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1982-03-24 第96回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月二十四日(水曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 森  喜朗君    理事 大原 一三君 理事 中西 啓介君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 鳥居 一雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    麻生 太郎君       今枝 敬雄君    木村武千代君       熊川 次男君    笹山 登生君       椎名 素夫君    白川 勝彦君       中村正三郎君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    森田  一君       柳沢 伯夫君    山中 貞則君       山本 幸雄君    与謝野 馨君       大島  弘君    佐藤 観樹君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       野口 幸一君    平林  剛君       堀  昌雄君    柴田  弘君       玉置 一弥君    正森 成二君       蓑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君  出席政府委員         大蔵政務次官  山崎武三郎君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵省関税局長 垣水 孝一君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君         国税庁間税部長 篠原 忠良君  委員外出席者         経済企画庁調整         局国際経済第一         課長      丸茂 明則君         外務大臣官房外         務参事官    佐藤 嘉恭君         外務省経済局国         際機関第一課長 池田 右二君         農林水産大臣官         房参事官    香川 荘一君         農林水産省経済         局国際部国際経         済課長     副島 映一君         農林水産省食品         流通局企画課長 青木 敏也君         農林水産省食品         流通局物価対策         室長      森元 光保君         通商業省通商         政策局国際経済         部通商関税課長 横堀 恵一君         日本専売公社総         裁       泉 美之松君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   野口 幸一君     前川  旦君 同日  辞任         補欠選任   前川  旦君     野口 幸一君     ————————————— 三月二十三日  不公平税制改正等による一兆円所得減税に関  する請願金子満広紹介)(第一四二二号)  増税中止所得減税に関する請願斎藤実君紹  介)(第一四二三号)  同外一件(斎藤実紹介)(第一五七二号)  所得税課税最低限度額引き上げ、一兆円減税  に関する請願中島武敏紹介)(第一四二四  号)  税制改革に関する請願竹内勝彦紹介)(第  一四二五号)  同(鳥居一雄紹介)(第一四六四号)  一兆円所得減税に関する請願安藤巖紹介)  (第一四二六号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一四二七号)  同(土井たか子紹介)(第一四二八号)  同(中村重光紹介)(第一四二九号)  同(野坂浩賢紹介)(第一四三〇号)  同(八木昇紹介)(第一四三一号)  同(松本幸男紹介)(第一四三二号)  同(山田耻目君紹介)(第一四三三号)  同(湯山勇紹介)(第一四三四号)  同(渡辺三郎紹介)(第一四三五号)  同(鈴木強紹介)(第一五五七号)  同(高沢寅男紹介)(第一五五八号)  同(楯兼次郎君紹介)(第一五五九号)  同(戸田菊雄紹介)(第一五六〇号)  同(馬場昇紹介)(第一五六一号)  同(森中守義紹介)(第一五六二号)  同(山田耻目君紹介)(第一五六三号)  同(山本政弘紹介)(第一五六四号)  同(吉原米治紹介)(第一五六五号)  一兆円減税に関する請願(辻第一君紹介)(第  一四三六号)  同(不破哲三紹介)(第一四三七号)  同(正森成二君紹介)(第一四三八号)  一兆円減税不公平税制是正に関する請願(三  浦久紹介)(第一四三九号)  同(山原健二郎紹介)(第一四四〇号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税、揮  発油税免除等に関する請願池端清一紹介)  (第一四七四号)  同(岡田利春紹介)(第一四七五号)  同(北山愛郎紹介)(第一四七六号)  新一般消費税導入反対等に関する請願(有島  重武君紹介)(第一五六六号)  同(川本敏美紹介)(第一五六七号)  同(新村勝雄紹介)(第一五六八号)  同(田口一男紹介)(第一五六九号)  同(森井忠良紹介)(第一五七〇号)  医業税制の確立に関する請願横山利秋君紹  介)(第一五七一号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ  等に関する請願外二件(長谷川正三紹介)(  第一五七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第四六号)      ————◇—————
  2. 森喜朗

    ○森委員長 これより会議を開きます。  関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 初めに、日米貿易摩擦の問題につきまして、少しお尋ねをしておきたいと思います。  きのうアメリカを訪問いたしました櫻内外務大臣が、レーガン大統領との会談で、六月のサミットを念頭に置いて、日米経済摩擦についてその解消に向けあらゆる努力を払う、サミットの際には鈴木総理大臣日米首脳会談を開きたい、こういう提唱をしたようでございます。  このことは、サミットの前に鈴木総理大臣レーガン大統領会談をして、今日まで日米貿易小委員会でいろいろ具体的な話が出たことを、日本世界経済にいかに寄与するかという大所高所に立ってある程度まとめて、具体的な考えを示さなければならない、こういう立場に立ったのじゃないのかと考えられます。私はそんなふうに受け取っておるわけであります。きのうまで、貿易摩擦解消のために日本は新しい東京ラウンド提唱したらどうかという話が出たり、多角的な通商交渉政府も積極的に取り組んだらいいという議論があったかと思うと、これに対して、日本が率先して先頭でそんなことを提唱するのはどうか、新しい多国間協議がもし始まれば、経済力のある日本はもっと大幅な責任を果たしてこいというようなことを言われて、かえって苦境に立つのじゃないか、あるいはまた、そういう提唱をすると過大な期待をかけられるというようなことから、自民党の中でも政府部内におきましてもいろいろな意見があったというふうに承知をし、またそういう議論がされておりましたけれども、きのうの外務大臣提唱で、どちらかというと、ある程度まとめて話し合いをしなければいけないというような段階に踏み込んだのじゃないかと思うのであります。  ですから、この問題につきまして、大蔵大臣としてはどういうふうに考えるかということを初めにお伺いしたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 貿易摩擦解消は非常に重大な問題でございます。ただ、櫻内さんとレーガン大統領会談の模様については、私も新聞に載っている程度しか実は知らないわけでございまして、いずれ本人が帰ってきてから、どういうようなことの話し合いをしたのか、どういうことができるのか、政府としても相談をしなければなるまい。いまのところは想像の域を出ないわけであります。  ただ、われわれとしては、関税一括引き下げというようなことは率先をしてやっておるわけでありますし、そのほかに非関税障壁の問題も、数十項目にわたってそれの解消というようなことは日本は進んでやっておるわけです。あと、やることといってもそうたくさんないわけでございますから、どこらのところまで向こうが要求しているのか、帰国の上よく相談をして進めてまいりたいと考えます。
  5. 平林剛

    平林委員 きのうまで議論がありました日米摩擦解消の問題につきましては、率直に言って、個別でいろいろな具体的な問題を積み上げていくやり方だとか、あるいはまた、包括的に一つにまとめて何か相談し合うとかいうような議論をしていましたが、結局問題は中身なんですね。具体的な中身がなくてこの話し合いというものが進むはずはないし、摩擦解消になるはずはないと思うのでありまして、中身が一体どうなるのかというのが一番中心になるのではないのかと思うのですね。どんなやり方なんて議論をするのは余り意味がないと私は思っておったわけであります。  ただ政府は、第三回の日米貿易小委員会が終わったときに、農産物の残存輸入制限の緩和あるいは撤廃というような問題だとか関税率の問題、それからサービス貿易自由化の問題など、いずれにしても五月中をめどにして政府部内の意見をまとめなければいけないのじゃないかというような相談をされて、具体的に検討に入るという方針を決めたと伝えられておるわけであります。  ただ、今日までの経緯を見ておりまして、サミットのときには日米首脳会談相談をする、政府部内でも五月中にはいろいろなことを案にまとめなければいけないといっても、どの問題一つとらえてもむずかしいことばかりなんですね。これは具体的な問題について、アメリカヨーロッパから非難されているように、一時逃れのその場限りでちょっと言葉だけで逃げるとか、逃げるという言葉は適当じゃないが、目に見えるような具体的な案をまとめるというのはなかなかむずかしいのじゃないかなと私思っているのです。  そういうようなものについて、これから帰ってきてから相談するのだと言うけれども、いまこの段階においても、どのようなものがあるのか、あるいはどんなふうにしてこれが解決できる見通しがあるのかということを、もう少し腹の中でどんなことを考えているかお話をいただきたいと思うのです。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 各省庁にまたがる問題についてはいろいろありましょうが、私の直接担当ではございません。私の方といたしましては、関税の問題、たばこ問題等が主たるものだと思っております。  関税の問題についてはもうすでに前倒しをやる、税関の輸入手続簡素化等もやるということをやっておるわけですから、あとは要するに、向こうが言うアメリカたばこをもっと買ってくれという話でしょう。これについても、小売店の数をふやすとかいろいろ便宜は図るということを考えておるわけです。しかし、たばこなどというのはしょせんは好みによって吸うわけですから、アメリカたばこをただでもらったからといって吸わない人もいっぱいいるわけでありまして、なかなかそう簡単にはいかない。しかし誠意を持ってわれわれとしてはできることは相談に応じてまいるという考え方であります。
  7. 平林剛

    平林委員 きのうのきょうの段階で、この解消策について、特に大蔵大臣の所管する問題で具体的なお答えを求めるのはあるいは無理かもしれませんので、これ以上申し上げません。  ただ今後、サミットの前に日本側が打ち出せる日米摩擦解消策は、どの問題をとらえてもなかなか困難なものがあるということだけは事実であります。とてもアメリカが期待するような劇的措置がありそうに思えない。仮に、ある程度政府部内で見解をまとめて具体的な措置がこんなものがあるということでとったといたしましても、それでアメリカヨーロッパが満足するかどうか、こういう問題も残ってくると思いますね。  結局、今日の貿易摩擦が非常に深刻である、深刻になった原因に何があるかと言えば、いろいろあると思いますが、私は、その一つ外需依存型の経済、対米輸出に対しても節度というか自粛の態勢というか、そういうものが鈍くて、この対応について手の打ち方がおくれてきておるのじゃないか、それが見逃し得ない一つの要因だという感じを実は私は持っておるわけであります。いま、そのおかげ日本における農業が致命的な打撃を受ける。私から見ると横やりと思えるようないわば外圧が出てまいりまして、そのおかげで人身御供にされそうな問題が生じている、こういう認識を持っておるわけであります。  そこで、私が注目いたしたいのは、三月十一日の新聞でしたか、大蔵省は、欧米諸国との貿易摩擦を緩和するために事実上の輸出課徴金創設検討を始める、こういう記事が載っておるわけでございます。これによりますと、輸出関税に相当する輸出正常化調整金というのを考えまして、伸び率が一定以上の輸出品目に対しては、一律五%程度課税しようというものというふうに報ぜられております。解説によりますと、仮に五%程度調整金をかければ一兆円近い収入があるし、輸出を抑制する上においても効果がある。その収入公共事業などに使えば内需の拡大にもなっていいのじゃないのか。これは考えてみれば劇的な措置になるし、適切な発想じゃないかというような考え方も生まれておるようでございます。  現在、政府部内で検討しておる市場開放の策では、アメリカ側が要請するような問題を満たしにくいということになってまいりますと、こんな考え方もあるいは適切かなという感じもしないではございません。この新聞報道がすべてだとは思いませんけれども、これが伝えられている背景はやはり根拠があったのじゃないかと思うのでありまして、これは一体その後どうなったのか、また、この問題について大蔵大臣はどういう考えを持っておられるのか、それを伺いたいと思うのです。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いまごろ何でその記事が出たのか、私の方もちょっとびっくりしているのです。  実は、この話は当初私が言い出したのです。輸出調整金として、そういうことがいいのじゃないかということを言ったところが、これは政府内の内々の話ですが、まず通産省が大反対、それは日本貿易会とかなんかも絶対反対ですから。それでその理由としては、結局、輸出を罪悪視するという思想が悪い、それから、日本でもしそんなことをやれば、各向こうの国が、それはいい話を聞いた、日本でそんな高くしてくるのなら、どうせ高くなるんだから私の方で輸入課徴金でいただきということになったときには困るとか、いろいろありまして、それから、伸びと言ったって何を基準にしてかけるのだ、えらく伸び足りなくて、いらっしゃいいらっしゃいと言われている品物もいっぱいあるよ、そういうのもかけるのか。  たとえば、シームレスパイプだとかああいうようなものは、アメリカなんかでも、日本のものはどんなに高くても値段はこちらの言うとおりでございますからぜひお願いしますということで、向こうは困るのだそうだ。四千メーターも石油を掘るものですから、いま千メーターぐらいのものを三千とか四千とか深くしなくちゃ出ない。ほかの国のパイプでは圧力ですぐぺしゃんこになってしまう。日本のが一番いいそうですね。私もよく知らぬですよ、聞いた話だから。だから、これはぜひ日本品物。たとえばそういうものにもかけるのか。そうなると割り振りが、そいつを芸細かくやる気になるととても不可能だということになるし、一律にかけると、いま言ったような矛盾が出てきてしまうというようなこと、そのほかにもいろいろあるのでしょう。  専門家同士の話は、詳しいことは局長に聞いてもらえばいいですが、いずれにしても、これはまあしようがない、アメリカも余り評価しないと言うから、怒られながらやる必要もないし、じゃやめようということまで知っておるのですが、そこから先は私は知らない。新聞をぽこっと見て、何でいまごろ出てきたのかと実は私は思ったわけでございます。何か続きがあるかどうか、局長から説明があれば……。
  9. 垣水孝一

    垣水政府委員 輸出正常化調整金については、ただいま大臣が御答弁いたしましたとおりの経緯でございます。  実は、昨日も御質問がございましたのですが、前々回の黒字対策の際には、いろいろな手段を寄せ集めて、いわば国際経済対策のための法律案を作成したときに、輸出税というような形ですでに一応の案ができまして議論をしたものが、現在私どもの手元に残っているわけでございます。  その点につきましては、ただいまも大臣から御答弁しましたように、いろいろ批判がございます。ただ、たとえば輸出を罪悪視するのじゃないかというような点については、私どもは、そういうものをかけることについて罪悪視するというのであれば、輸入輸入関税がかかっているのは輸入を罪悪視するとお考えなんでしょうか、そういう思想で、要するに、日本で要るものは日本でつくらなければならぬというような思想だとすれば、そこがいわば経済摩擦の基本であって、製品輸入が進まないゆえんなんだ。そういう点から実は頭を切りかえていただかなければ、先方にもずいぶん輸出努力が足りないというような点がございますが、なかなか貿易摩擦のわが方の対応もまた、そういう思想といいますか、先方国産品愛用ということを言っておりますが、そういう点があるのじゃないか。  こういった面で、必ずしもこの制度、しかし、いずれにいたしましても輸出について税をかけるというようなことは、過去ドイツが一回やったのが典型的な例でございまして、その他は、たとえばスリランカが紅茶の輸出に軽い税をかけて財政収入にしているというようなことがあるとか、開発途上国等についてあるだけでございますが、ただこの制度は、一番の欠陥は、制度として持っていてもいいのじゃないかと私どもは思っておりますが、いまこういう段階でつくろうとすると、たとえば駆け込み輸出が出るとかそういう問題がございます。それから、先ほど大臣申し上げましたように、昨年の暮れのようなどんどん輸出が出るときには、この問題はある程度考えていただいてもいいんじゃないかと思いますが、今日のように、また急激に輸出伸びが鈍りまして、むしろその点が心配だと言われているような状況では、昨年の秋ですら大変な反発を招いたわけでございますので、今日これが実際的であるとは私ども考えておりません。
  10. 平林剛

    平林委員 私は、貿易を罪悪視するとか、日本が対外経済的な面において優位な立場をとることがいけないとかいうことを言っているのじゃないのです。ただ、外需依存経済政策をとってきた中で、強い立場にあるのはどちらかというとこれに関連した産業や商社でございますね。ところが、これに対して内需はふるわず、対米輸出超過のはね返りで牛肉だとかオレンジだとかたばこなど、わが国産業に致命的な打撃を受けようとしておるときに、比較的好況的な地位を占めてきた輸出産業の中でも、同じように痛みを分け合ってもらっていいのじゃないか。そうでなくて弱い者だけが犠牲になるというのは、どうも国民全般から見て説得力がない、私はこう考えるのでありまして、これをとらえて質問をしたわけなんですね。  いまお話しのように、いまは日米貿易のいろいろな摩擦があって、わが国譲歩譲歩を重ねざるを得ないというような状態になっているのは、自由貿易という体制を維持したいという考えがあるし、国際的に見てこれに依存しなければならない日本としては、あるものを犠牲にしてもというような考え方があると思うのですが、そのときにあわせて、私は、バランスの上から見ても、こうした問題についてもやはりメスを入れる必要があるのじゃないかという考えなんです。  局長の方のお話だと、いま輸出が少し鈍化している中だから、こういうときはどうだと言うけれども輸出がどんどん伸びているときは、こういう制度をつくろうと思ったら、よけいまた反撃が多いわけですよ。むしろこういうときに、どんな基準をつくったらいいのかなということをルールとしてつくっておいて、何もすぐ適用しろというのじゃないのですよ、現状において直ちに適用しろというのじゃないのだけれども、しかし輸出超過国民全般にいろいろな意味で覆いかぶさっている現状考えたら、やはり抑止力としてこういうルールをつくっておいていいじゃないか、私はそう思うのですよ。輸出がどんどん伸びて、これでもってやっていこうなんというときに水をかけるようなことをしたら、なかなか大変ですよ。今日の段階は、そういうルールをつくって検討するのにちょうどいい時期じゃないかというのが私の考えなんですね。  ですから、先ほど申し上げましたような趣旨から考えましても、いろいろな意見はあるだろうが、いま申し述べたような考え方もあるわけでありますから、大蔵省大蔵省なりの責任において、ある程度のものは引き続き検討をしておいてもらいたい。どこか立ち消えになるというようなことよりも、こういうものは絶えず研究しておかないと、今度は犠牲にされるものは承知しませんよ。そういうもので追い込められて窮地に立たされ、打撃を受けるものたちにとって一体どうするのかということになってまいりますので、そんなことも考えると、政治的には、こうした問題について検討を続けるという配慮が必要なんだと私は思うのです。これは大蔵大臣、もし御意見があれば伺っておきたいと思うのです。
  11. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私も大体同じような考えで、こういうものを研究するようにして、各省とも実際のところやり合ったのです。ところが実を結ばなかった。しかし、いろいろ手がなければ、またもとへ戻ってくるということもあるかもわからない。したがって、そういうような研究は必要だと私は思っております。
  12. 平林剛

    平林委員 次に私は、日米間のたばこ問題について、専売公社総裁おいででありますから、最近の実情について少しお話しを願いたいと思っております。  日本アメリカとの間で、たばこの問題が再びやかましくなっておるようでございます。この間アメリカを訪問いたしました自民党江崎さんの使節団というのか江崎さんのグループが、アメリカ側から日本たばこ市場閉鎖性を強く訴えられて、その改善を迫られたという報道に接しました。最近の日米貿易小委員会でも、たばこの問題が中心課題になったときには、アメリカ側から、アメリカたばこ競争力があるのに売り上げが伸びないじゃないか、それは日本側に各種の規制があるからだという批判があったという記事にもお目にかかったわけであります。  しかし私は、いささかこの問題についていろいろな知識を持っておりますので、どうもこのやりとりの報道だけでは実際の姿が国民の間に理解されないと思いまして、専売公社総裁から、これまでの経緯と最近の実情についてお話を聞きたいなと思いまして、おいでをいただいたわけであります。  最初に、この問題についてちょっと公社見解を承りたいと思います。
  13. 泉美之松

    泉説明員 お答えいたします。  日米間のたばこ、特に製造たばこ輸入の問題につきましては、昭和五十五年の十一月に日米たばこ協議というものが調いまして、その結果、関税率を大幅に引き下げること、小売店を増加すること、小売のマージンを七%からとりあえず八・五%に引き上げ、将来は国産品と同じように一〇%まで持っていくこと、あるいは広告宣伝につきましていままでの規制を緩和していくというような事柄、それから小売店を一万四千二百店から二万店にふやすというようなことを協議いたしまして、関税率は五十六年の四月一日から実施されましたし、小売の手数料の引き上げも同時に行いました。  それから、それまで国産の一番の売れ行き品でありましたマイルドセブンとラークとの価格差は百十円であったのでございますが、関税率引き下げ等もございまして、小売マージンが上がりましたけれども、この価格差を百円ということ、つまりマイルドセブン百八十円に対しましてラークは二百八十円ということで決着を見て、小売店も昨年の十月までに二万店にふやしてまいったのであります。その結果、昨年の四月から本年の二月までの間ですと、国産品は一%足らずの増加しか見ておらないのでありますが、アメリカ品は二二%増加いたしておるのでございます。  私どもの目から見れば、輸入品の増加、特にアメリカ品の増加は著しいものがあるというふうに見ておるのでありますが、アメリカ側の方は、そのように伸びておることは事実として認めるし、また日本側が誠意を持って実行したことは認める、しかしながら、シェアが一・四%台ではいかにも低過ぎる、アメリカたばこはフランスでは二六・五%のシェアを持っているし、イタリーでは二八・三%のシェアを持っておる、そういうのに比べると、日本のシェアが一・四%台というのはいかにも低過ぎる、アメリカたばこはいいたばこなんだから、日本人はもっと吸うべきだというような主張をされておるのであります。  しかし私どもは、たばこというのはすぐれて嗜好性の高いものであり、また習慣によるものが多うございますので、いかにアメリカたばこがいいと言われましても、日本たばこになれておる人が急にアメリカたばこはいいからそれに変えるというふうにはなかなかならないものでございまして、いまのように二二%もふえていきますれば、そのうちにシェアはおのずから高くなっていくものでありまして、それが一挙にフランス、イタリーのような状態になっていないのがけしからぬと言われても、それはアメリカ側の主張が性急に過ぎるのではなかろうかと私は思っておるのであります。  ただ、私どもは、別に輸入たばこについて何ら規制をしておるわけではありませんし、輸入の枠を設けておるわけでもございません。国民アメリカたばこを吸えば、その吸った量に応じてボンド方式で輸入をいたしておるところであります。また、内外品の競争条件は公正を期するようにやっておるところであります。  したがって、そういった点においては問題はないと思っておるのでありますけれどもアメリカ側の方では、公式には申しておりませんけれども、販売専売というのが一種の非関税障壁であるかのごとき発言をしておるのであります。しかし、これは平林委員御存じのとおりガットで認められておる制度でございまして、非関税障壁というのは当たらないと思うのでございますが、そういう販売専売をとっているところに輸入品が伸びない原因があるんだという主張をいたしておるのであります。  私どもといたしましては、小売店の増加であるとかあるいは広告宣伝費の規制の緩和はもうすでに行っておるわけではございますが、この一年間にテレビ、ラジオの放送料も上がってまいりましたので、それらの点を考え広告宣伝費の増額等についてお互いに話をしていきたい、このように思っておるところでございます。
  14. 平林剛

    平林委員 私は、去年十一月でしたか、アメリカ日本との間でたばこの問題について話し合いがあって、一応合意に達したというふうに理解をしておる。それが半年もたたないうちにまた新しい問題を持ち出してくる、こういうことは、いかにもいまの日米貿易摩擦というような一つの舞台をつくり上げて、次々に、私から言わせると、横やりとまで言わなくとも自分の都合のいいことだけ主張しているんじゃないかという印象を受けざるを得ないのですね。  ですから、アメリカたばこもたまに吸えばおいしいかもしれませんけれども、やはり日本人は日本の気候や風土に合った好みというのがあるんだから、何でもアメリカの言うとおりに広がるなんという考え方を持っておられるというのは、私はちょっと納得ができないのじゃないかと思いますし、私もたばこの経験があるけれども、一度吸ったらそれはなかなかやめられないですよね。次のものに変えるなんというのは大変なんで、ましてや、ラークだか何だかアメリカたばこもございますけれども、興味を持って吸う人はいるかもしれないが、なかなか嗜好まで変えるというわけにいかないわけでありまして、これは商売なんですからね、そんな勝手なことを言って、次々にいろいろな問題を出されては迷惑な話だと私は思っているのですよ。  それから、日本でも喫煙と健康の問題がやかましくなっているのですが、アメリカなんかもっとひどいいろいろなことをやっているんですね。日本の方がまだ緩やかなんだ。たばこは吸い過ぎると何とかというのがありますね。有害。アメリカはもっとひどいことを言っているんですね。ヨーロッパではもっとひどいことを書いてあるわけですね。それだから、少しはこっちでは緩やかだから売れるんじゃないかと思っているかもしれないが、それはもうそんなに簡単にいくものじゃない。  それから広告なんかでも、日本の場合だって専売公社にそうやたら広告をしてはいかぬといってやられているときに、アメリカたばこの広告だけは自由だなんというのは話がおかしいんですよ。郷に入りては郷に従えという言葉があるんですが、これは英語に訳すとどうなるんですかね、わかりませんけれどもアメリカだって、わが物顔に日本の市場はどうにでもできるという考え方は、私はおかしいと思うのですよ。これは幾ら言ってもアメリカ新聞は私のこの発言を載せてくれませんからしようがないんですけれども、ただ、アメリカたばこを売る小売店を一万四千二百店から二万店にしただけで、たばこの売れ行きが一遍に二〇%もふえた、日本たばこは一%しかふえないときに、こんなにふえた。そこへまた小売店をふやすということになったら、一体どんなになるんだろうか。  こんなことを考えますと、簡単に、たばこ小売店をふやせば日米貿易摩擦は少し解消するかななんという考え方でやったんでは、また困ると思うのであります。しかし、どうもアメリカに参りました使節団の中でも、まあこれは何とかしなければいかぬ、そういうことを検討しようなんということを言っておられますけれども、仮にこれをふやしていくと、アメリカの言うように一・五%のシェアじゃ少ないから、もう少しふやせという、その程度までしたら、一体どういう影響があるのか、こういうようなことについて、ひとつ専門家である公社の方の御説明を承っておきたいと思います。
  15. 泉美之松

    泉説明員 たばこ広告宣伝につきましては、平林委員のおっしゃいましたように、公社昭和四十五年十一月から自主規制をいたしておりまして、政府から特に言われたわけではございませんけれども、健康と喫煙の問題、それに未成年者喫煙禁止法ということとの関係からいたしまして、たばこ広告宣伝につきましては、たとえば青少年のアイドルになっているような人は使わないとか、それから、たばこについては新製品に限ってラジオ、テレビの広告をする、古い銘柄についてはやらない、広告の金額もごく制限されたものしか使わないということにいたしておるわけでありまして、その点は輸入たばこについてのメーカーにもよく徹底いたしておりまして、そういう点でお互いに一つルールをつくって、それを守っていこうではないかということにいたしておるのでございまして、向こうが勝手に広告宣伝をやるとうことではございません。ただ、先ほども申し上げましたように、最近テレビ、ラジオの放送料が高くなりましたので、その値上がり分は見てやらなくてはならぬだろう、こう思っておるわけでございます。  なお、たばこ小売店を幾らふやすかということについては、まだ業界で話し合わなければならない問題がございまして、たとえば輸送の効率の問題、それから、いま輸入たばこにつきましては、国産たばこに比べて返品率が五倍と大変高いのでございまして、その分を全部いま公社がかぶっておるのでございます。小売店をふやすのであれば、当然そういう返品の処理についてはそれぞれのメーカーが負担してもらわなくてはならないといったような問題がございます。  こういった問題は、すぐれて業界同士の話し合いで決まるべきビジネスの問題でございますので、業界同士で話し合いたいと思っておるのであります。したがって、いまの段階で、小売店をふやすことによってどれだけ国産製造たばこに影響するかというようなことはちょっと申し上げかねるのでございます。また、アメリカ側の方のシェアがフランス、イタリーになるようなことはとうてい期待できない話だと思うのでありますが、その点をどう考えておるかということについても、まだはっきりしたことは聞いておりません。  一説によりますと、一〇%というようなことを言っておるようでありますけれども、これも数量で一〇%なのか金額で一〇%なのかがはっきりいたしません。向こう側の言うところを聞きますと、金額ではいま二・五%でございまして数量で一・四%、したがって、金額で一〇%というのはいまの四倍程度になるということでございまして、その場合には数量では五%強になるわけでございます。  それにいたしましても、いま三千億本のところで五%強ということになりますと百五十億本を超える数字になるわけでございます。急にそれだけふえるということはとうてい起こり得ないと思いますが、何年かのうちにそういうふうな数字にはなっていき、それが大きく影響しては私ども困りますので、私どもとしては、国産品のシェアは少しずつ落ちましても数量は落ちないように競争力のある新しい銘柄を投入し、広告宣伝も販売活動も十分行いまして、そういうふうに国産品の数量が減るというようなことのないように持っていきたい、このように思っているわけでございます。
  16. 平林剛

    平林委員 私は、きょうは本当は外務省の人にも来てもらって、私のこの話を聞いてもらおうかと思ったのですが、ちょっと連絡があれしたのですが、余り外交的なことだけで実情を無視した取り決めはしてもらっちゃ困る。  とにかく日本は、アメリカから葉たばこだけでも年間六百数十億円買っている大お得意さんなんだから、そっちの方は全然黙っていて、こっちの方だけいろいろなことを言うのもどうかなと私は思っているのです。アメリカの製品たばこが入ってくれば、その分だけ国内のたばこは後退するわけで、そうなれば、アメリカの葉たばこを買ってやるのも少し少なくなるぞぐらいのことをたまには言ってやったっていいんじゃないのかと思っているのです。  これは別にいたしまして、もう一つ、いろいろ話を聞いている中で、輸入たばこ小売価格は百円差になっておりますね。何か最近、アメリカ経済は相変わらず高金利状態で、製造原価も高くなって三〇%程度上がってしまった。去年百円差でもって約束したけれども、どうもこれじゃもたない、製品たばこを買うときは専売公社はもう少し高く買ってくれ、価格はそのかわり据え置いてくれ、こういうような話が来ておるそうでありますけれども日本国産たばこアメリカたばことの間に百円の差があることも、いまのような要求を受け入れるというと、これは関税率をゼロにしたって間に合わない。それから、専売公社のそういう取り扱いの手数料というのですか、利益金というのか留保金というのか知らぬけれども、一%ぐらいいただいているものをただにしてやっても、アメリカの言い分は通すとなればだめになってしまう。  私は、こういう問題については、日本国民の税金でアメリカたばこ会社の利益を図るなんというのは、どだいおかしいと思っているのです。結果的にそうなるのです。関税率をゼロにして、それで専売公社の手数料もゼロにして、やっとアメリカの要求というのは満たされるわけでありますから。そんなことは、裏返していえば、日本国民の税金をもってアメリカたばこが売れるようにしてやるというのと同じでありまして、こんなことはとても考えられないと私は思うのですね。  それで、百円差くらいのものは、ヨーロッパではもっと価格差があるんじゃないでしょうか。日本アメリカたばこが売れるように百円差ぐらいでもって譲歩しているのであって、イギリスだとかあるいはフランスだとかなどに行きますと、もっともっと百円の価格差は広がっていると聞いておりますし、それから日本関税は、去年の申し合わせで安くしたけれどもヨーロッパ諸国では、アメリカたばこを入れるときは九〇%の関税率をかけているということじゃありませんか。こんなことを考えると、どうも私も納得できないのでありまして、アメリカの百円差というような問題、ヨーロッパではどうなっておるのか。  それから、いま申し上げましたような、アメリカの要望を満たすためには関税率も下げなければいけない、専売公社の手数料もただにしなければならないということになってまいりますと、一体どういうことになるのか、そこらの事情についても、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  17. 泉美之松

    泉説明員 お答えいたします。  アメリカ側は昨年、五十六年度の販売契約を結ぶ際におきまして円建て契約にしてくれということで、一万本当たり二万九千五百円ということで契約を結んだわけでございます。そのときには、その前六カ月間の為替レートが二百九円何がしかでございましたので、それを基礎にして結んだわけでございますが、御存じのように、昨年は大変円安が続きまして、向こうの外貨手取りは当初予定しておった数字より大変少ないものになってしまったわけであります。  そこで、今度は向こうとしては輸出価格を大幅に引き上げてほしい、約三〇%程度上げてほしいということを言っておるのであります。しかし、三〇%上げても日本国内における販売価格は据え置いてもらいたいということでございますけれども、そのようなことは算術としてできないわけであります。  価格決定方式には、輸入価格に関税、それに国内のたばこ消費税と専売納付金、小売マージン、専売公社の販管費、それに内部留保というものが加わって計算されるようになっておるのでありまして、専売公社の販管費あるいは内部留保につきましては、若干の削減の余地がないわけではありませんけれども、とうていそれでもっていまの百円の価格差を維持していくことができるようなものではございません。したがって私どもとしましては、向こう側も去年は円建て契約で損したかもわからぬけれども、為替相場の変動ということは変動相場制下において避けがたいことなのだから、それを一挙に取り返そうというようなことは考えないで、ビジネスライクに話をしようではありませんかということを申し上げておるのであります。  ちなみに、ヨーロッパ輸入品と国産品との関係について申し上げますと、フランスではゴロワーズがこの二月から三・八フランになりましたが、輸入品でありますマールボロは七フランでございまして、三・二フラン、百三十二円の差があるわけでございます。国産のものを一〇〇といたしますと輸入品は一・八五倍になっております。それからイタリアの場合におきましても、イタリアの国産品の有力なものはエム・エスでございますが、これが八百リラであります。輸入たばこはマールボロが千四百リラでございまして、その価格差は六百リラ、百十九円、つまり国産品に対して一・七五倍の価格差がついておるのでございます。  日本の場合に、先ほど申し上げましたようにマイルドセブンとラークが百円差であるというのは、ヨーロッパ価格差に比べてむしろ少ないぐらいのものでありまして、私どもは、この価格差がそんなに大きいというふうには思っておらないのであります。したがって、向こうがオファー価格をそんなに大きく引き上げるのであれば、どうしても小売価格を上げざるを得ない、小売価格を上げないで済む程度にするなら、向こうのオファー価格をしかるべき額に調整してもらわないといけないということを申し上げておるところでございます。
  18. 平林剛

    平林委員 もっといろいろ話したいこともあるのですけれども、いずれにしても、自民党江崎さんが行かれたときにアメリカ側から強く要望されたたばこ市場の開放という問題についてはなおいろいろ議論がございます。具体的にどういうことを言っているのかというのもよくわかりませんし、それからもう一つ私が気がかりなのは、第二臨調の方で、こうなったら外国たばこについては、その販売分を専売公社から切り離したらどうかというような意見も出ているという話を聞いておるわけであります。外国のメーカーに自由に販売させるということが国内にどういう影響を与えるのか、実際問題としてそれがどうなるのかということは、軽々に結論を出すことはできないわけでありますが、一説によると、アメリカ側の主張の中にも、市場の開放ということとたばこの専売制というのは矛盾しているから、専売公社は民営にすべきだというような議論が出ておりまして、こんなことは一種の内政干渉だと私は思っておるわけであります。  とにかく、いま若干の時間で総裁お話をお伺いいたしましたが、この問題についても、私は、アメリカの要望について詰められるものは詰めてもいいと思っています。筋の通った話ならば何も断固拒否なんて態度をとる必要はないのでありますが、しかし、こちら側の言うべきことはきちんと言っておく。それからもう一つは、関税率の問題になると大臣の方の問題になりますけれども、本来この問題は、たとえば先ほど総裁が言いました流通効率の問題だとか専門的技術的な問題は、外交問題よりはむしろ業界同士でよく話し合わせていくというような基本的な態度を日本側としてはとるべきじゃないのか、こう思うのであります。  この問題について私の見解を述べましたが、大蔵大臣も参議院の関係で御都合があるようでありますから、大臣の御見解を承って、残余の質問は留保しておきたいと思います。
  19. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 商売の話は商売人同士でどうやったらいいのかということを話し合えというのは私も基本的に大賛成、そういうことでやってもらいたいと思っております。それから国内製造の問題は、これは日本がやることですから、別にアメリカにどうこう言われることはございません。  以上であります。
  20. 平林剛

    平林委員 それでは話題を変えまして、輸入物洋酒の関税率の問題につきまして、少しお尋ねをしていきたいと思うのであります。特にウイスキーとブランデー、ブランデーの問題は近くフランスの大統領がおいでになりますから、それとの関連におきまして少しお尋ねをしておいた方がいいのではないかと思いまして、これを取り上げたいと思っております。  関税暫定措置法の一部を改正する法律案の提案趣旨によりますと、「我が国市場の一層の開放により貿易摩擦を緩和し、自由貿易体制の維持・強化を図る等の見地から、我が国の自主的措置として、東京ラウンドで合意した関税引下げの一律二年分繰上げ実施の措置を講ずる」こう書いてあるわけでありますが、輸入物のウイスキーにつきましても関税率が若干引き下げられるようでございます。  しかし、これによってどういう変化が起きるのかと率直にお尋ねをしたいのです。たとえばジョニーウォーカーは、デパートや何かに行って値段を見てみますと、ジョニ黒で九千円、ジョニ赤で三千八百円という店頭価格になっておるわけでございますけれども、今度の関税率引き下げでこういうのはどういうふうに影響するか、まずお尋ねします。
  21. 垣水孝一

    垣水政府委員 ウイスキーの関税の引き下げを東京ラウンドの一律前倒しと一緒にいたしましたのは、実はウイスキーはすでに八年分全部前倒し済みで下げているからでございます。しかしながら、下げたにもかかわらず、これは従量税でございますが、仮に従価に換算いたしますと、五十六年度の輸入価格によりますと、平均で四〇%を超える四〇・二ぐらいに実はなるわけでございます。  こういうことで、EC特にイギリスあたりから市場開放要求の代表例とされたということでございますが、もとより先生御承知のように、それには関税の上にさらに酒税がかかり、そして流通マージンが国内品に比べても非常に大きいわけでございます。実はスタンダード物のたとえばジョニ赤クラスの小売価格三千八百円といたしますと関税のシェアは七%、プレミアム物のジョニ黒クラスでございますと関税のシェアは、いま先生おっしゃいました九千円に対しまして三%程度でございます。  したがって、今回平均して一〇%以上関税を引き下げたわけでございますけれども、一本当たりにいたしますと三十円程度という数字が出てまいります。こういたしますと、恐らくは小売価格にはほとんど影響がないのではないか。これは一つには、むしろ値崩れをすることによってかえって売りにくくなるとかいうようないろいろな問題があるかと思いますが、恐らくは小売価格には余り影響はないのじゃないかと考えております。
  22. 平林剛

    平林委員 いまお話しのように、たとえばジョニーウォーカーの黒は、CIF価格で八百五十円くらいにしかならないのが店頭においては九千円になる、十倍も値段が違うのですね。同じように、ジョニ赤だと、四百八十円くらいで入ってくるものが店頭に行くと三千八百円になるわけでありますから、十倍にはいかないけれども、これまた相当高値になる。よく調べてみると、中間マージンが店頭価格の、ジョニ赤でいけば四六%、ジョニ黒でいけば六〇%も入ってしまっている。私は、この中間マージンが少し多過ぎるのじゃないかと思うのであります。  もちろん国産ウイスキーとの関係もあるかもしれませんけれども、もう少しこういう仕組みを合理的にして、日本の消費者がもっと気楽にジョニーウォーカーも楽しめるというようなことにできないものだろうかと思うのでありますけれども、いかがでございましょうか。
  23. 篠原忠良

    ○篠原政府委員 お答えいたします。  輸入ウイスキー並びに輸入ブランデーの市販価格がCIF価格並びに関税、酒税を加えた引き取り価格に比べて大変高いではなかろうか、先生御指摘のとおりでございまして、今度それを逆に、小売価格の中に占める輸入業者の流通経費等が、マージンを含めましておおよそ五割から、高いものになりますと七割を占めておるという状況でございます。  この輸入洋酒の市販価格は、大体業者の自由価格ということになっておりまして、輸入し得る業者、また販売できる免許等については非常に緩やかに取り扱わせておりますが、もっぱらこの輸入価格が流通の経費等で非常に高くなっている。これにつきましては、先般来から並行輸入と申します方法等がとられておりまして、その並行輸入の景がわずかでございますので、まだ市販価格に影響を及ぼすほどになっておりません。しかし基本的には、一国に一つの総代理店を設けて先方側が輸出しておる、つまり輸入側としては総代理店経由での輸入方式になっているということがございまして、そのために、輸入されてくる商品の国内販売につきまして、総エージェントが、流通の経費のほか輸出者に対する市場の情報の提供、広告宣伝並びにFOBの将来の価格の引き上げあるいは為替の変動のリスク等々を加味して、流通の経費、マージンが占められておるという現状のようでございます。できるだけ輸入業者において幾分でも競争し合って、市販価格がそれなりに市場の実勢に見合って形成されることが望ましいと見ておるところでございます。
  24. 平林剛

    平林委員 どうも朝っぱらからウイスキーやブランデーの話をして申しわけありませんけれども輸入のブランデーの価格、これも相当なものなんですね。  私は余り飲めないから、寝るときにちびりちびりくらいしかたしなまないのでありますけれども、ブランデーになってくると、値段の関係もあって余り手が届かないのです。この間もちょっと調べてみたら、フランスのレミーマタン・ナポレオンは三万円、それから、レミーマタンのVSOPでも一万二千円、ヘネシー・スリースターで九千円ですが、これも同じようにCIF価格と小売価格を比較してみますと、中間マージンが大体五〇%近く、半分は中間マージンです。ヘネシー・スリースターのごときは七〇%が中間マージン。ですから、われわれはブランデーを飲んでいるつもりなんですが、本当は中間マージンを飲んでいるということなんでありますね。  近くフランスのミッテラン大統領閣下がおいでになるわけでありまして、私どもも敬意を表して、もう少し日本とフランスの親善を深めるために、ブランデーを多くの日本国民に飲んでもらうことによって日仏の関係はさらによくなるんじゃないのかと思いまして、もう少したくさんの人にブランデーを飲んでもらったらどうかと思ったのですが、これは大変な中間マージンがあって、そのことが障害になっているというようなことも考えられるわけですね。でも恐らく、フランスから大統領がおいでになると、この話が出るかどうか知りませんが、日本はもう少しブランデーを買ってくれ、そのためには関税率を下げろなんということがないとは言えないですね。  ところが、その関税率を調べてみると、ウイスキーは今度の改正案で関税率を下げて三六%ですが、フランスのブランデーの方はもうすでに二四・九%で、ウイスキーより安いのですね。いや、やはり日本は早くも、フランス大統領閣下がおいでになるので、歓迎の意味でこんな低い関税率にしてあるのか、こういうふうに思ったのでありますけれども、それでもなおきっとフランスにとりましては不満だろうと思うのです。  そうすると、この不満、こういうものの輸入についてもう少し考えろという場合には、どうやったって中間マージンを何とかしてもらう方が販路は拡大をするんじゃないのかという感じがしないわけじゃございません。むしろここの方に焦点があるんじゃないのかと思うのであります。  こういう小売価格が相当の高値になっている理由はいまの中間マージンにありますけれども、これは何とかできないですか。日仏親善のためにもひとつ知恵を働かして、具体的にどうしたらいいかというようなことはお考えがないでしょうか。このことについてひとつお知恵を聞かせてもらいたいと思います。
  25. 垣水孝一

    垣水政府委員 ブランデーにつきましては、すでに先週の日仏貿易会議におきまして、ウイスキーを下げたのになぜブランデーを下げないのかという議論がございました。  そこで、ただいま先生も御引用になりましたように、ブランデーの方はすでに、イギリスがバーボン並みに下げろ下げろと言っておる、そのバーボン・ウイスキーの関税率が二四・五でございますが、いまおっしゃいましたように、ブランデーが二四・九ぐらい。従価ではございませんので、従量を現在の価格で換算いたしますと、その程度になっているわけでございます。それともう一つは、シェアが非常に大きくて、もうすでに、ブランデーの日本におけるシェアというのは半分近くになっている。  こういうことで、いまおっしゃいましたように、問題はその流通マージンのところにあるのではないか。しかも、ブランデーの流通業者というのは主として外資系でございまして、その辺に問題がある、こう申しましたところが、事務的には、なるほどそういう分析をしてみるとそういう面もあるかと、これはフランス側も帰ってよく検討するということで、当初、ブランデーというのをかなり目玉のようなかっこうにしていた感がございますが、その後、ジョベール貿易相も、また現地からの電報によりますと、江崎先生とジョベール大臣とがお会いになったときにも、個別の問題としてブランデーの話は出なかったということにはなっております。したがって、彼らもその流通のところをどうするか。ただ、私どもは、ブランデーというのはやはり高いから売れているという面もかなりございますので、向こう側がどういう態度に出てくるかということを慎重に見守っているところでございます。
  26. 平林剛

    平林委員 この問題については、なおもう一つの問題を提起してお尋ねをしたいと思ったのでありますが、私の割り当ての時間も経過いたしましたので、本日は、ウイスキーとブランデーの話はこの程度にいたしまして、私の質問を終わっておきたいと思います。どうもありがとうございました。
  27. 森喜朗

    ○森委員長 午前十一時四十五分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十時十三分休憩      ————◇—————     午前十一時五十一分開議
  28. 森喜朗

    ○森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。和田耕作君。
  29. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 このごろ、内外政策といいますか、政府の見通しの甘さというのが非常に目立っておると思います。たとえば国内の景気の見通しについても、もう二年間企画庁長官の見通しは狂いっ放しというところでありますし、また、外交政策あるいは対外貿易の問題あるいは外国の景気の問題についても、最もいい条件のもとで見通される予想、こういうようなものが目立っておる感じがいたします。  そういうふうな見通しに立ってのいろいろな対策あるいは予算の編成ということにもなりますから、ことごとく見通しと実績とが狂ってくるという感じがしてならないのでありますけれども、まず第一にお伺いしたいのは、昨日のレーガン・櫻内外相の会談で、サミット前に日本日本の国内市場の開放についての包括的な対策を示してもらいたいというのがアメリカ側の観測のようであるのに対して、日本側としては、官房長官の言などもありますように、必ずしもサミット前に対策を求めておるのではないというような観測をしていることが伝えられております。この問題は、政府としてはどのような受け取り方をしておりますか。
  30. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 江崎ミッションがお帰りになりまして、それから櫻内外務大臣が帰られまして、今月末に関係閣僚の会議があるやに聞いております。そういうような、いま外に出向かれております政府・与党の使節団のお帰りを待ちまして、検討が進むのだろうと思います。目下のところは、各省それぞれ、先般の日米貿易小委員会あるいはECあるいはフランスとの間の会合の際にいろいろ出ました問題を、担当分野につきまして検討しております。そういうようなものが、お二人がお帰りになった段階でさらに検討が進められ、ただいま御質問のような基本的な考え方になっていくんだろう、そういうふうに思っております。
  31. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 外務省の方の見解は。
  32. 池田右二

    ○池田説明員 アメリカの要望というものは、できるだけ早期に目立った措置日本側にとってもらいたいということだと外務省としても承知しておりまして、日本側は、これに対して、できることから前向きにとれるべき措置はどんどんとっていかなければいかぬ、こういうふうに認識しております。
  33. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 余りはっきりしないんですが、つまり、この問題についての受け取り方ということが、今後の日本の対策の立て方について非常に大きな影響を及ぼしてくる。政府として、いままでアメリカあるいはECの方からいろいろ注文が出てきた、また今月の九日、十日にはアメリカとの貿易委員会が行われ、またその次のECとの間にもそういう問題が行われておる。そういう事務的な接触の中で、個別的な問題の解決の仕方あるいは日を延ばして解決が延ばせるんじゃないかという、かなりゆとりを持った考え方、こういうふうな考え方が何だか目立つのであります。  たとえば、その前提として、この秋にはアメリカの下院の選挙が行われる。この選挙を目指してのアメリカの政治家たちの発言だという考えからすれば、選挙が済めばもっとじみちな交渉が行われるだろう、そういうことを期待しながら日本の態度を明らかにすることを延ばしていく。時間を稼いでいく。そういう感じが見られてならないのでありますけれども、果たしてそういう姿勢でこの問題が対処できるのか。そういう、何というのですか、ぐずぐずとした姿勢で対処した結果が予期以上のダメージを受けることになりはしないか、そういうことを一つ心配しなければならないような局面にいまあるのじゃないかという感じがしてならないのであります。  たとえば、きのうのECのガットへの提訴を決めた問題、こういう問題は、ガットの閣僚会議は十一月ですか、それからサミットは六月ですから、約半年くらいの期間のずれがあるわけで、あのレーガンの対案、要求は、サミット前に日本の包括的な姿勢を示してもらいたいということだと思うのですけれども、その問題についてあいまいな姿勢というのは非常に大きな問題を残してくるんじゃないか、私はそういうふうに思えてならないのです。きょうは時間が半時間くらいしかありませんから、その問題について数えて聞くことはやめますけれども、そのことをぜひ要望しておきたいと思います。  もう一つの問題は、先ほど申し上げたとおり、日本の対外貿易の問題について、いまの状態を何とかしのいでいけば、秋ごろになればアメリカの景気もよくなるだろうしというようなことで、好転をして状態が緩和されるんじゃないかという感じ方が一つあるんじゃないかと思うのですけれども、現在の日本の国際貿易の問題は、環境を考えた場合に、そういう楽観的な考え方がどの程度まで可能であるかということについても、この際もっと深刻に考えてみなければならぬと思うのです。  大ざっぱに見て、現在アメリカ、西欧諸国を含めて、どの国もインフレと失業あるいは財政困難に襲われている。この問題はちょっとやそっとでは解決できない問題であることは御案内のとおりだし、状態から見れば、ますます困難さを増しておるというようにも思う。まず、この問題についてどのようにお考えになっているのか、簡単にお伺いをしたい。
  34. 垣水孝一

    垣水政府委員 日米、日EC間の貿易摩擦の原因は、非常に表面的にあらわれておりますのは、もとより大幅な、ECに対しても百三億ドル、アメリカに対してはわが方の統計では百三十三億ドルを超える黒字ということでございます。  片方において、先生ただいまおっしゃいましたように世界的な不況で、特にEC、アメリカとも一千万人前後に及ぶ失業者が出るということに対するところが一番大きいわけでございまして、そこにいわゆる集中豪雨的な輸出するものがございまして、これは最近は自動車等についてのあれで、アメリカ政府としては必ずしも大声を上げておりませんけれども、ECはかなり集中豪雨的な輸出ということについて文句を言っているわけでございます。  そういう段階で、しからば日本に何をとらせるかというと、なかなか日本製品の優秀さのために、と日本人はかなり自負しているわけでございますが、むしろ、それよりもいわゆる非関税障壁で市場が閉鎖的だという言い方……。
  35. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 途中ですけれども、そういう問題も無関係ではありませんけれども、先進諸国の景気あるいは購買力、日本貿易の前提になるそういうものが回復する兆しがあるのかないのか、この一年あるいは二年のうちに、その問題ですね。
  36. 垣水孝一

    垣水政府委員 その点につきましては、むしろ国際金融局長の方から御答弁申し上げる方が適当かと思いますが、アメリカの景気も徐々に回復いたしておりますし、日本もむしろEC等に対してもう少し手助けをして活性化をする。手助けと申しますのは、投資をするとか集中豪雨的なものについてはならしていくとかということでございます。
  37. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 関税等の問題については後で質問します。  いま私質問しているのは、日本輸出入の貿易の前提になる各国の購買力なり景気というものが、果たして一部期待しているように半年、一年で目に見えて好転する可能性があるのか、この問題を聞いておりますから、簡単にお答えをいただければいいと思います。  先進国の問題についていまお答えがありましたが、ソ連や中国を含んだ東欧諸国の問題でも、どの国も計画の不振を伝えられておって、回復する可能性はない。特に一年のうちに回復する可能性はむずかしい。またOPEC諸国にしても、いまの石油価格の低落等によって購買力が非常に減退しておって、これも半年や一年で回復する見通しはない。そして開発途上国の慢性的な不況が依然として深刻化する傾向にある。つまり、日本貿易を取り巻いておる外国の要因を見れば、どの要因も日本貿易が好転をするような条件は、この半年、一年、二年足らずのうちには少なくとも予想できない、こういうように私は思うのですけれども、この問題について、どなたかお答えになれる人おられますか。
  38. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 OECDの昨年十二月の世界の経済の見通しがございます。これを、御承知だと思いますが簡単に御紹介しますと、成長率については、五十六年と五十七年を比べた場合に、下期の方から上向いていくであろうという見通しを立てております。  たとえば日本の場合でございますと、これは暦年でございますので政府の発表と違いますけれども、八一年が三・七五、下期に三・二五に落ちたということでございますが、八二年の上期に三・七五、下期は四・五というようなことで見ております。主な七カ国で見ますと、八一年が一・二五でございますが、八二年の上期が〇・五と落ちますが、下期に三・五と上がるというふうな見方をしております。それから、自由圏で二五%ぐらいのウエートを持っておりますアメリカについては、アメリカ政府の公式の見解は、第一・四半期を過ぎた後四月ないし五月ごろから在庫調整が進んでおりますし、だんだんと自律反転の力がついてくる。七月の減税が行われるというようなかっこうで、十二月−十二月で見ますと一、二%の、あるいはもう少し大きな成長になるんじゃないかというような見通しを立てております。ただ、ただいま御指摘のように、債務累積を抱えております低開発国の問題、それから東欧圏の問題、確かに一般的に見て本当にそういうふうにいくのかという疑問は所々に出されております。  このOECDというのは、二十四カ国集まりましていろいろ作業をやっておりますので、一応公式的な見方としてはただいま申し上げたような見解である。ただ、御指摘のような第二次オイルショックの後遺症の問題、アメリカの高金利の影響の問題あるいは東欧圏の経済ピンチの問題、そういうような問題は現に存在しております。絶えず注意深く見守っていかなければいかぬというような心構えでやっております。
  39. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 大臣もお見えになったようですが、大変お忙しい中を御苦労さまです。  大臣、いま御質問しておりますのは、最近の政府の国内の景気の見通しあるいは外国の景気の立ち直りに対する見通し等については、見通される最もいい条件を見ておられて、悪い面あるいは実際の動きということからちょっと離れて楽観的な見通しが多過ぎるんじゃないかという立場で、いま外国の景気の問題について御質問を申し上げておるのです。  たとえばEC、アメリカの景気にしても、この秋ごろになればだんだんとという考えがありますけれども、果たしてそうであるかどうか。これは、一つの希望的なものを含めないで、客観的にもっと検討してみる必要がありはしないか。とすれば、なかなかそう楽観を持てない条件がアメリカにもECにもある。あるいはOPECの諸国にしても相当大きな購買力を持っておったところですけれども、これは油の減価あるいはその他で、なかなかこの一年、二年で購買力をつけるとは私は思われない。東欧諸国はみんなそうですね。ソビエトも中国もそうです。一般の開発途上国もますます慢性的な不況になる、こういう条件から見ますと、国際貿易が好転していく、客観的な条件がよくなるということは相当警戒的に見てみなければならないということが考えられるのです。  そしてその前に、櫻内さんとレーガンさんとの会談で、サミット前に日本の包括的な対策を求めるというのに対して、日本政府は、宮澤長官の新聞の発言なんかによると、必ずしもサミット前という条件つきではなくてということのようですけれども、実はこの問題は非常に大事な問題だと思うのですね。いまの求められておる対策というのは、どれをとっても非常にむずかしい問題で、政府としてはできるだけ時期を延ばしてという考えを持っておられるように見えるのは、これはよく理解ができるのですけれども、果たしてそういう姿勢でいまのアメリカなりECなりとの交渉がうまくいくかどうか、私は大変危なっかしく思うのです。  きょうはもう時間がありませんから、私からいろいろ申し上げて、後から大臣の御所見をいただきたいのですが、たとえば日本輸出にしても、いまの輸出の困難、これはだんだんと好転していくという見方があるのに対して、果たしてそういうことになるのか。いま申し上げた海外の景気の問題は大いに関係するのですが、たとえば、いまの自動車とか鉄鋼などの輸出が自粛という条件で減退しているということだけじゃなくて、最近の数年間の輸出の好調によって、輸出商品の在庫ということがすでに問題になってきている。大きく輸出伸びを予定してたくさんの品物をつくっておる。これが在庫になっておる。この問題がかなり負担になってきておるという条件も見逃すことはできない。こういう問題が、また、日本が数年間にわたって旺盛な外国に対する投資をしたその会社等が次第に製品をつくり出してきた。これが日本輸出中心のものに対する競争的な立場に立ってきている。こういう条件と、いまの海外の景気の停滞等を考えると、なかなか貿易についての楽観的な見通しは危険じゃないか、こういうふうに思うのですが、大臣の全般的な御所見をひとつお伺いしたい。
  40. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私も決して楽観はいたしておりません。いたしておりませんが、ヨーロッパアメリカの景気動向というものについて、だれが的確にそれを推測するかといいましても、なかなかだれがということの決め手がない。したがって、われわれはOECDを初め通説的に言われているものを一つの目安にする以外には、現実の問題として目安のとりようがないということでございます。  そこで言われていることは、要するに、前半は悪いが後半になればいろいろな施策があるので上向くということでございます。しかし、まるっきりそれで安心もできません。日本としては、国内の内需喚起というような問題についても、限られた条件の中でございますが、できるだけのこともやってまいりたいし、なお貿易摩擦の問題、この問題もごたごたのままでサミットに行ってしまうと、日本つるし上げみたいなことになってしまっても、これは大変な問題でございますから、一番問題の多い日米関係について、それ以前にできるだけ調整をしておくということは一番いいことじゃないだろうか。どういうふうなやり方をやるかにつきましては、櫻内外務大臣の帰国、江崎ミッションの帰国というものを踏まえまして、よく相談をしていきたいと思っております。
  41. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私は、こういう御質問を特に警戒的に申し上げておるのは、ちょうど一九三〇年代、私はあのときは企画院の調査官をしておりまして、大体あの時分のことを記憶しておるのですが、あの時分も大変あれですね、大恐慌からあのころまでというのは、ナショナルな感覚が各国に出てきて、これが即国益追求という形で、もっともな議論がなかなか受け入れられなくなるのですね。  特にこの国益の問題、今度のような関税の問題なんかについても、アメリカの要求がある、そしてECの要求がある、強くなればなるほど、日本としても反発してくる、これは当然のことです。その反発ということが、日本の戦後の国際的な状態から見て、ある程度までにしないと、もっともっと大きな損害を受けるというていのものなんだけれども、なかなかそれの調整ができないような状態が次から次へと出てくる。そして思わぬような大きな対立になってくる。この点を非常に警戒しなければなりませんね。したがいまして、先ほど申し上げているとおり、見通しという問題を政府としてもっと重視してもらいたい。  国内景気の問題についても、いま企画庁長官として、この二年間はまるきり、恐らく今年も当てが違ってくると思うのですけれども、つまり、苦しくなると一番いい条件だけを考えて、そして自分の立場だけを考えるようにならざるを得ないのです、人間として、国として。そういう問題から、そういう徴候がすでに出てきておるので、私は心配をしておるわけです。  したがって、今度のアメリカの要求というものも、農産物たとえば牛肉とかあるいはミカンとか、あるいはたばことか、具体的な要求もあります。それからECにしても、そういうふうな個別的な要求もありますけれども、全体としてのムードは、個別的な要求にポイントがあるのではなくて、日本のいわゆる集中的な輸出というものの圧力を何とかはねのけたいという包括的な一つ考え方があって、そして個別的な問題についてのあれが出てくる。この二面を特に見ないと、この対策が誤ってくるのじゃないか。  特に、アメリカのこの間の日本の公聴会なんかを見ると、案外向こうでじみちに議論をしているところなどは予想以上に穏やかに見える。しかし、日本との交渉という形になってくると、私は、そういう穏やかな感じはなかなか出てこないんじゃないか、もっともっと政治的な姿勢、日本はせっかく自分たちが苦労して援助して伸ばしてやったのに、いまこういうふうな状態は何事だというような、全体的な不満の姿勢が出てくる。むしろその方が強いという感じで理解をしなければならないのじゃないか。  こういうことになると、今度のサミットまであるいはECの問題は十一月のガットの閣僚会議ということにもなるかもわかりませんが、ある程度まで包括的な姿勢、つまり日本としてぎりぎりの一つ考え方というものを早くまとめられて、そしてアメリカなりEC側の理解を求めるという考え方も非常に重要であるのじゃないか、こういう感じがするのですが、大蔵大臣としてはどういうお考えを持ちますか。
  42. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 全く同様な考え方でございます。
  43. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 そのようなことはぜひともひとつ、つまり情勢の判断、アメリカなりECなりの要求というものが、一つ一つの物品についてある程度譲歩をすれば済むという面もあります。ありますけれども、それだけではなくて、もっと強い問題が、いま申し上げたような政治的な一つのうっぷん、不満ということにある点、しかも交渉になればこれが表へ出てくるという問題ですね。これに対して対処を誤れば、事によってはなかなか調整できないような感情的な問題にもなる問題ですから、ぜひともその問題について、政府として冷静な対応の仕方を考えて、時期を誤らないような対策を考えてもらいたい、こういうふうに思うわけでございます。  そういうふうに考えますと、大臣、この包括的な一つの対策となりますと、きょうも幾つかの新聞でも書いておりますように、まず第一に関税輸出入にまつわる日本の出先の税関での問題の扱い方、こういう問題をアメリカとしては、確かにアメリカやり方は全く違うわけですから、何とか改善しなければならないというような非関税障壁の打開の問題、そして農産物を中心とした個別的な要求に対するある程度の見通しという問題、そして、いま向こうで言っているようなたとえば日本の流通機構の問題とか、そういう日本株式会社的な日本独特の一つの閉鎖的な要素になっている問題についての対策、こういう三つの問題について、時期を追っての対策が必要だという感じがするのですけれども、こういう問題についても、包括的な考え方というものを政府としてお考えになっておるのかどうか、あるいは違った包括的な考え方を持っておられるか、この問題についてお伺いをしたい。
  44. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはもう何回もお話ししておるのですが、具体的なやり方については、櫻内外相、江崎ミッションが帰ってから政府・与党の中でとりあえず至急に相談をして、どういうようなことが一番効果的で、しかも問題解決に役立ち、打撃がこちらも少なくて済むかということの案を早急に練っていきたいと思っております。
  45. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 最後に、国際的な経済の状態はますます深刻になってくる、そして日本輸出貿易は困難がますます加重してくる、そういう状態のもとでの対米、対ECの問題は日本の死活の問題に関係する問題でありますから、ぜひとも情勢の判断をお誤りにならないように、そして遅きに失するようなことにならないように、ぜひとも政府としての配慮を願いまして、私の質問を終わります。
  46. 森喜朗

    ○森委員長 正森成二君。
  47. 正森成二

    ○正森委員 主としてアメリカとの摩擦の問題について聞かしていただきたいと思います。  今回の摩擦は、十年くらい前と大分さま変わりしておるのですね。というのは、十年くらい前と違って、今回は、アメリカの経常収支は七九年、八〇年、八一年、三年連続黒字じゃないですか。逆に、わが国の方は七九年、八〇年と赤だという状況の中で起こっておるのではありませんか。
  48. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 計数の問題なので私から申し上げます。御指摘のとおりでございます。
  49. 正森成二

    ○正森委員 ですから、大臣はすでに御承知のところだと思いますが、アメリカの議会図書館議会調査局報告書というのがあります。その中でもこの点を指摘しておりまして、細かい数字はやめますが、こう言っているのですね。   経済的観点からすれば、米国の物資、サービス貿易全体がほぼ均衡を保っている限り、対日商品貿易赤字はそれほど重大な関心事とはなりえない。商品貿易は国際経済資源の全体の流れのほんの一部にすぎないし、また日本は多くの貿易相手国の中の一国にすぎないからである。   八〇年に米国の商品貿易赤字は二百七十三億五千万ドルに減少する一方、米国の経常収支は一億一千八百万ドルとわずかながら黒字を示した。その上、対日貿易黒字を縮小しようとする米国の行動は米国が貿易黒字を維持している欧州共同体(EC)に同じような譲歩の要求を引き起こさせることになって、期待はずれの結果に終わりかねない。さらに、商品貿易収支がよくなれば、ドルが強くなるから、日本輸出品は米国市場でいっそう競争力を増し、米国の輸出品の海外での競争力は弱くなる。したがって、対日措置の純経済効果は小さなものかもしれない。日本輸出規制することで貿易収支の不均衡を縮小しようとするやり方は、一般的に非能率の原因となり、また米国市場での消費者の負担をかなり増大させるだろう。 こう言っているのですね。これはアメリカの議会図書館議会調査局報告書ではございますけれども、正鵠を得ている点があると思うのですね。  それで、大臣は参議院で御苦労なさって休みは衆議院で昼もがんばる、御飯を食べる時間もないということでは、幾ら超人的な大臣でもこれは体がもちませんから退席していただこうと思いますが、その前に一つだけ、これとの関連で伺っておきます。  垣水さんでしたか、関税局長、「貿易関税」の三月号、こういう本がありますね。この中にあなたは非常に貴重な論文を書いておられますね。「本稿は、一月十一日の日本関税協会常務理事会における講演をもとにまとめたものである。」ということですから、しかも、これは言ってみればあなた方がお出しになっている本ですから、責任をお持ちになると思うのです。  その中で、この問題について、大臣が非常に信頼をなさる関税局長がいろいろ言っているのです。後でおいおい聞きますが、非常に私が興味を持ったのは、こう言っているのです。ずっと摩擦の問題を挙げた後で「その点では、ECのほうがずっと厄介だとは思うけれども、米国内でも、具体的に自動車を抱えているところ、あるいは農産物を抱えているところは、理性をすでに失ってしまったような状況も現出している。」関税局長が、相手国が理性を失っていると言うているのですね。理性を失っている相手とは交渉できないのですな。大臣に早く休んでいただこうと思って中間の論理を省略しているのですが、後でまた言いますけれどもわが国関税局長としてこう書かざるを得ないというような状況に対処していくには大変なんですね。  きょうの新聞にも、サミット前の一括解決とか二段階解決とかあるいは三段階解決とか、いろいろ言っておりますが、こういうときにわが国の国益を守って、関税局長でさえ理性を失っていると言わざるを得ないような相手に対して、わが方は理性的に対処する。わが方も理性を失ってしまって、農業はどうなってもいい、あれはどうなってもいいというようなことでは困るのですが、それについての御意見を承って、それで退席していただきたいと思います。
  50. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは見方だと思いますが、私の知っている限り、政府の要人は、相互主義法のようなものができることは困ります。それからアメリカ輸入制限、そういうようなことは希望しておりません、日本からの輸出は結構でございますとも言っているわけです。  問題は、アメリカ貿易はいま御指摘のとおり黒字なんだから、その点はグローバルで考えるべきじゃないか。だから、日本もサウジアラビアに対して大赤字なわけですから、二国間だけで物を言うんだったらば、そういうことを日本もサウジに言わなければならない。必要があって油を買っている。向こうも必要があるから日本のパイプを買ったり鉄を買ったり、いろいろやっているわけです。だから、そういう議論はしているのです。それは、われわれとしては、それならばアラスカの石油をこっちに回してください、買いますから。日本はどこかで石油を買わないから、メキシコならメキシコのものをアメリカに譲ってもいいから。そうすれば二国間だけの貿易はかなり黒字になるじゃありませんか。そういうことでやろうとすれば、向こうは資源がどうだとかこうだとか、法律があってできないとか言っているわけですから、それはあなたの方の問題じゃありませんかということは盛んにわれわれも言っているわけです。  航空協定の問題も同様であって、こんな不平等な話があるかということはやっているわけです。だから中断で帰ってきちゃったということになっているんで、政府としては黙っているわけでも何でもない。どんどんやっているのです。  問題は議員なんですよ。これは、理性を失っているかどうかは知りませんが、その選挙区だけの話を持ち出してかなりいろいろ言っているわけですね。貿易と防衛の問題がどう関係あるのか私知りませんよ。知りませんけれども、かなり強い意見がある。これは選挙もあるし、日本は別だろうけれども、いろいろどこの国も似たようなところがあります。したがって、これに対してはやはりこちらも個別的に、その選挙区に行って、いろいろな演説会で、まあ議員の応援はできないが、日本の事情を説明したり、その議員が日本に来てこういうことを言って非常に働いているくらいのことは何かで知らせてやれば多少違うのではないかとか、いろいろなことが言われております。  いずれにしても、これは感情的になっちゃっても困る。アメリカみたいな国は、国民感情でふったかってしまうと政府のブレーキではなかなか消えませんからね。私は、実はそこのところを一番心配しているのです。かつて、日本は強くなり過ぎてABCD包囲陣をしかれて、ともかく資源を押さえてしまえということでハワイ真珠湾攻撃をやっちゃったわけですから、そういう愚は二回繰り返すわけにはいかない。こっちも野たれ死にするわけにもいかない。でございますので、それはやはり本当に理性的に、また仮に筋の通った話の場合は、どうして日本国民に理解してもらうかということも政府としては大きな問題なんです。お互いに持ちつ持たれつの社会ですから、一方的なことばかり言えません。だけれども、こちらが壊滅的打撃も困る。  ですから、そこらのところをどこで考えていくかということについては、国民代表である国会の皆様の理性にも訴えて、これは穏便で現実的な処理の仕方、多少の苦痛は仕方がないこともあるでしょうが、そういうことで極力努力をしてまいりたいと考えております。
  51. 正森成二

    ○正森委員 いま大臣の御答弁がありましたが、大臣は、経常収支と貿易収支をちょっと間違えられて、貿易でも黒字だと言われましたが、貿易ではもちろんアメリカは赤字なんですね。だから、いろいろアメリカの方が言っている。特にその中でも、自動車にしてもアメリカはある特定の地域に集中していますから、大臣も言われたように、その地域出身の議員などが特に中間選挙でもあるといろいろ声が大きくなるということになると思うのです。しかし同時に、アメリカ貿易収支の点を言いますが、これはやはりアメリカの企業の性格とも非常に関係があるのじゃないかという気がするのです。  あるいは、これは国金局長に聞くことかもしれませんが、私どもが承知しているところでは、アメリカ貿易構造というのを見てみますと、多国籍企業というものが非常に大きなウエートを占めているわけですね。たとえば、ある学者の調べによりますと、これは一九七九年に出た本で書いてあることですが、日本の企業の場合には海外販売の内訳は、大まかに見て、全海外販売のうち本国からの輸出が八〇%を占めている。ところが、アメリカ企業の場合には、全海外販売に占める輸出の割合は日本とは逆に二〇%で、全販売の八〇%は多国籍企業の持っている現地販売を中心にして行っているという差があるようですね。  ですから、資料によりますと、一九七七年を例にとると、アメリカ本国の輸出は千二百十二億ドルで、海外子会社の売り上げが六千四百八十億ドルにも達している。日本とECの輸出の全部合わせても四千六百三十三億ドルですから、いかにアメリカの多国籍企業が現地で拠点を設けて、そこで行う輸出というのが大きな力を持っているかということを示していると思うのですね。こういうような生産あるいは貿易体制の差がありますから、商品貿易で赤字であっても、海外の売り上げから利益が国内へも入ってくるということで、結局経常収支というのはここ三年連続黒字なんでしょう。だから、そういう点をアメリカ側に指摘する必要というのはあるのじゃないですか。
  52. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 御指摘のとおりでございまして、申すまでもございませんが、八一年度の貿易が二百七十八億の赤でございますけれども貿易外を入れた経常収支では六十六億の黒になっている。貿易外でございますけれども、ただいま御指摘の海外投資が非常に大きいわけでございます。  いろいろな計数がございますが、いまちょっと手元にないので記憶で言いますと、二千億ドル以上の投資、海外直投を持っておるわけでございますね。ここからの上がりが貿易外というかっこうで入ってくる。国際企業の売り上げの数字等々はいろいろ推計があって確たる数字がなかなかございませんが、そういうことで、要するに、アメリカの国際収支統計で見る限り、御指摘のような海外の投資からくる収益が貿易の赤をカバーしておる。まさに私どもは、貿易問題というのはバイで議論をすべきじゃないんじゃないか、グローバルでやるべきだ。もう一つは、貿易収支だけではなくて貿易外、さらには資本勘定も入れて議論すべきではないかということは絶えず、私どものカウンターパートは外務省でございますが、彼らとの間でそういう議論をやっております。ただ、彼らの主張としては、失業とか何とかという国内問題にかかわることになると貿易収支であるというような議論があるわけでございますが、やはり一国の対外バランスは総合収支、一歩譲って基礎収支で論ずべきではないかということは絶えず主張しております。
  53. 正森成二

    ○正森委員 確かに、アメリカ国内で失業が起こったり、一つ産業が衰退してくるというのは大問題だと思いますが、しかしその問題についても、私は、公平に見れば、日本側としてはずいぶん抑制措置をとっているのじゃないかという気もするんですね。  どこがお答えになるのか知りませんが、昔は鉄鋼にカラーテレビに自動車とこうなりまして、あるいはカラーテレビのかわりに家電製品という言い方もしましたが、その三つについてはわが国はそれぞれ自己抑制をして、事実上アメリカは保護貿易主義をとっておると言ってもいい状況になっているんじゃないかという気がするのですね。  たとえば鉄鋼の輸出数量は、一九七六年が頂点で後は減り続けておる。カラーテレビも一九七六年がピークで以後減少しておる。それから自動車は、御承知のように、昨年でしたか百六十八万台ということで制限しておる。鉄鋼はなぜ少なくなったかと言えば、御承知のように、一九六九年から七四年の六年間にわたって、日本・ECとアメリカとの間にOMAというのですか市場秩序維持協定というのが結ばれて、自主的な輸出規制が行われた。それ以後はアメリカがトリガー価格制度で、日本だけでなしにECからの輸出アメリカから言えば輸入も制限した。  カラーテレビは一九七六年に二百九十五万九千台というような実績に対して、年間、半製品を含んで百七十五万台で、日本の電機メーカーはアメリカの現地での生産体制の確立を急いだために、もはや輸出規制を延長する必要すらなくなった。自動車は百六十八万台ということで制限をしたというようなことで、商品貿易自体についても相当アメリカは保護貿易主義をとり、わが国やあるいは場合によったらECもこれに協力しているということが言えるんじゃないでしょうか。
  54. 横堀恵一

    ○横堀説明員 ただいま先生のお話にありましたようなケースでございますが、大体先生のお話のようなことで、業界としてもいろいろ輸出自主規制をやり、あるいは私どもの方で、そういうようなことについて業界と話をしたということがあったかと思います。それからそのほか、そればかりではなくて、たとえばカラーテレビのケースなどでは、アメリカに、現地に進出して行ったというようなことで、日本からのカラーテレビの輸出が下がっておるというようなこともあろうかと思います。
  55. 正森成二

    ○正森委員 カラーテレビの現地進出については、先ほど私も指摘しましたが、そういうような点で特に関税局長にもよく聞いておいてほしいのですが、そういうような状況であるにもかかわらず、アメリカ貿易収支で非常に苦境に立っているというのは、一つには多国籍企業という特殊な産業構造があるほかに、生産性がアメリカで非常に下がっているという面があるのですね。  これは私前も引用しましたので、多くは言いませんが、アメリカの上院の外交委員長だったチャーチ委員長がたびたび演説で言っているのですね。「アメリカは一九五〇年以来、巨大な軍事機構をつくり、外国政府を武装・装備させ、朝鮮、ベトナムのようなはるかな地で局地戦をたたかうために二兆ドルという途方もない金を使った」「軍事支出を重視したことによって、この目的のために国家的な調査研究の大きな部分がふりむけられた」「わが国政府の研究・開発予算の七〇パーセント以上が軍事・航空宇宙計画に費されている。しかも、これらの計画の大部分は民間会社に請け負わされているのだから、民間部門にある技術革新能力の大部分は、世界市場で十分な競争力をもつ消費製品を開発するためでなく、よりいっそう高度な兵器を追求することに費されている」こういういきさつがあって、アメリカの一人一時間当たりの生産性が一九六四年以来わずか一・七%の成長で、日本の九・三%、フランスの六・四%なんかに比べて非常に立ちおくれているということをアメリカの上院外交委員長自身が指摘しているのですね。  こういう点をほうっておいて、それでいろんな要求を次々出してくる。去年出したことをまたもう一遍蒸し返して、さらに大きな譲歩を迫るというようなアメリカやり方というものに対しては、やはり十分私たちもあるいは政府もそれを腹に据えた上で対処しなきゃならないんじゃないかというように思うのですが、いかがですか、政務次官。
  56. 垣水孝一

    垣水政府委員 その点はちょっと手元に数字ございませんが、まさにアメリカの生産性よりも日本の方が高い面がたくさんございます。  実は先般、といいましても十二月の日米貿易小委員会の場でございますが、アメリカ側が、アメリカが使っているもの、たとえばラジオ、テレビ、自動車等々を挙げまして、一〇%以上のものを十数品目か挙げまして、こんなに使っているのに、日本アメリカ製品のシェアが一〇%を超えているのは航空機のみである。しかも電子計算機、IBMというかもしれないが、IBMもほとんど日本で生産されている。こういう発言がございましたので、私からも逆に、そのIBMが同じ機種であっても、メード・イン・USAのIBMのコンピューターよりもメード・イン・ジャパンの方が東南アジアやアフリカによく売れているという事実は十分考慮してくれと、まあ切り返したというほどじゃございませんが、そういうことをやっておりまして、たとえばそういったことで、決して私どもが言うべきことを言わないでいるわけではございませんので、言うべきことは言う。ただ、わが方も反省すべき点は反省するという態度で臨みたいと思います。
  57. 正森成二

    ○正森委員 わが方の反省すべき点は、また時間があれば後で言いますが、外務省来ていますか。  アメリカの下院の歳入委員会貿易委員会、第一次ジョーンズ報告を出しましたが、一九八〇年には第二次ジョーンズ報告を出していますね。その中で「われわれは、日本市場が「基本的に開放的である」という見方が議会や米国全体で一般的な印象に反することを承知している。しかし、以下は米日貿易研究グループの一九八〇年調査結果「特別進展報告」の第一ページからの引用である。」こう言って、日本とのビジネス競争の最前線にいる人々が発表した特別進展報告というのが引用されておるようですが、その中でどう言っていますか。
  58. 池田右二

    ○池田説明員 まことにあれですが、いま具体的に手元にございません。
  59. 正森成二

    ○正森委員 私が手元に持っておりますから、貸してあげてもいいんですけれども、また参議院の予算委員会みたいに問題が起こるといかぬから、私が読みますが、日本との第一線に立ってがんばっているアメリカ貿易関係者がこう言っておるんですね。「われわれは、現在の貿易不均衡が日本の残存非関税障壁よりも、米国市場を開拓しようとする日本輸出業者の努力と米企業の市場開拓努力の差に起因することを認める。日本企業の輸出努力に対する日本政府の積極的な態度がこの差を拡大した。二国間の貿易不均衡を長期的に改善するためには日本の残存非関税障壁を撤廃するよりも、米国の経済界と政府輸出促進努力を改善することにかかっている。」こう言っておるんですね。  こういうことを言っているという記憶ぐらいはありますか。
  60. 池田右二

    ○池田説明員 アメリカ側にもそういう認識があるということ、それからその報告書ですか、そういうことを言っておるということも承知しております。
  61. 正森成二

    ○正森委員 それで、その中でいろいろ言っているんですが、たとえば、日本アメリカ実情に合わせて左ハンドルの自動車をつくる。ところが「米国は日本実情に合わせて右ハンドルの車をつくろうともしないで、どうして多数の車を日本に売り込むことができるのか、米国の車は燃費や品質で欧州の車と比較できるのか、ということはほとんで問われない。」ということが第一章の冒頭に書いてあるんですね。  それで、ほかにもいろいろ、第一次ジョーンズ・リポートでも書かれておりますが、外務省の経済局が「日・EC経済問題についての双方の考え方」ということについて広報資料を出していますね。その広報資料の中で、双方の売り込み努力の比較ということで、相手国別貿易事業所比較と人員比較とを出しているでしょう。その中で、アメリカ日本、それから典型的なものとしてアメリカとイギリス、このそれぞれの比較について答えてください。
  62. 池田右二

    ○池田説明員 急な御質問ですので、詳しい資料といいますか準備はございませんが、日本にあります欧米の貿易事業に携わっている事業所の数といいますか、こういうもの、それから日本が欧米に持っておりますそういう事業所の数というものは、先生おっしゃいますような輸出努力というものを示す一つの数字になるかと思います。  私が手元に持っております数字ですと、日本アメリカにおいて事業所の数が九百三十一カ所、人数は二万一千六百四十四人。携わっている人、商社とかそういう種類の人たちですが、ヨーロッパ、EC全体に対して事業所の数が五百九十七カ所、人数が一万三千二百二十二人であります。  他方、それではアメリカ、ECが日本に対してどれだけ努力をしているかということで事業所の数で見ますと、アメリカの方は日本に対して百六十何カ所、人数を全部足しても千六百何人、それからEC全体では九十七カ所、八百人余りということで、確かに輸出努力という面においては、日本が戦後営々として努力をして今日の貿易上の地位を築いてきたという状況はあると考えております。
  63. 正森成二

    ○正森委員 終わりの数字は少し省略されましたが、いまあなたの言われたのは一九八〇年三月末時点での「相手国別貿易事業所比較」ですね。  それを見ますと、双方が置いている貿易要員の比率を言いますと、アメリカ側日本に、日本アメリカに置いている七・五%の人員しか置いてないんです。ECはどうかと言えば六・四%、イギリスの場合は四・八%の人員しか置いてないんです。だから、これが同等の人員を置いていて、あるいはそれに近いものを置いていて、いや日本が買ってくれないというなら話はわかるけれども、これで見ると、大体アメリカ人は日本人の能力の、七・五%だから十二倍ぐらい、ECの場合にはほとんど十七、八倍の能力がなければできないような勘定になっているんですね。だから、それは風俗、習慣、言語が違うということはあるかもしれませんけれども、そういう点は除外して、いやなかなか売れないと言っても、これはいかぬと思うのですね。  同じくその文書の中に、文化的、言語的障壁という点がありますが、その中で外務省自身どう言っていますか。また持っていませんか。僕が読みましょうか。
  64. 池田右二

    ○池田説明員 文化的な障壁については、これは広い意味でのいわゆるNTB、非関税障壁というふうに心得まして、そのような説明をしておると思います。  それで、文化的な障壁というものは一朝一夕にはなかなか解決できないものですし、その国、日本なら日本の歴史的な事情もあるわけですから、そういう問題も踏まえて、日本としては、広い意味経済といいますか社会の国際化、この国際社会で生きていくという必要性を踏まえて長期的に対処していかなければいけないという気持ちで外務省は考えておる、そんな気持ちのことが書いてあるはずであります。
  65. 正森成二

    ○正森委員 まあ大蔵委員会だから外務省の役人を余り怒ってもしようがないけれども質問の中で、ジョーンズ報告その他外務省がこの摩擦について出している文書について聞くから、むずかしいことは言わぬでいいから、こういうことが書いてあるなとか言えば、はいと答えたらよろしいと言うて、それで来さしているんです。それなのに、大臣ならともかく担当課長が、自分たちが広報資料として出しておるものすら、ふろしき包みにちょっと持ってくればいいのを持ってきていないというようなことは、けしからぬことだと思うのですね。それでアメリカへ行ってくれば向こうの言いなりみたいなことを言う。一体どこの外務省だと言わなければならぬと思うのですね。本当にしっかりせにゃいかぬですよ。  あなたのところで、こう書いているのです。「文化的、言語的障壁があるというのは何も日本に限られた問題ではない。日本も西欧や途上国市場への進出に当っては多かれ少なかれ同様の文化的、言語的障壁に直面しながらも多大の努力を払うことによりかかる困難を乗り越えてきたのであり、EC側も同様の努力を期待したい。」こう書いているのです。外務省にしたら珍しくいいことを書いているから、せめてそのことだけでも言わしてあげようと思って、それで質問をしたら、よう答えないで、出てきたことが、一番いいことは言わないで、何やらごちょごちょ言うておる。本当に態度悪いですね。(発言する者あり)
  66. 森喜朗

    ○森委員長 きちっと答弁してください。
  67. 池田右二

    ○池田説明員 私、三十分前にこの委員会へ前の先生の質問のために出てまいりまして、その留守中に、十五分前に先生の方からそういう質問があるということは確かにいま事務官の方から聞きまして、ジョーンズ・リポートの方は持ってまいったんですが、広報資料の方を持ってまいらなかったという状況がございますので、その点御了承をいただきたいと思います。
  68. 正森成二

    ○正森委員 それはまた、ますますけしからぬですね。結局、十五分前におれが聞いたからできなかった、こういうのでしょう。私が朝九時に言うているんですよ、ちゃんと。それが十五分前にあなたの耳に達したのは、外務省がたるんでいるからじゃないか。それを、十五分前に聞いたから、おまえの質問通告が悪かったから答えられないと言わんばかりのことを答える。(「人が足りないんだ、外務省は」と呼ぶ者あり)いや、それはあるかもしれないけれども、態度が悪いじゃないか。そんなもの、その人間でも、私は電話で軽く言うてあげたけれども、だれがどう言おうと、自分たちの基礎資料ぐらいはふろしき包みに提げて持ってくるのがあたりまえじゃないか。それを、言われて謝るならまだしも、おまえが悪いというような言い方を課長クラスの人間がのうのうとやる。僕は外務委員として外務委員会にも二、三年おったことがあるけれども局長でもそんな態度悪いことを言うた者はおらぬよ。言語道断じゃないか。
  69. 森喜朗

    ○森委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  70. 森喜朗

    ○森委員長 速記を始めてください。  池田国際機関第二課長
  71. 池田右二

    ○池田説明員 まことに内部の連絡が悪くて申しわけございませんでした。資料を取り寄せまして御説明申し上げます。
  72. 正森成二

    ○正森委員 時間がありませんから、資料はわざわざ取り寄せる必要はありません。私が大体持っている資料で聞いているわけですから、知っているんですから。ただ、もうちょっとまじめにやらなければいかぬですよ。  それでは聞きますが、この間、二週間ほど前の新聞を見ていたら、外務省では、アメリカの非関税障壁撤廃の要求が非常にきついので、これはジョークだと言っておりますが、二年ぐらい前から、アメリカ日本に要求してくる非関税障壁撤廃の最後のものは日本語の使用であろう、こう言っているのですね。つまり、日本語が非関税障壁だ、それの撤廃というのがアメリカ側日本に要求してくる最後のものであろう、こういう冗談が外務省内で言われている。それは決して外務省の冗談ではないのですね。局長垣水さん、また出てきますけれども、あなたの本の中で言うているのですね。「貿易関税」の三月号の二十一ページに「彼らはよく「日本語が非関税障壁の最たるものだ」」とか「日本人は国産品を愛用しすぎる」とかいうが」云々、こう書いてあるのですね。  これは、一体日本を独立国と心得ておるのか。日本語がもし非関税障壁なら、その日本語を使用しているわれわれにとって、英語もアメリカ語もアラビア語もドイツ語もイタリア語も皆非関税障壁じゃないか。それを克服してわれわれはやっているのに、よその国は、貿易の人員は十分の一か二十分の一しか置かない、それで日本へやってきて、日本語が非関税障壁だ。外務省でジョークで言われているのかと思ったら、垣水局長は相手がちゃんと言うているということをこの本に書いているのですよ。言語道断じゃないか。そういうことで、次から次へ要求してくる。一体、日本を独立国と心得えておるのかということを言わなければならないですね。私は、外務省はよう言わぬと思うから、日本の国会でこういう議論があるということを記録にとどめるために言っておるのです。日本人として、そんなもの黙っておれるか。
  73. 垣水孝一

    垣水政府委員 私の論文は、それにも書いてございますように講演の速記のようなものでございまして、いわば講演という場で多少話をおもしろくするという面もあったわけでございます。ただ、たとえばかなり地位の高い人ですが、これもまあ冗談だと思うのですが、イギリスあたりでも、日本語はむずかしいからこれが非関税障壁だというような話が実際問題として話題に上っていることは否定できないわけでございます。  ただ、一つつけ加えさしていただきますと、そこはまことにけしからぬわけでございまして、この場で申し上げるのはどうかと思いますが、たとえばサウジアラビアの金持ちになぜ日本の車を買うかと言うと、アメリカの車やほかの車はみんな英語でしか書いてない、ところが日本から輸出されるものはアラビア語で書いてある、だから日本車をまず選ぶのだ。それから、たとえばバンパーが非常に弱いと言うと、一週間、この一週間というのは余りにも極端だと思いますが、一週間ですぐ直してくれる、とても他の国ではそういうことがないというようなことを言っているということを聞きまして、私どもは、先ほども申し上げましたように、会談の場あるいはそういうような話はパーティーの場等で強く相手に反省を求めているところでございます。
  74. 正森成二

    ○正森委員 時間がございませんので、次へ移らしていただきたいと思いますが、農水省来ていますか。農産物について、これはもっと買え、もっと買えというようなこととか、それから輸入制限品目とかということになっているようですが、たとえば国内でも政策推進労働組合会議というのがあります。そこの一九七九年一月の提言に、なぜ日本国民は外国の五倍も高い牛肉、二倍も高い米や麦を食わされ続けねばならないのかという一句があるのですね。  そこで関連して聞いておきたいのですが、東京、ニューヨーク、パリ、ロンドン、ハンブルクの五つ、もしわからなければそのうちの幾つかでもいいですが、農産物ですね、米の値段、鶏卵の値段、牛肉の値段、豚肉の値段ぐらいでいいですが、消費者価格の国際比較について、わかれば簡単に答えてください。
  75. 森元光保

    ○森元説明員 お答えをいたします。  食料品の価格の比較をする場合につきましては、その国の生活水準の問題とかあるいは食生活の内容の問題、あるいは生鮮食料品の場合につきましては、特に供給量に季節的な変動がある、それによりまして価格がかなり変動するということもございます。それから、日本品物と品質とかあるいは規格さらに用途等が国によって異なりますので、そういった物の見方につきましての統一性がございませんと、調査結果を厳密に比較するというのは非常に困難でございます。  そこで、私の方で公式に調査したものはございませんけれども、ジェトロ、日本貿易振興会でございますが、海外の駐在員等の事例調査によりまして算出したのがございますので、ちょっとそれを申し上げますと、まず米につきましては、一応日本の場合を一〇〇といたしまして、ニューヨークで六〇、パリが一〇二、さらにロンドン九七、ハンブルク一四四というような形になっております。これは五十五年の十月でございます。それから牛肉につきましては、日本を一〇〇にいたしまして、ニューヨークが四〇、パリが八二、さらにロンドンが八九、ハンブルクが八〇。豚肉につきましては、東京を一〇〇にいたしまして、ニューヨークが六五、パリが八六、ロンドン一三八、ハンブルク一四八。それから鶏卵につきましては、東京を一〇〇にいたしまして、ニューヨークが六三、パリが一二一、ロンドン一五三、ハンブルク一一七。ソーセージは、東京を一〇〇にいたしまして、ニューヨークが一二三、パリが一六五、ロンドンが七二、ハンブルク一一九というような形になっております。  これはあくまでも事例的な調査でございますので、そういったせいで数字がいろいろあろうかと思いますが、以上でございます。
  76. 正森成二

    ○正森委員 資料についてどれだけ信憑性があるかということはあるでしょうけれども、とにもかくにも農水省が調べている資料で、一部のところが言っているように外国の五倍も高い牛肉だとかなんとかいうことはないのですね。日本ヨーロッパとの格差は一般が想像されているほど大きくないということを言わなければならないと思うのです。  さらにもう一つ聞きますが、農林水産省が、農林漁業を中心とした産業連関表とかで飲食費総額、その内訳で、国内農産物の産出額に対して幾ら、それから食品加工費は幾ら、流通経費は幾ら、飲食店サービス代は幾らという内訳を調べたものがあるはずですが、それを一応説明してください。
  77. 青木敏也

    ○青木説明員 お答え申し上げます。  昭和五十年の産業連関表に基づきますデータでございますが、最終消費者の支払い額が各部門ごとにどういうふうに帰属するかというお尋ねかと存じます。国内の農業産出額関係につきましては二八・六%、それから流通関係の帰属が二三・三、それから食品加工経費関係につきましては二五・五、それからいわゆる外食関係の帰属が一四・三、そういう数字になってございます。
  78. 正森成二

    ○正森委員 いまお聞きになりましたように、農家の手取りは三〇%以下ということですね。だから、食糧が異常に高い高いと言われるけれども、その中で農家の手取りというのは三〇%以内で、それ以外が流通経費だとか加工費だとか飲食店ということになっているわけで、それを一概に、一部の論者が日本の農業を攻撃して、それで何が高い、あれが高いというように言うというのは必ずしも当たっていないんですね。  私は、何も昔の農本主義のようなことを言おうとは思いませんけれども、しかし、一国の存立の基本というのは、やはりいざ鎌倉というときには農業にあるので、だからこそ、ヨーロッパでもアメリカでも農業というのは保護をしているんですね。それに対して、今度輸入制限を撤廃しろということでもし外国が非常に無理な要求をしてくるということになれば、私たちは、防衛関係については与党の皆さんと非常に重大な意見の相違があります。しかし、国の安全を確保するという点では同じで、その中でも一番大事なのは腹が減っては何にもできない、共産党ですから戦ができないとは言いませんけれども、腹が減っては何にもできないというのは事実なんです。だから、この点について政務次官、常識論でよろしいから御意見を承りましょう。
  79. 山崎武三郎

    ○山崎(武)政府委員 先生の言われるとおり、私どももそう考えております。
  80. 正森成二

    ○正森委員 政務次官からそういう御答弁がありましたから、あといろいろ聞こうと思ったら気合いが抜けてしまったような感じです。  しかし、そういうような問題がございまして、結局、貿易摩擦解消だとかいうようなことで一方的に要求してくることに対して、あれも入れる、これも入れる、あれも撤廃、これも撤廃というようなことをやるのは、必ずしもわが国の国益に合わない点があるんじゃないかということを申し上げておきたいというように考えるわけであります。もちろん、そのことは日本の各企業が行っていることが全部いいというようなことを言っているわけではなしに、本当はその点については私どもとしてはいろいろ申し上げたいことがあるわけでありますけれども、何事も自主的な自分たちの態度というものを離れては、これはよろしくないということをぜひ指摘しておきたいと考えるわけであります。  それで、もう一つだけ聞いておきたいと思います。時間がなくなってまいりましたが、貿易摩擦解消で三つほどいろいろ手段をおとりになりましたが、輸入検査手続の苦情処理というのを設けたら、これは苦情が五件ぐらいしかなかったということですが、それは本当ですか。
  81. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 お答えいたします。  一月三十日の経済対策閣僚会議の決定によりまして、苦情処理対策本部いわゆるOTOが設けられまして、その後昨日までに、私ども企画庁だけではございませんで、関係各省の窓口にも寄せられました苦情を含めまして二十件以上になっております。
  82. 正森成二

    ○正森委員 それでは、もう時間がありませんから、最後に一つ、横浜税関のある統括調査官が不正輸入に関係したというふうに言われているのですが、横浜税関名入りのコピーを、部外秘と言われるものを流したということが言われているのですね。  それで、これは商社に秘密捜査資料を流したということなんですが、こういうことがあるとするとゆゆしいことですが、そういう点について調べておくようにと言いましたが、どうですか。
  83. 垣水孝一

    垣水政府委員 まことに不始末をしでかしているとおわびを申し上げなければならないわけでありますが、実は、昨年九月横浜税関が輸入洋酒に係る脱税容疑で横浜市内のある貿易合社を強制捜索いたしましたところ、同社から税関の内部資料の写しが発見されまして、横浜税関において、特に監察官を中心にその資料の出所等について調査を行いました結果、どうも特定の統括官クラスの職員から出たのではないかという疑いが生じましたために、同人から事情聴取でなお調査中でございます。
  84. 正森成二

    ○正森委員 そういう点がありますと、ただでさえいろいろ問題が起こっているときに、税関当局なり大蔵省に対する国民の信頼上もゆゆしい問題ですから、厳正な態度をとっていただきたいということを申し添えておきたいと思います。  ほかに、いろいろお聞きしたいこともございますけれどもわが国は二年前倒しと言いますけれども、実際上は三年前倒しなんですね。それで昭和五十九年までで、それ以後のことは各国はどことも決めていないのですね。それをわが国が法律の許す範囲内で完全に前倒ししてしまうわけです。そういうことまでやっているにもかかわらず、なおかつ、あれをやれ、これをやれと言うてくるという場合に、毅然とした自主的な態度をとって対処していただくことを特に要望して、ちょうど時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  85. 森喜朗

    ○森委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時十九分休憩      ————◇—————     午後六時二分開議
  86. 森喜朗

    ○森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。佐藤観樹君。
  87. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大臣、大変遅くまで御苦労さまでございます。連日、貿易摩擦あるいは経済摩擦、人によっては、これは経済ではなくて政治摩擦だと言われる方もいらっしゃるわけでありますけれども、いま提案をされております関税定率法に関連をいたしまして、いまの貿易摩擦あるいは経済摩擦、一体これで日本は何が問われているのか、少し関税政策と絡めながらこの問題について所信をお伺いしたいと思うのであります。  それで、いろいろのことを言われる方がいらっしゃいますけれども、いまの貿易摩擦と言われるいろいろなアメリカなりヨーロッパの要求、これが一時的なものなのか、あるいは将来に向けての日本産業構造自体を問われている問題なのか、日本として何を問われている問題なのか、この点の見きわめをはっきりしていきませんと、後の対応を誤ると私は思うのであります。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕  たとえば一時的問題だとするならば、これも非常に重要なことでありますけれども、いま議論されております関税率をもう少し下げる、あるいは残存輸入制限品目の数を減らしていくという対応ももちろん出てきましょうし、あるいは非関税障壁を少なくしていくということや、あるいは貿易バランスが、五十六年が対米百三十四億ドル、対EC百三億ドルの貿易黒字ということでは、いかにもこれは大き過ぎるのではないかという対応の仕方もありましょうし、あるいは円安の問題に対する対処の仕方、こういったものにどうやっていくかという一つの方法も出てまいりましょう。あるいはいま問われている問題というのは、日本貿易の突出なのか、あるいは逆にヨーロッパなりアメリカなりが、突出という言葉が正しいかどうかわかりませんけれども日本に売り込めない、こういう問題なのか、こういう見きわめが私は大切なのではないだろうかと思うのです。いま起こっている問題が、それだけではなくて、あわせてもう少し長期的な内容を含んでいる問題だとするならば、日本産業構造を変えていく、あるいはどこまでできるかわかりませんけれども内需中心型の日本経済に変えていく、これも私いま研究中なのですけれども、どのぐらいまでできるかということは大変むずかしい問題だと思います。  それは別といたしましても、なるべくそういう方向に持っていく、あるいは、いまこういったことが大きな問題になっている背景には、アメリカで約九百万人の失業者がいらっしゃり、あるいはECの中では一月末は千七十万だと言われているわけですけれども、これだけの失業者があるということを考えてみますと、日本のこれからの産業構造なり経済のあり方自体、やはり現地生産ということを促進させていくことも考えていかなければならぬと思うのです。したがって、いまのアメリカなりあるいはヨーロッパ日本に対する要求にこたえていく道というのは、日本みずからが何を問われているのかということを見きわめて、おのおのに対応していく必要があるのじゃないだろうか、こういうことを考えるわけであります。  きょう質問する大体概略を目次的に申し上げたわけですけれども、これは最初に交渉に当たっていらっしゃる外務省、それから通産省、そういう形でお伺いをして、あわせて直接的にはこれは一部は大蔵大臣の所管もあるかと思いますが、その後にニューリーダーである渡辺大蔵大臣に、経済を担当する大臣という立場で政治家の立場から、いまの経済摩擦貿易摩擦の認識について、まずお伺いをしたいと思うのであります。
  88. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘の質問あるいは現在の貿易摩擦に関する御所見、非常に多岐にわたっておるわけでございますが、私どもも、先生がおっしゃったような問題点を認識の問題点として持ち合わせているわけでございます。日米間の通商上の問題あるいはヨーロッパ諸国との貿易問題、長年にわたって底流として存在してきているわけでございます。もちろん、日米関係なりヨーロッパ諸国との相互依存関係というものがきわめて複雑に発展してまいりましたので、なかなか一つのポイントだけをとらえて問題を分析することが非常にむずかしい状況になっているかと思います。私どもとしては、短期的に対応すべき問題点と同時に、長期的な問題点を含んだ対応が必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。  短期的にと申しますのは、御指摘になりましたように、アメリカあるいはヨーロッパにおける経済状況というものが非常に厳しいものであるだけに、多くの失業者を抱えておるという政治的にも非常にむずかしい圧力になる問題を抱えているだけに、この問題をとにかく片づけていきたい、処理をしていきたいということが、ただいまのアメリカなりヨーロッパ諸国から寄せられているいろいろな要求の背景にあるのだろうと思います。しかしながら、失業問題を短期的に片づけるということは、指摘するまでもなく非常にむずかしいわけでございます。それぞれの国における経済政策というものの財政政策なりあるいは金融政策なりとの均衡といった問題もございましょうし、あるいはアメリカの中一つをとってみましても、地域による格差というものも含んだりしておるわけでございます。しかしながら、この状況のもとにおいて諸外国が求めている要求の一つは、日本の市場の開放ということが焦点になっているということは間違いないところだろうと思います。したがいまして、現在の欧米諸国の指導者あるいは一般市民が日本に対して抱いている感情を考えますときに、日本というものは開かれた経済体制をとっているということを印象づけていくことが、当面の問題としては非常に重要な問題ではないかと思います。  それから、長期的な問題を含むと申し上げましたのは、まさしく欧米諸国経済体質とも関係してまいるわけでございます。欧米諸国におきましても、御指摘のありましたように、構造調整、産業の調整の問題も含んだ経済運営ということが求められていることもまた明らかだと思うのでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕 こういった問題は、社会の硬直性とか経済政策の弾力性を欠いているのではないかといった諸問題も含んでいるだけに、実現は非常にむずかしいかと思いますけれども、世界の貿易を拡大していくという長期的な展望の枠の中におきましては、この産業調整といった根本問題も考えながら対応をしていくことが必要ではないかというふうに思います。  いずれにいたしましても、外務大臣の訪米におきまして米側からいろいろな考え方の提示があるわけでございますので、こういった問題にできるだけ早く対応をしていくことが肝要かと思っております。
  89. 横堀恵一

    ○横堀説明員 お答えいたします。  先生のただいまの御質問でございますが、まことに多岐にわたる、かついろいろ示唆に富む内容でございまして、私どもといたしまして、先生がおっしゃいましたように、輸出ということだけじゃなくて、先方との関係を深めていくという観点からは産業協力、とりわけ投資の促進というようなことについて、いろいろ支援していくということが大事かと存じます。  ただ問題は、先ほど来お話もありますように、先方経済の環境というような問題もあろうかと思いますし、それから企業の決断ということにもなろうかと思います。ただ、そうは言いましても、企業側がいろいろなそういう産業協力の機会とか投資の機会ということを知らないという場合もある。それから、いろいろ情報が欠けているということから非常にちゅうちょしているということもありますので、そういう問題については、私どもといたしまして企業の方々に相談に乗って、そういうような方向での多角的な投資、産業協力というものも推進していくということに、私どもも今後とも努力してまいりたいと思っております。
  90. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 要約すれば佐藤委員の言ったことに尽きると思います。  第一次、第二次石油ショックを通して非産油国はいずれも大変な負担を背負い込んだわけでございます。日本がそれからいち早く抜け出した、そういうようなことで物価は安定するし、それから輸出は順調だし、つまり国際収支は黒字になった。ここ一年くらいはそうですね。しかも成長率はみんなマイナス成長だというのに、三とか四とか曲がりなりにも成長しておる。彼らは日本の財政赤字のことは意外と知りませんから、そういうことで日本だけがよくやっているのは、少しはやり過ぎだという点もありましょう。  それから市場の開放をしない、国際協力の義務を果たさない、防衛費をかけないからだ、いろいろなことを言っています。言っていますが、一方国内では、やはりどこのなにも政権は維持していかなければなりませんしね。幾ら一生懸命やってもインフレはとまらない、失業者はふえる、選挙は近づくということになれば、これはもういろいろな問題が出てくる。確かに失業がふえて、自動車産業のようなものまで日本の車がいっぱいだ、みんな日本のせいだというふうに思い込んでいる節もかなりある。ということになれば、それに同調すれば選挙の札が入るわけですから、そんなことありませんなんと言って歩いたら、なかなかむずかしいか知りませんからね。だから議員なんかには、かなりエスカレートして、いろいろな極端なことを言う人も出ているということも事実です。  しかし、彼らに言われて、やはりわれわれも反省もしなければならない点がございます。したがって、そういうような点については、特に非関税障壁の問題、これらについては、なるほど私らも考えてみて、これはちょっと行き過ぎじゃなかったかというような点もなきにしもあらずであります。したがって、そういうようなものについては、これはこの間見直しを行うことにいたしておりますし、今後もそういうような問題を解決をして、余り他国の国民感情でふったかるようなことをしたのでは、なかなかこれは引っ込みつかなくなる。理屈は理屈、感情問題にしない。こちらは冷静、そういうことでともかく言うべきことは言う。そのかわり、わかってもらう努力もする。向こうの言い分も聞けるものは聞くということで、取りまぜてやっていくしか仕方がないんじゃないか、そう思っております。
  91. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は、ずっと経済を勉強していると、実は世界が相手になければ日本というのは経済はやっていかれないわりには、どうも世界のことは余り頭にない、そういう感じがしてならないのです。  ガットのデュンケル事務局長が、これは西ドイツのハンブルクで開かれた東アジア協会の夕食会で演説をして、この方は非常に見識の高いことを言われていると私は思うのであります。  たとえば日本問題では、ガット事務局としては「工業国間で生じている緊張、通商紛争を承知している。だれもが貿易減退、失業者増大、インフレ高進の責任をかぶせる相手を求め、すべての政府が自分の政策が予期した成果をあげないことによって、スケープゴートを見つける必要に迫られている。こうして日本との競争の問題が危機的様相をおび始めたのだが、実際は、それはより広範な問題の一つの兆候に過ぎない」「また、「対日輸出が特別の問題をもたらしていることを知っている。日本政府自体、外国製品輸入促進のためにしなければならないことがあるのを認識しており、すでに実行し始めた。これは、歓迎すべきことだ」と述べ、「しかし、これは万能薬でない。私の見解では、いわゆる“日本問題”に対する唯一の恒久的解決は、欧米経済が生産性を日本の水準にまで引き上げ、(日本の)挑戦を受けて立つことである」」。私は非常に見識の高い見解ではないかと思うのであります。  ただ、いまちょっと触れましたように、そうはいっても日本は世界があって初めて日本経済がやっていかれるということを考えるならば、やはりこの見解に甘えてはいけないという気がするわけですね。  それでいま総論的に、いま起こっている貿易摩擦の問題についての見解をお伺いしたのでありますが、たとえば、これを一時的な問題としてとらえるならば、これはひとつ日本も一時的に輸出を控えたらどうだろうか。これは富塚文太郎さんが見解として一月の末くらいに言われていることでございますので、さらにその見解が強まったかどうかわかりませんけれども、富塚先生の見るところは、恐らくアメリカ輸入課徴金をかけてくるんではないか、彼はその蓋然性については七〇%ということを言っているわけですね。  輸入課徴金とガットの問題というのはいろいろな問題がありますけれども、それはさておきましても、輸入課徴金をかけるならば、この財政難の折でありますから、輸出の課徴金をかけたらどうだという考え方は、考え方としては当然起こってくるわけですね。ただ、貿易立国で将来ともいろんな形で成り立っていく日本が、みずから輸出課徴金をかけるということは、これは基本政策としてどうだ、私はいわば反論的にお伺いをこれからするわけでありますけれども、この輸入課徴金の可能性というのは、相互主義法案との関連でどうなっていくかという予想を立てることはなかなかむずかしいと思いますけれども輸入課徴金をかけられるよりも、むしろ輸出に対して輸出調整金、これを取った方がいいのではないか。何か新聞記事でありますけれども、前年度比一〇%以上輸出伸び率があって、なおかつ輸出全体の増加寄与率が〇・五%以上の品目が自動車など四十二品目あって、その輸出総額が二十兆円、一律五%掛ければ一兆円の財源が出るということで、財政を担当する大蔵委員会としても少し乗りたいような気もすることでありますけれども、まあこれは昨年の十一月でございましたか、経済閣僚会議でお蔵入りをした、大蔵入りじゃなくて、お蔵入りをしたようでありますけれども、一体こういうことでアメリカなりECなりは納得するようないまの状況なのであろうかどうか。  これは、交渉に当たられている外務省及び通産省に、一体これが一つの手だてになるのか、その辺の感触はいかがでございましょうか。
  92. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答えいたします。  輸出課徴金についてのお尋ねだと思いますが、いまの日米経済関係におきまして、この日本からの輸出の問題をどういうふうに見るかという点が、一つ基本問題としてあろうかと思うのであります。日米関係において私どもが承知する限りにおきましては、アメリカは、日本輸出をとめてほしいということは言っておらないわけでございます。やはり自由貿易体制という大原則に立ちながら、世界の貿易の発展を希望しているというアメリカでございますので、輸出を問題にするということであってはならない立場であろうかと思うのです。アメリカの行政府は、そのような考え方対応しているわけでございます。  また、輸出課徴金の問題について、これは私ども公式の場で議論をしているわけではございません。いろんな経済学者あるいはそのような議論日本の部内にあるということは、アメリカ側報道等によって承知をしたものであろうと推測をされますが、そういう問題についてはアメリカは支持をしていないというのが私どもの受けている感触でございます。これは別に交渉の場で話し合っていることではございませんので、そういう含みで御理解をいただければと思います。
  93. 横堀恵一

    ○横堀説明員 輸出に対します課徴金というような問題についてでございますが、通産省の考え方といたしましては、やはりこういうものは輸出努力を抑制する、これまで営々と企業が、国内市場だけではなくて輸出市場も等しく自分の市場として開拓してきた努力、これに対して水を差すことになるという感じを持っております。  それで、そういうような基本的な問題のほかに、輸出意欲を抑制する。さらにそれが設備投資というようなところに対しましても抑制的に働くということになるのではないかというようなおそれもありますし、それから現在の経済情勢ということを見ますと、最近の輸出動向というものもむしろ二月は前年同月比マイナスに転じている。それから、たしか国民所得統計の方でも十−十二月期というのは、外需というのはそれほどプラスになるといいますか、むしろマイナスの寄与度を示しているというような環境もございますので、本件は非常にむずかしい問題があるのではないかというふうに考えております。
  94. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 輸出課徴金というのは本格的に問題になっているわけではないのですが、これは扱うとなると関税局で扱うのですかな。輸入関税に対する輸出関税的なものですから、扱うとなると、大蔵省が担当になるのでしょうかどうでしょうか、関税局長。そういう議論はしたことはあるのでしょうかね。
  95. 垣水孝一

    垣水政府委員 輸出課徴金といいますか、私ども大臣は、かつては、昨年の秋には輸出正常化調整金という言葉をお使いになったわけでございますが、これは実はすでに七、八年前になりますか、対外経済対策のいわば総合立法、関税を弾力的に上げ下げするというようなことを含んだ立法を大蔵省が立案したときに、その一項目として輸出税というかっこうですでに案を、非常な素案ではございますが、素案をつくったことがございます。  そういうことで、現在私どもの手元には、そのときの検討資料が残っているわけでございます。かつ、いま先生仮定の問題としてそういうことをやるとすれば、当然税関で徴収するということになりましょうから、主として私どものところが担当するということになろうかと存じます。
  96. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そういうことだそうですので、いまから、いまのどから手が出るほどの財源の欲しい渡辺大蔵大臣ですが、どうなんでしょうね。いま佐藤参事官の方から、どうも私も外務省の方からいろいろお伺いすると、日本の突出も確かに幾らか問題があるのだけれども、それよりも向こうが言うには、平等に商売ができないということに問題があるのであって、その意味では輸出が多過ぎるという問題だけではない。しかし、自動車なんかある程度台数を自主規制しているわけなんで、やはり向こうにも失業の輸出だということが心の中にあると思うのです。  ですから、その意味では、私も基本的に、先ほど通産省の方からお話があったように、輸出課徴金という考え方日本経済の基本的な立場からしていいかどうかということは若干疑問を持っています。ただ、まさに対症療法としては一つの方法でもないのかなという気もするわけなんですがね。ちょっと大臣にこの問題についての見解をお伺いして、次の問題にいきたいと思います。輸出課徴金です。
  97. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは午前中でしたか、どなたかの質問にもお答えしたように私は記憶をしておるのですが、一応考えてみたんです。考えてみたんですが、実務上いろいろ非常にむずかしい問題点がいっぱい出てきている。  ただ、伸びたものは悪いといっても、シームレスパイプの話を先ほどしましたが、必要で何が何でも値段はおっしゃるとおりで結構ですからぜひぜひというのまでかける、しかし、今度は例外を認めるというと、品目によっても何千種類とあるから、なかなか収拾がつかなくなるというような問題等もあり、要するに、そういうことをしても摩擦先のアメリカが評価しない。評価しないことを国内で騒がれて、向こうで騒がれて、何の御利益もない話で、税金も欲しいという話ばかりは言えないわけですから、もともとこれは税金が欲しくて考え出した制度じゃないのでして、ですから、少し様子見ということになっているわけです。また事態が変われば話は別なことですけれども、当面私としては積極的に推進する気持ちはございません。
  98. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次に、関税の問題にちょっと触れたいのでありますけれども一つは、国連の貿易開発会議で、UNCTADでありますけれども日本関税率ヨーロッパあるいはアメリカに比うて高いということが事務局の報告として出されたということが報じられております。加重平均してECが二・九、米国が四・三、日本が七・〇ということになっているのですが、どうもいろいろ聞いてみますと、ECの場合には特恵関税を入れているという問題もありますし、数字自体がかなり古いという話も言われているわけであります。いまきわめて重大な時期ですので、UNCTADの事務局の報告というのは、どこがどういうふうに違っているのか、その後政府としてどういう対応をしたのか、そのことについて、ちょっと報告していただきたいのです。
  99. 垣水孝一

    垣水政府委員 UNCTADの事務局の報告と申しますのは、ことしの三月の理事会用に出されました「世界経済における保護主義と構造調整」と題するレポートの中に出たものでございまして、世界の主要国の対世界加重平均関税率が、日本が七・〇、ECが二・九、米国が四・三という数字が出ていたわけでございます。  しかし、この報告書は、ただいま先生もおっしゃいましたように、第一には非常に古いデータを使っている。東京ラウンド前の一九七六年のものを使っており、しかもその点を明記しないで、あたかも現在の関税率がそのようなことと受け取れるような書き方がしてある。それから第二には、御承知のようにECは農産物等につきまして関税は非常に低いわけでございますが、まさにいま話題になりました輸入課徴金を徴収している、これを実質上関税であるのにかかわらず全く除外している。それから、その他たとえばロメ協定等の特恵あるいは米国とカナダとの特別措置ども考慮してございます。  したがって、私どもとしては、特に外務省すなわち在ジュネーブの日本政府代表部から、データの出所を明記しなかったことはおかしいじゃないか、しかも実際にこの七%という計算はどう考えても出てまいりませんので、その辺を十分詰めないでこういうことを発表するのはけしからぬということで、厳重に訂正方を申し入れているところでございます。
  100. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで日本アメリカ、ECという比較になると、恐らく一番最近のは七九年くらいまでしかないと思うのでありますが、一体、関税の負担率が七九年でどういう数字になっているのか。あわせて、日本ですと八〇年の関税負担率というものが出てくるのではないかと思いますけれども、それはどうなっているか、ちょっと数字を挙げてください。
  101. 垣水孝一

    垣水政府委員 関税率の算定の仕方は、実は非常にいろいろなやり方があってむずかしいわけでございます。たとえば特恵がございまして、特恵をどの程度どういうふうに入れるかというような問題がございますので、最も端的にはかり得るのは実際に適用された関税率をもとにして算出したもので、私どもはこれを関税負担率と言っておりますが、総輸入額に対して関税収入額が幾らあったか、これが関税の実際の負担率だということで、それが一番正確といいますか、もっともらしい数字になるのではないかと思っております。(「もっともらしいというのはどうか」と呼ぶ者あり)それが関税負担率として実態に即した数字ではないかと思っております。  そこで、いま問題になりました七六年について、その数字、関税負担率の国際比較をいたしますと、日本が三・三、米国が三・六、ECが三・二という数字になっております。これが七九年におきましては、日本が三・一、米国が三・九、ECが三・九でございます。それから八〇年につきましては、米国、ECはまだ明らかでございませんが、日本は二・五まで下がっているという数字になっております。
  102. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次に、もう一つ関税の問題ですが、昨日でございますか、ECが、日本には差別があるということでガットの二十三条に基づきましてガットの場へこれを提起するということが報じられたわけであります。  これはECの外相理事会だと思いましたが、そこで提訴されるようなほどECに対して日本が閉鎖的なのか。いろいろ調べてみますと、ECにも日本製品に対する差別というのはかなりな品目残っているということのようでございますけれども、一体、いまガットの場へこういった日本に差別ありということで提訴される、それほど日本がEC商品に対して差別をしているのかどうなのか、その点はいかがですか。
  103. 横堀恵一

    ○横堀説明員 お答え申し上げます。  ECがどういう点において日本制度、慣行をガットの二十三条に基づいてガットに違反していると言うのか、その内容はいまだにつまびらかではございません。ただ、従来いろいろ言われておりますところは、たとえば残存輸入制限の点等におきましてEC側がいろいろ問題にしているという点は事実でございますが、日本の場合は、特に特定の国を差別してそういうような制限をやっているというものは、私はこの残存輸入制限に関してはないというふうに存じております。他方、ECの場合には、各国におきましていろいろと対日差別と言われるものがあるというのは私どもの承知しておることでございます。
  104. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 政治問題とそれからガット上の問題というのは少し違うのじゃないだろうか。ガットというのはやはりそれなりに条約に基づいたものですから、そういうことになれば、それはそれでその俎上で具体的に議論をすべきことじゃないかと思うので、その意味で、いま通産省からお答えをいただきましたけれども、ひとつそういう対応で主張すべきことは主張するというのが一国としてあるべき姿じゃないかと思うのです。  次に、六月四日、五日、フランスでサミットがあるわけでございますけれども、それまでにどういう形でこの貿易摩擦というのを決着をつけていくのか、摩擦をやわらげていくのか、理解を求めていくのかというのは非常に重要なことだと思うのであります。何か新聞報道するところでは、新東京ラウンドなるものを日本政府はつくって、それをサミットでひとつ打ち上げたい、あるいはそれ以前に打ち上げてサミットで了解をもらうということが報ぜられたと思うや、次の日には、いや日本政府としては、いまちょっとアメリカの先をいくようなのは全体としてまずいのではないか、したがって、この際は積極的な受け身でいった方がいいのではないか、アメリカが言ったことを日本もそうだそうだと言って同調した方が、日本が突出した印象を与えないでいいのではないかというような報道がまたあらわれるということで、何か一番最初に言い出したのは田中政調会長だというように新聞報道しているのですけれども新聞に出ること自体、私は余り日本にとっていまプラスではないと思うのですね。  積極的な受け身という言葉日本語としてあるのかどうか、これはちょっと疑問に思うのですが、それはさておきましても、ここで関税定率法の審議をし、東京ラウンドを二年早目に関税率を下げるという対応をしている中で、さらに新東京ラウンドだということが報ぜられますと、これは一体どうなっていくんだということを思わざるを得ないわけであります。  一体、そういう新東京ラウンドなるさらに関税率引き下げという構想を大蔵省自身が持っているのか、あるいはそれは何らかの形でサミットまでに一つの打ち上げをしていこうというような考えがあるのか、新聞報道するように積極的受け身というので果たしてこれは対応になるのか。どうせやるのならば、むしろ日本はこういうことですと言った方が、受け身ではなくて、前に出た方がいいのではないか。しかし、これは戦術戦略の問題もありますから、御判断はなかなかむずかしいところとは思いますけれども、いずれにいたしましても、関税の将来のあり方として新東京ラウンドなるものの構想が大蔵省の中でさらに進んであるのかどうなのか、その点をお伺いしたいと思います。
  105. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実は私は聞いておりません。新聞に書いてあっただけであって、大蔵省としても官邸筋からもそういう話は聞いていない。この際日本が何か言い出すとしても、だれかさんの言葉を借りれば、マージャンやって、強い人が今度はルールの変更をしようと言うふうにとられても逆効果ではないのかというような感じもしないではない。  ガットの問題については、ドイツのラムスドルフ経済相が日本使節団か何かに、日本は堂々と受けて立った方がいいでしょう、そうすれば日本も黙ってはいないだろうから、日本だけでなくてフランスとかイタリアの、特にフランスあたりは農産物についてはかなりきついことをたくさん、日本以上にやっていますから、そういう問題も表に出て、お互いに人のことばかり言えない、自分のこともやはり言われるわけですから、かえってそういうところで正々堂々とした方がいいのじゃないかということを言ったそうですが、これも一理あるのじゃないかという気もいたしております。いずれにしても新東京ラウンドサミット前は考えておりません。
  106. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 もう一つの問題は、円安の問題というよりもドル高、アメリカの高金利、これが先進国のいまの経済政策の手段をかなり縛っておると僕は思うのですね。とうとうとこれについて言う必要はないと思うのでありますけれども、この問題について、大蔵大臣としても内政干渉になるかもしれませんのでちょっと言いにくいかと思うのですが、アメリカでやっているようなマネーサプライをコントロールしてインフレを抑えるということで、アメリカのインフレはおさまるのだろうかということについて、私は、実はかねがね疑問を持っている一人であります。  学者の方々にいろいろ聞いてみますと、いや、アメリカでもマネタリストというのはほんのわずかしかいなくて、ボルカー連銀理事長に対する風当たりはきわめて強いということも聞いておりますし、何か、この前アメリカヨーロッパの労働組合でもいまの政策はやめてもらいたいという話が出ています。それは労働組合だからいいでしょう。  それは別といたしましても、本当は日銀の総裁でも来ていただいて少しお伺いしたかったのでありますが、いまアメリカのやっているこの金融政策というものが、世界不況の中で大変大きなウエートを占めておるのじゃないだろうか、私は常々こう思っておるわけでありますけれども、これはちょっと内政干渉にわたるやもしれませんので、大蔵大臣という立場ではなくて財政運営をする経済の専門家という立場で、アメリカのいまのマネーサプライの管理政策というものはどう見ていらっしゃるか、答えにくければ結構でございますが、ひとつ御見解をお伺いしたいのです。
  107. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実は、サミットのときも夜は蔵相会議というものがありまして、何時間か何回かやりました。私からもこれは持ち出したのです。別に内政干渉でも何でもない。ともかくアメリカの高金利政策というものはひど過ぎる、インフレも沈んできているのだから、やはりそれは直すべきだということを私が言ったところが、ドイツもフランスもこれは大賛成、同調なんです。当時はイギリスがちょっとアメリカ寄りで、そんなことを言ったってそれ以外に方法がないと言うのだから、アメリカ経済が立ち直らなければ結局われわれも困るのだ、だからもっと待ちましょう、大体そんなふうなニュアンスでした。  ところがこの間、これはないしょにしていた蔵相会議がばれちゃったわけですが、そのときになりますと、これはちょっと空気が変わってきて、イギリスのハウ蔵相などもやはりややこちらに近いような話に風向きがどうも変わってきたように私は受け取った。ともかくアメリカのドルが弱いとき、数年前の話ですが、われわれはみんなしてドル支えに協力したんだ、今度はドルばかり強くなってしまって各国の通貨がうんと弱っている、今度はアメリカが協力すべき番じゃないかということが、逆にヨーロッパでも非常に強く言われています。  したがって私どもは、いずれサミットがあればそのときにはやはりみんなでこれは少し強く言って反省をしてもらう必要があると私は考えております。本当にアメリカ経済そのものがこんなに、いまでも一三%の公定歩合とか、一六、七%のプライムレートを継続していって経済がうまくいくということには、どうもわれわれも考えられない。ですから、そこらの点についてももう一遍検討をし直してもらいたいということは、私は強く主張したいと思っております。
  108. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私もちょっとその点をお伺いしようと思ったのですが、その前に、二月の末に今度の六月のサミットの準備会があって、渡辺財務官が行かれて何かその辺の話もされてきているようでありますが、きょうどこか外国へ御出発だということですので、国際金融局長に、その準備会で各国ともどういうような対応だったのか。いま大蔵大臣は、前回のサミットの状況についてお話があったわけでありますけれども、これも一つ政策の足を引っ張っている、あるいは幅を少なくしているということもあるし、あわせて、これは当然貿易のアンバランスの一つの要因にもなっているわけですので、その意味で、いま大蔵大臣が言われたように、六月のサミットには姿勢を正してぜひともアメリカに迫ってもらいたい一つのことだと思うのでありますが、準備会の段階でどんなようなことだったのか、少し御報告をいただきたいと思います。
  109. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 二月二十七日と二十八日、パリの郊外で七カ国の首脳の個人代表が集まったわけでございます。それで、国際会議の通例でございますが、内容はお互いに言わないことになっております。  御承知のように、前七回、ワンラウンドいたしたわけでございますが、大体五項目があったわけでございます。それで、どちらかといいますと、先般のモンテベロのときもそうなんでございますが、もう少し首脳同士で自由に議論すべきじゃないかというようなことがございまして、先般の準備会議では、そういうように首脳たちが自由にやるためには、むしろ個人代表なり役人の方が事前のト書きや何かしつらえてやるのではなくて、自由に議論してもらうのにはどうしたらいいのかというようなことで、かた苦しくないやり方にするにはどうしたらいいかという点と、各国の経済状況の現状がディスカッションされた、そういうようなことでございます。
  110. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 なかなか中身は言いにくいと思うのでありますが、やはりいまのアメリカの高金利に対する——このときにはたしかアメリカの代表も個人参加という形で入っていたわけですので、どういう話になったかわかりませんけれども、当然アメリカの高金利問題というのは出ているし、かなり批判は高まっている、こういうふうに理解しておいてよろしいのですか。
  111. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 これはむしろ大臣からお答えいただいた方がいいわけでございますが、大臣もときどき、たとえば去年の十一月でございますか、財務長官が北京の帰りに寄ったわけでございますが、そういうときには、そういう議論を両国でやっているわけでございます。  それから、先般のOECDのWP3というのがございますが、こういう機会もどらまえまして、日本というよりもむしろ各国が、アメリカの高金利は何とかならぬかというような議論は絶えずやっているわけでございます。
  112. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで大臣、もう一つだけこの問題についてお伺いしておきたいのは、この問題はいわばECと共同歩調がとれる問題なんですね。いま新聞の報ずるところでは、サミットの前にひとつアメリカとの首脳会談を持とうという話が出ておるのですが、どうもこういった問題について少しECとの共同歩調をとろうという動きがないのであります。いま、これから出るのかもしれませんけれども、この点はどうなんでしょうね。  私は外から見ていますと、この問題というのはECと共同歩調をとって、貿易の問題になるとECとアメリカが組むという形になると思うのですけれども、この問題だけは、不況がいろいろと厳しくなってくる方向に向かって、ECと日本というのが共同歩調をとって、アメリカに言うべきことを言う必要があるのじゃないか。ただ、アメリカの事情を見てみますと、なかなかそう簡単ではないことも私もわからぬわけではないのでありますけれども日本も世界的な経済のうねりの中でそれなりに対応しようとしておるわけでありますから、アメリカもやはり対応してもらう必要があると思うのです。  そういう意味で、アメリカとの首脳会議もそれはそれで重要でしょうけれどもアメリカの高金利問題について、事前にECと首脳会議なりあるいは蔵相会議というんでしょうか、持つお考えはないでしょうか。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  113. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いまのところ具体的に持つつもりはありませんが、しかしこの間、ドイツとかフランスが公定歩合をちょっと下げただけでも、えらいレートに影響している。その余波までこっちが受けているわけですから、もう身にしみてドイツあたりは感じているんです。したがって、この前のサミットなんかでも、それはもうかなりきつい口調で両首脳がアメリカに対して強く要求していたことも事実でございますから、一層そういうような状況が醸成されているので、われわれは利害の一致するところは一緒になってそれは要請をしていきたいと思います。
  114. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 最後に、冒頭に申し上げました少し長期的な問題について、お考えをお聞きしておきたいのであります。  いまアメリカの方では、議会の中でどうなるかわかりませんが、相互主義法案というのが出てくる。これの意味するところは、自分の国でつくってどんどん売ってくるだけではなくて、うちの方は失業の問題を抱えているんだから、ひとつ日本もこちらに出てきて品物をつくってくださいよ、そうすれば失業の問題あるいは雇用の問題というのはもう少し緩和してくるじゃないかというのが、いわば相互主義法案の答えですよ、それは自国の部品を何%使わなければいかぬとかいったことでいろいろ出てきているわけであります。  それを延長していきますと、将来、今度は日本の失業問題はどうなっているかという問題まで響いてくるわけでありますけれども、それは非常に重要な問題でありますが、いまちょっとおきまして、そういうようなことを考えてまいりますと、だんだん日本も、将来的にはアメリカのように貿易では赤字だけれども貿易外収支で黒字になる。なかなかそこまで私はいかぬと思いますが、基本的な物の考え方としてそういう方向に、つまり物の提供から金融あるいはサービスという形での日本産業のあり方というウエートが高まっていくのじゃないだろうか。たとえばロボットにしても、技術が行けば、発展途上国の隣の韓国で工業製品に対するロボット化というようなことが私は結構進むのじゃないかと思うのですね。こうなってまいりますと、日本もさらに高付加価値化へ進んでいく。そういう意味で、物をつくる産業というのはだんだんかなり狭まってくる。それはそれ以外のサービスなり貿易外収支ということで貿易バランスをとっていくという方向へ進んでいくのじゃないだろうか。そういう方向にいかなければならぬと世界は日本に教えているのじゃないだろうか。こういうふうに私は見ているわけであります。さらに細かいことについては、まだまだ全部の構想が描かれたわけじゃないわけです。  そこで、これは通産省にお伺いしておきますが、そういった意味で、現地生産ということですね。これは通産省が幾ら行政指導といっても、企業の収益にかかわる問題でありますから、トヨタのアメリカ進出のときにも大変大きな問題になりましたけれども、そうそう行政指導だけで簡単に片づくようなものじゃないわけでありますが、現地生産の促進、これはいま申しましたように、日本の雇用の問題ともうらはらに絡んできますので話はそう簡単じゃありませんけれども、こういったことについてはとりわけ話をしぼって、いわば海外投資と申しましょうか、現地生産と申しましょうか、このことについては、通産省はどういうふうに考えていらっしゃるのですか。
  115. 横堀恵一

    ○横堀説明員 ただいま先生のおっしゃいましたように、海外投資の促進ということにつきましては、先ほど私が申し上げましたように、先方経済の発展あるいは雇用の促進という面もありますし、先方の国とわが国経済との間を緊密化させるという効果もあるという観点から、側面的な支援ということを企業に対して行ってまいったわけでございまして、具体的にどういうことがあるかと申しますと、たとえば海外投資等損失準備金というような制度あるいは輸銀、国際協力事業団その他等を通じます長期低利の金融ということを行っておりますし、それから、たとえば特に東南アジア等におきます中小企業でございますが、中小企業が進出していくというような、現地の経済ニーズに合った投資の促進というようなことをいろいろ行っているところでございます。
  116. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 なかなかそれぐらいでは、どうも大変な資本投下をしなければいかぬわけですので、しかも、こう言ってはなんでありますが、労働の質の問題から言いましても、なかなか日本ほどいいものはできないというようなことがありまして、結構障害は多いわけでありますけれども、しかし、物の考え方としては、私は、将来、世界経済の中で日本が孤立化していかないということを考えるならば、物の視点として、現地生産という方向あるいは日本産業構造自体が物からサービス部門へウエートを変えていくという視点、こういった方向にいろいろな形でやはり誘導していく必要があるのじゃないか。海外投資等損失準備金制度もありますけれども、なかなかそれも十分利用できるというわけではない。いろいろな問題を考えますと大きな問題があるのですが、最後に大臣に、長期的な目で、こういった視点についての考え方を聞いておきたいと思うのです。
  117. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 産業協力、一口で言えばそういうことも重要なことだと思います。ただ問題は、東南アジアとか韓国とかからの批判は、日本が来ていろいろなことを教えてくれて、つくった品物は買ってくれると思ったら、今度は買ってくれないという不満が逆に出ていることも事実ですね。ですから日本としては、長期的に見れば、頭脳集約型産業に転換をだんだんしていく、そして衰退産業はもう仕方がない、だから、隆昌する産業の方に民族移動が行われるということにならざるを得ないのではないだろうか。ただ、急激にそういうことをやろうとすれば大混乱が起きるから、急激にはできないけれども、徐々にそういうようなことで産業調整というものが行われていかなければ、なかなか世界の経済とうまく歯車がかみ合っていかぬのじゃないか、そう思っております。
  118. 中西啓介

    ○中西(啓)委員長代理 小杉隆君。
  119. 小杉隆

    ○小杉委員 お疲れのところ恐縮ですが、できるだけ簡潔に質問をしたいと思います。  今度の関税の改正のそもそものねらいというか、その背景というのを改めてお伺いしておきたいと思うのです。
  120. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 関税の改正の背景というのは、御承知のとおり貿易摩擦、大きな各国からのいろいろな非難があって、日本としてはそれを受けて立って、個別案件ごとでなく、東京ラウンドで一応決まったものですから、その決まった枠の中で前倒しに一挙に三年分を、二年前倒ししますから三年分をやろう、そして日本に対する貿易のある意味での市場開放の一環として行おう、輸入促進策にも資そう、そういうことであります。
  121. 小杉隆

    ○小杉委員 わが国の方がそういうふうに貿易摩擦解消のために、これで約四百億ですか、減収も覚悟の上でやるわけですけれども、われわれが考えていると同じようにアメリカやEC諸国が、本当に日本努力しているのだ、貿易摩擦解消のために涙ぐましい努力をしているのだという受けとめ方をしてくれるかどうかというところに、私は非常に問題があると思うのですね。  そこで、先ほどの佐藤委員質問に答えて、関税負担率で言うと、すでにもう七九年度で日本関税率というのは三・一%、アメリカヨーロッパの三・九%よりも低くなっているわけですね。今度の関税の改正によってどのぐらいになるのか、これはまだ計算が出ていないのかどうか、その辺を聞かしていただきたいのと、私は、いま大蔵大臣が答えられたように、こうやって一生懸命努力しているけれども欧米諸国にはまだ日本は閉鎖的であるという受けとめ方があるわけなんで、むしろそんなことならば、何もこの財政の厳しいときに四百億円もの減収覚悟の関税の引き下げなんか必要ないんじゃないか、もっとアメリカヨーロッパが本当に喜ぶといいますか、本当に貿易摩擦解消したと受けとめられるような措置に重点的にしぼってやった方がいいと思うのですよ。その辺についてどうお考えか。  いままで日本も、すでに相当東京ラウンドをやっておりますし、それから非関税障壁ですか、これも九十九品目のうち六十七品目やっているし、また今度、オンブズマンの苦情処理委員会もつくったり、また江崎ミッションとか安倍通産大臣櫻内外務大臣相次いで訪米をし、あるいは訪欧をして一生懸命努力をしているわけですけれども、果たして、この関税を引き下げたということが日本が本当に努力しているというふうに受けとめられるのかどうか。何でもかんでも、関税も引き下げる、あるいは農産品も自由化します、あれもこれもということで、何か御用聞き外交をやっているというような危険がありはしないか。関税の率はもう欧米並み以下になっているのだったら、関税なんか引き下げないで、むしろ本当に諸外国が求めているものに重点的に努力を払った方がいいのではないか、こういうふうに思うのですが、これは大蔵大臣と、具体的な問題については各省庁からお答えいただきたいと思います。
  122. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 シンボリックなものと言いましても、それは一挙にできないものはできないわけですから、その理由は説明をしなければならない。しかし日本としては、あれもできません、これもできませんというわけにもいかない。したがって、できるものについては極力、皆さんからいろいろなことを言われておることに対応してそれはもう努力をしよう、その努力の一環である、こういうことであります。幾らシンボリックなものをやれと言われても、それはできないものはできないものがあるわけです。
  123. 垣水孝一

    垣水政府委員 具体的数字を申し上げますと、実は八〇年度につきましては先ほど日本が二・五になったと申し上げましたが、暦年で判断いたしますと二・六になっております。  ただ、新年度でどうなるかという点につきましては、ちょっと算定ができかねますが、いずれにいたしましても、関税の予算上の予定の収入が昨年よりも三百四十億円ばかり少なくなっておりますので、したがって、当然それよりも下がるということになるのではないかと思っております。  それから、ただいま大臣からお答え申し上げましたが、一律前倒しにつきましては、特にたとえば十一月の半ばにアメリカが突きつけてまいりましたいわゆるバラクロフ書簡に示されました二十九品目の関税の撤廃ということ、まあアメリカが撤廃ということを本気で考えていたとは思いませんが、そういう書簡を外務省の経済局長あてにメモで渡したわけでございますが、それはいずれもきわめてセンシティブなものでございまして、それを一々対応するということは、短期間に、年内に関税率審議会等の手続を経て、ただいま御審議をいただいているような法案にまとめ上げるにはとうてい間に合わないというようなこともございまして、総理の強い御指示で一律前倒しという手段をとったわけでございますが、これはそれなりに大変評価を受けておりまして、たとえば日米貿易小委員会等におきましても、十二月の小委員会でも確かに鋭鋒が鈍ったのではないかという感じがいたしましたし、三月の日米貿易小委員会におきましても、あれは評価するけれどもということは、常に冒頭の発言としてそういうことを置きながらやっておりますので、相当の成果はあったのではないかと評価しております。
  124. 小杉隆

    ○小杉委員 担当の役所の人は比較的そういう受けとめ方をしていると思うのですよ、日本がかなり努力している。ところがアメリカの上院議員、下院議員あるいはその他の政府の高官のお話を聞きますと、どうも感情的になっているわけです。こういう点でもっとPRといいますか、アメリカの世論にもっと訴えるという努力が必要ではないかと思いますし、たとえば二国間だけでこそこそ協議をするということをいままで重点にやってきましたけれども、思い切って、ECの外相理事会が今度ガットの二十三条に基づいて対日問題を取り扱うというならば、むしろ逆に、私たちはそういう公の場でどんどん勝負した方がいいのじゃないか。日本はこれだけもう自由化しているのだ、アメリカヨーロッパの方にまだこういういろいろな差別が残っているではないかということを明らかにした方がいいと思いますけれども、この点に関して、これは大蔵大臣よりもむしろ外務省かあるいは通産省の方が適当かと思いますので、どう対応していくか。アメリカヨーロッパの世論形成、そういう努力についてどう考えるか。
  125. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  広報活動についての御指摘であったかと思います。私どももまさに先生御指摘のとおり、行政府のレベルにおけるいろいろな話し合いに加えまして、アメリカの世論あるいはヨーロッパの世論というものに対して、日本考え方なり政策というものを訴えていかなければならない、かように先生と同じ気持ちでおるわけでございます。  最近の情勢を特に留意いたしまして、私ども外務省といたしましては、二月の中旬にワシントンにおきまして対米広報会議というものを開催いたしました。そこで、在米大使初め在米の各総領事、それから本省の情文局長が集まりまして、これからの対応について協議をしたわけでございます。  私どもとしては、三つばかりの柱を立てながら緊急に対応してまいりたいと思っております。  一つは、対米広報面におけるいろいろな分野がございますので、各分野におけるアプローチを一層推進してまいるという点が第一点でございます。その中には、議会関係者への説明と申しますか、議会関係者との接触を一層密にいたしまして、日本考えている政策あるいは文化等についての理解を深めることをしたい、こういうように思います。それから地元の有力者、私どもオピニオンリーダーと言っておりますが、そういう人たちとの接触も従前以上に強めまして、われわれの考え方説明してまいりたいと思っております。それから、経済摩擦ということもございますが、財界人が世論形成の上で非常に重要だと思いますので、財界人との接触というものも一層強めてまいりたいと思っております。それから第四番目に、米国という国柄でマスコミの力というのが非常に大きいわけでございますので、テレビ、新聞等を含めまして、マスコミとの接触を強化しながら日本のことを広報してまいりたいというのが第四点でございます。第五点は、いわゆるグラスルーツに対する働きかけでございます。これはいろいろな方法があろうかと思いますが、日米友好基金というアメリカにおける一つの組織もございますので、そういう場を通ずる接触あるいは青年交流計画といったものを企画いたしたいと思っておりますが、(小杉委員「時間がないから少し簡潔に」と呼ぶ)……といったようなことで広範なPR計画を進めたい、かように思っております。  それから第二点の、国際場裏において少し日本の主張を展開したらどうだ。ガット二十三条の問題を御引用になりました。私ども、EC側の出方、確かに外相理事会におきましてガット二十三条を援用した貿易問題の取り上げ方というものを決めておるわけでございますが、具体的にこれをどういうふうにEC側が実施していくか、必ずしもまだはっきりしていない面があろうかと思います。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕 私どもは、ガットの場における協議というのがお互いの非難の応酬ということになってはいけないと考えますので、ヨーロッパ側がどういう対応を示してくるかということも十分見きわめながら、私どもとしての対応考えてまいりたいと思っております。
  126. 小杉隆

    ○小杉委員 アメリカ側が一番要求しているのは農産品に対する自由化なんですね。特に牛肉、オレンジ、革、ほかにたばこというのがありますけれども。  私も、アメリカでスーパーマーケットへ入って、二センチぐらいの幅の十センチ、二十センチぐらいの牛肉がどのぐらいするのかずっと見て回ったのですが、われわれにとっては非常に大きなビフテキの肉ですが、大体五ドルですね。もし日本のスーパーマーケットでこれと同じぐらいの大きさの牛肉を買ったらどうかというと、アメリカ・ドルで言いますと約三十ドルということです。確かに日本の肉はいろいろ手をかけてやわらかいし、おいしいし、アメリカの肉はそれに比べて余りうまくない。そういう品質の差はありますけれども、その差があったとしても、六倍というのは余りにもべらぼうではないか。  私は東京出身ですから、消費者からも、なぜもっと安い肉が食えないのかということを非常によく言われるわけです。最近二百海里問題で魚が異常に高くなりまして、肉とほとんど差がない。最近若い人たちの食生活も変化して、もう魚を食わない。それからトリばかり食わされるものですから、肉をうんと食いたいと言うのですが、肉は食卓に大体三日に一遍ぐらいしか供せない。もう少し安くなれば、毎晩でも子供たちに肉を提供できるという声をよく聞くわけですけれども、いままでこの委員会で論議されたのは、常に畜産業界なり生産者側の論理が非常に多かったと思うのですが、やはり消費者というものは、もっともっと日本の肉が安くなってほしいと願っているわけですが、実際に値段の差というのは、農林水産省の方ではどのように把握しておられるのか。私は実際の体験に基づいて言っているわけですが。
  127. 香川荘一

    ○香川説明員 お答えいたします。  日本の牛肉が高いという先生の御指摘でございますが、私ども日本の場合、非常に土地条件が限られております。やはり土地に立脚いたしました家畜でございますので、土地条件のすぐれておりますオーストラリア、アメリカ等にはなかなか対応できないという問題がございますが、近年非常に生産の合理化もいたしておりまして、私ども調べましたところでは、これは枝肉の卸売価格でございますが、日本を一〇〇といたしまして、アメリカが約二分の一程度というふうに見ております。これは日本の場合には乳牛の肉から和牛の肉という高級な肉までいろいろ幅がございますが、アメリカの肉とほぼ同程度のものを私ども比較いたしましたところ、こういう水準になっております。(「ECも言えよ」と呼ぶ者あり)ECも申し上げますと、大体七割程度で、特に最近ECの場合にはインフレ等で水準が上がってきておりますので、わが国の七割程度という状況になっております。
  128. 小杉隆

    ○小杉委員 農林省の数字がどういうふうに出てきているのかわからないのですが、実際に買ってみますと、そんな半分なんという差じゃないですね。少なくとも三倍から五倍、あるいはひどいときには七倍というような数字が出てくるわけなんで、これはすべて土地条件の差だということで宿命的にやっていったら、これはもう日本の消費者はいつも高い米を食わされ、高い肉を食わされ、高い果物を食わされるという結果になりかねないので、やはりその土地条件を克服していくという努力を農林水産省はしていくべきだと思うのですよ。何でもかんでも、土地が狭いんだ、だから生産性が上がらないんだということでやっていたら、たとえばお米だって、いまやアメリカのお米の値段は日本の三分の一ですよね。だからそういう点で、これは議論をしたら平行線ですから私はこれ以上申し上げませんが、いまアメリカ側あるいはヨーロッパ側が、関税の引き下げも、もちろんNTBの撤廃も、それなりの評価はすると思いますけれども、いま一番象徴的に迫ってきている問題は、この牛肉とオレンジの問題なんですよ。  そこで、農林水産省としては、この問題についてはどう対応していくのか。いま大体八三年までは割り当て量が決まっていて、八四年以降はことしの十月から協議をするということになっておりますが、輸入量をいまのまま凍結をしていくのか。自由化については一切応じないということなのか。
  129. 副島映一

    ○副島説明員 牛肉とオレンジの問題につきましては、アメリカとの間で東京ラウンド上の合意がありますことは先生御承知のとおりと思います。  これは八三年度までの枠を取り決めておりまして、八四年度以降の取り扱いについて、八二年度末前後に再度協議をするというふうになっておるわけでございます。この協議の点につきまして、まずいつから始めるかといった点で先ごろの日米貿易小委員会等でも議論があったわけでございますが、この点につきまして、私ども、この十月から協議を開始することには応じるということを言っておるわけでございます。  その前提といたしまして、アメリカ側はやはり完全自由化ということを前提に協議を行いたい。他方私ども、先ほども議論がございますように、国内農業の保護という立場から、自由化にはとうてい応じられないという前提で、この協議には臨みたいというふうに考えております。ただ、そういうかけ離れた中で対話を深めることによって、何らかの双方の満足のいく線、解決策を見出したいというふうに考えております。
  130. 小杉隆

    ○小杉委員 現在、牛肉は国内産が三十万二千トンで輸入が十二万トンですね。どうも農林水産省の考え方というのは、海外から輸入をふやすと国内の畜産業者が打撃を受けるという考えのようですけれども、私がさっき言ったように、いままで三日に一回の肉を二日に一遍とか、場合によったら毎晩というように、値段が下がればこれは需要がもっとふえるというふうに思うのですけれども、その点についてはどうですか。
  131. 香川荘一

    ○香川説明員 お答えいたします。  消費者の問題につきまして私ども見ておりますのは、日本人の場合、食生活は現在相当腹いっぱいになっております。大体二千五百カロリーくらいで頭打ちになっておるわけでございます。したがいまして、牛肉が増加した場合、あと畜産物といたしまして豚肉、鶏肉というふうなものへの影響等も当然あるわけで、その辺の代替関係が出てまいるというふうに思っております。当然、魚にも影響をいたすと思います。価格が安くなるとある程度消費は伸びると思いますが、全体的にカロリーが一定ということでありますと、中の代替関係だけで置きかわるという点だけの問題になろうかというふうに考えておるわけでございます。
  132. 小杉隆

    ○小杉委員 結局、いま貿易摩擦の一番前面に押し出されてきたのが牛肉とオレンジの問題なんですね。この問題がある程度話し合いがつかないと、関税引き下げだとかその他のいろいろな努力にもかかわらず、日本はオープンでないという評価というのはなかなかぬぐい去ることはできないと思うのですよ。  ですから、私は逆に言うと、工業製品で日本はどんどん金をもうけているわけですから、国内生産者を保護するということを考えるならば、むしろこれを多少自由化して、その分工業製品の売り上げの貿易収入の中から補助金で出すという方法だってとれなくはない。そういう財政支出は、大蔵大臣としては非常に痛いと思うのです。しかし、わが国のように海外の貿易に依存している国にとっては、総合的に考えて、むしろそういう方法をとった方がプラスであるというふうに考えることもできるのではないかと思うのですけれども、いかがですか。
  133. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 とても金額的についていけないということが一つです。  それからもう一つは、牛肉を自由化したからアメリカから入るとは限らぬわけですから。恐らくアメリカからは入らぬで、ほかの国から入るでしょう。それよりも、いまのような割り当て、たとえばホテル枠とかはアメリカだけに割り当ててやっているのですから、そういうものをできるだけふやせればふやしてやるということの方が、本当はアメリカのためになるはずでございます。
  134. 小杉隆

    ○小杉委員 ちょっと質問に答えていないのですけれども。  それはわかりますよ。輸入をふやしたからといって、アメリカの肉ばかりがふえるのじゃなくて、むしろオーストラリアの方が肉は安いのだから、そっちがふえる。しかし、それはもうわれわれの関知したことじゃなくて、向こうが言っている、なるべく自由化をすることによって、あとはおまえたち同士の競争だぞということを言ってやればいいんで、われわれがそういう彼らの言っている枠を外すということでいいと思うのですね。要するに、農業に補助金を出してやるという方法はどうですか。
  135. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 補助金を出してやるといっても、農業補助金はかなり多いと逆に言われているわけですから、これ以上大幅にふやすなんということは、言うべくして非常にむずかしい問題であります。  実は、私は、かつてアメリカへ牛肉とかオレンジ問題で交渉に行ったことがあるのです。そのときにいろいろ話して、夜になったところが、実は牛肉は、あなたのところはもう輸出余力がないじゃありませんかと言ったのですよ。昼間は、そんなことはない。夜になったら、いや、実はオーストラリアから頼まれたと言いましたよ。(笑声)
  136. 小杉隆

    ○小杉委員 とにかく、消費者は牛肉の輸入に対しては非常に強い要望を持っているということだけは、ひとつ念頭に置いてやっていただきたいということを申し上げて、次に、たばこの問題に移りたいと思います。  まず、いま原料は、国内産のたばこの葉っぱを買うのと外国から買うのと、どのくらい値段の差があるか。
  137. 高倉建

    ○高倉政府委員 お答え申し上げます。  正確な値段を申し上げるのは、商取引上の問題になりますので、差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に申し上げますと、国産の葉たばこが、外国葉たばこに比べますと裸の値段で二倍と言われております。仮定の計算でございますけれども、品質格差を織り込みますと約三倍と言われております。ただ、これは一般的な比較でございまして、たとえばアメリカから買っております葉たばこは、日本たばこの品質を維持するために非常に高級なのを買っておりますので、ただいま申し上げましたような大きな差は出てはまいりません。国によりましては、もっと安い値段で買っておるところもある。さまざまではございますけれども、総じて言えば、日本の葉たばこは裸の値段で二倍高いと言われているわけでございます。
  138. 小杉隆

    ○小杉委員 私もノースカロライナの専売公社の方を調べてみましたけれどもアメリカから買えば日本の三分の一で買えるのだ、だけれども大蔵省の方がなかなかこれを認めてくれないということで、もっと外国の葉たばこを、原料を買えば、専売公社の経営ももっと楽になるし、あるいはたばこの値段ももっと安くできるということを言っておりましたけれども、なぜ制限をしているのか、聞かせていただきたいと思います。
  139. 高倉建

    ○高倉政府委員 大蔵省が別段制限をしているわけではございませんが、御承知のとおり、国内におきまして葉たばこ農家が約十万余、その生産額は、いろいろな見方がございますけれども、金額でいきますと米と畜産関係を除けばその次という額を占めているわけでございまして、こういう葉たばこ農家が存在しているということも無視できないわけでございます。同時に、この葉たばこ農家に対しましては、五十年度以降わが国たばこの売れ行きが全く停滞状態になってまいりました中で、年々減産というような大きな犠牲もお願いしているわけでございます。  そういう中で、たばこの品質を維持するために使用いたします量の大体三分の一程度の葉たばこ輸入しておりますが、このまた過半はアメリカから買っておるわけでございまして、アメリカの葉たばこの最大の顧客であることは間違いございません。
  140. 小杉隆

    ○小杉委員 それでは、完成品の輸入の比率ですが、昨年ですか、十月に、従来外国たばこを扱っているお店を一万四千店から二万店にふやしたということでいまもお話があったと思いますが、輸入たばこの比率がふえているということですね。しかし、ふやしたとはいっても、繁華街ではまだ二店に一店の割合ぐらいしか扱っていないのですね。ですから、二十五万店の全国のたばこ屋さんの中で二万店というと、約十分の一ですけれども、繁華街などはもっとふやせば——アメリカの不満というのは、製造の専売だけじゃなくて、流通の方まで全部専売でやってしまっているということですから、せめて流通の部門で、二十五万店の中の二万店というのは去年ふやしたばかりだと言いますけれども、繁華街ではもっとたばこ屋さんに置くような措置考えられないかどうか。
  141. 高倉建

    ○高倉政府委員 お答え申し上げます。  一昨年十一月の日米協議の結果に基づきまして、たばこ輸入品取扱店を二万店にふやしたわけでございます。この二万店というのは、実はアメリカ側の要請によりましてそういうことにしたわけでございまして、二万店が制限的であるということは当たってないと思います。この数字自体、固執するわけではございませんが、同時に、店舗を拡大しましたことによって返品が増加しているというような問題がございます。  先日の日米貿易小委員会におきましても、アメリカ側から輸入品の取扱店の増加ということが提案されましたが、これにつきましては、専売公社としても前向きで検討する用意はある。ただし、店舗がふえてまいりますと、当然に配送効率が落ちる、配送コストが上がるというような問題がございまして、これの負担をしてもらわなければなりません。さらに、ただいま申し上げましたように、返品が増加してまいりますと、現在のところはすべて公社が負担しているわけでございますが、その負担をどうするかというようなことも相談しなければなりません。そういう点につきまして、ひとつ日米両方の業界間でよく話し合ってほしいという旨の回答をしているわけでございます。
  142. 小杉隆

    ○小杉委員 専売制度、製造の段階でも流通の段階でも専売という形をとっているのは、わが国と、あと一カ国くらいだと思いますが、いま臨調の第四部会でも、この専売公社のあり方について議論がされているわけです。もちろん国内業者を保護することも大事ですけれども、非常に強い不満があるということから、いろいろむずかしい問題はあっても、やはりもう一度反省するところは謙虚に反省して直すという姿勢を私は望みたいと思います。  最後に一つ。この日本に対する貿易摩擦は、結局のところ私は、アメリカなりEC諸国のそれぞれの国の経済不振が原因だと思うんですね。これがすべてだと思うんです。  そこでアメリカに対しては、やはりアメリカ自身の高金利政策というものが自分自身の首を絞めているじゃないか。高金利のために企業の設備投資は行われないし、また輸出はふえないで輸入の方がどんどんふえている。その他、高金利によるひずみがいろいろ出てきているわけです。レーガンの政権、二年たちましたけれども、いわゆるレーガノミックスと言われている政策も、いまアメリカの国内でも非常に批判が強まってきているわけですね。レーガンの人気も、当選した直後に比べて、いまや三分の二くらいに落ちてしまっている。テレビの元俳優ですから、テレビでのアピールが強くて、個人的な人気はあるけれども、レーガンの政策、特に経済政策に対する不満というのが非常に強くなってきて、いまレーガンに対する人気が急速に低落をしているということです。  そこで、いまのアメリカの高金利政策というものが、日本にどんな影響を与えているのか、ひとつ主なものだけでもいいですから列挙していただきたいと思うのです。
  143. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 アメリカは高金利政策をやっているんじゃないと言っているわけでございますね。マネーのサプライを、通貨量の増加を抑制しておる、その結果金利が上がっているだけだ、彼らはそう言っているわけです。それで、次第に下がるであろうということを言うわけです。現在のアメリカのインフレを抑えるためにはこれ以外に道がないんだ、先方の認識はそういうことでございます。  その結果、私どもに対しましては、国際収支面で経常収支がたとえば五十六年に暦年で四十七億の黒でございますが、長期資本が約九十億ドルばかり出ております。その中で金利差で引っ張られているというようなものを大変大ざっぱな計算をいたしますと、半分ぐらいあるというような影響を受けます。これが一つでございます。  それから二番目には、レートが弱くなりますから物価に徐々に影響が出てくるという問題がございます。たとえば現在卸売物価が対前年で二・八でございますけれども、かなりの部分が最近の円安のはね返りというような計算もございます。  大ざっぱに申しますと、そんなような影響を受けておりますが、アメリカの方は、だんだん物価が下がれば金利が下がる、だからもうしばらくがまんしてくれというような考え方をとっているわけでございます。
  144. 小杉隆

    ○小杉委員 レーガンの経済政策、特に高金利政策に対しては、日本だけではなくてヨーロッパも非常に影響を受けているわけですね。先ほども申しましたように、アメリカ国内でも、いまのレーガンの経済政策に対しての批判というのが非常に強くなってきております。ボルカー連銀理事長に対する風当たりも非常に強くなっておりまして、内外ともにレーガンにとっては非常に多難な時期なんですが、いま日本貿易摩擦で受け身に立っておりますけれども、こういう面ではやっぱりヨーロッパに対して、ひとつ高金利政策を是正させるように求めるべきじゃないか。  最近特にOPECなんかの会議でも、もうこれ以上原油を引き上げることはできないし減産も余儀なくされるという状況の中で、いままでのインフレ要因であった原油の要因というのはだんだんなくなってきたし、また、アメリカの特に労働者の賃金の指標とも言われる全米自動車労組の賃金もむしろ低下しつつあるわけですね。ですから、いまアメリカが仮に通貨供給量をふやしたからといって、従来のようなインフレということにはならないということを私ども考えるわけですけれども、そういった面でヨーロッパ諸国と協力をして、アメリカの高金利政策に対してもっと強く是正を求めるべきだというふうに考えますし、いまの政策をとり続けたら、アメリカ経済そのものがもう破綻してしまうと私は思います。  それからもう一つの点は、いわゆるアラスカ原油を日本輸入をすることによって、大体五十億ドルから六十億ドルの貿易摩擦解消に役立つと言われておりますが、こういったアラスカ原油並びにレーガンの高金利政策に対する対応といいますか、その点についての考えを聞きたいと思うのです。
  145. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは、この間も安倍通産大臣が行って向こうへ要求しているんです。ところが、向こうは資源の何か法律がありまして、そういうものは売らない。それはおかしいじゃないか、あなた方はこちらへ売って、そのかわりメキシコあたりから日本の買うものを回してやるから、そうすれば二国間のバランスはうまくいくんだからどうですかということは言っているんですが、向こうの国内事情でそれはできないということでございますから、貿易問題は二国間だけで問題にするということの方がむしろおかしいんじゃないかと私は思っています。
  146. 小杉隆

    ○小杉委員 あと通産省。
  147. 横堀恵一

    ○横堀説明員 ただいまのアラスカ原油のことでございますけれども、この問題につきましては、ただいま大蔵大臣からお話しになったとおりでございまして、あと若干補足いたしますれば、たとえば日米貿易小委員会等の場を通じましても、私どもとしては、従来からこの問題について提起しておるところでございます。
  148. 小杉隆

    ○小杉委員 それじゃ時間が来ましたので終わります。
  149. 森喜朗

    ○森委員長 次回は、来る二十六日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十五分散会