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1982-04-13 第96回国会 衆議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月十三日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 唐沢俊二郎君    理事 今井  勇君 理事 大石 千八君    理事 丹羽 雄哉君 理事 金子 みつ君   理事 森井 忠良君 理事 平石磨作太郎君    理事 米沢  隆君       小里 貞利君    古賀  誠君       斉藤滋与史君    白川 勝彦君       竹内 黎一君    戸沢 政方君       友納 武人君    長野 祐也君       葉梨 信行君    浜田卓二郎君       船田  元君    牧野 隆守君       川俣健二郎君    川本 敏美君       田邊  誠君    栂野 泰二君       永井 孝信君    草川 昭三君       塩田  晋君    浦井  洋君       小沢 和秋君    菅  直人君       柿澤 弘治君  出席国務大臣         労 働 大 臣 初村滝一郎君  出席政府委員         労働政務次官  逢沢 英雄君         労働大臣官房審         議官      小粥 義朗君         労働省労政局長 吉本  実君         労働省労働基準         局長      石井 甲二君         労働省労働基準         局賃金福祉部長 望月 三郎君  委員外出席者         衆議院法制局第         五部長     蔵本 人司君         大蔵省主計局主         計官      篠沢 恭助君         大蔵省主税局税         制第一課長   滝島 義光君         大蔵省銀行局貯         蓄奨励官   上川名清次郎君         厚生省社会局生         活課長     浅野 楢悦君         厚生省年金局企         画課長     渡辺  修君         労働省労政局労         政課長     松原 東樹君         労働省労働基準         局監督課長   岡部 晃三君         労働省労働基準         局賃金福祉部福         祉課長     石岡愼太郎君         建設省計画局宅         地開発課長   市川 一朗君         建設省計画局民         間宅地指導室長 嵩  聡久君         建設省住宅局民         間住宅課長   伊藤 茂史君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   西中  清君     草川 昭三君 同日  辞任          補欠選任   草川 昭三君     西中  清君     ――――――――――――― 四月九日  原子爆弾被爆者等援護法案森井忠良君外六名  提出衆法第一三号) 同月十二日  民営旅館業の経営安定に関する請願大石千八  君紹介)(第一九三四号)  同(木野晴夫紹介)(第一九三五号)  同(椎名素夫紹介)(第一九三六号)  同(塩崎潤紹介)(第一九三七号)  同(正示啓次郎紹介)(第一九三八号)  同(早川崇紹介)(第一九三九号)  同(大西正男紹介)(第一九四九号)  同(工藤巖紹介)(第一九五〇号)  同(倉成正紹介)(第一九五一号)  同(砂田重民紹介)(第一九五二号)  同(谷洋一紹介)(第一九五三号)  同(吹田愰君紹介)(第一九五四号)  同(渡海元三郎紹介)(第一九五五号)  同(石井一紹介)(第一九九一号)  同(江藤隆美紹介)(第一九九二号)  同(加藤六月紹介)(第一九九三号)  同(中山正暉紹介)(第一九九四号)  同(越智伊平紹介)(第二〇四三号)  同(中西啓介紹介)(第二〇四四号)  同(楢橋進紹介)(第二〇四五号)  同(船田元紹介)(第二〇四六号)  同(三原朝雄紹介)(第二〇四七号)  同(太田誠一紹介)(第二〇六一号)  同(栗原祐幸紹介)(第二〇六二号)  同(古賀誠紹介)(第二〇六三号)  同(佐藤信二紹介)(第二〇六四号)  同(林義郎紹介)(第二〇六五号)  同(平沼赳夫紹介)(第二〇六六号)  同(藤井勝志紹介)(第二〇六七号)  同(森山欽司紹介)(第二〇六八号)  同(米沢隆紹介)(第二〇六九号)  療術の制度化阻止に関する請願谷洋一君紹  介)(第一九四八号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願(  安藤巖紹介)(第一九六九号)  同(小川国彦紹介)(第一九七〇号)  同(大島弘紹介)(第一九七一号)  同(岡田利春紹介)(第一九七二号)  同(勝間田清一紹介)(第一九七三号)  同(川俣健二郎紹介)(第一九七四号)  同(串原義直紹介)(第一九七五号)  同(清水勇紹介)(第一九七六号)  同(新盛辰雄紹介)(第一九七七号)  同(鈴木強紹介)(第一九七八号)  同(高沢寅男紹介)(第一九七九号)  同(竹内猛紹介)(第一九八〇号)  同(武部文紹介)(第一九八一号)  同(寺前巖紹介)(第一九八二号)  同外四件(土井たか子紹介)(第一九八三  号)  同(中路雅弘紹介)(第一九八四号)  同(野口幸一紹介)(第一九八五号)  同(馬場昇紹介)(第一九八六号)  同外一件(日野市朗紹介)(第一九八七号)  同(東中光雄紹介)(第一九八八号)  同外一件(細谷治嘉紹介)(第一九八九号)  同(矢山有作紹介)(第一九九〇号)  同外一件(竹入義勝君紹介)(第二〇七〇号)  国立腎センター設立に関する請願奥田敬和君  紹介)(第一九九五号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  外一件(大原亨紹介)(第一九九六号)  同(馬場昇紹介)(第一九九七号)  同(福岡義登紹介)(第一九九八号)  同(松本善明紹介)(第一九九九号)  年金官民格差是正に関する請願石橋政嗣君  紹介)(第二〇一三号)  身体障害者に対する福祉行政改善に関する請願  (石橋政嗣君紹介)(第二〇一四号)  障害福祉年金受給者所得制限廃止に関する請  願(石橋政嗣君紹介)(第二〇一五号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願  (石橋政嗣君紹介)(第二〇一六号)  在宅重度障害者介護料支給に関する請願(石  橋政嗣君紹介)(第二〇一七号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願(石  橋政嗣君紹介)(第二〇一八号)  無年金脊髄損傷者救済に関する請願石橋政嗣  君紹介)(第二〇一九号)  在宅重度障害者暖房費支給に関する請願(石  橋政嗣君紹介)(第二〇二〇号)  身体障害者雇用に関する請願石橋政嗣君紹  介)(第二〇二一号)  労災重度被災者暖房費支給に関する請願(石  橋政嗣君紹介)(第二〇二二号)  労災脊髄損傷者の遺族に年金支給に関する請願  (石橋政嗣君紹介)(第二〇二三号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願  (石橋政嗣君紹介)(第二〇二四号)  重度障害者福祉手当増額に関する請願石橋  政嗣君紹介)(第二〇二五号)  旧々労災被災者労働者災害補償保険法適用に  関する請願石橋政嗣君紹介)(第二〇二六  号)  労災年金最低給付基礎日額引き上げに関する  請願石橋政嗣君紹介)(第二〇二七号)  福祉施設充実等に関する請願(林百郎君紹  介)(第二〇六〇号) は本委員会に付託された。 四月十三日  早稲田医療学園あん摩、はり、きゆう科設置  認可反対等に関する請願外五件(甘利正君紹  介)(第一七八四号)  同(伊藤公介紹介)(第一七八五号)  同(石原健太郎紹介)(第一七八六号)  同(小杉隆紹介)(第一七八七号)  同外四件(河野洋平紹介)(第一七八八号)  同(田川誠一紹介)(第一七八九号)  同外五件(中馬弘毅紹介)(第一七九〇号)  同(山口敏夫紹介)(第一七九一号)  同(依田実紹介)(第一七九二号)  同(安藤巖紹介)(第一八六〇号)  同(岩佐恵美紹介)(第一八六一号)  同(浦井洋紹介)(第一八六二号)  同(小沢和秋紹介)(第一八六三号)  同(金子満広紹介)(第一八六四号)  同(栗田翠紹介)(第一八六五号)  同(小林政子紹介)(第一八六六号)  同(榊利夫紹介)(第一八六七号)  同(瀬崎博義紹介)(第一八六八号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一八六九号)  同(辻第一君紹介)(第一八七〇号)  同(寺前巖紹介)(第一八七一号)  同(中路雅弘紹介)(第一八七二号)  同(中島武敏紹介)(第一八七三号)  同(野間友一紹介)(第一八七四号)  同(林百郎君紹介)(第一八七五号)  同(東中光雄紹介)(第一八七六号)  同(不破哲三紹介)(第一八七七号)  同(藤田スミ紹介)(第一八七八号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一八七九号)  同(正森成二君紹介)(第一八八〇号)  同(松本善明紹介)(第一八八一号〉  同(三浦久紹介)(第一八八二号)  同(三谷秀治紹介)(第一八八三号)  同(蓑輪幸代紹介)(第一八八四号)  同(村上弘紹介)(第一八八五号)  同(山原健二郎紹介)(第一八八六号)  同(四ツ谷光子紹介)(第一八八七号)  同(渡辺貢紹介)(第一八八八号) は委員会の許可を得て取り下げられた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第二八号)  早稲田医療学園あん摩、はり、きゆう科設置  認可反対等に関する請願外五件(甘利正君紹  介)(第一七八四号)、同(伊藤公介紹介)  (第一七八五号)、同(石原健太郎紹介)(  第一七八六号)、同(小杉隆紹介)(第一七  八七号)、同外四件(河野洋平紹介)(第一  七八八号)、同(田川誠一紹介)(第一七八  九号)、同外五件(中馬弘毅紹介)(第一七  九〇号)、同(山口敏夫紹介)(第一七九一  号)、同(依田実紹介)(第一七九二号)、  同(安藤巖紹介)(第一八六〇号)、同(岩  佐恵美紹介)(第一八六一号)、同(浦井洋  君紹介)(第一八六二号)、同(小沢和秋君紹  介)(第一八六三号)、同(金子満広紹介)  (第一八六四号)、同(栗田翠紹介)(第一  八六五号)、同(小林政子紹介)(第一八六  六号)、同(榊利夫紹介)(第一八六七号)、  同(瀬崎博義紹介)(第一八六八号)、同(  瀬長亀次郎紹介)(第一八六九号)、同(辻  第一君紹介)(第一八七〇号)、同(寺前巖君  紹介)(第一八七一号)、同(中路雅弘君紹  介)(第一八七二号)、同(中島武敏紹介)  (第一八七三号)、同(野間友一紹介)(第  一八七四号)、同(林百郎君紹介)(第一八七  五号)、同(東中光雄紹介)(第一八七六  号)、同(不破哲三紹介)(第一八七七号)、  同(藤田スミ紹介)(第一八七八号)、同(  藤原ひろ子紹介)(第一八七九号)、同(正  森成二君紹介)(第一八八〇号)、同(松本善  明君紹介)(第一八八一号)、同(三浦久君紹  介)(第一八八二号)、同(三谷秀治紹介)  (第一八八三号)、同(蓑輪幸代紹介)(第  一八八四号)、同(村上弘紹介)(第一八八  五号)、同(山原健二郎紹介)(第一八八六  号)、同(四ツ谷光子紹介)(第一八八七  号)及び同(渡辺貢紹介)(第一八八八号)  の取下げの件      ――――◇―――――
  2. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川俣健二郎君。
  3. 川俣健二郎

    川俣委員 きょうから勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案の審議に入るわけですが、私の記憶によれば、この法案はたしか十年前にこの通常国会創設されたわけですが、その後幾多の変遷を経たのですが、現在のところの利用状況というか、そういったものを少し詳しく聞かしていただいて質問に入りたいと思います。
  4. 望月三郎

    望月政府委員 先生指摘のように、財形法が成立いたしましてから約十年を経過しておりますが、この制度うち財形貯蓄制度は四十七年一月に発足いたしましたが、その後順調な伸びを示しまして、昭和五十七年一月末現在、契約者数約千二百七十万人、貯蓄残高約五兆三千三百四十七億円、事業所数約百三十二万事業所となっております。  また、財形貯蓄を原資とする持ち家融資は、昭和五十七年二月末現在、総額一千五十六億円となっております。  それから、財形持ち家分譲融資制度昭和四十八年九月に発足しまして、本年の二月末現在の累計貸し付け決定件数は千七百七十三件、金額は約六百八十三億円でございます。  また、財形持ち家個人融資制度昭和五十二年四月に発足をいたしまして、本年二月末現在の累計貸し付け決定件数は一万一千八十八件、金額は約四百六十九億円でございます。  なお、財形進学融資制度は五十三年の十月に発足しまして、本年二月末現在の累計貸し付け決定件数は五百六十件、金額にして約三億七千万円でございます。
  5. 川俣健二郎

    川俣委員 いわば、一つはこの制度恩典を加えておるから貯蓄がふえるであろうという、それが非常にうまく当たったと私は思うのですが、もう一つ住宅建設、これはいろいろと建設省問題等もあるのでしょうが、なかなか進まない。いろいろと当局も苦労されてはいると思うのです。  そこで、これは最初は民間にだけ適用であったのですが、いまや公務員勤労国民全体ということでありますが、ちょっと論議に入る前に、もう一つ、この勤労国民に入らないのはこの国会秘書なんですがね。これはまあ長年言われてきた古くて新しい話ですが、質問が逆になったのですが、端的に聞くと、この問題を少しは検討しましたか。
  6. 望月三郎

    望月政府委員 国会議員秘書につきまして、財形法適用があるかどうかという御指摘だと思いますが、国会議員秘書特別職国家公務員とされておりまして、またその雇用期間が限られるなどの特殊性もありますが、各種保険適用関係、給与の支払い関係等から見ても、国を事業主とする勤労者と観念されますので、財形法適用を受けるものと考えております。
  7. 川俣健二郎

    川俣委員 せっかく出たから、受けるものと考えられるんじゃなくて、これは事務当局でも参考人に呼んで聞くべきだろうけれども、少しはそういう話を国会事務当局と詰めましたかと聞いておるのです。
  8. 望月三郎

    望月政府委員 この問題につきましては秘書会代表の方と一度相談をしようということを言っておりますが、国会庶務部とは一応連絡をとって話し合いに入っておりますが、秘書の正式な代表の方とまだ十分詰めた段階になっておりません。そういう次第であります。
  9. 川俣健二郎

    川俣委員 部長、いま担当の石岡さんが耳打ちしたように、対象者は望んでいるわけだ。秘書会と話をする余地はない、それはもう希望しておるんだから。問題は、いま初めて耳打ちされてわかったんだろうが、庶務課と大分詰めているはずなんだ。その辺の感触はどうかと聞いている。
  10. 石岡愼太郎

    石岡説明員 お答えいたします。  私ども事務当局は、すでに秘書会方々ともお話し合いをその後させていただいておりまして、秘書会でもこの問題に非常に関心を寄せられているというふうに現在感じております。  ただし、この問題につきましては、結局のところ、国会事務当局といいますか、それが事業主としての立場としてどのような援助措置なりを国会秘書方々に講ずるか、予算なんかも絡みました問題がございますので、引き続きまして前向きの方向で国会議員秘書の方に財形制度がうまく適用できますように、私ども秘書会ともこれから詰めさせていただきまして、傍らまた国会事務当局とも折衝してまいりたいというふうに考えております。
  11. 川俣健二郎

    川俣委員 そういうことであれば、さらに促進方を期待しておきますが、秘書もやはり勤労国民の一人なんで、ただ勤めが特殊な関係があるんですが、労働省から見た場合にはやはり勤労者財形法にフォローアップすべきではないかと私は確信を持っておるので、しかも対象者は希望しておるので、ぜひ促進方をお願いしたいと思います。この問題はこれで打ち切ります。  そこで、三つ目ですが、先ほど部長から実績等を伺いまして、十年の結果というものを、ここで創設に当たったわれわれとしては改めて感を新たにするわけですが、それじゃ一体今回どこをどのようにいじくろうとするのか、ちょっと簡潔に聞かしてくれませんか。
  12. 望月三郎

    望月政府委員 簡潔に申し上げますと、今回の改正二つ大きな柱がございまして、一つ財形個人年金という制度を新たに創設したいという点でございます。これは勤労者老後の安定した生活、豊かな生活援助しようという構想で考えている年金制度創設、それから第二は、勤労者住宅建設促進するために従来の制度を若干いじりまして、住宅控除制度というものを廃止するかわりに、新たに住宅建設のための財形融資を受ける者に対して利子補給をしていこうという二本でございます。
  13. 川俣健二郎

    川俣委員 そこで、二つ目住宅建設促進は、これはわれわれ国政に当たる者は超党派で考えなければならぬ問題ですが、十年の歩みを見ると何か三年ごとにいじくるのですが、いじくるというのはプラスアルファで積み重ねていくのなら話はわかる、たとえば年金でも援護法でもそうですが、この委員会で。ところが、ようやく軌道に乗って国民が頭に入ってこれでいこうというように進むとぱたっと廃止になる。何で住宅控除制度というのを廃止するのか。
  14. 望月三郎

    望月政府委員 住宅貯蓄控除制度は、これまで住宅取得目的とする貯蓄を奨励促進する効果をそれなりに上げてきたものではございますが、持ち家取得に伴う負担軽減には直接結びつくものではなくて、持ち家促進施策としては住宅取得に対する援助に比して効果が少なく、計画的な住宅取得に結びつきにくい面もあること。  それから第二は、政策上の効果を含めて勘案の上、一般住宅貯蓄控除制度についてはすでに先生御承知のように五十六年一月から廃止されているという事情もございます。  それから三つ目には、この制度老後目的など住宅取得以外の目的貯蓄に利用する事例等も見られることなど、持ち家促進施策としての効果や実施の実情に問題も見られまして、単なる節税の方途として考えられている向きもございますので、必ずしも住宅取得のため直接のインセンティブになっていないという実情にあったわけでございます。  そのため、財形政策としてはこのような住宅貯蓄中心持ち家促進施策をこの際改めまして、財形貯蓄により集積されました資金を活用して、勤労者住宅取得促進する財形持ち家個人融資制度について、一般会計からの利子補給によりまして貸付利率を引き下げるとともに、融資限度額を従来の三倍から五倍に引き上げることによって、住宅取得しようとする勤労者に対してより効果的な施策を講ずることとしたわけでございます。  また、このような持ち家促進対策の強化と並びまして、貯蓄については先ほど申し上げましたように財形年金貯蓄制度創設いたしまして、高齢化社会の進展に対応してその蓄積を促進することが急がれる年金貯蓄に特に手厚い税制上の優遇措置を講ずるよう政策上の展開を図ることにした次第でございます。
  15. 川俣健二郎

    川俣委員 年金問題のあれはまず度外視しましょう。  そこで、利子補給の問題は後で論議しますけれども、持ち家住宅取得促進に直接結びつかないという考え方は少し独断的じゃないかな。その証拠に、いまの実績を言ってごらんなさい。全然いないというのか。いま現在の実績を言ってごらんなさい。
  16. 望月三郎

    望月政府委員 先ほど申し上げましたように、財形貯蓄が五兆三千億ほどの貯蓄にたまっておりますが、住宅ローンとしての実績はわずか一千億ということでございますので、この数字から端的に申し上げましてもなかなか住宅建設に結びついていないということが言えるのではないかというように考えられます。
  17. 川俣健二郎

    川俣委員 そういうことじゃなく、あなた自身もそうなんだ。貯金はあるけれども家が建てられないというのは足りないからだよ。貯金はあるけれども家を建てるところまでいかないというのは、お金が足りないからだ。問題は、じゃ、これを利用している人間はどれくらいいるんだ。
  18. 望月三郎

    望月政府委員 利用者は九十万八千人でございます。
  19. 川俣健二郎

    川俣委員 九十万人余りの人がいるというのに住宅取得促進につながらないという考え方はどういうわけなんだ。
  20. 望月三郎

    望月政府委員 結局お金をためてもなおかつ住宅を建てたくても建てられないという方もいらっしゃるわけでございますが、そのほかにもこの住貯制度一つの税金の恩典という面もございまして、とにかく税制効果がありますので、それに対してやや無目的にためておるという方もございます。そういった面と、もう一つは、やはり今回の改正の中身と関連いたしますが、金利が高いとかそういった財形ローンを利用し得ない、しにくい面等もございまして、それらをあわせてやはり住宅が建てにくいという状況になっているのではないか、こういうように思うわけでございます。
  21. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、無目的にやっているという見方もあるというのは、住宅貯蓄控除を許可するときには、この人はうちを建てるかどうかということを全然無審査でやっているわけだな。
  22. 望月三郎

    望月政府委員 それは一応家を建てるという目的でやっているのだろうと思いますが、それほどかたい意味ではなくてやっている方も相当あるわけでございます。
  23. 川俣健二郎

    川俣委員 その辺は事務当局どうなんだ。うちはちゃんとあるのだけれども住宅貯蓄控除を許しておるのだということか。どうなんだ。そんなことないはずだよ。ちゃんと審査しているはずだよ。
  24. 石岡愼太郎

    石岡説明員 お答えいたします。  住宅貯蓄控除を受けます場合には、もとよりその前提としての住宅貯蓄契約というものを交わすことになっております。この契約におきましては、一定期間一定額を積み立てるという内容が一つ契約事項になっているのは当然のことでございますが、と同時に、満期になりました場合には所要の金額銀行等からローンを受けまして建てますという約束ももう一つこの契約の中で交わされております。そういう体制をとっておりますから、貯蓄を開始するときには家を建てるという目的は形式的に担保されるという形になっておりますけれども、実際問題、貯蓄をやっていかれまして、その多くの人たちの中には、部長が先ほど言いましたように地価が非常に高くて取得がなかなか困難であること等々の事情で、なかなか家が建たない。それで家を建てないと税額控除が今度は税制上過去の分にさかのぼりまして追徴されるというペナルティーもございますので、非常に労使間でいろいろトラブルが起こっておるということを聞いているような次第でございます。  くどいようでございますけれども、私が申し上げたいのは、一応形式的に住宅目的ということを担保しながら貯蓄を進めさしていただいておるわけですが、いろいろ事情の変更が貯蓄中にございまして、不本意ながらなかなか家が建てられないという方々がかなり多い事情にあるのではなかろうかと考えております。
  25. 川俣健二郎

    川俣委員 そうなんだ。部長のさっきのあれだと無目的にやっているように、一般の人が聞いたら何だ労働省、無審査でやっているのかと……。もし建てる者が満期になって建てる気がなかったら罰金まで取るんだから、労働省しっかりしておるのですよ。それでなかったら労働省は何やっているんだということになる、大蔵省から見た場合。  そこで、今度みんな行革の問題に頭を移そう。もし貯蓄控除をやめたらどのくらい財源が浮くんだ。大蔵省どうですか。
  26. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答えいたします。  この制度廃止に伴う増収効果では昭和五十七年度で約三十億円でございますが、五十七年度はその廃止に伴う効果が全面的にあらわれてまいりませんので、これが完全にあらわれると仮定いたしました場合の増収額、これを私ども平年度ベースの増収額と言っておりますが、これは二百九十億円程度になろうかと存じます。
  27. 川俣健二郎

    川俣委員 三百億くらい浮くんだよ。本来から言うならば、この秋の国会の行革の財源に堂々と入るべきなんだ、三百億だから。労働省は行革やらないからいい官庁だなんていってほめられたようだけれども、年金とか、厚生省ばかりたたかれたけれども、これなら労働省だって三百億の財源を大蔵省にねらわれたという以外にないじゃないですか。どうなんです。これは審議の結果、この委員会ではイエスかノーか、こんなのはだめだということは言える余地があるのですか。どうですか。
  28. 望月三郎

    望月政府委員 租税特別措置法によりまして税額控除の問題はすでに衆参両院を通過いたしまして成立しておりますので、この問題につきましてはすでに改正法が成立しておりますので、それと両輪のごとくこの財形法改正案を審議していかなければならなかったわけでございますが、向こうの方が先に成立してしまったということでございますので、この点についてはいまの段階ではいかんともしがたいということでございます。
  29. 川俣健二郎

    川俣委員 車の両輪のごとくというか、同時審議するというのじゃなくて、技術論として、税法に引っ張られたのか、税法が先なのか母法が先なのか、考え方としてどうなんですか。この日にちが遅くなったということを何も私は責めているんじゃないのです、大人の論議なんだから。そうじゃなくて、大蔵省、税法の方が財形法を引っ張ったのですか。どうなんですか。
  30. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答え申し上げます。  先生の御発言の中に三百億円という財源を大蔵省がねらったんじゃないかということがございましたが、実はこれは労働省昭和五十七年度の財形関係改正事項の一環としてこの項目が入っていたわけでございます。確かに住宅貯蓄控除は大ぜいの方に利用されておりますけれども、先ほどの御議論の中にありましたが、結果として住宅建設に結びつかない住宅貯蓄というものが相当ありまして、その場合にはそれまでに受けました税額控除、これは賃金を支払う方がその分を賃金を支払う際に源泉徴収いたしまして過去の税額控除分を税務署に払い戻すという措置をとることになっておるわけですが、そのようなケースが急増しております。  そこで、本当に労働者の方で家を建てる方、この方には貯金の段階ではなく、本当にお金を借りて家を建てるという段階の援助措置に切りかえた方が実効が上がるという全体的な判断をなさいまして、ワンパッケージとして御要求なすってきたわけであります。非常に口幅ったい言い方でございますが、私はその労働省の御要求をさわやかという言葉を使っていいのかどうかわかりませんが、全体として非常に筋の通ったものだと思いました。大蔵省は世間から、何か御要求があればすぐ切るというふうな印象を与えておりますけれども……(「そのとおりじゃないか」と呼ぶ者あり)ちょっと口が滑りましたが、これは私どもとしては非常に気持ちのよい御要求であった。非常にむずかしい問題もございましたが、一緒になって考えたということは申し上げられると思います。
  31. 川俣健二郎

    川俣委員 さわやかだとあなたは答弁を堂々とやるけれども、僕ははっと思ったんだ。あなたは労働省の担当者だから、口幅ったいなんて自分では断っているけれども、一緒に考えたのか、あなたの入れ知恵をしたのか、どっちなんですか。
  32. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 先ほど大蔵省からも申し上げましたが、財形法改正につきましては、先ほど部長が申し上げましたように、労働省が発想をし、労働省が現下の勤労者の財形問題について基本的に考えをいたしまして、その一環として、特に住宅問題については実際問題として最後の結果が、住宅取得について非常に貧困といいますか、なかなかできないという事情を踏まえまして、また住貯の控除制度につきましての実態を踏まえまして、やはり住宅をつくるということには、そのつくる段階に援助をすることがより直接的であり、かつそれが有効である、しかもそれに対して利子補給なりあるいは貸し付けの金額を五倍にするというようなことをあわせまして、全体的なものとして考えまして、労働省の発想におきましてこういう措置を考えたわけでございます。
  33. 川俣健二郎

    川俣委員 どうです、労働省局長が言っているじゃないですか。これは労働省の法律なのです。だから社労委員会でやっている。だからあなたの方では相談を受けたわけでしょう。どうなんですか。
  34. 滝島義光

    ○滝島説明員 これはいまの局長の御答弁にありましたように、あくまでも労働省からの御要求がございまして、それを受けて私どもが検討させていただいたということでございます。
  35. 川俣健二郎

    川俣委員 そうでしょう。そうだとすれば、廃止するということの相談を大蔵省にやるときの意思決定の場でこれは審議すべきじゃないのですか。大蔵省の方で租税特別措置法を通してしまってから、通されちゃったからしようがないという提案はないでしょう。どうなんです。これはどっちが意思決定するんですか。
  36. 望月三郎

    望月政府委員 いままでの経過を御説明いたしますと、今回の財形制度改善は、私ども労働省がもちろん考えて、大蔵省と相談しながら法案として決定をいたしまして、去る二月の九日に私どもは国会へこの法案を提案したわけでございます。租特法の改正法案は二月二日ということでございますので、ちょうど一週間おくれではございましたが、今国会へ二月の段階で提出をしたわけでございます。国会の審議状況によりまして、本年三月三十一日で期限切れになる措置等を含む租特法改正法案の方は、先ほど申し上げましたように、三月いっぱいで可決成立したわけでございますが、財形法改正法案はきょう初めて審議に入ったわけでございます。  私どもとしては、両法案の並行的審議を予想していたわけでございますが、国会の諸般の事情によるものでございまして、関係委員会でも住貯の廃止等につきましては相当審議が行われたわけでございますので、そういう意味も含めて、今日非常に遅まきでございますが、よろしく審議方をお願いしたいというのが私どもの気持ちでございます。
  37. 川俣健二郎

    川俣委員 論議がもめてから、整理してみたら、そういうことを言うんだ。滝島君わかったか、そういうことなんだ。  ところが、あなたの方が積極的な発言を、口幅ったいことを言うようだけれどもと言って――どうも私が聞くところによると、あなたの方が先に言ってきて、だから租税特別措置法で先に通してというようにしか考えられない。ところが、いま部長が苦し紛れに弁明するのは、何しろ日程の関係で、こういうことなんだ。ところが、日程の関係では済まされないような気がする、この委員会として。だから、税法通ってしまったから、この担当委員会としてはイエスかノーか言えないというような論議がありますかね。しかも廃止だから。プラスアルファでないから。
  38. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 御指摘のように、この住貯の廃止財形法の現在御審議をいただいている中身の問題とは相互に関連し合っておりまして、それ自身、今後、財形を通じて住宅取得する全体的な政策をどう判断するかということでございます。  住貯につきましては、財形法の一部改正法案と関連はございますけれども、すでに国会提出され、しかもこれが採決をされておるわけでございます。その過程におきましても実は論議がございまして、むしろ住貯の廃止が、この財形法の今度の審議、いまお願いを申し上げている審議と非常に関連をし合っているわけでございまして、それがどうなるかということと非常に関係があるのではないかという、言ってみれば、同じような一つの総合性からする議論もございまして、私どもとしては、この現在行われております社労における御審議が、当然法律案として提案されておりますので、これについてぜひ御審議をお願いをいたしまして、この成立をお願いをしたいということと、それから、住貯廃止ということは一つの大きな変化でございますので、これに実損が伴わないように最大限の努力をいたしますということでお答えを申し上げまして、成立をしたという経緯が実はございます。
  39. 川俣健二郎

    川俣委員 だから、私の聞きたいのは、これは日程のちぐはぐは、予算委員会、僕もやってきたからわかるのだ。そうではなくて、労働省としては、確かに二百九十億控除がなくなった、九十万人には全く不利な話なわけだ、だけれども、財形法全体を管掌しておる労働省としては、それに見返るものはちゃんと考えておるということのあれがあるというのですか。どのようにあるのですか。言ってごらんなさい。三百億出してくれ、ここへ、どこがプラスなのか。
  40. 望月三郎

    望月政府委員 先生の御指摘でございますが、利子補給額は、初年度は五千六百万円ということで、わずかではございますが、十月からございますので、五千六百万円というわずかなものでございますが、これは後年度の負担が非常に大きくなるわけでございまして、平年度ベースでは、少なくとも二百四十億円の利子補給額が必要となるものと考えられます。  また、もう一つ年金貯蓄創設に伴いまして、これも後年度の負担が非常に増大してまいりまして、少なく見積もりましても、七十五年ごろには退職後の利子非課税分だけでも年間百八十億円の、まあ国にとっては減収が見込まれるわけでございまして、住貯の廃止とこの二つとを総合しますと、やはり勤労者全体にとっても、私どもは今回の改正案の方がプラスになる制度だというように確信をしているところでございます。
  41. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると主計官、今度のこの利子補給の予算、何ぼのっておるの。
  42. 篠沢恭助

    ○篠沢説明員 ただいまもちょっと出ておりましたが、五十七年度、初年度の利子補給額は五千六百万円でございます。五十七年度の融資予定戸数としては三万一千戸見込んでおりますが、制度発足十月と考え、初年度といたしましては、ごくわずかの時期だけ利子補給がかかってまいります。初年度でございますから、利用戸数もまだ少ないといったようなことから、五千六百万円の予算を計上しております。  ただ、労働省で推計していただきましたが、これは利子補給でございますので、直ちに相当増加してまいりまして、翌年度は二十億ぐらい、あるいはその次は五十億近いというふうに、すぐふくれてまいりまして、大体利用が平準化するのではないかという十年後におきましては、ただいま労働省でもちょっとお触れになりましたように、二百四十億と推計しておられるようでございます。  これ以外に、年金の方のいわゆる個人年金貯蓄に対する税制の優遇分も入ってくる、こういうことでございます。
  43. 川俣健二郎

    川俣委員 年金の方はまた後で……。  そうすると、十年後は二百四十億というのですか。十年後はこの三百億が、こっちは一千億になるかもしれないですね。  それから、千三百四十八万円というのは何だ、この予算に計上しているのは。
  44. 篠沢恭助

    ○篠沢説明員 ただいま先生がおっしゃられました約一千四百万円の罰金は、労働省予算で雇用促進事業団等の分として計上されている分でございます。これ以外に、先生御承知のとおり、住宅金融公庫の窓口を通しましてこの財形を利用していただく分がございます。この分の方がむしろ利用の戸数としては多いものでございますから、建設省の予算に約四千二百万円を計上してございます。合計で五千六百万円でございます。
  45. 川俣健二郎

    川俣委員 五千六百万ね。五千六百万が二百四十億になる計算はしてくださいよ、後で質問するから。大蔵省でもどっちでもいいから。  その前に、この利子補給をやるということは、わかりやすく言うとどういうようなことですか。具体的に説明してください。
  46. 望月三郎

    望月政府委員 利子補給の仕方は、限度額五百五十万円までに限りまして、財形住宅融資を受ける者に対して、初年度及び二年度二%利子補給、三年、四年、五年の三カ年にわたりまして一%利子補給をするという内容でございます。
  47. 川俣健二郎

    川俣委員 そうするとこういうことか。五百五十万まで限度だね。それで、七・九九%を二%というと五・九九%、二%を利子補給してもらうわけだな。それから、三年から五年までの間は六・九九%の利子でいくわけだ。そうすると、五年間で計算すると、一人につき五年間に三十七万円だ。さて今度はこっちの五万円を十年間住宅控除あったのだから、それだけでも五十万と三十七万の違いがあるわけだ、それだけ端的に比べた場合。ばっさりやられなければ五十万の恩典があったであろうが、今度は一人につき三十七万の恩典しかない。今度はさらにもし五十万円を借りるか、五十万円を恩典を受けた分を恩典を受けなくなったために借りなければならぬでしょう。借りるかどうかということになると、八%で計算しても年間四万円になる。各個人から見るとローンが二十五年で百万円になるのだ。そうすると、どう見たって各個人にとってはメリットがないのじゃないですか。  それからもう一つ、あなた方うちを建てたかどうか知らぬけれども、これで建てるかどうか知らぬが、住宅金融公庫は五・五%、厚生年金還元融資が六・〇%。そうなると、せっかく皆さんが苦心の作――労働省が入れ知恵したか大蔵省が入れ知恵したか、自主的な発想の労働省の案だか知らぬけれども、いまのあれはメリットが五・九九が二年、六・九九が三年なんだ。そうなるとどうです。利口な消費者としては、国民としては、果たしてこの方が利用価値があるのだろうか、どうです。私自身が労働者の場合は、住宅金融公庫か厚生年金還元融資に走るね、どうです。
  48. 石岡愼太郎

    石岡説明員 細かい数字の問題でございましたので、私からお答え申し上げます。  一人当たりの利子補給額は、ただいま御案内がありましたように、正確に申しますと、私ども三十七万八千円ぐらいだと考えておりますが、そういう金額に相なります。  これに対しまして、住貯の場合は十年間で五十万円の税額控除があるから、個人的なメリットはむしろ住貯の方にあるのではないかという御指摘でございますが、実は財形貯蓄の限度額は五百万円と御承知のようになっておりまして、そういう関係から申しますと、結論から申しますと、十年間で五十万円の税額控除が実際には受けられないということになろうと思います。なぜならば、五十万円の税額控除を十年間で受けるということは、毎年五万円の税額控除を受けるということになります。この毎年五万円の税額控除というのは、実は貯蓄が五十万円以上ありましてその一〇%だということであるわけでございますから、五十万円の税額控除を受けるためには、十年間毎年五十万円ずつかける、こういうことになります。そうしますと、十年で掛金だけで五百万円に達するわけでございます。しかしながら、この十年間におきましては、その五百万円から実は金利が生じまして、それがその都度元本の方に加わっていくわけでございます。そういうことからいたしますと、五百万円を掛金でおかけいただきますと、実は元金が、いろんな金利によって違いますが、十年目には、たとえば九百万とか一千万にもなりまして、財形貯蓄の非課税枠である五百万を超えるわけでございます。  かようなことから、五十万円の税額控除を受けることは現実問題としてはむずかしいわけでございまして、十年間でございますと、大体年三十五万円ずつくらい貯蓄をされまして、十年目に三百五十万円になったところでそれに利息を加えまして、大体元本五百万の範囲におさまる、こういうことでございますから、大体十年間で受けられる税額控除は、貯蓄額に比例しまして三十五万円くらいになるのが現実ではなかろうかと思います。そうなりますと、個人的には住貯の方が利子補給よりも大きなメリットがあるということは、私率直に申し上げまして言えないのではなかろうかと思います。  それから、それに対します八%の金利の問題をおっしゃいましたけれども、税額控除につきましては、確かに理論上金利を付しましてこれを計算することができます。しかしながら、と同時に、約三十八万円の利子補給をいただきましたときには、それだけ返済金が少なくなり手元にお金が残るわけでございますから、それをたとえば銀行に預けたケースを御想定いただければわかりますように、三十八万円につきましても同様に金利が理論上生ずるわけでございまして、約三十八万円と、先ほど申しました意味での税額控除三十五万円と比べますと、金利面でも大差がないのではないかというふうに私は考える次第でございます。  これが第一点に対するお答えでございます。  第二点は、公庫の五・五とかあるいは年金事業団の六・〇%の融資がありますので、かかる利子補給制度をとりましても、財形制度を御利用される方々が期待できないのではないかという点につきましては、公庫の融資にいたしましても、年金の融資にいたしましても、限度額がございます。公庫の場合はたとえば新年度から六百二十万、年金の場合は六百万になっていますが、これは保険に入るのが十五年以上という実は一番最高の融資額でございます。かかる融資額に限度がございますので、それだけでは現下の住宅事情に照らしますと、家がなかなか建たないという事情方々も多いわけでございまして、それにさらに財形の融資を組み合わせまして、勤労者ができるだけ負担の少ない形で公的融資をうまく組み合わせまして持ち家を建設していきたいというのが私どもこの利子補給を導入しました際の基本的な考え方でございます。
  49. 川俣健二郎

    川俣委員 いまあなたの長い説明は、ほかの人方にも論議してもらって、私も聞いています、議事録も読んでみますけれども、結局こういうことなんだな。  私が思うには、年とって定年間近になれば、せっかく将来家を建てねばならぬのだから、だから貯金ぜいというようにずっと進めてきたものをばっさりやって、先に金を借りろというような局面になったような気がするのだな。だから、あなたどんなに説明したって頭金なんだから、頭金の五十万があるかないかによって二十五年で百万違うというんだよ。五十万というのはどういうことかというと、黙っていたって貯蓄控除の恩典が五十万あるかないかによって、ローンの二十五年で百万違うのだから、だとすれば一歩下がって、大蔵省どうです。そこまで労働省がこっちの方がメリットがあるというなら、貯蓄控除と両方あった方がいいかもしらぬ。どうです。
  50. 滝島義光

    ○滝島説明員 財源に余裕がありますれば両方あった方がそれは目的達成のためにプラスだと思いますが、御承知のような財政事情ということを考えますと、その辺はなかなかむずかしい問題があろうかと思います。  それから、財源の有無とは関係のない問題でございますが、先ほど来何回か労働省から御指摘がありました問題点、つまりこの制度が、まじめに利用される方もあると同時に乱用されている部分もあるという点も考えなければいけないのではないかと思います。結局、貯蓄の段階ではなくて、本当に家を建てられるその段階での行政措置、これは乱用ということがないわけでございますから、制度として純化することになる、そういった点も考えなければいけないのではないかと考えます。
  51. 川俣健二郎

    川俣委員 言葉じりをつかむわけじゃないんだが、まじめにふまじめにという言葉はやめなさいよ。いいですか。さっき言ったように、貯蓄控除をやって五年過ぎたら、うち建てる気はない、十年たってもうち建てる気はないと言ったらペナルティーを取るんだよ、あなた。何を言うんだよ。まじめもふまじめもないじゃないか。労働省はちゃんとチェックしているんだから、それは考え直せ。そんな野方図に労働省はやっているんじゃないんだよ。  それから、財源に余裕があれば利子補給貯蓄控除と両方あった方がいいだろうとあなたはいみじくも言った。問題は財源なんだよ、うち建たないというのは。いまの制度が悪いからうちが建たないんじゃないの。銭がないからでしょうが。そうでしょうが。財源がないから、財源の窮屈な折からという文案でないんだよ、労働省の提案は。それじゃ、そういう提案に直すか。いまの貯蓄控除は促進しない、利子補給にすれば促進する、こういうことが解明されなければこれはだめだ。どうです。ちょっと言って見なさい。二百四十億になると言うならなるように計算して聞かしてみてくれよ、いまの五千万が。
  52. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 財源論というのも、これは現在の段階におきましては大変重要な問題であると思いますが、私どもは、要するに財形貯蓄によりまして住宅を建てたい方々、その方々に現実的にそれを取得してもらう方法は一体何だろうかということをまず考えたわけでございまして、それにはやはり金利の問題が基本である。その中で現在、先生指摘のように住金が五・五、年金事業団融資が六%、財形融資の金利が八・二四という大変格差がございます。政策的な金融とは言えない、そういう状況でございますので、この際、いろいろな世論を調査してみましてもやはり金利の問題であるということに目を当てた一つの選択、それが私どもの考え方であったわけでございます。
  53. 川俣健二郎

    川俣委員 それじゃ、論議を進めましょう。  大蔵省から言わせれば二百九十億から三百億の財源を確保できない。ということは、国民から言わせれば逃がすわけだ。しかし、そのかわり将来二百四十億の見返りがあるであろうというのは、何年後で、どういう計算なのか聞かしてみてください、二百四十億になるという計算を。
  54. 石岡愼太郎

    石岡説明員 将来の利子補給所要額の推計をやっておりますので、御披露させていただきます。  私ども、先ほど言いましたように、五十七年度におきましては、半年間の利子補給でもございますので、一万六千人の実は利子補給対象者を見込んでおります。これが次第に増加してまいりまして、十年後におきましては約六万二千名になるのではないか。そこで、この十年後の六万二千名が、非常にかたく見積もりました場合に、十年目から以後横ばいになる。実は五年間の利子補給でございますから、ちょうどその十年目から五年を経過した十五年目におきまして、人数が固定するわけでございます。すなわち、利子補給対象者は、先ほど言いました新規六万二千人掛ける五倍ということで三十一万になるわけでございます。この総計三十一万の人たちに対する利子補給の単価を粗っぽく申し上げますと、一年目の方につきましては約十一万、二年目の方も十一万の利子補給がありまして、後はだんだん下がるわけでございますが、それを平均しますと、約八万ぐらいになります。したがいまして、三十一万人に八万円を掛けますと、約二百四十二億という数字が出てまいるわけでございます。
  55. 川俣健二郎

    川俣委員 十五年後か。議事録に残っておるだろうから……。  それでは、十五年後にもし住宅貯蓄控除が残っておるとすれば、どのぐらいになると思いますか。あなたの二百七、八十億というものは、本来から言えば五十万の控除の恩典があるがいまの段階では平均三年ぐらいだ、三・何年ぐらいだから二百九十億ぐらいだ、こういうことなんだな。大蔵省、そうですな。課長、二百九十億の計算はそうだな。そうすると、十五年後はこれはどのぐらいになっておるのだろうか。あなた方はおつむがいいのだから計算できるだろう。
  56. 滝島義光

    ○滝島説明員 いまお尋ねの点につきましては、計算しておりません。
  57. 川俣健二郎

    川俣委員 労働省、どうですか。
  58. 石岡愼太郎

    石岡説明員 私どもも同様に計算いたしておりません。  ただし、最近の住貯の新規加入者といいますか、その伸び率、あるいは言いかえますと住貯契約者の伸び率というものは従来より少し落ち込んでまいっております。そういった事情も考えますと、推計が非常にむずかしいために、私どもとしては、十五年後に及ぶ住貯契約者の数を正確には把握し切れない状態でございます。
  59. 川俣健二郎

    川俣委員 しかし、あなた方も幸せな人方だな。このぐらい計算はすべきだろう。こっちの方は計算しておいて、ばっさりやる方は計算していませんからなんて返事されたら、場所によっては怒られるよ、僕は黙っておとなしくしておるけれども。見なさい、この統計にはどこ減っておるのだ。減っていますか、二百九十億。だんだんに九十万人が減っていますか。どこに数字が出ていますか。何ページですか。
  60. 石岡愼太郎

    石岡説明員 私は、住貯契約者の数が減っておりますと、先ほど御答弁申し上げたつもりはございません。ただ、従来と比べますと住貯契約者数の増加の伸び率が若干鈍っているのが昨今の状況ではなかろうか、この背景には恐らく住宅建設の不振とか所得の低下とか、そういった社会的、経済的な要因がいろいろあるのではないかと思っております。
  61. 川俣健二郎

    川俣委員 そこで総合的に、局長、どうですか、これはあなた自信がありますか。こうなればいまよりうちが建ちますか。五万円の貯蓄控除をばっさりやって利子補給が、よくて五・九九、六・九九。しかし、わずか五年だ。そんなものだけでは……。せっかく貯蓄控除を考えたときにはもっと信念を持って提案しておったわけだ。これは論議をもう一回やろうか。これで大丈夫かなと言ったら、今度はうちが建つと思います。三年後また、建たないよ、これ。また、建ちませんからまた変えますと言う。三年ごとに変わっているもの。これはどうですか。
  62. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 これまでの財形の結果を率直に見てまいりますと、大ざっぱな話で恐縮でございますが、約五兆円を超えております。その中で一兆円に満たない金額が住貯をやっておるわけでございますが、その中で、実際にいわゆる公的なルートを通じて住宅が建ちましたのが一千億分に満たない、こういう現実でございます。そこで私どもは、御指摘のように、住貯制度をつくったいきさつはございますけれども、やはり実際に出口といいますか、建てる段階での措置というものが非常に重要であるということから、政策的な選択としてこれを提案申し上げているわけでございます。  そこで、こういうことで建つのかというお話でございますが、私どもは幾つかのモデルを現在つくってございます。一番最適だと思いますのは、先ほど先生指摘のように、住金が五・五、年金が六、私の方の財形が約六%ちょっとぐらいでございますが、そうなりますと、大体政策金利として一貫性を持つであろう。これをできれば利用者勤労者が三位一体で、つまり三つの制度を合わせてその資金計画を練っていただければ、現実的な対応が大きく前進するんじゃないかという気がいたします。これにつきましては、幾つかのモデルをつくっております。それによって、大体そういうセット方式でやれば、現在の収入との勘案におきまして、その負担は大体適当な負担の限度の中で処理できるんじゃなかろうかということを考えておるわけでございます。
  63. 川俣健二郎

    川俣委員 財形貯蓄が五兆円になったんだよな。この五兆円を労働省が運用して何とかならないんだろうかね。その辺に頭を使った方が早いんじゃないかと思う。労働省のものとは言えないが、労働省の力作の十年間の成果が五兆円の貯蓄になったことは間違いないんだ。大蔵省はこれを認めると思う。これを基礎にしてもう少し持ち家というものを促進できないだろうか。  もっと観点を変えて言えば、十五、六万のサラリーマンは、自宅から通っているのと下宿かマンションへ入っている者との違いというものは大変でしょう。しかし、ほとんどが家のないアパート暮らしだよ。これを見ると、もう少し五兆円というものを種にしてパターンを大きくして論議する必要はなかったかな。こっちの方の控除をやめて、こっちの方を五年間一%、二%利子補給してもらおうなんという、しかも初年度は五千万か、十五年後は二百四十億ぐらいになるであろうなんて、十五年後の二百四十億の価値がどのくらいか知りませんが、大蔵省はその辺も計算しているのでしょう。二百四十億の価値というのはいまのどのくらいの価値なのか。そんなこと並べて、こっちの方は得でございますなんと言ったって、納得しないよ。  その辺どうですか。論議ではなくて、もう少し変わった観点に立って、改廃するんなら、そういうこともあったではないか。貯蓄奨励はもう終わったんだ。大体それはすっかり当たったんだ。われわれこれは認めます。貯蓄奨励というこれがなかりせば、こんなに貯蓄はふえなかっただろう。しかし家はさっぱり建たない。しかし貯蓄の額は五兆円ある。  部長、これどうです。少し抽象論でもいいから聞かせてくださいよ。
  64. 望月三郎

    望月政府委員 先生のおっしゃる意味もよくわかるわけでございますが、私どもこの問題につきましては、昨年の通常国会等でも相当先生方から御指摘をいただいたところでございますので、相当真剣に考えたつもりでございます。  結論としてはこういう結果の法案でお願いしたいと思っておるわけでございますが、何しろ勤労者住宅が建てにくいという理由にいろんな理由があるわけでございますが、これは勤労者だけに限らない理由がございまして、一つは地価が高いという問題が一番ウエートが高いかと思います。第二は建設費が非常に高い、高騰しているという点がございます。それから第三は、これは財形の利子が高い。七・九九にはなりましたが、利子が高いという問題。この三つがあるわけでございますが、いろんな研究者の調査等によりますと、その地価とそれから建設費と利子の原因の比率が四対二対一だということが言われておるわけでございます。  その四対二対一ということで利子が三番目になるわけでございますが、物価の安定とか地価の安定ということについては、これは労働省だけでできるものではございませんし、政府が一体となってやらなければならぬ課題でございます。そこで労働省だけでできるのは、何とか財形貯蓄財形ローンの利子を下げたいということについて真剣に取り組んだ結果、利子補給ということに落ちついたわけでございますが、これとてもなかなか、先ほど大蔵省からも御説明がございましたように、利子補給をむしろ整理するという時代の中で、どうしても勤労者住宅というものが一番おくれているという認識について関係者の理解が得られましたので、こういう形でお願いしているわけでございます。  したがいまして、細かい議論がいろいろあるわけでございますが、私どもとしてはこれが、十分ではございませんが現在私どもがとり得る一番の施策であるというように確信をしてお願いしているわけでございますので、どうかよろしく御審議のほどをお願いしたいというふうに思うわけでございます。
  65. 川俣健二郎

    川俣委員 五兆円を種にしてやるという問題は一労働省だけではいかぬと思う。それは後で大臣にもぜひ閣議でキャンペーンを張ってもらいたいが、問題は住宅なんだ。もういまの国民生活というのはほとんど住宅です、東京都は。もう七、八万でしょう、住居費が。しかも自分の物にならないものの七、八万が多いんだから、統計によると。  そこで、それにしてももう少し納得したいのは、大蔵省が言うわけじゃないが、国民から言えば三百億確かに逃がすわけだ。それに対して、十五年後に二百四十億メリットがありますと言うのじゃなくて、現実に三百億、そしてことしは五千万。五千万と三百億との首っ引きだけだ、国民から見た場合。それはどういうように推移していくのだろうかね。来年はどのくらい、再来年はどのくらいにいって、どういうふうに推移していくのですか。石岡さん、計算していませんか。十五年後の二百四十億なんて聞かされたって、とてもじゃないけれども……。
  66. 石岡愼太郎

    石岡説明員 先ほど一部御紹介申し上げました、私どもで試算した利子補給額の所要額を若干年度別に申し上げてみたいと思います。  五十七年度は、先ほどからお答え申し上げておりますように、利子補給額は約五千六百万でございます。それで、以後、先ほどのような前提で利子補給対象者が私どもふえてくると思っておりますが、そういう考え方に立ちますと、五十八年の所要利子補給額は二十一億三千万程度と見込まれます。
  67. 川俣健二郎

    川俣委員 五十八年がいきなり二十一億、それはどういう計算根拠ですか。
  68. 石岡愼太郎

    石岡説明員 これは、五十八年度におきましては新規に三万四千人程度の利子補給対象者が生ずるという前提に立ってはじいておるものでございます。
  69. 川俣健二郎

    川俣委員 三万四千人の基礎はどういうことですか。
  70. 石岡愼太郎

    石岡説明員 先ほど申しましたように、五十七年度は、半年分で一万六千人という数字を利子補給の積算の根拠にしております。したがいまして、平年度ベースに直しますと、実は三万二千人程度を五十七年度対象にしているわけでございまして、それが徐々に増加していくという計画でございます。そういたしますと、五十八年度におきましては三万四千という新規の申し込み者が出てまいりまして、もっと正確に言いますと、五十七年度で翌年度回しの利子補給の負担となった人もまじりまして、先ほど申しましたように二十一億の利子補給予算が必要なのではないかと一応積算いたしておる次第でございます。  ちなみに、五十九年度におきましては約五十億、六十年度におきましては七十七億、順次ふえまして、七十一年度、十五年後におきましては約二百四十億の利子補給予算が必要ではないかと試算いたしております。
  71. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、来年二十一億三千万、これは大蔵省は、サマーレビューにおいて覚悟しておるわけだ。しかし二百七十億は浮く。これは大変な稼ぎだ。  ところが、どうしても理解できないのは、十五年後に二百四十億になりますからいま現実の二百七十億とそう損得ないでしょうという言い方だ。それはよしなさいと言うの。ただ、だんだんに家が建っていくかどうかというのは、後世、きょうの論議が、おたくの方が見通しがよかったのかどうかということがわかるわけです。  ただ、いままでの財形法の審議のあり方を見ると、三年ごとに変えているんだよね。変えているばかりじゃなくて、今回のこの改正というのは租税特別措置法でばっさりやって、この社労委員会の母法を審議するところはイエスもノーも言えないというスタイルは、きょうは衆議院の法制局の方も聞いてもらっていますし、それから調査室長にも聞いてもらっておりますが、やはり母法たるものが意思決定したから大蔵省がそれを受けてやったのだという考え方をしないと、これは何のための国会審議なのかわからぬですよ。それが一つ。  一歩下がって、それならこういう方法なら家が建つという論議は十年、十五年たてば初めてわかる。  三つ目は、現実二百七十億を吸い上げて五千万、来年は二十一億、こういうようなかっこうでオーケーぜいと言ったって、私の感じではちょっとその辺がどうかなと思っております。  そこで、時間があれですから、大臣、いままでの事務当局と私と論議しているの聞いてもらってわかると思うのですが、五兆円ためました、これは労働省の成果、財形法の成果なんです。この五兆円をもとにして勤労者の、特に住宅難である東京都に持ち家制度をもっと促進するということを大胆に、これは五兆円持っているのだから建設省なり総理府なり全体に論議する必要があると思うのだが、その辺ひとつ、端的じゃなくて少し長く大臣のお話を聞きたいのですが、どうです。
  72. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 当初この法律案をつくるときに、財形貯蓄をやっておるが現在高が四兆七千億ぐらいある、ところがこれを利用して家を建てる人が借りた金が一千億程度だ。そこでどういうわけかと聞きましたら、利息が高過ぎる、八・三四%だ、したがって、一般の市中銀行と何ら変わりない、だから金融がしにくいからもう少しこの点を考えなければいけないということで、利子補給制度を考えたわけなんです。そういたしますと、御承知のとおりに五年間のうちの当初一、二年間だけは金を借りても支払いをするに一番きついときであるから利子補給を二%ずつやりましょう、したがって、八・三四%が六・三四%になる、あとの三、四、五の三カ年間を一%ずつ下げましょうということでやっていきますと、平均して公庫あるいは厚生年金等々ダブらせて六%が頭なんですよ、限度が。六%を切るようなことはない。六%を台にしてやれば家もできるのじゃなかろうかという考え方一つ。  もう一つは、従来の貸付限度を五百五十万程度に見た場合に、三倍ないし五倍、したがって二千万を頭にして金を貸すようにしたらどうか。そういうことから、これはいいことなんだなと私も思いましたので、ひとつ事務当局に命じましていろいろと大蔵省とのかけ合いをやって、この法案をいいことなんだと私、自信を持ったものですから、国会にお願いをして法律に出しているわけなんです。  御承知のとおりに税法関係と並行してやっておったのですけれども、国会の審議上これが後になっておる。私は当初から、いい法律であるならば非常にいいことなんだから早く進めなさいということであったのですけれども、今日の状態である。  いま先生のお話を聞いて、二百七十億大蔵省に御加勢をするということを初めて伺って、不勉強の至りで私もびっくりしたわけでございますが、御承知のとおりに月に一千億ずつ貯蓄がふえておるわけですね。だからして五兆三千三百億にもなっているのですから、それを種にして将来もっと何とか考えるべきじゃなかろうかというような御発言がありますが、そのとおりに私も考えざるを得ない。しかし、一応この法律をつくって実行さしてもらわぬと、そうした後でこういう点がまずい、これはこういうふうになるからということであれば再度考え直さなければいかぬのじゃないかというのがいまの気持ちだ。  先生との質問応答があって初めていろいろと内容がわかったわけでございます。これは私の勉強不足をおわび申し上げますけれども、何さま勤労者財形制度をつくって持ち家をするのにどうしても必要であるということから考えたことが一つ。  もう一つは、従来、退職をして財形制度をやめた場合に、貯蓄に対しての利子に課税するということを大蔵省が言うておったのです。それではせっかくやったことが何にもなりませんから、退職してでも一応貯金については年金制度を相当取り入れるわけでございますから非課税にするようにということで、その方は大蔵省と話し合って成功したわけです。  だからして、何とかして御審議を願ってこの法律を実行していただいて、そのうちにいろいろな隘路があればさらに検討するということで御了解を賜っていきたいと思います。
  73. 川俣健二郎

    川俣委員 私の時間が来ましたので、最後に言っておきますけれども、いま大臣の前向きな意欲も理解できるのです。ただ、大事な勤労国民全体の法律でもあるし、ばっさり廃止するということなんですから、しかも労働省は、聞くところによるとこれしか法律はないようだから、一カ月かかってじっくり、余りかたくなにならないで、修正にも応ずるぐらいのあれでお互いに話し合ってやっていかないと、だれがどんなに言ったって、大臣が初めて聞いたというように二百七十億と五千万との首っ引きなんだから、これだけは現実にそうなんだから。私はまだしょっぱなの質問ですから余り中身に、年金なんかに入っていませんけれども、そういう感じがしますの、ぜひその辺はよろしく審議のほどをお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  74. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 次に、川本敏美君。
  75. 川本敏美

    ○川本委員 川俣先生の後、私も引き続いて質問いたしたいと思うのですが、財形法改正案が財形貯蓄をする勤労国民の立場からいうと大変大きな問題をはらんだ法律であることは、先ほど川俣委員質問のとおりで明らかだと思うわけです。仮に税法上の住宅貯蓄控除が平均一人三万円だったとしても、九十万人であれば二百七十億という年間税額控除を受けられておった。それが先ほど川俣委員質問の中で明らかになりましたことは、今度の金利補給は五十七年度は大体五千六百万円程度しか、二百七十億の税額控除は予算関連法案として大蔵委員会でもうすでに廃止されてしまっておる、そしてその身がわりとして今度出てきているこの財形法上のメリットがわずか年間五千六百万円だ。それじゃ何のための改正かということで私たちは大きく不満が残るところでありますし、ましてそのメリットになる部分を先に廃止を決定しておいて、いまさら財形法の審議でもあるまい。全く社労委員会を軽視しておると言われても仕方がないと思うのです。その点について、この法案の審議が終了するまでに社労委員長も何とかその辺の問題解決のためにがんばっていただきたいと私は思うわけです。  そこで、ちょっと一、二細かい問題についてお聞きしたいのですが、先ほど意見の中には出ておりませんでしたけれども、財形法による年金貯蓄というのですか、仮に行うとしても、これは預金をする場合と、それから信託銀行に信託をする場合と、あるいは証券会社と契約する場合、そういうことで全部利回りが違ってくるわけですね。一つの法律によって要件をくくっておいて、法的要件を同じように満たしているにもかかわらず、その預託先が異なるということでそこの利回りが違ってくるというのはおかしいんじゃないかと私は思うわけです。少なくとも一つの法律で、一つの要件を付して、それによって貯蓄をしたものが、貯蓄先が異なれば利回りも違う、こんなことは整合性を欠くと私は思うわけです。だから、その場合今度は貯蓄の利回りも統一するように法的に拘束すべきじゃないか。この点を最高のところで拘束したらいいが、最低のところで拘束する必要はないんだから、その辺のところについてどうなのかということが一つあります。  それからもう一つは、いままで貯蓄の方の、預金の方で財形貯蓄をしておったのを途中で信託にかわろうとした場合に、継続できないわけですよね。一度解約してからでなければまた信託にかわれない、あるいは証券にもかわれない。これは継続できないということじゃ問題がありますよ。ここで継続ができるような措置をどのようにして保証するのか、そういう点についてもまずお聞きをいたしたいと思うわけです。
  76. 望月三郎

    望月政府委員 先生指摘の統一商品をつくってとにかく異なる金融機関の間でも利回りも同じようなものをすべきだ、こういう御指摘のようでございますが、私どもの考え方は、信託銀行にしろ銀行にしろ、それから生命保険、証券会社にしろ、それぞれ特色を持った金融機関でございまして、短いのに強いとか、あるいは長くやるのに強いとか、それぞれ特色を持っておるわけでございます。したがいまして、それらについて全部統一していくということももちろん一つのお考えではあろうかと思いますが、なかなかむずかしい問題であるというように私どもは考えておるわけでございます。それで、むしろやはりそれらのそれぞれ特色を知りながら勤労者個々人が一番自分に合ったものはどれかという選択をしていただくというのが、現在のところ一番望ましい形ではなかろうか、私どもこう思うわけでございます。  それから、後の方の御指摘の点でございますが、統一商品であればどこへでも転勤のような場合に移しかえるという簡便さの長所があることは間違いないわけでございますが、現行法でも、財形貯蓄を行って勤労者が転職した場合には同一の金融機関等を相手方とする場合はもちろんつながるわけでございまして、また金融機関が異なっても、金融機関の間で債務承継が行われるときは、従前の勤務先を退職した後に六カ月以内に新しい勤務先を通じて手続をとることによって、継続して利子の非課税措置が受けられるということになっておりますので、それらの活用について今後とも労使によく周知をいたしまして指導に努めてまいりたい、こう思うわけでございます。
  77. 川本敏美

    ○川本委員 総評傘下に全国一般という中小企業に働く人々を中心に組織している労働組合がある。ここが昨年末組合員に対していろいろ調査をやったわけですが、その中で、働く年齢というのは大体二十歳から六十歳まで約四十年間ですね。その四十年の間で大体平均五回ないし六回職場をかえておる。多い人は十回ぐらいかわっておる。これが中小企業で働く労働者の現実の姿じゃないかと私は思うわけです。  ところが、この財形法に基づいて貯蓄をしようとした場合に、一生のうちに五回も六回も職場をかわる人について果たして利用価値があるのかどうか、こういうことになると余りメリットはないのじゃないかと私は思うわけです。財形に乗るような労働者でないわけですね。この財形というのは、終身雇用というようなことを前提にしてこの法律がつくられておる。しかし、いま言うような中小企業で働く労働者がだんだんふえてきておるのです。だから、その人たちも利用できるような財形法でなきゃいかぬと思うわけです。まず勤務先によって選択をしておる金融機関が違うわけですから、先ほど申し上げたように職場がかわれば財形の継続性がない。こういうことで、せっかく財産形成をしようと思っておっても制度上継続できないような形になっておるんだから、その点に一つ問題点がある。  それから、仮に今度は住宅融資を受けようとした場合、これは事業団が事業主に一度貸して、そして事業主が労働者に貸すという転貸制度をとっておるわけですね。そうすると、中小企業で五回も六回もかわっておる人ですけれども、住宅を建てるために一度そこで事業主に転貸融資を受けたということでそこの事業場で束縛されてしまうわけです。そうすると悪い労働条件や低賃金ででも住宅の融資を返してしまうまでは体を束縛されてしまう、こういうような条件が起こってくる可能性があるわけです。だからこの転貸の制度というものを改めて、直接本人が貸し付けを受けることができる、その場合事業主は返済金を給料から天引きするという同意書、それさえあれば本人が直接受けられる、事業場がかわっても事業主が天引きをするという同意書さえあれば継続してそれをいままでの計画どおり返していけばいい、こういう程度に変えていかなければ中小企業で働く人々は実際問題としてこの住宅融資も受けられないんじゃないか、このように私は思うわけですが、その点については労働省はどう考えていますか。
  78. 望月三郎

    望月政府委員 先生の御指摘はきわめて適切な御指摘でございまして、私どもも従来の制度をできるだけ活用して貯蓄の継続が切れないような努力をしてまいるつもりでございますが、それを根本的にやるためにはさらに一工夫がいるわけでございまして、私どもは一つの方法として、従来の貯蓄を一度解約して新たな金融機関等の財形貯蓄に残高を移しかえる方法が一番適当ではないかと考えておるわけでございますが、これには御承知のように財形貯蓄のあり方だとか、あるいは金融機関の間の調整等に関する問題がございまして、なかなかにわかに解決しがたい事情にあるわけでございます。  しかしながら、今度新しく創設されることを期待をしております財形年金貯蓄でございますが、これは定年退職時まで継続的に実施されるようにすることが非常に望まれますので、転職があった場合の継続要件の緩和につきまして、このような方法を含めまして私どもは今後の重要な課題として検討を続けてまいりたいというように考えておる次第でございます。  それから、持ち家融資の返済につきましては、適当な場合には本人または新事業主が債務を引き受けることができることとして、転職後も引き続き同一条件で割賦償還できることとしておるわけでございます。
  79. 川本敏美

    ○川本委員 そこで私、具体的な問題について少しお聞きしたいんですが、東京都千代田区九段南二丁目二の四にニチバン株式会社というのがあるわけです。これはセロテープとかばんそうこうとか粘着テープを製造しておる会社ですけれども、会長はダニロンで問題になりました大鵬薬品の社長の小林幸雄という方です。社長は大塚光一という方です。従業員数は八百名ぐらいですが、これは後で御説明しますけれども、労働組合が第一組合と第二組合があるわけです。合化労連傘下のニチバン労働組合というのが第一組合です。全ニチバン労働組合というのが第二労働組合ですけれども、ここが実は財形制度の発足に当たってまず問題があったわけです。第六十五国会の衆議院の社会労働委員会財形法昭和四十六年三月二十三日に初めて審議をされたときの附帯決議に「事業主による賃金からの控除及び預入等の代行に伴い、取扱金融機関の選択については、勤労者の意に反することのないよう配慮すること。」こういうことがつけられておる。これは労働省御承知でしょう。  ところが、現にこのニチバンという企業では、これも後で御説明しますが、途中から大鵬薬品が資本提携をして、そして大鵬薬品から重役が送り込んでこられた、こういう形です。第一組合の労働組合は取り扱い金融機関の問題について、会社側から提案のあった三和銀行、富士銀行、安田信託銀行、日本興業銀行、こういう銀行は会社のふだんからのいわゆる関係する金融機関ですよ。全国的におしなべて五兆円というこの預金がある背景には、企業が勤労者の給料から天引きした貯金を自分のところの取引先である銀行に預け入れて、その見返りとして運転資金その他の、これを担保として融資を受けようというような意図もあってここまでふえたんだと私は思うわけですけれども、それが露骨にあらわれておるのがこのニチバンの場合ですね。  労働組合は、三和、富士、安田信託、日本興業銀行、この金融機関も結構ですけれども、そこへさらにもう一つ労働金庫を加えてもらいたい、こういう要求をしたところが、会社側は労働金庫を加えることを拒否したわけです。拒否して今日に至っておるために、第一組合との間では財形の協定はできていないわけです。第二組合は会社がつくった御用組合的なものですけれども、その第二組合との間には会社提案どおり三和、富士、安田信託、日本興業、この四つを金融機関として指定をして、財形法による財形貯蓄組合もすでに発足をしておるわけです。これは当初の四十六年の衆議院社労委員会の附帯決議に全く反することを会社側は公然とやっておるわけですね。  こんな場合に労働省としては行政指導できませんか。できるのですか、できないのですか。
  80. 望月三郎

    望月政府委員 財形貯蓄をどこの金融機関へ預けるかという意思決定の問題でございますが、財形貯蓄契約事業主による賃金の控除及び払い込みの代行を要件としておりまして、事業主勤労者との契約によりまして賃金控除、それから払い込み代行の事務を引き受けることになるわけでございまして、取り扱い機関は一義的には勤労者の希望するところによって決めるべきだと思いますが、事業主もこの事務遂行の便宜を希望するわけでございますので、結局双方の便宜とするところに従いまして、双方の合意によってやはり話し合いによって決めるべきものと思うわけでございます。このため、場合によっては各企業での財形貯蓄の取り扱い金融機関が限定されて、一部の従業員が希望する金融機関の財形貯蓄を利用できないことになることもあるわけでございますが、基本的には労使で十分お話し合いをしていただいて、その解決が図られるように努力をお願いしたいわけでございます。  したがいまして、御指摘の会社につきましては十分その実情を承知しておりませんが、財形法では事業主は、その雇用する勤労者財形貯蓄契約を締結しようとする場合と、及びこれに基づいて預け入れ等をする場合には、その勤労者に対して必要な協力をするように努めなければならないこととされているところでもございますので、やはり労使とも歩み寄って意見を調整して、財産形成が円滑に進められるようにしていただきたいというように考える次第でございます。
  81. 川本敏美

    ○川本委員 労働組合は歩み寄っておるのですよ。労働組合は、三和とか富士とか安田信託、日本興業という金融機関を指定するのに反対で、労働金庫だけにせいと言うておるのじゃないのです。会社側が提案しておる四つの金融機関に労働金庫もつけ加えてほしい、こういう要求をしておるわけです。初めから労働組合は歩み寄っておる、会社の言い分は認めておるわけです。そこへ労働者の言い分として、労働金庫も一つ加えてもらいたい、こう言うたわけです。それを、労働金庫を入れることは会社としては反対であるということで、今日まで財形貯蓄を認めていない。これは私は全く不当だと思うのです。まだこれ以上歩み寄れと言うんだったら、労働金庫をやめてということなのか、あなたの先ほど言った歩み寄れという意味は。そうなるじゃないか。私が言うておるのに、もっと歩み寄っていただいてと言っておるんだから。そんな歩み寄り方はあると思いますか。五つのうちの四つは会社提案、一つを労働者が提案しておるのです。それを歩み寄れと言ったって、どのくらい歩み寄ったらいいのか。  これについてはいままで労働省としては御存じなかったと思いますけれども、やはり耳に入った以上は、そういうことは衆議院社労委員会の附帯決議にも反することだから、会社側に適当な指導をしてもらってしかるべきだと私は思うのですが、どうでしょう。
  82. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 先ほど部長も申し上げましたように、やはり一義的には勤労者の希望するところによって決まるというのが基本だと思います。具体的にどういう状態になっているか、先生指摘のとおりであろうと思いますけれども、さらに実態を調べまして、御趣旨の線に沿って対処をいたしたいと思います。
  83. 川本敏美

    ○川本委員 もしいまの法律で行政指導ができないということであれば、行政指導ができるような制度に変えていかなければ、もっと労働者の意見が尊重されるようなものにしなくては、本当の労働者のための財形とは言えない、このように私は思いますので、その辺は要求をしておきたいと思うのです。  そこで、このニチバンの会社について、まだまだたくさん問題がありますのでちょっとお聞きしたいのですが、実はここの会社は昭和四十七年ごろに、ニチバン労働組合という、合化労連傘下の組合が一つしがなかったわけです。その当時、中労委のあっせんで労働時間について、週三十八時間三十分、一日七時間労働の協定が取り交わされたわけです。ところが、その後五十一年五月に大鵬薬品と資本の提携をして、小林会長が顧問に就任をし、五十二年の七月には、労務担当を一新していわゆる大鵬流の労務政策に転換をしてきたわけです。そして五十二年九月一日になりますと、さきの四十七年の中労委のあっせんによって決めた一日七時間制という労働協約を、一方的に会社の業務命令によって、一日八時間就労しなさい、こういうものを出したわけです。そういうことからこの企業では紛争が始まってきておるわけです。  いま労働大臣の手元に、ちょっと見ていただくために資料としてお渡ししましたが、この企業では、五十二年九月一日から現在までの間に紛争事件が、一からずっと番号を打っていますけれども、全部で二十四件も重なっておるわけです。一つの企業でこんなにたくさんの紛争があり、それも都労委とか地労委とか裁判所とかいうところで引き続き今日まで争われておる。二十四件のうち、終わりから二番目の二十三番のスト不当処分というのだけがこの間和解で解決したから、残りが二十三件あるということらしいのですが、労政局長、係属中の紛争が二十件を超えるというのは、全国的に見てたくさんありますか。
  84. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 ただいまの先生の御指摘でございますが、件数のとり方についてはいろいろ数え方があろうかと思いますが、一企業におきます労使紛争をめぐる事件が、労働委員会とかあるいは裁判所に二十件以上も係属している例はきわめて少数でございます。私どもが現在把握している事例といたしましては、いま御指摘のニチバンのことも含めますと、四つの例があるだけでございます。
  85. 川本敏美

    ○川本委員 全国で四企業ですか。  そして、この小林会長が社長をしておられる大鵬薬品でも、ダニロンの問題でいろいろ今日まで紛争が起こってきておるわけですけれども、ここは労働組合の結成から五カ月ぐらいだと思うのですが、いま係属中の紛争はどのぐらいありますか。
  86. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 大鵬薬品工業の件につきましては、ただいま私どもが把握しているのは一件ございまして、いま地労委に係属中と伺っております。
  87. 川本敏美

    ○川本委員 労働大臣の所感をお聞きしたいのですが、二十件を超えるような労使間の紛争が引き続き今日まで続いておる、これは正常だと思いますか、異常だと思いますか、あり得べきことだと思いますか。
  88. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 まあ異常の方じゃないかと思います。
  89. 川本敏美

    ○川本委員 いま労働省は、労働時間の短縮の問題について指導通達等を出しておられますね。大体いま日本の労働時間が二千二百時間から二千三百時間ぐらい、それを昭和六十年には二千時間以内にしていきたいと。これは貿易摩擦の問題でも大きく諸外国から指摘をされているところであります。  ところがここのニチバンの場合は、一日七時間、週三十八・五というような労働時間の協定に到達をしておりながら、今度は、資本提携している先の会社がかわって会長がかわれば労務政策も変わって、その協約を破棄したんじゃなしに、一方的に、話し合いもせずに業務命令でそれを八時間に戻す、そしてそれを強行してきておる。こんなことが許される道理はありません。だから、この資料でも御案内のように、この問題についてはすでに東京地裁で判決が出されて、そして、労働時間の問題については会社側が敗訴をしていることは御承知のとおりです。  ところが、敗訴したからもとの時間に戻すのかといったら、今度は違うのですよ。そこが大鵬流というところですが、第二組合をつくらせるために会社側が、最初は再建署名というような言い方で署名運動を展開して、会社側の言うことは何でも聞きますという署名をさせて、その署名をした人たちを集めて今度は第二組合を結成させて、そこで第二組合との間に新たに、一日八時間制、年間二千二百時間から二千三百時間になる労働時間の労使間協定を締結しておる。そのときには、労働基準法が週四十八時間制だということで、一時は四十八時間に戻したわけです。その場合、全くこの労働基準法というものを悪用しておると思うのです。週四十八時間、労働基準法で認められているのだから、四十八時間でも法律的に違法じゃないのだ、こういう説明をして、四十八時間制に戻したわけです。これは、労働基準法を悪用して、労働組合つぶしのために利用しておるとしか私は言えないと思うのです。そしてその後は、さらに昨年、一昨年ですけれども、昭和五十五年、五十六年の十二月にそれぞれ賃上げが行われたときにも、七時間労働制の第一組合員には七%の賃上げ、そして第二組合で八時間労働制で働いている人には一三%の賃上げ、こういうことを強行して、今日まで労働条件もだんだんと差別をつけようとしておるわけです。  大臣、これは一般論として、ニチバンということじゃなしに一般論として、これは、日本の企業の中での労務政策として好ましいあり方だと思いますか、あり得べからざることだと思いますか、どうでしょう。
  90. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 すべて企業家は、労働組合と資本側、要するに労使間で円満に何事でも決めるのが一番いいと思います。  ところが、甲の組合、乙の組合というふうに分けて企業家がやるということは、いずれかが企業側の言うとおりになりにくいとか、いろいろな問題点があるのでそういうことをやったと思いますけれども、要は、労使間で何でもきちっと話し合うてからやるのが常識ではなかろうかと考えます。  どの組合がいいとか、どの組合が悪いとかと言うことは、いま私の口では差し控えたいと思います。
  91. 川本敏美

    ○川本委員 そこで、ちょっと大臣の手元に、見てもらうために出しましたが、これは所沢の安定所が、ことしの三月に高等学校を卒業する人たちのいわゆる求人申し入れをニチバンの会社から受けたわけです。  ニチバンの会社というのは、埼玉県の所沢に埼玉工場があり、それから愛知県の安城に安城工場があり、大阪の藤井寺に大阪工場、こういう三つの工場を持っておるわけですが、これは埼玉の場合の求人票ですが、これをちょっと見ていただいたらわかりますけれども、ここでまず「就業時間」というところで、ここでは八時三十分から五時三十分まで、土曜日も五時三十分まで、こういうふうに書かれておる。それから右の欄の一番上の「加入保険等」というところでは、「財形」というところにちゃんと丸をしてあるわけです。ところが、先ほど来申し上げましたように、労働時間については、第一組合とは七時間、第二組合とは八時間ですが、ここに書かれておるのは八時間を書かれておるわけです。それで、第一組合との間には財形はないけれども、第二組合との間には財形がある。そうしたら、ここに財形があると書いてあるわけです。これでは全く第二組合との協定が会社側の協定であって、第一組合とのものは会社は認めていないということが、この求人票に出されておる労働条件一つを見ても明らかだと思うわけです。  労働省としては、労働時間を将来本当に短縮する気でおるのか、いや、七時間労働制のところも延ばして八時間にしてもらった方がいいと思っておるのか。その辺について、これは大きな問題を投げかけておると私は思うわけです。恐らく会社は、労働組合つぶしのために利用したいために、将来労働時間を短縮せよという要求が出ても、その場合は、企業の中で七時間労働制の労働者と八時間労働制の労働者を残しておいて、そして賃金に格差をつけておいて、労働時間は週休二日制を実現しますとかいう形の短縮をしようというような、そういう意図を持っておることは、もうこの求人票一つを見ても読み取れると私は思うわけです。  このようなことで、いまの労働省の行政の中では、本当に労働時間短縮を指導できますか、できませんか、どうですか。
  92. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 労働時間、休日の取り扱いについてでございますが、これは、各企業におきまして経営の事情等を勘案しながら、労働基準法に抵触しない範囲内において決めるべきものであるわけでございます。ところで、先生指摘のニチバンにおきましては、昭和五十二年九月以降日勤の労働者について一日の所定労働時間が七時間から八時間に変更されたこと等については承知いたしておりますが、これらは一日八時間、一週四十八時間の法定内の労働時間の延長の問題でございまして、労働時間の長さ自体については労働基準法上の問題は生じてこないわけでございます。  ただ、冒頭申し上げましたように、いわゆる労使関係の中でいろいろな問題を各企業抱えている、あるいは現実にニチバンもそうだと思いますけれども、それはございます。したがいまして、いわゆる労働基準監督という立場、つまり基準法の施行という立場からこれに介入をするということはできることではありませんし、また、そうすべきではないと思います。ただ、全体としまして、労働省としては、労働時間短縮の方向に沿いまして行政指導をしているわけでございますが、これはやはり基本は、労使がお互いに話し合いをしながら、企業における労働時間をどう考えるか、これを労使の中で話し合いをする、あるいはいわゆる三六協定のあり方を労使が考える、そういうことで、それぞれの企業が努力をしていただきたいと考えているわけでございます。
  93. 川本敏美

    ○川本委員 そうして、ニチバンの場合、企業の中の就業規則にも男女の差別があるわけです。これも大臣の手元へちょっと資料を配付いたしておきましたが、実は就業規則の付表二というのがあるわけですけれども、これは、就業規則に基づくいわゆる給与規定、別表第七の給与規定の付表の二というものです。ここでは明らかに、同一学歴で同一の仕事をしておっても、男女の別によって給料の昇給の仕方が違っていくわけです。  そこで、これは愛知県の安城工場の従業員が、私はどなたかわかりませんが、労働組合にも相談せずに、うちの給料表に男女の差があるのはおかしい。三年目までは大体同じなんですが、四年目からはどんどんと給料表の差が大きくなっていくようになっておるわけです。十年ぐらいたてば一万七、八千円金額にして給料額が違ってくるような給料表になっておるようです。それで安城工場の女性の方がまず最初に刈谷の労働基準監督署に対して、男女差別の給料表が就業規則で書かれておるということで申告した。それで、それに基づいて、続いて労働組合も五十六年五月ごろに、刈谷の労働基準監督署と所沢の労働基準監督署に、給料表に男女差別があるのはおかしい、男女の差別をなくしてもらわなければいかぬということで、労基法違反ではないかという申告をしたそうです。そうしましたら、昨年の十二月だと思いますけれども、就業規則を会社側が変更をして労働基準監督署に届けたわけです。届けた新しい給料表が、大臣、その下についています。  これは昨年の七月三十日に就業規則を改正したわけです。ところが、今度出てきた給料表の中身は、全く数字は同じことですけれども、いままで男女となっておったのが、作業職で言えば作業職1と作業職2、事務・技術職で言えば事務・技術職の1と事務・技術職の2という表現に変わっただけで、中身は全く同じことなんです。  ところが聞きますと、会社側はこれは刈谷の労働基準監督署の指導をいただいてこのように変えたんだ、こう言っておるわけです。それで刈谷の労働基準監督署に聞きますと、所沢もそうですけれども、男と女という、男女によって差をつけているのは労基法上違反だから、これは指摘していわゆる指導ができるけれども、事務職1とか事務職2とか作業職1とか作業職2とかいう表現であれば、男女ということを書いてないからこれは労基法に抵触しないんだ、こういう言い方ですけれども、現実には男の方と女の方がペアを組んで一緒に仕事しているんです。仕事上は何の区別もない。差別もない。ところが給料表では、これは作業職1とか事務職1とかいうのは全部女性なんです。作業職2とか事務職2とかいうのは全部男性なんです。男と女という区別を、作業職1を女、作業職2を男、事務職1を女、事務職2を男というように置きかえただけなんです。  監督署は、これは見たとおりでは差別がないということで指導できない、こういうわけらしいのですが、仮にもこれが会社の言うように監督署の指導によってこのように訂正しました、これは形式的な指導であって、中身について全然変えないで書類上だけ変えて、これで男女差別がなくなったんだ、これでは私は全く労働基準行政というものの本質を疑わざるを得ないと思うわけです。  基準局長、これはどう思いますか。
  94. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 ニチバンの賃金についての男女差別の問題の御指摘でございますが、確かにニチバン埼玉工場の労働者から昭和五十六年の七月に、女子であることを理由として賃金について差別的取り扱いが行われている、そういう旨の申告がございました。監督機関によりまして調査を行ったのでございますが、いわゆる就業規則における昇給、昇進基準が職務内容の違いに対応して定められており、先生指摘のこと、そういう職務内容による定め方をしておりますので、その段階では違法を確認するには至らなかったものでございます。  なお、詳細については監督課長からちょっと……。
  95. 川本敏美

    ○川本委員 いや、もう時間がないから、簡単に説明してください。
  96. 岡部晃三

    ○岡部説明員 ニチバンにおける就業規則につきましては、先生指摘の愛知につきましては、九月九日改正就業規則が届け出られています。埼玉につきましては、九月三日でございます。その内容を見ますというと、作業職1につきましては、簡単な機械操作手順等々の作業内容……
  97. 川本敏美

    ○川本委員 それはわかっているんだ。もう時間がないから私言いますが、そういうふうに給与規定の中身には、男女とは書かずに、作業職1と作業職2とで分類したように見えておるけれども、工場の中に入ったら、ペアになって二人で一組、四人で一組ということで男女が一緒に仕事をしておるのに、片っ方は作業職1であり、片っ方は作業職2であるということは、その中身と違うというわけです。だから、実態を見て判断するのか、書類だけを見て判断するのかということで、私は労働基準監督行政のあり方を指摘しておる。だから、もう一度実態を調べた上で、男女差別がなくなるような就業規則にするために本当の正しい指導をしてもらいたい、このことを私は要望しておきたいと思うのです。  このほかにもまだあるんですよ。たとえばやみの残業がある。やみ残業というのは、これはニチバンや大鵬の工場では日常的に行われておることですが、いわゆる残業をしても残業手当ももちろん払わないし、割り増し賃金も払っていない。第一労働者が申告できないような、残業をしたということはそれだけ自分の能率が低かったというような感じを持たせて、申告できないような社内の空気、体制をつくり上げて、そして現実にはやみ残業を強制をしておるというのが、私は現実だと思う。これも一回実態、中身に入って調査をしていただいた方が私はいいと思う。  それからもう一つ、その残業の協定そのものもそうですけれども、第二組合だけじゃ従業員の過半数にならないわけです。だから、監督署等への届け出書類はすべて第二組合の代表と管理職、組合はないのですけれども、管理職が全部代表者に委任をしたその管理職の代表との連名によってようやく過半数になる。そういう形でさっきの財形の協定も行われておるし、三六協定も行われておる。私は、管理職が従業員の代表として、それを入れれば過半数になるからといって、その管理職も含めてそれは有効だということは、法的に問題はあると思うのですが、その辺についてもひとつ十分監督をしてもらわねばいかぬと思うわけです。  私は時間がありませんので、最後に労働大臣にお聞きしたいと思うのですが、いま申し上げたような二十三件も係属中の労使間の紛争がある。あるいは合法化するためには管理職まで動員したかなり無理な体制をつくっておる。そして私から言えば、企業家として企業経営の理念がもう根本的に間違っているんじゃないか。近代的な労使関係をつくっていこうというような認識を持っていないんじゃないか、こういうふうに思うわけです。これをこのまま放置するということになりますと、労働省が目指す労働時間短縮の行政指導も、このような形でやられれば、私は全然進まないと思うわけです。  労働大臣、私はそういうモデルケースとして一つこのような対立した労使関係を早急に正常化させるために、一遍労使、会社側のトップ、労働組合のトップ、そういう人たちを労働大臣室にでも呼んで、理念を説いて聞かして、近代化のあるべき姿を説いて聞かして、正常化さしていくような強力な指導ができないのかどうか、ひとつ大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
  98. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 いま先生がニチバンのことでいろいろ、財形の取引先の銀行の問題、あるいは労働時間の問題、いろいろあったわけでございますが、話を聞くと、一応地元の労働委員会で係争中ということもありますね。こういう問題に大臣が直接当たってとやかくは言われませんから、一応事務局の方で適宜さらに調査をして、私が出て代表者を呼んでどうなんだという意見を聞くぐらいはいいと思いますよ、意見を聞くぐらいはいいが、あんたはこういうところは行き過ぎじゃないか、これはどうだという意見をさらに私の方から言うということは出過ぎではないかなという気がしますので、一応調査してみますから……。
  99. 川本敏美

    ○川本委員 ちょっと待ってくださいよ、大臣。前の藤尾労働大臣だったら、そんな場合、じゃ私がひとつ大臣のいすをかけてでも正しい姿に戻させるためにがんばりますとか、前向きな発言をされたのですよ。ところが初村労働大臣、それはおっしゃる意味はよくわかりますよ、しかし、日本の労使関係を近代化し、そして西欧、アメリカ、EC諸国からも指摘されないような日本の新しい労働条件をつくり上げていくためには、やはり大臣が決意をもって臨まなければ私はいけないと思う。だから、地労委とか都労委とか、裁判所で係争中の問題について介入してくれと私は言っておるのじゃない。まず、それ以前の資本家とか経営者とか労働組合、この人たちのあるべき心構えについて、私はこういうことを考えて労働省としてはやっておるんだ、あなた方もそういう理念に基づいて企業を経営してもらいたいということぐらいは、労働大臣から呼びつけて指導しても決して介入ではないと私は思いますので、その辺もう一度労働大臣、ひとつ決意をお聞きしたいと思う。
  100. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 前の大臣が積極的な姿勢を示して、果たしてそれを実行したかどうか。(川本委員「それは記録にとどめます」と呼ぶ)私は、言うた以上は実行するわけですから、一応調べてみて、よし、それなら大臣が呼んでやってもいいということであれば、呼んで話し合いをいたしたいと思います。
  101. 川本敏美

    ○川本委員 終わります。
  102. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十六分開議
  103. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、請願取下げの件についてお諮りいたします。  本委員会に付託になっております請願中、早稲田医療学園あん摩、はり、きゆう科設置認可反対等に関する請願三十八件につきまして、去る八日、それぞれの紹介議員から取り下げ願が提出されております。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  105. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。栂野泰二君。
  106. 栂野泰二

    ○栂野委員 税額控除制度廃止の問題につきましては、いま議論がございましたから私は多くは申し上げませんが、死んだ子の年を数えるような感じでして、むなしい気がいたします。しかし私どうしても納得できないのでちょっと申し上げますが、今度廃止になりました租税特別措置法の四十一条の四を見ますとこういうふうにも読めるのです。五十六年一月一日から五十七年十二月三十一日までに締結した財形貯蓄契約については七年あるいは十年の間最高五万円の税額控除を受けられるのですよ、しかし五十八年以降は保障しませんよということにも読めるのですね。  ということになりますと、これは無理してでも五十七年中に財形貯蓄を始めないと、五十八年になるとこれはなくなるかもしらぬ、こういうことになるのですね。そこで無理をして始めた。貯蓄契約するわけですから七年あるいは十年の間積み立てていかなきゃならぬですね。ところが突然、一年間の経過措置はあるというものの税額控除を受けられなくなってしまう。これは貯蓄をする人から見ればペテンにかかったようなものですね。こういう期待権を侵害する、しかも期待権といいましてもこれは非常に具体的なんですね。貯蓄契約をしているわけですから五年あるいは十年という期間も決まってますね。定期的に幾ら積み立てるかということも決まっている。したがって、積み立てたらそれに対して税額控除が幾ら受けられるということも決まっている。非常に具体的な期待権です。これをこういう形で奪ってしまうというのは私はどうしても納得できないのですね。  五十五年に一般住宅貯蓄の税控除がなくなるという改正がありましたね。大蔵省にお聞きしますが、一般住宅貯蓄に対する税控除がなくなったとき今日のような形でしたか、それとも五十五年いっぱいに契約した者については契約をした期間、将来的にも税額控除を受けられるという形ですか、どちらですか。
  107. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答え申し上げます。  一般住宅貯蓄契約につきましては、五十五年十二月末までに締結されたものにつきましては、積み立て開始後七年間は従前と同様の税額控除が受けられるという経過措置を講じております。
  108. 栂野泰二

    ○栂野委員 それがあたりまえなのですね。これから先契約を始める人はもう税額控除を受けられませんよというのならばまあ話はわからぬでもない。だから一般住宅貯蓄の控除をやめるときにはそういう措置をおとりになったのでしょう。なぜ今度の場合は一般住宅貯蓄の場合とは違っていきなりその場からやめるというふうな措置をとられることになったのですか。
  109. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答え申し上げます。  今回の財形制度改正はいろいろな要素から成っております。住宅貯蓄控除廃止といいますのはその一環でございまして、その他面におきまして、財形持ち家融資の枠の拡大、あるいは五百五十万円までの分につきましての利子補給、あるいはさらに個人年金貯蓄につきましては退職後も非課税にするというようないろいろな制度の組み合わせで御理解いただきたいと思うわけであります。  住宅貯蓄控除廃止に伴いましての経過措置を講じておりませんが、その他面といたしまして、家をお建てになって融資を受けられる場合には利子補給という制度ができているわけでございますから、全体を通じてみますと形を変えた経過措置と申しましょうか、いわばそれが保障されるような措置が他面においてとられているということが申し上げられると思います。
  110. 栂野泰二

    ○栂野委員 労働省は、一般住宅貯蓄税額控除廃止になったときと同じように、少なくともすでに契約してしまった者に対しては七年なり十年なり税額控除を認めてくれないか、来年から契約する人に対しては適用がないというなら話はわかるが、こういう意見を強く大蔵省に言わなかったのですか。先ほどの話を聞いていると、何も大蔵省に言われてやったのではない、労働省が進んでやったのだとおっしゃるのだか、こういうことも労働省が進んでやったことですか、それとも大蔵省に言われて仕方がなく引っ込んだのですか、どちらなんです。
  111. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 このたびの財形法改正につきましては、先ほども申し上げましたように、今後の展望を踏まえまして積極的な展開をするという一つの流れの中で改正法案の御審議をお願いしているわけでございます。  そこで、住貯の廃止との関連の問題でございますが、先ほど大蔵省からもお答えがございましたけれども、住貯を廃止していわば入り口の政策から出口の政策といいますか、つまり、住宅を建てるその次元に政策を転換したということでございます。したがいまして、この住貯の廃止との関連で言いますれば、財形住宅貯蓄を行った上ですでに利子補給のない財形持ち家融資を受けて住宅取得している方々がおられます。また、今後住宅貯蓄控除なしで住宅取得目的とした財形貯蓄を開始し、利子補給のある財形持ち家融資を受けて住宅取得する者がございます。そういうことから関連しますと、その均衡をやはり考量せざるを得ないのではなかろうかということから、五十七年度で廃止をするという政策の転換を図ったわけでございます。
  112. 栂野泰二

    ○栂野委員 こういうことをやられるのではもう財形制度というのは勤労者から信用されなくなると私は思うのです。  そこで、いまいろいろお話が出ますように、そのかわりに住宅融資の利子補給制度を導入した、こういうことですが、この制度は一体どういう法形式で規定されますか。
  113. 望月三郎

    望月政府委員 国の利子補給につきましては、たとえば住宅金融公庫についても法令上それを規定していないわけでございます。しかしながら、貸付利率を法定することにより、貸付原資の利率との利差分の負担を国が補給するというたてまえで行われているわけでございます。したがいまして、財形持ち家融資につきましても利子補給は直接これ以上規定いたしませんが、利率を政令で定めることとしておりますので、政令で定める利率と雇用促進事業団等が調達する利率の利差分は、それを実施する雇用促進事業団等に対して今後国が継続的に補給をしていくという形でございます。
  114. 栂野泰二

    ○栂野委員 結局これは政令で決めるだけ、言ってみれば予算措置だけということになりますね。いま言いましたようにああいうえげつない形で今度税額控除制度を全部打ち切ったというふうなことを考えますと、先ほどのお話によれば今年度は五千六百億ですね、二百四十億だかになるのは十年先だとおっしゃる。仮にその額がふえて何十億、何百億というふうになったら大蔵省が必ず文句をつけてくるのだろうと私は思うのです。単なる予算措置、単なる政令で決めておく程度では。これは新しい制度なのですから、利子補給制度を導入するということがなぜこの法律改正でちゃんと入れられないのですか。
  115. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 先ほど部長から説明をいたしましたように、貸付利率を法令で定めることによりまして利差分を補給するというたてまえでございます。そういうことから利子補給は法令上規定をいたしませんけれども、利率を政令で定めることによりまして、まあ、法律でその利率を定めるということがない住宅金融公庫の法令上の規定にならうといいますか、そういう例もございますので、この際は政令で定めるということにいたしたわけでございます。
  116. 栂野泰二

    ○栂野委員 それは利率の問題なんですよ。これは性質が全然違いますよ。たとえば財形法の八条の二に財産形成助成金のことがうたわれていますね。言ってみればこれと同じで、国が助成措置として新しく利子補給をやるというのですから、その利子補給をやるということに基づいて、それは一体どのくらいやるかということ、まあ細かいことは政令で定められてもいいのです。貸付金の利息云々といま住宅金融公庫のことをおっしゃったが、それは言ってみればその程度のことでしょう。利子補給制度の導入というのは性質が違う。これはやはり法律できちんと決めてもらわないと、勤労者から言えばまたいつ簡単にやめられるかわからない。法律に決めておけば国会で審議しなければだめだ。どうしてもこれはやってもらいたいと思うのですが、どうですか。これは大体考えられたことはあるのですか、労働省は。労働省としては法律にしたがったけれども、それこそまた大蔵省関係で法律にまで決められたのじゃ後でやめにくくなって困るという話でもあったのですか、どうなんですか。
  117. 望月三郎

    望月政府委員 全くそういう意図はございませんで、私どもは先ほど申し上げましたように、住宅金融公庫の例等も見て、利率は政令で定めるのだ、したがって、政令だからいつでも変えるというような安易な気持ちは毛頭ございませんし、他意なく政令で定めるということで考えたわけでございまして、先生指摘のようなことは毛頭考えていなかったというのが実情でございます。
  118. 栂野泰二

    ○栂野委員 他意なくとおっしゃればなんですが、では、いま私がこう申し上げておるのだが、これはやはり法律で定めた方がいいというふうにお考えになりませんか、どうなんですか。検討したこともないのですか。
  119. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 いま部長が御説明しましたように、私どもは住宅金融公庫についての例もございまして、これで十分やっていける、しかも先生指摘のように、政令で定めるからこれを簡単にということは、労働省の性格からいたしまして、いいかげんにということは全く考えておりません。
  120. 栂野泰二

    ○栂野委員 借りる勤労者の立場から考えてみてくださいよ、どっちが安定的なのか。これはもう申し上げるまでもないのです。しかも、今度のこの改正の言ってみれば積極的な目玉だとおっしゃっているわけでしょう。それなら、この改正条文に一つも出てこないようなことをしないで、ちゃんと法律に入れたらいいじゃないですか。  大臣いかがでしょう、これは検討していただけますか。
  121. 望月三郎

    望月政府委員 財形制度の中には他に分譲融資制度がございまして、これの利子等につきましても政令で書いてあるわけでございます。したがいまして、その利子補給の点でございますが、政令で書いてあるわけでございまして、制度の中での整合性ということも考えてやっておるわけでございまして、内閣法制局でもそれでよろしいということで、私どもは他意なく政令でお願いするという立場でございます。
  122. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 先生のおっしゃるのは、法律できちっとした方がいいじゃないかということでございます。これをつくる場合に、法制局等ともよく相談をしてやったわけでございますが、労働省としては、政令でやるから、法律にのっとるからということで区別することなく、政令であってもその運用において労働者のためになるような運用をしていけばいいと思いますので、御了解賜りたいと思います。
  123. 栂野泰二

    ○栂野委員 時間がありませんから先に進ませていただきますが、いま建設省は、住宅融資の返済能力の限度といいますか、収入に対して月々の返済額は一体どれぐらいが限度だと見ておられますか。理由はいいですから、一言でいいですよ。
  124. 望月三郎

    望月政府委員 やはり上限は二五%程度だと思います。
  125. 栂野泰二

    ○栂野委員 まあそういうことだろうと思いますね。そうしますと、仮に月収四十万の人だとしますと、月に十万が限度ですね。そうしますと、いま六%以下の利率のものを借りて、大体千五、六百万というところが借りられる限界じゃないでしょうか。これ以上借りても返せませんね。そうしますと、仮に二千万としますと、五百万頭金を準備する必要があります。ところが、いま東京ではマンションも二千五百万ぐらい出さなければ買えませんね。そうすると、頭金が千万要るということになってくるはずであります。一体頭金をどうしてつくっていくのか、ここが実は問題なんです。貸付額を三倍から五倍に上げたり、最高限度を千五百万から二千万に今度上げられましたけれども、これは借りられません。いま勤労者の関心は貸付額の拡大じゃなくて、いま言った事情から言えば、では頭金を一体どうしてつくるかということだろうと思うのですね。  そこで、実は税額控除制度、これはまず大蔵省に伺いましょうか。大蔵省は、税額控除制度がありましたが、これはどういう趣旨でできたものだという考え方だったのですか。
  126. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答えいたします。  勤労者財産形成貯蓄、このうち住宅建設に資するためのもの、これにつきまして税額控除という一種の誘引措置を講ずることによりまして、住宅建設のお手伝いをするということであろうと思います。
  127. 栂野泰二

    ○栂野委員 この大蔵省主税局の「昭和五十五年 改正税法のすべて」というのを読みますと、制度の趣旨はこう書いてあるのです。「住宅貯蓄控除制度は、主として勤労者などが長期かつ低利の融資を利用して住宅取得する場合に、まず必要な頭金の貯蓄をできるだけ容易にし、その持家計画が着実に進められるよう税制からも援助する」、こういう趣旨からつくった、こう書いてあるのです。これをなくしてしまったでしょう。  そうしますと、一体労働省はどうお考えなんでしょうか。これから頭金をつくっていく。いま五百万しか枠がありませんね。五百万では、さっき言ったように足りないですよ。千万にしなければ、これは勤労者の期待にこたえられない。しかも、税額控除はなくなってしまった。頭金をなかなかそろえられない。何か具体的な対策をお持ちですか。
  128. 望月三郎

    望月政府委員 確かに首都圏の場合、先生おっしゃるように、かなりの自己資金の形成が必要でございますが、財形制度の場合、住貯が廃止されても、財形貯蓄には利子等の非課税、利子補給を伴う融資という援助措置が付されますので、財形貯蓄勤労者の自己資金の計画的な形成に引き続き貢献できるのではないかと思いますし、自己資金が、いま都内のマンションを購入する場合に、平均的には約六百八十万円程度のものがいままでの購入例としてございますが、これは今後三年以内に住宅保有計画のある勤労者世帯の平均的な貯蓄額でございますが、これをもとにしましてモデルを私どもも試算してみております。  六百八十万円を手持ち金として借入金を千八百万円、そのうち公庫から借り入れるのがこれは五分五厘で八百万円、これはマンションの場合は八百万円までいけますので八百万円、それから厚生年金住宅貸し付けが四百五十万円、これが六・〇%、それから財形借入がローンとして五百五十万円、これは今度の利子補給をつけた形で、これらをミックスしますと、二千四百八十万円の購入価格でマンションが手に入るわけでございます。これについて毎月の返還額を見てみますと、おおむね十万円ないし十万ちょっとという額になりますが、最初の一年目はちょうど月収比の二五%に該当しまして、それが年々、五年目には二〇・六%ということになります。そういうことで、多少つらかろうが、一番の上限の範囲の中で月給も若干上がるわけでございますので、最初の五年間を少し利子補給で負担をするということにすれば、非常にうまくいくのではなかろうか、こういうように試算しておるわけでございます。
  129. 栂野泰二

    ○栂野委員 一つの試算として承りましたが、それにしても、いま頭金六百八十万とおっしゃいましたね。だから、そこから見ましても、とにかく財形貯蓄住宅貯蓄関係から言っても、どうしても頭金をつくるために、やはりこれは五百万じゃなくて千万ぐらいな非課税枠、これはやってもらわなければ困ると思う。今回出てます年金関係から見ましても、やはりこれは合わせて五百万じゃなくて、少なくともこれは千万ということを考えてもらわぬといかぬ。労働省も当初は、この法改正に当たって五百万じゃなくて八百万円にするというふうに考えておられたのじゃないですか。これはなぜ五百万にまたもとへ返ったのです。
  130. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 現在五百万でございますが、それを一千万ぐらいに非課税枠を拡大してはどうかという御質問であろうかと思います。  確かに現状からしてこの非課税枠が多ければ多いほどいいという問題もございますけれども、一つは現在各種の非課税枠、たとえばマル優とか郵便貯金の問題その他合わせますと、全体を合わせまして非課税枠の合計は千四百五十万円まである。うまく操作をすればそれは可能でございます。また、実際に持ち家制度を利用した勤労者の計画の状況を見ますと、五十五年度貸付決定者の平均で工事費が、いわゆる購入価格は二千三百七十五万円ということでございまして、自己資金は七百四十四万ということになっております。いわばそのうち財形貯蓄額は三百五十九万でございますので、非課税枠の範囲内に現実の姿もおさまっておるということから見まして、現状の五百万というのは、現在の情勢の中では妥当性を持っているのではないかというふうに考えております。
  131. 栂野泰二

    ○栂野委員 だから、当初八百万というふうに計画をしておられたのでしょう。それは事実かどうか。それはなぜ今回実現できなかったか、そこを言ってください。
  132. 望月三郎

    望月政府委員 先生指摘のように、私どもは当初、年金貯蓄につきましては八百万円程度に引き上げることが妥当ではないかということで検討しておったわけでございます。しかしながら、少額貯蓄非課税制度、いわゆるマル優や郵便貯蓄等の限度額との関係の問題や、財形貯蓄の平均残高がいま平均五十万円程度でございまして、勤労者世帯の全貯蓄額の平均も五百五十万円程度にとどまるという状況でもございますし、現状では五百万円の限度額で一応適当な水準が確保できると見られますので、従来どおりの五百万円の限度額の範囲ということでお願いをしておるところでございます。
  133. 栂野泰二

    ○栂野委員 これも結局大蔵省がうんと言わないからでしょう。年金にしましても、石岡課長の論文を見たってちゃんと書いてあると思うのだけれども、やはり五百万じゃだめだと書いてある、そのとおりだと思うのですよ。いま結局五百万にしますと、二十年間年金をもらいたいというと三万八千円にしかなりませんね。郵便年金などに比べまして六万、少なくともそのぐらいなものを財形年金でやってやらなければ、これは魅力はありませんよ。そうしますと、五百万じゃなくて千万。千万になれば七万六千円になりますかな、こうなってくるのです。だから財形年金から見ましても、いま言いました住宅を建てる場合の頭金のことを考えても、これはどうしても千万にしなければいかぬ。大蔵省は相当抵抗されると思いますよ。しかし、ここのところを労働省がちゃんとしてやってくれないと、財形制度は私は生きてこないと思いますね。これは十分御検討願いたいと思います。  それからいま部長がモデルを示されましたが、財形貯蓄で五百五十万ですか借りるという話でしたが、そうなるのでしょうかね。いま一番勤労者が利用したいのは企業の融資ですね。これは大きい企業しかなかなかできないことでしょう。五%以下ですよ。それから金融公庫、厚生年金とこうなるわけで、そこのところで何とか千五百万いきましたら、とても財形など手が出ない。あとは、さっきから繰り返しますが、頭金をどうするか。そこで、やはり財形の融資が魅力があるためには、どうしても公的融資と同じくらい、六%以下にならなければ、これは利用価値が余りないと思われます。今度の利子補給で五年間は多少楽になる。しかし、それは五年にとどまります。その先はまたもとへ返って七・九九なんということになってきますね。これは何とか住宅金融公庫あるいは厚生年金並みの五、六%というそういう安い利率にする工夫はありませんか。
  134. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 利率の問題につきましては、先生御承知のように、いわゆる調達金利というものでそれとの対応関係利子補給をする、こういうことでございますが、現在は八・三四、今度はちょっと下がるようで七・九九、それによりまして二%ということになりますと、六%下限でございますからそのようにそろうわけでございます。したがって、今後の問題としては、調達金利が、いまの国債関連もございますけれども、いずれにせよその情勢を見ながら常に対処をしなければならないだろうと思いますが、当面のところはいまの利子補給五年間ということでやっていけるんではなかろうかという見通しでございます。  それから、給料も上がってまいりますから、いわゆる二五%ラインというものは、モデルでございますけれども、若干ずつ緩和されていくという見通しで、ございます。
  135. 栂野泰二

    ○栂野委員 いまの財形制度の仕組みでどうしてもそういう公的な融資並みにいかないということになりますと、これは抜本的に考え直さなければならぬという意見が当然出てくると私は思うのですよ。たとえば住宅金融公庫で一般住宅の枠の上に財形分の枠を上乗せして一本化してしまう、雇用促進事業団なんか介在する必要なし、こういうことになりかねないと私は思うのですね。ですから、ここはなかなか工夫の要るところでむずかしいとは思いますが、これをやっていただかないと、今回のように、やはり貸付枠を広げてみましても、結局は利率に突き当たってくるわけですから、ひとつこれはこれからもっともっと工夫をしてもらいたい、御要望申し上げておきます。  それから財形年金ですが、五十五歳未満から契約を開始しなければならない。それから五年以上定期的に積み立てなければいかぬ。それから六十歳以降五年間以上にわたって定期的に支払いを受ける。こういう非常にきつい要件がついていますね。しかし、実際問題としまして四十歳台までは住宅と教育で手いっぱいですね。老後のことを考えて、さあ年金どうしようかと言うのは、各種統計を見ても明らかなんだけれども、五十歳過ぎてからですよ。しかも、いまは定年がだんだん延びつつある状況で、なぜ五十五歳から後からやったらだめなのか。二年ばかり経過措置がありますよ。しかし、原則としてこれから五十五歳からじゃもうだめということになる。なぜそうしなければならぬのか。せっかく退職後も非課税ということにした。どうして五年間以上積み立てなければならぬのか、三年じゃだめなのか。たとえば五十七歳から始めて六十歳までに三年間で積み立てよう、もうそのときは住宅も何とかなった、子供の教育のことも考えなくてもいい、あとは全力で財形年金を積み立てようという人もあるはずですね。  こういうことを考えますと、一体どうしてこんなにきつい要件が必要なのか。今度新しい年金制度をつくろうというんじゃないのですね。既成の商品を活用する、こういうことですね。だから、いろいろなニーズが出てくればそれに応じていろいろな年金商品が出てくるはずなんですね。だからこれはこれに任しておけばいいと思うのですね。それに対して非課税の措置を適用してあげればそれでいいと私は思う。どうしてこんなにきつい要件が要るのかどうしてもわからない。ちょっと説明してください。
  136. 望月三郎

    望月政府委員 御指摘の点についてお答えします。  まず最初に、五十五歳未満の勤労者が締結したものであることとしておりますのは、定年前に十分な資産蓄積が計画的に促進されるようにするために、私どもは労働政策として六十歳定年の一般化をいま図っておりまして、定年年齢として六十歳が通念化しつつあるということが第一の理由でございます。第二は、五十五歳のころから賃金の低下に伴い貯蓄余力の低下が見られる。第三は、さらに十分な資産を形成する場合に少なくとも五年間の積立期間を要すること等を勘案いたしまして、五十五歳未満の者が開始するものとしたわけでございます。  それから、五年以上の期間にわたって定期に積み立てを行うこととしておりますのは、勤労者が毎月の賃金の一部を積み立てて老後生活のためにある程度まとまった資産を形成するためには、相当の期間にわたって積み立てを継続することが必要でございまして、現行の財形貯蓄の積立期間も預貯金等につきましては三年になっております。それから生命保険等については五年と現行もなっておるわけですが、これらとの関係や、また、非課税限度額とされる五百万円を積み立てる場合の毎月の積立額は、もし五年とすればやはり毎月七万円くらいを積み立てぬと五百万円になりません。そういうようなこと等も考慮いたしまして五年以上というように定めたわけでございます。  それから、六十歳以降契約所定の時期から五年以上の期間にわたって年金の支払いが行われることとした点につきましては、財形年金貯蓄が、勤労者が定年退職して収入が減少した後に年金としてある程度長期にわたって支払われ、その勤労者老後生活の安定に資するためのものでございますので、支払い開始時期については、六十歳定年制はすでに定年制の主流となっておりまして社会通念となりつつあることや、勤労者の賃金水準は六十歳以上で低下が著しいこと等を考慮いたしまして、六十歳に達した日以後の契約所定の日としたわけでございます。なお、現在民間の各金融機関等が取り扱っております個人年金商品の年金支払い期間がおおむね五年以上であるというような実態、それから郵便年金年金支払い期間も一番短くて五年とされている等の例もございますので、そういった点も参考にしたわけでございます。
  137. 栂野泰二

    ○栂野委員 長々と御説明になりましたけれども、時間がないから先に進まなければなりませんが、やってみて、これは必ずいろいろな矛盾、要求が出てくると思うのですよ。その実情を見て検討はなさいますか。そういうおつもりですか。一言言ってください。
  138. 望月三郎

    望月政府委員 この制度を施行して、よく実態を見ながら、推移を見ながら、必要とあればさらに改善をしてまいりたいと思います。
  139. 栂野泰二

    ○栂野委員 まだもうちょっと聞きたいのですが、時間がございませんからあれですが、いま私いろいろお聞きしても、この財形貯蓄のメリットは要するに税金問題なんですね。非課税ですよ。結局ここが柱になっている。だから大蔵省に振り回されることになるのです。財形制度というものは勤労者の自助努力が基盤になっている。そこで、国と事業主がそれにどう援助するかという、雇用関係というところに特殊性があるわけで、ここを生かさなければなりません。  石岡課長、なかなか勉強していろいろ書いておられて、私も読ませていただいたのですけれども、さっきも言いました八百万円限度というもの。ほかにもいろいろ書いてあるのですよ。たとえば事業主に給付金の一人十万円という枠を広げるとか、それから国の助成金もこの際上げようとか、いろいろ書いてある。これは「財形」の八二年一月号です。この法案を出す直前まではこういう構想があった。みんな消えているでしょう。やはりこれはいろいろ理由があるかもしらぬけれども、もう時間がないから聞きませんが、結局大蔵省との折衝で、金が出ることはだめなんですよ。けれども、やはりこれはどうしても国の援助事業主援助が必要。特に中小企業は、事業主といってもなかなかむずかしいですから、国が援助してやる。そうでないと、財形らしい特色を生かした制度になってこないと私は思うのです。ですから、やはりここら辺に力点を置いた施策をこれから進めませんと、結局この財形制度というのは無用の長物になるなと私は思うのです。  僕は、不勉強で余り知りませんでしたよ。この間から初めて勉強を始めてみたのだけれども、これは一体どうなるのかなと思って大変不安を感じるのです。今度の改正案でも、これで大いに利用できるというふうには、とてもじゃないけれども考えられない。ちょっと特色を出そうかなと思ったら、みんな頭を大蔵省に抑えられている。せっかくできた制度なんですから、ここのところをよほどこれから労働省にひとつしっかり充実させてもらいたいと思うのですが、最後に大臣、一言御意見をお聞かせください。
  140. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 私ども労働省としては、当初からこの法律は五十七年度の目玉というような感じから、非常に張り切ってやったわけでございますが、いまいろいろと私が聞いていますと、もっともな点があるようでありますから、一応実行した上で、いろいろな問題点があればさらに検討をやって、前向きに善処したい、かように考えております。
  141. 栂野泰二

    ○栂野委員 終わります。
  142. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 次に、浦井洋君。
  143. 浦井洋

    浦井委員 朝から大分いろいろ議論がございまして、多少私も重複するかとも思うのですけれども、この法案についていろいろ疑問点を大臣以下労働省の幹部の諸君にお伺いをしたいのです。  まず、当初、昭和三十年代から、労働者の財産形成を推進しなければならぬということで、西ドイツの財形制度などを参考にしながら、労働省としてはかなりの意気込みを持ってこの法案の作成に当たられたというふうに聞いているわけであります。ところが、朝方から、いろいろ不十分である、しかも今度はまた二百九十億削られて、十五年後にやっと二百四十二億つくんだということを、大臣、初めて知って驚いておられるようでありますが、そういうことできわめて不十分であるということがおわかりになったと思うのであります。  これは局長にでもお聞きしたいのですが、この法律、財形制度として、いまの時点で労働省が考えておられるものからして、どのくらいのできばえなのか、整備の度合いがどれくらい進んでおるか、こういうことをちょっとお聞きしたい。
  144. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 これはなかなかむずかしい御質問でございますが、少なくとも十年で五兆円を超える貯蓄残高があるというのはまさに事実であろうと思います。問題は、その中で、それ自体貯蓄という一つの財産形成であると私どもは思いますから、それなりの一つ目的を達成した面がございますけれども、もう一つは、やはり住宅という、物的な資産形成という側面については、当初予定したよりもはるかに立ちおくれておるというふうに考えます。  それから、さらに新しい政策的な対応として、高齢化社会における自助努力による高齢化時代の態勢をみずからつくるという、個人年金制度を新しくつくった。これは、当初予定していたというよりは、むしろ新しい事態に対応するということであろうかというふうに考えております。
  145. 浦井洋

    浦井委員 だから、制度として、その整備のされぐあいというのはどの程度なのか。労働省として、当初あるいは年来こうありたいと思っておるところから比べてどうなんだという辺を、もう少し端的にお答え願いたいと思います。
  146. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 財形政策の中で一番基本は、個人の労働者の自己努力に対して、使用者と国が援助をする、そういう体系を維持し、拡大していくということだろうと思います。そういう意味では、いわゆる給付金制度あるいは援助制度等の制度をつくり上げて、税制上の対応をしてきたわけでございます。  もう一つは、やはり住宅問題という、資産形成という物的な側面であろうと思いますが、これにつきましても、実は年来いわゆるプレミアムとかあるいは利子補給というものについて、かなりの世論もございましたし、労働省なりに動いたわけでありますけれども、なかなかそれが諸般の事情で実現できなかったわけでございまして、今度の利子補給につきましては、この客観的な情勢を踏まえながら、一応予算的な処置ができたということで、私どもは一つの踏み切りを行ったという評価をしてもいいのじゃなかろうかと思います。  年金の問題については、先ほど述べたとおりでございます。
  147. 浦井洋

    浦井委員 くどくど言われるのですけれども、もう一つ私の胸にぴっと響いてこないのですが、そうすると、この法律の第四条の「勤労者財産形成政策基本方針」というところで、「労働大臣、大蔵大臣及び建設大臣は、勤労者の財産形成に関する施策の基本となるべき方針を定めるものとする。」その事項は、「勤労者の財産形成の動向に関する事項及び勤労者の財産形成を促進するために講じようとする施策の基本となるべき事項とする。」云々とあるわけですね。基本方針を定める、となっておるわけなんですが、いまの基準局長の歯切れの悪い答弁からすると、なるほど定められないのも無理ないなという感じがするのですが、とにかく「定める」となっておるわけですね。それなら、一体なぜ「定める」ということが必要なんですか。
  148. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 財産形成政策というのが、一つの労使関係というものをそのバックに持っておりますことと、それから資産形成という問題を含めて、勤労者の福祉を増進するという場合には、総合的な観点からこれについての方向を決めるべきであろう、こういう総合的な施策が必要であろうということであると思います。
  149. 浦井洋

    浦井委員 労使関係の中で、あるいは総合的な観点から定める必要がある。定めたらいいわけなんですね。それが制度が発足して十年になるのになぜ定められないのか。なぜこの基本方針が作成されないのか、これはどういうことですか。
  150. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 先生指摘のように現在法律施行以来もう十年になるわけでございますが、法律による基本方針がまだ策定されておりません。現実には財形という制度はかなりの中身を持ちながら発展をしておると思うのでございますけれども、そういう意味で拡充整備が急がれておったわけでございます。しかし、何分にもこれまでの段階というのは、いわば一つの整備段階ということもございまして、今後審議会等におきましてこの基本方針の策定について検討してまいりたいと思います。
  151. 浦井洋

    浦井委員 大臣にちょっと。  朝からいろいろ聞かれておったと思うのですが、十年前に、もりと前から研究されておったのでしょう、西ドイツなんかの制度も参考にしながら。そして、さあつくろうということになってまいりまして、でき上がったのは非常にお粗末なものであって、これは先ほど言われたように三年ごとくらいに改正されてきて、きょうも改正されようということになっておるのですが、やはり法の目的からいきますと、「勤労者生活の安定を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」勤労者のための生活の安定を図るということが目的になっておると思うのですが、いま局長が言われたように貯蓄は五兆円になった。これは何やかにや言っても一番メリットがあるのは金融機関ですね。それから今度は事業主を経て、こうなりますから、これは事業主としたら人事管理とか労務管理でかなり使える。肝心の勤労者の方は一千億ぐらいの住宅の融資というようなことで、これはいまの法の目的からも非常に外れておるというふうに私は言わざるを得ぬわけなのです。石岡課長にお聞きしますと、本来であればこの財形制度は、末々はプレミアムという割り増し金であるとか、あるいは持ち株制度とか、そういういろいろ西ドイツでもやられているようなこともやりたいということだそうでありますけれども、とてもそこまでいかぬ。現状としてはせいぜい利率がどうのこうのというようなことで、建ちもせぬ住宅に、年金だとか――年金と言っても貯蓄したものをあるとき以後分割してもらうということですし、住宅融資と言っても住宅金融公庫なりあるいは厚年融資なりがあって、その上にちょっと乗るような、そんなお粗末なもの、とても勤労者の財産形成というようなおこがましいことは言えぬ状況だと思うのです。その証拠がこの法律の第四条、基本方針を定めるというようになっているのに十年間も定められないところだろうと思うのですが、大臣どうですか、やはりこの辺で少しいろいろなところを調整もしながら、政府部内も調整もしながら、せめて基本方針が十年目にできるくらいな、そういう万人を納得させられるような制度に改める、充実させるというような御決意はないですか。
  152. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 この法律ができて十年、しかも法律の目的に沿わないような運営をしておるのじゃないか、したがって建設大臣、労働大臣、大蔵大臣は基本方針を立てるべきである、いろいろ書いておるようでありますが、今日財形貯蓄が五兆円もあるということは、これは何というても勤労者の協力のたまものである。これは何をおいてもそういうふうに考えなければいけない。したがって、この時点で何とかして勤労者持ち家制度をやるのにいい知恵はないものかと思うて考え出したのが今度の利子補給制度、しかも借入金の限度額を、頭を二千万にして、三倍ないし五倍まで借りられるということをやったわけでありますが、いま言われるとおりに根本がまだ十分でないということであるようでありますので、一応やってみて、それで将来こういう点をこうしなければならない、法の目的に達するにはこういう点をまだ改めなければならない、しかも五兆円というものがあるじゃないかというようなことであれば、やはり前向きで再検討する必要がありはしないか、かように私は考えております。
  153. 浦井洋

    浦井委員 やってみてと言うが、かなり十年間やってみてこられたわけですよ。そして今度もちょっと点々を打つくらいな改良、改善をやられてはおるようでありますけれども、しかし、これから言いますように、午前中も言われたように、片一方でデメリットがあるわけですね。だからこれはよほどの決意を込めて、しかも何か労働省の幹部諸君に聞きますと、労働省のこれを一生懸命育ててこられた人はそれなりに将来に対する夢みたいな、ビジョンみたいなものを持っておられるようである。しかし、諸般の事情からそのことを一つも言われぬわけですね。だからせめてそういうものを多少とも花が咲けるようなことをやるのが政治家の任務だろうと思うのです。  そういう点で、ちょっと一年ほど大臣をやっていたらそれで済みだからということでなしに、何かやはり、あのときの大臣はなかなか思い切ったことをやりおったということで、これなんかも一つの材料だろうと思うのですが、もう一遍そういう点、大臣から。
  154. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 私は過去の経過は余り知らないものですから、今度の財形法を変えるときにこれはいい目玉なんだという気持ちで取り組んだわけでございますが、いろいろと話を聞いてよくわかりましたから、一応十年もかからずに前向きで再検討させてもらいたいと思います。
  155. 浦井洋

    浦井委員 大分けさ方からはおわかりになってきたようでありますから、ひとつ努力をしていただきたいというふうに思います。  そこで、朝から問題になっております租税特別措置をやめて住宅融資の方の利子補給をやるという問題でありますが、さっきから数字を言われておりますが、もう一遍復習いたします。大蔵省にお尋ねいたしますが、ここ数年の租税特別措置法の適用による控除の実績はどれくらいなんですか。資料をいただいておるので読み上げてもいいですが、言うていただけますか。
  156. 滝島義光

    ○滝島説明員 手元に五十一年度から五十五年度までの五年間の実績がございますので、順次申し上げます。  昭和五十一年度九十七億円、五十二年度百十七億円、五十三年度百七十三億円、五十四年度二百二億円、五十五年度二百二十三億円、以上でございます。
  157. 浦井洋

    浦井委員 それなら労働省の方に。これも数字が出ておりますが、五十七年度から利子補給というかっこうで支出をされる金額の数字を教えていただきたいと思います。
  158. 石岡愼太郎

    石岡説明員 先ほどお答えしました推計によりますと、五十七年度が五千六百万円、それから五十八年度が二十一億三千万円、五十九年度が四十九億六千万円という推計をいたしまして、七十一年、十五年後から二百四十二億八千万円ということで平年度化すると考えております。
  159. 浦井洋

    浦井委員 これは大臣、大体おわかりになるでしょう。  もう一つ大蔵省の方に聞いておかなければいかぬですね。住宅貯蓄税額控除方式が存続をするとして、五十七年から五十八年、五十九年、六十年度くらいまで、一遍数字を言ってみてください。
  160. 滝島義光

    ○滝島説明員 廃止された制度が存続するとすれば幾らの減収額になるかという数字は計算しておりません。
  161. 浦井洋

    浦井委員 午前中にお答えになったように五十七年度で大体二百七十億から二百九十億、そうですね。
  162. 滝島義光

    ○滝島説明員 五十七年度の初年度は増収効果としては三十億でございますが、これを平年度化いたしますと二百九十億円でございます。
  163. 浦井洋

    浦井委員 そういうことで、先ほど言われた数字から類推して年間に大体三十億ぐらいずつアップしていくわけですから、計算いたしますと五十八年度で三百十億、五十九年度で三百四十億というかっこうで上がっていくとしますね。そうするとたとえば五十八年度から六十二年度まで利子補給で大体何ぼになりますか。六十二年度ぐらいまでで利子補給金額は、累積で大体どれくらいになりますか、労働省
  164. 石岡愼太郎

    石岡説明員 御質問の趣旨をちょっと確認させていただきますが、先ほど申しましたように毎年度それぞれ利子補給額が試算してございます、それを五十七年から六十二年まで足し上げたものでよろしゅうございますか。(浦井委員「足したもの」と呼ぶ)五十七年から六十二年まで先ほど一部年ごとに申し上げておりました利子補給額の試算額を足し上げますと、約三百八十億に相なります。
  165. 浦井洋

    浦井委員 だから大臣申し上げたいのですけれども、今度やいのやいのと言ってつくられた利子補給制度、いまから五年間、五十七年度を入れますと六年間でありますが、三百八十億。それでいままであった住宅貯蓄税額控除の方式がなくなったことで国が支出をしなくて済む金額というのが、三十億ぐらいずつずっとふえていくとして千四百七十億、これは五年、六年を計算してみてもこれだけあらけてくるわけですね。なるほど十五年先では午前中言われたように単年度二百四十三億という利子補給の額になるらしい。しかし十五年先を言わぬでも。ここ五年、六年を見ますとこれだけ差が出てくる。こんなことが許されますかね。  大臣どうでしょうか、大臣の御感想をひとつ。いや、基準局長のは大体ようわかっています、大臣の御感想がこの際大事なんで。
  166. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 いま労働省側から五十七年から六十二年まで約三百八十億、それから住宅関係廃止したために国が出さなくてもよろしいという金が千四百七十億。したがってその差し引きは一千百億ということです。びっくりしておりますけれども、びっくりしますということで、私も何と答えていいかわからぬような気持ちでございます。
  167. 浦井洋

    浦井委員 やはり労働省を率いて立つ大臣ですから、びっくりした後何とも言えぬ気持ちですと言うだけでは、これはちょっと大臣としてはぐあいが悪い。別にこの点を責めるわけじゃないのですよ。
  168. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 びっくりしたほど、あいた口がふさがらぬように勤労者が損をするということなんです。したがって、これはやはり私としても真剣に考え直さなければいかぬなという気がします。四、五年で大体千百億も損するようなことですから。私どもは労働者の将来のために、家をつくるにしても利子補給をやるし、また財形貯蓄年金制度を入れて、利子課税のものも非課税に、勤労者がやめても継続してもらうということで、プラスになると思ってやったということなんですから。それが五年を見ても千百億違うということであれば、これはもうやはり検討をする必要がありはしないか。率直な意見であります。
  169. 浦井洋

    浦井委員 大臣は率直に検討をしなければならぬと思います、こういうふうに言われたわけでしょう。
  170. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 いまの大臣のお答えでございますが、要するに金額を並行的に両者を、これも厳密じゃございませんけれども、しかし単純に計算するとそれに近いものだろうということをおっしゃったわけでございます。しかし私どもは、現実に財形で営々としてためてこられた金を資産として住宅を持ちたい、そういう勤労者の願望に対してどう対処するかということが基本でございます。  したがいまして、現実にこの住宅貯蓄控除制度というのは、いままでの経験上から見ましても、先ほど来から話がありますように、実際に公的なルートで住宅を建てた方々金額として約一千億に満たないという現実はやはり現実として、政策的な立場からは考えざるを得ないと思います。それからもう一つは、現にすでに一般の、財形以外の方々住宅控除制度も実は廃止をされておるという一つの趨勢もございます。  そういうことから、私どもは問題を利子補給という、先ほどのお話もございましたが、要するに借金をして金を払っていく方々の立場も考えますと、やはり利子補給をしてこれを何とか軽減をさせていくという方向がより正しいではないか、あるいはいままでの貸付金額を三倍から五倍にするという金額の供給源を大きくする方向に政策転換をいたしたわけでございます。そういう意味で、住貯制度というもののたてまえの上に立つ現実を見まして、その上に立って政策転換をする場合の一つの選択的な政策手段として考えた、こういうことです。
  171. 浦井洋

    浦井委員 大臣、いま局長の言われたことをお聞きになったと思うのですが、確かに政策転換をやった。それはいろいろな理由づけがあってやられたのだろうと思うのです。しかし、単純明快にして私が大臣にお教えしたわけですが、ここ六年間で一千百億ぐらい国民が損をする。大臣はきわめて率直に再検討しなければいかぬ、いままでは改正をしてよかったんだというふうに思っておったけれども、どうもけさ方から雲行きがちょっとおかしいというような御心境のようでありますが、これはひとつその方向でがんばっていただきたいと私は思う。とにかく五兆円、勤労者がつめに火をともして金をためているわけですよ。その上に住宅融資というのは、その中で使われているのはわずか二%ですか。また進学融資あたりもごくわずかでしょう。進学融資という方もあるのですよ。そこへ持ってきて今度の改正でいかにも正しく改める――改正というのは正しく改めると書くけれども、勤労者が六年間見ても千百億損をする、これは改正だと言えるのかということになるのですよ。だから、これは大臣、ひとつもう一遍よく考えて、いまの御発言、率直に再検討したい、これは非常に貴重だと思いますので、その方向で前向きで検討していただきたい、こういうふうに思います。  そこで、私一つの提案があるのですけれども、確かに住宅貯蓄税額控除廃止された、けさ方問題になって大臣もそう言われておる。だから今度は年金年金といっても貯金したのを分割してもらうだけのことですけれども、その年金貯蓄が行われるわけですね、これからは。だからそういう面で、今度租税特別措置法を改正して廃止した税額控除方式を今度は年金の積み立てにひとつ適用していただきたいと思うのです。なるほど五百万円までマル優で利子は非課税にはなりますよ。しかしそれだけでなしに、いままであった、今度廃止された税額控除方式を今度年金の積み立てに使っていただきたいと思うのです。わかりますか、大臣どうでしょうか。
  172. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 ちょっと事務的な説明がございますので……。  先生指摘のように、まさに年金につきまして、いわゆる雇用労働者でなくなった場合の利子の非課税を創設したわけでございます。したがって、この分についてもやはり全体的な評価をいただきたいというふうに考えます。
  173. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 いま浦井先生が言われたとおり、私は単純な計算をしたわけですね。あなたが言われた六年間の数字をぽぽっと書いた結果、とにかく一千百億円損をする。  そこで、ここで前の制度税制関係でもうなくなってしまっておるわけですから、それを生かすわけにいかぬのですから、廃止しておるから。しかし、私どもは勤労者のためになるために今度は新しい制度を考えたわけですね。それをやらせてもらわぬと困るわけだからやらせてもらって、さらに従来のとおりやっておれば幾らか、ずっと一千億も五、六年で違うということがいよいよはっきりわかれば、やはり今後財形貯蓄面で何とか取り返すというようなことを検討してみたいと思います。
  174. 浦井洋

    浦井委員 いや、それはやらせてもらうからひとつ待ってくれというようなことでなしに、住宅貯蓄に対する税額控除方式をやめたので、今度の提案ではむずかしいでしょうけれども、もう来年か再来年くらい、今度は年金の積み立てに対して、せっかくそこで廃止したのを復活するのでなしに別の方向で、ここでひとつ税額控除方式の優遇措置を講じてほしい、特別措置を講じてほしい、このために大臣がんばってほしいということを言っておるわけなんですよ。何か大臣、前向きで検討するくらい言えますか。
  175. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 私が言うのは、いまさっき言ったような率直な数字を出して五、六年間で千百億も損するようになる、これは大ごとだ。ところがもう法律は死んでしまっておるわけですから、私どもはこの新しい財形をまず運営させていただく、しかる後にさっき言ったような欠損を生ずるようなことがあれば、これを取り返す意味において何かの措置をいたしたいというのが私の考え方でございます。
  176. 浦井洋

    浦井委員 大臣、長いこと労働大臣やっていてください。ひとつ日の目を見させていただきたいと思うのです。  時間が迫りまして、各論をいろいろやりたいのですが、それと横並びといいますか、この財形制度でもっと改善をしなければならぬ問題、住宅に関して言いましても、住宅金融公庫の場合には、建て売りであっても土地と上物に対してそれが全体として融資の対象になる。マンションもやはり土地の上に建っているわけですから、それも融資の対象になるということで、私が言いたいのは、財形でもそういう用地費も含めた融資対象にした方がよいのではないかというふうに思うわけです。ただでさえ金利が高くて利用価値が少ないと言われておるわけですから、これは朝からいろいろ出ておる問題と同じような改善策の一つですが、この点について労働省はどう考えておられますか。
  177. 望月三郎

    望月政府委員 財形持ち家融資の貸付対象につきましては、本年度から対象住宅の床面積を老人等の同居の場合は拡大するとか、あるいは既存耐火構造住宅の範囲を建築後十一年以内のものから十二年以内のものに広げるなどによって範囲を拡大するという努力をまずやっております。  それから土地の先行取得につきましては、これはなかなか問題がございまして、地価の高騰をあおる場合も十分考えられまして、投機目的での悪用という場合も避けなければなりませんので、そういった問題をどうするかということをやはり念頭に置かなければならない。  それからさらに、賃貸マンションの権利金等についてはどうかというような御指摘もあろうかと思いますが、それが資産形成という財形政策目的との関連で非常に困難な面がございます。  それからもう一つは、対象の拡大という意味で木造中古住宅を対象にすべきではないかというような意見もあるわけでございますが、これにつきましては現在その評価方法等が十分確立されておりませんで、公的融資として適切円滑に運営されるかどうかというような問題もございます。しかし、これについてはいま検討をしておるところでございまして、現在の段階ではこれを直ちに新年度から対象にするというところには至っておりませんが、評価方法等について検討をいまやっております。そんな状況でございます。
  178. 浦井洋

    浦井委員 私が次に質問することも部長は全部答えてくれて時間の節約に御協力をいただいたわけですが、やはりこっちの質問することをよく聞いてそれにフィットするような答えをしてもらわなければ困ると思うのですよ。  そこで、建設省来ておられますか。――少し建設省質問をしたいと思うのですが、土地の融資の問題に関連をいたしまして、要するに地価が上がる、それから建設価格が上がるということで勤労者の所得とそういうものが乖離をしてしまって、特に東京都、首都圏では住宅不足が非常に増大をしておるわけなんで、その中でも一番の問題はやはり地価の高騰だろうと思うのですが、これに対してこれを抑えなければもう話にならぬわけです。それについて当面何をされておるのか、ちょっと聞いておきたいと思う。
  179. 市川一朗

    ○市川説明員 お答えいたします。  建設省といたしましては、宅地需給が逼迫しております大都市地域を中心といたしまして、できるだけ良質で安い価格の宅地を供給したいということから、従来から市街化区域農地の宅地化の推進を初めといたしまして、いろいろな政策を総合的に推進してまいっているところでございますが、現在の時点におきまして、そういった宅地供給を推進するに当たりまして大きな問題と考えております代表的なものは、まず第一に素地所有者の意向が変化してまいりまして、宅地開発のために必要な素地の取得が非常に困難になってきておるということが第一点。  それから第二点におきましては、特に市街化区域内においてでございますが、仮に素地の取得ができた場合におきましても、もともとのその素地の価格水準が高いということ、それからそこで宅地開発を行いますと、道路、下水道、公園その他の関連の公共公益施設の整備負担が非常に増大しておりまして、最終的に供給される宅地の価格がどうしても高いものとなるということが問題であるというふうに考えております。  したがいまして、私どもといたしましては、今後の政策の重点には、その二つの点をできるだけ解消するような方向でいろいろな検討をしておるということでございます。
  180. 浦井洋

    浦井委員 そこで、建設省の場合、例の宅地開発公団というのをつくられたわけですね。それを今回住宅・都市整備公団というかっこうでまた逆戻りしたわけですが、宅開公団が具体的に竜ケ崎で五十六年の十月に宅地造成を完成をして分譲を始めたわけでしょう。この模様は一体どうなっておるのかということをちょっと御報告願いたいと思うのです。
  181. 市川一朗

    ○市川説明員 昭和五十六年度に竜ケ崎ニュータウンにおきまして住宅地の一般分譲を御指摘のとおり行いましたが、その結果は、二百六十二区画、五・七ヘクタールに対しまして平均坪当たり十九万五千円、そのときの倍率は平均して約十五倍という状況でございました。
  182. 浦井洋

    浦井委員 当初は、あれはいつでしたか、四十九年ですか、坪十万円ということなんでしょう。かなり高くなっていますね。これは約束違反ですか。
  183. 市川一朗

    ○市川説明員 宅地開発公団ができましたのは五十年の九月でございますが、大体当時の宅地供給の類似のところの平均が坪当たり七万数千円ぐらいの金額でございましたので、その後の状況その他をいろいろ勘案いたしまして、坪当たり十万円程度の宅地供給が可能なのではないかということで、私どもはそれを目標に進めてまいったわけでございますが、先ほど申し上げましたような素地価格の問題とか、あるいは関連する公共施設の問題とか、いろいろ価格がアップする条件がたくさん出てまいりまして、一生懸命努力した結果、やっと十万円台におさめたというのが実態でございます。
  184. 浦井洋

    浦井委員 十何万円といっても、まあ坪二十万円ですよ。これは約束違反だ。  それから、先ほど言われたのですが、純粋の分譲というのは、これは四十五区画でしょう。共同分譲を含めても二百九十二区画ですか。聞いてみますと、共同分譲の競争率が八倍で、一般分譲の競争率は約五十倍ということなんですよ。なぜもっと一般分譲をふやさないのかということなんです。共同分譲ということになりますと、これをやれるのは大企業ばかりなんですよ。現に積水であるとかミサワであるとか東急不動産であるとか三井建設ですか、こういうようなところしかやってない。地元の直接購買力をふやすような、大工、左官さんがやれるようなものは一般であって、それが少ない。やはり一般をもっとふやすべきだというふうに私は思うのですよ。  住宅公団でよいのに宅開公団をつくって、今度また住宅・都市整備公団にして、結果としては両公団の役員の数をふやすだけになっておるわけなんですが、せめて建設省はこういうことぐらいせなければいかぬのじゃないですか。
  185. 市川一朗

    ○市川説明員 宅地開発公団は、昨年の十月に住宅・都市整備公団に統合されたわけでございます。したがいまして、竜ケ崎ニュータウンも含めまして、同公団におきまして従来宅地開発公団がやっておりました事業を鋭意推進しているわけでございますが、今後の宅地供給というサイドから見た公団の考え方といたしましては、先生指摘のとおり、宅地分譲に対する勤労者のニーズが非常に強いというところから、できるだけそれにウエートをかけた供給体制を確立していきたいと思っております。  ただ、竜ケ崎ニュータウンで行われましたいわゆる共同分譲方式とおっしゃいました部分は、宅地開発公団が整備しました宅地の上に、いわゆる住宅関係企業がそこに上物を建てまして、民間企業と公団とがタイアップして、できるだけ上物も含めて、宅地だけじゃなくて上物も含めてトータルとして勤労者取得しやすい安い価格の供給をするという考え方で行ったものでございまして、私どもといたしましては、この方式もかなりの好評を得ているという認識でございます。
  186. 浦井洋

    浦井委員 もう一つ建設省に。いまの地価の抑制の二点に関係をするわけなんですが、最近自治体が宅地開発指導要綱をずっとつくっていますね。それで開発者に費用負担をさせるというようなことをやらせてきたわけですが、最近建設省、自治省が点検をして、行き過ぎのものには改善の勧告をするというような報道があるわけなんです。どういう作業をしておるのか、行き過ぎというのはどんなものなのか。私の考えとしては、やはり乱開発を規制するとかあるいは地方財政を少しでも豊かにするという点で、こういう開発指導要綱というのが必要だと思うわけですね。どうも報道によりますと、建設省、自治省はデベロッパーのいろいろな要求に押されて負けているような感じがするわけですよ。その辺についてひとつお答えを願いたい。  やはり指導要綱の見直しをするというようなことは、かなり慎重な態度が必要だと私は思うわけです。だから、そういう点で建設省考え方を聞いておきたいと思う。簡単にひとつ。
  187. 嵩聡久

    ○嵩説明員 現在、自治省と共同で指導要綱に関する調査を実施しておりますけれども、これにつきましては、遅くとも五月中には一応の集計結果をまとめまして、それを踏まえてしかるべき是正措置を講じていきたいと思っておりますけれども、先生指摘のように、指導要綱に関しては、これが成立してきた経過を見ますと、それなりの歴史的使命といいますか、そういうものは果たしてまいりました。  ただ、昨今非常に地価が高騰してきたというようなこともありまして、かなり行き過ぎた負担とかあるいは過大な整備水準の要求とかいうことにつきまして、それが価格に転嫁せざるを得ないというような事態になってまいりましたので、これを否定するということではわれわれも考えておりませんけれども、行き過ぎたものは是正していきたいというような態度で慎重に臨んでいきたいと思っております。
  188. 浦井洋

    浦井委員 やはり自治体あるいは地方住民にとっては非常にメリットがあるわけですから、見直しをするといっても慎重にやらなければならぬ。宅地供給をふやすためには、かなりいろいろないきさつがあってできた宅地関連公共公益施設整備費、現在国費ベースで一千億ぐらいになっているのですか、そういうものをもっとふやしていく必要があるのではないかというふうに私は指摘をしておきたいと思うのです。  そういうことでありますが、肝心の財形の方ももう時間がなくなりました。大臣に申し上げておきたいのですが、私が質問せぬ前にもう回答していただいたわけですが、土地なんかも融資対象にせよ、それから中古の木造住宅も融資対象にせよ、それから賃貸マンションの権利金についても融資対象に入れよ、それから先ほども出ておりましたけれども、マル優の限度額を、一千万という話が出ておりましたけれども、少なくとも八百万というようなことをやらなければならぬ、それから五十五歳で新規の財形の受付はやめだというようなことは権利の侵害だからやめておけというような意見を私も持っております。  それから、きょうは厚生省に対しての質問は用意しませんでしたけれども、年金融資の貸出枠、融資枠、これをもっと広げることを要望しておきたいと思う。それから進学融資、これなどもこの財形制度一つの柱として喜び勇んで発足されたけれども、だんだん利用者が減ってきておる。これは利率が高いわけですね。私は利率を下げる努力をしなければならぬと思います。だからそういう点で、これからも大臣を先頭にしてひとつがんばっていただきたいと思うわけであります。  最後にもう一度大臣にお尋ねをいたしますけれども、財産形成制度というものは、やはりそれなりに夢とビジョンを持って発足したはずであります。それがいろいろな政治の谷間にはまったりあるいは財政事情に阻まれたりして、金融機関にメリットがあるだけだというようなかっこうになっている。これは大臣もけさ方からの論議でよくおわかりだと思うのです。だからこれは決して改正ではなしに、下手をすれば改悪だと言われても仕方がないものだというふうに深刻に受け取っていただいて改善に努力をしていただきたい。このことを要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  189. 唐沢俊二郎

  190. 米沢隆

    米沢委員 けさほど来多くの問題が提起をされておりますので、少々重複するところがあるかもしれませんがお許しをいただきまして、質問を続行させていただきたいと思います。  御案内のとおり、勤労者財産形成促進法の一本の柱であります財形貯蓄制度は、制度発足以来十年を経過し、昭和五十六年十一月末日現在における実績は、財形貯蓄契約者数で千二百六十二万人、雇用労働者の約三分の一をカバーしております。貯蓄残高は四兆九千七百八十五億円、これはもうすでに五兆円を超しておるはずであります。それから採用事業所数で百三十一万事業所に及んでおりまして、勤労者のための貯蓄制度としては着実に定着しつつあると思います。しかし他方、けさほどから問題になっておりますように、本制度の主要目的であります勤労者持ち家取得援助については、融資の貸付利率が高いこともありまして一向に進んでおりません。持ち家分譲融資については、制度発足の昭和四十八年度から五十六年十一月末日までで合計五百八十四億円、融資戸数で六千八百五戸。持ち家個人融資については、制度発足の昭和五十二年度から五十六年十一月末日までで四百五十五億円、融資戸数で一万七百六十六戸で、合計約一千三十九億円でありまして、これは財形貯蓄残高のわずか二・一%を占めるにすぎない状況であります。  この財形貯蓄に対する融資比率は常々問題になっていたわけでありますが、この財形制度目的勤労者の資産保有を進め、資産保有面における社会的なアンバランスを是正することにあるとすれば、この融資比率、融資額、融資戸数からしておわかりになりますように、一体この十年間何のための財形制度であったのかが問われねばならないと思います。財形制度で恩恵をこうむったのは金融機関であって勤労者ではなかったのではないか。結果的には労働省は本法を施行することによって金融機関の営業マン的な存在に堕しておると言っても過言ではないと思うのでありますが、まず大臣に所信を伺いたいと思います。
  191. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 その前にちょっと、事務的なことでございますので……。  いずれにせよ、先生指摘のように五兆円に達する制度のふくらみを見たわけでございます。その意味におきましては勤労者貯蓄という一つの資産をつくったという意味で大きな役割りを果たしている。ただ御指摘のように、非常に問題がございますという御指摘もわからないわけではございませんで、それによって今度御提案申し上げたような一つ制度を考えておるわけでございまして、一つの方向としては御指摘のような発展の方向を踏み出しておるというふうに御理解願いたいと思います。
  192. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 いま米沢さんが言われたとおりに、私は財形貯蓄が五兆三千三百億円にもなっておって利用者が相当数ふえたということはそれなりに意義がある。ところがこれを利用して家を建てる場合に、利息が余り高いためにそれを利用するのが約二%、五兆円の二%ということは一千億程度だということを聞かされておったために、何とかして利息を安くしなければいかぬじゃないかというようなことで今回考え出したのが利子補給制度でございます。したがって、私どもも過去の経過を踏まえて、いろいろといいところがあればそれをとるし、悪いところがあればこれを変えていくというのが法律の趣旨であろうかと思いますので、今回新しくつくった法律で運営をしてみて、さらに労働者が損をする、本当に前の形の方がよかったという点があれば今後何かの形で埋め合わせをするような気持ちで検討していかなければいけない、かように考えるわけであります。
  193. 米沢隆

    米沢委員 そこでまず融資比率が二・一%と極端に小さいこと、すなわち財形融資の不人気の最大の要因は何と言っても先ほどおっしゃいましたように貸出金利が高過ぎることであります。率直に言いまして、せっせと貯蓄をしてきて、すでに五兆円以上の財形貯蓄を行ってきた財形制度の加入者への住宅融資の金利が三月一日から七・九九%と、何もしない住宅金融公庫の金利五・五%よりどうして高くならなければならないのか。高いから利子補給をするといういま議論でありますが、利子補給をする以前の問題として、せっせとためてきた連中が高い金利で借りて、何もしないやつが五・五%の安い金利で借りられる、こんな矛盾した話はないではないかと私は思うのでございますが、この点を労働省は一体どういうふうに考えておるのか。高金利が財産形成のためとは言え財形に寄与しない、財形になっていない。この制度の致命的な欠陥ではないかと私は思うのでございます。この疑問に、制度的な理由も踏まえてわかりやすく御説明いただきたいと思います。
  194. 望月三郎

    望月政府委員 御指摘の点でございますが、財形の持ち家融資は、勤労者財形貯蓄を行いまして、それによって金融機関に集積された資金を調達して行うものでございまして、いわば財形貯蓄を行う勤労者に対する還元融資であるので、基本的には貸付利率は融資に関する事務の費用を除いて考えるとしても、金利体系の中で定められる調達利率によるという制約があるわけでございます。したがって、貸付利率の引き下げ、特に勤労者持ち家取得促進する観点から、国が特段の援助を行うこととするものでございまして、その水準については、まずひとしく国民一般を対象として低利の住宅資金を貸し付ける住宅金融公庫など通常貸し付けに対する国の援助に、特に勤労者について追加して援助するものとして位置づけられるというものでございまして、財形持ち家融資貸付利率住宅金融公庫の場合よりは多少高くなるのはやむを得ないということでございます。一方は財投のお金でございますし、一方は金融機関に利子をつけて預けた金を原資としている、こういう違いがあるわけでございます。  なお、住宅金融公庫の貸し付けも、郵便貯金あるいは社会保険等により国民貯蓄した財政投融資資金から行うものでございますので、先ほど申しましたように財形持ち家融資の場合と性格が同様のものであるが、財形持ち家融資の資金である財形貯蓄を行っている勤労者は、一方で長期貯蓄としての高い利率を確保しておるものでございます。したがいまして、そういう財源の違いからどうしてもやや高くなるということでございまして、これに対して利子補給で何とか下げようという発想が出てきたわけでございます。
  195. 米沢隆

    米沢委員 たとえば住宅金融公庫は、財投金利との利ざやを一般会計からもらう、いまのところ財投から逆に借りるというような変則的な運用を行っておりますけれども、その意味では原資の問題でいろいろ議論があることは事実です。しかし、もう少し労働省として基本的に考えてもらわねばならぬのは、個々の労働者が財形貯蓄契約を結んで銀行に納め、その銀行から借りて、また、貸してあげるんだから調達利率というものがあって、それ以上下げられないという基本的なことはよくわかっています。  問題は、この制度を発足する際にあったと私は思うのです。各銀行にばらばらにこれを納めるのですから、その銀行が運用した益を実際は還元できないようなシステムを最初からつくったところに問題があるのじゃないかと私は思うのです。たとえば、貯蓄する窓口が一体だったり、五兆円もためてそれを運用しながらその運用益を個人に転貸利子を安くする方向に使ってあげるという制度がもし最初からできておったならば、いまさら一般会計から利子補給をしなくても、もっとかなり安い金利で貸し出しができるのではなかったのか。この基本的な問題にまず労働省としてはこの制度を立ち返らさせるような努力をしない限り、少々一般会計から利子補給を二%やります、一%やりますなんといっても、こんなことは議論にならないと私は思うのです。どうなんですか。
  196. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 財形につきましては、御指摘のように各金融機関に貯蓄をいたしまして、それに国と使用者が援助するという制度でございます。西ドイツにおきましての同じようなことを一つの経験として私ども参考にしたわけでございますが、一つのものをつくるということは大変なことでございまして、現実的には合わないのではなかろうか、むしろ積極的に理解するならば、銀行における一つの調達金利を何らかの形でこれを引き下げるような努力を銀行側と話し合っていくという方向はあるのではないだろうかというふうに考えております。
  197. 米沢隆

    米沢委員 確かに制度が発足して今日において  一本にまとめるのはむずかしいかもしらぬけれども、私が申し上げたいのは、最初の発足のときにこういう制度をつくったところに、高い金利でしか住宅貸し出しのできない最大の欠陥があるということをわかってもらいたいと思うのです。銀行を督促して調達金利を安くしようなんといっても、実際やっても効果ないでしょう。実際やってくれないから、あなたはまた一般会計から利子補給をやろうなんという議論になっておるのじゃありませんか。私はそのことをぜひ肝に銘じてもらいたいと思うのです。  大体、預けられた金融機関で五兆円の一%をうまく運用したら五百億でしょう。二%うまくやったら一千億もうかるんだ。その分が借りる個人に返ってこないところが問題なんだ。もっとそういう意味では労働省としては金融機関に強く当たって、調達金利を下げてもらう努力を引き続き行ってもらうことが大事だ、私はそう思っております。  それから、高金利以外の問題で還元融資を不振ならしめておる原因、問題点は数多くあると思うのです。個々の制度に内在している問題点について労働省はどのような分析と反省を持っているか、お尋ねしたいのであります。  まず第一に、持ち家分譲融資制度が進まぬ理由についていかがでございますか。分譲融資が非常に伸びない、それは、これも制度発足の問題がありますが、建設事業主体に事業主と共済組合を指定したというところが私は大変問題だと思っておるのでございます。  この財形制度の発足に当たって事業主が期待したのは、住宅を建設して従業員に分譲するというそのことではなくて、まあそのこともあったでしょうが、それが主たる理由ではなくて、企業がいままで持っておった住宅貸付等の制度を公的制度に移管したい、それが私は事業主が賛成をした主な理由ではなかったかと思います。また実際、事業主体を事業主にするなんということは、実際は普通の企業は何も不動産業者でもありませんし建設業者でもありませんから、いろいろな土地を買ってきてそこに家をつくってめんどくさいことをやらざるを得ないわけですから、それだけでも事業主はやはり嫌気が差しておるのだと思いますね。  同時に、転貸融資でありますから、あるいはまた分譲したものは今度は事業主を経由して雇用促進事業団の方に返すのでしょう。そうであれば、二十年間、三十年問返していく間はずっと企業が責任を持って管理しなければならぬ。これもしちめんどくさいことだと思うのですね。そういう意味で実際は事業主が分譲融資を借りて分譲しようという気持ちになりたがらないという最大の理由があると私は思うのです。  同時に、共済組合あたりを事業主体にするなんということ自体最初から無理だったわけですね。最初から無理だったと思いますよ。共済組合なんというものは、いろいろな規模のものがありますし、同時に共済組合そのものの仕事が実際あるわけですから、それを越えて土地探しから家までつくれ、それをまた分譲して何十年間金を返し終わるまで管理せよなんということを共済組合に求めること自体が私はナンセンスだと思う。  そういう意味で私はこの分譲融資は一向進んでいないのじゃないかと思っておりますが、労働省はどういう見解ですか。
  198. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 雇用促進事業団の一つの事業として御指摘のように財形持ち家分譲融資制度が四十八年九月に発足したわけでございます。その背景は、企業の一つの社内融資制度とのかみ合わせも含めまして、労使関係の背景を持ちながら一つ事業主住宅を建設し、それを分譲する、こういう制度をつくったわけでございますが、それはやはりそういう一つ実績が日本の現実の中でかなり多く見られるということを踏まえながらこれを設けたものであります。  したがいまして、分譲住宅につきましては、確かに御指摘のように長い間一つの債権債務関係が継続いたしますから、この点についての工夫をさらに進めながらこれを進めたいと思いますけれども、しかしいずれにせよ、財形がいわば労使の話し合いなり、あるいは労使関係という一つの状態を意識しながらの制度でございますから、この分譲制度もそれなりに大きな役割りを果たしておるだろうというふうに考えておるわけであります。
  199. 米沢隆

    米沢委員 大きな役割りを果たしておるというその感覚が嫌なんだな。分譲融資は進んでいないじゃないですか。わずか六千八亘戸ですよ、つくったのは。金を貸したのはわずか五百八十四億でしょう。それは分譲住宅というこの制度があれば利用する人はあるでしょう。それはないよりましかもしらぬけれども、しかしこれは生きてないじゃないですか。それが生きておる、大きな役割りを持っておるなんと言うこと自体が大体ナンセンスだ。答え直してください、そんなのは。
  200. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 役割りといいますのは、つまり先ほど言いましたように、労使関係を土台にしたという意味では一つの大きな役割りだろうというふうに、私は質的な問題として申し上げたのでございますが、これを伸ばすことについてはかなりいろいろ問題がございますから、ざらに検討してまいりたいと思います。  なお、住宅金融公庫を通じてのいわば労働者が直接財形の形の中で住宅取得のための融資を受けるという制度も、別途開いておるわけでございますから、両方相まって進めてまいりたい、こういうことでございます。
  201. 米沢隆

    米沢委員 この分譲融資制度の中で日本勤労者住宅協会がやっておるものがありますね。この分だけは金利が五・五%ですね。分譲融資としては一番条件がいいわけですが、この勤住協だけなぜ五・五%にしたかという問題についてお答えいただきたいと同時に、制度的にこうしてすぐれておるにもかかわらず、勤住協の財形住宅実績がなぜ伸びないのかというこの問題をちょっと御説明いただきたいと思うのであります。  この理由として、制度が不備である。特に五十三年から制度的には公務員等にも分譲できるように法改正がなされたわけでありますけれども、逆ざや補てんをめぐって地方公務員は分譲を受けられない、こういうあたりが昔から問題になっておりますね。このあたりを一体どういうふうに改正なさっていくのか。自治省との関係もあると思いますけれども、労働省の見解を伺っておきたいと思います。
  202. 望月三郎

    望月政府委員 いわゆる日本勤住協に対する分譲融資は、住宅の分譲を行うことが困難な事業主雇用されておる勤労者につきまして、事業主にかわって行うという考え方でございまして、これを労働保険特別会計から利子補給分を支出することによりまして、五・五%の貸付利率としているところでございます。これは、いわば事業主が連帯して負担することによって他の公的住宅分譲並みの条件を確保しながら、そのような勤労者持ち家取得の方途を開いているというものでございます。  なお、五・五%といたしましたのは、住宅金融公庫の公社分譲住宅融資や年金福祉事業団の消費生協等に対する分譲融資の金利、さらには財形持ち家分譲融資を受ける日本勤労者住宅協会が行っている他の住宅分譲の場合の金利、これも五・五%でございますが、それとの均衡を図るように設定したものでございます。  したがいまして、あとの地方公務員の問題がいまなかなか実績がないじゃないかという話がお尋ねの点だと思いますが、国家公務員それから三公社等につきましては一応この形でいま実績があるわけでございますが、地方公務員の場合は、その勤住協が地方の都道府県等に行って、ある住宅建設計画を立てるわけでございます。そうしてそれを分譲するわけですが、その場合に、その中に地方公共団体の職員が何名応募するのかということが非常に不明確な点があるわけでございます。  そこで、いろいろいままでもある程度かたいところをねらってやってきた、計画をつくって勤住協も努力をしたわけでございますが、なかなかうまくいかないで非常に困っておるわけですが、最近私どもも、これは一つには、地方公共団体のそういった福利厚生面を預かる責任者の理解を得て、あらかじめ勤住協が計画的に住宅を建設するような情報を早く地方自治体に流しまして、そして地方自治体がそれを消化しながら、ことしはそれじゃ何人分ぐらいの利子補給の予算を組もうというような、予算編成時にのせるというような努力をしなければ、これはなかなか簡単にいかないということでございますので、いま勤住協の首脳部と私どもでまずとりあえず具体的な例として特定の県から模範例をつくっていこうということで、私は勤住協の常務ともいま鋭意、特定なところからモデルをつくって、ひとつそれを中心にほかの府県にも波及していかせるような方向に努力しようじゃないかということで、やっている次第でございます。
  203. 米沢隆

    米沢委員 それから持ち家個人融資の伸びない理由は、一にかかってこれは高金利にあるわけでありますが、その他制度的にも問題があるのじゃないか。たとえば転貸融資については、雇用促進事業団のルートと共済組合ルートがありますが、大企業はまあまあとしても、中小企業は一向に伸びない。共済組合ルートも余り芳しくないと聞いておるのでありますが、その理由について当局の見解を聞かしてもらいたい。
  204. 石岡愼太郎

    石岡説明員 転貸融資の手続面の繁雑さ等がその融資の伸長を阻んでおる原因にもなっておるのではないかという御指摘であったかと思いますが、そもそも転貸融資というのは、事業主が社内制度としてその制度をつくり、その責任において勤労者に転貸していくという形ですから、ある程度の繁雑さその他はやむを得ないことだと思います。ただし、それがゆえにこの融資が伸びないという御指摘も各方面からいただくこともございますので、できるだけ、いままでもやってまいりましたが、今後も事務面で簡素化できるものはやってまいりたいというふうに考えております。(米沢委員「中小企業が伸びないのは」と呼ぶ)  中小企業でやはりこの転貸融資が伸びないのは、御指摘のとおり転貸融資にはいろんな事務の手間暇を要します。と同時に、中小企業におきましては、一度事業団から転貸融資を受けますので、企業の借入金という形になる。そういう形を嫌われる中小企業の方々もおられると思います。  以上申し上げましたような理由が中心となりまして、中小企業でなかなか転貸融資が伸びない。そんなことが原因ではなかろうかと考えております。
  205. 米沢隆

    米沢委員 個々のむずかしい伸びない理由はあるかもしれませんけれども、格段の御努力をいただいて、せっかくの融資制度でありますから、うまく運営ができるように督促、指導等を強化していただきたいと思います。  さてそこで、今回の改正法案におきましては、いわゆる勤労者財産形成審議会基本問題懇談会の答申を受けて、一つは、退職後にも利子非課税の措置をとる財形年金貯蓄制度創設する。二つ目には、持ち家個人融資に関し五年間の利子補給制度を新設し、貸付限度額を貯蓄高の三倍から五倍に引き上げて、限度額も一千五百万から二千万円にする。三つ目には、そのかわりに現行の住宅貯蓄控除の租税特別措置を五十七年十二月末をもって廃止する等の提案がなされておるわけでありますが、以下この三点の改正事項についてそれぞれ若干の質問をさせてもらいたいと思います。  その前に一つ伺っておきたいのは、さきの懇談会の答申におきまして、推進すべき点として三つの問題が挙げられておりますね。第一は、高齢化社会の進展に対応する勤労者の自助努力に対する援助。第二は、事業主援助制度、財形給付金・基金制度改善。第三は、財形持ち家融資制度の積極的活用の促進。この三つが挙げられておるわけでありますが、今度の改正法案には二つはありますが、事業主援助制度改善というものが見送られておる、これは一体どういうことですか。
  206. 石岡愼太郎

    石岡説明員 御指摘のとおり、財形審の答申におきまして、今後の財形制度の推進すべき方向として事業主制度改善といったものが指摘されております。この内容、方向につきましては、審議会の御意見では、先生が最初に申されました高齢化社会に対応する貯蓄制度と相緊密な関連を持ちまして、率直に言いますと、今回実現されました年金貯蓄に給付金制度等を利用いたしまして事業主援助する、そういう構想が考えられていたわけでございます。これにつきましていろいろな要求をいたしまして、先ほども浦井先生の方からも御指摘があったところでございますが、今回一つの成果といたしましては、基金・給付金制度を使いまして、今度新しくお認めいただければ発足いたします財形の年金制度における貯蓄者に対しまして事業主援助ができるという道が開かれたわけでございます。
  207. 米沢隆

    米沢委員 この財形給付金あるいは基金制度を利用して年金の原資にさしてあげるということだけでは改善にならない、やはり従来の給付金・基金制度そのものを逆に事業主を説得してもっと充実したものにするということが、基本問題懇談会の答申の中の推進すべき方向として指摘をした段階では、そのものまで含まれておったのだと私は思うのですね。その点を留意されて、少なくとも今後の改正の中では大きな目玉として即時に改正をしていくという方向でがんばってもらわなければならないと思います。  それからまず第一に、財形住宅貯蓄控除、租税特別措置法の廃止に関する問題であります。内容はもうすでに御承知のとおり、いままで短期住貯が八%、長期住貯が一〇%の税額控除をし、それを十年間続けるというものを廃止して、結局五十七年三月三十一日からは住宅貯蓄新規契約を停止する、五十七年十二月三十一日で税額控除制度廃止する、こういう提案になっておるわけでございます。この財形住宅貯蓄の推移を見たときに、五十六年の九月現在で契約者数が八十九万人、約九十万人ですね。住宅貯蓄残高が九千五百億、税額控除というものの制度の存在の意味がますます高まりつつある。その住宅貯蓄控除というものをこの際廃止していくということは大変大きな問題があると思うのですね。少なくとも住宅貯蓄控除ぐらいの優遇策があっても当然ではないか、そういう気持ちが実際はするわけです。大体これは財形の持ち家融資利子補給と、財形個人年金の五百万の利子非課税の措置を退職後も継続適用することにした二つの措置との取り引きで打ち切られておる、私はそう思うのでございます。  この二つの新制度と住貯の税額控除の財政負担を計算したら、住貯の税額控除の方が大きいはずですね。これはけさほどから何回もいろいろな議論になっております。ということは、制度加入者にとっては後退だと言っても過言ではない。またいろいろ理屈を述べられると思うのでありますが、たとえば税額控除は五十五年度は二百八十億と言われましたね。五十七年度は平年ベースに直したら二百九十億ぐらいだろうといわれますね。これがたとえば十年後ぐらいどうなるかと計算しますと、先ほどは予測は計算してないという大蔵省の話でありますが、大体十年後ぐらいだったら三百五十億ぐらいになっておるはずですよ。ところが、たとえば利子補給については、五十七年度は十月一日から発足するのだから五千六百億、これは三万一千戸をつくることを前提にして五千六百億ですか。それで五十八年が約二十億、五十九年が約五十億、十年後でやっと二百四十億ぐらいになると言われていますね。ところが十年後の二百四十億の推計の前提は六万二千戸ぐらいを毎年つくっていくことが前提でしょう。これは見積もりが大体二百四十億を出すために、実際の話、無理しておるという感じだな。  その上、財形年金貯蓄についての退職後利子非課税は、二十年間支払いで原資五百万として一人当たり八十万の減税だといいますね。これだって二十年後に年間の減税総額が百八十億というのですから、これは住貯の税額控除金額と、それから今度の利子補給と財形年金の退職後利子非課税の減税額と二つを足したものと比較して、どう考えても税額控除の方がずっと大きいよ。幾ら計算してもこれは大きいな。もともと財形控除の二百八十億、二百九十億という現在のやっと将来の二十年後の減税額なんかをあなた方比較するのだから、比較の土台が間違っておるよ。その上、六万二千戸をつくることを前提にして二百四十億ぐらいの利子補給だなんてこれは問題にならないよ。五十七年が五千六百億、平年度に直しても大体二十億、五十億で、十年後にやっと二百四十億ぐらいでしょう。税額控除というのは毎年二百八十億か二百九十億ぐらいの単位でずっと税額を控除していくのだから、どう計算しても、あなた方幾ら強弁されても、やはり住宅貯蓄税額控除をやめたということは制度加入者にとっては後退だと思うな。どう思いますか。
  208. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 お答えいたします。  先ほど来の議論でございますが、私どもはここで住宅取得についての財形加入者、つまり営々として住宅取得貯蓄をしてきた方々がどうすれば最も効果的に持ち家を達成できるかという観点が政策の中心でございます。  そこで、まずいわば住宅をつくる段階において施策を施すという方向に大きく方向転換をするということでございます。さらに実際上で見ますと、一つは、持ち家の場合もそうでありますが、一般勤労者以外、つまり住宅についての財形貯蓄者以外の一般住宅貯蓄控除制度についてもすでに五十六年一月から廃止されておるわけでございます。さらにこの制度の背景の中には、住宅取得目的として貯蓄をしているわけでありますけれども、現実にはこれが最後まで達成できなかったという方々が相当ございます。そういう意味でいわば目的外の形に流れ込んでいくということもございます。  そういうことを勘案いたしまして、先生方の年来の御指導もございましたので、財形の推進の中でこの際これを政策論として踏み切ったというふうに考えておるわけでございます。
  209. 米沢隆

    米沢委員 私が聞いておりますのは、税額控除制度加入者が受ける恩恵と、利子補給プラス年金の非課税で受ける恩恵と、どう計算しても税額控除の方が大きかった。そうしてみたらトータルとしては制度加入者にとっては後退だ、この議論は僕は何もおかしいことはないと思うのですよ。だからこそ大臣が先ほどからもう少しがんばろうといろいろ前向きの話をされているのじゃありませんか。そういう意味では、私は、経過措置をとるべきだという議論は一つの説得力があると思うのですね。  御承知のとおり財形審議会の答申におきましては、現行の住貯控除の租税特別措置法が五十七年十二月末をもって廃止されることについては勤労者に実損を与えないよう最大限の努力をせよ、こうあるわけですが、住貯の税額控除を期待して貯蓄をし始めた方への十年間の税額控除の約束というものは、実損にはならないのでしょうか。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕  先ほどから何か住貯が目的外のものに使われる、したがってまた追徴をするというめんどうくささもあるというような話も実際はありますけれども、住貯が目的外に使われる傾向は急増しているということでありますが、目的外に積み立てて税金の追徴になった件数は一体どれだけあるのか。トータルの住貯をやっておる皆さん方の何%に当たるのか。大げさな話をしてもらいたくないのですが、ちょっと数字を教えてもらいたい。
  210. 石岡愼太郎

    石岡説明員 住貯契約者うち、家を建てないという要件違反を起こしまして追徴になりました比率というものは、私ども、税務当局の資料等から推計いたしまして約一一%であろうかと推定いたしております。ただし、これはあくまでも貯蓄をやっている方々全体に対する追徴の比率でございまして、実際満期になって家を建てなければ要件違反になる、要件違反になれば追徴されるという方々うちどれだけ追徴のケースがあったかという比率では必ずしもございません。恐らくその比率はいま申しました一一、二%くらいのものよりは、最近地価等々が高騰いたしまして住宅貯蓄をしましてもなかなか家を建てられない人も従来よりはより多くおられようと思いますから、後者の比率といいますか、実際満期になりまして家を建てなくて追徴になった人の比率は、前者の比率よりも恐らく高いのではないかというふうに推定いたしております。
  211. 米沢隆

    米沢委員 それでなぜ経過措置をつくらぬのですか。  それから、これは先ほどからも議論になっておりますけれども、もうすでに租税特別措置法が決まってしまって、そしていまから労働省関係する財形問題を審議して賛否を問うなんておかしいな。その上、制度加入者にとっては大変大きな問題である税額控除については、大蔵省が言い出したのかと思っていたら最初から労働省から言っておるというのですよ。一体これは何事かと言いたいんだな。  たとえば、今度新規契約は三月三十一日以降は認めないんでしょう。まだこの法律が通ってないんだから、この間一体いままでどうしておるのですか。法律も通らぬのに新規契約なんか実際抑制するようなことができるのですか。租税特別措置法を通してしまってからそれに関する問題をいま審議しておって賛否を問うなんて、賛成しないとおかしいような議論じゃないか、こんなのは。
  212. 望月三郎

    望月政府委員 先生がおっしゃることも私どもよくわかるわけでございますが、けさほども申し上げましたように、二月二日に租税特別措置法の方は提案になりまして、私どもの方は一週間おくれですが、この財形法改正案を二月九日に提案をした次第でございます。(米沢委員「同時審議しなければだめだよ」と呼ぶ)その後いろいろな事情がございまして審議が今日に至っているということでございます。私どももとより、両方が関連するわけでございますので、これはやはり並行的にそれぞれ議論を尽くしていただければ一番ありがたいというつもりでおったわけでございますが、いろいろな事情でこちらの方が今日初めて御審議をいただくということでございまして、まことに申しわけないと思っております。
  213. 米沢隆

    米沢委員 答弁漏れだな。五十七年三月三十一日で新規契約は停止する。これは一体どうしておるのですか。これからどうするのですか。この法律が通ってからやるのですか。それとも法律が通らぬ前から新規契約は抑制するような指導をやっておるのですか。
  214. 石岡愼太郎

    石岡説明員 御指摘のとおり、財形貯蓄に加入される方々にとりまして最終的な期限は新しい租税特別措置法の施行前ということで、すなわちことしの三月三十一日まででございました。かように相なりましたのも、もとより関係の大蔵委員会の方でいろいろ御審議を尽くされましてなったものであると私どもは理解いたしております。
  215. 米沢隆

    米沢委員 だから、財形貯蓄の新規契約を停止するのは大蔵省の話か。労働省の話じゃないの。それを三月三十一日で停止する。まだ法律も決まっていないのに停止できるのかなと言うておるのだよ。それじゃどういう法律で停止しておるのか。
  216. 石岡愼太郎

    石岡説明員 先生は停止というお言葉を使っておられますが、住宅貯蓄契約とそれから住宅貯蓄控除というものを分けさしていただきますと、住宅貯蓄契約というものはもとより十二月三十一日までずっと存続しまして、これは財形契約の一種でございますから、必要によりまして五十八年以降も継続されるものでございます。これに対しまして、税額控除を行うべき対象者は、先ほど言いましたように三月三十一日までに住宅貯蓄契約を結んだ人に限るという措置でございます。これは制度が十二月三十一日に廃止される、それに伴いまして実際にもう制度廃止されるものに入られるというような、歯に衣を着せずに申し上げますと、税額控除を若干なりともいただきたいということで、すなわち悪用というようなケースもございまして、税務当局といたしましては制度廃止に当たって経過措置といいますか、そういうものの一つとしてかかる措置をとったのだろうと私どもは理解しております。
  217. 米沢隆

    米沢委員 もう時間がないのでぐずぐず言うのはめんどうくさいのだけれども、新規契約を停止するというこんな措置は法律も通らぬのにできるのかと言いたいのですよ、法律が通ってないのに。法律が通ってからならわかるよ、新規契約をやめましょうと。ところが、三月三十一日を過ぎて、きょうは四月十三日かな十四日かな、そんなことができるのかと言うておるのだ。通ることを予測して行政だけが早っ走りするなんというのは、まさにこれは重大な問題だよ。幾ら文句を言うてもわからぬようだからもうどうしようもない。  次の財形持ち家個人融資制度改善の問題ですが、いまから一般会計から利子補給でもしようというのだから、一歩前進だと私たちも認めます。そこで、この利子補給制度によって一体住宅の増設を今後どういうふうに見込んでおるのかという問題なんですね。その結果、融資比率がどれくらいに向上するのかというその予測を、後々の議論のためにぜひ聞かしてもらいたいと思うのです。従来まで、五十六年度の個人融資の実績は十一月現在まででわずか八百二十七件でしょう。これは三万戸も建設するなんて、まず目標が高過ぎるな。そんなに融資が進むものですか。  その上、通常つくるときには金利の安い住宅金融公庫を借りますね。厚生年金の還元融資を借ります。それで大体千二、三百万借り入れるのでしょう。それからもし企業にそういう制度があったらそれを借りますよ。そして足りないものを財形の金利の高いものを借りるのだから。そういうことでありますから、財形まで借りるとなると通常はもう返済可能限度を超えてしまうんだと私は思いますよ。そういうように安い金利をまず使う、残った部分を一部だけもし必要があったら財形を使う。それを借りるときにはもう返済可能限度目いっぱいじゃないか。だから、これは財形貯蓄を使おうとする人はよっぽどいい家をつくるか、かなり高額所得者でないとこれは使えないんだよ。いまから三万戸もできますとか、将来は六万戸もつくりますって、冗談じゃないよ。どういう予測を立てておるんですか。どれだけ融資率が高まると思っておるのですか。はっきり言うてもらいたい。時間がないから急いでね。
  218. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 お答えいたします。  現在の財形による住宅の伸びない原因の大きなものは金利でございます。これが今度現実には六%、つまり年金並みになるわけでございまして、年度間三万戸と言ってございますが、もしこの法案を御審議いただき成立させていただくならば、大体十月から施行ということになると思います。したがいまして、現実にはその半分ぐらいを予定しているわけでございます。  ただ問題は、現に住宅を建てたい方々はいっぱいおるわけでございまして、それがいままでの八・八%を超える、あるいは八%のような利子が六%になるということになりますと、このインセンティブは非常に大きいんじゃなかろうかというふうに考えます。さらにわれわれとしましても、これの促進について十分努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  219. 米沢隆

    米沢委員 直接僕の質問に答えてください。
  220. 石岡愼太郎

    石岡説明員 利子補給の新規対象者数を申し上げますと、五十七年は一万六千を考えておりまして、以下三万四千、三万八千と伸びまして、御指摘のとおり十年目から六万二千になるという計画を立てまして、今年度から新しくスタートします利子補給を持つ財形融資を大いに伸長させてまいりたいということで、私どもすでに一月二十日から内々努力を払うべき準備をいたしている次第でございます。
  221. 米沢隆

    米沢委員 ここで将来の話をしてもちょっとむずかしいだろうからお手並み拝見といきましょう。しかし、住金、厚年等に比べて余りにも財形の貸出条件が悪い、何らかの形で住金よりも厚年よりも何かいいものを持たない限り幾ら還元融資をどうのこうの言うても、金利負担やってもわずか五年間でしょう、六%は。後はまた調達金利に返っていくんだからね。それは将来を見たら五年で持ち家住宅をつくってそれを返済する人はいませんよ。そういう意味で住金、厚年そして財形と並べたときに、いずれにしても少々の利子負担があったとしても条件が悪過ぎる。そのあたりを何らかの形で、金利でなかったら別の面で何か有利なものができないと融資は伸びませんよ。そのあたりを今後の改善事項としてぜひ御検討方をお願いをしたいと思うのでございます。そうでないとこれは高額所得者用のため、あるいはもうすばらしい家をつくる人以外に余り借り手はおりませんまということを念を押しておきたいと思うのであります。  それから年金貯蓄制度創設の問題でありますけれども、時間がありませんから一つだけ聞いておきたいのは、たとえば郵便年金の場合は基本年金、それから積増年金A、積増年金Bの三本立てでありまして、郵政当局は積立金を有利に運用してこれを加入者に還元するシステムをとっておるわけですね。しかし財形年金貯蓄の場合には、利子分のみが還元されるだけでありまして、これは積立期間五年以上と固定はされ、かつ天引きによって自動的に預金が払い込まれるという、きわめて有利な預金を獲得できる金融機関のみのメリットではないかと私は思うのです。  個人で定期あるいは信託で運用していった場合と一体メリット差は年金にしてどれくらいあるのだろうか。なのにわざわざ個人年金をつくってあげたなんて言うておりますけれども、こんなの何にもないのだもの、ただ利子非課税をしただけだもの。それを年金として上げますと言うていろんな条件をつけて使いよくするだけであって、これは利子非課税だけやってもらってもいい。個人で頭のいい者は、そんなものはどんどんやりますよ。利子非課税のメリットだけがこの年金をつくった最大の理由でしょう。年金そのものは、少なくとも運用利益なんかを年金加入者に還元できるシステムじゃないのだから。自分がためたものから利子非課税の分だけが還元される。どう見ても財形の年金制度というのはおためごかしにすぎないと私は思う。頭のいい者は一々束縛されるよりも個人で回した方がずっと便利だという問題が一つございますね。  したがって私は、金融機関にもうちょっと有利な運用を義務づけて、加入者に還元されるような指導を各銀行にやってもらいたいということが一つ。  それから郵便年金の場合には、インフレに伴う目減り防止対策として年金額が年三%の複利で逓増するような仕組みになっておりますね。ところが財形年金貯蓄については目減り防止策がない。一体どうしてくれるんだ。このあたりが解決されないと、年金をつくったって、名前はいい、新しい年金創設しました、ところが、中身についてはほかの年金制度に比べたらもうがた落ちだなと私は思うのですが、その点ぜひ前向きの検討をいただきたいのであります。その二点について御答弁いただきたい。
  222. 望月三郎

    望月政府委員 非常に激励の意味の御指摘だと思いますが、まず第一点の年金貯蓄につきまして利子非課税というだけで大したことはないんじゃないか、こういう、叱吃激励だと思いますが、私どもとしては従来財形貯蓄が労働者でなくなった途端にそれに対して利子に課税されるということについていろんな意見をいままで聞いてきたわけでございます。今度の年金貯蓄につきましては、これに対して非課税制度をとるということで、このこと自体は非常に、それだけかと言えばそれまでかもしれませんが、そうでなくて、やはり民間でも先生おっしゃるように、自由な形のこういう年金商品が売れておりますが、しかしそれは必ずいろんな制約があるわけでございます。したがいまして、私どもはある一定貯蓄をして年金化すれば、それに対して非課税措置を退職後も続けるということは、それなりに大きな意味を持つものであると思います。それが十分であるかどうかという問題はございますが、しかしいまの時期でこういう非課税措置をとるというのは、私はそれなりの前進ではないかというように思っておるわけでございます。  それからもう一つ、インフレ目減りの対策をどう考えているのかという御指摘でございますが、やはりこれは、物価は上がるわけでございます。できるだけ物価は上がらないようにするのが政府の仕事でございますが、それにしても幾らかは上がるわけでございまして、貨幣価値が下がるという点がございます。この点につきましては、ある一定の段階で徐々に掛金を少しずつ積み増しをする、また給付の段階で、それに対して目減りがしないような給付の仕方をするというような工夫をしながら、この制度が実際にインフレに対して抵抗力を持つような工夫をしていかなければならぬという点につきましては先生と全く同感でございますし、そういった商品の開発に今後とも指導をしてまいりたい、こう思っております。
  223. 米沢隆

    米沢委員 もう時間もありませんけれども、私、最後に申し上げたいことは、この財形制度そのものが発足の当初から非常に大きな問題があるままに発足したところに現在の不幸があると思いますね。利子補給について一般会計から導入ができなかったとか、あるいは財形福祉基金だとか財形福祉公庫みたいなものをつくって窓口を一本にして運用しようというのができなかった。結果的には、ばらばらに金融機関に預けて、金融機関はうまく運用益でもうかっているけれども、それを利用者に還元できない。そういうものは制度そのもの、基本的なものを本当に抜本的に変えない限り、いつまでたってもこういうぐじゃぐじゃした枝葉末節の議論をしながら、何かもやもやしておるものを放置しておくことになってしまうのではないか。  そういう意味で、これは本当に目玉商品でして、ぜひ労働省にがんばってもらわねばならぬ制度でありますから、年金なんか割り増し金をつくるとかそれぐらいのことをやらないと、労働省よありがとうなんということにならないわけだから、どうか一生懸命がんばってもらいたい、これを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  224. 今井勇

    ○今井委員長代理 次に、草川昭三君。
  225. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  まず最初に、住宅貯蓄控除制度の問題をめぐって少し現状をお伺いしたいと思うわけでございますけれども、一番新しい数字の、勤労者財産形成貯蓄契約者の数、貯蓄残高事業所等について、ふえていると思いますが、どのような傾向になっておるのか、お伺いをしたいと思います。
  226. 望月三郎

    望月政府委員 財形貯蓄契約者数でございますが、五十七年一月の数字で、千二百六十九万八千人でございます。それから、貯蓄残高は五兆三千三百四十七億ということでございます。事業所数は、百三十二万三千でございます。
  227. 草川昭三

    草川委員 この財産形成制度というのは西ドイツ等をモデルにし、わが国の近代的な労使関係の中にこれを定着させようとした労働省の意欲というものは、私はそれなりに評価をしたいと思うわけです。ところが、いまもお話がありましたように、契約者数が千二百六十九万人になり、五兆円を超える貯蓄残高になり、事業所も百三十二万を超すという非常に多くの関係者の方々がお見えになっておるわりには、いわゆる融資というメリットが少ないわけです。たとえば勤労者財産形成持ち家の分譲融資、これは貸付決定が一体どの程度になっておるのか、あるいは個人融資の方で貸付決定がどのようになっておるのか、そしてそれが合わせて幾らになっておるのか。その点について二番目にお伺いをしたいと思います。
  228. 望月三郎

    望月政府委員 持ち家分譲融資の方は、五十七年二月末現在でございますが、合計六百八十三億――失礼しました、六千八百三十四戸でございまして、金額は五百八十六億六千万円でございます。  それから転貸の方でございますが、件数として一万一千八十八件、金額は四百六十九億二千七百万でございます。
  229. 草川昭三

    草川委員 いまもたまたま数字のカウントが間違うぐらいに、数が少ないのですね。結局、実はもう一けたぐらい多くてもよさそうなものだけれども、分譲融資は六千八百三十四戸にすぎないわけでありますし、金額で五百八十六億、そして個人融資が一万一千件。これは個人融資の方が多少多いわけですけれども、金額も四百六十九億でございますから、合わせて一千億というわけです。  とにかく、五兆円の預金があるのだけれども、現実にそれを利用して貸付決定が一千億というのは余りにも少な過ぎるのではないだろうかというので、いろいろと議論もあったところだと思うのです。一つは金利が高いということもあるでしょうし、それから手続がむずかしいということもあるでしょうし、さまざまな問題がある。だからこそ今回の利子補給制度をつくったんだと労働省はおっしゃるのではないか、こう思います。  しかし、これは率直に申し上げまして、財形制度というものは非常にむずかしい法律でして、日本の国にたくさん法律があるのですけれども、恐らくワーストワンかワーストツーぐらいに位置づけられるわけで、その運営をなさる労働省の役人の方々というのは、だから、日本の役人でも一番頭のいい人が運用される、こう思うのです。  ところが、いま言ったようにその受け手の方は、企業者の方々も、これは非常にむずかしい、こう言うわけです。さりとて、いま皆さんがどこの町へ行かれても、どんな信用金庫でも相互銀行でも市中銀行でも都市銀行でも、ほとんどどこのお店の看板にも財形ということが書いてあるわけですから、財形貯蓄というのは、金融機関にとっては物すごいメリットがある預金、資金ではないだろうか、私はこう思うのです。  そこで、私がいまここで一つお伺いをしたいのは、大蔵省の方もお見えになっておられますが、これは生保等も含めてもらってもいいのですけれども、資金運用について、一体市中金融機関はどのような商品というものを現実に各企業あるいは対象者方々に売っておるのか、あるいは利用をしていただいておるのか、その内容についてお伺いをしたいと思います。これは労働省の方でも結構ですし、大蔵省の方で答えていただいても結構です。
  230. 上川名清次郎

    ○上川名説明員 受けましたその財形資金につきましては、それぞれの金融機関が最も有利な商品を販売するというふうなたてまえをとっておりまして、たとえば都市銀行等で申し上げますと、いわゆる期日指定定期預金というのがございます。これは、通常の定期預金の二年ものでございますといわゆる六%というふうな金利になっておりますけれども、ところが、期日指定をいわゆる複利計算というふうな形でやりますと、六%よりもはるかに高い金利が適用されるというふうなことでございますし、それから、たとえば信託銀行で申し上げますと、普通預金と金銭信託というふうなことの抱き合わせによりまして、五年間やはり複利みたいな形で運用するというふうなかっこうでございまして、要するに、各金融機関におきましては、それぞれ手持ちの商品の中でかなり有利な商品を財形用の貯蓄の商品として販売しているというのが実態でございます。
  231. 草川昭三

    草川委員 代表的な商品の銘柄で結構ですから、少し利率についての差を言ってください。
  232. 上川名清次郎

    ○上川名説明員 二つ申し上げますけれども、たとえば普通銀行につきまして、期日指定定期預金というのがございます。これは二年ものでございますが、表面金利は年六%ということになっておりますけれども、これを三年間継続して複利でやりますと、六・三六七ということでございますから、そこに〇・三六七の差がございます。これが第一点。  それから先ほど申し上げました信託銀行の中に、Aコース、Bコースというのがございますが、このAコースというのは、普通預金と金銭信託を組み合わせして財形資金を運用するというコースでございます。金銭信託の金利は、五年ものでございますと七・五八ということになっておりますが、これが五年間継続されますと、実質金利では八・九三ということでございますから、その差が財形の場合には有利である、こういうことでございます。
  233. 草川昭三

    草川委員 そうしますと、残高で見て、金融機関別の、都市銀行、地方銀行、それから信用銀行、信託あるいは相互、信用金庫、郵便局あるいは証券会社等たくさんあるわけですが、トップのところはどこになりますか。
  234. 上川名清次郎

    ○上川名説明員 シェアで申し上げますと、都市銀行と信託銀行が圧倒的に高うございます。
  235. 草川昭三

    草川委員 都市銀行と信託が多いわけですが、現実には中小企業の経営者等がつき合っております銀行というのは相互銀行が多いわけですけれども、順位でいきますと相互銀行はどの程度のところに位置づけされますか。
  236. 上川名清次郎

    ○上川名説明員 残高のシェアで申し上げますと、相互銀行は二・六%でございますから、順番からいきますと七番目になります。
  237. 草川昭三

    草川委員 いまお話がありましたように、どうしても都市銀行と信託へ行くというのは、一つは、私、経営側の態度によるところが非常に多いと思うのです。これは前回のこの委員会のときにも私は指摘をしたことがあるのですけれども、いわゆる勤労者側の立場、労働者側の立場からいって金融機関の選択ができないというところが、この制度に非常に大きな矛盾があると私は思うのです。都市銀行が一兆を超すわけですね。一兆千四百九十億というぐらいの、トップの地位を占めておりますのは、やはり大企業の方々が多いということになるでしょうし、あるいは信用銀行、信託銀行等が同じく一兆円を超すというのも、商品というのですか、安定的なという意味で選択をするということだと思うのです。  しかし、私はかねがね中小零細企業の労働者の立場から物を言っておるわけでございますけれども、中小企業の労働者というのは、勢い一つの企業の定着性というものが許されぬ方が多いわけです。どうしても流動化をするという立場が多いわけです。という場合に、企業が変わりますと、まず次の企業の経営者がいわゆる財形というものに理解があればそこで継続することができますが、さらに問題が出ておりますのは、これは金融機関が変わった場合には継続ができないわけですよ。  ここに非常に大きな問題があるわけでありまして、財形を利用してこれから住宅を建てるという場合がございましても、中小零細の方々適用が非常に少ないのではないかという心配を私は持っておりますし、先ほど触れましたように、銀行の選択ができないために、たとえば、いまよくあることですけれども、労働者の方々の自分の兄弟が、たまたまどこかの金融機関に働いていたとする。そうしますと、預金獲得運動なんかで自分の子供だとかのところに預金を集中したいのは、これは当然の人情なんですけれども、事財形はそのような選択というものが一切認められぬわけです。  だから、金融機関の選択、あるいは任意の継続性の問題、任意というよりも、企業がかわった場合の継続性というものが、私は前回の委員会指摘をしたことが今回の改正の中にも依然として盛られていないということは、非常に残念に思うのです。その点は労働省サイドの方からお答え願いたいと思いますが、どうでしょう。
  238. 望月三郎

    望月政府委員 A企業からB企業に転職した場合の継続の問題でございますが、現在では、先生御承知のような形で、同じ金融機関であれば当然継続されますし、もう一つは、違う金融機関であった場合には、両金融機関が債務承継という形で合意をすれば継続ができるということになっておるわけでございます。それでは不十分ではないかという御指摘かと思いますが、この点は、どういう金融機関を選ぶかというのは、いろいろな観点からいろいろな形でそれぞれ個別企業がやっておりますので、なかなかそれを一つの土俵の中で、どこへ転々と行っても通算できれば一番いいわけでございますが、この点について非常にむずかしい問題がございまして、この点につきましてはさらに今後そういった通算措置が完全にできるような方向に向けて大いに検討していかなければならぬ問題だと考えております。
  239. 草川昭三

    草川委員 ちょっと確認をしますが、いわゆる債務承継は、ここに私、用紙を持っておりますが、勤労者財産形成貯蓄の転職等の手続で、まず転職後の勤務先を経由して、すでに行っている財形貯蓄の取り扱い機関の営業所に提出する、こういうことなんです。これは、たとえばの一つの例ですけれども、非常に組合の強いところで、会社と話をして、労働金庫を指定したとします。ところがその会社が不幸にして倒産したとします。今度は別の場所に行った、たまたまそこの企業では経営者の方も財形ということに理解があって、それが都市銀行であったとします。それは、労働金庫から都市銀行に継承できるのですか。それはできないんでしょう。
  240. 石岡愼太郎

    石岡説明員 先ほど部長が言いました債務承継の措置は、実は租特法の政令に規定を置いているものでございます。しかしながら、現実問題といたしまして、いろいろ金融機関のむずかしい、率直に言いまして、利害調整の問題がございまして、この債務承継の措置による継続措置が現実にはほとんどとられていないのじゃないかと考えております。
  241. 草川昭三

    草川委員 だから、結局そこら辺になりますから、財形貯蓄というものが非常にむずかしくなってまいりまして、大企業というと言葉が悪いのですが、非常に安定した、しかも生涯雇用が前提になるような企業ではこれは今後も伸びると私思うのですけれども、中小零細にとっては手続上も非常に問題があるわけでありますから、これは今回は間に合わないとしても、今後の問題ではぜひ私がいま申し上げた立場からの手続がいくように、継続をするようにしていただきたいと思います。  それからもう一つ、奨学金の方ですね。これもたしか私、前回問題提起をしたわけでございますけれども、勤労者財産形成進学融資という方も数が非常に少ないわけです。これも件数が、五十三年が百九十件、五十四年が百六十三件、五十五年が百十九件、五十六年が八十八件、こう減ってきているわけでございまして、五十三年から全国でわずか五百六十件というのは、いかにも貸付対象が少なさ過ぎるのではないか。しかも全部でこれは一億一千四百万円、一億一千二百万円、七千九百万円、六千五百万円、合計三億七千万円というのも、貸付決定が非常にこれは少ないんで、これあたりもいま少し、財形をやられるような方々は進学融資の必要がないと言えばそれきりでありますけれども、思い切って天井を高くするとかあるいは手続を簡便にするとかというようなことがあってもしかるべきではないかと思うのですが、この進学融資等についてはどのように今後PRをされるのか、あるいは対応されるのか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  242. 石岡愼太郎

    石岡説明員 財形におきます進学融資につきましては、従来からもいろいろ改善を図ってまいってきております。いろいろありますが、五十七年度新年度におきましても、この対象の進学融資資金に教科書代、下宿の敷金、権利金等の進学に必要な経費も加えることにいたしたような次第でございまして、今後とも利率につきましていろいろ見直しを行うとともに、対象教育施設あるいは資金、貸付対象者等につきましても、状況に応じて絶えず見直しを行いまして、進学融資がもっと多くの需要にこたえるように努力してまいりたいと思います。
  243. 草川昭三

    草川委員 それからちょっとこれは今度の関連事項について、細かいことですが聞いておきますが、これも前回私が指摘をしたのですが、持ち家分譲融資の、いわゆる使用者側の共同抵当方式というのがございまして、これが非常に不人気で、使用者側、特に中小企業の社長にとってはそこまでの責任は持てないということで、これは評判が悪かったわけですが、今度これが解消になるわけですね。解消になるのですが、それは過去にさかのぼるのか、ちょっと細かいことですが重要なことなので、お伺いしておきたいと思います。
  244. 石岡愼太郎

    石岡説明員 御指摘のとおり、従来から分譲融資におきまして共同抵当方式が非常に不便であり、利用者にも御迷惑をかけて、この改善が強く訴えられていたわけでございます。私どもいろいろ努力しました結果、五十七年度からこの共同抵当方式が個別抵当方式に切りかわることになります。したがいまして、新しいものにつきましては、当然ながら個別抵当方式でまいりますが、古い過去の共同抵当方式のものについてどうするか、私ちょっと細部については存じておりませんけれども、なるべくそういう制度がせっかくできたものですから、過去のものにつきましてもできるような方向で私は検討すべきではないかと思います。
  245. 草川昭三

    草川委員 ぜひそれは企業者側の負担なり、安心をさせていただけるようにお願いを申し上げておきたい、こういうように思います。  そこで、この財形の今後のあり方等についてもいろいろと発展をさしていただきたいわけですけれども、労働者というのですか勤労者の方が家を建てるというのは大変なことでありまして、一生に一度ということになると思うのです。そのために住宅資金の計画ですけれども、これもいろいろと御意見があったと思うのですけれども、年金福祉事業団の年金の還元融資、それから当然のことながら住宅金融公庫の融資、そしてこの財形というものを組み合わせ、そして個人の頭金あるいは個人の調達する金額あるいは企業からの借入金、こういうものをそれなりに苦労をしながら家を建てるということを勤労者方々は考えるわけでございますが、たまたま最近年金福祉事業団の方の予算がふえたからいいわけでございますが、年金福祉事業団の方の予算が足りないときには、金融公庫からの融資は決定したけれども福祉事業団の方がおりなかったとか、そのために契約を解除するとか、そのためにまたペナルティーを払うとかいろんなトラブルがあったわけです。  今回ここで財形というものが新たに来て、それの個人融資を受けることになるわけでございますが、行政上は労働省あり、厚生省あり、住宅金融公庫あり、それぞれ縦線というのですか、縦の流れというのは十分わかりますけれども、借りる方はこれは一人でございまして、むずかしい書類を三つも回るというのは大変むずかしいわけです。  だから、勤労者方々持ち家というものについては、若い青年の時代から、それこそ新入社の時代ぐらいから、こういうあり方がありますよということを平易にPRをするということも、私は非常に重要な問題になってくると思うのですが、できたらこの三つのものを一本で処理できるような窓口というものはないのか、あるいは機関はないのか。下手をすると、それを民間デベロッパーというのがやり、また次に私、問題提起をいたしますけれども、財形は本来は個人が契約をしてから始まるのですけれども、あらかじめ財形用のものができてしまってそれを分譲するというようなことがかねがね指摘をされておるわけですが、そういうこともできかねないのですけれども、ひとつ十分な対応が必要だと思うのです。その点、労働省として今後どのように考えられるのか、お伺いをします。
  246. 望月三郎

    望月政府委員 先生のおっしゃる点は非常にもっともな適切な御指摘だと思いますし、私どももできるだけあっちへ行ったりこっちへ行ったりする手続を省いて、勤労者が本当に一カ所に行けばこれで事が足りるという形になるのが一番望ましい姿だと思っております。  ところで、いまは雇用促進事業団の窓口は、実際実務につきましては住宅金融公庫にその大部分の実務を委託しておりますので、そういう限りでは住宅金融公庫資金と財形の資金というのは窓口は一本化されておるというように言っていいのではないかと思います。もう一つ年金福祉事業団からの融資も、これももう一つつけられれば一番いいわけでございますが、この点につきましてもいろいろ議論がございまして、私どもとしてはまた関係行政機関と十分協議をしまして、やはり勤労者に一番便利な方法はどうすればいいのかということを前向きでひとつ考えていきたいということでございます。
  247. 草川昭三

    草川委員 本法律の改正案については以上で終わりまして、第二番目に、勤労者住宅生活協同組合というのがあるのですけれども、そして日本勤労者住宅協会というのがあるわけでございますけれども、これは昭和三十六年にILOの労働者住宅に関する勧告を背景に、議員立法によって設立をされた特殊法人であるわけでございます。これもいわゆる年金事業団の方から原資を受けながら、それを各地方の単協というのですか、府県段階の住宅生活協同組合との関連で、勤労者住宅建設等についての対応をしておるわけでございまして、私どもも非常に重大な関心を持っておるわけでございます。  ところが、この日本勤労者住宅協会が長期に土地を保有をしているのではないか。別に長期に土地を持っていても、一定目的があり、あるいは一つの条件があるならば、長期に土地を保有するということは認められるわけでございますけれども、全国に散在をしておりますところの取得年度別の保有土地状況というのを見てまいりますと、かなり疑問に感ぜられる取得状況がございます。  たとえば古いところから言いますと、昭和四十五年度に土地を所有をしておりながら、今日なお住宅建設なり土地分譲が行われていないというような例がございます。たとえば、愛知県の場合は一万五千平米、あるいは広島には六万三千平米、これは昭和四十五年の状況でございます。あるいは、昭和四十六年度になりましても、宮城県で一千平米、秋田県で二千平米、それから三重県でも五千平米、これは四十六年ですから非常に古いわけですね。四十七年になってまいりますと、神奈川県で二万四千平米というようなものが保有をされておるわけでございますが、全国でこのような非常に長期にわたるところの土地所有というものがあることについて、これはどこが担当になるのですか、労働省ではなくて、これは建設省の民間住宅課になるかもしれませんけれども、これらの現状というものがどのような状況になっておるのか、概括的にお伺いをしてみたいと思います。
  248. 伊藤茂史

    伊藤説明員 私どもが日本勤労者住宅協会から聞いておりますところによりますと、五十七年の三月三十一日現在で、同協会の持っております土地は全国で、長期保有土地という定義は非常にむずかしゅうございますので、とりあえず保有しております土地でございますけれども、全国で約三百四十ヘクタールほどございます。  これが事業をやっていく上で多いか少ないかということでございますけれども、たとえばこれから公共用地を出したり、いろいろなオープンスペースをとったりする必要がございますので、戸当たり三百平米ということで計算しますと、大体一万戸分の土地を保有しておるということかと存じます。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、同協会は大体年間五千戸のペースで仕事をしておりますので、大体二、三年分の土地を持っている、こういうことではないかと思います。したがいまして、全体の量をマクロ的に見ますと、そう余分の土地を持っているわけではないというふうにわれわれ考えております。  ただ、この中に素地のまま保有をしておる、宅地造成を行っておりませんで素地のまま保有しておるものは、大体一割程度あるというふうに聞いております。あるいは、先生いま年次別に御指摘になりました非常に古いもの、あるいは四十八年の例の石油ショック前後に購入しましたものの中には、宅地開発をしてそのまま持っているもの、あるいは素地のまま持っておるものが相当あるやに聞いております。  これらにつきましては、勤住協の経営自体にとりましてもいろいろ問題がございますので、個別にどういうふうに計画的に措置をしていくかということで、これから適切な措置をとっていかなければならないというふうに考えておりまして、勤住協の方も五十年代に入りまして非常にそういう意識が高まりまして、いろいろな改善措置を講じて、個々の対策を講じてきているというふうに聞いております。
  249. 草川昭三

    草川委員 この勤住協の役員というのはどういう構成になっているわけですか。
  250. 伊藤茂史

    伊藤説明員 現在の役員構成でございますが、理事長は非常勤でございまして、かつての建設省の職員の方でございます。それから副理事長は労金の出身の方、これも非常勤でございまして、労金の出身の方がなってございます。それから、常任理事ということでそれぞれ仕事の関係のございます金融公庫、生活協同組合、それから総評という三者構成で、常任理事に三者入ってございます。それから理事が四人ございますが、労働省の出身の方と住宅生協の出身の方と総評、同盟とそれぞれ出身の方がなっております。それから監事が三人ございまして、一人は建設省の推薦ということで公庫の関係の方、それから一人は中立労連、もう一人の方は生活協同組合ということになっております。  これは協会ができました推移で、それぞれどういう方が役員になるかということは、法律で人数を定めております。それから、これは経緯がございまして、日本勤労者住宅協会ができましたときに、それぞれの出資団体、これは労働団体や生活協同組合、労働金庫が出資しておるわけでございますが、そういう経緯がございまして、それ以来の構成でございます。
  251. 草川昭三

    草川委員 いまお答えがありましたように、これは日本ではどちらかと言えばモデル的な、代表的な各団体の代表者によって構成をせられておる住宅協会ですよ。ですから、ここの住宅は、日本の民間住宅の開発についても勤労者用の住宅を開発するわけですけれども、万人が納得できなければなりませんし、またそのような運営をなすっていただかなければいけない団体であることは間違いのない事実だと思うのです。それにもかかわらず、実は素地が約一割程度、しかも昭和四十五年、四十六年、四十七年、四十八年に取得したものがそのまま残っておるということは、いかがなものか。これは非常に重大な問題があると思うわけです。  本来から言いますと、この土地の取得等についても、事業団の方からの融資を原資にして運営をされるわけでありますから、勤住協がまず土地を先行的に取得をし、それから各県段階の労住協、労働者住宅生協等がそれを受けて、各地域で労働者用、勤労者用の住宅を販売をする、こういうことが筋でございますけれども、よく見てまいりますと、住宅生協の方が土地を先行取得をしておきまして、それを勤住協の方に渡すというような例もあると思うのですけれども、その点についてはどのように考えられておるのか、お伺いしたいと思います。
  252. 伊藤茂史

    伊藤説明員 先ほど申しました三百四十ヘクタールの全体につきましてどのくらい住宅生協から買った土地があるかと申しますと、大体四分の一程度ということでございます。これは過去にそういう例があったのが多うございまして、最近ではむしろ住宅生協でありますとか労働金庫というのは、その地方地方で非常な情報網を持っておりますし、土地の情報も当然ながら持っておられるわけでございまして、動注協事業をやっていく場合にそういう情報は非常に貴重でございますので、そういう末端の情報を生かしながら勤住協事業として採択できるかどうかということで情報は持ち寄るということになっておりますけれども、まずあらかじめ買っていただくということは、現在のところやっておりません。結果的に現在は四分の一ほど過去のものがございまして、三百四十ヘクタールの中にはある、こういうことでございます。
  253. 草川昭三

    草川委員 余りこの問題を深く掘り下げましても、過去の例等もございますので、しかも土地の問題ですからあれでございますけれども、やはり法律に基づく運営は運営で、原則は明確にしていただきたい、こういうように思うわけです。  それで、これもごく事務的にお伺いしますが、昭和四十八年に岐阜の場合は二つの団地を購入をしております。これは約十万八千、広見第一団地というものを購入しておりますが、その間の経過はどういうことになっておりますか。
  254. 伊藤茂史

    伊藤説明員 先ほどの御質問、ちょっと補足させてもらいますが、住宅生協の土地を買って、後、勤住協の事業にする場合、たとえば住宅生協が独自の事業をやって、その一部を勤住協が事業をやるというような場合もございますし、たまたま住宅生協が持っておる土地で勤住協がどうしても仕事をやりたいという場合もありましょうし、これからそういう道を完全に閉ざしたということじゃございませんが、先生指摘のような先行取得買収ということで生協を使うということはやっておりません。これは法律でもできませんし、いままでもできなかったことでございます。  それから、いまの岐阜の例でございますが、広見のお話がちょっと出たようでございますけれども、詳しく、どういう土地で、どなたの土地であったものをだれが買い、生協が持っていたものを勤住協に売るようになったかという経緯はつまびらかではございません。
  255. 草川昭三

    草川委員 この広見団地の場合も、第一団地が十万、それから広見第二で二万五百。この広見の第二の場合は、昭和四十八年の十二月に三億八千二百万で購入いたしておりますけれども、五十五年に売却をしております。これは売却するんですけれども、一つ目的外の売却になるのではないか、こういう問題もあるのではないかと私は思いますし、これに対して、労働金庫の連合会がこの用地取得に対して融資をしておるわけです。この労金連合会が融資をするのはいいわけでございますけれども、売却した代金というのが労金連合会の方に戻っていないわけですが、そこら辺の展望というのはどのようになっておるのか、話し合いがついておるのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  256. 松原東樹

    ○松原説明員 いま先生指摘の広見第二団地を五十五年の十二月に民間の不動産業者に転売をしたわけでございますが、その代金二億八千三百万弱でございますが、その代金は、五十五年十二月二十二日に二千八百万円、五十六年三月二十日に  二億五千五百万円弱、それぞれ労働金庫連合会の方に返却されております。なお、返却してもなお  かつ利子等の残高がございます。現在、二億円余りございます。
  257. 草川昭三

    草川委員 ここらあたりの問題は、実は私の方、  いま少し突っ込んだ議論をしたいわけでございますけれども、きょうはこういう社会労働委員会の席上でもございますし、私が当初指摘をした立場に立って労働金庫の運営なり、あるいは労働省の方としても私は今後の対応ということを十分監視をしていただきたいわけでありますし、また指導もされることが必要だと思います。  なお、厚生省の生活課長がお見えになっておられますけれども、全国の住宅生活協同組合は厚生省の所管ということになるわけですね。ですから、私は全国の住宅生活協同組合の先行の土地の取得等につきましてもかなり古いものがあるわけでありますから、一回洗い直しをして、そのことが労働金庫の日常運営には差しさわりがないものだと思いますけれども、いろいろな関係が出てくるわけでございますので、いま一度労働省の対応あるいは厚生省の対応をお伺いしたいと思います。
  258. 吉本実

    ○吉本(実)政府委員 労働金庫の貸し付けにつきまして、住宅事業団体からの貸し付けのみならず一般に不良貸し付けを惹起させるということのないよう十分な審査を行った上で貸し付ける、こういうことでございますが、特に大口の融資につきましてはその債権の回収なり保全について十分配慮するよう、必要に応じて指導を行っているところでございます。先生ただいま御指摘のような事例、まさに私どもも大変残念なことでございます。今後、貸し付けの審査等に当たりまして十分留意するよう、私どもといたしましても指導監督に努めてまいりたいと存じます。
  259. 浅野楢悦

    ○浅野説明員 住宅生協におきましては、先ほど来草川先生指摘のように勤住協からの委託を受けて住宅建設等の事業を行う、あるいは年金福祉事業団からの融資を受けましてみずから組合員のための住宅建設を行うといった形で組合員の方に対する住宅供給の一翼を担っておるわけでございます。これは連合会を含めての数字でございますが、全国で七十三の組織がございまして、そのほとんどが現実には各都道府県知事の監督下に置かれておるということでございます。組合事業は基本的には自主的に運営するというのが基本でございますけれども、法令に照らしあるいは事業の健全性を保持するということから、都道府県知事の指揮監督を受けておるわけでございます。  そこで、ここ十年来程度の土地取得状況について住宅生協サイドで調べろという御指摘でございますが、ただいま申し上げましたように厚生省で独自にそういうデータを持っておりません。したがいまして、都道府県知事を通じまして、若干の時間を要そうかと存じますけれども、よく実情を調査いたしました上で、なお調整すべき点があれば調整するようにさせていただきたいと存じます。
  260. 草川昭三

    草川委員 時間が来ましたので、実はこの首都圏財形住宅協同組合、これは建設省と中小企業庁の所管の一つ勤労者の財形住宅の組合でございますが、これも東京都内にございますし、役職者の方々も官庁出身者の方々が非常に多いわけでございます。この財形住宅等も、この分譲戸数等を見てまいりますと、ピークの五十二年二百八十三戸をつくっておるわけでございますが、これが徐々に減ってまいりまして、財形の融資の内容は、五十三年に十戸、五十四年に十四戸、五十五年になりますと、ついにこれはゼロになるわけであります。一時は、昭和五十二年時代には雇用促進事業団の方からの融資も二十四億という金額を受け、分譲をしておる組合でございますが、これも本来の目的を達成したのではないだろうか。財形融資というのがもうゼロになってしまった。  これはそれなりに、金利が高いとかいろんな原因があると思うのですが、このような財形住宅協同組合というのが実は全国でたくさんあるわけなんで、いま一度、この法律改正に伴いまして個別の財形住宅協同組合のあり方等についての指導なりあるいは対応ということも考えなければなりませんし、先ほどの、五兆円の積み立ての融資というものが個別の金融機関によって再投資をされるわけでございますが、本来的なこの協同組合との関係をどのように見直すのかということも、これから私ども十分考えていかなければいけないことだ、こう思っております。ひとつその点を十分考慮の上、お考え願いたいということを要望して、この財形の協同組合の問題についてはこれで終わりたいと思います。  最後になりますが、時間の許される範囲内で、雇用促進事業団の全国でいま建設をされておりますところの事業団宿舎の問題について問題点を少し触れておきたいというように思います。  この雇用促進事業団というのは、非常に古いのもございますし新しいのもありますけれども、勤労者方々には非常にたくさん利用されておるわけでございますが、古い住宅は二戸を一戸にしませんととても今日的な住宅にならないというので、二戸一改造ということがやられておるわけです。これは非常に評判がいいわけです。これは四Kになるわけですから、一戸当たりの経費というのも、壁を抜くということだけでございますので比較的かからないやり方だと思うのですけれども、つい最近会計検査院の方からも、目的外の入居が多いじゃないかというような指摘も若干あったやに新聞で聞くわけでありますが、これも私どももいろいろな地域で見ておる限り、この事業団宿舎というのはいま少し予算を投入し、それから周辺整備を行いまして、逆に言うならば勤労者住宅として安定させる必要があると思うのです。二戸一改造というのを今後ともやられるのか、あるいは予算もつけて改造が進むのかどうか、お伺いをします。
  261. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 御指摘のとおり雇用促進住宅は全国に相当の戸数を建てております。当初、いわゆる一時的な住宅という性格がございましたので二Kないしは二DKという狭い住宅で始まったわけでございますが、やはり居住性の改善ということも必要なわけでございますので、最近は三DKというような形のものもできております。その狭い二Kあるいは二DKに入っておられる方は、家族の方もふえてこられますと非常に手狭になるということで、二戸分を二戸に直すということをやっております。そういう意味で、居住性の改善はなお今後も続けていきたいと思っておりますので、必要な予算を投じてその改善を進めていきたいと思っております。
  262. 草川昭三

    草川委員 それから雇用促進事業団の古い団地の場合は欧米式の古い浄化槽が多いわけです。これは炭鉱離職者が政治問題になったときに急造したわけでありますからやむを得ない点もあると思うのですけれども、私どももいろいろと現地で見てまいりまして、保健所の方から浄化槽の排水が排出基準違反だというような強い指摘を受けている建物が多いわけです。ところが現実には、これを直しますと三千万円程度の予算がかかるというので、管理人の方々も非常に苦労しておるわけでございます。この古い浄化槽を雇用促進事業団としてどういう展望をかけて改造をするのか、見通しがあればひとつお聞かせ願いたいと思います。
  263. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 雇用促進住宅の場合に、家賃収入でもって維持管理費あるいは修繕費等に充てるという考え方をとってきております。いま御指摘の浄化槽の改修等も含めましてその修繕費は、五十六年度では家賃収入の五四%を充てているわけでございますが、それ以外に管理人の経費あるいは公租等の経費等もありますので、維持管理費全体では家賃収入だけで賄い切れないような状況になっております。  いま御指摘の浄化槽については、保健所との関係等も私ども耳にいたしておりますので、できるだけ早くそういうものは改善したいと思っておりますが、いま申し上げたような全体の収支バランスの上で一挙に全部というわけにはいきませんものですから、計画的に、急ぐところを優先的にやっていくということで、今後ともその辺の改修については努力していきたいと思っております。
  264. 草川昭三

    草川委員 雇用促進事業団が持っておる港湾宿舎というのがありますね。これも一定の時期、一定の役割りがあったわけでありますけれども、今日の港湾労働というのはコンテナ化いたしまして、港湾労働者は非常に減っておるわけです。従来は港湾宿舎というものを事業主に、レンタルというのですか、まるごと貸与したわけです。ですから事業主にしてみますと空き家がどんどんふえてまいりまして、所期の目的を達したので返却がそろそろ始まる、こういうことがいま起きておるわけでございますが、その空き家の返却というのですか、これを抱えるということになりますと、港湾宿舎のあり方も基本的に見直す時期が来たのではないかと思うのですが、その点、事業団としてはどのように対応するのか、あるいは労働省としてどのようにこれを見ていくのか、お伺いしておきたいと思います。
  265. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 御指摘のとおり港湾労働の実態は、コンテナ化等、輸送の方式が大幅に変わりましたので、日雇い労働者の数が非常に減ってきておるわけでございますが、常用労働者を含めますとまだ相当数の港湾労働者が主要港におりますので、その意味で港湾労働者の住宅もそれなりに機能を果たしていると思っております。  いま先生指摘の空き家があって返還という話は私まだ直接耳にいたしておりませんけれども、そうした事実があるとすれば、至急その実態を調べまして、その空き家の処理をどうするか、対応を検討したいと思います。
  266. 草川昭三

    草川委員 時間が来たのでこれで終わりたいと思いますが、雇用促進事業団は設立の当初のいきさつもあるわけでありますし、非常に交通事情の不便なところもたくさんあるわけでありまして、私ども一番地域で悩みますのは、入居者の駐車場の問題があるわけです。団地の自治会の方々ともよくお話をするわけでありますけれども、事業団としては入居者の駐車場等については限界があるということでございますが、場所が不便であるだけに今日的には駐車場等も考えなければいけないというので、私ども所轄の警察の方々ともいろいろとお話をし、あるいはまた地域の住民の方々にも空き地を駐車場等に転用するようにお願いをしておるわけでございますが、これも限界があるわけであります。これはきょう直ちにどうのこうのということは申し上げません。私の要望でありますけれども、この雇用促進事業団に入っておみえになります入居者の方々のためにいま少し住居の周辺整備、緑だとか、あるいは明るい色に変えるとか、あるいはいま申し上げたような浄化槽の問題だとか、あるいは駐車場の整備等についてもいま一段、事業団の方としても予算をつけるものはつける、あるいはまた予算がないとしてもその運用の中で知恵をしぼってやるようなことを強く要望して、終わりたい、こういうように思います。
  267. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 次に、菅直人君。
  268. 菅直人

    ○菅委員 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案の審議ということで、きょう朝方来多くの委員の方からいろいろな議論がなされたわけですけれども、私も聞いておりまして、この制度の趣旨そのものは大変に結構なんですけれども、その趣旨が今回の改正で果たしてどこまで生かされてくるのか、そういった点でいろいろな面で疑問がわいてくるわけであります。特に、今回新しくこの改正によってつくられようとしている財形年金貯蓄契約というものについて、幾つかの点でお尋ねをいたしたいと思います。  まず、この財形年金貯蓄契約の条件といいましょうか、そういったものを簡単に御説明いただきたいと思います。
  269. 望月三郎

    望月政府委員 今回創設しようとしております財形年金の要件でございますが、一つは五年以上の期間にわたって積み立てること、第二は五年以上の期間にわたって年金給付を行うことという点、それから年金給付は六十歳以降において支給するものであることというような点が中身でございます。
  270. 菅直人

    ○菅委員 もう一つ、要件の中に支払いの猶予期間が五年未満というのが入っているようですが、それは確かですか。
  271. 望月三郎

    望月政府委員 据え置き期間が五年以内ということでございます。
  272. 菅直人

    ○菅委員 この支払いの据え置き期間を五年未満というふうに定められようとしているその理由というのはどういうことなんですか。
  273. 望月三郎

    望月政府委員 財形年金貯蓄制度は、勤労者期間中に老後資産を計画的に形成することを促進するものでございまして、先ほども申し上げましたように、五年以上積み立てることを要件の一つとしております。また、年金の支払い開始時期につきましては、現在私どもは昭和六十年度に六十歳定年が一般化されるよう強力に高齢者雇用対策を推進しておりまして、いわば六十歳定年制はすでに定年制の主流となっておりまして、社会通念となりつつあるわけでございます。そういった事情を考慮いたしまして、勤労者が六十歳に達した日以後の契約所定の日としたところでございますが、まだ五十五歳定年制の企業が少なからずあること等にかんがみまして、据え置き期間を五年以内に限り設けることができることとしたわけでございます。
  274. 菅直人

    ○菅委員 ということは、もうちょっと簡単に言いますと、六十歳定年制をこの据え置き期間五年未満ということを設けることによって促進しようというふうな意味なんですか。またそういう効果があるというふうな見通しということですか。
  275. 望月三郎

    望月政府委員 そういった意味ではございませんで、やはり六十から年金を支給するということになっておりますので、それへ合わせる意味で五年以内ということにしたわけでございます。
  276. 菅直人

    ○菅委員 ちょっといまの答弁は、何か全然意味がわからないのですけれどもね。私が聞いているのは、支払いの据え置き期間、五年以内を設けている。別個の条件として六十歳以上から払うということはあるわけで、支払いの据え置き期間五年未満を設けるということは、たとえば五十七歳の定年制の企業で五十七歳まで掛けた。六十歳から――ちょっと待ってください。五年間の据え置き期間をもし法定化すれば、後五年は最低置いておかなければいけないわけですよね。ですから、この条件がどういう意味で設けられたのか、この支払いの据え置き期間五年未満というのはどういう趣旨で設けられたのか、もう一度説明いただけますか。
  277. 望月三郎

    望月政府委員 五年というぴしゃりとした五年ではございませんで、「五年以内」ということでございますので、たとえばいま五十七歳で定年でやめるという方があれば、その場合は六十歳以降まで三年でございますので、三年の据え置き期間をつくればいいわけでございます。
  278. 菅直人

    ○菅委員 そうすると、逆に五十五歳よりも定年制が、たとえば五十三歳とか五十二歳というところがあったとしますと、その場合はこの制度には入れないということですか。この制度を活用できないということを意味しているわけですか。
  279. 望月三郎

    望月政府委員 確かに先生指摘のように、これは非常にまれな例だと思いますが、五十五歳未満の定年制の企業があった場合につきましては、五十五歳未満定年の企業は私どもとしては非常に希有な例だと思いますし、五十五歳未満で退職した勤労者は再就職するのが通常でございまして、再就職後において財形年金貯蓄の積立期間の要件を十分満たし得るし、また前の企業で行っていた財形年金貯蓄を新しいところで継続する措置もございますので、財形年金貯蓄が全くできないということにはならぬと思います。
  280. 菅直人

    ○菅委員 まあ五十五歳よりも低い定年制というのは確かに非常にパーセンテージが低いようでありますけれども、それならわざわざこの制度の中に支払いの据え置き期間五年未満というような条件を加える必要というのはほとんどないのじゃないか。その六十歳以上の支払いということだけあれば、この五年未満の据え置きというのが持つ意味というのが、答弁を伺っているとますますわからないわけです。これは要らないわけじゃないですか。どうなんですか。
  281. 望月三郎

    望月政府委員 やはり財形貯蓄は在職中にしか賃金から控除して積み立てができないわけでございますので、六十歳以降に年金として支給するとすると、五十七歳だったらその五十七歳と六十歳の間のギャップを据え置き期間として置かないと、やはりどうにも技術的にも動かなくなりますので、そういう意味で五年以内という、縛りと言えば縛りでございますが、一つの要件をかけたということでございます。
  282. 菅直人

    ○菅委員 私がわからないのか説明がわからないのかよくわかりませんけれども、さっき六十歳以上というふうな条件があると言われたんだから、六十歳以上になればいつでももらえるということで何か不都合があるわけですか。五年未満なんという据え置き期間を置かなければいけない、そうじゃないと何か矛盾をするというようなことがあるのですか。
  283. 石岡愼太郎

    石岡説明員 ただいま御指摘の問題は、なぜ六十歳から年金貯蓄の支払い開始要件を置いたかという問題とも非常に関連が深いと思います。六十歳後に年金の支払いという要件を置きましたゆえんは、やはり日本の場合定年制が六十歳というのが社会通念化されておりますし、同時にまた六十歳以降になりますと、そういうことですから、引退される方々もおられるわけでございますし、働いておられましても、その賃金が低下する傾向が一般的だと思います。そういった時代にはまさに老後を迎えたとも言えるわけでございまして、そういうときに自分で勤労者生活中におためいただいたお金を国と事業主援助なんかも交えながらお使いいただくということで、六十歳以降支払いといたしたわけでございます。  ところが、五十五であれしますと、まだまだ、何といいますか、勤労者として十分働いていかなければならない年でございますし、そういった関係で、私どもとしてはできるだけ六十歳ということで統一した形でこの年金制度というものを運営していきたいということで、そうしたわけでございます。
  284. 菅直人

    ○菅委員 この細かい問題でそれほどかかわり合いを持つ気はないのですけれども、とにかく社労に付託されたこの法律案によると、二ページの2の一の口の中に「年金支払開始日(その者が六十歳に達した日以後の日(最後の当該契約に基づく預入等の日から五年以内の日に限る。)であって、当該契約で定める日をいう。)」この中の括弧ですね、「(最後の当該契約に基づく預入等の日から五年以内の日に限る。)」という項目が、先ほどから何度も言っておりますように、どういう意味でこれが必要なのか。いまの答弁は、別にこれがなくても六十歳以上という条件は残るわけですから。  それでこの項目が残る唯一の状況を私なりに推察をしてみると、先ほど申し上げたように、もし五十五歳以前に定年を迎える人があった場合は、この制度が活用できない、もちろんそれはその後の仕事だとかいろいろ言われますけれども、そのためにわざわざこういう項目を設けられているような形に法律上なっているんじゃないか。だから、そういうことが何か積極的な意味があるならばわかるのですが、いま聞いている限りでは積極的意味がないから、こんな無用なものは無意味だったらなくしてもいいんじゃないですかと私は申し上げたわけで、もう一回だけこの二重の括弧の内側のことだけについて、意味があるのかないのか、それをお答えいただきたいと思います。
  285. 石岡愼太郎

    石岡説明員 先ほどからお答えしておりますように六十歳という一つの支給開始年齢を私どもは定年制との関連におきまして引かせていただいております。それまでの期間に定年を迎えて積み立ての終わったような方々が、できるだけ資産を有利に使っていただきまして、本当に必要な六十歳以降に使っていただこうというような趣旨も踏まえながら、こういう規定を設けているつもりでございます。
  286. 菅直人

    ○菅委員 もうやめますけれども、全然答えられないですからね。  大臣、これはそれほど大きな問題ではないかもしれませんが、一体これがどういう意味なのか、幾らお聞きしてもお答えがないようなんで、一度よく検討していただきたいと思います。  あわせてちょっと、もう一つこういう場合にどうなるかということをお聞きしたいのです。  たとえば五十五歳で積み立てを終わる、そして六十歳から年金支払いを受けようと思っていたけれども、突然の病気とか突然の物入りがあって五十五歳から六十歳の間の、たとえば五十七歳で一時的にもう全部をもらいたい、一種の解約をしたいというようなケースもあり得ると思うのですね。たとえばそういう場合に、五十五歳で積み立てが終了して六十歳で支払いを受けるということになっていて、五十七歳でとにかく解約といいましょうか一時金でもらったとしますと、まずそういうことができるのかどうかということと、その場合に二年間の利子に対しては後からさかのぼって税金がかかるのか、それともそのぐらいはいいでしょうといって、かからないような優遇措置がそのままとられるのか、その点はいかがですか。
  287. 石岡愼太郎

    石岡説明員 据え置き期間中に解約された場合におきます課税関係年金貯金につきましてお尋ねでございますけれども、その積立金をまるまるおろされまして解約ということになりますと、それ以後の二年なりの期間におきまして利子というものが発生いたしませんので、課税関係は生じないものと考えます。
  288. 菅直人

    ○菅委員 最後のことよく聞こえなかったのですが、五十五歳で積み立て終了して、たとえば五十七歳で解約をした場合のその二年間の据え置き期間の利息の税の減免の問題ですが、もう一遍答えていただけますか。
  289. 石岡愼太郎

    石岡説明員 ただいま申し上げましたのは、先生が、据え置き期間中に六十歳まで二年の期間を残しまして、たとえば五十八歳で全部解約をされお金を引きおろされるケースでございましたので、そういう場合におきましては預金がもう存在しないわけでございます。一切存在しないわけですからそこから出てくる利子所得はないわけです。(菅委員「五十五歳から五十七歳の間は存在しているじゃないですか」と呼ぶ)私、六十歳までの二年間だと思いましたのでお答えしましたが、それは政令で、現在そこの辺は多分そういうことにならないと思いますが、政令で定めることで目下関係省検討中でございます。
  290. 菅直人

    ○菅委員 大臣、かなり細かいことをお尋ねしたのは、この財形による個人年金というのは、ある意味では大変に魅力的といいましょうか、そういう側面があるように思えるのですけれども、しかし実際の中身を見てみると、いま申し上げたようにいろいろな条件がついていたりして、果たしてこれが勤労者にとって本当に有利なといいますか利用するに足りる制度になるかどうかということが一つ問題だと思うのですね。  それからもう一つは、こういう制度をつくって、きょう朝以来いろいろな議論がありましたけれども、何か金融機関に一つの商品を提供しているというふうな感じもするわけです。それが結果的に勤労者にとってプラスになるならばそれはそれでいいのですけれども、いろいろ聞いていても何かどうも単なる一つの商品を提供して、それも大して魅力ある商品でもない。唯一魅力あるのはもちろん税制上の減免措置なわけで、そのあたりが、本来の勤労者の財産形成という大前提の趣旨と、今回のこういう新しい追加制度を設けられる趣旨がちゃんとマッチしているのかどうかというところが非常に心配な感じがするわけです。  そういう点で大臣に、このあたりの趣旨がどう生かされるようにされるつもりか、細かいことでなくて結構ですから、その決意のほどをお尋ねをしたいと思います。
  291. 石井甲二

    石井(甲)政府委員 財形における年金制度は、大きな一つの対応としては利子の非課税を雇用労働者でなくなった時点においても継続する、こういうことであります。  そこでこの制度の評価の問題でございますけれども、老後について、それぞれ各人が老後の設計あるいは老後の状態についてこれに対応するということは当然でございます。そこで、言ってみれば公的年金あるいは企業年金というものが、それぞれの状態において抱えたりあるいはそれがなかったりするわけでございますけれども、その場合に、自分の老後について自分が持っている公的年金その他を踏まえながらどういう選択をするかという問題でございまして、それには現在各金融機関が高齢化社会に対応してそれぞれの商品を開発しております。これを財形という側面で援助すると同時に、その内容につきましても、ある程度労働者に有利になるような一つのパターンをつくり上げて、これを金融機関に指導してまいりたい、こういうことでございまして、何か年金というものを一つ制度としてつくるということとは性格が違うものでございます。さらに現実には、勤労者老後のために貯蓄をしているという現実が相当ございますから、これに対してこういう措置で援助をするということでございます。
  292. 初村滝一郎

    ○初村国務大臣 今回の財形年金貯蓄制度創設というものは高齢化社会の急速な進展に伴って重要な課題である。したがって、勤労者老後生活の安定のために貯蓄制度を導入した方がいいんじゃないかということでやったわけでございます。  これでやってみていろいろ問題が起きてくるかもわからない、そのときにはやはり労働者のプラスになるように改善するのもやぶさかではない。特に金融機関の話があって、金融機関で商品をつくるわけですから、それを労働者が選んでその商品を買うわけでございますから、あくまでも勤労者のためになるような商品でなければいけない、金融機関がただもうけっ放しになるようなことではいけない、私はこういうようなことを考えておりますので、なるたけ労働者本位のプラスになるようなことでこの法の運営をしていくし、さっきも申し上げたとおりに、運営の途中で、どうもこれはぐあいが悪いということであれば、さらに改善していくように前向きで検討したいと思っております。
  293. 菅直人

    ○菅委員 大臣の前向きな御答弁をいただきましたし、時間ですので終わりたいと思いますけれども、もう一度重ねて、本来この制度で五兆円近いお金が預けられている。しかし、それに対して貸し付けの額は一千億余りということで、きょう午前以来、この財産形成促進法がそういった住宅建設という意味でも、果たしてどこまで役に立ったのだろうかということがずっと議論をされてきたわけです。  今回もう一つの目玉として、年金制度、個人年金の形の商品を開発する。これがまた、何かよく理解できないような条件が幾つもついていることについていま指摘をしましたけれども、こういったことで年金年金と言って、何か非常に勤労者のためになるように思えて、また数年間たってみたらこの住宅の場合と同じように、そういう意味ではなかったというようなことにならないように、ぜひいま大臣の御答弁のありましたように、問題があれば速やかに改革をしていくという姿勢で臨んでいただきたいということを重ねて申し上げて、私の質問を終わらしていただきます。
  294. 唐沢俊二郎

    唐沢委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  次回は、明後十五日木曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会