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1982-08-06 第96回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年八月六日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 吉田 之久君    理事 小渡 三郎君 理事 川田 正則君    理事 高橋 辰夫君 理事 島田 琢郎君    理事 吉浦 忠治君       臼井日出男君    浦野 烋興君       奥田 幹生君    古賀  誠君       高村 正彦君    國場 幸昌君       近藤 元次君    泰道 三八君       中村正三郎君    船田  元君       伊藤  茂君    岡田 利春君       竹内  猛君    馬場  昇君       玉城 栄一君    小沢 貞孝君       瀬長亀次郎君    菅  直人君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      田邉 國男君  出席政府委員         北方対策本部審         議官      橋本  豊君         北海道開発庁計         画監理官    富士野昭典君  委員外出席者         議     員 近藤 元次君         議     員 高橋 辰夫君         議     員 島田 琢郎君         北海道開発庁計         画官      大江 郁夫君         外務省欧亜局ソ         ヴィエト連邦課         長       丹波  実君         水産庁漁政部協         同組合課長   西川 俊幸君         水産庁振興部沿         岸課長     入澤  肇君         水産庁海洋漁業         部国際課長   真鍋 武紀君         通商産業省通商         政策局南アジア         東欧課長    糟谷  晃君         資源エネルギー         庁石油部開発課         長       深沢  亘君         自治省行政局振         興課長     浜田 一成君         特別委員会第一         調査室長    長崎  寛君     ————————————— 委員の異動 八月六日  辞任         補欠選任   奥田 幹生君     古賀  誠君   佐藤 信二君     船田  元君   鳩山 邦夫君     浦野 烋興君   五十嵐広三君     岡田 利春君   上原 康助君     馬場  昇君   松本 幸男君     竹内  猛君   小沢 貞孝君     部谷 孝之君 同日  辞任         補欠選任   浦野 烋興君     鳩山 邦夫君   古賀  誠君     奥田 幹生君   船田  元君     佐藤 信二君   岡田 利春君     五十嵐広三君   竹内  猛君     松本 幸男君   馬場  昇君     上原 康助君 同日  理事部谷孝之君八月五日委員辞任につき、その  補欠として部谷孝之君が理事に当選した。 同日  理事上原康助君同日委員辞任につき、その補欠  として上原康助君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  北方領土問題等解決促進のための特別措置  に関する法律案近藤元次君外十八名提出、衆  法第二八号)  北方領土隣接地域振興等特別措置法案島田琢  郎君外九名提出衆法第三〇号)      ————◇—————
  2. 吉田之久

    吉田委員長 これより会議を開きます。  近藤元次君外十八名提出北方領土問題等解決促進のための特別措置に関する法律案及び島田琢郎君外九名提出北方領土隣接地域振興等特別措置法案の両案を一括して議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 実はきょうの私の質問は、きのう理事会決定いただきまして、本法案の審議に関連して政府委員出席を要求いたしたわけです。特に北方対策本部長である総理府長官出席を要求したのでありますけれども、きょう委員部から私のところへの返事では、長官出席ができない、あとの関係については、それぞれ各省と調整しまして、きょう出席できない人はかわって出席をするということで、私は了解をいたしたわけです。なぜ本委員会の所管でもある総理府長官出席できないのでしょうか。
  4. 吉田之久

    吉田委員長 では、私から申し上げます。  私たちもそういう強い総理府総務長官出席を求める気持ちを持っておるわけでございますが、きょうは閣議、それから人事院勧告の立ち会い、北方少年総理大臣訪問同席等が午前中立て込んでおりまして、また午後は公務員共闘との会見、全官公との会見等がございまして、何とか採決時点では長官出席を求めたいと考えているわけでございますが、そういう事情にございますので、この際代理答弁を求めたい、こう考えております。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 人事院勧告は一カ月前からきょう行われることがわかっておった事実であります。ただ、理事会決定ではきょうどうしても採決をするのだということで、私は質問の時間も実は制限されておるという状況であります。そういたしますと、いずれ長官出席をするわけですから、そのときに一、二問質問機会を与えてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  6. 吉田之久

    吉田委員長 さよういたしたいと思います。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、まず、この法案をめぐる関連する諸問題について初めに御質問いたしたいと思うわけです。  日ソ間の関係は、政治的にはまだジグザグとした状況にあることは否めない事実であると私は思います。しかし、久しぶりで第二回の日ソ事務レベル協議が今年の一月二十日から三日間モスクワで開催をされました。その後、日ソ両国政府の間で公式的ないわば日ソ間の諸問題について折衝が行われたことがあるのかどうか、この機会外務省の方からひとつ御説明願いたいと思うわけです。
  8. 丹波実

    丹波説明員 お答え申し上げます。  日本ソ連の隣国といたしまして、日ソ関係を良好に発展させたいというふうに考えておることは御承知のとおりでございます。しかしながら、まさに先生自身いま言われましたとおり、最近の日ソ関係は必ずしも良好な発展の姿は見せていない。私たちといたしましては、この理由二つありまして、一つは、領土問題を初めとする日ソ間のバイ関係の問題がそういう要因となっておる。もう一つの問題は、アフガン問題に象徴されますところの国際社会におきますソ連行動の問題が理由となっておるということでございます。     〔委員長退席川田委員長代理着席〕  このような問題を解決するためにも、政府といたしましては、あらゆる機会ソ連側と政治的な対話をする必要があるという考え方をとっておりまして、まさにそういう観点から今般、一月の事務レベル協議も行われたわけでございます。その後、たとえば魚本大使グロムイコ外務大臣会談ですとか、あるいは新任の高島大使グロムイコ大臣会談、そういったものが行われました。六月の国連軍縮特総の際には、櫻内・グロムイコ会談が行われたことも御承知のとおりでございます。  私たちといたしましては、このような会談を通じまして実はグロムイコ外務大臣訪日ということをソ連側要請しておりまして、そのような機会を通じて平和条約の締結問題、その他先ほど申し上げたような重要な政治問題を話し合っていきたいというぐあいに考えておるわけですが、今日までのところグロムイコ外務大臣訪日は実現しておりませんし、近い将来実現するという確かな回答は私たちまだ得てないというのが現在の日ソ関係の展望じゃないか、こういうように考えます。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 日ソ間で当面問題になっておりますサハリン陸棚石油天然ガス開発プロジェクトの問題でありますが、わが国としては、ベルサイユ・サミットの場合に、鈴木首相レーガン大統領の間にも、本プロジェクト扱い方について意見の交換が行われたことは御承知のとおりであります。その後、アメリカレーガン政権対ソ経済制裁措置という中で、サハリンプロジェクトに対して、いわばアメリカ電気検層機器使用ができないという事態になった。しかし、これは日本だけではなくして、ヨーロッパ諸国においても同様の問題が発生をして、イギリスあるいはフランス、西ドイツ、いずれもレーガン政権措置に対して強い不信の念を表明いたしておるわけです。わが国政府米政府に対して同様な懸念の態度を表明しておるようでありますけれども、現時点においてサハリン陸棚石油天然ガス開発プロジェクトについて政府はどのように対応していこうとする基本的な方針をお持ちか、承っておきたいと思います。
  10. 丹波実

    丹波説明員 お答え申し上げます。  サハリンプロジェクトの問題につきましては、岡田先生自身先ほど言及されましたとおり、日本政府といたしましては、総理以下、外務大臣通産大臣関係大臣が、あらゆる機会アメリカ側にいろいろ要請をしてまいったわけですが、残念ながらポーランド問題との関連アメリカ日本側要請を認めなかった。私たち認識では、アメリカの頭に特にありましたのはヨーロッパのヤンブルグ・プロジェクトであろうと思います。それとの関連で、いわば日本側サハリンプロジェクトが飛ばっちりを受けた、そういう状況ではないかなというふうに感じます。  私たちといたしましても、アメリカ側決定の再考ということをいろいろなレベルで求めておりますし、また先般のいわゆる域外適用の問題につきましても、日本政府としてきちっと日本側の考えをアメリカ側に伝達しております。  そこで、サハリンの具体的なプロジェクトの今後の問題についての日本政府考え方ということでございますけれども、アメリカ側からのそのような否定的な回答に接しまして、サハリン石油開発協力会社ソ連側話し合いをいたしまして、紆余曲折はございましたけれども、結局オドプト構造探鉱につきましては八三年まで延長するという合意が何とかできたということでございます。  そこで、政府といたしましては、このプロジェクトが今後順調に進むことを期待しておるわけですが、その過程でソ連側との間で問題が生じました場合、あるいはアメリカとの今後の問題につきまして、いろいろな側面的な援助はできるだけしていきたい、こういう姿勢でこのプロジェクト政府としても臨みたい、こういうように考えております。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 このプロジェクトは、日本側はすでに政府資金を含めて六百億円の資金投資をいたしておりますし、当事者であるサハリン石油開発協力株式会社石油公団の出資が四〇%行われておるということではいわゆるナショナルプロジェクトである、こう申し上げても私は差し支えないと思うのであります。したがって、これを進めていくとするならば、当然引き続き資金投資が行われると想定されなければならないわけでありますけれども、その場合、今日話題になっている輸銀資金、すなわち資源開発ローン使用に踏み切るという考え方をお持ちなのかどうか、この機会に承っておきたいと思います。
  12. 深沢亘

    深沢説明員 お答え申し上げます。  先ほど来、先生からもちょうど御指摘ございますように、要するにチャイウォ構造というところとオドプト構造、この二つ構造が現在段階におきましては発見されておるわけでございます。  それで、チャイウォ構造につきましては、探鉱段階が一応終わって、これから鉱量のいろいろな評価を行い、そして具体的な開発計画に進んでいく。それからオドプト構造につきましては、先ほど外務省の方から御説明申し上げましたように、これからまだ探鉱が来年度までひっかかっていくという段階でございまして、それで現在問題になっておりますのが、要するにチャイウォ構造につきましてこれから開発段階に進んでいくわけでございますけれども、いま問題になっておりますのは、開発段階に進んでいく資金の確保をどうするかというその一つ前の段階でございまして、これから生産プラットホームをつくり海底パイプラインを敷設していく等に当たりまして土質がどうなっているか等々の調査、まあいわば事前の調査が問題になっているところでございます。その調査費につきまして現在、輸銀ソ連側との間で話し合いが行われている、こういう段階でございます。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 最近の対ソ貿易傾向でありますけれども、わが国米政府とともに対ソ経済措置をとってまいっておるのでございますが、貿易の面から見れば、順調とは言わないけれども発展している、こういう理解を私は実は持っておるわけであります。したがって、最近の対ソ貿易傾向について、この機会説明を承っておきたいと思います。
  14. 糟谷晃

    糟谷説明員 それでは、最近の日ソ貿易の動きについて簡単に御説明申し上げます。  一九八一年、昨年一年をとってみますと、日本からソ連に対する輸出が三十二億六千万ドル、輸入が二十億二千万ドルということでございまして、輸出の方は一七%の増、それから輸入は八%強の増、こういう状況でございます。したがいまして、昨年につきましては輸出入とも日本の対世界の貿易の伸びと大体同じという感じであったかと思います。  それから、昨年はそういう状況でございますが、ことしの上半期、一−六月をとってみますと、輸出は十九億六千万ドルということで、昨年同期に比べまして一一%ほど伸びておりますが、輸入の方が停滞しておりまして十億ドルということで、ほぼ昨年と横ばいでございます。したがって、ことしの上半期について申しますと、輸出は依然として順調であるけれども輸入横ばい、こういう状況になっております。  ちなみに、若干品目別に見てみますと、八一年につきまして日本からソ連向け輸出している主な品目は鉄鋼と機械、この二つが主要な品目でございまして、全体の約七割を占めております。それから日本側輸入といたしましては、木材と金、これで全体の約六割を占めている、こういう状況でございます。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 対ソ貿易関係では国際的に第五位の地位で、輸出は第三位の地位だ。ヨーロッパ諸国の場合には石油天然ガスソ連から輸出をしているという面で、輸入の方が日本構造が違うという点がこの数、字に顕著に出ておるが、輸出の面では第三位ということになっておりますから、依然として西ドイツ日本がその中枢にある、こう申し上げてもいいのではないかと私は思うのです。ただ、今年度上半期の、四半期のお話がいまございましたけれども、対中国の輸出はマイナス三七・二%、十七億六千万ドルでありますから、対ソ貿易の方が一一・三%の一九億六千万ドル、上回っておるという特徴点があるのではないかと私は思うのです。ただ、最近の傾向を見ますと大型商談が進んでおりませんから、これは下期、来年の上期の関係傾向がいろいろ影響が出てくる、こう私は承知しておるわけです。  そこで、かつて私が予算委員会伊東外務大臣質問した場合に、対ソプロジェクト関係はどういう基本的な姿勢で臨むのかということに対して大臣は、ケースバイケースで対処をしたい、そして互恵の原則である、たとえば資源開発などには投資をする、そのことによって資源わが国輸入されるというようなことを中心にして答弁が行われておるわけです。今日の対ソ貿易についてのわが国の基本的な方針はそのときと変わっていないのかどうか、また変更があるのかどうか、承っておきたいと思います。
  16. 丹波実

    丹波説明員 伊東外務大臣のお名前が出ましたので、私の方から御答弁させていただきたいと思います。  いろいろな考え方があろうかと思いますけれども、私は、日ソ間の貿易関係を進める場合に、主として次の四点が基本的な指針といいますか考え方になるべきものではないかと考えております。  まず第一点は、日ソ間の経済関係を進めていく場合に、日ソ間の領土問題が解決しておらない、平和条約がないという、そういう政治の状況を全く無視して経済だけを進めていくということはやはりできないのではないか。そういう意味では政経不可分といいますか、そういう考え方一つあるであろう。  それから二番目は、日ソ間の貿易経済関係を進めていく場合に、そのときどきの日ソを取り巻く国際情勢というものをやはり考えていかざるを得ない。御承知のとおり日本の基本的な外交姿勢は西側の一員としての行動ということでございまして、そういう観点からは具体的にアメリカとかあるいはヨーロッパとか、そういった国々との協調ということが一つ考え方であろう。  三つ目は、互恵平等といいますか、そういう経済原則という考え方ではないか。  四つ目は、安全保障の問題を抜きにして物事を考えるわけにはいかない。これは二つに分かれると思いますが、第一は、ソ連軍事能力を直接高めるような貿易の仕方というのはやはり問題があるであろう。この点についてはどこに線を引くべきかという問題は、ココムその他の場所で話し合われていることは御承知のとおりです。安全保障上の考慮の第二番目の考え方は、一定資源ソ連から輸入するような場合に、やはり依存度ということの問題は考えておく必要があるであろう。現在、日本エネルギー資源対ソ依存度というのは非常に低いわけですが、そういう意味で、当面見通し得る将来、現実の問題として問題にはならないと私は思いますが、観念的にはやはりこの問題があるという認識はとっておくべきじゃないか。  以上が基本的な四つの視点ではないか、こういうふうに考えております。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の質問は、対ソ経済制裁措置の中においてわが国は一体対ソ経済協力等についてはどうするのかということに対して答えられたのが、先ほど言った答弁の内容なわけです。したがって、いま丹波課長が言われているような点については、すでにそういう状況の中でこの質問が行われたわけです。  したがって、具体的なプロジェクトに対する態度としては、伊東外務大臣予算委員会における答弁、これはアフガン問題があり、そしてモスクワ・オリンピックにわが国が参加をしないという後の時点における政府態度でありますから、そういう意味では具体的なプロジェクトに対してはこの方針は変わってないのではないか、こう理解されるのですが、いかがですか。
  18. 丹波実

    丹波説明員 お答え申し上げます。  アフガン及びポーランドとの関連におきますところの状況の中で個々経済案件をどう進めていくかという点につきましては、まさにケースバイケースアメリカヨーロッパとの協調といったような問題を考えながら対処していきたい、これはいまも変わっておりません。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に、日ソ関係で大きな協力関係のファクターは漁業協定にあると私は思うのです。ソ日日ソ漁業協定があり、サケ・マスの漁業協定があり、日ソ漁業協力協定は今年自動延長下初年度に入ったという状況にあるわけです。また民間レベルでは昆布の漁業協定があり、また日ソ共同漁労協定が行われておる。こういう体系にあるのが日ソ間の漁業問題の状況であろうか、こう思います。いわば日ソ間の漁業問題というのは国際的にある一定の枠組みと秩序の中にある、こう理解していいのではないか。その点、今日の対米関係よりも一定秩序がある、こう見ることが常識ではないかと考えておるわけです。  そこで、問題点がいつでも出るわけでありますけれども、昨年十二月の交渉でもそうでありますが、基本的ソ日日ソ漁業協定で、わが国クォータが七十五万トン、そしてまたソ連側クォータが六十五万トンであるわけです。これは昨年の十二月の協定でも変わっていないわけです。しかし実績になりますと問題点が出て、その実績の問題をめぐっていろいろ問題点が議論されていると私は理解しておるわけですが、昨年の七十五万トン・六十五万トン・双方のクォータに対して実績はどういう数字になっているか、この機会に明らかにしていただきたいと存じます。
  20. 真鍋武紀

    真鍋説明員 昨年の日ソソ日協定に基づきますクォータ消化状況でございますが、一九八一年、ただいま岡田先生から御指摘のございましたように、総クォータ日本側が七十五万トンでございます。これに対しまして漁獲実績は五十二万六千トンでございます。消化率は七〇%でございます。そのうち主要な漁獲対象魚種でございますスケトウダラにつきましては、クォータが二十九万トンございますが、これに対する漁獲実績は二十三万八千トンでございまして、消化率が八二%ということになっております。  他方、わが国の二百海里におきますソ連漁獲クォータは、御指摘のように六十五万トンでございます。これに対するソ連側漁獲実績は二十万九千トンということでございまして、消化率三二%でございます。ソ連側主要対象魚種でございますマイワシとサバにつきましては、クォータが五十万トンに対しまして漁獲実績が十八万トンということで、消化率は三六%、こういうことになっております。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 昨年の交渉で漁場問題が最後まで問題になったということも、クォータは七十五万トン、六十五万トンですけれども、実績から見るとわが国は七〇%台、ソ連側は三二%ですから三分の一以下というところに問題があるわけであります。そういう点で今後ソ日日ソ漁業協定安定化を図るというのは、クォータ実績がまあまあというところまで行かないと、常に毎年毎年の交渉問題点が出てくるのではないか。これらに対しては、わが国側としてもやはりある一定の工夫を要するのではないか。わが国は、北洋漁業についてはいわば非常に伝統的、歴史的になれているわけですね。ソ連側は、わが国の二百海里に対してはきわめて歴史が浅いわけであります。また、したがって海況、漁況についてはわが国北洋の把握よりも弱い。しかし、クォータを完全にとることはできなくても、ある程度の水準、まあまあという水準、このことはやはり注意をしておく必要があるのではないか、私はこう思うわけであります。  そこで次に、最近北方海域において拿捕がまた頻繁に行われているようであります。今日の拿捕件数と、そして拿捕された漁船員の処分について、向こうの裁判でこれは判決を下すわけでありますけれども、すでに確定したものについて状況はどうなっておるか、この機会説明願いたいと思います。
  22. 入澤肇

    入澤説明員 北方四島周辺水域におきますソ連によるわが国漁船拿捕事件は、五十五年が十八件、五十六年が十件、五十七年が十件、これは八月六日現在でありますが発生しておりまして、いまのところ未帰還のものが十一隻、三十一人でございます。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 未帰還三十一人のうち、刑が確定した者とまだ未決の状態にある者の関係はいかがですか。
  24. 入澤肇

    入澤説明員 刑が確定して勾留されている者が四件でございます。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の判断では、最近拿捕されて刑の確定期間がずれておるのではないか。昨年までの傾向を見ますと、大体二カ月ないし二カ月半内くらいにそれぞれ刑が確定し、釈放する者は釈放する。また、刑に服する者はハバロフスクの刑務所に服役をする、こういうのがいままでのケースだと思うのですが、ことしの拿捕された状況を見ますと、その点の期間がずれておるのではないか、何かこの点問題があるんだろうか。当然外務省としても、これはわが国の国民の問題ですから相手方に問い合わせもしているのではなかろうか、こう思うのですが、この点はいかがでしょうか。     〔川田委員長代理退席委員長着席
  26. 丹波実

    丹波説明員 お答え申し上げます。  勾留から刑の確定までの期間につきまして、特に最近新しい変化が出てきておるというふうに私は実は認識しておらなかったのですけれども、先生せっかくの御指摘でございますので、調べまして何か新しい点がありましたら、別途後刻、先生のところに御報告に参りたい、こういうふうに考えます。  なお、個々のいろいろなケースにつきまして、根室その他の現地から外務省にも要請が来ておりまして、それにつきましては、その都度モスクワに取り次いでおります。たとえば最近のケースでは、お母さんが拿捕されて子供さんが非常に困っておるとか、あるいは別途拿捕された御婦人の心臓が悪いので何とかこれだけは特別にしてくれというようないろいろなケースにつきましては、その都度私たちといたしましてもソ連に取り次いでおるということは御承知のとおりでございます。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 先般も拿捕されたカレイ刺しの二人乗りの漁船はすぐ釈放になったという経過もあるわけであります。こういう事件が依然として毎年続くわけであります。  そこで、安全操業についての政府の見解を承っておきたいと思うのですが、いわば二百海里以前は、四島周辺については岸辺まで行って魚をとってもいいというのが水産庁の公式見解で、しばしば国会でも表明されているわけです。しかし、二百海里以降は、中間線というものは日ソ双方で認めているわけであります。それは領海もあれば二百海里もあるわけであります。したがって、当然この一つ協定区域内に入るということは許可証を所持する漁船でなければ入漁できないというのが当然だろうと思うのですね。いわば二百海里以前と、協定に対して向こうのこの海域における漁業の状況というものは変わっていると思うのです。したがって、政府はこの変わっている状況の中で今日どういう指導をしているのか、政府考え方を承りたいと思います。
  28. 入澤肇

    入澤説明員 日ソ漁業暫定協定に基づきまして、ソ連の二百海里水域におきましては、わが国漁船が操業を開始して以来、水産庁としまして、水産庁所属の取り締まり船、これは官船と用船とあるわけですけれども、これを随時北洋漁業関係水域に派遣いたしまして、ソ連海域の中ではわが国漁船に対して操業指導を行っております。わが国漁船とソ連監視船との間にトラブルが発生した場合等には、可能な限り現場に立ち会ってソ連監督官と折衝を行っております。また、北海道庁におきましても、道庁所属の取り締まり船、これは官船を用いまして北海道周辺の関係水域に派遣し、水産庁同様の漁船に対する指導、それから現場立ち会い、ソ連監督官との折衝を行っておる。二百海里内では操業指導をやり、二百海里外では常にわが国の方でトラブルが起きないようにという、これは水産庁長官の通達も出しまして指導をしているところでございます。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 二百海里内と二百海里外でいま説明があったわけですけれども、二百海里内ということは、領海十二海里、これはそれぞれの国によって起点のとり方がありますけれども、二百海里は結局陸地から二百海里。したがって、二百海里内については、これは協定漁場である限りは領海部分であろうとあるいは領海部分ではなかろうと、これについては許可証を持った船以外の操業はすべきではない、操業することができないということは、前と変わって明確になっているということなんですね。これはそうですか。
  30. 入澤肇

    入澤説明員 御指摘のとおりでございます。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 ここも問題があるんですけれども、これ以上の問題は避けておきたいと思います。  そこで、法案にごく関連する関係の問題について、総理府に承っておきたいと思うのですが、北方地域の居住者の実態について、これは昨年の予算委員会の私の質問では、特に次代継承の問題は五十六年度予算案で調査費を計上して、そしてその結果ひとつ対処をしたい、こう中山長官答弁をされておるわけです。したがって、あわせて居住者の調査も行われておるのではないか、こう思うのですが、ごく新しい調査では、北方地域の旧居住者の実態、いわば八月十五日時点で居住しておった島民数、それから今日生存されておる数、あるいは根室管内、また北海道内、北海道外の居住者数について、最も新しい数字はどうなっていますか。
  32. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 昨年、五十六年七月一日現在の数でございますけれども、生存者一万四百九十六人、居所等不明な者が約千百人ということでございます。このうちの四割が根室地域に居住しているということでございます。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 ちょっと数字が違うようですね。それはいつ、どこで調査した数字ですか。
  34. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 北方領土問題対策協会が社団法人千島歯舞居住者連盟に委託をして調査したものでございます。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 それは何年の数字ですか。
  36. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 先ほど申し上げましたように、五十六年の七月一日でございます。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 それぞれ法案の提案理由説明にも書いておるのですけれども、いま元居住者二万何ぼでしたね、間違いありませんか。
  38. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 二十年八月十五日現在が一万七千百六十七人であったわけでございます。その後、亡くなられる方がございまして、先ほど申し上げましたように、昨年の七月一日現在で一万四百九十六人ということになっております。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 一万七千百六十何人で、亡くなった方が一万四千ですか。
  40. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 現在生存している方が一万四百九十六人というわけでございますので、七千人弱の人が亡くなられたということになります。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 五十三年の調査の中間報告、これが大体いままで使われてまいった数字だと思うのですが、これによると、人口は一万七千九十八人、亡くなった方が四千四百八十一人という数字が出ているわけですね。これが五十六年になって、また、いま説明された数字でありますから、さらに死亡者の数が多くて、一万人強という数字になっておるというのが現状だと思うのですね。  そこで五十三年の場合は、根室市には引き揚げ者が二七・一七%、根室支庁管内四町村には八・三四ですから、合わせて三五・五一%、約三分の  一強ですね、根室管内に住んでいる居住者は。その他、道内地域に住んでおるのが一九・七〇%、道外には、はっきり把握したのが一七・八五%という数字、五十三年の中間報告の中ではこういう数字になっておるわけです。そうしますと、この数字の比率ですね。大ざっぱに述べられておりますけれども、根室支庁一市四町、それから道内、道外という点の明確な数字はおわかりですか。
  42. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 先ほどのより時点がちょっと違うのですが、五十五年十二月に北海道庁が調べたものによりますと、北海道内が八千七百九十八人、うち根室地域四千三百十七人。この内訳を申し上げますと、根室市が三千二百二十一人、別海町三百三十五人、中標津町百九十人、標津町二百二十四人、羅臼町三百二十七人、それから根室地域を除いた北海道内が四千四百八十一人ということでございます。先生のお手元の資料より時点がちょっと下がっておりますので、あるいは一致しないかもしれませんけれども、そういうことであります。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 道外はどうなんですか。
  44. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 この時点における数字は、一万一千六百五十五人です、この北海道のを含めまして。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 道外にも、旧居住者が住んでおるのでしょう。その数字はどうなっているのですか。
  46. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 道外が二千九十九人ということになります。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで、いま総理府所管の中で、領対協があるわけであります。本年度予算は六億一千二百二十七万二千円という数字が計上されております。ここでは、北方地域の諸問題について啓発活動が行われておるわけであります。今度の法案にも啓発活動が含まれておるわけですが、これは四十七年以降、この法律ができてこういう形で行われておるわけですが、この啓発活動について総理府はどういう評価をしていますか。いままでずっと長い間法律の目的に定めている啓発活動をやってきているわけですね。これに対してどういう評価をしているのですか。
  48. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 先生も御存じのように、北方対策本部と北方領土問題対策協会、それから民間の運動団体、数多くございますけれども、そういう団体がいろいろな活動を実施してまいりまして、その間に署名運動では現在二千四百万人の署名が集まっている。それから、北方領土の日が設定され、あるいは総理が現地を視察したというふうなこともございまして、現在のところ、かつてないほどの国民世論の高まりを見せているということでございます。先生も御承知のとおりでございます。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうすると、いまの答弁でいくと、満足とは言わないけれども、まあまあ満足的な状況に啓発活動は行われている、こういうことでしょうか。
  50. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 満足とは言いませんけれども、努力の成果は着々と上がってきておるというふうに考えております。
  51. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで、北方協会から引き継いだ、いわゆる旧漁業権者や居住者に対する援護措置でありますけれども、この点、五十一年ですか、二億上がって、資金の額は拡大されてきておるわけであります。だがしかし、対象事業についての拡大というのはないわけですね。また改善もないわけですね。こういう事業の拡大、改善について検討されたことがありますか。
  52. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 融資対象者の希望等を踏まえながらいろいろ検討はしておりますけれども、なかなかその聖業の拡大にまで至っていないというのが現状でございます。
  53. 岡田利春

    岡田(利)委員 今日、旧居住者はいろいろな要望、意見があると私は思うのです。視察に行くと、それぞれの団体の長がいろいろな要望、意見を文書できれいに並べて要望しますけれども、しかし、居住者の実態、内部に入ると、要望、意見というのはずいぶん断層がある、こう私は承知をしておるわけです。そういう点については、北方関係の援護措置もずっと長い流れがありますけれども、たとえば、今度は名称が変わりましたが、特定地域改善対策関係の予算なんというものが法律のもとに組まれて、北海道のウタリについてはウタリの予算措置が組まれている。こういう面から見ると現時点で、いまだ三十七年たって、しかもどんどん老齢化して死亡者が毎年ふえていくという状況の中において、居住者要望についてやはり大きな断層があるというのが、実は私の認識であるわけであります。したがって、すべてがこれは貸し金制度でしょう。ただ奨学資金だけは無利子ですね。あとは、たとえば四分で三分七厘六毛を利子補給する。返すといったって、老齢化するともう返し切れないわけですよ。子供がおればいいかもしれない、継承されるかもしれませんけれども。そういう点では、三十七年たった今日、居住者の構造は質的に大きな変わりがあるわけです。だから、従来の政策手段というものは見直す時期に当然来ている。前から来ているのだけれども来ている、こう私は思うのですけれども、そういう認識はございませんか。
  54. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 先生のお話のとおり、三十七年を経まして、融資対象資格を持っておる元居住者の年齢も確かに高齢化しておりますけれども、高齢者、たとえば八十歳以上の高齢者の方には、当時子供さんがあって、その子供さんも融資対象者たる資格を持っております。それでございますので、後継者について、後継者が融資対象資格を持っていない人というのはまだ五十歳代、六十歳以上の人は大体後継者が資格を持っているというふうに考えております。それでございますので、いま直ちに後継者について融資が得られないという状況はまだないであろうというふうに考えております。
  55. 岡田利春

    岡田(利)委員 北方領土問題は、もちろん国民的な大きな課題でありますけれども、その原点にあるものは何かということです。やはりいままでの返還運動なりいろいろな運動の歴史を調べてみますと、旧居住者が原点になっているわけですね。これは間違いない事実だと思うんですよ。ここに重点的な目を向けるということはきわめて当然ではないかと私は思うのですが、この私の意見についてはどういう御意見でしょうか。
  56. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 現在行われております元居住者に対する援護というものも、元居住者の意見、それから居住者の団体である千島連盟等の意見、希望等を踏まえながらできるだけ努力をしておるところでございますけれども、今回できます法案においても元居住者に対する援護というものが入っておりますので、これによってさらに手厚い施策が行われるものと存じております。
  57. 岡田利春

    岡田(利)委員 この辺のところが、ちょっと後から長官にやはり聞いておきたいなと思うわけであります。  そこでウタリ協会、ウタリ関係、これは所管は北海道開発庁になっておるわけですけれども、各省にまたがっておるわけですね。去る五月二十三日の北海道ウタリ協会の総会において、全千島に対しては、先住民族としての権利を保有するという公式的ないわば主張がなされたわけですね。これはもう大きく報道されておりますから、政府も御承知かと思います。これはだれに答弁していただいたらいいかどうか私も見当がつきませんけれども、このウタリ協会の総会における発議、決定について政府はどういう感想を持っているか承りたいと思うのですが、だれがいいでしょうね。これは所管は開発庁だな。
  58. 富士野昭典

    ○富士野政府委員 お答えいたします。  いま岡田先生がお話しになりましたウタリ協会のそのことでございますが、私ども、聞いている話でまことに申しわけないのですが、北方領土にウタリの方々が昔から住んでいたという事実を尊重してほしい、それでそういうことについて協会の中で今年度中ぐらい、どういうふうにするか検討をしてまいるというふうな話を聞いておりまして、私どもはそれに対してどうこうということは、まだ具体的な処置をとっておりません。そういう現状でございます。
  59. 岡田利春

    岡田(利)委員 同和対策というのは民族問題を内在しているわけじゃないですが、ウタリ問題というのは民族問題であるわけですね。わが国は単一民族で民族問題は存在しないというたてまえを政府はとっておりますけれども、疑いもない事実なわけです。一方は法律によってちゃんと予算措置がなされる。一方は単なる予算措置で、このまま対策が行われている。これはやはり片手落ちだと思うんですね。この点、やはりぴしっと法律をつくって、特定地域のように、旧同和対策のように法律をつくって、そして予算措置が組まれるという方向に改めなければならない時期に来ているのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  60. 富士野昭典

    ○富士野政府委員 この問題について私からお答えするのが適当かどうか、ちょっと疑問の点もございますけれども、私どもがウタリ対策としてやっておりますのは、北海道ウタリ対策ということで、北海道に現在住んでおられるウタリの方々についての対策を進めているということでございまして、先生のおっしゃっているウタリ対策と多少ニュアンスが違うのではないか、こういうふうに考えております。私どもは、北海道に在住しているウタリの方々について地域対策として進めている、こういうことでございます。
  61. 岡田利春

    岡田(利)委員 同和対策だって、地域改善対策の関係は、これは地域指定でしょう。北海道だって北海道ウタリは地域指定でしょう。何も変わらぬですよ。内容を検討したら、地域改善対策よりもウタリの対策は、予算措置としてもおくれているわけですよ。低い水準が存在しているわけですよ。そういう点をもう少し、これ以上やったら時間がないからやめておきますけれども、問題点として指摘しておきたい、こう思います。  そこで、自治省にお伺いしますけれども、自治省は特別交付税の中で、特に北海道の特殊な部分、道及び根室市あるいはまた他の町村において、北方関係のいろいろな行事とか啓発とかやる。それに対しては特別交付税で見てきておるわけです。五十五年、五十六年のこの関係の特別交付税はどの程度交付されておるか、御説明願いたいと思います。
  62. 浜田一成

    ○浜田説明員 お答えいたします。  北方領土隣接地域の特交の総額をまず申し上げたいと思いますが、根室市におきましては、五十五年度三億二千五百三十四万六千円、五十六年度三億五千九十七万四千円。別海町におきましては、五十五年度一億五千四百八十万五千円、五十六年度一億五千九百九十七万六千円、中標津町、五十五年度が一億五千七百十八万七千円、五十六年度が二億二百九十万四千円、標津町、五十五年度が一億百三十八万一千円、五十六年度一億四百三十八万四千円、羅臼町、五十五年度が一億二千九万円、五十六年度一億二千百六十三万三千円、合計で申しますと、五十五年度が八億五千八百八十万九千円、それから五十六年度が九億三千九百八十七万一千円ということに措置がなされているわけでございます。
  63. 岡田利春

    岡田(利)委員 まあ相当の額であるということは、いまの数字で明らかだと思うわけであります。  そこで、今回提案されている法案を見ますと、啓発活動、そういうことについて基金の運用を図るということになっているわけです。そうしますと、当然従来交付税の対象になっていたものと同じものがあれば、これは交付税から差っ引かれるということになるでしょう。なるという見解を私は承っておりますけれども、この点はいかがですか。
  64. 浜田一成

    ○浜田説明員 交付税の問題でございますが、隣接地域の五市町の北方地域に関する財政需要、それからその他の財政需要というものがございますので、そういったものを今後も適切に把握いたしまして必要な交付税措置をとってまいるということでございます。
  65. 岡田利春

    岡田(利)委員 ただ、いまの自治省の答弁は、私が質問を設定したのは、北方諸問題に対する啓発活動行事、こういうものに対して特別交付税で見る、これは隣接の要素以外のものも入っているわけでしょう。これはまだ少ないのですよ。だから、北海道と五市町合わせて五十五年度恐らく四千七百万円程度じゃないですか。その数字はいかがですか。
  66. 浜田一成

    ○浜田説明員 概略その程度になっております。
  67. 岡田利春

    岡田(利)委員 五十六年度は。
  68. 浜田一成

    ○浜田説明員 五十六年度は、それよりもややふえておるという段階でございます。
  69. 岡田利春

    岡田(利)委員 ですから、私は、本法の啓発の事業ということになれば、いま述べた点が競合するのだと思うのですね。したがって、その点が問題として出るということをまず指摘をしておかなければならない、こう思うのです。  そこで問題は、いま提案されている法律案で基金制度が設けられて、後から提案者に質問するのでありますけれども、啓発事業ということが三つの要素のうちの一つとして入っているわけですね。ですから、いま私が後段に言った部門については交付税の対象にならない、いまの交付税の基本要領から言えばそうなることはきわめて必然的な結果として、素直な結論として導き出される、こう思うのですけれども、どうでしょうか。
  70. 浜田一成

    ○浜田説明員 基金そのものでの果実で行われる事業について交付税の対象にならないことば事実でございますが、その他の市町村が独自にやられるもの等があれば、そういったものは財政需要として把握されるということでございます。
  71. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで開発庁に伺っておきたいと思うのですけれども、今日の根室管内について、開発政策上特に問題点について開発庁として把握されておると思うのですが、開発政策の問題点についてはどういう認識をお持ちですか。
  72. 富士野昭典

    ○富士野政府委員 お答えいたします。  根室地域の基幹産業というのは先生も御存じのように農業と水産業であろうかと思います。農業につきましては、あの地域はいわゆる酪農中心の地帯でございまして、大規模なかつ高生産性の農業あるいは酪農をやってきておる、こういうことでございます。酪農につきましては、最近では生乳の自主調整によって生産量を余り伸ばすわけにいかないというような問題、あるいはかなり急速に大規模な投資をやってきたというようなことがありまして、農家の負債が問題になりつつあるというのが現状ではないか、私はそういうふうに考えております。  それから水産業につきましては、あの地域には非常に生産力の高い沿岸地域があるわけでございますし、また遠洋あるいは沖合い漁業の基地もありまして、それを中心にして発展してきたわけでございます。しかしながら、いまいろいろ問題とされております北方領土問題が未解決であるというようなことに加えまして二百海里の問題等がありまして漁獲高が減ってきているというのが一つ問題点であろう、こう思っております。そのために漁家の経営がかなり悪くなり、それに伴い関連産業についても影響が出ているというのが現状であろう、こういうふうに思っております。この現状の解決をどうするかということが私どもの問題点であろうかと思います。  農業についてはやはり経営コストを下げていくということが一番大きな問題であろうと思います。そのためには、この地域の農業の中心であります乳用牛についての品質改良あるいは飼料の自給力の向上あるいは農業機械あるいは施設の共同利用というようなことを進めてまいりたい、こういうふうに考えております。  それから水産業につきましては、どうしても沿岸資源開発及びその培養ではないかというふうに考えております。さらに、そういうものを通じて水産資源あるいは漁獲したものの加工度を高めていくということがこの地域の問題ではないか、こういうふうに考えております。  なお、この地域は北海道の一番東の外れにありますし、また地域もかなり広大な地域にわたっておりますので、交通網の整備ということも一つの問題ではないか、こういうふうに考えております。  以上でございます。
  73. 岡田利春

    岡田(利)委員 ありきたりな答弁であります。御承知のように国鉄は、いま内陸根室の標津線と厚床線を第二次の廃止対象線としていますね。したがって、根室管内には厚床から根室市までの鉄道しか残らぬという地域でもあるわけです。したがって、交通体系の問題がきわめて重大な問題になってまいります。特に強調しておきたいのは、わが国で医療水準の最低な県は沖繩県であります。沖繩県は医師の数は十万人当たり六十八・一人です。根室管内は十万人当たり四十八・一人なわけです。最低の県の沖繩水準よりもはるかに下回っておるわけですよ。北海道でももちろんどん底の状態にあるわけです。ようやく、ことし僻地基幹病院の指定が中標津病院に行われる。ようやくそこまで来た。北海道で十一番目くらいですか。そういう意味でも、施策という面でいろいろ言われておるけれども、どうもおくれをとっている。特に一昨年昭和五十五年の十一月十四日、鈴木総理は閣議で発言をして隣接地域の特別措置をやれということで各省連絡会議が設けられた。そこで、この初年度に当たって、私は予算委員会で原長官に、一体何をやったのだという、質問をしましたら、落石—初田牛線を採用しました、中標津空港の整備をやります、漁業の振興については予算執行の上で配慮していきたいという答弁があったわけです。これはいずれも前から決まっておる計画なのです。何もなかったと言っていいのじゃないかと思うのですね。  では、ことしはどういうことをやったのですか。それから、来年度に向けてどういうことをやろうと考えられておるのですか。せっかく各省連絡会議をやって、北海道から上がってきてかんかんがくがくやって、この点は明確なのでしょうか。私が質問したときにはまだ、十一月に発言をしてそれを受けて各省がやって、そしてすぐの予算でやりますから、まあまあここは理解できるとして、では今年度の予算ではこれを受けてどういう特徴が持たれているのか、あるいはまた来年度に向けて開発庁はどういうことを考えているのか、何かありましたら承っておきたいと思います。
  74. 大江郁夫

    ○大江説明員 お答えいたします。  五十六年度から政府関係省庁で連絡会議を設けまして、根室地域の振興対策を進めてきているわけでございますが、これは地元一市四町並びに北海道の要望を受けまして、政府関係機関がそれぞれの所管において現行制度を前提にいたしまして最大限の措置を講ずるということでやってきてございます。具体的にどういう玉があるのかということになりますと、いまこの時点でにわかに申し上げるということではございませんが、根室地域の要望に対して最大限の配慮をしているということでございます。
  75. 岡田利春

    岡田(利)委員 法案の提案者にこれから質問いたしたいと思うのですけれども、時間が非常に気にかかるのですが。  この法案が提案されるまでの経過を振り返ってみますと、先ほど言いましたように五十五年十一月十四日に鈴木総理は閣議で発言をして、北方領土の隣接地域の特別措置について指示を出したわけです。そしてきょう小沢委員長もおりますけれども、中山正暉君外十一名提出北方地域内の村の北海道の区域内の市又は町への編入についての地方自治法の特例に関する法律案というものが出されておりますね。これはきのう下げたのですか、何かそうらしいですね。それまで生きておったらしいですね。そして私の方から、北方地域旧漁業権者等に対する特別交付金の支給に関する法律案というものを出したのですけれども、前国会で前者の法律案だけ残して私の法律案だけ廃案にしたわけです。ずいぶん暴挙だと私は思うわけであります。何も結論を出すのじゃなく、もう少し置いて一緒に審議をすればいい、下げるなら一緒に下げればいいじゃないですか。どうもこの委員会の運営は、そういう点で私はかちんとくるものがあるのであります。そして今回の法律案が出されてきたわけです。島田君を筆頭にする法律案として北方領土隣接地域振興等特別措置法案が出ておるわけですが、これは、前に述べました中山正暉君の私案として、島田提出法律案と同じ名前の北方領土隣接地域振興等特別措置法案というものが理事会に出されたという経過があるわけです。そして、最終的にそれを経て今回の法律案提案になっているわけです。  そういう一連の経過というものを冷静に、反省課題も含めて考えておく必要があると私は思うのです。そういう上に立って、素直に本件についてどうするかということを考えるべきじゃないかというのが私の意見なわけです。  ですから、こういう経過を考えますと、大体この種の法律案というのは、各党の意見あるいは案が出ても、委員長で調整をされて、委員長提案ぐらいで全会一致で持っていくというのがやはり望ましいのですが、どうも時間はあったけれども、今日ここに至ってきょうは採決をやるというところまで来ているわけです。私はそういう点で、北方関係の国会決議すら、各党の主張に違いがあっても——何回やっていますか、北方領土関係についてはもう衆参で四回ぐらい本会決議をやっているわけでしょう。そういう精神を踏んまえ、また法案の性格を考えれば、そういう努力がなされていくことはきわめて当然だと私は思うのであります。しかし、何か知らぬけれども勝手に走って、もうきょうやるというのでありますから、非常に遺憾だと私は思います。  そこで、この法律案の立法に当たって、関連法律としては北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律及び北方領土問題対策協会法があるわけであります。この関連については立法に当たってどういう検討をされましたか、この機会に承っておきたいと思います。
  76. 高橋辰夫

    高橋議員 中山私案というのは、昨年秋、自民党内で検討された北方領土隣接地域振興等特別措置法案のことかと思いますが、お話しのとおり今回提案の基礎になったものであります。私どもは、その法案の趣旨において北方領土解決促進のためという趣旨をより明確にしただけで、根本の考え方において何ら変わったことは考えておりません。具体的な措置の内容についても、前の案で一本に書いてあった北方領土問題についての啓発宣伝と元居住者の援護を別に取り出して柱を立てることとしたものでございます。  それから、基本方針北方領土問題対策協会法との関係についての御質問かと思いますけれども、北方領土問題対策協会法は、北方領土問題対策協会の設立とその業務の範囲と組織を定めているものでありまして、一方、この特別措置法案により定めることとされておる基本方針は、今後北方領土問題に対する世論の啓発や元居住者に対する援護等をどのように推進していくかについての基本的事項を内容とするものであり、北方領土問題対策協会も、今後の事業の推進に当たってはこの基本方針に沿って行っていくことと考えておる次第であります。
  77. 岡田利春

    岡田(利)委員 この法律案でいろいろ問題点がありますけれども、まず問題は第十条の基金の問題でありますが、題名は「北方領土問題等解決促進のための特別措置」であって、基金は「北方領土隣接地域振興等基金」という名称がつけられているわけです。そこで、これは五年間で政府が八十億補助をする、道は四分の一、したがって五年間で最終年度は百億の基金になるという内容になっておるわけでありますけれども、五年間で均等割りで国は八十億の補助金を出すということなのか、また状況によって、執行する政府が要するに最終的に五年後に八十億になればいいという趣旨なのか、この点が第一点であります。  それから、この基金の運用について、結局これは預託をして、金利七・六%ですかその益を運用する。そして一、二、三となっているわけです。一は「北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定のための事業」、二は「北方領土問題その他北方地域に関する諸問題についての世論の啓発に関する事業」、三は「北方地域元居住者の援護等に関する事業で次に掲げるもの」、こうなっておるわけです。したがって、基金の運用については、この三つの要素に対するウエートというのは当然想定されておると思うのです。  この二点について、提案者はどういう考え方を前提にして立法されたか、承っておきたいと思います。
  78. 近藤元次

    近藤(元)議員 ただいま御質問いただいた五年以内に基金を積むという問題でございますけれども、書かれておりますように、基金については今後の予算編成の際に五年を待たずしてできるだけ早い時期に目的の基金を設定したい、こう考えておるわけでございます。そういう意味からすれば、当然五年間均等割ということは考えていないわけで、五年以内に所期の金額を積み上げていきたいということでございます。  なお、運用に際しましては、御案内のように北海道に条例を定めていただいて、この運用に際しましては当然当該地域の要望なり御意見を聞き、この法案の趣旨に沿って運用していただくように国からも指導していただかなければならない、こう思っておるわけでございますので、その点御了解をいただきたいと思います。
  79. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし、基本方針及びこの十条の基金を補助する場合、一、二、三点挙げられているわけですね。地域振興と生活安定、それから啓発と旧居住者の援護。当然最終的には百億になれば七億六千万でも結構なんですが、ウエートがあると思うのですよ。これは北海道に任せれば適当にやれるというものじゃないと思うのですよ、立法の趣旨からいって。だから、どこに重点があるのか、どういうウエートをかけているのか、これは当然なければおかしいと思うのですね。この点は、せっかくこれだけのきちっとした、目的から基本方針に始まって基金のところまでも一貫して三点を挙げているわけでありますから、したがって、そのウエートについてはいかがですか。
  80. 近藤元次

    近藤(元)議員 この法案策定に際しましては、われわれなりに一応の地元の要望なり御意見を聴取しながら法案の作業に入り、百億という金額も設定をいたしたわけでございまして、百億の基金で七・三%の果実を生んで、地元から出てきた現段階の総額が百五十億ぐらい出てまいりまして、三本柱合計して百五十億ぐらい、これは十年ぐらいの間に地元の要望を満たしてやるためには、およそ百億あれば大体いけるのではないだろうか。しかし、年次ごとのウエートなりそういう面につきましては、啓蒙、啓発あるいは地元の産業における事業につきましては、金額的にはかなり隔たりが実はございます。ただ、われわれが聞く範囲内というのは関係市町村をもって聞くわけでございますので、元居住者を含める公共的な地域振興がややウエートが高いように実は思います。当然島民に対する、旧居住者に対する援護等についても、なお今後さらに御意見なりをお聞きして、年度の消化に際しまして先生の御趣旨に沿うような方向で今後の努力をわれわれは喚起していきたいと思っております。
  81. 岡田利春

    岡田(利)委員 島田議員の提案のこの法律では二つの要素、援護とそれから隣接地域の振興、そして額は違いますけれども同じような基金制度を採用する、全く同一であります。この場合は立法者としてはどういうウエートを考えられたのですか。
  82. 島田琢郎

    島田議員 おおよそ地域振興に七割、引き揚げ援護に三割というめどでフレームを考えていますが、これらの運用はもちろん上から押しつけるようなやり方というのは好ましくありませんから、おおよその考え方として百二十五億の割り振りをいたしておりますが、運用は地元の皆さん方の自主性を大きく盛り込んだものにすべきだ、このように考えています。
  83. 岡田利春

    岡田(利)委員 近藤提案者はウエートを明確に言うことをちょっと避けられたようでありますけれども、理事会で提案者が考え方説明されたことを漏れ承ると、啓発及び援護については約一割程度、そしてあとの九割程度は地域振興、地元要望をまとめた面から言ってもそういうことになる、こういうことが理事会で表明されたと私は承知をいたしておるわけであります。そういうことを述べたことはございませんか。理事懇談会かもしれませんね。
  84. 吉田之久

    吉田委員長 ありません。
  85. 高橋辰夫

    高橋議員 言っておりません。
  86. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はそういう説明を承ったわけです。間接的に聞いたわけであります。  そこで私、非常に心配するのは、結局はかつての地元要望百五十億の内容を見ても、いま私が指摘した方向になりかねないと私は思っているわけですよ。もしそうだとすれば、半分を啓発、半分を援護に向けたとすれば、七億六千万のうち一〇%と言ったら七千六百万ですよ。半分にしたら三千七百万程度の金にしかならないわけですね。そうすると二と三というものは、実際に基金運用の対象としては非常に問題点が残る、こう私は思うのであります。「北方領土問題等解決促進のための特別措置」というのは、この題名をつける以上、いま一番大事なのは国民世論を啓発する、これはいろいろ問題がありますけれども、そういうたてまえをとっているということです。そして先ほど言ったように、いままで本当の原点は旧勘民であった、こう言っているわけですね。だからここに相当なウエート、できれば三割程度のウエートが当然置かれないと、どうも法律の目的とか基本方針とか基金の運用の方針から言って当を得ない、こう思うのです。だから、ある程度の目途というものは、私がいま言ったように最低三割程度のものがいま言った二つの要素ぐらいに向けられないとこの法律はおかしいと思うのですが、私のこういう考え方についてはいかがでしょうか。
  87. 高橋辰夫

    高橋議員 基金の運用益の配分に当たりましては、今後各方面とも協議し、合理的な運用に十分配慮してまいりたいと思っておる次第であります。
  88. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは北海道庁に対して補助金を出して基金を設ける、そして条例で定めるわけですね。したがって、地方自治体の金が、北海道の金が二割入っているわけでありますから、この対象は北海道内に限るわけでしょう。どうですか。
  89. 近藤元次

    近藤(元)議員 地域振興の部分については根室周辺地域になるわけでございますけれども、元居住者については元居住者でございまして、北海道に住んでいる人でなくとも対象ということで考えております。
  90. 岡田利春

    岡田(利)委員 ウタリ協会の場合も私は政府と論争したことがあるのです。道外のウタリにもアイヌ人がおるわけですね。しかし、これは道に補助を出して、それで運用するわけだから、したがって道内に限る、まあ重複している関係もありますけれども。今度の場合は北海道に基金をつくるわけですね。そして北海道庁もお金を出すわけですよ。そうすると富山とかそれ以外の人々もこの場合対象になるということを明確にしてよろしいですか。
  91. 近藤元次

    近藤(元)議員 それは法律をつくる前に事前に協議して、それで差し支えがないということで専門家からのお答えをいただいておるので、その趣旨でこの法律を提案しておるわけであります。
  92. 岡田利春

    岡田(利)委員 北海道につくられた基金の運用で啓発事業、国民世論を喚起してと、大変ハイレベルの目標を掲げておるわけでありますけれども、そうしますと、この基金で全国的な啓発活動をする、こういう理解でよろしいのでしょうか。
  93. 近藤元次

    近藤(元)議員 先ほど岡田先生もお話しのございましたように、元居住者が中心になって返還運動を今日まで続けておるわけでございますし、元居住者が根室週辺に現在四〇%居住をしておるわけでございますから、当然のことながら根室市を含める週辺地域が町の単独であるいは団体の単独でやられておる事業もたくさんありますので、きわめて環境の厳しい零細な町村に、全額を町財政、市財政でやることもいかがなものかと思って一部の補助を、その地域で単独でやっているものに限って基金から補助をしたらどうかということで提案いたしておるわけでございまして、全国的なものは当然のことながら総理府の予算でやるということでございます。
  94. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、この隣接一市四町で行う事業、これ以外にも北海道では皆各町村やっていますよ。釧路でもやっています。居住者が釧路にも一〇%いるわけですから、全道的に分布がありますから、札幌でもやっているわけですね。しかし、この基金の啓発事業の対象は一市四町に限る、居住者は全国的な視野で旧居住者全員を対象にする、こういうことで理解していいのですか。
  95. 近藤元次

    近藤(元)議員 そういう考え方で提案をいたしておるわけであります。
  96. 岡田利春

    岡田(利)委員 ここで大分はっきりしたのですが、この法案の内容というのは、そういう意味で言うと北方隣接の地域、旧居住者だけは全道、全国的にいわゆる旧居住者だ、啓発はそこの限定された一市四町でやっている啓発事業に対して基金でめんどうを見るんだ、だからウエートがぐっと低くなると思うのです。あとは残ったのは全部生活の安定、産業振興に使うということになるわけですね。そうするとますます、法体系から言うと北方領土隣接地域等の振興ということは、名は体をあらわす、きわめてどんぴしゃりで、中山私案というのはさすが先見の明があった、こう思うのですが、その点何かわれわれ立法府の議員として矛盾を感じませんか。
  97. 近藤元次

    近藤(元)議員 先ほど高橋議員から中山私案との関係で実は出てまいりましたし、わが党の中でも地域振興という話で中山私案が出たわけでございますけれども、高橋議員から御答弁がございましたように、この中でいわば最終の目的は北方領土返還が終局の目的でありますので、前回の法案を基礎にしながらも、なおこれが返還のための一助となることを期待も申し上げて、啓蒙宣伝と居住者の援護について明確に柱を立て基本方針を打ち出したということで、結局名称も変えさせていただいたということでございますので、考え方につきましてはそう差がないもの、こう思っておるわけでございますので、御了解をいただきたいと思います。
  98. 岡田利春

    岡田(利)委員 法律の実体論としては、そう差がないんですよ。それは私もよく認識しているわけです。しかしながら、立て方としては立法技術上どうなのかという問題がやはりあると思うのですね。普通、法律というのは実体を法律の名前であらわすというのが立法技術としてきわめて当然だと思うのです。そういう意味で私は疑問を提起をしておるわけです。そうしますと、居住者の場合、いま領対協で貸付業務で援護措置をとっているわけですが、この内容を見ますと、事業者の関係で見ると漁業者が大体八〇・一%という数字になっておるわけですね。どうしてもやはり漁業関係のウエートが非常に高くなっておるわけです。したがって、ここでは援護について具体的な例示として書いておりますのは、「技能研修その他その生活の、安定及び福祉の増進」、こうなっているわけですね。技能関係というのは労働省関係でやっておる技能訓練などを指しておるのじゃないか、あるいは道でやっておる道立の高等職業訓練なんかの関係を指しておるのじゃないかと私は思うのですけれども、特に北方協会で援護措置をとっている、住宅資金の貸し付けもやる、奨学資金も無利子で貸し付けする、いろいろな事業に金を貸す、こういうことをやっておるわけですけれども、それとの関係が当然出てくるだろうと思うのです、何を対象に決めるか知りませんけれども。そういう関連についてはどう考えていますか。  同時にまた、元居住者は全国を対象にするといえば、道がこれを把握するというのは大変ですね。改めて組織をつくるなんというのは大変なことですよ。金ばかりかかって事務費が多くなるわけですよ。そうすると、これは北方協会に委託をするのか。この点、実務的にどういうことを前提にされていますか。
  99. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 北海道に元居住者を構成員とする千島歯舞諸島居住者連盟というのがございます。この団体が構成員を対象にいろいろな事業を現在やっておりますし、今後もいろいろな企画をやっていきます。そういうことで、略して千島連盟と言っておりますが、その千島連盟に仕事をやってもらうということになるのじゃないかと私どもは理解しておるわけでございます。
  100. 岡田利春

    岡田(利)委員 もし居住者に対して資金を貸し付けするような援護措置をこの基金でやるとすれば、北方協会でやっておるわけでしょう。業務をふやすかあるいは委託すればいいわけでしょう、全居住者を対象にしておるわけですから。実際問題、千島連盟にそれだけの能力がありますか。富山県、道外、全部の能力がありますか。専従者を調べてみても、ここに資料がありますけれども、そんな能力があるとお思いになるのでしょうか。あるいは補助金を出すという場合でも、公示もしなければなりませんし、徹底もしなければならぬわけでしょう。道が全部、道外の二〇%の旧居住者分もできますか。だから私は前段に関連法律案との関係を聞いているわけですよ。でないと、屋上屋を重ねて事務費ばかりふえるわけですよ。基金だって、条例をつくったら、この基金の管理の事務費も出てまいるわけですから、だから屋上屋とか、同じ政府が財政資金を出してこういう政策をするに当たってそういう問題があるのではないのか、こういう意見を述べているのです。それで冒頭、私は、関連法案との関連については検討されましたか、十分研究しましたかということを聞いたわけです。どうなんでしょう。
  101. 高橋辰夫

    高橋議員 援護措置の中で直接の貸し付けというものはいま現在この法案作成に当たっては考えておりませんから、そういうことでございます。
  102. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういうことが考えられてなければ、「技能研修その他」とありますけれども、技能研修以外に何かあるのでしょうか。
  103. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 先ほど申し上げました千島連盟がいろいろと検討し、われわれの方にもいろいろな要望が出てきております。その千島連盟の考え方からそんたくしまして、技能研修はもとより、先生のおっしゃいますように元居住者が北方領土返還要求の中核であるということでございますので、その返還要求運動を続けるための自覚とそれから活力を維持するということで、たとえば現地で集会を催して北方領土返還に向けてのいろいろな相互の情報交換、意見交換あるいはいろいろな研修会をやるということ、それに対しても、その事業をやりたいので補助してくれぬかというようなことが出ております。たとえばそういうふうなことも援護の一環として今後上がってくるのではないかと思っております。
  104. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし、「北方地域元居住者の援護等に関する事業で次に掲げるもの」、「北方地域元居住者がその能力に適合した職業に就くことができるようにするための技能研修その他その生活の安定及び福祉の増進を図るための事業」、これが例示として上がっているわけでしょう。いまの総理府答弁から言うと、それは二の事項ですね。世論の啓発の場合は一市四町に限れとはっきりしているわけでしょう。元居住者はそれ以外にも全国にいるわけでしょう。いまの答弁は全然合わぬじゃないですか。
  105. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 いま申し上げました例示のほかに、千島連盟が考えておりますものをさらに申し上げますと、たとえば北海道内の元居住者が札幌の学校に進学したいというときに寮をつくるとか、あるいはあちらに行って子弟同士が相互に集まって意見交換をしたりするための集会の場をつくるとか、それから学校の勉強はするのですけれども、元居住者としての自覚を高めるという意味で、いろいろな資料を集めておいてそれを利用するような場所をつくってほしいというふうなことも千島連盟の方から出ております。そういうものも入ると思いますので、技能研修だけということでなくて、千島連盟からは今後いろいろな形で基金の方からの援助を求めた具体的な計画が出てくるであろうというふうに存じております。
  106. 岡田利春

    岡田(利)委員 百五十億というのが出たわけでしょう。それを基礎にして百億という基金をつくったのでしょう。総理の指示以来これは二年間やっているわけです。しかし、いろいろ答弁を聞いていると、これから内容をつくるというような話で、そういう意味ではどうもぴんとこないわけですね。むしろ私は前段に質問しているように、いまの貸付制度であっても奨学資金などは——高校は根室市に二つありますよ。四町に一つずつ高校はあります。しかし大学は遠いわけですよ。ウタリだって旧同和対策だって、みんな奨学資金を出しているわけですよ。ですから前段で、そういう検討もしませんかと質問しておって、そしてこの質問をしているわけです。だから発想を少し変えて、元居住者、これが返還運動の原点であるという認識があるならば、そこにウエートを置いて、ある程度思い切ったことをやらなければならぬじゃないか、私はこう思うのですね。それがどうも答弁とひっかからないのが残念なんです。いかがでしょうか。
  107. 近藤元次

    近藤(元)議員 例示として挙げておるのは研修等挙げておるわけでございますけれども、われわれが考えておるのは、いまの技能研修並びにいま御質問、御意見がございましたところの奨学制度について、あるいは元居住者の意識を高揚するためにも現地における研修会等の費用の一部や、当然現地に来られない方々のために機関紙を発行するとか、いま御答弁をされましたところの集会所の新設をするとか、あるいは北方領土の開拓時代の村を再現するというようなこと等を実は考えておるわけでございますが、従来の協会なり連盟なりあるいは道も一部基金に参加するわけでございますので、そういうわれわれの考えておるものと、なお連盟、協会、道、関係市町村等の協議の上に立ちながら、秩序ある整理をしながら、この法案が従来のものより充実していくことを考えて今回の法案をつくっておるわけでございますので、内容につきましては、いま申し上げた以外に御意見がありましたら、その趣旨を踏まえてこの法案運用に当たっていただきたい、実はこう思っておるわけでございます。
  108. 岡田利春

    岡田(利)委員 自治省にお伺いします。  今度は北海道にこういう一つの基金制度をつくるということでありますけれども、いままで地方自治体なりに国が補助金を出して基金制度をつくったもので私の承知しているのは、文化庁の明日香基金しかない。これ以外にないと承知しているわけですね。そういう意味で、もしあるならばその例を聞きたいということ。  それから、明日香基金の場合には埋蔵文化財の保存でありますから、目的が一つきわめてはっきりしているわけです。そういう面で考える場合に、基金の管理という面についてはどういうような見解を持っているか、この二点を承りたいと思うのです。
  109. 浜田一成

    ○浜田説明員 本法案でできております基金に類似する基金ということでお話がございましたが、御指摘のありましたとおり、明日香村における歴史的風土の保存及び生活環境の整備等に関する特別措置法の規定に基づきます明日香村整備基金というのがございますが、私どもで承知いたしておりますのはこれ一つでございます。  この基金の運営につきましては、法の趣旨を踏まえまして直接的には基金の設置されております団体の判断で運営がなされるべきであると考えております。
  110. 岡田利春

    岡田(利)委員 この基金の設定に当たって、これは第三条ですか、「内閣総理大臣は、第一条の目的を達成するため、外務大臣その他の関係行政機関の長に協議して、北方領土問題等解決促進を図るための基本方針を定めるものとする。」そして二項に一、二、三号、そして三項。第三条はこういう組み立てになっておるわけであります。  そこで、啓発事業というのははっきりしましたね。根室管内一市四町、ここがやることに限定されるということですね。外務大臣関係するとすれば、ここじゃないかと思うのです。そこを内閣総理大臣外務大臣その他の関係行政機関の長と協議して基本方針を決める。きわめて限定されたものですね。それから、北方地域の居住者の関係については先ほど質問で明らかになってきたわけであります。そして振興の関係関係行政機関の長ということになってきたんだと私は思うのです。しかも、決めるべき基本方針の内容は次のとおりだと、きわめて抽象的に三つ書いておるわけです。これも先に質問した内容とほとんど変わらないわけですね。これが北方領土問題等解決促進を図るための基本方針だと言って恥ずかしくないでしょうか。どうでしょうね、立法からいって。特に北方領土問題の解決促進を図る主管庁は、外交問題でありますから外務省でしょう。これが基本方針だという点について、啓発事業を全国にやるわけじゃないですから、一市四町だけのやる分ですから、そのために総理大臣外務大臣とも協議をすると、こう麗々しくなっているわけですね。目的とも関連しますけれども、どうもそういう面でこれを基本方針だと言い切っていいでしょうか、いま前段、私が質問した内容からいって。いかがでしょう。
  111. 高橋辰夫

    高橋議員 北方領土問題解決のために、もとより私たちとしても今後とも強力な対ソ外交を進めていく考えでありますが、北方領土問題はまさに国民的な課題であり、その解決のためには国民の総意を背景とする国民と政府の強い意思が必要であると考えております。したがって、この問題が未解決である現在の状況並びにこれに起因して北方地域居住者及び北方領土隣接地域が置かれている特殊な事情にかんがみれば、国民世論の啓発、援護、振興というこの法律案に掲げておられる三つの基本方針に関する事項を拡充することは、ひいては北方領土問題の解決促進に資するものであるというふうに考えておる次第であります。
  112. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はぽっと読んだとき、北方領土未解決のための特別措置に関する法律案と言えば一番ぴんとくるな、こう思ったのですよ。しかし、解決促進のための特別措置なんて、ずっと目的を読んでいきますと、そしてこの内容を見ると、実体と法の目的、体系というものが余りにも落差があると私は思わざるを得ないわけであります。これがわが国の法律上、北方領土問題解決促進を図るための基本方針だ、しかも内閣総理大臣関係庁と協議をしてこの三つのことを定めるのだ、これが基本方針だと言うことは、いかがでしょうか。私は素直にそう思うのですよ。だから、社会党の島田君が出している法律案だって、大体額とかそういうものを除けば、あとは一項目がある、ないの問題でしょう。そういう点で、何か私に言わせると、非常にハト派的な思想で法律案をつくったのだけれども、名前の方はタカ派的なものに飛び上がった。だからそこにアンバランスがあって落差が生じたという感じがするわけですね。そういう点ではもう少し素直になったらどうかと僕は思うのですけれども、無理してこういう体系にしなければならぬものでしょうか。われわれ立法者として、立法府の議員として、そういう素直な反省があるのですけれども。
  113. 高橋辰夫

    高橋議員 解決促進というものは、これはもう政府と国民の悲願でございまして、これについては戦後三十六年間いろいろな形で行ってきたわけでございます。われわれは、この解決促進ということについては一日も早いことを願っておるわけでございまして、それに基づいて不法な占拠をされておるというような問題あるいは二百海里等の問題からして、隣接地域というものは経済的にも非常に大変な困難な状態になっておるということで、解決促進とあわせて三つの柱を設けまして、特に地域振興にも対処をしていくという考えを盛ったような次第であります。
  114. 岡田利春

    岡田(利)委員 外務省丹波さん、私からこういう質問があったらどう答えますか。  外務省としては、北方領土問題解決促進を図るための基本方針は何ですか、どういう方針ですかと聞かれたら、あなたはどういう答弁をするでしょうか。参考に聞かしていただけませんか。
  115. 丹波実

    丹波説明員 お答え申し上げます。  北方領土問題解決の基本的な考え方は、私は二つに分かれると思います。  一つは、外交上ソ連に対していかなる交渉をしていくかという対外折衝の問題。それから二つ目は、対外折衝をしていく上において国内的な基盤がきわめて重要でございまして、つまりそればまさに世論の問題でありあるいは国内における関係者の領土問題に対する関心の度合い、そういったものが、いま高橋先生が申し上げた二百海里の問題でありますとかあるいは北方領土問題、占拠されていることからくるいろいろな問題との関係で、そういう要求をする強い考え方が揺るがないという国内の対策、この二つに分かれて、対外折衝と国内対策というものが合わさって初めて基本的な方針というものが出てくる、今回の法案はまさに後者の問題をきちっと処理するためのものであろう、私はこういうふうに理解しておる次第でございます。
  116. 岡田利春

    岡田(利)委員 優秀な丹波課長さんにしては、前段はいいけれども、後段はずいぶん無理している。外務省の公式のものではないと思いますね。それはやはり全国民的なものなんですからね。しかも、この基金の目的、内容というものは、いま質問で明らかになったわけでしょう。しかも啓発事業、これは北方領土問題対策協会だって目的があるわけでしょう。ここには「北方領土問題対策協会は、北方領土問題その他北方地域に関する諸問題について啓もう宣伝及び」云々と、こう書いてあるわけですね。ですから、啓蒙活動が一市四町に限定されているわけですから、その一部であるわけですよ。すべてではないわけでしょう。総理大臣が決める北方領土問題の解決促進を図るための基本方針としては、まだ範囲が広がらなければならないわけでしょう。援護は旧居住者にも及ぶわけでしょう。地域の振興は隣接だけなんでしょう。先ほど言っているように、根室管内の一〇%くらいの居住者は隣の釧路にいるのです。しかし、それは地域振興の対象にならない。居住者の援護だけ対象になるわけでしょう。そういう点から見て、余りにも題名が大き過ぎて内容の実体が伴っていない、こう私は言わざるを得ないのであります。  そこで、ここの目的にも書いておりますけれども、「北方領土問題及びこれに関連する諸問題の解決促進を図り、ひいては北方領土の早期返還を実現して」云々、こう書いてあるわけであります。ですから、この施策は一部であって、むしろもう少しウエートの高いところは北方領対協なら領対協の方に、これを附則でやるか抜本的に改正してやる方が最もわが国の基本方針として正しいんだと思うのです。総理大臣が定める基本方針はかくかくだとして、きわめて限定的なものをわが国の法律で対外的に明らかにするということは、どうも合わないんじゃないですか。それは領対法を抜本的に改正したらどうなんですか。そしてこの法律があるというなら話はわかるわけです。そうわれわれが思うことが当然ではないかと思うのです。総理府はどうですか、そういう意味で、そういう気持ちはないですか。
  117. 高橋辰夫

    高橋議員 ちょっと総理府から答える前に、啓発事業は一市四町に限定しておると言われておりますけれども、一市四町ではございませんので、その点を御理解いただきたいと思います。
  118. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほど近藤さんは、一市四町のやる啓発事業に対してと明確に述べられたから、それを前提にしてずっと議論してきたわけです。違うのですか。
  119. 近藤元次

    近藤(元)議員 先ほど私が答弁申し上げたのに一部舌足らずな面がございましたので、再答弁をさせていただきたいと思います。  もちろん北方領土問題の国民世論の啓発は当然のことながら国民の課題でございますし、政府も従来から総理府を中心にし、北対協等の協力を得てやってきたわけでございます。しかし、一番先頭に立っておる根室周辺というのは、それなりに四〇%の居住民を現状住民として抱えておる、そういう事態で、町としても単独でいろいろな啓発なりそれなりの施設や費用を使われてきたものの一部を、一つはこの基金で補助をしてやろう。啓発、啓蒙そのものは実は国家的な行事でございますから、その基本方針の一部の主役を過去の経過からいって北方地域市町村が行ってきたということでございますので、ただ、国民の啓発事業に対して、ここで啓発をさせたり国家的な事業をこの法律によってやるということではございませんので、その点を了解いただきたいと思います。
  120. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、こう理解していいのでしょうか。一市四町のやる啓発事業に対してこれは助成する、同時に基金の保管者である北海道、道庁がやることも含まれる。あえてもう一つ言えば、第十条一項三号のロ、「北方地域元居住者が北方領土問題の解決のための諸施策の推進を図る上において特別の地位にあることについての認識を深めるのに資するための事業」とありますね。これを含めると北海道からちょっとはみ出すわけですね、二割は道外にいるわけですから。ですから、いまの答弁はそういう範囲という解釈でよろしいのですか、それとも領対協がやっているように全国的に北海道から沖繩に至る啓発事業をも対象にするというお考えなのですか、ちょっとわからなくなってきたのですけれども。
  121. 高橋辰夫

    高橋議員 世論の啓発についてでございますけれども、本法律案において第三条第二項第一号あるいは第四条に規定する国民世論の啓発については、北海道のみを対象としているものではなくて全国民を対象としているものであります。ただ、第十条第一項第二号に規定する事業の基金は北海道に設けられるものであり、その対象となる世論の啓発に関する事業は北方領土隣接地域の市もしくは町または北海道の区域内の公共的団体が自然的に行うもので、国の補助または負担を伴わない事業に限られておるわけであります。
  122. 岡田利春

    岡田(利)委員 先ほどの六億一千二百二十七万の予算、これには北方領対協の補助金というのが五億五千二百七十六万、それから事務費、事業費ときて、啓蒙、それ以外にも北方領土問題解説資料の作成とか総合実態調査費用とか、こういうのがあるわけですね。しかし、基金の運用は最高限度で、これからインフレ率を考えると、基金を足すということになれば法を改正しなければならぬわけですけれども、マキシマムで七億六千万程度、それで三つの要素を消化する。ですから、せっかく同じ国でやる施策ですから、国民の税金を使ってやるわけですから、効率的にやるためには一だから僕は冒頭から関連法案との関係ではどういうぐあいに検討されましたかということをずっと系統的に聞いてきたつもりなのです。その点で、やはり議論の中で、ある程度ぴしっとしておかないと、後から適当に基金の運用は北海道でやればいいんだということであっては問題が残ると思うのですね。そういう点では、先ほどの十条の問題と、いまの問題について、高橋さんが答弁されましたけれども、もうちょっと整理をして午後からでも見解を表明していただけませんか。いかがですか。
  123. 高橋辰夫

    高橋議員 整理して報告をいたしたいと思います。
  124. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで、私は恐らく提案者はもう北方領土——領土の視察といっても全部見えるわけじゃないですからね、一部見えるだけですから。どうも最近、北方領土の視察といったら根室市に行くのです。標津から羅臼の方がよけい見えるわけです。ずっと国後島が見えるわけですが、それでも国後島の三分の一は見えないのですからね。択捉は全然見えない。しかし、最近国会で北方領土視察というと根室市に行くわけです。ちょっとガスがかかると国後は全然見えないわけですね、水晶島がちょっとしか見えないですから。いわゆる共同宣言で平和条約が締結されれば日本に引き渡すと規定された島しか見えない場合が多いわけですね。そういう点から考えると、私はやはりこの法律案をやるに当たって、同じ意見といっても首長とか団体の長、もちろんありますけれども、いろいろな意見が多様にあるわけです。ですから、私がいま質問している内容というのは、そういう人の意見を頭に置きながら、せっかくつくったものが喜ばれるのかどうか、旧島民に言わせれば、何だこっちはつけたりで、これはあとは全部地域振興だということであれば逆現象が出る可能性があると私は思うのですよ、立法の趣旨から言って。その点を私は恐れるわけです。だから、できればやはり公聴会とか、そういう人の参考意見を聞くとか——島によってまた違うわけですよ。歯舞、国後、択捉それぞれ居住者の意見が違うのです。なぜかと言えば、国後の引き揚げは、昭和二十三年の夏まで漁業をやっておったのです。漁業権が消滅したと言ったって、そのまままだやっておったのですから、国後択捉漁業会というのが。そういう条件がみんな違うのですよ。だから、私はそういう意味で非常に心配して先ほどから質問しているわけです。参考人とかそういうことをやらぬで、この法案をあくまでも上げちゃうということですか。それだったら参議院の方でやってもらわなければならぬ、強引にやるなら。こう心配するのですが、いかがですか。委員長どうですか。
  125. 吉田之久

    吉田委員長 島田理事の方からも、かねてそういう御意見も強く出されておりました。委員長あるいは委員会といたしましては、できれば参考人の意見などを丹念に聞く機会を持ちたいと思っておりましたけれども、何せ国会の会期上物理的にそういう時間が見出せませんので、後日、法律が成立いたしました後で、いろいろそれにかわる各界の意見を聞くなど、この法律が実情に一層即するように、よく機能するように万全の措置を講じてまいりたいと考えております。
  126. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、これが法律になって、総理府が法律の施行をやらなければならぬ、こう書いてあるのですが、その場合に、立法者、提案者は、この法律に基づいて、北方領土問題等解決促進のための特別措置に関する法律の施行令といいますか、こういうものも当然出てくるのじゃないかと思うし、また、これ以外に政令で定めることも若干ありますね。そういう点で、政令で定める分というのは私の読んだ中では出ておりますけれども、他に施行令を受けて政令で定めなければならぬ部分というものが出てくるのではないかと思うのですが、この点の関係についてはどういうお考えでしょうか。
  127. 大江郁夫

    ○大江説明員 お答えいたします。  この法律で具体的に政令と言われておりますのは、本法案第七条の特別の助成の対象になる特定の事業というようなことでございます。これらの事業につきましては、当該地域の特性を踏まえてその振興に寄与するような事業ということで考えております。  それで、法律で事業の大きな枠組みは書いてございますが、もう少し具体的に、私どもがこういうものじゃないかということで想定しているものとしては、たとえば、道路でありますと市町村道の整備事業あるいは街路の整備事業、河川関係につきましては準用河川の改良事業、それから下水道の設置改築事業、それから公営住宅の建設改良事業、それから都市公園及び緑地の新設改築の事業、それから幼稚園とか小中学校の整備の事業、それからスポーツ施設の整備の事業、給食施設その他産業、教育関係の整備事業というようなことになっております。  まだいろいろなことを考えてございますが、一部を紹介させていただきました。
  128. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間が参ったわけですが、ずっと質問して私が一番恐れておりますことは、前沖特委員長もおりますけれども、これから今年一年間でも居住者は相当数亡くなりますよ。亡くなっても、それは千島連盟という事実上の組織でやっていくでしょうけれども、だから先ほどから元居住者の構造、今度は孫までという次代継承は構想の中に入っておりますけれども、これだって、この法律では旧居住者だけです。漁業権者の問題もあるわけですね。そういう問題もほかにまだ残っているわけです。まだまだ質問したいことはたくさんあるわけであります。したがって、次世代まで対象にしたという意味は、旧居住者の方々を長年の三十七年間の返還運動の原点としてとらまえている。だから次世代も今度の法律に入れたと思うのですが、ここのウエートの問題なのですね。ここのウエートの問題は、残念ながらこの法律の発想の中であるいは答弁の中では、ぴんとくるようなものを感じなかったわけです。だがしかし、完全に固定化されているものではないわけですからね。せっかくこれだけの立法をしてもそっぽを向いてしまうような形では、これはマイナス要因になると思うのですよ。地域の振興よりも人間の心、気持ちを振興しなければならないわけでしょう。ここにやはり問題点があるのではないかと思うのです。だから、そういう点について提案者の方でももう少し詰めてはしいと思います。また、この法律を施行する場合においても当然そうだと思うのです。そういう点から見ると島田提出の・法律案の方がまだこれよりもましだ、完璧だと私は言いませんけれども、まだましである。しかも、実体と法体系からいって、立法府に身を置く立場からいって、私はそう思わざるを得ないわけです。  そういう気持ちをこの機会に率直に述べて、時間ですから質問を終わります。
  129. 吉田之久

    吉田委員長 この際、午後一時まで休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  130. 吉田之久

    吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島田琢郎君。
  131. 島田琢郎

    島田委員 私は、北方領土の問題に関しましては、基本的には一日も早く北方領土がわが国に返ってくることを期待し、その熱意において他の方方といささかも劣るものではございません。それだけに、北方問題をめぐります問題については深い憂慮を禁じ得ないのであります。しかも三十七年にわたりまして、引き揚げ者を中心に北方地域の隣接町村は非常に苦労をされてまいりました。その御苦労に対して深く敬意を払うものであります。  たまたま鈴木内閣になりましてから、総理みずから昨年、北方領土にも訪問をされておりますが、私は、何といいましても政府の立場においてやらなければならない点については、それを実行に移すという構えがいまほど強く望まれているときはない、こう思うのです。ですから、慰めみたいに行って激励したり、ただ視察をして帰ってくるというだけではもう済まない状態にあると私は思う。そういう中で北方地域の状況というものを、産業、経済、文化の面にわたりまして、私どもはこの地域の問題に対して真剣に取り組まなければならないという点では、政府とも比較して劣らないという気持ちを立法府におるわれわれとしても強く持っているわけです。したがいまして、今回、北方地域の振興を中心にいたしました法案が出されておりますことに対して、この際やはりこれが確実に法の目的を達成するということに目標と力点を置かなければならないと考えています。  そういう中で、自民党を初めとする公明、民社、新自連、各党四党にわたります共同提案に係ります法案は、そういう意味では一つの目的としては、鈴木総理があれだけのことを言ってきてもなかなか政府はやらぬ、腰を上げようとせぬ、これに対して私たちも同様の責任を持っているという立場から、責任を持った法律というものをつくっていく、その議員立法という理念と趣旨をしっかりわきまえておかなければならないのではないか、こういうふうに考えておる一人です。したがいまして、立法府のわれわれが議員立法で法律をつくるということは、政府に対して一定の義務と拘束力を持たせるというところにねらいを置いていかなければならぬわけです。  ところが、おつくりになりました法案は、その法制作業においてかなり行政府の意見が入ってくる。それは、ある一定の意見を聞かなければいけないということはありますけれども、毅然たる議員立法としての趣旨と目的を果たしていくことにこの議員立法の趣旨があるということを損ねてはいかぬと思うのであります。そういう立場からいいますと、私は、この法律の持っております力というものはいささか弱められているような感じがしてならぬのであります。この点は私は大変遺憾に思っております。  それから、私どもは対置して法律を出しておりますが、午前中の岡田質問にもございましたように、この法律を通して受ける北方地域隣接町村の引き揚げ者あるいは町村居住者の皆さん方が、この趣旨に沿って十分の、法律に盛られている以上の目的を達成するということに今後われわれも力を入れていかなければならぬ、こう思っています。  そういう点でいいますと、お互いの法律を比校してどこが違うのかという点では、なかなか比較しづらいという意見もありますが、私は、自画自賛とやじが飛ぶかもしれませんが、私のつくりました法律の方がはるかに地元の皆さん方にもわかりやすいし、そして今後の行政運営に当たっても政府はやりやすいはずだ、実はそう思っておるのであります。特に、この目的の中で、先ほども触れておられましたけれども、私は一つの危倶を持ちます。  今日、北方領土の返還というのは、なかなか口で言うほど言うべくして簡単なものではない、ますますその状況は厳しくなっている。これは一つには、必要以上な反ソキャンペーンをしいてみたりしている。返還運動に当たって一番大事なのは、けんか腰で取ることができるかどうか、いまの国際情勢のもとにおいてさえも、それはなかなか困難でありますから、私どもはあくまでも一定の情理を尽くし、円満にこの返還運動が実を結ぶように努力することが、今日時点においてなお必要だと私は考えているのです。  そういう意味で、目的の中で、北方領土の早期返還を実現していくという考え方が示されておりますけれども、諸問題の解決がこの法律によって図られるというふうな単純なものではない、私はこう思っています。この法律の第一条を見ますと、あたかもこの法律ができると返還運動がいままで以上に促進されて、その目的が早期に解決できるようなニュアンスになっている。残念ながら私は公党の立場で、そんなに早期に、簡単に北方領土が返ってくるという状況にあるとは認識できないのであります。その辺の認識をどのようにお持ちになっているのか。この目的に沿ってこれから事業が進められていく過程で、つくられた法律の目的の一つになっているだけに、これは大事な点ですから、この辺の見通しについて、ひとつ提案者の方からお考えがあれば示してもらいたい、こう思うのです。
  132. 高橋辰夫

    高橋議員 われわれとしては、北方領土問題を解決して平和条約を締結することが対ソ外交の基本方針であると考えており、機会あるごとにわが方の基本的立場をソ連例に伝えておるわけでございますが、遺憾ながらソ連は、この問題は解決済みであり、存在しないとの従来の態度を繰り返すにとどまっておるような次第でございまして、北方領土問題は日ソ間の最大懸案であり、自民党としても政府としても、北方領土返還を求める国民の総意を背景として、引き続きソ連側に本件の早期解決を働きかけていく所存でございますし、この法案作成に当たっては、この法案が通れば即北方領土が返ってくるとは考えておりませんし、より国民の悲願である領土返還に対して、総意を結集するための意味も兼ねまして、この法案提出いたしたような次第でございます。
  133. 島田琢郎

    島田委員 少なくとも法律の目的というのは非常に重要な意味を持っていますね。その目的どおりに法律が機能していかないということになりますれば、法の体裁上もおかしいし、あるいは法をつくった意味もない。いまの提案者のお話ですと大変自信がなさそうであります。そういう自信といいますか、そういうお考えのもとに法律に麗々しく目的を掲げるというのは私はいかがなものかという感じがいたします。  そこで、次に定義についてなんでありますが、北方地域を四島に限定されているという点について御見解を承りたい。
  134. 高橋辰夫

    高橋議員 四島に限定したということは、これは政府態度でもあり、サンフランシスコ条約のときに得撫島以北を放棄しておる現実をとらえまして、四島返還ということは政府も自民党も基本的な方針でございますので、われわれは四島にとどまったような次第でございます。
  135. 島田琢郎

    島田委員 しかし、国内には、いまおっしゃったような考え方だけでない人たちがいます。したがって、定義としてここに盛るというのには、この法律はそうした四島に限定した考え方を持っている人たちだけに機能する法律ではございません。そうすると私は、政府や自民党の考え方がこの範囲であるからというふうにおっしゃるのはいささか問題があるのではないか、こう思うのです。そういう点で、一方では、返還運動は国民的な課題であり国民的な運動である、こういう位置づけがあります。それに対して、この法律は啓発事業を含めて大変国民的な課題を持っているわけであります。そうすると、いままでこの四島に限定していないというお考えを持っている国民各層の方々の意見というのはどういうふうになっていくのか。少なくともその辺は自民党においては整理されているとおっしゃるかもしれませんが、しかし、それは他の党についても必ずしもこのように限定しているということにはなっておらないのであります。いわんや国民の間にも二つの意見があるわけでありますから、そういう点で考えますと、限定した考え方でこの法律をおつくりになるというのには、法制上の問題としても私はいささか問題が残るのではないか、こんなふうに思っています。これは総理府に聞いた方がいいのかもしれませんね。総理府の御見解を伺いたい。
  136. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 総理府にということでございますので、私どもの方の考え方を申し上げますが、この法律によって、その定義された四島が、歴史上も、それから国際的な取り決め上も、わが国の領土であるということを十分に理解していただいて、そういう観点に立った返還要求運動をさらに盛り上げていくように、そういうふうにこの法律が機能するように願っております。
  137. 島田琢郎

    島田委員 いまの御答弁では、私は、私の尋ねた点にお答えにはなっていない、こう思います。ここだけに時間をかけるわけにいきませんが、そういう点について私は、この法律に疑義を持っている一人であります。その点を指摘をしておきたい、こう思います。  なお、華金をもってこれらの目的を達成するための措置をとる、こうなっております。私の方から出しました法案の中では、政府が百億を用意すべきだ、北海道庁が二十五億積み上げまして、百二十五億。私ども地元に参りまして現地調査で承っております額は、先ほどもお話に出ておりましたが、返還促進等の問題も含めて百五十億ほどの要求が出されております。私ども返還運動は返還運動として別に扱うべきだという考え方に立って、それを切りまして、百二十五億という要望に近い線を実は考えておる。それらの利回りを七・主ないし七・六と置いておりますが、七・五にいたしましてもおおよそ九億がらみの利子であります。その利子運用によって地域の振興や引き揚げ者の援護を重厚に行うというのが私どもの考え方でありますが、従来からも地方交付税をめぐります問題がいろいろ論議されておりまして、先ほどの中にもそれが出ておりました。従来九億程度のものが地方交付税として考えられる。先ほども自治省から細かな内容の説明が数字的にございました。おおよそそんな数字でございます。そういたしますと、おつくりになりました法案、百億で計算いたしますと、七・六%の利回りで計算されているようでございますが、七億六千万。従来自民党の皆さん方がおっしゃっていたのは、せめて交付金の九億ぐらいのものを何とかして地域の振興のために使えないかというようなことが盛んに言われておりまして、私もその点は同感でございました。それは自治法上問題があるという点は除きまして、その程度のものはやはり地域の振興やあるいは引き揚げ者援護のために使うべきではないか、こういうふうに考えまして、地域の要望の額に近い、しかもそれから出てまいります利子相当額が九億、まさに私の方が皆さん方おっしゃっていた数字とどんぴしゃり一致するのでありまして、どうして七億六千万などとちびった額になったのか。しかも、政府が考える場合には、一口で言って、やはり期待するのは百億ぐらいは用意するというのが大体普通言う数字ですね。それを八十億に削られた。財政事情が厳しいというのはわかります。財政事情が厳しくて、ともすれば地域振興が忘れられがちだから、政府の側に提案はなかなかできないから、政府に義務を負わせるという意味も含めて議員提案がなされるということでなければいけないのでありますから、立法府の意思として、この際苦しくても、いままで三十七年間のおくれた振興や引き揚げ者の援護に充てるという前向きの姿勢を示すなら、百億を義務づけるというぐらいの姿勢を立法府から示すべきだ、こう私は考えて、必ずしも百二十五億が十分な措置だとは私ども思っておりませんが、しかし、地域の皆さん方の期待にこたえるということがこの法律をつくったねらいである限り、そういう大事なこれから運用されていくその基礎となります予算に余りちびったような考えでいくべきではなかったのではないか、こう考えていますが、いかがですか。
  138. 高橋辰夫

    高橋議員 基金の額につきましては、島田委員の言われることもわれわれも十分承知しておりますし、また、われわれも、この法案立案に際しましては、党内におきまして地元から出された計画案に対してなるべくひとつそれに近いものをというような考えを持っておったことも事実でございますが、われわれ与党の立場といたしましてはやはり政府の財政事情というものも十分勘案しなければならない立場でありまして、この問題につきましては党内におきましても大変な論議の的となったわけでございますけれども、最大限これまで党の三役に対し申し入れいたしましてこの額にいたしたような次第でございますので、大変困難な状態にありましたけれども、ここまで努力したということをひとつ御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  139. 島田琢郎

    島田委員 私は提案者の御苦労に対して、それを否定するものではありません。しかし、ほかならぬ提案者の一人であります高橋さんも、農林議員で米議員の一人と言われておりますね。この間あれだけやったじゃないですか。あれは五年間で出す金額ではありません。百五十億、百六十億、みごとに皆さん取ったじゃないですか。百億円、八十億円を今後五年間でしょう。均等に割ったって大した金額じゃない。日ごろ豪語されている高橋さんにしては余りにも消極的ではないか。それで北方地域振興に大変頭を痛め心配しておりますと言うのじゃ、言っていることとやることが違うと批判を受けても仕方がないんじゃないでしょうか。どうもこの件に関しては元気がなさ過ぎる。おかしいと私は思います。この間の米で騒いだあのいわゆるエネルギーとバイタリティーはどこへ行ったのか、私はそう思うのです。まあこういう御時世でございますから、口で言うほど簡単でないというのは、私どもも国会に籍を置いております限り十分わかるのでありますが、繰り返して悪いですけれども、だからこそ議員立法が必要だったのであります。財政当局の意見を聞いたとか、外務省の考えも聞いたとか、開発庁はどう思っているか、そういうふうに行政府といろいろな話をしながらやるのなら、これは議員立法とは言えないと私は思うのです。この際、毅然として立法府の姿勢というものを貫くというところに、このつくった法律の目的がもう一つある。そういう点で言えばやや私は百点満点を上げるわけにはいかない、こんな感じがしております。  それから立法府の考え方としては、法律の範囲でいいのだろうと私は思っておりますし、あと、受けたそれぞれの行政府が、所管諸省庁が政令以下の問題についてお決めになっていくということになるのだろうから、そんなに細かに私どもが注文をつけたり枠をはめたりするということは、かえって議員立法というものの趣旨から言うとおかしくなる、私もそういう理解はいたしております。しかし、やはりお金が使われるという段階で、一定の節度ある使い方、目的に沿った使い方が必要だから、これがルーズにわたってはいけませんが、しかし、ともすると、この種のお金というのはひもがつきがちであります。特に基本方針を定めて、あるいは知事もまたその事業推進に当たっての計画を策定する、上の方からその考え方で押しつけていくといったようなことになりがちでありますが、やはり今回はあたう限り地域の自主性というものを尊重する。基本方針策定の段階でも、計画をつくる段階でも、十分地元の意見を取り入れる、そして真に地域の振興に役立つ方向に持っていかなくてはいけないのではないか。そういう点では私の法律もそういう意味を込めております。恐らく皆さんの方でお出しになりました法律も、そういうことについては十分御配慮があるのだろうと思います。しかしその使い方において、私の方は地域振興と引き揚げ者の援護措置でありますし、皆さんの方の法律はいわゆる返還運動というのが一つ入っています。ここのところが、岡田さんがさっきいろいろ質問された中でもかなり浮き彫りにはなっているとはいうものの、運用の上ではかなりあいまいにされる部分だと私は思う。最後までついに、その百億なら百億の基金の運用の範囲をどのように規定するのかというお考えが示されなかった。こういう点がさらに一層あいまいさを濃くしているという感じを持ちながら私は聞いておりました。とかく極端なことを言えば、反ソ・キャンペーンにまで使われるなんということになったら法の趣旨が損なわれてしまいますから、また逆に運動の足を引っ張るという結果になりますから、お金の使い方というのは非常に慎重を期さなければならない点であります。おつくりになった法律は、やや口が悪く申し上げますならば、羊頭を掲げて狗肉を売るという感じになっている、こういう感じがいたしますが、その辺のところは運用の中で決して羊頭ではないと言うならば、そっちの方にかなりウエートがかかっていって、広い範囲で反ソ・キャンペーンまで含めたお金に使われていくという危険性が生じてくる。ですから、本来この法律の目的というのは地域の振興と援護の重厚な措置にあるのだという考え方をこの法律の成立以前に皆さんのお考えとして明確に示してほしいと私は期待するのです。いかがですか。
  140. 高橋辰夫

    高橋議員 基本方針の内容につきましては、今後政府で検討することになっておるわけでございますけれども、地元の意向についてはでき得る限り尊重すべきであるという考えを持っておるような次第でございます。この法案の趣旨からいけば反ソ・キャンペーンになるのではないかという御指摘がございますけれども、われわれはそういうことば毛頭考えておりませんし、歴史的にもあるいは国際法上に照らしてもわが国の固有の領土である北方領土の返還というものは国民の悲願であり要望でございますので、わが国としては当然の返還運動であり、これは反ソ・キャンペーンにも何らならないという考えを持っておる次第でございます。
  141. 島田琢郎

    島田委員 この法律が施行されます段階で整理しなければならない大変多くの問題を持っております。それは私どもが提案いたしました法律もまさにそうであります。しかしながら、この北方地域におきますもろもろの問題の中でも特に私たちが重点を置かなければならないのは、やはり北方地域における特殊な事情というものを十分考えていかなくてはならないということだと思っています。ところが、既存の助成事業であるとかあるいは奨励事業の中でも重複する部面がたくさん出てくるわけでありますから、そういう点は明確に、差しかえをするというのではなくてその上に積み上げていく、そういうものでなくては地域振興というお題目には沿わないと私は思っているのです。ですから、そういう点も、今後政省令をおつくりになります段階で、立法府のわれわれがいままで審議をいたしましたものを十分踏まえてつくってもらうということが必要でありまして、そういう限りにおいて言いますれば、やはり今後の当委員会における論議などもそうした点で反映をしていくというふうなことが必要だと思います。  それから、これを運営していきます場合には、どこが責任省庁になるのかという点についてはまだ必ずしも明らかでないようでございますが、大体は総理府それから北海道開発庁といったところがメーンになって、あとほかの省庁がそれに参加をするという大変複合的な体制になってくると思うのです。そういう意味では、プロパーでおやりになるという場合は問題ありませんが、かなり各省庁間の意見が錯綜してくるという心配がある。しかもそこにお金がついておりますから、開発庁は開発庁で、うちの道路をこういうふうにつけたいからもっとお金をくれというふうな話になるでしょう。それから返還運動では金が足りないから、総理府、うちの方ももう少し金が欲しい、こういうことになるでしょう。この辺の整理は一体どのようにおつけになるのか。これが私はこれからの問題として出てくると思うのです。これはもちろん私が提案しております法律も同じことが言えるのです。そこのところは私は私なりにこういう整理をすべきだという考えは持っております。持っておりますが、私の法律案が通ったらそれをやりたいと思いますが、いまのところどうも高橋さんの方の案が通りそうだから、そうでありますと、そっちの方のところはそういうふうにやはりいまから注文をつけておきたいと思うのです。  しかも、そうやって縄張りみたいなものが出てまいりまして、それがさっきから私がくどくど言っているように地域の皆さん方の期待と遠いものになっていくという心配を私は持っています。この辺の整理をきちっとおつけ願いたいと思うが、提案者として、この際この公式の場を通じて行政府に注文をつけるという意味で御意見を承っておきたいと思います。
  142. 高橋辰夫

    高橋議員 お答えいたします。  この法案の所轄分野につきましては、啓発、援護につきましては総理府とし、地域振興については北海道開発庁ということに、われわれも党内の論議において、立案の策定に当たってそういうことにしておりますし、島田先生が言われるように、地域振興というものはこの返還運動と密接不可分な関係にあるというような考えからも、われわれは十分島田先生の言われておりますその意思も踏まえて今後ともひとつ運用していくべきであるという考えにおいては変わりないものでございます。
  143. 島田琢郎

    島田委員 終わります。
  144. 吉田之久

  145. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、自民党など四党共同提案の北方領土問題等解決促進のための特別措置法案について質問しますが、その前に私の基本的な姿勢を申し上げたいと思います。  いわゆる歴史に学び、さらに歴史をつくるということは、政治家にとって非常に大きいものである。歴史に学ぶというのは、誤ったものがあればこれを正して、正しいものは発展させていく、そして継承していくという基本的な態度から質問したいと思いますが、最初にこの法案は、私が見るところ二つの柱になっております。いわゆる四島返還論の立場、それから地域住民の経済振興など、こういったような二つの柱からなっておりますが、その意味で私は、四島返還論についてはどうも筋が余り通らないということでこれを承認するわけにいきませんが、地域住民の生活あるいは経営、漁業権も含めて、これをどう発展させるかという問題については、あえて反対するものではなく賛成であります。したがいまして、いま私が、これは道理に合わぬぞと思う点について提案者に質問いたします。  最初に、いわゆるサ条約二条(C)項によって放棄した千島列島、クリール諸島と言われておりますが、いわゆる北は占守島から得撫島に至る北千島、それから国後、択捉の南千島、それから北海道の一部である歯舞、色丹、とりわけこの南北千島は、日本が戦争や侵略に基づいて取った島々であるのかどうか、これに最初にお答え願いたいと思います。
  146. 高橋辰夫

    高橋議員 そういうことはないと考えております。
  147. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは、これはポツダム宣言にもありますね。戦争とか侵略などによって奪ったところは返さぬといかぬ。だから朝鮮、台湾は返したでしょう。したがって、いま提案者がそういうことはないと言われたのは私も賛成であります。  これはもとより御承知のように、いわゆる国後、択捉は一八五五年、いま北方領土の日と言っている二月七日、このときに日露通好条約によって、いわゆる交渉によって日本領土になった問題である。さらに引き続き一八七五年の五月七日、いわゆる樺太千島交換条約に基づいて、戦後最後に全体としていわゆるクリール諸島は日本の領有となった。したがいまして、いま、戦争によってではなく、侵略によってではなく、平和裏に条約に基づいて全千島が日本領土になったという点、確認されました。  それからお聞きしたいのは、ポツダム宣言に言う「「カイロ宣言」ノ条項ハ履行セラルベク」というカイロ宣言、うたっておりますね。カイロ宣言はどういうことをうたっていて、ポツダム宣言の中に組み込まれているか、御存じですか。
  148. 丹波実

    丹波説明員 お答えいたします。  恐らく先生が聞いておられますのは、カイロ宣言の中におきまして、日本が暴力及びどん欲により略取した地域は取り戻さなくてはいかぬ、そういう規定があることを指しておられると考えます。
  149. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 同時に、カイロ宣言の一番大事なのは、領土不拡大の原則をカイロ宣言でうたっているんですよ。そうでしょう。いかがですか。
  150. 丹波実

    丹波説明員 領土不拡大の原則も含まれております。
  151. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私はその点をなぜ聞いたかというと、いわゆるポツダム宣言を無条件に受諾して日本は降伏しましたね。したがって、このポツダム宣言というのは、いままでの民主主義を阻む一切のものを除去する、軍国主義復活は許さぬといったような平和と民主主義の共同宣言なんですね。  したがいまして、先に参りますが、この平和条約を結ばれた吉田総理が全権となって行ったあのとき、千島問題についてどのようなことを言われたのか。いま言う択捉、国後、これは含まぬと言われたのか、含むと言われたのか。それから、この条約が国会で批准になります。批准になるときに政府外務省の条約局長はどういうふうな規定をクリール島に対してやったか、御存じでしたらこの点だけ説明してください。
  152. 丹波実

    丹波説明員 サンフランシスコ平和会議、一九五一年九月八日でございますが、そこにおきまして吉田全権は、千島列島及び南樺太の地域は日本が侵略によって奪取したものだとのソ連全権の主張は承服しかねます、日本開国の当時、千島南部の二島、国後、択捉両島が日本領であることについては帝政ロシアも何ら異議を差し挟んでおりませんでした、また、北海道の一部を構成する色丹島及び歯舞諸島もずっと日本の領土であった云云、そういうことをはっきりと表明しておるわけでございます。
  153. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 特にはっきり言ったのは、千島南部の二つの島、択捉、国後両島、それから得撫以北の北千島諸島と述べておるのですね、吉田さんは。択捉、国後島、得撫以北の島を千島列島の南部、北部と規定している。したがって、南北千島、これがいま放棄した領域であると言っておる。さらに、一九五一年十月十九日に、西村熊雄条約局長はその線をやっぱり認めております。総理の規定、国後、択捉、これも含むんだという規定。さらに同じ年の十一月六日、これは参議院特別委員会で草葉外務政務次官、これも千島という言葉の中で指しています条約のクリール・アイランズというのは、千島全体についての表示だと考えざるを得ない。これは国後、択捉は千島の範囲外ではないかとの質問に対する答えです。これがサンフランシスコ平和条約を結んだ当時の吉田全権、それから批准国会における責任ある政府答弁です。ところが、その後四島、いわゆる国後、択捉は向こうに放棄した島ではないということに変わったのはいつごろ変わったのか、だれが総理大臣時代に変わったか、説明でさましたら説明してください。
  154. 丹波実

    丹波説明員 お答えいたします。  この点につきましては、瀬長先生自身が先ほど引用になりました一八五五年の条約、一八七五年の条約、これをごらんいただきますとはっきりとおわかりいただけますとおり、千島列島というものは得撫以北の十八島を指しているのであるということは、まさに一八五五年以来の当時のロシア帝国の認識でもあり、日本政府認識でもあります。したがいまして、千島列島とは何かと言われた場合の認識につきましては、政府としては一貫しておりまして、それがいつかの時点で変わったというようなことはございません。
  155. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 変わっているから聞くのですよ。大体サンフランシスコ平和条約を結んだ当時は、いわゆるクリール・アイランズというのは南北千島を言うということを吉田全権も言う、条約局長もはっきり言っているのです。ところが五五年から変わった。なぜ変わったかという問題、これは基本的にいまの答弁では国民は納得しませんよ。もともとあれは、あの平和条約二条(C)項なるものは、御承知のように一九四五年二月ヤルタで結ばれたヤルタ秘密協定に基づいてスターリンが不当に千島列島を引き渡せと言った。返還しろという言葉じゃないのですよ、引き渡せ。ヤルタ協定は御承知のようにソ連、イギリス、アメリカです。だからそれに縛られて、遂に千島を戦後処理として全く道理に合わないような二条(C)項に基づく日本の全権原を放棄するという、きわめて歴史的に見て誤った戦後処理をやっておる。これは当時のスターリンの横暴については死後もどんどんいろいろ出ております、いかに民族自決権を侵したかという問題まで含めて。したがいまして、私は、この四島返還論という問題は非常に国民的コンセンサスを得て——いま申し上げましたように、最初に高橋先生も言われたように、あれは戦争や暴力で取ったものじゃないのですよ。北の占守鳥から得撫、あれ大きいですね、なぜそれを放棄しなければいけないのか。「等」がつけば、「四島等」とつけば、あああそこまで含むんだという、従来の沖特委の決議案で共産党が賛成したのは、党が推定したから賛成したんですよ。これは向こうを含むんでしょうな、ああそうだ、こうだから。ところが、いまの提案の理由の中ではどうも含みそうもない。したがって、これは高橋先生に聞いた方がいいかな。四島という場合に、いま申し上げました得撫以北、占守島に至る、これはもう仕方がありません、放棄しますということですか。
  156. 高橋辰夫

    高橋議員 ただいま御指摘ありましたように、サンフランシスコ条約第二条(C)項の規定により放棄した事実がございますので、われわれといたしましては、北方領土、この四島返還ということは政府並びに自民党もその態度は一貫して変わっておりません。
  157. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、放棄したのは誤りだと指摘しているのですよ。固有の領土、歯舞、色丹、あれは北海道の一部ですよ。それから国後、択捉は南、それから得撫から占守までは北でしょう、千島の。これは固有の、北海道の一部であるのはもちろんですよ。南、北千島、これは当然国民的な領土問題解決の根源じゃないかと私は思うのだが、これを放棄しましたからもう手を挙げますじゃ国民は承知しない。国民運動を展開しようというわけでしょう、北方地域領土を返せ。コンセンサスがなくてどうしますか。たとえば私、沖繩返還運動をやった体験者の一人ですが、なかなか最初は三条撤廃を入れることができなかった。しかし、とうとう第三条を撤廃しようというスローガンを全県民のものにすることによって、全県民的な要求に高まって、沖繩を返せ。これは沖繩だけじゃないですよ、全日本にわたった。とうとうアメリカも手放さざるを得なくなった、ただし安保条約をかぶせましょうということだったんですが、領土返還というのは筋がないと、全国民のコンセンサスのもとで草の根からの運動を起こさぬ限り、これはとうていできない問題である。したがって、いままでの戦後処理としての領土問題について、政府に誤ったのがあれば正すというのが当然のことであり、全国昂のまた合意を得る一つの大きい根源的な問題だと思うのですよ。したがいまして、この四島、国後、択捉、それから北海道の一部、歯舞群島、色丹、これに限りますと、この法案は限っていますね。将来の領土返還問題への足かせになって、これが推進力となって国民的な運動に発展させる基礎をみずから一つ一つ取り崩していくんじゃないかという心配がありますよ。ですから聞きましたが、もう一つお聞きしたいのは、四島に限るといった場合に、たしか五五年に、あの調印をしたアメリカ、フランス、イギリスに、この四島に限るということについて国際的な打診を求めていますよ。これについてはアメリカも余り賛成じゃないのです。それで英、仏ともに批判的なんです。これは国際的なコンセンサスも得られていないのですよ。ここからいきますと、よほど四島に限るという返還論は誤っておりますので、この点について何か納得いくような説明ができますか。できましたらひとつ……。
  158. 高橋辰夫

    高橋議員 先ほども申し上げましたように、得撫以北をサンフランシスコ条約の中で放棄をしておるわけでございまして、その得撫以北の帰属につきましては連合軍がこれを決めるということになっておりますけれども、いまだその帰属については決められておらないような状態にございますので、瀬長先生の言われることも十分わかりますけれども、現在の立場といたしましては四島返還にひとつ全力をささげるという態度でありますので、御了承いただきたいと思います。
  159. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、四島返還に不賛成じゃないのですよ。それは当然のことですよ。賛成しますが、足かせを入れないようにどういう方法があるか。決議でも「等」をつけているんだから、なぜ「等」をつけられないのか。法律用語にそのようなことはなじまぬというわけですか。何かありますか。
  160. 高橋辰夫

    高橋議員 それはありません。
  161. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 たとえば、社会党案の中にははっきり番いてありますね。この「北方領土隣接地域振興等特別措置法案の提案理由」、これは社会党の提案なんですが、「第一に、この法律におきまして北方地域とは、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島等の千島全地域でありまして、この法律による特別措置の対象となる北方領土隣接地域とは、根室市、別海町、中標津町、標津町及び羅臼町の区域であります。」ということで、いずれにしても千島全地域であるということはうたっていますね。これは条理にかなっていると私は思います。したがって、いま高橋先生が言われた法律用語とか、なじまないということではないんだということですが、提案者の皆さん、入れることに別になじまないことはないでしょう。入れて、全国民的な返還運動展開の足場だけは築いてほしい、崩さないでと思いますが、いかがでしょうか。
  162. 高橋辰夫

    高橋議員 瀬長委員質問の趣旨はわかるのでございますけれども、法律は政府として誠実に施行しなければならないものであるわけでございまして、国会決議とは異なり、そのような法律の中で北方地域につき社会党案でのような定義づけを行うことは、自民党政府が一貫して北方四鳥の返還をソ連に求めてきていることとの兼ね合いにおいて政府対ソ立場を混乱せしめることになりかねないのでございまして、与党の立場としてはそのような定義を法律の中で用いることは問題があると考えておりますので、四島返還ということに位置づけたわけでございます。
  163. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 問題があるというのは、どういう問題があるのですか。
  164. 高橋辰夫

    高橋議員 これは再々申し上げておりますように、サンフランシスコ条約第二条(C)項により得撫以北を放棄しておる、そういった事実に基づいて行っておるわけでございます。
  165. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 二条(C)項は、そんなことは書いてないですよ、権原を放棄するというだけであって。あなたの言うようなことは書いてないですよ。ですから私は、この二条(C)項は領土問題で誤りだと思うのです。サ条約三条が沖繩、南西諸島の信託の条約でしょう。それでアメリカが行政権を握るという。二条は(C)項ですよ。これには、いま高橋さんおっしゃたようなことは書いてないですよ。
  166. 高橋辰夫

    高橋議員 請求権を放棄しておるわけでございますから。
  167. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 請求権の放棄あるいはすべての権原の放棄はうたっていますが、これはいまでも正しいとお考えですか。
  168. 丹波実

    丹波説明員 平和条約の解釈の問題でございますので、私の方から御説明させていただきたいと思います。  先ほどから引用されておりますサンフランシスコ平和条約第二条(C)項におきまして、明確に「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」という条項となっておりまして、このサンフランシスコ平和条約は、当時の国民を代表された方々の集まりである国会におきまして、民主主義的なプロセスにおきまして承認されておる、私はやはりここが出発点であるべきじゃないか、こう考えます。
  169. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、そこが出発点ではなくて、出発点はやはり日本とロシアが平和のうちに話し合って、条約で日本の領土にするということを決めたということが原点ですよ。それは高橋先生も最初におっしゃった。決して戦争とか侵略とかによって日本が奪ったものじゃないのだ、これが原点ですよ。ですから、ポツダム宣言の問題を出したのは何かというと、ポツダム宣言というのは無条件に受諾しての降伏ですからね。その中にカイロ宣言、領土不拡大のこのカイロ宣言原則はポツダム宣言でも履行するんだというようなこと、領土不拡大ですからね。ですから、こっちの領土でしょう。いわゆる南、北千島、あなた方の言うような理論からいっても、北千島でも、こっちの領土ですよ。なぜそれを放棄するのか。あの領土不拡大の方針は、ポツダム宣言の原点ですよ。ですから、問題はあのヤルタ協定の秘密協定だ。あれは秘密協定であって、ソ連が参戦するという目標で、いわゆる敗戦の年の四五年二月に秘密に結ばれたのがあのヤルタ協定です。これによって、あの千島を引き渡せ、これなんです。返還せいという言葉を原典も使っていないですよ、ロシア語の原典も全部調べておりますがね。あれは領土じゃないから、引き渡せとなっているのですよ。向こうの領土であるということであれば、返還を要求しますよ。なぜ引き渡せと言ったか。ソ連の領土じゃない、ちゃんとソ連と一八五五年あるいは七五年、そういった条約に基づいて日本領土にしたのだということをさすがのスターリンも知っているから、強引に言えないで、引き渡せなんて言ったわけだ。それは引き渡しましょう、これこそ日本国民は守る義務がないんですよ。縛られる必要もない。秘密協定なんだ、国際的に見ても。これは戦後わかったことだ。ですから、いま説明員ですか、あのサ条約を結んだときが原点なんだと。原点はあれじゃなかったんだという問題なんだ。との原点を誤ると、歴史の方向を正そうにも正し得ないんですよ。歴史上、戦後処理として誤ったことがわかれば、これは正すべきだということを書いてある国際条約があるんですね。これがいわゆる一九七五年、ヘルシンキで結ばれた全欧安保・協力会議。この中で、一たん結んだ条約でも後になって誤りがあったら当然正すべきだということが、このヘルシンキ条約に明確に書かれているわけなんだ。これは一九七五年につくられた条約なのです。こういった国際的に条理ある返還の理論をもってしなければ、結局国際的な支持を得ることができません。ですから、このヘルシンキ会議で決められた、誤ったとわかったら国際条約でも直すべきだという、これは国際会議ですからね。そういったことは筋が通るし、国際的支持も受けることができるのです。日本ソ連平和条約、まだ結ばれていないが、そういった情理を尽くしてやらない限り、これは国際的にも通用しない。国際会議で決められているのがあるので、私はそういった方法も加えて、二度言いますが、理事会でも口酸っぱく言ったんだ、「等」を入れられぬかな、と。何か委員長も、いいかもしらぬなあというような顔をしておりましたが。ですから、これを二度、三度、口酸っぱく言うのは、誤りをちゅうちょしないで直すべきだということが、日本国民のコンセンサスを得る道じゃないかというふうに考えるんだ。そうなると、さすがに自民党はよう考えておるんだなあといったようなことも、あるいは国民の中で出る可能性なきにしもあらず。ですから、ここら辺はどういうふうに高橋先生は思いますか。
  170. 高橋辰夫

    高橋議員 いま瀬長先生の言わんとするところはわかるのでありますけれども、国際信義あるいは日ソ関係の問題等を踏まえまして、われわれは、固有の領土は北方四島である、そういう考えに基づいて、「等」を入れる考えはございませんことを了承していただきたいと思います。
  171. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が沖繩選出の議員でありながら、なぜ北方領土問題にそんなに時間を割いてやるかということは、体を張って体験したから言うんですよ。一遍、国際条約なら国際条約、サ条約もそうですね、それで結んで、三条で祖国と断ち切られた、その苦しみ、民族の独立を失った一部民族の苦しみというのは、これは並み大抵じゃないんですよ。したがって、いまの歯舞でも色丹でも国後、択捉でも、その鳥々に住んでおられた人々が、自分の生まれた島にも帰れないという心情は、察するに余りあるんですよ。したがって、そういったような地域の人々の苦しみを幾らかでもやわらげ、あるいは悩みを救ってやる、経済的にも、さらに漁業権などの展望も与えながらやるという点においては、私は反対しない、賛成ですよ。これは自分の体験ですから。あの時代は、もちろん米軍の銃剣下での運動ですから、それは政府から補助金をもらっている連動とは違ったものだ。あの当時、政府は反対しておった。ですから、こういったように銃剣下における沖繩返せ、いわゆる領土返還、祖国復帰の闘いの体験からいいましても、サンフランシスコ平和条約三条を撤廃しよう、これによって沖繩は祖国から断ち切られたんだという目標を掲げて、初めて全県民運動となり、国民運動となって、全面返還ではなかったわけなんですが、安保条約をかぶせられましたから、なかったが、一応は日本国民として、日本国の憲法のもとで生活できるという、布令・布告政治をなくすというような状態になったその体験からいって、私はいま申し上げた論理を展開しております。共産党は、もちろん御承知かもしれませんが、あくまでもやはりいまの南千島、北千島、いわゆる全クリル・アイランズを返還させる一番原点は、あのサ条約二条(C)項の撤廃ですよ。この撤廃を掲げて当面たとえば、当然のことながら北海道の一部でしょう、歯舞群島、色丹島、これは当然返せ、これはすぐ要求できますよ。同時に、いわゆる国後、択捉、それからあの占守島までの北千島、これはやはり返還を求める。しかし、これはいろいろ国際的な問題もあり、国内的な問題もあるんですよ。いま返したらどうなるか。安保条約がある。やあと言ってアメリカ軍が向こうに行ったらどうするかという問題があるわけです。そればありますよ。さあ日本に返しました、いわゆるソ連の実効性はなくなった、それっということで、日米安保条約に基づいて国後、択捉に米軍が進駐したら一体どうなるか、こういったいろいろな問題があるのです。いろいろな問題があるにしても、いま言う情理を尽くして、だれでもわかるような、あの二条(C)項、これは誤りであったんだぞ、なぜか、暴力によって、あるいは戦争とか侵略によってかち取ったものじゃないんだといった点、これは合意していますから、これは国際的な合意ですよ。筒橋先生も言われるように、この国際的合意に基づいて、本当の返還運動の礎石は築き上げられるということを私はここで申し上げておきます。  それで後半ですが、あの島々、四島に住んでおられた高々の人々は、本当に戦後四十年近く自分の郷里にも行けない。また、一昨年でしたか、北海道に行ったときに、小沢委員長時代かな、いろいろ請願も受けました。墓参もできない。せめて墓参ぐらいさせたらどうか。漁業権というふうなものも満足にとれない。これはやはり島々を失った人々の苦しみですよ。私、その面からいっても、まだ日本は完全に独立をかち取っていないというふうに考えております。  それはさておき、あとの問題について質問いたしますが、根室地域を初めとする北方漁業に従事する漁民は領海十二海里、漁業水域二百海里体制に入ったことにより漁場の縮小、減船、漁獲量の低下、原料の高騰などによって漁民は深刻な事態にあることを私は知っております。特に漁業を基幹産業とする根室地域の漁民は、領土問題も関係し、漁民の生活だけでなく、水産加工業を初め漁業関連業種の停滞などきわめて厳しい状態にあるわけなんですが、この法案では特に深刻をきわめている漁民や漁業関連業種への有効な援護措置は講じられていないように考えるが、これはどういうふうに考えているか、ちょっと説明してください。
  172. 近藤元次

    近藤(元)議員 いま先生から御質問の漁業関係については、特にこの法律の中の基金を活用する面では実は重点事項の中の一つでございます。二百海里というきわめて制限をされた日本の三大漁場の中の周辺地域でございますから、負債額も百九十億を超えておるような負債額であり、金利負担にもたえかねておる漁民がたくさんおるわけでございますので、この基金の活用によって金利負担の軽減を図ったり、一方では領土の返還が来るまでは二百海里の宣言というのはやむを得ない。先ほど岡田先生からの質問の中にもありましたように、拿捕されなお帰らざる漁民がまだたくさん残っておるわけでございますから、その間には沿岸漁業の整備を最重点に考え、漁港の整備等この基金の活用によって北方地域の漁民の皆さん方の苦しみに対処していきたいということが考えておる事項でございます。
  173. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に、この法案では根室地域外の北方漁業関連で厳しい状況にある隣接の釧路、稚内地域の振興にはつながらないと思うのだが、この地域の振興などはどう考えておられるか。ここら辺おわかりでしたら答えていただきたい。
  174. 高橋辰夫

    高橋議員 これは政府の方の答弁になろうかと思いますけれども、釧路あるいは稚内方面についても大変厳しい状態は私たち承知しておりますが、これは農林水産省の方の漁業の振興との兼ね合いで今後ともやっていくものだと考えておるわけでございます。
  175. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これについて何か政府の考えがありますか。——農林水産省来てないのですか。  最後に、旧漁業権者に対する補償措置について地元では大変強い要求となっておるわけなんですが、歯舞、色丹、国後、択捉島などにおける旧漁業権補償措置についてはこの法案で考慮されておらないが、これについてはどのように考えておられるか、また旧島民、元居住者は現行の融資事業の拡充強化を要求していますが、この措置についてはこの法案でどのように考えているか、この二つ何かお考えがありましたらお伺いします。
  176. 高橋辰夫

    高橋議員 この法案では、それは別途の問題として取り扱っておるわけでございますけれども、旧漁業権者に対する補償の措置政府の方ではもう終わったという考えでございまして、われわれも実はこの問題は党内でも十分論議をいたしましたけれども、そういうこともありますので、その点はひとつ政府側から答弁をしていただきたいと思います。
  177. 橋本豊

    ○橋本(豊)政府委員 旧漁業権補償の方は私どもの所管でございませんので、元居住者に対する融資の問題についてだけお答えしたいと思います。  元居住者に対する融資については、先生も御承知のように北方領土問題対策協会を通じまして現在年間貸付枠が十億ということで元居住者の営む事業資金、生活資金等について貸し付けを行っておりまして、今度の法案とは関係がないというふうに理解しております。
  178. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最後に要望事項を申し上げます。  最初に全千島返還の基本的な問題を提起いたしましたが、この問題は、この法案が通った場合にいわゆる北方領土とはということが法律で決まるわけなんで、北方領土というのはもう北千島を含まないといったような宣伝が行われて、これに国民的合意を求めようとする考え方はきわめて危険だということを私は指摘したいのです。法律用語の中でも私は「等」をつけてほしいと再三言いましたが、どうもつけられないようなことであります。いずれにいたしましても北方領土は四島はもちろんですが、北千島も当然日本の領土であったし、であることに間違いはない。いまソ連が不当に実効支配しているが、いつかは日本国民の正しい要求のとらえ方とさらに運動の発展、国際的にも支持されるような道理に基づいてやるならば、誤ったあのサ条約二条(C)項の規定にかかわらず全千島をもとの日本領土に組み入れることは可能ではないか。そういったような観点に立って私たちはこの北方領土という問題を考えなくちゃいけない。採決が後であるかもしれませんが、私申し上げましたように、筋としては北方領土は四島に限りますじゃ何といったって条理に合わないのですよ。過去三十九年、あの島々から追い立てられるようにして現に根室地域に集中しておるような元の島民の方々には、毎年墓参もやりたいという考え方もある。年がたつに従ってだんだん年をとられる。以前の島民はだんだん少なくなって二世、三世になっている。せめて向こうに住んでいた一世だけでもいいからお墓参りをするような方法も考えなくちゃいかぬし、現在の生活権を脅されている漁業権者、漁業に従事している方々に対しても温かい気持ちで、国民的な気持ちで救済の措置をとるということは国民として当然のことであるというように考えております。したがいまして、そういったようなこととも関連して、間違った四島返還論に固執することなしに、全千島の返還を目標にして、この全千島の返還をかち取るためにはサ条約二条(C)項の撤廃、これだと、本当に勇気を持って自信を持って、野党であれ与党であれ大きい旗を立てて進むということがいま一番大切なことであると考えます。  私、まだ少し、十分ぐらいありますが、委員長も気にしておるようですからこれで質問を終わりたいと思うのですが、提案者も一四島ですから、あくまでも四島四島、これが頭の隅にでもあるとすれば頭の隅から一掃していただいて、全千島の返還要求の腰を折らないようにしてほしいということを要望して、私の質問を終わります。
  179. 吉田之久

    吉田委員長 答弁の補足をお願いいたします。近藤君。
  180. 近藤元次

    近藤(元)議員 先ほどの岡田委員の御質問に対してのお答えの補足をさせていただきたいと思います。  北方領土問題についての世論の啓発について、この法律案考え方を御説明申し上げたいと思います。  第一に、第三条第二項第一号あるいは第四条に規定をする国民世論の啓発については、北海道のみを対象としているものではなくて全国民を対象とするものではございます。  第二には、第十条の第一項第二号に規定する基金と世論の啓発との関連でございますが、これは北海道に設けられるものであり、その対象となる啓発に関する事項は一市四町または北海道の区域内の公共的団体が自発的に行うもので、国の補助または負担を伴わないものが対象となります。これをもう少し具体的に考えますと、世論の啓発という事柄からしまして、先ほど申し上げましたとおり一市四町において行うというものはもちろんでございますが、そのほかに広く北海道全体を対象として、道あるいは道民としての立場に立った北方領土問題についての世論の啓発ということが千島連盟その他の公共的団体を通じて行われる場合が相当にあるのではなかろうかと考えられているところであります。  なお、念のために申しますと、北海道自身がこの基金を使って世論の啓発を行うことは、法律上認められておりません。  よろしくお願いをいたしたいと思います。
  181. 吉田之久

  182. 岡田利春

    岡田(利)委員 大体わかったのですけれども、いま千島連盟ということを述べられているのですね。千島連盟の組織というのは全国的な組織なのです。千島連盟の支部というのは富山県にもあるわけです。千島連盟というのは、やるということになりますと、その傘下に、富山県にちゃんと支部があるわけですから、そこも入るから、千島連盟ということにすると、それは富山でやってもいいということになるのです。ただ、いまの解釈ですと、北海道に限るということになると、組織的に千島連盟はばみ出すわけですから、そういう点をひとつ十分考慮に入れてほしいということが一点です。  それからもう一点は、いまの質問答弁された中で注意を喚起しておきたい点を一つ感じたわけです。それは、たとえば漁業者の負債等にこの基金も活用して配慮するという趣旨のことが答弁にあったわけですが、北方四島なら北方四島でもいいですよ、ここで二百海里の問題で非常に困難になったという意味は、単に一市四町だけの漁民じゃないのです。二百海里以前は釧路の方からもその漁場で自由操業しておったわけですね。そういう北方四島の海域で操業しておったけれども、今度は許可制になり、クォータが決められたという変化の結果、漁業者の負債等について対象にするとするならば、ちょっと限定することが困難ではないか。そこに入っていた、漁業権を持って操業しておった者、こういう点を配慮しないと運営の中で分断が起きる可能性があると思うのです。何だ、あそこだけやってあれだと、本法の趣旨と逆行ずる結果が出る。恐らくは網走でもあると思うのです。この点は相当注意を払わぬと、せっかくやったけれども内部混乱が起きてしまって、片一方はそっぽを向く、こういう点を先ほどの答弁から感じましたので、その点ぜひ注意をしていただきたい。
  183. 吉田之久

    吉田委員長 しばらくこのまま休憩いたします。     午後二時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時三十分開議
  184. 吉田之久

    吉田委員長 再開いたします。  岡田利春君。
  185. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理府総務長官に二点だけ御質問いたします。  一点は、御承知のように北方領土問題対策協会法があって、協会が存在しているわけです。しかも、これは旧北方協会の業務を引き継いでいる協会でもあるわけです。したがって、今回提案の法律が成立するとすれば当然援護業務については関連が出てくるわけです。旧漁業権者及び旧居住者の援護について、今度の法律では次代継承の面も旧居住者が含まれておりますから、しかも旧居住者は高齢化して、最近高齢化の結果死亡人員が非常にふえておるわけであります。いわば旧居住者の年齢的な構造というものが非常に大きく変化をいたしております。したがって、援護業務についてもこの法案と兼ね合いが当然あるわけでありますから、この際やはり援護業務についても旧居住者の意見等も聞きながらもう一度検討してみたらどうか、そして体質改善すべき点があれば改善する、こういうことが当然必要になってきていると思うのですが、この点についてそういう御検討をする御意思があるかどうか、承っておきたいと思います。
  186. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 お答えをいたします。  今回の特別措置法案は、北方領土問題の重要性にかんがみまして、これまで行われてまいりました各種の施策をさらに充実強化しよう、こういうことで、新たに基金の設定等の特別措置を盛り込みまして北方領土の問題解決の一層の促進を図ろう、こういうものであろうと理解をいたしております。  そこで、北方領土問題対策協会が現在全国レベルで推進をいたしております啓蒙、啓発、援護等の業務につきましても、この特別措置法案の成立後におきましては内閣総理大臣の定める基本方針に包含をされる、そしてそれに基づく施策の一環として行われることになると理解をいたしております。したがいまして、従来の北対協の事業と今回の基金の事業、こういうものは総理大臣決定するいわば基本方針の中で一応決めまして、そしてそれをやっていこう、こういう考え方でございます。  なお、今回の法案に設けられております基金の対象となります啓発活動と援護事業というものは、隣接地域の一市四町あるいは道内の公共的な団体が独自に行う事業でございまして、全国レベルで行っております北対協の事業とは次元を異にする、こういう考え方に立っておりますので、御理解をしていただきたいと思います。
  187. 岡田利春

    岡田(利)委員 大臣は入ったばかりですから、いまの答弁でいいのですけれども、ただ援護活動は先ほども明らかになったように全国レベルなんですよ。ここはダブるわけです。したがって、いままでの援護活動というものは昭和三十六年以来の伝統と歴史があるわけでありますから、居住者の現存する人の年齢構造も変わってきているわけです。そういう意味で、どういう援護活動がいいかという点では一回総括をする時点だ。ぜひ検討してもらいたい。今度の法律の基本方針と直接関係あるわけじゃないのですから、その点を私は申し上げておるということを十分踏まえておいていただきたいと思います。  第二点は、実は居住者は非常に複雑な気持ちで高齢化し、どんどん多くの人が亡くなっておるわけですが、これに対する何らの措置もいまないわけです。今度の引き揚げ者というのが、いままでの北方領土の返還運動の原点でずっと来たということは何人も認めるのじゃないかと思うのです。したがって、今回の基金の運用等についても三つの例示があるけれども、特に引き揚げ者の援護ということにもう一段留意しないと、せっかくの基金がただ地域振興に漠然と使われていく、引き揚げ者の方はいままで運動していたけれども逆にそっぽを向くというような形で逆な結果になる可能性が非常に強いと思うのです。何と言ってもそういう旧引き揚げ者の人々が原点でありますから、その点を十分踏まえてこれに対する対応を法律を執行する場合には行わなければならない問題だ、こう私はいままでの流れから言って考えるわけであります。そういう点についていかがでしょうか。
  188. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 いま御指摘の問題でございますが、北方領土の元居住者は戦後三十七年、長期にわたりまして領土の返還運動要求の中でまさに中核的存在として努力をされてきたのであります。したがって、この方々の北方領土に対する気持ちをみずからわれわれの気持ちとして対応してあげなければならない、こう考えるわけであります。したがって、わが国の固有の領土でありますこの四島に対する返還実現を願っておる国民全体の気持ちに、素直な感情といいますか気持ちで対応していくべきである、こう考えております。  その中身の御指摘でございますが、私はいわば心の振興ということが非常に大事なことであろうと思います。今回の特別措置法案におきましても世論の啓発、そしてまた元居住者に対する援護措置が当然大きな柱になるものであると私は考えております。したがって、この法律が成立を見る場合においては、この法律の趣旨というものが十分生かされるように最善の配慮をしてまいりたい、こう考えております。
  189. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  190. 吉田之久

    吉田委員長 これにて近藤元次君外十八名提出北方領土問題等解決促進のための特別措置に関する法律案については質疑を終局いたしました。     —————————————
  191. 吉田之久

    吉田委員長 この際、本案は予算を伴う法律案でございますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があればお述べいただきたいと存じます。田邊総理府総務長官
  192. 田邉國男

    ○田邉国務大臣 本法律案のうちで地域特例の創設、基金の設定につきましては、現下の財政事情等から見て問題があります。にわかに賛成はしがたいけれども、諸般の事情を勘案をいたしましてやむを得ないと私は考えております。  以上でございます。
  193. 吉田之久

    吉田委員長 これより近藤元次君外十八名提出北方領土問題等解決促進のための特別措置に関する法律案について討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  194. 吉田之久

    吉田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  195. 吉田之久

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  196. 吉田之久

    吉田委員長 お諮りいたします。  委員の異動に伴い、理事に欠員が生じております。委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ所あり〕
  197. 吉田之久

    吉田委員長 御異議なしと認めます。それでは      上原 康助君 及び 部谷 孝之君を理事に指名いたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十一分散会