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1982-04-06 第96回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月六日(火曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 森  喜朗君    理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君    理事 小泉純一郎君 理事 中西 啓介君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 鳥居 一雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    麻生 太郎君       木村武千代君    熊川 次男君       笹山 登生君    椎名 素夫君       白川 勝彦君    中村正三郎君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    森田  一君       柳沢 伯夫君    山中 貞則君       山本 幸雄君    与謝野 馨君       大島  弘君    佐藤 観樹君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       野口 幸一君    平林  剛君       堀  昌雄君    柴田  弘君       渡部 一郎君    玉置 一弥君       正森 成二君    小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君  出席政府委員         大蔵政務次官  山崎武三郎君         大蔵大臣官房審         議官      水野  繁君         大蔵大臣官房審         議官      矢澤富太郎君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省理財局長 吉本  宏君         大蔵省証券局長 禿河 徹映君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         大蔵省国際金融         局次長     大場 智満君         国税庁次長   小山 昭蔵君         国税庁調査査察         部長      岸田 俊輔君  委員外出席者         経済企画庁調整         局調整課長   海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局計画官  野口 卓夫君         外務省経済局国         際機関第一課長 池田 右二君         大蔵省銀行局保         険部長     猪瀬 節雄君         通商産業省貿易         局輸出課長   伊藤 敬一君         建設省計画局調         査統計課長   斉藤  衛君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度の公債発行特例に関する法  律案内閣提出第九号)      ————◇—————
  2. 森喜朗

    ○森委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度の公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉置一弥君。
  3. 玉置一弥

    玉置委員 ちょっと二日の内容を聞いてないのでよくわからないのですけれども、大体毎年毎年出てくる問題でございますから、特に特例公債の分につきましては、出さざるを得ないということは十分理解ができるわけでございますけれども、これまでの予算編成等いろいろ見ておりますと、行政改革効果が出ないままにかなり圧縮をされているような感じを受けるのでございます。  これは、やはり財政再建を五十九年末までにやらなければいけないという大蔵省の強い決意といいますか、そういう中にいまやられておるということでございますから、われわれとしても、財政再建の必要ということはよくわかるわけでございますけれども、いまの経済状態の中で、無理して財政再建というものを急がなくてもいいんじゃないか、一言で言えばそういうことなんですね。いままで厚生年金国庫繰り入れとかいろいろありますけれども、これは後で戻していただくというのですが、後で戻すということになりますと、その分が結局後年度払いのような形になるわけでございまして、国債と同じような性格のものになるのではないか。こういうことを考えますと、単につじつま合わせだけで予算の中身が調整されていく。むしろ、もっと経済に機敏な財政というものをつくらなければいけないと思うわけでございますから、そういう意味では、財政圧縮をされて経済に与える影響というものがだんだん小さくなってきているのじゃないか。  そういう意味で、まず一つ、五十九年度、五十九年度と、何回聞いても五十九年度に赤字を脱却しなきゃいけないということでございますけれども、それならば、五十九年度でなければいけないという論拠、それを一回お示しをいただきたい、かように思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 この議論は最初からある議論でございます。ただ、われわれといたしましては、赤字国債をのんべんだらりんと出しておくことはいけない、これはみんなわかっておるわけです。  では、いつまでに脱却するかということですが、要するに、六十年から国債償還が始まるということですね。しかし、六十年から始まるといったって、償還、返還の財源は積み立ててあるんじゃないか、六十二年だっていいじゃないかという議論は民社党なんかから前からあるのです。しかし私どもとしては、いずれにせよ六十年から償還が始まるのだから、償還の始まる年も、片一方では償還片一方では赤字国債借金というのは、どうも政治姿勢としてよくない。やはり借金を返す年には新しく赤字借金は借りないということがけじめがついていいじゃないか、それで、まるきり不可能な話でもないから、一応それをめどとして五十九年からもうすでに発行しないよ、一年前に切り上げてしまおう。発行しないということは、五十九年にそれだけの要するに歳入の道を断つというわけですから。だから、そういうようにしましょうということでやったわけです。これは六十年にすると、六十年に歳入の道を断って、片方は返済の方の金も積んで、つらさはダブルパンチになりますわね。仮に歳入の方を一兆円減らす、歳出の方は、ともかく今度は一兆円支払いのためにふえる。二兆円という重圧がかかるから、それを半分に緩和しよう。それには五十九年までにもう借金しない。つまり、歳入をその年はその分減らす。こういうことにしようということでやったわけであります。  だから、それ以上に数字的に細かく、なぜそうでなければならぬかどうかというようなことはございません。ございませんが、物の考え方として、それを最大目標にしようという政治目標として決めたわけです。
  5. 玉置一弥

    玉置委員 当初、五十九年度に財政再建を完了するというと何か変ですけれども、いわゆる赤字公債発行は五十九年までに抑えよう、これはたしか五十三年の二月か三月の、要するに第二次石油ショック前の数字ベースになっていると思うのですけれども、それ以降第二次石油ショックが起こりまして、そういう面での経済に与える影響はかなりあると思うのですが、そういう面から見て、ベースが変わったのであるからやはり検討が必要ではないかというような気がするわけです。  それともう一つは、いまの国内景気が大変落ち込んでおりまして、十二月末の税収の徴収状況を見ても、五%ぐらいの落ち込みという数字が出ておりますけれども、そういう状態から見ても、財政は確かに苦しくなっております。それほどに景気が冷え込んでいるということは、これも構造的なものもあると思うのですけれども、大変大きな影響を与えていると思うのです。われわれ考えるには、やはり財政景気を喚起するような内容が五十七年度は、一応五十六年度横ばいというよりも、実質的には圧縮をされておりますから、まだまだ景気を回復するだけの効果が全く出ないのじゃないか。五十七年でこうでございますから、五十八、五十九とまだまだ圧縮をしていかなければいけない。そういう状態の中で、五十九年ということはそんなに固執をしなければいけないのか。先ほどの話ですと、いわゆるダブルパンチになるということでございまして、それもわかるのですけれどもダブルパンチになるのは、集めてくるからダブルパンチがかなりきついわけでございますから、じゃ片方はそのままワンクッションで受けて、あとツークッションくらいに分けてできないか。  いままでに何回もお聞きしておりますけれども、要するに、一つベースが変わったということをどういうふうに見ておられるのか。それと、言い方は繰り延べみたいな形になりますけれども、そういう方法ショックを緩和できないか。その辺についてお伺いしたいと思います。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一つは、経済ベースが変わったのだから変えてもいいじゃないかという御議論経済は生き物ですからしょっちゅう変わりますが、それと財政とが無縁というわけにはまいりません。これも事実です。事実でございますが、問題は、五十九年、六十年のころまで不況が続くというようにも考えない。アメリカ景気も、ことしの後半からはよくなるという通説なんです。実際は神様でない限りわからないのですよ。私としては通説に従うというのが無難でございますから、そういうようなことを見ておれば、日本世界先進国の中でも物価の安定あるいは雇用という面においては一番すぐれていることも事実。世界じゅうが悪いわけですから。そういう中で、何とかいまの状態をこれ以上落ち込ませないように工夫をしていこう、そしてことしの後半、来年にかけて、世界景気の回復を待って、さらに日本も着実な安定成長を進めていきたい、そう思っておるわけでございます。  財政というのは、やはり景気に対しててこ入れをしたりなんかする余裕がなくてはならない。いままではそれをやってきました。しかしながら、一遍安易に財政をふくらますと、なかなかこれが、景気がよくなってもへこまないですね。そこに問題があるのですよ。われわれは、あるとき財政をぽんとふやしてもいいんですよ。そして景気がよかったらどんと締める。そうなると、口では簡単なんだけれども現実には、いや今度は建設業者仕事がなくなって倒産がふえてしまうとか、騒ぐわけです。それは確かにそうです。仕事がふえて人をいっぱい雇ったのが、どんどん仕事を減らされたら人は要らないという話になるから、現象的には多少そういう問題もある。しかし、そういうことが大きな政治問題になって、一遍ふやした公共事業を減らすということは、実際できなかった。五十三年になったら、物すごくいい景気だったけれども、なかなか減らすということはできない。したがって、ここで安易に財政を膨張させることは、減らすことができないという心配一つあること。  それからもう一つは、膨張させたくても財源がない。国債といっても、建設国債といえども金利がつく。しかも、いまかなり高い金利がついているわけですから、金利払いだけだって六兆三千億円、国債費が七兆八千億円というようなことしの予算の姿ですわね。防衛費の三倍とか、農林水産費の二倍とか、そういう大きな状況になっている中で、利息のいっぱいつく国債をどんとふやしていくということは、財政上さらに非常に苦しみを与えることにもなる。  したがって、われわれは仮に景気対策をやるとしても、そういう面を横目でにらみながらでなければ借金ができない。した借金はだれかが払わなくちゃならぬわけですから、できることならば借金は余りふやさないで、別な手段によって景気の持続ができれば一番いい。そういうことを模索をしながら、万々やむを得ないというような問題が起きれば、またそのときは緊急避難的な措置ということは当然あり得るわけです。しかし、そういう事態にはなるべくならないようにしたいし、そこまで持っていかなくたってまだやれるじゃないか、また半年くらい様子見られるのだから、あわてることはないじゃないかという議論も一方にはあるわけでございます。  そういうものを総合判断いたしまして、われわれとしては、安定成長に変わったからといっても、いま景気が落ち込んでいるからといっても、五十八年も九年もずっと落ち込んでいるんだという見通しも立っておりませんから、いまの段階でこれが全然不可能だという状態にもなっていない。むずかしかろうと言われれば、それは確かに、いまの状態が続くとむずかしいかもしれませんよ。しかし、目標ですからね。目標というのは、すぐ手の届くところに置いたのでは目標と言わないし、やっぱり届きそうで届かない、あるいは届くかもというくらいのところに置いて最大限の努力ということが一番いいんじゃないか。そういうことで、いまのところ目標を変えるつもりはない、こういうわけであります。
  7. 玉置一弥

    玉置委員 おっしゃることはよくわかるのですけれども、いまの財政経済への影響ということを考えてみますと、財政再建一つでございますけれども、やはり予算の組み方を変えていかなければ、もし財政再建成った後でも、結局同じことになるのではないかという心配があるわけです。単年度主義増分主義、そういうものが予算ベースになっておりますけれども行政改革をいまやられておりまして、これはたしか昭和三十九年ですか、第一次臨調のときに各省の合理化とかいろいろやられたわけですけれども、それ以降また何年かすると合理化考え方というかやり方が各省庁の体質になっていないという感じもしますし、要するに、予算編成の仕方が従来から大体増分主義でこられまして既得権をかなり認めてきた、そういうような中から、前年度ついたならば今年度はプラス幾らというような大体そんな形で予算がつくられてきた、これがこういうふうに財政を大変大きくした原因ではないかと思うわけです。  そこで、お聞きをしたいのは、たとえば財政再建が成るまでは余り予算機構もいじれないと思いますけれども、それよりも臨調の結果がどう出るかわかりませんから、その辺について多分慎重にやられているのではないかと思いますけれども財政再建成った後やはり予算編成方法を変えていかなければいけないと思うのですけれども、それについてどのようにお考えになっておりますか。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 増分主義というか、ひょっと予算がついたらばそれをベースにだんだん縄張り根性でふえてきた、私はこれは事実だと思うのです。行政機構も同じで、必要があってつくった役所は不必要になってもなかなかつぶれない。そこには労働問題があるとかいろいろな利害が絡むとかということで、みんな恨まれることはいやだから、世の中は、恨みは忘れないし恩はすぐ忘れてしまう。だから、どうしても恨まれることはやらないという傾向が強くて、ぶよぶよと要らない機構まで抱えているのは私は事実だと思うのです。  だけれども、こういうように国民の負担が多いということになってくれば、そんなこと言っていられない。小さな問題よりももっと大きな問題に取り組まなければならぬということになれば、不要な機構役所は減らすとかつぶす、それから予算でもカットするものはカットするとか、もらう人にとっては月給を切られるくらい厳しいものです。しかし、それは全体として見なければならぬから仕方ない。だから、われわれとしては去年はゼロシーリングというものをかけまして、なおその中でも補助金については各省庁とも一割減らせ、一割減らせというのはみんな一割切ってこいと言ったのではないのです、私の方は。補助金全体として一割減らすのだから、その中で二割ふやすところがあったり四割減らすところもあるとか、要するに、その優先順位は各省庁で一番知っているのだから、それは全部臨調の答申の精神に従って切ってこいという指示を出したことは事実なのです。一〇〇%それが貫かれたかどうかということについては問題があります。ありますが、まず第一弾としてそういうことをやってきたことも事実。  いままで余りやらなかったことをやるのですから、一挙にやれと言われても惰性と抵抗があってなかなかできない。しかし、一応ゼロベース予算ができ上がって全体として一・八しか一般歳出は伸びない、これも事実。ですから、こういう努力を継続していくことによって、増分主義という風潮はなくしていかなければならぬ。どこの省庁もどこの局もどこの課も、予算伸び率はいままでと同じようにみんな同じだ、こういうばかなことはもうとてもできません。したがって、五十七年度からはこれにはかなりきつい姿勢をとったことも事実でございます。委細については申し上げなくてもおわかり願えるかと存じます。
  9. 玉置一弥

    玉置委員 いまの中で予算方法ですけれども、いままでどおりやっていくと、こういうようにまた同じ結果になるのじゃないか、それについて今後変えられるのかどうか。
  10. 西垣昭

    西垣政府委員 お聞きになっておられますのが予算査定にかかわる問題だと思いますので、私からお答え申し上げますが、おっしゃいますように、財政というのはだんだんふえていく傾向がございます。これは各国財政当局者が一様に悩んでいる問題でございまして、増分主義をどうして是正していくかということで、各国ともいろいろと工夫をしております。私どもも、歳出につきましては制度の根底に立ち返りましてその必要性から洗い直しをして、むだな予算計上をしないようにということでいろいろ工夫をしているところでございます。  その方法といたしましてはいろいろございますけれども、たとえばシーリングを厳しくする、あるいは大臣が申しましたように、一定の経費について一律カット方式を導入するとかサンセット方式を導入するとか、かつてはPPBSでございますとか外国の手法につきましてもいろいろと勉強いたしました。各国とも、いろいろと工夫をいたしまして、やってみてだめなものはやめていくというようなことで、いろいろと模索をしているわけでございまして、私どもも、各国の経験も生かさせてもらいながら、われわれとして独自の手法を開発していくというような方向を通じまして、歳出削減については一層努力をしたい、こういうふうに思っております。  いま決め手としてどんなものがあるかと言われると、お答えしにくいわけでございますが、いずれにいたしましても、増分ということではなくて歳出の根っこに立ち返ってやる、気持ちとしてはゼロベース予算というような気持ちでやりたい。制度としてのゼロベース予算につきましては、御承知かと思いますが、カーター政権のときに制度として取り入れられましたものが効果を発揮しないということで、レーガン政権のもとでは廃止されておりますが、気持ちとしてはそういったことでやりたいと考えております。
  11. 玉置一弥

    玉置委員 アメリカでゼロベース予算がトライアル的にやられて、すぐまた戻ってしまったというお話がありますけれども、それはどのように分析をされておりますか。
  12. 西垣昭

    西垣政府委員 私の理解しておりますところでは、カーター政権のもとで非常にこの手法に期待を持って始められたわけでございますが、大変に手間がかかるということが一つあったようでございます。  もう一つは、そういうことで、トップが政策選択をするときに余りにこまかいことに時間をとられ過ぎまして、大きなところが抜けてしまうというふうな問題もあったというふうなこともございまして、期待されたほどの効果がないということで、レーガン政権のもとでは廃止されたと伺っております。
  13. 玉置一弥

    玉置委員 西ドイツの、これは前の蔵相でアレックス・メラーさんという方がおられまして、その方が、公債発行については、調達された資金がいかに支出されるかということにかかっている、そしてその使われ方が社会資本とか技術開発教育改善、いわゆる次の世代に続くようなものであれば有害ではないと言われておりまして、そういう面から見たら、今回赤字国債を大幅に減らそうということでやっておられますけれども教育関係費用あるいは公共投資等を考えてみると、まだまだ発行してそれを補ってもいけるのではないか、そういうふうな解釈も成り立つわけです。  これは受け取り方がそれぞれあると思いますけれども、単純にこういうふうに言っておられますけれども、それについて私がいま解釈したような、いわゆる次の世代に続く財産として残れば逆に公平な負担になるのではないか。そういう目から見たら、公債発行というのはまだやってもいいのではないか、極論ですけれどもこういうふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
  14. 西垣昭

    西垣政府委員 制度の問題でございますから私がお答え申し上げますが、日本財政法思想健全財政主義ということで貫かれておりまして、その担保として公債発行は原則としてやってはならない、公債発行公共投資等投資的経費に限られる、こういう考え方でございます。  いま引かれましたドイツの学者の説も、要するに同じような思想だろうと思います。わが国といたしましても、教育の問題につきまして、投資的な施設費につきましては公債発行を許すことになっております。ドイツの場合の教育改善というのが、その先生の学説の紹介だけでははっきりはいたさないわけでございますけれどもドイツ財政制度を見てみますと、基本法の中で日本と同じように投資的経費以外の公債発行は禁止しておりますので、おっしゃっておられる意味教育投資的な施設費的なものを指しておられるのではないのかな、こういう感じがいたしております。
  15. 玉置一弥

    玉置委員 公共投資予算いわゆる投資関係ですけれども、その数字からいきますと、五十七年度予算の中に投資部門として八兆三千九百七十四億ですか、そのくらいあるわけですね。こういうことを考えると、一応いままだ六兆五千億強だと思いましたけれども建設国債が出されておりますが、そういう意味ではまだ余裕があるのではないか、そういうことを言っているわけですね。  われわれ、これを考えますには、物として残ってその耐用年数の間に活用できれば、その利用できる年代の方が負担をしていけばいいのではないかというように思うわけです。そういう意味で考えた場合に、まさにこの理論というのはある程度正しいのではないかという気がするわけです。従来から施設関係については日本建設国債発行していいということになっておりますけれども投資という面で考えてみたら、ほかの要素も入ってくるわけですね。目に見えるものだけでなくて、将来役に立つという面での投資というものも入ってくると思いますけれども、そういう面で、その投資関係費用すべてをそういうように考えた場合は問題があるかないかということになると思うのです。それについてはいかがですか。
  16. 西垣昭

    西垣政府委員 いまの御意見は、財政法四条で許している四条公債対象経費つまり投資的経費の中で、まだ公債発行されていない、したがって今後追加公債でもって賄い得る部分があるのではないか、こういう御議論だと思いますが、先ほど申し上げましたように、財政法では健全財政主義を貫いておりまして、四条公債発行し得る対象経費範囲につきましても、予算の総則でございますが、その範囲を議決していただくということになっております。その範囲につきましては、投資的経費の中で特定財源をもって充てられるものは外されますので、現実の問題として五十七年度予算に即して申し上げますと、ほとんどすき間がございません。そういう状況でございます。
  17. 玉置一弥

    玉置委員 確かに後の負担のことを考えると、むやみに発行すると建設国債であってもかなりの償還がたまってきておりますから、そういう意味では無理して出さなくてもいいというように思いますけれども、しかし、そういう厳しい状況にあるときには考えられないかということでございまして、その程度にしておきたいと思います。  予算が昨日参議院を通過をいたしまして、これから公共投資の前倒しをかなり急いでやっていこう、そういうふうな動きがございますけれども、まず五十七年度が、当初の見通しによりますと経済成長率が名目では八・四%、実質では五・二%、そういうのが一応五十七年度予算ベースになっておりますけれども、実際五十六年度の実績としても当初の見通しからかなり落ち込んできておる、そういうふうに聞いております。  まずそこで、五十六年度の実績見通しと、それから五十七年度のいまの当初設定されました条件からどのように変わると思われるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  18. 海野恒男

    ○海野説明員 五十六年度の実績見込みにつきましては、五十七年度経済見通しにおきましては四・一%程度の成長率を見込んでおりましたけれども、御存じのように昨年十−十二月期の成長率が非常に落ちてマイナスの〇・九という予想外に大きなマイナスになったために、このまままいりますと三%前後の成長率に落ちる可能性があるということでございます。  非常に厳しい情勢になってきているということでございますが、このために、当初見込んでおりました五十六年度から五十七年度にかけての持ち越し分と申しますか、通常われわれこれをげたと申しておりますけれども、このげたが当初見込みよりも一%程度下がってきておる。これは一−三月期がどうなるかによっても変わりますけれども、げたが下がってきておるということでございますので、したがいまして、五十七年度の経済成長率見通し五・二%というものに対して、げたがそれだけ下がってきたということで非常に厳しい情勢にあるということだけは事実でございます。しかし経済は、大蔵大臣がしばしば言われますように生き物でございますので、アメリカの高金利が是正されるとか、あるいは世界経済が暦年の下半期に相当回復してくるというような非常な条件の好転がありますればかなり取り戻すことができるということで、しかし現状のままではかなり厳しい情勢であるというふうに判断しております。
  19. 玉置一弥

    玉置委員 いまお聞きのように、当初の見通しより大分下回ってきているということでございます。  そこで、五十六年度の税収の締めはまだやられてないのですけれども、最新月で、先ほども十二月で言いましたけれども五%程度の落ち込みがある、このままいきますと一兆四千億ぐらいいきそうだという話がかなり出てきているのですけれども、その辺については。
  20. 水野勝

    水野(勝)政府委員 税収につきましては、ただいまは一月末までの実績が判明しているわけでございます。  この数字によりますと、前年に対しまして四・四ポイント程度低いということで、それからまた、先ほど来ございますような経済活動の低迷もございまして、私ども心配はいたしているわけでございますが、一月末現在で申し上げますと六〇%程度でございまして、その程度の段階でございますし、まだ確定申告の状況も判明していない、三月決算法人の申告も残されているという、なお四割程度が残っているわけでございますので、全体を通じましてどういう状態になるかという点につきましては、まだ申し上げられる段階にはないということでございます。
  21. 玉置一弥

    玉置委員 税収が予算を上回ることはないと思うのですけれども、おおよその予測はつきませんか。
  22. 水野勝

    水野(勝)政府委員 ただいま申し上げましたように六一%程度でございまして、なお四割のものがあるわけでございますので、いま具体的に額をもちましてどのくらいということはなかなかむずかしい段階にあるわけでございます。
  23. 玉置一弥

    玉置委員 どちらにしても不足するということはまず間違いないと思うのです。  そういうことを考えますと、今回国債発行を減額して収入に不足が出る、この間は五十六年度三千七百五十億円の追加発行という形で出されましたけれども、また出さなければいけないということになるわけでございまして、この処理については、不足が出た場合どういう財源をあてがわれるか、その辺についてお聞きしたいと思います。
  24. 西垣昭

    西垣政府委員 五十六年度の決算につきましては、七月三十一日に主計簿の締め切りをして確定するわけでございます。いま税収だけの話をされましたが、あとの要素といたしまして、税外収入がどうなるか、それから歳出面で不用がどうなるかということが大きな要素としてございます。このいずれも五月から六月にならないと大体の姿もわかってこないわけでございまして、その辺の様子を見た上で適正な決算処理をしなくてはならない、それまでに十分検討したいというふうに考えております。
  25. 玉置一弥

    玉置委員 まだ締めてないから何とも言えないということです。  そこで、先ほど五十七年度はもうすでにげたの部分で一%落ち込んできている、これは経済の方ですが、そういうふうになってまいりますと、五十六年度落ちた分がまるまる効いてくるわけでございまして、その対策として公共投資の前倒しで七五から八〇%を上期でやりたいというようなお話を聞いておりますけれども、これをやった場合に五十七年度の経済というのがどの程度回復をするか。そしてもう一つは、公共投資を上期に八〇ぐらいやったら、後半にあと二〇しか残らないというような形になりますから、逆に後半に冷え込むのじゃないかというような心配があるのですが、その辺についてはいかがでしょうか。
  26. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 七五%前倒しでやれば何ぼ効果が出るかというのは、計数的にはなかなかはっきりわからないというのが実情でございます。  後で残りが少なくなってしまって冷え込むのじゃないか、これは常識的に考えると、経済状態が同じならばそういうことが言えるでしょう。しかし、そこで速度がついて世界経済がまた変わってくるということになれば変わってまいりますから、一概に申し上げることはできません。いずれにしても、日本経済世界経済とある程度連動いたしておりますから、日本だけ飛び離れて特別な工夫というわけにはなかなかまいりません。したがって、世界経済の事情、日本状況等をよく見ながら、後をどうするかという問題については、私も予算委員会で申し上げたように、七五%契約してしまったらあとはなくなってしまいますから、取っておいて仕事をしないようにということでは困りますから、要するに後が衰弱しないようにひとつ何かしましょう、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  27. 玉置一弥

    玉置委員 経済企画庁にお聞きをしますけれども、いま公共投資が前倒しにされまして、前半と後半で経済に与える影響というのはかなり変わってくると思うのです。それと、圧縮基調にあるいまの財政の中で、このままで行きますと来年度はかなり厳しい状態になるような気がするわけですけれども、どちらにしても財政上の制約というのは、税収とのバランスもありますし、そういう意味では財政再建期間が延びてもそう変わらないと思いますが、結局、税負担の率とか、そういうようなものがいわゆる負担感として国民の中にあるのではないかという気がするわけです。  財政再建を六十年に延ばしたら、あるいは六十一年に延ばしたらということで計算されたことはいままでないと思いますけれども、たとえば財政再建期間が二、三年延びたというふうに考えた場合に、いまの状態から見て経済予測というものは大きく変わってきますかどうか、どうですか。
  28. 野口卓夫

    野口説明員 財政再建期間ということでございますが、新経済社会七カ年計画で昭和六十年度までの経済見通しというものを一応立てておりますけれども、現在の経済規模は大体二百八十兆、昭和六十年度ごろになりますと三百兆を超える規模になっております。そういう中で、財政再建のための歳出を若干動かすというようなことがあっても、経済全体に及ぼす影響というものはそれほど大きなものではないのではないかと考えております。
  29. 玉置一弥

    玉置委員 余り変わらないということは、財政経済に与える影響が少ないということだと思うのですね、そういうふうに解釈しておきます。  それで非常に心配なのは、たとえば、ここにあります財政収支試算によりますと、五十八年度要調整額というものがありまして三兆三千七百億円、それから五十九年度が五兆六千八百億円、非常に大きい金額が出てまいります。いま経済が予想より非常に落ちておりますから、要調整額がさらに拡大をされるということになるわけでございます。  昨日五十七年度予算が通りましたので、五十八年の見通しをぼつぼつ聞いてもいいのではないかというふうな気持ちで伺うのですけれども、まだ検討していないという話が多分出てくるのではないかと思いますが、五十七年度の予算編成を見ておりましても大変苦労をされておりまして、そして苦労されたその予算がようやく通りましたので、もうとっくに五十八年度の準備をされているのではないか、そのように考えておりますので、五十八年度予算、たとえばいま申し上げました三兆三千七百億円という要調整額というものが試算でありますけれども、このベースがすでに変わってきている。これについて五十八年度、大変な不足をしますけれども、どういうふうな方法予算編成をなさいますか。これは言い方むずかしいのですね。まあそういうふうに聞く以外ないと思うのですけれども、要するに、どういう方法でこの差を詰めていくか、さらに大きくなったということで。そういうふうに受け取っていただきたいのですが。
  30. 西垣昭

    西垣政府委員 中期展望の数字でございますが、中期展望の性格と申しますのは、五十七年度予算の御審議の際に、御審議の御参考として、五十七年度予算が前提といたしました制度、施策を先に伸ばしていった場合に歳出がどうなるかという推計と、それから、その時点における経済成長率それから最近時点までの平均的な弾性値で歳入を推計した場合にどんな姿になっているか。つまり、財政体質はどういうふうになっているかということをごらんになっていただくためにつくっているものでございます。  五十八年度予算につきましては、五十七年度、五十八年度の経済がどうなるかわからないわけでございまして、ここにある要調整額を圧縮してしまえば、それで五十八年度予算ができるということではございませんで、たとえば税収が減れば要調整額がまたふえるわけでございますし、それはその五十八年度予算編成する一番近い時点における見通しをもとにして作業をする、こういうことだと思います。  いずれにいたしましても、私どもは、歳入歳出のつじつまが合わなければ予算ができないわけでございまして、そのつじつまを合わせるためには、望ましい姿として、財政歳出構造ができるだけ合理化されるような方向で努力をいたしまして、できるだけ歳出圧縮するような形で予算を組んでいく。その間に、その時点における調整しなくちゃならない額をどういうふうにして整理していくかということを、いわば一番現実的にその予算の判断ができる時点で工夫をする、こういうことだと思います。いまから、この中期展望の三兆三千七百億をどう圧縮するかという議論は、ある意味ではそれほど現実的な話ではないかと思います。
  31. 玉置一弥

    玉置委員 だけれども、実際、五十七年度のベースがすでに変わってきておりまして、それをベースに考えた場合には、五十八年度も要調整額というものはこの数字以上に出ているわけですね、もし、いまのベースがそのままスライドすれば。よほど臨調の方で思い切った何か特効薬がありまして、それで効果が出るということであればいいですけれども、実際、機構改革にしても人が動かなければ費用が減らないわけですから、そういう面で考えたら、そんな、即来年大きく響くというのは考えられない、そういうふうに私は解釈をするわけです。  そういう意味で、すぐにやるというと、もう増税しかないのではないかという気がするわけですね、間を詰めると。いまの経済状態から考えて、財政をこれ以上圧縮するというのは、中身を調べていけばまだ出るかもわかりませんけれども、もし今年度やったような程度であれば、ことしでさえもかなり厳しかった様子ですから、それを来年やると、二乗で効いてくるということになりますから、この金額を圧縮するというのは非常にむずかしい。逆に拡大をされている、税収の落ち込みの面で。そういう面から考えて、やはり何らかの対策ということをやっているはずなんです。やっていなければ主計局なんて要らないわけですから心もうええやで決めて、先ほどの増分主義じゃないですけれども増分できないから、ちょっとみんなで減らしましょう、それでできるわけですね。だから、そういう意味では、やはりもっと、ある程度の方向というのはあるはずだと思うのですけれども、いかがですか。
  32. 西垣昭

    西垣政府委員 さっきも申し上げましたように、理想としてあるいは心構えといたしまして、極力歳出圧縮を図る、その歳出圧縮は、心構えとして歳出構造をよくするような形で圧縮を図る。どこまでできるか、そんな簡単なことではないではないかという御指摘でございます。私はそのとおりだと思います。しかし、心構えとしては、先ほど申し上げましたようなあらゆる手法を駆使して、できるだけその努力をするということだと思っております。  では、具体的にいまどんな手法を考えているんだという点につきましては、率直に申し上げまして、いまここで申し上げられるようなところまでいっているわけではございません。五十八年度予算現実に問題になるときまでに、私どもとしては、私どもなりのその答えを出さなくちゃならない、こういうふうに考えております。
  33. 玉置一弥

    玉置委員 何か決定的な文書が出ていないといい答えが返ってこないみたいですね。  予算も厳しいですけれども、年々厳しくなる中で、償還が始まりますと、今度は逆に償還の分の費用がプラスされる、先ほどのダブルパンチの話ですけれども。ある程度その償還ショックを緩和するためには、やはり借りかえということを考えていかなければならぬじゃないか。大蔵大臣の方は借りかえをやるべしという何かお考えがあるみたいな、そういうのが二月二十日の日経に載っておりましたけれども、「十九日の衆院予算委員会で六十年度以降に予定される赤字国債の大量償還問題について」お答えになったのですね。要するに、赤字国債の大量償還については借換債を発行してでもやらなければいけない、そういうような言い方だと思いますけれども、ところが、その同じ新聞で、大蔵省は考えていない、主計局は考えていない、そういうふうに非常に食い違う意見が載っておりまして、こんなようなときに聞こうかなと思ったのですが、ちょっと時間がなくて、きょうは公債の質問でございますから、まあ、ちょっと意見が違うということも新聞に載っておりましたので、その辺、一回確認をしたいということです。
  34. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 借換債の話はいたしましたが、それは建設国債の方でして、建設国債については借りかえせざるを得ないだろう。赤字国債については、法律上現金償還ということで決まっておりますから、法律を直さない限りできるわけではない。したがって、そういうことは言ってないはずです。赤字国債の借換債を出すというようなことは言ってないはずです。その時期になって払えないという問題でも起きればどうか知りませんけれども、いまの時点でそんなことを言うはずがないと思います。
  35. 玉置一弥

    玉置委員 そうですか。「法律では現金償還することになっている。」というふうにお答えになったのですね。「いまの段階では法律に書いてあること以外の答弁をしようにも無理だ。」同じようないまの答弁ですね。しかし、要するに法律を改正してもやらなければいけないような時期が来るのではないかというような、そういうことだと思うのですけれども、やれないからもうやらないということですね。要するに、法律を変えてまでもやらないと。
  36. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはもう法律は国会で決めるわけで、大蔵大臣が内閣として提案することはございますが、内閣で法律をつくることはできないわけです。法律は生きていますから、法律に内閣は拘束をされる。その事態にもし万々一、先の話ですからね、これは。六十何年。万々一払えないときどうだ、払えないときどうだと言うから、払えないときがあれば、それは踏み倒してしまうわけにはいかないわけですから、何かしなければならぬでしょうというようなことは、仮定の仮定の問題としてあるいは言ったかもしれませんが、現段階から支払い不能ということを前提にして物を言った記憶はございません。何かそこらを、問いに対する仮定の仮定の話を、いかにもこっちから積極的に払えないから法律を直すというふうにとって書いたのかどうかわかりませんが、いまから現金償還ができませんから赤字国債も借りかえますというようなことは言っておりません。
  37. 玉置一弥

    玉置委員 大蔵省の方で借用証で資金調達をというふうに考えられている向きがあるということが、これもまた新聞に載っておりましたけれども、借用証で民間機関から資金を調達しても、結局非常に短期に返さなきゃいけないということでかえって苦しくなるのではないか、そういう気がするわけですね。こういうことをやるならば、むしろ短期債の発行とかそういうような面でもっとその分含めた範囲で考えるべきではないか、そういうような気がするわけです。これは昨年の末だったと思うのですけれども、いま時点では、このように借用証による資金調達というのは考えられておりませんか。
  38. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 お答えをいたします。  昨年、ちょうど五月でございましたか、国債の条件改定をいたしまして、その後御案内のようにアメリカ金利が非常に高騰いたしまして、国債発行が困難になったわけでございます。発行条件を改定して金利を引き上げればよかったじゃないかという御指摘もあろうかと思いますが、当時せっかく公定歩合の引き下げに続く長期金利の引き下げをやった、景気はようやく回復軌道に乗るかというような状態でございまして、長期金利の引き上げを再びやるというのもどうであろうかということで、六月、七月、八月と休債が続いたわけでございます。  ところで、国庫の方はかなり金繰りが苦しくなるおそれがあるということもございまして、私ども、臨時異例の措置ということで私募債を発行いたしまして、非市場性国債という名前をつけたわけでございますが、九千億円ばかりの国債を銀行、金融機関を中心としてお借りをしたということでございます。八・二%の金利をつけまして、九十九円六十五銭、譲渡制限期間二年ということで調達をしたわけでございます。  私どもが私募債を発行するにつきまして、西ドイツで債務証書借り入れというのをやっております。これは銀行からお金を借りているわけでございますが、証書で借り入れをしておるわけでございます。国債の調達の多様化という見地から、一つの借り入れ方式を導入することも検討したらどうだろうかということで、予算編成の段階でいろいろ検討もいたしました。しかし、結論といたしましては、昭和四十年度以来公募債を中心として公債発行をやってきたということもございますし、借り入れはやめておこうということにいたしまして、予算総則でも国債発行限度だけを定めた、こういうことでございます。
  39. 玉置一弥

    玉置委員 いまの債務証書借り入れ方式というのは、メリットとしてどういうところがあるのですか。
  40. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 西ドイツの債務証書借り入れのことを先ほど申し上げましたが、メリットと言われておりますのは、一つは、通常の債券より若干金利を高くしております。〇・二%ほど高目に条件を設定しているようでございます。それから評価損の発生のおそれがない。公募債の場合は東京証券取引所に上場いたしまして流通価格が生まれるわけであります。ところが、借り入れということになりますと上場の問題がございませんので、それを取得した金融機関にとって評価損の発生のおそれがない。この辺が一つのメリットではないかと私ども考えております。
  41. 玉置一弥

    玉置委員 償還に備えて借換債、そして短期債ですか、そういうものをいろいろ計画をされておりますけれども、多分この前いろいろ聞かれたと思うのでやめまして、最後に、財政再建期間というものがあって、それが過ぎるとちょっとくらい楽になるのかなという、われわれそういう気がするわけです。いまの予算方式も変わってこなければいけませんし、行政改革考え方行政機構の中に定着をしていかなければいけないと思うのですけれども財政再建期間中は大変苦しいと思います。それが済んだら本当にどうなるのかというのを簡単にお願いしたいと思うのです。
  42. 西垣昭

    西垣政府委員 これは中長期的な話ですから、中期展望あるいはその延長の話として申し上げますと、五十九年度に特例公債依存体質から脱却するということで中期展望をつくっておりますが、それまでの間は特例公債を減額しなければならないという意味で非常に厳しい状況にございます。それから、先ほどもおっしゃいましたように、国債整理基金の余裕金が六十二年度に枯渇する、その後予算繰り入れが相当多額に上ってくる、こういう問題がございます。で、その年までほうっておいたのでは特定の年に予算繰り入れ負担が急増いたしますので、望ましい姿としては、できるだけ早く平準化するために予算繰り入れを前もってやっておくというようなことが必要かと思います。  そういったことで、なだらかに財政負担をならしていって、それで特例公債償還という特に強い圧力をうまくかわしていくということが必要であろうかと思います。そういうふうにいたしましても、中期展望のベースで考えていきますと、一般会計に占める国債費の割合は今後少しずつ上がるような方向になりますので、これは財政規模にもよりますけれども財政がかなり硬直化していて、苦しい状況特例公債から脱却しましてもしばらくは続くのではないか、こういうふうに見通されるかと思います。
  43. 玉置一弥

    玉置委員 われわれとしては、一日も早くいまの景気が回復をし、国内の景気が回復するというのはこの間も言ったんですけれども、やはりいまの貿易摩擦解消にかなりの貢献をするんじゃないか、そういうような感じがするのです。そういう意味で早く健全な体質に戻していただいて、そして財政経済をある程度動かせるような、そういう体質を早く回復をしていただきたい。  ちょっと早目ですけれども、終わります。
  44. 森喜朗

    ○森委員長 塚田庄平君。
  45. 塚田庄平

    ○塚田委員 きのうは予算が成立をいたしました。新年度にもなったし、恐らくいま大蔵大臣はほっとしたというところじゃないかと思うんですね。そういうところで、先ほどから答弁を聞いておりますと、どうも相変わらずの答弁で、予算審議中はちょっと言えないというような気持ちもあって、いろいろ大臣の答弁も奥歯に物の挟まったような答弁だったろうと思いますけれども、もう予算も通ったのですから、きょうのやりとりは本音のやりとりでひとつやっていただきたい、このようにあらかじめお願いを申し上げます。  それで、円相場が下落する、不況は相変わらず好転しない、続いておるという中で、私どもは最近の円安の原因といいますか、これを次のように考えております。  きのうの相場を見ますと、円は五日相場で二百四十七円七十五銭。だんだんと二百五十円にまさに迫りつつある。恐らくこの情勢はこれからさらに加速されるというのが一般的な見方です。特に民間の各経済研究所あたりでは大体二百五十円、悪ければ二百六十円なんというような数字も出てきておるような状態で、きわめて憂慮すべき状態だと思います。  こういった円安不況の第一の原因は、何といってもアメリカの高金利一つ原因として挙げられるのではないか。それから第二は、日本の輸出の鈍化が挙げられます。つまり企業の業績が悪化して、最近の言葉で言うとファンダメンタルズといいますか、経済の基礎的な条件が非常に悪くなってきておる、これが第二。それから第三は、新しい外為法、五十五年の十二月に成立した外為法で資本の流出が非常に激しくなっている。これは先ほどのアメリカの高金利と無関係じゃありませんが、資本の流出が非常に激しくなってきておる。第四は、産油国では石油の収入が減少してきております。したがって資金の引き揚げがどんどんと続いてきておる。  この四つあたりが、円相場の下落そして国内景気の不況ということの大きな原因ではないかと私どもは考えております。  このことは企画庁も一緒に聞いてもらいたかったのですけれども、企画庁はいま来たようですから、最近の動向と今後の見通しあるいは対応策について政府はどのような見解を持っておるかということについて、まず御答弁を願いたいと思います。
  46. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大体円安の原因というのは大まかに言いますといま言ったような方向だろう、私もそう思っております。  アメリカの高金利の問題についてはいろいろ見方もあるのですが、物価も鎮静化をしてきておりますし、各国からも強い非難を受けておるというようなこともあって、大統領府の自由にはならない制度だそうでございますが、金利を下げてもむしろよくこそなれ悪くなる状況にはないのじゃないか、そう思っておりますから、私は、この高金利というのはそう長く続かないのじゃないか。また、その後で物価がどうなるかわかりませんが、一時は下がる時期が来ているのじゃないかという気がいたします。  輸出の問題等については、日本は輸出をすれば輸入もしなければならぬというような状態でございますから、輸出を伸ばすといってもなかなかむずかしい問題でございます。  資本の流出の問題についても御指摘のとおりでございますが、これもやたらに小さなことでとめるとか有事規制発動とかそういうことはできない。やはりある程度は自然の成り行きに任せるというのが当然で仕方のないことだということになれば、日本経済条件をさらによくすると言っても、実際なかなか手はないですね。世界じゅうそうでありますから、日本だけ焦っても、非常にいいというような状態に私はならない。下手に持っていけばインフレにしかねない危険性を包蔵しておる。しかし、それに最大に注意をしながらやれることは、国内の内需喚起という問題が一つの問題であろうと思います。  したがって、それにつきましては、われわれとしては、公共事業の前倒しを初め住宅政策等を通しまして、限られた政策手段の中でそれを有効に使って、これ以上落ち込みをしないように工夫をしていく、簡潔に申し上げればそういうことでなかろうかと思います。
  47. 塚田庄平

    ○塚田委員 どうもいまの大臣の答弁を聞いておると、さっぱり具体的なこれという政策はない、成り行きに任せるといいますか、せめて国内的な政策としては、たとえば公共事業の前倒しとかなんかで景気を支えていきたい、こんな答弁で終わっているような感じなので、私の指摘した四つの問題について、具体的にこうするんだという政策は聞き取れないような感じです。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕 これをここで議論をしておると、これだけで一時間以上かかりますので、次に移りたいと思います。  外国では、いま言ったとおり、アメリカも金高利という問題についてはこれからどういう政策をとるか不明だと思うのですが、円安傾向というのは、むしろ日本が円安に誘導しているのじゃないか。たとえば三月二十日のロンドン・エコノミストを見ますと、日本はむしろ円安誘導をやっておると非難を込めた記事が実は載っております。これはロンドンだけじゃなくて、他の諸国の中でも、どうも円安は政策的な誘導だ、こういうようなことがささやかれておる中で、政府はこれに対して一体どういう対応をしているのかということについて、ひとつお答え願いたいと思います。
  48. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 よくそういうことを言う人がいるのですが、最初は外国人の政府高官の中にもそういう疑いを持っている人がございました。しかし、最近はそんなことはありません。私も国際会議に何回も出て話しておりますし、日銀当局の積極的な介入姿勢その他を通じましても、日本が円安誘導をしているというように思っている人は、専門家には余りないと思うのです。  資本の流出というような問題についても、資本自由化というものを掲げておるわけですから、それが少しぐらい出ていったからといって、それを直接規制をすることの方がむしろ閉鎖的という非難をまた受けるわけでありまして、われわれは機会あるごとにも言っておりますから、雑誌や何かに部分的にそういうことを言う方がおりますけれども、円高をこそ望んでおりますが、円安を望んでおるということは決してございません。そういうことはまた、外国に対しても強く、一般的にも皆さん手分けをして言っておるというのも実情でございます。
  49. 塚田庄平

    ○塚田委員 私がわざわざ雑誌の名前を挙げて、ロンドン・エコノミスト、しかも三月二十日号ですから最新号です。世界の代表的なそういった経済雑誌が指摘して、これが大方の共感を呼んでおるということも新聞紙上等で見ております。大臣は、そういうことはないのだ、こういう話でございますが、現実にそういうこともかつてあった。いまはないと言いますが、私はまだ続いておると思いますので、これらに対して対処する、あるいはPRする、あるいは政府の意図を明確に示すという努力を今後一層続けてもらいたい、このように考えております。  第三点は、その四つの原因の中の特に資本の流出について聞きたいと思います。恐らく政府も、日本の資本の流出についていま頭を悩ませておるというのが現実じゃないか、このように考えております。たとえば、ゼロクーポンの販売一時停止の行政指導にしましても、あるいは巷間伝わる有事規制の発動、いまそんなことはないと言いましたが、そういうこと等、いろいろと対策が報道されております。しかし、こういう現象は、新外為法ができたときに当然予想されるべき現象であったか、私はこのように考えております。その最たるものは、これはどうも言ってまずいかもしれませんが、生命保険の資産の運用が、五十五年十二月外為が通ると同時に、五十六年集中豪雨のようにだあっと外国に向かって資本が流出していった。この現象等は、まさに待ってましたとばかりという現象だろう、このように考えておりますが、この資本の流出についてどういう対策を今後とっていくか、大蔵大臣の所感をひとつお伺いしたいと思います。
  50. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 生命保険会社の海外投資あるいは資産運用が非常に多様化している、これは事実でございます。しかしながら、昨今の円安状況にかんがみまして、各生命保険会社とも海外投資については慎重な姿勢を示しておるということでございますので、今後非常に急激に増加することはないだろう。ただ最近、たとえば五十三年末の二千億円から、五十六年末には同期に比べて約一兆円くらいのものが、金融市場の発達と内外金融機関の情勢とを背景にして、年々外国有価証券残高がふえたことは事実でございますが、最近の状況からして、これが大きくふえていくというようには実は見ていないのでございます。
  51. 塚田庄平

    ○塚田委員 最近は大きくふえていないというのは、どういう資料によっているのですか。大蔵大臣の言った一兆円というのは、これは十二月にもうその域に達しておるわけです。さらに一月、二月、恐らく大蔵大臣のところへ資料が来ておるのじゃないかと思いますが、この十二月であっても、総資産比は三・九%、恐らく一月では四%の声を聞いたんじゃないかと思うのですよ。そうなりますと、増加資産に対して占める割合というのは三〇%近くになっているのです。  時間もありませんから、そのほかに言います。生保会社は海外の投資会社を別につくって、そこでまた土地を買ったり家を買ったりあるいは債券を買う、こういう二重のやり方をやっているのですよ。私は効率運用ということについては否定できないが、少なくとも生命保険会社は被保険者の金を集めて運用する会社なんですね。だから、リスクの多いあるいはリスクのおそれのあるこういった利用の仕方、あるいは外国から指摘されるような、たとえば最近の金融摩擦といったようなことで指摘されるような行動については、やはりある程度の規制をしなければ、これはやまないんじゃないか。特に大臣、三・九%というと、生命保険会社は一体国債をどのくらい買っておるかというと二・八%。国債よりも外債をどっと買っているのですよ。一%も違うのです。こういう現実に対してどう思うかと聞いておるのですよ。
  52. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 御説明申し上げます。  生命保険会社の海外投資額が、十二月に残高で三・九%に達しまして、すでに一兆一千億でございます。一月には、先生御指摘のように、さらにふえてまいりまして、総資産の線で見まして四%に達しておるわけでございます。  生命保険会社の資産運用をできるだけ効率的にということで、多様化と国際分散投資をやってまいっておるわけでございますが、先生御指摘のように、海外投資には為替リスクという問題があるわけでございますので、私ども、これに対しましては、投資総額を総資産の一〇%以内にとどめるようにというところで、かねて指導しておるところでございますが、特に最近の海外投資がかなりの急テンポで増加している状況も踏まえまして、また同時に、最近における円安の状況というような点を勘案いたしますと、為替リスクのおそれというものはますます強まってくるわけでございますので、私ども、この動きに対しましては多大の関心を持って注視いたしております。  先般も、このような考え方から、大手生保会社を中心にヒヤリングをいたしてみたのでございますが、その結果では、各社とも最近のこういった円安の状況等々を勘案いたしまして、きわめて慎重な投資姿勢を示しておりますし、また相当な自粛の方向にあると見受けられますので、四月以降は相当落ちついた水準になるものと私どもは見込んでおるのでございます。  また、第二点のお尋ねの海外の子会社についてでございますが、これまた先生御指摘のとおりに、昨年一年で七社ほどが海外に出ておるわけでございます。ニューヨークに四カ所、ロンドンに二カ所、そしてルクセンブルクに一カ所というようなことでございますが、こういった会社は、海外投資に関します情報を収集いたしまして、また投資しました資産を現地で管理するというような効率的な面にも役立っておるわけでございます。また同時に、不動産等につきましては、海外の生保会社あるいはアメリカの市の開発事業というようなものに対する協力もいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、こういった海外拠点というものが、それなりにカントリーリスクあるいは為替リスクというような国内投資とはまた違った重要な、むずかしい問題があるという点は先生御承知のとおりでございますので、私どももこれを野放しにしていいとは思っておりませんので、それなりの人材の蓄積なりあるいはノーハウの蓄積、さらにはそういった体制の整備というものが図られているかどうかというようなことをチェックポイントにいたしまして、海外進出に当たりましては一応そういったものの審査をいたしております。  同時に、一カ所に一時期集中いたしますようなことは、海外進出の集中豪雨というような非難も受けかねませんので、その点についても何らかの交通整理をいたすというようなことを心がけておるところでございますし、今後ともこういった方針で指導してまいりたいと思っております。  また国債につきましては、これまた先生御承知のとおりの数字でございまして、海外投資の残高に比べますと、国債投資残高は少ないわけでございます。ただ、生命保険会社が投資しておりますのは、国債のほかに地方債あるいは政府保証債、こういった公共債にも投資をしておりまして、これをひっくるめて申し上げますと、総資産に対しましては一月時点で七・二%ということで、それなりの公共的な投資にも役立っておるものと心得ておるところでございます。
  53. 塚田庄平

    ○塚田委員 いまの答弁ですと、これからの行く末をよく見守っていく、野方図なことはさせないというふうにとったのですけれども、あなたは七社と言いましたが、これは間違いで五社なんですよ。店舗を出したのが七つなんですよ。しかも、それは五十六年というたった一年間を通じてそれだけどっと出たので、それで私は集中豪雨という言葉を使ったのですけれども、これは相当の決意でガイドラインを設けるとかあるいは規制措置を講ずるとかやらないと、いま言ったリスクもさることながら、一番心配なのは円安プッシュなんです。そういう要素があるのですよ。その点でもう一遍、これは見守るのじゃなくて、きちっと規制をするあるいはガイドラインをつくるということ等を含めて検討してもらうように御答弁を願いたいと思うのです。
  54. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 どうも大変失礼申し上げました。進出している数が七社で、日本の会社としては五社であるという点は先生御指摘のとおりでございます。  海外の店舗と申しますか、これにつきましては、銀行と違いまして保険業法は何らの認可あるいは免許というものは必要ないわけでございますが、ただ先ほど申し上げたような観点から、私ども、進出に当たりましては、十分な体制整備ができているか、その点は十分チェックをいたしておるのでございますが、いずれも進出後日が浅いものばかりでございます。したがいまして、今後もこういったものから、その営業のしぶり、実績というようなものにつきまして報告を求めることになっておりますので、そういったものを徴しまして、それを分析し、そして必要があるような場合には何らかのガイドラインというようなことも検討する必要があろうかと思っておりますが、いま直ちにガイドラインを作成するということまでは必要ではないというふうに思っておるところでございます。
  55. 塚田庄平

    ○塚田委員 では、その点については大臣も十分動向を見ながら適切な指導をしていただきたい、このように考えております。  経済企画庁は来ておりますか。最近政府が発表する景気判断というのは、率直に言ってどうも狂いが目立つのですね。たとえば、昨年ですか河本企画庁長官は、もう景気は底を打っておる、これからはだんだんと上昇気流に乗るんだというような、いわば景気回復宣言、俗に新聞ではそう言っていますけれども、これを発表しました。ところが、実際には景気はその後も全然よくならない。むしろ悪化してきておる。政府の景気判断がこのように狂うということになると、それをもとにしていろいろ計画を立てたり税収の見積もりをやっておる大蔵省は七転八倒じゃないか、このように考えておるのです。  このように判断の狂う原因は一体どこにあるか、どう一体反省しておるか、このことについて御答弁を願いたい。
  56. 海野恒男

    ○海野説明員 最近の経済見通し、私どもは、民間の予測とは多少違いまして、単なる予測でございませんでして、いわば一種の望ましい、あるべき姿を描いているということで、若干民間の見通しと違うという点は御理解いただきたいと思うのですが、それにいたしましても、五十六年に新しい基準で四・七%という見通しであったのが、先ほど玉置委員にも御説明しましたように、五十六年実績は三%前後になる可能性があるということを申し上げたわけでございますが、この五十六年度におきまして非常に大きな狂いが生じた一つの大きな原因は、われわれが前提としておりました世界経済の回復、それからアメリカの高金利の是正といったような外的条件というものの好転が予想どおりいかなかったということが非常に大きな原因であるかと思っております。  ちなみに、五十五年以前の政府経済見通しと実績との間では、通常は民間の予測よりも的中率は高いというふうに言われてきておりまして、五十六年度がかなり離れたということで、それは先ほど申しましたように、外的条件が予想以上に悪化のままで推移したということが非常に大きな原因かと思っております。
  57. 塚田庄平

    ○塚田委員 外的要因が非常に大きい、こういう答弁でございますが、私はそうじゃないと思います。そうじゃないと思うというか、もっと大事なことがあると思うのです。  それは、判断材料である景気指標が景気の実態を反映していないのじゃないか、こう思うのですよ。だから、この景気指標を現実を正しく反映するような経済指標に変えていかなければならぬ。特に、いまやっておる景気指標は、恐らく高度成長時代のものを大体指標材料として持ってきていると思うのです。もうそういう時代じゃないのですから、いまの低成長に即応した指標というものをつくっていかなければならぬ、検討しなければならぬ。そういう時期に来ておると思うのですよ。  だから私は、一つは外的要因、一つは企画庁のとっておる景気指標あるいは経済指標のとり方が非常に古いといいますか、いまの経済の実態を正しく反映するような状態になっていない、こう考えておるのです。この点について一体どう考えておるか。
  58. 海野恒男

    ○海野説明員 経済指標につきましては、大体五年ごとに新しい基準の指標がつくられるということで、先生御指摘の高度成長時代の指標を使っておるということの意味が私よく理解できないのでございますが、いろいろな指標は大体五年ごとに基準を変えていくということでございまして、現在、景気を総合的に判断する一番大きな資料でございます国民所得統計も、五十年基準ということに昨年変わったわけでございます。それまでは四十五年基準であったものが五十年基準になる、これからまた五年たちますと五十五年基準になるということで、新しい指標をそれぞれつくっていくという努力はいたしておるわけでございます。  それにいたしましても、四十五年から五十年に基準の変更をした際に、旧指数と新しい基準の指数との間に非常にギャップが生じたということで、現在、庁内におきまして識者を集めましていろいろな御意見を伺って、どういう指標を使うことが、どういう指標のつくり方が最も景気の現状を表現するかということにつきまして研究会を開いておりまして、近くその検討結果が報告されることになっておりますけれども、そういう努力は続けておることを御理解いただきたいと思います。
  59. 塚田庄平

    ○塚田委員 そうすると、いまの答弁で政府は新しい経済指標を作成中だ、検討中だ。四十五年から五十年、五十年から五年ごとというと五十五年ですね、これを基準として。まあ年次はそれでいいです。しかし実態が非常に低成長ですから、その辺を十分くんで指標を生かすことになると思うのです。したがって、その検討を急いでつくらないと、あらゆる展望に、たとえば大蔵省の中期展望、そういったものにも全部影響してくるわけですよ。その点、ひとつ努力を一層早めるように私は要望しておきます。いいですね。
  60. 海野恒男

    ○海野説明員 私どもは、指標の改善だけではなくて、それを使って予測する場合の手法の改善も同時に行っておりまして、そういう先生の御指摘のような点あるいは手法の改善の点については、私ども一層努力し研究をしていかなければならないというふうに考えております。
  61. 塚田庄平

    ○塚田委員 時間が余りございませんので予定どおりやっていきますが、たしか三月十六日かと思います。七五%の公共事業の前倒し、閣議で決定ですね。こういうことで過去最高の前倒しになります。答弁の中では河本さんは、七五%はおろか八〇%くらいまでも実は考えておるんだという答弁もあったように記憶しております。  そこで大臣、先ほどからいろいろと、たとえば玉置君の質問についての答弁の中でも言っておりましたが、ここでひとつ本音を言ってもらいたいのは、七五%ないし八〇%前倒しをするということは、建設国債発行を前提としなければ、そのような政策は実際とれないのですよ。大臣はいつも、いや経済は生き物だ、体力が弱らないように薬でも飲まして体力をつけるのだ、こう言っておりますが、政策的には、八〇%近い前倒しということは、下期において建設国債発行するということを前提としなければこれはできないのです。これだけひとつ本音を言ってくださいよ。あとは、一体いつ発行するのか、どのくらいの額を発行するのかということにしぼられておるのですよ。私はそう思いますよ。ここのところをやはり正直に言ってもらわないと、予算が通った、これから国民はこの予算に従っていろんな生産活動の計画を立てなければならぬわけですよ。この点はどうですか。
  62. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 建設国債発行といっても、これは私一人で決めるわけではないのでございまして、政府内部で実はまだ相談してないのです。七五%以上の前倒し執行をやる、後はどうなんだということについては、まだ六カ月も先のあることだから、まあ心配のないようにやろうということだけでして、これは幾ら発行してどうしてと、いずれにしたってこれは臨時国会にかける話ですから、それとの絡みもあることでございますので、まだいまの段階で額と時期を明示する段階じゃない。  しかしながら、塚田議員のような議論のあることは、当然そういう議論が出ても不思議でも何でもない話でございます。ただ、政府として決まってない、これも事実です。別にうそを言っているわけでも何でもありません。そういうような含みがあるのじゃないかと言われれば、まあそういうふうにとられても仕方のない点もあるということでございます。ともかく心配のないようにしましょう。六カ月先のことですから、また先のことを言っちゃって間違ってしまっても困るので、もう少し様子を見ようということなんです。
  63. 塚田庄平

    ○塚田委員 少しわかってきたような答弁なんですけれども、しかし大臣、間違っては困るのは、私は、建設国債を早く出しなさいということを言っているのじゃないのです。そういうことを予想しなければ、いまのようなやり方では日本経済というものはパンクしかねない事態になるのじゃないかということを言っているのです。  そこで、いま言ったとおり、建設国債についてはあるいは塚田議員の指摘されるようなことも考えなければならぬ事態があるのかもしれないという答弁にとって、そこで特例国債ゼロにいたしました。しかし特例国債建設国債といえども国債には変わりはないわけですね。いつか、たしか大臣は、いや建設国債は性格が違うからというような答弁をしたことを記憶しておりますけれども特例国債であろうと建設国債であろうと、これは国の借金であることには変わりないし、後年度は物すごい負担になってくることも変わりない、あるいは財政そのものの体質を弱めていくということも変わりない。  大体、日本国債依存度というのがどんどん上がってきたのは、あの第一次石油ショックのときに、これは何とかしなければならぬ、公共事業に頼って景気を浮揚しなければならぬということでどっと出した、これが私はもとになっていると思うのですね。一回出したら、麻薬のようなもので、これは次から次へと出さざるを得ないのですよ。この第一次石油ショックのときの建設国債増発ということが、今日国債が膨大な数字になっておる原因になっていると思うのです。そういう面から言って、建設国債発行して公共事業を起こすということは、またぞろ昔の二の舞というか、そういう感じがしてならないのですけれども大臣はどう思いますか。
  64. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 建設国債も利子をつけて返さなければならない政府の債務であることは赤字国債と同様である。しかしながら、その性質が消費的なものでないということで、後年度負担をしてもそれは説明はつきやすい、これも事実です。  ただ問題は、公共事業をやればいいというだけのものではなくして、たとえば建設国債発行して公共事業がふえても、土地代の中に八割も七割もとられてしまったというのでは、これは非常に効果がないわけですね、景気刺激に効果がない。たとえば土地代に七割も八割もとられたとか営業補償にとられてしまったとかというのでは波及効果が薄い。まして、建設国債発行して全然採算の上がらないような別なものをこしらえられてしまって、そこからまた大きな赤字を生み出すというような、赤字国債の対象になるような性格のものだということではなお困る。でありますから、ただ公共事業をふやせばいいというように簡単にはいきません。仮に景気対策上やるとすれば、そういう点は本当に景気に役立つように厳選をして追加をしなければならぬと実際のところ私は思っております。四十九年ごろからずっとですが、建設国債を増発をして、確かに大きいことはいいことだみたいにばらまいてしまって、その結果、赤字を生むようなものまでこしらえてしまったことも事実なんですね。ですから、それはもう厳に二度とそういうことを繰り返しては困る。  しかしながら、一遍そこに一つの営業権とか何かがつくと、実際問題としてそれをつぼめるというのはいろいろ抵抗があるわけですよ。ですから、景気対策にその建設費を使うのはいいのだが、景気が悪いときふやすのなら景気がよくなったら減らす、それで文句を言わないというのならやりいいのだけれども、それが文句を言うからね。ふやすときは文句を言わないけれども減らすときは大騒ぎだ。そういうことも考えると、財政上だらしなくなっても困るからそれは慎重を期す。そういう意味で、建設国債を追加で幾ら出すのですかと言われても、私の歯切れの悪いのはそういうこともあるし、まだ決まってないので歯切れが悪いわけです。それは塚田さんと同じ考えだから私も歯切れが悪いのです。もっと歯切れよく言えと言われてもそれは無理なんですね。
  65. 塚田庄平

    ○塚田委員 歯切れが悪いのはまだ決まってないからだと言うが、大蔵大臣ですからね、この場合はそんなに長い将来じゃないのですよ。やはり一定の将来を見通してそれをきちっと踏まえないと、生き物だ生き物だと言って何か自分と違ったところで勝手に動いているような印象を国民に与えたのでは、かえって国民を不安に陥れる、このように私は思います。これは答弁は要りません。  そこで、何とか景気浮揚をしなければならぬということで、公共事業の前倒しあるいは場合によっては、これ以上は言わないですね、これはまだ決まってないと言うのですから。しかし、やはり観点が違うのではないか、今日の不景気といったものは個人の可処分所得の減少によるのではないかと私は思いますよ。だから、この可処分所得を何とか上げなければならぬということが、景気浮揚対策のまず第一として考えられなければならないのではないか。前に言ったとおり、第一次石油ショックのときに公共事業にばっと食いついた、おかげで赤字がどんどんと累増をした。こういう苦い経験を捨てるためにも、あるいはこれを教訓にするためにも、可処分所得の増加ということを考えることが、いま景気浮揚を考える最もいい道であり正しい道ではないか、私どもはそう思います。  そこで、金利を下げたり何かするという小手先のことはいろいろやっておりますけれども、所得税の大幅な減税ということがどうしてもいま必要だ、こう考えておるのです。これはいずれ小委員会等でも議論されるところですが、大臣はいま一体どう考えておるか、この点について答弁願いたいと思うのであります。
  66. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 減税といっても、いずれにしても財源が必要なわけですね。そして一兆円の金を使う、それを公共事業に使った場合と減税に使った場合とどっちが効果があるか。近視眼的に見れば公共事業の方が倍以上効果があるというのですね。  減税の方は、結局は財源をどうするのだ、財源がなければできないわけですから、それじゃ赤字国債発行して減税をやるのかという問題が一つあります。途中で歳出カットといっても、それじゃいま予算の中で一兆円の歳出カットを何でやるか、そうでなければ増税をどこに求めるか。減税をするには財源が要るわけですから、その財源は、増税でやるのか、それとも歳出カットでやるのか、借金をするのか、三つしか手はないですね。(「まだあるよ」と呼ぶ者あり)ほかにありますか。ほかにあれば教えてもらいたいわけなんですが、私らに考えられるところはその三つしかない。ということになりますと、実はそこに非常に問題がある。  もう一つは、可処分所得が多ければ消費が多い、これは原則論として全くそのとおりだと私は思います。ところが問題は、可処分所得が伸びない伸びないと言いながら、貯金が仕方ないほど伸びているわけですよ。去年一年間で個人の金融資産が一一・何%と伸びている。個人だけですよ、金融資産が一月−十二月、一年間で三十五兆円もふえてしまっている。これはどういうことなんだろうか。これはやはり省エネルギー、省資源という政府の政策によって石油の消費がうんと減った、一〇%も減った。これは世界じゅうに大変いいことだけれども、それは石油にとどまらない。そのほかの洋服についても何についても消費が伸びないことは事実、伸びているのは食料品だけですね。これはどこに聞いてもみんな順調だそうですね。それから目新しいもの、ファッションだとか健康用具だとか健康食品とか、こういうものはぱあっと伸びているんですね。要するに、衣類とかなんとかについてはやはり省資源の考えで消費節約、そして貯金というふうな風潮になっておりますから、景気対策としての減税というものには、そこらのところにいますぐやるということについての疑問を私は実は持っているのです。  しかし、反対だと言っているわけじゃないのですよ。特に、五年間課税最低限が据え置かれているということによっての重税感がある、これは私は率直に認めているんです。それは確かにあります。認めているけれども財源の問題と効果の問題の両面から考えて、現在大幅減税ということは景気対策としてはいかがなものかというように思っておるわけでございます。
  67. 塚田庄平

    ○塚田委員 それでは建設省に伺います。  いま七五%の公共事業の前倒しをやるということでありますけれども、これは仮にですが、一兆円の国債発行による公共投資をやった場合どのくらいの経済効果、波及効果があるかということについて、たしか建設省はモデル計算したはずですが、どういう結果が出ていますか。
  68. 斉藤衛

    ○斉藤説明員 いま御指摘の点でございますが、建設省といたしましても、従来から公共投資効果はいろいろ研究してまいりまして、その中の一つといたしまして、いまお話しの公共投資一兆円を行った場合にどういう効果が出てくるかというのをいろいろやっております。  その幾つかを御披露いたしますと、税収効果一つございます。これはいろいろな計算方法があろうかと思いますが、ここでは経企庁の方で開発なされましたSP18というモデルがございますけれども、それの乗数を使いまして、一兆円公共投資を行った際のGNPの増加分を試算いたしまして、さらに、これに一定の前提のもとに試算をいたしました租税の負担率を掛けてまいります。そういうふうにいたしますと、初年度で約二千四百億円、次年度にもございますし、三年度累計いたしますと、おおむね五千億円ぐらいの増収、これは国税、地方税ともに含んでおりますが、そういう試算がございます。その他、生産とか雇用とかそういう面に対しましてもいろいろな試算をしております。  以上でございます。
  69. 塚田庄平

    ○塚田委員 大臣、いまの答弁聞かれましたか。一兆円建設国債を出すと、三年たつとそのうちの五千億は返ってくるのですという計算なんですけれども、これはバラ色のような計算ですな。どうですか、これ。こういう計算をどんどん出して建設国債を誘導していく、まあそういう意図はないのかもしれませんけれども、そういうことだと、これは大変なことだと私は思うのです。  そこで、大蔵省は別な計算をしているのじゃないですか。大蔵省の計算とあわせてひとつその点についての御答弁を願いたいと思います。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  70. 水野繁

    水野(繁)政府委員 建設省のただいまの御答弁のように、経済企画庁のSP18を使うと、そういう計算が出てまいることは事実でございます。  それで、公共投資を追加をいたします場合に、それは一つの計算でございまして、いろいろな前提がございます。ただいまの計算でも、たとえば用地費はゼロというふうな感じで考えております。そういうふうな前提をすれば、そういう計算が出てくるわけでございますけれども現実的な姿でございますと、GNPそれから税収、こういうところに及ぼす影響はいろいろございます。必ずしも定量的に幾らという数字は出てきておりません。  それから、いまの数字を仮にいただきまして計算いたしましても、三年たちました後、これは償還金と利息というものはずっとかさむわけでございます。そのころの公共投資公共事業効果というのは、そこのところで急激に曲がりまして、それ以降のことは計算として出てまいりません。したがいまして、全般的な姿として、これそのものは一つの計算ではあろうけれども、このまま直ちに採用するのはいかがか、特に公共投資の追加を建設公債発行するというふうな場合には、いま申し上げました国債費の増大のほかに、利息に対する影響がどういうふうに出てくるかというふうなもろもろな問題がございます。  なお、大蔵省の計算といたしましても、一応同じモデルを使うと大体同様な計算が出てまいりますけれども、初年度で申し上げまして、国税と地方税合わせて大体二千四、五百億、先ほど二千四百億とおっしゃいましたけれども、そのうち国税につきましては千八百億程度、こういう計算が一応出ております。長年続くものではない、こういうことでございます。
  71. 塚田庄平

    ○塚田委員 恐らく、それは片方はSP18モデル、いま言われたのは世界経済モデルでしょう。
  72. 水野繁

    水野(繁)政府委員 おっしゃるとおり、世界経済モデルでございます。
  73. 塚田庄平

    ○塚田委員 それによりましても、これは福田主税局長の参議院の大蔵委員会における答弁なんですけれども、一兆円のことを言っているのですが、公共事業費増の場合、増収額は五十七年度中に、これは一年ですね、初年度二千六百億円、減税の場合は九百億円、だからだめだ、こういうような言い方なんですけれども公共事業費に一兆円出した場合に、二千六百億円というのは確実に入ってくると確認していいものでしょうか、どうですか。
  74. 水野繁

    水野(繁)政府委員 公共事業をいたします場合に、いま先生御指摘のとおり、世界経済モデルで申し上げますと、公共事業の場合の乗数効果が一・二七ぐらいに計算されます。それに対しまして減税の方が〇・四二ということで乗数効果は非常に低うございます。それに税金がかかってまいりますので、税金の税収については相当差が出てまいります。ただ、先ほど申し上げましたように、これを単独でやりました場合でございますが、ほかの金利などなんかが上がりまして、全体の経済がどういうふうに移っていくかという現実的な姿がございます。このままで全部確実に入ってくるかどうか、一つの計算として申し上げているところでございます。
  75. 塚田庄平

    ○塚田委員 では質問を次に移りたいと思います。  政府の出した、これは予算委員会にも出したと思いますが、国債整理基金の資金繰りの状況についての仮計算があります。この仮計算のどれを見ましても、大体、借換債収入、定率繰り入れ、予算繰り入れ、運用益、財源計となっていて、六十一年で終わって、六十二年になりますと、この基金はゼロになってくるわけなんです。以下ずっとゼロです。  しかし、私は、この財源計1から4のほかに重大なものを忘れていると思うのです。利子ですよ。これは利子が入っていないでしょう。借り入れの収入と定率繰り入れと予算繰り入れと運用益。利子は一体どうなんですか。利子を入れた場合にどうなるかという数字をひとつ発表してもらいたいと思います。利払いですよ。
  76. 西垣昭

    西垣政府委員 中期展望をベースにしまして、その後の国債整理基金の状況はどうなるのか、あるいは利払い費はどうなるのかというのを、一定の前提を置いてお出ししている一連の資料の中に利払い費もお出ししているかと思います。  それで申し上げますと、たとえば五十七年度は六兆五千億でございますが、これは特例債につきましては五十九年度脱却、それから四条債につきましては五十八年度以降も五十七年度と同じ規模で推移するという前提ではじいたもので、利払い費を五十八年度以降申し上げますと、五十八年度は七兆三千億、五十九年度は七兆九千億、六十年度が八兆三千億、六十一年度が八兆六千億というような姿になるという資料をお出ししておりますので、もし先生のお手元に行っていないようでしたら、後ほどお届けするようにいたします。
  77. 塚田庄平

    ○塚田委員 それで、六十九年まで出ているのですね。六十九年で、定率繰り入れ、予算繰り入れ、利払い費、合わせてどのくらいになりますか。
  78. 西垣昭

    西垣政府委員 定率繰り入れと、それから六十二年度からは予算繰り入れが始まる、そのほかに利払い費もあるということで、この三者を合計した姿で申し上げますと、五十七年度以降、五十八年度が八兆七千億、五十九年度が九兆五千億……(塚田委員「時間がないから合計だけでいいです」と呼ぶ)はい、あと六十一年度以降ずっと合計の金額だけ申し上げます。十兆四千億、十一兆五千億、十三兆七千億、十六兆五千億、十七兆四千億、これは六十五年度でございます。これがピークでございまして、六十六年度以降、十五兆八千億、十四兆四千億、十二兆八千億、十一兆二千億。先ほど申し上げましたような前提を置いての計算でこういう姿になります。
  79. 塚田庄平

    ○塚田委員 それで、これを全部合計しますと、実に百六十兆の、正確には百五十九兆六千億、こうなるのです。大変な数字ですよ、百六十兆というのは。  大蔵大臣、いまピークと言いましたね。六十五年の十七兆四千億。予算規模が、これも推計ですけれども、五%ずつ伸びると仮定します。そうすると、六十五年、ピーク時は六十九兆四千億くらいの予算になります。そうしますと、予算に占める国債費の割合は相も変わらず二五%という数字が出てきます。二五%ちょっとですね。これでは、いつまでたっても二〇%台の依存率というのを脱却することができないのじゃないですか、どうですか。ただし、私の場合は五%という仮定があります。
  80. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いま塚田委員の言うように、七十兆で十七兆も国債費を払うというのですから、予算の四分の一、予算規模が五%しか伸びないということになると、こういう数字になっちゃう、これは本当に大変なことだと私は思います。どういうふうにしていくか、これは本当に真剣に考えていかなきゃとても払い切れるものじゃないということですから、景気の回復次第なるべく早く建設国債等についても減らしていくという方向を打ち出さなければならないのじゃないか、そう思っております。
  81. 塚田庄平

    ○塚田委員 そこで、ドイツの例を出したいと思うのですけれどもドイツもやはり公債依存度の高さで悩んだことがあります。そのときにいろいろと国会で問題になりまして、どうもいままでのような、たとえば日本でやっておる中期経済の展望あるいは見通し、あるいは収支仮計算、こういうものではだめだということで、一体これから五年間どういう姿になっていくのかということを細かく計算したいわゆる財政計画というものを立てました、これは改善法によってですね。これがそうです、この計画書が。日本で言うと予算書と同じくらいの膨大なものなんです。しかし、たとえば日本の中期展望、あれは五項目か六項目に分かれて試算していますね、社会保障費は何ぼだとか国防費は何ぼだとか。これは実に驚くなかれ三十四項目にわたってずっと、これから後年度になったら一体どうなるかという姿を出しておるのですよ。恐らく予算委員会等で財政計画を出しなさい、展望ではなくて、試算ではなくて、ということを社会党はきつく要求したのじゃないかと思うが、それはいま言ったようなこういう国債の増大というものをわれわれ予想していますから、したがって、そういったものの償還を含めて、これはもう出さないあるいは縮めるということも含めて、そういう後期の展望について国民がわかりやすいあれを出しなさい、こう言っているのです。  大臣、どうですか。こういう財政計画というものを出さなきゃならぬのじゃないかと思うのですね、いまの日本財政状況においては。しかも、それは相当責任を持った計画でなければ、何とかこれは早く脱却しなければならぬという、何とかではこれは追いつかないのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  82. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 現在の中期展望というものは積み上げでやってありますから、細かく分ければもっと細かい数字にもちろんなるんです。それを引き伸ばせば引き伸ばすということができないことはありません。ありませんが、ただそれが役立つかどうかということは全然別な問題になってきてしまうわけです。経済が動かないでこっちの予想したとおりに進めば、その数字が当たってまいりますが、ともかくこれほど非常に激しいぶれがあるわけですから、経済が違えば、予想した経済の実態が違えば当然違ってしまうわけですね。ですから、そういうところに非常に難点が実はございます。しかしながら、ともかく五%の伸びでは二五%も国債費がふえるとなったんでは、とても払い切れるという話でもないということも事実でございます。  したがって、そういう計画を細かくつくって出すということは、手数はうんとかかるし、それでそれが全然現実とまるっきりかけ離れてしまっているということでは困るわけでございまして、みんな恐らくそういった条件がいろいろついているんだと思いますよ。ドイツだって、経済見通しどおりにいけば騒ぎは何もないわけです。なかなか経済見通しどおりにいかない、そこに問題があるので、大蔵省としては、先々まで細かい計画といって、それに近いものを誘導できるような力もないので、実は出すことをお断りをしてきておるというのが実情でございます。しかしながら、塚田委員の言うように、国債問題は、将来の問題については大変な、本当に頭が痛くなる、大蔵大臣をだれもやり手がないですよ、そういうような大問題があるということはもう肝に銘じておるわけでございます。
  83. 塚田庄平

    ○塚田委員 時間もありませんが、これは言いっ放しで聞いてください。  いま、経済状態といいますかあるいは国債の問題を一つとっても、一番悪いのは、依存度とかなんかいいますと日本とイギリスじゃないかと思うのですね。そのイギリスもこれからの公共支出についてはやはり計画を立ててやるということでずっと進んできております。あるいはアメリカは御承知のとおり教書というのが出ますね。あれは大統領の演説であって、あの教書に付随した五年間の見通し、計画がついてきます。あるいはドイツはいま言ったこれですね。これが五年間の大体の見通しあるいは計画。スウェーデンも大体同じようなものを持っておるんじゃないかと思います。  こうして、いま世界は、いわば計画経済とまではいかないけれども、生き物でありますということで何か追っかけていくような、そういうやり方じゃなくて、その生き物をきちっと制御しながら動かしていくという経済運営に変わってきている。私は、別に社会主義者だからこうなんだと言うんじゃないのですよ。社会主義のような計画経済をやれと言っているんじゃないのです。少なくともケインズ方式というものは、いまはもう破産とまではいかないけれども、そろそろある程度修正しなければならぬ時期に来ておるんじゃないか、こう思います。  非常に理屈っぽくなりましたけれども、特に後年度負担はどうなるのか、あるいはこの計画で行った場合には公共投資、特に下水道はどうなるか。ずいぶん細かいんですよ。上水道はどうなるのか。もういろいろなことが出ているんです。確かに時間がかかる。これは十年かかったんですから。しかし、一度つくれば後は五年、五年で修正していけばいいのです。どうですか大臣、こういう計画をよしやってみようという気にならぬですか。
  84. 西垣昭

    西垣政府委員 中期展望をお出しします前に財政計画というものがつくれるのか、つくるとしてどんなものをつくるべきかというようなことにつきまして、財政制度審議会でずいぶん勉強していただきました。これは学者の先生方に参画していただきまして、いま先生おっしゃいましたようなイギリスとかドイツとか、そういったところの事例も十分研究をいたしました。そこでわかりましたことは、やはり各国ともそれぞれの財政制度、社会制度の中でそれぞれ独特の制度をつくっているということがわかってきたわけです。その中で、いま言われましたように、計画という名前をつけております国もございますし、それから見通しという名前をつけているところもございますし、いろいろございます。その計画性の濃淡につきましてはいろいろございますけれども、突き詰めていきますと、やはり現在の制度を前提とした将来の見通しというような性質のもので、拘束力のあるようなそういう性格のものではないというのが財政審の一応の結論でございました。  日本に適用する場合にそれじゃどうかということで、財政審でやはり一番懸念されましたものは、日本の風土の中でそれが固定的なものにとられるあるいは既得権化するというふうなことで、財政の改善に役立つよりもむしろ硬直化のおそれもある、そこのところを一番気をつけなければ、日本の場合の中期計画といいますか中期展望といいますか、そういったものがゆがめられてしまうおそれがあるというふうなことで、五十六年度に初めて出しますときにも、財政審はその点を非常に気にしながら、日本で出すとすればこういうものだということで取りまとめられた経緯がございます。  そういった意味で、いわゆる実行計画としての財政計画をつくるということにつきましては、私どもいろいろと問題があると思っておりまして、御指摘のようなお気持ちはよくわかるわけでございますが、これからまた真剣に、かつ慎重に研究しなければならない、こういうふうに思います。
  85. 塚田庄平

    ○塚田委員 もう時間もありませんので、大臣、これはきょうの新聞なんです。一斉に「大型補正予算、必至の情勢」「補正予算秋口にも編成」、どの新聞も見出しは皆同じ調子です。  そういうことで、私どもは先ほどから質問をしたのでありますが、いろいろなお答えがありました。私は恐らくこういう情勢になると思います。と同時に、もう一つどの新聞にも出ておりますのは、グリーンカードの見送りが固まった。これは日経ですけれども、「Gカード見送り固まる 三年“凍結”で決着へ」、代表的な新聞を持ってきたので、どの新聞もきょうは、この補正予算の問題とそれからグリーンカードの問題で埋まっております。そしてこの日本経済新聞では、政調会長がそういう情勢、制度についてこういうことを言っていますね。「五十九年一月からの同制度の実施を三年間延期する」「この間利子・配当所得に対する現行の源泉分離選択課税制度は存続する」「このため今通常国会に所得税法改正案を議員提案し、成立を図る」政調会長がこういう方針を出しているのですから、これは与党である自民党です、政府の方針に直ちにこのとおりはね返っていくものと思うのです。大蔵大臣、どう思いますか。もうすでにセンターの予算は通りました。今度の予算で、建設費四十一億あるいはコンピューターのリース料とかカード製作、こういうことで大体総額四百億ぐらいかかるのじゃないかと巷間言われております。こういう予算が可決した翌日にこれを三年間凍結。恐らくこれは凍結してそのまま凍らしてしまうのじゃないか、やらないのじゃないかと思いますよ。何でこういうばかなことをやるのですか、やらなきやならないのですか。これは大蔵大臣の答弁を求めます。
  86. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私、自民党ですから同じかもしれませんが、おしかりを受けましてもちょっと困る話でございまして、私も新聞で見ているだけなんです。  党の中でそういうような動きがあるということは承知をいたしております。いずれにしても政府・与党の間でございますから、何らかの話があるでしょう。私としても、どういうふうにするかいろいろ相談はしたい。政府の方針は決まっておりますが、政治世界のお話でありますから、ことにこれは国会が決めることで、法律で決まったものは、私は政府の大臣として法律と憲法を守るという立場でありますから、国会が法律を直すというのなら、自民党だけで直るのかどうなのか、これも非常に疑問の問題がございますし……(塚田委員「数でいけば直るよ」と呼ぶ)いや、そう簡単にできませんよ、それは。そう簡単にできないと私は思います。私としては、やはり公平を確保するということは非常に大事なことであると同時に、余り不安、動揺を与えることはいけない、そう思っております。したがって、まず不安、動揺させないということが一番大事なことでございますから、経済は思わぬことでハプニングが起きたりなんかしても困るわけで、不安、動揺を与えないということにすることがまず先決問題。それと同時に、公平の確保を図っていくということも大切なことでございますので、どういう意見なのか、きょうは一日聞けないし、あしたも聞けないし、そのうち党三役ともよく意見を聞いてみたい、そう思っております。
  87. 塚田庄平

    ○塚田委員 もう時間がありませんが、ちょっと一言。私は職を賭してこのようなことはさせないと言ってください。
  88. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、ただのんべんだらりとさせるようなことはしない、そう思っております。
  89. 塚田庄平

    ○塚田委員 終わります。
  90. 森喜朗

    ○森委員長 午後一時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  91. 森喜朗

    ○森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。戸田菊雄君。
  92. 戸田菊雄

    ○戸田委員 冒頭に大臣、いま理事会でも問題になったと思うのですが、グリーンカード問題について、どうも最近、自民党の有志議員というのですか、いろいろな結束をして、これはやはり凍結をすべきではないか、こういう話がいろいろ出ているのですが、これは大臣、聞いておられますか。
  93. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は新聞で見ただけで、聞いていないのです。いま、田中政調会長に電話をしまして、一体どういうことなんだと言ったら、いや党内で二百九十何名かが署名を集めてある、ついては、これは皆何万票と取ってきた人なんだから世論と見なくてはならぬ、ついては、これをそのままというのではなくて、何らかの検討をしなくてはならないということで、それで役員会に報告したら了承を得たと言うから、中身はと言ったら、中身は何も言ってないと言うものですから、どういうふうに検討するか知らぬが、ともかくこっちの方と、政府・与党の間だからよく連絡をとってもらわなければ困るよという話はいま言っておきました。  これから後でどんな話があるか、いずれ追って話があるだろうと思いますが、中身は一切まだ聞いておりませんし、向こうも何とも言ってないそうです、中身については。ということで、こちらも余り騒ぐこともないんじゃないか、そう思っております。
  94. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これ以上は言うまいと思ったのですが、いずれにしても、今日まで同僚議員等の質問に対して大臣が、これはもう完全にやりますということは言明をしてきておったわけでありますから、やはり国民の代表として委員会で決定をされ、本会議等の質問によってもそういう答弁をなされておるわけですから、この点はぜひひとつそういう決意で今後も大臣としては臨んでいただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  そこで、この国債発行削減計画についてでありますが、鈴木内閣の五十九年度赤字国債脱却の財政再建計画、これは達成がむずかしくなってきたのではないかというふうに考えますが、大臣、どうでしょう。
  95. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十九年度までに赤字国債依存の体質から脱却するというのが総理の言葉でございますが、五十七年度においては少し赤字国債分が二兆円減額できなかったような点もあって、来年度は一兆九千億円からのものをしなければならぬということですから、非常に大変であるという認識は持っておりますが、最大限の努力をしてみたいと考えております。
  96. 戸田菊雄

    ○戸田委員 公債でも建設公債あるいは赤字国債特例公債等々あるわけでありますが、いままで政府が、あるいはわれわれが問題にしてきたのは特例公債、これの脱却を意味しているのですね。それに対して総理も大臣も、そうですという見解を示してきましたが、しかし、いずれにいたしましても、塚田委員の前の質問に対して、今後の景気見通しその他についてもいろいろと論議をされたところでありますが、私は、公共事業の前倒し論、別な角度から今後の税収の減収、こういうものについて、必ず起こってくるのではないだろうかというふうに考えますので、その点の見解を申し上げて、大臣の答弁をお願いをいたしたいと思うのであります。  五十七年度予算で、中期財政展望、これで考えてみましても約三千億円下回るようであります。その上に五十六年度の税収が補正予算比でおおむね一兆円、これは前にも私は指摘をしたのでありますが、その程度の穴があくのではないだろうかという気がいたします。そうしますと、今年度租税収入三十六兆六千二百四十億円、これすら確保がむずかしいのではないかと思うのですが、実情の進展を一体どうお考えですか。
  97. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十六年度の税収見積もりが過大であったということでございます。予想外の物価の安定、消費の伸び悩み、労働時間の要するに残業などが減ったというようなこと等がいろいろ絡まりまして、私も大変心配をしておるのであります。  いままでも税収の見積もりというのはなかなかうまくいかなくて、多いときには予定に対して二〇%不足、あるいは過小見積もりをしてしまったために二〇%余分に自然増収という形で入ってきたというようなことがございます。今回はそんなにはいかない、一〇%もいかないと思いますが、どうも数%ぐらいどうなるのかと思って、これはまだわからぬわけですが、二月時点ではどうしても数%という数字が予想される。しかし、三月の申告は五月にならなければわからぬわけですから、法人の申告でどれくらい穴埋めができるか、ここら辺のところが非常にまだよくわかりません。わかりませんが、私は数%は足りないような気がして、どうも不安でならないわけでございます。
  98. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それからもう一つは、当初政府の税収見積もり、ことに自然増収、これは中期展望ではおおむね四兆七千億見当いくだろう、こういう想定であったわけですが、途中で経済指標その他塚田委員が問題にしたようなかっこうで結果的には四兆円、総体で七千億引っ込んだ。その補てん策はいろいろ増税でやったり、それから各会計の取り崩し、そういった税外負担でもっていろいろやる、こういう状況になっておるわけですね。そういう実情からいっても、税収が所定どおり、見積もりどおりいけるというのはなかなか困難ではないだろうかというふうに考えます。  一方で五十七−五十九年度の国債減額一兆八千三百億円、しかしこれはもうすでに五十七年の中期展望、新しくできたものでいきますと、一兆九千六百億円にふえておるわけですね。そういうことになりますと、これがさらに今後ふえていく状況にあるわけですから、赤字国債脱出というのは、鈴木総理が予算委員会で同僚議員に答えたように、政治生命をかけてがんばってやっていきますよ、こう言いましたが、そんなになまやさしいものではないのではないかというふうに考えますが、これは大臣どう考えますか。
  99. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは一にかかって経済見通しの問題が一つでございます。経済見通しが違えば税収にも違いが来る、これはもう当然なことでございます。  非常に激動する世界経済の中でございますから、なかなか断定的なことは申し上げられません。しかしながら、ともかく苦しくともまず冗漫な現在の財政体質といいますか歳出体質、こういうものについて抜本的なメスをもっと入れていこうというような考えもございますし、一方、いまのところ景気は停滞をいたしておりますが、世界経済もことしの後半からよくなるというのが通説でございますから、五十八年、九年というようなときまで経済が低迷をしておるとも考えられませんし、極力われわれも景気の底支えというものをやっていきたい、こう考えております。  したがって、五十八年、九年と二年で赤字国債脱却、一兆九千数百億ずつ減らしていくというのは非常にむずかしいのじゃないかという危惧がないわけではありません。ないわけではありませんが、やって全くできないというところでもないので、最大限の努力目標として掲げておるというわけでございます。最大限の努力を払って達成するように努めてみたい、そう考えております。
  100. 戸田菊雄

    ○戸田委員 先ほど塚田委員にもお答えになったようですから、この回答はいいのですが、いま言ったように、公共事業は前倒し、そして八〇%予算を使ってしまう、片や税収見積もりはそういうことで思うようにいかない、そういうことになりますと、七月等に決算をされて、そうすると減収分はこれだけ出る、それが仮に一兆円以上になるかどうかわかりませんが、そういう状況です。そういうことになると補正という問題が出てくる。これはこの前指摘をしたとおりでありますが、そういう補正を組むに当たって、財源調達で結局は建設公債発行、そういった形にいきませんと財源調達の見通しはつかない、こういうところに追い込まれるのじゃないだろうか、私はこういうふうに考えておるわけですが、これは先ほどの塚田委員にも答弁があったようですから、これは答弁はもう要りませんが、そういう心配をいたしておるわけであります。  それからもう一つは、したがって景気浮揚その他をこれから図っていくためには、どうしても財政的てこ入れが必要になってくるのではないか、こういう気がいたしますね。この点は大臣どうですか。
  101. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 財政的にてこ入れというのは、私も必要ないとは言わないのです。しかしながら、先ほどもお話ししたように、ただ漫然と公共事業をふやせばいいというものではない。財源がないわけですから、増税で公共事業をふやすというわけにいかない。もし仮に、どこまでも仮の話ですが、ふやすとすれば建設国債を出さなければならぬというような事態になりかねない。  そういう場合においては、まずその一つは利息の問題が後年度に毎年かかってくるという問題がある。したがって同じ公共事業でも、景気刺激のためにやるというならば効率的な公共事業をしなければならない。土地代に七割もとられてしまったとか、移転補償のための補償金だけとか営業権補償にとられたとかというのでは、個人の貯蓄に皆回ってしまうわけです。ですから、これはそういうことではなくて、波及効果のなるべく多いようなもの、あるいは地域性等も考えてやらなければならぬ。また、地域性を考えるからといって、借金してつくった施設がまた借金を生むほど赤字をつくる、これは絶対困る。そういうものは対象から外してもらわなければならぬとか、きめ細かい考えをしながら、もし万一やる場合はそういうふうな考えでやらざるを得ないのじゃないか。  しかしながら、当面はやはり世界景気の動向等もあるし、公共事業その他の前倒しという問題もありますから、それの進捗状況景気の動向をにらみながら常に目を配っていきたい、そう思っております。
  102. 戸田菊雄

    ○戸田委員 景気浮揚の要因は幾つかあるわけでありますが、一番大きいのはやはり国民消費ですね。五十七年度予算でも、GNPが二百七十七兆二千億見当、国民の最終消費が百六十兆三千億円等となっておる。その割合は五八%、こういうことを目指しているわけですね。いま勤労者の大部分は、大幅賃上げ、こういうことで可処分所得の実質的な向上に向けていろいろやっておる。しかし、これも聞くところによると六%台そこそこじゃないか。確かに今年度の見通し、物価からいけば若干は上がっておりまするが、しかし過去二年間可処分所得額は減っているわけですから、マイナスですから、仮に六%台だとすれば、その穴埋め程度にしかならない。  減税はいまのところいわば凍結、これから大蔵委員会でいろいろ検討する、こういうことになるわけでありますが、いずれにいたしましても、国民消費の伸びる要因はいまの時点で考える限りは余りないのではないだろうかというふうに考えるわけです。  そうすれば、当然公共事業の前倒し、いろいろやって、あるいは輸出ドライブその他でもってさらに努力はするでありましょうけれども、その一番根底となる五〇%を超える景気浮揚の要因、これが全然動かないということになれば、どうも先行き暗いということになるのじゃないでしょうか。  したがって、こういったものに対する賃上げその他実質可処分所得、さしあたって賃上げ等に対して、これは労使で決定することでありまするけれども、私は、もう少し大局的な判断から行政指導その他を大臣としても考えるべきではないだろうかというふうに考えますが、これはどうでしょう。
  103. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結論から言えば、労使の問題に尽きるわけであります。  私は、適切なベアが必要である。適切なというのは、それはやはり生産性の範囲内だろう。それを超えたベアというのは物価高、コストインフレ、結局は労働者がかぶるということになるわけでありますから、私は、それは賛成いたしかねる。     〔委員長退席、粕谷委員長代理着席〕 みんな減税とかいろいろなことを言いますが、仮に物価が何%も上がってしまったのでは何にもならない話で、ともかく日本では景気が悪いとか耐乏生活だとか言われておるけれども、世の中が静かなのは物価が安定している、この点がせめてもの光明だと私は思っておるわけであります。  したがって、いま世界じゅう非常にインフレに悩んでおって、しかも日本でも円安傾向が続いておって、ともかくこれが輸入原材料に影響しておりますから、このままでいけばいやおうなしにある程度インフレ要因を運び込んでいくわけです。これを何とか円高傾向に持っていく工夫もしなければならぬ。しかし、日本だって物価が上がる要因というのはあるのですよ。たとえば日銀総裁が言うように、マネーサプライは成長率から見ると限界以上に出ている。成長率が低いのにマネーサプライの伸び率が一一%とか一〇%という高い率にあって、これは限界である。したがって、ちょっと火がつくとばっと物価に火がつく危険性がある。  幸いに日本の国民は賢明ですから、消費節約によって結局それを貯蓄に回してしまった。このことが物価安定に非常に役立っているが、一方、貯金がどんどんふえるわけですから、その反面、物を買わないということで、耐久消費財、ラジオもテレビも自転車も洋服もみんな持っていて二、三年どうってことない、住宅には手が届かない、身の回りのものはもう大体持っている、貯金だけがぼんとふえた、事実三十五兆ふえたわけですから。どういうものがふえたのか中身を調べてみると、非課税貯金がそのうちの二十三兆円近くふえてしまった、現実の問題ですね、この内容を分解してみると。これが景気の足を引っ張っていることは事実だけれども、物価を安定させていることも事実、どっちがいいか、痛しかゆしというところがあります。  私は花見とか何かずいぶん歩いてみたら、おもしろいことにみんな寄ってくるわけです、大蔵大臣がんばれとかなんとか言いまして。若い人は物価ですね、私が言われたのは、物価を上げないでくれ、税金なんかいい、ともかく物価を上げないでくれと言うのです。ところが頭のはげかかった課長クラスの人は、それもそうだけれども税金ももうちょっとまけてもらいたいという話だった。二十組くらい会いましたね。大体似たりよったりで、酔っぱらって話をしているから案外本音が出てくる。実は私は、それが庶民の実感ではないのかな、やはり底辺層というのは物価ということに一番敏感だという気がつくづくしておるわけです。  そういうこととの見合いの中で、どういうふうに切り開いていくか、日本だけアクセルを踏ましてしまって、アメリカやイギリスが後を追っかけるようなことは困る。労使協調で官民一体でせっかくうまくきているんだから、この際つらいところはじっとがまんしても、世界経済の回復まで待って、それに乗り継いでいくという基本的な考え方がいいのではないかと私は思っているのです。しかし無策でいるというわけではございません。基本的には……(「無策も策だ」と呼ぶ者あり)まあ経済問題といたしましてはそれも一つの策なんです。ですから、そういう点も見ながら、余り急いで物価に火をつけないようにするということを最大の眼目にしたいと思っているわけであります。
  104. 戸田菊雄

    ○戸田委員 一つだけ不公平税制で提言をして大臣に検討願いたいと思うことがあるのですが、きょうは銀行局長が来ておられますから、私の理解ですと、いま金融資産と言われるのはおおむね三百三十兆円、そのうちの二〇%、約六十兆円ないし七十兆円は隠れ財産、こう言われているように私は理解しているのですが、これにもし一定の課税をするということになりますと、どのくらいの税収が見込まれるか、その隠れ財産というものがどのくらいあるか、銀行局長にお伺いしたいのです。主税局長いれば、これを税収に見積もった場合にどのくらい増収ということが考えられるか、この点ひとつ聞いておきたい。
  105. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 隠れ財産というのがよくわかりませんが、一般にも言われておりますのは、三百万円の限度超過の部分があるのではないかというふうなこと、それからもう一つは分離課税の部分でございますけれども、それが一般に、あるいはその中に一部はっきりしないものがあるのじゃないかというふうなことが言われておりまして、私どもといたしましては、銀行局サイドや金融サイドからそういう面についての把握というのができないということをお答えさせていただきます。
  106. 水野勝

    水野(勝)政府委員 先生のお話の隠れ財産とおっしゃるのが、非課税貯蓄に入っているという性質のものでございますか、あるいは源泉選択の中に入っておりまして本来課せられるべき総合課税の税率が課税されないでおるというお話の場合か、あるいは源泉選択と非課税貯蓄の間に普通の二〇%の源泉徴収を受けます一般的な預金もございますが、それが総合課税を免れていて税収の減収をもたらしている、どういうタイプのところのものを御指摘になって隠れ財産、隠し財産と言うかによりまして、いろいろ収入の点も違ってくるのでございます。  そこらの点につきましては、たとえば非課税貯蓄でございますれば、それが六%なり七%なりの利子率とすれば、一般の預金でございますればその二〇%の源泉徴収は少なくとも入ってくるとか、そういういろいろな計算はできるわけでございますが、どういう性格のものであるか、またどういう規模のものがそういうものとして存在するかにつきましては、私どもなかなか、いまここで計数をもって申し上げられるようなものは持ち合わせていないのでございます。
  107. 戸田菊雄

    ○戸田委員 もう一点、審議官。五十九年から配当利子の分離課税を取りやめて総合課税に移行しますね。そういうことになりますと、どのくらいの増収になると思いますか。わかりますか。
  108. 水野勝

    水野(勝)政府委員 大ざっぱに申し上げて、国税、地方税合わせて二千億円程度というふうな試算をさせていただいておるわけでございます。
  109. 戸田菊雄

    ○戸田委員 前段の問題については後で資料を計数的に整理をして提出をしていただきたいと思うのですが、委員長、これはよろしゅうございますか。
  110. 粕谷茂

    ○粕谷委員長代理 提出できますか。
  111. 水野勝

    水野(勝)政府委員 前段の点と申しますと、隠し財産の方でございますか。それは基礎になる方の金額なり数量なりにつきましては、私ども、そういったものとして御提出できるような数字ができるかどうか、その点につきましては大変どうもむずかしいかと思います。ただ、こういったものがあればこういう性格のもので、それが正当な課税であればこうなるという抽象的なものでございましたら、御説明は申し上げられるかと思います。
  112. 戸田菊雄

    ○戸田委員 審議官が考えるような内容で結構ですから、整理して後で出してください。いいですか。
  113. 粕谷茂

    ○粕谷委員長代理 水野議官、よろしいですか。いまの確認の御質問はわかりましたか。
  114. 戸田菊雄

    ○戸田委員 国債の銀行窓口販売、いわゆる窓販の問題について若干御質問したいと思うのであります。  これは三人委員会というのがありまして、前に同僚佐藤委員が取り上げておりますが、これは文字どおり首相の私的諮問機関ということになっておるわけであります。この答申に基づいて大蔵省が一定の基本方針を決めたと言っておるのですが、その基本方針というのはどういうものですか、説明をしていただきたい。
  115. 禿河徹映

    禿河政府委員 いまお話がございましたとおり、国債の窓販問題につきましては、いわゆる三人委員会におきまして昨年の十月からいろいろ検討をお願いしてきたわけでございますが、去る三月十一日に御報告をちょうだいいたしましたので、その御趣旨を踏まえまして、大蔵省としての方針を決定いたしたわけでございます。  その内容を簡単に御報告いたしますと、まず、いわゆる窓販につきましては、窓販の対象の有価証券は長期利付国債、政府保証債及び地方債とする。業務の範囲は、募集の取り扱い、いわゆる窓、販でございますが、そういう募集の取り扱いのほか、はね返り玉の買い取りを認める。それから実施の時期につきましては、いろいろの状況を勘案いたしまして、たとえば実施に伴う混乱を避け適正な運用を図るため、実施時期は五十八年四月からとする。こういう窓販につきましての基本方針を決定いたしたわけでございます。さらに、いわゆるディーリングにつきましても三人委員会の方の御趣旨がございますので、これにつきましては期近物国債が大量に出回る時期等を考慮しつつ今後さらに検討を続けていこうという大蔵省の方針を決めたわけでございます。その他、中期利付国債それから割引国債につきましては、その発行額だとか落札の状況等を考慮しながら今後さらに検討を続けていくことにいたしたい、こういう基本方針を決めたところでございます。  今後も検討を続けるべき事項につきましては、私どもといたしましては、また三人委員会の御検討の結果を踏まえながら、その上で検討を重ねてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  116. 戸田菊雄

    ○戸田委員 私は、銀行側、証券側、どちらにとっても全く中立公平で、どちらに偏るということではないのでありますが、一回るると質問してまいりたいと思うのであります。  その前に、いま局長が説明された大蔵省の方針、それによって国債の消化、流通面等々に対してどういう影響あるいは効果というものを与えているのでしょうか、その辺が一点であります。  いろいろと検討してみますと、どうも銀行側と証券側の挟み打ちに遭ってしまって、どっちにも偏れないということで、足して二で割るといったような印象を受けるのです。これは後からいろいろ指摘してまいりたいと思うのでありますが、そういうきらいはございませんか。どうですか。     〔粕谷委員長代理退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  117. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは銀行局長、証券局長両方おりまして、私は決して足して二で割ったわけじゃないのです。もともと銀行には、銀行法の中で証券業務をやれるんだというようにおれたちは読んできたんだ、おれらの業務だ、元来の業務だという考えがあります。証券会社の方はそうではなくて、銀行はやってないんだし、われわれは新しく証券業法というもので認められて、戦後ちゃんと別な法律でやって定着しておるんだから、おれたちの領分なんだ、一口に言えばそういうけんかなんですよ。  そこで、大岡裁きみたいな話かもしらぬけれども、確かにそういう有権解釈を銀行側がとってきたことも事実でございまして、だからといって、いままで表立ってはやったことはないのですから、それを銀行法の中で明文化したわけです。明文化したからといって、あしたからどんと一遍にやるというのではなくて、物には順序というものがあるから、ともかく長期物から少しやってごらんなさい、ディーリングについては後回しですよとか、それから、いつやらせるんだというので、いつやらせるといっても、これだけ国債が出回って借りかえという話にこれからなりますと、かなり実際は個人に持ってもらわぬと、私はちょっとだぶつくというように見ておるのです。ところが、証券会社の支店というのは小さな町までびっしりあるわけじゃないし、金融機関といったらかなりの町までもありますから、そういうところで窓販をやるということは、非常に私はいいことじゃないかというように考えておるわけです。  しかしながらディーリングの問題については、これはまた別な問題なのでもっと後になりますよ、後というのはいつですか、それはともかく期近物の国債が出回るときだ、あと一年とか何年とかたったら、もうどんとともかく返さなければならない国債が出る、返し切れない、当然借りかえ、片一方では発行とダブるわけですから、そういうときまでには私はしなければならないのじゃないかというふうに考えておりますが、欲ばかりかかないで、まずともかくやってごらんなさいということを言っておるわけです。  ちょうど、後の御飯をそろえてくれなければ前倒しを食えないなんという話と同じで、まず召し上がってください、あとはあとでという話と同じようなことでして、これはまずはスタートさしてみたいと思っておるわけでございます。決して足して二で割ったわけではありませんが、いままでの歴史その他を調べて、どっちも多少不満だけれどもまあ現実的だというふうにやってきたつもりでございます。
  118. 戸田菊雄

    ○戸田委員 大臣の詳細な御答弁があったわけでありますが、どうもやはり私まだ納得できないのは、大蔵省として国債管理政策の基本姿勢が欠けているんじゃないかというような気がするわけであります。  たとえば、管理政策の各般の法律その他がありまして、時間がありませんから詳しくは割愛をしますが、たとえば管理政策の主なる内容、これは一つは新規発行する場合の国債の種類とか、満期債の借りかえの場合の発行、それから公開市場操作に際しての売買の対象等々の問題が管理政策の中にはあるわけですね。したがって、景気の調整とか財政金利負担の問題とか国債市場の秩序の維持の問題等々が、しぼってきますと通常管理政策の基本だと言われておるわけであります。  こういうものに対して、いま管理として、たとえば銀行で十年物既発債に限って認めておるわけでありますが、以下具体的に述べるたとえば国債の多様化政策、こういうことで中期債、二年、三年、四年、五年といった国債、あるいは割引国債、あるいは既発債以外の扱いたいものがいっぱいあると銀行はいま言っているわけですね。そういうものに対しても認めていないわけです。  だから、こういうものに対しては、いま大臣が言われますように、うまいものを何でも一遍に食ってしまえということでなくて、まず一つ食って、それからだんだんに拡大していきますよ、こうは言っておられるわけであります。そういうものに対して漸次拡大をして、これから認めていくという方向ですか。その辺はどうですか。
  119. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは、現実の窓販というのはやったことがないわけですから、まずそれをやってみてください、それで、割引債などについては、銀行はいままでは余り大量に発行することにはむしろ反対をしてきた立場にもあるわけです。だから急に、今度は自分の方がやることになったから、そいつも全部ふやしてよこせといっても、少し欲が深過ぎるのじゃないか。  それから中期その他の問題についても、一遍というわけではないが、われわれとしては前向きに考えています。
  120. 戸田菊雄

    ○戸田委員 さっき同僚議員も発言をしたように、これからも国債発行はさらに続くでありましょうし、大量発行に向かっていくという状況ですね。今年度が大体八十二兆円ぐらい、来年度、五十八年度は九十二兆円ぐらい、五十九年度になりますと約百兆円を超える、こういう状況。ずっと追っていきますと、さっき言ったように百六十兆円ぐらい、そして利払いが十七兆円もある、こういうことになって、いずれにしても拡大の方向に行くような状況だと思うのです。したがって、こういった国債増大に伴っての管理政策というものは非常に大事だと考えます。  大蔵省からいろいろな資料をいただきました。たとえば国債、地方債、公社公団債、事業債、金融債の五十六年度、五十七年度発行額、あるいは額面ベースでの国債残高の推移、あるいは普通国債発行額の推移、中期国債、長期国債の引き受けシェア、国債の市中消化額と日銀オペ額、あるいは政府短期証券の市中消化額、こういったものを全部資料としていただきましたが、これはもう莫大なものになっていくわけですね。  ですから、いま数字は時間の関係で読み上げませんが、こういうものに対して管理政策というものをよほど厳重にやっていかないと、これは大変なことになってしまうのじゃないだろうか。まさにそのことによって財政破綻ということになりかねない。したがって、今後の経済政策の最大の課題といいますか中心課題は国債政策にあるという気がします。そういう点について大臣はどう判断をしておりましょうか。
  121. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御趣旨のとおりでございます。
  122. 戸田菊雄

    ○戸田委員 きょうはちょっと持ってきておりませんが、大蔵省の担当課長が書かれた国債の経緯等について拝読をしたのです。名前をちょっといま忘れましたが、大蔵省のある課長が書かれたものですが、それを見ますと、戦前戦後通じてずっと一連の経過措置が載っております。  いま、この世界的な状況判断で、この点は大臣もどう判断されているかわかりませんけれども世界的不況、失業、各般の経済状況を見ますると、一九三〇年代、昭和六年、この辺の景気と、国内外ともにやや似てきているのじゃないだろうか。状況そのものもそのような気がします。当時アメリカでは、一九三〇年にはフーバー大統領、シカゴやニューヨークで職よこせその他でもって大変な状況に相なった。それでフーバー大統領が下がって、ルーズベルト大統領が就任した。それでニューディール政策というものを百十項目か何か決定をして、総体的な失業、インフレ等々の解決策に踏み出した。当時日本も日中事変勃発以前で大不況状態がずっとやってきた。こういう状況を見ますると、何か状況としては似ているような気がするのでありますが、これは大臣、認識としてどうでしょう。
  123. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は歴史をつまびらかにいたしませんが、今回の世界的な不況、インフレの混在の最大の原因は、何といっても安い石油が無制限に手に入るという中で築かれた経済が、ある日突如として石油が戦略物資になり、自由に手に入らない、それから値段が二ドル五十セントというものが急激にたった十年間ぐらいのうちに十ドル、十五ドル、二十ドル、二十五ドル、三十ドル、一時はスポットが四十ドルといったようなところまで行ってしまった。これは昔だったらかなり大問題になったんじゃないか。  日本にとっても去年一年間に、ともかく十年前に使った石油の量と去年の量とどっちが多いか、去年は二億五千何百万キロリットル、昭和四十七年ごろは二億七千万キロリットルぐらいだったと思います。やや減っている。減った中で十一倍ぐらいの金額を払っているわけです。余分な金と言ってはなんですが、一年間に余分なものを五百億ドルも払っておるということになれば、むしろ少ない量で十一兆円ぐらいの金を余分に日本国民は出しているわけです。ということは、十兆円戦争、一年間に戦費を十兆円使って石油戦争をやっていると言っても過言ではないのじゃないか。同じようなことを世界じゅうどこでもやっておられる。  その中で日本国民は、それを生産性とかいろいろなものによってカバーしたり節約したりしてやってきた。もちろん物価にもはね返ってきておる。だけれども、その中では、そういうような戦費調達に対するエネルギーというか才能というか、日本人が一番利口だったわけですね。ほかの国は生産性が悪いから、まともにインフレと失業をかぶっちゃった。だから世界じゅう同じような現象が起きて、一にかかってこれはもう経済の繁栄の母体になっておった石油が法外な値上がりをしたというところに原因があったというように思っております。  そこで、みんなが知恵を働かして、脱石油、脱エネルギーというような政策を始め、そうして石油の消費量がだんだん伸び悩みということで、この前の狂乱物価のようではなくて、売り惜しみ買いだめもなく、値上がりしてもむしろだぶつきぎみで石油卸業者でも小売屋さんでもいま倒産だとかいって騒いでおりますが、コストを乗っけて売れないというような状態にあることも事実。事実だけれども、一方は物価の方が鎮静してきて、世の中が何となくそういう点では落ちついておる、私はそう思います。
  124. 戸田菊雄

    ○戸田委員 いまのようなことで、日本は優等生、ある人に言わせるとそういう表現を使うわけであります。しかし、いずれにしても、このままでもって拡大持続体制をとっていくということになりますと、いまちょっと指摘したように、一八三〇年ですか、イギリスで初めて公債制度が始まって、それ以来第一次大戦に突っ込んだ。戦争でもってそういうものが全部解消されていっているのです。第二次大戦ではこれまたドイツなんか大変な公債発行でもってインフレその他に見舞われてこれもだめになる。第二次大戦が一九三三年、これもそういうところで切り抜けて、結局各般の政策ができなかった。いま日本も軍備政策で増強政策をとっておる、こういうことになっていきますと、たとえばドイツあたりは国家予算の二七%見当が軍事費に回る。日本の場合はGNPの一%以内ということで抑制はしておりますけれども、いまの姿勢からいけば、今後これがどんどん拡大される傾向にあるということになりかねない。膨大な国債発行されて、結局これは税金の前取りですから国民の負担になっていく、転嫁されるわけですから。  こういうことになっていきますと、どうもいまの状況からいって、さらに何年か後にはもうのっぴきならない、日本の軍備もどんどんミサイルその他近代兵器に切りかえられて金はかかる。それでなくても、いま特定の業界から、もう少し国家で軍備増強政策、何割やりなさい、せめてドイツアメリカ方式くらいに持っていけという声がないこともない。そういうことになって、そういう面に突っ込んでいったら大変危険な状況になってくるのではないだろうかという気が私はいたしますが、その辺の大臣見通し、見解についてはどうお考えですか。
  125. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 現在の国債は石油戦争の戦費調達であったという面もかなりあると私は思うのです。国民にかぶせるべきものをかぶせないで国が一部肩がわり、国民の側からすれば一時立てかえさせたということにもなるのでしょう、それが国の国債だから、石油戦争の戦費調達の一翼を担ってきたことは間違いないと私は思っています。  一方、国債発行してそれによって軍事費を調達したという御主張のようでございますが、なるほど確かに金に色目はありませんから、現金で取った分が社会保障に、借金をした分が防衛費にいったかどうかという区分けはありません。ありませんけれども防衛費というものは、本来理想的にはどこの国でもなければそれは一番いいのでしょう。警察もない方がいいのでしょう。監獄もない方がいいのでしょう。しかし現実問題として、独立国家として軍備を持たないという国はない、これも事実なのです。永世中立国スイスですら国民皆兵で軍備を持っているという現実。理想としてはない方がいい。現実としてはやはりないと不安でいられないという現実も一方にある。私としては、独立国家として日本がこれだけの経済大国になっておって、軍備は一切要らぬということはとうてい考えられない、やはり国力に相応した防衛費は必要であると思っておるわけです。  大体、鈴木内閣としては、当面GNPの一%以内の防衛費、その中でも、なるべくむだのないようにやってくれということでございますから、防衛費にブレーキがかからないと言うけれども、結局は、予算を通して内閣が文民統制するばかりでなく、国会が文民統制でコントロールするのですから、本当に軍備費が増大すると国民がみんな困るというときには、国民大多数の声を反映して困るという国会議員の数が多くなるわけですから、ブレーキはかかるわけですよ。だから、そういう意味においてはそう心配する必要はない。ただ、安易に軍備費を増大するということには私は賛成をいたしません。私は、必要最小限度のものでなければならないという考え方でございます。
  126. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間もなくなってきましたから、借りかえ問題について若干質問しておきたいのでありますが、私の計算でいきますと、これは大蔵省からも説明を聞きまして金額がはっきりしているわけでございますが、五十七年度が三兆二千七百億円、六十年度は六兆五千二百億円、六十五年度八兆九千二百億円、六十九年が十二兆六千億円、これは元本だけですから、これに利払いが加わってくると思うのでありますが、こういうふうに大きくふくれ上がっておるわけです。こういった借りかえをどうするかということです。それからまた、そのルールについてはどういうふうに考えておられるか、この点についてまずお答えいただきたい。
  127. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 国債の借りかえ問題でございますが、私ども考え方といたしましては、昭和六十年度から大量発行償還期、長期国債、中期国債、五年割引国債、それぞれの種類の国債について償還期が来るわけでございますが、中期国債と五年割引国債については大体同じ種類の国債で借りかえていこう、中期債は中期債、割引債は割引債という考え方をとっております。  問題は長期国債でございまして、十年物の国債償還に際して、これをどういう形で借りかえていくかというのが一番むずかしい問題であると考えておるわけです。一つ考え方といたしまして、シ団にお願いして乗りかえる乗りかえ発行という考え方もございます。しかし、これはシ団がうんと言うかどうかという問題がございます。これは今後シ団と十分協議していかなければならない問題であると思っております。  それからもう一つ、長期国債を必ずしも長期国債でなくてほかの種類の国債に借りかえるという考え方もあるわけです。と申しますのは、借りかえと新発債の違いは、借りかえの場合はすでにだれかが国債を持っておりまして、償還いたしますと、その償還資金が国債の保有者に散布されるわけでございます。国庫の立場から申しますと、国債の保有者に償還資金が渡るわけでございます。したがいまして、そのお金を何らかの形で再投資していただければ借りかえが円滑にいく、こういうことになるわけでございます。そうしますと、再投資を促すために投資家のニーズに即した国債を出していく必要があるのじゃないかという考え方もあるわけでございます。そういった意味で短期国債発行というようなことも一つの検討課題ではないかということで考えておりますが、いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、昭和六十年度以降の大量の借りかえに対して、どういうふうに対処していくかということでさらに検討を続けてまいりたい、このように考えております。
  128. 戸田菊雄

    ○戸田委員 五十五年十二月に借換懇談会というものを開きまして、いま局長がおっしゃったような六十二年までの借りかえ分については一応決定している、こういうことですね。  しかし、その後の問題についてどうするかということを今後検討する、ここまでは懇談会で一応意思決定しているだろうと思うのでありますが、それに加えて、日銀や政府で保有している国債の借りかえ、これも同じ時期にほとんど集中してくるわけです。それからもう一つは、金融機関保有のものあるいは個人、企業等々のものも大体この時期に集中してくるような状況になるわけです。こういうものについてはまだ検討はなされておらないわけですか。この問題はこれからどう取り扱いますか。
  129. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 日銀と運用部が保有している国債がかなりございます。これの借りかえにつきましては、私ども考え方としては全額借りかえをする、資金運用部の場合は、資金運用部の金繰り等もございますけれども、基本的な考え方としては全額借りかえをしていくということであろうかと思います。  それから、金融機関等が保有している国債の借りかえにつきましては、先ほど申し上げましたように、中期国債とか割引国債につきましてはそれぞれその種類で借りかえる、それから十年債につきましては、どういうふうにするか今後シンジケート団とも十分協議しながら内容を決めてまいりたい、このように考えております。
  130. 戸田菊雄

    ○戸田委員 これらの借りかえ分については完全にいま掌握されておるのですか。その点はどうですか。
  131. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 当然のことでございますが、国の債務でございますから、これは全部掌握をしております。  と申しますのは、国債発行の大部分は登録債になっておりまして、それぞれだれが保有しておるかということはわかっておるわけでございます。それから個人の保有しているもの等につきましては、若干本券で渡してあるものもございますが、これは証券会社等で保護預かりの形で、これはマル特の適用のために証券会社に保護預かりになっておるということでございますので、その所有の状況も私どもでわかるということでございます。
  132. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それはかつてはシンジケート団があって、そこで一括委託販売をしていくわけですね。いまは政府直轄販売をやっているのはほとんどないだろうと思うのですが、そういうことになって、ちょっと時間がなくなりましたからこれは読み上げませんが、銀行のシェアあるいは生命保険会社その他いろいろこういった資料がありますが、いまはどうでしょう、個人の消費拡大と言っているのではないでしょうか。そういうものの中で完全に捕捉できるという状況にあるわけですか。その辺はどうですか。長期、短期、各般の問題が、いろいろな種類も多いでしょう。そういうものを証券局で全部掌握されていますか。
  133. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 こういうことだと思います。  たとえば個人が国債を持っておるという場合に、これは保護預かりの形で証券会社に寄託をしておるというのが通常の場合でございます。そこで、借りかえの時期になりますと、これらの個人が保有している国債につきましては全額現金償還されます。個人の持っておるものをそのまま借りかえるということはないわけでございまして、個人が持っておる国債は全部現金償還されまして、それと同時に借換債が発行されるわけでございます、国債整理基金で。その借換債をどういう形で発行するかということになりますと、それは必ずしも従来のシ団の十年債方式でやるかあるいは借換債その他の種類の国債を出すかというのは今後の検討課題であるということでございます。
  134. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それからもう一つ、証券局長、これは主計局次長になりましょうか、借りかえに関連して、今度新型の短期国債発行の構想があるというのですが、これはどうですか。一月二十九日の日経でいろいろと説明されているのですが、その資料を持っておるのですが、ちょっと割愛しますけれども
  135. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 これは先ほどもちょっと申し上げましたが、借りかえの際に国債の保有者が円滑に再投資をしていただくような投資家のニーズに合った国債を出すということが一番ポイントではないかと私ども考えておるわけでございます。国債償還されましてお金が戻ります、そのお金は遊ばしておくわけではないんで、必ず何らかの再投資をいたすわけでございます。  したがいまして、その再投資に適した、ニーズに合った国債を出す必要があるのではないかということで、私どもとしては、現在長期国債、十年債とか、あるいは中期国債で二年とか三年とか出しておりますが、それに加えて、たとえば一年未満の国債というようなものも出すことを考えたらどうだろうかということで、一つの検討課題として申し上げたわけでございますが、その内容等につきましては、今後六十年度から始まる大量借りかえを目指して私どもとしてはまだもう少し研究を重ねたい、このように考えております。
  136. 戸田菊雄

    ○戸田委員 その場合に、政府の短期証券等との競合があるんじゃないかという気がしますが、その辺は心配ありませんか。
  137. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 現在、私どもは国庫の金繰りのために大蔵省証券というものを出しているわけでございます。これは年度内に償還されるという形をとっておりまして、いわば金繰り資金として大蔵省証券を出しているわけでございます。  いま私が申し上げましたいわゆる短期国債と申しますのは、借りかえのために償還財源を調達するためのものとして発行を考えたらどうだろうかということで申し上げたわけでございまして、若干種類が違うわけでございます。片方は全くの金繰り資金、年度内には返さなければいかぬ、こちらは要するに償還財源に充てるものとして出したらどうだろうか、こういうことでありまして種類が違うわけでございます。  ただ、仮に将来そういった一年未満の短期国債が公募入札で発行されるということになった場合に、現在出しておる大蔵省証券が現在のままの姿でいいのかどうか。これは、御案内のように日本銀行が大部分を引き受けておるという形で行われておりまして、これは性格から言えば一時借入金といったような種類のものでございまして、仮に将来そういう新しい国債が出てきた場合には、この大蔵省証券のあり方についてもやはり何らかの検討も加えなければいかぬのじゃないかというふうに考えております。これはやはり将来の一つの研究課題だということで御理解をいただきたいと思います。
  138. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間がなくなりましたから、あと二問ほど質問をして終わりたいと思うのでありますが、金利の自由化について、現在人為的に金利が決められているものは十年国債あるいは政府短期証券、銀行の預金金利、自由金利は二年、三年もの中期国債、手形、コールの金利など、短期性のものが自由金利の方向に向かいつつあるわけでありますが、こういった政府発行国債を人為的金利と自由金利、こういうものを分けている根拠というものはどういう理由でしょうか。  それからもう一つは、二年ほど前でありますが、国債の値下がりで銀行等が評価損を大分出したときがあるわけですね。今後も同じ問題が起きるのじゃないかという心配があるわけでありますけれども、こういったものに対してよほど注意をしませんと、ことに、単に市中銀行のみならず個人にも大量に販売をされていっているわけですから、国民そのものにも損害を与える、こういうことになっているわけですね。  それで、若干の金利の動向、推移というものを資料でいただいたのですが、これだけはちょっと説明をしておきたいと思うのでありますが、「国債、政保債、地方債、事業債、金融債の最近の条件改定状況」ということで、これは国債十年ものでありますが、二年前の五十五年十二月、これは八%でしたね。ところが五十六年の五月七・六、五十六年の六月七・六、ようやく五十六年の九月にいって八%に復元、五十七年の一月へきて七・七%。政保債においても大体〇・一%高いようでありますが、五十五年十二月に八・一%が五十六年五月は七・七、六月が七・七、こういうことで、これはやや近似数でありますけれども、以下それぞれダウンした、こういう状況があって、若干の損が出ているような状況があるわけですね。  だから、こういうものについて十分これから考えていきませんと、個人のものに対しても同様の損害、こういうものが出ていくのじゃないだろうか、こう思いますから、その辺に対して一体どう考えておられるか。そういう二つのいろいろな分割金利がありますけれども、私は、最終的に自由化の方一本で今後やっていくべきじゃないだろうか、こう思いますが、最後の点については大臣にもひとつ回答を願いたいと思います。
  139. 吉本宏

    ○吉本(宏)政府委員 現在、国債発行形態といたしまして中期国債と十年債が中心であるということを申し上げましたが、中期国債は公募入札で発行しておりまして、これはまさに金利が自由化されておると言っていいかと思うわけです。それから長期国債は、先ほど御指摘になりましたように金融情勢等を見まして適時に調整をいたしておりまして、私どもとしては、市場実勢に即して弾力的に条件を決定しているというふうに考えているわけでございます。  それなら、金利の自由化を一段と促進したらいいじゃないかという問題があるわけでございますが、これは国債発行、消化一つをとりましても、かなり巨額のものを出しておるわけでございますから、これを全部市場で公募発行するということは実際問題としてなかなか困難であるということがございます。月に一兆円と申しますと五十億ドルを超えるわけでございますね。どれだけのものを単一銘柄で発行しておるような市場は世界どこにもございません。したがいまして、やはり現在のシ団方式、シンジケート団を中心として円滑な国債消化をやっていく、発行条件は適時適切に弾力的に変えていくというのがいいんではないかというふうに考えているわけでございます。  それからもう一つ、評価損のお話がございましたが、評価損の問題は、国債が相場商品である以上はなかなか避けられない問題でございます。したがいまして、私どもとしては、国債投資をしていただく場合に、その国債という商品はやはり価格が変動するんだということを投資をする方によく理解をしていただかなければいかぬというふうに思っているわけです。仮に価格の下落というようなことがあれば、これはできるだけ満期まで持っていただく、それでもなかなかむずかしいという場合には国債担保金融というような道もあるかと思いますので、そういうことで、できるだけ安定的に保有をしていただくというのが適当なんじゃないか、このように思っております。
  140. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいまの理財局長からの話で尽きておると思います。  金利は、国債だけでなく銀行金利やなんかもつながっておりますしね。銀行金利等も自由化とかいろいろ言われておりますけれども、郵便局というまた別なところがあって、国民貯金の三分の一を持っておるというところの兼ね合い、大銀行と中小銀行との格差、いろいろございますから、一挙にはなかなかできない問題ではないか。余り混乱をさせても困りますから、現実は。そういうようなものを見ながら、混乱させないような形で弾力的に考えていきたい、そう思っております。
  141. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 関連質問の申し出がありますので、これを許します。大島弘君。
  142. 大島弘

    ○大島委員 同僚議員並びに委員長の了解を得まして、この前の私の質疑に対する大臣の答弁がはなはだ私として納得いきませんので、もう一遍改めて問いたいと思うのでございます。  あらかじめ質疑通告はしておりませんけれども、この前の質疑と同じ内容でございますので、道路財源あるいは貨幣回収準備金財源、こういうものと、いまこんなに景気が冷え切っているのに一兆円を国民の減税に回すのと、どちらが大事かということを私はこの前お伺いしたのです。  ところが大臣は、どちらも大事だ、こう言われまして、時間が切れましたのでそのまま質疑を打ち切りましたけれども、その道路特定財源あるいは貨幣回収準備金をいまそのまま道路に使う、貨幣回収準備に使うということと、いまこれほど国民が熱望している一兆円財源に使うのとどちらが大事かということを、どちらも大事だという答弁では私は納得できないと思うのです。それをお答えいただきたいと思います。
  143. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大島議員の質問は、一つは道路財源を一般財源に回せということであります。  われわれも、できれば短期間、財政再建期間でもいいから何とかそういうようにしてもらえぬかなと思っておるのですが、これはいきさつがいろいろありまして、なかなか御了解が得られない。それからもう一つは、むしろ公共事業をふやせと言われている中で、それじゃ国債発行してこれをやっているというのに道路財源だけでは足らぬじゃないか、人に回すどころの騒ぎじゃないよというような理屈もあるでしょう。しかし、いずれにせよ特定財源が余り硬直化してしまうということはおもしろくないので、そういう点は大蔵省だけでこれは自由にならぬわけです、気持ちはあっても。ですから、弾力的に、年限を切ってでもいいから何とかやってもらえないかという努力はしていきたいと思っております。  それから貨幣回収準備資金、これの問題も前からも出ておりますが、いままではともかく無制限に発行してはいかぬからということで、それに見合ったものを積み立てさせているということでございますが、そういう国はないじゃないか、日本とどこか、ベルギーとかしかない、これも事実なんです。しかしながら、いままではいままでの意味があったけれども、全体の通貨数量の中におけるシェアがうんと小さいとか、いろいろあるでしょう。ですから、これは発想の転換がなければならぬわけで、ただそれを、一兆円減税をやっているんだから、一兆円減税の資金として向けろというのには、ちょっと私は納得いかないのです。それは一遍使ってしまえば、それだけで終わりという話ですから、戻し税とかなんとかいって一回だけで、後はまた昔に戻るんだよということと違って、減税という場合には、ことし減税すれば来年も再来年もずっとというお話でございますから、その財源として適当であるというふうには考えておりません。ただ貨幣準備資金というもの、仮にそれじゃ財政に穴があいちゃって、ともかくほかにどこからもなかなか、そんな増税というわけにいかぬじゃないかというような新しい議論が出てきたときには、またそれはどうなるのか、これからの話でございますから、私は、決して固定観念だけで対処するつもりはございません。
  144. 大島弘

    ○大島委員 最後にもう一点だけ。  本予算が一のぜん、公共投資七五%前倒し、これが二のぜん、それから三のぜん、これが秋の大型補正予算、この前私はこの質問をいたしました。それで、一のぜん、二のぜんの板前を雇っている。しかし三のぜんの、いわゆる秋の大型補正予算の板前はまだ雇っていないとつい二、三日前に大臣は答えておりましたが、いま現在どうですか。
  145. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 正確に言えば、板前はここにいるのですよ。次席の板前はいます。板前はいるのですが、ただ材料を買うお金がないので、三のぜんの材料を買うお金をどこから生み出すのかという問題、ツケにするのかどうするのか、そういうようなことが決まっていないので、いまのところは何とも申し上げませんが、ともかくせっかく病状回復のためにやるわけですから、病状が回復してしまえば、そのままお休み願ってもいいのだし、回復しないときにはまたお食事を差し上げなければならぬかどうか、もう少し先になってみないと、その金額、数量等についてはまだ断定的なことは申し上げられない。六カ月も先の話ですから、非常に世界経済は激動目まぐるしいということも考えていただきたい。ただ、衰弱するようにはしないということだけは申し上げたいと思います。
  146. 大島弘

    ○大島委員 終わります。
  147. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 戸田菊雄君。
  148. 戸田菊雄

    ○戸田委員 では、時間ですからこれで終わります。ありがとうございました。
  149. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 柴田弘君。
  150. 柴田弘

    ○柴田委員 私は、きょうは財政再建の問題を中心にして御質問をいたしたいと思っておりますが、本題に入る前に大臣、先ほどのお二方も御質問になりましたグリーンカードの廃止あるいは延期の問題であります。  きょうの新聞を見ておりますと、きょう自民党の方は役員会あるいは総務会を開いて決定をする、こんなような報道がなされておったわけでありますが、一方においては総理大臣、大蔵大臣は、委員会等々で、予定どおり五十九年に実施をする、こういうことであるわけであります。いやしくも一国の総理が国会において、予定どおり実施をする、こういう明言をした以上は、私は、その党総裁の意思に反して、まさか自民党内でグリーンカードの廃止、延期の問題について党議決定はなされ得ないであろう、こんなふうに思っておったわけでありますが、どうもそうでもないようであります。  また、新聞の報道によりますと、どうもこの問題についてはすでに総理が内諾を与えているというふうな書き方をしておったわけであります。もしそうであるならば、これは国会において表面的には実施をすると明言をしておきながら、裏においてそういった内諾を与えている、これは国民に対する背信行為にもなってまいりますし、またひいては私は、内閣の不信任の問題にもつながってくるのではないか、こんなふうに憂慮をいたしているわけでございますが、その辺について、まず、このグリーンカードの問題について大臣の御所見をお伺いをしてみたいわけであります。
  151. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 総理大臣が内諾を与えているという事実は、私はないと思います。少なくとも大蔵大臣の私がしょっちゅうそばにおって、いろいろな話を聞いておるわけですから、私の知っておる限りでは、そういう事実はございません。  それから、このグリーンカードをどうしてつくるようになったかというと、御承知のとおり、これは総合課税移行ということからスタートをしたわけです。そのためには、特に非課税貯金がわからないで、これが乱用されたのでは非常に困る。大体三百三十七兆という個人の貯蓄残高の中で、これは正確な数字ではないのですが、課税ベースから推計をした大蔵省の内々の数字ですから、ここでしゃべることはまずいかな、これは内々の数字で、推計によるもので余り正確だということは申し上げられない。それから、集計の時期が多少ずれがあるものですから、十二月とか三月とか六月とか、ずれが少しありますから、この数字はぴたっと一律に十二月で並んだわけじゃないのです、数字が出ませんから。十二月の分は出たものもあるし、出ないのもある。  そこで、三百三十七兆八千億円、これはいいのだけれども、その中で郵貯、マル優等が、郵貯が五十六年の十二月末で六十七兆、マル優が実は五十六年の三月で百七兆とかいうようなことで、特別マル優が六月で五兆八千億、財形貯蓄が四兆三千億とかということで、これをずっと並べて推計してみると、大体非課税貯蓄というのが百八十兆か百八十五兆か、それくらいあるのじゃないか。課税貯蓄というのは大まかに言って百兆円、そのうちの総合課税分というのはやはり七十兆円くらいかなというところなんですね。大ざっぱな見方です。まるっきり根拠がないわけじゃないのですよ。課税ベースから類推して計算しているわけですから。  それだけ大きなものがあって、去年は、みんな可処分所得がない、何がない、貧乏してしまったという話なんだが、大体三十五兆円個人の貯蓄がふえた。そのうち、郵貯のように七兆五千億ふえたとか、これははっきりわかっているわけですね。マル優が十二兆ふえたとかいうのはわかっているのだけれども、全部そういう非課税貯蓄というものをずっと類推すると二十兆から二十二兆、まあ二十二兆前後ですな。一年でどんと二十二兆ふえるということになれば、国民一人二十万円という話ですかね、一億一千万人だと。そういうふうにふえるというのですから、金はうんとあるのだけれども、皆非課税のところにばかりどんどん来てしまうのですね。そして分離課税などというのは、総合課税をやるよやるよと言っても二兆円ちょっとぐらいしかふえないのじゃないか、どうもそういうことらしい。そうすると非課税のところにばかりいってしまう。これは乱用されているという実態ではないかという気が私はするのです。  したがって、こういうように非課税という制度を置く以上は、グリーンカードというよりもゴールデンカードじゃないのか。カードを持っている人だけは特権的に九百万円まで非課税です。ですから、これは決していやなものではなくて、庶民大衆にとっては福の神カードじゃないのかな。そして、それ以上のものについては総合課税ということです。しかしながら、ともかく総合課税をやっている国で、税率が七五%などという国は世界じゅうの先進国にないわけですから、やはり世間並みにするのだから、税率もどんと落として世間並みということが筋ではないかということを私は持論として言ってきたわけであります。  したがって、グリーンカードというこの中身を知らないで騒いでいるのが多いのじゃないか。実は二日ぐらい前に、大阪のテレビ朝日というのがありまして、それで私の家へ来まして、議員宿舎で私と大衆との実況放送をやったのですよ。そこで三百軒の家に電話を無差別に頼んで、そこでいろいろぽんぽんぽんぽんとやるのですが、グリーンカードに関心のある人は手を挙げてごらんと言ったら、やや関心がある、関心があるということで、九割なんですね。関心がうんとあるという人は約四割なんです。九割の人は関心がある。関心がないというのは一〇%なんですね、三百人の各家庭につないでボタンを押させたら。  ところが、私が五つの質問をしたのですよ。百万以下の人、百万から三百万持っている人、三百万から五百万の人、五百万から一千万の人、一千万以上の人、そして一のボタン、二のボタンといって押してみろと言ったら、百万以下というのが三五%もあるのですね。三百万以下というのは半分以上あったな、ちょっと忘れたけれども。金を持っていない人が何でグリーンカードにそんなに関心があるのかね。ちょっと私はそこのところがおかしいのですよ。持っているのを、テレビに出したらわかってしまうと思って隠したのか、あるいは持っていなくても本当に関心があるのか、何が何だかわからなくて、グリーンカード、グリーンカードとみんなが言うものだから、名前だけ覚えていて押したものか、そこら辺のところは深く掘り下げていないからわかりません。わかりませんが、私としては、グリーンカードというのは何が何だかわからない、ともかく貯金高を調べられてしまうぐらいに思って、百万以下の人まで関心ができてしまったのではないかという気も実はなきにしもあらずなんです。  ですから、これはまだ時間がある話ですから、一年も二年も先の話ですから、もっと国民に知らせる。国民がよく知らないというところで余り軽挙妄動されても困るのです。経済というものは知らなくたって、軽挙妄動したら何兆円という金がどんと動きますからね。だから、そういうようなことで、まず安心感を与えるということが先決問題であるということで、積極的にこれは考える。  それからもう一つは、うんと持っていて取られてしまうという気になれば、それはどこかに逃げますよ。ですから、取られるものじゃないのですよということをもっと知らせてやる必要がある。やはり水は高い方から低い方に流れていくし、預金は金利の安い方から高い方に流れていく、これは自由主義の原則ですね、片一方は物理学かもしらぬけれども。そこら辺のところで何か工夫をして、もっと安心できる方法等があるのではないか。国債というのは無税だということを知らない人がいっぱいいますから、国債ももう少し、御用金調達ということが言われますけれども、こういうものについてももっと工夫をすれば、この問題は円満解決というところにどうもなりそうだと私は思っております。まだこの親方とは会談をしてみないので実際はわからないのです。
  152. 柴田弘

    ○柴田委員 いまのいろいろおっしゃったことは、自民党の見直し論者の人とよく話をしていただければと思うのです。  いま大臣もおっしゃいましたように、もともとグリーンカード制というものは、税金には不公平があってはいけないからそれを是正していくというのが目的である。しかし、いま一つの目的は、高額所得者の税金逃れあるいは所得隠しというものがひどいということで、これに歯どめをかけていく、そして公平な是正をしようというねらいもあったというふうに私は思います。  そこで、このグリーンカードを一度決めたわけでありますが、しかしいろいろなマイナス面が出た、だから見直そう、これは一つの対応かもしれません。しからば、そういった税金逃れ、所得隠しがそのまま見逃されていいかという問題がいま出てくるわけであります。ごく一部の金持ちを守るために立法府の見識を捨てていいか、反対論なり見直しを言う場合には、せめて所得隠しの対策を示してからグリーンカード制の改定の問題というものを言うべきではないか、こういうふうに考えるわけであります。現実に大阪国税局の調査によっても、約七百社の中小法人の隠し預金が七十五億円にも上っている、半数以上が架空口座であった、こういうことであります。こういった実態というものをどうしていくかということの処方せんを示した上で、反対なり導入阻止あるいは延長ということを言うべきではないかというふうに私は思います。そうでなければ、現在の税の不公平感を持っている国民からの共感というものは決して得られない、こんなふうに思うわけでありますが、簡単で結構ですが、大臣、御所見はどうでしょう。
  153. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 簡単に言うと、私もおおよそ同じような考え方であります。
  154. 柴田弘

    ○柴田委員 そこで国税庁にお聞きしておきますが、最近の、ここ数年で結構でございますが、あなたの方の査察の実績から見て、所得税、法人税の脱税事例におきまして、脱税資金というのは一体どういう形で隠匿されているか。特に架空名義、無記名等の預貯金のケースをとっている場合があると思いますが、その辺の実態はどうでしょうか、御説明をいただきたい。
  155. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 先生御指摘の査察事件の内容でございますが、五十五年度の実績で見てまいりますと、告発をいたしましたのが百六十七件でございます。このうち、利益の留保形態でございますが、一番大きいのがやはり預貯金でございまして、推定でございますが、全体の三割ぐらいという感じでございます。そのほか有価証券、不動産、その他はもろもろでございます。  このうち、預貯金の内訳でございますが、申告その他で公表いたしております預金以外のいわゆる別口預金の内容でございますけれども、残高で見てまいりますと、全体では百四十八億円でございます。そのうち仮名預金が大体全体の六五%、それから無記名預金が二二%、仮名、無記名合わせて八七%という状況でございます。ただ、これは特に悪質なケースだけ取り上げましたので、全体といたしまして預貯金の架空、無記名の状態がそれほど悪化しているということではないかと思っております。
  156. 柴田弘

    ○柴田委員 こういったケースで、昭和五十五年度で仮名預金が九十五億七千三百万円あるわけですね。朝日新聞を見てまいりますと、先回の大阪国税局の例は、銀行員が積極的にこういった役割りを演じている、こんなふうに書いてあったわけでありますが、そういった事実はあるのかどうか。
  157. 岸田俊輔

    ○岸田政府委員 お答えいたします。  仮名、借名預金等につきまして銀行員等が何らかで関与をしております疑いのあるケースが全くないとは言えないと思っております。最近の事例でございますが、銀行員が自分の親戚の名義その他で定期預金を設定させたような事例も見られておるような状況でございます。
  158. 柴田弘

    ○柴田委員 銀行局長にお聞きしていきます。  銀行に対する指導、銀行検査があるわけでありますが、たしかその一項の中にはこういった仮名預金に対して、ないように、こういった検査もありますし、当然局長の通達が出され、各金融機関も自粛をしているということでありますが、現実は所得隠しに架空名義の預金が使われ、しかも、それにいま国税庁の方からお答えがあったように、積極的な役割りを演じている場合がないことはない、あるわけでありますね。銀行局としてはそういった検査をやられておるわけでありますが、実態はそういったことであるわけでありますね。やはりこれはちょっと考えていただかなければならないと私は思います。後を絶たないわけでありますね。どうでしょうか。
  159. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 先生御指摘のとおり、私ども銀行検査をいたしますときに、臨店いたします。そこで実際に調べまして架空名義預金みたいなものが発見できることもございます。それからまた、自主的に良心的に架空名義があるかどうかを申告しろというようなことで実態把握にも努めておることもございます。あるいは国税庁の方から御指摘をいただく場合もあるわけでございまして、私どもとしては、まことに遺憾であると考えております。  架空名義預金というのは、財産の隠匿とかあるいは脱税等不正な意図に利用されることが多いわけでありまして、また、これを受け入れます金融機関にとりましても、適正なる事務処理という点からいきましても、非常に支障を生ずることが多いのではないかということでございまして、行政面と検査面両方にわたりまして監視をいたしておるわけでございますが、行政面といたしましては、いずれにいたしましても、こういうようなことは根絶を期するということを基本方針といたしておるわけでございます。昭和四十二年十二月には各金融団体に対しまして本人名義以外の名義による預金等はこれを受け入れてはならないというふうな指導もいたしておるわけでございます。金融団体におきましても、それを受けまして架空名義預金というのは受け入れてはならないということを徹底させるように努力いたすと同時に、全店舗に掲示をいたしまして、本人名義でもって預金をしてもらいたいということを店頭掲示いたしておりますし、四十七年十二月にはさらにその店頭掲示のポスターの全面改正を行いまして、より一層の自粛をさせたわけでございます。  また、検査等によりましてこれがわかりました場合には直ちに是正措置をとるというようなこともやらせておるわけでございまして、特に金融機関が架空名義預金であることを知りながら受け入れる、あるいは先ほど御指摘のような、金融機関の職員が勧誘するというか勧めるというふうな悪質な場合には、担当責任者に厳しく注意を喚起するとともに、検査、示達書等におきましても、その是正措置及び再発防止の具体策について報告を求めるというふうなことなどもいたしておるわけでございます。  御指摘の点、重々よくわかります。さらに今後とも、一層金融機関に対しまして架空名義預金の廃絶ということに対しまして徹底を図るように指導してまいりたい、こう思っております。
  160. 柴田弘

    ○柴田委員 大臣、いまいろいろ国税庁と銀行局長に答弁をいただいたわけでありますけれども、脱税資金といいますか所得隠しが銀行あるいは金融機関の架空名義の預金ということでずいぶん隠されているという事実があるわけであります。各年度ここ五年の数字を見てまいりますと、大体百二十億から百四十億程度といった預金があるわけであります。ですから、先ほど申しましたように、こういった脱税という社会的な不公正というものを正していくということが一つのグリーンカード制度導入の目的でもあるということですね。こういった点も、もっともっと国民の人に知らしていくということも必要ではないか、こんなふうに私は思うわけであります。  そこで、大臣に伺います。  いよいよ議員立法になってくるのかどうなるかということでありますが、閣僚の中にも、すでに松野国土庁長官は対策議員連盟の反対署名に署名をされた、中川長官もされるというようなことが報道されておるわけでありますが、これはまことに遺憾なことではないかと私は思います。閣内の不統一につながっていくのではないかというふうに思います。だから、担当大臣である大蔵大臣もこういった問題については何らかの自粛を求めて、閣内において改めて五十九年一月一日からのグリーンカード実施というものを申し合わせる必要がいまあるのではないか、あるいはまた自民党はということでありますから、政府・与党連絡会議等においてもそういった申し合わせば今後必要じゃないかというふうに私は思っておるわけであります。その辺の御意思というのはあるのかないのか。あるいはそんなことせぬでも、ちゃんと確信を持って予定どおりの実施がされるのかどうか。これは大事なところですからお聞きをしておきたい、こう思います。
  161. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、いままでずっと言ってきた私の持論に従って総合課税は実施したい、そう思っております。党の方がどういうふうなことを言っておるのか、党三役の話も聞いておりませんから、とても忙しくて、毎日国会にくぎづけでそういうことを聞く暇がないのですよ。ですから、これはもう特例国債でも早く上げてもらって、そして私はよく相談をしたい。  いずれにしても、仮に議員がどうのこうの言ったって、これは国会で法律が直らない限り動かないわけですから、自民党だけで国会をやっているわけじゃありませんから、法律と憲法に従うのは国務大臣として当然のことなので、最終的には国会で決める問題です。問題ですが、政府としては、このグリーンカードの変更について別に提案をする考えはありません。周辺整備については、私は、内容を聞いた上で周辺整備はしたい、そう思っております。
  162. 柴田弘

    ○柴田委員 周辺整備ということは具体的にどういうことですか、わからなかったのですが。
  163. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 環境整備でございます。
  164. 柴田弘

    ○柴田委員 環境整備とはどういうことですか。
  165. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは、グリーンカードが円滑に実施されて国民が非常に喜ぶような環境整備であります。
  166. 柴田弘

    ○柴田委員 いずれにいたしましても、そういった国民が喜ぶような環境整備をしていただきまして、ともかくグリーンカードは不公平税制を是正していくという税制改正でありますから、予定どおりの実施ということを私はお願いをしておきたいと思うわけであります。  それで次は、私は、「財政の中期展望」を中心にして、財政再建の問題についていろいろお聞きをしていきたいわけであります。  いまの時点に立って財政再建を考えた場合に、私は、一つ景気の問題、二つ目にはこの夏にあります臨調答申による行政改革の問題、三つ目には大蔵委員会の小委員会におきまして議論される所得税減税の問題、この三つが新しく迎えた局面ではないか、こういうふうに思うわけであります。  そこで、まず景気の問題、経済実態の問題からお伺いをしていきたいと思いますが、実質成長率は第一次石油ショック後、五十年から五十四年度までは大体五%台の成長を確保してまいりました。第二次石油ショック後の五十五年度は三・七%、五十六年度は政府の実績見通しが四・一%でありますが、昨年の第三・四半期がマイナス成長ということから三%程度の成長になるのではないか、こういうふうに言われているわけであります。五十七年度も政府は五・二%、こういうふうな見通しでおりますが、今日の経済の実勢からしてやはりむずかしい。民間でも大体三%台である、こういうふうに言っておるわけであります。ですから、仮に三%台の実質成長がわが国経済の実勢だとすれば、新経済社会七カ年計画の五・一%よりも相当低くなるわけでありまして、これは財政再建にも影響をしてくるわけであります。だから、この財政再建に向かってこうした経済の実態というものをどう見ていくかという問題が一つは出てくるのではないか、こういうふうに私は考えるわけでありますが、その辺の御所見はまずいかがでしょうか。
  167. 水野繁

    水野(繁)政府委員 五十七年度五・二%と見込んでいるわけでございますけれども経済全体の事情を申し上げますと、先ほど仰せられましたように、昨年の十−十二月期のGNP、QEで申しますが、これがマイナスでございましたので、非常に気分的にめいっている点があろうかと思います。それがマイナスでございましたので、おっしゃられましたとおり五十六年度は三%程度、四・一%は非常に厳しい、こういうことでございますが、足元と申しますか、経済の実態そのものは比較的堅調でございます。堅調というのは、非常に景気がいいという意味じゃなくて、これからずるずる突っ込んでいくおそれはないであろうというふうな見通しではほぼ一致している。しかしながら、おっしゃられました非常に高いエネルギーがあるかというと、そこのところはもう一つ世界の情勢、これからの国内の情勢などがございますので、必ずしもはっきりと言い切れる状態ではございませんけれども、いずれかと言えば、その足元に比べて気分の方がめいっている。したがいまして、今後、政府といたしまして公共事業前倒しを検討中でございますし、金利も長期金利を下げられるだけのものはそのときに応じて下げる、さらに、アメリカ金利も恐らく下がっていくであろうという見通し、それができますならば日本も合わせていくということで、できる限り景気を高いところに持っていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  168. 柴田弘

    ○柴田委員 それから、第二番目の行政改革の問題でありますが、この夏には臨調の第二次答申が行われる。来年三月には最終次答申が行われる。それで、これに基づいて行政改革が推進される、こういうことでございますが、大臣どうでしょうか、行政改革だけによって赤字国債発行を五十九年ゼロとすることが可能でしょうか。どう見ているでしょうか。
  169. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 行政改革というのは、歳出構造の見直し、それからいろいろな行政機構の縮小、そういうものは極力やらなければいかぬと思っておりますが、行政改革というのは、もう初年度から何千とか何兆とかと金がどんと出るという話じゃないのですね。それは長い目で見れば大変な財産、宝になりますが、初年度からどんと出るわけじゃない。ですから、これは五十七年、八年、九年というのはすぐ一、二年の話ですから、行政改革だけで三兆九千億ですか、そういうものがそれだけからすぐ出るとは思いません、そういうものも含めて。それから歳出の洗い直しも、ほかにもやるし、それから歳入の見直しもやるし、不用財産その他いろいろなものの売り払いとかそういうものも全部やった上で何とかやりたい、行政改革だけで、打ち出の小づちでざらざら金が出るとは私は思っておりません。
  170. 柴田弘

    ○柴田委員 第三点は、議長見解によって示された所得税減税の問題、これは今後大蔵小委員会によって検討されるわけでありますが、景気浮揚の問題あるいは国民生活防衛の問題、負担の公平化、こういった国民的な要求であります。だから、その実施が待ったなしの状況と考えておるわけであります。でありますから、減税実施の場合、財政再建とあわせて考えてまいりますと、代替財源あるいは経済効果などの検討が避けて通れない、こういうふうに思うわけであります。この辺の認識、簡単で結構です。大臣どうでしょうか。
  171. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 減税の問題についてはもう何百回も私はここで答弁をいたしておりますから、余りくどく申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、景気対策としての減税ということについては、私は、実は非常な疑問を持っておるわけでございます。
  172. 柴田弘

    ○柴田委員 これは後のつなぎで質問はしなければなりませんから、財政再建が迎えた新しい局面ということでいろいろと聞いておるわけです。  まあいずれにいたしましても、経済の実態、景気の問題、行政改革それから減税の問題というのは、今後財政再建を考えた場合にはこれは避けて通れない問題である。ですから、国民といたしましても、政府のこれに対してどう対応されるかという問題には、きわめて高い関心を持っていると私は思います。  そこで、いろいろお聞きしてきたわけでありますが、「財政の中期展望」について、いままでの質問してきた関連を踏まえてお聞きをしていくわけであります。  私は、かつてこの委員会におきまして、財政計画を策定しなさいということを質問いたしました。財政計画の策定というのは非常にむずかしい。しかし、財政収支試算では、これはただ点を線で結んだだけですから、これはだめだということで、五十六年度から「財政の中期展望」が提出をされている。これは個々の内容ではまだ問題があるけれども、私が思いますには、五十六年度の要調整額二兆七千七百億円をゼロシーリングすることによって、これを達成をされた。この点では私は大いに評価をしています。そういう点の中期展望は評価をしておるわけです。しかし、いよいよ財政再建、当面の目標もあと五十八年度と五十九年度の二カ年になった、こういうことで、この財政再建のために足がかりとなる「財政の中期展望」というのは改善を今後とも加えていかなければならない、できるだけ適切な推計方法を採用して改善をしていくべきである、こんなふうに私は考えております。  そこで、一つは改善の問題でありますが、景気の問題というものを、経済の実態に即したもので考えていかなければならない。ところが五十七年度の中期展望というのは経済計画が修正されたものとは言えない。たとえば五十七年度の要調整額が二兆七千七百億円、これを解消したのにもかかわらず、五十八年度の要調整額は三兆三千七百億円になっております。これは税収推計の前提となる経済成長率を昨年の中期展望では一一・七%と見込んだところに問題があったわけでありまして、また今回提出をされました中期展望においても、前提としている名目の成長率は九・九%、これも最近の経済動向から見れば高過ぎるわけであります。ですから、税収推計に当たってはもっと現実的な成長率を用いなければならない。確かに税収推計で積み上げることはむずかしいことはよくわかるわけでありますが、前提としている経済成長率が非現実的な点は問題ではないか、こういうふうに思うわけでありますが、一つ経済計画、これは改定の問題、現実的な成長率を設定すべきではないかという問題、それからいま一つは、経済の実態に合った税収を試算して、それをもとに論議していく必要がある、この二点を私は思うわけでありますが、この辺はどのようにお考えでしょうか。
  173. 矢澤富太郎

    ○矢澤政府委員 お答え申し上げます。  今回の中期展望で用いましたのは、御指摘のとおり、経済社会七カ年計画のフォローアップに基づく伸び率でございます。この時点といたしましては、このフォローアップの委員会におきましても多数の専門家が集まられまして検討された結果でございますから、政府の見通しといたしましては唯一最善のものであったというふうに私ども受け取って使っているわけでございますが、いずれにいたしましても、何年か先の経済展望は経済審議会等で専門家が集まって議論さるべき問題でございますので、それとは別個に私どもだけで単独で別の見通しを立て得るかということになりますと、大変自信のないところでございまして、むしろ経済企画庁等で適正な見通しを立てていただく、それに基づいて中長期的な税収の展望を計算していくということにならざるを得ないのではないかと考えております。
  174. 柴田弘

    ○柴田委員 それで大臣、これは所管外かもしれませんが、実態に即した経済成長率というものに合わせて経済計画を策定されなければならないし、それを根拠に税収動向において、その税収見積もりが経済の計画というものを根底とするならば、そういったものの改定も必要になってくると私は思います。所管外で済みませんけれども、その辺の御見解がありましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  175. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私も同じような考えなんです。それは大蔵省にしてみれば、成長率を高く見積もってもらえば要調整額は少なくて済む。しかし、現実にそれがぶつかったときに税金が入らなければ苦しむことは同じことですから、最初から入るものが少なければ少ないように歳出の方にメスを入れていく、当然のことだと私は思うのです。したがって、行革というものとも絡めて経済計画というものは、いま世界じゅう大激動の時代だから何年も先まで見通すといったって実際なかなかできない。アメリカだって、いろいろつくったって半年ぐらいでがらっと変えてしまうわけですから、そういうようなことになりかねない。けれども、新しい世界の秩序、情勢の中で考え直すことの方がいいのじゃないだろうか、経済企画庁でも国会が終わったら勉強するようなことをうわさに聞いておりますから、そんな方向に行くのじゃないだろうかと思っております。
  176. 柴田弘

    ○柴田委員 そこで、これは主計局にお聞きしておきますが、ことし出した中期展望、名目成長率が九・九、実質成長率が三%台ということで恐らく名目成長率も政府見通しの七%はむずかしいのじゃないか、まして九・九というのはあれじゃないか、こう言われております。  そういった中で五十八年度以降の要調整額というものを出されております。いよいよ予算編成の時期なのですが、いま大臣から答弁がありましたように、経済がそういうふうになってくれば要調整額が減ったりふえたりするわけですから、当然名目成長率がダウンしてくれば要調整額も多くなってくるのじゃないかと思います。来年の予算編成をする場合に、ことし一月にせっかく出された中期展望では用を足さないのじゃないか、こんなふうに思います。その辺はどう考えていらっしゃいますか。
  177. 西垣昭

    西垣政府委員 いまおっしゃったとおりでございます。  つまり、五十七年度中期展望というのは、五十七年度予算審議を控えまして、五十七年度予算歳出面では制度、施策を先に伸ばしていく、その時点における成長率と弾性値を使いまして歳入を見まして、歳出歳入の関係がどうなるかということをお示ししまして財政運営あるいは予算審議の御参考にしていただく、こういう性質のものでございます。しかし、これは一応の推計でございまして、そのとおりになるかどうかわからないわけでございます。要調整額一つとりましても、歳入が中期展望で示された以上に出ればその分だけ要調整額が小さくなりますし、それだけ歳入が出なければ要調整額が大きくなる、そういう性格のものでございます。  では、具体的に五十八年度、五十九年度予算はどうするかということになりますと、一番近い時点における経済状況財政状況を見まして、その時点でフレームをはじいてどれだけの調整が必要であるか、それは歳出でいくのかあるいは歳入の増加を何らかの形で図っていくのかということを具体的にそこで検討するわけでございまして、五十八年度予算について申しますと、いままでの例で言えば五十七年十一月時点での判断でそこは考えていく、こういう性質のものでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、もしも不幸にして五十七年度の経済状況が悪くなって、五十八年度の税収見込みが五十七年度中期展望ほどに出なくて、その結果要調整額が厳しいものになれば、予算編成はそれだけ厳しいものになる、そういうことでございます。
  178. 柴田弘

    ○柴田委員 五十八年度は、要調整額はいまの九・九名目成長率ではじかれて三兆三千七百億ですか。そうすると、名目成長率がダウンしてくるわけですから、その調整額でいいのかという問題、変更しなくてもいいのか、こういう問題です。その辺をお聞きしておるわけですが、どうですか。
  179. 西垣昭

    西垣政府委員 中期展望につきましては、私どもはローリングプランで改定を図っていくということで、五十六年度中期展望、五十七年度中期展望、それぞれ前提が違っております。そういった意味で、この次は、五十八年度予算ができましたときに、それを前提とした中期展望がつくられて国会に参考資料として提出する、そういうことになろうかと思います。当然その時点では見直しになります。  それから、五十八年度予算でどうするかということは、先ほど申し上げましたように、この中期展望から離れまして、その時点での経済事情等から五十八年度の税収見積もりを立てまして、それを前提として五十八年度の予算を作成する、そういうことでございます。したがって、現実に五十八年度予算をつくりますときにはこの中期展望から離れていく、こういうことになります。
  180. 柴田弘

    ○柴田委員 じゃ次に参りますが、中期展望の改善の問題の第二であります。  歳入面においていままで取り入れていなかった新しい事実ということで、一つは今後大蔵小委員会の場で減税の結論が出ます。これは当然財源対策の問題あるいは法改正の問題が出ると思うのですが、そういうきちっとした段階で中期展望に織り込んでいくということ、それから五十九年からはグリーンカードが実施されるということでありまして、これは当然増収に結びついてくるわけでありますが、そういった点もきちっとこの中期展望に織り込んでできる限りの改善をしていく、こういうことが必要だと思いますが、この辺はどうでしょうか。
  181. 西垣昭

    西垣政府委員 五十七年度中期展望におきましては、五十七年度の税収見積もりは成長率掛ける弾性値というような出し方ではございませんで、五十七年度に予定されております税制改正を前提として各税ごとの積み上げではじかれておるわけでございます。五十八年度以降はそういう手だてがございませんので、成長率と弾性値ではじくという機械的計算になっております。  それでは、五十八年度予算をつくるときの税収見積もりはどうなのかと申しますと、今回の中期展望の五十七年度に相当するものが五十八年度になるわけでございますので、これはそのときの税制改正も含めました各税日ごとの積み上げ、こういうことになるわけでございまして、仮定の問題として申し上げますならば、そのときに何らかの税制改正が行われるとしますと、それは当然織り込まれる、こういうことになります。
  182. 柴田弘

    ○柴田委員 同じく歳出推計でも、今後予定される臨調答申、この中に三公社の問題ですとか三Kの問題あるいは中央省庁の統廃合、補助金の整理合理化等々の問題が答申をされます。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕 それが法律になりいまおっしゃった五十八年度予算に反映されれば、当然これも今後中期展望に織り込んでいかなければならない、こういうように思うわけでありますが、この辺はどうでしょうか。
  183. 西垣昭

    西垣政府委員 おっしゃるとおりでございます。  五十八年度予算の中に取り込まれましたものにつきましては、臨調答申に入っているものも入っていないものも、とにかく五十八年度予算の前提となっております制度、施策ということで五十八年度は政府予算案ができるわけですから、それがそのまま乗りますし、それを前提とした五十九年度以降の歳出の推計は、それを将来に伸ばしたものとして当然それらのものを織り込んでいく、こういう考え方でつくられるものと思います。
  184. 柴田弘

    ○柴田委員 大臣、いま御答弁を聞かれてもおわかりと思いますが、今後の財政再建を考えた場合には、中期展望というのはできる限り適切な推計方法、そういった改善というものをしっかりして国民の合意を得るためにわかりやすくしていかなければならない。ですから、新しい景気の実態、経済の実態あるいは行政改革の問題、大蔵小委員会で結論が出る減税の問題、こういった問題は中期展望に織り込んで整合性のあるものをつくっていく努力をなされてしかるべきであると思いますが、総論的に言って大臣の御所見を中期展望についてお伺いしておきたいと思う。
  185. 西垣昭

    西垣政府委員 いま御意見がございましたように、毎年度の中期展望では、一番新しい時点に合わせましてつくっていくということで常に見直しを図っていくものでございます。  それから推計の方法といたしましては、先ほどからおっしゃっておられますように改善を加えるべきだ、私どもも、当然そういうものとして今後推計方法については改善の努力を払ってまいりたい、このように思っております。ただ、それを実行計画のようなものにしていくという点につきましては、これはなかなかむずかしい問題がございまして、そうはまいらない。私どもは、中期展望としてできるだけ精度の高いものにしていく努力を続けてまいりたい、こういうふうに思っております。
  186. 柴田弘

    ○柴田委員 次は、国債償還の問題についてお聞きをしていきます。  国債整理基金の資金繰りの状況、これの仮定計算を見てまいりますと、赤字国債は六十年度から急増し、六十五年度の七兆一千五百億円をピークとして、六十年から六十八年度までに三十八兆九千四百億円の償還が必要である。先ほども午前中議論をされておりましたが、大臣、ここでちょっとお約束をいただけるかどうかということでありますが、これはあくまで現金償還ということがたてまえになっておるわけでありますね。予算委員会では、たしか借換債の発行もあるかもしれないというような含みを持った答弁を大臣はなされたということでありますが、ここら辺はあくまでも現金償還をしていくんだ、こういうお考えであるのかどうか、ひとつ確認の意味でお聞きをしていきたいわけであります。どうでしょうか。
  187. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、六十年度以降まで大蔵大臣をやっておりません。したがいまして、いま言えることは、法律に決まったとおり政府はやる、ということは現金償還でやってまいりますということ以外はちょっと申し上げる方法はございません。
  188. 柴田弘

    ○柴田委員 そこで、六十年度以降の国債償還、それは先ほど来から議論が出ておりますように莫大な金額であります。仮定計算だけを計算してまいりますと、六十年度から六十九年度まで赤字国債だけで三十八兆九千四百億円、四条債、これは借りかえがありますが、百七兆三千五百億円、合計百四十六兆二千九百億円の膨大な金額になるわけであります。  それで、臨調の土光さんは、六十年度以降の国債償還も増税なしでいくんだ、これが行政改革の基本目標である、こういうふうに言っておるわけでありますが、六十年度以降の国債償還を増税なしで乗り切るということには、よほどの歳出の大幅な削減というものが必要であるわけでありますが、その辺はどうでしょうか。やはり増税なしで乗り切る、こういう御決意であるのかどうか、お伺いをしていきたいわけであります。大臣、どうでしょうか。
  189. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは、一にかかってそのときの経済情勢の問題になろうかと存じます。歳出カットが幾らできるか、これもやり方次第ですが、どうしても国民がそれだけの歳出を残せということになれば、それに伴う財源が必要なわけですから、そのほかに払っていかなければならぬということになると、なだらかにするのかあるいは何らかの、国債というものは税金の先食いみたいなものですから、税金で取って賄うべきものをどこからか借りて賄ったという話ですから、どうなるか先のことはよくわかりませんが、いずれにいたしましても、われわれとしては、歳出カットで結局行政の軽量化というものを図っていくということを最優先的にまず取り上げていく。それでもできない、どうしても歳出が必要だという場合は国民の選択の問題ですから、何らかの形でだれかが負担しなければならぬということにならざるを得ないでしょう。
  190. 柴田弘

    ○柴田委員 そうすると、一に経済情勢、それからもう一つ歳出カットでいくんだが、それができない場合は国民の選択の問題である、こういうことですね。そうすれば、やはり決意としては増税なしでいきたいということなんですか。経済情勢、国民のコンセンサス、そういった条件は設定して、こういった問題で増税というような問題もあるかもわからない。それの理解で、増税なしで乗り切るということは一口には言えるんだが、なかなかそう簡単にはいきませんよというのが大臣の御理解である、こんなふうに考えてよろしゅうございますね。  次は、国債の銀行か証券かということで三人委員会の結論の問題でちょっとお聞きをしておきたいわけなんですが、これは大蔵省の三月十一日の「銀行等の証券業務について」認可ですね、これについて発表はありました。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕  それで問題は、ディーリングの時期がいつかという問題です。それから中期利付国債、割引国債は「今後更に検討を続ける。」ということですが、一つは、これはいつかという問題が大きな関心事ではないかというふうに思います。私は思いますのは、ディーリングの時期は、ここにも書いてありますように「期近物国債が大量に出回る時期等を考慮」する、こうありますね。そういうふうに見てまいりますと、やはり五十九年度ぐらいからというふうに私は予想しているわけでありますが、そういう理解でいいかどうかということですね。  それからもう一つは、中期利付国債、割引国債、これは「発行額、落札の状況等を考慮し」こうありますね。果たして発行額、落札の状況はどうだろうということで見てまいりますと、五十五年度一兆七千四百億円、これは中期利付国債でありますが、このうち証券会社が八八%の一兆五千三百億円を落札をしているわけですね。それから五十六年度は二兆四千八百億円のうちの九〇%、二兆二千二百億円を証券会社が落札をしているわけであります。それから割引国債も三千億、これは全部証券会社にいっているわけですね。そうしますと、ここにそういった「発行額、落札の状況等を考慮しつつ、今後更に検討を続ける。」こうあっても、ここ数年の間、現段階ではやはり銀行の出る余地がないであろう。それは、先日の参考人の質疑においても、証券業協会の会長が、これはもう十分今後とも証券会社だけでやっていけるから銀行の出る幕はありませんよというような答弁をしていらっしゃったわけでありますが、そんなふうに私も考えるわけでありますね。  だから、ここに書いてあるだけでなかなかできないのじゃないか、そんなふうに思うわけでありますが、大蔵省としてはどう考えていらっしゃいますか。
  191. 禿河徹映

    禿河政府委員 二点お尋ねがございましたので、順次お答えをいたしたいと思いますが、第一の期近物国債が大量に出回る時期、それは五十九年度を示したものか、こういうお尋ねでございますが、いわゆる期近物国債につきましては、その期近という点につきまして実は必ずしも明確な定義があるわけではございませんので一概に言い切れませんけれども、三人委員会の結論でもございますとおり、ディーリングにつきましていつごろ結論を出すかについてのめどは、今後国債管理政策上の必要性とか公社債市場への影響等もあわせ勘案しながら、期近物国債が大量に出回る時期等を考慮しながら検討をいたしていくということになっておりまして、具体的な時期等につきましてははっきりしたことは示されてないわけでございます。ただ、仮に十年債につきましてその期近物を残存一、二年というふうにいたしますと、それが大量に出回る時期と申しますのは昭和五十八、九年ということになろうかとは思っております。  それから中期国債、割引国債についてのお尋ねでございますが、御指摘ございましたとおり、現在、中期国債につきましてはおおむね九〇%、それから割引国債につきましては一〇〇%というものを証券会社が入札あるいは引き受けの形で消化いたしておるわけでございます。実はそういう状況を踏まえまして今回の決定、来年の四月から窓販を行います対象を国債に関して申しますと十年ものの長期国債だけでまず認めていこう、こういうふうにいたしたわけでございます。  いまの消化状況は先ほど申し上げましたとおりでございますけれども、ただ、新規財源債のほかに期近物国債が出回ってくるようなときに借換債、大量の借りかえの問題というのも出てくるかと思います。そういう状況というものが今後あり得るわけでございますので、三人委員会におきましても、当面は窓販の対象を長期国債に限るけれども、中期国債それから割引国債の問題につきましては、今後の発行額あるいは落札の状況というものを考慮しながら今後さらに検討いたしていこう、こういう結論になったわけでございます。これにつきまして、いつからどういう形で窓販を認めるかということは、まさにそういう発行あるいは消化の状況、それによるところであろう、かように考えております。
  192. 柴田弘

    ○柴田委員 一つ、ここで関連でゼロクーポン債のこと、いま発売禁止になっておりますね。伝え聞くところによりますと、これは対外的な問題もあるので禁止もしていけないであろう、今月末をめどに金額を少なくして、二億ドル程度にして再開に踏み切ろう、こういったお考えがあるというように聞いたわけであります。このゼロクーポン債の発売の再開、これはどう考えていますか。
  193. 禿河徹映

    禿河政府委員 私ども、三月の初めにとりあえず販売を当分見合わせてほしいという要請をいたしたわけでございますが、その時点における状況を繰り返し御説明申し上げることももうないかと思いますが、その時点におきましても私ども、内外の資本交流の自由という大原則がございますし、それからまたゼロクーポン債だけがだめだ、いつまでもだめというわけにはまいらない、そういうことで、いずれかの時期にはその再開はまたしていただくことになろう、かように考えておりました。ただ何分にも、一月に一億五千万ドル、二月に七億八千万ドルという非常に過熱した販売状況でございましたものですから、その販売の各社の状況、これを調査いたしまして、さらに今後の賑売体制あるいは取り組み方というものにつきまして、現在各社からもいろいろ事情あるいは考え方というものを聞いておる状況でございます。そこのところがまだ私ども結論を得ておりませんので、いつからそれを再開するかということにつきましては、まだ時期のめどは率直に言って持っておりません。  ただ、申し上げられますことは、とりあえず見合わせていただいたという点からいきましても、何カ月も先まで販売自粛をさらにお願いするというわけにはいかないであろう、かように考えております。その際に、どういうふうなことであれば再開に踏み切るかということにつきましても、まだその結論を実は得てないわけでございまして、金額が一定の金額内だけであるならばいいとか、あるいはその時期は今月が終わればいいとか、そういうところまで実はまだ達しておらない、こういう状況でございます。
  194. 柴田弘

    ○柴田委員 では最後に私は、これは一つだけ大臣に直間比率の問題で。  いま三対七の直間比率を四対六ぐらいにしていこう、これはたしか大臣が参議院の予算委員会で答弁をされているわけであります。この直間比率、それはそれで私としても結構でありますが、一概に間接税を一〇%アップするということでは内容がわからないわけなんですが、いろいろやり方があると思います。所得税をそのままにして間接税を引き上げるという問題もありましょうし、所得税を減税して間接税を据え置くということもあるし、間接税を引き上げるという問題、いろいろあるわけでありますが、問題は、これはある新聞に書いてありましたが、五十七年度予算案をもとに計算をしてみると、直間比率見直し構想というのが四対六というふうに、間接税を一〇%上げると四兆七千四百億円の増税になる、こういうことであるわけでありまして、私は、直間比率を見直す場合に、やはりそのもととなる租税負担率というものを一定水準に保てなければ問題があるのではないか、こういうふうに思うわけなんですよ。  その場合に、大臣がこうおっしゃるには、一体どういう考え方でこのことをおっしゃっているのか。租税負担率をどう考えていらっしゃるか。あるいはそういった場合に、所得税減税を中心とする直接税についてはどうお考えになっているのかお聞かせをいただきたい、こういうふうに思っておるわけなんですが、どうでしょうか。
  195. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、余りむずかしい考えで言っているわけではないのですよ。仮に大幅の所得税減税ということになれば、その財源というのはない。日本はこれからますます社会保障費その他がふえていく。ふえていくときに七割の直接税だけで、これが七割五分、八割ということで所得税と法人税だけで支えていくことは不可能ではないですか。特に法人税というのは景気が悪ければどんと減るんだし、景気がよければふえるけれども、非常に不安定なものである。したがって、所得税が中心になって国の歳出を支えていくということになる。一方には、所得税も減税してくれという声も多い。  そういうことになれば、歳出を切るかどうかしかできないけれども、極力切ってはみても、社会保障なんというのは全体的に減らしていくということはできないのです、この制度を置く限りは不可能なんですから。なくしてしまえば別ですよ。だれもなくせという声はない。ということになれば、社会保障を安定的に保っていくためにも安定した財源が必要でしょう。そういうことになれば、所得税も減税してもらいたい、一方には社会保障を守ってくれということになる。とりあえずは所得税減税の財源としては、仮に大幅にやるとすれば、やはり間接税というようなものが、大幅にやるとすればですよ、手直しのちょこちょこしたものは別だけれども。そういうようなことがやはり本音で議論されなければ、所得税減税問題というのはなかなか言うべくして大きな所得税減税は実現しないでしょうという実態論を私は申し上げたわけでございます。  したがって、直ちに一年ぐらいで間接税のシェアを一〇%上げるんだという考えは毛頭持っておりません。あるべき姿としては、最低その辺までいったっていいんじゃないでしょうかという感じを申し上げたわけでございます。
  196. 柴田弘

    ○柴田委員 その場合に、大型間接税の導入というのは頭の中にないわけですね。その辺をちょっとお聞かせいただきたい、念頭にあるかどうか。
  197. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは仮に一〇%ぐらい、何年か先になるでしょうけれども、将来その程度の税のシェアを持たせるということになると、現行の間接税のかかっているものだけの税率を上げていくというようなことでは、かえってえらい不平等になって、これはうまくいかないのじゃないか。技術的な問題については、今後詰めていく必要があると思っております。
  198. 柴田弘

    ○柴田委員 そうすると、現行の間接税だけの税率を上げるだけじゃいかぬ、新しい税目といいますか、税制というものを取り入れる考え方の間接税の一〇%アップ、こういうことですか。
  199. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ですから、これも選択の問題で、所得税をどんどん納めていくのだっていい、その方がいいのだというなら、それも一つ方法なんですよ。それは困るのだというなら、そのかわり財源を探さなければならぬ。社会保障をもっと詰めてくれというなら、そんな必要もないのですよ。社会保障は維持していくということになると、何らかの財源が何らかの形で必要になってくるわけですから、それはやはり今後本音ベース議論をしていくべき問題である。  あるべき姿としては、ヨーロッパ諸国がみんな四割から六割の間接税を持っておるわけです。それから日本でも、昭和二十五年から四十五年までの高度経済成長時は、大体四五から四〇の間接税のシェアですからね。その当時、高度経済成長時代に、間接税をうんと取って、日本政府は国民をいじめたなんてだれも言ってないわけでして、非常に住みよい時代だったわけです。だから、私としてはそういうこともただ観念論だけでなくて実態論として議論をしていくべきものである、これも私の持論なのですよ、実は。まあ、いつまでも大蔵大臣をやっていないからなんですが、しかし私は、やめても恐らくそういう議論はするでしょう。そういう考えであります。
  200. 柴田弘

    ○柴田委員 では委員長、時間ですから終わります。
  201. 森喜朗

    ○森委員長 和田耕作君。
  202. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 予算もうまく通りまして、大蔵大臣、大変御苦労さまでございました。  最近の景気見通しの問題についてでありますけれども、最近の景気見通しの問題について、一番大きなショックを与えたのは、昨年の十月−十二月の経済成長率がマイナスというあの数字が発表された、あれは一月ほど前でしたか、あの発表からがくんと変わってきたみたいな感じがするのですけれども、あの段階での政府の考え方というのは、あれとは全く違った、もっと楽観的に、もっと明るさが来るような予想だったと思うのですけれども、あの十月−十二月のマイナスに変わった問題を、大蔵大臣はどのようにお考えになるのでしょう。
  203. 水野繁

    水野(繁)政府委員 御報告申し上げます。  一カ月ほど前、三月上旬に、昨年の十−十二月のQEが発表されたわけでございます。全体としてはマイナスになっておりますけれども、中身で申し上げますと、輸出、海外に依存する分が非常に悪うございまして、それだけでマイナス一・七ということでございます。国内の民間需要は相当逆に出ております。〇・七%ということ、これは四・四半期でございますので、それを年率に直しますと、それだけでもってGNPを二・九%、大体三%かたがた押し上げる力を持っております。  したがいまして、全体の形といたしましては、総じりでもって相当突っ込んでおる。その輸出のマイナスの点につきましては、たとえば造船で、輸出されるべきものが特殊事情で一月におくれたとか、こういうふうな特殊事情もございますので、中身全体とすれば、いわば海外に依存する形が国内の民間需要に戻ってきた。形としてはよろしゅうございます。ただ、仰せのとおり全体の姿がマイナスに至った、これは五十年以降の話でございますので、心理的なショックを与えておる、これは事実であろうかと思っております。
  204. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 きょう配られた日本銀行の月報なんですが、これを私ちらっと拝見しておりまして、ちょうど昨年の十二月十日に公定歩合の〇・七五%の引き下げをやった、あのときに出した説明のようなものが一番冒頭に書いてあるのです。そのときの日本銀行の経済見通しについては、非常に印象的な説明があるのですね。こう書いてあるのです。「最近の経済情勢をみると、大企業の設備投資や輸出が底固い動きを示し、在庫調整も概ね完了をみた反面、個人消費の回復は捗々しくなく、住宅投資も不振を続けている。」つまり、こういう基本的な見方を、一番堅実的なと言われている日本銀行が示しておるのですね。  しかし、実際にこの問題が、一月余り前に発表された状態によると逆なんですね。ちょうど逆なんです。輸出は底がたいのではなくて、これが大幅にこの時期にめり込んでおるのですね。そして個人消費は、むしろ若干あのときに持ち直しておるのですね。ちょうどこの基本的な認識が逆なんです。  こういう認識に立って公定歩合の〇・七五の引き下げを行う、つまりこういうところが私は、この問題だけではないのですけれども、少なくともこの二年間の経済見通し等について、大蔵省並びに日銀もそうですけれども、かなり楽観的な、一番可能性の高い、あるいは現実にはとてもそういうことは見通せないというものすら採用をして、それに基づいて大事な予算編成を行うというようなことがありはしないか、こういうふうなことに思えてならないのですが、いまの御説明と、この日銀の見解とはどういうふうに説明したらいいのでしょうか。
  205. 水野繁

    水野(繁)政府委員 先ほど申し上げましたように、ただいま申されました大企業の設備投資は、現在も成長度合いは少しずつ曲がっておりますけれども相変わらず堅調でございます。それから個人消費につきましては、幸いにしてここのところ若干出始めておる。  そこで、非常に見通しといいますかそれが違っておりますのが海外に関する関係、輸出の関係でございます。この内容は、先ほど申し上げました特殊事情もございますし、それから輸出先の景気状況、特にアメリカそれからヨーロッパ、さらにはアジア、これは東南アジアがアメリカ経済影響を受けて余りよくございませんので、そういうところが相当響いているという感じがいたしております。したがって、輸出そのものは当初予定していたよりも落ちていると思いますけれども、それでも経常収支は相変わらず黒でございますし、いま仰せられましたその姿そのものが非常に心理的にはマイナスということで響いておりますけれども、全体としてはこれからずるずる悪くなってくるようなかっこうではない、この点では、日本銀行当局とも経済企画庁とも、われわれ意見が合っていると考えております。
  206. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 あなたは先ほど、十月−十二月の輸出が非常に悪い、ここでは輸出は底がたい。これは十二月の十日の説明です、公定歩合の引き下げをした時期の説明ですから。これは政府のあれじゃないですよ、日本銀行の見方です。恐らく政府もこれと違った見方をしていなかったと思うのですけれども、そういう非常に大事な経済のファンダメンタルズ、基礎的条件という問題がいろいろありますけれども日本にとって基礎的の中の基礎がやはり輸出の問題だと思うのです。その問題についてこのような全く逆の、当時はまだわからなかったでしょう、わからなかったけれども、わかってみれば当時の判断と全く違った状態が十二月のあの段階で現出したということですね。そうは思いませんか。
  207. 水野繁

    水野(繁)政府委員 昨年十二月ごろ、輸出信用状だの何かが若干よくない、こういうケースはございました。しかし、それまでの趨勢で考えております、またいろいろ聞き取りをしておる限りにおいては、輸出がこれほどになるとは思っていなかったということは事実でございます。  それからもう一つ、海外に対する依存というのは、輸入がふえるということもございます。輸入と輸出の差し引きでもってマイナスが出てまいります。石油を初めとして、それまでずっと輸入が沈滞しておったといいますか、輸入の勢いが低かったところがそこも出てきた、両様からこういう結果になったということでございます。当時輸出堅調ということは、輸出堅調というよりも海外に対する関係が堅調と申しますか、経済を支えておるないしはそれがまたかつ貿易摩擦のもとにもなっておるという方向の懸念にもなっておることは事実でございます。
  208. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 その問題はその問題としまして、次に、同じような問題として、五十七年度の経済成長五・二%、実質GNPの五・二という数字。きょうも幾つかの新聞では、日本経済見通しのかなり権威的だと言われておる二つの機関で、いままで四%台と見ておったのが三%、三%台と見ておったのが三%を割るというような見通しを立てられておる。つまり、下方修正といいますか、大幅な修正すら行っている。  こういう状況下で、きょうは経済企画庁の方見えておりませんけれども大蔵省もそれを承認しているわけですが、五・二%というこの数字もかなりむずかしくなってきたというふうに判断はできますか、あるいはそうでなくて、やはり五・二%を実行するために努力をする、努力をすればできるんだというふうに考えておられるのか、いずれでしょう。
  209. 水野繁

    水野(繁)政府委員 五・二%の成長を予測いたしましたときに、五十六年度の経済成長は四・一と考えておりました。四・一から出発いたしまして、それでどのくらいということで、われわれの言葉でございますと、げたという言葉がございます。けさほど経済企画庁の方からお答えいたしましたように、そのげたが四・一までいきませんと低くなります。その意味で、五・二%というのはなかなか厳しい数字になっていることは事実でございます。  ただ、国内の景気情勢から申し上げますと、在庫調整はほとんどもう終わっておりますし、さらに徐々にではございますけれども個人消費も出てきているしというふうないい趨勢が出てございますし、それからアメリカの方の景気、海外の景気はどうなるかという情勢もございますので、できないかと言われますと、そこをできないと申し上げるほどの勇気もございませんし、かと言って簡単にいける話ではございませんで、相当努力は必要だ。したがいまして、前倒し、それから金利もチャンスを見て下げていくというふうな万般の措置をとっておりますし、これからもとっていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  210. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 五十六年度の場合も五%台から四%の低い方へ修正して、しかもこれが実際には四・一%も困難だという状態になってきているわけですね。  こういうことは、単に数字の修正で済むことじゃないのです。これはその他の施策に対する基準になる数字でありますから、この問題についても全く架空の数字とは申しません、政府が責任を持って五・二という数字をはじいておるのですから。しかし、考えられる最高の可能性の数字とでもいいますか、そういうところを選んでおるというふうに見て差し支えないんじゃないか。何かありますか。
  211. 水野繁

    水野(繁)政府委員 仰せのとおりでございます。民間の見通しでございますと、いろいろのモデルを使いまして確率の一番高いところを出しているようでございますけれども、政府の場合には、それに政策目的と申しますか望ましい姿というものを踏まえまして、そのために政策も考える、内需振興の手を打つということを加味いたしまして、そこのところでもって出している数字でございます。
  212. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私は、ここでこの問題を特に重視しますのは、余り楽観的な数字ばかり出して、しかも日本役所では一番かたいと言われている大蔵省が、これは今後の税収の見通しでもそうです、これと関連してくるのですが、余り実際と離れた希望的な数字を次から次へと国民に言っておると信用がなくなりますよ。信用がなくなるということは、現在日本のいろいろな企業家の調査をしておるけれども、もう不況で見込みは暗いのだという暗いマインドが企業家の心を支配しつつある。これは大事なことですよ。もしこれが定着していきますと、たとえば、せっかく設備投資を強気でやろうとする人たちの意欲も鈍っていくわけですね。そうしてまた、金がふところへ少し多く入ってきても、個人消費、何かを買おうとする意欲がなしにため込んでしまう。つまり、そういうふうな心理的な状態にいまなりつつあるわけです。このことと、政府の一般に信用されてない一つ経済見通しというものと無関係だとは僕は言えないと思う。  これは渡辺大臣だって、あと一年大臣をしているかわからない。あるいは総理大臣だっていつおやめになるかわからない。私は、渡辺大蔵大臣が無責任に言っているということを言っているわけじゃないのですよ。しかし大蔵省としては、これはとてもむずかしいという数字が出てくれば、それに対してはっきりその数字はちょっと問題だということをリーダーに、大臣に、総理に言うべきですよ。しかも、それを言わないでとことんまで行ってしまって、そうしてまたこれは足らなくなりましたなんということでは責任が持てないでしょう。そういうことを重ねてやっていると、一般の国民は、政府はあんなことを言ったって当てにならないんだ。現に企業家がそうじゃないですか。現在の日本経済の力、基礎的な条件は、揺らいでいるといってもまだしっかりしている。だから、もっと展望を持っていい数字、基礎的な条件があるにもかかわらず、何ぼ六月とか八月には調子がよくなるということを言っても、それを信用しない。せっかくの設備投資だって、やる力はあるのにやろうとしないというような空気が現にもう出始めているでしょう。そういう問題と関係があるから、この経済見通しについてはもっと真剣さを持ってもらいたいということを申し上げたいために申しておるのです。  大臣、いかがでしょう、この問題、感じとして。——大蔵大臣、私はこういうことを申し上げている。経済見通しにしても、あるいはいまの不況の今後のあれにしても、かなり現実とかけ離れた高い見通しに立って国民を説得しよう、何とか理解してもらおうとしている。このことの問題点をいま言っているわけです。五・二%の問題もそうです。一番最近問題になった去年の十月−十二月の問題、これが経済の担当者にショックを与えているわけです。しかも、このときの日本銀行の担当の責任のある声明と、現実に十月−十二月に起こった状態と全く逆の見解になっている。  こういうふうなことは、まあ大臣の任期が決まっているわけじゃないのだけれども、やめるまではというようなお気持ちでなくて、そういうお気持ちであると私は言っているわけじゃないけれども、余り離れた数字をオウム返しにあれしておりますと、結局そういうことになる。いまの五・二%の問題は、そういうふうな証明の一つじゃないかということを私は申し上げている。いまの責任のある民間の見通し、きょうも先ほど申し上げたとおり、いままで四%台と言ったのが皆三%台に下がってきている。三%台と言ったのが三%を切って二%台になるのじゃないかという予想さえ出てきている。政府だけが五・二というものを国民に説得しようとしている。つまり、こういう態度は逆に政府に対する不信感をつのらせてくる要素になる。そういうことが、まだ日本経済は力があるのに日本の経営者が設備投資に対して逡巡したり、あるいは、お金が入るのに個人消費をふやしていくという気持ちに国民がならないということになりはしないか、そのことを申し上げておるわけですが、大蔵大臣はいかがにお考えになるかということを申し上げておるわけです。
  213. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは実は五十七年度の見通しをつくるときなどもかなり議論のあったところなんです。しかし、いろいろな経過を経てそういう見通しをつくったわけでございますが、いずれにせよ、現在の七カ年計画ということについては、いま御指摘のような問題点が私はあると思います。したがって、これは国会でも終われば恐らく経済企画庁でも何らかの検討を始めることではないだろうか、そう思っております。私も、届かないようなところ、これは見通しですからね、見通しだからといっても、届かないようなところに置いても無理な話で、やはり実態に即してやるべきだ、私はそう思います。
  214. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 物価は安定しておる、あるいは企業の収支なんかも、かなりかげりが出てきているといっても、まだまだしゃんとした経営をしている。あるいは雇用の問題も、失業者はまだまだ健全な状態にある等々、日本経済を取り巻いている基本的な条件というのは、これはまだまだしっかりしていると私も思う。そうだから、もう八十兆から九十兆、百兆とあと二、三年で続いていく国債発行でも、これがかなり順調に消化されている。またインフレ的な要素も起こっていない。一番そういうふうにせしめておるのは、やはり経済の基本的な条件がいいからだということもわかる。  しかし、日本銀行総裁もしばしばこのごろ言っているように、その基礎的条件が変化してきているという要素、その一番のポイントにあるのが輸出なんですね。この輸出という問題をもっと重視して考えなければならないのじゃないか。  三、四日前の新聞にも出ておるのですけれども、輸出信用状の受取高を見ると、日本の輸出信用状の前年同月比が軒並み下がっておるのですね。これは、この数カ月ずっと下がってきている。しかもこの下がりは、いまの貿易摩擦を起こしておるアメリカとか西ヨーロッパも下がっているけれども、これは案外下がりの率は少ない。大きく下がっておるのは、アジア諸国であり、中近東であり、その他の諸国ですね。いまの日本の輸出の不振という問題は、単に貿易摩擦によって起こっておるというよりは、世界じゅうの国の一つ景気後退といいますか不況といいますか、ところによってはいろいろ言葉の使い分けがあると思いますけれども世界全体の景気の後退というのが日本の輸出の不振の背景にある。これに対して貿易摩擦というのが、それを加速させていくような役割りを果たしておるというふうに思えるのですけれども、この全般的な見通しについて、どのように判断されておられるでしょうか。
  215. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはやはり石油が一番の問題でございます。特に非産油国は外貨不足に悩み、みんな貿易は赤字、低成長、全部同じ現象ですね。しかも、自分たちがお金を借りたくとも、信用はないと言っちゃなんだが、結局金を貸してくれる国はない。したがって、日本のような国は貿易立国でいかなければならないし、今後とも国際金融面においても、自分で使うだけじゃなくて、借りてきては人にも貸さなければならぬ、そういういわゆるリサイクルもしなければならない立場にあると私は思います。  いずれにしても、そういうことで、世界全体の活性化が行われていかなければだめだ。したがって、自由貿易主義というものを守っていかなければならぬ。保護主義はいけない。ことに資源のない国においては、保護主義をやられたのでは大変なことになるわけです。そういう意味で、日米関係の貿易問題等についてもその他についても、全体的な配慮を欠いたのでは、やはり自分のところに火の粉がかかる、自分だけでは生きていけないわけですから、世界経済全体の問題を、日本世界のGNPの一割も持つということになれば、考えていかなくちゃならぬだろう、そういうふうに思っております。
  216. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 通産省の方、見えていますか。いまの輸出信用状の受取高というのは、これは通産省関係、これはどこですか、この信用状をあれするのは大蔵省ですか。それはいいですよ、もう時間もだんだんなくなりますから。  この四月二日の朝日新聞に載った数字によりますと、先ほどもちょっと申し上げたように、アメリカが二月に引き続いて前年同月比が一%減、アメリカはわりあい少ないのです、一%減。アジア向けが五%減、これは同じく前年同月比ですね。これは五カ月連続に減少している。主に自動車がその中心になっている。アジア向けの自動車が減っているということですね。それから、欧州の方は一二%減。中南米その他で四%減。つまり、全世界的な規模でこの輸出信用状の受取高は減ってきている。これは二、三カ月後の実際の状態影響してくるものだそうですけれども、こういう状態は、通産省の輸出の係の人から見て、やはり事実もそういうふうになると思われますか。
  217. 伊藤敬一

    伊藤説明員 お答えいたします。  最近のわが国の輸出動向でございますが、昨年わりに好調でございまして、一七・一%増、これは通関統計の伸びでございますが、それがどうも昨年の後半から余りいい状態とは言えなくなってまいりまして、この二月には通関統計でマイナス三・七%というような数字を出しております。先生御指摘の輸出信用状、これも最近三月の数字がマイナス四・二%という発表があったとおりでございます。  私ども、いろいろ要因を分析いたしておりますが、まず一つは、海外の景気停滞がきわめて続いておりますこと。それから円のレートが、ドル以外の諸通貨たとえばドイツのマルクでございますとかポンドですとか、そういったヨーロッパ通貨等に対しまして、相対的には円高傾向で推移してきておるというようなこと。それから、従来好調でございました品目、たとえば自動車なんかでございますが、これは輸出の自粛措置というのをやっております。あるいは需要の一循環、ビデオテープレコーダーなんか大変伸びたわけでございますが、これもちょっと需要が一巡してきておるというような感じ等々がございます。  私ども、ここへ来てこういう伸びが鈍化してまいっておるということについて、今後の見通しでございますけれども、これは内外の景気動向、為替レートの動向、いろいろ動いておりますので、一概には申すことはできないわけでございますが、やはり各国景気停滞の長期化はかなり深刻なものがあるというふうにも考えておりますので、当面はこうした落ちついた動きが続くのではないだろうか、かように考えております。
  218. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 外務省の方、見えていますか。いまの問題についてのお考えを……。
  219. 池田右二

    ○池田説明員 貿易立国でありますわが国にとって、輸出が重要であることは、先生先ほどおっしゃいましたとおりであります。現在の世界景気停滞の状況の中で、一般的な国際経済の環境といたしましては、わが国の輸出のためにむずかしい景気状況にあるというふうに見ております。  今後の貿易の正確な見通しを立てることは、各種の要素がありまして困難ではありますが、昨年十二月に発表されましたOECDの「エコノミック・アウトルック」の見通しにおきましては、わが国の貿易収支の黒字は、八二年上期の百六十億ドルから八三年上期には二百八億ドルに、また年ベースでは、八一年の二百十三億ドルから八二年には三百四十八億ドルにそれぞれ拡大するということが一応予想されておりますが、いま申し上げました数字は昨年十二月発表の段階のものでありまして、次回の発表が、いましばらくして本年の年央、六月ごろにさらにその段階での状況を踏まえた予測がなされるということになっております。
  220. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この輸出の問題、これも私は非常に大事な問題だと思うのですが、最近の輸出が非常に落ち込んできたということと、最近の異常な円安の問題とは関係があるように思えてならないのですが、これはいかがでしょう。関係があると思われるのか、つまり、円安というのはアメリカの高金利ということに連なったスペキュレーションの要素が入ったというふうに見られるのか、あるいは日本の基本的な経済条件である輸出がぐっとおかしくなってきたということを織り込んでおるのか、その問題について、いかがでしょう。
  221. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 いろいろな見方があると思うのでございますが、円安の方は、一番決定的な要因は、アメリカ金利が高い。輸出が伸びないのは、世界景気が悪い。これはやはりアメリカの高金利アメリカの国内経済が沈滞化している。その高金利というようなところに着目いたしますと、日本の輸出が伸びないということと円が安いというのは地下でつながっているような感じがいたします。  今度観点を変えまして、そういう金利ということでなくて、具体的な個々の問題で日本経済のサイドで考えた場合に、日本経済の中に円安の要因があるのかどうか、あるいは輸出の伸びない理由がないのかどうか。日本経済の方は、どちらかと言いますと景気が余りよくないわけですから、理論的に考えますと輸出が伸びるはずなんですが、それがそうではない。それから円安の方は、どちらかと言いますと物価もしっかりしておりますし、経常収支もどんどん黒になるというような状況ではございませんけれども、そうではない。そうしますと、両方からチェックしてみますと、内外金利差というようなことが両方を一つで説明できるような気がいたしますが、いろいろな考え方があると思います。
  222. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 しかし、日本の円安というのは、二百二十円台になったころから、日本の基礎的な条件に比べて下がり過ぎだから、やがて回復するだろう、するだろうと言われながら三十円台になり、四十円台になり、五十円台になろうとしている。つまり、こういう問題についても私は検討が不十分だと思うのです。これが二十円からまた十五円へ返ってしばらくおるというのじゃなくて、大体なにはありますけれども軒並みずっと下がってきている。しかも、一般に言われる日本の基礎的条件はまだほとんど変化はしていない。ただ、輸出の問題が大きく落ち込んできておるということもありますので、この問題について、いやいや、そのうちまた上がっていくなんということを考えていると、私は、大きく失敗をしていくのじゃないかという感じがしてならない。そういうふうな意味で、日本の輸出の持っている日本経済に対する意味をもっと真剣に考えてみる必要があるのじゃないか。日本経済の基礎的条件の、その基礎的なものはやはり輸出という問題。これは、アメリカなんかと基本的に違った要素というふうに見ていいのじゃないかという感じがするのです。  私、この二、三日ソウルに行ってきましたが、ソウルの経済状態は予想以上に余りよくない。これはやはり輸出が非常に落ち込んでいることと関係があるわけです。それを大型にしたのが日本経済だというふうに心配をしてみる必要がありはしないか、そういうふうに思えてならないのですけれども、そういう感じ方が間違っておるかどうか。あるいは、国内消費が高まってくれば日本経済はよくなるというふうに考えれば、そういういろいろな手もある。しかし、日本のもっと基礎的なものは輸出だというふうに考えてみれば、またやり方も変わってくるということにもなると思うのですが、大臣、こういう問題について大ざっぱな考え方として、そういうこともあるなというふうにお考えになるのかどうかということをお伺いしたい。
  223. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大まかに言うと、私も似たような考え方であります。
  224. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そうでありますと、いま起こっておる貿易摩擦それ自体が、現在の日本の輸出の落ち込みの主な犯人ではない、それを加速しておる要素だと私は思うのです。この要素に対する対策も、国内でいろいろな反対があるでしょうけれども、輸出という問題が一番大事だというふうに考えてくると、多少の国内の犠牲も仕方がない。アメリカに言うことは言うんだ、ECに言うことは言うんだと何ぼ気張ってみても、この問題だけはなかなかいい対策が見つからない。やはり日本の輸出を伸ばしていくためには、向こうの言い分も、個別品目にしても聞かれるものは聞いていくという状態で、いろいろ腹をくくらなければなるまい。あるいは、貿易外のいろいろな商取引法とか慣習とかいう問題についても検討して見直す必要がありはしないか、こういうふうに思えてならないのです。  きょうは農林省の方はお見えになっていないが、二、三のあれをすればこれはよくわかる。あるミカンの産地については大変な問題が起こってくる。あるいは、牛肉の問題がどうなるかわからぬけれども日本の肉を生産しておるところにも大きな影響が起こる。もし大きなものが起こってくれば、たとえば、かつて繊維の業者が織機を廃棄したのに対して、政府がこれを財政的にめんどうを見てあげたような、そういうカバーのことを考えても、そういう問題に対処する必要がありはしないかというふうに思うのです。これは起こってない問題ですが、そういうことを含めて、貿易摩擦の特に品目的に挙げている問題については、ひとつ真剣に対処してもらわなければならないというふうに思うのですけれども、大蔵大臣、そういう方向についてはどうなんでしょう。
  225. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 長い目で見ますれば、やはり衰退産業は滅びて優勝産業の中に吸収されていって、そして日本経済全体からすれば、失業者が少なくて完全雇用に近い状態が続いて、所得水準が高いことの方がいいですね。幸いなことには、日本で中小企業の倒産とかあるいは建設業が倒産とか、農林業から毎月どれだけ失業者が出ていると言っても、失業の全体は余りふえない。ほかの国は、失業したら就職口がないわけですから。日本は、失業してもどこかが吸収するということになれば、長い目で見れば、私は、和田委員の言うようなのが本筋だろう、それをどういうようにして犠牲を小さくしながら、社会問題化しないでやっていくかということが問題だろうと思います。
  226. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 日本の食糧にしても、本当になくなっては困るという大事な食糧についての自給という問題はおろそかにしてはならない。しかし、ぎりぎりの問題では、外国貿易との関係で抑えるものは抑えていくという考え方はやはり必要だ。食糧自給という問題はやはり大事な問題です。その辺の判断の問題が要求されているというふうに私は思うのです。そういうことで、輸出の問題というのは、日本のあれにとって意外に大事な問題だということを強く指摘をしておきたいと思います。  と同時に、最近、国内で有力な経済新聞なんかでも、財政再建という問題に余りとらわれると、つまり精神的な要素として不況のマインドが広がってきておるという状況だから、財政の問題は多少抑えてもという空気がかなり強く出てきていると思うのです。政府は、これに対して、公共事業の前倒しとか、いろいろむずかしい問題も手を打たれておるようですけれども、そういうある意味の転換の時期というふうな感じがするかどうか。これはいかがでしょう。
  227. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 景気がよくなったら、要するに行政改革ができるかというと、これはできないのですね。景気がよければ自然増収がうんと入る。自然増収が入れば、歳出を切るとすれば、どこかが騒ぎを起こす。起こせばそのままずるずると来て、それで現在のような肥満体質になったわけですから。国民は負担が重いから、これ以上はもういやよ、そんなこと言ったって、こういう事業をやっていれば負担はあるじゃないか。事業は起きた、金は出したくないと言っても、これは通用しないわけですから、金が出したくなければそれはむだだ、高度経済成長時代のように、抵抗なくお金が自然増収という形で入ってくるときと違うんだから、やはりこういうときには、行革というものを進めるとすれば、一番やりやすい雰囲気にあることは間違いないと思います。したがって行革というものは、こういうときを逃してはほかにない、これは大いにやるべきである。  財政再建の問題は、やはり似たようなところがございまして、高度経済成長時代には、みんなが出し合ってもいい、むだだと思ってもいいと思っておったが、こういうように、もう所得税減税は行われない、何年も続くという中で、おれたちが金を出してまで、そんなに経費をふやしていく必要があるかという部門があります。  たとえて言えば、一番わかりいいので育英資金なんというのは毎年八百億円ずつ出していますが、これは最初は小さなものだった。ところがいまは、ともかく英才でなくたって貸すわけで、育凡なんて悪口を言う人がありますがね。そういうものも無利息で、しかも学校の先生になったら返さなくていいというようなことまで必要なのかどうか。やはり非常に低金利で、それで貸した金は返すとか、それから三%や三・五%ぐらいの金利を払ってもいいということになれば、いまの半分で民間資金の活用もできる、片一方じゃ貯金が余ってしまっている、現実はそうなっているわけですから。しかし、これは昔から無利息となっているのですから、余りできない人にまで貸してもみんな無利息なんだということがいいのか、三・五%ぐらいのものだったら融資にして民間資金を活用してやったらいいのか、ここまでくればもう判断の問題ですね。したがって、こういうことは発想を変えればやってできないことはないのじゃないか。学生が直接困るわけでもないのだし、十年先になって返すというときに幾らか利息がかかるというだけのことなのですから。  だからわれわれは、この時期に財政改革、再建をやらなくていいということは言えない。この際、だぶだぶした体質を切ったり、安易に国債発行するということで後年度に負担を残すという思想は断ち切っていく必要がある。しかし、経済は生き物ですから、原則はそうだけれども、ある程度部分的に臨機応変なことは全部排除するということは私は考えておりません。
  228. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大蔵大臣、もう予算の審議も終わったわけですから、もっと気楽にいろいろ話ができると思うのですけれども公共事業の前倒しをカバーする建設公債というのはどういうようにお考えになりますか。
  229. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは具体的に考えておりません。それはやはりまだ六カ月以上も先の話でございますので、世界景気がどういうふうに動いてくるか。先ほども水野議官が言ったように、十−十二の速報値が悪かったとしても、内需の方はよく出ているわけですから、外需の要するに貿易が落ち込んだためにマイナス〇・九となっているので、内需の方はいいわけですから、そいつを伸ばしていくというようなこともございますので、もう少し経済の実態というものを見た上で判断をしたいと私は思っています。
  230. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 日本景気がずっとよくなってくるとか、あるいはアメリカ景気も秋ごろからずっとよくなるとか、ヨーロッパでもドイツあるいはイギリスでは少し明るくなってきたというニュースもあるようですけれども、そうなれば余り必要なくなるのかもわかりません。  しかし、反面で、なかなかアメリカ景気もそう一本調子でよくなるという見通しもだんだん少なくなってきている、日本でも先ほどから申し上げておるような要素が出てきているということになると、これはやはりそういう条件が重なってくると必要なことになりますね。
  231. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 やはり世界景気日本もつながっておりますからね。ですから、余り急激な極端なことをやろうとしても失敗することが多い。大勢というものがありますから、こらえるときはこらえていかなければならない。物価をばっと押し上げるのではなくて、全体を見ながら、日本で有効にできる手だての範囲の中にとどめなければならないと思っております。
  232. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そうしてまた、所得税の減税問題がすぐ問題になるわけですけれども大臣は、まだ、直接と間接との比率を少し変えていく必要があるのじゃないかと、いろいろなことをおっしやっておるのですが、大型の間接税を否定はしておられないわけですね。これは私、野党の一人ですけれども、所得税の大幅減税というものをやり、あるいはその他の景気の問題をあれするため、かなり大型間接税の問題は当然検討の対象になるという考えも理解ができるのですが、この問題はどうでしょう。
  233. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結論から言えば、これは国民の判断の問題だと思うのです。  要するに、まず歳出をどこまで切るか、ともかくそれは困るということになれば、その負担はだれがするかというような問題等を含めまして、直接税だけで負担をするのか。そうすると、片方で減税をできないじゃないかということになりますから、これはやはり一つの税目だけに偏ってはいかぬと思うのですね、世界がそうなんですから。ですから、理想論ばかり言ってみたって始まらない話で、もっと現実論に着目をして本音ベース議論をやっていけば、私は、落ちつくところに落ちつくのだろうと思っております。
  234. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 また話を変えますが、来年度予算はゼロシーリングの方向で行くというふうに思っておられますか。
  235. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これもまだ内部で相談をしていないのです。  要するに、臨調の方針がどんなふうに出てくるのか一向にわからぬし、内部でもきのうまでは予算委員会で毎日張りつき、今度はまた特例法がありますからじっと張りつきで、幹部が全部朝から晩までここへ来ているわけですから、相談している暇がないのです。ですから、早く御理解をいただいて特例法を上げていただいて、内部でお互いに真剣に検討できる時間を与えてもらえば、なるべく早く、会期中にもお答えができるようにしたいと思っております。
  236. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 しかし、ほかに特別の収入が考えられなければ、五十九年までの財政再建ということになると、ゼロシーリングでいくよりしようがないですね。
  237. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは収入がなければ当然そういうことにならざるを得ない。まして、税収についてどうなるのかという問題もありますから、場合によっては来年はマイナスにでもしなければならぬかどうか、ここらも、もう少し中身の数字を詰めてみないことには、まだ結論を申し上げる段階にありません。いずれにしても、ふくらますことはあり得ないと思っています。
  238. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 三K問題、国鉄、健康保険、お米、この問題を最もうまく臨調の提案で解決したとして、来年、再来年への財政的な寄与はどういうふうになりますか。
  239. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは本当に仮定の仮定の問題で、まだ皆目見当がつかないというのが実情です。
  240. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 少なくともこの問題は、来年度の予算については直接の財源の相当なあれになるということは考えられませんか。
  241. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 どういうふうにやろうとするのか、国鉄問題というのは一番の大問題ですよ。しかし、これは人減らし以外にないわけですから。運賃を上げると言ったって、これ以上どんどん上げたら乗らなくなってしまう。いま旅行が一番落ち込んでいる。その理由は、過去数年間、十年ぐらいの間に、ほかの諸物価の値上がりの中で国鉄運賃が全体から見れば一番高く上がったそうです。数字は忘れましたがね。ですから、国鉄運賃を三割上げたら三割収入が入るなんということはあり得ない、現実に場所によっては民間より高くなっているのですから。したがって、これはともかくむだな工事をやめることと人を減らす以外にないということになっても、人を減らしても今度は七割も年金を払うのだということになっては、減らした分だけ全部浮くわけじゃないですから、ここにも問題がある。したがって年月がかかる。だけれども、着実にこれをやらなければ国民全体の不幸につながる話ですから、やっていかなければならぬ。だから、すぐ金目がぞろっと出るということじゃないと思いますよ。  それから食管の方は、最大の原因はコスト逆ざやですからね。運賃でも倉庫料でも、民間でやっても役所でやっても、新潟の米を東京へ運んで、民間ならただで役所ならトラック賃がかかるということはあり得ないわけですから、少なくともこういうものは、売買逆ざやだけでなくて、民間でやってもかかる費用は当然に消費者が負担する、私は、発想をあたりまえのように変えたらいいのじゃないかと思っておるのです。ですから、これは年限をかければ、これも一挙に上げることにするとまた物価という問題がありますから、毎年一食二円ぐらいずつ上げていけば五、六年で解決つく問題じゃないか。時間が多少かかります。  医療の問題については、これは十三兆も使っておるわけですから、これも大問題。しかし、これは政府が出している金は四兆円だけれども、国民からすれば保険料で取られたらこれは同じことですね。政府に取られるか保険料で取られるかで同じこと。しかしながら、これについては全体の空気は、年寄りがふえれば病気がふえるわけですから、これはふえていくという傾向ですよね。しかしながら、中ではそれが金もうけの材料に使われて億万長者ができてしまったり、それをうんと金もうけの材料にいっぱい使うということを放置するわけにいかない。これをまず是正する必要がある。他方は、また病院の基準がうんとやかましくて、それで労働者はストライキなんかばかりやってしまって、賃金がうんと上がってしまって、それで医療費がべらぼうに高くついてしまうというのも現実にある。それから老人病院なんて、そんな厳格なものが果たして必要なのかどうなのか、基準のとり方ですね、こういう問題も含めて、これも余り観念論じゃなく、実態論に沿って抜本的に医療体系全体の見直しをやっていく必要があるだろう。だからといって、一年にどかんとなかなか金は出ないと思いますが、ブレーキはかなりかかってくると思います。
  242. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 財政再建行政改革、これは無論違った問題でありますけれども、これは非常にむずかしい、何十年もやろうやろうとしてなかなかできない問題ということがこのごろよくわかる気がします。  きょうの質問の最初にも申し上げたように、行政改革、これは実際からいったらちょっと不景気な話なんです。財政再建、これは不景気な話なんです。行政改革をうまくやれば減税の財源もできるのだということは、理屈で言うけれども景気な話です。それから精神的には、これは不況マインドを刺激することなんです。しかも、現在その不況マインドが経営者の中に出てきている。国民にもそういうものが出てきている。こういう時期ですから、このマインドを吹き払うような政策が必要だ。しかし、それをやれば財政再建にも行政改革にもマイナスの影響を与える。  そういう一つの大事な時期なんですけれども、財界の諸君の中にもあるいは政治家の中にも、二つの考え方がまだ未決着のままで渦巻いておるということですが、特に大蔵大臣としては、どうしたらいいかなと迷うだけじゃ何ともならぬので、やはり考え方として財政再建五十九年までは赤字特例はなくするという方針を何とかして貫きたいというお考えは持っておるのか、あるいは景気の好転へのマインドをよくするために、多少それに響いても何らかの手が必要だと思われるのか、その判断はどうでしょう。
  243. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 五十九年度までに赤字国債から脱却というのはなかなか困難ですよ。非常に厳しい。厳しいけれども、やってできないという数字じゃないです。  一方、行政改革歳出カットをやるという場合に、片方財源をそろえて赤字国債をどんどん出してやるよということになれば、これは財源がある以上、実際は切るといったってなかなか切れるものじゃない。したがって、しりをしぼっておいて、それで切れるだけまず切ってみる、後はもう経済は生き物ですから、それは世の中なかなか思ったとおりに動かない場合だってありますよ。ありますけれども、五十九年度脱出という一つの年次の目標がないと、これはぐうたらになってしまいますから、私は、現段階においてはそれを守っていく、最大限にそれに向かって進むということが身軽な政府にするためには必要なことじゃないだろうか、そう思っております。
  244. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これで終わります。
  245. 森喜朗

    ○森委員長 次回は、明七日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五分散会