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井上(普)
委員 それは違う。ごまかそうとしたって、交渉はやっている、あたりまえの話。しかし、売買契約が一月にフランスと結ばれ、その次、ドイツと結ばれた。毎年毎年百億ドル、ソ連に代金を送るというのだから、
アメリカが神経質になって、これはやめてくれということを再三言っておる。しかし、ミッテランは閣議におきまして、フランスは独立国としていかなる国の干渉も受けることなく自主
外交をするのだと言って、
アメリカの要求をはねのけてやった。あるいはまた、ドイツもしかりであります。売買契約ができなければ、これは何にもならない。
日本じゃ、どうです。何ですか、パイプラインの敷設機一つくらいでいばったところで、話にならない。
いま
アメリカと欧州との間には大きな溝が広がりつつある。これは率直に私
どもは認めざるを得ない。いままでのように占領国扱いをする
アメリカに対して反発が起こっておる。それは何かと言えば、
先ほど来申しますように、欧州にもし戦火が及ぶならば、
戦争する戦場になるのは欧州なんだ。われわれがともかく命がなくなり、焦土と化すのだという
考え方に立っておる。
日本だって、そうです。もし一朝事あるならば、
アメリカが傷むより先に
日本は抹殺されるのだ、焦土と化すのだ。そういう点からするならば、平和をこいねがうために
日本のあるべき
外交の姿というものがおのずから出てくると私は思う。ここに私は大きな疑問を待たざるを得ないので、申し上げておるのであります。
もう時間がございませんので、さらにもう一つ私は申し上げますが、
経済協力。
経済協力というのはまことに何かいなと思って、この「
経済協力の理念」という本をいただいた。書いてあるのを見ると、まことに無
責任なことを書いてある。「序」として、本書は
経済協力局の担当官でまとめられたので、
外務省の公式見解ではありません、という本を出している。どういうことだろうなと思って、こう読んでいきますと、この中には、まことにおかしげなことを書いてあるのです。
八〇年代においては、あたかもその結果わき起った怒濤が狂奔して、果たしてそれが収まるのか、あるいは怒濤がさらに怒濤を呼ぶのか、見通しのきかない深い霧におおわれているかにみえます。しかしながら国際社会において大きな存在となった我が国は、この深い霧の中にただ佇むばかりであってはならず、積極的に霧を払い、道を開く努力を行って
世界の平和と繁栄に貢献し、このような貢献を通じて自らの平和と繁栄を確保しなければなりません。
これは何を言っているのだ。ともかく、名文のつもりで書いたのか知らぬけれ
ども、一体何だという書き方をしている。こういうことを書かれても私らはわからないのです、文学的な素養がないからわからぬのかもしれませんが。そこで、
経済協力というのは一体何なんだということで私もずっと見てみると、「開発援助についての国際的な一般理念−人道的・道義的考慮と相互依存の認識」ということで書いてある。このことを一々どこが間違っておるか申してもなんでございますし、もう時間がございませんので、一つだけお伺いしたい。
私は、一昨年、キューバに参りまして、
実情を見てまいりまして、百聞は一見にしかずとはこのことだなと思いました。あそこの民衆の生活は悲惨なものだ、だから国外亡命がたくさんあるのだというような
情報に私
どもは接しておった。しかし、あそこへ行ってみてまず感じたのは、これはえらい話が違うぞ、子供の顔色もよろしい、質素ながらかなりな生活を皆さん送っておる、中米の諸国とは違ってレベルが全部上がっておる、中においても保健とさらには教育にはえらい力を入れている国だな、こう感じたのであります。そして、かの国の
外務大臣にお目にかかったときに、その
外務大臣は教育の問題について非常に熱心に私
どもに御説明になりました。
日本に対して
経済協力を頼んでおるのだ、中でも教育に対しての終済協力援助をお願いしているのだが、幾ら言っても
日本の
政府は経済援助をやっていただけない。どうしてなんだろうか。ひとつお
考え願えないか、こういう話なんだが、どういうわけなんだ。しかも、その計画自体は、ユネスコのもとに立てられた計画に沿って事業を進めておるのだけれ
ども、
日本はこのことについては御理解がなくて、再三にわたって援助をお願い申し上げておるのだけれ
ども、やってくれないのだ。岡田副議長のお供をして私
どもは行ったのでありますが、こういう実績が上がっておることこそ援助をすべきじゃないだろうか。
帰りまして、
外務省の某高官にこのことをお話ししましたら、いや、あの国はだめです。何でだめなんだと言って聞くと、あの国は
政治教育をやっておるからだめだ、こう言う。
政治教育って、おい、どのくらいやっておるか知っているのかと言ったら、いや、全部がそうでしょうと言う。私が聞いたところによると、中学の二年生の三学期に一時間ずつ
政治教育をやっています、それまではやっておりませんという話は、向こう側さんがおっしゃるのだから、信用するかせぬかは別問題。しかも、ユネスコが計画し、教育に重点を置いている。中米においてはあれだけ義務教育が浸透した国はありますまい。あるいはまた、四〇%くらい文盲があったのを、もはや全然ないというくらいにまで撲滅させたあの国、民衆のレベルを高めることに懸命の努力を払っておる国に対して、
日本の教育援助がない。一体どういうことだろうか。御再考を願いたいと私は思ったのでありますが、
外務大臣、この点をひとつお調べになって、御
研究になる必要があると思うのですが、いかがでございますか。