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1982-04-15 第96回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月十五日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 唐沢俊二郎君    理事 今井  勇君 理事 大石 千八君    理事 丹羽 雄哉君 理事 深谷 隆司君    理事 金子 みつ君 理事 森井 忠良君   理事 平石磨作太郎君 理事 米沢  隆君       小里 貞利君    金子 岩三君       鴨田利太郎君    瓦   力君       木野 晴夫君    古賀  誠君       斉藤滋与史君    白川 勝彦君       谷垣 專一君    戸沢 政方君       友納 武人君    中尾 栄一君       長野 祐也君    葉梨 信行君       浜田卓二郎君    船田  元君       保利 耕輔君    山下 徳夫君       与謝野 馨君    大原  亨君       川俣健二郎君    川本 敏美君       田邊  誠君    栂野 泰二君       永井 孝信君    山本 政弘君       西中  清君    塩田  晋君       浦井  洋君    小沢 和秋君       菅  直人君    柿澤 弘治君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 森下 元晴君  出席政府委員         厚生大臣官房総         務審議官    正木  馨君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁年金         保険部長    小林 功典君  委員外出席者         議     員 森井 忠良君        議     員 平石磨作太郎君         議     員 米沢  隆君         議     員 浦井  洋君         議     員 菅  直人君         臨時行政調査会         事務局主任調査         員       谷川 憲三君         大蔵省主計局共         済課長     野尻 栄典君         大蔵省理財局資         金第一課長   安原  正君         日本国有鉄道共         済事務局管理課         長       長野 倬士君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 四月十五日  辞任         補欠選任   木野 晴夫君     瓦   力君   斉藤滋与史君     保利 耕輔君   船田  元君     鴨田利太郎君   牧野 隆守君     与謝野 馨君   池端 清一君     山本 政弘君   田口 一男君     大原  亨君 同日  辞任         補欠選任   鴨田利太郎君     船田  元君   瓦   力君     木野 晴夫君   保利 耕輔君     斉藤滋与史君   与謝野 馨君     牧野 隆守君   大原  亨君     田口 一男君   山本 政弘君     池端 清一君     ————————————— 四月十五日  民間保育事業振興に関する請願永末英一君紹  介)(第二〇八六号)  療術の制度化阻止に関する請願戸井田三郎君  紹介)(第二〇八七号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願(  矢野絢也君紹介)(第二〇八八号)  同(中村重光紹介)(第二一三〇号)  同外二件(堀昌雄紹介)(第二一三一号)  同(池端清一紹介)(第二一七一号)  同(小野信一紹介)(第二一七二号)  同(後藤茂紹介)(第二一七三号)  同(城地豊司紹介)(第二一七四号)  同(新村勝雄紹介)(第二一七五号)  同(楯兼次郎紹介)(第二一七六号)  同(戸田菊雄紹介)(第二一七七号)  同(野坂浩賢紹介)(第二一七八号)  同(藤田高敏紹介)(第二一七九号)  同(有島重武君紹介)(第二一九一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二一九二号)  同(稲葉誠一紹介)(第二一九三号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第二一九四号)  同(金子みつ紹介)(第二一九五号)  同(木島喜兵衞紹介)(第二一九六号)  同(北山愛郎紹介)(第二一九七号)  同(小林進紹介)(第二一九八号)  同外一件(小林恒人紹介)(第二一九九号)  同(嶋崎譲紹介)(第二二〇〇号)  同(武田一夫紹介)(第二二〇一号)  同外一件(永井孝信紹介)(第二二〇二号)  同(武藤山治紹介)(第二二〇三号)  同(八木昇紹介)(第二二〇四号)  同(薮仲義彦紹介)(第二二〇五号)  同(山田耻目君紹介)(第二二〇六号)  同(大橋敏雄紹介)(第二二二〇号)  同(小林恒人紹介)(第二二二一号)  同(塚田庄平紹介)(第二二二二号)  同(平林剛紹介)(第二二二三号)  同(福岡義登紹介)(第二二二四号)  同(松本幸男紹介)(第二二二五号)  民営旅館業の経営安定に関する請願天野光晴  君紹介)(第二〇八九号)  同(伊東正義紹介)(第二〇九〇号)  同(稲村利幸紹介)(第二〇九一号)  同(奧野誠亮紹介)(第二〇九二号)  同(亀岡高夫君紹介)(第二〇九三号)  同(戸井田三郎紹介)(第二〇九四号)  同(粟山明君紹介)(第二〇九五号)  同(大村襄治紹介)(第二一三二号)  同(岸田文武紹介)(第二一三三号)  同(佐藤守良紹介)(第二一三四号)  同(三枝三郎紹介)(第二一三五号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第二一三八号)  同(山崎平八郎紹介)(第二一三七号)  同(齋藤邦吉紹介)(第二一八〇号)  同(永田亮一紹介)(第二一八一号)  同(羽田野忠文紹介)(第二一八二号)  同(金子岩三紹介)(第二二〇七号)  同(志賀節紹介)(第二二〇八号)  同(松永光紹介)(第二二〇九号)  同外二件(安田貴六君紹介)(第二二一〇号)  同(池田行彦紹介)(第二二二六号)  同(梶山静六紹介)(第二二二七号)  同(久野忠治紹介)(第二二二八号)  同(倉石忠雄紹介)(第二二二九号)  同(小坂善太郎紹介)(第二二三〇号)  同(清水勇紹介)(第二二三一号)  同(羽田孜紹介)(第二二三二号)  同(古井喜實紹介)(第二二三三号)  同(宮下創平紹介)(第二二三四号)  同(村田敬次郎紹介)(第二二三五号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (坂井弘一紹介)(第二〇九六号)  同(藤田高敏紹介)(第二一八三号)  老人福祉に関する請願鯨岡兵輔紹介)(第  二一二九号)  障害福祉年金受給者所得制限廃止に関する請  願(中路雅弘紹介)(第二一四八号)  在宅重度障害者介護料支給に関する請願(中  路雅弘紹介)(第二一四九号)  無年金脊髄損傷者救済に関する請願中路雅弘  君紹介)(第二一五〇号)  在宅重度障害者暖房費支給に関する請願(中  路雅弘紹介)(第二一五一号)  労災重度被災者暖房費支給に関する請願(中  路雅弘紹介)(第二一五二号)  労災脊髄損傷者の遺族に年金支給に関する請願  (中路雅弘紹介)(第二一五三号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願  (中路雅弘紹介)(第二一五四号)  重度障害者福祉手当増額に関する請願中路  雅弘紹介)(第二一五五号)  労災年金最低給付基礎日額引き上げに関する  請願中路雅弘紹介)(第二一五六号)  国民健康保険料の低所得者負担軽減等に関する  請願中島武敏紹介)(第二一六七号)  社会保障社会福祉予算増額に関する請願(  渡辺貢紹介)(第二一六八号)  年金制度の改悪、老人医療有料化中止等に関  する請願中島武敏紹介)(第二一六九号)  老人医療費有料化所得制限強化反対等に  関する請願中島武敏紹介)(第二一七〇  号)  精神障害者福祉法制定に関する請願近藤元次  君紹介)(第二一八九号)  国立腎センター設立に関する請願渡部一郎君  紹介)(第二一九〇号)  婦人労働者の権利と生活保障等に関する請願(  春田重昭紹介)(第二二一八号)  軍歴期間各種年金加算等に関する請願外一  件(小坂善太郎紹介)(第二二一九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出第四〇号)  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第三九号)  原子爆弾被爆者等援護法案森井忠良君外六名  提出衆法第一三号)      ————◇—————
  2. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原(亨)委員 第一の質問は、いま政府の間において行われておる、年金関係いたしました各種諮問機関審議機関があるわけですが、それらについて、厚生年金国民年金船員保険等年金の大部分を掌握している厚生省は全体の各委員会審議状況についてどういう考えを持っておるか、こういうことを中心に、それぞれの担当者が来ておりますから、質問をいたします。  臨時行政調査会、出ておりますね。年金というのはこれから高齢化社会の非常に大きな課題であって、現状のままではいけないわけでありますが、いままで社会保障制度審議会が出しました「皆年金下の新年金体系」、これはすでに出ております。それから、厚生大臣諮問機関であったのが出しました昭和五十四年度の報告、これは年金制度基本構想懇談会という名前だったと思いますが、その報告、これはもうすでに出ております。その他国鉄共済についてもしばしばやりまして、船後報告が出ております。それから、大蔵省きょう来ていますが、御承知のようにいま大蔵省中心でやっておる国家公務員あるいは地方公務員全部を踏まえまして、正式の名前共済年金制度基本問題研究会、こういうのがあります。それから、現在作業中のもので、厚生省社会保険審議会厚生年金部会作業を始めております。国民年金については、先般、政府に密着いたしました御用団体かどうかわからぬが、それに類するような答申が出ております。  そして、今度は臨調も、これはどこまでが本当かということを含めて御答弁いただきたいのですが、四月七日、基本答申の重要な柱として盛り込む年金制度改革案というのが新聞で報道されております。その内容等についてもかなり具体的に出ておるわけであります。そういう答申のすでに出たものや作業中のものを踏まえて、臨調は七月には出すというふうに言われておるのですが、先般の新聞基礎年金への三段階統合なんというふうないろいろな案が、中身についてはほとんど同じでありますが、新聞で報道されたわけですが、それらの作業との関係をどういうふうに考えておるのか。あるいは臨調は、事務局として知り得る範囲でよろしいと思うのですが、七月にこれらの問題については報道されているようなかなり具体的な年金行政一元化基礎年金導入等方向について答申をするというふうに伝えられているが、それはどういう見通しであるか。つまり他の幾多の作業答申との関係、それと臨調の七月に答申する大まかな中身、この二つの点について答弁をしてもらいたい。
  4. 谷川憲三

    谷川説明員 お答えいたします。  臨時行政調査会では、現在四つの部会で七月の答申に向けまして精力的に審議を進めております。年金問題につきましては、第一部会、第二部会、それから第四部会、それぞれ検討しているわけでございます。  第一部会におきましては、重要行政施策あり方検討一環としまして社会保障政策を取り上げております。その中で将来を展望した年金制度あり方について、年金財政の長期安定の確保あるいは制度間の格差の是正、年金制度一元化といった問題を中心検討を行っております。  それから第二部会におきましては、中央省庁の組織の問題等を分担しておりますけれども年金行政につきましても年金制度改革の推進にあわせて行政機構体制改革が必要である。こういう認識に立ちまして、年金行政機構一元化あるいは年金業務処理体制一元化等の問題を中心に、機構体制あり方について検討しております。  それから第四部会におきましては、三公社、特殊法人等合理化関係を分担しておりますけれども、ここでは国鉄経営形態の見直しを含めた改革案検討一環としまして、国鉄年金問題について検討いたしております。  各部会ともこれまで関係省庁学識経験者等ヒヤリングあるいは意見交換を行いますとともに自由討議を進めておりますけれども、具体的な改革案あるいは方向づけについてはまだまとめる段階には至っておりません。  以上が、現在までの臨調での検討状況でございます。  それから先ほどの御質問で、これまで出されたいろいろな提言、あるいは現在検討中の審議会等提言、これから出されるであろう提言との関係ということでありますが、これまで社会保障制度審議会とか年金制度基本構想懇談会等提言がある。それから現在幾つかの審議会研究会検討しておられるということは承知しておりまして、臨調としてもすでに公表された審議会提言についてはこれまでの審議の中で十分参考にさせていただいております。現在検討中の審議会研究会のものにつきましては今後可能な範囲審議参考にしていきたい、こういうふうに考えております。  それから先ほど新聞の話がございましたけれども、これは審議の途中段階での討議ペーパーが一部出されたものと思いますけれども、途中段階のものでございますので、審議の進展に従っていろいろな意見が出されておるということでございます。  以上でございます。
  5. 大原亨

    大原(亨)委員 それでは大蔵省主計局中心となってやっておる共済年金制度基本問題研究会で、国鉄年金やあるいは他の共済年金全体をやっておると思うのですが、これはどのような内容について議論し、そして大体いつ答申を出すのか、お答えいただきたい。
  6. 野尻栄典

    野尻説明員 お答え申し上げます。  私どもの方が中心となって持っております共済年金制度基本問題研究会昭和五十五年の六月に発足いたしました。ほぼ二年前でございます。そのときに私どもの方からこの研究会にお願いいたしましたのは、おおむね二年程度の間に御意見をちょうだいできればありがたいということでお願いしたわけでございます。この研究会を設けましたのは、共済年金制度が将来に向けて現在のままでは非常に不安定な状態にあるという認識のもとに、その給付水準とか支給要件を抜本的に見直していくに当たってどういう見地からこれを見直していったらいいのかという問題を中心にいたしまして、他の公的年金制度やあるいは恩給制度との整合性とか調整の問題、さらには、当面の緊急な課題といたしまして、国鉄共済年金財政的に非常な危機に陥っておりますので、そういうことに対する全体としての対応策、これらが検討テーマということにされているわけでございます。  先ほども申し上げましたように、おおむね二年の間に御意見をいただきたいということをお願いしているわけでございますので、ちょうど二年がことしの六月に参ります。私どもといたしましては六月ごろにこの研究会の御意見の集約が行われるということを期待しているわけでございます。
  7. 大原亨

    大原(亨)委員 次に、厚生省関係社会保険審議会厚年部会でやっておると思うのですが、これは現在の段階はどういう状況で、いつ答申を出す、臨調答申との関係についてはどういうふうに考えておるか。
  8. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 従来から厚生年金保険部会におきましては財政計算期における大改正のための予備作業をするわけでございますが、現在厚生年金部会懇談会で行っております検討もそれでございます。昨年の十一月から懇談会検討を開始いたしまして、現在月二回のペースで検討をしております。すでに具体的な個別の事項について検討作業が進められております。  従来のありようから申し上げますと、この懇談会におきましていろいろ問題になる事項を詰めた結果に基づきまして御意見をちょうだいをいたしまして、それによって次の改正原案をまとめるという作業段階になります。その改正原案につきまして改めて正式に諮問を申し上げるということになります。現在の懇談会作業といたしましては、その意味では個別の問題を順次検討するということでございまして、具体的にいつまでにその検討を終えるという時期のめどはまだ立てておりません。ただ、従来行われました何回かの改正の経緯から申し上げますと、通常はほぼ一年前後懇談会検討が行われております。懇談会としましては、その意味では臨調答申がいつ行われるかということは特に現在の段階では意識をしておられないようでございます。
  9. 大原亨

    大原(亨)委員 やっぱり同じように厚生省年金局中心となって、先ほど申し上げましたように昭和五十四年に、年金制度基本構想懇談会年金懇答申というのが出ていますね。あの答申をいまの状況で見てみますと、基礎年金とか基本年金とかという構想は、全面的に否定してはおりませんけれども、これは大部分否定、こういう立場でやっておるわけですね。それから臨調討議ペーパー等を見てみますと、これはやはり基礎年金段階的に導入するしかないだろう、こういう一定の方向議論をしておるし、また総理大臣も、私も一昨年の予算委員会総括質問以来しばしばやっておることですが、特に昨年等でも鈴木総理大臣やあるいは中曽根長官は、臨調報告に関連して、やはり私が指摘をいたしました点について大まかに同調の意を表明をいたしておるわけでございます。  というのは、国鉄の問題は、一番古い年金だし、非常に政策的な、政府政策がここへ入り込んでおるだけでなしに、たとえば三十五万人の合理化体制をやれば、保険料を払う者が減っていき、そしてもらう者がばっと多くなるのですから、年金制度としては成り立っていかない。これは国鉄だけではなしに、きょう自治省が来ておりますが、地方公務員だって十六に分かれておる年金を見てみますと、それぞれそういう問題を抱えておるわけです。それから公共企業体も皆時間的にそういうことであります。  ですから、低成長、高齢化社会の中で皆年金体制に入っておる中で年金はどうあるべきかという問題について、全体を考えないで個別的な問題の解決はできない。きょう国鉄出席をいたしておると思うのですが、できない。こういうことははっきりいたしておるわけであります。ですから、私は、年金行政一元化の問題と、それから基礎年金を導入してそして計画的に年金の長期安定を図るべし、こういうことを私どもの党も最近まとめましたけれども、その考え方を一貫して主張いたしておるわけです。  いままでの答申といま厚生省社会保険審議会厚年部会等でやっておる問題との間において、やっぱりかなり、時間的な差もありますが、それにいたしましても考え方の差があるわけであります。それに加えて臨調答申が出てくるわけですが、臨調鈴木内閣はこれを尊重する、政治生命をかけて行革をやる、こう言っておるわけですから、そういう関係はどういうふうに理解をして中心官庁である厚生省作業を進めておるのか、この点についてお答えいただきたい。
  10. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 ただいまの各制度共通する基本問題につきましても、厚生年金部会では一応一つ検討項目として掲げております。そういう意味で全体の制度の中で厚生年金がどういう機能を持つべきかという観点議論をしておられるわけでございます。  厚生年金部会を離れた立場で申し上げますと、先ほど基本懇のお話がございましたが、基本懇も五十二年の中間報告では必ずしもいわゆる基礎年金構想を否定しているわけではないと思います。五十四年の最終報告段階では、当面いたします五十五年改正が目前になっておりましたので、それとのつながりを恐らく考慮して当面とるべき措置ということで非常に限定された報告をされたのじゃないかというふうに私は理解をいたしております。私どもとしましては、次の大改正段階では公的年金全体の問題を踏まえた一つの物の考え方を前提にして改正案を組むということが必要であろうという判断をいたしております。
  11. 大原亨

    大原(亨)委員 それじゃもう一つついでに聞いておきますが、厚生大臣の私的な諮問機関である社会保障長期展望懇談会有沢さんが会長、そこでは年金とか医療とか社会保障全体をやっているのですが、作業状況、いつ答申を出すのか、他の審議会との関係、これを、これは官房だと思うのですけれども、適当な人が答えてください。
  12. 正木馨

    正木政府委員 社会保障長期展望懇談会でございますが、昨年の九月に審議を開始いたしまして、先生おっしゃいますように有沢巳先生が座長をされておりますが、現在までに六回ほど審議が進められております。この長期展望懇談会は、さきに五十年八月に意見書が出ておりますが、その後の諸情勢の変化というものを念頭に置きつつ、二十一世紀における社会保障あり方という観点から審議が進められております。  審議の大きな事項といたしましては、年金、それから保険医療社会福祉の各部門にわたっておりまして、これまでのところで各担当部局からのヒヤリングを終えまして懇談会において御論議を進められるということでございます。  年金関係につきましては、公的年金役割り、あるいは年金体系の問題、あるいは給付水準支給要件費用負担の問題、あるいは業務処理体制問題等々が検討事項とされております。  現在のところ提言の取りまとめ時期につきましては、大体ことしの六月中あるいは七月ぐらいをめど審議を進められている状況でございます。
  13. 大原亨

    大原(亨)委員 一斉にそれらの作業が六、七月ごろ、予算概算要求が終わるごろぐらいをめどにやっていると思うのです。そういう仕事をやっておるし、臨調臨調で非常に大きな構えでやっておるわけであります。  その中にはいろいろな議論すべき問題点もあるし、たとえば臨調基礎年金への三段階統合の中をちょっと見てみますと——臨調答申は、大体全体を見てみますとろくな答申はないわけですが、しかし年金とか医療問題ということになると少しは傾聴に値するようなところがあるわけであります。これは社会党の答申に対する評価の中にも出しておりますが、ただしちょっと一枚皮をめくってみますと、年金水準を下げるしかない、あるいは開始年齢をおくらせるしかない、保険料を上げるしかない、これはちょんでも何でもということはないが、だれでも考えつきそうな案で、大蔵省の官僚が考えつきそうな案です。大蔵省ベースで大体臨調のものは進んでいると思うんだ。ですから、一皮めくってみますと、全然知恵のないのが寄り集まってそろばんの収支をはじいたような議論が出ておるわけです。しかし、これは臨調答申であるということでばっと出てまいりますと、いままでこつこつとやっておったのを、これはどういうことになるんだ、その関係はどうなるんだということになるわけであります。  ここらで、国務大臣でもあり、厚生大臣として少しはなれてこられたと思うのですが、これらについて鈴木内閣年金改革の言うなれば手だてというか、これがどういう方向であるべきか、こういう点について厚生大臣の御答弁をいただきます。
  14. 森下元晴

    森下国務大臣 いま御指摘のように、臨調答申であるとか社会保障審議会であるとか、また何何懇談会であるとか研究会であるとか、いろいろな観点から実はこの問題に取り組んでおります。その中で私は、この臨調答申というものはかなりのウエートで尊重しなければいけない。これは内閣全般が取り組んでおる問題でございます。もちろんきょうの問題も含んでおりますし、遠いあすの問題まで含んでおるというわけでございます。  その臨調の中で特に社会保障関係に示されておりますのは、活力ある福祉社会をつくろう、これが大方針でございますが、その中で年金関係では、先ほどちょっと説明がありましたが、年金制度の長期的な安定対策、こういうことになるわけでございます。そういうことで、この年金の見直しについては大体五年ごとというふうになっておりまして、次は六十年ということになっておりますが、もろもろの差し迫った問題を考えました場合には、六十年を待たずにこれはかなり思い切った改革と申しますか見直しをしなければいけない一つの転機になっておる、こういうふうに実は認識をしております。  いまいろいろ大原委員からもお話がございましたが、この年金の一本化の問題、一本化するためにはどうしても段階的にやりながら基本年金、また基礎年金とも言われるようですが、こういう問題を同時に考えていかなくてはいけないというようなことを考えました場合に、なかなか大変な時期になっておるなというようなことで、私も年金について深い関心を持っておりますし、活力ある福祉社会をつくるためにも、また将来の民生安定のためにも、この年金の問題は大きな問題である、こういうふうに実は受けとめておるわけでございます。
  15. 大原亨

    大原(亨)委員 再計算期は五十五年再計算の順序からいいますと六十年ですね。いままでは一年、二年と繰り上げてやってきたわけですが、しかしその大きな改正をやろうと思えば前の国会に出さなければいけないので、その年の国会でばたばたやるわけにはいかない。そういうことになるとこれはかなり早くから準備をしなければいかぬ。  それからもう一つは、国鉄共済年金昭和六十年以降はパンク状況だというふうに言われておる。現行制度では支払いができないと言われておる。そうすると、六十年に変えたのでは全体の年金はいけないということになる、そのことを国鉄はどう考えているのですか。
  16. 長野倬士

    長野説明員 お答えいたします。  国鉄年金財政は、収支委員会答申で五十六年に再計算を行いまして五年間の計画で現在やっておるわけでございますが、五年間の計画がどうしても立てられないということで、五十九年までの財政については答申をいただきまして、それに基づきまして現在運営をやっておりますので、五十九年まではめどがついておるわけでございますが、六十年には共済組合としては私どもの試算では約一千億程度の赤字が出るということで、とても通常の財源率というような形ではやっていけないような状況に立ち至るというふうに見込まれております。  私どもとしましては、単独でこれを維持していくことはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えておりまして、船後報告書等も、国家公務員、公企体共済組合等との統合一元化をお願いしたらどうだという答申をいただいておりまして、そういった方向で各方面にお願いをしておるわけでございます。大蔵省研究会等の結論に従って抜本的解決策をお示しいただきたい、こう思っておるわけでございます。
  17. 大原亨

    大原(亨)委員 たとえば行革で今度の七月に、国鉄については民営・分割論が臨調議論されているでしょう。民営・分割論やっているでしょう、臨調
  18. 谷川憲三

    谷川説明員 国鉄の問題につきましては、第四部会経営形態の見直しも含めて検討いたしております。
  19. 大原亨

    大原(亨)委員 その議論の中で、たとえばこういう点はどういうふうな議論をしているんだろうかと私は思うのだ。不思議でならぬわけだけれども、つまり国鉄年金は六十年は赤字になるわけですよ。それで国鉄だけをどうこうする、国庫負担を導入するというわけには皆年金のもとではいかぬわけでしょう。そうすると、六十年にそういう状況になるんであったら、来年くらいからちゃんと制度方向をつけなければできないわけですよ。こういう年金は、特に日本は積立方式等をとっておってそれが崩れておるわけです。インフレで崩れる。これは当然崩れるような仕組みになっておるわけだから崩れるわけですが、土壇場で騒ぐからますますできないということになる。長期の展望がないからますますできない。だれもそんな赤字になるものを引き受ける者は、労使ともに年金保険料を負担する者はいないわけですよ。ですから、そういう土壇場へ来てやったんではどの年金制度も全部パンク状況になって全体が無政府状況になる。そうすればこれから低成長の高齢化社会を乗り切っていくことはできない。  たとえば、国鉄を民間に移行するならば当然厚生年金でしょう。これから年金の掛金を掛ける者は厚生年金へ掛けることになる。そうすると、いままでの数十万人の年金受給者とこれからふえてくる人といままで国鉄共済年金を掛けた者はどういう形態でこれをやっていくのか。そうするといまでも四、五千億円一年間の持ち出しがあるわけですから、当局負担分があるわけですから、それを国がちゃんと負担をしていくのか、これは国鉄の一兆円赤字の問題とはどういう関係になるのかという問題等があるのですが、そういう問題はどういう議論をしているのですか。
  20. 谷川憲三

    谷川説明員 私は四部会議論をすべて聞いておりませんので、必ずしも正確には申し上げられませんが、国鉄改革の問題の中で年金問題というのは避けて通れない非常に重要な問題であるということでございます。経営形態の変更、見直しについても検討しておりますが、どういう形にするかということについてはまだ途中の段階で、必ずしも方向づけはできておりませんので、その際年金をどうするかということについても、現段階では具体的な方向づけというものはなされておらないわけでございます。
  21. 大原亨

    大原(亨)委員 大蔵省の共済課長答弁しておりましたが、大蔵省共済年金研究会は、私はまさにそのことを含めてやっているのだと思うのですね。それから厚生省の長期懇もそういうことを含めてやっていると思うのです。ですからこの問題は、こういう年金に対する取り組み方をどう改革するかということを改革することが、そういう問題を出すことが臨調の仕事になるのではないかと思うのだが、いかがですか。あなた方臨調だって、わけのわからぬつまらぬ問題についてばんと出すのですか。そんな権威のないことをやるのですか。私は、いま途中だから将来のために指摘をするわけだが、臨調はわからぬなりにがたがたと結論を出すのですか。そういうものの案もない、こういうときに出すのですか。そういうでたらめなことをやっているのですか。それでは臨調の権威というものはないでしょう。ヒヤリングだけやっていると思うのですよ。ヒヤリングをやっていろいろな段階を消化しようと思っているでしょう。それはあなたに言ったってしようがないし、土光会長にしろ大物が集まったからといって、大きな声をしたからといって、それがいいとは限らぬわけだから、その意味においては、一体どうするのだということは、国務大臣である厚生大臣もちゃんと考えておく必要があるのではないか。  大体年金行政を少なくとも早く一元化して、そして日本の年金を全体としてどうするかということをやって作業を詰めなければいけないと私は思うのです。臨調はそういう点について問題をしぼって出すべきではないか。私どもは、総理府に年金庁を設けてやるとか、あるいは厚生省の方が年金をたくさんやっておるから、健康保険と同じように、保険制度とは違うけれども年金庁的なものをつくるかというふうな考え方等があるわけであります。それは私はどっちにこだわるというわけではないのですが、そういう年金行政をきちっとしなければ、いま質問を聞いておっても、年金全体をいま責任を持ってやっているのはだれもおらぬわけだ。たくさんの審議会でいろいろ費用を使いながら精力を分散してやって、それでろくな結論も出ない。昭和五十二年にやった年金懇報告も時代から見るとちょっと影が薄れた、こういう状況であります。ですからそれを総合的にやって、一元的に行政や研究の機能をやるようにすることが、いまの日本においては、何でもかんでも一本がいいことはないが、年金については避けて通れないのではないか。  臨調答申の中で、最近年金審議機関をもう少し大きなもの一本でやったらどうかという案を新聞に一部報道しておりましたが、これは結論ではないと思いますが、そういう議論はしているのですか。
  22. 谷川憲三

    谷川説明員 検討議論の中ではそういう御意見を示される方もおられると聞いております。
  23. 大原亨

    大原(亨)委員 であるならば、いままで中間の討議ペーパーが漏れたように、だれか発表したんだろうと思う、一部出しておいて、意見を聞きながらやっていくのだと思うのだが、そういうふうに年金についてはかなり具体的な問題について答申をするというふうに言われておるわけですね。思い切った大局から見ての答申で正しい方向であればいいのですが、私が申し上げましたように財政的な見地からだけ見たのでは、これは結果として財政的な効率においてもいいものが出るとは限らぬわけであります。  ですから、そういう問題については十分議論をするように臨調においても考えるし、大蔵省も考えるし、また特に厚生年金国民年金の主管大臣である厚生大臣も十分配慮して、これからどういう答申が出るかということについて介入するわけにはいきませんが、どんどんいい意見をやりながら、全体として無政府状況が続かないような措置をとるべきであると思うが、厚生大臣、いかがですか。
  24. 森下元晴

    森下国務大臣 低成長、高齢化社会を迎えまして、年金問題は非常に重要な問題でございます。大きくは八つ、三グループに分かれておりますが、この一元化の問題を含めまして非常に重要な問題として取り組みたい。またこの改定期も迫っておりますし、そういう意味でも積極的に各種審議会等の結論について見守っていきたい、そのような覚悟でおるわけでございまして、年金問題は厚生行政の中でも非常に重要な部門であるということを承知しております。
  25. 大原亨

    大原(亨)委員 もう時間もないから各論へ行きますが、今回出しておる改正案の中で、たとえば各種審議会制度審とか社会保険審議会等が答申しているのですが、スライドの時期を、共済でしたら人事院勧告、それから国民年金厚生年金は物価スライドですが、その実施時期を毎年毎年繰り上げる、こういう措置をとってきたわけです。そして五%以下の物価上昇の場合であっても特例措置としてスライドをとってきたわけです。特例措置として繰り返した。そういう繰り返しておるのは制度へきちっとはめておいて、毎年毎年そういうふうにしなくていいようにして、それで最大限努力する点は、支払いの技術の問題はありますが、年度の初めに近寄せることですから、そういうことで法律をきちっとつくって、毎年そのことについては繰り上げと、それから五%未満の物価上昇の際も特例措置ではなしに、物価が上昇すればそれにつれて上がる、こういうことは当然のことですから、制度としてきちっとその点は決めておいて、そしてこれからの全体の改革を示すべきではないのか。ことしは財政の都合で一カ月おくらせる、そういう便宜的なことをやるべきではないのではないかと思いますが、いかがですか。
  26. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 スライドの問題につきましてはいま先生が御指摘されたとおりでございます。次の大改正一つの大きな問題となっております。時期の問題以外にも、基準の問題あるいは指標の問題、そういうものも含めまして、できれば新しいルールを確立したい、こういうふうに考えております。
  27. 大原亨

    大原(亨)委員 私的な年金と公的な年金を比較して、公的な年金は、とにかく年金の目減り、物価上昇に伴う実質価値の保障、こういうものが一番大きな安定した制度であります。そういう制度がなければインフレを政治の中で頭に置いてやるということもさぼっていきますから、これは一番大きな問題です。二つともそれに関係しておる問題で、年金の安定化を図る上においては非常に重要な問題であります。差についてここに余り出しておりませんけれども、実施の時期を共済の方は四月、厚生年金は六月で国民年金は七月でした。それを一カ月ずつおくらせたわけであります。これもコンピューターもある時代ですから四月からやる、こういうふうにして制度はぴしっとした方がよろしい。そうしないと制度の安定というものはないと思います。  これは厚生大臣、いかがですか。
  28. 森下元晴

    森下国務大臣 目減りをするということは、長期的な年金のような問題については一番心配される問題で、給付者はもちろん、いわゆる掛ける掛金に関係する方々の心配の最たるものである、このように思っております。  そういうことで、このスライドの問題は特例的に五%以下でもこれを認めていただいたわけでございまして、この点は四・五%でスライドさせていただく、これを恒久化せよ、もう五%以下とか何%と言わずにやるというわけでございますが、この点につきましては、いまここで、そういたしますということはちょっと発言できかねます。しかし、このお気持ちの点は、これは大原議員だけではなしに、やはり目減りをするということが一番心配の種であるということの意義はよくわかっております。当分そういうことで、この前も五%以下でもスライドさせていただいたし、今年もそうさせていただいたわけであります。  ただ、六月が七月と、七月が八月に一カ月分だけずれたということにつきましては、これはほかの恩給等の横並びもございます。非常に財政的に逼迫しておりまして、これはひとつごしんぼう願いたいということでそうなったわけでございます。せっかくいままでだんだんいい線まで持ってきたのが、一歩後退という感を与えたことは否定はいたしませんけれども、非常に厳しい財政である。こういう中でごしんぼう願っておるわけでございまして、この点、ひとつ御了解をよろしくお願いしたいと思っております。
  29. 大原亨

    大原(亨)委員 そういうことが了解できない、こう言うんだ。というのは、前年度の物価の上昇や賃金の上昇分でスライドするんだから、本来から言うならば、もう一年前へさかのぼれということを年金の生活者は言っておるわけだけれども、そこまではいかなくても、四月からはぴしゃっと入っていくというのがやはり制度として最低のルールではないか。でないと、財政的な理由だけでこれを削っていくというふうなことになると、スライド制自体が骨抜きになる可能性はないか、こういう本質的な問題として、私はこの問題を強く主張しておきます。  それから、この財源の問題に関係いたしまして、大蔵省、理財局来ていますか。——来ていますね。それで、国民年金厚生年金の積立金の運用利子は現在何%であるか、これをお答えください。
  30. 安原正

    ○安原説明員 資金運用部の預託利率は現在七・三%になっております。
  31. 大原亨

    大原(亨)委員 いままでの経過を私も調べてみましたが、現在は七・三%ですが、厚生年金とか国民年金の金というのは、銀行や郵便局がやるように、募集に伴う手数、費用は要らないわけですよ。コストはゼロなのです。コストはゼロであるから、七・三%というのは、高いことはなくて、かえって低いのではないか。というのは、念のために聞いてみたいのですが、厚生年金基金の運用の平均利回りは幾らですか。これは基金をつくって、報酬比例部分と企業年金部分を一緒にいたしまして、社会で蓄積をしてこれを運用するということになっておるはずでありますが、これは平均的にどの程度の利子でありますか。
  32. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 五十四年度におきまして七分四厘四毛でございます。
  33. 大原亨

    大原(亨)委員 つまり安定運用あるいは高利回りの運用ということですが、これは〇・一違いましても、莫大な金ですからうんと違うわけです。ですから、時間がないから議論はできませんが、最近も特殊法人に対する財政投融資、資金運用部の資金の運用の仕方も考えなければいけない、根本的に見直さなければいかぬ、こういうのがある。共済年金の方は原則で自主運用を積立金でやっておるわけです、一定の枠をはめておりますが。  そうすると、コストのかかっていない、問題は資金運用部あるいは住宅資金その他で、貸し出しの利子との関係はありますが、それは政策問題ですから、これは運用利回りの七・三というのはかなりの努力はしていることは認めるが、さらに念のために聞いておくのですが、たとえば、これは長期の金ですから、長期のプライムレートはいまどのぐらいになっているのですか。理財局がおればわかるはずです。理財局は銀行関係をやっておるはずですからわかるはずですが、長期のプライムレートは大体、正確でなくてもいいから、記憶した程度で答弁してください。
  34. 安原正

    ○安原説明員 現在、長期プライムは、三月末から八・四%となっております。
  35. 大原亨

    大原(亨)委員 そうすると、年金の金というのは二十年、三十年平均、三十年平均以上保険料を掛けてもらうわけですから、積立方式としましても、本人には、積み立てたと思っても全然ないわけだ、この年金の方は。そういう意味においては、言うなれば羊頭狗肉の状況になっておる、国民年金なんかは三兆円もないわけですから。そうすると、本体年金保険料というものはどこへ行ったかわからぬ形であります。  そこで問題は、やはり財投について根本的に見直して、これから基礎年金の問題と一緒に、企業年金的な、職域年金的なものを雇用との関係等もあって考えざるを得ない段階にあるわけですから、このような長期安定資金については、利回りについては、たとえば八・四%ということになると、一%違えば、これは莫大な収入に影響するということになるわけだ。ですから資金は、日本においても漸次自由化していきまして、財投といえども、特殊法人とのそういう癒着関係というものはもう断ち切っていく、そういうことが特殊法人の活力のある経営体を維持するということにもなるのじゃないか。そういう側面がある。これは全部がいいとは言わぬですよ。だから、これは根本的に考え直すべきであると、私は問題を指摘をしておきます。これは大蔵大臣もおられませんし、経済企画庁長官もおられませんから、そういう政策全体についての御答弁はむずかしいと思うから、問題を指摘をしておきます。  あと時間はもう少しです。そこでもう一つは、たくさんあり過ぎるのですが、児童扶養手当については、またもとへ返りますが、児童扶養手当は法律改正が出ておるわけですが、これは生き別れあるいは未婚の母、母子家庭であります。これは最近は何人が児童扶養手当の受給者になっておるか、何件ほどあるか。  そして、この問題について私もしばしば取り上げて議論したことがあるのですが、つまり十八歳までは児童扶養手当を支給するわけですが、問題は、十八歳で高等学校を卒業できない人がおるわけであります。生年月日によって、あるわけでありますが、その分については無利子の世帯更生資金を運用しておるはずであります。この世帯更生資金の運用状況、金額等についてお答えをいただきたいと思います。二つ。
  36. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 児童扶養手当の支給世帯でございますけれども、近年非常にふえておりまして、五十五年度末で四十七万世帯でございます。それから五十六年度末で四十九万八千世帯でございます。  それから二番目の、修学資金の問題でございますが、母子福祉資金の中に、十八歳に達しましたことにより児童扶養手当が受けられなくなるという世代のことを考慮いたしまして、昭和五十五年度から新たに特例修学資金ということで児童扶養手当相当額を上乗せいたしまして、従来の修学資金に加えて貸し付けをする制度を設けたわけでございます。現在私ども、五十五年度の実績しか集計をいたしておりませんが、五十五年度の実績で二百七十九件、金額にいたしまして約四千八百万円の特例修学資金の額でございます。
  37. 大原亨

    大原(亨)委員 これは比較的利用者が少ないわけですか。少ないのはどういう理由ですか。
  38. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 昭和五十五年の五月分から実施をいたしたわけでございますが、五十五年度は実施当初ということでございまして、必ずしも実績が十分でございません。この制度の周知徹底につきまして、私ども今後とも努力をしてまいりたいと思っております。
  39. 大原亨

    大原(亨)委員 母子家庭の中で、生き別れの家庭と未婚の母の数の比率はわかりますか、これを答弁してください。
  40. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 児童扶養手当の支給世帯で見まして、昭和五十六年三月現在でございますけれども、全体を一〇〇といたしまして、そのうちで離婚の世帯が六四%でございます。それから、いわゆる未婚の母子世帯が七・七%でございます。
  41. 大原亨

    大原(亨)委員 父子家庭はことしからやっておるのですか、来年からか。父子家庭はどのくらいですか。
  42. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 父子家庭につきましては、大体全国に十一万ないし十二万世帯と推計をいたしておりますが、本年から新たに父子家庭に対するいわゆる介護人の派遣事業をいたしたい、こういうことでございます。
  43. 大原亨

    大原(亨)委員 父子家庭に対して児童扶養手当は。
  44. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 父子家庭につきましては、私どもが調査をいたしております関係では、経済的には一般の世帯とさほど異なりませんので、現在のところ児童扶養手当の支給対象にはなっておりません。
  45. 大原亨

    大原(亨)委員 しかし、これはおかしいのじゃないかな。ここに皆さんおられるが、男女平等ということから言えばどうかしておるのじゃないか。大体父子家庭の場合は女房の方が蒸発するのでしょう。母子家庭の場合はおやじの方が蒸発したり離婚するわけだ。子供を抱えるのはお母さんの方が多いということでしょう。そうすると、同じような家庭状況になるのじゃないかな。(「経済力が違う」と呼ぶ者あり)これはもう時間がないから。  ただ、一言言っておきますが、生き別れとか未婚の母の場合の母子家庭に対して児童扶養手当を出す、これは数十万になるからふえるわけです。予測から言いますと、二十代の離婚がふえておるわけですからますますふえます。これは西欧その他全体の共通現象であります。しかし、そういうふうに勝手に別れておるのに対して手当を出すのはけしからぬと言うばかなやつがおるのですよ。臨調なんかで議論しているのがおるそうだけれども、そういうことは間違いである。それは間違いであるということについては時間がないから議論いたしませんが、臨調はそのことについてよく討議をしないままでぴしゃっと出すようなことはいけない。  それから、その次は児童手当の問題でありますが、これは日本は第三子です、十五歳以下、第三子。非常にいびつなままで、いつも私が指摘しているとおりであります。この児童に対する所得保障というものは、出生率が非常に低下しておるわけですから、やはり社会的に保育をするということが求められておるわけであります。そのことは、産めよふやせよという方針をとらなくても、育児をしていくという条件を整備することは、言うなれば民族の活力を維持する上において非常に重要な問題であります。  ですから、臨調も、年金の所得保障の中に障害者の所得保障と一緒に児童手当の問題も——これは世界じゅうで日本は一番悪いわけです。第三子という言葉はないわけですから、やっているところはもう第二子か第一子です。ほとんどは第一子です、六十四カ国ですから。日本は非常に悪い。これも企業が七割を負担するから企業の負担だというふうに言っているのですが、そうではなしに、企業が賃金その他に分配する根っこで外形的に賃金を基準して負担しているのですから、これは経営者の負担ではない。だからといって、所得制限をかけるのだという議論がどんどん進んでおるわけですが、これも間違いである。ですから、これはやはり国民的な問題として事業主が負担しておるのである、分配の前に根っこで負担しておるのである、そういう思想を徹底させていかなければならぬと思うし、五千円という金額もここ十年近くも固定いたしておるわけであります。高いほどいいというわけではないが、物価もある程度上昇しているわけですから、制度を積極的に活用しようと思えば、それらの問題を総合的に考えて、児童手当の制度については、財源の問題は扶養控除の問題等を含めて審議会答申しているわけですから、その答申のようにやれば第一子から五千円出せるわけです。  ですから、この問題については討議を避けて通らないで、高齢化社会における出生率の低下の問題等を踏まえて、児童手当の問題については政府は確固たる方針で自信を持って対処すべきであると私は思うが、厚生大臣はいかがですか。
  46. 森下元晴

    森下国務大臣 これは人口問題として非常に大切な問題でございまして、高齢化社会、それと生産年齢人口がだんだん少なくなっていく、そういうことで私は、たくさんりっぱな子供を産んでもらって、それが将来生産年齢人口として活力を与えてもらいたいという考え方は持っております。したがって、いま大原議員が御意見としてお話をされましたことには同感でございます。いろいろ財政的にも厳しいときでございますので、いま直ちにどうこうと言うことは私からは避けますけれども、いわゆる前向きの姿勢で勉強していきたい、このように思っております。
  47. 大原亨

    大原(亨)委員 それでは、現在無年金の人は何人おりますか。
  48. 小林功典

    小林(功)政府委員 いわゆる無年金者の数を正確につかみますのはなかなかむずかしいわけでございますが、五十三年から五十五年にかけまして例の特例納付をやったわけであります。その際に使いました数字がございますが、それによりますと、当時は八十万人でございました。その際に、八十万人のうちの約半分に当たります四十万人を特例加入させましたので、残りの四十万人前後がいわゆる無年金ということであろうと思います。
  49. 大原亨

    大原(亨)委員 その後年々無年金になる人がふえていっておるはずですよ。そんなことじゃないと思うのです。特にいけないのは、大都会で行政サービスが徹底していないところほどそういう無権利状況の人が多いわけです。ですから、これはかなり数字の変動があるはずであります。これはやはり基本年金等を導入しないと解決できない一つの問題だと思います。基本年金を導入する一つの理由にもなっておるわけであります。  もう一つ、最後に、一分間ありますから質問いたしますが、五人未満の事業所で働いておる者で、これを制度の中へ入れますと、当然政府管掌健康保険に入る人が五百万人程度はあるはずであります。これを国民年金に入れておくというのはおかしいわけです。そうすると、五千二百二十円の国民年金保険料でやるということになります。一本化しますと、妻の任意加入の問題を含めまして、物価上昇に伴う年金保険料が増大するということから、非常に大きな問題になると思います。  この五人未満の問題についても年金改革のときには十分考えて、そして国民年金の中で自営業者、農業、商業という生産手段を若干持っている人を中心とする年金とは違うんだという点を頭に置いて、把握率等は厚生省等はいいわけですから、この問題については十分配慮して年金改革作業を進めてもらいたい、このことを要望いたしておきますが、局長からでも御答弁いただきたいと思います。
  50. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、五人未満の問題は非常に古くしてなおかつ新しい問題でございますが、今度の改正の際に何かいろいろ知恵をしぼって幾らかでも事態が解決できるような工夫をしてみたいというふうに考えております。
  51. 大原亨

    大原(亨)委員 終わります。
  52. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 次に、米沢隆君。
  53. 米沢隆

    米沢委員 私は、国年法等の一部を改正する法律案に関連いたしまして、本日は国民年金制度そのものにしぼりまして質問をさしていただきたいと思います。  後ほど個々の問題点については指摘をしながら御質問をいたしますけれども、まず最初に大臣にお伺いいたしたいことは、いまいろいろと話が出ておりましたように、年金制度そのものは、あらゆる年金制度がそれぞれ問題点を持っておりまして、きわめて厳しい状況にあるわけであります。特に国民年金制度そのものには集約的に問題点が集まっておるという気がするわけでありまして、国年の制度に内在する問題点につき大臣はどういう認識を持っておられて、今後その抜本的な改革方向についてどう考えておるのか、まず所信を承っておきたいと思います。
  54. 森下元晴

    森下国務大臣 老後の所得保障を受け持ちます年金制度各種ございますが、その中でも、いま御指摘のように国民年金制度は、被保険者の数からいいましても受給者の数からいいましても公的年金中心をなすものでございます。しかしながら、低成長、高齢化時代に入りましていろいろと疑点が出てまいりましたり、また将来に対する不安な要素が出つつあることは事実でございます。したがって、臨調答申を初めもろもろの懇談会とか研究会等からも、また各党からも、将来の年金あり方、特に国民年金あり方についての御示唆等もございます。  従来からいけば五年ごとに年金の見直し、手直しをやりたいということでやってまいりましたが、そういうように非常に急迫しておると申しますか、時を急いでおるような感じがいたしておりますので、六十年を待たず次期再計算に向かって、被用者年金との関連も図りつつ基本的な検討を進めさせていただきたい、このように思っております。
  55. 米沢隆

    米沢委員 御承知のとおり、先般、国民年金研究会が国民年金制度改革に関する報告という貴重なレポートを発表されました。その中には、国民年金制度が直面をするさまざまな問題につきまして今後検討すべき改革方向指摘をされておりますが、私は、このレポートに示唆をいただきながら、この際当局の所信をただしておきたいと思うわけであります。  このレポートには、拠出制国民年金制度発足後これまでおおむね順調に発展してきたが、最近になって幾つかの注目すべき変化が起こっておるとして、一、被保険者数の減少、二、国民年金財政の逼迫化、三、免除料率が高まってきたこと、四、付加年金が据え置かれたままになっておること、五、強制適用でありながら未加入者が多いということ、六、老齢年金の繰り上げ請求の割合が高いということ、七、無拠出制の老齢福祉年金水準が高くなったという、大きく分けましてこの七つの変化を挙げております。とりわけ制度の成熟化と人口の高齢化の進行に伴いまして財政状態が厳しくなってきたことを指摘いたしておるわけであります。  そこで、まず第一に被保険者数の減少についてでありますけれども、その原因を、就業構造の変化、とりわけ女性の厚生年金適用分野への進出によって強制適用者が減少をしてきたことと、任意加入者の伸び悩みにあると分析しております。将来にわたる被保険者数の減少は、制度の成熟度、制度の健全性、安定性にかかわる重大な問題であると思うのでありますが、厚生省は今後被保険者はどのようなかっこうで推移していくと予測をしておるのか、同時に、対受給者比率がどう変化していくことが予想されておるのか、まず基礎的な問題について御説明いただきたいと思います。
  56. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 五十五年改正の際将来の推計をしているわけでございますが、その基礎として見込んでおりますのが、被保険者数は八十五年で二千六百八十九万人ということを見込んでおりまして、ほぼ横ばいという見方でございます。それに対しまして老齢年金受給者の数につきましては八十五年で八百九十六万人ということでございまして、現在よりも一・七倍程度に増加する。したがいまして、加入者に対しまする老齢年金受給者の比率で申し上げますと、現在はほぼ五・四人に一人ということでございますが、八十五年には三人に一人という割合になるという見込みでございます。
  57. 米沢隆

    米沢委員 第二の問題は、財政状態がすでに息切れ状態にあるという点であります。  このレポートの表現によりますと、登山にたとえると三合目あたりの段階ですでに息切れを始めたことになる、こう言っております。昭和五十五年度末の国年の積立金は二兆六千億円、それに対して五十六年度の給付費予算は一兆九千億円でありますから、その比率はわずか一・四倍にすぎないわけで、当初積立方式を予定した拠出制国年財政は、いまやもう積立方式からほぼ賦課方式に近づいておるという指摘をしておりまして、まさに当を得ておる指摘だと思います。  そこで、当初の国年を設計されたときの予測と比べて国年財政運営でこういうそごを来している原因は一体どういうところにあったのか、まず伺いたいと思います。
  58. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 一概にそごというようには言い切れないと思うのでございます。といいますのは、すべての年金制度がそうでございますけれども、成熟度が高くなるに従いまして財政はどうしても賦課式に近づくわけでございます。これは既裁定の年金につきまして実質価値の維持を行います、つまり通常スライドと言われておりますが、これを行うわけでございますが、スライド財源は現役時代にはとても負担するわけにはまいりませんで、どうしても後代負担になります。そういう意味でスライドに要する追加費用が年々ふえてまいりますから、成熟化してまいりますとどうしても賦課式に近づくというのが本来の姿であろうと思います。そういう意味におきまして成熟度を比較してみますと、厚生年金ではまだ一〇%になっておりませんが、国民年金はすでに二〇%に近づいているわけでございます。  制度といたしましては後から発足したわけでございますが、制度の仕組みといたしまして過去期間をある程度配慮している、つまり本来の資格期間が二十五年で老齢年金がつくということでございますが、制度発足当時の高齢者につきましては資格期間を短縮する、つまり年齢に応じまして二十年ないし二十四年に資格期間を短縮いたしまして老齢年金が発生するようにしております。さらにこの資格期間を短縮いたしました経過的な老齢年金につきましては、年金額の面でもある程度加算をいたしております。そういうようなことを制度発足後改正のたびにいろいろ配慮をしてきましたために、当初の見込みよりは財政はどうしてもきつくなっているという事情があろうかと思います。  それからもう一つは、先ほど先生からもお話があったのですが、婦人のサラリーマンがふえたために当初ほど加入者がふえなくなったということでございますが、そのほかにもう少し大きな問題といたしまして、国民年金をつくりますとき考えられました社会的な背景は三十年代の前半でございます。その当時は就業者の中でサラリーマンの割合は半分にもなってなかったわけです。四三%くらいであったかと思います。そういう状況下で発足をいたしたわけでございますが、御案内のとおり三十年代の後半から四十年代の初頭にかけまして非常に急激な産業構造の変化があったわけでございます。それに伴いまして、就業構造の上でもサラリーマンが飛躍的にふえてきております。現在は就業者の中で七割強がサラリーマンでございます。そういう意味国民年金が当初予測いたしました加入者ほどは伸びなかった、ということは保険料負担者の数が予定よりは伸びないわけでございます。どうしても一人一人の負担が重くなるという形になりますが、つまり財政状況といたしましては、当初の予測よりは厳しい環境下に置かれた、こういうことが言われるのではないかということでございます。
  59. 米沢隆

    米沢委員 そこで、さきの昭和五十五年の大改正の時点におきましては、昭和六十年度までは国年の保険料段階的に引き上げていこう、こういうことを決めているわけでありますが、それを実施していったとして、昭和六十年時点ではどのような財政状況になっておるか、これが一つ。  もう一つは、国民年金段階的な保険料を実施していったとして、特に大改正のとき三百五十円ずつ毎年上げていくということになりましたが、完全に国年が賦課方式になる時点があるのかどうか。これは財政収支のバランスがとれるように保険料を計算されたのでありましょうから、賦課方式に完全に移行することはあり得ないかもしれませんけれども、後は保険料をどれくらい負担できるかどうかにかかっていろいろな問題が指摘されると思うのでありますが、その点を聞かしてもらいたい。
  60. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 六十年段階におきます財政状況というお尋ねでございますが、一応現行制度のままで推移をするという仮定で試算をいたしてみますと、六十年度におきまして収支の残は五千億円、つまり単年度の収支残五千億円でございます。これが支出の一六%になります。それから六十年度末におきます積立金は約四兆四千億円ということで給付費の一・二年分ということになろうかと思います。  そこで、いつから賦課式になるかというお尋ねでございますけれども、仮に賦課式になりましても、公的な制度でございますから何がしかの給付のための準備金を持っている必要があろうかと思います。現在、制度が成熟しております西欧諸国でももうすべて賦課式でございますが、それなりに準備金もある程度は持っているわけでございます。そういう形で国民年金を考えますと、すでに非常に賦課式に近い状態にあるという見方もできようかと思います。  保険料負担の限界というような問題も非常に大事な問題でございます。これは国民年金だけではありませんで、厚生年金でも同じ問題でございますが、負担の問題を考えます場合には、年金だけではございませんで、医療保険等も含めました、あるいは税等も含めました全体の負担の問題がまずあろうかと思います。それからまた、所得が上がりますと負担力もふえるわけでございます。さらにまた、年金に対する意識が高まりますればある程度負担にも応じようというような意識も出てくるわけでございます。  そういうような推移を見ながら考えていく必要があろうかと思いますが、トータルといたしましては、年金水準として相応のものを設定すればそれに応じた負担は何らかの形で必要なわけでございますから、そういう給付と負担とのバランスも考えながら負担の問題も考えていく必要があるということでございます。
  61. 米沢隆

    米沢委員 国保財政の脆弱性を考えましたときに、これはいま積立方式でありますから、結局皆さんが計算される平準保険料と拠出保険料の格差が大き過ぎるとこれは問題なわけですね。実際各制度ともそうでありますけれども、平準保険料と拠出保険料とはかなり乖離をしておる。  御承知のとおり国民年金昭和五十一年四月における平準保険料は月額四千九百六十円、その際徴収保険料はわずか千四百円でありましたから、必要な保険料に対してもらっておる保険料率はわずか二八・二%であったわけです。昭和五十五年四月における計算では平準保険料が月額七千九百二十五円に対しまして徴収保険料三千七百七十円、これは四七・五%です。そうして五十六年四月の八千百五十円に対しては四千五百円でありますから五五・二%ですね。三百五十円プラス物価スライドを加えまして、五十七年四月は保険料が五千二百二十円になったということでありますが、これに対するパーセントはまださだかに知ってはおりませんけれども、少なくとも五五・二%よりもちょっとは上がっていないとおかしいと私は思うのです。  こういうふうに、必要な保険料に対してもらっておる保険料率というものは、少しずつパーセントはふえてきつつありますけれども、このことは、たとえばこの五十六年時点で考えましても保険給付に必要な費用の四五%程度を逆に将来の被保険者の負担として繰り越しているということを意味するわけでありまして、この分について将来の保険料の引き上げかあるいは国庫負担の増加という形で、いずれにせよ全体としては将来の世代の負担になっていかざるを得ない、こういうことが言えるわけであります。  そういう意味では、今後この乖離した部分をどういうかっこうで埋めていくのかという問題が非常に大事な問題だと思います。だから、たびごとに、その当時、その時点における感覚でこのパーセントを決めていくのか、それとも計画的に、でき得る限りこの乖離をなくすような方向保険料を上げていかねば実際は問題がどうも明らかにならないという感じがするわけでありまして、その点について一体厚生省はどういう考えを持っておるのか、お聞かせいただきたい。
  62. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 いま御指摘のありました点は先生のおっしゃるとおりだと思います。先生のお話の中にもございましたように、平準保険料に対します割合は、若干ずつではありますが、ふえてきております。これは実は逆に言いますと、賦課式に近づきますとどうしても平準保険料と実際の保険料が近づくわけでございます。そういう意味で賦課式に近づいているという見方もできようかと思います。これは国民年金はその歩みが非常に速いわけでございますが、厚生年金でも同じ事情があると思います。特に制度発足当初の高齢者に対する特別措置等がございますから、その方たちにとりましては、言い方が余りよくないのですが、割りのいい給付が出ているわけでございます。そういう割りのいい給付を受けている方がだんだん減るようになりますと、当然に平準保険料保険料との格差も縮まってくる、そういう見方もできようかと思います。  おっしゃいましたように、現在乖離している分につきましては当然後代の負担になるわけでございますけれども、後代の負担につきましては、国民年金グループだけではありませんで、厚生年金共済組合、それぞれのグループでも同じ問題がございますから、一概に、単純に国庫負担に頼っていいということにはならないと思います。やはり社会保険方式の仕組みでございますので、主体は保険料の中で何とか解決を図っていく必要があるのじゃないか、かように考えております。
  63. 米沢隆

    米沢委員 第三の問題は、保険料の免除率が上がってきておるという問題であります。  五十五年度末の法定免除者は八十三万六千人、申請免除者は百四十九万三千人、合計二百三十三万人であるそうで、免除率は一一・八%になっております。簡単に言ったら十人に一人が保険料を免除されておる、こういう問題であるわけで、これは保険料の上昇と無関係ではないと思いますが、特に申請免除者が多くなっていることは、それが、免除期間の年金額単価が三分の一になるということはわかりながら申請をしてくるという意味で、そのことがわかっていても保険料引き上げについていけないという人がふえておるという意味で、あるいはまた先のことは言っておれぬという人が加入者の中に多いということで、別の観点からも問題があると私は思うのです。  そこで、免除されておる皆さんは、暮らし向きの面もありましょうし、何となく年金に不信を持っておって、三分の一に減るとか減らないとかいろいろ言われてもそんなのはわからぬよという感じで、年金不信というものも私は実際あると思うのですね。そういう点を厚生省として一体どういうふうな分析をされておるのかということと、今後こういう免除率が高くなっていくということは保険料の引き上げに大変大きな障害になりますが、その点をどういうふうに考えておられるのか、この二点を聞かせていただきたいと思うのです。
  64. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 せっかくの年金制度でございますから、免除期間が長くなることは本来余り好ましくないわけでございます。ただ、制度のたてまえといたしまして、負担力があるなしにかかわらずすべて適用をするということをやっておりますので、そういう仕組みの中ではやはり保険料の負担できない方には免除の道を開いて、資格期間としては生かす。資格期間だけではありませんで、三分の一の給付が出ますが、ともかくもその期間について無年金の状態を避けるという趣旨があるわけでございます。  おっしゃいましたように、私どもも免除の数の動向には非常に神経を働かせているわけでございまして、もう少しその実情を把握してみる必要があると思いますが、ただ、免除者につきましては保険料の追納という道がございますので、免除を受けた期間についてすべてがそのまま免除期間として推移するということでは必ずしもないようでございます。そういう意味で、実際に給付を裁定いたします場合に、その中に免除期間がどの程度あるかということも一方で検討してみる必要があろうかと思います。追納することによりまして本来の期間に直っている者も大分あるはずでございますから。ただ、残念ながらいままでの統計ではそういう面をつかんでおりませんので現在正確なことは申し上げられませんが、ある程度そういう事情があるということでございます。     〔委員長退席、深谷委員長代理着席〕  それから、免除率が高くなりますと財政的にきつくなるのじゃないかというお話でございますが、免除期間につきましては保険料財源の給付が出ない形になっておりますから、そういう意味では財政に影響する要素は少ないという見方をしてよろしいかと思います。  ただ、そういう観点ではなくて、もし保険料が上がれば免除者がふえるという意味で上げにくくなるのじゃないかという御指摘であるといたしますと、その点は制度の仕組みといたしまして、負担力のない者を抱えている限りにおいてはどうしてもついて回る運命にあるわけでございまして、ある程度はやむを得ない面もあるのじゃないかというふうに考えております。
  65. 米沢隆

    米沢委員 そこで、免除された者が後から支払う制度、いわゆる追納保険料というのですか、これはお聞きしますと、現行の規定では滞納保険料は二年間、また免除を受けた保険料は十年間さかのぼって納付することができる、こういうことになっておるそうであります。この場合の保険料は過去の納付すべき保険料の実額で、たとえば十年おくれても十年前の金を払いさえすればいい、これはやはり公平を欠くと思うのです。免除を受けた人は気の毒と言えば一言で片づくかもしれませんけれども、たとえば十年間免除された人が十年前の金を出しさえすればいいというのは、国年というのは保険制度でございますから、場合によっては最初から生活保護家庭で、二十五年間も生活保護をそのまま続けるという人もおるわけで、ほとんど金を出さずに最終的には年金を国庫負担でもらう、これは保険じゃないですね。  そういう意味で、厳しい言い方かもしれませんが、追納保険料等々は利子を取るというぐらいのことは当然検討されるべきだと思うのです。どうでしょうか。
  66. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 ただいま御指摘の点はまさにそういう要素があろうかと思います。制度発足当初は事態をやや静態的に見ていた節がありますので、現在のような状況になったことを見ますと、やはり現在の追納の仕組みというのは相当再検討すべき問題が内蔵されているというふうに私どもも考えております。
  67. 米沢隆

    米沢委員 第四に、付加年金の問題でございます。  御承知のとおり、この付加年金制度というのはもともと所得のある人たちにより高い年金をという考え方から出発したものでありますが、その後無職の者も対象とする法改正が行われ、いま被用者の妻によって利用されている実態もあるわけです。昭和五十五年末の加入者は四百九万人。内訳は、付加年金の強制適用者、いわゆる農業者年金加入者が百一万人、任意加入者が、その大部分は被用者の妻だと言われますが、三百八万人、トータルで四百九万人を数えます。そういう意味ではこの法改正はそれなりの理由があってなされたと思いますが、最初に目標にした所得のある人は少少高い年金をもらえるような制度をつくろうという趣旨から少しずつ変質して、そして昭和四十八年以来付加年金保険料は四百円に据え置かれておるという実態もありまして、この付加年金制度の国年に占める存在意義というものがかなり薄れてきておる、あるいは将来一体どうなっていくのだろうかという将来設計についてもいろいろな不満や不安が出ている。  そういう意味で、この際、付加年金制度というものについて、一体拡充する方向にあるのか、それとも現行のままでいっても仕方がないと思うのか、それともなくしてしまう方向なのか、そのあたりをはっきりしてもらうことが必要ではないかと思うのですが、いかがですか。
  68. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 この問題もいま先生から御指摘あったとおりでございます。四十四年改正で設けたわけでございますけれども、当初の志とは現状はずれておりまして、加入している大半がどうもいささか趣旨と違っているんじゃないかというのは御指摘のとおりでございます。制度をつくりましたときは所得比例の給付と年金ということに対する加入者グループからの要望に対応しようという志があったわけでございますが、どうも余りうまく動かないような結果になっておりまして、次の改正の際にはこの問題も基本から見直しをしてみたい、こういうふうに考えております。
  69. 米沢隆

    米沢委員 第五の問題は、国民年金法律上は強制適用ですね。実際にはいま加入してない者が多数残されておるという問題でございます。その数は昭和五十二年の厚生省の調査によれば約三百八十万人が無年金者ですね。五十三年末の被保険者数が二千七百八十万人、未加入者が三百八十万人ですから、これを足して三千百六十万人。ですから、本来入っておるべき人のうちで無年金者の割合を計算しますと、その割合は約一二%です。国民年金は強制加入と言いながら、一二%の人が国民年金に入っていない。これはやはりどう考えても矛盾だと思うのでございます。  確かに国年の制度が自分で届け出をしてお金を納めていくという制度をとっておることもありましょうし、意識の薄さというものも実際はあるかもしれませんけれども、これはいま放置しておったならば、いま若いときにはそれは文句も言わないし、自分で納めないんだから仕方がないと思っているかもしれませんが、そういう人々が年をとって六十五歳、七十歳になったときに、そのことは忘れて、私はやっぱり問題になってくると思うのですね。そして、また政治家を使って何とかしろなんという議論になりますと、これは冗談じゃないという状態が将来出てくる可能性がある。そういう意味では、いままで三回にわたりまして特例納付を実施してきたのだから、その網にもかからないんだから仕方がないということでうっちゃっておくにしては、将来に禍根を残す問題点を残すことになってくるのじゃないか、そういうふうに私は考えるわけでございます。  そういう意味で、もう一回特例納付を実施しろというのは、ちょっとやっても結果的にどうなるかということで私も定かではございませんけれども、できればもう一回ぐらいやってもらいたいということ。もしそれができないとするならば、やはり制度そのものを変えていく必要があると思うのです。  いまのところ強制適用者については二十五年の受給要件がありますね。これを逆に廃止して、加入年数に応じて老齢年金を支給するという制度は一体本当に検討できないものだろうかどうか。  あるいはまた資格期間が二十五年というから余りにも長いわけでして、僕らは厚生年金あたりで十五年の適用があるように、二十年ぐらいに短縮するような特別措置は実際できないものかどうか。  あるいは六十歳まで保険料を払うわけですが、その段階になってあと四、五年どうも足りないという連中には逆に継続加入の道を開いてあげるという、そんないろんな便宜を図って、無年金者をなくすということが私は大変重要な問題だと思うわけでございます。  そういう意味では、こういう制度をとるとすれば、現在加入を求めにくい三十五歳以上の未加入者の加入促進にも大きく役立ちますし、または海外居住から帰国する人、あるいはこの前難民条約が発効しまして新規に加入を認められました在日外国人の本人資格、本人の落ち度によらず無年金者になる、こういう皆さんが救われるということになるので、これは前向きに御検討いただきたいと思うのですが、いかがですか。
  70. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 ただいまの問題も先生のおっしゃるとおりだと思います。  ただ、ちょっと先生が引用されました調査の問題でございますが、私どもが五十二年の三月に行った調査でございますけれども、おっしゃいますように、強制加入対象者で未加入の者が三百八十万おったわけでございますが、その理由を見てみますと、加入手続のおくれというのが二百三十万人おったわけでございます。これは一時点の調査でございましたために、たまたまサラリーマンから退職したというような方が国民年金に入る手続をまだしてないという状態にあるというような方もいらっしゃったはずでございまして、そういう方たちが二百三十万人いらっしゃったのだと思います。そのほかあと残りが百五十万になりますが、加入の意思のない方が九十一万人でその他に六十二万人ということになっておるわけでございます。この、あとの二つの方々の問題だと思います。  そういう意味では約百五十万の方の問題でございますが、その後ももう三回目の特例納付が行われましたから、それによりましてある程度解消もされていると思いますが、先生からお話ありましたように、実際に老人になってから、ああ掛けておけばよかったというような方も出てくることは容易に想像されるわけであります。  そういう意味で、資格期間そのものを基本的に手をつけることが果たして社会保険方式の仕組みの中で当を得ておるかどうかというのは非常に基本的な問題が含まれていると思いますが、ただ後半の部分で挙げられましたような、在外生活の長かった方、あるいは難民の方、中国孤児の方なんかの問題はそれなりに解決をする必要のある問題でございますから、そういうような方々にむしろ重点を置きましてこの問題は検討させていただきたいと思います。
  71. 米沢隆

    米沢委員 六つ目の問題は、老齢年金の繰り上げ請求の割合が高くて、しかも年々その率が上昇しておるという問題であります。  いまは新規裁定における繰り上げ請求の割合は、昭和四十六年の時点で四七・三%から昭和五十五年の時点では六七・一%にまで増加をしておるわけでありまして、その上繰り上げ請求の六二%が六十歳支給である。六十五歳からもらう人はわずか三三%にすぎない、こういう調査資料があります。  これは支給開始年齢に本当に問題があるのか。あるいは雇用とか就労の面で問題があるのか、ちょっと定かでありませんけれども、これは一体どういうことなんでしょうか。
  72. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 繰り上げ請求の多い状況については、ちょっと私どもも正確な調査をしたことがございませんので、はっきりしたことは申し上げかねますが、ただ現在対象になっております受給者は十年ないし十五、六年加入された方でございまして、国民年金が発足しましたときすでに中高年の年齢にあった方でございます。そういう方たちでございますので、どちらかと言いますと少しでも早く現物を手にした方が間違いがないというような感覚がおありなんじゃないかという気がいたします。  ただ、これはあくまでも私の主観でございますから客観的な説明にはならないわけでございますけれども年金本来の機能といたしましてはやはり所得を得るための道がむずかしくなるような高齢の段階においてできるだけ本格的な年金が出る方が望ましいわけでございますから、そういう意味では本来の年金がもらえる年齢まで待っていただく方が、十年、二十年たちますと御本人にとってもよろしいわけでございますから、そういう意味ではこの請求についてのPRと申しますか、受給者に対するいろいろな指導と申しますか、そういう面をなお社会保険庁にも十分配慮をしてもらう必要があろうかと思います。  また、その実態につきましても何らかの形で客観的な状況がわかるように調査もしてみたい、かように考えます。
  73. 米沢隆

    米沢委員 たとえば六十歳から受給をされることになりますと、年金額は通常の額の五八%、約半分近くに減額されるわけですね。それは早く金が欲しいという気持ちはわかりますけれども、逆に繰り上げ支給の制度があるために、本来ニーズがそれほど強くない人まで早く金が欲しいということで減額年金の早期支給を受ける傾向があるのではなかろうか。当座は確かにいいかもしれませんけれども、先ほどの話じゃありませんが、老後の後半、そのときになって特にニーズも切実な時期に少ない年金しかもらえない、年金なんて何でこんなに安いのだという逆に文句を言われる、そういうことであってはやはり問題だと思うのですね。公的年金が本来意図した保障の効果が失われていくという、これはやはり問題だと思うのです。  そういう意味で、これもむずかしい話かもしれませんが、繰り上げ支給というものに対してもっと厳しい制限を置く、あるいは一定の経過期間が必要かもしれませんけれども、そういう方向でないと、先ほどの話じゃありませんが、老後の後半においてやはり問題になって、結果的には飯が食えない、生活保護だということで二重に公的な保障を受けざるを得ないという人をつくるということになっていくんじゃないか。それはやっぱり繰り上げ支給制度ができた意図もよくわかりますし、それなりの評価もできますが、同時にその制度が後半において逆に問題を残すようなことになったらやはり検討される必要があるのではないか、こう思うのでありますが、いかがですか。
  74. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 おっしゃるとおりの要素があろうかと思います。私ども検討の際に十分参考にさせていただきたいと思います。
  75. 米沢隆

    米沢委員 第七番目の問題は、今後無拠出制の老齢福祉年金水準をどう考えていくかという問題であります。  財政関係、経過年金とのバランスの問題等々もあって、老齢福祉年金はバランス論の上にいま水準がつくられておるわけでありますが、一体今後、老齢福祉年金水準はどういうものが一番適正な水準であろうというふうに設定をするのか、これは非常に大事な問題だと思うのでございます。それで当局の見解を聞かせてもらいたい。
  76. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 老齢福祉年金の絶対的な水準をどういうふうに考えるかというのは非常にむずかしい問題であろうかと思います。現在の仕組みといたしましては、実は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども国民年金が発足しました当時の中高年者に対しまして二十年から二十四年の資格期間で経過的な老齢年金を支給するようにしておりますが、その経過的な老齢年金の最低保障額として一つの金額が定まっているわけでございますが、それと同額のものを福祉年金として差し上げているわけでございます。そういう意味で、やはり拠出年金のレベルとのバランスにおいて決めざるを得ないのじゃないか、こういうふうに考えております。
  77. 米沢隆

    米沢委員 以上で、いま国年の現状に関する問題、そしてそれについての御見解を伺ったわけでありますが、まあ、これは本当にいろいろあるという率直な感じがいたします。そういう意味で、次の大改正、六十年を待たずに取り組もうという前向きの答弁が大臣からなされましたけれども、これはちょっと問題があり過ぎて、もういま五十七年でしょう、あと七年、八年、一年間ぐらいやって、今度はその結果でまた討議をしていくということを考えますと、六十年の大改正をちょっと前に持ってくるとすればますます時間がなくなるわけで、果たしてこんな問題に結論がつけられますか。  僕は昔からこういう議論を積み重ねてきていつも感じますのは、みんな何か審議会にお尋ねして答申を受けてからどうだという議論になって、厚生省自身として自信を持ってこうやろうではないかというのはいつも出てこないのですね。そのあたりが、次の大改正のときまでの時間を考えれば考えるほど、もっと厚生省自身が厚生省自身の試案なり物の考え方をぴしっと決めるということが必要だ。そしてそれについて審議会意見を聞く。いま逆立ちしておるのですよね。そのあたりをちょっとメスを入れてもらわないと次の大改正にはとうてい間に合わないと思うのですが、その厚生省の姿勢を変えてもらうことに関して大臣にちょっと見解を聞いておきたいと思うのです。
  78. 森下元晴

    森下国務大臣 そのとおりでございます。いろいろ諮問機関がたくさんございまして、その中に駆け込むというか逃げ込むという気持ちはないわけですが、結果的には日を延ばすだけにすぎないという、これは一般論でございますが、傾向が実はあったことは事実でございます。  しかし、この国民年金の問題につきましてはもう待ったなし、給付を受ける方はもちろんでございますが、掛けられる方々の不安を解消するためにも、やはり長期安定、心配ないという安心感の上に年金制度、すなわち、老後の所得保障、これが立たなくては行政としてはやっていけないということで、この保険制度あり方、目的、精神を考えました場合に、臨調でも示されておりますような長期的な安定、そういうことで六十年を待たずにできるだけ早く抜本改正厚生省自身が自主性を発揮いたしまして取り組んでいきたい、従来と違った意味局長以下取り組んでおりますし、今後より一層御趣旨のような方向で行きたい、このように思っております。
  79. 米沢隆

    米沢委員 さて、将来の国年の改革に当たりまして考えねばならぬ問題についていまからちょっと触れてみたいと思います。  言うまでもなく、国民年金の五十五年財政再計算結果を見ますと、国民年金の受給者は今後とも着実にふえ続けて、五十五年の時点の六百三万人が七十五年では千四百十五万人、九十年には千八百十九万人になることが予測をされております。また、これらの年金受給者を将来どれだけの被保険者が支えていくかが問題でありますが、さきの財政再計算では、老齢年金受給者数の被保険者数に対する割合は、昭和五十五年度には一八・四%でありますが、七十五年で二九・一%、ピークになる昭和九十年度では三四・八%までに増大すると見込まれております。これは、先ほど答弁がありましたが、言うならば百人の被保険者で約三十五人の受給者を支えることに相なるわけであります。  その上、この試算を用いております厚生省の人口問題研究所の昭和五十一年の将来人口推計の合計特殊出生率に比べまして、さきに出ました昭和五十六年の将来人口新推計による合計特殊出生率はまだ低い水準にあると言われておりますので、将来の老齢年金受給者数の被保険者数に対する割合はさらに厳しくなることが予測をされるわけであります。  いずれにいたしましても、今後国民年金制度の成熟化が進めば進むほど年金受給者はふえる、しかも老齢年金受給者の平均加入期間は伸びていくわけでありますから、これに伴って平均給付水準は自動的に上昇していくわけでありますから、今後の四十年間に年金受給者が三倍になるのに対して年金給付費総額は昭和五十五年価格で四倍になって、これに見合う保険料及び国庫負担が必要になってくる。こういうのが常識論でございます。  問題は、国民年金の被保険者がこのような保険料引き上げにどこまでついてこれるかというのが最大の問題だと思うのです。厚生年金と違いまして国民年金は定額保険料で、一律、全加入者から出してもらうという制度でありますから、上げますと、加入者のうちの比較的所得の少ない人はついてこれない。その結果また免除率が高くなっていくというもろ刃の剣的なものを持っておるわけであります。  そういう意味厚生省に聞かせてもらいたいのは、被保険者が一体どこまで保険料アップについてこれるのか、その限度について一体どう考えるか。厚生年金の場合には、前の大臣の話によりますと、大体一七、八%が限度だろうというような話をされておりました。この国民年金についての保険料のアップできる限度みたいなものは一体どういうふうに考えていらっしゃいますか。
  80. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 負担の限界という問題は非常にむずかしい要素があろうかと思います。先ほどもちょっとお答え申し上げましたけれども一つには、年金だけではありませんで、医療保険なり税の負担、それらも全部込みにした全体の負担に対する感じの問題があるわけでございます。それからもう一つは、所得水準が上がりますればそれなりに負担力はふえてくるわけでございます。それからもう一つ年金そのものに対する評価が高まるといいますか、意識が高まればそれだけ負担に積極的に取り組んでいただける、そういう要素もあろうかと思います。  過去を見てみますと、当初百円、百五十円で発足しました保険料、五十六年度では四千五百円になっているわけでございますから、その間の倍率は実は非常に大きいわけでございます。そういうふうにして保険料を負担していただいたのは、それなりに国民年金に対する加入者の信頼があったからだというふうに思っております。そういう意味で、制度そのものに対する信頼を得るように努めるということがまず根幹にあると思います。  それで将来の問題を考えます場合には、これも先ほど申し上げましたが、給付と負担、つまり年金で生活をするOBの生活水準と現役で保険料を負担する生産年齢者の生活水準、このバランスの問題が一番大事であろうかと思います。そういう世代間の生活水準のバランスということを念頭に置いて物を考えれば、おのずから負担の方も常識的な線に落ちつくということが期待できると思います。     〔深谷委員長代理退席、委員長着席〕  そういうようなことで、五十三年でございましたか、一遍、保険料負担についての意識調査がございますけれども、その段階では、まあ大体五千円ぐらいならというようなところが回答としては多かったわけでございますけれども、その後若干の年数もたっておりますし、また一方、厚生年金の方のバランスを考えましても、現在は一〇・六%、本人負担五・三%でございますが、この方も将来はいまお話がございましたように料率も少なくともいまの倍くらいまではいかざるを得ないわけでございますから、そうすると仮に月給、平均賃金の方がいまですと二十二万くらいじゃないかと思いますが、現在の負担はその意味では本人負担が一万二千円くらいだと思いますが、そういうものとのバランスということも一方で考えながら対処していく必要がある、かように考えております。
  81. 米沢隆

    米沢委員 いずれにいたしましても保険料には限界がある。その中で年金水準を維持発展させていくためにはやはり健全財政を貫いていく、それならばやはり国庫負担をふやさねばならない、こんな議論になるわけですね。しかし、国庫負担にも限界があるでしょうから、そうなりますと、結局健全財政にさせていくために、簡単に言うたら収入をふやすか支出を減らすしかないわけなんでして、収入をふやすということは、保険料を適正化する、限度を考えながら段階的に引き上げを図っていくということと、あるいは新規財源をどこかに求めるかという議論につながるでしょうし、あるいは支出を減らすというのは、すなわち年金給付水準をどうも相対的には下げていかねばならない、こういう選択をとるかどうかにかかってくるわけです。  いずれにいたしましても、収入と支出の問題の中でしか年金水準は決まらないわけでありますが、いま臨調なんかで議論されている話を聞いておりますと、保険料とか国庫負担を伸ばしていくのはどうも限界があるので、この際、給付水準そのものを給付の適正化という名前のもとに下げていかざるを得ないのじゃないかというそこらに力点が入っておるような気がするのですが、大臣、臨調議論はまだ定かにはオープシにはされておりませんけれども、今後の年金、特に国年の水準を考える場合に、保険料を上げていくあるいは国庫負担を増大させていくという議論よりも、水準そのものを相対的には下げていくということに力点が置かれておる、この臨調議論をどういうふうにお考えになりますか。
  82. 森下元晴

    森下国務大臣 その前に、実はILOが日本のことをえらい心配してくれまして、将来高齢化社会を迎えて日本の二〇〇〇年以降における年金財政は大変なことになりますよというようなことが新聞に載っておりました。臨調においてもこの点非常に心配されておりまして、活力ある福祉社会をつくるために年金制度はいかにあるべきかというようないろいろな御意見が出されると実は思うわけであります。  その中で、いかにすれば年金財政がうまくいくかという中で、給付水準を下げよというようなお話があったわけでございますが、その前に年金の一本化と申しますか、何かそういう形に持っていかないと、給付年齢においてもまちまちでございますし、またその給付の水準もまちまちでございます。そういう格差をできるだけ早く是正して、それからそういう点を上げるか下げるか、そのままにおくかということを考えるべきである、このように考えておりますし、また年金をいただける年齢を繰り延べるという問題も実は出ております。  これは雇用の問題に絡むわけでございます。定年制の問題とかいわゆる老年雇用がどこまでいけるかというような問題とも絡んでいくと思いますけれども、このままではいまおっしゃったように、またILOでも言っておるように、低成長また高齢化時代における日本の老後を保障するという年金制度一つの危機に来るであろう、私も実はそう思っております。  そういう意味で先ほども申しましたように早急に抜本的な対策を立てるべきである、そういう中で一本化の問題、またいまおっしゃいましたような給付水準問題等についても検討を加えていかなくてはいけない、このように思っておるわけであります。
  83. 米沢隆

    米沢委員 保険料の適正水準への引き上げというものは不可避だと思いますけれども、その際、国年の一律定額の保険料には、先ほどから何回も議論がありますように負担能力の面からおのずから限界が出てきます。したがって、今後の課題として保険料体系を見直すべきだという意見もあります。所得に応じて保険料を取るという厚生年金的な感覚で保険料体系をつくり直す。しかし、そうなったらまたいろいろ問題が出てくることは事実でありますが、その点についていま厚生省当局がどういうスタンスで保険料体系を見直すということに関して取り組もうとされておるのか、その点を聞かしてもらいたい。
  84. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 御指摘のありましたように、本来公的年金でございますから、所得再配分効果を持つ方がより望ましいわけでございます。そういう意味で、実は制度発足後間もない時期から、何らかの意味で所得比例の仕組みを導入できないかということが繰り返し検討されたわけでございます。さっき問題になりました付加年金も実はその一つの形としてやってみたわけでございますけれども、ただ実際に所得比例制ということになりますと、現実にその所得の把握をどうやってやるかという問題がございます。やはり公平な所得を把握しないと、ある面での不公平が出るわけでございます。それからまた、その所得を把握するための事務的な組織という問題も伴ってくるわけでございます。そういう意味では、具体化するに当たりましていろいろと詰める必要のある問題があるわけでございます。そういうものもまた検討を十分加えまして、いい知恵が出れば何か考えてみたいというような、いま状況でございます。
  85. 米沢隆

    米沢委員 その一律定額の保険料にはおのずから限界がある。同時に、所得比例の保険料も採用するのは実際はむずかしい。そうなれば残された方策は、新たな財源を求める以外にないわけです。給付水準はどうでもいいというなら別ですけれども給付水準をそれなりに維持、発展させることを前提にするならば、どうも新たな財源を求める以外に方法はない。  その方法論として、一つは現行税制による国庫負担を増額していくという考え方と、二つ目には制度間の財政調整をやったらどうかという議論と、あるいは一般税または年金財源のための目的税を導入したらどうかという、大きく分けて三つの物の考え方が現実にあるわけです。  しかし国庫負担を増額せよ、こう言いましても、現行の制度下でも大変大きな重圧になっておることは御承知のとおりで、五十五年時点の例の再計算のときにも、七十五年の時点では一・六兆円ぐらい国庫負担になる。現在の約二・五倍くらい負担しなければならない。厚生年金でもその七十五年の時点では三・一兆円、現在の約五・一倍くらいお金が要る。そのほかまた共済等もあるわけですから、国庫負担を増額しろという議論は、かっこうはいいけれども現実論としては非常にむずかしい。  あるいは制度間の財調の問題も、御承知のとおり年金制度基本構想懇談会においても検討されたと聞きますが、とてもとても合意を得るような状況にはならないであろう。  そうすると、やはり残る手段は新税の導入、新規財源の導入という結論にならざるを得ないのでありますが、新規増税をやるなんというふうになりますと、これは大変な議論になるでしょうし、それなりの環境整備のためには相当の期間が要ると思います。  そういう意味で、昭和六十年以前における大改正までにはちょっと結論は得られにくいかもしれませんが、少なくともその議論はもう始めてもらわないと困る、そういう感じがしますね。そういう意味でこれは一大決心の要ることでありますから、それぞれむずかしい話はありますけれども制度そのものが土壇場にいってどうしようもないときに出てくる議論よりも、その成否は別にしまして、もっと広く公論に決すべしという観点からも、その新規財源の導入に関して一回アドバルーンを上げるなり、あるいは議論のまないたにのせるなりということが、いま将来を見通した段階では非常に大事なことのような気がするわけです。  これはいままでのいろいろな審議会等でも議論にはなっておりますけれども、頭からそれはちょっと無理だということで突き進んだ議論が進められておりません。その点について僕は大臣の意見を聞かせてもらいたいと思っております。
  86. 森下元晴

    森下国務大臣 目的税を新設したらどうかという御意見だと思います。税負担のかなり重いときでございますし、なかなかそう簡単にはいかぬと思いますし、かなりの啓蒙、啓発、また世論の動向を踏まえなければ新税というものはむずかしいと思いますけれども一つ考え方として私は傾聴に値する提議だと思います。  先ほどの負担金の問題でございますが、年金の方は定額で健康保険なんかの場合は定率でございまして、これは相互扶助の考えからいくと、先ほどのちょっとお話しございました一律に決める方法もいいけれども、定率方法も一つ考え方としては将来生かせるのじゃないかという気持ちもして実は聞いておったわけです。所得の把握は、これは健康保険の方でやっておるわけでございますから、できぬことはありません。  ただ問題は、税金、国税、地方税、固定資産税、それに各種の掛金がふえておる時代でございまして、一人当たりの給料から差し引かれる公租公課が幾らであるか、それに対して給付を受ける年金が幾らいただけるか、ここらの比較も実は非常に大事でございます。成熟した国において例が見られますように、一生懸命働きましても、働く方が損だというような心理的な悪い影響を与える制度をつくっては大変でございますし、先進国等のそういう悪い面がぼつぼつ出ておることもよく検討、勉強いたしまして、大きな負担にならないように、しかも将来に対する所得保障、老後の幸せを得るためには協力すべきである、そういう問題で進んで協力していただけるような体制、またそれにふさわしいような機構、仕組みというものをつくっていきたい。そういう中で、いま御提議ございました目的税の創設も、考え方としては傾聴すべき考え方であると思っております。
  87. 米沢隆

    米沢委員 次に、年金の積立金の有利運用についてお尋ねしたいと思うのです。  年金財政が大変厳しい状況にありますから、いま議論がありますように、給付水準を下げるのかあるいは保険料を上げるのかという議論があるわけですが、しかしその議論だけではなくて、現に年金の積立金というのは相当の金額に達しておりますので、これを何とか有利に運用して運用益を稼ぐような方法は一体できないものだろうか。これは先ほども大原先生が御指摘になりましたし、いろいろな委員会で過去においても議論が積み重ねられてきておる問題だと思います。しかし、結論はどうも冷たい結論しか出ておりません。  御承知のとおり、年金の累積積立金は、五十七年の予定を見ましても、厚生年金保険で三十六兆三千三百五十億、国民年金の累積額で二兆九千七十五億、トータルでは三十九兆二千四百二十五億という大変な額になっておるわけでございます。この金が一部還元融資資金として運用されておりますことは十分承知をいたしておりますが、その残りはみんな資金運用部の方に預託をされて自主的な運用ができない、こういう仕組みになっております。この問題につきましては社会保険審議会等も何回か改正について建議をされておりますけれども、にもかかわらず改善されていないという問題であります。これがやはり私はいまの段階ではもっと真剣に取り組んでもらわなければならない大きな課題ではないかと思います。  先ほどから言いますように、年金財政が大変苦しい時代になっております今日におきまして、年金財政の健全化のためにもっと有利運用を図って運用益等を生み出して、年金拠出者の期待にこたえるべきときであるというふうに私たちは考えております。そういう意味で、資金運用部資金以上の利率、いま五十七年の二月時点で七・三%になったそうでありますが、いかにも低いですね。それ以上に有利運用できるような部分をつくる工夫が必要だと年来主張させていただいておりますが、資金運用部資金法第二条の内容は十分わかった上で大蔵省の見解を聞かせてもらいたい。  同時に、この問題は厚生大臣も前向きに大蔵省とも議論しましょうという約束をされておるのですが、その後の経過は全然わかりません。厚生省としては、この年金の積立金の有利運用についてどういう見解を持っておられるのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  88. 安原正

    ○安原説明員 年金資金につきましては、先生ただいま御説明がございましたように、資金運用部資金法に基づきまして、郵便貯金その他の国の特別会計の積立金等を全部統合いたしまして、資金運用部におきまして一元的に管理、運用させていただいておるわけでございます。この資金の運用の問題につきまして種々御意見があるのは承知いたしておりますが、現在、一元的な管理、運用をいたしておりますのは、あくまで国の制度、信用を通じて集められる資金でございますので、これを一元的に管理、運用することによりまして、政策的な重要性に応じたバランスのとれた資金配分をやっていく必要がある、あるいはまた財政、金融政策との整合性を全体として図って、そのときそのときの社会経済情勢の要請に応じた運用をやっていく必要があるということからでございまして、こういうことで、現在のそういう統合運用の仕組みというのがわが国の財政制度の基本的な枠組みに組み込まれておるわけでございます。そこで、これを一部でも分離運用するということは、こういう財政の基本的な仕組みに影響を与えますので、とり得ないというぐあいに考えております。  ただ、あくまで年金資金にしましても、ほかの資金にいたしましても、できることなら有利に運用されなければならないということは当然のことでございますが、一方また、先ほど申しましたように、公共目的に照らしまして、できるだけ全体の国民の要請に応じた政策的な目的にも活用していかなければならないという要請もあるわけでございまして、その両方の要請の調和を考えながら運用をさせていただいておるというのが実情でございます。  それでは、具体的に運用部の預託金利がどのように定められておるのかということでございますが、それは現在の金利体系の中にありまして、一方では、先ほども大原委員もお触れになりましたが、たとえば長期プライム等のいろいろな各種の長期の金利がございます。そういうものと、財投で資金を流しております各種財投機関、政策金融機関等の基準金利というもののバランスを考えて設定する。  他方、資金コストといたしましては、資金運用部の中で年金資金と並びまして大宗を占めております郵便貯金の預貯金金利の問題がございます。これはまた同種の民間の預金金利とのバランスをとって設定する、そういう両方の金利をにらみまして、その間で資金運用部の預託金利というのを設定しておるわけでございます。私どもは、現在の七・三%という金利は、現在の金利体系の中にありまして全体の金融情勢に即した適正な水準であると考えております。私どもは、その預託金利の七・三%イコール貸付金利ということで、利ざやなしに各種財投機関に対しまして貸し付けを行っておるということでございまして、現在の金利が適正なものであるということで御理解を賜りたいと思います。
  89. 森下元晴

    森下国務大臣 年金加入者は、それぞれ自分の預けたお金が安全に、しかも率の高い利子で運用されておるかどうかということには非常に関心が強いと私は思うのです。目減りをしておらないだろうか、また変な方向に使われておらないだろうか、と。そういうことで、この年金資金はすべて資金運用部に預託してあるわけでございます。その点は共済組合等とは違うわけでございまして、当面は、厚生省は専門でございませんので、年金問題懇談会とか年金資金懇談会、こういう場において関係者の意見が十分反映されるように配慮していくのが最も妥当な方法であろう、このように考えております。
  90. 米沢隆

    米沢委員 時間がありませんので最後の質問にしたいと思うのですが、大蔵省の方、いまおっしゃった理屈はよくわかるのです。それはいままでの議論だ。資金運用部資金法の二条二項を読めば、あなたが言うようなことはよくわかるのですし、いま言われた理屈もよくわかるのですが、それはいままでの議論ですよ。こんなに年金財政が大変だという時期においては、ある程度いままでどおりの考え方とちょっと変わった方向議論してもらわないと私は困ると思うんですね。いま御案内のとおり、先ほどから出ておりますように、財政投融資そのもののあり方がいま再検討されておりますよね。われわれから素直に言わしてもらえば、法律がどうなっておるかわかりませんよ、先ほど出てきました共済年金あたりは自主運用でしょう。あるいはまた簡易生命保険及び郵便年金の積立金、これも運用部資金への預託は義務づけられておりませんで、自主運用ということになっておりますね。だから何も厚生年金やら国民年金の積立金だけが全部預託をさせられて、自主運用はだめでございますと、こんな議論は成り立たないと思うんだな。そのあたり、大蔵省は一体どう考えておるのですか。  一時は、この共済年金の自主運用なんというものは、われわれにとっては大変うらやましいなと思ったことがありますが、一部は共済ダラーと言われたそうでございまして、兜町あたりでは、ばあっと国債を買い集める。そして、その利ざやを自主的に運用した結果、共済年金財政運用のために役立てていく、そんな方法を考えられておるわけですよ。なぜ共済年金は許されて、簡易生命保険の金、郵便貯金の金が自主運用が許されて、なぜわれわれのものだけ——いかにも自分の金のごとくに勝手に使われては困ると思うんだ。大蔵省、どう考えるんです。いままでの議論はいままでの話だ。こんなに財政が大変だ、年金も大変だ、そして今度は年金保険料も上げねばならぬ、こういう事態において、われわれがためた金を自主的に運用して、その運用益をやはり年金財政のために何らかの形で貢献させていこうというこの考え方が何がおかしいのかな、大蔵省
  91. 安原正

    ○安原説明員 ただいま年金資金につきましての統合、一元的な運用の考え方を申し述べましたが、年金資金につきましては特に大きな資金でございまして、将来の給付のための大切な財源でございます。そこで、この資金を安全、確実に運用していくということがきわめて重要かと思います。したがって、いまの資金運用部資金に預託をしていただきまして、全体の政策的な目的にも即しまして、しかもできるだけ有利ということも十分配慮しながら運用していくのが最も適当であるというぐあいに考えておるわけでございます。  御指摘の簡保資金につきましては、確かに唯一の例外として、国家資金の中で例外的な取り扱いになっておるわけでございますが、これは大正時代に制度ができましたときに自主運用の形でスタートいたしまして、一時統合運用ということになってまいったわけでございますが、昭和二十八年度から、発足の経緯に照らしまして、沿革的な理由から再び分離運用という形になったわけでございます。  ただ、あくまで簡保資金も国の資金でございますので、できるだけ公共目的に即した形で運用されなければならないということでございまして、その点、資金運用部資金法と同じような運用対象に運用していくということになっておりまして、資金運用部資金と簡保資金も合わせまして、全体として財投計画というものを策定いたしまして、政策的な重要性に即した運用を、大部分の資金については財投協力という形でやっていただいておるわけでございます。  それからもう一つ共済につきましてお話がありました。共済につきましては、一部資金運用部に預託していただいておるわけでございますが、現在のところ法律に基づきまして実質的に厚生年金とバランスのとれた形で預託を願うということになっております。現在一人当たりの積立金の額が厚生年金に比べまして共済年金の方が金額が高いこともございまして、一部の運用ということで行われております。現在の形で実質的なバランスがとれておるものと考えております。
  92. 米沢隆

    米沢委員 済みません、もう一問。  答弁聞いておりますと、われわれの年金の積立金は運用部資金にみんな集めておれたちが安全、有利にやっているんだという話ですけれども、御承知のとおり、この前、郵便貯金が余り集まらなくて五十七年度には政府保証債や政府保証借入金を約六千億円増発するという手段をとりましたよね。こういうかっこうで、足らなかったらいろいろとやれるんだよ。逆に、あってそれを使うのはいいかもしれませんけれども、足りなくなったらこういうふうにして政府保証債でも発行してやれるという手段はあるのですから。私たちは厚生年金国民年金の積立金を全部くれと言っているのじゃありませんよ。一部を自主運用できるような道を開いて、できる限り財政の健全化のために使いたいというわけであります。いまおっしゃったような議論は、いまの法体系を一生懸命説明しただけであって、政策的に前向きな議論が何もないんだ、私はそう考えざるを得ないわけでございます。  そういう意味では、厚生大臣、これは大変むずかしい問題かもしれませんけれども、何回も申し上げておりますが、もっと、年金財政が置かれておる現在を踏まえながら大蔵省と、財投そのもののあり方も根本的に問われている時代でありますから、そこらをひっくるめて大々的な政策転換を行うような動きを大臣みずから先頭に立ってがんばってもらいたいと思うのです。  一言御答弁をいただいて、質問を終わります。
  93. 森下元晴

    森下国務大臣 大切な積立金の管理運営のことでございますから、積極的にこの点は大蔵省ともよく相談して、米沢議員の考え方にも同調するようにひとつ勉強をしてみたい、このように思っております。
  94. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  95. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国民年金法等の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。小沢和秋君。
  96. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 最初にまず大臣にお尋ねをしたいと思うのです。  本法案は、国民年金等について、昭和五十六年度の消費者物価上昇率が五%を超えておりませんけれども年金額の物価スライドを行おうとするものでありますから、このこと自体私たちは当然の措置として賛成したいと思います。問題は、先ほどからも議論されておりますけれども、この当然のことが特例措置として行われるという仕組みにあると思うのです。これを恒久的な原則とすべきだということも社会保障制度審議会答申などでも出されてもおります。先ほど年金局長が答弁の中で、次期の大改正の中ではこれは考えなければならぬことだというふうに言われたと思うのですが、厚生省としてそういう方向でやるという立場に立っておられるのかどうか、まずお尋ねをしておきたいと思います。
  97. 森下元晴

    森下国務大臣 年金のスライド問題につきましては、一応過去におきましてかなり大きなインフレがございまして、どこに線を引くかというようなことからこういう制度ができたのであろうと私は思っております。そこで、五%の引いた線がよかったのかどうか。これは五%以下でも特例措置でスライドしておりますからそれはそれでいままではよかったと思いますけれども、今後その線を外してしまう、そして物価が上昇すればその率に応じてスライドしていこうというような御質問じゃなかろうかと思うのですが、年金制度につきましていろいろ各党からも案を出されておりますし、臨調を初め懇談会とか研究会とかプロジェクトチームとか、あらゆる機関からいろいろな意見が出されております。それがそろそろ煮詰まろうとしておりますし、大体六十年めどをできるだけ早めましてこういう問題も含めて検討いたしたいということで、前向きにこの点についても検討していきたいということを申し上げたいと思います。
  98. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 前向きということでありますから、それでは今後の経過を見守りたいと思うのですが、特に問題なのは実施時期を昨年より一カ月おくらせた問題だと思います。国民の要求によって昭和四十八年にこの物価スライド制が実施されてから、法律のたてまえとしては厚生年金や船員保険についてはその年の十一月、国民年金については翌年の一月からというふうになっているものが、関係者の努力によって逐次改善されてまいったわけです。それがずっとそういう方向で改善されてきたのに、今回、実施十年目にして初めて一カ月おくらせるということになった。これはいままでの方向とはっきり違うと思うのです。逆転だと思うのです。私はこれは年金行政だけでなく福祉全体についての行政姿勢の後退を意味するのではないかと大変残念に思っているわけですが、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  99. 森下元晴

    森下国務大臣 年金のスライドの時期につきましては、私は、一番初めは十月とか十一月というふうに行われたと聞いておりました。実は昨年ゼロシーリングで、当初計画いたしましたのは十月とか十一月、またもう少し遅くというようなことで予算を組みかけておったわけでございますが、これではいけないというようなことで、何とかもとの線に返そうということで努力をしたわけですが、やはり全般的に財政事情が非常に悪いということと、スライドだけは何とか守ろう、しかしながら一カ月のおくれはいたし方ない、こういうことで実はしんぼうをしたわけでございます。  だから、お説のとおりまことに残念なことでございますけれども、私はすべてあらゆる状況、環境、厳しい財政状況のもとではこの程度のことは、恩給等の横並びもございますし、御理解を願いたい、ごしんぼうを願いたいということでございます。
  100. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 この点についてはとても了承するわけにはまいりませんし、わが党としては他の野党と共同して修正案を提出する考えでおります。  大臣は先週の審議で、来年度予算ではこの一カ月おくれを取り戻したいという決意を表明されたと思います。いまも変わりありませんでしょうか。
  101. 森下元晴

    森下国務大臣 いろいろ諸情勢等も見なければいけないわけですが、私としては、物価スライドの趣旨とか従来の経緯にかんがみまして、精いっぱいの努力をいたしましてもとの線に戻していきたい、その努力をいたしたいということを申し上げます。
  102. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 大臣が先週そう表明されてから後も、新聞などを見ておりますというと、五十六年度の歳入不足が二兆円からある、五十七年度は恐らく三兆円を超すだろう、五十八年度はマイナスシーリングではないかというようなことも言われているわけです。こういう中で大臣がいまのような立場には変わりはないというふうに言われたことは、私は積極的な意味を持っていると思うのですが、それだけにこれはまた容易ならざる決意表明だと思うのです。マイナスシーリングという方針が政府全体として出たから、もうしようがなかったんだということでさっさと旗を巻くというようなことではなくて、それこそ、辞表をふところに入れてでもがんばるという決意だと私は伺ったのですが、それでいいでしょうか。
  103. 森下元晴

    森下国務大臣 非常に厳しい財政情勢で、ゼロシーリングまたはマイナスシーリングというようなうわさも出ておる中で、厚生行政、特に福祉行政、保障制度については、一カ月の問題を云々ではなしに、全般的な厚生行政、福祉行政が後退しないという不退転の決意の上に立って、そして象徴的にもとの線に戻しますという気持ちを申し上げたわけでございます。非常に厳しいとは思いますけれども、この問題だけではなく、全般的な福祉行政が後退しないように全力を挙げるという気持ちを込めて申し上げたわけでございます。
  104. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 では、法案に直接関連する問題はそれぐらいにいたしまして、次の問題に移りたいと思うのです。  ここ数年、年金制度の抜本改正についていろいろな意見などが発表されているわけであります。私たちの党としてもこれについて検討を続けているわけでありますけれども、若干、この抜本改正の問題についてお尋ねをしたいと思います。  まず最初に私が申し上げたいと思うのは、最近の議論の中で、年金財政が非常に苦しい、だから年金をこういうふうにしていかなければいけないというような、いわゆる年金財政の方から年金をいじる発想が生まれているような感じがするのですけれども、私は、これは根本的な誤りではないかと思うのです。よく言われるように高齢化社会が急速に到来しつつある、こういう中で、年をとられた方々が老後を本当に安心して生活できるような保障として年金はどうあるべきか、これを保障するために財政はどうなければならぬ、こういう形で議論がされなければならないということを、私はまず指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、先週の審議で、厚生省の方としては、五十九年度の再計算期に、少なくとも厚生省が所管をしておる年金については抜本改正案を出すという考え方を示されたと思いますが、そう理解してよいかどうか。そうすると、もうあと二年、かなり検討が煮詰まっているはずではなかろうかと思うのですが、およその方向などが固まっているんだったら、それを国民の前に明らかにすべきではないでしょうか。
  105. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 いま、再計算期が五十九年というお話が出ましたが、再計算期としましては限度は六十年でございますが、私どもは、現在のような情勢でありますと、案がまとまるものならばそれよりも前にできればしたいという考えでいるわけでございます。実際に作業を始めておりますのは昨年の九月からでございまして、現在、一方で、社会保険審議会厚生年金保険部会でも具体的な項目について検討をお願いしている最中でございます。いずれは私どもの案もお示しする時期が当然来ようかと思います。現在の段階では、まだそこまで至っていないという状況でございます。
  106. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 国民に対して、前回の再計算のとき以来でしょうか、もう年金制度は大変だ、危機だ危機だというふうに言っている割りには、いまのお答え程度だとすると、政府の取り組みが非常におくれているという感じがするわけです。  私はもう一度お尋ねをしたいと思うのですけれども、五十九年にでもそういうような抜本改正案を出そうというのだったら、その直前に、まとまったというようなことで発表すると同時にもう国会にかかるというようなことでは、これだけ重大な、全国民の老後の生活にかかわるような問題ですから、それはいかぬのじゃないか。もっと早く中間的にでも、骨子というか方向が固まってきた段階で国民の前にそれを示して、いわば全国民的な討論によって合意をしていくということでなければならぬのじゃないかと思います。そういう姿勢をお持ちか。  そしてそうだとすれば、そういうような骨子などを明らかにする時期というのは、あなた方はもういまの時期で大体めどを持たなければいけないと思うのですが、どうお考えでしょう。
  107. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 まず前段の問題でございますけれども、五十五年の再計算期改正が通りましたのは残念ながらその秋になってからでありまして、昨年は御案内のとおりゼロシーリングの問題が出まして、さらに特例法というような思わぬ問題も出まして、そういう方に忙殺されまして、本来の作業にとりかかることができなかったというのが実情でございます。昨今の定員抑制事情でなかなか人手をふやしてもらえませんから、限られた陣容で作業をいたしますので、どうしてもいろいろな条件で制約があるということは御理解をいただきたいと思います。  それから次の改正案の問題でございますが、私ども関係いたします正式の審議会といたしましても、社会保険審議会国民年金審議会、さらには社会保障制度審議会の正式の諮問、それから答申という段階を経なければいけませんので、案がまとまってすぐ国会にお出しするというようなことにはならない、こういうふうに考えております。
  108. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いずれにせよ、早く国民の前にその根本的な考え方を明らかにして、十分に国民的な討論ができるような状態を保証していただきたい。  ところで、この抜本改正問題で私が第一に問題にしたいと思うのは、年金水準の問題であります。厚生省はしばしば、わが国の年金が西欧先進国並みに達したというような評価をしているようですけれども、本当にそうなのかどうか。臨調が去る三月三十日にまとめた公的年金制度改革案というのを見ますと、各年金給付水準を、国民の合意の得られた負担水準に見合ってダウンするということを求めているわけであります。これでは、高過ぎるから下げるべきだという立場が露骨に出ているわけですが、厚生省はいまの水準についてどうお考えなのか。将来は下げていくべき水準になっておるというお考えでしょうか。
  109. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 いま御指摘がありましたように、現在の水準は西欧の諸国に匹敵する水準になっているという言い方は、ある意味では非常に正確さを欠いているわけでございます。私どもが申し上げておりますのは、二十年、三十年後を踏まえた構造的な制度の問題を論ずる場合には、制度の仕組みとしては西欧諸国に肩を並べる水準になっているということを申し上げているわけでございまして、現実に現在受給しておられる方々の年金のレベルが、西欧諸国に匹敵するものになっているということは言い切れないと思います。厚生年金で、平均で申し上げますと、そう悪くないわけでございますが、平均でそうだということは、分類してみますと平均以下の方が六割くらいいらっしゃるわけでございます。そういう方々につきましては、なおそれなりの措置を講じていくための工夫をする必要があろうかと思っております。  それから後段の給付水準あり方そのものの問題でございますが、これは私どもがいま考えております立場は、あくまでも二十年、三十年先の段階、つまり年金制度が成熟した段階で健全にしかも安定してこの制度が機能するかどうか、そういう立場からの検討をしているわけでございます。その問題と当面支給されている年金水準の問題とは区別して考える必要があろうかと思います。将来の問題の方につきましては、制度そのものに対する信頼感を持っていただくというためには、OBの、年金で生活する方の生活水準あるいは所得水準と申しますか、つまり年金水準でございますが、それと現役で保険料を負担するグループの生活水準あるいは所得水準、賃金水準でもよろしいわけでございますが、その両者の間に均衡かとれておりませんと、どうしても制度としては安定しない、どちらからか不満が出るわけでございます。そういう立場に立って水準を考える必要があろうかと思います。  そういう意味で、給付水準につきまして現役の賃金とのバランスでどう考えるかというところから現在の構造的な水準を見直す必要があるのではないかということで厚生年金部会等にも問題の提起をしている状況でございます。
  110. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いまたしか平均としてはある程度のところにきているが、平均以下の人が六割くらいと言われたと思うのですが、平均の水準自体も決していいところにきているとは言えないと私は思うのです。念のため厚生年金国民年金それぞれの最近の一人当たり平均受給額はどれくらいか、おっしゃってみてください。
  111. 小林功典

    小林(功)政府委員 厚生年金で申しますと、五十六年九月末の数字でございますが、月額十万八千十八円でございます。それから国民年金、拠出制国民年金でございますが、老齢年金で申しまして、同じく五十六年九月末の数字で月額二万四千二百四十二円でございます。
  112. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 これでどうして高いと言えるのか。私、念のために先ほど老人夫婦世帯の生活保護費というのがどれくらいかということを同じ厚生省の中の当局者にちゃんと尋ねてきたのですよ。一級地で十万八千五百七十円あるのですよ。そうすると、よくいい、いいと言われる厚生年金にしても、これは明らかにこれよりも平均が下じゃないですか。これでいいというようなことを言ってもらっては困ると思うのです。  だから、まだまだ最低の老後生活保障たるにふさわしいような水準にまで上げるということはいま緊急の問題じゃないかということを私は強く指摘したいと思うのです。特に国民年金になりますと、これは生活費の体裁をなさないほどの低さじゃないかと私思うのですね。国民年金についてはとりわけ急いで水準を引き上げなければならないのじゃないかと私は思うのですが、現実にはなかなかその引き上げが進まないのじゃなかろうかということも感ずるわけです。  その一つとして指摘したいと思いますのは、国民年金については希望者は六十歳からもらえるという制度があります。この減額年金をもらっている人が数としても比率としても相当なものだと聞いているのですが、どれくらいですか。
  113. 小林功典

    小林(功)政府委員 国民年金の老齢年金の繰り上げ受給、その率でございますが、これも五十六年九月末で約六〇%でございます。
  114. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 そうすると、国民年金の受給者の六〇%は減額年金をもらっている。金額にしてどれくらいでしょう。
  115. 小林功典

    小林(功)政府委員 平均の年金額で月額二万一千七百四十一円でございます。
  116. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 この人たちは生活が苦しいために、六十五歳になるまで待ち切れずに本来の年金額の半分以下というような低い水準でももらってしまっているわけですね。そうすればいよいよ年をとったときにますますこれでは大変になるということはわかっているけれども、しかしいま何とかしなければということでもらってしまうということはさっきも議論がされたと思うのです。こういうことがずっと続いている限り、国民年金については非常に低額な層というのはいつになってもなくなっていかないのじゃないかということを、私、一つ問題点として指摘したいと思うのです。  それから国民年金水準の足かせになるもう一つの問題が、これも議論されている免除の問題ですね。免除者数もこの期間ずいぶんふえてきて、五十五年には一一・八%に達しておるという状態ですね。今後のことを考えてみると、国民年金保険料は昨年四千五百円、ことし五千二百二十円と、実質賃金の方がいま下がっているということで大問題になっているのに、相当なテンポで上がっていくから、さらに免除者もふえることになる。免除者というのは確かに加入期間としては計算されるけれども、これは空期間でしょうから、資格ができても、後でもらえるという場合には極端に低い年金しかもらえない層にもならざるを得ないわけですね。そうするとこの面からも国民年金の場合は改善の見通しが非常に暗いのじゃなかろうか。  こういうようなことを幾つか考えてくると、年金制度が全体として将来はかなり高い水準になっていくというようなことをさっき年金局長は言われたけれども、よくよく考えてみればそういうふうな楽観はできない。大企業などで一生ずっと厚生年金などの保険料を払っておったというような人はかなり高い水準のものがもらえるでしょうけれども、中小企業などを転々としておったとか零細な商売人として苦労しいしいこの国民年金などを積み立てたとかいうような人たちというのは、はるかにずっと悪い状態で張りつく。  よく賃金の二重構造ということが言われますけれども、私は、年金の二重構造みたいな状態がだんだんはっきりしてくるのじゃなかろうかというようなことを問題として考えるわけですけれども、そういうことは思い過ごしなのかどうか。年金局長としての将来の見通し、どうお考えなのか、お尋ねします。
  117. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 先ほども申し上げましたように、年金水準を考えます場合に、将来の構造的な問題を考える場合と当面の経過的な低額の年金について考える場合と、立場を区別してみる必要があろうかと思います。  国民年金につきましては発足の日が浅いということもありまして、現在やっております年金は五年年金、十年年金、長い方でも十五、六年の加入ということでございますから、まだ本来の年金は出てないわけでございます。厚生年金にいたしましても二十年の資格期間なりあるいは特例の十五年の資格期間で出ている方がまだ多いわけでございますから、そういう意味で現在実際に支給を受けている方は金額の低い方もいらっしゃるわけであります。  しかしながら、国民年金にいたしましても、制度が成熟いたしますと、六十歳まで掛けていただくわけですから、大部分の方は掛けられるわけですから、そうしますと四十年加入ということになります。四十年加入の金額は、ことしの予定される四・五%の物価スライドまで考慮いたしますと単身で七万五千円を超えるわけでございます。夫婦二人ですと十五万円ということになります。いまからですと二十年後になりますが、待期期間がございまして正確には約二十三年後になりますけれども、その時代になりますと新しく発生する年金は皆四十年年金になるわけでございます。そういう段階において果たしていまの水準が妥当かどうかということを考える必要があるということを申し上げているわけでございまして、現在の経過的な年金についてはそれなりにまた工夫をしてみる必要がある、こういうふうに考えております。
  118. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それじゃ私がさっきから指摘したことは何もわかってないということになるんじゃないですか。その七万五千円というのは四十年間ばっちり保険料を納め切った場合に、そして六十五歳からそれだけ受け取るということでしょう。ところが実際には免除を受けるという人たちがずいぶんな勢いでふえてきている。この人たちは初めからこういう水準をもらえっこない。そこへもってきて六十歳からくれという人たちがさっきのお話では六〇%、将来成熟して年金意識が高まってくればその率は減るという楽観的な見通しをお持ちかもしれないけれども、私はそう簡単には変わっていかないのじゃないかと思うのです。そうだとすると、いまのあなたのお話というのは余りに楽観的じゃないですか。  だから、そういうような非常に低い部分が今後も構造的に発生していくような状態というのはどうやったらなくしていくことができるか、そして少なくとも全体として生活を最低保障できるような実質的な年金額に国民全体が到達する上でどうしたらいいかということをもっと深刻に考える必要があるんじゃないでしょうか。
  119. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 この点は午前中にもちょっとお話し申し上げた部分があるのですが、国民年金は要するに負担力があるかどうかを問わず全部まず適用をするという前提の仕組みになっておりますから、どうしても加入者の中に保険料の負担ができない階層をも含んでいるわけでございまして、そういう意味で免除に該当する方が一部いるのはやむを得ないと思います。  ただ、免除の問題について考える必要がありますのは、二つあると思いますが、一人の方がまさか四十年免除をということはまずないのじゃないかということが一つございます。もう一つは、先ほども申し上げましたけれども、免除を受けましても追納という道がありますので、免除を受けた期間が給付の段階で免除の期間のままになっているかどうか、追納をすることによりまして本来の期間に直っている部分が相当あるんではないかという問題があろうかと思います。この点は給付について裁定する場合に免除の期間がどのくらいあるかということを一遍調査をしてみる必要があろうかとは思っております。  ともかくもそういう意味で一定限度の免除の期間が存在することは事実でございますが、その一部のものを中心の議題にして全体のレベルの問題を議論する、これはいささかいかがか。むしろ本来の形の場合で水準議論して、附帯的な問題として免除の取り扱いをどうするかという形で議論をする方が本来ではないか、かように考えております。
  120. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 国民年金の受給者が現実に六割も六十歳からもらっている、そのためにうんと水準が低くなるというような問題を私が指摘しても、それは一部の問題だというような年金局長の認識では非常に困るんじゃないかと思うのです。  時間がありませんから次の問題に移りたいと思うのですが、抜本検討の中でもう一つ問題になっているのは支給開始年齢の問題だと思うのです。  財政立場から厚生年金を六十五歳からということは盛んに言われるわけですけれども、先ほど指摘をした本末転倒というのはまさにこの辺に一番端的にあらわれているのじゃないかと私は思うのです。本来どういうふうに問題を進めるべきかといったら、高齢化社会というのは社会の構造から見てどうしても若い人が少なく高齢者が多い。だから、これを支えていくためにはどうしても六十五歳までの人々にもっと社会を支えるための積極的な役割りを果たして第一線で働いてもらわなければならない、そのための環境やら条件やらを整備していく、それが進行していく中で年金というのは、だから六十五歳でもいいじゃないかということになっていくのであれば、私はそれはそれで話としてわかると思うのですけれども財政危機だから六十五歳にしなければいかぬ、その体制をつくるためには、というようなことで、雇用とかなんとかという問題が後から出てくるというのは大変おかしいのじゃないか。  いまのような雇用の状況、六十歳定年がようやく過半数に達したばかりというような状況の中で、とても六十五歳定年なんて問題にもなり得ない。したがって、いまのような状況のもとでは六十五歳からこの厚生年金を支給するようにするというようなことは、まだまだとても地平線の先に見えてくるような課題にはなり得ないのじゃないかというように私は考えるのですが、どうでしょうか。
  121. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 いまの開始年齢の問題については、基本的な考え方は私は先生の御意見に賛成でございます。ただ、地平線のかなたかどうかは議論があろうかと思います。  昨年発表されました人口推計によりますと、今世紀中は生産年齢人口のウエートはそう大きくは変わらないようでございますが、二十一世紀に入りますと、その階層の割合が急激に落ちてまいります。その段階ではおっしゃるとおり、現役で働いていただくラインをどうしても延ばさないと経済社会そのものが成り立たなくなるのじゃないかと考えておりますが、そういう問題はおっしゃったように、つまり雇用の問題になるわけでございます。六十歳台前半の階層に対する雇用の場の確保と申しますか開拓と申しますか、そういう問題を解決して、それと連動して年金制度がどう機能するかというふうに考えるのが本来である、かように存じております。
  122. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いまのお話からすると、六十五歳というのが実際的な問題になってくるのはどうも二十一世紀の課題のように聞こえたのですけれども、きょうはそこのところは余り議論をしないことにしたいと思うのです。  私がきょう、この支給開始年齢のことで特に問題にしたいと思いますのは、一部の職種についてはむしろ支給開始を繰り上げる必要があるのではないかということなんです。この議論をするために確認の意味でお尋ねするのですが、現在でも坑内労働者とか船員などは、全体が六十歳からということになっている中で五十五歳から支給されているわけですが、その理由はどういうことなんでしょうか。
  123. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 これは両者とも多分に沿革的な意味もあろうかと思いますが、船員保険の方が現在の厚生年金よりも先に単独でできた仕組みでございまして、当初は五十歳支給開始でできていたと思いますが、二十九年に厚生年金の方を六十歳にいたしましたときに五十五歳にたしかしたのではないかと思います。そういう意味で特別なグループとして先行をしておりました。そういう事情もございますが、それ以外に、海上勤務の激しさというようなこともやはり配慮されたのだろうと思います。ただ、そのかわり保険料負担は現在のすべての公的年金制度の中で一番高い保険料率になっております。  それから、坑内夫の問題でございますが、これも厚生年金の仕組みが昭和十七年にできましたときから一般よりも五歳早く支給開始をするということでございまして、これも坑内作業の特殊事情に注目してとられた配慮の結果だと思います。これも同じ厚生年金ではございますけれども保険料負担は一般の被保険者よりも重い保険料を負担しているという状況でございます。
  124. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 この二つの職種と同じように非常に激しくて、健康に有害な労働で、早期に引退を余儀なくされるような職種があるとすれば、私は繰り上げ支給ということをやはり考えなければならないのじゃないかと思うのです。  総評が八〇年二月に厚生年金制度改革に関する第一次報告書というのを発表しておりますが、この中で、鉄道等の運転士及び常時三交代作業に従事する労働者、労働安全衛生法上の有害物質を扱う労働者などを特例職種として特別措置を設けること、つまり早期に支給を開始するということを提案しておるのです。  私の出身の職場が、実は新日鉄八幡製鉄所という一番典型的な三交代職場なのですね。高炉とか転炉などは一刻もとめることができませんので、労働者が八時間ずつ三交代で働いている。一週間ずつ朝番、昼番、夜番というふうに勤務番が変わることは御存じのとおりです。こういう労働に長期に携わるということになりますと、生活のリズムが一週間ごとに変わりますからどうしても非常に体に悪い。とりわけ人が寝ている深夜も昼間と全く同じ緊張状態で働くために多くの労働者が体を壊して、四十歳を過ぎたら三交代勤務ができるような人というのは数えるほどしかいないような状態になってくるわけですね。  ですから、この鉄鋼関係では数年前に六十歳定年制というのが実施をされたのですが、この三交代の労働者はこの定年延長を歓迎しない。むしろ年金の支給開始の方を五十五歳にして、五十五歳で引退したら年金をもらえるというようにならぬものかということを私はその当時非常にしばしば聞かされたものであります。  あなた方もこの三交代労働を長期にわたって続けるということが健康に非常に悪く、早期に引退をせざるを得ないような状況じゃなかろうかということをお考えになるのじゃないかと思うのですが、こういう点についてどうお考えでしょうか。
  125. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 確かに御指摘のような問題はあろうかと思います。しかしながら、一般制度の中でさらに特例を設けるということになりますとそれなりのふるい分けをしなければならないわけでございますが、そのふるい分けの基準をどういうふうに決めるか、逆の意味の不公平ということも考えられるわけであります。厚生省関係で申し上げても、たとえば看護婦なんかは三交代でやっているところはざらでございますから、そういう意味であらゆる職場の中でそういうような問題があろうかと思いますけれども、不公平の出ないきちっとした基準というものが果たしてつくれるものかどうか、これはなかなかむずかしい問題があろうかと思います。  そういう意味では、先ほど例に出ました坑内夫とか船員の取り扱いの問題とも関連しまして、この開始年齢の弾力化と申しますか、そういう問題の一環として検討はさせていただきたい、かように思います。
  126. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 検討をしていただくということですから、私も期待しておきたいと思うのです。  もう一つこの機会にいまのことで申し上げたいと思うのは、三交代労働者は収入はある程度多くなりますから厚生年金保険料は高いのですよね。ところが、そういう健康に有害な労働に長期に従事しているために短命に終わる人が多いように私の経験では思うのです。実際、製鉄で働く人たちの中では満コロ、つまり定年満期になるところりといってしまうということで満コロという言葉もある。私が先日満コロの話を後輩の人にしたら、いや、小沢さん、近ごろは中コロですよと。どういうことかと聞いたら、ことしになってからも職場の中で何人か急に倒れて病院にかつぎ込んだけれども助からなかったというような方が何人か出たけれども、そういうような人たちはその人が知る限りではいずれも三交代の労働者であった、だから中コロですよというような話を聞いて、私も大変ショックを受けたのです。  一つお願いしたいと思うのは、三交代を長期に続けた人が実際に経験的にこういう満コロとかいうような状態にあるのかどうか。あなた方は全部年金を支払うわけですから、どの人がいつごろ、何歳で年金の支払いが終わった、つまり亡くなったということを掌握できる立場にあるわけだから、一定の人たちをサンプルか何かで選んで、ずっと昼間普通の労働をした人、こういう三交代労働を長期にやった人がどういうふうな結果になっているかというようなことについて、ぜひ調査をしてみていただきたい。ここではっきりした差が出れば、私は早期に引退をせざるを得ないということが別の面からも裏づけられるのじゃなかろうかということを考えるのですが、この点を調査していただけないかどうか。
  127. 小林功典

    小林(功)政府委員 確かに、亡くなられまして失権した場合、それの受給期間なりというものはわかると思いますが、ただ、記録の中に現役時代の勤務状況とか勤務条件とかは全然ありませんので、まずむずかしかろうと思いますが、せっかくの御要望なので一回知恵をしぼってみたいとは思います。非常にむずかしい問題だとは思います。
  128. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 いや、それは会社の側と、幾つかの企業などと協力をしたら、会社の場合にはその人が何年ぐらいどういう勤務についたという記録があるのですから、だから比較的サンプリングなどはしやすいのじゃないかと思いますが、どうです。
  129. 小林功典

    小林(功)政府委員 結局、現場まで行きまして、そこで突き合わせをするということになると思います。それの事務量という面がちょっと気になりますが、一回知恵をしばってみたいと思います。
  130. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 では、その問題はその程度にします。  それから、抜本改正という点でまだあと幾つか問題になっているのですが、一つは婦人、特に妻の年金権の保障の問題です。この点についてはいろいろ議論されているから私は一問だけにしたいと思うのですけれども、特に私が言いたいと思いますのは、結局この問題の根本というのは、婦人を一個の独立した人格として認めて、年金について男女の差別をなくすことだ、こういうふうに考えるわけです。この立場に立って、五十九年の抜本改正ではすっきりとした形で婦人の年金権が確立されるというようにいままでの議論から私は期待したのですが、それでよろしゅうございましょうか。
  131. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 婦人の扱いにつきましては、これはもう国民年金もそうでございますし、厚生年金の中でもこれはまた逆にいろいろ問題をはらんでおります。保険料の差でありますとか、遺族年金の問題でありますとか、開始年齢もございますが、そういう問題も全部含めまして、私の願望としましては何とか先生の御期待に沿うような結果にしたいということでございます。
  132. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 では次に、これは私がお尋ねしたい最後の問題ですが、年金一元化ということがやはり抜本検討の中でよく問題になります。  それで、臨調の第一部会が三月の末にまとめた社会保障についての改革原案によりますというと、「被用者年金について、」「段階的に統合する。当面、国鉄共済年金について他制度との統合を検討する」というふうになっておるのです。さっきもこれはちょっと問題になったようですが、「他制度との統合を検討する」というのは具体的にはどういうことが考えられるでしょうか。
  133. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 臨調がどういうことを念頭に置いて議論しておられるのか、ちょっと私どもは一応疎外されておりますので、そこら辺のことは何とも申しかねます。
  134. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 では、ちょっと角度を変えましょう。  いま国鉄についてはいわゆる民営移管論というのが盛んに臨調の中などで言われている。民営ということになるというと、これは厚生省所管の厚生年金に統合するというように聞こえてくるわけですね。もちろんわが党はそんな民営移管なんて絶対反対なんですよ。しかし、国鉄共済の統合相手として民営ということになればそういうことになりはせぬのですか。
  135. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 現在の仕組みのままでいきますと、民間の被用者は厚生年金の適用になります。ただ、その場合に想定されますのは、過去の期間についてどうするかという問題が大きな問題になろうかと思います。過去におきましても、これは統合よりも分離でございますけれども、私立学校教職員の共済組合でありますとか、農林漁業団体職員の共済組合ができましたときは、厚生年金から離れていったわけでございますが、その場合にも、それまで厚生年金に入っていた期間の取り扱いをどうするかというのがやはり大きな問題になったわけでございます。それと同じような意味合いにおきまして、これまでの期間の扱いをどうするかということが一番大きな決め手になろうかと思います。将来の期間につきましては、あっさり被保険者になっていただければそれはそれで結構なわけでございますから、むしろその統合されるという問題そのことよりも、過去の期間の扱いをどうするか、すでに発生している年金の支払いをどうするのか、こういう問題の方が恐らくよりむずかしい、大事な問題じゃないかというふうに思います。
  136. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 私は、この話を聞いたとき、これはなかなかうまいことを考えたな、いま相対的には一番余裕があるというのが厚生年金じゃないかと思うのですね。そこに、一番危機が目前に迫っている国鉄共済を民営移管という形でもしくっつけることができたら、いわばいままで民間の労働者がためてきたファンドをそっちの方に振り向けさせよう、そういうことになったらこれはまた大騒ぎになるんじゃないかと思うのですが、そんなようなことというのはあなた方は実際に可能だとお考えになりますか。
  137. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 これはやや勝手な言い方になるかもしれませんが、各年金制度の運営につきまして過去の経緯をごらんいただきますと、少なくとも厚生年金国民年金につきましては非常に私どもはまじめに努力をしてきたつもりでございます。そういう意味で、厚生年金で申しますと、労使双方に三十五年以来毎改正ごとに相当大きな負担増をお願いしてきているわけであります。これはあくまでも将来の制度の安定を願う立場からでございます。そういう努力をしてきた結果でございますので、そこへ単純に、いま少し余っておるから使わせろというようなことで話が来ましても、これは私の立場としては絶対にお受けするわけにはいかない、かように考えております。
  138. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 その点はよくわかりました。  以上で抜本改正で問題になっているようなことで私の関心のあることについての質問は終わりまして、あと若干の時間を使って、年金制度のいまの制度の仕組みの中でもこれは緊急に改善すべきだというような点についてちょっとお尋ねをしたいと思うのです。  一つは、年金に対する税金の問題です。  私の手元に、最近何年間かの「厚生年金・船員保険の源泉徴収状況」というのを資料としていただいておるのですが、昭和五十二年を一〇〇とすると、源泉徴収される人数の面では、昭和五十五年に四倍、源泉徴収される金額の面では、同じく五十二年を基準として六倍というふうに物すごい勢いで、源泉徴収される人も、それからまた金額もふえていっておるわけですね。私どもはもともと年金というのは老後の保障であって、こういうようなものにまで、形式的に確かに所得ではありますけれども、税金などをかけるべきではないというふうに考えるわけです。まして、いわゆるスライド制などでせっかく皆さん方が物価が上がったのに対応して実質的な価値を維持しようというんで上げたら、税金の方がはるかにそのテンポを上回るような形でぐっと重くのしかかってくるというようなことは、これは私はまことにけしからぬことじゃないかと思うのです。  去年の社会労働委員会の中でも、この点特別に決議もしたりしておるんですけれども厚生省としてどのように年金の課税をさせないように、少なくとも最低限を大幅に引き上げるようにという点でどう努力をされているかということをこの機会にひとつお尋ねします。
  139. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 おっしゃるとおりでございまして、私どもの実感としましても、せっかく労使から保険料を出していただいて、それを主たる財源として給付をしたのがまた税金で持っていかれるのは、何かその部分に関しては正直非常にもったいないような気もするわけでございます。そういう意味で従来から毎年税制改正に関連いたしまして、できれば非課税ということ、そうでなければ年金受給者のための特別控除を増額するようにということで要求をいたしておりますが、ここ数年来力及ばず改善が行われていないというのが実情でございます。この問題は、五十八年度につきましても従来以上の熱意を入れて努力をいたしたい、かように考えております。
  140. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それから、もう時間がありませんからどんどん聞いていきますけれども、無年金者対策です。  これもさっきから盛んに出ております。高齢化社会に突入していこうという時期に、無年金で老後を迎える人のことを思うと、私も本当に胸が痛むわけです。今後どうしてもこういうような人の発生を食いとめなければならないし、いますでに無年金が確定している人々についても私は救済の手を差し伸べなければならぬのじゃないかと思うのです。  五十二年に厚生省が無年金者の数などを調査したことがあるというように伺っておるのですけれども、その数と、先ほどの八十万ほど無年金者がいたけれども四十万人は特例納付で救ったという数と、ちょっと私聞いてみると大分違うんじゃないかというような感じがするのですが、そういう食い違いはないのか。  それから、実際問題としていまのような仕組みのままでいくと、無年金者は毎年発生していくんですね。だから五十二年にそういう調査を一遍したというだけじゃ不十分で、この抜本改正ということが問題になっているいまの時点でもう一遍無年金者の実態について調査をして、検討する資料にすべき時期じゃなかろうかと私は考えるのですが、いかがですか。
  141. 小林功典

    小林(功)政府委員 先ほどお答えしました八十万とか四十万という数字、これは将来とも保険料を納めても年金権の確保につながらないという数字でございます。恐らく五十二年の調査は、現在入ってない、未適用者の調査でございます。そこの食い違いだと思います。(小沢(和)委員「今後調査すべきじゃないかと聞いておる」と呼ぶ)調査も必要だと考えておりますけれども、一番困りますのは、市町村に住民基本台帳が備えられておるわけですが、どうしてもそれをもとにしなければいかぬわけですけれども、そこには他の公的年金制度の加入状況というのが入っていないわけです。したがって、ほかの制度と通算して年金が出るというものの数がなかなかつかめませんので、そういった意味で全体的な調査はなかなかむずかしい状況にございます。何か抽出とかで一部について調査すること、これについては一回考えてみたいと思っております。
  142. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それで、無年金者の発生防止のためにどういう手を打っているかということもこの機会にお尋ねしたいのです。海外に行っておられる人というような場合は、これはなかなかむずかしいでしょうけれども、国内に住んでいる人の場合には私はやりようはあるんじゃないかと思うのですね。いまのように強制加入だと言いながら実際上は加入の申し込みを待って処理をするというような事務の仕方になっているというと、これは事実上は任意加入と同じようなことで、本人が言ってこないとどうにもならない。自動的にその人たちが国民年金の保険を払わなければならない人だということで事務的に仕事をするというような体制をつくっていったらどんなものだろうというようなことも考えるのですが、この点いかがですか。
  143. 小林功典

    小林(功)政府委員 未加入者への適用促進ということだと思いますけれども、これは決して私ども手をこまねいているわけではございませんで、従来からテレビ、新聞等を通ずるPRはもちろんやっております。それと、現段階で言いますと、ほとんどの市町村で未加入であると思われる方に対しまして往復はがき等いわゆるダイレクトメールでございますが、これをお送りいたしまして、個々に加入の勧奨をしております。そこまでやっております。  それからさらに、保険料がだんだん上がってきて納めにくいために入れないという方もいらっしゃると思いますので、この点につきましては納めやすいように毎月納付の方法等をいま奨励しているところでございます。  そういったいろいろな面で未加入の方に対しましての加入の勧奨を積極的にやっているところでございます。これからもそれを続けたいというふうに考えております。
  144. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 それから、三十五歳以上の方はどうにもならない、もう無年金が確定した人だということになるわけでしょう。国の考え方というのを何遍かお尋ねしたことがあるけれども、いまこういうことになったというのは本人の責任で、私たちとしては何回も特例納付やらやったんだから、もうこれ以上無理ですというような答えが返ってくるのですけれども、しかし、年金に対する意識が非常に急激に高まってきたのはごく最近のことであって、やっぱりその日の生活に追われておった人というのは、必ずしも悪意とか故意とかいうようなことじゃなくてこういうことになってしまったという人がかなりいると私は思うのです。私のところなんかに相談に見える方もやっぱりそうですね。その日その日の生活に追われている、むしろ生活に苦しい人たちが、あわてて何とかならぬものかと言ってくるケースが多いのですよ。  だから、私はそういう意味じゃ、まだ救済の手を差し伸べなければ国としての責任を果たしたことにならないんじゃないかという気がするのですが、どうです。
  145. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 過去の特例納付にいたしましてもあるいは五年年金等の再加入にいたしましても部内でも両論ございまして、社会保険方式なのでということでかたい考え方もあったわけでございますけれども、いまお話ございました二十代、三十代で年金、老後をそれほど意識するかという問題もございます。そういう意味で、その問題以外にも前回にも出ましたけれども、海外に長く行っていらっしゃった方とか、あるいは中国孤児の問題、難民の問題等もございますから、そういうような問題を検討いたします際にあわせて検討はしてみたい、かように思っております。
  146. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 時間もありませんから、最後にお尋ねしたいのが国民年金の印紙の納入の問題であります。国民年金法の第九十二条によりますと、保険料を納付するには、国民年金印紙による納付によらなければならないということになっておりまして、第三項には「国民年金印紙による保険料の納付は、国民年金手帳の所定欄に国民年金印紙をはりつけ、これを都道府県知事又は市町村長に提出し、その検認を受けることによつて行うものとする。」というふうになっているわけです。  お尋ねしたいのは、現在このように国民年金印紙による保険料の納付を実際に行っている市町村はあるのか。また国民年金手帳というのはあるのかどうか、お尋ねします。
  147. 小林功典

    小林(功)政府委員 国民年金手帳はございます。  それから納付方式でございますが、確かに法律では印紙の方式というのが規定されておりますけれども、これを廃止して現金徴収のような形にしたらどうかという御意見も以前からございます。私どもも以前からこの問題を検討しておりますけれども、これを現金徴収に近いかっこうにいたしますことにつきましては、たとえば新たに三千数百の市町村に国の会計口座を設けなければいかぬとか、あるいはその場合には市町村の事務処理方式も変わりますので、なかなか簡単にいかない問題がございます。  そこで、そうは言いましても、制度発足当初のいまの法律の仕組みには若干無理があるという点を認識しておりますので、少なくとも被保険者の方と市町村の間は現金徴収と同じような形にいたしております。ただ市町村から国への場合にはやはり印紙の方式を残すというかっこうにならざるを得ないのが現状でございますが、これはいろいろ問題もございますので、引き続いて検討はしてみたいと思います。
  148. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 しかしこれは市町村長が歳入徴収官になれないといういわば純然たる法律技術上の障害のために、実際には使われもしない印紙を毎年ごとに印刷をして市町村に配ったりするというようなばかみたいなことをやっておるわけでしょう。これはいま臨調、いわゆる行政の簡素合理化ということが言われている中では、少なくともこういう使われもしないものを印刷して配ったりとかいうことはなくしてしまうというぐらいのことは、いますぐここで決断したらどうですか。  ただ、それを廃止すると国民年金印紙の売りさばき手数料やらがどうなるかという問題も起こってくると思うのですが、それについては当然納付書の送付等の事務があるからこれは事務取扱交付金に加えて市町村に交付するというようなことでやったら、市町村はこういうようなものを手数料を引き上げてくれと言って皆さんに陳情しておるのだから、市町村からも喜ばれて事務は合理化して大変結構なことじゃないかと思うのです。  どうですか、ここで即答しなさいよ。
  149. 小林功典

    小林(功)政府委員 印紙の印刷とか手渡し、これをなくすといいますと、かわりにまた事務がふえる部分もあるように思います。そこら辺との関係で、単にいま簡素化になるかどうか、ここら辺若干の問題がなしとはしないと思いますが、いずれにしろ、これは日銀の話でありますとか、予算の全体の話でありますとか、あるいは会計法令の全体の話でありますとかございますので、関係省庁とも一回話をしてみたいと思います。
  150. 小沢和秋

    ○小沢(和)委員 これで終わりますけれども、話し合ってみたいというのは、そういうことが実現する方向検討するというふうに理解をしていいんでしょうね。もう一遍お尋ねして、終わります。
  151. 小林功典

    小林(功)政府委員 受け入れ側の方の都合もありますでしょうし、会計法令上も、それからシステムもかなり基本的な変革になると思いますので、そういった意味で、いまここでやりますと言うだけのちょっと自信はございませんが、慎重に対処したいと思います。
  152. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 次に、菅直人君。
  153. 菅直人

    ○菅委員 国民年金改正ということですけれども、十三日以来この問題で多くの委員の方から質問が続いているわけです。私の場合もいろいろな質問をしたいのですけれども、限られた時間ですので、問題を幾つかにしぼって御質問をさせていただきます。  せんだっての他の委員の方の質問の中でも、海外へ勤務をしている人の奥さんは、海外勤務中に御主人が亡くなったときの遺族年金の給付が受けられないという問題について、非常に不合理じゃないかということの質問があったわけですけれども、実はこういった海外勤務にかかわる不合理さというのは、他にもたくさん事例があることは大臣も御存じかと思います。  たとえば現在、日本からアメリカへ長期出張をしている人が十二万人近くいると言われているわけですけれども、そういう人が現地で仕事をする、そのときに本国、つまり日本の会社から給料をもらえばそのまま厚生年金にいるわけですけれども、たとえば現地に現地法人をつくって給料を得た場合に、そういった資格がなくなってしまう場合もあるというふうに聞いているわけです。まず、こういった点について二、三お聞きしたいのです。  資格について保険局の方にお聞きしたいのですが、たとえば現地法人から給与を得る場合に厚生年金を抜けたことになるのかならないのか、その点はいかがですか。
  154. 小林功典

    小林(功)政府委員 日本から外国に出張なり派遣されるといったケースにつきましては二種類ございます。厚生年金の適用ということを考えます場合には、事業主との使用関係というのが一番問題になります。その使用関係があるかないかの判断の一番大きなポイントが、ただいまお話がありましたように、企業の支払いがどうなっているかということでございます。  そこで、前に戻りまして、たとえば日本の会社から給料をもらい、いわば出向とかそれに近い形で外国の会社へ行くという場合、これは賃金が支払われますから、それで厚生年金の資格は続けるわけでありますが、日本の会社と縁を切って外国の会社へ勤務するとなりますと、日本の国内法であります厚生年金の適用はなくなるわけでありますから、出た段階で資格喪失の扱いをする、こういう扱いになっております。
  155. 菅直人

    ○菅委員 その場合、たとえば具体的な事例としてアメリカを例にとってみますと、アメリカにおいてもOASDIと言われる年金制度があって、これに強制加入をさせられるケースが数多くあるというふうになっていると思うわけです。この件についてはかなり以前といいましょうか、橋本厚生大臣当時から日米の間でこういった不合理をなくするための交渉が始まっているというふうに聞いているわけですけれども、まず、日米の間でのそういった交渉がどういう経緯で進んでいるか、その点についての現在の状況をお聞かせいただきたいと思います。
  156. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 年金制度に関します日米通算の問題でございますが、いまお話がございましたように、五十四年二月、アメリカの方から交渉の申し出がありまして、こちらも賛意を表明したわけでございます。そういたしまして、五十四年の七月に、東京で日米両国の厚生大臣が会談をしたということでございまして、その十月にはワシントンで、こちらから担当者が参りまして、技術的な問題についてまず第一回目のフリートーキングをいたしました。翌五十五年の八月に、アメリカの方から通算協定についてのドラフト案を送ってまいりまして、その後何回か文書による意見交換が行われたわけでございます。  たまたま先週の土曜日から私どもの資金課長を長といたします折衝の担当の者三名を派遣いたしまして、アメリカにおきまして、現在、実務的な問題点の詰めを行っております。そういう状況であります。
  157. 菅直人

    ○菅委員 その交渉過程の中で、一番簡単な形で言えば、いまのわが国の中で行われているような、たとえば厚生年金国民年金の通算というような形と同様な形で、日本の厚生年金なり国民年金と、向こうのOASDIとを単純に通算をするという方向で話が進んでいるのか。まだ交渉過程であるようですので、概略でいいんですけれども、何か非常に大きな問題点が横たわっているのか、それとももう大体そういった大きな問題点はないという見通しか、そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。
  158. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 基本的な考え方といたしましては、国内でも数珠つなぎ方式でやっております。いわんやお互い制度の仕組みの違う立場にございますので、やはりともかくも通算をするということでありますと、どうしても国内の通算方式と似たような形にならざるを得ないのじゃないかというふうに、私どもは判断をいたしております。それにいたしましても、お互いの資料の通報等が確実に行われませんと実際の業務が動きませんので、そういうような問題でありますとか、あるいは障害年金の取り扱いをどうするかとか、そういうような多分に技術的な面の詰めをいまやっているわけでございます。
  159. 菅直人

    ○菅委員 大臣お聞きのとおり、先日の審議の中でも、外国への勤務者が非常にふえている中でいろいろな矛盾が起きている。先ほど一部言いましたけれども、資格がなくなってみたり、日本でせっかく十五年なら十五年国民年金を掛けているのに、長期向こうに行ってみたら足らなくなったとか、十三年ぐらい厚生年金を掛けていたのに足らなくなったとか、また逆に、強制的に向こうで掛けさせられるけれども、三年や四年では事実上権利が取得できないでむだな費用に終わってしまったとか、そういうことが大変多いわけですけれども、いまの事務当局の話では、大きなところではそれほど問題がないんだということでもあるようですし、ここはやはり大臣の積極的な姿勢があればこの問題というのは一気に進展することも不可能ではないのではないかというふうに思うわけですけれども、この日米の年金の通算協定を実現することについての大臣の所見といいましょうか、決意のほどを聞かせていただきたいと思います。
  160. 森下元晴

    森下国務大臣 本格的な国際化時代を迎えまして国際交流が活発になっております。日本から出ていっております海外で活躍されておる方々の数は二十万とも三十万とも言われておりますし、これからもますますふえ続けるであろう、また、そうでなくてはいけないと思います。その中で、海外で働く方々の一番の心配事は、子弟の教育問題とか、それから医療の問題、特にいま御発言がございました年金制度の国際通算の必要性、重要性がますます高まっておるわけでございまして、ちょうど、いま御答弁局長の方からいたしましたが、去る土曜日に厚生省からアメリカに派遣をいたしまして事務的な詰めを行っておるわけでございます。早く日米間だけでも年金通算の協定にこぎつけまして、これができますと各国各地に及ぶわけでございますから、これは積極的にひとつ取り組んで、年金に加入していない方がないように、また、御不幸があった場合でも奥さんに御迷惑をかけないように、全力を挙げてやっていきたいという強い決意でおります。
  161. 菅直人

    ○菅委員 大臣の非常に積極的な決意を聞いて、この実現が一刻も早いことをさらにお願いをいたしておきたいと思います。  もう一つ、これは非常に具体的な事例に近いのですけれども、私の実際に相談を受けた事例の中で、もともと日本人の婦人なんですけれども、一度アメリカに帰化をしてさらに日本に戻って日本に帰化をしたという方で、これは余り細かいことを事前にお伝えしていたかどうかあれですが、七十歳になったときに日本国籍がなかったというケースなんですね。この方は、本来だったら明治の三十四年生まれですから老齢福祉年金がもらえる条件が整っていると思っていろいろ手続をとられましたら、最終的には、東京都の方から、あなたは七十歳に達した日において日本の国籍を有しないために国民年金法第八十条第二項本文の規定により同法第七十九条の二の老齢福祉年金は支給できませんという最終的な却下の通知が出たわけですね。七十歳の当時にもうすでに日本には帰っていたのだけれども、国籍を復活することがおくれたために、現在七十六歳の段階で日本の国籍が再度得られたんだけれども、国籍が当時七十歳時点でなかったからだめだということなんです。  いろいろ私も法律の条文をひっくり返してみたのですけれども、なぜこういうことが起きてしまうのか、また、もしこういうことが何らかの形で回避できる方法があれば教えていただきたいし、大体本来老齢福祉年金というものの性格上、掛金が十分に掛けられる期間がない方にほぼ事実上無条件で年金を渡しているのに、こういうケースが生じるということは何か対応がないのか、その点をお伺いしたいと思います。
  162. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 年金制度はある意味では非常に割り切った仕組みでございますので、事実関係によりましては、極端に言いますとたった一日違いでだめだったというようなこともあり得るわけでございます。そういう意味では年金制度の限界と申しますか、福祉年金につきましても国籍要件を前提にして給付の要件が定められておりますので、その限りにおいては現在の仕組みの中ではいかんともしがたいのではないか、かように思います。  もしそれを何とか変える方法はないかということであるとしますと、たとえばいまのように初め国籍をお持ちで一遍失ってまた再取得したという形だと思いますが、初めからない方が取得する場合もあるわけでございますので、そういうようないろいろな均衡論等もございますから、いまの段階ではちょっとむずかしいのじゃないか、こう思います。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  163. 菅直人

    ○菅委員 非常に割り切ったお答えで、制度運用上ある種の割り切りが必要だというのもわからないではないのですけれども、どうも割り切り方に血が通ってないといいましょうか、もう少し、すべてを緩くしていいとは思いませんけれども、いま私が申し上げたような国籍がなくてそして帰化をした時点がもうすでに七十歳を超えていたというような場合に、その七十歳の時点において国籍がなかったからだめだというふうな扱いというのはちょっと何か扱いが冷た過ぎるという感じがしますので、こういった点も、これからの改革の中で、そういうふうな冷たい扱いにならないような、たとえばある部分においては裁量の余地を残して審査をするとか、そういったこともぜひ配慮していただきたいとお願いをして、次のテーマに移りたいと思います。  これまでのいろんな審議の中でこれからの年金制度あり方ということがかなり大きな課題になっているわけですけれども、現在昭和五十五年の財政再計算に基づいていろいろな年金制度について語られているわけです。次回のこの財政再計算の時期についていろいろな含みであれこれと言われているようですが、いまの厚生省の姿勢としては、次回の財政再計算の時期、これは本来五年ずつがルールだということですけれども、実際にはこれまで何年か繰り上げてされたケースが多いわけで、特に出生率の低下などかなりこの数年の間でも変動要素が多いわけですけれども、どの時期に財政再計算をされるおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 法的に申し上げますと、前回が五十五年でございますから、六十年、少なくとも六十年までにということになりますけれども、いまお話がございましたように、前回の再計算の基礎になりました人口の推計が翌年には新しいのが出ているわけでございます。そういう状況でありますとか、あるいは先ほど来御議論のあります海外期間の長い方の取り扱いでありますとか、あるいはそのほかいろいろ差し迫って解決を急いだ方がいい問題も多うございます。そういうようなことを考えますと、内容のまとまりができ次第なるべく早く改正をする方がいいのではないか。ただ、一方におきまして、もう現在の段階ですと二十年、三十年後を見据えた将来のための年金あり方を考えなければいけませんから、そういう問題も考えますと若干の準備期間はどうしても必要であるというようなこともございまして、私どもとしましては六十年にはならないように何とかしたいというのが現在の心境でございます。
  165. 菅直人

    ○菅委員 六十年以前に行いたいということのようですけれども、余り手おくれにならないうちに、そういう変動要素を踏まえる問題を議論する上でも、実施をされた方がいいのじゃないかということを申し添えておきたいと思います。  それからもう一つ、これはかなり古い時期に大きな問題になって、現在の状況がどうなっているかということを少し確認のためにお聞きしておきたい問題ですけれども年金福祉事業団が大規模年金保養基地というものを建設するということでかなり大規模な用地取得を行っているわけですけれども、その後の経緯を見てみますと、いろいろな状況の変化の中で必ずしもその保養基地の建設というものが予定どおり進んでいない、ないしはその計画そのものも変更をしていたり、さらには全く手がついていないという様子であります。年金の財源というものをどういうふうに運用するかということはきょうも議論が多いところですけれども、その内容がかなりこういった方向にも使われているわけで、この大規模年金保養基地というものが現状においてどういうふうな形になっているのか、説明をいただきたいと思います。
  166. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 大規模年金保養基地は、四十八年の改正の際に事業団法の改正もお願いをいたしまして始められた事業でございます。その事業が構想された当時と比べまして、その後のオイルショック等によりまして事情が激変をいたしましたので、最近ではときにいろいろ御批判も受けておりますが、現在の状態は、兵庫県の三木と北海道の大沼の基地は五十五年七月にオープンをいたしまして、すでに順調に利用されております。それから新潟県の津南と鹿児島県の指宿の二基地について現在工事中でございまして、六十年オープンを目途といたしております。それから残りの基地については、とりあえずある程度規模の縮小を考えまして、と同時に、地域の特性を生かすという意味から、県に設計工事等を委託をするという方式をとることにいたしまして、地元の協力を仰いで事業を進めようということで、岩手県の田老、広島県の安浦、和歌山県の紀南、それから熊本県の方の北九州基地、それぞれ県と協議が整いまして、県中心で事業の計画が進められております。残余の四つについても現在県当局といろいろ話し合いを進めている状況でございます。
  167. 菅直人

    ○菅委員 これは相当大規模な用地取得が行われているわけで、実際動いているところはまだ二つということですけれども、たとえばこれに要する費用の利子ですとか、現在の維持管理費等は、どういう形で支出をされているわけですか。
  168. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 建設費用は借入金で行うわけでございますが、四十八年度から五十六年度まで総計いたしまして、借入金の総額が五百九十五億円でございます。そのための利子とそれから管理費が要るわけでございますが、四十九年度から五十六年度まで八年間で二百三億円ということでございまして、これは資金運用部から借り入れを行っております。それから返済する費用といたしましては、元金は厚生保険特別会計等からの出資金によっております。それから利息と管理費につきましては、厚生保険特別会計等からの交付金で賄っているわけでございます。
  169. 菅直人

    ○菅委員 つまり厚生保険特別会計ということは、厚生年金の掛金の中から払われていると理解していいわけですか。
  170. 山口新一郎

    山口(新)政府委員 この大規模年金保養基地の事業も厚生年金保険法に言います福祉施設、俗に言いますと福祉事業でございますが、その一環でございまして、厚生年金保険事業の一部でございますので、その費用は厚生年金保険料の中から賄われているということになります。
  171. 菅直人

    ○菅委員 きょうはこの問題でこれ以上細かくは申し上げませんけれども、とにかく厚生年金の掛金の中から利息と管理費だけでこの八年間で二百三億円の費用がかかっている。しかし実際には予定されていた保養基地そのものは十一カ所のうち二カ所はできたけれども、あとは途中であったり、さらに計画そのものがかなり怪しくなっていたりするということですから、こういったものの運用については、むだな経費をどんどんつぎ込むようなことのないように、今後もぜひ注意をしていただきたいと思うわけです。  時間もそろそろなくなりましたので、最後にこれは大臣に簡単な紹介をさせていただきたいのですけれども、きょうも年金の将来というものがこのまま推移すればいろいろな点で大変困難があるということが繰り返し議論をされてきたわけですが、実は年金という形だけではなくて、これからの高齢化の中でやるべきことというのはいろいろあると思うわけです。  実は、私が住んでおります武蔵野市が武蔵野市福祉公社というものをつくっているというのは、最近新聞などでも何度か紹介されているので大臣も御存じかと思います。これは簡単に申し上げれば、自分の家に住んでいて老後のいろいろなケアが受けられる。そのケアを提供する何といいましょうか世話役を市がやる。費用は市が持つのではなくて、それぞれ本人なり家族なりが負担をする。または現金がなくても持ち家を持っていれば、場合によったらそれを市が一種の担保に入れてお金を貸す。これまで社労でもいろいろ議論されましたけれども、民間の施設で一括で何千万か払い込めば一生めんどうを見てくれるというような施設が倒産をして大変に悲惨な形になったということも幾つかあるわけですけれども、これは公的な武蔵野市という自治体ですので、そういった形でいえばある程度安心ができるということで、いま大変注目をされているわけです。  年金の問題はよく言われるように、世代間の所得のある意味では再配分的要素もあるわけで、もちろんそういった意味での年金というのは大変重要だと思いますが、非常に裕福な、またはそれなりの経済力を持っている高齢者の方は、やはり自分の若い時期に蓄えたものの中で自分の老後の態勢もつくっていく。ただ、つくっていきたいけれどもなかなかそういう仕組みがないために、一時的にお金を払って入ってみたらつぶれて困ったとか、個人的に雇い入れてもなかなかむずかしいとかいうことがあるわけで、そういう点ではこの武蔵野市の福祉公社というのは大変注目をされてもいい一つの形ではないかと思うわけです。こういった自治体がいろいろな努力なり、モデルをつくっているわけですので、厚生省の方でも、これからの高齢化社会に向かって一つのやり方のモデルとしてぜひ注目をしてみていただければ何らかの参考になるのではないかと思うわけです。  そういうことを含めて、今後高齢化社会に向かっての年金及びそれを取り巻く情勢というのは大変厳しいと思いますし、年金問題はいま大きな転換期だと思いますけれども、その転換期に当たって、どのような覚悟でこの年金問題また高齢者問題に取り組もうとされているのか、最後に大臣に所見を伺いたいと思います。
  172. 森下元晴

    森下国務大臣 低成長時代の高齢化社会に対応する老後の暮らしの保障と所得の保障は結局年金をおいてはないというふうに思っておりますが、この年金制度をいかに上手に運用していくか。一元化の問題もございますし、負担の問題、また給付の問題等いろいろございます。臨調でも言われておりますように一つの転換期を迎えておりますし、厚生省自身でも近く見直しが迫られておる。いろいろ各制度間でもそれぞれりっぱな案を出されておるように聞いておりますし、またそれぞれの審議会等でも大体煮詰まってきたような感じでございますし、そういう新しい時代の転換期に際しまして私どもは前向きにやっていきたい。  武蔵野市の福祉公社の問題につきましても、私も新聞で見せていただきました。公的機関、それから総合的に、いわゆるボランタリーも含めましての相互援助、それから個人個人の自助自立、それから財産を担保にして福祉をお願いする、非常にうまく組み合わせた活力のある福祉社会を武蔵野市はつくっておるように私は思います。将来、私どもが厚生行政、福祉行政をやる上に参考になる点が非常に多いわけでありまして、こういう点も参考にいたしまして新しい時代に即して年金問題を今後前向きに取り組んでいきたい、このように思う次第でございます。
  173. 菅直人

    ○菅委員 終わります。
  174. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  175. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 この際、森井忠良君外四名から、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合、五派共同提案に係る修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。平石磨作太郎君。     —————————————  国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  176. 平石磨作太郎

    ○平石委員 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は  一、昭和五十七年度における厚生年金保険、船員保険及び拠出制国民年金年金額の物価スライドの実施時期を政府案より一カ月繰り上げ、厚生年金保険及び船員保険については昭和五十七年六月から、拠出制国民年金については同年七月からにすること。  二、福祉年金、児童扶養手当、特別児童扶養手当及び福祉手当の額の引き上げの実施時期を、政府案より一カ月繰り上げ、昭和五十七年八月からにすること。  以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  177. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 以上で修正案の趣旨説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。森下厚生大臣
  178. 森下元晴

    森下国務大臣 ただいまの日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合提出の修正案については、政府としては反対でございます。     —————————————
  179. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。今井勇君。
  180. 今井勇

    ○今井委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております国民年金法等の一部を改正する法律案及びこれに対して日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合が共同で提出した修正案につきまして、修正案に反対、原案に賛成の意を表するものであります。  所得保障の中心である年金制度を初め、母子家庭、心身障害者の方々に係る諸手当の制度につきましては、従来から充実が図られてきたところでありますが、国家財政の再建が課題とされている最近のきわめて厳しい財政状況のもとにあっても、老人、障害者等の方々に対しては社会経済情勢の動向に対応した適切な配慮がなされる必要があります。  厚生年金保険等の拠出制年金につきましては、消費者物価上昇率が五%を超えない場合には物価スライドは実施されないこととなっておりますが、政府原案は、昭和五十七年度においては、昭和五十六年度の消費者物価上昇率が五%を超えない場合であっても、特例としてその上昇率に応じた年金額の引き上げを実施することとし、また、福祉年金及び諸手当につきましても、これに準じた給付の改善を行うこととしており、老人、障害者等の方々の立場を配慮した適切な措置であると考えます。  また、物価スライド等の給付改善の実施時期につきましては、公務員給与等の引き上げが抑制されるというような非常に厳しい財政状況であるということから、例年よりは一カ月おくれとなっておりますが、これは、このような厳しい財政状況を考慮いたしますと、現状においては最大限の配慮の結果であると考えます。  一方、ただいま提出されました修正案は、物価スライド等による給付改善の実施時期を政府原案よりさらに一カ月繰り上げるものでありますが、これは、現在が財政再建を急務とするきわめて厳しい財政状況のもとにありますことから、賛成いたしがたいものであります。  以上、修正案に反対し、政府原案に賛成の意を表するものであります。  これをもちまして、私の討論を終わります。(拍手)
  181. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 次に、金子みつ君。
  182. 金子みつ

    金子(み)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております国民年金法等の一部を改正する法律案、並びにこれに対して日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合より共同で修正案が提出されておりますが、この修正案に賛成、原案に反対の討論をいたします。  六十五歳以上の人口がその国の総人口の八%を超えた場合、その国は高齢化社会に到達したものと言われていますが、わが国は現在すでに九・四八%と推計され、今後急速にかつ確実に高齢者は増加していく段階に入っております。  高齢者の生活保障に重大な役割りを期待されている公的年金制度あり方はことのほか重要な時期に直面しているといえましょう。このときに当たり、今回政府国民年金法等の一部を改正する法律案提出いたしましたが、その内容は、拠出制年金の物価スライドの実施時期及び福祉年金等の給付改善の実施時期について、従来より一カ月おくらせることとしておりますことは、国の財政再建のための政策と称してはおりますが、すべてに財政が優先するという考え方に基づく政策は福祉政策の後退であって、賛成することはできません。この際、当然のことながら、少なくとも従来の時期に戻すのが正しい政策といえるものと考えます。  長年、夫の扶養者として、独自の年金を有さないままの被用者の妻の年金権の確立の実現は、政府が署名を行いましたILOの婦人のためのあらゆる差別撤廃条約の趣旨を踏まえて、独立した婦人の年金権を確立することは焦眉の急であります。  さらに、現在八種類にもわたる各種公的年金制度は、その相互間の格差や矛盾を持っており、不公平な保障を生じてきている点につきましては、その抜本的改革を可及的速やかに実現させることが重要であります。  これら基本的な改革とあわせて、受給者や被保険者に対する相談体制や業務処理を強化し、国民に対するサービスの向上に努めることを強く要望し、本改正案について反対をいたします。  以上でございます。(拍手)
  183. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 次に、平石磨作太郎君。
  184. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私は、公明党・国民会議を代表して、国民年金法等の一部を改正する法律案に対し、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合共同提案に係る修正案に賛成し、政府原案に反対の立場から討論を進めるものであります。  いま、わが国は、急速な老齢化の進行、平均寿命の伸び、さらに特殊出生率の急激な低下など高齢化社会への入り口に立って、それへの対応を早急に整備しなければならないと思うものであります。  所得保障の中心をなす年金制度の抜本改正は、わが国の社会保障政策の中核であり、きわめて重要な政策課題であります。  本法案の諮問に際して、総理大臣諮問機関である社会保障制度審議会は、「長期的展望を踏まえた恒久的原則を速やかに確立し、国民の年金制度への信頼が高まることを期待したい。」と答申しており、政府厚生省は、抜本改正への一歩を早く示すべきであります。  しかるに、今回改正しようとする政府原案は、従来の決められていた物価スライドの実施時期をそれぞれ一カ月おくらせており、まさに福祉後退と言われても決して過言ではないのであります。  かかる措置に対して、厚相の諮問機関である社会保険審議会は、「実施時期の繰上げを求めるかねてからの当審議会意見に反するものであり、遺憾である。」との答申を行っており、他の審議会においても同様な趣旨の答申を行っているのであります。明らかに答申を無視したものと断ぜざるを得ないのであります。  以上の立場から、わが党は物価スライドの実施時期を従前のとおりに行うべく強く主張し、政府原案に反対の討論とするものであります。  以上です。(拍手)
  185. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 塩田晋君。
  186. 塩田晋

    ○塩田委員 私は、民社党・国民連合を代表し、国民年金法等の一部を改正する法律案について、修正案賛成、原案反対の討論を行います。  わが国は、すでに高齢化社会に突入していますが、将来人口を推定するならば、世界に例を見ないスピードで人口の超高齢化が進展することは必至であります。このような人口の高齢化がわが国の社会経済に及ぼす影響はきわめて大きなものがあり、速やかに長期的かつ総合的な高齢者対策を講じなければ、将来に大きな禍根を残すことになりましょう。  したがって、政府は、高齢者対策の基本理念とそれに基づく原則を示し、中長期的なビジョンを国民の前に明確にしなければなりません。とりわけ、長期的に安定した財政運営が求められる公的年金制度の将来展望を明らかにすることは、政治に課せられた重要な責務であると考えます。  御承知のとおり、わが国公的年金のうち、厚生年金共済年金は、ほぼ国際的な水準に達したと言われていますが、しかし、これとて今後の人口高齢化とともに、老齢年金受給者が急速に増加し、給付に要する負担が大幅に増加することが確実であり、高齢者が経済的に安定した生活を営めるように、年金制度の長期的、安定的な運営を図っていくことが重要な課題となっています。同時に、制度発足が新しい国民年金制度においては、老齢福祉年金や五年年金等のいわゆる経過的年金受給者が多数を占めており、その給付水準の改善が急がれております。  これらのためには、分立している現在の被用者年金制度間の格差是正、給付と負担のバランス、給付体系の見直し等、社会経済情勢の変化に対応できるような制度改革していく必要があります。しかも、後世代の人々に過重な負担を強いることがないように配慮し、年金改革を計画的に推進しなければなりません。  しかし、政府は、こうした年金制度の抜本的改革の方針すら明確にしないのみならず、実質的な年金額の切り下げをもたらす物価スライドの一カ月おくれを今回強行しようとしています。こうした政府の場当たり的あるいはその日暮らし的な政治姿勢は、全く無責任と言うほかなく、国民軽視以外の何物でもありません。われわれは、このような姿勢を断じて容認できないのであります。  私は、早急に国民が期待する年金制度の抜本的改革を行い、その内容水準の着実かつ長期の計画的改善の推進を図るべきだと思います。特にわが党がつとに主張してまいりました基礎年金、すなわちナショナルミニマム年金制度を速やかに創設する環境整備を確立するために、政府は全力を挙げられんことを強く申し添えまして、修正案賛成、原案反対の討論を終わります。(拍手)
  187. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 次に、浦井洋君。
  188. 浦井洋

    浦井委員 私は、日本共産党を代表して、国民年金法等の一部を改正する法律案に反対、五野党共同提案の修正案に賛成の立場から討論を行います。  現在年金受給者は千五百万人余にも及び、年金は、お年寄りや障害者など経済的に弱い立場にある方々が生活していく上で大きな支えになっております。  今日、勤労者の生活が、実質賃金の低下で苦しくなっている状態の中で、それよりも水準の低い年金生活者は一層苦しい生活を強いられており、一日も早く年金額が引き上げられるよう強く望んでいるのであります。  ところが本法案は、昭和五十三年より定着してきた年金のスライドの実施時期をおのおの一カ月おくらせようとしており、これは、年金受給者の期待を大きく裏切るものであります。しかも、このことは、年金のスライドのあり方から見て大きな問題を残すものとなっているのであります。  かつて社会保障制度審議会が、総理大臣あての意見で、年金額の自動スライド制が採用されてもタイムラグが重大な問題となる、タイムラグを短縮する努力が必要であり、一部予測値を取り入れるなどスライドの指標のとり方に特別の工夫を加えることが必要であろうと指摘しているとおり、年金額は、物価上昇に応じて可能な限り早い時期に引き上げることが必要であり、この趣旨に沿いスライド時期を早めるための努力を従来から行ってきたところであります。今回、スライドの時期を一カ月おくらせるごとは、これまでの努力の積み重ねをないがしろにするのみならず、年金のスライド制のあるべき姿の基本を崩すものであり、年金制度の重大な後退であります。  本改正案で、物価上昇五%以下でもスライドを実施するとしているのは、国民生活の窮迫下で当然の措置であり、当委員会において重大な内容として審議されたスライドの一カ月繰り下げは、まさに、福祉を切り捨て、軍事費と大企業優遇の補助金をふやす臨調答申の具体化にほかならず、年金制度全体の切り下げの突破口と言えるもので、とうてい許すわけにはまいりません。  以上の理由によって、日本共産党は、国民年金法等の一部を改正する法律案に反対の態度を表明するものであります。  日本共産党は、年金額のスライド時期を例年どおり実施することを要求するとともに、お年寄りや障害者などが安心して生活できる年金制度とするため一層奮闘することを表明し、討論を終わります。(拍手)
  189. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  190. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 国民年金法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、森井忠良君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  191. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  次に、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  192. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  193. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 この際、大石千八君外六名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ民主連合及び柿澤弘治君共同提案に係る本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。森井忠良君。
  194. 森井忠良

    森井委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合及び柿澤弘治君を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     国民年金法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるよう配慮すべきである。  一 本格的な高齢化社会の到来を迎えた今日、中高年齢者の雇用の改善との連係を図りつつ、公的年金制度全体の抜本的改善を図ること。特に制度間の不均衡の是正など体系的な整備充実に努めるとともに、年金制度の長期的安定化方策につき検討を行い、速やかにその確立を図ること。  二 拠出制年金の物価スライドの実施時期及び福祉年金等の給付改善の実施時期については、従来の経緯を踏まえ、前向きに適切な措置を講ずること。  三 婦人の年金権のあり方については、被用者の妻の国民年金への任意加入制度に関し早急に結論を出し、その結果を踏まえて総合的な見地から検討を進め、速やかにその確立に努めること。  四 各福祉年金については、引き続きその充実に努めるとともに、関係制度との関連を含め、基本的な検討を行うこと。  五 本格的な年金時代を迎えるに当たり、受給者、被保険者に個別的かつ具体的に対応できるよう年金相談体制を充実するとともに、業務処理体制の強化を図り、もつて国民に対するサービスの向上に一層努めること。  六 年金の給付については、老後の生活安定を図る立場から、業務処理体制の整備とあわせて支払期月、支払回数及び支払方法の制度間の整合について検討すること。  七 すべての年金は、非課税とするように努めること。  八 五人未満事業所の従業員に対する厚生年金保険の適用の問題について、具体的方策を樹立し、その適用の促進に努めること。  九 中国からの帰国者並びに国際化の進展に伴う海外長期在住者及び在日外国人等に対する年金制度について、適切な方策の確立に努めること。  十 積立金の管理運用については、極力、有利運用を図るとともに、民主的な運用に努めること。また、被保険者に対する福祉還元についても、なお一層努力すること。  十一 児童手当については、高齢化社会の担い手となる年少世代の長期的な展望に立つて、制度の基本的な検討を進めること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  195. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  大石千八君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  196. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。     —————————————
  197. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  199. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森下厚生大臣
  200. 森下元晴

    森下国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力をいたす所存でございます。      ————◇—————
  201. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 次に、内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び森井忠良君外六名提出原子爆弾被爆者等援護法案の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。森下厚生大臣。     —————————————  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案  原子爆弾被爆者等援護法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  202. 森下元晴

    森下国務大臣 ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者については、原子爆弾被爆者医療等に関する法律により、健康診断及び医療の給付を行うとともに、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律により、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当、保健手当等の支給を行い、被爆者の健康の保持増進と生活の安定を図ってまいったところであります。  本法律案は、被爆者の福祉の一層の向上を図るため、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律について改正を行おうとするものであります。  以下、その内容について御説明申し上げます。  まず第一は、医療特別手当の額の引き上げであります。医療特別手当は、原子爆弾被爆者医療等に関する法律の規定により、原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の状態にある旨の厚生大臣の認定を受けた被爆者であって、現に当該認定に係る負傷または疾病の状態にあるものに対して支給されるものでありますが、この医療特別手当の額を現行の月額九万八千円から十万二千四百円に引き上げるものであります。  第二は、特別手当の額の引き上げであります。特別手当は、原子爆弾被爆者医療等に関する法律の規定により、原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の状態にある旨の厚生大臣の認定を受けた被爆者のうち、医療特別手当の支給を受けていないものに対して支給されるものでありますが、この特別手当の額を現行の月額三万六千円から三万七千七百円に引き上げるものであります。  第三は、原子爆弾小頭症手当の額の引き上げであります。原子爆弾小頭症手当は、原子爆弾の放射能の影響による小頭症の患者に対して支給されるものでありますが、この原子爆弾小頭症手当の額を現行の月額三万三千六百円から三万五千百円に引き上げるものであります。  第四は、健康管理手当の額の引き上げであります。健康管理手当は、造血機能障害等特定の障害を伴う疾病にかかっている被爆者であって、医療特別手当、特別手当または原子爆弾小頭症手当の支給を受けていないものに対して支給されるものでありますが、この健康管理手当の額を現行の月額二万四千円から二万五千百円に引き上げるものであります。  第五は、保健手当の額の引き上げであります。保健手当は、爆心地から二キロメートルの区域内において直接被爆した者であって、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当または健康管理手当の支給を受けていないものに対して支給されるものでありますが、この保健手当の額を、一定の範囲の身体上の障害のある者並びに配偶者、子及び孫のいない七十歳以上の者であってその者と同居している者がいないものについては、現行の月額二万四千円から二万五千百円に引き上げ、それ以外の者については、現行の月額一万二千円から一万二千六百円に引き上げるものであります。  また、これらの改正の実施時期は、昭和五十七年九月一日といたしております。  以上がこの法律案を提案する理由及びその内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  203. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 次に、森井忠良君。
  204. 森井忠良

    森井議員 私は、ただいま議題になりました原子爆弾被爆者等援護法案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党、新自由クラブ・民主連合を代表いたしまして、その提案の理由を御説明申し上げます。  昭和二十年八月六日、続いて九日、広島・長崎に投下された人類史上最初の原爆投下は、一瞬にして三十万人余の生命を奪い、両市を焦土と化したのであります。  この原子爆弾による被害は、普通の爆弾と異なり、放射能と熱線と爆風の複合的な効果により、大量無差別に、破壊・殺傷するものであるだけに、その威力ははかり知れないものがあります。  たとえ一命を取りとめた人たちも、この世の出来事とは思われない焦熱地獄を身をもって体験し、生涯消えることのない傷痕と、原爆後遺症に苦しみ、病苦、貧困、孤独の三重苦にさいなまれながら、今日までようやく生き続けてきたのであります。  ところが、わが国の戦争犠牲者に対する援護は、軍人、公務員のほか、軍属・準軍属など国との雇用関係または一部特別権力関係にあるものに限定されてきたのであります。しかし、原子爆弾が投下された昭和二十年八月当時の、いわゆる本土決戦一億総抵抗の状況下においては、非戦闘員と戦闘員を区別して処遇し、原子爆弾による被害について国家責任を放棄する根拠がどこにあるのでしょうか。  被爆後三十数年間、生き続けてこられた三十七万人の被爆者と、死没者の遺族の、もうこれ以上待ち切れないという心情を思うにつけ、現行の医療法と特別措置法を乗り越え、国家補償の精神による被爆者援護法をつくることは、われわれの当然の責務と言わなければなりません。  特に今年六月には国連軍縮特別総会が開かれ、鈴木総理も出席の上演説されると聞いております。  わが国内においても、反核・軍縮・被爆者援護を求める声が一段と高まっている折から、政治もこれにこたえるべきであります。  国家補償の原則に立つ援護法が必要な第一の理由は、アメリカの原爆投下は国際法で禁止された毒ガス、生物化学兵器以上の非人道的兵器による無差別爆撃であって、国際法違反の犯罪行為であります。したがって、たとえサンフランシスコ条約で日本が対米請求権を放棄したものであっても、被爆者の立場からすれば、請求権を放棄した日本国政府に対して国家補償を要求する当然の権利があるからであります。  しかも、原爆投下を誘発したのは、日本軍国主義政府が起こした戦争なのであります。われわれがこの史上最初の核爆発の熱線と爆風、そして放射能によるはかり知れない人命と健康被害に目をつぶることは、被爆国としての日本が、恒久平和を口にする資格なしと言わなければなりません。  第二の理由は、この人類史上未曽有の惨禍をもたらした太平洋戦争を開始、また終結することの権限と責任が日本国政府にあったことは明白であるからであります。  特にサイパン、沖繩陥落後の本土空襲、本土決戦の段階では、旧国家総動員法は言うまでもなく、旧防空法や国民義勇隊による動員体制の強化に見られるように、六十五歳以下の男子、四十五歳以下の女子、すなわち、全国民は国家権力によってその任務につくことを強制されていたことは紛れもない事実であります。今日の世界平和が三十万人余の犠牲の上にあることからしても、再びこの悲劇を繰り返さないとの決意を国の責任による援護法によって明らかにすることは当然のことと言わなければなりません。  第三の理由は、すでに太平洋戦争を体験している年代も数少なくなり、ややもすれば戦争の悲惨さは忘れ去られようとしている現状であります。原爆が投下され、戦後すでに三十数年を経た今日、被爆者にとってはその心身の傷跡は永久に消えないとしても、その方々にとっては援護法制定されることによって初めて戦争が終わるのであります。  私たちは以上のような理由から、全被爆者とその遺族に対し、放射能被害の特殊性を考慮しつつ、現行の軍属・準軍属に対する援護法に準じて、原爆被爆者等援護法を提案することといたしたのであります。  次に、この法律内容の概要を御説明申し上げます。  第一は、健康管理及び医療の給付であります。健康管理のため年間に定期二回、随時二回以上の健康診断や成人病検査、精密検査等を行うとともに、被爆者の負傷または疾病について医療の給付を行い、その医療費は、現行法どおりとすることにいたしたのであります。なお、治療並びに施術に際しては、放射能後遺症の特殊性を考え、はり、きゅう、マッサージをもあわせて行い得るよう別途指針をつくることにいたしました。  第二は、医療手当及び介護手当の支給であります。被爆者の入院、通院、在宅療養を対象として月額三万円の範囲内で医療手当を支給する。また、被爆者が、安んじて医療を受けることができるよう月額十万円の範囲内で介護手当を支給し、家族介護についても給付するよう措置したのであります。  第三は、被爆二世または三世に対する措置であります。被爆者の子または孫で希望者には健康診断の機会を与え、さらに放射能の影響により生ずる疑いがある疾病にかかった者に対して、被爆者とみなし、健康診断、医療の給付及び医療手当、介護手当の支給を行うことにしたのであります。  第四は、被爆者年金の支給であります。全被爆者に対して、政令で定める障害の程度に応じて、年額最低三十万千二百円から最高五百七十四万二千五百円までの範囲内で年金を支給することにいたしました。障害の程度を定めるに当たっては、被爆者が原爆の放射能を受けたことによる疾病の特殊性を特に考慮すべきものとしたのであります。  第五は、被爆者年金等の年金額の自動的改定措置、すなわち賃金自動スライド制を採用いたしました。  第六は、特別給付金の支給であります。本来なら死没者の遺族に対して弔慰をあらわすため、弔慰金及び遺族年金を支給すべきでありますが、当面の措置として、それにかわるものとして百万円の特別給付金とし、五年以内に償還すべき記名国債をもって交付することにいたしました。  第七は、被爆者が死亡した場合は、十五万円の葬祭料を、その葬祭を行う者に対して支給することにしたのであります。  第八は、被爆者が健康診断や治療のため国鉄を利用する場合には、本人及びその介護者の国鉄運賃は無料とすることにいたしました。  第九は、原爆孤老、病弱者、小頭症その他保護、治療を必要とする者のために、国の責任で、収容・保護施設を設置すること。被爆者のための相談所を都道府県が設置し、国は施設の設置・運営の補助をすることにいたしました。  第十は、厚生大臣諮問機関として、原爆被爆者等援護審議会を設け、その審議会に、被爆者の代表を委員に加えることにしたのであります。第十一は、放射線影響研究所の法的な位置づけを明確にするとともに必要な助成を行うことといたしました。  第十二は、日本に居住する外国人被爆者に対しても本法を適用することにしたのであります。  第十三は、厚生大臣は速やかにこの法律に基づく援護を受けることのできる者の状況について調査しなければならないことにいたしました。  なお、この法律の施行は、昭和五十八年一月一日であります。  以上が、この法律案の提案の理由及び内容であります。  被爆後三十七年を経過し、再び原爆による犠牲者を出すなという原水爆禁止の全国民の願いにこたえて、何とぞ、慎重御審議の上、速やかに可決されるようお願い申し上げます。(拍手)
  205. 唐沢俊二郎

    ○唐沢委員長 以上で両案の趣旨説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る二十日火曜日午前十時十五分理事会、同十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十九分散会      ————◇—————