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1982-08-10 第96回国会 衆議院 環境委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年八月十日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 八田 貞義君    理事 中村正三郎君 理事 藤波 孝生君    理事 牧野 隆守君 理事 山崎平八郎君    理事 野口 幸一君 理事 水田  稔君    理事 岡本 富夫君 理事 中井  洽君       中西 啓介君    土井たか子君       山本 政弘君    大野  潔君       木下敬之助君    藤田 スミ君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 原 文兵衛君  出席政府委員         環境政務次官  石川 要三君         環境庁長官官房         長       山崎  圭君         環境庁長官官房         審議官     大山  信君         環境庁企画調整         局長      清水  汪君         環境庁企画調整         局環境保健部長 七野  護君         環境庁自然保護         局長      正田 泰央君         環境庁大気保全         局長      吉崎 正義君         環境庁水質保全         局長      小野 重和君         通商産業大臣官         房審議官    村田 文男君  委員外出席者         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課産業廃         棄物対策室長  坂本 弘道君         厚生省社会局施         設課長     田中 健次君         林野庁指導部治         山課長     小澤 普照君         水産庁振興部振         興課長     小川 洋二君         資源エネルギー         庁公益事業部計         画課長     西中真二郎君         資源エネルギー         庁公益事業部火         力課長     廣瀬 定康君         運輸省航空局飛         行場部長    栗林 貞一君         建設省都市局都         市高速道路公団         監理官     青木 正次君         建設省河川局治         水課長     玉光 弘明君         建設省河川局都         市河川課長   萩原 兼脩君         建設省道路局企         画課道路環境対         策室長     田口 二朗君         環境委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 八月十日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     中西 啓介君 同日  辞任         補欠選任   中西 啓介君     木村 武雄君     ――――――――――――― 七月二十九日  湖沼環境保全特別措置法の制定に関する請願  (大原亨君紹介)(第四六九一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 八月六日  空き缶散乱防止対策に関する陳情書  (第四二九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境影響事前評価による開発事業規制に関す  る法律案土井たか子君外二名提出、第九十四  回国会衆法第五号)  環境影響評価法案内閣提出、第九十四回国会  閣法第七一号)  公害防止自然環境保護及び整備並びに公  害健康被害救済に関する件      ――――◇―――――
  2. 八田貞義

    八田委員長 これより会議を開きます。第九十四回国会土井たか子君外二名提出環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案及び第九十四回国会内閣提出環境影響評価法案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中西啓介君。
  3. 中西啓介

    中西(啓)委員 おはようございます。  本日は、各党に先駆けまして、自由民主党に一番バッターを命じていただいたことに、まず心から感謝を申し上げる次第でございます。ピンチヒッターでございますので、おたおたしながらの一時間かと思いますが、ひとつ環境庁長官中心といたしまして、私が非常に疑問に思っている点が幾つかございますので、そういう点につきまして、ひとつ明快かつ懇切丁寧に御答弁をいただければ大変ありがたいかなというふうに思っております。  まず、環境影響評価法案に限定して御質問をさしていただくわけでございますが、この法案は、もう御承知のとおり、四十七年の六月に各種公共事業に係る環境保全対策について閣議了解をされて以来、環境庁中心になりまして、大変多くの方々の熱心な御討議、大変な労力と時間をかけて今日まで来ておるわけでございます。私も、この環境アセスメントのパンフレットにありますように、鯨岡環境庁長官が「美しい自然、気持ちのよい環境は、人間が豊かな生活を送るための基本です。私たちは、その中で生まれ、生活し、この貴重な財産を子や孫に伝えなければなりません。」こういうふうに冒頭おっしゃっておられるわけでございます。私も全く同感でございまして、環境をよりすばらしい状態にしていくという考え方では人後に落ちない人間の一人でございます。  そこで、これからいろいろとお伺いをしてまいるわけでございますが、まず、その基本的なスタンスをひとつお話しを申し上げて、具体的な問題に入ってまいりたいというふうに考えております。  私、どうもこの法案が通りますと、何か大変なことになりはしないかなというふうな胸騒ぎが非常にするわけですね。非常に気にかかるわけなんです。長官は、「地球素顔が美しい」という言葉を聞いたことございますか。これはJALのコマーシャルに出てくるのですね。地球素顔が本当に美しいということは僕もよくわかるのでありますが、しかし、なかなか人間は、武士は食わねど高ようじというわけにはまいりませんで、やはり飯を食うていかぬことにはどうにもならぬわけです。そこで、きょうはひとつ、スポンジでふわふわとこすっていてもなかなか進展をしないかと思いますので、ちょっとたわしで冷水摩擦をするくらいのつもりで、血がうっすらとにじみ出るくらいの感じで、一遍いろいろな意見をぶつけてみたい、そんなふうな気持ちでお邪魔をしたわけであります。  いま、これから高度成長時代から安定成長時代というよりも、むしろ低成長時代に入っていくと言われておるわけでありますが、しかし、その中でもやはりエネルギー、特に石油がいつまでも続くという保証はありませんから、当面この石油にとってかわる主力打者原子力だと言われているわけですが、その原子力発電所だとか、あるいはまた交通、新幹線の問題もあれば、関西新国際空港の問題もやがて実施に移されるものと私は確信をいたしておるわけでありますが、そういう問題あるいはまた都市開発等各種のいわゆる開発事業を行いつつ、バランスのとれた発展を目指していかなければならないわけでありまして、またそれを追求していくのも政治一つの大きな目的役割りでもあると思うわけであります。そのときに必ず環境問題が生じてくるわけでありますけれども、その環境問題は、未然公害を防いでいかなければならぬ、これは言わずもがなでありますが、そのためには当然このアセスメントというものは大変必要、重要であるわけでございます。  この法案に関して申し上げますと、どうも従来の行政手法に見られないような点がいっぱい出てくるわけです。また、いろんな制約が事業進展に大変な足かせになりはしないだろうか、そういう感じがするわけであります。同時に、国や地方における政治行政基本にかかわる問題点も含まれているような感じが強くしてならないわけです。  先般来から、きょうも御出席でありますけれども、わが親友の中村正三郎委員も重大な疑問を提出されたところでありますが、こうした議論議事録等で読めば読むほど、あるいは聞けば聞くほど、慎重にも慎重を期してこの法案をますます練り上げていく必要があるのではないか、そんなふうに私自身強く感じるわけです。  そこで、本日は、本法案に内包されている基本的事項について、環境庁長官中心に、石川要三名政務次官もおられるわけでありますから、いろいろとお伺いをしてまいりたいと思います。  まず初めに、訴訟についてお伺いをしてまいります。  近年、全国各地におきまして、事業の差しとめを求める、いわゆる公害訴訟なるものが頻々として起こっているわけですね。それはもう環境庁皆さん方が一番よく御存じのことだろうと思うわけでありますが、これらの中に、いわゆる意図的にといいますか、反対のための反対として、組織的に提起されているものも数多くあると私も聞いておりますし、また一、二現実の問題として私自身も知っております。その根拠として彼らが挙げるものは、いわゆる憲法第二十五条の生存権、「すべて國民は、健康で文化的な最低限度生活を営む権利を有する。」この生存権福祉国家の理念に基づくいわゆる環境権、こういうものを挙げまして盾にとってやってきているわけですが、これまでのところ、実体法上の規定を欠いているわけですね。そこで、最終的に認められていないわけですよ。しかしながら、本法案が成立をいたしますと、環境権訴訟に有力な手がかりを与えることになると私は強く感じてならぬわけです。そこら辺、ひとつ環境庁見解をお伺いをしてまいりたい、こんなふうに思うわけでございます。
  4. 原文兵衛

    原国務大臣 中西委員御説のように、武士は食わねど高ようじというわけにはいかないことは私どもも十分承知しております。現在の日本の国土面積は、北海道、本州、九州、四国、沖繩、それに若干の島々でございますが、これは考えてみますと、ちょうど江戸幕府時代と同じ国土面積だと思います。江戸時代人口が大体三千万と言われております。現在一億一千五百万、これだけの人口が同じ国土面積の中に生存し、そしてまた、しかも生活程度も上がっているわけでございますから、江戸時代のようなことを考えるわけには私はいかないと思います。  しかし、同時にまた、科学技術もずいぶん進歩しております。したがって、この法案におきましても、開発を全部だめだというようなことじゃなくて、必要な開発はやらなくてはならぬが、それに当たりましても、やはり環境の破壊というようなものがないように、これを未然防止しようというのが大きな目的であろうと思います。  そこで、いまこの法案ができますと、いわゆる環境権というような訴訟一つ根拠を与えて、訴訟が非常にふえるのじゃないかというような御心配だと思いますが、そういうような面につきましても、この法案を成案し、提案するまでに、政府部内におきましても非常に長い間いろいろな討議が重ねられまして、現在の段階においては、一〇〇%という法案は、私はこれはなかなかないのじゃないかと思いますが、これが現在の段階において最善の法案であるという確信を得て提案さしていた、だいているわけでございます。  環境権というものにつきましては、これはいままでの判例では一応否定されているというふうに私どもは考えているわけでございます。その理由はもう御承知のとおりでございますと思いますからあえて申し上げませんが、この法案ができましたからといって、私は、いままでの判例で否定されている環境権そのものについて根拠を与えるというふうには考えられないのじゃないかというふうに思っている次第でございます。  なお、細かい点につきまして御質問がございましたら、局長もおりますので、お答えさせたいと思います。
  5. 中西啓介

    中西(啓)委員 当然、この法案を出されている本家本元環境庁でありますから、出されている手前上、そういうオブラートで包んだようなふんわりした答弁しか伺えないであろうなと、予測していたとおりの御答弁が出たわけでございます。しかし、そういう訴訟に大変精通している法律実務家、そういう人たち意見を聞きますと、この法律では関係地域を限定しているわけですね。あるいは関係住民を特定する旨の規定があるわけでしょう。二番目に、また、関係住民に限定して意見を述べることができる、こういうふうになっているわけです。そうしますと、これは何人にも認められる憲法第十六条、いわゆる請願権ですね。請願権は「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、」云々と書いている、あの請願権を単に確認したものじゃなくて、この法案に基づき特別に認められた権利であるというふうに理解せざるを得ぬと思うのですが、その点はどうですか。  なぜなら、何の効果もないのであったら、関係住民に限ってというふうな、こういう規定をする必要がないと思うのです。そういうふうな点から判断していきますと、従来から根拠とされる憲法第二十五条などに加えて、本法案により環境を共有する者の利益実体法上も認められたとして、これを根拠環境権主張することは明白だと思うのですよ。  ちなみに、あの北海道伊達火力発電所建設等の差しとめ請求事件昭和五十五年の判決文を読んでみますと、「立法による定めがない現在においては、いまだ、環境権を、地域住民に共通の明確かつ強固な内容範囲をもったものとして構成したうえで排他的支配の対象とするということは困難であると考えられる」こうなっているわけです。繰り返して言いますと、立法による定めがない現在においては環境権は認められない、こういうふうに判決で言っているわけです。だから、そこら辺が僕は非常にはっきりしていると思うのですね。あるいはまた、有力な法律学者で構成する研究グループ人たち見解では、事業者アセスメント義務づけること自体は公法上の義務であるけれども、同時に、民事上の注意義務を強化し、一部を創造する、こういうふうに言明しているわけです。  これも環境庁は当然御存じだろうと思いますが、いま私が申し述べた諸点を踏まえますと、先ほどのせっかくの環境庁長官の御答弁でありますが、どうもちょっと何か避けて通っているような、何かオブラートに包んだような、そんな感じがするわけですね。だからひとつ、伊達火力発電所判例を、これも知らぬわけないと思うのですけれども、いかなる根拠環境権が認められないとするのか、具体的にひとつ再度御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  6. 清水汪

    清水政府委員 この環境権という言葉が必ずしも明確でないというところから、いろいろ議論がまさに行われているのだろうと思いますが、この問題の一つの重要なポイントは、いまの伊達火力判決の中にもありましたように、もし私権としての環境権ということが、実定法の上で何か規定があるのかどうかということが、その場合でもポイントとして指摘されているわけでございます。  ところが、政府が現在提案しております環境影響評価法案におきましては、この法案ポイントは、もう御案内のことと思いますけれども事業者に対して、事業に着手する前に、環境に及ぼす影響についていろいろ調査、予測、評価をしなさい。その手続はこれこれこういうぐあいにやりなさいということを決めている法律であるわけです。ということは、いま私が申し上げましたこととの関連で言いましても、住民個人の側について、その住民の何か具体的な利益なり権利なりというようなことについては、何らこの法案の中に規定をしているわけではございませんし、この法律の全体の構成も、それを連想させるようなぐあいには構成されていない、こういうことがはっきり申し上げられると思うわけでございます。  したがいまして、憲法以下のいろいろの法律議論というものは、だんだんと社会進展とともに発展といいますか、前進ということはあり得るかと思いますけれども、私どもがこの法案を御提案申し上げている立場、そしてこの法案自体内容条文等から申し上げますと、いま申しましたような点から言いましても、いわゆる環境権、これはつまり言っている方は、私法上の排他的な権利であるかのごとき一つとして、環境権というような主張をされているだろうと思いますけれども、そういうものとはおよそ縁がないということは明確になるんじゃなかろうか。したがいまして、この法案が成立いたしましても、いわゆる環境権主張に何か有力な手がかりを与えるというようなことにはならないということは申し上げられると思います。
  7. 中西啓介

    中西(啓)委員 だけれども、このあれが出てまいりますと、いわゆる手続上の問題で違法であるか、あるいは適法であるかというような問題が必ず生じてくると思うのです。だから、どうしても彼らは事業そのものの引き延ばしを目的としてやるわけでありますから、彼らの目的が相当達成される可能性は多分にある、私はそういうふうに思えるわけです。ですから、いまも私は観念論をもてあそんで言っているわけじゃなくて、具体的判例まで引いて、司法の動向も踏まえて議論してきたわけです。ですから、いまの答弁にはちょっともう一つ納得できないわけですけれども、いずれにしても、環境庁環境権は認めませんと保証してくれるわけじゃないですね。結局裁判所判断を待つ以外にないわけですよ。だから問題だと思うのですが、とにかく環境庁答弁は、私自身にはきわめて心もとないというか頼りない、そういうふうにしか聞こえなかったわけです。  これ以上お聞きしても、同じような答弁の繰り返しだと思いますが、そこで、仮に環境権そのものが認められないとして、一遍質問してみたいと思います。  この法案では、第二十条いわゆる横断条項というのがありますね。この横断条項によって許認可とリンクしているわけでありますが、そうしますと、アセスメント瑕疵理由として行政訴訟が提起されるなど、ますます訴訟が多発することが予想されるわけでありますけれども、その点は環境庁はどのようにお考えになりますか。
  8. 清水汪

    清水政府委員 ただいまの御指摘の御懸念につきましては、ある意味では私どもとしても御心配のお立場は理解できるわけでございます。これまでのいろいろの事例からも、訴訟というものは非常にたくさん起きております。  問題は、訴訟自体がどういう趣旨あるいはどういうポイントについて起きているかということが一つあると思いますが、そういう点になりますと、これにはかなりいろいろの種類なり側面があろうかと思います。  ところで、この法案の二十条では、まさに御指摘のように、横断条項とよく私ども言っておりますけれども主務大臣許認可というような行政処分を行う際には、評価書において、環境影響防止公害防止とか、自然環境保全、そういうものについてどういうふうに配慮されているかということを審査をしてから処分をするというふうにしてございます。そこからいまの御懸念の問題がある意味で出てくるんだろうと思いますけれども、この点につきましては、私どもとしては、この二十条は、いま申しましたように、環境保全について十分な配慮がされているかどうかという、そういういわば実態について、許認可処分に当たり主務大臣としても配慮をしなさい、こういうことでございます。  ですから、そのことから言いますと、まず言えますことは、一つは、その評価書をつくるのは事業者でございますが、事業者はこの法律規定流れに沿って評価書をつくるわけでございますけれども、いまの御指摘は、その手続流れの中に何か瑕疵があった場合に、最終において行われておる主務大臣行政処分にどういう関係があるかということからくる御質問だろうと思いますけれども、その点は、ただいま申しましたように、主務大臣立場というのは、主務大臣行政行為というものが直接事業者の行っている一連の流れとつながっているということよりは、その結果の成果物である環境配慮について行ったことの内容について審査しなさい、こういうことでございますので、まず形式的といいますか、そういう関係から言いましても、手続流れに何か仮に瑕疵があったとしても、そのことが直ちに行政処分である方の違法性につながるというふうには考えなくていいんじゃなかろうかというふうに思いますし、それからもう一つは、この二十条の表現をごらんいただきますればおわかりのように、主務大臣は結局のところ総合して判断する、こういう立場に立っているわけでございます。したがいまして、そこにはある意味でいわゆる判断の裁量と申しますかへそういうものが認められている、こういう法文になっているわけでございます。  そういうようなことから言いまして、いま御指摘手続流れ瑕疵が、すぐに形式上行政処分の有効あるいは違法という議論につながるわけではないということは申し上げられると思います。思いますけれども、ただ、訴訟を起こそうという側からすれば、とにかく訴訟を起こして裁判所判断が出るまでは、仮にそれが門前払い判決といいますか、門前払いのことであれ、あるいは実体審理の上での判決であれ、それはいずれにしてもある意味一つ目的を達しているという面はあるかもしれません。これは御本人の方の主観の問題ですから、私は推測で申し上げるしかないのですけれども、そういうことから言いますと、その訴訟自体が、あるいは訴訟理由一つされるのじゃないかというようなことまでは、これは否定できないと思います。思いますけれども、私は、いま申しましたような、この法の解釈とか内容から言いまして、それは特に心配する結果にはならないのじゃないかというふうに考えております。
  9. 中西啓介

    中西(啓)委員 それじゃ、要するに訴訟の争点がふえることは当然予想される、あるいはまた、訴訟を提起し得る者の範囲が従来よりもぐっと拡大される、そういうことは率直にお認めになられたわけでありますね。  それじゃ、これと関連しますが、法案第十条にあります「関係住民」、これは単に形式的に関係地域住所さえ持っておればそれでいいわけですか。
  10. 清水汪

    清水政府委員 その前に、先ほどの答弁に関連いたしますが、住民範囲ということで、ちょっと先生からのお言葉がございましたが、いわゆる訴訟手続で言う原告適格という意味住民範囲という意味においては、別段それを拡大しているというようなことにはなっていないというふうに私ども解釈をしております。  それはなぜかと申しますと、そもそも、先ほどからもちょっと申し上げておりますけれども、この法律自体がいわば自然環境なり公害防止というような、公益の確保ということを目的にして事業者に対して一定手続を決めているということであって、個々の住民個人の具体的な何か利益規定しているということではございませんので、そういうことになる、そういうことは申し上げられるということでございます。  それから、いまの御質問の、第十条の関係住民とはどのようなものかということでございますが、これは、法律にございますように、一定地域というものを知事に決めていただきますけれども、その地域内に住所を有する者ということでございます。
  11. 中西啓介

    中西(啓)委員 そうしたら、訴訟を起こすことを最大目的としているいわゆる職業的闘争家、そういうのもいっぱいいるわけですね。そういう者が次から次へと、あちこち資料を集めて、反対のための反対を述べるために住所を移していく、そういうことはそれじゃチェックできないわけですね。
  12. 清水汪

    清水政府委員 結論から申し上げますと、その地域住民であるという形になりますと、言葉は悪いのでお許しいただきたいと思いますが、いわばその正体が何であるかということまでせんさくをするというわけにはなかなかまいらないと思います。住所、氏名を明らかにしていただくといいますか、聞くというようなことは、それは差し支えのないことだと思いますけれども、聞いても、それは住所をそこに手続をとっていればそれ以上にせんさくはできない。  ただ、法の趣旨から一言申し上げたいわけでございますけれども住所というのは、申すまでもなく、生活の本拠を指すということに民法の上でも明らかになっております。そのことと、いわゆる現在行われております住民登録ということとは必ずしも一〇〇%一体にはなっていないように思います。登録は単に住民票の異動の提出でもって住民台帳への登載は可能でございますので、そこのところが一つある、そういうことでございますし、もう一つは、そもそも一々住所をチェックしてまで運用するかどうかという実行上の問題もあるわけでございます。そういうことから申し上げますと、法の趣旨ははっきりいたしているわけでございますけれども、現実の運用の段階で法の趣旨に合うように幾らかでもなし得るかどうか、そのためには、しかし、どういうことができるかということは、今後も運用上の問題としてはさらに研究はしていきたいというふうには考えております。
  13. 中西啓介

    中西(啓)委員 研究はしていくけれども、目下のところは排除するすべがない、こういう結論だろうと思います。ですから、この法案のいわゆる「関係住民意見」の規定は、一見非常にもっともらしい体裁を整えているわけですけれども、しかし、実態をそしゃくしますと、重大な欠陥と危険性を有していることが明らかだと私は思うのです。ですから、本来その地域と全く関係のない人間であっても、外形上その地域に住んでいるかっこうさえとれば、ほかの地域住民には認められていない意見陳述権を与えることになるわけでありますから、その権利を最大限に活用して、実体法規定手がかりとして訴訟をいたずらに多発させて、各地に混乱を生じさせる最大の元凶になるような、私はそんな気がしてならないわけであります。ひとつさらに鋭意検討していただいて、何とかチェックできるような方法を模索していただきたいと思います。  そこで、さらにお伺いをしてまいりますが、訴訟が提起された場合、一連の手続が中断され、開発事業に大幅な遅延がもたらされるというふうな可能性はあるかどうか、そこら辺も一遍お聞きしてみたいと思います。
  14. 清水汪

    清水政府委員 いまの御質問にも関連いたしますが、先ほどの答弁にちょっと補足させていただきます。  この住民の、いわゆる言葉は悪いのですが、この場の言葉としてお許しいただきたいのですが、その正体を厳しくチェックするかどうかという議論は、この種の法律の場合には、そこまで考えることはちょっと適当でないんじゃないかという問題があろうかと思います。  ということは、たとえば選挙権のような公民権とか、その他の受給権のような問題ですと、いわゆるその権利でございます。そういう場合には、その本人の真実性と申しますか、そういうものを確認した上で処理をすることがいわば当然でございます。しかし、この場合の住民意見というものは、いわゆるその地域に住む人の、言うなれば生活体験等に基づく環境情報を得たいというのがそもそもの趣旨でございますので、そこまでの深入りは、ある意味では、先ほどの環境権論争というようなものとかえって議論が混淆してくることにもなりかねないということも考えなければならないと思います。  それからもう一つは、とにかくそういう人が登場する機会はいわば二度でございまして、一つは説明会に入るということと、もう一つは説明会の後なり、前でもいいのでしょうけれども意見意見書でもって事業者提出するという、この二度の機会でございますので、いま問題になっているような現象とは必ずしも一緒にはならないということかもしれません。  もし仮に、説明会のようなものが、これは望ましいことではございませんけれども、非常に妨害的な荒れ方のようなことで、その運営自体が全く不可能だというような現象が生じたときは、この法律では一つ規定がありまして、たとえば説明書を配付するというような代替措置でもって、その説明会自体にかえて、先へ手続を進めることができるというふうには手当てはしてあるわけでございます。  それから、ただいまの後の方の御質問でございますが、訴訟が提起された場合には、大幅におくれるのではないかということでございますが、この点は、ある意味では見解の相違ということになろうかと思いますけれども、一応申し上げられますことは、一つは、まず行政訴訟と民事訴訟に分けて考えてみますが、行政訴訟が提起されたからといいましても、それに対する免許等の効力停止の決定がない限りは法律上の事業の遂行に支障はない、こういうことが申し上げられるわけでございます。事業の遅延というものは、反対する方たちの実力行使などを含む、いろいろな事実上の妨害行為によって生ずることがむしろ多いのではなかろうかというふうに思うわけでございますけれども、いずれにしても、ここは訴訟の継続によりまして遅延が生じているのかいないのかということは、つまり事実が両方重なっているというような例が多いと思いますので、明確には申し上げにくいということでございます。  それから、民事訴訟というのは、民事の差しとめ訴訟ということになりますけれども、これも事業の続行禁止の仮処分決定がない以上、法律上は事業の遂行に支障はないわけでございますけれども、この辺のことになりますと、環境影響評価手続上の欠陥というものを理由とする民事差しとめ訴訟というものが提起されるかどうか、これは事実としては提起する人はないとは言えないと思いますけれども法律理論上は、民事訴訟としてのそういう訴訟の提起は認められないことになりますので、したがって、当初のうちは多少はそういう訴訟が起きるかもしれませんけれども、それはやがて落ちつくところへ落ちつくことになるのじゃないかということは申し上げられると思います。  もう一つよく心配されますのは、訴訟が提起されますと、行政庁のその仕事に携わる公務員自身としても非常に仕事がやりにくいという心情になる。これが、私どもも過去の間に、ある意味では経験していることでございます。ございますが、その辺のことになりましては、一義的にはいずれにしても申し上げかねる。全部がストップしているわけではない。むしろ、いい悪いは別といたしましても、訴訟は後まで残っているけれども、すでに事業が動いているというような例もあるわけでございます。
  15. 中西啓介

    中西(啓)委員 当然環境庁らしい御答弁だと思いますし、事業が、そういう訴訟があっても継続して動いておる例もあるというふうにおっしゃいましたけれども、動いてない例も逆にいっぱいあるわけです。行政庁が毅然とした態度で臨めば、それは何ら心配は要らないというふうに環境庁はおっしゃるわけですけれども、私の選挙区でじんかい処理の予算を、厚生省になるわけですけれども、もらいたいというので私も一生懸命陳情して、わかりました、何とか予算をつけましょう、そういう段階になって、よその県から来た渡り鳥の闘争家が訴訟を起こしたのです。そうしたら直ちにその予算はストップ、こんな問題があるところへは予算はつけられません。とまっちゃったじゃないですか。そんな例はいっぱいあるわけですね。だから、いまのような環境庁の説明ではとてもわれわれは納得ができない。そのことを申し上げて、きょうは十一時半までですから時間がありませんので、まだ聞きたいこといっぱいあるのではしょって漸次聞いてまいります。  とにかくそういうことで、訴訟の動きがあることだけで行政庁は行政指導によって事業者を指導し、形式的要件が整っているにもかかわらず許認可の申請はもちろん、届け出や報告さえも行わせない、あるいは受理を拒否する、そういう事態が日常茶飯事、あっちこちで起こっているという現実を絶対に忘れないでおいてください。それの方が圧倒的に多いわけですから。事業が遅滞なく進んでいるというのはほんの一例ですよ。そういう現実への影響ということを十分配慮していただかぬと大変困るわけであります。  そこで、今度は、住民意見と代表制民主主義制度についてちょっと聞いてみたいと思うのです。  法案第十条によれば、関係住民は「公害防止等の見地からの意見を述べることができる。」こういうふうになっておりますね。しかし、この公害防止とは、その目的とするところは住民の健康と福祉でありますね。そこで、この行政事務を第一義的に行うのは地方公共団体であり、このことは地方自治法第二条第三項一号に、地方公共の秩序を維持し、住民の健康及び福祉を保持すること、こうなっております。同項第七号にい公害防止その他の環境整備保全に関する事項を処理すること、こういうふうになっているわけでありますが、環境庁は、この法案においてなぜ住民意見を述べさせることにしているわけですか、どういう根拠でこの規定を設けているわけですか。ひとつ簡潔にお答えください。
  16. 清水汪

    清水政府委員 この法案におきまして住民意見を聞くということにいたしました理由は、簡潔に申し上げますと、環境影響評価事業者はやるわけですけれども、その地域生活しております人が持っているそういう生活体験に基づく情報、その中には何か貴重なものがあるのではなかろうかというふうに考えられます。そういうようなことから、評価書の作成過程におきましてさらに十全を期することに資するという趣旨から、住民のいわばそういう面での協力を求めている、こういうことでございますし、それからまた、その反面の効果といたしましては、その社会において事業者事業を展開する以上、住民によくその事業の説明をし、それから環境保全の面についても説明をして、安心をしていただくといいますか、そういうことであればその方が地域のコミュニケーションという面からいってもベターであろう、円滑に事業が進むということの効果もあるかと思います。  ただ、ここで申し上げますことは、その関係住民意見によって、たとえばその事業をやる、やらないということの事業者としての意思決定を、その住民意見によって直接左右されるというような関係には全くないということでございます。それは、この法案に単に「意見を述べることができる。」と書いてあることからいいましても自明のことでございます。したがいまして、先ほど先生ちょっと御質問の中にありました、代表民主制との関係というような点についての新たな何か問題性というふうなものはないということははっきり申し上げられると思います。
  17. 中西啓介

    中西(啓)委員 そういう面は確かに私もよくわかります。素朴な、本当に住民の、開発はしてもらいたいが、こういう点が心配だな、そういう方々の意見を吸収する、そういう面ではよくわかるのですが、逆に私が問題にしているのは、さっきの意図的な、イデオロギー的な闘争家、要するに反対してできるだけぶっつぶしたい、ぶっつぶせなくても、できるだけ引き延ばしを図りたいということを最大の目的にしている連中を対象にして話をしてきたわけでありますけれども、そういう連中を排除できないという心配が厳然として残るわけですね。  環境庁は、との評価基準を明確にして、事業者が困惑しないようにすると言っているわけですね。そうしますと、住民意見をむしろ聞く必要がない、そういう理屈も成り立つと私は思うのですよ。ですから、逆に、住民意見を求めなければならないとしているのは、いかに評価基準があいまいであるかということの証左にもなるんじゃないかな、そんな気もするわけです。環境庁の言う基準とは、住民意見をうのみにして、これを判断基準にするんじゃないかというふうな見方もできなくはない、そんなふうにも実は思うわけであります。  住民意見といっても、素朴な人たちのあれはよくわかるわけでありますが、この環境問題に対する関心あるいは理解度という点については、みんなそれぞれニュアンスが全く違いますし、まちまちだろうし、主観的な要素がその内容となっているわけですけれども事業者としてこれにいかに対応していくかということは非常にむずかしいと思うのですよ。そこで混乱に陥るということは火を見るよりも明らかになるわけですけれども、私は、結論から申し上げますと、住民意見というのは、自然環境保全という観点からだけじゃなしに、いわゆるいろいろな事業の行われていく場合に、その事業の持つ総合的なメリット、経済的あるいは社会的に与えるいい面での影響、効果、そういうものが何かもう一つ盛り込まれてないといいますか、取り入れられていない。この法律ではそんな感じがするわけですね。メリットといっても、国家的な必要性もあれば、あるいはまた地域開発をしていく上においての効果もありますし、あるいはまた国民生活の向上あるいは社会福祉の増進、そういうのがあるわけですけれども、そういうものはどうも余り取り入れられてない、そんな感じが非常に強くするわけです。  こういう面で、それを支持する人たち意見を余り聞き入れられない、そんなふうなあれになっている感じがするわけですよ。だからそこら辺ももうちょっと工夫をしてもらわなければならぬかなというわけでございます。  アメリカのNEPAという、いわゆる国家環境政策法は、私は詳しくまだ勉強はいたしておりませんけれども、聞くところによりますと、狭い意味での環境面でのあれだけじゃなくて、先ほど私が申し上げました、いわゆるメリットについても十分配慮しておる、そんなふうに聞いておるわけでありますが、そういうアメリカのNEPAも十分参考にして、そういう一部の人たちのあれじゃなくて、全体のメリットを追求できる道ももっと開いていただきたい、そんなふうに思うわけです。  どうもこれだけだったら、何か反対のための反対をする人だけに絶好のチャンスを法律で保障しているような、担保しているような、そんなふうにもとろうと思えばとれなくないわけです。だから、日本の場合は一たんつくった法律というのはなかなかもとへ戻せない、そういう風習がありまして、時とともに価値も変わるし、環境も変わっていくわけでありますから、人間のつくる法律ですから、先ほど環境庁長官が一〇〇%完璧な法律はあり得ないと言われましたが、トライアル・アンド・エラーで、そのときそのとき修正をしていける、そういうことになれている日本であればいいのですが、一たんつくっちゃうとなかなかできませんでしょう。憲法だって、よしあしは別にして、いろいろな国々は何回か手直しをしているわけですけれども、日本は、あの環境のもとにつくられた憲法がいまだに一字一句直されずにずっと来ている。こういう一例を考えても、一たんつくってしまうとなかなかもとへ戻せないということも考慮して、さらに鋭意あらゆる角度から検討してもらいたい、この機会に再度要請をさしていただくわけであります。  引き続いて、関係住民意見を聞くということは、直接民主主義を持ち込むことになってくるわけでありまして、わが国の政治風土になじまないと考えますが、その点はどうですか。
  18. 八田貞義

    八田委員長 清水局長、簡潔に答弁願います。
  19. 清水汪

    清水政府委員 住民意見を聞くというのは、現在の法律の中で探してみますと、たとえば都市計画法とか一、二の法律に、利害関係人及び地域住民意見を聞くという例がございます。しかし、余り多くはありません。多くの場合は利害関係人でございます。ですが、現在あります都市計画法等の法律におきましても、その意見によって事の採否を決定するとかいうような関係は全く持っていないわけでございます。この法律におきましても、先ほども申し上げましたように、住民意見を聞くということは入っておりますけれども、それによって事業自体の、行うとかなんとかということの意思決定にはそれは直接かかわりを持たないわけでございます。そういうことでございますので、すでに例もあるということも申し上げられますので、特に風土に合わないということまでにはならないんじゃないか。  一言補足さしていただきますが、先ほど先生のおっしゃいました問題点は、もちろん将来勉強させていただきますが、この段階で一言申し上げておきたいと思いますのは、むしろそのようなことにするということは、事業そのものの採否の意思決定にまでより深くかかわり合いを持つような方向に行くという可能性もあるわけでございますので、なかなかアメリカなどの風土とそこは違う点があるのではなかろうかという点が一つ考えられると思います。
  20. 中西啓介

    中西(啓)委員 開発事業を含めて、人の活動には大なり小なりプラス面とマイナス面とがあるわけですね。要するに、いろいろな現象面で喜怒哀楽というのは絶えず同居するわけですよ。ですから、これはマイナス面をもちろん強調しているわけですけれども、もう一方では、先ほどの繰り返しになりますが、プラス面をも含めて十分に総合的に評価できるような、その是非を判断することが大事だと私は思うのです。ですから、最大多数の最大幸福といいますか、どうしてもいろいろな意見があるわけですから、その全体の意見を正しく反映できる、そういうルールづくりといいますか、それが大事なんじゃないかなと思うわけでありますが、その点をぜひお願いを申し上げます。  ですから、この判断は、地域住民が選んだ代表者が、議会において全住民の総意に基づいてメリット、デメリット双方を十分勘案し、冷静かつ科学的な議論が総合的に展開されることを通じて初めて得られるものであり、また、そうでなければ責任ある意見とはとても言いがたい、そういうふうに思うわけです。  この法案は、わが国の政治行政の進め方の根幹にかかわる問題を有しているにもかかわらず、住民の信託を受けた県議会、市議会がなぜ軽視されるのか、あるいはまた、知事の意見と一部住民意見がなぜ同列に扱われるのか、両者の意見が異なった場合にどんなふうにそれじゃ比較考量されていくのか、そこら辺も徹底的に詰めるべきだと私は思いますが、そこら辺もまだちょっとあいまいもこという感じがするわけです。そういうことで、非常に安易な考え方がやや優先しているんじゃないかなという感じがするわけです。  そこで、時間がありませんから、とんとんと飛びまして、上乗せ条例、横出し条例、この説明ですね。中野区の区長選挙の問題もあるわけですが、これを言うと、また文部省の問題まで波及するから避けますが、ここもちょっと簡潔に言ってくれませんか。
  21. 清水汪

    清水政府委員 いわゆる上乗せはできない、それからいわゆる横出しは、それぞれの自治体においてそういう必要を認めて行うことについては、それを妨げるものではないというのがこの法律のとっている態度でございます。
  22. 中西啓介

    中西(啓)委員 そうしますと、この法律の対象事業について上乗せをする条例は違法である以上、条例の当該部分は当然に無効である、したがって、事業者はこれを無視して手続を進めてよいわけですか、どうでしょうか。
  23. 清水汪

    清水政府委員 おっしゃいますように、この法律が制定されまして施行された後におきましては、この法律規定に抵触する条例の規定は、その限りにおいて効力を失うということになるわけでございます。問題は、失っても、それが一度出た状態にあるのは、いまの法律解釈論としてそういうことになるわけでございますが、事実上そこはわかりにくいという問題になろうかと思います。ですから、その点をきちっと整理をしていくことが非常に大事なことになるんじゃなかろうか。それは私ども行政の立場で、当該地方公共団体とよく話し合っていくということがまず必要だろうと思います。そういうようなことでございますが、法律論としてはいまの最初に申し上げたようなことになります。
  24. 中西啓介

    中西(啓)委員 まあ違法であっても、現実に条例が存在する以上、実際にはこれに従わざるを得ない、そういうことですね。
  25. 清水汪

    清水政府委員 実際にといいますか、従う必要はないわけでございますが、そこの実際の問題を円滑に整理をすることはとにかく必要だ。整理をしませんと混乱が起きるという心配はあるんじゃなかろうかという、そういう問題だろうと思います。
  26. 中西啓介

    中西(啓)委員 まあしかし、これを不服とした場合は、事業の主たる許認可権を持っている人は知事なんかを想像できるわけですけれども、知事なんか絶大な権限を持っていますから、それを相手取って提訴するなんということは、現実問題としてこれはやれませんよ。だから、そこら辺にもそういう可能性が大いにあるということを御考慮いただいて、さらに詰めていただきたいというふうに思います。  では次に、違法な条例が制定された場合に、国は法律上どのような措置によってこれを是正していくのか、また、そうした措置を発動したことはあるのか、あるいは聞かなかった場合はどうするのか、この三つ、いずれも関連しますから、これもちょっと簡潔にお願いします。
  27. 清水汪

    清水政府委員 地方公共団体が違法な条例を、違法、無効と知った上でそれを制定するとかいうような前提の御議論でございますので、法治国の問題としてははなはだおかしい前提の問題だと思いますけれども議論として申し上げますと、もし仮に、そのような違法な条例が制定された場合には、地方自治法第二百四十六条の二の規定によりまして、内閣総理大臣は、地方公共団体の事務の処理等が違法な場合について、その是正のため必要な措置を講ずべきことを求めることができることとなっておりますので、このような手段を行使することは考え方としてはあり得る。しかし、先生の御質問は、その先で、さらにそれについて言うことを聞かないときはどうかということでございますが、そうなりますと、それはいわば中央と地方との政治の問題というようなことに考えざるを得ないものというふうに思います。
  28. 中西啓介

    中西(啓)委員 そこもどうも明快にぴちっと決まりませんね。  あと時間が五分ですというメモが回ってきましたので、飛ばしまして、最後に、それではせっかく環境庁長官もお見えでありますので、先般土光臨調から最終答申が出されたわけであります。この中において許認可等の整理を初め、行政改革の推進がうたわれているわけでありますが、環境庁長官、ひとつこの答申についての感想といいますか、評価を御答弁お願いいたします。
  29. 原文兵衛

    原国務大臣 臨時行政調査会の答申は、私も、基本答申につきましても、また第一次、第二次の答申につきましても十分拝見しております。やはり社会情勢、経済情勢の変化に伴いまして必要のなくなった許認可事項とか、あるいはまた、いたずらに煩瑣な許認可事項とかいうようなものを整理するということは、これは国民の立場に立って当然のことでございまして、私どもは臨調のその精神は十分尊重していきたいというふうに考えているところでございます。
  30. 中西啓介

    中西(啓)委員 とすれば、この答申、私もちらっと読んでみたのですけれども、「行政改革を進める観点」として、「画一性を重視する行政から、それぞれの地域や部門の実情に応じた多様性とゆとりを認める行政への移行」がうたわれているわけですね。そこが一つポイントになっているわけだし、また、国と地方の役割り分担の項目では、国の地方公共団体に対する関与を積極的に緩和する、こういうふうに強調されているわけです。ですから、このアセスメントの問題は、一つ一つの条件が全く違う地域の実情に応じて行わなければならないわけでありますが、したがって、きわめて地域性を有するものであるという考え方になると思うのです。  また、同時に、この法律の対象事業は、いずれも地域開発の重要な柱ですね。アセスメントをやってほしいという地方もたくさんふえているという反面、開発をやってほしいという地域がさらにそれを上回る勢いでわれわれのところにも陳情が来るわけです。だから、こうした地方開発とうらはらの関係にあるアセスメントも、地方自治体のそれぞれの工夫あるいは地域特性に応じた対応を信頼して、これにゆだねることが臨調答申の精神に合致するのではないか。いわゆる中央省庁の縦割り機構、これでいつもむだもたくさんあるわけですけれども、弊害を排除して、メリット、デメリットを十分に比較考量した、真の意味での正しい総合的なプロジェクト評価が行われることになるのではないか、私はこんなふうに考えるわけです。  この公害問題の多くがいろいろなお互いの努力で解決し、環境庁の廃止論さえ言われている昨今なんですね。ですから、何とか仕事をふやし、権限を強化していきたいというのは、私は人情論として非常によくわかるのです。わかるのですが、環境庁立場も理解できないわけじゃないのですけれども、私も、冒頭に申し上げましたように、環境保全が重要であるという認識において決して人後に落ちるものではありませんが、社会の厳然たる現実を無視して、このように問題の多い法案を拙速裏におつくりになろうとしている環境庁の姿勢にはどうも納得がいかぬ、そんなふうに強く感じます。  アセスメントに関して申し上げるならば、今日の緊急の課題は、一日も早く、評価に必要な、いわゆる科学的知見の確立や、あるいは調査、予測手法の開発を行うことだと思うのです。それは率直にお認めになると思うのですが、これこそが環境庁の権威と信頼のあるアセスメント制度の確立への道ではないか、そんなふうに思うわけです。科学的に確立されている項目というのは現在ほんのわずかでしょう。幾つくらいあるのですか、二つか三つしかない。それが大事なのじゃないかな。手続だけ優先するよりその中身が大事だ。それができていないわけです。  本日は時間の都合で、とりあえず訴訟の問題、住民意見の問題、条例の問題といったごく一部の問題点に的をしぼって質疑した次第でありますが、この法案についてほかにも、いま申し上げましたような科学的な知見の未確立の問題とか、あるいは行政改革が国家的緊急課題とされている今日、環境法体系との調整をどんなふうに考えていくのか、非常に重大な、かつ、広範囲にわたる問題が内在していることを再度強く指摘をいたしまして、ちょっとたわしでこすり過ぎた嫌いもあるかもしれませんが、しかし、円満に解決するために、けんか過ぎての棒ちぎりじゃ意味がないわけで、あえて尊敬申し上げる環境庁長官原文兵衛先生や石川要三先輩に御質問申し上げたわけでございます。どうぞよろしくひとつ御検討のほどお願い申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  31. 八田貞義

    八田委員長 岡本富夫君。
  32. 岡本富夫

    ○岡本委員 アセス法案について質問いたしますけれども、最初に環境庁長官に、いま政府・自民党の与党の委員の方から、この法案に対しては非常に問題があるというような指摘があったわけです。大体政府・自民党ですから、自民党の方の了解といいますか、そういうものがきちっとあってこそ初めていままで提出してきておるわけなんですが、そっちの了解をきちっと得ておるのかどうか、聞いておると非常に疑問に感じましたので、ひとつもう一遍質問をいたしたいと思います。長官、どうですか。
  33. 原文兵衛

    原国務大臣 岡本委員承知のように、政府から法案を提案するに当たりましては、与党である自民党の政調会あるいは総務会等、全部法案について検討をしてもらうという手続をすべて経てきてこれが提出されておりますし、私が環境庁長官になりましてからも、何度も自民党、政府、与党の執行部の方々にもその点ははっきりと申し上げて、みんながこれは党の意思としてひとつ早く成立をさせてほしいということを再確認をしている次第でございます。
  34. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、先ほど来のああいう疑問といいますか、一つ訴訟の問題、あるいは行革の問題、そういうようなところから追及されましたけれども、その点の統一が非常にできていないのじゃないかということをつくづく感じたわけです。いまの疑問に対して、私、横から聞いておりまして、余り的確に答えてないように思うのですが、その点は大丈夫なのか、もう一遍聞いておきたいと思います。
  35. 原文兵衛

    原国務大臣 政府・与党としての意思は、先ほど申しましたようにはっきりと決定をしております。決定しておりましても、それは個々にいろいろな疑問点があることを御質疑になるのは当然でございまして、私どもといたしましては、私も局長も、その疑問点につきましてわれわれの見解を誠心誠意お答え申し上げたつもりでございます。
  36. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、問題はたくさんあるのですが、先ほど質疑の中で聞いておりますと、関係住民意見、こういうものは事業を行うについて意見を聞くだけであって、それによって左右されるのではないというような局長答弁だった、そういうように聞こえたわけです。それであるならば、説明会だとか、あるいは公聴会、こういうものは必要でないのじゃないか、こういうように感じたわけですが、その点いかがですか。
  37. 清水汪

    清水政府委員 この住民意見を聞くというのは、法文にもございますように、公害防止及び自然環境保全の見地から意見を聞くということでございます。環境影響評価の一連の手続をいたしますのは、事業者が、自分が行う事業影響について事前によく調査をし、そうして必要な公害防止の措置を講じて事業を行うように、その事業内容にそういう公害防止措置というものが反映することが含まれるということはもちろんそうなりますけれども、しかしながら、そこは環境影響についてのその次元の問題だ、こういうことでございまして、そういう意味において住民意見は、そのプロジェクト事業を行うことの、先ほどの質問言葉で申し上げますと、実体的なメリットとか意義とかいうことについて意見を求めているわけではなくて、まさに環境影響調査評価、分析について意見を聞いている、こういう関係にございますので、その住民意見というものは、事業自体を行うという事業者の意思決定には直接には関与してないということは申し上げられるわけですから、そういうことを申し上げたわけでございます。しかしながら、それではそれが全く無価値なことかということにはならないと思っておるわけでございまして、その地域におります住民が、環境影響評価について、事業者が行ったその評価書について、とりあえずは準備書ですけれども、その準備書の内容について気がつくことを申し出るということは大きな意味があるというふうに考えております。
  38. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、そういった、たとえばここに道路をつくる、高速道路をつくる、そうすると、こういう影響があってこうなんだからという環境影響を重視して、そして事業を行う、それはただつけ足しであって、意見を聞くだけである、これでは何にもならないと私は思うのです。したがって、その事業を行うについて、環境問題についてこういうところに影響があるから、これは考慮してもらわなければいかぬとか、あるいはそのときには、じゃ、これはストップしてもらわなければならぬ、あるいはまた、計画を変更してもらわなければならぬというような意見が出てこそ、初めてこの環境影響住民からの意見が取り上げられるわけであって、それはもう全然関係ないのだ、事業事業だ、ただ意見だけ言ってもらうのだ、意見だけ出してもらって、それを参考にするだけだということであれば、これは何にもならないと私は思うのですね。もう一遍ひとつ的確に答えていただきたい。
  39. 清水汪

    清水政府委員 これは、法律の上で申し上げますと、いわば参考という地位であることは参考であるというふうに思います。思いますけれども、いまの、事業者がまず自分の事業についての調査をし、その結果を住民に対し公表し、説明をするわけでございます。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 住民立場から言いまして、いや、その影響の見方についてはこういう点が違うじゃないかとか、こういう点をもっと調べるべきだとかいうような意見がまさに出てくるわけでございます。そういうようなことを言っていただいた上で、事業者としてさらにそれに誠実に対処する。そういうことになっていきますと、なかなかそのことによって、その計画をやめなければ公害防止なり自然環境保全が図れないというような、そういう安易な計画というものはそう出てくるとはまず想像できませんけれども、仮にもそういうような点で非常にむとんちゃくな計画を持ち出した事業者があったとすれば、それは恐らく、その影響議論をめぐる結果として、その批判にたえられなくなるということはあり得る話だと思います。しかし、常識的に考えれば、事業者としてもかなり慎重にその位置の選択なり、その事業影響防止の措置については、すでに計画の中へ織り込んで立案しているのが通常のことだというふうに思いますが、そういう立場からすれば、事業の本体にどうこうという結果が出るとは普通予想されませんけれども、要するに、法律の上で住民が申し上げる意見というのは、事業者にとっては、環境影響調査評価について述べられるわけでございますから、その述べられたことについては誠実に受けとめて、それについての見解というものもまた後で評価書として回答をしなければならない、こういうことになっているわけでございますから、決してただ言わせっ放しというようなことにはならないというふうに私ども思っております。
  40. 岡本富夫

    ○岡本委員 しかし、あなたの常識的という考えから、この環境問題については、そんなに住民から言われて計画変更しなければならぬというような計画は出してこないだろうという答弁でありますけれども、なかなかそうではない。ですから、こうしてアセスメントをして、環境庁あるいはまた住民意見も聞くわけです。その関係住民あるいはまた、それに対する利害といいますか、環境影響の利害のある人たち意見を述べて、そして、それによっていろいろと計画変更、こういうものをやらなければ、これは何にもならないと私は思うのですね。そうでないと、先ほどの答弁のようであれば、ただ意見を述べさした、これでもう終わった、これが要するに開発の免罪符になってしまう。それでは何にもならないと私は思うのですよ。その点について関係住民からそういった意見が出て、開発の変更あるいはまた訂正、そういうものが行われなければならぬという担保がなければならないと思うのですが、その点についてもう一遍お聞きしておきたい。
  41. 清水汪

    清水政府委員 その点は変更なり改定ということはあり得るだろうと思いますですね。  そうして、ただいまその担保ということでございますが、一つは、その結果、その住民意見に対して事業者としての見解を、つまり、こう思うというだけの見解もあれば、その意見はもっともだから、ここをこういうふうに直したというような見解もあり得ると思いますけれども、そういうものを評価書として書いて示すということが一つあるわけでございます。これは公示するわけでございますから、そういいかげんなことができるはずはないと思いますし、もう一つは、最終的に主務大臣立場でそのような評価書内容について審査をして処分をする、こういうことになっておりますから、その段階でも十分チェックされる、こういうことになろうかと思いますので、住民意見というものは、公害防止自然環境保全への影響の回避という面においては十分尊重されるようになっているということは申し上げられると思います。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  42. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は少し不満ですが、これは時間がありませんから。  そこで、「関係住民」とはその地域に居住する者、これは法人も含むと私は解釈しているわけですけれども、その点をひとつ聞きたい。  それから、公害の補償法の中に、その地域に三年以上ですか、勤務している人たちの健康の補償もしているわけです。ですから、通勤しておる人たち関係住民になるわけですよ。住居は別でありましても、そこへ通勤している、こういうものも含まれるわけか、また含まれないのか、この点ひとつはっきりしていただきたい。
  43. 清水汪

    清水政府委員 法案で言います「関係住民」というのは「関係地域内に住所を有する者」というふうに書いてございますので、自然人だけでなく法人も含まれることは申すまでもございません。  しかし、いまおっしゃいましたもう一つの、通勤者は含まれないか、こういうことでございますが、その点の公害健康被害補償法の扱いとの比較においての御質問でございますけれども、これは公害健康被害補償法はある一定の基準を決めた上で、大気汚染による呼吸器系の疾患、その被害者を救済するというところにそのポイントがございますので、その地域なら地域の汚染によって健康を害されるという場合には、それはそこに住所を持って住んでいる人にせよ、あるいは通勤だけれども、長時間その中にいて、その空気を吸っているという人も、その原因によってその疾患がもたらされた者という認定を受ければ、同じく被害者であるわけですから、それを救う、こういうことで、そこにその両方ということになってくると思います。  ところが、こちらの評価法の方では、環境に関する情報を教えてください、こういう性質の問題でございます。そうなりますと、そこに住所を持っている人がむしろ一番よくそれを知っているというふうに普通推定してよろしかろうと思います。つまり、その情報というものは、通勤者もその情報に気づくことはあり得るかと思いますけれども、その情報については、まずそこにいる人ということで一応いいのではなかろうか、あるいはそれが自然の考え方というふうにも言えるかと思いますし、いずれにいたしましても、被害者を救うということと、その一定地域環境というものの知識、情報を求めるということとでは、やはり事柄がそこは違っている、そのことから扱い方に違いがあるというのもある意味で自然だということは申し上げられるかと思います。
  44. 岡本富夫

    ○岡本委員 その地域へ通勤して、そして公害になったという人は、公害になってから救われるんじゃなくして、もしもこういうものができて、それで公害患者になるというのであれば、当然その開発についての関心あるいはまた意見あるいはまたいろいろな情報を知って、自分に一番健康に関係あることですから、やはり私はそういった、そこに三年とか五年とか通勤している人、こういうものも含めなければならぬと思いますよ。そうでなかったら、そこにおる人だけということになりますと、たとえば公害環境問題についてはなかなか素人さんではむずかしいのです。だから、若干専門的な知識、そういうものもなければなかなか、まして、ここにどういうものができて、どうなるという評価というものはそう簡単にできない。簡単にできるのであればあれですけれども、どういうのがどうなっていくかということの評価ということはなかなか素人ではむずかしいわけです。ましてや、そこに勤務している人ということになりますと、絶えずそれを自分が受けるわけですから、この点はいまここで修正せいと言いましてもなかなかむずかしかろうと思いますけれども、この辺はひとつ一遍篤と検討してもらわなければならぬ、こう私は思うのです。  それから、ちょっと先ほど聞いておりまして、条例との関係、この法律が通りますと、現在ある東京都あるいはまた神奈川あるいは川崎、福岡、こういう条例との関係ですね。先ほど聞いていると、その条例を知事と話をして、それで検討し直すんだというように聞こえたわけですが、既設の条例との関係はどうなるのか、もう一遍お聞きしたい。
  45. 清水汪

    清水政府委員 この既存の条例との関係では、一般的に申し上げますと、たとえば対象事業範囲がかなり違いがあるということが一つあると思います。政府法律案では数が十幾つという程度に少ないということでございますが、たとえば東京都の条例の場合にははるかに数が多いわけでございます。その中には同一の事業が入っているわけでございます。そこで、先ほど来申し上げておりますことは、同じ対象事業については法律によることになりますということでございますから、したがって、条例の方は言うなれば削っていただく、その対象事業のリストから削っていただけばそれで済むわけでございます。  それから、そのほかの事業について条例はずっと残るわけでございますけれども、問題は、その段階の方がちょっとややこしいかと思います。というのは、その条例の方に残っております幾つかの事業について、条例で決めております一連の手続のその内容が、法律の方で決めております一連の手続と比較してどの程度整合性があるかということが問題のポイントになります。  この点については、具体的なことになりますので、今後われわれとしては関係の地方公共団体ともよく話し合っていきたいと思いますが、問題は、どの程度のずれなら許容できるか、あるいはどの程度以上のずれならば許容できないかということの、個別具体的な判断になってくると思います。つまり、もう一寸一分たとえば手続が違っておるからそれはいかぬ、直してもらわなければいかぬのだということになるわけのものでもないと思います。しかし、実質的に法律の整合性の要請の趣旨との兼ね合いでそこは決めていく、そういう相談をしていく、こういうことになろうかというふうに思っております。
  46. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、たとえばこの法律に入っていない対象事業、東京都では石油パイプラインとか、あるいはまた福岡ではゴルフ場だとか、あるいは鉱物の採取の露天掘り、こういう五つの事業、こう書いてありますけれども、こういった対象事業で、この法律以外のものは条例そのままやる、こういうことですか。
  47. 清水汪

    清水政府委員 二つございまして、一つは、条例で引き続き対象にしていくことは何ら差し支えがないでしょうということがまず第一点として申し上げられますが、第二点目は、条例自体で決めております、その手続の問題でございます。つまり、たとえば準備書をつくるとか、あるいは公告、縦覧するとか、説明会をするとか、あるいは公聴会をやるとかいうような関係の一連の手続規定してあるわけでございますけれども、その手続、つまりアセスメントをやる事業者に負担になるような意味手続、そのことにつきましては、法律は第三十八条で整合性の要請をしているわけでございますから、その法律の第三十八条の趣旨に立脚いたしまして、その点を地方公共団体と話し合いをしていくことが必要になる、こういうことでございます。対象事業としてとにかく何らか条例の対象として残り続けること自体は、これは向こうがそういう判断であれば、そのことについて私どもとして何も申し上げることはございません。
  48. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうしますと、対象事業については条例で、この法律以外に、発電所だとか、あるいはまた石油コンビナート、こういうものが抜けているわけですけれども、抜けているんじゃなしに、抜いてしまった、それは条例でそのことをやってもいい、こういうことが一つですね。  それから、いま、たとえば東京都の条例、これは東京都はわれわれ公明党も与党なんですが、住民参加の範囲、これは都民ですね。東京都では都民になっておるのです。それから公示、縦覧、これは三回、説明会は二回、公聴会が一回、これは義務づけておるわけです。それから意見書の提出が二回、こういうところが、結局この法律が通ると、説明会一回で、あと公聴会はそれに応じて、こういうことになって、うんと後退するわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  49. 清水汪

    清水政府委員 いまの手続で、やや具体的に列挙されましたけれども、そのすべてが国の制度と違っているというわけではもちろんございませんが、国の制度よりもちょっと出ているところもあるように思います。その出ているところもいろいろの出方があるわけでございますので、その辺のどれは調整をしていただいた方がいいか、それともいただかなくてもよいかということは、東京都の方もたまたますでに実例を重ねつつございます。その辺の運用の実態ということもこれから拝見できるわけですけれども、そういう諸要素を前提にいたしまして、法律三十八条の整合性、私どもとしては、なるべく同じようにやっていただきたいということが、この整合性の条文の持つ期待でございますけれども、そういう立場からよく話し合っていきたい、こういうことでございまして、その結果によりまして、多少違っていてもそのままで結構という話に落ちつくものもありましょうし、まあここは合わせましょうというふうにして、歩み寄っていただけるものも出てくるのではなかろうか、こういうふうに思います。
  50. 岡本富夫

    ○岡本委員 そうすると、これは運用によっては非常にあいまいな法律ということですね。  たとえば公示、縦覧が東京都では三遍です。説明会が二回になっておる。こういうものを、この法律ができるとこの法律に合わせるために、いろいろと知事と相談するといいますけれども、東京都ではこういった審議機関というものは知事ではないのですよ。学識経験者二十名によるところの審議会というのをつくってあるのです。これは全部知事の意向でいくのであれば審議会は要らぬわけです。ちょうどいまの法律みたいに主務大臣だけでいってしまう。そこに大きなギャップがあるわけです。  したがって、もう一度聞きたいのですけれども、この法律が通った場合に、ただ話し合う、話し合って聞かなかったら補助金を打ち切るぞ、こういうことでは困る。だから、既存の条例については、これはもう仕方がない、あるいはこれからつくる条例についてはこうだというような、はっきりした線をひとつ打ち出しておいてもらわないと、ただ話し合いでいくというわけにはいかないと私は思うのです。どうしても日本は中央集権がきついですから、条例が全部後退してしまって、結局この法律が通ったために環境の問題が後退する、こういうふうに言わざるを得ないわけですが、その点をもう一度お聞きしたい。
  51. 清水汪

    清水政府委員 繰り返すようで恐縮でございますけれども、既存の条例との関係については、整合性の要請という、この条文の趣旨に立脚して、話し合いをしていくということがどうしても必要になるだろう。ただ、その話し合いの内容ということが問題でございますが、ある意味では、先行しているその実情ということももちろん念頭に置いて話し合いをするということになるわけでございますけれども、余りかけ離れたような手続の部分というものは、その場合に話し合いの対象にどうしてもならざるを得ないわけでございまして、私どもとしては、こちらの方に合わせてくださいという要請をする立場にあるわけでございます。  先方さんの方が審議会というものを一つ抱えているという御指摘もございますけれども、その点につきましては、私どもとしては、執行機関である知事というものに対して物を言う以外にはないわけでございますので、知事さんを相手に話をしていく、こういうことでございまして、あと審議会の問題は、東京都のいわば内部関係ということであろうか、こういうふうに思います。
  52. 岡本富夫

    ○岡本委員 要するに知事と話をしていく、話をしていくと、話だけしておるのではなくして、結局ここにまとめてしまう。この法律が通ると、条例は骨抜き――骨抜きと言ったらおかしいけれども、後退していく、こういうことになるのじゃないですか。要するに説明会も一遍でしまい、公聴会も、東京都では義務づけられておる、ところが、こっちは開くこともできる、こういうように住民の声を入れるところが後退するように感ずるわけです。その点、ただ話し合いをするだけでは、そんなことではどうも納得できないですね。お答えください。
  53. 清水汪

    清水政府委員 やはり地方自治という立場がございますので、それで、この法律でも第三十八条というような書き方になっているということでございます。つまり、仮に言えば、たとえば三十八条のような中途半端な書き方でなくて、合わせさせる、あるいは指示するというような立法も検討の余地はあり得るかと思いますけれども、現実問題としてはそういう書き方をとらなかったわけでございます。とらない理由は、やはり地方自治体が環境行政に対して貢献していただいているという実績等を踏まえて私どもも考えているわけでございます。  ところで、仮に、一部の手続について国の法律に合わせていただく、たとえば評価書ですね。国の法律は二回でございますが、三回を二回にしていただくということが仮にあったという仮定の議論で申し上げますが、その場合でも、そう後退と言うほどおしかりを受けることではないのじゃなかろうか。私どもとしては、もちろんこの法律を提案申し上げているわけでございますから、この法律のやり方が妥当であるという立場から言うから当然そうなるわけでございますけれども、そういうことを申し上げて、相手方の方にもその辺の理解を得ていただいて、調整の目的を果たしたい。しかしながら、何が何でも隅々まできっちり合わせなければ気が済まないなどというふうには私ども考えておりませんで、やはり事の種類とか、その度合いによりましては、多少程度が違っていてもそれは容認していっていいのじゃないかというような、幅のある考え方をどうしても持つわけでございますので、そういう意味で申し上げておりますことをぜひ御理解賜りたいと思います。
  54. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体環境行政というのは、いろいろ権限を全部地方自治体へおろしたのですよ。特に四十五年のあの公害国会のときはやかましく出てきましたから、いろいろな権限をほとんど地方自治体の方におろしているわけです。したがって、今度はこの法案をつくって上から締めつけるということでは、これは大きな後退といいますか、環境保全するという立場から見るとギャップがあると私は思うのです。  いま、何もかもそれで押しつけるのじゃないという答弁をいただきましたから、もう一遍、一つ一つ現実問題について、また次の機会に質問してみたいと思います。  そこで、この調査評価項目について、この法律は典型七公害自然環境だけに限定しておるわけですね。これから漏れる公害については条例、要綱を尊重するのか。たとえば電波障害、日照障害あるいは廃棄物、こういうのは条例に任せるのかどうか、この点もひとつお聞きしたい。
  55. 清水汪

    清水政府委員 おっしゃいますように、われわれの法律の方は公害対策基本法で言います典型七公害、それから自然環境保全法で言います自然環境保全、こういうことでございます。御指摘の、たとえばよく言われますのは、文化財とか日照権とか、そういうような問題はこの法律評価項目の対象には含んでおりません。しかしながら、地方の条例において、そういうことについても必要があれば取り込むということは、私どもは別に妨げようというような考えは持っておりません。それはそれで結構でございます。  もう一つ、たとえば低周波という問題あるいは廃棄物ということをちょっとおっしゃいましたが、それらは恐らく政府法案の、典型七公害の中のいろいろの技術指針の中でカバーされてくる、こういうことだろうと思います。つまり、典型七公害公害対策基本法の範囲内に法律的には入っているということでございます。
  56. 岡本富夫

    ○岡本委員 まだ僕は低周波のことは聞いていないんだ。これから聞こうと思ったんですが、先に答弁したんじゃ困る。  そこで、この典型七公害、いま一つは電波障害とか産業廃棄物とか日照障害、これは条例でよろしいというわけですね。そういうことだったのですね。それからもう一つは地盤沈下、これは典型七公害に入っている。ところが基準ができていない。それから低周波公害、これもまだ基準ができてない。基準ができてないのにどういうふうに評価するのか。あるいはまた、地盤沈下と低周波の基準をいつ決めるのか、その二点をちょっとお聞きしたい。
  57. 清水汪

    清水政府委員 この電波障害のようなものは私ども法案の対象に入っておりません。ただ、廃棄物の関係は、ちょっとさっきも申しましたが、こちらの法案の対象の中で多分カバーできるだろうと思っております。  それから、基準がはっきりしていないもの、たとえば地盤沈下とか幾つかのものが、いわゆる環境基準を設けていないというようなこともございますが、そのようなものにつきましては、いままでその種の環境影響の現象についていろいろ調査研究もし、そして、その防止対策も講じてきたという事実上の実績があるわけでございます。したがいまして、そうした実績というものをいわばよりどころと申しますか、参考にいたしまして、この事象についてはこの程度には少なくとも対策を講ずることが必要であろうというような判断は持てるわけでございますから、そういうようなやり方で、いわば評価の基準といいますか、判断のよりどころというようなものを示していきたい。主務大臣定める指針の中でそれをやる、こういうことになろうかと考えております。
  58. 岡本富夫

    ○岡本委員 低周波の方は基準はどうですか。
  59. 清水汪

    清水政府委員 この低周波の問題も、これは空気の振動ということであるようでございますが、その環境基準はないわけでございますけれども、これについても当然何らかその影響について検討をし、その対策について考えるということにはなるわけでございます。これについては現在のところが、やや問題が技術的に未解明という状態にありますから、そういうところを鋭意推進をしていくということがまず大事だろう。そういう研究を重ねた上で、考え方としては先ほど申しましたような考え方でやっていくということになろうかと思います。
  60. 岡本富夫

    ○岡本委員 どうもこれでは、住民の方でどういうように評価してどうなるんだということが全然つかめないわけですよ。たとえばこういう影響があるだろう、低周波公害はこれだけが基準だ、これ以下じゃないとだめだということになれば、ああ、こういうところの評価はどうなっているんだ、あるいは地盤沈下は、どれだけの地下水の採取がどうなっているとどうなるんだということがわかる。やはり地盤沈下もずいぶん長い間、四十二年に公害基本法ができてからずっとこの典型公害で残っておるんだ。これはどこが反対するのか、恐らく工業用水の問題で通産省だと思うのですが、こういうものもやはりきちっとした基準を決めてこそ、それならばこういう影響があってこうだという、住民の方からいろいろと意見が出せる。これは主務大臣の方で大体決めておるだろうから、それを横から見て、環境庁がちょっと検討するんだということでは、私は、はっきりした環境影響評価ができないと思うのです。  大臣、この間四十三号線へ行きましたね。そのときにあなたに直接住民の方から、低周波公害について早く基準を設けてもらいたい、頭が痛くて困るんだというような意見があったわけです。そのときに長官は、わかりましたと言ったのですが、その後どうなっていますか。
  61. 原文兵衛

    原国務大臣 四十三号線は七月二十一日と二十二日、夜と昼と私も体験をさせていただきました。今後いろいろと検討していかなければならない点がたくさんあると思います。  低周波の問題につきましても、率直に申しまして、私は実はそういう科学的な知識も不十分でございますので、大気保全局長の方にこの低周波問題についてひとつ十分検討するようにと言っておりますから、大気保全局長から一言答弁させてもらいます。
  62. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 この低周波の問題でございますけれども、私どもの方では、昭和五十一年度から鋭意研究を行っておるところでございますが、御理解を賜りたいと思いますのは、学問の新しい分野でございますので、残念ながらいまだ結論を得るに至っておらないところでございます。  大きく分けますと、三つの分野があろうと存じます。最も大事なのは、生理的に人の健康にどういう影響を及ぼすか、こういうことでございますが、もう一つは、物の影響があります。がたがた音がする、こういうことがございます。それから三番目には、低周波のそういう各般の影響を加味してどういう測定をやるか、こういうことであろうかと思うのであります。  最初に申し上げましたものにつきましては、高いところは百十デシベルという高エネルギーのものを当てまして、血圧、心電図、脳波とか、そういう基本的な生理的な事項につきまして影響調査しておるのでございますけれども、残念ながらまだ明確なる答えが出ておらないところでございます。そこで、本年度はちょっと視点を変えまして、ストレス反応についての影響調査をしたいと考えておるところでございます。  それから物の影響につきましては、これはかなりわかってきております。  それから最後の測定方法でございますが、物理的な空気の振動の周波数、それから強さがどれくらいあるか、こういうことはもちろんのこと、はかることができるわけでございますけれども、それが直接この影響とはつながらないわけでございます。いろんな周波数、いろんな強さの空気の振動があるわけでございます。  一つ例を申し上げますと、音でホンということで騒音をはかっておりますが、これは物理的な空気の振動そのものをはかっておるのではございませんで、いろいろまざり合った状況で大方の人が騒音として聞くという……(岡本委員「言いわけはいい、早くやってくれ」と呼ぶ)それで、音の方につきましては、物の被害につきましてはかなりわかっておりまして、間もなく測定方法を確定したいと思っておるところでございます。
  63. 岡本富夫

    ○岡本委員 とにかく言いわけばかり聞いてもしようがないわけですよね。だから、早くひとつこれはやってもらいたい。特に、長官もこの間、直訴されたわけですから。  そこで、対象事業の中で一般国道、ここで自動車の騒音の評価を行う場合、この評価の基準は、よく言われる要請基準になるのですか、それとも普通の騒音の環境基準で評価するのか、これをお聞きしておきたいのです。
  64. 清水汪

    清水政府委員 その点は、環境基準の方を基本といたしまして判断をしていく、こういうことになるだろうと思います。これは指針でそういうものを定めていくわけでございますけれども、そういうことになるだろうというふうに考えております。
  65. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは明確になりましたね。要するに、要請基準では非常にホンが高いわけですね。  そこで、もっと細かいことをやらなければいかぬのですが、時間がありませんから。  この間、長官が四十三号線にお見えになったときに、現存するあれですけれども、夜間の大型車だけを高速に乗せてもらいたい、そういう誘導対策をやってもらいたいという要請があったわけですが、その後お帰りになりまして検討されてどうなったか、これをお聞きしておきたいのです。
  66. 原文兵衛

    原国務大臣 夜間、大型車を高速に乗せることについては、いろいろといままでもなるべく乗せるように広報、宣伝等もやってきているわけですが、問題は、料金を割り引くとかなんとかしなければ、そうは言ってもなかなか実効が上がらないじゃないかというようなこともあるわけでございます。ただ、料金を安くするとかえってそこに大型車が集中してしまうのではないかというような議論もございます。そういうような点と、もう一つは、料金体系の問題がありまして、いまこの点につきましては、私も帰りましてからも事務当局に督励いたしまして、建設省の方といろいろ協議をしているところでございます。
  67. 岡本富夫

    ○岡本委員 協議している……。これはもう長官、先国会あるいは先々国会と、僕は当委員会で何遍もこの問題は要求したことなんですよ。兵庫県知事からも言われましてね。いつも協議だけしてもらっておるんじゃ――あのときにあなたもお見えになって、橋の上で自動車の騒音を実際にごらんになったですね。それが八十ホンを皆オーバーしておりましたでしょう。それで、あなたもあのとき資料をもらったと思いますが、大型車の混入は夜間の方が多いわけですね。ですから、何としても夜間少しでも安眠できるようにしてもらいたいという切なる願いだったと思うのです。あなたが長官の間に協議だけして、また次に、これは鯨岡さんも協議しておったが、これは協議ばかりじゃ話にならないですよ。たとえば今度湾岸道路をつくる、このアセスのときに、要するに一時間に何台通過するとかいう、そういう評価ができていないのですね。恐らく四十三号線も、最初できたときには非常に静かだった。どんどんふえてきた、台数はどうなるんだという面から評価しなければならないわけです。  いずれにしましても、いつごろ協議がまとまりすか。それでいつごろ答えが出ますか。めどをつけてもらわぬと……。
  68. 原文兵衛

    原国務大臣 私、夜間も見ましたが、確かに夜間は全体の交通量としては減っております。しかし、その中における大型車の混入率がふえておること、これはおっしゃるとおりでございます。そういうようなことで、大型車を高速に乗せるためには、やはり料金問題を言わないで、ただ口でなるべく上に乗れ、乗れと言ってもなかなか解決しないと思うのです。その料金問題がなかなか複雑でございまして、いまわれわれも本当に誠意をもって折衝しているところでございますけれども、いつまでというめどと言われても、これは率直に申し上げまして、いつまでというふうにお答えできないのでございますが、今後も誠心誠意、一生懸命やっていきたい、こういうふうに思っております。
  69. 岡本富夫

    ○岡本委員 はっきりせぬな。建設省、来ていますね、ひとつお答え願いたい。
  70. 青木正次

    ○青木説明員 ただいま先生の御質問、また、長官答弁がございましたけれども、私どもといたしましても、この点についてはなかなか問題は重要であるということは十分認識いたしてございます。  ただいま、料金関係についてどういう問題があるかというようなことでございますけれども、冒頭に申し上げましたように、一つは体系問題というのがございます。また、そのほかに、先ほど長官の方からも御答弁がございましたけれども、時間帯別あるいは地区別といいますか、そういうことで何らかの割引制度等をとった場合に、その時間帯、また地区に相当な混雑が予想されるという懸念がある。また、これは料金徴収上の技術的な問題でございますけれども、特定の区間、いわゆる料金区界から申しますと、武庫川を向きまして大阪圏あるいはまた、それから西の方が兵庫圏となってございますけれども、四十三号の区間と必ずしも重複していないという点がございまして、そこで料金徴収上、相当の困難性があるということ、それからまた、大型車が仮に当阪神の高速道路に乗りました場合におきましては、これまでの一つ影響範囲というものが相違してくるというような、いろいろな問題が非常に多くございまして、これにつきまして何らかの対応策がないものかと苦慮しておるところが現況でございます。
  71. 岡本富夫

    ○岡本委員 住民の健康や、あるいはまた環境問題は、金で解決するものはした方がいいですよ。いつまでも料金体系ばかり言って、いまから四、五年前もそういう話だった。だから、いまここで言ってもしようがないだろうから、長官、これは責任を持って何とかあなたが環境庁長官の間に解決してもらいたいと思うのです。なぜかといいますと、こういったものを解決しないと、結局アセスをやりましてもだめだ。東北新幹線もそうでしょう。アセスをやかましく言ってやったけれども、結局あちこちでまた環境をオーバーしておるわけでしょう。だから金で解決するものは、やはり私はした方がいいと思うのですよ。もう一遍ひとつ決意を伺いたいと思います。
  72. 原文兵衛

    原国務大臣 誠心誠意努力をいたしたいと思います。
  73. 岡本富夫

    ○岡本委員 そんなことでは法案は通りませんよ。  そこで、大分あるのですけれども、きょうの最後としては、典型七公害自然環境だけに限定しておりますけれども、景観はこのアセスメントの中には入らないのですか、いかがですか。
  74. 清水汪

    清水政府委員 自然景観というものは、もちろん調査評価の対象項目に入ることになります。
  75. 岡本富夫

    ○岡本委員 環境評価をする場合に、ただPPm行政だけではこれはうまくいかないと思うのです。国土庁や建設省あるいはまた各省庁ともいろいろと関係があろうと思います。だから、その地域開発行為については、地下水の分岐の問題とか、あるいはまた土地利用の傾向、地すべり、地震、こういう自然災害の度合い、あるいは景観への侵害度、ただPPm行政だけではなしに、いろいろなデータを集めて環境影響評価をしなければならぬと私は思うのですが、この点について環境庁の対応はどうなのか、ひとつお聞きしておきたい。
  76. 清水汪

    清水政府委員 ただいま御質問の中で挙げられました、たとえば景観は、先ほども答弁申し上げましたが、当然アセスの対象に入るわけでございます。あるいは地盤沈下、これも典型七公害一つでございますから入ります。これらについては、先ほどの御質問にもございましたように、客観的な、いわば数値的な基準がないのにどうするかということがございましたけれども、それはその時点において一番よく得られている科学的知見なり、あるいはそれまでの実際の防止措置の経験というようなものをよりどころにして判断をしていくことはできるであろうというふうに考えているわけでございます。  ただ、先生がお挙げになりました項目の中で、たとえば地震とかいうものは、ちょっと直接はアセスメントの項目の中に入らないわけでございますけれども、その辺の地盤自体の安全性のような問題については、それとは別の意味で、事業者自身が計画地の選定という立場で、十分に調査の上で位置決定がされることは当然のことではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  77. 岡本富夫

    ○岡本委員 私は、そういった総合的な環境影響評価をする必要があると思うのです。なぜかならば、今度の十号台風で奈良県の西吉野村、ここで鉄砲水で山崩れがありました。これは今度の評価対象になっている国鉄線が入るということで、線は入らなかったけれども、いまバス路線になっておる。そこが崩れまして、あんな大きな災害が起きたわけです。したがって、私は、今後環境影響評価とともに、そういったいろいろな影響調査して、そして開発をしなければならぬ、こう思うのです。  そこで、ついでですから、時間がなくなりましたけれども、最後にちょっと、厚生省に来てもらっておるから聞きますが、今度家屋の全壊とか、あるいは半壊とか、こういう災害を受けた人に対して、政府から融資制度があるはずなんですが、これは去年でしたか、百三十万のものが百八十万になっておるのですね。これは所得制限がついているのですか、ついていないのですか、これをひとつお聞きしたい。
  78. 田中健次

    ○田中説明員 いまお尋ねの、災害弔慰金法に基づきます災害援護貸付金でございますけれども、この資金は、被災者の生活の立て直しを図る、こういう性格でございまして、福祉的な性格を持っております。したがいまして、一定の所得制限を設けております。  その所得制限は、全世帯で低所得者の下から三分の二の方々が貸し付けを受けられるようにということで設定をしておりまして、これまで所得の動向等によりまして逐次改正を図ってきておりまして、ことしもすでに所要の改正を図っております。標準四人世帯で、収入から所得控除をいたしまして、その残りの課税標準額で三百三十万円がその限度額ということになっております。
  79. 岡本富夫

    ○岡本委員 もう時間が参りましたが、前は二百十万だったのです。ほとんどこれは借りられない。なぜかというと、二百十万を三百三十万にしましても、所得制限が非常に低いと借りられないのですよ。ほとんど皆これは使っていないのですよ。ということは、一家族全部でしょう。そして三百三十万と計算しまして、そうすると一カ月二十万として二百四十万、それにボーナスが入りますからね。この所得制限が低いとほとんど借りられない。これをひとつ検討していただくことを申し上げて、きょうはこれで終わります。  あとアセスが相当残っておるのです。説明書の問題とか、これは余りむずかしいものは困る。それから科学的要件がまだできていないわけですからね。アセスをやって、そしてできたものに対してのもう一度事後評価、これも東京都ではやるわけですね。東京都のこの条例ではできているわけですよ。そういった事後評価によって、次にはどうするかということをやっていかなければならぬ。こういうことも次の機会にまた質問いたすことにいたしまして、きょうはこれで終わります。
  80. 八田貞義

    八田委員長 午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時四分開議
  81. 八田貞義

    八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木下敬之助君。
  82. 木下敬之助

    ○木下委員 環境行政の重要性は今日ますます増大していると思いますが、一方で後退しているんではないかという声も聞こえます。こういった声は、むしろ環境行政に対する激励であろうと私は思っておりますが、湖沼法案の問題にしても、なかなか国会提出できないし、地盤沈下の防止法案の問題にしても、関係省庁間で調整がつかず、当面行政運用で対策を構ずる状況にあるなど、骨抜きとなったり、日の目を見なかったりということがあると思います。  さらに、特に本日の議題であります環境影響評価法案は、国会提出されたものの、骨抜きとの批判があるわけですが、どの点をとらえて骨抜きと言われていると思われるのか、また、こういった指摘について環境庁はどういうふうにお考えになっているか、長官からお答えいただきたいと思います。
  83. 原文兵衛

    原国務大臣 木下委員の御指摘のような、いろいろな批判があること、私も十分存じております。また、環境行政は後退ではないかというような御批判もあるようでございますが、私どもといたしましては、いささかも後退というような気持ちはありませんで、とにかくできるだけの努力をしているつもりでございます。  提案している法案につきまして、骨抜きとの批判があるが、どの点を言うのだと考えるかということでございますが、これは率直にずばり言いまして、中央公害対策審議会の答申には、その対象事業発電所があったわけでございますが、これが除外された点がやはり一番の骨抜きというふうに批判されているのではないかと思います。  この発電所の問題は、政府部内、各省庁間においてもいろいろと議論が闘わされたことは御承知のとおりだと思います。その結果、いまの時点でこの発電所を入れて法制化しても、なかなか円滑な実施が図られるとの見きわめが持てないものでございますので、なお慎重を期する必要があるという判断から対象事業としなかったというわけでございます。  このような点はございますけれども、私どもは、この法案によりまして環境影響評価の法制度化を図って、権威と信頼のある環境影響評価手続等の確立ということはやはり相当な前進であるわけでございまして、非常に重要なことだと思っているわけでございます。そういう観点から、本法案についても御審議をいただいて、一刻も早い成立を切にお願い申し上げたいと思っているところでございます。
  84. 木下敬之助

    ○木下委員 その後退か前進かということですが、大臣、何もなかったところに少しでもできていけば、それは前進だ、いささかも後退ではないと言われますけれども、やはりそういった後退じゃないかという声は、期待ですね、その期待の大きさに対して後退している、もっとこんなふうに進んでいいんじゃないかという期待に対して後退、やはり後退であると思います。そういった意味で今後、いまのところということですから、これから先にできるだけ国民の期待するところに追いつくようにやっていただきたいと思います。  先ほどちょっと話に触れました湖沼法案の問題、それから地盤沈下の防止法案の問題についても、経過と現状及び今後の見通しについて御説明をいただきたいと思います。
  85. 原文兵衛

    原国務大臣 湖沼法案につきましては、本国会に提案すべく最大限の努力をしたつもりでございますけれども、どうしても政府部内でまとまらないということで見合わせざるを得なくなったわけで、私ども大変残念に思っておるところでございます。  ただ、しかし、湖沼の汚濁の振興を挟手傍観するわけにいきませんので、まず実質的にこれを食いとめるために燐、窒素の環境基準はすでに中央公害対策審議会に諮問しているところでございまして、秋口には答申が出ると思います。その答申を踏まえて、さらに排出規制というようなことも考えていきたいと思っているわけでございます。しかし同時に、湖沼法案そのものをあきらめたわけではございませんで、何とかやはりこれを法制化したいと思って、今後もいろいろな手だてを考えながら、最大限努力をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。  地盤沈下の問題につきましては、これもまたいろいろな問題がございまして、とりあえず閣議の関係閣僚によるところの地盤沈下対策というものをいま進めているわけでございますが、これにつきましても、さらに関係省庁と話し合いを進めていきたいというふうに思っているところでございます。
  86. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうふうに政府部内でまとまらない、なかなか先へ進まない状態を後退しているんじゃないかととらえておるわけですから、、骨抜きになったり、日の目を見なかったりということに国民が非常な疑問を持っておりますから、疑問にこたえるようにどうかやっていただきたいと思います。  そういった、どうしてこうなるんだろうという国民の率直な疑問を申し上げたいと思うのですが、通産省は事あるごとに環境庁のとる施策に反対しているのじゃないか、こう言われていると思います。どうしてそんなふうに通産省と環境庁とが対立しなければならぬのか、ちょっと疑問に思うのです。わが国は過去において深刻な公害を経験しており、その経験の上に立って、新しい社会を築いていく努力をしなければならないと思います。開発も必要ですが、開発に不可避的に伴ってくる環境問題を解決しないことには、開発を進めることすら不可能になるのではないか、こう考えます。  こういった意味からも、開発を行おうとすればするほど、環境問題に対する深い理解がなければならないと思うのですが、通産省のこういった環境問題に対する基本姿勢というか、根本理念をお聞かせ願いたい。
  87. 村田文男

    ○村田(文)政府委員 お答え申し上げます。  狭い国土人口が集中しておりますわが国におきましては、経済活動と環境保全を両立させることが何よりも重要でございます。通商産業省といたしましても、産業政策あるいはエネルギー政策を推進するに当たりまして、環境庁とも十分相談しつつ、今後とも科学的、合理的な環境保全対策公害防止対策に万全を期してまいる所存でございます。
  88. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう基本理念であると、いま通産の考えをお聞きしたわけですが、環境庁はどうですか。こういった環境問題に対する基本理念に食い違いがあるのですか、基本的には同じですか。
  89. 原文兵衛

    原国務大臣 いま通産の方からお答えがございましたが、基本理念で食い違いがあるというふうにも私ども考えておりませんけれども、ただ、湖沼法の例をとりますと、私は、事務当局からいろいろ折衝している諸君からも聞きますと、通産省としては、最近の湖沼の汚濁の原因は、いわゆる工場、事業場からの排水よりも、家庭雑排水の方が汚濁原因の負荷量が多いということで、それに対する対策をもっとどんどん厳しくやらないで、工場、事業場、特に中小企業の場合にはそれが大変な影響になるので、その点を考えてほしいというような、そういうことがやはり頭にあるのじゃないかなというふうに私は思うわけです。  われわれの方としましても、決して工場、事業場の排水対策だけでこれはできるわけじゃないので、それよりももっと大きな汚濁負荷の原因になっている家庭雑排水対策あるいは畜産とか、あるいは窯業とかいうような対策、もちろん公共下水道の普及、これの推進というようなことについて十分努力をしているわけでございますが、いろいろと省庁間の基本理念は変わらなくても、対応するやり方についてなかなかさっとまとまらない点があるのじゃないかなと、率直な話をいま申し上げたわけでございます。
  90. 木下敬之助

    ○木下委員 基本理念は変わらなくて、対応で差が出るという感じでとらえておられますけれども、私は、基本的な考え方が統一してくれば、いずれ先でどんな手法の違う問題が起こっても、解決の道があると思います。ですから、このアセスメント法案の本当の目的というのは、そういった何か食い違いが起こったときに、共通の土俵で同じ考え方のもとに道を選択できるような、そういうルールづくりというのがこの法案目的であったのじゃないか、私はそういうように思います。次元の高い、この規範に照らしてやろうというようなものを、どうか共通のものをつくっていっていただいて、国民にわかりやすい答えの出るような形にしていただきたい。それぞれその省庁の立場で手法が違って、もめて、そのためにいろんな環境行政がおくれていくというのは、とても国民にとってはがまんできないことだ、こういうふうに思います。  通産省に続けてお聞きいたしたいのですが、発電所の立地に際して環境アセスメントが必要なことは言うまでもありませんし、すでに五十二年の通産省の省議決定に基づいて、また五十四年には手続等についての通達も出されて、行政運用によりアセスメントが行われてきておると思います。しかし、このような個別の行政運用ではアセスメントの適切な実施が期しがたい。また事業によって、あるいは地域によって手続等がばらばらでは困るというようなことから今回の法案が提案されている、こう理解しておるわけですが、その発電所法案では除外されているわけです。この点について、さきの当委員会でわが党の中井理事からもお尋ねをいたしたところでございますが、発電所については、これまでの行政指導によるアセスメントでもう十分だという考えなのでしょうか。発電所に係るアセスメントは今後どのように行っていくお考えなのか、お聞きいたしたいと思います。
  91. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 発電所の設置に際しましては、環境アセスメントが必要であるということについては、通産省といたしましても十分認識しているところでございます。  御指摘のとおり、五十二年七月省議決定に基づきまして、環境アセスメントをしていくことを決定したわけでございますが、さらに、これに基づきまして、五十四年六月には、環境影響調査要綱あるいは地元周知要綱あるいはわれわれ自身が行います環境審査指針というものを定めてございます。この制度に従いまして、五十二年から現在まで大体全体で四十九地点、火力発電所で言いますれば二十八地点、原子力で九地点、水力十一地点、地熱一地点ということで、私どもとして環境アセスメントを実施して、相当程度私どもといたしましては実績を積み上げてきたと思っております。  当省といたしましては、これまでのそういった個別地点あるいは個別テーマというものについての実績を踏まえながら、積み上げながら、各種の技術的知見その他を積み重ねまして、改善を図って進めてきたつもりでございます。今後ともこのような改善努力を続けていって、環境アセスメントの実施実態を積み上げていくということを行いつつ、発電所環境保全に努めていく、また電気事業者自身にもそういう考え方をビルトインしていくという考え方で指導してまいりたいと思っております。  以上でございます。
  92. 木下敬之助

    ○木下委員 私の方が今後どうするかお聞きしたいのは、この法案との関係なんです。行政指導でいつまでもやっていこうとするつもりなのか、それともやはり法律でやることの方が望ましいと考えておられるのか、こういうことが聞きたいのです。今回外れたそれなりの理由もあると思います。考えておることがあると思いますから、今回は法律でやるための条件が整っていなかったという判断をされているかもしれません。これはもうすでに現在でも整っているんだという認識の方もおると思います。そういう認識の差は別にしても、やはり法律でやっていくべきじゃないかという考えで見ますと、発電所を法の対象とするためにはどういう条件が整備されればよいと考えておるのか、お聞きいたしたいと思います。
  93. 廣瀬定康

    ○廣瀬説明員 いま議論されています法案は、昭和四十七年の公共事業に係ります閣議了解以降の実績と現状を踏まえまして、国が実施し、または関与する大規模な公共事業中心に、手続の統一化を図ることを目的としたものだと私どもは理解しております。こういったような観点から見ますと、発電所の設置は対象事業とされる性格のものではないというのが私どもの理解でございます。  なお、発電所の設置につきましては、先ほども申しました五十二年七月の省議決定により環境アセスメントの制度化を行い、それ以降環境保全に努めてまいっておるわけでございます。昨今の電源立地を取り巻く諸情勢については、きわめて厳しい情勢があるというようなこと等を考えますれば、法律に基づくアセスメントを行うことについては、私どもとしては慎重を期していきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  94. 木下敬之助

    ○木下委員 現在の状況ですね、それと、いまいかに電源立地が大切か、こういった問題については国民も相当の理解があるし、私どもとしてもそのとおりに思っています。しかし、今回の法律をつくろうとしたその目的を考えるときに、どうでしょうか、発電所が入れるような法律をつくるというのがやはり当初からの目的じゃないかと思うのですね。だから、現在まだ入れる状況にないならば、電力を取り巻く条件がこういうふうに変われば入り得る、こうするのか、もしくは、法律の方がこういうふうに変われば電力も入り得る、このどちらかが達成されれば入れるべきであり、また当然、最終的に電力も入れるような共通の理念を見つけてつくるということがこの法律目的であったのではないか、こう思うのですが、どうでしょうか。その辺あれでしたら、通産の考えだけでなくて、環境庁の考えもお聞かせいただきたいのです。
  95. 清水汪

    清水政府委員 大変むずかしい問題でございますが、私どもの考え方として申し上げますと、電力なら電力というものも含めて、要するに影響が大きいような大規模事業、もう一つ前提が、国が関与するというのがございますけれども、そういうものを漏れなく拾い上げて、それについて法律のレベルでの手続の統一を図ることが理想であるということは申し上げられると思います。  ただ、現実ということを先生もおっしゃいました。不幸なことは、やはりこれまでの各種の事例を通じまして、ことに発電所の立地の問題につきましては、たまたまそこに原子力という問題が絡んでいるということも事実でございます。それからまた、事の性格が道路とか鉄道とか港湾というようなものとやはり違っているというようなこともあるかと思います。いずれにしても、たとえば非常に反対運動が強くて、あるいは法廷闘争というようなことに悩まされてきているという経験は、これは事実としてあるわけでございます。そういうような事情のもとでは、仮にこれを法律の対象事業ということにして、斉一的な手続アセスメントを推進しようとしても、現実問題として、法律が施行になった後、直ちにいろいろの難問にぶつかるということは想像にかたくないわけでございます。  そういうようなことから、私どもがよく申し上げております、これまでの実施の経験ということを踏まえて、この際、法律のレベルの一元的なアセスの制度を確立したいんだけれども、無理のあるものまで取り込むわけにもいかないじゃないかということから、一応発電所を除いた、こういう結果になっているわけですけれども、国民との関係とか、あるいは地方ごとのばらつきがないようにするとかいうような要請からすれば、やはり法律というレベルで一つのルールをつくるということが最終目標になる、こういうことは申し上げられると思います。
  96. 木下敬之助

    ○木下委員 環境庁の方は、理想として、すべてに通用するようなアセスメント法案であるべきだし、そのために、電力の方の事情で入れないんなら、そちらの事情が許すようになれば入ればいいし、法律の方も、もっと電力まで含める法律というものが、今後のこの実施の中でいろいろ改正等が出てくれば入れればいい。やはり理想としては含めていくべきだという考えを持っておられるようにいま私は受けとめたわけです。  通産の方はどうなんですか。先ほどのお話では、これはなじまないということで、これに将来とも条件を近づけていこうという考えはないように聞こえたのですが、その辺、やはり理想を求めていこうという姿勢は持っておられるのでしょうか。
  97. 西中真二郎

    ○西中説明員 大変むずかしいお尋ねでございます。  ただいま環境庁の方からもお話があったわけでございますが、私どもといたしましても、完全にその門戸を閉ざしてしまうとか、あるいは将来はやりますとかいうふうな、はっきりしたお答えができる性格のものではございませんけれども、今後の事情の推移に応じて考えていくべき問題である、少なくとも当面においては、私どもとしては、環境アセスの法律というのは、やはり公共事業中心にお考えいただくということが妥当なんじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  98. 木下敬之助

    ○木下委員 では、当面の判断であるというふうにお聞きいたしておきます。  この環境アセスメントについては、昭和四十七年の閣議了解に基づいて実施されるようになって以降、建設省所管の事業整備五新幹線、さらには発電所について、行政通達によりアセスメント手続等が定められ、実績も積み重ねられてきております。本法案に掲げられた対象事業は、このようなこれまでのアセスメントの実績も踏まえて選定されたと聞いておりますが、発電所は、他の公共事業と同様に、行政運用の実績があるにもかかわらず対象事業から除外されている、そういうわけですが、行政運用によるアセスメントの実績のあるものの中で、法案の対象事業とするかしないかの区分は、一体どのようにして個々の区分をされたものでしょうか。
  99. 清水汪

    清水政府委員 その点でございますが、ただいま先生も御指摘になりました、四十七年の閣議了解に基づいて始めた公共事業アセスメントの経験、あるいはそれを契機といたしまして、たとえば電力は公共事業でございませんけれども、通産省の行政指導のもとでアセスメントが行われてきましたし、あるいはまた、地方公共団体におきましては、むしろ時点的には、その前からのものも含めまして、条例とか要綱という動きがあるわけでございます。そういうようなことで、かなりの程度まとまった経験が現時点で蓄積されているというふうに認識ができるだろうと思います。  そこで、過去の経験の中から、そういうふうなまとまったものを一つの対象事業のグループとして取り上げる。ただこの場合に、さっきもちょっと触れましたように、発電所につきましては残念ながら合意が得られなかったと申しますか、つまり、発電所事業をめぐる一種の環境でございますね、いろんな意味環境、この環境が必ずしもよく整っていないといいますか、したがって、コンセンサスが得られなかったということですから、仮に無理してこれを法律の中に取り込みましても、私どもとしては、なかなか法律を円滑に遂行し得るだけの見通しが持てないという悩みもございます。そういうようなことから、これは慎重な判断を要するということで対象に入れなかった、こういうことでございますが、その他の大規模な影響のある、国の関与する事業は大体これに取り入れた。具体的には規模等は政令で決めることになりますので、この段階では抽象的にしか申し上げられませんけれども、大体そういうことになっているということは申し上げられると思います。
  100. 木下敬之助

    ○木下委員 電力も十分なアセスメントをいままでもずっとやってきているわけですね。そういうものの積み重ねの中からこの法案が出てきて、いま審議しているわけですけれども、そのときに電力が外れた、そういった中で、はっきりとした基準でこれが外れたというんならわかりますけれども、取り巻く状況とか、そういったことで外れていきますと、今度は、法律の方の意義、一体どういった意義がこの法律にあるんだろうか、逆に法律の方にも疑問がいくと思うのです。  電源立地に際しては電気事業者環境問題に配慮し、これまでのアセスメントの中でも、電気事業者が非常に熱心にやり、また、ずいぶん苦労しながら実績を積み重ねてきているというのはわかります。このような発電所アセスメントの経験をどう評価するのかは議論のあるところとは思いますけれども発電所は法の枠内ではうまくいかないから除外したということになると、対象事業は、現時点で法制化してうまく動くものだけを取り上げた、こういうことになる。これでは法制定の意義が乏しいのではないかという印象を受けるんですが、どうお考えでしょうか。
  101. 清水汪

    清水政府委員 大変厳しい御質問をいただいているわけでございますが、率直に申しまして、大臣からの御答弁にもございますように、発電所は除かれているという点から言えば、この法律案の言うなれば点数を下げているということは、ある意味ではそうなのかもしれません。ただ、私どもは、むしろその面だけよりは、この法律で、わが国において初めて法律制度として事前の評価制度を確立するということの意義の方をより大きく申し上げたい。しかも、その背景といたしましては、ばらばらに地域ごとのルールでいくということにはいろいろ問題が出てくるかと思います。  それからまた、これは一般論として申し上げれば、ある程度の経験ができてきた後は、行政通達というような形よりも、法律という形で物事を明確にしていく方が、たとえば内容で言えば住民との関係とか、そういうようなことを決めていくには、行政運用よりは法令の形による方が一般的にも納得されやすいということは言えると思います。そういうようなことから、電力が除かれているという点については、これはちょっと点数を下げているということはあるいは御指摘のとおりかもしれませんけれども、私どもとしては、なおかつ、この段階でこの法律案の成立を図るということには大きな意義があるというふうに申し上げたいわけでございます。
  102. 木下敬之助

    ○木下委員 何でもいいからとは申しませんけれども、まず法律があるがいい。これを優先して、いろんなことよりも、いろんなそういう不備よりも、法律をつくることを優先したように、どちらを優先するかというのが私は基本理念だと思うのです。基本理念がなければ、どちらを優先するかできない。そのときに、法律に必然性がない。なぜこの法律が必要なのか、必然性のはっきりしてないような法律が、そういうふうにどちらを大事にするかといったときに、とりあえず法律ができることが大事だということで、必然性のない法律ができてくるということは、これはどうしても疑問になる。私どもが疑問を持つというのは仕方がないんじゃないかと思います。  この法律に挙げられた対象事業が、これまでのアセスメントの実績を踏まえて、法でうまくいくかどうかというようなことも考慮をされたために、限定されたものとなっています。しかし、法律アセスメントの統一した手続等を定める以上、大規模で、環境影響の著しいものについては法律で取り上げるべきではないかと思います。こういった意味で、対象事業はこの法案に具体的に挙げられたものでもう十分だと考えておられるのでしょうか。それとも、対象事業をこれだけに限ったのは当面の考えであって、今後追加し、充実を図っていくという考えがあるのかどうか、お聞きいたしたいと思います。
  103. 清水汪

    清水政府委員 ただいまの御質問、先ほどからの問題ともずっと関連性があるかと思いますけれども、私どもとしては、現段階では先ほどの発電所という問題は除かれているという点がありますけれども、そのことを別にすれば、大体必要なものは法案の中に入っているというふうに考えております。  さて、そこで現在はそうであるけれども、さらに将来はどうかという点の御質問もあるわけでございますけれども、将来の問題につきましては、新しい初めての法律でございますから、この法律をまず施行させていただいて、その経験というものも見る必要があろうと思いますし、それから社会経済情勢の発展、推移というものも見る必要があろうかと思います。そういうようなことの推移、実績等に立った上で、さらに検討すべき問題があれば検討していく、こういう姿勢は必要であろう、このように考えております。
  104. 木下敬之助

    ○木下委員 電力の問題中井先生も十分なさいましたし、いつまでやっても切りがありませんから、次に移りたいと思います。  環境アセスメントをめぐる問題として、環境に対する価値観が各省、地方ごとに差があるというようなこともあって、アセスメント手続をどうするかという問題について各省、地方ごとに差が見られることがあります。  具体的に申し上げますと、アセスメント手続過程に住民はどう関与するのか、また、地方公共団体の位置づけをどうするのかなど、重要な点について違いがある状況と思いますが、こんなばらばらの手続のままでは、わが国のアセスメントの適正円滑な推進に支障が生じることが心配されます。これらについて、本法案ではどう調整、統一されるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  105. 清水汪

    清水政府委員 まさに、ただいま先生御指摘の現状ということがいろいろ問題を含むわけでございますので、私どもとしては、地方ごとのばらつきのないような、一つの斉一的なルールをつくる必要があるだろう、あるいはまた、先ほどもちょっと触れましたが、法令の形で、住民とかその他の関係については、明確で安定性のある制度というものにする、こういう必要性があるわけでございますので、そういう点からこの法案を立案しているわけでございます。  そういたしますと、今後はこの法案を成立させていただきますと、この法案が対象にしております大きな事業につきましては、少なくとも全国的に一元的なルールは確立するということになるわけでございますし、それに加えまして、この法律が対象にしてない事業につきましては、地方の条例で、あるいは要綱でアセスメント手続を決めるということは生じ得ると思いますけれども、その場合でも、この法案の第三十八条の趣旨に立脚いたしまして、手続の組み方は、なるべく国が対象にしている事業の場合の手続の組み方と整合性のあるようにやっていただきたいという要請あるいはお願いをしてまいるということになるわけでございますから、その点のいわば間接的な効果ということも含めて考えますと、国と地方をあわせましてアセスメントという制度はかなりの程度充実したものが確立することになる、こういうことは申し上げられるかと思います。
  106. 木下敬之助

    ○木下委員 この法案が成立して、それに従ってアセスメントを行うときに、住民の声の参加、意見はどんなふうにするのかとか、幾つかそういった現在食い違いのままの手続で残っている問題がまだあるでしょう。こういったものは一体どういうふうに調整をしていくのですか。
  107. 清水汪

    清水政府委員 ただいまの御質問は、たとえば地方の条例なり要綱なりの段階で、いまの住民の関与の度合いとか、そういうところにばらつきがあるという点の御指摘かと思いますけれども、そういう点については、基本的には国の法律案の姿を一つのお手本、という言葉を申し上げるとこれは叱られますから一決してそういうようなつもりでいるわけではございませんけれども、国の法律によるルールというものを一つの標準にしていただいて、整合性を図っていただくということを要請をしていきたいということでございます。  ただ、これは要請でございますので、つまり一方的に、国の方から個別の自治体に対して、この法律案手続と同じようにしなさいとかというふうに強制することはもちろんできません。それからまた、地方自治というお立場もあるわけでございますから、多少のそういう違いがあっても、それは実質的あるいは本質的に違うものでなければ許容するというぐらいの度量は必要ではなかろうかというふうに思っておりまして、そういうような姿勢で、各地方のばらつきの問題に対しては、できるだけ斉一性を図るように努力はしてまいりたい、このように考えております。
  108. 木下敬之助

    ○木下委員 私の申し上げたいのは、住民意見の参加という点についても、まだまだ一つの何かの法律をつくって、それでやっていたら、それが前例となってみんなが納得するという状況まで来ているように思えない。もっと根本的な問題で意見の食い違いが、国民の合意ができないままやっているのじゃないかという感じがするのです。その辺が電力の入ってこれないというか、事情の一つにもなっているのじゃないかという気がします。そうした意味で、住民参加の一つの大きなのが窪川町ですか、住民投票で原発をやろうというようなこともございましたね。あんなふうな問題に対する考え方も、まだ日本全部でいろいろなそういったことに対する議論がされたわけじゃないし、これからたくさんの意見をもっと出し合って答えを出さなければならない問題が残ったままで、ちょっと早まってこういう形にするから、いろいろな都合の悪い問題が出てきているのじゃないか、そういう感じを持っております。  同じように、この環境影響評価法案が法制化されたときに疑問として出されているものに、この法案訴訟との関係というのがあると思います。この環境影響評価法の制定によって、訴訟が多発して事業がおくれることとなるのじゃないか、こういうおそれがあるのじゃないかという議論があるのですが、これについてどういうふうにお考えか、まず環境庁からお答えいただきたいと思います。
  109. 清水汪

    清水政府委員 訴訟の問題は、率直に申しまして、私どもも非常に頭痛の種でございますが、その点につきましては、現在いろいろの種類の訴訟が起きているわけですけれども、この訴訟とこの法律案とが直接どういうふうにかかわり合うかということが問題の焦点かと思います。その点については、この法律案が成立したからといって、直ちに訴訟の件数がふえるということになるとは言い切れない。しかし、そこは件数がふえるとか、どうとかということとは別に、訴訟を起こそうという立場からすれば、何らかの一つの争点になるということはあり得ることだと思います。  そういう意味で、この法律というものが、新しいものが一つそこにできれば、それがいろいろな理由で現在生起しておる訴訟と全く無関係だということは申し上げられないわけでございますが、しかし、すぐに訴訟がふえるということに必ずしもならないのじゃないか。ある場合には、現在明確な法律のような形のルールがなくて訴訟が裁かれているということがあるわけでございますけれども環境影響評価法律上のルールができるということは、ある意味では裁判所側において御判断をなさるときにも、たとえば争点の整理には役立つのじゃないかというようなことも言われているわけでございます。いずれにしても、訴訟の増減の問題というのは、必ずしも一概には言いにくい面があることは否定できないと思います。  ただ、訴訟の遅延になるかどうかということは、いまもちょっと申しましたように、争点の整理に役立つ面もございますが、それ自体は、全体としては裁判所訴訟指揮のような問題が基本の問題であろうと思いますので、私ども立場から、この法案との関係で、ある訴訟が遅延するとか短くなるとかということはなかなか申し上げかねるということは御理解いただけると思います。  それから、そのような訴訟が提起されるということが、主務大臣の、つまり行政庁の方の行政事務の遂行の上にどういう影響を与えるかということがございますけれども、これは現在でもそのような関係の事態はしょっちゅう生じていることだと思います。この点については、理屈だけではなかなか割り切れない問題だろうと思いますけれども、私も公務員の一員という立場で考えさしていただけば、行政の立場、それから訴訟立場というものは一応筋は別でございますので、是と信ずる行政を展開することは何ら非難さるべきことではないだろうというふうなことは申し上げられるかと思います。
  110. 木下敬之助

    ○木下委員 訴訟でどのくらいおくれるかという問題は、また後で質問するといたしまして、通産にお聞きいたしたいと思います。  発電所は今回対象になっていませんけれども、これまでの議論ではいろいろなされたと思いますから、御質問いたしますが、発電所法律の対象とした場合に、訴訟件数にどのような差が生じると考えておられるのか。また、訴訟が遅延するおそれについてはどうお考えなのかをお聞かせ願いたいと思います。
  111. 西中真二郎

    ○西中説明員 ただいま環境庁の方からも、一般論としてお答えがあったわけでございますけれども、一概に訴訟件数がどうなるかということは非常にむずかしい問題でございますが、発電所の設置につきましては、先生御承知のように、現在非常に電源立地をめぐる環境も厳しいわけでございまして、従来から不服申し立て、あるいは訴訟が相当程度提起されておるわけでございます。ちなみに、現在行政訴訟が係属中のものが十一件、民事訴訟が九件、合わせて二十件現在係属中なわけでございますけれども、仮に発電所が本法の対象となるという仮定の話として考えますと、訴訟を起こす法律的なきっかけでございますとか、あるいは訴訟の争点というふうなことが増加するということは定性的には予測されるところでございますので、訴訟件数の増加とか、訴訟の遅延ということの一因にはなり得るのではないかというふうに考えております。
  112. 木下敬之助

    ○木下委員 最もそういった訴訟等で最終的に問題になるのは、どうやれば現実に手続が終了することができるのか、無制限に際限なく期間を要するようなことになるのじゃないか、こういったことが問題と思います。この法案では、準備書が作成されてから事業の実施に至る手続に要する期間について、どういう配慮をされているのかをお伺いいたしたいと思います。
  113. 清水汪

    清水政府委員 ただいまのお尋ねの点につきましては、事業者が、この法律手続に基づきまして環境影響評価準備書というものをまずつくりますが、この準備書をつくるまでにどれぐらいの時間がかかるかということは、これは私ども立場から一概に推定することはちょっとできないと思います。問題は、その準備書ができた後の手続の展開につきましては、まあ一般論ですけれども、ある程度の期間の予測はすることができると思います。それはそれぞれの節々について法律上の規定もかなりございますので、そういうことになるわけでございますが、結論的に申し上げれば、半年よりちょっと多い、あるいは八カ月程度とか、そのようなところが一般的な計算例としては申し上げられるのではなかろうか、このように考えております。
  114. 木下敬之助

    ○木下委員 その問題で二つほど私は聞いてみたいのです。その一つは、その前に訴訟のことを申しましたけれども、いろんな手続上に瑕疵があったとか、そういった問題まで裁判に持ち込んでストップさせよう、こういうふうな訴訟が戦術的に出てきた場合に、やはり際限なく無制限に期間を要するようになってしまうのか、どういうことですか。
  115. 清水汪

    清水政府委員 いまの御質問について、こういうふうに申し上げられると思います。アセスメント法による手続の進行過程については、仮にその手続のどこかの停止を訴訟に訴えようとしても、そういう訴訟は成り立たないということは、これは法務省当局その他も明快に示しているところでございます。その手続についての瑕疵議論は、最終段階許認可官庁の行政処分について争う場合に、どの程度援用されるかという問題は、問題としてはあろうかと思いますが、その点についても、けさほど申し上げましたことは、直接的には行政処分の有効、無効に関係はないということは、この法律立場からは申し上げられるということをお答え申し上げているわけでございます。その点はそういうことでございます。  もう一つは、たとえば説明会のようなところに一つ例がございますけれども、望ましいことではもちろんございませんけれども、非常に何か妨害のようなことが入りまして、説明会自体が予定した日に流れてしまったというような場合には、事業者は別途説明書の配付のような手続を講ずることによって、その説明会を省くことは、この法律上認めているわけでございます。しかし、それはこの法律にもありますように、そういうやむを得ない、かつ正当な事由のある場合ということでございまして、具体的にはそれはこれから総理府令のような形で決めていくことになりますが、そこは非常に慎重に私どもとしても対処をする必要があろう、このように考えておりますが、そういう形で無際限にどこかでストップしてしまうというようなことはないように配慮しておるということはひとつ御理解いただきたいと思います。
  116. 木下敬之助

    ○木下委員 もう予鈴が鳴りましたから、あれするのですが、ひとつ通産省、いまのこの点について、一体どう考えておるのかお聞かせいただきたい。手続瑕疵等を通じて、無制限に期間を要するようになるんじゃないかという私の考えに、いま環境庁答えられました。そういった環境庁の考えについてお答えいただければ……。
  117. 西中真二郎

    ○西中説明員 仮に期間を定めておるというふうな場合でございましても、知事が準備書面を受理しない、あるいは行政指導で申請させないというふうなことがございますと、いろいろ問題が出てくるようなケースもあり得るのじゃないかというふうな気もいたすわけでございます。
  118. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が来ましたから、またもっとゆっくり詰めたいところがたくさん残りましたけれども、このくらいに質問がなるわけですが、この期間の問題について私が一つ申し上げたいのは、期間を決めればそれで自然に先へ進んでいくのだという考えでしょうけれども、最終的に住民の理解をもらうという姿勢、これが、期間を決めて、この期間を決めたから結論としては手続上のアセスメントは全部できたのだ、だけれども、本来理解を得なければならない住民の心を離れてしまった、こういうことではいけないと思いますよ。ですから、その考え方に、本当の基本的に環境行政をどうしていこうかという根本理念があってやっているように見えないということです。だから、こういう問題は、電力の問題ばかりを申し上げましたけれども、どういうふうな法律ならばこの電力も入れるのか、一体われわれは何を目的でこの法案をつくろうとしていたのか、もっと原点に返って、国民の納得のいくものをやっていただきたかったということを申し上げて、私の質問といたしたいと思います。  終わります。
  119. 八田貞義

    八田委員長 本会議散会後再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時五十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十七分開議
  120. 八田貞義

    八田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公害防止自然環境保護及び整備並びに公害健康被害救済に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田スミ君。
  121. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、まず最初に、関西新空港の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  昭和四十九年の航空審議会の答申以来もう八年経過をしました。いよいよこの問題も正念場を迎えるというふうに言われておりますけれども、私は、最近の政府や大阪府や財界などの動きについては、幾つか強い疑問を持たざるを得ないわけです。  そこで、まず環境庁の方にお伺いをしたいわけですが、政府アセスメント法案なんですが、この法案では、事業主務大臣環境庁長官が相談をして決める指針に基づいてアセスメントを行うわけですね。そこで、アセスメントを免許者や監督官庁に送付をして、送付されたその免許権者などは、そのアセスメントを審査の上で免許などの処分を行う、こういう仕組みになっていると思うのですが、そういうことでよろしいでしょうか。
  122. 清水汪

    清水政府委員 お尋ねの二点でございますが、第一点は指針、その点は御意見のとおりでございます。  それから後段の点につきましては、途中の手続を省かれての最終的なところをおっしゃられたのだろうと思いますが、それは法案で言えば二十条にございますように、主務大臣は、一つ提出された評価書内容について審査するということと、それから同時に、その際に環境庁長官から意見の申し出があった場合には、その意見に対して十分な配意をして、そうしてみずからの行政処分をなさる、こういうようなことに書いてございます。
  123. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 というようなことになりますと、まあ私は、このアセスメント法案というのは反対立場なんですが、しかし、このアセスメント法案に従って、たとえば関西新空港の問題について考えるとしますと、その決められた指針に基づいてアセスメントを行って、その後に事業決定をするということに当然なっていくと思うのですが、この点は確認をしておきたいと思います。
  124. 清水汪

    清水政府委員 いま関西空港問題は現実に動いているということでございまして、他方の法案の方がいまこういう状態にあるわけでございますので、その具体的な関係というのはちょっと触れにくいと思いますけれども、いわばモデル的なとらえ方として申し上げれば、この法案で言えば、事業者事業の着手をする前にはアセスメント手続を終了していなければいけない。当然のことながら、国が関与する事業を選定してございますので、同時に、国は、先ほど申しましたように、事業者がつくったアセスメント評価書を見てから処分をするということになっておりますから、アセスメント書抜きの処分とか、したがってまた、たとえば処分なしの事業の着手というようなことは法律論的にはおよそ起こり得ないということでございます。  ただ、これを関西空港の場合について考えてみますと、関西空港は、事業の実施者が、たとえば運輸省御自身であるのか、あるいはもうちょっと別の、特定の特殊法人のようなものがつくられて、それが実施主体になられるのかというようなことも、私どもには全くまだわかっておりませんし、それから、そもそも、そういうことも含めまして、これについての基本的な御方針というようなこともまだ公式には打ち出されていないのではなかろうか。しかし、一方では事業の空港本体のようなものにつきましては、先般来運輸省の手によりまして、いわゆる環境影響評価その他のことが行われておりまして、その結果作成された文書はすでに縦覧もされ、それについての意見も、公聴会のような形で聴取されているように伺っているわけでございます。  しかしながら、この空港に関連するその他の問題というのもまだありそうな話も耳にしておりますから、そういうものは事業の全貌がまだはっきりしていませんし、それから、その方針そのものが、どういう形でいつの時点でどういうふうに段階的に決まっていくのかということが、いまのところはっきり言えないわけでございますから、その関係の問題については、これ以上ちょっと具体的にはお答えできないと思いますが、法律とのモデル的な関係は、最初に申し上げたようなことになろうかと思います。
  125. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そうしますと、閣議決定というのがありますね。その閣議決定に先立って、十分このアセスメントをやっておかなければならない、このことは言えると思うわけです。そうであるならば、たとえば空港の土取りの問題、そのほか前島だとか道路だとか、そういう総合的なアセスの必要というのは当然あると思うのです。そういうものをちょっと横に置いておいても、土取りというのは空港建設ともう密接不可分のものですから、こういうものは閣議決定の前に先立って行っておくということは当然のことだと私は思うわけですが、いかがでしょう。
  126. 清水汪

    清水政府委員 結論を先に申し上げますと、それは必ずしも一義的に先生のおっしゃるようなことにはならないのではなかろうかと思います。  ということは、いま空港問題の閣議決定というお言葉がございましたけれども、私ども現在知っております範囲では、何か具体的な、こういう内容の閣議決定ということがあるとかというような情報は全く得ていないわけでございます。それは先生も御承知の上での御質問と思いますけれども、前例を思い出してみますと、たとえば本四連絡橋のような場合には、一ルート三橋についてまず取り上げるというような、ごく大筋の基本方針をある段階の閣議で決めていたように、たしか私、記憶いたしておりますけれども、閣議決定というものは、もともとどういうものをどういうふうな段階で取り上げるとかということのルールが決まっているわけではございませんので、閣議決定との関係で、事前にどこまでのことが行われていなければならないかということは、一概には言いようがないと思います。  アセスメント法との関係で言えば、あくまでも事業者事業の着手の前までにはやらなければいけないし、それから国が関与する形態というのは、許認可なり国が直営でやる場合というのは、運輸大臣なりがみずから御決定になるということだろうと思いますけれども、いずれにしても、閣議の決定という行為とは別に、離れたところで、法体系上その事業についてはそれぞれの処分の形態というものが必ずあるわけでございます。その処分の形態の方と、この法律手続はドッキングしているということでございますので、繰り返しになりますが、閣議決定というものを一つとらえて、それにいろいろ幅があるということも実態論としてございますし、それから、手続論としていまのようなことがございますので、ちょっとその前に必ずどこまでということは申し上げかねるという点は御理解いただけるものと思います。
  127. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私が言いたかったのは、閣議決定ということになれば、これは計画が決まってしまったわけで、その後恐らく、たとえば埋め立ての免許の問題について、それが閣議決定の後取り消されるというようなことばまず考えられないわけです。前へ進んでいくばかりですから。それを着手の前という表現をされましたけれども、そういう以前に、土取りの問題なども空港建設と一体不可分なものだから、それは一体としてやっておかなければならないんじゃないかというふうに考えたので、こういうことを言っているわけです。  たとえば発電所のアセスですが、現在これは通産省でつくられた「発電所の立地に関する環境影響調査要綱」というものに基づいて行われているわけですね。この環境影響調査要綱というのを作成するに当たっては、環境庁も当然相談を受けているというふうに私は考えているわけですが、それは受けてつくられているわけですか。
  128. 清水汪

    清水政府委員 相談を受けております。
  129. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この要綱を見ますと、火力発電所の場合はほとんど埋め立てを伴う事業になっていくわけですが、「掘削、土石の処理に伴う地形、表層の土壌の変化及び植生に対する影響並びにそれらの評価について記載する。」というような言葉があります。それから「骨材の採取に伴う地形、表層の土壌の変化、植生への影響評価について記載する。」ということで、つまり環境庁も相談を受けてつくられた発電所のアセス要綱では、埋め立てに伴う土取りというのはアセスメントしなければいけないんだということ、これは当然のことだと思うわけです。  特に後でもきょうは触れていきたいと思いますが、今回の災害の様子を見ましても、土取り、山を削るということについては相当慎重にやっていかなければ、これは恐るべき環境破壊になるんだなということを感じているだけに、空港埋め立ての場合は、土取りのアセスメントは、事業者が決定してから後でやればいいんだというようなことは全く筋の通らない話だと私は思うわけですが、この点、局長いががですか。
  130. 清水汪

    清水政府委員 ただいまのお話の中で、事業者が決まらない段階でやるということは、現実的な問題としてなかなか難点がある議論だろうと思いますが、それはちょっとさておきまして、私が先ほどから申し上げておりますことは、先生の御懸念の点はもちろんよく理解しているつもりでございます。たとえば、閣議決定があれば、もうそこで物事が法的に決まってしまうじゃないかというような御懸念を前提にしておっしゃっているという面もあろうかと思います。そういう点については、閣議決定というものがどういうような内容のことを決めるのかということにもかかわりが深いわけでございます。一方で、アセスメントというのはその事業の具体的な輪郭なり事業者なりというものが煮詰まってまいりませんと、その影響をいろいろ調べるということが実際問題として余り有効にはできない、こういうことがございます。ですから、そこの兼ね合いということがどうしても問題になるわけでございます。  もう一つ、いまのお話の中で、土取りということはおよそ環境影響評価の中で重要な対象事項であるだろう、こういう御指摘でございます。その点は私どももそのように考えておるわけでございまして、ただいま御指摘のように、過去にも電力の場合とか埋め立て計画の場合について、土取りについても影響評価の対象範囲に含めてやってきているという実例は現にあるわけでございます  ですから、ここでの問題は、そこはそういうことで見解の不一致はないというふうに言えるかと思いますけれども、閣議決定の時点よりも前にという点につきましては、繰り返すようで恐縮でございますが、いま言われております、その閣議決定というのが、いつのどういう段階でどういう趣旨のものとしてまず出てくるのかということがはっきりいたしませんし、もう一つの土取りというのは、この空港をつくる事業者が、ここに将来確定するわけでございましょうが、その事業者が土取りについての影響についても配意するというような趣旨のことは、たしか、私の記憶に誤りがなければ、現在すでに公開されている三点セットの中の影響評価書の中にも記載されていたように思います。ですから、それは必ずきちっと行われることになることは間違いがないだろうというふうに考えている次第でございます。  なお、そういう点について御懸念がないようにするということは、私どもとしても、運輸省との話し合いの仕方等を通じまして、方法はいろいろあろうかと思います。
  131. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 土取りは重要な対象であるということで理解をしていただいていることは大変結構なんですが、しかし、そういう何もかも事が決まってから土取りのアセスメントに初めて手をつけていくというようなことでは、結局地元の者としては、最も不安な要素を残したまま、アセスメントをやりました、地元の住民の皆さんどうですかと聞かれても、話は半分しか聞かされていないということを言っているわけです。  だから、環境庁も言われているように、土取りの問題というのは非常に大事で、万々怠りなくアセスメントをやってもらうのは当然のことなんですが、それは物事が決まって、それからやるというのではなしに、事前に十分アセスメントをやる、その事前のアセスメント段階で土取りの問題というのは十分やっておかなければいけないということを申し上げているわけです。この問題でやりとりしていたら時間がかかりますが、鯨岡長官もかつて、この土取りのアセスメントは、空港本体と絶対不可分のものだから、非常に大事な問題、必要だということを強調されましたが、私は、環境庁は少なくともその立場で、環境保全という役割りを果たしてもらいたいというふうに思うわけなんです。  次に、運輸省にお伺いをいたします。  先月運輸省は、「昭和五十七年度関西国際空港調査の概要について」ということで、今年度の予算による調査計画を発表しておりますね。これによりますと、「これらの調査をもって、継続的に実施する気象・海象等通年観測等を除き、関西国際空港計画に係る基本的な調査は完了する見込みである。」こういうふうに言っていらっしゃるわけです。その点で、今年度は見送られましたけれども、運輸省としては来年度、実施設計調査費をどうしても計上していくつもりなのかどうか、お伺いをしておきたいと思います。
  132. 栗林貞一

    ○栗林説明員 五十八年度の予算要求につきましては、運輸省内で現在検討中でございまして、まだ決まってはおりませんが、先生のおっしゃいましたような調査の状況、あるいは地元からの意見などをいただいておりますので、そういったことも踏まえまして、関西国際空港事業の実行につながるようなかっこうで予算要求をしたいということで、現在検討しているところでございます。
  133. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 地元の意向ということを言われるわけですが、これがまたそういうふうに理解されているのだろうかということを思うわけですね。一般調査費ということならともかくですが、実施設計調査費というと、ずいぶん要求の中身が変わってくるわけでしょう。そうでしょう。本質的に中身が違うわけですね。  それで、第一、先ほども環境庁がるる言われましたように、まだ新空港の計画というのは政府全体が認知した計画になっていない。違うのでしょうか。もう一つは、関係閣僚協議会、そういうものもつくられていない。そういう状態で何ら見通しがないのだということは、先ほどおっしゃったとおりだと思うのです。そういう段階で実施設計調査費を要求するということは筋が通らないと私は思うのですが、どうなんでしょう。
  134. 栗林貞一

    ○栗林説明員 確かに関西国際空港につきましては、たとえばいまおっしゃいました閣僚協議会が設けられているとか、あるいは政府として認知したとか、そういったことはございません。また、地元についても、私ども、いわゆる三点セットというものを示しましていろいろ意見交換をしてきたわけでございますけれども、これについても、すべて回答が来ているわけではございませんが、すでに七月には大阪府から、計画の具体化を進めるべきであるという回答を得ておりますし、残る二県につきましても、恐らく八月中には回答が来るだろうというふうに聞いております。  それから地元の関係で申しますと、近畿圏内の全知事及び大阪、京都、神戸の各市長連名で、来年度予算としまして、関西国際空港につきまして、速やかにその具体化を図るための予算措置を講ぜられたいというような要望書も参っておりますし、私ども、財政当局とも事務的には協議を進めつつあります。  そういった周囲の環境の中で、私どもは、やはりこれと並行しまして、予算要求としては、関西国際空港の着手につながるような予算を要求したいというふうに考えておりまして、その具体的な姿については、現在最終的な検討を進めておるところでございます。
  135. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大阪府や、あるいは大阪府下の市町村の対応の問題については後ほど触れていきたいと思いますが、政府部内で主として問題になっているのは、これは、財産上の問題で採算がとれるかどうかという問題が一番大きなネットになっているのじゃないかな、私はそういうふうに思っているわけですね。  実際、三点セットの旅客需要予測というのを見ましても、これは私の足元なんですが、空港がつくられる泉州地域では、計算しましたら、空港完成時に、赤ちゃんからお年寄りまで全住民が、何と年に六回も国内線を利用して、それから二年半に一回海外旅行をするというような計算になっているわけですね。そういう計算自身、ずいぶんでたらめではないかという批判が出てくるのは当然なんですが、いずれにしましても、この採算問題について、私も大蔵省に参りましたけれども、大臣御自身が、やはりもっと具体的に運輸省と詰めなければいけないのです。実際また、そういうことで具体的に協議するという覚書を取り交わしていらっしゃるわけですが、こういう協議はその後どういうふうに進展をしているのか。
  136. 栗林貞一

    ○栗林説明員 先生おっしゃいますように、昨年の暮れの予算の最終段階におきまして、運輸大臣と大蔵大臣との話し合いで、今後この問題につきまして事務的に協議を進めようということになったわけでございます。私ども一月の下旬以降、大蔵省とは事務的にずっと議論を進めてまいりました。  主な論点は、先生おっしゃいましたように、やはり採算性の問題でございまして、採算性と申しますと、たとえばいまお話に出ました需要予測をどう見るかといった問題がございます。それはGNPの伸びをどう見るかというあたりの議論から始まるわけでございますが、そのほかに現大阪空港を廃止するのかしないのか、これが御承知のようなことで、まだこれから決めることになっておりますので、そういった場合の想定。それに関連しまして、建設資金の調達の条件ということもございますし、また、建設費の額について、現在実は現地で土質の調査をやっております。ボーリングの調査をやっております。あるいはまた、地盤改良の実験をやっておりまして、その成果もだんだんあらわれてまいりますので、その辺も含めながら、採算の前提条件をいろいろ考えて、大蔵省とも議論をしておるところでございます。
  137. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 いまのお話を聞いておりますと、大蔵省との詰めばまだ終わりには大分遠いような感じを受けたわけです。そうしますと、政府部内でまだ十分一致もしていないし、大蔵省のその前段の詰めも十分終わっていない。これでアセスメントの方から言えば、非常に大事な土取りのアセスメントというのはやられていないということになって、着手につながるこの予算とおっしゃいましたけれども、何で実施設計調査費というのを計上するというようなことになっていくのか、ここのところが全然わからないわけです。これはもうお聞きしても同じような話になると思いますのであれですが……。  兵庫県と和歌山県は八月じゆうに回答を出してくるであろう、こういうことでありますね。先ほどそういうふうにおっしゃいましたね。この七月の六日に大阪府が出した回答というのは、大阪府下では非常に府民から批判が出ているわけです。その批判は、内容面からも手続面からも出されているわけですが、主として手続面についてお伺いしておきたいのです。  運輸省が地元の了解を得てという場合の、この地元というのは、一貫してそれは府と県だ、こういうふうにおっしゃることは承知をしているわけなんです。しかし、その場合でも、その府県が地元の市町村の意見だとか、住民意見をよく反映させた態度をとっていく、このことはもう当然の前提だと思うのです。そういう市町村や住民意見を反映していないようなものは、幾ら県の意見だというふうに言っても、それは地元の了解という場合の、この地元ということにはなり得ないのじゃないか。これは一般論ですよ。一般論で聞いているのですが、これは府の意見です、こう言ったって、十分そこの市町村や住民意見を反映していないもの、これは逆に言えば、十分この府の意見とは言いがたいのじゃないか、こういうふうに考えるのですが、これは一般論としてまず聞いておきたいわけです。
  138. 栗林貞一

    ○栗林説明員 私ども、このようなプロジェクトを進めるに当たりましては、関係地域社会の理解と協力がぜひとも必要であるというふうに考えておりまして、それでいわゆる三点セットというものについて関係府県にもお示しし、その意見を求めてきたところでございますが、先生おっしゃいますように、私どもは、直接の窓口は大阪府の場合でございましたら府を相手にしておるわけでございますが、これは相談の上でそういう取りまとめがよかろうということになりまして、そういう扱いにしたわけでございますが、当然関係市町村あるいは地元住民の方々の御意見も集約していただきまして、府から国あてに意見が出てきたも  のと考えております。
  139. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 十分聴取されてと、こういうふうにおっしゃるわけですね。事実、前例のない七日間連続の公聴会をやりましたとか、地元の八市五町とひざを交えて懇談をしてきましたとか、こういうことを言っていることは、私も新聞の記事なんかからも十分うかがえるわけなんです。しかし、実際その内容なんですが、一体どういうふうに掌握していらっしゃるつもりなんでしょうか。
  140. 栗林貞一

    ○栗林説明員 大阪府から七月の六日に、私ども、この三点セットについての見解をいただきました。それではいろいろ留意事項というのがございますが、計画の具体化を進めるべきであるという結論で回答をいただいたわけでございますが、その添付資料といたしまして、いま先生おっしゃいましたような、公聴会の記録そのものでございますとか、あるいは関係市町の長といろいろ話し合いをした結果としての市、町からの意見といったようなものも添えてございまして、私どもそれを拝見しております。そういうものを見ましても、それぞれこれからの進め方についての要望というのはございますけれども基本的には、この計画の具体化に取り組むべきであるという結論になっているというふうに承知しております。
  141. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それがちょっと理解が非常に都合よく、実施設計調査費を要求される於けあって、何というのか、先走りした理解の仕方だなというふうに思うわけなんです。確かに公聴会をやられました。中を読んでいただいて、多分そういうこともわかっていらっしゃるのだろうかなと思うのですが、四割の人が反対意見を出したわけですね。残りの六割の人、これは空港必要論ということの立場で物を言っている人たちの中でも、現段階ではしかし、非常に疑問点が多過ぎるのだ、環境影響評価についても、地域整備についても、空港計画及びその財源対策についても疑問が多過ぎるという意見がずいぶんたくさん出ていたのがその特徴であったということは、これは一般の新聞でもずいぶん報道されていた点なんですが、ここのところがわかっておられたら、大阪府の回答の理解の仕方が違うというふうに思うのです。  それから八市五町の首長との懇談でも、特に泉南の八つの首長の方ば、現段階では可否判断ができないということで一致した意見を述べているわけです。その後この八つの市と町は、それぞれ市長、町長の名前で、表面的には確かに、運輸省に出した回答というのは計画の具体化を急げという趣旨の回答であったわけなんですが、これは表面的なあれで、その意味するところは、大阪府の言った回答の中身とばもう全然違うわけです。大阪府の回答というのは、府の当局者みずからが述べているように、これはゴーサインだと、こういうふうに言ったわけですが、八つの首長の場合は、三点セットで示された計画案では可否判断はできないんだ、だから、アセスメント地域整備の問題をもっとよく詰めて、政府として責任を持って具体的な案を示してもらいたいんだ、こういうことで、この点では、大阪府や運輸省の、先ほどお伺いした意見とは、ずいぶん回答の意味するところが違うというふうに思うわけです。これは私が勝手に言っているわけではありませんで、保守系の泉佐野の市長さん、この人も、大阪府はこれを実質的なゴーサインと位置づけているわけだが、府と地元市、町との間では認識が全く違うようだ、環境地域整備についてまだ多くの問題が残されているのにゴーと同じというのでは、地元として協力できなくなる、こういうことまで言っておられるわけです。  こういうふうに地元の市、町、住民意見というものが、大阪府の回答と認識がずいぶん違っているわけなんですが、もう一度この点について、運輸省の御意見をお伺いしておきたいわけです。
  142. 栗林貞一

    ○栗林説明員 ただいまの御質問でございますが、私ども、大阪府に対しまして意見を徴しまして、大阪府ば関係市あるいは町の長といろいろ御相談になって、それで回答が出てきたわけでございまして、大阪府からは、先ほど申しましたように、いろいろ留意事項はございますけれども、計画の具体化を進めるべきである、こういう結論を出されたわけでございます。  それで、これは私ども直接府下の首長さんと具体的な点について話をしたわけではございませんが、いま先生おっしゃいましたような、たとえば泉南の関係八市あるいは町の長、連名で知事あてに出されている文書も、これは添付資料としていただいているわけでございますけれども、それを見ましても、下記の諸点を十分踏まえ、計画の具体化について精力的に取り組まれるよう要望いたしますということで、下記の諸点というのは、先ほど先生おっしゃいましたが、たとえば土取りの問題でございますとか、連絡橋でございますとか、そういった事業の実施に当たっては、事前に十分な環境影響評価が実施されるよう、つまり、それぞれの事業を実施する場合には、それぞれについて十分環境影響評価をやってくださいということ、それから、あるいは大気、水質などの環境上の諸問題については、今後、常時監視組織を設置することとか、そういった意味でのこれからの進め方についての要望は確かにございますけれども基本的な姿勢として、計画の具体化について精力的に取り組まれるよう要望いたしますという文書を拝見いたしておりますし、私ども、そういうことを踏まえて、府でおまとめになって回答が来たものということで受け取りました上で、予算要求についても今後対処していこう、こう考えておるわけでございます。
  143. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 投げかけられた石をもう一度返すという行為がないわけです。問いかけられているのに返していない。返していないで、問いかけられたのを回答というふうに受けとめて、そして、着手につながっていくこの実施設計調査費というのをつけていこうという行為というのは、地元の意見を聞くんだ、地元に可否判断を求めるんだと言いながら、ずいぶん乱暴なやり方だと言わざるを得ないと思うのです。  この問題は、まだ後々取り上げていきたいと思います。きょうは時間がありませんから次に移りたいと思いますが、そういうことで、いまこういうふうに財政問題がいろいろ言われている時期に、地元の意向をそういう都合のよいように解釈を進めて、そして一地元から出された疑問点にも十分答えないまま、そういう予算を要求していくということについては不当だということを私は申し上げて、次に問題を移していきたいと思います。  次に、長官にお伺いいたします。  この間の委員会でも、ナイロビの国連環境会議では、戦争こそ最大の公害であるということが議論されたという問題について、私は長官見解を求めましたけれども、あのナイロビ会議では、もちろん森林の保全ということも強調されたわけです。  私は、今回の長崎の豪雨災害や、あるいは台風十号、その直後にありました豪雨、そういうふうに続いていった災害を見てみますと、災害もまた大変な環境破壊だというふうに本当に思いました。たくさんな山崩れもありましたし、水のはんらんによる環境破壊等、地域社会の破壊というのですか、こういうもので、私は実際に現地へも行きましたし、テレビも見ましたが、多くの人命を奪ったあの災害でした。あの災害というのは、逆に環境破壊が災害をもたらした大きな原因にもなっているわけなんですね。だから、環境破壊が災害をもたらし、そして、さらにその災害が深刻な環境破壊を広げていく、こういう点から、私は長官に御意見をお伺いしたいわけです。  災害が起こりますと、いっでも、あれは天災というよりは人災ではないかということが言われるわけですが、人災と言われる理由の中には、河川の改修のおくれとともに、いつでも理由に挙がってくるのは、乱開発の問題なんですね。防災という立場を忘れて森林を伐採し、その伐採した跡を宅地化していくという、この大変無計画な開発が、自然の保水力あるいは自然の遊水機能というものを奪ってしまって、能力以上の水を川に押し流していって、はんらんを非常に頻発させるような状態になってきた。こういう点で、ナイロビの会議で森林の保全ということを強調されているわけですが、私はやはり、無計画な開発と伐採の規制ですね、森林の保全、自然を保護することが、防災面からも非常に大事なことなんだよということが、今回の災害の教訓として一番見るべき点だというふうに思いますが、この点で長官としての御見解をお伺いしたいわけです。
  144. 原文兵衛

    原国務大臣 長崎地方を中心とする豪雨災害の状況、また、十号台風による災害の状況、私もテレビの画面等でもってずいぶん拝見をいたしました。  この問題については、いま藤田委員のおっしゃったと同じような感想を私も持ったこと、これは事実でございます。森林が、御説のように、自然環境保全はもちろんでございますけれども、それだけではなくて、国土保全あるいは水源の酒養、そして、それらは防災というような面につながる大きな機能をもっているわけでございます。われわれとしても、そういうような点を十分重視をしていかなければならないと思っております。  環境庁としましては、自然環境保全法あるいは自然公園法等の環境保全のための法律につきましても、森林の持つ国土保全機能というものに十分配慮した運用を行いますと同時に、森林法等、関係の制度の運用につきましても、森林の保全が図られるように留意してまいっております。しかし、同時にまた、先般の災害の教訓もあるわけでございまして、今後とも森林の乱開発というようなことの防止及び保全につきまして、関係省庁とも十分連絡をとりながら、一層努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  145. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、こういう問題が起こりますと、本当に環境庁にもっと権限があればいいのになあということをつくづく思いますね。  地域開発を見てましても、こんな開発の仕方でいいんだろうか。山を削るときでも、もっと環境面からきちっと押さえた住みよい町づくりという点で都市の自然環境を守っていく、環境を守っていく。町づくりの上からも、環境庁にそういう権限があればいいのになということを常日ごろ思っているわけですね。そういう問題も、国土庁だとか、やれ建設省だとか、しかし、実際に考えると、どの省にもそういう権限を網羅して持っているところがなくて、むしろそういうものは自治体任せになっている中で、私は、将来は環境庁はもっと広い意味で町づくりの上でも権限を持ってほしい、そうすればもっとこういう問題も、結局は押さえていく上で大きな力になってもらえる、そういうふうに、今度の災害地を歩きながら改めて思ったわけです。  この問題はまた後日、環境庁の御意見ども聞かせていただく機会をつくりたいと思います。きょうはもう時間がありませんし、緊急を要する問題で建設省の方にもお願いをしておりますので、大変残念ですが、次に譲っていきますけれども、そういう点で環境庁のこの権限の狭さというのですか、そういう無念さを改めて感じたことを述べておきたいと思います。  さて、今度の災害で、奈良県それから大阪府につながる大和川、これは長崎などの災害とともに非常に大きな災害をもたらしたわけなんですが、今回の豪雨というのは、もちろん部分的には豪雨に違いないわけなんですが、しかし、大和川水系で降った雨が、どこもかしこも長崎のように史上最高、未曽有のものだというふうに言われると、みんなそうかなと言いたくなるような通常よくある豪雨、ある程度これまであった豪雨というのでしょうか、そういう中でこれまでになかった被害が出てきたわけです。現地では、新聞報道でもありましたが、この水系の上流部での無計画な開発で、一たん降った雨を蓄えて徐々に流していくという機能がどんどん失われていく中で、実際雨が降ってから河川の増水までの時間が非常に短くなってきて、要するに、上流部での自然破壊が今回の災害の一つの大きな原因になったというふうに言わざるを得ないと思うのですが、この点、建設省はどういうふうに考えていらっしゃるか。
  146. 玉光弘明

    玉光説明員 お答えいたします。  いまおっしゃいましたように、一般的に申しますと、河川の流域が開発されますと洪水の流出量は増加するわけでございます。また、はんらん区域の資産もふえてまいりますので、被害は洪水が出たときに大きくなる傾向があるわけでございます。今回の台風十号につきましては、非常に大きかったわけでございまして、大和川の流域におきましては未曽有でございます。中流部、上流の出口に当たるところにおきましても計画洪水を超しておりますし、流域の平均の雨量を見ましても、二百八十ミリという大変大きなもので、これは過去に例がございません。  ちなみに、二十八年の洪水はかなり大きかったわけですが、これが流域平均で二百六十ミリ程度、それから、二番目に大きい三十四年でも二百十ミリ程度でございます。こういうことで、確かに今度の洪水は大変大きなものであったということを申しておきたいと思います。
  147. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 建設省は総合治水対策特定河川という制度をつくっていらっしゃいますね。これは特定河川に指定した場合には、河川の改修の費用を重点配分したり、あるいは流域市町村の協議会を設置して、そこで流域の開発の調整を行う、そういう内容のものだと理解しています。大和川の場合はこの指定にされているわけですか。  その点が一つと、それから、素人の私が考えても、河川を改修しても、それ以上の水が流れてくればどうしようもないわけです。先ほど、これまでの未曽有の豪雨だと言われましたけれども、現地に行って老人の話を聞いたら、生まれて初めてとみんな言うんですよ。七十以上の人がみんな生まれて初めてと言うんです。その点、何年かの間で一番雨が多かったんだという説明だけでは、とても納得できるものではないわけです。それはともかくとしても、これ以上河川の水量がふえていけばどうしようもないわけです。  そこで、流域の開発規制あるいは治水施設の整備は行われていかなければなりませんし、同時に、森林とか農地の保全によって、遊水や保水機能を維持していく、これまでのそういう治水対策の枠を越えた、もっと総合的な対策というのは、特に大和川水系の場合私は必要だと考えるわけですが、どうでしょうか。
  148. 萩原兼脩

    ○萩原説明員 お答えいたします。  まず、総合治水対策の特定河川に指定されているであろうかという点でございますが、今年度五十七年度から、大和川のうち奈良県内の流域の分だけにつきまして総合治水対策特定河川に指定してございます。  二番目の、先生おっしゃいますように、従来のような河川改修だけではいけないので、流域全体を十分管理すべきではないかというお話でございますが、総合治水対策という考え方が昭和四十年代後半から出ましたのは、やはり御指摘のとおり、河道をいじるだけでは治水対策の十全を期しがたいということから、できるだけ流域全体を見詰めて治水対策を立てようということでございます。特に奈良県内の流域につきまして、おっしゃいますような河道だけではなくて、流域の対策を含めたもの、当然それは、先生おっしゃいますように、流域に協議会というのが設立されますので、今後それを中心に協議していくことになるかと考えております。
  149. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それはぜひ、区域も広げて早急に対策を講じていってほしいと思いますし、ひとつそういうところに環境庁意見ども十分取り入れていってほしいものだと思います。  そこで、当面緊急を要する問題で、若干建設省にお伺いをしておきたいわけです。  今度のこの出水の原因なんですが、私、ちょっと大変恐縮ですが、大阪府内に限って申し上げますが、一般河川である西除川と、普通河川である今井戸川のはんらん、これで出水災害が出てきたということは十分御承知のことだと思うのですが、この西除川の出水の直接の原因というのは、一九%の河川改修率、まことに低い改修率なんです。これの問題と、それから、大和川本流との接続部のショートカットの問題これも御存じのことだと思いますが、この問題があったかと思います。  それから、今井戸川について言えば、今度の出水は、建設省の大和工事事務所の所長さんも、大和川本流の今井戸川への逆流だということを言っておられるわけなんですが、この点についてどう考えていらっしゃるか。  それからもう一つは、この逆流防止の水門を今井戸川につくるべく工事をしていたんですが、それが未完成であったわけです。これは建設省が市から委託を受けて仕事をやっておられますね。この工事部分の大和川堤防が大きな口をあけてしまいまして、工事のために口を広げたままであったということも直接の原因だと考えられるわけですが、この点についてはどういうふうに考えていらっしゃるか。
  150. 玉光弘明

    玉光説明員 御指摘の西除川と今井戸川でございます。これは両方とも現在大和川本川に出る出口が従来からあいております。まだ改修はできていないわけでございます。今回の出水は、本川の水位も大変高うございましたし、それから雨が下流でも降りまして、内水も多かったわけでございます。その両方が相まって災害を起こしたものであります。  いま先生のおっしゃいました西除川については、いま改修を進めているところで、ショートカットをして本川にすぐ抜くように計画をされておりますが、その関連事業等がありまして、鋭意努力している最中でございます。  また、今井戸川につきましては、おっしゃいましたように、下水道の事業で水門を設置するわけでございますが、これは本川に係るものでございますので、建設省が受託しまして施工中でございます。地元との調整もいろいろございまして、ある程度おくれましたけれども、現在、この時期にその河川の治水機能を失わないように配慮しながら工事をやっていたところでございます。ということでございまして、内水と、それから外水の影響ということで今回の災害が起こったわけでございます。
  151. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ここは大事な問題ですので、もう一度聞いておきたいのですが、今井戸川に対して大和川本川からの逆流があったということは認めていただけますね。一言で結構です。
  152. 玉光弘明

    玉光説明員 今回、逆流はありました。ただし、以前もこの状態であいておりますので、この程度のものがあれば逆流しているはずでございます。
  153. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 以前もあったというのですね。今回もあったけれども、以前もあった。それならなおさら、大和川本流から今井戸川への逆流というのは、治水対策上当然一級河川の管理者、大和川の管理者が責任を持つべき部門じゃないですか。
  154. 玉光弘明

    玉光説明員 おっしゃいましたように、本川の水位が高くなりますから、本川が高いときに水を切るために水門が必要でございます。したがいまして、いまその水門の工事をやっているわけでございます。
  155. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私の聞きたいのは、水門の工事をやっていると言われますけれども、実際お金を出しているのは地方自治体の方ですよ。  それで問題は、今井戸川に対して逆流があった、それは今回だけじゃなしに、過去にもあった、そういうことになれば、治水上今井戸川の水門についての問題は、当然その管理者が責任を持つべき部門じゃなかろうか。堤防に穴があいたら一生懸命ふたしてくれますよね。これはふたしてくれないと困るわけですから、土のうを積んでいる作業というのは大変感謝したいのですが、しかし、同じように責任があるのじゃないかということを聞いているわけです。
  156. 玉光弘明

    玉光説明員 水門の必要なことは先ほども申し上げたとおりでございます。事業をやるに当たりましては、それぞれの関係者がございまして、それぞれ分担して事業をやって予算を支出しているわけでございます。したがって、それを整合していきますと治水上の目的は達せるわけでございます。たまたまこの場合、今井戸川が普通河川でございまして、下水道の所管ということに仕分けしておりますので、そっちの方から予算が出ているわけでございます。
  157. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 水門をつくりますね。これは普通河川なので下水道という位置づけで水門、ゲートを市の方がつくっているわけですね。地元の方がつくっているわけです。この水門ができても流れをふさいでしまうわけですから、雨が降ったら、さっき内水と言われましたが、内水がはけていくところが当然要るわけですね。水門があっても内水が雨でふえてくるわ、水門があるために本流へ流すことができないわ、大和川から逆流してくるから水門はあけられないわ、こうなりますと、どうしたらいいのですか。
  158. 玉光弘明

    玉光説明員 一般論で申し上げるとよくわかるかと思いますが、大きな河川がございまして、それに小さい支川が合流するという場合に、大きな河川の高い水位が小さい河川に影響しないように水門を設けるわけで、外水が高い場合にはそれを閉めておくわけです。その間、内水と申しますか、小さい河川の水は低位内地にたまるわけでございます。それを内水と称しております。それを軽減するためにはポンプで排水するという方法がございます。そういうことでございます。
  159. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 水門と排水ポンプとは一体のものだという御説明であったかと思います。時間がありませんので、そういうことを確認しておきたいと思うのです。  そういう上に立って考えるならば、いま水門だけがつくられて、そうして排水ポンプの方は全然計画されていない、当面あわせて計画されていないという状態の中で、地元の住民は、水門ができてもまた災害が繰り返されるのではないかという不安を大きく持っております。  きょうはもう時間がありませんので、大変残念ですがこれで終わりますが、先ほどおっしゃった西除川の河川改修が一九%といいましたら、全国平均の半分ですから、これはぜひ改修を急いでいただきたいし、それから西除川の上のダム、狭山池をダム化する計画、これは急いでいただきたい。それからショートカットの問題は、もうショートカットが完成してから十年以上たっているわけですから、これはもう一日も早くショートカットが活用できるようにやってもらいたいし、今井戸川の問題については、水門と排水ポンプは一体のものだとおっしゃった、そのように今後国の方の積極的な措置をお願いしておきたいと思います。  最後は陳情みたいになりましたが、そういうことで、時間がありませんのでもうこれでやめますから、いい答弁くださるのだったら言ってください。
  160. 玉光弘明

    玉光説明員 水門とポンプは一体とおっしゃいましたけれども、まずその前に、外水が入らないようにするだけでかなり低位内地の水位は下がります。効果があるわけでございます。さらに、それにポンプをつければもっと効果が上がるということでございます。  それから、御指摘ありましたショートカットにつきましても、これは本川水位の右岸側が水当たりになるわけで、人家が三百棟以上あるところでございます。十年ぐらい前から鋭意そこを改修するように現地で努力しております。さらに今後一層努めて、あの辺一帯の事業を促進したいと思います。
  161. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 きわめてその答弁は不満なんですが、ぜひとも浸水した家のことを考えてください。実際財産を全部やられてしまうわけなんですから、そういう人たち立場に立って、ぜひ現地に建設省から直接行ってください。見た人間ならば、いまのような機械的な答弁ができるはずがない、そういうふうに思います。非常に人口が過密なところだけに、対策を急いでいただきたいということを再度申し上げまして、終わりにしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  162. 八田貞義

    八田委員長 野口幸一君。
  163. 野口幸一

    ○野口委員 私は、いまから、直接環境影響評価法に関係はいたしませんが、この問題も最終段階においては大きく問題となる視点でございますので、その意味で、環境庁の方も十分お聞き取りをいただきたいと思っておるところであります。  京都市は、北部周辺地域整備拠点整備基本計画というものに基づきまして、京都市左京区大原大見町に大見総合公園を計画いたしました。計画いたしましたのが一昨年でありますので、すでに御承知だとは思いますが、この事業は総工費、当初の予算といたしまして二百四十億という莫大な計画をいたしておるものであります。この建設計画に関係いたしまして、一部市民団体がこの問題を取り上げて、単なる都市公園の建設問題というにとどまらず、その建設に関係して環境に及ぼす影響大、こういう見地から警鐘を打ち鳴らしましたのが一昨年の末でございます。この地はいわゆる京都の過疎地でありますけれども、皆さん御存じの大原三千院の北へ入りましたところでございまして、京都市は過疎地再生という言葉を使っておるわけでありますが、果たしてそう単純に、過疎地の再生ということだけで、そこに総合公園を設けるというには余りにも問題が多いのでございます。  以下、若干の現状を申し上げますが、いまも申し上げましたように、この公園を計画されております地域は、京都の有名な北山しぐれというのがございます、非常に降雨多量、寒冷、降雪地でございまして、各種の施設やグラウンドなどを仮につくられるといたしましても、その使用期間はきわめて限定をされる、また、市内からも相当遠いところにあるわけでありまして、総合公園としておつくりになって、完成の暁どうなるかということになれば、これはいまから予見をすることは定かではありませんけれども、今日の時点で思いますると、非常に実効の少ないものと言わざるを得ないのであります。  しかし、それはさておきまして、この計画に基づきますところの土地造成でありますけれども、莫大なる土地といいまするか、この土地は標高約六百メートルから七百メートルの地域にありまして、そこに大体面積といたしまして、この高原地帯百二十八ヘクタールを平均二十メートル程度埋め立てる、こういうものであります。私も現地を見てまいりましたが、そこを総合公園とするにしましても、二十メートルも埋め立てなければならない理由は存在しないと思うのでありますけれども、仮に百歩譲って、その必要があると考えましても、物すごい埋め立ての量でございます。京都市の計画によりますならば、私はもっと必要だ、百二十八ヘクタールを二十メートルといいますると二千万立方以上になると思うのですけれども、京都市の言っておりまするのは、とにかく十年間に約千五百万立方メートルのいわゆる残土を投棄することによってこの地を埋め立てていきたい、こう言っているのであります。  この残土と申しますのは、いまいろいろな問題点を頭から抜きまして、率直にきれいな土を持ってこられる、仮にそういうように判断いたしましても、これを運送いたしまするのはもちろんダンプカーであろうと思いますけれども、市内より国道三百六十七号線を通ります。三百六十七といいますのは、京都市から大原三千院を通りまして、途中滋賀県大津市に入りまして、今津を経て若狭に抜ける道でございますが、この三百六十七号を通りまして、そして、その途中から道路を建設いたしましてこの土地に入る、こういう予定にいたしておるようでございます。  この途中で入る道路の問題がございますが、これはまた後ほどお尋ねをする問題でございます。しかし、この残土をもって、千五百万立方メートルの土を運ぶということでございますけれども、仮に良質の土だということにいたしましても、いま申しましたように、大原三千院を通る。あそこの道というのはそんなに広い道ではございませんが、もちろん春と秋は行楽で人が物すごく出るところでございます。  先ほども申しましたように、冬季は全く凍結、積雪期間が長うございますし、春や秋はそういった観光客でにぎわうところでありまして、ダンプカーがそんなにぶうぶう通ってはどうしようもないというところでありますけれども、仮にそれが通るということにいたしまして、この十年間に一千五百万立方メートルの土を運ぶということになりますと、期間が短い上に、しかも、そういう狭いところを、観光地を縫って走るということになりますと、もう土ぼこりとか、そんなものは言うまでもありませんが、どうしようもない状態になるということは、京都市自体だってわかるはずでございますけれども、机上のプランといたしまししてはそうなっているわけであります。  投棄をいたしまするその場所というのは、滋賀県に安曇川という川がございますが、あれは一級河川でございまして、滋賀県の川の中でも一、二を争う大きな川であります。この川の上流に当たります。この安曇川というのは、滋賀県特産のアユの産卵で有名な河川であります。したがいまして、このアユ漁の時期あるいは産卵の時期等を考えまして、仮にその土砂が流れていろんな問題が起こるというようなことを勘案しまして、京都市はそういう時期にはそういう土を捨てないようにする、こういう、これも全く机上の空論でありまするが、仮におっしゃるとおりに説明をいたしますると、そう言われているのであります。そういたしますと、もう土を捨てる時期というのは全くないのでありますけれども、おっしゃるのには、春、秋の観光季節を抜いて、そして冬季の凍結時期というのを抜いて、そうしてアユの産卵時期や漁業の時期を抜くと、いつ運ぶのかな、こう思いますと、これは真夏の八月から九月にかけての二カ月くらいの間にしか土は運べない、こう思います。しかし、後ほど申しますが、その時期に捨てたからといって、その土のいわゆる泥汁が河川に流れて、アユ漁に大きな影響を及ぼさないというものではございませんから。これは後ほどの議論になりますけれども、全く下流の影響ということを考えないでお立てになった計画としか言えないわけでございます。  こういう問題を、京都市のおっしゃるように、都市公園の建設という素直な気持ちで眺めてみましても、非常に長い期間にわたって埋め立てをしなければならない。しかも、良質の土を捨てるという、そのこともまた、私ども一〇〇%そうであろうと仮に思いましても、まあそういうわけでございます。したがって、これは公園造成というよりも、土を捨てるのが目的でございまして、土を捨ててしまう場所について、まず場所をつくって、そのでき上がったところを公園にするんだという、いわば美名を利用いたしまして、土砂投棄をするんだということになるんだろうと思うのであります。したがって、私どもは素直に、先ほどまでこの京都市の案を受け取るように話をしてまいりましたが、逆に言いますと、全くそれは公園とは名ばかりで、土砂投棄のための計画としか思えないのでございます。  そこで、関係省庁にこの問題点について若干の御質問を申し上げたいと存じます。  まず、厚生省にお尋ねいたしますが、京都市における公共事業において、いわゆる残土の処理計画に基づくところの投棄場設定の計画なるものが、厚生省に対して申し出るといいますか、そういうようなうわさが厚生省の耳に入っておりますか、どうですか。
  164. 坂本弘道

    ○坂本説明員 お答えいたします。  京都府下で排出されます産業廃棄物につきましては、昭和五十年十月に策定されました産業廃棄物処理計画大綱に基づきまして、従来その適正処理に努めてきたところでございます。現在、現行の計画大綱の見直し時期を検討いたしますとともに、京都府及び京都市の関与のもとに京都環境保全公社を設立し、産業廃棄物処理事業を行う等、その適正処理のためさらに努力を重ねているところでございます。
  165. 野口幸一

    ○野口委員 そうしますと、もう少し詳しく申し上げますが、京都市における公共事業及び一般事業における産業廃棄物対策につきまして、いまお聞きした計画のようでありますけれども、先ほど来申し上げました、いわゆる大原大見地区の埋め立てについて、市当局はこれを残土でもって埋めると言っておりますから、これは産業廃棄物でないということでございましょうけれども、この土地について、産業廃棄物の処理場だというような、仮にもそういう話が厚生省に聞こえておりますでしょうか、どうでしょうか。
  166. 坂本弘道

    ○坂本説明員 大見総合公園の土地造成は、公共土木工事に伴いまして発生いたします残土を使用いたします。したがいまして、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二条第三項に規定する産業廃棄物は搬入しないと聞いております。
  167. 野口幸一

    ○野口委員 そこで、おもしろいのでありますけれども、京都における残土の排出がどのくらいあろうか、こういうことを推定いたしますと、いま公共事業のうち残土が一番たくさん出るであろうと思われますのは地下鉄であります。地下鉄の計画を聞いてみますと、同市では現在一本地下鉄を完成いたしましたが、もう一本東西、東山と西山とを結ぶといいますか、祇園、清水といいますか、ああいう繁華街と、嵐山、西の地帯とを結ぶ東西の地下鉄というものの構想があるとは聞いておりますが、財政上の問題もございまして、具体的なものはいま示されてないようでございますが、仮に十年という期間が言われておるわけでありますから、これに該当するものと想定いたしまして、距離をはかってまいりますと、大体十キロ以内の距離でございます。  そういたしますと、この排出します残土というものは、シールド工法、複線式トンネルのやり方でやったといたしまして、半径四・九メートルということに仮定をいたしますと、一キロ当たり七万五千四百三十立方でございます。十キロはその十倍でありますから、七十五万四千三百立方ということになります。これは駅もあれば附属工事等もございますから、その倍の土が出ると仮定いたしましても、どう勘定しましても二百万立方を超えるものではないわけであります。仮に工期は、地下鉄というのは長いことやりますから、十年かかってやったといたしましても、十年間で二百万立方程度の残土が出てくる。千五百万立方の残土が出るということは、五十キロ、七十キロという地下鉄を掘らなければ出てこないというものでございますが、一般に考えられる工作物によってできる残土なるものが、果たしてこの十年間に千五百万立方メートルも出てくるものかどうか。これはとうてい考えられない数字なのであります。  さらに、京都市は、この問題を提起いたしましたら、滋賀県側に対しまして、これは漁業組合でありますが、何も知らない漁業組合員に対して、御心配なさいますな、第三次処理までやりましてきちっときれいな水を流します、こう言ったそうでございます。何ゆえそのきれいな土を、その土といえども第三次処理をしていただくのは結構でありますけれども、第三次処理をやりますということをにおわせているのか。これは全く産業廃棄物も捨てさせていただきますよということを暗に言われているのではないだろうか。これは一般廃棄物の投棄が考えられているとしか思えないのであります。現在、京都市は一般の廃棄物の投棄場所について、公共の場合においても指定しておらないようでございますし、産業廃棄物の投棄場所についても、これは公共事業に伴うものについても指定をしていないようでございますが、その辺の関係について、厚生省お聞きでありましたら、御回答をいただきたいと思います。
  168. 坂本弘道

    ○坂本説明員 京都府における産業廃棄物最終処分場の現況でございますが、ただいまのところ公共関係が四つ、事業者自身が二つ、それから処理業者九つということになっております。また、将来計画といたしましては、現在公共関与によるものが一カ所計画されております。
  169. 野口幸一

    ○野口委員 公共関与によって計画されている場所というのはどこになっていますか。
  170. 坂本弘道

    ○坂本説明員 私どもの伺っておりますところでは、京都環境保全公社と伺っております。場所は京都市内になっております。
  171. 野口幸一

    ○野口委員 いずれにしても、今日の時点では、この大見地区には、先ほど来お答えになりましたように、良質の残土のみをもって埋め立てるということに限定をして、厚生省にそのような話をしているということは、確認いたしておきますが、そのとおりでございますか。
  172. 坂本弘道

    ○坂本説明員 お答えいたします。  私どもの方は、そういうことで限定してというふうに聞いております。
  173. 野口幸一

    ○野口委員 そこで、残土という問題でございますが、この残土というのは一般廃棄物――産業廃棄物でないというのですから、一般廃棄物に該当いたしますか。
  174. 坂本弘道

    ○坂本説明員 残土は産業廃棄物に該当はいたしません。
  175. 野口幸一

    ○野口委員 産業廃棄物に該当しないということは一般廃棄物ですね。そうではないのですか。
  176. 坂本弘道

    ○坂本説明員 お答えいたします。  残土につきましては、いわゆる廃棄物処理法上の廃棄物でございません。
  177. 野口幸一

    ○野口委員 そうすると、一般廃棄物でもないし、産業廃棄物でもない。いわゆる残土というのは別の項目にあるわけですね。そういう考え方ですね。わかりました。  それじゃそういたしまして、先ほど来僕が申し上げたように、残土というのは地下鉄の工事に伴うものだということに仮にいたしますと、これはどんなものが出てくるかわからぬわけですね、残土といえども。これはもちろん、仮に地下鉄というものを想定しました場合には、その該当する地点をボーリングして、どのような土が出るかということが予見できると思いますが、いずれにしても、残土全体の質というのは、今日の時点で、たとえば京都はまだ地下鉄をやると言っていないわけですから、地下鉄だけに限定するわけにもいきませんし、どこのビルを建てるため、掘ることによって出てくる土だということになりますと、今日の時点で、残土という概念だけで必ずしも良質ということは言えないものだと思うのです。ちょっと厚生省に言うのも無理なのかもわかりませんが、おわかりになれば聞いておきたいと思うのですけれども、残土必ずしも良質なものだと言えない、どうですか。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  178. 坂本弘道

    ○坂本説明員 残土が良質か良質でないかということを、私どもでお答えするのは非常にむずかしいことでございますが、残土につきましては廃棄物処理法の対象にはいたしておりませんということでございます。
  179. 野口幸一

    ○野口委員 その問題は工法なども関係いたしますので、建設省などとも関係をいたします問題もございますから、また日を改めまして、そのときに質問を譲りたいと思っております。  厚生省の方、大変御苦労さんでございました。結構でございます。  次に、林野庁にお尋ねをいたします。  先ほど申し上げました公園計画に基づきまして、この地に国道三百六十七号線から大見地区に入るために道路を建設したいというのが京都市の考えであります。京都市の計画によれば、公園のための道というのではなくて、これは生活道路だということで計画を立てているようでございますが、仮にその計画によるものだということにしましても、三百六十七号より大見地区に入りまする地域は、林野庁にとりましては水源涵養保安林に指定されている地域であると言われていますが、そのとおりでございますか。
  180. 小澤普照

    ○小澤説明員 お答えいたします。  ただいま先生御質問の、国道三百六十五号線より大見地区に入ります区域の森林につきましては、水源酒養保安林に指定してございます。
  181. 野口幸一

    ○野口委員 あそこは三百六十五だったですか。三百六十七じゃないですか。
  182. 小澤普照

    ○小澤説明員 失礼いたしました。三百六十七号でございます。
  183. 野口幸一

    ○野口委員 そういたしますと、水源滋養保安林に道をつけようと思えば、指定の解除を受けなければならぬのでございますが、この道をつけるというために解除の申請がなされましたでしょうか。
  184. 小澤普照

    ○小澤説明員 解除の申請がなされたことがございます。
  185. 野口幸一

    ○野口委員 新聞報道によりますと、この用地の確保のために京都市は、約三・八四ヘクタールの保安林解除を申請をした。林野庁はその申請に基づいて、京都府に対してあらかじめ解除予定であるということを通告をした。京都府はこの解除予定であるということの通知を受けて、予定地の地図や地番を住民に示して意見を求めている最中に、京都市はすでに幅八・五メートル、約二百七十メートルに及ぶ無断工事を開始いたしました。この事実は間違いございませんか。
  186. 小澤普照

    ○小澤説明員 京都市より、道路用地とするために三・八四ヘクタールの保安林の解除申請がございまして、この後、農林水産大臣から京都府知事に、当該保安林の解除予定通知を行ったのは事実でございまして、また一方、解除処分の効力が生ずる前に、京都市が無許可で道路工事を行ったということも事実でございます。
  187. 野口幸一

    ○野口委員 全くけしからぬことを京都市はやっているわけであります。仮にその工事そのものは、先ほど来申しておりますように、正当な理由があるものであるにせよ、保安林の解除の決定を見ないうちに工事を始める、一体、保安林なるものをどのように認識をして、今日行政を行っているのかということを疑わざるを得ない状態でございますが、しかし、これは全く林野庁に対してといいますか、国の行政に対して甘く見たといいますか、京都市自身は、そんなものは間違いなくおりてくるものだからやりかけようという、非常に思い上がった態度が見えるのでありますけれども、林野庁は、この事件についてどのようにお考えですか。
  188. 小澤普照

    ○小澤説明員 私どもといたしましては、指定されました保安林の維持、管理につきましては、その保全を図っていくということが使命でございますので、こういう違反の行為につきましては、これに対しまして、内容にもよりますけれども、復旧あるいは植栽というようなことを、これは、保安林の通常の管理につきましては、都道府県知事に権限を委任しているものでございますので、知事さんを通じまして、何か違反行為が生じましたときには即座に対応するようにしてございます。
  189. 野口幸一

    ○野口委員 これは本件に関係する問題ではございませんけれども、林野庁さんにお願いしておかなければならぬと思うのであります。  先ほどの質問にもございました、今回の長崎の水害や、あるいは台風十号によるところの被害が非常に大きく、もちろん予期せざる災害であったことは間違いございませんけれども、それを最低限に食いとめるということ、あるいはまた、その災害を軽微にせしめるための森林の役目というのは、先ほど来長官もお答えになっておりますように、大切な行政の一つであります。したがって、これは道をつけるのだからということで、申請があればすぐおりるという安易さも、当該府県や、あるいはまた市町村にあるのかもわかりませんけれども、林野庁も確固たる信念で森林を守り、かつ水源地を守り、先ほども言います災害防止立場からも、保安林の維持、確保の問題については、特に意を用いていただきたいと思うのであります。  また、私は過日国有林を見せていただきましたけれども、いわば丸刈りにするのじゃなくて、間伐という形で木を切らしていただきますと非常にコストが高くつく、したがって、今日では、間伐をいたしました間伐材の処理をするといいますか、売却をする価格と間伐に要する費用とが合いませんで困っておりますというような話も聞きました。確かに水災害を防止するために、あるいはまた、水源の確保のために間伐ということをおやりになっている。そのことについて費用が非常に高くつく。これを何とか国の方でめんどうを見てもらえないかという話も聞いてまいりました。確かにそのことも必要であります。その辺のことも、私どもこれから決してないがしろにしてはならない課題であろうと思っておるのであります。と同時に、やはりいま問題がありましたように、こういった行為、つまり許可がおりないでもすでに手をつけるという行為が、これは聞くところによると、本件だけではなくて、間々行われていることだそうでございます。  というのは、申請をして大体おりるという、いわゆる仮におりてくるということであります。仮におりてくるというのは、もう間違いないからやってもよろしいよ、あるいはまた、伐採の時期だとか、それが工事の時期にかかわる問題として、予定を立ててそれをやるということによって、実は本決定がなされる前に工事が行われるというのは、間々あることだと聞かされているわけでございますが、林野庁、この問題はどうですか、間々あるのですか。
  190. 小澤普照

    ○小澤説明員 ただいまの先生の御質問は、保安林の解除にあらかじめ先立つ予定通知の意味合いについての御質問かと思うのでございますけれども、このあらかじめ通知をするというのは、森林法の規定に基づいて行っているものでございまして、森林法では、農林水産大臣は、保安林の指定または解除をしようとするときは、その旨を都道府県知事にあらかじめ通知しなければならないということでございまして、そういう規定に基づいて通知を行っているのでございまして、もちろんこの通知の意味合いは、これは告示期間が定められてございまして、四十日の告示期間がございます。法律上は、その四十日のうちの三十日の間に、直接の利害関係者等がこの解除について異議がある場合は、異議を申し立てることができるという措置を定めておりまして、そのために告示をしておるということでございますので、あらかじめ通知をして、あるいは告示をして、そこでそういう工事あるいは違反事件が起きるということは別個の問題でございまして、もちろんそれが間々あったりということは好ましくないことでございます。  したがいまして、本件につきましても、京都府知事より、その違反行為を発見した際に、すぐに京都市に対しまして指導いたしまして、復旧あるいは植栽を行わせているものでございます。
  191. 野口幸一

    ○野口委員 先ほど一般論で申し上げましたが、いずれにしても、今日この保安林の解除をするという行為について、少しく形骸化しておりまして、聞くところによりますと、その指定解除になる決定の前のいわゆる予備期間といいますか、あらかじめこれはそういうことで、法律に基づいて行われる通知が、すなわちもう工事着手になっている例が多いということを聞かされておるわけであります。たまたま本件は、そういうことに対して異議申し立てがありましたから見つかったわけでありますけれども、どこどこの保安林を解除して、道路なりいろいろなものをするにいたしましても、すでに着手をするというのが通例のように聞かされているなんということを堂々と言う人がありまして、私も驚かされたのであります。  林野庁としては、本件の問題についても、こういう事件を一つの契機にされまして、保安林の解除の問題についてはより慎重に、しかも、現地においてこのような違法行為のないようにお努めをいただきたいと思うのでありますが、不法伐採をいたしました者に対する処分、森林法第二百六条に対する見解はいかがなものですか。さらにまた、すでに道路工事を行ったところはどのようにしておるのか。私は、現地をすでに見てまいりましたが、林野庁の方はどのように把握しておられますか。
  192. 小澤普照

    ○小澤説明員 幾つかの御質問内容になっていたかと思いますが、まず第一点に、先ほどもございましたのですが、告示後工事をやっている事例が間々あるのじゃないか、こういう御指摘でございますが、これは事実はちょっと違っているというふうに解釈してございます。私どもとしては、告示期間が先ほど四十日ございますと申し上げました。なお、異議申し立て期間につきましては三十日というふうに規定されておりまして、私どもの方の行政上の指導といたしましては、三十日の異議申し立て期間が経過した場合につきましては、知事の許可を受けて工事をすることはあり得る、こういう判断でございますので、許可を受けておやりになる場合は、これはよろしいということでございますが、無許可の場合は違反ということになるわけでございます。  それからその次に、無許可等の伐採についての森林法上の処置の仕方ということでございますけれども、森林法第二百六条につきましては、これはいわゆる罰則の定めでございますけれども、本件について申し上げますと、知事の許可もなく土地の形質の変更を行ったものでございまして、この場合、京都府の指摘を受けまして、市の方は直ちに当該行為を中止いたしますとともに、復旧工事等を行う等、速やかに是正措置を講じたということでございますので、二百六条は援用しておりません。つまり、あえて司法機関に告発等のことは行ってございません。  なお、本件の扱いがどうなっているかということでございますけれども、私どもは、こういう違反行為の処置につきましての京都府からの御報告を受けておりまして、これによりますと、現地につきましては、植栽その他の復旧的な行為でございますけれども、復旧工事を行っているという報告を受けております。
  193. 野口幸一

    ○野口委員 新聞なんかでごらんだろうと思うのでありますけれども、去年の十二月の朝日新聞によりますと、すでにこれだけの道を平たく広げてしまっているわけですね。復旧というのは、山地を削ったところをもとへ戻して、そしてここへ植林をするというのが復旧じゃないですか。
  194. 小澤普照

    ○小澤説明員 お答えいたします。  私もその写真は拝見しておるのでございますけれども、すでに道路が一部ございます。それ以外に、その道路の拡幅あるいは森林のところに新しい道路をつくるという御計画のようでございました。  それで、いま御質問の、復旧とはどういうものを指すかということでございますけれども、これはそれぞれケース・バイ・ケースになると思うのでございますけれども、私ども、都道府県の方々に御指導申し上げておりますのは、実態上保安林の機能が確保されるようにという点から、その復旧の指導の仕方は、実際個々のケースによって異なりますけれども、たとえば土を削ったからそのまま盛るということには必ずしもならないケースもございます。というのは、盛った土というのは雨等が降りました場合にまた流出するケースもございますので、その辺はその実態に即した復旧の形をとる必要があるかというふうに考えております。
  195. 野口幸一

    ○野口委員 いずれにしましても、私の見たところによれば、復旧とは名ばかりで、いつでもまたもとの道路にできるように考えていらっしゃる植林の方法でございまして、これが本当に林野庁が命じたといいますか、その指示に従って植林をした、それからまた、復旧をしたとはとうてい言えないような状況で復旧工事なるものがなされておる現状でございます。この点について私はこの委員会で詰めるといいまするか、責任を追及するとかいう立場じゃなくて、少なくとも、先ほど来申し上げましたように、保安林の性格に基づくところの確固たる信念をお持ちになった、いわゆる今日の森林対策、あるいはまた、保安林等の行政に対して、もう少し実のあるといいまするか、より一層の御努力をいただいておかないと大変なことになるのではないかということを、まずこの機会に申し上げておきたいと思うのであります。  もちろん、この地点の解除申請は、先ほど来の話じゃありませんが、まだ解除になっていないわけでありまするから、再び解除するかどうかということをお聞きしても、恐らく申請が出た時点で考えますという答えが返ってくるに違いありませんから、あえて聞きませんけれども、どうかさらにもう一度、この解除申請が出たときには、この地に果たしてこの道路が必要なのか、あるいはこの保安林を解除することによって、水源酒養地であるところのこの地がどういう影響を下流に及ぼす地点であるかということをよく御調査の上で、この認可をしていただきたいということを重ねて強く申し上げておきます。  ここは、先ほど来申し上げておりますように、滋賀県の安曇川の上流の百井川と大見川の二つの上流地点にありますところでございまして、いわば安曇川の水源地でございます。後ほどこの安曇川の問題についてはいろいろ申し上げますが、いずれにしても、この上流で水源酒養林を簡単に、その地点の判断だけで解除を許可されるということについては問題がございます。どうか林野庁の方も、きょうのこの私ども質問を契機に、より慎重に御検討いただくことをお願いいたします。ひとつその点について確認の御返事をいただきたいと思います。
  196. 小澤普照

    ○小澤説明員 今後どのように扱うかという御質問でございますけれども、先ほどからの御質問の解除申請につきましては、現在京都市の方から申請の取り下げが行われておりますので、言うなれば、現在白紙の状態になって戻っておるということでございますが、今後、仮に申請が出された場合はどうするのか、また、慎重に対処するべきである、こういうような御指摘かと思いますが、私どもといたしましては、もし仮に、解除申請が今後行われた段階におきましては、この保安林の持っております役割り、それから森林法の定めております要件に照らしまして解除の適否を判断してまいりたい、かように考えております。
  197. 野口幸一

    ○野口委員 次に、農林水産省にお尋ねいたしますが、水産資源保護法によりますると、水産資源保護のために保護水面なるものを設けて、また指定をいたしまして、保護水面の区域内について水量、水位の変更はもとより、この区域内の水産動植物の保護培養に努めるために、いわゆる工作物等に対し必要な勧告をすることができる、これは条文は各条に分かれておりますが、簡単に言いますと、こういうように解釈されます。この区域内というのはどういう意味を持っておるのでしょうか、まずお尋ねをいたしたいと思います。――林野庁、結構でございます。
  198. 小川洋二

    ○小川説明員 お答えいたします。  保護水面の区域内の意味でございますが、これは水産資源保護法に定めるところによりまして、水産動植物が産卵し、あるいは稚魚が生育し、または種苗の発生するに適した水面でございまして、その保護培養のために必要な、増殖の措置とか、そういったものでございますが、必要な措置を講ずべき水面として農林水産大臣が指定した区域、こういうように定義されておるわけでございます。
  199. 野口幸一

    ○野口委員 先ほど来問題になっておりまする、滋賀県安曇川の下流地先は、いま申されました水産資源保護法の保護水面になっておりまして、アユの稚魚、成魚もそうでありまするが、保護培養のために必要な水面として指定をされているところでございます。  ただ、この条文だけを真っすぐ読んでおりますると、この保護水面という、いわゆる指定された水面だけがそういうことでいわば保護される、あるいはまた、先ほど申し上げましたように、工事、工作物等が行われるという場合に対して、必要な勧告ができるということになっているわけでありますけれども、御案内のように、水というのは続いておるわけでありまして、ましてや、川の場合は、これを保護水面だといって決めましても、一メートル先でも、仮にここでしゅんせつが行われたら、この保護水面は全く用をなさないように汚れてしまうわけでありまするから、この保護水面といういわゆる狭義の解釈は、川の上流、中流、下流という立場を考えましても、下流なら下流にこれがありましても、中流に及ぼす、あるいは中流から、中流と言わなくても、仮にこの保護水面から五百メートルでも一キロでも先にそういうことがあれば、当然その保護水面に及ぼす影響があるわけでありまするから、そういたしますると、保護水面を維持するために、その保護水面のいわゆる区域というものを、いわば水産動植物の保護培養に努めるためにといいまするか、その上流についても一定限のこの法律に基づくところの意義と申しますか、及ぼす影響というものは存在し得るものと思いまするが、いかがなものでしょうか。
  200. 小川洋二

    ○小川説明員 お答えいたします。  保護水面内の工事につきましては、御指摘のように、農林水産大臣が、あるいは都道府県知事、これは保護水面の管理者でございますが、埋め立てや、しゅんせつ、あるいは流量、水位の変更を伴うような工事につきまして許可することになっておりますし、また、それが保護水面の管理上障害になるようなことがございますと、その計画の変更とかを命ずることができることになっておるわけでございます。  それで、御指摘の、保護水面の外の区域でございますけれども、これにつきましては、保護水面に接続はしておるけれども、指定された保護水面の区域外のそういったような工事については特段の規定がないわけでございます。  しかしながら、先生御指摘のように、上流の方でこういったような工事が行われたり、あるいは環境が非常に変化する、そういったようなことで、保護水面の設定の目的あるいは保護水面の管理に重大な支障が生じる、こういったようなことが認められる場合にありましては、やはり水産資源保護法の趣旨にのっとりまして、この工事の施行者に対しまして、保護水面の管理者、都道府県の知事あるいは農林大臣ということになるわけでございますが、それを通じまして適切な指導を行ってまいりたい、こう考えている次第でございます。
  201. 野口幸一

    ○野口委員 もう一度ちょっといまの話を確認させていただきますが、そうすると、法律上は保護水面の区域外の問題についても、結局水面は続いておりますし、ましてや川の場合は、上流でそういういろいろなことがあるとするならば、下流に及ぼす影響なしとしないわけでありますから、そこにおけるところのいろいろな環境に変化を及ぼすような場合においては、法律にはないけれども、この水産資源保護法の精神にのっとって適切なる指導を行う、また、そういうことについても、いろいろと示唆をすることができるということでございまするか。そういうように解してよろしゅうございますか。
  202. 小川洋二

    ○小川説明員 水産資源保護法に基づいての工事の制限等を行うことはできませんけれども、当該保護水面に影響を及ぼすような工事がございますれば、水産資源保護法の趣旨に基づきまして、行政指導といたしまして、保護水面の管理者、野洲川の場合は滋賀県知事ということになりますが、を通じまして、適切な指導をしてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  203. 野口幸一

    ○野口委員 いま野洲川とおっしゃったですけれども、安曇川でしょうね。(小川説明員「失礼いたしました、安曇川です」と呼ぶ)わかりました。  それでは、適切なる指導をやってもらわなければならぬということについて御確認をいたしておきます。  次に、もう時間がありませんから、アユの問題を申し上げたいのです。  最終的に、この問題は環境庁にも関係をいたしまするけれども、特にアユ、イワナ、マスというのは清流を好みまして、いわゆる藻苔、コケや藻を食べるのであります。これに泥水といいますか、濁り水がかかりますると、仮に非常に薄い濁り水でも、藻苔に膜がかかった状況になりますと、全然食べなくなりまして、もはやその川に遡上しなくなるというのがアユの特性であります。安曇川の水源地ともいうべき京都の大見地区に、先ほど来申しております、この計画が実施をされますると、全く安曇川のアユというものは死滅を招くということも考えられまして、非常に重要な問題でございます。  したがって、これは最後になると思うのでありますが、環境庁にお尋ねをいたしまするが、いままで聞いていただいたように、この問題はきょうだけの質問にとどまらず、後ほどもまたいろいろと御質問もし、さらにまた、環境庁に対し、あるいはまた、関係省庁に対してもいろいろと申し上げてまいりたいと思っておりますが、とりあえず、きょうの時点で申し上げますことは、いまのやりとりの中でも考えられますように、この工事を差しとめさせるという確たる関係法令といいますか、そういうものは現在のところ見当たりません。したがって、これはもうあくまでも、具体的には関係住民の死活にかかわる影響であるし、それから、全国の約六〇%のアユを滋賀県が生産をいたしておりますが、稚アユの生産のこれまた重要な拠点であります安曇川の水質を守るために、重要な本件の施策というものは、ぜひとも環境庁においても十分な対策をお考えいただかなければならぬのじゃないだろうかと思うのであります。  河川法上の問題点も、また日を追いまして考えさせていただきますが、いま考えられる状況としましては、当該百井川とか、いわゆる京都府に属する河川は普通河川でありまして、国有財産法に基づくところの制限だけしか考えられないというような問題もございます。  ただ、工法等の問題につきましては、いろいろとございますので、これまた研究させていただいて、問題提起をさせていただきたいと思っておりまするが、自然を守り、日本の誇るべき河川の魚の代表ともいうべきアユを守っていくために、環境庁の行政指導と、その対応をひとつお聞かせいただきたい。  二つ目には、いま環境アセスの法案を審議いたしておりまするけれども、先ほど来の審議を聞いておりましても出てまいりまするように、全く今日のアセス法案というのは、限られた事業だけを対象にいたしましてアセスを行うということになっておるのでありますけれども、少なくとも、いまさっきから申し上げました、国を代表するような動植物の保護育成という立場から、そういったものからも発想すべきで、現状変更に対してはアセスメントができる、そういうものが織り込まれなければ、本当の意味のアセスではないということが言えるのでありまして、環境行政のあり方について、あるいはまた、環境アセスメント法の本当のあるべき姿について、最後に大臣の御所見を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  204. 原文兵衛

    原国務大臣 アユのことにつきまして御指摘がございましたが、アユは言うまでもなく、清流に住む淡水魚の代表的なものであろうと思います。したがいまして、その生息環境を維持するということは、これは自然環境の面からも大変重要であると思うわけでございます。  いま、安曇川の件につきましていろいろとお話がございまして、実はその実情を私は初めてお伺いしたようなわけでございます。しかし、また同時に、いろいろな問題点もあるようでございますので、本件のような事案に対しまして、環境庁としてどのような対応ができるか、どのような対応が可能であるかというようなことも十分検討して対処していきたいというふうに思うわけでございます。  なお、御提案申し上げている環境アセスメント法案の対象事業には、おっしゃった動植物の直接の保護のためのアセスメントというようなことはございません。しかし、動植物の保護というようなことも、自然環境保全とともに非常に大事なことでございます。そういう問題につきまして、私どもはこれからも、いままでもいろいろと対応してきたつもりでございます。ことしの秋にはいわゆる世界野生生物基金のことでエジンバラ公が日本に見えるというような予定もありますが、動植物の保護という面につきましても、今後いろいろな角度から対応していきたいというふうに考えておるところでございます。
  205. 野口幸一

    ○野口委員 質問を終わりますが、この問題は非常に根深いものを持っておりますので、きょうの質問だけではございませんで、先ほども大臣からお答えがありましたように、環境庁としてどのようにかかわっていくかという問題点もございます。自然保護立場から、あるいはまた、こういった淡水魚の保護培養という立場からも、環境庁のとるべき、法令面だけの問題ではなくて、個々の事例について、環境庁環境庁としてとるべき行政指導の問題もあろうかと思いますので、これは時間をかけてまた申し上げたいと思います。
  206. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 土井たか子君。
  207. 土井たか子

    ○土井委員 長官は七月二十二日に、国道四十三号線の現地を、お忙しい御日程の中で御視察になったわけでございますが、現地にいらしていろいろと実情に接しられると、御見解の上で新たなものがあるのじゃないかと私自身憶測するわけですが、いらしての印象と申しますか、長官としての四十三号線対策に対する物の考え方と申しますか、それをまずお聞かせいただきたいと思うのですが、いかがでございましょう。
  208. 原文兵衛

    原国務大臣 七月二十一日の夜十時前後と、二十二日の昼間と両日にわたりまして、四十三号線を私は現場に参りまして視察をさせていただきました。土井委員ももちろん御承知のとおりでございます。  私は、実はここの四十三号線については、事務当局からいままでもたびたび話を聞いておりますし、また、予算委員会でも御質問ございまして、いろいろと頭の中で一応は描いておりました。しかし、この四十三号線、また大都市には、東京なんかでも似たような状態の、国道とその上に高速道路があるところもございますが、こういうような問題につきまして、交通公害対策としてもちろんのこと、いろいろな対策を総合的に実施していかなければならないと思うわけでございますが、四十三号線について言うならば、この沿道整備法に基づく沿道整備道路として、八月三日に、これは全国初めての沿道整備道路として指定されたところでございますので、沿道整備法に基づく沿道整備道路としての緩衝建築物であるとか、緑地の整備であるとか、その他の施策が速やかに行われるように、環境庁としても十分ひとつ督励をしてまいりたいというふうに思っております。  また、ことしの三月からですか、夜間十時以降、二十二時以降翌朝の六時まで、いま片側四車線でございますが、片側二車線ずつ通行規制をしまして、交通量の削減を図っているわけでございます。こういうものをまたさらに徹底することによって、ある程度の当面の騒音防止の効果が出てくるかと思いますが、しかし、さらに総合的に、この対策をもっと積極的に進めようという考えで、いまやっているところでございます。
  209. 土井たか子

    ○土井委員 御決意のほどは、積極的にお進めになるということを承るわけですが、具体的内容をどうするかという問題が、決意とはうらはらに、なかなかうまくいかないという実情があるわけでございます。  それで、もう長官御存じのとおりなんですが、兵庫県の方が調査いたしております交通量を見てまいりましても、これは一番問題になるのはやはり大型車なんですね。特に長距離輸送の大型車なんですね。もちろんもう御案内のとおりに、朝、昼、夜の区別なく、環境基準を大きく上回る騒音であります。しかも、要請限度値をはるかに超えているという中身でもございます。だから、そういうことからしますと、どのようにすべきであるかというのは、朝、昼、晩問われている問題ではありますけれども、しかし、住民の方々に聞くと、夜間、他の地域だったら安眠を当然のことながら約束されている時間帯も、そういう条件がこの場所ではない。一日二十四時間、この騒音と振動に悩まされ続けているのが実情である。ささやかな願いの一つは、何とか安眠を夜の時間に約束してもらいたい。だから、そういうことからすると、いま申し上げたとおりに、長距離輸送の大型車に対して、時間を決めて車両の規制をする、場合によっては通行規制を、このことに対してはきちっとやっていただくわけにはいくまいかというのが年来の念願なのですが、いかがでございますか。これはやはりお考えいただくべき一つの中身だと思うのですが、どうでしょう。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  210. 原文兵衛

    原国務大臣 お説のとおりでありまして、夜間は全体の交通量は確かに減りますけれども、その減った中では、夜間の方が大型車の割合がふえてきているという実態がある。そして、騒音にいたしましても、大型車による騒音というのは振動も伴いますし、相当影響が大きいわけでございますので、大型車を何とか高速道路に上げられないかというようなことで、そういういろいろな指導等もしてきていますが、それだけでは解決しない。また車線を規制する、半分にするということをやっても、確かに交通量はある程度減ると思いますけれども、それでも十分なことにはならないというととは私も感じます。  そうすると一体どうしたらいいか。ある程度のトン数以上の大型車の通行そのものを時間的にとめちゃうことができるか。これまた物流の関係その他で大変影響するところも大きいわけでございますけれども、しかし、またそれをやるのは、環境庁として交通規制をやるわけにいかないし、これは国家公安委員会とかなんとかということになりますが、おっしゃることは私も対策の一つの大きなポイントでもあろうかと思いますので、十分検討してみたいと思います。
  211. 土井たか子

    ○土井委員 実はいまも長官おっしゃいましたけれども、高速道路を利用して、高速道路の方に大型車を上げていくということの対策というのを、料金の上でも考えてみたいというふうなことを、現地にいらっしゃったときに御発言になったのを、私も同席をいたしておりましたからよく承知をいたしておりますが、しかし、これは大臣のお耳に入っているかどうかわかりませんが、実はいきさつがございます。  それは昨年の六月に、神戸から西宮までの阪神高速道路が、大阪まで延長されることになりました。ところが、延長されるのに当たりまして、沿道の住民の方々は、これ以上高速道路を建設することに対しては、われわれとしては賛成しかねるという声が非常に強かったのです。そのときに、実は国道四十三号線を通行している夜間の大型トラックの全車両が高速道路を利用することになれば、騒音対策としても従来にはない抜本的な対策になるからという物の言い方があったのです。ところが、いざ開通してみますと、そのとおりにはいかないのです。なぜかといったら、料金が高いから高速道路を利用できないというふうな実情があって、一向に国道四十三号線はよくならない。住民の方々はだまされた気になられまして、いまやもう県に対しても、公団に対しても、不信の念を非常に強く持たれているのです。  ところが、その次に、さてこの高速道路を大型トラックが夜間利用するようになって、果たして公害対策や振動対策というのがこれで十分になっていくかというと、さにあらずですね。恐らくは、振動は以前に増してきついものになるだろう。騒音も、沿道から離れたところはやはり音響というのがかなり響くということにもなるのではないか。いろいろな問題がございますから、高速道路の方に振りかえていくということが、果たして本当に抜本対策としていいのか悪いのかというのは、実はかなり論議のあるところなんでございますよ。そういうこともひとつ大臣はお含みおきの上で、抜本的な対策というものをぜひぜひ取り上げて、他の関係省庁とも本腰を入れてやっていただかなければならぬ問題だと思うのです。  申し上げるまでもなく、環境庁の方が委託をされまして野村総合研究所の方が実施されました「大型車交通公害対策検討調査」というのの結果が出てまいっておりますね。あれを見ましても、いま時間を限ってということを特に私は申し上げましたけれども、輸送路について、都市間の輸送ルートの整備や輸送時間帯の抜本的な変革、輸送機関をトラックから鉄道に転換するなど、交通体系全体を通じて取り組むという問題でなければならぬということも、この中で指摘されているわけですね。したがいまして、環境庁だけの手に負えない部面というものがここに出てまいりますけれども、やはり他の関係省庁とひとつきっちり意を通じて、環境庁中心になってこの問題を取り上げて、具体策をきちんと出していただくということは、ひとつ原環境庁長官が現役の長官時代に、具体的に実行していただきたい問題だと思うのですが、十一月になりましたら内閣改造がございまして、長官はさらに留任なさるのかどうかよくわかりません。そのたびごとに環境庁長官はくるくるかわるのが特徴でございますから、そういうことを考えてまいりますと、あと非常に心もとない、非常に心細い気がいたします。ひとつぜひ長官、現役の間にこれだけはやっておいてもらいたいと私は思います。これだけはというのは語弊があって、私はほかにもありますが、しかし、四十三号線については、以前にない問題が原長官時代に、ここでこういうふうにできたということをひとつ示していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  212. 原文兵衛

    原国務大臣 先ほども申し上げましたが、高速道路に上げるということ、私は、それでもって抜本改善ができるなどと思っておりませんけれども、それで少しは騒音の対策にはなるかというようなことも考えたのですが、これもいろいろ問題があることは御指摘のとおり。  そこで、いま土井委員言われるように、夜間の大型車、これも何トン以上とかいろいろ問題もあるけれども、それの通行そのものについて禁止をするというような、思い切った規制をすることはどうかということ。これは、先ほども言いましたように、警察初めその他の関係する省庁も非常に多いわけですが、私も積極的に取り組みます。それ以上のこと、いつまでにできるということは、関係省庁も多いわけですから、できないが、積極的に取り組むということを申し上げておきます。(発言する者あり)
  213. 土井たか子

    ○土井委員 もういままでにこういうことは警察庁の方にも申し上げ、自治省の方にも問題としていただき、もちろん運輸省の方にも、それから建設省の方にも、いろいろと事あるたびごとに問題にしてきたわけですが、言うはやすく行うはかたいというかっこうで今日まで引きずってきたかっこうなんですよ。いまも横から声が出ておりましたけれども環境庁というよりも、環境庁長官がまずイニシアチブをおとりにならないと、本当のところ動かない問題です。いまも決意のほどは聞かせていただきましたけれども、これはひとつ時間を限りまして、たとえば夜間の十一時から翌朝六時までとか、願わくは午後十時から翌朝の六時か七時までの間は、一定の規模以上の大型車については通行禁止ということを前提としてまず考えて、そのためにどうするかという取り組みをしていただかないと事は動かないと思うのです。
  214. 原文兵衛

    原国務大臣 先ほど申し上げましたのは、環境庁長官として積極的に取り組むということでありますし、いまの大型車の、その大型をどのぐらいにするかということもいろいろ検討しなければいかぬと思いますが、一定時間全面禁止ということについても、ひとつ関係省庁とも十分話し合って、私としては積極的に取り組むということを再度申し上げておきたいと思います。
  215. 土井たか子

    ○土井委員 それから、先ほど環境庁長官が御見解の中で述べられました、幹線道路の沿道の整備に関する法律に基づいての沿道整備道路としての指定の問題です。  これはすでに八月三日に建設省の方から出ているようでありますけれども、それについて建設省から経緯を少しこの節承っておきたいと思うのですが、どうでございますか。
  216. 田口二朗

    ○田口説明員 ただいま御質問のございました、幹線道路の沿道の整備に関する法律に基づきまして、沿道整備道路の指定というのは、都道府県知事が建設大臣の承認を受けて行うということになっておるわけでございます。いまお話のございました、兵庫県下の国道四十三号、これは二十・二キロでございますが、それと、その上に設置されております阪神高速道路神戸-西宮線、それから大阪-西宮線、合わせまして十九・九キロでございますが、これを沿道整備道路として指定することにつきまして、兵庫県知事から承認申請が出されまして、建設大臣の承認の後に、八月三日、兵庫県知事が指定を行ったということでございます。  なお、八月五日に地元関係機関で構成されます沿道整備協議会、これが発足しておりまして、今後は沿道の適正かつ合理的な土地利用の促進を図るために、同協議会等におきまして、総合的に調整を図りながら、沿道整備計画を策定する検討が進められると考えておる次第でございます。  建設省といたしましても、この道路がこの法律に基づく最初の指定でもございますので、沿道の整備が円滑、適正に進められますように、十分指導してまいりたいということを考えているわけでございます。
  217. 土井たか子

    ○土井委員 建設省の方からはそういうことをお聞かせいただいたのです。先ほど長官の方からは、指定された以上は、この沿道整備の問題についても鋭意環境庁として、自治体に対して、さらにこのことが具体的に成果を上げ得るような方向で努力をするという決意のほどは聞かせていただいておりますから、その辺はそのように理解をしてよろしゅうございますね。
  218. 原文兵衛

    原国務大臣 そのとおりでございます。
  219. 土井たか子

    ○土井委員 これも、これからいよいよ財政負担とか、いかにしてその効果を上げるかとか、難問がたくさんあると思いますが、そのように長官は決意のほどを御披瀝いただきましたから、さらに具体的に、これから問題を追って、私どもはその都度取り上げて、いろいろと問題にさせていただくことにいたします。  さて、自動車の問題でもう一つどうしても避けて通ることができないのは大気汚染です。  沿道の一つの自治体が、いろいろと大気汚染の測定をしております中で、どうしても目立つのはNOxです。大変残念ながら、現在、六十年度を予想して、予想値からして兵庫県は総量規制の対象地から実は外れてしまっているのです。  ところが、この沿道の自治体が測定をいたしております現在の数値は、私、手元にあるのですが、五十二年度を基準にして六十年度には約五〇%減少するというふうに、窒素酸化物に対して予測をしておりますことが、実はもうすでに、現状におきまして、予測をしてきた中身とは大分違ってきているのです。どのように違ってきているかというと、減少しなければならない中身が減少してないのですよ。実は横ばいなのです。もうすでに、この自動車の排ガス規制は継続して環境庁としても努力をされておりますし、工場からの排出量に対しても、減少を具体化させることのために努力をされているにもかかわらず、NOxについての測定値というのは横ばいなのです。私は、非常に深刻な問題だと思うのです。排ガス規制をやり、排出規制をやってこういう現状というのは一体いかがか、なぜこういうことになっているのかということは、その原因について種々検討していかなければならないと思うのですね。  排出ガス規制が、実際には環境庁が考えていらっしゃるほどの効果を上げていないのではないかという問題が一点あるのではないかと思われますし、交通量が予測をしたのよりも増加をしているという現状をもう少し見詰めなければならないという問題もあるかもしれません。さらに工場、事業場、その他の発生源からの排出量が、現在のままでいいのかどうかということをもう一度再検討し直す必要もあるかもしれません。そうして天然気象の影響というのも、その中に勘案する必要があるという意見も出てまいりましょう。  しかし、種々ある問題の中で一点だけきょうは取り上げて問題にしますが、自動車の排出規制について決められたことの中身をその後追跡、フォローされておりますか、いかがですか。このことについてお尋ねをしたいと思うのです。
  220. 原文兵衛

    原国務大臣 NOxについては、残念ながら、おっしゃるとおり横ばいでございます。何とかしなくちゃいけないというふうに思っているわけですが、いま大気保全局長から詳しくお話しさせます。
  221. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 御指摘のございましたように、兵庫県の地域におきまして、自動車排出ガス測定局の窒素酸化物の濃度がおよそ横ばいでございます。六十年までに環境基準を達成できるかどうか、予断を許さないと考えておるところでございます。  自動車排出ガスの効果についてでございますけれども、これはもうある。確信するところでございますが、なぜまだ効いてこないかということは、実は置きかわり方が案外遅いんでございます。いまここに二つ数字を持ってまいりましたけれども、五十六年三月末現在で、五十三年度規制の乗用車、十分の一以下にする非常に厳しいものでございますが、これがまだ四〇%まで行っておらないのでございます。それから、その他いろいろな車種につきまして厳しい規制を行っておるわけでございますが、五十四年規制、第一段階のトラック、バスがございますが、これがまたその置きかわり方が遅うございまして、同じく五十六年三月末で一八・三%なんでございます。しかしながら、自動車はだんだん古くなりますと置きかわるスピードも上がってくると思いますので、置きかわりますならば、これはもう効果があると思います。なお、使用過程車につきましても、検査等のときにきちんと検査をしておるところでございます。
  222. 土井たか子

    ○土井委員 いまのお答えを聞いておりましても、そうでございますかということにはちょっとなりかねるんですね。これは排ガス規制をおやりになったことに対して、永続性のある対策にすることのためには、やはり追跡フォローをきちっとおやりになる必要がありますよね。そういうことからするとまだまだ不十分でしょう。  特に気になるのは、NOxの中で、特にN02が占める割合がどんどん増加していっている現状であります。これも資料をよく御存じで、私が言うまでもないと思うのです。首を縦に振ってらっしゃるから恐らくよく御承知で聞いていただけていると思うのですが、皮肉なことにN02に対しての規制緩和がございましてから後、NOxに占めるNO2の割合がどんどん上がってまいっております。規制値については緩和したことがあだになっていますよ、一つは。それと同時に、なぜこういうことになったかということも、しっかり調べ直していただく必要があると思います。これはおわかりですか。なぜこういうことになったかということ。
  223. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 自動車からも煙突からもでございますけれども、出てまいります場合には、ほとんどがNOで出てくるのでございます。八〇%とか九〇%でございますが、それが出てまいりましてN02に変わる。そこで、御指摘がございましたけれども、自動車排出ガス測定局におきまして、NOの方は実は順調に下がりぎみなんでございますが、N02の方がでこぼこがございまして、一口に言いますと横ばいのような現象にあるわけでございます。そこで、一体これはなぜかということなんでございますが、一口に言いますと、実はきちんとはわかっておりません。それで、私どもといたしましては、沿道の距離その他におきましてどういう変化をするのか、調査に取りかかりたいと考えておるところでございます。
  224. 土井たか子

    ○土井委員 これは聞けば聞くほどいよいよどうにもならないですね。NO2の規制緩和ばかりは非常に熱心であって、現状NO2がどんどんふえていくことに対して、どういうことなのかという調査が非常にずさんであるというのは、もう聞くにたえぬ話だと思うのです。こういう問題に対しては、環境庁の存在意義がどんどんなくなっていっているではないかという批判を、十分に押し返すまでにやっていただきたい。これはぜひ必要だと思いますよ。約束できますね。
  225. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 NOからN02に大気中でどういう条件のときにどういうふうに変わるか、いろいろなデータを集めておるのでございますけれども、先ほど申し上げましたように、きちんとはまだ説明し切れておらないのでございます。これはやはりきちんと研究を進めねばいかぬということで、その研究に取りかかりたい。これはもうそのようにきちんと考えておるわけでございます。
  226. 土井たか子

    ○土井委員 きちんとお考えになって取りかかりたいとおっしゃるのは、大体その手順として、いつまでくらいにやりたいというめどを立てて、きちんとおやりになるおつもりですか。
  227. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 これまでは大体NOの量とNO2の量というのは並行するのではないかと考えておりましたのですが、諸般の知見に基づきますと、どうも必ずしもそうではない。これはやはりきちんと調べなければいかぬということで、来年度から調査をいたしたいと考えておるところでございます。
  228. 土井たか子

    ○土井委員 来年度から調査をするというのは、年次を限っておやりになるのですか。それとも、来年度だけについておやりになるわけですか。それも中身をちょっとおわかりになるなら、そして御予定がすでに計画としておありになるなら、それを聞かせておいていただきます。それがなければ、まだそれは聞くに値しない中身だというふうに理解をさせていただきます。いかがです。
  229. 吉崎正義

    ○吉崎政府委員 実は私、ただいま資料を持ち合わせておりませんけれども、いずれにせよNO2の問題は非常に重大な問題でありまして、規制自体はNOxで自動車排出ガスはやっておりますので、これが大気中でどうなるかということであります。ちょっといま資料を持ち合わせませんので、的確にはお答えできないのでございますけれども、年次計画を持って研究をいたしたい。計画でございまして、それは何年計画でございましたか、ちょっといま資料を持ち合わせておりません。
  230. 土井たか子

    ○土井委員 そういう問題については、今国会中は審議の機会がないようでありますから、臨時国会になりますか、ひとつさらに追及を進めていきたいと思うのです。  さて、環境庁長官、衆議院や参議院の委員会で附帯決議というのをよくいたしますが、附帯決議は遵守するのが義務だというふうにお考えになっていらっしゃるはずだと思います。これは当然のことだと思います。大臣、国会での附帯決議をそのようにお考えになっていらっしゃいますね。これは遵守するのが義務であるとお考えになっていらっしゃいますね。いかがですか。
  231. 原文兵衛

    原国務大臣 附帯決議につきましては、十分尊重して、それが実現できるように努力をするのが当然だと思います。
  232. 土井たか子

    ○土井委員 努力ということがいつもひっかかるわけでして、いいかげんの言いわけをして済ませるという努力もあれば、実際問題一生懸命やるという努力もあるわけでありまして、いずれもこれは努力という日本語で表現されるのが実はくせ者だということにもなるわけです。しかし、一応附帯決議として出た以上は、守らなければならないというのは大原則だというのは曲げられないと思いますが、それはそのとおりでございますね。いかがですか。
  233. 原文兵衛

    原国務大臣 附帯決議もいろいろな内容があろうと思います。それが決議どおりに実現できるかどうかということは、いろいろむずかしい場合もあろうかと思いますが、とにかく尊重して、最大限の努力をするというのは当然だと思います。
  234. 土井たか子

    ○土井委員 この決議というのは、言うまでもない話でございますけれども、与野党が全会一致しないと実は決議案は決議にならないのでございます。したがいまして、そういうことからすると、むずかしい中身もあるがとおっしゃいますけれども、やはり与野党がこのことに対しては十分に話し合って、十分に検討して、そして詰めた上で決議というものが具体化されるという経緯にかんがみ、大体は不可能なことはないというふうな前提で私どもは臨むわけであります。そのこともひとつ言わせておいていただきます。よろしゅうございましょう、そのとおりに考えまして。
  235. 原文兵衛

    原国務大臣 繰り返しますが、附帯決議に盛られたところのことは十分尊重して、そして、それの実現について最大限の努力をするのは当然で、お答えの中にも含まれていると思います。
  236. 土井たか子

    ○土井委員 私は大変くどく申しましたが、実は昭和四十八年六月二十八日に自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律案法律にする場合に、私ども衆議院の公害対策並びに環境保全特別委員会は附帯決議をつけたわけでございます。私は当時のことを非常によく覚えているのです。どれほどこの決議をするのに苦労したかということも経験として覚えているわけでございます。-また、同時に、同年七月十三日に参議院の公害対策及び環境保全特別委員会でも同様の附帯決議がなされているわけですが、この参議院の方の決議の第十項というところを見ますと、「開発理由とする公園指定の解除については、自然環境保全の重要性にかんがみ、これを行なわないことを原則とする基本方針で臨む」というくだりがございます。これは中身を理解してつづめて言えば、本来、公園指定がなされている場所においては、自然環境保全立場から開発は行わないということを原則とすると読むことができると思います。こういう趣旨というのを、長官としては尊重していただけますね。いかがですか。
  237. 原文兵衛

    原国務大臣 その附帯決議を、私いま手元に持っておりませんけれども、いまお伺いしているあれでは、開発を前提としての解除を行わないというふうにお伺いいたしたいと思っております。
  238. 土井たか子

    ○土井委員 つまり、開発理由とする公園指定の解除については、これを行わないことを原則とすると書いてあるのは、したがって、本来は、逆につづめて言えば、この公園指定の場所において開発行為を行わないということが望ましいのだということを言っているんじゃないですか。そういうふうに理解しなければならない中身だと思いますよ。いかがでございますか。
  239. 正田泰央

    ○正田政府委員 附帯決議がございますことはそのとおりでございまして、特に参議院の附帯決議で、いま先生おっしゃったような「公園指定の解除については、自然環境保全の重要性にかんがみ、これを行なわないことを原則とする」、これの趣旨は、従来、公園が指定されているところを指定解除をして開発をさせたということがございまして、それは新しい自然環境保全法をつくったときに、今後はこういうことはやめようじゃないか、こういうことだというふうに御趣旨を承っておりまするし、お言葉を返すようですが、細かい開発はいっぱいございますから、御趣旨のとおり、これはもうそういった大規模の開発をやるようなときはいかぬ、こういうふうに私ども理解させていただいております。
  240. 土井たか子

    ○土井委員 それは開発についても、特に大規模開発なんかについては好ましくないということが考えられないと、こういう附帯決議の中身は出てこないし、いまおっしゃったとおりですね。それは、公園地域として指定されている場所においては本来好ましくないという認識でこの中身は読まなければ、正確に把握できない中身だろうと思うのですね。  さあ、それからいたしまして、大臣、よろしゅうございますか。そういうことから、私は四月十三日に、志布志湾についての質問をさせていただきました。私はどこまで考えてもわからないポイントがあるのです、いまのこの原則から出発して考えていって。自然公園法に言うところの国定公園の区域内で開発行為をやることについて、これは慎重に慎重を期さなければならぬですね、取り扱いの上で。原則は、開発行為は好ましくないのです。認めない方がいいのです。また原則として認めてはならないのですよ。そこを認めることに対しては戦々恐々としなければならない。  ところが、どういうわけですか。これは、環境庁としては、五十六年九月に出されましたFS案に対しては、自然公園法の十一条でもって指定の解除というものにつながる、環境に対して著しい変化を来すということになるから好ましくないと言われているのです。つまり、十一条ということを根拠に置いて自然公園法を適用して問題にされたのですが、今回、あのFS案からいたしますと、これはだれの目から見たって、大変に変わった中身じゃないのですよ、代案は。つまり、ことし二月二十五日、長官がこれに対しては了承いたしますとおっしゃった、原案に対して代案と申しますか、また修正案と申しますか、まあ私は、修正案、代案といったって、FS案、原案に比べまして、その差は自然環境保全という立場から言ったら本当に取るに足らない中身だと思っています、変化は。ところが、それに対しては自然公園法の十一条じゃなくて、今回は二十条を適用して、審議会にもかけずにオーケーをされたという。どう考えても解せないのです。  この点は、四月十三日に私は質問をさせていただいておりますけれども、その節、こういう場合は十一条にかけるべきだ、こういう場合には二十条でいいという、その判断基準というのが法制上何もないのですね。これくらいおかしげなことはないのです、自然環境保全するという上から言えば。万事が環境庁長官の胸三寸。環境庁長官がこのことに対してどれくらい意欲を持って臨まれるかに全部かかるのですよ。  そうなってくると、いままで原環境庁長官というのは、官吏でおありになる間、非常にまじめな官吏として有名だった方です。議員になられて、やはり議員としての活動は非常にまじめだという定評のある方なんです。環境庁長官になられて、恐らく環境保全の面においても熱心に、真摯な態度でお取り扱いになるであろうと期待をかけていたやさきに、どんでん返しを食らったような気分に私はなってしまった。  わからないのですよ、なぜ十一条じゃなく二十条になったのか。判断基準が何もないのです。よろしゅうございますか。あるといえば政治判断しかない。政治判断ですよ。しかも、その政治判断というのは大衆が納得する政治判断じゃない。国民大衆にわかる政治判断じゃないのですよ。これくらい環境庁の看板に泥を塗った行為はないと私は思っているのです。環境庁の存在意義がないと言ったっていいくらいの、まさに自殺行為ですよ。  行革の中でもちらほら聞こえた、環境庁不要論というものに対して、私たちは、そうじゃない、環境庁というのは絶対要る、環境庁がなくなったらどうなるかということで、防戦これ相努めて、環境庁の存在意義を一生懸命に力説する立場からしたら、これだけ残念であり、これだけ弁護のしようのない問題はほかにない。まさにこういうことは、環境庁は要らぬじゃないかと言う側のつけ目ですよ。やはり環境庁が、本当に意義を発揮しようとするならば、国民大衆が支持する環境庁でなければならぬのです。それでもりて初めて環境行政に対しては、本来あるべき姿というのが全うできるのじゃないでしょうか。  いまのような、こんなやり方をやられて、アセスメント法に対してどうぞ御審議を、どうぞ早く通してくださいと言われたって、国民大衆の気持ちからしたら、何を言っているんだということになるだろうと思いますよ。大臣、よろしゅうございますか。この場合に、何が二十条になすった判断基準です。聞かしていただきましょう。
  241. 正田泰央

    ○正田政府委員 十一条と二十条の判断基準でございますが、簡単に申し上げますると、十一条の指定の解除、これはある物をつくりまして、そのつくった結果、これはこの公園にやはり重大な支障ができた、あるいはつくった結果、何年もたって周りがどんどん変わってきた、たとえば団地ができた、うちができた、五年たっていっぱいになってしまったというようなときにやる、いわば事後の規定というふうに私どもいま運用させていただいております。  それから、先生御指摘の、届け出の規定行政処分関係規定でございますから、ここに物をつくりたいときは事前に届け出る、あるいは許可を受ける、こういう規定でございます。したがって、事前の方の第十一条の規定と申しますのは、十一条にひっかかるよ、このFSの案でいったら、将来できた後に特別地域に重大な影響を与えることになるから、これは重要なことだから審議会の意見を聞くことになるかもしらぬよ、こういうのが十一条でございまして、二十条の方の届け出というのは、どこでもある手続行為としてやったわけでございます。  ただいま先生の御指摘の点の、十一条か二十条かというのは、物ができることは別といたしましても、本来行為は二十条でありまして、それは十一条の指定の解除に触れていくということで申し上げていた次第でございます。
  242. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御説明を聞けば聞くほど、環境庁立場は悪くなるのです。よろしゅうございますか。すでにでき上がってしまっているものに対して、後、市街化が顕著になったとか、それから環境保全立場からして、従来この自然公園法で指定しているという意味がなくなったというふうなときに指定解除をやる、後追いだとおっしゃいましたが、実はそれ自身が問題なのです。いままで普通地域で勝手に建造物を建ててきたことに対して、やれ乱開発だということで問題視されて、普通地域に対しての規制というものをもっときちっとやるべきだという意見国会の中でも多かったのじゃありませんか。  具体的に一つの例を挙げれば、これは四十八年七月四日の審議におきまして取り上げられているのですが、福井県の若狭湾国定公園の中にどんどん九つの発電所がて建てられていったわけであります。そのとき、こういうものを許すのですかということを聞いたら、実は環境庁は、環境庁が設立される以前の問題でございまして、厚生省がやってしまったのでいたし方ございませんと言いわけをされたのです。もし環境庁ががんばっていたら、こういうことをやらなかったに違いないという御発言なのですよ。言いわけなのです。ところが、その後できてしまってから、市街化が顕著であると言って、五十六年九月の五日に環境庁はこれに対して指定解除をされています。何のための国定公園なのですか、何のための自然公園法という法律なのですか。こういうことを許していったら、自然公園法という法律そのものの目的と申しますか、法の存在意義すら根底からひっくり返されることになるのですよ。いまの御答弁を聞いていると、環境庁という立場での御答弁とはとても思えない。環境行政というのは最近どんどん後退してきているけれども、いよいよきわまれりという感じがしますね。  長官、私は、いまの御答弁はそのままのめないのですが、どのようにお考えになりますか。長官にお伺いします。
  243. 原文兵衛

    原国務大臣 この志布志の問題については、何回か御答弁申し上げておりますが、私どもは、方針といたしまして、国定公園の解除につながらないこと、さらに、景観にとんでもない影響を与えないこと、この二つの点について検討をしてきまして、最初のFS案については、そのおそれがあるので、代案を持ってこいと前長官のときに言ったわけでございます。いろいろの代案が出てくるまでにつきましては、鹿児島県当局と環境庁の間で長い間やりとりがあったわけでございますが、出てきた代案につきまして、もちろん何かつくれば景観に全然影響がないというわけではございませんけれども、まあこれならば公園の解除にはつながらないし、景観につきましても、とんでもない影響を与えるというふうにも考えられないし、また、五百メートル離したことによって、われわれとしてはこれでもってあの白砂青松が守れるのではないかというような観点から、アセスについては、この位置でもってアセスをやってもいいという意味合いにおいて、検討に値するというふうに鹿児島県知事に言ったわけでございます。  しかしながら、同時にまた、これ以上物をつくられる、埋め立てをされるというようなことがあっては、いま言ったような公園の解除なり、あるいはその景観に対して著しい影響を与えるおそれがあるので、これ以上のものは認められないという点もはっきりとつけ加えて言っているわけでございます。われわれとしては、この自然公園を守るという精神を逸脱してやったというような気持ちは毛頭持っておらないわけでございまして、この点、御理解をいただきたいと思います。
  244. 土井たか子

    ○土井委員 それは幾らおっしゃっても、後で言う何とかでありまして、聞けば聞くほど言いわけめいた、しかし言いわけにならない御発言になるのです。  実はこの四月十三日の大臣の御答弁の中に、景観に対して大きな影響を与えるというふうな場合は十一条、大きな影響を与えないときは二十条、このような御答弁があるのですが、十一条で問題にするのか二十条で問題にするのか、したがって、割り振りを考える場合に、影響の程度をどういうふうに考えられているのか、この判断基準がないということも質疑応答の中ではっきりしたのです。  そこで申し上げますが、先ほどの附帯決議にもう一度戻ります。この附帯決議を見ますとその四項で、「国立公園等の」とございますから国定公園もこの中に入れて考えなければならない。「国立公園等の普通地域及び自然環境保全地域の普通地区においても許可制とすることにつき再検討すること。」こうなっているのですよ。ゆめやおろそかに、普通地域だからといって取り扱いをしては困る、普通地域だからといって安易な取り扱いがいままであったことが、実は取り返しのつかないことにしてしまったという過去の経緯にかんがみて、この決議の中身は非常に重みがあるのです。そうして同時に、そういう意味も含めて五項の(五)もって「自然環境保全法および自然公園法に基づき許認可等を行なうに当っては、その基準を明確にすること。」となっているのです。これは四十八年七月の決議でございますが、この決議をするに先立って、六月の審議の席で、環境庁は、早急に基準をつくりたいという答弁をされているのですが、いまだにこれに対しての基準はないのです。したがって、大臣は胸三寸で、政治的にこれに対してゴーサインをおやりになったという現実がある。疑義は子々孫々に残りますよ。基準というのは問題にされますか、されませんか。いかがですか。
  245. 正田泰央

    ○正田政府委員 先ほど先生が十一条、二十条で原長官のお話を引用されましたが、恐らく私の記憶では、私が御答弁申し上げたのだろうと思いますが、最後に御指摘の、附帯決議でいきますところの基準でございますけれども、確かに附帯決議には、基準をつくれとございます。そこで、特別地域については総理府令をもちまして、それから、その他の地域については審査指針と申しますか、これは局長通達でございますが、四十九年十一月にそういった環境庁としての基準をつくらせていただいて、それでもってずっと実行いたしております。
  246. 土井たか子

    ○土井委員 今回の場合はその基準を問題にされましたか。どうなんです。
  247. 正田泰央

    ○正田政府委員 今回の場合は個別の該当基準、許可するなり届け出するなりの基準ということではなくて、これはあくまで環境庁として指定解除するかしないかということに影響する、つまり特別地域がたくさん破壊されるかどうか、解除してしまわなくてはならないかどうか、こういう観点で過去の瀬戸内海、その他一般の国立公園の事例に照らしても、関係者、特に専門家でございますが、そういった意見を聞いて集約いたしたものでございます。
  248. 土井たか子

    ○土井委員 関係者の意見とおっしゃるのは、どういう関係者なんですか。開発の側に立っている人たちばかりでしょう。
  249. 正田泰央

    ○正田政府委員 学者とか、行政を長年やっている方とか、そういう関係者でございます。
  250. 土井たか子

    ○土井委員 それは学者といったって、現地について自然環境保全しなければならないという立場でお考えになっていらっしゃるかどうかは、言うならば大変問題なんです、志布志の問題について。これはどれほどおっしゃっても、現に答弁の中で、はっきり基準はないということをおっしゃっているのです。自然公園法の二条で、国定公園というものは、国立公園に準ずるすぐれた自然の風景地だということははっきりしているわけですね。環境庁長官の方で、景観をだめにするかどうかについてやはり基準がなければならない、しかし、その基準というものは、いま現に法制度上用意されていないために、万事が長官の御判断にかかるのだという趣旨の御答弁になっているのです。それはこのとおりですよ、現実は。わずかの学識経験者の人の意見をかっこつけのために聞いたって、最後は長官の御判断一つなんです。その御判断の基準になっているのは何かといったら、学者の意見だと。それは噴飯物ですよ。だれがそれを客観的な判断基準なんて考えましょう。だれがその学者を選んだのです。それ自身も、これはきちっと法制度上用意された学者に対する任免じゃないでしょう。
  251. 正田泰央

    ○正田政府委員 私どもが、専門的な意見の集約と申し上げておりますのは、いろいろな学者が入っておりますが、指定に当たりましてのいろいろな専門学者、それから、解除などをいたします場合にも、いろいろな専門家の意見などを聞いて調査したり、あるいは委託したりして意見を聞いております。行政処分を行う場合でも、そういうふうなことを行っているわけでありまして、特に過去にも、こういう大きなプロジェクトをやる場合に、そういったような見解を求めてやったというケースはございます。そういうことを申し上げておるわけです。
  252. 土井たか子

    ○土井委員 ひとつその学者のリストを出してください。そういう方に聞いておいて、法できちっと決められている審議会には諮問一つしてないというのは、主客転倒もはなはだしいのです。逆立ちしたありさまですよ。私は、いま聞いてびっくりしましたよ。驚きました。局長、そういうことを言われたって、そんなものは答弁にならないです。立場を悪くするだけですよ。これは判断基準をおつくりになるかどうか、それをお聞かせ願いましょう。
  253. 正田泰央

    ○正田政府委員 指定につきましてもいろいろな判断をいたすわけですから、行政処分についても判断をいたします。そういう場合に、一つ一つの公園の指定などについても基準があるわけではございません。いろいろな見解を総合いたしているわけでございます。  ただ、いま先生おっしゃいました、指定についてのいろいろな基準と申しますか、あるいは行政処分の基準と申しますか、先ほど申し上げたように、行政処分の基準は、あるものはございます。それから、大きなプロジェクトについてのスケール、そういったものについては一々ございませんが、それは先ほど来申し上げているような、いろいろな意見を集約しているわけでございますから。ただ、指定を解除するかどうかというようなことについては、指定のときのいろいろな植生、動物あるいは形態、そういったようなものの考え方がありますから、そういったような考え方を集約して、われわれがいつも持っていると申しますか、考えていると申しますか、そういうことは非常にいいことだろうとは思っておりますが、現在のところはそういうものはございません。
  254. 土井たか子

    ○土井委員 いま、いいものだろうと思いますと言われた、局長の国定公園に指定されたときのその問題については後で触れます。  これ自身、ただいまは違法行為になっているのです、その点について触れて言えば。ただ大臣、行政処分ということに対しては、問題によってその基準をすでにつくっているというふうな御趣旨の御答弁もいまいただいているのですが、しかし、先日来、国定公園の指定を解除する、その区域を変更しようとするときの例に当たるか当たらないかということの判断をする場合の、つまり、行政処分をする場合のと申し上げていいと思うのですが、基準はないのですよ。ないとおっしゃったのです。この基準というのはやはり大事です。どこまでいっても、これは罪を長官は負わなければならなくなりますよ。長官になられる以前までは、十一条でこれは問題になるからだめだと言われた問題が、長官になってから途端に、結構です、二十条でいきましょうと言って、環境庁から県に割り振りされた、振りかえられたという問題になっているわけですから、そういうことからすれば、この基準というものをはっきりしていただくというのはどこまでもございます。先ほど、附帯決議に対しては守らなければならぬということを、したがって私は申し上げましたが、早期につくりますとおっしゃった中身がまだできていないのです。今回のような例に当たってみても、これはやはりどうしてもはっきりさせていただかなければならぬと思いますが、いかがでございますか。
  255. 正田泰央

    ○正田政府委員 一言だけ。先ほど申し上げましたように、特別地域については府令及び通達をもって基準がございます。普通地域につきましては届け出でございますから、届け出について、そこでもって許認可のような意思行為があるわけじゃございませんので、そういうずばりの基準というものはございません。ただ、何平方メートルぐらいのものは県知事とか、あるいはそれ以上のものは物によっては環境庁とか、そういうようなこととか、一応のものはございます。
  256. 土井たか子

    ○土井委員 一応のものはございますじゃ、これはだめなんです。普通地域については決めなくてもいいようなことをおっしゃっていますけれども、従来、普通地域について乱開発が進んで、いかがわしい現状になってしまったという猛省で、このような決議が用意されたと先ほど言ったとおりなんです。したがって、普通地域についてもこれを許可制とすることにつき再検討するとなった上で、いま繰り返してもう一度申し上げますけれども許認可を行うに当たっては、その基準を明確にすることとなっている中身に、やはり普通地域もこの基準というものをはっきりさせていかなければならないというものがあるということを私は申し上げているのです。非常に大事な問題だと思いますよ。むしろ、特定地域ならばがっちりがんじがらめにしていくというふうな方策が、すでにある意味では講じられているとすら言えるのですが、普通地域が実は問題なんです。長官、いかがですか。――もうこれは局長はいいですよ。
  257. 正田泰央

    ○正田政府委員 御案内のように、先生の御視点から見ますると、たとえばアメリカの営造物的な公園あるいはわが国における都市公園のような営造物の公園でしたら、まさにぴったりだろうと私は思っております。わが国のような地域性のゾーニングによる公園の場合ですと、いわば私権の上に立っている公園でございますので、そのかわり私権の程度に応じて特別地域とか普通地域を設けておる。普通地域という一般の人が住んでいる、あるいは物を建てる、そういうようなところに許可制をしいて、いわば権利を侵害するのはどうかというのが、恐らくこの法律の基礎だったのだろうと私は理解しております。したがいまして、普通地域について許可制をどうこうするということについては、私は賛成いたしかねまするが、普通地域は届け出制ということなので、あくまでこちらが審査をするというのを制度上基本の姿勢にしていない、そういうことだろうと私は理解しております。
  258. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、決議に対しては、これはいただきかねるという御認識を局長は持っていらっしゃるわけですね、いまの御発言を承っていると。
  259. 正田泰央

    ○正田政府委員 許可制にするかどうかという問題につきましては、これは立法論でございますので、現在の自然公園法制度が許可制を特別地域にとり、それから普通地域につきましても、ある程度のものは届け出なくてもいいとか、いろいろなことは指導でやっておりますから、そういうようなことで私は理解いたしております。
  260. 土井たか子

    ○土井委員 届けるか届けないかという、その建造物の問題をいま問題にしているのじゃないのですよ。自然公園法の十一条にかけないで二十条でいくとか、必ず十一条にかけなければならないとか、そういうことに対しての判断基準を問題にしているのです。すりかえ答弁はお断りいたします。  これは長官にお尋ねしますよ。やはり基準は必要なんです、どこまでいったって。長官は誠実にお考えになったに違いないんだけれども、その誠実さが今回は裏目に出ているのです。いまのような、こんなやり方をやられたら国民は納得できませんよ。長官、いま何か御検討中であるようでありますけれども長官からの御答弁を承りたいと思います。
  261. 原文兵衛

    原国務大臣 その当時の附帯決議につきまして、私は十分承知しておらないわけでございます。したがって、さっきから一般論として、附帯決議は尊重してできるだけ努力をするということを申し上げているわけでございます。  基準という問題は、たとえば法律に書くとか政令に書くとかいっても、自然公園あるいはその他のいろいろな問題についても、全部に基準というものを書き切れるものではないと私は思うわけでございます。いま環境庁の方としても、一つ判断基準というものは一応つくってやっている、こういうことでございますので、その方針を御理解いただきたいと思います。
  262. 土井たか子

    ○土井委員 判断基準は、特別地域においての判断基準ですね、普通地域に対してはないのです。今回は、普通地域に係る問題が問題になっているのですよ、石油備蓄基地に対して。大臣、そうでしょう。ところが、その地域は、面積は少々狭くなったのです。沖出しになって、少々場所は変わったのですが、申し上げるとおり少々なんですよ。原案の場合は、自然公園法十一条に言う国定公園で指定解除につながる可能性があるということで、これを認めるわけにいかないというのが、総じて前代までの環境庁長官の姿勢だったのです。それが、その点は全く問答無用になってしまって、今回、大変変わったのじゃないですよ、少々変わった代案に対して、長官がまさにゴーサインをなすったというのは、どう考えても解せない。これは繰り返し言っているとおりなんです。政治判断以外何もないじゃないですか。こんなことでやられた日には、あたりが自然公園法に指定されている地域は、みんな指定されている意味がなくなっていきますよ。長官はそのことを深刻に受けとめてもらいたい。  したがって、私は、繰り返し繰り返し、なぜ十  一条でなく二十条になったのですかということを、自然公園法の規定に従って聞いているのですけれども、変わった理由に対しては、本当に納得できる御説明を承っていないのです。以前は環境に及ぼす影響が大変大きかったけれども、今回は影響が少ないからゴーサインを出しましたという御答弁の繰り返しばかりなんですが、われわれはそうは思っていないのです。これはやはり、そういうことからすれば基準というのが必要だと思いますよ、この附帯決議の中にもちゃんと明示されているとおり。附帯決議は守らなければならないということは、先ほどおっしゃったとおりなんです、大臣。誠実にこれを受けとめて考えていただかなければならないと思いますが、いかがでございますか。
  263. 原文兵衛

    原国務大臣 基準につきましては、先ほども申し上げましたように、あらゆるものに全部基準を設けるということは不可能なことじゃないかと私は思います。したがって、環境庁としての判断基準というものは設けてあるわけでございます。  昨年のFS案について、それはいわゆる公園の指定解除につながるおそれがあり、あるいはまた、環境に著しい影響を与えるおそれがあるので代案を持ってこい、こういうようなことで持ってこられた代案でございまして、それに対する判断の結果は、私どもは、この位置でアセスを進めるということについては、検討に値するという答えを出したわけでございます。  ただ、最後につけ加えておきますが、私は、いわゆる政治判断というようなものを頭の中に毛頭置いていなかったことを、ここで再度申し上げておきたいと思います。
  264. 土井たか子

    ○土井委員 そのときはそうだったのでしょう。しかし現実は、客観的に見たら政治判断になってしまった。これはいつまでも問題ですよ。それはどのようにして是正なさるかというのは、ひとつ環境庁長官、責任を持ってお考えいただくことです。よろしゅうございますか。  そうしていま、これは環境に対して著しい影響があるかどうかということの判別をやった結果、著しい影響がないということで、このアセスに対して同意をなすったかっこうだという御答弁なんですが、きて、著しい影響があるかどうかということを判断なさることに対して、法が命じているやり方をやっていらっしゃらないという点を一つ指摘しておきます。  これは、もうすでに前回にも取り上げたのですが、自然公園法の十三条の二項で、国定公園に関する公園計画を廃止し、変更しようとするときは、県と審議会の意見を聞かなければならないのです。そうして、そういう届け出に基づいて審議会の意見を聞かなければならないということが明示されていて、そのとおりにされているのならば私は何も申しませんが、権現山については、展望所として、自然公園法の十二条二項の規定によって、日南海岸国定公園の公園計画として決定されているのですよ。これは今日に至るまで解除されていないのです。  この四月十三日には法制局の方から、公園計画に記載されているのかいないのか、そこが問題だ、記載されているのならば、自然公園法の十三条の二項からして、その展望所から景観を見ていないというのは手続上問題があるという御答弁がはっきり出ているのですが、私は、間違いのないように、きょうは公文書の写しを持ってまいりました。  昭和三十三年十一月五日、鹿児島県知事から出ている文書でございます。利用施設計画の単独施設の中に、番号は一、二、三、四、五とございまして、五に「権現山、園地(展望所)」とわざわざ書いてある。ここから、問題の今回の石油備蓄基地として考えられている地点を見ることをしない、見る地点から外しているというのは一体どういうことなんです。再度のお尋ねのかっこうになりますけれども長官、これに対しては納得のいく御答弁をいただきたいと思います。
  265. 正田泰央

    ○正田政府委員 ただいまの件は、先般御指摘をいただいたとおりでございますが、この計画は、御指摘の時点に鹿児島県が計画に織り込んだものであることは間違いございません。これは、県知事の権限で計画をいたすことになっております。したがいまして、それを削除とか、あるいは廃止いたす場合も、県知事が行うことに相なるわけでございます。  この権現山につきましては、そのときも申し上げましたが、展望地点は至るところにございまして、権現山よりももっと展望の広い高山地帯なんかもございますし、そういうところからも全部見ているということを申し上げております。その計画にある、主たる展望所としてもこれは考えていいということは申し上げました。ただ、一度申し上げましたのは、実態がほかの展望所よりは利用されていないということだけをつけ加えた次第でございます。  また、法制局の御意見を御紹介になりました。確かにそういうふうなお話も私ども先般承りましたが、環境庁長官の計画事項ならば、そして、なおかつそれを計画事項としてやめるならば、それは計画の廃止の手続をとらなければいけないだろう、こういうふうに法制局の部長が答弁したと私は理解いたしておるわけでございます。したがいまして、法制上の問題と申しますか、そういったものは現在私ども持っているという認識はございませんし、さらにまた、本計画については、本場所については御指摘のように、主たる展望点の一つというふうに理解して、アセスメントなどの一連の必要な展望点の中にあるというふうに考えておるわけでございます。
  266. 土井たか子

    ○土井委員 もうそれは次元が違うのですよ、おっしゃっていることは。これは環境に著しい影響を与えるかどうかということを勘案なさる際に、ここから見ていただかなければならぬ地点なんです。法定上の地点なんです。法が決めている地点なんです。法が決めていることに従って、公園計画で決定されている地点なんです。これを落としてどこから見るのですか。公園計画として決定しているというのは、法が命じている、そのとおりにしているわけですよ。そうして国定公園になっているわけなんです。よろしゅうございますか。したがって、これを著しい影響があるかどうかということを勘案する場合に、この展望所を外してどこから展望するということになるのですか、法違反じゃありませんか。
  267. 正田泰央

    ○正田政府委員 お言葉でございまするが、私ども、権現山を含む高山地帯一帯からこの展望について無視をしたとか、展望所に入れてないというようなことを申し上げたことは一度もございません。
  268. 八田貞義

    八田委員長 土井君に申し上げます。時間が大分過ぎておりますから、御意見を急ぎおまとめ願います。
  269. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。  局長、あなたはだんだん立場が悪くなりますよ。それは以前と違った御答弁をなすっているということと同時に、事実と違う御答弁をどんどんなすっている。  もう時間だとおっしゃいますから、最後に長官一つお尋ねをして、私は終わりにいたしますが、私は四月十三日の質問の初めのときに、鹿児島は長官がかつていらした場所であり、志布志という場所について、それは普通の場所ではないという思いを持っていらっしゃるに違いない、こういうことに対して、了承なさる以前に一度志布志を見ておいていただきたかったということを申し上げたら、日程の都合があってむずかしかったというふうな意味の御答弁がございました。それは時間があるならば行くことにやぶさかでないという意味の御答弁もその後出ているわけであります。  この附帯決議の中に、「公園地域内における開発行為の許可にあたっては、」という前提で、「地域住民の意向が十分に尊重されるよう配慮すること。」ということが十項目目に明記されているのです。いま申し上げますが、この志布志で石油備蓄基地を建設することに対して、住民の方々は賛成だというふうに思っていらっしゃいますか。賛成する方もあれば反対する方もあるでしょうが、反対をなさる方というのが非常に多いというのは、すでに昨年九月十八日の環境庁からの御答弁の中で出ているのですよ。具体的にどういう答え方をされているかというと、絶対反対という、ちょうど書き初めをする半紙の半分くらいの大きさの旗は街角、街角くらいの頻度で立っている。それから畳一畳くらいに横に書いた促進というのが、その旗の五本分ごとに一つくらい立っている。そういうことからすると、いわばいまの七〇%くらいというのが大体反対ということになるのかなという御答弁になっているわけであります。  環境庁長官は、現地に行くことも日程が許すならばやぶさかでないということを言われましたが、いまでもそのお気持ちにはお変わりはないだろうと思うのですが、これはいらっしゃったら、ぜひ住民の方々がどういうふうな思いでいらっしゃるかということは聞いてもらわなければ困ります。四十三号線には、非常に忙しい御日程の中から差し繰って、わざわざ現地に対しての視察をなすったわけでありますが、この志布志は後々開発の問題が問われる問題なんです。私も、まだまだどんどん質問いたしますよ。長官はぜひ志布志に足を運んで、現地についてどういうことになっているかということを確かめていただけませんか。視察なさる必要がどうしてもあると私は思いますが、いかがでございます。
  270. 原文兵衛

    原国務大臣 前回もお答えいたしましたけれども、二月二十五日までの時点におきましては、就任以来のいろいろな日程等からいって、とても現地に行く時間がないということは申し上げたとおりでございます。私は、志布志に絶対行かないというふうに言っているわけではございませんで、これからも日程その他のいろいろな条件等も考えて、もし行けるようなチャンスが来れば、もちろんのことそれを否定するものではございません。
  271. 土井たか子

    ○土井委員 委員長、時間超過したことをおわび申し上げます。追ってまた、この問題は次回にも取り上げさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。
  272. 八田貞義

    八田委員長 次回は、来る二十日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十六分散会