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1982-04-27 第96回国会 衆議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十七日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 稲垣 実男君 理事 奥田 敬和君    理事 川田 正則君 理事 高沢 寅男君    理事 土井たか子君 理事 玉城 栄一君       麻生 太郎君    石原慎太郎君       北村 義和君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    佐藤 一郎君       竹内 黎一君    浜田卓二郎君       松本 十郎君    井上 普方君       河上 民雄君    島田 琢郎君       吉浦 忠治君    林  保夫君       野間 友一君    東中 光雄君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         外務政務次官  辻  英雄君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省中南米局         長       枝村 純郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         農林水産政務次         官       玉沢徳一郎君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         インドシナ難民         対策連絡調整会         議事務局長   色摩 力夫君         外務大臣官房審         議官      小宅 庸夫君         外務大臣官房外         務参事官    中村 順一君         農林水産省畜産         局流通飼料課長 日出 英輔君         水産庁海洋漁業         部長      井上 喜一君         海上保安庁警備         救難部救難課長 藤原 康夫君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ————————————— 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   小林  進君     島田 琢郎君   大久保直彦君     吉浦 忠治君   伊藤 公介君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   島田 琢郎君     小林  進君   吉浦 忠治君     大久保直彦君   中馬 弘毅君     伊藤 公介君     ————————————— 四月二十七日  北西太平洋における千九百八十二年の日本国の  さけます漁獲手続及び条件に関する議定  書の締結について承認を求めるの件(条約第一  九号)  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生  産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の締  結について承認を求めるの件(条約第二〇号)  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生  産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の実  施に関する法律案内閣提出第七九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  北西太平洋における千九百八十二年の日本国の  さけます漁獲手続及び条件に関する議定  書の締結について承認を求めるの件(条約第一  九号)  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生  産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の締  結について承認を求めるの件(条約第二〇号)  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生  産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の実  施に関する法律案内閣提出第七九号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  本日付託になりました北西太平洋における千九百八十二年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を聴取いたします外務大臣櫻内義雄君。     —————————————  北西太平洋における千九百八十二年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま議題となりました北西太平洋における千九百八十二年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府は、昭和五十三年四月二十一日にモスクワで署名された漁業の分野における協力に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定に基づき、北西太平洋距岸二百海里水域外側水域における本年の日本国サケマス漁獲手続及び条件を定める議定書締結するため、本年四月十三日以来、モスクワにおいて、ソ連邦政府交渉を行ってまいりました。その結果、四月二十三日にモスクワで、わが方小和田臨時代理大使先方カーメンツェフ漁業大臣との間でこの議定書の署名が行われた次第であります。  この議定書は、北西太平洋距岸二百海里水域外側水域における本年の日本国サケマス漁獲について、漁獲量、禁漁区、漁期、議定書の規定に違反した場合の取り締まり手続等を定めております。なお、本年の北西太平洋ソ連邦距岸二百海里水域外側水域における年間漁獲量は、昨年と同じく四万二千五百トンとなっております。  この議定書締結により、北洋漁業において重要な地位を占めるサケマス漁業操業を本年においても継続し得ることとなりました。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。  何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします
  4. 中山正暉

    中山委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 中山正暉

    中山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します川田正則君。
  6. 川田正則

    川田委員 今回のサケマス交渉について、従来から四月七日から開始をするという合意がなされておりましたけれども、その後四月二日に延期の申し入れがあり、四月十三日から開始されて、前年並み合意を見たわけでありますけれども、そのときにはまたもめるのではないかなと非常に関係者は危惧の念でいっぱいでございました。しかし、モスクワへ行かれた方々の御努力によって円満に解決されたということは非常に喜ばしい限りであります。しかし一方、いろいろな話を聞いてみますと、日本アメリカの間にいろいろ貿易摩擦あるいはそれをめぐってごたごたがある、そういうことだからソ連の場合は今回円満に取り運んだのではないか、いろいろ計算ずくでそうではなかったのかというような話さえ聞かれるありさまでありますけれども水産庁のいらっしゃった部長さん、雰囲気的にどうでございましたでしょうか。
  7. 井上喜一

    井上説明員 お答えいたします。  交渉全体を通じましては従来と全く変わりませんで、ソビエトの年来の主張でありますサケマス沖取り漁業は非常に不合理であるということでございまして、ことしもそういった基本的な態度に立ちまして交渉してきたわけでございます。  ただ、ことしは従来と違いまして、昨年サケマス公海上におきます操業でかなり違反が出たわけでございますソビエトがこの点を強く取り上げまして交渉の焦点にしてきたわけでございます。この点がただ違っております。  先生指摘になりましたように、ことしは十日間というこれまでで最短の期間で妥結を見たわけでございます。そういう意味では、会議そのものは非常に雰囲気もよく、しかも円滑にかつ実務的に行われたと言えるかと思います。     〔委員長退席稲垣委員長代理着席
  8. 川田正則

    川田委員 従前と変わった点は日本側漁船違反が多かった、そのことが、従前と変わったと言えば変わったことだという井上部長の御答弁でございましたが、しかし、実際問題としてどの程度違反があったものでしょうか。
  9. 井上喜一

    井上説明員 申し上げます。  五十五年との対比で申し上げた方がよろしいかと思いますので、これと比較しながら申し上げますが、五十五年の違反件数は全体で二十隻でございます。その内訳は、太平洋中型サケマス流し網漁業が十九隻、日本海の中型サケマス流し網漁業が一隻でございます。  五十六年の違反件数は全体で二十七隻でございまして、その内訳が、太平洋中型サケマス流し網漁業が二十五隻、太平洋小型サケマス流し網漁業が二隻でございます。  ただ、違反内容といたしましては、操業日誌不実記載でありますとか漁具標識違反等軽微なものもございますが、特に問題になりますのは区域違反で、区域違反が非常に多かったわけでございます。  以上が違反の中身でございます。  どうしてこういう区域違反が行われるかということでございますが、漁業者がたまたま魚群を追って禁止区域内に入るということもございますが、やはり何と申しましても漁業者自身の道義的な問題も多かろうと思います。この点が特に問題になったわけでございます。     〔稲垣委員長代理退席委員長着席
  10. 川田正則

    川田委員 区域違反ということですけれども、そういう経過があって、ことしから初めてオブザーバーを乗り込ませるということになったと思いますが、実際そのオブザーバーが乗ってどんなことをやるのでしょうか。また、どういう権限を持っているのでしょうか。
  11. 井上喜一

    井上説明員 御案内のとおり、公海上におきます取り締まり権限は、ソ連監視船も持ちますが、同時に日本監視船も持っているわけでございます。そういう意味におきまして、双方の監視船がそれぞれの権限に基づいて取り締まりを行っているのが実態でございます。  今回日本監視船に乗りますソビエトオブザーバーは、日本監視船監視をいたしますそれを単にオブザーブするだけ、視察するだけ、こういう権限でございまして、取り締まり権限なり船自身管理権限はすべて日本側に属するわけでございます。そういう意味におきまして、取り締まり権限については全く向こう権限はない、日本権限については向こう自身として口出しすることはできない、こういう状況でございます。したがいまして、ソ連オブザーバーは単に日本取り締まりをオブザーブするだけ、こういうことでございます
  12. 川田正則

    川田委員 そういうことですと、何か単に乗っているだけというような感じがなかなかぬぐい去れない気がいたしますが、日本側として、仮に区域違反を犯したような場合に、どのような措置をとるわけなのでしょうか。
  13. 井上喜一

    井上説明員 お答えいたします。  仮に、日本監視船日本漁船区域違反をしていることを発見いたしました場合は、当該漁船に対しまして操業区域を守るように指導するのは当然でございますけれども、同時に、状況等を把握し、または状況も聞くわけでございます。その後の処分につきましては、十分国内取り締まりをいたしまして、従来の処分基準というのがございますので、それに照らしまして厳正な処分をいたす、こういうことに相なるわけでございます。  ソ連オブザーバーはそういう場合にどういうぐあいにしておるのかということでございますが、日本監督官取り締まり状況についてオブザーブしている、横で見ているというようなことになろうかと思います
  14. 川田正則

    川田委員 大体わかりましたが、そうしますと、アメリカの場合はオブザーバーがやはり乗っているわけですけれども、そちらと同じように考えてよろしいのでしょうか。
  15. 井上喜一

    井上説明員 オブザーバーの性格としては全く同様でございますアメリカは、日本サケマスの母船などに乗っておりますオブザーバーにつきましては、漁獲量でありますとかどういう魚の種類でありますとか等に重点を置いてオブザーブしているわけでございますが、ソ連オブザーバー日本監督官監督状況についてオブザーブしている、そういうオブザーブの対象が違いますが、性格的には同様かと思います。     〔委員長退席稲垣委員長代理着席
  16. 川田正則

    川田委員 オブザーバーの件についてはわかりました。  それから、もう一つお伺いしたいのは漁業協力金の問題です。これも昨年と同様に四十億ということになったわけで、業界も非常に安堵をしている感じがあるわけですけれども、昨年の場合は業界が四十億のうち二十三億を負担し、残りの十七億を国が負担をしたように聞いておりますが、ことしの場合はどういう割り振りになるのでしょうか。
  17. 井上喜一

    井上説明員 漁業協力費につきましては、本年度は昨年と同様四十億ということに相なったわけでございますが、そのうち政府がどの程度助成するかというお尋ねでございます。  昨年、一昨年と十七億円の金額を負担したわけでございますが、本年については、今後関係者十分話をしてまいりたい、今後の検討課題としてまいりたい、このように考えております
  18. 川田正則

    川田委員 サケマスにつきましては昨年並み妥結をしまして、井上部長さん初め長官も行っていらっしゃいましたし、外務省関係者も行っておられましたし、本当に御苦労さまでしたと申し上げたいわけでございます。     〔稲垣委員長代理退席委員長着席〕  ところが、日ソの方はまあまあうまく妥結をしましたけれども、これから大変なのが日米漁業問題であろうかと思います。この点につきまして、幾つか御質問を申し上げたいわけであります。  四月二十日でございましたか、日米漁業危機突破全国大会というのが東京でございまして、水産庁からも出席されておりましたが、そのときの雰囲気は、切実な漁民の叫びといいますか、大変な厳しい状態でございました。  アメリカ自体ブロー法に基づいて、今年度からいろいろ規制を始めております。このことについて私どもどうも理解ができませんのは、いままでのアメリカと全く物の考え方もやり方も違うということであります。外交の基本になるものが日米ということを私ども考えておりますし、また外務大臣の御答弁でもしょっちゅうそのことが出てくるぐらい、日米間はうまくいっていなければならないのですけれども、最近は、貿易摩擦を初め防衛の問題にしても、非常に日米間がうまくいっていない。  とりわけこの漁業につきましては、アメリカ国内法といいますブロー法が動いてまいりまして、年度当初、漁獲量の半分をまずとっていいということを示して、あとの半分のうちのまた半分、いわゆる二五%を四月の初めに、残りの二五%を七月の初めに、そういう取り決めになっているにもかかわらず、四月になってもまだ、これだけとっていいと、残りの二五%について明確な答えがない。  けさ新聞を見ますとそれが出ておりましたが、それによりましても、どうも納得のいかない数字であります年間日米割り当て量が百十四万トン、半分の五十七万トンはすでに許可が出ているわけでありますが、四月の初めに許可されるべきである二五%、二十八万トンですが、これはけさ新聞を見ますとさらに一〇%切られておりまして、十七万トンしか許可が出ないということは、漁民にとっては非常に大きな問題でありますが、このことについて井上部長の御答弁をお願いしたいわけでございます
  19. 井上喜一

    井上説明員 先生指摘のように、一昨年、いわゆるブロー法なるものが成立いたしまして、アメリカの二百海里法の体系がかなり変わったわけでございます。     〔委員長退席稲垣委員長代理着席〕 従来に比べまして、外国漁業の締め出し、それから入漁料の大幅引き上げ、オブザーバー乗船の強化、さらには、漁獲割り当てアメリカ漁業振興リンクをしていく、アメリカ漁業にどれだけ貢献するかを尺度にして漁獲割り当て量を決めていく、こういったことを改正内容といたします改正法が成立いたしまして、昨年から実施されたわけでございます。  本年の状況を見ますと、昨年よりさらにこの趣旨が運用面で徹底されてまいりまして、割り当てにつきましても、従来の年度一本の割り当てから、年三回に分割して割り当てていくということでございます。  その主たるねらいにつきましては、アメリカに対する漁業協力を図りながら漁獲割り当てを行っていくということでございまして、ことしにつきましては年度当初に五〇%の割り当てがあったわけでございます。     〔稲垣委員長代理退席委員長着席〕 四月には二五%の割り当てが予定されていたわけでございますが、日本に対しましてはそれが一五%になっているわけでございます。他の国に対しては予定どおりの二五%の割り当てでございますが、先ほど申し上げましたように、日本につきましては一〇%少ない一五%が割り当てられたわけでございます。  この理由につきましては、アメリカ側日本に対する洋上買い付け、いわゆるジョイントベンチャーと言っておりますけれども、これを大幅に増加することを求めてきているわけでございまして、わが方といたしましても、昨年の一万一千トンからことしは六万トンへと相当大幅に増加をしたわけでございますが、それ以上の増加要求しているわけでございまして、それが満たされなかったということが大きな背景になっているものではないかと思います。  われわれ、日米漁業関係について見ますと、アメリカ要求しております洋上買い付けの量にいたしましても、あるいはアメリカからの水産物の輸入にいたしましても、漁業面におきます技術協力等につきましても、ほかの国よりもはるかにアメリカ漁業に対する貢献度は大きい、このように考えているわけでございます。かてて加えて、アメリカの二百海里水域におきます日本漁獲実績もほかの国とは比べものにならないぐらい大きなものがあるわけでございまして、今回の割り当てにつきましては、日本状況、従来の日米漁業関係あるいは日本アメリカに対する漁業協力等について十分説明をいたしまして、さらに割り当てが上積みされるようにこれからも積極的に努力をしてまいる考えでございます
  20. 川田正則

    川田委員 どうも納得できませんのは、よその国は従来の協定どおり二五%四月に出して、日本だけがマイナス一〇%の一五%しか割り当てない、しかし貢献度日本の方がよその国よりも大きい、こういうことになりますと、私ども直接魚を扱ってなくてもおかしいなと思いますのに、漁民の皆さんにしてみますと、全く腑に落ちない。これは大変なことだ、死活問題だ。現に北転船などは、部長さん御存じのように三分の一も減船をしております。五十七隻も減船をしてしまって、後どうやって生きていこうかというときに、さらに漁獲量を減らされることでは、これはとてもやっていけない。いろいろ手当ては国がやっております。やっておりますが、それはあくまでも金融の道を開いてくれるのでありまして、借金借金として依然として残る現実の姿から見ますと、問題の解決になかなかならない。この間の全国大会は大変な切実な問題で、場内本当に渦を巻いていたような感じでございました。どうももう一つ日本側がそれだけマイナス割り当てということになる理由としては、いまお話しの洋上買い付け割り当てとをリンクさせているところに、アメリカとしては、非常に表現が悪いのですけれども、汚いやり方だと私は思います。一方で農産物の自由化ということをわが方に要求をしておきながら、片方ではそういうふうに制限をすること自体が私は非常にアメリカは何をやっているのかな、そのように思うわけでございます。  そんなことで、そのリンクをさせる洋上買い付け、いわゆるスケソウのすり身だろうと思いますが、これについては具体的にアメリカ側はどのような要求を、しているのかどうかわかりませんけれども、どの程度買えば満足するものなのか、この辺について御答弁をお願いいたします
  21. 井上喜一

    井上説明員 アメリカ主張につきましては、洋上買い付け量を増大するという点については従来と主張は一貫をして変わらないわけでございますが、その数量についてはときにおいて変化をするわけでございます。当初、われわれは二十万トンというのを聞いていたわけでございますが、この三月の貿易小委員会におきまして向こうが出してまいりましたのは四十万トンでございます。したがいまして、ただいまのところ、アメリカは四十万トンの洋上買い付けをやるように、こういうのが要求内容でございます
  22. 川田正則

    川田委員 その洋上買い付けの場合に、これまた困った問題は、もう水産庁では篤と御存じだろうと思いますが、結局それを大量に買い付け洋上すり身をされてしまいますと、今度はおかの水産加工人たちが、仕事が全くなくなってしまう。ただでさえ、二百海里以降、水産加工は原料にする魚が足りないものですから、もう四苦八苦。いつも申し上げるのですけれども、稚内などは四千人ぐらい水産加工従業員がおりますが、二千人はもうお手上げでいつも休んでいる状態。非常に不安定でございまして、その洋上買い付けを多くやられると、いわゆる大手の水産会社洋上すり身をしてしまうものですから、陸上の水産加工人たちは、これもまた死活問題につながっていく。そういう事情アメリカ人たち十分承知をして——一方では買え買えと言いながら、買わなければクォータを抑えるぞというようなやり方が私はどうも理解ができない。それだけアメリカ漁業というのは後進性があるということを言えばそれまでの話ですけれども、どうもなかなか理解がいかないわけでございます。  そんなことで、いま部長の御答弁にございましたように、極力努力をしていただかなければならないわけですが、もう一つ、そんな中で業界方々の切なる要望としては、水産行政責任者である水産庁長官にぜひとも近日中に渡米をしてもらって、何とかこの問題の解決を図ってもらいたいということを強く聞かされておりますが、長官渡米ということについてはどのようなものでしょうか。
  23. 井上喜一

    井上説明員 まず第一点のスケソウダラ洋上買い付けの問題でございます。  スケソウダラ洋上買い付け増加の問題につきましては、大まかに言って三つの問題がございます。  一つは、日本の現在の漁獲能力からいたしまして、急速にアメリカ洋上買い付け量増加させるということは、日本漁船減船を招きかねない、そういった問題がございます。したがいまして、そういう日本減船を招かない限度で行う必要があるということがまず第一点でございます。  第二点は、先生指摘のように、すり身需給状況を十分考えながら、すり身の供給過剰を来さないように配慮する必要がございます。先ほど申し上げました四十万トンといいますのは、日本の、アメリカ水域においてとっておりますスケソウダラの約五〇%に相当するような膨大なものでございまして、こういうものを短期間に洋上買い付けするということは実質的に不可能なわけでございます。  第三点につきましては、アメリカ漁船漁獲能力の問題でございます。それほど大量のスケソウダラアメリカ漁船能力をもってしてとれるのかどうか。  この三つの問題がございまして、三つの問題、十分検討しながら現実的に可能な数量スケソウダラ買い付け量増加をしていくというのがわれわれの基本的な考えでございます。この点につきましても、十分わが方の事情またアメリカ側事情説明いたしまして、アメリカ側納得を得るように努めてまいりたい、かように考えるわけでございます。  第二点の漁業交渉やり方の問題でございますが、漁業交渉について、いろんな側面の交渉がございます。また交渉の相手方も、ただ商務省でありますとか国務省という人たちばかりじゃなしに、地方の人、漁民の皆さん方、いろいろな人がいるわけでございまして、場所なり、あるいは相手方なり、あるいはその事項によりまして、それぞれ適当な、それに適した人間が向こうへ参りまして交渉しているのが実態でございまして、水産庁長官も、そういった交渉内容に応じましてはもちろんのこと従来もアメリカへ参りまして交渉したわけでございまして、今後におきましても、そういった交渉があるということは申すまでもないとわれわれ考えておるわけでございます
  24. 川田正則

    川田委員 ありがとうございました。  これで質問を終わりますが、最後に、いま申し上げたような、日ソの方は今回おかげさまでまあまあ前年度並み妥結をしたわけですが、日米間がこれからまた非常に大変むずかしい状態を迎え、何とか危機を打開していかなければならぬいまの段階でありますが、日ごろ農林水産業の将来について非常に心配をされ、また、情熱を持ってそれに立ち向かっている玉沢政務次官の漁業に対するこれからの決意を聞かせていただいて、質問を終わります
  25. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 わが国の漁業が非常に大きな困難に直面をいたしておりますことは、やはり二百海里時代の到来、それから燃油の高騰、この二つの要素が大きくあると思うわけでございます。  したがいまして、主要漁獲を上げております沿岸漁業の振興をまず第一に挙げまして水産業の振興を図る。同時に、外国に対しましては、二百海里内における漁獲につきましては、十二分に交渉しながら配慮をしていただく。特にアメリカとの関係におきましては、日本が大量の買い付けをやる、これによってアメリカ漁民も大変な利益を上げておるわけでありますが、もし日本に対して不当に割り当てを削減する、こういうことになってまいりますと、アメリカから買い上げるものそのものも大きな影響を受ける。したがいまして、これは向こうの方の漁獲能力というものもあるわけでありますから、お互いに十二分にこの点は日本漁民アメリカ漁民も、どういうふうにしたら共存共栄の実が上げられるかということについて、相当時間をかけて十二分の話し合いをしながらコンセンサスを求めるように今後とも続けていかなければならぬのではないか。  さらにはまた、燃油の問題等におきましても、省エネ漁船とかあるいは省エネルギーのための処置をとりながら、日本漁業がさらに一層発展するように努力をしてまいりたいと存じます
  26. 川田正則

    川田委員 ありがとうございました。
  27. 中山正暉

  28. 島田琢郎

    島田委員 最初に、フォークランド紛争事件につきまして外務大臣からお考えを聞かせてもらいたいと思うのであります。  これは、かなり動きが国際的にも出てまいっておりまして、日本もまたこの事件に対しては無関心でいるわけにはいかない利害関係もあるわけでありまして、基本的な考え方でありますが、この問題に日本としてはどう対処されようとお考えになっているのか、冒頭に外務大臣から伺いたいと思います
  29. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 わが国は、四月三日採択された国連安全保障理事会決議にのっとって、敵対行為の即時停止と、アルゼンチン軍の即時撤退を求めておるわけでございます。両当事国が自制して、武力衝突のこれ以上の拡大を防止するよう要請するものであります。同時に、外交的努力による紛争解決の道はなお閉ざされていないと信ずるので、関係国が事態の平和的解決のため努力を継続することを強く望む次第でございます
  30. 島田琢郎

    島田委員 両国における自主的な解決というのは当然の常識なんでありますけれども、しかし、それだけではなかなか相済まない状況に発展していくのではないか、私はこんな観測を持っているわけであります。ちなみに、日本側としては利害関係を持っているということを申し上げましたが、一つは、この周辺におきます漁船操業という事実もございますが、これは、実態的にはいまどうなっているのか、そこをお聞かせいただきた  いと思います
  31. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答え申し上げます。  現在フォークランド諸島周辺水域操業いたしております船は二種類ございまして、一つはジャパン・フラッグのもの、それからいま一つはアルゼンチンの合弁のフラッグのものでございます。  まず前者から申し上げますと、この船は、南方トロール漁船七隻、それから遠洋カツオ・マグロ漁船十八隻、これが現在、紛争地域であるフォークランド周辺諸島からは少なくとも三百海里以上、南ジョージア島からは五百海里以上離れました、アルゼンチンの二百海里水域外の公海操業しているという状況でございます。したがいまして、フォークランド諸島周辺でイカ及びマグロ漁業に従事している漁船はいまのところございません。現在のところはわが国の漁業に対する影響はさような意味ではないというふうに考えております。なお、この付近のイカとマグロは紛争の地域からはやや離れたところで漁場が形成されておりますので、今後ともこの船についてはさほど問題はないと考えておる次第でございます。  ただ、この紛争が将来とも予断を許さない状況でございますので、操業各船が極力紛争周辺海域から離れて操業する、あるいは日章旗を船体各部に掲示するといったようなことで日本国籍である旨を明示するように業界団体を指導しております。  それからまた、操業各船からは随時その位置を報告してほしい、また外交ルート等から関係情報が入手できれば全船に対しまして迅速にこの情報を提供できる体制は整備しておる次第でございます。  今後とも、操業の安全性を確保したいと考えて、鋭意努力をいたしたいと思っております。  なお、第二の船でございます現地法人、これは日本水産九〇%、三井物産が一〇%の出資をしている船でございますが、これは、二隻ございまして、現地船籍で、アルゼンチン・フラッグで操業しております。この船は、主としてメルルーサをとっておるわけでございますが、このメルルーサは、紛争地域に比較的近接した地域にも漁場が形成される可能性がございますので、これらの現地船籍船は南緯四十二度以北におきまして操業するという予定でございます。  現在二隻のうち一隻はドックに入っておりまして、いま一隻の六甲丸というのが四月二十八日から操業いたしますが、南緯四十二度以北で操業するということにいたしておる次第でございます
  32. 島田琢郎

    島田委員 三百海里といいましても、そんなに遠くないところで日本漁船操業が現に行われている、こういうことでありますし、また、日本水産が行っておりますトロール漁業は家族連れだ、こういうふうに聞いております。この家族は、どこに住んでいて、この安全は保障されるかどうかという点も一つ気がかりですが、この点についても御説明願いたいと思っております。  それから、日本から出向いております漁業をやっております船は寄港地をどこに持っているのか、この点もひとつ御説明をいただいておきたいと思うのですが、いずれも、こうした紛争に巻き込まれるというふうな事態がありますれば、直ちに安全というものが損なわれる、こういう危険性が発生してまいります。現にこの辺のところは十分の連絡がとられるような仕組みになっているとは言うものの、かなり遠いところにおける操業でありますから、日本からの注意喚起などはそう簡単にいかない面があるのではないか。これらの日本におきます留守家族の皆さんも心配は少なからざるものがある、こういうふうに、私は想像いたしております。こうした安全操業、それから家族に対します十分なる安全の確保というようなものが保障されるかどうかについて、重ねてお尋ねをしておきたいと思う。
  33. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 現地法人関係の船員及びその家族はプエルトデセアドという場所に居住しておりまして、これは紛争の地域からかなり離れた本土の方でございます。現在百十七人の従業員がいると聞いております。それから当該水域に入っておりますジャパン・フラッグの船は、アメリカのハリファックス等から出ている船でございまして、これは現地に根拠地は持っておりません。したがいまして、まず第一に私ども考えておりますことは、日本フラッグの船につきましては、先ほど申しましたように、徹底的にわが方から指導をいたしまして、紛争の地域に入らないように、また漁場からはかなり紛争地域は遠うございますから、その点について十分留意するようにこちらの方から情勢を提供いたしますと同時に、現地法人でやっておりますこの船につきましては、その漁船員及びその家族の安全ということにつきましては、私どもも十分に現地と連絡をとりまして、万が一のことがないように配慮するつもりでございますが、何と申しましても、居住地におきますところの人命の安全ということは、外務省にお願いをいたしたい事項でございますので、その点につきましても、十分外務省と連絡をとっている次第でございます
  34. 島田琢郎

    島田委員 ところで、アルゼンチンからは飼料穀物の輸入も若干はあると聞いておるのでありますが、けさ新聞にかなり大きく報道されておるわけでありまして、そうでなくとも飼料穀物の問題は、私どもにとっては無関心でおられない大変重要な問題であります。今度の事件をきっかけにしてシカゴ相場にも影響が出るのではないか、こういうふうに私は心配をいたしております。ダイレクトにアルゼンチンから輸入いたしておりますコウリャン等の問題については、現状はどういうことになっておるのか、その点のところをお聞かせいただきたい、こう思います
  35. 日出英輔

    ○日出説明員 御説明いたします。  きょうの新聞で出ておりますような、フォークランド紛争が長引けば飼料穀物の国際相場が上がるのではないかという報道でございますが、いまのところ飼料穀物の大宗をなしますトウモロコシの相場は、先週の末が二百七十八セント二五ということで、これはブッシェル当たりでございますが、これがきょうの週明けでは二百七十八・五〇ということで〇・二五セントの変化でございます。したがいまして、この新聞に出ておりますように、フォークランド紛争によって飼料穀物の国際相場が動くというようなことはまずないのではないか。ちなみに、この紛争が始まりました四月の二日からのトウモロコシの相場もほとんどこの水準で推移をしておりますので、そういった影響はないのではないかというふうに思っております。  それから御質問のアルゼンチンのコウリャンの輸入等についての事情でございますが、アフガンの出兵によりましてアメリカが対ソ穀物禁輸をいたしましたために、実はアルゼンチンのコウリャンはソ連向けに売られたわけでございます。そこでこの二年間日本は高値のためにとうとう買い付けられませんで、その分だけアメリカのコウリャンにシフトをいたしましたし、それからコウリャン自体の輸入量を減らしました。そこで、五十四年ごろには五百万トンのコウリャンの輸入がございましたが、実は五十六年には三百万トンということで、二百万トンコウリャンの輸入を減らしてございます。  といいますのは、配合飼料の原料のトウモロコシとコウリャンは代替可能性といいますか、お互いにかわり得るわけでございます。そこで、コウリャンが上がりました場合にはトウモロコシの方へシフトしていくことが一つの流れでございますし、現在トウモロコシの国際需給はきわめて緩やかといいますか、かなり過剰在庫がございまして、当面トウモロコシの国際相場が動くということはないと思っておりますので、仮にこういった問題が出てまいりまして、アルゼンチン産のコウリャンについて何らかの支障が起こりましても、トウモロコシの相場が動かない限りは、日本のえさ価格には動かないというふうに思っております。一応ことしのアルゼンチン産のコウリャンの輸入は、いま私どもが聞いている限りでは、五十万トンそこそこというふうに聞いておりまして、これの左右によりましてわが国のえさ価格がどうこうするといったことは全くないのではないかと思っております
  36. 島田琢郎

    島田委員 飼料課長からは楽観的な見通しが述べられているわけでありますが、しかし、これは長期化すれば、あるいは紛争がもっと深刻になってくれば、少なからざる影響を及ぼすということは考えられるわけであります。コウリャンはトウモロコシと代替できる穀物の一つであることは間違いありませんが、しかし、現にここで相当量が生産されておるということになりますれば、わが国がダイレクトの輸入はいまのところ余り大きくやっていないということになっておりますが、しかし、回り回りますと、国際的なコウリャンのいわゆる市場シェアに大きな影響をもたらし、日本にもやはり影響が出てくるということは十分考えられる。この点はひとつ十分の配慮を加えておく必要があるだろう、こう思うのであります。  政務次官おいでですから、この際、アルゼンチンからは飼料穀物のほかに馬肉が相当量輸入されている、こういうふうに聞いていますが、この点もやはり影響を及ぼしてくるのではないか。特にアルゼンチンの馬肉の問題は直ちにブラジルにも影響を及ぼしていく、こういうことになりますから、こういう点で考えますと、この点についても十分監視が必要だ、こう考えていますが、お考えがあれば、この際聞かしておいてほしい、こう思います
  37. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 これは食糧の安全保障という観点からひとつ考えてみる必要があるかと思うわけでございますが、もし日本が将来とも外国から食糧を全面的に依存するということを仮に想定した場合、思いがけない国際紛争が生じた場合におきましては、日本が非常に危機に陥ることは当然のことであります。今回の場合におきましても、日本人の中でアルゼンチンとイギリスの間で紛争が起こると予想した者はほとんどいなかったと思います。  現在、確かに短期的に見ますと、飼料穀物、主要穀物、それぞれ価格は動きませんけれども、しかし、かつてソビエトアメリカからの禁輸措置を受けました際に、アルゼンチンから大体国際価格の三五%のプレミアムをつけまして大量の飼料穀物、小麦を買い付けておる。日本はそういう影響がありまして、アルゼンチンからの買い付けば相当減っておるわけでございますけれども、もし紛争が今後拡大をいたしまして長期的になった場合におきましては、間接的な意味におきましても、国際価格が上昇するということは想定をされるわけでございますので、そういう点につきましての配慮というものは、十分今後とも考えておく必要がある。また同時に、食糧の問題につきましては、したがいまして、自国において食糧を生産をするという手段を持っておりませんと、不測の国際紛争が生じた場合、大変な困難に遭遇するであろうということは、この際はっきり認識をしておく必要があると考えております
  38. 島田琢郎

    島田委員 私の質問に直接のお答えはなかったのでありますが、まさにあなたのおっしゃる点、私も同感でありまして、この際所管の農林水産省としては、食糧の安全保障、こういうものをしっかり酌んでいかなければならない他山の石といいますか、教訓として踏まえ、われわれが年来主張しております国内自給率の向上に力を入れるという決意のほどが述べられましたから私はこれを了といたしますが、要は、本気になってやらないと、幾ら国会で決議をしてもそれが実態的にはさっぱり動いていかぬ、こういう点に国民は非常にもどかしさを持っている、こういうことが言えると思います。  ところで外務大臣、私はいま、魚を含めた食糧の問題にこうした紛争も少なからざる影響を及ぼすということの例を取り上げたのでございます。これは直接的には、アルゼンチンも決して将来閉ざされた国ではございませんから、いろいろな意味でいま申し上げました品目以外にも拡大をしていくということはあり得るわけであります。したがって、冒頭でこの事件に対します日本の姿勢といいますか、考え方を伺ったのでありますが、たとえばいまの馬肉の問題を一つ取り上げてみましても、もしもイギリスの方に手を挙げればアルゼンチンからの馬肉の輸入がとだえるばかりか、これはブラジルにも波及していくという問題に発展をする可能性を十分持っている。しかしながら、よその国のけんかなんだからわしは知らぬよというだけでは済まないということは、いまの点で十分考えることができるわけであります。そういう点で考えますと、外交上の姿勢としては、冒頭で伺った日本考え方、立場、こういうもので対処できるかどうかについて、私はいま一つ疑念なしといたしません。こういう点を十分に配慮いたしてまいらないと、外交の問題としては必ずしもそれが十全のものとはいえない、こういうことになりかねません。したがって、今後の取り組みにはこの点なども十分頭に置いた日本の態度というものが打ち出されていかなければならぬと思います外務大臣としてお考えがあればこの際ひとつ伺っておきたい、こう思うのでありますが、重ねてお尋ねを申し上げます
  39. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いま両当事国が紛争のさなかで、なかなか微妙なところがあると思うのですね。たとえば英国はEC諸国にアルゼンチンからの輸入をやめてくれ、そしてまた日本に対してもそういう意向を示しておる。これは英国としてはアルゼンチンに対してそういう点から経済的な圧力を考えておるのじゃないか、こう思うのでありますが、わが国は、お話しのとおりに英国またアルゼンチン、ともに友好国として終始してきておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、両当事国の自制を求め、平和的解決のための努力を強く望む、これが一つであります。  また、国連の内外において紛争の拡大防止と平和的解決のため今後一層の努力をする、これが現在の日本のとっておる姿勢でございます。また、そういう姿勢に対し、御承知のようなヘイグ米国務長官の精力的なあっせんの努力もございますし、現に紛争の当事国の間でもそういう平和的努力の継続についてはなお努力するということも言われておるのでありますから、この段階におきましては、ただいま申し上げましたような両当事国の自制、また国連内外を通じての平和的努力、これが適切ではないかと思う次第でございます
  40. 島田琢郎

    島田委員 わが国もこういう問題に発展しかねない問題を幾つか持っている状況は、御承知のとおりです。北方領土問題しかり、また竹島の問題しかり、中国との問題においてもしかりであります。  私は重ねて大臣のお考えを聞いておきますが、いまアメリカがこの調停に乗り出しているので、それを見守りたいというお話でございますが、アメリカが何らかの結論を出したということになった場合には、文句なしにアメリカのその調停の結果に従うというお考えですか。
  41. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは日本は第三者的立場にあるわけでございますから、両当事国がヘイグ長官のあっせんを了とすれば、それはそれで結構なことではないかと思うのであります。ただ、日本は現在安全保障理事会の理事国の立場がございまして、現在イギリス、アルゼンチンともにこの安保理事会の方に問題を持ち込んできておりませんが、安保理事会がアルゼンチンの行動を非として撤退を求める決議が行われた以降、安保理事会の動きがないわけであります。しかし、このヘイグ長官の調停がはかばかしく進まず、安保理事会の問題、こういうことになってまいりますれば、これは安保理事会の理事の一国としての立場で善処しなければならない、こう思っておるところでございます
  42. 島田琢郎

    島田委員 仮に安保理事会における取り扱いということになった場合には、日本はどういう態度をおとりになる考えですか。
  43. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは具体的に安保理事会がどういう動きをするか、たとえばカンボジア問題あるいはイスラエルのゴラン高原の併合、こういうときに、そのときどきに安保理事会が協議の上、結論を出すのでありますから、いま両当事国もなお平和的解決努力を続けようという段階におきまして、いろいろ仮定を立てて申し上げるということは適当ではないかと思うのであります
  44. 島田琢郎

    島田委員 時間の関係があるのでこの問題だけ集中するわけにいきませんので、次に移らしていただきます。  今回のサケマス協議に当たりましては長官初め大変御苦労でありました。この際、若干の点につきまして政府側のお考えを伺っておきたい、こう思うのであります。  資源的にいいますと、日ソ間におきますサケマスの資源は減っているのか、あるいはふえているのか、この辺のところの認識はどのようにお持ちですか。
  45. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 北洋におきますサケマスの資源の状態でございますが、先生も御案内のように、昭和五十二、五十三年と二百海里が施行された時点におきましてわが国は大変な減船をやっておりまして、これによりまして漁獲努力量が大きく削減されておるわけでございます。この結果、ソ連側におきましても、ベニザケ、シロザケにつきましては、資源状態は一応回復しているということは言っております。しかしながら、そのテンポにつきましては非常に遅いということを主張しておる次第でございます。また、今回は特にカラフトマスの一部資源につきましては悪い状態にあるというのがソ連側の見解でありまして、これに対しまして日本側の見解といたしましては、サケマス資源の一般的状態は、近年の五カ年間の平均水準及び昨年の水準よりもよいという考え方でございまして、今後も増加傾向が続くという考え方でございます。  魚種別に申しますと、ベニザケは全体としてその水準は昨年よりも上回ると考えておりますし、シロザケは全体的に近年の水準を上回り、かつ昨年の水準を上回る。カラフトマスは、一部の資源状態は低下しているが全体としては過去の不漁年の平均水準を上回る、ギンザケは全体として近年の水準と同様の程度である、マスノスケは近年において見られた程度と同程度の水準というわが方の見解を出しているところであります
  46. 島田琢郎

    島田委員 私は、おととしのこの協定成立に伴う当委員会における発言の中で、十分なる資源調査というのが必要ではないかということを主張いたしました。そのためには具体的な調査というものが日本側として自主的に進められていくということが必要だということを言ったのであります。それに基づくいまの御説明だと受けとめているわけであります。ただ、トータルクォータとしてはここ五年間据え置きの四万二千五百トンという状況に相なっておりますが、魚種別に見ますといろいろととる尾数の変化があるわけであります日本としては、率直に言えばマスよりはサケの方が欲しいという気持ちが強くあるのでしょうが、しかし、今回ソ連側から提案されました中で、シロザケでありましょうか、当初四百五十万ということの提示があったようでありますが、言い出しておきながら三十万匹減ったというのはどういう事情があったのか、この辺ひとつお聞かせ願いたいと私は思っています。  それから、ついでですから申し上げますが、ことしで日ソ漁業協力協定というのが年末に切れるわけであります。これはどのように取り扱っていこうとしているのか、日ソ間における協議が行われたのかどうかも含めて、あわせてお答えをいただきたいと思います
  47. 井上喜一

    井上説明員 御指摘のとおり、当初公海上におきますシロザケの漁獲尾数につきましては四百五十万尾を提案してきたわけでございますが、最終的には四百二十万尾になったわけでございます。この間の事情については、特に詳細な説明はなかったわけでございますが、シロザケがふえますと減りますのはカラフトマスになるわけでございます。御承知のとおりカラフトマスは一尾が大体〇・九キログラムでございます。シロザケは一・八キロぐらいでございまして、シロザケがふえますとかなりの量のカラフトマスが減るということで、操業の実態から申しますと、余りカラフトマスが減少し過ぎますと問題が出てくるわけでございます。経済的にはシロザケの方が確かに価値があるわけでございます。ただ、操業的に問題が出るということで、その辺のところを勘案して四百五十万尾を四百二十万尾にしたのではないか、そのように考える次第でございます
  48. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生のお尋ねの中に協定に関しての今後の取り扱いについて御質問がございましたので、私の方からその点についてお答えをさせていただきます。  御承知のように今回の日ソサケマス協定議定書につきましては、大もとになるものが昭和五十三年四月二十一日に締結されました日ソ漁業協力協定でございます。これが七条の規定に基づきまして一九八二年、今年の十二月三十一日まで効力を有するということになっておりますけれども、その同じ七条におきまして「この協定は、いずれか一方の締約国がこの協定の有効期間の満了の日の六箇月前までにこの協定を終了させる意思を他方の締約国に書面によつて通告しない限り、自動的に順次一年間効力を存続する。」ということになっているわけでございます。そういうことで、この協定自体は毎年自動延長をし得る仕組みになっておりまして、現在ソ連側がこれについて終了させるという意思を持っているということは全く存じておりませんし、ソ連側としても協力関係を今後とも続けたいという意向を持っているようでございますので、この協定の大もとの協定自体は今後ともこのような自動延長方式で一年ずつ延長されていくものと考えております。  他方、日ソサケマスにつきましては、この協定の三条におきまして、北西太平洋距岸二百海里水域外側水域におけるサケマスについては毎年議定書においてその具体的な措置を決めるというメカニズムになっておるわけでございます。それでこの議定書につきまして、従来これを長期の安定したものにしたいということで、協力協定締結したときに、むしろこの協定の中にこれを盛り込むべきではないかという主張を強くしたわけでございますが、ソ連側としては、基本的に沖取りは禁止されるべきであるという考えを持っておりまして、これを長期の協定の中に入れることはそれを長期にわたって認めることを意味するということで反対した経緯がございます。  ですから、今後は、そういうことで日ソ漁業協力協定自体が毎年一年間延長され、それに基づいて議定書が毎年作成されるという形で継続されますので、漁業の面における実態的な安定化が図られれば、この枠組み自体も存続するものと私ども考えております
  49. 島田琢郎

    島田委員 私は、協定の問題についてはこの際、ほとんど固定されているようなクォータにしても操業禁止区域にしても、あるいは期間の問題とか協力費の問題とか、いろいろな問題を解決していく上では、日本側からむしろ基本的な問題提起を、五年たつわけでありますから、すべきだ。先ほど申し上げた資源の問題についても、しっかりした調査をもとにして、日本の基本的な主張をこの協力協定の中でやるべきだし、またそれをしっかりしたものに固定するために盛り込むべきだという主張を持っている一人であります。したがって、自動延長でこのまま行けばまた来年もクォータも抑えられ、そのほかの条件も固定されていくというふうになりかねない。協定に基づく議定書でありますから、そういう関連性の中で言えば、この際やはり基本の問題をもう一遍論議し直すという姿勢に立って日本から問題提起をすべきだ、こう思うのですが、そのお考えはありますか。
  50. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御案内のように、本件協定締結されましたのは非常に厳しい二百海里時代の到来ということを受けてのことでございましたけれども、当時この漁業協力協定及びそれに基づくサケマス議定書の枠組みを決める交渉は大変難航いたしまして、やっと現在の枠組みが締結されたわけでございます。その経緯からいたしますと、現在の枠組みより有利な枠組みを日本側が獲得するという交渉を行うということはかなりむずかしいのではないかという気がいたしております。ですから、この枠組み自体はそれとして実態問題において相互の理解を深め、やっていく方が実態的には有利ではないかというふうに考えておりますので、この枠組みの変更を申し出る交渉というのは、私どもとしてはわが方の得にはならないのではないかという気がいたしております
  51. 島田琢郎

    島田委員 私は必ずしもそうは思っておりません。資源の問題を一つ考えてみても、四万二千五百トンというのはもっとふやしてしかるべきだと考えるわけです。ですから、そう及び腰になったのでは話にならないので、やはり前向きに取り組むという姿勢が外務省に出てこないといかぬし、それを受けてサケマス交渉、農林水産省、特に水産庁としておやりになるわけでありますから、そういう枠組みの中で物を考えるということになれば、来年、再来年、これ以降の問題についてはほぼわかったような話になってしまう。ですから、この機会に思い切ってやはり日本側主張をされるべきだ、こういうふうに考えるので、この点は答弁は要りませんが、そういう点を十分ひとつ取り組みの中で示してしかるべきだ、こう考える次第であります。  ところで、取り締まりの問題でオブザーバーの同乗問題というのが新たに提起されてきました。これは背景としては何があったのか、この点明確にしておく必要があると思いますのでお答えをいただきたいと思います
  52. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えいたします。  今回の交渉一つの焦点が取り締まりの関係にあったことは事実でございまして、この問題の当初におきまして、ソ側は共同取り締まりあるいは陸揚げ地における監視体制の強化といったようなことで、非常に強い提案をしてまいったわけでございますが、いろいろ交渉いたしました結果、最終的にはオブザーバーの乗船という形にいたしました。その場合に、日本監視権、監督権というものについては一指も触れさせないという形で今回の交渉を終えたわけでございます。  その背景についてのお尋ねでございますが、実は昨年かなりの違反が発生いたしまして、このために、ソ側が日本漁船操業に関しましてかなり不信の念を持ったということがございました。これが、何と申しましても取り締まり問題が今次交渉の焦点となった原因であると考えている次第でございます
  53. 島田琢郎

    島田委員 いままでの話し合いの基本になっているのは旗国主義であります。そのことが損なわれた、私はそういう理解をせざるを得ないのでありますが、これは協定の基本的な問題に触れると思っております。したがって、背景が一つ説明されておりますが、この点は、自粛するところは自粛するというのは当然各国が持たなければならない大事なモラルではありますけれども、しかし、だからといって、旗国主義が損なわれるということはなはなだ遺憾なことだと私は思っておりますが、これは基本的な認識はどこにお持ちになっているのか、その点をひとつ明確にしてほしいと思います
  54. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 今回の交渉に当たりまして、先ほども申し上げましたように、日本監視船監視状況につきましてソ側がいろいろな問題を提起いたしまして、一つは、日ソ双方の監督官日本監視船において行う共同取り締まりあるいは陸揚げ港におけるソ連監視員の駐在というような非常に厳しい要求を突きつけてまいったわけでございます。これに対しまして、わが方としましては強くこれに反論いたしまして、その結果、先ほども申し上げましたように、まず取り締まり権というものは日本側にのみ属しているということ、それから同時に、ソ連オブザーバー日本監視船に乗船を認めますけれども、しかしながら日本監視権、監督権あるいは管理の権利、これは運航も含むわけでありますけれども、これらの権利については一指も触れず、かつまたそれに支障を及ぼさないということを前提にいたしまして、それを明確にいたしました上でオブザーバーの乗船を認めたわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、ただいま先生お話しのように、旗国主義に触れるのではないかという御質問でございますけれども、このような取り締まりに当たりましてのわが方の管理権というもの、また取り締まり権というものは明確にした上でこれを決めたわけでございます。したがいまして、これは旗国主義には触れないと考えておりますし、また同時に、ソ連オブザーバー違反した日本漁船を検挙するということはあり得ないわけでございますから、したがいまして裁判管轄権の問題等も生ずるわけはないと考えている次第でございます
  55. 島田琢郎

    島田委員 日米漁業の関係においてはオブザーバーを認めておるわけですよ。ですから、そういうところから平等主義に立って主張されているのかもしれませんが、私は、日米漁業協定の問題についても、オブザーバーの問題は旗国主義に立つべきだと前に主張したことがございます。片一方でそういうことが行われているから、当然要求として出てくるのは仕方がないと言えば仕方がないのでありますけれども、そういう点はやはり海洋秩序、あるいは日本を含めた世界各国の動きの中で旗国主義というものはすでに幾度も確認をされているわけでありますから、これは直していくべきなんであって、日米漁業の問題についても、オブザーバーの乗船については拒否をするという態度があってしかるべきだということを私は申し上げたことがあります。  この点についての質問も、時間がなくなってきましたから先に進まざるを得ませんが、この際、昨年から再開されました昆布協定について見通しを伺っておきたいと思います
  56. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 民間協定により昭和三十八年より昭和五十一年まで継続をされました貝殻島周辺における昆布漁は、五十二年以降中断されておりましたけれども、北海道水産会及びソ連漁業省との間で鋭意交渉が行われた結果、昨年新たな民間協定締結され、昆布漁が再開される運びとなったことは御承知のとおりでございます。  本年の昆布採取に関する交渉につきましては、昨年の民間協定に基づきまして双方の代表者は本年五月十五日までに会合することになっておりまして、当事者である北海道水産会は近くソ連側と交渉を行う考えであるというふうに承知しております。  政府としましては、本年についても貝殻島周辺における昆布漁が継続されることを強く希望しておる次第でございます
  57. 島田琢郎

    島田委員 限られた時間なものですから詰めることができませんが、またこれは農水等でも話題にいたしたいと思っております。  そこで、もう一つの問題は、日米漁業協定についてでありますが、私は、先ほどの質問を聞いておりまして、これは対アメリカとの漁業認識を根本から変えないといかぬな。先ほどもお話がございましたが、一方では貿易摩擦理由にして、魚を含めたいわゆる門戸開放を迫りながら、片一方ではクォータの制限あるいは正しく割り当て、クォータの発表もしない。昨日一部はなされたようでありますけれども、従来四月に二五%、七月に二五%というのが常識になっていたはずでありますが、今回は一五%しか打ち出してこない、しかもかわって洋上取引に重点を置いた要求が出てくる、私はもってのほかだと思うのです。そういう汚いやり方に対して、日本政府の毅然たる姿勢というものをこの際見せてしかるべきだと思うのです。外務大臣、この点はいかがお考えになっていますか。
  58. 松田慶文

    ○松田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、四月の割り当てが減量されてきておりますことはまことに遺憾に存じておりまして、これに対する適正な対処を政府部内でただいま検討中でございまして、外交ルート等々を経由し、しかるべく抗議その他の措置をとる所存でございます
  59. 島田琢郎

    島田委員 しかるべき措置とは具体的に何を指しておっしゃっているのか、その点重ねて聞きたいのです。  もう一つの問題は、洋上買い付けの問題について、このような貿易秩序の維持といったようなことが国際的には言われておるわけでありまして、これは陸揚げするのではありませんで洋上取引でありますが、貿易上問題がないのかという感じ一つあります。この点についての見解はいかがですか。
  60. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 今回の漁獲割り当てにも関連いたしまして、洋上買い付けの問題というものが非常に大きくクローズアップしておることは事実でございます。そこで、これが貿易との関係で関連があるかというお尋ねでございますが、本来、この洋上買い付けの議論を米側が提起してまいりましたそのもとは、アメリカ漁船によってアメリカの二百海里内の資源を活用するという基本的な考え方、これはブロー法等にも盛られている考え方でございますが、この考え方が強く前面に出てまいりまして、したがってこれと漁獲割り当て量リンクするということでこのような主張が強く出てまいったというふうに考えております。  したがいまして、本来基本的に申しますと、この問題は漁獲割り当て量をめぐる問題というふうに理解すべきであると考えておるわけでありますが、他方、やはりこのような洋上買い付けがふえますれば、当然アメリカの魚の輸出というものが日本の市場に向かってふえてくるということでございますから、貿易の関係とは無関係ではないというように考えている次第でございます
  61. 島田琢郎

    島田委員 アメリカでは国内法ブロー法というのが一昨年成立をいたしました。これをベースにした日米漁業協定になっているとすれば、これははなはだ筋違い、わが方にとってはそういう感じがいたすわけであります日米漁業協定はことしで切れるのですが、これは日ソ漁業協定と違いまして、自動延長はあり得ない。再度協議をして、成立がなければ切れてしまうということになりますから、この取り扱いについては、相当日本側主張が明確に盛られる大事な年にことしはなっている、こういうふうに思います。先ほどの御説明で、具体的にはどういうアメリカに対する抗議をされるのかわかりませんけれども、こうした横暴なやり方をそのまま許すなんということがあったら、これは日本漁業者が大変大きなリスクを受けるばかりでなくて、国際信義の上からも多くの問題を惹起することになる、こう私は考えています。したがって、毅然たる姿勢でこの問題に取り組んでもらいたいと思いますが、この点はいかがですか。
  62. 松田慶文

    ○松田政府委員 御指摘のとおり、現行漁業協定は本年年末に期限が切れるわけでございまして、私ども先般来より米国政府との間に新漁業協定締結交渉を始めております。御案内のとおり、私どもといたしましては、米国沖合い水域におきます漁業開発に当たりましては、従来よりわが国の貢献はまことに大きなものがございますし、そのような伝統的な日米水産関係を基盤といたしまして、現行協定の中に盛られている相互の依存関係を新しい漁業協定にも盛り込みたいと考えておりますが、他方、米国には新しい、先生指摘のとおりの動きもございまして、決して交渉は容易ではございませんが、ただいま申し上げましたようなわが国の立場に立脚いたしまして、今後とも粘り強く年末までの仕上げを目指しまして交渉を続ける所存でございます
  63. 島田琢郎

    島田委員 もう一、二分になりましたが、大臣、私は、海洋秩序といいますか、漁業秩序、これを乱すようなこういうアメリカの態度、これに対しては厳重にやはり日本側としては抗議もし、毅然たる態度で外交交渉の場へ臨んでほしい、こういう希望を持っていますが、いかがですか。
  64. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 島田委員のおっしゃることは全く同感でございます日米間の漁業協定は、日本の実績を、あるいは歴史的経緯を踏まえて従来つくられておるものと思うのであります。それを国内事情を中心として日本に大きな犠牲を強いるというようなことは納得のできないところでございまして、本年の漁業協定の改定に際しましては、日本としてのはっきりした立場、主張すべきことは主張して、そして御批判のないような協定をつくりたい、このように念願するものでございます
  65. 島田琢郎

    島田委員 終わります
  66. 中山正暉

  67. 吉浦忠治

    吉浦委員 北西太平洋における千九百八十二年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書締結について承認を求めるの件について御質問をいたします。  今回のサケマス交渉の結果はおおむね昨年と同様で、関係者一同大変感謝していると地元から伺っておりますが、昨年との違いは、日本側取り締まり船にソ連オブザーバーを乗船させることになった点だろうと思うわけであります長官、大変御苦労さまでございました。この経緯を先にお尋ねいたしたいと思います
  68. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 今回の日ソサケマス交渉に当たりましては、先生指摘のとおり、取り締まりの問題がその非常に重要な部分を占めたわけでございますが、これは昨年漁期におきますところの太平洋中型サケマス漁船違反状況を背景といたしまして、ソ連側が今回の交渉におきまして、このように取り締まり問題を重大問題として取り上げてきたというふうに考えておる次第でございます。  具体的には、交渉当初からソ側は、日ソ双方の監督官日本監視船において行う共同取り締まり、また陸揚げ港におけるソ連監視員の駐在という非常にきつい提案をいたしてまいりました。日本側は反論を重ねてまいりましたが、ソ側は相当これに固執した次第でございます。そしてまたこの取り締まり問題の帰趨が交渉に直接影響を与えるということが、交渉を通じて終始明らかになってまいったという状況でございました。日本側といたしましては、日ソ漁業関係におきますところの信頼の回復ということが非常に重要であるということも配慮いたしまして、かつ特に重要な点は、取り締まり権というものが日本側にのみ属しているということを明確にするということが必要であると考えまして、このような点を明確にいたしまして、ソ連オブザーバー日本監視船への乗船を認めるということにした次第でございます。この結果、ソ連監視員の駐在提案あるいは共同取り締まりといったようなことは、最終的にはソ側もこれを撤回したというのが経過でございます
  69. 吉浦忠治

    吉浦委員 先ほど同僚議員からの質問にもありましたが、経費の負担はどのようになっているかということでございますが、一言で結構ですから、お答えいただきたい。
  70. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 オブザーバー乗船の費用についてのお尋ねであるというふうに思いますけれどもオブザーバーの乗船に必要な費用はすべてソ側において負担するということになっております。そのような合意になっております
  71. 吉浦忠治

    吉浦委員 アメリカの場合は、オブザーバーの経費は日本側が負担する、こういうふうになっておるのですが、今後そのような恐れはないのかどうか。
  72. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 米国の場合のオブザーバーは、その費用をわが方が負担する形になっておりますが、これは日ソサケマス漁業とそれから米国内におきますところのわが国漁船操業とは性格的に違っていることに起因しているわけでございまして、つまり米国のオブザーバーアメリカの二百海里水域内において操業する外国漁船に乗船するものでございます。  この場合には、この場合と申しますのは日ソサケマス漁の場合には、公海あるいはアメリカの二百海里水域において、これはわが方の漁船操業しておりますので、これは当然ソ連側が負担すべきであるという論理でございます。このような性格の違いがございますので、今後ソ連オブザーバー日本監視船への乗船を認める場合には、当然この違いを指摘いたしまして、今回の合意どおり経費は将来ともにソ側の負担ということでやってまいりたいというふうに思います
  73. 吉浦忠治

    吉浦委員 このようになった原因、理由というのは、やはり日本船の違反件数が多くなったということだろうと思うわけでありますが、その原因をどういうふうにとらえていらっしゃるのか、簡潔で結構ですから。
  74. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 確かに中型の流し網漁船を中心にいたしまして違反件数が増大いたしておりまして、五十五年の違反件数が二十隻、五十六年の違反件数は二十七隻で、特に行政処分を要するものが非常にふえているという状況でございます。このような違反内容操業日誌不実記載とかあるいは漁具の標識違反といったような軽微なものもございますが、特に問題になるのは禁止区域、特に区域違反でございます。この区域の違反というのは、漁業者魚群を追いまして禁止区域内におきまして操業を行ってしまったということによるものがあるというふうに考えるわけでございますけれども、一方におきまして、漁業者自身が国際的な約束を遵守するということにつきまして十分な自覚を促さなければならぬという面もあろうと考えている次第でございます
  75. 吉浦忠治

    吉浦委員 一たんソ連人の乗船を認めたということは、今後日本漁船違反件数が減らない場合、ソ連側がオブザーバー権限の拡大を要求することは目に見えて多くなる。そうなりますと、これは将来に大きな問題を残すことになると思うのですが、長官どういうふうにお考えですか。
  76. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 今回のオブザーバー乗船につきましては、監視船三隻に先方のオブザーバー一名、通訳一名をそれぞれ乗せるということで合意をいたしたわけでございますが、先生指摘のように今後さらに違反がふえるというようなことになりますと、ソ側は態度を硬化いたしまして、オブザーバー乗船をさらに強化することを要求してまいる可能性が十分にございます。したがいまして、私どもといたしましては、違反がなくなるように全力を尽くさなければいかぬというふうに考えている次第でございまして、今回の交渉妥結の際に大臣の談話がございましたが、田澤大臣から、今後ともこの違反をなくすということのために農林水産省としては十分に指導してまいりたい、また漁業者の自覚も促したいということも申しておられるわけでございます。さようなことから今後ともこの違反の減少、さらに根絶に向かって私どもとしては最大の努力を続けなければならないと考えておりますし、またこれがこのオブザーバーの問題を強化されるといったことを防ぐ最大の、また唯一の方法であると考える次第でございます
  77. 吉浦忠治

    吉浦委員 次に、日ソ漁業協力協定は、先ほども同僚議員からの質問にありましたが、十二月末でその期限が一応切れることになるわけです。その後は、六カ月前までにソ連あるいは日本のいずれかが協定を終了させる意思を通告しない限り、順次一年間効力を有するということになっておりますけれども、今回の交渉に当たって、協定の延長について話し合いが持たれたのか、また、でなければどういうような感触であったのか、その点をお尋ねをいたしたい。
  78. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生指摘のように、この日ソ漁業協力協定は本年の末で一応有効期限の終わりが参りますけれども、その後は順次、六カ月前までに通告がない限り延長されるということになっておりますが、今回の交渉を通じてソ連側からこの協定を終了するというようなことについての意思表示は全くございませんでしたし、むしろ協力関係を今後とも続けていくという見地からの話が実態的に行われましたので、私どもとしても協定を終了する意思がソ連側にあるというふうには全く考えておらない次第でございます
  79. 吉浦忠治

    吉浦委員 漁業者は単年ではなくて長期的に安定した操業を行いたいと希望しているわけでございますので、先ほどの質問にもありましたように、現行協定の単純延長ではなくて、毎年協定が切れることを心配しなければならないような協定じゃないようにぜひ努力をしてもらいたいのですけれども、そのお考えはいかがですか。
  80. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先ほども説明させていただいた件でございますけれども、本件日ソ漁業協力協定が五十三年四月に締結されたときに、今年の末まで協力協定自体は有効期限があったわけでございますが、ただいま議題になっております日ソサケマス漁業につきましては、この協定の三条に基づいて毎年議定書によってその具体的な措置を定めるということになっていたわけでございます。当時も、日本側といたしましては、サケマス漁業につきましてこれを長期的な枠組みの中で取り扱っていきたいということを非常に強く主張したわけでございますけれどもソ連側は基本的にサケマスについては沖取りは禁止されるべきであるという態度をとっておりまして、長期的な協定の中で沖取りを認めるようなことをすればその原則的な立場を撤回したと考えられるということで、長期的な枠組みにこれを入れることに強力に反対したわけでございます。したがいまして、当時も、本年末まで有効であった協力協定のもとにおきましても、第三条によりまして毎年議定書という形でこれを取り決めていかざるを得なかったという事情がございます。この事情ソ連側におきまして現在も変わっておりませんので、これから長期の枠組みの中でサケマスを取り扱うということをソ連側に提示いたしましても、なかなかソ連側はこれに応じる状態にはないのではないかと思っております。また、その枠組み自体も、当時非常に困難な交渉を通じて獲得したものでございますので、私どもといたしましては、現行におきましては、この実態の問題についてお互いに協力関係を強めることによって、枠組自体を毎年決めるという形ではありますけれども、現行の枠組みを維持していくということが有益ではないかと考えている次第でございます
  81. 吉浦忠治

    吉浦委員 次は、漁業協力費の点についてお尋ねをいたします。  今年は四十億円というふうになっております。これに対する国の助成は、一九七八年から一九八〇年まで協力費の四五・三%を国庫助成してきたわけでありますけれども、昨年は協力費が上がったにもかかわらず前年と同様の十六億九千八百七十五万円助成されておられますが、今年の場合はこの助成の方針はいかがお持ちでございますか。
  82. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 漁業協力費でございますが、昨年も四十億でございまして、本年も交渉の結果同額ということで、四十億に合意ができまして、その点よかったと思っておる次第でございます。  この協力費に対します国庫の助成は、五十五年、五十六年ともに約十七億円ということで政府が援助をいたしてまいっておりまして、本年の政府助成につきましては、財政事情等もございますが、具体的には今後関係各省庁の間で十分に協議いたしまして、それによってこの助成を決めてまいりたいというふうに考えている次第であります
  83. 吉浦忠治

    吉浦委員 漁業協力費の性格が私にはよく——毎年質問をいたしておりますけれども入漁料とどういうふうに違うのかということですね。だから、割り当て量を確保するためにその額を決めることからすれば入漁料と同じじゃないか、入漁料に対しても助成をすべきではないかというふうな感じはいたしておりますけれども、これはどういうふうな性格のものととらえていらっしゃるのか。
  84. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 漁業協力費は本来的に入漁料とは全く異なった性格を持っているというふうに考えております。と申しますのは、わが国サケマス漁船ソ連の二百海里水域外でソ連系のサケマス漁獲するに当たりまして、ソ連側がサケマス資源の保護、再生産維持のために投下した経費、これにつきまして応分の負担を行うというのがこの趣旨でございまして、たとえばサケマスの産卵場の保護あるいは改修といったようなことのためにソ側が負担しているその経費を日本側が応分の負担をするということでございます。したがいまして、そのような趣旨のもとに政府も関与いたしまして、サケマス増養殖を中心にいたしました漁業協力を実施するものでありまして、いわば日本の国内においてサケマスのふ化放流事業に対しまして政府が公共的な立場からこれに助成しているといったような考えと似ていると考えるわけでございます。したがいまして、他国の二百海里水域の中におきまして漁獲を行う際に支払われる入漁料とは全く性格が異なっているというふうに考えるわけでございます。したがいまして、このようなことで協力費といたしましては助成を行っておりますが、入漁料は本来操業経費の一部であるということで漁業者の方が負担していただくということがたてまえになっている次第でございます
  85. 吉浦忠治

    吉浦委員 漁業協力費の経緯を見ますと、一九七八年が十七億六千万円、一九七九年が三十二億五千万円、一九八〇年が三十七億五千万円、一九八一年と本年は四十億円、こういうふうになっておりますが、この協力費の膨大なふえ方、ことしは長官も胸をなでおろしておられると思うのですけれども、この推移からすると、またまた日本がこの協力費の中に増額をされるおそれがあるという心配が起きていますけれども、見通しは、簡潔で結構ですから、どういうふうに持っておるのですか。
  86. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 ただいまも御答弁申し上げましたように、漁業協力費の性格は、ソ側がその産卵場の保護等のために支出しております経費に対しまして応分の援助をしていくという考え方でございますので、ソ側のこのような投下する経費がふえました場合には、当然ソ側はこれに対しましてさらに協力費の増額を要求してくるということがあり得るというふうに考えております。  この問題につきましては、毎年の交渉におきまして十分にわが方の立場の主張もいたしまして、ことしも実はその主張をいたしました。特に燃油が高騰し、かつ魚価が低迷しているという状況においては、負担能力が非常に少なくなっているということも主張して四十億ということになったわけでございますが、今後ともこのようなソ側の要求があると思いますので、その際にはその時点において十分にこれにつきましては交渉をしていくというふうに考えております
  87. 吉浦忠治

    吉浦委員 日ソ共同のサケマスふ化事業について、過去において話し合われたことがあったと私は聞いておりますけれども、今交渉では話し合いは行われませんでしたか、どうですか。
  88. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 日ソサケマス共同増殖事業につきましては、古くからこの話が日ソの間であったわけでございますが、実はこの共同増殖の事業につきましては、日ソ漁業委員会という組織がございますが、この場で話し合うことが適当であるというふうに考えられまして、実は昨年の十一月モスクワで第四回の日ソ漁業委員会がございまして、その際に日本側よりサケマスの共同増殖につきましてソ連側で検討してもらいたいということを主張いたした経緯がございます。これに対しまして、ソ側は、反対はしないが当分はそれぞれの国別に事業を行った方が合理的、効果的であるというふうに考えているというのが向こう側の考えでございました。このようなことが明らかになりましたので、この問題は将来とも漁業委員会で話していくつもりでございますが、今回の交渉におきましては漁獲量の設定その他の交渉でございましたので、特段の話し合いは行われなかったというのが事実でございます
  89. 吉浦忠治

    吉浦委員 最後に、このたびの紛争のフォークランド周辺における日本漁船操業について、その安全確保という点から、または、その細かい点はもう時間になりましたので触れませんが、どういうふうな対応をなさろうとなさっているのか、その点だけ伺って終わりたいと思います
  90. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 先ほども他の委員の御質問に御答弁申し上げましたように、現在南方トロールの漁船及びカツオ・マグロ漁船がこの紛争水域からはかなり離れたところで操業いたしておるわけでございますけれども、この漁船につきましても紛争に巻き込まれることがあってはならないということから、操業各船に対しまして極力紛争周辺海域からは離れて操業するように、それからまた日章旗を船体各部に掲示するといったようなことで、日本国籍である旨を明示するようにということで業界を指導しております。それからまた、操業各船からは随時その位置を報告させまして、外交ルート等から関係情報が入手できれば全船に対して迅速に提供する体制をとるということで安全を確保する措置をとっております。  また、現地法人に属しておりますアルゼンチン・フラッグの船が二隻ございますが、これは特にメルルーサをとっておりますので、紛争水域に近接した地域においても漁場が形成されるという可能性もありますので、これらの現地移籍船は南緯四十二度以北というところで操業するようにということで、そのような操業を予定しているという次第でございます
  91. 吉浦忠治

    吉浦委員 ありがとうございました。
  92. 中山正暉

    中山委員長 林保夫君。
  93. 林保夫

    ○林(保)委員 北西太平洋における千九百八十二年の日本国さけます漁獲手続及び条件に関する議定書につきまして若干の質問を試みたいと思いますが、なお、新聞報道でもいろいろと出ておりますし、関係業界あるいは船員、海員の皆さんが大変心配している問題として、二十六日午後米国の日本政府に対する通達ですか通知ですか、漁獲割り当て日本はえらい差別するような状態で出てきております。これに関します実情を事務当局の方から御説明いただきたいと思います
  94. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 アメリカの四月における対日漁獲割り当てでございますが、四月の二十六日に米国は日本政府に対しまして正式に本年第二回目の対日割り当て量を通告してきた次第でございます。  この通告は、予定されておりました四月一日よりも一カ月近く遅くなりまして、しかも量的にも予定量の二五%を大幅に下回る一五%、十七万トンという割り当て量であったわけでございます。米国はこの通告の中で対日割り当て量を削減した理由は必ずしも明確にしておりませんが、従来のいきさつ、交渉の経緯から考えますと、恐らくこれは、米漁民からの洋上買い付けの量等対米協力内容に米側が不満を示したということではないかというふうに考えられるわけでございます。  しかしながら私どもといたしましては、わが国はアメリカの水産物輸出のうちの過半数を輸入している国でございまして、アメリカ側の貿易には十分に寄与をしておるわけでありますし、また、洋上買い付けにつきましても段階的にこれを拡充するということにつきましてすでにその協力をいたしている次第でございまして、そのような意味で米国漁業の発展に協力しているという次第もございまして、これらの努力が今回の四月割り当てに反映されていないということにつきましてはきわめて遺憾であるというふうに受けとめている次第でございます。わが国としましては、このような米国のとりました措置に対しまして遺憾の意を表明いたしますと同時に、今後ともあらゆるルートを通じまして洋上買い付けに関するわが国の態度等を十分に米側に説明いたしまして、わが国の操業が安定的に維持されるように努めてまいりたいというふうに考えております
  95. 林保夫

    ○林(保)委員 重ねてでございますが、韓国や西ドイツ、台湾など他の漁業国に対しましては二五%の割り当てをする、なのに日本は、こういう問題が一つあると思います。先ほど長官のおっしゃったような、向こう側の希望している洋上買い付け四十万トンでございますか、これを果たしてやれるのかどうか、こういう問題がきっちり出ないと、長官がいまおっしゃったようにこれからやるという問題もしっかりいかないと思います。したがいまして、洋上買い付けがいままでの実績で幾らで、これからどれくらいやる意思なのか、国内業者への圧迫の問題もございますので、その辺のところを含めまして御説明いただきたいと思います
  96. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 洋上買い付けと申しますのは、アメリカ漁船がその二百海里内で漁獲をいたしました魚を日本の船に舷側で渡しまして、その結果日本側がこれを買い付けるという方式でございますが、実はこれは去年も実施しておりまして、実績が一万一千トンいっております。それから、ことしも当初四万トンと申しましたが、これを現在六万トンまでふやしてアメリカ側洋上買い付けの拡充を実は図っているというのが現状でございます。  ただ、アメリカ側はことしの六万トンに対しましても不満でありますと同時に、中長期にわたりましてこれを大幅に大きくしてくれ、増額してくれということを申しておりまして、先ほど先生もおっしゃいましたように四十万トンを三年間で実施してくれということをわれわれに申したことがございます。私どもとしましては四十万トン、三年といったようなことはとうていむずかしいということを申しておりまして、特に私ども強調いたしておりますのは、対米の漁獲割り当ての中でこのような洋上買い付けがふえてまいりますと、どうしても日本漁船に対する割り当てが減ってくるわけでございまして、さようなことから減船問題あるいは失業問題等が起こりますことは、これはとうてい容認できないところであるということを申しておりますと同時に、またその買い付けの契約の中身につきましても、去年は明らかに損失をこうむるような価格の設定でございまして、かような取引は長続きはしないということを申しております。  また、第三点といたしまして、果たして四十万トンといったような大量の洋上買い付けを行い得るだけのアメリカ側漁獲能力あるいはそれを売り渡す能力があるかということが問題でございまして、さような点についてアメリカ側にわが方の主張あるいは見解を何度か向こうから来た人にも話し、またこちらからも担当官が参りまして話をしているところでありますが、まだ話がついていないというのが現状でございます
  97. 林保夫

    ○林(保)委員 海洋国でありますにもかかわりませず、日本はだんだん締めつけられてくるというような実感を禁じ得ないわけでございます。年々歳々この委員会日ソの問題そのほか取り上げましても、広がることはない。やっと今度がサケマスが現状だった、こういうことでございますが、水産庁長官、こういう状態でいいのでございましょうか。何が原因でこういうふうに締めつけられるのか。それは、各国とも権益を欲しがるという問題もございますが、特に今度の米国からの漁獲割り当て、これをどのようにはね返す御決意であるか、この辺をひとつしっかり御答弁いただきたいと思います
  98. 玉沢徳一郎

    ○玉沢政府委員 米国との関係におきましては、日本アメリカは最大の友好国であるわけでありますが、現在農産物をめぐりましても大変な主張の違いがあるわけでございます。しかし、この点に関しましては、アメリカのわが国に向けております要求はどうも大変性急であり、また価格の問題におきましても、いま説明がありますようにとうていのめないような要求がある、こういうふうに見ております。しかしながら、長期的に見ますと、日本アメリカから買い付ける、そうしますアメリカ漁民も利益を受ける。しかしアメリカ漁民能力を超えるような要求がある。したがいまして、こういう点が大変両国の間には誤解が生じておる、あるいは幻想に基づいた要求だと言わざるを得ないと思います。したがいまして、この漁業の問題等におきましては、ついここ二、三年の問題として浮かび上がってきておるわけでありまして、実情を十二分に向こう説明をするという外交努力が最も必要である、そして長期にわたって両国が共存共栄の実を示す、こういうことが大事であると思うわけでございますので、アメリカに対しましては、誤解とか幻想に基づく要求というものに対しましては断固として主張すべきところは主張しまして、何とかお互いに立ち行くべき道を探し出して打開をしていくべきである、このように存じます
  99. 林保夫

    ○林(保)委員 ぜひがんばっていただきたいと思いますが、いまも玉沢政務次官おっしゃったように外交努力が必要だ。そしてまた、新聞紙上では貿易摩擦の嫌がらせだ、こういうことも実は報道されております。  外務大臣にお聞きしたいのでございますが、大臣は先方のこういった漁獲割り当てについてどのように御認識をなされ、これをどのようにはね返していただけるのか、この辺のところを、ひとつ御決意を承りたいと思います
  100. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日米間の漁業関係、これは日本に大きな実績があると思うのですね。それがだんだん圧迫を加えるということは、これは忍びないところでございまして、お話のように外交努力によってこれを打開しなければならない。また、米側の要求というものが実情に即していないということも先ほど来の御説明でおわかりのとおりでございまして、こういうような点もはっきりさして、そして妥当な協定でなければならない、このように考えておる次第でございます
  101. 林保夫

    ○林(保)委員 関係者の憂慮ばかりでなく、いま大臣おっしゃったようにまさに実情に即していないという、こういう認識をわれわれ日本国民はみんな持っていると思います。そういう点を踏まえられまして、ひとつしっかり外交御努力をお願いしたい、このことを特に申し上げておきたいと思います。私ども協力する余地があるなら幾らでも協力して、一緒に国益を守っていかなければならぬ、こういうことだろうと思いますので、ひとつその点を強調しておきたいと思います。  続きまして、議題となっております日ソサケマス交渉の実質妥結でございますが、交渉のスタートがおくれたにもかかわりませずわりと早く決着がつき、なお、前年度と同じ四万二千五百トン、そして協力費四十億円、そしてただ新しくソ連オブザーバー日本側漁船監視船三隻に乗船する、こういうような内容になったと思います。時間がございませんので、ひとつこれの評価を水産庁長官から、特に漁業協力費が四十億と決まっておるが国庫負担がどれぐらいできるものなのか、そしてその四十億の内訳はどういうものなのか、簡単に御説明いただきます
  102. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えを申し上げます。  まず評価でございますが、自分が交渉当事者でございますので、どのような評価であるかということはむしろ皆様の方から評価をしていただきたいということでございますけれども、私自身考えておることは、今回のサケマス交渉は開始日がおくれたものの円満早期に妥結いたしまして、特に漁船の出漁の時期に間に合ったということは、私非常によかったというふうに考えておる次第でございます。また、総漁獲量につきましても四万二千五百トンになりましたし、また年々増加してまいりました協力費につきましても昨年と同額であったということは、まずまずの成果ではなかったかというふうに評価していただけるのではないかというふうに思っておる次第でございます。  ただ、今回日本漁船取り締まりに関しまして、特にソ側が、昨年の漁期におきますところの漁船違反が非常に多かったということから厳しい提案を行ってきたわけでございますが、これにつきましても最終的には、わが方の取り締まり権というものは日本側のみに属するということを明白にいたしました上で、監視船へのソ連オブザーバーの乗船を認めたという経緯でございます。さような意味で、今後とも違反防止のために関係漁業者に対する一層の指導をし、また自覚を促していくということが必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。  第二点の協力費でございますが、四十億ということで去年と同額になったわけでございますけれども、国庫の助成は去年それから一昨年ともに十七億ということでやってまいっております。この点につきましては、まだ決定を見たばかりでございますし財政事情等もございますので、関係当局と十分に話し合ってみたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、この協力費の内訳と申しますか、何に使われているかということでございますが、これはソ連に対する諸機材の供与ということのために使われているわけでございまして、特にいままでの経緯から申しますと、ソ側がその機材として常にわが方に求めてまいりますものは、サケマスのふ化増養殖のための餌料、えさの施設と、それからサケマスのふ化増殖のための諸機械類等の施設でございまして、恐らくこれらのものが今回の四十億の内容にも主力を占めてまいるのではないかというように考えておる次第でございます
  103. 林保夫

    ○林(保)委員 外務省からの資料によりますと、魚種別漁獲量尾数で、ソ連側提案はベニが百十万、そして妥結が百十万、それからシロは四百五十万が減って四百二十万、ギンは百二十万が同じで百二十万尾でございます。それから漁業協力費は、ソ連側提案が四千七百万ルーブルの二七%で約三十九億円、これが妥結額では四十億円、このようになっておりますが、これはどういう事情から、ソ連の提案よりもわが方が遠慮して一億円余分に出したり尾数を減らした、こういうことがちょっと納得がいかないわけでございますが、簡単に御説明願います
  104. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 まず尾数の違いでございますが、これはソ側が当初から申しておりましたように本年はマスの不漁年でございまして、したがいまして、四万二千五百トンの漁獲量割り当てられまして、しかもそれを消化いたします場合に、マスが少なければどうしてもシロザケをとらざるを得ないわけでございます。ところが、シロザケの方は当然価値も高うございます上に重量も重いわけでございます。したがいまして、シロを主体にとるということになりますと、マスが少なくなりますために同じ総漁獲量でありましても尾数が減ってくるということでございます。それ以外の他意はございません。  それから、先ほど先生三十九億の要求ということを申されましたが、これは当初提案の三万七千トンを前提にいたしましてそれに対する協力費でございまして、これから計算してまいりますと、四万二千五百トンというふうに漁獲量が増大いたしました場合には当然四十億をはるかにオーバーする協力費の要求になってまいるわけでございます。それを前年どおりに抑えてきたということでございます
  105. 林保夫

    ○林(保)委員 今回の漁業交渉日本監視船三隻にそれぞれソ連オブザーバー一人が乗る、これが特徴的である、こう言われております。そしてまた、五十五年は違反船が二十隻、五十六年が二十七隻、これはどうしてこういう違反が出るんだろうか、こういう問題もございます水産庁の指導監督の問題が一つあると私は思うのでございますし、業者の姿勢の問題も一つあろうかと思います。その辺もお答えいただきたいのでございますが、この議定書を先ほどから何度も繰り返して見ているのでございますが、日本側監視船へのソ連オブザーバーのいわゆる乗船規定といいますかそういうものがどこに書かれておるのかということをまず御質問いたしたいと思います
  106. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 このオブザーバーの乗船につきましては、日ソ双方の了解を間違いなくするためにこれを事務当局の作業議事録という形でまとめてございます。作業議事録というものは非常に細かい手続を決めたものでございまして、その第二部におきまして今回のオブザーバーの乗船につきまして相互の了解に間違いがあってはいけないということでこの中に決めておりまして、その中で、特に取り締まりの実施状況を視察するということに限るというようなこととか、それから日本側取り締まり活動に支障を及ぼさない範囲で行うとか、それから日本船側の漁業監視船上における取り締まり権及び管理の権利は日本側にのみ属するというようなことを明確に取り決めております。これはあくまでもそういうことで、ソ連側に便宜を供与するという観点から作業議事録という文書において明確な了解を取り決めた次第でございます
  107. 林保夫

    ○林(保)委員 これはやはり資料として出していただきたいと思います。大事なポイントを審議しておりますのにそういうものがないとどうにもならないと思います。したがいまして、オブザーバーを乗っけるというそのところだけ、作業議事録膨大なものでございましょうからそこだけでも結構ですから後で届けていただきたいと思います。審議しようにも、これを幾ら読んでもどういうふうになっているのかちっともわからぬ、こういうことでございますので、委員長、この点は厳重に申し添えておきたいと思います。  先ほどの問題でございますが、二十隻、二十七隻でございましたか、これはどういうことなんでございましょうか。ソ連側には一体幾らぐらいの違反船があって日本側はどういう取り締まりをやっているのでございましょうか。サケマスに限らず全体の、北の関係の海で起こっておる状況水産庁長官から御説明いただきたいと思います
  108. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 漁業違反につきましては、操業日誌不実記載であるとかあるいは漁具標識違反といった細かなものもございますけれども、特に問題が起こっておりますのは区域違反でございます。  区域違反につきましては、サケマスというのは定着性の魚種ではございませんので、広い海にわたって回遊いたすものですから、どうしても魚群を追いまして漁業者禁止区域に入ってしまうという問題がございます。しかしながら一方におきまして、やはり漁業者自身が国際的な約束を守るということにつきましての十分な自覚を促さなければならないという面もあるというふうに考えております。  わが方の違反船の取り締まりにつきましては、監視船九隻をもちましてこの取り締まりに当たっておるわけでございますが、一昨年はサケマス漁業につきましては先ほど先生のお話しのように二十件、昨年が二十七件でございますが、特にその中でも停泊処分等の非常にきつい処分を行わなければならない分が非常にふえておるということが問題であるというふうに思いまして、今後ともこの違反はぜひとも減少し、また根絶させていかなければならぬというふうに思っております。  なおサケマス漁業自身につきましては、ソ側はわが国の近海に来てやっておりませんので、この違反事件はないわけでございますが、双方の二百海里内の違反事件は日本ソ連ともにございまして、昭和五十六年のソ連側の違反件数は十二件でございますソ連側の違反に対しましては水産庁、海上保安庁で十分に取り締まっておりますし、またわが方の漁船向こう側の水域におきまして日ソ・ソ日の協定違反ということで拿捕されているという場合もあるわけでございます
  109. 林保夫

    ○林(保)委員 こういう違反取り締まり、監督と同時にまたやはり海上の安全という立場があると思います。これは海上保安庁きょう来ておられますから一言で結構ですが、何隻ぐらい北の方へ船を出されて、現在どういう状況にあるか、危ないのか危なくないのか、その辺のところを一言。
  110. 藤原康夫

    ○藤原説明員 海上保安庁はこのサケマス漁業操業期間中、常時三隻の巡視船をこの海域に前進配備いたしております。昨年の海難は三十六隻でございましたけれども、このうち海上保安庁が二十五隻を救助しておるところでございます。  なお、この間に病気になる方などもございますので、そういった人たちのために医療パトロールというのも実施しておる状態でございます
  111. 林保夫

    ○林(保)委員 三十六隻で二十五隻救助したというと、あとはどうしたのでございますか、その点一つだけ。
  112. 藤原康夫

    ○藤原説明員 ただいま申し上げましたのは海上保安庁で救助した隻数でございまして、僚船の救助とか自分で危機を脱して帰ってきたというのもあろうかと思います
  113. 林保夫

    ○林(保)委員 どうかひとつ大事な海域でもございますし、わが大事な資源でもございますので、それ相応の対処をぜひお願い申し上げまして、これをもって終わります。ありがとうございました。
  114. 中山正暉

    中山委員長 野間友一君。
  115. 野間友一

    ○野間委員 最初にお伺いしたいのは、同僚の議員の方からも質問がありましたが、アメリカの二百海里水域内の四月分の漁獲割り当て数量の削減の問題であります。  これは二五%のうち一〇%の削減、数量にいたしますと十一万四千四百九トン、大変なカットになるわけであります。しかもこれはアメリカとの約束には違反することは明らかだと思うので、直ちにこれには厳重に抗議をするという姿勢をとるべきだと思いますが、その点についてどういうお考えを持っておられるのかお聞きしたいと思います
  116. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 ただいまお話しのとおり、四月に予定されておりました第二回の対日割り当ては一カ月近くおくれまして、しかも量的にも予定量の二五%を大幅に下回る一五%、十七万トンということで通告があったわけでございます。  このような事態になりました原因は、向こう側は明確にしておりませんけれども、恐らく従来の交渉の経緯からいたしまして、米国の漁民からの洋上買い付け量につきまして対米協力内容が不満であるということが原因であったと推定をしておる次第でございます。しかしながら、われわれといたしましてはアメリカの水産物の輸出の過半数を輸入しておるわけでありますし、また洋上買い付けにつきましても段階的に拡大を行っているわけでございまして、米国漁業の発展には協力をしているということでございますので、今回の割り当てに際しましてこれらの努力が反映されなかったことはきわめて遺憾であるというふうに考えております。  したがいまして、私どもといたしましてはこのような米国のとった措置に対しまして遺憾の意を表明いたしますと同時に、今後ともあらゆるルートを通じまして洋上買い付けに関するわが方の態度等を米側に十分説明をいたしまして、先ほど玉沢政務次官からも御答弁申し上げましたが、明確な態度でわが方の主張向こうに申しまして、最終的にわが国の漁業操業が安定的に維持されますように最大の努力を払ってまいりたいというふうに思っております
  117. 野間友一

    ○野間委員 洋上買い付けば去年に比べて四倍以上です。一万四千トンから四万トン、しかも途中で変更して六万トン、日本としても相当譲歩しておるわけですね。これが一つ理由だということをいま言われましたが、同時にいま例の経済摩擦、農水産物の輸入枠の拡大あるいは自由化の問題が大きく背景にあるというふうに私は思いますけれども、この点についての認識はいかがですか。
  118. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 先ほども申しましたように、今回の対日割り当て量の削減が洋上買い付け問題等につきましての米側の不満から発したのではないかというふうに推測をいたしておるわけでございますが、この点は先生も御案内のようにブロー法という法律がございまして、対日割り当て量が米国漁業に対する日本協力の度合いというものによって決まってくるということになっておりまして、この問題はアメリカ側としてさような観点から取り上げ、かつこのような処置をとってきたのではないかというふうに考える次第でございます。  しかしながら、他面やはり貿易の問題というものはこれに全く無関係ではないというふうに考えているわけでございまして、特に洋上買い付けの量がふえてまいりますればそれだけ対日輸出量が増してくるわけでございますから、さような観点をも関連があるものとして判断をすべきではないかというふうに考えている次第でございます
  119. 野間友一

    ○野間委員 確かにブロー法は得手勝手なことがあるわけで、いま言われたアメリカ漁業の振興への寄与の程度等はいかようにでも判断、解釈できるわけですね。これによってこんなに大幅にやられてはもうどうにもならぬ。特に、次回は七月ですから早急にこれらの手当てをせぬことには、ぎりぎりになってやられても操業の準備が間に合いませんので、早急にアメリカに対して物を申す、そしてカットされた分をもとに戻させる。いまあらゆるルートを通じてというふうに言われましたけれども、時期的に非常に急ぐと思いますので、そういうルートについて何か具体的に手だてを考えておるとするなら、それについて一言伺いたい。
  120. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 この問題は、お話しのとおり七月の割り当て残り二五%もありますし、当然早急に対応しなければならない問題であるというふうに考えておりまして、あらゆるルートを通じてと申し上げましたが、目下外交ルートを通じてやりますと同時に、担当官の派遣も含めまして、米側と早急に接触してこの問題の解決に当たりたいというふうに考えている次第でございます
  121. 野間友一

    ○野間委員 水産庁からいろいろ資料をもらってびっくりしたのですけれども、たとえばサケマスの輸入の数量を見ましても、五十五年度が三万九千三百四十五トンのうちアメリカから三万三千二十五トン、これが去年になりますと全体の輸入の量が七万一千八百三十六トン、アメリカから六万二百五十トンですから、アメリカからのサケマスの輸入が倍近くふえておるということですね。その上に、いま長官も言われましたが、日米間の水産物の貿易関係はアメリカの水産物の輸出の約四割が日本ということですから、これほどアメリカの水産業の振興に協力している国はないわけですね。だから、仮にブロー法に依拠してもカットされる理由は全くないと言わざるを得ないと私は思うのです。再度その点についての確認を求めたいと思います
  122. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 サケマスの輸入でございますが、御案内のように、ベニを中心にいたしまして五十六年は七万二千トンの輸入をいたしておるわけでございます。これは日本側も相当な需要があったということは事実でございますが、その効果といたしましてアメリカ側としては相当の輸出ができたというのが現実であると思います。また、実際にアメリカの魚介類の輸出量のうちで半分近くは実は日本が買っているわけでございまして、さような意味では、先ほども答弁申し上げたようにわれわれは相当に協力をしているという考えでございますので、さような点につきましてはいままでも十分に話してまいりましたし、今後ともその点は強調いたしまして折衝に当たりたいというふうに考えている次第でございます
  123. 野間友一

    ○野間委員 本題に入りまして、オブザーバー監視船乗船に関してお聞きしたいと思いますが、これは具体的にどういう文書上の表現をされておるのか。これは何か作業議事録にあるわけですね。公海上で政府監視船によその国の者をオブザーバーとして乗せるというようなケースは、一つは先ほどからも話がありましたアメリカの二百海里内のオブザーバーの乗船の問題と、このほかにはソ連との母船式のところのオブザーバーの乗船、これだけだと思うのですね。考えてみれば、これは主権の侵害かどうかにかかわる大変重要な問題に発展する可能性があると思うのですけれども、これについていかがですか。
  124. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 公海上で政府監視船に他国のオブザーバーを乗船させているケースとしましては、日本と韓国との間の漁業協定合意議事録第三項に基づく乗船を認めているケースがございます
  125. 野間友一

    ○野間委員 答えが大変簡単なので順次聞きますが、これについて違反の有無が先ほどからも論議されたわけです。私は、もし違反があったとしても単に取り締まり監視を強化するということだけで事が済むのかどうか、ここに大きな問題があるのではないかというふうに考えるわけです。  農水省の統計情報部がまとめた五十五年度漁業経済調査報告を見ましても、漁業界は構造不況に陥っているということがさまざまな数字から読み取れるわけですね。魚価の低迷、一方では燃費の高騰あるいは原資材のアップということで大変な状態にあることは明らかだと思うのです。したがって、違反があったとしても、これについて単に監督、監視の強化ということだけでなしに、やはり漁業、特に中小漁業をどう振興させていくのかということを除いては抜本的な解決にはならないというふうに私は思うわけです。時間がありませんけれども、私はそう思いますが、これは漁民要求でもありますけれども、そういう点についての対策を特に何か講じておるのか、あるいはこれから講じようとするのか、お伺いしたいと思います
  126. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 幾つかの点について御答弁申し上げたいと思います。  まず第一に、日本監視船上にオブザーバーを乗せるということにつきましては、かつて先例もございますし、また今回の作業議事録の中で非常に明確に規定をいたしておりまして、「日本側漁業監視船上における取り締まり権及び管理の権利は日本側のみに属する。ソ連側のオブザーバーはいかなる方法によっても日本側漁業監視船の航行及び漁業監督官の活動等につき日本側取り締まり権及び管理の権利の行使の支障となるような行為は行わない。」ということをきわめて明確にしております。したがいまして、われわれが取り締まり権を行使するに当たりまして、そのような支障になるようなことは絶対あり得ないというふうに考えておりますので、わが方は不当な譲歩をしたわけではないというふうに考えております。  第二点でございますが、実際におきまして日本漁業、特に二百海里の規制あるいは燃油の高騰等によりましてその経営が非常にむずかしくなっていることは御案内のとおりでございます。ただ申し上げておきたいことは、今回のオブザーバー乗船の対象になりました中型流し網漁業でございますが、この漁業はマグロあるいはイカ釣り漁業あるいはトロール漁業と比較いたしますとかなり経営状態はいいという状況でございます。もちろん、個別につきましては悪いものもあるかもしれませんが、総体といたしますとほかよりも悪くはないというのが現状でございます。  そこで、われわれといたしましては、もちろんこのような全般的な漁業の非常に深刻な事態に対しましては、御案内のように生産構造の再編整備ということを含みまして、負債整理対策も含みました予算対策も講じておりますので、これらを全部にらみながら今後の総合的な対策を講じてまいりたいというふうに考えておる次第でございます
  127. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので、次に進みます。  いわゆる四千七百万ルーブルの問題です。これは魚資源の再生産のための投資ということのようですが、昨年も同じ額ですね。この四千七百万のいろいろな積算根拠、内訳については去年私が聞いたわけですが、それは時間の関係で省くとして、これは何か何カ年計画かでそういうものを立てた上での単年度の金額がこうなるのかということが一つ。  それから、そうだとするならば、これは全体の事業がうまくいっておるのかどうか。進捗状況ですね。特に日本の場合に、実際にその点検と申しますか、検討、調査することが担保されていないということのようで、いま現物を支給しているわけですが、だからこれはやはりフォローする必要があるのではないかと思うのですが、その点について。  それからもう一つ、これは別の質問ですが、先ほども質問がありましたが、貝殻島の昆布漁の問題です。いよいよシーズンがやってくるわけです。昨年ああいうふうにして、おくればせながら成功したわけでありますが、これについても政府としても直接の当事者ではありませんけれども、これはぜひことしも実現されるように努力をされたいと思いますが、見通し等も含めてこの点についてのお答えをいただきたいと思います
  128. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 お答えをいたします。  今回の交渉におきましても、ソ側はサケマスの再生産のためにソ側が投資した経費につきまして日ソ両国の合計漁獲量に占める日本のシェアによりまして日本側で負担するように要求をしてきたことは事実でございます。その際の説明でございますが、ソ側は昨年の投下経費が四千八百五十万ルーブル、本年は五千三百万ルーブルであるということを申しました。ただ、今回の交渉協力費の算定としましては、従来どおり四千七百万ルーブルにするということを申した次第でございます。  なお、日本側より具体的な資料の提示を求めましたが、ソ側は細かくは申しませんが、サケマスふ化場維持、産卵場における取り締まり等保存、保護、産卵河川の土地改良、産卵河川の汚染、破壊防止といったような各項目につきまして、その予定投下経費を明らかにしてきたわけでございます。  ただ、先生おっしゃいますように、わが方が、これがどの程度まで現実に費消されているか、あるいはその進捗状況はどうなっているかということは、何分にもああいう国でございますので、これを現実に調査する手段は現在のところはないというのが状況でございます
  129. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 貝殻島の昆布交渉につきましては、昨年取り決められました民間協定に基づいて、双方の代表者が本年五月十五日までに会合することになっておりますので、当事者である北海道水産会は近くソ連側と交渉を行う考えであるというふうに承知しております。したがって、政府としましても、本件貝殻島をめぐる周辺における昆布漁が、引き続き本年も継続されることを希望している次第でございます
  130. 野間友一

    ○野間委員 関連して聞きますが、第二貝殻島、昆布の魚礁をつくっておるわけですが、これは成功しておるかどうか。
  131. 松浦昭

    ○松浦(昭)政府委員 昆布漁の再開がまだ見通しがつかなかった時点におきまして、政府も援助いたしまして、第二貝殻島の魚礁をつくったわけでございますが、一応成功はいたしまして、昆布はとれるようになったわけでございます。しかしながら、どうしても品質その他の面から申しまして、やはり天然の貝殻島昆布には及ばないという実情でございまして、さような意味で貝殻島の昆布交渉妥結し、漁獲が再開いたしましたことは、非常に漁民は喜んでいるという実情でございます
  132. 野間友一

    ○野間委員 それでは最後に外務大臣にお聞きしたいのですが、冒頭に質問申し上げたアメリカ二百海里内の漁獲割り当て等についての一方的な削減、これは水産庁の方からいろいろと見解やあるいはその対応についての話がありましたけれども、これはやはり外務省が外交ルートを通じてということになると思うのですけれども、四月一日がこんなにおくれてしかも削減された。同時に七月ということを考えた場合に、これは早急に予定どおり割り当て量を確保するというための具体的な手だてが私は必要だと思うのですけれども、それについての早急の取り組みを進めるべきであるという立場から、外務大臣の所見をお伺いしたいと思います
  133. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 本日この委員会で、日米漁業協定については種々御意見が出、また厳しい御批判があったわけでございます。私も伝統あるこの二百海里内の日本漁業というものが現在のような状況にあるということはきわめて残念なことでございまして、皆様の御意見、また野間委員の御質問の御趣旨を踏まえまして、適切にまた時期を失せずに交渉をいたす考えでございます
  134. 野間友一

    ○野間委員 終わります
  135. 中山正暉

    中山委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  136. 中山正暉

    中山委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  137. 中山正暉

    中山委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  139. 中山正暉

    中山委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  140. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します外務大臣櫻内義雄君。
  141. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 四月十四日の外務委員会における井上普方議員のキューバの国民総生産に関する御質問に対して、外務省説明員より行った答弁の中に事実と違う説明がありましたことは遺憾であり、おわび申し上げます。  以後このようなことがないよう厳しく注意しましたので、御了承願います
  142. 中山正暉

    中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します井上普方君。
  143. 井上普方

    井上(普)委員 時間がございませんので早速お伺いするのでありますが、日米の農産物作業部会が、日米貿易小委員会の実務担当者会議が行われたようでありますが、その際、アメリカは農産物の二十二品目全部完全自由化しろ、いやそれはできないということを日本側が申すと、二十二条の提訴をガットにするという話がアメリカから出てまいりました。そして、よろしい受けて立ちましょうという立場をとったところが、アメリカから五月上旬に行われる自由化品目の中に農産物を入れてくれというような話があるやに新聞で承っておるのでありますが、事実はどうなんですか、ひとつお伺いしたいのです。
  144. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  基本的にはただいま井上委員のおっしゃったとおりでございます
  145. 井上普方

    井上(普)委員 そうしますと、五月上旬の緊急の自由化の問題には日本は農産物は入れぬのですね、どうなんです。
  146. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答えいたします。  その点を含めまして、現在検討中でございます
  147. 井上普方

    井上(普)委員 検討中というのは私はおかしいと思う。アメリカがガットに提訴するんだと言ってくるから、よろしゅうございます、受けて立ちましょうと言いますと、今度は向こうさんがそれじゃなしにひとつ基本的に入れてくれ、それをまた日本は受け入れましょうというのは一体どういうことなんですか。     〔委員長退席稲垣委員長代理着席
  148. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答えいたします。  私の先ほどの答弁が若干舌足らずであったかと思います。検討中と申し上げましたが、実際検討中でございます。ただ検討するに当たりましては、アメリカのこの問題に対する考え方が、日本側からいたしますと最初受けておりました印象と最近照会しました結果と比べまして必ずしもはっきりしない点があるわけでございまして、その辺についてもう少しはっきりした考えを持つ必要があるわけでございまして、その点を含めまして検討中ということでございます。どうも失礼いたしました。
  149. 井上普方

    井上(普)委員 おかしいじゃないですか。アメリカはあくまでもガットに提訴するんだということで物別れになったんでしょう。四月十三日に会議は決裂したんでしょう。決裂した上で、後になって今度はひとつ自由化の中に入れてくれと言ってくる。日本アメリカの属国じゃありませんよ。アメリカの言うとおり何もかも聞かなければならないということが一体どこにあるのです。しかも正式の場でガットに提訴するからというので交渉は決裂したはずです。日本は、農林省当局はガットでやりましょうということを言明しておる。にもかかわらず、アメリカは相手のぐあいが悪いから、日本は何でも言うことを聞くから、この際ひとつ五月上旬に日本の開放体制の中に農産物を入れてくれなんという、余りにも虫がよ過ぎるじゃありませんか。どうです、大臣、この日本の外交姿勢はこれで正しいとお考えになりますか。これは政治的判断で外務大臣のお考え方を承りたいのです。
  150. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 作業部会はそれぞれの立場を言い合って、そして物別れになったと承知をしておるのであります。その物別れになったということの中に、ある者はガットに提訴か、こういう見通しを持ったことも事実だと思うのでありますが、この作業部会が相互の見解を述べ合うということは作業部会の性格上当然だと思うのでありますが、あらかじめこの作業部会は何かを、結論を出すというような取り運びはしておらなかったと思うのであります。そこで物別れの結果が、日本側はもうこれはガットだ、こういうふうに認識したという事実があるかと思いますが、米側はその後、この作業部会にお互いの言い分を言っておるのだが、サミット前に何らかの措置をとる、こういうことであればある部分は考えてもらえるものではないか。これは世上何か六項目とかどうとかいうふうに伝わっておりますが、ところが日本側の、一応七日に経済対策閣僚会議を設けて、そしてそこで検討した結果を何か結論にでもしようかというそういう手順はどうも作業状況から見て無理だ、こういうことになってこれを延期しておる、こういう段階でございまして、いま御質問をいただいたようにガットへ持っていくんだ、ああ持っていけ、こういうことであったかというとそういうはっきりしたような状況のものではなかったと私は承知をしておるわけであります
  151. 井上普方

    井上(普)委員 責任者の大臣が言われるのだから、あるいはそれも本当だとすると、事務当局との間の、いまの経済局の次長のお話とは大分違う。私が先ほど一番最初に念を押したのは、アメリカがガットに提訴するんだ、こう言ってきているはずなんだ、新聞にはそう書いてあるし、それを確かめたら、そのとおりで、大体大筋において間違いないという話。それじゃ日本も受けて立ちましょうということになると、向こうがあわてて今度は閣僚会議に農産物を入れてくれ、首尾一貫しないこのアメリカの態度。私どもはこれは許すべからざることだと思う。少なくとも作業部会にいたしましてもこれは外交ルートに乗った正式な会議だ。そこで向こうさんがガットに提訴する。しかし、ガットに提訴するといってもアメリカだって農産物の残存品目は十三品目も持っておって、しかも日本要求しておる牛肉にしてもあるいは乳製品にしても向こうさんこそいまオランダからガットに提訴せられているくらい輸入制限をやっておるところだ。ところが日本に対してだけはガットに提訴するぞという恐喝を、おどしをともかくかけてきているとしか私には受けとめられない。アメリカ日本に対する態度はここ三、四年前のストラウスを初めといたしまして、あらゆる交渉が行き詰まると常に恐喝をもって日本に臨むというような態度は許しがたいことだと私は思う。私はアメリカに対して反米感情をここで言うのじゃないけれども、余りにもアメリカの外交それ自体日本に対して日本を属国視しておるのじゃなかろうかという感を深くするのであります。したがいまして、この農産物の問題についてはあくまでもどういう立場で日本はやるのか、毅然とした態度をとってほしい。アメリカがガットに提訴するのであれば——アメリカだってオランダから提訴せられている、しかも残存輸入品目はアメリカは十三品目でしたか、ある。こういうような状況の中でなぜ日本だけが、アメリカがガットに提訴すると言えば、よろしいと言えば今度はひとつこっちの方でやろうじゃないか、余りにも日本の自主外交というのはなくなってしまっておる、このように感じますのでお伺いする次第なんです。今度どうされるのですか。
  152. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほど御説明申し上げたように、作業部会の性格が、意見を述べ合う、協議をするということで、ここで外交交渉して何か結論を出す、そういう性格でない。そもそもが日米貿易小委員会の折に、いろいろ問題点を出したが、ひとつ残存制限品目については一遍作業部会でもやろう、その作業部会をやろうということについては、なぜ日本側で農産物で言えば二十二品目、工業品目で五品目残っておるか、そういうようなことを米側にもよく説明する、そういう機会を持ってもいい、米側は米側で何を言うかというようなのが作業部会の持たれたゆえんだと思うのです。ただ、井上委員のおっしゃっていることは、私どもはやはり日本の農村、漁村のことを考えての立場がありますから、余り大っぴらに言うことははばかってはおるのですが、しかしこれは冷静に考えなければいけないことは、残存制限品目そのことはガット上どうか、こういうことになりますね、ガット上からいえば。本当はそういうものが残っておるべきでない、こういうことになりますから……。そうすると、これをストレートに二十二条なのか二十三条なのか、それはガットへ持ち込むという声が上がったときにどっちでいくのかも判断ができないわけでございますが、要するに提訴ですね、提訴をされるということで、それじゃそのことによってガットにおいてごうごうという結論を出される。それはガットへ持ち込んでもらえばある時間的な経緯は考えられますけれども、なかなかそこのところは、こうやって外交折衝の責任の立場にありますと、簡単に結論を出して、ようしガットでやろう、そういう意気込みはいいが、果たしてその場合にどうなるかということも読まなければならぬところがあると思うのです。そこで、七日の経済対策閣僚会議で何か結論を出そうというのを先に延ばしておりますし、また、この範囲のことは検討ができるかどうかというようなことを言ってきておりますから、これはやはりまともに考えながらどう結論を持っていくか、そういう必要性はあると思うのです。ですから、客観的にごらん願うと何か大変弱腰のようなあれが見えるかもしれませんが、そうでなくて、やはりこれはじっくり取り組んでいく方がいい、しかしいま、向こうが言ったものをどうするということで、先ほどから担当が申し上げておるように、それじゃよく検討してみよう、こういう段階にあるわけでございます
  153. 井上普方

    井上(普)委員 ガットの問題につきましても、日本ばかりにあるものじゃない。ECにいたしましても域内の農業保護のために可変課徴金というともかくまさにガットに最も悪質なる違反事件をずっと起こしておるのです。しかもアメリカ日本に対して、貿易小委員会においてもっと話し合おうじゃないかと言ったら向こうの方が打ち切ったのだ。一たん打ち切っておきながら、今度は七日の残存輸入品目の中に農産物を入れてくれといって泣きついてきておる。泣きついてくるというよりはむしろそれを声高に要求してきている。われわれは日本の農業を守るという立場からするならば、特にオレンジにいたしましても牛肉にいたしましても完全自由化をすれば一体どうなるのか、非常な不安をいま農民は持っている。にもかかわらず、それに対するアメリカ要求に対しましてあっち向き、こっち向きするようなことでは、日本農民に対して顔向けできないような外交を行っているのではないかと私は感じられてならないのであります。時間がございませんのでこの程度にいたしますが、毅然とした態度を持って日本農業保護のために御努力いただきたいことを強く要求いたしておきたいと思います。  以上、終わります
  154. 稲垣実男

  155. 土井たか子

    ○土井委員 まず、外務大臣にお尋ねをいたしますが、対外経済協力の中でバイに充てられる配分、マルチに充てられる配分、これは割合からいうとどういうことに相なりますか。まず、それについてお聞かせをいただきます
  156. 柳健一

    ○柳政府委員 お答え申し上げます。  過去のわが国の援助のバイとマルチの実績は、バイが約七割でございまして、マルチが三割になっております。  ただ、一九八〇年だけは、たまたま国際開発金融機関に対する拠出金、出資金が非常に多うございましたので六対四になっておりますが、大体七対三、これは国際的にも大体七対三、こういうのが過去の実績でございます
  157. 土井たか子

    ○土井委員 いまは事務当局から過去の実績についてお聞かせいただいたのですが、外務大臣、いかがですか、外務大臣としては、そのことをことしも踏襲して考えるというお立場でしょうね。  「五十七年度外務省予算重点事項」というのをちゃんといただいておりますが、この中でも、マルチについては援助の拡充というのを力を込めて外務省としてはお書きになっていらっしゃいます。いま、大体七対三という事務当局からの過去の経緯についての御説明ですが、いかがですか、外務大臣、ことしもそれを踏襲してお考えになりますね。——もういいですよ、大臣に聞いているのです。
  158. 柳健一

    ○柳政府委員 ちょっと一言だけ。  五十七年度の予算のODA事業予算につきましては、国際開発金融機関の協議の調わない部分がございましたのでマルチが減っておりまして、大体いまは四分の一ぐらいになっております
  159. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外務省内で、五十七年度をどうするかということについては、過去の実績にのっとって七対三を一応の目標にしております
  160. 土井たか子

    ○土井委員 先日、先月の十九日でしたと思うのですが、当委員会で対韓援助の問題について質問をいたしました節、ちょうどその日に、外務省としては中間回答とおっしゃる中身を韓国に示されて、それに対して韓国側は拒否してこられたといういきさつがございますね。その節、日本側に対して韓国側が求められているのは、政治的な決断、政治的配慮ということをしきりに求められ、相も変わらず総額六十億ドルという線は倒れていない。日本側が政治的決断を下して総額を出すというのがわれわれの認識だというふうなことで、韓国側はこの回答に対しての拒否ということを日本に持ってきているわけですけれども、いかがなんですか、外務大臣、これは総枠で日本が答えるなんということは、日本の立場上許せるはずはないと思うのです。このことに対しては、当委員会でも質疑の中身として口酸っぱく何回も出たわけですよ。大臣からもそういう趣旨のことはいままで御答弁をいただいているのですが、きっぱりとした御答弁ではもう一つない。総枠では日本としては断じてこういう問題を考えることはできないということだと思いますが、どうでございますか。
  161. 木内昭胤

    ○木内政府委員 三月十九日に韓国側に示したわが方の考え方に対しまして、韓国側はそれを拒否するということでは決してございませんで、実質的には非常な難色を示したというふうに御理解いただいた方がいいんじゃないかと思います。  その内容としましては、私どもが商品借款はむずかしいと申したのに対しまして、昨今の国際収支の著しい困難さにかんがみて、韓国側に対しても商品借款を考慮してほしいということを、それからなるべく条件のいい、すなわち基金による借款の割合をできるだけ大きなものにしてほしいということを私どもに強く要望してまいったわけでございます。  他方、土井委員の御指摘の総枠提示の問題でございますが、私どもとしましては、たびたび御答弁申し上げておりますとおり、各年度につきましての合意を図るわけでございまして、総枠について約束事をするということは全く考えておりません。
  162. 土井たか子

    ○土井委員 木内さん、あなた、いいですよ。  大臣、これはもうここでも何遍か質問の中で言ってまいりましたけれども、韓国側は、事業ごとの内容審査よりも日本側協力、総額の提示が先だと主張して譲らないんじゃないですか。しかし日本側としては、いまの局長答弁でも言われるとおり、総額では言えないんだ、総額では考えられないんだ、総額での経済援助のあり方なんというのは日本では許されないんだ、こういう立場なんですね。総額を提示するなどということは、大臣、よもやお考えになっていらっしゃらないと思いますけれども、そのとおりでしょうね。韓国側は、総額を提示してもらいたいと、そう言ってきているんでしょう。いろいろプロジェクトごとの内容を吟味するよりもそれが先だ、こう迫っているのでしょう。いかがですか。
  163. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そもそもの韓国側の要望は、三十五億ドルの経済借款、それから二十五億ドルの商品借款、三十五億ドルはどうか、それは十一のプロジェクト、こう言っておるのですね。本年から始まる五カ年計画の中で、民生安定、経済発展の上に寄与する十一のプロジェクトを提示している、こういうことで、日本は、日本の経済協力の方針がございます、また積み上げ方式です、このことははっきり言ってあるわけでございますから、よく総額が幾らと出てくることについては、私もどういうことかな、こういうことで見ておりますと、十一のプロジェクトを、いま答弁がありましたように輸銀、基金に振り分けて言っておる。そうして五年計画だというようなことになると、それは相手方なり客観的に見ると、大体こんな見当になるという推定はあるかもしれません。しかし、日本としては単年度主義ですから、土井委員のおっしゃるとおり、日本が総枠はこうだああだ、こう言うことはないのであります
  164. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、いま総枠について、十五億ドルなどというふうな数字がしきりにささやかれたり、現に報道で公にされたりしているのですが、そんなことは言っていないと、大臣、ここでもう一度断言がおできになりますか、どうなんですか。
  165. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは私は、先方の要求からODAがどうだということではなく、先ほどお尋ねの七と三で五年倍増の協力金をどうするかと言ってくると、おおよそどの見当が出てくるかというようなことから、ときに十億ドルと言いあるいは十三億ドルとかいろいろなことが出ると思うのでありますが、それは先ほどから申し上げるとおりに単年度でございますから、今回韓国に協力するについてそれじゃ総額幾ら、それも出てこないと思います
  166. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、どこまでいっても大臣としては総枠で物を言うわけでもなければ、総枠の計算でいろいろとこのことに対して検討しているわけではないというふうにいまお答えになったわけですね。そうすると、いまのお答えからすると、当面いま韓国に対して日本考えております借款の中身は、五十七年度予算に占める中でどうするか、どういう内訳になるか、こういうことを種々検討されているということに相なりますが、それはそのとおりですね。
  167. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 五十七年度幾ら幾ら、それはおっしゃるとおりだと思います。  それからなお私がよくつけ加えて申し上げておるのは、五十六年度分がそのままほってあるわけですね。この五十六年分を、慣例によれば年度を越しておりましても五十六年度分の該当が幾らというものは、今度韓国との間で交換公文でも交わすときにはそれは表へ出てくると思います
  168. 土井たか子

    ○土井委員 交換公文で問題にするのはあくまで五十七年度予算の中でどのように借款を考えるかという問題なのですね。しかし、五十六年で残っている分があるから、それは交換公文の中で考える中に入ってくるかもしれぬとおっしゃるのはどういうことですか。それは全く別枠の話だと思うのですが、いま御検討になっているのは五十六年度の分も含めていま考えようということでお考えになっていらっしゃるわけですか。もう決まった話なのでしょう、五十六年度の話は。いまこれから決めようということで非常に難儀をなさっていらっしゃるのは五十七年度の問題じゃないですか、どうです。
  169. 柳健一

    ○柳政府委員 単年度で交換公文を結んでおりますのは、五十六年度は五十六年度においてそのときの韓国側の需要を判断してプレッジするわけでございますね。ただ、実際に支出されてきますのは、必ずしも五十六年度プレッジした全額がその年に全部出るわけではございませんで、プロジェクトの場合は特にそうでございますね、今後数年間にわたって出ていく、こういうことになりますから、五十六年度分のプレッジをまだしてない、そういう意味でございます
  170. 土井たか子

    ○土井委員 そんなことをおっしゃるならこれは韓国に限らない。どこの国でも未使用分というものが大変あるのです。五十七年一月十五日現在を見ると、マレーシアなんて五五%未使用分ですよ。エジプト四九%、タイ四六%というぐあいに未使用分がたくさん残っている。韓国だけに対して、どうしてそのことに対して考えなければならないのですか。特に配慮しなければならないのですか。この問題は後でまた出しましょう。しかし、いま問題になっているのは五十七年度予算の中での話でしょう。五十六年度の未使用分を特に今回配慮しようという特別の考えをお持ちになったのですか、どうなのです。
  171. 柳健一

    ○柳政府委員 先ほど申し上げましたように五十六年度においてそのときの韓国の需要、必要性を判断して交換公文でプレッジするわけでございます。それから五十七年度はまた五十七年度でその年において考えて判断するわけです。実際に支出されていくのは数年かかっていくわけでございます。  それから、未使用分というお話でございますが、たとえば恐らくことしの三月の末でいわゆるパイプラインと称されるもの、これは実際にプレッジしたものとそれから支出されたものの差でございますね、まだ支出されてないもの、これがございますけれども、これはほかの世銀とかその他の国際機関全部で比較いたしましても、たとえばことしの三月三十一日から今後一年間にどの程度支出されるかという比率は、日本の場合はたしか三〇%でございましたか、かなり高うございまして、決してそれが未使用というものではなくてこれは当然残っているパイプライン、こういうことになるわけでございます。五十七年度において今度プレッジするものはその年において判断された必要なもの、これを今後数年間にわたって支出していく、こういうことになるわけでございます
  172. 土井たか子

    ○土井委員 重ねてもう一度外務大臣にお尋ねします。  いま日韓間で問題になっている借款、日本が韓国に貸すわけでありますが、このことについて交換公文の中身になるのはあくまで五十七年度予算に占める中でどうするかという問題なんですよね。それが問題にされてお互い妥結すれば、これが交換公文として取り交わされる、これが当面の問題だと思いますが、大臣どうでしょう、そのとおりですね。
  173. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのとおりでございます
  174. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、これは昨年の九月二日に当外務委員会で園田前外務大臣の御答弁でこういう部分があるのです。  過去にやった五年間協力向こう五カ年間で倍増するという方針を立てられておるわけで、これを仮に国会でそのまま承認いただいた場合に、総額からすれば二百十四億ドルになるわけであります。   そうすると、その二百十四億ドルというものは、国際機関だとかあるいは国際的な難民の問題とか、いろいろ協力の問題とか出す費用がありまして、七割が二国間協力に使えるわけであります。その七割のうちの七割がアジアに振り向けられる枠であります。そうしますと、仮に私がいま考えている予算を皆さん方が承認された場合に、一年間に何とかやりくりのできるお金は最大限二十一億ドルでございます。つまり、最大限この二十一億ドルの中の七割のさらにその七割がアジアに振り向けられるわけだから、その枠の中で韓国に対する借款の問題は考えていくということが、これは数字の上でいくと大前提になる、枠になるとはっきりおっしゃっているわけです。     〔稲垣委員長代理退席委員長着席〕  そこで、お尋ねをいたしますけれども、ことしのODAの予算の中で二国間に充てられているのは七割でしょうね、園田前外務大臣がおっしゃったとおり。アジア地域に割り当てられているのは、そのさらに七割なんでしょうね。これいかがですか。そして数字もおっしゃっていただきたいと思います
  175. 柳健一

    ○柳政府委員 過去の実績は御指摘のとおりでございます。  それから、本年度の五十七年度の予算がアジアに的確に七割になるかどうかということは現段階ではまだ何とも申し上げることはできません。ただ、過去の実績その他を考えながら実際に判断してまいりますから、おおよそそういうことになるのではないかということは考えられると思います。     〔委員長退席稲垣委員長代理着席
  176. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、一般会計分で大体日本円でどれくらいになるかというのを過去の実績分から推してひとつ示してくださいよ。アジア地域に充てられる費用、そうしてその額の中で北東アジア分は一体どれくらいと考えているか、一回出していただきたいと思います
  177. 柳健一

    ○柳政府委員 その数字は現段階においては申し上げられないと思います。いいかげんなことを申し上げますと、かえって不正確なことになると思います。  それから、北東アジア分というのは過去の実績では全部韓国だけでございましたですね。ところが統計にはまだ出てきておりませんけれども、この一、二年から中国も入っておりますから、北東アジア分というのも移動していくわけでございます、全体の中のシェアが。ですからその数をいまはっきり申し上げることはちょっとできないと思います
  178. 土井たか子

    ○土井委員 これはODAの事業予算として一般会計分というのはちゃんと計上されて額が出ているのでしょう。それからするといままでの実績で、いまのお答えにおっしゃいましたとおり、その約七〇%を二国間、さらにその七〇%をアジア地域ということで考えていくと、数字はおのずからそういう結果が出てくるのじゃないですか。それすら言えないのですか。少々の差が出るかもしれないけれども、それは少々であって大変な差が出るはずはない。言えるでしょう、いかがですか。
  179. 柳健一

    ○柳政府委員 先ほど申し上げましたように、昭和五十七年度につきましてはバイとマルチの比率が大体七五対二五ということになっております。それから、その七五%の中身は円借款だけではなくて、技術協力もあれば無償資金協力もあるということで、これを今後各国に振り分けていくわけでございますから、ちょっと事前に、年度当初にアジア何割と初めから決めてかかるわけではございませんで、その国の要請を受けながら、そのプロジェクトそのものを判断しながら、ケース・バイ・ケースで判断して決めていくということになるわけでございますから、それは無償も技術協力も円借款も全部七割、また七五%と決めて機械的に計算すればできると思いますけれども、その数字自体は申し上げても余り意味はないのじゃないかと思ってそういうふうに申し上げたわけでございます
  180. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、これは外務省がお出しになった「五十七年度外務省予算重点事項」というのを見ていると、すでに「国際機関を通じる援助の拡充」、つまりこれはマルチに当たるわけでございますが、それに対しては非常にたくさんの額を計上して、いまおっしゃったようなパーセンテージになりやしませんよ。そうして、それをむしろ重点に置いてやりたいというのが先ほどの外務大臣の御答弁でもあるのです。数字を聞き始めると途端に返答が変わってくるというのは、一体どういうわけですか。
  181. 柳健一

    ○柳政府委員 先ほどちょっと触れましたけれども、国際開発金融機関に対する拠出金、出資金に関する国際間の協議がなかなか調わなかったこともございまして、昭和五十七年度の私どものODAの事業予算は、国際機関への出資、拠出は先生御案内のとおり二千二百九十七億円になっております。これはODA事業予算全体の九千四百十八億円で割りますと約四分の一になってしまうわけでございます。ただ、こういうことになるのは私どもとしては望ましくないと判断いたしまして、ぜひとも国際開発金融機関に対する出資金、拠出金などももっと各国に呼びかけてふやしていこう、重点的にやっていこう、そういう意味で重点事項と掲げておるわけでございますけれども、実際の額はいま申し上げましたとおり、恐らく先生のお手元にもあると思いますが、そういう数字になっておるわけでございます
  182. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、昨年の九月二日に園田前外務大臣がおっしゃったような数字というのは、これはいま全部御破算になすっているのですか。先ほど申し上げたとおり二百十四億ドルというのが国際機関に使える協力の費用の中身だ、その七割が二国間協力だ、その七割がアジアに向けられる枠である、そのアジアに向けられる枠の中でさらに北東アジアについてはその中で考えていかなければならないから、実に限られた枠の中で対韓借款の問題は考えざるを得ないという大原則を、ここに示されているこの数字全部御破算なんですか、一体何なんですか。
  183. 柳健一

    ○柳政府委員 私が申し上げていることは、昨年園田前外務大臣の言われたことを別に御破算にしているわけでも何でもございませんで、園田前外務大臣のおっしゃいましたのはあくまでも今後五年間の実績でございます。実績についておっしゃったことでございまして、そのとおりだと思います。他方、私が本年度のことについて申し上げましたのはこれは事業予算でございます。これがどういうふうに実績となって反映されていくかということは、もちろん予算の基礎の上に立って実績ができるわけでございますけれども、実績と予算というのは多少は違ってくるわけでございます
  184. 土井たか子

    ○土井委員 実績と予算というのは違ってくるとおっしゃるのは、援助というのは積み上げ方式でいくから過去の実績というものの上に立って考えていくというふうに理解していいですか、そういうことですか。
  185. 柳健一

    ○柳政府委員 実績と予算が違うと申し上げましたのは、予算で予定しておっても時としてはその予算で計画したとおりその年度の中で支出されないこともあるということでもって違いが生じ得る、こういうことでございます
  186. 土井たか子

    ○土井委員 それはやってみなければわからない問題をいま答えていらっしゃるのですよ。五十七年度予算の枠の中でどう考えるかというのはいま考えての話なんですよ。どうなるか、これから先の話なんです。いま、やってみなければわからないような御答弁をされていますが、そんなことを私は聞いているのではない。  さあそこで外務大臣、先ほどの前外務大臣の御答弁を受けて、ODA事業予算一般会計分、五十七年度の分を二国間を七〇%その中で考え、さらにアジア地域を七〇%考え、その中で北東アジアの中で韓国と中国を考えていくということになると、韓国の場合は、五十七年度年度でこの中身は日本円にいたしまして大体三百八億円、ドルに直しまして一億四千五百万ドルになるわけであります。ODA全体の枠をむちゃくちゃに崩すのなら別ですよ。しかし大臣は先ほど、過去の経緯から考えてマルチとバイの割合というものは大事にしていきたいということもおっしゃっていますから、それからすると、五十七年度の単年度考えて、まずはこの一億四千五百万ドルという枠を五十七年度は対韓借款に対しては超えてはならないということが一応の単純指数として出てくるわけでありますが、これはそのように考えてよろしゅうございますね。大臣いかがでございますか。
  187. 柳健一

    ○柳政府委員 ただいまの御指摘の数字は一般会計だけではなくて財投のお金も全部含めてのお話ではございませんでしょうか、と思います
  188. 土井たか子

    ○土井委員 一般会計分に充てられている額を計算してまいりました。——いろいろ数字のことを言うとああでもないこうでもないというごまかし答弁みたいなことをおやりになりますが、これは外務大臣、いかがですか、こういう額が一応試算してみると出てくるのですが。
  189. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それは私、逆に資料としてちょうだいしてよく調べてみないと、いまここに手元に数字がございませんが、現在まで私が承知しておる範囲では、昨年の就任後に六十億ドル頼む、その中の三十五億ドルの中を十一のプロジェクトにして、そして五十七年度にはどうなるかという一応の見当とはちょっと違う数字でございますから、それは一遍よく計算のあれをちょうだいして検討をさせていただかなければならないと思います
  190. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁では、どうも日本のいろいろ予算の組み立て方とか借款に対してのあり方というものに対しての原則からお考えになっているのじゃないので、六十億ドル頼むと言われて、そのうちの三十五億ドル何とかならないかと言われて、十一のプロジェクトの中でそれをどう考えるかというふうな計算をやってみたらそうならない、こうおっしゃるのですが、どうも外務大臣、語るに落ちたりという感じがするのですね。そうすると、総枠から出発して計算をなすってるのですか。いかがですか。
  191. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それはおっしゃっていることとは私は全然違うと思うのです。十一のプロジェクトでおおよそこれが妥当である、これは実務者会議でやったのですから、しかもその中を、すでに何遍も申し上げておるように輸銀と基金とはどうだ、そうしてその検討を中間回答としてやっておるわけですね。しかし、輸銀の方が金利が高いのですから、それでは困る、こう言ってきて、もっと金利の安いものをできるだけというようなところでいま足踏みをしておるわけで、それで、私は何遍も申し上げておるように、ちゃんと積み上げ方式でそういう計算をしてやっておるわけで、何も向こうが要望したからその要望に何かとらわれてやっておるというのでは全然ありません。
  192. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣のおっしゃることはよくわかるようなわからないような御説明なんですが、過去の実績ということも先ほど来おっしゃっていますから援助実績を見ると、五十一年から五十五年までの数字はもう出ております。円借款の有償無償、出ておりますが、それから計算をしてまいりまして、そして過去の五十五年までの五カ年間を倍増して考えましても、単年度はドルにして二億ドル、日本円は、一ドル二百円で計算をいたしまして四百億円を上回ることはできない数字が出てくるのですが、これはやはり過去の実績から考えていくと、対韓援助については五十七年度年度考える場合にこれが大切な一つの目安と思いますが、この額を超えることはないでしょうね。やはり幾らプロジェクトについて必要だ、必要だと言われても、援助に対するいろんな枠、日本にとっては大事な原則、これをねじ曲げてまでやることはできない、これはだれしも考える鉄則でございます。したがいまして、これを上回ることは許されないと思いますが、いかがですか。
  193. 柳健一

    ○柳政府委員 先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますけれども、たとえば五十七年度におきまして韓国に対してプレッジする額というのは、五十七年度に全額が支出されるわけではございませんで、今後恐らく五年間くらいにわたって支出されていくわけでございます。五十七年度に実際に支出される海外経済協力基金の一般会計とそれから財政投融資のお金とを一緒にした資金がそこにございますね。そこから出ていく金というものは、五十七年度においては、過去の実績から類推して考えますと、まだごく一部でございます。ですから、五十七年度において交換公文を結んでそこでプレッジを行うということは、五十七会計年度中に全部支出されるということではないということが一つ。  それから、先ほどおっしゃいました三百八億円でございますか、これは全部のことでございますから、日本の援助の予算は半分弱が一般会計でございますが、残りは財投のお金であったり国債であったりするわけでございます。ですから、たとえば韓国の分が仮に三百だとしても、それは一般会計からだけ出ていくわけじゃなくて財投のお金からも出ていく、こういうことでございます。特に円借の場合には財投と一般会計の比率は大体三対一くらいになっております。三が財投で一が一般会計。
  194. 土井たか子

    ○土井委員 そういう内訳はいろいろあるでしょう。そうして全額出るか出ないかという問題も、実際問題として決めてから後の問題として出てくるかもしれません。しかし、いま問題にしているのは、先ほど外務大臣お答えをはっきりなすったとおり、五十七年度年度、ことしの予算に占める中でどうするかということを考えて、それを交換公文としてお互いが合意すれば日韓間で結ぶという問題なんですよ。それについて私はお尋ねしているわけですから、あなた要らない御答弁はそれこそ要らないですよ。そんな問題は後の話です。交換公文の中でどれだけ出すか、あとは出さないかなんということまでわかりはせぬでしょう。まずはこれだけを五十七年度の枠として決めましょうということでしょう。そういうことですよ。だから要らないことを答弁する必要はさらさらないのです。     〔稲垣委員長代理退席委員長着席〕  外務大臣、これはどうですか、やはり単純計算すると、過去の対韓援助の実績をずっと見ていきまして、五十七年度年度で二億ドル、四百億円を上回るということは、どうも、どこからどうしても考えられないのですが、それくらいを目安に考えるということでございましょうね。
  195. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 局長が御説明申し上げておるのは、五十七年にある額を示しても、それでは二、三年後に五十七年は実績が幾らと——いま土井委員は実績をもっておっしゃっておるでしょう。そうすると、ある程度の数字、実績というものは、実績は後から出てきますからね、だからその二億に当たるものは、一年、二年先になって、五十七年の実績は従来どおりに二億なら二億、こうなるんですね。だから、五十七年に約束をするときには、その枠だからね。だから、それが枠と実績が同一だというふうにはいかないんじゃないかと思うのです。
  196. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、実績と枠というものをやはり両方考えもって、五十七年度、この単年度借款をどうするかという問題をお考えになっていると理解をしましたが、そういうことからするといかがなんですか、実績の上から考えても枠の上から考えても、片や枠の上で言うと一億四千五百万ドルというのが単年度、単純計算の上で出てくる。片や実績の上から考えていっても二億ドルというのが上限というふうに出てくる。こういうことでございますから、このいずれかの額を上回るというわけにはいかないと思うのですが、いかがでございます。大臣、大体の感触でいいですから、そこの点をお聞かせくださいませんか。
  197. 柳健一

    ○柳政府委員 結局また繰り返しになって申しわけないのですけれども、枠とプレッジとの関係は、実際にどれだけの実績が出るかについてどの程度のプレッジを、たとえばことしならことしすればどの程度実績がおりていくかということの相関関係を考えながらやっていくわけでございます。ただ、その場合に、たとえばいまの韓国の場合に、先生指摘のように絶対に四百を出ちゃいけないかどうかということは、もうちょっときちんと計算してみないとわからないんじゃないかと思います
  198. 土井たか子

    ○土井委員 外務大臣、いろいろ計算してみないとわからないというお答えがいま出てきたのですが、いま二国間援助の問題と多国間援助の問題の割り振りを変えてでも対韓援助というものを重点に置いて考えるという姿勢はまさかおありにならないだろうと思いますが、その辺の枠を、これははっきりいままでどおりお考えになって守っていくという姿勢をお持ちになっていらっしゃるんでしょうね、いかがですか。
  199. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私が就任後に要請を受けたその時点は、前年度韓国が経済成長率が非常に落ち込んで経済運営に困難を来しておる。そこでひとつ経済援助をお願いしたい、確かにそういうことがわれわれとしても認められますから、それじゃそういう見地に立ってひとつ作業してみよう、こういうことできておりますから、実績では一応の、大体の、アジア地域はどう、その中から韓国はどうというそういうものも出てくると思うのです、実績から。しかしながら、要請された事情等を勘案していく場合に、必ずその実績の枠の中にすべてを入れなければならないということではないと私は思うのです。これは正直に申し上げておきます。それは経済援助を受けるそれぞれの国の事情考えながら、その経済援助が最も生きていくことを考えなければならないんで、また全体的に非常に要望が強いという場合なら、実績よりも、予算に限定されますから非常に小さくなる場合もあるし、あるいは全体的にそうでないというときであれば従来の実績よりも多少緩やかに出るという場合もありますから、おおよその過去の実績から言えばこんなことじゃないかということは言えても、ではそれに絶対に縛られなければならない、上限はそこまでだと、それは実際に仕事をする上から言えば、そのとおりですとは私は言いかねますね。
  200. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、政治加算によっていまマルチが三、バイが七、大体そう言われているのですね。配分も変わるかもしれないのですか。
  201. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは、先ほど局長が言っておるように、昨年は七五と二五でございました。だから、過去五年なら五年とった場合と、では昨年はどうかというと、昨年は割合違っておりますね。そこで御説明申し上げておるわけでございます
  202. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、意に含められているのは、その関係がこれによって少し変わってくるかもしれないというふうな御答弁の趣旨と受けとめさせていただきますが、そのとおりに理解してよろしゅうございますね。
  203. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのとおりで、実績でがんじがらめというわけにいかないだろうという御説明をしておるわけであります
  204. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、実績の上に立って、積み上げ方式で単年度で援助は考えていくという従来の日本の対外援助のあり方が、大分これによって変わってくるということも言わざるを得ないわけであります。  アメリカ側から、この対韓援助の問題の早期妥結を非常に強く望んでいるということが伝えられてくるのですが、これは当初から全大統領とレーガン大統領とでの話の中に、日本に頼むということをアメリカ側がむしろ韓国側に言って、こういう事情が始まったとさえ伝えられているような事情があるのですが、大臣御自身アメリカ側がこれに対してどういう要請をしているか、また、これに対してどういうふうな関心を持っているか、感触なりをひとつお聞かせいただきたいと思うのです。大臣に聞きます
  205. 木内昭胤

    ○木内政府委員 アメリカ側としましては、この問題が解決することを希望はしておると思いますが、早期に解決ということは、アメリカとしては言えないと思います。これは日韓間の問題でございまして、着実に解決していかざるを得ないわけで、第三国が早期にと申されても、これには無理があると思います。  なお、アメリカ側日本に要請しておるという御発言がございましたが、そのような事実はございません。
  206. 土井たか子

    ○土井委員 ところで、外務大臣、連休に訪韓なさるとかどうとかというお話が一時期ちまたで非常に問題にされたわけでありますが、現段階では具体的に中身が整っておりませんために、大臣は恐らくこの連休には韓国にいらっしゃらないであろうというふうにわれわれも思っておりますし、また、そのように大臣御自身もお考えになっていらっしゃるに違いないと私は思うわけでありますけれども、その点いかがなんでございますか。
  207. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはこの前の委員会か何かでお答え申し上げておりますが、私が就任後でも五カ月もこの問題のやりとりがあるわけで、総理が私に、関係省庁をまとめて、ひとつできるだけ早くやった方がいいのじゃないか、そういうことを最近言われたことがございまして、できれば連休の後半にでもそういう段階を迎えたいということでまいっておる次第でございますが、ただいまお尋ねのように、現在、それではそのようにいけるかどうかということについては、最後のやりとりがなかなか難航しておるという実情でございます
  208. 土井たか子

    ○土井委員 それでは大臣、もしいらっしゃるときはどうなんですか。きょうお尋ねした限りでは、五十七年度年度の予算の枠の中で対韓援助というものが具体的にどうかということが決められて、交換公文の中でお互いがそれを確認するというかっこうになるわけですから、段階からいうと、やはり交換公文が具体化されるような段階でないと、大臣はいらっしゃるまいと私たちは思っておりますが、どういう段階で大臣はいらっしゃるというふうなお心づもりでいらっしゃるのですか。
  209. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはすっかり話がまとまって、しかも、交換公文に盛り込むプロジェクトについての調査も済んでから交換公文ということになるのが、私は順当だと思うのです。ですから、私が仮に行く場合でも、そこで交換公文というようなことでなく、五十七年についてはこの範囲でいくかということでの合意を見る段階で行く、そういうことになると思うのです。交換公文とは、私が行ったときにそういうものを交わす、そういうことではない、こう認識しております
  210. 土井たか子

    ○土井委員 最後に二問。  一つは、現段階でお考えになっていらっしゃる案を韓国側に示す。こっちはお金を貸す側なんですけれども、借る側の韓国側が中間回答に対しても、これではだめだなんというふうなことを言って突き返すようなかっこうになっているわけですが、今回のお考えの中身は韓国側にとっては受け付けられないであろうというふうな、これはそういうふうにならない先にそういうことをお答えになるというのは、これは外交交渉ですからむずかしい話であり、お答えしづらい問題でありましょうけれども、何か大臣の感触をその辺でひとつお聞かせいただきたい。     〔委員長退席稲垣委員長代理着席〕  先日、ブッシュ副大統領が訪韓に先立って、鈴木総理に対して、韓国に対する援助の問題に対しては、ちょうど訪韓するやさきであるから重要なことを聞いたと言って訪韓されているわけですが、これはブッシュ副大統領の韓国に対しての物の言い方によって、かなりこの点はこの以前と状況が違ってくるというふうに受けとめていらっしゃるかどうか、この二点をお聞かせいただきたいと思うのです。
  211. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ブッシュ副大統領と鈴木総理のお話の中で、私の記憶によれば、韓国から経済援助の要請がありますが、それについてはでき得ることはしたいと、協力はできるだけする考えでおるというような話、これはそういう首脳、準首脳の話でありますから、数字その他は一切ない抽象的な経済協力の話が出ておったことは記憶にございます。  それから、いま日本側が経済協力をしようというのに、何か韓国から大変文句をつけられて、そしていろいろやっておるような御印象でございますが、これは交渉事ですから、相手は相手の希望を言うということは、これは耳を傾けてもいいと思うのですね。  それから、実務者レベルの会合とかあるいは前田大使が帰られてからいろいろ申し上げておるということは、できるだけ日本の経済協力の方針とか、日本の財政状況とかそういうようなことをるる説明しておると、その中に韓国側はまた韓国側の立場で要望しておるということで、私はやはり日本日本としての立場で言うべきことを言い、協力のできることはする、こういう気持ちで臨んでおるわけであります
  212. 土井たか子

    ○土井委員 これで質問を終わりますが、外務大臣、これはもう申し上げるまでもなく、日本としてはできることとできないことがあるわけです。ね。日本の国の対外援助の原則なり、いままでの対外援助に対してとってまいりました実績なりをひっくり返すようなかっこうで対外援助を、どういう友好国であろうともすることは許されない。そういうこと自身が友好を損なうことになるということを一言申し上げさせていただいて、終わります
  213. 稲垣実男

    稲垣委員長代理 玉城栄一君。
  214. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいまの日韓経済協力の問題についてでございますが、私もちょっとよくわかりませんので、一、二点だけお伺いしておきたいのです。  妥当な、また正当なルートに乗った経済援助というのは、これは何も韓国に限らず、その必要性に応じてその国の経済発展、繁栄あるいは平和という立場から、わが国としてもこれは大事な方針であると思うわけでありますが、ただ、いま土井先生もおっしゃいましたように、これは前の園田外務大臣も、借りる側がびた一文まけられないというようなことはどうかなというような意味のこともおっしゃっておられたわけであります。ずっとお話を伺っておりましても、貸す方の側のわが国、こちらは大分苦慮していらっしゃるというような感じで、これは国民の目から見れば、何か日本側に弱みでもあるのかなというふうに映るわけですね。  そこで、先ほどちょっとお答えもあったかと思うのですが、昨年のオタワ・サミット、その前の五月の日米首脳会談、そしてまた今回のブッシュ副大統領に、わざわざまた総理がそのことをおっしゃっておられるということからしまして、この話の最初の言い出しっぺといいますか、これは韓国側なのか、わが国の側なのか、あるいはアメリカの側なのか、この六十億ドルの経済援助、まあ額の話は別にしましても、それはどちらが先になっているのでしょうか。
  215. 木内昭胤

    ○木内政府委員 玉城委員指摘のとおり、わが国の経済協力の一般原則を曲げてやるということは毛頭考えておりませんで、その枠組みの中で、ほかの国とのバランスも十分考えまして、また昨今の韓国に生じておりますニーズも念頭に置きまして、慎重に対応しなければならないということは、累次御答弁申し上げておるとおりでございます。  それから、この経済協力六十億ドルの問題が正式に提起になりましたのは、昨年の八月に盧信永外務部長官が来日いたしまして、園田外務大臣との外相会談が持たれました際に、先方から提起のあった問題でございます
  216. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは時間がございませんので……。  そこで、これまでのお答えを伺っておりますと、中間回答は韓国側はちょっとこれを受け入れるのは困難である。また日本が案が決まりつつあるか、その辺よくわかりませんが、それを韓国側に提示する、しかし予想として非常に厳しいというようなことも先ほどもおっしゃっておられたやに伺ったわけでありますが、そうしますと、大臣、厳しいという御認識の上に立って、その見通しはいかがでしょうか。
  217. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 韓国側は日本の出した中間回答に対して、より金利の安い資金を多くしてもらいたい、あるいは商品借款をお願いしたい、こういうことでありましたが、先般来前田大使も帰られておって、なかなかそうはいかないという私どもの意向を申してありますので、恐らくその辺のことを帰られてから韓国側に言われておるのではないか。向こうの希望の中で、たとえば輸銀と基金と振り分けておるのをもう少し基金にいかないかとか、あるいは収益性の相当上がるそういうものは市中銀行でもいいじゃないかとかいったのについて、それは困るとかいうようなところを、まあそれは市中銀行はやめて、では輸銀と基金でいくかというようなやりとりの最中でありますが、しかし韓国としては、より安い金利のものということで主張をしておるように思います
  218. 玉城栄一

    ○玉城委員 そうしますと、大臣とされては一応この問題も含めて韓国への御訪問はされる御予定でございますか。同時に、簡単で結構ですから、大臣のことしの外交日程もお知らせいただきたいわけです。
  219. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外交日程は、来月中旬にOECDの方へ行く予定が一つであります。それから中国の趙首相をお迎えするときには日本におらなければならないと思いますが、その後ベルサイユ・サミットと、それから特別軍縮総会へ総理の随行をする。その随行を途中から戻りましてASEAN拡大外相会議に臨む、そして日豪の定期閣僚会議に参りまして、その後インド、パキスタン、ヨーロッパに参らなければならぬ、そういう予定もございます。大体下半期は外交日程が非常に多い、こういうことでございます。  そこで韓国につきましては、この連休の後半にでもという予定でおりましたが、なかなかその実行がむずかしい状況に現在はある、こういうわけであります
  220. 玉城栄一

    ○玉城委員 この日韓経済協力問題につきまして、双方が大分食い違っておりまして、見通しとしても大変厳しいというようなこと、また外務大臣自身の年内の外交日程、そういうことからしますと、これは早期決着とか継続交渉とか——まあこれは継続交渉になっていくのか、打ち切りになっていくのか、その辺はよくわかりませんけれども、ただ、私は先ほど木内局長さんにもちょっと伺いましたが、例のオタワ・サミットのときに鈴木・レーガン会談でこの日韓経済協力という問題が話題になったのか、いかがですか。その点だけ。
  221. 木内昭胤

    ○木内政府委員 オタワ・サミットにおきましては、六十億ドルの対韓経協の問題をどうするこうするという形での話題は全くございませんで、総理としましては開発途上国あるいは韓国等に対しまして誠意を持って経済の面、技術の面で協力していくんだという御意図を表明されたものと伺っております
  222. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、これは大臣にこの問題について最後にお伺いしておきたいわけですが、総理御自身が、いま六十億の話、特定なものではなかったかもしれませんけれども、日韓経済協力という問題をレーガン大統領とお話し合いをされた。今回ブッシュ副大統領がわざわざ来日されたときにわが国の誠意を示されたということからして、いまの状況では大変妥結が厳しいということからし、そういうことでこれは最終的には、今後の問題ですから何とも言えませんけれども、やはり日韓の首脳会談ということも行く行くは想定されてくるのかなという感じもするわけですが、いかがでしょうか。
  223. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 本当に歴史的な関係のある隣国の韓国のことでございますから、私自身が就任後半年近くにもなろうというのに両国の外相が会わないでおるというのも本当はおかしいことでありますし、また首脳がお会いする機会ができればそれはもう早いことの方がいいと私は思うのです。また、隣国のことでありますから、ちょいちょい行き来されるのも好ましいと思うのでありますが、現在におきましては、そういう首脳会談、外相会談も行わずにおるということはこれはいかがかな、私としてはできるだけ早くそういう会談ができるような環境をつくりたいと鋭意努めておるわけでございます
  224. 玉城栄一

    ○玉城委員 次に、質問を変えまして、難民の問題についてお伺いをしておきたいわけです。  わが国、人権関係に関する条約、この二、三年、批准、承認をしてまいっておるわけですが、仏つくって魂入れずということでもまずいわけでありまして、現在ベトナムの難民の方々、日赤だとか宗教団体とかいわゆる民間機関、ボランティア活動に大分お世話になっておるわけですね。しかし状況はまさにパンク寸前というお話も伺っておるわけですが、現在の受け入れの状況、これを御説明いただきたいのですが。
  225. 色摩力夫

    ○色摩説明員 お答えいたします。  受け入れ体制でございますが、先生御承知のとおり、わが国政府インドシナ難民対策として制度上定住と一時滞在の二本立てで運営しております。定住に関しましては、政府の事業としてアジア福祉教育財団に委託をいたしまして全国で二つ、神奈川県の大和、それから兵庫県の姫路に二つのセンターをつくって運営しております。それから一時滞在難民に関しましては、主として先生指摘のとおり、民間の善意の団体、宗教団体あるいは社会事業団体に委託して事業を運営しております。  詳しく申し上げれば、日本赤十字社十一カ所です。それからカリタス・ジャパン、これはカトリックの慈善団体なんですが、いまのところ十三カ所、それから天理教一カ所、立正佼成会一カ所ということで運営しております。なお、一時滞在難民の対策の合理化の一環といたしまして、政府は大村、これは長崎県の大村でございますが、そこにレセプションセンターというちょっといままでの収容所とは違う性質のものをつくりまして、二月一日から運営しております
  226. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、わが国に来られた難民の方々、行く先もはっきりしないまま四、五年施設にそういう状態でおられるというようなことで、預かっていらっしゃる民間のそういう機関の方々も悲鳴を上げつつあるわけですね、そういう声も聞いております。ですから、このままの状態でいいのかどうか。政府として今後、まだベトナム難民というのは五十名とか百名とかボートピープル来るわけですから、その辺をどういうふうに対策として考えていらっしゃるのか、いかがですか。
  227. 色摩力夫

    ○色摩説明員 御指摘のとおり、今後の見通しでございますが、難民対策関係者各国とも的確にはわかりかねております。客観情勢はどう推移するのか的確にはわかりません。しかし全体の流出状況その他を見まして、ラオス、カンボジアからの流出は顕著な減少を認めておりますが、ベトナムからの流出、普通ボートピープルと申しておりますが、この流出は一向減っておりません。むしろ漸増ぎみという観測さえございます日本への到着状況を見ましても、昨年、一昨年千名を超えました。ことしも少なくともそのぐらいの到着が来ると想定しなければインドシナ難民対策としてはいけないのではないかという認識でございます。  それから先生指摘のそういう人たち、滞在が長期化しておりますこういう人たちをどうするかという問題でございますが、これについてはまず第一に申し上げたいことは、先ほど申し上げましたように二本立てという制度、その一環として一時滞在難民という形で一時預かりという考え方のもとに所要の庇護及び保護を与えてまいりました。しかし客観情勢はますます厳しくなりまして、アメリカ、豪州、カナダあるいはヨーロッパ諸国はその受け入れを数量的にも制限しておりますし、それから個々の条件についても適用を厳しくしているという状況でございます。しかもわが国に到着する一時滞在難民の大多数が必ずしも日本に定住を希望しない、第三国に希望している、しかし客観的に眺めましてその第三国に引き取られる可能性は非常に少ないのではないか、むしろ絶望的ではないかと思われる難民の方々がいま現に滞留している約千八百名のうち恐らく半数を超えるのではないかという事情がございます。こういう人たちをどう最終的解決に持っていくかということは、これはまた大変な問題でございまして、まず基本的には日本の社会が、これは政府も含めてでございますが、難民問題の本質に関してさらに深い認識を持って、心を新たにして取り組まなければいけないのではないかと考えておるわけでございます。それはどういうことかと申しますと、従来日本の世論もそれから政府の姿勢も、インドシナ難民対策の理念は国際協力の一環として進めるという姿勢でございました。確かに難民の対策に関してはそういう要因は非常に大きな要因としてございます。しかし、この具体的な問題、すなわち経緯のいかんを問わず、好むと好まざるとにかかわらず、洋上で救出されて日本の領域内に入って、日本政府が上陸許可を与え、つまりとりあえずの庇護を与えたという時点から、これは日本の難民問題であって、つまり自国の難民問題であって、他国の難民問題の解決に関して協力するということではございません。したがって、日本自身の問題としてこれの解決に真剣な努力をしなければいけないということが第一点でございます。  そういう見地から、じゃ具体的にはこれからどうするかと申しますと、まさに難民政策、難民対策の曲がり角に来ているということと、それから民間の、特に最終的な解決をする主役として期待されている地域社会のイニシアチブが残念ながら非常に少のうございますので、これから官民の努力をさらに結集して推進しなければいけないと考えているわけでございます。  ちなみに、政府といたしましては、その問題意識から、現在難民対策に関する特別行政監察ということが行われております。聞くところによりますれば、五月にもその結論あるいは勧告という形になるかもしれませんが、そういう作業の状況と聞いております
  228. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題、官民挙げて協力体制をつくらなくてはならぬということ、いまちょっとお話がありましたけれども、難民の方がいらっしゃる、永住希望者は少ない、行きたい国は受け入れ制限している、さらにまたふえる、それを世話するボランティアの方々は悲鳴を上げている。だから、いまおっしゃるように、日本社会が閉鎖的であるから、協力してやろう、そういうことで難民対策特別行政監察というようなことが具体的な問題として考えられておる。これは何をやろうとするのですか。
  229. 色摩力夫

    ○色摩説明員 現在、難民対策に関する特別行政監察が行われておりますが、これは行政管理庁がもちろん実施しているわけでございます。事務局は内閣官房にございまして、行政監察の対象にはなっておりませんが、常に連絡を密にしていろいろ相談にあずかっております。そういう立場から、一体何が問題になっているかということを、まあ当事者じゃございませんのでうかがい知るところを大胆にまとめて申しますと、浮かび上がっている問題点がどうも二つあるようでございます。  一つは、政府の責任体制が必ずしもはっきりしていない、つまり主務官庁が難民対策全般に関してどこであるのかはっきりしない、ばらばらに所掌されておるわけでございます。非常に多数の省庁にわたる問題でございますから、ばらばらなのはある程度やむを得ませんが、中には、重要な部分がどこの省庁が責任を負うのか全くはっきりしないという部分さえございます。  それで、この行政監察によって、第一の問題点は、できれば主務官庁をはっきり一つに設定する。そこまでいかなくとも、主として難民問題に責任を負う官庁がどこかということをはっきりさせるということが第一点でございます。  第二点は、先生指摘のとおり、一時滞在難民が長期化いたしまして、民間の収容施設を運営している団体が非常に疲労こんぱいしております。長期化することによっておのずからいろいろむずかしい問題が出ております。そこで、日赤とかカリタス・ジャパンとか、その他もろもろの、民間の収容施設を運営している方々政府に非常に強く要望していることの一つは、長期化して問題が非常にあり得る難民を分離して一カ所に集中いたしまして、そうして民間の努力を軽減していただきたい、そうでなければ、いままでの水準、いままでの規模、いままでのやり方を継続することもきわめて困難になるのではないかという状況が生じております。したがって、政府といたしましては、これらの方々を特に分離収容する、いままでとは別種の収容所をつくらざるを得ないのではないかという認識に立ち至っております。もちろん、これには、行財政改革のこの世の中でございますから、いろいろ難問がございます。しかし、これを何とか実現したいということで、いろんな案を練っている段階でございます
  230. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは最後に大臣にお伺いしたいのです。  いま、難民の問題につきまして御質問させていただきましたけれども状況はいまお聞きになられたとおりでございますし、また、わが国は人権関係の条約についても最近非常に積極的に批准、承認をしてまいっておるわけです。いままさに、難民問題というのは限界に来ていまして、わが国の受け入れ体制、これからどうするか、そういうことで、いまお答えになりました難民対策特別行政監察というようなことも行われながら、やはり一カ所にというようなことで、事業団構想というようなことも言われておるわけです。大臣、いかがでしょうか。
  231. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在、滞留の数が、手元の資料で千八百六十七名、こういうことでございますが、従来、善意の民間団体の協力に依存して問題に対処しておる。もちろん政府の施設もあるわけでございますが、お話のように、限界に来ておる。そこで行政監察の結果を踏まえて対応したい。こういうことでございますが、幸い、現在、一時のように非常におびただしい難民ということでもないこういう機会に、もっと根本的な対策が必要ではないか。事業団のお話もございましたが、アジア福祉教育財団、この方で百人以上の人を預かっておりますが、その方に、前の奥野文部大臣が理事長をしておって、私が、どういうことか副理事長ということで難民の多少のお世話をしてまいっておるわけでありますが、早く、行政監察の結果を踏まえまして、もう一つ根本的な対策を立てるべきである、このように認識しております
  232. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。ありがとうございました。
  233. 稲垣実男

    稲垣委員長代理 林保夫君。
  234. 林保夫

    ○林(保)委員 午前に引き続きまして御苦労さまでございます国際情勢の審査でございますので、当面際立った問題二、三を取り上げまして、ひとつお伺いしたいと思います。  その一つは、これは民間ベースでやったのだから政府は関係ないよ、こう言われれば別でございますが、なお過日、二十日から三日間、東京で、ソ連からグジェンコ運輸大臣・ソ日協会会長以下、八十七名という大挙しての来日があり、そしてまた私も、全日程じゃございませんが出席させてもらいまして、いろいろとソ連の言い分なり日本側の言い分、そして私の主張を申し述べてきたところでございます。これにつきまして、最後に共同コミュニケ、あれは全会一致でやろうとしてもああいう会でございますからなかなかできやしませんが、やはり全会一致の採択になりました。そういった中で、これから直ちに両国政府がテーブルに着いて平和条約締結の協議をする交渉に入るよう呼びかける、なおございますけれども、こういうのが一項目、大変貴重な柱として打ち立てられましたが、これらにつきまして、大臣は日ソ関係をかねて来憂慮しておられましたが、どのように評価されておられますか、まず承りたいと思います
  235. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日ソ間に相互理解のもとに真の安定した関係を結ぶ、これは非常に必要なことだと思うのであります。しかし、申し上げるまでもなく、一つには両国の間で平和条約締結が行われてない。これは領土問題が未解決である、何としてもこのことを解決して安定した姿に持っていきたいということが第一であります。今回行われました日ソ円卓会議は民間で行われたことではありますが、私もこういう会が持たれて対話をするということはそれなりの効果があるのではないかというふうに見ておる次第でございます。しかし、両国の本当の安定した国交を持つためにはどうしても領土問題の解決ということを優先しなければならない。このことはしばしば繰り返し申し上げておるところでございます
  236. 林保夫

    ○林(保)委員 そこで、いま申し上げました共同コミュニケの中にあります「ただちにテーブルにつき、」こういうことは政府としてはどのようにお考えでございましょうか。
  237. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 先生指摘のとおり、この共同コミュニケには「両国政府がただちにテーブルにつき、」と書いてございます。しかし、その後で「国際関係上すでに広く認められている政治体制の異なる国家間の原則を確立し、両国が平和条約締結に向かって前進」云々、このように書かれております。テーブルに着くということの目的でございますが、ここに書かれているとおり、国家間の基本原則を確立するということでありますならば、日ソ間にはすでに一九五六年の共同宣言、さらにそれを補足するものとして七三年の共同声明というものがございます。いま日ソ両国にとって必要なことは、こういう既存の共同宣言あるいは七三年の共同声明に立ち返ることであって、いまさら改めて国家間の基本原則というようなものをつくる必要はないのではないか、かように考える次第でございます。  また同時に、平和条約という言葉が出ておりますが、領土問題を解決してという表現はございません。このコミュニケのどこを見ても領土問題という言及がございません。ソ連はかねがね日ソ間に領土問題はないあるいは解決済みである、こういう主張をしておりまして、恐らくそういう主張を受けた上でのこういうコミュニケではないかと考えております。そういたしますと、これはやはり領土問題を解決して平和条約を結ぶという日本の基本的な方針に合致しないものではないか。したがって、テーブルに着くということ自体は結構ではございますが、その目的とするところはわれわれの考えとは合致しない、このように判断しております
  238. 林保夫

    ○林(保)委員 いまの局長の御答弁ですが、実は私もそういうことで全日程詰めていたわけじゃございませんので何とも言えませんが、世界平和と軍縮の第一分科会、政治外交の発展についての第二分科会、それから経済協力・通商貿易拡大についての第三分科会、学術・教育・芸術交流の発展についての第四分科会、そして相互理解と友好の発展についての第五分科会に分かれ、またいろいろな立場の人が出ておられましたので、意見は必ずしも一本ではなかったことはもう御承知のとおりであろうと思います。私も局長の意見に大体似ているわけですが、国家間の原則はやはり平和条約できっちりとやるべきであるという党の主張を踏まえまして、政府交渉を何よりも優先させるべきであるという主張を私も第二分科会ではっきりといたしました。そしてその中でやはり北方領土の問題が出てくる。そこで、局長どのようにお読みになっているかをお聞きしたいのでございますが、コミュニケの中に、国益に関する諸問題に関する対話を行なう、ということがある。いろいろな人がおりますのでいろいろと意見が違うと思いますが、国益に関する諸問題の中に当然領土問題を含むと解釈している者もはっきりとおりました。そしてまた、それはむずかしい、こういう意見の人も少数ながら私も意見を聞きました。外務省は、よそでやった会議だから何とも言えないとおっしゃるかもしれませんが、諸問題というと北方領土のほかに何があるのか、この意味は外交上見て北方領土を当然含むものなのかどうか、この点の御解釈を事務的で結構ですからひとつ承りたいと思います。     〔稲垣委員長代理退席委員長着席
  239. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 いま先生自身が御指摘くださいましたとおり、政府間の話ではなく、私ども内部の議論の詳細をフォローしているわけではございません。したがって、この文章の背景になった議論というのは詳細は十分承知していないわけでございます。ただ、一般に日ソ間で双方の国益ということを申しますときに、日本にとっては最大最高の国益は北方領土の復帰実現であることは言うまでもないと思います。ただ、ソ連側は先ほど申し上げましたとおり北方領土問題は存在しないという立場でございますから、これをソ連側は国益あるいは日本にとっての国益と認めているかどうかは非常に疑問のあるところだと考えます。それ以外に経済協力、特に長期経済協力協定締結とか、あるいはソ連側が主張してやまない善隣協力条約締結、そういう問題を恐らくソ連側としては国益という認識のもとでこういう表現を使っているのではないかと推察しております
  240. 林保夫

    ○林(保)委員 私も実はここの議論の場に入りまして、いろいろな問題が出ておりましたので、国益という問題からいきますと領土問題が入っているのじゃないか、こういうふうにも理解をいたしますが、それはそれといたしまして、一昨年の十一月の第二回円卓会議にも党を代表して行ってきたわけですが、その間、率直に言いまして、日本語ではあるけれどもなおわかりにくい言葉がぽんぽんとソ連の文章の中からあるいはソ連の通訳の人から飛び出てまいりますので、その辺について、これは大臣結構ですから、事務当局でこれをどう理解しているか特にお答えいただきたいのでございます。  その一つは信頼強化措置ということがあらゆる文章に今度出ております。そしてまた、言葉を変えて言いますと信頼醸成措置ということも出ております。これは外交上どういうことを意味するのか、国民にわかりやすいようにお答えいただきたいと思います
  241. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ソ連側が信頼強化措置あるいは信頼醸成措置と呼んでおりますのは、ヨーロッパにおける緊張緩和の一環として一九七〇年代に進められた一連の措置を指すものと考えております。  その措置の内容は、たとえば軍事演習の事前予告とかいろいろな情報の交換、そういう措置を通じてお互いに信頼を高めよう、こういうヨーロッパの実験を極東においてもやりたい。これは昨年の第二十六回の党大会の際にブレジネフ演説という形で表明されたものでございまして、その後近くはタシケントにおけるブレジネフ書記長の演説に再度繰り返し述べられている問題でございます。これを指して信頼醸成措置あるいは信頼強化措置と呼んでいるものと解釈しております
  242. 林保夫

    ○林(保)委員 内容はともかくとして、日本側から信頼醸成、強化ということになりますと、結構ですと外交上日本は言える立場にあるのですか、ないのでしょうか。
  243. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 信頼醸成ということ自体は決して悪いことではないと思います。しかしながら、ソ連が極東、特にわが北方四島に軍事構築を進めておる、極東の軍備力を増加しつつある、さらにアジア地域においてはアフガンへの進出等の行動をとっておる、こういう状況のもとでは相互に信頼を醸成する、あるいはそれを強化するというその基盤は存在しないのではないか、かように考えるわけでございます。もし本当に信頼醸成措置あるいは信頼強化措置をソ連が真剣に望むのであれば、まずその行動をもって示すこと、こういう軍事的な脅威、あるいは構築とか潜在脅威、そういうことを背景にして信頼醸成と言ってもそれは受け付けられないものである、かように考えております
  244. 林保夫

    ○林(保)委員 次に善隣協力条約でございますが、第二分科会の席上、善隣協力条約が重ねて提議になっておりましたので、一昨年と同じように、善隣協力条約内容はともかく、その言葉自体からいきます日本は大変受け入れがとうございます、なぜならば、アフガニスタンへソ連が出た、進駐した、軍事介入した、その基礎が善隣協力条約にあることを一億一千万人みんな知っておるからこれは無理ですよ、こういうことをはっきり私なりに申したわけですが、私のそういう国民感情からする単なる判断と違いまして、外務省はあれだけたびたび提議されております善隣協力条約を一顧だにもしないというような立場でいられる理由をひとつわかりやすく説明していただきたいと思います
  245. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 日本にとって最も重要な隣国の一つでございますソ連との間に善隣協力関係を進めていくということは、ソ連側の要望であるのみならず日本側にとってもそういう希望があるということは言うまでもございません。しかしながら、ソ連が善隣協力条約と言うときには、同時に領土問題は存在しない、領土問題は解決済みである、こういう主張とうらはらをなして出てきている主張でございます。そこから考えますに、この善隣協力条約というソ連側の構想は、領土問題を棚上げにして、領土問題をわきに置いて日ソ関係を構築していこう、こういう構想であろうと判断せざるを得ません。日本側の二十六年に及ぶ戦後の日ソ関係、一貫して領土問題を解決し、平和条約を結んで、こういう基本方針にのっとって進めてまいりました対ソ政策と正面から背馳する結果になるわけでございます。したがって、日本としてはこのように領土問題を棚上げにしての条約関係というものはとうてい受け入れられない、かような立場でございます
  246. 林保夫

    ○林(保)委員 これは政府が発表したと思うのですが、この間の第二分科会では、ソ連の一代表は日本政府が勝手に発表したんだと善隣協力条約のことを申しておりまして、それは違うという反論が出たことも事実でございます。  それからなお、日本側が同時にグロムイコさんに提示いたしました日ソ平和条約案がいまだに日の目も見ない。私たちが過日、昨年でございましたかこの席でも質問いたしましたが、御発表にならない。これは外交上の信義に関する問題だから、こういうことでそれはそれなりに理解いたします。なおその当時、一九七八年一月だと思いますが、向こうが握ったままにして、それ以来何も返答がないんだろうと思いますが、その経緯はどうなっておりますか、簡単に、ソ連側がなぜ日本側から出した案を受け入れられないのか、検討の俎上に上せないのか、この辺をひとつ御説明ください。
  247. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ただいま先生指摘のとおり七八年の一月、当時の園田外務大臣が訪ソされて外相定期協議とあわせて平和条約交渉をいたしましたときに、先方から善隣協力条約の素案なるものが提出されました。日本側としては、先ほど私が御説明したような趣旨からこういうものを考慮する用意はない、しかしせっかくソ連側がお出しいただいたものであるからお預かりしておこうということで受け取った経緯がございます。同時に日本側からは、領土問題を解決して平和条約を結ぶ、そういう基本方針に従って平和条約の草案を先方に提出してございますソ連側は日本側のせりふと全く同様、これを検討するわけにはいかないけれどもお預かりしておこうということでソ連側がそれは預かっている、こういうような状況でございます
  248. 林保夫

    ○林(保)委員 それ以後押された事実はあるのですか、日本案を検討してくれとか。
  249. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 平和条約の草案を検討しろ、こういう形で話をしたことはございません。しかしながら領土問題を解決し平和条約を結ぼうではないか、そういう提案は繰り返し繰り返し、特に最近では一月二十日から二十二日にかけて行われました第二回の日ソ事務レベル協議におきましても、そのような主張は先方に申し入れてございます
  250. 林保夫

    ○林(保)委員 と申しますのも、七八年からまだ日が浅いといえば浅いし深いといえば深うございますが、やはり向こう側も受け入れられるような案でなければならない、こう素人考えで思うわけです。そうなりますと、押すと同時にいろいろな詰めをやってもらわないことには、いつまでもどうも事ソ連に関しては政府外務省努力をサボりにサボっていると言われても仕方がない、私たちもモスクワの今度の二回目の円卓会議に出席いたしまして、そういう感じを禁じ得ないのでありますが、その点はいかがでございましょうか。
  251. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 平和条約そのものの審議に入る出発点と申しますかその前提としては、先ほどもちょっと触れましたけれども一九七三年の田中・ブレジネフ共同声明、これに立ち返る必要があろうかと思います。御案内のとおりこの共同声明におきましては、戦後の未解決の諸問題を解決して平和条約を結ぶ、その戦後の未解決の諸問題というのは領土問題を含む、こういう合意日ソ間で行われているわけでございます。ここに立ち返るという前提が確保されて初めて、平和条約交渉あるいはその草案の審議というものに移れるのだろうと思いますけれども、遺憾ながら現在までのところ、ソ連は七三年の共同声明に立ち返るという姿勢さえ明らかにしていない状態でございます。この点は、第二回の事務レベル協議におきましても日本側から今後の交渉を進める出発点として、まず一九七三年の声明に立ち返れということを強く先方に申し入れてございます
  252. 林保夫

    ○林(保)委員 それから先ほども国家間の基礎を、原則をということでございましたが、今回もソ連側の基調報告によりますと、そういう条約ができないのだから政治原則の確立をということでございまして、第一回、第二回の円卓会議も同じような結論を得ていると思いますが、この政治原則の確立について、いま局長おっしゃったような条約締結ができないとすれば交渉をやる用意があるのかどうか、日本側にとってどういうことなのか、御説明願います
  253. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ソ連は、アメリカその他数カ国との間には確かに御指摘のような基本原則あるいは政治原則をまとめた文書を交換しております。同じようなものを日本に対してもやろうというようなお考えかと思いますが、これは先ほどもお答え申し上げましたとおり、日ソ間にはすでに一九五六年の共同宣言、それから七三年の共同声明、こういった基本文書が幾つか存在しているわけでございます。必要なことはそういうものに立ち返り平和条約交渉を進めるということであって、いまさら改めて政治原則というようなものあるいは基本原則というようなものをつくる必要は毛頭ない、かように考えております
  254. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がありませんので、急いで次の問題に移ります。  過日の開会総会におきますグジェンコ会長の基調報告の中に、核兵器の生産と入手を拒否し自国領土内にそれを持たない国に対して核兵器を使用しないという特別な協定締結問題に関して日本と意見の交換を行うソ連の用意がある、これをかなり強調しておられました。現に、欧州では核モラトリアムの提案をブレジネフ書記長がやっております。あるいはその一環かともとれますし、いろいろな解釈ができるのでありますが、第一に、これは外交ベースでこういう話が出たことがあるのかどうか。一月の事務レベル協議その他の接触の機会があったかと思いますが、大使の新しい赴任もございました。その中に出ているかどうか。それから第二点は、これは日本として交渉に入るだけのお気持ちがおありなのかどうか、二点御説明ください。
  255. 小宅庸夫

    ○小宅説明員 お答えいたします。  私どもの承知しておる限り、従来ソ連側からそのようにスペシフィックに非常に具体的な形で交渉の呼びかけがあったというふうには承知しておりません。それからただいま先生の御指摘がありました核不使用の問題を日ソ間で交渉をするという考え方についてのお尋ねでございますが、私どもといたしましては核の惨禍が二度と繰り返されてはならないということはもちろん当然のことであります。したがって、この目的に資することであればわれわれとしてはあらゆることをするべきであるとは考えておりますが、核兵器の不使用という具体的な約束をすることに関しましては核兵器の生産の停止とかあるいは貯蔵の削減とかそういった具体的な実効性のある軍縮措置というものによる裏づけがない限りいかなる約束をいたしましても実効性は確保し得ない、それからまたそういう実効性の保障のない約束をするということは、その安全保障上の意味合いにもかんがみまして現在の国際社会の平和と安全が核の抑止力というものに依存している以上これに対しては十分慎重に配慮すべきものというふうに考えております
  256. 林保夫

    ○林(保)委員 やはり信頼醸成措置そのほかいろいろ聞いておりますと、北方領土の返還が国民のソ連に対する唯一の本当の願いであるような焦点になってまいりました。ソ連側は過日も解決済みとあっさり言っておりましたが、外交上は、一月の事務レベル協議の柳谷審議官との応酬もここに持っておりますが、どういう言葉で解決済みというふうな言い方を外交場裏ではやっておるのか、それをひとつお聞かせいただきたいと思います
  257. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 どういう言葉でという御質問でございますが、ソ連側の言っている表現はまさにいま先生のおっしゃったとおり領土問題は解決済み、別の表現では領土問題は存在しない、そういう表現を使っております
  258. 林保夫

    ○林(保)委員 この間の事務レベル協議の約束では、高級レベルの協議ですか、これが外相会談を意味するのかどうかという問題もございますが、いつごろそれをやる予定でございましょうか。
  259. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 事務レベル協議をつくろうという合意は一九七八年一月の当時の園田外相訪ソのときに達成された合意でございます。しかしその第一回の会合はたしか一九八〇年の夏に行われております。第二回の会合がことしの一月と、当初の合意と申しますか了解では大体一年に一回というような感じでございましたが、園田外相訪ソの当時から二年近く最初かかったというのはやはり日中平和条約交渉というものがその間に入ったということ、それからその後第二回までに一年以上、かなり長い月日がかかったというのは、その間にソ連のアフガン進出というような事件があったためでございます。したがって事務レベル協議は大体一年に一回と考えておりますが、そのときどきの国際情勢とかそれに対する日ソ双方の受けとめ方というようなこともございますので、次回はいつということは必ずしも前もって、前から合意していくことは非常に困難な状況にございます。ただ、先回の事務レベル協議の際には次回は東京で行おうという合意ができておりますので、できれば来年東京でということを私ども事務当局としては考えております。  これ以外に高級という言葉をいまお使いになりました。恐らくこれは外務大臣の間の定期協議のことをお指しになっておられるのではないかと思います。外相定期協議も一九七八年園田訪ソ以来中断されております。したがって、今度はソ連側からグロムイコ外務大臣がそのために訪日する順番になっております。この点につきましては、昨年の九月ニューヨークにおきまして当時の園田外相とグロムイコが話し合ったときにもその話が出ておりますし、先般の事務レベル協議の際にも次回は日本で行います、そのためにグロムイコさんの訪日をお待ち申し上げておる、こういうことを先方に伝えてございます
  260. 林保夫

    ○林(保)委員 申し上げるまでもございません。国民の世論からいきますと、ソ連との関係は大変不毛である、こういう情勢だと思います。そして政府間がこういう状態であれば一体どうなるのだろうというのもまた国民の非常に大きな心配でございます。私ども野党の立場ながら議会制民主主義の立場から、外交は政府外務省に任せておけ、こういうことではございますが、なお一本の糸をたずねてこういう場へ出まして実は努力をしておるわけでございます。大臣も大変外交日程がお忙しいと先ほど承りましたが、なお対ソ外交について、大臣、これからどういう手を打とうとされるのですか。座して国際情勢の変化を待つということでもないと思いますので、大臣に最後に一言その辺のところをしっかりと承っておきたいと思います
  261. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 やはり対ソ外交にはけじめが必要だと思うのです。アフガニスタン問題、ポーランド問題等を考えましていまソ連に自制を求めておる、一方において領土問題があって平和条約が結ばれずにおる、この辺のことはどうしてもソ連考えてもらわなければならない。しかし互恵的に考え漁業問題のように実務的な双方の話し合いあるいは民間レベルの円卓会議、両国の間が非常にむずかしいのでありますから、むずかしいなりに対話をしていく必要があるのではないか。東西がソ連アメリカを頂点にして対立をしておる。しかしその間にありましても米ソ間の対話は中距離核戦力の削減交渉のように行われる。世界全般を見て非常な対立があってもその間に対話をするという傾向もございますので、私も、ソ連との間に大きな二つの問題はあるけれども、対話はやり、双方の理解を深める、そういう場は持っていきたいと思っております
  262. 林保夫

    ○林(保)委員 ぜひ、政府間でひとつしっかり対応していただきたいと思います。  最後ですが、きょうは韓国に対する援助の問題がいろいろ出ております。実は、私ども民社党では、民韓党の代表を大挙こちらへ招きまして、新しい韓国の建設について、経済問題を含めての話し合いをきのうから始めております。そういった中で、いや、それ以前から非常に強く感じますのは、新しい全斗煥政権が、過去と全く絶縁してでも第五共和国を育てていこうということで、非常に変わったなという印象を禁じ得ないのでございます。  なお、ここで、大臣ではございませんが、皆さんのお話を聞いておりますと、何か戦後の韓国との関係をそのまま継続して一体どうするかという対応にしかとどまっていないのではないだろうかという危惧の念を禁じ得ないと思います。と同時に、過日も経済援助の問題で申し上げましたけれども、新しい時代ができておるにもかかわらず、過去の援助方針を一歩も出ない範囲で問題を処理しようとするところに非常に大きな問題があろうかと思います。これは金額の問題ではないと思います。何のために何をやるか、こういう問題でございますので、私なりに新しい発想で、新しい時代、新しい皮袋に酒を盛るんだということで、金額は問いません、内容もきょうは聞きませんが、対処していっていただきたい。そうでないと、せっかくの友人を憤らせるといいますか、余りいい関係に置かないような感じがいたしますので、その点を特に御要望を申し上げておきたいと思います。私の考えが間違っておりますかどうかを大臣にお伺いいたしまして、質問を終わりたいと思います
  263. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 林委員のお気持ちはよくわかります。隣国である韓国との間を円滑に、友好親善を深めていきたい、その必要性は私はあると思いますので、誠意を尽くしておるわけでございます。  また、ただ政府政府というよりも、国民的基盤でこの韓国との間では連携を持つ、連帯、協調するという必要もあるのではないか、こう思っておるわけでありますが、幸か不幸か、就任以来経済協力問題に重点を置いておりまして、何とかこれを打開して、そして両国の間をよくしていきたい。林委員のお気持ちを十分私は承知しておるつもりでございます
  264. 林保夫

    ○林(保)委員 交渉事でございますので、これはやはりしっかり対応していただきたいと思います。大臣がおっしゃられましたように、新しい展望をつけ加えての解決に持っていっていただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  265. 中山正暉

    中山委員長 東中光雄君。
  266. 東中光雄

    ○東中委員 日韓経済協力、いわゆる対韓援助について、まず外務大臣にお伺いしたいと思うのです。  いま交渉をやられておる対韓援助問題は、鈴木・レーガン日米共同声明に言う西側の一員という立場でこの経済協力援助問題に対処しておられるのかどうか、まずその基本的な立場をお伺いしたいと思います
  267. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 自由と民主主義の価値観を共有する立場で、両国の関係をより一層友好親善を深めたい、こういう考えであります
  268. 東中光雄

    ○東中委員 共同声明によりますと、「総理大臣は、先進民主主義諸国は、西側全体の安全を総合的に図るために、世界の政治、軍事及び経済上の諸問題に対して、共通の認識を持ち、整合性のとれた形で対応する」というふうに言われておるわけですが戸いま外務大臣の言われましたのはこういう立場なのかどうか。  だとすれば、世界の政治、軍事及び経済上の諸問題に対して整合のとれた対処、軍事的なものも含まれてくる、そういうふうにもとれるわけでありますが、その点はいかがでございましょう。
  269. 木内昭胤

    ○木内政府委員 鈴木首相が訪米されましたときの日米共同声明の第九項に、「世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を強化」云々ということがございますが、結果的には、韓国はここで申します「地域」に該当するというふうに考えられるかと思います
  270. 東中光雄

    ○東中委員 韓国側が安全保障上の立場ということを言ってきていること、少なくとも当初言っておったことは周知のことでございますが、ことしの一月八日に行われました第十八回日米安全保障協議委員会で、いわゆる安保条約六条に関する極東有事研究の着手に正式に合意するということ等が討議されたようでありまして、その最後の段階で、櫻内外務大臣は日韓関係に言及をされて、韓国の経済回復にできるだけ寄与したいというふうに、日米間の安保協議委員会で韓国の経済援助についての発言をされたと承っておるわけでありますが、外務大臣、これはどういう立場でそういうことになるのでございましょうか。
  271. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 それはどういうことをもとにしてお尋ねであるのか、何か記録の上にそういうことが書かれておるのか、いま私、大分日がたっておりますので、該当するようなことについては十分な記憶を持っておりません。
  272. 東中光雄

    ○東中委員 これは相当広く新聞で大きく報道されておりますので、私たちは安保協議委員会にみずから参加しておるわけではございませんから、報道されておることについてもしその事実がないのだったら、それは誤報であるというふうに外務大臣から言っていただければいいと思うのでありますけれども、私はそういう報道に基づいてお伺いしていることであります。いかがでございましょうか。
  273. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 その報道は、何か会談後の公式のものであるのかどうか、再度のお尋ねでありますが、私、どうも十分にそういうことを承知いたしておりません。国際情勢一般について話したことはございますから、その中でアジア情勢の一環として韓国問題に触れたか、こう思うのでありますが、ちょっと御質問の趣旨のことについては記憶はございません。
  274. 東中光雄

    ○東中委員 アメリカとの間で韓国の援助のことが問題になるというのは、これは特に安保協議委員会であれば安保絡みであることを明白に示しておるというように私たちは思うのでありますが、外務大臣、御記憶がないと言われるのだったら、これは否定をされないのですね。そういうことを言ったのじゃないあるいは言うはずがないというふうに否定をされるのじゃなくて、記憶がないと言われるのはどうもしようがないわけですけれども外務省当局としては個人の記憶の問題じゃなくて、安保協議委員会でそういう問題が言及されたのかされなかったのか、何か記録が残っておるのかいないのかという点についてはいかがでございましょう。
  275. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ただいまの御指摘につきましては大臣のおっしゃられたとおりでございますが、国際情勢一般の討議の過程でアジア情勢、朝鮮半島の問題等が出たということかと思っております。この点につきましては、その新聞報道と当時の記録とを突き合わせまして後刻御答弁させていただきたいと思います
  276. 東中光雄

    ○東中委員 後刻また明らかにしていただきたいと思うのですが、二十四日にブッシュ米副大統領が見えて、総理大臣が副大統領にわざわざ対韓経済協力問題を持ち出して、日本にとって身近な韓国の新五カ年計画による国づくりに日本もできる限り協力していくという方針を伝えたというのがあるのですが、これもアメリカとの関係で韓国の新五カ年計画での協力という話をされたということでありますが、これは事実なのでしょうか。まだ日も新しいですから、いかがでしょう。
  277. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ブッシュ副大統領訪日の折、訪韓を直前にしておられることもございまして、総理から日韓経済協力問題について触れられたことは事実でございます。総理の御発言は最近の韓国、経済的にいろいろ困難に直面しておるようなのでできる範囲で協力していきたいという一般的な方針を述べられたと伺っております
  278. 東中光雄

    ○東中委員 単なる一般的なもの、しかしいま現実にこの対韓援助問題が交渉のいわば山場に来ているというようなときに一般的なということでは済まないのじゃないか。特に相手はアメリカですから、韓国から来た者に言っているというのとは違うのですから、そういうところにいろいろ問題があると思うのです。  ことしの三月十五日の米下院の対日公聴会でロング太平洋軍司令官は、韓国の経済困難性は原油、原材料の高騰とウォンの顕著な安値にあり、これらの問題が韓国軍の第一次改良計画の変更、中止の結果となっており、第二次改良計画においても弓なりの波というのですか、極度のアンバランスということだと思うのですけれども、の原因となった、こういうふうに言っているのですね。要するに軍事的な面から見て、韓国軍の近代化という点から見て、経済的困難というのは非常にぐあいが悪いのだというふうに証言をしているわけです。裏返して言えば、対韓経済援助は韓国軍の近代化促進を支援することになるということをこのロング太平洋軍司令官の公聴会における証言で裏づけておると思うのですが、そういう点についての認識はいかがでございましょうか。
  279. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ロング太平洋軍司令官が、韓国が経済的に諸般の理由によって困難に陥っておる、したがいましてその結果韓国の財政を非常に窮迫させておる、その結果韓国の国防努力にも支障が生ずるという事実は、これは事実だと私は思います。しかしながら、これは国防努力に支障を来す面があると同時に経済開発、社会開発の面でも非常な制約になっておるわけでございまして、わが国としましては累次御答弁申し上げておりますとおり、この経済社会開発の分野に直面して協力をする、すなわち韓国国民の民生の安定に協力するということで取り上げられておりますプロジェクトも一部御紹介いたしましたとおり、まさに韓国一般庶民の生活の基盤の充実に振り向けられるものである、そういう性格のものであると承知いたしております
  280. 東中光雄

    ○東中委員 三月二十七日の参議院の予算委員会で木内アジア局長は、韓国が四百六十五億ドルの外資調達を予定して日本から六十億ドルということを言ってきておる、この四百六十五億ドルの中には外国からの武器購入費も当然入るというふうに考えられる、木内さん、そういうふうに答弁をされておりますね。いかがですか。
  281. 木内昭胤

    ○木内政府委員 御指摘の参議院予算委員会におきまして、四百六十五億ドルの外資調達分に武器購入が含められるのじゃないかと考えられる旨御答弁申し上げたことは事実でございます。私がそう申しました理由としまして、この四百六十五億ドルが何のために必要であるかという理由が挙げられておりまして、一つは国際収支の赤字穴埋めあるいは韓国側が抱えております元利金の償還に充当させるため、それから外貨準備を補強するためという理由があるから、私はこの国際収支の赤字穴埋めという観点に着目しまして、これは一般に兵器の調達のみならず食糧であるとか原油であるとかすべてにかかわるわけで、その関連で関係があるのじゃないかと御答弁申し上げた次第でございます。  しかしながら、この点につきまして再度韓国に照会いたしましたところ、武器調達は完全に一般の通常貿易の国際収支の問題と別枠に考えて扱われておる、また武器の調達等につきましてはすべて秘扱いになっておるという韓国側の説明がございます。したがいまして、この四百六十五億ドルと韓国政府による武器の調達は直接関係がないということが判明したことを御説明申し上げます
  282. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、あなたは参議院で「当然入るものと考えられます。」という答弁をされた。「当然」と言っているんですよ。ところが、向こうの弁解を聞いたら今度はそれをそのまま信用して、これは別枠なんだというふうに日本政府としては思っている——余りにも不見識じゃないですか。それも武器の問題については秘密の扱いにしておるからということを韓国側が言っているといまおっしゃいましたね。秘密にしておったらわからぬじゃないですか。これはそんないいかげんなものなんですか。韓国第五次経済発展五カ年計画達成のための外資調達である四百六十五億ドル、こういうふうな形で具体的に出ておって、その中身は武器が入っておると当然考えられると言ってみたり、いやそれは全く別枠なんだ——初めからこの額というのが五百億ぐらいというのじゃないのですね、本来ならばちゃんと積算してわかっておる計画ですからね。そういう性質のものだと思うのですが、どうしてそういうふうに変わるのでしょうか。
  283. 木内昭胤

    ○木内政府委員 新しい韓国の経済発展五カ年計画にこの四百六十五億ドルの必要外貨分は国際収支の赤字補てん、そのためにも必要であるということを私は額面どおりとりまして、すなわち国際収支の赤字穴埋めという以上は海外から調達するあらゆる物資との関連で国際収支が赤字になるととらえて御答弁申し上げたのが、その後韓国側に確認いたしましたところ違うという説明があった点を御説明申し上げておる次第でございます
  284. 東中光雄

    ○東中委員 同じ三月二十七日の参議院予算委員会外務大臣は、この経済発展五カ年計画と第二次戦力増強計画とは全くリンクしないと、冷静に見ていきたい、こういうふうに答弁されているのです。同じときにですよ。担当の局長は当然含まれていると考えられる、それで外務大臣は全くリンクしない、そしてアメリカの三月十五日の下院対日公聴会では、経済的な困難性が軍備増強計画にひずみをもたらしているから経済援助という形で軍備の近代化促進の方向を図るべきだという趣旨のことを言っているわけです。それから、ロング太平洋軍司令官の公聴会での証言の大きな趣旨は木内さん認めているわけです。非常に矛盾をしているわけですね。何か国民が聞いておって、結局これは向こうが言っている安保絡みという韓国の軍備増強ということに、直接的でないかもしれぬけれども一段置いて、ストレートにしかし間接的にというふうに見えるのですが、そこらの点ははっきりとつかむ必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  285. 木内昭胤

    ○木内政府委員 ロング提督が韓国の諸般の経済的困難から国防の分野あるいはその他の分野においても苦労しておるということを指摘されましたことと、私どもがその結果、ロング大将の意向を受けて対韓協力をするということでは毫もないわけでございます。先ほど来御説明申し上げておりますとおり、本委員会でも申し述べさせていただきました諸プロジェクト、これはダムであるとか上下水道であるとか、そういった面での協力に局限いたしまして手がけていこうということでございます
  286. 東中光雄

    ○東中委員 ちょっと角度を変えますが、韓国側は商品借款を非常に執拗にと言ってもいいくらい求めておりますね。日本の方から、それはできぬという趣旨の回答をされたはずなのになお商品借款ということを要求してきておる。なぜですか。
  287. 木内昭胤

    ○木内政府委員 私どもは引き続きまして商品援助がきわめてむずかしいという立場を崩しておりません。商品借款の性格上、これは国際収支上非常に困難に陥っている国々を志向するものであるということを韓国側に説明いたしましたのに対しまして、韓国側からは、いや韓国も昨今のアメリカの高金利等々にかんがみまして、それからアメリカのあるいは日本の長期不況に基づきまして輸出が思うように任せない、したがって国際収支上大変困難に直面しておるのだ、そこで商品援助をぜひ御再考願いたいということを言ってきておることは事実でございます。この韓国の国際収支がどの程度困難なものであるか、これはいろいろな主観的な要素も入るわけでございまして、一概に結論をここで出すのはいかがかと思いますが、先ほど申しましたとおり商品援助はきわめてむずかしいという点は明らかでございます
  288. 東中光雄

    ○東中委員 商品借款を強く求める理由というのはそんなまどろっこしいことではなくて、結局韓国が自由にできる資金を援助する、資金を欲しいということなんですがね。商品借款を要求するというのはそういうことじゃないですか、どうでしょうか。
  289. 木内昭胤

    ○木内政府委員 韓国に限りませずあらゆる援助受益国にとりまして商品借款がきわめて便利なものである、プロジェクトの場合は長時日を、年月を要してようやく完成するのに対しまして商品援助は東中委員指摘のとおりの便利さというものがあることは事実でございます
  290. 東中光雄

    ○東中委員 だから、具体的な六十億というものの積算もしない、あるいはできない。要するに、自由な金が欲しい、その背景に向こうは安保絡みということを言っているわけです。そしてアメリカの議会では、韓国軍の近代化の促進のための経済援助という趣旨のことを言っている。それで、日本はできないと言うてるものを、借りたいという側がなお強引に商品借款を求めるというのは、軍備増強のためのあるいは近代化のためのあるいは安保絡みのという主張をとっていることは明白だと思うのです。借款を受けたいという方が、それはだめですと言うているものに対してなぜそこまで言うてくるのか。私は、これはあくまでも安保絡みということで、共同声明以後ずっとそういう線が貫かれているというふうに思うのでありますが、そういう点ではこういう軍事援助的なもの、これは断じて許せない。経済援助自体についても、たとえば金利の問題にしましてもそうでありますが、特別な扱いをする、そういうことは絶対にやるべきではない、こう思うわけでありますが、最後に外務大臣の御所見を承って質問を終わりたいと思います
  291. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 るる申し上げておるように、商品借款についての先方の要望はございますが、これはきわめて困難である、また私としてはそれをやる考えをいま持っておりません。  それから、東中委員がいろいろお考えの上で御質問されておりますが、十一のプロジェクトをごらんいただきますならば、上下水道であるとか、ダムであるとか、住宅建設であるとか、道路であるとかということで、そして地下鉄のようなものがたしか入っておりましたが、収益性のあるものは輸銀やその他のもので、基金にふさわしいものは上下水道などというようなことを回答しておるわけでございまして、一昨年韓国の経済がマイナス成長で困難に直面しておって、経済発展、民生安定に欠ける、こういうことで協力を求めてきておる、私はあくまでもその趣旨にのっとって考えておるのでありまして、どうも御質問を聞いておると大分お考えが違うなと、こう思った次第であります
  292. 東中光雄

    ○東中委員 日米共同声明、安保協議委員会での外務大臣の発言あるいはロング太平洋軍司令官、こういう動きを具体的に指摘をして、どうも額面どおりに私はお聞きするわけにはまいらない。何となれば、商品借款なんというようなものに何ぼでも固執しているところから見ても言えるのではないか、こういうことを申し上げたいわけであります。  時間ですから、質問を終わります
  293. 中山正暉

    中山委員長 高沢寅男君。
  294. 高沢寅男

    ○高沢委員 大変恐縮ですが、最後にきょうはわが党の土井委員を初め各委員から対韓援助の問題がずいぶんございましたので、それに関連して一問だけお尋ねして、これについてはひとつ木内局長のお答えと大臣のお答えをお願いいたします。  それは五十六年度の対韓援助の問題です。先ほど来大臣から総枠的なやり方はしないのだ、その年度年度でちゃんと単年度方式でやっていく、こういうお答えがあり、その点は私もよくのみ込めたわけですが、その際、いま問題の五十七年度のほかにその前の五十六年度もあります、こういう御説明があったので、五十六年度の援助というのはいま問題の五十七年度以降のものと私はおのずから性格は違うだろうと思います。その場合に、この五十六年度の援助額が幾らと決まってくる場合、いわゆる韓国から希望されておる各プロジェクトの積み上げでそういうものが決まるのか、五十六年度についてはそうではなくて、これはこれで何百億というふうな一括的五十六年度の枠組みで出されるのか、その辺のところは一体どうなのか、これは局長の御答弁、そして大臣の御答弁をお願いします
  295. 木内昭胤

    ○木内政府委員 現在、韓国と協議いたしておりますことは、先方が出してきました十一のプロジェクトについて、それから先ほど非常にむずかしいと申し上げました商品援助の問題について、この全体についてのやりとりをしておるわけでございます。すなわち、その中で円借になじむものは何であるか、輸銀になじむものあるいは市中の銀行の御融資になじむものは何であるか、そういうことについてのやりとりをいたしておるわけでございます。もちろんそれが総枠提示ということには相ならないことは何回も御説明申し上げたとおりでございます。  それで、このおおよその対応ぶりについて、あるいは韓国側が御納得いただいた場合には、そこで、最初に取り上げられますのが五十六年度の経済協力部分に相なるかと思います。引き続きまして五十七年度、五十八年度とそれぞれにつきまして先方と打ち合わせをいたすという仕組みでございまして、現在まで韓国との間で合意が達成されておりますのは五十五年度分まででございます。そこには具体的に医療協力、メディカルの医療協力、それから教育施設に対する協力等具体的、詳細に合意されておりまして、金額も金利も年月も合意されておるわけでございます。その方式にのっとりまして五十六年度分について何をするかということを今後韓国側と相談することに相なっておるわけでございますが、現在は、先ほど冒頭に申し上げましたとおり、十一のプロジェクトについて右からあるいは横からしさいに検討しておる段階でございますので、単年度主義に基づく合意であるところの五十六年度の御相談にまだ入っていない段階でございます。したがいまして、今後韓国との話し合いがつきました場合には、大筋での話し合い、進路がはっきりいたしました場合には五十六年度について金額、プロジェクト、条件等々打ち合わせます。そういう意味合いにおきまして、私ども答弁申し上げておりますとおり、単年度主義、プロジェクトに即した積み上げであるということで十分御納得をいただけるものと考えております
  296. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 木内局長説明で尽きるのでありますが、もう一点私がつけ加えておきたいことは、土井委員に何で五十六年の分があるということをつけ加えたかといいますと、私の就任が昨年の十一月三十日、その後すぐこの問題が起きて、それでもし話が早くつけば、その第一年分と言うなら五十六年であったかもしれない。  それからもう一つは、韓国の新五カ年計画は本年の一月から始まっておるわけです。ところが、日本の方の年度は三月末日までと、年度がそこのところが重なりますね。ですから、五十七年四月以降の五十七年の交換公文ということになるが、五十六年というものも昨年来懸案のままできておるので、五十六年の分もあるということを申し上げたのです。
  297. 高沢寅男

    ○高沢委員 一問だけと約束してお聞きしましたのできょうはこれであれいたしますが、また次の機会に十分聞きたいと思いますが、きょうのお話では、大臣はこの韓国の五カ年計画の援助要求に対する最初の答えとしてまとまれば五十七年度の交換公文をする、ただその際五十六年もありますよと、五十六年度というのは一種のおまけのような説明をされていたわけですが、しかしいまの局長説明によれば、そういう話がつけば五十六年度から始まる、こういうふうなことで、そこら辺にかなり位置づけの違いがあるやに思います。したがいまして、この点は私も十分問題として留保いたしまして、また次の機会にお尋ねをいたしたいと思います。どうもありがとうございました。      ————◇—————
  298. 中山正暉

    中山委員長 本日付託になりました細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約締結について承認を求めるの件並びに細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の実施に関する法律案議題といたします。  政府より順次提案理由説明を聴取いたします外務大臣櫻内義雄君。     —————————————  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約締結について承認を求めるの件  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の実施に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  299. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま議題となりました細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和四十六年の第二十六回国際連合総会の決議に基づき、昭和四十七年四月十日にロンドン、モスクワ及びワシントンにおいて作成されたものであり、細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生産、貯蔵等の禁止並びにこれらの兵器の廃棄により細菌剤(生物剤)及び毒素が兵器として使用される可能性を完全になくすことを目的とするものであります。  わが国がこの条約締結することは、軍備管理及び軍備縮小のための国際協力に貢献し、軍備縮小を促進すべきであるとのわが国の主張をさらに推進する見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約について御承認を求める次第であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。  次に、細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約の実施に関する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  細菌兵器生物兵器)及び毒素兵器開発、生産及び貯蔵禁止並びに廃棄に関する条約締結するためには、同条約の実施のために新たな立法措置を講ずることが必要であります。  これを受けて、本法律案においては、生物剤または毒素の開発等が認められるのは、平和的目的をもってする場合に限るとの基本原則を定めるとともに、生物兵器または毒素兵器の製造等を罰則をもって禁止し、また主務大臣は、平和的目的以外の目的をもってする生物剤または毒素の開発等を防止するため必要な限度において、業として生物剤または毒素を取り扱う者に対し、その業務に関して必要な報告を求めることができる旨規定しております。  以上が本法律案提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします
  300. 中山正暉

    中山委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  両案件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十三分散会      ————◇—————