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1982-03-18 第96回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月十八日(木曜日)     午前十一時十四分開議  出席委員    委員長 石井  一君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 山崎  拓君 理事 上田 卓三君    理事 渡部 行雄君 理事 市川 雄一君    理事 小沢 貞孝君       有馬 元治君    上草 義輝君       小渡 三郎君    狩野 明男君       亀井 善之君    木野 晴夫君       塚原 俊平君    中村喜四郎君       吹田  愰君    細田 吉藏君       宮崎 茂一君    渡辺 秀央君       岩垂寿喜男君    上原 康助君       角屋堅次郎君    矢山 有作君       坂井 弘一君    鈴切 康雄君       岡田 正勝君    永末 英一君       榊  利夫君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田邉 國男君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房同和対策室長 水田  努君         内閣総理大臣官         房総務審議官  柳川 成顕君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君         外務大臣官房長 伊達 宗起君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省情報文化         局長      橋本  恕君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省住宅局参         事官      松谷蒼一郎君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省財政局長 土屋 佳照君  委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   池田 久克君         防衛庁装備局武         器需品課長   鈴木 輝雄君         外務大臣官房審         議官      国広 道彦君         外務大臣官房審         議官      小宅 庸夫君         外務大臣官房外         務参事官    遠藤  実君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   永末 英一君     中井  洽君 同日  辞任         補欠選任   中井  洽君     永末 英一君 同月十八日  辞任         補欠選任   倉成  正君     渡辺 秀央君   田村  元君     中村喜四郎君   坂井 弘一君     鈴切 康雄君   永末 英一君     岡田 正勝君 同日  辞任         補欠選任   中村喜四郎君     田村  元君   渡辺 秀央君     倉成  正君   鈴切 康雄君     坂井 弘一君   岡田 正勝君     永末 英一君     ――――――――――――― 三月一日  民主的行政改革実現に関する請願井上泉君  紹介)(第九一七号)  同外三件(栂野泰二紹介)(第九一八号) 同月十日  民主的行政改革実現に関する請願鈴木強君  紹介)(第一一二四号)  同外二件(栂野泰二紹介)(第一一二五  号)  同(日野市朗紹介)(第一一二八号)  同(山本政弘紹介)(第一一二七号)  同(吉原米治紹介)(第一一二八号) 同月十五日  元在上海日本大使館嘱託恩給支給に関する請  願(愛野興一郎紹介)(第一二七七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇号)  地域改善対策特別措置法案内閣提出第四三  号)      ――――◇―――――
  2. 石井一

    石井委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、冒頭外務省の方に、本日かかっております在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に関連して、一言注意を喚起しておきたい問題があるのです。  かつて渡辺大蔵大臣も、在外外務職員がでたらめと言ってはなんですけれども、いろいろな行為があってややひんしゅくを買っておるというような指摘があったように新聞で読んだのですが、以下申し上げることもその一つではないかと思うのです。  これはひとつ外務省注意をしておいてくれということでありますから一言言っておきたいのですけれども、外国勤務をされておる外交官の方、一つの特権として乗用車等を購入されるときに無税で購入できるわけですね。私の調べたところでは、たとえば二千ccくらいの車でありますと四〇%あるいは四二%くらい安くなる。これは、関税のほかに登録手数料外国へ持っていくために模様がえをしなければならない、そういういろいろな費用等が免除される、ゆえに四〇%あるいは四二%安くなる。これを転勤されるたびに高く売って、特に南米あたりでは高く売れるそうですが、それで利ざやを稼いでおる。みみっちい話ですけれども、そういうことが案外いい感じを与えないことになる。それで、その辺は十分注意をしておいていただきたい。  私は、たとえば外国等で車を買われた場合に、よそに転勤される際それを持っていくのがめんどうくさいから売却されるということはよくわかるのです。そしてまた南米等では非常に高く売れる、これもよくわかります。だから、そういう点はきちんと、たとえばそのための利益分を所得として明らかにされるというようなことであればそう問題はないと私は思いますけれども、そういうことをしている人がいるのでこれは余り体裁がよくないのじゃないかということですから、十分注意をしておいていただきたい、こういうことだけです。  以下、外務省関係することを御質問したいと思いますけれども、今度の六月の国連軍縮総会に向けて、二、三の兵器禁止に関する条約批准して第二回軍縮国連総会に対処されるということを聞いておりますが、そのうちの一つに、過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器使用禁止又は制限に関する条約、それから化学兵器禁止に関する条約等々を用意されておるということを聞いておりますが、そのとおりでございますか。
  4. 栗山尚一

    栗山政府委員 特定兵器禁止に関する条約につきましては、今国会の御承認を予定して提出することにしております。化学兵器禁止に関する条約につきましては、先生承知のように目下軍縮委員会でいろいろ議論が行われておる段階でございまして、まだ条約そのものができておりませんので、今国会との関係におきましてはそういうことは考えておりません。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 特殊兵器禁止条約の方ですけれども、五条の「効力発生」に関してお伺いしたいのですが、いま何カ国ぐらい批准等を終えておりましょうか。
  6. 都甲岳洋

    都甲政府委員 お答え申し上げます。  本条約につきましては、多分わが国が初めての批准国になるだろうと予想しておりましたところ、二月十一日付でメキシコ批准いたしましたので、目下メキシコが第一番目の批准国でございます。そのほかに批准をした国はございません。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はこの条約に賛成の立場から質問をいたしたいと思いますけれども、具体的に議定書の一に代表される兵器を、一、二の例で結構ですから例示していただきたいと思います。
  8. 都甲岳洋

    都甲政府委員 第一議定書は、検出不可能な破片等を利用する兵器禁止する議定書のことをお指しだろうと思いますけれども、私の承知している範囲では、そのような兵器は現在存在していないということを聞いております。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは議定書IIの、特に「他の類似装置」という、これに該当するような代表的兵器は。
  10. 都甲岳洋

    都甲政府委員 議定書II地雷、それからブービートラップといいますか、おもちゃに仕掛けているような兵器とか、そのようなものについて使用制限禁止をしているものだと思いますけれども、私、特にブービートラップ兵器につきまして、存在するということは聞いておりますが、具体的にどのようなものがあるかということについてはまだつまびらかにしておりません。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 防衛庁の方はどう思われますか。
  12. 池田久克

    池田説明員 外務省見解と基本的に同じでございますけれども、これに類似するものを現在の自衛隊保有しておりません。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、自衛隊が持っておるか持っておらぬか聞いておるんじゃないのです。他の類似する装置ということでどういう兵器が具体的に考えられるのですかということを聞いておるんです。
  14. 池田久克

    池田説明員 議定書の言葉の解釈の方は外務省が御専門だと思いますけれども、他の類似装置でございますので、地雷とかブービートラップを挙げた上で他の類似装置でございますから、それに類似したものだと考えられます。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 おかしな答弁をなさいますね。その他の類似したやつで代表的に考えられる兵器というものはどういうものですかと聞いておるのであって、それは他の類似する兵器ですというようなこと、答弁になりますか。  具体的に聞きましょうか。  ベトナム戦争米軍が使いましたボール爆弾というのがあります。私もハノイに行って見てまいりました。大変な殺傷兵器です。御存じでしょう、ボール爆弾とはどういうものか。それはこの議定書のどの部分に相当するか、具体的に聞きましょう。
  16. 都甲岳洋

    都甲政府委員 先生いま御指摘の点につきまして、突然の御質問でございますので明確な御答弁を申し上げられなくて申しわけございませんが、また調べてお知らせしたいと思います。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いずれ外務委員会にこれがかかったときにもう一度質問しますから、その点はわかりやすく、具体的な兵器の名前を挙げられると大変わかりやすいのですよ。  それで議定書III関係して、これはナパーム弾が代表的な該当兵器だと思うのですけれども、私は過去、昭和四十六年三月段階予算委員会でこのナパーム弾の問題を取り上げました。それでそのとき明らかにしたことをもう一遍確認したいと思うのです。  その時点自衛隊が所有をしておったナパーム弾、これは米軍からのMAPであります。昭和三十二年に二千七百発、三十三年に二千八百四十五発、三十四年九百十三発、計六千四百五十八発がMAP自衛隊に渡された。そしてベトナム戦争が熾烈になった段階で、そのうちから四千二百六十七発米軍返還をした。そしてまた不用決定及び訓練等のために消費されたものが百五十五発。その百五十五発のうち消費された分は五十発。そしてその時点におけるナパーム弾保有量は二千三十六発。その二千三十六発のうち、航空自衛隊の第二補給処高蔵寺支処に貯蔵されておるものが千七百六十三発、各部隊ごとに貯蔵されておるものが二百七十三発。各部隊とは、第二航空団に六十発、第四航空団に八十二発、第五航空団に二十四発、第六航空団に一発、第八航空団に九十発、第八一航空隊に十六発、計二百七十三発。四十六年時点ではこういうことであったと思いますが、確認したいと思います。
  18. 鈴木弘

    鈴木説明員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、その四十六年以降、訓練用使用されたものがあるか、並びに現在はどういう状態になっておるか、お答えをいただきたいと思います。
  20. 鈴木弘

    鈴木説明員 御説明申し上げます。  その後、四十六年の国会で御審議になりました以降、演習等で消耗したものはございません。そして、正確に申し上げますと二千三十二発分のものを持っておったわけでございますが、それはF86用の器材でございますので、F86の用途廃止に伴いまして、各地にありましたものを現在高蔵寺に集めまして保管しております。そしてF86が用途廃止になりましたもので、このものを持っておる意味がございませんので、昨年の暮れMAP返還手続をしております。  以上であります。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 F86が引退するから、ナパーム弾を使える飛行機がないので返還をするという御答弁のようですが、このナパーム弾飛行機からの落とし方、それはいわゆるトスボミングでしょう。
  22. 池田久克

    池田説明員 ナパーム投下の方法については先生篤と御承知と思いますけれども、水平に入ってまいりまして、低空飛行に移りまして目標物の上をそのまま通過しながら落とすというものでございまして、これはトスボミングには当たらないと思います。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ファントムはそういう能力ないのですか。
  24. 池田久克

    池田説明員 ファントムにはそういう能力はございます。しかし、先生十分御承知と思いますけれども、このナパーム弾投下の仕方が問題でございまして、先ほどから御説明いたしておりますナパーム弾弾殻でございますけれども、二千三十三という弾殻は、86Fに積みましてそのまま放すという性質のものであります。これは86Fが非常に古い飛行機であるゆえんでございますが、いまの航空機、F4もそうでございますけれども、落とすときはカートリッジを使いまして突き放してやります。そうしませんと飛行機の航行の安全を阻害するおそれがあります。したがいまして、F4にもし将来別の形の弾殻をつくってナパームを使うということであればそのとおりでございますけれども、いま議論していただいております二千三十三の弾殻についてF4で使うことはできない仕組みになっております。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ベトナム戦争のときはファントムナパーム弾を使ったのですね。そうすると、今後ともナパーム弾を発射できるような装置というものはファントムには絶対につけないとここでお約束できますか。
  26. 池田久克

    池田説明員 F4ナパームを将来つけるかっけないかという御質問でございますけれども、現在われわれはF4ナパームを搭載する計画を持っておりません。それをつける必要があるかどうかは将来の問題であると考えております。  いずれにしましても、いま御議論になっております二千三十三発の弾殻に関する限り、いまのF4には使用することはできません。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっと注意しておきますけれども、あなたさっきから二千三十三発と言っていますけれども、二千三十六発ですよね。確認したじゃないですか。  大臣、いまお聞きのとおり、F4ナパーム弾を将来使うかどうか、これはいまはつけるようにはなっていない、しかし将来はわからぬようなことを言っているのですね。今度こういう条約批准を求められるわけですが、こういう条約を出す以上、将来ともこれに該当するナパーム弾というものは日本政府保有しないということを明確にしなければ、意味がないではありませんか。外務大臣の御見解を伺っておきます。
  28. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 条約上どういうふうな解釈になるかについては条約局長の方からお答えをさせますが、私はこの知識が全然ございませんが、いま御質問答弁のやりとりの中では、二千三十六発はMAP返還手続をとった、こういうことですから、私は、現在はこれはゼロだと思って聞いておりましたが、間違いでしたらばお許しをいただきたい。
  29. 都甲岳洋

    都甲政府委員 条約との関係につきまして、この特定通常兵器使用制限禁止条約につきましては、兵器の種類によって全面的に禁止されるものと使用制限をされるものとがございます。私が現在理解しておる限りでは、この焼夷兵器に関しましては、これを文民に対して使ってはいけないとか、それから人口密集地域にある軍事目標に使ってはいけないとか、そういう使用制限をすることがこの条約の主たる目的ではないかというふうに、第三議定書における特定兵器についての規制の書き方ではなかったかと承知しております。
  30. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっと確認しておきますが、この議定書IIIの焼夷兵器使用禁止又は制限に関する議定書、これに該当する最も代表的な兵器ナパーム弾でしょう。それは間違いないですね。
  31. 都甲岳洋

    都甲政府委員 ナパーム弾がその第三議定書の焼夷兵器の主たる規制の対象になっているということはそうであろうと存じます。
  32. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで私は聞いておるのですよ。自分のところは保有をして、そしてこういう条約批准するというのは説得力ないのですね。だから少なくとも、ベトナム戦争で証明をされました、焼き尽くし殺し尽くし破壊し尽くす、ナパーム弾はそう表現されておるのですね、だから、現在MAP保有しておるものはF86がなくなるので使えないから返すんだという御答弁ですが、今後もこのナパーム弾は、こういう兵器は使わない、保有しない、私はそういう態度であってもらいたい。防衛庁の方の御答弁では将来はわからぬというような御答弁ですから、よけいに私はこの際、将来ともこのナパーム弾というような議定書IIIに該当するような殺傷兵器は持つべきでないというような決意のほどを外務大臣に期待をしておるわけです。もう一度大臣の御見解を承りたいと思います。
  33. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほど申し上げたように返還手続のとられておる現状でございますから、楢崎委員の御質問の御趣旨を体して今後どうするかは検討をさせていただきたいと思います。
  34. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは今後の政治方針ですから、防衛庁の方も実は長官の責任ある答弁が私は欲しかったわけです。こう言っては失礼ですけれども、審議官ではなかなかそういう政治方針、高度の政治判断を要する問題について御答弁を期待するのは無理であろうと思っておったのですが、いま外務大臣の方から慎重に検討したいということですから、ひとつこの点は防衛庁長官とも御相談の上、いずれ外務委員会でこの条約がかかった時点で私は質問をする予定でございますから、その際に確たる見解を御表明いただきたい、このように思いますが、大臣どうでしょうか。
  35. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御質問の御趣旨に沿って防衛庁長官とも相談し、検討さしていただきます。
  36. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に、三月一日の予算委員会第二分科会で私は、日本駐留をしておったタイ空軍の問題について質問をしました。その後、調査の結果が知らされました。その調査の結果に基づいて質問を継続したいと思います。  タイ空軍分遣隊日本駐留していたのは昭和二十六年六月から五十一年七月まで。二十六年六月から四十三年ごろまでは、軍用機はC47三機、乗員約三十名、任務は空輸支援。四十四年ごろC47がC123二機にかわった。その時点での乗務員は約二十五名。昭和四十四年十二月、立川飛行業務停止のためにこの分遣隊横田基地に移駐をした。このタイ空軍機米軍によるMAPでありますけれども、これは貸与ではなしに無償譲渡あるいは無償供与である。間違いありませんね。
  37. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 間違いございません。
  38. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたの三月一日の御答弁はずいぶん間違ったところがあるわけですね。私はこの点について確認をしておきたいのです。  あなたは国連軍として駐留したとおっしゃいましたね。タイ国連軍に加入したのは二十九年なんです。そして、さかのぼって二十七年の四月二十八日から国連軍として取り扱われるようになったわけです。だから、あなたの答弁はそこでまず違いますね。  このタイ空軍は、少なくとも昭和二十六年六月から昭和二十七年三月までは国連軍ではなかった。しかもあなたは、私がそれを言うと、いや昭和二十六年九月八日の吉田アチソン交換公文根拠になっている、こうおっしゃいましたね。もしそうであるとしても、これは六月からというと三カ月間そこに以前からいることになる。したがって、吉田アチソン交換公文はこの三カ月間については根拠にならない。しかも私は、この吉田アチソン交換公文効力を発揮するのは、旧安保条約発効をしました昭和二十七年四月二十八日以降からである、このように思いますよ。しかも、タイ占領軍、つまり連合軍でもなかった。  昭和二十六年六月から二十七年四月二十八日までの期間について、タイ空軍日本駐留した根拠は一体何であったのですか。
  39. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 条約上の根拠については後で条約局長から詳しく答弁していただきますけれども、先ほど楢崎委員質問を私誤解しておりまして、輸送機MAPかという御質問を実はちょっと取り違えまして、さっき楢崎委員が言われました国連軍として派遣している輸送機、これはタイ輸送機でございまして、MAP修理とは別に関係ないわけでございます。この前の委員会でも三つ問題が出ておりまして、一つ修理のために入ってきたタイ空軍機、もう一つ国連機、こういうことでございます。
  40. 栗山尚一

    栗山政府委員 楢崎先生の御指摘のとおりに、昭和二十七年の四月二十八日に平和条約発効いたしまして、それ以後は、当然のことながら旧安保条約とそれから吉田アチソン交換公文というものが、日米間において、日本におきます米軍施設、区域、基地使用に関するもろもろの事項を規律しておるということでございます。  それでは平和条約発効前はどうか、法律的な根拠はどうかという御質問かと思いますが、御承知のように平和条約発効以前は占領下にあったわけでございますから、占領軍でありますところの連合国、その主たる責任者であります米国というものの方針と申しますか措置によりまして、このタイ空軍機日本への配備と申しますか駐留と申しますか、そういうものが認められておったということであろうと思いますが、そのときの詳細な連合軍の指令でありますとかそういうものについては、ただいまちょっと資料を持ち合わせておりませんので、承知しておりません。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が想像するところは、つまり占領中ですから日本に主権がない、それで米軍の許可で来ておったのではないかというふうに推測するのですけれども、この辺はやはりきちっと整理をしておかないといけないと思うのですね。  それで、時間が来ましたから最後一問にいたしますけれども、このタイ空軍日本駐留について立川飛行場が使われて、その後横田飛行場が使われた。立川飛行場自衛隊と共用ですね、四十七年から。それで五十二年に完全に返還をされたわけですけれども、国連軍自衛隊基地を使うというときには、アメリカ軍の場合は地位協定の二条一項(a)によって合同委員会の議を経れば、合意を得れば使われますね。国連軍の場合は国連軍地位協定の五条によって、合同会議の議を経てと申しますか合意を経て使うことができる。私はこの前もちょっと指摘をしたのですけれども、あの朝鮮戦争に関連する国連軍、十六カ国ですね。しかも国連軍地位協定の前文で日本の周辺ということは範囲はどこかと聞いたら、安保条約六条の極東の範囲だ。そうすると、この国連軍地位協定によって十六カ国は日米安保条約と全く同じように、それぞれの国と安保条約を結んだような、全部とは言いませんけれども、その効果の一部を国連軍は共有するのですね。私大変な問題だと思うのです。  それで、この前もちょっと触れましたように、これが極東有事のときに、極東の範囲安保条約六条の範囲と一致すれば、この国連軍十六カ国というのは日本の民間空港及び自衛隊基地も使えるということになる。私は、これは非常に重要な解釈である、このように思いますよ。しかも、このタイ空軍の目的は、外務省の報告によると空輸支援ということになっている。朝鮮戦争のときに空輸支援というのは当然作戦行動の一部ですよ、これは。だから、限りなく拡張されていく。国連軍十六カ国が、自由というとおかしいけれども、合同会議の議を経れば極東有事の際に日本のいろいろな施設を使うことができる、こういう内容になっておることを私は心配をしておるのです。  それで、その辺の歯どめというか、いわゆる違憲事項である集団自衛権の発動につながるような危険性を持っておる、この辺の国連軍日本施設、区域の使用について非常にシビアに考える必要がある。最後にもう一遍外務大臣の御見解を聞いて、終わりたいと思います。
  42. 栗山尚一

    栗山政府委員 国連軍地位協定につきましては、ただいま楢崎先生指摘のとおりに、合同会議を通じまして施設、区域の提供については合意をするということになっておりまして、これも先生よく御承知のとおりだと思いますが、国連軍地位協定の公式議事録におきまして、これは「兵たん上の援助を与えるため必要な最小限度に限る」ということになっておりますので、いわゆる安保条約で言うところの戦闘作戦行動というようなもののために国連軍施設、区域を使うということは国連軍地位協定上認められていない、この点はこの前分科会のときに私から御答弁申し上げたところでございます。  それから、極東の範囲との関連につきましては、これは吉田アチソン交換公文との関連で安保国会においても御質問がありまして、これに対して政府の方から、これは極東という言葉を使っておるけれども、安保条約で言うところの極東という範囲とは必ずしも一致しない、すなわち、そもそも国連軍地位協定の対象になっております国連軍というものは、御承知のように朝鮮事変、朝鮮動乱というものを念頭に置いて、それに対応するための国連軍の行動を兵たんの面で支援するというためにつくられたものでありまして、そういう意味におきまして、安保条約で言うところの極東の範囲とはこれは必ずしも一致しない、むしろある意味では狭いものであるということを安保国会のときにおきましても政府の方から御説明申し上げておるところでございます。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ちょっとそれは違うんじゃないですか。この前の三月一日、淺尾局長は、あなたは吉田アチソン交換公文を言っているけれども、私は国連軍地位協定の前文の「その附近」というのを聞いているのですよ。「その附近」というのは安保条約の六条に言う極東の範囲と同じだというふうに解釈していると淺尾さんは答弁したのですよ。それで私は言っているのです。そうすると、それを取り消すのですか。どうなんですか。
  44. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 三月一日の予算第二分科会において、国連軍地位協定に言う「その附近」というのは極東として観念してよいというふうに御答弁したのは、そのとおりでございます。しかし、その答弁意味は、「その附近」についてまず第一に私の方から明確な定義があるわけではないというふうに申し上げました。極東における国際連合の行動に従事する軍隊を支持するための場所という趣旨答弁したものでございます。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 時間が来ましたから、私はこの次に譲りますけれども、あなたは本当にくるくる答弁を変えますね。そしてへ理屈を言ってごまかしてしまう癖がある。問題を残しておきますよ。  終わります。
  46. 石井一

    石井委員長 次に、鈴切康雄君。
  47. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の法案の内容につきましては、在アンカレジ領事館を総領事館に昇格をする、そして、在アルバニア日本国大使館の新設、こういう問題については、これはもう対外的な問題であるだけに一刻も早くこの法案を通してあげるということ、これは与野党とも一致するところであり、そういう意味からいいますと、この法案が早く審議されていくということも大きな意義があろうかと思うわけであります。  しかし、考えてみますと、これはこれとして、国政全般の問題として、いろいろ内外の問題が非常に緊迫している、あるいは外交問題等についてもこれから外務大臣としてもいろいろ対処をしていかなければならない重要な問題があるわけでありますが、とりあえずこの法案の内容絡みで一、二問だけ聞いておきたいと思うのです。  実は西ベルリンの日本国大使館のことでございますけれども、昭和十七年に完成をいたしました西ベルリンの元日本国大使館は、昭和十九年に爆撃で壊されまして、最小限の保存措置を講じたままで現在は全く使われていないという状況にあります。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕 ところが、シュミット首相からも文化絡みの施設として再利用を検討してほしい旨の要請があるように聞いておりますけれども、要請の内容はどういう内容になっておるのか、また、その見通しについてはどうお考えになっているのか。また、これには大変に修復の費用がかかると聞いておりますが、その修復の費用はどれくらいかかる見通しなのか。それから、これについて今後の予算措置としてはどういうふうにお考えになっているのか。また、これは国有財産だと聞いているわけでありますけれども、この国有財産について、シュミット首相からの要請があるわけでありますが、これをどういうふうにこれから運営していかれるのか等の問題についてちょっと見解をお伺いしたいと思います。
  48. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ただいま先生指摘のとおり、西ドイツのシュミット首相及び西ベルリンの市長から数回にわたって、旧日本大使館を修復の上、文化的な施設として使いたいという要請が参っております。これは西ドイツ政府及び西ベルリン当局といたしまして西ベルリンを国際都市として発展させていきたい、その計画の一環として協力を求められているわけでございます。  この修復の費用の点につきましては、一昨年、日本の業者をして一応の見積もりを立てさせております。大体の費用は、修復だけに二十億円くらい、もう少し詳しく申し上げますと、千七百七十九万六千五百五十マルクを要する、こういう試算が一応出ております。ただ、これはあくまでも修復の予算でございまして、これを文化施設あるいは文化センターに変えるという費用はこの中には含まれておりません。  ただいま先生指摘のとおり、このベルリン旧日本国大使館の建物及び土地は国有財産でございます。国有財産でございますから、その使用についてはいろいろ法律上の制約があることはそのとおりでございます。現在、わが政府といたしましてはいろいろな可能性、この大使館の建物をどういうふうに使っていくかという可能性について検討している段階でございまして、五十七年度政府予算原案において調査費を計上している次第でございます。この調査費を活用いたしまして、この大使館の将来の修復及び利用方法を検討していきたい、かように考えております。
  49. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 シュミット首相あるいは西ベルリンの市長から、ぜひ国際都市としての協力をお願いをしたいということでございますけれども、文化施設あるいは文化センター、こういうものにはやはりいろいろな考え方があると思うのですが、具体的にこれからどういうふうに、国際都市としての協力という中にはたとえば博物館をつくってくれとかいろいろになるようなものをつくってくれとかいうような形になろうかと思うわけでございますけれども、その点については、向こうとしてはどういう要請が来ているのでしょうか。いまの御答弁でちょっとわからない点がある。
  50. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 先方の要請の内容も必ずしも詰めたものではございませんので、文化的な施設として活用を考えてくれ、こういう程度にとどまっております。  また、これは西ベルリンの今後の都市計画その他とも関連するものであろうかと考えておりますし、その西ベルリンの都市計画自体がまだ一〇〇%はっきり決まったものでないという状況も恐らく踏まえてのことだと思いますが、現在まで私どもが受けております要請は、漠然と文化的な施設にしたい、こういうことでございます。
  51. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 修復に約二十億円の金がかかるというわけでありますが、では、これを全部政府の資金でやるのか、あるいは民間の資金を仰ぐのか、その点についてはどういうふうにお考えになっているのか。  また、五十七年度調査費を組んでおられるということですが、その調査費の使用目的というのはどんなふうにお考えでしょうか。
  52. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 非常に膨大な費用がかかることは御指摘のとおりでございます。これを民間の協力のもとで進めるかどうかということにつきましても、まだ結論を得ておりません。検討の段階でございます。予算に計上されました調査費を活用して、その点も考えていきたいと思っております。  その調査費をどう使うかという御質問でございますが、原案に盛られている額は百万円ということでございますので、非常に限られた額の中で、できるだけこれを有効に使いたい。まだ結論を得ているわけではございませんが、いろいろな有識者の意見を徴するとか、現地に専門家を派遣して実情を見るとか、そういうような計画を盛り込みたいと考えております。
  53. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 次に、カンボジア大使館及びウガンダ大使館は、これは実際には大使館の実館がないのですね。しかし予算定員は実際にはついているというふうに聞いているわけでありますけれども、このカンボジア大使館とウガンダ大使館についてのいわゆる国内状況とかあるいは在留邦人の状況、あるいは五十六年度、五十七年度の予算及び定員の状況についてはどういうふうになっていましょうか。
  54. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 カンボジア国内の情勢でございますが、御存じのとおり、一九七九年以来ベトナム軍がカンボジアに約二十万駐留しております。それに対しまして、現在、民主カンボジア等の抗越勢力がゲリラ活動その他を行っておりまして、特にことしの一月中旬以来相当激しい戦闘が行われております。  なお、治安状況につきましては、プノンペン周辺につきましてはかなり治安が安定しておるようでございますけれども、地方に行きますと、相当な治安の混乱が見られるということのようでございます。  在留邦人につきましては、短期の滞在者がときどきはございますけれども、長期の滞在者はいないというふうに了解しております。
  55. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十六年度にも、たしかウガンダには大使あるいは一等書記官、三等理事官等三名とカンボジア大使一名の予算定員を組んでいるわけですね。ところが、これは恐らく不用額になったのじゃないかと思うのですが、五十七年度にはどういうふうな予算をお組みになっているのでしょうか。
  56. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  五十六年度はただいま鈴切委員がおっしゃったとおりでございまして、欠員ということになっておりました。  五十七年度におきましては、人員の効率的利用の観点から、外務省定員の計画削減の一環といたしまして、ウガンダ大使館に五十六年度に配置されておりました二名を削減することといたしまして、したがいまして、ウガンダの大使館には大使一名、それからカンボジアは五十六年度に引き続きまして大使一名の定員ということになっておりまして、これは欠員ということになっております。
  57. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この在外公館に関する法案の内容等については、以上の点であれします。  そこで、外務大臣はいよいよ二十日から二十五日まで訪米されて、レーガン大統領またはヘイグ国務長官らと日米首脳会談に臨まれるわけでありますが、まことに御苦労さまでございます。  この外務大臣の訪米については、確かに御存じのとおり、鈴木内閣改造後初めて訪米をされるという意味においては、外務大臣が行かれることについては非常に意義があるだろうということでありますが、いま、アメリカについて申し上げますと、貿易摩擦あるいはまた防衛の努力を日本に要請する等のいろいろな問題が非常に大きく話題になっておるわけであります。そこで、外務大臣は今回の訪米目的とその意義はどこにあるがとお考えになっているのかということがまず第一点。  それから、今回の訪米に当たって、十六日の記者会見において外務大臣は、日米経済摩擦については、個々の米側の要請は要請として、世界経済の再活性化について大局的見地から話し合いをしたいと表明されております。日米の当面の最大の課題でありますところの貿易摩擦の問題の話し合いについては、これは確かに外務大臣がおっしゃっているように、国際経済の問題の上から大所高所お話しになることはそれは当然だとしても、現在の日米の当面の最大の課題である貿易摩擦問題の話し合いというものについては避けて通れないだろうと私は思っているわけでありますけれども、外務大臣の御所見をお伺いしたい。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私の訪米の目的は、大体鈴切委員の御質問の御趣旨に沿っておると思います。  改造内閣後初の外務大臣訪米ということになりますし、また昨年の伊東外務大臣以来を考えますと、一年ぶりということになります。したがって、まず第一の課題としては、当面の国際情勢について、これは東西関係もございますしあるいは中東の関係もございますし、またアジアのいろいろな問題あるいはアメリカの関心のある中米、カリブ海の問題等々ございますが、そういう国際情勢全般について腹蔵のない意見交換をすることはもとよりでございます。  また、ただいまお尋ねの日米間の経済摩擦と申しましょうか貿易の問題、あるいはそれとともに世界経済との関連で、日本とアメリカが国際的に見ますならば三分の一のGNPを占めておるわけで、この両国の考え方による国際経済の影響というものは非常に多いのでありますから、特にアメリカは西側諸国のリーダー格としてどう対処していくか。現在欧米において経済が行き詰まっておって、そのことによって日本との貿易インバランスが厳しく批判もされる。まあそれぞれ入り組んでおると思うのでありますから、この二国間の当面の問題にどう対応するかということももとよりでありますが、そういう国際経済との絡みで今後日米がどう対処していくか、こういうようなことが重要な課題になると思います。
  59. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 鈴木総理大臣は施政方針演説で、国際社会全体の安定と発展に貢献するために積極的な外交の展開を図っていく、こういうふうに強調されております。当面アメリカ側から強く求められているわが国の果たすべき国際的役割りについては、この日米首脳会談を通じて外務大臣としてどのような具体的対応策を表明されるお考えなのでしょうか。
  60. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 国際社会の安定という中で、恐らく御質問は、経済の安定が基盤になる、その辺の重要性をお考えなのではないか。  日本としては、欧米の失業、インフレ、成長率がほとんど見られないような、一言で言うならばそういう深刻な不況に悩んでおる、そういう中で日本が比較的いい経済状況にある、したがって、日本がそういう場合にどう対応してくるか、それが非常に西側諸国に対する影響が大きい、こういうことでございましょうから、日本としてはでき得る限りの市場開放をしていく。また、貿易の障害になるようなことについては、いわゆる非関税障壁のようなものもできる限り改廃していくということで、日本として積極的な手を打ってきておるわけであります。  しかしそれがまだ十分でないということで、アメリカを中心としてECからもいろいろ意見がございますから、それらのことについては日本として責任ある対応をしていく。現に日米貿易小委員会の状況をごらんいただきましても、日米間の問題点については種々検討いたしておるわけでございますが、市場開放についての努力というもの、そのことによりまして少なくとも日米の間の摩擦を解消しながら、また、ヨーロッパ諸国にもこたえながら、そして世界全体の経済の安定の上に寄与していく、こういうような行き方を考えておる次第でございます。
  61. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 御存じのとおり、世界経済が非常に停滞しておりまして深刻なものがあるわけでありますが、日米の貿易摩擦は、かつて訪米された江崎訪米団に対してのわが国の閉鎖市場に対する不満表明と、相互主義による日米貿易の縮小均衡を目指す気配を実際には緩めていないという現状であります。こういうようなことになりますと、実際に日米協調とかあるいは相互依存の基盤というものを突き崩すような結果になりかねないということで、私は非常に心配をしているわけでありますけれども、このような貿易とかあるいは防衛摩擦等の日米の不協和音の高まっている現在において、日米関係をどのように再構築をされようとされているのか、その点について外務大臣はどうお考えになっているのか。  また、松永外務審議官の訪米による高級事務レベル間の協議をサミット前の四月か五月の適当な時期にやろうとか、あるいはまた、場合によっては日米閣僚会議の再開をやっていこうというような考え方によって積極的にこれに対処されようというお考えだというように聞いているわけでありますけれども、その点についてはどうなんでしょうか。
  62. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大変広範囲にいろいろお尋ねでこざいましたが、日本の市場開放につきましては問題点は列挙されておるわけでございます。これらについて誠意を持って早急に解決していく努力によりまして、日本に対する批判にこたえたい、こう思います。  また、防衛の関係につきましては、これは昨年来大変問題になったわけでございますが、五十七年度予算編成の機会に日本としてのでき得る限りの努力をした、こういうことから一応の評価を得ておるようでございまして、今後それをどのように持続的にやっていけるかどうかということがこれからの問題ではないかと思うのであります。  いずれにいたしましてもこの両国の間が、特に日本から言いますと日本外交の基軸をなすのが日米外交でございますので、対話を繰り返すことによりまして両国の間がいまのような厳しい情勢でなく、本当に友好親善の上にいろいろの問題に対応できるようにしていかなければならないと思うのであります。これらにつきましては、アメリカはアメリカとしていろいろ御意見や希望もございましょう。しかし日本日本の財政上の問題もございますし、あるいは防衛の問題につきましてはいろいろな制約もあることでございますから、御意見はよく承りますが、しかし日本が自主的に判断をしていくということは言うまでもないと思うのであります。  それから松永審議官のことについてお尋ねがございましたが、松永審議官は現在外務省内におきまして経済問題を担当しておりまして、日米の間の各種の問題については、日ごろこれに専心をしておるわけでございます。私としては、必要があれば訪米をすることもよろしいし、また、現在の立場で大いに努力をしていただいて日米間を円滑にしていくようにお願いをしておる、こういうことでございます。  日米閣僚会議の問題につきましては、御承知のように賢人会議で話題に上ったのであります。現在閣僚会議が十何年か中断をしておる状況でありますが、その間に両国の責任者がかわっておるわけでありますから、そういう場を持つことも有意義である、こうは思っておりますが、現在まだ具体的にいつどうしようというようなことを、アメリカ側からも日本側からも口火を切っておりません。また、今回の訪米に際してそういうことを話題にするかどうかということも決めておらない次第でございます。
  63. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、外務大臣がこの際行かれることは火中のクリを拾うんじゃないかというふうな心配等もあるわけでありますけれども、しかしそれよりも、やはり外務大臣が行かれることによって対話を交わされるということは非常に有意義であろう、両国間でやはり対話のとだえているものがいらだちになっていくというような、そういうふうな問題等もありますし、いま公聴会等でかなり日本の貿易摩擦あるいは防衛努力の問題等が言われている中にあって、忌憚ない意見を交換する、日本ができるものはやる、そしてできないものははっきりできないと言う、そういうやはり姿勢が私は非常に大切だと思うわけであります。  いま先ほどお話がありましたように、防衛の問題についてはかなり評価されているというお話でございますが、私は今回貿易摩擦に対して防衛の問題を絡ませるようなやり方はすべきじゃない、こう考えております。そこで、恐らく貿易摩擦の問題等がかなり向こうの方でもいろいろあるでありましょうけれども、防衛の問題については評価されているわけでありますから、外務大臣としては、行かれました後ワインバーガー国防長官が来日をされるわけです、二十五日から二十八日ぐらいに。そういうことになっておりますから、余り防衛の問題に深入りをするということでなくして、やはりこちらに来ていただいて、この問題、防衛力の整備についての問題を話し合われた方がいいんじゃないか、私はそう思うのですが、外務大臣はどうお考えでしょうか。
  64. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 鈴切委員からおっしゃいますとおりに、確かにワインバーガー国防長官は今月末に来日がすでに決定をしておりまして、私もお会いする機会を持つことにいたしております。今回の訪米に際しましては、そういうことで国防省の方は御遠慮しようか、こういう考えでおりましたが、現在、私が訪米した折には国防長官代理の方がおられる、こういうことでございますから、日米外交の中でも重要な分野を持つ防衛問題でございますので、そこで国防省に表敬訪問をいたしまして、その折に米側から何か御用意があればそれは承ることにやぶさかではございませんが、国防長官訪日が予定されておりますので、防衛庁長官、私などが日本でよくお話をする方が実効が上がるんではないかと思っております。
  65. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いよいよ外務大臣が米国を訪問する、そういう時期が間近に控えておりますけれども、去る十四日に日米貿易摩擦問題に関する対処方針を五項目にわたって決定したというふうに報道がありましたけれども、その具体的な内容はどういうものでしょうか。
  66. 遠藤実

    ○遠藤説明員 先ほど外務大臣から御答弁がございましたように、わが国といたしましては、わが国が有する地位、責任にかんがみまして、市場開放に今後とも自主的に努力していくというのが基本的な考え方でございます。  ただ、具体的にわが国がどのようなことをなし得るかというのは、今後の政府部内の検討を通じて決まっていくわけでございまして、同日の引用なさいました新聞に、たとえば輸入枠の拡大等五項目を措置するというふうな報道がございました。これにつきましては、日米貿易小委員会等いろいろなアメリカ側とのやりとりを通じましていろいろな要望が出ております。  たとえば牛肉、柑橘類の輸入制限のみならずそのほかの輸入制限の緩和、撤廃、あるいはたばこの輸入拡大、それからソーダ灰等アメリカとして競争力がある製品の日本への市場アクセスの改善、それからサービス貿易の一層の開放、あるいは自動車の安全基準あるいは輸入検査手続の簡素化等幅広い分野についての要望が寄せられていることは事実でございます。しかし、これにつきましては、先ほども申し上げましたように、具体的に何をなし得るか、今後の政府部内の検討にかかっているわけでございまして、現在のところこの具体的な措置についての決定があるわけではございません。
  67. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十四日の午後に外務大臣はマンスフィールド駐日アメリカ大使と会談されておられますけれども、日米貿易の摩擦問題に関して米側の厳しい情勢が伝えられたようでありますが、事態は楽観を許さないほど緊迫しているということでありましょうか。その点の感触はどうでしょう。
  68. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私が訪米するに際しまして万遺漏なきを期する上において、米大使館大使、公使等主要幹部の皆さんと懇談の機会を持ちました。  米側は、昨年来日本のとってまいりました関税の前倒しあるいは非関税障壁に対する対処、こういうようなことについては評価はしておりますが、これは米側としては、それは第一歩である、この先しっかりやってくれ、こういう受けとめ方のようでございます。  日米貿易小委員会も開かれまして、残存制限品目の問題や、ただいま政府委員の方から御説明を申し上げたようないろいろな問題点が取り上げられておるのでございますが、米側は、現に議会も開かれております。それから、当面とられた措置を、それは経済問題に対処する第一歩という印象でありますから、この後どれだけ日本が市場開放に努力をするのかというところに大きな関心を持っておる。だから、私が行くにつきましては、国際情勢をお話しになることはもとよりだが、まだまだこの経済問題に対してはアメリカとしては関心が非常に強いし、いままでとられたその範囲では、そう十分だという考えでない、なかなか厳しい情勢があるので、その辺をよく考えてお出かけになるがいいではないかという趣旨を私に対して非常に好意的におっしゃっておられるわけでございまして、私も、アメリカにおける政府あるいは議会の各種の情報を総合いたしまして、きわめて厳しい情勢の中に訪米をするんだということで大変苦慮をいたしておるところでございます。
  69. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 確かに、非関税障壁の改善策六十七項目をやったり、あるいは東京ラウンドの関税の引き下げについては八年間を二年間繰り上げ実施をするとか、それなりの日本は努力をしているわけですね。ところがアメリカは、いまもおっしゃったようにこれは第一歩なんだというふうに言われているわけでございますけれども、アメリカは少し神経質になり過ぎているんじゃないかというような感じがしてならぬわけです。やはりアメリカの努力も必要であろうと私は思う。  いま問題になっているのは、ECもそうでしょうけれども、日本においても、高金利政策というものがアメリカでとられたために、アメリカの中においても内需の不振が続いておりますし、また言うならば日本においても円安傾向が続いている。これはもう国際社会の非常に大きな問題になっておる。あるいはまた、軍事費を膨大にやるためにこれが国内のいわゆる財政を圧迫するというような問題があったり、あるいはまた生産性がまことに低い、努力が低い。むしろアメリカに物申すものは物申さなければいけないんじゃないか。そういう中にあって、アメリカの方では盛んに日本についての努力だけを強調している。そういうことから言いますと、むしろ内政干渉に近い状態になってきているんじゃないか。こんなことは許されないのです、実際には。しかも、日本の言葉が違うからそれが非関税障壁の一つであるとか、あるいは伝統、文化が違うからこれはまた大きな問題だとか、もうそんなことになりますと、それぞれの国の自主的な問題が非常にあるわけでございますから、そういうことまですべて網羅してやれということはアメリカは少し行き過ぎじゃないかという感じがするのですが、その点についてはやはり外務大臣もきちっと言うところは言っていただきたいなと私は思うのですが、その点がまず第一です。  それから第二は、ボルドリッジ商務長官が江崎訪米団長に強く要求したと言われます劇的な措置、これはどういうことを意味しているのかさっぱりわからない。これは、内容的にどんどん言いますと内政干渉だと言われるから劇的な措置というふうに言っているのでしょうけれども、これをどういうふうに判断されておるのか。  そこで、十四日の日米貿易摩擦問題に関する対処の方針の中で五項目を取り上げられたという外務省のお考え方、それでアメリカの対日不満の鎮静化が図られるかどうか、それについての感触をお聞きします。
  70. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 米側がとっておられる施策、それを私からいろいろ言うことは、今度は米側から言えば内政干渉ということにもなってまいります。そういう懸念があるわけでございますが、しかし、米側のとっておる施策によって日本やヨーロッパがいろいろ影響を受けておる、こういうことになりますと、そのことは当然主張をすべきことではないか。アメリカはインフレ抑制のために努力をしておる、その努力の一つが高金利政策になっておる、その高金利政策は各国が見ても少し強過ぎるのではないか、それによって日欧がそれぞれ影響を受けておるということも紛れもない事実でございます。日本の円がもう少し正当に評価されるような事態でありますならば、内需の喚起にも役立ってまいりますから、そういう点はやはり指摘をする方がいいのではないか。  しかし、アメリカのいまとっておられる施策によりまして物価の面では次第に効果があらわれてきておりますし、また、アメリカの明示しておる経済運営が下期以降景気回復に向かうということについても、いまの物価の鎮静しておるそういう方向からすると、アメリカの経済運営はだんだん効果が出てくるのではないか、こんなふうに見ておる次第でございます。  次に、劇的な措置ということをボルドリッジ商務長官が言われたのでありますが、これは解釈のしようではないかと思うのですね。私は、思い切った措置をおとりなさい、こう言ったものだと理解をしておるわけであります。  米側はよく、個々の問題よりも包括的な処理、そういうようなものに期待しておることを言っておりますから、したがって、日本の市場開放というものが、いろいろな問題が総合されてなるほどこれだけやってくれたかというようなこと、そういうところに期待感があるのではないかと思います。日米貿易小委員会の経過を見ましても、また御質問の中にある五項目、こういうようなものが重要な要素ではあるかと思いますが、そのほかのことにつきましても、でき得る限り市場開放の上に日本のとり得ることはやる、こういうことだと思うのであります。  以上でございます。
  71. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 貿易摩擦問題についてアメリカの政府は十六日、六月のベルサイユ・サミット、いわゆる先進国首脳会議までに日本は先ほどもお話がありましたように懸案の問題の一括解決案を提示するよう、あなたが今度訪米されるときには持ち出す方針を固めたというふうに伝えられておるわけですけれども、この一括解決案の具体的な内容についてはどのように理解をされておるか、そしてまた、どういう情報をあなたは受け取っておられるのでしょうか。
  72. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 一部新聞報道で、ベルサイユ・サミットまでに一括解決をするように、私の訪米の機会に米側がそういう意図表明をするようなことが伝えられておりますが、現在外務省としてはそのような確報を得てはおりません。ただ、そういう米側の意図表明があるなしにかかわらず、いま欧米より日本の市場開放を求めてきておる、インバランスの解消を要望しておるというこの事態に対処するためには、迅速に、そして問題を残さずに対応していくという必要性はあるわけでございます。  こういう時間を限ってどうこうというようなことは、またその時間にとらわれることによりましてうまく対応のできない場合も出てくることがございますから、新聞報道は報道といたしまして、迅速に、適確に問題をでき得る限り全部片づける、こういう考え方で進んでいきたいと思います。
  73. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは新聞の報道でございますけれども、十六日の午後にステッセル国務副長官が大河原駐米大使にその旨を伝えたとか、あるいはマンスフィールド米駐日大使が外務大臣にお会いをしてその旨を伝えるということについては、それは全く根拠がないものであるかどうかの問題が一つ。  それからもう一つは、日米貿易小委員会終了後に日本側としては、サミット前の一括解決にとらわれずに、できるものから積み上げ方式で問題解決も図るという日本側の方針を一応考えられたわけでありますけれども、これについてアメリカの方では一括方式ということを言っているわけでありまして、これは大変に開きがあるなというふうに思うのですけれども、その点についてはどういうふうに対処されようとしているか。
  74. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 米側のそれぞれ責任ある方が何か私に言ったかどうか、新聞報道のようなことはございません。ただ、アメリカが非常に厳しい情勢にある、それから、いままでとった措置は第一歩なんだから、あとしっかりやってもらいたい、こういう意図表明はあるわけでございまして、それらをとりょうによっていろいろと報道はしておるのではないかと思うのであります。  それから、日米貿易小委員会後に、それでは日本はこの委員会に伴ってどういたしますと、そういうことは一言も言っておらないのでございます。日本側が、まあ担当官からすれば問題点については解決できるものは速やかにしていく、こういうようなことは当然なことなんで、ここ一週間か半月の間に解決できるものも置いといて、それで一括やるのです、それはおかしなことだと思うのですね。  しかし、先ほど申し上げるように、私どもの気持ちとして、精神としては、たくさん問題があるが、これらをでき得る限り解決する、そういう意味合いにおいて包括的というのであれば、それはそれなりに理解はできるわけでございますが、特に日本はOTOの制度をつくりまして、そして貿易手続などに関することはいつでも持っていらっしゃい、それでそれらについては短期のうちに解決をするという姿勢もとっておるわけでございますから、この辺のことは米側においてもヨーロッパにおいても評価されておりますから、個々のそういう手続上の問題などについては順次そういう制度を活用して解決をしていく、こういうことだと思います。
  75. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本側が貿易摩擦の解消努力を積極的に行うということはいま外務大臣からお話があったわけでありますけれども、アメリカの包括的な市場開放策というものについては、これは日本としては少々問題があるという御発言かのように承ったわけでありますけれども、やはりこういう問題についてはある程度時間をかけて、サミット前の期限を切って各省庁の調整を図るとかなんとかということは非常にむずかしいし、そういうこと自体が必ずしも的確にすべてができるというわけではないだろうし、また現実に、牛肉とかオレンジ、果汁については日米交渉の十月繰り上げの形での解決努力がなされるということについてある程度合意をしているから、そういう点については日本としては一つ一つの問題の積み上げによる解決方策を今後も続けていきたい、アメリカの一括方式で何か劇的な解決策というような、そんななまやさしいものではないというふうに考えておられるのでしょうか。
  76. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 東京ラウンドは東京ラウンドで、これは国際的な取り決めで日本がこれを忠実に履行をしておる。しかし、経済情勢の現状からいたしまして、日本が自主的に関税の前倒しはする、こういうことでこれは評価されておると思うのですね。それから、八二年後半から次の段階の話し合いをしょう、こういうことについてはっきりと十月からやるということ、これも一つの前進であると思うのであります。  私は、積み上げ方式という言葉が適切かどうかは別といたしまして、そういうお約束のことはこういうふうにしましたとか、制限品目については作業部会でこうやりましょうとか、このことはこういうふうに措置しましたとか、これはそれぞれが皆答えになっておると思うのですね、それはそのことによって日本が逃げたということではないのでありますから。ですから、先ほどから申し上げますように、非常に多くの問題があるが、それらの問題について早急にその解決あるいは解決の方向を打ち出していく、それが幸いサミット前に、なるほどそれぞれの問題について一応対処したなということになれば、これは包括的対応ということにはなると私は思うのであります。  しかし、現在のこの不均衡をそれによってどの程度解消できるか、こうなってきますと、その範囲が非常に狭いのでございますから、また日本から言えば、アメリカ側のアラスカ石油を出してもらいたいとかあるいは西部炭を出してもらいたいとかいうことについても、これは当然主張をすべきだと思うのですね。この石油や石炭というものが円滑に出てくるということになりますならば、いまの不均衡の、大まかな計算で少なくとも半分以上は解消し得るということも言えるのでありますから、まあ私はこのドラマチックな措置ということが、これは相互理解の上に立つとするならば、やはりアメリカ側においても思い切った措置をとる、日本側もとる、こういうことではないかと思うのであります。
  77. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのアメリカ側が相互主義法案の成立を実はちらつかせているわけであります。わが国への市場開放要請をかなり強めている、公聴会等においてもがなりそういう問題等が取り上げられておりますけれども、この相互主義法案がもし成立をした場合、私は自由経済体制にも非常に大きな支障を来すだろうというふうに思うわけでありますが、外務大臣は、現在問題になっているアメリカの相互主義法案については、もしこれが成立したような場合においては、一体具体的にはどのような事態が考えられるのでしょうか。
  78. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 アメリカ議会に、相互主義法案と言われる、そういう関連のものが幾つか出ておることを承知しております。その中でもダンフォース法案が非常に注目をされておるわけでありますが、その法案では、米国が相手国に与えているものと実質的に同等な通商上の機会が与えられていない場合には対抗措置をとる、こういうふうに条文の中に書かれております。したがって、この内容の法案が成立した場合には、運用いかんによりまして貿易の縮小を招く可能性が出てくるわけでありますから、そういう点を心配をしておるわけでございます。一部にはこの法案は通過の見通しがあると言う方もございますし、あるいは政府当局はそういう相互主義法案というものは困るということも言っておられまして、その帰趨のほどはわかりませんが、いずれにいたしましても相互主義という表現は、お互いにいいことをやろうということならいいのですが、残念ながら、相手が閉ざしておるならおれの方も閉ざすぞ、こういうことになるのではいけないのであって、私どもは繰り返し、拡大均衡はいいが縮小均衡は困るということを申し上げておる次第です。
  79. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 櫻内外務大臣は、去る二月二十六日の予算の分科会、私もちょうど聞いておったわけでありますが、わが党の春田議員の質疑に答えられまして、米議会提出の一連の相互主義法案のうちダンフォース上院議員提出の相互主義法案については成立の可能性がある程度強いという懸念を表明されたものの、最終的にはこれを阻止し得る、そういうふうに見通しを表明されたわけでありますけれども、外務大臣としては、日米交渉でこれを阻止し得るという手だてが果たしてあるのか、その点についてはどういうお考えでしょうか。
  80. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 お答えをした時点と現在の時点、これは新聞あるいは公式にもいろいろ入ってくる情報や、議会や政府の動向を見ておりますと、ダンフォース議員が日本に来られて日本でいろいろお聞きになって帰られておりますから、あるいは相当理解を持たれたのではないか、私はこういう観察をしておりました。しかし、その後のいま申し上げました諸情報からすると、相互主義法案、特にダンフォース法案が非常に有力視されておる、こういうことで、ただいまの私の見方からすると、なかなかこれを阻止するというような楽観的な見方をしてはおれない、こういう現状だと思います。
  81. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このほど開かれましたOECDの場における貿易準備会合では、米国の相互主義はガット体制を根底から揺るがすとして強い懸念が表明されたというふうに伝えられておりますけれども、そうした動向は一段と強まってくるのじゃないかという感じがするわけであります。その問題が一つ。  それからもう一つは、いま江崎使節団が行っているわけでありますけれども、日本に対する貿易の不均衡についてのEC側の反応は日本に対してかなり厳しいものがあるということを聞いているわけでありまして、EC側が、日本が対処しなければ、場合によっては半年間内においては市場を閉鎖するというようなことも言われているというわけでありますけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。
  82. 遠藤実

    ○遠藤説明員 御質問いただきました最初の点でございますが、アメリカの相互主義法案立法化の動きにつきましては、わが国のみならず、西欧諸国その他OECD諸国も懸念を持って見守っていることは事実でございます。ただ、アメリカの相互主義法案をめぐる動きは現在非常に流動的でございまして、仮に成立するにいたしましても、どういう内容のものになるかということが必ずしもわからない。それからまた、仮に成立しても、運用いかんによるところも大きい。こういうこともございまして、懸念を持ってはおりますけれども、たとえばOECDの会議等におきまして非常に大きく取り上げるといった状況にはまだなっておりません。  それから、江崎使節団がECに参りましたときに、ECのトルン委員長が、今後六カ月以内に保護的な措置をとる国が出てくるかもしれないと言ったことは事実のようでございますけれども、その真意は必ずしもはっきりいたしません。江崎先生一行がお帰りになってから、改めて十分にお話を伺いたいと思っております。
  83. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカの相互主義に反対の立場から、わが国としてはEC諸国と協調して、国際会議の場などを通じ、相互主義反対の機運を国際的に盛り上げていくようなことを外務大臣としては考えておられるのか。これは日本だけの問題でなくして、やはりECにもあるいはまた自由諸国圏内においても重要な問題であるわけでございますし、そういう問題については、アメリカの独走だけを許しておきますと、自由経済体制に大きなひび割れがくるだろうというふうに思うわけですから、そういう点については、やはりECとの話し合いをしていくのか、あるいはその手だてについてはどのようにお考えになっていましょうか。
  84. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 相互主義法案が実際に法制化されるということになると、その運用いかんによって保護主義的傾向が非常に強まってくることは言うまでもない、そこで懸念をしておる、日本としては機会あるごとにそのことを言っておるわけでございます。また、EC諸国におきましてもEC諸国なりのそういう懸念を表明しておるわけでございますが、だからといって、アメリカを置いておいてECと日本が相談してどうと、それは外交方策上、私はどうかな。現在のところ、そういう姿勢をとる、そういう行動をとるというようなことについては考えておりません。
  85. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 貿易について相互主義をとりますと、短絡的には確かに日米貿易の不均衡を是正する働きをしますけれども、長期的にはアメリカ経済の活力まで弱め、そして破壊的な影響を与えてしまうのじゃないか、ひいては自由陣営の経済体制まで揺るがしてしまう問題だけに、外務大臣としては、これは決してアメリカだけの主張というのではなくして、大所高所に立った物の考え方に立って取り組んでいただきたいなということを私はこの際ぜひ申し上げておきたいわけです。外務大臣がアメリカに行ったことによってずいぶん大きく道が開けたなというような形にぜひ御努力を願いたいと思います。  次に、日韓の経済協力問題について非常に難航しているわけです。実際には、そのままにしてほっておくわけにはいかないと私は思いますけれども、外務大臣は、アメリカから帰ってこられて、五月の連休前後の訪韓によって事実上この問題については決着をしたいというお考え方であるのか、あるいはまだまだこれからずっと長く延ばさなくちゃならぬのか、その点についてはいかがでしょうか。
  86. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御承知のように一月、二月とハイレベルの実務者協議をいたしたわけでございます。その結果、韓国側の、どのようなプロジェクトを要望しておるか、あるいはいわゆる六十億ドル経済借款が内容的には三十五億ドルのプロジェクト、二十五億ドルの商品借款というような、またその中身が次第に明らかになってきておるわけでございます。それで、それについては日本側の関係省庁が積極的に熱心に検討をいたし、またその間に問題があれば外交ルートを通じて向こうにお尋ねをしておる、こういう作業状況を続けておるわけでございます。  日本としては、日本の経済協力の基本方針がございます。あるいは他の諸国への経済協力との均衡というようなことも考えていかなければなりません。さようなことは随時韓国側によく理解をしていただくように努めておりますが、それではいよいよ最終的にどうするかということにつきましては、なお若干行き来をする必要面が残っておると私は思うのであります。  ただ、ゴールデンウイークごろには決着か、そういうような予想が出ますゆえんのものは、その後の私の外交日程が、ベルサイユ・サミットに行くとかあるいは軍縮特別総会に行くとか、またASEAN拡大外相会議に行くとか、大変日程が詰まっておりますから、自然にそういう推測が出てくるわけでございます。いつまでもこの重要な事項が懸案として解決しないということではいけませんから、私としても速やかに解決すべくあらゆる努力を今後も続けてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  87. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまもお話がありましたように、いわゆる事務のハイレベル間においていろいろ煮詰めをされておるというようなお話でございますけれども、韓国が要求しております五カ年間の長期計画に基づく総枠、いわゆる総枠方式ですか、これについては政府としてはどういうふうに対処されるようにお考えでしょうか。
  88. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この総枠方式とか総枠ということがなかなかとりょうがむずかしいのですね。いろいろ計算して、大体この見当になります、だからこれでいきましょう、それも総枠が決まったということになるわけでありますが、日本はこういう問題について国会の御理解もちょうだいしなければなりません。あるいは一省だけでない、各省に関連をしておるのでありますから、それなりに根拠がなければなりません。ですから、よくそのことを積み上げ方式というふうに言われる向きもございますが、積み上げだ、総枠だということは余り意味がないと私は思うのです。いま提示されておるプロジェクトを検討した結果かくかくになる、それがときに日本としては額が多過ぎるから多少プロジェクトの中で考え直してもらいたい、これは民間ベースでいけるんじゃないかというような意見が出たりして、そして終局的にどういうような額になるか、こういうことでございまして、またとりょうによっては、総枠というと何かつかみ金を出すような、それはわれわれとしては考えておらないわけであります。
  89. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 韓国側は先ほどもお話がありましたように、約三十五億ドルの医療とが教育施設の拡充に対するプロジェクト援助、それから二十五億ドルの商品借款のすべてを円借款でやってもらいたい、いわゆる低利な借款をやってもらいたいというわけでありますけれども、日本としても経済協力の原則というものもある程度はありまして、中国とかあるいは東南アジア等においてのバランス等も考えなくちゃならぬ点もあろうかというふうに私は思うわけでありますけれども、そうなった場合、円借款は円借款、あるいは輸銀とか民間融資とかというような、そういう対象資金別に振り分けるという形にならざるを得ないと思うのですけれども、その点どういうお考えであるのかを聞かしていただきたい。
  90. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまのお尋ねの点が、なかなか詰めるのにむずかしいわけですね。私どもから見て、このプロジェクトは採算性があるじゃないか、であれば思い切って民間資金でやったらどうですかともこれは言えるわけですね。あるいは、この程度なら輸銀資金でやってもらいたいというようなことが双方で円満に速やかに合意に達する必要があると思うのであります。  いずれにしても私どもとしては、この韓国の新五カ年計画に伴う日本への援助を要請しておる問題は、誠意を持って対処してまいりたい。また、日本の経済協力の基本方針あるいは他の諸国との均衡、それから日韓両国の間で、過去における閣僚会議などで申し合わせておることもございます。できるだけ民間でやれるものはやろうというような話し合いもしたことも事実なんでありますから、そういう点を総合的に相互に理解を示しながら円満な妥結を図る必要がある、このように見ておる次第です。
  91. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 韓国の要求は六十億ドルでございますけれども、それに対して、日韓の友好親善を図るという意味においては日本としてもかなり考えてあげなくちゃならない問題があるわけであります。なかなかむずかしい問題でありますが、商品借款の扱いについてはどういうふうになりますか。また、円借款は三分の一ぐらいだ、あとはそれじゃ輸銀とか民間とかあるいは商品借款であるとか、そういうふうな考え方等もあるようでございますけれども、その組み合わせばどういうふうにお考えでしょうか。
  92. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 その組み合わせが両国で円満に合意に達しますならば妥結ということになるわけでございますが、それについてここで申し上げるのにはまだ十分機は熟しておらないと思うのであります。円借款につきましても、韓国の内資分として考えるのに、ある程度の必要性は折衝しておる私どもは十分承知しておりますが、財政当局からいうとまた意見もあるというようなことで、この辺が最後の詰めであると思います。
  93. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは話を変えまして、三月十五日に日米安保条約の改定を求める百人委員会という団体が発足しましたけれども、この中で自民党の議員が五十七名とか五十八名とか含まれているというふうに言われております。政府はこの団体とは公的にいかなる関連も持たないし、また、公務員もこれらと公的、私的の関係を持つべきではないという考え方であるかどうか、この点、国家公務員法から言いますと中立義務ということがありますからね。こういう問題について果たして委員会のメンバーに国家公務員がなれるのかどうか、その点についても御見解を……。
  94. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  冒頭にまず、この改定を訴える声明というものは、一つの国内各界の方々のお考えでございましょうけれども、予算委員会等でも総理並びに外務大臣お答え申し上げているとおり、政府の立場、見解とは全く異なるものでございます。  この声明との関連におきまして、公務員というものは公私の別なくこれに関係を持つべきではないということにつきましては、国家公務員法とそれから人事院規則というものがあるわけでございまして、一般的に公務員は政治活動というものの規制を受けているわけでございますので、このような活動に加わる、加わると申しますかこのような声明の委員会に名を連ねるというようなことは、一般的に公務員としてはできないことであろうと考えます。
  95. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日米安保条約締結のいろいろな経過があるわけでありますけれども、これをいわゆる双務的に改定しようという動きについてはアメリカの方にもありますし、いま申し上げましたように百人委員会というのにも出ておるわけでありますけれども、外務大臣はいまの日米安保条約の改定はもう必要はないんだ、そのようにお考えになっているのかどうか。また、必要はあるとするならば、どういう事項を改定しなければならぬのかという問題と、それから、今度外務大臣がアメリカにお行きになりまして、日本側においては日米安保条約の改定の問題についてはいろいろ百人委員会とかそういうものがあるけれども、政府としてはそういう意思はないということを明確に訪米されたときにおっしゃる必要があるのではないだろうか。そうしませんと、大変に誤解を招くような形になりかねない動きでございますから、その点については外務大臣はどうお考えでしょうか。
  96. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日米安保条約について百人委員会の動きがあることに伴いまして、鈴木総理は参議院の予算委員会におきまして、政府としては現在日米安保条約がうまく機能しておるので改定の意思のないということをはっきり答弁申し上げておる次第でございまして、私もまたこの問題でお尋ねがあるときには、同様、現行安保条約が機能しておる、したがって改定の考えは持っておらないということをはっきり申し上げておる次第でございます。ですから、もしアメリカにおきましてこの種の問題について発言をする機会がありますならば、もとよりいま申し上げたとおりのことを申す考えでございます。
  97. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま考えるとおりに申すというわけでございますけれども、日本としては、現在の日米安保条約についてはいまそういう動きがあるけれども、全くいま改定の意思はございませんよ、そういうことを明確にアメリカの方におっしゃる、こういうことでしょうか。
  98. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはどうでしょうか、いま国内で何かちょっとした動きがある、そういうものを政府が頭を使って、ああいうことがあるけれどもどうか、私はちょっとそれは下手だと思うのですね。もうすでに総理も、またいまこうやって御質問に答えて明快に申し上げておるのでございまして、もしそういう問題が出ればもちろんそのとおりはっきりした姿勢を示す、こう申し上げておる次第でございます。
  99. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私がいま心配するのは、外務省のOBである法眼さんですか、法眼元事務次官ですね、こういう人とか、あるいは国連大使をやった加瀬俊一さんとか、言うならば外務省にかなり大きなウエートを持っている人が、OBであるいま現在は民間であるとはいいながらも、そこにおられる役人さんたちよりもかなり先輩であるそういう人たちが百人委員会等においてこういう動きをするということは、ただ単に一民間団体だというのでなくして、かなりアメリカにおいても関心を持つ問題じゃないかというふうに私は思うわけですから、そういう意味において、民間団体のことだからそんなものをいま取り出すのはどうなんということではなくして、私はやはり外務大臣が明確にこの問題を言われる必要があるのじゃないだろうかというふうに思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
  100. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは考え方、見方だと思うのですね。よく飛んで火に入る夏の虫なんというのもありますからね、余りかかわり合いを持つというのはどうか。日本もいろいろな面でいろいろな意見が出て、大変言論の自由な国でございますから、したがって、そういうことも仮に米側が関心を持っておるとするならよく承知をしておるところでありますから、御質問に応じて総理なり私が国会のこの大事な場で明快に申し上げておるのでありますから、私は、自分の方からこういうこともあるけれどもこうだ、それは何か弁解がましくて、そういう考えを持たずに、もし向こうで関心があって質問があればそれは私としてよく説明をいたします。
  101. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外務大臣はどうぞ。  もう本当に時間がなくなってしまいました。私、二時間ばかりやるつもりでいっぱい持ってきているわけですけれども、本当に申しわけない、防衛局長さんまでおいでくださったし、官房長もおいでくださったわけでありますけれども。  今回F4ファントムの試改修の問題で一番問題になったのは、やはりシビリアンコントロール、文民統制を形骸化したというところに非常に問題があるだろうというふうに私は思うのですね。そういうことから考えまして、総理に報告していなかったなんて、これはもってのほかでございまして、もし防衛庁が総理に報告できないような仕組みになっているとするならば、機構とかそういう問題については当然改革をしていかなくちゃならないだろうし、総理は国防会議の議長であるわけですから、国防会議の議長である総理が防衛の問題、安全保障の問題はいつも頭にぴしっと入っていないと、こういうふうなF4ファントムの問題の爆撃装置等について素通りをしてしまって、後で大変に問題になってしまうということが考えられるわけでありますから、そういう点についてはやはり防衛庁のいまの機構というものについてもう少し国防会議の議長である総理と連絡が密になるようなシステムができなければならないのじゃないだろうかということが一つ。  それからもう一つは、防衛庁というのは歴史も浅いわけでありますけれども、御存じのとおり、大蔵省とかあるいは自治省、いわゆる警察のOBとか、装備局長ですと通産の関係とか、そういうように寄り合い世帯に実はなっているわけです。これは半面、専門的な立場からということにもなるでしょうけれども、防衛庁としても、子飼いの、いろいろと苦労されている下積みの方々等の人事については考える時期にもう来ているのではないだろうか。そういうふうに輸入的な幹部であるということ。また、一つは、防衛庁長官も改造するたびごとに首を切られているというのじゃ、防衛庁長官は私の本懐であるなんて防衛庁長官がおっしゃっても、本懐にならぬうちにかわっちゃうわけですから、もう少しじっくりとこういう問題について防衛庁は腰を落ちつけて、シビリアンコントロールの問題等についてもこれからやっていかなくてはならぬ問題が出てきたのじゃないかと私は思うのですが、その点についてはどうでしょうか。
  102. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いろいろ御指摘いただいた点、ごもっともな点が多いわけでございますが、二点。  まず、防衛庁の組織について、自衛隊の最高指揮官でもあり国防会議の議長でもある総理大臣とのパイプ役というふうなものが必要ではないかというお尋ねがございました。私ども一般的に申し上げて、そういったパイプがあることが望ましいということは防衛庁として申し上げられますが、ただ問題は、平生常日ごろから総理大臣防衛庁との間の意思の疎通を十分にすることが必要であろうかというふうに考えます。  それから、第二点の人事の問題につきましては、確かに御指摘のとおり防衛庁設立後まだ日も浅うございます。そういう意味で、各省庁の御協力を得ながら行政経験の豊富な方々に来ていただいて局長等のポストについていただいておるわけでございますけれども、最近、防衛庁で採用しました職員が逐次成長いたしまして、いま局長の一歩手前の参事官レベルまで成長しておるわけでございます。遠からずそういう人たちが局長その他の重要なポストに入って防衛行政を担当するであろうというふうに期待されておるわけでございまして、おっしゃることはごもっともですが、私ども、現在いる人間につきましても鋭意研さんに努めまして、先生の御指摘のような遺漏のない防衛行政を担当してまいりたいと考えております。
  103. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 F4ファントムの試改修の問題で、実は三月三十一日までに契約をしなければこれは不用額になってしまう、国庫債務負担行為でございますから不用額にならざるを得ないというわけで、政府は当初十八日にはそのことについての解除をしたいという意向であったわけでございますけれども、参議院等のいろいろの審議の過程から言いまして二十六日とか二十五日とかということになってしまったわけでございますが、凍結解除ということを考えたときに、いろいろな手順があると僕は思います。手順というものを経なければそこにまた問題を残しちゃうわけですから、果たして防衛庁としてはこの問題についてどういう手順を踏むべきか。  また、そういうことから言いますと、逆算して今月なら今月防衛庁としては向こうとの間の契約を結ぶということになった場合、それじゃタイムリミットいっそういう行動を起こしたらいいかということについて、少なくとも煮詰めておられると思うのです。契約をするのにただ判だけ押せばそれでいいというのじゃそれはやみ契約であって、実際に公の契約にはならぬわけでありますから、その点についてはどうお考えでしょう。
  104. 塩田章

    ○塩田政府委員 ファントムの試改修の予算につきましては、御承知のように、二月十日以降、執行関係すべて停止いたしております。この点につきましては、総理からもあるいは官房長官からも年度内にはぜひ執行いたしたいという希望はいろいろな機会にお答えをし、また申し上げているところでございますが、現在の時点におきまして、現在参議院の予算委員会で御審議をいただいている時点でございますが、この時点で、いま先生いろいろ日にちを何日とか何日とかお挙げになりましたけれども、私の方から何日というふうに申し上げて、それまでに解除していただきたいということを申し上げるような立場にはございませんので、ただ年度内にぜひ執行させていただきたいという願望を強く申し上げておるわけであります。  そこで、いまの先生のお尋ねは、防衛庁としては逆算的に見てもくろみを立てておるのじゃないかということでございますが、これは私どもといたしましては、かなり大きな契約でございますから、なるべく前広に時間をいただきたいという気持ちはございますけれども、いまここで何日あればできるから、あるいは何日かかるからというようなことを申し上げて私どもの希望を表明するというのは、いまの参議院で御審議をいただいている状況からいたしましていかがかと思いまして、実は私どもとしましては、やはり一刻も早く、一日も早く解除できて執行に差し支えないようにさせていただきたいという願望を強く申し上げた  い、こういうことでございます。
  105. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ファントムから空中給油装置を取り外したわけですけれども、この復活については現在は考えていないというお話はこの間予算委員会答弁があったわけでありますが、実際には空中給油装置については八十八個は岐阜の第二補給処に保管してあります。現在はつけないと言うけれども、再装備は全くやらないのかということになると、防衛庁がいろいろ出してきました装備というものは軍事技術の進歩等の条件の変化に応じて変わるものであるというような内容から言っても、空中給油の必要性が実際にもう全くなくなったとするならばこれは廃棄処分にしなくちゃならぬわけですね。そういう意向があるのか。あるいは、いまのところは試改修に対するところの爆撃装置をつけるということだけであって、その後、やはり爆撃装置をつけた以上は足が非常に短くなってしまうからどうしても空中給油機が必要になってくるのじゃないかということが将来もあるのかどうか。その点についてはどうでしょう。
  106. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、今回の試改修によりまして爆撃計算機能が付与されることになりますが、そのことによって足が短くなるということはございません。爆弾の搭載量自体は現状と別に変わるわけではございませんので、その点をまずお含みいただきたいと思います。  それから空中給油装置そのものでございますけれども、いま私が言えますことは、現在考えていないということ、これはこの前も申し上げたとおりでございます。  将来のことについてのお尋ねでございますが、先生からもお話がございましたように、軍事技術の進歩といったようなことを考えました場合にいろいろな変化があり得るのではないか、一般論としては確かにそういうことは言えるかと思います。空中給油装置に限らず、今回爆撃計算装置を付与することにいたしましたこと自体もそうでございますけれども、いろいろな意味で軍事技術の変化、進歩、それによってそれに対応する装備の変化ということは考えられるという意味においては一般的には考えられますが、少なくとも空中給油装置について現在、将来そういったことがあり得ると考えているのかというお尋ねでありますれば、現在は考えていないということより以上にはちょっと申し上げられないわけでございまして、将来の時点のことをいまここで、しないとかするとかということを申し上げられる状況にございません。ただ、いまは考えていないということだけでございます。
  107. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間が来ましたけれども、将来考えていないなら八十八機分は廃棄処分したらいいのですよ。そんなむだなものを補給処に置いておく必要はないのであって、少なくとも六十年代になってくると装備に対する近代化という問題の中から空中給油というものが必要になってくるだろうという考えがあるから廃棄処分できないのじゃないですか、そうでしょう。そうでなければ直ちに廃棄処分にしなさい。いかがですか。
  108. 塩田章

    ○塩田政府委員 現在あります八十八機分の廃棄処分がどうかという問題自体は私どもこれは一応別な問題としましてあのとき外しまして、現在部品として管理いたしておりますが、物品管理という観点からいきまして、まだ新しいあの物品を廃棄処分するということには物品管理法上からいってまいらないということで、別に将来のことを考えて残しておくとかあるいは廃棄処分するとかいうことでやっているわけではございませんので、一応それは別個な問題でございます。私どもはその点は結びつけて考えてはいないわけでございます。
  109. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後ですが、いわゆる五六中業については今年度相当煮詰めなくてはならぬでしょうし、すでに政府側からは内局の方に出されている考えがあるわけであります。防衛庁案としては四月にこれをまとめなくてはならぬでしょうし、実は七月から八月にかけて国防会議にかけなくてはならぬわけですけれども、工程的にも審議的にも大分おくれているような状態でありますと、五十八年度から始まります五六中業が見直し等を含めて果たしてできるかどうか。そういうことになると、場合によっては一年ぐらいずらさなくてはならぬという問題も出てくるのではないだろうかという感じもするのですね。そればかりでなしに、いま五三中業から五六中業に対して防衛庁としてはどういう点が見直しとして考えなくてはならぬ問題なのか、恐らくそういう問題についても手直しをしなくてはならないということだと思うのですが、そういうことから考えて、五六中業は五三中業を踏まえたときにどの部分に問題点があり、どの部分を充実をしなくてはならぬというふうにお考えなのか。  それからもう一つは、これから五六中業の後五九中業というのも当然考えられる。三年たったら見直しをしながら進めていくということになれば、五六中業でもう終わりだということにはならぬだろう。となると、五九中業とか、それからどんどんと中業が転がっていくというふうに防衛庁として考えているとするならば、F4ファントムの試改修は五九中業のときに初めて問題になってくるだろうし、六十年から六十一年ごろに国防会議にかかってその問題は決定されるという手順になるのじゃないかというふうに思うのですが、その点について最後にお聞きしましょう。
  110. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず五六中業の作業でございますが、私ども、現在の状況で特におくれているとは思っておりません。大体予定の線でいっているというふうに見ております。  その際に、五三中業の見直しと五六中業とがどう結びつくのかというようなお尋ねでございました。五六中業はもちろん五三中業の見直しという形で五十八年度からスタートするわけでございますが、まず基本的に、五六中業といいますものは、先生御案内のように去年の四月に国防会議で「防衛計画の大綱」の水準に到達することを基本として作業するという、言うなれば一つのお墨つきをいただいております。そういう意味では五六中業自体そういう一つの大きな目玉といいますか、めどというものを与えられていま作業をやっておりまして、五三中業の個々の手直しということよりも、むしろ「防衛計画の大綱」の線に到達するかどうかということを大きなめどにいたしまして作業をやっているというふうに申し上げられるかと思います。  それから、五六中業の後さらに五九中業と続くのではないかということですが、私どもも当然そういうふうに考えております。その点におきましては、中期業務見積もりのあの三年のローテーションの考え方をそのまま維持していきたいというふうに現在考えております。その場合に、そうすれば五九中業ということになれば、F4ファントムが国防会議にかかる具体的な時期等を考えると五九中業のような時期になるのではないかというお尋ねであったと思いますが、いわゆる量産改修の時期は六十年ごろからと考えられますので、時期的にはまさに御指摘のような時期になるのではないか。したがいまして、今回は試改修をお願いしておりますが、具体的な量産段階は五九中業の中身になっていくだろう、こういうふうに考えております。
  111. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 以上をもって質問を終了いたします。
  112. 石井一

    石井委員長 次に、岩垂寿喜男君。
  113. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最初に、臨時行政調査会が、対外交渉力や外交政策決定の機動性を高める必要性があるということに関連をして、外交に関する行政のあり方を審議していることは御存じのとおりであります。その中で、特に専門的な問題についての対外交渉は一定のルールのもとで関係官庁が相手国側と直接行うことというふうな、いわば機能分化構想というふうなものを打ち出す、そういう日程が進んでおります。これについて私は外交の多元化という懸念を指摘せざるを得ないわけですが、外務大臣はこれについてどのように対応なさろうとするつもりなのか。答申が出てしまってからさてと言ってみたところでそれは遅いと思いますので、外務省としての見解をこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
  114. 国広道彦

    ○国広説明員 先生指摘の臨調答申に関する報道は私も新聞で見たことがございますが、臨調ではまだ検討段階にありまして、最終結論は出していないと承知しております。  それはともかくといたしまして、今日のようにわが国の国際関係の広がりが大きくなっている状況を考えます場合に、対外関係の事務をすべて外務省がひとりで処理すべきものでない、またし得るものでないということは申すまでもありません。したがいまして、関係各省と外務省が緊密な協力のもとに対外関係を処理し得るようにすることが何よりも大切と考えます。物事によりましては、外務省と相談しつつ関係省庁が直接交渉することが適当な専門的な問題もございますし、現にそのように対処しているケースがかなりございます。しかし、各省が個々に対外交渉等を行うことによりまして外交の総合性が失われることは、先生指摘のとおりに国益を損なうものだと思います。外務省は対外関係につきまして総合的責任を持つ官庁と心得ておりますので、対外交渉ないし政府の対外関係事務が政府の基本方針と整合性を保ちつつ一元的に処理されることを確保していくことが必要と考えております。
  115. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 財界の一部に、名前はともかくとして経済協力省みたいな独立した機関を設けるべきだという意見があります。そして通産なり大蔵なりあるいは外務省が対外経済協力などの関係でばらばらになっていることについて、一元化する必要があるという判断を非常に強めている。このことについて懸念を持ちますので、その点については外務省としての主体的な立場というものをひとつしっかり示していただきたい、このことを臨調にも反映をするように御努力を願いたい。私の気持ちですが、申し上げておきたいと思います。  引き続いて、臨調において木村、大来元外務大臣あるいは松川元財務官などから、たとえば外交担当の官房副長官を設けたらどうかとか、あるいは外務省と他官庁との人事交流の活発化を図るべきではないかとか、さらには情報収集機能を強化すべきであるとか、さまざまな意見が出されております。これらについて、臨調が議論をしてその中で示された処方せんだけでなしに、外務省自身も主体的に、今日の国際情勢の目まぐるしい動きに対応するみずからの体制の整備、そして同時に、日本外交のポイントといいましょうか、そういうものをきちんとさせていくという努力が必要だと私は思いますけれども、これらの点についての外務省見解をお尋ねしておきたいと思います。
  116. 国広道彦

    ○国広説明員 ただいま御案内の構想は、首脳外交が活発になってまいりました今日、総理の外交活動を補佐するために御指摘のような外交担当の官房副長官を置くというようなことがアイデアとして挙げられていると承知しております。あらゆる提案がそうでございますように、この提案にもメリット、デメリットがあると思います。その一つで、いま先生御自身も御指摘のように、外務省との関係に困難が生じないかというようなことも指摘されております。またこれに対しましては、それはむしろそれぞれの個人の問題であろうというような意見もあるように聞いております。  いずれにいたしましても、外務省はその全力を挙げまして総理の外交を補佐する覚悟でございます。そして、そのために必要な体制の強化、質の強化を図っていきたいと思っております。
  117. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは御答弁は要りませんが、外務大臣、臨調の機能が、いま進んでいる作業を見ていますと効率ということにかなり重点を置いて対応しているように思われてならないのでありまして、そういう点では、対応の不十分さというものに対する外務省としての自己批判を含めた対策を示すときが来ている、こんなふうに思いますが、ぜひその点の御努力を願いたいと思います。  なお、かねてから私どもも理解を示しながら指摘をしてまいりました定数、とりわけイタリア並み五千人体制と言われるものがあるわけであります。人だけふやせばそれでいいというものじゃございませんけれども、しかしやはり、これだけのグローバルな体制のもとでは、そういう先進国並みのスタッフ、外交陣容というものを整えることが必要だと思います。これについて臨調などの議論も当然出てくるのだろうと思うのですが、これは外務大臣御みずからきちんと臨調などに反映をしていきませんと、皆さんが目指しているスケジュールというものも困難になってくるだろう、すでに困難になりつつあるということさえ私は感ずるわけですが、外務大臣のその辺に対しての対応と所見を承っておきたいと思います。
  118. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在、国の数も百六十数国というようなことで、また開放経済下にございまして、外務省の折衝する面は非常に幅広く、また深くなってきておるわけであります。そういうことから、臨調の方でも御意見が出る、あるいは与党である自由民主党の方でも外交強化委員会をつくって御意見が出る、こういうことでございます。また外務省自身としては、私の外交方針の演説の中で外交体制の強化ということも訴えてまいったわけでございますが、ただいま御所見もございましたように、これからますます外交面の担当する分野は広くむずかしいことであると思いますので、現在の体制に甘んずることなく、どのようにしたらば外交機能を十分発揮できるかということを外務省自体もよく考えなければならないということは言うまでもございません。  おかげさまで、外務省の五千人体制については臨調の方でも御理解を示していただいておるようでございます。また五十七年度予算編成に当たりましても、行管の方でも理解を示していただいておるわけでございますから、これからも外交体制の強化については、各方面にこの実態に触れておる私どもが進んで意見も申し上げ、体制の刷新強化に努めたいと思います。
  119. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 時間が余りございませんし、参議院の方にも外務大臣は呼ばれているそうでございますから、端的に質問を続けていきたいと思うのです。  あさって、いよいよ訪米でございます。いまどきの訪米は、外務大臣としても大変心が重たいものもあろうと思います。どうかひとつ御健闘を期待したいと思うのですが、その前に……。  たとえばアメリカのレーガン政権の対ソ認識、それに対する日本の外交、外務大臣の対応というふうなことが求められるとするとします。当然そういう話題が出てくるでしょう。私はかねてからこの委員会でも何回か主張してまいりましたが、対ソ認識が一緒になったということから出発をしますと、したがって、対応する防衛力の強化などなどというところへストレートにエスカレートをしてくる経過が今日までの状況のもとにございました。  そこで、いままで政府としては、アメリカと日本との間には見方や厳しさに違いがある、主体的にそれらの問題について判断をするというふうに、自主的に判断をなさるという立場をとってこられたわけですが、これらについては、言わずもがなかもしれませんけれども、訪米をなさるときの心構えとして、わが国の対応についてきちんと明らかにしておいていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  120. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 岩垂委員の大変いい御意見をちょうだいいたしました。私ももちろんそのけじめをつけて、日本としての自主的な立場は明白にしてお話し合いをする、こういう心構えでいきたいと思います。
  121. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 見方や厳しさに違いがあるということは大臣もお認めになっていらっしゃるというふうに考えてよろしゅうございますね。
  122. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのとおりでございます。
  123. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これも、五六中業などの問題について、たとえば具体的な要求を突きつけられる可能性というものも私はないとは言えないと思うのです。先ほど鈴切委員とのやりとりの中で、国防長官がこっちへお見えになるので、できればその機会にというふうにおっしゃっておられたようでございますが、恐らくはそれらのことが出てくる可能性というのは、私は否定することができないだろうと思うのです。  この点についても、私はそれを評価する立場にはいませんけれども、わが国のこれまでの国会答弁をなさってきたその道筋から飛び出て独自的な日米間のコンセンサスをつくり出すあるいは生み出すということのないように、これはどうもブレーキをかける言い方で大変恐縮ですが、あなたの訪米ということに対してそれなりの懸念を持つ立場から質問をしておきたいと思いますが、そのとおりでよろしゅうございますか。
  124. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 防衛問題につきまして今回話題になるかどうか、これは推測ができかねますが、仮に話題になりましても、かねがね政府としては、日本には種々制約がある、憲法のたてまえあるいは防衛大綱、そういうようなものによりまして、米側の期待表明は表明として、日本としての独自の立場で結論をつけていく、これが従来とってきておる日本方針でございまして、この方針は堅持していく考えでございます。
  125. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 貿易摩擦の問題について、先ほどもやりとりがありましたけれども、御質問をしたいと思います。  アメリカは自由貿易主義ということを主張しながらも、現実には、アメリカの特に製造業を保護するためのある種のナショナリズムが全国に広がっているというふうに伝えられています。そこへもっていって、この秋の選挙ということなどを意識した、それぞれの選挙区の事情というものを背景にした議員の発言というものがそれを増幅さしていることも事実でありましょう。同時に日本でも、業界、特に農業、流通関係産業などを含めて、それは保護しなければだめじゃないか、何言っているんだというふうな気持ちを含めて日本のある種のナショナリズムにも火がつこうという状態があることは事実であります。  率直なところ、これを何言っているんだということだけで任しておくということ、あるいはそのナショナリズムが激突をするというふうな状態になりますと、アメリカの保護主義がますます強くなってくるという悪循環を私なりにも心配をせざるを得ないわけでございます。私は、この問題というのは国際経済の構造的なものの反映がこういう形になっていると思いまして、根本的な解決というのはなかなかむずかしいと思います。これは国際経済の全体の問題が絡んでいるわけですから、むずかしいと思うが、しかし何とか解決の糸口を探し求めなければならぬことだけは事実であります。  そういう立場から、私から申し上げておきたいのは、貿易摩擦というのは、たとえばレーガン政権の軍拡あるいは高金利というような政策がアメリカの不況と失業というものを増大させているあるいはそれを深刻化させている、そして日本の対米貿易の大幅黒字を生む原因となってきたという事実はだれしもが否定し得ないことだと思うのです。これは大来元外務大臣も言っていますが、日米貿易の不均衡の少なくとも半分はアメリカの高金利によるドル高、円安相場のためだというふうに指摘をしておられます。これは、ある新聞の記事でございますけれども、私はけだし名言だと思います。こういう立場について、外務大臣はきちんとアメリカに言うべきは言う、この立場をぜひとっていただきたいと思いますが、この点、大前提でございますが、御答弁を煩わしたいと思います。
  126. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 意見を言う上になかなかむずかしい点は、アメリカがいろいろ意見を言われる中に、それは内政干渉じゃないかと日本の方から反論する場合もございます。レーガン政権がとっておる方針に対しまして個々の問題にいろいろ批判を加えると、やはり同じような米側の今度は批判が出るのではないか。そういうことを考えますときに、岩垂委員もおっしゃるような、もう一つ高い見地からこの論議をしてみるのがいいのではないか。  日本とアメリカとで世界の三分の一以上のGNPの分野を占めておる、したがって、この両国の間がうまくいくかいかないかということはそれなりに国際経済に大きな影響を与えるわけでございますから、したがって両国の間では本当にお互いに理解をし合っていかなければならない。現に、ヨーロッパ諸国においても、また日本も同様に、アメリカのとっておるインフレ抑制のための結果として出ておる高金利がいろいろ影響がある、そういうようなことは、これは当然主張をいたし、アメリカに何か新たな手を打ってもらいたい、そういう気持ちは持っておりますが、いずれにいたしましても、腹蔵のない意見交換に努めたい、こう思います。
  127. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 新東京ラウンド構想というものが新聞でも報道されておりますが、これは内閣として完全に意見の一致を見て、そしてやっていくということになっているのか、そして、それはどんな構想になっているのか、簡単に御説明をいただきたいと思います。
  128. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現下のこの貿易問題、これを広く国際的に見た場合、それを解決するためにはガット等の多数国間の場を利用して話し合うということが非常に必要ではないか、そういうようなことから東京ラウンドが行われて各国の間で合意を見たのでありますが、このガットの場で新たにいろいろ取り上げる問題はないか、そういうことについてよく検討をする必要があるではないかということが、新東京ラウンドという表現で新聞などで大きく報道されました。  これについては、自由民主党側においてもそういう意見も出ておりましたからそういうことを検討しようと。それはまず第一は、ガットの場で検討すべきことではないかと思います。
  129. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、これは十一月ですわね。まあ十一月という期限を区切って物を申し上げるつもりはないですが、いま日米あるいは日本とEC、二国間あるいはブロック間の問題がこれほど深刻になっている。これまでのこういう厳しさというものを考えてみて、そこまでで対応は十分であるかどうか、その辺の認識をお聞かせをいただきたいと思うのです。時間稼ぎじゃないかなどという見方もあると言われておりますが、その前の対応というものをどうなさるおつもりか、御答弁をいただきたいと思います。
  130. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在、経済問題は昨年来大変やかましく言われておって、そして政府としては経済対策閣僚会議を中心にいたしまして順次対策を立てておるわけであります。あるいは関税の前倒しであるとか、非関税障壁の撤廃であるとか、そういう努力をしておるわけでありますから、このガットの場まで時間稼ぎをする、そういうことは考えておりません。  また、こうやって日米の外相会議と申しましょうか、首脳会議をやるとかあるいはパリ・サミットがあるとかというふうに順次国際会議もございます。そういう場におきましても当然国際経済の問題は問題として取り上げられるのでありますから、それについては、日本日本としての考え方をまた各国との間で話し合うあるいは二国間で話し合うということを順次やっていく次第でございます。
  131. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いままでの政府の方針が、実務者レベルで個別問題ごとに解決を求めていくという方向になっているようでございます。そのことについて私は何も申し上げるつもりはございませんが、公式、非公式にアメリカ側から、六月までに一括解決を目指すというふうなアプローチがあるような報道もなされております。これは事実ですか。
  132. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほどもお答えをしたところでありますが、六月までというふうに何か時間を切ってのお話は、私どもは受けておりません。新聞等による報道で、アメリカ側の一部にそういう意向があるのかというように認識しておるわけであります。
  133. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 六月というのを特定するのはサミット前というふうな意味だろうとも思うのですが、それはそれとして、いまのような、つまり個別問題ごとに解決する道筋というものが、日米間というふうに限ってみて、本当に通用するだろうかどうだろうか。アメリカは恐らくそういうことでは一括解決を、あなたがアメリカに行かれたときに持ち出される懸念がある。それについて、ある種の解決に至るルールみたいなものを、いま出すべきでないのかもしらぬが、考えておかないと、これはどうも日本側の対応はどうのこうのというふうな議論になってしまうおそれがあると思いますが、関係閣僚会議などということを含めて、対応なさる御用意というか、おつもりというものはございますか。
  134. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日米間の経済関係をよくし、あるいはこの経済関係のために日米関係を損なうことのないように努力をすることは当然でございますが、それが、何か一括でなくてはならないということではないと思うのです。たとえば、現在苦情処理制度を設けて、OTOにいつでも何かあれば持っていらっしゃい、要するに貿易手続などについて、いわゆる非関税障壁について問題があれば持っていらっしゃい――それをいついつまでにまとめてやる、こういうものではないのではないか。できるだけ早くいろいろな問題点に対して日本の回答とか姿勢とか、そういうものをはっきりさせる。それが私はまた、包括的にそういう姿勢をとったということになるんではないか。早くできるものをも抑えておいて、そして一緒にと、それはどうか、こう思う次第でございます。
  135. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これもさっきちょっと新聞で引用した言葉なんで大変恐縮ですが、私もそういうふうに思いますので申し上げるわけですが、これも大来元外務大臣がある新聞で、「貿易摩擦も日米、日欧間で論議を重ねるだけでは産業技術の発展を続ける日本が常に弁解者の立場におかれる。むしろ視点を変えて、日本のもつ巨大な経済力を世界経済の発展に積極的に役立て、多数の国々の支持を得た立場で国際経済問題に対応することが貿易摩擦の袋小路から抜け出るための賢明な道となるのではなかろうか。」というふうに強調されております。日米、日欧という形で個別なやりとりをしているという状況の中で、日本が産業技術がどんどん発展をしていく、もちろん生産性がそう順調に伸びるかどうかは別として、国際的にも有利な立場に立っていくということになれば、どこまでいっても貿易摩擦問題は解決しないだろうと私は思うのです。そこでよほど気をつけないと、それがまた、アメリカとの関係で言えば防衛努力というところへリンクされる。その意味では、具体的にたとえば政府開発援助をふやすという問題を含めて、日本が国際経済に貢献をする役割りというものを尽くしていく必要がある。その意味では、ODA中期倍増計画を達成するためには毎年一〇%ぐらいふやさなければならぬことになっているのですが、今年度予算の経済協力予算規模というものは必ずしもそこまでいっていない。五・七%ですか、五・八%ですか。今後これらに対する対応というものを、それこそドラスチックに対応していく、財政事情は厳しいけれども国民の理解を得てやっていく、こういう努力が必要ではないかと思いますが、外務大臣、いかがお考えになりますか。
  136. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御質問の前段の方、日本がいろいろ攻め立てると弁解の立場になる、それは本当に愚かなことでございます。したがって、鈴木首相が昨年ヨーロッパ各国を回りましたときに、貿易のインバランスから取り組むのでなくて、技術協力、経済協力、第三国への協力というようなことで各国首脳と話し合って、それなりの成果があったと思うのです。今後におきましても、日欧米の間あるいはそのほかカナダ、豪州等を加えまして、いまのような考え方で国際経済に寄与していく、そのことによって貿易問題も解決していく、そういう手法は絶対に必要であると思うのであります。  その中で特に経済協力の問題、これは後段のお尋ねでございました。日本は五カ年間で倍増しようということで臨んできておるわけでございます。本年度の予算では、一般会計ではたしか一一・四の伸びを見ておるのでありますが、しかし、国際機関に対する協力問題などをひっくるめると、どうも倍増計画に必要な五十七年度の予算措置にはなってない、これは単年度で見ますとそういうことでございますが、この倍増計画を中心にいたしまして、本年度は残念ながら御批判を受けておりますけれども、次年度以降経済協力については力を入れてまいりたいと思います。
  137. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 経済協力一般論で申し上げたわけですが、それにもかかわらず、西側陣営にとって重要な地域への援助というものがどうもアクセントが強くなってきている。訪米の際に、たとえばレーガン大統領のカリブ海に対するアプローチなどについて日本は積極的に協力をするんだというふうなことが出ておりますが、これは事実ですか。
  138. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 政府としては、紛争地域の周辺において難民問題あるいは経済活動の上にいろいろ支障を来しておるというようなことから特別に配慮しておる地域は、トルコとかパキスタンとかタイとかという諸国がございます。中米関係についてはどうか。現在手元に資料がございませんが、中米では一カ国経済援助をしておる国があると思うのでありますが、今回訪米いたしまして、もし中米、カリブ海開発構想というものが取り上げてお話がございますならば、日本といたしましてできることについて協力をするにやぶさかではない、こういう立場をとっております。
  139. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 エルサルバドルの問題など含めて複雑な状況があるわけですから、それらについてはやはり慎重な対応をしながら、日本としての立場を決めていただきたい、このことだけは申し上げておきたいと思います。  貿易摩擦の問題はその辺にいたしまして、これは北米局長で結構ですが、三月一日から始まったアメリカ下院の対日公聴会での質疑応答が新聞に出ておりました。ハミルトン議員が、鈴木首相は日本周辺の空海及び千海里の海上交通路防衛を行うと語ったが、これが五年間に日本に望むものかという質問をして、これに対してウェスト国防次官補が、もし日本が今後八年間にソ連潜水艦の脅威や爆撃機の脅威に対処できるようになれば、鈴木首相の言ったことに合致する、そのためには現在以上の能力を持つ必要がある、七・七五%以上が必要だと答弁している。この今後八年間ということと、それからソ連潜水艦の脅威や爆撃機の脅威に対処できるようになるという、そのメルクマールといいましょうか、それは一体何なんですか。それは、鈴木総理のアメリカに対する公約でもあるのですか。実は議事録を原文できちんと見たわけじゃございませんので、新聞の報道でございますが、幾つもの新聞も同じことを書いておりますから、その立場で御答弁いただきたい。
  140. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 このアジア・太平洋小委員会公聴会は三月一日から始まっておりまして、いま御引用になりました三月一日の公聴会の中でハミルトン議員が日本の防衛分担について質問しております。ただ、その中で五年間云々、こういうふうに述べたかどうかということは、私たちもまだ議事録を入手しておりません。したがってそういうふうに述べたかどうかは必ずしもつまびらかにいたしませんが、日本の防衛分担について質問を行った。それに対してウェスト国防次官補が、八〇年代に日本が真の自衛力を身につけるようになり、千海里の海上交通路を防衛するための能力保有するようになれば、アメリカ政府の考えている防衛の役割り分担に合致する旨述べているという点については傍聴に行っておりましたわが大使館員がそういう趣旨のことを聞いております。  それから第二の御質問の、鈴木総理のいわゆる周辺数百海里、それから航路帯を設ける場合に千海里というものが公約かどうかというお尋ねでございますが、これは総理自身が国会で従来再三答弁されておりますように、昨年ワシントンに行かれた際にナショナルプレスクラブで記者から質問がございまして、それに対して鈴木総理が、憲法を踏まえつつ、かつ自衛の範囲内で日本の周辺数百海里及びシーレーンを設ける場合には約一千海里、それを自衛の範囲内で整備していくんだ、こういうことを言っておりまして、公約ではございません。  さらにウェストが当日の公聴会において冒頭に発言しております中でも、鈴木総理はナショナルプレスクラブの会合でいま私が言ったようなことを述べたということになっておりまして、公約したという言葉は何らそこには出てきていないわけであります。
  141. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その八年という数字はどこにもないわけですね。
  142. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 先ほど申し上げましたように、全体の議事録をとってみませんと全くないというふうには言い切れませんけれども、少なくともわれわれがいま承知している限りでは、八年というような数字はございません。
  143. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 後ほどその議事録がもし手に入ったら見せていただきたいと思います。  それから上院の軍事委員会戦略・戦域核小委員会で――その前に軍事委員会でワトキンス・アメリカ海軍太平洋艦隊司令官が、一九八四年から通常の攻撃型原潜並びに主要艦船にトマホークを数百基配備するということを述べまして、これは別の小委員会でケルン海軍少将、米海軍作戦部の戦略潜水艦課長だそうでございますが、トマホークには非核弾頭もあるが、一つの原潜にどちらを搭載するかの決定は、作戦任務などの原因を考慮して各艦隊司令官の裁量にゆだねられる、米政府の最高責任者は一々チェックしないということである、さらに言葉をつけ加えまして、一時持ち込みの際でも日米安保条約に基づく事前協議を日本側に申し入れる意思はない、こういうふうに証言をしている。これも実は新聞報道でございまして、きちんととったわけではないのですが、私なりに確かめてみるとこういう答弁をしております。これらについては北米局長どう理解をしていますか。
  144. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 まず最初のワトキンスの証言でございますが、(岩垂委員「それはいいです」と呼ぶ)よろしゅうございますか。  次のケルンの証言でございますが、ケルンが委員会で言っていたのは、アメリカの巡航ミサイルの配備についていろいろ言っておりまして、いま委員が御引用になりました核と非核をどの割合で積むかということは艦隊司令官の裁量に任せられている、そういうことは言っております。  しかし、最後に御引用になりました一時寄港について事前協議をしないということは、このケルンさんは全然言っていないわけであります。
  145. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうも新聞の報道がまだ確かめようがないものですから確かでないのですけれども、全然言っていないということであればそれはそれで意味がありますが、艦隊司令官の裁量に任せられている、そしてその艦隊司令官の認識というのは、言ったか言わぬか知らぬけれども、いままでのアメリカの軍関係者がさまざまな形で事前協議問題について言及していることからしてみると、全く思いつきを言っているんじゃない、こんなふうに感じます。これも実はいまの発言について照会をしていただいて、ぜひ私にも拝見させていただきたい、これは今後改めてまた議論をしたいと思います。  時間がどんどん来てしまいますので急ぐわけですが、国連軍縮総会に臨む日本方針についてお伺いしておきたいと思います。  鈴木首相の参加表明に続いて、フランスのミッテラン大統領やあるいは西ドイツのシュミット首相や、さらにはきのうの新聞ではイギリスのサッチャー首相なども参加をされるようであります。御考慮願いたいのは、ヨーロッパ、アメリカはもちろん、日本を含めて世界の世論が反核そして核軍縮を求めて非常な高まりを示している、このことをきちんと受けとめてほしいと思うのですが、その中で、広島、長崎、そしてビキニと、被爆体験を持っておる日本の総理大臣として、この国連軍縮総会に結集する世論に対応して日本としてのリーダーシップをぜひ発揮していただきたい。これは外務省なり官房で全体としてつくると思うのですが、この機会に私は、日本国憲法と非核三原則を守るという日本の立場を日本の総理大臣の発言の中にきちんと世界の人々にも示す意味を含めて宣言をすべきだと思いますが、外務大臣は当然のことだと思いますけれども、そのことについて御賛成願えますでしょうか。
  146. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御指摘のとおり、わが国は唯一の被爆国の立場でございます。したがって、平和憲法のもとに非核三原則を堅持して今日に至っているわけでございますから、核軍縮を中心とする軍縮の促進に努力することはわが国の当然の務めだ、そういう立場で特別軍縮総会に臨む鈴木総理の考えであり、また私もその考えで随行をいたします。
  147. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 念のためにもう一遍お願いしますが、日本国憲法の立場、そして非核三原則を今後守っていく、この原則、このことを内外に鮮明にあいさつの中で述べていただける、このように受け取ってよろしゅうございますか。
  148. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのとおり、結構でございます。
  149. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は国際的に見て、日本のとっているいわばユニークな姿勢というものがいまや世界の世論の一つのシンボルとして大きく浮かび上がってきているというふうに思いますので、日本のその立場を明らかに宣明していただきたいと思います。  関連いたしますが、わが国の非核三原則というものを外交的、国際的に展開させていく努力が当然必要だと思うのです。これは日本が参加しておりますところの核不拡散条約を拝見いたしますと、第六条では、締約国が全面的かつ完全な軍備縮小あるいは核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置について誠意をもって交渉に当たるということが述べられ、第七条では「この条約のいかなる規定も、国の集団がそれらの国の領域に全く核兵器の存在しないことを確保するため地域的な条約を締結する権利に対し、影響を及ぼすものではない。」と明らかにされているわけであります。つまり第七条というのは、地域的な非核武装体制設定の原則を期待をし、掲げたものだと私は思います。  日本はこの条約に参加をしているわけでございます。ここで特定の国を挙げて、どことどこのエリアでというふうに申し上げるつもりはございませんが、日本を含む非核地帯の設定という問題について、トラテロルコ条約などということも含めて考えながら、日本の立場というものを、国連総会などの場所で日本の熱意を内外に表明することはできないかどうか。ぜひやっていただきたいと思いますが、その点に対する御答弁をいただきたいと思います。
  150. 三角哲生

    ○小宅説明員 お答えいたします。  わが国もNPTの締約国といたしまして、いま御指摘がありましたとおり非核体制というものを国際的にも拡充していきたい、そのためにも第六条に基づく核軍縮を訴えてまいるのがわれわれの方針でございますが、これとの絡みで、いま御質問のありました特定の地域というものを対象とした何らかの方式、たとえば非核地帯というのがございますが、これにつきましては、政府として一般的な構想としてはこのような考え方は十分理解しておるものでございまして、各地域にそれぞれ適切な条件が醸成されるということが何よりも大切でございます。日本を含むアジアにつきましては、私どもの考え方といたしましては、遺憾ながらまだそのための現実的な条件というものは整っていないというふうに考えております。
  151. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 整っていないというところからやってみたいのですが、時間がございませんのでそれは申し上げませんが、情勢ができてくるまで待っていて、情勢ができたらやろうなどということではできっこないのです、こんなものは。非核三原則を持っている日本が主導的に努力をして情勢をつくっていくということの方が大事なんです。その点では、私は外務大臣にぜひひとつ――日本が非核三原則を持っているわけです。それは非常にネガティブな意味だけでなしに、広島、長崎の悲劇というものを受けとめた日本国民として、二度と再びああいうことを繰り返すまいという決意に基づいて宣言がある、その原則があるわけです。それを地域に広げていくという努力は当然なさるべきだと思いますが、この点はぜひ外務大臣の御判断をいただきたいと思います。
  152. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま答弁がございましたように、非核地域を設定するには、その裏づけがなければならないと思うのですね。日本を含む地域にそういうことが考えられるかということになりますと、現在のソ連の軍事の配備の状況などからいたしまして、ある地域を特定してやるにはどうか。しかし日本はどうかと言えば、日本は非核三原則、これを国際的に明らかにしておる。これは明白だ、日本は非核地域だ、こう思うのであります。
  153. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それはやりとりをしても時間がございませんからやめますが、一九七八年の軍縮特別総会で、会議に出席したNGO関係の代表が、千三百人参加をいたしました。日本からの代表団の派遣についても、当時私が外務省にお願いをいたしまして、できるだけ便宜を図っていただくことをお願いをし御協力をいただきました。今回も恐らく日本から大変な多くの代表団というものが参加をするだろうと思います。この国民代表団の派遣について、外務省としてもしかるべき要請があったら御協力を願いたい、このことをまずひとつお願いをします。  それから、この前の特別総会では、六月の十二、十三日の両日をNGOの日というふうに決めまして、二十五名の代表が本会議場で演説をいたしております。日本代表の地婦連の事務局長の田中里子さんが感動的なスピーチを行ったことは記憶に新たなところでございますが、今回もそのようなNGOの日を定めるような努力を、そして何としても実現さしていただきたい、このことを日本のイニシアチブも含めて、これは日本だけじゃだめなんでしょうが、ぜひ外務省にお願いしたいと思いますが、その点いかがでしょうか。
  154. 三角哲生

    ○小宅説明員 お答えいたします。  来るべき第二回軍縮特別総会に対するわが国からのNGOの代表の参加につきましては、ただいま御指摘がございました方向で政府といたしましてもできる限りの協力、便宜を与えるということで、現在やっております。  他方、軍縮特別総会それ自体で、各国から集まりますNGOあるいはわが国から行きますNGOにどのような形で発言の機会が与えられるか、これは実は軍縮特別総会の準備委員会で目下検討中のことでございまして、具体的には、四月開催を予定されております最後の第四回になりますが、準備委員会でこの問題が取り上げられることとなっております。わが国といたしましては、各国政府の意向あるいはわが国NGOの考え方等も十分体しまして、できるだけわが国NGOの発言が認められる方向で努力をいたしたいと思っております。
  155. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 外務大臣、実は私は自然保護議員連盟というのをやっておりまして、大石武一さんが会長で、私が幹事長というので、超党派の組織なんですが、その中で最初に、新自由クラブの河野代議士が本会議で提案をいたしまして、私どももできるだけその実現を目指しているわけですが、地球的な規模の環境の危機を回避するための方策を研究し、世界にその具体的な提案をするための特別の国際委員会を臨時に設置することを日本が中心になって働きかけるということをすべきだということに対して、本会議では原環境庁長官がその積極的な姿勢を示されました。  いま地球の緑がどんどん損なわれて、二十一世紀までの間にはもっと、二割も砂漠がふえていってしまうのではないだろうかというふうなことさえ言われています。大気の組成も大きな変化を見つつあるというふうな危機的な状況が伝えられておりますが、ブラント委員会のような国連の独立委員会という形で日本がこの地球砂漠を防ぐ、自然環境を守っていく、そういうイニシアチブをとるべきだというふうに考えまして、私は予算委員会分科会でも提起をいたしました。櫻内外務大臣に環境庁長官からもその旨をお伝えをし、理解をいただいていつつあるところだ。  何分にも国連局の関係予算だということでございますが、たとえばブラント委員会など、ちなみに言いますと四百万ドルぐらいの費用がかかります。世界じゅうのその点での非常にすぐれた人たちが、学者や専門家が結集をして南北問題についてのりっぱなレポートを出しまして、国際的にも非常に大きな反響を受けたことは御存じのとおりですが、あれとかあるいはパルメ委員会のような形で、私はそういう課題について積極的なアプローチを日本としてやっていただきたい。ブラント委員会は四百万ドルということになって、その半分をオランダが持っているわけです。金額のことは別として、この国連の独立委員会というものをぜひ設置をするためのイニシアチブを日本がとってほしい。  たまたま実は五月にナイロビでUNEPの十周年の会合がございます。この機会に、外務大臣がぜひ御理解をいただいて、環境庁長官が国際的にそれを呼びかけることができるような、そしてuNEPのトルバ事務局長も積極的に国際的なそういうアプローチをやっておりますので、それをしっかり支えていく、こういうことをお願いをしたいと思うのですが、その点について外務大臣恐らくお聞き及びだと思いますので、御答弁をいただきたいし、ぜひひとつ実現のためにがんばるという御答弁をいただきたいと思います。
  156. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 環境庁長官の来訪を受けまして、ただいま御質問の御趣旨に沿ったことは承っております。そこで、外務省といたしましては、特別委員会の設置について、これにどういう協力が可能であるか、そういうことについて環境庁との間で検討をしておりますし、このナイロビにおける会合に環境庁長官は御出席のようでありますが、その御出席の折に、先ほど御提示がございました予算の関係など、これはどの範囲で協力ができ得るか、十分連絡をとって結論を得たいと思っておるところでございます。
  157. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 時間がなくなってきましたので、締めくくります。  先ほどから貿易摩擦の問題でいろいろ国際的な理解を深めていくという努力をしていかなければならぬ。それは政府レベルだけでなしに民間レベルでも当然していくことが必要ではないか、こんな問題意識を持つわけですが、神奈川県の長洲知事が「地方の時代のテーマを考える」というシンポジウムをここ数年やってきております。ことしは民際外交という問題について、その市民の役割り、自治体の役割り、そして民際外交の理論と言われるようなものを、平和外交を進めていく立場から成功させたいという計画を持っております。実は全国で二百九十七余り、国際的にあちこちと姉妹都市というものを結んでおります。これは私は非常に大きな意味を持っているというふうに考えます。国柄もまちまちですし、その中で相互理解を深めていくということが世界平和の上でも非常に大きな役割りを持っていると思いますが、ことしは神奈川県が主催をして、全国の自治体やあるいは学者、専門家の御協力をいただいて何としても成功させたいというふうに思っております。十一月の中旬になりましょうけれども、これは外務省としても、しかしこれは民間の行事ですから、かかわるといったってかかわり方はいろいろあるわけですが、ぜひ積極的な御協力をいただいて、政府のやる外交、もう一つは民間の外交と言われるもの、これは多少ぎくしゃくがあってもいいと思うのですけれども、相互理解を深めながら世界の中の日本というものを広げていく上で役割りを果たさせていただきたい、そんな意味外務省に御協力を求めたいと思いますが、この点についての外務省見解をお聞かせください。
  158. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 政府対政府の外交、それから国会議員の先生方におやりいただくいわゆる議員外交というものと並びまして、先生指摘のように、わが国の都市対外国の都市あるいはわが国の町対外国の町の間でさまざまの交流が行われますことは、これは相互理解にも役立ちますし、また友好親善にも資するものがあるという考え、全く先生と同じでございます。  外務省といたしましては、従来とも、この姉妹都市の提携を初めといたしまして地方レベルでの各種の交流につきましては積極的に御協力を申し上げてまいりましたけれども、今後ともできる限りのお手伝いをやっていきたい、かように考えております。
  159. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最後に一問だけ。  横浜市の緑区に米軍のジェット機が墜落をいたしまして、林和枝さんがお亡くなりになったことはもう御理解のとおりですが、それに関連をいたしまして、実はいま横浜地方裁判所の民事第五部で民事訴訟の裁判が行われております。昨日もその裁判があったわけですが、原告側がこの問題の事実関係を立証するために速記記録などの文書送付を国に嘱託するよう地裁に申請をいたしまして、地裁もこの申請を採用決定いたしまして、昨年の末に国側に日米合同委員会での事故に関する議事録と合意文書、それから同委員会事故分科会の議事録と事故報告書、この二点について提出を求めておりました。裁判所が提出を求めているわけです。しかし、外務省は、昨年の十二月十八日付で日米両国間の合意がないので提出できないというふうに拒否をなさり、それから、三月十二日に防衛施設庁も外務省と全く同じ回答を出して、提出を拒んでいるというふうになっております。  林さんは四年以上にわたって闘病生活をなさった。そしてついに帰らざる人になりました。平和だった家庭がある意味で崩壊せざるを得なかった。その加害者は言うまでもなく墜落をしたジェット機であり、そしてまた乗員であります。にもかかわらず、それに対して国が誠意を持ってそうした裁判に協力する態度というものをとり得ない。まことに私は不可思議でなりません。  これはこういう形で行きますと、真相の究明ということは困難にならざるを得ません。同時に、被害者は結果的に不幸な状態というものを長い間続けざるを得ないわけでございます。いま裁判所から嘱託されました文書というものを出せない理由について、この機会に御答弁をいただきたいと思います。
  160. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 緑区の米軍の墜落の事故、これについては私たちも非常に痛ましい事故であるというふうに感じておりますし、施設庁が中心になりまして、けがをされた方あるいは御遺族の方々と補償の問題その他の点について誠意を尽くしていま話をしているわけでございます。  そこで、いま岩垂委員お尋ねの、なぜ合同委員会の記録あるいは事故分科委員会の報告書が提出できないかというお尋ねでございますけれども、すでにこの事故については、実は昭和五十三年の一月に、当時の合同委員会調査した点をほとんど盛ったものを日本文として提出しております。他方、日米間の合同委員会の議事録、これについてはアメリカ側の同意がなければ提出できないということでございます。そこでわれわれとしては、すでに公表した文書をもって十分事態の解明ができるというふうに考えておりまして、またその実態としても、いま申し上げたようなことがございまして国それ自身が国の損害賠償責任を認めております。そこで先ほどお答え申し上げたようなことで、裁判所からの嘱託についても提出できないというふうにお断りしたわけでございます。
  161. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 事故原因についてアメリカ側の回答書は来ているわけでしょう。来ているけれども、それは最初は、捜査上の秘密だから出せないと言っていました。その後は、外交文書だから出せないというふうに言ってまいりました。原因を追及する上で必要な資料が、そういうまさに御都合主義みたいな形で出せないと言っているのであります。私は、そのこと自身が原告に非常に大きな怒りを燃え上がらせる理由になっていると思うのです。だから、アメリカから正式に来ているとすれば、それはできる範囲内でやはり提示すべきではないか。この点についてはいかがですか。
  162. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 いまお尋ねのアメリカ側の回答文書、これについては予算委員会、五十六年の二月十二日でございますか、質問がございまして、当時の伊東外務大臣から、捜査上の理由で出せないということを申し上げているわけでございます。先ほど私が申し上げましたのは、米軍の事故についての事故委員会の報告書、これは合同委員会合意で出せない、こういうことでございます。
  163. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 アメリカ軍の回答書というものを、出せないという木で鼻をくくったようにおっしゃるのではなくて、出す努力をなさったらどうなんですか。アメリカは加害者なんですよ。日本人が被害者なんですよ。お亡くなりになったんですよ。家族はめちゃめちゃになったんですよ。そういう状態を前にして、アメリカは回答書を出した。回答書を出したら、出したものを国民の前に示すことは当然のことじゃないですか。外交上の文書だから出せないというような木で鼻をくくったような言い方じゃなくて、もっと血の通った、国民に対する責任というものを、あるいは国民に対して外務省として持っている立場というものを示すことがいまこそ重要じゃないかと思うのですけれども、裁判所から求められている資料について、それを全文全部そっくり出すということがもしできないとすれば、それに近い形で求められている資料について精いっぱいの努力をする、こんなことはあたりまえのことじゃないですか。ぜひ誠意のある答弁をいただきたいと思います。
  164. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 先ほど来も御答弁いたしましたけれども、要するに捜査のために外務省としても努力をしたわけでございます。しかし、これはやはり警察当局との話もございまして、捜査上の理由でお出しできないということでございます。  他方、先ほど来私が申し上げているのは、合同委員会の文書について、これはアメリカの合意がなければ出せないということでございますけれども、事故分科委員会あるいは合同委員会の文書については、その事実をまとめまして日本文で御提出している、こういうことでございます。
  165. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いまの合同委員会の文書でなくて、私もそれはこれからも要求していきたいと思うのですが、それはこっちに置いておいて、事故原因についてのアメリカ軍の回答書があるわけですよ。捜査上の秘密だからと言われていたんです。捜査は終わったんです。警察はこれで捜査を打ち切ったと言っているのです。ピリオドは打たれたのです。そうしたら今度はその次の言いわけが、いや、外交文書だから出せない、こう言うのです。そういうその場限りの、あるいはその場その場で出さない理由を自分で理由づけして出していくというやり方が、非常に誠意のないやり方なんですよ。もう捜査が終わったと警察は言っているのです。捜査上の秘密はそこで済んだのです。いま裁判が進んでいるのです。ですから、ぜひこの事故報告書を、アメリカ軍がわざわざ回答書をよこしたのですから、アメリカ軍は出しちゃ困ると言っているんじゃないのでしょう、その点ははっきりさせて、アメリカ軍にもう一遍問い合わして、アメリカ軍がだめと言っているのかどうか、そのことを含めて御答弁をいただきたいと思います。
  166. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 せっかくのお尋ねでございます。しかし、これは長い経緯がございまして、五十六年三月あるいは五十六年二月、各委員会外務大臣あるいは警察庁の方から御答弁しておりまして、捜査上ということでお出しできないということでございます。岩垂委員の言われることは私自身として非常に身にしみてよくわかるわけでございますけれども、外務省の限界というものもございますので、その点はぜひ御理解を賜りたいと存じます。
  167. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これでやめますが、やはりこれは理解と言ってもらっても困るのですよ、出すか出さないかの問題でございますからね。だから私がお願いしたいのは、アメリカ軍が出していけないと言っていらっしゃるのか、あるいは日本政府の判断で、これは外交文書だから出すべきでないというふうに判断していらっしゃるのか、その辺もまだ明らかでないのです。きょうはそれまで詰めません。しかし、できればやはり、日本の立場で出せないという歯どめがあるとすれば、私はもう一遍検討を煩わしたい。同時に、アメリカが出していけないと言うのなら、それはちょっとアメリカに物を言ってもらわなければ困るのです、これは明らかに加害者なのですから、裁かれているわけですから。国籍でそんなものは変化ないですよ。そのことを含めてアメリカにきちんと問い合わせていただく、そして御答弁をいただきたいと思います。
  168. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 正確に申し上げますと、むしろ日本側の捜査上の理由ということでございます。  そこで、私がさっき申し上げましたように、私としては、こういう事件でございますので出せれば出したいと思っておりますが、力及ばずということでございますので、御了承願いたいと思います。
  169. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いや、了承はできないと言うのだよ。捜査上の秘密だと言うなら、捜査は終わったのですよ、捜査は打ち切ったのですよ。一つのピリオドがついておるのです、その事件について言えば。だから、警察にもういいだろうと言うぐらいの努力は、力及ばなくたってそれはあるよ。だから、警察にもう一遍きちんと問い合わせてみる、そのくらいの誠意は示してくださいよ。
  170. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 たびたびのおしかりでございます。私としても非常に身にしみているところでございますので、私限りで努力してみます。ただ、相手があることでございますので、ここでお約束できかねる点、その点についてはどうぞ御理解賜りたいと思います。
  171. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 以上で終わります。
  172. 石井一

    石井委員長 午後四時三十分より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後二時四十五分休憩      ――――◇―――――     午後五時二分開議
  173. 石井一

    石井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中路雅弘君。
  174. 中路雅弘

    ○中路委員 限られた時間ですので簡潔に答弁していただきたいと思いますが、法案について一問だけお聞きしておきます。  今回の法案の給与の改定部分等は昨年十月七日の外務人事審議会の勧告に基づくものですが、特にその勧告の中の子女教育について十分措置されていないと思いますが、この問題は今後どうされるわけですか。
  175. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、昨年十月外務人事審議会の勧告の中に、子女教育手当について、教育費の実態の変化を考慮して子女教育に伴う負担の公平を保つための改善について検討せよという勧告をいただいたわけでございますが、この五十七年度予算におきまして、子女教育手当につきましては制度自体の改定は行いませんけれども、しかし勧告の御趣旨に沿いまして、負担の公平という見地に立ちまして引き続き検討を進めるということにいたしております。
  176. 中路雅弘

    ○中路委員 官房長にもう一問お聞きしておきますが、政府はこれまで、三十年経過した外交文書は公表してきたわけです。五十六年になりますと、わが国の戦後史を明らかにする上で非常に重要なサンフランシスコ条約の関連の外交文書もその公表の期限に来ているわけですが、まだ公表されていません。できるだけ早い時期に公表措置をとるべきだと思いますが、どのようなお考えですか。
  177. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、外務省は三十年ルールということで外交文書の公開というのを五十一年に自発的に始めたわけでございまして、その後六回ほど外交文書の公開をいたしております。ただいま御質問にありました五十六年になりますと、昭和二十六年当時のサンフランシスコ条約関連の外交文書につきましても公開の時期に来ているわけでございます。  ただ、何分だんだんと資料が多くなってまいりまして、審査のための人員の不足ということもございまして、私どもとしてはできるだけ早い時期に公開しようということで現在省内において鋭意準備中でございます。一部報道にございましたように公開を断念したというようなことではございませんので、できるだけ早い時期に公開するように努力をいたしているところでございます。
  178. 中路雅弘

    ○中路委員 五十七年度のできるだけ早い時期に公表できる見通しですか。
  179. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 五十七年におきまして、できるだけ早い時期に公開できるものと考えております。
  180. 中路雅弘

    ○中路委員 あと一、二問、前回の委員会でお聞きした問題に関連して、伊藤施設部長にお聞きしておきたいのです。  一つは、前回の内閣委員会で、昨年伊東外務大臣に御答弁いただいた問題ですが、四年来事実上閉鎖状態になっています池子弾薬庫、広大な弾薬庫ですね。いま事実上閉鎖状態ですが、遊休化した施設は速やかに返還しなければならないということも決められているわけです。また跡地についても地元から国営自然公園等の計画等もいろいろ出されて、神奈川県、また関係市とも強い返還の要求を出しているわけです。前回、伊東外務大臣が地元の要望も理解できるので米軍とも調整して要望について検討するという御答弁がありましたが、その後検討されたでしょうか。
  181. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答えします。  昨年の四月九日だと思いますが、内閣委員会先生からそういう御質問がございまして、外務大臣からいま先生おっしゃったような御答弁内容がございました。  私ども、池子の問題につきましては、先生も御承知のように現在資材置き場として使っている以外に弾薬庫としては使用していないというような実情も踏まえまして、米側ともこの点交渉しております。ただ、米側としましてはその点につきまして米側なりの計画もございましょうし、現在のところ米側との間で具体的にまとまったことというのはございません。  なお、そういった調整を通じまして、地元の返還要望等も米側には十分伝えてございます。
  182. 中路雅弘

    ○中路委員 この問題に関連して施設部長にもう一問お聞きしておきます。  前回のこの問題の質問の際に、横須賀地域の基地外に居住する米軍家族の状況を見ると、四けた、一千戸以上の住宅不足が考えられるということで、その住宅の確保のために当時は複数の候補地を挙げて、五十六年は五千万の調査工事費がついていますけれども、検討しているというお話です。この五十六年度の予算はまだ執行されていないと思いますが、これは繰り越しになるのではないかと思います。五十七年度新しく環境影響の調査ということで一億八千万の予算がつけられていますが、その後この住宅建設について候補地はしぼられてきているのか、その中にいま問題になっています池子弾薬庫は含まれているのか、その後の調査がどこまで進んでいるのかお尋ねをしたいと思います。
  183. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 お答えします。  横須賀地区の米軍が、特に家族住宅が四けたといいますか千戸以上の不足を来している、これにつきまして米側として家族住宅というものの建設について非常に強い要望を持っております。  私どもとしましては、いま先生指摘のように五十六年度にも調査予算というものを持ちましたし、五十七年度にも、現在予算御要求申し上げているところでございますが、現在のところ横須賀地区ということで複数の候補地につきまして調査検討を行っている段階でございます。  先ほど先生指摘になりました本年度の五千万の調査費につきましては適地選定のための地質調査、地形調査ということに充てることにしておりますが、現在のところまだ執行するに至っておりません。場合によっては繰り越しということも考えられるわけでございます。
  184. 中路雅弘

    ○中路委員 いまその対象になっている複数の候補地とおっしゃっておりますけれども、その中に、先ほど返還の問題と関連して論議されている池子弾薬庫は対象に入っていますかとお聞きしているのです。
  185. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 先ほども横須賀地区における米軍の現在の適当なところというのは検討の対象にしておりますので、御指摘の池子弾薬庫地区につきましてもその検討の対象に入っております。
  186. 中路雅弘

    ○中路委員 この返還の問題は御存じのように地元でも大変強い要求ですから、いまお話しのように対象にされているというよりも、一千戸以上になるとここしかあの地域にはないわけですから、これは返還の要望にこたえて、恒久化につながるような住宅建設については池子弾薬庫を対象にしていくということは撤回するということを強く要望しておきたいと思うのです。  もう一問、これも前回お聞きした問題ですが、横浜のノースドックの問題です。これもベトナム戦争後長らく米軍の船舶が激減しまして、同埠頭をアメリカが専用するという必要性はなくなってきたのじゃないかと思うのですが、昨年の一月以来四月、十月、東富士のキャンプと沖縄の海兵隊の兵員、車両の輸送の事実上中継地としていま利用されてきていますが、このノースドックについても、長洲県知事、横浜市長も兵員の輸送の中止とあわせて返還を強く求められているわけです。  横浜市は最近、臨海部開発計画を策定して第一期工事が五十七年度から始まるわけですが、この工事はまた横浜国際港都建設法による国、市が一体になって検討してきた計画でもあるわけです。この計画の中に事業用地としていまの米軍冷凍倉庫地域が入っておりますし、ノースピアの基地の北側への埋め立てと関連して、港湾業務施設の集中でいまのノースピアの基地のところに道路建設が計画されているということでありますから、市、国が一体になって検討してきたこの計画と早期返還の問題が関連してくるわけです。  こういう点で、この返還の問題についてどのようにお考えなのか、あるいは、たとえば適切な代替施設があった場合に移転の考えがおありなのか、こうした点についてお答え願いたいと思います。
  187. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 私ども、横浜のノースピアは米軍の兵たん輸送施設として現在も有効に使用されておりますし、また米軍駐留目的からも必要な施設だと考えております。  なお、先生、いま横浜市といいますか、その港湾計画等につきまして、ノースドックにつきましての計画が市の方におありのようにお話がありましたが、私どもの方はそういう件については一切承知しておりません。  それから代替施設があれば返還可能かということは、一般論としましては、私どもそういったような形で代替施設の提供をして返還を求めるというようなこともやっておりますが、このノースドックに関して現在のところそういったような計画はございません。
  188. 中路雅弘

    ○中路委員 承知してないという話ですが、この計画は首都圏の整備計画の中でも核都市構想の中でプロジェクトとして位置づけられていますし、いま言いました横浜国際港都建設法ですね、建設省も関係していますが、これにも関係しているわけですね。あるいは建設省の大都市地域総合整備部会の基本構想の中でも課題とされている問題ですから、国が深くこの計画には関係しているわけです。施設庁は知らないというお話ですけれども。  その工事が、計画が始まるわけですから、この最大の障害になっている問題について、十分米軍とも返還について交渉していただきたいと思いますが、いまの移転の問題と関連して最近地元の関係者や一部のマスコミに、読売新聞あるいは神奈川新聞等でもノースピアの大黒埠頭への移転が検討されているということが報道されていますが、こういう問題については検討されているんですか、あるいは今後もそういうことはあり得ないということですか。もう一度移転と関連してお聞きしておきたい。
  189. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 私ども、先生の御指摘がございまして新聞記事等見ましたので、大黒埠頭というようなことも出ているのかなとは思っておりますが、何分にいたしましても、もしそういった計画というものが県、市の段階で、場合によりましては国の他の機関等の段階で計画が進められるということになれば、それが米軍施設に関連することならば当然私どもの施設庁にもお話があると思いますが、現在のところそういう話は一切承っておりません。
  190. 中路雅弘

    ○中路委員 話は聞いてないというお話ですが、施設庁としてのお考えはどうですか。全くそういうことは検討をする余地もない、そういうことですか。
  191. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 私どもとしましては、日米安保条約に基づく基地の提供は米軍駐留目的に即して必要にして十分なだけの限度において行うべきだと思っております。その点におきまして、そういった代替の問題も、一般論としましては代替地ということは言えると思います。ただ、ノースドックについてのお尋ねでございますので、現在のところ、そういう計画は一切ございませんと申し上げております。
  192. 中路雅弘

    ○中路委員 あと残された範囲でお聞きしたいと思いますが、巡航ミサイルの配備問題です。  最初に巡航ミサイルの配備について、一つは核の巡航ミサイルの配備、それからもう一つは核、非核両用といいますか、これの水上艦艇あるいは潜水艦、その具体的な艦艇の配備計画は、いまどのような計画になっていますか。
  193. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 最近のアメリカ側の当局者の発言によりますと、通常弾のミサイル、これについては本年じゅうにも配備する、それから核つきのミサイルについては一九八四年以降、こういうことでございます。
  194. 中路雅弘

    ○中路委員 昨年の十一月十二日、参議院の外務委員会で淺尾北米局長が、トマホークの五分の四は非核で五分の一が核だというふうに述べておられる答弁がありますが、この根拠は何ですか。
  195. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 私がそのときに申し上げたのは、その当時私たちがいろいろな関係で持っていた情報から申し上げたわけでございます。ただ、その後もう少しアメリカ側で正確に発表しているところがあるので、もしお差し支えなければこれを申し上げさしていただきます。
  196. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの点、もう少し詳しく話していただきたい。
  197. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 たとえば一九八〇年二月二十八日下院軍事委員会研究・開発小委員会、その議事録を入手したわけでございますが、その中で、海上あるいは海中発射の巡航ミサイルについて、対地攻撃用通常爆弾搭載トマホーク・ミサイル、これについては七十一基、それから対艦船攻撃用通常爆弾搭載トマホーク・ミサイルについては二百四十三基、また対地攻撃用核弾頭搭載トマホーク・ミサイルについては百二十五基が計上されているということでございます。したがって、全体で合計しますと四百三十九基、そのうちで核が占める割合は二八%ということでございます。
  198. 中路雅弘

    ○中路委員 これは私の見ましたアメリカの八三年度軍事情勢報告ですが、これにも通常弾頭のものの巡航ミサイル・トマホークはことしから始まり、核弾頭つき地上攻撃用巡航ミサイル・トマホークは八四年に配備開始予定、八〇年代で四百発の核弾頭巡航ミサイルが艦船に積載される、核弾頭つきのものはさしあたりロサンゼルス級並びにスタージョン級攻撃型原潜への積載で、この予算が計上されているということが言われていますが、いまのお話ですと両方合わせて四百三十九ですね。二八%が核というお話ですから、参議院で昨年答弁された五分の一よりも多い約三割近いものが核だということになるわけであります。艦船に配備される地上攻撃用の巡航ミサイルはほとんど核弾頭だと思いますし、攻撃型原潜もほとんど核なわけですから、三割近い核が現実に配備されるということが明らかにされている。  これは非常に重要な問題だと私は思いますし、たとえば攻撃型原潜に八四年から核を装備する、これは参議院でも御答弁があったということも聞いていますけれども、横須賀にいままで寄港している対象になっている攻撃型原潜等は、これまで何回寄港していますか。
  199. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 この前私が参議院の予算委員会答弁いたしましたのは、昭和三十九年十一月に佐世保にシードラゴンが入ってまいりまして、本年三月にアスプロが横須賀に入ってまいりまして、その間に全体として百六十三回アメリカの攻撃型原子力潜水艦が寄港しております。内訳を寄港地別に申し上げますと、横須賀百二十八回、佐世保十八回、ホワイト・ビーチ十七回、こういうことでございます。
  200. 中路雅弘

    ○中路委員 八四年からの核配備の対象になる攻撃型原潜は、いまお話しのようにしばしば横須賀を初めとした日本の港に寄港を現在までしてきているわけです。原潜だけではなくて、一般の水上艦艇も今後対象になるわけですが、これはトマホークの艦船配備計画について七八年の二月二十一日の米上院軍事委員会で、潜水艦担当のグリフィス海軍作戦副部長が証言しているのを見ますと、時間もありませんから艦名を全部挙げませんけれども、これで見ますと、攻撃型原潜、原子力ミサイル巡洋艦、駆逐艦など約百四十二隻から百四十七隻対象になっている。うち太平洋艦隊に現在も就航しているのが五十一隻あります。最近のジェーン海軍年鑑で照合してみますと、この中で相当の艦船がやはり日本に寄港しているというのが含まれているわけですから、こういう経過を見ますと、こうしたトマホークの配備というのはアメリカの海軍の標準装備兵器に近づいてきているということが言えるのではないかと思うのです。  トマホークのような射程二千数百キロに及ぶ命中精度も高い戦域核が八四年以降配備される艦船が現在も日本に寄港しているわけですし、配備されて日本周辺に来るということになれば、核基地化ということも現実の問題になってまいります。いざというときには核報復攻撃の的にされる危険も出てくるわけですから、大変重要な事態だと私は思うのです。いままで日本に来るときだけ核兵器は積んでない、こういうおとぎ話ではもう済まない事態になってきているわけですけれども、非核三原則を貫いていくという立場からこの際もっと明確に、日本に出入りしている艦船については核を積んでいないということを明らかにした船以外、いわゆる灰色艦船といいますか、これはお断わりするということを明確にすることが重要だと思いますが、これは外務大臣、いかがお考えでしょうか。
  201. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 きょうの御質問からいたしますと、一九八四年以降核装備をした艦船の日本寄港の懸念をお持ちになっての御質問だ、こう思うのです。  そのころになりまして一体現実にそういうことが起こり得るかどうか、仮に起こり得るということになりますれば、これは米国最高首脳レベルが一貫してそういう場合については必ず事前協議をするということを言っておるのでございますから、これはもうそのように履行されるものである、また事前協議が履行されれば、わが国は非核三原則にのっとってノーと言うということは従来からはっきり申し上げてまいっておる日本方針であるということを御承知いただきたいと思います。
  202. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほども同僚議員の質問にもありましたけれども、アメリカ海軍の戦略潜水艦のケルン課長が、個々の原潜に核巡航ミサイルを積載するか非核の巡航ミサイルを積載するかは艦隊司令官の裁量に任せるということを言っているのが報道されていますけれども、こうなると、いま事前協議の話も出ましたけれども、個々の艦船、しかもそれはもうほとんど標準的な兵器になってくる。そういう問題について、アメリカ政府自身が個々の艦船の配備について承知していくということは困難になるというか、事実上できない問題ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  203. 淺尾新一郎

    淺尾政委員 いま中路委員お尋ねの件は、ケルン潜水艦課長が証言している点に触れられたことだと思います。しかし、どの艦に核とそれから通常型のミサイルをどういうぐあいで積載するかということはいま言われたようにその艦隊司令長官に任せられているということがあったにせよ、先ほど大臣から御答弁いたしましたように日米間は信頼関係ができておりますし、また安保条約先生承知のとおり核の持ち込みは事前協議の対象ということでございますので、たとえ艦隊司令長官の裁量によって非、核の組み合わせというのが任せられるにしても、やはり米国政府自体としては歴代の大統領が日本に対して事前協議の義務は履行するということを言ってきておりますので、私たちはやはりアメリカからは当然事前協議の申し出がある、こういうふうに考えておりまして、その際には先ほど大臣から御答弁したようにこれは非核三原則をもって対処する、こういうことでございます。
  204. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですのでそろそろ終わりますけれども、先ほど挙げましたアメリカ側の証言を見ても、百隻以上に配備をされるということになってくるわけですね。そういうことになって、いまお話しのように艦隊司令官の裁量に任されるということですから、もし日本政府が核積載の疑いを持って米政府に問い合わせてもアメリカ政府自身が答えることもできない状況になってくる。私は、いまお話しの事前協議自身が事実上形骸化するというふうにも考えるわけです。  事前協議の問題については、また別の委員会あるいは同僚議員が時間をとって御質問することになるかと思いますが、その点で特に横須賀はまた一つの焦点にもなってくるわけですから、こうした国民の不安を取り除く上でも、先ほどお話ししましたけれども、日本政府としての態度をもっと明確にすべきじゃないか。この前ソ連の潜水艦が事故を起こしたときに、後からですけれども、この潜水艦は核を積んでいないということを言わしたじゃないですか。これは私はいいことだと思うのです。アメリカだけではなくて、どこの艦船についても、核を積んでいないということを明らかにしない、疑いのある艦艇は断るんだということを日本政府の態度としてはっきりすべきだということを、大臣に重ねてですけれども強く要求し、御答弁をいただいて、私は質問を終わりたいと思います。
  205. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 非核三原則はただ単に政府のとっておる方針でないのでありまして、国会の決議に基づいて、国際的にもしばしば日本のこの方針を厳然として示しておるわけでございますので、ただいま大変御懸念のようでございますが、アメリカ政府は、アメリカ首脳が言っておるように、必ずそういう場合の事前協議はあるものと信じておるわけであります。
  206. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですので、これで終わります。
  207. 石井一

    石井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  208. 石井一

    石井委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  209. 石井一

    石井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  210. 石井一

    石井委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、愛野興一郎君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。渡部行雄君。
  211. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨の御説明を申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について速やかに検討の上、善処すべきである。  一 激動する国際情勢の中にあって我が国の外交を一層機動的に展開し、我が国の国際的責務を遂行しうるよう、情報機能の強化をはじめとして平和外交の推進など外交実施体制の一層の拡充・強化に努めること。  一 在外職員、特に生活及び勤務の環境の厳しい地域に勤務する職員が、職務と責任に応じて能力を十分に発揮しうるよう、また、これら職員の在勤期間の長期化等に配慮し、環境の整備・処遇の改善等必要な措置を講ずること。  一 在外公館の事務所及び公邸の国有化を推進するとともに、在外職員宿舎の整備に努めること。  一 海外子女教育の一層の充実を期するため、在外日本人学校及び補習授業校の拡充、子女教育手当の充実、帰国子女教育の制度及び施設の改善整備等の対策を総合的に推進すること。  一 海外に在留する邦人が選挙権の行使ができるよう適切な措置を検討すること。   右決議する。  本附帯決議案の趣旨につきましては、先般来の質疑等を通じまして明らかなことと存じますので、よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。  以上で終わります。
  212. 石井一

    石井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  213. 石井一

    石井委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。櫻内外務大臣
  214. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま、在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を御可決いただきまして、まことにありがとうございました。また、本法案の御審議の過程においては、外交活動の基盤強化につぎ深い御理解と貴重な御提案を賜ったことに対し、感謝申し上げます。  法律案と同時に可決されました附帯決議の内容につきましては、御趣旨を踏まえ対処してまいる所存でございます。まことにありがとうございました。     ―――――――――――――
  215. 石井一

    石井委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  216. 石井一

    石井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  217. 石井一

    石井委員長 次に、地域改善対策特別措置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。佐藤信二君。
  218. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 私は、各党を代表し、本案に対し質疑を行いたいと存じます。  同和対策に関する小委員会におきましては、先般来、小委員懇談会を開催し、本案に関する諸問題について検討、協議を続けてまいりまして、各党の御意見を取りまとめることができました。これは、同和問題は国民的課題であり、多くの人々が本案の一日も早い成立を待ち望んでいる、こうした現状にかんがみまして、本委員会審議促進に御協力申し上げようとするものであります。したがいまして、いまから御質問を申し上げますが、政府におかれましては的確に、簡潔に、そして誠意を持って御答弁願えるようにお願いをする次第であります。  まず、従来の同和対策事業特別措置法を今回は地域改善対策特別措置法と、こういうふうに変更をされておりますが、その理由をお聞かせ願いたいと思います。
  219. 水田努

    ○水田政府委員 お答え申し上げます。  四十年の同対審の答申の中にもありますように、同和問題は、封建社会の政治的、経済的、社会的諸条件のもとにおきまして一定地域に定着して居住することを余儀なくされる中において形成された問題であり、ここに実態的差別及び心理的差別が生ずることになったわけでございます。これら歴史的、社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されておる地域に関する改善対策を講ずるための立法であるため、地域改善という言葉を用いた次第でございます。  なお、今回同和という用語を用いなかった理由は、昨年八月の同対協の中間意見具申において同和対策事業に関連して国民の批判的意見もあることや、また昨年十二月の同対協の意見具申の中においても広く国民の理解と協力を得るという立場から立案するようにという御提言をいただいていることから、一般の国民の方にもなじんでいただける法律名称にするということから、このように決めた次第でございます。
  220. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 新聞報道によると、同和という字自体が新たな差別用語になっている、こういうことから法律名称を変えるというふうに伝えられたものがございますが、その点はいかがですか。
  221. 水田努

    ○水田政府委員 今回法律名称を地域改善対策特別措置法とした理由は先ほどお答え申し上げたとおりでございますが、一同和という用語が差別用語であるとは考えておりません。
  222. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 そうすると、同和という言葉は差別ではないということはいいわけですね。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕  そこで、その点に関して総務長官に確認したい事項がございます。  それはまず第一に、昭和四十年の同対審の答申にもございますように、この問題というのは、国民的課題としての同和問題の根本的解決を期すというために国及び地方公共団体がいろいろな施策に取り組む必要があろうかと思いますが、その点が今度の法律でもってあいまいになっては困るということですが、この点はいかがですか。
  223. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 お答えをいたします。  本法案においては、第一条の目的規定におきまして、基本的人権を保障する日本国憲法の理念にのっとりましてその運用を行うことを明らかにするとともに、同条におきましてそのために必要な施策を明示し、また第二条の第一項におきましてこれらの施策を総合的に推進しなければならない旨の国及び地方公共団体の責務規定を設けていることから、御指摘のようなおそれのないものと考えております。
  224. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 また、新しい法律に基づいて国民的課題である同和問題の解決に向かって広く国民も積極的な取り組みを重ねていく必要があろうかと思いますが、この点もあいまいにされては困ると思いますが、いかがですか。御答弁願いたいと思います。
  225. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 本法案の第二条第三項におきまして国民の責務規定を設け、国民的課題であるいわゆる同和問題の解決のために行われる地域改善対策事業は、日本国憲法が保障をする基本的人権の理念に基づいて行われるものであることをよく理解するように要請するとともに、国民にも事業の円滑な実施に協力をするように求めているところであります。そのようなおそれはないものと考えております。
  226. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 この法案の第一条に「生活環境等の安定向上が阻害されている地域」こうした表現がございますが、このことからいって、たとえば北海道のウタリ地区だとか一般のスラム地区、こうしたものも対象になるのではないかと思いますが、その点がはっきりしているかどうか。ここのところをお願いしたいと思います。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  227. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 現行の同和対策事業特別措置法においても同和という用語の定義規定はなく、同法第一条に規定をされている「すべての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域」という定義規定により初めて同法に基づく事業の対象地域の特定が行われているところであります。同和対策事業特別措置法施行十三年間におきまして、この規定によりいわゆる同和地域を指すことが行政的にも確定をしていることにより、同法の施行期間内に解決をできなかった諸問題に対処するための今回の新法においても、行政の混乱を避けるため全く同じ定義規定を踏襲したものでありまして、法の対象となる地域は、現行の同和対策事業特別措置法と同一でございます。
  228. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 それでは、大事なことは現行の同和対策事業特別措置法と同じだということは、はっきりしているわけです。そういうことで、次に移りたいと思います。  それで、この新法のもとにおいても属地主義の原則というものは貫いているのでしょうか。その点の御見解を承りたいと思います。
  229. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 本法案における対象地域は「歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域」と明確に規定をしておりまして、属地主義により法の運用が行われるよう地方公共団体を指導してまいりたいと思います。なお、個人給付的な事業につきましては、属地主義でありかつ属人主義によりその運用が行われるべきものだと考えております。
  230. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 そうすると、この法律はあくまでも属地主義ということによって法の運用というものが行われるというように地方公共団体には指導していきたいということですね。しかし、個人給付的な事業というものに関しては属地属人主義をとっている、そして運用が行われるべきものだ、こういうふうにお答えになったと思いますが、その点はよろしゅうございますね。  そこで、確認したい次の問題は、この地域改善対策特別措置法とされることによって、今後の施策が環境の改善、これのみに重点が置かれていくおそれがあるのではないだろうかと思うのですが、この点について御見解を賜りたいと思います。
  231. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 本法案は、第一条の目的規定におきまして、施策の重点事項として生活環境の改善、また産業の振興、職業の安定、教育の充実、また人権擁護活動の強化、社会福祉の増進等を挙げているところでございまして、また本法案の第二条の第一項におきましては、これらの施策を迅速かつ総合的に推進するよう努めなければならない旨の国及び地方公共団体への責務規定を設けているところから、そのようなおそれはないものと考えております。
  232. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 この法律名称がどのように変わろうとも、三十年以上にわたって定着してきている同和問題という言葉とか、そしてまた同和教育という用語の使用禁止すべきではないと考えますが、この点の政府の御見解をお願いします。
  233. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 お尋ねの件でございますが、新法の名称及び新法に基づく補助事業の名称は地域改善対策となりますが、社会的慣用語として使用されている用語が人権を侵害するものではない限りにおいては、その用語の使用について行政的に特に介入する必要はないものだと考えております。
  234. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 そうすると、いまのお話は、法律用語としては地域改善対策ですか、そういうふうに変わっても、行政用語とか慣用語としては残る、こういうふうに考えていいわけですね。  そういうことで、いまのことにちょっと関連して自治省にお聞きしたいと思うのですが、いままでこうしたこと、これらの用語を使用していた地方自治体の行政機構の名称、これについては国が介入すべきではないと考えますが、いかがですか。
  235. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 地方公共団体の行政機構の名称につきましては、従前から公共団体が条例または規則で自主的に定められるということになっております。同和関係施策に関します組織につきましては、従来からかなりの数の団体におきまして同和対策課等の部課が設けられておりますことは、御案内のとおりでございます。  新法の施行に伴いまして、地方公共団体の関係部課の名称についても検討されるとは考えますが、最終的には各地方公共団体がその責任において決定すべきものだというふうに考えております。
  236. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 どういうふうにするかというのは各地方公共団体のオプションだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。  それでは、いままで六点について御確認をいたしましたが、この確認したことを踏んまえて、今回の新法の制定に当たっては、その運用の基本方針は、同対審の答申にもある国民的課題としての同和問題の根本的解決が目標であるということを、この際、総務長官はっきりとしていただきたいと思います。いかがですか。
  237. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 御指摘のとおりだと考えております。
  238. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 それでは次の問題として、この新法と同対協の意見具申に関する事項について質問したいと思います。  その第一は、同対協の意見具申を受けて、法案の第二条第二項の規定が設けられたものと考えられますが、そのとおりですかどうかということと、また、当該条項の規定が遵守されるように地方公共団体を指導することについての政府の御見解を賜りたいと思います。
  239. 水田努

    ○水田政府委員 お答え申し上げます。  本法案の第二条第二項の規定は、昨年十二月の同対協の意見具申の中にある「物的施設については、周辺地域との間に格差のないものを整備し、その運営に当たっては、周辺地域の人々の利用にも供するような配意をする必要がある」という御提言を受けて、第二条第二項において「対象地域とその周辺地域との一体性の確保を図り、」と定義規定をした次第でございます。  次に、同意見具申の中にある「特に個人給付的事業については、行政の主体性を確保しながら、その運営の公平の確保が図られる必要がある」という御提言を受けて、同条同項において「公正な運営に努めなければならない。」と規定した次第でございます。  次に、国及び地方公共団体は、地域改善対策事業を実施するに当たっては、第二条第二項の規定を遵守すべき義務が生ずるものであり、御指摘のとおり地方公共団体を指導してまいりたいと考えております。
  240. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 総務長官にお尋ねしたいと思いますが、昨年十二月の同対協の意見具申の中で、今後の施策の重点として雇用、教育、啓発を考慮していくことの必要性というものが指摘されておりますが、この点についての御見解をお願いしたいと思います。
  241. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 御指摘のとおり、地域改善対策特別措置法の施行に伴う関係施策の推進に当たりましては、昨年十二月の同和対策協議会の意見具申を尊重してまいりたいと考えております。
  242. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 次には、今後の施策の重点事項に関する事項をお聞きしたいと思います。  ただいま総務長官から今後の施策の重点事項について総合的な御答弁をいただきましたが、関係各省にその具体的な進め方について質問したいと思います。  まず、労働省おいでになっていると思いますが、同和地域には依然として不安定就労者が多いし、また、若年労働者が近代産業に就職する場合にも就職差別が後を絶たないという現状がありますが、今後どのようにしてこの問題を解決し、また施策を推進していかれるのか、この点をお願いしたいと思います。
  243. 関英夫

    ○関(英)政府委員 御指摘のございましたように、同和地域住民の就業の実態は、全国と比べまして特に中高年齢層を中心に臨時あるいは日雇いなどの不安定就業がなお高い状態にございますし、また、就職差別といった事象も依然として後を絶たないという状況にございます。  このために、労働省といたしましては、まず新規学校卒業者に対しまして近代的な産業に就職を促進するための職業指導を充実していくこと、あるいは就職差別につながるおそれのあるような事項を排除した統一応募書類によりまして適正な採用選考が行われるような指導、こういったものを進めてまいりましたし、また、職業訓練あるいは職業講習、こういったことを通じまして技能を身につけていただいて安定した職業についていただく、あるいはまた各種の援護措置を活用していく、さらに事業主に対します啓発活動、こういったものをやってまいったわけでございます。  この新しい法律のもとにおきましてこれらの施策をさらに強力に推進していくことはもとよりでございますが、特に、御指摘ございましたように、中高年齢層を中心として不安定就業を余儀なくされている方々に対します対策、あるいは就職差別をなくしていくための雇用主に対する啓蒙指導、こういったことをさらに強力に推進していく覚悟でございます。
  244. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 こうした差別があってはいけないわけですから、その点ひとつよろしく指導のほどをお願いするわけであります。  次に、文部省にお願いしたいのですが、雇用促進のためには教育の機会均等の保障が不可欠でございますが、奨学金制度の普及によって高校への進学率は高まってきているとはいうものの、中途退学というケースがまだかなり高い状況にあると言われております。これに対する有効な対策を早急に確立すべきではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  245. 三角哲生

    ○三角政府委員 文部省といたしましては、経済的理由から高等学校等への進学が困難な同和関係者の子弟に対しまして、進学の道を開くことにより将来有為な社会人としての活躍を期待いたしまして、高等学校等進学奨励費補助事業を進めてきたところでございます。  これらの子弟の高校進学率は、昭和三十八年当時三〇%、ちなみにその当時の全国平均は六六・八%であったわけでございます。そのようにかなり低かったのでございますが、五十四年には八九%、全国平均は九四%でございます。そういうところまで向上するという成果を上げておる、こういうふうに思っておるのでございます。  しかしながら、他方におきまして、せっかく進学をしながら中途で退学する生徒の割合が、ただいま御指摘にございましたように他の生徒よりも多いという傾向が見られることは遺憾なことでございます。文部省といたしましては、この事業の趣旨が十分に生かされますように、今後とも、まず学校における学習指導及び生徒指導の一層の充実を期するとともに、中途退学者の実態の把握や原因等の解明にも努めまして、御指摘の中途退学者をできる限り少なくいたしますようにその方策について真剣に検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
  246. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 それでは、いまの点はよろしくお願いいたします。  次に、啓発問題について総理府と法務省の両方にお尋ねしたいと思います。  まず総理府さんにお願いいたしますが、昨年十二月の同対協の意見具申において特に啓蒙、啓発を重視しておりますが、政府においても今後格段の努力を払う必要があるものと考えますが、その御決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。  また、法務省の方には、深刻な差別事件が依然として後を絶っていない現状でございますので、人権擁護活動を飛躍的に強化していく必要があると考えますが、この点についての御所見をお聞かせ願いたいと思います。
  247. 水田努

    ○水田政府委員 総理府関係についてお答え申し上げます。  五十七年度の予算編成に当たりましては、昨年の同対協の意見具申を尊重しまして、まことに厳しい財政事情下でございましたが、政府としては、啓発活動予算については対前年度伸び率二四%という大幅な引き上げを図ったところでございますし、今後とも積極的に対処してまいる所存でございます。
  248. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 法務省関係についてお答え申し上げます。  いわゆる部落差別は合理的な理由が全くない重大な人権侵害でありますが、今日なおこのような人権侵害事件が後を絶たないということは、まことに遺憾に存ずるところであります。  法務省といたしましては、これまでもこの種事件の根絶を期し、人権擁護活動の強化に努めてまいったところでありますが、今後ともなお一層その充実強化を積極的に図っていきたい、かように思っておる次第でございます。
  249. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 今度の新法によって、ややもするとこうしたものが置き去りになるのではないかと懸念をいたしますので、総理府も法務省の方もよろしくお願いしますし、絶対にやっていただきたい、かように思うわけであります。  次に、財源に関する問題についてお尋ねしたいと思います。  その第一は、総理府から、地方公共団体の財政負担の軽減を図るために、国の補助については補助単価、採択基準等を実情に合ったものに改善すべきと考えるが、この点についてのお答えをしていただきたいと思います。  また、自治省の方には、法第五条の、元利償還の交付税算入の地方債の枠の拡大を図るべきと考えておりますが、この点についてお答え願いたいと思います。  また、一遍にお聞きいたしますが、建設省の方には、住宅新築資金等に関する補助金については、貸し付けに伴う事業量が増大している一方、政府からの借入金利も補助率決定時よりかなり高くなっておる、こうした現状にかんがみて、現行の補助率四分の一をたとえば二分の一に引き上げる、こうした改善努力をする必要があるのではないかと考えますが、この点はいかがですか。  総理府、自治省、建設省からお願いしたいと思います。
  250. 水田努

    ○水田政府委員 お答え申し上げます。  地方公共団体の負担に配慮いたしまして、御承知のとおり大変厳しい財政状況下でございますが、今回の法案におきましては、現行の同対法と同じ財政措置を講ずるようにいたしたところでございます。  なお、御指摘の補助基準を実情に合ったものにせよとの点でございますが、これまでもその改善を図ってまいったところでございますが、今後とも引き続き努力をしてまいる所存でございます。
  251. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 地方債の元利償還費の交付税算入措置につきましては、同和対策事業特別措置法のもとにおきましても、公営企業などその事業の収入を当該地方債の元利償還金に充てることができる事業に対するものを除きまして、国庫負担補助金を受けて行った事業について行うこととしておりまして、新法における地域改善対策事業につきましても従来の同和対策事業と同様の取り扱いとする考えでございます。これは、同和対策事業ないし地域改善対策事業は国、地方共同の責任において実施さるべきものであり、国庫補助負担の特例措置がなされたものについて、地方公共団体の共有の財源でございます地方交付税上の措置を講ずるという従来からの考えに立っているものであることを御理解願いたいと存じます。
  252. 松谷蒼一郎

    ○松谷政府委員 お答え申し上げます。  住宅新築資金等の貸付事業は、対象地域の環境改善を図るために、みずから住宅を新築し、改修し、または宅地の取得を行う者に対しまして低利の融資を行う地方公共団体に、貸付財源の四分の一を国庫補助いたしまして、残りの四分の三には地方債を充当いたしまして地方財政負担の軽減を図っているものであります。  ただ、ただいま先生から御指摘がございましたように、地方債の利率の変動等によりまして、地方公共団体の地方債償還の総額と貸付者からの貸付金償還の総額との差に増減が生ずることになります。近年の比較的高い金利のもとでは地方公共団体に負担が生じているというのは御指摘のとおりでございます。しかしながら、現下の厳しい財政状況下におきましては、補助率の引き上げを行うことはなかなかに困難な状況にあると考えております。
  253. 石井一

    石井委員長 ちょっとヒューズが飛んだらしいので、答弁を少し大きく……。
  254. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 ヒューズが飛んで声も小さいし、どうもよくわからない点がございましたが、時間の関係から次に進みたいと思います。  法の有効期間内に事業の完結を図るためには、その計画的な実施を進める一方、昨年の同対協の意見具申にもありますように、事業内容の見直しを行ってその適正化、効率化を図るとともに、一般施策との均衡を失することがないよう事業量の見直しを行って、財源の重点的な配分を行う必要があるのではないかと考えますが、この点についてお答え願いたいと思います。
  255. 水田努

    ○水田政府委員 新法のもとにおいて地域改善対策事業を推進するに当たりましては、国はもとより、地方公共団体におきましても昨年十二月の同対協の意見具申を尊重してまいらなければならないものと考えております。政府におきましては、五十七年度の予算を編成するに当たりまして、物的事業につきましては、生活環境等の改善整備に見合ったものとする一方、非物的事業については、啓発活動、進学奨励金の増額等、必要なものには増額を図ってまいった次第でございます。  次に、同和問題の早期解決を図りますためには、本法の第二条第一項に規定いたしておりますように、迅速かつ総合的に事業の推進を図ってまいらなければならないと考えております。たとえば地元関係者の合意を要する住宅地区改良事業等につきましては、早急に事業計画の策定を行うよう、関係省庁を通じて地方公共団体の指導をしてまいりたいと考えている次第でございます。
  256. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 それでは次に、事業の範囲について質問したいと思います。  まず第一点は、新法では、具体的な事業項目はすべて政令に移す、こういうことになっておりますが、その際、地方公共団体がそれぞれの地域の事情に応じて実施している事業も考慮に入れるべきであると考えますが、この点についていかがですか、総理府にお願いしたいと思います。
  257. 水田努

    ○水田政府委員 昨年十二月の同対協の意見具申の中におきまして、国が地方公共団体を通じて、または地方公共団体とともに行う同和対策事業の範囲については、行政の責務の範囲等を検討した上で明確にすることとされており、また、同意見書の中で、一般法による施策だけでは解決できない事項や一定期間内に特定目的を達成する必要のある事項がその内容となると御提言をいただいているわけでございますが、これらの点を尊重する方向で政令の内容を定めてまいりたいと考えている次第でございます。
  258. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 自治省にお尋ねいたしますが、地方公共団体の実施している単独事業にストップをかけるべきではない、かように考えますが、この点についての御見解をお願いします。
  259. 土屋佳照

    ○土屋政府委員 単独事業は、御承知のとおり地方団体がそれぞれの必要性に応じまして独自の判断によって実施するものでございますが、昨年十二月の同和対策協議会の意見具申におきましても、その内容や運営が妥当であったか否かについて十分検討を加え、その適正化及び効率化を図っていくよう、また、広く住民一般のコンセンサスを得る努力をする必要があるといった指摘がされておるわけでございまして、その趣旨に沿った事業実施がなさるべきものと考えております。その趣旨を地方団体にも周知させることといたしたいと存じております。
  260. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 昨年の同対協の意見具申にもございますように、同和事業に関連した国民の批判、これを受けないようにするためにも、本法案の成立を契機に国の事業実施要綱等の見直しを図る必要があるのではないかと思いますが、その点いかがですか。
  261. 水田努

    ○水田政府委員 先ほど御答弁申し上げました趣旨で政令の事業内容を定めてまいります一方、関係省庁においても、従来施策についてその適正化、効率化について御努力をいただいているところでございます。
  262. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 国の例はわかりましたが、地方公共団体の関係条例等についても同様にその是正を図る、このように指導する必要があるのではないかと思いますが、その点いかがですか。
  263. 水田努

    ○水田政府委員 先ほどからも繰り返しお答え申し上げておりますように、昨年十二月の同対協の意見具申は、地方公共団体においても当然尊重されるべきものと考えている次第でございまして、かかる見地から、それぞれの関係各省において適時適切に地方公共団体の指導をしてまいるようにいたしたいと考えている次第でございます。
  264. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 それでは最後に、その他の事項について若干お尋ねしたいと思います。  まず第一は、五十三年、この延長時に附帯決議をつけましたが、その中にありますように、五十年調査は必ずしも十分ではないので、今後とも同和地域の実態の把握に努めていく必要があろうか、かように考えます。この点について、総理府から政府当局の考え方をお願いしたいと思います。
  265. 水田努

    ○水田政府委員 今後とも、関係各省において府県等からの事情聴取を行う等、その把握に努めてまいりたいと考えております。
  266. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 第二番目の問題は、同和問題の早期解決を図るためには、昨年の同対協の意見具申の中において、現行法の運用が行政機関と同和関係者のみの法律のごとき印象を与えてきたことを反省し、広く国民の理解と協力を得るという立場からその運用に当たる必要がある、こういうふうに指摘されておりますが、この点についての政府の姿勢について総理府からお答え願いたいと思います。
  267. 水田努

    ○水田政府委員 同和問題の早期解決を期してまいりますためには、何をおいても国民の理解と協力を得ることが必要であると考えております。この問題の解決のために実施されます事業に関連して、国民の批判を受けないようにしていくことも重要であると考えております。このためには、同対協の意見具申にも指摘されていますように、国も地方公共団体も、広く国民の理解と協力を得るという立場から本法案の運用に当たっていきたいと考えている次第でございます。
  268. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 三番目にお聞きしたいのは、同和問題の早期解決を図るために同対協のあり方を検討する必要があると考えますが、この点について総務長官からお答え願いたいと思います。
  269. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 お答えをいたします。  総理府の附属機関としての同対協、同和対策協議会が昭和四十一年の四月に設置をされまして今日に至っておりますが、その間、現行の同和対策事業特別措置法の制定、延長及び今回の新規立法の必要性等につきまして適時適切に御意見をいただいており、また、関係行政機関相互間でややもすれば意見の対立等の生ずる問題につきましても、同協議会の学識経験者である委員の方々のお骨折りによりまして今日まで円満に解決を見ておりまして、現在の委員の構成、同協議会の任務が今後の施策の推進を図る上においても最も実情に合ったものであると考えております。
  270. 佐藤信二

    ○佐藤(信)委員 以上をもって質問を終わりますが、きょうは非常に短時間に、冒頭申し上げましたように、各党の意見をまとめて一括させてもらいました。そういうことで、総務長官、本日確認したことだけは確実に守っていただきたい、こういうことをお願いして私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  271. 石井一

    石井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  272. 石井一

    石井委員長 この際、日本共産党中路雅弘君外一名から、本案に対する修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。榊利夫君。     ――――――――――――― 地域改善対策特別措置法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  273. 榊利夫

    ○榊委員 日本共産党を代表して、ただいま議題となっております地域改善特別措置法案に対する修正案、これはお手元に配られておりますが、この修正案の提案理由とその内容の概要を御説明申し上げます。  わが党は、現行の同和対策事業に対する特別措置がなお一定期間必要なことを認めるものであります。だが、措置が有効であるためにも、各種のゆがみを生み出した法の不備、欠陥を是正することが必要であります。  周知のとおり、現行同特法は、施行後十三年間、対象地区の環境改善や地区住民の生活改善をもたらした反面、特定団体の暴力的圧力やその不備、欠陥などから、さまざまな否定面やゆがみを生み出してまいりました。  同対協が昨年十二月十日の意見具申で指摘しましたように、今日なお、少なくない地方自治体で特定団体が同和行政を事実上支配するという無法な窓口一本化行政が行われております。そのもとで、所属団体の違いなどを理由とした新しい差別が地区内に生み出されています。超デラックスな施設建設や常軌を逸した各種の個人給付事業が行われ、逆差別ともいうべき現象も生まれております。また、事業の一面的肥大化が進み、地方財政破綻を促進しているところもあります。さらに、同和対策事業が土地転がしや脱税など、利権と腐敗の温床になっている事態も随所で問題化しております。  こうした乱脈な同和行政は、同和対策事業のあり方に国民の不信を生むに至っております。今日、同和対策事業のゆがみと非計画性を正し、公正、民主、公開、国民合意の同和行政を実現することは文字どおり国民世論となっております。  今回の政府提出の法案は、国民の批判にこたえようとする一定の前進面を持っております。しかし、法案は、現行法が持つ不備、欠陥を十分克服しておらず、このままでは、特定団体の暴力的圧力による窓口一本化とそのもとでの不公正、乱脈が温存される危険もあります。  わが党が提出する修正案は、法案のこうした弱点を抜本的に是正をして、国民的な合意が得られるものに改めるとともに、事業を法の有効期間内に迅速かつ計画的に完結させることを目指すものであります。  これが修正案を提出する理由であります。  次に、修正案の内容の概要を申し上げます。  第一は、法の目的と事業の目標が、同和問題の解決に寄与し、対象地区住民の社会的経済的地位の向上を不当に阻む諸要因を解消する点にあることを明記し、法律名称を同和対策事業特別措置法に改めることとしております。  第二は、法の目的を達成するための国と地方公共団体及び国民の責務規定をそれぞれ独立の条文とし、国の第一義的責務が明確になるように規定することであります。  第三は、不公正、乱脈な同和行政を抜本的に正すため、行政の責務として、みずからの判断と責任において公正かつ民主的に行うこと、対象地域とその周辺地域との一体性の確保を図ること、及び対象地域の住民が思想、信条等によって差別されることなくひとしく受益できるように行うことを明記することであります。  第四は、同和対策事業の非計画性を正し、事業を法の有効期間内に迅速かつ計画的に完結させるため、国に事業実施に関する基本方針を、地方公共団体にこの方針に基づく実施計画をそれぞれ定めるよう義務づけることであります。  第五は、事業の一面的肥大化に歯どめをかけるため、法の目的と事業の目標の明確化、公正、民主的な同和行政実現のための保障の明記などとあわせ、基本方針と実施計画の公開、実施計画を定めるに当たっての地方議会の議決と国との協議などを義務づけ、厳しいチェックを行うこととしております。  第六は、事業を迅速かつ計画的に完結させるための財政措置についてであります。わが党は、事業を三年以内に完結させることを原則とし、大規模事業など特別のものについても遅くとも五年以内に完結させるとの見地に立つものであります。そのためには、現行の特別の助成を継続するだけでなく、不必要な事業に対する追加投資を廃止または大幅に削減し、おくれた地区に重点的に財源を配分するなどの措置をとる必要があります。本修正案で特別の助成と実施計画を結び、実施計画を定める際、国との協議を義務づけているのはこうした運用を行うためであります。なお、財政力の弱い市町村に対し新たにかさ上げ補助のかさ上げを行うこととしております。  第七は、同対協を民主的に改組強化し、公正、民主的な同和行政の実現と迅速かつ計画的な事業の推進に役立てることとしております。  最後に、本修正案は、協議会の会議公開の原則を明記するとともに、国に基本方針の公表と同和対策事業に関する国会への年次報告を義務づけるなどによって、同和行政の密室主義を抜本的に正すこととしております。  以上が修正案の提案理由とその内容の概要であります。  本修正により、かさ上げ補助のかさ上げなどで約百七十億円の経費増を伴いますが、他方、不公正、乱脈な同和行政を抜本的に是正することにより膨大な浪費を削減することとしており、全体として経費増を伴わないものと見込んでおります。  委員各位の賛同をいただき、速やかに可決されるよう要望して、修正案の趣旨説明を終わります。
  274. 石井一

    石井委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。田邉総理府総務長官。
  275. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 ただいまの修正案につきましては、遺憾ながら賛成いたしかねます。
  276. 石井一

    石井委員長 本修正案について別に発言の申し出はありません。     ―――――――――――――
  277. 石井一

    石井委員長 これより本案及びこれに対する修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  地域改善対策特別措置法案について採決いたします。  まず、中路雅弘君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  278. 石井一

    石井委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  279. 石井一

    石井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  280. 石井一

    石井委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  281. 石井一

    石井委員長 次回は、来る二十三日火曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十四分散会