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1982-08-09 第96回国会 衆議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年八月九日(月曜日)     午後二時二分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君    理事 奥田 敬和君 理事 川田 正則君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       鯨岡 兵輔君    佐藤 一郎君       竹内 黎一君    浜田卓二郎君       井上  泉君    井上 普方君       河上 民雄君    小林  進君       林  保夫君    東中 光雄君       伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         外務政務次官  辻  英雄君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省条約局長 栗山 尚一君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君  委員外出席者         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ――――――――――――― 八月九日  世界連邦実現等に関する請願(戸井田三郎君  紹介)(第四七七七号)  同(渡辺朗紹介)(第四七八三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 八月六日  婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関す  る条約早期批准に関する陳情書外一件  (第三五一号)  朝鮮半島南北平和統一実現に関する陳情書  (第三五二号)  日朝民間漁業協定の継続に関する陳情書  (第三五三号)  旅券事務に対する財源措置の改善に関する陳情  書  (第三五四号)  朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻の  安否調査等に関する陳情書外二件  (第三五五  号)  核兵器廃絶と軍縮の推進に関する陳情書外三十  四件(第  三五六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 外務大臣外交案件のためにオーストラリアにお出かけの間に、御案内のとおり教科書問題が大変な外交問題になってしまったわけでございます。外務大臣のこの問題に対しての御認識のほどが大変大事にただいまはなっているわけでございますが、まず最初に、外務大臣としてこの問題にいかに対処することが大切だとお思いかということから質問を始めさせていただきます。いかがですか。
  4. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 教科書問題中国また韓国におきまして非常に厳しい批判が行われておるということを非常に憂慮いたしておるわけでございます。文部省が、検定制度のもとにある教科書、これについてどういう扱いをしておるかというような御説明は御説明で、われわれ外務省を預かっておる者としてはそのことを承知しておるわけでございます。しかしながら、そういうこと以上に中国あるいは韓国国民にとって、日本教科書にあらわれておる方針というものが果たして適切であるのかどうか、むしろこういう教科書日本教育が行われておるとするならば、それは日本の過去の行為についての反省がないのではないか、あるいは事実を曲げて教育しておるんではないのか、そういうような点から非常に国民感情を刺激し国民世論を喚起しておるということを認めなければならないと思うのであります。  そういう時点からわれわれは冷静に事に処して当たらなければならない。中国とあるいは韓国との国交回復に際しまして、日本としての立場というものを明らかにしてきておるわけであります。日本として、中国に対する非常な損害を与え、迷惑をかけたということについて反省をする。また、韓国に対しましては、日韓合併当時のあり方など、あるいは韓国合併のいきさつなどから幾多の反省すべきことがある、こういうことを忘れてはならないのでありまして、そういうような点がもし両国からの批判の中でわれわれが考えなければならない諸点があるとする、そういうまたおそれがあるわけでございまして、その点を十分配慮しながら教科書問題に対処すべきである、私はこういう心境をいたしておるわけであります。
  5. 土井たか子

    土井委員 冷静に事に処するために日本立場説明するといま外務大臣おっしゃったのですが、さて中国側からはすでに七月二十六日に肖向前外交部第一アジア局長を通じて在中国日本大使館に対して、具体的に中身がされている申し入れの文書なるものが出されているわけであります。いまそれから後の対応というものを見ておりますと、外務省とされては在中国日本大使館渡辺公使を通じて、日中共同声明日本側認識は不変であるという日本側立場説明をされたり、そして教育にその中身を反映していかなければならないという意思表示日本立場として披瀝をされてきております。しかし外務大臣、事はそれによって両者間の、お互いの意思の疎通を図りながら打開の方向に向かっているかというと、実はそうじゃないのです。むしろ外務省側渡辺公使を通じて中国側説明をされたときには、外務省としては日中共同声明に対しての認識は不変だけれども、教科書問題についてはひとつ文部省から説明をさせていただくと、げたをそっちに預けられたかっこうになっている。それから後の説明たるや、これは繰り返し検定制度に対しての説明しか行われていない。中国側から持ってこられた中身に対して答える立場というのは、いままでのところ全く出ていないと申し上げていいと思うわけであります。  初めの日本側対応というのは、非常に間違った対応をやったのではないか、私たちはそのように思っておりますが、外務大臣は、いままでの対応はこれでよろしいとお認めになっていらっしゃるのですか、それとも、虚心坦懐にここはお考えいただいてお答えをいただきたいと思いますが、もうちょっと、対応の仕方が間違っていた、やり方出発点が間違っていたというふうに言わざるを得ない、このようにお考えなのか、いかがなんですか。——いや、これは局長レベルの問題ではないのですよ。局長、ちょっと待ってください。大臣お答えいただきます、これは政治レベルの問題なんだから。局長ちょっとごめんなさい、私は大臣お尋ねいたします。
  6. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現に教科書問題が本日の実情にある、そういう点からいたしまして、対応の仕方に反省すべき点があるのではないか、このように御指摘があれば、そのとおりだと思います。土井委員が御承知のように、対応の仕方に非常にむずかしさがあったという事実は否定はできないのじゃないか。教科書問題として純粋に扱っていく。文部省として検定あり方であるとか、そしてその検定の結果どういう問題点があるか、こういうことになってまいりますと、その点でいろいろ説明が行われる。またその間に、最初に申し上げましたように外務省としては中国あるいは韓国における国民世論動向などを考えてまいりますと、なかなかそういう世論動向——検定制度だけを考えておるというところでこれがうまく両方の考え方、行き方というものが相手国に納得のできるように取り運ばれておったかどうかということになってまいりますと、そこにはなかなかむずかしい点があり、御指摘のような反省を要する点があったかと思います。
  7. 土井たか子

    土井委員 さて外務大臣、この認識において間違った認識をしておれば、これは後々日中の国交問題にまで影響を及ぼす問題に現状はなりかねないことにすらなっております。九月の総理の訪中という問題にも多大の影響を与える、恐らくいまのままだったら無理でしょう。これは今後の日中の友好的な国交考えれば考えるほど、これから先をおもんぱかって、いまは非常に大切な時期だということを言わざるを得ないのです。  さて、渡辺公使中国側に対して説明をされた中身にも繰り返し述べられているのですけれども、日中共同声明前文において、過去に「日本国戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」旨を明らかにいたしております。そうしてこの認識にはいまもいささかの変化もない、こう言われているのですが、さて、この認識ということについて外務大臣お尋ねをしておきたいのです。この認識が私は非常に重要だと思うのですね。  日本は過去の戦争中国人民にもたらした重大な損害責任を痛感しと言われておりますこの「戦争」はどういう戦争なんですか。これは外務大臣侵略戦争とお思いになっていらっしゃるかどうか。日本侵略行為であったというふうにお考えになっていらっしゃるかどうか、この点の御認識はいかがでございますか。非常に大事なポイントでございますよ。どうなんです。
  8. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この日中共同声明前文の御指摘の点は、日中国交回復に際して日本の率直な考え、気持ちを申し述べ、そして中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感する、反省をするということを明白にしたわけでございます。  この戦争についてはどのように考えるかということになりますと、これはやはり客観的な判断というものが一番大事ではないかと私は思うのであります。中国を含めて国際的には侵略であるという厳しい批判を受けた、この事実は認めていかなければならないと思います。  また、現在のわが国立場といたしましては、どのような名目がつきましょうとも、国際紛争を解決するにおきまして、戦争行為には訴えない、戦争を放棄する、こういう立場であります。このことは国際的にも現在の日本がそういう立場をとっておることは認識されておることと思います。私はこのことも大事だと思っておる次第でございます。
  9. 土井たか子

    土井委員 いま外務大臣がおっしゃった、海外における過去の戦争に対しての事実認識、これは日本から行われた侵略であったというふうに考えられているという御答弁でありますが、外務大臣自身も、いま日中共同声明をもって国交回復がなし遂げられて、それからさらに条約を締結して正常な友好的な状況で日中間外交が進められている中で、外務大臣として、あの共同声明の中に問題にされた「戦争」という部分については、これは多大の損害中国人民に与えた日本侵略であったという認識をお持ちになっていらっしゃるかどうか、これが大事なんですよ。外務大臣、もう一度この点に対してはひとつはっきりお答えをいただきます。外務大臣のその点についての御認識が非常に大事です。いかがですか。(「簡単でいい」と呼ぶ者あり)
  10. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはなかなかそういう簡単な表現で申し上げるわけにはいかないのです。やはり日本がどういう戦争行為をやったか、日本自身がこうだああだと言うべきものではないと私は思うのです。  そこで、先ほども申し上げたように、中国も含め、国際的には侵略であるという厳しい批判を受けておる、そういうことははっきりした事実であって、この事実は政府としても十分認識する必要がある、こういうことであります。
  11. 土井たか子

    土井委員 事実認識のその事実に対しての大臣自身の御認識はまだ御認識になっていない。これは日本戦争をやったのです。日本侵略をやったのです。日本自身がそのことに対してどう認識しているかがただいま問われているのであって、外国がどう考えているかが問われている問題じゃないのです。  そういうことからすると、先ほど外務大臣がおっしゃったとおり、中国がどう考えているかい、明白であります。韓国がどういうふうに認識しているか、明白であります。北朝鮮がどのように認識しているか、これまた明白であります。アジア全域の各国が新聞の紙上を通じて報道しているところ、どのようにこの問題を認識しているか、それは明白であります。みんな侵略だということを明白に事実に即応して事実を認識している。さて、肝心の侵略をやった、戦争をやった日本認識として、いま外務大臣認識が問われているのじゃありませんか。一朝一夕にそういうことを簡単に言うことはなかなかむずかしいなんとおっしゃることは、私は心外だと思いますよ、大臣。その点が問われているのじゃありませんか。いかがでございます。
  12. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまも申し上げましたように、そういう批判については政府としても十分認識する必要がある、こういうふうに申し上げておる次第です。
  13. 土井たか子

    土井委員 政府としてもとおっしゃるのは外務大臣としてもなんですね、すなわち政府でありますから。そのように理解してよろしゅうございますか。外務大臣、もう一度その辺をはっきりおっしゃっていただきたいと思いますよ。文部大臣の方はこれについてもう認められたのです、侵略戦争だったと。外務大臣は、いまこれは外交案件になっておりますから、そういうことについてどのように認識なさるかということは今後の行き方を左右する問題になってくるのです。外務大臣のこの問題に対しての御答弁いかんが非常に大事になってまいります。いかがです。
  14. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 重ねて申し上げますが、政府としても十分認識する必要があるということは重ね重ね申し上げます。
  15. 土井たか子

    土井委員 くどいようですが、政府としてもというのは外務大臣としてもですか。どういう認識なんですか。それは侵略であったという認識なんですね。もう繰り返し言う必要もないと思いますけれども、先ほど来の大臣の御答弁はそのように相なるかと思います。そのように理解してよろしゅうございますね。
  16. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほどから申し上げておるのですけれども、私は戦争にあれこれはないと思うのですね。戦争というものを日本は戦後否定しておるわけです。ただ、戦前の問題についてどうかということについては、日本の行った行為に対してそういう厳しい認識があるし、また政府もそのことを十分認識しなければならない。また同時に中国のことにつきましては、共同声明前文にあるとおりわれわれは大変な迷惑をかけ、損害を与えたということについて責任を痛感し、反省をしなければならない、このように申し上げておるわけであります。
  17. 土井たか子

    土井委員 大臣戦争をしないと日本決意したのは、過去に侵略をやったという反省の上に立っての決意でしょう。侵略をやったという反省の上に再び侵略をしないという決意をしたことが中身として戦争をしないということになっているのじゃありませんか。このことは率直に認めなければならないと思うのですよ。どうして外務大臣がいまこだわっていらっしゃるのか私にはさっぱり解せないのです。そのことに対して外務大臣が虚心坦懐にお考えになるならば、今回の問題も、教科書記述部分について中国が、事実を歪曲することは許されない、事実を事実として披瀝するのは当然じゃないかと日本に厳しく言われているのは、言うまでもなくこれは当然至極の話だと思うのですが、外務大臣としてはこういう問題に対してどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  18. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 どうも御理解をいただけないので残念ですね。私は、戦争というものをあれこれ区別して、あるものは肯定するというようなことは考えたくないのであります。したがって、先ほどから申し上げておることを言っておるのでありまして、わが国共同声明にあるとおりの反省もしなければならないし、迷惑をかけたということも認識しなければならないと思っておりますし、国際的な批判も受けとめなければならない、こういうことを申し上げておるのであります。
  19. 土井たか子

    土井委員 いま戦争一般について問題にしているわけではございません。過去十五年の長きにわたる中国に対する日本侵略を問題にしているわけであります。これについての御認識を問いただしているわけであります。よろしゅうございますか。いかがです。
  20. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 したがいまして、日本に与えられた厳しい批判認識しなければならないということを申し上げております。
  21. 土井たか子

    土井委員 あと一問です。これは韓国側からも日本に対して非常に厳しい要求が出ているわけですが、一九一九年の三月一日、つまり三二独立運動と世に言われております中身、これは独立を宣言した集会であり、そうしてデモであり総決起であって単なる暴動というふうには考えられない、このように認識するのが客観的な事実認識だと世に言われておりますが、大臣自身のこれに対する御認識を承ります。
  22. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまの御質問は、三・一運動について特に「暴動」というような記述をしておることに対して韓国において非常に厳しい批判がある、こういうことを前提にしてのお尋ねかと受けとめた次第でありますが、率直に申し上げましてこの三・一運動は、わが国朝鮮半島の統治を排して独立を希求する朝鮮民族皆さん方民族運動であったということは明らかだと思います。
  23. 土井たか子

    土井委員 終わります。
  24. 中山正暉

  25. 高沢寅男

    高沢委員 外務大臣、ただいま土井委員から、日本中国朝鮮に対する戦争行為侵略戦争であったということの御認識質問がずっとありましたが、私も初めにそれを受けて、同じ問題でまず大臣のお考えをお聞きしたいと思います。  そこで大臣、私はここに「あたらしい憲法のはなし」という教科書を実は持っております。この教科書は戦後のあの新しい憲法ができたのを受けて、その直後の昭和二十二年に文部省が作成、発行された中学生用教科書です。したがって、この教科書中身文章は当時の文部省自体考え方である、こう言って間違いないわけであります。その中にこの戦争反省がこういうふうに書いてあるのであります。これは第二次世界大戦を意味しますね。「こんな戦争をして、日本の国はどんな利益があったでしょうか。何もありません。ただ、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。戦争は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だから、こんどの戦争をしかけた国には、大きな責任があるといわなければなりません。」こういう文章です。これは中学生相手教科書でありますからここには侵略戦争というふうな言葉は使われておりませんが、「こんどの戦争をしかけた国には、大きな責任があるといわなければなりません。」この「しかけた国」は間違いなく日本であります。そういうことを念頭に置いて当時の文部省がこういう教科書をつくった。このことは、侵略戦争をやった日本責任を当時の文部省がはっきりと教科書に作成した、こういうふうに私は認識をするものでありますが、外務大臣も同じ御認識ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  26. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本戦争を通じて大きな損害、迷惑を与えたその事実については、これは当然責任を痛感し、深く反省しなければなりません。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 きょうは外務大臣は、何を言われてもこの表現で押し通すというまるで何か決意を固めて出てこられたような感じが私はいたします。文部大臣は先般の文教委員会において侵略戦争であったことを認められた。同じ国務大臣としてあなたにそれだけの見識がないというのは大変残念に思います。     〔委員長退席愛知委員長代理着席〕  もう一度重ねてお尋ねいたします。戦争をしかけたという場合に、たとえば日本アメリカ戦争があります。これはアメリカに対して真珠湾攻撃をしかけるということから戦争になりました。しかし日本中国に対してした戦争はこれとはもっと性格が違うのです。あの御承知満州事変は、戦争が始まってから日本軍満州へ出ていったのじゃないのであります。日本軍はすでに満州にいたのであります。よその国の領土の中に日本の軍が入っていて、それがあの満鉄の鉄道爆破でもっと大きな戦争を起こしていったのです。あるいは盧溝橋事件、このときは日本の軍はすでに天津にいたのであります。そして盧溝橋で演習をしているときに鉄砲の音が聞こえたということを口実に全面的な戦争を始めていった。つまり日本中国との戦争で言えば、日中の戦争関係が起きる前にすでに日本軍中国の中にいたのです、占領していたのです。そしてもっと大きな戦争でさらに占領を拡大した、そしてそれこそあの南京の虐殺を初めとする何百万の死者を出すという被害を与えた。こういう戦争やり方真珠湾攻撃アメリカ日本戦争になったのとはもっと性格が違いますよ。こういうふうに考えたときにこの戦争侵略戦争であった、これはだれが考えてもそうだと思いますが、もう一度あなたの御認識を聞きたい。いかがでしょう。(「外務大臣がそんなことを言ったら本当におさまらぬぞ」と呼ぶ者あり)
  28. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いや、そういうことはないと思うのですね。やはり私は同じ御答弁を申し上げなければならない。中国も含めて国際的には侵略であるという厳しい批判を受けておる、これは日本政府もそのとおりに受けとめなければならない、こう思うのです。ただ、先ほどから私が何かこだわって言っておるようにお受けとめになりますが、戦争をいろいろと仕分けして、かりそめにもあるものはいいような印象をもし与えるなら、その方がもっともっと私は重要だと思うのですよ。だから、日本は戦後におきまして戦争を放棄しておるということも申し上げておる次第でございまして、そして日本が国際的に非常な批判を受けた、それを厳粛に受けとめていくのが日本として正しい姿勢だ、こう思っておる次第であります。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 いまの外務大臣言葉を私、もう一度繰り返しますが、中国を含めて、日本侵略戦争をやったという批判を受けておる、その批判日本政府もそのように受けとめておる、こう言われましたね。そのように受けとめておるということは、別な言葉で言えば、日本政府もあの戦争侵略戦争であったと考えておる、反省しておるということじゃないですか。もう一度大臣、そこを言ってください。
  30. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 政府もその批判を十分認識する必要がある、こういうことであります。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 あなたのその言い方は、実際上あなたはその意味においては日本侵略戦争をやった、こういうふうにお考えになっておる、そういう立場に立っておられるというふうに私は受けとめます。それを一言そう言えばこの問題は私はこの先へさらに進みたい、こう思うわけですが、そのように政府も受けとめておりますというのは、イコール日本が過去、中国朝鮮に対してやった戦争侵略戦争であった、こういうふうに自分も考えておる、こういうことじゃないですか。大臣、もう一言答弁をお願いします。
  32. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 国際的に日本がああいう行為をしたことに対して厳しい批判を受けておる、そのことは政府が十分認識していかなければならない。そして中国については、この共同声明前文のとおりに大変な御迷惑をかけた、損害を与えた、そのことについて反省をしていく必要がある、こういうことであります。
  33. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、大臣のいまのお言葉をもう一度砕いて、それではあの日本中国との戦争で、日本中国から迷惑を受けた、日本中国から損害を受けた、こういう認識は成り立つでしょうか。確かに、日中の戦争において日本の軍隊にもたくさんの戦死者負傷者が出た。けれども、このことをわれわれ日本はあの日中の戦争中国から損害を受けた、中国から迷惑を受けた、こういうふうな判断が成り立つかどうか、この点、大臣いかがでしょうか、聞かしてください。
  34. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それはもうお答えするまでもなく、日本が迷惑をかけ、損害をかけたということであって、その迷惑、損害日本も云々、そういうことはあり得ないと思います。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 その点は私は全く大臣と同じ認識でありますが、その認識を一つの言葉表現すれば、つまり日本侵略戦争をやった、こういうことになるんじゃないですか、大臣。これは、何といいますか、論理学の当然の結論じゃないですか。大臣も、そんなことを言っては失礼ですが、そのことはおわかりだと思いますが、その一言大臣、いかがでしょうか、やはり言われるべきじゃないですか。文部大臣は言っているのですよ。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは何遍も申し上げるようでありますが、日本が国際的にそういう厳しい批判を受け、それを日本政府認識しなければならないということを繰り返し申し上げるわけであります。
  37. 高沢寅男

    高沢委員 大臣がそういう御認識で、日本の国会でそういう答弁をされておるというふうなことば、これは当然すぐに対中国、対韓国に伝わるわけであります。そういうときに、いま大臣中国へ派遣された橋本情文局長、きのう中国へ着かれた、そして北京においてこの問題解決のための努力をいろいろされていると思いますが、いま大臣がどうしても侵略戦争ということを認めない——内容はすでに実際上は認めておる、しかし言葉として認めない、この大臣の態度が一体橋本情文局長の働きにどういう影響を与えるか、私は大変心配するものです。これでは橋本情文局長中国側との間で事態打開のための前向きの働きができないのじゃないのかというふうに私は憂慮するものですが、大臣、どういうお考えで情文局長を派遣されたのでしょうか。情文局長に期待された任務、役割り、これは何でしょうか、御説明をお願いします。
  38. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 一つには、日本の大使館の皆様方が中国側と相接触しておるわけでありますから、本国政府の意図するところとかりそめにもそごがあってはならない、十分この認識をさせておく必要がある、また、文部省がいろいろ言っておられることについても、これを担当者が認識しておる必要がある、こういうことで両局長が参っておるわけでありますが、しかし、両局長の入国に際して、そういう機会に中国側との間でお話し合いをする必要性、これがもしあるとすれば、それは日本としてもそれを期待するわけでありますが、その際には日本考え方日本立場というものをよく説明をするということを第一の目的として行っておる次第でございます。
  39. 高沢寅男

    高沢委員 在北京の日本の大使館の人たちと、その対応にそごがないようにいろいろ打ち合わせをする、それは外交というよりはむしろ内政問題ですね。そして、さて中国責任者と会談が成り立ったとき、その会談の中でよく日本立場説明する、こう言われましたが、何を説明されるのですか、また教科書検定の制度の仕組みを説明するのですか。——これは私は大臣にお聞きしている。局長はいいです。そういう制度の仕組みをまた説明するとか、あるいはあの検定の際の「侵略」を「進出」に変えさせたいきさつを説明するとか、こういうふうなことの説明ですか。私は当然、どうすればこの問題は中国との間で解決ができるか、中国はどういう線で解決に応じてくれるのか、そういう点のいわば打診といいますか、探るというふうなのも橋本情文局長の大きな任務、役割りの中にはあるのじゃないかと思いますが、何を説明するかということと、それから中国の側から何を情文局長はキャッチしようとするのか、その辺のところをもうちょっと説明してください。
  40. 木内昭胤

    ○木内政府委員 基本的には中国に対しまして、高沢委員承知のとおり、渡辺公使から日中共同声明前文という立場を十分伝えてございますが、橋本情文局長はこれを踏んまえまして、まさに高沢委員指摘のとおり、中国側考え方というものをさらに一層突っ込んで承ってくる、そして今後の対応ぶりの参考にするということで参っておるわけでございます。
  41. 高沢寅男

    高沢委員 大臣、いまの木内局長説明中国側のさらに突っ込んだ考え方をキャッチする、こう言われましたが、それこそわかっておるのじゃないですか。すでに肖向前第一局長日本の問題の教科書の修正を希望された。その次に、今度は中国外務次官が鹿取大使に対して教科書の訂正を要求された。このことはもうはっきり外交レベルでわれわれに、また政府にわかっていることじゃないですか。そういたしますと、中国考え方をここで聞くとか探るといって、もうそれ以上一体何があるのでしょうか、それ以上一体何を聞くことがあるのでしょうか。  私は今度は大臣にひとつ答えていただきたいと思いますが、すでにそういう中国側の態度が明らかになっておる、その上に一体さらに何を聞こうとするのか、これをひとつ大臣説明していただきたいと思います。いかがでしょう、大臣
  42. 木内昭胤

    ○木内政府委員 御承知のとおり、橋本情文局長は、十年前の日中国交正常化のときに当たりましで、日中共同声明の作成の責任の一端を担ったわけでございます。当時のいきさつもよく承知しております彼が、同じく彼の折衝相手となった中国側の当局者と率直に意見を交換するということは、私は非常に意味があるのではないか、さように考えておるわけでございます。
  43. 高沢寅男

    高沢委員 いまの答えについて、私は先ほど、もうすでに中国の態度ははっきりと外交ルートでわかっておる、そう言っているのです。もうそこに何かのあやがあるとか、そこに何かのニュアンスが出てくるとかいうふうなものじゃない。希望するから、さらに要求するということに外交レベルでなってきた。教科書を変えてもらいたい、訂正してもらいたい、こういう中国側の態度、私はそれ以上の別のものは、どんなに橋本情文局長が昔の仲を語りながら、どんなにマオタイを乾杯しながら話しても、そういうものは出てくるはずはない、こう思います。  そうすると、その前提に対して日本政府は何を決断すべきかということに当然なるわけでありますが、大臣、その決断に関係してここで中国側の一体何を探ろうとされるのか、何を期待されるのか、ひとつ大臣からお答えを願いたいと思います。
  44. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本立場というものは繰り返し申し上げておりますから、中国側においても認識を得ておることと思うのであります。しかしながら、現実にいかにこれを処理していくか、こういうことになってまいりますならば、これは抽象的な論議では事は足りないと思うのであります。  したがいまして、いま高沢委員は事実は明白だ、そういう御見地でいろいろお尋ねでございますけれども、しかし事は、われわれがこうやって非常に重大な問題になっておるということを皆それぞれ認識しておる段階でございますから、中国との間でこういう点について考えなければならないというようなことを、はっきりと政府の担当のハイレベルの事務当局者がやはり承知をしていく必要があると思うのであります。文部省側の方で検定問題としていろいろ取り上げられた改善意見とか修正意見とかというものをずっと見てまいりましても、問題の焦点というような点についてはもう一つはっきり把握しておく必要があるのではないか、こういうふうに思うのであります。  ただ、現在までのいきさつからいたしますと、高沢委員もそういうお気持ちで御質問であろうと思うのでありますが、そういう区々たることよりも、もっともっと日本政府の基本的な姿勢というものも問われておるのではないか。しかし、その点についてはわれわれは誠意を持って申し上げてきておるつもりではありますけれども、その辺をもう一つはっきり申し上げるというような必要も出てくるのではないか、あるいは問題点も幾つかあるのでございますから、それらの点についてもはっきり掌握しておくことの方が両国の長い将来の上に必要なことだと認識するわけであります。
  45. 高沢寅男

    高沢委員 いま社会党の青年活動家代表団というのが中国に行っているのです。そしてこの代表団が肖向前第一アジア局長とつい最近ですが会談をしています。その中で肖向前第一アジア局長はこういう言い方をしているのですね。九月下旬に鈴木総理が中国を訪問される、こういう予定になっている、そのことに触れて、中国はよい関係の中で鈴木首相を迎えたい、こういう言い方をされているのです。これは非常に簡単な言葉です。しかし、私はこの簡単な言葉の中に非常な含みがある、こう言わざるを得ないと思うのです。よい関係の中で迎えたいということは、これを裏返して言えば、そういうよい関係にならないときはお迎えできませんという裏返した表現にもなってくるわけでありますが、この場合の肖向前第一局長の言うよい関係とは、先ほどから私が言いました、いま問題の教科書問題で訂正を希望する、希望するの次は要求する、こうなってきた中国政府の公的な立場、その公的な立場日本政府対応によってこたえられた、こういう場合には私はよい関係ということになると思いますが、それができない、そうならないというときは、よい関係は逆の悪い関係になる、こういうふうに言わざるを得ないと思いますが、この点は外務大臣、御認識、御判断どうでしょうか、お聞きしたいと思います。
  46. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 本年趙紫陽首相閣下を日本にお迎えをして、国交回復十年の節目の年である、超首相にこたえて鈴木首相も秋に訪中をしょう、こういう際でありますから、高沢委員のおっしゃるように、よい環境の中でお出かけをいただく、そのことに誠意を持って努力することは言うまでもございません。
  47. 高沢寅男

    高沢委員 そこまでは大臣、まだそれは序論なんです。あなたのいま言われたことは、要するに前書きを言われたのです。そこで、よい関係というふうにするには何が必要か、どうすることが必要かということを私は先ほどから繰り返し大臣お尋ねをしているわけですが、この点は大臣の御所見はどうでしょうか、そこをひとつ教えてください。
  48. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 よい環境の中で鈴木訪中を実現する、これは外務大臣の私の大きな責任だと思います。これは非常に抽象的な言葉になりますが、しかしそうでなく、一体具体的にはどうか、こういうことになりますと、日中間の関係は私は近年非常にいい関係にあるのではないかと思うのであります。今回の教科書問題で厳しい批判を受けるような状況になりまして、これは本当に遺憾にたえないところで、私も外務大臣としては、そのことについて本当に心からなる憂慮をいたしておるのでございますから、この問題について両国の間ではっきりした合意ができ、そして現在は非常な厳しい批判の中にあるわけでありますが、それがそうでなく、文字どおりよい環境になるよう努める必要がある、このように思う次第です。
  49. 高沢寅男

    高沢委員 橋本情文局長が任務を果たして帰られる。いつごろを予定されているか、この辺はいかがですか。
  50. 木内昭胤

    ○木内政府委員 現在、北京におきまして中国側との打ち合わせのスケジュール等について相談して、その結果によるわけでございますが、一応水曜日ぐらいに、夕方にでも帰ってくるという含みで出かけております。
  51. 高沢寅男

    高沢委員 きのう向こうへ着かれたわけですね。そして、聞いてみたら、きょうまだ先方との会談とかいうふうな段階に至っていないというふうにお聞きしたわけですが、いま木内局長の言われたように十一日の水曜日に帰るというふうなことになりますと、もうあしたが十日であります。その、きょう、あしたの二日間というふうなことの中で、こちらの期待するような話し合いが果たして成り立つのかどうか、このこと自体が大変問題だと私は思いますよ。その成り立つかどうかということ自体も、私は本委員会における外務大臣お答えというふうなものが非常に微妙な関係がある、こう思うわけであります。  いずれにいたしましても、そういうふうな任務を果たして橋本情文局長が帰ってきたとき、物事はタイミングがありますね、まさに政府がこの問題を解決するための決断をするタイミングは、まあ私たちは早ければ早いほどいいと思いますが、どう見ても、いまの政府の側から見ても、橋本情文局長が帰ってくる、この辺のところが政府がまさに決断されるタイミングじゃないのか、こう思うのですが、この辺は大臣、どんなふうにお考えですか。
  52. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 こういう重要な問題でありますから、時日が遷延するということは好もしいことではないことは言うまでもありません。日本政府としては、誠意を持って対処して、早急に物事の解決するように努力すべきだと思っております。
  53. 高沢寅男

    高沢委員 とにかく繰り返して、国務大臣が決断をもってひとつ解決策を提示されて、そして総理もその線によって動かすというふうにぜひやっていただきたい、やるべきだ、こう思います。その点を申し上げます。  さて、きょうは実は文部大臣にもお尋ねしたいことがたくさんありましたが、きょうは文部大臣の出席がありません。鈴木初中局長お見えになっておりますので、いずれ大臣お尋ねしたいことは別として、初中局長にごくほんの一、二の点をお尋ねしてひとつお答えをいただきたいと思います。  教科書検定問題で、教科書で使う言葉は、たとえば侵略という言葉は、これはだれが見ても悪いことである、こういう価値観を伴う言葉である、こういう言葉教科書に使ってはいかぬというようなことで侵略を変えさせた、こういう経過にあるわけですが、そうすると、朝鮮の三二事件は暴動である、暴動、これは悪いことである、やはり同じような価値観を伴う言葉ですが、こちらはいかぬ、こちらは使え、これは一体どういう関係ですかな。局長の御答弁をひとつお願いします。
  54. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 侵略につきまして、文部省検定調査審議会の議を経て付しました改善意見は、個々の歴史的な事柄を表記する場合に、全体の表記の公正、バランス、あるいは一貫性という見地から、たとえば列強の中国に対する行為につきましては進出と書いてある場合に、日中の行為については、日本中国侵略というふうに書いてあるようなケースについて、よりバランスをとる見地から変えたらどうかということでやったわけでございますし、また、ただいま高沢先生の御指摘もございました暴動の件につきましては、これは三・一運動そのものを暴動というふうに総体的に意見を付したものではございませんで、独立運動ということは明記してございまして、その中の一つの状態として、全体の状況をあらわすものとしてそういうものが、集会、デモのほかにそういう状態があったのではないかというようなことで、騒擾状態をあらわす言葉としてそういうものが表現されたということでございます。
  55. 高沢寅男

    高沢委員 いまの局長お答え、私の気負い込んで質問したのが、ずいぶんペースを狂わされたようで大変あれですが、もうちょっとぱきっと答えていただきたい、こう思います。  それで、教科書検定あり方、いま朝鮮独立運動という総体は認めながら、しかし、その中に騒擾状態があった、こういうふうに言われたわけですが、しかし、あの万歳万歳と当時朝鮮の人たちが独立を願って行動をとった、そのこと以外に別の行動が何かあったか。そのこと自体がすなわち三・一事件であったわけで、それを騒擾事件、暴動、こう位置づければ、結局あの独立運動全体を暴動という規定づけをすることになるわけですね。そうして、実際当時の日本朝鮮における軍と警察は、これらの朝鮮人をあなた、何万人と射殺、銃殺、殺しているわけですよ。こういうふうなことが暴動という言葉表現されたとき、これを鎮圧するために射殺、銃殺したことは当然であったということにまで、この暴動という言葉の意味するものはつながっていくのです。そういうことで一体いいのか。局長、ちゃんと答えてください。
  56. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 歴史の著述におきまして記述する場合に、できるだけ客観的に史実に基づいて行うということが趣旨でございまして、その意味におきまして、このお挙げになりましたような教科書の例を申し上げますと、「集会・デモがおこなわれ、」というような状況は書いてございますけれども、そのほかの状態として、この運動がかなり長く行われました経過においてそういう状態があったという一般的な情勢を、背景をやはり正しく書く必要があるのではないかという見地から意見を付しまして、その結果出た表現がそういう「暴動」という表現でございます。  ただ、全体の三・一運動につきましては、三・一運動独立運動の趣旨は繰り返し繰り返し明記されているものでございまして、そのことによって三・一運動の意義が損なわれるというふうなことはないということでございます。
  57. 高沢寅男

    高沢委員 インドがイギリスから独立をする過程を見ても、いままで植民地の、圧迫を受けた民族が独立をしようとするときは、どこの国でもそれはデモという形があらわれ——それしか方法がないんだから、そういう形があらわれて、そうして結果として独立をかち取るというふうになるのです。そうすると、あなたのいまの説明では、それはどこでもそういう姿になる、これはみんな暴動であるということにならざるを得ない。そうして、あなたはいまそういうことを言ったけれども、これも朝鮮のことを日本教科書で扱っているということは、ただ単に日本の問題だけじゃ済みませんよ。書かれる相手朝鮮韓国はそれをどう受けとめるかということに当然なるわけであります。この点についていま強い抗議が、修正要求がなされておるというこのことはあなたも御承知のとおりです。  そこで、この修正はすべきだというふうに私考えますが、そういうやりとりはいずれ文部大臣相手にいたしたいと思いますが、もう一つ、あなたがいま言った、歴史の教科書は客観的な事実を記述すべきである、こう言われた。私はそのごまかしをやはり指摘したいと思うのです。客観的記述をしなさい。あの中学、高校の教科書に、広島に落とされた原爆、長崎に落とされた原爆、その原爆はこんな被害を与えた、こんなひどい目に民衆を遭わせたという客観的な記述教科書にある。その一つのあらわれとして、あの丸木御夫妻の「原爆の図」のこの写真が教科書に掲載された。そして今度はこれを削れと言う。客観的な記述をするとこれも削れと言う。何で削るんだ。それは残酷だとかいうふうな理由で今度は削れと言う。皆さん、客観的な記述をして残酷な事実は、やはり残酷な事実として客観的な記述をせざるを得ないのです。それを今度はまた削れと言う。そうすると、あなた方の言う歴史の記述は客観的な記述をとこう言いながら、それを出せばそれをまた削れと言う。こういう検定やり方のごまかしというか、そういうことを私はこの際根本的に反省してもらいたい、改めてもらいたい、こう思うわけですが、局長いかがですか。
  58. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 いまお挙げになりました「原爆の図」、これは要するに、教科書の中に発達段階に応じましてどういう教材をどのように配列するかということは、教科書の成り立ちから申しまして大変重要なことだと思います。「原爆の図」を取り上げてはならないというようなことはございませんで、その取り上げ方が一ページ大にわたりまして原色でやっているというふうな場合に、これは教科書の構成から申していかがであろうかというようなことでございまして、ある適切な分量であれば認められているものもございますし、そういう意味で教科書の構成、内容、配置という観点から意見を付しているものでございます。
  59. 高沢寅男

    高沢委員 もう私の質問の時間が終わりましたから、これで終わって井上委員に交代いたしますが、とにかく外務大臣先ほどいろいろと質問いたしました侵略戦争の評価については、これはまだ後に後に残して、あくまでもひとつ大臣認識をはっきりさせるということで私たちはやりたいと思います。  その点を最後に申し上げ、そしてまた、そういうことのやる必要がないような一刻も早く政府の決断でこの問題を解決するということを要望いたしまして、終わりたいと思います。
  60. 中山正暉

    中山委員長 井上普方君。
  61. 井上普方

    井上(普)委員 ただいまは現実の日中問題あるいは東南アジアの諸国との日本の文教政策について重要な提起をされておりますが、それにも劣らぬ日本外交姿勢について、あるいは外交当局の態度について政府の御見解をただしたいと思うのであります。  と申しまするのは、日本の戦前の外交を見てみますと、あるいは外務省が知らざるところにおいて軍部が外交をつかさどった。ために日本は三国同盟を結び、戦争にまで追い込んでいったという事実があります。したがいまして、日本外交というものは、少なくとも一元性でなければならない、こう私は感ずるのであります。しかし、いま日本の状況を見てみるときに、あるいは自衛隊がアメリカの国防省と連絡をしながら五六中業をつくっておるというようなうわさも私どもには聞こえてきて、まさにひたひたと日本外交はどうなるのであろうかと憂えるところであります。  それはともかくといたしまして、その一つのあらわれとして出てまいりましたのが、最近の新聞にはブロック書簡という形で出てまいったのです。このブロック書簡のいきさつにつきましては、もう外務省当局も十分御存じだろうと思います。五月の十二日に櫻内外務大臣がパリにおきまして、アメリカから日本の総理大臣の市場開放第二弾に対する談話を、原稿を渡されて、あなたはびっくりされただろうと思う。こういうような事実がありましたが、これらについて外務省といたしましては、このいきさつにつきましてはどのようにお考えになっておられるのか、さらにはまた、その詳細にわたってひとつ御説明を願いたい。  同時に、それらに対して、ブロック書簡にあらわれました日本の二元外交あるいは各省のやり方に対しまして、外務省としてはどういうような反省を持たれておるのか、この点お伺いいたしたいのであります。
  62. 深田宏

    ○深田政府委員 ただいま井上先生御質問で御指摘がございましたように、ブロックさんの書簡にいろいろな別添がついておりまして、総理大臣談話をお出しになるということであれば、このようになさってはどうかということが出ておったわけでございます。私どもといたしましては、これは日本側の参考にということで、内々の書簡ではございましたけれども、大変異例なことでございましたので、先方に、これは一体どういう背景でそういうことになったのかということを直ちに問い合わせた次第でございます。  先方の立場もございますので、その詳細、先方からの説明の詳細については、この席でお答え申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、私どもとしましては、このような重要な問題につきまして、今後におきまして関係各省と緊密に御連絡をいたしまして、ただいま先生御指摘になりましたような外交が二元化、三元化というようなことにならないように配慮いたしたい、このように考えている次第でございます。
  63. 井上普方

    井上(普)委員 私は国の外交に対してまことに重大であるから、このいきさつについてお話を承りたい、こう申しておる。このことについてどういうような御調査をなさり、どういうように事態をお考えになり、把握し、かつまた、これに対する今後の処置についてお伺いしているのです。ここはそういうようなまことに抽象的なお話では物事は済まない、具体的に出てきているのだから。この点について局長、あなたの答弁、もうよろしい。外務大臣、いかがにお考えになります。国の重大なる今後の問題として私は受けとめておる。外務大臣、いかがでございます。
  64. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ブロック書簡と、こう言われておる手紙でございますが、五月十一日付の書簡がパリの出先で私の手元に届けられましたが、その折にこういう同趣旨のものが他の閣僚にも渡っておる旨、そういうことが言われておりまして、それからその書簡を見ますと、正規の外交文書として在日アメリカ大使館を通じて届けられたとか、あるいは在ワシントンの日本大使館から通じて届けられたとかそういうようなものでない。私も七、八カ月この省にありますから、一見して、一つのブロックの書簡で外交文書のごときものではあるが、しかし、それなら正規のそういうものであるかということになりますと、私はそういう扱いのできないものである。したがって、こういうものが来ておりますと言うから、私はべっ見してそのまますぐふんと言って、持ってきた松永外審に渡した。そういう経緯のものでございます。  しかしながら、事務当局がその書簡を詳細に検討してまいりますと、いわゆる第二弾を前にして、それに対しての意見なり案が出ておるというようなことから、ただいま局長からお話のありましたように、それらの背景についての問い合わせをしてみるというようなことであったわけでございます。  そういうことでありますから、私は特に日本語で言うと、親展秘というブロックの書簡、こういうことでありましたから、それなりのものとして本日まで扱ってきておるわけであります。  なお、もう一つ申し上げておきますが、この手紙を受けましたその時点におきましては、私がOECD閣僚理事会に出席をする、また安倍通産大臣がいわゆる三極会議に行くというようなことで、出発前に第二弾についての粗筋については打ち合わせが済んでおった段階であります。したがって、ブロック書簡をべつ見して、いろいろ意見を言っているなという、そういう程度に私は受けとめた、こういう経緯にございます。
  65. 井上普方

    井上(普)委員 大臣、ここは物事を大きくすまいという御配慮はわかりますけれども、しかし、これは日本外交それ自体についての重大なる問題点だろうと私は思いますので、あえてお伺いするのです。すなわち、五月十二日——出発する前にはまだ粗筋においては決定しておらないのであります、第二弾につきましては。しかも、大蔵省、通産省、農林省、さらには経企庁、外務省が相談をいたし、まだ協議中の事項であったはずであります。私は通産省ということは一切言うてない。にもかかわらず、いまいみじくも櫻内大臣は安倍通産大臣というお言葉を出された。ちまたに言われておるところによると、通産省がこのような総理大臣の談話を発表することをアメリカから日本に言ってくれといって出したのが、このブロック書簡に添付せられておる総理大臣の談話原稿だと言われております。どうなんです。この事態につきましては、こういうことが新聞紙上でも伝えられておるんだが、真実かどうか、この点お伺いしたいのです、具体的に。——あなたに聞いてない。通産省には聞いてない。外務省に聞いている。通産省には聞いてない。引っ込め。——委員長、指名したんですか。指名していないでしょうが。
  66. 中山正暉

    中山委員長 指名しました。
  67. 井上普方

    井上(普)委員 外務省に私は聞いているんだ。
  68. 中山正暉

    中山委員長 事務的に答弁をさせたいと思います。いきさつは通産省から……
  69. 井上普方

    井上(普)委員 いや、外務省答弁させてください。
  70. 中山正暉

    中山委員長 いま通産省という御指摘が出ましたから。
  71. 井上普方

    井上(普)委員 私は通産省には聞いてない。
  72. 中山正暉

    中山委員長 中澤通商政策局長——早く答弁してください。
  73. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 通産省の原案作成の問題についての御発言でございますので、答弁させていただきたいと思います。(土井委員委員長、ちょっと委員会運営について」と呼ぶ)
  74. 中山正暉

    中山委員長 発言中でございます。これが済んでから伺います。答弁後に御発言ください。(土井委員委員長、これが優先です、最優先、ちょっと待ってください」と呼ぶ)ちょっと待ってください。  土井たか子君。
  75. 土井たか子

    土井委員 質問者が要求している答弁者をまず指名していただく、これが適正な委員会運営だと存じます。委員長、お願いしますよ。
  76. 中山正暉

    中山委員長 御発言でございますが、挙手がございましたので、まず事務的に、また、井上普方先生の御発言の中に通産省に関する御発言がございましたので、委員長として、外務大臣もここでお聞きになって、御答弁の御判断をなさるのにその前提として必要であろうと思いましたので、中澤通商政策局長を指名したわけでございます。御了承を得まして、もう一度中澤通商政策局長を指名いたします。
  77. 井上普方

    井上(普)委員 委員長。私は、先ほど通産省の名前は全然出していなかったのであります。しかし、はしなくも外務大臣が、安倍通産大臣もこういう手紙を受け取ったと、こうおっしゃった。したがって、一体どういうわけでこういう通産省が名前が出てくるのか。一体これはどういう事実なんだ。事実の経過を外務省として私は承っておるのです。真実を外務省から私は承って、その後に通産省に質問するならしたいと思っております。外務省のお調べになった実態をひとつお伺いしたいのです。
  78. 深田宏

    ○深田政府委員 私どもが伺っておりましたところを御説明いたしますと、通産省のお話が出ました、通産省の方では、この総理大臣談話の発出、その概要について、六日の日に通産大臣から総理大臣にお諮りになられたということでございまして、その結果、七日の日に、事務当局からアメリカ側に電話連絡で、日本側考えの骨子をお伝えになったということでございます。私どもは当時その間の事情を承知いたしておりませんでした。これは大変残念であったと存じますけれども、十一日のブロック書簡に添付されておりましたアメリカ側の総理談話の案というものは、通産省の方から御連絡になられましたところを反映しておったということのように理解いたしておるわけでございます。
  79. 井上普方

    井上(普)委員 こういうことでいいんでございますか。いまのお話によると、一国の総理大臣の談話について、通産省が了解を総理大臣から得た、外務省は全然つんぼ桟敷、こういうことで日本外交ができるんでございますか。一国の総理大臣の談話、国内に向けてであると同時に、海外向けの談話です。そのことについて外務省は全然関知していないということでありましたならば、一体どうなるんでございますか。これが第一点。  第二点といたしまして、電話連絡というようなお話でございますけれども、日本農業新聞が手に入れました原稿を私も拝見いたしました。実物を見てみるというと、日本人のつくった英語であるということが言われておりますし、また、そのように私も考えます。この点について、外務省が総理大臣の対外的な談話を全然知らずに、日本外交をできるのでございますか。どうでございます。櫻内大臣いかがでございますか。
  80. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ブロック書簡にその種のものが添付されておったことは事実だと思います。その時点で通産省から外務省に連絡があったかどうかということにつきましては、ただいまの深田局長の御答弁でお察し願えるように、連絡はなかったんではないかと思うのでありますが、この談話というものは、たしか五月の二十七日でしたか、第二弾の折に総理の談話というものが閣議で了解されて、発表になっておると思います。そして、たしかその前に、どういう談話にするかということについては外務省も相談にあずかった、こういうことでございます。
  81. 井上普方

    井上(普)委員 いまの局長のお話と大臣、御認識が違うようであります。通産省は総理大臣に了解を得てアメリカに対して電話連絡した、こういう話でございますが、少なくとも総理大臣の談話については外務省が全然知らなかった、通産省から全然連絡もなかった。通産省から外務省に連絡しなかったこと、これ自体についても大きな失態があります。そしてまた、総理大臣の談話を総理大臣が外務当局に全然連絡せずに、通産省の言うままにオーケーを出したというのでありましたならば、これまた日本外交というのは一体どこにあるのか、重大な問題であります。この二点について外務大臣の御答弁を承りたい。いま外務省局長より承りますと、この二点について全然知っていないという事実が判明いたしましたので、この点について外務大臣はいかにお考えになるか、御答弁をお願いしたいのです。
  82. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 事実関係の問題でございますので、私からまず御説明をさせていただきたいと思います。  先ほど工業製品の関税の引き下げ等についての対米折衝ぶりについて触れておられましたので、その間の事情を御説明いたしますと、市場開放第二弾の検討は、四月の段階から入っておりまして、通産省といたしましては、通産大臣からの強い指示によりまして、今回の第二弾の内容については十分に先方に評価させることが大事である、したがって、正式な決定発表の前にその内容等について事前に十分相手方の評価を得るように先方と打ち合わせを行うようにということがございまして、TFCその他の場を通じまして当方の考え方説明しております。そのような一環で、先ほども出ましたように五月六日の日に、その五月十一、十二日のパリで行われます三極会談の骨子につきまして通産大臣より総理大臣に、工業製品の関税の引き下げ方に関する方針及び政府声明あるいは総理声明という形で、これにあわせて国内における工業製品の市場開放及び外国企業の歓迎、こういう考え方声明することが非常に有効であり、不可欠であるという進言を強くいたしまして、総理からそのような方針について大筋の御了承をいただきました。その後、七日の日に三極会合の議題につきまして先方から照会がございましたので、大臣の指示も得まして、議題の連絡と同時に、案を出す場合の考え方の骨子を連絡したわけでございます。したがいまして、当方からいわゆる書簡の案を出すようなことをあらかじめ先方に連絡した、あるいは仕組んだというようなことは一切ないわけでございます。
  83. 井上普方

    井上(普)委員 はしなくも言った。あなた方、仕組んでいるんだ。外交二元の姿がありありと出てきておるじゃありませんか。しかも総理大臣の談話の説明だと言いながら、その案文がすでに向こうさんに渡っておる。しかも外務省は全然知らない。一体こんなので外務省外交はできるんですか。これはまだ通商だからいいというような考え方であなた方はのんきにせられておったら大変なんだ。すでに自衛隊はあるいはアメリカ国防省と打ち合わせをしながら、日本の予算要求もなされておるというようなうわさすら私らには承る。まことにゆゆしい事柄だと私らは内心憂えておるのであります。かつて日本がドイツと三国同盟を結ぶ際に、日本陸軍が大島駐在武官を通じて、外務省はそっちのけにしながら外交交渉をやった結果、御承知のように三国同盟の締結になったのであります。言いかえますならば、二元外交ほど恐ろしいものはない。日本はこのような国でありますから、一番大事なのは外交である、次に大事なのは教育であると私は考える。しかもその外交が、過去の失敗にこりず、同じようなことが同じ政府部内で役人によって二元外交が展開されようとしておる時期に、安閑と外務省がしておることは私は許されないと思う。これが鈴木内閣の外交方針であるならば、まさに鈴木内閣は日本を再び亡国の姿に追い込む元凶をつくるものであると言っても差し支えないと思う。でございますので、外務省よもう少ししっかりしてくれと私は言いたいのであります。  お約束の時間が参りましたので、私はこの程度にさせていただきますが、次にこの機会に十分この点を論議させていただきたいことを委員長にお願い申し上げまして、質問を終わります。
  84. 中山正暉

    中山委員長 玉城栄一君。
  85. 玉城栄一

    ○玉城委員 最初外務大臣にお伺いいたしますが、いま深刻な外交問題にまで発展いたしましたわが国教科書検定問題につきまして、先ほど大臣御自身大変憂慮すべき状態であるという認識も表明をしておられるわけです。考えてみますと、一国の教科書がこれほどまで他国から厳しく批判を受けるということ、これは本当に異例なことではないか、このように思うわけでございます。しかし、これはやはり過去にわが国の行ったことに対する、たとえば日中戦争だとかあるいは満州事変だとか太平洋戦争とか、その傷跡がまだ関係諸国に深く残っている。したがって、そういう立場からすれば、当然起こるべくして起こった批判ではないか、このように思うわけであります。まさにわが国、その過去の重大な誤りを深く責任を痛感し、反省をした上に立って新生日本というものは出発をしたと思うわけでありますし、憲法の精神もそうだと思うわけであります。そこでそういうことが空洞化されつつある、あるいはされた、そういうことからやはり内外にこの問題が重大問題として発展している、このように思うわけであります。  そこで、端的に伺いたいわけでありますが、日中国交正常化しましてちょうど十周年、両国の首脳が相互訪問され、いよいよわが国鈴木総理来月は訪中される、こういうことであります。私は、現在のこういう状況からしますと、果たして本当に鈴木総理の訪中ができるのかどうか、まさに赤信号がついている、そのように見るのが常識的ではないかと思うのです。厳重に二回も中国から抗議を受け、報道によりますと、中国は国内的にも連日この問題で抗議運動すらも起こり始めている。文部大臣も正式に断わられた。そういうことからしまして、本当にこういう日中間の状況の中で鈴木総理の訪中ができるのかどうか、その辺、外務大臣としての認識、率直にお聞かせいただきたいと思います。
  86. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 鈴木首相の訪中につきましては、かねてこの秋には趙紫陽首相の訪日にこたえる、その一つとして訪中をするということが明らかにされておるわけであります。玉城委員のおっしゃるとおりに、本年が日中国交回復の十年の節目の年でもありまして、この鈴木首相の訪中が有意義に行われるということは必要なことだと思います。  そこで、行われるのかどうかという端的な御質問でございますが、先ほども御質問がありましたように、訪中を行う以上、よき環境の中で行われる必要があることは言うまでもないのでありまして、現在のような教科書問題が非常に重大な段階にあるということは速やかにこれを解決して、そして両国ともに虚心坦懐に日中の首脳の交歓を行うということが必要である、そういう見地に立ちまして、問題につきましては鋭意誠意を尽くしてその問題点の解消に努めて、この訪中がよき環境の中で行われるようにいたしたいと思います。
  87. 玉城栄一

    ○玉城委員 そのように外務大臣とされては当然していただかなくてはならないわけでありますが、文部大臣は、この間国会における委員会でこの問題について、こういう状況の中では総理の訪中中止ということも絶無ではないというようなこともおっしゃっておるわけですね。したがって、本当に真剣にこのことを考えますときに、外務大臣とされてはそのように希望的におっしゃることは結構ですけれども、まさにこういう状況の中で非常にむずかしくなってきていると私は思いますが、それが絶無であるとかないとか、絶無とは言えないというようなこともお考えになっていらっしゃいますか。
  88. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は絶無とは言えないというような考えはございません。特にいま問題の教科書問題は早急に解決されなければならない問題でありますし、またこの問題は厳しい中国韓国の世論の動向の前にさらされておるわけでございます。日本側がこれにどう誠意を持ってこたえるかということでございまして、鈴木訪中の前にこの問題に対して誠心誠意を尽くして解決すべく努力をして訪中の実現はぜひこれを見たい、このように私は思っております。
  89. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、大臣、早急にとか誠心誠意、鋭意とか、努力しなくちゃならぬとおっしゃいますが、問題はそこなんですね。どういうふうに具体的に誠心誠意努力すればいわゆる日中関係のよい環境をつくり上げ——早急につくり上げなくちゃならないとおっしゃるわけですから、外務大臣とされてはどういうふうにした方が関係修復が、総理訪中も実現できるような態勢ができ上がるか、その点をちょっとお聞かせいただきたいわけです。  もう一つつけ加えて、そのおっしゃる誠意ということについてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねいたします。
  90. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 総理御自身も言われておることでございますし、私も折に触れ申し上げておりますように、日中の関係につきましては御承知のような日中共同声明のもと、その前文日本としての誠意を中国に対して披瀝をしておるわけでございます。「中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」ということを明らかにして国交が回復されておるのでございまして、このことがあらゆる面において明白に実現をしておらなければならないのであります。このことをすべての日本国民が念頭に置いて行動をすべきものでありまして、そのことが私が申し上げる誠意を尽くす、誠意を尽くすことはこの前文反省あるいは責任の痛感ということにあることは言うまでもありません。
  91. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、いまのその点なんですね。相手側の要求というのははっきりしておるわけです。記述内容について向こうの指摘は、こういうことじゃいかないという抗議が来ているわけです。そのことについては大臣としてどのようにお考えになっていらっしゃるのですか。あれはまさにより客観的、より公正であり、向こう側の言っていることは当たらない、こういうことなのかどうか。いわゆる必要はないということなのか。いかがでしょうか。
  92. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほどから何回かお答えをしておるわけでございますが、戦前のわが国行為について、中国も含め国際的には侵略であるという厳しい批判を受けておるのでありまして、この事実を政府が十分認識する必要がある、これが私は大事なことだと思っております。
  93. 玉城栄一

    ○玉城委員 端的に言いまして、再改訂ということが問題になっておるわけですね。ですから、そういうことは総理訪中を遂行させるためには必要であるのかないのか。いかがでしょうか。
  94. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は国務大臣立場がございますから、その立場での判断はございます。しかしながら、御承知のようにそれぞれ責任を担当しておるのでございますから、そこで私は繰り返し、中国を含めて国際的にいろいろ批判がある、しかしそれを政府は受けとめていかなければならないということを申し上げておるわけでございまして、そういう認識に立っての行動が必要だと思っております。
  95. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは報道でしかわかりませんが、総理は文部大臣と再改訂という方向で協議をしているというふうに報じられておるわけですが、外務大臣はそういう協議にはまだ参加をしておらないということでしょうか。
  96. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は外務大臣として、中国または韓国からのいろいろな情報につきまして、これを関係各省に率直に伝える責任を持っておるわけでございまして、それがために私は、事務次官同士もよく話し合ってもらいたいということも指示をいたし、外務省承知しておることはすべて関係省の方には伝える、こういうことによりまして、それぞれ関係のある立場の方の善処をお願いしておるわけであります。
  97. 玉城栄一

    ○玉城委員 その誠意ということについてなんですが、いま盛んに総理もおっしゃっておるし、外務大臣も何回もおっしゃっておるわけですね。本当に大誠意を持って臨まないと、この問題は非常に憂慮すべき状態に置かれておると思います。それはやはり誠意といえば、相手が納得するような内容を含んだ行為、行動が伴っていないと、いまのようなこういう状況では、幾ら相手に誠意を示していると言っても相手が納得しないわけです。問題は、大事な指摘されている部分をどうするかということがいま問題になっているわけですね。大臣は善処するとおっしゃいましたが、教科書指摘されている記述等を含めて、当然それは外務大臣として、より公正、より客観的な内容にされることについては異議がないわけでしょう。いかがでしょうか。
  98. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは外務大臣責任として、中国韓国またアジア諸国における世論の動向、あるいは批判の事実というようなものを正しく伝え、また基本的には、繰り返し申し上げておるような、日本政府の姿勢が明らかにされる必要があるということを申し上げておるわけであります。
  99. 玉城栄一

    ○玉城委員 きのう外務省それから文部省局長が行かれました。この問題についてのとらえ方、外務省はもちろん、文部省も含めてですけれども大変甘かった。ここまで事態をこじらせてきている。それをしかもいわゆる実務者である局長さんを派遣して、順序が逆じゃなかったか。普通の外交交渉と違うわけでしょう。やはり国の責任がある程度持てる立場の政治家が最初に行って、そして日中友好というものについてかっちりと固めた上で、後は実務的な点は話し合いをしましょうというのが、今回それを逆に、実務者が行きまして、先ほどお話を伺っておりますとまだ会談も始まらない。一方韓国では閣僚級であれば受け入れてもいいとか、この問題の取り扱いが外交的にも非常に拙劣な面が多々ある、そういう感じがするのですが、いかがでしょうか。
  100. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 この問題が起きまして以来の経緯にかんがみまして、またわれわれとして判断をする上に、やはりもっと事実を十分把握する必要がある、こういうような点も物の判断をする上にはどうしても必要なことではないか、そういうような点から、実務者の中でも特に責任を持ちあるいは事情に通じておる者がひとまず相手国を訪問する、しかし、この訪問に際しては、これはただいま玉城委員の御指摘しておることともう一つ目的があることを申し上げておるわけであります。第一番目に接触をするのはそれぞれの在外の大使館のことでもありますから、かりそめにもその大使館の認識が欠けておってはいけない、それには相当な責任ある者が行ってよく説明する必要がある、こういう目的をも兼ねて行っておることでありますので、御了承をいただきたいと思います。
  101. 玉城栄一

    ○玉城委員 私きのう、空港での出かける橋本さんをテレビで見ましたけれども、おっしゃるとおり、誠意を持って話す以外にない。それで、非常に大変な役目だな、気の毒だなと思いました。現地に行きまして政治的な判断ができないということは、相手側にとっては納得できないわけですね。そういうものをこういう大事な時期にやっておられるいわゆる政府対応、これは非常に問題点だと思います。もし最悪の場合、総理の訪中が中止だとか、日中関係悪化していって行かれたら、局長さんなんか大変だと思うのですね。その点、大臣責任でちゃんとやらなくちゃいかない問題だと思うわけです。  そこでもう一点。侵略戦争について、日中戦争についての性格の問題ですが、私も文教委員会で伺いました。これは何回も文部大臣は、きょうは局長もいらっしゃいますので、弁解の余地のない戦争であった、それはどういうふうに表現しても構わない、それは侵略戦争だ、そのように言ってもいい。じゃ、おっしゃってくださいと言えば明確に侵略戦争であったと言う。これは何回もおっしゃっておられるわけです。  そこで、時間ございませんので、文部大臣はそうおっしゃった。そうしますと、ほかの閣僚の方々はどうでしょうかと、同じような認識を持っていると自分は思う。それをいわゆる統一見解としていくのか、そのように努力するとまでおっしゃられたわけですね。文部大臣がそのように努力されることについて外務大臣は反対されますか、賛成されますか、推進されますか、協力されますか。
  102. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 文部大臣文部大臣としての御所見を言われておることだと思います。私は、日本行為そのものを日本自身が弁護するとかまた日本自身が何らかの判断を示すよりも、現に厳しい国際的な批判を受けておるということを政府が率直に認識することの方がより重要である、こういうことを申し上げておるわけであります。
  103. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題は、まさに櫻内外務大臣が本当に泥をかぶるという言い方はおかしいですけれども、いま総理の訪中自体が赤信号がついているという大変な状況にあるわけですね。まさに周囲がこの問題で大変な状況にあるわけです。それで、先ほど申し上げました誠意という問題ですが、やはりおっしゃった過去の戦争についての共同声明についての確認ということは、これは何らかの形で当然必要だと思いますが、いわゆる指摘されている部分についてやはり何らか変えるということもこれは当然必要だと思うのですね。あるいは、総理自身の誠意を示すという意味で親書か何かを事前にきちっと関係諸国に持たせるとか、いろいろな方法があると思うのですが、大臣、いかがですか。
  104. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私がいまの御質問お答えができる立場であるといいのでありますが、やはりそれぞれ各省の責任を持っておるのでありますから、したがって、外務大臣としては外務大臣の限界で物を申し上げておる。いまの御質問につきましては、これは文部省がよく考えるべき問題だと思います。
  105. 玉城栄一

    ○玉城委員 いやいや、文部大臣ではなくして外務大臣とされて、目前に、もう来月の下旬には総理が訪中しなくてはならない。これ以上問題をほうっておきますと、それすら危なくなってきている。それは、中国韓国、関係諸国すべてがいまそういう状況にあるわけです。それを憂慮しておられるわけですから、外務大臣が泥をかぶってでもこの問題でやはり何らかの具体的なものをしていかなくてはいかない。そういう意味で、私がさっき申し上げました点、総理に閣議でも進言をされ、早急に検討していく方向に大臣としてされるかどうか。いかがでしょうか。
  106. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外務大臣としては、わが国中国に対してとったその行為というものについて責任を痛感して反省をするというこの共同声明前文にのっとって、それぞれの立場の人がよく認識しての行動をとってもらう必要がある、こういうことを申し上げておるわけであります。
  107. 玉城栄一

    ○玉城委員 事態の進展を私も大臣と御同様に非常に心配するだけに、大臣、ひとつこの問題は本当にやっていただきたいと思うのです。  そこで、時間がございませんので文部省の方に伺いたいのです。  事の正否は別ですよ、あなた方の言い方、正否は別にしても、現実にこのように日中関係も抗議がある。韓国でもそうですね。在留邦人の方々もいま大変肩身の狭い思いをしているわけです。タクシーにも乗れない。不買運動とかいろいろな問題が出始めているわけでしょう。それは文部省の言い分はいろいろあるでしょう。しかし、そういう状況にあることについて、文部省責任を感じませんか。いかがですか。
  108. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 この問題につきまして文部大臣が申し上げておりますように、教科書検定制度の適正に運用する過程で起きました問題についての外国からの指摘でございますが、この点について文部省なり文部大臣が民間に責任を転嫁するというふうなことはございませんで、それは明らかに文部省責任であるということは申し上げているわけでございます。  しかしながら、教科書検定につきましては、これはわが国の児童に与える教科書をいかに適正につくっていくかという見地から教科書検定制度を運用いたしまして適正にやっているのでございまして、その点についての理解を求める努力を、できるだけ誠意を持って対応しなければならないという姿勢で一貫して当たっているわけでございます。
  109. 玉城栄一

    ○玉城委員 局長さん、そんなことをおっしゃいますけれども、あなたのその説明は一体何を、どういうことを説明——むしろあれ以来火がついているわけですね。制度の運用自体にも問題があると私は思いますよ。そしてこれほど、あなたの教育行政というその枠の問題じゃいまなくなっているわけでしょう。きのうの文部省局長さんが向こうにその制度をさらに説明にいくということ自体にも私ちょっと問題があると思うのです。もうそういう次元じゃないということなんですね。  そこで、一つ確認しておきたいのですが、検定した教科書を訂正するには正誤訂正という制度がある、やり方がある。著者から申請がある、受理する、そしてその制度に乗っかっているかどうか検討する、そして正しければ訂正するというようなことはそのとおりですか。そのときに出てくる問題は、内外の問題も含めて、それは当然そのルールに乗っかっていきますね。
  110. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 教科書検定の仕組みは、新規検定と改訂検定の二つでございまして、新規検定と申しますのは、指導要領とその基準となる枠組みが変わった場合に全般的に改訂をするというものでございます。それから改訂検定は、採択が三年に一遍であるということを踏まえまして三年目に改訂をするというものでございます。これが検定でございます。  ただ、いま先生がお挙げになりましたような正誤訂正という手続は、正式に検定調査審議会に諮ることなく事務的に処理をするというものでございまして、たとえば誤記、脱字、誤植とか、統計資料が古いとか、そういうようなものになっておるわけでございまして、ただいま問題になっておりますような案件について、意見を付しましたものをまたもとに戻すというふうなものについては、この正誤の趣旨にはなじまないということを私どもたびたび申し上げておるわけでございます。
  111. 玉城栄一

    ○玉城委員 最後に、これは文部省に申し上げておきたいのですけれども、文部大臣御自身がいま訪中を拒否されている状況なんですね。さっき申し上げましたことでしょう。それで、この間も外務省の方は、ここで日中共同声明のあの部分について、あの重みというものは数十年、数百年の歴史の重みに支えられているのだ、それは全日本的、全中国人のまさに血と涙の結晶である、それほどの重みがあるのだということを言っておりました。まさに私もそのとおりだと思います。戦後、日本があの敗戦の中から、廃墟の中から立ち上がって、ここまで経済大国と言われながら——これは国民の必死の努力ですね。いま連日報道されていますでしょう。これは大変な信頼を失いつつある。そのことについて、文部省が自分らが正しいんだということだけで突っ張っていること自体が——最後に確認ですよ、もしわが国の周囲を全部非友好国にしてそれでもいいというのならいいんですが、その点はいかがですか、最後に。
  112. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 私どもの立場はたびたび申し上げたわけでございまして、日中友好あるいは日韓友好の精神にいささかも変わりはございませんし、教科書全体の流れの中での記述をごらんいただきますならば、そういう点についての理解は十分得られるのではないか。御指摘のような点のこともございますけれども、そういう全体の記述をごらんいただきますならば、その精神について教科書全体の流れの中で記述されているということの御理解が得られるのではないか。これは他の近隣諸国に対しても同じように考えているわけでございます。
  113. 中山正暉

  114. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 早速外務大臣にお伺いいたします。  前回外務委員会が開かれましたのは七月三十日だったと思っております。そのとき私は、現在の時点において中国あるいは韓国その他の国々から日本に対して教科書問題についてのどのような申し入れがあったのかということをお尋ねいたしました。特に、まず中国側からの申し入れについて、これは抗議ですかというお尋ねをいたしました。そうしましたら、そのときに政府答弁は、これは抗議ではありません、プロテストではありません、強い関心、意図が表明されたと受け取っております、これは議事録をここに持ってきておりますが、そのようにお答えがありました。  さて、それから一週間以上たっております。そこで、外務大臣に現状の認識についてお伺いをしたいのでありますが、今日中国韓国から抗議が来ている事実、そしてまたこれは日本政府としても本格的な外交問題として取り組まなければならないというふうに御認識なのか、あるいは違う認識をお持ちなのか、外務大臣にまずその点をお聞きをしたいと思います。
  115. 木内昭胤

    ○木内政府委員 渡辺委員御指摘のとおり、前回の段階では中国側は強い希望ということでまいっておったわけでございます。韓国の方もその段階では政府間のやりとりにはなかったわけでございますが、その後、表現は適切かどうか知りませんが、事態はエスカレートしてきておることは事実でございまして、その意味では単なる教科書の問題ではなく、重大な外交問題に発展してきておることは事実でございます。
  116. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣、そのような認識でいらっしゃるというふうに判断してよろしゅうございますね。
  117. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまアジア局長が言われましたように、渡辺委員の御質問の時点後に、中国韓国ともに国内世論、情勢を反映しての日本政府への申し入れがございました。それまでの情勢より、より深刻になったということは事実でございます。
  118. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうしますと、これは過去のことをあげつらう気持ちはございません。本当に一週間、十日ほどの間に大きな変化が起こってきているということであるならば、その時点においてもうちょっと私は適切な手が打たれてしかるべきであった、また対策を講ずるべきであったという思いがいたします。  ところで、昨日でございましたか、鈴木総理は教科書問題についての記者会見をしておられます。その中において、九月に予定されている首相の訪中までに円満な解決ができる、どうも聞きようによっては自信のほどを表明されたという感じがいたします。ところで、いかがでございますか、外務大臣、実際に九月の訪中までに円満に解決できるというお見通しはお持ちでいらっしゃいますか。
  119. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 渡辺委員も御同感であろうと思いますが、いま事態が非常に悪化しておるわけでございまして、このような状況をある期間続けるというようなことは、とうてい許されないことだと思うのであります。したがって、教科書問題の解決のために全力を傾注すべきでございます。そのような努力によりまして鈴木首相の訪中前に何としてもかかる事態は解消しなければならない、このように思っておる次第です。
  120. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまのお話を聞きますと、どうも円満な解決をしたいという御要望を持っておられる、希望を持っておられるということであって、円満な解決のめどがどこにあるのかというところについては定かではないというふうに感じられます。  八月四日、鈴木総理は外務大臣及び文部大臣に対して対応策の協議を指示されたというふうに聞いております。具体的な指示があったからこそ、またその指示が恐らく打開策として適切であると外務大臣あるいは総理が判断されたからこそ、円満な解決ができるという言葉で記者会見をされたのではありませんか。単なる希望の表明でございますか。外務大臣、お聞かせいただきたいと思います。
  121. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 八月四日朝、私は日豪閣僚会議から帰って成田に着いた日でございます。その日正午に政府・与党首脳会議などがございまして、その間に首相の御意向なども私なりに受けとめたのでございまして、それに伴って、教科書問題が出発前と違って非常にむずかしい段階を迎えておるということを深く認識いたしまして、その後、こういうことではならないということで全力を傾注しておるわけでございますが、その私どもの努力が何らかの成果をあらわすのではないか、こういう見地に立ちまして、鈴木訪中前の円満解決について私は全力を注ぐということを申し上げておるわけであります。
  122. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これはいまお聞きしておりますと、全力を傾注するということはおっしゃいましたけれども、たとえば今回、情文局長外務省が、そしてまた文部省の方から学術国際局長を派遣をしておられる、これなんかも中国側への説明であったり、あるいは真意を打診するというような任務でどうも行っておられるようだ。全力傾注というのがもし本当であるとするならば、恐らく交渉権を与えるとか、あるいはもっと具体的な指示をしておられなければならぬと思います。交渉の真っ最中だからそれは言えないというならばそのように言っていただきたいと思います。単なる言葉の全力傾注なのか、具体的な指示をされた上での派遣なのか、全力傾注なるものの具体的中身を教えていただきたいと思います。
  123. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま申し上げたように、私が日豪閣僚会議から帰朝後、私なりの努力をいたしておるわけでございまして、両省の事務次官の会談をするとか、あるいは中国韓国に対しての高級レベルの役人を派遣するとか、こういうようなことも私としては努力の一つの証左であるとお認めをいただきたいのであります。  これは渡辺委員はよく御理解をしていただいておると思いますが、ただ外務省が動けばということではなく、また関係国にも非常に国内世論の動向などもあって、言葉表現が悪うございますが、なかなか簡単に処理のできることではない。少なくとも本当にわが国が誠意を尽くす、わが国が従来日中共同声明やあるいは日韓国交回復の際にそのときの代表から言われたことが誠実に守られ、履行されておるかというようなこと、あるいは将来にわたってそうであるかどうかというような、そういう問題でありますから、それこそ本当に真剣にあらゆる努力をしていく必要があるのでございまして、これは私としては私なりにいろいろ苦慮をし、知恵をしぼっておるということでございます。
  124. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 なかなか、私もこの辺は踏み込んで聞くのはちょっとむずかしい段階かなという感じがしないわけではありません。しかしながら、いまお話を聞いておりますと、事務次官会議であるとか、あるいはまた高級レベルの人の派遣であるとか、いろいろ苦慮しておられる。どうもしかし、その話を聞いておりましても、私は九月の訪中の時点までに円満に解決できるという根拠が定かであるようには思えません。どうもこのままでは展望なき見通しを言っておられるだけにすぎないのではなかろうか。私は端的にお聞きいたしますけれども、必要によっては、外務大臣、自分が訪中して打開するぞという意欲はお持ちでいらっしゃいますか。
  125. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私が出かける必要があれば、いつでも出かけていくことにやぶさかではございません。しかし、私もこの衝に立って以来、外交がそういう個人の努力だけでいけるものか、これはなかなかむずかしいことでございまして、やはりこれには両国の理解というものが十分なくてはできないことでございますから、両国の理解や信頼を深めるために現在努力をする。また、日本反省の実を上げるとか、あるいは誠意を示すとかということがまず必要であればそれをする、こういうことではないかと思っております。
  126. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣、ただいまいつでも自分で出かけていくという決意の表明がございました。特に、先ほどもおっしゃいましたけれども、これは重大な外交案件になっているという認識に立っておられるわけですから、外務大臣が当然先頭に立っての打開策を講じられるべきだと思います。その点、要望をさしていただきたいと思います。  さて、同じく教科書問題でありますが、八月五日にお隣の韓国の国会において文教公報委員会という委員会が開かれているという記事を新聞で見ました。また、そこにおいて決議が採択されているということも知りました。どのような決議であるのか、これに対して外務大臣としてはどのように対応していかれるのか、お聞きしたいと思いますが、まず先に、内容につきまして事務当局の方でお聞かせをいただきたいと思います。どのような決議でございましょうか。
  127. 木内昭胤

    ○木内政府委員 御指摘のとおり、八月に入りまして韓国の国会の文教公報委員会におきまして決議が行われたわけでございます。  その決議の主要点は、教科書記述の問題につきまして即刻是正を求めるべきであるということでございます。  それから、韓日間に今後生ずべきあらゆる事態の責任日本政府にあるということが第二点でございます。  それから、韓国政府自身の対日交渉態度は微温的に過ぎるということで、みずからの政府当局にハッパをかけておられるということが言えると思います。  したがいまして、なかなか厳しい決議であることは申し上げるまでもないわけでございますが、私どもとしましては韓国に存在します国民感情というものには、十分これに理解を持つべきであるということが一つ、韓国のいろいろな言い分につきましては謙虚にこれを伺っていくということで、すでに前田大使から李範錫外務部長官に対してもお伝えしてある次第でございます。
  128. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまの決議文、これは新聞によりますと、五日の朝から深夜までかけての国会における論議の結果採択されたやに聞いております。四項目にわたる決議が行われております。日本向けの内容それから韓国政府に対する要求事項、こういうものが盛り込まれています。  ところで外務大臣、このような決議が行われたことに対して外務大臣はどのように対応すべきだというふうにお考えでいらっしゃいますか。
  129. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いやしくも韓国の国会が論議を尽くしての決議でございまして、その決議として表明されましたことは非常に重要なものであるということを認識し、真剣にこれを受けとめていく必要がある、このように思っております。
  130. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 なお私は、いま理解を持ってまた謙虚に聞く、大変結構な言葉でありますけれども、問題は誠実さ、謙虚さというのは耳を傾けるだけではなく、実際的行動で示さなければならない、そのように思います。その際に、私は全文を見たわけではありませんで、新聞を通じて拝見しただけでありますけれども、当日の文教公報委員会における論議はなかなか厳しいものもある。たとえば国交断絶を辞せずというような厳しい言葉も使われているようであります。あるいはまた、かつての朝鮮総督府、これは現在の何でございましょうか、向こうの政府の建物になっているわけでありますけれども、この政庁そのものを破壊してもいいではないかなどというような議論もある。私は、韓国における民族感情そのものが非常に燃え上がっているという感じがいたしました。  しかし、同時にまた私は、お人柄は存じませんけれども、文教相、これは文部大臣ということでございましょうが、その答弁などを見まして、大変驚きました。非常に冷静に、かつ慎重に対応しておられる。と同時に、一種の哲学といいますか、外務大臣、これは私は日本の国会にも、特に閣僚の方々に持っていただきたい点がどうもあるやに思われます。  たとえば、歴史の歪曲、これは精神的な侵略だという言葉そのものもなかなか痛烈な言葉であると私は思います。と同時に、厳しい意見がいろいろ出てきていることに対しまして、「どの国の歴史でも偉大な歴史のなかに傷もあり、恥辱の面もある。これを抱きかかえ消化させる歴史こそ偉大なものと思う。」という答弁をしておられる。  私は、今回の日本における教科書問題についての閣僚の方々の論議を見るときに、少しく哲学といいますか、この方の、向こうの国の文部大臣の発言一つと比べてみるときに、悪いけれども、余りにも低次元ではなかろうか。内政干渉だ、こうすぐに叫んでみたり、非常に単純な反応しか出てきておらない。私は、外務大臣、せめてわが国政府外務大臣はもっと広い視野と哲学を持ってこういう問題に対処していただきたい。その観点からもう一度外務大臣の御所見をいただきたいと思います。
  131. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 韓国の文教部長官の御発言に関連して御質問がございましたが、私は渡辺委員のそういう御質問の趣旨を私なりに参考に供させていただきたい。これについていろいろ申し上げることはいかがかと思いますのでお許しをいただき、また日本の閣僚の発言についてもお触れでございましたが、本来閣議は公開されるべきものでない、したがって私は、報道を見ておりましていろいろな形で報道がされておる、それをもって閣僚について云々することもいかがかと思うのでありますが、渡辺委員がおっしゃる、それぞれ閣僚あるいは長官という立場で一つの哲学を持って、そして緊要な問題に対処すべしということについては、私も謙虚に承る次第でございます。
  132. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 一つ、二つ具体的にお尋ねをいたしたいと思います。  いまの文教相、文部大臣指摘している点でありますけれども、「西独とポーランドは修好前に教科書を正常化していた。われわれの先輩がそうした問題をなおざりにしたことは残念である。」われわれの先輩と言われたのは韓国における先輩という意味であろうと思いますが、そういう言葉を使っておられる。なおまた関連して、「第二次大戦で日本侵略を受け、被害を受けた太平洋沿岸諸国は、共同研究、協力を求めているが、国際教科書センターを中心に近隣国と関連を深める方向に持っていきたい。」この翻訳が正しいのかどうかわかりませんけれども、そういうふうな趣旨のことを言っておられる。外務大臣、どのようにお考えになりますか。いまの西独とポーランドの件、そしてある議員は、日本が本当に誠実さを、いまおっしゃったように謙虚さを示そうとするならば、西ドイツの例を見習うべきであるということも言っております。  具体的な問題でございますので、外務大臣にお聞きしたいと思うのですけれども、少なくとも教科書問題なんかで大いに論議をしたらどうであろうか。さきに愛知さんでございましたか、そういう問題についての御提案も前の委員会でたしかございました。私は、それを単に二国間だけではなくて、アジア地域において本当に虚心坦懐にそれこそ論議をし合う、違いは違いとする、こういうことも考えていいのではあるまいかと思いますが、外務大臣、いかがお考えでいらっしゃいますか。
  133. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 教科書がそれぞれの国家、国民にとって重要な指針であることは言うまでもございません。それがために、政治の面におきまして教科書というものが重要視されなければならぬということについては、これはどこの国においても同じ見地に立つと思うのであります。日本におきましても、戦後教育の経過を見ますと、ときに偏向教育がされておるんではないかという厳しい批判もあり、あるいは教科書の内容も偏向しておるんではないか、こういうようなことで教科書問題が大きくクロープアップされた時期もあったと思うのであります。そういう点を考えますときに、日本はもとよりでありますが、各国ともに、教科書の重要性にかんがみまして検討を繰り返すという必要性はあると思います。
  134. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私は、文部省の方にもぜひぜひお考えを聞かせていただきたいと思うのですが、どなたにお聞きしたらよろしいんでしょうね。  いまの西独とポーランドの件、あるいは太平洋沿岸諸国における共同研究などが行われた場合に、政府も積極的にそういうところへ参加していったらどうだろうか。私は、それが謙虚さであり、それが率直さだというふうに思うのですけれども、文部省はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  135. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 教科書の制度は、その国の教育の基本をなしている制度でございますから、国々によって教科書の成り立ちが違うわけでございまして、たとえばいま問題になっております中国韓国は国定教科書の制度をとっております。そういう国と、わが国のように検定教科書という制度をとっております国と、いろいろ教科書制度のバックグラウンドが違うわけでございまして、私どももいろいろな観点から検定教科書制度の運用を適正に行うための努力を続けているわけでございますし、またそれぞれの国におきましても、その努力は続けられているわけでございます。たとえばわが国におきましても、日米の民間ベースにおきまして社会科の教科書について共同研究をしたという例もございますし、政府におきましてはそういう傾向も重視をいたしまして、その研究の成果は関心を持っているわけでございますけれども、やはり教科書制度の持っております背景とかそういうものを考えますと、なかなか御指摘のような問題はむずかしい問題であるというふうに考えております。
  136. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この問題はもう一遍じっくり時間をいただいてやってみたいと思いますが、私はもちろん、これは国定教科書じゃありませんからということをおっしゃる、それは予想しておりましたけれども、文部省がそういうかたくなな態度でおられるということはよろしくないと思うのです。積極的に民間や何かでそういう学者や何かが大いに交流したり研究する、そういうものに対しては積極的に私どもとしては応援したい、そういう姿勢が僕は必要だと思うのです。  関連しまして、時間がありませんから、一つだけ要望しておきたいと思うのですが、前に見て感心して、これはよくできているなと思いました。世界の動き社で出している、外務省の方がお書きになったのだと思いますけれども、「世界の動き」ことしの三月号でございましたが、「日韓文化交流の五つの視点」ということで大変りっぱな論文が載っておりました。私は、こういう問題を、外務大臣、積極的に進めていただきたい。文部大臣の方にもぜひそのように働きかけていただきたい。  一つは、虚心坦懐にお互いを見詰め合う、そういう立場が必要だ。第二番目には、過去を直視して、心を広くあけた日本人とすべてを過去に転嫁せずに主体性を持った韓国人との心の交流を促進すべきだ。三番目、日韓の間でタブーになっている問題がたくさんあるけれども、タブーをあえて議論し合えるような学者、文化人の交流を進めるべきである。四番目、文化が類似している、地理的に近接している、そういうことから逆に誤解が生まれてくる結果になっている。むしろ両国間の違いを知るべきなんだ。五番目、朝鮮半島日本との文化交流の跡をたどっていって、いわば日本文化のルーツを探る。そこに協力関係と相互理解が生まれてくる。こういう点を指摘した日韓文化交流の問題点ということでの論文が載っておりました。  私は、外務省の方がお書きになったものとしては、と言ったら恐縮でありますが、なかなか、大変りっぱなことを書いてあるし、問題はそれを実行されるかどうかだと思いますが、外務大臣、こういう問題についてぜひ積極的な具体的な取り組みを私は御要望したいのですが、御所見を最後に聞かしてください。
  137. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日韓の関係、最も近接しておる国のことでございまして、ただいまの御指摘の文書、五つの提言というもの、これが実行されることを御期待されたようでございますが、私もそういうことによりまして、日韓の関係が長き将来にわたりまして友好親善の強化ができる、相互の理解が深められるということは必要なことだと思います。
  138. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 せっかくの御努力をお願いいたします。  ありがとうございました。
  139. 中山正暉

    中山委員長 東中光雄君。
  140. 東中光雄

    ○東中委員 いわゆる教科書問題は、中国韓国から非常に強い要求や抗議が来ておるということ、これ自体も非常に重要でありますけれども、それ以上に日本あり方として非常に重要な問題を含んでおる。結論的に言えば、侵略戦争肯定の思想的な国民の動員といいますか、そういう方向に教科書を持ってきているというところに非常に重要な問題があるわけであります。  特に日本憲法の前提は、こうした侵略戦争を二度とやってはいかぬということを大前提にして、たとえば憲法前文で言っている、政府行為によって再び戦争の惨禍が起こらないように決意したというのも、こういう厳粛な事実を事実として認めて、その上に立って日本憲法の平和主義というのが成り立っておるわけです。これはそれに対する重大な、憲法なりあるいは日本国民に対しても非常に重要な反動的な攻撃なんだというふうに私は思うわけであります。  それで、率直に外務大臣にお伺いしたいのですが、日中戦争侵略戦争だったのか、侵略戦争でないというふうに見ておられるのかということであります。  一九三一年、日本軍が華北を侵略した、そして一九三七年に中国への全面侵略に拡大していった、こういう歴史的事実、これを外務大臣としては認められるのか否定をされるのか。まずその点をお伺いしたいと思うのです。
  141. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 戦前におけるわが国行為につきまして、中国を含め国際的な厳しい批判があり、侵略であるということを指摘されておるわけでございまして、私はこういう国際的な批判というものが非常に重きをなしておると思うのであります。したがって、この事実は政府としても十分認識していかなければならない、その必要があるということをきょう繰り返し申し上げておる次第でございます。
  142. 東中光雄

    ○東中委員 それはよくわかっているんです。厳しい批判がある、その批判があるという事実を認識する必要がある、こうおっしゃるだけだから、そうではなくて批判されている事実、日本中国に対して侵略戦争をやったという事実自体を日本政府日本外務省としては認めるのか認めないのか。批判があることは事実だ、そんなことはもうわかっておるんです。それを何ぼ認識したって、認識したも何も現に批判が来ているのですからそれは対応の問題であって、実際の過去の日本政府行為についてどう認識をしておられるのか。文部大臣侵略だということを最後にはこの間認められたようですが、外務大臣はその点はどうなのかということをお聞きしているわけであります。質問そのものに答えてください。
  143. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 侵略であるというそういう事実が指摘されておって、そうしてその事実は政府として十分認識する必要があるということを繰り返し申し上げておるわけであります。
  144. 東中光雄

    ○東中委員 それでは、第二次大戦のサンフランシスコ講和条約のときの会議で、全権の吉田総理がこの会議に出ておられるわけですが、最終のサンフランシスコ条約会議録、これは外務省のものですが、いろいろ検討してみますと、たとえば米国はこういうふうに言っております。中国日本侵略のために最も長く、最も手痛い打撃を受けた国だというふうに米国代表は言っておる。英国の代表は、英連邦では日本侵略の記憶がいまだまざまざと脳裏に残っているという発言をしております。ラオスは、ラオスはその隣国と同様に侵略され、かつ占領された、こう言っていま世パキスタンは、日本侵略の潮はアジア各地に放火と殺戮とをもたらした。オランダは、私たち国民日本の東南アジア侵略によって最も損害をこうむったものの一つである。ニュージーランドは、日本のいわれない侵略、無責任侵略、こういう言葉を使っています。ベネズエラは、条約日本侵略の犠牲になった人々の正当な熱望をもたらすものではないか。ウルグアイは、全く不当な侵略という言葉を使っています。カナダは、日本侵略と言っています。イランは、日本侵略及びその軍隊の領土占領という言葉を使っています。オーストラリアは、多年にわたる満州中国、東南アジア及び太平洋における日本の武力侵略という言葉を使っておる。エチオピアも、日本の数次の侵略行為。それぞれの国がそういう発言を最後の声明で言っておるわけであります。吉田全権は当時これに対して侵略でないとかあるいは先になったら歴史でわかるんだとかそんなことを言ったかどうか、どういう態度を日本は示したんでありますか。この点を外務省にお伺いをしたい。
  145. 木内昭胤

    ○木内政府委員 サンフランシスコにおける講和会議におきまして関係当事国、連合国側の当事国からそのような厳しい発言があったことはそのとおりと存じます。これに対して吉田全権がどのように具体的な発言というのは手元にございませんので、早速調べてみたいと思いますが、連合国側の厳しい態度、批判、主張というものについては、吉田全権も何らの幻想なくこれを受けとめられたものと私ども思っております。
  146. 東中光雄

    ○東中委員 外務大臣にお伺いしたいんですが、吉田全権はその当時すでに日本政府の代表として、全権として、そういう厳しい批判、しかも現在のいわゆる自由陣営の諸国からの批判を受け入れた、そしてあの議和条約になった。日本政府はそういう立場をとってきたんではないんですか。言うだけ言わしておいて、別の態度でおったということですか。そうではないと思うのですが、外務大臣どうなんでしょう。
  147. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはきょうの委員会冒頭以来繰り返し申し上げておるように、いまお挙げになった各国がこぞって日本に対する厳しい批判をしておる。したがって、国際的には侵略であるという厳しい批判を受けておるということは事実で、その事実は政府としても十分認識する必要があるということを言い切っておるわけであります。
  148. 東中光雄

    ○東中委員 必要があるんじゃないんですよ。それを受けとめて受け入れたんでしょう。事実そうなんですから。ところが昭和五十三年以降の本会議場その他でわが党が質問したのに対して、最近は政府が、侵略かどうかは歴史の判断にまつ、こういうふうな発言に変わってきているわけです。そういう中で教科書は「侵略」から「進出」というふうに変わってくる。これは明白な侵略、過去の政府が犯した戦争の惨禍、侵略戦争、そういうものを肯定していく方向に変わってきているということだからこそ重要なんであります。そういう批判認識をしておるというだけでは、そんなもの認識するもしないも明白な事実なんですから、日本政府はどうなんだということなんであります。その点重ねてお聞きします。
  149. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 政府がそういう指摘認識しておるということは私は大事だと思います。
  150. 東中光雄

    ○東中委員 認識しておって——だから相手の態度を認識しているわけでしょう。世界じゅうの国の態度は認識しておる、日本はその認識をして、日本の態度はどうですか。それを聞いているんですから。
  151. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 東中委員も憲法を引用されておるわけで、私もきょう冒頭から申し上げておるように、日本戦争というものを放棄しておるわけです。したがって、どういう戦争、こういう戦争というような、そういうことはもう考える余地はないと私は思うのですね。それよりも日本行為が国際的にそのような厳しい批判を受けており、それを日本認識するかしないかということは大事なことだと思って、繰り返し申し上げておる次第であります。
  152. 東中光雄

    ○東中委員 どういう戦争がいいか悪いかということじゃなくて、過去の日本政府が犯した戦争の惨禍を再び繰り返さないようにする。過去の政府の犯した戦争の惨禍、その行為侵略戦争じゃなかったのか、侵略であったと各国が言っている、認識している、日本政府はどうなんだということを聞いているのですから、それは答えになりませんよ。
  153. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 このようなことを二度と繰り返さない、こういうことで戦争を放棄しているわが国であるということを東中委員も十分御認識であると思うのです。それよりもこれよりも、日本に対してのそういう厳しい批判があって、そのことを日本認識し、反省することの方がよほど必要だと思います。
  154. 東中光雄

    ○東中委員 それじゃ、認識し、反省しているのだから、あれは侵略行動であった、そういうことを二度と繰り返してはいけないのだという立場に立っているというならいいのですけれども、それをなお奥歯に物の挟まったような言い方をしておられる。これは政府の姿勢の欺瞞性を示していると言わざるを得ないわけであります。  もう一点についてお聞きしますが、いわゆる三・一朝鮮独立運動の問題であります。軍隊、警察により、あれは暴動であったので暴動が厳しく弾圧されたのだということになっておる。民族独立運動を「暴動」という形で文部省教科書で出しておる。これは歴史の歪曲だと非常に大きな問題になっているのですが、外務大臣は、その点は三二朝鮮独立運動暴動というふうに見ておられるのかどうか、この点をまずお聞きしたいと思います。
  155. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 三二運動わが国朝鮮半島統治を排して独立を希求した民族運動であり、歴史的に見ればこのような運動が起こったことは十分理解できるところでございまして、この点についても本日の委員会冒頭以来お答えしておる次第でございます。
  156. 東中光雄

    ○東中委員 「暴動」というふうに教科書で書きましたというところに非常に大きな問題があるわけですが、暴動とは見ていないということなのか。いま言われたことのほかに、そういう暴動と見るべきではないというのが日本外務省としての見解なのかどうかということを聞いているわけです。
  157. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先ほど外務大臣が御答弁申し上げましたとおり、この三・一運動独立運動であるということでとらえておるわけでございます。暴動という表現についての御指摘がございましたが、この点につきましては、これは教科書との関連での御指摘であるとすれば文部省の所管の問題でございますので、私どもとしてはこれにコメントすることは差し控えたいと思いますが、先ほど申し上げましたとおり、この運動は歴史的な大きな流れから見れば独立運動民族運動であるというふうに理解いたしておるわけでございます。
  158. 東中光雄

    ○東中委員 歴史的な民族独立運動暴動としてとらえてこれを弾圧をしたというのは、過去の日本の植民地政策、特に朝鮮人民に対する占領政策からきておったまさに侵略的な行動なのであります。ここに私、大正八年八月一日の予審終結決定書、京城地方法院予審係朝鮮総督府判事永島雄蔵という人の予審終結決定書を持ってきていますが、これを見ますとこういうように書いてあるのですね。「各地に朝鮮独立運動を開始せしめながらも該独立運動たるや終に化して暴動を為すに至る者あるべきを予知しながら其等各種の暴動と相俟つて敢て当初の目的を達成せん事を企図し宣言書と題し朝鮮人は自由民なり朝鮮独立国なり全朝鮮民族は遠近相呼応して最後の一刻最後の一人に至るまで独立の完成に努力せざる可からざるの趣旨を縷述せる文書を多数印刷し同年三月一日以降広く之れを朝鮮内各地に配付し」、これは「暴動を為すに至る者あるべきを予知しながら」全部暴動ということで絡めて、独立運動であるけれども弾圧するのだ、こういう姿勢なんですね。だから植民地支配のこの論理、大正八年のこの残虐な論理がいまこの日本教科書に出されてきているわけです。だから韓国民が怒るのはあたりまえなんです。朝鮮人民が非常に怒るのはあたりまえなんです。こういう問題について、日本国憲法のもとで、そして国連で植民地に関する条約が可決されているそういう状況のもとで、当時の朝鮮法院の論理がここに出されてきている、こういう性質のものなんです。文部省は一体何と思っているのですか。
  159. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 これはたびたびお答えしておりますように、三二運動暴動であるというような検定意見を付したことはございません。  お挙げになりました教科書の例を見てみますと、「朝鮮でも、独立の気運が強まり、一九一九年三月一日、京城(現ソウル)で朝鮮独立を宣言する集会がおこなわれ、デモと暴動朝鮮全土に波及した(三・一独立運動)。」と書いてございまして、これが独立運動であることは、いま申し上げましたような「独立の気運が強まり、」とか「三・一独立運動」ということでございまして、その事柄は全然触れていないわけでございます。三・一運動の過程におきましての歴史的な事実として「集会」「デモ」ということがございますが、それに伴う騒擾という状態が「暴動」という言葉で使用されたものということでございまして、修正検定意見におきまして、三・一運動暴動であるというような意見を付すとかそういうことではないのでございます。
  160. 東中光雄

    ○東中委員 暴動を弾圧した、こういうことにすることで、しかも「日本の」というのを削って、「軍隊・警察により暴動はきびしく弾圧された。」こういうふうに書きかえているのじゃないですか。こういう暴動という概念を出してくるのはその当時の考え方と全く一緒だ。  続けて言っておきますが、「多数の教会が焼かれた。」という条項を削らしています。  この問題について、これは「現代史資料」二十六巻「朝鮮」の二巻ですが、日本の軍隊が放火をしたということをはっきりと公の文書で認めていますね。「京城発 大正八年四月廿二日後一、五〇 本局着 同後六、三一 長谷川総督」朝鮮総督ですね。「原総理大臣(拓殖局長官)」あての文書です。こういうことが書いてあります。   三月下旬京畿道水原安城両郡地方ニ暴民盛ニ暴行シ官公署及ビ民家ヲ破壊焼棄シ 云々というのがあるのですが、そこで、  有力ナル検挙班ヲ派遣シ四月二日ヨリ同月十四日ニ至ル間六十四部落ニ亘リ大検挙ヲ行ヒ約八百ヲ検挙シタリ此検挙中暴民死十傷十九ヲ生ジ火災発生十七部落焼失戸数二百七十六二及ベリ又之ト同時ニ該地方ニ兵カヲ分散シ前記検挙ニ協力スルトコロアリシガ偶々水原郡発安場二派遣セラレタル歩兵中尉以下十二名ハ四月十五日附近駐在巡査ヲ同行シ、堤岩里基督教会堂ニ基督、天道両教徒約二十五名ヲ集メ訊問訓戒ヲ加ヘントシタル際教徒等反抗セシタメ殆ンド全部ヲ射殺シ火ヲ放チタルニ強風ナリシ為二十八戸ヲ焼失シタル事実アリ 総理大臣あてにこういう報告を出しているのです。その後に、   前述検挙班コウナコウ地方ニ於テ火災ヲ生セシハ取調ノ結果一部ハ夜間混雑ノ結果失火シタルモノナルモ他ノ一部ハ暴民ノ獰悪ナル行為殊ニ巡査二名ノ惨殺ニ報復心ヲ起シ居タル検挙班員ノ放火ナル事ヲ確メタリ又堤岩里ノ殺生及ビ放火ハ嚮ニ発安場ニ於テ同地小学校ヲ焼キ暴行ヲ為シタルモノハ堤岩里基督天道両教徒ナル旨同村内地民ヨリ訴ニ接シ且彼等ヲ掃滅セラレタシト部落民ノ懇請ヲ受ケ前述ノ処置ニ出デタルニ却テ反抗シタルタメ斯ノ如キ行為ニ出デタルモノノ如シ以上検挙班員及軍隊ノ行為ハ遺憾ナガラ暴戻ニ渡リ且ツ放火ノ如キハ明カニ刑事上ノ犯罪ヲ構成スルモ今日ノ場合 正しいという字と等という字が書いてあるのですが、意味は不明です。  正等ノ行為ヲ公認スルハ軍隊並ビニ警察ノ威信二関シ鎮圧上不利ナルノミナラズ外国人ニ対スル思惑モアレハ放火ハ凡テ検挙ノ混雑ノ際ニ生ジタル失火ト認定シ当事者ニ対シテハ敦レモ其手段方法ヲ得ザル廉ニヨリ其指揮官ヲ行政処分ニ附スル事トセリ なお、  英国総領事代理米国領事及ビ外国宣教師一部現状ヲ視察シタリ御参考迄 こう書いてあるのですね。  これは明白に日本の警察、軍隊が放火をし——具体的なことは何も書いてないのですね。「反抗セシタメ殆ンド全部ヲ射殺シ」こういうことを、しかもこれは総督が総理大臣に報告を出しているのですよ。こういう文書がずいぶんたくさん外務省か総理府か知りませんが保管されているはずなんです。そういうものはまだ公表されてないのですね。たまたまこの「現代史資料」に載せられているわけです。放火、殺人、こういうことを独立運動をした人たちに対してあるいは教会にいるクリスチャンに対してやられている。しかもこれは隠さなければいかぬということを言っているのです。そのほかの通達を見ましたら、断固として鎮圧する、しかし外へはなるべく小さく見えるようにせいというようなことを書いているのですね。それがそのままいまここへ出てきているわけでしょう。そういう問題に対して日本人が本当に反省をしなければいけない、これは民族独立の権利というものを認めなければいけない、そういうときに数十年前のこの残虐な植民地支配、それを、その論理をそのままいま教科書に持ってきている。韓国が非常に憤慨をする、あたりまえのことなんです。こういう歴史を偽造することは許されない。  これは公用文書、たまたまこういうふうに資料として出されておりますけれども、日本政府はどこに保管しているのか知りませんが、外務省にこういった植民地における問題は保管されているという説もあるようですし、公文書館に保管されていないというようなことも聞いているのですけれども、これはまず公表すべきだ。事実は事実として認めてこそ、日本責任反省とそして平和国家としての日本あり方というものがあり得るわけであります。そういう点、外務大臣、こういう資料は公表すべきだと私は思いますが、まずいかがですか。こういう記載について日本はもっと事実を明らかにすべきだということを思うのですが、御所見を承っておきます。
  161. 木内昭胤

    ○木内政府委員 戦前のただいま御指摘のような公文書、一般論としましては公表、公開すべきであるというのが考え方であるかと存じます。  御指摘の電報、報告が外務省にあるかどうかということでございますが、現地から恐らく陸軍司令官あてであるか、あるいは陸軍司令官を経由して時の総理大臣に報告されるルートで来ておるものと存じます。したがいまして、そのような公文書は外務省としては持ち合わせておらないわけでございます。
  162. 東中光雄

    ○東中委員 文部省はそういう関係についてはどうですか。それから総理府は来ていただいていませんか。
  163. 中山正暉

    中山委員長 来ておりません。
  164. 東中光雄

    ○東中委員 呼んだはずだけれども。——それでは文部省どうですか。
  165. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 私どももその件につきましては承知しておりません。
  166. 東中光雄

    ○東中委員 これは大臣に、国務大臣として申し上げておきたいのですが、こういう公文書は日本のいま問題になっておることにまさに重大な関係のあることでありますし、そういう問題はここに、この「現代史資料」に載っている限りでもずいぶん膨大なものがあります。私はそのほんの一つを紹介しただけですから。そういう点は明らかにするという方向を、外務省は持っているかどうかわからぬということであったら、どこで保管をしているのか何かわからないというようなことで逃げてしまうということであってはならないと思いますので、そういう点についての善処をぜひやられたいと思うのですが、大臣、どうでしょう。
  167. 木内昭胤

    ○木内政府委員 御指摘の点につきましては、関係当局と政府全体としまして十分検討させていただきたいと思います。
  168. 東中光雄

    ○東中委員 質問に対して的確な答えを得られなくてまことに残念でありますが、時間が来ておりますので終わります。
  169. 中山正暉

  170. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 いま手元に届いた夕刊を見ますと、教科書問題アメリカでも非常に大きな反響を呼んでいるという記事が大きく載っております。これはCBS放送の日曜の特集版で「歴史を書き換える日本」と題するものでありまして、歴史の教科書文部省の指示で改変をされて、中国韓国から激しい抗議を受けている経緯を伝えております。その間、日本の軍人が中国人やその子供を生き埋めにしている場面や、穴の前に正座した中国人を日本兵が後頭部に向けた銃で射殺し、死体が穴に転がり込む場面が当時の黒白フィルムで続々と日曜夕方の茶の間のテレビに映し出されておる。そして、ワシントン・ポストはさらに、四一年十二月に帝国航空隊がパールハーバーに「前進した」と教えられたとしたら、一体どう考えるかと問いかけている。こういう記事が載っております。  文部省外務省の両局長が、重要な問題を抱えていま中国入りをしているわけでございます。きょうのこの日本の外務委員会における櫻内外務大臣のこれまでの答弁を伺っておりますと、内容においてはかっての日中戦争に関しては反省をしなければならない、侵略戦争というその内容においては認めるけれども、外務大臣侵略戦争とはなかなか認められない、こう言わざるを得ません。  私たちは戦後の教育を受けてきた世代でありますけれども、この第二次大戦をわれわれの生活の基盤といいますか、国体の基盤にして戦後の憲法が生まれ、そうした中でわれわれは教育を受けてまいりました。いま国の中に教科書検定問題という非常に複雑な重要な課題を抱えているということは承知をいたしておりますけれども、前回の外務委員会でも私は官房長官に申し上げましたけれども、外国から言われたから日本が大あわてで直すということが必ずしもいいと思いませんけれども、しかし人間というものは、自分はこれで姿、形がいいと思っていても、あなたはネクタイが曲がっていますよ、思ってみたらネクタイが曲がっていた、あわててネクタイを直す、そういうことはあり得るわけであります。私どもがいまこの検定問題、教科書問題をめぐって中国韓国から激しい抗議が続けられて、もう解決の道はこれを訂正する以外にない、そういうことを重ねて表明をしてきているわけでございます。私は、日本のこの権威ある外務委員会櫻内外務大臣がこの日中戦争をどういう形で、言葉でも内容の点でも表現をするかということが今後の問題解決の糸口を握っていると思うのです。すでに文部大臣は、この日中戦争侵略戦争であった、そしてそうした過去の反省の上に立ってわれわれはこれからの中国韓国との関係を続ける、こういう意思表示をいたしているわけでありますが、官房長官の記者会見の中でも、政府はそういう方針であるけれども、各大臣はそれぞれの考えがあって発言をしている、こういう記者発表もございました。櫻内外務大臣が、この日中戦争言葉の上でも内容の点でもいわゆる侵略戦争として認めるかどうかということが、これからの問題解決の糸口になるわけでございます。二度とこういう悲しい戦争を繰り返してはならないとわれわれも常々考えてまいりましたし、われわれの次の世代にもそういうことがあってはならないというふうに私は思います。そういう意味では、この歴史をいかに正しくわれわれが認識をし、また次の世代にもあの日中戦争はどういうものであったかという真実を伝えるという必要があると思うのです。私は、日本を代表する外務大臣として、この日中戦争侵略戦争として認めるのか認めないのかということは重大な歴史的な判断になるというふうにも思うわけでありますが、櫻内外務大臣の御見解をもう一度伺います。
  171. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 きょうの委員会冒頭以来同じ御趣旨の御質問をちょうだいしておりますが、私はこの日本行為について国際的にはそれが侵略であるという厳しい批判を受けてきておるという事実、この事実を政府が十分認識するということが必要である。侵略だ、侵略でないとか、そういうようなことでないんですよ。日本はそういう行為をして国際的に厳しく批判をされたんでしょう。それを日本政府認識していくということが一番大事であるということを強調しておるわけであります。
  172. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 同じ答弁を伺いました。私はそういう認識をするということはとても大事だと思いますけれども、その認識がどういう認識であるかということが非常に大事だと思うのですね。ですから、櫻内外務大臣は、日本の有力な政府を支える大臣として、また政治家として、侵略戦争ということは、これはその言葉がなじまない、そうお考えなら、外務大臣は堂々とそうおっしゃればいい。侵略戦争という言葉は合わないとお考えなら、それは政治家として堂々とやはりそう大臣の御見解を発表すべきですね。外務大臣にそれぞれの政党がそれぞれの立場できょうは長い時間かけて伺ってきました。あの第二次大戦をどう認識をするか、それは内容の点でも言葉の上でもどういう表現ですることがあの戦争を後世に伝える上でもわれわれが認識する上でもいいのかという判断は、外務大臣としてやるのはあたりまえじゃないですか。外務大臣としてそのぐらいのことをはっきり国民の前に明らかにしたらいいんじゃないですか。どうですか。
  173. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 残念ながら各委員の御理解を得ておらないようでございます。しかしながら、私はあくまでも私の主張を明確にしておきたいと思うのです。日本は戦後戦争を放棄して、平和憲法を持っておって、どのような戦争であってもそれは日本としては考えないところであります。ただ専守防衛ということは言っておりますが、これは事の性格が違うと思うのでありまして、それよりも日本行為に対してこのように厳しい批判が与えられておることを政府が十分認識して立つということが必要である。この私の言は世界のどの国の人が聞いても私は妥当だと思うのですよ。日本がそういう認識を持つということが一番大事なんですよ。言葉の遊戯ではありません。
  174. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 じゃ大臣は、自分のお子さんやお孫さんにあの戦争はこういう戦争だったよ、これは言葉で言わなければならないですね。教科書には日中戦争日本の「侵略」、こう書くのが大臣のお孫さんに教えるのにいいのか、あるいはいやあれは「進攻」「進出」そういう形の方がいい、大臣はどっちがいいとお考えですか。「侵略」という形で大臣の子供さんやお孫さんに——お孫さんですよね、お孫さんに教える方がいい、そうお考えなんですか。
  175. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これもきょう繰り返し申し上げておるところです。私は外務大臣の職責上お答えをしておるのであって、教科書検定問題は検定問題として責任をとっておられる方があるんですから、したがって、物事を解決していく上におきまして私がここで当を得ないことを言ってはならないのであります。だから私の責任の範囲で外務省としては、各国の世論動向その他、また戦前、戦後を通じてどのように日本が見られておるか、したがって、その見られておることは、厳しい批判を受けておるその事実を日本政府認識する必要がある、こう言っておるのです。
  176. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 きょうはもう大臣はそれ以上の答弁をしないということを決めていらっしゃるようだから大臣に伺いませんけれども、文部省に伺っておきたいのですが、国会審議などを通じて、手続上は教科書を会社側から訂正の申請が出た場合には正誤訂正をするという方法がある、こういうことを答弁されてきておりますけれども、もう一度確認をしたいのです。
  177. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 これは先ほども御答弁を申し上げましたが、教科書検定は新規検定と改訂検定と二つの種類がございます。改訂は三年ごとということになっておりまして、三年ごとに検定を受け付けるということになっておりますが、その間にたとえば誤字、脱字とか統計資料等緊急を要するもの、そのような問題については正誤訂正という制度を設けているわけでございますが、これは検定制度の簡便な方法でございまして、誤りがごく明らかであるとか緊急性があるとかそういう問題に限定されておりますので、ただいま問題になっておりますようなものについて、改善意見を受け入れまして一たん欠陥ありとして直したものをまたもとに戻してくるというようなことでありますれば、そもそも正誤訂正の制度の趣旨になじまないということを私はたびたび申し上げているわけでございます。
  178. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 会社側かあるいは著者から今度のこういう一連の問題が起きて訂正をしてほしい、こういう要請が出ておりますか、どうですか。
  179. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 いまのところ聞いておりません。
  180. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 もしそういう要請が出てきた場合にはどうでしょうか。それも今度のこの件はなじまない、こういうことなんですか。
  181. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 正誤訂正という趣旨につきましてはいま申し上げたようなことでございまして、いま案件になっているようなことについてそれが申請をされるということでございますと、その制度の趣旨になじまないということをたびたび申し上げておりますように、もともと正誤訂正というのはそういう数字でございますとかごく明らかな誤りについて緊急に訂正を要するというようなものでございますから、いまのように検定におきまして一度修正をしたものをまたもとに戻すというふうなものにはもともとなじまないということを繰り返し答弁させていただきたいと思います。
  182. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 文部省にもう一つ伺っておきたいのですけれども、これは文部省がたしか自民党に内部資料として説明された中に韓国における報道の状況というのがございまして、韓国においては昭和五十年ころから日本教科書についての関心が非常に強くて、時折新聞などにも報道されていた、今回の件についてもすでに朝鮮日報が現代社会の検定の問題を取り上げてこれを批判していた、こういう資料が出ているわけでありますが、この資料を見ますと、韓国からは少なくともこういう日本教科書検定についての批判がすでに出ていたということを文部省認識をしていたということになるわけですが、その事実を説明ください。
  183. 鈴木勲

    ○鈴木(勲)政府委員 五十年ぐらいから韓国の新聞報道等におきまして日本教科書の問題について意見がありましたことは事実でございますが、いま先生お挙げになりましたような内容につきましてどうであったかということについては、ただいまのところ私承知をしておらないわけでございます。
  184. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 こういう説明資料を見ますと、すでに韓国からもそういう批判が寄せられていたということを文部省認識をしている。この資料によればそういうことですから、どうも今度大きな、中国であるとか外交問題になってきて初めてこういう問題に対応する、そういう姿勢がむしろ問題だと私は思うのですね。教科書検定の問題等も非常に検定そのものにも問題があると思っておりますが、きょうはそういう問題を取り上げている時間がありませんけれども、やはりこれだけ大きな問題になる前に対応する、そういう必要があるし、また文部省外務省が事前にそういう連絡をお互いに密にしていく、関係各省庁のそういう連絡がもっと必要ではなかったのかというふうに思います。そういう対応がおくれたがために非常に大きな外交問題にまでなってしまったというふうに思います。  もう一点、実はいま二局長中国に派遣されている問題について伺いたいと思いますが、いま両局長中国入りをされているわけであります。これは単なる日本側の一連の説明に終始をするのかあるいは改訂ということも含めて意見交換をされるのか。もし改訂の問題まで意見交換をされるとするなら、これは来年発行される教科書について改訂をするのか、あるいはそれは間に合わないからその後来年以降改訂をする、そういう問題まで含めて交渉というか現地で話し合いを進められるのか。二人の局長の与えられている現地での話し合いの内容について、答弁ができる範囲内で伺いたいと思います。
  185. 木内昭胤

    ○木内政府委員 両局長の目的は、先ほど来御答弁申し上げておりますとおり、わが方出先大使館が今後の事態進展に十分に対応できるようにこれと打ち合わせをすることとそれから中国側と率直な意見交換をするということが目的でございます。先ほど来のこの種の御答弁に対してはそれでは済まないという御指摘がございますが、今回の両局長の訪中には改訂の問題というものは含まれておりません。
  186. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 外務大臣に最後に伺いたいのですけれども、来年以降、外務大臣として日本教科書を改訂する必要がある、これは来年になるのか来年以降になるのか、いまの中国韓国あるいはその他の国々からの日本教科書問題に対するいろいろな反響の中で外務大臣はいまどう考えているかを伺って、質問を終わります。
  187. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外務省としましては、今度のこの教科書問題の重要性にかんがみまして、中国韓国を初めとしての各国の世論、動向あるいは申し入れのあった国々のその申し入れの内容等についてこれを正しく関係省庁にお伝えをすることを第一の任務としておるわけでございまして、伊藤委員が言われるこの教科書の内容について明年以降どういうふうに考えるのか、こういうことにつきましては、残念ながらお答えする立場ではないのでありまして、その点は御了承いただきたいと思います。
  188. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 外務大臣のお立場はわかりますけれども、問題は外交問題になっているわけでありますので、今後外務大臣としての適切な御判断をお願いをして、質問を終わります。
  189. 中山正暉

    中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十二分散会