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1982-02-25 第96回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月二十五日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 石井  一君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 田名部匡省君 理事 山崎  拓君    理事 上田 卓三君 理事 渡部 行雄君    理事 市川 雄一君 理事 小沢 貞孝君       有馬 元治君    上草 義輝君       小渡 三郎君    狩野 明男君       亀井 善之君    塚原 俊平君       吹田  愰君    細田 吉藏君       宮崎 茂一君    岩垂寿喜男君       上原 康助君    榊  利夫君       中路 雅弘君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         外務大臣官房長 伊達 宗起君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   池田 久克君         防衛施設庁総務         部調停官    宇都 信義君         防衛施設庁総務         部施設調査官  近藤 孝治君         防衛施設庁施設         部首席連絡調整         官       岩見 秀男君         法務省民事局第         二課長     大森 政輔君         外務大臣官房領         事移住部長   藤本 芳男君         通商産業省通商         政策局通商企画         調査室長    鈴木 孝男君         運輸省航空局管         制保安部長   武田  昭君         自治省行政局振         興課長     浜田 一成君         自治省財政局交         付税課長    能勢 邦之君         内閣委員会調査         室長      山口  一君     ――――――――――――― 二月二十四日  靖国神社公式参拝実現に関する陳情書外八件  (第一号)  靖国神社祭祀法人化に関する陳情書  (第二号)  旧軍人・軍属恩給欠格者に対する恩給法等の改  善に関する陳情書外七件  (第三号)  同外二件  (第一一一号)  同和対策事業特別措置法強化改正に関する陳  情書外十三件  (第四号)  北海道東北開発公庫の存置に関する陳情書外九  件(第五号)  同和対策事業特別措置法の失効に伴う新法制定  に関する陳情書  (第一一二  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇号)      ――――◇―――――
  2. 石井一

    石井委員長 これより会議を開きます。  在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。渡部行雄君。
  3. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今度新しく外務大臣になられたばかりの櫻内外務大臣に、まず日本外交基本姿勢重点目標について明らかにしていただきたいと思います。
  4. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本世界に誇るべき憲法を持っておるわけでございますが、それだけに、外交を通じてみずからの平和と安全を守る、また豊かな国民生活を確保していく、こういうことが基本だと思うのであります。そして、そういうことを通じまして、世界の平和と安定に積極的に貢献をしてまいりたいと思います。また、わが国政治経済上の基本理念を同じくする米国を初めとする西欧諸国との連帯協調を図りながら、わが国国力国情に応じた、ふさわしい役割りをいたしたい。  そこで、渡部委員のおっしゃった、具体的な行動はどうか、こういうことになりますと、近く第二回の軍縮特別総会が開かれますが、そういう場を通じまして、核軍縮を初めとする軍縮の具体的な前進が図られるように積極的に寄与してまいりたいと思いますし、また、開発途上国に対する経済協力を初めとする南北問題の解決について努力をいたしたい。この点は、総合安全保障一つの大事な柱としてそういう方針をとってまいりたいと思うわけであります。  また、現在の国際経済を見てまいりますと、日本大変成績がいい方ではございますが、しかし国際経済全般が沈滞しておるということではいけないのでありまして、世界経済の再活性化のために努力をしていきたいと思います。また、残念ながら、第三世界における地域的な紛争や対立というものが絶えない状況にございますので、これらの解決を図るために協力をしてまいりたい。  政治経済面を通じまして積極的な役割りを果たしたいというのが、当面のわが国外交基本方針であり、また私の所信の一端でございます。
  5. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ただいま、政治経済基本理念共通する国と仲よくしていくんだという趣旨のお話がありましたが、そうすると、中国とかフランスは、これは政治経済基本理念が若干違うのじゃないかと思うのですが、そういう点についてはどうなんでしょうか。
  6. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それは、政治経済についての共有した考え方を持っておる諸国を初めとするということでございまして、外交につきましては、いかなる国とも問題ごとに話し合っていく。また、非常に困難な関係にあればあるほど外交上の話し合い必要性があると思うのでございまして、政治経済が同じ国だけとしかやらないという意味じゃなくて、米国などがわれわれと価値観を共有しておりますから、そういうところがまず中心ではあるけれども、おっしゃったような中国フランス、御指摘諸国との外交もまた大事であることは言うまでもございません。
  7. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは、外務大臣としては余り政治経済の違いとかあるいは体制の違い、そういうものは口にすべきじゃないと思うのです。よく、自由世界とか、そういうことで問題の共通性を強調される場合が多いようですが、そういうもので区別して外交姿勢を決めるということになりますと、これは憲法にも違反するのじゃないか。憲法精神というのは、いかなる国とも融和を図って世界平和の実現に向かって努力するのが憲法精神であることは言うまでもないと思います。  そこで、世界平和の実現ということが日本の使命になっておるわけでございますが、現在、世界は非常に緊張状態になっておるわけでございます。大臣は、この緊張状態の原因は一体どこにあるのか、またその障害となっているものをどうしたら取り除くことができるのか、こういうことについて、真の世界平和に向かってアプローチしていく、そのプロセスと申しますか、それはどういうふうにお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。
  8. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 最近のこの十年ぐらいを顧みまして、国際的にデタントということが言われてまいったことは御承知のとおりだと思うのであります。そしてそれに対する期待感は非常に強かったのでありますが、しかしその緊張緩和の中に、遺憾ながらソ連軍事力を逆に強化していった、こういうようなことから、現在、東西関係からいたしますと軍事バランスというものがどうなるのか、非常に危惧されるところとなってきております。このまま進んでまいりますならば、八〇年代中葉には不均衡状態となって、国際的にどうかというような観測も行われておるのでございまして、そこでオタワサミットをごらんいただきますと、そういうような傾向に対して先進諸国が憂慮の意思を明らかにして、そしてそういうことを避ける上におきましては対話を行い、でき得る限り低いレベルでの軍事均衡が好ましい、こういうことでこの一年経過してきておると思うのであります。そして、米ソの間におきましても中距離核戦力削減交渉、その他の交渉もしようという対話の具体的な取り運びは昨年十一月三十日以来行われておるけれども、なおそこに不安定なものを持っておる、こういうような状況でございますが、日本といたしましては、こういうような対話が進められ、オタワサミット話し合いのように低いレベルの勢力の均衡ということによって平和が維持されることを期待してやまない次第でございます。
  9. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そこで、平和を実現するための日本努力としていま一番大事なのは、何と申しましても軍縮だろうと私は思うわけでございます。そしてまた、南北問題、あるいは全面外交を展開して全世界対話をしていく、こういうのがいま一番重要ではないかと思います。  そこで、軍縮問題については、ことしの六月七日から七月九日まで国連本部において第二回国連軍縮特別総会が開催されることになっております。これへの各国代表は最も高い政治レベルの方ということになっておりますが、日本鈴木総理出席されるやに聞いておりますけれども、これは確定したのでしょうか。
  10. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 鈴木総理は、国会を通じましてみずから第二回軍縮特別総会出席をする、こういうことをおっしゃられております。そこで、外務当局といたしましては、ベルサイユ・サミット後に、引き続きニューヨークにお出かけになり、この総会に御出席を願うよう準備を進めておるところでございます。
  11. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この第二回国連軍縮特別総会に臨むわが国の態度といたしまして、第一回の場合と全く同じなのか、若干の変化があるのか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  12. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  第二回特別総会におきましては、第一回の特別総会の際に審議され、採択されました最終文書に盛られております内容をしさいに検討いたしまして、さらに前進を図るということに相なっておりまして、この意味では第一回と第二回の間に相違があると考えられます。
  13. 渡部行雄

    渡部(行)委員 私はそういう問題を言っているのでなくて、精神が同じなのかどうかということを聞いているのです。
  14. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいまお述べになられましたように、精神におきましては相通ずるものが当然にあろうと考えております。つまり、御指摘になられましたように、軍縮問題というのは世界の平和と安全を確保する上において重要な課題でございます。国連が創設されまして以来、当初から軍縮の問題は国連の最も重要な課題であるという認識のもとに加盟国努力してまいっているところでございまして、繰り返しになりますが、お述べになられましたように、軍縮問題に真剣に取り組む、この精神においては第一回、第二回貫いいて共通のものがあると考えております。
  15. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、第一回の軍縮特別総会のときに園田外務大臣出席して演説をされたわけですが、その中で、平和憲法のもとで非核三原則を堅持しているわが国立場を述べ、核廃絶という究極的な目的に向かって現実国際関係の中で実現可能な具体的措置を一歩一歩進めていくことが肝要であるとの基本的な姿勢に基づき、核軍縮中心とする軍縮の促進を国連の全加盟国に訴えたということでございますが、しからばこの間の、昨年十二月九日の核兵器の不使用及び核戦争の防止に関する総会決議になぜ日本反対されたのか、その理由をお聞かせ願いたいと思います。
  16. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 核の不使用及び不配備に関する決議につきましては、国連総会でたしか過去十回ぐらい提案され、採択されておると思うのであります。それで、昨年と一昨年わが国がそれに反対をしておる、こういうことは、その当時の国際状況を考えますときに、核が戦争抑止力になっておるという現実を認めなければならないと思うのであります。  これは不使用のことでございますが、日本として一昨年来の国際情勢からすると、そういうことによって現に抑止力の働いておる状況から考えてどうか、アフガニスタン以来の国際情勢を踏まえての日本考え方から反対をいたしたわけでございますが、日本が核の生産をやめろ、あるいはその前提となる核実験をやめろ、あるいは核不拡散条約を徹底させよう、こういう姿勢をとってきておることは御承知のところでございまして、ただこの不使用決議につきましては、その当時の国際情勢を勘案しての反対、こういうことでございます。
  17. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それは全く理由にならないと私は思うのですよ。  この問題は、インド、アルジェリア、アンゴラその他相当の国々が共同提案したわけですが、最初日本はこれに棄権をしてきておる、そうして今度反対に回った。ところが、最初棄権をしておったソ連やスウェーデン、そういうところが今度は賛成になって、反対しているのはアメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、イタリア、それからベネルックス三国、豪州、日本、わずか十九カ国なんです。賛成は百二十一カ国ある。それから棄権が六カ国ですが、こういう状態で、この核を使わない、そして核戦争を防止するというこういう決議をどんどんやって、そしてそういう核を使うということは本当に罪悪行為なんだというこの全世界世論形成をしていくことが最も大事だと思うのです。そういうことをしないで、一体この被爆国である日本がどうして本当の軍縮のイニシアチブをとることができるのか、これは私は全く疑問でならないわけです。その辺をひとつもっと明確にお答え願いたいと思います。
  18. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま私が御説明申し上げたとおりに、不使用ということ以上に核の生産を禁止するとか、あるいはその生産前提になる実験を禁止するとか、あるいは核の不拡散を徹底していく、こういうようなことがより重要だと思うのであります。また、核の抑止力というものも念頭に置かなければならない。そういう際におけるアフガニスタン問題以来の国際情勢から考えていきますと、この抑止力についての懸念が出てきておるわけでございますから、ただ不使用ということでなくて、本当に実効の上がることを考えるべきではないか。ただいま渡部委員がおっしゃったように、反対をした諸国をごらんいただきますならば、私ども国際場裏で同じ歩調をとっておる西欧諸国中心反対をしておるのでございまして、これはいちずに核の抑止力というものを念頭に置いてのことでございます。そして、この核軍縮とか核の絶滅とかいうことにつきましては、われわれはそれを理想としておるところでございまして、実効の上がる措置の方を積極的にやるべきである、こういう見地に立っておるわけであります。
  19. 渡部行雄

    渡部(行)委員 アフガニスタン問題以来核抑止力を重視したと言われますけれども、私は、ああいう問題が出たからこそ、こういう決議賛成すべきだと思うのですよ。核抑止力を重視するということは、つまりそれ以上の核をつくれということじゃないでしょうか、日本立場から言えば。アメリカソ連以上の核の力を持つべきだ、それが核抑止力だと考えるならば、もうこれは軍縮方向じゃないですよ。軍拡方向ですよ。私はその辺の感覚が全くわからないわけです。どんなことであろうと、実現不可能でいますぐ実現ができなくとも、それを可能に近づけるための最大限の努力をするというのが大事じゃないでしょうか。私はもっと別なところにその観点があるように思えてならないわけです。つまり、軍縮という言葉の陰で、実は軍拡競争をしておる、その軍拡を正当化するためにいまのような発言が出てくるのではないか、こういうふうに考えられるわけですが、その辺はいかがでしょうか。
  20. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本が核をつくったり、核による軍拡など、そういうことはないことはもう御承知のところでございます。したがって、日本発言というものはきわめて重要だと思うのです。先ほどから申し上げるとおりに、核兵器生産禁止あるいはもう一つ貯蔵削減というようなそういう具体的な措置による裏づけのない限り、実効性についてなかなか問題ではないか。そこで核の抑止力ということを私申し上げておるわけでございますが、また先ほど基本方針でも申し上げたように、国際的に軍拡競争などが激化しないように、そしてその軍事バランスが低いレベルで行われたい、それには米ソの間でも対話が開かれておる、この軍事均衡ということは、これはやはり大事だと思うのです。この均衡が破れることによって不測の事態が起きておることは、過去の事例でわれわれもよく考えなければならないところだと思うのであります。そういう点から実効の上がらないようなことはどうか、こういう見地に立っております。
  21. 渡部行雄

    渡部(行)委員 いま軍事均衡ということをおっしゃられましたが、私は、この国際会議軍縮会議等を通じて、一体東側と西側とどちらが本気で平和を考え、軍縮を考えているかということをわれわれは見なければならないと思うのです。  そこで、本当に均衡が破れてソ連の方の軍備が拡張されているだろうか。ソ連予算を見ますと、国防費予算が一九七一年は百七十九億ルーブル、そして七六年が百七十四億ルーブル、七八年が百七十二億ルーブル、七九年が同じく百七十二億ルーブル、そして一九八〇年が百七十一億ルーブル、八一年が百七十億五千万ルーブル、そして八二年は同じでございます。ソ連予算は減ってきているのですよ。ところがアメリカはどうでしょうか。アメリカは大変なものです。ことしの兵器生産で発注した総額が去年より四兆八千億円も伸びておるのですよ。そして八一年度に発注した契約総額は九百七十三億ドル、約二十二兆八千六百六十億円。この最近の伸びというのはもう大変な伸びなんです。アメリカのいわゆる軍事産業政府が完全に結びついていると言っても過言ではなかろうと思いますが、このように利潤が保証されていく背景がここにあるわけですから、とてもじゃないが、軍縮なんかする気にならないのは、私は理解できると思うのです。恐ろしい死の商人が裏からアメリカ軍事政策を後押ししておる、そう言っても、この数字からいって過言ではなかろうと思います。  そういうふうに考えてまいりますと、これは非常に重大な問題だと思うのです。日本もどんどん軍事予算をふやしてきて、そして一方で軍備を縮小しましょう、あるいは全面完全軍縮に持っていきましょう、だれが信用しますか。そういう論理が国際的に通用するとなれば、これは全くおかしなことになると思うのです。前向いて歩いているのか後ろ向いて歩いているのかさっぱり見当つかないというのが、いまの日本の生きざまじゃないでしょうか。その点について御答弁をお願いします。
  22. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまお示しの、ソ連あるいはアメリカ予算額というもの、これは私よく承知しておりませんので、その辺はまたよく調べてから申し上げたいと思います。しかし、渡部委員の御調査前提にして申し上げますと、そういう数字になっておるといたしますと、ひとまずただいまのような御批判が出ると思います。  しかし、先ほど私が当初に申し上げましたように、われわれの期待しておったデタントというものが具体的に進むというよりも、むしろその間にソ連軍事力を強化したということは、各国がそのことを認めておるところであります。そして、そのことによって均衡が破れるのではないかという非常な懸念がある。特にレーガン大統領は就任後にそのことを指摘して、このまま放置しておいたならば大きな不均衡を生じて問題である、だからどうしてもこの際犠牲を払っても軍事力を強化しなければならない。これは、ただいま申し上げておるような軍事均衡をどうしても保持しようという、そういう見地方針であるわけであります。  私は、この方針がただいたずらに軍拡をやるのだということではないと思うのですね。アメリカ自身が大変な犠牲を払っておるということは、予算を見てもわかると思うのですね。大きな赤字、そしてその赤字によってはアメリカ経済は非常な困難に直面する。現に、この赤字のためにインフレが高じてはいけないということで高金利政策をとって、またそれによって日本でもいろいろな困難な面があるわけでありますが、そういうことを承知しながらもどうしても軍事均衡は保ちたい、こういう考え方、これについては私ども理解を示さなければならない。  一方におきまして、東西対立米ソの間がうまくないようではあるが、しかし対話をしよう、こういうことで、昨年の十一月三十日以来の核戦力削減交渉、あるいはグロムイコ、ヘイグの長時間にわたる会談が行われておるのでありまして、こういうような会談を通じまして渡部委員のおっしゃるような理想的な方向へ進んでいくならば、まことにそれは好ましいと思うのでありますが、現段階においてアメリカのとっておるそういう措置というものは、われわれ友好国としては理解を持っていかなければならないと思います。
  23. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この問題は少し時間をかけてみっちり討論したいところですが、時間がありません。  ただ、SALTIIの問題一つとっても、どちらが調印しないでいるのでしょうか。本当に誠意をもってそのSALTIIを完成させようとするならば、早急にこれに調印をしてそして次の段階に進むという姿勢があってこそ、いま大臣が言われたようなこともある程度理解されると思いますが、口で言っていることとやっていることとが全くちぐはぐだと、これは信用できないのではないでしょうか。その点について、一言お願いいたします。
  24. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま渡部委員指摘のありましたSALTIIについては、調印はいたしました。しかし、批准についてアメリカの上院の中でいろいろ異論がございまして、批准はしておりません。しかし、レーガン政権としても、新しい見地から特に十分な検証がとれるということその他の要素を考えて、新しい戦略についての協議、今度はSTARTと言っておりますが、それを開始しようという意向を持っておるというふうに私は承知しております。
  25. 渡部行雄

    渡部(行)委員 どうも失礼しました。先ほどのは、調印したのを批准しないでいるということです。まあこと点はそのくらいにして、次に移ります。  一九七二年に生物兵器禁止条約日本は署名をしたわけでございますが、これがまだ批准になっていないわけです。ところが世界国々を見ますと、もうすでに八十七カ国が批准を済ませているわけですが、一体なぜ日本生物兵器禁止条約批准を渋っているのでしょうか。
  26. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはわが国国内法令、あるいは禁止対象となっている生物材等の取り扱いの実験等調査しながら慎重に検討してきたのでありますが、こういう国内措置、そこに問題があるわけでございます。八十七カ国が批准をしておるということでもあり、わが国としても今国会には批准目標関係各省庁との間の調整を早くいたしたい、こういうことで現在臨んでおるわけであります。
  27. 渡部行雄

    渡部(行)委員 国内法との関係批准できないと申しますが、それも去年やおととしあたりのことなら納得できますけれども、もう十年たっておるのですよ。そんなにかかるでしょうか。     〔委員長退席佐藤(信)委員長代理着席〕 この行政改革なんかでは、あんな多くの法案を一括して審議したり、またその法律でいままで長い間なじんできたものを一遍にばっさりと変えてしまうことをやれる政府なんですから、やる気なら十年もたたないですぐやれるのじゃないでしょうか。もしこれを本気で考えておられるなら、ではいつ整備して、いまどういう法律とかかわり合いを持っているか、その辺をひとつ明らかにしていただきたいと思います。ついでに見通しもはっきりとお願いいたします。
  28. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  この生物兵器禁止条約対象になっておりますいわゆる生物兵器は、私人の行為に対しましても規制を及ぼすという内容のもので、特殊な性格を持っておるものでございます。それから、この条約が対象にいたしておりますのは、予防、防御または平和的目的のために利用されるものを除くということで、きわめて多岐広範な分野にわたる生物剤が対象になり得るのでございます。  そういう関連から、この兵器についてかかわり合いを持ちますところの国内諸官庁の範囲も非常に多いものがございます。そういうことで、私どもの協議はどうしても慎重かつ十分な内容を持ったものでなければならないということがございますので、すでにこの条約を批准いたしております国においてどのような国内措置がとられているかというふうなこともあわせ検討いたしながら、先ほど大臣から御答弁がございましたようにただいま関係省庁と鋭意協議をいたしているところでございますので、御理解賜りたい、かように存じます。
  29. 渡部行雄

    渡部(行)委員 見通し等については全然お答えになりませんが、少なくとも調印しておるものを十年間——鋭意慎重に検討しましたなどと言うけれども、恐らくその検討に当たった人たちは三年か二年で皆交代しているんじゃないですか。そんなことではいつまでたってもやれるはずはないですよ。もっと具体的にしっかりした答弁をしてください。大臣、これはいつまでにやりますか。
  30. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほどお答えを申し上げましたように今国会には批准をいたしたい、こういう目標のもとに、関係各省庁鋭意検討を行っておるところでございます。
  31. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ぜひひとつそうしてください。  そこで、いまジュネーブの軍縮委員会で、日本が化学兵器禁止条約を提案して、その審議がなされておる最中だと聞いておりますが、その中身は一体どんなものなのでしょうか。さきの生物兵器とは大分違う内容のものなのですか、その辺をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  32. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  化学兵器禁止条約は、わが国が非常に重要視いたしております軍縮措置一つでございます。ただいま渡部委員から御指摘いただきましたように、この条約に関しましては、わが国は一九七四年にみずからの手で条約案文を作成いたしましてそれを提出いたしておりますし、また、ただいま軍縮委員会で行われておりますところの作業部会につきましては、一昨年にはその議長としてわが国の代表が積極的な貢献をいたしております。  それで、お尋ねのございました化学兵器は生物兵器と違うのかどうかという点につきましては、お述べになられましたとおり内容的に異なっております。化学兵器は窒息性ガス、いわゆる毒ガスといったものがその対象になっているわけでございます。  なお、わが国が提案いたしております化学兵器禁止条約案の内容は、生産、貯蔵等の禁止を内容といたしているものでございます。ちなみに使用に関する禁止につきましては、一九二五年のジュネーブ議定書において定められております。
  33. 渡部行雄

    渡部(行)委員 今度は問題を変えまして、日米同盟ということについてお伺いいたしますが、昨年の五月八日に出された鈴木総理大臣レーガン大統領との間の共同声明、これは何回読んでも日本が得するという条項はないんじゃないでしょうか。全部アメリカからこれをしろ、あれをせよというふうに押しつけられておるような気がしてならないのですが、その辺の判断をお聞かせ願いたいと思います。
  34. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 鈴木総理は首脳会談国会で、御質問に応じて当時の御自身のお考えをしばしば明らかにされております。それに基づきますならば、いま渡部委員がおっしゃるようなアメリカから何か押しつけられたということでなく、常に日本憲法の制約の中あるいは諸法律の枠の中で自主的に日本が考えていくということを繰り返し明らかにされておるところでございます。
  35. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは具体的にどの項目が日本にとってメリットと言えるのですか。
  36. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 全般的に申し上げますと、日米共同声明の中で日米同盟という言葉を使いまして日本アメリカとの幅広い関係を再確認したわけでございますが、その日本外交の基軸であるアメリカとの関係をより緊密にしたということがまず言えるかと思います。最初の方にございますのは、いずれも、国際情勢に対する認識を両国間で共通の認識というふうな表現でいろいろと表現をしているわけでございます。  それでは日本は具体的にどういう点でその利益を受けたか、こういうことでございますが、たとえばその八項において日米安全保障条約に言及しておりまして、日米安全保障条約が日本の安全あるいは極東の安全と平和に役立っているというようなこともうたっておりますし、さらにはその後で、いろいろ経済問題について自由貿易開放体制というものを確認しているということでございます。さらに十三項において、エネルギー問題について両者で引き続き関心を持って、エネルギー生産の増大あるいは代替エネルギー源の開発利用の促進等々ということを確認しておりますが、それを受けて、具体的にはたとえば東海村の再処理について、従来その暫定的な同意を得ていたものを、今回日本側の再処理について相当恒久的な取り決めというものができたということでございまして、個別的に述べるよりもむしろ全般として日本アメリカとの関係、これは日本の安全と平和及び日本経済あるいは貿易というものが、額も巨額でございますし、やはり日本アメリカとの間で貿易がなければ日本自身が生きていけないということでございまして、そういう点についてアメリカ側が再確認したということは、やはり日本の利益にもなっているというふうに私は考えます。
  37. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは観点の相違かもしれませんが、私はこのくらい屈辱的なものはないと思うのですよ。全く同盟という名のもとに日本はがんじがらめにされて、危険なふちにどんどんと引きずられていく。これは新聞等でも出ておるように、同盟というものが一つの大きな縛りとなって、日本の安全が逆に危険な方向に持っていかれておる。アメリカが最近軍備を増強せよと日本に迫ってくるその一つの論拠というもの、あるいは貿易の自由化を迫ってくるその論拠の一つに、必ず同盟のあかしをということを言ってきておる。そうして、その同盟のあかしをせよということで、日本は自分の国が不利になることを承知の上でじりじりと退却を余儀なくされているというのが今日の姿じゃないでしょうか。  原子力の再処理だとかエネルギーの問題を日本の利益だと言っておりますが、これだって、あれほどの大きな反対運動があり、万が一にももし原子力発電所に爆弾でも投下されたら、それは大変な事態になる。この評価の問題は決して国民のコンセンサスがあるわけではないわけですよ。日米安保条約が両方から確認されたからこれが利益だなどということはとんでもない話で、そんなことは前々からあることで、論理的に言ったって事務的に言ったって、それは当然の帰結じゃないでしょうか。本当にこれが日本のためになるというものがあるとは私は思われません。  そういうふうに、共同声明というものは逆に日本が縛られる道具になっている、こういうふうに私は思いますが、現実にその衝に当たる外務省はそういうことは一切感じられないのかどうか、その辺をお聞かせ願いたいと思います。
  38. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本が、安保体制のもとに、日米の外交というものを最も大きい柱、基軸として外交をやっておる。これは過去を顧みて私は御異論はないと思うのです、そのことのよしあしは別ですよ、御異論はないと思うのです。  いま、昨年の会談による共同声明から、利益があるあるいはないという論議をされておるわけでございますが、私は、この日米共同声明の一環として流れておる点は、いま申し上げました日米の戦後の、この平和条約締結後の三十年の経緯にかんがみた、そういう上に立っておるものではないか。特に、同盟とは自由と民主主義の共有の価値の上に立っておるということをまず言っておるのでありまして、それを素直に受けとめていく必要があるのではないかと思います。  これが、おっしゃるような軍備増強の論拠になっておるというお話でございますが、安保体制の上から言いますならば、日本アメリカの核の抑止力に頼っておるわけでございまして、日本として日本の防衛を自主的にどうやっていくかということは、日本自身の考える必要なことであって、この共同声明によってどうというものではないと思うのであります。  いま原子力の問題をお取り上げでございますが、極端な例をお示しになったわけでございますが、私は、自由民主党として申し上げますならば、原子力の平和利用というものにつきましては、これは日本のエネルギーの将来を考える上に必要である、安全性の確保は確保として、絶対にこの日本のエネルギー政策の中での大事な、大きな方針である、このように受けとめておるのでありまして、何か恐ろしいことが起こる、そういうようなことは現在考えられないところではないかと思うのであります。  要は、この共同声明が何かそろばん勘定の上でどうこうというものではない。日米の首脳が会って、国際情勢について意見の交換をし、日米の共通する問題についての腹蔵のない話し合いをしての共同声明、こういうことであると思います。
  39. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この前までは、日本に防衛分担を迫って、グアム島以西フィリピン以北、そうして航路帯千海里ということで言っておったのが、今度はどうでしょうか。今度はシーレーンの防衛に、日本は西太平洋とインド洋にまで責任を持つべきだと言ってきているのではありませんか。そういう、どんどんなし崩しに、同盟だから当然じゃないか、こういうことでやってきておるようですが、このシーレーンのアメリカ考え方についてはどういうふうに思いますか。
  40. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 アメリカといたしましては、現在の国際情勢の中で、特にペルシャ湾、インド洋においてその航路帯の確保のためにいろいろな努力を続けているのは渡部委員も御承知のとおりでございます。  で、同盟国に対してアメリカ側が軍事費の充実を図っていく過程の中で、アメリカ一カ国だけでは十分対応できないということで、NATOであるとか、日本に対して応分の防衛の分担ということを呼びかけているのは事実でございます。しかし、日本側といたしましては、あくまでもその共同声明の中にあるように、わが国としては憲法及び基本的な防衛政策に従って防衛力の充実を図っていく、より一層の努力をしていくということでございまして、アメリカ側がいろいろ言ってくるからといって、それに対して日本側が盲従するということはないわけでございます。  また、御引用になりましたように、アメリカ側の考え方が、何か、日本憲法を改正しろとかあるいは安保条約を改正しろというような御意見のようでございますけれどもアメリカの一部に、民間の中あるいは議員さんの中には確かにそういう意見がございます。しかし、行政府の中には、日本として憲法の範囲内であるいは基本的防衛政策の中で日本の自衛のためによりなすべきことがあるだろう、こういうことでございまして、わが国としては、アメリカ側が日米安保体制を持っている以上日本の防衛について関心を持っているのは当然でございますが、しかしながら、そのアメリカ側の関心に対してどう対応していくかということは、先ほど大臣が御答弁されましたように、日本が自主的に判断していく問題だと私は考えます。
  41. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それでは、この航路帯一千海里というもの以外には考えない、こういうふうに受け取っていいでしょうか。
  42. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 御質問の趣旨を必ずしも私は正確に理解しているかどうかわかりませんけれども日本側が考えていることは、防衛の基本政策あるいは防衛の大綱ということによりまして防衛力の整備を図っているわけでございまして、その前から、周辺数百海里あるいは航路帯を設ける場合には約一千海里にわたって日本としては防衛力を充実していくということでございまして、そのことそれ自身がそこの海域を全部負担するという考えではもちろんないわけでございます。あくまでも日本の自衛のために行う、こういうことでございます。それ以外に日本の自衛隊としてなすべきこと、これはむしろ防衛庁からお答えすべきことがあると思いますけれどもわが国の防衛のために、さらに、現在の大綱に従って大綱の水準に達するようにいろいろ努力をしていくというのが防衛庁の見解であるというふうに私は理解しております。  もう一つ申し上げれば、安保体制の円滑かつ効果的な運用ということで、在日米軍の経費の負担ということは、これは毎年の予算において地位協定の範囲内でできるだけやっていこうというのが政府考え方でございます。
  43. 渡部行雄

    渡部(行)委員 防衛庁の方が来ておりますからちょっとお聞きしますが、いまの日本の周辺数百海里、それから航路帯一千海里という、これはいわゆる日本の防衛の範囲と受けとめていいでしょうか。
  44. 池田久克

    ○池田説明員 われわれが航路帯の安全の確保につきまして努力をしている基本的な考え方は、先ほど外務省から申し上げた点と全く同様でございます。われわれが日本周辺の数百海里あるいは仮に航路帯を設けた場合に約一千海里ということを申し上げておりますのは、われわれの防衛力整備の一つ目標として御説明しているところでございます。
  45. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それは非常に重要な問題ですからね。そうすると、それ以外のところは考えていない、つまり防衛の範囲としては考えていない、こういうふうに受け取っていいでしょうか。
  46. 池田久克

    ○池田説明員 われわれは日本の自衛のために防衛力整備を進めているところでございます。われわれの考え方としては、約一千海里までを目標として防衛力整備を現在進めているところでございます。
  47. 渡部行雄

    渡部(行)委員 進めておることを聞いているんじゃないですよ。日本の防衛の範囲は、いま言った周辺数百海里、航路帯一千海里の範囲内なのかと聞いているんだから、イエスかノーか、これをはっきり言っていただきたいわけです。
  48. 池田久克

    ○池田説明員 われわれが進めています防衛力整備の目標は、日本の自衛のために必要な範囲について整備をいたしております。
  49. 渡部行雄

    渡部(行)委員 そうすると、日本の防衛のためにはどこまででも延ばせるということですか、その論理は。あなたのお答えは、日本の防衛のためならばインド洋でも、それこそ大西洋でもいいという論理になりますよ。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  50. 池田久克

    ○池田説明員 日本の自衛のために必要な範囲というものは、おのずから定まってくると思います。(渡部(行)委員「その範囲を言え」と呼ぶ)  われわれは、インド洋とかそういうふうには考えておりません。しかし、われわれが防衛力の整備を進めている基準は、あくまでも日本の自衛にとって必要な範囲に限定しております。
  51. 渡部行雄

    渡部(行)委員 これは当然答えられない方だろうと思います。だから私は、こういうときにはできれば大臣に来ていただきたいわけですが、しかし、きょうはほかに引っ張られているそうでやむを得ませんから、これは次の機会に回すことにいたします。  そこで、私はずっと見ておると、日本は西側の一員だ、西側の一員だと盛んに強調しておられますけれども、本当の西側諸国から見たら、日本なんかおれたちの仲間じゃないよ、まあ金持ちだから少し利用して使った方がいいくらいの考え方じゃないでしょうか。私はまだまだ白人の中に人種差別観というのがなくなっていないと思います。これはアメリカに行っても感じますし、ヨーロッパに行っても感じます。本当に日本人をパートナーとして彼らが考えているとすれば、もっとあらゆるところにそういう態度が出ていいのではないか。私はそういうふうに考えて、日本のひとり合点でいるような気がしてならないのですが、いかがなものでしょうか。
  52. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 残念ながら、私はそのようには見ておりません。これからの事例を御参考に申し上げますと、ECの議長国であるベルギーの外務大臣が近く日本を訪問されます。また、イタリアの大統領、フランスの大統領、次々と日本においでをいただくわけでございます。特にフランスの大統領は、フランスで初めての大統領の訪問、こういうようなことになるのでございまして、こういう事例から見ましても、日本が明らかに西側の一員である。また西側も日本に対して相連携を保つという、そういう気持ちをあらわしておるものと思うのであります。  最初に申し上げましたように、日本といたしましては外交一つの重要な要素としては、西側の各国との連帯協調ということを申し上げておるような次第でございます。
  53. 渡部行雄

    渡部(行)委員 それではなぜこういう現象が起きているのでしょうか。というのは、いま日本とECの間で貿易摩擦が非常に激化しております。ところが、アメリカとECの間ではどうかというと、それほど激しい摩擦にはなっていないようです。  そこで、貿易摩擦の実態を見てみますと、いまECは六百五十五億八千八百万ドルの赤字を抱えておるわけですが、その中で対日赤字は百九億九千万ドル、これに対して、対アメリカ赤字は二百四十六億二千五百万ドルとなっておるそうです。こうしてみますと、対日赤字の二倍以上もアメリカの方に対してECは赤字を背負っておる。しかも、ECの対域外輸入の方を見てみますと、八〇年で、これはECが出した数字ですが、日本はわずかに四・六%にすぎない。日本からの輸入がこんな比重であるのに、なぜ日本に対して非常に激しい圧力というか攻撃を加えてきているのでしょうか。これは、アメリカ日本というものを必ずしも同じように見ていない一つの具体的なあらわれではないか、こういうふうに私は思うわけですが、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  54. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本とECの間で貿易のインバランスが百億ドルを超えておる、アメリカはそれ以上だ、倍以上じゃないかということからお話がございましたが、日本がECとの関係について注意深く見守っておる、ECの動向などについて大きな関心を持つ、そしてそのことが報道などになってあらわれてきておる、それを端的に申し上げればECの日本に対する厳しい批判、こういうことだと思います。しかし、それではEC対アメリカとの間はどうか、こういうことになりますと、若干報道の論調というものは、日本の直接のかかわり合いがございませんから激しくいろいろECが言っておるようなことが報道されませんけれども、しかし、たとえて申し上げますならば、アメリカの高金利につきましては、ECは繰り返し繰り返しその不当な点を指摘しておると思うのであります。  それから、ECとの間が何か摩擦が非常に厳しいような御印象を持っておられますけれども、しかし、昨年の鈴木総理の六カ国訪欧の状況をごらんいただきますならば、ヨーロッパ各国との間では、直接の貿易のこういうインバランスについては日本努力を要請しておりますが、また、経済協力、技術協力あるいは第三国に対する協力などについて、歴訪された各国との間は合意されております。あるいはオタワサミットにおきましても、円満にEC諸国との間の話が進んでおることは御承知のところだと思います。
  55. 渡部行雄

    渡部(行)委員 日本はいまアメリカとも非常に貿易摩擦を起こして、しかも相互主義法案が議会に次々提案されておるやに聞いておりますし、これが成立する見込みだと言われております。西を向いても東を向いてもこういうふうにして、経済面では大変な、戦争という表現すら使っておる論文等もありますが、それくらい激しい摩擦を起こしておるわけです。一体これは、正直に言ってどっちが悪いのでしょうか。日本に迫るアメリカやECの言い分が間違っているのか、日本の輸出の仕方に問題があるのか、その辺についてひとつお伺いいたします。
  56. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本に対していろいろ批判がございます。そして、その批判につきましては謙虚にお答えをしておるわけでございまして、改造内閣発足後に、関税の前倒しであるとか非関税障壁に対する改廃であるとか、いろいろな努力をしておるわけでございます。しかし現実には、アメリカとの間の大きな日本の輸出超過、ECに対してもいまお話しのような輸出超過があるのでございまして、日本がいろいろ努力をしておる、その努力しておる最中にいろいろ厳しい御批判がさらにあるということは、この点は私はきわめて残念に思っておるのであります。問題がある、だから日本努力する、その努力について不足であると、これはわかりますけれども、次第にその効果はあらわれていくんではないか。それで、なおいろいろ問題があるであろうということから、オンブズマン制度も設けてひとつ謙虚にお話は聞きます、そういう姿勢をとっておるのでございますから、次第に欧米諸国理解が得られるもの、このように見ておる次第でございます。
  57. 渡部行雄

    渡部(行)委員 きょうは通産省も来ておりますから、ひとつお答え願いたいのです。  これほどいろいろな摩擦を起こして、しかもその摩擦の結果、日本のどこでしりぬぐいをさせられているかというと、これは農民なんですよ。みんな工業資本家がどんどんともうけるだけもうけて、そして最後のしりぬぐいは日本の農民にさせておる。しかもこの摩擦というのは、ほとんどの人の意見が一致していると思うのですが、日本の集中豪雨的な輸出に問題があると指摘しておる学者が多いわけです。この輸出の秩序というものを通産省はどういうふうに考えておるのでしょうか。
  58. 鈴木孝男

    鈴木説明員 お答えいたします。  戦後、世界経済の発展は自由貿易体制ということによって維持されてきたのではないかと思います。特に資源に乏しいわが国におきましては、諸外国との調和ある経済関係、こういったもとで自由貿易主義の堅持に努めることが必要だったわけでございます。このため、現在、わが国も含めまして世界各国が積極的な産業調整あるいは世界経済の再活性化、こういうことの努力が不可決なんではなかろうかと思いますが、当面、第二次オイルショックの調整過程等もありまして、先進各国は非常に経済的な困難に直面しておりまして、こういう再活性化あるいは産業調整ということにつきましてもコストと時間がかかるというようなことで非常に困難な状況にありますので、昨年の十二月の経済対策閣僚会議でも述べられておりますけれども、輸出政策につきましては、貿易立国でありますわが国としては、自由貿易、貿易の拡大均衡、これを基本とはしますけれども、集中豪雨的な輸出ということの回避を含めまして、節度ある貿易、こういったものにつきまして維持増進に努めることも肝要か、そういうふうに考えております。
  59. 渡部行雄

    渡部(行)委員 農民が米をたくさんつくって、つくり過ぎたら今度は減反だという生産調整を押しつけられているわけですが、自動車やテレビやそういうものは生産調整を行わないじゃないか。やはりそういう問題で、工業製品で余り多くの問題を出すならば、生産調整の指導が必要ではないか、こういうふうに思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  60. 鈴木孝男

    鈴木説明員 わが国は自由経済というものをたてまえとしておりますので、輸出も重要な経済活動でございまして、これに何らかの形で政府が関与するということは、必要やむを得ない場合は別といたしまして、輸出活動というものについて関与するということは極力はばかるべきじゃなかろうかと思います。むしろ、貿易につきましても拡大均衡という形で、輸出入をバランスのとれたような形で考えるということで、輸出政策につきましても節度ある輸出、こういうような態度につきましては業界各界に要請はしておりますけれども、具体的に生産調整等を考えるような時期ではないのじゃなかろうかと思っております。
  61. 渡部行雄

    渡部(行)委員 通産省の方はもう帰ってください。  外務大臣にお伺いいたしますが、今度、日本の市場開放ということがアメリカから迫られて、大体一番重要なのは、日本の農産物にそれが向けられていると聞いておりますが、食糧というのは申すまでもなく、これは安全保障上欠かすことのできない物資であるわけですから、これはひとつ自分の食いぶちぐらいは自分でつくるということをはっきりと世界に向かって宣言できないでしょうか。その辺についてお伺いします。
  62. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本国民生活上、この食糧をどういうふうに考えていくか、これは農林大臣が鋭意御努力されておるところでございますが、私としても、ある程度の自給率を確保しておく、これはいわゆる総合安全保障見地から必要なことではないか、こういうふうに思います。  したがって、国際的に安いから安い物を買えばいいんだ、単純にそういう考え方にはなり得ない。やはり日本のような狭小の国土の上に一億一千万の人口を養っていく、そういうことから考えますと、ある程度の食糧はやはりみずからの手で確保しておかなければならない、これは基本的な考え方ではないか、このように思います。
  63. 渡部行雄

    渡部(行)委員 ぜひ日本農業を守り、かつ日本人の食べる問題を日本自身がはっきりと保障できるような方向で今後とも御努力いただきたいと思います。  次に、レーガン大統領がこの間七項目にわたる対ソ制裁を発表いたしまして、日本と西側諸国に同調するように呼びかけられましたが、この呼びかけに対して日本はどのような措置をとられるおつもりか、具体的にひとつ御説明を願いたいと思います。
  64. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 日本政府基本的な姿勢は、二回にわたる外相談話で述べたとおりでございます。具体的な措置といたしましては、去る二十三日に官房長官談話という形で一連のポーランドに対する措置及びソ連に対する措置を決めたところでございます。  ポーランドに対する措置は、債権の繰り延べには当面応じないということ、それから新しい信用供与を当面差し控えるということ、それから在京のポーランドの外交官に対する届け出制度に基づく旅行制限を課すということでございます。同時に、これとあわせて五十万ドル相当額の衣料、食品等の経済援助、緊急援助を行っているわけでございます。  ソ連に対する措置といたしましては、科学技術協力委員会の開催を当面見合わせるということ、それから経済、貿易に関する年次協議、これも当面見合わせるということ、それから通商代表部の拡充については当面これを検討しないということでございまして、さらに与国、西側諸国のとる措置を損なわないように配慮する、さらには、国連その他国際機関において西側と協調して行動をとる、こういう一連の措置でございます。
  65. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この制裁ということですが、私は、制裁というのは少なくとも力の強い者が弱い者に対してやる措置じゃないかと思うんですよ。子供がおやじに対して制裁を加えたなんということは聞いたことはないですね。弱い者が強い者に制裁を加えるということは、どういうことなんでしょうか。私はそういう言葉を少し慎んでもらいたいと思うのです。これは非常に相手の神経を逆なでしておりますよ。そして、日本はもっと自国の利益を考えなくちゃならぬのじゃないでしょうか。アメリカの言うとおりにばかり何でもやっていったら、もうこれは独立国じゃないですよ。私は完全な従属国じゃないかと思う。一つも抵抗できない。結局は言うなりになっていく。予算の中身まで文句を言われたり、あるいは議会で日本の内政に関することの決議を上げられたりして、何も言えないじゃないですか。もっと毅然とした態度がとれないでしょうか。私はその辺について非常に疑問があるわけです。しかも、この間アフガニスタンにソ連が侵攻をした際に、やはりアメリカの言うことを聞いて日本は制裁措置としてオリンピックをボイコットしたり、いろいろそのほかやりました。その実効は上がったでしょうか。その辺についてひとつお聞かせ願いたいと思います。これは大臣、重要な問題だから。
  66. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 対ポーランド、対ソ措置について、何かアメリカとの関係で従属国のようだという御批判でございますが、十二月十三日、ポーランドの戒厳令がしかれた以降の経過をごらんいただきますならば、そのような御批判は当たらないと思うのであります。日本日本としての考え、また西欧諸国との連帯、協調の上に立ってやってきておるのでございます。  制裁措置が云々というお話でございましたが、新聞等ではそういう表現を用いておりますけれども日本としてわれわれは公にはそういう表現をせずに、対ソ措置あるいは対ポーランド措置ということを申し上げておるわけでございます。  この今回の措置にいたしましても、西欧諸国との連帯、協調の上にとった措置でございまして、アメリカからどうというものではございません。  それから、アフガニスタンに対する措置実効が上がったかどうかということにつきましては、ソ連側の各種の会合などにおける首脳の所見をいろいろ検討してまいりますと、やはりソ連としてはそれなりの影響を受けておるということが明らかになるわけでございますが、具体的な事例は必要に応じてまた担当の方からお答えをいたさせます。
  67. 渡部行雄

    渡部(行)委員 措置という言葉を使うそうですから、ぜひそういうふうにお願いいたします。  そこで、これをずっと見ていると、制裁措置という形で西側、日本そしてアメリカ、こういうふうにしてソ連に対して締めつけをしていくという姿は、ちょうど戦前の日本に対するABCD包囲網、あの状態を思い起こすのです。非常に似通っているのではないかと私は思うのです。問題は、こういう形で締めつけられると、かつての日本のように追い詰められてばあんと爆発することも考えられるのじゃないか、非常に危険なかけだと思うのです。これはよほど慎重に考えていかないと、日本外交憲法にまで抵触するような方向に発展するおそれがあると私は思うわけです。世界のあらゆる国と仲よくしようというときになぜ日本が直接関係ないのに制裁措置をとらなければならないのか、それではそれによってポーランドの軍政が直るのか、そんなものじゃないのですよ。かえってソ連が頭にきて、ますます東西対立が激化するだけの役割りしか果たせないと思うのです。  しかも、この間ブレジネフ書記長が対米書簡の中でポーランド問題に触れて、ポーランドで起きている事態は米国が口出しできる筋合いのものではない、ソ連はいかなる意味でも関与していないと言っているのです。真相は私は知りませんけれども、一応こういうふうに言っている。こういうふうに言っているのに、そうじゃない、おまえが関与しているのだと言うからには、どういうふうに関与しているのか、それを具体的に証明しないと、これは全くぬれぎぬを着せて制裁を与えていると言われても返す言葉がないのではないだろうか。  その辺の具体的な関与の形跡があれば、それをお聞かせ願いたいと思います。
  68. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 現在のポーランド事態の責任はソ連にあるということは、西側諸国の一致した見解でございまして、わが国も同様の見解をとっております。  その具体的な証拠ということをいま御質問でございましたけれども、ポーランドの共産党とソ連の共産党との間に交換された幾つかの声明、それからいま私が記憶しておりますのは、九月十日に在ポーランドのアリストフというソ連大使がポーランドの党に対して警告を発しておりまして、もしいまの連帯とかそういう労働運動を鎮圧しないと非常に危険な事態になるというおどかしをかけております。さらには、十二月の初めだろうと思いますが、ワルシャワ条約の司会官がポーランドでポーランドの政府、軍当局といろいろ接触したということが伝えられております。  以上は一応の状況証拠でございますが、こういう無数の状況証拠を分析し判断した結果、本件については、ソ連の直接介入とは言わないまでも、ソ連が圧力をかけこういう事態を招いたその責任は逃れられないという判断に到達した次第でございます。
  69. 渡部行雄

    渡部(行)委員 このことはその程度にしまして、いま日本が対ソ連関係において一番重要視しているのは、北方領土の返還じゃないでしょうか。この北方領土の返還を要求するのに、一生懸命ソ連の神経を逆なでして対立を深めていってどうしてこれが返還できますか。やっていることと言っていることがまるきり違うのじゃないでしょうか。仲よくしてから、それはおれのものだから返してくれと言うなら話がわかるけれども、びんたを張っておいてよこせと言ったら相手はますますよこさなくなりますよ。そういう物の道理というものを考えていただきたい。一体これについてはどういう筋道で北方領土返還を考えておられるのか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  70. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 北方四島が不当に占拠され、そこに軍事施設を設けておることは明らかな事実でございます。わが国は終始一貫その不当を非難し、北方領土の返還について繰り返し繰り返し要望をしてきておるところでございます。  そこで、ポーランド問題などに関連して、そういう空気の中で領土返還と言ってもどうかという御趣旨の御批判でございましたが、これは冒頭申し上げましたように、いま日本ソ連との間は、アフガニスタンの問題、北方領土の問題、ポーランドの問題などで非常に困難な状況にございます。しかし、そういう際に日本日本としての所見、立場を明らかにしてソ連に対応していくこと、これは独立国家としての日本の当然の立場だと思うのです。  昨年、国連におきまして、当時の園田外相はグロムイコ外相との間に、事務レベルの協議もしよう、外相会談もしよう、こういうことを申しまして、それをグロムイコ外相も受け入れておるわけであります。そして、ただいまおっしゃったようなむずかしい状況下にはございましたが、一月の二十日、二十一日、事務レベルの協議も行って、そして、そこで両国は腹蔵のない意見交換をいたしております。日本としては領土の返還要求もその場でいたしておるわけでございますが、このように両国がざっくばらんに話しするということによりましてそこに道が開けていくんではないか、かように見ておる次第でございまして、その席上、グロムイコ外相の訪日を要請する、首脳部と相談して返事をするというようなこともあるわけでございますから、一方においてむずかしい情勢がある、だから言うべきこともそういう情勢下ではどうかということでなく、これはもう言うべきことはいかなる場合においても、いかなる機会においてもちゃんと言っておく必要があるのではないかと思います。
  71. 渡部行雄

    渡部(行)委員 この間、朝日新聞の方々がソ連に行ってチーホノフ首相と話し合われた内容が新聞に出ておりました。これによりますと、もう北方領土等問題は日ソ間にはないんだ、議題にならないんだ、こういう一つ前提に立っておるようです。しかも、もっと詳しくその感触を書いたものを見ますと、日本が日米安保条約で軍事同盟を結んでいる限り、絶対に返しはしないんだ。また、そういうソ連に敵対する力を強めながら、北方領土を返せというような虫のよいことは許さない、こういう感じがソ連の方にはあるようでございます。それじゃ、それは絶対に返還しないのか、こういうふうに考えますと、日本が中立国になれば恐らく可能性は開けてくるのではないか。つまり、北方領土は現在の段階では袋小路に入って、二律背反の関係になっている、それは日米安保との板ばさみになっているということでございます。  こういうふうに考えますと、何だか日本は北方領土、北方領土と口で言っているけれども、その行動では、引き寄せるのではなくて、北方領土を向こうに追いやっているような感じがしてならないのです。しかも、日米安保条約は日本を守ってくれる、自民党の言うことが本当ならば、四島がいまソ連に占領されている、不法占拠されておるとしたならば、アメリカが出てきて追っ払ってくれるのが日米安保条約ではないのでしょうか。本当に千島列島の返還を要求できるのは日本社会党だけですよ、私たちはサンフランシスコ条約にも反対し、今日までやってきているのですから。  やっていることと言っていることをもっと近寄せて、一致させろとまでは言いませんから、近寄せて話してくれませんか。お願いします。
  72. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 渡部委員渡部委員のお立場での御所見であると思いますが、いまのお話を承っておっても、ソ連もまた言っておることがずいぶん矛盾があると思うのですね。解決済みとは言っておるが、詳細にずっと点検してみれば、軍事同盟を結んでいる限り返さないと言っておる。それは北方領土が日本のものだということを認めておることにもなるわけでございます。したがって、私どもはそのときそのときの情勢下で言っておるのではなくて、戦争末期におけるソ連の参戦、そして八月十五日以後に四島を占拠したというような事実からその非を責めていく、そのことによって物事がいつかは解決するのではないか。したがって、粘り強く交渉していかなければならない。かつては、アメリカが沖縄を返せばそのときは北方四島を返すよというようなことを言ったと伝えられているときもあるのですね。しかし、沖縄が返っても北方は返ってこないというような事態でございますから、日本の主張は主張として相手国に対して言うのと同時に、また国際世論にも訴えていくということによってこれが解決を目指したい、このように思っております。
  73. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間の関係で先へ進みます。  武器協力について相互武器開発計画が日米間にできていると言われますが、その内容は武器輸出三原則に抵触しないかどうか、また武器輸出、技術協力、共同開発などの憲法上の限界はどこにあるのか、この点についてお答え願います。
  74. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま渡部委員のお尋ねの件が、かつて、昭和三十一年ころに日本アメリカとの間で話し合いがございました日米相互武器開発計画ということでございますれば、当時アメリカ側がNATOの諸国と結んでいた計画、すなわちアメリカとNATOの国がお互いに武器の開発をする、アメリカ側が資金の五〇%を持つという計画がございました。日本側に対しても三十一年ごろそういうことをしようじゃないかという話がございましたけれども、その後、三十七年ころでございますが、アメリカ側がドル防衛の見地からこの相互武器開発計画というのを取り下げております。したがって、現在、日米間に日米相互武器開発計画というのは、私の申し上げたような意味ではございません。  それから憲法との、あるいは武器三原則とのお尋ねでございますが、武器禁輸三原則、それが憲法そのものがそれ自体として直接的に禁じているというふうには解釈しておりませんで、むしろ憲法に基づく平和主義、そのもとで日本政府としては禁輸三原則なり政府統一見解というものがあるというのがわれわれの理解でございます。
  75. 渡部行雄

    渡部(行)委員 次に極東有事研究についてお伺いいたしますが、これは去る一月八日に開かれた第十八回日米安保協議委員会で、極東有事の事態を想定して日米の軍事協力について共同研究が正式に決定されたと申しますが、まず極東の範囲とは一体どこを指すのか、二番目に極東の有事とはどのような状態を言うのか、三番目に有事と判断する者は一体だれなのか、アメリカ側か日本側か、また、この有事の際に、在日米軍基地、施設の使用はもちろん、自衛隊基地も使い、それでも間に合わなければ民間用の港湾、空港も使いたい、武器弾薬、食糧など戦略物資、補給物資を調達したり輸送することへの支援も欲しい、救難活動やサルベージを受け持ったり、船舶運航の統制や通信電波の統制など、全面協力を求めている。また、こうした便宜供与、後方支援活動だけでなく、さらに一歩進めた作戦面での協力、たとえば在日米軍基地防衛の強化や米海軍の増援部隊の海上護衛などの面でも日本に積極的な役割りを引き受けてもらいたい意向を持っていると言われておりますが、その真偽についてお伺いいたします。
  76. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まとめてお答えいたします。  まず最初の極東の範囲についてはどうかということでございますが、これは安保国会以来再三議論されておりまして、一般的な用語として用いられておる極東、これは地理学上正確に限定されたものではございません。ただ、安保条約上の「極東」ということになれば、昭和三十五年に当時の政府の統一見解が出ておりまして、その「極東」というのは、日米両国が平和安全の維持に共通の関心を有している区域であって、かかる区域は大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であることは従来から御答弁申し上げているとおりでございまして、さらに日本及びその周辺地域ということについては、統一見解の中に台湾、韓国ということが出ているわけでございます。  次に、有事の際にだれが認定するかというのが次の御質問かと思いますが、この点につきましては、安保条約に基づくものでございますので、そういう事態が起きつつある、あるいは起きる場合には、日米間で緊密な協議が行われているということでございますので、日米いずれもその認識については共通するということを申し上げたいと思います。  それから、どういう範囲内で協力するかという御質問で、いろいろな例示を挙げられているわけでございますが、一月の二十一日にこの六条に基づく研究協議というものが始まったばかりでございます。したがって、アメリカ側がガイドラインに基づく研究協議で日本に対して何を求めてくるのかということはこれからの課題でございます。したがって、現在の段階で、いま委員が挙げられたようなのが入るのか入らないのかということはこれからアメリカ側の意向というものを聞かなければわからないという状況でございます。  ただ、一つ申し上げておきますのは、このガイドラインの三項に基づく日米の研究、共同というものは、ガイドラインそのものにも書いてございますように、まず憲法あるいは非核三原則、事前協議というものは対象としない。それからそこで研究協議を行っていくのは、安保条約、関連取り決めあるいは法令の範囲内で行う、法令の範囲内で便宜を供与するということでございます。最後に挙げられましたような、日本アメリカ側がこの第三項に基づいて協力する場合に、直接的に軍事的な協力を行うということはないわけでございます。
  77. 渡部行雄

    渡部(行)委員 時間の関係で先に進みます。  最近、日韓経済協力の問題についていろいろ言われておりますが、何か櫻内外務大臣と河本経済企画庁長官の話が食い違っておるようですし、また今日まで日本の海外協力のやり方というものには積み上げ方式と単年度主義という一つの原則があったやに聞いておりますが、今度大臣は一括政治判断で決着をつける、こういうことを言われておるようですが、もしそうなれば、今後ほかの国が五カ年計画や十カ年計画を提示して、そして援助をしろと迫ったときに同じような形で対応するのか。また、そういう一括政治決着ということにいくと、当然これが前例にならざるを得ないと思うわけですが、その辺の問題についてお聞かせ願いたいと思います。
  78. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 政治決着という点ですね、これはそういうふうに報道が行われておりますが、私が申し上げておりますのは、実務者協議が一次、二次と行われて、そして今後外交ルートで詰めていく、しかし最終的には外相会議で日韓経済協力をどうするかということになるんじゃないですかということを申し上げると、外相会議で政治決着、そういうようなとり方をされておりますが、私はそれは適切ではないと思うのです。いまお話があったように、従来、こういう問題については積み上げ方式でいこう、それから日本経済協力基本方針の中でやろう、これは繰り返し申し上げておるところでございます。  なお、一次、二次の協議を通じまして韓国側の考えておる基本的な五カ年計画、またそれに対する日本への協力の要請、これは十一のプロジェクトと商品借款、こういうことが言われておりますが、それらの具体的な内容について、一次、二次を通じて先方の考えをお聞きしておる。なお日本側としてお尋ねしたいところがあるので、この後外交ルートを通じてお話し合いをしましょう、そういうような進め方で参っておるわけでございまして、お話しのような、何か一括どうするというような考え方はございませんし、また、いまのような方針で他の国との間で同趣旨のことが起きれば同じような扱いになっていく、こういうことでございます。
  79. 渡部行雄

    渡部(行)委員 最後に一言、お伺いというよりもこれはぜひやっていただきたいということで申し上げますが、在外公館の問題についてですが、外務省は外務省の定員を昭和六十年度までに五千人体制にする、こういうふうに計画がつくられて進めておられるわけでございますが、この進行状況を見ますと、とても六十年度までにこの計画が満足させられるとはとうてい思われないのです、よほど真剣になってやらないと。私は軍事費の一部削減をしても——日本は外務省が一番大事ですよ。平和を担う外務省として充実していくには、もっともっと思い切って予算をとって、この計画はこれでも小さいくらいですから、そうして満足させるように大臣にお願いいたします。決意のほどをひとつ。
  80. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 まことにありがとうございました。おっしゃるように、外交体制の強化につきましては今後とも一生懸命やっていく考えでございますので、この上とも御支援のほどをお願いいたします。
  81. 渡部行雄

    渡部(行)委員 終わります。
  82. 石井一

    石井委員長 午後二時十五分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時二十七分開議
  83. 石井一

    石井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上原康助君。
  84. 上原康助

    ○上原委員 午前中のお尋ねとも若干重複する面もあるいはあるかと思うのですが、法案並びに本題に入る前に、せっかく外務大臣おいでですので、冒頭外務省、櫻内外交基本について少しお尋ねをさせていただきたいと思います。  御承知のように、目下外交条件というのは山積をしているような感じがいたします。  たとえば、一連の米側の対日防衛増強圧力あるいは通商摩擦による米議会、政府における保護主義的動き、また一方欧州、ECとの関係も貿易問題で大変ぎくしゃくしていることは御承知のとおりであります。さらに、北方領土の問題を初め冷え切った対ソ関係、対ソ外交をどう改善していくかということもきわめて重要な外交課題だと考えます。一方、日中国交回復がなされてから十年の転機を迎えようといたしております。そういう意味でもまた、日中関係は新たな親善友好関係に入ったと見ることもできるかと思います。しかし、経済関係その他をめぐって日中関係も非常に重要な課題があろうかと思います。さらには、韓国への借款問題をめぐる動きも、必ずしも政府部内で意思統一がなされているとは私たち受けとめられません。一方、エネルギー確保の問題、石油資源をめぐっての中東との関係もまた、より積極的な対応が必要かと思うのです。  総じて、いま幾つかの例を申し上げましたが、これらの懸案をどのように解決し改善していかれようとするのか、外務大臣に就任された櫻内さんの前途必ずしも順風満帆でないような感じがいたします。あるマスコミの論評などを見ますと、櫻内外交は個性なき対米追随外交になるのじゃないかという懸念も出されております。こういう国民の不安やあるいは一方の期待に対して、いま私が若干指摘をしました事柄についてどのように対処していかれようとなさるのか、基本についてまずお聞かせをいただいてから、本題に入ってまいりたいと思います。
  85. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本外交の一番大事なことは、わが国の平和と安全を守り、また豊かな国民生活を確保していくことだと思います。そして、世界の平和と安定に積極的に貢献をしていきたい、このように考えますが、ただいま上原委員の言われたまずアメリカ、EC、これらの関係をいかに円滑にしていくか、これは日本外交の中でも大事な要素であろうと思うのであります。  そこで、通商摩擦につきましては、改造内閣後、すなわち私の就任後におきましては、御承知のような非関税障壁あるいは関税の前倒し、いろいろと工夫をしてまいっております。また、経済対策閣僚会議によりまして、日本経済開放体制をいかにして進めていくかというようなことをやっておりまして、対米、対ECは日本外交の中でも重要な分野である、そういう見地からあらゆる面で努力をしておるわけでございます。  それから、北方領土の問題に関しての対ソの関係のお話でございましたが、これは昨年園田前外務大臣のときに、事務レベルの協議あるいは外相会議をやろうじゃないかという提言にグロムイコ外相も応ぜられまして、たしか二年八カ月ぶりぐらいにそういう会議をまず事務レベルで本年の一月二十日、二十一日と持って、その機会に日ソ間の懸案については両国とも腹蔵のないことを話し合ったわけでございまして、それはそれなりの評価があったと思います。  また、中国につきましては、私の就任後の最初国際会議として第二回の日中閣僚会議をいたしまして、中国の目指す近代化について協力を申し上げる、あるいは両国の関心事項につき、国際情勢を初めとしていろいろ論議をいたした、こういうようなことでございます。  韓国につきましても、先般来の懸案がございます。これをどのように処理するかということで、現在、実務者レベル会議をすでに二回催しまして、なお外交ルートを通じて接触をしておるという状況にございます。  エネルギー問題で中東についてのお話がございました。中東関係につきましては、おっしゃるとおりに日本の石油エネルギーの七〇%からの供給を受けておる地域でございますから、この中東地域の包括的な和平を願うことはどこの国よりも日本は積極的であり、強い意思を持っておるわけでございます。ただ、遺憾ながらイラン、イラクの関係あるいはイスラエルのとった措置、そのほかいろいろな問題がございます。そういうことにつきましては、直接にそれぞれの関係国にどうこうというそういう雰囲気にはございませんが、あらゆる機会を通じまして中東和平達成の上にわが国の意見を言い、またそういう動きに対しての支持を与えておるということでございます。  要は、日本外交も百六十数国を相手にしての広範囲のことでございますから、なかなか行き届かない面もあろうかと思いますけれども、日ソの関係あるいは日米の関係、むずかしい問題がある関係国につきましては、逐次二国間の協議がいろんな形で行われて問題の解決の端緒を得るように努めておるような次第でございます。
  86. 上原康助

    ○上原委員 後ほど具体的な問題との関連でまたお尋ねをしますが、そこで、いまの大臣の御答弁とのかかわりであと一、二点お伺いをいたしておきます。  かつては、福田さんが外務大臣をしておられるころは盛んに全方位外交ということを強調いたしておりました。しかしこれも日米を主軸とするという前提はついておったわけですが、必ずしも日米軍事同盟的色彩を前面に打ち出さずに、対ソ関係あるいは対中関係、中東関係についてもより積極的な、言葉をかえて言うと、平和外交を推進していくということが外交の基調だったというような感じがするわけです。  しかし、昨今の国際情勢の変化ということもあることは否定はいたしませんが、最近の日本外交の基調といいますか姿勢を見ておりますと、余りにも日米の、あるいは日米欧といいますか、そういった軍事同盟的色彩というものを前面に出すがゆえに、対ソ関係にしましても、あるいは朝鮮民主主義人民共和国との関係その他の社会主義諸国との関係等においても、または非同盟国との関係もぎくしゃくすることになっていはしないか。これは私たちは大変懸念をするわけですね。  そういう中で、たとえば日米関係にしましても、いま自民党の江崎団長が訪米なさっているわけですが、日米通商摩擦に端を発した米政府及び議会の、さっきも申し上げました保護主義的な傾向あるいは相互主義法案が議会を通過するのじゃないかということが大変濃厚になってきている。貿易摩擦解消では日本側は今後さらに厳しい対応を迫られることは必至だと思うのですね。そういう中で、これからも日本側が農産物の輸入など、残りの輸入制限の緩和とか金融サービスの緩和など新たな措置を迫られつつあると見ていいと思うのですね。これに対して、外交の窓口である外務省は一体どうなさるのですか。  さらに、八三年度国防白書を見ましても、この防衛費の着実な増加努力を評価するということを大変強調いたしております。そして、三月一日からは米下院外交委員会における東アジア小委員会の公聴会も始まろうといたしております。総じて貿易摩擦というものをアメリカのいわゆる軍事的な世界戦略を優位にする一つの手法といいますかテクニックとして考えているとも見られないこともない。外交には、オーバーロードといいますか、過大な課題なりいろいろな注文がつけられるのが一般的だと思うのですね。そういうことを見誤ると、私は、日本の国益という表現は余りどうかと思うのですが、日本国民から見る国益の保障というか、それを守るという立場においては、大変失礼な言い方をすると、失態を招かざる危険なきにしもあらずというような感じもいたすわけですが、これについてはどう対処していかれようとなさるのか、改めて御所見をお伺いしておきたいと思います。
  87. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いろいろな面から懸念されるところをお示しいただきました。私も外務大臣として、通商摩擦、それから続いては農産物の自由化あるいはサービス、金融面の自由化、国防白書で指摘されておるところ、いろいろな問題があるかと思うのでありますが、これらの問題は、要はやはり腹蔵なく話し合うことであろうと思います。日本日本としての意見もあり、希望もある。いまの御指摘は、どちらかというとアメリカの意見、要望というものがクローズアップされておるわけでございますが、だからといって日本がそのことによって何か左右されるというのではなく、日本として聞けるものは聞くが、しかし日本としてそういうことはできないものはできないというように言うのが外交であろうと思うのであります。  私は、就任以来直接米首脳と接触をしておりませんので、この三カ月の間のいろいろな問題をもう一度見まして、そして近い機会にアメリカを訪問いたしますれば、私なりの率直な意見を申したい。いずれにしても、日本は戦後安保体制の中で、外交の中では何といっても基軸をなすのは日米関係だと思うのであります。それだけに先方も意見を言うでありましょうし、また私の方からも意見を言うということで、そこに打開の道を見出していく、それが必要ではないかと思います。
  88. 上原康助

    ○上原委員 歯切れは余りよくありませんが、そうしますと、三月一日からの米下院外交委員会における東アジア小委員会ですか、そこでの公聴会に対しては、日本側としてはこれはもうアメリカ議会でやることですから干渉がましいことはもちろんできないし、控えなければいけないわけですが、これだけいろいろな問題が噴き出している中で日本政府としてどういう対処をしていこうという具体的なお考えは持ち合わせございませんか。
  89. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは現地の大使館があらゆる情報をとっておると思います。現に日本からはつい最近橋本情文局長アメリカに行ってもらいまして、各方面との接触をしてもらいました。また大河原大使は、日本に対して特に意見のある国会議員に個別に会う、あるいは大使館の公使以下を動員してお会いしたり、説明したりしておる次第でございまして、恐らく公聴会が催される折には、そういう努力というものはある程度反映していくのではないか。また、公聴会における意見を陳述する上に必要な方々については、ワシントンの大使館の方でそれぞれあらかじめ説明を申し上げ、理解を求めておると思います。
  90. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、これは特に訓令を出されるとかそういうお考えはないということなんでしょうね。  そこで、あと一、二点ですが、対ソ関係ですが、確かに私も、北方領土を返還しないあるいはなかなか外交テーブルに乗って懸案事項の話し合いができないということに対する懸念は、懸念というか姿勢は、是とするものではございません。かたくなな態度は、やはりソ連側も改めるべきだと思う。しかし要は、日ソ関係というものはやはり友好関係でなければいけないということは、これは外務大臣であろうが、日本政府、外務省全体であろうが、共通すると思うんですね。ただ昨今は、カラスの鳴かない日はあっても対ソ脅威論を吹聴しないということはないですね。北方領土を返さぬからけしからぬ、それはそのとおりかもしれませんが、かつて日米が戦争状態に入ったころは、もうアメリカはけしからぬけしからぬで、鬼畜米英だということを盛んに言っておった。下手すると、どうもああいうムードをつくって、良識的な判断あるいは冷静な判断というものをこれは見誤ってはいかぬと思うのです。これをまた意図的に、外交課題としても、軍事面からも利用をしていこうという動きがあることも否定できません。しかし私は、いろいろな動きがあっても、日本国民全体の良識というものは、やはり対ソ関係はより友好親善関係に持っていって、領土問題を初め早目に平和友好条約を締結をしていくということを期待し、願っていると思うのですね。  そういう面から考えますと、まあ最近、高島前事務次官をソ連大使に任命して新たな外交展開を始めようということのようですが、先ほどお答えもありましたが、グロムイコ外相の訪日等々を含めて、やはりこれだけ冷え切った、ポーランド問題、アフガン問題、いろいろあるにしても、私は対ソ関係というものの改善、友好関係というものを外務大臣なり外務省が日本政府全体として積極的にこの際やるべきだと思うのですね。これについてはどのようなお考えを持っておられるのか、もう少しこの件についてもお考えを聞かしておいていただきたいと思います。
  91. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほども触れましたけれども、二年八カ月ぶりに、事務レベル協議とは言いながらも、柳谷審議官がモスコーへ参りまして、そして日本側の思っていることはもう逐一話をする、ソ連側も、例の領土問題は解決済みから始まっていろいろ見解を述べたようでございます。それは両国にとって大変いい空気であったと思うのであります。  ただ現在ソ連との関係については、残念ながら、一つには北方領土問題という重大な懸案事項が残っておりまして、これを解決して本当の安定的な両国の関係にしたいというわれわれの大きな目標にはソ連はどうもかたくなな態度をとっておる。それからアフガニスタン問題、ポーランド問題等を見ておりますと、この点は御所見が違うかもしれませんが、東西軍事バランスというものが、どうもデタントの機会にソ連軍事力増強をしたのではないか、そういうようなことが背景で相当強気に出たのではないかというような見方もできるような状態、さらには極東におけるSS20、SS4、SS5の配備などを見ますと、やはりこういう情勢は日本としては率直に言えば憂慮をしなければならない情勢にあると思います。  しかし、このような非常に困難な関係にありますけれども、そうであればそうであるだけに、両国の間の対話をする必要性が非常にあると思うのです。したがって、いろいろな悪条件があっても、グロムイコ外相がおいでいただくなら、それはそういう番になっておるのですから、ぜひおいでいただいて大いに話し合いたい。また、多少中長期の展望をするならば、こちらも進んでお話し合いをしたいし、またいろいろ問題がありましても、御承知の北洋漁業のような当面する問題については両国の代表的な話し合いが行われておるということで、対ソ外交も大いに重視してまいりたいと思います。
  92. 上原康助

    ○上原委員 グロムイコ外相の来日の可能性はどうですか。近い将来、近いうちと言いますか……。
  93. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 今度外相会議を開催するとすれば、相互主義でグロムイコ外相の来日を期待しておるわけで、そのことを先般の事務レベル協議で申し上げたところ、首脳と協議をして御返事をする、こういうことでございました。そこでその御返事をお待ちしておるわけでございます。
  94. 上原康助

    ○上原委員 いらっしゃるならいらっしゃいという、そんな消極的態度じゃいかぬと私は思うのですよ。在日ソ連大使も交代をなさる、在ソ日本大使も交代をするという。人間がかわればすぐ話がうまくいくということでもなかろうが、そういうチャンスを有効に生かすのも一つ外交のテクニックじゃないですか。そういうことを注文をつけておきたいと思うのです。  あと一点、この件と関連して、日中関係ですが、多くは触れません。  いま御案内のように、戦争の悲劇というのがこれだけ人間を不幸にするのかということを非常にわれわれは感ずるわけですね。連日報道されております中国残留日本人孤児、と言ってももう四十代、五十歳前後になられる方々ですが、あの場面を見ると、かつての日本軍国主義のつめ跡というものを忘れちゃならないと私は思うのですね、戦争の悲劇ということを。  そのことはきょうは別といたしまして、こういう方々に対して、厚生大臣がこの間オリンピック青少年会館ですが、行って激励をしておられることが報道されておりますが、私はやはり、外務省なり日本政府全体としてこの問題にもっと熱意を示されてもいいのじゃなかろうかという感じを率直に持つわけです。そういう面で、これは要望でもあるのですが、政府全体としてこの問題を早期に解決していく、また、そういった肉親にお会いしたいという方々に対してあらゆる便宜供与をいろいろな面で図っていくということは、人道上からも政治的にも、また日中友好親善促進の面からも必要な課題だと私は思うのですが、この件について外務大臣の特段の御努力を要望すると同時に、どういうお考えを持っているか、一言お聞かせをいただきたいと思います。
  95. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 上原委員の、現に残留されておる邦人、一般的に孤児と申しておりますが、これらの方々の肉親を何とかしてお探ししてあげたい、この点の熱意は、私も上原委員と同様でございます。  昨年の第二回の日中閣僚会議の折にも、肉親探しのことについて私から谷牧副首相、黄華外相そのほかの閣僚の皆さんを前にして好意を謝し、今後もよろしく御高配をお願いしたい旨を申し上げておる次第でございまして、こういう戦争の結果お気の毒な状況にあられる方に対し、熱意を持って臨んでいくということは申すまでもございません。
  96. 上原康助

    ○上原委員 ぜひひとつ特段の御努力を要望しておきたいと思います。  後ほどまた、いま御答弁いただいたことと若干関連する面もありますから具体的な面でお尋ねしますが、次に、法案についてまず二、三点だけ聞いておきたいと思います。  例年、この在外公館名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部改正というのが出されているわけですが、今回はアルバニアに日本国大使館を新設する。これはユーゴ大使館との兼館のようですが、なぜ開設をしなければいけないのか。さらに、アンカレジの日本国領事館を総領事館に格上げといいますか昇格をさせる。これも、アンカレジがわが方との航空ルートその他の面で重要な位置を占めているということは理解をいたしますが、その必要性があったのかどうか。まずこの二点。  さらに、既設の在外公館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の改定、給与の改定というものがどの程度なされようとするのか。そういう面について、もう少し御説明をいただきたいと思います。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席
  97. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  アルバニアの大使館設置でございますが、従来アルバニアとわが国との関係は、戦後しばらくの間関係が希薄でございまして、人的交流も少なかったということで現実的な必要性も感じられなかったということがございましたために、延び延びになっておりました。両国間の実際の外交関係設定に関します話し合いというのはすでに昭和四十八年ごろから始まっていたわけでございますけれども、それも断続的に行われていたわけでございますが、近年バルカンの一角にありまして独立の路線を標榜しているアルバニアという国もやはり、実館ではなくとも外交関係を設定しておくことがわが国外交の幅を広げるゆえんであろうということもございまして、幸い昨年の三月でございますか、双方で外交関係設定についての合意ができましたので、今般大使館を設置しようということで、この法律に盛り込みまして御審議をお願いしているわけでございます。  それから、アンカレジの領事館、これを総領事館に昇格するわけでございますが、これは私から申し上げるまでもなく、先生もおっしゃいましたが、アラスカ州には在留邦人、日系人合わせまして約千二百人ほどおりますし、その大半がアンカレジ市及びその周辺に居住しております。また、資源的に申しましても、アラスカ州は、漁業とか林業とかあるいはわが国との貿易というものを通じましてきわめて緊密な関係にございますし、また、水産加工でございますとかパルプ、それから天然ガス関係におきますわが国の企業の進出も三十五を数えている。年々、年とともにこのように緊密化してまいっております。それに伴いまして領事館の取扱事務というものが質量ともに拡大しているということでございますので、ここにひとつ、総領事館に昇格をしてアラスカ州地方におけるわが国外交というものを強化しようということで、総領事館昇格もこの法律でお願いしているわけでございます。  第三番目に、この在勤俸の今回の改定でございますけれども、先生も御承知のように、前回も、この五十六年度におきまして法律基準額を改定いたしたわけでございます。しかし、その後、御承知のように世界経済がかなり変動をいたしております。二つの要素でございますけれども、消費者物価がインフレということで変動いたしておりますし、それから為替相場も変動している。そういうことから、実質生計費指数というもの、これも変動せざるを得ないわけでございます。この実質生計費指数というものを在勤俸額を算定する上での一つの基準としているわけでございますが、この実質生計費指数の変動を顧みましたところ、やはりこの際、五十七年度におきましてもほとんど全公館につきまして増額することが必要であるという結論に達しましたので、財政当局とも折衝いたしました結果、この法律に盛り込んであるような改定額、基準額をお願いしているわけでございます。全公館平均で大体七・六%の増額改定となっております。  以上でございます。
  98. 上原康助

    ○上原委員 大使館を設置する、総領事館に格上げをするということ、これに伴う人員の増加はどうなっているのですか。  それともう一点は、平均で七・六%ですか、実質生計費指数で算定をしたと。もちろんそれはいろいろ理由もあるでしょうし、また、在外公館に勤務をする方々の生活の面というものも外交官らしく見なければいけないということは当然でしょうが、どうも一説によると大変上厚下薄になっておるという点。いろいろ物価指数とか理屈は立てておっても、円高の場合はかえってまた有利になる面もあろうと思うのです。そういうことなどがどう勘案をされているのか。上げればよいという話でもないでしょうし、人をふやせばよいという話でもないでしょうし、これだけ改定をするからには、外地勤務も御苦労ではあろうが、情報収集なり日本外交関係全般についての十分な使命もまた果してもらわなければいかぬと思うのです。こういう点は、一体本省としてはどのように行政指導というか訓令をしておられるのか。給与改定とか待遇だけよくして、あとはその現地で大変高慢な態度をとっているとか好ましくない外交姿勢をとっているというようなことがあるとすれば、やはり慎まなければいけないと思うのですね。こういう点についてはどのようにお考えで、どうしようとするのか、もう少し説明をいただきたいと思います。
  99. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 在勤俸改定と同時に人員の点ではどうであるかということでございますが、アルバニア大使館につきましては兼館を予定しておりますので、特にアルバニア大使館のために人員を増加しているということはございません。  それからアンカレジの総領事館でございますが、アンカレジの総領事館には総領事一名の増ということになります。  それから三番目に、平均して七・六%の増額になっておるが、上げればいいというものではなかろうというお話もあったわけでございます。  確かに、生計費指数というものは為替変動と消費者物価の変動とのかみ合わせでございますので、当該地におきます消費者物価が上がりましても、円相場が強くなれば、これはまたそこの地域における在勤俸を増額する必要はないわけでございます。そういう点を勘案いたしまして一定の方式がございまして、すべてそれらの要素を勘案した上で計算したものがこの法律基準額になっているわけでございまして、今度の改定に際しましては、為替につきましては昭和五十六年後半、すなわち六月−十一月の米ドルの対円為替相場の平均値、つまり一ドル二百二十九円というものを基準にとりまして、これで在勤基本手当の支給額を算定しております。しかし、御案内のように、二百二十九円と申しますと、この相場は、円の対ドル相場からしてみればすでに現在はもう下落しておるものでございますから、その点において増額の効果というものがそれだけ減殺されているということも申されるわけでございます。  それから、いろいろ在外の勤務地における大使館員の行動あるいは館員の活動ぶりについての御批判があるわけでございますけれども、私どもそれは謙虚に受け入れて、ますます自粛自戒して外交実施体制の強化及び外交の実施に努めなければならないと思うわけでございます。  事実、この数年、外務省といたしましては、外交実施体制を強化しなければいかぬということで、特に情報収集機能というものは外交の生命でございますので、そういう点を強化しようということで、職員の訓練、研修の制度、この研修の制度の中にも、赴任前に研修をすることによりまして当該国での特殊語学を勉強させるとか、あるいは人員の適正配置を考えるとか、あるいは機械化による能率の向上を図るとか、あるいは在勤期間を延長することによって情報源の開拓ないしは情報源を開拓した後における情報源との接触、連絡の期間を長くするということを図っているわけでございます。  また、これに伴いまして、やはり何と申しましても、在勤期間を長くいたしますと、職員の勤務条件、現在、在外公館の半分以上が瘴癘地にあるということを勘案しまして、不健康地における職員の勤務条件の改善ということにも力を入れております。今後とも外交実施体制の強化につきましては、数々の御批判を御批判として受けとめながら、また関係方面の御協力も得て、ますます強化することに力を尽くしたいと思っております。
  100. 上原康助

    ○上原委員 上厚下薄じゃないかということについてはお答えありませんでしたが、そこいらも、細かいことは省きますが、よく御配慮をいただきたいということです。  最近、外務大臣の本会議における所信表明でも、わざわざ外交官、外務職員をもっとふやすように特段の御尽力をなんて言って、ちょっとオーバーなコメントもあったのですが、やはり必要に応じてふやすのはやむを得ないと私は思うのです。だが、昨今の行財政改革とかいろんなことを言われている中で、防衛を聖域化する、あるいは外務省をまた特別扱いするということはいささかどうかと思うのです。  一週間か十日くらい前のある新聞のコラムでしたが、たとえばオーストラリアの大使館なんかは人が少ない。自民党の派閥関係をあさることから、社会党とか政治関係を全部一人で足を運んでやる。政治も経済も労働も、いわゆる人間関係含めてばたばた働いている。それに対して日本大使館の職員というのは、いやおれは自民党担当だ、おれは社会党、野党だ、おれは通商だ、おれは農林だということで縄張りで、非常に高度成長をしているのは本当にうらやましいという皮肉っぽいコラムがあったのです。ちょっと興味があったので取り上げてあったんだが、どこに隠れたかわからなかったのできょうは持ってきませんでしたが、それに反して日本外交官の情報収集能力というのは、国際レベルでABCをつけるとCくらいだという皮肉なコラムがあったことを指摘をしておきたいわけです。  みんながみんなそうとは言いませんけれども、しかしそういった厳しい国際的な見方、同じ外交官としての見方もあるし、国民の目から見ても特権階級的な存在であってはいけないと思いますので、こういうことについては、ひとつこの法案に対しての締めとして外務大臣の所見をちょっと伺っておきたいと思います。
  101. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外交官の姿勢は、言うまでもなく対外的にも、また対内的にも注視の的でございます。外交官としての任務を完遂する上に誠心誠意努めていかなければならないことは言うまでもないことでございまして、自分は何省の出身だからどうとかというようなそういう姿勢をとったり批判を受けたりすることのないように私は努めてまいりたいと思います。
  102. 上原康助

    ○上原委員 次に進みたいと思うのですが、次もこの法案との関連が幾分あるわけですが、国際協力についてちょっとお尋ねをしてみたいと思うのです。  最近、日本経済力が非常によくなった、あるいはそういう意味でも発展途上国や国際社会に対しての国際協力というものをもっと充実をすべきだという意見が内外に高まっていることは、もう申し上げるまでもありません。  そこで、全般については触れませんけれども、この国際協力事業団の主たる任務といいますか、どういうようなことを主にやっておるのか、また、その前提でしょうが、これからの国際協力関係というものを政府としてどう充実を図ろうとしておるのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  103. 柳健一

    ○柳政府委員 お答え申し上げます。  国際協力事業団は外務大臣の監督下にございます特殊法人でございまして、開発途上にある海外の諸国ないし地域に対します技術協力の実施というのが主な任務になっております。  この技術協力の実施と申しますと、海外からの技術研修員の受け入れ、あるいは本邦から海外への専門家の派遣、さらには、海外の発展途上国の中にたとえば職業訓練センターというようなものを設けまして、そこへ機材も運び込みまして現地で研修員の技術訓練をする、そしてまたそのカウンターパートを受け入れるというふうなプロジェクトというのでございますが、そういうものを中心といたしまして技術協力の実施というのが中心の仕事になっておりまして、それ以外に、無償の資金協力の促進の業務だとか、あるいはいわゆるボランティアの意思を持つ青年が海外で国際協力活動をする、この青年海外協力隊の活動を促進する業務を扱っております。またさらに、開発途上地域等の社会の開発または農林業、鉱工業の開発に協力するという見地から、これらの開発のためにわが国の民間の企業が協力される場合に、それが当該国の発展、開発に役立つようなものについては資金の供与も行っております。それから最後に、中南米地域に対します移住者の支援活動を中心とした仕事というものをやっております。以上が国際協力事業団の業務でございます。  それから御質問の第二のポイントにつきましては、私どもといたしましては、国際協力の仕事はわが国にとって大変大事な仕事だと思っておりまして、先生御案内のように昨年一月にわが国政府開発援助の倍増という計画を決めまして、そのためにいま一層国際協力の業務の拡充というものに努力を払っている段階でございます。
  104. 上原康助

    ○上原委員 この事業団の業務計画といいますか業務の内容を見ても、いま大体お答えがあったとおりですが、要するに簡単に言うと、発展途上国なりに対する技術援助あるいは人づくりのために日本側が協力をしていく、こういうことでしょうね。それはやはり大事なことですので、力を入れていただきたいわけです。  そこで、若干具体的にお尋ねをさせていただきたいのですが、重点事項の中で海外技術協力事業の拡充ということがあります。研修員の受け入れ人数を五十七年度百六十六名ふやして、三千四百五十名が三千六百十六名になっていく。第三国研修の拡充、実施件数六件から十件。これは主にどういう諸国からの研修受け入れかということをちょっと明らかにしていただきたい。また、どういうことを目的に何をマスターしたいために来られるのか、そういう点、ちょっとお聞かせいただけたらと思うのです。  さらに、専門家の派遣というのはわが方からでしょうね、派遣人員十名増ということで、千八十名から千九十九名になっている。研究協力の充実強化。こういういろいろなことが述べられております。  さらに、わが国からそれぞれ発展途上国なりいろいろな国に進出をしていっている企業があるわけですが、一体この事業団とそれとの関係もあるのかないのか、そこも少しお聞かせをいただきたい。  そして、ASEANの人づくりプロジェクトの推進ということが言われておりまして、これは新規事業として出されております。このASEANの人づくりセンターというものは、ASEAN五カ国にそれぞれの人づくりセンターをわが国の資金協力で設置というか立地をさせていくということかと思うのですね。これはもちろん相手国の御意向、自主性というのを最大限に尊重しなければいけないことは当然でしょうが、目下のところどういう方向話し合いが進んで、いつごろまでにめどが立つのか、ここいらのことについてもう少し明らかにしていただきたいと思います。
  105. 柳健一

    ○柳政府委員 順番にお答え申し上げます。  最初に、技術協力の研修員の受け入れの分野でございますが、これは農業、運輸、郵政、行政、建設、水産、重工業と、ありとあらゆる分野にわたっておりまして、それを世界じゅう、大ざっぱに申し上げまして百十カ国ぐらいから受け入れております。受け入れますと、事業団自体は、ごく一部持っておりますが、研修自体を施せませんので、研修をほとんど政府関係機関とかあるいは民間の機関にお願いいたしまして受け入れていただいております。  地域別にどういうことになっているか、御参考までに申し上げますと、昭和五十五年度で大体アジアから五七・三%、中南米から二〇・七%、中近東から十二・八%、アフリカから七・五%、こういうようなシェアで受け入れております。  それから、専門家の派遣につきましても、分野に関する限りは大体同じようなことでございます。それから、地域別に見ますと、専門家の派遣はアジアが約六二%になっておりまして、中南米も一九%、中近東一〇%。大体受け入れも派遣もアジアに五割から六割の間行っておりまして、それから中南米に約二割ぐらいざっと考えていただければ、大体の見当で当たっていると思います。  それから、ASEANの人づくりセンターの件でございますが、これは先生御案内のように、昨年一月に総理がASEANを訪問されましたときに、いわゆるASEAN人づくりプロジェクトという構想を明らかにされまして、この構想はASEAN諸国経済社会開発を促進するために、いわば御指摘のとおりの人づくりを推進するということのためにASEANの各国一つずつセンターをつくるということが決まったわけでございます。と同時に、これとの関連で、沖縄にもASEAN人づくりのためのセンターを設置することが明らかにされたわけでございます。  現在、ASEAN各国に関するセンターの内容をどうするかにつきましては、すでに五カ国及び日本を入れたいわば多数国集まっての会合を終わりまして、現在は二カ国間で打ち合わせをやっておる最中でございます。それから、沖縄に設置されますセンターの方は、国際協力事業団の附属機関といたしまして設置する。その主要なる業務は、ASEAN向けの研修と、それからASEANとの人的交流あるいはASEAN各国に設置されますこの五つのセンターの、私どもはバックアップサービスと呼んでおりますが、支援業務あるいはリエゾンといいますか連絡をするということになっております。  それから、国際協力事業団が海外で行っております技術協力、人づくりの事業というのは、基本的に政府政府の約束に基づいてやっております政府ベースの事業でございますので、直接的には日本の企業とは関係ございません。ただ、先ほど申し上げましたように、国際協力事業団でやっております開発投融資事業は日本の企業を支援するという事業になっております。
  106. 上原康助

    ○上原委員 私が聞かないことまでもお答えしてくれたのですが、そうしますと、ASEAN五カ国につくるというのは二国間で協議を進めておって、まだ設置されていない。見通しはどうなんですか、それぞれの各国とのお見通しは。
  107. 柳健一

    ○柳政府委員 ASEANにつくるセンターにつきまして、たとえばタイでは、はだしの医者と俗に言うのでございますが、プライマリー・ヘルス・ケアの分野で協力する、それからフィリピンではたしか農業関係中心とした、または職訓を中心とした人づくりをやる、マレーシアでもたしか人づくりをやる、シンガポールでは視聴覚を中心とした協力をするというふうに、大体の方角は決まっておりまして、いまこれから具体的に調査団を出しまして中身を詰めるという段階まで来ております。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  108. 上原康助

    ○上原委員 沖縄のセンターについてはもう少し後で詳しく聞きます。  あと一点。新東京国際研究センター、これは仮称となっておりますが、あのセンターはたしか東京にもいまもあるのでしょう。これは充実強化だと聞いたのですが、なぜ新東京国際研究センターとして新たにというか、建設をしなければいけなくなったのか、ここいらももう少し明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  109. 柳健一

    ○柳政府委員 先ほど申し上げました国際協力事業団による海外からの研修員の受け入れでございますが、いま年間大体三千四、五百人になっております。先ほど先生の予算の中の御指摘にもございますように、毎年どんどんふえておりまして、実は、受け入れ機関の都合上この研修員の受け入れ総数の約六割くらいは都心部でどうしても受け入れなければならない。これは受け入れ機関側が全く都心部に集中しておりますので、そういうことがございます。現在、私どもは東京及び地方に七つのこういう主として研修員の宿泊施設として使われますセンターを持っております。その中で一つ、東京が約二百七十人くらいのTIC、東京センターを持っておりますが、とうていこれでは賄い切れなくなりましたので、今度五百人収容できる新しいセンターをつくることにいたしたわけでございます。
  110. 上原康助

    ○上原委員 それは来られる方々といいますか、その意向もあるいはあろうかと思うのですが、いまお答えありましたように、余り都心部に集中化するというのもどうかと思うのですね。やはり地方に、分散というと語弊があるかもしれませんが、そういった受け入れ施設をつくって、そのローカルの文化なり地域との関係を密にしていくというのも一つの国際交流の方法だと思うのです。何も私は沖縄にこれがつくられるからその点を指摘しているわけではないので、これは外務大臣にもちょっと聞きたいわけですが、もうすでにお答えがありましたが、当初沖縄に設置をされる国際センターというのは、単なるリエゾンオフィス的性格のものでない、沖縄を国際交流の拠点にしていくので国際センターをつくるのだ、こういうのが前中山総務長官なりあるいはまた政府の打ち上げ方だったわけですね。それがだんだん後退をして、東京の方にメーンオフィスをもっと強化をしていく。これはある面ではわからぬわけじゃないですね。しかし、リエゾンオフィス的性格というのは、私は英語はよくわかりませんけれども、要するに現場事務所とか出先機関ということでしょう。出張所みたいなものでしょう。ちょっと羽根をつけたか毛をつけたかということじゃないでしょうかね。これは非常に誤解を招いている面があるわけですね。  あれだけ大々的に、総理がASEANを訪問なさって沖縄に一大国際センターをつくるのだと言いながら、具体化をしてくる段階ではだんだんせせこましくなってきている。そこで、はだしのお医者さんも必要でしょう、いろいろなことが必要でしょうが、ひがみ根性かもしらぬが、どうも沖縄も何か亜熱帯疫病地域くらいに考えているのじゃないかという感じさえしないわけではないのですね。  この医療の問題を見ますと、水質・寄生虫、衛生虫、臨床検査・病理・感染症というような医療施設をつくっていく。もちろん農林水産業ではサトウキビの品種改良とか栽培、サトウキビ害虫防除、ウリミバエ、ミカンコミバエ等、これは重要な研究部門であり、やらなければいかぬという面ではASEANとの共通性というのはありますけれども、感じとしては、何か大変変な言い方をすると、未開発地域にちょこっとした出張所でもつくっておけやというような感じでは、これはいかないと思うのですね。  ですから、この沖縄国際センターというのは、一体どう位置づけて、どういう性格、どういう規模でこれからやっていこうとするのか。ここで細かいことは後の質問もありますから省きますが、皆さんがお出しになった資料でもいろいろ出ているわけですが、これは五十七年度予算政府原案ですかね、国際センター基本設計計画が三億五千万、用地借料が一千六百万程度を出されている。しかも、この注意書きを見ますと、「本「国際センター」構想案は、現在政府部内で検討されている試案であり、今後最終案を固める段階で変更があり得る。」変更する場合、これより大きくはなっても、小さくなったらこれはおかしい話になりますね。さらに二としては、「本センターは、沖縄県浦添市前田地区に設置される予定である。同地区は沖縄県県庁所在地の那覇市より約十キロメートル北にあり、近くには琉球大学があり、環境も静かで、本センターの用地として応しい場所である。」こういうふうになっているわけですね。  これは場所としてはすでに県なり市当局との合意でそうなっているからいまさら変更できないと思うし、去年でしたか、総理が行った場合も儀式までやっているわけだから、どうなんですか、これは沖縄の二次振計とも関係をしますが、こういうものについては単なるリエゾンオフィス的なものではなくして、もう少し本格的に、ASEAN諸国あるいはその他の東南アジア全体との国際交流の拠点に将来持っていく、外務省の単なる国際事業団の一事業ということではなくして。大臣、あなたは沖縄処分の一番の、功労者ではない有名な人なんだから。七一年の十一月十七日を覚えていらっしゃるかね。そういう面でももう少しお考えになったらと思うのですが、いかがでしょう。まず局長の御答弁をいただいて、大臣の御見解も聞いておきたいと思うのです。
  111. 柳健一

    ○柳政府委員 お答え申し上げます。  沖縄に設置を予定しております国際センターは、国際協力事業団の附属機関としてと先ほど申し上げましたが、その主要な業務は、先ほども申し上げましたようにASEAN諸国向けの研修事業を行うということ、それからASEANとの人的交流を行うということ、これが非常に重要な主たる仕事になっているわけでございます。  そのほかに、ASEAN各国に設置されるセンターに対するバックアップサービスもするし連絡もやる。連絡といっても単なる事務的な連絡ではございませんで、これからちょっと申し上げますけれども、そういうわけで、沖縄に設置される国際センターは、まさにわが国とASEANとの国際協力、交流の場としてつくるという構想に基づいております。  実は、国際協力事業団は、先ほど申し上げましたように、七つぐらいのセンターを持っておりますが、一、二の例外を除きましてほとんど研修貝の住居だけに使っているわけでございますが、このセンターについては、約百ベッドぐらいの規模でございますが、研修員の住居のみならず、コンピューター、視聴覚等を中心といたしました、センターそのものが研修を行えるような施設にしたい、こういうふうに考えておりまして、その意味では、私どもの事業団が持っておりますほかのセンターとちょっと違った独特のユニークなものでございます。  それから、構想がだんだん当初のものから後退してしまっているのではないかというお話でございますが、一例で申し上げますと、今度つくる沖縄の国際センターは、一部屋当たりの面積が、東京幡ケ谷に予定しておりますセンターの大体二倍の広さ、それからすでに筑波につくっておりますものでも一・六倍の広さ、こういうふうにいたしまして、先ほど申し上げましたとおり、コンピューター研修室、ビデオスタジオあるいは研究協力用の研究室とか、できれば国際会議室等、そういうふうなものもつくって、私どもの持っております国際協力事業団のセンターの中でも特にスケールの大きい、しっかりとした内容のものにしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  112. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま御説明があったとおり、既存の他の施設と比較して相当大規模であると思うのであります。敷地は約三万三千平米、施設本体の延べ面積は約八千平米、用地の地形、景観及び沖縄の気候、風土等を考慮した設計を考えておりますので、建設完成の暁には、本センターはわが国の国際交流の一つの拠点としてふさわしいものであることが期待されておる、こういうことでございます。
  113. 上原康助

    ○上原委員 そんな文に書いたのだけ読んで、あなたのその答弁は全然血が通っていないじゃないですか。  まあ国際交流の拠点にする施設になるという大臣の答弁ですから、一応期待をしたいわけですが、ぜひこれは単なる、何とかつくらなければいかないから沖縄へ持っていっておけやということではなくして、先ほど来申し上げておりますような経緯があり、期待があるわけですからね、大臣。そういうことはよく御理解の上で、規模がこれ以上縮小されるとか、あるいは距離的な面で隔絶な位置にある、それはメリット、デメリットがあるわけですから、やはり沖縄に行くよりは本土のどこかのセンターへ行きたいとか東京へ来たい、これはまた来る方も人情だと思うのです。そういうふうになってしまってはいかぬ。その点は十分メリットを生かしながら、そういった目標を達成していくという方向で持っていっていただきたいということを強く要望申し上げます。  それで、これはいつごろ完成するのですか。そのときまでどのくらいの予算が必要なのか、この点をあわせてお聞かせをいただきたいと思います。
  114. 柳健一

    ○柳政府委員 お答えいたします。  完成時期は昭和五十九年度完成をめどにしておりますので、昭和六十年度より使えるようになると思います。  それから予算につきましては、実は本年度、調査と概念設計のために一千万円の予算が計上されておりまして、来年度は実施設計及び予定地の造成、くい打ちのために三億五千万が計上されておりまして御審議いただいておるわけでございます。そこで、全体の建設費でございますが、来年度つまり五十七年度に予算をお認めいただいた上で行われます実施設計を行いました結果最終的にでき上がるということで、ただいまはまだはっきりしておりません。
  115. 上原康助

    ○上原委員 いつごろ完成なのですか。
  116. 柳健一

    ○柳政府委員 完成の時期は五十九年度末完成でございます。
  117. 上原康助

    ○上原委員 先ほど申し上げましたように、ぜひ関係市を初め県民の要望に沿えるようなセンターにしていただくことを重ねて要望申し上げておきたいと思います。  次は、航空交通管制業務についてお尋ねをしてみたいわけですが、これも沖縄返還のときとも関係をいたしますが、その具体的な事例に入る前に、日本全体の航空交通管制は果たして安全が確保されているだろうか、最近の日航の人為的な事故などもあって、改めて飛行機といいますか航空交通に対しての関心が持たれているわけです。たしか七一年でしたか、雫石事件などもあって大変ショッキングなことがあったわけですが、その後もニアミスの問題とか、いろいろな面で航空交通の点についてはたびたび問題が提起をされております。  現在、そういう意味日本全体の空域にどのくらいのいわゆる制限空域といいますか、米軍あるいは自衛隊のそういった訓練空域、制限空域、民間の飛行機が通過できないそういう面があるのか、まず御説明をいただきたいと思います。
  118. 武田昭

    ○武田説明員 お答え申し上げます。  現在、全国で自衛隊の訓練試験空域ということで設定されております個所は二十三カ所ございます。それから沖縄の関連で、米軍の演習の区域ということで十六カ所設定をされております。以上でございます。
  119. 上原康助

    ○上原委員 それだけですか。自衛隊の二十三カ所と沖縄の米軍関係で十六カ所、これだけですか。
  120. 武田昭

    ○武田説明員 設定をされましてAIP等で明らかにされております個所数としては、以上でございます。
  121. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、本土の空域には米軍の訓練空域というのはないのですか。
  122. 武田昭

    ○武田説明員 数字を申し上げますと、米軍の演習場としては全国で二十五カ所。この中に先ほど申し上げましたウォーニングエリアの十六カ所が含まれております。それから防衛庁の演習場といなしまして三十二カ所がございます。訓練空域といたしましては、先ほど申し上げました二十三カ所でございます。
  123. 上原康助

    ○上原委員 それでは、訓練空域と制限空域の違いはどうなっているのですか。二十三カ所は何ですか。三十二カ所は何ですか。もう一遍はっきりさせてください。  それと、米軍の二十三カ所と十六カ所だけですかと言ったら、いままた、米軍の全国で二十五カ所ある、そのうちの十六カ所が沖縄だ。すると、九カ所は一般論で言うと本土関係だということでしょう。いわゆるレンジエリアというのとウォーニングエリアというのとどう区別されているのか。
  124. 武田昭

    ○武田説明員 米軍の二十五カ所の演習場区域、これはレンジエリア、ウォーニングエリア両方でございますが、空域が制限されておるということにおきましては同様でございます。
  125. 上原康助

    ○上原委員 制限されているということでは同じだ。そうしますと、レンジエリアが六カ所あるということですね。沖縄関係はウォーニングエリアになっているわけでしょう。どうなんですか。運輸省そのくらい知らぬのですか。
  126. 武田昭

    ○武田説明員 沖縄周辺の十六カ所のうちウォーニングエリアということで設定されておりますものが十五カ所で、レンジが一カ所でございます。
  127. 上原康助

    ○上原委員 あなたの答弁はますます要領を得ない。それではこっちから具体的に聞きましょう。  そこで、ちょっとこれは外務省かもしれませんが、お尋ねしたいのですが、一般的に米国では、ウォーニングエリアというのは公海上を含めての上空を言っているような感じがするわけです。レンジエリアは陸上に設定されるのが区別されているような感じがするわけですが、なぜ本土の空域がレンジエリアで沖縄だけがウォーニングエリアとなったのか。この違い。また、このウォーニングエリアを設けるに至った経緯というものを明らかにしていただきたいと思います。
  128. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 上原委員のせっかくの御質問でございますけれども、私ちょっと承知しておりません。恐らくその間の経緯について、関係省庁がここに来ておりますので、もし答えられれば答えていただきたいと思います。
  129. 岩見秀男

    ○岩見説明員 私どもといたしましても、ウォーニングエリア、レンジエリアの区別につきましては承知いたしておりません。
  130. 上原康助

    ○上原委員 外務省も答えられない、防衛庁も承知いたしておりません。あるわけでしょう、そういうエリアというのが。どこで決めたの。もしいま答弁がはっきりしないなら、きょうはぼくはこれ保留しますよ。それと運輸省は、私がこの質問をすると言っても、どういうわけか、どんな質問をしますかとも全く来ないんだよ。(「関係ないからだ」と呼ぶ者あり)関係あるんだ、大いに関係ありますよ。それと、これは沖縄国会でも大変問題になった事項なんですよ、淺尾さん。あのころ、いまアメリカ大使をしている大河原さんは、背の高いだけが取り柄の答弁をしたのですがね。  一つお尋ねしますが、昭和二十七年六月に交わした日米合同委員会での合意事項というのはどうなっているのか。もう一つは、昭和三十四年の六月あたりにもこの日米の航空交通管制についての取り決めがあると思うのです。さらに沖縄返還のときにも、四十七年の五月十五日に日米合同委員会で沖縄航空交通管制に関する合意というのがある。この一連の関係で、要するにウォーニングエリアというのがどういう法的根拠を持って、どういうふうに取り決められたのか。あのときも運輸省と外務省の見解は非常に食い違っておった。これは私がお尋ねした四十九年の四月二十六日の会議録をお読みになればわかります。こういう重要な問題について、さらにその後追加されたのもあるわけでしょう、制限空域あるいは訓練空域というものが。それを外務省もわかりません、防衛施設庁もそんなことわかりませんでは話にならぬじゃないですか。そういう制限空域が入り組んでいるがゆえに航空管制官やパイロットの皆さんにどれだけストレスなり危険感を与えているかということを皆さんはおわかりでしょう。お答えいただきたいと思います。
  131. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いまお尋ねの件、歴史的にどれがウォーニングエリアでどれがレンジエリアになったのかということについては、実は私たちきょうここでお尋ねが出ましたので詳細に承知していないわけでございまして、これは、われわれ外務省として知り得る限りのことを調査して、いずれ御返事したいと思います。  それから、いま御引用になりました合同委員会の合意につきましても、確かに上原委員指摘のように、昭和二十七年六月、それから三十四年六月の合意がございます。さらにそれを受けまして一番新しい合意として、沖縄返還に伴って五月十五日に沖縄における航空交通の管制についての合同委員会の合意ができております。いま私、手元に持っておりますのは、その最後の航空交通管制についての合意の内容でございます。  その内容についてもし説明させていただければ、あるいは上原委員はよく御承知かと思いますけれども、沖縄の返還に伴って、今度は航空管制を一体どこがしようかということから恐らくこの合同委員会の合意というものができたのが背景だろうと思います。  御承知のとおり、那覇空港の付近には、近接して嘉手納と普天間という飛行場がございます。そこでその三飛行場の関係の航空交通というものが非常に複雑しているということで、まず第一点としては、那覇空港の進入管制業務を他の二つの飛行場すなわち嘉手納と普天間とに分離して行えるかどうかということを検討しまして、その結果、航空交通の安全を確保して付近の空港を有効に利用するためには、三つの飛行場の進入管制業務を一元的に実施せざるを得ないということが、この日米間で協議の結果合意に到達いたしまして、それを盛ったのが五月十五日の合同委員会のメモでございます。日本側において一元的に進入管制業務を実施するまでの暫定期間、嘉手納進入管制所がこれらの三つの飛行場の進入管制業務を引き続いて行うということで現在に至っております。したがって、那覇空港の進入管制業務もアメリカ側がいま行っているというような現状でございます。
  132. 上原康助

    ○上原委員 いまさっき私が申し上げた点について、防衛庁、運輸省、外務省のはっきりしたお答えを後ほど……。きょうはぼくは持ち時間ありますが、これは留保します。  そこで、いまあなたくどくどおっしゃいましたが、これは確かに、いまお答えあった点はそのとおりなんだ。しかしそれには前提があるのです。航空交通管制業務というのは、航空路管制業務、進入管制業務及び飛行場管制業務、この三つを総称したのが航空交通管制業務なんだ。三位一体でなければならない。進入管制という首根っこを依然としてアメリカに押さえられておる。だからそれをどうするかということについては、要員なり施設なり、レーダーサイト施設がないからできないと言っている。運輸省は当初、五カ年くらいあればできると言った。その後どうなったの。それを次のときまでにはっきりさせていただきたい。  さらに、ウォーニングエリアの実際さえわからぬと言うが、そういうのはちゃんと航空路図にはあるじゃないですか。防衛庁、ばかなことをおっしゃるなよ。もう答弁はいいです。その後、モービルエイトとか、それからスコープヒートとか、そういうのも新たに設けられているわけでしょう、SR71、E3Aの空中給油をする。そういうのが一体日米間でどういう取り交わしをして設けられているのか、それについて次まではっきりした答弁ができるように準備をしていただきたいと思います。  残余の質問は留保しておきます。
  133. 石井一

    石井委員長 次に、小沢貞孝君。
  134. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 私は、櫻内外相が就任されて、北方領土問題について先ほど二、三質問がありましたが、それ以外に質問があったとは存じていませんので、主として北方領土問題について外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、櫻内外務大臣は北方領土問題にどのようにこれから取り組んでいこうとするか、抱負といいますか、経綸といいますか、その基本的な考え方をお尋ねしたいわけであります。  先ほど来、渡部、上原議員の答弁の中でも、言うべきことはいかなる場合においても言うとか、それからまた昨年は、幹事長時代にポリャンスキーに会ったときに、自民党三役、なかなか言うべきことを言った、なるほどと私たちも喝采をしたことがあるわけです。ただ、いまの答弁を聞いておると、グロムイコさんが来日されることを期待するという程度のことで、そういうことだけをやっておったのでは過去三十何年間運動してきたこととかわりばえがない結果になって、百年河清を待つがごとき状態になるのではなかろうか。新外務大臣、決意を新たにして新しい方法なり何らかの打開策を考えなければならないのではなかろうか。そういうことについて、これは質問の通告になかったわけですが、抱負経綸がありますればどうぞ御答弁をいただきたい、こう思います。
  135. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 北方領土問題が日ソ間における最大の懸案である、これが解決、領土返還については国民の悲願であるということは、皆様とともに強い認識を持っておるわけでございます。しかるところ、戦後すでに三十七年目を迎えてもなお解決の糸口を見出すことができない、こういうようなことで昨年、二月七日を北方領土の日と設定いたしまして、新たに国民世論を喚起する。また同時に広く国際世論にも訴えよう、こういうことで昨年の国連総会においては、当時の園田外相の演説の中でこの点も触れていただいておるわけでございます。  ソ連は、この問題はすでに解決済みであるということで、最近では終始そのような姿勢をとっておりますが、申し上げるまでもなく、領土問題の解決がないからこそ日ソ間の平和条約の締結がされておらないのでありますから、ソ連解決済みと言うことは当を得ないと思うのであります。また、日ソ国交回復の折の交渉の経緯、また一九七三年の田中・ブレジネフ会談当時の経緯を見ますならば、明らかにこの問題が両国間の最大の懸案として残っておる。特に七三年の田中・ブレジネフ会談に際しましては、引き続きこれらの問題を含めての未解決の問題を交渉して、そして平和条約の締結をしようではないか、こういうように意思の一致を見ておったと思うのであります。したがって、今度グロムイコ外相の訪日があって外相会談が持たれるといたしますならば、私としては一番先にこの問題を取り上げて、ソ連がどのような対応をするか、何としても領土問題を解決したい、返還を求めたい、こういうことで終始一貫した行動をとっておる次第でございます。
  136. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 経過やその他いままでずっと外務省がやってこられたことを継続しようというような程度にしか聞こえませんが、またその基本問題についてはおいおいお尋ねする中で外務大臣の御答弁をいただけばいいと思いますが、先ほど来問題になっております、いまも発言がありましたが、グロムイコ外務大臣が来たら一番先にこの問題を取り上げてやろうと、こうおっしゃっておるわけです。昨年の園田・グロムイコ会談、ことしの一月二十日、二十一日ですか、事務レベルの折衝の結果、来る見通しは本当にあるのでしょうか。率直に言って、何か魚でも生けすに入ってくるのを待っているみたいにじっと待っていても、これは果たして見込みがあるかどうか、どうなんでしょう。そしてまた、一回の事務レベル交渉をしただけで、さらに続いて第二回の事務レベル交渉が持たれるのか持たれないのか、その辺の見通しをお聞かせいただきたいと思うのです。
  137. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 まず、次回の事務レベル協議につきましては、双方に都合のよい時期に東京で行うという合意はできております。
  138. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それはいつごろですか。
  139. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 一回目から二回目に二年八カ月を経過したということもございますので、いまからいつということはちょっと申し上げかねる状況にございます。
  140. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 先ほど来渡部、上原議員の質問にもお答えしておって、グロムイコに来てもらうことを期待する、そして来たらばどうしよう、こういう外務大臣の御答弁があったわけですが、いま事務当局のお話だと、まだ二回目がこれから東京で行われよう、こういうことなんですから、一体外務大臣が来るのか来ないのかというのも私たちから見ればかいもく見当のつかない話ではなかろうか、こう思うのですが、その辺の見通しをさらに、事務当局でも結構です。
  141. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 今回のグロムイコ外相の訪日提案というのは、柳谷審議官がグロムイコ外相と会ったときにその旨を言っておって、外相が首脳の方と相談をすると答えたものでございますから、相談の結果は必ず返事があるものと思うのですね。したがって、ただ間接的に来るようだとかどうだとかいうのではないので、責任あるわが方の事務当局の高級の立場にある方が外相に直接申してのそれに対する返答でありますから、これは何らかの反応があるべきものと私は期待をしておる、こういうことです。
  142. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 反応があるべきものと期待をしておられる、その期待どおりにいくかどうか私はまだ疑わしいわけですが、大分確信がありそうなので、さらに一歩進めてお尋ねをします。  第五回まで相互で、一九七八年が園田外相訪ソで第五回平和条約の交渉、こういうことのままとぎれているわけですが、今度何年ぶりかでいま外相の言うようにグロムイコ外務大臣が来るとするならば、当然これは一回、二回、三回、四回、五回と続いている平和条約交渉の延長線上にある、言うならば第六回平和条約交渉、こういう意義を持ってくるものとわれわれは理解してよいでしょうか。
  143. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 御説のとおり、次回の平和条約交渉ということでございます。
  144. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 そのように明確ですと、グロムイコが来ること、そのことは領土問題が議題であり、平和条約の交渉が議題だ、こういうふうに理解していいわけですね。
  145. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 両国外相間の話し合いには、当然そのときにおける国際情勢、それから領土問題以外の二国間関係、その他幅広い議題が含まれると思います。しかし、二国間の中で最大の問題は当然領土問題であり、かつ、それを解決した上でつくるべき平和条約交渉ということでございますから、当然ほかの問題とあわせて平和条約交渉が行われる、かように御認識願って結構でございます。
  146. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それでは了解いたしました。私は、第六回の平和条約交渉がグロムイコ来日によって行われる、こういうように理解をしてよろしゅうございますね。  それでは続いて、若干さかのぼったことについての質問ですが、まずヤルタ協定、こういうものについてまだどうも私はよくわからぬわけです。  いまソ連が例のクリール・アイランズ、北方四島はわが方のものですから、クリール・アイランズを占領しているのは、一体これは戦争でいきなり侵略したという形で占領しているのか、ヤルタ協定というものを真に受けて占領をしているのか。国際法上いかなる条約もソ連をしてクリール・アイランズを占領してよろしい、領有してよろしい、こういうものはないのではないかと私は思うのです。そういうことになると、ソ連がいまクリール・アイランズを占拠しているゆえんのものは、いきなり戦争で侵略した、こういう形のままいっているのか、あるいは彼らはヤルタ協定なるものを真に受けて、それをよりどころとしてこれを占領しているのでしょうか。その辺を、相手はソ連のことだからわからないと言えばそれまでなんですが、外務省はどう理解しておりましょうか。
  147. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ただいま先生が御指摘になりましたとおり、ソ連側の主張はまず戦争の結果ということが主であり、いろいろわが方の反論に対して法律論的なものを余り整理されないままに幾つか出しております。その中で、ヤルタ協定ということは常時引用しております。
  148. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 日本政府は今日までヤルタ協定なるものについて、これは無効だとか、これは価値がないとか、これはどうだとかいう発言を、戦後、あるいはサンフランシスコ講和条約締結後でもいいですが、政府としての見解を出したことがあるのでしょうか。わが方に関係ないから無視しているという状態のままでしょうか。
  149. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 御案内のとおり、ヤルタ協定は、戦争中の米、英、ソの首脳が共通目標を書いた文書でございまして、わが国を拘束するものではないし、いわんや領土移転について法的効果を持つものではございません。そのような見解は国際的には特別に申しておりませんけれども、累次の国会答弁において日本政府立場として繰り返し申し上げてきたとおりでございます。
  150. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 米国はこれを批准は当然してない。英国も批准をしてない。だからこれはもう完全なやみ協定、そういうことで理解していいわけですね。英国も批准をしてないわけでしょう。
  151. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 いま先生御質問の中で言及されましたとおり、アメリカもイギリスも別に批准というような措置をとっておるものではございません。アメリカもイギリスも、ヤルタ協定が、ただいま欧亜局長の方から御答弁申し上げましたとおりに、領土の処分につきまして最終的な法律的効果を与えたものではないということは、従来からそういう見解を申しております。
  152. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 私がいま質問しようということを積極的にお答えいただいたのだが、アメリカは、これは領土問題について何のかかわり合いもないものである、こういうコメントを二回、三回にわたって出しているわけです。これはアメリカ一国だけです。英国はこういうことについて何か言っておりますか。
  153. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、アメリカは、ヤルタ協定は領土の移転について何ら法律的効果を持つものではないという見解を表明しております。イギリスについては、日本側から二回にわたって意見を打診したことがございます。その内容はイギリス政府の要望もございまして現在公開することができませんけれども、イギリス政府の見解もわが方の立場を否定するものではないということは申し上げて差し支えないと考えます。
  154. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それはどういう意味ですか、イギリスが言っておるのは。やはり領土問題について何ら関係がない、こういうふうにアメリカと同様のことを言っているわけですか。私はまだ寡聞にしてイギリスの公式の態度を聞いたことがないわけです。
  155. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 御指摘のとおりでございます。領土移転について法律的な効果を持つものではない、そういうアメリカの見解を否定するものではない、こういう趣旨の英国政府の見解でございます。
  156. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それはいつ幾日、どういう公式の場で、どういうような形で発表されていますか。われわれいまだかつて聞いたこともないわけです。
  157. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私が先ほど申し上げたことは必ずしも十分でなかったかもわかりませんが、私が申し上げましたことは、イギリスが何月何日にこういう公式な見解を明らかにしておるということではございませんで、国際法的に申し上げまして、法律的な領土の処分、戦争の後におきます領土の最終的な帰属決定というものは当然のことながら平和条約というものにおいて行われなければならないということは、先生御承知のとおり、これは国際法的に確立していることでございます。アメリカもイギリスもそういう国際法のルールというものについては十分承知をしておって、そういう立場をとっておるということを申し上げておることでございまして、何月何日に千島あるいは樺太の帰属の問題についてヤルタ協定との関連でどうこうということをイギリス政府が公式に述べたということは、私は承知しておりません。
  158. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 私は、何でこんなことにこだわるかというと、ヤルタ協定の当事者であるアメリカは、明確に二回、三回にわたって見解を述べているわけです。イギリスから同じような見解をのべてもらうことは国際世論形成の上から大変いいではないか、こういうように考えるわけです。  昨年、われわれ国会代表も北方領土の問題で英国へ行って、リドリー外務担当国務大臣、カーショウ下院外交委員長に会いましたが、アメリカと同じように、ヤルタ協定なるものは領土について何の拘束もしないやみ協定だ、こういう意味のことを公式に発表してもらうことは国際世論形成上大変有効ではないか、こういうように考えるわけです。改めていまからでもいいからそういう公式見解を英国から発表してもらう、こういうことは大変大切なことではないか、こう思うのです。どうでしょう。
  159. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 昨年夏、小沢先生がイギリスを訪問されたときのお話は詳しく伺っておりますが、その当時英側要人の説明は、私の記憶に間違いがなければ、ヤルタ協定は過去のものである、しかし将来の交渉の問題を考えたいというような発言があったように承知しております。私ども英国とのいろいろなレベルでの接触で、英国政府の今日の立場日本政府のこの領土問題に対する立場を支持するものである、かように了解しております。
  160. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 われわれの交渉したときに、いまおっしゃったとおり、どうぞ将来に向かって交渉を進めてくれ、ヤルタ協定についての経過はよく知らなかったので調べてみたいし、他の議員とも話し合ってみたい、また政府にもよく伝えてみたい、カーショウ外交委員長はそういうことです。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕 ただ私たちは、国際世論形成の上から、ソ連がいかに不法なことをしているかということを改めて国際世論に訴える上からも、英国の態度というものを明確に表明してもらうことの方が返還運動にはるかにベターではないか。英国もなかなかやりたくないだろうけれども、やはりそれは国際的に、法律的に無効なものだから、無効なものなら無効だということを明確に言うくらいのことはできるはずだ、こう思うのです。どうでしょう。
  161. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 領土問題の解決は、第一義的にかつ最終的に日ソ両国間の問題でございます。しかしながら、この問題を少しでも有利に解決するためには、国際世論の支持が必要であることは御指摘のとおりでございます。  このような観点から、日本政府といたしましては、国連その他の場を通じて日本の領土要求に対する国際的な理解と支持を求めるために各種の工作、それから宣伝、啓発活動を行っていることは、これもまた先生の御承知のとおりでございます。イギリスもそういう国際世論の重要な一翼という形で私どもは考えておりますし、今後とも進められる日欧あるいは日英のいろいろな対話を通じて繰り返しわが方の立場を説明し、あわせて英国及び西ヨーロッパの諸国からの支持と理解を仰いでいきたい、かように考えております。
  162. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 いま言われた、基本的に日ソ両国間の問題である、こういう立場は私はどうもおかしいのではないか、こう思いますので、後でお尋ねをしますが、これは大臣、また機会を見て、米国と同じように英国も、あのヤルタ協定は無効、無効というか領土問題については何の関係もないと、やはり英国も同じようなコメントを出してもらうことは国際世論形成の上から私は大変有効ではないかと思いますので、大臣にこの点は要望をして、さらに事務的なお尋ねをしたいと思うわけです。  四島はわが国のものですからそれは別として、日本がサンフランシスコ講和条約で放棄したというクリール・アイランズ及び南樺太は、相手方を定めずに放棄したわけで、放棄した地域がいずれの国の領域となるかは全然確定をされておらない。  アメリカの公式な見解によれば、外務省のパンフレットによれば、一九五六年九月七日「日ソ交渉に対する米国覚書」「日本によって放棄された領土の主権帰属を決定しておらず、この問題は、サン・フランシスコ会議米国代表が述べたとおり、同条約とは別個の国際的解決手段に付せられるべきものとして残されている。」こうあるわけです。一九五二年サンフランシスコ講和条約発効以降、この問題でどこかで国際会議、どこかで何らかの話し合い、こういうことが行われた経過がありますか。放置したままですか。
  163. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 いま御質問のような国際会議、その他の国際的な話し合いが行われたということは、私ども承知しておりません。
  164. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 私たちが放棄したところだからこれは関係がないし、発言権がない、こういうようには理解するわけですが、いま実力行使でソ連が占領してしまっているままの状態でもうすでに三十何年でしょうか、サンフランシスコ講和条約からは三十年余ですね。このままの状態がずっと続いていくならば、国際法上、私はそういうことがあるかどうかは知らぬが、時効みたいなことになってきて、後から言ったってもうそれはだめだぞ、ソ連のものだぞ、こういうことになる可能性はないか。ソ連実効支配がもう三十何年も続いている。だれも何も言わないでそのまま見ている。時効的なことでそのままソ連の領土になってしまう可能性はないか。これは法律的なことです。
  165. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 法律的な根拠なくして取得した領土が時効によって合法的なものになるかどうかということについては、国際法学者の間で必ずしも定説と申しますか一致した意見があるわけではございません。一般的に申し上げますと、時効によって合法的な領有権が成立するという学者もおりますし、そうでない、国際法の面では時効というものは成り立たないんだ、時効によって領土取得が合法化されるということはないんだという説を唱える学者もございます。どちらかといえば時効という概念が国際法でもあるんだという学説をとる者の方が多数説かとは思いますが、いま申し上げましたようなことで、一致した定説というものはございません。  したがいまして、ただいま先生の御質問でございますが、千島、樺太につきましてそういう時効の理論が働いてソ連の領有権が確立するかどうかということにつきましては、私としまして確たる、こうであるという意見を申し上げることはできません。
  166. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 よくわかりました。そういうことになると、学者間で多数意見の方は、むしろ時効的なことでソ連の占有権ですか、ソ連の領土になってしまうという可能性の方が多いみたいに聞こえますが、まだこれは学者間で意見が分かれているところだ。  そういうことになれば、つい最近、最近というのはおかしいのですが、前までわが国の領土であります。これをそういう危険があるにもかかわらず放置しておいてよいだろうか、日本も何らかのアクションを起こして、この帰属については明確にしろという国際的なアクション、あるいはアメリカに働きかけるのか、手続は私はよくわかりませんが、何らかのアクションを起こして、はっきりソ連にやるべきものならやってしまう、そういうようにした方がソ連も喜ぶかもしれぬ。あるいは国連の信託統治みたいにした方がいいかもしれぬ。いずれにしても、これはやはりかつて日本の領土であったから、現状のまま放置しておいていいだろうか、私はこういう疑問を持つわけです。これはどうでしょう。  大体こういう国際会議は、アメリカの代表が千九百五十何年だかに発言した以外にどこにもないわけですが、一体だれがイニシアチブをとってこの国際会議なり帰属の問題について打ち合わせるのでしょうか。
  167. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  先ほど先生も御質問の中でおっしゃられましたとおりに、政府が従来から申し上げておりますことは、サンフランシスコ条約二条(C)項によりまして、日本としては、千島列島、それから南樺太、これにつきましては、連合国に対してこれを放棄したということでございますので、確かにそれまでは日本の領土でございましたが、平和条約によりまして一たん放棄いたしました地域の最終的な帰属につきまして日本としてはあれこれ言うべき立場にない。これは二条(C)項にとどまりませんで、ほかの一方的に連合国に対して放棄いたしました地域についてすべて一貫して政府がとってきておる立場でございまして、これについて最終的な帰属を日本政府が云々すべき立場にないということは、従来から繰り返し申し上げているところでございまして、先生も十分御承知のところでございます。  全く理論的な問題といたしまして、それじゃどういう国がイニシアチブをとるべきかということになりますれば、これはやはり連合国の方が帰属の最終的な決定を行うという法律的な責任を持っておるわけでございますから、連合国の方が決めるべきことであろうというふうに、これは純粋な法律論として申し上げる次第でございます。
  168. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 大臣、どうでしょうかね。先ほどのイギリスにも明確にコメントを発表させる問題。それから、事務当局から言えば、放棄したこのクリール・アイランズなるものについてわが日本は別に発言権もないし、放棄したのだからそれまでだ、こういうことだと私は思うのですが、日本の置かれた立場や政治的ないろいろを考慮するならば、日本が何らかのアクションを起こすということが必要ではないか、私はこう感ずるわけです。これは大臣、どうでしょうね。
  169. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 サンフランシスコ平和条約で権利、権原を放棄した千島列島また南樺太に対して、いま日本が何か主張する立場にあるかないか、これはもうないということが明白でございますが、そのことについては小沢委員からいろいろと御示唆に富んだ御発言があるわけでありますけれども、北方四島の不当性を責め、北方四島の返還を強く迫るという立場、この立場からいたしますと、ヤルタ協定が何らの法的根拠なしという、その根拠にあるわけでございますから、そういう方の攻め方をしておるときに、一方において権利、権原を放棄したものに日本が何かのアクションを起こすということは、本来の四島の主張を強く言っていく上に、私は、そのアクションを起こさない方が四島に対しての日本の強い意思表示をするのにいいんではないか、こういうような私の私見がございます。
  170. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 私は後からだんだん申し上げますが、むしろそういうアクションを積極的に起こした方がいいんではないか、こういうふうにも考えるわけで、それは対ソ交渉あるいは国際的な会議等の場において日本発言権がより大きくなる、こう考えるわけです。まただんだん質問する中で、それもお尋ねしたいと思います。  次は、この日ソ間の問題という立場から見るならば、国際司法裁判所にどうして提訴をしないのか。これは前々から私は主張しておるわけですが、特段のやれない理由があるのですか。
  171. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 国際司法裁判所に提訴して裁判所の法律的な判断を求めるためには、残念ながら裁判所で裁判所の判断を仰ぐということについてのソ連の同意が必要なことは、先生よく御承知のとおりでございます。もちろん手続的には、一方的に提訴するということも裁判所の規定上排除されておりません。しかしながら、一方的に提訴いたしましても、裁判所がそれを受け付けるためにはソ連の同意というものがあくまでも必要でございまして、強制的に、ソ連の同意なくして裁判所が本件を審理するというわけにはまいらないわけでございます。  ソ連につきましては、領土問題は存在しないという立場をとっておりますことからも明らかなように、従来から本件につきまして裁判所で黒白を決するということにつきまして全くその同意をするということはございませんので、したがいまして、遺憾ながらわが国といたしましては、国際司法裁判所に提訴するということは現実の問題としては考えられない、こういうことでございます。
  172. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 事務当局の答弁はまさにそのとおりで、いままでもたびたび聞いているとおりです。ただ、これだけの紛争の問題を、国際司法裁判所に訴えようじゃないかということを——先ほどのあの英国の態度と同じですわ。向こうは受けてきっこないからやらないんだやらないんだ、こう言っていないで、日本は公式にそういう態度を決めて、そうして持ち込んでいく。ソ連が受けなければ、ソ連は大変な国だな、ひどいじゃないか、こういうこともまた国際世論を盛り上げたり国内世論を盛り上げることになるんじゃないか、こう思うのです。どうしても受けっこないんだ、それだから持っていかないんだ、こういう態度は、返還運動をする立場からは余りにも事務的過ぎることじゃなかろうか、それが一点です。  いま一点は、一方的にできるんでしょう。向こうが強制管轄権の受諾宣言を出してあろうとなかろうと、やろうと思えば一方的にできるわけでしょう。どうでしょう。
  173. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 後段の方の御質問についてお答え申し上げますれば、先ほど申し上げましたように、手続的には確かに一方的な提訴というものは可能でございます。可能でございますけれども、その結果、裁判所が北方領土問題を取り上げるためにはソ連の同意がどうしても必要であるということ、これは先生よく御承知のとおりでございまして、したがいまして、提訴をいたしましても、そこで現実の問題としては行き詰まってしまうであろう、こういうことで、政府としては従来から一方的提訴ということは、実際の領土問題を解決する方法としては適当ではなかろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  174. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 われわれ運動をやっていて、どうして外務省は国際司法裁判所に訴えないのだろうか、そういう運動を一生懸命でやっている人が盛んにそう言うわけですよ。というのは、いま事務当局が言っているように、事務的にいかぬからだめだ、これは私は、運動を進める上の運動論としては、たとえそれが受け付けられなくても、一方的に提訴するということは一つの運動になるんではないか、国際世論や国内世論を盛り上げる運動の手段になるんではないか、こう言っているわけです。私は、事務的なことはもうわかっていますから。そういうことをやることが国際世論、国内世論を盛り上げる。運動論で私は言っているわけです。どうぞ、後でまたそれは御答弁をいただきたいと思います。  それとは別個に、サンフランシスコ講和条約第二十二条によって、国際司法裁判所に提訴をする道が開かれているわけです。この二十二条、サンフランシスコ講和条約にはソ連は参加しておりませんから、提訴をしたものについてソ連はいいの悪いのと言う権限は当然ないわけです。したがって、私が提訴をしなければならないと言う理由は、大体北方四島は日本の領土であるぞ、固有のものであるということを認めてくれている国は、先ほど来るる言っているようにアメリカ一国しかないわけです。四十七カ国の参加国のうち、アメリカは明確に、北方四島は日本の固有の領土である、こういうように言ってくれているから。われわれが放棄したクリール・アイランズというのは千島もあるいは北方四島までみんな入っているんではなかろうかと思うような国がいっぱいいたんでは、これはわれわれの運動は熱が入らぬし、大丈夫かなという疑問を持ってしまう。だから、その解釈を明確にするためには、サンフランシスコ講和条約第二十二条によって、条文に疑義がある、中身に疑義がある、そのときには国際司法裁判所に訴えて、そこの判決に全部の国が従え、こうなっているはずです。だから、私たちの運動にきちっとした理論的な根拠を与えるためには、サンフランシスコ講和条約で北方四島は日本か放棄したものではないという結論を明確に下してもらった方が、私は大変運動に有利ではないか、こう思います。  というのは、国内でも二島返還論があってみたり、全千島返還論があってみたり、いろいろ出てくるから、やはりサンフランシスコ講和条約は四島は放棄したものではない、放棄したのは得撫以北のクリール・アイランズだけだ、こういう結論をサンフランシスコ講和条約二十二条で出してもらえば、これはソ連に対しても相当な影響を与えるでしょうし、国際世論に対しての影響もいいであろうし、国内世論をさらに盛り上げるゆえんにもなる、こう思うのです。どうでしょう。
  175. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 サンフランシスコ条約の二十二条によりまして、平和条約の解釈につきまして当事国間で紛争がありましたときには国際司法裁判所に行くということを義務づける規定があるということは、先生御指摘のとおりでございます。  ただ、ただいま申し上げましたように、この規定はあくまでも条約の解釈または実施に関する紛争が生じた場合ということでございまして、北方領土の問題につきまして考えますると、二条(C)項で放棄いたしました千島の範囲につきまして、日本とその他の連合国との間でこの解釈につきまして紛争があるという事態では必ずしもないんではないかということだろうと思います。もちろん、先生おっしゃいますように、連合国の中には、アメリカのように非常にはっきりと、日本が放棄した千島の中には四島は入っていないという立場を明確に明らかにしておる国もございますれば、千島の範囲につきまして必ずしも明確にこれを理解していないという国もそれはあるということも事実でございますが、現実日本とそういう連合国との間に紛争があるということではございませんので、この二十二条に基づきまして国際司法裁判所で二条(C)項の解釈を決めてもらうというような問題ではないんではなかろうか。  他方、これは法律問題ではございませんが、連合国の間で、先ほど私が申し上げましたように、二条(C)項の範囲について必ずしも正確に理解してないという国もあって、そういう国に正しく日本立場あるいは条約上の正しい解釈というものを理解してもらうということは、これは必要だろうと思いますので、これにつきましては、別途いろいろな努力政府としては行っておる、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  176. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 紛争というのはどういう状態であるか、私にはしかとわからぬわけです。よくわからぬわけです。いまおっしゃるように、サンフランシスコ講和条約の参加国の中には、北方領土を含めて全部放棄したものだというような理解をしている国もあるんだ、こういうような御発言があったわけですから、そういうことになれば、いよいよもって、わが国の放棄したものは得撫以北のクリール・アイランズだけだという統一解釈をぜひしてもらわなければならない積極的な理由があるんではないか。その統一した解釈がきちっとできないで、どういう理由で一体日本ソ連に向かって、領土を返せ返せ、こういうことが言えるんでしょうかね。ただアメリカがあのときに言っただけ、それだけを根拠にして、ソ連に向かって領土を返せ返せ、こう言っている。大体、われわれが放棄したというのは、全千島を全部放棄したのか。北方四島だけは放棄してないんだという連合国の統一解釈が背景になくして、ソ連に向かって言う理論的根拠がないじゃないですか。  たとえばヤルタ協定、全然無効なものですが、ソ連としてはあのヤルタ協定を金科玉条として、北方四島を含めて全部放棄したものだ、こういうつもりであるいは理解で占拠しているかもしれません。だから私は、政治的にはどうしてもこれが必要だと思うのです。そのためには、いわゆる事務的には、紛争ということはどういう状態か。紛争というのは、やろうと思えば技術的に幾らでも私はできるんじゃないか。ある国によっては、全部放棄したものだと思っている国と大いに論争することも一つの紛争でしょうし、私は技術的にできると思う。こういう基本的なことがなされずして、ただ感情的にソ連に返せ返せと、こう騒いでいる。どうでしょうかね、これは。  最初に事務的に、紛争をどうやったらつくり出せるか。こんなのは技術的には私は簡単ではないかと思うのです。     〔愛野委員長代理退席、委員長着席〕
  177. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 先ほど条約局長から説明いたしましたとおり、サンフランシスコ条約二十二条につきましては、その当事国、つまりソ連を除くサンフランシスコ条約参加国とわが国との間に、同条約の解釈をめぐって明示的な見解の相違があるということはございません。したがって、この二十二条を援用してサンフランシスコ条約の他の当事国を相手取って提訴するということは、技術的にもきわめて困難ではないかと思っております。むしろわが国としていたすべきことは、北方四島がサンフランシスコ条約に言われる千島列島には含まれないということ、そしてこれらの領土が法的にも歴史的にも日本固有の領土であるというわが国立場を国際的に理解してもらう、そういう活動ではないかと思います。  先ほどの御説明の繰り返しになりますが、国連総会の一般演説の場あるいはその他の日本外務省の広報活動を通じまして日本立場は広く世界世論に訴えておりますし、こういう努力は今後も続けていきたい。こういうことをすることが領土問題の解決をいま一歩現実の問題としてわれわれに近づけるゆえんではないか、かように考えておる次第でございます。
  178. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 一国一国理解を求める、私それでも結構だと思うのです。確信が持てればそれでいいのです。一国一国理解を求めて、四十七カ国全部とはいかなくとも、北方四島は放棄したものでないという各国公式の解釈をちゃんと日本に対して出してくれるなら、私はそれはそれでいいと思うのです。そういうことを本当に外務省はいままでやってきているわけですか。
  179. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 先ほど御指摘のありましたイギリスを初め関係国に対しては従来からやってきておりますし、また、現在もそういう努力を続けております。
  180. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 まあ、やっていない証拠に、たびたび私は持ち出すのだけれども、北方四島のサンフランシスコ講和条約参加国がどちらの領土として表現してあるのか、こういうのを見れば、調査のできないところもあるが、いかなる国も、一つの国も、日本の主張どおりに表現をしてない。こういうところを見ただけでも、各国理解を求めているとは私は毛頭考えられない。サンフランシスコ講和条約参加国の北方領土表現については、昨年の七月、私に公式に文書で答弁をしていただきましたが、その中で一カ国も四島が日本の領土であるという表現を完全にしてある国はない。こういう実態では、いま外務省の言うように一国一国説得をして公式に日本の領土であるというようにちゃんと約束を取りつける、何かコメントをいただく、こういうことをしますと言っても、私はとうてい当てにできないわけです。  いま出されている法案は、外交官が少なくて困るとか、そういうことはよく同情するけれども、しかし三十何年間たって、いまどきになって私からこういう質問をされなければならないということは、いまの皆さんじゃなくて前任者か昔の外務大臣か知らないけれども、余りにも情けない状態ではないのか。半年、一年ばかりたつのだけれども、その後あれかね、講和条約参加国から地図を直しますというのが出てきましたか。わかっていたら知らしてください。
  181. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 御指摘の地図の改訂でございますが、私どもからは繰り返し関係国に訂正方を申し入れております。最近までの実情で、まだその地図が直ったという現物は見ておりませんが、わが方の主張を受け入れて地図の改訂に応ずるという形の肯定的な回答を寄せている国が幾つかございます。  たとえばブラジル、これはブラジルの国土地理院でございます。それからギリシャ、それからイギリスのパーネル・ブック社、ジョージ・フィリップ・アンド・サン社、ジョン・バーソロミュー・アンド・サン社、それからアメリカのジン・アンド・カンパニー社、ハジトン・ミフリン社、アリン・アンド・べーコン社、それからエジプトの教育省、イタリアのフラテリ・ファブリ・エディトリ社、イタリアはサンフランシスコ条約の当事国ではございませんが……。そのほか、ニュージーランドのリード・エデュケーション社、それからこれもサンフランシスコ条約の締約国ではございませんが、スウェーデンのエセテ・カルトル・AB社、こういう地図出版社から、日本側の要望を酌み入れて次の機会には改訂したいというような前向きの回答を得ております。
  182. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 昨年から見れば、いま読み上げた二、三カ国の中の一部——これは一部です。一部の地図については、これから訂正肯定的な回答を得たようでありますが、まだ圧倒的には参加国の地図というものはみんな日本領になっていなくて、ソ連領になっているという表現が多いわけです。こういう現実から言えば、先ほどお答えをいただいたように、四島は放棄したものでない、固有の領土だということを各国にちゃんと何らかの公の文書なり何なりで理解を取りつけておくようなことをしなければ、私たちの返還運動というものはソ連に対してもきちっとした返還要求運動になっていかないのじゃないか、こう思うわけです。  私もそういうことに対して大変素人ですが、これはどういう人ですかね、法政大学教授杉山茂雄という人が「国際法からみた北方領土」こういう論文の中に、「条約当事国間で解釈が分かれたときには、何らかの方法でその紛争を解決する必要に迫られる。対日平和条約の場合、この条約の解釈又は実施に関して紛争を生じた場合には、最終的には国際司法裁判所に付託して解決されるべきことが定められている。(同条約第二十二条)。」こういうのから始まって、途中を略しますが、「領土権放棄の物権的効果を考え併せると、日本立場を強化するためには、対日平和条約の当事国である諸国との間に解釈の統一をはかっておくことが一層有益であろう。北方領土の問題は日ソ二カ国間の交渉案件であり他の諸国はこれに無関係であるというわけでは決してない。」さっきから外務省は日ソ二カ国の問題だ、こういう理解の仕方をしてずっとやってきているが、この国際法学者はそうではないと言う。「むしろこの問題処理の理論的な手順からいえば、対日平和条約当事国間の意見調整、解釈統一が日ソ間の交渉よりも先の事柄であるともいえるであろう。」これは学者までそう言っているわけです。  従来、どうしても日ソ二国間の問題だ、二国間の問題だ、こういうぐあいに国際間の問題であることを回避してきたのは一体どこに原因があるか。この学者の説はどうですか。
  183. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいま御引用になりました杉山教授の論文は私自身拝見しておりませんが、国際法学者の中にそのような意見を持っておられる方々もおられるということは私も承知しております。  ただ、サンフランシスコ平和条約二十二条の解釈と申しますか、その役割りというものについでのただいま先生御指摘の杉山先生の見解というものは、私どもは必ずしも納得しておりませんで、先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますが、紛争というものは何をもって紛争と言うかということになりますと、これは非常に厳密な定義があるわけではございませんが、いずれにしましても、事実関係あるいは法律的な権利義務につきまして当事者間において主張の対立があるということをとらえて紛争ということだろうと思います。  北方領土の範囲あるいはサンフランシスコ条約二条(C)項で放棄しました千島の範囲というものにつきまして、たとえばAならAという連合国が、日本の言っておることは間違っておるというような主張をいたしまして、日本の解釈と相対立しておるというような事態は現在必ずしも存在しておらないわけでございますので、そういう意味におきまして、二十二条を根拠にして裁判所でその国と争うというようなわけにはまいらないだろうということを先ほどから申し上げておる次第でございます。
  184. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 私は何も二十二条によって国際司法裁判所へ持ち込め、どうしてもそれでなければいかぬ、こう言っているのじゃない。もしできるなら四十七カ国一国一国に理解を求めて、四島は放棄したものでない、やはりこういう各国から公文書をもらうような努力をしてあればいいわけです。  そこで私は外務大臣にお尋ねするが、大臣が来るまでは、実はそういうわけです。講和条約四十七カ国の参加国の地図は一つ日本の主張している表現をした国がないわけで、去年来私が指摘して、やっとさっき読み上げたこれからぼつぼつ直しましょうかというのが、四十七カ国の中には何百何千という地図があるんだけれども、わずか数種類だけこれから直しましょうだか肯定的な返事が来ただけです。だから私は、従来外務省は世界各国に対してこの北方領土の運動、問題について理解を求めている、こういうようには見えないわけです。大臣から大いにハッパをかけて、どういう方法でもいいです、二十二条に訴えることもよし、一国一国から全部何かコメントをいただくということでもいいが、少なくとも私たちの運動は国際的にも認められる運動でなければソ連をして返還させるわけにはいかぬではないか、こう思います。どうでしょう。
  185. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 サンフランシスコ平和条約の締結国の中に、日本の考えと違っておる、そういう考えを持っておる国があるんではないか、そういう国に対して理解を求めろ、こういう御所見は一つの見識だと私は拝聴しておって受けとめました。  ただ、ソ連との関係におきましては、これは専門的にお調べの小沢委員に申し上げるのは恐縮でありますが、このサンフランシスコ条約からの問題ではないと思うのですね、これはその条約に参加しておらないのでありますから。したがって、日本ソ連に対して不当である、こう申しておりますのは、ソ連が自分の主張を正当化しようとしてのヤルタ協定を引用する場合には、それは日本としては関係のないことである、そのヤルタ協定を話し合われた関係国の私文書的なものであって、何らの拘束はないよということを申し上げておるわけでございます。  また北方四島は、御説明するまでもなく、歴史的経緯からいたしまして一度も日本以外の国の領土になったのではないのでありまして、しかも日本はポツダム宣言を受諾しておる。日本の領土問題については、そのポツダム宣言というものが非常に大事だと思うのですね。ポツダム宣言においては、その領土問題については強奪したりなんかしたものはそれは返せということで、固有の領土について云々しておるわけではないと思うのです。したがって、日本が強く主張しておるのは、このソ連の八月十五日以降に不当に占拠して実効支配をしておるというその事実、そのことについて不当である、こういうことを言っておるので、これは締約国とかどうとかじゃないわけですね、ソ連は条約の関係なしで勝手に取っておるんですから。ただヤルタ協定の中から言うと、千島列島云々ということがあるが、しかしその千島列島というものについては、ポツダム宣言からいたしましても日本が強奪したものでない四島である、こういうことです。  だから、いずれの角度からいたしましても、ソ連に対してはわが国の正当な主張というものがある。この主張を小沢委員のおっしゃるとおりに、もっともっと国際世論の支持も受ける、これはそういう措置をこれからもやっていかなければならないと思っております。
  186. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 外務大臣の心境もわかりましたが、私がどうしても理解できないのは、どうしても日ソ間の問題だけに限定をしてこれを返してもらおうと努力している、その態度ではソ連はとうてい返してこないと私は思う。やはりわれわれ外遊してみて、リドリー英国外務担当大臣も言っていたが、国際的な圧力、そういうようなものもなければ、とてもじゃないが、ソ連は返そうはずがない、こう言っているわけで、そういう判断に基づけば、二国間だけで解決をしようという従来の外務省の態度は変更を加えなければならぬ。何も四十七カ国みんなそろって押しかけていけ、こういうわけではないんだけれども、それさえも説得していなければ、これはソ連を説得するわけにはいかぬと思うので、これは大臣によく検討していただきたいと思います。  では、続いてお尋ねをいたしますが、今月の文芸春秋にも出ておりますし、前任の兵藤課長も新任のときに私に言ってまいりましたが、たとえば一九七九年五月、時の外務大臣は園田さんです。四月かな、アメリカへ行って、バンス国務長官が、北方領土返還でお手伝いをすることは何かありませんか、向こうは積極的にそう言ってくれているわけです。そうしたら園田大臣は、いや、これは日ソ間の問題ですから気長に交渉をいたしますと、アメリカが応援をしてくれようというのを回避しているわけです。それがずっと外務省を流れている日ソ間の問題だ。よそには迷惑をかけない、こういう思想がここにあらわれているのではないか、私はこう思うわけです。  いま一つ、去年、民社党の委員長の佐々木さんがブッシュ副大統領に、北方領土問題について御協力をいただきたい、そうしたら、どういうことをやったらいいか具体的におっしゃっていただきたい、こういうように言われたときに、佐々木委員長は、いや具体的なことは政府をして言わしむる、政府からお願いをする、こういう問答があったことも文芸春秋の今月号に出ておるわけです。その後具体的にアメリカにどういうようにお願いをしたかは私は聞いておりませんが、外務省を流れておる一貫した思想は、さっきから言うように、どうしても日ソ間の問題だ、よそへ大騒ぎしたくないという思想がどうも流れているのではないか、こう思うわけです。  外務大臣、さっきからいろいろ二人の御意見もあるわけですが、私はやはりソ連に対しては、国際的な世論、そして国内の世論の盛り上がり、それからいろいろな圧力、こういうものがなければソ連は返してよこさぬ、これはそう思うわけです。どうでしょうかね、アメリカ協力を求める意思はあるかないか。  いや実は、去年かな、うちの党内で問題になって、鈴木総理レーガン大統領と行き会う機会に、アメリカ協力を求めないでどうして北方領土を返してもらえるか、だから初めて聞いたときは、鈴木総理は非常に熱心だからそれもやってこい、こういうことでわれわれ、出発間際だったから官房長官に申し入れただけであったわけですが、私は、外務省の態度をアメリカにきちっと協力を求めて交渉をするという態度に変えなければ、どうしても戻ってこない、こう思います。どうですか、外務大臣
  187. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 よく国際世論に訴えるということを私どもも申し上げておるわけであります。その世論の喚起ということについては多くの国の支持を得たいということになるのでありますが、いまの小沢委員のお尋ねでありますと、日本ソ連の二国間の協議、交渉とは別に、アメリカに何らかの行動といいますか、いま私にはそういう考えがございませんから、こういうようなことという例を挙げることもできにくいのでありますが、国際世論の喚起とそれから二国間協議に対してお手伝いをいただきたいということとは多少これは違うところがあると思うのですね。  そこで、園田外務大臣がいままで国連総会で触れていなかったのを触れるというようなことにも踏み切られたのでありますが、私の記憶では、国連総会でおっしゃられる前の段階で、バンス・園田会談というものがあったと思うのです。その折には、当時の園田外相は二国間の協議でいくという意向を表明したと思うのであります。したがって私も、いま何らの準備なく、ここで米国に頼むがいいとか悪いとか、そういう所見を申し上げることは軽率であると思うのです。  国際世論に訴えるということについては、これは機会あるごとに、あの四島は不当に占拠されておる、実効支配されておる、それは不都合である、これはこれからも大いに強調してまいりたい、こういうように思います。
  188. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 私の質問が国際世論に訴えるからアメリカ協力まで一気にいってしまったので、大臣の答弁はそうかもしれません。しかし、これは常識的に考えて、ソ連交渉を対等にできるのはアメリカ以外にはないんじゃないでしょうか。自由主義陣営の防衛的にも精神的にも背景をもとにして、そうしてアメリカに訴える、こういう最高のところでなければ、北方領土問題は、ソ連は例の安保の問題だとかなんとかいろいろ言え出していますから、その場がなくしてソ連は一体返してよこすでしょうか。  文芸春秋に書いた木村汎さんというのは、われわれは敬愛して、「ソ連及びロシア人」だったか「ロシア人及びソ連」だったか、あるいは「ソ連との交渉のテクニック」とか、いろいろなものを読ましてもらっているが、その木村汎さんの意見もそうだと思います。「北方領土問題の解決にさいしてなによりもまず努力を傾けるべき対象は、案外モスクワではなくてワシントンであるとさえ、極言しうるかもしれない。」そして、北方領土の返る第一の条件は、「国際政治の世界に働く“力”の現実をクールに受けとめ、自国の安全保障をカチッとしたものにし、よって、クレムリンからも一目おかれるような政治的成熟性をしめすこと。——これが、一見迂遠ないし無関係のように見えようが、実は、北方領土問題解決の第一歩なのである。」その次はまた、第二項としては経済とリンクして取引をしろ、こういうようにも書いてありますが、私たちが常識的に考えてもそう思うわけです。  これが日ソ間の問題だけでソ連は、はい結構でございます、返しますと言おうはずがない。先ほど来質問がある安保の関係がどうだとか何かあるのですから、これはデタントなり何なりそういう米ソ最高首脳の会談の場でなければ北方領土は返してよこさぬ、私はこう思うわけです。外務大臣、どうでしょうね。
  189. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 かねて来申し上げておるように、日ソ間における北方領土の問題について、これは日ソ国交回復の経緯あるいは一九七三年の田中・ブレジネフ会談の経緯からいたしまして、ソ連は繰り返し繰り返し領土問題はないとか解決済みとか言っておりますけれども、そういう経緯からいたしますと明々白々として問題は残っておると思うのです。そういう日ソ間の経緯から考えますときに、一体小沢委員のおっしゃるようなそういう方途を日本政府が考えていいものかどうかということにつきましては、いまにわかにお答えがしにくいと思うのです。やはり国際情勢東西対立の中にあって、こういう問題をアメリカ解決してもらうということ、それがいいのか悪いのか、ちょっと判断に迷うわけで、日本の主張というものは、われわれはもうどこから見ても正当であるということを信じておるのでありますから、この正当な主張を粘り強くやっていくことが必ずや成果を生ずるものと信じておる次第でございます。
  190. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 私は、いろいろの経過あるいは最近の国際情勢すべてを考えて、アメリカの全面的な協力のもとに、米ソの最高首脳の会談のある機会にこの問題を持ち出さない限りは解決しない、こういうように確信するわけですが、これは日本外交の大事なところでありますから、いま外務大臣の答弁もペンディングのような答弁でありますから、十分研究をしていただいて私の要望にこたえるように将来していただきたいと思います。  そこでまた、あと質問を続けたいと思いますが、対ソ制裁の問題が出ておるわけです。私は北方領土もこういうこととみんな関係があると思いますから、やはり対ソ制裁をやるならやるできちっとやった方がいいと思うのだけれども、自由の陣営としてソ連のいまのアフガニスタン、ポーランド問題あるいは北方領土問題、こういうことを考えると、対ソ制裁についてはきちっとやるべきときにはやった方がいい、そして日本の内閣の意見を一致させてやった方が私はベターだと思います。  ところが、二十三日の新聞の報ずるところによれば、せっかく四項目の対ソ制裁をやろうとするときに、その発表に当たって宮澤官房長官は、これは飾り的な色彩を持つ、飾りみたいなものだ、こういう官房長官談話を発表しているわけです。そうかと思えば田澤農林大臣は、経済外交を進めている立場としてはそうした背景も考えてもらわなければと、何か実際にやってもらっちゃ困るみたいな談話を出しているわけです。これは一体どういうことですか。雨降り候天気にはござなく候、ゆっくり急げという言葉もあるけれども、全くそれと同じことで、これは、対ソ経済制裁だか何かをやるつもりなのか、アメリカが言うので仕方なしにかっこうだけつけて、ソ連に向けては飾り物だ飾り物だ、こういうように媚態を呈しているのか、一体どっちなんでしょうか。
  191. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 対ソ制裁という御発言でございますが、私ども政府の文書では制裁という言葉はとっておりません。二十三日に発表されました官房長官談話も、対ポーランド、対ソ連措置という言葉でございまして、制裁という言葉はそこには出てきておりません。  こういう措置目標とするところは、ポーランドの軍政当局に対して、現在の異常な事態を一刻も早く収束してほしいということ、このポーランド問題に責任を有するソ連に対しては、その自制を求め、今後さらに介入の度を深めるようなことがないように、そういう牽制の意味を込めた措置でございます。したがって、大上段に振りかぶった対ソ制裁といった種類のものではなく、関係国あるいは関係政府当局の自制を求めるための一種の誘いの措置である、かように考えておるわけでございます。先生がなまぬるいとおっしゃるのも、そういう措置の本質的な性格から当然そういうことになるわけでございまして、こういうものをどのように表現するかは各個人の言葉の問題ではないかと考えております。
  192. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 まさにいまの説明を聞いても飾り物的なもので、雨降り候天気にはござなく候、どっちにでもいいように解釈ができるものですから、本気措置だか制裁だかやろうとする意思がないみたいに見えるわけです。  ただ、私は、北方領土の返還をやる場合に、ソ連としてはヤンブルグの開発だか東シベリアの第二の鉄道だか、東シベリアの開発で日本経済とか技術とかノーハウとかそういうものをよだれが出るほど欲しいのではないか。ソ連の最近の経済情勢を考えても私はそう思うわけです。だから、それとリンクさせなければ北方領土は返ってきません。木村先生もそういうことを、文芸春秋にはそれが出ているわけです。そしてそれはまた、自由主義陣営がアメリカ中心にして団結して、そして最高首脳会議のあたりで決着をつける、こういう方途でいかなければ返ってこない、こう私は思う。これは、木村先生の言うことと私は全く変わりはないわけです。  ところが、ソ連がやってくるのは何かというと、政経分離論であります。外務大臣はさっきから政経不可分論的な発言でありますから、折につけ機会を見てと、こう言っておりますが、私はそれを信頼したいと思いますが、向こうは領土だけは切り離して、経済協力やそういうことだけはやれ、あらゆる機会を通じてそういうように言ってきているのではないか、私はこう思うのです。これは物の考え方なんですが、私は、そういう経済とリンクをさせなければソ連に譲歩させることはできない、こう確信するわけです。どうでしょうか。
  193. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 小沢委員のおっしゃるとおり、日本としては政経分離のたてまえはとらないわけでございます。
  194. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 そういう背景があるなら、私は、対ソ交渉においてはちゃんと自由陣営に足並みをそろえて——さっき言ったような雨降り候天気にはござなく候といったような措置をやったって何の影響もないと思うのです。これも、アメリカ中心にしてわれわれも協力をして、その背景のもとで交渉する、これでなければならないということに帰結するわけですが、どうでしょうかな。
  195. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 その点は小沢委員のおっしゃるとおりだと思うのです。  そこで、対ソ措置、対ポーランド措置をするにつきましては、西側の結束というものを最大に念頭に置いて行動しておるわけであります。今回の措置も英、独等の措置と並行しながらやったわけでございまして、今後におきましても西側の結束、たとえば対ポーランドの問題につきましては、われわれの結束によってソ連の直接介入は何としても避けなければならない。また、ポーランドの異常事態が速やかに解決されて、ポーランド人自身の手で解決方向に進んでもらいたい、こういうようなことが西側の一致した考えではないかと思っております。
  196. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 その問題についてはその程度にして、今度は全然逆な立場から、こういう意見があるわけです。  これも二十四日の朝日新聞に壁厚い北方領土、「日米安保と両立は至難」こういうことで、先ほどもどなたか例に出しておりましたけれども、時間もないから前後続みませんが、その中では「北方領土を「友好の島」としたらどうか。「それなら、賛成だ」」こういうようなことがあるわけです。私、北海道へ昨年視察に行ったら、北方領土の返還の運動を長いことやっている、たしか松何とかという専務理事だと思ったが、こういうことを言うわけです。北方四島が返ってきても軍事基地は設けない、そういう決議をまず国会でやってもらった方がいいじゃなかろうか、こういう意見もあったわけです。なるほどソ連は、ここに書かれているように、被包囲意識、こういうものを持っているというように見るならば、私はそれもいいことではなかろうか。  この間、民社党大会で、沖縄の返還を一生懸命やった安里前の代議士の息子さんの県会議員が、やはり国会で非武装地帯みたいな宣言でもしておいて、返ってきてもそういうようにします、こういったことの方が返りやすいのではないか。これは私たちも方々で聞く意見であります。これについては、外務省の見解はどうでしょうね。
  197. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 北方領土問題は現在係争中の案件でございます。したがって、現時点から返還の条件というようなことを言うのは時期尚早であろうかと考えております。朝日新聞で言うところの平和の島という意味が何を意味するか、必ずしも私よく理解できませんけれども、現段階から返還の条件というようなものを示す必要もないし、また、そういう時期でもない、かように判断しております。
  198. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 大体の大筋は終わらせていただきますが、これは前に大分週刊誌や新聞で大きく書き上げられたわけで、その後ずっとニュースの面から消え去っているわけですが、例の笹川良一さんが、アドミラル・ナヒモフ号の引き揚げ、こういうことで、私はその当時委員長をやっておりましたが、宝物が出てくれば喜んでソ連へくれてやって、そのかわり北方領土を返してよこせ、こういうようなことを言って、そういうことがもとで、ミーハー族までこの北方領土に関心を持ったのはなるほどなというふうに思った記憶を持っているわけであります。これは現状は一体どういうようになっているか、外務省わかっておりますか。
  199. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 アドミラル・ナヒモフ号の引き揚げ問題につきましては、昭和五十五年十月三日にソ連側より次のような申し入れがございました。この船及びその資産のすべてについてはソ連が権利を有する、その同船及び資産の探索作業及び引き揚げに関するすべての問題はソ連側との合意に基づいて決定されなければならない。これに対して十月二十日日本側より、ナヒモフ号は旧帝国海軍により拿捕されたものであり、国際法上その時点で、同船及びその積載品にかかわるロシア側の一切の権利は消滅したものであって、同船に関するソ連側の主張は根拠がない、このような回答をしております。その後、十月三十一日、ソ連側が右の日本側の見解に対する反論を行い、さらに十二月二日にわが方よりソ連側の反論に対する再反論が行われております。しかし、最終的には十二月十九日、ソ連側よりそれまでのソ連側の申し入れの内容を再確認するという申し入れがありましたのに対し、わが方よりも日本側の立場を再確認するとともに、これ以上本件について議論を繰り返す必要はないと申し入れた経緯がございます。その後、この問題については日ソ間で全くやりとりがございません。  以上の次第でございますので、この問題につきましては、ナヒモフ号及びその積載品はわが方により拿捕された戦利品であり、ソ連側の主張は一切認められないというわが方の立場は明確に先方に伝えられたと考えております。
  200. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 経過はわかりました。一体船が揚がるのか、宝物が出てきたのか、最近の情勢はわかりませんか。
  201. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 最近の情勢はつまびらかにいたしておりません。
  202. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 これはやはり大臣の答弁を必要とするか……。  いろいろ考えてみると、ソ連はある時点においては二島返還論、こういうものを持ってくる可能性があるんではないか。これは私の動物的感覚であります。一九五六年にも日ソ共同宣言でソ連は、歯舞、色丹のことには、条約締結後に引き渡します、こう言っておりました。それから、ソ連との円卓会議を主催したりソ連とずいぶん通じ合っていると自他ともに許している松前重義さんの個人的な動きも、どうもどこかその辺を意図してソ連と話を進めているのではなかろうかとも考えられて、その問題は、日本ソ連は歯舞、色丹返還で合意するかといって、いつの週刊誌ですか、つい最近も大きく出たことがあります。ソ連は一たん言い出したんだから、もし妥協して返還をしてくるとするならばそういう案を持ってくる可能性が多いように私は直感をするわけです。  さて、仮定の話で大変恐縮でありますが、私は、ソ連の意図というものは日本の国論分断、こういう一つのメリットもあってそういうものを持ってくるのではないか、こう思います。私は、一九五六年度の日ソ共同宣言のときも、北方領土のあの周辺の根室市ほかではちょうちん行列をやって上や下への大騒ぎ、領土が返るということで大騒ぎをしたという話も聞いておりますが、もしそういうことになってくると、私たちは国論を統一して四島でということで一生懸命でやってきたんだけれども、やれこういうことでわあっと世論がそっちへ移っていってしまう。こういうことになると、大変な国論分断がそこで出てきて、これは外務大臣どころじゃない、政府まで苦境に陥るような事態になるんではないか、取り越し苦労で大変恐縮ですが、私はそう考えるわけです。これを防ぐには、四島一括返還で意思統一をした、これを貫くためにさてそのときにはどうしたらいいでしょう、これは大変むずかしい問題だと思います。仮定の問題で答えられなければそれで結構ですが、外務大臣としては断固として四島返還を貫く、こういう御答弁をいただけますか。
  203. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それは日本として、不当に占拠された四島の返還をあくまでも求めるということについて、もう終始一貫して変わらないということを明白にしておきたいと思います。
  204. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それは外務大臣としては当然の答弁だと思いますが、実際にそうなったときに日本の国論は大分断を起こしてしまって、内閣が総辞職するほどの大問題にまで発展してくるのではないか、こういう国論の分断が行われるんではないかと思うほどの大問題になると私は思うわけです。  実はそういうことを憂えて、今度は自治省、法務省の問題になりますが、私は、国論を一本にするためには、いま歯舞だけは根室市に合併をしておりますが、あとの三島六カ村は自治法上も地方財政法上も日本の領土であるという領土権を主張するわが国立場が明確になっておらないという立場から、この三島六カ村を近隣の町に合併をさせたらどうか、こういう提起をしたこともあるわけであります。  それについて私は、法務省、自治省も来ていただいておりますから若干お尋ねをしたいと思いますが、かつて北方四島に移住をしたいという人が出てきた。引き揚げ者で転籍をしたい、移住をしたい、これは物理的には不可能であります。物理的には不可能でありますが、それを却下した理由が、町村役場がないからということが主な理由で却下してしまったわけです。それは法務省おわかりですね。これは法務省が主としてそれをやったと思います。ところが、去年大阪の青年が歯舞の水晶島に転籍をしたい、こう言ったら、それは受理され許可されたわけであります。そして現に、戸数で三十三、在籍者六十三人、除籍者を含む在籍者数、これは私意味がよくわかりませんが、九十五、こういうぐあいに歯舞島に籍を有する者がいるわけです。ところが北方三島、歯舞を除く色丹、国後、択捉から引き揚げてきた者が最近転籍をしたいと言ったら、法務省は、それは村長がいないので戸籍事務が扱えないからと言って却下してきた。それは御案内のとおりです。  私は時間がありませんから細かく説明しませんが、そうすると、これは日本の領土でありながら転籍という実際のことが不可能である、だけれども、領土権を主張するからにはちゃんと転籍の手続が終わらなければならない、こういうように考えるわけです。法務省、自治省どうでしょう。
  205. 大森政輔

    ○大森説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、北方三島六村に対する転籍の届け出につきましては、その届け出を受理いたしましても本籍地の市町村長としての戸籍事務を行うことが物理的にと申しますか現実的にできませんので、その結果としてそういう届け出は受理することができないという基本的な見解を維持しているわけでございます。  それに対しまして歯舞諸島に関しましては、これは昭和三十四年以降と記憶しておりますが、根室市の区域に編入されまして、結局現在は根室市の市域である。したがいまして、そこを本籍とする本籍地市長としての戸籍事務が取り扱えるということから、歯舞村を本籍とする転籍届け出とかあるいは分籍届け出、そこに新戸籍を編製する旨の婚姻届け出、そのような届け出は受理することができるという考え方をとっているわけでございます。  以上でございます。
  206. 浜田一成

    ○浜田説明員 お答えいたします。  ただいま法務省から御説明があったとおりでございまして、先生も御指摘のとおり現実に市町村長はおらないわけでございまして、市町村長が事務をとるということはないわけでございます。
  207. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それはそのとおりのいきさつがあったことは承知しています。ただ私が自治省にお尋ねをしたいのは、去年も一人の青年が水晶島に転籍、それはできたわけです。さっき申し上げたように現に歯舞島には三十五戸ですか、それと六十何名の在籍者がいるわけです。これは日本の国家の領土であるということを名実ともに示しているわけです。ところが現に引き揚げてきた者が、泊ですか、色丹、国後、択捉に転籍をしたいというときに却下してきた理由は、いまおっしゃるとおり村長がいないからできない、こういうことでしょう。そういうことになると、これは日本の領土であるということを自治法上明確に示していることにならぬと私は思う。  いま現地で亡命七カ村運動をやっている若い人々の運動というものは、何とかして籍だけあそこへ置かしておいてもらおう、これが返還運動の核になるような現場の若い人々の訴えであります。そして歯舞は根室市に合併したからいいな、あとの三島六カ村というものはそれはできないのだ。これは日本の国民の基本的権利というものが、村長を置かない、事務手続をやらないがために侵されているのではないかと私は思うのです。自治省どうですか。
  208. 浜田一成

    ○浜田説明員 戸籍の問題につきましては法務省所管でございまして、機関委任事務という形で処理されておるわけでございます。したがいまして、その戸籍の取り扱いをどういうふうにしたらいいかということにつきましては、まず法務省が基本的にその取り扱いの考え方をお定めになるということであろうかと思います。
  209. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それでは自治省はだめだ。戸籍は法務省でやらなければいけないから法務省の責任みたいにしているが、これは基本的な問題だ。金大中が何とかしたことは、日本の主権が侵害されているとこう思う。ところが、三島六カ村の者が転籍をしたくてもさせてもらえるような状態をつくっていないのは、私は自治省の責任であると思う。私はこれは別の機会に徹底的に責任を追及する。日本の国家の領土で日本の村でありながら、自治法上も、後で申し上げるが交付税法上も認めていない。それをいかに注意してもあなたたちはわからなかった。それはまた別の機会に追及しますが、せっかく交付税課が来ているそうですから一つだけ。  同じような状態にある島根県の竹島、これには日本実効支配ができていないわけですよ。歯舞、色丹と同じような状態にある。にもかかわらず都道府県分の交付税が昭和二十七年から交付されておる。それから市町村分の交付税は五箇村に昭和二十七年から交付されている。尖閣列島は昭和四十七年に沖縄県に県分、それから石垣市に市町村分の交付税が交付されている。歯舞諸島歯舞村の分は北海道に都道府県分の交付税が交付されており、根室市に市町村分の交付税が交付されておる。しかるに国後、択捉、色丹三島の六カ村分は、県分として北海道に交付されておるが、いま言われるように市町村長がいないものだから、役場をつくってないものだから、あるいは私の言うように、これをこっちへ合併していないものだから市町村分の交付税は宙に浮いてしまっている。この事実はそのとおりだと思います。これは当然そこへ交付税を渡すべきである。歯舞群島でさえ渡してあるのだから、市町村分を渡すべきものを何で自治省は渡さずして全国のほかの市町村に勝手に分配してしまったか、それを教えていただきたい。
  210. 能勢邦之

    ○能勢説明員 地方交付税の取り扱いについてでございますが、歯舞を除く北方三島につきましては、建設省国土地理院がこれらの三島の面積を公表したことに伴い、その時点で、昭和四十四年からでございますが、北海道の面積の一部に含めて交付税の算定の対象としておるわけでございます。それで、お話のありました市町村分についてでございますが、これらの北方三島の六カ村につきましては、通常の市町村としての行政の実体がないということで、その面積に係る市町村分の交付税の算定は行っていないわけでございます。
  211. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 それでは竹島は実体があるか。ないにもかかわらず五箇村に市町村分の交付税を出している。あるいはまた尖閣列島は行政の実体があるか。ないにもかかわらず出している。どうしてこの三島六カ村だけを特別の理由をつけて出さないか。
  212. 能勢邦之

    ○能勢説明員 お話がありました尖閣列島については、昭和四十七年から沖縄県及び石垣市の交付税の算定の基礎に入れておりますし、それから竹島につきましては、昭和二十七年から島根県及び五箇村の交付税の計算基礎に入れております。それから歯舞諸島につきましても、昭和三十四年から根室市の交付税の計算の基礎には入れておるわけでございます。  そこで、これらの交付税の取り扱いでございますが、これはこれらの島々が国土地理院の公表面積において明らかにされておるということと、さらにそれぞれ当該市町村の区域の一部であるということから行っているわけでございまして、北方三島の六カ村につきましては、かつては独立の地方団体であったわけでございますが、現在、いずれの市町村にも実態上属していないということから、市町村分としては算入していないということでございます。
  213. 小沢貞孝

    ○小沢(貞)委員 先ほど、これは結論までいかないが、法務省の方の御答弁にもあったように、市町村長がないから籍を入れることはできない。これだけで私は、国民の基本的な権利、領土権の主張というものが阻害されている。そういうものをつくってやれば当然国税もまた行ける、こういうことになると思うのです。私は、繰り返しその問題をやってきたが、自治省は北方領土権を主張しようという気がないから、言いわけを言いながら一いまのはみんな言いわけた。転籍もできないじゃないか、転籍をさせてもらいたいというのが北方領土返還運動の現場の亡命村の若い人々の声なんだ。それができない、そこだけが。阻害されている。市町村長を設けないせいですよ。あるいは私の言う三島六カ村を合併する、このことをやってないからなんだ。だから、交付税もここへ当然行くべきもの、五箇も尖閣列島もみんな行っているんだから、行くべきものを勝手に自治省が全国に配っているのではないか。要するに、これがわが国の領土であるということを地方交付税法あるいは自治法、そういう上から認めようとしないからなんだ。  この問題は私は、非常に重大な日本の権利が阻害されていますから、主権が阻害されているから、別の機会に徹底的に追及したいと思います。したがって、本日は、次の質問者がもう待っているようですから、これでやめさせていただきます。
  214. 石井一

    石井委員長 榊利夫君。
  215. 榊利夫

    ○榊委員 時間が限られておりますので、私の方もなるべく手短に質問したいと思いますので、ひとつ御答弁の方も簡潔にお願いいたします。  さて、今回のアルバニア大使館設置などの在外公館に関する法律案、これは当然のものだと思います。また、在外公館勤務員などの給与改定案はむしろ不十分だ、こういう気がするのでありますけれども基本的に賛成できるものであります。その上で幾つか質問をさせていただきます。  世界的にインフレ傾向にあることは広く知られておりますけれども、国によってもいろいろ差があります。この要素は在勤基本手当の基準に勘案されていると思いますけれども、どうでしょうか。それからまた、基準額の見直しは適宜やっていかなくてはいけませんけれども、何年に一回ぐらいが適当と外務省としてはお考えなのか、まずこの点をお伺いいたします。
  216. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  在勤基本手当の額を算出するに当たって、世界的なインフレというようなものがどのように反映されるかということでございますが、在勤基本手当の額を算出するに当たりましては、在勤地における物価の上昇率と、それからその在勤地における貨幣の円との為替変動率、この双方を勘案いたしましてその土地における実質生計費指数というものを算定いたします。これをもとにいたしまして、一定の方式に当てはめまして、そこの地における生計費所要額というものを算出することとしているわけでございます。今回の改定も、ただいま申し上げましたような算定方式に従いまして、インフレ及び為替変動の両方の要因について私どもとしては相応の考慮を払ったものというふうに考えております。  ちなみに、この在勤基本手当の平均上昇率は、この法律に盛り込みました上昇率がお認めいただけるとしますれば七・六%になるわけでございますが、世界の平均の物価上昇率というのは約一四%ということになっております。これは主としまして、確かにインフレ要因はございますけれども、また、円がドルに対しては弱くなっておりますが、欧州各国の通貨に対しては円が強くなっているという面もございまして、そういうところから物価上昇率全部を補うほどの上昇率にはなっていないということでございます。  それから、何年に一遍くらいが適当であるかというお尋ねでございますけれども、これはいまも御説明申し上げましたように、やはり物価上昇、インフレの率、それからそれぞれの国における貨幣と円との為替相場の変動に応じまして改定することが必要でございます。そうでございませんとまた非常に在外職員の生活も困難を来すというようなことにもなりますので、なるべく早く実勢に合わせるということが必要でございますので、何年に一遍ということを基準として考えるのは適当ではなく、むしろ非常に弾力的に改定を行っていくことを心がけたいと思っております。
  217. 榊利夫

    ○榊委員 大体一年に一回くらいは見直しをやっていくのが適当ではないかと思うのですが、各号別の給与基準額、それと関連して、アフリカ地域などで高くなっておりますね。このことはよくわかるのですが、ヨーロッパで連合王国だけがアフリカ並みの水準になっておりますけれども、これはどういう理由でしょうか。やはりインフレの問題ですか。
  218. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  英国は、御承知のようにいま非常なインフレでございますので、それを勘案いたしまして在勤基本基準額を上げたということでございます。
  219. 榊利夫

    ○榊委員 どうですか、一年に一回くらい見直しをやったらどうでしょうか。
  220. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 私どもといたしましては確かに一年に一遍やることが適当ではあろうと思っておりますが、なかなか財政事情ということもございますので……。要は、為替の変動及びインフレの変動に応じて実勢に即した給与が在外に勤務する人に渡るように、なるべく弾力的に運用するということだろうと思うのでございます。
  221. 榊利夫

    ○榊委員 次いで、外交官や在留邦人の健康管理問題ですけれども、大使館、大変数が多いのですが、医者、つまり医務官が配置されている大使館は十六館だというふうに聞いておりますけれども、その医務官の担当公館数は幾つになっておりますか。
  222. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 十八名の医務官がいるわけでございますが、アジアではインド、インドネシア、タイ、中国の四名でございます。それから中南米ではリオデジャネイロ、ペルー、メキシコの都合三名でございます。それから中近東地域におきましてはイランとクウェートの二名でございます。アフリカ地域につきましてはエジプト、アルジェリア、ナイジェリア、象牙海岸、ケニア、ザイールの六名でございます。それから欧州地域におきましてはソ連邦、それからオーストリアの二名でございます。大洋州に最後のもう一名、パプア・ニューギニアに置いておりまして、都合十八名ということでございます。
  223. 榊利夫

    ○榊委員 いや、一人当たりの担当、幾つ担当するのかということです。
  224. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 たとえば先ほど申し上げましたアジア地域に配属されております中でのインドネシア大使館に配属されている医務官は、インドネシア大使館はもとより、そのほかシンガポール大使館、フィリピン大使館、マレーシア大使館等々十二の公館を担当しております。
  225. 榊利夫

    ○榊委員 一人の医務官で十二の大使館を渡り歩いて担当して医療、健康管理をやらなければいかぬ。職員だけではなくて家族もおられますし、在留邦人のこともありますし、ちょっとこれでは手が回らないのじゃないでしょうかね。したがって、これについて改善を図っていくということは当然お考えになるところだと思うのですが、どうでしょう。
  226. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 まことにそういう状況にございまして、私どもとしてもこの医務官制度というものは、在外公館職員の健康管理上ますます充実強化していかなければならないものと考えております。そのように今後も努力いたしたいと思っております。
  227. 榊利夫

    ○榊委員 これは人道問題ですから……。  この問題の最後に、海外の医療問題では、在留邦人、在外邦人が非常にふえていますね、現在四十六万人ぐらいに上っているのじゃないかと思いますが、いわゆる医師の免許が現地主義で、日本の医師が海外で診療活動をやれない。これはやむを得ないわけでありますが、外国で病気をしたときのつらさは、体質も違いますし、ヨーロッパ人並みの薬をやられたら熱が下がり過ぎて云々とか、あるいは言葉の問題とかいろいろあります。そういう点では、巡回医師団がアフリカその他に派遣されていると聞きますけれども、大体一回に数日滞在するのが普通のようであります。この巡回医師団を拡大してはどうなのか、これが一つ。  それからもう一つは、在外邦人の場合、現地に日本企業があるわけですから、その点ではもっと自分の社員の医療問題に責任を負わせる、そのことをもっと強く求めるということが必要じゃないかと思いますが、この二点、どうでしょう。
  228. 藤本芳男

    ○藤本説明員 お答えいたします。  ただいま在外におります邦人のうちで企業に属する方々の健康管理という御質問でございますけれども、大手の会社におきましては若干医師の派遣というふうなことはあるようでございますが、中小企業を含めて、在外の企業全体といたしまして診療所をつくるなりあるいは医師を派遣するというふうなことを考えてはどうかという動きが現在ございます。それに対しまして私ども政府といたしまして何とか支援をしようかということで、五十七年度に、どういうニーズがあるかということを調べる調査費が一応政府案に計上されております。  また巡回医師団につきましては、現在十チーム前後毎年派遣しておりますけれども、この数をぜひふやしたい。幸い五十七年度はチームの数が一つふえまして、恐らく十三チームぐらいは派遣できるのではなかろうか、こういうふうに思っております。ただ、何分予算が限られておりますので、一チームが派遣されましてもせいぜい一月ということで、大変に忙しい仕事をしているわけでございます。
  229. 榊利夫

    ○榊委員 それでは、次の外務省の機構の問題で二、三質問いたします。  北米局の安全保障課の業務はいかがなものなんでしょうか。
  230. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 外務省の定めによりまして、日米安全保障条約あるいは地位協定の運用というのが主たる業務でございます。
  231. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと安全保障課というのは、安保条約、地位協定等と、いわば特定の条約に関する政務が大変多い、主にしている、こういうことのようでありますけれども、こういった一つの条約を主として取り扱うような機構というのが、たとえば日本の外務省以外にどこかありますか。
  232. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 御質問の趣旨が、一つの条約あるいは協定だけを取り扱う課が外国の例にあるかということでございますれば、私寡聞にして、そういうところがあるのかどうか、よくわかりません。  ただ、外務省の安全保障課というのは、さっき主としてと申し上げましたように、安全保障条約あるいは地位協定の運用でございますけれども、同時に、日米安保体制それ自身、それが日本の安全保障の根幹をなしているということから、より大きな日本の安全保障政策それ自身も安全保障課が取り扱う業務の一つにはなっているわけでございます。
  233. 榊利夫

    ○榊委員 私も主としてということで質問したわけでありますけれども、いずれにしましても、そういうのは大変国際的にも例が少ないようであります。私もかつてある人から、いや安保課だ、こう説明したら、身辺警護の警備課と間違えられてびっくりした。どうも話が通じないと思ったら、そういうふうに、つまりセキュリティーだから、ボデーガードと間違えたらしいのです。そう誤解を与えるぐらい少ないということであろうと思います。  私はこの点でお伺いしたいのでありますけれども、一国の安全保障というのは、もちろん一外務省の専管問題でもなければ、まして一つの課の専管問題でもないと思うのであります。非常に全般的な問題であろう。いまも外務省北米局長がお答えになりましたけれども、そのまた一課が安全保障課、これは大仰な名前であります。私は、日本の安全保障の問題が日米安保条約の枠組みの中でしか考えられていない、またそこを基軸として考えられている、そういう点では、偏った外交の姿がそこにも一つあらわれていると思うのであります。  しかも現在外務省に、機構改革をめぐって、その安全保障課を安全保障局に格上げ評価する、そういうことが国連局を国連部に格下げ縮小することと並んで構想されているというふうに聞きますけれども、事実なんでございましょうか。
  234. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  最近二、三回にわたりまして、マスコミでそのような報道がなされたことがございます。  ただ、先生も御指摘のように、一国の安全保障というものは、外交の非常に重要な、ほとんどその目的でございます。したがいまして、これは一課一局が受け持つものではないということでは、私もまことにそのとおりだと思うわけでございます。しかし、いまも申しましたように、外務省といたしましては、より広く世界的な見地から常に安全保障の問題を検討するところ、そういう機能は外務省としてこれからも強化していくべきではないかということは、省内での研究における議論としてあるわけでございます。  ただ、いま先生がちょっと申されましたように、現在の北米局の安全保障課を格上げして局にするというようなことが考えられているものではございません。その点は御理解いただきたいと思います。また、そういうような議論が行われているのは、全く公式にそのような機構改革の結論が出たとかいうことではございませんで、われわれの問題意識として、安全保障問題についてもひとつ広い見地から軍縮問題も含めて検討、研究していく、そしてそれを眺めていくようなところ、そういう機能が必要なのではないかというふうに考えているわけでございまして、それを直ちに安全保障局と呼ぶかどうかは別問題といたしまして、局にするとかいうことと直接結びついているような具体的な検討はまだそこまで至っていないということでございます。
  235. 榊利夫

    ○榊委員 ただ、外務省の中につくられている機構小委員会、この中間報告が安保局新設の構想を明記していることは確かじゃないでしょうか。
  236. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  機構小委員会というものが省内にございまして、これで検討をした結果の中間報告というものがそのような意見を出していることは事実でございますけれども、この小委員会の結論はそれなりの研究成果ではございましょうけれども、果たしてその小委員会研究の中間報告と申しますか、そういうものを外務省全体として取り上げるかどうかという点については、まだまだ研究段階にとどまっているということでございます。
  237. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、たとえば来年度、八三年度の機構改革案に具体的に盛り込むとか、そういうことはない、こう理解してよろしいのですか。
  238. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 機構改革の問題でございますが、ただいまは行政改革の行われているときでございますし、また臨時行政調査会というものも七月には答申が出るという状況にあるわけでございます。したがいまして、五十八年度において全く機構改革がないかと申しますれば、それはいまのところ目安が立たないわけでございまして、あるかもしれませんし、またないかもしれないわけでございますけれども、具体的に安全保障局というようなものを、たとえば来年度に機構改革として行うというようなことはまだ考えておりません。
  239. 榊利夫

    ○榊委員 いまの話の中で、全体としての安全保障の問題を考える、それで軍縮を含めてという答弁がありましたけれども軍縮問題ということになれば、結局いま取り組んでいるのは国際的にはやはり国連の場、こういうことになると思います、第一回の軍縮総会、ことしは第二回が開かれる予定になっておりますけれども。ところが、安保局の構想と並んで、国連局は国連部に格下げをする、これは紛れもなく格下げだと思うのですけれども、そういう構想がある、こう言われるのですが、そうしますと、いまの説明とはちぐはぐの感じがするのですね。軍縮問題に取り組まなければいかぬと言っているけれども、それを扱ってくる直接の国連局は格下げだ。これはどういうことなのでしょうか。
  240. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 国連局を国連部に格下げするというようなことを私どもはまじめに考えてはおりません。  これは外務省の機能強化とも関連するわけでございますけれども軍縮軍備管理の問題も重要な安全保障問題の一環として取り扱うものとした方がいいのではないかという議論が行われているわけでございまして、先ほど私が申しましたのも、有力な議論の一つとして考えられているということを申し上げたわけでございまして、国連局を国連部に下げるというような具体的な案があるわけではございません。
  241. 榊利夫

    ○榊委員 実は、私、その国連局の改革云々といった問題は、一つの憂慮と結びついて質問申し上げたわけであります。  それは、最近、日本政府国連でしばしば孤立するような場面が出ております。この点、櫻内外相にお尋ねしたいのですが、たとえば二月五日の国連総会では、例のゴラン高原占領のイスラエル制裁勧告決議、これが圧倒的多数で可決されております。賛成八十六、反対二十一、棄権三十四。ところが、日本国連代表部はこれに反対をして舞台裏のオルグ活動をした、こういうことでアラブ諸国が大変怒って、アラブ諸国外相会議、これは二月十二日、この間ですが、日本などとの政治経済関係を規制する問題を検討調査する委員会を設置する。これは非常にゆゆしい問題であります。一部では、日本アメリカと一緒になってイスラエル制裁勧告決議反対した、だからそのかわりにスケープゴートにされたのだ、こういう説もあるわけであります。もしそれが事実だとすれば、これはゆゆしい事態でありますが、このアラブ諸国外相会議のいまの決定、日本その他との政治経済関係を規制する問題云々、このことは外務大臣には報告はあったのでございましょうか。それからまた、そういう国連外交のあり方でいいというふうに大臣としてはお考えなのか。その二点であります。
  242. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本の中東に対する基本方針がございます。それは、第一には包括的な和平を望んでおるわけであります。それから、あくまでも話し合いでいってもらいたい、こういうことを主張しておるわけでございます。  ゴラン高原の併合についての非難決議、これは非同盟が出されたものでありますけれども、その内容を見てまいりますと、イスラエルを国連の機関からほうり出すような条項があるわけでございます。また、国連の各種機関からも同様かと思うのでありますが、そういうことは日本基本方針とは沿わない、こういうことから反対ということにしたわけでございまして、イスラエルのとっておる行動については、あるいは措置につきましては、国連憲章に反しますし、また国連決議にも反する、こういうことで、このイスラエルの行動を認めるというような姿勢わが国はとっておらないのであります。  それから、アラブ外相会議のいろいろな動きにつきましては、そういう経緯の電報などは見ておりますけれども、おっしゃったような委員会がどのような形でつくられ、そしてどのようなことをするのかというような詳しいことについては、私は存じておりません。
  243. 榊利夫

    ○榊委員 そういうのが的確に外務大臣に報告されていないというのは、私はやはり重大だと思うのですね。  いま非同盟の話が出ましたけれども国連では少なくとも非同盟諸国というのは多数を占めているわけでありまして、アラブの問題、イスラエル問題は非常に厳しい対立問題もある。アラブ外相会議のそれにしましても、やはりそういう中から出ているわけで、それに一歩対処を誤りますと、日本そのものが国際的な舞台において非常に孤立をしていく、いろいろ経済的なはね返りもある、こういう問題でありますし、いま聞きますと、何か詳しい話がなかったというような話でありますけれども、そういうことは少なくともノーマルな動き方ではないのじゃないか、こう思うのであります。  しかし、実際問題としましては、そういう委員会をつくって、日本などとの政治経済関係を規制する問題を検討する、こう言っているわけですから、それについてはどういうふうに対処しようと思っておられるのでしょうか。
  244. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 どのような考えをされるのか、そういうことが明らかでないときに、ここでいろいろ申し上げることはどうか。私は、日本の大事な石油等の資源の供給を受ける中東地域のことでありますから、中東外交につきましては、先ほど申し上げたような一日も速やかな包括的な和平を望んでおるのでございまして、そういうことについては協力を惜しまない姿勢をとっておるわけでございます。  日本のとった行動が特に批判に値するものでない、私は十分中東諸国に対しての理解も持っておるつもりでございますし、また、いろいろお話し合いがあれば、ざっくばらんにお話し合いもするという姿勢で、就任以来、アラブの諸国外交官の方とはいろいろ接触もしておりますし、また、アラブだけの大使の方々との懇談なども持っておるわけでございますから、いまアラブ外相会議で何かあったからといって私は余り悲観的な見方はいたしておらないわけであります。
  245. 榊利夫

    ○榊委員 少なくとも国際舞台であるいは国連の舞台で、アメリカ一辺倒ということで逆にスケープゴートにされるというような、そういう愚は繰り返さない、そのことは私は強く希望したいわけであります。  ところで、ちょっと話がそれますが、鈴木内閣としましては、いわゆる防衛費の問題、これについてはGNPの一%以内にとどめるということをしばしば国会でも答弁を繰り返されておりますが、櫻内外相としましても当然そういう方針だと思いますが、これはそう理解してよろしいでしょうか。
  246. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 GNP一%をめどにしておることは、防衛庁長官あるいは鈴木総理がしばしば委員会あるいは本会議等で言われておることでございまして、私もその考えのことを念頭に置いて行動しておるわけであります。
  247. 榊利夫

    ○榊委員 ところが、外務省顧問の牛場信彦氏が昨年十月一日、大阪の関経連の講演でこう述べておられるわけです。GNP一%問題、それは当然その壁を破らなければならない、こういうふうに主張されておる。外務省の顧問が政府及び外務省の方針と食い違う発言を行っていいのでしょうか。どうなんでしょうか。あるいは、これはそういう事実について黙って見過ごしていいのでしょうか。お尋ねいたします。
  248. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 牛場顧問がそのような講演をなされたことは、実は私、承知していないわけでございますけれども、ただいま先生がおっしゃいましたような講演内容を牛場顧問がなさったということが事実でありますれば、それを前提といたしましてお答えいたしますとすれば、これは牛場氏自身の個人の見解でございまして、外務省顧問ということとは直接関係がないことであろうと思うわけでございます。
  249. 榊利夫

    ○榊委員 いや、これは現物がありますけれども、これは牛場信彦外務省顧問とちゃんと明記してあります。「最近の国際情勢日本の安全保障」、これは外務省から定期的に配付されております出版物であります。そのナンバー二十三にちゃんと掲載をされている。したがいまして、何も個人的ということで済まされるわけじゃないので、公の出版、公刊物の中でちゃんと紹介されている。しかも外務省はお配りになっているのですよ。だから、単純に個人のものだということで済まされない。この事実の上に立ってお尋ねしているわけであります。こういうことがあっていいのかどうか。
  250. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  法律的に申しますれば、外務省の顧問というのは非常勤の国家公務員ということになるわけでございますけれども、人事院規則に基づきまして、その政治的な行動といいますか、政治的な活動及び政治的な意見の表明というものは、国家公務員に定める服務規律の適用から除外されているわけでございまして、個人的な意見としまして講演の中にいろいろな意見を発表されるということは、国家公務員の点から申しましても別に差し支えがないことであるというふうに考えております。
  251. 榊利夫

    ○榊委員 いや、この中には、お言葉をお返しするようですが、私の個人的な意見としましてはなんて、そういうただし書きはないのですよ。仮に個人的な意見としても、それはこういう肩書きでやっておられるわけですから重大だと思うのですね。外務省顧問というのは、ちゃんと外務省設置法によっても「外交上の機務に参画」をする、こういうことがあるわけでありまして、やはりこういう点は、外務大臣といたしましても結構でございますという態度はおとりになれないのじゃないか。まあ注意をするとか、しかるべき対応が必要じゃないかと思うのですけれども、その点いかがでしょう。
  252. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 残念ながら、その講演の全文を承知しておらないのでありまして、一%の問題のところだけをいまおっしゃっておられますが、一体、全体の論旨がどういうものかというようなことも考えなければなりません。もとより、外務省の顧問という立場で講演をされるという場合に、やはりそういう立場を考慮しながら講演をされるのが至当であるということは、これは常識上当然だと思います。
  253. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、その至当でないことをおやりになった、こういうことであります。したがいまして、それは当然だという判断はいま外務大臣されなかったわけですから、この問題、ひとつきちっとしためり張りのある対応をとっていただきたい。こういうことがしょっちゅうあるということはやはりよろしくない、こう思うのであります。  さて、次の問題ですが、極東有事の研究の問題で一、二お尋ねをいたします。  櫻内外務大臣は、一昨日の予算委員会で私たち同僚の中路議員が質問したのに対しまして、つまり極東有事、まあ極東戦争と言った方がいいと思います。欧州戦争、中東戦争、極東戦争——その極東戦争、それが起こる、あるいは極東有事と言ってもいいですが、それでそのときは日本はまだ平時であるわけですが、そういう際に米軍が自衛隊の基地から直接出撃すること、こういう問題に関しまして、基地の共同使用を認めたからといってわが国が相手国から攻撃を受けるということは、国連憲章の個別的、集団的自衛権からいっても違法である、理由がない、こういう答弁をされました。私は、これはもう驚くべき答弁だと思うのでありますが、大体、アメリカが常に正義の戦士じゃないわけでありまして、アメリカの軍事行動が国連憲章で言う自衛権の枠をしばしば乗り越えてやってきたことは明らかであります。インドシナの侵略戦争、これは結局撤兵せざるを得なかった。中東出兵またしかりであります。  そのことを一応指摘した上で、お聞きしたいのでありますけれども、かつて佐藤総理が、これは一九六八年八月十日の参議院予算委員会でありますけれども、こういうふうに言われたわけであります。「私は日本が、安全保障条約でもアメリカ自身が戦闘基地に日本を使うことは事前協議の対象になる。これはもうお断りする。中立、これを厳守する、堅持する、こういう立場だ」こういうふうに明言をされております。櫻内外相としては、そういう立場はとらないということでございましょうか、お尋ねをいたします。
  254. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 自衛隊の基地から云々という場合、これは共同使用の手続をとってのことだと思うのです。  それから、いまのアメリカによる武力行使については、榊委員と私は全く所見を異にするわけです。国連憲章のもとにおいて、個別的または集団的自衛権の行使として違法な攻撃に抵抗するために行われる、そういう場合に、わが国の施設区域が自衛隊の基地の場合、共同使用の手続をとって使用されておる場合、この米軍の行動によって日本が違法な攻撃を受けるということは、それはない。また米軍がそういう行動をとる場合は、これは事前協議の対象になるのでありますから、そのときそのときの状況によっていろいろ判断が行われると思いますが、仮に事前協議で同意を与えた、その与えたということが理由で攻撃することが国際法上認められておるというようなことは私は承知しておりません。
  255. 榊利夫

    ○榊委員 私はこうお尋ねしているのです。先ほど佐藤さんのそれを引いて、事前協議の対象になる、そういう場合はお断りする、中立を厳守するんだ、堅持するんだ、こういう立場だ。そういう立場、態度は櫻内外相としては現在おとりにならないのですか、こう聞いているのです。
  256. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ちょっと先ほど先生が御引用になりました佐藤総理の答弁につきまして申し上げたいと思うのですが、佐藤総理の答弁は、いま先生がおっしゃいました後、引き続きこういうふうにおっしゃっております。  「アメリカの基地があるからといって、アメリカの基地を攻撃するんだ、こういうことを第三国が言うて現実に攻撃した、こういう場合に、中立国日本はどうなるか。日本の国土を侵害しないで、日本の領海、領空を侵害しないで、日本にある基地を攻撃することができるかどうかという問題だと思います。私は、アメリカの基地とは申しましても、これは日本の領空、領土、領海を侵害しないでそういう攻撃はあり得ないと思います。そういう場合だと、これは日本が攻撃を受けたということになる。その場合には、平和憲法を持っておりますが、私は自衛の権利はある、これはもうもちろん日本本土に対する攻撃をされたように考うべきじゃないかと、かように考えます。」  こういうふうに佐藤総理はおっしゃっておられます。
  257. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま条約局長がお答えしたことで明々白々としておると思います。
  258. 榊利夫

    ○榊委員 いま二つの部分に分かれて述べられました。つまり前半で中立を厳守する、事前協議の対象になる、これはもうお断りする。では、そのことについてもそのとおりだ、こういうわけですか。それは確認してよろしゅうございますか。
  259. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 佐藤総理の御答弁を部分的にいろいろこうお尋ねされても、そのときにどういう問題でその御答弁のあるいは質問の行き来があるのか、そういうことを十分頭に置いてお答えしなければならない問題だと思います。
  260. 榊利夫

    ○榊委員 だから、お尋ねしているのです。十分にわきまえてお尋ねしているのです。つまり、ここで私が紹介した、また、いまさっき読み上げられました佐藤総理のかつての発言、それと同じ立場をとられるのですか、あるいはそうでありませんか、こう聞いているのです。
  261. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 だから、いまのその答弁だけでは、私が申し上げることがなかなかむずかしい。全般の質疑応答を、全体のどういう問題のときにどういう質問があって、どういう答弁をしたか。先ほどあなたは一部分だけ言って、私がうっかり下手な答弁をすれば大変なことになる。後の方はちょん切って言っているじゃないですか。そういうことはいけない。あらかじめあなたの方から、何月何日の佐藤首相の質疑応答について質問するからよく勉強してこいというのに対して私がこういうことを言うのでは、これは榊委員に対して大変失礼だけれども、私も残念ながら外務大臣になったからといって古い答弁資料を全部見るなんという余裕はないので、だからいまの答弁でお許しをいただかなければいかぬと思うのです。
  262. 榊利夫

    ○榊委員 私は、いまの答弁は大変重大だと思うのです。一国の総理大臣あるいは一国の外務大臣の答弁というのが古い新しいでくるくる変わる、一体そんな持続性のない答弁であっていいのか。もしそういうものがあっていいとするならば、一体どういうことになるでしょう、国の政策、方針というのは。ああこれはきのうの答弁です、きょうは違います、あしたになれば、ああこれはきのうの答弁でございます、こんなこと許されるはずがないですよ。私は、もっと重いものだと思います。  ところで先ほどの、総理の後があると、こう言いますけれども、読まれましたように、日本から出て行く。そうするとアメリカの基地といっても日本の土地の中にあるわけですから、それに対して相手側が日本に報復攻撃をやるとする。日本の領土、領海内に入ってくる、こういうかっこうになる。そういうことになる。これは、そういうことにならないようにということでしょう。これはそれだけの重大な問題なんです。だからこそ、日本の基地を直接の作戦行動、これに米軍に使わせるようなことについては慎重な態度をとり、ノーを言う、それが日本のために安全不可欠だ、こういうことではなかったのでしょうか。  その点ではどうでございましょう。極東有事の際、アメリカ側から自衛隊基地の共同使用の要請があっても、日本政府としては安全のためにその事前協議ではっきりノーを言う。こういう約束はできないでしょうか、いかがでしょうか。
  263. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 榊委員承知のように、安保条約には事前協議の制度というのがございます。日本の施設、区域を使っての戦闘作戦行動、これは事前協議の対象になる。その場合に、日本政府はイエスも言いノーも言う。これは従来国会で何遍も繰り返して総理大臣以下答弁してきているわけでございます。その判断の基準はまさに国益、国益を踏まえてそのときにイエスを言った方がいいのか、あるいはノーを言った方がいいのか、こういうことではないかと思います。
  264. 榊利夫

    ○榊委員 外務大臣にお尋ねします。
  265. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 事前協議があったときは、その際の諸状況に基づいてイエスもある、ノーもある。これは当然なことで、先ほどもそのことを申し上げておいたわけであります。
  266. 榊利夫

    ○榊委員 いや、先ほどはノーもあるということはおっしゃらなかった。  さて、少なくともそういう不幸な事態にならないように——私は、自衛隊基地であろうと現在の在日米軍基地であろうと、それを使って直接戦闘作戦行動を行うような事態になるならば相手側から報復攻撃を受ける。実現云々は、それは向こうの力次第でしょう。それはしかし道理としては当然だ。それを、では日本の中に入ってきたからということで今度は自衛の名によって日本の自衛隊も参戦をしていく、こういう不幸な論理になってはいけない。結局、よその国同士の戦争なのに日本が戦禍にさらされていく、こういうことになるわけでありますから、いわゆる極東有事研究、この問題は日本の前途にとりましても非常に重要な問題ですし、危険な選択をしないように、そのことをあらかじめここで要望して、次の質問に入りたいと思います。  さて、思いやり予算と在日米軍の問題でございますが、外務省は二月一日に日米合同委員会で五十七年度の基地提供整備の思いやり予算を米側と合意されました。その額は三百五十一億八千二百万で、前年度比二七・三%の増となっております。これは思いやり予算を始めた五十三年度と比べますと、その伸び率は八・三倍ということにもなるので、これは大変なスピードであります。この五十七年度の思いやりの中には、沖縄の牧港に米軍用診療所をつくる、相模原に米軍用の育児所を建設する計画があります。  お尋ねですが、この育児所や診療所は概算要求の中に含まれていたのでしょうか。それからまた、これらの建設費、それから施設の規模、これはどういったものなのでしょうか。
  267. 宇都信義

    ○宇都説明員 お答えいたします。  相模原住宅地区の育児所は、規模が約九百平方メートルで、金額につきましては約六千万円のものでございます。  また、牧港補給地区における診療施設につきましては、規模は約千七百平方メートルで、金額につきましては、五十七年度予算計上額約一億四千万円でございます。
  268. 榊利夫

    ○榊委員 答弁、漏れているのじゃないでしょうか。これは初め、概算要求の中に入っていたのですか。
  269. 宇都信義

    ○宇都説明員 五十七年度の概算要求、八月時点で大蔵省に提出いたしましたその時点から予算の中には入っておりました。
  270. 榊利夫

    ○榊委員 ところで、いまの説明聞いてみましても、かなりの金額であります。相模原市などに聞きましても、この規模だったら普通は一億数千万かかるだろう。  ところで、日本人のための保育対策費はことしは三%減額になっております。保育所措置費も減額であります。医療施設設備費も、がん、循環器疾患対策など減額であります。しかし、在日米軍にだけは手厚い思いやりがやられているようであります。これじゃ、一体どちらを向いているのだ、国民の方なのか、海の向こうなのか、こういう質問が出てくると思うのであります。  お尋ねいたしますけれどもアメリカ側は、米軍の駐留経費については給料以外は全部日本側に肩がわりさせて、どんどん在日米軍をふやしていく腹だ、こういうように言われておりますけれども、この点についてはどう見ておられるのか。現に、思いやり予算がこの数年来ふえるたびに在日米軍も増強されているのじゃないでしょうか。いかがでしょう。
  271. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いまお尋ねの件は、思いやり予算がふえるたびに在日米軍がふえているのではないかというのがお尋ねかと思いますが、在日米軍の総数については、私は、ふえているということは聞いておりません。ただ、在日米軍の配備されている航空機等の近代化というものは図られている、これは事実でございます。
  272. 榊利夫

    ○榊委員 北米局長は御存じないかもしれませんけれども、防衛施設庁は御存じのはずです。どうでしょう。  それでは私が言うから確認してもらいたい。五十三年度、四万三千百人在日米軍がいたはずです。五十四年にこれが四万五千人にふえた。五十五年四万六千人にふえた。五十六年、去年四万六千二百人にふえた。この三年だけで三千名以上も在日米軍はふえているんじゃないでしょうか、どうでしょう。
  273. 宇都信義

    ○宇都説明員 手持ちの資料でお答えいたしますが、五十年度当時は在日米軍約五万五百人駐留しておりまして、思いやり開始の五十三年度には約四万四千百でございます。五十六年九月末の時点では四万六千約二百名という数字になっております。
  274. 榊利夫

    ○榊委員 五十三年四万四千百という数字ですが、いずれにいたしましても、いまの答弁でもこの三年間で三千人近くふえているわけであります。鶏が先か卵が先かは別といたしまして、思いやり予算の増加と在日米軍の増加がやはり足並みをそろえているということだけは間違いないわけであります。  ところで、アメリカでは、日本は安保ただ乗りだ、こういうことが言われております。しかし実際は、アメリカこそ日本列島ただ乗りですよ。それも、宿つき保育所つきです。アメリカのアジア戦略の中で、実際にはアメリカ日本列島を不沈空母として利用しておる。日本の安全、平和、主権、こういった点にとってそれ自体が重大な問題だと私は思うのです。鈴木内閣といたしまして、在日米軍については減らすというのが方向なのか、あるいはふやすというのが方向なのか、どうでございましょう。
  275. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほど、まず第一点としてただ乗りだというふうに言われましたけれども日本が在日米軍のために払っている経費は、すべてひっくるめまして約十億ドルでございます。それに対して、アメリカ側が経費を負担しているのが十四億ドルというふうに言われております。したがって、必ずしもただ乗りということは言えないと思います。  それから、政府としては在日米軍を減らす方に向いているのか、ふやす方向に向いているのかというお尋ねでございますが、先ほど来の数字の御説明がございましたが、大体四万六千ということで現在推移しておるということが言えるかと思います。これは日本アメリカとの両方の考え方として、日本の安全あるいは極東の安全と平和のために、現在程度の規模がいまの国際情勢のもとでは妥当ではないかということに相なるのではないかと思います。要は、むしろその数が減るかふえるかということよりも、日米安保体制がいかに有効的に、かつ円滑に機能していくかということにかかっているかと思います。
  276. 榊利夫

    ○榊委員 それではお尋ねいたしますが、アメリカは十四億ドル出している、だからただ乗りじゃないという弁解でございますけれども、公務上の事故、これは安保条約が発効しましてことしの四月でちょうど三十年でありますが、この間に、その事故件数はどのぐらいになっておりますか。それによる日本人の死亡者数は何人でしょうか。それから公務上の事故の補償金額の総計は幾らになるでしょうか。この三点、お尋ねいたします。
  277. 近藤孝治

    ○近藤説明員 お答えいたします。  地位協定の十八条関係の事故発生件数は、講和発効後から五十六年九月末現在で、公務上が三万八千四百七十四件、公務外が十一万七千八十三件でございます。この大部分の、約八割は車両事故でありまして、このうちの大半は追突、接触等の比較的軽い物損事故になっております。死亡者数でございますが、公務上、公務外それぞれ四百九十四名、四百七十九名ということになっております。  次に、公務上事案の補償額でございますが、それまでの期間の累計額が三十四億四千二百万円になっております。これは約でございます。
  278. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、事故によりまして人命の損失、死亡者だけでもかれこれ千名に近い九百七、八十名、かけがえのない命が奪われているわけであります。事故数にしましても、十五万を超えるのですから大変な数です。しかも、補償金額といいますけれども、その補償金額の中で、日本側はまた持たされているのでしょう。日本側が持った補償金額は幾らになります。
  279. 近藤孝治

    ○近藤説明員 米軍の公務上の事故の場合には、補償額のうちの七五%を米側が負担いたしまして、日本側が二五%を負担することになっておりまして、そのように負担してまいっております。
  280. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、三十四億の二五%を日本側が持ってきた、こういうことですね。
  281. 近藤孝治

    ○近藤説明員 そういうことでございます。
  282. 榊利夫

    ○榊委員 もう時間が参りましたのでそろそろ締めくくらないといけませんけれども、こういうように見ますと、安保条約というものがいかに高くついているものなのか、だれでもわかることであります。安保を基軸としてという御答弁でございましょう。先ほどそういう質問でございましたけれども日本というのは西側陣営でもなければ東側陣営でもない。日本日本、どこの国とも平等互恵でやっていく、経済的にも文化的にもということでなくてはいけないと思うのです。安保ただ乗りなどと言ってまた日本に——アメリカこそ日本列島ただ乗りで、軍拡軍拡、そして二つの軍事ブロックの中の軍拡競争の中に日本が巻き込まれていく。これは避けなければいけない。そして、在日米軍基地が続くほど、米軍がふえるほど、また日本人の被害は大きくなるのです。この五年間だけとってみてもいろいろな不幸な事件が起こっているわけであります。公海上のあの日昇丸、これはこの中に入っていません。日本の船員が二人死亡された。こういったものは数字が入っていません。だから、もっと大きくなる。  しかも、アメリカが限定核戦略で極東戦争に突入すれば、さっきの話ではありませんけれども、結局は日本列島も巻き込まれる、その危険もそれだけ大きくなるわけであります。そういう点では政府とわれわれは立場は違います、見解は違いますけれども、米軍基地の撤去、撤退、これがやはり究極的には本当の日本の安全の道になる、私はそのためにこそ努力すべきではないかということを最後に主張しまして、質問を終わらせていただきます。
  283. 石井一

    石井委員長 次回は、来る三月二日火曜日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十七分散会