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1982-03-24 第96回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月二十四日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 愛知 和男君 理事 稲垣 実男君    理事 奥田 敬和君 理事 川田 正則君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       麻生 太郎君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    佐藤 一郎君       竹内 黎一君    浜田卓二郎君       山下 元利君    井上  泉君       井上 普方君    河上 民雄君       林  保夫君    野間 友一君       東中 光雄君    伊藤 公介君  出席政府委員         外務政務次官  辻  英雄君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済協力         局長      柳  健一君  委員外出席者         科学技術庁計画         局国際科学技術         博覧会企画管理         官       平野 拓也君         外務大臣官房外         務参事官    藤田 公郎君         外務大臣官房外         務参事官    遠藤  実君         外務大臣官房外         務参事官    佐藤 嘉恭君         食糧庁業務部輸         入課長     大神 延夫君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     田村  元君   北村 義和君     倉成  正君   竹内 黎一君     有馬 元治君 同日  辞任         補欠選任   有馬 元治君     竹内 黎一君   倉成  正君     北村 義和君   田村  元君     麻生 太郎君 同月二十四日  辞任         補欠選任   伊藤 公介君     石原健太郎君 同日  辞任         補欠選任   石原健太郎君     伊藤 公介君     ――――――――――――― 三月二十三日  婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関す  る条約早期批准に関する請願外二十五件(谷川  和穗紹介)(第一四六三号)  同外一件(五十嵐広三紹介)(第一五四五  号)  同外二件(池端清一紹介)(第一五四六号)  同(上原康助紹介)(第一五四七号)  同外三件(小川省吾紹介)(第一五四八号)  同(岡田利春紹介)(第一五四九号)  同(加藤万吉紹介)(第一五五〇号)  同外二件(小林恒人紹介)(第一五五一号)  同外六件(島田琢郎紹介)(第一五五二号)  同(塚田庄平紹介)(第一五五三号)  同外四件(長谷川正三紹介)(第一五五四号)  同(安井吉典紹介)(第一五五五号)  同外九件(山口鶴男紹介)(第一五五六号)  非核三原則の堅持等に関する請願武部文君紹  介)(第一五四三号)  同(永井孝信紹介)(第一五四四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国ドイツ民主共和国との間の通商及び航  海に関する条約締結について承認を求めるの  件(条約第三号)  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する一の  文書である千九百七十一年の小麦貿易規約の有  効期間の第六次延長及び同協定を構成する他の  文書である千九百八十年の食糧援助規約有効  期間の第一次延長に関する千九百八十一年の議  定書締結について承認を求めるの件(条約第  四号)  国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨  時措置法案内閣提出第三八号)      ――――◇―――――
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  日本国ドイツ民主共和国との間の通商及び航海に関する条約締結について承認を求めるの件及び千九百七十一年の国際小麦協定を構成する一の文書である千九百七十一年の小麦貿易規約有効期間の第六次延長及び同協定を構成する他の文書である千九百八十年の食糧援助規約有効期間の第一次延長に関する千九百八十一年の議定書締結について承認を求めるの件並びに国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉城栄一君。
  3. 玉城栄一

    玉城委員 最初委員長に御要望申し上げておきたいわけでございますが、きょうは大臣御欠席の異例の中での法案並びに条約質疑でございますので、これらの法案並びに条約に対する大臣への質疑については、後日また機会を持っていただくということで、質疑を始めさしていただきたいと思います。
  4. 中山正暉

    中山委員長 了解いたしました。
  5. 玉城栄一

    玉城委員 それでは最初に、国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法案についてお伺いをいたしておきたいと思います。  この政府代表人選任務についてお聞きしたいわけでございますが、もうすでにこの政府代表人選については内定をいたしておるやに伺っておりますが、この人選はどういう基準で決定をなされるのか、政府代表任務とは具体的にどういうものであるのか、まず最初にその点をお伺いしておきたいと思います。
  6. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  この科学技術博覧会に対する政府代表につきましては、目下政府部内において鋭意選任方検討しているところでございます。私どもといたしましては、この選任に当たりましては、次のようなことを考慮に入れながら選任をすることが必要ではないかというふうに考えております。すなわち、この科学技術博覧会特別博ということになってございますが、こういった条約関係あるいはそれに関連して出てきますいろいろな法律問題に通じておられる方、また、国際会議等の場面もございますので、この分野における外交的経験の深い人物であるということが必要かと思っております。また、当然のことながら、国内準備の過程におきまして、科学技術博覧会準備当局あるいは科学技術庁を初めといたします関係省庁等の御協力を得ながら対応をする必要がございますので、そういう方面との連絡調整を十分やり得る能力を有しておること、そういったことが必要であろうかと思っております。なお、この博覧会事務局との関係におきましてフランス語が使われることが非常に多いわけでございますので、そういう語学の面につきましても十分な配慮をしていかねばならないか、かように存じておるわけでございます。  また、政府代表任務でございますが、非常に多岐にわたっているわけでございます。条約に基づきまして、この特別博覧会に関するすべての事項につきまして招請国政府を代表するという任務を負っておるわけでございます。対外的な関係調整あるいは国内におきますところの諸般手続、そういうものを十分監督し得ると申しますか連絡調整を図り得る、そういうことを任務としておるわけでございます。
  7. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、同じく外務省の方にお伺いしておきたいのですが、この博覧会昭和六十年の三月十七日から六カ月間にわたって開催されるわけでありますが、すでに国内法も成立しており、また国際博覧会条約規定等により、本年から開会に向けて本格的な準備に入るやに承っておるわけです。現在までの準備状況について、外務省の方から概略伺いしたいわけですが……。
  8. 平野拓也

    平野説明員 具体的な博覧会準備につきましては、私ども中心となってやっておりますので、私どもの方から御説明申し上げます。  博覧会準備状況でございますが、昭和五十四年の十一月に閣議了解がございまして、博覧会を開くということで準備が始まったわけでございます。自来、関係省庁等の大変な御協力をいただきまして、準備はほぼ順調に進んでおるところでございます。博覧会準備大変多岐にわたりますので、一応国際関係、それから会場輸送の問題、出展の問題というふうな、順を追って御説明申し上げたいと思うわけでございます。  まず、国際関係でございますが、昨年の四月に博覧会条約に基づきます博覧会国際事務局通称BIEと申しておりますが、それの総会におきまして、この科学万博、私どもはこれを科学万博というふうに申しておりますので、これから科学万博と申し上げますが、科学万博につきましての登録が承認されまして、これで条約上の手続は完了したというふうに考えておるわけでございます。  それから、外国政府に対する出展招請でございます。これは外務省を通じまして関係各国招請状を出すわけでございますが、すでに昨年の秋に百六十一カ国の外国政府とそれから五十四国際機関等に対しまして招請状が発せられておるわけでございます。  次に、博覧会を行います会場の問題でございます。博覧会は御案内のとおり筑波の研究学園都市の中で行うわけでございますが、具体的な会場はその研究学園都市の中の谷田部町というところでございます。閣議了解に基づきまして、この会場用地につきましては茨城県がこれを取得されるということになっておりまして、茨城当局地元の地主さん等の大変な御協力を得まして、約百二ヘクタールでございますが、現在時点で九九%以上、あと一ヘクタール弱を残すのみでございまして、近々これは完全に買収が終わるという状況でございます。ここに会場建設するわけでございますが、その建設財団法人国際科学技術博覧会協会が行うということでございまして、その会場計画の骨子というようなものを先日まとめまして、これから具体的な設計に入るという段階に相なっておるわけでございます。  それから三番目の輸送問題でございますが、本博覧会は観客が約二千万人と予定しておるわけでございます。これの輸送は、学園都市自体がいま余り便利でないということもございまして、大きな問題でございます。幸いにして昨年の十一月に関係閣僚会議を開きまして、とりあえず緊急を要する輸送関係中心とした関連公共事業概略決定されたわけでございまして、現在県当局等におかれては道路用地の取得とかをやっておりますし、それから道路公団あるいは首都高速道路公団等におかれましては、それぞれの高速道路等についての建設を急ピッチにやっていただいておるというふうなことでございます。それから鉄道関係でございますが、鉄道上野方面からお越しになるお客様のためには臨時の駅をつくりまして、そこから会場まで運ぶというようなことでございまして、現在博覧会協会関係省庁協力を得まして、駅から会場までの輸送につきまして鋭意対策を練っておるという段階でございます。  それから出展の問題でございますが、この博覧会国際博覧会でございますので、外国出展それから日本国政府出展民間出展というふうな三つに分かれるわけでございます。外国出展につきましては先ほど申し上げましたように正式に参加招請を行っておりまして、今後それぞれの国に招請活動を行うというふうなことで、来年度からこれを精力的に行いたいというふうに考えておるわけでございます。それから政府出展につきましては、現在基本計画というものの取りまとめを行っておりまして、来年度これを具体的に設計を行うという段階から、一部政府館建設着工に入りたいというふうな段階でございます。それから民間出展につきましては、先日民間出展説明会を行いまして、来月から参加受け付けを行うということでございまして、これによりましてほぼ博覧会の骨格というものができ上がるというふうに考えておるわけでございます。  概略以上のとおりでございます。
  9. 玉城栄一

    玉城委員 私は、外務省の方から、概略準備状況をどのくらい外務省は把握していらっしゃるかという意味でお伺いしたかったわけですが、いま科学技術庁の方が先に。実は、科学技術庁も含めて、外務省博覧会開催について余り熱心でないという声があるわけですね。そういう意味でございますので、委員長、私は指定した省にお答えさせていただきたいと思うわけです。  そこで、同じく外務省にお伺いします。  いわゆる国際科学技術博覧会開催に要する総事業予算額外務省としてはどれぐらいかかると見ておられますか。
  10. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 先生のいまの御指摘でございますが、外務省科学技術博覧会について熱心ではないのではないかという御批判をいただきましたが、私どもといたしましては、今般の科学技術博覧会と申しますのは、科学技術の向上という趣旨のもとに、諸外国わが国科学技術の問題について考えている諸般の政策あるいは技術水準と申しますか、科学技術をめぐりますいろいろな問題につきまして内外の方々の評価をいただくという非常にかっこうの機会であろうかというふうに考えているわけでございます。したがいまして、かような観点からできるだけ多くの参加国が得られるように努力をしてまいりたいと思っておりますし、なかんずくわが国の今日の経済発展に至るまでの間、産業技術でありますとか科学技術の問題がわれわれのこの生活を支えてきたわけでございますので、そういう観点日本のとってきた歩みと申しますか、戦後のこの日本発展を諸外国方々科学技術という分野を通じてごらんいただく、そこに情報の交流も行われるでございましょうし、あるいは新たな科学技術への人材を集めていくということにもなろうかと思うわけでございます。したがいまして、先進諸国からの参加のみならず発展途上国からの参加も数多く得たいということで、目下のところ外交チャンネルを通じましてできるだけ多くの国の参加を得られるようにまず努力をしたい、かように考えております。決して軽々しく考えているということではございませんので、その点の御理解をお願いいたしたいと思います。  それから、予算についてのお尋ねでございましたが、関係各省庁におきましてどのくらいの規模の予算でおやりになるかということは、私ども必ずしも全貌を把握しておりませんので科学技術庁の方から御答弁があろうかと思いますけれども外務省といたしましては、この法案の御審議を得ながら、政府代表が諸外国との接触なりBIE委員会との接触などを図りながらこの科学技術博覧会成功のために努力をしていくわけでございます。したがいまして、この政府代表関連予算のお願いをしているのが実情でございます。
  11. 玉城栄一

    玉城委員 私がお伺いしていますのは、この博覧会に要する総事業予算額外務省はどれくらいと見ておられるかという御質疑を申し上げたわけですが、まだお答えないのです。  それで、これは開催地元県であります茨城県はこの博覧会成功のためにいま着々と準備していらっしゃるわけですが、地元県負担も相当大きいと思うのです。外務省は、この開催地元茨城県がどれぐらいの負担をこの博覧会開催によって負うかということを見ていらっしゃるか。外務省としていかがですか、その問題も含めてさっきの問題も。それだけ熱心ということはそういうものもちゃんと把握しておくのが私はもう常識だと思うのです。どうぞお答えいただきたいのです。
  12. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 国際科学技術博覧会全貌でございますが、先生もうすでに御承知かと思いますけれども予算的に申し上げますと会場建設費などいわゆる直接にかかわる経費として約八百五十五億円というふうに承っておるところでございます。  地方自治体の御負担がどのぐらいになるかという御質問でございましたけれども、私ちょっとその点承知しておりませんので、大変恐縮でございますが、科学技術庁の方から御答弁をさせていただきたいと思います。
  13. 玉城栄一

    玉城委員 そういうところが私は非常に大事じゃないかと思うのです。熱心熱心とさっき弁解しておられたわけですけれども、こういう大事な法案を提出しておられる以上はそういうことも当然知っておいていただきたい。きょう質疑がされるわけですから。  それで私お伺いしたいのは、昭和五十四年十一月二十七日の閣議了解があるわけです。これによりますと、政府関係各省既定経費の枠内で捻出しなさい、茨城県への国庫負担助成は行わないなど六項目の確認事項があるわけです。こういうことで、おっしゃるように国家的また国際的な事業成功させていくことができるかどうか、いま非常に疑問に思うわけです。ですから、これはこの閣議了解事項のような方針で今後もいかれるのか、あるいは今後はそれ相応助成についても考慮されるおつもりであるのかどうか、この点はもう政務次官になりますかね。
  14. 辻英雄

    辻政府委員 お話しのように大変重要な博覧会でございますが、閣議方針としましては、現在の財政事情等を考慮しまして御指摘のような閣議了解を決めておりますので、博覧会の実質が備わることを基本にしながら、方針閣議で決まったものを尊重しながらやっていかなければならぬと思っておるわけでございます。
  15. 玉城栄一

    玉城委員 方針はわかりますが、いま私が申し上げておりますのは、これだけの事業成功させるためにはやはり地元への負担についてもそれ相応の国としてめんどうを見る必要があるのではないかと思うわけです。ですから、そのままそうおっしゃらずに、大臣とも御相談されて、検討されるなら検討されるという方向でやっていただきたい。そこで成功さすのが目的ですからね。その点いかがでしょうか。
  16. 辻英雄

    辻政府委員 ただいまお話のありましたように、博覧会開催につきまして必要な経費につきましては私も見なければならぬというふうには考えておるわけでございますが、その見方が、閣議了解にありますように既定経費を活用しながらやるということでやってみれないわけではない。お話しのように、まだいまの段階地元にどの程度負担がかかりますか、どういう負担がかかりますかいろいろはっきりしておりませんけれども、そういうものも考慮しながら閣議了解方針に従って既定経費を活用することによって、御趣旨のような博覧会目的が達成できるように努力をしていきたい、現段階ではそのように考えておるわけでございます。
  17. 玉城栄一

    玉城委員 ほかの条約もございますので最後にお伺いしておきたいわけですが、二千万人をこの博覧会に予定していらっしゃるわけですが、その二千万人中、外国方々も含まれるわけですね。二千万人の方々が本当にいらっしゃるのか、その中には外国方々はどれぐらいいらっしゃるのか。先ほど科技庁の方から宿泊施設輸送問題、いろいろありました。これはもう時間がございませんので、また別の機会にお伺いしておきたいわけですが、その二千万人ということについて外務省の方にちょっとお伺いしておきたいわけです。その中に外国関係からはどれくらいの方々がいらっしゃると見ていらっしゃるのか、その辺いかがですか。
  18. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 現在の見通しといたしましては、約一割ないし一割五分ということを想定して考えておるわけでございます。
  19. 玉城栄一

    玉城委員 それでは最後科技庁の方から、二千万人という数字、これはどういうふうにして算出されたのですか。
  20. 平野拓也

    平野説明員 お答え申し上げます。  二千万という数字算出根拠でございますが、これは博覧会の構想が始まって以来いろいろな手法で予測を行ったわけでございます。ただこれは過去の博覧会の例からも明らかなように、開催期日間際まで変動する数字であるということで、手法なりその博覧会知名度なりあるいはそのときの経済情勢その他いろんな条件が絡むわけでございますので、これを正確に予測するのは非常に困難な仕事でございますけれども、これまでいろいろな機関にお願いしまして調査いたしましたところ、二千万程度あるいはそれをもう少し超えるといったような数値が出ておるわけでございます。ただこれは開催までまだ三年間ございますので、今後博覧会協会等でPRその他に努めまして知名度を上げた場合に、一体どのくらいのお客様がおいでになるかというようなことをだんだんと精度の高いものにしていきたいというふうに考えておるわけでございます。現在いろいろな、入場者数というのは会場計画輸送計画その他の基本になる数字でございますので、過去のそういう調査とそれから会場の広さなり輸送力なりというようなことから、一応の計画値として二千万ということを採用いたしておるということでございます。
  21. 玉城栄一

    玉城委員 最後に御要望して次に移りたいと思うのですが、外務省の方もおっしゃるとおり、積極的に関係省庁と合議をされながら、これが成功するようにがんばっていただきたい、このように御要望申し上げておきます。  次に、小麦貿易規約及び食糧援助規約延長に関する議定書についてお伺いをいたしたいと思います。  小麦ばかりでなくコーヒー、砂糖等々の商品協定基本的な役割りは、一つには価格の安定、二つには貿易の安定、三つ農民所得の安定にあると思うわけでございます。しかしながらこの七一年協定は、価格の安定のメカニズムであるいわゆる経済条項を欠いており、この協定は単に情報交換等市況に関する協議を主体としたもので、本来基本的役割りを持つ商品協定とは言えないと思うわけです。いままで国会の質疑において、これまでも経済条項を有する新協定締結見通しを伺ってまいりましたけれども輸出国輸入国との間で見解の差があるという決まった答弁しかされておりません。  そこで、もう少し掘り下げて質疑しておきたいわけですが、現在パロット国際小麦理事会事務局長が提示した新協定代替案ベースとして討議が進められてきたと聞いております。このパロット案なるものの内容はどういうものなのか。また、この案は開発途上国の利益をとりわけ重視していると聞いておりますが、どういった内容になっているのか、お伺いをいたします。
  22. 遠藤実

    遠藤説明員 御説明いたします。  国際小麦協定貿易規約に関します新協定代替案、いわゆるパロット案と申しますが、これは御案内のように、七八年、七九年の交渉会議、ここで新しい小麦協定貿易規約を作成しようとしていたわけでございますが、これが七九年の二月に中断されまして、その後に、七九年の十月でございますか、国際小麦理事会パロット事務局長が提案したものでございます。この代替案は、交渉会議におきます新協定案内容ベースとしながらも、かつ各国の立場を踏まえ、メカニズムの随所に現実的あるいは弾力的なアプローチを取り入れたものでございます。  もう少し具体的に申しますと、新協定案と比較いたしまして四つほど特徴を挙げることができるかと存じます。  第一は、備蓄在庫総量及び最低備蓄量を定めるということでございまして、これは、新協定案等にございます備蓄総量について、七八年、七九年の交渉会議で議論されました三千万トンの目標数量を必ずしも明示しないで、各国交渉決定する備蓄分担量の合計とするという考え方を示唆したものというふうに考えております。  第二点は、市況を検討いたしますための協議開始についてでございますが、あらかじめ協定の中で決定されました価格水準によることなく、むしろ最近の市況動向を考慮して算出される価格、いわゆる移動平均指標価格と申しますが、これによることとするものでございまして、この点は協議開始のタイミングについて弾力性を導入しようとしたものでございます。  第三点といたしましては、備蓄在庫の放出及び積み増しについてでございますが、これは、一定の価格水準ベースとして自動的メカニズムによるということではなくて、拡大執行委員会決定を踏まえて、特別理事会、場合によりましては閣僚理事会の合意により決定するということでございます。  それから第四点が、先生指摘になりました途上国に対する特別措置でございますが、この点につきましては、備蓄施設に対する二国間あるいは国際機関からの財政的、技術的援助の問題、備蓄施設が整備されるまでの間の先進国による備蓄の肩がわり保有ないし備蓄義務の一時免除の問題、援助評価委員会による物質的、財政的援助計画の作成の問題、それから、小麦の輸出課徴金による備蓄運用資金の設立等の規定を設けるというものでございまして、この特別措置については、七八年、九年の交渉会議で討議されました特別措置よりも開発途上国寄りの提案となっております。
  23. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、おっしゃられたパロット案は、原則的には受諾可能国と受諾不可能国と二分されたというように聞いているわけです。やはり世界の小麦貿易量の半分近くを占めるアメリカの出方に大きなかぎがあるのではないかと思うわけですが、例の海洋法会議の例を引くまでもなく、レーガン政権の登場により、強いアメリカを目指して外交政策は大幅に再検討されておりますが、レーガン政権下でのこの案に対する態度はどうなのか。消極的な立場をとっていると言われておりますが、そうであればその理由について外務省はどのように見ているのか、お伺いいたします。
  24. 遠藤実

    遠藤説明員 先生指摘のとおり、このパロット提案につきましては、大半の輸入国につきましては、これが現実的かつ実際的なアプローチであるということで評価をしておりますが、他方一部の開発途上国が、三千万トンの備蓄目標がこれでは達成されないということで、三千万トンの目標達成が必要であるということを主張いたしましたのと、もう一つは、米国のみならずカナダ等も含めました輸出国側が、幾つかの理由を挙げて、これに対して消極的な態度をとってきております。  その理由は、一つは、食糧の安全保障は、自由貿易体制、在庫の公平な分担、供給逼迫時における供給保障等によって達成されるべきであるということ、それから、備蓄の在庫につきましては、各国が自国の必要性の範囲内で適正な在庫を保有すべきであって、これが世界の食糧安全保障の強化につながるものである、こういう主張をしておりますが、さらに、代替案メカニズムの実効性、これについても疑問視をしているということでございます。
  25. 玉城栄一

    玉城委員 EC側は、この代替案については最上の妥協案であるとし、特にアメリカ側の態度については批判的であるというふうに聞いておるわけですが、そのとおりなんですか。
  26. 遠藤実

    遠藤説明員 御指摘のとおりでございます。
  27. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、輸入国であるソ連、中国、インド、アフリカ諸国はどういう態度なのか。恐らくニュアンスの違いはあっても、この代替案を新規約作成のベースとすることに賛成ではないかと思いますが、いかがですか。
  28. 遠藤実

    遠藤説明員 ソ連はこの代替案を支持しております。中国は、この国際小麦理事会に入っておりませんので、態度ははっきりさせておりません。わかりません。
  29. 玉城栄一

    玉城委員 インドとかアフリカ諸国はどうなんですか。
  30. 遠藤実

    遠藤説明員 途上国の中でインド、それからケニア等がこれに反対しておりますけれども、それ以外は支持をしているというふうに理解しております。
  31. 玉城栄一

    玉城委員 反対はしていないのでしょう。――まあいいです。  そこで、インドがこの新規約交渉の早期妥結に関する決議案を提出したときに、わが国輸入国であるわけですが、米国、豪州の輸出国と一緒になってインドの決議案を、どちらかというとつぶす方に回ったと聞いているわけですが、この代替案に対するわが国の態度は一体どういう態度なのか、お伺いいたします。
  32. 遠藤実

    遠藤説明員 パロットの代替案につきましては、わが方としては、これは現実的なアプローチだと考えております。  それから、御指摘になりました、インドが提出いたしました新協定の早期締結決議案でございますけれども、インドは昨年六月の小麦理事会におきまして、備蓄などの経済条項を含む新しい小麦貿易規約を八三年六月までに締結すること、それからすべての援助供与国及び関係国際機関開発途上国に対して、備蓄を保有するための倉庫施設の増設、インフラストラクチュアの強化について財政的及び技術的援助を与えることなどの点を盛り込みました決議案を提出したわけでございます。この決議案に対しまして、わが国のみならず先進諸国、これはアメリカ、EC、それから輸入国であるソ連、ECは輸入国でもあり輸出国でもあるわけでございますが、こういった国、そのほか一部の開発途上国が、国際小麦理事会は純粋に小麦貿易にかかわる諸問題を着実な方法で討議する場である、したがって、この種の決議を行うには適しないということと、それから、決議案は開発途上国への特別措置を強調しておりまして、この種の決議によって開発途上国への特別措置のみを先取りして新協定の今後の交渉方針決定することは好ましくない、その他の理由によりまして反対をしたわけでございます。
  33. 玉城栄一

    玉城委員 世界の穀物生産は十五億トンに達していると言われ、そのうち三〇%が小麦で占められております。したがって、食糧問題の中で小麦の占める重要性はきわめて高いと思うわけです。しかし、七一年協定は、七二年、七四年の大規模な凶作の際全くと言ってよいほど無力であったと言われております。小麦価格が高騰しているとき、または豊作で小麦が世界市場にだぶついているときにしか新しい協定はできないと思うわけですね。幸いにして、ここ二年続きの豊作であり、特に米国の方は豊作貧乏と言われるぐらいなんですが、このような時期にこそ新国際小麦協定の早期締結への積極的な働きかけが必要ではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。
  34. 遠藤実

    遠藤説明員 確かにこの種の協定は、そのときの情勢によりまして、つくるための契機が熟しているときとそうでないときとがございますけれども、これを長期的に考えますと、むしろ現在のような豊作の時期にこそつくっておくことが必要だというのは、確かに輸入国側の立場からいたしますれば当然のことでございまして、そういった観点から、わが国は七一年以来引き続きそういった考え方を推進しているわけでございますが、新協定準備段階からは特に積極的に討議に参加いたしまして、新協定交渉会議に関しても積極的な参加を行ってきたわけでございます。いずれにいたしましても、わが国としては、長期にわたりまして妥当な価格による安定供給を確保することがぜひとも必要でございまして、これを、開発途上国の食糧問題の解決を目的といたします国際食糧援助計画に応分の貢献を行うことともに、基本方針として対処してきているわけでございます。その結果、食糧援助規約については合意が成立したわけでございますが、小麦貿易規約につきましては成立しておりません。そこで、現在の現実的な判断といたしましては、新協定が作成されるまでの当面の措置といたしましては、現行協定協議メカニズムを強化する、それと並行して、新協定案の作成についても検討を重ねていくということになっておりまして、特に、単に当面の協議メカニズムの強化だけでは足りないということは、わが国小麦理事会の場におきまして強く主張して、並行しての新協定案作成についての検討ということにつきまして輸出国側の同意も得ることになったわけでございます。
  35. 玉城栄一

    玉城委員 最後の方に政務次官に、これはグローバルな問題になります、二問、時間がございませんのであわせてお伺いしておきます。  食糧安全保障問題についてお伺いしたいのですが、七三年、七四年の世界食糧危機、七三年のアメリカの大豆禁輸政策、さらにソ連のアフガン侵攻に伴う穀物制裁実施等々によって食糧安全保障への関心が高まり、数多くの論議が繰り返されております。この問題、日本だけの視点から論ずる場合と、世界的視野から総合的、特に開発途上国における食糧不足や飢餓の解消という立場から論ずる場合とがあると思うわけです。  まず、世界的視野に立った、人類の幸福のための食糧安全保障はいかにあるべきかを政務次官はどのようにお考えになっておられますか。特に国際的備蓄制度のあり方についてお伺いいたします。  もう一点、わが国の食糧の総合自給率は七三%、穀物自給率はわずか三三%と、主要先進国では最も低い水準にあるわけです。日本で消費される小麦、大豆、飼料穀物など毎年二千万トンから二千四百万トンに上ると思います。その八〇%がアメリカ一国から輸入されている。まさにわが国の食糧がアメリカの傘のもとにあると言ってもいいのではないかと思うのです。日米貿易日本の黒字がアメリカ側から云々されているわけですが、日本人にとってこれだけの食糧をアメリカ一国に頼っていいのかどうか、素朴な疑問が出てまいります。昨年農水省が、穀物輸入がストップしたらという検討資料を発表しておりますが、それによりますと、終戦直後に転落というショッキングな数字も出ております。この発表によりますと、ゴルフ場まで掘り起こして食糧を生産するということを考える必要があるというようなことまで言っておるわけですが、こういう国際紛争、あるいは世界的凶作がいつ起こるかわからないという状況のもとにおいて、あらゆる場合を想定し、日ごろからわが国の食糧確保のためどのように対応すべきであると外務省としては考えておられるのか。  以上、二点あわせてお伺いしておきます。
  36. 辻英雄

    辻政府委員 第一点につきましてまずお答え申し上げますが、わが国が穀物を中心に食糧の輸入国であるということを考えてまいります場合に、基本的には国内生産をどのように持っていくかということと関連しまして、国際的な輸入についてどういう政策をとっていったらいいかということが日本における問題点だと思います。しかし、さらに先生がお話がございましたように、国際的な広い角度における小麦の需給の安定ということと、開発途上国等における食糧の困難な事情に対してどのように対処をしていくかという問題があろうと思います。開発途上国の、特にアジア諸国の食糧というものが今後とも増産されていきますように、資本、技術の面で日本協力をしていくことも、アジア諸国のためでもあるし、同時に日本にとっても食糧安全保障のために肝要なことである、重要なことであるというように考えておるわけでございます。  一方、また日本といたしましては、穀物の輸入国である立場もありまして、国の中における適切な国内備蓄を保有することが必要でありますけれども、先ほど来お話がありますような小麦貿易規約の問題とも関連しまして、あるいはこれまたある面におきましては、開発途上国における食糧危機の回避ということも含めまして、国際的な小麦に関する備蓄制度というものを早急に成り立つような方向で努力をしていくことが日本にとって重要であるというふうに考えておりまして、先ほど来事務当局から御答弁申し上げましたように、今後とも積極的な小麦貿易規約の新たな協定ができますように努力をしていかなければならないというように考えております。  また後の問題の、日本小麦を含めました食糧の自給率をもう少し高くしていかなければならぬではないかという点につきましては、政府もかねてから努力をいたしておりまして、最近わずかではありますけれども小麦国内生産量もふえつつある、今後ともこういうものの、小麦のみならず穀物につきましてできる範囲の努力はしていくべきである、できるだけの努力をしていくべきであるというように考えております。  また、日本の穀物輸入が主としてアメリカに依存しておるという点につきましては、現実の穀物の小麦を含めた世界の生産事情というものが主たる要素になっておると思うわけでありまして、多角的な輸入をした方がいいのではないかというお考え方ごもっともでありますが、将来はそういう方向に進むにいたしましても、現実の日米貿易アンバランス等の問題も当面に控えておりますので、これらを含めまして将来の方向としてはおっしゃるようなことに持っていくべきだと思いますが、現時点において直ちにどれだけのことができるかということを含めて検討をしていかなければならない、そのように考えております。
  37. 玉城栄一

    玉城委員 この議定書についてのほかの質疑はまた次の機会にさせていただくことにして、次に、日本国ドイツ民主共和国との間の通商及び航海に関する条約についてお伺いをしておきます。  一九七九年二月、わが国ドイツ民主共和国政府より通商航海条約締結したい旨の申し入れを受けたとのことでありますが、ドイツ民主共和国わが国との経済関係の緊密化を図りたいとの熱意を示した理由について、外務省はどのように理解をしておられるのか、お伺いいたします。
  38. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 先生案内のとおり、東独と西独との間には一九七二年に両独間の基本条約というのができております。その結果といたしまして、東ドイツも一民族二国家という枠内で主権国家としての地位が認められたわけでございます。両独の間には常駐代表の交換を含む外交関係もできております。そういうことで、東ドイツとしては西側諸国を含む諸外国と独立のいろいろな条約を結びたい、特に経済面で主権国家として条約を結びたい、こういう意向があったわけでございます。他方、一九七〇年代の初めごろから日本のいろいろな企業の東独への進出という傾向が見られまして、特に大型のプロジェクトについて日本側からプラントを輸出する、こういう現象が生じたわけでございます。  こういう二つの理由が重なりまして、相互の経済関係を安定的な基礎の上に置くこと、そして基本的な枠組みをこれに付与する必要がある、こういうことから通商航海条約を結ぼうという話になりまして、ただいま先生指摘のとおり正確には七七年に先方から条約締結の申し入れがございまして、その後七九年、八一年と三回の交渉を進めた結果、昨年の五月末、この東独との通商航海条約に署名することになったわけでございます。     〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  39. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、東ドイツとの通商航海条約締結することによりまして、わが国はソ連を初め東欧六カ国とそれぞれこういう条約締結することになるわけですね。  それで伺っておきたいのは、ポーランド事件で東欧の社会主義というものが西側諸国で改めていま問われているわけですね。わが国が今回東ドイツとこの通商航海条約締結する意義とその目的はどこにあると理解すればよいのか、お伺いいたします。
  40. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 東独との通商航海条約ができますと、東欧七カ国、これはユーゴを含め、アルバニアを除く諸国とでございますけれども、ハンガリーの場合を除きましてすべて通商航海条約ないしそれに類似した通商条約を結ぶという結果になります。――失礼いたしました。ハンガリーとの場合にもございます。したがって、東独との条約を結ぶことによって、東欧七カ国とはすべて通商条約を結ぶ、こういう結果になります。  ポーランド事件というようなこういう厳しい国際情勢のもとでこの条約を結ぶことの理由、意義という御質問でございますが、御案内のとおりポーランドの現情勢は、ポーランドの軍政当局がソ連からの圧力を受けて、そのもとで生じたものであるというのが、私ども日本政府の認識でございます。ポーランドのこの状況の背後にワルシャワ同盟条約諸国の影響があるということについては、積極的な証拠を握っておりません。現にアメリカその他西欧諸国もソ連の責任は追及しておりますが、その他の東欧共産圏諸国の責任ということには言及しておりませんし、そのための措置というようなものもとっておりません。  この条約は、先ほども申し上げましたとおり日本と東独との経済関係基本的な枠組みをつくる協定でございますし、当然日本側の東独における経済活動もこの条約の結果として保障される、そういう効果があるわけでございます。加えて、東独側からはこの条約を一刻も早く発効させてほしいという要望が参ってきております。こういう状況を考えまして、現時点でこの条約の発効をおくらせるという、そういう積極的な理由はないと私どもは判断しております。     〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕 すでに署名を了した協定でございますので、国会の御承認を賜り、速やかに発効する方向に持っていければ、日本と東独、ひいては日本と東欧諸国との関係にも資するところが大きい、かように考えている次第でございます。
  41. 玉城栄一

    玉城委員 日本を除いて、西側諸国で東ドイツとこういう通商航海条約を結んでいる国は何カ国ぐらいありますか。
  42. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 いわゆる通商航海条約としては、七本結んでおります。ソ連、ブルガリア、チェコスロバキア、これは東側でございます。そのほかベルギー、ルクセンブルク、これは相手を一つとして結んでおるわけでございますが、ベルギー、ルクセンブルク、それから中国、北鮮、キプロス、こういう国と通商航海条約を結んでおります。  長期通商協定を結んでいるケースは、十七カ国との間でございます。国の名前を申し上げますと、ポーランド、ハンガリー、ブルガリア、アルバニア、ルーマニア、ユーゴスラビアそれからオーストリア、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、オランダ、オーストラリア、スペイン、マレーシア、シリア、リベリア、キューバ、以上でございます。
  43. 玉城栄一

    玉城委員 いまおっしゃることは、西側諸国が東ドイツと通商航海条約を結んでいる国々という意味ですか。それとも日本が結んでいるという意味ですか。私がお伺いしているのは、西側諸国が東ドイツとこういう通商航海条約を結んでいる、西側諸国は何カ国ぐらいあるのですかということです。
  44. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 質問の意味を取り違えまして、失礼いたしました。  西側諸国といたしましては、通商航海条約あるいは類似の通商協定を結んでいる国は、大体十一カ国でございます。具体的には、ベルギー、ルクセンブルク、オーストリア、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドを加えると十二カ国になるかもしれませんが、一応フィンランド、オランダ、豪州、スペイン、マレーシア、シリア。それから、あと産業技術協定という名前で、フランス、イタリアが入っております。ちょっと数えて、大体十二カ国というふうに思っております。
  45. 玉城栄一

    玉城委員 こういう東欧諸国は産業協力や西側銀行のバンクローンを強く期待していると思うのですが、産業協力には生産協力技術協力、販売協力といろいろな形態が組み合わされ、西欧と東欧を中心に活発化するようになってきていると思いますが、その実情について概略御説明いただきたいと思うのです。
  46. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 東西の経済関係につきましては、単なる貿易、つまり商品の取引にとどまらず、科学技術分野、経済開発の分野、さらには産業協力分野というふうに多岐にわたって発展しております。特に、東側が非常な関心を持って進めてまいりましたのは産業協力分野でございまして、一九六〇年代から七〇年代にかけまして西側諸国との間に非常に数多くの産業協力協定が結ばれたという事実がございます。しかしながら、七〇年代の後半に入りましてから、いろいろな理由でこの産業協力が足踏みをするようになってきております。  その理由の一つといたしましては、東側から、俗に申しますコンペンセーションとかあるいはカウンターパーチェス、つまり取引の代価を相手国の産品で支払うとか、あるいは取引をする条件として相手国の産品を買いつける約束を結ぶとか、そういう附帯条件を出してくる、こういう現象のためであろうかと思います。また、こういう東側の附帯条件の背後にある情勢といたしまして、東側諸国がおしなべて経済情勢が悪化し、特に外貨事情が悪くなって支払いその他に困難を来す、こういう状況があったと考えております。要するに、七〇年代まで非常に活発でありました東西貿易、特に産業協力というのは、このところ一とんざと申しますか、若干足踏みの状況に入っている、かように認識しております。
  47. 玉城栄一

    玉城委員 次に、最近公表されたIMFのワールド・エコノミック・アウトルックによると、コメコン諸国の実質生産は七〇年代後半に至りかなりの鈍化が目立ち、一部の国ではマイナス成長さえ記録されているようでありますが、悪化を示すソ連、東欧経済不振の要因はどこにあると外務省は見ておられるのか。
  48. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 やはり一番大きな理由は、東欧諸国がおしなべてソ連からエネルギー資源、特に石油を輸入しております。この石油のソ連から東欧に対する供給が量において削減され、また価格において高くなってきておる、こういうことが一つ大きな理由ではないかと考えております。  第二の理由といたしまして、西側の経済自体がやはり景気の鈍化ということのために東側の産品を十分買ってやれないという事情がございまして、せっかく東欧でつくった物を西側が余り大量に輸入できない、こういうような状況、これも第二の原因として挙げられるのではないかと考えております。
  49. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、この東欧諸国の中でも最先進国であり、経済力は最強であると言われている東ドイツが、一九七〇年代後半の五カ年計画の諸目標を達成することができず、特に七九年の経済は不振であったと言われておりますが、その原因についてはどのように考えていらっしゃいますか。
  50. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 五カ年計画は共産圏諸国が常にとっておる経済運営の方法でございますが、コメコン加盟六カ国おしなべて、五カ年計画の目標を達成していないという状況でございます。しかし、その中にあって東独は一番いい成績をおさめている。経済は鈍化しておりますけれども、まだまだ四%台の経済成長率を維持しておるという点では、かなり努力し、かつ成果もおさめているのではないかと考えております。  こういう五カ年計画未達成の原因ということでございますが、先ほど申し上げましたとおり、エネルギーの問題が一番大きな原因になっております。現在東欧では、エネルギー源の確保と同時に、その節約、それから有効利用ということを非常に大きな課題としているわけでございますが、そのための投資が必ずしも十分ではない。したがって、このエネルギーの節約ないし効率的な利用ということにまだ十分の成果をおさめていないということ、同時に、労働生産性が必ずしも望ましいほど高くなっていない、かような理由があろうかと考えております。
  51. 玉城栄一

    玉城委員 この東ドイツはエネルギー資源に乏しい国であるわけですが、ソ連からのエネルギー資源の供給量の大幅増加は今後も見込めないとの指摘もあるわけですが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  52. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 東独の石油輸入の大体九割方はソ連から供給されているものでございます。未確認情報でございますけれども、最近ソ連は、東ドイツを含めて東欧諸国に対する石油供給を減らしておるという話がございます。それに伴いまして、東ドイツとしては国産の褐炭、そういう代替エネルギーの開発に力を注いでいるようでございますが、現段階ではまだ十分な成果をおさめていないように見受けられます。
  53. 玉城栄一

    玉城委員 東ドイツは通常年間六百万トンの石炭を輸入しており、七九年には八百七十万トンと急増していると承っておりますが、その急増している理由。それから、東ドイツはポーランドからの輸入石炭に対する依存度も高いようでありますけれども、今回のようなポーランド事件による影響が東ドイツに大きく出ているのかどうか、その辺いかがですか。
  54. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 いま手元に詳しい数字は持っておりませんが、東ドイツの国産炭の増産という事実は確かにあろうかと思います。先ほど申し上げたとおり、これはソ連からの石油供給の減少というものを補うための措置であると考えております。同時に、ただいま先生指摘のとおり、東ドイツはポーランドからかなり多量の石炭を輸入しております。ポーランドの現状にかんがみまして、石炭だけは何とか増産をしているという説もございますけれども、少なくとも統計等で見ます限りにおいては一昨年から昨年にかけましてポーランドの石炭の増産も非常に減っておりますし、輸出量も減っております。その影響は東独にも当然及んでいると考えております。
  55. 玉城栄一

    玉城委員 東西経済関係見通しということから考えまして、ソ連、東欧諸国において製造される工業製品がコメコン域内の経済発展の需要に左右され、自国生産製品をすべて西側諸国への輸出に振り向けることができないという制約があり、ソ連、東欧諸国の輸出構造が不安定であることが東西経済関係見通しを暗くしているのではないかという指摘がありますが、それはそのとおり理解してよろしゅうございますか。
  56. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 私は大体さように認識しております。
  57. 玉城栄一

    玉城委員 そこで、八〇年代を通じ東ドイツが自国経済発展への糸口をつかむためには工業生産の合理化とエネルギーの省力化をどこまで実施し得るかにかかっているのではないかと思うわけです。わが国との経済緊密化を図るため通商航海条約を今回締結し、わが国の支援、協力を強く期待していると思うわけですが、外務省としてはどのように対応されるおつもりであるのか。
  58. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 やはり体制、理念を異にする東側諸国であるということを念頭に置き、今後の国際情勢というのを注意深く見ながらきめの細かい措置をとっていくことがわが国の対東欧関係で必要なことではないかと考えております。今後とも東独から具体的な案件についての要請、申し入れ等は多数あろうかと思いますが、これにつきましては、いま申し上げたとおり国際情勢というものに注意深い目を配ると同時に、一方的に東独だけを利するものではなく日本と相手側との相互利益に資するものを、そういう物差しを当てケース・バイ・ケースで慎重に検討し、かつ決断していきたいと考えております。
  59. 玉城栄一

    玉城委員 この条約について最後の質問ですが、ソ連と東ドイツとの関係、一般的でなくてわれわれの参考になるような、理解できるような御説明をいただきたいと思います。
  60. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 御案内のとおり、東ドイツはワルシャワ条約機構のメンバーでございますと同時にコメコン経済機構の一員でもございます。ソ連との関係はほかの東欧諸国に比べて最も緊密であり、協力的な国であると考えております。ただし、最近におきましては、東西両ドイツの首脳会談等にあらわれておるとおり西ドイツとの関係を深めようという方向に動いているように見受けられます。同時に、ソ連圏あるいは共産圏の一員でありながらドイツ独自の文化に対して再認識を始める、こういう傾向がございます。また、西ドイツと境を接し、情報とか人間とかの往来もほかの東欧諸国に比べて非常に頻繁であるために、西側特に西ドイツからの影響が随所に見受けられる、そういう点で東側においても特異な地位を占める国である、かように認識しております。
  61. 玉城栄一

    玉城委員 時間が参りましたので、次の機会にまた質問させていただきます。
  62. 中山正暉

    中山委員長 愛知和男君。
  63. 愛知和男

    ○愛知委員 玉城委員の御質疑との重複を避けまして、若干お伺いをしておきます。  最初に、日本と東ドイツの通商航海条約に関しまして、先ほども若干お話がございましたが、日本と東ドイツの通商航海条約は東欧諸国と日本と結びましたこの種の条約最後伺いましたが、最後になった理由というのは何かありますか。
  64. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 東ドイツが東ドイツという国として国際的に認められた時期が非常におくれたということが最大の原因ではないかと思います。先ほど申し上げましたとおり、東西両独間の基本条約、一九七二年にこれが結ばれて初めてドイツが一人前の主権国家として認められ、国連への西独、東独の同時加盟というような事態が生じたわけでございますが、正式な国としての発生がおくれたということが、この条約最後になった根本的な原因であろうかと思っております。
  65. 愛知和男

    ○愛知委員 今回この日本と東ドイツの通商航海条約を結ぶに当たりまして、当然のことながら西ドイツは非常に関心を持ったのではないかと思うのですが、西ドイツの反応はいかがでございましたか。
  66. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 東ドイツは主権国家であるとは申せ、先ほど申し上げたとおり一民族二国家という表現に見られますとおり、同じドイツ民族の国家であるという意識、それが特に西ドイツに強いわけでございます。したがって、こういう東ドイツと諸外国との外交関係あるいは経済関係に西ドイツが非常な注意と関心を持っていたことは当然である、かように推察いたします。しかしながら、この条約に対して西ドイツが非常に不快感を持ったあるいはこれを抑制するような措置に出た、このような事例には接しておりません。先ほど申し上げたとおり、東ドイツも一人前の主権国家として認められたということは、同時に東ドイツが諸外国といろいろな関係を結ぶことについて西ドイツは文句を言わない、こういう原則がそこで確認されたためであろうかと考えております。
  67. 愛知和男

    ○愛知委員 これまたいささか当然のことではございますが、この条約を東ドイツと結ぶことによって日本と西ドイツとの関係には別に影響がないと思いますが、いかがですか。
  68. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 ただいま申し上げたとおり、条約的には影響がないと考えております。しかしながら、西ドイツは西側陣営における日本の与国でございます。特に日本と西ドイツとの間には非常に緊密な協力と友好の関係がございます。したがって、私どもといたしましては、一方で東独とのこういう枠組みの設定あるいは経済関係の増進に努めると同時に、西ドイツとの友好協力関係は、今後ともそれに傷がつかないように大切に守っていきたい。これは具体的な政策の面で心を尽くしていくつもりでございます。
  69. 愛知和男

    ○愛知委員 先ほど東欧諸国の経済の状態のお話が若干ございましたが、東欧諸国あるいはソ連等も含めまして経済が非常に悪い、その理由についてお話がありましたが、エネルギーの状態だとかそのほかいろいろ理由があるんでしょうけれども基本的にはこういう諸国の経済制度、統制経済、そういうところに基本的な原因があるんではないかと私は思うのですが、いかがでしょう。
  70. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 確かに先生の御意見、まあこれは国際的にも多数説になっているのではないかと思います。統制経済あるいは官僚統制のもとでの経済運営、それに対して西側の市場経済というのは、利益の追求とそしてまた自由な経済活動と競争関係、そういうもので大いに伸びてきた。それに対して東側の経済の仕組み自体に何らかの欠陥があるために現在東西間の経済には大きな水があいた、こういうふうに見るのがいまや国際的にも多数説になっているようでございます。
  71. 愛知和男

    ○愛知委員 東欧諸国の中では東ドイツは比較的経済がいいと言われておりますが、東ドイツの経済運営の中で、経済制度そのものに若干新しいアイデアなどを盛り込んで経済運営をやっている結果が出てきているのでしょうか。
  72. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 具体的な事例を正確に把握しているわけではございませんが、東ドイツはエネルギーの効率的な利用ということに非常に力を注いでおると伺っております。それからまた、石炭の増産にもいろいろな近代的な手法を講じて取り組んでいる、こういう努力の結果が東側の中でも東ドイツがかなりいい成績をおさめている原因ではないかと考えております。
  73. 愛知和男

    ○愛知委員 先ほど経済体制の問題で、あのような統制経済とわが国のような自由主義経済を比較した場合に、体制としては自由主義経済の方がいいんだという結論が大分世界的にもできているというお話もございましたが、東ドイツと日本通商航海条約を結んで、経済関係のみならずあらゆる面で関係が深まるわけでありますが、この際、東欧諸国に対して日本のような自由主義経済体制の方がいいんだというようなことなどをいろいろな機会に示していくこともいいんではないか、こんなふうに私は思うのですが、いかがでしょう。
  74. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 先生指摘のとおりでございまして、実はわが外務省といたしましても東ヨーロッパの諸国に日本の経済の仕組みを理解してもらうということで、昨年以来外務省が主宰になりましてあと通産省その他の協力を得ましてセミナーをやっております。これには東欧諸国から政府機関あるいは学者の方々をお招きして日本で現実にいろいろな企業とか工場を見ていただく、同時に日本の役人とか学者から話を聞いていろいろ討論する、こういうようなことをやっているわけでございます。
  75. 愛知和男

    ○愛知委員 ぜひそのような交流なども深めていっていただきたいと思いますが、この東欧地域のことを考える場合に、どうしてもポーランドの状況というのが関心があるわけです。ポーランドの状況も、基本的にはポーランドの経済がよくならなければ問題は解決しない、こう言われておりますが、ポーランドの経済の現状はどうでしょう。
  76. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 戒厳令下でございますので、ポーランドのいろいろな生産状況の具体的な数字等はきわめて把握が困難でございます。しかし私どもが得ております情報を総合いたしますに、特定の鉱業生産にはかなり力を入れておって、特に石炭の生産はほぼ前年並みの、あるいはそれより若干上回る生産を達成しつつあるというふうに聞いております。しかしながら、これは本当に経済活動の一部にとどまるものでございまして、それ以外の分野においては、ポーランドの経済は依然としてきわめて厳しい状況にある、かつこれがさらに悪化の徴候さえ示しておるというふうに聞き及んでおります。
  77. 愛知和男

    ○愛知委員 ポーランドの経済状態がよくなるために、日本として何かできることというのはないのでしょうか。
  78. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 御案内のとおり、日本側は、日本政府といたしましてはポーランド問題につきまして何よりもまず西側の協調、西側の結束ということを重んじております。確かに、日本はポーランドの貿易相手あるいは経済的なパートナーとしてかなり大きな比重を占めておりますが、これは日本だけでできることではございません。近隣にある西ドイツあるいは西ヨーロッパの諸国、こういう国と意見をすり合わせ、共通の結論を出した上でポーランドに対する措置を決めていかなければならないと考えております。  ただ御案内のとおり、日本の対ポーランド措置というのはあくまでも軍政当局に対する反省を促すための措置でございまして、懲罰的な意味を強く持つものではございませんし、またこういう措置をとると同時に、人道的な緊急援助、そういうものは従来どおり続けておるし、またさらにこれを増大する方向でいろいろな施策を進めていることは先生案内のとおりでございます。
  79. 愛知和男

    ○愛知委員 東欧諸国と申しましても東ドイツからポーランド、いろいろな国があるわけですが、最後わが国の対東ヨーロッパ外交、基本的な取り組み方を政務次官からお答えいただければと思います。
  80. 辻英雄

    辻政府委員 ただいま愛知先生からお話がありましたように、日本としても東欧諸国全体との関係につきましては、それぞれの国情を勘案しながら相互理解の増進と友好関係発展のために今後とも努力してまいるべきものだと考えております。
  81. 愛知和男

    ○愛知委員 次に、国際小麦協定に関連して若干お尋ねをいたします。  その一部であります食糧援助規約に関連いたしまして、まず初めに開発途上国の食糧問題に対するわが国基本的な態度をお伺いしておきたいと思います。
  82. 辻英雄

    辻政府委員 わが国は、開発途上国において現実に慢性的な食糧不足が生じている事実にかんがみまして食糧援助を行う必要があると考えております。具体的には食糧援助規約に従いまして、国際協調のもとに小麦三十万トン相当の食糧援助を行ってきております。  他方わが国は、開発途上国の食糧問題は基本的に当該国の自助努力によって食糧生産の増大を図ることが必要であると考えておりますので、そういう開発途上国の食糧援助を支援することを目的といたしまして、肥料、農薬、農機具等の食糧増産に必要な機材の供与を実施するため、昭和五十二年度から所要の予算措置によりまして、食糧増産援助を行っているほか、開発途上国の農業開発をわが国の経済協力の重点分野の一つとして、研修生の受け入れ、専門家派遣等の技術協力並びにこれらの諸国の各種農業プロジェクトに対する資金援助等を実施してまいっております。
  83. 愛知和男

    ○愛知委員 食糧問題は、その国でその国の国民が生きていくだけの十分な食糧を自給できるようにする、これは最終的な基本的な問題の解決になるわけで、そういう意味で食糧増産のための各種の援助を日本がしているということは大変意義のあることだし、ぜひ今後ともそのことは強力に続けていく必要があると思いますが、それはそれとして、とりあえず食べる物がなくて困っている国民がいっぱいいるとなれば、そういう方々に対する援助というものもこれまた大変意義があることだと思いますが、日本はこの規約の中で三十万トン相当の食糧援助をするということになっているわけですが、実績はどうなんでしょう。
  84. 柳健一

    ○柳政府委員 お答え申し上げます。  五十五年度の実績でございますが、全体で四千八百十万七千ドルでございます。この中には日本米が二千七百九十万ドル、それからタイ米一千百七十六万ドル、さらに米国産の米が八百四十万ドルというふうになっております。
  85. 愛知和男

    ○愛知委員 お伺いしたがったのは、日本は三十万トン相当、こういうようなことですが、これは最小限度ですか、それに対してどの程度実績が上回ったのか、あるいは三十万トン相当ちょうどだったのか、その辺のことを伺いたかったのです。
  86. 柳健一

    ○柳政府委員 お答えいたします。  この食糧援助規約によりますと、その援助の仕方が現金の場合と現物出資の場合と両方ございますけれども日本の場合は現金でやっております。  金額的に申しますと、本体分は大体において最小限度をちょっと上回っておる程度でございます。ただ、その輸送費を必ずしも義務的には持つことになっておりませんが、日本の場合は後発開発途上国でございますLLDCに対しては全額、それからそうでないLDCに対しても約半額持っておりますので、それは最小限度の義務のほかに追加して金額を使っております。
  87. 愛知和男

    ○愛知委員 最小限度まで達成すればいいのだ、こういうことではなくて、諸般の事情から、日本として可能な限り援助をふやしていくというようなことなども大切なのではないかと思いますので、ちょっとその点を確認したかったわけであります。  この食糧援助で、日本は穀物全体は非常に輸入国でありますが、御案内のとおりお米だけは余っているわけですが、このお米がどの程度こういう援助物資として使われておりますか。
  88. 柳健一

    ○柳政府委員 食糧援助を行う場合の中身の問題でございますが、わが国が食糧援助を行う場合には、被援助国からの要請内容に十分考慮を払ってやっております。  特にこの規定によりますと、援助用の穀物の買い入れ、つまり日本の場合は現金で出して買い入れるわけでございますから、買い入れに当たりましては、食糧援助規約及び小麦貿易規約の加盟国、特に開発途上国からの買い入れを優先するように勧奨されております。同時にまた、両規約のいずれの加盟国でもない発展途上国からの買い入れも排除しない、こういうことになっております。そこで、実際問題といたしましてタイ、ビルマ等から自国産のお米を買ってほしいという要請もございますし、それから米国産小麦等、メンバーカントリーであるところの先進国の穀物についても使用方の要請がございますので、いろいろな点を、開発途上国の嗜好とかそういうものも勘案しながら決めておるわけでございます。  ただ、他方わが国が余剰米を抱えておるという現状にもかんがみまして、日本米は、KRの援助の中におきましては、金額で見ますと約六割程度日本米になっております。
  89. 愛知和男

    ○愛知委員 農家の皆さんが精魂込めてつくったお米がどうも余っているというような声が最近非常に多いわけで、農民の方々もそういう意味では若干元気をなくしているような現状ですが、そのお米がこういうことで日本として国際社会の中で大いに役立つということになれば、農家の方々もある意味では非常に元気も出てくるわけでございますし、まあお米は食糧ですから、それぞれの国の嗜好その他を考えなければならないという面もありましょうが、ひとつなおお米も可能な限り援助として出していくということを推進をしていただきたいと思います。  次に、小麦貿易規約の点について関連してちょっと伺いますと、先ほどいろいろ御質疑がございましたので重複は避けたいと思いますが、これに関連いたしまして、穀物需給等で大変関心を持たれておりますのは、ソ連の状況でございます。ソ連は三年続きの不作だと言われておりますが、ソ連の穀物の状況はどういう状況でしょうか。
  90. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 ただいま先生指摘のとおり、ソ連の穀物生産は過去三年間引き続いて思わしい成果を上げておらず、私の記憶に間違いがなければ、年々千五百万程度の穀物をアメリカ、アルゼンチン、カナダ、豪州等の諸国から輸入しておるというふうに聞いております。
  91. 愛知和男

    ○愛知委員 そのソ連の穀物の不作というのは、天候の事情等の一時的な原因によるものなのか、あるいはソ連の農業政策あるいは体制そのものに問題があるのか。体制そのものに問題があるとすると、まだ当分続くと考えられますし、天候その他による一時的な現象と認識をすれば、また対応の仕方も違ってくると思いますが、どのような認識でしょうか。
  92. 遠藤実

    遠藤説明員 原因はいろいろ言われておりますけれども、一つは生産性が向上してないというのは厳然たる事実でございまして、ただこれに悪天候が重なったということを考慮する必要があろうかと思います。ただ、どの程度がこの悪天候のせいに帰せられるべきものか、その辺はいろいろむずかしいところだと思いますし、またその生産性がなぜ上がらないかということについては、いろいろな意見があろうかと存じます。  それから、先ほど加藤局長の方から申しました、毎年千五百万トンぐらいの穀物をソ連が輸入しているといいますのは、実は小麦についてでございまして、穀物全体といたしましては、今穀物年度におきましては、一つの推計によりますと、四千三百万トン程度の輸入が必要ではないかというふうに言われております。
  93. 愛知和男

    ○愛知委員 そうしますと、ソ連の農業生産の体制そのものに従来と違った体制で取り組むというような徴候その他はないわけですか。
  94. 遠藤実

    遠藤説明員 ソ連の政府といたしましては、生産性向上につきましていろいろ施策を講じようとしているようではございますけれども、現在実施中の計画、八一年から八五年にかけましてのガイドラインというのがございまして、これのターゲットによりますと穀物の生産が大体二億三千万トンということになっております。ただ、推計によりますと、今穀物年度におきましては一億七千万トンぐらいの生産ではないかというふうに言われておりまして、それと先ほど申しました四千三百万トン程度の輸入ということを合わせて需要を賄っているということでございますが、今後どういうふうな施策を打ち出すか、その辺についてはなおつまびらかにいたしておりません。
  95. 愛知和男

    ○愛知委員 アメリカがソ連に対して穀物禁輸措置をとったわけでありますが、その影響は大分出ていると思われますか。
  96. 遠藤実

    遠藤説明員 一つには、アメリカのソ連に対します禁輸につきましては、アメリカ以外の穀物生産国からの輸出が実際に行われまして、必ずしもアメリカ政府が意図した所期の効果は出ていないというふうに通常言われております。他方、これに関連いたしまして、ソ連といたしましては外貨不足に悩んでおりまして、穀物の輸入代金を賄うために金を西側に売っているということが確実な事実でございます。どの程度であるかはいろいろな憶測がございます。
  97. 愛知和男

    ○愛知委員 アメリカがとりました措置、これはわが国としても理解ができる部分もあるわけですが、問題はやはり食糧というものが戦略物資、外交戦略上の外交手段として用いられるということは余りいいことではございませんで、わが国も食糧を大量に輸入しなければならない宿命にあるわけでございますから、食糧、穀物を外交戦略手段として利用されるということは人ごとではないと思うのですが、最後にその点につき政務次官にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  98. 辻英雄

    辻政府委員 一般的には愛知先生の御意見もごもっともであろうと思いますが、現実の国際情勢の中で食糧の窮迫事情等も考えるべき要素の一つではあろうと存じますので、必ずしもいまの時点では絶対にいけないのだということを決め得るかどうか、方向としてはごもっともでございますけれども、現実に必ずそうでなければならぬと言い切れるかどうかについては、若干の検討の余地がある場合もあろうと考えるわけでございます。
  99. 愛知和男

    ○愛知委員 終わります。
  100. 中山正暉

    中山委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  101. 中山正暉

    中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。林保夫君。
  102. 林保夫

    ○林(保)委員 まず、国際小麦協定に関する小麦貿易規約並びに食糧援助規約議定書について質問いたします。  まず、政務次官にお伺いしたいのでございますが、この二つの規約の役割りをどう評価なさいますか。協定はできておりません、なおしかし二つやらなきゃならぬ、こういう問題かと思いますが、御所見を伺いたいと思います。
  103. 辻英雄

    辻政府委員 小麦協定を構成しておりますうちの第一の小麦貿易規約の方は、それを通じまして国際社会における小麦の安定的供給を確保するということを目的としたものだと考えております。そしてまた食糧援助規約の方は、現実の国際社会における、後進国等食糧に対して非常に苦しい状態にある国に対して、どのような援助政策をやっていくかということを中心にしてつくられた、食糧の国際的な危機を救うための援助を目的としたものだというように考えておるわけでございます。
  104. 林保夫

    ○林(保)委員 重ねまして、いつになったら小麦協定締結できるのでございましょうか、見通し伺いたいと思います。
  105. 遠藤実

    遠藤説明員 先生のお尋ねの件は、小麦貿易規約につきまして経済条項を伴った新規約がいつできるか、こういうお尋ねかと存じます。これにつきましては、七一年以降経済条項のない貿易規約が実施、発効しているわけでございますが、その間に需給関係の安定、それから貿易の拡大、生産者に対する合理的な価格、それから発展途上国に対します援助ということを念頭に置きまして、鋭意交渉が続けられたわけでございますが、このうち援助規約につきましては改正が成立いたしましたけれども小麦貿易規約につきましては何回かの試みにもかかわらず成立するに至っておりません。そこで、七九年に小麦理事会で新協定案交渉が中断いたしまして、その十月に小麦理事会の事務局長でございますパロット氏が出しましたいわゆるパロット案、新協定代替案につきまして交渉が続けられたわけでございますけれども、結局、輸入国側はごく一部の途上国を除きまして大方この代替案に賛成ということでございましたが、主要輸出国がこれに対して消極的でございまして、当面直ちにこの新しい貿易規約が成立するというのは必ずしも容易なことではないというふうに考えられております。したがいまして、当面この小麦理事会におきましては協議メカニズムを強化、充実するとかという措置に取り組みつつ、並行的に新協定についての作業を継続するということになっております。
  106. 林保夫

    ○林(保)委員 パロット案に対します日本の態度、それから、日本はこれに反対しているアメリカ、カナダに対してどういう折衝なり交渉なり意見交換をされたのか、その辺を伺いたいと思います。
  107. 遠藤実

    遠藤説明員 日本輸入国の中でも特にこの新しい小麦貿易規約の作成に非常に重要性を付しておりまして、したがいまして、アメリカ、カナダ、その他の輸出国が、特に開発途上国備蓄について財政援助をするとかそういった点を中心にいたしまして、それ以外にもございますが、そういったことから消極的な態度に出ているわけでございますけれども、これについては鋭意開発途上国の食糧問題の重要性等を説きまして、いろいろと努力をしてきたわけでございますが、その点については成功するに至っておりません。したがいまして、現在のところは直ちに新しい貿易規約を作成することは容易ではないという状況になっております。
  108. 林保夫

    ○林(保)委員 私が聞きましたのは、アメリカ、カナダとどういう協議をされたか、こういうことでございます。
  109. 遠藤実

    遠藤説明員 特に二国間で別途このための特別の協議というものはやっておりませんが、小麦理事会の場においてあるいはその理事会が開かれます場外等におきましてわが方の基本的な方針に従ってアメリカ、カナダを初めとする輸出国側とも鋭意話し合いを進めてまいったわけでございます。
  110. 林保夫

    ○林(保)委員 小麦の輸入については日本は大変大きな国であるはずです。そういうところで外交をやるとすれば、わが国はかなり有効な手だてを持ち得る立場にあると私は思います。ぜひ御努力をお願いしたいと思います。  なお、今日の片肺飛行の状態の中で、ここ両三年間多国間交渉がだめなんだからということなのでございましょうか、二国間協定がかなりふえてきております。この実情と、なぜこういう状況になっておるのか、またこれは好ましいことなのかどうなのか、こういう問題について御所見を承りたいと思います。
  111. 遠藤実

    遠藤説明員 二国間の穀物協定につきましては、現在数えましてほぼ二十前後できているかと思います。これがつくられました動機は、それぞれ必ずしも同一ではございませんが、これはある意味ではきわめて限定的なものでございまして、通常輸出入国いずれの側にとりましても、供給の保障であるとかそういった面ではきわめて部分的に満足させているにすぎない状況であります。しかし、この協定がいわば乱立をするという状況になりますとか、あるいはその中身によっては国際穀物市場、小麦市場の硬直性あるいは排他性を招くというようなことになれば望ましくないというふうに考えております。しかし、現在のところきわめて部分的な効果を持つ協定でございまして、その意味で、国際的な管理のもとにおける国別の備蓄基本といたします新しい貿易規約というものを阻害しているというふうには必ずしも考えておりません。
  112. 林保夫

    ○林(保)委員 そういうふうに二十幾つあるわけでございますが、二国間協定ができてきて糸がもつれてしまうという状況、また食糧についての地球的な関心がいま非常に出てきていると私は思います。一方において豊作、また一方において凶作もありますけれども、なお多くの民族、国民が慢性的な食糧不足に悩んでおるというような状況の中において、東西関係が緊張すればするほどまた戦略的な要素を食糧は持ってまいると思います。そういった視点で、先ほども申し上げましたように日本も大きな輸入国であり、関心があるならばむしろ積極的な食糧外交をいまから打ち立てておかないと、エネルギー危機そのほかの体験に見るような事態が来ないとも限らない、というより明らかに来るだろうと思います。政務次官、この点についてどのようにお考えになっておられますでしょうか。
  113. 辻英雄

    辻政府委員 食糧の安定的確保はわが国にとりましても重要な問題でありますばかりでなく、世界の平和と安定という点できわめて重要な問題であることにつきましては先生指摘のとおりだと考えております。そういう意味におきまして、現在難航しておりまするこの小麦貿易規約の中の経済条項を含めたものをどのようにして合意に達するかということは、援助規約と同様に、それ以上に重要な問題でありますので、ただいま御指摘のありましたようなことにつきまして速やかに実現し得るように努力をしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  114. 林保夫

    ○林(保)委員 現行の食糧援助規約の今日までの実績を御報告いただきたいと思います。
  115. 藤田公郎

    ○藤田説明員 ただいままでわかっております数字は、一九八〇及び八一穀物年度、すなわち一九八〇年七月一日から一九八一年六月三十日までの実績でございますが、四百六万五千トンの拠出が行われております。しかしながら、これはまだ未報告の国がございますものですから若干不正確な数字かと考えられます。いままで報告がありましたものだけでその程度でございます。
  116. 林保夫

    ○林(保)委員 日本は幾らですか。
  117. 藤田公郎

    ○藤田説明員 日本は三十万トンでございます。
  118. 林保夫

    ○林(保)委員 世界で四百六万五千トン、それから日本の実績が三十万トン、こういうことでございますね。  農林省にお伺いしたいのでございますが、これは国内もありましょうし対外的なものもございますが、農業政策の面から見てこの実績についてどのような評価をしておられますでしょうか。
  119. 大神延夫

    ○大神説明員 お答えいたします。  御承知のように、現在農政の枠の中では過剰米という問題を抱えておりまして、この過剰米を円滑に処理していくということは今後の農政を進める上で一つの重要な要素と考えております。そして、過剰米は工業用とかえさ用もございますが、その中で輸出用として処理することが一つの柱になっておりますので、私どももいま御審議いただいております食糧援助規約に基づきまして、無償援助で過剰米の処理をさせていただいているわけでございます。世界的に多数の開発途上国で食糧不足が生じておりますので、これは農政の上からももちろん必要でございますけれども、私どもの過剰米がそういうところのお役に立っているという意味でも意義があることであるというふうに考えております。
  120. 林保夫

    ○林(保)委員 五十六米生産年度の過剰米は幾らになっておりますでしょうか。それともう一つは、三十万トンというのは換算してのものだと思いますが、日本の米はそのうち幾ら出したということになっておりますか。
  121. 大神延夫

    ○大神説明員 お答えいたします。  私どもが過剰米と申しておりますのは若干定義がございまして、昭和五十年から昭和五十三年、これは会計年度でございますが、その間にわが国の需要を超えまして生産された米が蓄積いたしまして現在に及んでいるわけでございます。それが五十三年度当時で申し上げますと六百五十万トンあったわけでございますが、いろいろな方途でそれを処理いたしまして、現在、正確に申しますとこの三月末ぐらいで約三百万トン超、すなわち約三百五十万トンは処理された、こういう状態になっております。  それで、これは会計年度で申し上げたいのでございますが、五十六会計年度におきましては先ほど申しました食糧援助規約に基づく援助、これを私ども通称KR食糧援助と申しておりますけれども、これは無償で輸出をいたしたわけでございますが、そのほかに延べ払いの輸出もいたしております。その両方を合わせまして五十六会計年度におきましては、韓国、タンザニア等の諸国向けとして現在までのところ約七十一万トンの輸出の成約を見ております。
  122. 林保夫

    ○林(保)委員 農林省に根っこのお話を聞きたいのでございますが、これは農業政策上期待していたもの以上なのでございましょうか、ちょっと少ないといいますか大変少ないというか、どういう御判断を農林省はしておられますか。外務省関係なくひとつお答えいただきたいと思います。
  123. 大神延夫

    ○大神説明員 私どもといたしましては、過剰米の処理に当たりましては、先ほど申し上げましたように工業用と輸出用とえさ用ということで考えております。そして基本的には、当初六百五十万トンありましたものが現在時点で約三百五十万トンさばかれた、残るものは三百万トンでございます。  そこで、これをそもそもから申し上げますと、私どもは五十四年度から五カ年間、すなわち五十八年度までの間に全体の六百五十万トンを処理するということで過剰米処理計画を立てたわけでございます。そして輸出用といたしましては、明年度すなわち五十七年度及び五十八年度で約八十万トンを処理する。これは今後の計画でございますが、過去の実績は実績として相当の処理をしてきたと考えておりますし、今後につきましてはいま申し上げたようなことで計画的に処理してまいりたい。  そこで一点申し上げたいことは、過剰米の輸出につきましては、もちろん食糧不足に悩む開発途上国等からの要請に基づいてやっておるわけでございますが、それと同時に私どもの輸出は、FAOに余剰処理原則というのがございます。これはたとえばわれわれの過剰米輸出が通常の商業的な米の輸出国の利益に悪影響を与えないようということがございます。米の輸出国と申しますと、御案内のとおりタイとかビルマとか、それから先進国では米国等がございます。その辺のところの国の利益にも十分考慮しながら、かつ農政上の必要として計画的な処理をしてまいりたい、こういうことでございます。
  124. 林保夫

    ○林(保)委員 私がこれを聞きましたのも、これはもう皆さん御存じのとおりだと思いますが、田舎へ行って人と話をすればするほど、世界は飢えているのになぜ米が余っているのをほっておくのだ、こういう問題でございます。国際条約協定上いろいろと制約があることはもう周知の事実でございますけれども、なおその間において日本小麦の大きな輸入国であり、米を過剰なものを持っているということは、やはり外交手段、手法を使う根っことして非常に貴重なものだと私は思うのです。そこでひとつ農林省さん、外務省さん、一緒になってこういう世界の今日の状況に対処してしっかりやっていただきたい、こういうことを言いたかったわけでございます。国民にもよくそのことを理解をさせておかなければ、何のために農業にあんな大きな補助金を出しているのだという声がやみません。そういった問題をずっと突き詰めていきますとこういう問題にもつながっていると私は思います。国際的な貢献はできる日本であるのにちっともしてないではないかという声がいっぱいございます。と同時に、やはり現実の問題としてはそういう補助金を出しているがゆえの壁とか、一般の商業ベースの取引を邪魔しないようにしなければならぬといういまおっしゃったようなFAOの約束事あるいは条件もございますので、やはりいろいろあるかと思いますが、なお政務次官にそういう壁を乗り越えて世界の問題に対処する決意をひとつこの機会に承っておきたいと思います。
  125. 辻英雄

    辻政府委員 ただいま先生からいろいろな広い角度につきまして御指摘がありましたことはまことにごもっともであると思います。やはり世界の食糧の安定供給、特に一部の開発途上国における極端な食糧不足に対応するということは基本的に日本の政策としてきわめて重要である、このことが基本でありますが、同時に現実に日本で米が若干余っておる、一方では小麦が足りないということを長期的に考えますと、これからの農業政策の中で構造改善政策をどのようにとっていくかということも同じように重要な問題であろうと思います。先生の御指摘の点を含めまして農林省とも協議をしながら対応してまいりたい、積極的な努力をしてまいりたいと考えております。
  126. 林保夫

    ○林(保)委員 では続きまして国際科学技術博覧会政府代表設置に関する臨時措置法案についての質問に移りたいと思います。  まず、科学技術庁にお伺いしたいのでございますが、今日予想される事業費のいわゆる総額、と同時に本年度予算で幾ら組まれておるのか、また博覧会の現在までの準備のポイントだけで結構ですが、どこまで進んでいるのですか。
  127. 平野拓也

    平野説明員 お答え申し上げます。  博覧会関係予算でございますが、大きく分けまして、博覧会場を整備するという関係予算、これは会場建設費と申しておりますが、それと博覧会の主催国でございます日本国政府博覧会にふさわしい出展をするという政府出展と、この二つが直接経費として大きなものでございます。  そこでまず会場建設費でございますが、これは昨年末の五十七年度の予算折衝におきまして全体総額が約四百九十億円、そのうちの国庫負担分が二百十八億円ということで、財政当局と一応調整がついておるわけでございます。  そこでこの来年度予算でございますが、会場建設費、来年度建設にいよいよ着手するわけでございますが、一応敷地の造成あるいは道路、上下水道といった基礎施設等につきましての実施設計あるいは建設に着手というようなことが主な内容でございまして、博覧会協会に対する補助金ということで約三十億円を計上いたしております。このほかに、国庫債務負担行為が約七十億円ということでお願いいたしておるわけでございます。  それから政府出展でございますが、これは従来からの慣行と申しますか、開催国の政府がその博覧会のテーマに沿いまして全体の基調をなすような展示を行うということでございまして、全体が三百六十五億という規模でお願いいたしておるわけでございます。五十七年度予算につきましてはそのうちの約十七億円、それから建物関係でございますが、国庫債務負担行為で約百四十九億円という予算をお願いいたしておるわけでございます。したがいまして、全体の直接経費が八百五十五億円ということに相なるかと思います。  このほかに、関連公共事業といたしまして、昨年の秋に関係閣僚会議で約四千二百億円の道路鉄道、下水、河川といったような緊急を要する関連公共事業につきましての計画の御決定を見ておるということでございます。  それから現在の準備状況でございますが、まず国際関係につきましてはBIE、すなわち博覧会国際事務局という国際機関がございますが、これに対する諸手続、これは昨年の春に完了いたしております。  それから会場計画関係でございますが、会場用地の手当ては県にお願いするということで、県が大変精力的に用地の取得をなさいまして、現在すでに九九%以上の用地が獲得されておるということでございます。そこにどういう会場をつくるかということにつきましては、これは開催の運営主体でございます博覧会協会の責任でございまして、協会は先般第一次の会場計画案というものをまとめまして発表いたしたところでございます。  それから政府出展につきましては、ただいま関係省庁の御協力を得ながら、民間、一般の専門家のお知恵も借りつつ全体の基本計画というものの策定を行っておるわけでございまして、来年度引き続きまして展示の基本設計なりそれから展示館の建設の着工といったようなことを予定いたしておるわけでございます。  それから民間出展につきましても、先般民間出展予定者に対します説明会を行いまして、来月の半ばからその受け付けを始めるという段階でございまして、夏ごろまでにはほぼ全体の輪郭が明らかになるであろうということでございます。  さらに外国政府出展招請でございますが、これは昨年の秋に外交ルートを通じまして招請を行ったところでございますが、今後具体的に個々の国とのあらゆるチャンネルを利用いたしまして、できるだけ多くの国に参加していただくということを基本方針といたしまして、外務省を初め関係省庁及び関係団体の御協力を得ながら、できるだけ多くの国に参加してもらうべく、来年度精力的に努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  128. 林保夫

    ○林(保)委員 いま御説明の中にありました万博の国際事務局に対して説明し、承認をとったわけですが、条約上には法制上、財政上の措置を示して登録を受けるというふうに書いてあるのを読みましたけれども、どの段階なんでございますか。
  129. 平野拓也

    平野説明員 条約手続に従いまして、登録という最終の手続のようなものでございますが、その登録を昨年の春に受けております。それまでの間にはいろいろ総会における審査あるいは現地調査ということで、筑波の会場予定地にまでBIE調査団がお見えになって、日本には今度の筑波博を十分行う能力があるという判定がその以前に下されておるということを踏まえましての登録完了ということでございます。
  130. 林保夫

    ○林(保)委員 そうすると、政務次官、もう手続は一切済んだ、政府代表を決めることさえ法律的な手続をすればいい、こういう段階に一応なっているわけでございますか。
  131. 辻英雄

    辻政府委員 博覧会国際事務局等との関係、第一の基本的な手続はできておりまして、具体的に進めてまいります段階政府代表を任命する必要があるところまでは来ておりますけれども、今後具体的にどのようにしてこの博覧会目的を達するように国内でいろいろなことをやっていくか、あるいは対外の話し合いなりPRなりをやっていくかということはこれから具体化する問題でありますので、これで全体が済んだというようなことは毛頭考えておりませんので、これからの全体のものを軌道に乗せますために、政府代表任命について御承認をいただきたい、かように考えているわけでございます。
  132. 林保夫

    ○林(保)委員 これからの問題でございますが、いまお話しの総事業費、関連工事の四千二百億円を除きまして、直接が先ほど八百五十五億とおっしゃいましたですね。このほかに民間からもやはり金を集めなきゃならぬのじゃございませんか。それは幾らぐらい予定しておられますか。
  133. 平野拓也

    平野説明員 先ほど申し上げました会場建設費と申しますのは補助事業でございますので、四百九十億円の全体の補助対象事業がそれの三分の二ということになっております。したがいまして、民間からは四百九十億円の三分の一というものを、これを寄付その他でお願いしなければならないということでございます。したがいまして、今後経済界その他にもお願いいたしまして、これが穴があきませんように予定どおり寄付金その他を集める努力をいたしたいということでございます。
  134. 林保夫

    ○林(保)委員 博覧会は有料だろうと思いますが、先ほど何か二千万人ぐらいの入場を予定しておるというようなことでございました。どれくらいの収入を見込まれ、赤字なんでしょうか、黒字なんでしょうか。
  135. 平野拓也

    平野説明員 博覧会の赤字、黒字と申しますのは、これは運営費の収支のバランスを指していることかと思いますが、実は運営費につきましては、協会等でもいろいろ試算はいたしておりますけれども、正式にはまだ決めておらないということでございます。ただ、私どもの一応の試算でございますと、大体運営費が四百億から五百億の間というふうなことに落ちつくのじゃなかろうかというふうに考えておりまして、その収入の主なものはこれは言うまでもなく入場料の収入でございまして、これを幾らにするかということがこの収支バランスでも非常に大事なことかと思いますが、現在まだ正式にその入場料を幾らにするかということは決まっておりませんで、鋭意いろいろな多方面の知恵を借りながら検討をしておるという段階でございます。
  136. 林保夫

    ○林(保)委員 先ほどありました各国へも要請しておるという、どういう国へどういう要請の仕方をされておられますか。
  137. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  各国への招請についてのお尋ねでございますが、昨年十月十五日付をもちまして外務省の訓令を発しておるわけでございます。国の数にいたしますと百六十一カ国、それから各種の国際機関参加を求めているわけでございますが、五十四の国際機関招請状を発出したところでございます。
  138. 林保夫

    ○林(保)委員 これらの要請については、百六十一という以上は、もう東西の壁も何もなく全部一斉という意味でございましょうか。
  139. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 国際博覧会の規則によりますと、招請状外交チャンネルを通じて発出をすべしという定めになっているわけでございます。したがいまして、先ほど御説明申し上げましたが、各国への招請状につきましては、外交チャンネルで発出しておるわけでございますが、どういう国に発出をするかということは、これはもっぱら主催国に任されている事柄でございます。そこで、百六十一カ国という数の国に招請を出したわけでございますが、私どもとしては日本政府と外交関係のある国々に招請状を発出したということでございます。
  140. 林保夫

    ○林(保)委員 どこか外れているところがありますか。  ついでに一緒にお答えいただきたいのでございますが、私たち関心の引くようなところで外れているところがあるかどうかという点と、それからこの招請状を出してから後の反応はいいんでございましょうか。
  141. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 第一点の外れている国についての御質問でございますが、北朝鮮については、外交関係がございませんので、招請状は発出しておりません。  それから昨年の十月の半ばに招請状を出しまして、その後の状況でございます。現在のところ、リビアあるいは民主カンボジアそれからタイといった国々から積極的な参加表明の回答が来ております。国際機関からも、一、二の国際機関から参加表明の回答が来ておりますが、いずれにいたしましても数多くの参加国を得られるために私どもとしては今後ともいろいろな手段を使いまして招請努力を重ねてまいりたい、かように考えております。
  142. 林保夫

    ○林(保)委員 そこで、質問が逆になったのでございますが、国際科学技術博覧会、これの意義を、スタートのときに出しておられると思いますが、科学技術庁はどのように出しておられますでしょうか。
  143. 平野拓也

    平野説明員 本科学万博の意義でございますが、いろいろあろうかと思いますが、私どもはこれをまず第一に、二十一世紀を創造する科学技術のビジョンといったものを内外の方々、特に青少年に対してお示しするということによりまして、科学技術に対する理解と関心を深めていただくということがまずあろうかと思います。  それから、この博覧会出展を契機にいたしまして、筑波の研究学園都市、これは世界にも数少ないユニークな都市でございますが、それを科学技術の世界の中心地として育てていく、その一つのきっかけになるのじゃないかというふうなことが次に考えられるわけでございます。  同時に、国際博覧会でございますから、世界各国科学技術情報を含めた、テーマにふさわしい種々の情報交換を世界的なレベルで行い得るということ、あるいは、博覧会出展を契機にいたしまして、いろいろな新しい技術なり文化なりといったようなものがそこで生まれるというようなことも期待いたしておるということでございまして、こういうふうなことを念頭に置きつつ、いま現在準備を進めておるということでございます。
  144. 林保夫

    ○林(保)委員 その限りでは別に問題はないのでございますが、このいわゆるビッグイベントですか、これをやることについての国際的な反応といいますか、特に近隣諸国の国民感情はどんなものでございましょうか。外務省はどのようにこれを見ておられますでしょうか。
  145. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  先ほども若干触れたわけでございますが、たとえばタイからは積極的な参加の意図表明を受けておるわけでございます。それから、東南アジアで申し上げますと、文部大臣機構というのがASEAN諸国の間にございますが、そのようなASEANのグループとしての機構からも積極的な参加の意図表明を受けておるわけでございます。外交チャンネルを通じまして、それぞれの国々の関係当局政府に、いま科学技術庁の方から御答弁がありましたような、今度のこの科学技術博覧会趣旨をよく説明をして、参加招請をしておるわけでございますが、私どもが得ている反応といたしましては、大変意義の深いものではないだろうかということを、政府のレベルにおいては表明を受けておるわけでございます。  東南アジア諸国の一般的な受けとめ方はどうかという点でございますけれども、私どもはこれからのこの参加招請を行っていく過程におきまして、これらの国々の国民の方々から寄せられる御支援であるとか、あるいは問題提起であるとか、そういうことも十分に受けとめながら、今度の博覧会成功のために外務当局としては努力をしてまいりたいと思っております。
  146. 林保夫

    ○林(保)委員 ぜひそうやっていただきたいのでございますが、なお政務次官にひとつ判断をお伺いしたいのでございます。  御承知のように、いまアメリカばかりでなく欧州との経済摩擦、貿易摩擦あるいは防衛摩擦も非常に出ておる。その背景が、また経済力、技術力、科学の水準、こういったものの大きさ、高さというところから出てきていると思います。こういう博覧会を開きますと、当然、かつての大阪の万博と同じように世界の関心が日本に集まってくる。それで、日本より以上のものが出てくればいいのだけれども、行ってみて貧弱だったという国はやはりさびしがりますね。それは、二十一世紀がいかによくなるかという問題とはまた別の次元でございます。そういう中であえてこれをやろうというふうに御決意をされたわけでございますが、とすれば、それなりの配慮がやはり私は必要だろうと思います。例の大阪の万博のときでもそうでございましたね。非常にいい面と、またそれに対する批判も各国からあったのは御承知のとおりでございます。  ということは、日本にとりましても、私はいま故事として昔の、もう忘れ去っていいような問題かとも思いますけれども思い出すのは、サウジアラビアの王様が日本へ来て新幹線に乗った。お茶を買うたら、あれがたしか二十円か三十円だったですね、それ一杯を、サウジアラビアの灯油でもガソリンでも結構ですが、幾らいくんだと言ったら、白灯油に換算いたしまして一リットルが十八円ぐらいでしたからね、一リットルも入っていませんね、一方のお茶が三十何円で、これがその半値にもいっていないというようなことから長嘆息された。エネルギー危機はそれで起こったわけじゃございませんけれども、なお、タイミングをとってみると、そういう問題もやはりあったということも言えるかと思います。したがいまして、この博覧会を対外的にも対内的にも何もいじけてやることはございませんけれども、なおそういう配慮を万般やっていかなければならぬと思いますが、政務次官、どのようにこのことをお考えになっておられますか。
  147. 辻英雄

    辻政府委員 先生指摘のように、今回の科学技術博覧会は単に日本のためにやるものではなくて、世界全体を含めた科学技術発展を目指してやっていこうということが基本でありますので、その趣旨におきましては、科学技術について各国によりましてそれぞれのレベルはありましても、その具体的な普及、徹底、発展、そのための協力もやっていくということには、皆非常に賛成をしてくれておるというふうに私は考えております。  同時に、先ほど万博なり沖縄博に関連しましてお話のありました諸外国の国民感情というものに対しては、十分配慮すべきことであって、博覧会の運営そのものなり、あるいはそれに関する事前のPR等につきましては十分神経を使いましてやっていきたいというふうに考える次第でございます。
  148. 林保夫

    ○林(保)委員 そのことを重々御要望申し上げておきたいと思います。科学技術庁さん、ありがとうございました。  続きまして、東独との通商航海条約につきまして、二、三御質問したいと思います。  まず一点は、これはたしか日本側が条約を結ぼうと言ったのではなくて、向こう側からやりましょうという積極的なアプローチの結果、結ばれたというふうに理解しておりますが、どういう経緯でございましたのでしょうか。
  149. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 一九七三年に東独との間に外交関係が樹立されたときに、先方からまず第一回の申し入れがございました。その後、一九七七年、当時のフィッシャー外務大臣が訪日いたしましたときに、通商航海条約締結したいという正式の申し入れがございまして、それを受けて七九年に先方から第一次の条約案が出てきた、こういう経緯でございます。したがいまして、どちらかと申せば、先方が要請というか、申し入れをしてでき上がった条約でございます。
  150. 林保夫

    ○林(保)委員 日本はソ連及び東欧六カ国ですか、すでに通商航海条約締結しておりますが、これと今回の条約との違いはどういう点にございますか。同じでしょうか。
  151. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 東独との通商航海条約は、先生指摘のとおり東欧諸国との一連の条約最後に来るものでございます。おのおのの通商航海条約は、相手側の法制とか事情とかそういうものを取り入れまして多少の差異はございますが、全般的にはほかの東欧諸国と結んでいる通商条約とほぼ同じ条約であると認識しております。
  152. 林保夫

    ○林(保)委員 多少の差異というのはどんな点なんでございましょうか、二、三……。
  153. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 日本はソ連及び東欧諸国と通商航海条約を結んでおりますけれども、その国とすでに結ばれている条約内容その他を勘案いたしまして、それぞれについて若干の差異がございます。たとえばソ連との通商条約におきましては、領事関係事項については、特に別に領事条約締結しておりますので入っておりませんけれども、今回の東独との通商航海条約におきましては、領事関係の条項が入っているわけでございます。たとえば第七条の四項におきまして、逮捕、拘禁された場合に直ちに通報するというようなこととか、拘禁されている者との通信、訪問を遅滞なく行わなければいけないというようなことを書いてございまして、それで議定書の中で特に、たとえば通報する期間については三日という具体的な日にちを置いてございますし、それから訪問及び通信するのは四日以内という具体的な日にちを置いてございます。これはソ連との領事条約において、ソ連とは別途定めているわけでございますけれどもわが国としては、当面東独との関係は、この通商航海条約におきまして、このような領事規定を入れることによって処理できるというふうに考えたものでございますから、特に当面領事条約を別途結ぶ必要がないというふうに考えておりますので、このような領事規定を置くことにして処理しております。このような例は若干ございまして、たとえばポーランドとの通商航海条約にも領事規定を置きまして処理いたしております。これなどが一つの例でございます。  それからさらに、たとえばこの議定書に、直接投資についての相互主義を規定してございますけれども、これは事業活動の最恵国待遇の例外として置いてあるものでございますが、これは東独におきまして、現在まで外国からの直接の投資を認めるという制度になっておりませんで、これはその都度閣僚会議が個別に認めるという体制になっておりますので、たとえば事業活動についての最恵国待遇を東独に与えますと、これは非常に不均衡になるということで、この点は特に別途、相互主義による最恵国待遇ということになっております。このような点が若干違っております。
  154. 林保夫

    ○林(保)委員 東欧六カ国と、これで七カ国になるわけでございますが、この東独との通商航海条約締結によって一番あれになりますのは貿易実績、そういったものが一番バロメーターになると思いますが、既締結国の六カ国、そして今度の東独、どういうバランスになりますでしょうか。今回がやはり一番大きいでしょうか。
  155. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 日本との貿易額という観点から申しますと、従来まで一番多かったのはポーランドでございます。二番目の大きな貿易相手国はルーマニアでございます。東独はその後、三番目という地位を占めております。
  156. 林保夫

    ○林(保)委員 全体として大体どのくらいの年間の輸出入取引になるので。こざいましょうか。――後で聞かせていただきます。  この七カ国との条約締結をもって、軍事、政治的にはこれはまた別の観点があるかと思いますが、いわゆるワルシャワ体制、コメコン体制と日本が完全につながったような印象を受けるのでございますが、そのことについての政治的な御判断を政務次官はどのようにしていらっしゃいますでしょうか。
  157. 辻英雄

    辻政府委員 通商航海条約がねらっておりますところは、日本とドイツとの経済関係を円滑にし、それを発展させるということが基本的な目的であろうと思います。  なお一般的に、政治的にコメコン体制の間の国と通商貿易をどうしていくかということにつきましては、基本的には、貿易というものが両国の相互の利益になるものだという考え方を基本にしまして、具体的内容につきましては、それぞれの国情、態様に応じて処理していくべきものだと思っておりますので、この通商航海条約を結ぶことが、コメコン体制に入るとか、接近し過ぎるとか、そういう角度の問題ではないんじゃないかと思っております。コメコンはコメコンで一つの考え方があってやっていることでございますので、そのことは別といたしまして、私どもは、その体制をどうするとかこうするとかという問題とは直接に関係のない問題ではないか、かように考えております。
  158. 林保夫

    ○林(保)委員 しかしなお、この七カ国の中にいま大変問題となっておりますポーランド、これがございますね。そうしますと、そこらに対する経済的な影響、まあ貿易は東西の壁なしでいろいろとやり合ったらいいと思います。しかしなお、そういう近いところでこういう貿易体制ができ上がりますと、それなりの影響を与えると思いますが、ひとつ今日のポーランドの事件についてちょっとまず最初に聞きたいのでございますが、例の大変心配されたアフガンのような最悪事態は避けられたものの、よくよく見ますと、一九五六年のハンガリー・ブダペスト反政府騒動ですか、それからまた一九六八年八月のソ連・東欧五カ国のチェコへの抜き打ち的な侵入、これとはちょっと様子が違っていると思いますが、どのような判断をされ、これからの発展をどう見ておりますか、まずそれをひとつ御説明願いたい。
  159. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 一九五六年のハンガリー事件、一九六八年のチェコ事件と今回のポーランド事件はどこが違うかというお尋ねでございますが、今回のポーランドの事件は、一九七〇年代を通じてヨーロッパで非常に大々的に進められました緊張緩和、特に一九七五年にヘルシンキ基本文書という形で合意がまとまりましたヨーロッパの安全保障に関する合意、こういう一連の緊張緩和の流れの後に出てきた事件がポーランドである。つまり欧州の情勢を緊張緩和という大きな枠のもとで安定させようという試みの後に出てきたのがこのポーランド事件である。これに比べますと、チェコ事件にいたしましてもハンガリー事件にいたしましても、それ以前の状態、つまり別の言い方をいたしますれば、ヤルタ協定と俗に言っております東欧におけるソ連の勢力圏、そういう事態の中で起きた事件、その点が非常に大きな違いではないかと思っております。したがって、ポーランド事件が今後どういうふうに推移するかによって、ヨーロッパのみならず、世界の東西間の均衡というものが非常に大きく乱されるおそれがある。その意味で、前二回の事件よりもはるかに大きな意味を持つ重大な事件であると私どもは受けとめております。
  160. 林保夫

    ○林(保)委員 そういった意味で、東欧諸国への世界的な関心が高まっておるときに、日本通商ベースでこういうことで条約を結ぶことになった、そのことは理解できるにいたしましても、やはり関心が高いと思います。しかも先ほど申し上げましたような向こうの一つの体制。軍事、政治関係はないけれども、一斉にワルシャワ体制の各国と結んでしまったということですね。そういった点で、先ほど来も質問が出ていたと思いますが、西ドイツの方はどのような反応を示し、どういう説明を、外交ルートを通じましてすでに当然話はしていると思いますが、やっておられるか、承りたいと思います。
  161. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 一九七二年に東西両独の間に基本条約が結ばれて以来、東ドイツも一つの主権国家として認められたわけでございまして、その東ドイツが諸外国といろいろな協定条約を結ぶことは当然認められる、こういう関係になっております。したがって、この通商航海条約を結ぶこと自体について、西独からとやかく注文とか文句とか、そういうものが出た経緯はございません。もちろん、交渉の過程におきまして、西独側はいろいろと情報の入手等に努め、非常に注意深く交渉を見守っていたとは考えますけれども政府から政府に対して何か要望とか注文とかが出たということはございません。
  162. 林保夫

    ○林(保)委員 見通しでございますが、従来、東欧貿易は絶えず政治的な影響、ときには軍事的な影響を受けてきた、こういうことでございます。本条約を審議するに当たって、一体これからどのような東西貿易の拡大発展を期待しておられるのか。余り望めないんじゃないだろうか、このようにも思いますが。
  163. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 御指摘のとおり、東西貿易の将来は必ずしも明るい希望が抱けるとは考えておりません。特に東側の経済の困難というものを考えますとき、今後飛躍的に東西貿易が伸びるという見通しは非常に立てにくいという考え方を持っております。ただ、日本といたしましては、櫻内外務大臣の外交演説にも述べられておりますとおり、東ヨーロッパ諸国それぞれの情勢を勘案しつつ、また世界情勢の推移を見きわめながらきめの細かい措置をとっていくということを考えております。こういう方針に従ってできる限り東ヨーロッパ諸国との経済関係の維持発展に努めてまいりたい、かように考えております。  もしお許しいただければ、先ほどの数字の点をごく簡単に御説明いたします。  ユーゴを除きます東欧六カ国と日本との貿易総額は往復で大体十二億ドルでございます。そのうち日本の輸出は九億ドル、それから六カ国から日本への輸入は三億ドルという数字になっております。これは八〇年の統計でございますが、一番大きなポーランド、往復の貿易実績は二億八千九百万ドル、二番目のルーマニアは往復で二億六千八百万ドル、三番目の東独は一億七千八百万ドルという概数が出ております。
  164. 中山正暉

    中山委員長 林委員に申し上げたいと思いますが、国際科学技術博覧会に関する先生の御質疑に対しまして、佐藤参事官から補足答弁をいたしたいとのことでございます。御聴取を願います。佐藤参事官。
  165. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 先ほど先生から御質問のございました招請状の出ていない国という点につきまして、私の答弁が完全でなかったことをおわび申しますとともに、補足をさせていただきます。  北朝鮮の件については未承認国であるということで御説明したとおりでございますが、それにアフガニスタンそれから南アフリカ共和国の二つも除外されております。前者につきましては現政権を私ども承認をしていないということでございますし、後者につきましては外交関係を有していない、こういうことでございます。したがいまして、三つにつきまして除外をされているということでございますので、補足をさせていただきます。
  166. 林保夫

    ○林(保)委員 一つだけ伺いたいのですが、国ベースではそのようなことでございましょう。なお、ここでは参加国になっておりますが、民間ベース参加する場合は受け入れられるのでございましょうか。条約上はどのような解釈になるのでございましょうか。
  167. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 国際博覧会条約のたてまえにおきましては、博覧会における招請状の発出及びこれに対する回答もすべて外交ルートを通じて行うことになっております。ですから、民間団体が参加を希望する場合におきましても、これは政府外交チャンネルを通じて参加の表明を行うということになっております。
  168. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。終わります。
  169. 中山正暉

    中山委員長 野間友一君。
  170. 野間友一

    ○野間委員 筑波博から質問をしたいと思いますが、かつて国際科学技術博覧会準備及び運営のために必要な特別措置に関する法律が衆議院の科学技術委員会で審議されたときに附帯決議が付されておるわけですが、この附帯決議に関してまずお伺いいたします。  その一つは、第二項に「政府出展及び民間出展については、わが国固有の文化及び伝統工芸等に関する科学技術紹介に努めるとともに、中小企業の積極的参加について配慮すること。」というのがあるのです。具体的にいまどういう配慮、手だてがなされようとしておるのか、この点についてまずお答えいただきたい。
  171. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  五十六年三月十九日の附帯決議についての御質問であろうと思いますが、第二項の具体的準備状況ということでございます。  私どもといたしましては、わが国固有の文化あるいは伝統工芸が科学技術博覧会に十分反映されることが諸外国からの参加を求めるに当たっても非常に重要な意味をなすものではないか、かように考えているわけでございます。したがいまして、このことを博覧会全体の中で考えますときに、諸外国からもいろいろな形の伝統文化あるいは伝統工芸の出展がこれから考えられていくわけでございますが、そういうことをも念頭に置きながらこのような準備をしていくことが必要であろうかと考えているわけでございます。  具体的な措置としてどのようなことが考えられるかということでございますが、展示物の輸送面における優遇措置であるとか敷地の使用料といった問題についての特別な待遇、そういうようなことも含めまして検討していったらよろしいのではないかと見られておるわけでございます。これらの点につきましては、外務省所管というよりはむしろ関係省庁の御協力を得ながら取り進めることになろうかと思います。
  172. 野間友一

    ○野間委員 これは、いま言われたとおり去年の三月ですね。もう一年前なのです。先ほども外務省はどうも熱意がないというようなことで指摘をされたわけですが、あなたはこの二項を読んだだけの話で、実際中身は全くないわけです。いまのところ中身は全くないと理解していいのですか。どうなのですか。
  173. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 外務省としてこの科学技術博覧会成功のためにいろいろな角度から御協力しなくてはならないという点については、私ども意をかたくしているところでございます。  何も決まっていないのではないかという御質問であったと思いますが、現在のところ科学技術博覧会準備事務局を中心にいたしまして、この附帯決議の中に盛られている事項についてそれぞれの準備をしていると聞いておるわけでございます。具体的な内容について私必ずしも全部捕捉しているわけではございませんが、先ほど御説明申し上げましたような諸般の優遇措置というものが、中小企業の出展等において考えられていくのではないかと理解しておりますけれども準備事務局における準備の進展に伴いまして、なお具体的な措置がとられていくものというふうに理解をしております。
  174. 野間友一

    ○野間委員 では重ねて聞きますが、諸般の優遇措置というものは具体的にはどういうものがあるわけですか。
  175. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 先ほどちょっと言及いたしたつもりでございますが、展示物品の輸送面における優遇措置でございますとか、あるいは、敷地のいろいろな形での使用が行われるわけでございますので、そういう使用料の問題でどういう優遇措置が考えられるか、そういった問題がとりあえずあろうかというふうに思います。また、諸外国からの参加招請するに当たりましても、いろいろな面での対応を考えていかなくてはいけないと思いますが、たとえば通関上の便宜供与でございますとかいうことも、諸外国からの参加を求めるに当って検討すべき事柄ではないか、このように理解しております。
  176. 野間友一

    ○野間委員 聞きもせぬことを水増しして答弁をする必要はないのですよ。諸外国の問題については後から聞くわけです。いま言われたことは輸送料とそれから会場の使用料ですね。これについての一定の配慮という措置があるんだということですね。それじゃ具体的に、輸送料が普通なら幾らでどのくらい優遇措置が講じられるのか、あるいは使用料についてはどうなのかということについては、外務省としては把握してないのじゃないですか。先ほどから関心がないとか言われているのはそういうところにもあるのじゃないかと思うのですね。きょう答えられなければ次回にまた聞きたいと思うのですけれども外務省としても、単にこれは科学技術庁あるいは中小企業庁――まあ科学技術庁だと思うのですが、そういうことでなく、やはりきちんと具体的に把握していく、あるいは特に合い議していくということが何よりも必要だと私は思うのです。だから具体的に詰めて、外務省としても措置をとるための努力をするということがあってしかるべきだと思うのですけれども、その点について。
  177. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 そのように対応したいと考えております。
  178. 野間友一

    ○野間委員 それでは中身については後でまた別の機会にお伺いするとして、同じく三項ですけれども、ここでは発展途上国の積極的参加、これについての最大の努力をするということが決議として上っておりますが、これについては具体的にどういう構想を持ち、どういう手だてをいまとっておるのか、いかがでしょう。
  179. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  発展途上国について特に強調されておるわけでございます。私どもといたしましても、諸外国からの招請を考えるに当たりまして、科学技術というものが発展途上国開発途上国の生活環境の向上にいかに貢献をしていくものであろうかということを考えながら、特に発展途上国の多くの参加が必要であろうかというふうに考えているわけでございます。昨年の十月中旬の外交チャンネルを通じます招請国に対する案内の際にも私どものこのような基本的な考え方を述べながら御案内を申し上げたということでございます。  そこで、外務省としては具体的にどういう手だてを講じているのかということでございますが、私どもとしては、まず参加について積極的な説得といいますか御案内をしていかねばならないと存じておるわけでございます。したがいまして、外交チャンネルだけで案内についての積極的な活動をするだけではなくて、協会の幹部の方々にもお願いをしながら、これらの開発途上国を直接に訪問し、それらの国々からの御参加を慫慂してまいりたいというふうに思っているわけでございます。発展途上国がどのような出展をしてまいるか、その辺のところまでまだ準備が進んでおらない状況でございますが、いずれにいたしましても二十一世紀の科学技術の持つビジョン、そういう考え方のもとに多くの発展途上国参加できるようにまず努力をしてまいりたい、かように考えている次第でございます。
  180. 野間友一

    ○野間委員 これまたいま長々と答弁されましたけれども、結局中身はPRするということだけじゃないですか。外交チャンネルだけじゃなしに積極的にPRするということをあなたは答えただけじゃないですか。途上国招請に応じて参加するという具体的な手だて、保障、そういうものはどういうものを考えておるかということを私は聞いておるわけです。それについての答弁と、同時に、どの程度途上国からの参加を予定しておるのか、あわせてお答えいただきたい。
  181. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 具体的な手だてについてのお尋ねでございますが、現在のところ、まず開発途上国からの御参加を得なくてはならないという段階でございます。したがいまして、それぞれの参加の意図が表明されるように私ども努力をするわけでございますが、もちろんその間におきましては、この科学技術博覧会の持つ意義等についての理解を深めなくてはならないかと思うわけでございます。  これからの具体的な内容というものは、現在御審議いただいております政府代表についての御承認が得られることを期待するわけでございますが、政府代表において個別に各国との間でどのような出展が可能であろうかということを十分協議をしていくつもりにしておるわけでございます。昨年の十月半ばに招請状を発しまして、現在のところ寸まだそう多くの反応がないわけでございますが、主要な国とも十分連絡をとりながら科学技術博覧会に向けての諸外国の関心をまず高めていきたい、かように考えておるわけでございます。
  182. 野間友一

    ○野間委員 何遍聞いても中身が全くないわけですが、それではいま途上国が幾つくらい参加するという通知なり連絡があるというのでしょうか。と同時に、いま申し上げたように、それじゃ具体的に、制度的に、物的なそういう保障、手だてはいまどういうものが考えられるわけですか。それでまた、具体的にとり得るものはフルにとるという体制で臨むのかどうか、まだそれは検討中ということで具体的に何にも決めていないということですか。どうですか。
  183. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  どのくらいの数の国から反応が来ているかという御質問でございますが……(野間委員途上国」と呼ぶ)途上国でございますね。私どもがいま接しておりますのは、リビア、民主カンボジア、タイ、この三国が参加の意図表明をしておるわけでございます。それから、アジアの文部大臣機構というのがございます。この国際機関も入れますと、四つのところから参加の意図の表明があるわけでございます。私どもとしては、これからまさに科学万博についての準備を精力的に開始するわけでございますので、昨年十月の招請状の発出を受けまして諸外国参加が数多く得られるように一層の努力を払いたいと思っておるわけでございます。
  184. 野間友一

    ○野間委員 どうも精神的な訓示ばかりで、中身が全くないので往生するわけですが、これは次回に回したいと思います。  条約の二十二条。条約というのは、千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名された国際博覧会に関する条約を改正する議定書ですが、この二十二条、これは、申し上げた附帯決議の三項、これを具体的に保障する段取りとして当然使えるというふうに私は思いますけれども、こういうものを踏まえて具体的に検討されておるのかどうか。
  185. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 御指摘のありました二十二条でございますが、「各国及びその国民の参加を容易にするため、特に人及び物品の輸送の料金及び入国又は輸入の条件に関して便宜を与えるよう努力する。」ということを定めておるわけでございます。まさにこういう細かい問題につきまして、国内関係省庁の御協力も得ながら細則についての定めをしていくべきものと心得ております。
  186. 野間友一

    ○野間委員 政務次官、お聞きになってどうですか。
  187. 辻英雄

    辻政府委員 率直に申し上げまして、国内におけるいまお話しのような附帯決議に関連するような事項について十分段取りができていないというのが現状ではないかと私は考えております。  お話しのように、附帯決議自体は非常に重要なことを院で御決議になっておりますので、その趣旨に合わせまして、中小企業の出展を促進すること、積極的参加を促進することないしは開発途上国のできる限り多数の参加を段取りすることがきわめて重要なことでございますが、そのために、具体的にいまの条約の二十二条に書いてありますような措置をどうとるのかということはこれからの問題である。そのことにつきましては、きわめて重要なことでありますから、政府部内一致して、極力それが推進されるような策をとらなければならぬということだと私は考えております。その意味では、現在の段階で固まっていないということを率直に申し上げた方がお答えとしては早いのだ、お話を伺っておって、私はそういうふうに承ったわけでございます。  したがいまして、招請を出しておきながら、どういうメリットがあるのかということがなければ、招請に応ずる側の方も困るのじゃないかという御趣旨はよくわかりますので、早急にそういう措置をとるように、政府部内で努力をしていきたいと考えております。
  188. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 この条約の二十二条に従いましてとられる措置につきましては、多分過去の例が御参考になると思います。今回も過去の例を十分に勘案しながら、それに沿った措置がとられることになるのだろうと思いますので、私の方からは、事実といたしまして、沖縄海洋博のときにどういう措置がとられているかということを御紹介申し上げたいと思います。  沖縄海洋博におきましては幾つかの法制及び特別措置がとられておりますけれども、その中で主なものといたしましては、たとえば海洋博の関係入国者の検疫に関する特別な措置であるとか、展示物品の通関に関する措置であるとか、海洋博に関する外国為替及び外国貿易管理法上の取り扱い、それから海洋博用の貨物の輸入割り当てについて特別な措置がとられております。それから動物の検疫、輸入食品衛生監視に関する措置であるとか国税、地方税に関する特別措置、その他輸出入貿易管理令あるいは道路通行料の特別措置等がとられておりますので、これらが次の筑波における博覧会において条約二十二条の実施としてとられる措置の一つの参考になるのではないかと思っております。
  189. 野間友一

    ○野間委員 本当に、ヤシじゃありませんが、いらっしゃい、いらっしゃいだけじゃどうにもならぬわけで、具体的にこういうものに基づいて、いま次官言われたけれども、手だてをしていかなければいけない。  いま、二国か三国か、途上国の問題言われましたけれども、そういう状態だと思うのですね。せっかく党派を越えて附帯決議をつくりながら、これが全然生かされていない。これは大変なことだと思うのです。いま、大変おくれておるというふうにみずから認められましたけれども、たとえば旅客の輸送とかあるいは宿泊設備等々についてもいろいろ問題があります。これはほかの委員会でもいろいろ論議されておりますが、これについては、きょうはもうどうにもなりませんので、この点についての質疑を次回にすることにして、この問題についての質問として最後に聞きたいのは、条約の十一条との関係で、いま三カ国しか参加の意図表明をしていない、こういうことを言われましたけれども、お尋ねしたいのは、これは国交がなければ招請できないのか、それともそうでないのか、この点であります。
  190. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  御指摘の十一条におきましては、外交上の経路を通じて招請国政府に対して案内を行うということを定めているわけでございます。どの国を招請するかということにつきましては、主催国の政策ということで決められていくものというふうになるわけでございます。  したがいまして、日本政府といたしましては、昨年の九月二十五日の閣議におきまして「我が国と国交のある外国政府、我が国が加盟している国際機関等に対して招請を行うものとする。」という決定をしておるわけでございますが、それに基づきまして、先ほど来御説明しているところでございますが、百六十一カ国、五十四の国際機関招請状を発したわけでございます。
  191. 野間友一

    ○野間委員 十一条によりますと、これは必ずしも国交がなくても招請できる、しかも先ほど引用しました二十二条、入国の条件に関して便宜を与える、これとも直接関連してくるのじゃないかというふうに私は思うのですけれども、その点どうですか。
  192. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 条約の仕組みに関することでございますので、私からお答えさせていただきたいと思います。  国際博覧会条約は、もともと十九世紀の半ばにおきまして始まった国際博覧会というものが非常に頻繁に行われるようになって混乱が生じたということがございましたので、特定の博覧会につきましては、参加国及び招請国がともに政府の責任のもとにおいてそれを行うことによってそれらの混乱が生ずるのを避けようということを目的とした条約でございまして、この条約のもとにおいて行われる博覧会につきましては参加国招請国政府の代表を任命し、その政府が外交上の経路を通じて参加及び招請手続をとるというメカニズムによってこの博覧会の秩序の正しい運営を行っていこうという目的でございますので、そういう観点からいたしますと、この条約のもとにおける博覧会につきましては政府代表という資格で参加を認め得る、そういう意味では外交関係を前提とした政府の間での参加及び招請ということを意図しているように考えられるわけでございます。したがいまして、私どもが承知している限りでは、この条約に基づいて行われております国際博覧会につきましては、各国とも未承認政府招請したという例はないようでございますし、これはこの条約目的が多分そのような慣行を生んでいるということではないかと考えております。
  193. 野間友一

    ○野間委員 私が聞いておるのは例があるかないかということでなくて、条約上国交がなくても招請はできるのではなかろうかということをお聞きしておるわけです。
  194. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 その件につきましては、先生指摘の十一条の趣旨も、外交上の経路による招請及び外交上の経路を通じてのみ回答することができるということを明確に規定しておりますし、それから十二条を見ますと、招請国国際博覧会政府代表を任命するということで、政府代表がすべてについて責任をとらなければならないことになっておりますし、十三条におきまして、参加国も陳列区域の政府代表を任命することによって自国からいろいろな法人であるとか個人が参加する場合があっても、自国の展示についてはその政府代表がすべて責任を有するという形になっております。こういう仕組みからいたしますと、やはり政府代表というものを任命し得る相手国がこの協定に言う博覧会参加するということが前提になっていると推定されるわけでございます。
  195. 野間友一

    ○野間委員 その点については博覧会趣旨にもとるというふうに思いますが、きょうはペンディングにして、さらに機会を設けてお尋ねをしてみたいと思います。  それでは筑波博はこの程度にいたしまして、次にお伺いいたしたいのは国際小麦協定についてであります。  まずその中で、小麦貿易規約について一点だけお伺いしたいと思いますが、これは第六次の延長ですね。新しい協定化への展望の有無、現在交渉は一体どういうふうになっておるのか、その点についてひとつ説明をしていただきたいと思います。
  196. 遠藤実

    遠藤説明員 お答えいたします。  小麦規約の改定問題につきましては小麦理事会で鋭意検討してまいったわけでございますが、七八年、七九年にかけまして行われました新協定案と称するものの交渉が中断いたしました。その後、七九年の十月でございますが、国際小麦理事会事務局長パロット氏の提案によりまして、新協定案よりも若干弾力的な運用を織り込んだものをベースとして討議を続けるかどうか、こういうことで種々議論が行われたわけでございます。しかしながら、大半の輸入国はこれに同調する方向でございましたけれども、結局輸出国が、主として食糧の安全保障というのは自由貿易体制それから在庫の公平な分担、その他逼迫時における供給保障というようなことで達成されるべきである、そのほか備蓄在庫につきまして各国が自国の必要性の範囲内で適正な在庫を保有すべきであるとか、代替案でいろいろメカニズムがございますけれども、それについて必ずしもうまく動かないのではないかというふうな主張がございまして、したがって、交渉会議の再開というめどは立たないままに推移してまいりました。  そこで、国際小麦理事会といたしましてはパロット事務局長に対して、事態の改善策を関係国と協議して結果を報告しろという要請をしていたわけでございます。これに対しまして事務局長が昨年の十一月の小麦理事会におきまして、現在の困難な事態を何とか打開すべく協議してきたところ、このパロット案ベースとして交渉会議を早急に再開することは困難であるという結論を報告いたしました。その結果、小麦理事会といたしましては、当面の措置として、現行協定協議メカニズムを強化、充実するということを提案したわけでございます。そしてそのように決まったわけでございますが、同時にわが国あるいはスイス等の先進輸入国開発途上国の方からの不満の表明がございまして、結局これと並行して新協定についても作業を継続することが適当である、こういうふうに輸入国側も輸出国側も含めまして合意を見た次第でございます。
  197. 野間友一

    ○野間委員 それでは質問を変えまして食糧援助規約についてでありますが、この規約を見ますとその目的のところで、一千万トン以上の食糧を援助するという世界食糧会議の目標の実質的な達成を確保することを目的とする、こういうことが書かれてあるわけですが、それではその援助を発展途上国が受ける場合に無条件で受けることができるのか、それともこの規約の運用に当たって何か条件があるのかどうか、この点についていかがでしょうか。
  198. 柳健一

    ○柳政府委員 特別の条件はございません。
  199. 野間友一

    ○野間委員 この援助の方針とか政策に関していままで加盟国間で協議をしたとか、あるいは何らかの合意をしたというようなことがあったのかどうか、その点どうでしょう。
  200. 柳健一

    ○柳政府委員 お答えいたします。  私の承知している限りではございません。
  201. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、この目的にある世界食糧会議の目標の実質的な達成を確保することというのがこの援助規約のすべてなんですね。
  202. 柳健一

    ○柳政府委員 そのとおりだと了解いたしております。
  203. 野間友一

    ○野間委員 そうだとするならば、食糧事情が大変困難だという場合には、その国ないしはその国民は援助をする、これだけがいわゆる人道的な見地に立った援助の基準、こういうふうに言ってもいいのじゃないかと私は思うのですが、その点はどうでしょうか。
  204. 柳健一

    ○柳政府委員 わが国が食糧援助をいたします場合には、これは政府ベースの援助でございますから、当然外交ルートを通じて援助要請が来るわけでございまして、先生指摘のように、発展途上国の食糧不足の状況と経済社会情勢、そういうもの、それから、わが国との二国間関係、限られた財源でやるわけでございますから、その諸般の事情を総合的に勘案いたしまして、当該国の食糧不足の窮状を助けていくということで、そういうことを目的といたしまして、具体的に二国間で、当該国との間で相談をしながらやっておる、こういうふうにやっております。
  205. 野間友一

    ○野間委員 世界食糧会議の目標の達成、これがただ一つの基準だということを言われたので、そこで私はお聞きしているのですが、七四年の世界食糧会議、これには宣言あるいは決議がたくさんありますけれども、この宣言を読んでも、「飢餓と栄養不良の撲滅とこの事情を引起した原因の除去がすべての国の共通の目的である」というふうにきちっと書かれておりますが、食糧会議の中で具体的にこういうふうに宣言に書かれておることからしても、飢餓と栄養不良の撲滅、この事情を引き起こした原因の除去、これが食糧援助する目的だ、具体的な中身について言うと、こういうことですね。
  206. 柳健一

    ○柳政府委員 世界食糧会議での考え方はそういうことだと了解いたしております。
  207. 野間友一

    ○野間委員 いろいろすべてを引くわけにはまいりませんけれども、飢餓の撲滅、栄養不良、これから逃れる固有の権利等々、さまざまなところでこういう表現が使われておりますし、それから、とりわけ人道的立場の強調。人道的立場を強調するということも、この宣言の中でも明確に指摘されておりますが、この食糧援助についても、いま申し上げた、あなたも認めたわけですが、飢餓と栄養不良から逃れるために、しかも人道的立場に立った援助というのが、そもそもこの一条の目的の中の、世界食糧会議、これにマッチしたものだというふうに理解していいわけでしょう。
  208. 柳健一

    ○柳政府委員 世界食糧会議での考え方はまさに御指摘のとおりだと思います。  わが国の食糧援助に対する考え方と申しますか、ちょっと一言申し上げますと、先生指摘のように、実際に、発展途上国におきまして非常な飢餓ないし食糧不足というものが生じておる。したがいまして、この食糧援助規約日本としても入って協力したい、こう思っているわけでございます。  同時に、他方、わが国といたしましては、発展途上国の食糧問題というのはやはり当該国の自助努力によってやっていかなければいけないということで、単に食糧を援助するだけでなくて、食糧増産のための協力をやっていく、こういう考え方に立ってやっております。
  209. 野間友一

    ○野間委員 それは別のところにも書いてあるので私もよく知っておりますが、それと同時に、いま申し上げたように、飢餓を撲滅する、栄養が足りない場合にはその栄養を補給する、しかも人道的な立場に立つというようなことがこの宣言の中に書かれておるわけですね。それはお認めになったとおりです。  それから、決議の中を見ましても、「食糧援助は受取国の開発目的に干渉せず、また供与国の政治目的を押付けず、国家の主権に調和した形で供与されなければならない」、これは決議の十八ですか、この中に明確に規定されておりますけれども、これはこのとおりですね。
  210. 柳健一

    ○柳政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおりでございます。
  211. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、幾つかいまお伺いしたわけですが、この食糧援助規約について言いますと、やはり世界食糧会議、これが一条にもきちっと基礎に入っておりますし、しかも、食糧会議の宣言とかあるいは決議、これを見ますと、まさに人道的な立場に立って飢餓からの解放、しかも政治的な介入、押しつけをしない、これはりっぱなものだし、これがベースでこの援助規約が運用される限り問題はなかろうというふうに私は思うわけですけれども、実際にいま政府がやられておることについては、私は大変疑問に思う点がたくさんあるわけです。  そこで、具体的にお伺いしていきたいわけですが、ベトナムとかラオス、インドシナ半島ですね、ここに対する加盟国の援助実績、これをまずお聞かせいただきたいと思います。
  212. 柳健一

    ○柳政府委員 お答えいたします。  私の手元にございます資料によりますと、一部の北欧の諸国を除きまして、ほとんどの国が援助を停止いたしております。ただ、フランスが最近改めて援助を再開するということを決めたように聞いております。
  213. 野間友一

    ○野間委員 では、順次お聞きします。  小麦の会計年度七六年-七七年、それから七八から七九年、これまで豪州それからカナダ、EEC、これらがベトナムあるいはラオスへこの規約に基づく援助をしておったというふうに私は理解をしておりますけれども、この点がどうかということの確認と、それから七九年-八〇年度に豪州あるいはカナダがやめたというふうに私は承知をしておりますけれども、その理由についてはどうなのかということ。
  214. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 お答えいたします。  北欧の二カ国、スウェーデン、ノルウェー、それぞれ小麦の食糧援助をベトナムに対していたしておりまして、スウェーデンにつきましては七九年の……(野間委員「あなた何を聞いておるのか。私の聞いたことに答えてください」と呼ぶ)失礼しました。スウェーデン、ノルウェーそれからオランダ、スイス……(野間委員「そんなことは聞いていないよ」と呼ぶ)食糧援助をしております。それから、カナダ等やめましたのは、やはりカンボジア情勢一般についてのカナダの判断によるものと思います。
  215. 野間友一

    ○野間委員 ちょっと委員長、注意してください。  質問を正確に聞いてくださいよ。私の聞いたことをあなたは全然理解していないわけですよ。七六年から七七年、七八年から七九年、これまで豪州それからカナダ、EEC、これが援助をしておったということの有無の確認と、なぜやめたのか、その理由を私は聞いておるわけですよ。
  216. 藤田公郎

    ○藤田説明員 まことに申しわけございませんが、ただいま各国の供与国別の資料は、八〇-八一年度については手元に持っておりますけれども、かつ、七九それから八〇年度については現在入手中でございますが、七六年の数字は持っておりませんので、後刻調査いたしてお答えいたしたいと思います。
  217. 野間友一

    ○野間委員 だめだ、もう審議できないですよ。私はこれをベースにこれからずっと質疑を進める予定なんですけれども、その答えができなければ進められませんので、この程度で打ち切って、次回にこの続きをしたいと思います。
  218. 中山正暉

    中山委員長 それでは、次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十一分散会