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1982-04-09 第96回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月九日(金曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 森  喜朗君    理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君    理事 小泉純一郎君 理事 中西 啓介君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 鳥居 一雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    今枝 敬雄君       太田 誠一君    木村武千代君       熊川 次男君    笹山 登生君       椎名 素夫君    泰道 三八君       中村 弘海君    中村正三郎君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    船田  元君       毛利 松平君    山中 貞則君       山本 幸雄君    与謝野 馨君       大島  弘君    佐藤 観樹君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       野口 幸一君    平林  剛君       堀  昌雄君    山口 鶴男君       柴田  弘君    渡部 一郎君       小渕 正義君    正森 成二君       簑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         大蔵政務次官  山崎武三郎君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         大蔵省理財局長 吉本  宏君         大蔵省証券局長 禿河 徹映君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁次長   小山 昭蔵君         厚生省援護局長 北村 和男君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         建設大臣官房会         計課長     梶原  拓君  委員外出席者         経済企画庁調整         局国際経済第一         課長      丸茂 明則君         経済企画庁調整         局財政金融課長 宮島 壯太君         国土庁土地局土         地政策課長   木内 啓介君         通商産業省産業         政策局調査課長 山本 雅司君         建設大臣官房政         策課長     佐藤 和男君         建設大臣官房官         庁営繕部営繕計         画課長     小川 三郎君         建設省道路局道         路総務課長   牧野  徹君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      前川 春雄君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ――――――――――――― 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     太田 誠一君   白川 勝彦君     船田  元君   森田  一君     中村 弘海君   柳沢 伯夫君     泰道 三八君   塚田 庄平君     山口 鶴男君   渡部 一郎君     正木 良明君   玉置 一弥君     小渕 正義君 同日  辞任         補欠選任   太田 誠一君     麻生 太郎君   泰道 三八君     柳沢 伯夫君   中村 弘海君     森田  一君   船田  元君     白川 勝彦君   山口 鶴男君     塚田 庄平君   小渕 正義君     玉置 一弥君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十七年度の公債発行特例に関する法  律案内閣提出第九号)      ――――◇―――――
  2. 森喜朗

    森委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  この際、本案について、本日参考人として日本銀行総裁前川春雄君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――
  4. 森喜朗

    森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  5. 沢田広

    沢田委員 最初に大蔵省にお伺いいたしますが、いま盛んに自民党の方でグリーンカード見直しという議論が行われております。それで、大蔵省としては、この見直されなければならない原因をどういうふうに、大蔵大臣自民党党員としてそれぞれお聞きになっているんだろうと思うのでありますが、大蔵省としては、これを延ばさなければとか反対しなければならないというのはどういう理由でそれを主張されているのか、その点の原因だけ、わかる範囲内においてお示しいただきたい。それから大蔵大臣の方も、党の役員会閣議等においても意見もあるのかもわかりませんから、自民党党員としての立場からグリーンカードがなぜ凍結とかあるいは見直し、いかなる理由でそういうことが言われているのか、若干ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  6. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えいたします。  直接にお聞きしているわけではありませんが、新聞報道等による問題点とされているのを挙げてみますと、プライバシーの問題が一つかと思います。プライバシー議論はあの法案が審議されたときにも十分論議がございまして、内容的にも守秘義務が重く掲げられておるということは御高承のとおりです。  それから、枠自体非課税枠だけの管理でございますので、そういう意味で、金の出し入れとか残高という点について懸念がないということは十分に説明いたしております。  それから、あと資金移動の問題。金の購入がふえておる。一年間に五千億ですから、その半分が退蔵用、こう見ていいかもしれません。あとゼロクーポン債が特に二月に非常に大きく売れたというようなことから、資金移動が国際的に生じておるのはグリーンカードからだ、こういうふうに短絡的な説明があったということもきっかけでしょう。これはどのくらいの規模かと言えば、全金融資産から見ればウエートがそんな大きなものではないし、マクロの経済影響を及ぼすものではないという気がいたします。適切な対応を考えていくべき面は今後措置していくべきであろうと思います。  あとは、貯蓄心がというような議論もあるようですが、貯蓄の方は伸びておりますし、いろいろ問題が挙げられている点については、われわれとしては問題とされることがおかしいという気がいたします。むしろ限度額が完全に守られていないところから来る問題、また、本人が確認されるということから来る問題があるように思われます。  それからもう一つは、やはり税率が現在最高税率七五ということ。これは、まじめな分離課税の方でも三五は七五になるということが余りにも税率問題としては解せないという問題はあろうと思います。これについては大臣、私もいつも検討しておることで、税率の構造が総合課税になれば、そこは、外国総合課税も同じような体制をとっている以上は、合理的解決をすべきであるということであろうと思います。  頭にあるだけの問題点は、そういうことであろうと思います。
  7. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは、理論的のものと政治的なものと二通りあるのじゃないかと私は思っております。  いま言ったように、総合課税税率が七五%というのは世界で例がありません。総合課税にするときに、いいところだけのつまみ食いというようなことは経済の活力を大いに失うし大問題がある、これは一つございます。それからもう一つのものは、枠取り競争金融機関枠取り競争になるというようなことでいろいろ言う人がいるでしょう。それから選挙区なんかへ帰ると、中小企業者からグリーンカード質問が非常に多い。そして、それに対する明確な回答がなかなか与えられないというようなこともあるのかもわかりません。  いずれにしても、国民にいつまでもいつまでも不安、動揺を与えるのはいけないというようなことから、よくグリーンカード理解がないことが一番の問題ではないのか。財産がみんなわかってしまうのじゃないかとか、税務署に手にとるようにみんなばれるのじゃないかとかという必要以上の心配がある。やはり政治は、国民に不安を与えないことなのだという点から、不安を与えないためにというようなことでやっておるのではないか。私、まだ正式な接触がないのです、忙しくて。五分、三分と話をするわけにもいかぬものですから、したがって、これの法案でも大蔵委員会で上げてもらって少し暇をつくっていただけば、私は早速説得工作説得まではしかねるかもしらぬけれども、そういう実態をよくお話しして謙虚に相談をしてみたいと思っております。現在はそういう状況です。けさの閣議でも同じような質問がありました。
  8. 沢田広

    沢田委員 そうしますと、大蔵省大蔵大臣は、言うならば内容のPRといいますか正しい認識が十分でないという把握である。大蔵大臣としては、いろいろとそういう動きはあるけれども、説得をして、言うなら大蔵大臣の職をかけるとまでは大げさには言えないのでしょうけれども、とにかく職をかけて、一たん決めたことでありますから、それを国民なり、またそれぞれ主張している人を説得するという決意のもとに臨むのだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  9. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私といたしましては、これは法律で決まっておることですから、私が大臣になる前からこの法律は決まっておるのですから、したがって、法律を執行するというのは当然のことであります。  ただ、草々の間でつくったために矛盾したところもあると私は思うのですよ。いま言ったような税率の問題だとか資産合算制度だとか、そういうようなもので実際理屈に合わないようなものがある。したがって、環境整備というものはやはり同時にやるべきだということで、その時期は、できれば同時実施が一番いい、私はそのように考えております。
  10. 沢田広

    沢田委員 いみじくも言われましたが、環境整備という言葉の意味はきわめて重要なのであります。七五%の関係と三五%の関係等環境整備の要件であるとすれば、大体それ以外は解決できる、こういうふうに解釈していいわけですね。七五%の部分と分離課税の三五%が総合化されることによって七五にはね上がってくる、そういうことの点だけが調整というか若干環境整備されれば、その他の問題は解決できるというふうに理解していいわけですか。
  11. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大体いいのじゃないかと思いますが、ただ問題は、正当な資金を持っている人が非常に不安を持っているというのも事実なので、そこらのところに不安を与えない工夫を何か一ひねり考えるかどうかということがありますが、具体的には、まだどうこうということを言うまでに至っておりませんけれども、そうすればいいのじゃないかと私は思うのですがね。
  12. 沢田広

    沢田委員 大体のところで、本論に入らせていただきます。  赤字国債が膨大になって大変厳しい財政状況になっておる。大蔵委員会歳入委員会でありますから、その辺は野党といえどもクールに財政を見詰めていくということがどうしても習性になっているわけであります。  そこで、建設省においでをいただきましたが、建設省は独自の財源などを持っていろいろ行政をやられておるし、治外法権的な財源を持っておって、大蔵省といえどもなかなか物が申せないというような状況であります。特に今日の財政赤字原因、そのもたらす結果あるいは国民に及ぼす影響という点で、建設省としては、特例公債発行している現状に対してどういう御理解をなさっておるのか、ちょっと御見解を承りたいと思います。
  13. 佐藤和男

    佐藤説明員 お答えいたします。  特例公債に関しましては、私ども専門でございませんので、一般的に承知している範囲でのお答えでございますが、先生御高承のとおり、特例公債経常部門の歳出に対して歳入が不足するということから五十七年度においても発行せざるを得ない状況にあるというふうに承知しております。ただ、この特例公債は、建設公債と違いまして、発行に見合います資産が残らないという意味で不健全なものでございまして、五十九年度内に特例公債から脱却するという方向政府が一致して努力を傾注しているという現況にあると承知しております。
  14. 沢田広

    沢田委員 建設省としては、自分財源自分財源として確保していると言う。子供の方はわりあい小遣いが多くて裕福である、ところがおやじの方は火の車でどうにもならない、こういう現状に対して建設省としては、この前質問もありましたから触れませんけれども、道路舗装率、どの法律を見ても、道路にも充てるというふうに法律ができておるわけですね。そんなに道路道路と言っているわけでありますが、自動車税にしても、重量税にしても、自動車取得税にしても、軽油引取税にしてもあるいは揮発油税にしても、全部道路財源に充てると法律で決めているのですね。そのとおりですね。
  15. 牧野徹

    牧野説明員 国の関係につきましては、揮発油税石油ガス税法律上の特定財源になっております。なお、自動車重量税につきましては、先生御案内のように、四十六年に第六次五カ年計画財源不足を補うということを主な理由として創設された経緯によりまして、国分の八割が道路整備に充てられるということが慣行として確立いたしております。それから軽油引取税等地方の方もすべて道路整備特定財源になっておることは先生のおっしゃるとおりでございます。
  16. 沢田広

    沢田委員 だから、高度成長のときには、日本の産業を強化していくために道路をつくる、自動車の発達とともに道路道路と、何でも道路さえやっていればいいやということで今日来たわけです。  こういう形態がこのまま今日のような赤字財政の中で継続していくことは妥当なのかどうか、いわゆる政策選択として見直していくべき時期に来ているのではないか。道路だけが幾らよくなったって、国民が食えなくなったのでは何にもならない。まさか道路を食って生きていくわけにいかないのでありますから、やはりその意味においての選択というものが必要なのじゃないか。言うならば常識的な答弁を、それはあなた方は、建設省なり運輸省なりそれぞれの省にいるからそのことだけで、いわゆる向く方向が両方覆われてしまって馬車馬のようなかっこうになってしまっているのじゃないのかという気がする。だから、特例公債は大変な状態なのだということをどう認識しているか、これはいま言われただけの答弁じゃなくて、これから借金というのは返さなければいけない、その返さなければならぬ状況については、どういう道路をつくっていくことがどれだけプラスがあると考えていますか、借金を返したりしていく上において。その点はどうお考えですか。
  17. 佐藤和男

    佐藤説明員 お答えいたします。  先生は、道路をとって社会資本一般についての今後のことをお尋ねというふうに理解しておるわけでございますが、社会資本整備水準現状は、先生御高承のとおり、現状においても諸外国との比較においてはまだ低位にあるというところでございまして、建設省といたしましては、今後十年ないし二十年の間にでき得る限りこの整備水準を諸外国並みに到達させるということで事業の推進を図っていきたいと考えております。  ただ、個々に行われます公共投資につきましては、一つは後代に資産が残る、かつ、その投資の過程において、一般的に言いますと経済成長にも寄与するということで、税収についての返還と申しましょうか、還元というのも一部生じてくると理解しております。     〔委員長退席大原(一)委員長代理着席
  18. 沢田広

    沢田委員 社会資本でいけば、もし建設省内部道路の問題でいけば、下水道はではどういう水準にありますか、あるいは公園はどういう水準にありますか、それから、たとえばいつも言っている共同溝というかケーブルなどに対してはどういうことですか。それから道路をつくったって、その道路にたまった水は全部ほかへ流れていってほかへ迷惑をかけているのですが、その下水はどういうふうに整備されていますか。  時間の関係で結論的に言えば、重量税道路です、自動車税道路です、取得税道路です、それから揮発油税道路です、軽油引取税道路です、こういう形の一辺倒的なのは改めて、少なくとも最悪譲っても建設省内部だけの財源に切りかえて、下水道公園河川もというふうに一応全般的な建設省財源に変える。自動車河川とどう関係があるかと言ったら、橋の上を通るんだから関係がないということはないのですから、そういうことで建設省内部財源とすることまで一歩譲ったとして、他の河川とか公園とか下水道とかそういうものの財源に、建設省全体の枠の中で処理していくという方向は考えられないかどうか、その点お伺いいたしたい。
  19. 佐藤和男

    佐藤説明員 お答えいたします。  先生承知のとおり、わが国の下水道普及率現状は総人口に対して三〇%程度ということでございまして、(沢田委員「それは市街化区域だけだよ」と呼ぶ)たとえばアメリカの七二%、イギリスの九七%に比べれば、これからまた着実にこれを充足していかなければならない現状にあると考えております。
  20. 沢田広

    沢田委員 だから道路だけが七〇、八〇何%国道、県道はいってしまって、市町村道が五〇%程度までも進んできている。それと下水道進捗度合いから見ればアンバランスがあるということは御承知でしょう。あるいは公園面積から見れば諸外国に対して著しく低い、こういう状況もそのとおりなんです。だから、一般財源にしろとまでは言わぬから、せめて建設省内部のそういう全体的なナショナルミニマムの充実へ当面これを変えていくという方向に改められないか、改める考え方がないかどうか、それを一応聞いているわけです。その点をお答えいただきたいのです。
  21. 佐藤和男

    佐藤説明員 先生おっしゃいますように、地域社会資本整備水準がそれぞれバランスをとって整備されなければならないということは、私ども最大の目標ということでやっているわけでございます。  ただ、その際、特に地域整備におきます基幹的な施設でございます道路につきましては、やはり地域整備に先行して道路整備を図る、かつ、たとえば下水道との関係におきましても道路整備を図った上でそれに管渠を埋設するということで、現状においては、現在の財源制度を続行させることが社会資本整備にとってきわめて基本的に必要なことと考えております。
  22. 沢田広

    沢田委員 答弁にならないよ。そんなことを聞いているのじゃないのだよ。だから建設省内部での融通ができるかできないか。  ここで大臣に伺いますが、それぞれ担当が来るときにはレクチュアしてこういう問題だということは言っているわけだ。だから、それに答えられる人間をよこさなければ、これは話にならぬのですよ。建設省内部での融通ぐらいは建設大臣が一人で所管しているのですから、何も道路課だけの仕事をやっているばかりが能じゃないのでして、いまこういう状況になってきているのだから、本当は一般財源にしたい、こういうふうにわれわれは言っておるわけですが、そこまで一歩譲っても、建設省内部財源大蔵大臣とはどういう関係にあるのかと思って調べてみたら、徴収に当たっては税務署長に委託して、税務署長がもし重量税などが取れないときには取ってくる、こういうことになっておる。いよいよ困ったときには税務署長のところに泣き込んでいくというのがこの仕組みなんです。  だから大蔵省だって、それは実際にあるかどうかは別問題としまして、一応法体系としてはそういうことになっているわけです。自分が取れなくなったときには税務署長頼みますよ、そういう関係にあるのだから、一歩譲っていま言ったアンバランスを直す、建設省の中だけでも融通しないか、こう言っているわけですから、いま言ったような答弁では、こんな全くなってない回答をしているのですから、そんなかたくななことで今日の財政再建が可能だと思いますか。首のすげかえをやらなければ、これはだめだということなんですよ、頭の切りかえをやらなければだめなんです。それがいまの現状なんですから、これは大蔵大臣、どういうふうにこういう答弁を考えられますか。
  23. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 どこの省庁でも、お役人さんというのは自分の縄張りのことだけ言うので、人のことは余り言わない。それは大蔵省も同じですよ。  私としては、建設省に対しては議員と全く同じことを言っているのです。とにかくことしの予算は去年と同じですよ。そこで道路財源だけがふえてしまう。そうすると、道路だけ伸びるけれどもほかが圧迫される。そうすると、財源を持った長男だけは腹いっぱい飯を食うが、次男三男、つまり公園とか住宅とか下水とかというのは後から出てきていますので、次三男の方が栄養失調になって、長男だけ太ればいいのか。それは道路族建設族も一緒なんだから、家の中でひとつお互いに次三男もめんどう見てやる、長男だけ飯をいっぱい食わぬということをやってもらえぬかということを実は私からもお願いしておりまして、そういう点についてはやや理解ある態度を示してもらっている、そう思っております。今後とも一層長男だけ食い過ぎるほど食わないようにという話は続けてやらなければならない、そう思っております。
  24. 沢田広

    沢田委員 いまの答弁で結果的には法律を全部、重量税揮発油税軽油引取税自動車取得税自動車税地方団体の分においても道路だけでなくていいのですから、これは環境整備の上にプラスになればいいのですから、建設省の枠内においてやらなければならないものに充当するという法律改正をしなければならないのですよ。これはみんな道路にその使途が明確になっているわけですから、屋上屋なんです。自動車の車の油で取って、車を買って取って、それから自動車そのもので取って、それから重量税で取って、今度は揮発油税で取って、あるいは軽油の方の引取税で取っている。あらゆる角度から道路財源というものを取っている。だから答弁は、建設省全体に一時期配分する、それぐらいは一応考えて言ってもらいたい、いま大臣が言っているような方向建設省自身が頭の切りかえをやってもらいたい、その点はいかがですか。
  25. 佐藤和男

    佐藤説明員 お答えします。  道路財源の扱いにつきましては先ほど私がお答えしたとおりでございますが、大蔵大臣からの御意見は、かねがねからそういう御意見があることは承知しております。
  26. 沢田広

    沢田委員 結局、頑迷な態度をとっているということ以外に何物もない。  じゃ、もう一つ聞くけれども、重量税のことでお伺いしますが、検査自動車というのがあります。この検査自動車というのは何なんですか、答えてみてください。
  27. 牧野徹

    牧野説明員 大変申しわけございませんが、不勉強で存じ上げません。
  28. 沢田広

    沢田委員 税金は取っておるけれども、車の中の検査自動車の中身もわからぬで、よくのこのことこんなところへ来られるもんだな、全く。じゃ調べてここへ来なさい。いま留保しておいてやるから。  それから、大型特殊自動車だけはなぜ重量税を取らないんですか。その理由をちょっとお聞かせください。
  29. 牧野徹

    牧野説明員 自動車重量税の創設の経緯につきましては、先ほど申し上げましたとおり、四十六年に道路を損傷する者からお金を取って道路整備財源に充てるのが最も合理的であろうということで創設されたように承知しております。ただ、その際に、いろいろ他の政策との配慮、整合性等の観点から、物価等の観点も考慮して、基本的に税率が定められたというふうに承知しております。
  30. 沢田広

    沢田委員 僕の答えになっていないよ。なぜ大型の特殊自動車は免税にしているんだ。それから検査自動車という中身は何なんだ。聞いていることにちっとも答えてないじゃないですか。時間をやるから後で……答えられるの。
  31. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 じゃ、かわってお答えします。  自動車重量税法の第五条(非課税自動車)の第一号のところに大型特殊自動車がございます。これが第二点の御指摘の点ですが、これは道路を走らないで、建設現場等にある大特というものであります。そういうことでこれは走行しないわけです。(沢田委員「大型特殊自動車というのはキャタピラーがついているものだよ」と呼ぶ)そういうのも入っています。通常走らないというのがそうです。  もう一つ検査自動車、これは検査の対象になる自動車ということであります。
  32. 沢田広

    沢田委員 そういうなまじっかな答えをしちゃいけないよ。検査の対象じゃないんだ、検査がすべて終了したものを検査自動車というんだ。それは継続、分解整備検査、構造等全部終わったものを検査自動車というのであって、それに税金をかけますよということなんです。これは、これからも車検だの何かの問題があるから言うのですが、そういうものでなければ税金はかけませんよ、こう言っているわけなんだ。だから、検査がすでに完了したものでなければ重量税はかけませんよということが税の本質だ、そうでしょう。それは知っているんだよ。知っているから聞いたんです。
  33. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 これは重量税法の第二条の定義にございまして、第二号の検査自動車、これはいろんな検査をやって検査証の交付または返付を受ける自動車であります。
  34. 沢田広

    沢田委員 だから建設省、ここら辺をやっていると時間がなくなりますので、やりとりは終わりますが、大蔵大臣、ともかく建設省がいまのような態度であったんではこれは話にならぬのであって、大蔵大臣に聞いてもこれは無理なんだろうが、もう一回聞くが、建設省のこの道路財源というものを、今日の累積赤字がこんなに大変になって、償還が大変になっている、そういう情勢を考えて、普通なら一般財源にしたい、そして当面の急場をしのぐためには協力してほしい、これがいわゆる一応現在の心境だよ。与野党通じての心境だ。特別頑迷なのも中にはいるだろうけれどもね。いま税金を増税されるよりは、その方がいい、道路が若干一年おくれても増税されるよりは当面その問題を考えた方がいい。さもなければ、下水道なり公園なり、世界の水準から落ちているものに若干バランスをとっていくように、低水準であるけれども整合性をとろうじゃないか、そういう提案をいま私がしているわけだ。せめてその方向で検討していくくらいな気持ちがなかったら、これは話にならぬと思う。余りになめているよ。そんなことで建設省がやれるんならやってみろ。そういうことでまかり通ると思ったら大間違いだということを言いたい。  これは、またいずれ建設委員会なり何かへ行ってやるけれども、そんなことだったらばとても話にならぬが、もう一回出てきて答弁してみなさい、今日の日本のこの財政状況をどういうふうに認識しているんだか。一応その見解をお伺いします。
  35. 佐藤和男

    佐藤説明員 これからの社会資本整備を進めていくためには、やはり財源的に特定財源とそれから現況におきますと一定の建設国債という形で進めざるを得ないと思います。そういう公共投資を進めることが、わが国経済の活力を維持し、かつ、一定の成長を担保する一つの要因であろうというように考えております。
  36. 沢田広

    沢田委員 もう話にならぬ。大蔵大臣も聞いてくれましたけれども、こういう情勢に当たっては、もう少し情勢に応じて対応できる、かたいだけで、結構裏で何をやっているかわかりはしませんからね。表向きかたいようなことを言ったって、裏では何をやっているかわかりはしないですから、その辺はこれ以上言ってもしようがない。  経済企画庁長官がお忙しい中をおいでいただいておりますから、もう日本の景気をしょって立っているような大臣でありますから、一応景気のいまの状況でお伺いをしてまいりたいと思います。  七カ年計画のフォローをされまして、現在二兆三千億も今年度はむずかしい。来年度も三兆円以上むずかしいと一般的に言っているし、景気は悪い、貿易収支も悪い、生産率もきわめて弱い、回復は全く見込みがない、こんなふうに言われておりまして、七カ年間のフォローを六十年度に国民所得の指標を三百兆円くらいにしましょう、それから鉱工業生産も五・二%程度ぐらい上げましょうというふうに、租税負担も大分上がるようになっていますが、それぞれ考えられております。  いまのこの現状に合わして、やはりもう一回この七カ年計画を見直さなければならぬ、そういう段階に来ているんじゃないか。当然そういう時期に来ているので、七カ年計画がどういうふうになるだろうか、このままで推移をしていった場合にどうなるのか、こういうことが一つ疑問になります。  それからもう一つは、建設国債を前倒しして、後の分はどうなんでしょうという質問に対して、大蔵大臣は、後のことはそのときの情勢でなければわからぬというような言い方でいるわけだ。しかし、いまの情勢で見ると、七五%も実質上前倒しができるのかどうかという疑問もありますが、当面はそれでやっていかなければ日本はいけないんじゃないか。政府資本で誘導するという方向は間違っているんじゃないか。総理大臣以下全部、当初予算に当たっては、民力の活用である、小さな政府である、こういうふうに政府は言われたわけでありますから、今日政府がそういう公共事業で建設国債の増発をしたりなんかすることはインフレへの懸念の方がより多くなるんじゃないか、こういうことが考えられますが、七カ年計画に対する今後の見通し及び建設国債発行とインフレとの関係等についてお答えをいただきたいと思います。
  37. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 現在の七カ年計画昭和五十四年からスタートしておりますので、ことしで四年目になります。これまでのこの計画についての取り扱いは、毎年フォローアップをしまして、経済の実情を見ながら実際に合ったように運営していこう、こういうことでずっとやってまいりました。しかし、最近世の中の事情も大分変わってまいりましたので、昨年の五月、経済企画庁で経済審議会に二十一世紀を展望いたしました長期展望委員会というのをつくっていただきまして、これからのおよそ二十年の間に日本の社会と経済はどのように変化をしていくのか、こういう作業をしていただいております。一、二カ月の間に大体一年間の作業を終えまして答申をいただくことになっておりますし、七月には臨調の本格的な答申も出る予定になっております。そこで、この二つを参考にいたしまして、この際七カ年計画を根本的にやりかえるべきかどうか、新しい計画をこの際つくり直すべきかどうか、こういうことについての結論を得たい、こう思っております。  ただ、問題点一つございますことは、仮にこれをやり直すということになりましても、いま世界の経済情勢が激動を続けておりまして、昨年の後半からことしの前半へかけてが戦後最悪の状態である、このように言われております。そういうさなかに、果たして中期計画というものがっくり得るかどうか、こういう考え方もございますし、いや、そういう時代であればこそ中期計画をつくり直すべきである、こういう議論等もございます。  実は、現在の七カ年計画をつくります際に、この案そのものは五十三年末にできたのです、しかし、たまたまそのときに第二次石油危機が起こりましてエネルギー事情が急変をいたしました。そして昭和五十四年の七月に東京サミットが開かれることになりまして、そこではエネルギー問題を中心に議論する、こういうことになったので、その結果を見ないことには七カ年計画は正式に決定できないではないかということで、案そのものができましてから約八カ月間決定を延期しまして、東京サミットが終わった後五十四年八月に正式決定したような経緯もございます。  そういうことでございますので、経済の激動期に新しい計画がつくれるものかどうか、そういうこと等も含めましん、これから二、三カ月の間にいろんな角度から判断をしてみたい、このように考えておるところでございます。
  38. 沢田広

    沢田委員 そうすると、七カ年計画は、非常に不確定要素は多いけれども、一応根本的に見直すという立場でいるというふうに考えてよろしいですか。
  39. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 見直すという結論をまだ出したわけじゃないのです。しかし、先ほど申し上げましたような二つの答申が出ますので、それを基礎にして見直すかどうかの判断をしたい、こう思っておりますが、見直すべきであるという議論等も非常に強いので、そういう点をいま検討中である、ただし、経済の激動期なので、こういう激動期にそれができるかどうか、そういうこともあわせて検討している、こういうことでございます。
  40. 沢田広

    沢田委員 これは大蔵大臣にお伺いいたしますが、いわゆる政府の消費支出のGNPに占める割合というのは大体一〇%以下であります。また、七カ年計画においてもやはり一〇%以下であります。そうしますと、結果的には、建設国債をよけい出していくということは、GNP対比でいけば小さな政府から大体また現状維持の政府に切りかわっていってしまう。言うなら、民力の活用というか、あるいは設備投資というものが今日低迷していますが、いわゆる民力の活用にプラスにならない。自主能力なり自立的な体制というものを弱めてしまう。弱いから転んだ子供を起こしてやっている、こういうかっこうになってしまうことになりはしないか。いまの建設省答弁のように、がむしゃらに自分の城だけ守っていればいいや、ほかがどうなろうと構わない、こういう頑迷な連中がいるのですから、なかなか大変だ。前倒しはいいでしょうけれども、あとは出さないでやるべきだと私は思っているのですが、いかがでしょうか。
  41. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 建設国債といえども利息がついて返さなければならない借財である点においては特例国債と同じであります。ただ、性質が違うということが言えるわけでございます。しかし、国債も借財でありますから、それをどんどん出し続けてふやしていくということは決していいことではない。本来ならば、やっぱり租税なりその他の財源の中で建設行政を行われるべきものだ、これが原則でございます。したがって、そういうようなものを増発するというような場合は異常な事態、異例なことというように考えなければなりません。恒例的には私としては考えたくないわけであります。  したがいまして、今後建設国債を増発するかどうかという問題は、一にかかって異常な問題が続くかどうか、景気がさらに落ち込むかどうか、そういうような諸般の情勢を見た上でないと何とも申し上げることができません。原則的には、私はあなたと同じ考え方であります。
  42. 沢田広

    沢田委員 結局前倒ししてやればあとはまた出てくるのじゃないかという安易な見方をされることがきわめて危険だということを私は申し上げておきたかったわけであります。そういうことの安易感を与えることによって、かえって締まるものが締まらなくなってくる、そういうことを述べたわけで、特に建設省みたいな、ああいう頭の少しかたいというよりもかた過ぎちゃってどうにも動きがつかないという連中もいるわけであります。  そこで、通産省もおいでになっていますから、経済企画庁とあわせてちょっとお伺いしますが、一番いま依存すべきは設備投資だと私は思っておるわけでありますが、設備投資現状とこれからの展望をちょっとお伺いをしておきたいと思います。
  43. 山本雅司

    山本説明員 民間の設備投資につきましては、昨年前半は非常に好調でございましたが、後半になるに従いまして期を追って低くなってきております。  特にその中で問題になりますのは、大企業はまあまあいいところへいっていると言われておりますが、中小企業の設備投資が非常に低調でございます。この状況は、ことしに入りましても大きく変化はしておりません。最近、今年度五十七年度の設備投資動向調査をしておりますが、大企業では一〇%前後の伸びをするものと見込まれておりますが、やはり中小企業についてはまだ動意が見えていない状況でございます。
  44. 沢田広

    沢田委員 七三年からずっと見てまいりますと、七六年が一番低い時期だったわけですね。いまから言えば五、六年前ということがGNP対比で一番低い時期だったわけであります。それが七七年、七八年と低くて七九年から一応やや上ってきた。しかし、またここで落ちてきつつあるという状況です。ところが、アメリカなんかでも現在七〇年対比でいっても一二二%の設備投資、西ドイツでも七四年で大体一〇四%の設備投資。これから十年、十五年先の日本の産業というものを考えれば、やっぱりこの苦しいときに設備投資をしておかなければ、そのときにいってよたよたしてしまうということにならざるを得ない、競争力をなくなしてしまう、こういうことになるわけですから、苦しいときだからこそ、ほかのものをある程度削減しても設備投資に向ける、こういうことは必要な要件じゃないかと思っています。  同時に、国内産業の見通しもあわせて聞きたいのでありますが、そういうことで大企業はいいとしても、国内産業で、それでは農林はどうだ、建設はどうだ、化学はどうだ、繊維はどうだ、紙パルプはどうだ、あるいは金属はどうだといった場合に、国内産業が七〇年度を一応基準として今後どういうものが伸びてどういうものを伸ばさなければならぬと考えているのか、その点お伺いをいたしておきたい。
  45. 山本雅司

    山本説明員 今後の産業政策と申しますか産業構造がどうあるべきかというのは非常に重要な課題でございまして、私どもといたしましても、五十四年、五十五年に「八〇年代の産業構造の展望と課題」というような産業構造審議会の答申が出されております。具体的には、これから資源エネルギー問題あるいは国際分業の進展、さらには人口構造の中高齢化等に対処いたしまして、やはり知識集約的な創造的な科学の非常に進んだ分野を進めていくということが基本でございます。ただ、これから加工組み立て産業と基礎素材産業の跛行性とか通商摩擦とかいろいろ問題が出てまいりますから、対外的な問題も踏まえまして、今後とも基本的にはいま申し上げましたような方向で進むものと期待いたしておるわけでございます。
  46. 沢田広

    沢田委員 知識集約型だなんて抽象的なことを言っているんですが、要するに、政府資本は民力を活用していくという方向で行った場合に、どういう恥力に依存をしながら日本の生産力を上げていくのか、経済成長をしていくのか、そういうのは知識集約型だけだということになれば、一般機械なりあるいは機械産業なりというところになるのかあるいは電機産業ということになるのか。大体電機産業は八二年で、全体を一〇〇にした場合には、七五年に対して一割ぐらい上がってきているわけですね。上がらなければならぬだろうという想定をしているわけです。  だから、これからの産業構造の中で第一次産業は減りますよ、第二次産業も減りますよ、第三次産業だけがふえますよということで所期した国民総生産は確保できるのかどうかということもやはり疑問の一つなんですね。それで第一次は減りました、輸入に依存します、第二次もそういう形になりますが減ります、第三次はふえてきます、それで国民総生産は上がってくるかどうか、この点は通産省と経済企画庁から、大臣が来ておりますから経済企画庁の方から、こういう産業構造をつくっていって国民総生産はだんだん上がっていけるという見通しはあるのかどうか、その点ひとつ見解を承りたいと思います。
  47. 山本雅司

    山本説明員 ただいまの先生の御指摘でございますが、先ほどの建設省への御質問に対する答えと多少ダブるかもわかりませんが、私どもといたしましては、第二次産業の発展なくして日本経済の発展はないというのが通産省の立場でございます。  したがいまして、GNPそのものは第三次産業が発展しますればそれでも多くなるという形にはなるわけでございますが、やはり基本的には、物を生産し豊かな社会をつくるということでは第二次産業の発展、しかもその中でもできるだけ知識集約的な創造的な産業をやっていく。ただ、そう申しましても、基礎素材産業がない日本の産業というのは考えられないわけでございまして、全体的なバランスのとれた産業構造の中で二次産業が発展するというのを期待するわけでございます。
  48. 沢田広

    沢田委員 国土庁にもおいでいただいていますから、この機会に、大蔵大臣にもこれは関係することなんですが、いま日本の物価の中で、世界的にもそうでありますが、一番べらぼうに値上がりしているのが土地なんであります。日本は一平米当たり地価、これは八一年でありますが、これは経済白書からとって三万五千円。イギリスの十六倍、アメリカの九倍、西ドイツの六倍。西ドイツは一平米当たりの地価が六千円、イギリスは二千円、アメリカは四千円、大体年収の三倍で取得ができるものに対して、日本は年収の六・七倍以上、こういうふうに世界的に土地がべらぼうに上がっている。  だから、財政再建までの間だけでも、私の主張ではありますが、公共の福祉に反せざる限り所有権というものは保護されていかなくてはならぬことは憲法の保障しているところであります。しかし財政再建中こうべらぼうに上がったものは社会に還元してもらう、いま言った世界の水準の年収の三倍を基準にすれば、三倍以上の分はいわゆる付加価値といいますか不労所得といいますか、そういう意味において位置づける。そして住宅産業が厳しい、厳しくないという議論がありますけれども、やはりひとしく国民が痛さを分かち合うということになれば、その分についてはある程度社会に還元してもらう税率を適用する、こういうことは当面考えられないかどうか。  たとえば、今度は東北新幹線ができるということでべらぼうな値上がりが盛岡でも出ているというふうに聞いておりますが、それはまさに新幹線ができたことによって地価が上昇した、こういうことなんであって、本人が別に一生懸命ここ掘れワンワン掘ったわけではない。そういうことのいわゆる日本の政府政策の自然の結果なんでありますから、当然政策にまた還元してもらう、こういうことは当然の理論じゃないか。だから全部取っちゃえと私も言いません。しかし、いま言ったように、日本がべらぼうに高いという水準に対してせめて世間並みの水準以上は、売る方から取るか買う方から取るか、折半で行くか、これは別問題、いずれにしてもその分は社会に還元をしてもらう、こういう筋道を当面財政再建期間中はとるような方向を考えるということはできないかどうか、以上お伺いをいたしたいと思います。
  49. 木内啓介

    ○木内説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、わが国が諸外国に比べまして地価が非常に高いことは事実でございます。ただ、可住地面積とかいろいろな条件、社会的、自然的条件を考えますと、ある程度は諸外国より高くてもやむを得ないというふうなことが言えるのじゃないかと思います。  それは別としまして、先生御指摘のように、公共事業等によりますいわゆる外部経済と申しますか公共事業の施行等によりまして地価が効用増という形で値上がりする、こういうものについて社会的に還元したらどうかというふうなことが御指摘かと思いますけれども、そういった課題といいますか、そういった物の考え方というものは根強くございまして、私たちも常々の課題として考えているところでございます。  ただ、そういうことでございますけれども、現実に公共投資による増分の幾らかを公共社会に還元するということを具体に考えてまいりますと、まず公共事業によって土地が値上がりすることは予想されるのでございますけれども、どの程度、どういう範囲にわたって値上がりが行われるか、それから、公共事業によって地価が上昇する分と、そうでなく貨幣価値の問題、いろいろな問題から地価は上昇しますけれども、そういった地価の上昇との要因を分離するというふうな、どの程度が公共事業であり、どの程度が他の要因であるという要因の分離、そういうものが非常にむずかしゅうございます。  したがいまして、そういったことが比較的可能な、たとえば下水道のような場合には受益地が比較的決まっておる。あるいは区画整理事業のような場合、できる公共施設と対象面積が非常に関連が深いという場合には、区画整理の公共減歩とかいうふうな形で、公共への還元がある意味ではなされているというふうに私は考えられるわけでございますけれども、その他の一般的な場合は、そういう技術的な面もございまして非常にむずかしゅうございます。  もう一つは、そういった公共事業による利益の実現が即金、お金ですぐ出てくるものではございませんので、譲渡等がなされる場合にしかなかなか現実的にはとらえにくいという問題がございます。こういったものについては、譲渡所得税等である程度は還元がなされていると思いますけれども、しかし譲渡所得税につきましても、余り厳しくしますと、今度は土地取引自体が非常に停滞しまして宅地の供給を阻害するというような問題が出てくる問題だと思います。  そういうことで、先生の御指摘の問題意識、重要な問題だとは思いますけれども、現実に、私どもも常に検討をしているところでございますけれども、なかなかむずかしく、画期的な方法が得にくいという状態が現状ではないかと考えられるわけでございます。
  50. 沢田広

    沢田委員 税金の方で、大蔵省の方では大体こういうものについて、いわゆる突出して非常に物価が上がり所得が多くなった部分について、やはり特定の税率というものを適用する。いま安くするという方向が強いのでありますが、だから、一定の限度以上の倍率のものについてはやはり社会還元ということの方向をとれないかどうか、その点はどうでしょうか。
  51. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 特別に値上がりしたということが客観的に判断できるかというような問題もあろうかと思うのですが、現行制度で短期については重課をしているわけでございまして、これで、短期の重課というところでそのような投機的なまたはフロー的なものが入るというところまでで、あと個別にフローまたは過度の値上がりということをねらっての税制というのはなじまないと思います。そういうことで短期重課、それから長短をはっきり区分して、今回は長期安定税制にしたということで、それをさらに政策的というか、そういうふうな特別の考えでやるということは適当でないと考えます。
  52. 沢田広

    沢田委員 結果的に土地が世界的な水準以上に超えて非常に高くなってきているということは、ある意味においては、景気の上においても、あるいは所得の再配分の上においても、これはやはり問題が非常に多いわけなのであって、当然これはいま言ったような方向見直していかなければならない課題である。  住宅事情も、いま国民一人あたり一・〇三ぐらいですか、もう需要に達しちゃっている。ですから、これから百五十万なり百三十万の住宅建設というものが、果たして日本式のものが可能かどうかというと、きわめて微妙であります。外国のように耐用年数が二百年ももつような建物を日本がつくっていくということであれば、これは別でありますが、二十年か三十年の耐用年数の建物で満足する風習のついている日本人が、結果的には二百年ももつような建物をつくる能力もなければ資力もなければ、そういう背景もない。マンションみたいなものをつくったって、そう長くはもちにしないですね。あんなのは、六十年と言っているけれども、日本の風土の中で六十年もちっこない建物です。ですから、そういうことから言って、いわゆる短命なものをちょいちょいやっていくわけでありますから、結果的には、住宅産業に依存をしていくという方向も歩どまりが多い。設備投資は、いまお話があったような状況で、これもいま停滞ぎみであります。  だとすれば、どこに何を求めるかと言えば、そういうような異常な暴騰をした土地の不労所得といいますか、そういうようなところからある程度社会に還元をしてもらうということは、大臣、考えなければならぬことなのではないのかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  53. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは気持ちはわかるのですが、実際実務面だと非常にむずかしい。じゃ、値下がりした場合はどうなんだと。ともかく道路をつくったら値上がりするとは必ずしも限らないわけでしてね。町村道とか県道とか国道なんというのは大体周辺が値上がりします。ところが、新幹線とかそれから弾丸道路、それで買収したその地域の値段よりも、その周りの方はむしろ下がる。  それはどうしてかというと、利用価値がむしろなくなるからであります。乗り込めない、利用できない、利用するのには五十キロ先だ、邪魔者が一本そこへ通るということで、そうすると、値上がりするところは確かに値上がりするが、厄介者で値下がりする場所も中にはございます。  したがいまして、その範囲をどういうふうに切るのかどうか、そこらの実務的な問題が、気持ちはわかるんですよ、私は。わかるんですが、実務上どこで線を引くかというようなことが非常にむずかしい。したがって、値上がりを部分的にしているところは固定資産税等を引き上げて社会に還元する。固定資産税はいままでのものではなくて、うんと値上がりしたものは固定資産税を上げるとかね。何かそういうところでひとつ、固定資産税も一律に上げるのじゃなくて、極端に上がったところはもっと上げるとか、それで還元するというふうな方法が一つの方法でしょう。だから、そういう気持ちを何か生かせる工夫をこらすことは必要じゃないか、私はそう思っております。どうできるかが問題であります。
  54. 沢田広

    沢田委員 まだ外回り線を走っているようないまの答弁なのでありますが、社会常識として、要するに、突出して利益なり所得がふえていく分野、しかも自分の努力というよりも社会的な原因によってふえていった部分、それがいまマイナスの部分の方に補てん、再配分をされるべき要因の一つだと思うんですよ。結局、それによってマイナスを受ける、騒音によってマイナスを受ける、公害によってマイナスを受ける、そういうところは下水道が早くできるとか、あるいは公園がたくさんできるとか、あるいはコミュニケーションの場ができるとか運動場ができるとか、そういうようなことによって、社会に還元していく分の財源が高くなった分で平均化を図るということは当然の理論だと私は思うんですね。  利益のあるところだけは野放しに、利益でありますよというのではなくて、やはりそれによって受けた被害のところへ回されていくという再配分の機構というものは、理論的に考えていかなくちゃならぬことだというふうに思うわけです。考え方はわかるけれども実際はむずかしいと。しかし根本的に考えれば、一番割り切れば、私は、そうむずかしいことではないと思うのですが、しかし、一応いまのようなことで税制上むずかしいかどうかということよりも、これだけ上がってきた条件を何とか緩和していくということが大変大切なことだし、そのためにもある程度、不労といいますか、いわゆる余分な、社会の理由によってふえた分は社会に還元していくという方向で検討していただきたい。この特例公債を出して財政再建をやって、それじゃ何が解決になるのだということです。  私は、設備投資も聞きました。あるいは住宅事情の問題も聞きました。国民所得の方も聞きました。それじゃ何の解決のめどがあるのかということになるわけです。私は、そういう意味において提言をしてみたわけですね、何かしなければだめなのですから。これは大臣が言いたいところでしょう、私の言っていることは。だから、あれもだめだ、これもだめだといって、建設省もあんなことを言っているぐらい、だめだ、こう言っている。  そこで大臣、それじゃ何がありますか、この特例公債の解決をしていく道は何と何なんですか。ひとつ三つぐらい言ってみてください。
  55. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 質問の趣旨は、特例公債をなくす方法ですか。(沢田委員「そういうことです」と呼ぶ)  特例公債は一刻も早く脱却しなければならぬ。そのためには、やはり思い切った歳出カット、これが一番大事でしょう。その次は、やはり景気の持続発展を図っていくことで税収の確保を図っていく、そういうことも大切でしょう。その他、税収面等において税制改正というようなもので取るべきものはいただくということも必要でしょう。  ただ、いまあなたのおっしゃったのは、土地保有税といいますか土地再評価税というか、社会党の案の中にそういう構想がございますよね。そういう物の考え方だと思いますが、それと固定資産税との関係はどうするのか。むしろ、それなら固定資産税を上げればやはりそういうふうなことが言える。しかし、それではむらができてしまうという問題もありましょうが、その町村の固定資産税がうんと上がれば不交付団体になることだってあり得るわけだし、交付税は少なくなるわけですから、上がらない方へ交付税が回っていくということで、間接的にはそれは還元できるわけです。  ですから、いろいろなことを、知恵を全部出して、総ざらいに一遍検討をするというのには、第二次臨調等踏まえて非常にいい時期に来ておる、そう思っておりますから、そういう点で大いに勉強させていただきたい、そう思っております。
  56. 沢田広

    沢田委員 それでは、後年度負担に対しては、六十年でゼロになると仮定をしましても、六十年以降の償還に対する償還計画、これもやはりきちんと立てなければならない。これはいまと同じように、要調整額がさらにふえていくのじゃないのか。これは歳入の方でふえずに、歳出の方で今度は要調整額が必要になる。バランスをとらなくちゃならぬ、こういうことになります。ですから、これは当分の間続くのじゃないのか。この借りかえを除いて、たとえば返していく分だけを加えましても、いわゆる歳出分における要調整額というものが非常に重要になってくる。だからその辺は、これも同じ方向で進める、こういうふうに考えてよろしいですか。
  57. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは六十五年以降特に予算繰り入れもしなければならぬというような状況になったときの経済情勢はどうなのか、考えただけでも本当は頭の痛くなることであります。  そういう先まで見通して返済計画、返還計画というものをつくれということは、予算委員会等でも社会党の理事の阿部議員などから非常に厳しい注文を言われたのでございますが、現実の問題として、数字に書くことは前提条件の中でできるかもしれないけれども、書いてみても現実的にそれがうまくマッチするかどうか、当てはまるかどうかということが非常に問題でございます。  現在の七カ年計画、もっと短く言えば、中期展望ですら毎年かなり大幅修正をしなければもちろん合わないわけでございますから、そう先々のことまでは言うべくして実際のところは困難でございますので、やはりそのときどき目まぐるしく変化する経済の実態に対応して解決していく以外にはないのじゃないか。ただ根本的には、肥満体質化した高度経済成長時代の歳出構造というものは抜本的に洗い直しをする、それから歳入についても見直しを行う、基本的にはそういうことだろうと思います。
  58. 沢田広

    沢田委員 今年度たとえば二兆三千億不足するという場合に、その補てんは何でどういうふうにやるのですか。
  59. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはもう五十六年度分は補正予算というわけにはまいりません。したがって、歳入欠陥が起きるかどうかということは、四割のシェアを持つ法人税の申告がわかりませんから、まだ断定的なことは申されませんが、一般に言われている常識論からすれば、二月決算というものをベースにして機械的に計算するとかなりの税収不足が見込まれる、そういう場合はどうするんだということでございますから、そういう場合はやはり決算の調整資金、国債整理基金等法律で認められた制度の活用ということが考えられるわけでございます。
  60. 沢田広

    沢田委員 たとえば国債整理基金の繰り入れの現状からいって、五十七年、五十八年その他からずっと見てまいりますと、もしここでやると、もうすでに同じような、財政的に非常に低迷をしてきますと、来年も同じような条件が出る、そうするともう国債整理基金なんというのは二年でなくなってしまう、そんな状況になりますね。そういう状況だということで認識してよろしゅうございますか。
  61. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 国債の整理基金というのは、仮に拝借するとしてもこれは短時間で、一年度で返さなければならない性質のものです、現行法においては。したがって、五十八年度の予算編成に当たってはまた別のことを考えていかなければならないということであります。
  62. 沢田広

    沢田委員 建設省、最後にもう時間がなくなりましたから。  とにかく、いまのような借金がどうにもならないという状況、そういうことで、いまだに道路財源だけにこだわっていていいのかどうか。いわゆる国民的良識の立場に立ってひとつお答えをいただきたい。そういう頑迷固陋な形を今日の財政状況が許してくれるのかどうか、国民はそれを望んでいるのかどうか。それは、あなたの役職は役職でしょうけれども、やはりもっと弾力的に考えていかなければならない時期に来つつある、少なくともそういう認識はしなければならないだろうと思うのでありますが、その点はひとつもう一回答弁してもらって、いままでのやりとりの中から道路財源というものはどうあるべきか、見直すべきじゃないのかということについてお答えをいただきたい。
  63. 佐藤和男

    佐藤説明員 社会資本整備水準に対する国民のニーズというのは、私どもまだ非常に強いように理解しております。これを着実に進めていくためには、繰り返し申しておりますように、特定財源ないしは建設国債の一定の発行をしていただくということによらざるを得ないのではないかと思いますが、そういうことで、今後とも一定の財源を確保して公共投資を進めてまいりたいと思っております。
  64. 沢田広

    沢田委員 話にならぬ。時間がなくなりましたから改めて……。終わります。
  65. 大原一三

    大原(一)委員長代理 堀昌雄君。
  66. 堀昌雄

    ○堀委員 きょうは、財政特例法の問題を中心に現在の日本経済の主要な問題点と、それからいま沢田委員も触れましたけれども、昨日大蔵大臣が二兆円を上回る財政欠陥が生ずるという、そのお話をもとにして財政上の法律論を含めた論議をいたしたい、こう考えておるわけでございます。  まず、前半で経済企画庁長官にお伺いをいたしたいと思うのでございますが、長官とはこの前ちょっとテレビ討論でも御一緒いたしまして、長官の大体のお考えは私も同感のところが多いのでありますが、まず最初に、五十六年度の第三・四半期に御案内のような久しぶりの実質マイナス成長が前期比で起きたということは、これは何によってこういう事態が起きてきたのかを長官にお伺いをいたしたいと思います。
  67. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 五十六年度の第三・四半期はマイナス〇・九%という成長でございます。外需の関係がマイナス一・三、それから国内の民間需要はプラス〇・七で、公的需要がマイナス〇・三、これら全部を調整いたしましてマイナス〇・九、こういうことになっておりますが、なぜ外需が急速にマイナスになったかといいますと、やはり世界全体が非常な不況で世界全体の購買力が落ち込んでおりまして、日本の輸出が伸び悩んでおる、これが最大の背景だろうと思っております。
  68. 堀昌雄

    ○堀委員 実はこの時期はアメリカもマイナス成長、西ドイツもマイナス成長という異常な事態が起きておるわけでございますけれども、このアメリカなり西ドイツなり日本、いずれも実はマイナス成長の中身が違うわけでありまして、世界経済の中でウエートの高いアメリカ、日本、西ドイツが同時期にマイナス成長という事態になったということは、国際経済的に見ても何らかの関係があるのじゃないだろうか、私はこういう気がいたしますけれども、企画庁長官、いかがでございましょうか。
  69. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これは昭和五十四年から第二次石油危機が起こりまして、第二次石油危機は、第一次石油危機のときと違いまして一挙に起こりませんで、じわじわとだんだんと深刻になってきた、こういう経過をたどっております。  そこで、昨年の後半からことしの前半にかけてが最も深刻な不況だ、このように言われておりますが、この世界的な深刻な不況、これが背景にあると思います。
  70. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと過去の状態を調べてみますと、昭和四十一年から四十五年までの平均GNPの伸び率、実質で大体一一%くらい、五十年から五十四年にかけて大体五%くらい、そうして今度は五十五年に三・七%、ことしの見通しは後で伺いますけれども、五十六年は大体三%を割るというのは確実のようです。五十七年も私の予測では大体三・五%の上下だろう、少し動きがありますから、真ん中が三・五くらいで上になるか下になるかという程度ではないだろうか。  要するに、これを見ますと、石油ショックのなかったときは一〇ないし一一%の成長ができたのが、どうして五%の成長になり、その次どうして三%台の成長になるようになったのか、その点について、その原因の一番大きなものはどういうことかを長官から伺いたいと思います。
  71. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま御説明ございましたように、石油危機までは大体平均一一%の成長がずっと続いてまいりました。石油危機が起こりましてからは、若干の紆余曲折はございましたが、これまた御指摘のように大体五%成長であった、こう思います。そして五十五年と五十六年、五十六年の最終の数字はまだ出ておりませんけれども、二カ年を平均いたしますと、ざっと平均三%前後の成長でなかろうか、こう思っております。  これは、繰り返して恐縮でございますけれども、第二次石油危機の影響が五十五年から五十六年にかけまして深刻に出てきておる。だから、私はこの状態が正常な姿とは思っておりません、異常な状態である、こう判断をしております。
  72. 堀昌雄

    ○堀委員 経済的には、いまの経済状態というのは油の値段の上がった分だけ交易条件が悪化しているわけでありますから、第一次石油ショックは大体二〇%台の交易条件の悪化、今度は三〇%台の交易条件の悪化、こういうことになっていると思うわけであります。あと総理が御出席になるときの問題もありますので、ちょっと伺っておきたいのですが、これは事務当局でも結構です。  いま私がちょっと申し上げたように、実質が五%台というのは五十一年が五・一、五十二年五・三、五十三年五・一、五十四年五・三、四年くらい五%台が続いて、いまの三%台に入ってくるわけですが、いまの交易条件の悪化は急に改善する見通しはないのではないか、おおむねこの程度の交易条件の悪化というものがしばらく続く、少なくとも四、五年は続くのではないか、私はこう思っておるのです。それだけではありませんけれども、一番大きいファクターがここですから、そういう意味で、五十七年も五十八年もここで四年目ですから、私は、五十九年くらいまではこのままいくか、やや下がりぎみかという気がいたしておるのですが、事務当局でそのことについてちょっと答えてください。
  73. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 いま先生御指摘がございましたように、第一次、第二次石油ショック後にわが国の、わが国だけではございませんが、わが国も含めました先進国の交易条件が悪化をいたしまして、それが所得の流出を通じまして経済成長にマイナスの影響を与えてきたということは御指摘のとおりでございます。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ最近は、御承知のように石油価格がかなり安定をしてやや下がりぎみでもございますので、ほぼわが国の交易条件は横ばいになっております。  今後につきましては、石油価格の動向等不確定の要因もございますが、私どもの考えでは、今年度五十七年度につきましては交易条件がこれ以上悪化することはなかろう、したがいまして、その面からのマイナス要因はなくなっていくというふうに考えております。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 マイナス要因はないということは横ばいになるということで、私はそこを聞いているわけです。  大臣、いまの答弁を下敷きにしていただいて、実は異常な事態が起きてきておるのは、これまでOPECがともかく非常に資金超過になっていたのが、どうやら一九八二年というのはOPECは大体とんとんか少しマイナスになるかもしれないと言われる情勢が出ておるわけでありますね。これは世界の金融情勢にもかなり大きな影響をもたらしてくるし、低開発国、発展途上国に対しても、これはかなり大きな影響が起こる問題がありますので、このことは世界経済的にはデフレ要素だ、私はこう見ておるのですが、企画庁長官、いかがでございましょうか。
  75. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私は、若干見方を異にしておるのです。  というのは、OPECに黒字が少なくなれば、つまりOPECが赤字になれば、どこかがその分だけプラスになっておるわけでありますから、世界経済全体から見れば別にそれがデフレ要因になる、そのようには私は思いません。  それから、先ほどのお話の件につきましては、何しろ世界経済がいまのような戦後最悪の状態にある、こういう状態がずっと続きますと、これは世界全体が低成長に追いやられる、こういう危険性はございます。しかし第一次石油危機のときも、危機が起こりました直後には、もう世界じゅうはゼロ成長とかマイナス成長とかあるいはよくいってもぜいぜい一、二%の低成長しか期待できないのではないか、このように言われておったのでございますけれども、各国が工夫いたしまして、それぞれ一応安定成長路線に各国の経済が軌道修正した、こういう経過もございます。  したがいまして、いまは最悪な状態にございますから、将来を展望いたしまして悲観的なことしかややもすると考えられないのでございますけれども、しかし、石油危機が起こりましてから大分時間も経過いたしますし、インフレ等はほぼ峠を越した、このようにも思っておりますので、私どもは、ことしの後半から世界経済はある程度回復の方向にいくのではないか、このように判断をしております。したがって、今後はわが国経済を安定成長路線に持っていくことも十分可能である、こういう判断をしておるのでございます。
  76. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、成長が少しより高い方が望ましいと思うのですけれども、残念ながら、これだけは高くしょうと思ってできることではございませんので、要するに、客観的な分析を正確にすることによって政策対応が決まってくるのじゃないか、これがややいまの私の心配であります。  当委員会は、御承知のように特に財政を預かっている委員会でありますから、昨日大蔵大臣が五十六年度二兆円を超える財政欠陥が生ずるということを二月分の税収をもとにして御発言になっておることは大変重要なことでございます。そこで、この五十六年はすでに過ぎ去ったことでありますが、五十七年という本年度の問題を私どもはこれから真剣に考えなければならないところにきているわけであります。  そこで、これは経済企画庁長官が正式におっしゃりにくいかもしれませんが、この間私、井川さんに話を伺っておりまして、もし第四・四半期の対前期比が一・五%なら大体二・八%になるだろうというお話、これは計算上の問題としてお話がございました。その二・八%という実績、政府の実績見込みは四・一でございますから、かなり低い実績が五十六年になりますと、もう当初から五・二%なんというのは、四・一になっても五・二は無理だと私は思っていたのでありますが、ここへ来て二・八となれば、常識的に民間の修正されたものや何かを見ましてもおおむね三・五%程度、上下いろいろばらつきはありますが、そこらは避けられないのではないかと思っているのですが、長官、いかがでございましょうか。
  77. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 五十六年度の第四・四半期は終わったばかりでございまして、まだこの数字の集計はできておりませんので、正確なことは申し上げにくいのですけれども、三%成長に達するということも、これは年度間を通じての話でございますが、非常に厳しい状態になっておるのではなかろうか、こう思っております。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 五十六年度はいまおっしゃるようなことだと思います。なぜかというと、外需も二月が大変落ち込んでおりますし、一、二、三月の鉱工業生産その他のデータも大体の予想が立つわけでありますので、前期比一・五というのは最近余りないわけでございますから、それを超えるようなことは、私はなかなかむずかしいと思うのであります。  そこで、げたが低くなるわけでございますから、それを土台として五十七年というのを私はいま申し上げているのですが、私の考えについてどのぐらい違いがあるとお考えになるか、お答えいただきたいと思います。
  79. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 実は、昨年の秋に五十七年度経済見通しを事務的に検討させましたところ、このまま推移すれば三・八%見当である、こういう数字が出てまいりました。  しかし、その場合に日本の抱えておる問題は解決できるかということを聞きましたところが、失業は相当ふえます、それから経済摩擦は拡大をいたします、税収は激変をします、そういうことでございましたので、それでは政策努力を加える、つまり経済の変化に応じて適切機敏な対応をしていく、そういう十分な政策的な対応ができるという前提に立って、しかしこれもおのずから限度というものがございますから、そういうことをいろいろ勘案いたしまして再検討をさせましたところが、五・二%成長までは可能であろう、こういう数字が出たのでございます。したがいまして、五・二%成長というのはほっておいたのではできる数字ではない、相当な工夫と努力を今後積み重ねていかなければならぬ、こう私は思っております。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 いま長官がおっしゃるように、工夫を積み重ねて、可能ならばそうしたいと私も思うのですが、選択の手段が非常に限られておりまして、この間討論会で七五%前倒しとおっしゃったので、実は昨年のいまの時期も七〇%前倒しをいたしました、五%前倒しをしてもそれほど効果がある、景気浮揚力があるとは思わないというお話を申し上げたら、きょうの新聞を見ますと、本日閣議で七七%ですか前倒しということでさらに二%追加になる。これは過去七三%前倒しというのが一番高かったのでしょうから大変高い前倒しになるわけでありますが、あのときに他党の方から、前倒しをすれば後に穴があくから、建設国債を増発して公共事業をふやすべきだというお話があったのですが、私は、ちょっとそれはいかがかという考えであのとき申し上げましたし、長官も必ずしもそれに御賛成ではなかったと思うのでありますが、私がいまここのところで三・五%程度と申しているのは、今度の五十七年度の名目成長率が、いま為替が少し安くなっていますから、五十六年の物価と同じようにいくのかどうかは多少私も疑問がございます。あるいは政府見通しはちょっと高目でありますから、このぐらいになるのかもしれないと思うのでありますけれども、これは計算上のことでちょっと企画庁答えてほしいのですけれども、仮に現在の政府経済見通しの消費者物価、卸売物価の上昇率をデフレーターとして、私が言っているように三・五%の成長ということであれば、名目成長率は大体どのぐらいになりますか。大体のところでいいです。
  81. 宮島壯太

    ○宮島説明員 お答えを申し上げます。  実質の見通しが政府の場合五・二でございます。先生のお考えのように三・五ということになりますと、一・七でございますか実質が落ちるということでございますので、そのパーセントだけ名目が落ちるというふうに大ざっぱに言えば考えていただいて結構でございますから、八・四から一・七を引きますと六・七でございますか、一応の計算としてはそういうことが成り立ち得ると思います。
  82. 堀昌雄

    ○堀委員 計算上で結構です。  それでは、もう一つ聞きたいのですけれども、仮に私が言っているように五十六年実質二・八ということになったら、政府の名目成長率見通しは七・〇なんですが、これはどのぐらいになりますか。いまの計算の方法で結構です。
  83. 宮島壯太

    ○宮島説明員 お答えを申し上げます。  五十六年度の実績見込みは、政府経済見通しの段階におきましては四・一でございました。それが二・八ということでございますから、この差が一・三でございますから、その数字を引きますと五・七でございますか、したがって五%台、こういうことになろうかと思います。
  84. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、いまの五・七より少し低いんじゃないか、五十六年の名目成長率は五・五程度、もうちょっと下がるかもしれないんじゃないかと思っているんですが、それがもたらした影響がいまの二兆円の減収、こうなってきたわけですね。  そこで、五十七年の名目成長率は八・四ですから、それが六・七、これももう少し下がると思っていますけれども、そうしますと、租税弾性値の計算もいろいろありましょうけれども、これは三兆に近づくのではないかあるいは三兆を超えるかもしれないという事態がどうやら起こってくるのじゃないかということで、私は大変心配しているわけです。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  そこで、今度はちょっと日銀総裁にお伺いをいたしますけれども、私は、この経済成長の問題の中の非常に大きなファクターというのは為替の条件だというふうに考えております。最近私が私なりの経済見通しの計算を自分でやっておりまして、為替を中心にしながら考えた方がどうも正確だという感じがしておるのであります。  私は、一月にエコノミストの皆さんと懇談をする機会がございまして、そのときにエコノミストの皆さんは、ことしは不思議に民間エコノミストは為替は二百円というのが一番多いんですという話で、先生はどう思われますかという話でしたから、私は、そうはならないと思います、二百二十円から二百三十円というのが中心値になるのじゃないかと思うという話をしました。そうしたら、なぜ民間のわれわれと先生は違うのですかという話になりましたから、いまの経済というのは、皆さんがいろいろシミュレーションをつくったり経済的分析をいろいろおやりになっているけれども、いまや世界の経済というのは政治的要素が非常に大きくなって、純経済的要素で動いているというふうに私は思っていません。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕 私ども政治家の立場から、そういう政治的要素を通じていまの経済を考えてみると、アメリカの財政赤字というのは八二年、三年と大変大きなものが出ておりまして、昨年の暮れストックマンが出したのは、必ずしもこのとおりになるというよりも、こうなるから少し予算を考えてくれという予防線的な問題提起ではなかったか、私はこう思っておりましたけれども、可能性としては十分あり得る。なぜかというと、さっき経企庁長官は世界経済は回復に向かうという話ですが、私、ことしの後半に余り回復しないと思うのです。その回復しない最大の理由は、私はアメリカの問題だと思っておりまして、アメリカの状態というのは、考えてみますと、どんどん失業率が上がってくる。失業率が上がってくるということは、裏返せば財政的に失業の手当がふえてくる。同時に経済成長がマイナスになってくるということで、財政収入は減ってくる。  ですから、けさの新聞でありますか、アメリカ議会で一千八百億ドルに近づくぞという話が出ておるようでありますが、私はそういうことを実は一月段階から予測をしておりましたから、アメリカがそういう形であれば、アメリカの金利がそう簡単に下がるはずはない。私は、いま為替安の一番大きな理由理由といいますか、もとは、アメリカと日本の実質金利の差だろう、こう見ておるのでありますけれども、そういうことになりますと、アメリカの金利が安易に下がらないということであれば、そう簡単に為替が高くなるということにはならない。だから私は、二十円ないし三十円という話を申し上げました。  三月にまた皆さんと会ったときに、皆さんの方で、やあ堀さんの方がよく当たりましたねということだったのですが、その当たった理由というのは、私は、アメリカ経済分析というものが一番重要な中心になっての判断でありますけれども、それは間違いなく当たったような気がいたしております。  そこで、日銀総裁にお伺いをしたいのは、アメリカは二月には物価が七・七まで下がっておりますから、アメリカと日本の実質金利の差は四月の現状ではどのくらいなのかをちょっと最初にお答えをいただきたいと思います。
  85. 前川春雄

    前川参考人 アメリカの消費者物価は七・七まで下がってきておるのはいまお話しのとおりでございます。  金利につきましては、どの金利をとるかということが一つ問題でございますが、プライムレートでとりますと一五、六%ということでございますから、実質金利が七・八ぐらいということでございます。日本の消費者物価は大体三・三%ちょっとでございましょう。これもプライムレートをとりますと六%でございまするから、現在大体二・五くらいでございましょうか、二・六七、三%弱というぐらいのところであろうかというふうに思います。
  86. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、最近私は日本とアメリカの金融状態を調べておりますと、日本のマーシャルのkはずっとここのところ上がりっ放しなんです。アメリカのマーシャルのkはずっと下がりつつある。乖離が大きいわけですね。私は、やはりここにはかなり大きな問題を含んでいるのではないか、こう思っておるのです。  実は、私どもの勉強会にこの前日本銀行の方にお越しいただいて、少し日本のマネーサプライはいまの名目成長率に比べて高過ぎませんか、名目成長はさっき申し上げたように大変下がってきているわけですから、この名目成長に比べて、どうも高過ぎますよという話をしたのですが、そのときは、このぐらいは適正だと思いますというお話でございました。しかし、ここへ来てそういう名目成長の姿がはっきりしてきておりますと、私は、どうも少しいまのM2の増加というのは高過ぎるんじゃないだろうか、こう思いますが、総裁、いかがでございましょうか。
  87. 前川春雄

    前川参考人 マネーサプライは昨年の九月以来毎月大体前年比で一〇%増ということでございます。マーシャルのkも、いまお話がございましたように、ずっと上がっているわけでございますが、もちろんマーシャルのk、日本では、金融資産、個人の貯蓄資産かだんだんふえてまいりますから、趨勢としては少しずつ上がるということでございますが、それよりも、このところちょっとマーシャルのkの上がり方が大きいということはおっしゃるとおりでございます。  こういうふうに景気が沈滞しておりますので、通貨の回転速度が遅くなっておる。その裏がマーシャルのkが高いということでございましょう。マーシャルのkの逆数で通貨の回転速度というのは見るべきであろうと思いますが、こういうふうに景気がやや沈滞しておりますときにマーシャルのkが上がり、また回転速度が低くなるというのはいつもの例でございまして、私どもは、こういう金融緩和政策をとっておりまする結果、マネーサプライの数字が少し上がり、マーシャルのkも上がるというのは、言ってみればその政策の結果であろうというふうに思います。  ただ、この高さをどう判断するかということでございますが、いまのお話にございましたように、名目成長率が五ないし六ということで見ますと、一〇%のマネーサプライの増加状況というのは、私ども、いま一〇%のマネーサプライの状況が非常に危険だとは思いませんけれども、ただ、われわれがこれから政策を運営してまいります上において、この高さというのは許容し得る限度の上限に来ておるのではないだろうかというふうに考えております。そういう意味で、マネーサプライというのはなかなか短期間でコントロールできないものではございますけれども、大きな線から考えますると、マネーサプライはさらに加速してふえるということはない方がいいだろうと思っております。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 先般、国債の市況を見ておりますと、七・七%国債がオーバーパーになるという事態が起きてまいりました。これだけ大量に国債を発行していてオーバーパーになるというのは最近珍しいので、理財局長は大変安心をしたんではないか、こう思うのであります。  そこで、市場実勢で国債を発行すべきだというのが私の主張でありますから、オーバーパーになったのならば、これは当然金利を下げるのがいいだろう。結果的に四月国債は〇・二%条件改定が行われた。この条件改定のときに、当初は〇・三%という話もあったのですが、私の承知しておるところでは、ふだんならば私と同じように市場実勢で発売するのが当然だというのが日本銀行の基本姿勢だと思うのですが、今回はやや消極的であったように聞いておるのですが、総裁、いかがでございましょうか。
  89. 前川春雄

    前川参考人 長期金利は市場実勢に応じて決められるべきだという考え方は、私どもちっとも変えておりません。ただ、三月ぐらいからの中期の利回り低下がかなり急でございました。非常に急激に中期債の価格が上がってきたということでございます。金利の先安見越しというのが陰で働いていたというふうに思いますので、果たして市場実勢が安定したものであるかどうかということに、ちょっと私は危惧の念を持っておりました。その後の状況は市場実勢はずっと安定しておりますので、その結果ああいうふうに長期金利が下げられるということに私は原則として反対でないわけでございます。  私ども、その間におきまして考えておりましたのは為替の問題でございまして、いまの為替相場が極端に円安になっておるということにつきましては、先ほどお話がございましたような政治的な環境というものがかなりそれに影響しておることもありますけれども、大きな要素はやはり内外金利差ではないかというふうに考えております。そういう意味で、こういうふうな円安というものがいろいろ日本の経済に悪い影響を及ぼします。物価あるいは貿易摩擦という問題だけでなくてやはり企業マインドにも、輸入物価がだんだん上がってまいりますので企業収益をどうしても圧迫する。なかなかコストの上昇分を製品転嫁ができませんので、そういうことから企業マインドにも悪い方に影響するおそれもあるということで、円安は何とかして防がなければならないというふうに考えておりました。そういう意味から申しますると、内外金利差はできれば余り拡大しない方が望ましいというのが、私どもの基本的な考え方でございます。そういう意味で、多少市場実勢が安定的であったかどうかとか、あるいはいま申し上げましたような為替の面から申しまして、一応私どもの考え方としては、慎重に考えた方がいいのではないかというふうに思ったわけでございます。  また条件改定に当たりましても、蛇足ではございまするけれども、クーポンレートでやるかあるいは発行価格でやるか、いろいろ方法があるわけでございまするので、そういう点もあわせて頭に置いて考えた方がいいかなという感じを持っておりました。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、なぜそれではオーバーパーになったんだろうか。これは、やはりM2がどんどんふえ続けて、言うなれば日銀の政策として、いま景気がよくないから、景気浮揚のためにはたっぷり資金を供給するという政策で、結果的にM2が御案内のようなかっこうになった。  それがいまの長期債の方へはね返って、金が余って、ともかく投資物件がないわけですから、当然長期債に来る。その結果がオーバーパーになった。オーバーパーになったら金利は下がる、これは当然の仕組みで、私が最初に申し上げた、いまの為替を安定させるためには実質金利の差を縮めなければならないときに、実質金利の差が開いてくるという選択をとられておる。そこで、長期金利はもう手が届かないから、今度は皆さんの方ではコール市場に、皆さんのところのコントロール金利なものですから、コール市場で金利を操作しておられる、大変な矛盾だと私は思うのですね。  ですから、私は、この前から国際金融局長なんかとも少し議論をしたりいろいろしておるのでありますけれども、いまの円安の状態というのは当分なかなか動かせない、私はこう見ているのです。もしこれを転換させるというときには、大蔵大臣を含めひとつ金融政策を、国内のそういう民間需要の頭を抑えるようなことを配慮しながら一回動かすということがこの際あっていいんじゃないだろうか。このままだらだら五十円という話は、これは日本経済にとって大変マイナスだ。いま拝見をしておると、日本銀行政策対応が何か大変ちまちましている感じがするのですね。率直に言うと、小さな調整というものはかえってやらない方がいいというのが私の考えなんです。  今度は大蔵省もこれから、このちまちま対策を徹底的にやらせてもらいますけれども、どうもこのごろは、全体に、日本の経済の運営について微調整方式といいますか、安易で、ちょっと手軽にやれるようなやり方がどこかないかと、私はこれが官僚的発想だと言っているのですけれども、そういうものが多過ぎるものだから、いまのような矛盾が出てくるんじゃないか。片方で金を量的に緩めながら、質的に高くしようなどという、これは経済合理性から見てナンセンスだと私は思うのです。これは日本銀行の金融政策上の大変重要な問題点だと思っておるのですが、総裁、いかがでございましょうか。
  91. 前川春雄

    前川参考人 短期金利と長期金利は決まる場が違うものでございますから、その間金融政策といたしましては、もっぱら日本銀行の金融調節政策は金利を当てにするわけでございまして、長期金利は市場実勢の方で決まる、間接的には影響がございますけれども、直接的にはなかなか手の及ばないところがございます。  私ども、いまなぜそういうふうな短期金利を少し強目に調節しておるかということでございますが、実は年度がわりで、この四月、五月、これは例年そうでございますけれども、非常に大きな政府資金の支払いがございます。昨年も四、五月で大体五兆円ぐらいあったと思いますが、本年はどのくらいになりますか、大蔵省の方で、一方で国債の発行その他引き揚げる方も考えておられますから、それが幾らになるかということによって違いますので、はっきりしたことは申し上げられませんが、恐らく去年と同じぐらいは出るだろうというふうに考えられるわけでございます。ほうっておきますと、短期金利は下がってくる。こういうふうに財政資金が非常に支払われるときに、それを調節するというのが金融の調節でございまするから、当然その部分を吸い上げないといけないということでございます。  いまのような状況のもとでございますると、どうしても短期金利が先安観というものが出やすい。しかも、そういうふうな短期の資金繰りは、六月になりますと、今度は不足期に入る。大きなだぶつきから、今度は非常に大きく締まるということがわかっておりまするので、そういう大きな波をならすというのが金融調節の役目でございますから、そういう点からいって、ここで余り先安観が出ますことは、六月以降またそれより大きな反動が起きるということもございますので、むしろそれは余り緩和観が出ない方がいい。ことにいまのような為替の問題もあって、マーケットが非常に神経質になっているようなときは、金利がどんどん下がるという感じが出ない方がいいということで、少しきつ目に調節しておるわけでございます。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 いま金融の関係で、あれは高率適用といっているんですか、正確な言葉を調べておりませんが、ロンバードのようなものが日本の制度にも取り入れられておりますね。大蔵大臣、ずっと二百五十円なんというのでいくときには、どこかでひとつショック療法をやる必要がある、これは政治的判断です。経済的な問題は別としても、政治的にはどうしてもそういうショック療法が必要だ、こう思っているんです。  そこで、この問題は、どのぐらい上げるかという話は別ですけれども、ちょっと一遍ここらで、日本政府は本気で為替の問題に対応してきたなということが、為替もかなり心理的要素が多いですから、検討の余地があるのじゃないか、こういうふうに思っているんですね。  順序として、ひとつ総裁の方から、私がいま提起しているように、実質金利の差をぐっと動かす何らかの対応を、そういうものを、いまの高率適用といいますかロンバードの金利のような形の処理で、欧州は逆ですけれども、日本はいま情勢が違いますから、考えてみる余地がないのかどうか、総裁にひとつ。
  93. 前川春雄

    前川参考人 いま先進国どこでも公定歩合のほかに、いわゆるロンバード・レートというのを導入いたしまして、それで金融調節をする方がむしろ普通になっておるわけでございます。そういう意味で、私どもも、昨年の三月に公定歩合を下げましたときに、やはり金利差というものが為替に相当大きく影響するということから、公定歩合とは別に、市場のレートをそのときどきの情勢に応じて調節するということが必要な場合があり得るということから、基準外貨貸付制度というものを導入したわけでございます。制度を導入いたしましたけれども、現在までのところはまだ発動しておりません。要するに、市場の短期の金利を調節する、その市場でできる金利を日本銀行の調節によってさらに高くする、低くする場合は考えておりませんけれども、そういうことで考え出したものでございます。  しかし、先ほど来お話がございまするように、日本銀行の金融調節でも、短期の金融市場の金利をある程度高くすることはできるわけでございます。現在それをやっておるわけでございます。それはできるのでございますけれども、あるいはそうでなくて、あの制度を発動して、そういうことをマーケットに明確にするということがいい場合もあるというふうに私ども考えております。どういう場合にそういう事例になりまするか、それは、その場その場、そのときどきの判断ということにぜひさせていただきたいと思いますけれども、私どもも、そういう手段がございまするので、必要な場合にはいつでもそれを発動するつもりでございます。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、いまのは日銀という機構としての御答弁ですけれども、政治家として、大蔵大臣、いま総裁がお答えになったようにコールをコントロールしてましても外にはわからないのですよ。外に何かがわかることが私は非常に重要な意味がある、こう思っているのですね。  二百五十円というのは、私決してこれでいいんだという為替じゃないと思うのですよ、日本の場合。ここはもうある一つの限界に来ている、私はこう見ているのです。さらにこれ以上円安になるかならないかわかりませんが、仮にそういう問題が動くようなら、ここらは一遍政治的判断があってしかるべきじゃないかと思いますが、大蔵大臣、いかがですか。
  95. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 為替の問題は非常にむずかしい要素がいろいろふくそうしていますから、なかなかどれが真相かよくわかりません。  実は、三日ぐらい前にドイツのラムスドルフという経済大臣が参りまして、約二時間ばかり私は夜懇談をしました。当然為替の話も出ました。そのときに、要するに、日本の為替の安いということ、円安は何か日本でやっているからじゃないのかというむしろ疑問を持っておるのでありまして、それは全然違いますよ、ここへきて安くなった原因一つは、貿易の収支がそんなによくない、ともかく貿易が悪ければ日本のGNPも落ちるということですから、ああいう発表等があったことも一つ原因じゃないか、そういうような話、それからアメリカの高金利の話をしたのですが、彼が言うのはこういうことを言っているのですよ。日本には有事規制の制度がある、だから結局円を持ってもいつ規制されるかわからぬ、不安感がある、だから円が強くならないのだ、こういうことですね。中長期的には一理あるかもしれない。しかし、この段階でアメリカとの金利差で円が流出する、ゼロクーポンのような問題でもどっと出るということになれば、これは決してプラスにはならない、ドルが出ていくということはプラスにならない、そういうようなことで、ここで日本は天下に向かって何にもしませんよと言うと、すぐ目先の問題ではむしろ資本の流出で円安加速するのじゃないか、だから結局あなたの言うようなことは中長期的に見ればあるいは言えるかもしらぬが、目先貿易摩擦の解消という点などを考えれば、ラムスさんの言うのは私は逆効果じゃないかと思う。規制を全部取っ払っちゃって幾ら資本が出たっていいじゃないかというのが彼の意見ですから、あるいは円建て債なんかいっぱい発行しちゃったらどうたというような意味も含んでいるわけですよ。それはしかし、目先のことから言えば円安加速になるのじゃないか。長い目で見ればいいかもしらぬけれども。  だから、やはり一番の問題はアメリカの高金利なんだ。結局結論はないのですがね、それは認めているわけです。したがって、これはなかなかうまい手がないので……。(堀委員「違うのです、質問のポイントが違うのです」と呼ぶ)だから、要するに、あなたのおっしゃるのは、簡単に言えば何かやれというのでしょう、為替の介入とか。
  96. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、違うのです。ちょっと待ってください。日銀総裁にお答えを願って、これは金融当局ですから政治的な問題の話をする場所でないので、総裁の話はロンバード金利の話をしているわけですから、それは一つそのように承りました。  ただ、大蔵大臣財政、為替に関係ある主務大臣ですから、政治家の立場として、いまのそういうロンバード金利の適用、何%ちょっと上げるぞというようなことがもし行われたとすれば、政治家としては意味があると思いませんかと言っているのですよ。だから、いまのあなたのおっしゃった話は全然私は触れていない。このポイントは実質金利差だということを私は最初から申し上げて、総裁もそれを確認されながらの話の流れですから。ただ短期金利、コールを動かしていても外からはわからない。ロンバード金利を動かすと、それが仮に二%動いたとなると、あ、日本はやったなと思うと、為替は相場ですから、スペキュレーションも入っていますから、逆にぐっと動く。そこではずみをつけて、ひとつ適正なところへ落ちつける方がいいのじゃないか、そういう問題についてのあなたの政治判断を伺ったのですから、前段の御答弁とは全然違うわけです。
  97. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 為替の問題について、仮に何か将来やるというような場合においても、突如としてやるということはできないのじゃないか。したがって、日銀総裁がコール市場を多少かげんする、短期金利を上げるというようなことは、私は適切な措置だと思っています。そういうふうに、日銀と大蔵省の間ですから無関係でやったわけじゃございませんので、私は、適切な措置じゃないか、そう思っております。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 問題の本質をちょっと御理解いただいてないかもしれません。結構です。それはいいのですが、そこで実は日本銀行の総裁にちょっと伺いたいのです。  四月四日の日本経済新聞に、個人資金グリーンカード異変広がる、証券へ二十三兆円流入するという大きな見出しが出たわけです。私は、グリーンカードを推進して分離課税を廃止をしながら預貯金金利総合課税をやるということが日本の税制上の当面最大の案件だと思っております。そこで、この記事の中にこういうところがあるのですね。「マル優や郵貯の不正利用(預入限度額の超過)ができなくなる。分離課税制度がなくなるため、高額所得者の預金離れが進み、架空名義預金もなくなる――など。マル優の不正利用は現在約十兆円、郵貯の不正利用は同十六兆円、分離課税預金は十九兆円と推定。」されている、こうこれに実は出ているのです。  私は、その流れの方がどうなるかなんというのは全く推測で、こんなことは起きるとは思っていないのですが、この資料でマル優の不正が十兆円。郵貯の不正利用十六兆円といったら、これは郵政省も頭へくるだろうと思うのです。この問題というのは、まず脱税をしたのが裏預金でこういうところへ入っている。裏預金で入っているのが、脱税だけでまだ満足しないで、マル優や郵貯の限度を超えて不正に非課税貯蓄制度を利用してやっているのが十兆も十六兆もあるということは、グリーンカードの問題でいま騒いでおる人たちは二重に不正な脱税をやろうとしておることだというふうにこの文章は理解できる部分があるのです。  そういう意味では、日経新聞というのは一生懸命グリーンカード廃止論の先頭に立っていますけれども、案外抜けた報道だなという感じが私からはするのです瀞、大蔵大臣、こんなことが起こるのでし上うか。「証券へ二十三兆流入 郵貯十四兆、銀行九兆減る」なんという話。これは有力金融機関と書いてあるのですね。「有力金融機関がまとめたグリーンカード制度実施に伴う資金移動についての試算内容が三日、明らかになった。」こういうことなんですけれども、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  99. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私もこれを読んでみたのですが、大蔵省の中でもいろいろ分析をさせてみた。どうも根拠について納得がいかない点が実際は多いのです。  ただ、非課税貯蓄が急増していることは事実なんですね。現在減っているのじゃないのです、逆にふえているのです。去年一年で三十五兆円個人の金融資産がふえたというのだけれども、それを課税関係から個人貯蓄の残高というものを推計をさせてみた。ところが、その三十五兆ふえたといううち、約二十二兆ぐらいがマル優とか郵貯とかそういうところに行って、それで課税貯蓄というのは六兆三千億円、そのうち分離課税というのは二兆三千億円ぐらいじゃないか、総合課税が四兆ぐらいふえているか、ふえた大部分は非課税貯蓄でふえているということになると、この現在の非課税制度というのはむちゃくちゃに乱用されているのじゃないか、はっきりした証拠はないけれども、総合的に考えてどうもそんな気がしております。
  100. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つ資金がこんなふうに流れるかどうかという点は、大臣はどう思いますか。
  101. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 完全適用ということになれば、それは多少のものは流れるものもあるでしょう。あるでしょうけれども、証券に二十三兆行くなんということはちょっと考えられないですね。
  102. 堀昌雄

    ○堀委員 日本銀行総裁も、金融の立場でございますから、この問題についてどういうふうにお考えになるか、ちょっとお答えを願いたいと思います。
  103. 前川春雄

    前川参考人 いま大蔵大臣がおっしゃいましたように、それは絶無とは申せないかもしれませんけれども、このような数字が推定されるとは私は思っておりません。
  104. 堀昌雄

    ○堀委員 経済企画庁長官と日本銀行総裁は御退席いただいて結構でございます。  そこで、これから残った時間で、実はこの間正森委員が御指摘になって、きょうも沢田さんからもすでに話が行われておるわけでありますけれども、例の二兆円の穴があくというときの問題、これはもう避けられないことですね。ですから、これの対応を考えるというのが私は大事なことだと思います。  実は、私は、昭和五十一年十二月に落選をして五十四年の十月にカムバックしてくるまでは、当委員会から離れていたわけです。この離れていた間に、大蔵省は、いまのちまちま方式というか、小手先の実にくだらぬ、大蔵省の歴史上これほどくだらぬことをやったかと後世の歴史家が言うであろうことをやっておるわけですね。  それは何をやったかと言いますと、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案というのを出して、そこで国税収納金整理資金に関する法律の一部改正、国税収納金等の受け入れ期限である翌年度の四月末日を一月延長して五月末日とするという、こういう法律をまず二月に出したのです。そうして、これを出しておいて、しかしやはり大蔵省というところは、私は大体完全主義の役所だと思うのですね、こういう悪いことをしたら先でとがめが出るだろう、とがめが出たときに何らかの対応をしておかないとギブアップすると困る、そこで考え出したのがこの決算調整資金に関する法律です。  決算調整資金に関する法律は出したけれども、金は二千五百億ぐらいしかないから、これはある意味でダミーなんですね。決算調整資金というダミーを使って、本体は実は国債整理基金なんです。要するに、国債整理基金の金をダミーに流し込んで、このダミーからいまのやつを穴埋めに使う。こういう仕組みを実は当時だれがやったのか、私はそこまでは言いませんけれども、実にくだらぬことをやっているわけです。  だから要するに、本来三月決算というのは実は翌年度の財政収入になるべきであったものを当年度に繰り入れたわけです。一遍繰り入れるだけなんですよ。後は同じことが起こっちゃうのだから、一遍だけの繰り入れです。主税局長、このときに三月決算で繰り入れた金額というのは大体幾らですか。
  105. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えいたします。  二兆三千三百三十一億、うち法人一兆八千八百五十五億でございます。
  106. 堀昌雄

    ○堀委員 わずか二兆円の金のために、こういう後の仕掛けまでつくって、そして一年こっきりでやった。  ところが、これを考えてみればわかるのですけれども、予算編成ですね。五十七年度予算というものの編成は五十六年の十一月ごろに主としてやりますね。最終は十二月になるでしょうが、十一月ごろにやる。そしてそのときに五十七年の問題でなくて五十八年の三月決算を、要するに一年半ほど先を見通してそれを歳入の中へ繰り込もうというわけです。これは九月決算ならはっきり出ていますから、あともちろん十二月決算もあるし、一月、二月も法人はありますけれども、それはそう大したことはないので、九月決算で大体の歳入見通しが確定する。確定して処理ができるようになっていたから、決算調整資金とかこんなことのあれはなかったのです。ところが、いまの小手先で二兆三千億ほど何とかちょっとこれを前へ繰り越して使いたいという、全く助平根性ですね。  私は財政を長くやっていて、率直に言って、大蔵省というのはかなり信頼している役所なんです。皆さんよく勉強して、非常に信頼しているのだけれども、最近になってたがが緩んできて、やることが全くどうも適切を欠いている。それの一番の見本はこれなんですがね。ですから、いまのこの問題で二兆以上の穴があくということになると大変なんです。不用額を足して、あと千億や二千億足らないというのならまあいいですよ。それは調整資金を取り崩そうといいのだけれども、二兆円も超えるものができて取り崩し額というのは、もし仮に二兆円としたら幾らになりますか。不用額が幾らなんでしょうね。大体の見当はもうついているのでしょうが、ちょっと事務当局で答えてください。
  107. 西垣昭

    ○西垣政府委員 決算をするに当たりましては、歳入の見積もりのほかに不用額がある程度わかるということが必要でございますが、例年これがわかってまいりますのが五月の下旬ぐらいでございます。ちょっといま資料を持っておりませんが、昨年の不用額は三千数百億というオーダーだったかと思います。
  108. 堀昌雄

    ○堀委員 大体三千億円台でしょうね。私も、この前剰余金減税をやったから不用額というのは大分一生懸命調べてみたので、大体の見当はついているのですがね。ですから、不用額をあれしても一兆円を上回る資金が必要になりますね。ラウンドナンバーでいいですが、一兆円を上回ると思いますが、大臣どうでしょう。
  109. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 断定的なことは申せませんが、大体新聞に出ているようなところかなという心配をいたしています。
  110. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、ちょっと内閣法制局にお伺いをいたします。  実はこの決算調整資金法の第七条一項、附則の第二条、こういうものが仮になかったとしたら、この法律は五十三年二月以前にはなかったのです、要するにこの時期になって予算総則で言う赤字国債限度額を超える赤字国債発行しなければいかぬ、これがないのだから赤字国債で処理する以外にないのだから、そうなったときにはどうしますか。法律的にはどういう救済の措置がありますか。
  111. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 法律がない前提で申し上げますと、決算上の赤字をそのまま放置していいということにはならないと思いますので、しかるべき立法をいたしまして対応するということになろうかと思います。
  112. 堀昌雄

    ○堀委員 私もそのとおりだと思うのです。だから要するに、もし決算調整資金という法律がなかったら、いまが仮にそうだとすればですよ、この国会で特例公債発行限度に関する特例法、これはいまの特例法の修正案だっていいんです。要するに何らかの法律を使って、予算総則はもう三月三十一日でなくなっているんだから、ここをさわることはないんですね。ただし、幾らという限度は予算として残っているとみなすべきでしょう、私もそこはよくわからぬけれども。だから、何らかここで特例公債発行して処理ができるという法律をつくる以外に救済措置はないと思いますが、どうでしょうか。
  113. 前田正道

    ○前田(正)政府委員 お話しの前提であれば、そのとおりに考えます。
  114. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで大蔵大臣、いまのは法律論ですからね。法律論としてはこれがなければやれるということは、いまのこれをつくったときにどういう議論があったのか、私もつまびらかにしていないのですけれども、それはいまはもう済んだことだからいいのですが、私、今日、これで考えてみますと、政策上の選択は同じだと思うのです。  この間理財局長答弁をされまして、そこで国債整理基金の五十七年三月末は二兆五千三百億円で、長期債一兆八千五十八億、短期債が七千二百四十二億、五十七年の五月の繰り入れが九千四百七十二億。そうすると、長期債を売り払ってまで資金の手当てをするなんというのは常識でないと思うから、あとの二つで一兆六千七百十四億というのが国債整理基金が使える限度だと思うのですが、主計局どうですか。
  115. 西垣昭

    ○西垣政府委員 金額につきましてはもう少し詰めなければならないと思います。解釈の基本といたしましては、国債整理基金本来の目的である償還等に支障がないようにということで、支障がない範囲で具体的な額が算定されるということになろうかと思います。
  116. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、もう時間が余りありませんから考え方を言いますと、ここで決算調整資金というからくりを通じて国債整理基金から金を使うということは、この法律によって五十八年度それだけまた一般会計から入れなければいかぬのですから、同じことなんです。一年だけ赤字国債の処理が早く来るか遅く来るかなんです。早くした方がいいというのが私の意見なんですね。  なぜ早くした方がいいか。五十八年予算というのは、あなたはまだ大蔵大臣をしているからねじり鉢巻きで大変だろうと思うのですね。そこに並んでおる大蔵省の皆さんも大変だと思うのだけれども、これは大変です。私が大蔵委員会にやってきて財政の問題をいろいろ勉強してきた中で、一体五十八年の予算というのはどんなふうにしたらできるのかな、率直に言うとこう思い惑っておるというぐらいに困難な情勢だと私は思っているんですね。それなら後年度に、五十八年にものを繰り越してはいかぬというのが私のいまの考え方の第一点です。  二点は、そこで要するに穴があいた分だけいまの特例法をつくって赤字国債をぽんと出す。そうすると国民も、これは財政が大変だな、アナウンス効果が大きいわけです。赤字国債を出すとどういう現象が起こるかというと、五十六年は二兆円減額をしていたんだけれども、実際にはもう減額分はゼロになったと同じだ。なぜかというと、一兆四千億増税しておりますから、そこで一兆四千億の増税を引いたらネットの減額というのは六千億くらいしかないんです。だから財政再建元年は吹っ飛ぶわけだ。それほどの大変なことですよと言って赤字国債を特別立法をつくって正面から出す。ここで修正してもいいと思うのですよ、この問題は大事な問題ですから。この法律案、何もきょう上げなければならぬということはないので、来週上がったって同じですからね。後で立法したうていいんですからいいんですが、こういう小手先のことをやったことの余波がここへきて起きているのですね。  だから、私はいますぐとは言いませんが、大臣、このいまのシステムをもとへ戻したいのです。一年こっきりでやる話はやめた方がいい。なぜかというと、三月決算に商法改正で全部ここへ重なってきて、これほど困難な歳入見通しを立てろなんというのは、だれがやったってむずかしいですよ。その誤差の幅が広がるに決まっている処置をここで踏み切った。この当時は、まだまあこの範囲でいけると思ったでしょうけれども、これはそう簡単なことではないです。だから、やはり五十三年二月以前の状態に、こんな決算調整資金も要らないし、附則第二条で繰り入れるなんということも邪道ですから、みんなあれですから、あったものは仕方がないけれども、そういう曲がった財政対応をするのはこの際適切でないというのが私の信念なんです。ひとつ大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  117. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そういう見方もございます。しかし、いまここで決算制度を変えると、そうすれば確かに歳入見通しが非常にやりやすくなることは事実ですね、堀さんの言うようにやれば。しかし、それを変えるとなると一年分だけ今度は穴が……。
  118. 堀昌雄

    ○堀委員 こっちの方はいまやれと言うんじゃない。いまやれというのは、ことしの処理は赤字国債で処理をした方がいい、そのことだけ言っているんです。五十六年度のいまの穴があいた分をいまの法律のままでいくと決算調整資金とか国債整理基金とか、それをやめておいて特例法で赤字国債を真っ正面……。
  119. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 わかりました。これは、もう国会も終わりでございますし、五十六年度分については所定の手続でやるほか方法がない、こう思っております。  それから五十七年、八年のむずかしい問題がいろいろございますが、そういう中ではいろいろな議論があります。結論は出しておりません。
  120. 堀昌雄

    ○堀委員 法律があるからそれをやるということは、それは官僚の皆さんそうですが、私は、政治というのはそういうものじゃないだろうと思うのです、渡辺さん。要するに、五十八年予算をこれから組むときに大抵のなまやさしいことでは予算を組めませんよ、率直に言って。だから、相当な決意でやろうとするならば、国民もその気になってもらわなければ困るということじゃないですかね。国民もその気になってもらうということは、五十六年の財政でこれだけ穴があきました、赤字国債を出さなければなりません、要するに、財政再建の問題が行き詰まるほどの状態になっているんだから、ひとつ国民の皆さん協力してくださいという姿勢をアナウンス効果を含めて国民理解をしてもらうために、こんなちまちました処理をやめて、正攻法で問題を処理すべきではないかという政治判断を私は言っているので、確かにそのような方法もあるとおっしゃっているからいいけれども、今後御検討いただくこととして、これは非常に重要な問題ですよ。  要するに、ただの決算処理の問題と私は思ってないのです。五十八年予算をどう組むかという問題に重要なかかわり合いのある問題だ。ここでごまかしたって五十八年にそれを入れなければいけないのだから、それは五十七年の赤字国債になるのか五十八年の赤字国債になるのか、結果は同じなんですよ。どっちにしたって同じ。それなら早くきちんと処理をするくらいの方が五十八年予算を組むのには都合がいいのじゃないかということを私は問題提起しているわけであります。  この間、皆さんの大蔵省の先輩の同僚議員の方もその点については同意見だという話でございまして、私は、昭和四十年ですか、ちょうど最初に国債が発行になったとき、予算委員会で総括質問を担当したのですけれども、そのときに、あれは赤字国債で処理されたのですね。私は大変りっぱな処理だと実は思ったのです。大蔵省の人に聞いてみると、建設国債の処理もあったという話ですけれども、福田さんは、要するに、これはもう当初見積もりが欠陥になったのだから赤字国債でやるべきだというお話だったというのは大変高い見識であった、その当時から私はそう思っているのですけれども、ひとつ渡辺大蔵大臣も後世の検証にたえるような財政上の政治的な判断をなさることを要望して、この質問を終わります。
  121. 森喜朗

    森委員長 小杉隆君。
  122. 小杉隆

    ○小杉委員 私は、三つばかり質問をしてみたいと思います。一つは、いまも問題になっておりましたが、大幅な歳入欠陥に関連をして当面の財政対策、二番目はグリーンカードに関連する問題、最後に税制についての考え方、こういった点について質問をしたいと思います。  先ほど来いろいろ議論が出ておりますように、昨日発表された五十六年度二月末の決算によりますと、法人税がまだ半分程度しか進捗率がありませんので断定はできませんが、累計で大体一六・二%法人税がダウンするだろうと言われておりますし、一般会計総額で見ると、前年同月比で一〇%ダウン、補正後で考えましても八・五%ダウンということで、けさの閣議でも、大体税収見込みの三十二兆円に対して七%から八%くらいダウンするんではないかというようなことが大蔵大臣から発表されたと思いますが、この減収予想というのは、的確にといいますか、いまの段階でもう少し正確に言うとどのくらいになるのか、お伺いしたいと思うのです。
  123. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  いまの段階ということでございますと、昨日発表しました二月分税収というのが最新の資料であるわけです。  この資料を見まして、非常に悪い数字だというのを私も深刻に受けとめておるわけでありまして、前年比が五・六%です。そして、累計が一〇%ということです。そういうことで、進捗割合で申しますと六七・七ということで、前年同月が七二・九ですから、五・二ポイント下回っております。これが最近の経済動向、為替を含みましてそれが響いておる、これは率直に税収にあらわれてきたなという気がします。  具体的にどうかと申しますと、逐次こういう数字をもちろん発表いたしていきますので、月を追ってはっきりすると思います。三月の過ぎました確定申告、これが今月の終わりに出ます。これがどうかというのがやはり大きな懸念材料です。その次に、三月決算法人の数字がどうなるか、これもやはり経済影響を受けておるというのは十分に言えるところで、二月の法人で悪いのが為替の関係からきた石油業界、それから石化業界の数字が悪い、これが一番大きく響いていますので、そのような影響が三月期決算に出るのではないかという気がいたすわけです。物品税等は依然として伸びがいいんですけれども、これが税収確保できるかとなると、もう終わり近くなってきますと、予算審議中に私が御説明しておったころには法人税についてもわりに希望が持てたのですけれども、たとえば一月の法人税、これは一一〇・九と最高の率だったのですが、これが九二・七になっておるのですね。別にその辺、私は急に発言を変えたというよりも、この二月の数字を見ましてから、やはり経済影響が率直に出てきたなという懸念を持っています。ただ、数字が幾らかというのは確定数字では申せないということでございます。
  124. 小杉隆

    ○小杉委員 いずれにしても、新聞報道あるいはけさの閣議での発言では、二兆円を超えるだろうと言われておりますが、この税収不足いわゆる歳入欠陥をどう処理するかというのが当面の課題になるわけです。  先ほど来の質疑を通じて、決算調整資金と国債整理基金から一時出すということになるわけですが、まず決算調整資金というのは二千四百億から二千五百億円程度しかありませんし、それから、それでもさらに足りない分は国債整理基金から出すわけですが、これはいま三兆四千億から五千億あるわけですね。これから一時借りて一般会計に繰り込むことになるわけですけれども、これは先ほど来の答弁にもありますように、翌年度までに繰り戻さなければいけないということになるわけですから、具体的には五十七年度にまあいろいろ景気浮揚のために大幅な建設国債を出せというような議論もありますし、五十七年度予算補正がもし行われればこの機会か、あるいは五十八年度予算か、あるいは五十八年度補正予算で返却をするということになるわけですね。ところが、ただでさえ、いまもうすでに、ついこの間決まった五十七年度の税収すら危ぶまれておりますし、さらに五十八年にはもっと深刻な状況を迎えるわけですから、これは返す当てが本当にあるのかどうか、これが非常に心配になるわけでございまして、財政当局として、この返済についてどう考えているのか。そして、さらに関連をして、結局一番手っ取り早い方法というのは赤字国債を出すしかないわけですけれども、そうなりますと、五十九年度赤字国債ゼロという目標をこれは崩さなければならなくなる。この辺についてどうお考えになっているか、ひとつお聞かせいただきたいのです。
  125. 西垣昭

    ○西垣政府委員 これは大臣がお答えすべき問題かもしれませんが、まず制度の問題について申し上げますと、御指摘のように、もし仮に大きな決算赤字が生じた場合の決算処理をどうするかという点につきましては、現在予定されております制度といたしましては、決算調整資金、それが不足する場合には国債整理基金から一時繰りかえ使用するということになっております。したがいまして、堀先生のような御意見があることはよく承知しておりますが、そういう制度がある以上は、そういう制度に従って処理をするというのが筋ではなかろうか、こういうふうに思いますが、これは、いずれにいたしましても決算の姿がはっきりしたときに慎重に検討しなければならない問題だと思います。もし国債整理基金から繰りかえ使用をした場合に、その繰りかえ使用分をいまの制度では翌年度までにということでございますので、遅くとも五十八年度予算においては処理をしなくちゃならない、早ければ、もしそういうチャンスがあれば、御指摘のように五十七年度中にもという可能性はあろうかと思います。  その場合の後始末をどうするかという点につきましては、これはもう今後の問題でございまして、今後の財政運営の基本にかかわる非常に深刻な問題でございますので、慎重に検討しなければならないというふうに思います。
  126. 小杉隆

    ○小杉委員 答弁が漏れている。赤字国債……。
  127. 西垣昭

    ○西垣政府委員 いま申し上げました、今後の財政運営の基本にかかわるきわめて深刻な問題なので慎重に検討しなければならないと申し上げましたのは、その点についてでございます。
  128. 小杉隆

    ○小杉委員 ついこの間五十七年度予算が成立したばかりなのに、もう次の予算を心配しなくちゃいけないというのは非常に悲しむべき状況ですね。  私も前回の質問でも申し上げたのですが、もう間もなく五十八年度予算の編成に入るわけですけれども、いまの状況からいきますと、五十六年、五十七年以上に厳しい歳出カットが必要になるわけですね。五十七年度予算ではゼロシーリングということをやったわけですが、五十八年度予算ではむしろマイナスシーリングをやらなければならないような状況にも追い込まれるのではないかと私は思うのですが、その辺の覚悟があるかどうか、これはひとつ大蔵大臣からお答えいただきたい。
  129. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 今後の経済情勢も見なければなりません。また、経済の落ち込みがないようにするためにいろいろな手法をまず講じていくことが大切です。それと同時に、臨調答申、これがどういうものが出るか、それをながめながらかなり思い切った歳出カットをしなければならないと考えております。マイナスシーリングにするかあるいはゼロにするか、どうするか、これは、国会が終わり次第早急に具体的数字に基づいて検討を始めなければならぬ、いまのところ未定であります。
  130. 小杉隆

    ○小杉委員 けさの閣議でも河本経済企画庁長官が、これから真剣に財政の穴を埋める対策、景気対策を講じなければいかぬという発言をされたそうですが、きょうは企画庁長官は呼んでおりませんので、大蔵省としてこの景気対策についてどんなものが考えられるか、ひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  131. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 確かにけさありました。けさ閣議であったのは、七七%前倒しの公共事業の執行を確保するように努力をしたいと私が発言をしたことに関連をいたしまして、それは大変いいことだ、それによって前年対比約三兆円の公共事業が伸びるという効果がある、しかしながら、後半の問題について心配があるというようなお話がございました。私といたしましては、ともかく半年以上先のことでございますし、世界の景気動向とまるっきりかけ離れて日本の経済が動くはずもないわけでありますから、世界の景気動向等をながめながら、どういうふうなことができるか総合的によく検討しましょうということを言ったにとどまったわけであります。
  132. 小杉隆

    ○小杉委員 大蔵大臣、先ほど臨調答申を待ってというお話でしたけれども、今度の予想される答申内容というのは、公社の経営のあり方とかあるいは中央省庁の再編成であるとか、いわゆる直ちに財源になりにくいような内容が主として多いわけですね。ですから、ちょっと矛盾した答弁だと思うのです。  私はこの前も申し上げたのですが、第一次答申のときと同じように、いま財政がこれだけ非常に厳しい局面に立たされているのですから、臨調に対して、五十八年度予算編成で当面手をつけて財源対策になるような答申を求める。これは、もちろん大蔵省だけで検討してそういうものが出てくれば一番いいのですけれども、せっかくいま第二臨調が設置されている際でもありますので、そういう中長期的な基本的な問題だけではなくて、緊急的な五十八年度予算に連動できるような対策について至急答申をお願いするというような考えはないかどうか。
  133. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 臨調の答申に干渉、介入する意思は毛頭持っておりません。おりませんが、臨調委員の方々は広い見識を持った方であり、国の財政事情等も精通された方がかなり入っておりますので、当然にそういうような点については考慮してくださるものと考えております。
  134. 小杉隆

    ○小杉委員 私は、干渉すべきだということじゃなくて、こういう財政状況ですから、臨調の出発点はやはり財政再建ということにかなりのウエートがあるわけですから、緊急に五十八年度予算に対応した一つの考え方も求めるように努力を払うべきだというふうに思います。  それから、恐らくこれから大蔵省は予算編成に当たって非常に苦労されると思うのですね。それで、確かに大蔵省には優秀な人がいっぱいそろっていますけれども、いまのような状況ですと、非常に景気が低迷をして、景気を刺激しなければいけない、景気対策をやらなければいけない、一方において対外的な貿易摩擦の問題がある、そして財政再建行政改革というようなことで非常に矛盾した政策をとらざるを得ないということでありますので、この際、いままでの予算編成の発想を変えまして、大蔵省がこれからの予算編成の方針を事務的にやるということよりも、むしろ国民全体でこれを考える。私どもは前々から、予算編成前にも臨時国会を召集して、国会自身もいまの状況をどう打開していくのかということで国民理解と協力を求める姿勢でやっていく必要があるのじゃないか。もちろんわれわれは執行権を侵すつもりはありませんけれども、こういう非常に選択のむずかしい時期こそ国民の納得を得るためにも、たとえば五十八年度予算編成に当たってどういうフレームでいくのか、どういう基本的な方針でいくのかというようなことを国会の場でも議論をする、そういう姿勢が必要だと思うのです。  もちろん、後から委員長から報告があると思いますが、この委員会に一兆円減税に関連しての小委員会が設置されるわけですけれども、そういう作業とも連動させながら、国会の場を通じて国民理解あるいは納得を得るような姿勢が必要じゃないかと思うのですが、そういう予算編成前の国会の召集ということについて、大蔵大臣のお考えを聞かせていただきたい。そういうことで総理にも意見具申をするつもりはないかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  135. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 特別にいまのところ五十八年度予算編成に関しての臨時国会を意見具申するつもりはございません。ございませんが、広く国民各界各層のコンセンサスを得て予算をつくることは一番いいことでございますので、われわれは、常に皆さん方の意見は真剣に拝聴をして参考にさせていただいておるわけであります。
  136. 小杉隆

    ○小杉委員 いまの状況は、単に大蔵省だけで、いままでと同じ手法で打開できるようななまやさしい状態ではないということで、ぜひいま大蔵大臣答弁されたような姿勢で、具体的には私どもは臨時国会を開いてやるべきだという考え方は持っておりますが、それはこれからの問題でもありますから、そういう点を十分配慮しながらやっていただきたいということも申し添えておきます。  グリーンカードの問題について触れたいと思います。  私も、グリーンカードがそもそも発足した由来をいろいろ調べてみました。これは一口に言いますと、いまの利子とか配当の所得を分離課税にしていることによって非常に不公平税制になっている、これを是正するための手段としてグリーンカードというものを導入すべきだということで法律ができたわけですね。そして昭和四十九年度の国会から毎年衆議院の大蔵委員会でも参議院の大蔵委員会でも、この問題についての総合課税ということの附帯決議が相次いで出されてきて今日に至っているわけです。  そういう過去の数年間に及ぶ経過にもかかわらず一部、もう一部どころじゃない、自民党の中では三百人を超える反対署名が集まっている、民社党も反対だと聞いているわけですけれども、端的に質問をしてみたいのは、グリーンカード以外に実効ある総合課税制度を実現する方法はなかったのかどうかということをまず聞きたいと思うのです。
  137. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 お答えします。  政府税調の方でも十分検討を続けたわけで、その間にいろいろな意見が出たわけです。納税者番号制度というのも当然ございました。それから高率源泉徴収をやって還付する高率源泉徴収還付方式、それ以外にもいろいろな案が議論されて、その際には、政府税調ですから銀行、金融機関の代表も入って議論されていますから、その辺は実務を踏まえた意見交換があった、こういうことであろうと思います。  もう少し時間をいただけば、高率源泉徴収をやって還付するこのやり方は、一律に高い税率で源泉徴収をかける、そうしておいて利子非課税制度というものにかえて、銀行預金等の利子または郵貯の利子のうち、貯蓄者ごとに一定金額以下の人については免税にするということですから、これを確定申告を通じて精算、還付するという考え方がございました。これは相当高い税率による源泉徴収をするわけですから、それが納得が得られるようなことになるかどうか。これは非課税制度を一応やめる形でやって後で落とすわけですから、その還付をする際に、還付を受ける方も大変な手数が要るわけです、また戻す方も大変な事務があるということで、この話はやはり問題がある。  それから納税者番号制度というのは、背番号制度というふうなことになっていく可能性があるということは十分に議論されました。非課税限度を使うというのは、それを利用して減税を受けるわけですから、利用証というふうに考えればいいんで、最初のところで住民票をもって本人の確認をした証票があれば、それから先はあと要らないわけですから、そういう意味では、免税を受ける以上はそういうもので本人確認をする。  それから課税貯蓄のところをどうするかが、納税者番号がいけないということはもう前提においてプライバシーの問題として考えておりましたので、そこのところで今度は課税貯蓄の本人チェックをどうするか、これはグリーンカードでチェックするのが一番望ましいのですが、本人確認ができればいいのですから、公的証明書がほかにあれば、運転免許証とか保険証等で確認すればいいわけで、そういうふうな便法に移っています。しかし非課税限度のところはきっちりやるというふうに、グリーンカードの問題が具体策としてしぼられていったわけです。緑の手帳方式というのは、その限度管理のところに重点があったのですが、総合課税が問題の本質なものですから、そういう意味で、緑の手帳というのをグリーンカードと途中から俗称になったわけですけれども、それで本人確認の方にも使えるという形になっています。  いずれにしろ、総合課税をやるのにどうしたらいいかというのは、いろいろな案が持ち寄られたのですが、これしかないというのが結論でして、また、これにかわるものがあればそれは当然議論になったと思うのですが、結局このやり方というふうに議論の経過は説明、報告されております。  以上で簡単ですが……。
  138. 小杉隆

    ○小杉委員 いま主税局長から、いろいろな経緯の説明があったわけですね。そして、いろいろな方法論の中でやはりこの制度が妥当であろうということで選択をし、さらに自民党内のあるいは世間のいろいろな反発にこたえて、本人確認をグリーンカードだけに限らないで免許証とかそういったものにも融通性を持たしたわけですね。  いま、いろいろと反対論が出てきております。幾つかの問題点がありますが、一番大きい反対論というのは、やはりプライバシーの問題と、それから日本の経済活力というものが損なわれるのじゃないかという二つぐらいだろうと思うのですね。いまは非課税の部分だけグリーンカードで把握されるけれども、それを突破口として、将来すべて国民貯蓄が把握されてしまうのではないかというおそれを持っている人が一部にあります。  それからもう一つは、自動車のハンドルと同じように全部が全部遊びがなくてかっちりしてしまっていると、本当の国民経済の活力というものは生まれてこないのじゃないか、税務難局が把握できない陰の部分が一つの民間の活力になっているのじゃないかという反対論もあるわけです。こういうことに対してどういうお考えか、お聞かせいただきたい。
  139. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 最初のプライバシーの問題、これは再三お答えしていますし、いまの審議過程のところで非常に注意をして審議されたということであります。  そういうことですから、利用証、利用する証書という形で本人が任意にそれを申請するわけです、一方的に付番をするということではない。また、その中身は枠だけを書くわけですから、要するに、いまの限度が守られるようにというところにこのグリーンカードの趣旨があるわけですから、その枠の管理ということですから枠を設ければいいので、その中身の出入りとか残高というのは必要ないということです。いま、その枠が守られてなくて、しかも不正なものが入っているというところがだんだんとはっきりしてくるにつれて、反対論の論拠になっているという気がします。  それから、国民経済への影響は再三なにしておりますが、全体の法人、個人の金融資産は四百四十兆ぐらいですから、それが海外への影響があるかという問題は、金とゼロクーポンでこれが合わせて五千億程度ですから、これに対して適切に対応していくということで国際的な問題については手が打ってある。金はそれで物が入っておるわけで、また両方ともそれなりの危険を覚悟して資産選択をやっているわけですから、それはそれなりの動きがあっても、資産選好の問題としてはやはりある限度があろうという気がします。  あと、国内でどう動くかは大臣も私もまだ何もはっきりした数字を持っているわけじゃないので、むしろ不安をあおられないようにするということが大事のような気もします。証券に二十兆も行くというような流布をされることが、むしろグリーンカードつぶし的な趣旨であるならば問題だろうと思います。むしろ限度をオーバーしている分が相当あるというものが的確に把握されていけばいいわけだろうと思います。  あと、活力といいますけれども、そういう課税を免れた金で経済が保たれるということを言うような国はほかの国ではないわけで、やはり考え方は正しい金であるというのが当然でございまして、ダーティーマネーで経済が支えられるという考え方は非常におかしいと思います。
  140. 小杉隆

    ○小杉委員 理屈以前のそういう心理的な恐怖心、過大なそういう不信感というものを一つ一つほぐしていくような努力を、ただ論理的に説明をするだけでなくて、やはり心情的に国民に訴えるような方策を大蔵省も考えていただきたい。  それから、相当の数の署名が集まって万が一これが中止なんということになりますと、その影響は非常に大きいですね。大蔵省や証券会社がPRにも非常にお金をかけていますし、大蔵当局も相当準備を進めております。  大変小さな問題かもしれませんが、たとえば朝霞にコンピューターの設備がもう昨年度ですか五十六年度から建設に入っておるそうですけれども、大体進捗状況はどんなことになっているのか、予算も含めてお答えいただきたいと思います。
  141. 小川三郎

    ○小川説明員 お答えいたします。  御指摘の建物につきましては、昭和五十六年の五月に着工いたしまして、昭和五十七年十一月の完成を目指して、現在計画どおりの工事を進めておるところであります。進捗状況は全体の計画額の約九一%が契約済みでございます。なお規模につきましては地上七階建て、延べ床面積一万七千平方メートルでございます。予算につきましては、全体計画額といたしましては約五十六億円でございます。
  142. 小杉隆

    ○小杉委員 大蔵省では、建物以外にいろいろコンピューターの会社なんかとの問題もあると思うのですが、どんな状況ですか。
  143. 小山昭蔵

    ○小山(昭)政府委員 お答えいたします。  先生承知のように、カードの交付申請が五十八年の一月から始められることになっております。そこで国税庁におきましては、このカードの交付事務が円滑に行われますように、建設省の方で現在コンピューターセンターの建設を進めていただいておりますことと並行いたしまして、コンピューターのシステムの開発を昨年の九月以来鋭意進めておるところでございます。これはことしの秋口ぐらいまでに何とか完成させたい、このように考えております。なお、建物の完成を待ちまして、来年の一月にはコンピューターの機器を据えつける、現在こういう予定でおるところでございます。
  144. 小杉隆

    ○小杉委員 もうすでにそういう状況で走り出しているわけですから、これは相当反対論が強くなっておりますが、大蔵大臣あるいは総理大臣も、予定どおりこれは実施ということを重ねて決意表明されております。  これは最後の質問と関連しますので申しますが、昨日の信託大会で大蔵大臣は、グリーンカードの実施と累進税率の緩和とをセットでやるということを申されたそうですけれども、そのお考えに間違いがないか。それから現行税制では、住民税も含めて最高税率が九三%、所得税だけをとりますと七五%ですか、これを大蔵大臣は五五%程度にというふうなことをお話しされたそうですが、住民税も含めた最高税率はどのぐらいが適当とお考えなのか。  それから、これは大蔵大臣じゃないのですが、大蔵省首脳というのはだれを指すのかわかりませんけれども、いわゆる高額所得者だけでは片手落ちだから、低中所得者にも配慮すべきだというふうな考え方を漏らされているようですが、これらについての大蔵大臣の見解、そしてグリーンカードの実施についての決意を改めて伺いたいと思います。
  145. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 グリーンカードについては、もうかねがね申しているとおりでございます。  それから最高税率の問題、これもかねがね申しておるわけでありまして、欧米は大体五〇から六〇の間ということだと、真ん中をとれば五五ということになるでしょうし、そういうようなことが望ましいということは私の持論でございまして、持論を申し上げただけのことでございます。  それから、ともかく上だけいじって下は全然いじらぬというようなことはないでしょう。そういうような問題も含めて、いずれ大蔵委員会で税制に関する小委員会等もできることですから、中長期的に見て財源問題等との絡みも考え、ひとつ御検討いただきたいと考えております。
  146. 小杉隆

    ○小杉委員 重ねて伺いますが、確かに、減税をやる場合に結局財源が問題になるわけですが、先ほど来申し上げているように、税収不足は深刻の度合いを非常に深めておりますし、いま直ちに具体的な財源というものは明らかでないということでありますが、大臣は、たとえば大型間接税の導入をお考えになっているのかどうか、お聞かせいただきます。
  147. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 考えておりません。  私の言っているのは直間比率。直間比率については、これも持論でございますが、ヨーロッパ並みぐらいがいいんじゃないか。そうでなければ、直接税、ことに所得税だけで国を支えろと言われても、所得税八割とかいう国は、アメリカみたいなところはありますけれども、しかし、ほかの国ではそういう国はない。したがって、これもヨーロッパ並みということになれば、ともかく四分六あるいは五分五分、フランスのように六、四というところもあるわけですから、そういうのを横目で見て、いずれにしても、減税なんかやらぬで所得税だけでみんなしょうのだというなら別ですよ、政策判断の問題ですから。それは困るというなら別の財源を考えざるを得ないので、それについては、これも世間並みのことがいいんじゃないかという持論を言っておるだけでございます。
  148. 小杉隆

    ○小杉委員 もうやめますが、直間比率を変えるということは、結局大型間接税の導入に結びつくのじゃないですか。
  149. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはどういうようなやり方をやるか。間接税をやるかやらないか、これはもう本当に判断の問題ですから、これも大蔵委員会の小委員会で御検討をいただきたいと思っております。
  150. 小杉隆

    ○小杉委員 終わります。
  151. 森喜朗

    森委員長 午後一時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時六分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  152. 森喜朗

    森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  小委員会設置に関する件についてお諮りいたします。  去る三月七日の議長見解において示されました、昭和五十七年度予算成立を待って直ちに衆議院大蔵委員会に小委員会を設置し、中長期的な観点に立って、所得税減税を行う場合における税制の改正並びに適切な財源等について検討を行うこととの自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合間の合意事項を踏まえ、当委員理事会において協議いたしました結果、この際、所得税減税問題、減税の財源対策を含む税制全体のあり方について検討するため、小委員十六名より成る減税問題に関する特別小委員会を設置することとし、小委員及び小委員長委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。  なお、委員異動に伴う小委員及び小委員長補欠選任並びに小委員及び小委員長辞任の許可、それに伴う補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  154. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  155. 森喜朗

    森委員長 昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀昌雄料。
  156. 堀昌雄

    ○堀委員 財政特例法の質問に当たりまして、本日は、鈴木総理大臣の御出席をいただいて、これから約七十分間質問をいたします。  いま日本の財政というのは、予想された情勢より大変厳しい段階に立ち至っているわけであります。経済の見通しというのは、今日のような世界的な規模の中での経済運営ということでありますから、日本だけでいろいろと見通しを考えても、この見通しが必ずしも正確に達成できないということは、現在の国際経済の中ではやむを得ないことだと思っているのでありますが、しかし、そういう経済情勢の変化に速やかに対応して、新しい経済情勢の変化に応じた対策を講じなければ、経済の運営は大変厳しさを増すというふうに実は私は考えているわけでございます。  この五日に予算案が成立をいたしまして、現在四月でありますけれども、やがて五十八年度予算の編成という問題が政府特に大蔵省にとりましては重要な課題になってくると考えているわけであります。そこで、この五十八年度財政の問題、ここで基本的に発想の転換をかなり行わない限り、従来の方法と手段だけでは、五十八年度の予算というものはほとんど編成が進まないのではないかという感じを持っているわけであります。  実は、午前中に大蔵委員会で、河本経済企画庁長官と論議をさせていただきまして、政府が五十六年度の経済成長を実績見込みで四・一というふうな方針で五十七年度の経済見通しが立てられた、しかし、ここへまいってみますと、河本長官からも三%を達成するのは大変困難な情勢のようだという御答弁が先ほどございました。私は大体二・八%が精いっぱいだろう、こう見ておりますが、そこら、わずかな数でありますから結構なんです。そのときに、五十七年度の問題をちょっと論議いたしたわけでありますが、河本長官は、五十七年度については、当初事務当局では、このままで何もやらなければ三・八%程度成長になるということであったが、それでは失業の問題その他も問題があるので、政策努力によって五・二%を達成するようにという経済見通しになったんだというお話がございました。  先ほど河本長官と論議をさせていただいた中で、最近の日本の経済成長率でありますけれども、四十一年から四十五年までのGNP実質の平均伸び率は一一%になっているのであります。それが石油ショック後、五十年から五十四年は大体五%ということになりました。  ちょっと具体的に申し上げてみますと、五十一年が五・一%、五十二年が五・三%、五十三年が五・一%、五十四年が五・三%、こういうような実質経済成長が四年続いたわけでありますが、五十五年になって実は三・七%ということになりました。そして、いま申し上げたように、五十六年は私は二・八%程度、長官も、三%は少しむずかしい、こうおっしゃっておりますから、やはり三%程度、両方合わせまして平均しますと三%程度になるわけです。その次のことし五十七年度はどうか。私は、三・五%を中心に上下に〇・二%ぐらいの誤差の範囲ではないか、こう見ておるわけでありますから、具体的に言えば、三・三から三・七までの間ぐらいになるのではないかと予測をしているわけであります。  そうしますと、大体これで三カ年続いて三%台成長となるわけでございますね。私は、この三%成長というのは、ただ三年にとどまらず、まだ少し続くのではないかという感じを持っておるのでありますが、きょう総理にお尋ねをいたします最初の問題は、実は五十八年度予算を組みますときの下敷きになります新経済社会七カ年計画というものがございます。昭和五十七年一月二十日に経済審議会が答申をされておりまして、それによりますと、文章はいろいろ書いてございますが、表で、実質で五十六年から六十年度の年平均伸び率がいまのGNP、国民総支出は五・一%というふうに実は計算されておるわけであります。そうして、その五・一%のいろいろな土台となります昭和五十六年度の値は、五十七年度政府経済見通し、五十六年十二月二十一日閣議了解における五十六年度実績見込み及びこれらに基づき作成したものである。要するに、このフォローアップ昭和五十六年度報告というのは、実はそのスタンダードが五十六年の実績見込みとなっていたわけでありますが、いま申し上げたように四・一が二・八になるのではないかと私は思っておりますが、そこですでに一・三ぐらいダウンするわけですね。これで平均五・一ということで、そういうバランスを土台にして公的固定資本形成が、実は五十三年度価格で昭和五十六年度が二十兆七千億円のものが昭和六十年度には二十七兆五千億円に、平均伸び率で七・三%も伸ばすんだというふうに、このフォローアップは示しているわけであります。細かいことを申しませんけれども、政府最終消費支出も年平均伸び率が一・八である、こうなっておるわけでございます。ですから、このような新経済社会七カ年計画というものが、このままではいまの五十八年度予算を編成するのには大変な障害になる、実はこう考えておるわけであります。  そこで、まず最初に経済企画庁長官にお伺いします。  これは、いまのようなことで五十六年度の実績見込みを土台にして、こういうふうにできたということでございますが、この五十六年度の実績見込みがある程度固まる時期に、それも早くしていただかないと予算編成に関係があるわけですから、できるだけ早くその見込みの上に六十年度へのアプローチをひとつ再検討していただかないと、五十八年度予算というのは組めないのではないかというふうに私は思っておりますが、長官、いかがでございましょうか。
  157. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 これは、七カ年計画で決めておりました七カ年間の公共投資二百四十兆円を、七カ年では無理なので八年半でやりましょう、七年の間には百九十兆円の投資になります、こういうことに昨年の一月に修正したのでございます。  そのときにできた表でございますが、その後、予算委員会等におきましてたびたび御答弁申し上げておるのですけれども、大分世の中の事情も変わりましたので、そこで現在、経済審議会に長期展望委員会をつくっていただきまして、今後二十一世紀を展望いたしまして、約二十年の間に日本の経済社会がどのように変化するか、いま検討していただいております。昨年の五月から検討が始まっておりますので、もう一、二カ月もいたしますと答申が出ることになっております。  それから、あわせて七月には臨調の本格答申が出ることになっておりますので、それらを参考にいたしまして、現在の七カ年計画をこれまでのように毎年のフォローアップでいいのか、あるいはこの際抜本的に見直す必要があるのか、そして新しい計画につくり直す必要があるのかどうか、そういうことについての判断をしたいと思っております。
  158. 堀昌雄

    ○堀委員 総理大臣、いまお聞きをいただいたように、経済企画庁においても対応を急いでおられるようでありますが、私は、これは一遍ちょっと横へ置いて、いま終わりに長官がおっしゃいましたように、抜本的に見直しませんと、これはうまくないと思うのです。  なぜかと言いますと、さっき私は成長率で申し上げたように、かつて一一%の成長、これが第一次石油ショックで落ちまして、少しがたがたしましたが、五十一年から五十四年までは大体五%成長、ところが第二次石油ショックでまた影響を受けて、そして実は今度は影響の幅は大きいのです。第二次石油ショックの方が大きくて、その結果が三%台成長ということに少なくとも三年なる。五十八年も恐らく三%成長の延長線になるだろうと私は思っています。非常に条件が変わっておりますので、その新しい条件に対応するこういうものができてまいりませんと、これは予算編成に非常に関係がございます。「財政の中期展望」その他の問題もみなこれが下敷きになっておりますので、私は、まず何としても最初にそういうものを新しい情勢に対して対応できるものに改めることが、五十八年度予算に対する取り組みの最も重要な課題だと思うのでありますが、総理、いかがでございましょうか。
  159. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 御指摘のように、いま世界経済はかつて経験したことのないような激動期にございます。  したがいまして、私どもは、新経済社会七カ年計画をそのままいままでのとおり下敷きにしてやっていけるかどうかということにつきましては、堀さん御指摘のように早急に見直しをしなければならない、このように考えておりますが、そこで、いま河本長官から申し上げましたように、経済審議会に長期展望委員会を設置することをお願いしまして御検討を願っております。また、臨調の行財政改革に対するいろいろの御意見もちょうだいする、七月にはその基本的な答申をいただくことに相なっております。そういう点を踏まえて、特に経済審議会の方の長期展望委員会の審議を促進していただきまして、できるだけ早くこの七カ年計画の根本的な見直しをしなければいけない、このように考えております。  それが五十八年度予算の編成に間に合うかどうかという問題でございますけれども、もし間に合わないような場合におきましては思い切ったフォローアップの修正をいたしまして、そしてそれに基づいて予算の編成に取り組んでいかなければならない、このように考えております。
  160. 堀昌雄

    ○堀委員 実はいま行政改革の話が出ておりますけれども、新聞でしか私ども行政改革の問題は承知することができないのでありますけれども、率直に言いますと、私は、どうも大山鳴動してネズミ一匹ではないのかという感じがいたしてなりません。  というのは、総理が行政改革、財政再建を非常に重視しておられることは、私は評価をしておるのでありますけれども、それは中身がまともなものになればという前提でないと、私は評価できないというふうに思うのであります。最近ずっと新聞を見ている感じでは、何だか本格的な行政改革は手が余りつかなくて、三公社程度のところを何とか少しさわって、これでおしまいというのではないかという気がしてなりません。私は、後でこの財政再建の問題についていろいろ伺いたいのでありますけれども、やはり財政再建ということは予算のあり方の問題を抜きにしてはできない、私はこう考えております。同時に、いまの日本経済は少し調子がよくないものですから、政府は何とかここを切り抜けるために、本日の閣議で七七%公共事業前倒しということのようであります。それは適切な方法だと思うのでありますけれども、私は、最近公共投資モルヒネ注射論ということを言っておるのであります。  第一次石油ショックが来ましたときは、だれも経験をしなかった新しい情勢でありましたから、非常に大きな影響がまず企業に参りました、家計ももちろんでありますけれども。そこで、その痛みをとりあえずとめるために、実はモルヒネ注射をして痛みをとめようとした。ちょっと注射をしてもなかなか痛みがひどいので、一三%、一四%と前年比で大幅な公共事業を伸ばして痛みをとめた。痛みはとまったのでありますけれども、モルヒネというのは、私は医者でありますから専門の方でありますけれども、これをやりますと、痛みがとまるほど続けてやれば必ずモルヒネ中毒の中毒症が起きる。中毒症が起きてきますと、注射をやめると禁断現象が起きて大変苦しい状態になる。  ちょうど、いまやや高率に公共事業を伸ばしてきて、これで財政再建ということでそのための裏返しの国債がうんとふえてきたということで、これを何とかしようというので、ここのところ公共事業伸び率ゼロということで落ち込んでいる。私は、大変適切な選択だと思っておるのですけれども。そうすると、今度はいまのその他の要素から来た不況なんですけれども、不況がだんだん浸透してきてなかなかうまくいかない、これの対策は後で議論させていただきますけれども、減税か公共投資か、こういうことになるわけですね。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席公共投資というのは、さっき申し上げたようにモルヒネみたいに即効性がありまして、痛いときに刺したら早く効くのです。目に見えて効くのですね。減税というのはそれじゃどういうことかといいますと、要するに、痛みのもとになっておるところを十分考える、いまの経済情勢では、痛みのもとになっておるところはどうやら国民の収入が実際の経済の動きの中で十分に伸びていない。その結果、五十五年、五十六年と経済企画庁の家計年報を見ますと、実収入もマイナスであるし、それから可処分所得もマイナスになってきた、こういうことなんでございますね。  個人消費が低迷しておる、民間消費が低迷しておるということが今日の最大の原因でありますから、これが五〇%以上国民総支出に占めるわけでありますから、ここをさわらなければ問題にならないということはどういうことかといいますと、要するに、痛みの原因をはっきり分析をして、それに対して適切な痛みどめではなくて、その原因に対する治療をやろうというのが私は減税政策だ、こう考えております。  ですから、ある意味では、そういう構造政策に近いような具体的な問題をやるためには、少し時間はかかるのですが、効果が出てくるとこれは本物でうまくいくわけですね。ともかく一時的に公共事業でちょっとやっても、公共事業というのは、この前東京オリンピックの後、不況が来ました。なぜ不況が来るか。大型な公共事業をやって、その後がすとっと落ちると必ずギャップができて、それが不況の大きな原因になる、こういう問題が起こってくるわけですね。  ですから、五十七年にいろいろなことをやると五十八年にがたっと落とせない。五十八年もまたやらなければならぬというかっこうになってくると、財政再建というものは完全にどこかへ行ってしまうことになるわけでありまして、私は、そういう意味では、この五十七年経済運営と五十八年の財政というものは、今後の中期的な日本経済に非常に大きな影響を与えることになる時期だ、こう考えているわけであります。総理は、それについてどういうふうに御認識になっているかを承りたいと思います。
  161. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 現在の停滞しておる日本経済をできるだけ早く健康体に回復をさせる、活力もそこへ見出すようにしたい、こういうことをお互いに考えておるわけでありますが、与えられた環境と条件の中におきましては、一つ政策だけで決定的な効果を期待するということは非常に困難だ、私はこのように考えております。それで、いろいろな政策に細心の配慮をしながら、そういったものの組み合わせの中で相乗的な効果を期待をする以外にないのではないか、こう思います。  私どもは、まず五十七年度予算を成立をさせていただきましたから、その執行に当たりましては引き続き物価の安定、これは何といっても基本でございます、これに最大の配慮をしていく必要がある。それから、きょうの閣議でも公共事業の上期前倒しをかってない七七%以上ということで方針を決めたわけでございますが、これをやります場合におきましても、できるだけ波及効果のあるように効率的な運営を考えたい。それには用地の取得済みの公共事業等を重点的にひとつ取り上げていくべきではないか、このように考えております。  それからまた公的資金住宅、これも五十七年度予算では大分配慮もいたしましたが、執行に当たりましてもこれに力を入れてやってまいりたい、このように考えておるわけでございます。  そういうようないろいろな政策をかみ合わせまして、できるだけ五十七年度予算の執行を私どもはそういう方向に向けるように努力をいたしたいもの、このように考えておるわけでございます。
  162. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと後で使いたいので、主税局の事務当局にお願いをいたしますが、さっき私は、五十七年度の経済見通しが仮に私が申しているように三・五%実質ということになったときには名目成長率は一体幾らになるだろうか、こういうふうに企画庁に尋ねましたら、いまの五・二に見合うものが八・四だから大体六・七程度ではないか、こう言っているわけであります。政府の今度の五十七年の租税弾性値大体一・七ぐらいになると思うので、もし名目成長率が六・七になって租税弾性値が一・七であったら大体税収がどのぐらいになって、不足がどうなるか、私のいま目の子の感じでは三兆円程度の不足になる、こう見ているのですがね。後でちょっと使いますから試算をして、できたら手を挙げてください、お願いします。  総理大臣、いま私がちょっと申しておりますように、私どもはけさの新聞で、渡辺大蔵大臣が、二月の税収の状態の発表を見られて昨日の信託大会でどうも二兆円を超える税収不足が起きそうだ、そういうお話をしておられるということを新聞で拝見をいたしました。さっきもそういう御答弁ございました。もし、ことし二兆円の不足ということになりますと、五十六年度というのは、当初二兆円国債を減額いたしました。財政再建元年というふれ込みであったわけでございます。財政再建元年というふれ込みですけれども、国債を二兆円減らしただけではなくて、一兆四千億程度の増税が実は五十六年に行われております。増税で国債を減らすのなら、だれでもできるのでございまして、財政再建全部増税でやっていくというなら、幾らでも増税した分だけ国債を減らせるわけでありますから、私は、ネットの財政再建は六千億だと見ていたわけです。二兆円国債を減らしましたけれども、一兆四千億円増税しましたから、それを差し引きすると六千億円というのが実は正味の財政再建の中身だなと思っておりましたら、すでに三千七百五十五億円というものが昨年の補正で落ちましたから、残はもう二千億台しか実は財政再建部分はないなと見ておりましたところで、今度は二兆円の減収、こうなりますと、不用額も出ますから別でございますが、これはもう、五十六年というのは、財政再建と言っておりましたけれども、財政再建は何もできなかった、逆に財政悪化の年ということに歴史的にはなるんじゃないかな、こういう感じがいまいたしておるわけでございます。  そこで理財局長、これ袋での予定で、五十六年の当初は特例公債が幾ら出されたか、それが五十六年補正後にどうなったのか、その補正後の問題を下敷きにして、五十七年の当初というのはいまどれだけ特例公債発行することになるのか、そうすると、もし仮に後を処理をするとすれば、総理がおっしゃっておる五十九年にゼロにするためには、幾らの特例公債発行をやれば五十九年ゼロになるのか、まず、いまの二兆円の話はちょっと横へどけて、現在の状況のことを最初にお答えをいただきたいと思います。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  163. 吉本宏

    吉本(宏)政府委員 お答えいたします。  特例公債の五十六年度の発行でございますが、当初五兆四千八百五十億円というものを予定しておりまして、先般の補正でこれを三千七面五十億円追加いたしました結果、補正後の特例公債発行予定額は五兆八千六百億円になっております。そのうち、五十七年の三月末までに五兆四千八百五十億円をすでに発行しておりまして、残余の三千七百五十億円、補正追加部分だけが残っておるということでございます。これは六月末日までに資金運用部において引き受けることとしたい、このように考えております。
  164. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまのような土台があるのですが、今度は二兆円の減収というのが確定するのは六月ごろになるのでしょうが、大体いまの傾向から見て、私もそうなるんだろうと思っておりますが、そうなったときには一体、この不用額三千億台というのを差し引いてみて、まあことしは、さっきの議論ではごまかして通ろう、こういうことのようですから、結果は五十八年に出るから同じなんですが、仮にこれを赤字国債発行したとするならば、これは大体どういうかっこうになるでしょうか。これは主計局ですか。事務的な処理は次長で結構ですから、どうぞ。
  165. 西垣昭

    ○西垣政府委員 現在、制度として用意されておりますものは決算調整資金というのがございまして、その残高が二千四百億でございますので、いま言われておりますような規模の決算不足が出ますとすれば十分でない。  その場合に開かれております道は、国債整理基金の余裕金残高の繰りかえ使用ということになりますので、それを充てるとした場合に、その補てんは遅くとも翌年度までにしなければならないということになっておりまして、五十八年度までに処理をしなければならない。遅くとも五十八年度ということでございますので、その財源をその年度予算までに生み出さなければならないということでございます。その生み出し方については、理論的にはいろいろあり得ると思いますが、そこにはなかなか困難な問題があろうかと思います。
  166. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとまだ減収が確定していませんから、なかなか話は進めにくいのでありますが、総理もお聞きのように、当初の予定でいっても、実は一兆九千六百億というのを出して、まあ五十九年はゼロにしたいということだったのでありますが、いまのこの情勢から見て、どうも特例公債を五十九年にゼロにすることは物理的に不可能だというふうに私はいま考えているのです。大蔵大臣、いかがでしょうか。
  167. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはこれからの経済運営の問題でございまして、世界の景気、今後の日本の状況、歳出カットのやり方、それから歳入見直し、そういうようないろいろなことをやって、もう最初から非常にむずかしいからとギブアップしちゃうというのではなく、非常にむずかしいかもしれないけれども、しかし、その中で最大限の努力をするということを言っておるわけでございます。いまから断定的に、それはできないという考えは持ちません。やはり目標でございますから、全然手が届かないのだからあきらめちゃうというのではなくて、届かないか届くか、すれすれのところですから、それはやはり最大限の努力をする。これがもしなくなれば、歳出カットががたがたっと緩んでしまうということの方が、私はむしろ恐れておるわけであります。
  168. 堀昌雄

    ○堀委員 いいですか、主税局長
  169. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 あくまで仮定計算ということでお答えいたします。  減収が五十六年幾ら生ずるか、これはもう本当の仮定で、ラウンド二兆と、こう置いています。それからあと、八・四が六・七になるというのも本当の仮定で、これは八・四とわれわれは考えるわけですが、弾性値は一・六一とわれわれ置いておりますので、それも変わらない、こうやっておきますと、結論から申しますと、五十七年当初予算に対して、いまの仮定計算で約三兆でございます。
  170. 堀昌雄

    ○堀委員 私はさっき、私なりの計算をしてみて大体三兆円だと思いましたが、主税局長も、これは計算ですから別にそのとおりに必ずなると言っているのじゃないのですが、いまのような経済の見通しをベースにしながら計算してみると、大体三兆円穴があく。そうすると、五十六年で二兆円あいて、五十七年に三兆円。五兆円実は穴があいたわけですね。  これまでの考えでいけば、確かに五十九年にゼロにできるという状況があり得たと私は思うのですけれども、ここへ来て、財政再建元年も実は赤字国債増発の年になる。財政再建二年目の五十七年も、一兆八千三百億円の減額に対して三兆円、いまの不用額その他いろいろ努力をされるでしょうけれども、まあまあ二兆五千億程度の国債発行をしなければいかぬということになると、これまた国債増発の年になる。二年間、国債増発の年が五十六年、七年と続いて、九年にはゼロにするということは、五十八年で全部これのしりぬぐいをしてしまわなければならぬ。  だから、私がさっき総理に申し上げたのは、政策手段の問題、可能性の問題というのは、私も二十年余りこれで政治の問題をやらせていただいていますから、それなりに真剣に考えております。この問題は与党、野党という問題じゃないのですから、日本国民全体に関する国家的な問題でありますから、決して政府を痛めつければ気分がいいなんというような話ではないのであります。そういう真剣な立場で考えてみても、私がさっき申し上げたように、物理的にどうやらこの問題は不可能なところに到達をしている。三%成長というものが、私の見通しでは単に五十七年だけではなくて五十八年も大体そういう形になるのではないか。飛躍的にそこで六%も七%も実質成長が起こるなどということは、これまた過去の私どもの長い経験からして想像できない。  こう考えますと、総理は五十九年に財政再建が完了できなければ政治責任をとるとおっしゃっているのですが、私は何も総理に政治責任をとりなさいと言っているんじゃないのですよ。総理が政治責任をとられたって国民は結局マイナスを受けるわけでして、だから私はそういうことにこだわってないんですけれども、ではどういう手を打てば、さっき大蔵大臣が申しましたようにできるだけそこへ近づけるか、私はこの範囲だと思うのです。ギブアップしてもうやめたから財政どうでもいいという話になったのでは困るのであります。  総理、実は私さっきこういう問題を議論いたしました。いまの赤字の問題で、昭和五十三年の二月に、どうしてこういうばかなことを考えたかと思うのですが、その年の三月決算を出納閉鎖期間を延ばして前倒しにするということを大蔵省がやったわけでございます。これは、国税収納金整理資金法律を改正して、四月というのを五月にしてそれを処理したわけですね。そうすると、大蔵省の皆さんも、ひょっとして財政欠陥ができたときには大変なことになる、そこで、決算調整資金というものを同じときに法律で出して、そして決算調整資金で決算上穴があいたらここからお金が出せますよということにした。決算調整資金は、さっき主計局の次長が答えましたように二千四百億円ぐらいしかないのですから、これではとても処理ができない。そこで、本体は国債整理基金に置いて、法律形式は決算調整資金ですけれども、その附則で、要するに、国債整理基金からここへ流し込んで、決算調整資金を通して一般会計のいまの不足を賄うということを実は大蔵省が考えたのですね。私はさっき、小手先の技術論でこういうばかなことをやるのはけしからぬと言っているのですが、私落選中でありましたから物が言えなかったわけであります。  決算調整資金というのは言うなればダミーでして、木札は国債整理基金なんですね。これはダミーを通じてやるという処理ですが、いま次長が申しましたように、これはちゃんと返さなければいかぬ、こうなっていますから、私は、そんな細かい手段を使わないで、穴のあいた分だけはっきりと赤字国債を出しなさい、こう言っているのです。そうすると、一生懸命やっているようでゼロシーリングもやったけれども、なお赤字国債がこんなに出るのじゃ、これは大変だなと国民全体が考えると思うのです。そのアナウンス効果を考えますと、ごまかしたってどうせ五十八年で問題が起こるのですから、ここで処理をしたらどうか、こういうのが私の提案なんですが、検討してもらうことにして実は結論は得ていないのです。  というのは、ひとつこれは総理に、どういう金をどう使うかは政治的判断ですからね。ですから、きちんと赤字国債を出しまして、本当にこれは大変だと国民が思えば、五十八年予算で、皆さんもすでに議論がありますが、削れるところはしっかりゼロシーリングなんて言わないで削ろう。削り方は後でまた問題提起をしますけれども、こういう考えなんです。総理は政治判断として、ごまかして五十八年に禍根を残していくのがいいのか、金額は同じですからね、赤字国債にしてここでけりをつけて、国民財政状況の厳しさを訴えた方がいいのか、その選択はどちらがいいと思われるか。やるやらないの話はいいですよ、技術論があって渡辺さんが心配しているでしょうからね。総理の判断はどうだろうかというのをひとつ承りたい。
  171. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 いまこの段階でその判断を私が下すということは非常に困難な面がございます。五十六年度の決算の状況を見、決算調整資金なりあるいは国債整理基金なり、そういうようなものも適切に運用しながら五十六年度の決算を適切に処理する、その段階で五十七年度以降の見通しをつけて、その時点で判断をするという以外にないと思うのでありまして、いまここでどうという判断を申し上げることはできない。堀先生の御意見は御意見として十分参考にさせていただきます。
  172. 堀昌雄

    ○堀委員 それはいまの総理の御答弁で、おのおのの立場がありますから結構でございます。  そこで、私はいまのこういう問題を通じて考えますときに、皆さんのお手元にペーパーをお配りをしてあるのです、このペーパーをちょっと見ていただきたいのです。急いでやったものですから計算上ちょっと間違いもあるのですが、これは一体何をペーパーにしたかといいますと、いまの国の財政のあり方というのは中央政府にすべてが集中的に偏っているという問題でございます。  「五十五年度一般会計の特質」とこう書いたのでありますが、これは、国民経済計算の昭和五十七年度版といいますから、五十五年の実績の出た企画庁の資料をもとにしてつくったのでありますが、一番上に総固定資本形成、中央政府二兆三千八十三億円、地方政府十二兆六千二百六十三億円、社会保障基金五百十一億円、合計十四兆九千八百五十七億円というのが、フローでとらえた中央政府地方政府、社会保障基金、一般政府という項目の公共投資総固定資本形成でございます。右の方の三番目の方へちょっと来ていただいて「五十五年度総資本形成」というところに公的企業というのが、ほかにまだあるのでありますが、この公的企業というのが八兆四千七百七十三億円。公的住宅というのが八千八百二十六億円、それで公的企業の分が七兆五千九百四十七億円で、合計公的企業が八兆四千七百七十三億円、一般政府がいま申し上げた十四兆九千八百五十七億でありますから、要するに政府の総固定資本形成は、公的部分は二十三兆四千六百三十億円になる、こういうふうに読んでいただきたいわけであります。     〔委員長退席大原(一)委員長代理着席〕  そこで、今度は長期債がどういうかっこうで出ているのかというのを調べてみますと、国の長期債十四兆二千七百五十億円、地方政府は一兆百四十八億円、社会保障基金は出ておりませんから、これの合計が十五兆二千八百九十八億円となります。公的企業と書いて下へ置いておりますけれども、これはいまの公的企業の長期借入金のことでございまして、それの計算が下の負債残高ということで、これはストックでしか出てないものですから、ストックを、五十五年と五十四年の差額を出せばそれが五十五年のフローになるわけですから、そういうことで計算をしたものをここへ上げたわけであります。そこで、長期債の十五兆二千八百九十八億とその下に書いた五兆百六十一億とを合計いたしますと、下に星をつけて書きましたが、長期債と借入金の合計二十兆三千五十九億円、こうなるわけであります。そうしてこの公共投資の総計は二十三兆四千六百三十億円、こうなるわけです。  日本の国民経済計算ということで見ると、実はいま出されておる国債、地方債、政府保証債その他の長期借入金全部を含めましても、公共投資よりもまだ少ないのです。公共投資全体が二十三兆四千六百三十億円に対して、長期債と借入金の合計は二十兆三千五十九億円。約三兆余りはまだ固定資本の方が大きい、こうなるわけです。ですから、国民経済計算という角度で見ますと、よく四条国債、特例国債という議論があるのですけれども、国民全体での計算で見ると、実はいま言われておる赤字国債というのも、国全体ではどこかで固定資本の見合いになっているというのが、私がいま申し上げている問題の基本なんであります。  そこで、この固定資本を見てみますと、中央政府がわずかに二兆三千八十三億円しかないのに、地方政府は十二兆六千二百六十三億円と、国がずいぶん金を使っているけれども、国の公共投資というのは、資産としては国の資産ではなくて地方資産だ。それが十二兆もあって、国そのものの資産は二兆三千億しかない。ところが金は全部国が賄うというかっこうになっておるわけでございます。  そこで、これから見て、いまの日本の財政のあり方というものは一体これで正常なんだろうかどうだろうか、こういうことでありますが、五十六年度の政府の会計の使途別分類というのを時間がありませんから私の方で申しますけれども、五十六年度は、人件費が二兆五千四百、物件費が一兆一千八百、補助金十四兆七千二百、他会計への繰り入れ二十四兆三千九百、総額で四十六兆七千九百というのが五十六年度の予算の一般会計の関係であります。  実は大体この二割を国が使うので、あとの八割は全部地方やその他へ国を通して流れていっているというのが、いまの国の財政の姿なんですね。ですから、補助金も十四兆ありますけれども、これもずっと地方へいく、それからいろいろなものが地方にいきまして、結果的に地方はこれで非常に助かっているわけであります。  国全体では地方関係を調べるのは大変むずかしいものですから、東京都の五十五年の決算をちょっと調べてみたのであります。そうしますと、東京都の五十五年の決算は、地方債の発行が三千三百十二億円、国庫支出金が五千七百四十八億円で、合計九千六十億円。これは借り入れの方です。それに対して投資的経費は八千二百三十六億円ということになりまして、一般歳入が四兆三千八百八十八億円で、これに対するいまの地方債、国庫支出金等の負債割合はわずか七・五%にしかならない。  こうやってみますと、投資部分はほとんど地方にありながら、地方は起債をしないで国の国庫支出金やその他一般財源との関係で処理をする。ですから、いま国が一生懸命赤字国債借金しながら、地方には起債をさせないでそっちへ金を全部流してしまっているものですから、結果的に中央政府は非常に困難な情勢になっておる。しかし国民経済計算全体で見たら、そういう意味では赤字国債じゃなくて、公的企業を含め、地方政府を含め、中央政府を含めて、どこかで全部引き当てになっておる、四条国債的な発想がここではそうなっているが、たまたまいまの中央政府財政の仕組みがこういうところへきて非常にひずみがきて、これが赤字国債赤字国債ということで大変な情勢になっておるというのが、いまの私の分析なんです。  だから赤字国債を出していいという話をしているのじゃないですよ。よろしゅうございますか。要するに、赤字国債であれ建設国債であれ国債は同じですから、国債を出せばそれが問題になることは、物が引き当てになっておろうがなっておるまいが別なんですが、ただ国債の発行の状態というものは、日本経済全体の中でバランスがとれているかとれていないか、金融資産の増加分との関係でどうなっているかということが大事なんでして、ただ単純に予算技術上で四条国債だ赤字国債だなどという問題は、私は、多少問題のあるところへきているのじゃないだろうか。  確かに、最初日本経済というのは均衡予算だったわけですから大変よかったわけです。しかし、均衡予算でいけた時期というのは高度成長の時期ですが、だんだん成長が低下をしてくる情勢の中で、これではやっていけないということで昭和四十年に国債の発行になった。これは総理も御存じだと思いますが、私も、当時ここの場で佐藤総理大臣福田大蔵大臣のときに最初の国債発行の論議をさせていただきました。  私どもは、あのときは実は歳入欠陥を予想したのですが、そうではなかったのです。赤字国債というかっこうで出されて、福田大蔵大臣の決断は大変りっぱだった。当時全然出してないのですから、四条国債だと言って出してもまだ出せることではありましたが、それを四条国債にしないで赤字国債にされたのは、私は、当時の福田大蔵大臣のりっぱな決断だったと思うのでありますけれども、そういう時代からだんだんここまでやってきたときに、行政改革とか財政再建というのは、システムを変えるということが基本だということを私は昨年も総理に申し上げてきたと思うのでございます。そのシステムを変えるということは、冷静にいまの情勢の中で、いまの財政のあり方がそのままでいいのだろうか。  だから、さっき五十九年に赤字国債をゼロにするというようなことは大したことじゃないので、総理が政治責任をとるとかなんとかおっしゃるけれども、そんなことはとる必要も何にもないと私は思っているのですよ。それよりも総理がやらなければならない大事なことは何かというと、いまの財政構造、中央政府地方政府、公的企業、こういう全体を見渡して、最も合理的にこれの配分が行われるようにやるということをあなたがここで行政改革としてやられれば、そんな財政再建、五十九年に赤字国債がゼロになろうがなるまいが、この倫理から言えば大したことじゃないのです、率直に言って。  問題は、日本の金融資産の増加、全体の経済の大きさに対して、どこまでが国債発行が許容される限度であるのか、そういう問題が大事なので、赤字国債、建設国債というのは、何か話を聞いていると、建設国債ならよくて赤字国債なら悪いのだという一般概念でありますけれども、これで見れば別に同じなんです。要するに、中央政府のそういうシステムによって起こってきているだけのことだ、こう私は思っているわけです。これも細かい技術論じゃございませんので、総理大臣のお考えをひとつ承りたいと思います。     〔委員長退席大原(一)委員長代理着席
  173. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 現在の行財政改革につきまして、堀さんから、中央地方の問題を基本的にどう考えるかという示唆に富んだお話がございました。  今度の行財政改革におきまして、一つは、中央と地方の役割り分担、行政の配分、事務の配分、当然それに伴いまして財源負担の適正な配分、そういうことが行財政改革の大きな一つの課題である、このように私も認識をいたしております。臨調におきましても、そういう基本的な問題につきましての御検討もなされておるということも承知をいたしております。これが第一点でございます。  それから第二点は、何といっても高度経済成長時代に肥大化した日本の行財政の姿を、安定成長の時代といいますか、非常に厳しいこれからの経済の中でそのまま続けていくということは許されない。でありますから、歳入歳出両面にわたりまして思い切った見直しをする、改善をする、ぜい肉を落とす、効率化を図る、これも行財政改革のねらいであろう、このように考えますが、後段の方だけが多く言われておりまして、前段の、いま堀さんが強調された点が見落とされてはいけない、このように私も認識をいたしております。
  174. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、少し具体的に予算編成のあり方の問題について私の意見を最初に述べておきたいのです。きょうは主計局長も無理に出てもらったのですが、それは非常に重要な問題だから責任者が出るのは当然だと思って、ちょっと無理を言って出てもらっておるのです。  まず、国会に参って財政をやっておりまして、非常に不幸なことに、参議院選挙に当選をして議席につく間もなく亡くなった村上孝太郎さんという大蔵省の先輩がおられます。この村上孝太郎さんが、主計局長だったと思いますが、次官かな、どっちかちょっとはっきりしませんが、総合予算主義ということを問題提起をいたしました。財政法をじいっと読んでみますと、いまの財政法は総合予算主義が原則になっているのです。そうして、当初予想せざる事態が起きたときにだけ補正予算を組む、こうなっていますから、村上さんが総合予算主義という問題を唱えたときに、ようやく財政法をまともにやろうという大変真摯な態度だと思って、私は高く評価をしたわけです。しかし、実際にはそれはうまくは行われなかった。そのもとは、いろいろありますけれども、よくそういうときに、大蔵省の人が私に、先生、それだったら米価とかそれから公務員給与とかいうのを予算のときに決めなければできませんよ、だから、それが決まらないのに総合予算で全部ばんとはできませんよ、こういう話だったのです。  それは、高度経済成長のときは確かにむずかしいと私は思うのですけれども、こういう低成長時代になりましたら、これからは政府が、当初予界のときにすでにその前に十分議論をして、要するに、予算を一本で決めるぐらいのことをやるのが財政健全化の非常に重要な問題だと思う。  大体、最近気に入らないのは、公務員給与を一%だけ計上するというとんでもないくだらぬことをやっておる。これは、長年にわたって公務員給与が十月ぐらいから実施されておったのを、私は予算委員会その他で、財源がありませんからという財政当局のあれをいろいろあれしながら四月実施まで持っていったという大変苦い経験を持っておるのでありますが、それで五%を入れるということを何とかかち取った。それがだんだん値切られて、いま一%。これはともかく幾ら何でも、片方で一人当たり雇用者所得は六・九%伸びるんだなんて言いながら、一%しか予算を計上しないなどということは、予算編成として全く誠意がない適切を欠く態度だと私は思っております。だから、政府は、こういう時期になって、特に財政再建中でこういう厳しい情勢ならば、もっと責任のある、しかし、いまの政府が考えておる、いまの経済の状態の中で少なくともこれだけというものが組まれてしかるべきだと私は思うけれども、そういう式のことをやっているから補正予算が当然だ、こうなっておるわけですね。  だから、言うならば、そういうやや安易な財政態度をこういう問題の中で改めるべきだ、こう思うのです。要するに、情勢が変わって当初予想しなかった情勢になったら、そのときはそのときでまた考えればいいと私は思います。ですから、そのあり方は、いまの公務員給与の問題については、あるいは一年ずれの問題が起こるかもしれない、多少調整の問題が必要かもしれないが、私は、予算というのは総合予算主義で、まず当初に責任を持ってきちっと決めるというような予算編成が大変重要ではないか、いまのは私から見るとやや無責任編成だという感じがするのですが、総理大臣、いかがでございましょうか。
  175. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 予算編成についての考え方でございますが、高度経済成長時代と、もう現在厳しい状態に入っております低成長時代の予算の編成という点については、確かにいろいろ工夫をこらす必要があろうか、こう思っております。  五十七年度予算の編成に当たりましても、私どももそういう点を考慮をいたしまして、ゼロシーリングという思い切った新しい発想の上に立ってやったわけでございます。これは基本的には、各省庁に前年度に近い枠を与えまして、その枠内で各省庁が行政の優先選択等を行いながら、その枠内で予算の編成をやってみる、こういう方法をとったのでございます。それはそれなりに大きな意味合いを持った。とにかく前年度対比六・二%の超緊縮予算というようなもの、それもゼロシーリングの一つの結果であろう、こう私は思っております。  しかし、その体験からいたしまして、今後、五十八年度予算編成に当たりましてもっと厳しいわけでございますから、ゼロシーリングでなしに、あるいはマイナスシーリングというようなことに追い込まれるかもしれませんが、その場合におきましても、ゼロシーリングの際に各省庁に任した、その結果は、いい面もあったが、そうでない面もあった、大いに反省すべき点があったわけでございます。非常に勉強になりました。そういう点は今後工夫をしていかなければいけない。たとえば、ゼロシーリングの枠内におさめるために、一番抵抗の少ない営繕費であるとかあるいは施設費であるとか、そういうものをまず真っ先に削減をするとかいうようなこと、財政事情が変わってくればいつでももとへ復せるようにという、その場しのぎというようなことを、各省庁も着目をしてやるというような問題もございます。  したがって、行財政の根本的な、さっき私が前段で申し上げた高度経済成長時代に水ぶくれをした、肥大化したものを思い切った体質の改善をやるんだということから言うと、必ずしも十分でなかったという反省がございます。こういう点を私どもも十分勉強いたしまして今後やってまいりたい、こう思っております。
  176. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私は、これについても一つ新しい提案があるのです。  私、長年経済をやっておりまして、内田厚生大臣のときに予算委員会で提案をして今日まだ実現しないのですけれども、診療報酬の支払い問題です。私は長年医者でそういう専門をやっていたのですが、いまの出来高払いというシステムはどういうことかといいますと、下手な能力のない医者が長くかかって治療したら収入が実はふえるのです。優秀な医者が的確な診断をしてやりますと早く治ってしまうのです。そうすると、これは有能な医者が収入が少なくて、有能でない医者の収入が多くなるというシステムなんです。だから私は、件数定額払い方式というものを内田厚生大臣のときに予算委員会でボールを投げて、今日まだできないのですけれども、しかし、私が医師会の皆さんに言っているのは、こういう財政情勢が厳しくなってきたときに発想の転換、システム転換をやらなければ、背さんの収入はうまく確保できませんよ、なぜかといいますと、要するに、現在の医療は薬剤費にリンクしているのです。薬剤費というのは値段が上がるものじゃないのですよ。必ず値段が下がるのです。だんだん技術進歩と大量に使うというような関係で下がってくる。下がってくるものにリンクをしていて、それでいまの人件費その他の物価が上がるのに対応できるはずがない。だから、私が言うような請負方式にすれば、物件費は先はそういう意味で下がるのだから、人件費が上がってもネットインカムはだんだんふえますよ。発想の転換をしようと言っているのです。今度は日本医師会の会長さんがおかわりになったので、まだ話をしていませんけれども、何とか合理的な医療費の対応をしたらいい、請負方式ということを考えて。  予算も、私見ていますと、どうやら出来高払い方式みたいになっておるのですね。ずっとこうやって大蔵省が査定をしてということで出来高払い方式です。これを請負にしたらどうかというのが十数年来の私の問題提起なんです。  前に櫻内さんが政調会長をしておられたころに、一遍テレビ討論でもそのことをやったことがあるのですけれども、それはどういうことかといいますと、確かに、いま総理がおっしゃったようにゼロシーリングで一種の請負みたいになったわけですが、これはただ請け負わせてはいかぬですよ、ルールがなければ。だから、まず請負をやるためにはきちんとしたルールをつくって、このルールに基づいて請負をして優先順位を決めなさい、これでなければ私はいかぬと思うのです。大事なのは、請負方式のときには基本ルールをどういうふうにつくるかということが一番大事でして、それをやらないと、役人というのは皆頭がいいですから、ともかくさっきの決算調整資金じゃないけれども、どこかに何かがないかと思って探し回って、うまいことやってまた先では戻したり財政投融資の方に持っていって戻したり、そこらは実は政治家はなかなか目が届かないのです。財政関係の大まかなことならわれわれ見ていますから、おかしなことをやったら言いますけれども、末端の予算なんて、われわれはとても目が届きません。  それからもう一つは、実は予算が決まった後の配分なんてことが、もう細かいプロジェクトまで分配するようになっているようですね。私はそれを、請負というのは一つの発想ですが、包括予算主義ということにできるだけできないだろうか、要するに、余り大きくやると振れが大きくなりますから、たとえば建設事業で言うならば、公園公園でくくる、街路は街路でくくる、河川河川でくくる、水道とか下水道はそういうふうにくくる、何かある程度くくって、そこの中をどこにするかはもう自治体に任ぜる。自治体は、過去の例から見て、これまでこれだけもらっているからこれだけくださいというかっこうで上へ上げていったのを、ルールに基づいて、いまの請負の仕組みで優先順位を出していくというようなかっこうにすれば、まず各省庁の人間がたくさん要らなくなると思うのですよ。すぐ首切る話じゃありませんよ。  前段の総理のおっしゃったことは、そういうシステムの転換をして、かつて民社党から第二交付税論というのも出たようでありますが、これは大まか過ぎてちょっと困るのですね。私が言う請負も、余り大まかにするとルールを幾ら決めても抜けますから、包括のあれはある程度リーズナブルな包括の大きさにしながら、できるだけ自治体なりもらった方の県なりの裁量の幅も生きる、しかし、それは必ず点検はしなければいかぬと思います。点検はしなければいけませんが、そういうような予算の方式をとれば、私は、いまの中央省庁の人間は大分減っていくのじゃないだろうか、こういう気がするわけであります。  ですから、細かい技術論のことは官僚の皆さんに任せて、私どもがここで議論をするのは政治論でございますから、そういう政治論の上に立って五十八年度予算というものを、仮にいまいろいろやってみても、どうしても一〇%切らなければいかぬという情勢なら、一〇%引きでルールをきちっとつくって一遍それでやってみるということなら、いまの補助金問題も、こう細かくなっている補助金が包括補助金になれば、私は地方も対応しやすいと思うのです。  ですから、そういう意味で、五十八年度予算というのは全く厳しい情勢の中の予算編成でありますから、一遍総理にそこらも十分考えてもらって、大蔵大臣聞いておりますし、主計局長にも出席を求めておりますし、この次次官になるからちゃんとそれを心得てやってもらって、ひとつちゃんとやってもらいたい、こういうふうに考えているわけです。ですから、政治論でありますから、細かいことについて総理から御答弁をいただく気はありませんけれども、物の考え方として、五十八年度予算編成のためにひとつ参考にしていただければ大変ありがたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  177. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 大変貴重な御意見を聞かせていただきましたが、私も、そういうような基本的な考え方で、五十七年度予算の編成に当たっても各省庁にできるだけ統合メニュー方式で補助金等は考えてほしい、こういうことを言ったわけでございます。農林省等におきましても、大分そういう方向で工夫をしてくれております。まだまだ十分でございませんけれども、基本的な考え方、特に予算が全体として厳しくなってまいりますと、そういうことが必要であろう。そうすれば、仮に一割やそこら全体として削減をされても、地方の特性に沿って効率的にそれを使うことができるということになれば、わりあい地方にも受け入れられる、このように考えるわけでございます。予算の効率執行というような面からぜひ考えたい、私はこう思っております。
  178. 堀昌雄

    ○堀委員 いま農林省予算の話が出ましたが、自民党の山中貞則さんにちょっと話を聞いてみると、畜産関係ではそれが大変うまくいって、非常に効率的な予算が五十七年度につくられたということも聞いておりますので、総理は農水関係の御専門ですけれども、その他の面も、やはり全体がそういうことで、受ける自治体が困るようなことは困るのです、自治体も喜んで受けられて、そうして全体として整合性もあり、いまの財政再建に役立つ処理が行われるということを特に強く希望いたしまして、時間でございますから、私の質問を終わります。
  179. 森喜朗

  180. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大蔵委員会に御出席をお願いした総理の前でございますから、かねてからの疑惑、疑問について端的に伺った方がいいだろうと思います。  いま国民が非常に不快をきわめておりますのは、昭和四十八年以来、分離課税でなくて総合課税にして不公平税制の一番大きなポイントを直そうというこの大蔵委員会での決議を踏まえまして、先日来、グリーンカード制が決議され、そしてその執行にかかる直前妙な雑音がそこらじゅうから聞こえてくるわけであります。私は、この制度は改善をすべき余地その他もあることは十分考えられるわけではございますけれども、このような制度を全面的につぶしてしまう、それだけではなくて最高税率だけ手直しするというような大蔵大臣の意向が表明され、こういうのは大金持ちあるいは脱税常習者に対してのみ非常に熱心に配慮されたものではないかという深い怒りを持ちまして質問いたしましたところ、最高税率だけではない、低い方、低所得者の方もやるのだと大蔵大臣はあわてて弁明されているわけでありますが、こうした一連の応酬を見ますと、国民は、政府自民党のわからない方々をたきつけてこうした制度を、こういうやり方をするのではないかという疑いがいま濃厚なのであります。私が、不公平税制、特にきのうも、この大蔵委員会の前の委員会におきましてもクロヨンの問題を伺いましたところ、調査が十分に行われていないで、的確にそれがつかまえられていない、いわんやクロヨンをどう直したらいいかについての御答弁はついになかったという状況にございます。  街を歩いてみるとわかりますが、景気が失調しているせいもありますし、可処分所得が減っているということもありまして、国民の中で税金が高い、そして景気が悪いという怨嗟の声がちまたにあふれております。こうしたことに一番敏感なお方であると私は総理をかねがね敬服しておる一人でありますが、そういう立場でこれらの問題について……(「上げたり下げたり大変ですな」と呼び、その他発言する者あり)静かに。こういう問題について総理の明快なるリーダーシップを発揮していただきたいなと私は切実に思っているわけであります。行くにしても退くにしても、この辺が明快でなければ、政権にとって大きな障害になるだけではなくて、日本の国の根底というものを、民主政治に対する信頼性を喪失するものであると私は憂えているわけでありまして、まずお話を承りたいと思います。
  181. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 グリーンカード制度の問題についてのお話がございました。これは、渡部さんからお話がございましたように、五十五年の三月でございましたか、分離課税とそれから税の公平確保の問題等をいろいろ総合的に国会で御審議の結果、所得税法の改正の中に導入された制度でございます。そういうようなことで、政府といたしましては、税の公平確保という見地からいたしまして、現在決定をいただいておる、現行法の中に盛り込まれておりますところのグリーンカード制というものは、予定どおり五十九年一月からの実施に向かいまして準備を進めてまいるという考えに変わりがございません。  自由民主党も大ぜいの党員を抱えておりますから、いろいろの意見のありますことは、これはやむを得ない。私が号令をかけていくわけにはまいりませんが、しかし党としても、いま私が申し上げたような観点に立ちまして、党の正式機関ではまだこれを取り上げていない。山中さんの党の税調におきましても、あるいは政策審議会、総務会等におきましても、これを党の正式の検討の課題、議題として検討を進めておるということを私は承知いたしておりませんし、先日も幹事長その他とお会いいたしました際に、党の方でそういうことが進められておるのか、新聞等で盛んに報道されておるがどうかということを聞いたわけでありますけれども、党の正式機関ではそういうことはやっていない、党員の中で、是正すべきだあるいは延期すべきだとかいろいろの意見を持っておる者があるが、党としては、正式に取り上げていないということでございます。また、仮に党がそういうものを検討いたします場合には、当然大蔵大臣等には事前に協議をし、政府と党の意見というものを調整されなければならないわけでございまして、私は、党の方でも正式にいま取り上げていないということでございまして、先ほど大蔵大臣がもしそういう場合には高額の方をどうするとかあるいは低額所得者の方をどうするとかいうようなこと等につきましても、大蔵大臣から何らのお話も聞いていないというのが実際の現状でございます。
  182. 渡部一郎

    渡部(一)委員 非常に果断なるお返事をいただき、明快なお返事をいただいて私も初めてわかったのですが、そうすると、大蔵省とか大蔵大臣というのは、かなり勝手なことをしょっちゅうわめき立てて新聞に書かせるということがわかりましたですな。  そうすると、信頼性のあるところで総理に承るわけでありますが、少なくとも法律として決定されたものがある。法律として決定されたものについては、政府の総理としては、これは執行の義務をしょっておられる。一方、自民党の総裁としては、月民党員を指揮して党の意向をまとめるいきさつというものが必要であると私は存じます。その二つの義務は相寄り添うているものだと私は存じているわけでありまして、調整は要するといたしましても、この問題について明快なるお立場をおとりになるものと私は信じたいと思います。  先日の新聞にもございましたが、グリーンカードの実施を三年延期するなどという自民党側の意向というものが一部において表明されておるのに対して、三十日の参議院大蔵委員会において総理は、私の意に反したことを党は決めるはずはないと発言された。ところが、三年延期するということは、私の意というのは三年延期することなのかというやじがいま猛然と入っているわけであります。総理大臣の意向、意思というのは一体どっちの方を向いておられるのか。それは三年延期する方向に向いておられるのか、三年を延期しないで即時厳正に執行していくという方向に向いておられるのであるか、いまちまたではうわさが飛び交うておるわけであります。総理に対して、この点についての御見解をなるべく明快に御表明いただきたいと思います。
  183. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 先ほども申し上げましたように、党として正式にこの問題を取り上げて検討しておる段階でございません。  そういうことでございまして、党としてこれを正式に取り上げるというようなことになりますれば、私に相談がないはずはないわけでございます。私としては、先ほど申し上げたように、現在現行法の中でその執行を政府に命ぜられておるわけでございますから、政府としては、それを誠実に実行する準備を進めておるということをはっきり申し上げておきたい。  また、つけ加えて申し上げますが、そういうことでございますから、もとより政府が改正案等を考えるというようなことは思っておりません。
  184. 渡部一郎

    渡部(一)委員 非常に明快なお話をちょうだいしました。  それでは、つけ加えて申すわけでありますが、このグリーンカード制の論議の際に、明らかに税制全体に対する手直し、連続して行われているものではございますけれども、国民の税に対する不公平感を緩和するための諸措置というものがとられていかなければならぬのは当然だと思います。  この問題の中で、私は明らかに一つ大きな問題が出ていたと思いますのは、退職金に関する課税の問題であります。  マル優その他の制度からいきますと、現在、勤続二十年以上の退職者で、大学卒で五十五歳定年の場合は千百五十万円を超えると課税ですし、高卒の場合では千三百五十万円を超えると課税でございますし、勤続二十年以下の場合ですと、五百万を超えるともう課税になってしまう。非常に低い金額で課税されてくるわけであります。ところが、退職者の平均寿命が伸びているために退職後の生活は非常に長くなっておりまして、退職金制度を有する企業の割合は現在九二%にも達しておりますが、現行の退職所得控除額というのは、五十一年の設定以来見直されておらないわけでございます。グリーンカード制度の導入によりまして、非課税限度額を超える利子所得等に課税されることから、退職金にも利子所得にも課税されてしまう、ダブルで課税されてくるわけであります。  したがって、このような問題点を考えますと、はしょって申しますけれども、国民貯蓄額と退職金の合計額を加えますと、非課税貯蓄の九百万円の枠ははるかにオーバーしてしまうわけであります。大蔵省グリーンカード一問一答の中で、夫婦の非課税貯蓄も合わせて約三千二百万円までの貯蓄の利子に課税されないとしておりますが、貯蓄の原資となる退職金には課税すべきではないのではないかと思われるわけであります。お年寄りの人生は、人生の晩年を迎えて仕事を失われた直後という深いさびしさの中で、そのなけなしの、苦労の結晶に対して強引な課税が行われるということは余り適切ではないし、国民の大きな不安を招くのではないか。マル優制度の段階においても、マル優限度額のシルバーマル優とでもいうべきものを考慮する議論が従来からあったわけでございますけれども、この辺ひとつ見直しというか、御研究をいただいたらいかがかと思うわけでございます。いかがでございましょうか。
  185. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 まず、御承知と思いますが、現行の退職金に対する課税の考え方及び制度を申し上げますと、やり方としては、年数があって一定金額を引くということでございますので、勤続年数三十年の場合で一千万円、勤続年数三十五年の場合で千二百五十万円を引くということで、この水準自体は相当の水準だと考えてもいいのじゃないかと思います。上げることは結局、大企業の役職員など高額な退職金受給者だけが減税の恩典を受けるというようなこともございます。  そういうことで、所得税ということであれば、退職金であっても一定の水準を上回るものについては、ある程度の負担はやむを得ないということでございます。また、そのやり方はいまのようなやり方でございますので、さらにそれを引いて二分の一に対して他の所得から分離して課税しますので、その負担は軽減される合理的なやり方になっておるのは御承知のとおりです。  また、これを非課税とするようなことでございますと、一時金ではなくて、年金形式で支給を受ける場合にもまた非課税というような問題も出てきます。今後老齢化社会が進みますので、そうしますと、年金というような形での収入もふえてくる。それが今後どういうふうに課税されるかという問題とも絡みますので、退職金の課税方式をいまどうするかということについては、現行制度で相当な水準にある、平均的な退職者の数字をとってみますと、それはそれほどの負担ではないという計算もございます。  もう一つのシルバー預金的な問題については、これは私から御回答するのではなくて、大臣の方から御回答申し上げると思います。
  186. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いま主税局長の言ったことで大体尽きておると思います。したがって、マル優関係については、現行法律どおりやるということで、それがやりやすくするための環境整備という問題は、別途の問題として検討されるべきものであると考えます。
  187. 渡部一郎

    渡部(一)委員 余りよく聞いておられなかったのかもしれませんが、現在、日本の平均の預金額がありますね、退職金の平均金額を足しますと、マル優の枠をオーバーしてしまう。人生の先が余りないのに、退職金の金額を平均余命で割ってみると、意外と生活というものに十分な金額ではない、年金も必要なもののおよそ半分でございましょう。  そういうときになりますと、老齢になったときの預金の金額について配慮をいたしませんと、非常にさびしい結論になるのではないか。だから、シルバー預金と申しますか、そういう方々の退職金を足した預金の問題については、永年勤続者の退職金については、現行の所得課税方式から、原則非課税の方向へ移行する方向へ向かって何らかの検討ができないものであろうか。または、非課税限度額について退職金の勤続年数を加味して考えられないものか。または贈与税の配偶者控除についても多少考えてよいのではないか。この辺はほとんど共鳴されるところと思いますが、もう一回重ねて伺います。
  188. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実は、私はお答えしたつもりだったのです。もっと概括的に、マル優、グリーンカードを執行する段階で、それがやりやすくするための環境整備の一環として、そういうようなものを含めて検討をいたします。
  189. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理、きょうはここで細かい議論をするべきときじゃないと思いますから、次の大問題についてひとつ申し上げておきたい。それは日米貿易摩擦の結論でございます。  日米貿易摩擦について、すでに第一次、第二次、貿易の均衡について非常に画期的な案を日本側では提出されておられますが、先方のねらいをじっと見ておりますと、とてもそれではおさまらない険悪な空気がまだございまして、特に私が憂慮いたしておりますのは、サービス部門の公平化という言い方で、銀行、証券、保険、不動産売買、その四つについて劇的な措置がねらい撃ちで行われようとしているのが明らかであります。  IMFにおけるさまざまな議論を見ましても、最近のアメリカ政府の要請を見ましても、貿易についてはいわゆる相互主義法案というものに政府は反対をしておりますけれども、こうしたサービス部門の公平化の問題については、アメリカ政府はむしろ意欲的に、こうしたものについての国内法的のよりどころをつくって、IMFにも持ち出すという気配すら濃厚でございまして、この部門における対応の仕方を誤りますと、とんでもないことになるのではないかと思っておるわけであります。  もう一つは、明らかに、円とドルの為替レートがこんなに異常な状況で、アメリカの高金利さえなければ、日本の円ははるかにもっと高い水準のものになるはずなのが低位に推移しておる。これに対する画期的な措置を同じく求めておるのは、本日の新聞の報道等においても明らかであります。中にひどい論者になりますと、ヨーロッパにおけるECの統一通貨のように、EMSというんでしょうか、あれのように日本とアメリカの間のみの固定相場というものを執行して、日本の円を猛烈に高い水準に切り上げるべきだという議論さえも、アメリカの銀行の担当者の間ではささやかれているやに伺うのであります。  このドラマチックな措置の中で、私は、両方とも恐るべき混乱を日本にもたらすものであろうと思います。しかし、これらについてほおかぶりをしていくだけの力は、私どもには残念ながらないのではないか。わが国としては、これに対して、微妙かつ的確な措置というものが必要ではないかと思っているわけであります。  サービス部門の公平化の問題について、少なくとも劇的な措置がそこをねらっている以上、また為替の相場について、円相場を高い水準に上げるための劇的措置について先方の表示している意向をどう評価されておられるか。大変だろうと思いますが、また、ここですべてをお述べになる必要は毛頭ございませんが、総理の基本的なお立場を明らかにしていただきたいと存じます。
  190. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 日本は、この貿易摩擦を解消する、できるだけこれを緩和するということで、今日まで第一次の東京ラウンドの二年分前倒し、輸入製品等の検査手続等の簡素合理化、これを国際水準並みに直さなければならないということで、全面的な洗い直しもやったわけでございます。私は、これは相当思い切った措置であった、こう思っておりますが、なお日本に対して、さらに市場開放等強い要請があるということも承知をいたしておりますので、第二弾の対策を、できるものと、できないものがございますけれども、四月中ぐらいを目途に、いま政府部内でいろいろ検討を進めておるところでございます。  そういう中で、最近米側から、いまお話しになりましたところのサービス部門について日本が思い切った開放の対策を講ずべきだという意向が強く出てきております。このサービス部門、保険、証券、銀行、投資、不動産等の分野はアメリカが最も強い分野でございます。しかし、その中には、制度そのものがアメリカと日本を比べて違うものもある。そのまま比較をすることが適当でないものもございます。たとえば銀行制度のごときは、アメリカと日本はまるで違うという問題がございますから、アメリカはこれをガットの体制の中で国際的なルールを確立するようにしたい、こういう考え方を大分強く持っておるようでございます。私は、わが国もそういう分野についても自由化の方向で結構だ、こう考えておりますので、米側がガットの場でこれを協議したい、閣僚会議の場等で提起をしたいということであれば、わが方もそれに対しては前向きで応じてまいりたい、そして国際的なルールを、公正なルールを確立するように協力していきたい、こう思っております。  それから、日米の間でこの為替の問題、日米間だけでも適当な割合で固定をしたらどうだ、こういうような御意見が示されたようでございますが、私は、いま変動相場制のもとで各国がやっておるわけでございますから、アメリカと日本だけの間でレートを決めてこれを固定をするというようなことは、直ちにはなかなか困難な問題であろう、こう思っております。しかし、わが国の経済の実勢、いろんな諸条件からいって、今日の円の相場はドルに対してもっと高くてよろしいのではないか、適正な相場に保持されていないということにつきましても、私は御意見と全く同じように見てはおりますけれども、しかし、これを直ちに固定相場制にするということについてはいろいろなむずかしい問題があるのではないか、こう思っております。研究はさしていただきます。
  191. 渡部一郎

    渡部(一)委員 非常に的確にお答えをいただきましたので、私は、ある意味では大変安堵をいたしたわけでございますが、アメリカの銀行家たちと応酬をしてみますと、日本のルールの中で日系、米系両銀行は適切に扱われており、アメリカのルールの中で日系、米系両銀行は適切に扱われておるという論理が通用しないような論議を私は最近強く感じます。つまり、アメリカ式のルールが日本国内で通じないからけしからぬというタイプの議論、これはどうかと思いますし、国が違うんで、制度が違うんで、何を言っているかと言いたいところでございますが、こういう議論が非常に多い。  また、もう一つ奇妙なのは、貿易摩擦、貿易摩擦と言いながら、貿易収支については議論するのに経常収支について何も議論しない。経常収支では大黒字のくせに貿易収支だけを日本にがみがみ言う。日本の新聞の書き方、外国の新聞の書き方にも影響があるのかもしれませんが、経常収支というものについては全然出てこない。何だか日本だけが一方的に悪いことをして物を売りつけているみたいに感じられている。ところが貿易外収支とか経常収支とか見ておれば全然違う。この辺も非常に不可解であると同時に非常に不愉快ではございますが、この辺についても、十分の説明と国際世論に対する理解の増進を特に図っていただきたいと御要望したいと思います。いかがでしょうか。
  192. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 御指摘の点はまことに同感でございまして、そういう点のわが国の正しい主張、考え方というものは、あらゆる機会をとらえて十分説明をし、理解を求めるように今後努力をしてまいりたい、こう思っております。
  193. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では終わります。どうもありがとうございました。
  194. 森喜朗

    森委員長 和田耕作君。
  195. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 きょうは、グリーンカードの問題は質問をする予定になかったのですけれども、同僚委員からいろいろ質問がありましたので、これは私どもの立場から黙っておるわけにはまいらない問題でありまして、一言、二言御質問をしたいと思います。     〔委員長退席、粕谷委員長代理着席〕  このグリーンカード問題につきまして、前の週からいろいろと与党自民党の内部にこれの見直しの動きがあるわけであります。また、こういうことに対しての総理の所感が新聞等を通じて報道されておるのでありますけれども、いまの渡部委員への答弁のニュアンスが非常に違っているというふうに私は思うわけでございますので、一言御質問をいたしますけれども、この問題について、自民党の中に相当多数の、現在三百名もの人が見直しに署名をしているというのですが、今後この運動が高まってくる。私ども民社党の中でも、ほとんど全部の衆参の議員が見直しに賛成をしている状態なんですが、具体的にグリーンカード見直しの動きが出てきた場合に、総理は、それはやはりちょっと考え直したらいいじゃないかというふうにチェックをするお気持ちがあるのか、あるいはそういう見直しの問題が出て党の正式機関にすることをとめるという御意思があるのか。あるいはまた、正式機関で審議されて何らかの見直しの動きが出たときに、それを取り上げざるを得ないというような場合もあるとお思いになるのか、そのことについてお答えをいただきたい。
  196. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、衆議院の予算委員会あるいは参議院の予算委員会等におきましても、このグリーンカード制の問題につきましての私の答弁意見の表明はいつも一貫をしておるわけでございます。  新聞がいろいろ書いておりますけれども、公式の予算委員会等における私の発言というのは一貫をしております。ただいま堀さん、渡部さん等にお答えをしたのと全く同じでございます。政府の立場といたしましては、これは現行法の執行は五十九年一月から命ぜられておるわけでございますから、その準備をすることにつきまして誠意を持って努力をしております。この立場がきわめてはっきりしておるわけでございます。  それから、自由民主党の党員の諸君の中でいろいろ意見がある、考え方がいろいろあるということでありますが、その内容についても恐らく、三百人と言い二百八十人と言っても、いろいろ考えようは一人一人違う面もあるのではないだろうか、こう思っております。しかし、いずれにしても税の公平確保という観点からこの改正がなされ、そしてグリーンカード制というものを採用しよう、こういうことになったわけでございますから、私は、これを党の正式機関で取り上げます場合にどういう結論が出ますか、まだ山中税調等にも党の正式機関にも全然かけられていないという段階でございますから、いま党内の個々の動きに対してどうこう申し上げることはできません。
  197. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 今後、先ほど私申し上げたような動きが出てきた場合に、自民党総裁としては、やはり総理がいまお答えになったような姿勢で対処していくというふうに考えていいのですか。
  198. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 党の正式機関で検討の議題として取り上げられるということになれば、当然これは政府、特に税制を預かっておる大蔵省大蔵大臣には当然相談がある。そういう際に、政府としてはどうするかという問題が初めて問題になるわけでございまして、いまは全然そういうことはございません。
  199. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 次に、日韓経済協力の問題、ちょうど総理おられるので、関連したこの問題についてお伺いをしたいと思います。  私も前の週に韓国に行ってまいりまして、向こうの要路の何人かの人たちとも接触する機会がありました。日韓の問題は非常に近い国、そしてまた安全保障の点から言いましても経済関係から言いましても、非常に密接な国なんですね。今後、国際状態がいろいろ緊張をしてくるに従って、お隣の国とは気持ちの理解のし合いというものが非常に大事な相手の国だと思うのです。  ところが日本の世論調査によりますと、一番嫌いな国がソビエト、その次が韓国というふうな数字が幾つかの世論調査の中にも出てくるんです。そしてまた、韓国の方の世論調査を拝見しましても、一番嫌いな国ソビエト、これは一致しているのですね。ところがその次の嫌いな国というのが日本だ、この点も逆に一致しているということでございまして、これは非常に大事な問題だと私は考えておるんです。隣国とのおつき合いが最も大事なときに裏目に出るような精神的な不安な要素が、両国の間にある状態から考えられてならないのですが、これは何としても早く打開していかなければならない、これは総理として特にお考えいただきたいと思うのです。これを打開する場合に、いろいろ両国それぞれ言い分がありますし、両国それぞれ足らない点があると思いますけれども、まあ常識的に考えた両国の関係あるいは歴史的に見た関係経済的に見た関係から見て、日本の方から手を差し伸べるというおおらかな計らいというものが私は必要じゃないか、そういうような気がしてならないのであります。  そういうふうな観点から、いまの日韓経済協力の問題は、ここでいろいろ新聞で伝えられております外務省の考え方、大蔵省の考え方等々の数字について申し上げるつもりはございませんが、とにかく一番日本としても財政的に困難な時期に六十億ドルという膨大な援助の申し入れでありまして、これをオーケーというのにはなかなか至らないことはよくわかるんですが、できるだけのことはしてあげなければならないというふうに私は思うのでありますし、こう思うのは、私ども民社党のほとんど大部分の者はそう考えておるし、党全部と言ってもいいと思います、そう考えておる。そして自民党の皆さんの中にも、心ある大部分の人はそういうような考えを持っておると思うのですが、ひとつこの問題について、できるだけの協力の計らいをぜひとも総理の裁断でやってあげていただきたい。大蔵大臣としては立場上いろいろ問題あると思います。あると思いますけれども、それはひとつ総理が判断をなさって、ぜひとも、向こうの言うままでは無論なくても、何とか話の通じ合うような方法を考えるという御努力をお願いしたいと思うのですが、お気持ちをお伺いしたい。
  200. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 日韓の関係につきましては、基本的に和田さんのいまお述べになったことと同じような気持ちを私も持っておるわけでございます。  その中で私は、特に大事なことは、日韓両国民国民的レベルにおきましても、本当に真の相互理解、真の信頼と協力、連帯の気持ちというものが国民レベルでこれが形成されなければいけない。単なる経済協力とか援助とか、そういうようなことでなしに、本当に日韓両国民が非常に身近な、重要な隣国であり、歴史的にも切っても切れない関係にある日韓の間、両国民がそういう理解と認識の上に立って協力し合う、政府としても、そういう国民間の環境ができてこそいろいろな面で協力し合える、こういうことだ、こう思っております。  私は、そういう意味で、そういう面にも特に努力をしていきたい。特に、これから日本語をわからないような若い世代の人たちがたくさん出てくるわけでございますから、青年あるいは学生、そういう諸君との交流の問題あるいは文化的な面、そういう面につきましても、いま申し上げたような観点から特段の努力をする必要がある、私はこのように考えております。そういう、韓国がいま非常に困難な経済の状態に置かれており、そして新しい経済社会発展計画のもとに国づくりに邁進をしておるということを私は承知しておりますから、日本としても、経済協力の基本方針が日本にはございますが、その方針にのっとりながら、できるだけのことを協力をしていきたい、こう思っております。
  201. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この問題は、両国の国民理解の仕方というものの中に、まだまだお互いに非常に理解できないような問題があると思うのですけれども、韓国の人にとってみれば、北朝鮮との関係でまだ大きな緊張状態がある、そういう状態に対して身を挺してやっておる、国の予算の相当部分を軍事費に使っておる、つまり、こういうことは自由諸国のためだということを本気に考えてやっておるのですね、この気持ちが日本に通じないということが非常に残念に思っている。そしてまた、日本の経済成長を見て非常にうらやましく、あるいはねたましくと言ってもいいほどの感じを持っておるわけでありまして、そこらあたりの問題は、ぜひともひとつ日本側から理解をしてあげなければならないと私は思うのです。  そういうわけでありまして、五年間という長期の問題については返答出なくても、この断面の一年間の問題についてはとりあえずこういうことでもやっていこう、後は前向きに考えるというようなことも一つの対策としてあり得ると思うのですね。そういうことを含めまして、ぜひともひとつ善処をお願いをしたいと思います。  続きまして、きょうはもう時間もありませんので、この議題のそのものの問題に入りたいのですが、総理、私は最近の状態を見まして、五十九年までに赤字国債をゼロにするということを柱にした財政再建と、それの双生児と言ってもいいのでしょう、むしろ行政改革の問題、これは大平さんのときに大型の消費税を出した場合になかなか国民の納得を得られない、行政改革で徹底的に行政経費を切り詰めた上で増税の問題を考えるべきだというような経過のもとに出てきたのが、この二つの問題だったと思うのですね、財政再建行政改革。そしてまた、この二つの進行中に出てきたのが、いまの大変な経済の困難な状態が国民のあちらこちらに出てきた場合の景気の刺激の問題、この三つの問題がいま同時に登場しておりまして、しかも、これは必ずしも一致するような面がなくて、それぞれひとり歩きをするようなばらばらの傾向さえほっておけば出てくるような気がしてならないのですね。  この問題について、総理としてお考えいただかなければならないのは、優先順位といいますか、あるいはタイミングといいますか、そういう問題についての一つ方向づけをぜひともお示しをいただかなければならない、そういう時期ではないかと思うのですね。たとえば、財政再建ということになりますと、五十六年度のゼロシーリング、五十七年度のゼロシーリングという状態で進みながらも、最近一番経済的なショックの問題は、昨年の十月-十二月のGNPマイナスという状態が出てきたこと、そしてこの二月に、二年連続に勤労者の可処分所得がマイナスになったということ、そしてまた、きのう、きょうの大きな問題になっております五十六年度の歳入欠陥が、当初私どもも一兆五千億規模になるのじゃないかと言われておったのが、それよりも一兆円も大きな規模で歳入欠陥があらわな状態になってくるという状態があるわけであります。これは来年の問題をとやかく言うことはできませんけれども、来年というよりもすでに准行しておる五十七年度の問題、やはり、いまのままの条件が進めば五十六年度と五十歩、百歩の歳入欠陥ということになる可能性もある。しかし、五十六、五十七年度ということであれば、先ほど大蔵省の方々がいろいろ言っておられるように、何とかつじつまが合うと思いますけれども、ここでつじつまを合わしたお金は、五十八年度以降にまたお返ししなければならないお金が多いのですね。したがって、五十八年度の予算編成というのは、大蔵大臣、これは大変むずかしい局面になってくると思うのですね。  先ほどの同僚委員質問に対して、マイナスシーリングというお考えもあったようですけれども、しかし、これは言うべくしてなかなか行われることではないこと、大蔵大臣一番よく御存じだと思うのですね。つまり、行政改革というものから出てくるお金の浮き出し、財政再建に役立つお金の浮き出しということと、現実に五十九年までの財政再建というものとのタイミングが合うかどうか、今年、来年、再来年のうちに行政改革で浮いたお金が財政再建の足しになることができるかどうか、この問題をちょっとお伺いしたい。
  202. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これも非常にむずかい問題でございます。なぜならば、世界の経済変動というものが余りにも激しいというような点から、定まった推定というものがつきかねるという問題でございます。  しかし、いずれにせよ、仮に決算調整資金や旧債整理基金で一時しのぎができたとしても、それはしょせん短期間のものでございますから、それを五十八年では返済をしなければならない。問題は、それだけの力が経済に出てくるかどうか、また歳出カットでできるかどうか、それを抜本的にやってみて、その結果どうするかということは、またその時期になって考えなければならぬと思っております。
  203. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 恐らくそうだと私も思いますけれども、しかし行政改革というのは、これは何回も確認されたように、増税なき財政再建という形であるように、増税という道が、いままでの鈴木総理のいろいろの形でのお約束等、あるいは大蔵大臣もそうですけれども、から見て、いまの五十八年、五十九年の財政を組む場合の増税という道がなかなかいまの状態ではスムーズに准場できない。しかも、増税以外に方法はないという状態も現に出てくる可能性がある。そういう場合に増税という問題をどういうように扱われるのか、これは総理にひとつお気持ちをお伺いしたい。
  204. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 財政再建それから行政の改革、そして停滞する景気の回復、この三つの課題、このどれを優先して考えるか、優先順位をつければどうか、まず最初にこういうお尋ねがございましたが、私は、この三つは全く表裏一体と申しますか、これを切り離して優先順位を付して考えられる問題ではない、このように認識をいたしておるわけでございます。その上にまた、国民の多数の方々から所得減税というもう一つの御要請が出てきておるわけでございまして、政府は、このような国民的課題をどうやってこういう厳しい内外の経済情勢の中で乗り越えていくかということに、本当のところ苦心惨たん苦慮いたしておるというのが偽らざるところでございます。  しかし、八〇年代以降将来を展望いたしました場合におきまして、私は、少なくとも五十九年には特例公債依存の体質からは脱却しなければいけない、このように考えておりまして、思い切った行政の見画しあるいは財政の縮減合理化というようなことで、その特例公債発行減額という財源は生み出さなければいけない、そして経済の運営につきましても、与えられた条件、非常に選択はむずかしいのでございますけれども、いろいろな施策を積み上げて総合的な効果を期待しつつ私どもは全力を挙げて努力したい、こう思っております。     〔粕谷委員長代理退席、委員長着席〕
  205. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いずれにしましても、この三つの課題は総理もおっしゃるように不可分の問題、しかも、ほっておけばひとり歩きをしかねない問題であるわけです。そういう点をひとつぜひとも御考慮をいただいて、それこそ総理のリーダーシップが必要だと思うのですけれども、善処していただきたい。  最後に、もう時間も参りましたが、いまの貿易摩擦という問題が持っておる意味というのは非常に大きな問題だと思うのです。これは、事によったら戦後の日本の一つ方向を示唆するような大きな問題だと私は思うのです。日本の経済の基礎的な条件とかいろいろ言いますけれども、日本の経済にとって決定的に大事なことは貿易しかも輸出ですね。これがうまくいかないから、ちょっと停滞しただけで現在のような状態が起こってくるわけです。世界国じゅうに物を売りさばいてもうけにもうけてきた。いまアメリカ、ECから日本が封鎖しているという感じを持たれておる。こういう問題については、私どもが考えている以上に、外から見れば何か迷路のようになって入りにくい、商売が切り開いていけないというような感じを持っておると思うのですね。  したがって、こういう問題については日本はもう裸になって、関係の業界のトップの人あるいは専門家の人に裸になるから十分見てくれ、どこに問題があるのかひとつ指摘をしてくれ、そうしたら、われわれはできるだけ早く総合的にいわゆる劇的な対策をするのだという姿勢をサミットではっきり示した方がいいと私は思います。それに対して、たとえば農業その他の面で被害を受けるところが出てまいります。それに対しては政府は十分な補償をする姿勢をとるというような国の姿勢を明らかにしていくことが私は大事だと思います。  と同時に、日本はやはり独立国ですから、防衛という問題についてはちゃんとした防衛計画をつくる。これは気持ちの問題として大事なことです。そして、きょうも問題になっておる日本の教育の問題についても、当然日本の国家というものを大事に考えるような教育を進めていかなければならない。そういうふうに独立国としての防衛あるいは教育の問題についてきちんとした考えを持ちながら、経済的にはもう世界との貿易なしには生きていけないのですから、その姿勢を明らかにしている。私は、こういう中で戦後初めて独立国の日本、世界の中でしか生きていけない日本の姿が出てくると思うのです。こういう困ったときは、総理、余り細かいことを考えないで、もっと大きく開いていく日本の姿を描きながら対策をとった方が間違いないです。ぜひともそれを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  206. 森喜朗

    森委員長 簑輪幸代君。
  207. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 総理にお尋ねいたします。  最初に税収不足の問題ですけれども、もうすでに指摘されておりますように、五十六年度では約二兆円の歳入欠陥、それから五十七年度の税収不足としては三兆円前後になるのではないか、そしてそれに続く五十八年度では六、七兆円の税収不足さえ出る可能性という観測の報道もされております。そして、それを受けて大蔵省の幹部は、赤字国債を増発しなければ五十八年度予算は編成できない、そういうふうなことすら言っているという報道もされているわけです。  総理は、すでに五十九年度赤字公債発行することをやめて赤字公債発行ゼロというところで公約をしておられるわけですね。こういう厳しい事態を迎えまして、果してその公約が守れるのかということをまずお尋ねしたいわけです。  あわせて、総理は、ことしの二月十日にわが党の岩佐議員に対して「税収が少し見積もりから外れたとか、そういうようなその途中段階における推移等に一々政治責任をとっておったら、幾らあってもたまらぬということになります。要は、五十九年に赤字公債からの脱却、これが私の公約でございます。」というふうに胸を張られたわけですね。しかし、五十六年度の補正予算に対する税収不足というのは前代未聞の事態なわけです。全く前例のないこういう異常事態を迎えておるわけですから、これが五十七、五十八に影響し、一体五十九はどうなるのだろうかということで、だれしもがゆゆしい事態であるということを認識していると思うのです。  そういう事態で、言うならば総理の公約自体あるいは財政再建そのものも崩壊させてしまうのじゃないかという性質を持っていると思うのですが、これに対してどのような対処をされ、どのように責任をおとりになるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  208. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 税収の見積もりにつきましては、その時点におけるいろいろな可能な限りの資料に基づきまして専門家が検討に検討を加えてするわけでございますけれども、このように激動する世界経済の中におきまして、われわれが予測できないような大きな変化が起こってきております。また、物価その他も私どもが予期した以上に、これは国民の皆さんにとっては大変いいことでございますけれども、物価はきわめて低位に推移した、いろいろな要素が絡まりまして今回のような税収が思わざる減収、こういうことに相なったことは残念でございます。しかし、かといって、それでもって私の公約でありますところの五十九年に特例公債依存の体質から脱却するという根本の方針を変更する必要はない、私は、これに対しては、あくまで責任を持ってその実現のために全力を挙げるという考えに変わりはございません。  五十七年度の予算は、国会の御協力によりまして成立をいたしました。この執行がこれから政府に課せられた重要な使命でございますが、その執行に当たりましては、景気の回復等も十分念頭に置きながら、物価の安定を十分配慮しながら、これを進めてまいる考えでございます。五十八年度以降の経済運営につきましても、そういう考え方で取り組んでいく考えであります。
  209. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 決意を述べられるのは結構でございますが、事態は非常にゆゆしい厳しい事態を迎えている。やはりこれを冷静に直視して、それに対策を立てていかない限り、希望的観測で事は処理できるものではないということをはっきり申し上げておきたい。そして、総理が今後の財政運営に当たって、これを国民にしわ寄せしないで財政再建ができるように財政運営を進められるように強く求めていきたいと思います。  時間がありませんので、私はこの際総理に、重要な問題を幾つかお聞きしたいと思います。  今日、核軍縮を求める世論が非常に大きくなりまして、わが国の中だけではなく世界で大きな運動になっているわけです。そこで、唯一の被爆国であるわが国の果たす役割り、そして総理の果たす役割りというのは非常に重要な問題だというふうに思います。  この六月に、ベルサイユ・サミットに続いて国連軍縮特別総会が行われて、そこでは総理が出席し演説をされるというふうに伺っております。伝えられるところによりますと、総理はこの間、西側が軍事力の面で優位に立つことは軍事的抑止力となり、軍縮交渉にも役立つというような見解をワインバーガー国防長官を通じてレーガン大統領に伝えたというふうに報道されておりますけれども、この基本的な見解をお持ちになって、この態度で国連軍縮総会で発言をし行動をされるのか、この点を伺っておきたいと思います。
  210. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 新聞の報道のニュアンスは、私がワインバーガー国防長官に申し上げたこととちょっと違うようなところがございます。  レーガン政権が言っておりますことは、いまお話しになったように、とにかく相手はソ連である、ソ連との間で交渉をするには、有利な条件に立って交渉しなければソ連は決して協調した話し合いに応じない、これはもう過去の体験、実績からいってそのように考えるという立場をレーガン大統領初め米政府がとっておる、この軍縮の問題についてもそのような考えを持っておる、これがアメリカの立場である、これは御存じだろうと思うのです。  私も、立場はよくわかる、よくわかるが、これが軍拡競争になるようなことでは世界の恒久的な平和は確立できない、そこで、この軍縮、軍備管理ということが全世界の人々の願いであるのであるから、この軍縮を進めていって低位に抑えて、その上に立っての世界の平和と安定、そして経済の活性化のためにやってほしい、こういうことを申し上げておったわけでございます。  その前段のアメリカの政策を私が米側に提案したような形に報道されておりますことは、私の真意に反するということだけは申し上げておきます。     〔委員長退席、小泉委員長代理着席
  211. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 そこは大事なところですので、ちょっと確認しておきますけれども、レーガン大統領あるいはアメリカの政策がそうであって、鈴木総理はそれとは別に、国民世論を背景にし、決して軍拡競争にならないようにという立場で国連軍縮総会に臨む、そして、その総会に臨む前に、西側諸国が一致した体制でというような事前の話し合いというものも報道されておりますが、そういう事実については、総理としては特に考えておらずに、国連特別総会において直接このような総理の見解を述べられるということでしょうか。
  212. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は基本的に、軍拡競争を繰り返していくようなことであれば決して世界は平和にならない、人類の幸せはそういう方向では求められないという考え方を機会あるごとに述べてきております。これは、オタワ・サミットにおきましても、またカンクンの南北サミットにおきましても、私が国際会議で主張してきたところでございます。この考えには変わりはございません。  また、わが国は世界における唯一の被爆国であり、非核三原則を堅持しておる平和国家でございますから、その立場に立って、私は六月の国連特別総会では主張したいと考えております。そして、その出発の前には、各政党の代表の方あるいは核軍縮等の運動をお進めいただいておる代表の方々の御意見も十分お聞きをし、それを踏まえて、全国民的立場で国連総会で日本の立場を訴えたいと考えております。
  213. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 核軍縮を進めるために総理が被爆国の代表として意見を述べられるに当たっては、国民世論を十分に聞いた上で臨むというふうに伺ったわけです。  新聞の報道によりますと、アメリカは西側のリーダーとして西側の結束が緩まないように十分配慮してほしいということを述べたようにも書かれておりますが、そういうようなことを言われたことはないのでしょうか。
  214. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 核軍縮の問題はいま申し上げたとおりでございます。  私は四項目にわたって申し上げたわけでございまして、国際情勢、これは政治情勢も経済情勢もございますが、国際情勢が厳しければ厳しいほど西側諸国の連帯と協調が必要である、こういうことを申し上げたところでございます。経済摩擦等につきましても、わが方も十分努力をしております。本当に犠牲を払いながら保護主義の台頭を抑え、自由貿易体制を拡大するために、日本は東京ラウンドの関税の二年分前倒し等の犠牲もいとわないで努力をしておるということでございますから、そういう点も十分頭に置いて西側の結束と連帯協調をひとつ進めてほしい、こういうこともつけ加えて申し上げておるところでございます。
  215. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 核の廃絶に当たって、西側も東側もないわけで、世界の平和を願う諸国民の皆さんと一緒になって、被爆国の総理として先頭に立って核軍縮を主張するというのが本来であって、ここで西側だの東側だの、核にとってはソ連だろうがアメリカだろうがその他だろうが、その核兵器が日本国民のあるいは世界の国民にとって廃絶すべき対象であることは変わりないと私は思うのですね。  その意味からいいますと、いまの総理がおっしゃったことはとうてい納得できるものではございませんが、あわせて、総理が、先日来地方議会で核の廃絶あるいは軍縮問題についていろいろ決議が行われるに当たって、これが反米運動にならないようにというようなことを特別に指示されたやに報道されておりますけれども、それは大変問題だろう。こういう核廃絶の党派を超えた平和を願う人々の運動に水を差すようなものじゃないか、ぜひこれは取り消すべきだと私は思いますが、その点いかがでしょうか。
  216. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 核軍縮、核兵器の究極における廃絶、こういう目標に向かってわれわれは努力を積み重ねていかなければなりませんが、ただそれを叫んだだけでは実現するとは私は思っておりません。何といっても、現実の問題としては核戦力を巨大に持っておる核の超大国である米ソ両国というものが世界平和のために、人類の生存のために責任と自制を持ってこれに対応しなければならない。また、その他の核保有国も同様でございますが、そういう点を訴え、かつその具体的な方策を探求して進めなければ、ただ核軍縮、核軍縮と言ってもそれはできないことは、もう簑輪さんも一番よく御存じのところであろう、こう思うわけでございます。  そういう意味で、私はその点を申し上げております。やはりこのバランスをとりながら、これをだんだん低位に抑えていく、そして究極において核兵器の廃絶に持っていくというような着実な運動を積み重ねないと、一足飛びにはなかなか厳しい現実はそうはいかない。  それから、もう一つ質問がございましたが、わが国は非核三原則というものを国是として堅持しておる。国会の決議もちょうだいをいたしておりますし、政府の揺るぎない政策でございます。したがって、日本全土が非核三原則のもとに置かれておるわけでありまして、何市が、何町村がそういう宣言をしたとかしないとか、そういうことではない、こう私は思っております。     〔小泉委員長代理退席、委員長着席〕
  217. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 日本じゅうが非核三原則で核廃絶に向かっていくということならば、各地でそれらのことを確認し、一層総理を応援する意味でも、それらが行われることは望ましいことであるはずだと思うのです。総理のおっしゃったことはちょっと納得できません。  それで、それはやはり総理が被爆の実相というものについて本当に十分認識しておられるかどうかということにかかってくると思うのです。端的にお答えいただきたいのですが、総理は「にんげんをかえせ」という映画をごらんになったことがございますか。
  218. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 そのことは、直接は見ておりませんが、しかし広島にも参りまして、そして広島の人々とともに、この核の惨禍、二度とこういうことが繰り返されてはいけない、そういう平和の誓いというものは、私も広島でしみじみやっております。
  219. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 この「にんげんをかえせ」という映画は、十フィート運動というのがございまして、アメリカから十フィートずつ買ってきた映画を編集したもので、いま英語、ドイツ語、スペイン語版を製作中ですし、軍縮特別総会に合わせてニューヨークでこれが公開されるという準備が進んでおります。総理も大変お忙しいとは思いますけれども、これは二十分でございますので、軍縮特別総会に参加するに当たって、ぜひこの前にこの映画を見ていただきたいと思いますが、いかがでしょうか、それだけ。
  220. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、そういう機会があれば、行く前にぜひ拝見したいと思っております。
  221. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 首相官邸にでもぜひそういう手配をさせていただきまして、そのようにお願いしたいと思います。  ところで、この原爆の問題が非常に重要で被害者として問題になっておるわけですが、一方で、侵略戦争の加害者としての側面があるというようなことは非常に重要な問題だと思います。  最近、森村誠一さんのベストセラーで「悪魔の飽食」という本が出ておりますが、これは関東軍七三一部隊のことで、この問題でちょっと総理の御見解をお聞きしたいと思います。  七三一部隊は、日本陸軍の関東軍防疫給水部ということで、原爆やアウシュビッツと並ぶ人類の汚点とも言うべき生体実験を行っていたというところです。犠牲となった人々は三千人を超えております。戦争という異常な状況のもとといえども、これは人道に反するもので、人間の尊厳を踏みにじるとうてい許しがたいことだと思います。  総理は、この部隊と、そこで行われた惨劇、それらの行為というようなものについて、どのような認識、感想をお持ちか、簡単にお聞かせいただきたいと思います。総理の感想をお聞きしたいわけで、もし特になければ、質問時間が限られておりますので次に進みたいと思います。感想は総理からお聞きしないと意味がないので、ほかの方の感想は意味がないのです。
  222. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 私は、この核兵器のほかに非人道的ないろいろな兵器なり細菌戦術なりが過去においてもあったということは聞いておるわけでございますが、そのような非人道的な悲惨なことが今後行われてはならない、このように考えております。
  223. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 この七三一部隊は、まことに非人道的な行為を軍当局はやってきたわけですが、この事実の隠蔽を図っているわけです。犠牲者は中国人、ロシア人、朝鮮人、モンゴル人、ポーランド人、オーストラリア人、アメリカ人、イギリス人と、実にいろいろな国にわたっております。  それで二十年八月十五日、敗戦の詔勅を前に陸軍省軍事課が指示し処理したことを示す公文書が残されております。それは「特殊研究処理要領」というふうにされておりまして、「一、方針 敵ニ証拠ヲ得ラルゝ事ヲ不利トスル特殊研究ハ全テ証拠ヲ陰滅スル如ク至急処置ス」という、そこの中の2のところに「関東軍、七三一部隊及一〇〇部隊の件 関東軍藤井参謀ニ電話ニテ連絡処置ス」というふうに記されておるわけです。これは、きのう外務省に要求したところでは、この文書そのものはないということでございましたけれども、私どもの調査の結果手に入れたものでございます。  こういうふうに、当時の権力者が戦争を終わるに当たって証拠を隠蔽し、歴史の真実をゆがめようというふうにしてきたわけです。いまこの「悪魔の飽食」がベストセラーになって、大変多くの皆さんの関心を得ているわけですけれども、特に非常に恐ろしい狂気とも言うべきこういう事実について、私どもは正しく正確に把握して、それを子孫に受け継いで、二度とこういうことを繰り返さないようにしていかなければならないと思います。いまこの問題がアメリカのCBS、カナダやスウェーデン、スイスの放送、アメリカのピープル誌、イギリスのサンデータイムズ紙などでも取り上げられて、国際的な関心を呼んできているわけです。  これらの関係書類というのは、まだいろいろなところに散逸しているものがあったり、あるいは石井四郎軍医中将がアメリカの軍当局にこれを提供して、向こうの公文書館に保管されているものがいろいろありますが、日本のこの政府の中にも数々の関係書類が残されているわけです。  それで、この問題について国際的な大きな問題になってまいりまして、日本政府としてこれにどう対応するかということがいずれ求められる時期が来るというふうに思います。それに当たりまして、私は、ぜひ、七三一部隊あるいはここに挙げられております一〇〇部隊及びそれらに関連するいろいろな資料等について、政府がみずから持っているその資料をすべて整理し、公表し、そして国民の皆さんにわかるようにしていただきたいというふうに思います。ひとつこのことをお願いし、さらに一歩進めて、政府が戦史というものをあらわすに当たって、それがどんなに痛みを伴うものであっても、事実を明らかにし真実を明らかにするという形で全部この資料を公表していただくように求めたいと思いますので、総理の御見解を承りたいと思います。
  224. 北村和男

    ○北村政府委員 資料の点でございますので、厚生省からお答えを申し上げます。  関東軍防疫給水部に関します資料といたしましては、私どもは、個々の構成員の留守名簿、それから関東軍防疫給水部略歴という資料は保有いたしております。個々の構成員の資料につきましては、個人個人の細かい身上調書等の要素もございまして、プライバシーに属するもので従来公開はいたしておりませんが、部隊の略歴その他につきましては、お求めに応じましては公表しても一向に差し支えないものであろう、さように考えております。
  225. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 いま私が申し上げましたのは、そういうことではございませんで、この七三一にかかわるすべての資料が、厚生省だけではなくてあるいは防衛庁その他関係のところにいろいろとあるだろうと思うのですね。それらを責任を持って取りまとめ公表すべきであるということを申し上げているわけです。それで、各省庁の問題じゃなくて、総理にその辺でどのようにお考えかお聞かせいただきたいわけです。
  226. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 政府としては、こういう問題を隠蔽しようなどという考え方は毛頭ございません。何分古い、そして終戦のああいう混乱の中でございますから、どの程度の資料が集められますか、やらしてみたい、こう思っております。
  227. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 終わります。
  228. 森喜朗

    森委員長 小杉隆君。
  229. 小杉隆

    ○小杉委員 時間が九分間ですから、続けて三点申し上げたいと思います。  まずグリーンカードですが、すでに自民党は三百人を超える反対の署名があった、民社党もかなりの部分が廃止または延期ということでありますので、いま自民党の政調あるいは税制調査会あるいは部会等ではまだ全然相談をしてないということですが、いずれこれが議題に供せられるということになりますと、恐らくこの数でいくと党議決定という事態も生まれかねないと思うわけですね。  そうしますと、これは鈴木総理が一貫して予定どおり実施と言い続けておりますが、こういう党議決定がもしなされるとすれば、これは鈴木総裁に対する実質上の不信任であって、鈴木総理の指導力が問われる問題です。大蔵大臣も、一貫してこれは予定どおり実施ということでありますが、最近になって、たとえばグリーンカードの実施とあわせて累進税率の緩和をセットでやっていこうとか、あるいは大蔵省首脳が中所得者、低所得者の税率緩和も同時にというような、グリーンカード反対論をできるだけ封じ込めるような提案もいろいろされているようでありますが、鈴木総理として、党内並びに党外のそうした反対論を押さえ込むあるいは説得する材料をお持ちなのかどうか、その自信がおありかどうか、まずお伺いしたいと思います。  それから、第二番目は貿易摩擦の問題です。この解消のために鈴木総理が非常に努力をされていることは私も認めます。この委員会でも、たとえば関税の二年前倒しの引き下げということもやりました。そういう議論を通じて、日本はいろいろな努力を積み重ねているわけですね。江崎さんがアメリカ、ヨーロッパにも行きましたし、櫻内外務大臣が訪米をされる、あるいは日米貿易小委員会でマクドナルドさん以下来てもらっていろいろお話しをする、あるいは苦情処理委員会の設置とかあるいは非関税障壁を三分の二ぐらいの項目を廃止するとかいう、いろいろさまざまな努力をしているわけですが、アメリカやヨーロッパが一番望んでいること、関税の二年前倒しのときも議論があったのですが、こっちが一生懸命やってあげても向こうが余り感謝をされないようなことでは、結局日本人、日本の国民だけが犠牲を受けるということになるので、やはり私は、先方が本当に望んでいることを効果的にやるというのが貿易摩擦の解消のためには有益だと思うのです。  私も、先月アメリカへ超党派の若手議員団で行ってまいりまして、上院議員、下院議員あるいは向こうの政府の人たちと会いました。端的に替って、農産物の自由化という声が非常に強いのですね。これは、私は別に大京出好だから言うわけじゃありませんが、消費者の中にももっと牛肉を安くしてほしいという声が非常に強いことも事実です。日本の農業の置かれた構造的な弱さ、これは国土が非常に狭隘であるというような、そういう構造的な弱さというのは私は知っておりますけれども、やはりこういう事態になったならば国民が等しく病みを分け合うということで、農産物の輸入の自由化あるいは輸入量の拡大ということについてある程度の姿勢を示すべきだと私は思うのですが、この点についての総理のお考えを聞きたいと思います。  最後に、行政改革と関連して財政の問題なんですが、この前の一次答申は五十七年度予算に非常に連動して今度の予算に反映をされました。しかし、今度七月に予定されている基本答申では、たとえば三公社の経営形態のあり方とか中央省庁の統廃合というような比較的中期的、長期的な問題で、余りお金になるという話ではないわけです。しかし、先ほど来議論が出ておりますように、五十六年度でもう二兆円の歳入欠陥がありますし、五十七年度、ついこの間決まったばかりの予算ですら、もう歳入の心配がされているわけです。ましてや五十八年度の予算編成が近々始まるわけですけれども、全く危機的な状況の中でどうしたら予算が組めるか、恐らく総理、大蔵大臣とも胸を痛めていると私は思うのです。  私は、この際提案をしたいと思うのですが、いまの臨調答申、これは基本的な問題も結構ですけれども、こういう非常に危機的な財政状況の今日、緊急策として五十八年度の予算に反映できるような対策を諮問して答申をしてもらうという考えはないか。たとえば、先ほど来出ておりましたが、医療の出来高払い制度、こういったものにメスを入れるだけでも一千億円単位の予算の削減ができるはずですし、一次答申でも見送った問題がかなりあるわけですね。そういう点でどうかということです。  それから、いままでの予算編成というのは、大体大蔵省がいろいろ方針を示して各省庁にやったわけですけれども、やはりこういう貿易摩擦あるいは景気対策あるいは財政再建、難問を抱えたいまの日本の状況を考えるとき、単に政府だけではなくて、予算編成前の臨時国会を開会をして、国民の英知を結集するという発想の転換を図るべきだと思いますが、その予算編成前の臨時国会の召集というような考え方についてどう考えられるか。  以上三点、続けてやりましたけれども、明確にお答えをいただきたいと思います。
  230. 鈴木善幸

    ○鈴木内閣総理大臣 大変重要な大きな問題を三つやられまして、それを二、三分の間で答えろというのですから、大変むずかしいことでございます。  まず第一のグリーンカードの問題は、先ほど来御答弁申し上げておりますように、まだ党の正式議題になっておりません。自由民主党が正式に党機関に議題として諮る場合におきましては、当然政府の方にも相談があるはずでございますから、その時点で政府としてはこれに対応するわけでありますが、政府としては、先ほど来るる申し上げておりますように、現在、国会でお決めいただきましたところの法律の内容、趣旨に従いまして、五十九年度実施を目指して準備の万全を期したい、こう思っております。  それから、五十八年度の予算編成前に臨時国会を開いたらどうか、こういうようなお話でございますが、これはもう御承知のように、七、八月ごろから概算要求その他、実質上予算編成の作業に入るわけでございまして、この国会におきましても、各党の御意見、各国会議員の方々の御意見というものは十分私ども耳を傾けておるわけでございますから、時間的な面からいっても予算編成前というようなことはなかなかむずかしい、こう思っております。  それから、行政改革をやります場合におきまして、基本答申といっても、それが五十八年度予算の財源不足を補うようなものにならないだろう、医療費その他の節約、節減あるいはむだの排除等等のような五十八年度予算の編成に役立つようなものの答申をお願いしたらどうか、こういう問題でございますが、この点につきましては、臨調においてもいろいろお考えをいただいておるようでございまして、また、いままでの全体としての臨調のお考えというものも踏まえまして、政府としても最善を尽くしたい、こう思っております。  貿易摩擦の問題につきましては、基本的には、アメリカにしてもEC各国にしても、非常に困難な局面に経済状態が置かれておる。ECだけでも  一千二、三百万人にも達しようという大きな失業、アメリカでも失業率は九%というような状態、そのほかに、インフレあるいは国際収支の悪化等々いろいろ問題がございます。こういう困難な経済に対して、これを立て直す、世界経済の活性化を図るということが根本的な対応であろう、こう私は思うわけでありまして、そういう点は、来るべきベルサイユ・サミットにおきまして、わが方からも具体的な提案もいたしたいし、各国首脳と十分話し合いをして協調して努力していきたい。  それから、いままでも日本はいろいろな面で努力をしたが、それほど喜ばれていない、相手の喜ぶものをやったらどうか、それは農産物の自由化というようなことをおっしゃったわけでございますが、私は、この農産物の中でアメリカの最大の関心品目は牛肉とオレンジであろうか、こう思っております。この問題につきましては十月から協議に入ろう、こういうことに相なっておりますから、その際、日米同国の考え方というものを十分披瀝し合い、また、日本がこの問題に対して今日まで取り組んできた努力の結果、経過あるいは日本の実情というものを十分説明をして、そして相互の合致点を見出したい、このように考えております。  それからその他の、これは農産物だけではありませんが、各国にはそれぞれ関心品目というものがございます。だから、関心品目というものを全然残しておいては、全体としての対策を講じましても、小杉さんおっしゃるように、なお不満が残るという面は確かにあると思いますので、関心品目につきましても検討を加え、第二弾の対策としてできるものは取り上げていきたい。これはなかなかむずかしい問題が残っております。できるものとできないものとありますが、第二弾の対策としては、そういう問題につきましても私どもは検討を加え努力していきたい、こう思っております。
  231. 小杉隆

    ○小杉委員 終わります。
  232. 森喜朗

    森委員長 これにて総理大臣に対する質疑は終わりました。  引き続き、質疑を続行いたします。平林剛君。
  233. 平林剛

    ○平林委員 このところ、上場法人の株式の時価発行による増資がふえてまいりまして、政府の資料によりますと、五十五年度で二百十八社、発行額が九千六十三億円、五十六年度には、見込みも入りますが二一四十社、一兆二千七百九十九億円の巨額になっておるようでございます。この時価発行による増資を公募いたしました会社の公募価格と最近の株価を眺めてみますと、その相当数が公募価格を割り、はなはだしく暴落をするという傾向が起きております。  念のために、昭和五十六年度の公募増資を行った会社の株価等の状況を実は点検をしてみたわけであります。五十六年の四月からことしの五十七年二月まで、公募会社は二百二社ございますが、公募価格を割って株価が下落したもの百二十一社、約六〇%に達しております。その他の会社におきましても、公募価格を維持しておるというのが大多数でございまして、この傾向は顕著であります。私は、公募金額百億円以上の会社で落差の激しいものだけを列記してみましたのが、ただいまお手元に配付をお願いいたしました資料でございます。  トヨタ自動車工業、昨年五十六年七月公募金額九百九十一億円でありまして、当時の公募価格は千四百十五円、これは私ちょっと早く調べたので三月十九日現在になっておりますが、八百九十六円でありまして下落は三七%、公募価格の六三%にしかすぎません。はなはだしいのは大阪チタニウム製造、五十六年九月に百六十二億円の公募を行いましたが、公募価格は三千三百七十五円、三月十九日現在の株価は千十円でありますから、実に公募価格の三分の一以下、〇・二九九という状態になっております。実に大変な大暴落であります。  公募金額は百億円以下であるけれども、公募価格と最近の株価の落差の大きいのを参考のために列挙いたしましたのが下の欄でございまして、ここに掲げてあるものは代表的なものであります。下落率と書いてありますが、いずれも三〇%以上低下したものを拾い上げてみたものでありまして、先ほど申し上げましたほとんど相当数の公募会社がかくのごとき状態になっております。  この最近の公募増資を行った会社の株価等の現況を見まして、どういうふうなお考えをお持ちでございましょうか。
  234. 禿河徹映

    禿河政府委員 お答えを申し上げます前に、ちょっと数字の件を先に申し上げさせていただきたいと存じます。決して私も公募価格割れを擁護するつもりではございませんが、いま先生がお話しになりました数字で若干事務的にまず申し上げたいと存じます。  五十五年度、五十六年度におきますところの時価発行増資の件数は、いま先生のお話がありましたのと大体同じでございます。ただ、五十六年度は最終的に二百三十九件ということで決まりました。金額は先生からお話がありました一兆二千七百九十九億円、そのとおりでございます。  それから、昨年四月からこの二月にかけまして時価発行増資を行われましたもので、三月十九日現在で公募価格割れになっております会社の数でございますが、実は時価発行増資の場合に、公募価格を決定いたしますが、その後決算期が到来いたしました会社で無償交付を行う会社がございます。無償交付がございますと、その時価発行価格と申しますか公募価格というものは、それに応じて下方修正されていくべきものでございます。そういたしますと、公募価格割れの件数はまだ非常に多いのでございますけれども、この三月十九日現在で見ますと、正確な数字で申しますと五二%が割れておる、こういう数字でございます。それから、大変恐縮でございますが、そういう点がございまして、先生がおつくりになられました先ほど配付がございましたこの資料の中には、六、七銘柄につきましては、公募価格と申しますのは増資を行った時点の公募価格で、その後無償交付がございまして若干その価格が下方修正されるべきものがございます。しかし、いずれにいたしましても、この表に関しましては、それを修正してもいずれもなおかつ相当の公募価格割れ、こういう状態でございます。  先にちょっとその数字の件を申し上げさせていただきまして恐縮でございましたが、私ども、基本的に時価発行増資というものをどう考えるかということにつきましては、こういう増資が増大していくということは、企業の資金調達手段が多様化していくあるいは国民経済に占めます資本市場の地位の向上等を示すものだという点から、基本的には決して悪いものとはマクロで見て考えてはおりません。ただ先ほど来お話がございましたとおり、反面におきまして、増資後すぐに公募価格割れをするとかあるいはその後におきますプレミアムの株主に対します還元が不十分であるとか、そういう問題があることも事実でございまして、これらにつきましては、発行会社、さらにはアンダーライターとしての証券会社に対しましても十分配慮していくようにできるだけ指導してまいり、またその配慮を求めてきておる、こういう状態でございます。
  235. 平林剛

    ○平林委員 私が配付していただいた資料については大方肯定をされましたが、公募価格がその後の決算によって無償交付などがあって落ちるということは私も認めております。しかし、指摘いたしましたたとえば大阪チタニウム製造のごときは、ただいまのような権利落ちがございましても三千三百七十五円が二千九百三十五円になったのでありまして、引き続き一千十円と暴落をしておることは紛れのない事実で大暴落であります。同じように、アルプス電気におきましてもこれはそのまま同じく千八百六十五円でありますから、この表に書いてある傾向というものは否定することはできないだろうと思います。  そこで、株価は、最近のような経済情勢だとかそれから昨年の上半期の日本経済に対する国際的な評価は高かったことから、ある意味ではこの機にという気持ちになって公募をするという会社がふえるのはあり得ると私は思うのです。大蔵大臣がしばしば言ったように、国際的に日本経済は優等生だと見られて、当時の日本経済に対する評価は非常に高かった。しかし今日では、それがいささかメッキがはがれてきて、いい悪いは別にいたしまして、違ってきていることもまた事実です。だから、そこにおいて株価の乱高下があることは、私は百も二百も承知しています。そして株価は常に何らかの条件で乱高下することはあり得るし、最近のように不況下になれば足を引っ張られていくということは当然あり得ることだと思うのであります。素人ではございますが、株価の変動が常に予測しがたいものであるという理解はあります。私は、それを前提にして、これから質問をしたいと思っておるわけです。  しかし、いろいろな情勢だとかあるいはそれなりの背景と理由があったといたしましても、最近の時価発行増資の公募後の状況は、その落差が大き過ぎるというのが私の指摘であります。当然、この公募に応じたお客は相当の損失を受けたに違いない。こういう傾向をそのまま行政当局は放置していいのかどうか。いま局長からはお答えがありまして、証券会社その他に対して注意、指導したと言われましたが、具体的にそんなことをおやりになったかどうか、それを私は聞きたいと思うのです。
  236. 禿河徹映

    禿河政府委員 私ども行政当局の立場といたしましては、たとえばある特定の企業の株価水準がこういう水準であるから高過ぎるからどうかとかいうことは大変申し上げにくい点でございます。それで、時価発行増資が行われます場合には、その際に有価証券届出書というものが提出されますが、その中の財務諸表につきましては、当然のことながら公認会計士が十分監査をいたすわけでございます。私どもにおきましても、その公認会計士の監査が十分に行われたかどうかとかいうふうなことをチェックいたしますと同時に、財務諸表の審査によりまして、不正な経理がないようにやっていくとかいうことをいたしておるわけでございます。と同時に、時価発行増資銘柄につきましては、不公正な株価形成と目されるようなものが見られないかどうかということも、十分実は監視いたしておるようなわけでございます。  そういうふうな個別のこともいたしますけれども、何と申しましても、株価というものは動くものでございますから、ある面ではやむを得ない面はございますけれども、お話がございましたとおり、時価発行増資してすぐに大幅な公募価格割れとなることは、それは証券市場に対します信頼の面からもあるいは投資家の保護という観点からも好ましくないことであることは当然でございまして、私どもといたしましては、時価発行増資を行うに当たりましては、その公正な株価形成というものを確認すると同時に、その株価水準についてアンダーライターとしても十分配慮して、これなら将来に向けても何とか株主の期待にこたえられる、こういうふうなことをよく考えていくようにとか、あるいは増資のタイミングあるいは増資の金額というものにつきましても、アンダーライターとしての責務を十分果たすようにということを指導してきたわけでございます。  証券界におきましても、いろいろ時価発行増資についての自主ルールというものを定めまして、その発行の基準とかあるいは利益還元のルールとかいうものを定めておりますが、さらに五十五年の五月には、公募価格割れ銘柄の次回増資には慎重に対処するということも申し合わせております。その実際の運用に当たりましては、公募価格割れになっております銘柄で、前回の時価発行から二年を経過していないものにつきましては、次の公募増資の引き受けには応じない、こういう実行もいたしておる。そういうふうないろいろのことを組み合わせて、この時価発行増資というものが健全に定着するようにということで努力してまいっておるところでございます。
  237. 平林剛

    ○平林委員 私は、いまのような御説は当然大蔵省としてお持ちになっていただかなければならぬことだと思う。  私の言いたいのは、指導してきたと言うけれども、具体的にどんな行動を起こしましたかということを言っているわけだ。確かに、時価発行の増資については、昭和五十一年当時も問題がありまして、お答えの中にありましたように、株式引受部長会というのが証券会社の中にあって、そこで時価発行増資に関する考え方をまとめられたことは承知しています。健全な資本市場の育成と投資家保護のためにということで、それをまとめられたことは知っています。たとえば、発行基準はどうするとか、あるいは資金使途の確認はどういうふうにするとか、公募の株数はどの程度にするとか、株主への利益配分のルールというような件についてまとめられたのでございますが、しかし、これは業界の自主的なルールなんです。これが一体本当に守られているかどうかというのは、また別な問題です。  また大蔵省としても、最近の傾向に対して、私は、口でいろいろ注意をするというだけでなくて、具体的な行動を何らか起こしましたかと聞いているわけです。たとえば昭和四十九年の十二月ころ大蔵省の証券局長名義で、証券会社の過当な勧誘や過当競争などの営業姿勢に対しまして投資家本位の営業姿勢を徹底するように、こういう文書を出しているのですね。当時の状態から見て、当然大蔵省はこういう措置をとって、各地方の財務局長に対していろいろ注意を徹底するという具体的措置をとりまして、その効果を果たす努力をされた。  私は、今日のこの傾向を見ますと、五十五年、五十六年で終わらぬ、五十七年も相当数ある、そういうときに、いまお話しになった程度のことでいいのでしょうかということを問うておるわけですね。いつおやりになったか、どういうことでやったか、絶えず指導してきたとおっしゃいますが、そういう個別の指導でなくて、やはり先回行われたと同じようなものをやるべき情勢ではないでしょうかと伺っておるわけです。
  238. 禿河徹映

    禿河政府委員 昨年の四月からこの二月までに時価発行増資を行った二百二銘柄のうち、五二%がこの三月十九日現在で公募価格割れになっておる実態、私どもも大変残念に思っておりますが、実は三月十九日の株価水準といいますのはダウで七千六十五、こういう水準でございまして、昨年の四月からこの二月までの月間の株価水準をダウで申しますと、一番低いところで昨年の十月の七千三百七十四、それ以外は大体七千五百から七千八百、こういうふうな水準でございまして、全般の株価水準が三月十九日に比較いたしますと、それぞれの月が七、八%から一〇%くらい下がっておる、こういう事実がございます。中には、もちろん先ほど資料でお示しがございました大幅に下がっておるというものもございますが、全般に株価水準が下がっておる。その中で半分ちょっとのものが公募価格割れになっておる、こういう実態でございます。  それで四十九年当時は、実は時価発行増資を行って一年未満あるいは一年ちょっとで倒産をしてしまう、こういう大変遺憾な事態が起こったわけでございます。それに対しましては、企業の粉飾決算の問題も絡みまして、それに対する措置もとりましたり、あるいは企業におきまして株価操作を行っておったものがございます。それに関与しました証券会社に対しましては、営業停止とかいうふうな行政処分をとったこともございますが、四十九年のそういうきわめて異例な粉飾決算とかあるいは株価操作とか、そういう事態の当時といまとが全く同じようなことであるかどうかということになりますと、やはりかなり違う面はあるだろう、こういう感じがいたしております。  それで、証券会社に対するそういう指導がもうちょっと、個別の注意とかいうことだけでなしに、大きく何かやるべきではないかという御指摘でございますが、四十九年当時のそういう事情を踏まえまして、各証券会社におきましても、その辺のところは十分考えてきておるのではなかろうかと考えております。ただ、決して十分とは申し上げにくいわけでございますけれども、かなり徹底はしつつある、かような状態ではないかと思っております。  ただ、私ども、時価発行増資というものがこれだけ大規模に行われてくるようになりまして、いまのままの増資のルールでいいのかどうか、やはり見面すべきときではないだろうか、こういう気もいたしまして、この三月から証券取引審議会を開きまして、個人株主問題を中心とした株式市場の問題を取り上げて御審議いただこう、かように考えております。その中で、こういう増資のあり方、特に時価発行増資の現在のあり方がいいのかどうか、これを再検討をお願いしたい、かように考えておるわけでございます。そして適正な、改善すべき事項は改善を図っていく、こういうことで今後取り組んでいきたい、かように考えております。
  239. 平林剛

    ○平林委員 局長のお話を聞いていると、公募割れをしたのは、私が冒頭指摘した六〇%ではなくて五二%だ、こう言っておる。事態の認識についてかなり大きなずれがあると思う。公募価格で発行して、公募価格を定めて、それが維持されるというのはあたりまえなんですよ、特別な条件がない限りは。それがあなたの説では五二%、私は六〇%と言いましたが、五二%だ。維持されているのはあたりまえなんですよ。それは二百社を超える法人会社の中には、数社において公募価格より上回ったのはありますよ。でも大多数は公募価格を維持しているかあるいは下落しているものが五〇%以上ある。この認識なんですよ。あなたは五二%だ、半分ぐらいは特別に問題がないかのごとき印象を与えるように言っていますが、その認識のずれがあるんですよ。私はその点を指摘しておきたいと思う。  最近、こういう状況について評論する人たちは、非常に厳しい意見があるのです。これは私の意見だけではなくて、その人の声などを私読んでみまして、なるほどそういう一面もあるなと思いましたので、ちょっと紹介をしますと、公募増資はありていに言って企業犯罪の最たるものであるという認識なんです。俗に言えば、ぬれ手にアワのつかみ取り、公募値が三百円で一千万株増資をすれば三十億円、これを価格操作をして五百円にすれば五十億円の資金が転がり込んでくる、非常に端的な表現ですな。一流企業でもない企業が五十億円の純利益を捻出しようとすれば大変な苦労と努力が要る。しかし、公募増資では比較的簡単に捻出できる。株価の水準を高くするという苦労は要るが、幹事証券会社と共謀すればその苦労も要らない。一株の利益を激増させるには純利益を激増させねばならないが、その激増利益は端的に言って粉飾利益のことが多い。だから、株価を暴騰させて公募で増資をする。これは極端な見方かもしれませんよ。しかし、痛烈にして、ある意味ではこの傾向に対する警鐘を鳴らしておる批判だなと私は感じたわけでございます。  まあ最近の時価発行増資の傾向が多いのは、先ほど私が申し上げた昨年の経済情勢、それから商法改正というような影響があって、監査が厳しくなるその前に駆け込んで公募増資しようという考え方もあるんじゃないか、こういう観測もございますが、私は、この痛烈な批判を聞きまして、四十九年当時とは違った感じでございますなんて言っていられるかということを聞いているのです。大蔵大臣、どうですか。私は、その感じをいまの局長の質疑応答の中で、かなり私との受け取り方のギャップがございますので、そんなふうに言っていられますかということを聞いている。そんな粉飾決算とかそういうものがないと言い切れますか。
  240. 禿河徹映

    禿河政府委員 私の申し上げ方が悪かったせいか、基本的認識におきまして、私も先生の御意見と異なる点はない、大変残念な事態だとそれは考えているわけでございます。  ただ、公募価格割れと申しましても、株価全体の水準が下がるというふうな事態で、避けられない面もありますし、それからまた、その増資の資金で設備投資等行って、それが収益に結びつくのには若干の時間がかかることもありますので、ちょっと申し上げたわけでございます。  ただ、基本的に、やはり時価発行増資で大黄の資金を企業が調達して、これをコストのかからないあるいは低い資金と考えることは、私ももってのほかだと思います。ですからこそ、そういう資金の調達を行う場合には、一応発行基準というものを定めて、その基準に該当するものでなければいけないとか、それからまた、資金を調達した場合には、その後の決算におきましてできるだけ株主に還元をするようにと、こういうルールを定めておるわけでございます。ただ、このルールにつきまして、それで果たして十分かどうかというのを私どももやはりもう一回この時点で見直すべき時期であろう、かように考えまして、証取審におきましてその点の御審議をお願いいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  241. 平林剛

    ○平林委員 大蔵大臣、この時価発行の株が、増資が終わると途端に下がってしまう。景気が悪いときには足を引っ張られるということもあり得ると思いますけれども、しかし、去年の九月を境にしたその後で発行された公募価格がずっと下がっているところを見ますと、何か少し安易にこういう傾向がふえているし、この状態は異常としか思われない。恐らく大蔵大臣もそういうお考えがあるのじゃないかと思うのです。いま質疑応答をしてまいりましたけれども、こういう現象があらわれてくることは好ましいと思ってないと思いますけれども、もし私と同じような考えがあるならぱ、こうした事態についてどう対処すべきかということを、先ほど審議会と言いましたけれども、大臣自身も関係当局と連絡をとって、何らかの措置、こうしたことが乱用されないようなルールづくりということに乗り出す気持ちはございませんか。
  242. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 証券局は証券協会ではないわけですから、それは厳正にしてもらわなければ困る。しかしながら、いま局長が言ったように、当時、一年前の株価水準全体が下がって、そしてこれもそれにつられて大体同じような傾向を示している。増資をした会社を除いたその他の会社の平均の水準と、増資をした会社の下がり方とどれぐらいの違いがあるか、一つ参考になるでしょう。全体の水準は、そんな三分の一なんということになっているはずはないわけでして、七千円ちょっとのところだから……(平林委員「なっている」と呼ぶ)いや、全体の水準はなっていませんよ。ところが、この株、あなたの出した資料の中では、三分の一以下というのも出ている。そういうのが、どうして株価をそういうふうに増資の前後でできたのか。長くいい株価だったのだけれども、何かでまずくなったのか、ここ一年ぐらいのうちにそれだけがうんと高くなって、終わったところが、その会社だけがどんと下がっちゃったのか。仮にそうだとすれば、これはいろいろあるかもわからない。したがって、そういうような中身については、むしろ個別案件的なものもあるし、超一流企業もこの中にはあるわけですね。こういうようなものはどうしたのか、かなり大きな規模のものをそんなに簡単に操作できないし。ですから、一概には言えないと私は思いますが、国会でも終わって時間ができたら、一瓶よく調べてみたいと思っております。
  243. 平林剛

    ○平林委員 私、この世の中というのは、人間でも企業でもなるべく楽して金を取りたいという気持ちは人情の常だと思うのですね。苦労するより楽して金を取った方がいいに決まっているのですよ。これは法人会社に限らず、個人だってやはりそれは人情だと思う。ただ、こういう風潮というのは正常じゃないと私は思っているのです。そこが大事なんですよ。この経済社会においても、幾らそれが人間の本能であり人情だといたしましても、その考え方は正しくないと思っております。額に汗流して、そして正常な道を歩いて蓄積をし、利潤を得ていくという態度がやはり健全だと思うのですね。この株式市場だって、競馬や競輪じゃないんだから、公募増資によって楽して資金を集めるなんという考え方に立つのはもう邪道ですよ。私は、その風潮に対して警鐘を発しているわけです。  そこで、五十五年、五十六年度の時価発行による公募額は、先ほどのお話しのように五十六年で  一兆二千七百九十九億円でしたかな、いいですね。この金額がとにかく発行会社の資金としてかき集められたことは事実なんだ。そこで、この公募金額の総額に対して、その発行会社の純利益は総額においてどうなっているかというのが問題なんです。この数字を私、必ずしも正確じゃないかもしれませんけれども、その発行会社の純利益というものは公募額よりもはるかに下回っているんじゃないのか。一説には、公募金額の総額、それは純利益総額の一五%、二〇%も上回っているというような説もあるのでありますが、実際は純利益を大幅に上回る公募額になっているんじゃないでしょうか。こういうようなことを検討なさったことございますか。
  244. 禿河徹映

    禿河政府委員 いま先生のお話がありましたような計数の把握はちょっと私どももいたしておりませんが、現在の時価発行増資の場合の発行基準はその企業の一株当たりの、たとえば配当金が五円以上だとかそれから経常利益が十円以上であることとか、そういうことにいたしておるわけでございますが、現在の基準を私ども見直す場合に、いまお話がありましたような観点もあわせてひとつ検討してみることもあり得るのではないかなという感じが現時点でいたしております。
  245. 平林剛

    ○平林委員 いまのお答えは正解だと私は思うのです。正しい点をつかんでおると思う。  ある資料によりますと、二部上場の公募会社七十九社の公募額が千五百九十七億円だ。いいですか。これに対する同じ会社の純利益額の総額は六百七十一億円だ。そうなると、公募額は純利益の二・三八倍になっている。五十五年、五十六年の公募会社の中には、公募額が純利益の六倍の企業が四社ある。余り汗を流すよりは公募でもってお金を集めた方がいいというようなことがこの中にあらわれている。六倍ですよ。私のまとめた先ほどの資料の中でも、たとえばアルプス電気がその例です。公募価格が千八五六十五円で公募額は百四十九億円ですが、この会社の五十五年の純利益は二十三億七千七百万円です。五十六年は三十六億一千八百万円であります。今度の場合でも、この会社は権利落ちでばたんと落ちたわけじゃないですね。つまり、こんなに純利益と公募額の開きが大きいのです。純利益の九倍だというものは二社あるわけです。アイワとか東邦チタニウムなどはその例だという話ですね。十一倍になっているものも一社ある。これは私は確認してないのですが、実に純利益の二十八倍だというものが一社あるのです。私は、純利益に対して公募額がこのような倍数になっているということはどこかに問題があると思うのです。冒頭申し上げました社会の風潮かもしれませんけれども、どこかに問題がある。いまそういうことも見直すのは必要じゃないかというお話がございましたから、私は正解だと言っている。  そこで、どうでしょうか、公募額というものは純利益のどの程度が適正と言えるでしょうか。ある説には、五〇%ぐらいがいいのじゃないのかとかなんとかいう意見もございます。これはいろいろの条件等によって違うと思いますけれども、適正基準というものがあるのでしょうか。皆さんが専門的に御検討なさっておる場合で、こんなところが適正じゃないかなと御判断なさるような基準がございますか。
  246. 禿河徹映

    禿河政府委員 私ども、時価発行増資の発行基準を見直すに当たりましては、どういう観点から、またどういう基準が導入できるのかというふうなことを実はこれから検討いたしたいと思っております。いま具体的にお話がございました何%が妥当かということにつきましては、まだその考え方はまとまっておりませんが、時価発行増資を行うに当たりましてのその時点におきますところの株主資本に対します利益率とか、さらに将来の見込み額、その辺がどういうふうに動くであろうかという見込みの数字とかいうふうなものも勘案いたしながら、何か適切な基準というものを設けてそれが導入できないかということも見直しをする場合の一つの考えとして検討いたしたい、かように考えております。
  247. 平林剛

    ○平林委員 そろそろこの問題のまとめに入りたいと思いますが、資本金三百億円以上の企業でありましても、純利益を五十億円とするのはなかなか至難のわざだと言われておるわけでございます。しかし、株価を暴騰させて五百円で一千万株を公募すれば簡単に五十億が手に入る。五十五年、五十六年、公募増資がふえておるのは、それなりの理由があり、すべてが批判される増資だと私は言っておるのじゃございません。しかし、五十七年度もこのような傾向が続くのではないかと考えまして、ただいまのような問題を提起したわけであります。  しかも、古い話ですが、株式引受部長会で業界が自主的に決めたルールを見ましても、どうも資金使途等の確認についてもどれだけ社会的責任を感じておるのかという点は、私は何度も読み返してみたけれども、あいまいなんです。公募による資金が、株主の利益配分がどうなっているかという点につきましても、配当性向の水準を公約し、その基準で利益の配分を行うこととありますけれども、「利益配分の実施状況につき特段の配慮を払うこと。」ということが書いてある程度なんですね。また、公約配当性向の維持の判断にしてもかなり甘いように思います。増資プレミアムを基準とする利益配分にいたしましても、「増資後二年以内に増資プレミアムの一五%以上を還元する」というような程度にしかなっていないのです。  そこで私は、今度は主税局、大蔵大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、増資によって得られた資金が、あるときは借入金の返済であったり、あるときは設備投資であったり、または投融資等の資金調達計画であったりすれば、その使途によっては現行税制の租税特別措置の恩典を使うことができるわけですね。たとえばそれが設備投資であった場合、機械の償却その他いろいろな意味の恩典を受けることができるわけですね。  しかし、財政再建ということで五十八年度の予算の編成などを行う場合に大蔵省もいろいろと苦心なさっておると思うのでありますけれども、そのために言うだけではありませんよ、そのためだけではありませんが、時価発行増資による資金調達分につきましては、たとえば集めた資金を留保して運用するというようなことが私は相当あると思うのです。理屈を言えば、いやそれは公募したお金は株主が承知してあれしたんだから、どう使おうと株主の自由なんだ、株主総会でそういうふうに決めれば文句は言わせない、こういう式の考え方は私はあると思います。しかし、こういうやり方で国民は、無制限にここに得たプレミアムを非課税にしておくというのにつきましては、おかしいのじゃないかという議論は当然巻き起こってくると思うのです。  そこで、私は、本日時価発行による公募の現況について指摘をいたしましたが、そういう事情もよく考えて、ある程度こうしたものに対して課税をするということを考えてもいいのじゃないのかと思うのであります。私は、決して法律上の理屈を言っているのじゃありません。きょう指摘しましたような現状等考えてみたり、あるいはその他もろもろのわが国財政の置かれている立場を考えてみたり、提唱的に私は申し上げましたけれども、そういう風潮を少しでも正し、ともに痛みを分かつためにも、こういう点について検討していいのじゃないかと思うのでありまして、私は、これは政治的な提言であります。大蔵大臣のお考えを聞きたいと思います。
  248. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 原則的に言えば、プレミアムは課税しない。世界もそうなっている、会計学上もそうじゃないかという理屈が一つございます。ございますが、現実にそれが株主に無償交付その他で割り当てられないで現金で、これは現金で入ってくるわけですから、現金で入ってきたものは株主には還元されない。極端なことを言えば重役報酬ばかりうんと上げちゃって、従業員ばかり上げちゃって、金の方は全部分けて使ってしまったけれども、積立金だけ残っているというようなことだってあるわけです、それは乱用すれば。まして、五〇%の資本組み入れを要求されたということの前に、じゃみんなでどんどん時価発行をやっちゃって、株主と余り縁のないようにして使っちゃおうかというような傾向があるのかどうなのか。駆け込み増資が九月になってどっと来ているというから、そういう傾向があるいはあるのかもわからない。  いずれにしても、同族会社は配当しないでおくと留保金課税をかけられておるわけですから、非同族なるがゆえにそれは株主本位にやられているという前提に立つから、そういうふうなものについては課税もされてないし、配当軽課も行われる。いろいろな恩典があるわけなので、その裏をかいて、別にいつまでもその金が自由に無税で利息もかからないで動き回っているということになりますと、これはもう別な問題。それならば一%くらいのものを、年々利息で張りつげたって七%ぐらいの金が入ってくるわけだから、一%ぐらいは納めてもらったっていいのじゃないかとか、いろいろそういう議論もございます。したがって、この問題は非常に専門的な問題を含んでおりますから、専門家の間で十分に検討をしてもらいたい、私も検討してみたいと思っております。
  249. 平林剛

    ○平林委員 それでは、次の問題に移る前に、ちょっと公共事業の問題について伺っておきたいと思うのです。  一般会計の公共事業費など政府の予算委員会に提出した資料を見ますと、ことしの公共事業の総額は幾らになっていますか。私は五十六年度の資料しか持っていないのでありますが、一般会計、特別会計、政府関係機関、公団及び事業団の五十七年度の公共事業の総額は幾らになっていましょうか。五十六年度は十四兆四千二百六十七億円、ことしの予算を見るとかなりふやしてあるわけでありますが、総額幾らになっておりますか。
  250. 西垣昭

    ○西垣政府委員 いま読み上げられました十四兆幾らという金額は、公共事業執行の対象経費だと思います。その額につきましては、繰越額が決定しませんと五十七年度の額がわかりません。もうちょっと時間をかけないとわからないというのがいまの段階でございます。
  251. 平林剛

    ○平林委員 それじゃ、私の調べたのは一般会計予算の五十七年度の公共事業でありますが、治水治山、海岸、道路、港湾、漁港、空港、住宅、下水道、廃棄物、都市公園、土地改良、沿岸漁場整備、交通安全、全部で九兆八千七百九十一億円、こういう数字になっておるわけであります。  政府の最近の動きを見ると、景気がもう沈み込んでしまっているから、これから少し公共事業もふやして勢いをつけないとなかなかこれからの景気はうまくいかない。さしずめ、ことしの予算の公共事業の金は前倒しをしてしまうと、第三、第四・四半期になるとゼロになってくるから、ゼロにはならないが足りなくなってくるから、この秋にはさらに補正を組んで公共事業を興さなければいけない、こういうことになっておりますが、ついこの間までは私は、年間九兆八千七百九十一億円もあるいは十兆円もするようなところから一兆円や二兆円節約できないものか、不急不要な公共事業なんというものは少し考えて、こういうところから財源が捻出できないものかというようなことを指摘したことがございました。いまその反対の方向にいかんとしておるのでございますから、少しタイミングが合わないかもしれませんが、大蔵大臣、あなたにこの間私は注文を出しておいた。  つまり、国の歳出のかなりの部分を占める公共事業費のうち、何も橋や道路やその他の施設をつくるのに国の銭を使うばかりが能じゃないじゃないか。国の銭を使うからうんと巨額になって、そしてそのほかの財源が足りなくて、あっちも削りこっちも削るということになる。また、景気を回復するんだといって公共事業をふやせば、なお苦しくなる。そんなことだけではなくて、もう少し民間の資金を活用するようなことは考えられないものか。ある意味では、民間の企業が手を出すことによってそれを企業化することもできるんだから、国民の税金を使うだけではなくて、ひとつそういうような方向を考えてみたらどうでしょうかということを提言してみたことがありますね。  大蔵大臣は、なるほどちょっとおもしろいな、おれも研究してみるよ、こう言われまして、あれから二月ばかりたちますか、何か誠意を持って研究をされて、結論を出したようなことがあるかどうか、ひとつお伺いしたい。
  252. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 研究はしたいと思っておりますが、毎日ここで答弁ばかりしておるものですから、その暇がございません。
  253. 平林剛

    ○平林委員 あのときの話はあなたと私の二人だけの話だったから、この問題について検討する時間がないというのはお察しできます。でも、改めて私はこの問題を提起しますが、いかがでございましょう、こういう考え方で見直してみる気持ちはございますか。
  254. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 何かそういうのがあれば知恵を授けてもらって、私も、こういう御時世ですから、積極的に乗りたいと思っております。  宅地造成なんというのはそのいい例でしょうけれども、何かそういうようなもので半公共的なもので民間にやらして、民間はペイする、ペイするやつしかやりませんから、いずれにしたって。ですから、そういうものがあれば、ひとつ皆さんからもお知恵を拝借して、そういう部分も取り入れていくことは非常に重要だ、そう思っております。
  255. 平林剛

    ○平林委員 そこで、これはきょう私、ほかの問題がありますから深くは申し上げないで、改めて提案をしたいと思っています。  いま私、引用いたしましたが、ことしの景気の回復という意味で公共事業をふやさなければいかぬ、そういうことで、五十七年度の予算で決まったものでは足りない、それを前倒しで七七%か七八%使うてしまうと、あとなくなってくるわけだから、後半期に息切れしちゃう。何とかせねばいかぬというので、公共事業をふやしたらどうかということが伝えられておりまして、政府の中でも検討中という話も聞いておるわけでございますけれども、さようでございますか。  その公共事業といってもいろいろありましてね、どういうところに重点を置くべきだという考えがなければ、ただ公共事業をふやしたら景気が回復するというものではないと私は思う。現在不況に陥ったのは、公共事業費が少しずつゼロシーリングか何かで削られたからそうなったというのなら話は別でありますけれども、そうでないというと、ただふやしたら何とかなるという性質のものではないのじゃないのか。同じお金を使うならば、後年にわたって効果的なものを使う。余り当てにもならないようなもので金をばらまいたって、効果があるとは私は思えない。おやりになるならば、国民経済から見ても、はあ、なるほど一石二鳥だというようなことに金を使って景気回復の一助にするということが必要なんじゃないのか。そういう点については、どう考えますか。
  256. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 現在、低成長と言われておるのですが、第一次石油ショックのときも大体二年ぐらい低成長なんです。今回は、これは二年になるのか、三年ぐらいで済むのか、大きな世界的な流れで見るとそういうようになって、日本もそのとおりであります。ですから、私は、こういうことはいつまでも続くまいと思っておるのですが、問題は、その間息切れをしたのでは困る。世界的にもことしの後半からと、こう言っておりますから、一年ぐらいおくれるかもしれませんよ、来年ぐらいになるかもわからない。したがって、そのつなぎにやるわけですから、仮にやる場合には、即効性のあるものでなければならない。即効性ということを考えると、重税感という問題と景気対策としての減税という問題とは別な問題、景気対策としては、それは公共事業の方が二倍以上の効果があるというのは、これも通説であります。したがって、どっちがいいかということはまだ決まっておりませんから、何とも申し上げられませんが、一般論を言えばそういうことになります。
  257. 平林剛

    ○平林委員 本題の方について少しお尋ねをいたしまして、質問を終わりたいと思いますが、きょう最後に私が取り上げたいのは、国債の個人消化の促進という問題であります。  お断りしておきますけれども、私は、政府の国債発行政策、特に国債依存の財政借金財政に対しましては終始批判的立場を貫いてきたということを申し上げておきたいと思います。それはいまも変わりありません。国債の個人消化の問題を取り上げようといたしましたのは、決して政府の国債政策を認めてそれを促進しようじゃないかということで申し上げようと思っているわけではありませんで、この点はひとつ誤解のないようにお願いしておきます。  ただ問題は、一般会計の四十九兆六千八百八億円のうち、国債の発行額は十兆四千四百億円でありまして、赤字国債もかなりの部分を占めておるわけであります。総理や大蔵大臣も、特例公債からの脱却というのが財政再建の中核であり、五十九年赤字国債をゼロにするということを目標にして政治生命をかけるとおっしゃっておるわけでありますが、五十七年度の国債残高は約九十三兆円になる。その九十三兆円の約四〇%が赤字国債ということになるわけで、残高はまだまだふえるのじゃないのか。ことし特例法律が出ましたが、来年も恐らく出てこざるを得ないだろうと思いますし、その次はないということになっていますから、恐らくラストチャンスだろうと思いますけれども、しかし、五十九年に赤字国債が仮にゼロになったといたしましても、建設国債は続けられるわけですね。  私は、赤字国債発行がゼロになれば財政再建は完了して、財政が健全化になったとは思っていないのです。ただ、幾ら今日までの国債発行政策が間違っていると声を高くして非難をしてみましても、これはもう、あるものはあるのですね。財政法違反だ、こういうふうに改めて開き直ってみましても、やはり国債は残るわけです。国民承知しない借金を、たった三カ条か四カ条の法律でもって一遍に借金できるのは、さっきの公募増資よりもっとひどいものなのでありまして、私が幾ら怒ってみても、現状はこれしかないかなという点は考えないわけにはいかないのですね。幾らけしからぬと言っても残るわけだ。本当だったら、もう内閣の二つや三つかわっているはずなんだけれども、自由民主党の政権というのは強いですね。こんなに借金をたくさん抱えても、内閣もちっともかわらないで継承されていくのですから、まことに偉大なもので、私は、鈴木さんのいすに対しまして心から敬意を表したいと思う。  だから、ここ当分、国債との悪縁は切れそうにもないのだから、私は仕方ないから、せめて国債政策のはらんでいるところの財政の不健全さ、あるいは膨大な国債累積のもたらすインフレ要因の潜在的脅威を、ここにも潜在的脅威があるのですけれども、それを薄めるということを考えなきゃなるまい。だから、大蔵省がこれを持ったり、日本銀行が保有したり金融機関が持っていたりするよりは、むしろ個人が国債を持ってもらうというようなことを促進するのはやむを得ない措置として当面の緊急対策じゃなかろうか、そんな気持ちで実は個人消化の問題を取り上げたわけでございます。  それで、最近は個人消化も大分ふえてきたのでありますけれども、最近の傾向をちょっと御説明いただきたいと思います。
  258. 吉本宏

    吉本(宏)政府委員 お答えいたします。  大量国債を発行しているわけでございまして、その円滑な消化を図るために個人消化を促進していきたいというのは私どものかねての重点項目でございまして、昭和五十六年度の証券会社の取扱額はすべて個人消化というわけではございませんけれども、証券会社が引き受けまして、個人を中心として売りさばいているわけでございます。  この五十六年度の額が三兆六千三日八十一億円ということになっておりまして、国債の発行総額の二七・二%ということになっているわけでございます。国債の大量発行を始めました昭和五十年度を見ますと、この額が三千五十七億円、発行額の五・七%ということになっておりますので、五、六年の間にちょうど十倍以上になった、こういうことでございます。  ところで、国債の発行の態様といたしまして、御案内のように長期の十年債がございます。このほかに、割引国債とかあるいは中期国債ということでやっているわけでございますが、特に中期国債などは最近は個人を中心にして販売されておりまして、安定的な消化が図られておるということでございます。割引国債も大部分は個人でございます。長期国債については個人のほかに事業法人等にも持たれておりますけれども、全体として見てかなり個人消化は進められているというふうに私ども理解しておるわけでございます。  さらに、御案内のように来年の四月からは、証券会社だけでなしに金融機関の窓口でも国債が販売される。金融機関の店舗の数は約一万七千軒ばかりございます。証券会社の店舗は二千軒でございますから、窓口がかなり広がる。そういった意味で国債が今後個人の有力な投資物件として取り扱われてくるのではないか、このように考えているわけでございます。
  259. 平林剛

    ○平林委員 私は、国債の管理政策とか国債の問題を聞くたびにいつも納得できないのは、国債の市中消化という番葉ですよ。市中消化というけれども、実際は金融機関引き受けのことが多いのでありまして、あれを市中消化、市中消化というのはやめてもらえませんか。あれは金融機関引き受けというふうに変えてもらいたいと思うのですよ。何か市中消化だと国債の保有状況が健全なような印象をもたらすのですが、あれは金融機関保有ですよ。  それから、いま個人消化と言われまして、今度は個人消化というと何か一般のそこらのサラリーマンもみんな個人が株を持って、それが二七幾らになっておるような印象を受けますけれども、この個人消化という言葉もずいぶんあやふやだ。証券会社引受額ですよ。ですが、証券会社が引き受けて本当の個人に行ったのか法人会社に行ったのか、あるいは外国人が持っているのかわからないですよ。こういうような区分はないのですか。個人済化等と書いてあるから、等の中に入っているのだろうと思うけれども、こんなあやふやな言葉も今度は政府の資料をつくるときはやめてもらいたいのだ。どうなんですか、内訳はどんなぐあいになっておりますか。
  260. 吉本宏

    吉本(宏)政府委員 お答えいたします。  まず最初に、市中消化というのはおかしいじゃないかというお話でございますが、これは財政法五条に「公債発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」いわゆる日銀引き受けの禁止の規定がございます。これに対して、日銀の引き受けはしない、市中で消化をいたしますというのが市中消化の原則でございまして、これは金融機関であろうと個人であろうと、あるいは事業法人であろうと、すべて日銀の引き受けでなければ市中消化というふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、国債の個人等というカテゴリーの中にいろいろなものが入っているじゃないか、事業法人とかあるいはその他のものが入っているではないか、これはそのとおりでございます。たとえば五十六年十二月末の数字を見ますと、個人等という欄の中に三十二兆円ばかりの国債があるわけであります。昨年の十二月末、全体で大体八十兆円の国債が出ておりまして、そのうち個人等としまして三十二兆円という欄がございます。これは確かに、法人あるいは政府機関その他外国人、こういったものにまって保有されている分がかなりございます。  純粋の個人はどのぐらいあるのかということでございますけれども、これは、正確な数字は実は私どももわからないわけでございます。ただ、これは推定でございますけれども、国債には登録債と本券、現物で出ておるものとがございます。本券と申しますか現物で出ている国債が大体十五兆円ある。そのうち大体十兆円ぐらいは個人の保有というふうに考えていいんじゃないかと思うわけであります。たとえば、一番端的な例が特別マル優という制度があります。特別マル優で証券会社に保護預かりされておるのが七兆円ございまして、そのほか割引国債とか課税されて持っておる分、こういったものを全部ひっくるめまして大体十兆円ぐらいというのが私どもの大まかな推定でございます。
  261. 平林剛

    ○平林委員 先ほどのような理由で、純粋なる個人が国債を消化してくれるようになれば、国債政策の持つ悪い面はかなり薄められる。そうかといって、余り政府に信用がないと昔のようなパアになっちゃう、国債がただみたいになっちゃうということの不安があるわけですから、そこの姿勢が一番大事なんでありますけれども、私は、さしあたりは個人消化という点をもっと重視をしていいんじゃないのか、こう思うのであります。  時間がありませんから、まとめて提案をしますが、さっき新自由クラブの方がやりましたようなやり方で全部三つ並べて言いますから、それを答えてもらいたいと思います。  私は、個人消化を促進するために政府自体も幾つかの方法を講ぜられたことは承知いたしておりますけれども、この際、三つばかり申し上げたい。  一つは、どうなんでしょうか、国債を今度は銀行の窓販もやるようになったんですけれども、やはり郵便局あたりで窓販をやらせたらどうなのか、こう思うのです。それは、もちろんいろいろ反対はありますよ。反対はあるかもしれませんけれども、その反対の人は、そのときどきの都合のいい理由をつげては反対するのですから、余り重視する必要はないと思うのですよ。銀行なんというのは、前には、これは割りが悪いからと言って、それで、御用金だ、だめだなんと言って、押しつけられるのは反対だと言われまして、そしていろんな交渉をやって、今度の一兆円ばかりをやるだけでも大分条件のことで苦労されているのを承知していますよ。そして今度は、金が余っているから国債で利回りが少しでもよければほかのものがやるのは反対だとやっているので、こんな勝手な理由なんというのに振り回される必要はない。  そういう意味では、これは郵便局なんかでやれば、いわゆるしょっちゅう投機の対象にしたり、売り買いをやったり、いや国債を買ったためにうんと損してしまったなんというようなことの文句を言ってくる人は少なくて、五年なら五年、十年なら十年しっかり持っていてくれて、お国のためだという人がかなりあると思う。それで郵便局の窓口なんというのを考えたらどうでしょうか。郵政省は、大蔵省が言ってくればいつでも引き受ける用意があります、こう言っているのですよ。どうでしょうかというのが一つ。  二つ目は、国債を担保にしていろいろなお金を借りられるようになりましたけれども、もっと庶民の人にこれが買ってもらえるような方法としては、たとえば税金を納めるときの対象にこの国債をやってもいいんじゃないか。われわれ政治家が選挙をやるときに供託金で使うことができるのですけれども、もっと幅を広げて、そうして国債で税金を納められる。いまの税法から言うと、たとえば農家、農家は相続税がばかっと取られるのですよ。中には何千万円と取られたり一億と取られる。これはいま土地が高くなったり、評価額が高いですから、したがって、農家はしようがないから生命保険を三億円ばかり掛けておいて、それでやるとかいうことを考えたりされるのですよ。だけれども、これは余りいい傾向じゃないと私は思うのでありまして、国債もいまのものはそういうのに使えないんだね。使えなくて、全然なければ国債もやるよぐらいな式のことはあるけれども、はなから国債も入れてあげるよというのはないのであります。だから、万一の場合には相続税は国債でやってもいいよ、ほかに田地田畑売り払わなくても、それを使ってもいいよというふうにして、こういうようなものに国債を活用できるというようにすれば、また少し違うのじゃないのかと、これでも大蔵大臣にかわっていろいろなことを考えてやっているのですよ。  それからもう一つ、第三番目の提案は、どうでしょうか、いま国債は三百万円までは非課税となっているが、この際五百万円というようなことにいたしまして、国債がふえてくるのに対して個人消化をふやすことによって安定度をつくるという意味では、考えていいことだと思っておるわけであります。ほかの非課税の問題は別にしてね。国債なんかについては五百万円までいいんじゃないかというような感じを持っていますが、これはいかがでしょうか。  以上三つ、これについてお答えをいただきたいと思います。
  262. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 第二点だけ、技術的な問題でお答えいたします。  税金を国債で納めるという考えが昔からあって、検討をずっとやっているわけですけれども、アメリカでもフラワーボンドというのをやって失敗したわけですね。結局、歳入のロスが生じたということなんです。それは額面と市場価格の差だったわけですね一ですから、結局額面で納めてくれという話なんです。そうすると、市場価格が下回っていますから、それで納めますから、今度は国がそれを処分しなければいけません。そうすると、マーケットプライス。それで、かき集めて納めてくれても、また売らなければなりませんし、また消却しようとすれば金が要るということで、結局差額だけ国損が生じたというようなことも経験でございまして、いろいろやはり考えてみて、非常にいいようではございますが、そういう問題があります。アメリカではその経験がありまして、フラワーボンドというのですが、いまやめることで経過措置だけ残っております。
  263. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一つは郵便局の窓販、これは郵便貯金が国債にかわっちゃうだけでは余り意味がないんですね。何か一工夫ひねってもらわぬと意味がないけれども。  それからその次は、国債、税金の問題はいまお話しがあったとおりです。  それから非課税枠の五百万円も、これは国債がだぶつくということになれば何か知恵は考えなければならない。いずれにしても個人に持ってもらう、十兆円しかない。個人の金融資産が三百二十八兆もあって十兆円ぐらいしかない。片方は九十兆も国債を発行しているということですから、完全に個人が持てば、しかも利息が安ければ、国債政策というのはもっと国民生活上利用の方法があるのではないか。利息が余り高いと、もう七兆八千億、六兆三千億もことし利払いするわけですから、利払いだけで。これは財政負担になる。何かそんな工夫があるかどうか、いいアイデアとしてテークノートいたしておきます。
  264. 平林剛

    ○平林委員 時間があればきょうあたりそれをやろうということになるのですが、残念ながら制限の時間が参りましたから、これをもちまして質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  265. 森喜朗

    森委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  266. 森喜朗

    森委員長 この際、本案に対し、小泉純一郎君外三名より修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。大原一三君。     ―――――――――――――  昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  267. 大原一三

    大原(一)委員 ただいま議題となりました昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案に対する修正案につきまして、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、この法律の施行期日は、原案では「昭和五十七年四月一日」と定められておりますが、すでにその期日を経過いたしておりますので、本修正案は、施行期日を「公布の日」に改めることとしようとするものであります。  何とぞ、御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  268. 森喜朗

    森委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  269. 森喜朗

    森委員長 これより、原案及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。中西啓介君。
  270. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 私は、自由民主党を代表し、昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案及び同法律案に対する修正案に賛成の意見を述べるものであります。  御承知のとおり、わが国財政は、わが国経済が第一次石油危機を克服し、安定成長への円滑な移行を達成し得た現在においても、なお、大量の公債発行に依存せざるを得ない状況にあります。  このような財政状況にかんがみれば、できるだけ早く財政公債依存体質からの脱却を図り、将来における高齢化の進展等による社会経済情勢の推移に弾力的に対応し得るよう財政の再建を進めていくことが、今日、最も緊急かつ重要な課題であることは言うまでもありません。  このような見地から、現在、政府は、国民の強い支持を得て、行財政改革による財政再建を強力に推進されているところであります。すなわち、昨年三月に設置された臨時行政調査会の答申を最大限に尊重するという基本方針のもとに、昨年十一月に成立したいわゆる行革関連特例法を初めとして、先般成立した昭和五十七年度予算も、このような行財政改革の基本路線に沿って、歳出削減を中心として編成されております。  まず、歳出面においては、いわゆるゼロシーリングに基づき経費の徹底した節減合理化が行われた結果、歳出規模は厳しく抑制され、歳出全体から国債費と地方交付税交付金を除いた一般歳出の伸び率は、対前年度比一・八%と昭和三十年度以来の低い水準にとどまっております。  また、歳入面においては、租税特別措置の見直し等、税及び税外収入の見直しにより増収が図られております。  このような歳出歳入両面にわたる見直しの結果、公債発行予定額は、五十六年度当初予算より一兆八千三百億円減額され、このうち、特例公債の減額は一兆五千六百十億円となっており、着実に財政再建の道のりを歩んできていると言えるのであります。  このような政府の着実な財政再建努力は、近年つとに高まってきた行財政の徹底した合理化、効率化による財政再建の推進という国民の要請にまさに合致するものでありまして、今後の長期にわたるわが国経済の安定的発展と国民生活の安定に大きく貢献するであろうことを私は確信するものであります。  しかしながら、このような政府の努力にもかかわらず、五十七年度においても引き続き特例公債発行によらざるを得ないこともまた厳然たる事実であります。昭和五十七年度予算の歳出の財源に充てるための特例公債発行予定額は三兆九千二百四十億円となっておりますが、これは、五十七年度の財政運営に必要な財源を確保し、もって国民生活と国民経済の安定に資するため、必要やむを得ないものであると考えます。  もちろん、特例公債発行はあくまでも特例的な措置であり、特例公債に依存する財政からできるだけ速やかに脱却すべきことは申すまでもありません。この点について、政府は、昭和五十九年度特例公債脱却を目指し、今後とも引き続き財政の再建に全力を傾注するとの強い決意を表明されておられますが、私は、これを高く評価し、全面的に支持するものであります。  なお、本法律案におきましては、特例公債発行額は予算で定める旨の規定その他所要の規定が設けられておりますが、これらの規定は、いずれも従来の特例公債法と同様の内容となっており、いずれも特例的な措置に対応した適切な規定であります。  また、修正案につきましては、本法律案の施行期日である四月一日はすでに経過しておりますので、これを公布の日から施行することに改めようとする修正は当然の措置と考えるものであります。  以上、私は、昭和五十七年度における特例公債発行が、必要欠くべからざるものであると考えますとともに、財政再建のために、政府国民のコンセンサスを得て今後一層努力されるよう切に希望いたしまして、本法律案及び同法律案に対する修正案の賛成討論を終わります。(拍手)
  271. 森喜朗

  272. 沢田広

    沢田委員 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となっております昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  反対の要旨を申し上げ、この重大な危機をもたらされました責任を追及するものであります。政府が速やかに反省すべき点を反省し、より衆知を集め、国民生活の安定、財政の健全化に努めるべきことを強く求めるものであります。  第一に、赤字公債の累積額は本年度末で九十三兆円にも達し、国民一世帯当たり三百五十万円もの借金を背負うこととなるものであります。しかも、償還のための国債額も約八兆円にも達し、差し引けば実効額はわずかに二兆円にしか効果を発生しないというものであります。まさに借金のための借金をするというサラ金地獄に落ち込むことになっているのであります。政治に携わる者として、じくじたるものがあると思います。この原因をつくった責任はきわめて重大であります。政治家は、将来の展望に立って選択、決断が求められ、その結果について責めを負わなければなりません。そのとった路線の誤りを厳しく指摘するものであります。  第二には、累積する赤字公債は景気の低迷、税収の欠損、実質所得の目減りに拍車をかけ、中期展望すら目安の目安と言わざるを得なくなり、五十八年、五十九年に対応する国民への指標は自壊し、五里霧中の中にあって、経済七カ年計画すら根本的に見直さざるを得ない事態を迎えるに至ったのであります。国民よどこへ行く、進む方向の明示のないまま、軍備拡張路線に狂奔するという危険な道を歩むことは許されないものであります。バターと大砲は両立しないものであります。平和こそ国民生活向上の大前提であることを忘れてはならないのであります。  第三の理由は、財政の硬直化が強まり、財政連帯がきわめて困難になることは必至であります。不要不急の歳出カットなしに対応できなくなっております。現在の公債比率は、一般歳入に対し二一%に下げたとはいいながら、アメリカの六・五、西ドイツの九・八、イギリスの一二・四%に比較し、財政的にも劣等生と言わざるを得ない状況にあります。麻薬に浸った体から脱することはきわめて困難が伴い、勇気が必要であることは当然であります。政府は、その決断もなく、国民への指標の明示もなく、不確実、不透明のまま惰性の中に過ごそうとしていることは許されないことであります。  第四の理由は、建設国債は社会資本の充実という目的もあり、六十年程度の耐用年数からいえば、一定の借りかえは許されることでありますが、限度もあり、国民のニーズもあり、適切な運営が必要であります。政府主導の景気対策から、比力の活用は政府公約の一つでありました。しかし、個人消費の伸び悩み、国民の可処分所得の減、設備投資の低迷、住宅建設の不振と、政府投資のみで今日の不況が脱却できるものでありません。  第五には、長年発行してきた赤字公債の償還期を迎えて、財政の圧迫は二重苦となって辿っております。このための要償還額も、六十年には九兆六千七百億円、六十五年には十七兆二千億円、六十九年度には十四兆二千七百億円となり、経済成長を六%ずつ見るとしても、これ自体がむずかしい問題でありますが、財政圧迫は危機的状況を迎えることが必至であります。これらの明らかな事態にも、何ら明確な解決策が明示されていないのであります。きわめて遺憾と言わざるを得ません。  第六には、公債発行は同氏に借金を負ってもらうものであります。市中金融の貸し出しを抑制する役割りも担うものであります。今日の保有の状況は、日銀九兆円、資金運用部約十二兆、市中金融機関二十二兆六千億、個人が二十七兆円となり、国瓦の貯蓄率に依存しているのが実態であります。幸い貯蓄率の高さがこの乱発公債を支えているのでありますが、インフレ的危機を伴う傾向が少しでも生まれれば、途端に市中金融の圧迫となり、倒産、失業のみならず、設備、住宅投資資金の圧迫にもなることは明らかであります。  以上、幾つかの理由を挙げましたが、財政的にきわめて危機憂慮すべき事態になっているこの責任はきわめて大であります。慢性、惰性、麻薬的症状から脱却することを強く警告し、反省を求めるものであります。このために、防衛費の削減、不要不急の過保護歳出を抑制することを主眼とし、機敏にして勇気のある措置を求めるとともに、国民負担の公平、生活水準の向上、特にバターと大砲は両立しない基本的な立場から、あくまでも平和国家としての立場を堅持するという選択政策の推進を図ることを提言し、反省を求めるとともに、反対の討論とするものであります。  以上であります。(拍手)
  273. 森喜朗

    森委員長 柴田弘君。
  274. 柴田弘

    ○柴田委員 私は、公明党・国民会議を代表しまして、ただいま議題となりました昭和五十七年度の公債発行に関する法律案について、反対の態度を明らかにし、討論を行うものであります。  われわれが反対する理由の第一でありますが、政府昭和五十六年度を財政再建元年とし、赤字国債発行を二兆円減額することを至上命題と掲げておりました。また、赤字国債減額を達成するために、所得税減税の見送りによる実質増税を初め、一兆四十億円規模の大増税、福祉の後退、公共料金の値上げなど国民に多大な負担を強いたことも事実であります。われわれは、五十六年度当初より政府財政の帳じり合わせのみを優先し、国民生活の向上や景気浮揚を軽視するならば、財政再建にとっても、角を矯めて牛を殺すことになりかねないことを指摘いたしました。特に、具体案としては所得税減税の実施を強く要求していたのであります。  しかし、政府は減税要求をかたくなに拒否し、五十六年度の経済財政運営を行った結果は、残念ながらわれわれの危倶が現実のものとなり、経済成長の著しい低下を初め、財政面においても、補正予算で三千七百五十億円の赤字国債の追加発行に至り、なお現状では、さらに二兆円を超える歳入欠陥すら懸念されることになりました。  こうした財政経済の憂うべき事態を招いた政府の責任はきわめて重大であり、公約違反とも言わざるを得ません。また、景気の停滞から国民生活を後退させたこともとうてい容認できるものではありません。  反対する理由の第二でありますが、当面する経済財政動向から考えるならば、単に財政再建のみを優先するのでなく、景気回復にも十分に配慮することが緊急の課題になっております。  昭和五十六年度の推移でも明らかなように、財政再建といっても景気動向を軽視すべきではありません。しかし、政府は昨年の十-十二月期の実質経済成長がマイナスに陥りながら、公共事業の前倒し実施を決めたのみで他に有効な対策を講じておりません。  特に、本来ならば多方面にわたる国民的要求でもあり、当初予算段階から実施すべきであった所得税減税がいまだに明確にされないことは遺憾であります。  また、政府が景気回復について有効な対策を明示しないことは、国民に景気の先行き不安を助長するばかりか、財政をさらに悪化させ、五十七年度における赤字国債の追加発行すら避けられなくするものであり、見過ごすことはできません。  最後に、われわれは、昭和五十年度以来赤字国債発行については、その前提として不公平税制の是正、行政改革の徹底、国債管理政策整備などを要求してまいりました。しかし、政府はこれらの諸施策を十分に措置したとは言えません。したがって、赤字国債発行の大前提である条件整備が不十分なままの本法案はとうてい認めがたいのであります。  以上をもちまして、反対討論を終わります。(拍手)
  275. 森喜朗

    森委員長 和田耕作君。
  276. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案に対し、反対の討論を行います。  本案では、五十七年度に三兆九千二百四十億円の赤字国債発行することとなっておりますが、これは二千六百九十億円の建設国債の減額をも含めてのことであって、政府の公約である赤字国債の一兆八千三百億円の減額が一兆五千六百億円程度にとどまったことはきわめて遺憾であります。  また、政府は五十九年度までに機械的に赤字国債から脱却することにこだわる余り、表面上の国債減額の陰で地方交付税交付金等の繰り延べや住宅金融公庫補給金の財投からの借り入れを行い、実質的な赤字国債発行しているのであります。まさに見せかけの数字合わせによる減額であって、国民を惑わす態度と言わなければなりません。  このような政府の表面上の国債減額の絶対化の政策は、機動的な経済運営を困難にし、見せかけの国債減額という小の虫を生かすために、わが国の経済の発展と国民生活の安定という大の虫を殺す愚を犯すおそれを内包していることを銘記すべきであります。  行政改革や財政再建は、できるだけ早く必ず達成されるべき中長期的な課題であります。これに対して、景気回復や貿易摩擦解消は急を要する短期的な課題ととらえるべきであります。したがって、当面する課題への対応がおろそかになっていることを政府は冷静に反省すべきであると思います。  私は、以上の見解に基づいて、本法案による赤字国債発行の意義が全く不明であり、財政政策に信念を欠いた政府態度を指摘しつつ、反対の討論を終わります。(拍手)
  277. 森喜朗

    森委員長 正森成二君。
  278. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題の昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案及び修正案に対し、反対の討論を行います。  反対の理由の第一は、財政法の健全財政主義を形骸化し、平和憲法の精神を踏みにじるものだからであります。  五十七年度予算は、福祉の切り捨ての一方で軍事費を異常突出させた軍拡予算であり、本法案はその財源を確保するためのものと言わざるを得ません。臨時異例、緊急避難などを口実に五十年度補正予算以来毎年度推し進められた特例債の残高は今年度末で三十七兆円にも上り、全残高九十三兆円の実に四割を占めております。これが、健全財政主義を掲げ、公債発行の原則禁止を定めた財政法第四条の趣旨に背くものであることは明白です。さらに、この大量公債依存の財政状況のもとで、国民の平和への願いに背き軍事費を大増額させていることは、財政法はもとより、憲法の定める恒久平和の理念、第九条の戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認の精神を踏みにじるものであります。  第二に、公債増発を進め、財政危機を一瞬強めるものだからであります。  今年度予算でも、公債元利払い等のための国債費は、前年度より一兆一千七行五十億円、一七・七%もふえ七兆八千二百九十九億円、予算の実に一四・二%が先取りされる結果となっております。残高も今年度に十一兆円の増となり、今後の国債費の激増は自明のところです。しかも、過去の特例法による公債の本格償還は六十年度から始まるのであります。大蔵大臣がざんげの念を表明されたように、事態は取り返しのつかない重大なものであります。本法案は事態の深刻化をさらに進め、財政の硬直化と破綻を強めているものであります。  第三に、財政危機の重圧の拡大が国民へのツケ回しを強めるてことなっていることであります。  政府は、財政危機を口実に、所得税減税を五年続けて見送ったばかりか、財界主導の臨調行革路線に沿って、福祉文教予算の切り捨てを進めています。その一方で、大企業への補助金や財界戦略に沿った経済協力費、エネルギー開発費の増大を図っております。消費不況の状況が抜き差しならぬ深刻化を加えている今日、国民へのツケ回しは一層景気に水を差すものとなっております。正すべきは大企業、大資産家優遇の不公平税制であり、大企業優先の経済政策であります。公債大量発行による当面のびほう策は認めがたいところであります。  第四に、金融市場を圧迫し、インフレ促進要因を拡大していることも指摘せざるを得ないところであります。  最後に付言しておきたいのは、五十六年度税収欠陥に関してであります。二兆円にもなんなんとする税収落ち込みは、今年度税収はもとより、五十九年度特例債脱却の総理公約の根幹をも揺るがすものであり、政府、大蔵大垣は事の重大さを深刻に受けとめるべきであります。国債整理基金からの一時借り入れなどは、当面の危機を先に繰り延べ、将来の破綻を強めるものでしかありません。  いまこそ国民的立場から、不公平税制の是正、軍事費削減など、税制、財政の根本からの見直しと民主的な行政改革を実行すべきであります。このことを指摘し、私の反対討論を終わります。(拍手)
  279. 森喜朗

    森委員長 小杉隆君。
  280. 小杉隆

    ○小杉委員 私は、新自由クラブ・民主連合を代表して、現在議題となっております昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案に対し、反対の立場から討論を行います。  一体政府は、いつまでつじつま合わせの財政運営をやっていくつもりなのでしょうか。この法案も、単年度均衡主義に基づく帳じり合わせにすぎません。健全な財政を回復するための抜本的努力をなおざりにし、いたずらに時間稼ぎをしようとするだけのこの法案には、同様の理由によって反対した五十七年度予算と同じく反対せざるを得ないのであります。  本法案の審議によっても明らかになったように、五十六年度は二兆円を超える税収不足が予想され、さらに五十七年度も、目標の五・二%成長も不可能であり、大幅な歳入欠陥は避けられそうにありません。まさに財政は危機的状況にあります。増税なき財政再建の大前提を守るためには税の自然増を確保するほかはなく、思い切った景気刺激策の導入が必要であります。日本経済が順調な成長を続けることは、今日の世界経済の停滞、激化する貿易摩擦などの状況の中ではなまやさしいことではありません。  いま求められているのは、行政の徹底的な簡素化、不要不急の歳出の大幅カットなどによって財源を生み出し、所得税の減税を断行することによって国民の潜在的な活力を引き出すことであります。こうした方策によって自然な税収増を図り、財政の健全化を推進することこそが望まれているのであります。しかるに、政府は、行革は小手先だけ、本年度の減税には消極的であります。とすれば、今回の特例公債発行は、財政の中央にぽっかりとあいた傷口をますます大きくするものでしかありません。  当委員会におきましても、私は、税負担の公平化、徹底した行政改革の断行を強く要求し、提案してまいりました。政府は、的確な現状把握ができず、将来への明確な見通しもなく、このようなつじつま合わせの法案を提出し、安易に特例公債発行を続けようとしております。  私たちは、現在と将来の国民に対しての重大な責任を果たすため、政府に強く反省を求め、今後も国民の立場に立った提案、要求を続けていく決意であります。したがって、私は、政府に反省を求める意味を込め、ここに反対の立場を表明するものであります。  以上をもって討論を終わります。
  281. 森喜朗

    森委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  282. 森喜朗

    森委員長 これより昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案の採決に入ります。  まず、修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  283. 森喜朗

    森委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  284. 森喜朗

    森委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。     ―――――――――――――
  285. 森喜朗

    森委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、小泉純一郎君外四名より、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新口山クラブ・民主連合五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。伊藤茂君。
  286. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。  わが国の財政は、昭和五十年度以降特例公債に依存することとなり、その発行のための特別立法は、昭和五十七年度を含めて、引き続き八回にわたり、建設公債を含む公債残高は、昭和五十七年度末において九十三兆円近くに達するものと見込まれております。  昭和五十五年度予算以降、歳入歳出両面にわたる見直しにより、公債発行額を着実に減額していることは評価できるところでありますが、なお諸外国に比べ公債依存度は高い水準にあり、公債残高の累増は、国債費の著増を通じて財政の硬直化をもたらし、金融市場にも各種の影響を与えているところであります。  国債の大最発行を続けることの弊害は、改めて申し上げるまでもありません。財政の大量国債依存からの脱却、なかんずく特例公債からの早期脱却により財政の健全性を回復することは、国民生活の安定と着実な経済発展を図るために緊要な課題であります。  加えて、昭和六十年度からは、昭和五十年代に発行された大量の公債について、特例公債にあってはその償還が、建設公債にあってはその借りかえが、それぞれ本格化することとなり、これが今後の財政政策の運営を一層困難にすることが懸念されるほか、国債管理政策の面においても、発行条件の弾力化等、一瞬円滑な国債消化のための方針の確立が急がれます。  財政再建のためには、中長期的な将来展望に立って、国民理解と協力を得つつ、財政金融政策上の適切な諸施策の推進によって難局を切り開いていくことがぜひとも必要であります。  本附帯決議案は、このような状況に顧み、政府になお一層の配慮を強く要請するものでありまして、案文の朗読によって内容の説明にかえさせていただきます。     昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について十分配慮すべきである。  一 健全財政を回復するため、行財政改革の一層の推進等により財政収支の改善に全力をつくし、昭和五十九年度に特例公債依存の財政から脱却するよう努めるとともに、建設公債についても、将来の財政事情を勘案し、に対処し、公債依存度の低下を図るよう努めること。  二 今後における経済財政事情の状況に応じ、国の財政の実態及びその中期的な展望を国民に明らかにする等により、財政再建についての国民理解と協力の確保に努めること。  三 財源対策としては、負担の公平化に一層努力し、中長期にわたる基本的展望に基づいて見直しを行うこと。  四 予算編成に当たっては、不要不急の財政支出の削減・抑制、補助金等の洗い直しを進めるとともに、いたずらに後年度負担の累増を招くことのないよう財政再建の基本方針に沿って、厳正に対処すること。  五 今後建設国債の借換えも本格化することに備え、金融・資本市場の動向を踏まえた市中消化の原則、発行条件の弾力化等適切な国債管理政策に関する方針を確立するよう努めること。 以上であります。  何とぞ、御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  287. 森喜朗

    森委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  288. 森喜朗

    森委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。渡辺大蔵大臣
  289. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  290. 森喜朗

    森委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  291. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  292. 森喜朗

    森委員長 次回は、来る十六日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十八分散会      ――――◇―――――