運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1982-07-28 第96回国会 衆議院 大蔵委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年七月二十八日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 森  喜朗君    理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君    理事 小泉純一郎君 理事 中西 啓介君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 和田 耕作君       麻生 太郎君    熊川 次男君       椎名 素夫君    中村正三郎君       森田  一君    柳沢 伯夫君       大島  弘君    佐藤 観樹君       野口 幸一君    平林  剛君       正森 成二君    蓑輪 幸代君       小杉  隆君  出席政府委員         大蔵政務次官  山崎武三郎君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         国税庁直税部長 角 晨一郎君  委員外出席者         防衛庁防衛局計         画官      宝珠山 昇君         参  考  人         (日本銀行理         事)      三重野 康君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 七月八日  辞任         補欠選任   木村武千代君     金子 一平君   中村正三郎君     倉成  正君   平泉  渉君     奧野 誠亮君   柳沢 伯夫君     村山 達雄君   玉置 一弥君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   奧野 誠亮君     平泉  渉君   金子 一平君     木村武千代君   倉成  正君     中村正三郎君   村山 達雄君     柳沢 伯夫君   竹本 孫一君     玉置 一弥君 同月二十七日  辞任         補欠選任   蓑輪 幸代君     安藤  巖君 同日  辞任         補欠選任   安藤  巖君     蓑輪 幸代君     ————————————— 七月十四日  不公平税制の是正、勤労者に対する物価調整減  税の制度化等に関する請願(阿部未喜男君紹  介)(第四二八四号)  同(戸田菊雄紹介)(第四三二〇号)  同(池端清一紹介)(第四三九九号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願佐藤誼紹介)(  第四三三七号) 同月二十一日  一兆円所得減税に関する請願山田耻目君紹  介)(第四五一四号)  中小企業承継税制の創設に関する請願赤城宗  徳君紹介)(第四五五三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 森喜朗

    森委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、本日、本件調査のため、参考人として日本銀行理事三重野康君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 森喜朗

    森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  5. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 きょうは、大臣外国出張中でありますが、大蔵省皆さんに当面する幾つかの問題をお伺いしたいと思います。  たしかこの前の委員会がありましたとき、ちょうどシーリング閣議決定ではなかったかというふうに思いますし、シーリングから後さまざまな問題が起きておりますが、これからどうしていくのか、たくさん問題があるわけでありまして、順次それをお伺いしたいと思います。また、シーリングを発表された後の各新聞の論説を見ましても、相当厳しい批判がずいぶん出ているわけでありまして、それらにどう対応するのかということも国民の関心のあるところではないかと思います。それらの五十八年度予算シーリングから編成へという過程の中で起きる問題をお伺いしたいわけでありますが、その前に、前年度並びに今年度処理の問題、その後どうなっているか伺いたいと思います。  まず最初に、五十六年度歳入欠陥処理、この大綱の考え方は前の委員会でも御報告がありました。それらがどういうスケジュールとどういう執行という形で進行しておりますか。また、決算のことでありますから時間の余裕はあるわけでありますが、どういう方法でこれを処理しようとしているのか、説明してください。
  6. 窪田弘

    窪田政府委員 五十六年度決算は今週末、今月の末でございますが確定をいたしまして、その処理をいたすことになっております。  現在のところ、いままで申し上げていた数字と大きな変わりはございませんで、税収欠陥が二兆八千八百億、税外収入の増加が千二百億、反面、歳出不用額が二千六百億円、差し引きいたしまして歳出歳入決算上の不足額は約二兆五千億円でございますが、これを決算調整資金からの組み入れ二千四百億円、なお不足いたします分は国債整理基金から決算調整資金への繰り入れによりまして穴埋めをする、この額は二兆二千六百億円。十億程度のオーダーで最後の確定の時期には動くこととなろうかと思いますが、いままで御報告申し上げていた数字に大きな差はない見込みでございまして、今週末、今月末にその処理をいたす予定でございます。  ただ、国債整理基金から組み入れました分につきましては、その組み入れた翌年度、つまり五十八年度までにこれを戻さなければなりませんが、それの時期及びどんな財源でやるかということにつきましては、今後の財政事情その他いろいろな情勢を勘案いたしまして検討してまいりたいと考えておりまして、現在のところ、まだはっきりした方針を決めるに至っておりません。
  7. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大きな内容は決算調整資金国債整理基金からの借り入れになるわけでありますが、これをどう思っていますか。  御承知のとおりに、決算調整資金に関する法律第一条には「予見し難い租税収入減少等により一般会計歳入歳出決算不足が生ずることとなる場合において」とありますね。膨大な歳入欠陥が出た、当初予算比較をして約三兆三千億、これが予見しがたい租税収入減少であったかどうか。新聞を読んでも、エコノミストとかいろいろな経済評論家が書いている論文を読んでも、予見しがたい租税収入減少であったかどうか。これについては、予見しがたいのではなくて予見し得たはずであるし、あるいはまた人災ではないかということが、私どもも言っておりますし広く言われている。予見しがたいのでやむを得ないと言うのは大臣大蔵省皆さん方が言うだけ、ひとり孤立して言うだけというのが現状であろうと思います。  済んだことを余り言ってもしようがありませんが、いずれにしても、五十六年度から経済伸び率税収その他全体の構造が変わってきたということも指摘をされているわけでありまして、今後のこと、あるいは他山の石としてこの辺は正直に言ってどういう感想をお持ちですか、また今後こういうことのないようにどう対応されるつもりですか。法律の第一条にある意味では触れる問題だと思うのですね。
  8. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいま伊藤委員が御指摘になりましたように、決算調整資金政府が活用させていただきます場合に、予見しがたい税収不足等が要件になっておることは御指摘のとおりでございます。五十六年度決算は今月末に数字確定いたしますが、たびたび御説明申し上げておりますように、現段階補正後の予算見積もり額に対しまして約二兆八千八百億円の税収減が避けられない状況にあることは御案内のとおりでございます。  どうしてこういう事態に立ち至ったかということでございますが、五十七年度予算の御審議過程で、予算委員会あるいは大蔵委員会等におきましてたびたびこの問題が論議されたことは私どもも重々承知いたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、税収の足取りから見まして、五十七年一月税収までの時点と二月の時点で、主として法人税それから三月に参りますと所得税税収伸びが予想に反しまして急激に鈍化してまいったことが判明したわけでございます。私ども、一月末の税収見積もりが判明いたしておりました三月、ちょうど参議院で本予算審議されておりました段階までは、何とか達成できるのではないかというふうに考えておったわけでございますが、結果として非常に大幅な税収不足になったわけでございます。  私ども、いまの段階におきまして弁解を申し上げるというふうな気持ちは毛頭ございませんで、そういうふうにお受け取りくださらないようにという前提で申し上げるわけでございますけれども、私ども今回の苦い反省を通じて痛感しておりますことは、マクロ的に見まして、税収経済動向に密着しており、経済動向をそのまま反映しておるということは、これはそのとおりでございますけれども、問題は、税収見積もりなり歳入見積もりをいたします場合に、ある会計年度の期間内に具体的な税収額として国庫に幾ら入ってくるかということが一番問題になるわけでございまして、その場合に、実体経済動きと具体的に税収国庫に入ってまいります間のタイムラグと申しますか、こういうものが第一次石油ショック以後各年を見ますと、年によりまして経済動き税収動きタイムラグというのがあらかじめきちんとわかるというふうなかっこうには必ずしもなっておりませんし、そのときどきの経済動きによって非常にまちまちであるわけではございますが、今後の反省といたしまして、私どもは、そういうマクロの実体経済動きを見ながら、反面、具体的な税収をきちんと追跡するという意味におきまして、なるべく早く、特に経済の激動期におきましては、全国五百余りの税務署があるわけでございますが、実際に収納当局の窓口に刻々入ってまいります税収を早くキャッチする。これも常々申し上げておるところでございますけれども、それから特に各国の歳入見積もりの経験に徴しましても、一番見積もりがむずかしい、あるいは経済激変期に上に狂ったり下に狂ったりするぶれの大きいのは、実は法人税でございます。  法人税につきましては、御承知のとおり約百四十万の法人があるわけでございますが、数にいたしまして、そのうち九九%以上はいわゆる中小法人でございます。大法人につきましては、かなりのカバー率でもちましてヒヤリング等の手法でなるべく早く情報をとるように従来も努力しているわけでございますが、今後ともこの方向はひとつ進めると同時に、そういう数の多い中小法人につきまして、何かそのサンプルのシステムを考えまして、そういう激変期には早く情報が入ってくるようなやり方をひとつ早急に考えてみたい。  そういうことを通じまして、歳入見積もり精度をさらに上げるように今後とも努力をしたいということでございまして、その辺の事情を御賢察いただければ大変幸いに存ずるわけでございます。
  9. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 主税局長前任者のときに起こったことですから、あなたに余り言うつもりはありませんし、さっき申し上げましたように、これを反面教師か他山の石として五十八年度、これから質問いたしますが、今後の対応について十分留意していただきたいという意味であります。  要するに、決算調整資金に関する法律の第一条にある「予見し難い」云々ということに関連して言うならば、大方の世間の人が予見したのであって、まあ予見し得なかったのは皆さん方の方、しかもこれは政治の圧力その他があったことでしょうからいろいろあるわけですが、担当当局としてこういうことを繰り返さない姿勢だけはきちんと持っていただきたいと思いますし、主税局長ちょっとおっしゃいましたが、それに対応するさまざまな研究手段というものもきちんと持っていくようにお願いをしたいと思います。  それから国債整理基金からの繰り入れ、二兆円余りの大きな額になるわけでありますし、基金残高は一挙に三分の一くらいに減ってしまうということになるわけでありますが、これの処理について、決算調整資金に関する法律の附則第二条第二項ですか、この繰り入れの問題について「繰入れについては、基金状況国債償還見込みその他の事情を勘案し、国債償還等基金運営に支障を生じないようにしなければならない。」当然のことですが、そういう規定になっております。  そういたしますと、さっきの窪田さんの答弁でちょっとあいまいなんですが、繰り入れを決めたら、その処理を現法律ルールどおりにきちんとするということをその時点で明確に決めておくということは当然の責任であろうと思います。先般の財政制度審議会の答申の中にも、そういう見通しのけじめをきちんと明らかにしなければならない、それをしないといろいろと混乱が起きるというような趣旨があったと思います。その辺は、当然でありますが、五十八年度処理は現在のルールどおりにということを取り崩すときにきちんと決めるということだと思いますが、どうでしょう。
  10. 窪田弘

    窪田政府委員 御指摘のように、法律にそうはっきり書いてございますので、その法律のとおりにやる。ただ、五十八年度までに返すということでございますから、五十八年度予算編成のときまでにこういう問題もあわせて考えるわけでございますが、現在はこの法律があるわけでございますから、この法律のとおりにやることと考えております。
  11. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 この間の委員会議事録を見ますと、大臣もちょっとその辺は含みを持った答弁をいたしておりますけれども、これを処理する時点、取り崩す時点でどうするのかということがあいまいだということじゃ、やはり非常にまずいと思うのですね。正直に言って、現在の法律どおりに執行するのはとても無理だから、法律も変えてもらわなければならぬとか、どう思っているのですか。
  12. 窪田弘

    窪田政府委員 これを取り崩すといいますか組み入れるのは、もう今月の末に決算のときにやらなければならないわけですが、それではいまどうするかとお尋ねがあれば、いまは法律があるわけでございますからその法律どおりやります、こういうわけでございますが、ただ問題は、また五十八年度予算の問題、つらさの問題もございますし、また、その間仮に五十七年度補正などがありましたら、そのときにどうするかという問題もあり得るわけでございますから、そういった今後の財政状況その他もろもろの状況をよく考えまして、この問題も含めて検討いたしたいと思っておりますが、しかし、法律にそういうふうに書いてある以上、そうやりますというお答えにならざるを得ないわけでございます。
  13. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 窪田さん、私は細かいパートのことをえらく詰めようというつもりじゃないのです。  後で申し上げますが、どっちにしても処方せんをその時点責任を持ってどうするのか、それについては全体的な信頼度の高いあるいは責任を持った全体の見通し、そういう中で国民に御理解をいただくというようなものがなければいかぬだろう。そうでなくて、何だかよくわからぬ、とにかく現法律はそうなっているが、五十八年度には予算編成の中でとても無理だから、その時点でまた法律を何か出してこようとか、こそくなあれをとらない方がいいというつもりでありますから。  それから、決算調整資金金額にいたしましても国債整理基金にいたしましても、それぞれほとんどが保有国債という形で運用されている。この間新聞で見ましたら、国債整理基金の保有する国債四千億円を日本銀行に引き取ってもらう、買ってもらうというふうな報道が載っておりましたが、何かこの四千億円については買い戻し条件つきということだから特に大きな問題はないのだというふうなことでありますが、それはどういう解釈か。  それから、そういう条件か経過があった以外、市中から買い入れた国債整理基金保有国債、これらを日銀に引き取ってもらうということは財政法上大きな問題があるということであろうと思いますが、二兆円以上崩すわけでありますから、それらの対応はどうなさいますか。
  14. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 六月末の残高が三兆六千億ございまして、短期で持っておりましたのが二兆二千億ございます。長期が一兆四千億。それで、二兆二千億の中に四千億運用部に売って二兆二千億になっておるわけですが、さらに、いまお話がございました四千億を日銀に戻すということをやったわけでございます。  お話のとおりのことでございますけれども、第一点は日銀との関係でございますが、基金資金の効率を上げるというような観点から、余裕資金短期運用するよりも長期運用したいというような観点から、金が、キャッシュが要るようになったときには日銀に買い戻してもらうという約束で、そういう利回りの観点から国債基金が買ったものが四千億あるわけでございます。そういう意味で、金融的な面あるいは財政的な面から見て、法律的にも実質的にも何ら問題ない、そういうふうに考えているわけでございます。
  15. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 理財局長、ついでにちょっとお伺いしますが、何かこういう心配が雑誌を読んでおりますと出ておりました。  日銀買いオペの対象に運用部保有国債を取り扱っていく。そしてできた余裕金運用部新規国債を買わせる。財政法上、日銀引き受けは当然明確にできないわけでありまして、言うならば事実上の日銀引き受けというのか、運用部をトンネルにして日銀に引き受けさせるようなことにこのままいけばなってくるのではないか。しかし、これは財政法解釈からいってもいろいろと重大な問題が出てくる、運用上の大きな問題になるのではないかという懸念の声もあるわけであります。理財局長、歴史に残るあの有名な国際的英雄の名前と比較されたのでありますから、気骨を持って、法律解釈を曲げることはしないと思いますけれども、どうでしょう。
  16. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 財政法の五条の問題でございますので主計局の問題になりますが、あえて私から御答弁させていただきますと、あのただし書きに、特別の事由がある場合には国会議決の範囲内で日銀が引き受けることができるという条文がございます。したがって、いま運用部が十六兆ばかり原初的に引き受けた公債があります。公債を売り出したときに運用部が引き受けた分のたまった分が約十六兆ございます。これは一般金融機関公債を引き受けたと同じような意味合いを持っているわけですから、その国債市中に売ったり日銀に売ったりするということは、法律上は何らいまの財政法五条のただし書きに抵触しないと思うわけです。  ただ、そのただし書き趣旨というのが一体どういう意味であるのか。結局、通貨創造公債を消化するについては国会議決が要るぞという意味だと思います。したがって、現在のような金融情勢、要するに日銀通貨供給買いオペというようなかっこうで供給しないで済んでいるというような状況、そういう場合には買いオペの相手である運用部公債を持つ理由がないわけでございます。そういう理由が出てくれば何ら法律的に問題はない、運用部保有国債日銀に売っても問題はない。ただ、現在の状況はそうではない。  もう一回繰り返しになりますが、法律、形式論的には何ら問題がない。ただ、趣旨から見て、実質的にはそのときどきの金融情勢なり資本市場状況というようなもので判断されてしかるべきではないか。現在は、そういうことで形式的には問題はないけれども、実質上そういう必要十分な条件を満たしていないのでやりたくない、そういうふうな考えでおります。
  17. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 法律というものは純論理的に解釈する場合とその趣旨とあるかもしれませんけれども、そういう条文がどういう趣旨とどういう懸念、どういう心配でもってつくられたのかということが運用に当たる部面では第一に配慮されるべき問題でありましょう。そして、これは当然なことでありますが、国債大量発行が、昨年もことしも七月は休債だとかあるいはさまざまの種類のものをどうするかとか、また金融市場全体に与えるショックも非常に大きい、こういう状況でありますから、形式的な法文解釈ではなく、趣旨、あるいは日銀の方でも、当然でありますがさまざまの今日の情勢対応する考え方があるわけでありまして、そういう趣旨対応するようにお願いしたいと思います。  いずれにしても、イージーな法律解釈のもとにイージーな運営になったら大変だ、これは重々御承知のことでありましょうけれども、そういうことにならないように当面はやっていただくべきではないだろうかというふうに思うわけであります。  それから、五十七年度処理の問題に入っていきたいと思います。  ようやく第一クォーター、第一・四半期が終わろうとしているのでありますから、来年五月、六月までの全体の見通しがどうなるのか、正確な計算はもちろんできないと思いますが、さっきも主税局長が言いましたいろいろな形での見通し、試算、検討、情報、いろいろな努力をしていかなければならない。それは遠い先というよりも今年度運営に当たっても当然必要なことであろうというふうに思います。現在、五十六年度経済状況の全体の構造がドラスチックにすぐ変わる、改善をされるという状況でもないと思います。  どうでしょう、約四兆円台の欠陥は避けられないのではないかという見方が多いわけでありますけれども、五十六年度と同じように当初予算比較一〇%ちょっとマイナスであったという場合もありますし、それから五十六年度増税部分を抜きにした伸び率から言えば七%台ぐらいにとどまっているというふうなことではないかと思います。その辺のことからいったら、来年の春から初夏までの景気はいろいろな変動条件があるでしょうから全部はわかりませんが、しかし、たとえばいまの条件、いまのような仮定でいった場合に相当の金額にならざるを得ない、そうならなければいいがなというふうに日夜主税局長としては思われているだろうと思うわけでありますが、その辺の姿勢をどう持ちながら、これから夏そして秋に向かっていこうとしているのか。どっちにしても年度処理というふうなことはできない深刻な状況であろうと思いますから、早目対応もとらなければならないということであろうと思います。  それから、その処理方法でありますが、もしそういう歳入欠陥が大きく出た場合には、方法論としては五十六年度と同じ処理はできない。決算調整資金もありませんし、あるいは国債整理基金を全部崩してしまうのか。五十六年度にとったような応急措置を五十七年度にとるわけにはいかない。どうしても方法論としては、処理方法は大部分赤字公債発行ということしかない。補助貨幣の一兆幾らというのがありますけれども、これも法改正が必要なわけでありますから、今年度処理に使うというわけにはいかないのじゃないかというふうに思いますが、その辺、一五十六年度と同じ状況でいった場合に一体五十七年度はどういうことになるのか、そうなった場合に処理すべき方法論は一体どう考えられるのか、何も年度末幾ら出たからこの金額をどうするかという意味ではありません。現段階の議論でありますが、どう思いますか。
  18. 窪田弘

    窪田政府委員 確かに、御指摘のように、五十六年度税収減が五十七年度のいわゆる土台に影響することは否定できないと思いますが、しかし、現在まだ年度が始まったばかりでございますし、どの程度になるか、その程度によって結局対策も考え方もいろいろ変わってまいるわけでございますし、私どもも、正直なところ五十六年度思わざる、さっき先生は予見していたじゃないかというお話もありましたが、五十六年度に本当に予見し得ざるあれがあきまして、本当にどうしたらいいかちょっと思い悩んでいるというのが実際のところでございまして、まだこういうふうにするというはっきりした方針をいまの段階では申し上げかねるのが率直なところでございます。
  19. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 五十六年度経済状況や歳入構造が変わらなかった場合、あるいは五十六年度に出た歳入欠陥の比率が続いた場合にどうなるのかということは、前回も数字が出ておりましたし簡単な試算でありますからあれでありますが、しかし、これは考え方の問題ですよ。現実四兆五千億出たからこの四兆五千億をどうしますかという段階の議論をしているわけではありません。ただ、そういう可能性が非常に大きいと私は思います。ある意味では、これは避けられないというふうにも言われているわけであります。その場合にどういう処方せんか、どういう方法を描くのかということ自体もわからぬということは、それは論理の問題として、論理のものでありますからないので当然でありますが、五十六年と同じ方法論処理をする手はずはできない。大部分のものは赤字公債処理しなければならない。あたりまえじゃないですか。
  20. 窪田弘

    窪田政府委員 おっしゃるように、方法といたしましてはまず歳出を切り詰める。七月に主計局長通達を出しまして、経常的経費、補助金、それから現在執行の予定のないもの、これを留保していただく。予算の大体一〇%、経常的経費の一〇%程度をめどにして、金額にいたしますと千億という額を目標にしていま留保を各省にお願いし、検討していただいております。  しかし、歳出面で大きく削るというのも限度がございますから、反面、歳入面におきまして国債発行あるいは税外収入を総動員する、こういうふうなことになろうかと思います。ただしかし、それはどの程度の額になるかによりまして、またどの範囲まで検討の対象にするかということも決まってまいる要素もございますので、今後の推移をもうちょっと見さしていただきたいと思っております。
  21. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 窪田さん、節約することだけ言いましたが、節約の方だって去年はたしか三百六十億ぐらいでしたか、三百億台ですね。旅費などの五%。ことし一〇%。旅費、光熱費などのいわゆる一般経費一〇%節約、一千億以上にしたいというお話でしたね。危機感を持っているならば、何か政策判断、政策順位をつけて、こういうものはこうすべきではないか、もう年度末になる前に借金して穴埋めをしようと思っても、どうにもならぬ状況になりますよというふうな危機意識をもっと鮮明に持って、そして広く国民に理解を求める、あるいはそういう対応を積極的に提起をしていく。いま置かれている現実はそういう状態なんじゃないでしょうかね。あなた方の方がよくおわかりだ。  それから、赤字公債をもって穴埋めをしなければならない、大部分のところが。そのほかにすべはない。これも来年のいまごろの話ではなくて、国債発行状況その他を見れば、もうこの秋、とにかくなるべく早い時期に見通しを示して対応策をとる、そういう考え方だということを一定の早い時点経済界に対しても明確にするということが絶対必要な条件になるわけでしょう。  ですから、その節約令といいますか主計局長通達ですか知りませんが、そういうことにしろ、主計局長通達だけという形でいいのか、あるいはもっと強いさまざまの努力を、これは大臣いらっしゃいませんけれども、閣議にも提起をしてやってもらう。それから、その見通し、額はまだわからぬけれども、こういう形でしか処理方法はありませんということを言うとかという状況ではないかと思うのですが、そういう意味から言うと、何かまだ、腹の中は深刻なんだろうけれども主計局の言い方はのんびりしているじゃないかという感じですが……。
  22. 窪田弘

    窪田政府委員 おっしゃるように、できるだけ早い時期に方針を決め、アウトラインを作成しろという御指摘は本当にそのとおりで、私どもも、早目にいろいろ見当をつけていくことが望ましいとは考えますけれども、しかし具体的に五十七年度税収がどうなるかとか、そういう点になりますと、まだ年度が始まったばかりで、もう少し経済情勢動きを見なければならないというふうなことで、いますぐそういったはっきりした時期や中身を申し上げることはむずかしい、こういうことでございまして、御指摘方法についてはそのとおりだと思っております。  それから、先ほどの留保につきましては、形は主計局長通達でございますが、その根っこは七月九日の閣議了解でございます。
  23. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 五十七年度のこと、余り時間をとるわけにいきませんので、理財局長にもう一つだけ伺っておきます。  いろいろと新聞を読んでおりましても、春のころは、ことしは大丈夫かなと思ったら、去年と同じようにまた休債条件改定、これから先の見通しにしてもより一層深刻さを加えているという状態に実はなっている。報道で読んでおりますと、条件改定交渉でも、もう間もなくですか、表面利率を〇・五上げることになるのかとか、いろんなことが言われております。あるいはまた、昨年もそうでありましたけれども、超長期国債を出そうとか私募債がどうとか変動利付国債発行がどうとか、いろんな研究もなされているようであります。いろいろと、胃の調子には悪い影響しか与えない話ばかり続いているということだと思いますけれども、しかし全体の流れを見れば、要するに、そういうさまざまの具体的な対応策で解決がつくということでもないだろうと思います。  この間何か読んでおりましたら、この国債市況の暴落も、五十七年度は赤字国債処理せざるを得ない。しかし今国会には出さない。総裁公選があって、その後でないと困る。年末か来年になる。それじゃ、その時点で集中発行なんてとても消化できないなどなどの状況の中で、そういう政府処理方針みたいなことを官房長官かどなたかおっしゃった途端に暴落をした。まあ言うならば、政治判断なり対応策が政治的にはまずいからこうなっているというのがベースであろうと思うのであります。  申し上げるまでもなく、十一月以降大量発行とか一−三月に集中発行とかとなれば、シ団の条件闘争だけではなくて、金融市場全体に大きな影響を与えるということになるわけであります。いずれにしても先見性のある対応、それを全体をどう持っていくのかということが一番大事なことではないだろうか。大臣も、補正は一回の補正で済むのかどうかわかりませんが、とにかく去年のように一月ごろに四千億減収見込みとか補正とか、そんな間違いじゃなくて、相当きちんとした、補正早目にということを言われているようでありますが、これは政治家のぐあいがどうとか与党の総裁公選がどうとかという以上に、経済を預かる場として、こうすべきである、こうしないと大変だということを補正の時期その他を含めてきちんと提起をする責任大蔵省のそれぞれの担当の責任者が持っているのではないかというふうに僕は思うわけでありますが、今日の金融市場あるいは国債発行状況などなどを含めて、どういう対応姿勢をとられますか。
  24. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 五十七年度国債消化問題というような御質問かと存じますが、私としては、三つ問題があるというふうに考えております。  一つは、十一月の財政支出のピークが来るわけでございます。六月もピークなんですが、これは何とか越えたわけですが、蔵券の限度が七兆四千億ある。このピークが越えられるかどうか、予算総則の修正等々の機会がないという前提で考えた場合に、蔵券の限度を超えないようにしなければならない、そういう問題がございます。  それから二番目には、歳入不足というのが起こる、これがいついかなるかっこうで私どもの方の手に渡ってくるのかという、そのうち市中消化を幾らやらなければならないかという問題が第二点でございます。  第三点は、昨今の公債価格の低落の問題、金利の要するに上昇の問題、この三点だろうと思うわけです。  第一点でございますが、これは税収状況なり歳出の進捗状況なり公債の消化状況にかかわるわけでございます。それで、本年予算上十兆四千億でございますが、借換債等を入れまして、市中であと消化しなければならない金額が約五兆円ございます。これをできるだけ早く消化したい。たとえばで言いますと、中に公募の中期債がございますが、仮に十二月までに消化しようとしますと、二週間に一遍くらいの割でやらなければならない、これはほとんど不可能事でございます。そういうようなことで時間との競争であるわけです。本質的には、現在金融が緩んでおるという認識を持っておりますが、したがって、消化ができないわけがないということで、問題は時間がどれだけあるかという問題になります。  それから二番目の、大量に増発があるかどうかという問題これは先ほど申しましたように、いつどういう時点で幾ら消化しなければならないようになるか、一−三月の消化実績というのは過去にあるわけでございますが、そういうような実績がありましても、そのときどきの金融情勢によって、これは変わってくるわけでございます。それに対してはいろいろなことを考えておかなければならない。多様化に尽きるわけでございますが、そういうような勉強をしなければならない。  それから三番目の問題は、ただいま御言及がありましたが、七月休んだという問題に象徴されておりますが、七月休みました理由は、アメリカの金利が低下傾向にある、それが国内の金利にどう影響を与えるか、なかなか読み切れないという問題がございまして、現在もそういう状態が続いておりますが、あと八、九、十、十一と四カ月でございますので、八月は何としても条件改定をしてでも消化しなければならない、そういうふうに考えております。  総じて五十七年度は、私はそんなに深刻に考えておりません。いろいろの手だてをとることによって解決ができるというふうに、またそうしなければいけないというふうに思っております。
  25. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 理財局長、いま三つおっしゃいました。いろいろ苦労がありますが、そう深刻に考えていないというあなたらしい判断もありましたが、僕が伺いたいのは、いままで伺ってきた、五十七年度相当量予想される、またせざるを得ない歳入欠陥あるいはその処理、そういうことについても量が大きいだけに、年度末にどううまく処理するかということから言っても、金融市場から言っても、これは大変な問題になる。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕 いずれにしても、やや早目ぐらいにその方向づけは明確にする、そしてその見通しの中で的確な対応をとっていく、これは経済界も世論もみんな言っていることですよ。  そういう意味から言ったら、国債の追加発行の問題にせよ、あるいは歳入穴埋めの赤字公債だけではなくて景気対策の建設国債の増発ということもどうなりますか、さまざまな議論があるようでありますね。そういうことをやはり早目対応をとっていく。そして大臣も言っているように、それらの対策は、たとえば補正が必要な場合には早目にということが担当者としてはあるいは担当責任者としては非常に大事である。また、そういう意味での提言なり努力もしていかなければならない。むしろそれが一番ベースなんであって、報道されているような国債の形式をもっと多様化する工夫も必要ですよ。しかし、それが主眼なんじゃないのじゃないかということ、どういう気持ちで努力していくつもりかということを聞きたかったわけです。
  26. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 いま申し上げたつもりなんでございますが、一つは、要するに早く決まってしまっているものを消化しておきたいということでございます。  先般の当委員会におきましても、私としては、十一月までに五兆円全部できれば消化してしまいたい、そうすれば、いまの御指摘の増発なり追加なりの問題、これは率直に申して、幾ら、いつの時点確定するかわからないわけでございますので、いまやらなければならないことは、ともかくできるだけ早く既定の分を消化してしまう、そうしてその間に追加されるであろうものをどういうふうなやり方で円滑に消化できるようなことを図れるかという、そういう用意をしておく、この二段構えでやるということだろうと思っておるわけでございます。
  27. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 そういうことも五十七年度全体をどう運用していくか、そして来年度にどう向かっていくのかというのにつながってくるわけでありますが、シーリングが出た後、各種のいろいろな評論それから論説などを読んでみましても御案内のとおりに、何新聞のタイトルは何ということを一々言いませんけれども、相当手厳しい論評がなされている。御承知のとおりであります。  何新聞でしたか、私が一番感心したのは、解説のこういうタイトルでしたね。出たとこ勝負の予算づくり、財政再建の理念なし、小手先細工になるおそれ、うまく言っているなというふうに思ったのですが、何も皆様方の能力と努力を軽視する意味じゃないですよ。現実に出てきているものですね。その中で出てきているのは、予算編成の前提条件を問うとか、こういうメニューの作業を始めて五十七年度及びこれから先どうなるのか、五十九年赤字公債ゼロというふうに言っているけれども、これは完全に崩壊したではないか、一番大きな問題は、これから先財政経済税制含めて運営はこうしていくんですよ、そういう中で五十八年度予算についてはこういうシーリングでこうしていくんだという展望性を示すことが大事なんだけれども、それが全然出ていない。まあ臨調もあり、歳入欠陥もあり、マイナスシーリングにしなくちゃならぬ。マイナス五%原則の結果が二千数百であったことは別にして、一体どうしていくのだろう、それがわからぬという意味での論評が非常に多いということだろうと思います。とにかく非常に重要なときであるだけに、そういうことをどう示すかということ、これは皆様にお尋ねするだけではなくて、私ども野党も含めて懸命に勉強しなくてはならぬというふうに実はよく私も思っているわけであります。  そういう角度から言いますと、政治家の大臣の話よりも皆様方とここでもっと明確にきちんとしなくてはならぬ非常に大きな問題があるのではないだろうか。特に赤字公債を減らす、五十九年度ゼロにする、増税なき財政再建というメニューが行政の最高責任者から依然として繰り返し言われているわけであります。みんなは疑いの目を持っているし、できるはずはない、破綻したというふうに思っている。この情勢でありますから、鮮明な旗印を掲げて、この方向でみんながんばりましょう、努力をしてください、よろしくお願いしますと言うべきところでありましょうが、その旗はすっかり色さめて何だかわからぬという状況だろうと思います。それをどうするのかということが、私どもを含めてみんなの大きな責任ではないだろうかというふうに実は思うわけでありまして、その辺をもっとはっきりさせるべきである。報道を読んでいますと、何か同僚与党大蔵委員理事の中で総理にちゃんと言いに行った人もいるらしいし、あるいは閣議の席でも有力閣僚の中からそういう意見が大分出たようであります。また、与党・政府の協議の中でも重要責任者の方からそういうことも相当強く出ているということのようであります。  そこで、一つの端的なシェーマとして一体どういうふうに考えられるかということでありますが、五十九年度赤字国債脱却、増税はしない。まあ小幅の増税が認められるかどうかは別にして、兆単位の新増税というようなことは考えない。この方程式を解くためにはどんなことになりますか、私もいろいろ数字を並べたり勉強したりしてみたのです。  細かいことを言う暇はありませんが、ずっと並べてみて、たとえばこれからずっと毎年度一般歳出伸び率は完全にゼロに抑える。ことしもマイナスシーリングと言いながら一般歳出はプラス一・四ですね。要するに、いまのマイナスシーリングよりもより厳しくやるという意味合いになると思いますが、一般歳出伸び率ゼロをずっと続ける。それから税収の毎年度伸び率を一〇%増というふうに仮定をする。その一〇%増のためにはGNPはどうしても実質三・五ぐらい、名目六ぐらい、弾性値でいって一・五から一・六ぐらいというものがなければそれもできないと思いますが、そういうこれから毎年ずっと一般歳出伸び率ゼロ、税収は年一〇%伸びるという仮定を置いてみて、ようやく六十一年度に再建をされる。いろいろな並べ方がありますからあれですが、いろいろな数字を並べながら考えてみたら、大体そんなことしか浮かんでこない。五十九年から二年延ばしということしか出てこない。  さらに極端な論理で言うならば、総理がおっしゃっている公約を実現するためにはとにかく五%、六%ではない、一〇%だとかそういう二けたのマイナス予算を組むか、あるいは一〇%から二〇%近いぐらいの大増税をするか。そのほかに景気をよくして税収を上げるということがありますが、これもさっき言った数字のような問題でありまして、そこに大きく頼ろうとすれば名目一〇%以上、税収は一七、八%以上ぐらい、当然大変なインフレ経済の危険性が表面化するということになるのではないかと思いますが、そんな要素が前提になければ、いま公約で言っている方程式は解けない。  総理大臣がどうとか大蔵大臣がどうとかという遠慮は抜きにして、これは論理の問題ですから、あるいは政策論理としてこういうことがなければ達成できないのではないかという考え方、論理の問題で聞いているわけであります。主計局を初め皆様方のところでは、そういうさまざまのことは頭にいっぱい詰まって日夜考えていることだろうと思いますが、いかがでございますか。
  28. 窪田弘

    窪田政府委員 御指摘のように、五十九年特例公債脱却の目標の達成がきわめてむずかしくなったということは否定できないと思います。しかし、いまこれをギブアップしなきゃならないかというと、まだそこまでのことではないのではないか。  たとえば歳出面で一般歳出伸び、いまマイナスシーリングの御指摘がございましたが、このシーリングも昨年はゼロシーリング、その前は七・五、その前は一〇%、急速にしぼってまいりました。それで、この五十九年脱却の旗印をおろしますとこういった歳出合理化の努力が緩む心配もございますし、また税収をフラットにたとえば一〇%という御指摘もいまありましたが、しかし、これもいまは世界的な景気の谷でございますから、この間のOECDの経済見通しでも、日本の成長率が八三年は四%台とか、また回復するような見通しもございますし、全くこれでだめだというわけでもございませんので、私どもといたしましては、何といってもいままで続けてまいりました歳出合理化の努力を今後一層続けることによりましてなお努力をしてまいりたい、こう考えております。
  29. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 窪田さん、私はこう思っているのですよ。  大蔵大臣も、増税なき財政再建、赤字公債五十九年度ゼロということについて予算が通った後ややざっくばらんにここで言ったときには、これはゴルフの穴のところに旗が立っているが、言うならば政治目標としてということを言われました。私は気持ちはわかります。要するに、ゾルレンとしての目標というよりも政治目標としてと言われました気持ちはわかります。ただ現状、そういう精神的あるいは政治目標としてのスローガンとしての五十九年赤字国債脱却、増税なき財政再建ということ自体もう信頼性がなくなったというのが最近の状況だろうと私は思うのです。したがって、それを総理もいまでも言っているわけだけれども、何ぼ言ってもみんなはそんなことできるかとか、いまのやり方でそんなことできるはずはないというふうに思っているというのが現実なんです。特にシーリング前後から状況は変わってきたと思うのですね。  いま必要なことは、とにかくそれを達成するためには政治家の大まかな議論じゃなくて、精密に国家財政、税制経済を考える皆さんの立場からすれば、先ほど私がちょっと申し上げましたが、たとえば一、二、三、こういう条件がなければ達成できません、しかし日本の税制をどう改革していくのか、財政はどう守っていくのか、経済にも活力を与えなければならないというためには、こういうさまざまな新しい努力をしなければならないということを言うことが現段階では求められているというのが、前とは違った今日の状況ではないか。  ですから、予算審議のときか予算が通った直後ぐらいに、政治目標としてこれはおろすわけにはいかないと言われた大臣の気持ちはわかりますよ。大臣としてはそんな気持ちだろうかなということはわかりますが、そういう状況はもう変わってきた。その変わってきた状況対応することが求められているというのが今日の状況だろう、それに対応する措置をすることが行政に求められているということだろうと思います。  先ほど申し上げたように、それを達成するためには、たとえば六十一年まで一般歳出伸び率を完全にゼロにする、そのためにはマイナス一〇%ぐらいの編成方針をしなければ特例を含めてゼロにならぬと思いますが、あるいは税収伸び率一〇%増を確保する。ようやく五十九年ではない六十一年。数字や何かは時間がありませんので申し上げませんが、あるいはまた方法論としては、大規模なといいますか二けたのカットを毎年続ける。二けた、たとえば二〇%近いぐらいの増税を続けるみたいなことでしかこの方程式は解けない。基本的に違いますか、違いませんか。これは政治のことを抜きにして、試算の問題として。
  30. 窪田弘

    窪田政府委員 基本的に非常にむずかしくなってきているということは御指摘のとおりだと思います。
  31. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 まあやめておきましょう。  それで、一つだけ言っておきたいのですが、これから先を考えますと、いまも非常にむずかしくなっているということは言われましたが、ただ質問者の試算なり考え方は完全に間違っていますということは言われなかったわけなんで、それなりに僕は思っているわけでありますけれども、結局、いま申し上げましたようにシーリング以降の各紙の論評、それから経済学者、専門家のさまざまな反響その他を見ていましても、一体これからどうするんだ、確実性の高い中期展望を一体どうつくっていくのかということが、いままで出たさまざまの問題についての細かい責任追及以上に出ていることではないだろうか。  それで、注文も含めてお伺いしたいのですが、いままでのパターンでいくのかどうか。いままでのパターンといえば、いまも円城寺さん、経済審議会が作業を開始している。秋か年末になる。新五カ年計画、四%成長。河本さんの立場もありますから、四%台に乗るのか四%すれすれになるのか、いろいろな議論が出ましょうし、その中で財政再建の道が一体どうなるのか、あるいは将来の税収見込みがどうできるのか、租税負担率をどうするのかということも、そこで作業を始めておられるようであります。税収その他の方は、主税局の方も苦労される、政府税調も議論をする、あるいは最近とみにパワーが増していると言われる自民党税調でも、どう税金を取るか、その議論がある。これはそういうシステムで進むわけであります。  そして、いままでのパターンで言いますと、年末予算編成が終わり、年がかわって予算委員会が始まるころに、一月の末か二月ごろにいわゆる中期展望か財政中期見通しというものですね、いままでも一、二、三とかA、B、C、Dとか何がどうとかたくさんあって、最近はようやく一本になりましたが、出てくるというのが従来のパターンであります。これでは国会がどうこうとか野党がどうこうという以上に、私は国民的説得性がないだろうと思います。  一番いま求められているのは、そういう信頼できる見通しは一体どうなんだということが問われているわけでありますから、これは私どもの党としても、単に財政、税制ばらばらの議論ではなくて、これからの経済対策、見通し対応を一体どうできるのか、そういう中で手がたい財政運営をどうできるのか。あるいはまた、そういう中で減税問題も含めて税制というものを一体どれだけ変えていけるのか。言うならばばらばら小売店ではなくて、その三点セットの総合的な議論をしなければメニューは出てこないというふうに思って、私どももいろいろ議論をいたしておるところであります。  そういう意味で言いますと、一番割りを食うのは最後には大蔵省ですから、税収が赤字じゃないかとか見通しが狂った、狂わないとか、一番やられるのは大蔵省なんですから、逆に言ったら大蔵省が、皆さん方が中心になってさまざまなそういうところの見解を持って、それで円城寺さんのところに提起をするとかいうぐらいのことをしなければ、ちょっとこれからの責任は果たされないのじゃないだろうかという気がするわけでありまして、私どもも勉強して、いい政策論争をもっともっとやりたいと思いますし、そういう勉強もしていきたいと思いますが、皆さん方の方で、これからシーリングから最終予算編成、そしていつもだったら来年の一月か二月ごろになって数字が出てくる、この繰り返しみたいなことで対応されるつもりですか、今度はそんな従来のパターンではない何かをしなければならないということでお考えなのか、準備をされているのか。
  32. 窪田弘

    窪田政府委員 中期展望の問題につきましては歳出面と歳入面の問題がございまして、歳出面は、いま後年度負担推計方式ということで、いまの財政に内在する増加圧力、ほっておくとこうなるという推計をしているわけでございます。ここにもやはり経済の要素、賃金とか物価とかいうものは反映いたしますが、主として経済的に、経済計画との関係では歳入面での推計がどうなるかということで企画庁のつくられます経済計画とリンクをしておりますが、現在行い得る中期的な展望の方式としては、現在のやり方以外にちょっと考えられないのではなかろうか。  いま先生の御指摘は、法則性のある財政計画のようなものをつくったらどうかという御指摘かと思いますが、これは財政審議会で長年検討されまして、やはり日本の実情に合っているのはいまの後年度負担推計の方式であるということになっておりますので、一応それをやらしていただいて、その数字をもとにしまして、それを今後どうしていくかということを検討をしてまいりたいと思っております。
  33. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 役所の方にはいろいろな仕組みがありますから、なかなかむずかしいと思います。しかし、行政全体、政府に対して経済界からも国民世論からも求められているものはまさにその点であろうと思います。ある意味では、これは内閣責任という形でなされるべきものと言う方が僕は本当だろうと思いますが、それならそれで、そういうことの方向に提言をする、アドバイスをする、タフな大臣にもよく言うとかいうことをぜひ私はお願いしたいと思います。そういうレベルでのメリットのある議論が国会でもなされるように期待をしていきたいと思います。  次に、やはりシーリングで問題になりました、われわれが言う軍事費、あなた方が言う防衛費、それから五六中業の閣議決定がございましたが、それらのことについて二、三点伺いたいと思います。  これは申し上げるまでもなく、去る二十三日国防会議で五六中業、昭和五十八年から六十二年まで、これを了承、期間中の正面装備費の総額が四兆四千億から最高四兆六千億、後方関係費を含めた防衛費総額は十五兆六千億から最高十六兆四千億、対GNP比は平均、これは新経済社会七カ年計画、もう新ではないわけですが、五・一%実質成長で試算をして〇・九七、最高で一・〇二、予算伸び率は十五兆六千億の場合に平均六・三%、十六兆四千億の場合には平均八%、さらに五六中業中に生ずる後年度負担は二兆一千億から二兆三千億であるというふうなことが決まったわけであります。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕  これでまず一つ伺いたいのですが、平均の話になっていますから、平均でいって最高額十六兆四千億の場合に、現在五・一%成長でいった場合には一%をちょっと超えますということになるわけでありますが、これは平均ということなんで、防衛担当主計官を初め主計局皆さんはさんざっぱらこの点は事前の議論もなさったようでありますけれども、現在のたとえば五・一%で平均幾らではなくて、どの時点で一%を超える、それは十五兆六千億の場合、十六兆四千億の場合それぞれですね、ということはどういう試算になっておりますか。  それから、私は五・一%を置いたということは非常に無責任だと思うのですね。すでに五十七年度経済成長を四%に下方修正しなければならない。これは企画庁だけではなくて関連する皆様方、そういうことを含めて進んでおられるということだと思いますし、現実には三・五%もなればいいところかなというのが民間の見方、現実の姿であろうと思います。ですから、五・一%成長という新経済社会七カ年計画、新ではなくなったですね、その七カ年計画の五・一という数字も、五十七年度のGNP伸び率見込みというものにしても、もうくずかごに捨てているわけですよ。それで新しいものに変えているわけだ。そういう古いもので試算をするというのはおかしいので、皆さん方からすれば少なくとも四%で計算をする、西暦二〇〇〇年まで四%で試算をした見通し、これは本当に見通しですけれども経済審議会の報告も読ましてもらいましたが、数字からすれば、いま見込みとして書くとすれば大体そんなことかなと思ったわけであります。大体防衛庁もけしからぬ話で、五・一でこんな数字を出すというのはおかしなことなんで、少なくとも四%で計算をするのが当然のルールであろう、政府責任であろう。  これは、名目ではじく、実質ではじく、あるいは軍事費の値上がり分、これも最近は非常に高くなりましたから値上がり率も高いし、どう組むか、さまざまな問題がありまして、試算の仕方もむずかしいところで、どれが一番実態に合う見通しかなということもあれなんですが、いろいろな数字を僕も並べてみました。たとえば四%で組んだ場合、大ざっぱに言って、五十七年のGNPを二百七十兆ぐらいにして考えてみましても、五十九年度は大体二百九十兆台のGNPとして、十五兆六千億の場合でも十六兆四千億の場合でも、五十九年度には一%ラインをオーバーする、それから、最終年度である昭和六十二年度にはGNP対比大体一・一五から一・一八、一・二に近づくというふうな試算になるということではないか。私どもからすれば、三・五ぐらいで最もかたく踏んで、少なくとも五十九年には、十五兆幾らの場合でも十六兆幾らの場合でも必ず一%を突破するということではないかというふうに、いろいろと数字を並べて考えてみたわけであります。  いずれにしても、平均で言うということはおかしいので、いつどうなるのかということをもうちょっとはっきりさせるべきではないかということと、四%で計算をいたしましたら五十九年には必ず突破してしまうということ。いかがですか。
  34. 窪田弘

    窪田政府委員 そういうふうな計算をすればそうなると思いますが、しかしこの中業というのは、御承知のように防衛庁の内部資料でございまして、概算要求の参考にするという性格のものでございます。あくまでもそういう性格のものとして私どもは考えておりまして、現に今度の中業の一番初めにも、そういう性格が明記をしてございます。  大蔵省として毎年度年度予算編成をする場合には、現在、当面GNPの一%以内にするという閣議決定がございますので、私どもは、その閣議決定を守って予算編成をしてまいりたいと思っております。
  35. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 窪田さん、そうおっしゃるのでしたら、こういうことになりますよ。  いま僕が申し上げたように、いずれにしても五十九年ごろには一%ラインを超すということはもう否定しがたい。それから分母の方も、実質五・一はむずかしいのでもっと下がる。そうなりますと、当然のことながら、遠い将来ではなくて二年後ぐらいには、一%枠では五六中業は達成できないということにぶつかるわけですよ、そのときあなたはもっと偉くなっているでしょうけれども。財政当局としては、どういう決意とどういう腹で臨むか。要するに、一%枠ということでがんばっていきたい、それでは五六中業は達成できない、どっちをとりますかということになってくるのですね。それは再来年ぐらいになると僕は思いますよ。もう目の前、年を越したら来年あたりにそんな議論が一斉に行われる。どっちをとるのですか、財政当局としてはどうですかということが世間から問われるという、シビアな話だと思うのですね。  それと、ついでで恐縮ですが、五十八年のシーリングが七・三五、これもまことにけしからぬと思うけれども、何か新聞を読んでおりますと、いつものことだから七・三五でやって、レーガンからも、自民党の防衛族も大騒ぎをして当然上積みになるんだろうという見方と、財政がこういう状況だから、七・三五のシーリングは組んだが、それから減らされるということもやむを得ないということになるのじゃないか、両方の見方があるのですが、どういう決意で臨むか、その二つをちょっと。
  36. 窪田弘

    窪田政府委員 中期業務見積もりは防衛庁の計画でございますから、毎年度年度の一%がどうなるかというのは、そのときどきの物価とか何かによってGNPも変わりますし、その数字は変わってまいりますので、いま五十七年度価格で仮に伸ばした数字がそのまま各年度そうなるというわけのものではないことはもう御承知のとおりでございますが、この一%を超えるかどうかというのは、大きな政治の基本問題でございます。これにつきましては、いま閣議決定で当面GNPの一%を超えないという決定がなされておりますので、予算編成におきましても、それを守ってまいるのは当然だと考えております。  また、シーリングで七・三四六%にいたしましたのは、これはほかの省と同じルールで、つまり、国際的な取り決めのある国庫債務負担行為の歳出化分が二千六十五億、それから、人件費の当然増といいますか例外事項が百三十億、マイナス分が約五百億というこのルールどおり計算した結果がそうなるわけでございまして、別にこれを特別の扱いをしているわけでもございませんので、各省と同じ扱いにしております。  したがって、今後これをどうされるかということは、その枠内で防衛庁がどういう要求をしてこられるか、また年度末、五十八年度予算をどういう形のものにするかということによって今後変わり得るものではございますが、シーリング、限界でございますから、われわれは、さらにそれに査定があるというふうに考えております。
  37. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 一つ要望なんですが、いま、一%という政府の政策、閣議決定がある。それを超すべきであるという自民党の防衛族の騒ぎもずいぶんあるようですが、私は、それがあるからということではなくて、やはり大変な財政状態、経済の今日でありますから、それにふさわしいような責任感と気骨を持ってやられるというのが当然のことであろうと思いますし、皆さんそうであろうと思います。そういう角度から気骨を持って提言をする、世に問う、発言をするというぐらいの姿勢でいかないと、何しろ政治全体が、何かがたがた言われると次々に押されてくるというこの数年間の状況でありますから、ぜひそういう姿勢を持って対応するということをお願いしたいと思います。  だんだん時間が短くなってきましたので、主税局長に二つだけですが、一つは要望で、一つは質問です。  要望の方は、僕はこう思っているのですよ。税と国民という関係から言いますと、いま税に対する関心は非常に高まっていると思います。また、さまざまな事件から税に対する不信感も非常に高まっている、そういうものが渦巻いているという今日の状況だと思いますね。  それから、私どもも二十一世紀初頭どうなるかという勉強を一生懸命やっているのですが、これから長期を展望すれば、一定の負担増は当然避けられない。これは、福祉国家をつくるためにも、どうしてもやはり一定の負担増、それを最も効率的に社会のためにどう使っていくのかということにならざるを得ない。しかし、いまのような税に対する関心と不信感と両方相伴って渦巻いている状態では、そういう社会に国民を誘導することもできないというふうなのが今日の状況ではないだろうか。  これは、大臣なり特に政府税調会長とかいうところが、税に対する信頼感をどうつなぐか、それをオープンシステムで、何かドラスチックな一つのキャンペーン、努力をどうするのかということの時期だろうと思いますし、主税局長だけに言って大変済みませんけれども、まじめな主税局長さん、そういう問題意識を流れとしてぜひ強力に持っていただきたい。  それから、増税その他いろいろ聞きたいことがあるのですが、それは抜きにいたしまして一つだけなんですが、間もなく臨調の基本答申が出ます。きのうの日経新聞に、こんな詳しい、何かいっぱい書いたのが出ましたね。これだけいっぱい書いて出してあるのだから、新聞記者の作文ではないだろうというふうに私は思うのですが、それはいずれ月末にわかることですから、やや正確な報告ではないかと思うのですが、その内容に「増税なき財政再建の推進」などの項目があります。それから、前提のところに非常に激しい口調で言っているので僕は驚いたのですが、「増税なき財政再建」この原則は「我が国の将来の基盤を確かなものとするためのテコとして、引き続き堅持されなければならない根本原則である。むしろ財政の危機的状況は、徹底的な行政改革に真剣に取り組み、将来の活力ある日本をつくりあげるための絶好の機会と考えるべきである。」土光さんの顔をちらちら思い浮かべるみたいな表現であるわけですが、それはこんなような方向で出てくるだろう。  それから、この間土光さんと大蔵大臣がお会いになって、小幅増税やむなし、現実問題としてこれはやむなしということを言われたようでありますが、小型で寄せ集めとか言われているさまざまな具体的な問題とか、それから、ことしのシーリングでは一般歳出の枠組みが決められておりますが、地方交付税交付金、国債費、これが流動的なせいでしょうか、これも含めた一般会計全体の枠組みまでは去年と違って出ていないというようなことになっていますけれども、いろいろお伺いしたい点はあるのですが、時間がありませんから、当面この臨調対応というものに対して、どういう姿勢で臨まれるのか。
  38. 梅澤節男

    梅澤政府委員 臨調答申に対して税制のサイドから当面どういうふうに受けとめるかという御質問でございますが、ただいまおっしゃいましたようにまだ正式の答申が出ておりませんので、今日の段階で私ども税制当局といたしましてコメントするという段階にないわけでございますが、基本的な考え方といたしまして、私ども、先ほども指摘があったわけでございますけれども長期的な税制動向、あり方というものにつきましては、単に税制当局部内の議論だけではなくて、むしろ広く世間の御協力あるいは御理解もいただきながら進めなければならないということは当然のことでございまして、現時点におきまして申し上げられることは、私ども、五十五年に政府税制調査会からちょうだいいたしました中期答申というものがございます。この政府税制調査会の運営につきましては、これは伊藤委員常々御指摘のとおり、もっと議論が国民の中に浸透していくような工夫をしろということを御指摘いただいておりますが、当然この努力を私ども進めるわけでございますが、現時点におきましては、中期答申で基本的な方向が示されておるわけでございまして、さしずめ私ども、臨時行政調査会の答申が出ました場合に、そういった中期答申の方向との整合性等を当然検討してまいらなければならないと考えるわけでございますが、本日の段階では申し上げられることはこの程度のことであるということで御理解を賜りたいと思います。
  39. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間がありませんから、その程度にしておきましょう。  もう十分足らずしかありませんから、もう一つだけ伺いたいと思いますが、グリーンカードの問題です。週刊誌を読んでいたら、グリーンカード強力推進の大蔵省のお役人、三人か四人かみんな異動になったから、金丸信さんの気持ちが楽になっているのかなみたいな無責任なことが書いてありましたが、現在の法律どおり執行するという準備をきちんとやるのが大蔵省なり国税庁の当然の仕事であろうと思います。それがどうなっているのか。  何か金融筋で聞きますと、もういまごろは大蔵省金融界といろいろな準備が行われ、作業がさんざっぱらあるのだけれども、何カ月か前から全部ストップしていますという話もあります。無理が通って道理が引っ込むみたいな話がいっぱい出るから、そこに懸念をして、遠慮をして、もう変わってしまったのかという心配もちょっとするわけでありますけれども、たとえば全体の準備はどう進んでいるのか。もう秋。ころには、朝霞に建っている建物も正式に引き渡しになるでありましょう。それからリースでコンピューターを入れるそうでありますが、何か日電と富士通だとか言っておりますが、どういう契約をしていつ入れるということになっておるのか。どんな色かは別にして一億枚近いカードをつくる、これだって相当時間がかかると思います。各税務署まで全部配置をするというのも一定の時間がかかると思います。それから、しばらく前、ことしの春ごろには、週刊誌その他新聞などにも、グリーンカード制の理解を求める、これは公平のためにやることですからぜひ御理解くださいというような広告を出したりしたけれども、これもばったりなくなりました。  しかし、五十八年一月からカード交付の開始、これは法律の本則、附則の中にちゃんと入っているというわけでありますが、私は、誇り高き大蔵省のお役人の皆様ですから、筋の通ったことを毅然としてやっていく、当然おやりになっているのだろうというふうに思いますが、その辺はどうなっているのでしょうか。一時春の時点で騒がれた金を買うとかゼロクーポンがどうとかというようなことは根なし草の話だったということは、もうすっかり事実として明らかになっていることだろうと私は思いますし、さっき申し上げたように税に対する関心と不信が渦巻いているという状況から言えば、筋の通った準備をきちんきちんとしてやる、これは当然のことだろうと思いますが、その辺の準備状況、構えがどうなっておりますか。
  40. 角晨一郎

    ○角政府委員 グリーンカードの準備事務を担当しております国税庁では、法律で定められております五十八年一月実施ということを前提に、所要の準備を進めておるところでございます。  いま御質問で幾つか具体的な点の御指摘がございましたので、それに即して申し上げますと、まず朝霞のADPセンターでございますが、これは建設省の官庁営繕費で現在工事をやっておるわけでございまして、五十六年の五月に着工いたしましたが、五十七年中に完成すべく目下工事が進められておるという状況でございます。  また、カード事務はコンピューターシステムで処理をすることを考えているわけでございますが、その処理の前提となりますコンピューターのシステム開発、これも五十六年の九月以降逐次進めておるわけでございまして、本年の秋にはこれが完成するということで、現在最終的な詰めを行っておる段階でございます。また、このセンターに搬入いたしますコンピューターでございますが、五十八年一月にこれを搬入すべく、現在いろいろな準備をしておるところでございます。契約面の御質問もございましたけれども、レンタル契約もこの搬入の時期を見合わせながら、それを目途に行う予定にしておるわけでございます。  また、カード自体ないしはカードの交付申請書の用紙につきましても、これは相当膨大な量になるわけでございますけれども、効率的な発注をすべく、いろいろな方法を現在検討しております。いずれにいたしましても、五十八年一月からの交付申請に備えまして調達手続を進めていきたい、こう考えておるわけでございます。
  41. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いずれにしても、この問題の経過から言ったら、いま追い込みの時点に入っているわけですからね。それから、無責任動きによる新聞報道で疑心暗鬼の向きもなきにしもあらず。私は、追い込みの時点にふさわしいような国民へのPR、準備その他も含めて、法律に決めましたようにきちんとやっていただきたいということを強く要望をしておきたいと思います。  もう時間がありませんから、ちょっと簡単なことを一つだけ国税庁に伺って終わりたいと思うのですが、法人税基本通達の問題、去年の十一月の末の問題ですね。これは公益法人の収益事業の課税問題に関してお伺いしたいのですが、中身のこと、その他のことは国税庁ともいろいろな御相談も始めておりますし、ぜひしていきたいと思います。私どもも、きちんとした御相談をぜひさせていただきたいと思います。  ただ、取り扱いといいますか経過のことなんですけれども、宗教法人も関係しますし、労働組合も関係しますし、いろいろな団体がたくさん関係していますね、大変な数ですから。この間たとえば宗教法人に聞きましたら、担当が厚生省ですか文部省ですか、何かそれらの監督官庁を通じて、大蔵省ともいろいろな事前の説明なり協議もあってというふうなことです。ところが私ども、労働組合の方に、お尋ねという名のあれが大量にあちこちの国税局でやっておりまして、一体これは何だろうというので、問い合わせが来たり、相談したりというようなことになって、御承知のとおりです。  中身は全然別にしまして、その経過で思うのですが、当然のことながら民主国家の納税問題ですから、詳しい説明、御了解、納得のいく納税、そして税に対する信頼感は高まっていくという基本姿勢だろうと思うので、何か突如としてばっと舞い込んだという形ではなくて、それは労働組合でもナショナルセンターも四つありますし、それぞれ全体を大きく統括をする社会的責任を持った団体でありますし、各県にもそういうものがありますし、それから、大きな工場地帯にはそれなりのセンターもあるということでありますから、やり方を十分注意していただいて、とにかく説明それから話し合い、了解、納得というふうな方向を大前提としてやり方を考えるべきではないかと思うわけであります。当然のことだと思いますが、一言御答弁いただいて終わりたいと思います。
  42. 角晨一郎

    ○角政府委員 公益法人とか人格のない社団の収益事業について法人税が課税されるということは、もう先生すでに御指摘のとおりでございまして、労働組合もその対象に入っておるわけでございます。  公益法人などの収益事業課税の適正化につきましては、これまで国会でもしばしば御論議をとただきましたし、国税庁といたしましても、その適正化に努力をいたしておるところでございまして、逐次その作業を進めてまいりまして、実態把握、それからそれに基づく申告指導をやっていかなければいけないということで、いま進めておるところでございまして、実態把握のためには事業内容を照会する、お伺いするということもやっておるわけでございますが、先生御指摘のように、いままで余りなじみのない公益法人等、労働組合も少なくないわけでございますので、あらかじめその照会の趣旨につきましても、必要に応じて十分説明をし、相手側の理解と協力を得ながら収益事業課税の適正化という事務を進めてまいりたい、こう思っております。
  43. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 質問を終わります。ただ、念のために、その基本通達の内容の諸問題とか具体的対応などについては国税庁とも私どもも十分話し合いたいと思います。  終わります。
  44. 森喜朗

    森委員長 和田耕作君。
  45. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 このごろは本当に、経済特に財政問題について考える場合に、何か一つ目安になるような、よりどころになるような数字もない、見通しもなかなかつけられないというような状態で、恐らく大蔵省皆さんが一番困っておられると思うのですけれども、たとえば五十九年までに赤字国債から脱却をするというこの柱も、総理自身がこれは非常にむずかしいようだということを言うほどに見通しができなくなってきている。増税なき財政再建というわけでありますけれども、この問題も、たとえば、この前大蔵大臣が土光さんのところへ行って、大型の増税はしないけれども、少しぐらいの増税は勘弁してもらわなければならぬというような申し入れをするという状態になっている。行政改革というふうに申して、行政改革でできるだけ経費を節減するという方針があったのですけれども、どうもこの行政改革では、少なくともこの数年間の日本の財政に寄与するような節約はできないというようなことも明らかになってくる。いろんなことでよりどころがない状態。しかも、そういう状態でこの九月あるいは十月、いつになるか知らないけれども補正の問題を具体的に決めていかなければならないということにもなっておる。そういうようなことで、大変皆さんお困りのことだと思いますけれども、しかし、そういう中でもやはり決めていかなければならないわけですね。  そこで、お伺いをしたいのですが、今年度国債の消化の問題を考えましても、今年度予定しておる国債というのは、十兆四千億という一応の目安があるわけですけれども、四月から六月までに大体四兆円の発行をした。そこで七月は国債発行をしないようにして、今後残った分の国債の消化をさせなければならない。この段階で、まずこの七月に発行をとめたということはどういう理由によるのでしょうか。このことからひとつお伺いをしたいと思います。
  46. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 アメリカの金利が下がり出しまして、国内の金融情勢もいろいろ影響を受けておるというようなことで、条件の改定につきましていろいろ見通し難という問題がございまして、しばらく様子を見たいというような、そういうことで休債をいたしたわけでございます。
  47. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大体そのいろんな条件の目安なり見通し、つまり八月から発行する条件は一応できたのでしょうか。
  48. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 もうしばらく様子を見るというような感じで御了解をいただきたいと思います。
  49. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 その中の大事な、つまり利子の引き上げという、〇・五%程度の引き上げは避けられないという報道がありますけれども、これは大体当たらずとも遠からずと考えていいのでしょうか。
  50. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 私ども発行者側の立場でございますので、御質問に直接お答えしかねるわけでございますが、たとえばこういうことを申し上げたらどうかと思います。  現在七・七%の十年物の公債がございますが、五月の中旬以降価格が低落いたしました。いままでに一番悪い時点が六月の二十九日でございますが、発行時に九十九円五十銭で出しましたが、その時点では九十五円二十五銭と、四円二十五銭価格が下がっております。その後、ただいま申し上げましたように、全体的な金利情勢が動いてまいりまして、一番いいときが七月の二十日で、九十六円四十五銭、発行時に対しまして三円五銭でございますが低落しておる。昨日でございますが、これが九十六円二十銭と、この一番いいときに比べましてまた二十五銭安くなっております。それで、これをいまの金利に直しますと、昨今大体〇・六とか七とか悪くなっておるわけでございます。上がっておるわけでございます。
  51. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この問題は、具体的に何ぼ何ぼということはおっしゃれないと思いますけれども、いま一般的に考えて日本の金融市場はかなり緩和されている、お金がだぶついておるというふうに見る人がおるのですけれども、このお金がだぶついておるということと実際の金利が高くなっておるということとは、どういう関係になるのでしょうか。
  52. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 公債がうんと出るような状況下では、一般論といたしましていわゆる貯蓄超過の状況にある。それが金融的、貨幣的にどうなるかという問題でございますが、おおむねパラレルに金融的にも緩和状況になるということが言えるわけでございます。にもかかわらず公債に関して金利が上がる、価格が下がる、これは幾つかの見方があるわけでございます。  一つは、公債というのは、債券の中で、証券の中でも一番しっかりしたものでございますが、余りたくさんありますとどうしても嫌気が差すということは、市場心理としてあるわけでございます。特にこれからもっとうんと出てきそうだというような増発懸念、非常にマーケットの方では嫌気が出てくるというようなことで値段が下がる。  それからもう一つは、短期金利の上昇があったわけでございます。円レートの問題があって短期金利の上昇誘導ということが行われたわけでございますが、結局長短金利の差が縮まってくる。そうすると投資家の心理としては、長期金利よりも短期金利で、将来金利がどういうふうになるかがわからないわけでございますから、差がないなら短期運用していこうというようなことで、たとえば手形、現先、CD等々の短期市場の方に、二月ごろの金額に比べて六月ごろになりますと倍ぐらい短期市場の方へ来てしまう。私ども公債は、中期債というのもございますが、十年債というようなことで長期物であります。したがって、長短市場の資金需給にそういうようなアンバラが出てくる。全体的なマクロの情勢と違ってくる。  それから、何と申しましても、同じことになるかもしれませんが、将来の金利見通しに不安感がある。  いろいろな理由がございますが、主なものを二つ三つ拾いますとそんなことで、マクロ的なことでございますが、そういう状況になる。  今度ミクロで見ますと、巷間伝うるところ、たとえば長期プライムで借りる人はいない、もっと安く借りておるとか、あるいは金融機関によって資金の性質が違うわけです。安定した資金で集めている金を多く持っている金融機関あるいは短い足の預金で貸し出しをやっておる金融機関等々、その金融機関の性格によりましても、相当こういうような情勢の場合にはいろいろな見方の違いが出てまいります。その中の部分的な見方が出てくるわけでございますが、マクロ的に、一般的に金融緩和である。それからミクロ的にもそういう情勢も散見されるというようなことかと思います。
  53. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この問題は、いろいろ政策をお決めになるのに大事な背景の一つだと思いますけれども、もう一つの問題は、ここしばらくマネーサプライが一〇%ぐらいの増の状態がずっと続いてきている。それに比べて、名目成長率よりはマネーサプライの方がはるかに大きくなっておる状態が続いておる、そういうことでお金がだぶついておるという状態がいろいろと議論をされておるのです。そしてまた景気はよくないという問題もあって、そういうことで、このだぶついた金が外国の方に流れているという観測もあるわけですけれども、この問題が例のこの前騒いだグリーンカード等の問題とも関連をしてくることだと思いますが、外国に流れているとすれば、これはどれくらいの額になるのか。こういう問題については、やはり大蔵省としては大体見当としてつかんでおられますか。
  54. 大場智満

    ○大場政府委員 御指摘長期資本の流出の問題でございますが、長期資本の状況を見てみますと、国内から海外へ流れる資金の流れ、これは十二月−三月大体三十億ドルぐらい、全体として三十億ドルぐらいでございました。しかし、四月、五月は大体二十億ドルぐらいの規模になっておりまして、六月は集計中でございますが、やはり二十億ドル前後かと思います。ですから、ピークから見てみますと十億ドルぐらい低下しておるという状況にございます。  それから、その長期資本の流出のうち、特に金利差に敏感な証券投資について申し上げますと、居住者の証券取得、つまり居住者が海外で債券とか株式を買う、そういう取引でございますけれども、御指摘のように二月に十一億ドルという大変大きな金額に上ったわけでございますが、三月は九億ドルぐらい、それから四月が六億ドル、五月が四億ドルというぐあいに減っておりまして、六月は恐らく三億ドルぐらいに低下しているというふうに見ております。これは、やはり居住者の証券取得というのは金利とそれからもう一つ為替というのを両方にらんでおります。したがいまして、円がこの時期かなり安くなったものでございますから、そういったことで、利息の面ではかなり高い利息が取れても、為替の面で損していくということがあるのではないかということから、資本の流出が落ちてきたということが言えるかと思います。  なお、海外からの資本の流入、非居住者が東京で債券とか株式を買う。これは大体いままで黒字と申しますか、買いの方が上回ったのでございますけれども、ごく最近では売りの方が上回っている、こういう状況になっております。
  55. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 余り時間もありませんので、もっと聞きたいことがありますけれども、そういうふうな金融状況で、これから国債がかなり、何ぼになるかよくわからぬですけれども、赤字国債にしても四条国債にしても、かなり大きな額の国債がいろいろうわさをされている。五十六年度歳入欠陥はもう確定をしたわけで、三兆数千億という金ですけれども、これは何とかかんとかつじつまを合わすとしても、五十七年、五十八年ということになると相当規模の国債の増発が考えられる。それで景気もよくない。今年度にしても、下期の公共事業の手当ても何億かしなければならないということになるわけですが、こういうことが、つまり国債の利子を上げなければ国債が消化できないような状態をつくり上げてきておるわけでありますけれども、これは非常に大事な問題でありまして、お金が当面だぶついておるのに、国債の利子は上げる必要はないと思われるけれども、今後多額の国債が出てくるという予想のもとに、金融市場を圧迫して、そして利子が上がってくるという問題でありますから、やはりここらで国債発行の額ぐらいは、一つのよりどころになるような額ぐらいはもう決めないと、国債の消化という問題から見ても非常にむずかしい問題が出てきやしないかと私は思うのですが、主計局として、今後どれくらいの国債が五十七、五十八で、いわゆるこの前の中期見通しをつくったような、今度新しい見通しみたいなものをつくる必要がありはしないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  56. 窪田弘

    窪田政府委員 五十六年度税収の減が五十七年度税収のいわゆる土台に影響するということは否定できないと思います。  そういった要素を考えますと、補正の問題というふうなことがいずれ生ずる可能性についてもまた否定できないと思うのでございますが、しかし、いまこの段階で、それじゃどのぐらいになるかとか、そういう点をちょっとまだ決めかねる段階でございますので、もう少し様子を見させていただきたい。ただ、御指摘のように、できるだけ早くその辺の見当をつけた方が望ましいじゃないかという点については私どもも同じように考えておりますが、まだちょっとそこは金額を幾らだということを決めかねている段階でございます。
  57. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私そう申すのは、五十九年までの赤字国債からの脱却という大目標がありますね。これは総理みずからがむずかしいということをもう言い出しておる。しかも、いま申し上げたようないろいろな条件で、何かのよすがになるような見通しがないと財政政策、計画自体も立っていかないという段階だと思うのです。そうでないと、いろいろ思惑筋のスペキュレーションがますますいろいろな形で出てきやしないかと思うのです。国債の消化ということだけを考えても、一方で増税ができればまた違った方法があると思うのです。しかし増税は、しばらくは大型の増税はできないということ、これはかなりはっきりした見通しとなっておるとすれば、国債の今後の見通しぐらいは、いまとは申しませんけれども、この十月ぐらいまでには大体の見通しをつけないと、今後の政策ができないんじゃないんですか。そういうふうに大変恐れられる状態だと思うのです。  そこで、もう時間もありませんので、いままでかなり大量の国債発行されている、この元利払いも大変なことになると言われておるわけですが、国債日本銀行が引き受けるということは法律で禁止されておるのですけれども、しかし、一度出た国債日本銀行金融政策の一つとして買い上げるということはできますね。そして、その買い上げた額を無期限に持っておるということもできますね。そして、その買い上げる額も上限は決まってない、何ぼでも買える、これは事実ですか。
  58. 三重野康

    三重野参考人 日本銀行国債買いオペは、いま先生の御指摘のとおり、金額的な限度というのは法規的にはございません。しかしながら、私どもとしましては、もちろん買いオペというのは金融調節の一環として行っているわけでございますが、金額的な限度は成長通貨の増発の限度ということを一応のめどにしております。  と申しますのは、日本経済、パーセントは毎年違いますが、年々成長するわけですが、それに見合って通貨、銀行券の増発が必要なわけでございます。この銀行券の増発は、究極的には日本銀行が信用創造をしなければならない。以前はこれを日本銀行の貸し出しで行っておりました。しかし、その日本銀行の貸し出しでいつも成長通貨を賄うのは不適当でございますので、昭和四十一年からは成長通貨に見合う分は日本銀行国債の買い切りオペで賄ってきております。もちろん年々の銀行券とぴたりと一致しているわけではございませんが、それをめどにして行っております。  たとえば具体的にこの四、五年の買いオペ額を申し上げてみますと、昭和五十二年度は一兆二百億、五十三年度は一兆一千八百億、五十四年度は三千六百億、五十五年度は八千億、昨年度、五十六年度はゼロでございます。昨年度がゼロでございましたのは、昨年度は大幅な財政の払い超がございましたので、いわゆる成長通貨は財政の払い超で賄われましたので、私ども買いオペすることは適当でないと判断して、いたさなかったわけでございます。したがいまして、こういうめどでオペレーションを続けていく限り、インフレマネーが日本銀行から出ていくということはないと思いますし、今後ともこの方針を続けてまいりたい、こういうふうに考えております。
  59. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いままではそういう状態で、大体おつくりになっておる目安みたいなもので来たと思うのですが、今後、いま私が申し上げたように、大蔵省として日本の財政計画というものが、目安が立っておればそういうこともできるのですが、立ってない。一寸先はやみだとは言わないけれども、二月先がわからないという状態で、しかも増税はしない、あるいは五十九年までには何が何でもやりたいということになってくると、しかもお金がなくなったりなんかすると、もうとっさになってかなり大きな赤字国債を出さなければならないというような事態も考えられるわけですね。  今年度でも三兆数千億の歳入欠陥税収不足が出るなんということはほんのこの間までわからなかった。そういうときに、日銀の引き受けという制度は法律上はできないのですけれども、出したものをすぐ日銀が買い上げるということはできる、こういうふうに追い込まれる可能性は私はなしとしないと思いますね。そのための歯どめを考えておく必要があると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  60. 三重野康

    三重野参考人 これから先のことでございますから、いろいろなことが考えられるかと思いますが、いままで政府の方からそういう点の申し入れもございませんでしたし、これは仮定の問題でございますけれども、これからもいままでとってきた方針を堅持していく、こういうふうに考えております。
  61. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 こういう心配が杞憂になればいいのですけれども、今後の、今年度の建設国債が何ぼになるかよくわかりませんが、いまわりあい建設国債ならいいんだという感じがありますね。これもしかし元利払いという点から見れば同じことであるわけで、それにいまの赤字国債、これをうまく消化していくということがいろいろな意味で非常に困難になる。  私は、いまの金融が緩和している状態で、利子を上げなくてもという感じがするけれども、しかしこれは、日本の景気がうまく立ち直ってきたりすると、またちょっと混乱状態が起こってくるということもあるわけですね。いろいろな不測の事態が私は起こると思うのです。日銀が必要以上に国債を背負い込まざるを得ない、仮に一時という形が少し長くなってくるという形で、そういうことも考えざるを得ないのじゃないかということを心配するわけですけれども、その問題はぜひともひとつ当面の対策としても厳しく考えてもらいたいと思いますし、大蔵省としても、もうそろそろ、十年二十年でなくて、この三、四年の一つの計画、見通しだけはお立てにならないと責任が果たされないのじゃないかという感じがしますので、そういう要望をいたしまして、質問を終わることにいたします。
  62. 森喜朗

    森委員長 正森成二君。
  63. 正森成二

    ○正森委員 防衛庁、おいでになっていますか。  いま、わが国が財政的に非常に重大な事態に立ち至っていることは言うまでもありません。そういうときに、先日、国防会議で五六中業を了承ということになりまして、新聞に報道をされているところによりますと、大体正面装備が五六中業の五年間で四兆四千億から六千億円、総額は十五兆六千億から十六兆四千億円というように報道をされております。この幅、特に総額が十五兆六千億から十六兆四千億というと八千億ございますから、その幅がどういうところから出てきたのか、そこからまず説明してください。
  64. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 御説明いたします。  五六中業は正面装備を中心として見積もるものでございまして、人件糧食費とか後方関係経費といったものについては参考までに試算をしたものでございます。  正面につきましては、先ほど先生御指摘のように四兆四千億円から四兆六千億円ということで、これは比較的詳細に積算をしたものでございます。この四兆四千億と六千億との間に二千億の差がございますのは、正面装備を取得いたしますのに通常二年から五年という期間があるわけでございますが、中業では、いつ、何を、どれだけ発注するかということについて厳密に年次割りをつくっているわけではございませんので、それを期間の初めに発注する場合、それから途中で発注する場合、期末に発注する場合と、いろいろなことが考えられるわけでございます。これによりまして期間内の経費というものは若干動くわけでございまして、これが二千億とした理由でございます。  後方関係経費、人件糧食費については大まかに試算をしたわけでございますが、後方関係が四兆八千億から五兆三千億と見込んでおります。ここで五千億円の幅があるわけでございますが、御承知のように、後方といいますのは正面の事業に付随して動く性格のものが一つございます。したがって、正面の幅があるのに伴ってどうしても、たとえば航空機の入るのが遅くなりますれば、航空基地なんかの手当ての方も遅くていいというような関係で幅が出ます。それから後方独自の、たとえばバッジシステムなどは後方の代表的なものでございますが、これも、いつ、どのようなテンポで入れるかによって幅が出てくるわけでございまして、そういうところから五千億円ほどの幅が出てくるということが申し上げられるかと思います。  人件糧食費につきましては六兆四千億から六兆五千億円と見積もっておりますが、これも期間中に若干の増員をお願いしたい。それから昇給の方も見込まなければなりません。特に五六中業の特徴としましては、自衛官の退職者が多数出るわけでございまして、これらの発生ぐあいというものについても幅を持つ必要があろうと考えました。そういうことから、ここに一千億円ほどの幅が出ました。  正面で二千億円、後方で五千億円、人件糧食関係で一千億円ということで、トータルで八千億円の幅があるということになっております。
  65. 正森成二

    ○正森委員 そこで、防衛庁にもう一つ聞きたいのですが、御説明の趣旨はわかるのですが、防衛費全体の中に占める正面経費の比率ですね。これは現在では一九・七%だと承知しております。あなた方の正面装備が四兆四千億から四兆六千億、総額が十五兆六千億から十六兆四千億というので計算してみますと、今回の場合はほぼ二七%から二八%、一番シビアにとりました正面装備が四兆六千億円ふえ、総額が十五兆六千億円しかふえないというようなケースだと、二九・五%になるのですね。いまの御説明で、正面装備によって後方支援だとか糧食、人件というものが変わる、こういうことですから、正面装備が一番ふえて総額が一番少ないというふうなことはあり得ないということに恐らくなるのでしょうから、大体二八%前後ということになると思うのですね。  そうすると、これは従来の正面経費が総額の中に占める比率から考えますと異常に高くなっているわけで、これは結局実行しがたいことではないか。一九・七%ということではないにしても、なかなか正面経費と総額との比率は二八%というような高い状況ではおさまらないので、結局総額がもっと押し上げられるのではないかというのが当然の疑問になるのです。この点はいかがですか。
  66. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 正面装備の先ほどの防衛関係経費総額の試算値に対する比率は、平均的に計算いたしますと、御指摘のように約二八%となります。この比率は現在二〇%弱でございますので確かに上昇するわけでございますが、五六中業では「防衛計画の大綱」に定めております防衛力の水準に到達したいということで、正面装備を中心に見積もっておりますので、正面装備の充実あるいは近代化なしには達成はできないわけでございますから、この比率が高まるというのはやむを得ないことだと考えております。  それから後方関係経費について見ますと、過去の平均では一二%ぐらいが防衛関係の中でのシェアでございます。低いときには二九というようなことがございますが、それに対して今回の見積もりで防衛関係経費の試算値に対する後方の、先ほどの四兆八千億から五兆三千億の比率といいますのは、三一ないし二%ということになっております。人件費の方は、これに対しまして四〇%から四一%ぐらいになろうかと思います。  このことから言えますことは、後方関係経費は防衛関係経費の伸び率とほぼ同等の伸び率が維持されておるということが言えると思います。人件糧食費は先ほどのようなことで試算したわけでございますが、人件糧食費のおよそ七%ぐらいのダウン分が正面のシェアの方に比率的には回ったということでございまして、人件費の見積もりというのはそれほど大きく変動しない性格のものでございますので、そういう点からそれほど無理があるとは私ども評価いたしておりません。
  67. 正森成二

    ○正森委員 いまはからずも言われたように、人件糧食費が七%ダウンしているのですね。これは人件糧食費というのも当然のことながら値上がりをするわけで、それを最小限度に見積もり、人員増も最小限度に見積もった、非常に無理をして、それで正面装備が全体の中で二八%を占めるというようにやりまして、やっと十五兆六千億から十六兆四千億である。これを人件糧食費をある程度上昇を見込めば、必然的にこの十五兆六千億から十六兆四千億という総額はふえざるを得ないというように理解せざるを得ないのじゃないかという点を私は指摘しておきたいと思うのです。これは恐らく現実にはそのとおりの姿になるであろう。それからまた、インフレ率といいますか物価上昇率は、五十七年度価格でやっているわけでしょう、実質でやっているわけですから。われわれは過去の経済成長率の実質と名目を見てみますと、五十六年は実質が二・七で名目五・二、五十五年は実質三・七で名目七・七、五十三年は実質五・一で名目九・五というように三ないし五%乖離があるわけですね。ですから、あなた方が先ほど示されたもので、実質として防衛費が六・三から八・〇の間ふえるということを発表しておりますが、恐らくそれは名目成長率が上がるのだから当然であるということを言われるかもしれませんが、これは大幅に防衛費はふえるであろうということは十分に推測できると思いますね。  そこで主計局に聞きたいのですが、あなた方は、五十七年度補正、これはやるかどうかわかりませんが、少なくとも五十八年度予算編成しなければならない。それにはゼロシーリングということであるいはマイナスシーリングということで非常に努力するのですが、マイナスシーリングをしましても、その対象というのは、ある新聞に、財界はどうも財政を知らないという大蔵省首脳の発言というのが出ていましたけれども、五十兆なら五十兆の予算のマイナスというように切れないわけで、当然にふやさなければならない国債費だとか地方交付税交付金もありますから、その対象はごくわずかで、来年度の場合には巷間伝えられるところ二千三百億円ぐらいカットできるかどうか、こういうことでしょう。そういうときに、防衛費が五六中業でこういうぐあいにふえていく。もちろんこれは見込みであって、予算は単年度ですからその都度査定するということで、財政当局を直ちに拘束するものではないということではございましょうけれども、しかし、過去の例から見ても、これが大きな影響、インパクトを与えるということは、これは見ておかなければならない。そうなると、予算編成に対する非常な硬直要因になるのではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  68. 窪田弘

    窪田政府委員 五六中業そのものは、いま御指摘のように要求の基礎資料でございまして、毎年度年度予算編成はそのときどきの情勢を見てやってまいりたい、こういうことでございますが、防衛というのが国の基本的な仕事の一つであります以上、私どももこれは重点を置いておりますが、しかし、世上言われておりますように、こういうものを突出させるとかあるいは聖域にするとかいう考えは全くございませんで、やはり防衛も国民の理解と協力を得なければ本当の防衛にはならないわけでございますから、全体のいろいろな施策とのバランスをよく考えて編成をしてまいりたいと思っております。
  69. 正森成二

    ○正森委員 一応そういう答弁ですが、私は、こういう五六中業を何らかの形で実施すれば、昭和五十九年にはGNP比率一%を突破するのは恐らく必至であろう。政府は、五十九年度までに赤字国債発行をゼロにする、こう言ったけれども、私の見るところでは、恐らくそれは無理であろう。そうすると、公約で達成するというようなものは達成せず、一%以下に抑えると言ったものは逆に一%を超えるということで、とうてい国民の信頼を得られないことになるであろうという危惧だけ表明しておきたいと思うのです。いずれまた、しかるべきときに予算委員会等で質問する機会があると思います。  そこで、次の質問に移りますが、五十八年度のことは、来年のことを言えば鬼が笑うと言うから、まだまだあなた方は基礎資料が出ておらない、五十七年度補正についてさえそうだというのが基本的な立場だろうと思うのですね。しかし、それを承知の上でなおかつ指摘せざるを得ない。  それは、いままでの委員の方もしばしば言われたように、五十六年度の歳入の見込みより低いことが五十七年度の発射台を下げるということで、五十七年が恐らく四兆円前後の当初見込みよりも減になるであろう。五十八年度はわれわれの試算では、全体でほぼ中期展望の五十八年度五十二兆円の収入を見込んでおりますが、赤字国債の減額も全部差し引きしまして。しかし、実際上はもし赤字国債の減額をやるとすれば四十六兆ぐらいしか上がってこないのではないか、約六兆足りないのではないか。そして歳出の方は、中期展望のB型をとりますと五十四兆五千六百億ということになるのですが、それに対して五十七年度ですでに補正予算で、理財局長がほぼそれを当然の前提にして、早く現在発行権限をもらっている国債を消化しておきたいと言われたように、国債の増発をやりますと国債費がふえますね。それから八月は恐らく国債の利率改定をしなければならないということになれば、それがまたふえる要因があるというような点を考えますと、地方交付税が税収減に伴う減ですが、そういうものを当然見込んでも、なおかつ五十五兆円前後にふくらむのではないか。そうすると、差し引きしますと約九兆円どこかから財源を持ってこなければならないというのが私は大きく考えた見通しである、こう思うのですね。  財政当局としては、まだ予算が始まったばかりで、税収がどうなるかわからぬ、経済の成長がどうなるかわからぬというようなことで、もちろん具体的には言えないと思いますが、先を見通し、優秀な知識を持っておる大蔵省としては、大まかな考え方としてはそういうことも最悪の場合はあり得る、その場合にはこうしなければ国の財政は持たないということをやはり考えていかなければいかぬと思うのですね。  そういう点から申しますと、私の方が独自でもし削ったりふやしたりする点があればどこであろうかというように考えていけば、真っ先に削らなければならないのは決算調整資金国債整理基金に返す二兆二千六百億円ですね。これはもし本当に返すとなれば、従来全然なかった新たな歳出の項目ですから大変なことですね。それから世上言われているところでは、歩積み両建てみたいな定率繰り入れはやめようじゃないか。何も借金して借金の返済の財源を積み立てぬでいいということで、そうすれば一兆五千億円ぐらいは節約できるとか、補助貨幣回収準備資金を思い切って使うとか、いろいろなことが言われておりますね。  実際、あなた方はこういうようなことを何一つやらぬでいいとまじめに思っているのですか。私は、決してこれを勧めたりするわけじゃないけれども、こういう幾つかの項目のどれかに手をつけなければ、五十八年度予算編成なんというのはできないんじゃないですか。つまり、そのことは鈴木内閣の言う赤字国債脱却なんというのがもう破産したということを言わざるを得ないんじゃないですか。  それで、主計局理財局長に伺います。  巷間伝えるところでは、定率繰り入れをやめるとかいろいろな問題について、主計局の方は財政の健全化から言えばやはり積み立てなければいかぬ。理財局の方は、そういう借金をして借金を返す財源を持っておるなんというのは不経済なことであって、この非常事態にいっそそういうものはやめたらどうかという意見だ、こういうように言われているのですね。これは純経済学的に見れば、それはどちらにも言い分があると思いますが、双方二人おられますから、ここでその意見を言うてみてください。理財局長まずお願いします。
  70. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 これは私の方じゃなくて、主計局の方から先に答弁してもらうのがあれだと思います。
  71. 窪田弘

    窪田政府委員 五十八年度予算の歳入と歳出数字をお挙げになりましたけれども、九兆円足りないというお話は、おっしゃるように、いまのところ私どもそういう数字のめどがまだ立ちがたい状況ではございますけれども、確かにおっしゃるように、非常な貧乏世帯のやりくりのようにあらゆることを考えていかなければならない。これは六月二十五日に衆議院予算委員会にお出しした資料にもありますように、補助貨幣の問題その他特殊法人、特別会計からの納付金、あらゆるものを幅広く検討してまいりたい、こう考えております。  ただし、いま御指摘のありました国債の償還財源あるいは国債整理基金への組み戻し、これは世上いろいろな提言がございまして、その中で、こういうことをやったらどうかという提言はございます。しかし、これは事国債発行の節度に関する問題でございまして、戦後、昭和四十年代から国債発行し出したときに、いろいろ考えましてこういう仕組みをつくりました。また、その後いろいろ国会の御審議もいただいておりますものですから、やはり軽々にはやるべき問題ではない。提言がありますので検討の対象にはいたしますけれども、やはり慎重の上にも慎重に考えてまいりたいと考えております。
  72. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 いまの主計局答弁のとおりなんでございますが、ちょっと長くなりますけれども、お許しをいただきまして申し上げます。  新聞に報道されているというのは私も読んだのですが、非常に奇異に思ったわけでございます。私が主計局におりましたときには、一・六というのは歩積み両建てでおかしいじゃないかという考え方を持っていたわけです。理財局の方はそうじゃないという議論で、いまの報道は全く逆なんでございます。  これはさておきまして、結局いま窪田次長が答弁いたしましたように、公債を四十一年に出しますときにいろいろな議論をやったわけでございます。戦前の制度あるいは諸外国の制度、そして歩積み両建てというようなことを大体主要国はやっていないということで、公債を出して積むというようなことはむだではないかというのが主要国の一般的な考え方であったわけでございますが、やはり公債の償還財源をはっきりしておくべきではないかというような考え方に立ちまして、現在は三本柱、御承知の一・六の分、それから剰余金繰り入れ予算繰り入れということで償還を着実にやっていく、それが公債の価格なり金利なりに対して好影響を与え、同時に財政規律の根本にあるという考え方に立っているわけでございます。  そこで、今回の決算のときの問題とその一・六の問題と、これは全く違った問題であって、一つは決算調整資金法の問題であり、一・六の方は国債整理基金特別会計法の問題であるわけです。しかしながら、実質的に見ますと結局同じ問題ではあるわけです。それで、従来の三本柱の国債償還の考え方あるいは国会における御議論、こういうような経緯的な問題と原理的な考え方の問題がございます。それから同時に他方で、いま御指摘のように、そういうようなものを出すために公債を出さなければならない、両建ての問題があるわけです。  そういうようなことで現段階では、こういうような緊急事態の場合にはすべて行きがかりにとらわれないでオープンの立場で、国民経済なり財政規律なり、そういう角度から最も妥当と思われる方途を探求すべきではないか、率直に申して私はそう思うわけです。この問題は理財局サイドの問題ではなくて主計局サイドの問題でございますので、主計局も恐らくそういうようなとらわれない立場で検討するという立場をとるのだろうと思います。  私どもの方は、百兆円になんなんとする公債の管理政策というものは一つの任務であるわけであります。そういうような立場から言えば、本来国債整理基金に金があった方がいいわけです。しかしながら、その金をつくるために公債をよけい消化しなければならない、これがジレンマになるわけです。結局そういうような問題でございまして、恐らく、主計局がデシジョンする問題でございますが、とらわれない立場で検討するのではなかろうか。私としては、全くとらわれないで検討した方がいいんじゃないかと思うわけでございます。先般の大臣答弁趣旨どもそうではなかろうかとそんたくをいたしておる次第でございます。
  73. 正森成二

    ○正森委員 非常に含みのある答弁で、とらわれない立場で検討する方がいいんじゃないかということに万感を込めて言うておられるように伺ったのですが、私は、とらわれない立場で検討するもどうしようも、背に腹はかえられぬということに結局はなるんじゃないかというように、窪田さん、率直に言うてそういう点を危惧せざるを得ないんですね。それは、いまは議論するのにまだ間合いがちょっと遠過ぎますから、もう少しその功罪も含めて、いずれ秋以降に議論したいと思います。  時間がございませんので、あと一問だけお願いいたします。特定財源の問題で揮発油税の問題だけ主税局に伺います。  揮発油税は、昭和二十四年にできたときは、もともとは従価税で、小売価格の十割ということで一般財源だったんですね。それが昭和三十二年に法律を変えて、その前に従量税に変わっておりましたが、当時キロリットル当たり一万一千円のものを四千八百円上げて、その分は道路用にする。その前にすでに、一般財源にしておったものを道路整備緊急措置法で道路に向けるということはやっておりましたが、もともとは一般財源だったんですね。それで、非常な財政危機の中でこれを一般財源に戻すべきではなかろうかという意見が巷間あるわけですが、それに対して、従来のいきさつがあるとか、あるいは一般財源にするときには、従来の経緯から見て、道路特定財源のためにだけ新たに法律を変えあるいは税率を変えてやったものを一般財源に入れるのはおかしいから、税率を変えて何ぽかは下げてやらなければいかぬとか、いろいろ意見があるようなんです。  こういう意見に対して、主計局の管轄でもあり、あるいは主税局にも絡みますが、どちらからでも結構ですから、時間がございませんので、短い時間で御見解を聞かしていただきたいと思います。
  74. 梅澤節男

    梅澤政府委員 揮発油税の件につきましては、いま委員が御指摘になったとおりでございます。  法制的にいいますと、現在揮発油税は税法上は普通税なんでございますけれども、特別法で道路財源に特定されておるということで、実質的には目的税的なかっこうになっております。  従来の経緯を見ますと、これは二十九年から特定財源になったわけでございます。道路整備計画が進展いたしますにつれて税率の引き上げを行ってきたわけでございますが、昭和五十年代に入りまして財政事情も非常に緊迫してまいりましたので、これを一般財源にすべきではないかという議論が各方面から起こってまいりまして、政府税制調査会でも、五十二年の中期答申それから五十五年の中期答申をまとめられる段階でこの議論が行われております。  一般的に申しますと、特に財政が緊迫しておる状況のもとでは、なるべく特定財源というのは好ましくないわけでございまして、財政の硬直化を招くという観点から一般財源が望ましいというのは、財政の理論としては原理的にあるわけでございます。税制調査会の中でもそういう議論が強く開陳されておるのですが、ただし、これにつきましては反面非常に強い反対論がございます。  その一つは、日本のいまの道路整備の水準をどのように考えるかということなんですが、特に地方道路の整備状況が非常におくれているから、なお道路の特定財源としてこれを確保しておくことが必要であるという主張と、もう一つは、従来の経緯から見て、道路整備のために税率をかなり高い水準で設定しておる、いわば受益者負担的な性格が強いわけであるから、一般財源に戻すとすれば、いまのような高率の揮発油税の水準をもとへ戻すべきではないかという議論、実はこれは税制調査会の中でも両論併記のようなかっこうでまとまっていないわけであります。そういった主張に対しまして、私ども税制当局といたしましては、ただいま申しましたように、財政論としては一般財源が望ましいということと、諸外国の例を見ましても、当初道路財源として揮発油税は発足しているわけでございますけれども、社会資本としての道路設備が完備してまいるに従いまして、これを一般財源に移してまいっておるという例が一般でございます。その場合も、必ずしも高い税率水準をもとへ戻していないという例もこれまた一般的でございまして、私どもは私どもなりにいろいろ主張があるわけでございますが、ただいま申しましたように、これについては根強い反対論もあるということでございますので、各方面の議論をさらに煮詰めていただきながら、ひとつ方向を見出していかなければならない問題ではないかということでございます。
  75. 正森成二

    ○正森委員 さらに詰めた議論をしたいと思っておりましたが、時間が参りましたので、終わらしていただきます。
  76. 森喜朗

    森委員長 次回は、来る八月四日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時十一分散会