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1982-02-10 第96回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年二月一日(月曜日)委員長の指名で、 次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  税制及び税の執行に関する小委員       麻生 太郎君    今枝 敬雄君       大原 一三君    木村武千代君       笹山 登生君    椎名 素夫君       白川 勝彦君    平沼 赳夫君       柳沢 伯夫君    沢田  広君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       渡部 一郎君    玉置 一弥君       正森 成二君    小杉  隆君  税制及び税の執行に関する小委員長                 大原 一三君  金融及び証券に関する小委員       大原 一三君    熊川 次男君       笹山 登生君    中西 啓介君       中村正三郎君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    森田  一君       山本 幸雄君    佐藤 観樹君       平林  剛君    堀  昌雄君       柴田  弘君    和田 耕作君       簑輪 幸代君    小杉  隆君  金融及び証券に関する小委員長 中西 啓介君  財政制度に関する小委員       小泉純一郎君    椎名 素夫君       中西 啓介君    平泉  渉君       毛利 松平君    森田  一君       柳沢 伯夫君    山中 貞則君       与謝野 馨君    伊藤  茂君       野口 幸一君    平林  剛君       柴田  弘君    和田 耕作君       簑輪 幸代君    小杉  隆君  財政制度に関する小委員長   小泉純一郎君  金融機関週休二日制に関する小委員       相沢 英之君    麻生 太郎君       今枝 敬雄君    粕谷  茂君       熊川 次男君    白川 勝彦君       中村正三郎君    藤井 勝志君       与謝野 馨君    大島  弘君       佐藤 観樹君    塚田 庄平君       鳥居 一雄君    玉置 一弥君       正森 成二君    小杉  隆君  金融機関週休二日制に関する小委員長                 粕谷  茂君 ————————————————————— 昭和五十七年二月十日(水曜日)     午前九時四十五分開議  出席委員    委員長 森 喜朗君    理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君    理事 小泉純一郎君 理事 中西 啓介君    理事 伊藤  茂君 理事 沢田  広君    理事 鳥居 一雄君       相沢 英之君    麻生 太郎君       今枝 敬雄君    熊川 次男君       笹山 登生君    椎名 素夫君       白川 勝彦君    中村正三郎君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    森田  一君       柳沢 伯夫君    山本 幸雄君       与謝野 馨君    戸田 菊雄君       野口 幸一君    堀  昌雄君       柴田  弘君    木下敬之助君       玉置 一弥君    正森 成二君       簑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君  出席政府委員         大蔵政務次官  山崎武三郎君         大蔵大臣官房審         議官      矢澤富太郎君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         国税庁直税部長 吉田 哲朗君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君  委員外出席者         国土庁長官官房         防災企画課長  楢崎 泰道君         農林水産大臣官         房参事官    浅野九郎治君         農林水産省経済         局保険管理課長 岡田 明輝君         農林水産省経済         局統計情報部経         済統計課長   岩渕 道生君         農林水産省農蚕         園芸局農蚕企画         室長      近長 武治君         農林水産省農蚕         園芸局肥料機械         課長      松居  努君         農林水産省農林         水産技術会議事         務局研究開発課         長       坂柳 迪夫君         気象庁観測部産         業気象課長   尾崎 康一君         労働省労働基準         局補償課長   林  茂喜君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ————————————— 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     田島  衞君 同日  辞任         補欠選任   田島  衞君     小杉  隆君 同月十日  辞任         補欠選任   玉置 一弥君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     玉置 一弥君     ————————————— 二月九日  国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第一五号) 同月四日  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ  等に関する請願飛鳥田一雄紹介)(第一九  九号)  同(和田耕作紹介)(第二〇〇号)  同(依田実紹介)(第二二七号)  税制改革に関する請願外一件(川俣健二郎君紹  介)(第二〇一号)  同(佐藤誼紹介)(第二〇二号)  同外一件(武部文紹介)(第二〇三号)  同(堀昌雄紹介)(第二〇四号)  同(松本幸男紹介)(第二〇五号)  同(伊藤茂紹介)(第二〇六号)  同外一件(佐藤観樹紹介)(第二二八号)  同外一件(野口幸一紹介)(第二一七号)  同(堀昌雄紹介)(第二一八号)  同(渡辺三郎紹介)(第二一九号)  同(池端清一紹介)(第二二八号)  同(上坂昇紹介)(第二三三号)  同(佐藤敬治紹介)(第二三四号)  同外一件(高沢寅男紹介)(第二三五号)  同外一件(武藤山治紹介)(第二三六号)  同外一件(矢山有作紹介)(第二三七号)  同(山本政弘紹介)(第二三八号)  同外一件(戸田菊雄紹介)(第三〇一号)  同(中西積介紹介)(第三〇二号)  たばこ及び塩の専売制度維持に関する請願(粟  山明君紹介)(第三四九号)  専売事業制度に関する請願小沢一郎紹介)  (第三五〇号) 同月八日  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ  等に関する請願石川要三紹介)(第三六四  号)  同(小澤潔紹介)(第三六五号)  同(越智通雄紹介)(第三六六号)  同(大塚雄司紹介)(第三六七号)  同(石原慎太郎紹介)(第四六六号)  自動車重量税の還付に関する請願奥田幹生君  紹介)(第四六七号)  同(佐藤文生紹介)(第四六八号)  同外一件(坂本三十次君紹介)(第四六九号)  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属の処  遇改善に関する請願渡海元三郎紹介)(第  四七〇号)  税制改革に関する請願(阿部未喜男君紹介)(  第四七一号)  同(井岡大治紹介)(第四七二号)  同(市川雄一紹介)(第四七三号)  同(金子みつ紹介)(第四七四号)  同(北側義一紹介)(第四七五号)  同外一件(北山愛郎紹介)(第四七六号)  同外一件(新盛辰雄紹介)(第四七七号)  同(田邊誠紹介)(第四七八号)  同(西中清紹介)(第四七九号)  同(広瀬秀吉紹介)(第四八〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十六年度の水田利用再編奨励補助金につ  いての所得税及び法人税臨時特例に関する法  律案起草の件  農業共済保険特別会計における農作物共済、  畑作物共済及び果樹共済に係る再保険金支払  財源不足に充てるための一般会計からする繰  入金に関する法律案内閣提出第七号)      ————◇—————
  2. 森喜朗

    森委員長 これより会議を開きます。  昭和五十六年度の水田利用再編奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、先般来理事会で御協議願い、お手元に配付いたしましたとおりの起草案を得ました次第であります。  まず、本起草案趣旨及び内容を御説明申し上げます。  本起草案は、昭和五十六年度に政府から交付される水田利用再編奨励補助金について、税制上、次の軽減措置を講ずるものであります。  初めに、個人が交付を受ける同補助金については、一時所得収入金額とみなすとともに、転作に伴う特別支出費用等は、一時所得必要経費とみなすことといたしております。  次に、農業生産法人交付を受ける同補助金については、圧縮記帳特例を設け、当該法人交付を受けた後二年以内に、事業用固定資産の取得または改良に充てる場合には、圧縮額を損金に算入することといたしております。  なお、本特例措置による国税減収額は約十二億円と見込まれております。  以上が本起草案趣旨及び内容であります。     —————————————  昭和五十六年度の水田利用再編奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  3. 森喜朗

    森委員長 本起草案に関し沢田広君から発言を求められておりますので、これを許します。沢田広君。
  4. 沢田広

    沢田委員 ただいま委員長から御提案のありましたいわゆる水田利用再編奨励補助金課税特例法案について、この際、一言申し上げたいと存じます。  御承知のとおり、この種の課税特例法案につきましては、昭和四十五年からの米生産調整奨励補助金昭和四十九年からの稲作転換奨励補助金昭和五十一年からの水田総合利用奨励補助金昭和五十三年からの水田利用再編奨励補助金など、それぞれの時代の政策要請に応じて変化した補助金に対し、一貫して当委員会提出法律案として立法し、課税軽減措置を講じてまいったところであります。  しかしながら、私どもがこの種の課税特例法案を立法いたしましても、政府においてこの法律執行による政策効果実態を十分に把握されていないと思える現状にありますことはまことに遺憾であります。  この際、委員長におかれましては、政府に対し、本法成立後、この措置による政策効果実態調査を行い、その結果を当委員会に報告するよう求めるべきであると思いますが、委員長の御見解をお伺いいたしたいと存じます。  以上であります。
  5. 森喜朗

    森委員長 ただいまの沢田委員の御意見は十分理解できるものであります。御趣旨に沿って、調査の上報告するよう当局に要望いたしたいと存じます。  この際、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣において御意見があれば発言を許します。渡辺大蔵大臣
  6. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 この法律案につきましては、稲作転換必要性に顧み、あえて反対いたしません。
  7. 森喜朗

    森委員長 お諮りいたします。  本起草案委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  8. 森喜朗

    森委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出法律案とすることに決定いたしました。  なお、本法律案提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  10. 森喜朗

    森委員長 次に、農業共済保険特別会計における農作物共済畑作物共済及び果樹共済に係る再保険金支払財源不足に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を求めます。渡辺大蔵大臣。     —————————————  農業共済保険特別会計における農作物共済畑作物共済及び果樹共済に係る再保険金支払財源不足に充てるための一般会計からする繰入金等に関する法律案     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  11. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま議題となりました農業共済保険特別会計における農作物共済畑作物共済及び果樹共済に係る再保険金支払財源不足に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  昭和五十六年度におきまして、東北北海道地方中心として低温、暴風雨等による水稲、バレイショ、リンゴ等被害が異常に発生したことに伴い、農業共済保険特別会計農業勘定及び果樹勘定の再保険金支払いが著しく増大するため、これらの勘定の再保険金支払い財源不足が生ずる見込みであります。この法律案は、これらの勘定の再保険金支払い財源不足に充てるため、昭和五十六年度において、一般会計から、農業共済保険特別会計農業勘定に四百九十三億二千七百十万二千円、果樹勘定に百十六億七万千円を限り、それぞれ繰り入れることができることとしようとするものであります。  なお、これらの一般会計からの繰入金につきましては、後日、農業共済保険特別会計農業勘定または果樹勘定におきまして、決算上の剰余が生じ、この剰余から再保険金支払基金勘定へ繰り入れるべき金額を控除して、なお残余がある場合には、それぞれこれらの繰入金に相当する金額に達するまでの金額一般会計に繰り戻さなければならないことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  12. 森喜朗

    森委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  13. 森喜朗

    森委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。戸田菊雄君。
  14. 戸田菊雄

    戸田委員 ただいま提案のありました二法案について、質問をいたしてまいりたいと思います。  まず最初に、これは農林省の資料でありますが、昭和四十八年度から五十二年度までの五年間の農林水産業被害状況を見ますると、農作物は四十八年が九百二十七億、四十九年が八百七十六億、五十年が九百九十億、五十一年が五千三百五十二億、五十二年が一千四億、その平均が一千八百三十億円。その他の産物の場合は、四十八年が四十七億、四十九年が四百九十六億円、五十年が二百六十六億円、五十一年が百九億円、五十二年が三百七十六億円、その平均が二百五十九億円、その他施設関係等を含めますと、合計で年平均が四千二百七十六億円の被害をこうむっておる。さらに、農林水産省資料によりますと、五十三年度に農作物だけの被害が二千九十四億円、五十四年度が一千八百九十六億円、五十五年度が七千八百三十六億円、五十六年度が五千三百十四億円、ことに五十五年と五十六年の二年連続被害の大部分、これは水稲被害をこうむっておりますね。  災害状況を見ますると、ことに北日本北海道東北等々は、豪雪あるいは台湾の低気圧などによる暴風雨、晩霜、降ひょう、干ばつ、集中豪雨、台風、冷害など、ほかに塩害とか地震による高潮、山火事など多数に及んでおるわけでございます。こういったことは全国各地にいつどこで起きるかわからぬ、こういう状況だと思うのですね。ですから、当然国、地方自治体では、国土保全あるいは災害予防あるいは科学技術研究災害復旧対策発生時の応急対策財政金融措置を含めて、もろもろの基本対策等もやっておりますけれども、いまだにまだまだの感がするわけであります。  こういった問題に対して、国土庁としては基本的にどういう防災対策というものを持っておりますか、その点をひとつお聞かせください。
  15. 楢崎泰道

    楢崎説明員 災害を防止いたしまして国民の生命財産を守ることは国政の基本であると私ども承知いたしておりまして、関係各省庁におきましても、災害につきましては、施策の面におきましても予算の面におきましても重点的に配慮をなされておる、こういうふうに承知いたしております。
  16. 戸田菊雄

    戸田委員 基本対策についてもう少し具体的に、防災ウエートはどこに置いているのですか、その内容について少し触れてください。
  17. 楢崎泰道

    楢崎説明員 予算の面からその重点的なものを見ますと、やはり治山治水等国土保全事業が相当のウエートを占めておるわけでございます。  ちなみに五十六年度の防災関係予算について見ますと、国土保全が一兆二千二百億ということでございまして、防災関係全体の予算が二兆九百七十億ということでございますから、六割程度を占めておるわけでございます。そのほか、防災に関する科学技術研究、それから災害予防、それから災害復旧、そういった面につきまして重点的に配慮をいたしておる、こういうことでございます。
  18. 戸田菊雄

    戸田委員 本題でありませんから、次に進みます。  ことに農水省に質問するわけでありますが、東北地方は二年連続災害を受けておるわけですよ。農作物に対する災害というものを克服するために、農水省としてはどのように具体的に対処策を持っているのか、その中身一つ。  それから、五十七年度の農林水産省防災関係予算があるかと思うのでありますが、その二つを御説明願いたいと思います。
  19. 坂柳迪夫

    坂柳説明員 御説明申し上げます。  私どもの方では、気象災害に対しますところの試験研究を担当しておるところでございます。そういった面につきまして御説明申し上げたいと思うわけでございますが、御案内のとおり、東北地方等におきましては国の試験場があるわけでございますが、そういった国の試験場とそれから関係する県の試験場と連携をとりまして、いろいろな気象災害対応試験研究努力をいたしておるわけでございます。概要につきましてはそういうことでございます。
  20. 戸田菊雄

    戸田委員 農水省防災関係予算額内容を見ますると、五十七年度は五千六百七十八億四千三百万円。内訳で、灌漑技術研究、これが四億四千五百万、災害予防が三十六億三千七百万、国土保全が二千六百四十六億九千二百万、災害復旧等、これが二千九百九十億六千九百万、その他ゼロ、こういう状況になっているわけであります。  五十四年度の実績と五十七年度の予算見込みを見ますると、これは災害ですから少なければ少ないほどいいのだろうと思うのですが実際はなかなかそうはいかない、こういう状況だと思うのでありますが、これでまいりますと、ことに灌漑技術研究、これは四億四千五百万見当しかつけていない。五十四年度は約六億をつけていますね、実績として。中身としてどういうことをやっているかときのうも聞いたのですが、そうしましたら、品種改良とか各般研究をいろいろやられておる。だけど、現地に行ってみますると、やはり金が足らなくて思うような研究ができないというのが実態なんですね。ですから、結局冷害その他に対応できないということが多く出ているのです。  たとえば水稲果樹、そういったものに対する干害、雪害、そういう予防品種改良研究その他いろいろやられているわけですね。この辺の中身については一体どういうふうにお考えですか。
  21. 坂柳迪夫

    坂柳説明員 先生指摘ございましたように、私どもといたしましては、かねてからいろいろな形で、たとえば品種改良でございますとか、そういったことをやってまいっておるわけでございますが、最近におきますいろいろな気象災害多発傾向等に対応いたしまして、特に東北地方を対象といたします研究といたしましては、昭和五十五年度から五十七年度の予定で、東北地方におきますやませ風に関する研究というものを現在国と県が力を合わせて推進をしておるわけでございます。それから五十七年度からは、これはまだ計画中、予定でございますけれども、ああいったやませ風の常襲地帯営農の安定という観点に立ちまして、畑作物中心といたします総合的な研究に取りかかりたい、こういうことを考えておるわけでございます。  関係の県といたしましては、岩手県でございますとか宮城県でございますとか青森県、その辺が中心になってくるわけでございますが、そういった各県のいろいろな研究所、試験場がございます。そういうところと私どもの方の東北農業試験場が共同で冷害に強い作物の導入とか栽培技術の確立、こういうことに取り組む予定にいたしておるわけでございます。そういうこととあわせまして、技術の指導その他につきましても十分心がけてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  22. 戸田菊雄

    戸田委員 畑作用作物の各種の研究、これは後で私も触れてまいりますが、水田利用対策でもって減反政策がある。  僕のいまの記憶じゃ、減反全国的に平均大体一八%ぐらい。宮城の場合は米どころですから若干下回って、平均一〇%まできてないと思うのですがね。しかし、いずれにしても、農林水産省が指示をする転作目標品種、麦とか大豆とか、こういうものを減反してつくるということになりますと、これは輪換作できる土地整備でないといけないのですね。これはだめです。そういうことになりますと、宮城県ではいまわずかに一八%です、灌漑排水その他やって、基盤整備ができて輪換作できるのが。だから、大多数はだめだということになっているのですね。  だから、いま言った基盤整備転作用品種改良等、こういうものをあわせ含めて国としてやっていかなければ成功しないのじゃないかというふうに私は考えるのですが、その辺はどうお考えですか。
  23. 近長武治

    近長説明員 ただいま先生指摘のように、全国にわたりまして稲作から他の作物への転作を進めてきております。  ただ、転作を進めていくに際しまして私ども留意しておりますのは、全国単純に、一律に転作をするということではございませんで、やはり基本的には、日本農業の姿がなるべくその土地条件に合ったように進むということが重要なことだと思っておりますので、たとえて申し上げますと、転作目標全国への配分に当たりましても、いろいろな要素を配慮いたしまして、宮城県でありますとかあるいは新潟県のような米どころとその他の地域とは転作目標面積においてある程度の差がついている、それが一つでございます。  それから、転作を定着さしていきますには、いろいろ重要な問題がございますが、一つはどうしても農業生産基盤整備でございます。やはりいままで灌漑農業中心にしてきた日本農業でございますから、そこに麦とか大豆などの畑作物を入れるということはなかなか容易でないわけでございますので、そういう条件整備していく。それから転作作物におきましても、当然のことながら、品種その他営農面での技術的な問題を解明していかなければいけない。こういうことを総合的に考えながら、かつ全国の農家の方の御協力も得ながら進めていきたい、かように考えております。
  24. 戸田菊雄

    戸田委員 これは後で触れますので、ここでは割愛しますけれども、ぜひいま言ったようなことで両面から整備に向かって努力をしていただきたいと思うのであります。  次に、災害予防ということがあるのであります。主として食糧備蓄とかそういうものが入るのでしょうが、この中身はどういうものでしょうか。
  25. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 ちょっとお尋ねの点がよくわかりかねたのですが、災害予防……
  26. 戸田菊雄

    戸田委員 災害予防費として三十六億三千七百万の予算を組んでおられるのです。恐らくこれは食糧備蓄あるいは災害発生時の応急対策用各般の資材を備えておくのだと思うのですね。その中身をちょっと教えてもらいたい。
  27. 楢崎泰道

    楢崎説明員 いわゆる防災関係予算災害予防といたしまして取りまとめておりますものは、災害用の資機材でございますとかそれから防災関係の施設、国土保全関係の施設を除きました通信施設でございますとか、そういった施設の整備の事業あるいは学校を地震に耐え得るように補強する事業、そういったものを災害予防としてまとめております。それで、治山治水等の事業も災害予防ではございますけれども、事業の性格上、これは国土保全という形で取りまとめておる、こういう次第でございます。
  28. 戸田菊雄

    戸田委員 これはきのう聞いて実は内容はわかっているのですが、私はどうもちょっと心細いので、それで再度質問したわけです。  来年乾パンが二十六万食。それからほかに、米はもう余るくらいあるから、過剰米その他はということで米の備蓄はやってないようです。それから木材が二十億円分、これは具体的には住宅用だ、こう言うのです。住宅関係はいいにいたしまして、食糧関係ですね。乾パンだけで一体間に合うのか。乾パンを二十六万食、いままでの実績に応じていろいろはじき出しているのでしょうけれども、米は一般の倉庫にそのままどっさりある、いつでも持ち出せる状況だ、こう言っているからそれはいいのですが、この辺はどうでしょう。
  29. 楢崎泰道

    楢崎説明員 食糧備蓄というのは主として非常災害時を想定して備蓄がなされておる、こういうことでございまして、いま先生指摘の乾パン、農水省での備蓄かと存じますけれども、国として農水省でそういう施策を進めておられるということでございます。  ただ、備蓄は国だけではございませんで、各自治体におきまして、それぞれ県あるいは市町村の段階である程度の備蓄を進めておる。それは災害対策基本法で地域防災計画というものを自治体がつくることになっておりまして、その計画に基づいて、乾パンに限らず食糧あるいは日用品等の備蓄を進めておる、こういう状況でございます。
  30. 戸田菊雄

    戸田委員 いずれにしても、こういった災害発生すれば対策本部というものを鈴木総理大臣を本部長にしましてつくられる。各省でいろいろな角度からやっておるわけですけれども、農林省の場合に、ことに食糧関係の補てんが私は最大のねらいになるだろうと思うんです。それは乾パン二十六万食だけで、あと米はあるから——場合によってはチーズとかバターとかそういうものも含めて考えていくのが、これからの近代生活に対する対応じゃないか、こういうように考えるのですが、その辺もう少し検討されて充実をしてもらったらどうかという気がするのですが、どうでしょうか。
  31. 楢崎泰道

    楢崎説明員 乾パンというのは災害発生した場合の本当に緊急の二、三日をつないでいくというのが一つの使命であろうかと思うわけでございまして、災害発生当初の一週間ないしは十日ということが援助の期間だと考えられるわけでございます。そこで一日、二日をつないだ後はやはり食糧としては米であろう。その米は政府倉庫に相当量備蓄されておるわけでございまして、それを活用していく、あるいは被災地の中でそれが確保できなければ被災地外から急遽持ち込む、こういったような計画でおるわけでございます。
  32. 戸田菊雄

    戸田委員 これは大蔵省にも質問しておきたいのでありますが、科学技術研究費ですね。五十四年と比較して五十七年、三年後の予算を見ますると逆に減っているということがありますね。  これは、今日の行革がらみの各省一割カット、こういったものも影響しているのかもしれませんけれども、しかし、いずれにしても、これは一年や二年で研究完成なんということはとても望めないのですから、長期の年限そういうものに対してはやはりある程度金は使ってもいいのじゃないか。それが証拠に、今次五十七年度予算ではエネルギー対策費、主として原発が中心になっているようでありますが、こういうものもあわせ含めて、研究開発を含めて相当な予算を取っているだろうと思うのです。だから各省の問題についても、こういう問題については予算査定その他の段階において余りきつくしないで、それぞれ条件に応じて使うところには金を使っていく、こういうことが必要ではないかと思うのですが、その辺の見解はどうでしょう。
  33. 西垣昭

    ○西垣政府委員 五十四年と比較しての五十七年の予算の姿というのは、私いまちょっと手元に資料を持っておりませんが、基本的な考え方といたしまして、私ども財政当局といたしましても、必要な品種改良等、いま先生指摘のありましたような冷害対策のために耐冷性品種、つまり冷たい気象条件にも強いような品種を開発することが重要であるということは十分認識いたしております。また、これがお金を出したらすぐできるというのではなくて、研究開発、技術開発の期間として相当長期間を要するということもよく承知をいたしております。  こういった考え方に基づきまして、従来からも冷害関係試験研究を実施し、また助成しておりますが、先ほど農林省からお話がありましたように、五十七年度におきましては、特にやませ常襲地帯における安定生産技術の開発という技術開発に着手することといたしております。具体的な予算額は五十七年度二千六百万円でございますが、これが第一歩でございます。今後とも、財政事情は非常に厳しいわけでございますけれども冷害関係技術開発の重要性、緊急性に十分着目をいたしまして、限られた財源の中で予算の重点的な配分に努めていきたい、かように考えております。
  34. 戸田菊雄

    戸田委員 国土保全関係ですけれども予防治山あるいは復旧治山、地すべり防止、防災林造成、保安林整備、海岸保全事業、地盤沈下等、これが主になっているのですけれども、五十七年度の主要方向はどういう状況になっておりますか、何カ所ぐらいやられる状況ですか。いま私が読み上げた主要な各種の整備、そういったものに対して、予防治山でどのくらい、復旧治山でどのくらいとか、どのくらいやられますか。
  35. 楢崎泰道

    楢崎説明員 国土保全関係の五十七年度予算案におきまして、建設省関係の河川事業でございますと四千五百億、ダム事業二千百八十億、砂防事業一千六百九十億。それから農水省関係で申しますと、農水省関係の林道の災害復旧四十五億、農地農業用施設の災害復旧六百十億等々となっております。
  36. 戸田菊雄

    戸田委員 ことに災害等大洪水その他でもってたんぼが流失をしたとかなんとか、いろいろありますね。こういうものは急いで復旧対応措置をやっていただかないと、農村としても次年度の作柄に大変影響しますが、大体全国的にそういうことは解消していると思うのですが、その状況はどうでしょうか。
  37. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 申しわけございませんが、その点は構造改善局が担当いたしておりますが、本日出席いたしておりませんので、後ほど御説明に参上させていただきたいと思います。
  38. 戸田菊雄

    戸田委員 災害発生時で予定された予算よりオーバーする場合が多分にあるわけですね。そういうものだと私は思うのです。ですから、災害発生したときには被害その他に対しても復旧対策をできるだけ敏速に加速的にやはりやってもらう必要があるだろうというふうに考えます。そのことを今後の努力目標としてお願いをして、次の質問に移りたいと思います。  各種共済の問題ですが、果樹とか豚、畑作物、園芸、こういった新種事業の講習、研修、これはどういうように行われていましょう。
  39. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 共済団体の役職員の資質の向上を図りまして制度の適正かつ効率的な運営を期するため、役職員に対する研修、講習を従来から拡充強化してまいったところでございます。  その際、ただいま先生指摘がございましたような新種共済事業の関係の研修、講習には特に重点を置いておりまして、五十六年度から、従来の研修項目に加えまして新しく試験研究機関派遣研修を実施いたすことにいたしておりますし、五十七年度の予算案におきましては、各種の研修、講習を実施する経費といたしまして三千二百万円を計上いたしておるところでございます。
  40. 戸田菊雄

    戸田委員 昨年も国会等でいろいろ論議をされたところですが、ことに園芸とか果樹共済、こういったものに対する組合加入の割合というものが余り進んでおらない。一たん改正をしまして促進整備強化、そういったことで取り組んでおられますから最近は少しいいようでありますが、それでも果樹共済の場合三〇%くらい、その程度じゃないかと思うのです。樹体関係についてはもうほとんど加入していないのが多いようであります。  いずれにしても、これらについては農水省も大分努力をされて今日までやっておられると思うのでありますが、さらに牛や豚、こういったものの加入率を農水省の統計で見ましても、牛の場合ですと加入が二百九十四万頭、加入率で七七%ですね。豚が種豚の場合が二十七万頭、肉豚で八十四万頭、種豚が二一%、肉豚で九%と、大体こんな状況ですね。ですから、どうしてもこういった新種共済に対して研修、講習等をやはり積極的に進めて組合員の多くの加入促進、こういうものをやっていかなければいけない、ここ何年か努力する状況になるのだろうと思うのですが、何かもう少し抜本的にそういうものに対する加入促進の方策として考えられておる対策というものはありましようか。
  41. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 ただいま御指摘のございました加入促進問題でございますが、私どもといたしましては、加入促進の問題が特に緊要の課題になっておるというのは果樹共済の分野であるというふうに考えまして、先般御審議を煩わしました果樹共済法律改正におきまして、加入促進の見地から、無事故割引でございますとかあるいは特定の栽培方法をとっております農業者についての負担軽減措置等を図りまして、特に優秀な技術水準を持っております専業的な果樹農業者の加入を促進するということに重点を置いた制度改正をお願いしたところでございまして、私どもとしては、加入促進問題が一番緊急を要する果樹共済につきましては、先般そういうことで制度的手当てをお願いいたしましたので、それの一層の普及拡充を通じて、所期の成果を上げていきたいというふうに考えておるところでございます。
  42. 戸田菊雄

    戸田委員 農災法に基づく各種共済は七共済あるわけですが、これらに対して国の助成措置があるわけですね。  一つは財政資金の交付税制上の優遇措置、特別融資制度等々から各般の助成体制というものをとっておるわけでありますが、ことに財政資金の交付の中で共済掛金と事務費の国庫負担、これが私は基本的な助成体制だと思うのであります。補完的には補助金とか交付金をさらに出しておるわけでありますが、こういった中で事務費、これは現地では大変苦労をされて、ことに災害発生時等における各般の実測調査、その他いろいろやられておるわけでありますが、こういうものに対して、率直に言ってもう少し助成体制をふやしてもらえないか、こう考えるわけです。  ことに農林省の資料によりますると、現在の農業共済事務費評価委員数及び手当総額、補助総額等々と資料をいただいたのでありますが、連合会の場合、損害評価委員は総数で六百七十人おられますね。手当総額がわずかに一千万です。補助総額が五百万、合わせて一千五百万。それから損害評価員、これは全国で二千九百一名おるわけですね。手当総額は二千百万円、補助総額で一千九百万、合わせても四千万というところですね。それから組合等に対する損害評価委員、これは全国で三万七千九百八十八名、手当総額で六億三千九百万円、補助総額二億五百万円。損害評価員二十一万五千五百二名、手当総額は十六億八千百万、補助総額で四億三千百万円。共済連絡員というのがおります。十九万九千百十一人、手当総額が十五億七千八百万円、補助総額三億九千八百万。これらを合わせまして、手当総額で三十八億九千八百万円、補助総額が十億三千四百万円、こういうことですね。これを大体目算で割ってみますと、一人当たり年間三千円見当にしかならない。全くの無条件奉仕ですね。  そういう関係で、さらに、評価結果について連合会と国の評価が違ったりなんかして大変な問題になった。五十五年もそうですし、五十六年もそうです。ですから、そういうものをなくすために農水省としては四項目の指導通達を出して、そしてことしはそういうことが功を奏して、連合会と国の評価に対する不統一というものは全くなかった、こう農水省は言っているわけです。だから、そういう実測導入や調査の導入をやったりなんかして、いろいろないわば人的活用でやっているわけですから、それを年間三千円というのは私は余りにも問題にならぬと思うのですね。こういうものについてもう少し納得できる線、いま急に一人当たり何万円よこせ、こう言うのではないのですけれども、そういう面についてどう考えますか。
  43. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 御指摘の損害評価員及び共済連絡員の手当の問題でございますが、私どもといたしましては、この種の仕事をやっていただくのは、何と申しますか、農業者相互間の相互扶助的な意味での善意に期待しておるという面がございまして、純然たる賃金とかそういう性格の金額をスタンダードに置いて考えるべきものではないというふうに思っているわけでございます。  ですから、そういう意味では、日当として見て幾ら何でも低いじゃないかという御議論もあろうかと思いますが、農村の地域社会の中での相互扶助的な機能という側面を持っているもの、そういう認識がございますということを一つ申し上げておきたいと思います。とは申しましても、確かに従来の損害評価員手当、共済連絡員手当の水準は問題があると思っておりまして、五十七年度予算案につきましては、この手当の単価を八%アップしたところで計上をいたしておるわけでございます。そういう意味では、私どもも適切な改善には心がけておるつもりでございます。
  44. 戸田菊雄

    戸田委員 これは事務費のアップばかりではありませんが、社会保険料の国庫負担金ですね、こういう問題に対しても、職員は普通の場合よりも掛金率は少し多くなっていると思うのです。だから、こういうアンバランスを解消するためにも少し考えていく必要があるのじゃないだろうかというふうに考えます。  この事務費手当を今回は八%アップしたということですが、今後五年なら五年の中で妥当と思われる、常識的に考えてまあまあこのくらいならやむを得ぬというような程度までは漸次上げるべきだと私は思うのです。ことに評価員は、災害発生して実測でもって行ったりなんかすると家庭の人はもう血眼なのですから。そういう中で夜も寝ないで調査結果を整理をしたりしてやっているわけです。そういう御苦労からいっても三千円じゃあれですから。八%といってもわずか二百四十円でしょう、上がって。三千二百四十円なんというのは、いまちょっとパート行ったってむずかしいのじゃないでしょうか。それも一回のみならず何回もやられるわけですから、稼働日数からいったら相当莫大なものに上るのです。ですから、これはぜひひとつ検討してアップの方向でいっていただきたいと思います。  それから、職員の社会保険料の国庫負担金の問題ですが、これはどうですか。
  45. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 この点は、本年度まで千分の四十九でございましたものを千分の五十四・五に引き上げるということで五十七年度予算案に計上いたしております。
  46. 戸田菊雄

    戸田委員 それから次に、共済制度そのものの改善についてひとつお願いしたいのですが、農作物共済支払いは、これは引受方式のもとに大体次のような算出方法でやられているわけです。  農災法の百九条第一項から同三項までですが、一つは一筆方式、耕地基準収穫量の百分の三十、それから半相殺農単方式、農家の基準収穫量の百分の二十、全相殺農単方式、これは百分の十、こうなっているわけです。これを実損害に比例して比例てん補方式ということで、損害を受けたら全部そのとおりやっていくのだ、補償するのだ、こういうところに改善措置ができないかどうか。どうでしょう、見解をひとつ。
  47. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 現在のいわゆる足切りの制度が設けられております基本になる考え方は、何しろこの農業共済制度は膨大な国費の負担を伴うものでございますから、ごく軽微な被害までそういう制度でカバーをするということはいかがなものであろうか。逆に申せば、ごく軽微な被害については農家がみずからの経営の内部問題として対応をしていただくべき筋合いのものではないかという考え方が一つと、もう一つは、農業者の自助努力によって防止可能な災害までこの制度でカバーされることになるということもまた、巨額の国費の負担を伴う制度でございますので、そういう事態は回避しなければならない。おおよそいま申し上げましたような二つの考え方に由来するものでございまして、そういう意味で私どもといたしましては、この足切りを設けておる基本的な考え方自体はにわかに放棄しがたいというふうに感じておるわけでございます。  一方、しからば農家の側から見ましてどうかということでございますが、ただいま先生指摘のような補てん方式にいたしますということになれば、当然その共済掛金率も引き上がるわけでございますし、共済組合の損害評価のコスト、事務費等も増大するわけでございまして、ごく微細な災害までカバーしてもらうというメリットを享受するために、共済掛金の引き上げとかそういう負担を受け入れることが得策であろうかということが、これまた農業者の立場から見ても一考を要するところではあるまいかというふうに思っておるわけでございます。せっかくの御指摘でございまして、前向きのお答えをいたしかねるのは心苦しく存じておりますが、足切りという基本考え方自体は、私どもとしてはどうも捨てがたいというふうに感じております。
  48. 戸田菊雄

    戸田委員 この点は真剣に考えていただきたいと私は思うのです。  私は確実な資料をいまここへ持ってきていませんが、農家の農業所得、これは全国平均で総体の四〇%そこそこではないでしょうか。あとはほとんどが農外収入ですね。ことに東北の農家といいますと米作一本やりですよ。あとはほとんど出稼ぎその他、こういうことで収入を得て生活をしているという状況ですから、そういう状況の中で一割にしても二割にしても米収の減があると、これは家計に及ぼす影響は大変なんですね。  たとえば、五十五年、五十六年と二年災害でやられまして、三本木という人口一万人までいかない小さな町がありますが、ここで米だけでことし六億減収です。だから地域経済はもう冷え切ってしまって、雑貨商なんか畳む店もところどころに出てきているという状況です。そういう点では東北全国に比してひどい状況なんです。だから、一割でも何でも被害をこうむったものについては制度上の適切な保護政策というものが必要だというふうに私は考えるのですね。  そういうことですから、いま局長が指摘されるように、こちら全体を拡大していけば、支給の範囲を拡大していけば、それは保険制度ですから当然それに見合う掛金ということになるかもしれない。私もその点の計数はまだはじいてみませんけれども、しかし、いままでも政府はそれぞれしかるべき国庫負担、掛金をやっておるわけですね。水稲の場合でも四%を超える部分については七〇%、以下三%から四%、二%から三%、一%から二%、一%以下、六五%、六〇%、五五%、五〇%というふうに段階方式でやられておる。だから、これは相互分担方式で、できるだけそういうものの掛金率が多くならないような何か精査、検討をやって、でき得ればこういった比例てん補方式に移行して、損害が出た場合には全体これは責任持ちますよ、こういう方式の制度に少しでも改善、検討していけないものだろうか、こう考えるのですが、どうでしょう。
  49. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 先ほど農業共済制度に足切りが設けられている由来を申し上げましたが、実は、足切り的発想法は農業共済制度だけではございませんで、たとえば天災融資法の資金でございますとか自作農維持資金とか、こういうものも、いかに軽微な被害でも被害があれば融資するという制度になっておるかというと、そういうことにはなっておらないわけでございまして、一定以上の深さの被害があった場合に天災資金が借りられる、自作農維持資金が借りられるということでございまして、いろいろな災害対策をおしなべて見て、幾ら軽微な被害でもいやしくも被害があればめんどう見るというふうには通則的に言ってなっておらないということがございます。  それからもう一つは、先ほど農業者の側から見て掛金のアップとの対比で得失いかんという問題が一考を要するという点につきまして、ただいま先生から、国庫負担の問題も含めて農業者の負担がふえないでそういう制度を工夫する余地がないものかという御指摘がございましたが、その点につきまして、現下の情勢のもとでの私どもの率直な感想を申し上げさせていただきますと、実は、私どもの局では目ぼしい予算と申しますと、農業共済予算、農林年金の予算農業金融関係予算ということでございまして、ゼロシーリングの中でどうやって帳じりを合わせるかというのは四苦八苦いたしておるわけでございます。天から財源が降ってくるわけではなくて、私の局の中で財源を捻出しようとすれば、農林年金を削るか農業金融関係予算を削るかしないと農業共済予算が捻出できないわけでございますので、そういう状況のもとで、どうも国庫負担の増高を招来しかねまじき制度改正を検討するということはおよそ至難のわざであるというのがいまの偽らざる心境でございます。
  50. 戸田菊雄

    戸田委員 なかなか困難だという見解ですが、これはぜひひとつ今後重要な研究課題として検討していただきたいと思うのです。要望しておきたいと思います。  次に、園芸施設共済の事業の責任分担、これを明らかにすべきだと思うのですが、この点が一つ。  それからもう一つは、家畜共済の掛金の国庫負担。牛、馬の場合は五〇%負担ですね。ただし豚は四〇%。これは、牛、馬は背が高いから、豚はまだちゃっこいから少しあれしろ、こういうことかもしれぬが、豚も牛、馬並みに国庫負担を同率に引き上げてはどうか、こういう見解でありますが、これはどうですか。
  51. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 まず最初に園芸施設共済の責任分担方式の問題でございますが、この問題につきましては、園芸施設共済の五十四年度の本格実施以来、五十四年度、五十五年度と連年にわたり各地に被害が多発いたしまして、その結果、一部の農業共済団体で園芸施設共済に相当の不足金を生じたという事態がございます。また、そういう中で共済金の支払いが多額であったのに対して、支払われた再保険金が比較的少なかったために、現在の再保険方式が問題があるのではないかというような御批判があることも私ども承知をいたしています。  私どもといたしましても、このような御批判に対して耳を傾けておらないわけではないわけでございまして、当面とり得る措置といたしまして、五十六年度から通常事故に係る再保険金支払い開始割合を従来の五割から三割に引き下げるというようなことをやってまいったわけでございます。これだけで問題がけりがつくかということであろうかと思いますが、何分この種の問題につきましては、保険設計上の資料整備状況というような問題もございますし、どういう改善措置が工夫し得るかということをなかなか、頭で考えさえすればいい制度が工夫できるというものではないという側面がございますのですが、せっかく合理的な責任分担方式の確立を図るために、五十六年度、各共済事業の責任分担のあり方につきまして学識経験者の御検討を煩わして調査研究を行っておるところでございますので、しばらく御猶予をいただきたいと思います。  それから、豚の共済掛金の国庫負担割合でございますが、これは先生御高承のとおり、近年共済掛金の国庫負担割合の改善を図りましたのは、主として畜産関係中心に共済の国庫負担割合を引き上げてきたわけであります。その歴史は先生御高承のとおりであろうと思います。それで、現状につきましていろいろ御議論があろうかと思いますが、ともかくここまで引き上げてきて、そこから先どうするかということになりますと、率直に申し上げてよほど慎重な検討を要するところであるというふうに思っておりますが、畜産政策の動向及び家畜共済の加入状況を見ながら検討をいたしていきたいと思っております。
  52. 戸田菊雄

    戸田委員 前段の園芸施設等の共済の問題ですが、いま三共済は必須事業として事業主体がはっきりしてやられている。漸次必須事業に持っていくことが加入率も自動的に促進される根本問題ではないかと私は考えるわけです。ぜひいまの回答のようにひとつ御検討願いたいと思うのです。  それから、豚の方が四〇%で、私がさっき数字を発表しましたが、数も少ないことは確かに少ないですね。これはいまの日本の経営実態というのは、私の方ですと、宮城県ですが、じいちゃん、ばあちゃんが小遣い取りで五頭ぐらい豚を飼ってというようなものが非常に多い。言ってみれば零細企業というか家内工業的なもの、そういうかっこうでやられているものが多いから、比較的そういう点で浸透していないということもあると思うのですね。だけれども、これはやはり共済を設定して今後拡大をしていかなければならないわけですから、そういうことになれば、基本の掛金の問題で牛、馬同様に持っていくことが自後の共済事業そのものの拡大につながるのではないかという気がしますので、これもひとつ十分御検討願いたいと思います。  次に、時間がなくなってきましたから、要点だけ質問いたしたいと思うのですが、五十五年十一月閣議決定の農政審答申「農産物の需要と生産の長期見通し」これによりまして、大体昭和六十五年を目標として一定の水田利用再編対策による生産調整計画というものを確定していますね。時間がないので、一応農林省の資料に基づいて私の方で発表しますけれども、この生産調整面積七十六万ヘクタール、麦転作が大体十一万ヘクタール、大豆が十五万ヘクタール、特定作物大豆、麦類、飼料など、この計が五十万ヘクタール。野菜が八万ヘクタール、永年性作物が四万ヘクタール、その他十三万ヘクタール。飼料が二十四万ヘクタール、これは上に入ります。こういうことで七十六万ヘクタールの減反をやるという生産調整はぴちっと決まっているわけですね。決まっているけれども、それに加えて、農業政策の転作、そういった面の合理性を持たせるために一定の転作奨励金を支給しておるわけです。これは五十六年十一月の農水省の「転作の現状」その中の十一ページにあるのですが、時間がありませんから額は読みません。  いずれにしても、こういうことになっているのですが、私はこれは賛成なんです。行革がらみで情勢はいろいろありますよ。しかし、転作をしても土地基盤整備その他の不十分さからさっき言ったような状況なんですから、こういうものがなければ農村は死んでしまうのですよ。だから、そういう意味合いにおいてぜひ本問題については、前途約十年あるわけですね、やられていくわけですから、今後ともこういうものは継続をしていただきたいと思うのですが、その見解をひとつ。
  53. 近長武治

    近長説明員 御質問の水田利用再編対策でございますが、お話しのように、米の大幅な過剰基調、こういう問題に対処しながら、農業生産の姿を需要の動向に安定的に対応できるような、そういうものにしていきたい、それがひいては日本の総合的な食糧の自給力の向上に役に立つ、こういう考え方で進めておりまして、現在、昭和五十三年を初年といたしますおおむね十カ年の計画で水田利用再編対策を進めているわけでございます。この水田利用再編対策は、やはり農家の経営を安定させるということが非常に大事でございますので、幾つかの期に分けて実施するということで、ただいま、昭和五十六年度から五十八年度までの三年間を期といたします第二期対策を進めているわけでございます。  それで、結局、この期ごとに奨励補助金を幾らにするかということは、その状況におきます米と転作作物との間の収益性の動向あるいは転作の定着化の方向づけというようなことを基本として定めておるわけでございます。現在、臨時行政調査会の御指摘もございましたし、それから一昨年の農政審議会の答申の中でも、「八〇年代の農政の基本方向」の中で「中核農家が中心的な担い手となって、転作田の集団化を図りつつ、生産性の向上、米と転作作物の収益性の望ましい方向への是正等により当面は必要とされている転作奨励金への依存から次第に脱却し得る営農が定着するように努めていく必要がある。」こういうことでございます。  私どもやはり、方向といたしましてはこの農政審議会の答申のとおりであろうかと思いますが、ただ、現在第二期を進めておりますので、第二期におきます奨励補助金につきましては、期を通ずるものとして定めたところでございますので、農家の方の経営の安定というようなこともございますし、それから、現実に農家の理解と協力を得ながら進めてきている、こういうこの対策の精神もございますので、二期の期間中はこれを維持する必要があるというふうに考えております。  しからば、第三期以降どういうふうに考えるかということでございますが、第三期以降の奨励補助金の水準とかどういう体系にするかということにつきましては、第三期がスタートする際におきますお米の需給事情あるいは他の作物とお米との間の相対的な収益性、それからその時点におきます転作の度合い、こういうようなものを総合的に勘案しながら定めていかなければいけないというふうに思いますので、これにつきましては、その時点にまた十分御意見等を拝聴したいというふうに考えております。
  54. 戸田菊雄

    戸田委員 時間があと一分程度ですから、最後に、いまの問題について大蔵省の次長はどう考えるか、これが一つ。  それからもう一つは、転作奨励金というものの免税措置ですね。これはかねがね大蔵省の主張としては、所得税法からいってなじまないということで、国会でもいろいろ論議をされて今日に至って、きょうのような処理になっているわけでございます。私は、やはりこの免税措置についても、いまの事情等からいって当然やってしかるべきである、こういうふうに考えておりますので、その二点を最後に次長にお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  55. 西垣昭

    ○西垣政府委員 第一点の、三期以降の転作奨励補助金の単価あるいはその仕組みにつきましては、ただいま農林省の方からお答えしたとおりでございまして、つけ加えることはないと思いますが、基本的には、農政審の答申や臨調の第一次答申の趣旨をも踏まえまして、奨励金依存から脱却するという基本的な方向に沿いまして対処したい、かように考えます。  それから第二点につきましては、まことに申しわけないのでございますが、ただいま主税局が退席しておりますので、お許しいただきたいと思います。
  56. 戸田菊雄

    戸田委員 終わります。ありがとうございました。
  57. 森喜朗

  58. 沢田広

    沢田委員 時間の関係上、順不同でありますが、まず大蔵省から。  この保険勘定で、大蔵省の再保険会計の再建の案というものは持っているのか持っていないのか、これはあるかないかだけお答えいただきたいと思います。
  59. 西垣昭

    ○西垣政府委員 先生の御質問は、恐らく果樹勘定関係について御質問しておられるのだと思いますが、果樹勘定につきましては、五十五年度改正に基づきまして、五十六年度契約から改善の方向でということを期待しているわけでございます。期待したとおりにいきますかどうですか、これはもう少し見守っていかなければわからない問題でございまして、その辺を見守りながら、所管の農林省とも相談をし、必要があれば必要な措置を講ずるということでまいりたいと思っております。
  60. 沢田広

    沢田委員 きょう配付された資料の中で、農業勘定果樹勘定だけしか出ていないのでありますが、たとえば四十九年、五十年、五十二年、これは繰り戻しゼロということになっております。どういう理由でこの年度がゼロであったのか。全然ゼロというのが若干問題があるので、たとえば何億であるかは別問題として、可能性があったのではないのかというふうに思えるわけです。ちょうどツーペイになりましたという論拠はちょっと理解に苦しむ。  果樹勘定でいくと、五十二年、五十三年が、年間大体五十億——その当時五十億あったかどうかは別として、五十二年、五十三年もこれがゼロ。これも理解に苦しむ数字なんです。いま回答をいただこうとは思いません。どういう理由でこのときにこの繰り戻しがゼロであったのか、その点だけ。果樹勘定においては、一般会計への繰り戻しが、これでいくと、五年、六年ずっとゼロというのが続いているわけですね。これが再建計画として果たして可能なのかどうか。とにかく毎年ゼロが続いているという状況であるとすれば、勘定自体の体質の弱さ、こういうものにも通ずるのではないかという気がいたします。  ですから、これはいま回答を求めませんが、追って書類等で回答いただけるかどうか、その点だけお聞きをしておきたいと思います。
  61. 西垣昭

    ○西垣政府委員 先生も御承知のように、農業共済考え方は長期的に収支が相償うという考え方に基づいて設計されているわけでございます。  それで、農業勘定の稲の関係につきましては、五十五年度、五十六年度はまことに異常な災害でございまして、それ以前の部分につきましては、一般会計の繰り入れ分は完全に繰り戻されているということで、それほど問題はないのではないかというふうに思います。  それから果樹勘定につきましては、先ほど申し上げましたようになかなか収支が相償わないという状況で、五十五年度に改正を行ったところでございますが、その改正の効果が十分にあらわれるかどうかという点については確かに問題はございます。その辺につきましては今後の推移を見ながら検討してまいりたい、このように思います。
  62. 沢田広

    沢田委員 これは農林省でありますが、農業災害補償法の第一条には、農業者が不慮の事故によって受ける損害を補てんをする、こういうことで法律の第一条の目的が規定されております。  ここで言う農業者とは、者というのはどう考えても人ですね、物質ではなくて人を指すのじゃないかと思うのであります。そうしますと、農業者が不慮の事故によって受けた損害を補償するということは、農業者、農業従事者本人を含むものだというふうに解するのが私で言えば常識的だと思うのでありますが、含むものか含まないのか、その点御回答いただきたいと思います。
  63. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 私どもといたしましては、農業災害補償法全体を通読いたしまして、この制度は物損を対象にする制度であるというふうに認識をいたしております。一条自体について文理的な解釈をいたしますれば、それは農業者というのはまさに人間であるというのは先生指摘のとおりであると思いますが、この法律全体を通読いたしてみますと、これは物損を対象にした制度である。  しからば、人的な被害についてどうするかという問題でございますが、農業者の業務上の障害等を対象とした共済ないし保険の仕組みといたしましては、農業労働災害の補償について労災保険法の特別加入制度がございますので、そちらで対処していくことを相当とするというふうに考えております。
  64. 沢田広

    沢田委員 だから、法律上の全体のたてまえは農業勘定から果樹勘定、家畜勘定というふうに分かれていっていますから、人災に対しての補償は全然法律の体系の中に入っていない。  しかし、この法律をつくった当初のこの農業共済の補償に当たっては、少なくとも農業者が不慮の事故に遭って受けた損失を補てんするという目的でこの法律ができている。とすれば、農林省としては、少なくとも人を含めた農業共済に発展をしていく準備を今日まで、怠慢とまでは言わぬけれども、素知らぬ顔をしておったということは少し怠慢であった、結局怠慢だな、怠慢であったということのそしりは受けるのではないか。その他の条文に入れてないから、第一条に農業者と入れたのは何ゆえかということになれば、当初法律としては、農業関係の補償というものはすべてこの法律の中で考えていこう、こういうのが一つの前提であった。たとえば、ダムが決壊して洪水になって人が死亡する、こういうこともあると思うのです。そういうような状況考えて、この法律のたてまえとしては農業者個人の人災の補償も含める、そういう気持ちはあるのですかあるいは全然ないのですか、その点だけひとつお答えいただきたい。
  65. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 立法の経緯も私どももいろいろ調べてみたのでございますが、一条の書き方がこういうふうになっておりますのは、言うなれば立法技術上の問題としてこういう書き方をしたということでございましたようで、当時の記録を調べてみましても、どうも人的損害まで含む災害補償制度に将来発展していくべき展望を持って一条をこういうふうに書いたという痕跡はございません。  それで私どもとしては、農業災害補償制度を人的損害も包括する制度に発展させていくということは考えておりませんで、先ほど来申し上げておりますように、労災保険のフレームワークの中で対処していくことを相当とするというふうに考えておるわけでございます。
  66. 沢田広

    沢田委員 では、これは了承したわけじゃないですよ。法律というのはひとり歩きするものですからね。今日的段階において、農業者が不慮の事故に遭ったということは、だれがどう考えてみても、それは外れているのだということは、この言葉の中からは出てこない。だからその意味においては、この第一条をもし尊重するとすれば、人的災害もこれから検討していくということにならざるを得ないのではないかと思いますが、これは私の意見でありまして、今後やります。  そこで、全部労災の方に任せます、一歩譲って入っていないと解釈します。では、現在農林省は、今日の農業従事者が、いろいろな機械化によって、昔のようないわゆる原始的な耕作の体質から今日大きく機械化になってきた、機械化になればなるほど労災的な災害を受ける条件は多くなってくる、その条件に対応する措置はとっておりますか。
  67. 松居努

    ○松居説明員 農林省といたしましては、農作業事故調査、これは特に農業機械を中心に農作業の事故調査の結果を踏まえまして、特に重度な災害に結びつくような機種については、従来から労働省にお願いいたしまして、機種の拡大あるいは作業範囲の拡大をお願いしてきているところでございます。
  68. 沢田広

    沢田委員 労働省来ていますね。では労働省、いま農林省から、この労災に適用される業務範囲というものはどういうものが申し出られているのですか。
  69. 林茂喜

    ○林説明員 農業従事者と申しましても、大きく見ますと、雇われている雇用労働者とそれから事業主と、こう大きく二種類に分かれると思うのですが、その点で私どもとしてお断りしておきたいのは、労災保険制度は、本来的には基準法上の雇用労働者の業務災害について使用者の補償責任を保険によって履行しようというのが趣旨でございまして、事業主や自営業者一般の災害補償を労災保険制度によって行うということは、本質的にはなじまない問題でございます。  しかしながら、零細事業主や自営業者の中には、その作業実態災害発生状況から見て、雇用されている労働者に準じて特に保護することが適当であると認められる者に対しまして、労災保険本来の使命やまた保険技術の点から見て許容し得る範囲で、特別加入の制度を認めているところでございます。特に農業従事者の特別加入は、農業一般に対する補償制度が農業政策の中で創設されれば、私どもとしてはその中に吸収されるべきもので、それまでの措置として設けているというふうな考え方でおります。したがいまして、その補償の範囲も、危険度が高く重度の障害を起こすおそれがある特定機械による特定の作業を対象として最小限度にとどめることとしているところでございます。これは中小事業主や自営業者についてでございまして、もちろん雇用労働者については、業務上の災害ということであれば全面的にこれは労災保険で認めるわけでございます。  現在、これらの農業機械の種類は農業用トラクターのほか十六種類を認めておりますが、新しい機械の導入や開発状況を考慮いたしまして、その都度農林省の方と協議の上検討することといたしております。
  70. 沢田広

    沢田委員 まず原点的な立場から違いが出てきていることが一つありますね。農林省の方は、農業災害 補償法でまず人は含まない、こういう考え方を示した。ところが労働者の方は、原則としてそれは入らない、特別に農林省の方から要請があったものについてだけ、いまで言えば十六種類だけしか入れていない。農林省は、これに対してどう対応しようとしているのですか。
  71. 松居努

    ○松居説明員 先ほど御説明いたしましたように、農作業の事故調査、いわゆる死亡調査なりあるいは傷害調査の結果に基づきまして、重度な災害に該当するような機種ですね、先ほど労働省の方から十六機種とございましたが、これは機種の種類によりましては十八機種というふうにも読めないことはないわけでございますが、現在、農業機械作業によりまして重度な災害の原因となっておりますところの機種は、一応指定機種ということで補償の対象機種というふうになっておるわけでございます。
  72. 沢田広

    沢田委員 そんなこと聞いているわけじゃないのです。これから農家経営というものは、貿易摩擦もあって、どんどん改善もしなければならないだろうし、大いに変わっていくわけだ。で、農業労働者が災害を受けたときに、だれがどういうふうに補償をしていくのかということをいま聞いているわけだ。十六だとか十七だとか——では、十六と十七はどうなんだ、労災に入れてもらっているのはどうなんだ、農林省はどう考えているんだと言うと、逐次入れていきますということです。  それは、災害を受けてからようやく入っていくようなものでしょう。交通事故が起きたら信号がついたというようなものだ。そんな、農林省が農業災害に対して、人的損害に対して何ら考慮していないような状態というのは、いわゆるここでいう農業者の不慮の事故というのは、その中に含まれるのではないか。本来は農林省が考えていくことだ。当面、耕作とかいわゆる家畜に限定はしたけれども、将来は考えていくということを前提としているのじゃないのか。では農林省は今後も考えないのかと言うと、考えない。労働省は考えるのかと言うと、これも考えない。  では、これはだれがめんどうを見るのですか。そこで相談して、どっちか答えてください。そんな不明確な状態に置かれた農業労働者はたまったものじゃない。はっきり、どっちかしてください。
  73. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 私が、農業災害補償法の対象として人的な損害をこの制度に包摂するという展望を持っておらないというふうに申し上げましたのは、物損と人的損失を共通して包摂する災害補償制度をつくるということを考えておらないということを申し上げたわけでありまして、農業者の農業労働上の災害について、わが省が無関心でいていいというふうには考えておりません。  それで、農業者の農業労働上の災害について、設置法のどこに書いてあるのかというのは私もよく知りませんが、当然わが省として責任を感じるべき問題であるというふうに考えております。  ただ一方、これは農業以外の他の業種においても、一人親方というような形でかなり広範に見られる共通現象でございますので、わが省単独でしゃしゃり出て一定の制度をつくるということが適当であるかどうかということについても一考を要する点でございますので、そこら辺は労働省初め関係各省と御相談をいたしながら対処すべきものと考えておりまして、私ども単独でどうこうとは申し上げにくいわけでありますが、当然わが省は責任を感じるべき分野であるということは自覚をいたしております。
  74. 沢田広

    沢田委員 何を言っているかと言えば、まことにけしからぬ答弁だ、そんなこと。そんな言い回し方でごまかそうなんというのはもってのほかだよ。要すれば農林省が考えなければならぬだろうということ。労働省としては原則的に入れません、こう言っているんだから。  では具体的にどう進めるのか。いままで何をやっていたのだ。急に大蔵省の主計富みたいな物の言い方をして、総合的だ、何が総合的だ。農林省の役人だったら農林省のことだけを考えればいいのだろう。農林省の労働者のことだけをまず優先的に物を考えて、相手に断られれば別として、一人親方がいるから、それを待っているのだなんて、何のために農林のためにこれだけ補助金なり予算が出ているのだ。それだけ日本の農政に対して、国の政策として必要だから出ているんじゃないですか。その必要度合いというものを考え農業労働者を守るのがあなたの役目じゃないか。何を言っているのだ、全く。  とにかく、委員長も聞いているとおり、農林省と労働省、こういうふうに突っかいもの扱いで、農業労働者が人災に対してきわめて——たとえば十六種類、中身は後で出してもらいたいのだが、この間労働省へ聞いたら、揚水ポンプ場のディーゼル機関、電気ポンプ、それは入っております。しかし排水機場は入っていない。どうしてだと言ったら、農林省から要請がありませんから、これが答弁だった。その答弁が正しかったか正しくないかは別だ。ともかくそういう返事だ。あるいは、その他の場合にしゅんせつをしている。河川の水路のしゅんせつをする。しゅんせつで死亡する。その場合は、じゃだれが補償するのかというようなことも起きる。  農村地区へ行けば藻刈りもやるし、しゅんせつもやるということになる。あるいは雇う場合も起こり得る。こういう場合に適用するようになっているかと言ったら、なっていない。そうでしょう、なっていないでしょう。それが農林省はどうなんだ。そういうことが、コンバインもサイロもある、高所作業もある、これから高圧線も扱う、電気器具も多くなった。そういう状況において、点検しているのですか。そういうものに対して、どれだけの災害があって、それについてどういう補償制度をしたらいいのかということを農林省としてはどう考えているのか。
  75. 松居努

    ○松居説明員 先ほど先生から御指摘のございました排水ポンプでございますが、これは通常、農家の場合揚排水ポンプというものを利用して排水を行うわけでございますが、動力排水機としては指定機種になっておるわけでございます。  コンバイン等いろいろ御指摘がございましたが、農林水産省としては、先ほどから御説明いたしましたように、毎年度死亡調査あるいは事故調査をやりまして、いわゆる労働災害に結びつくような機種、まあ十八機種について現在指定機種として労働省の方に位置づけしてもらっているというところでございます。  そういうことで、今後ともいわゆる農業機械の普及等に伴いまして事故調査を行いまして、重度な災害に結びつくものにつきましては指定機種に入れてもらうよう働きかけていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  76. 沢田広

    沢田委員 これまたいみじくも、事故が起きたら信号がつくの論をみずからあなたが言っているのだ。事故調査をして、事故が起きたならば今度は考えましょう、そういう退嬰的な消極的なことで農業労働者の人命が守れますか、あるいは補償ができますか。  そうじゃなくて、今日のような時代の変革に対応して、労働省の方はなかなか受け入れないという状況にあるわけだから、その中に入れてもらうならば、やはり将来の展望を持ちながら、こういう種類とこういう種類、いま言ったようなものはみんな入っていないでしょう。入っていない現実の中で、事故が起きたら入れましょう、そんな答弁でこの災害補償の法案を持ってくるなんというのはもってのほかだ。そんな態度ないですよ。事故が起きたら手配しますなんて、そういう答弁で通りますか。事故が起きて、事故を調べてみて、それから労働省へ行ってきますなんて、何が災害補償ですか。そんなばかな答弁、委員長、だめだ、こんな答弁しているようでは。もう一回勉強し直して、後でひとつ回答してもらおうじゃないですか。  委員長だってそう思うでしょう。こんな無責任なことでは、農業労働者は泣くに泣かれないですよ。こんなばかな話ないでしょう。農林省も農林省だが、労働省も、特に原則的に入れませんと。どこへ行ったらいいのでしょうということだ。国の中央でこんなことだから、末端のところへ行ったら、なおうようよしちゃう。  大蔵省、何かこれで見解述べろといっても無理な話かもわからぬが、やはり大蔵委員会だから、一応大蔵省の統一見解ぐらい、政務次官出せますか。ひとつがんばって、何とか救済措置を講じないと……
  77. 林茂喜

    ○林説明員 いまのに関連して、ちょっと誤解を受けているといけないので話をしますが、農業労働者といういわゆる農業に従事している雇用労働者については、機械の云々も一切なくすべて業務上のものは基準法で補償します。問題はその事業主でございますが、これについて、さっき申しましたように、本来的な趣旨は労災保険になじまないけれども、現在の状況では同じような作業をしているのでやっていこうということで、機械の種類につきましては農林省からいろいろ御相談もあって毎年追加をいたしております。去年の四月も五種類の追加をしております。
  78. 沢田広

    沢田委員 そうじゃないのだ。農林省が、いま言ったそれらの排水ポンプ場も入ってないということも言ったし、サイロも入ってなければ、そういう脱穀機その他もある、あるいはしゅんせつもあり藻刈りもあるのだが、それも入ってない。ただ問題は、農林省が事故調査をしたら考えましょうというその姿勢そのものに問題があるのだ。これは労働省の方の問題じゃないのだ。労働省の方は、そういうふうに要請があったら考えましょう、こう言っている。  しかし、地元の人たちが出ていっているということは、雇用主でないかもしれないけれども、やはり組合なら組合の、隣組なら隣組かもしれぬが、あるいは共同耕作区云々でやっている、だれか責任者がいるわけだ。それによってやっているわけです。これはこれ以上やってもしようがないから、この姿勢は全く許しがたい。あといっぱい質問する予定だったのだけれども、できなくなってしまった。これは後でやることにしましょう。
  79. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 ただいま沢田先生の御指摘の点につきましては、私どもといたしましても十分先生指摘の問題点を肝に銘じて検討をさせていただきたいと思います。
  80. 沢田広

    沢田委員 検討ということは、いわゆる農業従事者が、雇用主がある場合はもちろんのこと、雇用主がなくとも、たとえば組合であるとか共同作業であるとか、そういうような場合でも危険な職種については任意加入を認めていく道を開くように努力する、そういう方向で検討する、こういうふうに理解していいですか。あえて言えば、法律上支障のない範囲内において加入について努力する、職種について範囲の拡大を図る。
  81. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 実は言いわけがましいのでございますが、わが省において農業労働災害の問題は農蚕園芸局長が所管をいたしておりまして、私、農林水産省から出席しております唯一の政府委員であるということで、所掌を越えて農蚕園芸局長にしかとその旨を申し伝えるというっもりで申し上げておるのでございまして、ただいまのような具体的な立ち入った点についての御確認は御容赦いただきたいと思います。先生の御指摘になりました問題の……
  82. 沢田広

    沢田委員 それも立ち入ったという——通知も労働者災害補償法との関連について労働と農林とくっつけて出しているのだよ。私の方で言っていることは、立ち入ったなんてことは言ってない。こういう職種というものについて前向きに検討してもらいたいということを言っているだけであって、それ以上のことは言ってないじゃないですか。そのことまで拒否するような答弁では話にならぬ。もういい。やり直してもしようがない。そんなのはだめだよ。
  83. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 私がいま申し上げましたのは、農林水産省と労働省との間で落ちこぼれが起こるという事態がないようにすべきであるという先生の問題提起としてこれを受けとめて、しかと処理をいたしますということであります。
  84. 山崎武三郎

    ○山崎(武)政府委員 沢田先生指摘の件については、よく農林省とも相談したいと思っております。
  85. 沢田広

    沢田委員 とにかくよろしくお願いします。  もう時間がなくなってしまったのでありますが、最後に一つだけ。  これは時効が三年になっていますね。これはあらゆるものが三年ということになっていくわけでありますけれども、税法も変わってやはり五年にするべきではないのか、結論的に言うとそういう考えなんです。共済掛金の滞納整理あるいは欠損処分、また同時に今度はこの補償の受給資格、受領資格、時効三年というのは諸般の状況から考えて五年と延期すべきではないか。これが結論です。  もう一つだけで終わります。あとはもう時間の関係でやめます。  全然これと関係ないのですが大蔵省に、きょう言われた問題ですから、年末調整で、中小企業その他は年末休みというのがある。これは太政官令で決まっているのですから、休まなくともいいことにはなっているのだが、官庁もいつの間にかそれが休まれるようになっているのです。これは働けと言っているわけじゃない。働けと言っているわけじゃないが、本当なら立法化するのが筋だと思うのです。実際には中小企業は第三次産業を初めとしてもう三十日、三十一日まで働いている。それで翌月年末調整をそれからやって、一月十日までに源泉徴収を納める。これは大変苦痛である。みんなが休んでいるときでもあるし、その時間にまた出ていって仕事をしなくてはならない。何とか一月二十日に延ばしてほしい。できれば一月末くらいに延ばしてほしいという切実な要望がある。これは所得税法の改正ですから御検討いただきたいと思いますし、善処していただきたいと思うのでありますが、これは大臣がおりませんから、ひとつ政務次官の方からお答えをいただいて、ほかの問題は残念ながら後にして終わりたいと思います。
  86. 山崎武三郎

    ○山崎(武)政府委員 突然のお申し出でありますが、よく実態をまず調査してみる必要があるだろうと思います。その上でよく検討してみたいというふうに思っております。
  87. 沢田広

    沢田委員 その前、時効三年の問題。
  88. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 時効三年の問題は、一つは共済制度のように毎年多数の組合員等を相手とする債権で額も少額で、できるだけ迅速な処理を要するということと、一方では余りに期間が短過ぎてわずかの事務手続の遅延によって消滅時効が完成するということを防がなければならないという二つの条件を勘案して三年ということにしてあるわけでございまして、漁業災害補償制度につきましても同様に三年ということになっておるので、私どもといたしましては、特に痛痒を感じておるわけではなかったのでございますが、ただいま先生のせっかくの御指摘でもございますので検討させていただきます。
  89. 沢田広

    沢田委員 以上で終わります。
  90. 森喜朗

  91. 鳥居一雄

    鳥居委員 現在わが国農業というのは大変な課題を背負っているわけであります。主要農産物の過剰基調であるとかあるいは農産物の輸入圧力、生産者価格の抑制が続いてまいりました。また、資材の価格の高騰、これに加えまして二年続きの冷害、こういう踏んだりけったりという状況の中で農業関係者は、農業は一体これから先どうなるのか、大変強い不安、いら立ちを持って事態の推移を見守っているわけであります。  財政当局として、今日の段階でわが国農業をどのように位置づけし守っていこうというお考えであるのか、まず伺いたいと思います。
  92. 山崎武三郎

    ○山崎(武)政府委員 わが国の農業がいま鳥居先生指摘のような状況下にあることは言うまでもないわけであります。  しかし、日本農業の特色を一口で申しますと、きわめてコストが高くつくという面があります。土地が狭隘でありますし、また人件費もきわめて高騰しておりますし、かつ油等も上がっておりまして、他の国の農業に比べて非常に高くつくというのが一面であります。しかし、身近にきわめて高い購買力を持っておるという市場があることもまた片や有利な面であろうかなと考えるわけであります。しかし、農業そのものが冷害のような自然条件に左右される面もきわめて強いわけでありまして、一概に経済合理性だけでは割り切れないところもあります。しかし、農業もまた産業でありますから、生産性の向上等を自主的な努力でやらなければいけない面もあるわけであります。  したがって、本来ならば財政の支えなしに成り立つ農業を目指すことが理想だろうと私は思うわけであります。しかし現在の問題とすれば、財政当局としましても、食糧の安全供給という面、非常に重要な役割りを果たすわけでございまして、農業施策の重要性は十二分に認識しております。したがいまして、現在厳しい財政状況のもとではありますけれども、わが国の農業を取り巻く情勢に十分に対応しつつ、限られた財源の中で予算の重点的な配分を行って、わが国の農業を守り抜いていきたいというのが財政当局の気持ちであります。
  93. 鳥居一雄

    鳥居委員 確かに、国民経済の立場から見れば、農家の方々にも農業の生産性の向上について御努力をお願いしなければならない面、また財政運営という見地からは、農政の上のむだがあるとすれば農林水産省の方でもその是正に真剣に取り組んでいただかなければならない、これは当然のことだと思うわけです。しかし、農業は国民食糧の確保という大変重要な産業でありますし、国土の保全、自然環境の維持あるいは地域社会の安定、さらには人格の形成や文化の向上、こういったものを図っていく観点から言うならば、計量できない、お金の価値に換算できない重要な役割り、機能を果たしている、こういうふうに認識をしなければならないだろうと思うのです。わが国農政にそういった観点から対処していただきたいことをまずもって要望したいと思います。  ところで、最近の農家経済の動向でありますけれども、大変な状況の中にあるようであります。そのことについてまず伺いたいと思います。その後で農業共済の問題について伺ってまいりたいと思います。  まず、昨今の農家経済の動向について概略御説明をいただきたいと思います。また、その場合に、現在の農業所得は、第二次減反実施前すなわち昭和五十二年度を基準とするならば、どう伸びているのか。名目と実質でお示しいただきたい。しかも、その中で冷害等の影響の非常に大きかった青森県、岩手県の場合、その農業所得がどうなっているのか、この点についてもあわせてお答えいただきたいと思います。
  94. 岩渕道生

    ○岩渕説明員 ただいま御質問の最近の農家の経済の状況について御説明申し上げます。  五十五年度におきます農業所得は、御指摘のとおり記録的な冷害によりまして九十五万二千円でございました。しかし農外所得も。ございまして、そのほか水田利用再編の補助金、共済金などございましたものですから、農家の総所得といたしましては五百五十九万四千円でございます。家計費はそれに対しまして三百九十四万二千円ということに相なっております。  そこで、非常に冷害の影響が大きかった東北では、先生指摘の五十二年度基準でまいりますとやはり三六%、青森では四八%、岩手県では四四%ほど農業所得は減少いたしております。しかし、先ほど申しました農家総所得ということでございますと、東北では約五百四十万円、青森でも四百七十万円、岩手県では約五百三十万円を確保しております。また実質所得にいたしますと、全国で見ますと、五十五年の農業実質所得は五十二年に比べまして約三割ほど減少いたしております。  以上でございます。
  95. 鳥居一雄

    鳥居委員 御報告いただいたことからもわかりますように、農家経済、とりわけ被災地の農家経済には大変厳しいものがあるということであります。それだけに、そのような中にありまして、農業共済制度に大きな期待が寄せられ、またその役割りを果たしているということになっているわけであります。一方におきましては、そうした農業共済制度の存在に対しまして、農業を過保護じゃないかとする向きも実はあるわけであります。  しかし、これを一歩立ち入って分析してみる必要があると思います。たとえば制度的にも充実しています稲の共済について、昭和五十六年に通算して農作物全体の被害が四千七百七十七億、その中で水稲、陸稲合わせまして二千二百四十七億、この数字に間違いありませんか。
  96. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 稲の被害は二千二百七十四億円でございます。
  97. 鳥居一雄

    鳥居委員 農水省資料は、暦年で出ている場合とそれから年度で出た場合と、稲作については、これは被害調査変わらないだろうと思うのです。農水省からの資料によりますと四千七百七十七億、これが農作物全体の被害になっています。そして水陸稲合わせて二千二百七十四億というのが稲の被害ですね。  この稲の被害に対しまして、共済金として農家に支払われた額が九百四十二億、ざっと被害総額の四一・二%に相当している数字であります。このうち国が責任を持つ再保険部分が今回計上されております六百六十億、ちょうど被害総額の二九・〇%にすぎないというのがこの再保険部分であります。こういう実情を考えますときに、農家の経営と生活の安定を図るために、この農業共済制度の充実というのはきわめて重要な問題になってくるだろうと思うのです。先ほど御指摘がありました、私は大きい数字で押さえて指摘しているわけですが、二九・〇%という再保険部分、これをもっと充実させるような検討がなされていいのではないか、こう思うわけですが、どうお考えですか。
  98. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、農業災害補償制度におきましては、軽微な被害については農家がみずからの経営の中で対処していただくという考え方で、いわゆる足切りを設けておるわけでございまして、統計情報部でまとめました被害額のように、被害の深さと無関係に集計をされております被害額と対比して、共済金あるいは再保険金支払いの当否を論じていただくことは、実は私どもとしては困る、困ると申しますか、制度の仕組みから見てどうもなじまないのではないかというふうに思っておるわけでございます。それで私どもとしては、農業災害補償制度をもって対処することを相当とする程度の深さの被害、すなわち一筆方式で水稲の場合で申しますと三〇%以上、そういう被害を念頭に置いてこの制度を仕組んでおるわけでございますので、その点ひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。  ただ、そういうことを言わずに、もっとよけいにてん補するような仕組みを考えたらどうかという御議論は十分成り立ち得るというふうに存じますが、しかし、これにつきましては、一方、農家の側では共済掛金負担の増高という問題もございますし、一方また、国の財政ということもございますので、現下の情勢ではそういう方向で問題を検討するということはきわめて困難であるというふうに考えざるを得ないのであります。
  99. 鳥居一雄

    鳥居委員 それでは果樹共済について伺っていきたいと思いますが、今回のこの補正予算措置一般会計への繰り戻す残高についてなんですけれども、補正予算措置果樹共済果樹勘定に対して百十六億、農業勘定に四百九十三億、これを予算措置をとりますと、今後繰り戻すべき残高というのが非常にふくらんでくる。農業勘定で千八百七十六億、果樹勘定で三百億程度、この数字よろしいですね、五十六年度についてまだ正確な数字が決まらないという前提がありますけれども。  この農業勘定果樹勘定の残高を比べますと、絶対額で農業勘定の方がはるかに大きい。しかし農業勘定に係る共済金の額、これが二兆円を超えるという規模に対しまして、果樹勘定に係る共済金額というのは規模が千五百億程度、千五百億に満たない数字となっております。これを考えますときに、果樹勘定の方はきわめて厳しい状況にあるわけですね。これにはいろいろな理由があるだろうと思うのです。どういう理由によるものなのか。果樹共済には制度的に仕組み方に問題があるのではないか。この点についてはどうでしょう。
  100. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 御指摘のように、農業勘定の場合には従来から繰り戻しを完済いたしまして残高をゼロにした経験が何回もございますので、御信用いただけるだろうと思います。果樹勘定につきましては、確かに先生指摘のように御懸念をお持ちになることはもっともだろうと思います。  果樹勘定でかくのごとき繰入金の累積を招きました最大の原因は、まず何と申しましても、制度発足以来毎年大災害に見舞われるという不幸な事態に直面したということがございます。なお、制度上にも赤字の発生を助長するような要因があるのではないかという点は確かに考えられる点がございまして、そういう点を念頭に置きまして、五十五年に果樹共済制度について制度改正をお願いをいたしたところでございます。  それで、制度の改正の内容は御高承のとおりでございますが、基準収穫量をより慎重に設定をし得るように新しく標準収穫量という制度を導入いたしまして、それによって引き受けを行うということ、これによって元来災害とみなすことを相当としないような場合に共済金の支払いを受けるという事態を防止し得るわけであります。あるいは半相殺方式を導入することによって損害評価を一層慎重に行い得るような工夫をいたしておりますし、あるいは専業的農家の加入率を高めるための各般措置を講じたわけでございます。  それで、こういう措置を講じましたので、私どもといたしましては、制度面から果樹勘定における赤字が累積していくような要因は、思い当たる限りにおいては除去し得たというふうに確信をいたしておりますが、なお今後とも改正をいたしました新制度が実効を上げるように、その末端段階への普及に努めまして、繰入金の返納の一日も早きを期したいと考えております。
  101. 鳥居一雄

    鳥居委員 この果樹共済は発足当初から余り評判がよくないですね。共済金の責任分担という面で農作物共済との間に構造の上で違いがある、この点はどうなんですか。
  102. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 この点は、確かに先生指摘のように農作物共済の場合と責任分担の仕組みが異なっております。  それで、共済の責任分担の問題につきましては現在学識経験者の御意見を聴取しつつ検討中でございますが、ただ一つお心におとめいただきたいと存じますことは、共済のいろんな設計上のファクターについての資料の蓄積の程度あるいは制度の現地への適用可能性といった点の制約がいろいろございますので、どうも純然たる理論的検討で理想的な責任分担のあり方を仕上げていくというふうにはいきにくい制約要因がございますので、必ずしも御満足いただけるような結果をしでかしてみせますというふうに申し上げられるかどうか不安がないではございませんが、ともかく現在検討中でございます。
  103. 鳥居一雄

    鳥居委員 収支状況が悪いということがそのまま制度的に欠陥がある、こういうふうに即断はできないだろうと思うのですけれども、もしこの制度に欠陥があるとすれば、これは改めなければならない。  農作物共済の抜本改正、これを昭和三十八年にやっていますね。その後わりあい評価されるような形になってきているわけでありますから、抜本的な見直しというのがこの果樹共済に必要じゃないか、こう思うのですが、どうですか。
  104. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 実は、昭和三十八年に農作物共済で行いました改正の核心をなすのは、料率の設定方式を県単位から組合等単位で料率を設定するという方式に改めました点と、それから組合等の共済責任の分担の合理化を行ったことでございます。  それで、昭和三十八年に行いましたような制度改正が類推的に果樹に適応し得るかどうかという問題があるわけでございますが、実はこの点につきましては、組合等における果樹共済の事業規模は主産地とその他の地域で相当の格差がございます上に、さらに残念ながら加入状況にも著しい格差がございまして、事業規模の零細な組合等が多くて、それを単位にして適正かつ安定的な料率を設定するということは、少なくとも現段階では著しく困難でございます。それを強いて強行いたしますと、組合等によっては非常に高い料率になってしまうというようなこともございます。  それから、先ほどちょっと申し上げたことでございますが、組合等ごとに料率設定をする資料として使えるだけのデータの集積があるかどうかという点につきましても、率直に申し上げて相当不足しているケースが多いわけで、責任分担の問題を農作物並みに改めようといたしますと、農作物共済に出てきます通常標準被害率という概念を導入しなければいけなくなるわけでございますが、そういうものを設定し得るかどうかという点について資料上の制約がございます。したがいまして、先ほど申し上げておりますように責任分担のあり方について現在検討中ではございますが、三十八年の農作物共済の制度改正の前例にならった方向を志向するというのは大変むずかしいのではないかというふうに思っております。
  105. 鳥居一雄

    鳥居委員 さらに、市町村元請でありますけれども、この制度に関して元請が大体五〇%ずつぐらいの均衡で共済組合と市町村元請、こういう形になっておるようですね。数字では五十五年度に組合と市町村がそれぞれ一千百一、一千百八十七、こういう数字が上がっております。  問題は、市町村の場合の共済事業に従事されている方々の問題なんですが、様子を伺ってみますと、従事している皆さんというのは大体二年か三年でもうかわってしまう。共済事業に対して非常に未成熟といいますか未熟といいますか、専門の職員が育ちにくい状況の中にある、こういう話が通り相場になっているわけですね。行革との関連でお伺いしておかなければならないわけでありますが、こういう形の共済事業のあり方、市町村における共済事業、これは今後どうなんでしょうか、農水省として改善をしていこうというお立場にあるのじゃないかと思いますが、この点についてどうなんですか。
  106. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 現在市町村営が半分を超えているというのは先生が御指摘のとおりでございまして、市町村営の共済事業について先生指摘のような御批判は、私どももよく承知をいたしております。  元来、市町村営の共済事業というのは、どちらかと申しますと、組合営のなかなかやりにくいような、概して条件の悪い地域から市町村営の共済事業は広がっていったということもございまして、そういう点では同情するに値する事情がないわけでもございませんが、しかし、そういうことでは、特に御指摘のございました新種共済の普及とかそういう問題で確かに困った事態が起こりますので、研修事業等を通じて新規採用者研修、中堅職員養成研修等、そういう研修制度の中で市町村について特に重点を置いてカバーをしていかなければならないというふうに思っておりますが、それにいたしましても、やはり率直に比較をすれば、組合営の方がすぐれておるということは否定しがたい事実でございます。  それで、昭和五十五年度から農業共済組合等整備推進事業というのを実施しておりますが、この中で組織整備の一環といたしまして、市町村の行う事業をできるだけ広域化された農業共済組合の事業に吸収をしていく。あるいは農業共済組合に吸収していけない場合でも、市町村の一部事務組合をつくることによって広域化し、担当職員の定着を図っていく。そういう農業共済組合への吸収とかあるいは一部事務組合という形でこの問題に——この問題にと申しますのは、率直に言って組合営の方がすぐれているという現実を直視した対処をしていきたいというふうに考えております。
  107. 鳥居一雄

    鳥居委員 どうも時間がなくて最後になってしまったのですが、先ほどの沢田委員の質問で、農業労働災害、これに対して全く労働省と農水省との間でとんでもない問題ですね。私の手元に、農林大臣の諮問機関であります農業機械化審議会、ここの答申が昭和四十五年の十二月十四日に出ているのです。この答申によりますと「農業機械作業に従事する農業者の災害補償については、農協による共済制度も発足しており、これらの諸制度の活用をはかるとともにい農作業中の災害補償について新制度を創設することについても検討する必要があろう。」こういう指摘を答申で述べているのです。これからもう十二年経過していますよ。それでいまだにけがの仕方が問題であるとか言われているわけですね。  私が聞きたいのは、これから指摘する部分が特別加入で救済される対象になっているのかなっていないのか、まず伺います。チェーンソー、樹園モノレール、それから農用裁断機、もみすり機、製縄機、乾燥機、定置式動力防除機、背負い式動力防除機、動力整枝機、それから定置式運搬機械、以上どうでしょうか。
  108. 松居努

    ○松居説明員 農業者を対象といたしました新労災の創設でございますが、これにつきましては先生指摘のように、農林水産省としては、農業機械化審議会の答申を受けましてその後鋭意検討を進めてきたところでございます。ただ、次のような観点から非常にむずかしいということでございます。  その理由と申しますのは、一つは、農業者の就農実態が非常に一定でないということから、全員を強制加入させるということが非常にむずかしい。といって任意加入による少人数の保険では、料金と補償内容の点で現在の労災保険より魅力のある制度が期待しがたいということ。それから、家計と経営が判然と区別しがたいということから、農作業中か否かの技術上の問題が多いということ。さらには、労災保険なり農協共済等他の制度との関係をどう調整するかという点に問題があるというようなこと等でございます。  そういうことから、新制度の創設はむずかしいということでございますが、この答申以降、先ほど先生が幾つかの機械を挙げられましたが、労災の中の指定機械の範囲の拡充、さらには作業の範囲の拡充もなされてきておるわけでございますし、さらには農協共済の中に農作業中の傷害共済特約というのが設けられておるわけでございます。  そういうことでございますので、農林省といたしましては、農業機械の利用頻度が高く事故の可能性の高い機械を使う者につきましては、労災保険への加入を積極的に促進する、それから農業機械の利用度の低い農業者については農協共済の加入を促進するということで、農業者の就農の実態に応じまして、これらの保険に加入するよう指導してきているというところでございます。  それから、先ほど先生が御指摘のございました機種でございますが、全部がちょっと聞き取れずに失礼いたしましたが、チェーンソー、モノレール、裁断機、動力整枝機等は入っております。それから、もみすり機、製縄機等につきましては、いわゆる事故件数がほとんどないということから指定機種に入っていないということでございます。なお、動力カッターにつきましても対象機種となっておるわけでございます。
  109. 鳥居一雄

    鳥居委員 終わります。
  110. 森喜朗

  111. 玉置一弥

    玉置委員 非常に範囲も狭いことでございますし、また先輩議員がそれぞれ非常に熱心に質問されましたので、要点だけお聞きをして終わりたいと思います。  共済制度のあり方という面から見まして、いままで特に米いわゆる農業勘定につきましては、大体何年かすると採算がとれる、採算がとれるというのは変ですけれども、バランスがとれる。    〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕 ところが、果樹あるいはその他のものにつきましては、勘定から見ると出る一方であるというような傾向にあるわけです。そういう面から見て、本来の共済制度として内々でという、いわゆる仲間で助け合うというような面から考えますと、若干方向が違う部分が含まれているのではないかというように思うわけです。  そこでまず大蔵省に、現在のこの農業共済制度全般についてどういうふうに考えられておるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  112. 西垣昭

    ○西垣政府委員 現在の農業共済制度というのは、農業者が相互に掛金を負担し合って農業基盤の安定的な発展に資するという目的でつくられた共済制度でございまして、長期的には先生指摘になりましたように収支が相償うような形でつくられているということでございまして、歴史の古い農業勘定におきましてはそれが実現しているわけでございますが、御指摘のように、果樹共済等につきましては現実の姿はまだ問題があるわけでございまして、五十五年度改正の効果を見ながら、必要があればその改善に努めていくということが必要だと思います。その改善という意味は、現下の厳しい財政事情でございますので、いたずらに国庫負担をふやすということではなくて、制度それ自体の合理化も含めて検討していくということかと思います。
  113. 玉置一弥

    玉置委員 いまのお話ですと、やはり農業従事者というか農業に従事をされておりますそういう方々で助け合っていくというお話でございますけれども、ところが果樹になりますと、国民全体から助けていただいているというようなことになるわけですね。  なぜ、こう一方的に出てしまうのかということ、まあいろいろ要因があると思います。そういう点で農林省として、この出っ放しのものについて、出っ放しと言うと変ですけれども、要するに会計上戻ってくる間がない、間がないままに出てしまうというものについて、どういうものが要因としてあるのか、先ほどのいろいろまとめがございましたけれども、ごく簡単にまとめて要点だけお願いします。
  114. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 第一は、果樹共済制度発足以来連年の災害があった、これだけであれば制度の罪ではないわけでございます。私ども考えてみまして、制度が赤字発生を助長している要因として幾つか思い当たった点がございましたので、五十五年度に改正を行ったわけでございます。  思い当たった点の一つは、加入率が低い。中でも、ことに優良な経営をしている専業農家群の間で加入率が低い。それは、そういうすぐれた経営をやっている農家に加入のインセンティブを生じさせがたいような制度上の欠陥があるのではないかということを考えたわけであります。これを取り除くために、無事故割引の制度でございますとか、あるいは防鳥ネットだとかそういうものをやっている人は負担が軽くなるとか、そういう仕組みをつくりまして、優良な経営をやっております専業的農家に加入インセンティブが起こるようにする工夫をしたということが一つございます。  それからもう一つは、基準収穫量の設定の仕方がどうも不適正に行われる危険があったのではないか。これは、共済引き受けをいたします段階で基準収穫量を設定しなければいけないわけでございますが、責任期間がいつ始まるかということと密接に結びついておるわけでございまして、そこで標準収穫量という概念を新しく導入をいたしまして、共済引き受けは標準収穫量で行う。基準収穫量は責任期間開始後基準収穫量を適正に定めるためのデータがそろう時期に決めるということにして、基準収穫量の設定の仕方の適正化を図る。  それからもう一つは、損害評価の段階でそこが粗漏な点が起こり得るのではないかということを考えまして、損害評価を適正に行えるような方策として半相殺方式を導入する。  おおよそ申し上げて、以上三項目が五十五年度に行いました制度改正の主要な点でございます。
  115. 玉置一弥

    玉置委員 いま適用品目を徐々に拡大していただいておりますけれども、それの中で、一昨年ですかお茶を、特に私の方に関係がございますので、かなり長くかかってようやく適用されるということになりました。ある品目が適用されますと、その加入状況、加入がそう急速に充実するということではないと思います。  まず、例を一つそのお茶にとってみて、加入状況がどうなっているのかというのと、それから逆に、果樹の中で見込みとしていい例になるのか悪い例になるのかという予測がある程度つけば、大体何年ぐらいで安定するとか、そういうのがわかれば、それもまたごく簡単にお願いします。
  116. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お茶でございますが、現在実施しております地域は、埼玉、静岡、京都、鹿児島の四県でございまして、昨年十二月から引き受けを開始しております。それで引き受け面積は、共済団体からの連絡によりますと、最近の時点で三百三十七ヘクタール引き受けられておるというふうに承知をいたしております。  それから、果樹共済の制度改正の効果がいつごろ出て安定施行の状態に移行し得るかということでございますが、これは私ども可及的速やかにというふうに思っておりますが、三年先、五年先というふうな特定の年度を区切っていつまでには何とかしてみせますというまでに申し上げるほどの確信は、残念ながらまだ持てずにおります。
  117. 玉置一弥

    玉置委員 じゃ、制度改正してから加入率がどの程度変わっていますか、数字的にひとつ。
  118. 岡田明輝

    ○岡田説明員 果樹共済の発足当時の加入率というのは、申すまでもなく非常に低かったわけでございますが、特に最近の五十五年度の制度改正の後、引受率は約二八%程度に上がってきております。
  119. 玉置一弥

    玉置委員 二八%程度に上がってきておる。まだ三分の一いっていないということですね。  そこで、これは一つ考え方なんですけれども、要は三分の一しかいかない、その三分の一のメンバーの方々も、特に毎年毎年比較的被害を受けやすい、そういう立場の方しか加入されていない、そういうような感じがするというのも実際そうだと思うのです。農業従事者全体の方々で相互扶助といいますか、そういう形をとっていく。特に農林省としては産業としての農業の自立を図るというような大きな方針でいまやっておられますから、共済制度においてもやはり自立をしていくことを考えていかなければいけない。そういう観点からいきますと、この共済制度の中にいかに大部分の方々を加入せしめるかということが非常に重要なポイントになってくると思います。  そこで、こういう考え一つあるのではないかということを申し上げたいと思いますけれども、たとえばある果物である地域で被害を受けられます。そうなりますと、全体の需給バランスが非常に崩れてきまして、被害の受けてない地域にとっては同じ果物が従来より大変高い値段で売れる。そういうことが生じてくる。従来より高く売れたということになりますと、製造原価は変わりませんから、要するに純利益としてふえてくる。経費はかかりますね、運送費だけは。しかし、そういう経費は別としまして、やはり高く売れるということはそれだけ利益幅が増すわけでございますから、当然得べくして得られる利益ではなくて、いわゆる不労所得といいますか天災によって生じた利益であるというふうに考えた場合に、一つの同じ果樹栽培をされている中で、片方は損をされて、片方が利益を受けるということになるわけです。ところが農林省等のいわゆる行政指導として、果樹栽培という面からふだん共済制度以外の制度を利用されているものについては同じ便宜を図っているということになっているわけでございますから、やはり利益を出していただいたところについてはそれなりの応分の負担ということを考えていかなければいけない。  そこで、これは本来は国税庁に聞いて、農家所得の把握とかいろいろ聞くわけでございますけれども、ちょっと時間の関係で割愛さしていただきまして、そういう農家の所得がある平均値より上がってしまう。上がってしまうというのは変ですけれども、上がる。実際上がることがあるわけです。その上がった部分について、何らかの形で共済制度の資金として、基金として活用できないか。その一つは、やはり一律強制加入、ある一律分を決めてその上に任意の分を上積みする。先ほど五十五年の改正がありましたけれども、いろいろな恩恵で掛金率を下げられておりますけれども、それを一応底辺も一律で完全一律強制加入する、逆に、残りの部分について任意加入という形でいわゆる共済の支払い金額を決めるという方法がとれないか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  120. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 先生指摘のように、災害が起こった場合に、価格上昇の効果を生じて、それの受益者が一方にあるということは確かに御指摘のとおりでございますが、私どもとしては、災害と相当因果関係がある価格上昇というものを特定して、しかも具体的に個々の農家が現実にその金額で販売されたかどうか、そういうものをいかなる仕組みで取り立てるか、そういうことを考えますと、大変魅力のあるアイデアでございますが、行政的に仕組むのは大変むずかしいのではないかと思っております。  そこで、それではかわりに当然加入ということを考えてみたらどうかということでございますが、私どもといたしましては、一番困っておりますのは、一つは、果樹の場合には農家の間で技術水準に大変格差があるというふうに思っているわけです。それで、技術水準の高い農家というのは、技術水準の低い農家と込みになってリスクを負担するということになると損をするのであるという考え方が抜きがたく強いわけでございます。  そういうことの結果加入率が低くなっておるわけで、そういうことを緩和するために五十五年度の制度改正も行ったわけでございますけれども、ただ、そこで一律当然加入ということにいたしますと、そういう農業者の不公平感が取り除かれない段階で一律強制加入にするということは無理強いをされたという感じが非常に強く出ますので、なかなか農業者の間で受け入れがたい。かつては、ほかの分野の共済でも加入拒否者が続発して困ったというようなことがございまして、当然加入にする以上は、加入拒否者が出た場合の法律の手当てということは当然するわけでございますけれども、一種の社会現象としてそういうことが起こりますと、何とも事態の収拾ができないということになりかねませんので、やはりそういう制度に対する公平であるという信頼感が農業者の間にある程度広まっていくということがまず先決でございまして、その問題を飛び越えて法律上当然加入制に移行させるということについては、私どもとしては二の足を踏まざるを得ないという心境でおるわけでございます。五十五年の制度改正はそういうことを相当工夫をしたつもりでございますので、その普及を通じて、制度本来の魅力が評価されて加入率が上がるように努力をしていきたいというのがいまの心境でございます。
  121. 玉置一弥

    玉置委員 今回の農業共済趣旨からいって、当然農家の方々でお互いに助け合っていかなければいけないということでございますから、被害をこうむらない方もある程度の負担をするというのはあたりまえのことで、何も国民全般に広めて薄めていくということではないと思うのです。  それと、果樹共済のように毎年毎年出ていく、要するに一般会計から繰り入れするということになれば共済制度として成り立たないのであるから、本当はやめるべきだと私は思いますね。もしそれができないならば、農家の方々全体で負担をするという形をとらないと、まず制度として成り立たないということですから、どちらかの方法を考えるべきだと思うのです。  それから、やはり農家の中でふだん一般的な農政について行政のいろいろなメリットというものを技術の優劣なく受けているわけですから、逆に負担をするときにも技術の優劣をなくして考えるべきである。出と入りは同じ考えでやるということが必要だと思うのです。  それともう一つは、やはり大きいところが小さいところを見る、強者が弱者を抱きかかえるということでやっていかなければ、経済理論からいってとても存続をし得ない。極端に言えば、弱いところ、技術の悪いところはやめてもらう。それが基準になりましていろいろな物事を決められますと非常に不合理な形になるわけです。これでは、いま非常に批判が出ておりますけれども日本農業が外国に比べて非常に生産性が悪いという話が出てくるのもやむを得ないというふうに考えるのです。  そういう面から見ても、まずやはり農林省そのものが本体から考え方を変えていかなければ、弱者を救済するということであればそこまで手を下すべきであって、もし切り捨てるということであればあるレベル以下はやめてください、国民の迷惑になるからというような、言い方は変えてもいいですけれども、そういうふうにやはり方向をはっきり出さないといけないと思うのです。私は、本当はやめろと言いたくはないわけです。だけれども、割り切ってやらないとできないですね。それについていかがですか。
  122. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 御指摘のとおりでございまして、共済事業というのは元来長期的に見れば収支が均衡するという前提で仕組まれるべきものでございますが、現在御審議を賜っておりますような繰入金が長期にわたって累積をして繰り戻しができないというような事態は、制度の存立にかかわる問題であるというふうに私ども認識いたしておりますから、いつまでも納税者の御好意に甘えるということであってはならないということは、全く御指摘のとおりと思っております。
  123. 玉置一弥

    玉置委員 時間も参りましたのであれですけれども、では果樹共済はバランスとれなければやめるかどうか、一言最後に。
  124. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 必ず繰り戻しができるような状態にするという決意で臨んでおります。
  125. 玉置一弥

    玉置委員 終わります。    〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  126. 森喜朗

  127. 簑輪幸代

    簑輪委員 農業共済の制度については、言うまでもなく農業災害補償法に基づくものでございますし、災害による農家の損害を補てんし、農業経営の安定と農業の再生産を保障し、農業生産の発展を図るという非常に重要な制度だというふうに受けとめております。その制度が円滑に運用されて、かつまた有効に機能するというためには、共済組合とか連合会が十分な活動をするということが前提になってくるというふうに思います。  法律の十六条では、農作物共済に該当する農家は組合に加入するということが義務づけられているわけですし、共済制度全体に対して国が指導、援助するというたてまえになっているわけです。共済掛金の一部国庫負担はもちろんのこと、十四条では事務費についても国庫で負担するというふうに規定しております。最近のゼロシーリングあるいは臨調の答申というようなことで、補助金の整理の問題や事務費補助の圧縮という問題が取りざたされております。そういう中で、全国農業共済協会というところでも、補助金の増額ということを訴えておられますし、私の知っているところでも、農業共済の実務に携わっている担当の部門では、業務が非常に煩瑣であって、これ以上事務費が削られたり負担金、補助金が減らされていくなどというようなことだったら、共済事業そのものの引き受けを考えなければならないような事態だということまで言われている組合もあるわけです。  そういう実情から考えてみて、実情を無視した予算の切り捨てというようなことはぜひやめて、重要な国の事業を確立するということで予算を十分確保していくべきではないかと考えておりますけれども農水省と大蔵省のお答えをお聞かせいただきたいと思います。
  128. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 共済団体の事務費の国庫負担につきましては、私どもといたしましても、厳しい財政事情のもとではございますが、適正な充実は図っていかなければならないというふうに考えておりまして、現在御審議を賜っております五十六年度の補正予算案におきましても、国家公務員に準じて五十六年の四月一日にさかのぼる給与改善を実施し得るよう所要の経費を計上してお願いをいたしておりますし、五十七年度予算案につきましても、国家公務員の例にならいまして人件費の増加分を計上するほか、農業共済団体の職員の農林年金の掛金の負担に対する国庫補助、これを千分の四十九から千分の五十四・五に引き上げる、あるいは損害評価員、共済連絡員等の手当の増額を図る等、所要の充実を図った予算案を用意しているところでございます。
  129. 西垣昭

    ○西垣政府委員 農業共済制度の重要性はおっしゃるとおりでありますし、そのための事務費につきましては、国の助成で支えられているということはそういうふうに制度ができているわけでございますので、必要な事務費は確保しなければならないと考えております。  ただ補助金につきましては、財政資金の効率的使用と行政運営の能率化を図るために、補助効果の見直しを初めとして整理合理化の努力を不断に行っていく必要があるわけでございまして、農業共済の事務費国庫負担につきましても、引き続き節減合理化のための努力は図っていかなくてはならないというふうに思っております。
  130. 簑輪幸代

    簑輪委員 ぜひ農業共済本来の制度の立場に立って充実を図っていただきたいと思います。  次に、高山市で明らかになった水稲被害の問題についてお伺いいたします。  高山市の場合は、五十五年に激しい冷害を受けまして農業共済の適用を受けてきているわけですけれども、五十六年は五十五年の状況と幾らか様相が変わっているということで、農家の方々の共済の申告が五十五年ほどはされなかったわけです。ところが現実には、十アール当たりの生産量そのものは、冷害の五十五年とほぼ同じ程度の生産量が五十六年ということになったわけで、実感としては五十五年の冷害とほとんど変わらなかったというのが農民の実感だというふうに言われたわけです。ところが、水稲被害による支払い共済額で見ましても再保険の支払い額で見ましても、五十六年は五十五年の約三分の一程度というふうになっているわけです。  農水省としては、収穫後判明する被害については救済の方法が困難であるというようなことをお聞きしているわけですが、農民の立場から言いますと、せっかく農業共済に入っていて現実に被害が明らかになったにもかかわらず、その救済を受けられないということは大きな矛盾である、ぜひとも事後にも申告する方法など何らかの是正措置が講じられるようにしてほしいという要望が強いわけですけれども、その点について農水省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  131. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生指摘の問題は、一筆方式あるいは半相殺方式の場合には、圃場ごとに特定し得る損害を対象にして制度が仕組まれているという基本的な枠組みに由来するものでございまして、そういう枠組みの中で制度ができておりますので、刈り取ってしまった後では被害の圃場ごとの確認を行うということがむずかしいので、刈り取った後では一船的にはだめだということになっておるわけでございます。  ただ、刈り取った後でも圃場乾燥中で、かつこれはどの圃場のものであるかということが間違いなしに捕捉できるものであれば、圃場ごとの損害特定という制度の枠組みを逸脱せずに処理できますので、そこまでは後からわかった被害でも捕捉して評価するように指導をしているわけであります。そこから先へ行きますと、ちょっと圃場ごとに特定し得るという枠組みから外れてしまいます。それで、五十六年産の水稲災害の経験にかんがみまして、農家に対しても常に被害の状態を的確に把握して時期を失することなしに適切に被害申告をしていただくように、共済組合等に対しては指導を強化するように徹底を図っているところでございます。
  132. 簑輪幸代

    簑輪委員 おっしゃることにつきまして、後からしまったということのないように、適切な指導をぜひお願いしたいと思います。  ところで、農業と気象との関係などについてちょっとお伺いしたいわけですが、農業と気象の関係というのは非常に密接で重要な関係を持っていると思います。気象業務法の第一条によれば、災害予防のみならず、産業の興隆等に寄与することを目的として掲げております。  ところで、昭和三十三年に気象審議会から「農林水産業関係する気象業務の整備方針に関する答申」というのが出されておりまして、これを受けて気象庁では、昭和三十四年から十一年間にわたって、約十三億円余りの予算をかけて、農業気象観測所六百四十五カ所を設けるなど農業気象観測を充実させてきたところです。ところが、昭和四十九年に気象庁から「地域気象観測網展開に伴う農業気象業務の改善について」と題する文書が出されて、その結果、農業気象観測のあり方に変化を来してきたように思います。農業気象観測所というものがなくされてしまって、一般的な地域気象観測網に解消していったというふうにも言えるのではないでしょうか。  その結果、従来農業気象観測所で観測してきた土壌水分、水温、地中温度など農業に特有な観測種目については気象庁が観測をやめてしまったわけです。これは農業気象業務軽視と言われても仕方がないのではないかと思います。昭和五十五年の十月八日、災害対策特別委員会でわが党の三浦議員が、今後こういった農業気象特有の観測について、これをするのかというふうに質問をしておりますが、それに対して気象庁の方では、農水省とも協議して検討させていただきたいという答弁が行われました。その後、これについて検討されたかどうか、検討の結果はどうなのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  133. 尾崎康一

    ○尾崎説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。  気象庁は、農業が国の重要な産業であるとの認識に立ちまして、先生がいま御指摘になりましたように、昭和三十四年から農業気象観測所を設置しまして農業気象業務に努力してきたところでございます。その後、昭和五十四年以降におきましては、いままで一道十六県に展開しておりました農業気象業務を地域気象観測システムの展開に伴いまして全国的に展開し、各都道府県に農業気象協議会を設置して、現在ほぼ終了いたしました。なお、長期予報の技術の改善とかいったいろいろな近代的な科学の活用によりまして、農業関係者に適宜適切な情報の提供を行うようにしているところでございます。今後も、異常天候に対応しまして、農業気象業務については一生懸命努力する所存でございます。なお、ただいま御指摘ございました土壌水分あるいは地中温度の件につきましては検討を重ねてきたところでございますが、さっき申しました地域気象観測システムを使いましてこれを推定する方法を開発いたしまして、これを活用するようにいたしてございます。気象庁におきましては、地域気象観測システムは農業に非常に関係の深い気温、日照、風、降水量、こういったものを即時的に通報する施設でございますが、これによりまして農業気象サービスの低下を来さないように努力しているところでございまして、今後とも土壌水分あるいは地中温度によるサービスをこれで補っていきたいというふうに考えておるところでございます。
  134. 簑輪幸代

    簑輪委員 いまの御答弁では、結局地域気象観測網、アメダスによる一般観測ということで、これはさっきおっしゃった四要素のオンライン化による速報体制ということですけれども、結局一般気象観測、農業にかかわりはあるとは言うものの一般気象観測にとどまるわけで、農業気象特有の観測ということで先ほど挙げましたのは観測されないことになっているわけです。  昭和三十三年の答申を見ますと、これは従来一般の利用に供する気象業務を利用することになっているけれども、それでは十分な効果を上げ得ない状態にあるということで整備改善を行い、農畜蚕業の利用に適合する気象業務を制度上、特殊目的業務の一つとして確立することが必要であるというふうに言っているわけです。そして、そのために農業気候区というのを設け、専任の観測者を有する農業気象観測所を設けることというのを初めとして、将来は農業気象観測所に気象情報の解説の機能を持たせるように考慮することというようなことがこの答申で言われているわけですね。  そして、その付属書に、農畜蚕業関係の気象業務の改善要領というのがあって、これには一般の利用に供するための気象業務と農畜蚕業の利用を目的とした気象業務に相当の差異があるという例がいろいろと掲げてあるわけです。また、一般天気予報と農業気象通報との違いというものもここに書かれてありますし、こうした答申を熟読玩味してみますと、この答申を受けて充実させることこそが農業気象業務の課題であるというふうに思うわけですけれども、こうした答申、昭和三十三年に出された答申について気象庁は、もうそれは時代おくれのものであるというふうなことを認識されているのか、あるいは重要な答申であってこれを尊重すべきものであるというふうに認識されているのか、この答申をどう受けとめているかということについて、気象庁の御見解を承りたいと思います。
  135. 尾崎康一

    ○尾崎説明員 ただいま先生が御指摘になりましたように、三十三年の答申につきましては、この盛られました精神に基づいて農業気象業務を十分やっていきたいということでございます。  それで、先ほど申しましたように、五十四年以降は全国的な展開を行いますし、また天気予報の降雨の確率予想、こういったものの技術開発、それから一番農家に必要な長期予報の精度の拡充のためには、南半球の資料、こういったものも収集しまして、その精度の向上に努めているところでございます。  気象庁といたしましても、答申の精神に基づきまして、農家に適時適切な情報を提供するように努めておりまして、農業気象通報の手引きというようなものもことしは作成するつもりでございますし、また、五十五年の冷夏による東北地方の非常に大きな災害に対しまして、その要因となりますやませの観測、これは科学技術振興調整費による農林水産省との共同の研究でございますけれども、こういったものを通じまして、この観測におきましても地中温度、土壌水分を観測いたしまして、その実態把握に努めておるわけでございますが、農業気象通報の内容のいいものを農家に提供するように努力しておるところでございます。
  136. 簑輪幸代

    簑輪委員 基本的にこの答申の精神を受けて事業を進められるということですけれども、やはり農業気象特有の問題はいろいろあると思いますので、現在の農業気象観測体制で必ずしも十分ではないんじゃないかと私は思うわけです。  それから、世界気象機関、WMOというところがございまして、ここでも農業気象観測及び気象サービスの重要性というものを認識してWMO技術規則というのが定められておりまして、農業気象観測のあるべき姿について詳細な基準が示されております。日本もこれに参加しているようですし、観測種目など一層充実させるために人員増なども含めて予算措置を講じるということも考えていかなければならないと思います。  そういう中で、わが国は農業気象予算そのものが年々減らされているという状況もございますし、気象庁が行革の対象というようなことも言われているのはもってのほかじゃないかと私は思います。  気象庁としては、そういう中で、一九八一年、昨年の四月から、全国百カ所の測候所の中で十四カ所、夜七時から翌朝の八時までの夜間業務を廃止して、所員も五人から四人に減らすということにしたわけです。これは、その前年の十月、行政管理庁が十カ所の測候所廃止を含む再編整理を勧告したのを受けて、気象庁が第五次定員削減を消化するために打ち出したものであるわけですが、これに対して、該当地域の住民の皆さんや自治体なんかを初めとする関係団体挙げて反対運動が起こって、全気象の労働組合もこれを阻止すべく反対運動を展開されたわけです。そして国会でも昨年の参議院の予算委員会で鈴木総理大臣が、気象の重要性はよく認識している、今後行政改革に当たっては総合的、全体的に軽重、重要性その他を勘案しながらやってまいりたいというふうに答弁しております。  ところが、気象庁は四月からこの夜間業務廃止を強行実施したわけです。それに対して全気象の労働組合の方としては、自主的にこの夜間の宿直をやろうじゃないかという自主宿直闘争というのが積極的に展開されたわけです。そういう中で、高知県の宿毛というところでは、四月二日の夜半に測候所開設以来四月としては史上二番目の集中豪雨を観測したわけです。自主宿直の当番者が直ちに高知地方気象台へ連絡をし、その結果すぐ大雨洪水強風波浪注意報というのが発令されるということがありました。それから宮崎県の都城では、四月二十三日の早朝、宮崎地方気象台からは霜注意報というのは出ていなかったけれども、その地域のお茶の産地である地方で霜がおりたわけです。霜がおりるということはお茶にとっては非常に重要な問題ですが、実際に被害は出なかったわけです。それは、その前の晩、自主宿直の当番者が適切な解説をして、茶園では防霜処置がとられたということがあったために膨大な被害を免れることができたという事実があります。  こういう中で、行政管理庁の方は、気象衛星やレーダーなどの導入によって観測体制が整備されたので、測候所の必要性は薄らいだというふうに言っているようですけれども、いま申し上げました例に見るように、地域に密着した適切な農業気象情報が必要な農業関係者に迅速に提供される必要性というのは、薄らぐどころか、むしろ一層測候所の機能を強化し、地域の要望に応じられるような体制を整えて、測候所自身が予報を発表する権限を復活してほしいという、そういう強い要望すら出ているわけです。  臨調の答申では、国家公務員の定員削減について、現行定員削減計画を改定強化する旨明らかにしていますけれども、述べましたような気象の重要性にかんがみ、実情を無視したこの削減強行というのはぜひやめるべきであると思います。そこで、これに対する気象庁、農水省、大蔵省のお考えをそれぞれお聞きしたいと思います。
  137. 尾崎康一

    ○尾崎説明員 ただいま先生より、いろんな具体的な例につきましていろいろおしかりを受けたわけでございますが、気象庁といたしましては、近代的な気象衛星あるいはレーダーといったような、あるいは数値予報といったような科学的な要素をとらえまして、地方のサービスが低下しないように効率的な運用の努力をいたしておる次第でございます。気象庁といたしましても、農業サービスの低下がないように今後とも努力したいと思います。
  138. 浅野九郎治

    ○浅野説明員 農業生産は言うまでもなく気象条件に左右されるところが非常に大きゅうございます。そういう意味で、農業生産の維持あるいは安定を図っていくためには、やはり気象情報をいかに的確にかつ迅速に把握していくかということが最大の課題でございまして、それに即して適切な技術指導を行うということによって災害の未然防止もできるわけでございます。  そういう意味で、農林水産省におきましては、気象庁と十分連携をとりながら気象情報の迅速な把握、それを気象協議会等を通じまして農家に迅速に流していく、伝達をしていく。その後、普及体制その他組織を活用いたしまして、農家に対する技術指導の万全を尽くしているわけでございます。  ただいま先生から御指摘がございました気象情報のより的確な整備体制ということにつきましては、われわれ農林水産省といたしましても願ってもないことでございますので、気象庁の方に強く要望いたしながら、とにかく万全を尽くしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  139. 西垣昭

    ○西垣政府委員 厳しい財政事情のもとで、あらゆる経費を聖域扱いとしないという方針でございますが、気象業務に要する経費につきましては、静止気象衛星の打ち上げ等に要する経費等、気象観測、通信業務の充実あるいは強化に必要な経費を中心といたしまして、必要な予算措置は講じているつもりでございます。数字で申し上げますと、気象庁の予算といたしましては五十六年度に比べまして五・七%増ということで、一般歳出全体を非常に低いところで抑えている中では、できるだけの確保を図ったというふうに考えております。
  140. 簑輪幸代

    簑輪委員 終わります。
  141. 森喜朗

    森委員長 小杉隆君。
  142. 小杉隆

    小杉委員 今回の農業共済再保険への繰り入れにつきましては、昨年、ことしと予期しない冷害あるいは台風ということもあって、やむを得ない面があります。しかし、農業というのは天候、気象に左右されやすいというのは宿命的な面があるわけでございまして、これは去年とことしだけの例ではなくて、また来年も再来年もという、あるいは五年続いてこういう事態が起こり得ないということはない、起こり得る可能性があるわけでございます。  今回この繰り入れの実績を見てみますと、残高を見ますと、農業勘定で千八百七十六億、果樹勘定で二百九十四億、合わせて二千百七十億という、いままでの残高の中では最大の金額になっているわけです。これは、もし決算上に剰余が生じた場合においては一般会計に繰り戻すということになっておりまして、従来はそういうふうに一般会計へ返しているわけですが、これだけ大きな金額になると返し切れないということも想定されると思うのですが、これは法律上返さなくてもいいことになっているわけですか。
  143. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  確かに法律の条文の規定は先生指摘のとおりでございまして、決算上の剰余が生じなければ繰り戻しは行われないわけでございます。ただ、これは、よって返さなくてもいいという趣旨ではございませんで、償還期を特定しがたいという意味でさような規定になっておるわけでございます。ですから、特別会計の経理処理といたしましては、一般会計から繰り入れられた金額は負債の欄に計上されておるわけでございまして、これはあくまでも負債と観念をして、返すべき金として観念をいたしておる。ただ、償還期が特定しがたいということで立法技術先生のおっしゃるような状況になっておるということでございます。
  144. 小杉隆

    小杉委員 現在は財政再建中であって、また国民の期待も、やっぱりこういう金額をなるべく早く返していただくという気持ちだと思うのです。  いままでの経過を見ますと、大体最大でも五百億円程度の数字であったわけです。そして大体三年ぐらいの間に一般会計に返してきたわけですけれども、今回は二年続きで非常に大きな災害が出たために、さっき申し上げたような二千百七十億円にも上ってしまったわけです。返済期間が特定できないということですが、私は、財政再建ということを考えますと、できるだけ早く返すという努力をしなければいけないと思うのですね。  一応この制度をつくるに当たって、あるいは運用していくに当たって、大蔵省や農水省は大体何年ぐらいのサイクルで返すことを考えておられるのですか。
  145. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 保険の設計に当たりましては、二十年間で収支が均衡するという前提で計算をしておりまして、ですから、ピークとボトムがいろいろありましても、二十年間ならせば山と谷が消えるということでございます。  ただその中で、一つの山から次の谷までの期間が何年であるかというのは、これは保険設計上の理屈が別にあるわけではございませんので、全体として二十年間収支均衡というのと、その中での一サイクルごとの山と谷というのは、これは別問題でございまして、そういう意味では、理論的に何年で返せるべき筋合いのものだということはございません。収支均衡は二十年ということではかっております。
  146. 小杉隆

    小杉委員 財政再建期間中ということですから、こういう一時的な措置というのはなるべく早く一般会計に戻すという努力をしてもらいたいと思うのですが、具体的に大蔵省あるいは農水省に対策があればお考えをお聞きしたいと思うのです。
  147. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 先ほど来申し上げておりますが、果樹勘定につきましては、私どもも、制度上の欠陥がこのような事態を招いた要因の一部を構成しているのではないかという少なくとも嫌疑はかけておりまして、その点につきましては、五十五年度に制度改正を行って手当てをしたところでございます。  それから、それ以外に一般論といたしましては、こういう一般会計からの繰り入れを必要といたしますような大災害が続発いたしますと、掛金の計算に自動的に反映されて掛金が上がってくる、共済掛金率が上がってくるという一種のビルトイン・スタビライザーのようなものがあるわけでございまして、それと、先ほど来申し上げておりますように、保険設計上二十年間で収支均衡するという大前提で計算が成り立っておって、誤りのない限りはつじつまが合うはずであるということが繰り戻し可能な担保になっているというふうに考えております。
  148. 小杉隆

    小杉委員 農業の共済保険に対する農家の掛金ですね、つまり自己負担分というのは昭和五十六年度でどのぐらいになっておりますか。そして国庫補助率というのはどのぐらいか、その金額もあわせてお答えをいただきたいと思うのです。
  149. 岡田明輝

    ○岡田説明員 農業勘定で申し上げます。  農業勘定は、先ほど来お話に出ておりますように、水稲と陸稲それから麦それから蚕、畑作物、これらを一括して経理しているわけでございますが、これらを通じて農家の掛金は、掛金の総額といいますかファンドの総額が千六十五億になっておりまして、そのうち農家が四百二十三億、国庫が六百四十二億ほどを負担しておるという計算になります。
  150. 小杉隆

    小杉委員 いまお答えのありましたように、農家の掛金つまり自己負担金というのは大体三九・七%、約四割、あとの六割は国庫負担になっているわけでございまして、常識から考えても、かなりこれは国庫負担が重いという気がします。  それでなくても、いま農業関係補助金が非常に大きいということを指摘されておりますし、有識者の間では、農業に対しての過度の保護政策が日本農業をだめにした、いま農業の生産性というのは、日本の場合、先進国の中でも最低ランクに落ちてしまっているという批判のあることも事実でございます。今度の掛金だけではなくてこういう国庫からの繰り入れも考えてみますと、かなり国庫からの負担が大きくなってくるわけでございまして、いまの保険料率というのは、地域とか、それから水稲、陸稲、麦というふうにいろいろな種類によっても違うわけですが、平均しますと、大体、水稲、陸稲、麦などの場合に千円の保険金に対して約三十五円ですね。これがこの三月に改定されて四十円弱になるはずですけれども、こういうふうに二年続きで冷害が起こった、あるいは台風が集中してきた、あるいはまた来年も再来年も起こらないという保証はないわけですから、こういうときに思い切って負担分を引き上げて財政再建に寄与していただくというようなお考えはないものだろうか。そういうふうに、時期的に、弾力的にその保険料率を変えるというような考え方、そういう点についてはどうお考えでしょうか。
  151. 佐野宏哉

    佐野(宏)政府委員 共済掛金の改定は、五十七年度から新しい料率を適用することにいたしております。  それから、掛金の農家の負担割合をふやすという問題でございますが、これにつきましては、現行の掛金の国庫負担割合というのは、農家の掛金の負担能力とか、共済目的である作物の政策的位置づけとか、事業発生以来の経緯等総合勘案して決定されているものでございますが、二年続きの冷害の後でございますので、農家が大打撃を受けているということもございまして、農家の掛金負担割合を引き上げるということはむずかしいというふうに思いますが、最近の財政事情にかんがみまして、農政の動向等に即した共済制度全体のあり方とその新しい展開の方向を見出すための検討を行ってまいりたいというふうに思っております。
  152. 小杉隆

    小杉委員 もう時間が来たからやめますが、私ども都市に住んでいる者から見ると、たとえば農業者の納めている税金が百五十一億円に対して、国が農業につぎ込んでいる国費が何と三兆二百三億円にも達するわけですね。  これは一般の給与所得者と比べましても、一般の給与所得者の場合、大体サラリーマンの納めた税金は約六兆円、一人当たりにしますと約十九万円、農業の場合は約七万円というようなことで、農業の場合、確かに気象条件とか天候に左右される非常に脆弱な構造であることは理解できますけれども、国民の間の不公平感というところから考えますと、農業のこういう補助金についてももっと厳格な目で財政当局は当たっていくべきじゃないか。こういう制度がずっと長く定着してあるから、いまこれに手をつけるのは酷だというような考え方じゃなくて、国民の間の公平という観点からこういう具体的な問題について一つ一つ検討を進めるべきだということだけ申し上げて、私、質問を終わりたいと思います。
  153. 森喜朗

    森委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  154. 森喜朗

    森委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  農業共済保険特別会計における農作物共済畑作物共済及び果樹共済に係る再保険金支払財源不足に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  155. 森喜朗

    森委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 森喜朗

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  157. 森喜朗

    森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四分散会      ————◇—————