議が進められております。それから、行政情報の公開と管理その他行政手続制度あり方というのは、第二分科会が設けられまして、そちらで審議が行われております。また、予算編成、予算執行、財政投融資等のあり方というのは、第三分科会が設けられておりまして、そちらで審議が行われておるという状況でございます。  それで、第二部会自体の問題でございますが、これは細かく分けますと六点に分かれまして、一つが中央行政組織の再編合理化及び総合調整機能の強化、第二点が行政組織、定員管理のあり方、第三点が行政事務の合理化、第四点が省庁内部組織の整理合理化、これは附属機関等を含むものとなっております。第五点が地方出先機関の整理合理化、第六点が臨調以後の行政改革推進体制ということでございます。  これにつきましては、昨年の九月八日に第一回会合を開きまして以来、三月三十日の第四十四回会合まで第二部会が開かれておりますが、特に昨年は内閣官房、人事院、各省庁を中心にヒヤリングをいたしまして、年末に自由討議をいたしまして、検討視点なり検討課題を概定する。それで、ことしに入りましてからは、自由討議で主な論点の整理をしていきますとともに、有識者を招きまして意見交換をやるというようなことをいたしておりまして、現在改革の内容について自由討議を行っている状況にございます。  それから、公務員制度の関係でございますが、これは中身が一応五つに分かれておりまして、公務倫理の確立、第二点が給与決定方式を中心とする給与制度のあり点、第三点が公務員の範囲と種類、第四点が職階制の存廃、第五点がその他公務員管理のあり方ということでございまして、第一分科会につきましては、昨年の十月十九日に第一回会合を開きまして以来、三月二十九日まで、いままで二十二回の会合を開いておりますが、この間に各省庁のヒヤリング、それから有識者の意見交換、あるいは全官公、公務員共闘、日経連等の関係団体からの意見聴取、また民間企業からの意見聴取等を行いますとともに、最近自由討議を行っておるという状況にございます。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕  また、行政情報の公開と管理、行政手続につきましては、その中身といたしまして、情報の公開であるとか文書等の管理であるとか、あるいはプライバシー保護問題であるとか行政手続制度、オフィスオートメーション等々につきまして関係の各省なり学者地方公共団体、関係団体、民間企業等からヒヤリングをいたしますとともに、自由討議を進めておるという状況にございます。  それから最後に、予算編成及び財政投融資でございますが、これにつきましては、予算の編成、執行、財政投融資等については非常に専門的な事項も多いということで、ことしの二月九日に第一回の分科会会合を開きまして、三月三十日まで四回の会合を開きまして、有識者ヒヤリング等をやっておる状況でございます。  以上でございます。
  147. 中路雅弘

    ○中路委員 今朝の朝日新聞によりますと、七月の基本答申に向けた部会報告取りまとめのため、第二部会部会長と事務局が「改革の考え方」と題する素案といいますかたたき台を作成したというのが報道されています。  それによりますと、素案は、一番目に国防会議の改組などによる防衛体制の整備、二番目として対外政策関係の閣僚会議設置などによる外交の企画、調整機能の充実、三番目に科学技術関係部門の企画、調整機能の強化、四番目に国土行政の一体的、総合的推進体制の確立と企画、調整機能の強化、五番目に年金制度の一元化と給付水準の見直しなどとなっていると報道されていますが、この報道は事実なのかどうか、部会長と事務局で取りまとめた素案の概要を説明していただきたいと思います。
  148. 新野博

    ○新野説明員 ただいま御説明いたしました中央行政機構の再編合理化及び総合調整機能の強化というところにつきましては、一つは具体的な重要課題に対する対応をどうしていくかということで、たとえば国土であるとか、年金、科学技術等々について議論が行われておることは事実でございます。また、それにあわせまして、一般的な管理機能としまして人事管理なり行政管理一般議論も行われております。  それで、先ほども説明を申し上げましたように、現在、社会経済情勢の変化に対応した適正かつ合理的な行政の実現を果たすという臨調の設置目的からいきまして、そうした重要行政の実態につきまして全般的な検討を行う、それで行政制度なり運営の改善に資するということで調査審議をいたしておりますが、それぞれの中身につきましては現在まさに各委員議論をやっておる最中でございまして、その中身が方向として固まったものはまだ出ておらないような状況にございます。
  149. 中路雅弘

    ○中路委員 もう一問、先ほどの御説明と関連して、三月二十九日の調査会で決定された第二部会の主要検討課題のうち、幾つかについてもうちょっと聞きたいんですが、中央行政機構の再編合理化等については中央省庁の統廃合を含むのかどうか、含むとすればどういう省庁が対象となるのか。また、組織規制の弾力化等では、内閣権限を強化する国家行政組織法や各省庁の設置法改正を伴うようなものを決めるのかどうか。あるいは地方出先機関の整理合理化の基本的方針の中では、第三部会が検討している地方省庁的なものも考えられているのか。もう一つ、いま問題になっております天下り問題あるいは各種審議会の委員の構成などの問題、こうした問題も検討されているのか、また検討する予定なのか。もう少しこの点について説明していただきたい。
  150. 新野博

    ○新野説明員 お答えいたします。  四点の御質問のうち最後の一点は担当の主任調査員が別に参っておりますので、初めの三点について御答弁申し上げます。  まず中央省庁の統廃合等の問題でございますが、これは行政の実態に全般的な検討を加え、行政制度や運営の改善について提言を行うということで、中央省庁の組織の問題でありますとか総合調整機能のあり方等については第二部会で目下審議をいたしております。  第二部会における検討状況を申し上げますと、これまで対外政策であるとかあるいは国土の開発利用、保全であるとか年金行政であるとかというような、複数の省庁にまたがります問題につきまして、行政が直面している課題、関係する組織、制度、運営の現状と問題点等につきまして、関係省庁とか学識経験者からヒヤリングを含めまして意見交換を行い、調査審議を行ってきているところでございます。  それから第二点の行政組織のあり方、なかんずく組織規制の問題でございますが、これは第二部会での取り組み方といたしましては、行政組織や運営の硬直化を防止いたしまして、社会経済事情の変化等に機動的、弾力的に対応する必要があるという見地から、種々の検討を行ってきております。組織規制の弾力化等についても、その一環として検討が行われております。組織規制の弾力化の中身につきましては、御質問のような国家行政組織法の改正が必要ではないかという意見があることも事実でございますが、部会においてまだ結論を得る段階には至っておりません。  次に、第三番目といたしまして、地方出先機関の合理化の問題でございますが、これにつきましては、従来からその整理合理化の必要性につきましていろいろ指摘がされておりますし、また政府におきましてもいままで相当努力は重ねてきておる問題であるということでございますが、現在、部会におきましては、国のすべての地方出先機関、すなわちブロック機関、府県単位機関、府県単位未満の機関、それら全体について検討をするということで、鋭意調査審議しているところでございます。これにつきましても、いまの段階では調査審議の真っ最中であるということでございます。  以上でございます。
  151. 緒方勇一郎

    ○緒方説明員 公務員の倫理の問題でございますけれども、先ほど新野主任の方から説明いたしましたように、公務倫理の向上と新たな情勢に対応した公務員制度検討課題として、公務員制度の問題は現在検討が進められております。本調査会におきましても、第二部会の検討課題といたしまして公務倫理の向上ということが特に取り上げられておりますので、現在、公務倫理についても分科会におきまして検討をいたしておるところでございます。  その検討いたします過程で、これまでは、たとえば人事院の公務倫理の向上の研修内容を審議してみたり、あるいはまた、行政監察から見た公務倫理の問題等について行政管理庁との意見交換を行ったりしております。具体的にこの公務倫理の審議対象範囲をどう定めていくか、あるいはその内容がどうなっていくか、これは今後の分科会等の審議の結果によるものと思っております。
  152. 中路雅弘

    ○中路委員 一通りいまの審議の状況については御説明いただいたのですが、人事院がお見えになっておりますので、人事院にお聞きしたいのですが、天下りについては、いま問題になっております談合問題、これが発覚する中でも、みやげつきの天下りや持参金つき天下りが表面化しておりますし、先日は違法な天下りまで発覚したわけです。三月三十日に人事院が発表された、いわゆる天下り白書に対する国民のいろいろな批判も出ているわけですけれども、人事院として制度改正や審査の基準の改正等について検討をいま行うべきであると私は考えますが、御見解をお聞きしておきたいと思います。
  153. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 いわゆる公務員の天下りの問題、営利企業への就職規制の問題につきましては、従来からも種々御批判なり御意見なりをちょうだいをいたしております。特に最近、いわゆる談合問題に絡みましてこの問題が大きく取り上げられておることに対しましては、私といたしましても、大変重要な厳粛な問題であると受けとめて、これに対する対処を誤りなきを期したいというふうに戒慎を加えておるところでございます。  この天下り規制というものについての、いわゆる国家公務員法の百三条の規定というのは、御承知でございますように、公務秩序なりあるいは綱紀の保持の問題、そういう一つの要請と、それから、やはり公務員といえどもこれは一般国民の一人であり、労働者の一員でもございますので、そういう観点から、働く意思があればやはり職業選択の自由というものは当然保障されなければならぬ。そのけじめを、また接点をどうしていくかということに非常にむずかしい問題があるわけでございまして、この点につきましては、実は外国のいろいろな取り扱い例を参酌をいたしましても、日本のやっておりまする制度は決して緩いものではない、むしろ見方によっては大変厳しいという制度の仕組みになっておることも御承知のとおりだと思います。しかし、この問題は大変厳粛な重要な問題でございますので、従来からもこれの運用については厳しい態度をもって対処をしてきております。したがいまして、その後のいろいろな社会情勢の推移なり、天下りというものの実態とを総合的ににらみ合わせまして、制度的に何かさらに規制の仕方を改むべき点があるのかないのか、そういう点も謙虚に今後検討を加えるという態度には変わりはございません、やっていきたいと思っております。  それと並行いたしまして、審査基準の再検討の問題につきましても、従来国会等における論議も十分参酌をさしていただきまして、事実、漸次これについての改善措置と申しますか、強化措置というものも講じてきております。  二、三例を申し上げますれば、就職をいたします営利企業というものの是非を判断いたします場合に、仮に親会社があるという場合には、従来は子会社だけ、その当該会社だけであったけれども、親会社に非常に密接な関係があれば、これはやはり審査の対象としてチェックしていくとか、あるいは請負関係等にありますれば、その会社の当該所属関係官庁への依存度といいますか、官庁から発注をいたしますその高というものがその会社の全体の工事量の中でどのぐらいの比率を占めておるか、そういう依存度の関係、そういった問題にまで手を広げまして審査を厳密に行うという方向で検討し、また審査基準もそういうふうにやりまして、現にそれを運用に移しているということもございます。  また、最近特に問題になっております談合問題等に関しましては、私は率直に言って、談合は民間の工事受注業者間の問題でございますので、いわゆる天下りが直接の談合の原因である、主たる原因であるというふうには思っておりません。ただ、やはりいろいろ御批判もございますし、仮にその天下りということのためにこの不正が増幅されるとか、あるいはそれがさらに拍車をかけられるとかいうことがあっては、これは大変困ること、絶対にあってはならぬということでございますので、そういう方面からの検討も加えておりまして、そのことのためには、たとえばある建築会社に天下りをやった場合におきまして、それが行った後においてそこの受注高というものが当該官庁との間に何か大変目立った変化が起きてくるといったようなことがあるのかないのか、そういうこともやはり一つの審査のめどにしてもいいのではないだろうかというような点も含めまして、基準自体についても検討を進めております。  いずれにいたしましても、この問題は大変厳しい国民の批判があることでもございますし、事実、綱紀の粛正という面から申しましても、これはきちんとやるべきことはやっていかなければならぬという認識を持っておりますので、その線に沿ってさらに検討し、万遺憾なきを期したい、かように考えております。
  154. 中路雅弘

    ○中路委員 いまおっしゃったように、この問題では国民の非常に厳しい批判も出ているわけですから、お話のように今後さらに検討して改善強化をしていきたいということのようですので、ぜひこの点は抜本的な検討を行っていただきたいと思います。  次に、給与に関する問題で幾つかお聞きしたいのです。  恩給改定時期の一カ月繰り延べというのは、先ほど御答弁にありましたように臨調の答申とも関連を持っているわけです。人事院勧告の不当な値切りに連動したものであることも事実なわけですが、この点に関連して、給与改善予算が一%しか計上されていない。数年前までは少なくとも五%組まれていたのですが、五十六年度も人勧一%予算であったわけです。そして、値切るための財源不足の一つの口実にもされたという点もあるわけです。前の長官も、一%予算というのは人勧の値切りをいたしたものでなくて予算編成上の技術的な問題だ、人勧の値切りなしが前提だ、勧告が出れば実施していくんだという趣旨の答弁をされておりますが、五十七年、いま参議院で審議されている予算も一%なわけですが、この点について改めて確認しておきたいと思います。この一%の予算ということを口実にして人勧を事実上値切るとか不当な値切りをやるとか、こういうことでないという問題について、もう一度確認していくという意味で大臣の見解をお聞きしておきたい。
  155. 田邉國男

    田邉国務大臣 五十七年度におきましても人事院勧告が行われれば、その時点におきまして諸般の情勢を踏まえ、その取り扱いについて検討を行うことになるわけでございますが、私といたしましては人事院勧告を尊重するという従来からの基本的なたてまえから、この問題に対しては誠意を持って対処をしてまいる考えであります。
  156. 中路雅弘

    ○中路委員 臨調の公務員給与抑制一つの根拠に日経連が出された生涯賃金官民比較資料などがなっていますし、マスコミ等を通じてこの日経連の資料が非常に使われて、賃金について官高民低となっているという論評が続いているわけですが、給与年金退職金という性格の違うものを加えて比較をするということ自身にも私は問題があると思いますが、実態値と標準モデル方式ですね、こうした比較の仕方そのものも大変問題だろうと思います。この点についてまず人事院の見解をお聞きしたい。
  157. 斧誠之助

    ○斧政府委員 生涯給与の問題につきましては、人事院としましては従来からライフサイクルという考え方に立ちまして、給与退職金、年金、これのあり方をどういうふうにするかを検討するということは非常に意味があることではあるけれども、この三つを単純に合算しまして、そして比較して生涯給与で高い、低いというのを論ずるのはちょっと問題があるではないか、これは、いま先生おっしゃいましたように、それぞれ給付の目的が違うわけでございまして、そういう性格の違うものを単純に合算して比較するのには基本的に非常に問題がある、したがいまして、給与給与年金年金退職金は退職金、それぞれ比較しまして官民の均衡を図っていくという方法が最も適切であるということを申し上げておりまして、この点は臨調でも十分説明をしてきたところでございます。
  158. 中路雅弘

    ○中路委員 人事院もこうした比較には問題があるということをお認めになっておるのですが、二月八日の日に臨調の第二部会第一分科会に人事院の給与局長が出席をして意見を述べておられます。その際に、いまこうした比較は問題だけれども、あえて日経連の方式で生涯賃金を比較した場合にどうなるのか、比較はどうかということの試算を出しておられるわけですが、日経連方式でやった場合の人事院としての試算、この中身について説明していただきたい。
  159. 斧誠之助

    ○斧政府委員 日経連が発表しております官民の生涯給与の比較でございますが、これにつきまして私たちは、モデルのとり方、それからモデルの代表性、そういう点で非常に問題があって、そういう比較方式では本当の姿を出すのはなかなかむずかしいですよということも御説明したわけでありますが、臨調側から非常に強い要望もございまして、この場限りの参考にということで日経連方式による計算をあえてしてみたわけでございます。  その場合に、日経連の発表したものでは高卒で二等級というところで退職する、こういうことの計算になっておるわけですが、私たちの退職者の実態を調べますと、高卒では二等級になる職員はほとんどいない。主として三、四、五等級、この辺で退職するということでございますので、三等級、四等級、五等級につきまして一応のモデル設定をしまして試算を提出したわけでございます。  これは、いま申し上げましたように、いろいろ問題はありながらも参考にということで提出したものでございまして、これを公表するというようなことは非常に慎重に考えないとかえって誤解や混乱を生むのではないかということで、実は公式の発表はいたしておらないわけでございます。でございますが、試算として提出しましたものは、生涯給与で見ても日経連の出しました民間の生涯給与よりも低いという結果になっております。
  160. 中路雅弘

    ○中路委員 いまお話しのように、三等級から五等級が比較する場合の対象になる、日経連が言っている二等級を標準モデルとしたこれはわずかしかいないというお話ですが、もう一点だけお聞きしておきます。  たとえば六十歳で退職する場合として、生涯給与が皆さんの試算で三等級の場合どうなるのか、四等級の場合総額幾らになるのか、五等級の場合幾らになるのか、それが日経連の発表している生涯賃金と比べてどのぐらい差があるのか、結論だけ説明していただきたい。
  161. 斧誠之助

    ○斧政府委員 この計算の前提を申し上げますと、五十五年に採用になりました職員が現行の給与制度がずっと変わらないものといたしまして、六十歳に到達してやめたらどうなるか、こういう前提でございます。したがいまして、退職金は実は五十五年採用者は最高六十カ月分という現在の規定でございますのでそういう計算になっておりますが、総額でいきますと、三等級で二億二千九十七万七千円、四等級で二億一千二百五十四万五千円、五等級で一億九千八百十八万九千円ということでございまして、公務員について総計が二億四千三百五万六千円というものを日経連は出しておりますので、これよりは若干低いということでございます。
  162. 中路雅弘

    ○中路委員 いま人事院から説明していただきましたが、もともと実態値とモデル値と比較すること自身にも問題があるわけですし、人事院があえてということで日経連の方式で生涯賃金をいま試算してみても、日経連の言うのと違って、これは逆に官の方が相当低いという結果が出てきているわけです。こうした間違った試算で、公務員給与抑制すべきだとかあるいは公務員に対するこうした攻撃をやるということは大変けしからぬことだと私は思うのですが、せっかく総裁お見えになっていますから、いまの問題について総裁の見解も一言お聞きしておきたい。
  163. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 いわゆる生涯給与論については、先刻給与局長から御答弁申し上げたとおりでございまして、私も本委員会等の審議を通じてその立場を繰り返し申し述べております。したがいまして、それぞれ成り立ちなり目的なり機能なりが違うものですから、給与給与退職手当退職手当年金年金、それぞれについて均衡を保つようにしていくべく配慮することは、それ自体として意義のあることであろう。ただそれを形式的に足し合わせて論議をするということは、またいわんや、その観点から公務員が高いから毎月の生活費に充てる給与にまで何らかの手心を加えなければ妥当ではないのではないか、そういう議論は私はくみしないということを繰り返し申し述べてきております。  しかし、この点については誤解や何かがあるものですから、機会のあるごとにそれの釈明をする、解明を図るという努力は重ねなければならぬという気持ちでおりまして、最近、相当積極的にその方面のPRもやっておるつもりでございます。また、せっかくの臨調のこういう審議の席上でもございますので、お呼び出しがあればそこへ参りまして、できる限りのことは御説明申し上げるという態度できておるわけでございます。  ただ、この問題の処理についてはいろいろな前提条件がございまして、そういう前提条件を抜きにして論議を重ねて早急に結論を出すということは、これはまた誤りを重ねることになりますので、その点については十分戒慎を加えていかなければならぬというふうに感じておりますが、しかし、正しいことは正しいこととして自信を持って御説明をして、もしも誤解があればその蒙は開いていただくという努力は今後とも熱心に続けていかなければならぬという感じでおります。
  164. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの総裁の御見解もはっきり出ているわけですから、こうしたいろいろな試算の結果等については人事院としても明らかにされるということが、おっしゃった誤解等を解いていく上でも積極的な役割りを果たすのではないかということをもう一度指摘しておきたいと思うのです。  臨調の皆さんにもう一問だけお聞きしておきたいのですが、これはやはり公務員給与の問題と関連するのです。土光会長が先日、一次答申の実行が不十分だとしてまず公務員給与の問題を挙げておられますが、七月の基本答申では、そういう点で一次答申を上回る厳しい内容が盛り込まれるのではないかということも言われております。新聞等で報道されているのを見ますと、臨調の第二部会で、給与の総額制の導入の可否の問題、あるいは人事院と関係省庁との勧告前の事前協議の制度の導入の可否の問題、あるいは現行の民間準拠方式の見直しあるいは財政事情を横にらみした勧告の必要性、さらに人事院のあり方そのものの見直しというようなことも行っているということが報道されていますが、こういう問題についてどのような検討が行われているのか。七月の基本答申に向けての部会報告にどういう方向が盛り込まれるようになっているのか、説明していただきたいと思います。
  165. 緒方勇一郎

    ○緒方説明員 公務員給与問題についての検討の状況でございますが、これまで人事院、総理府、労働省、自治省などとの意見交換なりあるいは有識者等からの意見聴取を行ってきたところでございまして、最近では公務員給与問題を含めた公務員制度について委員間の自由討議を行っている段階でございます。  特に公務員給与あり方につきましては、人事院勧告対象職員、三公社五現業職員、特殊法人職員及び地方公務員に区分いたしまして、給与決定のあり方あるいは財政事情の考慮、国民の納得性などの問題につきまして検討を行っているところでございます。現段階で基本答申に盛り込むべき明確な方向が固まっているわけではございませんで、このあたりについては今後の審議の状況によってくるものと考えております。
  166. 中路雅弘

    ○中路委員 いま報道されていますように、給与の総額制の導入とかあるいは勧告前の事前協議制、政治勧告になるのではないかという話もありますが、民間準拠方式の見直しというようなこうした問題は、いずれにいたしましても人事院の代償機能へのいわば攻撃でもあるわけですし、公務員労働者の労働基本権への重要な攻撃でもあると思います。人事院としてやはりこういうことについて何も物を言わないということになれば、人事院制度そのもの、人事院のあり方、こうした点も問われる問題になってくるわけですが、こうした問題について改めてもう一度人事院総裁の見解をこの場所でお聞きしておきたいと思います。
  167. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 臨調の審議は大変精力的におやりになっていらっしゃるわけでして、その過程においていろんなことが報道されておるようでございます。しかし、これはいま臨調の方からも御説明がございましたように、まだいま審議の途中でございまして、結論が出ている段階ではございません。したがいまして、確定的な意思というものはまだ何ら外には出ないし、内部でも固まっていないというふうに私自身は承知をいたしております。  しかし、人事院といたしましては、このいろいろな審議の過程あるいは方向というものに対しては重大な関心を持って終始見守っております。したがって、人事院として何も言っておらないということでなくて、実はすでに、御承知のように昨年の五月十一日には私が呼ばれまして、臨調の各委員の前で問題の所在なりあり方というものについてはっきりとした御説明をいたしておりますし、その後臨調の方から審議の過程に応じていろいろ資料の要求なり説明の聴取を求められておりますが、その都度こちらからは資料も出し、また言うべきことは御説明申し上げるということでやっておる次第でございます。  ただ、私といたしましては、これもいままでも申し上げておりますように、現行の制度がございます限りは、特に公務員の労働基本権制約の代償機能としての性格、いわゆる中立性と公正性あるいは代償性、この点は人事院存立の基本的な方向でございますし、また制度の理念がはっきりと示されておって、その理念の上に今日まで公務員制度が維持されてきておるという厳然たる事実がございます。したがいまして、私としては、現行制度があります限り、従来の基本方針はあくまでも堅持するという方向で進んでまいる所存でございます。
  168. 中路雅弘

    ○中路委員 特にいまのままで人事院のあり方を見直すということは絶対に見過ごせないと私は思うのです。公務員の労働基本権の回復を前提にして人事院のあり方を見直すということになればその必要は出てくるでしょうけれども、その前提なしで代償機能を事実上形骸化するということについては絶対に容認できないと思います。その点では、やはり公務員の労働基本権の剥奪の代償機能としての人事院の役割りをしっかり堅持して、今後とも努力をしていただきたいと思います。  特に、公務員給与の問題は、恩給年金を初めとした広範な勤労者の賃金決定などにも大きな影響を及ぼす問題ですし、その抑制ということになりますと、これは国民生活に大きな影響を与える問題だと思うのです。そういう点では、また勧告の時期には改めて論議しなければなりませんが、こうした勧告が低額な政治的な勧告に絶対にならないように、人事院も、また給与の担当大臣としてもしっかりした立場で、この公務員給与の問題についてはひとつ対処していただきたいということをこの問題の最後にお願いしたいのですが、もう一度この問題について、人事院総裁給与担当の大臣である総務長官から一言お聞きしておきたいと思います。
  169. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 現行制度が維持される限り、従来の方針は堅持をいたします。したがいまして、ことしの場合にも、すでに一月十五日現在でもって国家公務員の実態調査を実施をいたしました。また、四月一日現在でやりまする民間給与の実態調査も、従来どおり五月の連休後から六月の中旬にかけて実施をすることで着々準備を進めております。すべて従来どおりの方針でもって較差を比較し、較差が出ればそれの穴埋めということで勧告をお願いするという段取りは、従来の方針を堅持いたします。
  170. 田邉國男

    田邉国務大臣 人事院の勧告が出ましたならば、従来のようにこの人事院の勧告を尊重するという基本的たてまえに立って、これに対応してまいる考えであります。
  171. 中路雅弘

    ○中路委員 人事院総裁、どうもありがとうございました。  あと五分くらいなので、他の委員からも御質問あった問題ですが、その他の問題を二問ばかり簡潔にお尋ねして、終わりたいと思います。  一つは、私も十年ほど前から何回か取り上げてきておる問題ですが、旧日赤の救護看護婦に続いて、旧陸海軍の従軍看護婦に対する慰労給付金の支給制度も発足しまして一年になりますが、九十一国会で、私の質問で当時の関総理大臣官房管理室長に御答弁いただいているのですが、増額の問題ですね。慰労金であるという基本的な性格からして年金等で採用されている物価スライドの方式はとれないわけだけれども、将来経済変動が起きたら、その時点では検討しなければならないという趣旨の御答弁もされています。そういう点で、発足をした五十四年度の消費者物価指数から見ましてもすでに十数%上昇していますし、慰労給付金自身が確実に減価しているわけであります。もちろん年金等と性格は違うわけですけれども、こうした問題について、将来の問題というのではなくて、いま増額について検討する時期ではないかというふうにも考えるわけですが、この点について大臣からも一言御答弁をいただきたいと思います。
  172. 海老原義彦

    ○海老原政府委員 旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金についての御質問でございますけれども、この慰労給付金は先生御案内のとおり、兵役の義務のない女性の身でありながら、軍の命令などがございまして戦地あるいは事変地に派遣されて戦時衛生勤務に従事したという、この特殊事情を考慮いたしまして、日本赤十字社が支給することとしたものでございます。この経緯を考えてみまするに、これは戦時中特段の御苦労をかけたということに対する一つの慰労という意味でございまして、一般年金、たとえば恩給とか厚生年金のように、老後の所得を保障するというような性質のものではないのではないかと考えられるわけでございます。  一方におきまして、先生ただいま御指摘ございましたように、従来の政府答弁もございますし、また、さきの九十四回国会におきましては慰労給付金の増額について検討するようにという附帯決議もいただいております。そういったことも踏まえまして、慰労給付金の増額について検討いたしましたが、初めに申し述べましたような慰労給付金の基本的性格という問題がございまして、こういったものから見て増額ということは大変むずかしいというようなことになりまして、現在慰労給付金の額を改定することは考えていない次第でございます。
  173. 田邉國男

    田邉国務大臣 いま恩給担当の室長から答弁がございましたように、慰労給付金の内容というものは、恩給共済年金というような公的年金とは本質的に違うものでございます。私もこの問題につきましては、午前中も質疑がございました中でお話をいたしましたけれども、今後社会経済情勢の変化が生じた場合には、私どもはこの問題については何らかの考慮を払わなければならないのではないであろうか。したがって、日赤等とも十分相談をいたしましてこの問題の対応を図ってまいりたい、こう考えております。
  174. 中路雅弘

    ○中路委員 いまお話しのように、この問題では附帯決議もつけられているわけです。恩給の問題でも最初に大臣にお尋ねしましたが、附帯決議というのは国権の最高機関である国会の意思でもありますから、その実現については、尊重して努力するという最初に大臣から答弁もありましたが、この問題も毎回附帯決議で出されている問題です。ぜひ実現について努力をしていただきたいと要望しておきます。  最後に、もう一問で終わりますが、これも各党の皆さんから取り上げられている問題ですが、いま問題になっています台湾在住の元日本兵の補償問題です。  最初、厚生省にお聞きしておきますが、第二次世界大戦で、いま問題になっている台湾在住の、正確に言えば中国ですね、台湾人というのはないわけですから、中国の台湾在住の元日本兵あるいは朝鮮などの他国民軍人軍属として徴兵、徴用したわけですが、こうした人たちの戦死傷者の数ですね。それぞれわかっておりましたら御報告いただきたいと思います。
  175. 森山喜久雄

    ○森山説明員 お尋ねの数でございますが、厚生省が持っております資料で計算いたしますと、台湾籍の旧軍人軍属の総数は二十万七千百八十三人でございます。このうち死亡者は三万三百四人、復員者、元気でお帰りになった方が十七万六千八百七十九人でございます。  それから、朝鮮籍と申しますか朝鮮半島出身の方々軍人軍属でございますが、これは二十四万二千三百四十一人、このうち死亡者が二万二千百八十二人、復員者が二十二万百五十九人でございます。このいずれも、傷病者の数は資料がございませんので、私の方ではちょっと不明でございます。  それから、その他の地域でこういう種類の方がいらっしゃるかということでございますが、これは兵役法によりまして、戸籍法の適用のない人は兵隊さんにはとらないということになっております。ただ、そういう方々で現地限りの雇用人的なもので軍属に採用した方はあるのではないかというふうに考えておりますが、その数はちょっとつまびらかではございません。
  176. 中路雅弘

    ○中路委員 いま説明いただきました外国籍をいま持つ元日本兵の戦死傷者への補償の問題あるいは未払いの給与軍人貯金の支払いなど、全く解決されていないわけですが、この点について最初に外務省にお聞きしておきたいのですが、外交問題もありますから、いまどういう経過になっているのか、そしてどのような検討が行われているのか、お聞きしたいと思うのです。
  177. 藤井宏昭

    藤井(宏)政府委員 本件につきましては、かねてから各省間で協議をしておる問題でございますが、特に本年二月、東京地裁での判決が出ましてから、さらに検討を重ねております。  問題といたしましては、一つは他の分離地域、いま御指摘ございました朝鮮半島等の分離地域の問題、公平の問題、それから日台間の全般的な請求権の問題、わが邦人の残置財産等を含めましての問題、それから、もちろんわが国の財政事情等の諸問題がございます。  一つの大きな問題は、この請求権につきまして、サンフランシスコ平和条約四条(a)によるいわゆる特別取り決め、これによります一括解決ということが、日中国交正常化の結果台湾と日本の間に国交がなくなりましたので、不可能になりました。したがいまして、台湾と日本との間の公式な話し合いというものは不可能になりました。それが本件の解決を妨げている大きな壁でございます。そのほかに、いま申し上げましたような公平の問題等々いろいろな問題がございまして、われわれといたしましては、本件、人道上の問題でございますので、できるだけ前向きに解決いたしたいと思いますけれども、問題がきわめて大きいという状況でございます。
  178. 中路雅弘

    ○中路委員 いまのような外交上の関係の問題ありますけれども、そのことは個人の請求権あるいは日本みずからの補償措置を制約するものでないということは、幾つか諸外国の例でも出されているところなんですね。先日の東京地裁の判決は、戦死傷者の補償の範囲、程度を決めるのは国の立法政策の問題だという判決を出しておりますし、いわばこの問題の解決を政府、国会にゆだねた形になっていると思うのです。そういう点で、いまおっしゃったように人道上の問題からも当然の責務の問題ですから、きょうは有馬さんもお見えですけれども、いわば議員立法という動きもあるわけですが、そういったことをまつまでもなく、政府としても誠意ある対応をいま早急にやらなくてはならないのではないかと私は考えているわけです。  どこが窓口になるのか、担当するのかということもまだよく決まっていないというお話ですけれども、一応閣僚の一員でもありますし、恩給あるいは恩給の周辺の問題等を担当する大臣でもありますから、この問題をやはり外務省を初めとして関係の省庁とも十分よく検討していただきたいという要請も含めて、最後に大臣に一言御見解を聞いて質問を終わりたいと思います。
  179. 田邉國男

    田邉国務大臣 台湾人で元日本兵士の戦死傷者の問題につきましては、先般日本の裁判等の結果もございます。この点につきましては、国民の多くの方にもいろいろの意見があるようでございます。ただ残念ながら、日中国交回復によりまして日華平和条約が失効をしたために、現在までこの問題の解決を見ておらないということでございまして、まことに残念であると思います。  ただ、この問題につきましては、日台間の国交がないということがやはり日台相互間の全般的な、そして財産請求権問題との関連もあることなどから、その解決がきわめて困難な問題であると私どもは承知をいたしております。先ほど外務省からも答弁がございましたけれども、この問題には郵便貯金の問題、いろいろな問題がまだございます。そういうことを考えますと、窓口は外務省でございますが、私ども、関係各省庁と十分連絡をとりましてこういう問題の対応をしてまいりたい、こう考えております。
  180. 中路雅弘

    ○中路委員 終わります。
  181. 石井一

    石井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十九分散会