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1982-03-26 第96回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月二十六日(金曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 渡部 恒三君    理事 梶山 静六君 理事 野田  毅君    理事 森   清君 理事 渡辺 秀央君    理事 後藤  茂君 理事 清水  勇君    理事 北側 義一君 理事 宮田 早苗君       天野 公義君   稻村左近四郎君       植竹 繁雄君    浦野 烋興君       島村 宜伸君    田原  隆君       泰道 三八君    中島源太郎君       野中 英二君    橋口  隆君       鳩山 邦夫君    松永  光君       宮下 創平君    粟山  明君       上田  哲君    城地 豊司君       中村 重光君    水田  稔君       渡辺 三郎君    石田幸四郎君       長田 武士君    横手 文雄君       小林 政子君    榊  利夫君       石原健太郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         公正取引委員会         事務局審査部長 伊従  寛君         通商産業政務次         官       原田昇左右君         通商産業大臣官         房審議官    植田 守昭君         通商産業省通商         政策局次長   黒田  真君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省立地         公害局長    神谷 和男君         通商産業省基礎         産業局長    真野  温君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁石油部長   野々内 隆君         資源エネルギー         庁公益事業部長 川崎  弘君         中小企業庁長官 勝谷  保君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     飛田 清弘君         国税庁直税部資         産税課長    平北 直巳君         農林水産大臣官         房参事官    香川 荘一君         自治大臣官房地         域政策課長   藤原 良一君         会計検査院事務         総局第四局上席         調査官     大西  実君         参  考  人         (地域振興整備         公団総裁)  中橋敬次郎君         参  考  人         (日本貿易振興         会理事長)   村田  恒君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ————————————— 委員の異動 三月二十六日  辞任         補欠選任   渡辺  貢君     榊  利夫君 同日  辞任         補欠選任   榊  利夫君     渡辺  貢君     ————————————— 三月二十六日  武器等輸出禁止等に関する法律案清水勇  君外七名提出、衆法第一〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 渡部恒三

    渡部委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する件調査のため、本日、参考人として日本貿易振興会理事長村田恒君及び地域振興整備公団総裁中橋敬次郎君の出席を求め、意見を聴取することとしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 渡部恒三

    渡部委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 渡部恒三

    渡部委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水田稔君。
  5. 水田稔

    水田委員 きょうは石油化学産業アルミの問題について質問をしたいと思うのです。  石油化学産業というのは、昭和五十五年の四月まで一時期仮需によって支えられ、その後ずっと今日まで低迷が続いておるわけであります。     〔委員長退席野田委員長代理着席〕 五十五年の操業率は五九%、五十六年が六〇%、まさに低迷が続いておるわけです。昨年もこの問題について、日本高度経済成長を支えた一つ基幹産業じゃないか、何らかの対策を講ずべきだ、こういう質問をしたわけでありますが、この一年間を振り返ってみましても、全く好転の兆しはないわけであります。これは石油化学産業に対する通産省基本的な見方なり現状理解なり、そういう認識の上に対策を立てなければならぬわけでありますが、そういう点について、これは基本的な問題ですから政務次官にお答えいただきたいのですが、その原因現状についての認識と、どういう取り組みをやろうという基本的な考え方をまずは政務次官にお伺いしたいと思います。
  6. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 水田委員指摘のとおり、石油化学工業は五十五年四月以降低迷を続けております。五十六年のエチレン生産稼働率約六割に相当する三百六十五万トンという水準に落ち込んできておるわけでございます。こうした低迷原因は、単に内需の落ち込みという循環的な要因だけではなくて、原料ナフサ価格高騰、安価なアメリカカナダからの製品輸入の増大といった構造的な要因もあるわけでございます。  こうした構造問題を踏まえて、石油化学工業の今後のあり方並びに施策につきまして、昨年四月からわれわれは産業構造審議会化学工業部会に諮問をいたしまして、鋭意検討が進められておるわけでございます。昨年十二月にはとりあえずの中間報告がまとめられたわけでございますが、それによりますと、原料ナフサにかかわる各種制約の緩和、業界体制整備アメリカカナダに対する天然ガス価格統制撤廃を呼びかけるということ等を内容とするものがこの中間答申に盛り込まれておるわけでございます。さらにこの中間答申から本年六月の最終答申に向けまして同部会審議が進められておるわけでございますが、当省としましては、中間答申部会の今後の検討を踏まえながら、さらに原料ナフサに対する対策あるいは業界体制整備等について結論を急いでおるわけでございます。  それからなお、アメリカカナダからの安いナフサ供給に関して天然ガス価格の問題があるわけでございますが、公正な競争という原則から言えば、天然ガス価格統制というのは問題ではないかということで、日米間でもスタディーグループを設けまして、これについても協議をいたしておるという現状でございます。
  7. 水田稔

    水田委員 そうすると、次官の御理解は、一つ石油化学産業というのは、一番の基本の問題は原料対策。そうして今度はナフサLNGの関係がありますが、そういう点ではアメリカにおける価格統制といいますか、価格を抑えておる。そういうものによる輸入の急増というようなことが基本にある。それをきちっとしない限り、石油化学の再建といいますか再生というのはむずかしい、こういうぐあいに理解されておる、こう理解をしてよろしゅうございますか。
  8. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  9. 水田稔

    水田委員 いま次官からもお話がありましたように、昨年十二月に産構審の化学工業部会中間答申で、石油化学製品コストの約七割を原料費が占めておる、安価な原料入手が必要となっているが、主原料であるナフサについては、石油税ナフサ輸入に関する制度的制約が課されている、これが問題だと指摘されているわけです。そして恐らくことしの六月に石油化学小委員会対策結論が出される、こういう予定になっておるようであります。しかし、最近ずっと通産省エネ庁との間、さらに石油化学工業界あるいはまた石油業界等、それぞれでナフサ問題に対する論議がされておるようであります。  これは新聞報道でありますが、たとえば、ナフサ輸入完全自由化を認めないかわりに、国産ナフサ価格輸入価格に近づける措置をとる。二つ目には、消費全体に占める輸入ナフサの比率を現行四〇%を五〇%に高める。あるいはナフサに対する石油税の撤回、備蓄義務の解除はしない。これはきのうあたりの新聞等でも報道されておるわけですが、こういうことが実際に論議をされておるのかどうか。そしてそれが事実とするならば、いま次官が御答弁になったように、こういう対策をやれば対策として十分であると考えておるのか。それによって、あとは自助努力石油化学産業というのが自立できるのだ、そういうぐあいにお考えになっておるかどうかをお伺いしたいと思います。
  10. 真野温

    真野政府委員 先ほど政務次官からお答え申し上げましたように、石油化学工業の基礎的な基盤整備は、まさに原料問題が一番大きいウエートを占めておるというのは御指摘のとおりでございます。ただ、その場合に二つ要素がございまして、一つは、日本石油化学原料というのはナフサベースでございますが、それについて、できるだけ国際的な価格入手価格に近づけるという努力があろうかと思います。それからもう一つは、先ほど次官から申し上げましたように、ナフサベースでない、御承知天然ガスでありますとか石油のオフガスを使いましたより安価な原料を持っておる、たとえば中近東の産油国あるいはカナダアメリカの一部、これとの競争をどうするかという二つがございます。  前者につきましては、基本的には、どういう形で国際的な原料条件に近づけるかということで、現在通産省の中においても検討いたしておりますし、また化学業界もそれぞれの努力をいたしておるところでございますが、そういうような原料条件整備いたしましても、もう一つ、先ほど申し上げました、エタン系と俗称しておりますが、天然ガスその他のより安価な原料との国際競争をさらに控えておる、こういうのが実情でございまして、後者につきましては、これはまた企業全体としての努力あるいは国際的ないろいろな話し合い、こういうものが必要になるということでございます。  そういう意味で、基本的には、現在の日本石油化学原料でありますナフサについて、どうやって国際価格に近づけるかということについていま検討しておる、こういう状況でございます。
  11. 水田稔

    水田委員 先ほど次官からもお話がありましたように、アメリカからの石油化学製品輸入というのは、一つEDCという形で入ってくる、あるいはエチレンモノマーで入ってくる、あるいはアクリロニトリルエチレングリコールで入ってくる。これは特徴的なものですが、昭和五十三年に比べて五十六年の輸入エチレンモノマーでは五倍なのですね。アクリロニトリルは十五倍なのですね。エチレングリコール、これはアメリカからは横ばいぐらいですが、カナダが一挙に入ってまいりました。これも五十二年に比べて大体五倍になっている。これは当然LNGを使う向こうの製法とのコストの違い、エチレン価格日本が倍ぐらいにつきますから。そういうことなのです。これはまさに一つ貿易摩擦なのですね。ほかの問題だってたくさんやられておるわけですから、これはまさに、後で触れますアルミも同じような形で、アメリカからいわゆる集中豪雨的な輸出がされておる。そういう点を、単に天然ガスの問題だけでアメリカとの交渉をすることによって解消するのかどうか。そんなことにはならないだろうと思うのですね。  ですから、この問題は、一つは、アメリカ天然ガス価格統制という原料問題、もう一つは、国内における原料であるナフサの問題が両方相またなければ、いわゆる自助努力ではどうにもならない問題であることを端的にあらわしておると思うのですね。  ですから、次官が言われた輸入がふえておる、普通に言ってふえておるという、たとえば年率一〇%とか一五%ふえたというのはいいと思うのですが、このことをどういうぐあいにとらまえておられるのか、この点を伺いたいと思います。
  12. 真野温

    真野政府委員 先生指摘のように、石油化学特定品目について、このところ輸入が急増しておるのは事実でございます。これについては、まさに御指摘のように、原料条件が非常に違う国からの製品がふえておる、こういうことであろうかと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、日本石油化学は、いままでのところどうしてもナフサベース原料でできておりますので、直ちにこれが安価な天然ガスその他にかわるということにはなかなかいかない実情にございます。  そこで、少なくとも、私どもとしましては、同じような条件にありますヨーロッパと同じような原料条件ベースにまず考える。そういたしますと、こういう安価な製品の圧力というのは、日本だけに集中せずに、日本ヨーロッパを含めたナフサベース石油価格全体で受けるかっこうになるということが一つの戦略的な考え方でございます。それが先ほど申し上げましたナフサ価格をできるだけ国際価格に近づける、こういう努力基本的な考え方でございます。  ただ、もう一つ、先ほど申し上げました安価な天然ガス原料を使用する石油化学製品というのは、幸いにして、これから数年考えましても、供給量は世界的に限界がございますので、四百万トンぐらいはここ数年間は出てまいると思いますが、残りはどうしてもナフサベースになりますので、そういう意味では、ナフサベースのこういうエチレン系製品がなお残る、必要とされるという状態がございますので、その中でどうやって日本石油化学工業がうまく対応していくかということであろうかと思います。  そういう意味で、御指摘のように、一つ原料条件の問題もございますが、同時に、石油化学の中でも、特に石油系の資本の石油化学については、多様な原料確保、有利な原料確保ができる。たとえば残渣油利用でありますとか、より安い原料をうまく利用するというやり方が比較的できやすいグループもございます。これはそういう意味での安価な原料を求める。さらには天然ガス利用というものも今後考えてまいる必要があろうかと思います。  もう一つは、エチレン系の樹脂の段階では競争はできないけれども誘導品段階勝負をする、こういう考え方もとれるわけでありまして、これは特に化学系石油化学、つまりもともと誘導品といいますか、末端製品から発達した石油化学メーカーについては、末端製品についていろいろな意味での技術的な力、開発力利用して、そこで勝負をする、こういう考え方がとれるのではないだろうか。そういう意味では、原料条件のほかに、そういった企業体制と申しますか企業全体のあり方、これも非常に大きな競争力要素になってまいると思います。  それから、先ほど政務次官から申し上げましたように、アメリカカナダ等、人為的な天然ガス価格のコントロール、これに対しては、私どもとしては、これの撤廃を要請するということで話し合いを続けていく。こういう対外的な活動、こういういろいろな多面的な施策なり措置を講ずることによって総合的に対処せざるを得ない。これ一つ万能薬という形には現状ではなかなかなりませんので、あらゆる面での努力をそういう形で投入してまいりたい、こう考えております。
  13. 水田稔

    水田委員 原料問題を考えたときに、日本化学工業の生きていく道というのは前に行かざるを得ない。それなら少々の原料の値段の違いは、付加価値の高いものになりますから十分カバーできる。それは当然私もそう思っておりますし、そのためには、基盤になるいまの各企業がそういう研究投資のできないような、体力が消耗してしまうような状態がずっと続いておるわけですから、それをやはり頭に置いてもらわなければならぬし、同時に、C1化学等通産省も予算をかけてやっておるわけですから、それもいままでは何十億かのオーダーで新しい製品が開発できたけれども、これからは何百億という台に乗るわけでありますから、そういう点はぜひお願いしたいと思うのです。  いまの次官局長の御答弁で大事なことは、石油化学基本はやはり原料問題、そしてそれは天然ガスとはすぐは対抗できないにしても、ナフサにおいてはヨーロッパ並み、こういうことを言われた、まさにそのとおりだと思うのです。ところが実際には、じゃ、ヨーロッパ並みにするのであれば、問題は、いま違うところは三つありますね。日本ヨーロッパナフサに対する扱いの違いは三つある。一つ石油税でありますし、一つ備蓄義務一つナフサ輸入が自由にできないという三つの問題だと思うのです。もう局長も御承知のように、西欧というのですから西ドイツ、フランス、イギリスというのは、いわゆる原料非課税原則で、原料であるナフサ非課税にしておるわけですね。にもかかわらず、いま新聞報道で見る限り、この中間答申ではそういう点を触れておる、これが問題だと。しかし、石油化学小委員会結論が出るまでの論議としては、どうもその点はお考えでないようでありますが、だからヨーロッパ並みと言われるのは、これは当然撤廃してしかるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  14. 小松国男

    小松政府委員 現在、石油化学工業の今後のあり方については、化学工業部会議論されているわけでございますので、その段階でいろいろ検討がされるわけでございますが、いま先生からお話のございましたナフサ関連した日本特殊事情、この点につきましては、日本の場合には石油依存度が非常に高いということで、そのための安定供給ということが非常に大事でございます。最近石油需給状況が非常に緩和しておりますので、あらゆる石油製品について簡単に海外から自由に買えるというふうな風潮もございますけれども、こういう時期がそう長く続くということでもございませんので、中長期的に見ますと、やはり日本の場合は石油を中心としたエネルギー安定供給ということが大事でございます。  そういう観点からエネルギー政策が行われ、そのエネルギー政策一環として石油政策が行われているわけでございますけれども、その中で、いま御指摘石油製品輸入はだれでも自由に入れられるようにしたらいいじゃないかという御議論がありますし、また石化業界からもそういう要請があることは事実でございます。ただ、先生も御承知のように、安定的に原油を確保し、それについて関連製品についても十分安定供給をしていくということになりますと、やはり消費地精製主義原則、これを守っておくことが、むしろ将来の石油安定供給のためには非常に大事じゃないかというふうに思っております。ただ、国際化の波、それからOPECのいろいろの状況の変化に対応して柔軟な姿勢を示す必要はありますけれども基本原則はなかなか変えられないのじゃないか。この点につきましては、石油産業の今後のあり方につきまして、昨年十二月に石油審議会の中の小委員会報告というのも出ておりますが、この中でもそういう方向がうたわれておるわけでございます。この中で、柔軟な姿勢を示すということで、われわれもナフサについてはできるだけ自由に入れられる体制はつくりたいというふうに思いますが、同時に、石油安定供給という政策との調整問題がございますので、その中でこの問題を今後解決していこうということで、現在検討を進めているわけでございます。  それから、石油税の問題につきましては、輸入ナフサにつきまして、臨時措置ではございますが、すでにもう毎年石油税を免除いたしておりますけれども国産につきましては、現在のエネルギー対策財源一環になっておるということでございますし、またナフサだけについて石油税を免除するということになりますと、他の石油製品との関連の問題が出てくる非常にむずかしい問題がございます。ただ同時に、石化業界としては、この負担に耐えられないという実情もわかりますので、そういう問題も踏まえて、現在私どもとしてもいろいろ勉強いたしておりますし、今後化学工業部会議論される過程で、この点についても十分な御議論がいただけるのじゃないかというふうに思っております。  それから、第三点の備蓄でございますが、これも日本の場合は非常に石油依存度が高い国でございまして、石油について将来のことを考えました場合に、安定供給を確保するために一定の備蓄量を持つ、これは民間が持つと同時に現在国家備蓄も進めておりますが、こういうことで備蓄を持つということは、エネルギー政策基本にかかわる問題だというふうに思っております。ただ、備蓄につきましては、石化業界だけではございませんで、石油業界からも非常に不満が出ております。これは供給サイドから見ますと、そういうものを持つということはコストにも響きますし、また市況を冷やす問題もあり、いろいろの意味でマイナスでございます。ただ同時に、需要サイドから見ました場合に、これが安定供給されるということが産業ないしは国民生活全体から見ても大事な問題でございますので、その一環として、現在原油については九十日、それから、ナフサを含む一般の石油製品については七十日という備蓄義務が課されておるわけでございます。こういうことで備蓄の問題というものは、一面から見ると非常に厳しい問題でございますが、安定供給という面から見ますと、これはまた非常に大事な問題であるということで、この問題については、軽減措置をとるというよりは、長期的にはむしろ備蓄量をもっとふやしたいという問題もありますので、その問題とも絡めて、石化業界負担の問題については今後検討していきたいというふうに考えております。
  15. 水田稔

    水田委員 エネルギー庁の考え方というのは、石油が一バレル一ドル五十セントぐらい、あるいは四ドル、五ドルぐらいのときで、エネルギー源のすべてが石油に依存し、原料石油に依存する、そういう時代の感覚で物を考えられておるのじゃないか。むしろ通産の方が、これからの化学産業の展望というものを少々はちゃんと見ておられる、私はそういう気がして仕方がないのです。たとえば、いまの石油消費地精製主義というのが、石油化学で言えば、日本ナフサエチレンからやっていこうとしても、アメリカから一つEDCという中間物で大量に入ってくる。そしてすでに南米からも日本EDCを買えと言ってきておるのですよ。そういう時代なんです。そうなると、それだけナフサのあれは減ってくるわけです。あるいは先ほど申し上げましたエチレングリコールとかアクリロニトリルとかいったものが大量に入ってくれば、それだけ国内消費は変わってくるわけですね。そのことがいま、いわゆる石油精製で、たとえば中間三品に合わせて生産すれば重油がだぶついてくるということになってきておるわけですね。そういう大変な、いままでと違った経済情勢、国際的な情勢が起こってきておる。そういう対応考えるならば、これまでの原則でいいのかどうかということを疑ってみるということが政策上必要ではないか。それが欠けておるところに、いま申し上げました、通産省の方は石油化学については原料問題だ、ヨーロッパ並みにはと言う。ヨーロッパとの違いは、石油税であり、備蓄義務であり、ナフサ輸入が自由にできないという問題だ。それぞれをやはり——後で石油業界の問題も触れますけれども、そういう問題はもう少し現状をきちっとわきまえたら、対応が違ってくるだろうと思うのですね。  たとえば石油税というのを取り出したのは五十三年の六月ですね。この施行に当たって、やはりヨーロッパとの関係で、原料非課税原則というのがヨーロッパである、日本だけ取るのはどうかという論議が恐らくあったんだろうと思うのですね。だからそのときに、国産ナフサに課税するけれども、石特の会計にコンビナートリファイナリー等の構造改善の環境対策費として百億計上しておるのです。それはやはりそういう配慮があったと思う。二年間継続して計上したのです。一銭も使ってないのです。そして三年目からはもうやめてしまっているわけですね。だから私は、石油税についてはそういう経緯なり、いま通産が石油化学考える場合、ヨーロッパと同じ条件にはせめてしなければならぬという考えがあるなら、それは当然考えるべきだと思うのです。  それからもう一つは、備蓄義務ですが、たとえば日本石油というのは、いわゆる発電用に大量に使われる、あるいはいま灯油がたくさん使われておるということから、それは民生用と基幹のエネルギーを確保するためというのは石油については大変な意味合いがあると思うのですね。石油化学製品というのは、たとえばだめなら中間物をよそから買ってきてやれるわけですね、石油が入らなくても。そして現実には、通常の製品在庫というのは一カ月から二カ月分ある。さらにメーカーの流通在庫というのがありますから、ぱっとストップしたらそこでパニックが起こるような状態とは違うわけですね。石油とは違う条件がある。そしてこれはIEAの取り決めで、原料ナフサについては備蓄義務はないわけでありますから、ヨーロッパの諸国もないわけです。これは基礎産業局が言われるように、ヨーロッパ並みにするのなら、そういうぐあいにすべきだというのはもうだれが考えてもそうなんですね。それにも安定供給という理由があるのですよ。石油の流通の状態備蓄状態石油化学製品のいわゆる安定供給という点での違った条件がある、そのことはどうお考えなんですか。  もう一つは、ナフサ輸入規制の問題については、これはむしろアメリカ側から、備蓄義務輸入規制という問題はけしからぬ、こういう文句を言われておる。それが正しいとも言いませんけれども、少なくとも法律上、いわゆる石油業法の四条で、石油精製業は許可である。石油輸入業は十二条で届け出制となっている。行政指導なんですね。これは石油についても石油化学についても、余りにも法律の解釈よりもすべてを行政指導で振り回すというところに、むしろ石油業界やあるいは石油化学工業が今日の苦境を招いたという面があるんではないかと思うのですね。だからそういう点は、それであってもだめだ、行政指導なんでしょう。先ほど来言いますように、この三つの問題が現に、ヨーロッパと同じ条件ということから言えば、負担をかけている。だから、自由競争をさす、外国からは自由貿易の原則ということでやられているわけですね。その中で、日本基幹産業石油化学基本である原料に、自分の国が手かせ足かせをはめて、外国からのいわゆる集中豪雨的な輸入で、基礎産業がもう体力が消耗していくということを黙って見るようなことをしておっていいのかどうか。その点、個々に一つずつ石油税あるいは備蓄義務ナフサ輸入の問題、もう一遍お答えいただきたい。私が具体的に触れた問題についてですね。
  16. 小松国男

    小松政府委員 お答え申し上げます。  先生お話ございましたように、確かに石化業界の立場から見ますと、国際価格並みの原料を入手するということが非常に石化業界にとって大事なことであるということは、私ども十分理解をしております。ただ問題は、それと石油安定供給石油政策との調整をどこに求めるかということではないかというふうに思っております。こういう点で、先ほど来申し上げましたように、国際的な事情もいろいろ変わっておりますので、そういう状況対応しながら石油政策の方も柔軟に対応していく。ただ、柔軟に対応するにいたしましても、日本の場合、石油依存度の大きさ、それからエネルギー構造の脆弱性、こういうことを考えますと、また将来石油需給についてどういう事態が起こるかということについて、安定供給のサイドから一定の配慮をしておくということは、石油政策の立場からも大事である、こういう基本を踏まえた上で、石化業界の御要請にどうこたえていくかということで、私どもいま資源エネルギー庁、基礎産業局、産業政策局、通産省挙げて、両業界にとって、また産業政策エネルギー政策の立場から、一番最善の解決策は何だろうということで、現在検討中でございますので、いま先生お話について、ここで確定的な回答を私申し上げる立場にございませんけれども、そういう観点から、ナフサ輸入についてもできるだけ自由に入れるようにさらに輸入の比率を上げていく、そういうことによって石油業界にも努力をしてもらう。  それから、価格につきましても、できるだけ国際価格に近づける。これは石油業界にとってみますと、石油製品の需要構造と価格水準、価格体系というのは関係が非常に深いわけで、それによって経営が成り立っているわけでございますので、方向としては、需要構造につきましても、また価格水準につきましても、これは国際的な需要構造ないしは価格水準に近づけていく努力石油業界に対してもしてもらうということで、いろいろ石油業界の方にもお願いをしておるわけでございます。こういうことで、ナフサ価格についてもできるだけ国際化価格に近づける努力をするということでございます。  それから、備蓄の問題につきましては、これはだれが負担するかという問題の関係でございまして、一応石油業界負担するか、または石化業界負担するのか、その他関連製品を実際に輸入しているところが負担するのか。ただ、日本全体としては、やはり相当の備蓄を持つ必要があるというのは、すべてを輸入に仰いでいる。これは単にエネルギーという立場だけではなくて、素材産業の場合にも、安定供給、それからバーゲニングパワーとか、いろいろな面から見ても、私は一定量の在庫ないしは備蓄というものは必要じゃないかという気がしておりますので、こういう中で石化業界負担をいかに軽くし、国際的な価格水準まで下げていくか、そのための努力をしていこうということで、エネルギー庁としても最大限の協力をし、また石油業界に対しても、その面での協力を求めているのが現状でございます。そういうことを踏まえまして、六月の答申に向かって現在省内でも全力を挙げて検討しているということでございまして、審議会でそれについての適切な答申が得られるものと期待しております。
  17. 水田稔

    水田委員 適切な答申を期待しておるといったところで、私は、エネ庁自身の考え方が、これだけの大変革がいま起こりつつある、それに対応する理解というものが欠けておると思うのです。私はこれだけは答えてもらいたい。たとえば石油税については、法律ができたときに、そういう考え方があったからこそ百億もちゃんと予算を別に組んだ。一銭も使わずにそれをなくしてしまった。それはどうなんですかということ。それからもう一つは、灯油とか重油と違って、石油化学製品というのは流通過程が違うし、在庫が違うわけですね。これはたんとつくらぬでもいいわけです、製品になっているやつは、普通の倉庫に入れられるわけですから。そういう違いがあるじゃないか。そこらは当然考えるべきじゃないか。その二点についてお答えがないものですから……。
  18. 小松国男

    小松政府委員 五十三年に石油税が創設されましたときに、輸入ナフサについては免税措置がとられ、国産ナフサについては当然全体としての石油税がかかっているわけでございまして、その段階でたしかコンビナートリファイナリー対策というような形で百億円が計上されたということは、私も承知をいたしております。これは恐らく先生が御指摘のような意味での配慮があったのではないかというふうに思います。こういうことで、私どもも、石油税石化業界負担分についてできるだけ軽減するという方法については、石油税の問題、石油化学政策全体の中でどうすべきかということで、現在勉強中でございまして、先生の御指摘の点は十分踏まえていま勉強をしておるということでございます。  それから、備蓄の問題については、これはナフサと同時に他の石油製品全体についても課されている問題でございまして、ただ、原油に比べて現在七十日ということで軽減措置はとっておりますけれども、これも他に波及する問題その他いろいろございますので、今後、先生の御指摘があったということも含めまして、今後の備蓄あり方について検討をいたしたいというふうに考えております。
  19. 水田稔

    水田委員 先ほどの答弁の中にもありましたけれども、いま一応とにかく当面はヨーロッパナフサということを言っております。しかし、現実にはアメリカカナダ、これは価格統制を外したとしても根本的に違うわけですから、そういうものが中間品として入ってくる、製品で入ってくるということも起こるわけです。もう一つは、いまの西ドイツ、フランス、ナフサで対抗といったって、将来はシベリアのあの天然ガスヨーロッパまでパイプラインで送っていく、そうなれば向こうも変わってくるだろう。石油化学原料についてはそれほどの大きな転換が図られる。いろいろやられておるわけです。ですから日本でも、じゃ、消費地主義をエネ庁言われますけれども、たとえば日本化学業界でも、仕方がないからカナダのアルバータへ出てEDCにして持って帰ろうかということになっていくわけです。そういう全体の展望というものを、単に石油業界石油化学業界との調整という非常に狭い視野で物を考えたのでは、長い将来の石油化学産業というものは生きていくことはできないと思うのですね。そういう展望なりそういうことについて、これは政務次官、そういうものなんですよ。そこをどう御理解いただいてどういうぐあいに通産省として石油化学の将来についての対策基本的なことだけで結構ですが、お答えいただければと思います。     〔野田委員長代理退席、森(清)委員長代理着席〕
  20. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 水田委員の鋭い御指摘、まことにごもっともな点が多々あるわけでございまして、われわれとしても、石油化学がきわめて重要な素材産業一つであり、これが国際的なエネルギー情勢の変化によりまして構造的な不況に陥っておるということも事実であるということを踏まえますと、現在原料に対しては、いわば手足が縛られて、それで製品の方は自由でございますからひっぱたかれる、こういう状況では確かに問題があるということは十分認識しておるわけでございまして、そこで、現在の日本産業、特に石油業界石油化学業界というような関係、あるいはわれわれの目的であるエネルギー安定供給という体系の中でどういうように解決していくかということになるわけでございますが、先ほどからエネルギー庁の長官がお答えしておりますように、まずは、原料価格の面で欧州並みということを目標にあらゆる施策考えるということが一つ。それから第二は、石油化学業界の中でも、業界の体制整備とか、あるいは開発輸入の促進等も考えていただき、同時に長期的な対策としては、C1化学等原料確保のための技術開発とか、高付加価値化のためのバイオインダストリーの振興といったことにも精力的に取り組んでいくことが非常に必要ではないか、こういうように私は考えております。  いずれにいたしましても、六月の最終答申産業構造審議会からいただくことにいたしておりまして、それに向けていま鋭意こうした問題を詰めておりまして、われわれとしては、大体そういう方向で適切な結論が得られ、その線に沿って強力に施策を進めていこう、こういうように考えておる次第でございます。
  21. 水田稔

    水田委員 石油化学の問題を考える場合、エネ庁石油業界との関係を考えざるを得ない。それが頭にこびりついておると思うのですね。まさに私もそのとおりだと思います。そして石油もいま大変な円安ですから、また昨年に続いてことしも大変な心配だろうし、石油化学というのは——合化労連という組合があるのですが、本当にもうわびしい思いでみんなが合理化を受けているわけですね。ですから、間に理を入れると合理化労連と自嘲的に言わなければならぬ。本当にわびしい思いで労働者が働いておる。石油もない将来に不安を持っていると思うのですね。  エネ庁答弁をずっと聞いておりますと、現在も高度経済成長当時の産業構造の仕組みの中で物を考えて、その中で石油業界石油化学業界の調整をやろう、非常に視野が狭いやり方ではないか。ですから、少なくとも石油業界についても、たとえば余りにも行政指導があり過ぎるのじゃないか。現実に設備過剰であることは間違いない。そして需給にマッチしない石油供給計画、そういうものは問題がないのかどうか。あるいは先ほど来触れておりますように、消費の構造は変わってきたわけです。ですから、どこかに焦点を合わせた、留分を一定の——それはきれいに消費できる形になっていない。中間留分の問題などもありましょう。それから一番大きいのはやはり為替変動なんですね。これまで見ておると、どんどん油は上がる、しかし販売量はふえていく。そういう中でトータルしてみると、為替差益があった、為替差損があった。しかし長期的に帳じりを合わせてみると、差益の方が多かったということで、そういった業界の安易さというのもどうもあるのじゃないか。そしていままさにそういうぐあいに消費の動向が変わってくる。しかもいま為替差損がだっとこの二年間連続起きておる。  そういう中で働いておる人たちは、一体おれたちの業界はどうなるんだろうかと雇用の問題で大変心配しておるわけです。その点、少なくとも石油化学考えるときには、石油業界そのものについても、これらの変わってきた情勢の中で、将来こういう形で生きていくのだという展望をエネ庁が本来出すべきじゃないか。そしてそれは単に石油だけで考えるのじゃなくて、原料問題でも——LNGも入ってきて、これは発電に使われる。あるいはLPGで入ってきて、たとえばガス供給業者が使う。そういうものの輸入で、そういう問題がどんどん起こってきておるわけですね。だから、そこらを考えた総合的な、石油ということに限定しないで、代替品がたくさん入ってきておる、あるいはナフサからいっておるものでも変わってきたという情勢を踏まえた石油業界の将来展望というものを明らかにすべきじゃないか。その点についての長官のお考えを伺いたいと思います。
  22. 小松国男

    小松政府委員 先生からお話がございましたように、石油業界は現在非常に厳しい状態にあるわけでございまして、これはいろいろ事情がございますけれども一つ石油の需給関係、これが非常に変わってきたということでございます。これは日本の場合でも、たとえば石油が非常に価格が高騰しましたので、エネルギー価格の高騰を防ぐために、脱石油ということでエネルギー政策をしました結果、代替エネルギーの開発、導入、省エネルギー、こういうものが非常に進みまして、その結果、石油は世界的にも需要が低迷してきたということで、高度経済成長時代ベース考えておりました石油業界の現在の設備が相当過剰になっているということは事実でございます。そういう過剰体質の中で石油需給が非常に緩和し、代替エネルギーの開発、導入というような形で、今後とも石油の需要については、そう大きな伸長は期待できないという状況の中で、石油産業は今後どうすべきかというのは非常に大事な問題でございます。  昨年、ちょうど前半、原油価格が高騰し、円安がそれに重なり、さらに国内の需要が低迷するということで、石油業界にとっては業界始まって以来という危機状態を迎えまして、資源エネルギー庁といたしましては、七月以降減産指導をしながらその体制整備を図る。同時に石油審議会石油部会でいろいろ御審議をいただきまして、昨年の十二月に石油審議会石油部会の小委員会報告ということで、「今後の石油産業あり方」という答申が出ております。  これは、今後の石油の需要というのは、そう大きな伸びが期待できない中で、現在の石油産業というのは相当過剰な設備を抱えている。この設備をどうするか。それから元売りを含めた石油産業自身が依然として過剰体質にある。これを今後どう集約をし、どう合理化していくかという問題。  それから、先ほど先生からまた御指摘がございましたように、需要低迷の中で、さらに石油の需要構造が変わってきているわけでございます。特に重質油、重油とかナフサ、こういうものの需要が落ち込む中で、ガソリン、灯油、軽油、A重油という中間留分の需要がどんどん伸びてくる、こういう油種間のアンバランスに対してどうこたえていくか、こういうことになりますと、従来のような石油精製得率ではとても間に合わないわけでございますので、たとえば重質油を分解して、中間留分に十分供給する体制整備していくという問題がございますし、特にまた最近の原油事情というのがどんどん重質化してきているというような問題がございます。こういう中で、石油産業をどういう体質にし、その要請にこたえていくか。先ほど先生から御指摘がございましたように、エネルギー関係はもちろんでございます。他の石油製品につきましても、国際化の波が押し寄せてきておりまして、できるだけ国際競争力を持った石油製品価格で供給できる体制石油産業自体にも課されてきている、こういういろいろの問題を抱えて、石油産業はいまそれに対して取り組んでおるということでございます。  こういうことで、昨年十二月の答申で基本的な方向が打ち出されておるわけでございますが、将来の原油事情、それからOPECの動き、こういうことを考え、それからIEAなどの消費国の体制などを考えますと、石油産業については、依然として安定供給のために消費地精製主義を中心とする石油産業基本路線は変えないけれども、これについてその基本原則を守りながらも、同時に国際化の波の中でそれに柔軟に対応していく。同時に、そういう政策路線の中で石油産業自身が過当競争体質を改善し、そういう需要構造の変化に十分対応していくことが大事だということは言われております。  こういうことで、私どもとしては、過剰設備の処理、業界の集約化の問題、それからさらには需要構造の変化に対応する供給体制整備、こういう問題について一つ一つ着実に解決していこうということで、現在そのための検討を進めておるわけでございます。  こういうことで、答申とか将来のあり方については、昨年十二月出された小委員会報告が中心になると思いますし、その路線に沿って具体的な対策を進めていくというふうに考えております。
  23. 水田稔

    水田委員 それでは次に、時間の関係がありますので、アルミの問題をお伺いしたいと思うのです。  御承知のように、いまアルミの需要というのは、かつて日本に生産設備があった百六十八万トン、大体とんとんですね。しかし、原油の値上がりによって電力料が大変上がる。そういう中で五十三年、産構審のアルミ部会の答申で百十一万トンにした。ところがそれ以来アメリカが不況で、アメリカの中で余るものですから、あすこは生産を落とさずに、それを集中豪雨的に一年で五倍にふえるような輸出日本にかけてくる。そういう中で、現実にはいま日本での生産というのは四十万トンぐらいしか生産してない。アルミ各社ほとんどが、もはやこのまま経過するならほとんどの会社が債務超過になる、そういう状態であります。  そして昭和四十九年にそこに働いておる労働者が一万五千人ほどおったわけですが、いまや八千人になる。まさにそこに働く人たちはこれからの先どうなるんだという心配を持っておるわけです。大変深刻な状況であります。  そういう中で、五十六年のこの産構審のアルミ部会、今回の答申では、七十万トンということで、そしてその余の設備を廃棄しよう。そのために関税免除をやって、その分の原資を設備廃棄に回そう、こういうことをいまやられようとしておるわけです。  しかし、一つは、通産省として、七十万トンというのは、この前に百十一万トンと決めた、しかし現実のアメリカからの輸入急増あるいは電気代がどうしてもべらぼうに高いということで、コストの点で引き合わない。現実には四十万トンの生産に落ちてしまう。在庫はどんどんふえる。今度七十万トンに決めたけれども、それも成り行きで仕方がないんだということでは困るわけでありまして、七十万トンというのは、たとえば昭和六十年度に二百十万トンの国内需要があって、国内生産七十万トン、海外物七十万トン、輸入七十万トンで二百十万トン、大体そういう計算のようでありますが、海外に出ていくにしても、日本が最高の技術を持っていないと、諸外国におくれた技術をもって海外に出たってメリットは一つもないわけですからね。そういう意味で、国内にそういう最高のレベルを持つ産業は必要である。  そういう点で、七十万トンというのは、通産省としては、これを切ることはまさに日本アルミはもう全部輸入でやりますということになりかねないわけですが、そういう点では七十万トンという数字をどういうぐあいにお考えになっているか。ぜひ守っていきたい、こういうお考えなのか。これは成り行きでまた変わるかもしれませんということは、まさにいままで業界も労働者も大変な苦境を耐え忍んで今日まで来た、もはや耐え切れないところまで来ているのですから、その点の七十万トンの数字に対するお考えを聞きたい。
  24. 真野温

    真野政府委員 昨年十月の産構審の答申で、七十万トン体制を維持すべきである、こういう答申をいただきました。この基本的な考え方は、ただいま先生指摘のように、昭和六十年度の需給を考えまして、その際、日本として一番安定的な供給は何かということをいろいろ検討したのが一つでございます。あわせて国際的なコストの面での競争力考えたわけでありますが、その際、やはり将来日本アルミ安定供給の主流というのは開発輸入、長契に移りつつある、これはもう事実でございまして、将来計画におきまして、国産よりも多いものが大体計画されているわけでございます。これが基本的にコスト的にも有利だからベースになるだろう。残りの部分について、いま申し上げました開発、長契、百二十万トンくらいになるだろう。こういうふうに想定したわけでありますが、残りの部分についてコスト的に見ますと、確かに外国の製品の方が安いわけでありますけれども、中長期のいままでのアルミの世界の需給を考えましたときに、スポット的なものについて過度に依存することは非常に危険である。従来の実績から見まして、日本として供給を受けられる安定的なスポット輸入というのは大体三十万トンというふうに想定いたしておりまして、したがって、一定量の国内の生産能力を維持する必要がある、こういうことで七十万トン程度の能力を維持することば必要であるという形が示されたわけであります。  他方、これに対しまして、果たしてこれが、先生指摘のように、国際的に競争し得るものであるか、維持できるものであるかという点でありますが、これについては、私どもは、単に国内の製錬のコストだけではなくて、開発輸入、長契等これはいずれもアルミの製錬メーカーが実施しているものが相当部分でございますので、それを含めて両方で競争し得る体制というのを想定したわけでございまして、その場合にやはりいろいろな措置が必要であろう。その一環として、先ほど御指摘がありました製錬業者の輸入するアルミ地金については関税免除措置をとるということで、現在法案を大蔵委員会の方で御検討いただいておるわけでありますが、そういうことによってコストを総合的に下げる、こういうやり方をいたしたい、こういうふうに考えたわけであります。  それで、そういうような両面の相まった対策でこの七十万トンの能力を維持したい。ただ、先ほど御指摘のように、現在実際の生産レベルというのは五十万トンくらいに落ち込んでおるわけでありますが、ただ、これにつきましては、実は昨年一昨年と非常に国内アルミ需要が落ち込んだことが一つと、国際的にも非常にアルミ市況というのは不況になっておるという異常要因が重なっておる。それによりまして昨年の輸入の急増があったわけでありますから、そこで国内に相当な過剰在庫がたまっておる。そういう意味で、急激な在庫調整をせざるを得ない、こういう状況が続いておるわけでありまして、そういう意味で、現実の生産は相当落ちておるわけでありますけれども、とりあえずアルミ産業アルミ製錬企業の経営体質を改善するために、どうしてもこういう過剰在庫は解消せざるを得ない、こういう事情がございまして、それによってできるだけ需給を均衡させる方向に現在動いているわけであります。  ただ、日本の場合はこれが非常に大きかったわけでありますけれどもアメリカカナダ等もこういう情勢が同様に波及してまいりまして、最近のアメリカにおける生産レベルというのは、やはり相当落ちてまいりまして、能力に比べまして七〇%台に落としておるわけでありまして、世界的な在庫調整がいま急速に進んでいる状況でございます。  そういう特に異常な状況がこのところ続いておりますので、いろいろな経営面での苦境がより倍加しておる、これもまたやむを得ないところではございますが、そういう中にありまして、私どもとしては、中長期に見て日本の安定的なアルミの供給を考えるときに、この七十万トン程度の能力というのは維持すべきであると考えておりますし、それを維持できるような体制をできるだけつくってまいりたい、こういうことでいろいろな措置を講じてまいります。
  25. 水田稔

    水田委員 七十万トン維持しなきゃならぬ、こういうお考えであるようでありますが、そうしますと、これは海外物とのプールということでのコストの平均化ということもあるわけでありますけれども、どうしましても、いま買電が一割くらいであとは共同発電がほとんど。二十万トンは古い水力とそれから石炭火力でやっておる。これはそのままでも国際競争力はある。五十万トンに対してどう考えても、たとえば石炭にかえても、いまの大体キロワットアワー十七円くらいがどうしても十二円くらいにしか下がらぬわけですね。カナダは水力で一キロワットアワー一円五十銭ぐらいで、アメリカが火力で五円から七円ぐらいとしますと、どれだけ日本の技術が最高であっても、これに対抗することはできないわけですね。まるまるそれに対抗するということではないにしても、少なくとも国内で五十万トンを維持していくということになれば、これは何らかの政策的な電力料というのを導入する以外に方法はないだろうと思うのです。昨年私がこの問題で質問しましたときに、通産省の方は、いままでは無理だったけれども、何らかのアプローチをしなきゃならぬだろうという答弁があって、それきりになっておるわけですね。確かに石炭に添加する補助が七・五%から一五%に、こういう配慮をされておりますが、それで計算してなおかつ一キロワット十二円ないし三円につくということですから、その間の問題については、やはり政策的な料金というのをどうしても、七十万トン維持しよう、そして五十万トンについては何らかを考えなきゃならぬとすると、それ以外に方法はないと思うのです。これは次官アルミ問題については国会の中でも権威でありますし、造詣の深い方でありますから、これを守ろうという意欲は私と変わらぬだろう、こういう気持ちを持っておるわけです。将来の問題、七十万トンを維持しようという気持ちが通産にある、それならば二十万トンのけた五十万トンについては、それ以外に方法があればぜひ教えていただきたいと思うのです。ないだろうと思うのですね。この点はぜひ次官に御答弁いただきたい、こう思うわけです。
  26. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 いま水田委員からどうも権威だと言われたのですが、私それほどあれではございませんけれども、いままでアルミ問題は不況対策を自民党で勉強しておりましたとき担当いたした経験もございますので、お答えいたしますと、いまおっしゃったように、アルミの不況の根本原因は、単に需要の減退ということだけでは説明できませんで、一番問題は、やはり電力のコストの大幅な上昇、それと最近のスポットの地金輸入の急増ということによってもたらされておるわけでございます。  そこで、いま局長から答弁申し上げましたように、七十万トン体制ということを実現するのにどうしたらいいかということでございますが、とりあえず特安法の安定基本計画、これは百十万トンになっておりますので、これを七十万トンに変更するということでございます。  第二番目は電力の問題ですが、石炭転換、それから共同火力発電の効率的運用ということによって、電力コストの低減を極力実現するということでございます。ただ、いまは御指摘のように、石炭に転換しても十二円ぐらいじゃないか、それじゃまだ国際競争力として問題ではないかということでございます。     〔森(清)委員長代理退席、委員長着席〕 もちろん一般消費者なりほかの産業が御納得いけば政策料金の導入ということも可能でございますが、なかなか現状において必ずしもそうまいらないということでありますので、当面アルミの製錬業者の地金輸入について関税を免除するという措置を五十七年度からとるということにいたしたわけでございますし、また今後の長期的な展望としまして、ぜひひとつわれわれとしては、電力を大量に消費する電解法というものにかわる新しい製錬法ということによって電気の大幅な節減が図れないかということで、この技術開発を強力に推進していく、あるいは原子力の発電設備から直接供給できるような原子力コンビナートといったようなものも検討していくということを考えていくべきではないか、こういうように考えておるわけでございます。  なお、新しくアルミ工場を世界においてもつくり出すということになりますと、いかに電気が安いところであっても相当のコストがかかるわけでございます。現在の世界のアルミ生産能力というのは、将来需要がだんだん伸びてまいりますれば、需給バランスは回復してくるのではないか、そういうことを考えていけば、当面こういう対策を強力に進めていくことによって危機を克服できるのではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  27. 水田稔

    水田委員 これは政治家原田さんの御答弁なら違った形になると思う。当局の答弁をそのまま読み上げたようなことであります。アルミが生き残るためのそういう長期的な施策については十分御理解されておるわけでありますから、ぜひ最大の努力を願いたいと思うのです。  最後に、時間がもうオーバーしますが、もう一つ。  いま石炭に転換してもなおかつ基本的に長期にわたっている。その間がもたないのです。私どもも労働組合や業界にいろいろ聞きましたけれども、働いておる人たちの気持ちは、石炭に転換すれば十年ぐらいになるのじゃないか、その間がもはやもたないという不安というのが働いている人たちに大変多いわけですね。ですから、たとえばその間にとれる方法というのは、共発が多いわけですから、その中で、たとえば自家発は事業税がかからない。共発は一般電気事業者ということになってしまうわけですね。そういう問題もあります。あるいはまた重油ですが、これは石油税がかかっておるわけですが、三年間というもの、転換する間もたない。そういう問題を含めた時限的な何らかの措置はできないものだろうか。あるいはまたいまは買電の方が安いというところもあるわけですね。しかし大口特契に変えようとしても、四十九年の例の割り増しという制度がありまして、いま変えたのでは、かえってキロワットアワー二十円ぐらいにつく。ですから、もともと最初から買電なら共電よりは安く入るものが入らないという問題、これは次官もよく御承知のとおりなんです。そういう三年間の時限的な特別の措置考えられないものか、そのことを最後にお聞きしたい。
  28. 小松国男

    小松政府委員 確かに長期的には電源を変えていくということで、アルミの場合も石炭転換というのも一つの方法だろうというふうに思いまして、そのために私どもとしても、先ほど先生からお話がございましたように、その転換のための助成策をいろいろ考えておるわけでございますが、その転換までの間についてどうするかというのは、確かに先生指摘のように、アルミ業界が生き残るためには重要な問題でございます。これはいませっかく電力業界とアルミ業界との間でどう対処していくかということで検討をしております。  事業税の問題。これは租税特別措置を新たに設けるということで、非常にむずかしいことになると思いますので、なかなか実現は不可能でございますが、特別料金制度は、共火を活用するということで特別料金制度を課さないでやる方法はあり得るのではないかと思います。  さらに、その間どういう電力をアルミ業界に送れるかという点につきましては、現在電力業界とアルミ業界双方で知恵を出してもらうということで検討してもらっております。
  29. 水田稔

    水田委員 終わります。
  30. 渡部恒三

    渡部委員長 後藤茂君。
  31. 後藤茂

    ○後藤委員 大変時間が制約をされておりますので、また大臣もきょうは出席をいただいておりませんので、日米貿易摩擦の問題について、きょうは突っ込んだ質問をさせていただきたいと思っておりましたが、そういう関係で二、三その周辺の問題についてお伺いをしてみたいと思うわけです。  最初に、日米貿易摩擦日本アメリカとのインバランスが八一年百八十億ドルということが言われているわけです。ところが通産の方の資料だと百三十四億ドル、こういうように言われているわけです。私はこの計算の基礎をきょうお伺いいたしません。ただ、一般的に百八十億ドルということが言われているのと、それから通産の方では百三十数億ドル、こういうように言っておる。これは一体どちらを私たちは日常的に使ったらいいのか。それからまた国際的な統計の面では、一体どちらの方が使われているのか。貿易局長、最初にその点だけちょっとお伺いしておきたいと思うのです。  計算の方法は結構です。ただ一般的にはどちらを使っているのか。たとえば日米貿易小委員会等におきましても百八十一億ドルの方を主として使っているのかどうか、その点だけ最初にちょっとお伺いしておきたい。
  32. 黒田真

    ○黒田政府委員 お尋ねのように、アメリカの統計では百八十億ドルということでございますし、日本の通関統計では百三十億ドル強ということでございまして、これはどちらを使うのが国際的に正しいかという御質問にはちょっとお答えしにくいのですが、アメリカは百八十億ドルと言いつのるだろうと思うのですね、大きな数字でもございますし、目立つ数字でございます。それに対して私どもがそのとおりだと言う必要はないので、私どもは百三十億ドルとか、日本ベースでの数字を言ってよろしいかと思います。ただ、通関統計の場合は、御案内のように、輸入の方に運賃等を含んでおりますから、若干詳しい議論をすると、その部分は除いて貿易収支の議論をするならば違う数字があるかもしれませんが、そういう数字はつくられていないということで、私どもとしては通関統計の数字を使わざるを得ないというような状況のように思います。
  33. 後藤茂

    ○後藤委員 くどいようですが、もう一回お伺いしておきたいのです。国際的には日欧あるいは米欧、米日というようにそれぞれ貿易がなされているわけでありますけれども、そのときの資料はその百三十億ドルで言っているわけですか、それとも百八十億ドルの方で言っているのでしょうか。つまり日本の方の言い分は、いま御答弁のあったとおりで結構だと思うのですけれども、国際的なやりとりの中では、ここの約五十億ドル違うということは、実態は別に物が動いているわけですから構わないということになるかわかりませんけれども、印象としては、インバランスが非常に大きく映るのと、そうでない映り方をするわけですね。     〔委員長退席、森(清)委員長代理着席〕 特にマクドナルド氏などの発言を聞いておりますと、農業関係の自由化を進めていけば三十億ドルくらいは十分出てくるじゃないかと言われる。そうすると、百八十億と百三十億というところの差、これに近いものが出てくるわけであります。こういったことで、私どももこの間アメリカへ行ってみまして、説明がめんどうですから一応は百八十億ドルという言葉を使ってまいりましたけれども、しかし、この点はもう一度、一般的にはどういうふうに使っておけばいいのか、その点だけ最初に聞いておきます。
  34. 黒田真

    ○黒田政府委員 お答えいたします。  ヨーロッパなどの場合でございますと、彼らの統計が大変遅く出てくるものでございますから、いやおうなしに日本の通関統計を使って日本ベース議論することが多いように思います。アメリカの場合は、アメリカ自身の統計が比較的早く出るということで、アメリカの立場からいうと、物だけに着目した貿易収支のときは、その百八十のベースになるような方式を彼らとしては使いたがると思います。ただ、われわれとしては、余り貿易収支だけの議論にとらわれたくないとか、もっと物事を経常収支で見るべきだあるいはグローバルに見るべきだという立場でございまして、ちょっと的確にお答えしにくいのでございますけれども、まあ向こうは百八十と言い続けるだろうし、こちらは必ずしもそれに直ちに同調する必要はない、およそそういうことがどこまで意味があるのだろうかという形で反論をしておるわけでございます。
  35. 後藤茂

    ○後藤委員 私が最初にそのことをお聞きしましたのは、事ほどさように、今度の日米貿易摩擦の問題に入ってみまして、双方の理解が十分になされていないということを嫌というほど実は痛感をさせられたわけです。  そこで、原田次官もお見えでありますけれども、この日米貿易摩擦の問題については政務次官として直接御勉強もなされておられるでしょうし、またその解決の衝に当たっておられると思うわけですが、この間は江崎ミッションが行き、そしてまた櫻内外務大臣もつい先日お帰りになった。その中で、私どもも向こうの議会、議員レベルの皆さん方や各研究所あるいは国務省、国防省等のスタッフの皆さんと話をしてまいりましたけれども、やはり日米貿易摩擦の問題については相当深刻に受けとめておかないと、いい品物を安く、しかもアメリカの国民が喜ぶような製品輸出しているんだから、この相互主義法案だとかあるいは非関税障壁の撤廃等についても、あるいは市場をオープンにしろ、そういう圧力というものはいわれのないことという角度から問題をとらえておりますと、事態はより深刻になりはしないかという印象を大変強く持ったわけです。  そこで、原田次官にお伺いをしたいわけでありますけれども、この日米貿易摩擦に対する認識の問題、日本政府としてもまだ甘い面がありはしないだろうかという気が私はいたしてなりません。どういうようにお考えになっておられますか、最初に所見をお伺いをいたしまして、二、三お聞きをしてみたいと思います。
  36. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 後藤委員わざわざ訪米されてアメリカの要路の方々とお話しをいただいて、私も大変評価しておる次第でございます。その結果を踏まえての御意見、非常に傾聴に値すると思います。まさに現在の貿易摩擦の解消について基本的にわれわれ考えていかなければならない。単に短期的な視野だけでなくて長期的に考えていかなければならない、こういうように考えておるわけでございます。  現在、世界の経済停滞が見られる中で、世界有数の経済大国に成長したわが国といたしまして、国際社会の責任ある一員として、世界経済の安定的な発展に向けて積極的な貢献を果たすということがわれわれの使命であると考えております。  こういう観点から考えますと、わが国としては、積極的に自発的に市場開放に努めまして、貿易の拡大均衡を図っていかなければならないわけでございます。その中で産業協力、経済協力等を通じて世界経済の再活性化と進展に貢献していくことが肝要ではないかと考えております。  そこで、いま当面の問題につきましては、まず関税の一括引き下げ、それから輸入検査手続等の改善を初めとする一連の市場開放策をとってまいりましたけれども、われわれとしては、これが一つの大きなステップであると考えておりまして、引き続いて関係各国との話し合いを緊密にして、一層の市場開放に努める必要があろうかと思います。アメリカでも、御承知のように、議会で相互主義法案等が提案されておる微妙な時期でございます。この成否も予断を許さないという状況にございますので、もし相互主義法というものが成立するようなことになったら大変なことになります。われわれとしては、自由貿易の堅持のために、われわれとしてできることは積極的にやっていくということが必要でございますし、サミット前までにはある程度のわれわれとしての決断をしていかなければならない、こういうように考えておる次第でございます。
  37. 後藤茂

    ○後藤委員 日米貿易摩擦の問題で、だれが考えても、アメリカの皆さんと話をしておっても、二国間貿易だけで問題の解決ができるわけがないということは百も承知しているわけなんですね。にもかかわらず、あの相互主義法案というものがいま大変な勢いで国民の合意を得始めてきているというそのことは、一体背景は何だ。レーガン大統領の経済政策の失敗というものは、ワシントン・ポストの幹部の皆さんやあるいはNBCの皆さんとお会いをしても大変不評判です。恐らくうまくいかないだろう、こういうように指摘をするわけです。そこからのいら立ちが、結局先ほどの百八十億ドルというのは、やはり大変大きなインバランスという印象を与えているわけですから、われわれが一生懸命日本の品物を買っておる、にもかかわらず、アメリカの品物が日本に行かないのではないか、そこにはそのアクセスを阻んでいる何かがあるのではないかというのがまことしやかに——こちらから言えば、あらゆる面が相当オープンマーケットになっている。関税障壁等についても非関税障壁等についても、いま次官が御答弁になりましたように、努力しているというようなことが実はほとんどわかっていない。私は、政府なりあるいは議会なりというものの一部の者はわかっておりますけれども、国民の皆さん方が全く理解がなされていないから、ことしの中間選挙というものが大きな圧力になって対日批判というものを大きくしてきているように思えてならないわけでございます。     〔森(清)委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、一つのドラマチックなアクションをかけなければ、日本というのは、今度の非関税障壁の整理等にいたしましても、言うことを聞かない、あるいは対日貿易小委員会等を開いて、そしてこれから作業部会等で、あるいは十月にはまた柑橘類だとかあるいは牛肉、農産物等をこれからどうするかということの作業等を進めていく、何か圧力を加えなければできないのだという形にとられてきている面を、一体どのようにアメリカに対して理解を深める手だてをしてきているのか。どうも事が起こってくるとミッションを送り、どういうことをやったらいいでしょうかと何かお伺いをたてているような形、それは自由貿易主義の旗手として日本考えていくべきではないか、こういうふうに言うわけであります。では、どういうようにしたらいいのですかということについては、そちらで考えなさい、こう言われてきておる。この問題に対してもっと積極的に、どう対応していけばいいのかということについて、どうもむしろ貿易の方でなしに対応のアクセスですね、そういうものが欠けておる。ジェトロの理事長お見えになっておられますのでお伺いをしたいと思うのですけれども、たとえば意見広告などをすぐに出されていて、それで事足りるということでは済まない問題が、日米関係においてはいま大きく上がってきているのではないだろうか。つまりアメリカに対して物を売らなければ、貿易立国だから物を売らなければ私たちは生きていけないのだ、あるいは資源国から資源を購入をして、そしてその資源の代金を支払っていきながら付加価値の高い物を売っていくのだから、それがわが国の使命なので、ジェトロとしてもこの面に一生懸命汗を流してやっておる。しかも各国に喜ばれるような品物を送っているわけだから、それに相互主義法案等が出てきて、これが保護貿易主義に入って縮小均衡になったら大変なことになる。事は二国間でインバランスを解決するというのではなしに、もっとグローバルに多角的に問題を解決していけばいいという意見広告程度では済まない問題があるのだろうと思うのですね。  そこで、ジェトロの方で、先端で日米貿易摩擦の問題あるいは日欧貿易摩擦等の問題を眺めながら、ジェトロの立場からどのようにこうした問題に対して見ておられるか、その点をまず最初にお伺いしておきたいと思います。
  38. 村田恒

    村田参考人 ジェトロの仕事につきましては、常々国会の先生方の非常に温かい御指導と御支援を賜っておりまして、われわれ常に感謝いたしております。ありがとうございます。  さて、いま問題の日米、日欧に対します貿易摩擦という問題についてでございますが、何と申しましてもベトナム戦争まではアメリカというものはともかく非常な自信を持ってきた。しかし、ベトナム戦争の失敗によってつまずきまして、アメリカ全体がもう非常に憂うつな気持ちになり自信を喪失してきた。かたがた経済は非常にうまくいかないということでございまして、全体が一種のフラストレーションといいますか、何かを求めるという非常な焦りというものが心理的にあるのではないかと存じます。  そういうときに、特に先ほど先生指摘のように、日米間の貿易の大きなインバランスというふうな数字が前へ出てまいります。やはり目についてしようがない。と同時に、これまた釈迦に説法のようで申しわけございませんけれども、たまたま十一月の中間選挙を控えまして、国会の動きというものがきわめて強くなってきている。特にこの三月、四月というものは、ちょうど大事な政治の季節になっているということが考えられます。同時に、アメリカの国会の中でこれまでは、いまここの大使になってきておりますマンスフィールドとかあるいはフルブライトとか、そういうある程度、長老といいますか、まとめ役がおったようでございますけれども、最近はゼネレーションがかわりまして、若手の議員が各地方から新顔としてたくさん出てまいります。したがいまして、その人たちのまとめる力というものが国会の中で非常に失われてきております。言いかえますと、各選挙区の利害というものを非常にぎらぎらした形で生の形でもって国会の中に反映してくる。たまたまいまの相互主義というような問題に関連しての一つ一つの大変な数の法案というものが、いま国会に持ち込まれておるわけでございます。同時に、こういったふうな動きというものが、先ほど申し上げました心理的なアメリカの全体の焦りというものに対しまして、それが非常にたまたまうまく当たっているということでないかと思うのでございます。  そこで、それに対する対策いかんということでございますが、ただいま先生の御指摘にございましたように、単に新聞に何か意見広告を出すというようなことでは、これはもうとてもおさまる問題ではございません。またその程度の措置でもってこれがうまくいくなどと考えることはとんでもないことでございます。と同時に、これまでのように、ワシントンでありますとか、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスといったような大都市におきましていろいろなPRを展開してくる、それでわが事足れりとしたのでは絶対だめでございます。  たとえばジョージアのアトランタに行きましても、ニューヨーク・タイムズを読もうと思っても、それは図書館か大学へ行けということでございまして、それぞれ一つ一つの地方の有力な新聞に対する工作、地方のテレビ、ラジオ等に対します工作、そういうものが活発に行われなければ、あれだけ広い国でございますから、それに対します日本の当面の問題に対する理解を深めるということはとうていできません。と同時に、単に自動車でありますとか、テレビジョンでありますとか、そういった商品そのものに対しますいろいろな解説、いろいろな釈明あるいはいろいろな理論的な根拠に基づく論争というものをやりましても、やはり足りないわけでございます。  もう申し上げるまでもなく、ヨーロッパでもアメリカでも流れ出てきている、はんらんしているものは日本の商品でございましょうが、その商品には人格がございません。したがって、これは要するに日本のものだ、あるいは日本人がつくったものだということはわかります。しからば、その日本及び日本人とは一体何なんだということに対する理解が全く足りないわけでございます。一々具体的な例を挙げるのは差し控えさせていただきますけれども、何といっても日本及び日本人というものに対する理解が足りない。そのことは日本の文化とか日本の社会、そういうふうな問題につきます適切な解説あるいはそれに対する丁寧な、わかりやすくかんで含めるようにして説明していくという努力が足りないと思うのでございます。  そこで、私、ジェトロの理事長に就任しまして以来、真っ先にやってもらいましたことは、地方に分散してPRを展開しろということでございまして、たまたま私はそのとき草の根運動という言葉を使ってこの問題を展開したのでございますが、草の根というのはアメリカ人に言わせますと、どちらかというとロビー活動のにおいがする。つまり国会の議員に働きかけるロビー活動のにおいがするからやめろということで、いまは地域を中心にした人間対人間の対話というふうな名称に変えまして、いまこれを全米各地において展開しております。何分にも少人数のことでございますし、また力の弱いところでもございますので、十分ではございませんが、私どもの出先の者はいまともかく必死になってこれをやっております。ある程度の成功をおさめてきているのではないかと思います。そういう意味におきまして、各地方地方の利害というものをわきまえまして、その地域におきます商工会議所あるいは市長、それから財界人あるいはその選出の代議士の方もおられますけれども、国会議員になるべく直接接触することはやらせないようにしております。と申しますのは、これはロビー活動と誤解されますので。しかしながら、主として民間のそういう力、そういうものに対していろんな働きかけをやらしております。  次に、ヨーロッパの問題でございますが、ヨーロッパに至りましては、アメリカ以上に日本のことを知っていないというのが実態でございましょう。そこでいまアメリカと同じように、また同時にヨーロッパにおきましては、PRエージェントとかPR活動というものがそれほど活発にいま発達しておりません。したがいまして、ヨーロッパに対しましては、主として日本でいまいたしておりますのは、ジャーナリスト、マスコミに目をつけまして、これまでジェトロといたしましては、ヨーロッパ各国から第一線で書いております新聞記者あるいはテレビの関係の人、そういう人たちをジェトロの費用で招きまして、日本の工場、日本の地方等を全部案内し、さらにいろいろな学者あるいは官庁関係の専門家を呼んで、それにいろいろな解説を加え質疑応答をやりまして、その理解を深めることに努めてきているわけでございます。  いま、啓蒙と申しますか、PRと申しますか、主としてそういう面についてだけお答え申し上げたわけでございますが、細かいこと、さらにその他の部分についての仕事はどうかということがございましたならば、御質問に応じましてお答えさしていただきたいと思います。
  39. 後藤茂

    ○後藤委員 きょうせっかく御出席をいただきましたので、なお二、三お伺いしたいのですが、私も今度二回目の訪米をいたしました。私どもはニューヨークだとかロサンゼルス等々を見てアメリカを判断してしまう欠点がどうしてもあるわけですね。しかし、今度ワシントンである人の話を聞きまして、いや、そうじゃないんだ、確かにニューヨーク等は大変な都市になってきている、あるいは労働生産性等についても大都市においては非常に落ち込んでいる。しかし、地方に行きますと、アメリカ人は神に敬虔な祈りをささげながら、勤労に汗をかいて非常に規律正しい人間味豊かな生活をしている。私たちはどうも、アメリカはベトナム戦争以後労働モラルは低下をし、犯罪都市を形成しておって大変なところになっているのじゃないか、こういうような印象を持っているわけですけれども、しかしそうではない。ヨーロッパにおいてもやはり同じだろうと思うのです。ところが、えてして私たちは、大都市あるいは政治都市を一見してすべてを判断していくという嫌いがあるわけです。  ECの対日代表部にいましたウィルキンソンさんですか、この人が「誤解」という本を出しておりますけれども、この日欧の貿易面での摩擦の背景にあるお互いの偏見や相互のイメージの集積を点検してみて、残念ながらヨーロッパ人の方に、先ほども理事長が言われておりましたように、非が多い。しかし、同時に日本側も経済大国としてうつつを抜かして、日本というものがもうすべて知られているような立場に立っているのではないか、こういうように指摘をしているわけです。そして最後の方で、私はこれはいい提言だなと思ったのですけれども、外交官という特権的職業をキャリア以外の人々にも開放したらどうだろうか。ジェトロというのは、最初は多分関西の方の中小企業輸出振興というものが原点といいますか、ルーツであったと思うのですが、ただエコノミックアニマル的に売り込み売り込みに精を出してきている。今日まで一生懸命やって、そのイメージが今日なお残っているのではないか。先ほど理事長が言われた、もっと多角的な交流を深めていかなければ日本理解してもらえないし、また外国を理解することもできない。もしこれがないと、どんなに貿易の問題をテクニカルに処理をしていったとしても、不信のイメージというものは変わっていかないだろうと思うわけです。  こういった問題に対して理事長いかがでございましょうか。日常一番御苦労なさっている中で、きょうは監督官庁おられるところで言いにくい面がありましょうけれども、率直に実情を披瀝されて、もっとそういった面に、つまりキャリア以外の人々がもっと働ける場というものをどういうようにしたらいいか、そしてその中から友人をどうつくり上げていくか、知日派を世界各国にどうつくり上げていくかということについて、ひとつお考えがあればお聞かせをいただきたい。
  40. 村田恒

    村田参考人 非常にむずかしい問題でございます。  第一に、日本はいま自由主義世界の第二位の地位になってきたんだから、日本が国際社会の中でもっとイニシアチブをとった活動をしたらどうかということの御指摘だったかと思いますが、日本がどういう姿勢をとって国際舞台の中で外交その他あらゆる問題を展開していくかということは、これは私はひとえに国会がお決めになることだろうと思います。政治というものは、つまり外交も政治でございますから、国会においてどういうふうな方針をおとりになるかということは政治家がお決めになって、それに基づいて役人が働けばいいわけだと思います。  ただ、こういうことを申し上げますのは、私、戦争前、戦争の中をくぐってきた人間としまして、個人的なあれでございますが、何となく余り前へ出ていってまたたたかれたり憎まれたりしてはいけないのじゃないかというふうな、特に東南アジアその他におきまして、戦争による災害でずいぶん迷惑をかけてきているわけでございまして、そこへもってきて今度は少し金ができたからといって、大きな顔をしてにわか成金がいばるようなことをやったら徹底的にたたかれる、必ず控え目に控え目にいくべきであるという思想がございます。  同じような意味において、アメリカの場合は少し違いますが、ヨーロッパあたりのように、非常に伝統的な文化を持ち、歴史を持っているところに行って、先ほども申し上げましたように、これといって十分な徹底した理解が得られていないような段階において、たまたま経済が優位であるからといって、余り一人前な顔をして言うと、この成り上がり者がなどと言われやしないかというような、これはあくまで個人的な感じでございますが。したがいまして、同じことを言うにいたしましても、絶えず相手方の立場を考えながら非常に控え目に言うというふうなのが、いまいろいろなセミナー、会合等においてヨーロッパの連中と接触しあるいはアメリカの連中と接触しているときに、私個人としてとっている姿勢と申しますか方法でございます。これが正しいかどうかは、今後の国政のあり方に順応いたしまして、それによってまたその姿勢というものは幾らでも変えていかなければならない、こういうふうに考えております。  さらに第二の、知日派をもう少しつくることが必要であろうというお言葉でございますが、全くそのとおりでございまして、先ほど申し上げましたように、およそ日本のことは知らない。高校の生徒に対していろいろなアンケートで調べましたときに、ECの国におきましても、アメリカでも、日本は中国の一部分であるというふうな回答がはね返ってくるという例が非常にございます。それから同時に、イメージがまだ非常に古いイメージでございまして、現在の日本がどういう経済であり、どういうふうな社会情勢であり、どういうふうな労働の状況であるかという問題についての適切なる解説がもっともっとなされなければならないと思います。経済の問題だけが前に出ておりまするけれども、それと同時に、いま申し上げました広い意味における日本の社会状況、文化の段階、そういうものについての解説をあらゆるルートを通じて、あらゆる方法を尽くしてやっていかなければならないと考えております。  同時に、これは立教大学の西山先生が言っておられるので、私は非常に同感なんですが、日本のことを日本語でばかり解説してもわからないよということでございます。     〔委員長退席、森(清)委員長代理着席〕 日本のことを解説するならば、世界にわかる言葉で解説しろということを言っておられるわけで、これはいままで全く抜けてきたところだと思います。言いかえますと、単にそれを英語でしゃべるとかフランス語でしゃべるということだけじゃございませんで、日本の現在ありまする実態をどういうふうに解説していくか。それは国際的な言葉で国際的な意識で解説する必要があるということなんです。外国人にわかるような、欧米の文化と日本の文化とは歴史的に非常な相違がございますが、彼らの頭で理解できるような解説をしろということを盛んに言っておられるわけです。  たとえば終身雇用という問題がございます。日本は終身雇用だからどうだという批判もございます。よろしい。しかしそういう場合に、いままでそれに対しまする答えは、あれは日本における純風美俗である。企業は一家族のごときものであって、終身まで雇って働かせていくことが純風美俗であり、労使間の協調の大きなゆえんである、こういう説明をしております。しかし、これでは向こうはわからないわけでございます。たとえばアメリカのように、簡単にレイオフができる、あしたからおまえやめていいよとぽんとやれる、そういうふうなやり方の中においては、終身雇用は純風美俗と言ってもわからないと思うのでございます。それでは不親切だと思うのです。何ゆえに終身雇用がこのような形において出てきたかということの説明をしてやることが大事だと思います。  第一に、終身雇用という問題は、戦前はそれほどなかったわけです。戦後非常に大きく前に出てきたわけでございまして、何だといいますと、これは非常に立ちおくれておりました日本の技術なり何なりというものをアメリカから学び、それに追いついて追い越そうということで大変なことをやってまいりました。と同時に、日本の学校の制度を、ドイツは敗戦の後におきまして、アメリカの突きつけてきましたものを完全に抵抗して、いままでのドイツ式の学校教育の制度を残しました。日本の場合は、アメリカ式の教育の制度になりまして、御承知のように大変な大学の数が出ております。しかも、この大変な大学の数が出て、大変なレベルの高い技術者が出てきたということは、たまたま日本産業構造というもの、日本高度経済成長を支える一つのゆえんにもなったわけでございます。  いずれにしましても、そういう形で企業が大変な人間を吸収していっている中において、企業としては、まず電気のことを十年やらしたら、その後機械のことを十年やらせるというふうな転換をしてやらしております。そうでないと、それが二十年先になったときにおいて、管理職の相当な地位になりましたときに、総合を知った形でもってコーディネーションのできる運営をしなければならない。それだけの相当高い給料をもって雇って、十年、十年と違う分野の仕事をさせて、いわば企業はそれだけの投資をしているわけでございます。したがって、それが三十年かそこらで簡単にやめてもらったのでは、企業としては絶対にもったいないわけでございまして、これから定年延長の問題も出ておりますけれども、さらにできるだけ長く働いてもらおう、これがすなわち終身雇用というものが発生してきた一つ原因なんだということを説明しますと、なるほどそうかとわかってくれるわけでございます。  比々皆しかりでございまして、このような現在の日本にありますいろいろな現象というもの、存在する現実というものを国際語で語る、国際語で説明する、こういうことがこれから必死になって行われなければならない、そのことがいつの間にか外国に日本というものをわかってもらえるゆえんであろうかと存じます。
  41. 後藤茂

    ○後藤委員 時間があれば、なおもっと村田理事長にお伺いしたいことがいっぱいあるわけでありますけれども、大変貴重な御意見を聞かしていただきましてありがとうございました。  今度の朝日ジャーナルの「ニッポン悪者論の正体」というものを読んだ中で、ジャンニ・フォデッラというミラノ大学教授の「イタリアからの提言」というのを私は大変興味深く読んだわけです。他国との関係のとらえ方、日本は「つねに卑下の立場か優越的な立場に立ち、対等の立場に立つことが決してない」という指摘があったのが、私は大変厳しい批判のように受け取ったわけです。先ほど理事長は大変正確にといいますか、お行儀のいい御説明をちょうだいいたしましたけれどもヨーロッパアメリカに対する態度、それから東南アジアや発展途上国に対する態度は、まさにイタリアのミラノ大学教授が言っているように、常に卑下の立場か優越的な立場に立って、対等の立場に立つことが決してないというように私も思うのです。  たとえば日米問題にいたしましても、私はその点が、原田次官、あるのではないでしょうか。     〔森(清)委員長代理退席、委員長着席〕 私はやはり一歩距離を置いて、そしておっ取り刀ですぐに走り回って火の粉を消すということではなくて、長い将来の問題があるわけです。日米の貿易量、経済的な関係を考えてみますと、軍事力を増強した程度で、この日米貿易あるいは経済摩擦が解消するわけじゃない。ところが、防衛費を突出しさえすればある程度火の粉が消せるのじゃないかというふうに大変短絡的に物を見ているわけです。そうではないのですね。仮にまた来年度の予算でふやしたとしたって、そのことによってアメリカが、やあよくやった、それではひとつ経済問題については物を言うのはやめようということにはならないわけです。そうした中で、もっと対等に言うべきことはきちっと言っていかなければならぬだろう。最近のいろいろな報道や、私どもも会って話した中で、たとえば一番有名になっております通産省の行政指導とか不況カルテルだとか、あるいはまた専売制度だとか、こういうようなものにまですべてが障壁のようなとられ方をしてきている。一体、政府はこういったものに対する説明をどうしておったのだろうかと奇異に感ずるようなものである。  いずれにいたしましても、日本は依然として小さい国だ、大変脆弱な経済基盤に立っているわけですから、世界各国の協力を得なければ生きていけないという中で、いまのような、ただ言葉の壁があるだとか古来伝統の慣習があるだとかということだけでは済まない問題がある。もっと日本の伝統なり慣習なりあるいは制度なりというものを十分に説明をしていく。そして開いていくものは大いに堂々と開いていく。そのためには、多角的にガット等の場あるいは国際的な機関で、スタンダード等の問題にいたしましても、もっと国際的にルールをつくるものはつくっていくという、むしろ積極的な役割りを日本が果たしていかないと、この貿易摩擦あるいはアメリカのフラストレーションというものを解消することにはならない。そしてむしろ相互主義法案等が仮に日の目を見てくるようなことになりますと、保護主義に入り、拡大均衡ではなくて縮小均衡に入っていくという危険性が出てくると思うのです。  貿易局長からまた答弁をいただいて大変恐縮でございますけれども、こうした問題に対して貿易局長と、最後に原田次官にお伺いいたしまして、十二時から本会議がありますので、委員長から十分前に終わってくれないかという要請もございますので、周辺の問題だけを御質問して大変恐縮でございますが、次の機会をいただいてもっと具体的な問題については御質問したいと思います。貿易局長、それから次官、御答弁をいただきたいと思います。
  42. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 先生指摘の点は一つ一つまことにごもっともな点でございまして、私ども通産省も、昨年の特に後半以降は、日本の市場開放につきましてできることは極力やるということで、数次にわたる経済閣僚協によりまして非関税障壁の撤廃あるいは関税一括引き下げ等々についてこれまでも大変な努力をしてきたわけでございます。  ただ、いま後藤委員がおっしゃいますように、その努力の内容、それからその犠牲に比較いたしまして、欧米でその内容が十分に理解されておらないという点も、これは率直に申しまして認めざるを得ないと思っております。したがいまして、ことしに入りましてから三極会合でございますとか、あるいは欧米に対して有力者をそれぞれ派遣して、日本がとった措置の内容を極力説明して、お互いの認識のギャップを埋めるという段階に現時点では入っておるというふうにわれわれは認識しております。しかし、率直に申しまして、やはり言うべきことは言うという姿勢も大事でございますけれども、欧米から指摘されておる点の中には、日本としても開放をしていかなければいけないという点もまだまだ残されておるということも私は率直に認めざるを得ないと思っておりまして、これにつきましては、欧米の経済状態とか対日フラストレーションという言葉だけでは片づけられないので、日本としてもそれなりのできることは開放に向かってこれからも努力していくという姿勢と、それから実際の目に見える解決努力をできるだけ早い機会に積み上げるということが、欧米に向かって胸を張って日本として言うべきことを主張するという背景として必要不可欠だというふうに認識しております。  したがいまして、私ども通産省は、貿易担当部局といたしまして、その中身につきましての努力を払うと同時に、それを正確に伝えるという意味でも、ジェトロを中心にPR活動をする。また一方、欧米だけではなくてLDC諸国も忘れずに、LDCからの輸入あるいは経済協力あるいはそれらの地域の中小企業への投資というような面につきましても、バランスを保ちながら進めていくという必要があるというふうに痛感しております。  時間の関係で、この程度にしておきます。
  43. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 後藤委員の大局的な御意見、大変参考になりました。われわれ常に感じておりますが、日米間のパーセプションギャップというものがやはりどうしてもあるということは事実でございます。これをどうして解消をしていくかということは、やはり基本的に非常に大事じゃないかと思います。それにはあらゆる機会をとらえて、長期的にこの問題に取り組んでいく必要があろうかと思いますが、当面、いま貿易局長答弁いたしましたように、短期的にもアメリカ側の言っておる中で理にかなっている点につきましては、われわれも積極的に市場開放をやりまして、貿易の拡大均衡に努める。それと同時に、産業協力、経済協力を通じて世界経済の活性化にわれわれとして貢献していくということが大事じゃないか。同時に、発展途上国に対する援助につきましても、新しい目標を掲げまして、積極的に経済大国としての役割りを果たし、そして世界の平和と安定に資していくということが何としてもわれわれとしてやらなければならぬことじゃないか、こういうように考えておる次第でございます。
  44. 後藤茂

    ○後藤委員 終わります。
  45. 渡部恒三

    渡部委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  46. 梶山静六

    ○梶山委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。長田武士君。
  47. 長田武士

    ○長田委員 まず初めに、国内景気の問題についてお尋ねをいたします。  現在、景気の動向につきましては、経企庁は景気回復のテンポが依然として緩やかであると報告をいたしておるわけであります。もうすでに五十六年の十月から十二月の統計を見てまいりますと、七年ぶりにマイナス〇・九%の成長率であります。それに加えまして、最近輸出の鈍化傾向が顕著であります。さらには中小企業の経営の悪化など、むしろ景気は停滞ぎみである。そういうふうに後退しているのじゃないかというような表現の方がぴったりするのじゃないかと私は思うのでありますが、この点、通産省としてはどういう認識を持っておられるのか、まずお尋ねをいたします。
  48. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 わが国の最近の景気状況でございますが、御指摘のとおり、内需の回復が依然としてはかばかしくなく、加えるに輸出の増勢も衰えてまいってきておるわけであります。昨年は、大体輸出によって経済成長が図られたと言っても過言でないくらい輸出依存度は高かったわけでございますが、その頼みの綱の輸出が昨年の暮れあたりから鈍化してきたというのは、やはり世界経済の不況を反映したものだと考えております。昨年の十−十二月の経済成長率はマイナスに転じたということでございます。こういうような情勢でございますので、われわれとしても、何らかの対策をこの際立てて、景気の振興を図らなければならないと考えておるわけでございます。
  49. 長田武士

    ○長田委員 最近は、産業界の一部では蜃気楼景気なんだと言われておる。オアシスがあるけれども、実際問題、経企庁の言うとおりいっていない。そういうことで、先行き見通しという点では、国民は甘い言葉にずいぶん悩まされたというのが実情だろうと私は思うのです。そういう点で、昨年来の景気を支えてきたのは内需じゃなくて、やはり輸出であったことが数字を見ても明らかであります。  しかし、実際問題、輸出が鈍化しておりますし、この傾向ははっきり示されておるわけですね。特に、これまで輸出の主力とされていました自動車、それから機械、これは減少が非常に目立つわけであります。今後貿易摩擦の問題も絡んで、そういう点では内需が非常に拡大されない、一方においては輸出もまた頭打ちであるという経済運営、日本経済というのは非常にむずかしいところに来ているなという感じが私はするわけであります。そういう点で、今後の輸出の先行き見通しについて端的にひとつお答えをいただきたいと思います。
  50. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  先生ただいま御指摘のとおり、昨年、全般的には輸出は堅調であったわけでありますが、年末以来ことしに入りましてから、欧米向きも含めまして輸出の伸びが非常に鈍化しておるという状況でございます。全般的には円安基調でございますので、輸出環境としては、為替の面からはしやすい状況でございますが、欧米も含めまして世界の経済環境は非常に鈍化しておる、市場環境は悪いということが、これに起因していると思います。政府の経済見通しでは、五十七年度を通じまして輸出はモデレートな伸びを見ておるわけでございますけれども、端的に申しますと、輸出の先行きの環境は非常に厳しいと言わざるを得ないかと思います。ただ、これももっぱら海外の市場環境によりますので、五十七年度の輸出がどのような形になるかということは、きわめて見通しがしにくい状況であると言わざるを得ないと思います。
  51. 長田武士

    ○長田委員 特に私が心配するのは、輸出もそういう点では非常に鈍化しておりますし、先行き見通しとしては暗い、こういう状況の中で政府・自民党が考えておりますのは、公共投資の前倒し七〇%以上、最近では八〇%ということを言っておりますけれども、これで一兆五千億から二兆円前後のいわゆる前倒しをやる。  一方、産業界におきましては、設備投資を非常に手控える、こういう傾向が非常に強いわけであります。中でも電力九社、当初四兆三千九十二億円ぐらいを見込んでおった設備投資が、最近平岩会長が一六・八%マイナスの七千二百六十一億円これを下方修正をする、こういう記者会見をやっておるわけであります。こうなりますと、民間の設備投資のいわゆる主力でありますところの電力、さらには一般企業のいわゆる設備投資というのは、新聞等のいろいろな調査でも相当落ち込むだろう、このように言われておるわけであります。  経済というのは、見通しが非常に暗いということになりますと、どこの会社も設備投資を手控えることがやはり常識だろうと思います。こうした中で、先日安倍通産大臣は、電力投資の上積みを業界に要請をする、こういう報道も実はされておるわけでありますけれども、この点は真偽はどうでしょう。
  52. 小松国男

    小松政府委員 電力の設備投資でございますけれども、五十七年度の電力の施設計画というのは、現在取りまとめ中でございますので、まだ正確な数字は出ておりませんが、先ほど先生から御指摘がございました当初計画に対して相当削減されておるということでございます。  これは、昨年の三月調査に比べまして、今回取りまとめ中の各社の施設計画としての設備投資計画が落ち込んでおるということでございまして、おっしゃられますとおり、電力その他につきましても、最近の需給動向を踏まえて、電力業界が設備投資計画全体の検討を行っている段階でございますので、昨年三月の調査に比べますと確かに落ち込んでおるということは事実でございます。ただ、私どもまだ最終的な数字は持っておりませんけれども、五十六年度の実績に対しまして五十七年度の計画は、大体一〇%くらいの伸びになるのではないかというふうに考えております。この数字は、政府といたしまして五十七年度の経済見通しの中で、全般的な設備投資を大体一〇%くらいの伸びというふうに考えておりますので、電力の場合は大体その線に沿っておるというふうに考えております。  大臣が電力業界に対して電力の設備投資について要請をしたという新聞記事がございましたけれども、これはことしの二月、電力業界との懇談会がございました席上、経済成長の場合に、全体の設備投資に期待する部分が非常に大きいわけですし、特にその中で占める電力の比重も大きいということで、電力側に対してそういう経済運営全体の立場も考えて設備投資については協力してほしいというお話をした経緯がございます。  ただ、最近の数字は現在取りまとめ中でございまして、現段階において、特に業界にそういう要請をしたという事実はございません。今後とも、私ども、電力業界につきましては、電力の長期的な安定供給のための体制整備してもらうということで、電源立地は積極的に進めてもらう必要がありますが、同時に全体の需給動向、また電力の多様化問題を考えながら、適切に投資計画をつくることが重要だというふうに思いますので、そういう観点から今後とも指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  53. 長田武士

    ○長田委員 私はここで問題だと思うのは、やはりこのような設備投資が非常に停滞をすると、景気の動向に非常にかかわり合いを持っておるわけであります。しかし、もう一方においては、電力需要というのが最近非常に落ち込んでおるわけであります。そうなりますと、やはり公共料金でありますから、長期供給安定、こういうことが前提にならなくちゃなりません。ここで通産省が圧力をかけて、設備投資をさらに増加させる。新聞によりますと、送配電部門を上積みさせよう、このような動きがあるようでありますけれども、実際問題需要が伸びない、そこへ設備投資をする、こうなりますと、勢い償却負担増といいますか、これが当然ふえてまいります。ひいてはこの問題が料金にはね返ってくるんじゃないか。そういうようなことで、供給安定という点においては、また側面から見てこれはうまくない、国民に負担増を強いる、そういう結果が当然出てくるわけであります。この点については、やはり慎重であるべきだと私は思いますが、景気浮揚対策も確かに必要です。必要ですけれども、この公共料金を値上げするということについては、一方においてやはり慎重を期さなくちゃいけない、そういう点、この兼ね合いはどうですか。
  54. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 ただいまのお話でございますが、私どもは別に圧力をかけてふやさせるというつもりはございません。ただ、景気を浮揚するためには、政府も、財政再建の非常に厳しい情勢ではございますけれども、公共事業の思い切った前倒しをやるとかあるいは住宅建設を促進するとか、あるいは長期プライムのレートを下げていくとか、いろんな施策を重ねまして、積極的な対策を図らなければならない。それにあわせてやはり民間の方もできるだけ協力していただけるところには協力していただく、こういうことが大事だと思うのです。  たとえば鉄鋼等におきましては、相当の設備投資の増加を考えておるわけでございまして、そういうように全般に設備投資が活発に行われますれば景気は浮揚する、それによって電気の需要もふえる、こういうことになってまいるわけでございまして、決して需要をオーバーする設備投資をどんどんやれということを電気業界に要請しておるわけではないわけでございます。御承知のように、電気の設備投資の問題一つとらえましても、大変長い懐妊期間が要るわけでございますので、われわれとしても、電気業界には、圧力をかけるということではなくて、十分話し合いの上で、できるだけ設備投資の協力をしていただく、こういうように考えておるわけでございます。
  55. 長田武士

    ○長田委員 いま申し上げましたとおり、国内景気、特に内需の問題、さらには外需の問題、そういう点では非常に曲がり角に来ているように私は思っております。  そこで、来年度のいわゆる経済成長の目標といたしましては五・二%程度、このように目標を立てておりますけれども、そういう点、内外ともに非常に厳しい状況に置かれておるわけでありまして、これを公共投資の前倒しであるとか、金利をプライムレートを少し下げようとか、金融のいわゆる弾力措置ですね、これをやろうとか、いろいろ手だてがあるとは思いますけれども、そういう点で個別的なそういう問題をきめ細かくやはり対策を練る必要がある。  公共事業にいたしましても、やはり土地代にほとんど吸収されるというような過去の例がありましたし、そういう点では、この景気の停滞というのは、どちらかというとオイルショック、第二次オイルショックの影響が非常に強いと私は見ておるのです。そういう意味で、みだりな公共投資をしても、かえってそれが逆転換をするということも考えられなくはない。そういう意味で、私は後半の息切れの問題も含めて五・二%の経済成長率は非常に困難だろうというような感じがするのですが、どうでしょうか。
  56. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 民間の調査機関等で来年度の経済見通しをいろいろ発表しておられます。それはそれなりに私は根拠はあるんだろうと思うのですが、しかし政府としては、やはりあらゆる政策手段を動員して五・二%程度の成長を目標にしてやろうということでございまして、事実日本経済のバイタリティーというものあるいはこれからの日本経済の発展、雇用の増加等を考えますと、まあ五%程度の経済成長はぜひ必要であるし、またその程度はやってやれぬことはない、こういうことがわれわれの目標であるわけであります。
  57. 長田武士

    ○長田委員 後半の息切れの問題でありますけれども、新聞によりますと、下期に一兆五千億円程度の建設国債を発行すると政府筋が明かしたということで、この点はどうなんですか。
  58. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 公共事業を前倒しして、後半息切れになるんじゃないかという御懸念があろうかと思いますが、後半につきましては、そのときの時点で判断せざるを得ない。  河本企画庁長官のこの商工委員会における御発言を聞きましても、OECD等の世界経済の見通し等によりますと、ヨーロッパの景気も後半には回復してくる。アメリカも相当回復する。そういう中で日本の景気はどうなるかということ、また前倒しによる効果はどうかということを勘案しまして、そのとき改めて判断する問題ではないか、こういうように思っております。
  59. 長田武士

    ○長田委員 それでは、具体的な問題にちょっと移りたいと思います。  アルミパイプなどの不況産業につきましては、これまで対策一環といたしまして不況カルテルの弾力的運用がなされてまいったわけであります。最近、公取は、すでに不況産業は在庫調整がもう終了した、このような判断をしているようでありまして、この三月で不況カルテルの目的は達成された、そういうことで四月以降は一切なくす方針である、このように私は伝え聞いておるわけであります。  そこで公取は、今後不況産業に対してはどのような対策を講じられるのか。
  60. 佐藤徳太郎

    ○佐藤(徳)政府委員 ただいま御質問ございましたように、今次の経済調整期におきまして、独禁法に基づきます不況カルテルは九業種ございましたのですが、そのうち六業種はすでに終わっておりまして、現在継続しておりますのは、鋼船それから中低圧法ポリエチレン、ガラス長繊維製品の三品目でございます。いずれも御指摘のとおり三月三十一日で期限が切れることになっておりまして、現在のところ私どもの方にさらに延長したいというような話が来てございませんので、三月で恐らく切れるのではないだろうかというぐあいに考えております。私どもとして、別にこれが切れましたら、その後あらゆる業種について一切認めないというようなことは申し上げておらないわけでございまして、もしも不況要件に当たるような産業がまた今後とも不幸にして出てくるようなことがありまして、私どもの方に御相談が来ることになれば、法律の趣旨に照らし合わせまして不況カルテルの実施についても適切に対応してまいりたい、こういうぐあいに考えておる次第でございます。
  61. 長田武士

    ○長田委員 不況産業の中でも石油化学業界がかねてから強く要望いたしておりますところの原料ナフサの自由化の問題、これに対しては業界はすでに貯蔵タンクの新増設を進めてその準備を着々とやっておるようであります。こうした動きには、通産省としては、輸入施設も持たないのに輸入の自由化を要求するのはおかしいじゃないか、こう突っぱねた経緯がございますね。それに対して私は対応しているのじゃないかなという気がいたすわけであります。  そういう意味で、また今後この原料ナフサ輸入の自由化についてはどのように取り扱っていくのか、お答えをいただきたいと思います。
  62. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘のとおり、石油化学にとりましては、原料ナフサというのは非常に大事な問題でございまして、製品国際競争にさらされておりますときに、ナフサについてもできるだけ国際的な価格で入手できるようにするというのは非常に大事な方向かと思っております。  ただ、他方、石油製品の一部であるということからまいりますエネルギー政策上の制約もございますが、私どもといたしましては、できるだけ石油化学業界が国際的な価格ナフサが購入できるように、実態としての解決策、こういうものを現在模索中でございまして、その一環といたしまして、石油化学業界がタンクの建設を行っている、いくことだろうと思いますが、できるだけ石油化学産業国際競争力を強化するということで事実上解決策を見つけ出していきたい、かように考えております。     〔梶山委員長代理退席、野田委員長代理     着席〕
  63. 長田武士

    ○長田委員 次に、貿易摩擦の問題についてお尋ねをいたします。  現下の国際情勢の中で大きな課題となっているのも、貿易摩擦に象徴されております対外経済関係の問題でございます。欧米からわが国に対する市場開放の要求もさらにエスカレートしてまいりまして、相互主義に名をかりまして保護貿易主義の台頭など、貿易立国でありますわが国経済への影響を考えますと、欧米諸国に対する理解を深め速やかな解決が望まれておるわけであります。しかるに、関税や残存輸入制限品目、非関税障壁などの対策現状を見るときに、必ずしも日本が諸外国に比べまして閉鎖的でないこともまた事実であります。率直に言って、欧米のインフレや不況の長期化などによって、その要因が出てきているのじゃないかという感じを私は強く持つわけであります。  いずれにいたしましても、こうした問題を解消するためには、何らかの対応日本は迫られておるわけでありますから、対応を示さなければなりません。そういう意味で、通産省といたしまして、市場の開放、製品輸入の拡大に努力するのだということを通産大臣も言っておるわけでありますけれども、具体的にはどういうふうに取り組む予定でございますか。
  64. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 いま御指摘のございましたように、わが国の市場の閉鎖性に対する各国の不満のうちには、誤解あるいは理解の不足あるいはパーセプションギャップ、こういったことに基づいているものがかなりあることは事実であります。しかし、わが国の側として、これらのいろいろな指摘に対して、確かにわが国としても経済大国として相当実力がついてきたわけでございますから、世界の自由貿易を促進する、そうしてこれに積極的に貢献するという観点から、積極的に市場開放を図っていくということもあわせてやっていかなければならぬ、こういうように考えます。  したがって、われわれとしては、すでに関税率の前倒し引き下げとか、非関税障壁のうち輸入手続の改善に関するものについては、すでにその措置を発表いたしたところでございますが、なおさらにこれらの問題について、米側の指摘一つ一つ検討して積み上げながら、有効な総合対策を打ち出すということは、どうしても必要ではないかと思います。  同時に、先ほどの御指摘の相手方の理解の不足、そういったものについては、わが国市場の実情に対する理解の増進、あるいは友好親善をもっともっと図るという観点から、経済交流の活発化とかあるいは日米間のいろいろなチャンネルにおける交流の促進ということによって対処していかなければならない、こういうように考えておる次第であります。
  65. 長田武士

    ○長田委員 市場開放につきましては、いろいろな人の意見を聞いてみますと、どうも農産物とたばこ、それから半導体などの先端技術、この三つのようですね。いろいろ細かい問題もあるようですけれども、通産関連物資でありますところの皮革、コンピューターなどについては、通産省はどう考えていますか。
  66. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答え申し上げます。  先生がいま御指摘になりました皮革とコンピューターでございますが、皮革につきましては、対米関係では本年度いっぱい、三月まで協定がございまして、この四月以降どのようなクォータにするかということは、日米間で協議がされるということになっております。日本国内の皮革関連の市況は、昨年来非常に厳しいものがございまして、日本国内事情というものは、開放と申しますか、枠の拡大につきまして非常にむずかしい事情にあるということも事実でございますけれども、そのような日本の事情も説明しながら、アメリカがぎりぎり満足のできる状況はどういうところにあるかということを、対話を通じまして探っていくという状況にあるかと思います。  コンピューターにつきましては、アメリカの関心がいわゆる高度技術産業一環ということで非常に高いことも事実でございますけれども日本のマーケット自体につきましては、アメリカと比べましても遜色のない形でオープンになっておりますし、アメリカ理解の中にも、日本実情についての理解不足と申しますか、ミスアンダースタンディングもあるというふうに考えておりますので、日本の市場の状況の説明を十分行えば、アメリカの誤解は解けると思っております。ちなみに、コンピューター自体につきましての貿易関係について申し上げますと、アメリカ日本への輸入の方が、日本の対米輸出よりも大きいという状況にもありますし、コンピューターにつきましては、日米の相互理解を進めれば解決できる、かように考えております。
  67. 長田武士

    ○長田委員 先日櫻内外相がヘーグ国務長官に会いました。その席で、六月に行われるパリ・サミットまでに多くの市場開放措置を絶対とってほしいと要求されたようであります。また日米貿易小委員会でも、マクドナルド代表が、三カ月以内に何らかの目に見える形の市場開放の措置を要請してきたパリ・サミットまでに政府としての対策がまとまるかどうか、私は非常にむずかしい問題だろうと思うのですが、ここらの調整はどうされますか。
  68. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 私どもとしては、現在の対外経済摩擦については、基本的には欧米の景気の動向が非常に悪いというようなこともありまして、かなり激しい動きがアメリカの議会を中心に出てきておりますし、またこの間江崎ミッションの行きましたとき、ECからも、場合によれば市場閉鎖ということも考えるというような厳しい話が出てきておる。これはきわめて深刻な事態であると受け取っておるわけであります。この際、われわれとしてなし得ることは、サミット前までに個々の話し合いを積み重ねて、包括的な措置として打ち出すということがどうしても必要ではないか、こういうように考えております。
  69. 長田武士

    ○長田委員 新聞報道によりますと、江崎ミッションが帰りまして、閣僚会議が今月の末にある。さらには四月中旬には松永外務審議官を団長として派米をする。さらにはブッシュ副大統領が四月下旬来日いたします。そこで詰めをやろう。そしてベルサイユ・サミットの直前に決着をつけたい、こういうプログラムであるようですが、この点は間違いありませんか。
  70. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 江崎調査会のヨーロッパ訪問の結果報告は三十日に行われる予定でございますし、櫻内大臣がアメリカ話し合いを行った結果をどのような形で今後の政府の方針に生かすかということにつきましては、今後関係省あるいは経済閣僚のベース検討されるということでございますから、まだ今後のスケジュールと申しますか、交渉スケジュールなり対欧米対策の打ち出し方は、政府として正式決定をしておるというわけではございませんけれども先生が御指摘になりましたような海外からの訪日予定あるいはサミットのスケジュール等々をにらみ合わせて申しますと、先生がただいま御指摘になったようなテンポに合わせて日本の対外開放対策検討し、かつこれを総合的なものとしてまとめて、今後四月、五月の検討結果を集大成するような形で打ち出していくということになろうかと考えております。
  71. 長田武士

    ○長田委員 五月十日、十一日ですか、OECDの閣僚理事会がありますし、そこでもこの問題が相当出てくるのだろう、そういう感じがいたします。さらに六月のサミットにおいても、やはりこれが中心課題になろう、そういうふうに予想されているわけであります。したがいまして、それまでに日本の立場を欧米諸国にもいかに理解させるか、日本の立場というものをきちっと明確に打ち出す、こういうことがぜひ必要であろうと私は思います。そういう意味で、櫻内外務大臣がきのう帰られましたし、江崎ミッションもいまヨーロッパに行っておられるわけでありますが、むしろ私は、この貿易の問題に関しては、通産省が率先して事に当たるという姿勢がなかったらいけないのではないかと思いますが、通産大臣、きょういないのですけれども次官、どうでしょう。通産大臣はサウジアラビアの方に行かれる予定でありますけれども、それをやめられてもアメリカヨーロッパを歩かれたらどうでしょうかね。
  72. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 この貿易の問題については、もちろん貿易の主管省でございます通産省といたしましては、これについて最も責任を持って取り組まなければならないことは言うまでもございません。しかし、各省庁にもそれぞれ関係があるわけでございますから、各関係省庁と十分話し合いのもとに政府として一体となって取り組んでいかなければならぬと思います。  また、御指摘の通産大臣の海外出張の問題でございますが、エネルギー問題はやはりこれからも日本の命運を左右するくらい重要な問題でもございますので、こちらの方にもやはり通産大臣の日程を割かざるを得ないわけでございまして、その間私どもが十分補佐いたしまして、全力を尽くして当たってまいりたいと考えておる次第でございます。
  73. 長田武士

    ○長田委員 それでは貿易摩擦に絡む対米自動車輸出についてお尋ねをいたします。  現在、アメリカに対しては年間百六十八万台の輸出が五十六年度、去年されておりまして、また五十七年度においてもやはりそれが目標だろうと思います。しかし、二年目の五十七年度は百六十八万台に対しましてプラス米国の乗用車市場の拡大量一六・五%、これは上乗せできるだろうといり当初の見通しがあったわけですね。  ちなみに、米国内の市場を見てまいりますと、五十六年度見込みでは八百三十万台から八百四十万台となっているわけですね。そこで五十七年度の見込みについてはどの程度と見込まれておるのか。
  74. 豊島格

    ○豊島政府委員 先般アメリカ側からアメリカの乗用車市場の現状、それから見通しについて私ども事務的に聞いたわけでございますが、その説明によりますと、二十五の調査機関等によってなされました八二年の乗用車の販売見通しというのは、最低が八百三十万台、最高が九百六十万台で平均大体九百十万台ぐらいという数字が出ておりますが、いずれにいたしましても、最近時点になるほどだんだんこの需要予測というものが低くなってきているという一般的な傾向があるようでございます。それから八一年は、先ほど先生指摘のように、大体近来ない低いレベルということで八百五十万台くらいということのようでございます。これは年度にいたしますと、もう少し下がるのではないかと思いますが、いずれにしましても、ことしに入りましてからアメリカの乗用車の登録といいますか新規需要は、昨年同月に比べまして大体二割以上落ちている、こういうことでもございます。したがって、先ほどのような数字もございますけれども、いずれにいたしましても、八二年及び八二年度の数字は、ことしに比べてそう大きな増加ということは期待できないのではないか、このように考えております。
  75. 長田武士

    ○長田委員 米国政府や民間の調査機関が調べたところによりますと、乗用車販売の予想は九百万台から九百五十万台、これが大勢を占めているようですね。中でもGMでは九百六十万台から一千十万台、非常に強気な予想を立てております。こうした点から判断しますと、市場が拡大するのはほぼ間違いないだろうという感じが私はいたすわけであります。そこで、五十七年度の輸出枠についてはどのように見通しを立てていらっしゃるのか。プラスアルファを迫るのかあるいは現状の百六十八万台でよしとするのか、この点どうでしょう。
  76. 豊島格

    ○豊島政府委員 いま先生指摘になりました数字でございますが、これは去年の秋ごろまでの数字、その後も、先生別にお手元におとりかもわかりませんが、大体において秋ごろまでは、相当八二年というのは大幅に回復するのではないかというような見通しもあったわけでございますが、しかし、その以後の予想はだんだん弱気の予想が強くなっておりますし、先ほども申し上げましたように、八二年になりましてから、三月は途中でございますが、一月、二月は引き続き相当悪い。三月も、先ほどファックスで見ますと、三月中旬はまたさらに悪くなっている、こういう状況でございます。  そこで、八二年度の輸出枠をどうするかということでございますが、その辺の需要見通しをどの程度に見るかということもございますし、アメリカの現在の自動車業界の窮状も考えまして、目下どういうふうにするかということについて鋭意検討中であるということでございまして、まだ確たる結論を得るに至っておりません。
  77. 長田武士

    ○長田委員 アメリカの景気は、八二年度の後半にはよくなるだろう、いろいろと言われておるわけでありますけれども、どうもアメリカ連邦政府が一千億ドルくらいの借金をするのではないかというような危惧もされておるわけであります。そうなりますと、勢い景気の回復は多少おくれるかなという感じがいたしております。  しかし、実際問題、米国の自動車業界のビッグスリーと言われております中でも、八一年の第四・四半期にGMだけが多少黒字に転じた程度なんですね。総体的に見て経営は依然としてよくない、私はこういう判断をせざるを得ないと思っております。  そういう意味で、私は余り自動車に期待を持つというのも非常に危険かなという感じがいたしますけれども、約束でありますから百六十八万台はやはり堅持する、この点は最低でも堅持するという方針なんですか。それとも落ち込んでもやむを得ないという考え方ですか。
  78. 豊島格

    ○豊島政府委員 先ほど申し上げましたように、まだ最終的な結論を出しておるわけではございませんが、少なくとも昨年の五月の大臣声明で、八二年度、二年度、それから三年度につきましての一つ考え方を明らかにしておりますが、その中ではっきりいたしておりますのは、百六十八万台を切るということは全然考えておらないわけでございまして、市場が拡大した場合においては、その一六・五%を上積みするということでございますが、減った場合というのは、これは日本側がアメリカのことを考えてとった一方的な措置でございまして、減少ということは念頭には全くない、現在でもその点は同じでございます。
  79. 長田武士

    ○長田委員 それでは次に、今月二十日に終了いたしましたOPECの臨時石油会議の結果に関してお尋ねをいたします。  原油生産量につきましては日量千八百万バレルに減産をする、基準原油価格を一バレル当たり三十四ドルに据え置く、この二点が決定をいたしたわけであります。このようなOPECの決定がわが国にとってどのような影響を及ぼすのか、さらに今後の見通しについてお尋ねをいたします。
  80. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘のとおり、OPECが千八百万バレルというふうに生産の上限を決めましたが、これはサウジアラビアが七百五十万バレルの生産ということを前提にいたしておりますので、サウジが七百万まで落とすという前提でございますと千七百五十万バレルということになろうかと思います。現在すでにOPEC全体の生産量がもう二千万バレルを割っておりまして、したがいまして、今回の上限の設定によりましても、国際的な需給状態というのは余り大きく変化がないのではないかというふうに考えております。  それから、価格につきまして、アラビアンライトの基準価格三十四ドルというのを動かさないということになりまして、これよりも軽い油につきましては、ディファレンシャルズを若干修正いたしておりますが、全体的に依然として価格が弱含みであるということでございますので、特に中東におきまして政治的な問題が起こらない限りは、需給及び価格ともに弱含みで推移するというふうに考えていいかと思います。ただ、わが国の場合には、九割以上が政府公式販売価格によります長期契約でございますので、ドル建ての原油調達コストにつきましては、スポットの低下分程度の下降でございまして、余り大きな低下にはならない、かように見通しております。
  81. 長田武士

    ○長田委員 アフリカの原油は昨年年間平均で一日当たり九万五千バレル、わが国の原油輸入量の大体二・三%輸入しておりまして、昨年の秋ごろから輸入量が非常に減ってしまいまして、本年二月にはゼロになってしまいましたね。また昭和四十年代まではわが国の最大の輸入量を誇っておりましたイラン原油は、昨年十月以降、日量八万バレルに落ち込みまして、本年四月からは日量三万バレル以下の輸入見通しと実はなっておるわけです。さらにクウェートの原油も本年四月以降ほとんど輸入されていないということも聞いております。  そこで、何がこういう状態をもたらしたのか。また原油輸入先が特定の国に限られてしまうと、オイルショックのときにずいぶん問題になりましたね。多数の国から平均的に輸入をする、そういう点が非常に望ましいということが当商工委員会でも論議されたわけであります。こういうふうにして取引先が非常に減ってしまう、こういうことは日本の立場からいって好ましくないのではないか。多少なりとも細くとも、細長く取引をしておいた方が将来有利じゃないか、そういう感じを私は強く持つのですが、ここらの見解はどうですか。
  82. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘のとおりでございまして、実は私どもも大変心配いたしておりますが、実はここ二年続きまして需要量が前年度に比べて一割ぐらい落ちる。したがって、二割程度の減少となっております。したがいまして、各石油会社とも長期契約自体を切るということをせざるを得ない状態になっておりまして、そのために、かつ、もう一つ石油会社の経理状況が非常に悪化しているということから、できるだけ高値の契約を切るという方向に行きつつあります。このために、結果的にはいま先生指摘のように、アフリカからの輸入はほとんどゼロになっておりまして、イランあるいはクウェートからの輸入も極端に減少いたしております。  私どもといたしましては、供給先はできるだけ分散化すべきであるというふうに考えておりまして、石油会社に対しましても、そういう指導をいたしておりますが、何分長期契約をいま切りつつあるという状態であり、かつ石油会社の経理状況が非常に悪化しているという状態でもありますと、なかなか分散化が実施できないという状態でございます。さらに四月以降在庫調整が進みますと、ますますそういう状態が来るおそれがございます。しかし、これは非常に問題がございますので、私どもとしては、できるだけ長期的な観点から輸入先を考えるように、今後とも石油会社の指導を行っていきたい、かように考えております。
  83. 長田武士

    ○長田委員 現在、通産省が行っておりますシーリングの問題であります。この制度については、原油価格の乱高下の際、便乗値上げの歯どめをかけよう、こういう趣旨で行われたわけですね。つまり行政介入をやめて市場メカニズムに任せよう、こういうことのようでありますけれども石油審議会でも、「石油産業あり方」でも同じことが実は言われております。そこで、現在、石油の需給が非常に緩んでおる、価格も安定しておる、そういう状況ですぐに撤廃するのがいいのかどうか、将来不安はないのかどうか、ここいらはどうでしょうね。
  84. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 御指摘のように、石油価格に対してシーリング制を設ける等の政策介入をするという必要性は、イランの政変直後五十三年から石油価格の高騰があり、便乗値上げ等によって日本経済なり消費者の経済社会に非常に問題が生ずるんではないかということで行われた制度でございまして、いわば緊急避難的な制度であります。したがいまして、そういう状況が一変した現在、この制度は早急に廃止しなければならぬというように各方面からも言われ、われわれもそう考えておるわけでございます。今回のOPEC総会の決議の実施状況を見ながらわれわれとしてもその廃止を検討してまいるつもりでございまして、四月末を大体めどに廃止してみたい、こういうように考えております。ただ、当然ながら価格の動向を十分監視をいたしまして、これからの経済社会に対する影響等はこの監視の中で十分見てまいりたい、こういうように考えております。
  85. 長田武士

    ○長田委員 時間が参りましたので、最後の質問にしたいと思っております。  日本石油が今度キロリットル当たり三千円の値上げをする、そういうニュースが流れております。たしか石油業界は大体三千六百億円くらいの赤字を背負い込んでいる、こういうような状況でございまして、大変窮地に追い込まれております。私はそれはよくわかるのでありますけれども、実際問題需要が非常に落ち込んでおりまして、設備の過剰という問題が業界の大きな課題だろうと私は思います。そこで値上げに踏み切るのか、あるいはそのような構造的な問題にメスを入れるのか、両々相まって値上げができれば、原油が下がっておるのですから、この点円安という問題も確かにあります、ありますけれども、できる限り価格を据え置いて、そういうような構造的な問題にメスを入れる、こういう方がいいんじゃないかなという感じがするんでありますが、この点最後にお尋ねいたします。
  86. 野々内隆

    ○野々内政府委員 御指摘のとおり、石油という非常に重要な物資につきましては、価格が安定をするということが非常に大事かと思います。ただ、昨年の大幅な赤字に加えまして、最近の円安傾向からさらに赤字を追加いたしておりまして、将来石油産業が非常に強固たる地位をつくりまして、安定的に石油製品をわが国に供給するためにも、より財務体質の強化が必要かと考えておりますので、コストアップに見合う最小限の値上げはやむを得ないとは考えております。  ただ、昨年の石油審議会の答申にもございますように、今後過剰設備の廃棄あるいは企業の集約化、過当競争の排除というような基本的な構造改善、こういうものと両々相まって企業の体質を強化する必要があるというふうに考えておりますので、今後そういう方向で業界を指導してまいりたい、かように考えております。
  87. 長田武士

    ○長田委員 終わります。
  88. 野田毅

    野田委員長代理 榊利夫君。
  89. 榊利夫

    ○榊委員 通産省、国土庁所管の地域振興整備公団が進めております中核工業団地の問題に関しまして質問さしていただきます。  中核工業団地の現在までの団地数は幾つなのか、総面積、それから総事業費及び売り出し価格の一平米当たりの平均価格について、まずお尋ねします。
  90. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 私ども公団が現在手がけておりますところの中核工業団地は十四ございます。そのうちで現在までに公募を開始いたしましたものは七団地でございまして、その面積は約四百九十ヘクタールでございます。そのうちで今日までに譲渡をいたしましたものは約百六十一ヘクタールでございまして、三三%になっております。
  91. 榊利夫

    ○榊委員 売り出し価格の一平米当たり平均は幾らですか。
  92. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 現在までに売り出しましたものの平均で申しますと、一平米当たり約一万二千円程度になっております。
  93. 榊利夫

    ○榊委員 その中核工業団地の一つであります福岡県の広川工業団地約八十万平米、工場敷地が約六十万平米と予定されておりますが、この総事業費は幾らでございましょう。それから一平米当たりの売り出し価格はどういう予定でしょうか。
  94. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 昭和五十五年三月に予定を立てました数字で申し上げますと、広川中核工業団地に要しますところの直接建設費は、当時で見積もりまして約七十五億円でございます。  そのときに、譲渡予定価格としまして一応計算しました金額を申し上げますと、平米当たり約一万七千円余りでございます。
  95. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、大体全国平均か少しそれよりも高いということでございましょうか。七十五億円と申しますと、これまで公団が支払われた金の総額は幾らですか。それから未払い額はどうなんでしょう。
  96. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 広川工業団地について申し上げますと、現在までは、まだ土地の取得をやっております状況でございまして、土地の取得のために支払いました金額は約四十七億円でございます。土地に関しまして未払いの金高として現在持っております数字は、約一億円余りでございます。  それから、造成費としまして現在払いました金額は、約七十二億円程度要しておると思います。
  97. 榊利夫

    ○榊委員 造成費が七十二億円ですか。そうしますと、土地の買収費よりも多いですよ。
  98. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 その中には用地取得費も含んでおります。
  99. 榊利夫

    ○榊委員 あと一億数千ということでございましたけれども、これはもっと多くなるはずであります。これまで支払われていない額、これはまだ県の土地開発公社の方から最終的には来てないわけでしょう。
  100. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 公団が土地を取得しまして造成をやるにつきましては、現在までは大体地元の土地公社とかいうものに代行取得を依頼しておるのが常でございます。それで、当広川団地につきましても、県の土地供給公社を代行者としまして土地を取得しておる段階でございまして、当初は県の公社が農村工業造成のために買収しておりましたものを、約六十二ヘクタール公団が買い取りまして、以後代行取得の契約に基づきまして、県の公社が買収しましたものをまた公団が買収しまして今日に至っておりますが、その代行買収につきましては、公社と公団の間で覚書を結んでおりまして、その面積、取得総額、期限等を約しておるわけでございます。そして現在までのところ、その総額としましては十四億一千八百万円という限度額で県の供給公社に土地の代行取得を依頼しておる段階でございまして、その後はまだ県の公社との折衝に入っておりません。
  101. 榊利夫

    ○榊委員 県の公社との間だけではなくて、その代行取得をしている福岡県の土地公社も、広川町が用地取得のために要した経費をいまだに払ってない。町が昭和五十三年に請求した分だけで六千数百万円あります。その後の経費を合わせますとほぼ一億円近いと思われますけれども、早いものはもう九年も未払いのままということになっているわけです。これは御存じですか。九年も未払いなんということは今日の社会にあり得るでしょうか。未払い金は早急に清算すべきだと思います。どうでしょう。
  102. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 先ほど申しました代行取得の覚書のもとにおきまして、公団は県の供給公社に事務費その他も土地代とともに支払うわけでございますが、現在までのところ公団の二次買収に際しまして、総額が当初予定いたしましたところの限度額を超過することとなりましたために、限度額を増額いたしました。その際に、公団としましては、県の供給公社からの要求の中での事務費約五千万円につきまして、限度額を超過した等の経緯を含めまして、その半額を公団負担するということで二千五百万円を支払っております。そのほかは私どもの方としましては、県の供給公社から事務費についての支払いの要求は現在までのところ受けておりません。
  103. 榊利夫

    ○榊委員 つまりは今後支払いがあり得るということですな。
  104. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 事務費、金利、土地の取得についての先ほど申しましたような未払いを含めまして、限度の超過額については今後の協議の課題となります。
  105. 榊利夫

    ○榊委員 その点、実際町が町民の税金その他の中から出費しているわけですから、したがって、これについてはきっちりとした支払いを最終的に行うということで責任を持ってもらいたい、これが一つであります。  それからもう一つ、広川工業団地の区域の中には六万一千平米の国有地、公有地がありまして、うち七千平米は町有地というふうになっています。地域公団はこれを無償で町から提供させておりますけれども、この見返りはどういうものですか。
  106. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 公団としましては、いろいろ里道とか水路、ため池等の国有財産を取得いたしまして、またそれに対応するものを等積交換をいたしてまいっております。現在、いまお示しのように、六万平米余りのものを取得し、それに対応しましては里道、水路、ため池等について改良いたしましたり、またはそれに見合うところの里道、水路等に当たる河川敷等を提供いたすということで交換をやっております。  いま、榊委員がお示しのものは、恐らく町道の約六千六百平米と思いますけれども、これについては公団が取得をいたしておりますが、いままでのいろいろの公団の造成後の経過を見てみますと、そういうものを得ますけれども公団の造成に当たってつくりました道路については、また現地の地方団体当局に管理を移して任すということがございます。恐らく広川の団地につきましても、造成が終わりました段階においては、先ほどの約六千六百平米を上回るような町道というものを公団から町当局に移しがえすることが見込まれております。
  107. 榊利夫

    ○榊委員 大蔵省に聞きますと、その町道は大蔵省がその土地を町に引き渡す予定だと言っていますが、公団が取得した土地の中から町道として提供する分があるのですか。
  108. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 三・二ヘクタールの町道につきましては、公団から町に移管する予定でございます。
  109. 榊利夫

    ○榊委員 その際、無償で町有地を提供させる、それに対して見返りを、いま言いますと三千ということですか。そうなりますと不等価じゃないですか。
  110. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 三千でございませんで、先ほどお答えしましたように、約六千六百平米の町道を公団が受けまして、それに対応してということでございませんけれども、いままでの例で申せば、私どもが造成しましたものの中から約三・二ヘクタールを町道として移管をするということになりますので、不等積ということであればまさにそのとおりでございます。
  111. 榊利夫

    ○榊委員 いずれにしましても、この問題については契約はあるのですか。
  112. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 先ほどの約六千六百平米につきまして、無償譲渡を受けましたものについてはすでに契約があるわけでございますけれども、約三・二ヘクタールの問題につきましては、今後のことでございますから、将来の問題となります。
  113. 榊利夫

    ○榊委員 その点については、決して町に損失が及ばないように、無償で提供された土地に対してはきっちりとまたお返しをしていく、この原則をひとつ貫いてもらいたいと思います。  そこで、次の問題でありますが、広川中核工業団地というのは、もともとは昭和四十八年、農村地域工業導入促進法に基づいて農村工業団地として発足されたわけであります。町が事業主体だ。それが五十三年から事業主体が公団に変わった。こういうことになって中核工業団地としていくわけでありますけれども、非常に不思議に思うのは、土地売買契約書には五十三年以降も中核工業団地というのが一つも書かれていない。広川農村工業団地工事のために必要な土地ということを全部契約書に書かれています。この被害者は六十名以上、面積にしまして十一万平方メートルぐらいになりますけれども、農工団地名目での農地の売買契約を結んで、実はしかし中核工業団地である、こういう事実を御存じですか。
  114. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 農村地域工業導入計画によりますものの団地と、それから私どもが現在担当いたしておりますところの工業再配置の促進計画に基づきますところの団地とは、根拠法が違いますが、オーバーラップをし得ることになっておりますので、いずれの名称をとってもよろしいと思っております。
  115. 榊利夫

    ○榊委員 つまり農村工業導入の地区というものと中核工業団地というのはオーバーラップして当然でしょう、地区指定なんだから。だけれども、三菱団地と角栄団地がオーバーラップするなどということはあり得ないでしょう。中核工業団地のための土地ならば、どうして中核工業団地のための土地だと明記しませんか。
  116. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 いずれも根拠法を二つ持っておりまするから、いずれの団地として言ってもよろしいと思います。
  117. 榊利夫

    ○榊委員 よろしいと思いますじゃなくて、それは通用しませんよ。二枚鑑札ということになるじゃないですか。農工団地でもあり中核工業団地でもある。農村地域工業導入法というのは地区指定であります。団地イコール名前じゃない。団地という場合には、これはちゃんと農工団地としてそれまでは来ていた。事業主体が変わった。今度は中核工業団地だ。どうして土地売買の契約書についても中核工業団地のための土地だと言いませんか。もともと農村地区です。先祖伝来の土地を手放さなくてはいけない。手放してくれと言ってきている。農村工業団地は次三男の対策だ、村のためにもなる、それに伴う環境整備その他の恩典もある。町を挙げて、町内会、婦人会まで動員して、町の発展のためだ、町の農村工業団地ですよ、売ってください。ところがそれが変わった。全然地元のこれとは関係のない、言うなればその地方の中核工業団地、こうなったわけであります。したがって、中核工業団地のためであるならば、初めから、発足した当時からいいまして、売りたくないという方もおられるかもしれない。農村、これは取っ払われているわけであります。  要するに、お聞きしたいのは、そういう経過の中で中核工業団地に衣がえしたわけであります。にもかかわらず、土地の売買というものは農村工業団地のまま、中核工業団地として明記していない。こんなことはほかに例がございますか。
  118. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 私どもが手がけました工業団地としましては、そういう例はございません。  ただ、先ほどからお答えしておりますように、根拠法は別々でございますが、いずれもその資格を備えておるのでございまして、私どもの方の取り扱います中核工業団地という名称をとりましても、あるいはまた農村地域工業導入促進法に基づきましての農工団地としての名称をとってもよろしゅうございますけれども、それはむしろ現地の地方公共団体がその団地をどういうふうに世の中にアピールした方がいいかということで、中核工業団地ということにいたしたものであります。
  119. 榊利夫

    ○榊委員 そんないいようになどというものじゃないですよ。土地の売買契約書ですよ。売買契約書に違ったことを書いているのです。  ここばかりとまっているわけにいきませんから、先に進みますけれども、とにかくほかには例がないような異常なことをやられておるということだけはいまの答弁ではっきりしました。しかも、この売買契約書はもっと不思議なことがある。契約書に書かれている売買金額というのは、実際の合意成立した金額じゃない。大体半分ぐらいしか書かれていない、こういうことを御存じですか。
  120. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 いまお話しの点は、恐らく土地代金と、そのときに別途の名目でもって支払われたといういわゆる農業構造改善費というものとのお話だと思いますが、私ども考え方といたしましては、そのものは両者同一と思っておりますけれども、その事実は承知いたしております。
  121. 榊利夫

    ○榊委員 いま農業構造改善費と言われましたけれども、地域公団が引き受ける前は農業構造改善費だった。公団が引き受けて以後は、農業という字は取られています。ただの構造改善費です。ここも非常に不思議な問題がある。結局は、同じ土地代の中で一部は通常の契約として土地代を払う。ところが、いまはしなくも出てまいりました構造改善費という部分、ここに図を持っておりますけれども、構造改善費という部分を二つに分けて支払っているわけです。通常の用地代のところ、これは当然税金がかかる、譲渡所得税。その分も含まれて土地代が払われているのです。つまり税込みの土地代なんです。ところがあと約半分の構造改善費と称して渡したところには、こちらと違って税金を払ってないのです。土地取得を代行した県公社。どこにこの税金が消えていったのか。つまりそこには、いろいろ言えば話が長くなりますけれども、要するにその際、土地売買の過程で県公社は、構造改善費として渡す土地代の税金分は県公社が責任を持ちます、念書を持っています。念書も出ておれば確約書も出ている。念書には、税金対策については責任を持って代行いたします、確約書には、税金相当額は別途上乗せしますとちゃんと明記してある。そういう約束をして、だから売ってください、税金は御心配かけません。地権者の方々は真に受けて、先祖伝来の土地を手放した。半分については、もちろん言われるままに、税金の検査はみんな県公社がやったのです。ここに持ってまいりましたが、便せんだって何だって、全部県公社のものですよ。公のものです。これが土地代ですよ。これが税金分ですよ。これは税務署に払ってください。わかりました。払いましょう。この分の税金については県が責任を持ちます。ところが去年の九月になってふたをあけてみて、そうじゃなかった。どっさりと追徴が来た。修正申告しなさい。追徴だ。みんなびっくりしたわけです。もう金がない、数年前ですから。こういういきさつは御存じでしょうか。
  122. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 先ほど申しましたように、土地代金という名目のもとに支払われました金額のほかに、構造改善費という名目のもとに支払われました金額があったこと、あるいはそれについて一部念書とか確認書が出てきたということ、それからまたそれについての税金問題で福岡国税局の調査を受けて、土地を売った地権者の人たちに修正申告の慫慂があって、大部分の人たちは修正申告の慫慂に応じ、ほとんどの人は完納したという事実を聞いております。
  123. 榊利夫

    ○榊委員 完納させられるのでしょう。中には家屋敷を差し押さえられて、大変な悲劇が起こっている。完納したって、借金でしょう。そういう例が多いわけであります。  ここに土地を提供した方の手紙がありますから、ちょっと読ませていただきます。  指導により先祖の土地を涙をのんではずし納税も完納しておっても、三年後に指導したはずの県土地開発公社権藤専務外トップによる納税修正申告の要請、一体私達地権者はどうしたらよいでしょうか。   政府、国、県、町当局には血も涙もないものでしょうか。折衝するところみな逃げの体制、町の発展は県の為、県の発展は国の為といわれた官庁の方々の地権者に対する言葉、税金は心配かけない、県土地開発公社、町当局にて責任持って納税する、地権者には一切迷惑はかけない、責任持って代行するの声が今でも昨日の如く耳にのこっております。   これが町民、県民、国民の指導的立場の方々の行政指導で良いものでしょうか。 これが本当に生の土地提供者の方々の声です。公社からは、税金は責任を持ちますよ、ちゃんとした公文書が出ているのですよ。公印が押されていますよ。ところが県公社が納めてなかった。その分がどっさりと今度は地権者に来る。これはやはり公団としても責任を持って、この納税履行、約束を履行することを指導すべきじゃないでしょうか。
  124. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 地権者の方々が、その土地の繁栄のために工業団地を造成する用地を提供せられたということは、これは私どもとしても非常にありがたく思っております。ただ、その際の代金の支払いに関しまして授受された念書、確約書につきましては、後日私どもの方で県の公社から事情を聴取したところによりますれば、念書については、先ほど来お話しのように、代行ということは、税務上の事務を代行するということを約束したものである。また確約書につきましては、用地交渉の過程で妥結額のアップを約束したもので、これを反映した妥結額を契約上とったということであります。その公社の答えは別にいたしまして、私どもといたしますれば、名目のいかんを問わず、地権者が土地代金として領収したものについては、これは御苦労さまでございますけれども、適正な納税をしていただくということを期待いたしております。
  125. 榊利夫

    ○榊委員 その土地代金の中に当然税金分は支払われていなければならなかったのです。それがやられなかったというところに問題がある。しかも加えて、いま県公社のものをまるのみでおっしゃっていますけれども、税金相当額はぴしっと上乗せします、これほど明確な契約はありませんよ。したがって、これはやはり約束として公のものですから履行してもらわなくちゃいけない。履行されないならば、これは別の方途に訴えなければいけなくなってきます。これは法的な問題に当然なるでしょう。いずれにしましても、その点について公団としても責任を持ってもらいたい、このことを改めて要求いたします。  とにかくこの団地の土地購入に絡まる疑惑というのは、これは大変なもの、調べる中で唖然とするほどです。私、ここに新聞の切り抜きを持ってきておりますけれども、これだけあるのですよ。一般新聞に出たものですよ。この三月三日の朝日新聞西部版一面トップにも載っておりますけれども、この記事は、ある人、団地の外の土地、ところが県の土地公社は、工業団地の用地ですよという証明書まで出していた。ここに証明書がある。団地の土地だから税金の上での特典があります、だからいまひとつ売ってください、信用して売った。ところがまたさっきの例と同じです。がっぽりと追徴が一千万以上来る、こういうことになっているわけであります。そのことについてはあれこれのいきさつがあります。その国税局等々との折衝、大蔵省来ていただいていると思いますけれども、この事件については大蔵省も御存じですが、この問題については、県公社がとったこの証明書についてはどういう御判断でございましょうか。大蔵省まだ来ていませんか。
  126. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 事態について私どもの方が承知いたしておりますことをお答えを申し上げます。  先ほどお話しの方については、買い取り証明書を県の開発公社が(榊委員「いやいや、中橋さんに尋ねているんじゃないのです。私は大蔵省に聞いている。だから大蔵省が来ていなければ先に進みます、時間が惜しいから」と呼ぶ)
  127. 野田毅

    野田委員長代理 発言のときは委員長の許可を得てください。  副総裁、続けてください。簡単にお願いします。
  128. 中橋敬次郎

    ○中橋参考人 広川農村地域工業導入計画に基づいてそれを変更いたしまして、この土地はそれに編入されるものでありまするから、租税特別措置法の適用を受けられるという証明書を出したようでございますけれども、それについての変更が行われなかったのであります。したがいまして、そのとき本来であれば証明書手続の取り消しを行うべきでありましたが、それが行われていないために、こういう事態が起こったのだと思っております。
  129. 平北直巳

    ○平北説明員 証明書が出ている場合には、その証明書によりまして措置法の特例等が適用されるかどうかを判断することになると思いますけれども、しかし、先生がおっしゃられました事案につきましていろいろ調査しましたところ、その証明書と実際の取引の内容が違っておりましたので、結局課税するということになったわけでございます。
  130. 榊利夫

    ○榊委員 つまり事実と違っていた証明書を県土地開発公社が出していた、こういうことがはっきりいたしました。公の公社がこんなことをやっている。  さらに、二、三重要な問題があります。地域公団は、福岡県土地公社に対して、昭和四十八年から五十五年に至る土地取得費として、先ほど話が出ましたように四十六億七千七百五十一万円を支出している。その流れをめぐってですけれども、いろいろな疑惑があるのです。たとえば地域公団は、昭和四十八年から五十二年にわたって五年間の用地取得費として三十二億六千百八十万円支払っております。ところが県公社の決算書を見ましても、公団が支払った額との間には一億二百万ぐらいの差額があるのです。この差額はどこに行ったんだろうか、この公金は。通産省はこのことを、差額があるということは御存じでしょうか。
  131. 神谷和男

    ○神谷政府委員 先生指摘の一億何千万というお話がどの数字に当たるかは存じませんが、公団等から支払われた金額が県公社の決算書類においていろいろな解釈ができるという風聞があり、それに関連して公団から事情聴取をいたしまして、確たる風聞の根拠はわかりませんけれども、年度の取り違えあるいは項目の読み違え等々によって了解されるものというふうに解釈をいたしております。
  132. 榊利夫

    ○榊委員 項目の取り違え等々によって云々と言われますけれども、そういう項目の取り違えがやられていたという事実が明らかになりました。さらに地域公団は、昭和五十三年度に十二億四千万円の用地取得費を福岡県土地公社に支払っておる。ところが公の決算書によると、用地費というのは十一億六百六十八万円なんです。その差額一億三千万もある。これについては違う費目に入れているんだというようなことを陳弁されているのですけれども、もし仮にそうだとしても、異常な経理操作だということにならざるを得ない。通産省どうですか。このことはどういう御理解ですか。その事実は御存じですか。
  133. 神谷和男

    ○神谷政府委員 ただいま御指摘の金額が県公社の決算のどこを指しておるのかは定かでございませんが、私ども通産省といたしまして、県公社の決算に関して云々する立場にございません。しかしながら、公団から流れた金が不当な形で本来流れるべきでないところに流れておるという事実は、私どもとしては、現在までのところ事情聴取した結果、把握いたしておりません。
  134. 榊利夫

    ○榊委員 現在までのところ事情聴取したけれども判明していない。しかし、もっともっとたくさんあるんです。もう時間がないので、そう詳しく触れられませんけれども、金利についても、公社の決算書を見ても、公団から金利と称して受け取ったその額と、それから決算書のそれは違う。さらにはその事務費の分、六年間の用地取得に関する事務費、これも公団から支払われている分と県が言っていることとは違う。ここにもう全部持ってきていますから。あるいはこんなこともある。たとえば昭和五十一年度分で、久留米の現地事務所で七人の職員が働いて買収の仕事をやっておる。ところが県公社の五十一年度の決算書には、職員の給料はゼロ、職員手当もゼロ、旅費もゼロ、こういうふうに軒並みゼロなんです。こんなことがあり得るだろうか。とにかく不思議であります。自治省は、従来、この地方自治体の土地開発公社のあり方については厳正でなくてはいけない、こういうことを言っておりますけれども、通達等々もずいぶん出されてきておられますけれども、自治省の方針として、こういう福岡県土地公社のあり方、望ましいと思われているでしょうか、どうでしょう。
  135. 藤原良一

    ○藤原説明員 私どもは事件の詳細の内容については十分承知していないのですけれども、ただ、工業団地の用地買収をめぐりまして非常に多くの混乱、疑惑を招いておるということはよく聞いております。われわれといたしましても、一次的な監督責任のあります県等が積極的に指導しまして、できるだけ早期に、円満、適切に事態を処理してただきたいと願っておる次第でございます。
  136. 榊利夫

    ○榊委員 疑惑のことは聞いておられる。  会計検査院、これまでどういうお調べになっておられますか。これは公団に関してでしょうか。
  137. 大西実

    ○大西会計検査院説明員 広川の中核工業団地につきましては、本年の二月一日から三日まで、地域整備公団の本部検査の際に検討いたしました。また現地につきましては、本年の三月の三日から六日まで調査官四名をもちまして実施いたしておりまして、現在その結果につきまして検討中でございます。
  138. 榊利夫

    ○榊委員 現在検討中だということなので、それ以上の質問は控えますけれども、いままで幾つかの例を引いてまいりました。一定の部分はこういうふうにマスコミでも報道されておりますけれども、こうした疑惑の金がどこかに渡った、あるいは流用されたということになると、犯罪を構成することになるんじゃないかと思うのですけれども、その点いかがでございましょう、法務省。
  139. 飛田清弘

    ○飛田説明員 いまの御質問、疑惑の金がどこかへ流用されたから犯罪になるのではないかというふうな御質問でございましたが、私ども犯罪という観点から申し上げますと、流用された金がどこに行ったかわからないからということで直ちに犯罪になるとは考えておりません。それは犯罪になるかどうかということを一番はっきり申し上げられる段階というのは、その金がどういうふうに使われたかということが判明して初めて、何らかの犯罪になるか、何かの構成要件に該当するかということがわかるわけでございまして、そういう意味におきまして、ただいまの段階では犯罪が成立するかどうかということはちょっとお答え申しかねるような事態でございます。
  140. 榊利夫

    ○榊委員 その点でありますが、つまりどういうふうに使われただろうかということ、まさにそこに疑惑がある。そのほかにも地域振興整備公団、福岡県土地公社の用地取得をめぐる経理というのはまことに乱脈をきわめておる。ここに資料を持ってきていますけれども、同じ年度の、同じ費目の数字が四種類も違うのです。決算書を見ましても、これは同じ年なんです。同じページ、金額も同じ。ところがこれは違うのです。述べられている中身が違うのです。同じ年度のやつが二つあるということなんですね。そのほか県公社の同じ数字についての県公社の経営状況報告、公社の決算書、公社の公の説明、地域公団から支払われた支払い額、全部違っている。こういうケースもある。どうも二重帳簿、三重帳簿になっているんじゃないかという気がするわけであります。しかも、県公社の対外説明が、きのう聞くところときょう聞くところと数字が違うのです。まことに真昼の不可思議。だから、粉飾し、再粉飾するのでないと、きのうときょうが違うということはあり得ないわけであります。だから、そういう点で、どういうふうに使われたかによって、こういう話でございますけれども、法務省としても、これまで調べられたでしょうか、あるいはこれから調べるおつもりはおありでしょうか。
  141. 飛田清弘

    ○飛田説明員 検察当局が犯罪の嫌疑ありとして犯罪を捜査するということは、まず犯罪の嫌疑があるということが前提になります。  それからもう一つ、検察当局がみずから乗り出すというのは、検察は刑事訴訟法上第二次的な捜査機関でございますから、検察がみずから乗り出すというのは、それ相応の、検察が乗り出さなければならない必要性というのを検察が認めて、みずから乗り出すかどうかということを判断するわけでございます。  そういうふうなことともう一つ、捜査というものは将来やるかやらないかということをあらかじめ申し上げるべき筋合いのものでもございません。そういうふうなことで、検察当局がこの事件を将来やるかどうかということについては、お答えを差し控えたいと思います。  ただ、この事件とは直接関係があると言えばある、ないと言えばないというような、この事件と少し接点があるような贈収賄事件については、すでに福岡地検におきまして捜査の上、公判請求をしているということを申し添えておきます。
  142. 榊利夫

    ○榊委員 そろそろ時間でございますのであれですが、やる、やらないと、いまの段階で言うことは差し控える、ということは、つまりやることもあり得る、調査することもあり得るという意味だと解釈いたします。  最後ですが、以上触れましたところは、当然通産省や国土庁の監督責任も絡んでくるものであります。  最後に、全国の中核工業団地の分譲率ですね、先ほど、三十何%ということを言われましたけれども、つまり中核工業団地は、「日本列島改造論」のかけ声で、農民などから、地権者から用地を安く提供さして、なるべく安い価格で大企業などへ分譲する、こういう方針だったわけでありますけれども、この広川工業団地の例を見ましても、いろんな悲劇が伴っている。それでもなおかつさっきの話でありますと、売れたのが三分の一。いまの経済状況で、よくなる見通しがあるだろうか。やはり見直しが必要になってきていると思います。やらなくちゃいけないと思うのです。それが言うなれば行革だと思うのです。  その点で最後にお尋ねいたしますが、通産省、大臣がおられませんなら、次官、お尋ねいたしますが、中核工業団地として予定してつくった、しかし売れない、いろんな利息がかさんでいく、人件費もかさんでいくとするならば、そこらで使途変更のことを含めて、たとえばこの部分については、三分の一は住宅なら住宅、農用地として返すとか、ある場合には、もちろん工業団地としてもとか、使途変更を含めまして、当該自治体などとも相談をしながら検討しなくちゃいけないところに来ているのじゃないか。その場合、自治体が要求すれば、やはりその土地に一番適した形での使途変更を考えるべきだ、考えなければ、これはもう全国に広域の土地をすでに買収しているわけですから、財政的にも大変な、国としての負担にもなってくるわけですが、この使途の問題、使途変更を検討し得るかどうか、このあたり所見を伺っておきたいと思います。
  143. 原田昇左右

    原田(昇)政府委員 国土の均衡ある発展を図るには、中核工業団地などの建設によって工業再配置施策を総合的に推進してまいるというのが政府の基本方針でございます。私どもそういう方針にのっとって中核工業団地を建設してまいっておるわけでございますが、御指摘のように、中には団地の売れ残っておるのも出ておるというのは事実でございますが、それを使途変更をすぐしたらどうかというのはいささか近視眼的な見方ではないか。私は、やはり過密から過疎へ工業の流れを変えて、その地域の発展を図ることがこのねらいなんでございますから、できるだけ今後あらゆる方策を講じて、その地域に工業を誘導するという方向をもっと積極的に図るべきであって、それでもどうしてもこれは目的を達成できないというときになって、地域の御要請があれば、またそういう方向を検討しなければならぬのではないかと思っておりますが、まだそういう段階ではないと思っております。  それから、先ほど来いろいろお話を聞いておりましたのですが、若干物事を問題あり、ありという方向に御議論なすっておられる嫌いがあるのではないかという印象を受けたわけでございます。率直に申し上げて、土地を提供していただいた地主の方には大変御協力をいただいて感謝いたしておるわけでございまして、こういう地主の方に誤解のないようにしっかり関係当事者で話し合っていただくということが何よりも先決ではないかと思っておりますので、よろしくひとつその点を御協力をお願いしたい。
  144. 榊利夫

    ○榊委員 ちょっと一言だけ。  話し合いという話が出ましたけれども、残念ながらそういう態度をとっておらないところに問題があるわけでありまして、ぜひひとつこの問題については、泣かされている地権者の声を十分に聞いて、公正な解決のために御努力もお願いしたい。それから土地の問題についても、将来売ろうとしても売れないというなら再検討せざるを得ないのですから、そういう方向での検討を重ねてお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  145. 野田毅

  146. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 最近牛乳の乱売合戦が起こっておりまして、小売店や生産者は大変に困惑した状態に置かれております。それで、公正取引委員会も立ち入り調査だのいろいろなさって大変御苦労も多いかと思うのでありますけれども、初めに委員長に、独禁法の根本精神というものは一体どういうところにあるとお考えか、それからまた、その運用に際して最も留意しなければならない点は何か、これは「公正取引」の一月号で委員長のお考えは大体あれなんですけれども、改めて伺わせていただきたいと思います。     〔野田委員長代理退席、森(清)委員長代     理着席〕
  147. 橋口收

    橋口政府委員 独占禁止法は別名経済憲法とも言われておるわけでございまして、現在の自由経済体制基本を守るという使命を持っておるわけでございます。したがいまして、自由経済体制を守るという見地から、産業の業種、業態にかかわらず、できる限り公正にして自由な競争条件整備されるように運用されるべきでございます。そういう点から申しまして、昭和二十二年に法律が導入されましてから以後幾多の変遷はございますが、昭和四十年代から五十年代にかけましては、従来は独禁法の適用になじみにくいとされておりました、たとえば自由業、建築士とか医師業あるいは歯科医師業、そういうものに対しましては競争政策が適用されつつあるわけでございます。それから政府によって規制された産業分野、いわゆる政府規制産業に対しましても、従来の方針を転換しまして、できるだけ事業者が自由に競争できるような状態を招来することが望ましいという考え方に立っておるわけでございましてこれは現時点における先進諸国の経済の活性化問題とも表裏をなす問題でございまして、基本は公正にして自由な競争が確保されるような社会をもたらすという二とに最大の眼目があるわけでございます。
  148. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 その運用に際して最も留意されている点についてお聞きいたしたいと思います。
  149. 橋口收

    橋口政府委員 独占禁止法は、御承知のように、私的独占の排除とカルテルその他の不当な取引制限の是正、それと不公正な取引方法の排除、この三つが柱でございます。したがいまして、私どもとしましては、この三つの柱を推進いたしておるわけでございますが、私的独占というのは最近は比較的少なくなっております。事業者が他の事業者を排除して、自分の独占的な地位を確保するという行為は比較的少なくなっております。不当な取引制限、つまりカルテルにつきましては、これが悪であるという認識はかなり強く徹底をいたしておるわけでございます。問題は、第三点の不公正な取引方法につきましては、どこまでが不公正な取引方法に触れるかという限界の問題等につきまして、まだ十分解明されていない面もあるわけでございまして、私どもとしましては、行政の重点あるいは運用上の配慮としましては、この不公正な取引方法の明確化ということが一番大切な問題であり、また現時点において要請度の高い問題であるというふうに考えております。
  150. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 「公正取引」という本を委員会でお配りしていただいて私も読ましていただきました。この中の「年頭所感 独禁政策を風化させないために」というところで委員長は、「経済的効率性を尊重するのあまり、反トラスト政策のもうひとつの柱である“社会的正義”の理念を見失ったり」こういうことをおっしゃっています。そして「わが国では、“経済的効率性”と“社会正義”との双方の理念を実現する独禁政策を堅く持してきた」こうおっしゃっているのですが、いま社会正義というようなお言葉はちょっとおっしゃらなかったような気がしたので残念なんですが、ぜひ社会正義の理念も失わずに運用していただきたい、こう思うのであります。  それで、最近牛乳がちょっとだぶついているといいますか、輸入に圧迫されてだぶついたかっこうになっているのでしょうけれども、そのせいでスーパーあたりでは一キロ百円、生産者が売り渡したのと同じような価格で売られている実態があるわけです。農林省の方にお尋ねしたいのですが、生産者から工場に入ってくる牛乳の安売りの状態というのはどういうふうになっているのか、またそれは農林省としてどのように受けとめておられるのか、お聞きしたいと思います。
  151. 香川荘一

    ○香川説明員 お答えいたします。  生産者段階価格でございますけれども、御指摘のように、現在非常に安くなっておりまして、従来販売店段階での安売りというものが中心でございましたが、最近では生産者の価格のところでも非常にばらつきが出ているというふうに思っております。これにつきましては、私どもは、一つは生乳の需給が緩和しているというのがあろうかと思います。それからもう一つは、産地間の競争というものが激しくなっておりまして、特に北海道等の遠隔の地から消費地に流れてきている、こういうものによる問題もございます。それから市乳の工場の競争が激しくなっておりまして、より安い原乳を買いにいく、こういうことから安くなっているということでございます。  加工原料乳につきましては、政府が一応保証いたしておりまして、現在八十八円八十七銭という価格でございますが、飲用向けにつきましては、自由な取引でございますので、そういう点でばらつきが出ているということでございます。
  152. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 政府の加工原料乳の保証価格は八十八円八十七銭、それから安定基準価格が六十四円三十銭、そういったことでありますけれども、私の耳に入ってくるところでは、一キロ五十何円台の牛乳あるいは六十円ぐらいの牛乳も入っている、こう聞くのであります。公正取引委員会ではいろいろ調査もされたようですけれども、一番安く入っている生乳はどのくらいになっているのか、お答えいただきたいと思います。
  153. 伊従寛

    伊従政府委員 私たちの方では、牛乳の問題につきましては、昨年の秋以降カルテルの問題について調査しておりまして、それに関連しまして多少調査したことがございますが、生乳の価格については調査しておりませんので、具体的な数字は把握しておりません。
  154. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 牛乳生産の酪農の場合、過去、昭和四十五年には三十万八千戸からあった酪農家が十一万五千戸に減ってきている、大変厳しい立場に置かれている産業だと思います。それから各農家の飼養頭数は、四十五年に六頭であったものが五十五年では十八頭にふえている。牛をふやすには本当に畑もふやさなければならない、牛舎も建てなければいけない、機械もそろえなければならない、非常に多くの借金もして踏ん張ってきた。また終戦後多くの方が国の食糧増産政策などにのっとって山間僻地の開拓地に入って非常な苦労をされながら、最初三十数戸あった部落がいまでは二、三軒しか残れない、こういう状況にある一方、国では酪農を振興しなければいけないということで、年々多額の補助金なども出し、また酪農振興法とか畜産物価格安定法あるいは加工原料乳生産者補給金等暫定措置法、それにまた農業協同組合法なんかもありますけれども、こういったいろいろな法律で手厚く保護している。保護しなければならないような産業だからこそこういったいろいろな法律をつくって守っているんだと思うのでありますけれども、農林省の方にお尋ねいたしたいと思いますが、こういったさまざまな保護法的な法律というものは一体どういう必要性から出てきたものとお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  155. 香川荘一

    ○香川説明員 御指摘のように、酪農に関しましては幾つかの法律がございます。その中で特に重要な法律となっておりますのは、加工原料乳生産者補給金等暫定措置法、通称不足払い法と言っておりますが、これによりまして、飲用に向けます生乳というのは、従来比較的有利に売れております。それの生産者の価格というものは、再生産を確保するに足り得る手取り価格というものが保証されているわけです。ところが一方で、バターとかチーズ等に向けます原料乳につきましては、生産者の再生産を確保するだけの価格で買いますと、末端の方でメーカーが処理加工したときに価格的に売りにくいという問題がございまして、生産者には再生産を確保し得る水準の保証価格ということで、先ほど申し上げました八十八円八十七銭というものを保証いたしております。それからメーカーの方には、取引が可能な価格ということで六十四円三十銭という水準でやっており、その差額を政府の財政において補給いたしておるわけでございます。そういう形で酪農を保護し育成する。それは相当合理化を進めておりますが、酪農そのもののまだまだ体質の弱さというものがございますので、そういう点でやっております。  ただ、最近の生乳の需給の緩和と申しますのは、五十一、二年から五十三年ごろにかけまして急激に生産が伸びております。六、七%台の高い水準で伸びます。ところが一方で消費の方は牛乳が二、三%の伸び。そこに需給のギャップが出まして、生乳の需給緩和という問題が起きました。これは五十四年度から生産者が計画的な生産をやって、最近では需給がほぼ均衡するという状況にまでまいっておるわけでございます。
  156. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 先ほど委員長が政府規制産業などにも競争の原理を取り入れていかなくちゃいけないと言われたが、そういったことから最近の公正取引委員会の牛乳問題に対する介入というのもなされたのじゃないかと考えられますけれども公正取引委員会が一月ごろですか、全酪連や広島県酪農業協同組合にいろいろ警告を出した。そういったことが新聞に出て、こういった生産者団体が大変弱腰になってしまった。そういったことが一層安値に拍車をかけていると思うのです。しかし、牛乳というものは毎日しぼればとにかくその日のうちに売ってしまわなければならない、保存する場所といったって、冷凍庫は大きさが限られていますし、三日も四日も置けば腐ってしまう。こういったところに競争を取り入れれば、結局売らないわけにはいかない品物なんですから、メーカーのだんだん言いなりになっていくのじゃないか、こういうふうに思われるのです。  それで、先ほどの酪振法や農協法といった法律の精神と独禁法の精神といったものは水と油のようなものなのか、あるいはうまく合わせていけるものなのか、その辺どのように取引委員会では判断されているのかということをお聞きしたいのと、先ほど最初のお答えで、いままでの、従来の方針を転換したのだというお話がありましたけれども、これはいつごろどなたが方針を転換するように決められたのか、この辺をお聞かせいただきたいと思います。
  157. 橋口收

    橋口政府委員 第二の御質問の方からお答えを申し上げたいと思いますが、昭和五十二年に独占禁止法が改正になりまして、昭和二十二年に独占禁止法が日本に導入されまして以来初めて強化の方角に向かっての改正が行われたわけでございまして、たとえば課徴金の制度、同調的価格引き上げの場合の理由の報告の徴収、あるいは独占的状態に対する監視体制の強化等々、独占禁止法の改正強化が行われたわけでございまして、これが施行になりましたのは五十二年十二月でございますから、それ以降、それ以前と比べますと競争政策が格段に強化されたということが言えるかと思います。  それから、政府規制の問題に関連しましては、昭和五十四年九月に先進国のクラブであるOECDから加盟各国に対しまして勧告がなされておりまして、政府によって規制された産業領域につきましてできるだけ自由競争の光を当てるように、こういうような勧告があるわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、独占禁止法は自由経済基本体制を守るための法律でございますが、近代的な福祉国家におきましては、もろもろの価値観というものが存在をいたしておりますし、福祉国家の存在理由の一つとしまして、先生がちょっとお触れになりました弱者の保護ということもございますし、あるいは公共性、公益性の見地というものもあるわけでございますから、競争政策一本やりの経済社会でないことは申すまでもないわけでございます。  ことに農林水産業との関連について申しますと、御質問の中にもございましたように、幾つかの価格支持政策、生産調整制度等があるわけでございまして、最も代表的なのは食管制度であるわけでございまして、こういう点で政府が価格に介入をしたり、価格を支持したり、あるいは生産量を調整するということを法的な基礎に基づいておやりになっていることも事実でございまして、そういう点で申しますと、その範囲におきまして自由競争の原理というものは修正されておるのが現状でございます。したがって、そういう法律によって授権された範囲において競争状態というものが制限されること自体は差し支えないわけでございますが、法的な保護のない、つまり独禁法の立場で申しますと、適用除外のない領域において不当な取引制限とか不公正な取引方法、あるいは私的独占が行われました場合には、これは法の規定に従って取り締まることが必要になるわけでございます。  お挙げになりました四国の乳価の問題、広島の問題、あるいは大手町会等の全酪連の問題等につきましては、法の規定に照らしまして、情状の重いものにつきましては法的な勧告、軽いものにつきましては警告ということをいたしたわけでございまして、いま乳価の状態がどういうふうになっているか、農業者の状態がどういうふうになっているかということにつきましては、的確には承知をいたしておりませんが、私どもが牛乳問題を取り扱うようになりましてから相当長い年月がたっておるわけでございまして、これは末端の小売店の不当廉売の問題もございますし、乳業メーカーの段階の問題もあるわけでございますし、また生産者の段階の問題もあるわけでございます。  そういう問題を取り扱いまして痛感されますことは、農林省からもお話がございましたが、基本的には、需給のバランスが崩れている状態をどうやって是正するかということに帰着するわけでございまして、生産が過剰になりまして物があふれてまいりますと、どうしても価格末端において下がる、あるいは中間段階において乳業メーカーにたたかれるということが起こるわけでございまして、そういうことに対抗せんがために違法なカルテルで末端価格を引き上げる。たとえば四国で申しますと、ある月以降、二百円以下の牛乳というのは一切スーパー等から姿を消したわけでございまして、そういうことは明らかに人為的な行為によって確保されている価格状態でございますから、こういうものに対しましては、一般消費者の利益を守るという立場から排除をするということが必要になるわけでございまして、そういう点で申しまして、農業の特性に基づいた競争制限的な領域というものは認めながら、法によって許容されない分野につきましては、独禁法に基づく競争政策を適用していかなければならない、これが公正取引委員会基本的な態度でございます。
  158. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 疑わしきは罰せずというのが裁判の鉄則だというふうに聞いておりますけれども公正取引委員会では、この言葉をどうお考えになっておるのでしょうか。
  159. 橋口收

    橋口政府委員 疑わしきは罰せずというのは刑事法の観念でございまして、私どもが掌握いたしておりますのは、あくまでも行政法の領域でございます。もちろん法的な勧告その他の措置をとります場合には、十分調査をし、物証を得、供述を得て、法的な措置にふさわしいという確信を持って措置をいたしておるわけでございまして、四国問題で申しますと、すでに勧告を応諾いたしておられるわけでございますし、その他、先ほどもちょっと触れましたように、情状に応じて法的措置までいかない警告の措置をとっているわけでございまして、疑わしいものは罰するという考え方をとっているわけではございません。
  160. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 広島県の酪連は、なぜ警告を受けるようなことをやらなければならなかったとお考えになっていらっしゃるのか、まず、そのことをお伺いいたします。
  161. 伊従寛

    伊従政府委員 広島県の酪連に対しましては一月二十八日に警告を出しておりますが、その独禁法上の問題点といいますのは、広島県酪が広島県における牛乳製造業者に、生乳ではなくて、牛乳の小売価格の最低価格を定め、小売業者に要請させ、要請しない業者に対しては、生乳の供給を停止することを伝えた行為が独禁法の十九条、これは「不公正な取引方法」で、独禁法の二十四条に、農協等の協同組合の適用除外の規定がございますが、その場合にも、不公正な取引方法を用いる場合にはこの限りでないという形で適用除外の例外になっております。この十九条に違反するおそれがあるとして警告したわけでございます。
  162. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 広島県酪連が二百十五円以下で売った場合には牛乳を売らないと言ったのは、結局、どんどん安売り競争が続いていけば、まさかメーカーが、自分が損をして赤字になって会社が倒産するような値段のままで売るわけはないので、そのしわ寄せというのは生産者に来ると思うのですよ。そうして生産者が最終的には安売りの被害を受けなくちゃならない。そういったことで安売りをしないでくれということを言ったと思うので、これは正当な理由じゃないとは言えないような感じがするのです。  それから、生乳を売らない、出荷停止をするぞということですが、物を売る、売らないはその人個人の勝手なんじゃないですか。
  163. 伊従寛

    伊従政府委員 広島酪連が、もし自分の生乳の供給者に対して、価格について折り合いが合わなくて出荷を停止するということだけであれば、これは独禁法上の問題は生じません。問題になりましたのは、自分の売る生乳の再販売価格、むしろ正確に言いますと、生乳を乳業メーカーが加工しまして、それを乳業メーカーが今度は小売屋さんに売って、小売屋んが消費者に売る価格を拘束して、それを守らない場合に出荷停止すると言ったことが独禁法十九条に触れるということでございます。ですから、御質問の中で、もし広島酪連が生乳の価格を幾らと決めてきて、それを価格が折り合わないから出荷しないということだけであれば、これは独禁法上の問題は生じません。
  164. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 先ほど適用除外の話をされましたが、この二十四条の三では、私は法律の専門家じゃありませんから議論すればあれかもしれないのですけれども、ただし「当該商品の価格がその平均生産費を下り、且つ、当該事業者の相当部分の事業の継続が困難となるに至るおそれがある」ときは、そういったこともできるのじゃないでしょうか。
  165. 伊従寛

    伊従政府委員 いまの御質問でお答えしますと、仮に生乳の値段が下がってきますが、これは需給関係によって下がるというのが一番大きな理由だろうと思います。要するに、需要に対して供給が多過ぎるために、需給関係によって価格が決まりますから、それで下がってくる。そうした場合にどうなるかといいますと、一般的には、採算に合わないところからだんだんに牛乳の生産を抑えていくということになるのですが、牛乳の場合にはそれがなかなか抑えられない。農協組織を通してそういう需給調整ということがある程度行えることが可能なわけでございますが、一般的にいいますと、農協が扱っていない、普通の企業の場合には、そういう需給調整行為ができないわけでございます。そうしますと、ある場合には共倒れになるおそれがありますので、それを救うために二十四条の三で不況カルテルの制度を設けておるわけでございます。不況カルテルを安易に認めますと、これは国民経済に対する影響が大きいので、いまの御指摘のような二十四条の三の一項一号に、「当該商品の価格がその平均生産費を下り、且つ、当該事業者の相当部分の事業の継続が困難となるに至るおそれがある」場合に、初めて不況カルテルが公正取引委員会の認可によって認められるという形になっておるわけでございます。ただし、農業協同組合の場合には、この種の調整行為のある種のものについては、認可を受けないで農協自体で行えることになっておりますから、むしろ二十四条の三よりは緩い形で、需給調整行為がある部分については認められていると考えますので、需給調整については、生乳その他の農産物については、これよりもやりやすい状態にあるのではないかと思います。
  166. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 この調査の結果、違反するおそれがあり、きわめて問題のあるものである。公正取引委員会でもおそれというような言葉を使われて厳重な警告を出された、そしてそれを新聞に発表された。まあ生産者団体の構成員の人たちなどは比較的素朴な人たちが多いもので、公取から警告を受けたなんていうとあわてて、最初に申し上げましたように、そういったことを取り下げてしまうのですね。どうも先ほどからお話を聞いていますと、何か無理無理ひっつかまえてやろうというような、無理無理この法律のどこかに該当させようというような感じで、ひっかけたような感じがするのですけれども、先ほどから申し上げている酪農を保護するためのいろいろな法律の精神から言っても、あるいはまた、変なたとえですけれども、この間青森県では息子を殺したお父さんが起訴猶予になった。世間ではそういった情状酌量ということがいろいろあると思うのです。ところが今度の公取の場合は、全くその逆、夜警国家というんですか、何かそういう感じがしてならないわけなんですけれども、本当のねらいというのは一体どういうところに置いてこうした警告などをされているのか、それをお聞かせください。
  167. 伊従寛

    伊従政府委員 先生指摘の生乳の需給調整については、農業協同組合法その他によりまして、独禁法の見地からいいますと、かなり緩かな形で認められていると言っていいと思います。今度問題にしましたのは、生乳の需給調整の問題あるいは生乳価格の問題ではなくて、末端消費者に対する牛乳の小売価格について乳業メーカーがカルテルをやってつり上げているということを問題にしたわけで、それに関連して、広島酪連の場合には、農協がそれにも手をかしたというところで問題になっているわけでございます。ですから、これは警告しましたのは、厳しくやっているのではなくて、むしろ緩かな形でやっているためにそういう形になっているので、農協の問題につきまして公取が特に厳しくやるということはございません。問題になりましたのは、要するに乳業メーカーの末端消費者に対する小売価格のカルテルでございます。あるいはその小売価格の維持行為が問題になっているわけでございます。
  168. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 つり上げているということをおっしゃいましたけれども、二百十五円ぐらいがつり上げになるんでしょうか。私は二百十五円は決してつり上げではないと判断するんですが……。  それから、OECDの勧告ですか、話があってというようなこともありましたけれども、外国などの場合でも、ニュージーランドとかイギリスあたりではナショナル・デーリー・ボードというところで生産者や政府、メーカーが一緒に集まって乳価を決定する。それからEC諸国などでは牛乳がちょっとでもだぶつけば大変厳しい生産調整をやる。そういったことを各国ともされておるようですけれども、公取では牛乳価格の決定の仕組みというものを、じゃ、どういうふうに——これもだめあれもだめと言うのなら、一体どう決めたらいいとお考えになっているのか、あるいはまたEC諸国などの乳価の決定の仕方などについて研究されたことがあるのかどうか、そういったことをお答えいただきたいと思います。
  169. 伊従寛

    伊従政府委員 公正取引委員会という役所の性格からいいますと、ある種の業界に対して、こういうことがいいとか悪いとかということを先に立って指導する役所ではございませんで、企業活動あるいは事業者の活動がありまして、その後から見て、独禁法上問題がないかどうかを見て、それで独禁法違反がある場合に措置をとるということでございます。  牛乳については、先ほどから繰り返して申し上げておりますように、生乳の取引については農業協同組合が関与している部分が多く、かつ農業協同組合がその面について行っている限り独禁法二十四条によって大幅に独禁法の適用が除外されているわけでございます。今回問題になりましたのは、生乳を農協その他から買いました乳業メーカーが、小売屋さんを通して消費者に売る価格について競争関係によらない、競争を制限して価格を決めたということでございますから、これは各国においても、もしそういう事態があれば、大体各国、先進国では独禁法がございますから、同様の措置がとられるのではないかと思います。
  170. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 小売値段が極端に下がっていけば、結局メーカーも原料を安く買いたたいて仕入れるほかない。メーカーが安く買いたたけば最終的なしわ寄せば酪農家に寄ってくる。そういうことは、くどいようですけれども、農業協同組合法とか酪振法、安定法といったものの精神に全く反する結果を招くことになる、私はこういうことを心配しておるのです。今後そういった事態がなるべく引き起こらないような方法で公取としてもこの問題に取り組んでいただきたいということをお願いしておきます。
  171. 橋口收

    橋口政府委員 いろいろお話がございましたが、私ども基本的な立場を申しますと、社会的な弱者である一般消費者の利益を守るというところに基本があるわけでございます。生産者の利益を守るという問題も、先ほど来触れておりますように、近代的な福祉国家におきましては、もちろん一つの理念としてあろうかと思いますが、末端において牛乳価格が二百円未満のものが一切整理されるという状態になり、一般消費者から多くの苦情が寄せられておるわけで、私どもが強い措置をとりました影響の結果として、ことに東京地区では現在でも二百円以下の牛乳があるわけでございます。そういう点で、私どもの行政のスタンスとしましては、どちらかと申しますと、一般消費者の利益を守るというところにあるわけでございます。いまお話がございましたのは、国全体の立場において生産者の利益をどうやって守るかという問題でございますから、この点については、それぞれ農林省御当局その他産業政策官庁があるわけでございまして、私どもの方としては、愚直に一般消費者の利益を守るために独禁法を運用しなければならないという立場にあることについて十分御理解をいただきたいと思います。
  172. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 いま委員長お話では、消費者を弱者、生産者を反対に置いてお話しなさいましたけれども、生産者というものは、私は非常に弱い立場に置かれていると思うのです。過去五十二年から乳価は、政府の保証価格は全く据え置かれたままで、しかもそこで生産調整がなされている。一方いろいろな物価は値上がりするし、借金は返していかなければならないし、子供はだんだん大きくなるから学校にやらなければならない。生産はふやせない、価格は上がらない。こういう大変苦しいときに逆に値がどんどん下がっていく。これではとても容易でないので、委員長さんとか部長さんに一度酪農家のどこかを見学していただいて、実態を十分見ていただければありがたい、こう申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
  173. 森清

    ○森(清)委員長代理 次回は、来る三十日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十分散会