○比屋根
参考人 私は
比屋根俊男と申します。よろしく
お願いいたします。
本日は、
参考人として
意見を述べる
機会を与えていただきまして、心から感謝申し上げます。早速、
意見の陳述をさせていただきます。
さて、今
国会に
提出されました
沖縄振興開発特別措置法等の改正法案は、現行法の内容をほぼ継続するものであり、特に現行の高率補助、過疎債に加えまして、辺地債が適用される点については高く評価するものであります。厳しい
状況の中でこれまで
努力された関係各位に、深く感謝申し上げる次第でございます。
改正法案の可決は、
沖縄県にとっては、現段階では率直に申し上げ最低必要な
条件かと思われます。
過去十年間振り返ってみまして、これまでの
復帰特別措置法、
沖縄公庫法、沖振法によって
産業の
振興、住宅の
建設あるいは
社会資本の整備に大いに
寄与してきたのは事実でありまして、高く評価するものであります。しかし、自立的
経済への体質
改善という観点からはほんの緒についたばかりでありまして、まだまだ未
解決の問題が多く存在しております。
たとえば、過度の財政依存型
経済であり、また県財政の自主財源が極端に低いこと、
所得乗数効果のきわめて小さいこと、恒常的に高い
失業率、対外収支の極端な赤字等々、マクロ的に見ても
県経済の体質には余り
変化は見られません。今後も、過去十年間と同じ
制度上の
特別措置による
振興策の推進では、二次
振興開発計画に多くの期待は持てまいというのが大方の見方であろうかと思います。計画
期間中の適当な時期に、思い切った沖振法の内容改正が必要と思われます。
具体的な
意見を申し上げる前に、まず共通の認識を持っていただくために、これからの
沖縄県の人口の問題を若干取り上げてみたいと思います。
十年前の
復帰の時点で九十五万人でありましたが、五十五年国調では百十万七千人となっております。この十年間で約十五万人余り増加していることになります。十年後の
昭和六十六年には百二十万八千人に達すると予想されております。したがって、
昭和五十五年国調で百十万七千でございますので、約十万人余り増加するということになろうかと思います。
現在の人口構成からしますと、これから十年間は総人口は増加いたしますが、ゼロ歳から十四歳の年齢層は現在よりむしろ二万五千人程度減少することになります。したがいまして、十五歳以上の年齢人口が増加するということになります。十五歳以上の人口がどの程度増加するかと申しますと、約十二万五千人程度となります。したがいまして、働く場を必要とする年齢層がふえるということに注目していただきたいと思います。これは大変重要な
意味を持ち、
雇用の場の確保がより深刻な問題となり、現在以上に需給バランスは崩れる可能性が強いと申せます。
現在
失業者二万三千人台、
失業率五%台から
全国の平均水準
失業率二%台に減少させるには、私の推計では、最低十万人程度の就業者の吸収が必要となってまいります。これは、過去十年間で約六万人余りの就業者が増加しているわけでございますので、今後、各
産業部門のこれまでの
生産性の
成長率を考えた場合、
雇用機会の増加はきわめて厳しい
課題となるものと思われます。十万人の就業者増加の吸収が不可能なら、労働力の積極的県外流出策をとるか、六十歳以上は積極的に引退するか、
女子の家事従事者その他無業者など、いわゆる非労働力人口の増加策をとる以外方法はないかと思われます。もちろん、六十歳以上の引退とか、
女子の家事従事者、無業者の増加を過度に期待してみても
意味のないことは申し上げるまでもありません。一方、労働力の県外流出策は、現在でも三千人台の純流出でありまして、九州では長崎県に次いで二番目に多く、Uターン者も多いわけですけれ
ども、流出人口もまた多い
現状であり、県外流出にも限度があるということが言えます。
したがって、現在われわれが考えている以上に
雇用問題、
失業問題ははるかに深刻となる可能性がきわめて高くなるという点を十分念頭に置いて論議を尽くされなければ、あいまいな
対策に流れる可能性が強いということをまず指摘させていただきたいと思います。
では、このような将来展望を踏まえて、積極的に働く場の確保をいかに図るか。新たに労働
市場に参加してくる若者が就業
機会を県内に求める傾向が強いだけに、思い切った政策的誘導策が必要となってくるものと考えます。
その基本的問題を二、三提言いたしますと、まず第一に、沖振法の高率補助の問題であります。
現行計画の総点検資料を見ますと、生活、
産業基盤としての
社会資本の整備の中で、すでに
本土水準に達したもの、まだ格差の大きいものがあります。整備のおくれている分野のほとんどは、
対象事業の補助率が相対的に低いものが大部分であります。
沖縄の県、市町村の財政力が
全国最下位グループであるため、補助率の高いものから整備されてきたのは当然であろうかと思います。したがって、高率補助
対象事業の見直しを徹底し、おくれている分野の
対象事業の補助率の引き上げあるいは新設を思い切って断行することであると考えます。特に、
観光施設整備のための
事業については高率補助の新設を図るべきであります。現在のところ、
観光産業は最も手のつけやすい分野でありまして、
県経済を支える有力な分野であろうかと思います。幸い
沖縄にASEAN諸国を
対象とした
国際センターの
建設が決定をしておりまして、
国際センターの
機能充実に伴い、研究並びに研修活動、
国際会議のため、諸外国との交流が盛んになるものと思われます。同センター
機能と並行いたしまして、都市型海浜リゾート施設、海浜公園、人工ビーチ、あるいはコンベンションホール等々の
観光施設整備が必ずや必要になってくると思われます。十年後、
観光客三百万人をねらう
観光市場の形成を図るには、積極的財政投融資が必要であろうかと思われます。世界に通用する
国際的
観光地に育てるためには、施設整備に対する高率補助の新設が不可欠と考えます。ただし、高率補助の見直しに当たっては、今後とも当分の間は
県経済の
成長を支える主力は
公共工事でありまして、安定した伸びの
事業量の確保に依存せざるを得ないため、県、市町村に過度に負担にならないきめ細かい
配慮が必要になることは当然の前提であります。
第二に、沖振法で工業
開発地区と
自由貿易地域の
制度が設けられております。
制度上の
優遇措置があるわけでございますが、
企業にとって魅力に乏しい内容のものであるという評判でございます。
これまで
企業誘致が思わしくない理由の
一つに、いろいろありましょうが、地価が高いことが挙げられます。狭い
沖縄に広大な
軍事基地を抱え、御
承知のとおり
全国の
米軍基地の五三%を占め、
沖縄本島の二〇%、中部地域では三割を占め、しかも軍用地料が
復帰後かなりのスピードで値上げされ、
沖縄県の地価上昇の原因となっていることが指摘されております。
わが国の防衛上、
米軍基地が不可欠であり、他の都道府県への分散も不可能ならば、それなりの
対策は必要であろうかと思われます。県民の
努力だけではどうしようもない
要因が存在しているからであります。
その
一つの
解決策といたしまして、現行の工場再配置誘導法の中で
沖縄特別誘導地域を設けまして、補助金を他地域より大幅に上げることが考えられます。特に軍用地の跡地が
対象地区となる場合は最優先し、相対的に高水準にある地価を補助金によって吸収し、優位な誘因を政策的につくることであるかと思います。
また、さらに一歩進めて、現在適用除外となっております新設あるいは増設についての
企業への補助金適用もあわせて検討し、それを現在内容検討の要望の高い工業
開発地区、
自由貿易地域の
制度上の内容
充実と並行して
実施すれば、きわめて効果的と考えます。
第三の重要な点は、
優遇措置適用の
対象企業の
業種をしぼることであろうかと思われます。誘致した
企業によって既存の地元
企業と競合し、地元
企業がつぶれるのでは
意味がないわけであります。また、時間をかけ誘致した
企業が、誘致と同時に斜陽化する
業種であっては問題であります。八〇年代、九〇年代に間違いなく
成長産業として活躍が期待される
業種に限定する必要があろうかと思われます。
たとえば、工業
開発地区への誘致
産業であれば、IC
関連産業など先端技術分野があります。地域に定着するよう徹底した
条件整備を実行することが必要かと思われます。先端技術分野の立地は、地場
産業を刺激し、全体のレベルアップにつながる上に、長期的には同分野に合った人材も育成されると考えるからであります。
以上、
振興開発上の今後の
問題点と
解決上の足がかりについて私見を述べさせていただきましたが、結局
沖縄の
経済自立化は、明るい兆しが出てきました花卉、野菜などを
中心とした第一次
産業部門と、比較的好調な
観光産業に力を入れ、それぞれの延長線上で考えられる二次加工分野の
産業の掘り起こしに努める必要があろうかと思います。たとえば水
産業の場合でありますと、その延長線上で魚のすり身工場を
建設するなどでございますが、さらには地場
企業の育成など、じみちな
努力を続けることであります。かなりこういう形で
努力したとしても、今後十年間で増加するであろう十万人以上の労働力人口の吸収は困難であるため、抜本的な政策誘導策をとらない限り、きわめて厳しい問題となろうかと思われます。いかに
振興開発計画で表面的に計画数字をつくろってみても、時間の経過とともに
雇用対策、
失業問題は一層表面化してくるのは必至と考えます。
したがいまして、これまで述べましたじみちな
努力とあわせて、
一つには、高率補助の内容を次の計画
期間の適当な時期に、十分検討し、戦略的に真に必要なあるいは立ちおくれた分野の
事業は、補助率の引き上げあるいは新設をすること。二つには、国土の均衡
発展を図るための工業立地政策と工業再配置政策の中で、思い切って
沖縄に対し特別な
配慮をし、総合的な
振興を図る以外に
解決策はないように思われます。過去十年間と同じパターンでなく、
民間の活力を導入することであり、
企業誘致のための積極的
優遇措置を創設し、徹底したインセンティブを与える
条件を整えることであると考えます。
昨今の
行政改革、
財政再建の趣旨から見まして逆行するかに見られましょうが、長期的に見まして、国にとっても県にとっても、
沖縄の
経済的
自立化の
強化は決してその趣旨と矛盾するものではないという点を強調いたしまして、私の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(
拍手)