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1982-03-31 第96回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月三十一日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君    理事 奥田 敬和君 理事 川田 正則君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       麻生 太郎君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    佐藤 一郎君       竹内 黎一君    浜田卓二郎君       松本 十郎君    山下 元利君       井上  泉君    井上 普方君       河上 民雄君    小林  進君       林  保夫君    野間 友一君       東中 光雄君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         外務大臣官房長 伊達 宗起君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省中南米局         長       枝村 純郎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省中近東ア         フリカ局長   村田 良平君         外務省経済局長 深田  宏君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         水産庁次長   山内 静夫君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     澤田 和彦君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         大蔵省国際金融         局国際機構課長 江沢 雄一君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ————————————— 三月二十九日  婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関す  る条約早期批准に関する請願小川省吾君紹  介)(第一六二八号)  同(栗田翠紹介)(第一六二九号)  同外四十件(木島喜兵衞紹介)(第一六四四  号)  同外三十件(佐藤誼紹介)(第一六四五号)  同外三十九件(嶋崎譲紹介)(第一六四六  号)  同外十四件(中西積介紹介)(第一六四七  号)  同外四十五件(長谷川正三紹介)(第一六四  八号)  同外四十四件(湯山勇紹介)(第一六四九  号)  同外二件(木島喜兵衞紹介)(第一六五二  号)  同(田邊誠紹介)(第一六五三号)  同外五件(中西積介紹介)(第一六五四号)  同(田邊誠紹介)(第一七〇六号)  同外四件(長谷川正三紹介)(第一七二八  号)  核兵器の廃絶等に関する請願岩佐恵美君紹  介)(第一七〇五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川田正則君。
  3. 川田正則

    川田委員 大変対日攻勢の厳しい状態の中で、今回の外務大臣の御訪米は、本当に御苦労さまでございました。  そこで、非常に素朴な国民感情としてお尋ねをしたい点がございます。昨年から一連日米関係をずっと見てまいりますと、どうもすっきりしない点がたくさんあるような感じがいたします。  昨年の共同声明の中に同盟という文字が取り入れられて、この委員会でも、同盟関係という文字をめぐってずいぶん激しいやりとりがございました。その後、ミッドウェーの帰港前後に核の問題をめぐってもいろいろ問題がございました。特にその時点では、ライシャワーさんだとかジョンソンあるいはエルズバーグさんなどの発言をめぐっても問題がありました。その後、今度は防衛費をめぐるいろいろな日米間の問題があり、圧力があるとかないとかの論議があったわけでございます。そして今回の航空協定だとか、あるいは日米貿易摩擦、こういう段階を経ているわけでございますけれども、今回訪米されまして、実際に現地の雰囲気を外務大臣は肌でお感じになってこられたと思いますが、この点についてお聞きをしたいわけでございます。何かこの時点日米関係というのがひとつ転換期に来ているのではないかとさえ思われる昨今なんですけれども、現地状況と、外務大臣のお考えをまずお聞きしたいと思います。
  4. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 川田委員のおっしゃるように、この一年間を顧みまして、日米間で種々話題になった問題があったと思います。伊東外務大臣以来ちょうどまる一年目に日本外務大臣訪米、こういうことになりました。  私がレーガン大統領、ブッシュ副大統領ヘイグ国務長官等との会談を通じて得た印象といたしましては、日本側日本外交の基軸として日米外交というものを考えておる、こういう点についてはアメリカもまた同じ見地に立っておる。腹蔵のない意見交換の中には、別にこれといって今後の日米関係に暗影を投ずるような、そういう傾向は私は認めませんでした。先方も非常に気持ちよく話されておりますし、基本的な方針、たとえば東西関係、あるいは中東関係、また日本にとってはアジア関係、そういう国際情勢の問題について、特に意見の相違を来すようなこともなく、またいま問題になっておる経済問題につきましては、両国の間で現象としてあらわれておる日米間の不均衡の問題については、米側が、日本のより一層の市場開放を求める。また私の方としても、その主張はわかります、必要性もわかる、しかし日米がいま世界経済の中に占めておる、たとえばGNPの三五%も占めておるとか、あるいは日米間の貿易が六百億ドルに達しておる、そういうことを踏まえて両国が相協力することによって、沈滞した世界経済活性化を求めることができるのじゃないかというような点は全く先方も同じ見解に立っておる、こういうことでございまして、今後の日米外交の上に、こういう接触を持ちながら進めていくということによって、川田委員の、この一年間を回顧しての御懸念というようなことについては、私は、そういうことはないという立場にございます。
  5. 川田正則

    川田委員 ただいまの外務大臣の御答弁で、全く暗い影はなかったというお話でございまして、その点については、それに期待するよりほかはないわけでありますが、昨夜の報道を見ますと、ECにおいても、EC首脳会議がございまして、そこでもやはり対日不満が続出をした。けさのテレビを見ますと、来月ミッテラン大統領が来日をしたときに、対日不満についていろいろと話し合いをしたい、そういうことも出ておりました。アメリカに限らずECの方からもそういうことでございまして、非常に大変だと思いますが、今回の場合は、外務大臣としてアメリカのみということでありますので、アメリカについてのみお尋ねをしたいわけでございますが、日本の場合は、ややもすると、世間で言われている防衛摩擦あるいは経済摩擦貿易摩擦といいますか、こういうものを切り離して考え傾向にある。しかしアメリカの場合は、防衛摩擦あるいは貿易摩擦というものも同じ次元でとらえているところに問題があるというふうなことを言う方がおりますけれども、こういう点について外務大臣としてはどのようにお考えになりますでしょうか。
  6. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ECが対日不満を持っておる、これは、アメリカ経済問題で不均衡是正を言っておるのと大体同じ趣旨に基づいておるものと思います。当面の問題について日本ができ得る限りの市場開放を行って、そしてその不満解消努力をするというその必要性はあると思うのですね。ただ、そういう不満というものがただ単に日米間、日欧間の貿易の不均衡というよりも、御承知のようなヨーロッパアメリカ失業率が非常に高いし、インフレであるし、経済成長もままならぬというそういう面からの不満が当面貿易の不均衡に向けられておる、その辺を考えながら対応していくことによりまして、この不満解消ができるのではないか。こんなふうに見ておりますが、これは一段と努力しなければならない問題だと思います。  それから、いまお尋ね防衛経済とがこれが米側は同じような考えのもとに臨んでおるのではないかというように御所見を承ったのですが、日本といたしましては、経済経済防衛防衛というようにこれが絡むというような考え方では、いま私の立場では臨んでおらないわけでございます。今回訪米に際しましても、防衛問題につきましては、ワインバーガー長官がちょうど日本の方へ出発をされた後のことでもありますので、国防省に対してはカールッチ国防長官代理に表敬をするということで、今回の一連会談を通じましては、実際は日本外交の中で防衛問題、重要な面ではございますけれども、ほとんど防衛問題については具体的な話をしない。アメリカ側から昭和五十七年度予算に対しての日本のとった措置に対し評価をしておるお話は承りましたが、こちらから今後防衛についてはどうしようというようなことなく、国際情勢あるいは貿易問題ということだけで終始しておるわけであります。もちろんこの日本外交の中の防衛関係も重要であるということは認識しておりますが、今回の訪米に際しては、経済防衛とを絡めたような話というものはいたしておりません。
  7. 川田正則

    川田委員 私がアメリカ国民だったらという想定で考えますと、現在アメリカの総予算は七千五百七十六億ドル、そのうち軍事費は二千百五十九億ドル、総予算に占める軍事費割合は二九%、約三〇%でございます。日本の場合は五十兆円の予算総額に対して五十七年度は二兆五千八百億、わずか五・二%、そういう対比を仮に考えてみますと、どうしてもそこにアメリカ国民感情としてはいらいらが出てくるのは私は当然でないかという気がいたします。防衛アメリカに任せて日本はもっぱら自国の経済発展に努めるということは、何かどうもやはりアメリカの側から見れば私はいらいらが出てくるのは当然だと思いますが、そういう背景が今回の貿易摩擦にあらわれてきているということについては、外務大臣は今回の御訪米ではお感じになりませんでしたでしょうか。
  8. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いま川田委員は、日本防衛費アメリカ防衛費予算の全体の割合からお話を進められましたが、いまアメリカレーガン大統領になりまして、強いアメリカということでもう一つ考え直しをしなければならないという前提は、デタントと言われておったこの十年にソ連の軍事力、特に核戦力が非常に強化された。そしてこのまま放置していきますならば、一九八〇年の半ばには憂慮すべきピークを迎えるのじゃないかというようなことから、もう一度考え直して、アメリカとして防衛努力をしようということで国防費が増大し、福祉その他の予算を削るという大統領としては勇断で臨んだ、こういうことでございます。  それでは日本はどうか。日本東西軍事バランスの中でどのような位置を持っておるか。安保体制日本が直接な軍事行動ということはしない。専守防衛に徹してはおるが、しかし、日本国内に相当な基地アメリカに提供し、その基地を利用してのアメリカ防衛力戦力というものは相当なものだ、こう思うのであります。  ですから、予算の面から見れば、なるほどアメリカ割合日本割合からすると、日本が何かよく言われる安保ただ乗り論的な存在のように見えますけれども、日本もまた相当大きな犠牲を払っておる。基地の提供ということは、基地を治めていく、沖縄の場合なんかを考えますならば、基地があり、沖縄民生の安定を期するということは、やはり基地というもののバックグラウンドがしっかりしておるということなんで、その民生の安定などについての努力というものは、これは防衛だとか軍事の方にあらわれてまいりませんけれども、しかし、目に見えないところの日本努力というものもありますから、そういうことを率直にアメリカに言うことによりまして、安保ただ乗り論的なことは、私は日本は胸を張って日本なり犠牲を払っておるということを主張していいと思うのですね。  それからまた、日本防衛専守防衛に徹している日本というものを考えるときに、日本アメリカのいま五十一州ですか、その中の一州程度、カリフォルニアと同じぐらいのところを防衛をするという立場なんですから、だからそういうところからは、どうも私としては安保ただ乗り論ということについては余り耳を傾けたくないわけでございますが、しかし、現実にはそういう日本に対する批判、風当たりのあることも事実でありますから、そういう点については私なりにそのような不満の起きない努力をいたしたい、こう思っております。
  9. 川田正則

    川田委員 そういう背景があるように単純に考えると思いますが、今回の対日貿易摩擦の最大の原因は、アメリカ経済不振にあると思わなければならないと思いますが、よく考えてみますと、この原因というのは、レーガン大統領の思い切った減税政策による空前の高金利時代といいますか、そういうものが活力をなくしたというふうにも感ぜられますが、この高金利問題について、今回の御訪米相手側お話をされましたでしょうか。
  10. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 アメリカ高金利については、現に日本だけでない、ヨーロッパも強い批判を持っておるわけであります。にもかかわらず、アメリカインフレ抑圧ということ、これを一つの大きな目標にしておる。そのインフレ抑圧ということが、ひいては高金利ということになってきておる、こういうことでございまして、私は、みんなが同じようなアメリカの責め方をしておりましても、それは効果がない、したがって、今度の一連会談を通じましては、こういう責め方をいたしました。あるいは主張をいたしました。  それは、アメリカインフレ抑制ということについて多少ずつ効果があらわれておるように見る、それは最近における物価趨勢がだんだん落ちついてきておる、でありますから、アメリカ考えておる経済運営がうまくいくことを期待する、本年下半期以降景気が上昇に向いて、明年は経済成長率五・二%ぐらいにいくと言われておるが、それが成功することを祈ります、こう言うと、これはどなたがどうということは失礼に当たりますから申しませんが、先方が、そういうことによっていま批判を受けておる高金利というものは次第に落ちついていきます、こういうことを言われます。それからまた、それに対しては、日本は現在円安のために非常に苦労をしておるんだ、もう一つ円が正当に評価されて円高になっていくならば、日本として内需喚起にも役立つし、また日本輸入増大にも寄与すると思うのだ、そういうことによってインバランス解消にも向かっていくのではないかというような行き方で、まあ直接的に高金利批判というよりも、間接的にやってまいったというのが実情でございます。
  11. 川田正則

    川田委員 ただいまの大臣お話でわかりましたが、やはりいまお触れになりましたように、高金利なるがために円安で、日本の場合も非常に市場開放しにくいという事態が出てくるわけでございますので、アメリカ側物価も大分下がってきて安定方向に向かっているということでございますので、ぜひともこういった努力もやっていただきたいと思いますが、反面、日本国内問題というのは、国内だけで解決できない状態になっていると思います。したがって、世界の中の日本という立場で解決をしなければならぬということになりますと、これもいまお話ございましたように、内需がやはりふるいませんと、せっかくアメリカからの商品も買えなくなるという事態がございますので、外務省として国内問題だから口を出さないんだという消極的な態度ではなくて、国内問題というのは、本当に私は世界の中の日本という立場で解決しなければならぬということであるという御認識に立てば、国内問題にも積極的に口を差し挾んでいただきたいと思うわけでございます。  同時に、もう一つお尋ねをしたいことは、牛肉柑橘類の問題でございます。いま外務大臣お話しなさいましたように、高金利問題だけで責めるのはどうかと思うということになりますと、日米両国間の経済上の連携ということでお考えになるとすれば、当然出てくるのはこの牛肉柑橘類などの枠の拡大の問題であろうかと思います。すでに私どもも耳にしておりますのは、枠の拡大というのがすでに既成事実のようになっているということをよく聞きますし、実態はよくわかりませんが、そういう話をよく伺います。そこで、今回の訪米で、外務大臣としてそのことにお触れになったか、あるいは何か確約をされたか、そのことをお尋ねしたいと思います。
  12. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 内需喚起に対して外務省も関心を払うようにと、これはかつてボンサミットの折に、時の福田外相日本経済を七%ぐらいに持っていきたいというようなことを言われ、これはとりもなおさず当時の状況のもとで日本経済成長内需喚起というようなものが非常に重要であったというようなことで、福田外相はそういうようなことを言われた記憶がございますが、お話しのように私も経済対策閣僚会議にいつも出席をしておりますので、国際的に見て一体日本経済をどう持っていかなければならないかということについては、常に配慮をしていく考えでございます。  それから牛肉と柑橘の問題につきましては、これは現在の枠、割り当てというものは、八三年までの取り決めをしておると思うのであります。そこで、八二年後半に八四年以降のことについては相談をしよう。これは日本アメリカとの間の約束でございますから、ですからこの約束を実行する。それについては先般来の日米貿易小委員会を通じまして、後半とは言うが、十月から相談をしよう、このことはそのとおりわれわれは認めていかなければならないと思うのですが、しからばその相談をする内容は、いまからどうこうとそういうことを約束したり、決めたという事実は何らございません。
  13. 川田正則

    川田委員 時間がありませんので御要望だけ申し上げたいと思いますが、第二次石油危機がどうやら終幕を告げたという感じでございますけれども、いまの中東情勢から見ますと、いつ何どきまた第三の石油危機が来ないとも限らない。こういうことについて、その危険性というものをやはり十分に認識をしてこれからの外交に当たっていただきたいということが一点と、もう一つは、世界的に不況ということの中で、普通のときには何も問題にならないようなことが問題になりがちだと私は思います。そんな中で、やはり単に日本だけがよくなればいいということでなくて、世界じゅうがやはりよくならなければならないのは当然のことでございますから、こういった点について日本政府、特に日本外務省というのは、いつも逃げ腰で事に当たるという態度ではなくて、積極的に事に当たっていただきたいと私は思うわけでございます。そんなことがやはり経済摩擦に対しても非常に私は金銭的な面以上に役立つものでないかという気がいたしますので、これは要望だけでございますが、その点について一言申し上げまして質問を終わらせていただきます。
  14. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいまの御要望につきましては、これからいよいよ国際的視野に立ってすべてを考えていく、ありがとうございました。  それから先ほどちょっと、ボンサミット福田外相と申し上げましたが、福田総理で、間違っておりましたから、訂正します。
  15. 中山正暉

    中山委員長 次に、井上泉君。
  16. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、幾つか質問を申し上げるわけでありますけれども、きわめて素人でありますので、豊富な知識体験を有する皆さん方から見ればお笑いになるかもしれませんが、ひとつお聞きしたいことは、まず外務省のお役人さんに、いわゆる官僚と言うことはどうも申しわけないですが、聞くわけです。  大臣がかわることによって外務省事務当局外交方針というものに変化があるのかどうか、そのことを……。
  17. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えを申し上げます。  外交におきましては、政策コンティニュイティーと申しますか継続性ということが大変大事なものであると心得ております。大臣がかわられましても、皆様も過去三十年よく御承知のように、日本外交方針というものは変わらずに揺るぎないものであると心得ております。
  18. 井上泉

    井上(泉)委員 そうなると、大臣はだれになってもそう差し支えない。園田外相から櫻内外相にかわっても日本外交政策というか外交方針には変わりない、こういうことですか。
  19. 伊達宗起

    伊達政府委員 お答えを申し上げます。  歴代の総理外交におきます政策継続性ということの重要性はよく御認識になっているところでございまして、外務大臣の選任に当たられましても、それを配慮の上で選任されているわけでございまして、事務当局もまた、外交政策コンティニュイティーという立場から大臣を補佐申し上げてるということでございます。
  20. 井上泉

    井上(泉)委員 それじゃ、極端に言うなら外務大臣がだれであろうとも変わりないということは、別に櫻内大臣になったからといって変わるわけではなし、あるいは中山大臣になっても変わるというわけでもないということですが、そうすると、大臣は、いわば大臣になったということによって日本外交政策でおれはこうするんだ、そういうような決意というものは何もないですか。
  21. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外交方針について一貫性を持っていくという必要性は当然あると思います。外務大臣がだれでも同じでいいんじゃないか、外務大臣がかわったことによって何ら変わらなければだれでもいい、そういう素朴な見方もできるかと思いますが、これはやはり、基本の方針が出されましても、そのときそのときの外務大臣の、どこに重点を置くか、また時々刻々の国際情勢変化に応じましてどの辺を日本としてアクセントをつけていくかとか、いろいろさじかげんがあると思うのですね。たとえば日本料理でいくんだ、こう言っても、同じ材料でも腕次第でうまいものもできればまずいものもできる。その塩かげんとか、味の素をどの程度使うかとか、その辺はそのときどきの大臣の腕だと思うのですね。櫻内のはどうも塩気が多過ぎて食えぬ、こう言われればそれまでのことでございますが、日本料理でこの材料でという方針の中で私が一生懸命ただいま腕をふるわしていただいておる、こういうことで御了承をお願いします。
  22. 井上泉

    井上(泉)委員 一生懸命腕をふるうということは、いままでの日本外交方針に対して櫻内大臣としては、ああいうところに欠陥があったからおれはこうするんだ、おれはこういう行き方をするんだ、そういう新しい大臣としての抱負経綸というものがあってしかるべきだ。ところが、その抱負経綸というものがあなたの国会における演説の中にも見当たらないし、いま外務省官房長が言うように、大臣がかわっても変わりません、こういうことだったら、あなたの存在価値というものはなくなる。そういうようなところから考えていくと、あなたとしても、自民党の大幹事長と言われたあなたが外務大臣になってから、おれが大臣になってもちっとも変わらぬなどと言われたら、あなたは事務当局になめられているということになる。これは、もっとそのような気概を持って外交方針というものは貫いてもらわねばいかぬと私は思うのです。そういう気概は余り……(発言する者あり)やじが多いので……。  そこで、やはりこういう激動する時代の中において外務大臣としてひとつ気概のあるものを示してもらいたい、かように思うわけですが、その気概のあるものの見せ場がこの間のアメリカ訪問だったと私は思うわけです。そこでどうもチェリーチェリーというようなことで非常にもてはやされ、ちょうど桜の時節ですからそれに形容されるもいいけれども、何か国民としては、あれは行かなかった方が外務大臣の値打ちがもっと上がったのじゃないか、あれは行っておじぎをしてなにするということは、どうも日本外務大臣としての見識を損のうたことじゃないか、そういうふうに酷評する向きもあるわけであります。そこで、あなたはこの間の会談に当たって、どういうふうな気概を持ってアメリカ大統領その他アメリカ政府高官とお会いになったのか、その点を一点承っておきたいと思うのです。
  23. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は一生懸命行動するので、それに対する評価は皆さん方でございますが、これはやはりある程度の、自分で言うのもおかしいですが、持ち味はあると思うのですね。切り込んでいくのもいいが、やんわりいくのもいいかと思うので、まあどっちかと言うとどうもいまの井上委員の御批判からいうと余りやんわり過ぎたかもしれませんが、いずれにいたしましても、どういう表現にしようが言うべきことは言う。これは、かっかかっか言うのも間接的に言うのも、言い方の違いですね。ですから、先ほど川田委員にもお答えしたように、どうして高金利を責めないか、いや、わしはこっちの方からやんわりやったというふうに申し上げておるわけでございまして、当面日米間の重要な問題については、一連会談を通じまして私の所信は申し上げてまいった考えでございます。
  24. 井上泉

    井上(泉)委員 その中身その他についてはまた同僚議員から指摘をされると思いますから私はこのことについて多くを質疑いたしませんけれども、どうも外務大臣、ややもすれば防衛予算軍事協力とかいうような事軍事に関する関係の発言が当局でも多いわけです。やはり国と国との関係を平和的に保って、そして日本世界じゅうどこの国とも仲よくやっていく、そういう体制をつくっていくことが外務省としての任務であり、それが外務大臣としての任務だと思うわけであります。ある国を仮想敵国のようなことを言って、たとえばソ連からの脅威があるから日本アメリカとは緊密な連携を保たねばいかぬ、韓国とも一体にならねばいかぬとかいうような、戦争をあおるような、対立感情をあおり込むような、そういう言動が外務省の流れとしてあるわけですけれども、こういう点については外務大臣も同じ意見ですか。最も平和外交に徹した行き方をしていくという外交本来の目的というものを踏んでいく、そういう考え方はないですか。
  25. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外交に対する私の心配りは、外交こそが安全保障ではないか、外交をうまくやっていくことが日本の平和と安定を維持するゆえんではないか、そういう見地に立っての外交を進めておる。これは歴代の外務大臣もそういうお考えに立っておったと思うのであります。  そこで、いまずばりと防衛についてのお考え、御批判が出ておりますけれども、一体、日本専守防衛をやっていくにどうかというときに、現在国際的な共通した意向というものは、力の均衡、そしてそれが低いレベルで保たれる。これは軍縮でみんなが合意して、もう軍備などしないということになれば大変好もしいのでありますが、しかし、そうはいってない。そうであれば、多少ぎくしゃくしておっても、他面、対話をする。対話をすれば、その場合に、お互いに低いレベルに持っていこう、そういうような防衛についての努力があるわけですが、日本はその間にあって、日本の平和、安定の上にどうか、そうなってくると、まず第一は、おっしゃるように各国との間を円満にうまくやっていく国際外交、そのことによっての平和、安定を求めていく、これが一番大事だと思っております。
  26. 井上泉

    井上(泉)委員 日本外交というものを、外交の歴史を見てまいる場合、特に国会の中における論議というもの、これはあなたのお父さんが大臣をやった当時も一緒ですが、大体日本外交は、アジア外交というものが中心に展開をしてきたわけです。そうして安保条約を締結するときの国会の場合でも、岸総理は、日本はアジアの一員としての外交政策を堅持する、こういうことを言っておった。それがいつの間にやら日米関係になってきた。それまで言ってきたことは、日本が中国大陸を侵略するためにこのアジア外交を基調とする、あるいはシナ関係、いわゆるシナという言葉でいまの中国、中国との関係を重視をする、そういうのが国会で総理の施政方針、所信表明の中にはずっと出てきておるわけです。ところが、今度はそのことを離れていつの間にやら日本は、アジアの一員でありながらも、遠い西側の一員だとか、アメリカとの関係を基調にするとか、そういうふうな、国民としては理解に苦しむ、なぜ日本が西側と一緒にならなければいかぬか、なぜ日本アメリカとの関係を重視をして、基調として、西側陣営の一員として、アジアの国を飛び越えて、どうして西側の一員として存在を位置づけなければいかぬか。その辺の理解に苦しむわけですが、その辺については大臣、どうお考えになっているか。なぜ日本アメリカとの関係が中心であり、西側陣営の一員としてアジアの日本がやらなければいかぬか。その点、どうですか。
  27. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本外交の中で近隣諸国であるアジアを重視するということは、言うまでもないことでございまして、現に日本と中国との間に閣僚会議も持ち、また、きのう、きょうは実務者レベルの協議もする、あるいは、この六月にはASEAN諸国の拡大外相会議へ行って、ASEAN諸国との連携を緊密ならしめる、あるいは、韓国との間で外交が取り運ばれておるということは、言うまでもないことだと思うのであります。  日本が戦後どういう道をたどるかということから、西側陣営の一員としていこう——それは敗戦後の日本状況からいたしまして、これから立ち上がっていく上に、今後日本の必要な原料を得たり、販路を求めたりする上におきまして、自由主義諸国家との連携が好もしい、こういうことでその路線をたどり、そして、日米間で御承知のような平和条約、安保体制をつくった。こういうことで、現在日本外交の中で一つの基軸になるのは何か、こう言うと、日米外交だと申し上げておるわけでございますが、アジア外交を等閑視する考えは毛頭ございません。
  28. 井上泉

    井上(泉)委員 そのアジア外交を重視をするという中で、日本は、アジアは中国、韓国だけ、こう思っておるのですか。朝鮮半島には、韓国だけじゃないでしょう、国が二つあることは御存じですか、大臣
  29. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 いま朝鮮人民共和国が存在しておるということは、これはよく承知をしております。しかしながら、戦後の経緯を考えてみますと、現在国交を持っておらないわけであります。しかし、国交はないとは言うが、非常に重要な国である、こういう認識の上で経済、文化等の交流をしておる、こういうことでございます。
  30. 井上泉

    井上(泉)委員 国交を持ってないということと、いま対ソ脅威論の中で日米韓の軍事協力体制あるいは北朝鮮と称してこれの軍事脅威とかいうことをよく宣伝をしておるわけでありますけれども、私はそういうことはいささかもないと思うし、それから世界各国どこも、八十何カ国も朝鮮民主主義人民共和国を承認しておるわけだから、その国との間における経済、文化の交流が、こうあるとは言いましても、現実に本当にどこまでこれをやる気があるのか、この点、私は非常に疑問視をするわけです。  そこで、水産庁にお尋ねするわけですが、朝鮮民主主義人民共和国との民間漁業協定というものが六月で切れるわけですが、このことについて、日本の漁民が得ておる利益、さらにまたこの協定が切れる場合に起こる状態とかいうものを踏まえて、日朝の漁業協定の内容について説明をしてもらいたい。
  31. 山内静夫

    ○山内政府委員 北朝鮮水域におけるわが国の入漁の状況でございますが、現在漁業の種類といたしましては、イカ釣り漁業、それからマス流し、マスはえ縄漁業、ベニズワイガニかご漁業、この四種類があるわけでございます。  操業実績等につきましては、年によって漁獲量については年変動がございまして、大体三万トンから四万トン、こういう数字が掲げられております。操業隻数は、これも年変動がございますから一概には言えませんが、最高千数百隻、こういう隻数が当該水域において操業しておるわけでございます。  民間協定、六月末で切れるわけでございますが、切れた場合の影響についての御質問でございますが、わが国の日本海におきます漁業として比較的ウエートの高い漁業でございます関係で、非常に大きな影響を受ける、こう考えておるわけでございます。
  32. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣は、前に農林水産大臣もやっておられたのですが、この民間漁業協定があることは承知していますか。
  33. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 承知しております。
  34. 井上泉

    井上(泉)委員 それが今日、漁業協定というものが六月にもう期限が切れるという状態の中で、これをどう打開しようと考えておるのですか。
  35. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御承知のような、従来民間協定ということでまいっておりますので、民間協定の経緯を注目しておる、こういうことでございます。
  36. 井上泉

    井上(泉)委員 注目は、あなたする立場じゃないですよ。あなたも外務大臣ですから、これは注目をして、いわゆる観覧席におる人間とは違うでしょう。やはりこの問題については、どうするかということに頭を痛めておるとでも言えばともかくも、注目をしておるじゃどうも納得せぬですよ。島根県の漁民もおるし、鳥取県の漁民もおるし、北海道の漁民もおるし、これは二千隻という船です。向こうと漁業協定を結んでおるが、日本は朝鮮側に対してどういう協定に基づく対応の仕方をしておるのか、そのことをひとつ大臣、あなたの知っておる限りで。
  37. 木内昭胤

    ○木内政府委員 遺憾ながら北朝鮮とは外交関係がございませんので、政府として前面に出るわけにはまいりませんが、せっかく日朝友好促進議員連盟あるいは漁業協議会の方々が民間で先方と接触されておりますので、その方々の御努力に私ども大変期待しておりますし、その関係の先生方と私ども接触を持っておる次第でございます。
  38. 井上泉

    井上(泉)委員 その関係の方と接触を持っておるという朝鮮側の人は、どなたと持っていますか。
  39. 木内昭胤

    ○木内政府委員 私が申し上げましたのは、日本の国会の先生方でございます。
  40. 井上泉

    井上(泉)委員 日本の国会の先生方と接触を持っておられるとしても、その接触の過程で、協定がどうなっておるといま外務省は見通しを持っていますか、この協定に対して。
  41. 木内昭胤

    ○木内政府委員 六月三十日に現行の取り決めが失効することになっておりますので、せっかく関係の方々の御尽力でこれが再延長になることを希望しておる次第でございます。
  42. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣、いまアジア局長が、関係各位の努力によってこれが再延長になることを期待する、こう言われているわけですが、期待をしておれば、その期待が実現できるようにやはり外務省としては協力体制というものをとらなければならぬと思うのですが、これもやはり観覧席から見るような程度ですか。
  43. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外務大臣としては、国交がないのでありますから、注目する、あるいは関心を寄せる、また私どもの関係の議員の方々が御努力をされておるということに陰ながら御協力を申し上げる、こういうことでございます。
  44. 井上泉

    井上(泉)委員 陰ながら協力をされるわけですけれども、陰ながら協力といっても、影でも映り出されるわけですからね。影でも映るわけです。その影も映っていない。そうすると、物がない、こういうことになる。これはたとえば、向こうから交渉に参りましょう、こういうことで向こうから出てくるのを外務省がストップをかけるというようなことは、これは陰ながら成功を祈るというようなことでなく、逆にその成功を阻止するようなやり方じゃないですか。初めあなたは、経済、文化の交流はよくやっておる、こう言われた。漁業問題も経済でしょう。その経済の交流を促進する。そして日本の関係漁民が、五千人も六千人もの漁民が、毎日操業しておるその区域の問題、これが六月には期限が切れるというんだから、これは大変な問題だから、ひとつ再廷長するように日本の関係者と、民間協定を結んだ相手方と話をしよう、こう言って向こうから来るというのを、あなたの方でストップをかける。これは一体どういうことですか。
  45. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先方から来られるであろうという話は、日朝友好促進議員連盟の先生方から伺っております。ただし、この問題につきましては非常に厄介な側面がございまして、その点につきましても、関係の先生方と引き続き慎重に御相談を申し上げているのが現状でございます。
  46. 井上泉

    井上(泉)委員 これは大臣事務当局としてのアジア局長はそう言うけれども、大臣としては、これはやはり政策的に政治家としての決断をしてやらなければいかぬ問題である、私はこう思うのです。向こうから話し合いに来ましょうと言って、向こうの代表団が来るのに対して、こちらがいちゃもんをつけて、その入国を拒否するようなことは、これはすべきことではないし、そんな無礼なことは、国交のない間柄ですから、なおさらそういうことはすべきではないわけですが、これは大臣、どうですか。——あなたじゃない、大臣だ。
  47. 木内昭胤

    ○木内政府委員 大変申し上げにくいことでございますが、昨年来られた玄峻極氏の入国に際しましては、現在の現状にかんがみまして、政治活動を御遠慮いただくということで御相談いたしておったわけでございます。関係の先生方もその点は十分了承されたものと私ども承知いたしております。にもかかわらず、重大な会見を新聞紙上でなされまして、そこで、事柄の当否は別といたしまして、レーガン大統領あるいは全斗煥大統領を大変激しく評価された次第もありまして、私どもとしては非常にやりにくい局面に立たされたという事情があることもひとつ御理解いただきたいと思います。
  48. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣日本は独立国家ですよ。自主日本の毅然とした態度をもって臨むならば、玄団長がどうのこうのと言うけれども、玄氏は朝日親善友好協会の会長さんですよ。朝鮮との間の友好関係を深めていく、経済、文化を通じて深めていくとすれば、その一番大事な向こうの友好協会の会長さんがこうして団長として日本に来られるとするなら、やはり礼儀を厚くしてこれの入国というものを認めてやらなければいかぬのじゃないですか。それがマスコミの報道でどうのこうのと言う。これはマスコミや新聞記者が取材した。それを新聞記者が書いておるので、向こうが問われれば答えるのが、これはやはり問われた者の責任でしょう。僕でも新聞記者からいろいろ問われれば、それに対して答える。それを答えないということは、これは無礼である。その、無礼でない、礼儀を尽くして向こうに答えたことが新聞に載ったからといって、それが玄団長の責任のようなことを言って、この人なら日本は入国を認めませんよというような、そういうかたくなな態度は、これは日朝親善友好を口にしながら日朝親善を破壊する行動につながるし、ましてや二千隻の日本の漁船の運命に関する大事な問題だと私は思うわけです。そこはやはり大臣として、あなたは非常に円満な人柄ですが、争いを好まぬということなら、これは決断をせざるを得ないと思うのですが、どうですか。
  49. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 物事を判断する上におきましては、いろいろと事情も聞き、また従来の経緯も配慮し、さらには、大事なことでございますから政府内部の意見もよく徴さなければならない。こういうようなことからまいりますと、ただいま局長の御説明も一つの要素ではございますが、なかなかいまお挙げになった方についてビザを出すということにつきまして非常に困難な事情がある、そういうことで苦慮をしておる次第でございます。
  50. 井上泉

    井上(泉)委員 その困難なということは、なぜ困難かは合点がいかぬですよ。この協定を結んだときはちょうどいまの総理大臣が農林大臣のときであった、ですから、いまの総理大臣もこの協定のことについてはよく承知をしておるわけです。大臣自身もこのことについては、農林大臣であったし、そしてまた自民党の首脳ですから、それくらいのことは御承知をなさっておると思うのですが、どこに気がねをするんですか。日本の二千隻の漁船の協定を向こうと結ぶのにどこに気がねをなさって、玄団長が入国するのはいけない、こう言うのですか、その点ひとつ。
  51. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先ほど申し上げました点につきまして、井上委員は、新聞の方から問われるままに答えたことが政治的な活動につながらないというような御判断でございましたが、やはり新聞に大きく報道される、内容によりましては私どもはこれが政治活動につながるというふうに遺憾ながら考えざるを得ないわけでございます。とりわけ第三国の元首に言及するということは、大変な都合の悪いことではないかと考える次第でございます。
  52. 井上泉

    井上(泉)委員 それではアジア局長は、大臣が入国を認めよ、こう言ってもあなたは反対しますか。
  53. 木内昭胤

    ○木内政府委員 外務大臣とは連日大変密接に御指示を賜って執務をいたしております。
  54. 井上泉

    井上(泉)委員 そうすると大臣は、玄団長では絶対日本に入国を認めぬ、それでは漁業協定が飛んでもしようがない、こういうふうに考えておるんですか。
  55. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 おいでになられる方それぞれについて、過去の経緯あるいは日朝議連の皆さん方とも従来いろいろ御相談をしてまいっておるわけでございます。その御相談の中で、やはり責任を持っていま外交を担当しておる上におきまして、こういうことはどういうことでしょうかというようなことも御相談しながら来ておるわけでございまして、そういう経緯の中からいたしますと、いまお挙げになっておる方については、現在どうもビザを出すということについて非常に困難である、こういうことでございます。
  56. 井上泉

    井上(泉)委員 それなら、現在、いまはできないけれども、状況変化といいますか、いままでの経過等から踏まえて、そうしてこれは日本側が朝鮮側にお願いをすることだから、その代表が、だれがどうだこうだと言って戸籍調べをすることは特高の警察がやったと同じようなことになる。そういう戸籍調べをして、そこで相手を拒否するということは、これは国際儀礼上も御無礼ですよ。これは外交の衝にある者としては、やっぱりもっと相手国の立場といいますか相手国の人を、どういう立場日本へ来るのか、日本はその人とどういう話をするのか、そういうことを考えた場合には、私は、過去にどういういきさつがあり、あるいは木内アジア局長が気になさった面があったにしても、玄団長はりっぱな朝鮮の代表者としてこの漁業協定を取り決めに日本の要請に基づいて来るんですから、それに対して、これはもうだめじゃと言うて最後まで突っ張るつもりですか、大臣
  57. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 別に私が特高的役割りをしておるのではないのでありまして、ただ、従来の経緯で、とられた行動によりまして、また他面、それが外交的にいろいろ批判の対象になったりしておるというようなことなど、いろいろございますが、こういうことは、私は、本来言うとやはりこういうところでいろいろはっきりしたことを申し上げにくいし、そうすべきものじゃない。ですから、皆様方の代表との間でいろいろ御懇談をしながら、しかしわれわれとして、お尋ねがあればこれは大変支障がある、こう申し上げておるわけであります。
  58. 井上泉

    井上(泉)委員 これは六月ですから、もう時間的なものもないわけですよ。それであなたは、この二千隻の日本の漁船がこの地域で操業しておって、そうして入漁料一銭ももらっていない。そして台風等のときには、向こうの配慮によって緊急避難をする。その受け入れをして、そしていろんな便宜を与えてくれておる。そういうことに対して、日本国民政府ですからね。これは自民党の政府というような形で考えては困りますよ。日本国民政府としては、そういう共和国の好意に対しては、やはり私はしかるべき感謝の、日本国民をこうして避難をさせていただいて本当にありがとうございます、こういうことを外務大臣が電報の一本ぐらい入れたところで、これは一つも国交がないからだめだとかというようなことにはならぬと思う。だから私はやっぱりそれと同じように、この協定に対して、向こうの代表団長がどうのこうのというようなことを言う前に、どういう関係の中でこの協定が成立をし、そしてこの協定の期限がいつ来ておるかということを考えたならば、やはり政治家としての決断をすべきでないか。つまり朝鮮民主主義人民共和国というものが国家として存在をしておるから、厳然として存在をしておるわけですから、日本が認めてなくとも、向こうの好意に対しては、日本政府としては当然感謝の気持ちをあらわさなければならぬじゃないですか、礼儀を尽くさなければならぬじゃないですか。そういう礼儀も尽くさない、感謝の気持ちもあらわさない。これはどうも団長が気に入らぬから入国を認めない、協定がどうなろうとも構わぬ、こういうことじゃ、余りにも国民のための外交とは言えないじゃないですか、国民のための外務省とは言えないじゃないですか。大臣どうですか。どうしてもだめですか、玄団長では。
  59. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 現在朝鮮人民共和国との間で民間が結んでおられる漁業協定によりまして、多くの日本の漁業者がそれによって非常に裨益しておるということ、また、そういうことについてとられておる朝鮮人民共和国の姿勢というものに対して私どもがありがたく思っておることは、言うまでもないことであります。そういうことについて、私どもは一度もとやかく言っておるんではないんです。ただ、だんだん私もこういうふうにお話が詰まってくると、やはり人間はある程度失礼にわたらないように申し上げていかなければならないし、私はここでどうこうということでなく、皆さん方にも懇切に、従来のこういう経緯からしてこうですから、なかなかそれで困るのですということを申し上げておって、そして、その間になお何か打開の道はないものかと模索しておるわけでございまして、ここで責め立てられて何か言わなければならぬ、そういうことではなく、やはりあくまでもこういう重要なむずかしい問題については、お話をしながら何とか道を探したい、こういうことでございます。
  60. 井上泉

    井上(泉)委員 これはぜひひとつ妥結の道を見出して、そうして関係漁民が安心をして操業のできる条件というものをつくってもらいたい。そのことはなお深く申し上げませんけれども、事態の推移を見守るわけです。  いま何か大臣は朝鮮人民共和国とおっしゃった。朝鮮民主主義人民共和国ですから、国の名前を変えると、櫻内を櫻田と呼ぶようなもので非常に御無礼ですから、これはやはり外交の責任者としてはそこら辺はひとつ外務大臣として注意をしてやってもらいたいと思うのです。  アメリカですら科学技術の交流の協定を結ぶようなことで、代表団を受け入れていろいろやっているのですよ。日本ももっとこちらから進んで共和国と交流を深めていくというようなことは、櫻内外務大臣時代に先鞭をつける勇気はないのですか。
  61. 木内昭胤

    ○木内政府委員 北朝鮮とは御承知のとおり人的交流あるいは通商、そういった面での交流を慎重は積み重ねていくほか遺憾ながらないと私ども考えております。
  62. 井上泉

    井上(泉)委員 その共和国との間の関係を積み重ねていくためには、向こう側からだけではなしにこちら側からも働きかけをしていくということが私は大事だと思うわけです。こちらがせずに向こうから、あるいは民間だけというようなことではなしに——いまは日中国交回復して十年、こういうことになっているわけですが、二十年前には中国との関係はどうだったですか。歴史というものは大きく流れておる、発展をしておるわけでしょう。そういう中でいま朝鮮に対してこういう態度をとっておったならば、いつかは悔いを残すことになる、そのことを考えたら、やはりこちらからも積極的に友好親善を積み上げていくような働きかけをして、その働きかけに対して外務省が直接的でなくても協力、支援をする、こういう姿勢があって私はしかるべきだと思うわけですが、アジア局長はあんなこと言うからだめです。アジア局長またかわるかもしれぬから、ひとつ大臣どうですか、そういう積み上げをやりませんか。
  63. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 経済、文化等の交流をしておるということは、これは井上委員の言われる積み上げの中の一つだと私は思うのです。朝鮮民主主義人民共和国に対して私どもがそういういろいろな角度からの積み上げをしながら、これは全般的な外交の枠組みの中で残念ながら国交を持ち得ないような状況にあるわけでございますから、そういう交流をしながらそのような枠組みが転換することを望む、それで誠意を持って臨んでいくということがいまのこの段階では一番大事だと思っております。
  64. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで韓国に対する六十億ドルの問題ですが、アメリカと韓国との経済関係、軍事関係の中で、日本はひとつ六十億ドル出せよというようなことが一つの大きな条件というか、話の中にあったということを聞くわけです。こういうことをすることが南北の対立を激化するもとであるし、一遍共和国の方へ足を踏み入れた者は、共和国が戦争をしかけるとかいうような国づくりをしておるとはいささかも感じることはないと思うわけです。そこで、この対韓援助六十億ドルの問題についてはいま話し合いがなされておるということですけれども、これはいま一体どういうふうな経過になっておるのか。  さらにはまた、いま大臣が後で答弁したところがどうもはっきり聞こえにくかったのですけれども、共和国との友好協力関係を深めていくという姿勢はあるのですか。いわゆる経済、文化の交流を通じてだんだん友好関係を深めていくというその姿勢はあるのかどうか、そのことを明確に、端的にお答え願いたい。あと関連質問でやられる方がありますので、その点を大臣、ひとつはっきり答えてください。
  65. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 一つは朝鮮民主主義人民共和国との間の関係をどういうふうに考えておるか。これについては、経済、文化を通じての交流を深めることによりまして朝鮮民主主義人民共和国と日本との間を、これを積み上げ方式と申しますが、そういうことで深めていきたい、こういうふうに思っておるわけであります。  それから韓国との経済協力のことについて、これは何か米韓軍事関係がどうとかという御質問、ちょっとはっきりいたしませんでしたが、そういうことは私が就任後全然考えておりません。一昨年来の韓国における経済状況、それに伴いまして本年から始まる五カ年計画の中で、これこれの範囲について日本経済協力を求めてきておる、こういうことから高級実務者レベルの会議を二回持って、また、その後も疑問のあるところについてはただし、あるいは当方の意見は申し上げる、こういうことで、先方要望しておる経済協力についてどの範囲でやり得るか、現在検討中である、こういうことでございます。
  66. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣も大正の一けたか明治でしょう。私も大正の一けたですが、大正の一けたとか明治の人は戦争を経験してきておるわけです。戦後の日本の国づくりというものは、戦争でしてきたことに対する反省の上に立っての日本の政治でなくてはならないわけですが、その反省なしに軍備増強というようなことで、核開発とかいろいろなことで戦争をしでかしては大変なことです。その戦争の一番の悲劇の落とし子として、この間台湾の召集兵に対する補償の問題も出ておりましたが、戦争中に中国大陸で非常に悲惨な目に遭って、日本人の父を持ちながらもいわゆる孤児として存在をする者がたくさんあるわけで、私は孤児問題についてもきょういろいろと質問するつもりでありましたけれども、それは省略するとしますが、一体過去の戦争に対して、あなたたちは鬼畜米英やるべしということで大合唱したグループですから、いまアメリカに対しては後ろめたさを感じて、どうぞどうぞということでやりはせぬか、私はこんなひがみ感情も持つわけであります。私はそうしたことに対しては非常に強い抵抗をしてきた者ですが、そこで、日中の国交回復というものがなされて、日中の関係そして朝鮮半島における自主的な平和統一ということがアジア平和のかぎになると私は思います。  それからソ連との関係にいたしましても、一体ソ連が日本へ攻めてくるという要素がどこにあるのか。それを水際作戦とかいろいろな形で防衛を幾らやったところでどうにもなる問題じゃないし、もっともっとソ連とか朝鮮、中国、そして東南アジア地域との友好関係を深めるための手だてを講じていくのが日本外交としての大事な行き方である、私はこう考えるわけです。  その一つとして、中国との関係においても、いま領事館が上海と広東ということで、日本では私が知る限りでは北海道と神戸ということですが、せめて東北地方に領事館、総領事館を一つぐらいは双方が交渉を持って設けて、そして残留孤児の引き揚げの問題やこれからの日本との友好関係を深めるというようなお考えはないのかどうか、その点承りたいと思います。
  67. 木内昭胤

    ○木内政府委員 井上委員御指摘のとおり、中国に残留しておられる孤児の方々との関連で、身元をできるだけ洗いまして、その引き揚げを促進するために、瀋陽に総領事館を設置してはどうかという御意見は国会の中にもございまして、私どもとしましても、仮に中国に第三番目の総領事館を設置することができるとすれば、瀋陽が一番優先するものと考えております。
  68. 井上泉

    井上(泉)委員 大臣、私の質問はこれで終わるわけですが、いまアジア局長からそういう意見が出されたわけですけれども、大臣がこれは必要だからひとつそこに建てるようにせよ、つくるようにしたらどうだ、中国と話をしたらどうなんだと、大臣が偉いのですから、もっと事務当局を指導するような、そういうことはしないのですか。大臣どう思いますか。
  69. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本として密接な関係のある地区に領事館あるいは総領事館を設けて、そして外交を強化するということは当然のことでございます。ただ、御高承のとおりに総領事館設置、こういうことになりますと、その関係国との間で相互主義的な措置をしなければならない、こういうことでありますから、そういう点で先方ともよく相談をして、いま仮に瀋陽、こういうことが取り上げられましたが、私は今後中華人民共和国に領事館なり総領事館の必要を認める場合には瀋陽を一番優先したい、こう思っております。
  70. 井上泉

    井上(泉)委員 関連質疑がありますので、終わります。
  71. 中山正暉

    中山委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。小林進君。
  72. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは五分だそうでございますから、質問は山ほどありますけれども、本当に事務的な問題で、三月十一日でございますか、朝鮮半島経由の日中空路、成田と北京の空路開設の問題であります。これについては、いま御承知のとおり南回りで大変不便をしていること、上海をぐるっと北へ上がったりして不便で非常な時間を要しているのですが、新聞によりますと、これはバンコクにありますICAO、いわゆる国際民間航空機構、そこの理事長のコタイテという方が近くソウルに行かれて、成田−ソウル経由−北京の航空路開発の交渉をされる。これができると、北の方の朝鮮民主主義人民共和国の方の平壌ですかもその会談に同時に入って、そうすると両方だ。南回りはソウル経由で北京まで行ける。北回りは成田から平壌経由で北京へ行かれる。この航路の開設の交渉がこれで可能性があるということになっているのですが、これに対して日本政府外務省がどの程度の関心をお持ちになっているのか。こういうことは私は多年要望いたしておりまして、こういう重大な問題をなぜ一体そのままにしておくのかということでやきやきしたのでありますけれども、幸いなるかな、バンコクの方からこういうサウンドが開始せられたということで私どもは非常に関心を寄せているわけであります。その後の経過はどうなっているか、この問題に対して外務省はどの程度まで積極的に動いたのか、あるいはまた依然として何も動かないで傍観をしていたのか、ここら辺をつまびらかにお聞かせいただきたいと思うのでございます。
  73. 木内昭胤

    ○木内政府委員 小林委員御指摘の日中間の航空路の短縮の問題につきましては、これは燃料の節約にもつながるわけでございまして、また時間的にも一時間前後短縮されるということは大変望ましいことと私どもも大変関心を抱いております。  御指摘のとおりICAO、国際民間航空機関のコタイテ理事長がピョンヤン、北京、ソウルそれに東京を訪問されまして、私どもも技術的な側面について御相談にあずかっておるわけでございます。現在はこのICAOにおきましてさらに技術的な詰めを行われておるというふうに承知いたしておりまして、その結果を踏んまえまして積極的に対応したいというのが私どもの考え方でございます。
  74. 小林進

    ○小林(進)委員 積極的に対応したいという、これから先のことを言っているんじゃないんだ。もう事態は動いているんだから。いままで日本政府はどういうことをされたか、何もしないのか、単にICAOと韓国政府なり人民共和国との交渉を黙って傍観していた。先ほども言ったようにあなた方は傍観することが得意だ。日朝議連の議員さんのところで話を聞いたとか、そんなことをもって外交だというような答弁をしているけれども、聞いていても腹が立ってしようがない。そんな客観的な評論家的な話を聞いているのではないんだ。日本政府はこの問題でいままでどういうふうに動いてきたか、どういうふうに行動をしてきたかということを聞いているんですよ。——言いなさいよ。私どもなんかいまわが愛すべき北京とは、こんなつまらない質問をしているよりは、十二時になったら十二時の飛行機に乗って北京へ行ってお茶でも飲んで、三時ごろにまた帰ってきてここで質問したい、そういうことも可能なくらい、一直線に北京まで行くようになれば道は近づくわけだ、時間的に短縮される、それをなぜやらないかということを私は質問しているわけです。どうですか、大臣
  75. 木内昭胤

    ○木内政府委員 決して傍観しておるわけではございませんで、御指摘のICAOのコタイテ理事長とも十分協議をいたしておるわけでございます。なお、ICAOの方におかれましては、技術的に詰める問題点が残されておるわけでございまして、その辺も十分伺って積極的に対応したいということでございます。
  76. 小林進

    ○小林(進)委員 もう時間が参りましたから、これはひとつ大臣に今後の決意、行動も含めて大体将来の見通し、やるかやらないか、これは政府が積極的に行動していただければ、実に客観的にはもう成熟しているんですよ。残念ながら日本外務省だけが僕らから言わせればサボタージュしているか熱意が足りない。どうか大臣、ひとつちゃんと腹の決まった決意を勇気を持って答えてください。
  77. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 小林委員のおっしゃっていることは私も全く同感でございます。そして現在までにも——これも言うまでもないことですが、いまお示しの空路が設置されれば時間的にも燃料的にもこれは関係国にとっても非常に好ましいことでありますから、今後においても積極的にこれが結実するように進めてまいります。
  78. 小林進

    ○小林(進)委員 質問を終わります。
  79. 中山正暉

    中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  80. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。河上民雄君。
  81. 河上民雄

    ○河上委員 先ほどこの委員会の同僚議員からもお話がございましたが、今回の櫻内外務大臣訪米に関連して、若干の御質問をしたいと思います。  外務大臣も大変御苦労でございましたが、今回の訪米のねらいはどの辺にあったのか。アメリカの要求を値切るために行かれたのか、あるいは体をかわすために行かれたのか、それとも毅然として拒否する意思を向こうに伝えるためであったのか、あるいは何らかの妥協点を探るために行かれたのか、そのいずれでございましたか。
  82. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 今回の私の訪米は、昨年伊東外務大臣訪米いたしましてからちょうど一年になるわけでございます。それから、鈴木内閣が昨年十一月末に改造いたしまして、私が就任後最初の訪米でございまして、折から日米経済問題ということが非常にやかましく言われておるのでございましたから、どちらかというと私の訪米がその問題でされるのではないかというようにとられがちでありましたけれども、いま申し上げましたような経緯から国際情勢全般について腹蔵のない意見交換をしよう、いわば日米間における外相定期会議とでも申しましょうか、一年ぶりに両国外交担当者が話し合いをするのが必要だ、こういうことで、しかし、折から問題がございますからその折に二国間問題も当然出るであろう、こういうことで参ったわけであります。
  83. 河上民雄

    ○河上委員 大臣が何かかわるたびにアメリカへ行くというあり方が、大臣自身としてこれでいいと思っておられるのかどうか。実は私のことを申し上げてあれでございますけれども、私も社会党の国際局長を四年ほどやりまして、この辺でそろそろやめた方がよかろうか、こういうふうに思ってあるところで話をしましたら、やはり外交というのは継続性が大事だからやめる必要はない、こういうふうにある外国の人から言われました。それも一理あるな、確かに大切なことだなと思ったのですが、よく考えてみますと、私が社会党の国際局長をやっておる間に日本外務大臣は五人かわりました。外交継続性が必要なはずの外務大臣が、野党の国際局長が一人務める間に五人もかわるというようなことですからという話をしたのでございますけれども、櫻内外務大臣、せっかくなったばかりでございますが、アメリカのみならず他の諸外国の外交担当者とお会いになるときに、こうくるくる外務大臣がかわるということは余り好ましくないとお感じになりませんか。
  84. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私、就任以来数多くの外務大臣と接触をいたしましたが、河上委員おっしゃるように大体一年未満の外務大臣というのは非常に数少のうございます。主要国では二、三年ぐらい外務大臣をされておる場合が多いと思うのでありまして、外務大臣が落ちついてその内閣の外交方針に基づいて仕事をされるということが好ましいことは言うまでもないと思います。  なお、アメリカとの間で今度こういう協議を持ったということは、御承知であろうと思いますが、いま主要国とは大体定期外相会議を持っておるのでございます。不思議とアメリカとの間は定期外相会議というような表現は用いておりませんが、年に一回ぐらい主要国との外相会議を持つということが必要ではないか、このように見ております。
  85. 河上民雄

    ○河上委員 今回の対米会談に当たって、新聞の報道するところ外務大臣は西側の結束を強調されるとともに、市場開放に最大限の努力をするということを述べておられたということでありますけれども、今回お話しになりまして、その点とめように感ぜられたのか。百八十億ドルとも言われます貿易インバランス解消策を大体どこに見当をつけられたのか、率直なところを伺いたいと思います。
  86. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私が米側に申しました主要点といたしまして、おっしゃるような西側諸国の一員として、二国間はもとより国際関係の広範な分野においてわが国の国力と国情にふさわしい国際的責任を果たすべく努力を継続するという趣旨を申しております。日米間の貿易の不均衡とともに日欧間の貿易の不均衡批判があるわけでございまして、御存じのように日米間百八十億ドル、日欧間百億ドルのインバランス、こういうことを言われております。  そこで、そういう当面の現象面からする問題もさることながら、私が特に強調しましたのは欧米を通じて経済が非常に悪い、失業率も高い、インフレも進行しておる、成長率も非常に低い、こういう国際経済の不況というものがまた不均衡原因になっているんではないか。したがって国際経済活性化を求める、そういう方からも考えなければならないんじゃないかというようなことで、西側の関係についていま申し上げるような点も強調をいたしたようなことでございます。
  87. 河上民雄

    ○河上委員 アメリカ側の方からともかくひとつ答えを早く出してくれ、ベルサイユ・サミットまでというような期限を切られたというふうに報道されておりますけれども、この点はいかがでございますか。
  88. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ベルサイユ・サミット前に市場開放努力をしてもらいたいという期待の表明があったことは事実であります。これは日本としてとりようがあると思うのですね。日本市場開放をそういう時期までにできるだけしろという意味もありますが、同時にサミットを開く上に日本として市場開放努力をし、そしてサミット会議で腹蔵のない話し合いができる、それは好ましい方向でないかと私は受けとめました。しかしながら、サミットまでに何もかもやれと時間を限ったような、そういうことではない。ヘイグ長官との間では、現に日米貿易小委員会でいろいろ話し合っておる、一つには作業部会を設けてやろうということもあるし、十月から柑橘類、肉類の話し合いをしようということもあるし、そう日にちを限ってやれと言ってもやれるもの、やれないものもあるんだ、しかし日本としてはサミットは非常に大事で、それまでにできるだけの努力をするということは結構だ、こういう受け答えになっております。
  89. 河上民雄

    ○河上委員 国民はその点大変不安を感じておると思うのでありまして、特に農産品の関係者は事実上どうも押し切られているんではないかという感じを持っていると思うのであります。  外務大臣は向こうで、私はチェリーだと言って新聞記者の体を果たしてかわせたのかどうか疑わしいのですが、そう言われたそうであります。日本の皆さんはチェリーがベルサイユの前に散ってしまうのではないかということを大変心配しておると思うのです。いまのお話ですと、いや何となくあいまいな形でと言う。しかし、向こうにはどうもある程度の感触を与えておるのじゃないかという心配を私どもは非常にするわけであります。  貿易インバランス解消策というのを考えますときに、この問題が現実に大きくなってきたのは一九六〇年代の末からだと思うのでありますけれども、その場合に、一つは対米輸出の面で日本側が抑制措置をとる。たとえば鉄鋼、テレビ、繊維そして自動車というような形で今日までやってきた。一方、対米輸入の面では、自由化、門戸開放というようなことで農産品あるいは電電公社の発注の開放あるいは非関税障壁の撤廃、もちろん関税障壁についても問題があったわけですけれども、そういうふうにやってきたわけです。しかし、対米輸入の面で、いま幾つか挙げましたもの、たとえば農産品などアメリカが仮に要求することを全部のんだとしても、どうでございますか、どのくらいになりますか、後でちょっと伺いたいんですが、恐らく大した額じゃないのじゃないかと思うのです。そうなりますと、結局何か大口の商品ということになって、またぞろ飛行機を購入するというところに解決策を求めるのじゃないかという予感がするのであります。一九七二年の佐藤内閣のときのサンクレメンテ会談、そして同じ年の田中内閣のハワイ会談、これはいずれも民間飛行機でありますけれども、これでインバランス解消しよう、こういうことになりまして、御案内のとおりロッキード事件という不祥事を起こしているわけです。私は、今回もまた結局その轍を踏むんではないかという心配を持っているわけでありますけれども、この点、政府としてはどのように考えておられますか。
  90. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 貿易の不均衡から言うと、米側主張は百八十億ドルと盛んに言われております。日本の統計から言うと百三十三億ドル程度だ、こう思うのであります。今回私は、貿易の不均衡ということでいろいろおっしゃるが、あなたの方は貿易外収支を入れての経常収支は黒なんじゃないですか、こういうことは申してあるのです。それから、そういう経常収支が黒というたてまえからいえば、貿易の関係を多少でもよくするということからいたしますれば、日本側要望しておるアラスカ石油、西部炭の輸入に力を入れればその面からでも四、五十億ドルは違うじゃないか、それからもう一つは、いわゆる円安状況、言いかえればアメリカ高金利、円の価値が正当に値してくれば、それが二十円違うということになれば、二、三十億ドル違うじゃないかというふうに、貿易の不均衡についてはわれわれの見ておる目をよく申し上げておきました。  そこで、河上委員の御関心の、一体それではアメリカは何を日本に売りたいのか、何の市場開放を求めているのかというと、ヘイグ長官がたまたま具体的に言われたときは農産物、たばこ、それから先端技術ということを指摘されておりました。飛行機のことが問題になるんじゃないかということを頭に置いて考えて、この先端技術が関連があるかないかというふうに一応は考えさせられますが、飛行機というようなことがそのものずばりという表現は何もございません。
  91. 河上民雄

    ○河上委員 いま外務大臣お話では、自分の意見はこう言った、相手はこう言ってきた、こういうことでありますけれども、どうもいまのお話の中には、外務大臣がこう言ったということに対してアメリカ側はどう受け取ったか、あるいはアメリカ側がこう言ったことに対してわが方はどう答えたかという御返事は全然なかったのでございますけれども、その点はいかがでございますか。
  92. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは会談のあやでございますから、一語一語にすぐ反駁してとかいうのが至当かどうかということは別にいたしまして、今度の一連会談を通じましては、たとえばいま河上委員が農産物の御関心を持たれたというふうに印象を受けましたが、これについては農務長官との間で相当突っ込んだ話をしてまいりました。それは、私が農林大臣をやっておる当時に、アメリカが大豆やトウモロコシ、コウリャンの輸出を渋った事実があるわけであります。それは国際的に非常に食糧飢饉の国がある、ソ連を初めとして、どうしても輸出しなければならない面があった、アメリカはそれを人道的、こう言って、それを優先して、長年の顧客である日本に対して出さなかった事実があるのですね。だから日本としてはある程度の農産物の生産をしていかざるを得ないのだということを強く主張した場面がございます。そういうことで、そのときそのときにどういうふうに受け答えをし、どのように反駁したかということについては、記録でも見て申し上げないと記憶が定かではございませんが、全般を通じましては言うべきことはよく指摘をした、こう記憶しております。
  93. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣、大変大事なことを何か記憶しているとか、あやとして御理解いただきたいということですけれども、結局、大臣がそう言われたこと、あるいは鈴木総理大臣がどこかで演説したことがやはり日本政府立場としてアメリカに理解されているということは、もう明白な事実だと思うのです。  そこで、いまのことをこの上言ってももうあれでございますが、最後にその点で確認をしたいと思うのでありますけれども、農産品の自由化については政府としてある程度対応するというお考えであるかどうか。そしてその点について、向こうの政府にある程度努力するということについて約束をしてきたのかどうか、具体的に何をどうするということは別として。  第二に、この大幅な貿易インバランス解消するために、将来飛行機の購入ということを全く考えないか。方針としてそういうことをとらないというふうにここで断言されるかどうか。近くフランスのミッテラン大統領日本を訪問されますけれども、日仏間のトレードインバランス解消のためにヘリコプターの購入をすでに決めておられます。同じことがアメリカの場合に秘策としてあなた方の頭の中にあるのではないか。それがないとここではっきり断言されますかどうか。
  94. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 農産物の問題はすでに日米貿易小委員会で、四月から作業部会で残存品目についての検討をする。これは今回私が訪米したからそういうものを決めたというのじゃなくて、すでにそういう作業部会を持つという合意がありますから、そのことが今後とり行われる。別段、今度私がそういう問題の交渉に行ったわけじゃないのですから、市場開放という問題が出たときに、農産物についてはすでに作業部会をやることになっておるのだから、その方針どおりじゃないか、それから柑橘類、肉については十月から八四年以降の枠についての話し合いをしよう、これも決まっておることですね、だからそれはそれでいいと思うのです。  それから、インバランス解消の上に飛行機を買えとか買うとか、そういうような問題には触れておりません。
  95. 河上民雄

    ○河上委員 触れていないということはさっきから伺っておるので、政府としてそういう考えがないということをここではっきりおっしゃっていただきたい。
  96. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私はいまの航空界の情勢とか、いまそういう商談があるとか、全然知りませんから、取引のことでありますから必要があれば買うでありましょうし、必要がなければ買わぬ、こういうことで、実際上の航空業界の情勢、私は知りませんから、いまここで将来飛行機は買わぬということを私が答弁するというのは不見識じゃないか、こう思います。
  97. 河上民雄

    ○河上委員 しかし、現実に佐藤内閣、田中内閣のときにロッキード汚職の温床になる取り決めをしているわけですから、私はその点をお伺いしたわけでありますが、いまのお話ですと、今回は要するに顔見せに行ったので、自分は交渉に行ったのではない、こういうふうに言われますけれども、日米間のいままでのいきさつをずっと振り返ってみますと、日本政府の要路の人がそのとき演説その他で言ったことが公約として受け取られているという面がたくさんあるわけでございまして、それだけに慎重に当たってほしい、私はそう思うのであります。  たとえば、いま外務大臣、シーレーンの南方千海里の防衛の問題につきまして、これは鈴木総理大臣がワシントンで行った演説に先方は依拠しているわけでありますけれども、ワインバーガー国防長官はこれを日本政府の公約として受け取っておる。日本政府側は、必ずしも公約ではないのだ、こう言っているのでありますけれども、これは一体どういうふうになっておるのか、また、どういうふうに政府としては理解しているのか。
  98. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本側が今後の防衛努力をやる上におきまして、日本周辺数百海里、航路帯を設ければ千海里ということは、昨年の鈴木総理のプレス・クラブの講演の前からそういうことが言われておって、総理はそのことをプレス・クラブの講演の中で言われた、これが事実関係であると思うのであります。今回、ワインバーガー国防長官が日本での講演の折に、あれは日本の公約だ、そういう表現をされたことを新聞記事で承知はしておりますが、どういう口調でどんなふうに講演をされたか、そのことは私聞いておりませんので、ワインバーガーさんはワインバーガーさんの一つの調子で講演をされたものと思っております。
  99. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、シーレーンの防衛についてはこれを公約とは理解していない、こういうふうに考えてよろしいわけですか。
  100. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 従来とられてきた方針をプレス・クラブの席上で総理が口にされたのでありますから、それだけにアメリカ側は大事なことと受けとめておるのではないか、こういうふうに私は見ておる次第でございます。
  101. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、これは公約ではないが、公約に近い効果を持つということを当然予期しているというふうにわれわれは考えざるを得ないのですが、そういう意味の御答弁ですか。
  102. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 プレス・クラブでしゃべられたということが、お話しのように米政府に公約したかしないのかと言えば、それは公約でないと申し上げていいと思うのです。しかしながら、従来日本側考えておることを総理が演説にされたのですから、それに伴って日本がそういう方針をとるのだな、こういうことは、プレスの人であろうが、またそれを間接的に見聞きした人が、日本がそういう方針かと、それは否定はできないと思います。
  103. 河上民雄

    ○河上委員 日本総理大臣である鈴木さんは、日米共同声明を結ばれて昨年五月に帰ってこられてから、日本の国会で再三にわたり、どうも自分の真意があれには反映されていないということを言われて、外務大臣の辞任まで引き起こしたわけですけれども、その発言とかそういう調印ということに関しまして責任を持ってもらわないと、その場限りに何かの政治的効果を期待していいかげんなことを言う、いいかげんでないかもしれないけれども、微妙なことを言うということは、私は日本の国益上非常にマイナスだと思うのであります。これから日本の前途に大きな影響を与えるシーレーンの防衛云々の問題がアメリカ側は公約として受け取っておる、日本は公約したわけではない。しかし、それが日本方針として受け取られるのはやむを得ないというようなそういうやり方は、私は大変大きな問題だと思うのです。  今度は北米局長に伺いますけれども、日米共同声明並びに鈴木総理大臣のプレス・クラブにおける演説によって想定された日本方針というのは、シーレーンの防衛についてP3C八十機体制を目指したものである、こういうふうに一般に理解されているわけですが、そういうように考えてよろしいですか。
  104. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま河上委員が御質問になりました点に関連いたしまして、実は共同声明の中ではっきりと、わが方は憲法の範囲内で、かつ防衛の基本政策の範囲内で、こういうことを言っております。したがって、シーレーンの防衛については、「防衛計画の大綱」の策定以前から防衛庁として計画しているわけでございまして、その範囲内でやるということでございます。したがって、いま機数を明示されておりますけれども、これは私たちとしては、そういう機数であるのかどうかということは承知しておりませんが、そこで言っているのは、従来の基本政策を新しく変えるものではないということでございます。
  105. 河上民雄

    ○河上委員 機数を明示しなくとも、シーレーンの防衛ということを約束をすれば、大体どのぐらいの飛行機が必要であるというふうに考えておって、それにはどのくらいの額がかかるというふうに想定しておられますか。
  106. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 外務省の方からその点についてお答えするのは若干適当でないかと思います。  私たちの理解では、あくまでも現在の防衛政策、特に五十一年にできました防衛の基本政策の大綱、その別表に伴ってやっていく、こういうふうに私たちは理解しております。
  107. 澤田和彦

    ○澤田説明員 防衛庁の澤田防衛課長でございます。  いまの防衛庁におきましては、「防衛計画の大綱」の別表に定めます防衛力の水準というものを目標に防衛力整備を行っているところでございますが、いま先生御質問のシーレーンの防衛、これは主として海上自衛隊の任務でございますが、ここでシーレーンの防衛と言いますのは、艦艇それから対潜哨戒機等の航空機によって行うわけでございますけれども、このうち、いま御質問に関連ございます航空機について申し上げますと、「防衛計画の大綱」の別表では、海上自衛隊の作戦用航空機といたしましては、二百二十機という内訳なしで記載されているだけでございます。しかし、私どもこのうち大別いたしまして、いわゆる対潜哨戒機、これは必ずしも全部P3Cに限っているわけではございません。ヘリコプターではない、いわゆる固定翼の対潜哨戒機は、その二百二十機のうちの大体百機程度であると考えております。そして、この「防衛計画の大綱」に定めます防衛力の水準、海上自衛隊はこれを、いま御質問になっておりますわが国の周辺数百海里、航路帯を設けます場合にはおおむね一千海里程度の範囲内における海上交通の保護を行うことを目標にして考えているわけでございます。
  108. 河上民雄

    ○河上委員 もし、いまのアメリカに対する公約といいますか、向こうは公約と受け取っておる方針を実現した場合、その他の兵器も含めて、アメリカの軍用機を購入することによって現実にアメリカに支払う額というのは、今後の日本防衛費の中で大体何%ぐらいを占めるとお考えですか。
  109. 澤田和彦

    ○澤田説明員 お答えいたします。  現在私どもは、防衛力整備を中期業務見積もりに基づいて行っているわけでございますが、先生御承知のように、昨年の四月二十八日に国防会議防衛庁長官が御報告いたしましたように、現在私どもは、「防衛計画の大綱」に定めます防衛力の水準を達成することを基本といたしまして、俗に五六中業と呼ぶことにいたしておりますが、新しい中期業務見積もりを作成することにしております。この作成作業は、現在防衛庁において鋭意やっている最中でございますので、いま先生の御質問にございましたように、これからどれだけ主要装備が必要になるか、それの所要額がどのくらいになるかということにつきましては、全体につきましても、それからいまの御質問に関連いたしますシーレーン防衛でありますとか、あるいはまたその中で、アメリカからということでございますと、輸入とかライセンス生産とかいうことであろうかと思いますが、そういうものが幾らぐらいになるかということは、現段階ではまだ検討中でございまして、申し上げられる段階にないことを御理解いただきたいと思います。
  110. 河上民雄

    ○河上委員 いままだ検討中だということですが、恐らく、日米経済摩擦解消策の一環として、政府としては、こうした日本の今後の防衛計画の中でアメリカに支払う軍用機を初めとする装備の金というものを考えられているのじゃないか、私はそのように思うのでありますが、大臣としては、そういう点、これを肯定的に考えられるおつもりでしょうか。
  111. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 対米貿易の不均衡解消する上で、米側から御指摘のようなものを買う、それが解消に寄与するというようなことは考えられますが、先ほども申し上げましたように、現在アメリカから民間の飛行機あるいは自衛隊の飛行機をどの程度買うのがいいのか、そういうことについては、まことに恐縮でございますが、私はいまそのことをつまびらかにしておりません。  ただ、「防衛計画の大綱」にのっとって現在進行中の五三中業ではどうかとか、あるいはこれから策定される五六中業が明白になって、その計画に沿ってどの程度アメリカから飛行機を買うかということは、その時点で明らかになってくるものと思います。
  112. 河上民雄

    ○河上委員 この問題は本当は非常に重要なことだ、私はそう思うのでありますけれども、いまのところ大臣は、こういう問題について、交渉事に行ったのじゃないということで、何も約束をしていない、しかし、将来、絶対そうしないという立場もここで明らかにされていないので、私どもとしては、この点を今後注意深く、厳しい目で見ていかなくちゃならぬという感じをいま一層強く持っておるわけであります。  ただ、今回の日米会談で、大臣が、ほかの点は大変あいまいにもかかわらず、カリブ海周辺諸国への援助についてはアメリカの要請を受け入れて、かなり明確なコミットをして帰ってこられたように新聞で報道されておるのでありますが、アメリカの要請という以外に、日本として一体そんなことをする必要があるのかどうか。私は中南米のことにつきまして特に詳しいわけじゃありませんけれども、中南米の情勢を見ますと、民衆の反発というのは最終的には抑え切れないのであって、日本が民衆を抑圧する政府にいかなる経済援助を与えてもこれは結局無意味である、私はそう思うのであります。アメリカ同盟国としての信頼をかち得るために外務大臣はそういう言及をされたかもしれませんが、実は第三世界、開発途上国の民衆の信頼こそわれわれは重んじなくてはならないし、そこにこそ日本の将来がある、私はそう思うのでありまして、その点、外務大臣はどのようなことまで踏み込んで言われたのか、またその根拠というものはどこにあったのか伺いたい。
  113. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 今回の訪米に当たって、中米・カリブ開発構想に新しくこういう協力をしますというようなことはないのであります。こういう構想が出された、その構想は、御承知のようにアメリカ、カナダ、ベネズエラ、メキシコによってすでに打ち出されておるのでありますから、日本としては、日本経済協力の基本方針に基づいて中米・カリブの関係諸国の社会、経済の安定に寄与する面があれば、それは日本としても協力をする、こういうことを申しておるのでございまして、今回の日米一連会談の中で二回そういう問題が出た記憶がございますが、その折にもただいま申した趣旨を言っておる次第でございます。
  114. 河上民雄

    ○河上委員 日米共同声明の中で、もうすでにカリブ海におけるアメリカ方針に協力することを約束しておるわけでして、私はそこに非常に大きな問題があると思うのであります。  大臣のいままでのお話を承っております限り、どうも大臣は、世界を見るのにいつもワシントンの窓から見ているという感じが非常に強いのであります。日本から見ておりますと、日本の窓から見ているつもりだけれども、どうもアメリカの大きな肩に遮られて世界がよく見えないのじゃないかという気がするのであります。  その一つとして、実は最近アメリカ自身が、三月二十六日、アメリカの国務省のフィッシャー報道官が、朝鮮民主主義人民共和国の学者がアメリカに入国することを初めて認めております。御承知のとおり、アメリカの下院のアジア・太平洋小委員会委員長をしておりますソラーズ氏は、実は私も、一九七七年でしたけれども第四回日米民間人会議で一緒になりまして、一遍朝鮮民主主義人民共和国を訪ねてみてはどうかということを大変勧めたわけでありますけれども、その後一九八〇年にピョンヤンを訪れて金日成主席とも親しく会談をいたしております。いま朝鮮半島の問題を、アメリカですらそういう角度で論じ始めておるのでありまして、その意味で、政府が何かアメリカの窓から世界を見て、アメリカの言うとおりやっておれば間違いないと言っている間に、アメリカ自身の方針も変わっていく、米中接近のとき、一九七一年に、頭越しということで大あわてにあわてましたけれども、その二の舞をするおそれがあるのじゃないか、私はそう思うのであります。これはある意味では非常に小さなことだという見方をされるかもしれませんが、私は、世の中が大きく流れが変わるときの非常に貴重な大事な一つのしるしであると思うので、こういうしるしを見抜いていくことがやはり日本外交を誤りなく進めていく基本だと私は思うのです。外務大臣並びに外務当局としてこの問題をどう考えられるか。
  115. 木内昭胤

    ○木内政府委員 アメリカにおきまして、北朝鮮の関係者が訪米する機運が出てきておるという報道は私ども承知いたしております。私どもは、アメリカの動きとは無関係に、けさほども答弁申し上げましたとおり、人的交流あるいは文化面等の交流を積み重ねていくほかない、かように考えております。
  116. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣、これはやはり日本がまずやらないと、米中接近が起こってから日中国交回復に踏み切るというのと同じような結果になると私は思うので、このことは非常に重要ではないかと思うのですが、大臣の率直な感想を承りたい。
  117. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本がアジアの諸国との関係を外交上重視することは当然のことでございます。現在、朝鮮半島と申しましょうか韓半島と申しましょうか、朝鮮民主主義人民共和国と韓国との間におきましても相互に対話の提唱がございますが、なかなか進行しておらない。しかし、南北統一の上にもし日本として考えることがあるということになりますと、私は、国連事務総長にでもあっせんの労をとってもらって、この朝鮮半島が統一され、平和、安定することは日本としてもまことに好ましい。ただ、戦後不幸な国際的な枠組みの中にあって、そして三十八度線を挾んで対峙しておるという事態の中で、日本は韓国との間で外交関係を持った、こういうことから、朝鮮民主主義人民共和国との間では経済、文化等の交流を積み重ねていこうという方針をとっておるわけでございまして、北朝鮮に対しても重大な、また細心の関心を持って今後とも対処していくことは言うまでもありません。
  118. 河上民雄

    ○河上委員 いまの御答弁の中に一つ前向きな動きが出てくることを期待をしたいと思うのでありますが、大臣日本の窓から見ておると、朝鮮民主主義人民共和国を承認している国は余りなくて、承認していない国の方が多いような感じお話しになっておりますけれども、先ほど井上泉委員からお話がありましたように、もう八十カ国を超える国が承認をいたしておるばかりか、アジアの中で、ASEAN諸国の中でも、フィリピンを除いて全部朝鮮民主主義人民共和国を承認しているわけでございます。したがって、大陸のアジアの国は全部承認しておりますから、アジアでは結局日本とフィリピンだけが実は承認してないんだ、こういう非常に不自然な状況にあるんだということをやはりもっと頭に入れて、真剣にこれをやってもらわないといかぬ、私はそのように思うのでありまして、櫻内外務大臣からぎりぎりのところでいまあのような御発言があったということを一つ手がかりに、今後もっと一歩踏み込んだ対応をしていただきたい、こう思うのであります。  もう一つ、もう時間は余りありませんけれども、先ほどの日米経済摩擦解消の問題アメリカからいろいろなサインが出ているわけですけれども、私は最終的に、アメリカがいわゆる金本位制ということを突如言い出すのではないかという予感を一つ持っておるのです。もちろんこれは一九七一年以前の姿をそのまま回復することはまあアメリカとしても不可能だと思いますけれども、しかし、何らかの形において、つまり、金保有量という点から圧倒的に優位にあるアメリカが圧倒的に不利な地位にある日本にぶつけるパンチとしては、これが一番いいということに最終的にはなるのじゃないかという気がするのでありますけれども、日本政府としては、この金本位制の問題がどうなるかということについてどう考えておるか、また一九七一年の二の舞をしないために何らかの対応措置をいまから考えておるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  119. 江沢雄一

    ○江沢説明員 お答えいたします。  先生御承知のとおり、アメリカでは昨年の六月以降、金委員会が発足いたしまして、国内及び国際通貨制度における金の役割りについて検討を行ってまいりました。それで、この三月三十一日までに議会に報告及び勧告を行うということになっておるわけでございます。三月八日に委員会が開かれまして、この席で委員会の勧告案を採択いたしておりますが、それによりますと、まず国内の金融政策につきまして、委員会としては、現在の状況下では金本位制へ復帰することがインフレ抑制に役立つとは考えないと言っておりますし、それから国際通貨制度につきましても、現在の変動相場制を支持する、国際的な為替アレンジメントにおける現在の金の役割りを変更すべきではないというふうに言っておるわけでございます。この委員会の結論は、私ども予想しておりましたように、おおむね常識的な結論であると思われ、当面金本位制へ移行するという可能性は遠のいたのではないかというふうに考えております。
  120. 河上民雄

    ○河上委員 いま大蔵省の方の御説明のとおりであることは、私も承知はいたしておりますけれども、しかし、ゴールドコミッションの評決の内容を見ても、やはり金本位制に対する、一発これでやってやろうという気持ちを持っておる人はかなり多いわけでして、そういう点から見まして、私はこの前の結論にもかかわらず、やはりアメリカとしては追い込められれば、やはり最後の手段としてこれに頼るということになる可能性は十分あると思うのでして、いま私が、朝鮮民主主義人民共和国に対するアメリカの最近の新しい動きに対して、これもやはりにらみながら、もちろん日本独自の対応というものをとるべきだということを、私は強くここで主張いたしますけれども、同時にまた、日米経済摩擦ということについて、小手先だけで、その都度相手の顔色を見ながら、これを言ったら多少は聞いてくれるんじゃなかろうかというような感じで発言をしておるうちに、だんだん追い込められて、最後は金本位制というような大きな打撃を日本はこうむる心配があると思うのです。外務省としては、そうした向こうの表面的な説明で安心するのじゃなくて、その底を流れているものを、やはり眼光紙背に徹する判断力を持って対応してもらわないと、結局困るのは日本国民ですから、ひとつその点を私はぜひ間違えないようにしてもらいたい。  外務大臣に最後にもう一度、いま私がここに提起いたしました二つの問題について、大臣としてのお考えを重ねてわれわれに言っていただきたいと思います。
  121. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 先ほどから、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカの関係あるいは金本位制の問題、いろいろと新しい動きと申しましょうか、日本として関心を持たなければならぬ動きについて御指摘がございました。外交の衝に当たっている私といたしましては、そのような各種の動きにも常に注目し、検討していく、それはおっしゃるとおりにそのような心構えで進んでまいりたいと思います。
  122. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、井上委員の方から関連質問がありますので、私はこれで終わります。
  123. 中山正暉

    中山委員長 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。井上普方君。
  124. 井上普方

    井上(普)委員 私は、外務委員会で初めて質問するのでありますが、質問するとしますというと、日本外交全体について五、六時間質問する時間が欲しいのでありますが、残された時間は非常に短うございます。残念でございます。  先ごろ櫻内外務大臣は、本会議におきましても外交方針の説明をなさいました。また、常におっしゃるのでございますが、日本は西側諸国の一員として国際責任を果たす、こうおっしゃっておられる。何のことかわからない。どういうことを具体的になさろうとするのか、その点をお伺いいたしたい。
  125. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 西側諸国とこういいますと、それにもう一つ、西側先進諸国と、こう言うとわかりいいかと思うのでありますが、これらの諸国とは日本は長い外交関係を持っております。そして、幸か不幸か、この西側諸国は、東側に対し、いわゆるソ連及びソ連勢力圏との間で対峠したような形がございます。ですから、これらのことはよく東西問題という表現がされておるわけでございますが、そういう国際的な枠組みの中の東西問題、とこうなってくると、日本は西側の一員として行動すると、そういう場合に西側の一員ということがよく使われておると、私の感じておることを申し上げます。
  126. 井上普方

    井上(普)委員 私がお伺いしておるのは、そういう地政学的な言葉じゃない。国際的責任を果たすとは一体どういうことなんだということをお伺いしているのです。
  127. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 ただいま申し上げたように、残念ながら国際外交情勢は東、西というふうになっておって、西側が東側との間で対峠しておる、その関係でよく東西均衡というようなことも言われる。そのことを私どもも認識しておるわけであります。
  128. 井上普方

    井上(普)委員 何かこう、明確な言葉をお使いにならない。国際的責任を果たすとこう言っておるのは一体何なんだということをお伺いしておるのです。  そこで私がお伺いするのは、時間がございませので端的にお伺いするが、西側先進諸国とおっしゃる以上、欧州諸国も入ると思う。しかし、アメリカ外交政策を見てみますと、アメリカ外交政策は、果たして西側先進諸国の一員として国際的責任を果たしておるか。あるいは西側先進諸国は一致しておるか。私は、大いなる疑問を持たざるを得ない。アメリカ外交というのは、いま世界情勢全部を見てごらんなさい、一体成功しておる外交というのはどこにある。ドイツあるいはフランスにおいてもぎすぎすしておる。あるいはまたカナダにおきましてもぎすぎすしておることは御存じのとおり。近隣諸国におきましても、カナダ、メキシコあるいはキューバ。中近東しかり。アメリカ外交で、アメリカ側から見るならば成功しておるのは日本だけじゃないですか。戦後アメリカ外交をずっと眺めてみるときに、アメリカ外交はすべて失敗に終わっておると申しても過言ではない。アジア政策におきましても、中国政策においても失敗した。あるいはまた東南アジア政策におきましても失敗した。韓国においても失敗したし、依然として成功しておるのはすなわち日本だけ。対日政策だけは、アメリカ側から見ても成功しておるでしょう。基本的にはあるいは失敗したとおっしゃるかもしらぬ。というのは、日本がこれほどまでに工業力をつけてきた、対米貿易においても日本が黒字になって、これはアメリカの失敗と、こうアメリカ側は思っておるかもしらぬ。しかし、私どもが見るならば、日本ほどアメリカに忠実に追随した国は、私は、世界各国を見てもなかろうじゃないかと、こう思う。いま現在におきましても、ドイツとアメリカとの間は一体どうなっておるか、あるいはフランスとアメリカとの外交政策は一体成功しておるか、こう見ますときに、これらがぎすぎすしておる。そして、その上にもってまいりまして日本に対しましては、依然として恐喝外交をもってアメリカは臨んできておるじゃありませんか。たとえて申しますならば、言葉は悪いかもしらぬけれども、日本外交が、外務省が言うべきことを十分に言ってないのじゃなかろうか、私はそのような気がしてならないのであります。  いまアメリカが最も気にいたしておりますのは欧州情勢でございましょう。ポーランド情勢をめぐりまして非常な緊迫をした。しかし、ドイツは一体どういう態度をとっています。フランスは一体どういう態度をとっております。ドイツの一貫した外交政策としては、それはNATO勢力下にはありますけれども、片方を見てみるならば、ソ連との間には武力不行使条約というのを結んで、そして西ドイツが焦土になることを極力避けようといたしております。焦土にされることを心から嫌うの余り、アメリカの言うことを聞いていない。ポーランドで対ソ制裁措置として経済断交をやれということをアメリカが要求いたしましても、例のガスパイプライン、これを結んでその実行に移っておるじゃございませんか。最も大事なのは自国の平和と安全であるという意識に立って西ドイツ外交が展開せられておるし、またフランス外交を見てみますと、フランスの経済力を豊かにする、同時にヨーロッパにおける平和を維持するためには一体どうあるべきか、それには米ソの戦争、米ソ衝突が起こることを極力避けなければならないという考え方にドイツあるいはフランスも終始しておるように私は思うのであります。  日本のいまの外交政策を見てみますと、日本に米ソの衝突が起こることを極力避けなければならないという意識が非常に少ないのではないかと私には感じられてならないのでありますが、櫻内外務大臣の御所見を承りたい。
  129. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 井上委員から大変広範囲にいろいろ御所見を承りまして、それは私も傾聴しなければならない諸点を持っておられると思いました。  そこで一つは、西側の問題でありますが、米・西独あるいは米仏、最近におけるこれらの関係の外相会議などを見ておりますと、確かになかなか意思統一のできていないところもございます。  しかし、これらの諸国はNATO諸国としての各種の会合を持って、そして常に諸情勢に対応しての相談をしておるという事実も一方にあるわけであります。それから、日本から見てもこれは西側として結束をする必要がある、いまお示しのようなパイプラインのような問題で多少意見の食い違ったりしておる、あるいは核戦略などについての意見の相違を来しておる場合もございますが、しかし、それでも関係諸国は皆腹蔵のない話し合いをして、できるだけ足並みをそろえる。日本もまた西側の結束が大事だよ、こう言っておるわけでございます。  そこで、対ソの関係を見ましても、米ソの間でも対話が行われておるのでありまして、日本としてはこの対話が前向きに成果のあることを期待するということを繰り返し申し上げ、御承知の中距離核戦力の削減交渉であるとか、これからやろうとするSTARTの交渉であるとか、そういうものはぜひ進めてもらいたい。そして、この東西間の緊張ができるだけ緩和される、これが好ましいことは言うまでもないのであります。  しかし、往々にして力の不均衡ということが思わざる問題を起こすというようなことから、このオタワ・サミットにおきましても、西側諸国が寄って、低いレベルでの均衡ということでいこう、それから対話は続けよう、こういうようなことでまいっておるのでありまして、日本もまたそのような立場をとって、それに対しましても同一歩調をとっておることは申すまでもございません。
  130. 井上普方

    井上(普)委員 私は、西ドイツはあるいはフランスは、自国の安全と繁栄ということを中心に物事を考えられておる、そのように思われてならない。西側の諸国の繁栄あるいは安全というようなことではなしに、自分自身の安全のために、もし米ソの間に限定戦争でも起こるならば、一番先に被害をこうむり焦土と化すのは自国であるというのが西ドイツのシュミットの考え方ではないか。西ドイツだけではない、もし米ソの間に衝突が起これば、限定戦争でも起こるならば、日本も同じように焦土と化すのです。したがって、米ソの間における衝突が起こらないようにいかに日本は腐心するか、これを考えるかというのが外交の基本でなければならないと私は思う。しかし、いまの日本には、西側先進諸国の国際的責任を果たすと言うだけであって、その平和への努力が非常に不足しておることははなはだ遺憾とするものであります。  時間がございませんのでもう一つ申し上げるならば、一体アメリカは、日本あるいは西ドイツを占領下にある国だぐらいの認識ではございませんか。したがって、先日も、ホールドリッジなる国務次官補のごときは、日本をあたかも侮辱するにもはなはだしい言葉を吐いている。日米貿易均衡は、日本の社会的な機構それ自体が何と申しますか日米貿易均衡を来すのだ、こういうことすら平気で放言する。この問題について見るならば、アメリカは、ホールドリッジなんかは、日本日本語で言うのをやめてアメリカ語を使えばいいぐらいにしか思っていないのではないかと私には感じられてならない。  このホールドリッジの放言に対して、外務省は何と抗議を申し込んだのか、一言もないではありませんか。日本外交というのは、まさにアメリカ追随の外交であり、のみならず幕末から続いてまいった日本外交の姿勢、すなわちその場を濁せばいいわ、一日延ばせばいいわということで、自分の言いたいことも十分に言ってないのが日本外交の姿ではないかと私は思う。日米の間に百三十年、四十年の外交の歴史があるけれども、ただの一回だけ、アメリカに対して対等に言葉を発したのは昭和十六年だけだったと私は感じられてならないのであります。  考えてもごらんなさい。日本はこのような焦土の中から立ち上がり、資源もない。そこでわれわれは、国民欣然一体となって勤勉に努力をして今日の繁栄を来してきた。しかし、それに対して働き過ぎだ、勤勉過ぎるというような言葉をもってアメリカ日本に対してともかく攻撃をする。私はアメリカの下院外交委員長に言ったのだが、アメリカ日本に対してそういうことを言うが、一体キリスト教のバイブルにでも日本は働いたらいかぬということが書いてあるのかと言いたくなるほどじゃございませんか。毅然とした外交姿勢、しかも、それは自国の安全と民族の繁栄のためにという視点が薄らいでおるのではなかろうか、このような危惧の念を私は持たざるを得ない。いまの外交方針に対して、はなはだ遺憾ではありますけれども、言わざるを得ないのであります。  時間がございません。結論だけ申し上げますならば、アメリカに対して言いたいだけのことは言う必要がある、腹を打ち割って言うだけの姿勢を外交当局は持っていただきたいということを私は申し上げたいのであります。  先ほど櫻内外務大臣は、ヘイグ長官との間には交渉があったと言われたけれども、ある程度日本人の通有性として、物事をその場その場ではっきりさせない、これがアメリカ日本に対して誤解をするゆえんではないかと私は思うのです。はっきり言うべきことは言い、向こうの主張の正しさはあくまでも認める、こういう姿勢こそ、いま日本にとって最も必要な話ではないかと私は思うのです。  でございますから、先日もワインバーガーが日本に参りまして、シーレーンの一千海里の海域を防衛することは日本の公約である、こう言ったじゃありませんか。新聞記者諸君の前で言ったじゃありませんか。しかし、いま外務当局が、そういう約束はないんだ、そしてまた、そういうことはできないんだということを言ったところで、向こうさんはそのように理解しておると言うのです。ここらあたりの解釈を一体どうするのか。煮詰めた話ができておりますか。一千海里の海域の防衛を、ワインバーガーは日本国際的な公約であると言っておるじゃありませんか。鈴木総理は確かに新聞記者会見でそう言った。しかし、いま日本政府はあれを公約と受け取っておりますか、そしてそれを実現する能力はいまの日本にありますか。先ほども防衛庁から参っておりましたけれども、とてもじゃないが、一千海里の海域の防衛なんということはできやしないというのが本当の腹じゃございませんか。そこらあたりを明確に相手国に言うことこそ日本外交をはっきりさすゆえんだと思うのでございますが、いかがでございます。
  131. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 井上委員がおっしゃいましたように、日本に対しての批判、また、その批判がややもすると感情的な言葉になってきておる場合、そういうようなことが最近見受けられることは非常に遺憾に思います。しかし、これに対してまた日本が感情的になっていくということになりますと、感情論は時としてエスカレートして思わぬ悪い状況を来します。しかし、井上委員のおっしゃるとおりに、説明をすべきこと、言うべきことはちゃんと言って、その感情論が誤解に基づくものであるならば、それを解いていくという努力の必要であることは言うまでもないのでありまして、せっかくいろいろ御注意をちょうだいいたしまして、私もよくそのことを心得て対応してまいりたいと思います。  ワインバーガー国防長官が、講演の中でシーレーンのことを日本の公約だ、こういうふうに言い切られたということを新聞紙上で拝見いたしましたが、これは先ほどからるる御説明を申し上げておるように、鈴木総理がプレス・クラブで講演されるときに、日本周辺数百海里、航路帯を設ければ一千海里ということを言われたことは事実でございますし、また、そのことは総理の口によって唐突に言われたことでなく、従来、日本が取り上げておる問題でありますから、私どもはそのような見地に立って、今後の防衛努力を現在明らかにしておる防衛大綱に基づいてやっていこう。それは客観的に見て、シーレーン確保が一体日本の現状でできるのかということになれば、それはそれとして考えなければなりませんが、日本周辺数百海里と航路帯一千海里のいわゆるシーレーンを守って、日本が安全に必要なエネルギーを確保する、物資を確保する、あるいは日本からの品物が海外に出ていく、その努力はすべきである、こう思うのであります。
  132. 井上普方

    井上(普)委員 私はもう時間が参りましたのでこの程度にいたしますが、最後にお尋ねいたします。  しからば、ワインバーガー国防長官が日本に参って記者会見の際に、シーレーン一千海里を日本防衛するのは日本総理大臣の公約であると言ったのは間違いであるということは、アメリカに通告し、アメリカと交渉した経緯はございますか。そしてまた、外務大臣はこれは本当に公約したものかどうか、ここの御見解をお伺いいたしまして、私の質問を終えたいと思うのです。
  133. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはワインバーガー長官が講演の折に口にされたことである。それを直ちに、ワインバーガーは何かいいかげんなことを言っておるというようなとり方をする必要はないのじゃないか。先ほどから申し上げるように、日本がそういう方針をとっておることは明らかなのでありまして、これを国防長官が公約だと言い切ったからといって、それが抗議をすべき対象であるかどうかということは、これは私が外務大臣として判断する上におきましては、よく講演というものにはアクセントがつくものだということもございますので、そういうふうにワインバーガーはとっておるかというふうに受けとめておるわけであります。
  134. 井上普方

    井上(普)委員 私はやめようと思ったけれども、一言言わしていただく。  そういうようなあいまいさを残すことが、日米関係において摩擦をさらに大きくするのだと私は思う。ワインバーガー国防長官は、新聞記者の前で講演をして、日本総理大臣の公約であるということをはっきりと明言しておる。日本側からすれば、これはあなたの誤解であるということを申すのこそ、日米協調の将来のためになると私は思う。日本国民にはあれは公約であるということを明確に言っておる。新聞記者に講演したということは日本国民に聞かすために言っている。ここらあたりを間違いは間違いとして明確に言うことこそ私は必要であると思う。先ほど来、私は、日本アメリカとの百四十年間の外交に言及しましたけれども、常にあいまいさを残そう残そう、そうしてじんぜん日を稼ごうとするこの日本外交、これこそ改むべき時期が来ておるということを私は明確に申し上げておきます。  私の質問を終わります。
  135. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 井上委員のおっしゃること、まことにありがとうございました。  ただ、私が先ほどから申し上げておりますのは、新聞でそういう報道がされておることは承知しておるということを申し上げておるのであります。現実に一体ワインバーガーがどういう言葉で言われたかということについては、私どもの方に来ておる資料からいたしますと、言明したとかどうとかというふうに、解釈の仕方が違うのもあるのです。ただ新聞報道ではワインバーガーは公約という言葉に報道されておりますが、その演説の速記のようなものをとりますと、それが公約と表現すべきものかどうかということについてはちょっと判断に迷うところもございますので、そこで私は先ほどから演説というのはときにアクセントもつくので、あるいはそういうふうにとる向きが多かったのかなと思ったりしているわけでございますが、そういうことでありますので慎重に対処しているわけで、ただおっしゃることはよくわかります。
  136. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、日本国民はそのように誤解をしておる、そうであるならば。あるいはワインバーガーの言葉が新聞記事報道と違うのであれば、日本外務省はなぜそれを訂正する努力を新聞記者諸君にしなかったのか。日本人はそういうふうに思っておる、私自身がそう思っている。ここらあたりに外務省のともかく大きなあいまいさがあると私は言及しておきたいと思います。
  137. 中山正暉

    中山委員長 玉城栄一君。
  138. 玉城栄一

    ○玉城委員 六月に第二回国連軍縮総会が開かれるわけでございますが、この国連総会を前に国内におきましても反核いわゆる軍縮運動が高まりつつあります。国民世論も大きく盛り上がりつつあります。このことは、わが国が世界で唯一の被爆国として、ましてこの総会に総理御自身が出席されるということからしますと、こういう国内の運動の高まりというものは当然力強いものだと思うのですが、外務大臣、どのように受けとめていらっしゃるでしょうか。
  139. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 最近の国際動向を見ておりますと、皆様とともに憂えなければならないのは、ややもすると軍備拡張傾向が強いのじゃないか、そういう中に米ソの対話も続けられておるというわけでございますが、日本は被爆国として何としても核軍縮は達成しなければならない、核の絶滅を期さなければならない、こういう意欲に燃えておることは言うまでもございません。そういう点から軍縮に対して関心を持って大きな国民運動があるということは私どもとして敬意を表しておる次第でございます。
  140. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、はなはだ残念なことなのですけれども、これはその運動の一環としまして、いま各地方議会等におきましてこういう反核・軍縮に対する意見書あるいは決議等がなされようとしておることについて、これは鈴木総理御自身も、参議院の予算委員会でのわが党の反核・軍縮に対する署名についても協力、署名したいということをおっしゃっておられながら、途中でできないということをおっしゃっております。これは政府も含めて自由民主党さんの皆様方が地方議会におけるそういう意見書、決議等について最近非常にブレーキをかけておることは非常に残念なことだと思うのです。したがって、そういうことからしまして、地方議会の動きにブレーキがかかってせっかくの意見書とか決議が見送られる傾向にあるということは本当に残念なことだと思うのですが、大臣先ほど大変敬意を表するということをおっしゃられたわけでございますので、そういう鈴木内閣自身も大変後退しておると私は思うのですが、いかがですか。
  141. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 総理が御見解を示しておりますし、私も同様に考えておりますのは、日本は非核三原則ということを天下に明らかにしており、また国会におきましてもこれが決議をされておって、いわば日本全体が非核宣言をしておる、そういう状況にあると思うのですね。軍縮に臨むに当たってのいろいろな動きについて私は敬意を表するということを申し上げたわけでございますが、町村別に非核の決議をせよといっても、これは全国の市町村全体に及ぶについてはなかなか大変である、こう思うのですね。点々とそういう決議をされておるよりも、むしろ日本が、国会が決議して国全体が国際的に訴えておるというその厳然たる事実を尊重する方がより好ましくないか。私はそういう動きが自主的にあるということについて理解を示さないものではございませんが、国全体としての方針がここ長いこととられてきておるのでありますから、そのことを念頭に置いて総理も署名を、あるいは各町村の決議に対してそれは自粛してくれとかいうようなことが党にもあったということでございますが、そのことはそのこととして、日本が国会の決議で国際的に明確に訴えておるということを尊重していきたい、私はこう思うのです。
  142. 玉城栄一

    ○玉城委員 お言葉でございますけれども、それぞれの地方自治体が核問題という、これはイデオロギーの問題じゃございませんので、それぞれの立場で反核そして軍縮をいまこそ強く特にわが国がしなければならぬ、それは地域的にそういう住民の意思を結集して、第二回国連総会が行われるわけですから、それに政府もいらっしゃるわけですから、むしろそれをバックアップしようという、これは政府にとってもまたわが国がそういう特殊な立場でありそれを世界に訴えるという意味からも非常に結構なことだと思うのです。それで、それにブレーキをかけるようなことはやめていただいた方がいいんじゃないか、こう思うわけでありますが、いかがですか。
  143. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 なかなか人間、いろいろと立場がある、見解も持っておる、こういうことで、本来言えばおっしゃるとおりに日本として、反核運動が世界じゅうが結束してやって、それで本当に核の廃絶に向かうということであればまことに結構であるわけでありますが、ともするとそこにそういう純粋な気持ち以外のものが働いている分野もあって、そのことが従来のそれぞれのお立場やあるいは行動の上からどうもまともに受けられないようなものも懸念されるというようなことから、玉城委員のおっしゃるようなふうにわれわれは受けとめたいけれども、どうもそうもいかないというのが現実の姿ではないかと思うのであります。
  144. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは大臣もいまもおっしゃっておられたのですが、決してイデオロギー的な問題でこの問題を扱ってはいかぬ、そのように受けとめてもいけないと思うんですね。これは決して反米だとか反ソだとかそういうことではないわけです。これは人類の生存に関する重大な問題ですから、そして国連総会も開かれて、わが国は平和憲法も非核三原則も持ち、しかも被爆国家である、そういう特殊な立場世界に訴える絶好の機会である。そういう立場から、国内世論の高まりというものについて政府御自身がブレーキをかけるような、あるいは大臣のいまのおっしゃり方は、むしろそのように受け取ること自体が反核、核兵器を絶滅しようという動きにブレーキをかけることに結果的になるのではないか、私はこのように思うのです。  そういう意味で、これは大臣よく御存じだと思うのですが、いま地球上にどれぐらいの核兵器があるか、広島型原子爆弾一発で二十万の方が亡くなられた。米ソ超大国を中心にしてこれはざっとその百三十万発分あると言われています。そうしますと、広島型で二十万、それが百三十万発分ということになりますと二千六百億。いま人類四十億ですから、この地球上の人類を六十数回殺戮、殺傷できるという、これはまさに狂気のさたとしか言いようがないわけです。そういう恐るべき核兵器だ。そして軍縮をやろうと世界に訴えられるのはわが国であるという立場からすれば、そういう国内の反核・軍縮運動あるいは世論の高まりというものは貴重な運動として受けとめられて、むしろそれを背景として国連総会に臨むべきではないか、このように思うわけですが、何か大臣は御訪米のときに国連総会について米側との意見調整もされたやに伺っているのですが、それはどういう意見調整をされたのでしょうか。
  145. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 第二回の特別軍縮総会にどう対処するか、日本は御承知のように率先鈴木総理出席を決めておるわけでございます。この軍縮総会に各国の責任者が出かけてある種の結論を得る、あるいはこの軍縮総会を通じてそれぞれの国が軍縮についての立場を明らかにする、それは大変好ましいことだと思うのであります。そういう点からいたしまして、軍縮総会に臨むに当たりましては緊密な連絡の上で臨みたい。私などは率直に申しましてアメリカ国内のニューヨークの総会でありますから、できればレーガン大統領も御出席になるのが好ましいとは思いましたが、そういう表現ではなく、よく連絡をとってこの総会に臨み、この総会が成果のあるようにいたしたい、こういう趣旨を申しておるわけであります。
  146. 玉城栄一

    ○玉城委員 いずれにしましても、そういう政府の姿勢で国連総会に臨まれようとも、国際的にまさにわが国のそういう反核・軍縮に対する姿勢を問われかねないと思うのですね。ですから、そういうブレーキをかけるようなことなどについては決してしていただきたくないと思います。  これはわが党の調査でありますが、すでに三月二十四日時点で三百四地方自治体がこの反核・軍縮に関する決議あるいは意見書をやっておるわけでありますから、政府自身がこれをむしろどんどん推進をしていただく、そのことを強く要望申し上げておきたいと思います。  それで、これは先ほどイデオロギーの問題ではないということを私、申し上げましたけれども、ソ連のSS20が極東に配備されておるわけですか、配備されているのはどの辺と外務省は掌握していらっしゃるのか、わが国への脅威の関係はどうなっているか。
  147. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答えいたします。  具体的にどの場所にどれだけの基数が配置されているかにつきましては、憶測の限りではございませんが、伝えられているところによりますと、少なくとも七十五基以上のSS20が極東地域に到達し得る発射地点に配備されているということに理解いたしております。
  148. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは後でまた日ソ関係の問題でちょっとお伺いしたいのですが、当然わが国を含めて射程の中にある地域にそういう恐るべき核兵器が配備されているということからしますと、政府とされても、日ソ間の話し合いの場においてあるいはいろいろな交渉の場においてそういうものの撤去について当然強く要求されるわけでしょう。されていらっしゃるわけですか。
  149. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 本年一月二十日から二十二日にかけて行われました日ソ事務レベル協議の場におきましてこの問題を日本側から提起し、アメリカとの中距離核削減交渉その他の交渉を通じてソ連全域における、ということは極東も含むわけですが、核兵器の撤廃ということを強く要求しております。
  150. 玉城栄一

    ○玉城委員 もう一つ関連して、最近フランスが中性子爆弾に関すると思われる核実験を行っていますが、政府はこのことについてはどういうように考えていらっしゃるのか。
  151. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ただいまお尋ねの点、つまり最近フランスは中性子爆弾の実験を行ったのではないかという点については、ただいまのところつまびらかにいたしておりません。至急調査いたしましてお答え申し上げたいと思います。
  152. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そういうことについてもわが国としても厳重に抗議をするということが大事だと思うのですね。そういう積み重ねもないままに——非常に問題だと思うのです。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕  それで次の質問に移らせていただきます。  中ソ関係についてですが、これは三月の二十四日だったですが、ソ連のブレジネフ書記長が中ソ関係改善の呼びかけをなされ、それについて中国側の、ブレジネフ演説を留意しまたソ連の実際行動を重視するという談話が発表され、これはどういうことになるのかな、そして現在、きのうからですか、日中事務レベル定期協議が開かれておるわけですが、中国側のこの談話の真意と申しますか、何か御説明があり、またそれをお聞きになったのかどうか、それについて外務省はどのように考えていらっしゃるのかお伺いします。
  153. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先般のブレジネフ氏のタシケントの演説に対します中国側の反応というものが、これを留意するということできわめて慎重であったという点が注目されておるわけでございます。しかしながら、昨日の日中事務レベル協議その他の場における日中間のやりとりを通じて承知いたしております中国側の考え方、これは基本的には変わっておらないわけでございまして、中国側としてはソ連が依然として膨張主義であり覇権主義であるという見方に立っておるわけでございます。  しかしながら、いずれにしても、最近のアメリカの台湾に対する武器供与の問題等をめぐりまして米中間にもきわめて微妙な関係が生じてきておる。その意味におきましては中国がソ連カードを使用しておるのじゃないかという見方も成立し得るのではないかと考えております。
  154. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは大臣にお伺いしておきたいのですが、いまの日ソ関係の改善あるいはこれがどういう形になっていくかいまのお話でまだ予測がつかないわけですが、これは国際政治上非常に重大な影響を与えると思うのですね。国際政治のバランスと申しますか軍事的バランスと申しますか、わが国との関係も含めてこの日ソ関係の行方というものには非常に重大な関心を持つべきだと思うのですが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  155. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本の対ソ外交の基本といたしましては、何としても領土問題を解決して本当に両国の間に恒久的な安定した関係を結びたい、こういうことを念願しておりますので、領土問題については繰り返し繰り返しソ連に対してこれが交渉を開始するよう、解決するよう望んできておるわけでございます。そういう間に今回のブレジネフ書記長による極東信頼醸成措置についての提案が、従来も行われておりますが、またそういう提案がございました。しかし、何としてもその前提が整わない限りこういう提案にわれわれが耳を傾けるわけにはいかないという方針をとっております。しかし、近隣の関係の深い国でありますから、いままでも対ソ間については非常な配慮をしておるわけでございまして、昨年の国連総会に際し前任者の園田外相が事務レベルの協議あるいは外相会議を提案いたし、そしてそれが実現をしてこの一月に高級事務レベルの会議を行い、その折に日本が言うべきことはいろいろと申し、また先方もいろいろ申しておるわけでございます。  なお、その折に外相会議も持ちたいということを伝えてありまして、それについては上層部と相談してお答えをする、こういうことでございました。先般の魚本大使の日本帰国の折にこのことをまたブレジネフに申してございますが、今度はグロムイコ外相が日本を訪問する順序になっておりますので、できれば早い機会にグロムイコ外相との会談をいたしたい。しかし、一番の基本は何といっても北方領土問題が解決をされる、そのことが日ソ間の安定的な関係をつくるゆえんではないか、かように見ておるわけであります。
  156. 玉城栄一

    ○玉城委員 私はそういう質問ではなかったのですが、時間がございませんので……。  もう一点は、米中関係がいまぎくしゃくしている。先ほどもちょっとアジア局長さんからお答えがあったのですが、いまの日中事務レベル協議の中で中国側はいわゆる米国の台湾への武器輸出の問題についてどういう言い方をし、また米中関係の悪化ということはわが国にとってもあるいは国際政治の上でもきわめて重大な影響があるわけですから、その辺の御説明をいただきたいのです。
  157. 木内昭胤

    ○木内政府委員 以前からも中国側の台湾に対するアメリカの武器輸出問題についての考え方というのはたびたび伺ってきておるわけでございます。中国側は台湾の問題は国内問題である、これに対する第三国の武器供与というのは内政干渉につながるというきわめて厳しい見方でございまして、その一点を除きまするならば米中関係は良好であるわけでございまして、それがその一点のために、玉城委員御指摘のとおり、ぎくしゃくした関係になるということは望ましくないのではないか。せっかく引き続き米中で慎重に御相談いただいておるわけでございますので、私どもとしましては、一方ではアメリカ側に対し、まだ他方では昨日も中国側に対して慎重に対応されることを希望する旨私どもの考え方を表明いたしておるわけでございます。
  158. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、日米並びにEC関係についての問題なのですが、これは外務省にも言い分があると思うのでぜひこの機会におっしゃっていただきたい点は、通産省のある局長が在日外国特派員の記者の方々に対して、「米欧が保護主義的対日措置をとる場合には、日本は共産諸国との貿易を強化し、」次が非常に問題なんですが、「世界中に武器を輸出しはじめることにならざるを得ない」、こういうことをおっしゃっているということについて外務省はどのように受けとめていらっしゃいますか。
  159. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 昨日も参議院の委員会で同様な質問が出まして外務省の方から答弁しておりますけれども、この通産の局長の説明というのは仮定の質問に答えるのだということでございますけれども、全体としての考え方は、私たちは非常に慎重さを欠いているというふうに見ているわけであります。
  160. 玉城栄一

    ○玉城委員 慎重さを欠いていると言って、この方の発言を肯定しているわけじゃないでしょう。それはどうですか。
  161. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 決して私は同局長意見を同じくしてはおりません。
  162. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、沖縄の米軍基地の問題についてお伺いしたいのですけれども、チャールズ・L・ドネリーさん、在日米軍司令官が、これは一月なんですが、沖縄の米軍基地視察に行かれて地元の記者の方々と記者会見していらっしゃるのですね。その内容について当然外務省は知っていらっしゃると思うのですが……。
  163. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私、ここにその記者会見の報道を持ってきておりませんのであるいは正鵠を欠くかもしれませんけれども、沖縄の施設、区域の整理についてどう考えるかという質問一つあったかと思います。それに対してドネリーが答えたのは、日本側からそういう要求があれば十分アメリカ側としてはこれに慎重にこたえていく、こういうことが趣旨であったかと思います。
  164. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは後で伺いますけれども、こういうことをおっしゃっているんですね。ドネリー司令官の記者会見で私非常に重要だと思うのは、このドネリー司令官は、沖縄県民は沖縄基地日本防衛のために重要であることを誇りを持て、こういう発言をしているんですね、記者会見で。この司令官は一体、沖縄のあれだけの基地を抱えて日常的に基地被害で苦しむ、不安に悩んでいるというそういう県民感情を知っていて、あるいは知らないで、沖縄の米軍基地というものは日本防衛のためにあるんだから沖縄の人たちは誇りを持てと、こういうことをおっしゃっているわけですね。外務大臣、この司令官と大臣も同じお気持ちですか、御意見を承っておきたいと思います。
  165. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これはドネリー司令官のお考えを端的に申されたもの、こう受けとめますので、私がドネリーさんと同じような考えを持っておるかどうかということについては、そういう考えは、同じ考えは持っておりません。また、このドネリーさんのそういうお考えについては、これをどうこう申し上げることはコメントを避けたいと思います。
  166. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣はいまのドネリー司令官と同じ意見ではないということをおっしゃられたわけですが、これは当然、そういうことを現地に来て記者会見をするということは、非常に県民感情を逆なでするわけですね。といいますのは、これは私が改めてここで申し上げるまでもないのですが、沖縄の場合、わが国で唯一地上戦闘が行われた、悲惨な戦闘が繰り広げられた、そしていわゆる四分の一世紀にわたって米軍の占領下にあったわけですね。復帰してことし十年になりますけれども、なおその延長線上にあるわけですね。いろんな基地被害があります。そういう中でこの基地について誇りを持てというようなことを記者会見でわざわざ言うということについては、これは外務省としては当然この司令官についてそういうことを言っちゃ困るじゃないかということをおっしゃってしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  167. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 在日米軍司令官がどういうコンテキストで言ったかということが必ずしもはっきりしておりません。いま委員が御指摘のようなこと、この沖縄新報では実はそこのところは出ていないわけでございますけれども、ドネリー司令官も出席いたしました一月の安全保障委員会においては、日本側から、基地整備の問題について引き続き十四回、十五回、十六回で合意された施設、区域の統合についてはその統合を進めていきたい、こういうことを言ったのに対して、アメリカ側から、沖縄の住民の気持ちというものは自分たちもよくわかっている、したがって、その日本側の、日本側のといいますか、約束した基地の整理統合については引き続き日本側と十分協力していきたいということでございますので、ドネリー司令官もそこの席にいたわけでございますから、その点は十分に沖縄県民の気持ちというものはわかっているんじゃないかという気がいたします。  しかし、いまの御指摘については、私は、機会があればその司令官がどういう気持ちで言ったのかということについては、ただすことはやぶさかではございません。
  168. 玉城栄一

    ○玉城委員 大臣、私は前からも申し上げているのですが、そういうこと等もありまして、やはり外交官を沖縄に常駐さしておいた方がいいのではないか。いま一部新聞の報道だけでどうのこうのと弁護めいたことをおっしゃっていますけれども、これはとんでもないことなんですね。  これは、前大臣も現職のうちにぜひ一回沖縄に行きたいということで、おやめになられて行かれなかったのですが、大臣いかがですか、機会を見られて。
  169. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大変日程に追われておりますのでその機会を得ておりませんが、私も機会があれば、また特に本年は復帰十年のことでもございます、ぜひ沖縄に参りまして、いろいろ意見を交換したい、こう思います。
  170. 玉城栄一

    ○玉城委員 できるだけ早い機会にぜひ現地意見要望を生でお聞きになっていただきたいと思うのです。  もう一点、この司令官がこの記者会見で、いわゆる中東有事の場合は在沖米海兵隊が出動する、さらに、出動することは七〇%を中東の石油資源に依存している日本防衛のためだ、こういうことを言っているわけですが、大臣も同じ御意見でございますか。
  171. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 御承知のとおり、アメリカにはRDFという構想がございまして、一たん有事の際には、その現存の陸海空及び海兵隊の中からRDFに指定されるわけでございます。その関連で恐らくドネリー中将は述べたのかと思います。  われわれの認識は、日本としてはその石油資源というものを中東に依存している、そういう関連で、中東における安定的な石油供給というものが保たれるのが必要である。で、外務省としてその中東地域の安定のために必要な外交努力は払っている。ただ、アメリカは、そこに必要な部隊というものを展開している、それ自身が現在のところ中東地域からの油の日本への輸送に寄与している。日本は、逆に言えばアメリカ側努力によって裨益している、これは言えるんじゃないかと思います。
  172. 玉城栄一

    ○玉城委員 私がお伺いしておりますのは、この司令官のおっしゃっているように、中東出動というものが日本防衛のためであるという司令官の発言は、そうではない、あるいはそのとおりである、どっちなんですか。
  173. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 御質問の趣旨が、非常に広い意味だろうと思うのですけれども、出動という、いわゆる戦闘作戦行動ということであれば、それは沖縄基地を使って作戦行動をするということは、現実的な問題として予想されないわけでございます。しかし、先ほども申し上げたようなアメリカの全体的な努力というものが日本の石油の確保その他のためには役に立っている、これは申し上げることはできると思います。
  174. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間がございませんので、この前もお伺いしました例のACMI設置の問題ですけれども、これは空の安全上、運輸省はもとより、沖縄の地元においても非常に反対が強いわけです。しかし、この前お答えもあったのですが、米軍自体はACMIの装置をすでに嘉手納基地に持ち込んでおり、建設着手を待っている段階にあると聞いているんですが、事実ですか。
  175. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 この前の委員会でも御答弁したかと思いますけれども、この問題はアメリカ側が非常に高い優先度を置いているということは事実でございます。しかし、同時に空の安全、それから地元漁民に対する影響というものがございまして、現在、関係の省庁の間で調整中でございまして、安保条約の目的達成と空の安全、あるいは漁業への影響というものを考えながらこの問題は解決していかなければならないというふうに考えております。
  176. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、私お伺いしているのは、そういう装置ですね、すでに基地内に持ち込んでいるということについて、それは事実かどうかということですね。
  177. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 そういう資材が持ち込まれているかどうかについてはわれわれは承知しておりません。
  178. 玉城栄一

    ○玉城委員 知らないということなのか知っていらっしゃるのかよくわかりませんけれども、どんどんそういう既定の事実化されていくわけですね、いまのACMIの問題にしましても。そういうことじゃ非常に困るのですね。これはこの前に申し上げましたとおり、民間航空の重要な空域になっているわけですからね。那覇空港の場合は三分の一がこの空域を通るわけですから、そういうところでのそういう戦闘機の訓練が常時行われるということになりますと、危険きわまりないわけです。その点も十分認識をしていただいて、別のところにやっていただきたいと思うのですね。淺尾さん、いかがですか。
  179. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 まず第一点、施設の中にそういう機器が持ち込まれているから既成事実の上で行われるのではないかということでございますが、この点については先ほど御答弁したように、目下日本内部で調整中で、その結果を踏まえてさらにアメリカ側と話し合う、こういうことでございます。  それから、別のところということでございますが、これは三省庁の調整ということを待って結論を出していきたいと思います。
  180. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、このACMIですね。これは先ほどのドネリー司令官の記者会見では自衛隊も使用するように考えているということを発言しておりますね。それはそのとおりですか。
  181. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私たちがいまアメリカ側から聞いているのはアメリカ側のF15の訓練のためであるということでございます。自衛隊が将来使うかどうか、これについては防衛庁の方に確かめていただきたいと思いますが、われわれは米軍がまずいまのところ使用するということを承知しているわけでございます。
  182. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、大臣、いまの沖縄の米軍基地の問題について改めてお伺いしておきたいのですが、沖縄県に在日米基地の五三%が集中しているということについて、外務大臣はどのようにお考えになっておられますか。
  183. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 基地がそのように集中しておるということは沖縄県民の日常生活に非常な影響があるということを認めております。そこで、現在沖縄振興法によって政府としてできるだけのことをやっておるつもりではございますが、現状について今後とも沖縄県民の皆さんの御不満が少しでも解消するように努力していかなければならないもの、これは総理府の方で担当しておりますが、私自身はこういうふうに思っており、またできるだけ側面からの協力を惜しまない。
  184. 玉城栄一

    ○玉城委員 重ねて大臣にお伺いしますが、在日米基地の五三%が沖縄県に集中的に存在しているということは、多過ぎると思いますか、当然だと思いますか。その辺はいかがでしょうか。
  185. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は防衛問題について十分な知識を持っておりませんが、日本政府としてはできるだけ基地を整理していく、あるいは統合していく、こういう方針のもとに日本あるいは安保条約の上からの米軍基地の持つ任務、そういうものによってある地域に集中して御迷惑をかけるということは、この基地の整理統合の場合にできるだけ配慮をしていかなければならない問題ではないか。しかし、現在の基地というものが安保体制の中で必要上来ておるものであるという認識は持っております。
  186. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、先ほどのドネリー司令官の発言ですが、それは先ほど淺尾さんもおっしゃられたわけですけれども、沖縄の米軍基地については日本本土または他の地域に基地を移転する要請があれば米軍側としては積極的に検討する、こういう発言をしておりますね。確認しておきますが、そのとおりですか。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
  187. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 報道に関する限りはそのとおりでございまして、私たちも従来からの安保協議委員会の結論をぜひ実施していきたいというふうに考えているわけでございます。
  188. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、同司令官は、しかしはなはだ残念なことには日本政府からそういう要請がないということも言っておりますね。要請があれば米軍は積極的に検討したい。こういう集中的に存在しておるということについて多過ぎるという判断があると思うのです。なぜ政府米側に対してそういう要請をやらないのですか。
  189. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これも先ほどお答えいたしまして繰り返しになりますけれども、十四回、十五回、十六回の協議委員会で合意しておる点がございます。それを一月に開かれた十八回の協議委員会でも再確認しておるわけでございまして、また地元の御要望というものも外務省が場合によっては直接、多くの場合は施設庁を通じて承っているわけでございまして、個々のケースについてはそれぞれの分科会あるいは合同委員会で取り上げておるわけでございまして、決して外務省としては努力してないということではないかと思います。  ただ御承知のとおり、この施設、区域というものを移設先なしになくすということは非常にむずかしいわけでございまして、移設の問題というものが絡まって非常に長い時間かかっておるということは事実でございまして、その点については御理解願いたいと思います。
  190. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは重ねて大臣にお伺いしたいのですが、在日米軍司令官は、そういう要請を受けていない、要請があれば米軍側としても積極的に検討したい、こういうことを記者会見で言っておるわけです。ですから、いま局長さんは言っておるというようなことなんですが、いま大臣の先ほどおっしゃられたとおりああいう一県に集中的にそういう基地存在し、日常的に県民生活に大きな影響を与えておるわけですから、大臣とされましてもそういう認識の上に立たれて、先ほどのACMI、航空機空中戦技評価、空域を設定してそういう戦闘機の訓練が行われるようでございますけれども、民間航空に対して非常に危険を伴う。ですから、そういう場所の問題も含めてあるいは五三%の米軍基地が集中的に存在しておるということも含めて、大臣とされて正式に米側に対して整理縮小についてやはりきちっとおっしゃっていただく必要があるのではないか。このように思うわけですが、大臣いかがですか。
  191. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これらの問題につきましては、従来基地の関係の諸問題が日米安保協議委員会で審議され、そこで合意されたものが逐次実施されておる、そういう手だてでございますので、また従来におきましてもすでにそういう要望があり、また協議の中では討議されておるものと思いますが、次回の協議委員会におきまして出席者との間でよく話し合ってみたいと思います。
  192. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間が参りましたので大臣に御要望申し上げたいのですが、前の大臣の方々も、よく私は沖縄基地の問題を取り上げまして御要望申し上げたのですが、おっしゃるところはきちっとおっしゃっていただいたわけです。大臣は何かはっきりしないような感じで答弁していらっしゃるわけですけれども、これは聞いている方にとっては非常に歯がゆくてしようがない。それはいろいろ問題もあることは承知の上です。しかし、少なくともそれだけの実態を私はるる説明しているわけですから、大臣、話し合ってみたいのだとか、機会があればとかそんなことじゃなくて、先ほど私が説明申し上げた点について、最後に大臣としてきちっとここでおっしゃっていただきたいわけです。
  193. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 外務省の所管で、私が決断して処理のできるものについては歯切れよく言えることもございますが、何分にも相手があり、また施設関係でありますから、施設庁の考えあるいは防衛庁の考え、いろいろ関連してまいりますので、どうしても私の答弁のようになることを御了承いただきまして、玉城委員の言われたことはよく念頭に置いて、今後の参考に供したいと思います。
  194. 中山正暉

    中山委員長 次に、渡辺朗君。
  195. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣は最近、訪米して帰国されましたので、当面する日米関係あるいは日欧関係、それらにつきまして質問させていただきたいと思っております。  それに先立って、中国残留孤児問題あるいはつい先般も東京地裁において請求棄却の判決がございましたけれども、元日本兵台湾人補償問題につき、二、三質問をさせていただきたいと思います。  これらの問題を見るときに、いまだ戦後は終わっていないというふうに思うのでございます。外務大臣として、特に私がお聞きしたいのは、元日本兵台湾人補償問題についてでございますが、どのような方向で解決すべきだとお考えでございましょうか、お尋ねをいたします。
  196. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本軍人軍属として当時戦死された台湾住民の遺族及び戦傷された台湾住民の方々について、現時点で救済等の措置を講ずることについては、遺族、戦傷者を含む台湾側との関係、他の分離地域の人々との公平の問題、日台間の全般的な請求権問題が未解決であることとの関連、さらには、わが国の財政事情等も考慮する必要がありますために、この件については、予算委員会におきましてもお答えいたしましたが、新たに救済措置等を講ずることについては慎重に検討をする必要がある、また、大変むずかしい問題であるというお答えをしておるわけでございます。裁判の結果に基づきまして、国民世論として何か措置はないものかということが大変大きな声となりつつあるわけでございますが、現状におきましては、いま申し上げる範囲を超える、そういう状況にはなっていないのであります。
  197. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務省の方にお尋ねいたしますけれども、第二次世界大戦中どのくらいの台湾の方が従軍され、そして死亡されたとか、あるいはけがされたとかいうような数字がございますか、外務省でお調べになったはずでございます。
  198. 木内昭胤

    ○木内政府委員 私ども厚生省から伺っておる数字では、軍人あるいは軍属としての台湾の方々の数は二十万強でございます。そのうちで、不幸にして亡くなられた方々の数は三万強というふうに承知いたしております。
  199. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 実は、この問題外務大臣、わが党の、亡くなられましたけれども、岡沢寛治議員が昭和四十三年に法務委員会で提起いたしておりまして、またそのときに外務省の金沢説明員の方からも御説明がございました。なおまた、当外務委員会において、昭和五十年二月でございましたけれども、永末議員の方から再度問題提起があり、そのときはたしか宮澤外相でございました。そのときに、契約上債務を日本側が負うということは明らかだ、「契約上の義務を履行しなければならない」のだということをはっきりおっしゃった、むずかしい問題なので、検討しなければならないということも確かに言われました。  ところが、いまお話を聞いておりましても、大臣は慎重に検討とまた言っておられる。十年、二十年たってまだ検討ということでは、国際的信義の上から言ってもいかがなものかと考えます。特に、私、検討という言葉を大体予想しておりましたので、調べてみました。  ことしになりましてからでも、三月一日、官房長官は田邊総務長官と協議の上、この問題について検討に入るということを言っております。あるいはまた、これは昨年でございましたけれども、新自由クラブの田川代表が本会議において質問されましたとき、鈴木総理も同じく、今後検討をいたします、こういうふうに言っておられる。検討検討の連続でございます。ここら辺でもう少し一歩踏み込んでいかなければ、国際的に日本という国はという評価を受けるのではないか。私は、その点、外務大臣、もう一度お考えを聞かしていただきたいと思います。
  200. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 大変申しにくいことではございますが、先ほど申し上げたような事由によりまして、非常に困難なるために、その結果がどうしても検討という、検討してなかなかむずかしいと、こういうところに落ちついていくわけでございまして、これを打開するにつきましては、非常に広範囲に影響のある問題でございますから、政治的な配慮ですぐ決められるということもなし、やむなく従来、御質問があると、こうやって問題が出れば検討はするのですが、やはりこれはなかなかむずかしいと、こうなっておるのが現実だと思うのであります。
  201. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 外務大臣として、確かに、これは各省庁にもまたがる問題であり、問題は恐らく多岐にわたる、ですからお答えは慎重にならざるを得ないと思いますが、個人としては、どのような方向でこれは解決したらいいのかということについては、先ほど見ておりましてもたしか大臣のところにも署名か何かが回ってきたやに見かけましたけれども、個人的にお考えのほどを聞かせていただけませんでしょうか。
  202. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは何かさらっとした解決方法がないものか、知恵を出せばあるのじゃないか、こんなふうに単純に思うのでありますが、この程度はどうかと言って出してみても、それはこの地域にこうすればあの地域にもこうであるというふうになってなかなか問題が前進をしないのであります。先ほど民社党の御関係で過去における御発言あるいは御努力の趣のお話を承りました。また、自由民主党の中でも台湾と御関係の深い方がおられていろいろ御奔走されておる事実もございます。しかし、どうしてもあるところまでいきますと、公平問題などが起きまして、これへ決断する以上はここまで考えなければならない、それはいまなかなかむずかしいというふうな理論展開になりますので、やはり私としても、いまこういう立場にございますから、個人的には、深い理解を示したい、こう思っておりますが、いまここでそれじゃ言葉にしてどう言うかということになりますと、結局やはり慎重に扱う以外にない、こういうことでございます。
  203. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは外務省の方にちょっとお尋ねしますが、外国ではどのような処理をしているのでございましょうか。たとえば、アメリカでは、戦前に統治下にあったフィリピン、そしてフィリピンの人が軍人軍属という形で従軍した場合、米国軍人に準ずるものとして年金あるいは補償金を支給されている。その際にはアメリカの市民権の有無は問題にされていないというように私は聞いております。あるいはほかの国において、たとえば英国とかドイツとかフランスとかイタリアとかというようなところにおいてはどのような実態でございましょうか。おわかりでしたらお知らせいただきたいと思います。
  204. 木内昭胤

    ○木内政府委員 フィリピンにつきましては渡辺委員御指摘のとおりの対応をアメリカがやっておるというふうに承知いたしております。ヨーロッパにつきましては私ども十分承知いたしておりませんので、至急勉強させていただきたいと思います。
  205. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ぜひともそこは調べていただきまして、後刻御報告をいただければと思います。これはお願いしておきます。  なお、大臣、これに関連いたしまして、これは東京地裁で一つの判決が出たあのときの時点でございますけれども、各新聞を見ておりましたら、どっと読者の声というような形で投書が載っておりましたね。見ておりましたら、その中でこういうふうに読者の意見というようなものが出ております。これは余り非情じゃないのか、法律がなくなったから救えないというのであるならば新しい法律をつくることじゃないのか、そのために国会があるのではなかろうか、こういうふうな投書もありました。あるいはまた、経済摩擦などで国際的孤立が言われる日本世界に理解してもらう、そのためにはこうした問題について誠意を見せていくことではないのか、こういう投書がございました。大臣日米貿易摩擦その他についてこれから御質問させていただきたいと思いますけれども、こういう庶民の声というものに対してはいかがお考えでございますか。
  206. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私も投書の一部は拝見いたしました。この庶民の声というものは傾聴すべきだと思います。
  207. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ぜひ傾聴していただいて、検討を続けていかれるのではなく、私は具体的な案をやはり国民の方に示していただきたい、それがこたえる道であろうと思います。それはお願いをいたしたいと思います。  さて、いまアメリカ初めあるいはヨーロッパ共同体におきましても首脳会議がついせんだって開かれたところでありますが、アメリカにおいては上院、下院、新聞見出し的に言うならば、異常とも言えるような形で日本問題が取り上げられてきたのが最近の事態でございました。この事態をどう見たらいいのか。まず、私は、個々のいろいろな問題、理由や何かがありましょう、この際にこれをせんさくしていたら切りがないと思いますから、大臣としては、この事態というものは大変せっぱ詰まったものだ、重大なものなんだというふうに深刻に受け取られておられるのか、あるいは、いままでだってあったのだし——貿易摩擦は確かにございました。ましてや中間選挙の年なんだからしばらくは激しいあらしが吹くだろう、台風一過を待てばまた違った状況が生まれるのではないかというふうに受け取っていいのか、大臣の御認識はどのようなものでございましょうか。
  208. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは報道等を通じてごらんいただいてもわかりますように、非常に厳しいものがある。また、ヨーロッパの方も同じような日本に対する見方をとっておりますので、これは下手をすると欧米こぞっての日本に対する批判になる。したがって、現在私どもがいろんな角度から、もし仮に誤解に基づくことがあるならばその誤解を解きたい、また、対応策として、ただ単に貿易摩擦の点からでなくて、もう一つ大所高所から考える点があるならばそれも訴えてみたい、いろいろ苦慮をしておるところでございますが、お尋ねの、どのように見ておるか、大変厳しいということはそのとおりであります。
  209. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 厳しいという認識をお持ちになった。対応策はそれではどのようにあるべきなのか。特に、これは日切れと言うとおかしいですけれども、サミットも近づいてきております。そういうような場合に、いつの時点までにどのような基本的な姿勢で対応したらよろしいのか、私は、細目はいいと思いますので、大臣の御姿勢をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  210. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御承知のように私は鈴木内閣改造後に就任をいたしました。そして、就任直後に、鈴木総理は、この日米経済問題あるいは対日批判にこたえるために急速に手を打とう、こういうことで非関税障壁の撤廃、関税の前倒し、こういうものをやって、これこそは国際的な日本に対する批判にこたえるゆえんのものであると思っておりましたが、残念ながらわれわれの認識は通じませんでした。それだけのことをやったと思っておったが、とてもとてもそれで理解を示すような状況にない。こういうことで、次の段階は先進国首脳が寄るベルサイユ・サミットである。この折にはみんなが顔をそろえるのでありますから、もし日本のその後の対応の仕方が悪いとすれば、一斉に批判が出ることは言うまでもない。また日本のとった措置がよろしきを得れば、先進諸国サミット会議が将来へ向かっての建設的な協議ができるということも考えられるわけでありますから、当面はこのサミット前にできるだけのことをいたしたい、こういうことで現在鋭意その努力をしておる、こういうことでございます。
  211. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 先日アメリカにいらっしゃる前までは、どちらかというと何か甘い観測をしていらっしゃったような気がするのでございます。いまお話を聞きますと、非常に深刻な受けとめ方をしておられる。そしてまた外務大臣としては、期限つきの約束はされなかったものの、サミットまでに具体的な市場開放措置を実質的に約束してお帰りになったというふうに見てもいいのではなかろうかというふうに思うのです。私はそんなことを言って申しわけありませんけれども、大臣の読みはちょっとやはり甘かったというふうに申し上げたいと思うのですが、その点いかがでございますか。
  212. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私が今度の会談の中で一番具体的に重要なのはヘイグ長官との会談でございます。私はサミットまでを念頭に置いてできるだけの努力をする、こういうことを申し、しかし、できないことはできないということも申してございます。そのことは相手も十分理解をしておると思います。  それから、日米間におきましては、特に今度の訪米が問題の解決に対応したというのではなくて、従来とも努力が続けられておるわけであります。御承知のような、日米間の貿易摩擦解消のために小委員会を二度開いておるということもございますし、また、この小委員会においては問題点を洗って、そしてそれに対するところの努力もいま続けておるわけであります。あるいは今後の具体的な扱い方として、四月には作業部会を持とうではないか、あるいは十月には柑橘、肉類についての話し合いをしようじゃないか、そういうようなこともすでに取り決めておるのでありますから、したがって、サミットまでにでき得る限りの努力をする、サミットまでに何もかも解決しなければならぬ、そういうことではないということを申し上げておきます。
  213. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 関連してお聞きしますけれども、いまアメリカの議会に出してまいっております一連の相互主義法案、これの見通しはどのようにお考えでございましょうか。  特に、これは外務大臣がワシントンに出発後だったと思いますが、たしかブロック米通商代表だったと思いますけれども、米議会において発言をし、この相互主義法案というのは支持しないということを言ったやに聞いております。そこら辺の見通しについて外務大臣の感触はいかがなものでございましたでしょう。
  214. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答えさせていただきます。  アメリカの相互主義法案がいろいろ出ておりますことは先生御指摘のとおりでございます。成り行きにつきましては、もちろんその法案の内容がどういうふうになっているかということもございましょうし、それからアメリカの景気の動向、それから国内の空気がどうなっていくかということもあると思います。それから、そこの一つ背景になっておりますアメリカ以外の国との関係、たとえば日本における市場開放努力あるいは日米貿易の成り行きといったようなことが総合的にアメリカでどういうふうに判断されるかというようなことも法案の成り行きに関係あるのではないかというふうな気がいたしますが、どうなるかということを現時点ではっきりと見通すということは困難かと思います。  それから、ブロック通商代表の意見でございますが、私どもブロック通商代表の意見をいろいろ伺っておりますと、基本的な考えとしましては、ガットの原則に反するような相互主義法案というものは好ましくない。たとえば貿易において二国間での相互主義とかあるいは同じ品目についての相互主義とか、そういうのはガットの自由無差別の原則に反するわけでございまして、そういうものは好ましくないと考えているようでございます。  他方、貿易以外の分野で、たとえばサービスの分野での国際的な関係をどう考えるかというようなことがございまして、そういう分野における相互主義というものは必ずしも反対と決めているわけではないということのようでございます。  いずれにしましても、これはアメリカ国内のことでございますので、今後とも関係者の態度、発言というものは注視してまいりたいと考えております。
  215. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 まあ私ども素人でわかりませんが、レーガン政権と米議会の関係を見ておりますと、一九八三年度予算審議をめぐっても必ずしもスムーズにいっていない。そういう状況下にありながら一連のそのような相互主義法案というものを支持しないということをレーガン政権が公式に表明したということであるならば、これは思い切った政治決断を向こう側はしたというふうにも見られるのではあるまいかと思うわけであります。その点、私は大臣の感触をお聞きしたいのです。向こうの方は本当に相互主義法案を引っ込めていく、それだけの姿勢で臨んでいこうとしているのか。それとも、いやそうじゃない、まだまだそんなものはこれから燃え盛っていく形勢にあるかもわからぬというふうにお考えなのか。ここら辺の見通しを聞かせてください。
  216. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 アメリカの政治情勢は秋に中間選挙を控えておりますから、私の判断を求められておりますので申し上げますと、選挙が近づくにつれて鎮静化するかしないかは、やはり日本の対応の仕方にあると思うのであります。現在の状況からすれば、鎮静化するということはそういう政治情勢ではなかなかむずかしいのではないかと思います。  しかし、米政府は、この相互主義法案が保護主義的なものになる、多国間協議の場であるガットの関係からいたしましてもそういうことがとり得るかどうかというようなことからいたしますと、政府当事者としては相当冷静に判断をしておると思うのであります。しかしながら、議会は議会で、また行政府の及ばない面があると思います。このことはレーガン大統領もいままでにもそういうことを口にされた事実もございますから、やはり議会は議会としての動きを注目していく必要があると思います。  私は、今回の訪米に当たって上下外交委員会に臨み、外交委員長それぞれ主催のもとに懇談をいたしました。その折には、私自身は率直に物を言って、なおかつ、相互主義法案のような保護主義的になるようなことは、どうぞ御出席の皆さんにはひとつさようなことのないように協力を賜りたいというようなお願いもしてまいったわけでございますが、現在私の見ておるのでは、たとえば通信法のようなもの、こういう個別的なものについては政府の方としてもそれは困ると言って、現在成立の見通しは余りないのじゃないか、そういう見方が出ておりますが、一つ一つのものについてはそういうふうに批判のあるものもございますが、ダンフォース法案のようなものについては、これはどうも成立する可能性があるのじゃないか、あるいは修正などがされて通るのじゃないかということが懸念される面がございます。たまたまブロック代表は、この公聴会に臨んで証言をして、そのことが報道されたわけでございますが、決して油断のできない状況ではないかと思います。
  217. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 関連して一、二、また聞かしていただきたいと思います。  一つは、従来から貿易摩擦が出てまいりますと必ず安保ただ乗り論が声高に語られる。防衛と連動しているやに報道される。先般来ワインバーガー国防長官が日本に参りましたときにも、それは切り離して考えていくべき問題だ、こういうふうなことを言ったやに聞いております。ところが新聞などを見ておりますと、たとえば上院の外交委員会においても、同じくまた防衛で対日制裁論をぶち上げている議員さんもいる。一体外務大臣認識は、貿易摩擦の問題は防衛と連動しない問題だとお考えでございますか。その点についての御認識をもう一遍聞かせていただきたい。
  218. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 安保ただ乗り論というのは、まさに日本がこういう経済繁栄をしているのはそういう根拠にある、こういうことで日本経済繁栄と絡ませての話でございますが、しかし、現在のこの日米間の経済問題については、今国会、るるいろいろの場で経済担当閣僚を初めとして申し上げておるように、私は安保と絡んでおるものではない、また今後の解決をしていく上におきましても安保との絡みで解決をするというようなことはない、こういうふうに見ております。  たとえば、現在のこの不均衡日本市場開放が足りないのだ、それで市場開放ができてこの不均衡が是正されるという過程になっていけばそれなりに問題は解決していくわけであります。また、私どもが繰り返し言っておるように、これは欧米の経済不況に基づいて日本に対する風当たりが強いのである。しかし、ヨーロッパ日本もともにこの原因アメリカ高金利にある。そうすると、米側の現状からいたしますと物価がやや落ちついてそして予定の経済運営ができる、それをやっていくとおのずから金利が下がる、下がれば円が正当に評価されて日本内需喚起できる、こういう方向からもまた解決の方向がある。それらの論議の中には安保との絡み合いはないことは明白でございます。
  219. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一つ貿易摩擦問題について、ガット事務局の年次中間報告によりますと、現在の経済沈滞とかあるいは貿易摩擦に対する各国の取り組み方について、すべての原因高金利とか特定の国の輸出圧力、貿易均衡に押しつけようとする危険な単純化の傾向がある、こういうふうな報告が書いてあると報道で読みました。なおまた、ガット事務局の方が景気回復のために、あるいは貿易摩擦解決のために総合的な取り組み方を促している。そしてまた同時に、多角的貿易の原則に立つ以上、二国間で貿易及び収支が均衡しなくても問題ではないし、二国間の相互主義は問題外だというふうに年次報告では言い切っているやに聞いております。他方、いままで引用してまいりましたように、あるいは私お聞きしましたように、依然として日本悪者論みたいなものもある。  外務大臣、ここら辺、これは大臣のお得意とされるえんきょくな言い方でやわらかくおっしゃって結構でございますけれども、どちらの形で日本はこれから貿易摩擦の問題、世界経済の再活性化の問題に対して取り組んだらよろしいでございましょうか。
  220. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 貿易問題をただ単に二国間でやるということについての批判、これは当然だと思うのですね。たとえば肉の問題について、本年になりましても第一回の割り当てについて米側に有利になった、高級牛肉の枠が大きかった、こういうことになりますと、豪州から早速それについて苦情が出てくるわけでございます。そこで第二回目にはかげんをするというようなことで、貿易問題が本来で言えば多国間協議の場で話し合っていく、そのことがガットの場でいろいろ協議をする、東京ラウンドということでお互いの合意の上で関税を逐次下げていくようなことにもなっておるわけですから、だからそれはそれで考えるべきだと思うのであります。  それから日本に対してのいろいろな批判も、ただいま渡辺委員がおっしゃるようにこれは全体的な経済の再活性化の面から考えていく、そういう考え方が当然あるわけでございまして、再活性化のために各国の経済がより生産性を向上し、合理化をし、技術の向上を図り、また自由貿易体制を堅持していくということは、これはそれぞれの国に経済力をつける一つ方針であるわけでありますから、そういうことの努力を大いにやって、そして競争力をつけて日本商品と大いにやり合う、こうすれば日本の方もそれに伴ってどしゃ降り輸出をしなくても済む面があるかと思うのですね。ですからこれは考えようなんですけれども、現在ではなかなかそういう面から考えてくれる余地のないほどの問題になっておる。そこで、日本としてはまずやるべきこととして市場開放努力をして少しでもいまのインバランスを鎮静化せしめながら、しかし一方におきまして本格的な世界経済活性化なりあるいは他の面からの日本の不均衡の是正を図りたい。  特にきょうも申し上げたように、アメリカがいろいろ言うけれども、アメリカの経常収支はどうかというと黒字なんですものね。それを貿易の面で、そして日本との赤字だけを責める。それじゃヨーロッパとはどうなのかと言えば黒字なんですからね。だからそういうところがやはり二国間だけということには問題があると思いますね。アメリカも大局に立っていろいろなものを考えてもらう必要がある。しかしそこまで行くその前の非常に感情的なことになっておるということを残念に思うわけであります。
  221. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間がだんだんなくなりましたので、先に進ましていただきたいと思います。  他の問題でございますが、アメリカの上院外交委員会は「米中軍事協力の意味」と題する報告書を公表し、中国の核戦力の実態を明らかにしたというふうに伝えられております。外務省はその報告書を入手しておられますでしょうか。
  222. 秋山光路

    ○秋山説明員 ただいままでのところ入手しておりません。
  223. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ぜひ手に入れていただきますよう、委員長、お願いをいたします。
  224. 中山正暉

    中山委員長 わかりました。
  225. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 さて、その報告書によると、これは私もまた聞きでございますのでぜひ検討していただきたいと思います。恐らく外務省の方ではそういうものは確認済みのことであろうと思いますけれども、中国の核ミサイルが着実に技術進歩を遂げている。そして日本はもちろんレンジの中に入るわけでございましょうけれども、モスクワを含むソ連全域への攻撃も可能になっているというふうに伝えられております。あるいはそのような報道があると聞いております。そうなりますと、アジアの核バランスに重要な変化を生みつつあるというふうに言えるのではなかろうか、このような実情というものについては外務省はどのように認識しておられますか。事実を把握しておられますか。
  226. 秋山光路

    ○秋山説明員 中国の核につきましては、なおソ連の有する核ほどには進展していないと私どもは認識いたしております。
  227. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 それでは二つお聞きします。  中国側と核問題についての意見を交換したことはおありでございましょうか。あるいはまた、中国のNPTへの加入問題を話し合ったことはおありでございますか。
  228. 秋山光路

    ○秋山説明員 中国の核実験に当たりましては、その都度日本側としましては核の実験をやめるよう申し入れております。それからもう一つの御質問でございますが、これにつきましては、日中の間でいろいろの話し合いが行われております。
  229. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 日中の間でいろいろ話し合いが行われている、時間があればそこら辺もうちょっと詳しくお聞きしたいと思います。ことしは国連の軍縮総会を前にしてのただいまの外務委員会でございますので、本当はお聞きしたいのですが、ちょっとその点は次の機会に残しまして別の問題を聞きたいと思います。  先ほど木内アジア局長、最近の中ソ関係の中で特にブレジネフのタシケント発言についてのコメントでございましたが、中国はソ連カードを使っているのではないかという見方もできるという御発言がございました。近ごろワインバーガー国防長官に提示した日本総理大臣の対外関係の基本見解としての四項目の中には対中関係の重視というのが入っております。外務大臣もきっとこれには、四項目作成については関与しておられると思います。この意味は一体何でございましょうか。日本は逆に今度はチャイナ・カードを使おうとするということを言われても、これは否定できないのではないでしょうか。ここら辺の御見解を私は賜りたいと思います。
  230. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 総理大臣ワインバーガー長官と会われて四項目の提示をされたということについては、新聞で報道されております。先般予算委員会の審議において総理大臣がみずからお答えになっておりまして、その中で中国を西側に近づけるために云々という新聞報道は必ずしも自分の真意を伝えていない、自分がワインバーガーに言ったのは、米中関係が安定していることはアジアの安定にとって必要である、そのことを述べたのである、こういうことでございます。
  231. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これもまた別個時間をいただいて別の機会にお聞きをしたいと思いますが、もう一つ、先ほど外務大臣は、日ソ関係についてお答えになった中で、アジアにおける信頼醸成措置についてソ連は言及しているけれども、その前提となるべきものが解決されていないので応じられないんだ、先ほどおっしゃったお言葉、そのように私は聞いたのですが、それでよろしゅうございますか。
  232. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 そのとおりでございまして、日本としては何としても北方領土の問題を解決して両国の安定状態をつくりたい、これがまず第一である、信頼醸成措置というものはその後の問題であるという認識を持っております。
  233. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一遍お聞きしたいんですが、その前提とは北方領土の問題であるということになると、これはちょっと逆ではないでしょうか。むしろ北方領土の返還をさせるためにこそ信頼醸成措置も講じなければいけない、それが講じられなければいかぬだろう、私はそういうふうに理解するのでございますが、外務大臣、その点についてもう一遍大臣の御見解を……。
  234. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 信頼醸成措置の方に取り組んでいきますと、いままでの両国の関係からするとこれで領土問題をとうとう日本はあきらめた、こういうところに参りますから、そこで用心をしてかかっておるわけであります。また、政経分離で経済だけというようなそういう進め方もしてまいりますけれども、常に忘れてはならないことは、この一番重要なこと、すなわちこれを外交的に申し上げますならば、平和条約の締結というものがまず必要である、また平和条約は七三年の田中・ブレジネフ会談後にひとつ話し合いを続けよう、こう言っているのがとぎれておるんでありますから、それをぜひ履行してもらう、しかしだからといってソ連との間で全く対話をしないという姿勢もいかがか、こういうことから実務者高級レベルの会談をするとか、あるいは外相会談には応じますよ、こういうことを申し上げておるわけであります。
  235. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 あと二つだけお尋ねをさせていただきたいと思います。  一つは、中東情勢、特にイラン・イラクの戦争の平和解決可能性でございます。パルメ調停使が入ったりなどしておりましたけれども、どういうふうな事態でございましょうか。逆に何か戦争の方は激化しているように思えます。それに対してまた日本は傍観しているだけでしょうか。何らかの手も打ってあるのでございましょうか。ここら辺について、簡単で結構ですからひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  236. 村田良平

    ○村田政府委員 戦争の方は、渡辺委員御指摘のとおり特に三月二十二日から非常に激化をしておりまして、特にイラン側の猛反攻がございます。このために、一昨日イラクがかなりの部隊を撤収するということをしたというふうな状況でございます。他方、実は昨年の十一月ごろまでかなりイランの反攻があったわけでございますが、その後雨季に入りまして戦争が膠着状態に入っておった。それが最近また活発化してきたということを背景といたしまして、二月の終わりにパルメ国連特使が両国を訪問した、さらに三月の初めにはイスラム諸国会議の代表団が両国に乗り込んだ、こういうことでございますが、残念ながら、パルメ特使及びイスラム諸国会議の代表団それぞれ、この停戦についての合意の手がかりというものをつかみ得なかったということでございます。そのそれぞれの使節の新聞発表等から分析いたしますと、両国それぞれ戦争をやめたいという気持ちはありますけれども、基本的な条件について折り合わないということで、特にイラン側は、通常三原則と言っておりますが、イラク軍の無条件撤退と、責任を明らかにして関係者を処罰するということと、それから賠償する、この三原則を譲らないということでございまして、これにイラクが応じられないというのがいまの状況でございます。そういうことでございますので、現在国連ないしイスラム諸国会議努力がさらに続くようでございますから、わが国としてはこの動きを見守っているというのが現状でございます。
  237. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一点、これは中南米の情勢でございます。EC首脳会議でも重大な関心が表明されたと聞いておりますが、私どもも決して遠いところだといって傍観しているわけにはいかないであろうと思います。クーデターが起こったり、あるいはまた内戦の危機がいろいろ報道されている中で非常に心配いたします。その際に、私はお聞きしたいのでございますが、この中南米の地域の大変な政治的混乱というのは、言われるように、米ソの綱引きあるいはパワーポリティックスがそういうものを引き起こしているのであろうか、あるいは貧困とか経済的困難とか、そういうことから社会的不安定が生じてきて政治的不安を引き起こし、いまのような事態になっているのであろうか、まずどちらの認識を持ったらいいのでしょうか。これは日本国民としても非常に不安感を持っている、そしてその目で見ていることだと思います。と同時にまた、日本として一体何ができるのか、何もできないのかということでございます。この点につきましてお聞かせいただければありがたいと思います。
  238. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 かいつまんで申し上げますけれども、私どももまさに渡辺委員御指摘のような両方の要因があると思うのでございます。基本的には、この地域の不安定の根本的な原因というのは、あの地域の諸国に内在いたしますところの経済開発のおくれでありますとか、社会的不公正の存在、これはもう明らかなところでございまして、これに目をつぶってはやはり長期的な安定というのは達成できないように思います。しかし、他方、そういう不安定の要因というものを外部から助長したり、扇動したりする動きがあるということも事実でございます。それで、こういう動きの背景に、大きく言えば東西の対立といいますか力関係というものがある。この双方に目を向けて対処していかないといけないのじゃないかというふうに思います。  そこで、わが国がこれに対してどう対処するかでございますけれども、前者の長期的な不安定の要因、これはやはりそういった経済的な開発のおくれとか社会的不公正の存在、これにもろに取り組む必要がございますので、たとえばアメリカでありますとかメキシコ、ベネズエラ、カナダ、コロンビアなどが進めておりますカリブ開発構想、これはたしかECの首脳会談でも歓迎されたように思いますが、そういったものに積極的な関心を持ってわが国なりの対策を検討していくということが必要であろうと思います。  それから他方、そういう外部からの介入とかいうふうな問題につきましては、最近ロペス・ポリチーヨ・メキシコ大統領の和平提案というものを中心に一連のいろいろな動きがございますので、そういったものを関心を持って注目しながら、われわれなりの意見も表明していくということが対策であろうかというふうに思っております。
  239. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 きょういろいろお聞きしたことを改めてまたお願いして討議をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。以上をもって終わります。
  240. 中山正暉

    中山委員長 東中光雄君。
  241. 東中光雄

    ○東中委員 通告してある質問に入る前に、いま渡辺委員から、いわゆる台湾人の元日本兵の補償問題についての御質問がありましたので、それに関連して一言お聞きしたいのであります。  台湾人というのはどういう者を言うのか私よくわからないのです。台湾在留の中国人という意味だと思うのですが、この問題につきましては、私たちは外国籍を持つ元日本兵はやはり公平に、全部同じように補償をすべきだという考えに立っております。それで外務省は検討中、検討中ばかりでさっぱり進まぬじゃないかという問題でありますが、外国籍を持つ戦死傷者への補償と未払いの賃金あるいは軍事郵便貯金の支払い問題、これはやはり解決をしなければいかぬ問題だと思います。台湾在留の中国人、それから朝鮮、サハリン、南洋群島、こういうところに現在は日本籍を持っていない、しかし元日本兵であった人がいるわけですから、これは戦争被害者として当然補償をさるべき性質のものだ、こう思うわけであります。そしていま外務省お話では、アメリカがフィリピンについてやったことはあるということを言われたのですが、一九四四年にイギリスがインドに対してもやはり同じようなことをやっているわけです。だから決して前例のないことではない。しかしそういうものは外務省の方で研究もされていない。勉強するというようなお話があったわけですが、戦後三十七年たっているわけですから、こういう問題については、戦争被害者の救済、補償ということについて公平で積極的なものを進めるべきだ。特に侵略戦争に協力をさせられたという戦争被害者の補償でありますから、私たちはそういうふうに考えておりますが、外務大臣、先ほどの答弁では必ずしもよく検討されているわけではないようなんですね、ヨーロッパの例は知らぬというような調子でありますから。積極的に進めらるべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  242. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 しばしばこの問題については御質問を受け、また相当の期間、これが懸案事項となっておりまして、その間、担当の省庁においては検討を進めておるわけでありますが、相当広範囲に及ぶ問題であり、また台湾との間では賠償権との関係などの問題もあり、なかなかこれが進行しないという状況にあるわけであります。ただいま、英国のインド、先ほどは、アメリカのフィリピン、そういう事例について十分調査をしておらなかったのじゃないか。それはそのように受けとめまして、そういう事例をよく調べて、台湾の方々の関係、またそのほかに関係する面がございますから、なお一層よく検討をさしていただきたいと思います。
  243. 東中光雄

    ○東中委員 それでは本論に入りたいのですが、外相の訪米前の三月十九日の本委員会における高沢委員質問であったと思うのですが、限定核戦争問題について大臣は、「限定核戦争、そしてさらには、それが本格的な核戦争にならないと断定することはできない、そういう状況にエスカレートする要素があると思うのですね。そのようなことを考えますときに、私は、言葉の上でときに限定核戦争をやるというようなことが、言われたようなことがございますけれども、しかし、そういうようなことを本気で考えておるというふうには私には思えない」こういうふうに言われて、それで世界の平和と安定の実現を期すためにアメリカとしても方針を立てているんじゃないか、こういう答弁をされておるのでありますが、「本気で考えておるというふうには私には思えない」、これは日本外務大臣がこういうことを言われたのじゃ非常に問題だと思うのです。アメリカ大統領が二回にわたって限定核戦争はあり得るということを言い、そういう方針で動いておるときに、それに対して、あれは本気じゃないんだ。それじゃ一体何なのだろうというふうになるわけであります。そうではなくて、限定核戦争構想、これは民族の死滅にもつながりかねないような非常に重要な問題でありますから、それに対して外務大臣はどのように考えていらっしゃるのか。これは断じて許されない、そういうものなんだということで受けとめられるべき筋ではないか、こう思うのでありますが、改めて、いわゆる限定核戦争——ヨーロッパで、政府レベルでもあるいは民衆レベルでも物すごい反対の運動が起こっておるわけです。それについての外務大臣のお考えを承りたいと思います。
  244. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 レーガン大統領の限定核戦争論、これはよく記憶はしておりませんけれども、その中で、核戦争の恐るべき事態にも言及をされておったと私は記憶をしておるのであります。そこで、そういうことを口にされた背景としては、アメリカとして、いかなる攻撃に対してもこれに対応し得る有効な体制をとることをその抑止力の基本としておる、その趣旨を言っておられるのではないか、こういうことで、その後、御質問の中でおっしゃいましたように、限定核戦争にしても、それは本格的な核戦争になる可能性を持つのでありますから、そのような行為に出るとは私は思えないという、私の観測を申し上げたのであります。
  245. 東中光雄

    ○東中委員 記憶でと言われると非常に無責任な発言になると思うのですが、十月十六日のレーガン大統領のホワイトハウスでやられた地方紙の編集長の昼食会後の質疑応答、それから昨年の十一月十日にやはりホワイトハウスにおける記者会見で言われた、いわゆる限定核戦争構想についての二回の発言、これは世界的に大問題になったわけですから、それはヨーロッパなりあるいは極東なり、アメリカ本国は核戦争に入らないけれども、地域的に限定されたところで核戦争をやる。ヨーロッパは、核戦争の戦場にされてたまるか、こういう大きな反核運動に発展をしておるわけであります。だから、日本があるいは極東が、極東に限定された核戦争戦場にされてたまるかと言うのは、私は当然のことだと思うのでありますが、そういうふうにお考えにならないのかどうかということであります。そして、核戦争というものについて、たとえばことし、一九八三会計年度のアメリカのワインバーガー国防報告でも、核部隊の目的というものを四つ挙げている。その中に、核攻撃の抑止のためというのがありますけれども、二番目には、大規模な通常攻撃を抑止するため、だから通常戦争を起こさせないためにということで核兵器の目的にしている。三番目には、大規模な戦争を終局させるためあるいはエスカレートを思いとどまらせるためにということが核部隊の目的なんだ。あるいは四番目は、核脅迫を否定するため、こういうふうに言っているわけです。明らかに通常戦争——ちょうど広島、長崎に落としたとき、あれは戦争を終結さすためにということだったと思うのですが、そういう方針を国防報告で言うているわけですね。そういう状態でありますから、一般的な話ではなくて、そういう限定核戦争というものは——カーター大統領は否定していたわけです。レーガンになって二回も、国際的に大問題になっておるときにあえて言うという状態になっておるわけですから、それについて外務大臣はどう考えていらっしゃるのか、そのこと自体についてです。
  246. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 私は、いまお示しのことはまさに核の抑止力だと思うのですね。通常兵器でも、これに対して、そういうことをするなら核があるよ、通常で大量殺戮をするような場合、こっちは核があるぞと言えば、それが抑止になると思うので、何か、核を使用するという前提でいまの四つをごらんになると、御懸念のようなことがあろうかと思うのでありますが、核を使用することが人類破滅に導くものである、お互いに核は持っているけれども、それは力のバランス上考えておるので、これを使うということになったらば、それは大変なことである。かつて、米ソ間でホットラインまでも設けた、こういうことでもありますし、また、現在米ソ間で核の削減交渉をしてなるべく早く低いレベルに持っていこうとお互いにいろいろ提案し合っておるという現状からいたしまして、核を使うぞ、引っ込め、こういう論理に行ってはおらないと私は思うのです。
  247. 東中光雄

    ○東中委員 そういう論理に行っておるからそれが大問題になっておるわけでありまして、結局は、大臣の言われておる論法で行きますと、限定核戦争構想については真正面から答えないで、結局弁護をされておるということになってしまうわけであります。特に極東への核巡航ミサイルの配備の問題が八四年から問題になっておりますけれども、このレーガンの十一月十日の記者会見のところの報道などによりますと、中性子爆弾を念頭にしてどうも言っているようだ、「戦術核、特に榴弾砲等から発射出来る中性子爆弾が念頭にあるものと推量される」というようなコメントがついておるわけですけれども、この中性子爆弾はヨーロッパだけの問題じゃない、日本への、あるいは極東への配備ということもあり得るんだという趣旨のことを、昨年の八月十一日、ペンタゴンで行われた国防総省スポークスマン、ベンジャミン・ウェルズ国防次官補代理が記者会見でそういう趣旨のことを言っていると思うのですが、外務省、御承知でしょうか。
  248. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま御引用になりましたのは、ウェルズ・アメリカ国防次官補代理が記者会見で言っていることを指しておられると思います。が、その前提として、中性子爆弾の生産を決定した際に、これはまだ生産の決定であって配備の決定でないということを国防総省が言っておるわけですが、この質問にはこういうくだりがあるわけでございます。「中性子爆弾に関してワインバーガー長官は、これは欧州のためだけというわけではなく、どこででも使用しうると述べたが、それはいかなる地域のことなのか。」これが質問でございます。それに対する答えは、「それは憶測であると思う。ワインバーガーは憶測について云々したくなかったと思うし、それは私も同じである。」「どうしてか。」「彼が言ったこと及び私がここで繰返して言いたいのは、中性子爆弾が欧州地域においてのみ使用されると考えることは不正確であり、正しくないということである。報道では欧州地域というところが強調されている。中性子爆弾は厳格に欧州向けのみに保留されている訳ではない。」こういうようなことを言っているわけですが、いずれにしても、どこの地域で使われるかということ、その点について、こういう公開の場で述べるのは妥当でなくて、その点については、要するに欧州だけでないということだけをここで述べるんだ、こういうことが回答の要旨です。
  249. 東中光雄

    ○東中委員 その後で、「中性子爆弾は、他の戦域でも使える。紛争が起こりうる他の可能性のある戦域がどこかについては、あなた方のご想像にまかせよう。われわれの前には、中東の非常に広大な地域がある。極東の広大な地域もある。あなた方は、これらの場所を潜在的な〔中性子爆弾使用〕地域と考えようとするかもしれない。ともかく、この兵器はヨーロッパ向けだけにリザーブされてはいないのだ。」こういう趣旨のことを言っているようですが、ということは極東地域、ここで言えば極東の広大な地域、あるいは中東地域に配備することもあり得るということを言っているわけですね。私は、限定核戦争に反対だということをはっきり日本政府としては言うべきだし、同時に、核巡航ミサイルの極東配備、それから中性子爆弾のこういう極東地域への配備というふうなことには反対だということを、唯一の被爆国としての日本立場でやはり言うべきじゃないか、こう思うのでありますが、外務大臣、いかがでございましょう。
  250. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 別の委員会でも御答弁しておりますので、繰り返しになって恐縮でございますが、要するにアメリカの中性子爆弾についての決定、これは生産、財政、予算支出に関するものでございまして、その配備についてはまだ決定していないわけでございます。したがって、いまの段階で、アメリカが中性子爆弾をどこに配備するかということはわからないわけでございまして、その段階で、その配備について反対だということを申し上げるのは時期尚早であるというふうに考えるわけです。ただ、日本との関係について言えば、この中性子爆弾はやはり核兵器でございます。したがって、核兵器の日本への持ち込みということは事前協議の対象になるわけでございまして、核兵器の事前協議については、非核三原則をもって対処するというのが日本方針でございます。  さらにつけ加えさせていただければ、特定の兵器だけを取り出して、その配備その他について反対するということでなくて、やはり核戦力全般について、それを低いレベルで均衡を保たせていくのがいいという考えでございます。
  251. 東中光雄

    ○東中委員 昨年の八月九日、ノー・モア・ナガサキと言うて大集会をやっておるときに、レーガンが中性子爆弾の生産開始を決定をしたんですね。その決定をした翌々日に、今度は、ヨーロッパだけではないんだ、こういう記者会見をやっているわけです。だから、そういうものを目指した方向、ヨーロッパだけではなくて極東も入り得るんだということを言っている。そういう次元で日本立場から言えば、はっきりとしたことを言うということこそが大切だというふうに私は思うわけであります。まだその配備の段階ではないからというようなことを言っている必要は一つもないので、そういうものは廃絶の方向に向かっていくわけですから、核戦争は二度と繰り返さないという立場で、被爆国としてそういう行動を積極的に起こすべきだということを強調しておきたいと思います。  次に、外相訪米についてですが、外務大臣が閣議で三月二十六日に報告された要旨が出されておりますが、防衛問題では「今後とも、役割と任務の分担にふさわしい防衛力増強努力を続けてほしい」との期待がアメリカ側から表明されたというふうに書いてございますね。こういう期待表明に対して外務大臣はどういうふうに応答をされたのでしょうか、それは何も書いてないのですけれども。
  252. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 報告は、いま御指摘のとおりでございます。今回の場合に、カールッチ国防長官代理とお会いいたしまして、このとおりに先方が言われました。評価する、それから防衛力の増強努力を、役割りと任務の分担にふさわしい努力を続けてほしい、この期待の表明で、これについては、日本は自主的に防衛大綱に沿って考えます、そういうお答えをしたのであります。
  253. 東中光雄

    ○東中委員 ところで、その「役割と任務の分担にふさわしい防衛力増強努力」こう言っておるわけですが、役割りと任務の分担というのは一体何なんでしょうか。
  254. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 これは、日本はあくまでも専守防衛立場でございまして、御承知のように五条の場合の検討をいろいろいたしました。それから六条の場合についての便宜供与は、現在その作業に取りかかったところでございます。五条での米側との協議がすなわち役割りと任務の分担だと思います。
  255. 東中光雄

    ○東中委員 協議が役割りと任務の分担と言われるのはどうも意味が不明になってくるわけですが、ことしの三月一日のアメリカ下院外交委員会対日公聴会で、ウェスト国防次官補は、レーガン政権は役割りと任務の分担に関する日米防衛協力を進める政策を採用した、日本はまだこれを果たしていないということを言っていますね。ホールドリッジ国務次官補も、三月一日同じ委員会で、合意された役割りと任務に関するすべてのレベルでの継続協議を通して云々ということを言っています。日米間で合意された役割りと任務にふさわしい防衛努力を続けてほしいというふうに外務大臣自身が報告されているように、向こうから言うてきておる。その合意された役割りと任務というのは一体何なのか。
  256. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 これは、東中委員もよく御承知のとおり、昨年の五月、鈴木総理訪米されまして共同声明を出したわけでございますが、その八項の中で、日本の安全及び極東の安全と平和とについて日米が役割りの分担をしていくという個所がございます。もちろん、日本が果たす役割りについては憲法の範囲内かつ基本的防衛政策を踏まえてということがございます。したがって、二つに分けて申し上げれば、日本の安全については、先ほど大臣から御答弁されましたように、安保条約で、日本が攻撃された場合には日米が共同対処するということでございます。その共同対処について五条で目下研究しているということでございます。それから、極東の安全と平和について日本の果たし得る役割りあるいは任務、これはおのずから日本の憲法あるいは基本的防衛政策によって制約があるわけでございます。それは言いかえれば、米軍に対して日本が施設及び区域を提供しているということが軍事面の唯一の協力できるところでございまして、それ以外は日本としては外交あるいは経済協力の面でアジアの安全と平和に尽くしていく、こういうことでございます。この点はアメリカ側の累次の証言その他の中でも、日本側としてアジアの安定、平和に尽くすのは、一つ経済協力というようなことを引用している個所があるのは御承知のとおりでございます。
  257. 東中光雄

    ○東中委員 ウェスト次官補が三月一日の対日公聴会で合意された役割りと分担ということとの関連で、その後で、アメリカは北西太平洋では核の傘を提供し、必要なら攻撃部隊を提供する、そして、韓国防衛を支援する、この三項目を言うています。南西アジア、インド洋については、アメリカは核の傘と必要なら攻撃部隊及び海上輸送のシーレーン防衛部隊を提供するのだ、こういうふうに言っています。だから日本の千海里シーレーン防衛は北西太平洋では完全に落としてあるわけですね。そして南西アジアではシーレーン防衛の部隊を配備するということを言っているわけです。ということは、日本が東北アジアにおいて千海里のシーレーンの防衛を担当する任務と役割りを合意した。鈴木総理首脳会議の後演説をしたそのことがいまもそのまま入っておる。先ほど言った、ワインバーガーが公約だというふうに言うたということ、これは新聞での講演でアクセントがあるからというふうに外務大臣は言われましたけれども、決してそうじゃなくて、アメリカの国会で冷静にこういうふうに言っているわけです。そういう点で言えば、一千海里防衛というのを日本の役割りと任務の分担の中心問題にしている、こう言わざるを得ないのでありますが、いかがですか。
  258. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 ウェストの証言でも、日本政府はこういうふうに述べたというふうに言っております。  そこで、いまのシーレーンについてどういうふうに考えるかということでございますが、これは累次の各委員会での御質問、それに対して総理あるいは防衛庁長官その他の御答弁の中に出ておりますけれども、日本側考えていること、それからアメリカ側もいろいろな証言の中で日本の憲法を踏まえて、また基本的防衛政策の中でやってくれということを言っているということから、アメリカ側としてもその点については日本と理解を同じくしているというふうに解されるわけでございますけれども、あくまでも日本防衛のために周辺数百海里あるいは航路帯を設ける場合には千海里、それを防衛できる能力をつけていくということでございまして、一定の海域を日米で分担するということはないわけでございます。この点は、昨年三月伊東外務大臣ワインバーガー長官会談された際に、もしアメリカ側に誤解があってはいけないからということで発言されて、日本が一定の海域を分担するということは憲法上もできない、あるいは「防衛計画の大綱」を超えるということで政策上も問題であるということを申し述べている点からも、アメリカ側にはそこの場所で非常にはっきりと言明しているわけであります。
  259. 東中光雄

    ○東中委員 ウェスト次官補が、私先ほど申し上げましたように、役割りと任務を分担するということで日米防衛協力を進める政策をレーガンが採用したということを言って、日本はまだこれを果たしていない、こう言っているのですね。先ほど言われたような五条や六条の一般的な、公式的な話だったら、日本はまだこれを果たしていないということにはどうしてもならないわけなんですよ。日本がまだ果たしていないと言うている問題というのは、これはまさにシーレーン防衛なんですよ。そのことを指摘している。その文脈からいってそうなるわけです。そして、昨年の五月の首脳会議の合意によって安保条約は改定する必要はない、百人委員会なんかできていますけれども、活性化したんだ、こういうふうに言っているわけですね。安保条約は現在のままで、しかし去年の五月の会談によって活性化した、だからこれは実質改悪がされた。憲法上許されないといま淺尾さんが言うている周辺海域あるいは千海里防衛ということをやることによって安保条約は活性化したんだ、こういうふうに言っているわけでしょう。筋道はそうなっているわけですから、実際に向こう側が公式に言っていることですから、これはやはり認めるべきじゃないか、そういうことは、取り消すなら取り消すということをはっきりすべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  260. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 そこをよく読んでいただいて東中委員はそういうふうに了解されておりますけれども、ここで言っているのは、日本が憲法の範囲内で周辺数百海里あるいは一千海里ということを目標にして防衛能力を高めていく、しかし、いまの日本防衛能力ではそれを果たすだけの能力がない、果たしてないということは、現在の自衛力から見てそれはできない、こういうことではないかと思います。
  261. 東中光雄

    ○東中委員 だから、憲法の範囲内でということも言っていますけれども、そういう憲法の範囲内でという形容詞をつけることで、実質的には憲法の枠を越してどんどん進んで活性化の方向へ行っているというのが、大前提になったこのウェストの公聴会証言だと思うわけであります。時間がありませんので、その点だけを指摘しておきたい。  もう一つ聞きたいのですが、極東有事研究について日米安保協で第一回の協議会が一月二十一日に開かれました。それから二カ月余りたっておりますが、その後何回、どのようなことについて協議が進められておるか、研究が進められておるか、お聞きしたいと思います。
  262. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いわゆる六条自体の研究については、いま言われましたように一月二十一日に会合をいたしまして、それ以後会合は開かれておりません。
  263. 東中光雄

    ○東中委員 一切の協議はしていないということですか。
  264. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 その協議委員会の代表でございますのが審議官レベルということでございまして、審議官の日程その他もございましてそういう会合は開かれていないということでございます。
  265. 東中光雄

    ○東中委員 会合は開かれていないというふうにいま御答弁があったわけですが、会合じゃなくて、協議はされているわけですか。
  266. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 正確に申し上げれば、審議官レベルの会合あるいは協議というものは開かれてないわけでございますけれども、事柄の性格上日米関係の担当者同士が電話連絡その他でお互いの立場を述べ合っている、それはやっているようでございます。ただ、第一回の開かれたような会合というものは全然開かれてないわけです。
  267. 東中光雄

    ○東中委員 会合というのは、非常にむずかしいわけですけれども、電話でも、要するに協議ですね、いわゆる研究、協議なんですよ。だから、会合を開くというのは、ガイドラインの三項に書いてあるわけじゃなしに、研究、協議ですから、電話とか担当官でやっておるというお話がいまあったのですが、担当官というのは、たとえば制服も含めての担当官なんでしょうか、どういうふうになっておるのでしょう。外務省と向こうの国務省あるいは大使館との関係でやっているのか、あるいは制服は制服同士でやっているとか、どういうふうになっているのか。この第一回協議の構成メンバーは審議官レベルとおっしゃいましたが、同時に防衛庁からも、これは制服も加わっておるようでありますから、担当官というのはどの範囲で、電話にしろ、カウンターパートでやっているのだったらどういうふうに協議が進んでいるのかということをお伺いしたい。
  268. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 この正式のメンバーというのは、御承知のとおり外務省及び防衛庁の審議官でございます。その下にもちろんそれを補佐する担当官というのがいるわけでございまして、その中には、私の記憶に間違いがなければ制服の人もいるということでございますけれども、具体的にどのレベルで何回ぐらい連絡しているかということは、私は承知しておりません。連絡というものは非常に非公式的なものでございますし、何回ということをここで申し上げるのもいかがかと思われますので、単に、正式の会合は開かれていないけれども、それ以下のレベルでの接触は行われている、こういうふうに申し上げるのが正しいかと思います。
  269. 東中光雄

    ○東中委員 防衛課長が見えているのですね。北米局長防衛庁の防衛課長と打ち合わせをしながら答弁されるというような、どうもはなはだ奇妙な状態が起こっておると思うのです。防衛庁は、いわゆる極東有事研究についてアメリカ側と、いま非公式と言われましたが、非公開だけれども公式の接触はやっておられるのですかおられないのですか。
  270. 澤田和彦

    ○澤田説明員 お答えいたします。  防衛庁からの正式の担当者というのは、ただいま北米局長からお答えしました防衛議官でございますが、この審議官クラスが出ました公式の会合というのは、いま外務省から御答弁申しましたとおり、一月二十一日でございましたか、一回だけでございます。ただ、その補佐官としての者が電話等その他の方法で接触、連絡をしているようなことはございます。
  271. 東中光雄

    ○東中委員 極東有事で出撃する米軍への自衛隊の協力、たとえば自衛隊が輸送や偵察、補給等を担当するということ、そして極東有事の戦闘行動をやっておる米軍に協力するということはできない、これはいままで外務省防衛庁も回答をされておるわけでありますけれども、自衛隊法上できないというのじゃなくて、憲法上できないということですね。その点はいかがでしょうか。
  272. 澤田和彦

    ○澤田説明員 私ども、防衛庁、自衛隊が憲法上できないとはっきり申し上げますのは、いわゆる集団的自衛権の行使ということであると承知しております。そして、これはいわゆる武力といいますか実力行使を伴う行動である。したがいまして、それ以外の実力の行使を伴わない、いま先生がおっしゃいました補給とかそういう種類のものは憲法上禁止されている集団的自衛権の行使とは違うと解釈しております。
  273. 東中光雄

    ○東中委員 大変なことを言われましたが、防衛課長ですからね。しかし、説明員として出て言われておるのではっきりさせておきたいのですが、昭和三十四年三月十九日の参議院予算委員会で、当時の岸総理大臣は、憲法の解釈から言えば、まず自衛権を裏づける自衛隊というものの出動は、これはあくまでも自衛の限度に限られるわけでありますから、いまただ補給ということであっても、日本に関係のない出動、要するに極東有事に対する出動に対して、何か協力するということは私は起こり得ないし、またそういうことは憲法上許されておらない、こう思います、とはっきりそういう答弁をされております。補給活動というのは戦闘行動でないから、だから、極東有事で米軍が戦闘しておる、それに自衛隊が補給業務として行動するというようなことは憲法上許されないんだということが岸さんの答弁であるわけです。それを変えるつもりですか、いまあなたが言っているのは。とてもじゃないが、あなたが変えるわけにはいかぬだろうけれども。
  274. 澤田和彦

    ○澤田説明員 ただいま申し上げましたように、憲法上自衛隊が禁止されている行動といいますのは、集団的自衛権の行使、それから海外派兵というようなことであると承知しております。そして、いまここで先生が問題にされておりますいわゆる極東有事、日本の安全に関連します極東有事におきます米軍に対します便宜供与ということは、いま申し上げました憲法で禁止されている実力の行使を伴う集団的自衛権の行使でもなく、また武力行使を前提として自衛隊の部隊が海外に出動する問題でもない、このように考えております。
  275. 東中光雄

    ○東中委員 もう時間がありませんので改めてやりますけれども、いまあなたの言っていることは、先ほど言った岸さんが答弁をしていることを変えるんだという意識で言っているのか、別に変えるつもりでなくて全く公式的なことだけを言っているということなのか、そこのところだけ確かめて私の質問を終わりたいと思います、後重大な問題が残りますので。
  276. 澤田和彦

    ○澤田説明員 いま私が御説明申し上げましたことは、昔、岸総理大臣が憲法の解釈として申し上げたことのはっきりした憲法の禁止という解釈を変えるという意味で申し上げたのではございません。ただ、その後、私の記憶によれば、法制局長官がこの岸元総理大臣の憲法の解釈を敷衍した御答弁をなさっていると承知しておりますが、その範囲内で申し上げているつもりでございます。
  277. 東中光雄

    ○東中委員 外務大臣、いまの論議を聞いておられまして、これは憲法にかかわってくる問題でもありますので、御所見を承っておきたいと思います。
  278. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 御引用になった岸さんの御答弁は速記録によることで、それはそのとおりで、それに伴って法制局長官がその補足の説明をしておる、その補足の説明によってのいま課長の御答弁だ、このように受けとめております。
  279. 東中光雄

    ○東中委員 終わります。
  280. 中山正暉

  281. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 いろいろと御議論を伺ってまいりました。櫻内外務大臣訪米をされて後帰国されて初めての外務委員会でございまして、アメリカを訪問中に外務大臣がどんなことを話をされ、日本を代表する外務大臣として何を特に主張されたのか、私がきょう御議論を伺った中ではどうもよくわからない。いろいろな御苦労があったことは百も承知でございますけれども、外務大臣として、いま起きている当面の重要な課題を含め何を特に強調されてきたのか、そしてどういう日米間の理解を深めてお帰りになられたのか、端的にお答えをいただきたいと思います。
  282. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 午前中御答弁申し上げておりますが、私が強調したところは三点でございまして、第一は、日米両国が自由と民主主義という価値観を共有する同盟国であって、緊密な日米関係の維持発展を図ることがわが国外交の基軸としてきわめて重要である、これが一つです。第二に、緊密な日米協力関係は単に両国にとって利益となるのみならず西側全体が一致協力して現下の厳しい国際情勢に対処する上での前提である、これが第二でございます。第三に、わが国としては西側諸国の一員として二国間はもとより国際関係の広範な分野においてわが国の国力と国情にふさわしい国際的責任を果たすべく努力を継続する、こういう三つの基本認識の上に立って話をしてまいりました。
  283. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 外務大臣訪米をされて、抱えている当面の重要な課題は明確になっているわけでありますが、そうした合意をされてお帰りになられた。にもかかわらず、きょうの夕刊を見ますと、依然としてアメリカの上院では日本車の締め出し法案が続けて提出をされておりますし、あるいはアメリカの商務長官が具体的な問題で日本への市場開放を要求されております。  日本側としての具体的なスケジュールを決めていかなければならないと思いますが、まず一点は、いろいろな御議論もございましたけれども、この日米間の通商摩擦を、いますでにアメリカでも具体的な日本車の締め出しということまでどんどん議会で提出をされている状況の中で、どう解決をしていくのか、もう一点は、同じこの委員会で、たしか外務大臣訪米の直前の委員会でございましたけれども、アメリカの台湾への武器輸出の問題について、そうしたことを含めて米中関係についてお話をされるという御発言をされておりますが、アメリカ側とどういうお話し合いがあったのか、二点についてまず伺いたいと思います。
  284. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 日本車についての本年度の方針は通産大臣が明らかにしたところでございまして、本年は昨年同様に自主規制をする、そういう指導をするということを言われておるわけでありますから、上院でどのような御協議が行われておるか、この通産大臣のそういう方針前にとられておることではないかと思います。  それから台湾の関係の問題につきましては、これはヘイグ長官とのお話し合いのときに出ておりますが、米側には台湾関係法というのがあって、大統領といえどもこの法案に縛られるので、大変苦労をしておるというお話でございました。私の方は、中国は、日本としては特別な関係があって、また、中国は常に一つの中国ということを言っておられますから、どうぞ、アメリカはこの問題については中国との間でよくお話し合いを願って、そして円満な解決を期待いたします、米中の関係はアジアの安定の上からも大事なことですから、粘り強くお話し合いをしてください、そういう趣旨のことを申し上げました。  それ以外には、特段のことはございません。
  285. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 限られた時間でございますので、次の点について伺います。  日本からソ連に民需用の名目で輸出をされた八万トンの浮きドックが、ウラジオストクでソ連太平洋艦隊の空母ミンスクの補修に使われていることが指摘をされております。御存じだと思いますが、、これは日本の武器輸出三原則上できるのかどうなのかを伺いたいと思います。
  286. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 御指摘の浮きドックは、昭和五十二年に石川島播磨造船所がソ連の全ソ連船舶輸入公団から受注し、輸銀の融資を受けて、五十三年にソ連側に引き渡されたものでございます。  武器三原則の観点からの御質問でございますが、本件につきましては、当時、外務省は関係省庁から協議を受けていないという事情がございますが、この許可を出した当局の判断では、民需用の物資である、したがってこれを武器と認めない、恐らくさような判断で輸出されたものと考えております。
  287. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 汎用品の議論は国会でもしばしばあったところでございます。二十七日行われた日米防衛首脳協議の席上で、ワインバーガー・アメリカ国防長官は、日本政府は、対ソ貿易を通じて直接にソ連の軍事力増強をもたらさないように、安全保障との整合性を十分留意すべきだとの異例の申し入れをしているわけであります。  大臣に伺いたいわけでありますが、すでに関係筋では、明らかに軍事用の目的と予測をしていたというお話も伺っております。そうしたものを、そうした目的がすでに予測をされている中で輸出をすることが妥当であるのかどうなのか。大臣の御見解を伺いたいと思います。
  288. 加藤吉弥

    ○加藤(吉)政府委員 ワインバーガー国防長官の防衛庁における発言の詳細は承知いたしませんが、これは日本の輸出に直接文句をつけるということではなくて、こういう技術、資本その他の輸出が、ソ連において軍事目的に転用されている例であるということで、注意を喚起されたというふうに承知いたしております。  なお、先ほどの私の答弁を補足する意味でさらに敷衍して申しますと、当時、この浮きドックにつきましては、商業ベースの取引であり、品目上ココムの対象品目でもなく、また、輸出貿易管理令の禁輸または要承認品目とはなっていない、したがって、国内法上輸出を規制する対象ではない、かような判断に基づいて輸出を許可したということでございます。
  289. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 通産省に伺えば、恐らくいまのような答えになるだろうと私は思うのです。しかし、明らかにワインバーガー国防長官がはっきりこう指摘をしておるわけですね。ソ連に対する浮きドック輸出を認めながら、安保体制を結ぶアメリカに対する軍事技術の輸出は、武器輸出三原則などで厳しい制限を課しているのは理解ができない、こういうことをアメリカ自身が言ってきているわけですね。しかも先ほど申し上げたとおり、どうも時期的に見ても、すでに発注をしたときに、恐らくこのミンスクに使われるのであろう、こういうことがもう関係筋では言われていたわけです。こういう目的がかなり明らかにされている、しかもそういう非常な心配が予測をされているものを、今後もこういう形で輸出することが適当であるかどうか。これはもういまお答えいただきましたから、大臣からお答えをいただきたいと思います。考慮する必要があるのではないかと思うのです。
  290. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 軍事目的が明白であって輸出をする、そういうことはあり得ないことでありまして、武器三原則及び政府方針にのっとってそれは配慮されるべきものと思います。
  291. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 大臣お答えのとおりなんです。軍事目的で輸出をすることはできないわけでありますが、民需用の目的で輸出をされたものが明らかに軍需用に使われていたのではないか、そういうことをやってもらっては困る、安保体制状況からいっても整合性がないじゃないかとアメリカ側から言われる。たとえば、日本の石川島播磨重工はこれをつくってソ連に売っているわけでしょう。そしてそれが軍事目的に使われて、今度は同じ日本の石川島播磨重工がその防衛のためのものをつくるわけですよ。アメリカとしては、これは大変矛盾しているじゃないかと言うのはあたりまえだと私は思うのです。きちっとこういう指摘をされておるし、しかも、日本側の関係筋でもそのことが予測をされていた。明らかにそういう目的に使われるであろうというものを、民需用というのは名ばかりで、軍事目的で輸出をするということはあってはならないと私は思うのです。こういうことについては、今後十分検討する問題ではないかと私は思うのです。大臣にもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  292. 櫻内義雄

    櫻内国務大臣 このようなケースが再び起こらないように、この件について十分検討する、これはそのとおりであります。
  293. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が参りましたので終わります。
  294. 中山正暉

    中山委員長 次回は、来る四月二日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十八分散会