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1982-03-23 第96回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月二十三日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 森  喜朗君    理事 大原 一三君 理事 小泉純一郎君    理事 中西 啓介君 理事 伊藤  茂君    理事 沢田  広君 理事 鳥居 一雄君    理事 和田 耕作君       相沢 英之君    麻生 太郎君       木村武千代君    熊川 次男君       笹山 登生君    椎名 素夫君       白川 勝彦君    中村正三郎君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       毛利 松平君    森田  一君       柳沢 伯夫君    山中 貞則君       与謝野 馨君    大島  弘君       島田 琢郎君    戸田 菊雄君       野口 幸一君    平林  剛君       堀  昌雄君    柴田  弘君       武田 一夫君    玉置 一弥君       正森 成二君    簑輪 幸代君  出席政府委員         大蔵政務次官  山崎武三郎君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵省関税局長 垣水 孝一君         大蔵省国際金融         局長      加藤 隆司君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    佐藤 嘉恭君         厚生省薬務局麻         薬課長     市原 久照君         農林水産省経済         局国際部長   塚田  実君         通商産業省通商         政策局通商関税         課長      横堀 恵一君         通商産業省貿易         局輸入課長   横山 太蔵君         通商産業省機械         情報産業局電子         機器課長    若曾根和之君         通商産業省機械         情報産業局自動         車課長     西中真二郎君         日本専売公社総         裁       泉 美之松君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   大島  弘君     島田 琢郎君   渡部 一郎君     武田 一夫君 同日  辞任         補欠選任   島田 琢郎君     大島  弘君   武田 一夫君     渡部 一郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第四六号)      ————◇—————
  2. 森喜朗

    ○森委員長 これより会議を開きます。  関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田琢郎君。
  3. 島田琢郎

    島田委員 けさのテレビで、訪米中の櫻内外務大臣レーガン大統領との会談が行われたその模様が伝わっておりますが、要約いたしますと、アメリカ側からはベルサイユサミットまでに一層の市場開放をという提起がなされ、それにこたえて外務大臣は、これを約束する、こういうふうに言っているようであります。  そうなりますと、ここで問題が二つ出てまいりまして、一つはタイムリミットが出たということであります。それから、従来からの日米間における貿易問題が、一つかなり具体的に提起をしなければならない問題としてこの会談の中に盛り込まれた、こういうふうに理解するのが常識的だろう、こう思うのであります。そういたしますと、六月までにどのような具体策が検討されていくのかが大変気になるところであります。この会談模様について冒頭伺っておきたい、こう思います。
  4. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  櫻内外務大臣レーガン大統領との会談につきましては、先生いま御指摘がございましたように、ワシントンの時間で二十二日の午前十一時過ぎから約三十分間ぐらい行われたわけてございます。  会談の要旨につきましては、今朝のテレビで概要は報道されていたと思いますが、私どもが接しておりますワシントンからの報告に基づきまして御報告をさせていただきたいと思います。  会談の冒頭まず両者の間で、日米関係の重要なことについての相互の確認がございました。と同時に、櫻内外務大臣からは、日本としても国際社会への貢献ということを積極的に考えていかなくてはならない立場であるということについては十分承知しているところであり、また櫻内外務大臣より、経済問題についての日本側対応姿勢について詳しく御説明になったというふうに聞いております。  御指摘の、サミットまでにというところでございますが、接しております報告によりますと、このようなことであったというふうに承知しております。  日米間には種々の問題が存在するわけでありまして、それは単に日米関係にとどまらず、より広い世界的な視野あるいは西側全体にかかわる問題であるということで、それぞれ重要な問題であろうということがレーガン大統領の方から指摘がございまして、六月には経済サミットがパリで開かれるという意味で、日本側国際社会に対する対応ということが非常に大切ではなかろうかというような御意見の開陳があり、西側経済においては、特にただいまのところ多くの困難に直面しているわけでございますので、そういう状況のもとにおいて自由貿易体制をいかにして維持していくかということについて日本側がいろいろお考えをいただくということが重要ではなかろうかという御指摘があった、そのような報告に接しているわけでございます。  これに対して、櫻内大臣から、日米間の貿易の諸問題につきましては、外交チャネルあるいは先般の日米貿易小委員会といったような場で両国当局間において鋭意話し合いが進められているわけであるし、日本としてもこれまで多くの努力をしてきたところであります、今後の問題について言えば、サミットということを念頭に置きながらさらに努力を払ってまいりたいという、わが国の一般的な経済問題に対する取り組み姿勢を表明されたというふうに承知しておるわけでございます。
  5. 島田琢郎

    島田委員 貿易全般にわたるものであるという理解は私もしているのでありますが、しかし、基本にかかわるところでは、まだ政府与党自民党の間で必ずしも統一した考え方に立っていない、また政府部内においても大臣間において意見相違がある、こういう状況のもとに置かれていると思うのです。たとえば、一括でやるのか個別でやるのかといった点については未整理のままに置かれているという印象を私は持っております。にもかかわらず、ベルサイユサミットと言えば、いまおっしゃっているように六月でありますが、あと二カ月少々しかない、こういう状況のもとですから、そういうわが方の取り組み基本のところがまだしっかりと合意され確立されていないという中で、具体的にどんな考えで臨まれるのか、一層疑問に思うのです。  この辺のところは、これは大蔵省なのか外務省なのか、どっちからでも結構でありますが、局長に、政府部内の不統一、政党との関係、いわゆる与党政府関係の不統一なところを説明せいと言ってもできないでしょうが、政務次官大蔵省でありますけれども政治家立場お答えになるのが適当だと思うのだが、どうですか。
  6. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 事実関係だけ御報告をさせていただきたいと思います。  外務大臣が御訪米になる前の日だったかと思います。外務大臣通産大臣官房長官という間で御意見交換があったと承知しておるわけでございます。その場におきましては、私どもの承知しているところによれば、これからの厳しい情勢に対して、いかに対応していくかということについての御意見交換があったやに承知しておりますけれども、ただいまの先生の御指摘のように、六月のサミットまでいろいろな行事があるわけでございますので、政府の部内においては、さらに意見調整を図りながら対応していかねばならないかと思いますけれども外務大臣からこのお話を伺ったところによりますと、基本的に御三者の間で大きな考え方の違いがあったというふうには聞いておらないわけでございます。
  7. 島田琢郎

    島田委員 どうもそうは思えない。きょうは大臣がいないのでどうもやりづらいのでありますが、櫻内外務大臣訪米の直前に開かれました大臣話し合いの場では、安倍通産大臣一括論かなり厳しい意見を述べる、また個別の問題でやるべきだという意見も閣僚の間にはある。ここが整理されないで六月サミット対応できるかどうか、私は非常に疑問だ。それまでにやりますと言いますが、少なくとも外務大臣は、レーガン大統領との会談の中ではサミット対応する、こう言ったのですから、だとすれば、その辺のところがきちっと整理された上で発言されたと受け取るのが、これまた常識だと私は思うのです。  余り大きな意見相違はないとおっしゃるが、しかし、これは大変な差でありまして、一括でやるか個別でやるかによっては、ずいぶん違ってくるわけであります。いまの答弁で私は納得できない。再度、私が納得するような説明がいただきたい。
  8. 山崎武三郎

    山崎(武)政府委員 しょせん、外交交渉の問題に対してどのような対応方式をとるかという、その方法論の問題だろうというふうに思います。一括してやろうという御意見はそれなりに理解できるわけであります、そうしなければ相手の方が満足するまいということでありますから。しかし、日本国政府としては譲歩するだけ譲歩している、今後まだなおかつ譲歩を迫られていく場合については個々に積み上げていって、そして交渉しなければいけないのではないかというふうに私どもは思うわけであります。  したがって、政府間の、一括方式をとるか個々積み上げ方式をとるかというその差は、しょせん技術的な差ではなかろうかというふうに思います。できるだけ一括して応じますということについては、相手国に多大な期待を与えはしないだろうか、しかし日本国政府としては、やはりそれだけの強い危機感を持って対応しなければいけないという戒めの意味にも受け取られるわけでございますから、一括方式あるいは個々積み上げ方式ということについて本質的な意味での差はなかろう、事が非常に重大で厳しいということの認識においては基本的な差はなかろうと思いますが、どういう方法がいいのか、これはまた今後検討してまいりたいと考えております。
  9. 島田琢郎

    島田委員 あなたがおっしゃるほど、これは簡単な問題じゃない。一括か個別かというのでは大変大きく違ってくる。その調整意味で、相手方もあることだし、過大な期待を持たせてもいかぬ、そういう配慮は必要であり、また、それを私は否定しているのではない。しかし、ここが根っこであって、ここから対応が出てこなければいけないので、それがどうも伝わるところでは、あなた方が幾ら否定されても、それは不統一ではありません、考え方としては同じであって技術的な問題ですなどと言ったって、納得ができない。方針の決まらないうちにアメリカに応諾を与えるかのごとき、そういう会談が行われた、会談の席上における発言が行われたということは、私はきわめて大事な点だと思うのであります。  この議論だけ繰り返していても始まりませんけれども、たとえば自民党政調会長である田中六助さんはまる裸論を展開されている。これは途中で党内からも大分突き上げがあって軌道修正されたようでありますけれども、こういう議論がぽんぽん飛び出してくる、こういうふうに考えますと、どうもまだ政府与党対応基本的にどこから始めるかということがきちっとまとまっていないと考えるのは、これまた至極当然なことじゃないでしょうか。そこのところをひとつしっかり基本の問題として踏まえてもらわないと、今後の問題としても尾を引いていくばかりか、出された決着点といいますか、決まったところが大変大きく違ってくるということに私は強い懸念をいま持っているわけです。それに私が十分納得できるようなお答えがないというのは、まことに残念なことでありますが、時間の関係もあって、これは前に進まざるを得ません。  そこで、東京ラウンド以降もかなり強いニュアンスで出ておりましたのが、何といっても農畜産物の問題であるわけでございます。牛肉だとかあるいはオレンジとか、非自由化品目まで含めていろいろ取りざたされてきておる。それが日本農業に大変大きく動揺を与えておるのは紛れもない事実である。そこで、きょうは農林水産の問題にしぼって、政府側対応なり考え方なりを明らかにしてもらいたい、こう思っておるところであります。  まず、私は、東京ラウンドを振り返ってみたいと思いますが、当時、東京ラウンドでいろいろな前倒しや、あるいは今後の、五十八年までの間の方向が検討され、日米貿易小委員会等でもかなり論議されたというふうに聞いているのであります。当時、東京ラウンドで、アメリカを初めECその他の国から、合わせますと二百九十品目にわたるリクエスト品目提起され、日本側からは二百四品目にわたってオファーを出したということでありますが、その後、この問題はどのように取り扱われ、どのような論議になって今日に至っているのか、その経過について若干説明をいただきたいと思います。
  10. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘ありましたように、東京ラウンド交渉は一九七三年九月に開始されまして、五年半にわたる非常に長い交渉の末、七九年の四月に実質的な妥結を見たわけでございます。この東京ラウンド交渉を振り返ってみますと、先生指摘のように、特に農産物交渉は非常に厳しいものがあったというふうに考えております。  その中で、関税輸入制限、この二つの問題に分けて考えてみますと、関税につきましては、米国EC等外国からかなりの要求がありまして、私どもは、御指摘のように大豆、エビ、なたね等輸入農水産物の約二割に当たります約二百品目について関税譲許を行ったわけでございます。その当時における農畜産事情を十分踏まえまして、できないものはできないということで、この辺にしぼって譲許を行ったという状況にあります。  それから残存輸入制限につきましては、特に米国から牛肉柑橘完全自由化という強い主張がありましたけれども、厳しい交渉の末、自由化は拒絶し、かわって牛肉柑橘輸入枠について約束を行ったところでございます。それ以後も幾たびか日米間で折衝する機会がございましたけれども、昨年の秋以降、アメリカは、わが国残存輸入制限についての自由化を特に強く要請しているところでございます。  そこで、御質問の日米貿易小委員会でございますけれども、十二月に行われ、それから三月にも行われましたが、そこで私どもは、残存輸入制限の問題につきましては、まず農林水産省立場といたしましては、米側から要請があります作業部会設置合意したところでございます。これは、私どもとしては、米側の言い分について聞く耳を持たないというようなことではなくて、むしろこのような部会を活用して、わが国農業事情の厳しさ、あるいは食糧安全保障を基軸といたしますわが国の農政のあり方、それから各国市場開放度——私とも、日本は世界第一位の食糧輸入国でございますから、それ自体かなり市場を開放している、閉鎖的でないと思っておりますけれどもわが国の農民なり農家のために、そういう日本の実情を十分米側説明したいという角度から、その作業部会設置合意したところでございます。その際も私どもは、作業部会設置をもって、わが国農産物自由化について何か行うということを誤解しないようにと強く言っております。  もう一つの問題は、かねてから米側から要請されております、また東京ラウンドでも決まっております牛肉柑橘に関する協議を、十月の双方都合のよい時期から開始するということについて合意を見たところでございます。米国側は、十月よりも前に交渉を開始したいということを、この貿易小委員会の場でも強調したところでございます。十月よりも前ということになりますと、東京ラウンド合意にそぐわないということになりますので、それは断り、十月の双方都合のよい時期ということで合意を見たわけでございます。  以上でございます。
  11. 島田琢郎

    島田委員 そうした交渉は、前の東京ラウンドの延長線上にあると理解していいのか、あるいは新たな東京ラウンドの始まりと理解していいのか。それはどういう考えに立って始められているんですか。
  12. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  十月において双方都合のよい時期に協議を開始するという牛肉柑橘の問題につきましては、これ自体東京ラウンドの枠組みの中で行われるものであるというふうに、時期についても、東京ラウンド交渉において双方で約束しているものでございますので、枠の中で行われるというふうに考えております。  それから作業部会設置については、東京ラウンドでは何ら言及されておりません。これは私ども、今回の貿易小委員会において双方合意して設置するものでございます。
  13. 島田琢郎

    島田委員 そうすると、新東京ラウンドだというものではない、こういう理解でいいんですな。
  14. 塚田実

    塚田説明員 新聞報道等で、お話しの新東京ラウンドという言葉が出てきておりますけれども、これは新東京ラウンドとは全く無縁のものと私ども考えております。
  15. 島田琢郎

    島田委員 この際認識を得る上で確認をしておきますが、昨年の日本輸出入の現状、私はこういうふうに数字をつかまえていますが、間違いないかどうか。  品目別にはいろいろありますが、輸出総額は三十三兆四千八百億円、そのうち食料品にかかわります輸出というのがわずか三千八百億円。何といっても自動車のところが大きいわけで、これが五兆八千三百億円という内容になっています。それに対しまして、わが方の輸入は三十一兆四千五百億円でありますが、そのうち食料品にかかわります輸入は一一・一%のシェアで三兆五千億円に達している。これは石油の十一兆六千九百億に次いで大変大きいものだ。この数字は間違っていませんね。
  16. 塚田実

    塚田説明員 私ちょっと、円で表示した資料を持っておりませんが、私ども農林水産物ドル表示でいいまして、林産物も入っておりますので恐縮でございますが、一九八〇年の実績は約二百九十億ドルでございます。林産物を除きまして、なおかつ円換算いたしますと、先生がいまおっしゃったような数字に近くなるのではないかと考えております。
  17. 島田琢郎

    島田委員 そうした貿易の実態にある中で、特にアメリカとの関係で言いますれば、わが方からの輸出総額三百八十六億ドル、これは八一年の資料であります。そのうち食料品が二億ドル。対しまして輸入総額二百五十二億ドル。いまおっしゃったのは八〇年の資料のようでありますが、五十六年度はまだ、これは暦年度会計年度によって違ってきますから、おおよそそんな数字なんでしょうが、そのうち食料品として輸入されたものは六十億ドルに達している。これはどの項目から見てもダントツでありまして、特に飼料用えさ原料、トウモロコシ、コウリャンなどが大変大きくて二十三億ドル、あと肉が五億ドル、小麦が七億ドル、こういう内容になっています。そのほかに、原料品として入ってまいります大豆が十三億ドル。農林水産関係で言いますれば、木材が年々輸入がふえておりまして十四億ドル。これらを合わせますと、農林水産物で、農林畜産木材、このトータルで言えば百億ドルに達する。これはまさに二百五十億ドルの半分にも近づこうかという大変な数字になっている。これも間違いない数字でしょうか。
  18. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  確かに、アメリカからのわが国農林水産物輸入は年々ふえておりまして、一九八〇年には先生指摘のように百億ドルの大台を超えまして百二億ドルという数字になっております。そのうち、農産物だけに限定いたしますと、約七十億ドルというふうになっております。その中で、農産物といいましても食糧以外のものもございますから除きますれば、数字を手元に持っておりませんが、恐らく先生指摘のように六十億ドルを上回る数字になろうかというふうに考えております。
  19. 島田琢郎

    島田委員 ところで、残存輸入制限品目にかかわりますと、各国並べている中では、日本が二十二品目残っているということが、大変あちこちからいろいろなことを言われているわけでありますが、確かに先進諸外国との比較で言えばそういうことが言えないこともない。残っている制限品目の数で言えばそういうことでありますが、しかし内容は、いまお話を申し上げましたような点で大変重要な中身になっているわけであります。  ところで、私はちょっと不思議に思っているわけでありますが、アメリカ残存輸入制限品目は一品目しかない、表向きそう言われておるのであります。しかし、中身で、たとえばアメリカの場合の精製糖などが残存輸入制限品目一つとして言われておるわけであります。ところが、ウエーバー品目というのが十三ある。このウエーバー品目というのがくせ者だと私は思うのです。ほかの国には全くない。ところが、これがなかなか表に出てこない。これは、言ってみれば特認されているようなもので、私をして言わしめれば、アメリカは、ガットが出てきましたときのどさくさに紛れて、このウエーバー品目十三を先取りしたというか、別に横取りしたというふうに私は感じられてならぬのであります。  したがって、正確に言いますれば、アメリカ自体残存輸入制限品目は十四になると考えていい。ほかにはこのウエーバー品目というものは例がないと私は思っておるのですが、他の国にどこかこういうものを持っている国がありましょうか。これは農林省というよりは大蔵省ですな。
  20. 垣水孝一

    垣水政府委員 先生指摘のように、アメリカ農産物については砂糖だけの一品目残存輸入制限ということで残っておりますが、アメリカウエーバーに基づく輸入制限品目としては、ミルク、脱脂粉乳、バター、チーズ、小麦小麦粉、落花生、あるいはこれは食料品ではございませんが綿花、綿あるいはその他アイスクリーム、チョコレートといったような、まさにウエーバーをとった品目が全部合わせて十六品目ございます。そういう意味では、各国残存輸入品目というのは、ある意味ではガットから正式に認められたものではないが、アメリカの正式に認められたものでないのは砂糖品目という結果になっております。  なお、念のためにほかの国の農産物について申し上げますと、フランスでは残存輸入制限十九品目西ドイツでは三品目イタリアでは三品目、デンマークでは五品目というようなことになっております。  なお、フランスにつきましては鉱工業品で二十七品目もございますので、農産物日本の二十二品目より少ないわけでございますが、品目トータルでは、日本の二十七に対しましてフランスが四十六と断然多うございます。ほかの国につきましては、西ドイツ、イギリス、イタリア等、合計でも大体一けたということになっております。
  21. 島田琢郎

    島田委員 そのアメリカが、日本に対して牛肉をもっとだの、やれオレンジをどうの、自分のところにないコンニャクまで含めていろいろなことを言ってくるというのは、私は納得ができない、こう考えているのであります。  さてそこで、先ほどオファーリクエストの話をいたしましたが、これは第一回目の東京ラウンドのときにそういうやりとりがあったわけであります。こうした中で、今度の牛肉とかオレンジとかいったような大事な品目に対して、今後どのような方向アメリカ側が具体的に言ってくるのか、その辺のところは、日本側としてどういう受けとめ方をしているのか。私どもは、新聞テレビ等を通じ、あるいは農林省の直接の説明などの中で聞いている限りにおいては、ここは問題にならぬ、大丈夫だというふうな、詰めて言えばそういう説明がなされている。しかし、どうももう一つ、別な報道によりますと、牛肉についてもさらに量をふやしていく、あるいは前倒しをさらにやる、オレンジなんかもそういう方向で季節輸入のところの枠を広げていこう、こういったような動きもあるやに聞いている。どっちが正確なのか、この際明らかにしてほしい。
  22. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  牛肉柑橘につきまして米側が私どもに要求しておりますことを具体的に申し上げますと、昨年の秋にアメリカのブロック農務長官が来日したときに具体的には始まると私は考えておりますけれども、まず牛肉柑橘について、両方とも完全自由化を要求したいと言っております。ですから、たとえば柑橘の季節自由化ではなくて完全自由化でございます。そういうことを要求したいということ。その要求は、日米貿易小委員会の場でも同様に彼らは言っております。  そこで御案内のように、東京ラウンドでは一九八三年度末まで牛肉と、牛肉は高級牛肉でございますが、柑橘について輸入割り当て数量が、枠が決まっておるわけでございます。米側完全自由化の要求は、一九八四年度以降について要求したい、こういうふうに言っております。  それから、現在のところ一九八三年まで決まっております輸入枠につきまして、それをふやせとか前倒しせよとか、そういうような要求は、私ども直接は聞いておりません。
  23. 島田琢郎

    島田委員 いままでの説明で明らかになりましたのは、日本農林水産物輸出入というのは、対米、対EC、大体大宗はそうなっておりますが、これはともに入超ですね。その傾向は依然として続いており、さらに拡大の傾向にあるということが一つ言えると思う。たとえば農林水産物は、対アメリカとの関係において見ますと、一九七三年は四十一億ドル入超であります。七六年には五十二億ドル、八〇年には九十八億ドル、そして八一年には九十一億ドルとふえ続けている。EC関係で言いましても、二億ドル、三億ドル、七億ドル、九億ドルと、入超問題から言いますれば大変な勢いでふえ続けている。それに対しまして鉱工業品は、アメリカとの関係で言えば七三年に四十三億ドルの出超、それから九十一億ドル、百六十八億ドル、二百二十五億ドルと大変な伸びであります。対EC関係についても、七三年に十四億ドルだったものが、八一年にはおおよそ十倍近い百十二億ドルとなっている。  こういうふうに考えますと、日本食料品輸出入あるいは鉱工業品関係で言いますれば、全くバランスが崩れているということが言えると思うのです。これは国内政策の不備によるものだということが原因にはあるものの、しかし、こういう状況が続いていくということになりますれば、日本はまさに食糧のすべてを外国に依存せざるを得ないという状況に追い込まれていく。そこが国内における農林漁業に携わっておられる皆さん方の大変大きな不安になっているということが言えると思う。  ですから、牛肉の問題とかオレンジの問題だけで限定して物を考えることはできないということも一面では言える。いわんや牛肉なんというのは、わが国においてはまだようやく揺籃の域からいま脱することができるかどうかという大変大事な瀬戸際に置かれている。オレンジなんかはもう、日本の歴史あるオレンジが大混乱で、その方向さえ見失ってしまうという状況にまで追い込まれた。ですから、貿易問題というのは非常に重要な問題であるということが、その点では言えるわけであります。  こうした状態の中で、それじゃアメリカ自身が、牛肉一つ取り上げてみても、輸出できるような生産の状況にあるのかといえば、私はないと思う。えさ問題なんか一つ考えてみても、日本は世界最大のお客さんである。これはアメリカもそう言っておりますし、われわれは、こんなにアメリカにえさを依存して酪農、畜産が行われていることは危険であるということを言ってきました。いまや、えさが、牛で言えばしっぽの先だけが自給されておって、あとはもう頭からしりのところまで全部よその国に依存しているという状態である。  そのうちに、まるごと全部他国に依存しなければ畜産、酪農が成り立たないということにもなりかねない、こういう状況でありますから、私は、東京ラウンドか新東京ラウンドかわかりませんが、そういう状況にないという点は、やはり話の中の基本として相手国にも理解させる必要がある、こういうふうに考えているのです。その努力はされたと恐らくお答えになるでしょう。しかし、努力をし続けているにもかかわらず、なおそれを言ってくるというのには、何か背景があるのかというふうに別な角度から疑わざるを得ない。何かあるのですか。
  24. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  確かに、日本の国民の食糧を摂取カロリーに直しますと、その五割近くがすでに外国産でございます。その多くがアメリカから来ているわけでございます。私ども、また、二十二品目残存輸入制限を持っておりますけれども、水産物を除けば十九でございまして、それでアメリカウエーバーをとっていると称しているといえども十四あるということでございますし、それから先生からもお話がありました牛肉については、アメリカ自体輸入制限をやっておりまして、それで市場開放度と言われれば、日本は全国民の総需要のうち約三割を輸入しておりますけれどもアメリカ輸入制限の結果八%しか開放していない。  そういうふうに、私ども農林水産省立場からしますと、国内の農政上、いろいろ米国には言いたいこともありますし、また、米国自体輸入制限についてもいろいろ注文をつけたいところもございます。そういう意味で、来月にも開かれると思いますけれども、先ほど申し上げた作業部会においては、こうしたわが国農林水産省考え方を十二分に米国説明し、理解を求めたいというふうに考えております。  そのような努力を今後ともやっていくつもりでございますが、米国のこうした農産物の面に関する要求の根源はどこにあるかという御質問でございます。農林水産省としては、やはり貿易摩擦の根源であります米国経済の不況、そうしたものの経済的社会的背景からきているものというふうに考えております。
  25. 島田琢郎

    島田委員 しかし、ほうっておきますと、向こうの選挙とか政治的な土壌の中でいろいろとこれが拡大され、問題が発展していくことがあるわけであります。ですから、わが方の対応というのはきわめて重要な時期に差しかかっている、こういうふうに思うのです。それをうのみにしたような外相のきのうの会談模様などが伝わっているという点で、重ねて、きわめて遺憾である、外務省が日本農業の実態というものを一体どのように把握しているのか、言いますれば、いいかげんに考えているのか、それとも十分考えているけれどもやむを得ないというのか、私は、その点、大変遺憾に思うところであります。  先ほどもちょっと触れましたように、ウエーバー品目十六のうち十三までが食料品農業にかかわるもの、農産物にかかわるものであります。こういうところはさっぱり言わないで、うちは一つしかございませんというところから話が始まると、日本の二十二はけしからぬ、こういうことになるわけであります。  特に興味深い資料として、アメリカの議会の図書館にあります議会調査サービス・重要問題システム・経済部に籍を置いているディック・K・ナントという人が、アメリカ議会における議論の素材として提出をしたと言われております論文の中で、特に農産物についての前置きではこう言っています。「日本は、米国農産物輸出にとって単一の最も重要な市場である。八〇年に、日本は五四億ドル相当の食用農産物、飲み物に加えて六億ドル相当の未加工の綿花、タバコ、動物の皮を米国から買った。日本は必要な食糧のほぼ半分を輸入しており、需要は急速にふえている。」という状況観測を行っている。つまり、日本をねらえというわけであります。  しかし、日本はそれなりに大変貿易に関しては関心を持っていて、かなり積極的にこの問題に対しては対応しているということは一面では評価できる、こう言っているのでありますが、しかし、どうもいま私が読みましたくだりが気になるのでありまして、日本アメリカから見て世界一の市場である、だからここに徹底的に突っ込め、こういう考え方を述べているというのは、今後のアメリカとの貿易関係の話の中では、大変大事な攻めどころと向こうが考えているのではないかと思われます。ですから、この際、日本農業の受ける影響というものがどういうことになるかということも含めて、アメリカ側に十分説明をする必要がある、これを排除していくための手だてとして考えていく必要がある、私はそう思っています。  特に、ドル為替レートも貿易関係では大変重要なウエートを占めるわけであります。そもそも現行の変動為替レート制のもとでは、通貨の価値というものは主に需要と供給に従う市場の力で決定されるというのが原則でしょう。このシステムでは、需要の少ない通貨は安くし、つまり貿易赤字あるいは大幅な資本流出のある国に限っているのでありますが、需要の高い通貨は高価にする、輸出超過あるいは大幅な資本流入のある国ということに限定されますが、そういうことで、商品、サービス、資本の流れにおける不均衡を是正する仕組みというのが一つ言われている点であります。  しかし、為替レートの調整は必ずしも二国間の貿易の不均衡を是正するとは限らない。それは、通貨市場は、すべての国際取引、すべての国との関係における需要と供給を反映するからだ。七八年は、円はドルに対して高くなり、これが日本の対米輸出を高くつくものにし、米国の対日輸出を安くつくものにした、こういう分析がされています。したがって、貿易赤字が減った、ふえたという問題になるわけであります。しかし、最近の傾向はドル高でありまして、この傾向を逆転させるかどうかの一つの指標とすべき問題点となるわけであります。  こういう点も含めますと、やはり円高、円安あるいはドル高、ドル安というような問題は、わが国のような大きな輸入国にとっては見逃すことのできない大事な点であります。したがって、そこも勘定に入れながら、今後一体どういうふうになっていくのかという見通しが必要になってくると思うのです。大体どの水準で話し合いのところではなされているのですか。
  26. 垣水孝一

    垣水政府委員 実は、申し上げるまでもございませんが、わが国が今日、ドルに比べて円が安くなっております最大の原因はアメリカの高金利政策にあるということを、自他ともに認めている面があるように思います。特にまたEC等におきましても、ECの経済の不況がむしろアメリカの高金利にあるんだということで、これまた強くアメリカを非難している面があるわけでございますが、アメリカとしては、むしろインフレを抑えるためだというのが第一の彼らの言い分でございます。  こういうようなことで、いろいろな会議で実はアメリカとの金利面での調整ということをやっておりまして、ここ一カ月くらい前には、アメリカの金利も低下傾向ということで、やや円高になりかかったわけでございますが、実はそれともう一つ、この貿易摩擦が余りにも新聞等で大きく報道されるために、それが日本経済に大きなインパクトを与えるというような印象から円安になっている面があろうかと思います。日米委員会等におきましては、特にどうだこうだということもございませんし、ECの方では、何か日本が円安の操作をしているのではないかというようなことを陰でちらほら言っておりますけれども、もとよりわが国は、現在はむしろできるだけ円高の方が望ましいという政策態度ではございますし、かつ、率直に言って、場合によっては介入もしているようでございますが、そういう状況で、必ずしも円の問題がいわばはっきり貿易のアンバランスに解決をできないわけでございます。  ただ、アメリカは要するに金利を下げて、もう少し円高にしたらバランスが回復するのじゃないかということを言いますと、先方は、前回のときにはかなり円高になったのに、ちっとも回復しなかったじゃないか、これは御承知のようにJカーブがどうのこうのといういろいろな議論がございますが、いずれにしても、実績として余り回復しなかったじゃないかというような言い方をしておりまして、そこのところは金融担当者同士でも議論を交わして、もう少し詰めようじゃないかというのが、ECを含めてのいわば三極の一つの金融関係議論になっているところでございます。
  27. 島田琢郎

    島田委員 金融面における問題は、いま局長がおっしゃったような方向で、これから詰めていかなければならない点だろうと思いますが、この際、時間が来ましたからこれを総括しておきますと、つまり、きょうのいろいろな質疑の中で明らかになったのは、日本の第一次産業、農林水産業にとって貿易問題というのは非常に重要な局面にいま立っている。しかも、いままで東京ラウンドを初め貿易問題というのはあらゆる角度から検討がなされてきて、日本としては、もうやり得ることはほとんどやり尽くしていると考えていい。何も特別日本だけが貿易問題に対して高い塀をめぐらしているのではなくて、どこの国をとってみても、それぞれ国内の農業保護を行い、第一次産業の保護政策を行っている。  この際ですから例を挙げておきますが、EC諸国では、ほとんどの国が輸入課徴金制度をつくっておりまして、国内価格と国際価格との遮断を行っている、これはきわめて常識的なことであります。アメリカ自身だって、かなり強い制限を行っている国である。大洋州もまたしかりであります。それは日本の場合に限らないわけで、国際的に見ても、こういう政策というのはほぼ合意されているわけであります。  ただ、その中で日本だけが非常に国内の農業政策なり水産業政策、林業政策が弱いために非常にねらわれる体質を持っているという点が他の国と比べて違う点であります。いわんや、食糧安全保障ということを先ほど政務次官もおっしゃったわけでありますが、これは食糧安全保障という立場から考えますれば、日本の自給率というのは、皆さん方御承知のとおり三〇%を割り込むという非常事態になっている。かつてのイギリスの自給率が問題になったときから考えましても、現状のイギリスの自給率との比較で言えばイギリスの半分以下でありまして、こういうことで一国の国民の命が守れるかどうかということがまさに問われているいま大事な時期だ、こういうふうに思うのです。  そう考えますと、東京ラウンドの延長であろうと、あるいはそのほかの貿易問題の各国間における協議であろうと、日本としては、これ以上譲れないぎりぎりのところにいまあるという点を、まずアメリカを初め各国理解せしめる必要がある。その努力が続けられてもなおわからないというのでは、私どもは全く納得ができない。  これは、農林省だけが幾ら声を大きくして叫んでもだめなんでありまして、冒頭で、政府部内において一括方式でやるのか個別方式でやるのかというのが大変違ってきますということを指摘をしたのは、個別にやってまいりますれば、牛肉の問題とかオレンジの問題とか、あるいはたばこの問題とかというのが突出して、そこのところだけにスポットが当てられて、えらい思いもかけない騒ぎに発展していくということだって起こり得る。こういう点を考えますと、やはり統一した物の考え方貿易問題に取り組まなければいけないのではないかということを冒頭でお話を申し上げたのはその点に尽きる、私はこう思うのです。  国内のいま置かれている状況を長々と御説明する必要はないほど、農林水産の問題は大変な窮地に立たされている。貿易問題によって日本農業の破壊、壊滅につながるという危機感さえ私自身は持っている。少なくとも日米間における合意ができないはずはないと私は思っている。日米安保というものがあるわけでありますから。それがないのなら、日米安保なんというのは一体何のためにあるのか。経済条項の第二条だけが突出していて、余剰農産物日本が買えという、これによって日本小麦は壊滅状態にまで追い込まれたという苦い歴史があります。しかも記憶に新しいのは、ごく最近、一九七四年お正月に、対日輸出品目の重要なものであった小麦の四割の輸出制限が当時のニクソンの手によって行われ、数日を経ずして大豆の全面禁輸という措置がとられたことによる日本の国内におけるあの騒ぎを、私はいまも生々しく思い起こす一人であります。信頼関係というのは一朝にして崩れ去ったと見ていいでしょう。  ですから、きわめて一方的でわが国の実情を全く無視するという態度に終始しているとすれば、私はやはり別な次元での政治対応が必要になってくると思う。そんな大事なときに、外務大臣が出かけていって、六月までに何とかします、よろしゅうございますというような約束をするというのはきわめて軽率至極ではないか。それは一にかかって、政府部内における意思の統一、いわゆる意見の一致がないところにも原因がある。つけ込まれるすきがあるから、そういうアメリカ側のむちゃくちゃと言われるような、不法と言われるようないわゆる押しつけも行われるのではないか。  そうでなくても、第一次産業のところでは何となしに工業製品のいけにえにされ、犠牲にされているという感じが強く国内に台頭していることも紛れもない事実であります。工業製品の見返りによって農業がつぶされるなんということは、私は、政治の整合性からいってもおかしいと思うし、そこのところは、きょうは大蔵省、外務省、通産省、農林省と限られた省庁の方々しかここには来ておりませんが、そういう問題意識というものをきちっと、いまわれわれ政治の立場にいる者も、行政の立場に置かれている者も持っておかなくてはならない大事な基本点ではないか、こういうふうに思います。農林省だけが一生懸命やっても、通産省が前にはだかつて反対しておる、外務省もいちゃもんをつける、こういうことでは、貿易問題の解決にはマイナスになれこそすれ、プラスにはならぬ、私はこういうふうに思うのです。  私がいままで述べました点に、各省のいまここにお見えの方々から御意見があれば承って、私の質問を終わりたいと思います。
  28. 山崎武三郎

    山崎(武)政府委員 先生指摘の点、まことにそのとおりであります。政府としても、いま江崎訪欧団が帰ってき、かつ櫻内外務大臣が帰ってきて、その対応策について慎重に協議してまいりたいというふうに思います。  御指摘のとおり、日本農業が置かれている厳しい状態というものを私どももよくわかっておりまして、いかにしてそれを守り抜くか、よくよく検討してまいりたいというふうに思います。
  29. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  外務省といたしましては、日本の国内の諸情勢というものも踏まえながら外交交渉を行っていかなくてはならないことは当然のことでございます。したがいまして、先生いま御指摘のございましたいろいろなむずかしい問題につきましては、私どもとしても、諸外国に十分この説明をしなくてはならないかと思うわけでございます。  他方、諸外国から見ておりますと、日本の経済力といいますか、あるいは日本がここまで発展をした生活力を抱えている国というふうに見えるわけでございます。諸外国の経済状況を御説明するまでもなく、きわめて厳しい状況にあるわけでございまして、そういう、外から日本をながめておりますと、何かやはり日本期待をかけるという意見もあるわけでございます。  私どもとしては、経済的に繁栄する日本を取り巻く国際環境というものを、やはり日々の努力によりまして、平穏なといいますか繁栄を築き得る素地を国際関係においてもつくっていかなければならないかと思うわけでございます。両者の調整ということが非常にむずかしい問題であることは、私どもも日々感ずるわけでございますけれども、外交の分野においてもしこの役割りがあるとすれば、ここまで発展してきた日本の経済力を今後とも発展させていくためにいかなる方法が適切であるかということを、均衡のとれた政策の中で見出していかなければならないかと思うわけでございます。
  30. 塚田実

    塚田説明員 農林水産省といたしましては、先ほども申しましたように、残存輸入制限品目二十二ございますが、これはわが国農業の基幹をなす作物でありましたり、それから地域的に重要な作物でありますし、また水産物につきましては、沿岸漁業等の振興上重要な品目に限られております。いずれも自由化が非常にむずかしいという事情にあります。そこで、先般の日米貿易小委員会におきまして、先ほども申し上げましたように残存輸入制限に関する作業部会設置され、早ければ来月中にも第一回目の協議がございます。それから十月中には牛肉柑橘についての日米協議がございます。  私どもは、こうした立場から食糧安全保障、それから先ほど先生も御指摘ありましたように、農業というのはいずれの国においても保護が必要であるというような角度から十二分に米国側説明いたしまして、その理解を得、わが国農業の調和ある発展に支障のないように、農林水産省としては全力を挙げて取り組むつもりでございます。
  31. 横山太蔵

    ○横山説明員 お答え申し上げます。  ただいま種々問題になっております貿易摩擦の原因は、先ほども農林省の国際部長から御答弁ありましたように、欧米におきますインフレでございますとか、失業の増大でございますとか、あるいは国際収支の赤字傾向といったような数々の経済的な困難が、その最大の要因であろうかと存じております。幸いにして、わが国は、それらの国々と比べますれば、その経済活動の諸指標がまだ多少恵まれている状況にあるかと存じております。  したがいまして、わが国といたしましては、そういった諸外国からの要望に対しましては、誠実に対処していくべきであるということが重要と考えております。しかし、具体的な国内措置、わが国側の措置を考えてまいります場合には、たとえば農産物の問題でございますれば、先生から御指摘のございますような種々の問題をはらんでおりますので、わが国農業の健全な発展ということと調和を図りつつ対処をしていくべきである、かように考えております。
  32. 島田琢郎

    島田委員 余り気に入った、私の納得するようなお話ではなかったが、時間が来ましたので、ここでやめます。
  33. 森喜朗

    ○森委員長 柴田弘君。
  34. 柴田弘

    ○柴田委員 私は、きょうは自動車の問題、それから半導体の問題、そしてたばこの問題、この三点を中心にして、いま起っております日米摩擦問題について、いろいろお聞きしていきたいと思います。  それで、まず自動車の問題でありますが、昭和五十三年には完成品の関税を無税にし、昨年は自動車の主要部品についても無税にし、そして今回はまたターボチャージャーを無税にして、相当門戸開放をいたしておるわけであります。  きょう私がお尋ねしたいのは、昨年の五月にアメリカ合意をいたしました、これは通産大臣の声明という形で、日本の自主規制の問題について三段階に分けて規制措置がなされたわけでありますが、まず初年度は百六十八万台、それから二年度は五十六年から五十七年の増加分の一六・五%、それから三年度はいわゆる二年目の最終にまた協議して決める、たしかこういったような内容であったと思いますが、最近、この第二年度目のいわゆる一六・五%の上積みというのが果たしてできるのかどうか非常にむずかしい状態になってきたのではないか。マスコミの報ずるところによれば、もう通産省としてはこの二年度も百六十八万台にする、こんなような報道がなされておるわけでございます。  そこで、私はまず通産省にお聞きをしておきますが、昨年はたしか自主規制の問題についてはいろいろと質問をしたわけでありますが、現在の自動車産業の重要性、これは従業員数が、直接携わる人が六十三万人、関連産業、資材、流通部門を含めると四百万人で、わが国総従事者の約一割、だから自動車産業というのは、わが国経済にとっては非常に大きな影響があるわけでございます。たとえば五十万台減少いたしますと、操業度が五・二%減少する、失業者が十六万四千人、失業世帯人口が五十七万一千人、そしてその失業者に対する救済のための要公共投資額が八千百九十七億円、わが国の財政収入の減収が国税、地方税を含めまして千五百八十六億円、こういうふうに経済面に大きな影響を与えるわけでありますが、簡単で結構ですから、まず、自動車産業のわが国経済にとっての重要性という問題について、一言簡単に御説明をいただきたい。
  35. 西中真二郎

    ○西中説明員 ただいまの先生のお尋ねでございますが、先生からもすでにお話があったわけでございますけれども、自動車産業はわが国の非常に重要な産業でございまして、ただいま御指摘のございましたように、従業員におきましても、非常に広い範囲をとりますと全従業者の約一割に相当するということでございますし、あるいはまた製造業、生産をとってみましても日本の総生産の約一割、あるいはまた輸出をとってみますと日本全体の二割というふうなことで、非常に大きなウエートを占めておる産業である、かように理解をいたしております。
  36. 柴田弘

    ○柴田委員 そこで、先ほどお話しいたしました自主規制についてのアメリカ側との合意、これは正式には昨年の五月一日に通産大臣が声明を出したわけでございます。  第一年度、一九八一年四月から一九八二年三月、これは百六十八万台に輸出枠を抑制する。それから第二年度、八二年四月から八三年三月までは第一年度の枠百六十八万台と第二年度における米国乗用車市場拡大量の一六・五%の合計とする。一六・五%の上積みをするわけですね。それから第三年度、八三年四月から八四年三月までは、この数量規制の可否については米国乗用車市場の動向を勘案しつつ第二年度の終期に検討する、こういうことになっていたわけです。  それで、私は昨年の本委員会におきましてもいろいろ申しましたが、こういったわが国の自主規制というものが、現在のアメリカ経済あるいはまた自動車産業に果たしてどれだけの救済措置になるのか。アメリカの自動車産業の不況という問題は、石油事情の急激な変化あるいは小型車志向というアメリカ市場の需要動向に対応できなかった、いわゆるアメリカ自動車産業それ自身の問題であり、アメリカ経済それ自身の体質の問題であるということを、私は昨年も本委員会において指摘をいたしたわけであります。  そこでお聞きしたいのは、それは三年間自主規制をやらなければアメリカの自動車産業の再建の結果というのはわからないと思いますが、初年度ほぼ百六十八万台、アメリカ側が言うように規制がなされたかどうか。それからもう一つ大事なのは、そういったアメリカ状況の中で、わが国の自主規制という問題が、今回の自主規制の目的であるところのいわゆるアメリカの自動車産業の再建に初年度役に立ったかどうか。私は聞くところによると、アメリカの五十六年の総市場の需要は、九百五十万台を目途にしておったのが八百五十三万台ぐらいで、百万台低下をしておるというのです。わが国の自動車の輸出規制というのがアメリカの自動車産業の再建には役に立たなかった、そういうふうに判断せざるを得ないのですが、その辺のところは、通産省としてはどう見ているのか、この辺のところをひとつ明確に御答弁をいただきたい。
  37. 西中真二郎

    ○西中説明員 ただいま先生指摘のとおり、ちょうど昨年のいまごろでございましたか、アメリカからいろいろ見通しを聞いたりしたこともあるわけでございますけれども、実は、一昨年のアメリカの乗用車の総需要が九百万台をちょっと切る量でございましたけれども、それが昨年には恐らく九百五十万台ぐらいには回復するだろう、そのときに日本側が自主規制をしてくれれば、アメリカ自動車産業の再建にとって非常にぐあいのいい息つぎの期間ができるのだというふうな説明が先方からもあったわけでございます。それに対しまして、先ほど御指摘がございましたように、昨年のアメリカの乗用車需要は大変惨たんたるものでございまして、実績をとりますと八百五十三万台というふうなことでございまして、見通しに比べて約百万台ダウンしたというのが実情でございます。  したがいまして、もし日本の自主規制がなかったらどうなったかということは非常にむずかしゅうございますが、少なくとも、当初考えておりましたように、日本の自主規制によってアメリカが非常に大きな息つぎの期間を得るという効果は余り発揮できなかったというのが正直なところだろうと思います。
  38. 柴田弘

    ○柴田委員 百六十八万台はもう達成できましたか。
  39. 西中真二郎

    ○西中説明員 自主規制でございますか。輸出数字でございますが、まだ三月の数字はもちろんわからないわけでございますけれども、百六十八万台ほぼすれすれまでは出るだろうというのが私どもの見通しでございます。
  40. 柴田弘

    ○柴田委員 そこで、いよいよ第二年度が間もなく始まるわけでございます。百六十八万台プラスアルファ、いわゆる一六・五%。  私は、この第二年目の規制を考える場合に、やはり初年度の結果がどうであったかということをまず一つ考えなければいけない。それから、いま私も指摘しましたし、課長さんもおっしゃいましたように、アメリカの自動車市場は惨たんたるものであって、いわゆる自主規制がなかりせばもっと惨たんたるものであったかどうかは知りませんが、それも勘案しなければならないが、少なくとも、それは三年たたなければわからぬかもしれませんが、この百六十八万台は日本側がせっかく自主規制したにもかかわらず、アメリカの自動車産業の再建への足がかりはつかめなかった、私はこういうふうに思うわけなんです。だから第二年度、第三年度を考える場合に、少なくとも第二年度の一六・五%をどうするかということを考える場合に、この反省の上に立ってアメリカ側との交渉をしなければならない、こういうふうに思います。その点が一つ。  いま一つは、端的に申しまして、この上乗せ分の一六・五%はどうするのですか。もうあと間もなくですね。大体その見通し、まだ五十七年度の見通しがはっきりわかりませんが、少なくとも通産省としては、アメリカ側との今後の折衝の中においてプラスアルファをつけて、一六・五%をあくまでも主張していくのかどうか。あるいはマスコミに報ぜられておりますように、この上乗せ分というものは切り捨てて、そして現下起こっております対日批判というものをかわす、そういった方向であなたの方は考えていらっしゃるのかどうか。二者択一の質問をして申しわけありませんが、どうするのか、この際はっきりとお答えをいただければと思います。
  41. 西中真二郎

    ○西中説明員 ただいまの御質問の点でございますが、現在私どもといたしましても、先生指摘のようないろいろな問題があるわけでございまして、最終的な詰めを省内でいたしておるところでございまして、まだ現在、いずれにするということがはっきりと固まっておるということでは必ずしもございません。  実は先般アメリカ側から人が参りまして、アメリカの一九八二年の自動車の需要見通しの話をいろいろ聞いたわけでございますけれども、八百三十万台くらいという非常に低い見通しもございますし、高い見通しでございますと九百六十万台というふうな見通しもあるようでございますが、どうも後になってきますほど低い見通しがだんだん強くなってきておるというふうな状況にもございまして、そもそも一六・五%プラスということを発動する余地があるのかどうかということも含めまして、現在向こうの需要見通し等について私どもの中でも検討を進めておる、かような段階でございます。
  42. 柴田弘

    ○柴田委員 検討しているというのは、確かにそれは五十七年度のいまの見通しというのは、五十六年度はいまおっしゃったように百万台から百五十万台の差があるかと思いますが、それが一六・五ですからあれなんですが、私がお聞きしたいのは、その見通しが定かでないのですが、要するに、自主規制の声明を通産大臣がなされた昨年の時点と同じ考えで一六・五を主張されるのか、あるいは対日批判をかわすために、先ほどの議論の中でも、個別にやるか包括でやるかという問題があったわけなんですが、そういった中で、今後通産省としては、アメリカ側のそういった状況を勘案してあげて、そして一六・五%は何とか棚上げしてあげよう、なしにしてあげよう、こういう考えの検討か、どうなんですか。台数を幾らにするかとかいうことはまだわからぬですからね。
  43. 西中真二郎

    ○西中説明員 大変微妙な段階での微妙な御質問なわけでございまして、非常にお答えがむずかしいわけでございますけれども、少なくとも昨年百六十八万台という台数を決めましたときに、アメリカ側といたしましては九百五十万台くらいは出るだろう、需要があるだろうと見ておったことは事実でございまして、別に九百五十万台と百六十八万台ということをリンクさせた議論をいたしておるわけではございませんけれども、そういう前提のものだと考えていたということは事実でございます。その辺の経緯等も念頭に置きながら、私どもとしましても適切に対処してまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  44. 柴田弘

    ○柴田委員 適切に対処するというのはちょっとわからぬのですがね。どうもあなたのお話を聞いていると、最近玉虫色だとか灰色などがはやるものだから、私もわからぬのですが、とにかく何とかしてあげたい、何とか包括的な措置の中で自動車の自主規制の問題も、去年の五月に通産大臣はああいう声明を出したんだが、今度はまたいろいろとやっていかないと対日批判をかわせない、だから何とかひとつ一六・五は勘弁してあげようという考え方で検討していらっしゃるんですか。これは大事なところですから、一遍はっきり答弁してください。本当は通産大臣に来てもらうといいんだけれども
  45. 西中真二郎

    ○西中説明員 実は、アメリカとの交渉事とも絡んでまいりますので、いまここで明確なお答えをするというのは非常にむずかしゅうございますし、また私ども自身もまだ最終的な答えを持っておるわけではございませんので、非常にお答えがむずかしいのでございますけれども先生指摘のような問題意識も私ども持っておるということは申し上げておきたいと思います。
  46. 柴田弘

    ○柴田委員 そうすれば、包括的措置になるのかどうか知りませんが、要するに一六・五のプラスアルファというのは、去年声明を出したんだけれども、対日批判をかわすために、そういった中でアメリカの自動車市場の惨たんたる状況を勘案して勘弁してあげよう、そして、それが今度マスコミの報ずるところによりますと、通産大臣声明というふうな形でアメリカに通告をされる、このように聞いておるわけなんです。そこで、そういったニュアンス、これは私もそういうふうに理解をいたします。私の理解が間違っておれば間違っておると言ってください。  それからもう一つは、しからば、これも大事なところなんですが、プラスアルファはそういうふうに検討していく、何とかしてあげたい。しからば、百六十八万台は第二年度はそれ以下になるということはないですね。プラスアルファを切って、なおかつ百六十八万台以下になる。それは自動車産業は大変なことになるわけですよ。先ほど御答弁いただいたわけです。だから、私は先ほど自動車産業の重要性ということについてお聞きしたわけなんですが、第二年度はどうなんですか。百六十八万台は今度のアメリカ側との交渉において絶対にそれは切らない、あくまでも死守していくんだ、こういうことですね。どうですか。
  47. 西中真二郎

    ○西中説明員 実は、昨年の十二月の初めでございましたか、アメリカの議会の公聴会でアメリカのサイドから証言がございまして、二年度は需要が減ればマイナスもあり得るという証言がアメリカサイドからございましたので、私どもの方から即刻アメリカに対しまして、マイナスということは全く考えていない、それはアメリカ側の誤解であるということを、すでにはっきりアメリカ側に伝えたというふうな経緯もございます。  私どもとしましては、百六十八万台というのは、これはもう絶対の底であるという考え方でございまして、したがって、プラスアルファがあり得るかどうかということは別といたしまして、百六十八万台を切るということは絶対しないということで考えておるところでございます。
  48. 柴田弘

    ○柴田委員 そうすれば、一九八二年度は百六十八万台は絶対切らない、だけれども、せっかく昨年五月に、アメリカの自動車産業のいわゆる再建のために考えてあげた一六・五%の上積みというのは、これはもう削除するかもわからない、いま検討中だ、こういう理解でいいわけでありますね。  それから、三年目。これは先ほど私が申しましたように八二年度の末にですか協議する、こうなっていますね。ところが、いますでにアメリカの議会や政府では規制をせよ、こういうふうに言っているようなんですね。そうすれば、とにかく自主規制というのは三年間ということでありますけれども、私は、これは将来アメリカ側からまたいろいろ迫られて、あるいはずっと続いていくかもしれないと思います。アメリカ自身の自動車産業のそういった体質が日本にかぶせられている。これはいわゆる管理貿易というものが一つは助長される、自由貿易の原則からいいまして、日米両国でこういうようなことをやっておるということはこれは大きなマイナスではないか、こういうふうに私は思います。しかも、これが他に波及をするのではないか、こういった心配を私はいたしておりますので、その辺のところを含めて御答弁をいただきたいと思います。
  49. 西中真二郎

    ○西中説明員 ただいま御指摘のように、アメリカ向けの乗用車につきましては管理貿易になっておるわけでございまして、私どもも、率直に申しまして、こういった管理貿易ということは決して好ましいことではないというふうに思っておるわけでございますけれども、御承知のような経緯がございまして、アメリカ自動車産業の再建のために協力をする、あるいはまた自由貿易主義を守るということで、昨年の五月に対米自主規制に踏み切ったわけでございます。  先ほどのお話の中で、三年目のお話もあったわけでございますけれども、三年目につきましてはあくまでも第二年度の終わりに、そのときに、アメリカの経済状況等々を勘案しながらどうするかを決めるというのが現在の私どものポジションでございます。なお、昨年の五月の発表にもございましたように、私どもとしては、この自主規制措置はあくまでも三年で終わりである、それ以上ずるずる延ばすことはしないというのが私ども立場でございます。
  50. 柴田弘

    ○柴田委員 その辺はよくわかりました。  それで二年度、これは一六・五%検討中であるといまおっしゃいましたね。これはあなたの方がそのとおりにやるなら、何も検討する必要はないわけでありますが、どうもそれを削除していこうという方面の検討だということでありますが、業界との話は内々してみえるんですか。業界がオーケーと言っているんですか。どうですか。
  51. 西中真二郎

    ○西中説明員 内々の話のお尋ねでございますので、ちょっとお答えしにくいのでございますが、もちろん多少の意見のすり合わせ等はいたしております。ただ、まだ業界がオーケーしているという段階ではございません。
  52. 柴田弘

    ○柴田委員 いずれにしても、この一六・五%、日本側立場もあります。国益を守る立場で私はしっかりやっていただきたいと思いますし、同時に、やはり言いたいことは、言うべきことはちゃんと言わなければいかぬと思いますね。日本が自主規制したからアメリカの自動車産業に即つながるものでは決してないんだ、こういったことは、私は、言っていらっしゃると思いますが、やっぱりぴしっと言っておくべき問題だと思います。  それから、いま一つ自動車問題で起こっておりますキャブシャシーというのがありますね。これは御案内の方もあるかと思いますが、トラックの荷台のついていない部分、これの関税の問題ですね。これはいまガットの提訴を通産省がするかどうかという問題について問題になっておりますし、ある大手メーカーは現在アメリカの国際貿易裁判所に提訴をして、いま訴訟を進めております。これは御承知のとおりです。これは八〇年の五月に、アメリカの財務省が一方的にこのキャブシャシーの関税を四%から二五%に引き上げる決定を公告をいたしておりまして、これは従来からアメリカの財務省に四%ということを確認をしてきたのにもかかわらず、八〇年の五月に一方的に二五%に変更をされた。これによってわが国の自動車業界が受ける打撃、これは年間二億とも二億五千万ドルとも言われております。これは全く理不尽な行為、変更だというふうに私ども思うわけでございます。  何かガット理事会に提訴する準備を日本政府としてもしているということでありますが、しかし残念ながら、このガットが三月十一日に予定されていたのが二月二十二日に繰り上がったということで、この提訴は見送られたわけですね、時期的に。日本としてはどうするのですか、この問題。いま裁判、訴訟まで起こっている問題ですね。     〔委員長退席、中西一啓一委員長代理着席〕 ひとつ私は、毅然たる態度でこういった理不尽な行為というのはただしていかなければならない、こんなふうに思いますが、どのような態度で今後ガットに提訴される方針であるのか、それを含めてお尋ねをしたいと思います。
  53. 横堀恵一

    ○横堀説明員 キャブシャシーの件につきましては、ただいま先生からお話がありましたように、アメリカの方で関税の分類の変更という手続をとりまして、二五%という関税が事実上課されるということになっているところでございます。  本件につきましては、日本といたしましては、すでにガットの場で、二十二条の規定に基づきます協議を行っておりまして、そしてこれまでのところ、アメリカ側から日本側の主張を認めるというような態度は得ておりませんので、わが国といたしましては、ガット上の規定も当然あるわけでございますので、それに基づきまして、わが国としても主張すべきことは主張するという点で臨んでいくということにしているわけでございます。  それで、いつどういう形でということにつきましては、いろいろ向こうのガットの場でのスケジュール等々もございますので、これは申し上げるというわけにはいきません。私どもとしては、二十三条の規定に基づく手段をとるという方向で措置を進めるということにしているところでございます。
  54. 柴田弘

    ○柴田委員 じゃ自動車の問題は、時間の関係もありますのでこの辺にしまして、次は半導体、ICの問題について簡単にお聞きしていきたいと思います。  今回、この関税の引き下げによりまして、半導体は、東京ラウンドの最終目標、これは八年後でございますが、昭和六十二年の四・二%まで行うことになっておるわけであります。いろいろと、わが国の半導体の生産状況ですとかあるいは輸出状況、これを、資料をいただきましたので見ておりますのですが、この半導体の生産額というのは、この二年間で、一九七九年が六千三百六十八億円でございます。八一年、去年ですが、一月から十一月まで十一カ月で丸千六百九十五億円。約五割の生産増加ですね。それから輸出入を見てまいりますと、これは集積回路と個別半導体の合計でありますが、とにかく七九年が千六百五十一億円、八一年が二千四百六十四億円、やはりこれも五割の輸出アップ。一方、輸入は余り変わっていない。七九年が千二百十八億円、八一年が千三百八十億円ですね。全体的に言えば、ずっとわが国輸出超過、出超であるわけですね。一方対米貿易は、半導体、これは一九七九年までは入超でありました。ところが一九八〇年、八一年、この二カ年は出超になってきたわけですね。それで、この問題も日米貿易摩擦の問題としてくすぶっておるのじゃないかなというふうに私は思うわけであります。  いろいろお聞きしておりますと、こういった状況の中で、六十四キロビットの記憶容量を持つ半導体が、もうすでにアメリカ市場においては日本商品は七〇%以上のシェアを持っておりますし、あるいは皆さん方御案内のように、先ほどありました富士通の問題、一番札であるにもかかわらずいろいろな問題で落札を拒否されておる。こういった問題は、ただ関税率の問題ではなくて、やはりわが国の技術力というものが大いに進んだ、こういった一つの結果であるというふうに私は判断をいたしたいわけでありますが、今後起こり得る日米貿易摩擦問題はこの半導体の問題である。ではこれにどう対応するかという問題。  アメリカも半導体の競争力というのは非常に強いわけでありまして、いわばアメリカ産業、アメリカ経済にとって、もうこれは最後の死守しなければならない一線だと思いますね。それがどんどん、いま御説明しましたように日本商品にシェアを荒らされている。だから、いまアメリカの商務省においては、こういった規制策を打ち出す可能性があって、何か一生懸命勉強しておる、こんなようなことでありますが、その辺の通産省の判断はどうかということ。もしアメリカが相当強硬な態度で出てきた場合に、それについて国益を守る立場からどう対応されるか。この二点、簡単で結構ですから御説明をいただきたいと思います。
  55. 若曾根和之

    ○若曾根説明員 お答え申し上げます。  半導体産業の発展の活力を維持しまして、またコンピューターなどの半導体の利用分野の将来の成長を確保するためには、半導体における自由かつ開放的な貿易体制を維持していくということが肝要だと考えております。半導体についての日米間の貿易バランスはほぼ均衡しておりまして、また日米両国間における投資の交流、技術の移転も相互に活発に行われております。したがいまして、現在の時点で、半導体全般として日米間の貿易について特段の問題があるとは考えておりません。
  56. 柴田弘

    ○柴田委員 では、今度はたばこの問題でいろいろお聞きしたいと思います。  たばこの問題は、アメリカ側との合意でございますが、たしか昭和五十五年の十一月に合意がなされておりますね。これをいろいろと検討してまいりますと、一つ関税率を大幅に引き下げました。紙巻き九〇%から三五%。二つ目には小売商のマージン率の引き上げ、これを七%から八・五%にいたしました。これを五十七年度に一〇%にする、こういうことでございますね。第三点か内外主要製品間の価格差を縮小していく。五十六年度は百十円から百円になりました。第四点は輸入品の取扱店数の増加、これは二万四千二百店から二万店に五十六年の十月に達成をいたしております。それから第五点といたしまして広告宣伝でございますが、これも内外共通の基準によって広告宣伝活動を認める。  こういった大体五項目にわたっての日米合意内容があるわけでございますが、これもすでに五十六年にほとんど実施をされているのではないか、こういうふうに思います。なおかつ、この上に立ってまた新たなアメリカ側の要求があるわけでございますが、まずそこら辺の実施の状況、それによってアメリカのたばこがどれだけシェアがアップしたのか、あるいはこういったさらなる市場開放というものをいま求めてきておるのは、アメリカ経済のいろいろな問題があると思いますが、こういった合意アメリカ側が一体どう考えているのか、この辺、あるいはまたその背景がどういうものであるか、これは簡単で結構でございますので、御説明を承りたいと思います。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、五十五年十一月に日米たばこ協議を行いまして、五点について改善するという約束をいたしました。  五十六年四月から関税率を引き下げ、また小売店に対する手数料を八・五%に引き上げ、そのほか小売店の増加あるいは広告宣伝の緩和といったような措置を全部講じておるわけでございまして、その結果、五十六年の四月から五十七年の二月まで、国内品はわずか一%足らずの増加でありますけれどもアメリカたばこは二二%ふえるといったような状況にありまして、アメリカ側は、公社が誠実にその約束を実施しているという点については評価いたしておるところでございます。  しかし、輸入品のシェアが全体として一・三%から一・四%にしかふえていない、一%台であるということに大変いら立ちを感じておるようでありまして、フランスあるいはイタリー等におきましては二〇%を超えるシェアを持っているアメリカたばこが、日本ではわずか一%台であるということに大変不満を持っております。したがって、もっとシェアをふやしたいというところから、いろいろたばこについて、もっと輸入をふやせという主張をいたしておるところでございます。  しかし、私どもからいたしますと、フランス輸入たばこのシェアがふえましたのは、フランス専売が黒たばこに自信を持ち過ぎてアメリカンブレンドのたばこをつくっていなかったことが大きな原因であると思っておるのでありまして、日本アメリカンブレンドのたばこを早くからつくっておりますので、アメリカンブレンドのたばこがすぐにシェアをそれだけ広げることができるというふうには思っておらないのでありまして、アメリカ側の出張はやや性急に過ぎるというふうに考えております。
  58. 柴田弘

    ○柴田委員 それで、先般も日米貿易小委員会かありましていろいろな問題がここで出されたわけでございますが、一つは小売店の増加の問題、二万店から増加をする。全国で小売店、たしかいま三十五万店くらいですか、これに対して公社としては具体的に多少伸ばす余裕があるのかどうか、これが一つ。それから、広告の使用金額の問題も出たと思いますが、この辺についての考えはどうか。それから、専売制度の問題が出ましたね、この問題。それから、前から言われておりましたが、小売価格決定方式の問題があります。これはあなたの方から資料をいただきましたが、定価というのは、購入原価プラス関税プラス専売納付金、これは五六・五%、プラス流通経費プラス内部留保、これは一%程度ですか、それから八・五%の小売人マージン、こうやって小売価格が決定されますね。  それで、アメリカ側の要求というのは、輸入価格は大幅に引き上げてくれ、それから内外製品間の価格差を維持するために小売価格は据え置け、こう言っておるわけです。小売価格を据え置いて輸入価格を引き上げろというのは、とりもなおさず三五%の関税は高過ぎるのではないか、タックス・オン・タックスではないかという主張もあるというふうに聞いておるわけなんですが、これは果たして譲れるのかどうか。  これは大蔵省も、この問題については関税の問題に関係してくると思いますから一遍お聞きしたいし、その前に一遍専売公社から、いまの四点、小売店舗数増加の問題広告使用金額の問題、専売制度の問題、小売価格の決定の問題、これをどの程度までアメリカ側の要求がのめるのか、あるいはこの点までは絶対守っていくんだ、こういうことを具体的に御答弁をいただければと思います。
  59. 泉美之松

    ○泉説明員 アメリカ側の主張に対しまして、私どもといたしましては、小売店につきましては増加することはやぶさかでないつもりでおります。しかし同時に、現在国産品に比べまして輸入品の返品率が相当、五倍ぐらい高いのでありまして、したがって、小売店を増加するならば一その返品の処理について輸出者であるアメリカ業界において考慮してもらわなければならない点がございますので、そういった点について交渉をいたしたい、このように考えておるところでございます。  それからまた、広告宣伝につきましては、もう一昨年の協議で十分ではないかと思っておりますけれども、マスコミの利用について、マスコミの方の手数料が増加いたしておりますので、その点を考えた上で、広告宣伝費の増加について考慮することはやぶさかでないと思っておるところでございます。  しかしながら、先方の要求であります関税率については、後ほど関税局長からお話があろうかと存じますが、私どもといたしましては、三五%というのは相当ぎりぎりの関税率であると思っておるのでありまして、これを引き下げることは適当でないと思っております。  また、アメリカ側は、この輸入品につきまして価格決定する方式があるわけでありますが、その方式が適当でないという意見を持っておられるようでありまして、いまお話しのように、関税を課した上それに納付金率が加わるということはタックス・オン・タックスであるというふうな主張をいたしておりますが、これは納付金率が従価制をとっている限り当然そうなるわけであります。アメリカの場合には消費税が数量についてだけの従量税になっておりますために、アメリカの制度では従量税でありますからタックス・オン・タックスということがないわけでありますけれども、従価税をとる限りタックス・オン・タックスになる、その日本の制度は不当であるというような主張をいたしておりますが、これは国内の問題でありまして、専売制度にいたしましても、これはガット上認められている点でありまして、それについて、それを直せというような主張は国内問題に対する介入でありまして、私どもは、そのような主張を認めるわけにはまいらない、このように考えておるところでございます。
  60. 高倉建

    ○高倉政府委員 先日の日米貿易小委員会におきまして、先生ただいま御指摘のような点がアメリカ側から主張されたわけでございますが、そのうちの輸入品の取り扱い店数の問題あるいは広告宣伝費の問題につきましては、ただいま専売公社からお答えしましたように、専売公社としても検討の用意ありということで、この点については業者間でよく話し合ってほしいということを申し述べたところでございます。  それから専売制度の問題、これにつきましても、アメリカ側としては最終的なマーケットをオープンするための障害は専売制度であるというような言い方をしたわけでございますけれども、これに対しまして私どもといたしましては、専売制度をとるかとらないか、これは全くそれぞれの国の政策判断の問題でございまして、現にわが国以外にも専売制をとっている国があるわけでございまして、アメリカ側の云々ということによって取り扱うべき問題ではないということを答えているわけでございます。  それから、最後に御指摘のありました価格決定方式の問題は、実は日米貿易小委員会の場ではアメリカ側から具体的に提起はされておりません。しかし、いろいろな場で公式あるいは非公式に価格決定方式がおかしいのではないかということが言われていることは事実でございますが、先生も御承知のとおり、現在の外国たばこについての小売価格決定方式というのは、外国品に関税が課されているということを除きますと、全く国産品と同じであるわけでございまして、決して恣意的あるいは差別的に取り扱っているわけではないわけでございます。  また関税率につきましては、これまた先生の御指摘にありましたとおり、一昨年末の合意に基づきまして昨年四月から大幅な引き下げをしたばかりでございます。現在の関税率水準というのは、国際的に見ましても決して高いものではないわけでございます。同時に、関税率というのは中長期の視点に立って判断をしなければならない問題でございますので、こういう大幅な引き下げをした直後に、一時的な現象その他によって関税率を扱うというのはまことに適当でないと考えるわけでございます。  タックス・オン・タックスの問題につきましては、先ほど専売公社総裁の方からお答えしたとおりでございまして、これまたわが国が特異な制度ということではございません。むしろ一般的に従価税がとられておりますので、そういう中では、国際的にも普通の方法であるということでございます。そういう点につきましてはアメリカ側にまたよく説明をし、理解を求めていかなければならぬと思っておるわけでございます。
  61. 柴田弘

    ○柴田委員 私は時間が多少ありますから、この際、またこの秋から来年にかけて大きな議論になると思いますが、専売公社の経営形態の問題について、いろいろお話をお聞きしたいと思います。  この経営形態については昭和五十三年六月、公共企業体等基本問題会議において意見書が出されまして、その中で「専売制度を廃止し、日本専売公社を分割して、民営化するのが適当である。」しかしこの場合、喫煙と健康の問題、外国たばこ企業との競争の問題、国内産業、葉たばこ問題等の解決すべき問題点がある、このように指摘をしておりまして、現在、それを受けまして専売事業審議会で検討中であるわけです。  一方、昨年七月の臨時行政調査会の第一次答申におきましては、日本専売公社については、民間資本の導入等民間活力を導入する方式などを含め検討する、こういうことにされているわけでありますが、この経営形態問題について経営当事者である公社はどのようにお考えになっているか、それからもう一つは、大蔵省としてはやはり監督をする義務があるわけでありますが、この経営形態のあり方についてはどのようなお考えであるのか、両方ひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
  62. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  私どもは、専売制度なりあるいは公社制度について、これを検討するのは高度の立法政策の問題であると考えておりまして、政府及び国会において検討されるべきものでありまして、私どもがとやかく言うべきものではないと存じておりますが、せっかくのお尋ねでございますので、私ども立場を申し上げますと、公共企業体等基本問題会議において民営の主張がされており、現在、専売事業審議会で検討されておるところでございますけれども、私どもといたしましては、分割、民営ということになりますと、たばこ事業においてきわめて重要な規模のメリットというのが失われまして、同時に、過剰投資あるいは交錯輸送など問題が多うございまして、したがって、分割、民営というのは決してなすべきことではないと考えております。  私どもは、基本的には、専売制度なり専売公社制度というものを基本にして、その上で時代の要請に応じたような改善を行っていくのが適当であり、それが国民のためになるというふうに考えておるところでございます。もちろん、現在の専売制なりあるいは専売公社制度というものが完全であるとは思っておりませんので、先般、たばこにつきまして納付金制度を改善いたしまして、公社の利益とは別に、定価に対して一定率で専売納付金とたばこ消費税との納付割合を決めるということを行いましたが、そのほかにも今後さらに改善すべき点があると思っておりまして、そういった改善をするのが適当であるというふうに考えておるところでございます。
  63. 山崎武三郎

    山崎(武)政府委員 いま泉総裁がお答えになりましたが、専売公社を三分割して民営化という議論もあります。しかし、分割、民営化ということになりますと、なかなか国際競争に耐えられないのではないかという心配もありますし、国産の葉たばこが激変をこうむるのではないかという心配もあります。また、財政収入の安定的確保に支障を及ぼすのではないかというような問題もありますし、その他、移行時における身分や資産負債の取り扱いにいろいろな問題が出てくるというような種々問題点が生じてきます。  そこで、昨年の臨調の第一次答申に示された経営形態改善の問題を政府としてどう考えるかということでありますが、この経営形態のあり方については、臨調でもまだ検討中でありますし、同時に、大蔵大臣の諮問機関であります専売事業審議会でも現在審議が行われているところでありますので、それらの審議結果を待って対処したいというふうに考えております。  いずれにしても、葉たばこ等にむずかしい問題が生じますので、慎重な判断が必要と考えております。
  64. 柴田弘

    ○柴田委員 あくまでも専売制度と公社制度は守っていく、そして三分割の民営化論というのは反対である、そしていま公社の総裁がおっしゃったわけでありますが、まだまだ改善すべきところがあるし、また今後時代の要請に合わせて改善していくべきところは改善していかなければならない、このようなことですね。  それともう一つ、臨調でいろいろと議論をされておるわけでありますが、私はマスコミの報道以外には関知しないわけでありますけれども輸入品を公社から切り離して、そして別会社をつくっていく、たしかこのような議論がなされているわけでありますね。とにかく今度、六月か七月か知りませんが、いよいよ本格的な答申が出る。これは三公社が第一ランクにのせられているということで、やはり公社の経営形態というものもそこで議論がされると私も思いますし、われわれも、国会としても、一体どういった経営形態が一番いいのか、財政専売としての使命を果たし、なおかつ良質なたばこを消費者に提供する、そういった公社の義務、責任はどういった経営形態であれば一番果たしていけるのか、公社経営のあり方の中に日本の国益をどう守っていくのか、私は、そういった観点からいろいろと議論をしていかなければならない、こう思いますので、いろいろとお聞きをしているわけでございますが、この輸入品に対してはどうでしょうか。
  65. 泉美之松

    ○泉説明員 専売制度なり公社制度については先ほど申し上げたとおりでございますが、輸入品につきましては、特にEC及びアメリカの方から専売制度が非関税障壁であるといったような主張がなされておりまして、したがって、少なくとも流通専売を廃止すべきだというような主張がなされております。もし、その非関税障壁であるという流通専売をやめますと、お話しのように、輸入品について専売公社が買っておるという形態を改めて別会社にするということも考えられるわけでございますけれども、私どもは、流通専売をやめるかどうかというのは国内問題として大変大きな問題であるというふうに考えておりまして、専売制度の根幹に触れる問題であると考えております。したがって、臨調でどのような議論がなされ、どのような答申がなされるかわかりませんけれども、流通専売を廃止するかどうかについては、よほど慎重であるべきだというふうに思っておるところでございます。
  66. 柴田弘

    ○柴田委員 これは専売公社の最後の質問でありますが、私は、一昨々年のたばこ値上げ法案以来、関心を持たせていただきまして、専売公社のいろいろな問題についても機会のあるたびごとに質問もさせていただいたわけでありますが、いま公社の経営あるいは運営ということについていろいろ問題があると思います。  先ほど来指摘しておりますように、アメリカとの摩擦の問題があります。それから、きょうは時間がありませんから取り上げませんが、葉たばこの過剰在庫をどう処理するかという問題もある、それからいま御説明があったように、臨調答申を受けてどのような経営形態になるか、その他いろいろあるかもしれませんね。  ところが、公社自体としては、専売制度を守り、公社制度を守り、そして時代の要請にこたえて改善すべきは改善をしていく、これが一番いいということで、やはりこれは内輪の人に話を聞かないといけませんので、それで私はきょうお聞きしたわけでございますが、今後の経営の合理化、そして公社としての先ほど申しました使命というものをどういうように果たされるのか、新工場の建設の問題、生産の合理化の問題あるいは新製品の開発等々、いろいろあると思いますが、どうかひとつ、簡単で結構ですから、具体的にこういうふうに五十七年度はやっていくんだ、あるいはそういうものはこういうふうにやっていくんだ、そういった腹案がありましたら、せっかくの機会でございますので、この席で御意見を述べていただきたいと思います。
  67. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  私どもといたしましては、基本的には専売制及び公社制度を維持しながら、所要の改善を図っていくということを基本考えておるところでございます。  いろいろ御指摘のように、公社の経営の効率化を十分図っていかなければならないというふうに考えておるところでございまして、その点につきましては、たとえば今回、京都工場と茨木工場ともう一つを廃止いたしまして新関西工場をつくる。これは、ことしの九月から発足することになっておりますし、さらにもう一つ、福岡工場と鳥栖工場を統合いたしまして新工場を、仮に九州工場と呼んでおりますけれども、それをつくりまして、合理的な形に直していくというふうに考えておりますし、そうした新工場の設立によりまして、一層能率を上げていく考えを持っております。  そのほか、葉たばこの過剰問題につきましては、今年約五千ヘクタールの減反を行いまして、これ以上過剰在庫がふえないという形に持っていきまして、そして、過剰在庫約一年分ございますが、今後これを逐次減らしていくということを考えておるような次第でございまして、経営の合理化及び効率の発揮につきましては一層努力していきたい、このように考えておるところでございます。
  68. 柴田弘

    ○柴田委員 いま過剰在庫の解消ということで、これは、私はたしか昭和五十四年の十二月のたばこ値上げ法案のときにも御質問をいたしましたが、とにかくこの十年間に、驚くなかれ、初めは、十年ぐらい前は二カ月分ぐらいのあれだったのですよ。金額的に言ってもそうです。  いま、在庫の約三分の一が過剰在庫でありますね。一年分ある。八千億ぐらいの在庫があると、約三千億近いのはいわゆる過剰在庫だ。もちろん、技術の改良の問題、それから品質の向上の問題あるいは国内の需要の拡大の問題、葉たばこ過剰在庫の解消ということで、専売公社はいろいろと努力をしていらっしゃるわけでありますが、依然として、そういった在庫は減るどころかふえる。しかも、いまおっしゃったように、生産調整ということによって、つまり耕作者の犠牲ということによって葉たばこの過剰在庫を解消していこう、そういったところが、きょうは時間がありませんから議論はいたしませんが、専売公社の統計を見ても、五十三年ぐらいから大体毎年生産調整をやって、五十七年度含めて約一万ヘクタール以上の生産調整をされる。それで減ったかといえば減らない。五十七年度五千ヘクタール近い生産調整をやっても、耕作者を犠牲にしても、では、過剰在庫が五十七年度どれだけ減るかといえば、金額的には一円も減らぬじゃないですか。要するに、五十七年度使う葉っぱだけの生産にとどめるというわけです。  だから、十年たっても二十年たっても、過剰在庫は減らない、こういうふうに断定的に申しても、決して過言ではないというふうに私は思っております。きょう私はこの問題は追及をしませんが、そういった指摘をしておきます。どうか、ひとつその前提の上において、耕作者の犠牲ということを踏まえながら、その人たちの意見もよく聞いて、解消策というのはもっともっと検討していただかなければいけないと私は思います。これは指摘しておきます。  それから、最後に関税局長さんに、何も質問せぬといけませんので……。  これは、ちょっと私もびっくりしたのですが、輸出課徴金の問題、こんな検討をあなたの方はしているのかどうか、一遍聞いておきますが、亡霊だというふうにマスコミは書いてありますが、いわゆる日米貿易摩擦問題の劇的措置の切り札として検討している。それで、大蔵省輸出の急増品に五%程度課徴金を課する。イエスかノーかでよろしいわけですが、検討しているのかどうか、そういった考えがあるのかどうか。検討しておりません、そういう考え方もありません、あるいは検討しております、そういう考えも多少持っております、どちらかと思いますが、ひとつ明快にお聞かせいただきたい。それで私の質問を終わります。
  69. 垣水孝一

    垣水政府委員 輸出課徴金の問題につきましては、実は稲山ミッションが昨年秋にヨーロッパから帰ったときに、ミッションの方々の御報告を聞いてみますと、実は、先ほど来御議論がございました対米の摩擦と対ECの摩擦とはかなり違うわけでございますね。やはりECの本心は、かなり輸出を抑えてくれ、当時特に集中豪雨的と言われる輸出が多かったわけでございまして、その段階で、御承知のように大蔵大臣は、輸出課徴金という言葉が悪い、輸出を正常化する調整金だというかっこうで言われましたのですが、俗な言葉で申しまして、その案が袋だたきに遭ったような感じでございます。  ただ、私は、当時衆議院の商工委員会でも御答弁申し上げたと思うのですが、輸出に課徴金をかけるからといって、あるいは税をかけるからといって、罪悪視するということではないと思うわけでございます。輸入輸入関税をかけているのは、輸入を罪悪視しているからではないわけでございまして、輸出に税をかけるのは罪悪視するのだというようなお考えだから、製品輸入がなかなか進まないと言いたくなるようなことになるわけでございますが、いずれにしましても、当時の大蔵大臣が申し上げた時代には非常に輸出がなお急増している時代でございました。  最近新聞に出ましたのは、実はこういう、いまや一方において、まあ輸出入でございますが、特に輸出かなり落ちておりまして、現状において、あんなに輸出がどんどん出ておるときでさえも大変抵抗が強かったわけでございますので、いま輸出が落ちているときに無理だとは思います。いまそういう、新聞に報道されておりますようなことはとても無理だと思いますが、ただ、基本論といたしまして、本当はそういう制度が用意されていた方がいろいろな場合にいいのじゃないかと思いますが、はっきり申し上げまして、ただいまは現実的ではないと考えております。
  70. 柴田弘

    ○柴田委員 時間が過ぎてしまったのであれですが、要するに、輸出に課徴金を課するということは決して罪悪ではない、そうなんですね。ところが、いま輸出が落ちているときにかけるのは無理で現実的ではない。ところが罪悪視をしていないんだから、いずれかまたそういった環境が熟してきたならば、この問題は頭をもたげてきますし、そして大蔵省としても関税局としても、やはりそういった考え方というのは持っておりますよというふうに理解をしてもいいわけですね。  もう時間になりますから、この問題は大事な問題ですし、また後議論がほかの先生からもされますし、私も機会があれば、きょうは議論の導火線としてお聞きしたわけでございますので、一遍そこら辺のところをひとつ聞いておきたいと思います。
  71. 垣水孝一

    垣水政府委員 実は、数年前の経済対策の総合立法のときに、輸出課徴金までを加えた立法が計画されたことがございますが、これは、そのときの情勢で取りやめになったことがございます。  そういうことで、私ども関税局には、輸出税についてという、その当時、数年前研究した資料が残っておるということだけでございまして、私どもは、いついかなる議論が出てまいりましても、それは利害得失こういうものだということだけは用意しておりますが、先ほど申し上げましたように、いま直ちにどうこうということは現実的でないと考えております。
  72. 柴田弘

    ○柴田委員 では委員長、どうも時間超過して済みません。この程度で終わります。ありがとうございました。
  73. 森喜朗

    ○森委員長 午後一時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  74. 森喜朗

    ○森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武田一夫君。
  75. 武田一夫

    武田委員 関税暫定措置法の一部を改正する法律案政府が提出されたわけでございますが、その中身につきまして二、三お尋ねをした上で、最近非常に問題となっております貿易摩擦、農業問題について、私はお尋ねをしたいと思います。  この法案の提出の背景をよく眺めますと、まずこの貿易摩擦を解消する、それから自由貿易体制の維持強化、こういうことを行うということでありますが、各国とも関税を設けているのは、要するに国内産業を保護育成するという前提条件があるわけでございます。現在騒がれているこの貿易摩擦は関税の引き下げで解消するかというと、それだけではとても解消するものではないと私は思うわけでありますが、たとえばアメリカECなどが指摘しているように、非関税障壁がやり玉に上げられて、これが大きな比重になっているのが現在の日本状況であります。  こういうふうに考えますと、この貿易摩擦の解消策といわゆる関税に象徴される国内産業の保護策は相矛盾する関係にあるのじゃないかと思います。そのために、もしこれを一歩間違えますと、国内産業特に弱い立場にあるものなどは再起不能になるというおそれもあるわけでありまして、この点につきまして政務次官どういうふうにお考えになっているか、まず最初にお尋ねをいたしたいと思います。
  76. 山崎武三郎

    山崎(武)政府委員 米国牛肉オレンジ等の関税撤廃を要求しておりますし、またECはビスケット、チョコレート等の関税の実質的な引き下げを要求しております。  しかしながら、特定の国が特定の品目について関心を表明したからという理由で、産業の実情にさしたる変化もないまま直ちに大幅な引き下げを行うことは、保護関税としてのあり方や東京ラウンドの枠組みとの関連から見て不適当ではないかと思います。  そこで、東京ラウンドの枠組みを維持するとともに、国内産業への影響を最小限にとどめ、わが国市場の一層の開放を促進することにより貿易摩擦を緩和し、自由貿易体制の維持強化を図る等の見地から、わが国の自主的措置として、今回、東京ラウンド合意の一律二年分繰り上げを実施したわけであります。
  77. 武田一夫

    武田委員 こういう措置によって、どの程度貿易摩擦の解消というものに寄与するかということを、この際深く考えなければならぬのじゃないかと私は思います。  政府としましても、各省庁にわたりましていろいろな不協和音が目立つとか思惑が動いているとか、政府自民党の中における意見統一がなかなか思うようにいかない。おのおのの大臣が、それぞれの立場で物を言う、こういうようなことが新聞等に論ぜられておりまして、けさほども局長新聞にいろいろ書かれているがというようなことも言っておりますが、いま考えてみますとアメリカは非常に強硬ですね。議会と政府まで一体になりまして、この問題に対して相当強硬に出ている。日本側対応は、いろいろな考え方が雑音のように出てくる。その中で、不統一的な動きにアメリカ側も相当警戒といら立ちを覚えているのではないかと思うわけでありますが、そういう点で、各省庁の思惑によるそうした軽々しい発言は余りすべきでないと思うのです。  いま櫻内外務大臣は、そうした大変な中でアメリカの方に行っているわけです。ですから、こうした問題をとらえまして、また新たな対応策を言ってくるのじゃないかというようなことも最近新聞に書かれておりますから、こうした政府部内におけるいろいろな不協和音は差し控えるべきではないかと思うのですが、どうですか、次官。
  78. 山崎武三郎

    山崎(武)政府委員 事柄が相手国との間の交渉にかかわることでありますし、日本国政府内の各省庁間においてそれぞれの御意見を陳述なさるということは、相手国との関係においては好ましからざることではないかという御指摘、まことにそのとおりだと思います。  そこで、江崎団長はいまECに行っておりますし、櫻内外務大臣もいずれ御帰国になるだろうと思いますし、その他の諸情勢等も勘案いたしまして、政府としては、どのような対処をすべきかということを慎重にかつ統一的に検討する必要があるのではないかと思います。
  79. 武田一夫

    武田委員 聞くところによりますと、市場開放という問題について省庁間の主導権争いであるとか、そんなことまで言われておるのでは、せっかくの努力も水の泡になるのじゃないか。  これは、日本にとっては大変重大な問題でもありますし、いままでと比べ物にならない向こうの強い圧力というのは目に見えているわけでありますから、そういう点を考えまして、つまらない縄張り争いによる勝手な発言は厳に慎みながら、いかにしてこれに対応するかということで力を合わせていくのはあたりまえのことです。この点はよくわきまえていただきたい、こういうふうに思うのであります。  ところで、こうした外圧、自由化の要求あるいは輸入制限品目の緩和という問題の中で、農業に対する風当たりもまた非常に強い。いつのときも最後にヒロインとなって片をつけられるのは農業、そういう運命的なものをたどってきたわけでありますが、その結果どういうふうになったか。日本農業の実態は皆さん方もよく御存じだと思うわけです。  そういう意味で、この市場開放日本に強く迫って、特に二十七品目の中の二十二品目農産物である、このところにアメリカはどうしてねらいを定めてきているのかということが私はわからぬのです。何かそういう特別な理由があるのか、そのわけ。特にこれは強いわけですが、どういうふうに見ていますか。きょうは、外務省も通産省もそれから経企庁も来てもらっていると思うのですが、また農林省も来ていますね。今回どうしてこんなに強いのか、おのおのの考えていることを具体的に聞かせてもらえませんか。
  80. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  私ども農林水産省といたしましての立場からも、米側とは何回か接触する機会があるわけでございますが、そうした機会を通じて米側の意向を打診したところ、米側農産物に対して非常な関心を現に持っております。先生のお説のとおりでございますが、その理由として挙げられますのは、一つは、アメリカ経済全体として国際競争力が非常に強い分野の一つ農業が挙げられる。農業が一番競争力が強い分野である。また、米国経済全体として貿易収支上農産物輸出振興が非常に大事であるというような観点からであろうというように思います。  それからもう一つの角度は、米側の言い分によりますと、アメリカの農村は現在一九三〇年代の不況にあるというようなことから、輸出依存度の高い農業といたしましては、やはり輸出振興に力を注がざるを得ないというように言っております。  大きく分けて、経済的な理由を述べればこういうような二つになるのではないかと思っております。  なお、米側といたしましても、わが国農産物市場米側にとっても非常なお得意先であるし、それから輸出も非常に伸びているという点では高く評価しておるわけでございますけれども、そのような事情から、なお一層開放してもらいたい、要望したいというように言っております。これが米側立場ではないかと私ども考えております。
  81. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  アメリカがこの農業の分野についてなぜ強い主張をしてくるかという御質問であったかというように思います。  私ども日米の経済関係におきまして、非常に広い関係を築き上げてきたわけでございます。年間の往復で六百億ドル以上にもわたらんとする貿易関係というのは、史上類を見ないほど多額なもので大規模なものでございますし、また、それだけに重要な分野になっておるわけでございます。  したがいまして、日米関係考えますときに、こういった日米間の基本的な経済関係というものを基本認識に持って対応しなくてはならないというふうに思っておりますが、現在アメリカが直面しておりますいろいろな経済的な困難、あるいはこれは地域的にいろいろ格差があるわけでもございますけれども、そういうようなことを背景にいたしまして、日本のこの経済力がアメリカ市場に参入する度合いは非常に自由である、それに反して、アメリカ側から見ておりますと、日本市場への参入が非常にむずかしいという問題が提起されておるわけでございます。  その分野の一つとして、この農業問題というものが挙げられているように思いますけれども、いずれにいたしましても、この日米関係の大規模な、かつ相互依存性の高い経済関係というものを基本認識にして対応をしていくことが重要であろうかと考えております。
  82. 武田一夫

    武田委員 いま外務省と農林省に聞いたのですが、農林省に聞きますが、それじゃ、たとえばオレンジ牛肉等、こういういわゆる的になっている残存輸入制限品すべてを開放して、お金に換算するとどのくらい向こうの方に入っていくか、それはどうですか。
  83. 塚田実

    塚田説明員 農林水産省といたしましては、残存輸入制限品目、御指摘のように二十二品目ありますが、それの一九八〇年における輸入実績を金額で申しますと十億六千万ドルでございます。農林水産物全体の輸入が二百九十億ドルでございますから、ごく一部でございます。  したがいまして、これを完全に自由化して、かつ、こういう想定は困難でございますけれども、全部アメリカから入ってきたとしても十億六千万ドル、もちろん自由化すれば需要がふえるとかいろいろございましょうけれども、おのずから限度のある数字でございまして、アメリカだけから来ているわけではございませんから、アメリカ分としてはなお限られたものというふうになりまして、現在の貿易収支のギャップから見れば、ごく一部分にすぎないというふうに考えております。
  84. 武田一夫

    武田委員 大体五、六億ドル程度だろう、こういうふうに言われて、まことに少ないわけですね。これは認めるわけです。しかもどうです、日本市場が閉鎖的であり、非常に制限的なそういう市場であると言われておるが、私はそう思わぬですが、ほかのヨーロッパ、アメリカと比べて、その点どうですか。
  85. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  わが国農産物市場は閉鎖的であるという考え方が非常に一般的であるように私ども思いますけれども農林水産省としては、決してそのように思っていないわけであります。わが国農産物の、農林水産物でも農産物でもよろしいですけれども輸入額と申しますのは、単一の国家としては世界で最大の輸入国でございます。それからアメリカにとりましても、アメリカ農産物の一五%は日本向けであります。第二位はオランダでありまして、わずか八%でございます。それから、カロリーベースで申し上げますと、日本の一億一千万を超えます国民のカロリー摂取量のうち五割弱は外国産であります。  このように見てきますと、このような市場が閉鎖的であるというのは、どういう角度から言うのであろうかということを、アメリカにも何回も申し上げておるわけでございまして、私どもとしては、決して閉鎖的でなく、むしろ開放的なのではないか、このような確信を持っております。こういうことは今後とも米側によく説明して、その事情をよく理解してもらうように努めていきたいと考えております。
  86. 武田一夫

    武田委員 外務省は対外的な折衝のときには一番最初に出ていくわけですから、いまの農林水産省からのそういう説明等はよく理解をした上で事に当たっておるのかどうかということですが、そういういま申し上げたような事実、私も、ヨーロッパあるいはアメリカ等々のIQ品目のそういう状況を見てみますと、どちらかというと、日本の方が非常に進んで開放的になっているし、特に、いま説明のあったように、わが国農産物輸入状況というのを見ておりますと、アメリカからのは農産物の場合なんかは四〇%以上もあるわけですからね。これは大変ないいお得意さんですね。こんないいお得意さんに意地悪するということは、どこかこれは別なところに原因があるんじゃないか、こういうふうに思わざるを得ない。たとえば飼料穀物などは大変ですわ。全体の数量で言いますと、トウモロコシは全体のシェアの九一%、グレーンソーガムなどは九〇・四%です。それから大豆に至っては九五%ですから、これはアメリカの方にとっては大変ないいお得意さんなわけですね。  こういうところに、なおかつそういうような圧力を加えてくるというのは、とんでもない思い違いだ。こういう点について、本当に日本立場、しかもまた、いままで自由化をしてきたために、それによって日本農業というのがどれほど衰退してきて、そういうIQ品目になっていたものが外されて、そのために非常に衰えて、いまだに農業の中におけるそういう立場といいますか非常に寒々しいという、たとえば大豆やそういう例などを見ますと、これは外務省としても、そうした日本農業というものがどういうふうな状況に陥るかということをよく認識した上での行動をしてもらわぬといかぬと思うのですが、その点はしかと心の中にとどめて行動に移っているのかどうか、その点を聞いておきたいと思います。
  87. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  先生いま御指摘のございました、外務省として日本の国内事情を十分認識しているかという点でございますが、私ども、外交折衝を行いますときに、関係各省の御支援と御協力も得ながら交渉しておるわけでございますけれども、私どもといたしましても、国内のいろいろな事情につきまして、諸外国において誤解もあるわけでございますので、そういった点については十分説明をしてまいりたいと考えているわけでございます。また、現にそのようにしてまいったつもりでございます。  わが国市場が諸外国と比べてどのような状況にあるかという点につきましては、関税面あるいは非関税面におきまして遜色のないものとなっていることは間違いのないところでございます。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕 しかし、諸外国から見ておりますと、わが国の経済力全体というものを見ながら日本の具体的な対応を求めてくる面もあるわけでございます。昨今のように、経済状況の悪い環境におきましては、ややもするとやはり保護貿易主義の圧力というものが高まっておるわけでございますので、私どもとして、この自由貿易体制というものを維持していくことが日本の経済の発展につながるという基本的な認識も持たねばならないと思うわけでございます。かような基本認識に立ちながら、わが国の求めるべき立場を主張してまいりたい、かように存じておるわけでございます。
  88. 武田一夫

    武田委員 大蔵省に聞きますが、日本の経済というのは輸出依存による成長というのが非常に大きいわけですね。現在もそれは大きいわけでありますが、今後も、もしこのままの情勢でいきますと、大幅に貿易収支というのは黒字を示していくんじゃないか、私はこう思うのです。これはどういうふうに見ていますか。大蔵省が一月十八日ですか、五十六年のこの貿易統計によると、米国との貿易収支は百三十四億ドル、それからECとの貿易収支は百三億ドルと、過去最高の大幅な輸出超過、黒字になっている。しかも、全体としての貿易収支が八十八億八千九百万ドルですかの出超で、これも過去三番目の記録だ。  こういうことですから、これはこのままでいったらもっと大変な黒字を出して、それが一層貿易摩擦に油ですか、そしてその批判がどんどん高まっていって、どうしようもなくなるんじゃないかと私は思いますが、これはどう見ていますか。
  89. 垣水孝一

    垣水政府委員 先生指摘のとおりの数字で、貿易収支の黒字はかなり大きくなっておりますが、申し上げるまでもなく、実は各国に対して、特にいま御指摘のございましたECアメリカに対して比較的に大きいわけでございます。たとえばOPECについて見ますと、ちょうどECアメリカの黒字を合わせたぐらいの赤字が出ているといいますか、そういった関係で、われわれとしては、そういう黒字を出さなければ実は生きていけない構造体質になっているわけでございます。さらに、特に貿易外収支では大きな赤字がございまして、経常収支で必ずしもそんなに貿易全体、国全体の規模から見て大きいとは思っておりませんので、そういう点を相手方とも議論をしながら進めているところでございます。  ただ、いわゆる集中豪雨的な輸出というようなことのないように、あるいは欧米に言わせますと、要するに、OPECからの赤字を平等に負担しないで、日本はそのツケをみんなアメリカECに回しているというような言い方をしているわけでございますが、そういう点を十分留意しながら、円滑な輸出入の拡大という形で図っていくことが最も大事ではないかと考えております。
  90. 武田一夫

    武田委員 五十六年度の貿易収支の特徴は、輸出が一七・二%と大きく伸びました。その反面、輸入は国内需要の停滞の中で一・九%の伸びにとどまっている。この輸出額の伸びで高い率のものは加熱、冷却用機器、こういうのとか、あるいはテープレコーダーあるいはまた船舶、科学光学機器という工業製品ですね。それから輸出台数を自主規制されているといっても、自動車が輸出額で大体一四・一%の増加です。特に自動車の輸出額というのは全体の輸出額の一七・四%も占めているわけでず。  こういうことを見ますと、いずれにしましても、工業優先の経済政策というものをわれわれとしましては今後考えなくてはならないんではないか。ある人に言わせれば、一つの経済という中で、やはり日本は、要するに世界の中の日本だということを忘れずに、もうけさせてもらった分の何がしかは、その地域に何かの形で向こうの国々も潤うような方向というものを考えていかなければならぬじゃないかというようなことも言う人もいるわけです。しかも、そういう工業製品による非常な黒字というのが続く限りは、日本貿易立国として生きていかなければならない国ですから、今後もそうした体制で進めていくとするならば、今後この貿易のあり方の根本的な検討をする、要するに、自由貿易体制あるいは国際協調体制を堅持していけるような貿易不均衡の是正をしなくてはならぬのじゃないか。  それからもう一つ輸出至上主義といいますか輸出主導型の経済運営を、われわれが常に主張しているような内需主導型の経済運営の方に転換をするということによって、そこに均衡ある発展といいますか貿易というものを進めていくのが、これからの日本に課せられた大きな課題ではないか、こういうふうに思うのですが、この点についてはいかが考えておりますか。
  91. 垣水孝一

    垣水政府委員 先生指摘のとおり、そういう点が多々あるかと存じます。  したがって、それに対する対策といたしましては、たとえば、わが国が原料で輸入してそして製品で出している物についてはできるだけ現地で加工する、すなわち現地に投資をしていくというようなことが必要かと思います。ただ、いずれにいたしましても、わが国が今後ますます、たとえば先端的な技術等を各国に先駆けてと申しますか各国に負けないように進めていかなければなりませんので、そういうことでわが国の経済を支えていかなければなりませんので、もとより農業等の保護を明らかにしながらそれを進めるためには、やはりそういう先端技術等についても、合弁等で現地に進出するあるいは先方からの投資を促進するというような形で、実は投資等についてもわが国市場が閉鎖的だと言われている、これは相当部分誤解もあると私どもは思っているわけでございますが、そういう点をも進めながら、国際協調の線を進めていく以外にないのじゃないかと思っております。
  92. 武田一夫

    武田委員 要するに、いまアメリカでは、日本のやり方が不公正だということで大合唱が起こっている。  この間行かれた代表団の方々からも聞きますと、日本は複雑な非関税障壁でいままで日本市場を閉鎖して、それで、かつて輸入制限で保護育成した電子あるいは通信機器、自動車、テレビ、こういうような優秀な製品を海外市場に売りまくって黒字をため込んでいる不公正な日本だというイメージが強過ぎるんだ、アメリカというのは、建国以来フェアかアンフェアか、公正か不公正かということに一つの道徳基準を置いているんだ、そういうアメリカ納得させるためには、日本アメリカ国民のすべてにアンフェアと映っているような、そういう心理的なものまでも払拭しなければならぬ、これが一番大事なところなんだ、ですから、正直言うと、たとえば外務省だけの対応でもだめだ、通産省だけの対応でもだめなんだ、あるいは農林省対応だけでもだめなんだ、とにかくそういうものを全部ひっくるめた、政治、文化、社会、心理学、すべての要因が絡んだ複雑な問題となりかねないような情勢にあるだけに、やはり日本対応は国を挙げて、しかとそれに応じられるような、要するに、アメリカのそうした国民的な感情までも揺り動かすような体制を組まなければならぬという意見はうなずけると私は思うのですよ。  それだけに、ただ国内において自分の分野だけの主張はいかぬと私が最初に言ったのはそういうところもあるわけでありまして、これはやはりわれわれ日本人の全体の問題として、国際的なつき合いの中でこの問題をどうするかということをもっと真剣に考えるときでもあろうと私は思うのですが、政務次官、きょうは大臣がいないのですけれども、こういう重大な問題、私がいま申し上げましたあらゆる問題を含んでいる貿易摩擦だというふうに私は理解するわけで、これはやはり国の総力を挙げての対応の中で解決するような方向政府部内、そして国民全体の一つの世論としてぶち上げていくような方向考えるべきだと思うのです。この点についての御意見と決意を聞かしていただきたいと思います。
  93. 山崎武三郎

    山崎(武)政府委員 わが国の経済体質そのものが、いかんせん外需依存型であったことは否めない事実であります。その結果、種々の貿易摩擦を招来してきて、今日かような事態に陥っているということ、これもまた、いかほど指摘されても指摘され過ぎることのないような現実であります。  そこで、政府としては、この外需依存型から内需依存型に政策転換をせざるを得ないということで、昭和五十七年度は種々の政策転換をしてきて、そして総力を挙げて経済体質を変えていかなければ、今後ますます貿易摩擦等は燃え広がるであろうという先生の御指摘のとおりでありまして、いま先生の御指摘なすった点について、一層国の総力を挙げて取り組んでいくべきときであろうと思っております。
  94. 武田一夫

    武田委員 時間が来ましたのですが、最後に農林省に。  私は、農林省は、もっと固い決意で日本農業をしかと守るという方向の根回しをきちっとやるべきだと思うのですよ。たとえば、いま非常に心配しているのはアメリカが、特にカリフォルニアだそうですが、牛乳などもこちらに売りつけようというもくろみもしていますね。これは御存じだと思うのですよ。それはパックの試作品をつくってよこして、これでどうなんだという問い合わせをしているというのですね。それからまた、これは御存じかどうか、米までも買わせようということです。というのは、その証拠に、アメリカで沼野酒造だったですか、彼らが向こうの米で純米酒をつくっていますね。二年前ですか、向こうに行ったときにライスワインとして出してきた。それを絶対日本には入れないと言っていたのですが、現実東京でちゃんと売っているんだ。あれは純米酒です。  二つの例を挙げたのですが、そういうことを考えますと、どうしてもこういう農産物、最後のとりではIQ品目として守る。そうでなければ弱い立場ですから。牛にしても三十万近くの畜産農家でしょう。ミカンにしても二十万の農家が生産調整やら価格の変動で苦労しながら、しかも落ち込みながら、その中で辛うじて支えているわけですから、こういうもろもろの状況考えたときに、いつも農業が工業製品の犠牲になる、そういうようなことを思わせるような取り組みは絶対相ならぬ、私はこう思うのです。その点、固く心に決めて今後の対応に当たっていただきたいと思うのですが、その点どうですか。
  95. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘がありました米なり牛乳なりにつきまして、私ども政府間の交渉で正式に持ち出されたことはございませんけれども米国の生産者にとって関心を有しているということは事実でございます。私ども農林水産物貿易問題につきましては、従来からも国内の農林水産業の健全な発展と調和のとれた形で行うべきであるという角度から、米国等とも強い折衝をしてまいってきたところでございます。農産物交渉、今回もなかなかむずかしいと思いますけれども、しかしながら、私どもは、先ほど申し上げました立場から今後とも万全の努力をしてまいりたいと考えております。
  96. 武田一夫

    武田委員 終わります。
  97. 大原一三

    ○大原(一)委員長代理 玉置一弥君。
  98. 玉置一弥

    ○玉置委員 いままでのお話を聞いておりますと、大体みんなねらいが同じじゃないかというようなところばかり重なっておりまして、これはちょっと聞きにくいのですけれども、気分を変えるという意味で、ちょっと違った質問をいたしたいと思います。  税関職員の関係ということで若干お聞きをし、かつまたお願いをしたい、かように思います。  一つは、先日大阪の南港で事故がございまして、松本さんという方が亡くなられました。この原因を調べてみますと、夜間の張り込み捜査というのですか、当初は二人でやっておられたのですけれども、交互に交代をされるというようなところで、交代をし、中間にいろいろ連絡をとっているうちに連絡がつかなくなった、そういうことがありまして、そして次の日に死体で発見をされたということでございます。その前に、昨年でしたけれども、名古屋の税関の管轄の中で、船内の捜査をしに行ったときにスクラップの影響で酸欠になりまして、結局命を落としてしまった、こういう事故が続いているわけです。  まず一つは、業務上の安全対策という面について、名古屋の件はどうされたか。そして、それ以降いわゆる業務上の安全という面について見直しをされたというお話を聞いておりますけれども、今回の大阪の事故はなぜ起きたのか。その辺についてまずお伺いしたいと思います。
  99. 垣水孝一

    垣水政府委員 昨年の名古屋の事故に引き続きまして、また一年足らずの間に同じように非常に若い、二十歳の職員を失いましたことは、私どもとして、まことに残念に思っているところでございます。  実は、昨年の死亡事故につきまして、それを教訓といたしまして、その後安全管理につきまして研修を特段に強化いたしました。それから、たとえば安全手帳というようなものを、従来からあったわけでございますが、やはり何となくなまぬるいところもございましたので、それを改定し、さらに具体的な措置としては、監視に出かけていく前に、チェックリストというものをつくりまして、安全靴はどうか、安全器具はどうか、複数で行っているかどうかということを一々出発前に点検させるというようなことをいたしまして、安全の徹底を図ったところでございます。そのほかに、たとえば機器の整備、それから有害危険物に対する知識の普及、そういったことも行ったわけでございます。  にもかかわらず、今回の大阪の事故と申しますのは、実は二人で、直接にはその船を監視、取り締まりのためではなくて出かけたんだと聞いておりますが、巡回で、たまたま隣の大きな船が積みおろしの作業をしていたために、それの巡回に出かけたところに、隣に韓国船がおりまして、それが従来密輸の経歴のある船であったということで、実は真ん中に倉庫がございまして、その港と反対側の方に車をとめて一人がおり、他の一人は向こう側、その倉庫の海側で、船から約数十メートル離れているところでございますが、そこで張り込みをしていたわけでございますが、私も約十日ほど後のお葬式のときにそこまで行ってみましたが、実際には倉庫の前にかなり荷物が積んでございまして、そしてシートカバーがございまして、いわば身を隠すところは幾らでもあるわけでございます。どうしてその海岸べりまで行かなければならなかったかということが非常にわからない。やはり何か本人を誘い出すような動機があったのではないかということを疑っているわけでございますが、実は警察はかなり懸命に捜査をしてくれておりますけれども、現在、過失によるものかあるいはその他によるものかということが解明されていない事態でございます。  ただ、確かに私どもとして反省いたします点は、あくまでも夜であったということ、さらに、近いところに同僚がいるとはいえ、見えないところで、単に携帯無線だけで一人で張り込みをした結果になったわけでございますが、そういう点については、なお教育が足りなかったと、私はその後、特に各監視系統の責任者たちを集めて、船というのは、ちゃんとした昼間積み荷目録などを調べるときには大したことがないにしても、やはり暗いところではいつきばをむいてかかってくるオオカミであるかもしれないということを念頭に置きながら、特に複数で監視をするということに力を入れるように訓示をし、徹底をしているところでございますが、今後さらにこの教訓にかんがみまして工夫をこらして、再びこういうことの起きないように留意してまいりたいと思っております。
  100. 玉置一弥

    ○玉置委員 業務で言いますと、いわゆる監視という役に該当すると思うのですけれども、聞くところによりますと、税関職員はいわゆる逮捕権がない。現行犯で身柄拘束はできるけれども、逮捕じゃないというような形になるらしいのです。  そこで、今回のような夜間の監視業務、夜間だけではないと思いますけれども、やはり一番危険な夜間ということで見てみますと、昼間よりもはるかに少ない人数でやっておられるという実態があるというお話を聞いております。また、管轄の警察当局と連絡をとってやる場合もあるし、それは特に、先ほどありましたような、いわゆる密輸経歴のある船が入ってきて、それがまたやるぞというような情報、そういうものがない限りは、税関職員独自で見張りをやらなければいけない。何かそういうことになっているらしいのですけれども、それが今回の不幸を招いたのではないかと考えられる節があるわけです。  そこで、これから単に税関職員の教育というか研修というか、それを充実するだけでは十分ではないというふうに考えるわけです。やはり力でもって対処をするということもある程度は考えなければいけないのではないか。税関職員に拳銃を持たせるとかそういう話じゃなくて、いまときどき応援をしてもらっている警察があるわけですから、そこともっと連携を密にとって、常時は何人かごく少ない人数、そしてその場にすぐ駆けつけられる、そういう体制が必要ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  101. 垣水孝一

    垣水政府委員 まさに先生指摘のとおりだと思うのでございますが、実は、ふだん税関職員にはそういう司法警察権がないわけでございます。  したがって、実際に踏み込んだり、それから現行犯以外の者を逮捕する場合には、警察なり海上保安庁等司法警察権を持った職員あるいは麻薬の取り締まり事務所の職員というような、そういう司法警察権を持った職員と一緒に仕事をせざるを得ないわけでございますが、まあ私どもは、何と言っても水際の第一線を守る者が税関であるという職員自体も誇りを持っておりますし、またその気迫も持っておる。ある意味では、私どもの今回の事件のごときは、その気迫なりその意気込みが、何といいますか、やはり人数の少ないところで有効にということのために一人でさせた結果になったということだと思っておりますので、そういう点に十分今後配意をして、いやしくも生命に危険のあるようなことのないように、しかし、いかにしたら有効な水際での社会悪事犯の防遏に努めることができるかということで工夫をこらしていきたいと思いますし、現にいろいろな指示をしているところでございます。
  102. 玉置一弥

    ○玉置委員 司法警察権というか、それがないものですから、緊急逮捕というようなことはなかなかできない。やはり連携をとるというのが必要でございますし、片方で、そういう危険な業務があるということを承知の上で仕事をいままでされてきているわけですから、それなりの待遇を考えていかなければならないのではないか。  前々から税関の職員の方々が言われておりましたことでございますけれども、国税の方、税務署の職員の方には税務職員の俸給表というものがありまして、これは国家公務員の一般職とまた違った体系になっている。これはなぜかというと、やはり専門職としての位置づけということを重視して、それなりにその専門ということに対する報酬というものを上積みをされている。ところが、いま税関の職員の皆さん方にお話を聞いてみますと、従来からそういう主張をしているけれども、まだいまだに税関の職員が、一般の職員いわゆる事務職、総務関係とかいろいろありますけれども、そういうものを除いて、まだいまだに一般職行政(一)、(二)というような扱いになっているということでございます。  いま、特に定年制導入とかいろんな問題がありまして、一つは、これは六十年が山場ではないかというような気がするわけです。昭和六十年に定年制に移行いたしますと、いままでの制度の見直しというものが当然行われるであろう。そういう中に、当然いまの税関職員のいわゆる俸給表の見直しを入れていくべきではないかというような気がするわけです。気がするというよりも、お願いをしたい。専門職としての税関職員、そしていまお話がずっとありましたように、大変危険な業務をやっておられるわけでございますから、そういう面に対する一種の安心感を与える。これは高くしたから安心だという話じゃなくて、安全対策というものはやはり万全を期してやらなければいけませんし、また、それなりの気構えというものが必要でございます。それだけのいわゆる自負心といいますか、自分がこういう仕事をしているんだということがあってからこそ、いままで成り立っているわけでございまして、ぜひいまの税関職員をこれからの仕事に対する取り組み姿勢が変わらない、そういうことを期待するためにも、そういういわゆる俸給の面での見直しということが必要ではないかというふうに思うわけです。  この前、この事故が続いた後に職員の方々の調査をなさいますと、少なくとも半数の方は、いまのままでも仕事をしたいという方がおられます。そしてあと残りの二五%、ですから全体の七五%が何とかこの仕事をやり通そうという気持ちになっております。やはり二五%の方が若干不安になってきたというように調査では出ておりましたけれども、そういう面から見ても、ここで一番奮起をして、日本の国内のいわゆる社会悪といいますか、そういうものをすべて水際でとどめるのだという、そういう決意をするためにも、その俸給の見直しというものがこれから考えられるのだ。もし考えられるとすれば、いつごろから行われるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  103. 垣水孝一

    垣水政府委員 税関俸給表の見直しということにつきましては、実は関税局自身長い宿題として、いろいろ利害得失と申しますか、そういうことを考えていたわけでございます。  その一番の具体的に技術的にむずかしい点は、実は税関の業務というのが監視部、輸入部、輸出部、そして監視の中でもたとえば船員もございますし、それから成田、伊丹等におきます旅具検査をつかさどっている監視もございます。そういう点で、果たして人事院がどういうふうにそこを見てくれるか、全部一律というようなことにはなかなかいかないのじゃないかというような技術的な問題もあって、税関職員の処遇をどうするかというのは、その俸給表が本当にいいのかどうかという議論があって、なかなか結論の出ないまま今日まで来ているうちに、実は率直に申しまして、こういう財政事情の時期になったためにむずかしくなったという点があろうかと思います。  ただ、先生もただいまおっしゃいましたように、六十年に向けて実は人事院でいろいろと給与制度のいわば抜本的見直しというようなことを考えているようでございますので、それに向けて、何が、どうするのが税関職員の待遇改善に一番資するかということでさらに詰めてまいりたいと思います。職員組合の方でもそういう強い要望があることも十分承知の上で、いろいろ詰めていきたいと考えております。
  104. 玉置一弥

    ○玉置委員 税関の職員の方々は、非常にむずかしい仕事、危険な仕事をやっておられまして、非常に複雑多岐にわたる業務といいますか、そういうものをやっておるわけです、それは一番御存じだと思いますけれども。やはり専門職としての知識が非常に必要ですし、一種の警察的な業務もあります。そして事務手続もある。  確かに、分類は非常にむずかしいと思います。しかし、一つの資格としてやはり制度を設けていかないと当然対応もできませんし、また人事異動にしても、それぞれの人の能力を見分けていくという面からも、ある程度の範囲の枠というものが必要だと思います。それを研究されていかないと、先ほどお話ありました同じ税関の職員でも職種がそれぞれ違うということがありますから、やはりそれを分けていかなければいけない。一律全部というお話ではなくて、引き上げていくという話ですから、それだけの仕事の体制をとれるということで、ふだんの異動の際に当然そういう論議がなされているわけです。この人はこういう仕事ができる、そういうことをされるわけですから、それなりに各個人にとってはそういう識別がされているというふうに思いますから、ある程度の見きわめがつけられる、そういうふうに感じます。  そういう意味では、仕事が分かれていても、そんなにむずかしいことではないのじゃないか。それは個人、それぞれ人で見ていけばいいと思う。人と職種、こういう仕事についている人、こういう能力のある人、その二通りで見ていけば、ある程度該当者が決定できるのじゃないかと思います。  それと、いまこういう時期でありますから設定がむずかしい、こういうお話でありましたけれども、これは人事院ですか、こういう時期であるから設定がむずかしいとなりますと、それでは財政難のときに何で毎年賃上げをするのか。財政難ということで、要するに俸給を上げる、専門職として資格を上げていくということがむずかしいということであれば、毎年人事院が勧告するということは非常におかしい話ですからね。いま財政がとてもじゃないけれども払い切れない、いやむしろ下げましょうかという話ならわかりますけれども、毎年何%かという勧告をしているわけですね。そういう自分勝手な理屈をつけるわけですからね、それではやはり納得できないわけですよ。  だから、財政は財政でおいておきまして、それは全く違う話ですから、要するに、いま人の働きに対していかに報いられているかということを検討すべきである。財源は財源で、また今度財源ができたときにとか、がまんしてくれとかいう話になればわかるのですけれども、いまないから検討しませんよということじゃなくて、やはり今後苦しい中でもやっていきましょう。大体、こんなのは上げたって総額からすれば知れていますよ、何千億、何兆円の一部ですから、それは端数みたいなものです。それを口実ということではなくて、いかに水際が大事か、その辺は、当局ですから一番よくわかっているのですね。本当は行管ぐらい呼びたかったのですけれども、時間がなくて……。  そういうので、当局の方としても、ぜひそれだけの熱意を持って、俸給体系というか、その方に取り組んでいただきたいと思います。それについて決意をお願いしたいと思います。
  105. 垣水孝一

    垣水政府委員 先生の御趣旨も体して十分検討を進めていきたい、できるだけ早く検討を進めていきたいと思っております。
  106. 玉置一弥

    ○玉置委員 大体、業務内容もそうですし、仕事量も非常にふえておりますから、その中で、いま一律五%削減という人の話もございます。ふだんから合理化を進めているところについては、五%節減というのが非常に大きくきいてくるわけですから、これも行管庁ですね、やらないところは一〇%、二〇%削減して、従来から手がけているところは、むしろ比率を減らすべきであると私は前々から思っていたのですけれども、そういう面では、いま非常に苦しい時期ではないか。むしろそういう中に安全面を考え、そして水際作戦ということから充実をさせようということになれば、まだまだ人が何人いても足りないという感じがします。それを何とか乗り切っていただいて、ある時期までがんばっていただきたい、かように思います。  ところで、今度は貿易摩擦の問題についてお聞きをしたいと思います。  先ほどからもお話が出ておりましたけれども、昨年の十一月の閣議で、一応関税の前倒しの示唆がございました。それから後、洗い直しを始めまして、九十九項目ということでやってこられました。一応六十七項目については、手続の簡素化、関税の二年前倒しということで決定を見て、日本としてはいろいろ努力をしているということでございます。しかしいまだに、欧米から見て非常に閉鎖的であると言われておりますけれども、確かに非関税障壁が、日本へ売り込みたいけれどもできなかったという、大変大きな理由にはなっていると思います。われわれから見れば、欧米の、特にヨーロッパですけれども、製品のPRが非常に不足をしておるし、またその販売代理店をつくるということについても、日本における販売会社の設立とか代理店、それぞれが非常に消極的である。そういう面から見ても、売れないのはあたりまえだと思うのです。ところが、相手はそうではなくて、日本はともかくヨーロッパへむちゃくちゃ宣伝をしている、そして、無理やり押し込んできて売っているのだというような受け取り方をしているわけです。  今回、非関税障壁もかなり改善されるということでございますけれども、それでもなかなか批判がおさまらない。この原因はどこにあるかということですけれども、その辺について、お伺いをしたいと思います。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  107. 垣水孝一

    垣水政府委員 貿易摩擦の基本的な問題の一つは、先ほど来御議論がございましたように、やはりわが国貿易収支が非常に好調だ、特にアメリカECに対して百億ドル以上、百数十億ドルに及ぶ日本側の黒字ということが第一点だと思います。  それから第二点といたしましては、世界的な不況、そして特にECアメリカにおけるインフレ及び失業、失業がECアメリカともに一千万人を超える勢いだというようなことに伴ういら立ち、そういったことを背景にいたしまして、従来ならばある程度大目に見ていったけれども、どうも日本には入りにくいというかっこうになってあらわれてきたのだと思います。  たとえば貿易摩擦、九十九品目の中で今度六十七、その一つとして改善することとして挙げております、先ほども話の出ました日本酒の沼野というのでございますが、これは日本輸出をしているのに二級酒にしか格づけされない、そのためにお歳暮等に使わないから売れない、実はそれが非関税障壁だというわけでございます。国税庁に言わせますれば、当然瓶をそれぞれあけて検査するわけにはまいりませんから、現場でこのおけから、まず大きなおけでかなりの量を調べまして、それが一級なり特級なりに当たる、それをそのおけから瓶詰めしたということを確認しなければ、なかなか一級だ、特級だというわけにはいかぬ、こういうことでございましたけれども、それをさらに譲って、向こうにもワイン等に鑑定官があるわけですから、そういうものの証明をかなり重んじよう、ここまで進んだわけでございます。  私、個人的に心配いたしておりますのは、さてそこまで進んでも、果たしてそれが一級なり特級に格づけされなかったときに、また日本はけしからぬというんじゃないかなという気がしております。なぜならば、たとえばブロック通商代表のごときは、カリフォルニアの日本酒は非常においしいのに、日本は二級にしか格づけしないというようなことを言っておりますので、そういった誤解と申しますか、文化的な摩擦と申しますか、慣習の相違と申しますか、そういうようなものもかなりあってなかなか入らない。しかし、それに近い幾つかのことが、先ほど申し上げましたように米国内における失業、そういったものに対するいら立ち、さらには、あえて申しますと、日本がまず繊維でアメリカを凌駕し、鉄鋼で凌駕し、やがて自動車もほぼ凌駕し、また先端技術等でもいろいろ争っている、こういうことに対するいら立ち等を含めまして、いろいろな形で日本が閉鎖的だということを言っていると思います。  ただ、わが方にも決して反省すべき点がないわけじゃございませんので、これも六十七品目の中にございますが、たとえばフランスから輸入するエビアンを煮沸しなければ輸入させないといったような常識的でない措置もあったわけでございます。そういった一種の文化摩擦的なものを背景として、しかし、あんなに弱かった、あんなにわれわれが助力してやった日本が凌駕する、いま黒字で、先ほども御答弁申し上げましまが、OPECからの赤字をわれわれに押しつけているといったような感情論もかなりあるんじゃないかと思っております。
  108. 玉置一弥

    ○玉置委員 外務省、通産省、それぞれ聞きたいんですけれども、多分同じような答えが返ってくると思います。違うと思ったら、ちょっと答弁をお願いしたいんですが。
  109. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 関税局長から御答弁がありました点に特につけ加える点はないわけでございますけれども、現在私どもが直面している貿易摩擦の問題の根底には、やはり石油ショックに対応する対応力の差と申しますか、国際競争力の差と申しますか、そういう経済の根本にかかわる問題が非常に大きいかと思うのであります。  関税面あるいは非関税面におきまして、先生御案内のとおり、政府におきましては、これまでも数多くの措置をとってまいりました。こういうものをよく諸外国説明し、わが国市場についての理解を深めたいと思うわけでございます。私どもにおいて改善すべき点は、やはり自由主義圏第二の経済国でございますので、できるだけ早期に改善をしていくことが必要ではないか、かように考えております。
  110. 玉置一弥

    ○玉置委員 確かに、経済構造の差といいますか民族の考え方といいますか、そういう積み重ねが出てきたような気がするわけですけれども、やはり日本人に対する誤解といいますか認識不足、そういうものがかなりあるような気がいたします。  たとえば日本人の生活、昨年でしたか、ウサギ小屋論争みたいなものが出てきました。イメージとしてはまさにそのとおりだと思うのですね。非常に低賃金、長時間労働ということで、時間当たりのコストが安い。そして、ウサギ小屋ではないけれども非常にみすぼらしい狭いところに住んでいる、そういうふうな理解をされている。確かに、海外に行っておられる方のお話を聞いても、ましてやもっと僻地へ行きますと、まだちょんまげの時代から余り出てこない。そしてアメリカなんかでは、駐留軍が昔いたときに日本にいて帰った、その当時のそのままの日本というような気持ちで見ているわけです。こういうようなものが、要するに自分たちの国を犠牲にして輸出をふやしているんだ、そういうものが非常に強いわけです。そういう面から見ると、まだまだこれから、日本人あるいは日本の経済それぞれを、数字では非常に評価されていますけれども、実態をそれぞれの国の人々に理解をしてもらうということも非常に重要ではないかと思います。  それと、やはり何といっても輸出を抑え輸入をふやすということでございますから、いま日本の経済が低迷をしておりますけれども、要するに内需拡大、これを本当に積極的にやるということが、一つ大きな貿易摩擦の解消につながってくるというふうに思うわけです。そうなっても、今度は民間と政府と違うんじゃないか、政府輸入するわけじゃないし、やはり民間だということになりますと、その輸入に対するいわゆる助成というか、そういうことも何らかの形で考えていかなければいけないんではないか。そういういろんな要素が絡まってきて、初めて貿易摩擦というものが解消されるわけで、政府間で、どっちの責任だということでいまいろんな論議をされておりますけれども、そういう論議をしているだけだと、日米の航空交渉みたいな決裂というような、あるいは横ばいというか平行線ということにしかならないというふうに思うのです。  だから、ことしはより一歩進めて具体的な対策ということも考えていかなきゃならぬし、その一つが非関税障壁の撤廃というか、撤廃までいきませんですね、改善ですね。その次は何だろうということになるわけです。次は何でしょうか。ちょっとむずかし過ぎたかな。
  111. 垣水孝一

    垣水政府委員 実は私どもとしては、宮澤長官が記者会見で仰せられたということで新聞報道されておりますように、この東京ラウンドの一律二年間前倒しあるいは六十七品目に及ぶ非関税障壁の一挙の撤廃というようなことが、いわばドラマチックな方策であると思っておりますので、次はと言われても大変困るわけでございますが、ただ、アメリカ、ヨーロッパ等が言っております農産物とか皮革、そういうものはなかなかむずかしいことは否定できないわけでございます。しかし、そのほかにもなお少しずつ積み上げて、相手がどこにいら立ちを持っているかというようなことを、少しずつよく積み上げていけばまだあり得るのじゃないかということで、たとえばOTOと称しております苦情相談の受付なども設けましたし、そういうことで片方でじみちにやっていくと同時に、私ども関税局の立場としましては、さらに大胆に、関税率、平均は非常に下がっておりますけれども、やはり突出した、二〇%以上、三〇%以上という関税率のものについても何とかできないかというような勉強が必要でございましょうし、輸入制限はなかなかむずかしいにしても、輸入枠をある程度国内産業との調整のもとで広げるとか、そういうことも検討してみる価値は十分あるんじゃないかと考えております。
  112. 横堀恵一

    ○横堀説明員 お答え申し上げます。  ただいま大蔵省垣水局長からお話がありましたように、私どもといたしましても、いろいろな問題につきまして、OTOの窓口の活用、それから、これからお願いしております関税の一律引き下げ等、最大限に相手側に説明をいたしまして、相手理解を求めつつ、私どもなりにできることをやっていくというふうに考えております。
  113. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまのお話を聞いていますと、相手が要望すればそれに対応していくということになるわけですけれども、近々というか六月にパリで行われますベルサイユサミット、それまでに何かおみやげが先にみんな出ちゃったような気がするわけです。あれもこれもやるんだというように打ち上げてしまった。そうしたら、もう行っても効果ないのではないかというふうに心配するわけですけれども、その点についてはどういうふうにお考えになりますか、外務省の方に伺います。
  114. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 六月にサミットがあるわけでございますが、御案内のとおり、サミットにおきましては、個別の問題について議論をするということよりは、むしろ先進七カ国の首脳が持ちます重要な経済についての諸問題、経済成長の問題でございますとかあるいは南北問題、エネルギー問題、貿易問題といったような重要な諸問題について、先進諸国としてどのような対応をしていくのが一番適切であろうかという、年一回首脳がお集まりになる非常に貴重な機会であると承知しているわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、こういう場において、日本がこれまでとってきた対応内容であるとか、あるいは世界の経済運営について日本としてどのように考えているかということが、鈴木総理の御発言になろうかと思います。重要な経済サミットでございますので、当然そういうものが念頭に置かれながら、わが国としてとるべき対応について対策を講じてまいらなければならないことは考えてまいらなければならないと思いますけれども、いま先生が御指摘になりました御質問の趣旨が、もうすでに出すものがないのではないかという御趣旨かと思いますが、目下アメリカ並びにヨーロッパ諸国からもなおいろいろな要求があるわけでございますので、そういう問題についても、個々に検討を重ねてまいらねばならないものと思っております。私どもとしては、こういうわが方の対応についてみずから時間を区切るということは、相手国のあることでもございますので、不必要に期待を高めてもいけないのではないかと思う次第でございます。  しかしながら、いずれにいたしましてもこの六月のサミットという時期が、諸外国の経済動向いかんということも背景にいたしまして、貿易の問題、経済成長の問題あるいは失業の問題といったことが重要な話題になろうかと思われますので、こういう場の議論も念頭に置きながら、これからの対応関係省庁とも御相談しながら考えていかねばならないか、かように存じておるわけでございます。
  115. 玉置一弥

    ○玉置委員 これからの対応考えますと、より具体的な製品、品目が出てまいりまして、それについてどうするかという話が大体中心になるのじゃないか、そんな気がします。  いま農産品の二十二品目について、その中でオレンジとか牛肉とかありましたけれども、要するに、いまアメリカの方から名指しでそういう提起をされているわけです。全体の話になってくると、何か製品輸出の見返りで農産品がやり玉に上げられているとか、そういう話が出てきますけれども、そういうことじゃなくて、農産品は農産品で高いということで従来から言われておりました。ただ、われわれとしても、国内産業の保護、いわゆる食糧安全保障、そういう面から、単に向こうが安いから買うということにはならない。そういうことを考えると、基本線というものをある程度明確にして、それの条件のもとに交渉していかなければいけないのではないか、そういうふうに思うわけです。  いまの動きを見てまいりますと、製品輸入に対する風当たりが農産品に来たということでございますけれども、より具体的に、これから交渉に入るために基本線を明確にしてやっていかれるのかどうか、そしてあくまでも全面的に拒否するのか、その辺について大体の思惑をお願いしたいと思います。
  116. 塚田実

    塚田説明員 まず私ども、先日の日米貿易小委員会において米側合意した点が二点ございます。  一つは、残存輸入制限に関する作業部会設置合意したこと、これは早ければ四月中にも第一回の会合が開かれます。それから第二点は、牛肉柑橘に関する交渉協議を十月中に開始するという点でございます。したがいまして、これから米国側農産物につきまして協議あるいは交渉が始まるわけでございます。  それで、御指摘基本的な態度いかんということでございますが、御指摘のありましたように、私どもの国民の摂取カロリーのすでに五割程度は外国産であって、特に米国が多いわけでございます。そういうわけで、食糧安全保障の確保ということにつきまして国民一般からも懸念が表明されておりますように、私ども基本的な立場は、食糧安全保障という立場を十分踏まえていかなければならないものというふうに考えております。  それから、わが国農産物市場は閉鎖的であるというような誤った考え方は、ぜひ払拭する必要があろうと思っております。先ほども申し上げましたように、わが国は世界最大の農産物輸入国でございまして、林水産物を含めれば一年間に二百九十億ドルも輸入しているわけでございます。このような巨大な農産物市場を持つわが国が閉鎖的であるわけがないわけでございまして、閉鎖的であれば輸入が少なくなるわけですから、そういう意味で、私どもは、他の先進諸国と比べても優に比肩し得る開放度を持っているというふうに考えております。確かに消費者価格が高いということがございますけれども牛肉一つとってみても、私どものは、確かにアメリカよりは消費者価格は高いわけですけれどもECの諸国の水準に近いというふうに考えております。  私どもは、そのような立場を踏まえながら、そしてまた、いま非常に厳しい農業事情にございますので、したがいまして、わが国農林水産業の健全な発展と調和のとれた形で物事を進めていきたいというふうに考えているわけでございます。そのような幾つかの点を踏まえて、何はともあれ米側理解を深めていくべく全力を挙げてまいりたい、このように考えております。
  117. 玉置一弥

    ○玉置委員 アメリカの方は、農産品が出てきましたけれども、ヨーロッパは製品を買ってほしい、アメリカもそうなんですね、製品を買ってほしい。失業対策というか、一番効いてくるわけですから。  ところがヨーロッパの方を見ますと、自動車で比較をすると大体二倍から二・六倍というところにある。自動車がそうですから、大体電気製品もそうであろうと類推をするわけです。電気製品になるともっと差がついていると思いますけれども、そういう目で見て、果たしてヨーロッパから日本に大量に買い入れるようなものがあるかどうか。これは幾ら貿易のいろいろな手続を改善しても、実際日本に来て対応できなければいけないわけですから、そういう面での可能性はいかがでしょう。
  118. 塚田実

    塚田説明員 ただいま御説明しました数字に、全世界から農林水産物二百九十億ドルというふうに申し上げましたけれども、その大宗は原料でございまして、米国、カナダ、豪州が主たる輸出国でございます。ECからは、私ども十億ドル程度の輸入というふうに考えておりますけれども、それは、彼らは原料輸出国ではございませんので、主として製品という形になってまいります。  そこで、私どもは、そういう製品についてはもうほとんど多くをすでに自由化しておりまして、保護としては関税が主要な役割りになっております。現在ここで御審議をいただいております関税の前倒しの対象となっているものもかなりあります。ビスケット、チョコレートはその一つでございます。そのようにして、私どもはやれるだけのものは輸入検査手続の改善も含めてすでにやっていると考えております。したがいまして、これ以上の輸入ということはなかなか考えにくいというのが実情でございます。
  119. 玉置一弥

    ○玉置委員 では通産省にお聞きしますけれども、通産省関係で、日本輸入をして売れるヨーロッパの製品、そういうものを拡大しないといけないわけですから、いまいろんなミッションが行かれて買わなければいけないという話は返ってくるわけですけれども、行って悪いのは、買わなければいけないと言って日本に帰ってきて具体的な動きをしてくれたことがないという批判が非常に出ているわけですね。  そういう面から考えて、より具体的な動きを始めていくためにはやはり見通しをつけなければいけない。見通しがあるのかないのか。向こうで、売れないものばかりであると言ってくればいいわけです。どうせおたくの国の物は高くて悪いんだ、売れないんだ、あきらめてくださいという話をすればいいのですけれども、そうはいかない。無理しても買わなければいけない。無理して買うと、要するに、国民が高い物を持たされるのか、あるいは商社なり輸入する会社が損をしてでも出すのか、まずそういうことはあり得ないと思うのですね。やはり高い物を買わせるか、政府というか国がその分のある程度の穴埋めをするかということでなければ、通常の経済の原則が適用されるわけですから、まず売れないであろう。  そういうことを考えますと、本当にヨーロッパの製品の中にあるのかなという心配が出てくるのです。だから、具体的な話が一向に進んでいかないのではないか。それについてはどのようにお考えですか。
  120. 横堀恵一

    ○横堀説明員 お答えいたします。  ただいま先生がおっしゃいましたように、日本がいろいろ物を輸入するという場合に、向こうから売れない物を無理に買うということではなしに、やはりこちらが欲しい物を向こうから買うということでないといけないと思います。しかしながら、日本では確かに、向こうで本当は日本で売れる物があるのではないか、それについてわれわれが知らない物もあるかもしれない、そういうことで、いわゆる輸入促進ミッションというものをこれまでベネルックス等いろいろ派遣いたしました。それから、ことしはフランス等にも派遣することにいたしておりますが、まず実際そういう物があるのかどうか。それから向こうの人たちに、日本というものは一億の人口を抱えておる非常に大きな市場であるということをよくわからせた上で、かつ、それをやるときに向こうの人たちが具体的にどういう点について問題として考えているかというような場は、たとえば政府間ベースの話し合い等を通じて、これまでもいろいろ議論をしておるところでございますし、今後ともそういうことは取り上げていくべきだと思っております。  たとえば、いろいろ向こうの方からは、JISの規格等についてよくわからないから教えてくれ、こういうものを翻訳してくれとか、そういうような話もございます。具体的には、実は幾つかの物については個別の品目、それは必ずしも額が大きい物とは限らないわけでございますけれども、個別の品目ごとには幾つかの話、具体的な点についての問題点というものの話し合いというのは行われており、私どもとしては、相手が本当に売りたい物で、日本がかつ欲しておる物を買い付けることができるような方向努力してまいりたいと思っております。  以上でございます。
  121. 玉置一弥

    ○玉置委員 たびたびミッションが行かれて、大物過ぎて具体的なことがなかなか進まないというのがいままでの結果みたいですから、なるべく実務もわかった人を出していただきたい、かように思います。  いよいよ時間が来ましたので、最後に、アメリカの方でいま相互主義というのが非常に問題になっておりますけれども、議会にいろいろ提案されております。これは相互主義というのか保護主義というのか、ちょっとわからないような内容になっているのですけれども、大体アメリカというのは自由貿易主義の国ですから、いままで国内においても海外においても余り規制をしなかったということです。ところが相互主義ということから、うちがやるからおまえもやれ、どちらかというとそういう感じですけれども、そういうふうなかなりお仕着せ的な法律がいま議会の方に提案をされております。いままでみたいに全部が流れるということはあり得ないだろう。特にサービス、金融、保険、そういう部分について、日本市場は非常に広いけれども、一向に入れてくれないというお話が大分出ているようですけれども、これについてどういうふうに対応されるのか、最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  122. 垣水孝一

    垣水政府委員 サービスの中で、特に金融、証券につきましては、実は率直に言って、やはり数年前までかなりの規制があったと言っていいかと思います。  ところが、新外為法の成立等に伴いまして、ほとんどそれを自由化したわけでございますが、やはりそれがなかなか徹底してない、要するにPRが行き届いていないということで、まあサービスというと、まず金融、保険あるいは証券というかっこうで取り上げられたわけでございます。  今度の江崎ミッションの場合にも、かなりよくわかったということで、たとえば一例を申しますと、日本はなかなか銀行の支店を設置するのもむずかしいというのに対して、いや、もう自由に、自由といいますか全く特別の規制がないのだというのに対して、それではある銀行が十支店一度に申請したら、それを認めるかという座談的な質問が出たのに対して、倉成副団長がイエスと答えられたというので、うん本気だなというようになったということでございます。そういうふうに、実は十も一緒に支店を申請するわけがないのに、私どもは非常にまじめなものですから、従来の答え方だと、いや、十、一遍というのは、せいぜい二年に一店舗ぐらいというような答弁をせざるを得ないものですから、ほら見ろ、日本は閉鎖的だ、こういうことになるわけでございますが、そういう点で、十、一遍でも結構ですよというぐらいな応じ方をして相手を説得しなければならないのじゃないかと私は思っております。  いずれにしましても、余談にわたりましたが、金融、証券、具体的な問題については余り大きな問題が起きることはないぐらい開放されているのではないかと思っております。
  123. 玉置一弥

    ○玉置委員 終わります。
  124. 森喜朗

    ○森委員長 簑輪幸代君。
  125. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 いま政府は、アメリカなどとの貿易摩擦を解消するということで、今回、関税の大幅な引き下げ措置をとる一方、輸入検査や輸入手続の簡素化など非関税障壁の是正をすることになっているわけですが、この貿易摩擦問題を考えるに当たって一番大切なことは、なぜこういう摩擦が起こったのか、その根本原因を明らかにすること、そして、それに対する適切な対策を立てなければ、真の解決は図れないというふうに思います。  貿易摩擦の原因については、日本側アメリカ側いろいろあると思いますが、日本側で見れば、一つは、独占の大企業が低賃金や長時間労働などで労働者を犠牲にする、あるいは下請中小企業を締めつけるというようなことによって国際競争力をうんと強くし、それによって主に工業製品、とりわけ自動車や電気製品の輸出を集中豪雨的に進めてきたということが挙げられます。  また政府は、この五年間、課税最低限を据え置いて実質大増税を進めてきておりますし、社会保険料の増大などによって国民の購買力がどんどん低下しているという実態がございます。そのため、消費支出が伸びないなど国内市場が狭められて、輸出依存による経済成長を図ってきたということが原因と考えられるわけです。  一方、アメリカ側の原因としては、巨大独占資本の多国籍企業化ということなどで海外投資がふえて、アメリカ国内の投資が減っている。アメリカの国内の生産性が衰え、貿易赤字がふえてくる。また、レーガン政権は軍事優先の経済政策をとる。経済の軍事化促進ということによって生産投資が減ってきているわけで、それがアメリカ国内産業の地盤沈下を一層ひどくしてきたというふうにも言われています。  こういう原因に対して、それに適切に対処する、それはとりもなおさず、日本で言うなら、まず内需を拡大し国内市場をうんと広げて、輸出依存型の経済のゆがみを正していくということが緊急に求められているのではないかと思います。そのためにも、一兆円減税を行うあるいは公共料金の抑制によって購買力を高める、個人消費を拡大するという施策をとらなければならない。そして、公共投資を大企業優先型から生活密着型に転換させるべきだというふうに私ども考えているわけです。  ところが政府は、こうした根本解決策というのを行わない、一兆円減税も行わない、それでアメリカからの要求に対して唯々諾々と従っていくという方針、これでは解決は図れないだろうというふうに思います。  今回、関税、非関税にわたってさまざまな措置がとられるというわけですが、こういう措置を変更するときには、国民の健康と安全、そういうものに十分な配慮が払われなければならない、あるいはまた今度の措置によって、ことに日本農業に与える重大な打撃というのははかり知れないものがあるわけですから、これらの国内産業に対する配慮が十分に払われなければならないというふうに思いますが、基本的な認識について、政務次官にお伺いしたいと思います。
  126. 山崎武三郎

    山崎(武)政府委員 先生指摘の、輸出依存型の体質から内需主導型の体質に転換をしなければ、貿易摩擦というのは永久に解消しないのではないか、そして内需主導型の経済体質に転換するためには一兆円減税をやるべきではないか、これをやらない以上、なかなかうまくいかないよと、こういうような御指摘ではなかったか、こう思うわけであります。  まあ、言われる点はまことにごもっともな点が多々あります。確かに、日本の経済体質からいって、従来は輸出に頼らざるを得なかった。そして輸出で稼いで、今日まで日本の経済を支えてきたという面が確かにありました。しかし、これもまた他方、中東における石油事情、この値上がり等によって、支払い金がほぼ十兆円にも満つるという、こういうような特殊な日本の国でありますから、輸出できるところは輸出をして、そこで外貨を稼がなければ、またどうにもならないという面があったこともまた事実であります。  しかし、これほど諸外国から貿易摩擦を指摘されるに及んでは、相当な内需依存型に転換せざるを得ないことは御承知のとおりでありますし、今回の予算編成等についても、住宅建設等を中心にし、また公共事業等の前倒しをして内需依存型に移行していきたいという政府考え方でもあります。しかし、早急に減税をしなければそうならないのではないかということについては、昭和五十七年度におけるわが国の内外経済環境は、第二次オイルショック直後の五十五年度、五十六年度に比べると、好転するのではないかというふうに見込まれております。加えて、昭和五十七年度予算においても、限られた財源の中で景気の維持拡大を図るためにいろいろな配慮をしておりますし、また公共事業の上期執行についても、過去最高の七五%以上の執行をしようということで各省庁間で検討を進めておりますし、こういうようなことから考えあわせますと、実質経済成長率五・二%を達成することによって、所得税の減税による景気対策を講じないでもやっていけるのではないか、こういうふうに考えておる次第でもあります。
  127. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 減税は行わなくても大丈夫じゃないかというような御意見でございますが、そういう現在の現状から見て、私どもは、一層の内需の拡大ということにこれが資するというのは、常識の範囲に属することだろうというふうに考えているわけです。そして、いま申し上げました点は、これらの関税、非関税の諸措置について、特に国民の健康、安全、国内産業に対する配慮が十分に払われなければならないということについてお尋ねしたわけですけれども、それは当然のことというふうな認識だろうと思います。  そこで、今回の関税暫定措置法改正案に盛られている東京ラウンド合意の段階的引き下げ措置の一律例外なし二年前倒しというのは、従来の引き下げ措置のときとは違っているように思うのですね。特に農業については、再三御質問がございましたけれども、念のためにいろいろ申し上げたいと思うことがありますので、ぜひお尋ねをいたします。  食糧の問題というのは、わが国経済のアキレス腱とも言われているというふうに言われたりしておりまして、生活に直結しているわけですし、特に農業というのは、その性格上各国とも保護政策をとっている。わが国でもこれは重視するのは当然のことであって、再三答弁もありますように、わが国の自給率というのは非常に低くて、穀物自給率は一九八〇年で三三%、先進諸国中最低ということで、この点に関する食糧自給率向上の国会決議というものまで、五十五年の四月八日衆議院の本会議で行われているわけですね。ここでは「先進諸国に較べ低位にあるわが国食糧自給力の向上を図り、国民食糧を安定的に供給することは、将に国政上の基本的且つ緊急の課題である。」というふうに述べているわけです。  そういう重要な農業問題、食糧問題であるわけですが、今回は農業に何らの特別の配慮というのはなくて、農業団体に事前の相談もなく一律一方的に関税引き下げということで、こういうやり方自身は農業者の皆さん方にとっても非常に不安を持ち、政府に対する不信というものも広がってきているわけで、全国農協中央会でもこれに対する反対の声が上がっているという状況です。こういうやり方というのは非常に問題だと思いますが、農水省のお考えをまずお聞きしたいと思います。
  128. 塚田実

    塚田説明員 お答えいたします。  今回御審議いただいております関税の前倒しの問題でございますが、農林水産省といたしましてまず御説明申し上げなければならないところは、東京ラウンドにおいて、諸外国からかなりの数の品目、それも相当な幅の関税譲許を求められたわけでございますけれども、私ども、当時、農林水産業の健全な発展にとって差し支えがありそうなものは全部お断りしているわけでございます。  そこで、今回御審議いただいておりますのは、東京ラウンド合意された関税譲許の二年の前倒しということでございます。私ども、その上に切り下げ幅も約一%程度というふうに非常に小幅であるということから、農林水産業に大した影響はないものというふうに考えております。  そこで、このような措置をとるにいたしましたのは、確かに御指摘のように、農林水産業は非常に厳しい事情にあるわけでございますけれども、経済摩擦の解消というのも政府として当面する緊急の課題でもあるというようなことから、こうした関税の前倒しに踏み切ったわけでございます。
  129. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 すでに東京ラウンド合意されており、小幅な引き下げであるから大したことはないというふうな御答弁であったわけですけれども、それなら農業者の方々がそんなに心配することもないわけですが、大変これについての声が上がっているということから見ても、重大問題だというふうに思います。  関税率だけじゃなくて、牛肉オレンジ、果汁などの残存輸入制限品目の問題、輸入枠の拡大の問題をアメリカから迫られているわけですけれども、こうしたことは今後日本農業に一層重大な影響を及ぼすというふうに思います。経済摩擦の主な原因は農業にあるわけではないのに、農業の方がそのしわ寄せを受け、責任をとらなければならないということは納得できないという言い分のあるのも当然だろうと思います。日本農業を発展させていく、そのためには農産物自由化それから輸入枠の拡大をやるべきではないというふうに私は考えますけれども、農水省それから関税局として、日本農業関税行政というものについてどのようにお考えか、基本的なお考えを簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  130. 垣水孝一

    垣水政府委員 今回、東京ラウンドの二年間一律前倒しをいたしましたのは、実は先生おっしゃいますように、農産品にも幾つかかかわっておりますが、逆に、たとえば当時言われておりましたビスケット、チョコレートを大幅に下げるとか、あるいはその他の農産品についてECから要求をしている、片やアメリカの方でも主として農産品を中心に、私どもは本気であったとは思いませんが、関税を撤廃しろというようなことを言っていたことに対して、いわばそのドラマチックな対応をしたのがこの一律前倒しでございます。  したがって、実は平均いたしますと千六百五十三品目にわたって八%のものが六・七五%、丁二五%の下げでございますけれども、その中には農産関係、林業、水産業を入れまして百程度でございまして、先ほど農林省からも申し上げましたように、すでに東京ラウンド合意済みのものでございます。これは千六百五十三という主として工業製品を下げることによって、ある意味では農産品の防衛的な役割りも果たしたと言える面もあるのじゃないかと思うわけでございますが、いずれにしても、私どもとしては、できるだけ東京ラウンドの枠ということと、それからなお欧米から、あるいは欧米のみならずたとえばASEAN諸国等からも要求のありましたものを、あるいはカナダ等をも含めて、この前倒しによって満足させることができるというので、そういう意味では、何といいますか、農産物品をむしろねらい撃ちされるのを防いだ面もあるのではないかということを考えている次第でございまして、農産品を犠牲にするということは、関税局といたしましても毛頭考えていないところでございます。
  131. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 農水省は、当然のことながら自由化や枠の拡大を進めていくということではないだろうと思いますので、それじゃ時間もありませんので、次へ進めさせていただきますが、農業を重視するという姿勢関税行政の中でもあるというふうに承ったわけで、その辺はぜひ踏まえて今後の関税行政に当たっていただきたいと思います。  次に、最近覚せい剤乱用者による事件が多発しているわけですが、覚せい剤取締法違反が昭和五十年以降毎年著しく増加している。検挙者、押収量ともにどんどんふえているように、覚せい剤乱用者が広がっているというところに大きな問題があると思います。  取り締まり強化や覚せい剤の恐ろしさの啓蒙など対策を講じてきたにもかかわらず、一向に減少する気配を見せていない、増加の一途をたどっているということですけれども、覚せい剤の撲滅というのは、そういう中で緊急の課題だろうと思います。最近の事態は、かつて昭和二十年代のヒロポンの乱用や昭和三十三年ごろのヘロインの乱用と違った特徴があるというふうに言われています。暴力団が覚せい剤密売を最大の資金源として積極的に販路拡張を図っているというようなことが一つ。二番目に、覚せい剤乱用者における暴力団関係者の比率が低下して、一般市民、主婦、学生、青年層に着実に広がっているというふうに言われております。それから三つ目に、覚せい剤は、そのほとんどすべてが海外からの密輸品であるということに特徴があるというふうに言われております。  したがって、暴力団関係者による組織的、計画的密輸密売が進んできておりまして、悪質巧妙な手口が広がっているわけです。一層蔓延するという一方の現状ですけれども、覚せい剤の根絶は過去の二度の乱用期とは異なる特徴を持っているという現状を踏まえて、それにふさわしい抜本的対策が必要だと思います。  それに対する厚生省の認識と、これに対する取り組み状況について簡単にお願いしたいと思います。
  132. 市原久照

    ○市原説明員 お答えいたします。  最近のわが国におきます覚せい剤事犯は急増しておりまして、ただいま先生指摘のとおり、まことに憂慮すべき状況を呈しております。すなわち昭和四十五年、先ほど先生五十年とおっしゃいましたが、昭和四十五年の覚せい剤事犯の検挙者は千六百十八名でございますが、年々増加の一途をたどりまして、昨年は検挙者が約二万二千名に達しております。  なお、この乱用の実態につきましては、先ほど先生が申されました昭和二十年代の覚せい剤第一次ヒロポン乱用時代と異なりまして、海外からの密輸入であるとか、暴力団組織の最大の資金源になっているとか、一般市民層に波及しているとか、覚せい剤の乱用に結びつけられるような凶悪事件が頻発しているとか、そのような現状認識でございます。したがいまして、私どもといたしましては、昭和二十年代に流行しましたヒロポン時代の乱用防止に成功した貴重な経験を生かしまして、罰則の強化を図るとともに、今回の乱用は海外からの密輸入によるものでございますので、その水際作戦、国内における密売ルートの摘発など、取り締まりの強化並びに一般市民層に対する啓発活動を推進しているところでございます。  さらに昨年、先生も御存じのように、六月に東京都の江東区で発生しました通り魔事件を契機といたしまして、昨年の七月に総理府の薬物乱用対策推進本部におきまして、覚せい剤問題を中心として緊急に実施すべき対策か決定して以来、関係各省庁がこぞってこの対策を強力に推進しているところでございます。
  133. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 覚せい剤根絶のためには各省庁力を合わせてということでございますが、特にほとんど密輸であるという実態から見ますと、税関の任務ということも非常に責任が重いだろうと思うわけです。  大変御苦労されて日夜監視、取り締まりに全力を尽くしておられると思いますが、最近の覚せい剤密輸の特徴、それと税関としての覚せい剤取り締まりについての基本的見解というものをひとつ簡単にお聞かせいただきたいと思います。
  134. 垣水孝一

    垣水政府委員 最近の覚せい剤の密輸の特徴と申しますか手口は、まさに先生おっしゃいましたように、ほとんどが密輸。実は覚せい剤というのは製造するときににおいが非常に強いというので、国内ではもうとても無理だということで、主として韓国、台湾等から入るわけでございますが、それも大体が航空旅客、船舶の乗組員による携帯密輸が相変わらずで多いようでございます。ただ、最近韓国との税関の連絡会等におきまして取り締まりを要請している件があることによるかどうか、実は最近の新しい手口としては洋上で、海の上でつくって、それを洋上で小型漁船に積みかえる方法というようなのが出てきているんじゃないかということで、これは海上保安庁の方にお願いせざるを得ないわけでございますが、そういうことでございます。  それから、隠匿方法も大変巧妙、悪質化いたしておりまして、たとえば石灯籠の火入れの部分に入れているとか、あるいは生きたドジョウを持ってくる際にアイスボックスの下に入っていたとか、あるいは生きたハトの入った箱の二重底の部分に入れていたとか、韓国みその中にビニールで包んだまま隠したとか、相当な事犯がございます。  私どもとしましては、しかし、これを単に手当たり次第というわけにもまいりませんので、できるだけ情報の交換、韓国からの情報あるいはその他からの情報と同時に、国内的には関係機関、警察、海上保安庁あるいは厚生省の方との連絡を密にして、情報をできるだけ緊密にして、ねらいを定めて取り締まりをするということに心がけている次第でございます。
  135. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 手口も悪質化しておりまして大変だとは思いますけれども、最近では、一般商業貨物の中に紛れ込ませる、郵便物を利用するというようないろいろな方法もありますので、それに対する適切な対処が必要かと思います。  さらには、根本的には覚せい剤の供給ルートを断ち切るということが必要ですので、関係外国との連携プレーというものも必要になってくるだろうと思います。そういう点での一層の努力をお願いしておきたいと思います。  しかし、一方で大阪税関での松本さんのような例もございますので、命がけの仕事ということで、監視、取り締まりを行うに当たっても、現場の職員の皆さんの意向を十分にくんで対処されるということが必要だと思いますし、その点くれぐれも関税局長にお願いしておきたいと思います。  時間が少ないので、最後に、輸入検査手続の簡素化、省略化というような点についてお尋ねしたいと思います。  幾つかの点がありますけれども、包括審査制、事後審査制というようなものが取り入れられるという話です。特に、包括審査制ということになりますと、ここでは、衆議院の予算委員会分科会で浦井議員が指摘いたしましたように、タイから輸入された米粉の件ですね。当初はケーキミックスというようなことで検査を受けてやりながら、次から包括審査制、検査なしということになれば、砂糖や粉乳をまぜない米粉がケーキミックスの名のもとに入っていたという例もあるわけで、この包括審査制というのは非常に問題だろう。税関のチェック機能という面から見ても、きちんと検査すべきだと思います。そして、これは包括審査制というのに当たっての判断の基準が一定の信用度というようなことを基準にされるやに聞いておりますが、そうだとすれば、大企業や大商社は非常に喜ぶ、一方、中小企業は差別的な扱いを受けるという問題点もあると思います。  それで、事後審査制の問題ですけれども、これは貨物の引き取りを先にさせて、後で審査をするというようなことですから、大変いろいろな問題が起こってくるだろうと思います。従来の場合は貨物そのものを担保として押さえていたという形になるわけですけれども、それがなくなってしまって、もう貨物は引き取ってしまった、その後に更正処分あるいは修正申告をさせなければならないというような場合に、担保となるものがもうないじゃないかという問題があるわけですね。そういう点からいえば、この点について何らかの適切な対処がない限り、これは重大な問題になるのじゃないかというふうに思います。  ここに「運上所から今日の税関へ」という本がございますけれども、ここでは関税局の皆さん方、税関の皆さん方がアメリカやヨーロッパの視察をされて、その成果が取りまとめられたというふうになっているわけです。「アメリカの通関制度」の中で参考になることがいろいろ述べられているわけですけれども、「たとえば、貨物の輸入通関にあたって現物検査はインボイスごとに必ず行うという原則があり、規則で若干の例外を認めている場合を除き厳格に行われているし、またその際の見本採取もかなり幅広く実施している。貨物を先に引き取らせるため、できるだけ見本は採っておかねばならないわけでもあるが、見本といってもわが国で一般に考えられるような断片的な小さなものとは限らず、場合によっては自動車一台をそのままとか洋服等についても布地、柄、サイズ等の別によってすべて見本をとるなど相当徹底した見本採取を行っていて、この見本採取をした貨物の保管用として税関内に公共倉庫も用意している。」というようなことが述べられているわけです。  一方、この引き取りに当たっての関税債権の担保の問題についても、「ボンドとよばれる金銭担保もわが国が許可前引取りに要求するような関税相当額ではなく、通常は当該貨物のインボイス価格に関税額を加えた額を提出させている。」というようなことが述べられているわけです。  引き取りがアメリカかなりスピードアップされているというふうに言われていますけれども、「引取りを急ぐものは一定の条件に合致している限りどんどん引取らせるが、だからといって引取ってしまえばあとはどうでもよいのだということは絶対に許さない。清算が完了するまでは、つまり手続きが完結するまではボンドも解除しないし、審査も時間に関係なく徹底して厳重に行い、税関が要求している点はあくまで履行をせまって履行を怠る者には容赦なく罰則金をかけるという一貫した姿勢を守っているわけである。こうした厳しさは業界の「正しく手続きが行われている間は貨物も早く引取れるし問題はないが、ウッカリして間違えたり必要なことを忘れたりでもしょうものならトタンにペナルティがかけられてまことにこわい」という声でも代表されるようにかなりのものであって、税関行政の権威を格調高く守りながら通関手続きを円滑に、かつ確実に行ってゆく大きな要因のひとつとなっているようである。」ということが述べられておりまして、事後審査制に当たりましては、このアメリカの通関手続なども十分に考慮に入れてやられない限り、一方で貨物の方はどんどん引き取られてしまった、後は更正や修正が十分できない、これは税関の関税徴収に支障を来すというようなことも起こってくるのではないかと思うわけですね。この点どのように考えておられるか、関税局長
  136. 垣水孝一

    垣水政府委員 実は、今回税関手続について非関税障壁論が起きて改正する前にも、改めて去年の秋、実際の取り扱いを見るためにアメリカへ行って調べたわけでございますが、ただアメリカの制度も、そういうことによって、たとえば日本の商社によりますと、今度は通ってから最終決定までにずいぶん時間がかかるために物の値段を決めてどんどん販売して、後から関税がこれじゃ足りないと言われたというような逆の面も起きるというようなことで、私どもがいま法律まで直してやるべきかどうかということもずいぶん検討いたしましたが、むしろこういう法律を直さないで、そもそもが約十五年前に関税が賦課徴収制度から申告納税制度になったのであるから、いわば今日の税務署と同じように、まず申告をしたのをとりあえず通しましょう、しかし、それは精査した上で間違っていれば修正申告なり更正をしていただくということでございますが、ただいま先生おっしゃいましたように、そうすると、ずいぶん徴収に手間がかかるということがあり得るので、そこの妥協として、実は信用度の高い者ということをとらざるを得なかったわけでございます。  そこで、単に一回限り輸入する業者とか、いままでにも何回も脱税している業者に対しては、そういうことは許さない。ただ、必ずしも大商社でなくても、小さな商社でも常日ごろ何回も輸入というのは繰り返しておりますので、申告をそのまま通しても、後から調べるということを実ははっきり判を押すことにしているわけでございます。これは後から調べますよという判を押して通させることにしているわけでございますが、そういうものについてはさほど弊害がないのじゃないかということで、いろいろ工夫をこらして、なるべく両方の要請を調整するように考えてやりたいと思いますし、また実績を見てからも、できるだけそういう対応をしてまいりたいと考えております。
  137. 簑輪幸代

    ○簑輪委員 問題点はいっぱいあると思いますので、ぜひ通関業務のあり方の基本的なことについて厳正公平にされるよう、そして同時に、国民生活の健康や安全が阻害されることのないように、さらにまた麻薬等が不当に、不正に入ることのないように、そして産業の健全な発展が図られるように、このようなことを十分踏まえて関税行政に当たっていただきたいと思います。  まだ質問がしたいのですが、時間が来ましたので終わります。
  138. 森喜朗

    ○森委員長 次回は、明二十四日水曜日午前十時十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十九分散会