運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1982-04-14 第96回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月十四日(水曜日)     午後一時三十三分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 愛知 和男君 理事 奥田 敬和君    理事 川田 正則君 理事 高沢 寅男君    理事 土井たか子君 理事 玉城 栄一君    理事 渡辺  朗君       石原慎太郎君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    佐藤 一郎君       竹内 黎一君    浜田卓二郎君       山下 元利君    井上  泉君       井上 普方君    河上 民雄君       小林  進君    林  保夫君       野間 友一君    東中 光雄君       伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 塩田  章君         外務大臣官房長 伊達 宗起君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中南米局         長       枝村 純郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      山口 達男君         外務大臣官房外         務参事官    中村 順一君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         農林水産省経済         局国際部国際企         画課長     松下 一弘君         農林水産省農蚕         園芸局果樹花き         課長      小坂 隆雄君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      赤澤 壽男君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ————————————— 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     阿部 文男君   東中 光雄君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   阿部 文男君     麻生 太郎君   寺前  巖君     東中 光雄君     ————————————— 四月十二日  婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関す  る条約早期批准に関する請願(林百郎君紹  介)(第二〇五六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上普方君。
  3. 井上普方

    井上(普)委員 私は先般関連質問で少しお伺いいたしたのでありますが、きょうは与えられた時間が一時間半ぐらいありますので、少しく日本外交基本についてお伺いいたしたいと思います。  その第一は、戦後もうすでに三十七年をけみしましたが、戦前外交失敗であったがために戦争に突入した、言いかえますならば日本外交はあの敗戦に対しても大きな責任を持たなければならないのではないかと私は思うのです。  近ごろたくさんの書物が出ておるようであります。あるいは外交専門家と称する外務省で生え抜いた人たちも本を書いておる。どれを見ても反省の色が余りないように私には思われる。  そこで、日本外交は一体あの敗戦をいかに反省し、その反省をいかに生かしておるか、この点をひとつお伺いいたしたいのであります。すなわち政策の上において、あるいはまた機構の上において、あるいはまた基本的な面において、あらゆる面においていかに戦前失敗というのを生かしておるか、この点についてお伺いいたしたいのであります。
  4. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ああいう悲惨な戦争経験を経た後の日本外交でございますから、日本外交基本日本の平和と安定のために努力をしよう、そして世界各国との間ででき得る限り円滑な話し合いを繰り返していこう、こういうことで臨んでおるのであります。ただ、日本が、戦後の経緯をごらんいただきますと、占領下から平和条約締結によりまして日本としての独立の道を歩む、こうなりまして、その際サンフランシスコ平和条約安保条約を結んでおる、こういうことから、そういうものが基軸になっておるということは言うまでもございませんが、根本の方針日本の平和と安定を期する、一言で言えばそういうことだと思います。
  5. 井上普方

    井上(普)委員 外務省機構の上においてはいかがでございますか。
  6. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣が言われましたような戦後のわが国外交基本的な立場というものからいたしまして、わが国の戦後におきます機構平和外交を基礎とし、国連外交ということも重視いたしましたし、それから経済協力ということについてもこれを一つの局として重視している、つまり国連局でございますとか経済協力局でございますとかいうもの、それから情報文化局文化交流という点も重視をいたしておりますし、移住者並び在留邦人の保護という点からも領事移住部というものもでき上がっているわけでございます。そういうような機構の変遷は、もちろん現在の姿は戦後直ちにでき上がったわけではございませんが、この三十年の時代の趨勢に応じまして基本的な平和外交という日本立場から変わってきているわけでございます。
  7. 井上普方

    井上(普)委員 日米安保基軸とするということについては私どもは異論を持っております。しかしこのことはさておきまして、歴代の各内閣基本方針を見ますと、国連中心主義を唱えた内閣もありました、あるいはまた福田内閣のごとく全方位外交と称するといって平等に置いた外交もありました。鈴木内閣になりますと日米安保条約基軸とし、しかもその上にもってまいりまして、何と申しますか日米同盟論というのを唱え始めておるのであります。私ども日米安保条約軍事同盟であるということを盛んに主張いたしましたけれども安保条約軍事同盟じゃない、こう言い続けてまいったのは御承知のとおりであります。しかし一昨々年でしたか、大平総理大臣が初めてアメリカを訪問した後の共同声明の中において同盟論というのを発表した。それを契機にいたしまして、鈴木総理が昨年参りますと同盟論を押しつけられてまいっておるのが実情じゃないかと思うのであります。  いま鈴木内閣方針日米同盟ということを中心にして外交が進んでおるように思われてなりません。国連中心主義はどこかに吹っ飛んでしまいますし、かつまた全方位外交、これも吹っ飛んでしまっているのが実情じゃないか。いま軍拡の声を盛んに奏でておりますアメリカ、あるいは米ソの対立、こういうことを考えますならば、まさに軍靴の足音が私らに聞こえてくるような気がしてならない。このときに日本は一体どうして日本の平和と安全を図るか、これこそ戦前外交反省の上に立って日本外交というのを展開してもらわなければ民族の将来は危ういことになる。いまの日本外交アメリカ追随外交と申しても過言じゃございません。そういう意味合いにおきまして、私は、いま三十七年前のあの敗戦ということをここに思い起こして、日本外交はいかにあるべきかということをお考え願いたいのであります。外交失敗したがために敗戦に追い込んだ、私はそのように考えるのであります。でございますから、私はこれから機構の面についてひとつお伺いしてまいりたい。  外務省機構職員録をいただきましてまず見ましたところが、外務本省には、大臣があり、政務次官があり、事務次官があり、その次に外務審議官があり、儀典長があり、続いては顧問というのがずらりと並んでいる。役人が役に立たぬから顧問をたくさん置いているのか、こう思いまして、どういう人が顧問をなさっているかということを見てみますと、大変な人がたくさんおる。堀田庄三がおる、永野重雄がおる、前田義徳がおる、土光敏夫がおる。何でこんなのを顧問にしなければいかぬのです。この名簿を見てみますというと、戦争前には枢軸外交を謳歌した人も顧問の中に入っておる。こういう人たちがなぜ顧問に入らなければならないのですか。それほど外務省というのは能力ないのですか。どうなんです。
  8. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  顧問と申しますのは重要な外交案件について諮問的な役割りを果たすということで設けられているものでございますけれども、ただいまお名前をお挙げになった方々もやはり非常に経験の深い方々でございまして、また、民間方々それなり民間の、外務省と違った経験意見もお持ちの方々であると承知いたしております。そういう方々意見をお聞きすることは、当面の外交問題につきましても、その判断を下したりあるいは政策を立案したりする際にきわめて参考になるものであるという観点からそれらの方々顧問をお願い申し上げているわけでございます。
  9. 井上普方

    井上(普)委員 顧問というのは、職員録に載っている以上、月給を出しているのですか、サラリーか報酬を出しているのですか。どうなんです。
  10. 伊達宗起

    伊達政府委員 顧問には、参与を含めてでございますが、約七十万円ほどの予算が計上されておりまして、主として顧問の方に報酬を差し上げているということになりますが、御指摘のように、人数が多うございますから、その額は非常に少ないものでございます。
  11. 井上普方

    井上(普)委員 参与も含めて二十人ぐらいおるのですか。その七十万円というのは一人に対してですか、全部、一年間でございますか。
  12. 伊達宗起

    伊達政府委員 一人に対してではございませんで、全部の方に対しまして一年間の予算でございます。
  13. 小林進

    小林(進)委員 関連。  ちょっといまの外務省顧問の問題に関連いたしまして、井上先生の時間を一分ばかりお借りして関連質問いたしますけれども、この前百人委員会とかというものができ上がった。あの内容は御存じでしょうけれども、正確なことは忘れましたが、安保条約を改定をするとかあるいは日本軍事力をもっと独立強化するとかあるいは憲法改正の条項もあったのではないかと思いますが、ともかく現わが日本政府の進み方と大変違ったコースを歩む内容中心とした百人委員会。ところがその百人委員会メンバーを見ていると、この外務省OBが入っている。しかもいま顧問のお話を承ってみると、法眼晋作などというのは外務省顧問。その彼が百人委員会のやはり有力な幹部メンバーの一人、むしろ発起人の一人といってもいいくらい有力な地位を占めている。それからいま一人は、またその法眼君の先輩加瀬俊一、これも顧問に入っているのじゃないかな。加瀬は入っていないかもしれぬけれども、ともかく外務省の有力なOBであることは間違いない。顧問でも、OBもそうだが、一応外務省の経歴につながる者であるならば、やはり一たん官地位を退いても外務省方針に基づいて動くのが、特に顧問と称せられる者の崇高なる道義的責任じゃないかと私は思う。その顧問と銘打たれた人が、日本政府が、総理大臣が繰り返しいわゆる安保条約現状でよろしい、しかも軍備縮小、核兵器の廃絶の方向へ先頭に立って歩む、憲法現状のままで十分だと言っているその中に、世論を刺激するようなこういう百人委員会あたり中心に座っていられるということは、外務省行政OBあり方、特に顧問あり方に私ども重大なる疑問を持たざるを得ない。外務大臣はこういう顧問の姿勢をどのようにお考えになっているのか。関連でありまするから、一問だけお伺いいたしておきたい。
  14. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いまお示しの方は、小林委員もおっしゃるとおりに、だれが見ても外交官としての豊富な識見を持っておられる、こういうことから、顧問にふさわしいということで委嘱を申し上げたものと思います。  ただ、百人委員会というのに名を連ねておる。これは最近にできたもので、顧問の方が入っておられるといたしますならば、その人の個人の発意でそういうところに参加をされたのじゃないか。私の記憶では、そういう百人委員会委員になっている人を顧問にしたということではなく、顧問の人で何かお考えがあって参加した、こういうふうに見ておるわけであります。
  15. 小林進

    小林(進)委員 関連でございますし、人の大切な時間を奪うということは政治家としての礼儀に反しますから私はこれでやめますけれども、いまの外務大臣の御答弁では私は納得することができません。  顧問であるからには、やはり外務省あるいは時の政府方針をきちっとわきまえて、その大まかなレールの上に乗っかった行動、発言でなくてはならぬけれども、いま百人委員会中心メンバーでやっていることは、政府方針とも外務省方針とも全く変わった逆な方向へ走っておる。反動的な、われわれに言わせれば日本を恐るべき戦争に駆り立てるような非常に危険な方向へ歩み始めているのでありまするから、したがって、名前の中に外務省OBあるいは顧問が入っているということで、その晩はうちの電話が鳴りやまないぐらい方々から電話が来た。これでいいのか、あなたも外務委員の一人だ、社会党としてもこれでよろしいのか、こういうあり方を承認するのかということで、一晩じゅう責められたという経験を持っていますが、それを外務省顧問地位を与えながら知らぬ顔してほおかぶりするということならば、これはまことに国民に対する挑戦ですから私は了承できません。私の質問順番が回ってきたときに改めてひとつ対決いたしますから、きょうは宣戦布告をいたしまして私の関連質問は終わります。
  16. 井上普方

    井上(普)委員 のみならず、この顧問の中には政治家衆議院に立候補し落選した人、こういう人もまた顧問に任命しているのであります。一体どういうことなんだ、これは。こんなことを平気でやっているのですか。外務省顧問といえば今度は肩書きがつくからということでやっているんじゃないですか。外務省先輩ではありますけれども、一度衆議院に出て志を果たさず、いま野に下っている人を顧問にしておる。麗々しく外務省顧問という名刺を振り回しておる人もおる。どうなんです。こういうことが行われておって、櫻内大臣どうです。こういうことをやっているんですよ。名前を私は申し上げませんが、委員長もこれを見られたらありゃりゃというお気持ちになるだろうと思う。こういうことで、こういうような神経で、先ほども百人委員会委員にこういうのが入っておって、そして日本平和外交を云々せられては、私はちょっとおかしいと思う。櫻内大臣、どうです。もう一度考え直す必要はございませんか。
  17. 伊達宗起

    伊達政府委員 選挙で落選をされた外務省OBの方で現在外務省顧問になっておられる方がいらっしゃるわけでございますけれども政治家としても十年近くの、あるいは何年か私ははっきり知りませんが、しかし相当長い御経験を経た外務省OBでございまして、その方が衆議院議員の資格を失われたということでも、しかし元外務次官としてやはり外交経験は非常に長い方でございまして、その上に衆議院議員としての御経験もあるわけでございますので、そういう面から外務省顧問としていろいろ御相談にあずかっていただくということは必ずしも不適当なことではないというふうに考える次第でございます。
  18. 井上普方

    井上(普)委員 大臣、あなたはどうでございます。あなたはこの顧問にお目にかかって抱負、経験を聞いたことはございますか。どうです。恐らくおありにならないんじゃないかと思う。
  19. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 就任以来、大変仕事に追われっ放しでして、いま御質問を受けてみて、多くの人に会ったり意見をちょうだいしておりますから、いま井上委員が頭に置かれておる方にもあるいはお会いしたか、御意見を徴したか、どの方を言われておるのかもはっきりいたしませんが、要するに毎日毎日多忙に打ち過ぎて、いまそういう御質問を受けてもちょっと私として十分な見識を持っておりませんので、よく顧問の顔ぶれを見たり、またいろいろ問題が仮に指摘されておればそれも頭に置いてよく調べてみたいと思います。
  20. 井上普方

    井上(普)委員 それは再検討される必要ありということを強く要求いたしておきます。  さて、次を見てまいりますと、名簿顧問参与というのがずらりと並んでいる。ほほうということで、これはどういう人かいなと思って見ますと、東畑精一さんなんという、これはもうお年寄りで、恐らく役職だけでも名誉職各種委員をたくさん持っておられる方だろうと思うし、御健康もすぐれぬのじゃないかという人がやっているのですね。(「名前を言わぬ方がいいな」と呼ぶ者あり)いや、結構、もう一つ言いましょう。土光敏夫、この人が顧問をされておる。いま臨調の会長をやっていばっている。あたかも日本には政治がない、あるいは政党がないなどというがごとく切った張ったのことをやられている。しかも臨調といえばこれは行政改革をやるためにどうすればいいかということを御研究になって提案を出されるのかと思うと、国の根幹にかかわる外交方針あるいはまた防衛問題にまでもくちばしを入れてきておるこの臨調の姿というのは私は納得がいきかねる。その人が堂々と外務顧問に入っておる。外務省顧問に入っておるからああいう日本外交方針にもくちばしを入れたくなるのじゃなかろうか。先ほど名前を言わぬことと言いますけれども、こういう連中が入っておるのです。財界の巨頭と称される連中がずらりと並んでおる。これはひとつ御再考をお願いしたいのであります。  続いてずっと見てまいります。そうしますと官房には官房長がおり、審議官がずらりと並んでいる。審議官というのはえらいおるなと思うと、査察担当、これは結構でしょうが、科学技術担当あるいは中南米局の次長であって官房審議官をずっとやられておる。この機構それ自体についてももう一度抜本的に考え直す必要があるのではないだろうか、私はこのように感じられるのであります。  続いてずっと見ていきますと、出てまいりました。官房の中に秘書官室というのがある。それから政務次官室総務課があって、続いては査察室があって、戦後外交史研究室というのがあって、その次に人事課というのが出てくる。その次には文書課というのが出てまいりまして、続いて出てまいりましたのが外交史料館というのが出て、外務省図書館が出てくる。その次に電子計算機室というのが出てくる。電信課というのがその次に出てくるのであります。  ここで私は、電信課というのを見てみまして、古い話でございますが、かつて日露戦争当時の電信課、あるいは日清戦争当時の電信課というのはもっとウエートが重かったのではないだろうか。日清戦争当時の電信課長はたしか田健治郎さんだった。えらい電信課というのは落ちたものだな、官房の中での地位というものがどんどん下がっておるんだなという感じがしてならないのであります。  さて、そこで私は電信課にどうして重きを置くかと申しますと、日米外交考えましたとき、昭和十六年のあの開戦前夜の外務本省ワシントン大使館との電報はほとんど傍受せられ、解読されておった。そして日本の手の内というものは、これまたどんどんと裏をかかれてきたというのは、当時の歴史を見れば明らかなところなんです。  外務省はもう少し電信課重きを置くのかと思いますと、官房の中の地位というものはどんどんと下がってきておるのが実情じゃないかと私は思う。それでなければ私は幸いだと思う。  そこでお伺いしたいのだが、この電信課というのは、暗号を組んで、そして各大使館等々に通信を送っておるわけでありますが、一体この日本暗号というのは世界に冠たるものがあるのですか。どれくらいの程度なんですか。ひとつこの点お伺いしたいのです。
  21. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  戦前におきまして、電信課長というのは、当時の電信技術というものが非常に先端を行くものとして、きわめて重要な電報電信となっていたわけでございますので、その意味におきましては、確かに電信課長地位外務省におきまして高かったということが言えると思います。かと申しまして、先ほど順番にお述べになりましたが、現在その順位が低い、官房に入っているから低いということではございませんで、やはり電信課長というのはそれなり重要性を占めております。すべての電報電信課長を経由して出たりあるいは入ったりいたしておるわけでございますから、その電信課長というものの配置には非常に気を配っているわけでございます。  また、暗号の点でございますが、戦前先ほど指摘のようなことがあったことも私も承知しておりますが、現在はその反省の上に立ちまして、非常に高度な暗号を組む技術を採用いたしております。それから、電信量が多くなりますと同時に、その機械もきわめて精緻なものとなっておりますので、用いる機械及びそのもととなる暗号というものは、恐らく私どもといたしましては、もはや解読不可能であるというふうに考えているものでございます。
  22. 井上普方

    井上(普)委員 戦前暗号もこれまた世界最高暗号である、決してこれは解読せられないであろうということは、日本役人あるいは海軍省役人もこれまた信用をしておった。ところがどうでしょう。ミッドウェーの敗戦はどうなんです。全部情報が向こうに筒抜け、暗号を盗まれておったじゃないですか。解読せられておった。外務省暗号だけじゃなくて、世界最高暗号と称した海軍暗号すら解読せられておったという歴史がある。まああなた方の採用されたものを私も信用しましょう。  しかし、エレクトロニクスが発達したので、外務省本省コンピューター室というのがある。これは虚偽であればまことに幸せだが、私は外務省の中にコンピューターがあるが、あのコンピューターは一体何をしているのだと聞いた。いや、あれはいま一番たくさん使っておるのは、たとえば小林進がこの前何を質問したか、いままで過去二十何年にわたって何を質問したか、ぽんとボタンを押したらさっさと出てくる。たとえば大出俊質問した、あれは過去に何を質問したか、何年何月にどういうことを質問したかというのが紙に出てくるというのに一番たくさん使っているのだ。まことに情けないなと私は思っておったのであります。それは国会答弁用に一番たくさん使うのだ。しまいになってくると、あんまり大出俊質問したのが多いから、一体このうちのどれをやるのだろうかといって迷ってしまうというように、国会対策にあの電子計算機が使われておるという話すら聞く。嘆かわしい次第です。これはそういうことがないことを私は期待いたしておるのであります。  そこで、わが国の状況から考えますと、これは自民党を問わず野党を問わず、海外出張をいたしまして、みんな帰ってきて言うのには、日本外務省情報収集が足らぬ、何とかもう少し情報収集をやるような予算はつけられないか、日本という国はこういう無防備な国である、ウサギと同じように耳を大きくして、そして常に世界情勢というものをキャッチする必要がある、これは政治をつかさどる者、国政をつかさどる者、異口同音におっしゃる言葉ではないかと私は思う。私もそう思う。  そこで、ひとつお伺いするのだが、たとえば外務省では海外情報をいかにして収集し、いかにして分析し、いかにしてそれを政策の上にあらわしておるのか、この点をお伺いしたいのです。
  23. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えいたします。  まず第一に、わが国情報収集が少ないということでございます。これは、いわゆる情報と申しましても、一種の諜報的なことはわが国は行っておりません。したがいまして、情報ということで公開の情報あるいは先方政府と接触した情報がその主体でございます。そして私自身の経験から申しますと、私が入りました三十年前の情報と現在の情報との質、量を比べますと、これは昔日の段ではなく飛躍的に向上したものと思います。  ただ、どのように分析をし、どのように蓄積をし、どのように外交方針の樹立に役立てているかということになりますと、それぞれ各地域局におきましてそれらの情報を受け取り、蓄積し、保管し、分析し、そしてそれぞれの地域局なりの方針というものを打ち立てていると同時に、片やまた現在外務省には調査企画部というのがございまして、各主管の地域局以外に、この調査企画部にすべての情報が集まるようになっておりまして、そこで専門的な見地から蓄積、分析を総合的に行っているのが現状でございます。  ただ、ここで私が申し上げなければならないのは、先ほど先生がコンピューターとの関連においておっしゃられたものと思うのでございますが、コンピューターを駆使して、いわゆる先端技術というものを駆使して、これらの情報の処理、蓄積、それから抽出と申しますか、そういうソフトの開発が私から見ましてもまだまだ不十分である、これからは大いにその面を開発していきまして、もっともっと情報機能を拡大していきたい、このように考えておりますので、ただいまの先生のお言葉は私は大変に激励のお言葉と思って、ありがたく拝聴いたしております。
  24. 井上普方

    井上(普)委員 官房長、私は激励の言葉ばかり言っているのだよ。間違わないようにしてもらいたい。外務省の間違っておるところは直せと言っているのだ。私は全部激励の言葉で言っているのだ。私のいつもの質問は憂国の至情にあふれたものだと承っていただきたい。この点はひとつ間違わぬようにしていただきたい。そこでおくれておるところ、情報を分析し、解析し、これをまた政策の上にあらわすのはおくれておる、まことに残念であります。この点はひとつ十分御留意してやっていただきたい。  さらに申し上げますならば、日本はこういう国でありますから、先ほども申しましたようにウサギのごとく長い耳を持って情報収集しなければいかぬ。これは私は諜報を言っているのではない。しかし少なくとも日本の、東京の上空は、ウィーン、レバノン、東京、この三カ所はともかく怪電波が行き交うので有名になっていることは私が申すまでもないことだ。少なくとも他国の電波をキャッチしてこれの解読をやるという技術は一体どこがやっておるのですか。
  25. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  現在私の承知いたします限りにおきまして外務省はやっておりませんし、その他の政府機関でもやっているということを聞いておりません。
  26. 井上普方

    井上(普)委員 外務大臣、いまの日本の置かれておる状況からして外務省がこれぐらいはやったって構わぬのじゃございませんか。先ほども申しましたように、戦争前夜のあの解読はアメリカの国務省がやっておるのですよ。これぐらいやったって構わぬことじゃないですか。なぜ怠っておるのですか。どうなんですか。
  27. 伊達宗起

    伊達政府委員 そういうことはやはり将来の問題としては考えていかなければならないかもしれませんが、耳を長くするという意味におきましては、公開の情報であっても私どもはまだまだ足りない面があると思っております。たとえば先ほど申し上げましたように対外的な折衝によって得た情報であるとか、あるいはさらに公開情報といいましても、新聞等による情報のみならずもっと在外公館におきまして、民間と申しますか、現地の人たちとより接触を深めることによってその民意なり人心の動向なりを察知するという面が非常に重要であろうと思いますが、その面では正直に申しましてまだまだ足りないところがあるのではないか。そういう面を拡充していくことによって、インテリジェンスと申しますかそういう面ではなくて、こういう情報社会でありますから相当のカバーができるものであろうと思います。
  28. 井上普方

    井上(普)委員 しかもいままでのお話によりますと、それをやっても収集してそいつを分析する能力がまたないのでしょう。情報文化局というのがある。これは一体何をやっているのです。こっちの本をつくって送っておるくらいですか、あるいは美術館とか展覧会をやるくらいが能のところだと思うのだが、ここらあたりやっておるのですか。
  29. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答え申し上げます。  情報文化局というのは情報という言葉を使ってあるので若干誤解を生じる言葉でございまして、いずれは機会があれば改めたいと思っておりますが、本来の意味の情報と申しますのは、先ほど申しましたように、各地域局がやっておりますし、それから調査企画部というところで国際情報を取り扱っておるわけでございます。情報文化局と申しますのはむしろインフォメーション、英語を使って恐縮でございますが、インフォメーション、広報という意味でのものと御了解願いたいわけでございます。したがいまして、現在の情報文化局におきましては、国内への、国民への外交問題の周知徹底を図る、啓発を図るという意味でいろいろなパンフレットも発行いたしておりますし、それから海外向けに日本実情の理解を求めるということで、海外へいろいろな催し物であるとか出版物であるとかあるいは視聴覚器材を使って広報をするということがございます。さらにもう一つは、在日海外新聞の特派員に対しまして、これとの接触を通じて日本立場を明らかにして世界に報道してもらう、そういうことでございます。それから文化面におきましては、国際交流基金というものがございまして、そういうものを監督しつつ文化無償協力、後進国に対する文化的な協力も行っている、そういう局でございます。
  30. 井上普方

    井上(普)委員 簡単にひとつ、情報文化局というのはPRの機関だ、こう教えていただけばわかる。ぐだぐだと長いことおっしゃっていただかなくても、それくらいで私はわかります。  そうすると、情報収集する機関は調査企画部とかなんとかいうところだけでやっておる。まことに嘆かわしい。どうです、アメリカにおいてもイギリスにおいてもドイツにおいても、外務省直属の情報収集機関を持っておるのじゃありませんか。どうなんです。
  31. 伊達宗起

    伊達政府委員 諸外国におきまして、外務省直属であるかどうかは別といたしまして、多くの場合恐らく外務省ときわめて密接な関係にあると思いますが、ただいまお挙げになりました国々は、いわゆる諜報機関というものを持っているというふうに承知いたしております。
  32. 井上普方

    井上(普)委員 私は諜報機関を持てと言っているのじゃない。先ほども申すように、一体他国はどういうような考え方をしておるだろうか、そういうものを知る必要がある。それを分析し、かつまた蓄積する必要がある。それが外交の上に生かされること、これが必要だと私は思う。その一つには暗号解読というのも必要でしょう。こういう点において抜かりはないのか。戦前のあの失敗経験を生かしてない一つの証左じゃなかろうかと私には思われてならない。大臣、いかがでございますか。もう少し日本外交が的確なる情報を積み上げていく、そして日本の繁栄と日本の平和を守ることに徹しなければならないと私は考えるのですが、いかがでございますか。
  33. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 今国会の冒頭におきまして外交方針の演説をいたした際に、外交機能の強化ということを強調したことを覚えておりますが、ただいまいろいろの角度から御意見をちょうだいいたしましたが、外交機能の強化の上に考えるべき問題がたくさんある、こう思いました。
  34. 井上普方

    井上(普)委員 恐らくここでそういうことをやるということは言明できないのかもしれません。しかし国を思えばやはり必要なものはどんどんとおやりいただかなければならないと考えます。私は、この問題はこの程度にしておきます。  そこで、いま櫻内外務大臣は本会議においての外交演説に触れられましたが、この点について一つ二つお伺いいたしたい。  この外交方針演説を見ておりますと、まず第一番にわが国を取り巻く国際情勢というものをお述べになった。このお述べになった国際情勢は、アメリカのレーガン大統領が言っておるのと余り変わらない。どこが変わっておるのですか。すなわち「ソ連の著しい軍備増強とこれを背景とする第三世界への進出に加えて、ポーランド情勢は、最近深刻化の様相を深めております。」あるいは第三世界に対しましても、これまたソ連の勢力が浸透しつつあります。中東に対してもしかりです。こういう国際情勢の前提に立って外交演説が行われておる。しかし、私ども考えますならば、去年、おととしまではそういうことはおっしゃらなかった。レーガンが出現してきて初めて、ソ連との対決という姿勢をはっきりと打ち出すことによって世界戦争の危機というのをあおり立て、軍拡の方向にまっしぐらに進んでおるのが現状でありますまいか。そういうレーガンの言うとおりをまず冒頭におっしゃっておられる。  そしてその後には何とおっしゃっておられるかというと、「わが国がこれら諸問題に受け身で対処するのではなく、世界の平和と繁栄のために主体的かつ積極的に貢献することが、世界から信頼される日本を築き上げていくゆえんであり、とりもなおさずわが国の安全と繁栄を確保していく道であると確信しております。」と、こうおっしゃっておられる。しかし、いまの日本外交を見まして、どこに日本の主体性があるのです。アメリカの言うままになっておる。アメリカ情報をそのままうのみにし、それによって外交方針が打ち立てられておるのが現状じゃありますまいか。どこに日本は諸問題を受け身で対処することなく主体的、積極的に貢献しておるのです。判断しておるのです。私ははなはだ疑問に思う。そうじゃないとこれに反論するお気持ちがあるならひとつおっしゃっていただきたい、外務大臣、いかがでございますか。
  35. 秋山光路

    ○秋山説明員 国際情勢の認識につきまして委員の方から指摘がございましたが、政府といたしましては、何もアメリカのレーガン新政権があらわれたからこういう基本認識で申し上げたのではありません。過去十五年ぐらいの傾向の上に立ちまして、世界情勢がいかに動いているかということの基本認識を述べた次第でございます。
  36. 井上普方

    井上(普)委員 外務大臣の演説をもとにして私は聞いておるのです。あんな小役人の言うことを聞いたってしようがない。外務大臣、いかがでございますか。例があればひとつお示し願いたい。
  37. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私が方針を述べましたのについて、それがレーガンの言っていることと同じだ、別に私はレーガン大統領がこう言っているから私の演説の中に取り入れた、そういう考えは毛頭ないのであります。いろいろお調べの上でどうも似ているな——これは自由と民主主義の価値観を共有しておる立場ですから、おのずから同じような見方をして御指摘のようなことがあるかもしれませんけれども、私は別にレーガンさんへ右へならえしたものでないですし、またそれではレーガンさんと違うところを言えと言われても、特にとりたててレーガンさんの言っているのと自分の言っているのはここが違うのだ、そういう認識は持っておらないのであります。外務省でいろいろ調査した資料のもとに、いまも説明があったように、何年間の国際情勢の傾向の上から日本としては大体こういう見当じゃないかというようなことから演説の草稿ができ上がってきておると思いますので、特に違ったところを言えと言われても、それもちょっと困るのですね。
  38. 井上普方

    井上(普)委員 私は違ったことを言えと言っているんじゃない。日本が主体性を持って積極的に外交をやったのは何なのだと言っているのです。あなたがおっしゃっているのだから。  さらに、あなたはレーガンと認識を同じくしているんだという意識は全然ないんだとおっしゃいますが、カーター時代の外務大臣の演説とレーガンになってからの日本外務大臣の演説とは違ってきているのですよ。このことは認めざるを得ぬでしょう。違うのですよ。国際情勢の認識におきましても、カーターが大統領であったときの外務大臣の演説と国際情勢の分析が違うのだ。だから私は言っているんです。  まだお伺いいたしたいことがたくさんあるんだが、もう時間がございませんから私は次にお伺いいたしていきたい。  この間も西ドイツあるいはフランスがソ連に対する経済制裁に協力してないゆえんを私は申し述べました。ドイツがポーランド問題に関しましてのアメリカからの強い要請にもかかわらず、自国の経済の発展のためあるいは欧州の平和のためにソ連と近づきつつある、こういう実情を私どもは認識いたしておるのであります。  時間がございませんから簡単に申し上げます。一月にはフランスのミッテランと西ドイツのシュミットが会談した。どういうことが言われたかというと、これは伝聞になりますのでどこまで正しいか知りませんが、アメリカのやつはドイツをどうもまだ占領国だ、こういう認識でもって対処してきておる、こういうことをシュミットが語ったということが私らに伝え聞かれておるのであります。それはそうでしょう。レーガン大統領になってから、欧州に対しては核兵器の配置が厳しくなったので、SS20が多くなったのでこの際ひとつ中性子爆弾をつくって、ドイツに配置すると言った。それじゃ困ると言いましたら、配置するときはドイツと協議をいたしますと言っていたが、昨年の六月か七月には無断で中性子爆弾の製造に踏み切っておる。続いては今度のSALT交渉であります。ともかく相当かやの外に置かれた状況が西ドイツにおいては起こっておるのであります。  ドイツあるいは西欧とアメリカとの間はぎすぎすした関係が生じておることは御承知のとおり。ところが、あなたのこの外交演説を見てみると、そういうことには全然触れてはおらず、ただ「日欧政治協力の一層の充実が大きな課題であります。」これをやって、「自由と民主主義という基本的価値観を共有する西側先進諸国との連帯と協調が不可欠であります。」こうおっしゃっておられる。しかし、西側諸国におきましてはアメリカの主導というものをいまや大きく疑問視しておる。そのあらわれがあの天然ガスパイプラインではないか。端的にあらわれてきておるのがこれじゃないだろうかと私らには感ぜられてならないのであります。欧州諸国は自国の平和ということをまず第一番に考える、安全ということをまず第一番に考える。日本アメリカと運命共同体だという認識のもとに、アメリカとともに倒れるというようなことがあったならば大変なことだ。西ドイツ、欧州諸国はそういう認識のもとに立って外交を展開しつつある。果たして日本はその点振り返ってどうだろうか、日本の安全のためにやっておるか、私は疑問符をつけざるを得ない。  一例を挙げるならば、これは外務省の諸君の先輩が言うたことなんだからはっきりしている。あの汚いベトナム戦争アメリカがやっておる最中に、あのベトナム戦争は正義の戦いであると堂々と言った皆さん方の先輩がおったじゃないですか。日本外交というのは、日本独自の目でもって、憲法にも言っております世界の正義と信頼にこたえるという道でなければならないと私は思う。いまの日本外務省の諸君がそういう気概を持って外交に臨まれておるならば、まことに幸いだ。一例を挙げれば、先ほど申しました、あの汚いベトナム戦争アメリカが介入したことは正しいんだ、正義の戦いだと言った人がこの外務省顧問の中におる、私は聞いたのだから。いまになったら、外務省の諸君も恐らくそういうことはないだろう、こういうことは言えないと思う。歴史がこれは証明した。アメリカの言っておることを道理ごもっともといって全部聞いてきた。これが日本の安全保障を守るゆえんであるかどうか、私は大きな疑問を持つ。そして、世界平和に寄与する道であるかどうか。  まあアメリカでは、いまになってみると、あの大統領に対しまして役人自体が、ピーナツ野郎とか何とかということを平気で言っている。私はそういうことは申したくはない。申したくはないけれども、大統領がかわるたびにがらりと方針が変わってくる。その中において、一体どうすればいいんだ。大統領がかわれば、そのとおり日本外交方針を変える、これであってはならないと私は思う。外務大臣、いかがでございますか。
  39. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いろいろ御所見をちょうだいいたしましたが、西側諸国、自由と民主主義の価値観を共有しておる立場で連携をしておる国々からいたしますと、何か一つ一つ事例を挙げると、ときに米独の間で意見の違う面があるとか、あるいは米仏の間で意見の違う面があるとかというふうなことが、これはそういう場合も出てくるかと思うのであります。しかしながら、西側全体として相互に連帯協調しておるということについては、私は間違いがないと思います。  お話の中に天然ガスのパイプラインのお話などが出ておりましたが、これは日本でも小松の敷設機についてアメリカ意見とは違う、既契約分はもう出すという姿勢をとる。ドイツやフランスの場合でも、既契約分について日本と同じような意見を持った、こう思うのでありまして、しかし、それでは将来に向かってどうか、こういうことになれば、ドイツにしてもフランスにしても、いまソ連のアフガニスタン以降の行動からすると、これに大きな戦力をつけるようなことはしないぞということになってくるのでありまして、御所見は御所見として承りますが、一概におっしゃるようなことではない、このように認識しておるわけであります。
  40. 井上普方

    井上(普)委員 天然ガスの問題は既契約の部分とおっしゃいましたが、それは間違っておるのじゃございませんか、一月に契約をまずフランスが結び、その次、ドイツが結んだのじゃございませんか。
  41. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 お答え申し上げます。  シベリアの天然ガスの問題については、いろいろ契約の段階がございまして、契約そのものが、たとえばガスの購入についての契約、それから設備の輸出についての契約、それから金融面についての契約、いろいろございまして、いまの一月の契約と申しますのは、ガスの輸入についての契約でございます。しかも、そのプロジェクトそのものは、大きなプロジェクトとして過去何年にもわたって西欧とソ連との間で話し合われてきた問題でして、どの部分まで契約が行われればそれが既契約かというような技術的な問題はございますけれども、西欧諸国としては、この問題は全体としては既契約、継続案件の問題である、こういう立場に立ってアメリカ側とも話を進めたというふうに承知をしております。
  42. 井上普方

    井上(普)委員 それは違う。ごまかそうとしたって、交渉はやっている、あたりまえの話。しかし、売買契約が一月にフランスと結ばれ、その次、ドイツと結ばれた。毎年毎年百億ドル、ソ連に代金を送るというのだから、アメリカが神経質になって、これはやめてくれということを再三言っておる。しかし、ミッテランは閣議におきまして、フランスは独立国としていかなる国の干渉も受けることなく自主外交をするのだと言って、アメリカの要求をはねのけてやった。あるいはまた、ドイツもしかりであります。売買契約ができなければ、これは何にもならない。日本じゃ、どうです。何ですか、パイプラインの敷設機一つくらいでいばったところで、話にならない。  いまアメリカと欧州との間には大きな溝が広がりつつある。これは率直に私どもは認めざるを得ない。いままでのように占領国扱いをするアメリカに対して反発が起こっておる。それは何かと言えば、先ほど来申しますように、欧州にもし戦火が及ぶならば、戦争する戦場になるのは欧州なんだ。われわれがともかく命がなくなり、焦土と化すのだという考え方に立っておる。日本だって、そうです。もし一朝事あるならば、アメリカが傷むより先に日本は抹殺されるのだ、焦土と化すのだ。そういう点からするならば、平和をこいねがうために日本のあるべき外交の姿というものがおのずから出てくると私は思う。ここに私は大きな疑問を待たざるを得ないので、申し上げておるのであります。  もう時間がございませんので、さらにもう一つ私は申し上げますが、経済協力経済協力というのはまことに何かいなと思って、この「経済協力の理念」という本をいただいた。書いてあるのを見ると、まことに無責任なことを書いてある。「序」として、本書は経済協力局の担当官でまとめられたので、外務省の公式見解ではありません、という本を出している。どういうことだろうなと思って、こう読んでいきますと、この中には、まことにおかしげなことを書いてあるのです。  八〇年代においては、あたかもその結果わき起った怒濤が狂奔して、果たしてそれが収まるのか、あるいは怒濤がさらに怒濤を呼ぶのか、見通しのきかない深い霧におおわれているかにみえます。しかしながら国際社会において大きな存在となった我が国は、この深い霧の中にただ佇むばかりであってはならず、積極的に霧を払い、道を開く努力を行って世界の平和と繁栄に貢献し、このような貢献を通じて自らの平和と繁栄を確保しなければなりません。 これは何を言っているのだ。ともかく、名文のつもりで書いたのか知らぬけれども、一体何だという書き方をしている。こういうことを書かれても私らはわからないのです、文学的な素養がないからわからぬのかもしれませんが。そこで、経済協力というのは一体何なんだということで私もずっと見てみると、「開発援助についての国際的な一般理念−人道的・道義的考慮と相互依存の認識」ということで書いてある。このことを一々どこが間違っておるか申してもなんでございますし、もう時間がございませんので、一つだけお伺いしたい。  私は、一昨年、キューバに参りまして、実情を見てまいりまして、百聞は一見にしかずとはこのことだなと思いました。あそこの民衆の生活は悲惨なものだ、だから国外亡命がたくさんあるのだというような情報に私どもは接しておった。しかし、あそこへ行ってみてまず感じたのは、これはえらい話が違うぞ、子供の顔色もよろしい、質素ながらかなりな生活を皆さん送っておる、中米の諸国とは違ってレベルが全部上がっておる、中においても保健とさらには教育にはえらい力を入れている国だな、こう感じたのであります。そして、かの国の外務大臣にお目にかかったときに、その外務大臣は教育の問題について非常に熱心に私どもに御説明になりました。日本に対して経済協力を頼んでおるのだ、中でも教育に対しての終済協力援助をお願いしているのだが、幾ら言っても日本政府は経済援助をやっていただけない。どうしてなんだろうか。ひとつお考え願えないか、こういう話なんだが、どういうわけなんだ。しかも、その計画自体は、ユネスコのもとに立てられた計画に沿って事業を進めておるのだけれども日本はこのことについては御理解がなくて、再三にわたって援助をお願い申し上げておるのだけれども、やってくれないのだ。岡田副議長のお供をして私どもは行ったのでありますが、こういう実績が上がっておることこそ援助をすべきじゃないだろうか。  帰りまして、外務省の某高官にこのことをお話ししましたら、いや、あの国はだめです。何でだめなんだと言って聞くと、あの国は政治教育をやっておるからだめだ、こう言う。政治教育って、おい、どのくらいやっておるか知っているのかと言ったら、いや、全部がそうでしょうと言う。私が聞いたところによると、中学の二年生の三学期に一時間ずつ政治教育をやっています、それまではやっておりませんという話は、向こう側さんがおっしゃるのだから、信用するかせぬかは別問題。しかも、ユネスコが計画し、教育に重点を置いている。中米においてはあれだけ義務教育が浸透した国はありますまい。あるいはまた、四〇%くらい文盲があったのを、もはや全然ないというくらいにまで撲滅させたあの国、民衆のレベルを高めることに懸命の努力を払っておる国に対して、日本の教育援助がない。一体どういうことだろうか。御再考を願いたいと私は思ったのでありますが、外務大臣、この点をひとつお調べになって、御研究になる必要があると思うのですが、いかがでございますか。
  43. 山口達男

    ○山口説明員 お答え申し上げます。  キューバにつきましては技術援助はいま行っておりまして、研修員の受け入れば行われております。ただし、いわゆる円借款等の政府開発援助につきましては、キューバの所得水準が比較的高うございます。キューバ側の社会総生産という概念で、GNPとは必ずしも一致しないわけでございますが、一人当たり二千五百ドルということになっております。したがいまして、政府開発援助の対象としては考えにくいというふうに考えておるわけでございます。
  44. 井上普方

    井上(普)委員 それでは政府開発援助は二千五百ドル以上の国についてはやらぬのですな。ということになると、対韓援助はどうなる。責任ある御答弁を願いたい。あんなチンピラはだめだ。大臣、対韓援助はどうなる。
  45. 中村順一

    ○中村説明員 御説明申し上げます。  ただいま山口説明員から申しましたように、政府開発援助と申しますのは、比較的所得水準の低い開発途上国に対して供与されるのが通常でございます。具体的にどのくらいの所得水準の国に対して経済協力が供与されるかということは、その都度判断されるわけでございますけれども、大体の目安といたしまして、たとえば千ドルを多少超えるくらいまでの国というものが、いわば一般的な目安になっておるわけでございまして、御指摘のキューバの所得水準と、ただいま御指摘のございました韓国の所得水準との間には、なおかなりの差があるという認識で考えております。
  46. 井上普方

    井上(普)委員 キューバの方が韓国より高いとお考えになっておられるのですか。どうなんです。
  47. 中村順一

    ○中村説明員 韓国の一人当たりの国民所得は、ただいま千五百ドル内外かと理解しております。
  48. 井上普方

    井上(普)委員 韓国の一人当たりが千五百ドルでキューバが二千五百ドルというのは、どこから出てくる数字なんです。
  49. 中村順一

    ○中村説明員 これは国連の統計に基づいております。
  50. 井上普方

    井上(普)委員 国連の統計に基づくという、その国連の統計は正しいとお考えになるか。あなた、キューバに行ったことありますか。韓国に行って、キューバと両方を比べられておっしゃっておられるのですか。どうです。
  51. 中村順一

    ○中村説明員 客観的な統計と申しますと、現在権威のありますのはやはり国連、あるいは世界銀行で作成する統計でございまして、各援助国も大体その国連あるいは世界銀行で調査、作成いたしました統計に基づいていろいろ判断の材料としているということで理解しております。
  52. 井上普方

    井上(普)委員 韓国が千五百ドルでキューバが二千五百ドルという数字には、われわれは常識的にも納得できない。こういうことを平気でおっしゃる外務省の皆さん方の認識がどうかと私は思う。まあ、それはともかくといたしまして、この教育援助についてはもう少し御努力を願いたいと思うのであります。  私は、ほかにもシーレーンの問題であるとかあるいは経済援助の問題等々について質問するつもりでございましたが、きょうは時間がございませんのでこの程度にさせていただきますが、どうかひとつ外務大臣日本外交をつかさどっておられるあなたといたしましては、日本の平和、日本国をいかにして安全に保つかということを中心に置いていただきたい。近ごろのアメリカの要求を見てみますと、無理難題を日本に言っておるという感じが私はしてならない、このことを深く御反省になっていただいて、日本外交の誤りなき方針を立てていただきますよう希望いたしまして終わります。
  53. 中山正暉

    中山委員長 次に、高沢寅男君。
  54. 高沢寅男

    ○高沢委員 私もまた時間がわずかでありますので、最初に韓国援助の問題を一、二お尋ねをして、それからほかの問題に移りたいと思いますが、ほんのポイントでありますから、これは大臣から御答弁をお願いしたい、こう思います。  これはけさの新聞によりますと、鈴木総理がきのう首相官邸に前田駐韓大使、外務省の木内アジア局長を呼んで、懸案の対韓経済協力問題については外務大臣の五月訪韓を念頭に政府案を詰めるように、こういうふうな総理大臣の指示があった、それでこれを受けて外務、大蔵の関係省庁の最終的な調整がいま行われておる、こういう記事でございます。これは大臣からお答えいただきたいのですが、外務大臣は総理から、五月にあなたは訪韓して韓国の援助に決着をつけるように、こういう指示を受けられたかどうか、そこをまずお尋ねいたします。
  55. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 前田大使と木内局長が総理に会われたときに総理がどのようなことを申されたかは私は聞いておりません。ですから、新聞記事のことは私は承知をしておらないわけでございまして、ただ私が申し上げられますことは、四月一日に日本側の作業を検討した結果を中間回答として韓国にいたしており、それに対して韓国がいろいろ意見を申してきて、その意見に基づいた検討がいま行われつつあるわけであります。そういうことが進んで、そして私が行くべき時期が来て行く、それが五月ごろが連休で行くのではないかということが取りざたされているわけであります。作業が進んでそういう時期が来ればもちろん行くわけでありますけれども、特段作業がまだ進んでおるわけでもございません。恐らく総理としては好もしい姿、あるいは好もしい検討というものを、仮に言われたとしたらばそういう見地のことを言われたのかな、こう思いますが、直接私に五月に行くよう準備せい、こういうようなことはございません。
  56. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、これもまた大変奇異な感じを受けるわけですが、あなたの指揮下にあるアジア局長外務大臣の五月訪韓ができるように取りまとめをしろ、こういうふうに総理から言われておる、そのことをあなたは、新聞には一応そう書いてあるが、私は知りません、一体こういうことが成り立つものかどうか、これが一つです。  もう一つは、この新聞の記事によれば、外務省は大蔵省との間に四十億ドルでひとつまとめようというようにやっておられると、こう出ておるわけですが、あなたの部下が四十億ドルでまとめようとやっているこの作業をあなたは御承知なのか、それでやれと言っておられるのか、それにはあなたは反対なのか、これは大臣いかがですか、御答弁願います。
  57. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 総理との話を私はこういう話を受けておりますというように聞いてはおらないのです。ですから、そういう話が出たとするならばということでいまのような私なりの見当を申し上げたので、総理が私を呼んでどうとかそういうことはないのが事実でございます。  それから、しょっちゅう新聞でいろいろ数字が出るのでありますが、これはこの委員会でも、予算委員会でも、本当にもう何遍お答えしたかわからないほど申し上げておることは、たとえば今回の中間回答はどうか、その中間回答に際しては韓国側が十一のプロジェクトを示しておる、その中で収益性の上がるものは輸銀で考えられる、それからそうでないもので政府借款でいけるものはこういう見当だということを申し上げたのでありまして、その申し上げた結果をいろいろ推定してその数字をくっつけるという場合が、それは私もそんなことでああいう数字が出るのかなと思うのですけれども、私からこういう見当でまとめるとかそういうことを言ったことはありません。
  58. 高沢寅男

    ○高沢委員 そういたしますと、あなたの部下の木内局長は大蔵当局と四十億ドルでまとめよう、こう言って作業をしておると新聞に出ておりますが、そういう事実はないということなのか、そういう事実はあるがあなたは御承知ないということなのか、そういう事実があればそれでやれというのか、それはやめておけ、四十億ドルは多過ぎる、こういうふうにお考えなのか、大臣、それを聞かしてください。
  59. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大体そういう数字が先ほど言ったように推定でどんどん書かれるのでありますが、現に韓国側から商品借款を考えてくれないのかというような回答が来ておる、これは事実なんです。それからプロジェクトの振り分けをしたことは事実でありますけれども、それじゃそれが合計幾らということはいまだ一遍も私のところへ上がってきたものでないのです。だから現在の作業というのは、そういう韓国側の回答に基づいて、その中で妥当なものがあるのかないのか、これはどうしても日本としては考えられないものなのかどうか、そういうようなことは、私は作業はしておると思います。
  60. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、次がありますから、この点について結論として。  もう大臣も御承知の前園田大臣以来、対韓国の援助ではいわゆる総額方式はとりませんと繰り返し言っています。各プロジェクトをこちらから見て、これは妥当な、援助の対象にしていいというものを積み上げた結果がどうなるかは結果で出てくることであって、まず先に何十億ドルという総枠を決めるようなやり方はしないと繰り返し言っておられるわけです。いまの大臣のお答えでは、まだそういう総枠をあらかじめ決めてやっているわけではない、こういうお答えと理解いたしますが、今度の対韓国問題は、この立場は絶対に変えてもらっては困る、そういうことでもってやらなければいかぬと思いますし、同時に、新聞記事によると、今度は経済界の協力関係で韓国の韓日経済委員会委員長が来て、この委員長は、いまの韓国の置かれた立場から、国防費の負担が重い、だから日本からもらいたいのだ、こういう言い方をしております。これは、明らかにいま問題になっておる経済援助は経済という名前はついておるが実際上の軍事援助の変形であるということをちゃんと語るに落ちているわけですが、そういうふうな性格の援助は絶対にあってはならぬ、こう考えるわけでありますが、この発言については大臣、いかがお考えですか。
  61. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 すでに本委員会で土井委員のお求めに応じまして、こういうプロジェクトを申し越してきておるということを資料として差し上げておると思います。それをごらんになりますれば、いま御懸念になるような、そういう該当するものはないと私は思います。  それから、韓日経済協会の朴泰俊と言われる会長さんがお見えになっておる。また、第十四回の日韓合同民間経済委員会が開催されておることも承知しております。その朴会長はきょう夕方私を訪問する、こういうことで、それはお会いしましょうと言っておるところでございまして、この朴会長がどのようなことを言ったか、それは私はいま承知しておりません。
  62. 高沢寅男

    ○高沢委員 それでは、この問題はまた今後もずっと継続して動きのある問題ですから後ほどに譲りたい、こう思います。  そこで、きょう大臣にもう一つお尋ねしたい問題は、実はアメリカと中国の関係であります。これは私はけさのテレビのニュースで聞いたのですが、アメリカ政府はきょう何か議会に対して台湾に対する武器の売り渡しを提案する、あるいはしたというのかな、そういうニュースをけさお聞きいたしましたが、そうなってくると、これがいまアメリカと中国の間の非常な対立の問題になっておるわけですが、このことについて大臣は状況をどういうふうに掌握されているか、まずそれをお尋ねしたいと思います。
  63. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 アメリカ政府が十三日、議会に対して台湾に対する六千万ドル相当のスペアパーツ売却に関して正式の通報を行ったということは事実でございます。かねて台湾に対する本件スペアパーツ輸出の意向は明らかにされておるわけでございますが、この六千万ドルという額になってまいりますと、それは議会に対して通報しなければならないというのがアメリカにおける取り扱い上の措置だと思うのであります。そこで、先般来この問題に対する中国側のいろいろな意向というものが機会あるごとに表明されて、その結果米中関係がうまくないというようなことを聞いておりますが、私はそういうことがアジアの平和安定の上に米中関係が損なわれていくようなことではいかがかというようなことで、すでに両国の国交回復がされて以来の懸案事項でもありますから、ひとつアメリカに対しても中国に対しても、これはもうひとつよく話し合って無理のないようにしてもらいたい、アメリカ政府はこのスペアパーツの売却ということについて、これはあくまでも文字どおりスペアパーツであってこれは武器とは考えないような、そういう意向を表明もしておりますから、この両国の間でもっと腹蔵のない話し合いを期待しておるというのが、いまの私の立場でございます。
  64. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣アメリカに台湾関係法という法律があることは、大臣も御承知だと思います。この台湾関係法という法律は、米中の国交回復がされてアメリカと北京の政府の間の外交関係が樹立される、するといままでのアメリカと台湾との外交関係は切断された、そのときにこの台湾関係法という法律がアメリカでつくられたわけです。この法律を大臣もごらんになったことがあると思いますが、私も実はそれを外務省からもらって勉強いたしました。それによりますと、この台湾関係法の中にはこう書いてあるのですね。「台湾地域における平和及び安定は、米国の政治、安全保障及び経済上の利益であり、また国際的関心を有する事項であることを宣言する。」つまり、台湾地域の安全はイコール・アメリカの安全である、こういうことでしょう。  こういうふうな立場に立って、台湾に対して防御的な性格の武器を供与するということがこの台湾関係法の中に書いてあるのです。それによって今度の六千万ドルは出てきておる、私はこう思いますが、そうすると、この六千万ドルは部品、パーツであるから武器ではない、そういう認識をいま大臣が述べられたが、これはこの台湾関係法から見てまさに武器そのものじゃないですか。武器そのものだと私は思います。そうして、そういうことをアメリカがやると、これは作用、反作用の関係で言えば作用です。それに対して、今度は中国は反作用で、そういうことはわれわれに対する内政干渉だ、二つの中国をつくるものだということでそれに抗議する。こうして、いま米中関係というものは外交上大変不協和音が出て、どうなるかわからぬというふうな状態が生まれているわけですが、ここの認識はさっき大臣のお答えになったことは少し違うと私は思いますが、もう一度大臣の認識をお聞きしたいと思います。
  65. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私の認識を申し上げたのじゃないのですね。スペアパーツに対して米政府がそういう見解も言われておることでありますし、私は米中関係がまずくなるということはアジアの情勢の上からいかがか、こういうことで米中が腹蔵のない意見交換をして、そしてこの問題で溝のできないことを、これは私が期待を表明しているわけなんですね。  また、御指摘になった台湾関係法については、米側が、これは大統領といえどもこの関係法には束縛されるというようなことは言っております。したがって、アメリカとしては対台湾の関係上重要な基本的な法律だ、こう私もそれは承知しております。
  66. 高沢寅男

    ○高沢委員 アメリカと中国の関係が対立的な関係になるということはアジアにとって好ましくない、そこでとにかく両者そういうことのないように話し合ってくれ、こういま大臣が言われたわけですが、この場合大臣が物を言う相手はアメリカと中国のどっちに物を言うべきかといえば、これはアメリカじゃないですか。アメリカが台湾関係法という法律をつくって、かつて台湾の国民政府と国交を結んでいたそのときと同じ既成事実をずっと続けようというのが、この台湾関係法の本来の目的でしょう。そのことは、中国から見れば明らかに台湾をいわば国交の相手と同じような取り扱いをすることによって、実際上の二つの中国というやり方になる。その最も許しがたいのは、それに武器を与えるということで、いま中国側が大変これに対して怒っているというのが現状でしょう。したがって、こういう事態を避けるために日本外務大臣が物を言うとすれば、中国に対して、あんたあんまり怒るなよ、アメリカが台湾に武器をやったからってそんなことで怒るなよ、こういうことを言うものではなくて、アメリカに対して、台湾に武器をやるようなことはやめなさい、これをこそ日本外務大臣は言うべきじゃないのか、こう思うわけですが、大臣いかがですか。この間アメリカに行ったとき、アメリカのレーガン大統領やヘイグ国務長官、そういう人たちとそういう話をされたのですかどうですか。これは私は大臣の御答弁を求めます。
  67. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 訪米の際にヘイグ長官から米中関係についての説明がございまして、そして先ほど私が申し上げたように、これは台湾関係法に基づくので大統領としてもそれに制約される、そういう説明がございました。そこで私は、米中関係がまずくなるということはアジアの情勢上感心しないので、ひとつ腹蔵のない話し合いをされて友好関係が維持されることを期待するということを申し上げたわけであります。
  68. 高沢寅男

    ○高沢委員 昨年の九月、この外務委員会の自民党の奥田委員、昨年は外務委員長をされておりましたが、この奥田外務委員長と一緒に私も実は中国へ行ったわけです。そして中国の人たちとの話し合いをしたわけです。台湾問題というふうなことで相当突っ込んだ話をした相手は、中日友好協会の、会長は廖承志という人ですが、副会長の張香山という人がいるのです、この人は中日友好協会の実際上の中心的な実力者、こう私たちは見ておりますが、その人とのいろいろなやりとりの中でこの台湾の問題が出ました。この張香山氏は、アメリカが持っている台湾関係法というあの法律はまさに中国に対する内政干渉そのものであるというふうなこと、あるいはまた、これに基づく台湾に対する武器の供給は中国としては絶対に承服しない、これは絶対に妥協のできない原則上の問題であるというふうなことを非常に強く言っておられました。しかし、それが今度は、レーガン政権によって六千万ドルの武器供与が行われるというふうになってきたわけですが、このことを受けてのこれからのそれに対する中国の反作用の出方がどうなるか。これはなかなか予測しがたいいろいろな問題が出てくるのじゃないのか、そのことがいわゆるアジアの安定、平和という問題についてまたいろいろな波紋を起こしてくるのじゃないか、こう私は思うわけです。そういたしますと、この昨年われわれが行ったときの中国側との話し合いの報告等も含めまして、これは一体日本政府立場としてはどうやるのがアジアの平和のために最善の道であるとお考えか、大臣、もう一歩踏み込んだお考えを聞かせてもらいたいと思います。
  69. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 中国においてもこの問題に対する非常な懸念を持っておるということは、昨年の日中閣僚会議の際にもそういう意向表明がございました。また、先般の事務レベル会議で符浩外務次官がお見えになってやはり非常な懸念をされておることを承りました。  しかし、日本としてやるべきことは、これは米中国交回復以来の経緯のある問題でございますから、私は、国交回復当時からの問題であるそのことは、決して両国が真剣に話し合って解決のできない問題ではない。すでにある期間経過して、その間じゅうあった問題です。だからアメリカが、先ほど言ったようなスペアパーツということについての見解を述べたりしておりますから、日本があっせんの労をとるという、そういう立場ではないと思うのですね。  ただ、高沢委員の懸念されるように、このことで両国の溝が深まってアジア情勢に影響が出てくるということは日本としても大きな関心を持たなければならない。そういうことから、何としても両国の間の話し合いが円満にいって友好関係が維持されること、これをこいねがっておるわけでありますから、そういう角度で、両国から何かの機会にいろいろな発言があるときには、必ずいま言うことを繰り返し申し上げておる、こういうことでございます。
  70. 高沢寅男

    ○高沢委員 最近、これはいろいろな観測報道でありますから事実の関係はどうかわかりませんが、いまの中国の政権の内部にもずいぶん、一種の勢力争いであるとかあるいは対外路線についての意見の違いがあるやに伝えられておる。そういうふうな中国内部の問題に、この台湾問題が、それについて一番敏感な一番重大な問題として中国でとらえられることに現になっておる、こう言われておりますが、恐らくそうじゃないかと思います。そうすると、この台湾問題というのは、米中の国交回復が行われたということの、よく言われるたとえ話で言うとのどに刺さった骨、この台湾問題は米中関係ののどに刺さった骨で、これは相当に太い、痛い骨になっておるということではないかと思います。そういう中からアジア・極東地域で思わざることが起きてくるというようなことをも私は心配いたします。  最近のフォークランド諸島の問題のイギリス、アルゼンチン、ああいうことも、われわれ素人としては、あんなことはゆめにも思わなかったようなことがある日突然起きてくるというふうな経験を現にわれわれしていますが、そういうふうなことが、この極東地域あるいは台湾地域でいつ起こるかしらぬ、そういう不安感を私はこの問題の中で非常に持つわけであります。また、そういうことになってはならぬ、なるべきではない、こういうふうな立場からすれば、この際、私が大臣にお願いしたいことは、日米関係でずいぶんアメリカ日本に対して言いたいことを言っております。もっと飛行機を買え、もっと軍艦をつくれ、一千海里の航路帯はこうしろ、いろいろ言われておりますが、日本も少しはアメリカに対して言いたいことを言ったらどうですか。  この台湾関係法、特に台湾に武器を供与する、このことはアメリカはやめろ、やめなさいとはっきり言ったらどうでしょうか。そういうふうなところから本当のアジアの平和の道が出てくるのじゃないのか。私は、櫻内外務大臣日本外交歴史に残る一つの思い切った決断としてそういうことをひとつやってもらいたい、やるべきじゃないか、こう思うわけですが、最後にその御所見をお聞きして終わりたいと思います。いかがでしょう。
  71. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は、この問題についていろいろ両国がそれぞれの角度で懸念をしたお考えを示すとか意向表明がある、その都度、繰り返し友好維持、話し合いということを申し上げておるのでありまして、その同じことを繰り返して言っておるうちに、やはりそれはそれなりの一つの日本の行き方である、私はこういう認識のもとに、この段階でも、米中がこの問題で溝をつくるということは決して両国にとって好ましいのではないのですから、また、国交回復以来の経緯を考えますならば、必ずやその話し合いができるものと、このように信じておるわけで、そういう姿勢を引き続きとってまいりたいと思います。
  72. 高沢寅男

    ○高沢委員 終わります。
  73. 中山正暉

    中山委員長 次に、玉城栄一君。
  74. 玉城栄一

    ○玉城委員 第八回目の先進国首脳会議がフランスのベルサイユで六月四日から三日間開催されることになっておるわけですが、開催国であるフランスのミッテラン大統領も本日来日されるわけであります。当然、首脳会談において、ベルサイユ・サミットについても意見の交換がなされると思います。この点、一点お伺いします。  もう一点、このベルサイユ・サミットについてですが、現在、世界的に経済不況、南北問題、東西の軍事的緊張問題等々きわめて困難な問題も多いわけですが、今回のベルサイユ・サミットの主要議題として、日本側としてどういうことを考えていらっしゃるのか。あわせて二点お伺いをいたします。
  75. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在まで明らかになっておりますことは、首脳会談の折に何か個別の問題を協議する、そういうことはなく、大所高所から国際情勢全般について腹蔵のない意見交換をしよう、こういう方針であるわけでございます。  ただ、そういう方針の中で想像されますものは何か、こういうことになりますと、ベルサイユ・サミットとかあるいは特別軍縮総会に臨むについて相互に意見を交わされる、こういうことは想像ができると思います。
  76. 玉城栄一

    ○玉城委員 この六月に行われますベルサイユ・サミットについてなんですが、経済問題のほかにポーランドあるいは対ソ政策などのいわゆる政治的な問題も議題になるのか。  昨年の第七回オタワ・サミットは政治サミットと言われまして、きわめて政治的な色彩の強いサミットであったわけですね。初めてソ連の軍事力増強に対する西側の強力な防衛力の必要を認めた政治声明が発表されたわけですが、今回のこのサミットにおいても、このような政治的な声明が出される見通しなのか、あるいは今回はそういう政治声明的なものは出ないという見通しなのか、外務省としてはどのように判断しておられるのか、お伺いいたします。
  77. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ベルサイユ・サミット開催につきまして、すでに二回準備会議が持たれておりまして、この後、もう二回予想されます。その準備会議でどういう問題を取り上げるかということが協議されるのでありまして、現在のところまだ結論に達しておらない、そういう段階でございます。
  78. 玉城栄一

    ○玉城委員 協議はそのとおりでございますけれども大臣とされて、私が先ほど質問申し上げましたような前回のサミットからしまして、今回もそういう政治的色彩の強いサミットになるのかならないのか、見通しについてどのように考えていらっしゃるのか。
  79. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 オタワ・サミットにおきましては、議長サマリーで政治問題についてのオタワ会議での先進国首脳の意向を取りまとめた、こういうことでございます。  そこで、今回はミッテラン大統領が議長をお務めになりますから、そういうお立場から、今度の鈴木・ミッテラン首脳会談を踏まえ、あるいはいまのこういう国際情勢の中にありまして、やはり議長サマリー考えよう、政治問題は取り上げようと、これは、これからのことではございますが、そういうことも想像できることではないか、こう思うのでありますが、いまの段階で結論的なことを申し上げることは、これはあくまでも先進国首脳の会議なんでありますから、私がとやかく言うのは軽率かと、こう思います。
  80. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、このサミットについてもう一点お伺いしておきたいのは、米欧側は貿易問題と絡んでわが国に対し、西側の一員としての防衛努力を一段と要求されるような心配はないのかあるのか、いかがでしょうか。
  81. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いわばサミットは経済サミットとまで言われるのでありますから、当然貿易問題については掘り下げた論議が行われる。その間にどういう意向を表明されるかということになっていくわけでありますが、また同時に、鈴木総理はかねて来、世界経済の再活性化を考えなければならない、それが今度のベルサイユ・サミットにおいては非常に大事なことだ、こういう御意向は言われておるのでありますから、恐らくそういう世界経済再活性化というようなことが正式に取り上げられて、協議されるのではないか、その方向から考えていきますと、日本に対して直接ないろいろ討議なのかあるいは全体的な討議なのか、これもいま即断するのは早いのではないか、こう思います。
  82. 玉城栄一

    ○玉城委員 このサミットにおいて、わが国に対して防衛力増強を要求される心配はないというように受け取っておきたいと思います。  次に、いま大きな問題になっておりますフォークランドの紛争の問題についてなんですが、アメリカのヘイグ国務長官もアルゼンチン、イギリスを往復されながら、今回もうすでにワシントンに帰国をして、この軍事的な衝突回避のために真剣にやっておられるわけですが、そこで、現状について、外務省、この紛争問題についてどのように把握しているか、見通しをお伺いしたいと思います。
  83. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 いま御指摘のとおり、四月八日以来、ヘイグ国務長官がいわゆるシャトル外交と申しますか、活発な外交を、仲介の努力を展開しておられるようでございます。仲介の努力というのは必ずしも順調にもいっていないという報道もございますが、アメリカ側からいろいろな筋で伝わってまいります情報によりますと、そういったものを通じて外交解決のための枠組みのようなものは生まれてきている。ただ両者の間の対立というものはまだなかなか距離があるのでそう簡単ではない。御承知のように、一たんワシントンに帰られて、アルゼンチン側が特に真剣に検討していることを期待しつつ、時期を見てまたブエノスアイレスに向かう、こういうことでございます。わが国としても英国、アルゼンチンそれぞれに、真剣にこの問題についての解決のためにヘイグ長官のせっかくの仲介を十分利用されたいという希望は申し述べておるところでございます。  他方、英国の艦隊が四月の五日に発進いたしまして現在南下しているわけでございますけれども、またその間に、四月の十二日以来フォークランド海域周辺に戦闘水域、正確に申しますと海上排他水域というように訳すのがよろしいかと思いますが、そういったものが設けられておるということでございますけれども、これは大臣がアルゼンチン大使に申し入れをいたしましたときにも、アルゼンチンの大使の方からは、ヘイグ長官の仲介に敬意を表してという表現でございましたが、現在アルゼンチンの主要艦艇は本土に引き揚げておるということでございますし、また軍事的に見ましても、恐らく英国の原子力潜水艦がすでにあの水域に到達しておると思いますので、当面アルゼンチンの海軍があの辺に艦艇を派遣するということはないのではないかというふうに考えます。したがいまして、直ちに軍事衝突に至るということではない、時間的な余裕はあるのではないか、何とかひとつその間にヘイグ長官の仲介を中心に平和的な解決が達せられるべきではなかろうか、われわれとしてはアルゼンチンのああいう武力行使ということは非常に残念であり、とにかく撤兵を実現してほしいということを基本的な考え方といたしながら状況を見ておる、こういうことでございます。
  84. 玉城栄一

    ○玉城委員 軍事的衝突というのは当面ないだろう、大変そのとおり願うわけであります。  ちょっと確認しておきたいのですが、イギリス側からわが国に対してアルゼンチンに対する制裁措置を正式に要求してきたが、前回の委員会だったと思うのですが、わが国としてはそれには同調しない、現在でもその態度は変わらないのか。
  85. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 かねて明らかにいたしておりますように、四月七日にサッチャー首相から鈴木総理あての親書が参りまして、その中で武器の禁輸を初め若干の経済的な措置をとってアルゼンチンに圧力をかけることに協力してくれないか、こういう内容があることは事実でございます。これに対しましては、私ども先ほど申し上げましたようなアルゼンチンの撤兵が先決である、この撤兵を強く求める、こういう立場をとり、かつヘイグ長官の仲介というものに期待いたすわけでございますけれども、武器の禁輸措置というものは、これはアルゼンチンに対しましても武器の輸出を慎むという基本的な政策はそのまま適用される、これは当然でございます。また、経済的な措置につきましては、現在のような危機が長引く場合には、日本政府及び民間のアルゼンチンの経済の将来に対する信認が揺らぐことによって日ア経済関係というものにも悪影響を及ぼすであろう、こういった趣旨の通告と申しますか懸念をアルゼンチン側に強く表明してきておる、こういうことでございます。
  86. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、戦闘水域、海上封鎖を英国はやるんだ、そのことについてはわが国に対しても通告は正式になされているわけですか。
  87. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 そのような通告を受けております。
  88. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで日ア関係にコウリャン輸入契約があると思うのですが、その数量と、それはわが国コウリャンの輸入量の総体のうちの比率としてどのくらいなのか。これは聞くところによりますと四月から六月にかけてわが国船舶がその輸送に当たる、そういうことでの支障はいかがなものですか。
  89. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 アルゼンチンからの穀物、この中の主たるものはコウリャンでございますけれども、金額にいたしまして一九七九年には三億ドルほど輸入しておりますし、八〇年にはこれが千五百万ドルぐらいに減ってはおります。これは恐らくコウリャンの収穫が思わしくなかったとか、あるいは品質の問題があったとかいうこともございますし、またソ連向けの輸出というようなことで振りかわったということもございます。したがいまして、数量的にはかなりの振れがございます。私ちょっと、全世界からの輸入の中でアルゼンチンのコウリャンの占める割合というものを手元に持っておりませんが、かなり重要であることは事実でございます。
  90. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは私たちが調べたのでは、百五十万トン中約四〇%ぐらい、アルゼンチンからわが国に輸入しているということです。その点の心配があるわけです。  それで海上封鎖についてイギリス側からわが国に対する正式な通告があったというお話がありましたが、それは簡単に、どういうことなのか。この海上封鎖ということは本来実効性が伴わなければ意味がないのじゃないかと思うのですが、今回のイギリス側の海上封鎖について、そういう実効性を伴った海上封鎖であるのかどうか。外務省としてはどのように認識をされているのか。したがって、さっき御質問しましたコウリャン、それ以外にもあるかもしれませんが、その心配はないのかという点を含めてお答えいただきたいと思います。
  91. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 この海上排他水域と申しますのはいわゆる封鎖ではございませんで、四月十二日のグリニッジ標準時で午前四時以降、フォークランド諸島の周辺水域二百海里以内にアルゼンチンの艦艇が立ち入った場合にはこれを攻撃する、こういう趣旨でございます。いわゆる国際法上の封鎖という効果を持つものではございませんし、私ども正確に国際法上どういう意味を持つのか、国際法上確立した概念ではないというふうに承知いたしております。したがいまして、そのことが法律的に、あるいは実質的にわが国の船舶に対して影響を及ぼすということはあり得ないことと思っております。ただ、万一あの地域に大変な軍事衝突が発生するということになりますれば、これは物理的に影響があり得るということはございます。したがいまして、あの水域に、特に現在アルゼンチンに向けて航行しようとしております日本の船、先生御指摘のように四月の末から五月にかけて若干の船があるようでございますから、それに一応の注意といいますか、そういうものは与えられておるというふうに承知しております。
  92. 玉城栄一

    ○玉城委員 注意はちゃんとしていらっしゃるわけですね。
  93. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 そのとおりでございます。
  94. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、アルゼンチンは南米ではブラジル、ペルーに次いで邦人の多い国だと思うのですが、そういうことがないことを願うわけですけれどもイギリスとアルゼンチンが戦争状態になる心配がある。ですから、万一のそういうことに備えて現地の大使館との連絡であるとか、あるいは、アルゼンチン政府わが国を母国としている日系人とか邦人の方々についてそういう状態が起きたときの危険性が当然出てくることに備えての何らかの対策をとっていらっしゃるかへあるいは全然していないのか、その辺いかがですか。
  95. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 先生御指摘のとおり、私どもとしてそういうことがないことを願うわけでございますけれども、念のためにすでに早い段階から大使館としては、たとえば日本人会でありますとかそういったものの連絡網の再確認をするとか、あるいはブエノスアイレスのみならず南部諸州に居住している日本人の所在を確認するとか、そういう必要な措置はとっておるように報告が参っております。ただ、私もそういうことが必要になる事態にならないことを強く願っております。
  96. 玉城栄一

    ○玉城委員 おっしゃるとおりですが、やはり万全の事前の対策をきちっとやっておいていただきたいと思うのです。  そこで、今回のフォークランド諸島紛争問題については、わが国立場からしても、単に地球の裏側の出来事だということで見過ごすわけにいかない重大な問題だという認識が必要ではないかと思うのです。このフォークランド諸島に対してアルゼンチン側はマルビナス諸島、もちろんイギリスはフォークランド諸島、それぞれ呼び方も違い、それぞれ領有権を主張しているわけですね。わが国の尖閣列島に対しても中国側は釣魚島、竹島に対しては韓国側は独島とそれぞれ呼称しておるわけです。こういう時期にこういう問題を持ち出すのもいかがかと思うのですが、これは将来の問題としてやはり一点、竹島の問題についてちょっとお伺いしておきたいのです。  それでは、海上保安庁の方に伺いたいのですが、竹島の現状調査については外務省の要請を受けて海上保安庁の方が行っていると伺っているわけであります。最近の実情について概略御報告をいただきたいと思うのです。
  97. 赤澤壽男

    赤澤説明員 海上保安庁では、外務省の要請を受けまして昨年でございますが、昭和五十六年八月二十八日、裏日本にございます境海上保安部の所属の巡視船一隻を竹島の周辺の海域に派遣しております。そして施設等の現場状況を調査しております。  それによりますと、灯台、見張り所、それに兵舎、そのほかコンクリート製の建物とか鉄製のやぐらなどが認められております。また、その調査の際に、警備員らしい者も視認されております。  以上でございます。
  98. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは海上保安庁としては、いつごろからそういう状態に置かれているというふうに見ておられるのですか。
  99. 赤澤壽男

    赤澤説明員 ただいま御説明しましたのは、昨年の八月の状況でございますが、そのような灯台等が認められましたのは昭和二十九年ごろからでございます。
  100. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務省に伺いたいのですが、これはやはり韓国側の不法占拠というふうに理解すればよろしいのですか。
  101. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 そのように考えております。
  102. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務省とされては当然韓国に対して抗議をずっとしておられるわけですね。いかがですか、それは。
  103. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 本件につきましては、昭和五十三年九月の第十回日韓定期閣僚会議の際、当時の園田大臣から取り上げたのが一つ、それから昭和五十五年三月のゼントカン大統領就任式の際に伊東外務大臣が取り上げたのがもう一つでございます。それからさらに昭和五十六年九月には閣僚会議で本件が取り上げられております。最近におきましても、たとえば本年一月、審議官のレベルでございますけれども、先方と話をしております。
  104. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務省とされては当然ずっと抗議をしてこられたと思うのです。いまお答えになったとおりだと思うのですが、昭和二十九年といいますともう約三十年ですね。十年、二十年、三十年あるいは五十年というふうに実際に不法占拠といいますかそういう状態が続いて、それがそのとおり国際社会に認められていくというようなことになりますと非常に重大な問題だと思うのです。もちろんあの島は人間が住んで生活するというような意味での価値はないと思うのですが、たとえば二百海里水域を設定するということになりますと、あの島を拠点にするかしないかということは国益上重大な問題になってくると思うわけです。  そこで、わが国として国際紛争を武力によって解決することができないことは当然でありますけれども、そういう事実に対して国際司法裁判所に提訴を積極的に進めるとか、日韓間の紛争に関する交換公文等を問題解決のために活用するとか、そういうことを積極的にやるべきではないかと思うわけですが、いかがですか。
  105. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 政府としては、本件の解決をあくまで紛争解決に関する交換公文に従いまして平和的手段によって解決していきたいということでございまして、韓国側に対して粘り強く交渉し、問題を提起して話し合いを続けていきたいという考えでございます。
  106. 玉城栄一

    ○玉城委員 わが国の領土に関する問題ですから、外務大臣に最後にお伺いしておきたいのです。  五月に訪韓されるかされないかはっきりしませんけれども、いずれにしても訪韓されるときがあろうかと思うのです。歴代外務大臣訪韓のたびに、この問題については韓国側に抗議も含めて問題解決を訴えておられるわけです。大臣、訪韓されるとき当然この問題を韓国首脳に持ち出されると思うのですが、いかがでしょうか。
  107. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ぜひそういう場面を持ちたい、申し入れたい、こういうふうに考えております。ただ、相手のあることでございますから、どういうふうにやるかというようなことについては、いよいよ韓国へ行くというそれまでによく検討したい、こう思います。
  108. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  109. 中山正暉

    中山委員長 次に、林保夫君。
  110. 林保夫

    ○林(保)委員 きょうは国際情勢を審議されるわけでございますが、五十七年度予算も成立いたしまして、外務省、これから実際的な面でいろいろ御努力を願わなければならぬ、こういう立場でまず経済協力の問題につきまして、ひとつ大臣の所信からお伺いしておきたいと思います。  ここに九十六国会における櫻内外務大臣外交演説を持ってきておりますが、この中では、建設的な南北関係への貢献、「南北問題の解決を図っていく上で、経済協力は特に重要であります。」「相互依存と人道的考慮の二つの理念に基づいて経済協力を進め」云々とございまして、「わが国の総合安全保障政策の重要な一環をなしております。」ここまで踏み切って所信表明をしておられますが、本年度の予算成立と関連いたしまして大臣はこれからどういうところへ重点を置いて進めていかれる御方針でございましょうか、まずお伺いしておきたいと思います。
  111. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外交演説の中でいまお示しをいただきましたように、相互依存と人道的考慮という二つの基準、これをお示ししておるわけでございます。  そこで、二国間援助の約七割をアジア地域に配分し、中でもASEAN諸国を特に重視してまいりたい。アジア地域に約七割、残りの三割を中近東、アフリカ、中南米の三地域におおむね均分する、そういう従来のパターンでまいりたい、こう考えております。
  112. 林保夫

    ○林(保)委員 事務当局の方から、本年度対外援助の特徴、数字、それからたしか一一・四%でございますか、一般会計で伸びておる、こういうことでございますが、その辺の概略をまず御説明願います。
  113. 柳健一

    ○柳政府委員 お答え申し上げます。  昭和五十七年度の予算におきましては、ODA事業予算の一般会計分といたしまして四千四百十七億円、これがただいま先生御指摘の前年度比一一・四%増の計上でございます。これは私どもといたしましては、非常に厳しい財政事情のもとであるにもかかわらず、先ほど指摘のような援助に対する私どもの積極的な姿勢のあらわれと考えております。これに加えまして、実は私どもの援助は一般会計のほかに財政投融資、それから国債、そういうものを財源とする部分もございまして、これを全部合計いたしますと、五十七年度のODAの事業予算全体では総額で九千四百十八億円となっておりまして、これは対前年度比で申しますと六%増になっております。この政府予算案の一般会計の中で、二国間贈与というものが二千四百七億円、それから借款が、これは財投も含めてでございますが、五千二百八十八億円、二国間贈与が対前年度比一二%、それから借款は対前年度比一〇・九%、こういう形になってございます。
  114. 林保夫

    ○林(保)委員 これまた事務的に承りたいのでございますが、理念それから目的、配分の基準というものをどういうところを原則としてことしはおやりになるのか、重点の置き方を特に御説明願います。
  115. 柳健一

    ○柳政府委員 お答え申し上げます。  理念と申しますか考え方は、先ほど大臣がおっしゃいましたとおりでございまして、配分の基準も大ざっぱに申しますと二つございまして、一つは地理的な配分の基準、これは大臣先ほど申されましたとおりでございます。これは今後とも大体その基準でいいのではないかと思っております。  それから分野でございますが、これは本年度の重点事項といたしまして、発展途上国で特に飢餓に苦しむ人たちが多いということから、食糧問題を中心にいたしまして、農村、農業開発、そこに重点をまず第一に置くということと、それから第二番目には、何と申しましても国づくりに重要な人づくりをする、そういう意味で人づくりに重点を置いていく。それから御承知のように、発展途上国がこの数年非常に苦しい思いをいたしましたのは石油問題でございまして、結局エネルギーのいろいろ代替の問題も含めまして、そういう問題を重点を置いて助けていく。それから最後に、発展途上国に適した中規模、小規模の事業を発展させる。大ざっぱに申しますとこの四つの点に重点を置いてやっていきたい、こういうように考えます。
  116. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一つ、いまあっちこっちで問題になっております医療とか福祉とか、そういったような面での援助はこの中ではどういう取り扱いになるのでございましょうか。
  117. 柳健一

    ○柳政府委員 お答えいたします。  私、ちょっと申し落としましたが、特に先ほど申し上げましたような人づくりとか農業、農村分野の開発等を総称いたしまして、私ども基礎生活援助と申しますが、これの中には医療関係のものも含まれておりますし、それから民生の安定に直接つながるような問題、給水、水の問題とかそういうような問題でございます。こういうものに非常に力を置いておるわけでございます。医療分野の協力も近年は徐々に伸びてきております。現在でもすでにもう医療分野の協力は一〇%以上になっておると思いますが、そういうところに特に重点を置きたい、こういうふうに考えております。
  118. 林保夫

    ○林(保)委員 先ほども二国間援助七〇%、アジア、ASEAN諸国に重点を置くということでございましたが、さらにほかは大体においてどういう配分を地域別に考えておられるか御説明願います。
  119. 柳健一

    ○柳政府委員 アジア地域は七〇%で、かつその中でASEAN諸国が大体三割ぐらいなんでございますが、二国間援助の中の残りの三〇%を現在中近東、それからアフリカにそれぞれ一〇%、若干正確に申し上げますと、中南米地域はいま六、七%になっておりますが、その他が入りまして約一〇%、いまこういう配分になっております。
  120. 林保夫

    ○林(保)委員 続きまして、二国間援助と多国間援助の比率、年度によって多少変わっておりますが、大体、先ほども二国間援助を重視していくということで七〇%と聞いておりますが、本年はどういう立場から多国間援助を進めていかれるか。また、二国間援助と両方重視するということでございましょうけれども、どういう比率に考えておられますか、御説明願います。
  121. 柳健一

    ○柳政府委員 お答えいたします。  わが国の援助は大体伝統的に、最近数年間二国間が七割、多数国間が三割でございますが、一九八〇年はたまたま六対四、こういう比率になっております。  どちらが重要かということになりますと、なかなかむずかしい問題ではございますけれども、私どもといたしましては、援助の理念、その他いろいろの点から考えまして、わが国が二国間のベースで直接その国に援助していくということは、その当該国からも要請がたくさん来ておりますし、これは非常に大事なことだと思っておりますので、二国間援助のシェアが約七割であるというのは今後とも大体妥当な線ではないか、こう考えております。  それから多数国間援助の方でございますけれども、実は私どもの援助の理念の一環として、私どもの総合安全保障の一環として世界の平和と安定のために貢献するということと同時に、また国際責任の分担という観念がございます。したがいまして、そういう見地から多数国間援助も、世界の各国と協力してみんなのために貢献していくという意味から、私どもはいま考えております程度の三割、これは国際水準に大体合致しておりますので、このラインでやるのが適当ではないかと考えております。
  122. 林保夫

    ○林(保)委員 大ざっぱで結構ですが、世界で何カ国が現在までに援助対象国として実際に援助が実行されておりますか。
  123. 柳健一

    ○柳政府委員 実は正確な数をいま持ち合わせておりませんので大変申しわけございませんが、私どもの援助の対象としている国は発展途上国ほとんどすべてでございますから、少なくとも百カ国以上になっているのではないかと思います。ただ、比較的重点的に援助を行っておりますから、たとえば上から十番目の国、十大援助国というのがございますが、その十大援助国で相当大部分のシェアを占めていると考えます。
  124. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、現在もなお大使館を通じあるいは日本に駐在している外国の公館を通じまして、こういうものをやってくれ、ああいうものをやってくれというのがいろいろ来ていると承っておりますが、どういう種類のものがどういうような国から来ておりますでしょうか。
  125. 柳健一

    ○柳政府委員 まず第一に、援助いたしますときは私どもの出先の公館を一応原則として窓口にいたしております。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕 私どもの出先の公館を通じて先方から要請がいろいろ参るわけでございますが、もう一つ私どもがいたしておりますのは、最近主要援助国につきましては毎年定期的に援助に関する協議をいたしております。これは単に向こうの要請を受け身で受け取るだけではなくて、こちらからもいろいろと助言をする、それから従来やった援助がどういう効果を上げているか、どういうふうにうまくいっているかというようなことも相談しながら、過去の援助のレビュー、そういうことをしながらまた新しい要請もそこで受け取る、相談をする、こういうやり方をしております。手続については大体そんなことでやっております。  それから、中身でございますけれども、これは実に種々雑多でございまして、農林水産分野、電気通信分野、港湾建設、病院をつくってほしいとか、その他給水、水資源の調査とか、人間生活のありとあらゆる分野にわたってありとあらゆる種類のものが参っております。
  126. 林保夫

    ○林(保)委員 そういった対象につきまして、本年度はかなり要望を満たされるような状況にございますでしょうか。やはりかなり切らなければならないのでございましょうか。
  127. 柳健一

    ○柳政府委員 率直に申し上げまして、まだ予算を通していただいたばかりで、これから至急先方の要望を整理しながらやっていくわけでございますが、需給関係で申しますと要望の方が多くて、その中から選択してまず優先度の高いもの、私どもといたしましてはなるべく自助努力を助けるということでございますので、先方の政府の意向、優先度を尊重しながらやっていく、こういうやり方をしております。
  128. 林保夫

    ○林(保)委員 実際の援助の決め方の問題でございますが、外務省中心になって実施しておられることは間違いないのでございますが、円借款は四省庁が関係するとかいろいろあろうかと思いますが、それらの方式を一応、円借款がどうとか技術援助がどうとかいうことで仕分けがありましたら御説明願います。
  129. 柳健一

    ○柳政府委員 先生御指摘のように、援助の中には贈与と借款と両方あるわけでございますが、その円借款の方は四省庁、つまり外務省、大蔵省、通商産業省、経済企画庁四省庁体制でやるということが経済協力基金法で決まっております。それから、贈与の中でも無償資金援助と技術協力と両方ございます。この両者につきましては、外務省中心になって関係省庁の協力を得ながらやって、おります。  実施機関といたしましては、円借款は経済企画庁のもとにございます海外経済協力基金、技術協力に関しましては国際協力事業団、無償資金援助に関しましても一部国際協力事業団が実施する、こういう形になっております。
  130. 林保夫

    ○林(保)委員 各省協議していかなければならぬといった中で、外交政策上のプライオリティーの置き方と実際の結論とはかなり違うような問題があると思います。それが韓国問題じゃないかとも思われますし、そうでないとも言えるかと思います。韓国につきましては、連休明けには決まるということで数字が四十億、三十億ドルといろいろ出ておりますが、外務当局としてはどういう段階でお考えになっておられますか。
  131. 柳健一

    ○柳政府委員 韓国に対する援助につきましては本委員会でもしばしば大臣並びにアジア局長からも答弁がございましたけれども、私どもといたしましては韓国に対する援助も特別の援助ではございませんで、私ども経済協力基本方針にのっとっていたしておりますし、外務省といたしましても、従来の積み上げ方式でかつ年次別でやっていくという考え方で残りの三省庁といま相談をやっている最中でございます。
  132. 林保夫

    ○林(保)委員 それはちょっとおかしいと思うのです。六十億ドルというのは法外な数字である、こういう認識もわれわれお互いあるかと思いますが、なおその中で、韓国が安全保障上の要請からわれわれが盾になっているのだ、ついては援助をという問題、あるいは長年にわたる日本との貿易の収支の差をこの際埋め合わせてくれ、これはまさに大臣の言っておられる安全保障上の問題が今度の援助に大変出てきておると思うのですが、経済協力局は韓国援助の問題を向こうの要求そのままのアイテムをこの物差しできっちり受け入れられるという意味でいまお話しになったのかどうか、承りたい。
  133. 柳健一

    ○柳政府委員 まず最初に、大臣がことしの一月の外交演説で申されましたわが国の対外援助が総合安全保障の一環としてという意味は、戦略的あるいは軍事的な援助との絡みにおいてという意味ではなくて、あくまでも私どもが発展途上国の民生安定と国民の福祉の向上のために貢献することがその地域の平和と安定ひいては世界の平和と安定のためになり、平和主義に徹して国際社会で生き抜いていかなければならないわが国にとってもそういう平和と安定を世界にもたらすことがわが国のために大事である、そういう意味で総合安全保障の一環と私は理解しております。したがいまして、決してそういう軍事的なものと絡めての援助という意味ではございません。  他方、韓国の方がかつてそういう安全保障絡みとか対日貿易云々ということを申したということは確かに聞いておりますけれども、これは私どもの理解では、韓国がわれわれに援助を要求する場合においての背景の説明としては確かに言ったかもしれませんけれども、現段階におきまして韓国が私どもに要請してきております援助の内容、リストははっきりと具体的に民生の安定につながるような十一のプロジェクトでございますから、それに対して私どもが、この間も実務者会議をやって、中身はどうであるかということをよく聞いて、それが本当に私どもの援助になじむかどうかということを検討している、それが私ども経済協力局立場であると同時に外務省立場でもございます。
  134. 林保夫

    ○林(保)委員 そういたしますと、韓国側が六十億ドル要求しているのはアイテムの上、あるいは日本の対外援助の理念からいくと全部認めてもいいけれども日本のふところがさみしいからあれは全部できないんで、四十とか三十とかいう数字が出ているというふうに理解してよろしいんでしょうか。
  135. 柳健一

    ○柳政府委員 まずまず四十とか三十とかという数字はまだ別に決まったわけでも何でもないのでございますけれども、まあどこの国と援助の話し合いをいたしますときでも、先方からいろいろと向こうのぜひやってほしいという希望が出てくるわけでございます。その場合にいろいろな金額が出てくるわけでございますが、私どもの方では、向こうと話し合いながら、もちろんこちらのふところの問題もございます。こういう財政事情の厳しい折でございますし、限度がございますから、そういうことも考慮に入れながら、優先度がどこが一番高いのか、それからどれが本当に円借款になじむのかということを考慮に入れながら、やはりそれを選定していくというふうにやっているわけでございます。
  136. 林保夫

    ○林(保)委員 もっともこれで決着がつけば、それはそれなりに結構なんだろうと私は思いますけれども、なお従来ここの委員会大臣答弁などを聞きますと、もうとてもじゃないけれども受け入れるような、何といいますか、ざるもない、そしてまたやり方もできないようなものを向こうが法外な要求をしてきているんだという答弁が多うございました。櫻内大臣はいまの韓国との交渉につきましてどのようにお考えになっておられますか。先ほど来の御答弁を聞きますと、事務当局の方でやっておられるといずれの日にか決着がつくというふうにお考えになっておられますが、五月訪韓の御予定もあるやに聞いておりますが、どういう姿勢でお臨みになるか、一言ひとつ御見解を承りたいと思います。特に前の本委員会における大臣答弁ではこれはできぬことだという意味が非常に強うございましたので、その辺を大臣はどのように今回受けとめておられますか。政治的な発言で結構でございますので……。
  137. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 すでに中間的な回答をいたしたことは御承知だと思うのであります。その回答は、韓国が提示いたしました十一のプロジェクトにつきまして政府借款でやり得るもの、収益性のあるものは輸銀で、こういうことを回答で申し上げておるわけでありますが、しかしそれに対して韓国側では、よりソフトな借款にしてくれ、いわば輸銀のものは考え直してくれ、そういう趣旨だと思うのであります。また、商品借款については、これは考慮することは困難だということを申し上げておりますが、韓国の現在の貿易の実情などからいたしまして、商品借款も考えてくれということを言ってきて、その韓国の要望を現在検討しておる、こういう段階であるわけでございます。いまここで、それでは韓国の重ねて言ってきたことは受け入れられるかどうかということは、いま作業中でありますからお答えができない、こういう段階でございます。
  138. 林保夫

    ○林(保)委員 そこで、先ほども出ております安全保障上の重要な一環としての位置づけを、わが国の経済援助協力を政策上しておられるわけでございますが、具体的にはどのような方針で本年度は臨まれるのか。特に本委員会でもたびたび議論いたしました紛争周辺国に対する援助でございますね、これなどはまあそういう性質のものであろうかと憶測いたしますが、いろいろな書類にもそういうものをやるということが書いてあります。本年度はそれらの諸国に対してどの程度の規模のものをやられる予定なのか、御説明いただきたいと思います。
  139. 柳健一

    ○柳政府委員 紛争周辺国という概念は、御承知のようにアフガニスタンに対するソ連の軍事介入以来導入された概念でございますが、これも紛争周辺国というのが、先ほど申し上げましたように、あくまでも世界の平和と安定に重要な地域という意味で、特に紛争が近くにある国の経済的、政治的な安定を図ることによって世界の安定に貢献しよう、こういう考え方に立っております。  ただいままでのところ紛争周辺国といたしましては、タイ、パキスタン、トルコと、三カ国でございます。タイにつきましては、昨年五百五十億円の円借款、その他無償、技術協力等々を重点的に徐々にふやしつついたしております。これは新年度におきまして、どの程度の規模の円借款を出すかまだ何も決めておりませんけれども、これから検討したいと思っておるわけでございます。それからパキスタンにつきましても、これも徐々に援助を強化しておりますが、同様、やはりこれから検討したいと思っております。それからトルコにつきましては、御承知のように、過去三年間三千五百万ドル、四千五百万ドル、五千五百万ドルと、最初の三千五百万ドルはプロジェクトでございましたが、四千五百万と五千五百万は商品援助をいたしております。これはトルコが非常に国際収支の危機に見舞われて、苦しい状況にあるということで、OECDのトルコを援助する特別会議というもので、OECDの諸国と一緒になりまして、いわば国際協調という考え方からも援助を行ったわけでございます。さてそれでは五十七年度においてトルコにどういう援助を与えるかということは、いずれまた援助国会議がもし開かれればそのときに考えますし、まだその辺がはっきり決まっておりませんので、その様子を見ながら考えていきたい、こういうように考えております。
  140. 林保夫

    ○林(保)委員 これは十三日の日経だと思いますが、アメリカ政府の出資のおくれで発展途上国への融資に支障を来しておる、第二世銀ですね、国際開発協会でございますが、この第六次増資問題で日本と欧州でアメリカ出資分の一部をとりあえず肩がわりする、こういう提案があり、そして日本はこれを受け入れた、こういうような報道がなされておりますが、その現状と、日本側はどういう対応をしておられますか、御説明願います。
  141. 柳健一

    ○柳政府委員 御指摘のように、十三日の日本経済新聞にそのような記事が出ておりました。確かに米国の払い込みスケジュールがおくれまして、変更いたしまして、したがいましてその結果としてIDAの開発途上国に対する資金の供給と申しますか、これをどうしていくかということは、いまや発展途上国の間でも問題になっております。ただ新聞の報道にございますような十億ドルのつなぎ融資についてわが国が提案したこともございませんし、それからまたかかる具体的な提案が合意されたという事実もございません。ただわが国といたしましては発展途上国の直面しておる困難と、それからその中でIDAの果たしている役割りというものは十分承知しておるつもりでございますので、私どももひとつ主要な拠出国と協調しながらIDAの融資活動というものが今後とも順調に行われるようにということについては、努力はいたしたい、こう考えておるわけでございます。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 林保夫

    ○林(保)委員 少し前になりますが、援助の仕方としてはいろいろあると思います。その中で新しいケースということになろうかと思いますが、日本アメリカの穀物を買って途上国へ援助をする、肩がわり方式というのでございますか、こういうのも政府考えておるというふうに報道されておりますが、外務省としてはこれらをどのようなお考えで、どういう範疇でやろうとしておられるのか、御説明いただきたいと思います。
  143. 柳健一

    ○柳政府委員 先生御案内のとおり、食糧援助規約というのがございまして、これで実はわが国はその食糧援助規約に基づきまして小麦三十万トン以上のものを発展途上国に対しまして援助しておるわけでございます。これは無償でございます。その中でわが国のお米を一部使っておりますが、実は食糧援助規約の中に、この援助規約に基づいて援助を行う場合にはこの食糧援助規約の加盟国から買うようにしろ。特に食糧援助規約の加盟国の中でも発展途上国から買って使うようにすべし、そういうことを奨励する規定がございます。私どもといたしましては、ですから実際には、いま食糧援助規約に基づくいわゆるKR援助で半分強ぐらいが日本のお米で残りを約一〇%ぐらいは米国の小麦、それ以外は、三割ぐらいは発展途上国のお米を使っていたしております。  ただ、そういう食糧援助規約上の制限がございますので、アメリカから急激に大量の穀物を食糧援助規約のもとで買って援助するということはなかなかむずかしいんじゃないかと考えております。ただ、それをどの程度ふやしてどの程度やれるかということは検討事項だとは考えております。
  144. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、お聞きのようにいろいろと援助の問題はございまして、これらをきっちりとやるということが——財政困難というだけの理由じゃないと私は思うのでございますが、国際的な約束を果たす、あるいは協力をする、あるいは世界経済に活性化をもたらす、発展途上国をサバイブするために援助するとか、いろいろな面があると思います。  そこで大臣に承りたいのでございますが、あちらがやるかこちらがやるかという問題からいきますと、アメリカは援助を大変出し渋る傾向をレーガン政権になって特に強めております。この点は私も心配いたしまして、昨年二月の予算委員会鈴木総理に、日本は援助をふやす、こういうことで、総理の施政方針演説にございますが、なおアメリカさんはむしろ減らす方向だ、こういうことで出ております、日本だけが何か援助の面で前へ出ていく、額としてはまだ日本は十分な金額じゃないという説明はあるにしてもそういう状況になっている、どうされますか、こういうことを申し上げたら、鈴木総理は、いやこれから五月にアメリカへ行ってレーガンさんに援助をふやすべく頼んでまいります、お願いしてきます、こういう答弁でございました。そしてその結果が、日米共同声明によりますと、世界の平和と安定のために特定地域に援助をやるという約束を逆に日本がして帰る、こういう状況になっております。そのことをとやかく言うのじゃございませんが、そういう国際情勢下にあって、これから経済援助、総額としてはいまも一兆円近いものをこれから運用される、こういう立場でこれからそれらをさらにまだ大臣は増額させていかれるのか、あるいは細部を見てどういう御方針をとられるのか、一言最後に承っておきたいと思うのでございます。
  145. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 すでに明らかにしておるように五年で倍増したい、この目標は達成をいたしたい、こう思うのであります。御承知のように日本が国際的に軍事協力というようなことはもう憲法上許されないのでありますから、経済援助によりましてそれぞれの地域の平和と安定に寄与してまいりたい。この援助の方法としては二国間援助あるいは国際機関への協力ということがございますが、御指摘のようにアメリカが国際機関への協力、これを大変渋っておる、これらの点については私もそうでなくやはり経済協力は大事だということを申したこともございますが、アメリカのことは別として、日本としてはこの倍増中期目標の達成のために努力をしてまいりたいと思います。
  146. 林保夫

    ○林(保)委員 そういう大臣の御姿勢を踏まえてというわけじゃございませんが、日本にはこの対外援助、経済協力については基本法がありませんですね、大臣。私もかつて二年前この委員会質問したこともございます。経済協力、経済援助あるいは対外交流について閣議決定の基本要綱あるいは原則の決まったものがあるのかと聞きましたところ、何もございませんということでした。ただ一つあるのは、海外経済協力基金ができたときに、こういう原則で運営する、援助するという七項目を決めているということでした。当時の大来外務大臣から御答弁のあったものでございます。そういう基本原則がないものですから、先ほど来も議論がたびたびございました。本当に私は物差しをきっちりして一兆円に見合うだけのものを、そしてまた国民が安心できるようなものを——額の多寡を言うのじゃございません。援助の額は八千億になってもいいと思いますし、あるいは必要なら一兆五千億になってもいいと思いますけれども、なおやはりそういうものをきっちりとすべき時期に来ていると思いますが、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  147. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私の外交演説で経済協力について明白にいろいろと申し上げておるわけでございます。御承知であろうと思いますが、施政方針演説それから財政方針演説、外交演説等は閣議において決定をいたしますから、したがって、この外交演説というものはそれなり重要性があるわけですね。すなわち閣議は、この私の言わんとしておる方針はそれを認めて私の外交演説になっておる、そういうことでございますから、ただ単に演説の中に入っているということではないということを御了解をいただきたいと思います。
  148. 林保夫

    ○林(保)委員 そのとおりでございます。しかしなお大臣、実際に在外公館をお回りになり各国を回られて向こうの財界人、政府の人なんかと会ってみますと、あれもやりたい、これもやりたい、大使館にもいろんなプロジェクトが来ていると思うのですが、それを一体どういう物差しでやるかということで先ほども議論ございましたけれども、これだけではちょっとどうにもなりませんね。これはりっぱな個人的な見解らしゅうございますけれども、個人としてはりっぱかもしれませんけれども、これを外務省方針だと言われたんでは私はどうにもならぬと思います。そしてまた先ほどりっぱな資料をちょうだいいたしましてこれなりに見ました。それはそれで結構だと思いますが、なおやはり対外援助あるいは国際経済協力に対するプリンシプルをこういう機会に、大変大きな金額になってきた折にぜひひとつつくっておいていただきたい。あえて申し上げませんけれども、なおいろんなうわさとして、特定な人が絡んで、それなるがゆえに実現したという話も現にございます。例を挙げろと言えば挙げますけれども、しかしそういう形で援助がこれから進まれるといたしますと、よその国でももうすでに援助疲れが出ております。日本だけが援助は、ぴんぴんしている、こういう状態です。ぴんぴんしている間にぜひわが国外交政策を百年の安きに置く、こういう意味でひとつおつくりになられてはどうか。それは確かにこの施政方針演説で重点の置き方はわかります。わかりますけれども、何によっているのだろうか、基本は何なのか、こう言いますと、私どももいろいろ行きまして、これはできます、これはできません、先ほど韓国の問題を私があえて聞いたのもそういう問題でございます。前の大臣のときは、もうあんなものはできやせぬというような感じの話が本委員会で出ました。しかしなお、いまは大臣は、積極的にとは申されぬでしたけれども、やるという姿勢でやっておられる。そこらあたりがどういうふうに変わってきたのかということになりますと、やはり原則がきっちりしていないからだ。また断られた国に行きますと、先ほどもお話が出ておりましたけれども日本に対して誤解を生むというおそれもありますので、ぜひそこらの点をきっちりさせていただきたい。大臣、一言いかがでしょうか、御要望でございますが。
  149. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外務省としていろいろ経済協力の具体的な方針というものを持っておるところであります。先ほど申し上げたような私の外交方針の演説という基本方針、それに続いて現実に実行する上の基準というものはあると思いますが、ただいまのお話を聞いておると、こういう大きな額になってくればもっとはっきりしたものを持つ必要があるのじゃないか、こういう御指摘だと思います。その辺はよく検討してみたいと思います。
  150. 林保夫

    ○林(保)委員 時間が足りませんので、もう一言中南米局長にちょっとお伺いしたいのでございますが、先ほど来フォークランド諸島をめぐる紛争につきましていろいろお話がございまして、情勢も大体理解できたと思います。しかし、一週間前ですか、本委員会で御質問いたしましたところ、特に運輸省の立場でございましたが、余り手を打っていないということであったのです。一昨日の報道では船舶の安全確保に運輸省が対応策をとるというようなことが出ておりますが、いまあちらには邦人が何人ぐらいおるのでございましょうか。船があそこへ出ておりますか。
  151. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいまのお尋ねがフォークランド諸島の周辺ということでございますと、現在あのあたりで操業しておる漁船はございません。先生御承知と思いますが、実は一九六三年から六六年にかけては日本の捕鯨関係の企業があのサウスジョージア諸島を基地に使って操業いたしておりました。しかしその後そういうこともございませんし、現在私どもの把握しておりますのは、たしか南緯四十度から四十五度の間で操業しておる漁船が十八隻ぐらいいるということでございます。これはかなり遠うございますので何ら心配ないと思います。また、定期船はパナマ運河あるいは喜望峰回りでございますので、あの辺にかからないということでございます。ただ、不定期船は若干アルゼンチン向けのものがございますけれども先ほど来申し上げているようなことでございますので、いまのところ直ちに影響があるというふうには考えておりません。
  152. 林保夫

    ○林(保)委員 わが国はイギリスともアルゼンチンとも大変深い長いかかわり合いがございますので、先ほど来お話しのような両国からの要請を受けて、しっかりした対応をぜひひとつ御要望申し上げておきたいと思います。  時間が来ましたのでこれで終わります。ありがとうございました。
  153. 中山正暉

    中山委員長 次に、野間友一君。
  154. 野間友一

    ○野間委員 まず、日米経済摩擦のうち、農産物についてお伺い申し上げたいと思います。  アメリカへ行かれる前に当委員会で、農産物については輸入枠の拡大それから自由化は絶対できない、日本の農家の実態を踏まえて物を申してきてほしいということを申し上げたわけでありますが、その中で櫻内大臣は、むずかしいということは言ってきます、こう言われました。ところで、その後のいろいろな推移でありますが、帰られた直後の参議院の予算委員会の中で田澤農水大臣は、自由化はもうできない、いまのところぎりぎりいっぱいだというような答弁をされました。その点、櫻内大臣の自由化についての態度がどうもあいまいと申しますか、答弁されたことを読んでみてもよくわからないわけであります。  そこでお伺いしたいのは、向こうへ行って日本の実態を訴えてきちっと態度をとってこられたのかどうかということと、それからいま申し上げた田澤農水大臣の言われた自由化はできないという線、これは櫻内大臣も同じ見解なのかどうか。どうも答弁がもう一つはっきりしませんので、その点についてお伺いしたいと思います。
  155. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 田澤農林水産大臣は、予算委員会などの答弁ではよく農林水産大臣としてはというようなまくら言葉をつけて御所見を言われておったと私は記憶をいたします。  それから残存二十二品目、輸入制限品目ですね、これについては私が訪米をする前に日米貿易小委員会で作業部会を設けて検討しようということになり、その作業部会はこの十二、十三日に開かれて終了しておるわけであります。その作業部会の模様を踏まえて今後どうするかという問題が現実にはあると思います。  それから、私が訪米をいたしまして農務長官また副長官と会いましたとき、私は過去において農林水産大臣をやっておるのでそういう経験から申し上げる、こう言って、私の経験に基づけばアメリカは大豆や飼料穀物を出してくれなかったことがある、それで非常に困ったことがあるのだ、したがって、そういうことを考えると日本がある程度の自給をするということはやむを得ないものである。これは、当時異常気象のためにソ連を初めとするそういう人道的に配慮しなければならないところに、アメリカが不作ではあったけれども大豆だ穀物だを輸出する際に、長い間の取引先である日本をおいてやったことがあるのですね。それはどういうことであったかというと、港湾輸送や鉄道輸送がそういう人道上のものを優先するととても日本には出せないというようなことであった。そのことをちゃんと指摘いたしまして、これについては農務長官、副長官ともに何ら反論はなかったのです。
  156. 野間友一

    ○野間委員 ひとつできるだけ簡潔にお願いしたいと思います。農水大臣は農水大臣立場としてはという言葉をまくらに使うというふうにおっしゃいますが、私がいま持っておる会議録はそうではありません。まあ、それはそれとしても農水大臣が言われる立場、つまり二十二品目ですね、これについては自由化はできないというお立場を持っておられるのかどうか、外務大臣の見解をお聞きしたい。これはいまからまたお聞きしますけれども、作業部会とかいろいろな問題が出てきておりますので、どういう立場を持っておられるのかということを私たちは知りたいと思うのです。
  157. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 その立場先ほどから明らかにしているんじゃないですか。日米貿易小委員会でこうなって作業部会をやりました、作業部会の結果が出ました、それを踏まえて、それに応じて考えなければなりませんとはっきり申し上げております。
  158. 野間友一

    ○野間委員 いや、作業部会を進めたりこれから交渉される際に、どういう立場で臨まれるかということが一番大事だと私は思うのです。農水大臣もそういう立場から言われておるわけですね。  次いでお聞きしますと、御案内のとおりこの作業部会で二十二品目の完全自由化が打ち出されてガットの場に出た、二十二条の協議ですね、こういう新聞報道があります。そして政府はこのような情勢の中で、五月上旬をめどに市場開放の措置の第二弾を行うことを決めたやの報道があるわけですね。これについて農水省はきのう松本事務次官が記者会見をされて、この第二段の中に農産物は含めないという方針を決めたということを言われておるわけです。きょう農水省来ておると思いますので、これは恐らくオレンジ、果汁の点だけだと思いますけれどもその点についての事実の確認と、同時にいま申し上げたような方針と申しますか、こういう方針政府としては決めておるのかどうか、農産物を含めておるのかどうか、この点について外務大臣にお尋ねしたいと思います。
  159. 深田宏

    ○深田政府委員 先ほどから御答弁ございましたように、作業部会の結果につきましては早速佐野経済局長、私ども遠藤参事官等参っておりますので、帰国次第十分話を聞くことになっております。これは二、三日のうちに相談をすることになると思います。基本的には、外務省といたしましてはわが国の置かれた環境にもかんがみ、できる限りの市場開放努力を進めてまいりたいというふうに考えておりますが、具体的な品目につきましては、従来同様、関係省と十分協議をいたしまして適切に対処してまいりたいということでございます。
  160. 野間友一

    ○野間委員 農水省、その農産物は第二弾の中に含めないということを農水省で決めたという報道がありますが、これについての確認を……。
  161. 松下一弘

    ○松下説明員 日米農産物作業部会におきまして、アメリカ側は残存二十二品目の完全自由化を強く主張しまして、わが方は自由化できないがそれ以外の方途で対応したいということを述べましたところ、完全自由化ができなければガット二十二条の協議に付したいということを向こう側は言ったというふうに聞いております。それにつきまして昨日、事務次官が記者会見で、そういうガット上の正式な協議があればこれは受けざるを得ない、しかし残存輸入制限の緩和や撤廃につきましてはこの十月から牛肉、柑橘に関する協議が予定されていることでもありますし、第二弾の対策とは別個の問題と考えているというふうに記者会見で述べておられます。
  162. 野間友一

    ○野間委員 外務大臣、農水省の方針はいま申し上げたように田澤大臣もそうだし、それからいまの第二弾についての見解も言われたとおりなんですね。この農産物について言いますと、もともと七八年の中川・ウルフ会談で一九八三年度までの農産物の合意ができた、八四年度以降については八二年度の下期の前後に改めて交渉するということが約束されておるわけでしょう。これが向こうからの圧力によって十月に交渉の日時が繰り上げられる、しかも、いま申し上げたように作業部会がパンクして、そしてこの中で五月上旬をめどにして第二弾の市場開放策をとる、その中に農産物を入れるということになったら大変なことになるのですね。その点でいま農水省は大変苦労をし、しかも一応部内の方針を決めておるわけです。だから、そういう経過を踏まえて十月から農産物については八四年度以降の交渉があるわけですから、急いで何も五月上旬にそういうものをする必要はない、これは含めるべきじゃないというふうに私は思いますけれども、その点についての見解を伺いたいと思います。
  163. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 十月から話し合おうというのは柑橘類、牛肉ということで、これは明らかでございます。それから、サミットを念頭に置いて市場開放努力をしようということは経済対策閣僚会議におきまして総理の方針を皆が了承をしておるところでございます。したがって、残存二十二制限品目につきましては、先ほどからお答え申し上げるように、作業部会が終わって、それに出席した諸君が帰ってくるわけでありますから、その帰られた模様を聞いて、そして、現在新聞紙上ではガット提訴とかいろいろ言われておりますが、それらのことを確かめ、どう対応するかということを相談をしたいということを申し上げておるわけであります。
  164. 野間友一

    ○野間委員 その農産物、特に牛肉、柑橘については十月からの交渉ということですから、新聞報道の五月上旬というこの中には含めるべきではないということを私、再度要求して次の質問に移りたいと思います。  核兵器の使用禁止宣言についてであります。これは国連の十六回総会で採択されまして、わが国もこれに賛成したわけでありますが、総理も核兵器については絶対悪だということを言われておりますね。恐らく外務大臣もその点についての認識は同じではないだろうかと思いますので、その点についての確認と同時に、この使用禁止宣言を見てみますと、「核及び熱核兵器の使用は、国際連合の精神、字義及び目的に反するものであり、したがつて、国際連合憲章の直接の違反である。」これは(a)ですね。それから(b)のところでは「核及び熱核兵器の使用は、戦争の範囲を逸脱し、人類及び文明に無差別の苦痛及び破壊をもたらすものであり、したがって、国際法の諸規則及び人道法に反するものである。」こういうのがあるわけですね。これは逐条の採決がされたわけでありますが、これにしかも日本政府は賛成したということですね。まず、この点についての確認を求めたいと思います。
  165. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御指摘の一九六一年の国連総会決議につきまして賛成しましたことは、先生いま御指摘のとおりでございます。従来から申し上げておりますように、この決議に賛成いたしましたのは、決議の中の個々の具体的な文言というよりも、決議全体の精神というものが、核戦争が起これば大変な惨禍をもたらす、人道上からもどうしても避けるべきである、こういうものが決議全体の趣旨であるというふうに受けとめて賛成したということは従来から申し上げておるとおりでございます。
  166. 野間友一

    ○野間委員 それはおかしいですよ。ですから、私が逐条にずっと採決されたのではないかということを聞いたのはそういうことです。ここでは全く肉づけというかそういうのがなくて、核及び熱核兵器の使用はこれこれに反する、国連憲章の直接の違反だというようなことの採決に日本政府は賛成したということの確認を私は求めておるわけですね。それは事実間違いないわけでしょう。
  167. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 まことに申しわけございませんが、いまちょっと私の手元に持っております資料では、逐条採決について日本が当時いかなる態度をとったかということはございませんので、ちょっと正確なことを責任を持ってお答えできません。
  168. 野間友一

    ○野間委員 それは準備不足ですよ。これについて聞くということをちゃんと言っておるでしょう。それはすぐ聞いてください。  それでは続けて聞きますが、核兵器の使用について国際連合憲章に違反する、あるいは国際法の諸規則及び人道法に反する、これについての賛成をしたわけでありますが、これは異存がないと思うのですね。外務大臣にお聞きしたいのは、核兵器は絶対悪であるという総理の答え、これはお認めになると思うのですけれども、この点についてと、いま申し上げたように国連憲章違反だということについて大臣の所見を伺いたいと思います。
  169. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 核兵器の使用が絶対悪であるかどうかということについては大臣から御答弁があるかと思いますが、その前にちょっと、核兵器の使用が国連憲章違反であるかどうかという点につきまして、その点については異議がないということについて先生の御質問がありましたのでお答え申し上げますが、従来から政府が一貫して申し上げておりますことは、核兵器の使用というものが人道的にはきわめて忌むべきことである、国際法の裏に流れている人道主義の精神には反するものであるということであるけれども、他方におきまして、核兵器の使用が国連憲章を含めて実定国際法上禁止されておるかということになりますると、そこまでのことは言えないのではないかというのが政府の認識であるということを、これは常に従来から申し上げておるところでございます。
  170. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、大変おかしなことになりますね。これはずっと態度が変わっておるわけですね。これはアフガンとかいろいろ言われています。私はそういうことを聞いているのじゃなくて、この宣言の中では明らかに、使用そのものが国際連合憲章の違反だ、人道にも反する、これだけの文言でしょう。これに賛成したわけですよ。これは変えられるわけですか、どうですか、これだけですよ。この事実について、使用するということについての判断ですよ。
  171. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 先ほど私が御答弁申し上げました国連憲章を含めて、国際法の実定法と核兵器の使用との関係についての政府の認識と申しますか見解は、従来から一貫して政府が申し上げておるところでございます。
  172. 野間友一

    ○野間委員 それではわからぬから聞いておるわけですよ。このときにはちゃんと賛成しておるわけでしょう。これから棄権に変わり、反対に変わっておるわけですね。このときにはアメリカは反対したわけでしょう。ずっと態度が変わっておるわけですよ。違いますか。あなたは直接答えないでしょう。これは答えられないのですか。  私が聞いておるのは、使用そのものが違反するかどうかです。あなたはいまわが国方針、態度はそうじゃない、こう言った。ところが、この宣言の中にずばりそのことについての賛否が問われ、賛成したわけでしょうが。そんなことでどうやって国連の中で仕事をし、採決するのですか、全く権威がないじゃないですか。そのことだけですよ、問われておるのは。非常にあいまいです。大臣、いかがですか、大臣答弁を求めたいと思います。
  173. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 核兵器が実際に使用されれば、人類に対して甚大な惨禍を及ぼすものである、そのようなことを被爆国の日本としてこれはもう絶対に避けたい、これは一つありますね。  しかし、現実の姿というものは、核の抑止力というものが機能しておって、そういう実情にあるということも認めざるを得ないのでありまして、お尋ねは、あなたも絶対悪であるかないか、こういうことでありますが、私はそれは悲惨な被害を与えるもので回避しなければならない、しかし現実の姿からすれば、それが抑止力として機能しておる、そのことも認めざるを得ない、こういう見解に立っております。
  174. 野間友一

    ○野間委員 いまの政府答弁というのは大変あいまいですね。一たん賛成したものが棄権に変わり、そして反対に変わる。その中身そのものは何も具体的な事実についての判断、評価でなく、使用するかどうかということだけの評価ですね。ですから、この宣言にはこのときは確かに賛成したかもわからぬけれども、実際いまは国連憲章やあるいは人道的に考えて、これは違反していないと態度を変えたということにしか、いまの答弁からすると私はとれないのです。これは大変な問題です。そういうような意識で軍縮総会にもし臨まれるということになりましたら、これは日本政府としては一体何ができるのか。私は、国連中心主義を唱えるならば、もっと権威のある態度で、しかも真摯に検討して、その上でやはり軍縮総会に臨むということの十分な検討をこの場で要求しておきたいと思うのです。  次に進みますが、時間が制約されておりますので、端的にお聞きします。  それはいわゆる関東軍防疫給水部本部、通称石井部隊、七三一部隊、これについてであります。この七三一部隊というのは、森村誠一さんの「悪魔の飽食」、これはベストセラーになっておりますし、お読みだと思います。これについて、この実態を簡単に申し上げますと、これは医師、化学者などスタッフ約二千六百名、世界で最大の規模の細菌戦部隊で、これらがやったことは、三千名余の捕虜、これは中国人、ロシヤ人あるいは朝鮮人、たくさんありますけれども、これらを対象にして非人道的な生体実験、そして細菌兵器の大量生産を行い使用した、全く戦慄すべき部隊なんですね。しかも、これらの実態は戦史の中の空白部分、こういうことになっております。  これについて言いますと、鈴木総理は、具体的な事実についてできる限り調査したいということを約束されました。私はこの問題を本委員会で取り上げたのは、こういう戦史の空白部分について、いまやっと戦後三十七年たって、アメリカではジョン・パウエルというジャーナリストが、向こうの方で公文書館からいろいろな資料を出してきて分析し、論文を発表しております。日本では生き残りの方々から事情を聞き、また資料を収集して、ああいうドキュメントをつくり上げた。これは近々生物兵器の禁止条約の国会提案あるいは毒ガス禁止条約早期批准と、さまざまな問題を持っているわけですね。もう二度とこういう残虐な戦慄すべきことをやってはならぬ。  しかも、ジョン・パウエルのいろいろな論文やあるいは引用しておる資料を見ますと、これは公文書館にあります極秘電報、これはいま公開されているようです。これは二つ引用されておりますけれども、これには、このすべての情報を、ソ連での証人喚問の前にアメリカが事前にその石井等に会って事情聴取して、そしてソ連側に引き渡す前に、言ってはならないこと、秘密を保持することについては、これはどうしたらいいのかということの相談をやり、それと同時に、独占的にこの情報アメリカ軍に引き継ぐということと引きかえに、石井中将等の戦犯からの免除、これについての極秘電報がパウエルの手によって明らかにされて、そしてこのことがいま大きな世界的な問題になっております。  そこでお聞きしたいのは、こういう一九二五年のジュネーブにおきます議定書にも違反するものが、世界的な最大の規模で当時旧満州でつくられ、生体実験され、そして一部使用された、しかもこれは独占的にアメリカに戦犯との引きかえに引き継がれた、こういう疑惑が非常に出てきておるわけですね。ですから、これらについてアメリカにあるいろいろな資料を接触しながら、これらの実態を明らかにしていく、それと同時に旧満州にあるいろいろなそういう実験の実態とかあるいは使用した実態等々、これも調査する必要があるのではないか、これは私は外務省の任務じゃないか、こう思います。  その点についての、こういう細菌戦部隊の置かれた立場や実態、仕事の中身、これについての所感と同時に、いまの調査をし、そして実態を明らかにするという要求についての答弁を求めたいと思います。
  175. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いまお尋ねの件は、大蔵委員会においてもお取り上げになったわけでございまして、その過程の中で、総理大臣調査をするというふうに言われましたけれども、その調査日本の国内にある資料について調査をするということでございますし、また厚生省の関係者も、秘匿する部分はプライバシーを除いてはほとんどないであろう、ですからできる限りそれは調査するということでございます。したがって、われわれとしてもまずこの部分については日本の国内で具体的な資料があれば、それはやはり調査しなくてはならないというふうに考えるわけです。  さて、それをアメリカ側に聞くかどうかという問題でございますが、森村さんの本というものは非常なベストセラーでございますし、またその中でジョン・パウエルという人の言葉も引用されておりますが、残念ながらすべて直接証拠に当たっての引用とは必ずしも言えないということでございますので、従来から政府としてこのような伝聞等についてそのまま照会はいたしかねるということで、まず第一義的には日本側が持っている書類というものを見つけ出すというのが第一ではないかというふうに考えておるわけです。
  176. 野間友一

    ○野間委員 これは情報公開によって公開された文があるわけです。いま私が申し上げたのは一九四七年三月二十一日付ワシントンの統合参謀本部からマッカーサー司令官あてのもの。もう一つは、同じく四七年の九月八日付でアメリカの国務省からマッカーサーあてのもの。これは公開されておりますから、これをもとにして論文を書かれた。この赤旗日曜版にもその文書の写真がありますけれども、これは明らかなんです。だから、極秘のものがあるかないか、いま非公開のものがあるかないか、それはわかりません。しかし、少なくともこうやって公開されたものの中でも非常に重要なものがあるわけです。しかも、いま申し上げたように世界でも最も戦慄すべき大きな問題でありますから、これについてやはり外務省としてはアメリカとの関係でできるだけ資料を収集して、実態を明らかにし、空白を埋める、これは当然の責務じゃないでしょうか。大臣、いかがですか。
  177. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま北米局長がお答えをしておることで尽きておると思うのです。国内で資料を探すということについては努力をする、それは可能なことだと思うのであります。いま承っておりますと、海外について何かやれ、こういうことのように受け取れましたけれども、これは年月もたっておることでもありますし、なかなか困難なことではないかと思います。
  178. 野間友一

    ○野間委員 調査が困難かどうかということ、これは年月もたっておりますから多少困難性があるかもわかりませんが、私はそういうことを言っておるのではなくて、困難でも必要であれば調査しなければならぬ。だから必要性の有無ですね。と同時に、私が申し上げておりますように、これは公開された資料がある。しかも、これは独点的にアメリカに引き継ぎをされた。国内でいろいろな生き残りの人から話を聞くとか、あるいは資料を収集するということも大事かもわかりません。と同時に、写真とかあるいは生体実験したときの資料が全部アメリカに行っておる、こういう疑惑がこの公電、極秘電文の中から推測されるわけです。そういう点から、国内で調査するといったってこれは限界がありますから、できることはやるのはあたりまえじゃないかということです。こういう残虐なことについてこれを否定し、戦慄すべきことだというように認識する以上、できるだけのことをやるのが当然じゃないでしょうか。外務大臣いかがですか。これすらしないのでしょうか。
  179. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、まず第一義的には日本国内にある資料を調査する。それに基づいて具体的にどういうものが必要であるかということが出てきた場合に、アメリカ側に調査を依頼するということでないと、漠然としてアメリカ側にこの点についてという調査というのはなかなかできないわけでございます。  それから、第二点のアメリカの国立公文書館にある書類についても、これはアメリカ情報公開法ということで出し得るということであれば別途の問題でございますけれども、まず日本の国内でやるべきことをやって、それからアメリカ側に対して臨むというのが基本的な考え方ということでございます。
  180. 野間友一

    ○野間委員 どうも消極的ですね。化学兵器の禁止についても、生物兵器の禁止についても批准が大変おくれておったりなかなか物にならない。だからこれはそういうものを早期に結ばなければならぬということの前提として、こういう大きな規模でのものを実態を、まずわれわれで全貌を明らかにして、そういうものの上に立って教訓を引き出して、こういうものを世界的なものにしていくということが私は大事だと思うのです。国内でまず調べて云々と言われますけれども、国内でも調べるし、可能な限り中国の東北部あるいはアメリカ、できるだけのものを集めて、ここで全貌を明らかにするのはあたりまえじゃないですか。何でこれができないのですか。それが私にはよくわからない。できないということは、しないということは、どうも私はそういうものの禁止についての熱意がない、こう言わざるを得ないと思うのです。可能な限りやる、これはどうして外務大臣言えないのでしょうか。いかがですか。
  181. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは具体的に考えてみると、野間委員外務省アメリカ調査せい、こういうことでしょう。そうすると、外務省はその前提になる確かな資料がなければ、アメリカへ持っていってこれはどうだ、あれはどうだということはできないでしょう。そうすると、北米局長が言うように、そういうことが整わなければ、やれと言ってもやりようもないじゃないか、こういうことになると思うのです。だから北米局長がお答え申し上げておることは、特段私は無理はないと思うのです。やれやれと言っても何もなくてやれっこないです。
  182. 野間友一

    ○野間委員 ないから私はそれを収集しよう、こう言っておるのです。これは大臣よく聞いておいてください。アメリカに全部引き継ぎをされた。そういう疑いがあるのですよ。公文書がちゃんとそれを推測しておるわけです。そういう疑惑があるのです。だから、国内で生き残りの人から証人としていろいろな事情の聞き取りをし、あるいは数少ないものを集める、これは大事です。と同時に、何でアメリカに対して、独占的にそれを引き継ぎしておるのじゃないか、あるとするならその実態を明らかにしたいから調査に協力してくれということは言えないのですか。何でいけないのですか。私はよくわからないです。
  183. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはとてもはっきりしているじゃないですか。何もなくてやれないでしょう。それじゃ国内のをどうすると言ったって、外務省が人を一人ずつ呼んだりなんかしてどうこうするという権限も何もないのですから、だから国内の方でこういうふうにそろっているから外務省外交上の関係もあるからやれ、そういう順序がなければどうにもならぬじゃないですか。そのことを答えておるのですから。
  184. 野間友一

    ○野間委員 どうもかみ合ってないのです。私はいずれ、五月末の生物兵器禁止条約のときにまた改めて続いて質問したいと思いますけれども、どうも外務大臣答弁いただけません。納得できません。続いてまたやることを申し上げて、終わりたいと思います。
  185. 中山正暉

    中山委員長 次回は、来る十六日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会