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1982-04-21 第96回国会 衆議院 運輸委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年四月二十一日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 三枝 三郎君 理事 楢橋  進君    理事 宮崎 茂一君 理事 福岡 義登君    理事 吉原 米治君 理事 草野  威君       小山 長規君    関谷 勝嗣君       近岡理一郎君    三塚  博君       森  美秀君    山村新治郎君       井岡 大治君    上原 康助君       小林 恒人君    関  晴正君       草川 昭三君    小渕 正義君       辻  第一君    四ツ谷光子君       阿部 昭吾君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君  出席政府委員         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         運輸政務次官  鹿野 道彦君         運輸大臣官房総         務審議官    石月 昭二君         運輸省海運局長 永井  浩君         運輸省港湾局長 松本 輝壽君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省自動車局         整備部長    宇野 則義君         運輸省航空局長 松井 和治君         海上保安庁長官 妹尾 弘人君  委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   福島 静雄君         法務省民事局参         事官      稲葉 威雄君         外務省北米局安         全保障課長   加藤 良三君         外務省国際連合         局専門機関課長 佐藤 裕美君         水産庁研究部長 尾島 雄一君         運輸省航空局管         制保安部長   武田  昭君         海上保安庁警備         救難部長    森  孝顕君         郵政省貯金局経         理課長     山口 憲美君         自治省財政局財         政課長     持永 堯民君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     縄田 國武君         日本国有鉄道常         務理事     竹内 哲夫君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   関谷 勝嗣君     天野 光晴君   浜野  剛君     伊東 正義君   関  晴正君     石橋 政嗣君 同日  辞任         補欠選任   天野 光晴君     関谷 勝嗣君   伊東 正義君     浜野  剛君   石橋 政嗣君     関  晴正君 同月二十日  辞任         補欠選任   伊賀 定盛君     矢山 有作君   関  晴正君     角屋堅次郎君 同日  辞任         補欠選任   角屋堅次郎君     関  晴正君   矢山 有作君     伊賀 定盛君 同月二十一日  辞任         補欠選任   浜野  剛君     森  美秀君   伊賀 定盛君     上原 康助君   浅井 美幸君     草川 昭三君   中馬 弘毅君     阿部 昭吾君 同日  辞任         補欠選任   森  美秀君     浜野  剛君   上原 康助君     伊賀 定盛君   草川 昭三君     浅井 美幸君   阿部 昭吾君     中馬 弘毅君     ————————————— 四月十五日  東北新幹線盛岡以北早期着工等に関する請願  (小沢一郎紹介)(第二一二一号) 同月十六日  公共交通を確立する交通政策実現等に関する請  願(五十嵐広三紹介)(第二四二四号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二四二五号)  同(小川省吾紹介)(第二四二六号)  同(加藤万吉紹介)(第二四二七号)  同(清水勇紹介)(第二四二八号)  同(島田琢郎紹介)(第二四二九号)  同(鈴木強紹介)(第二四三〇号)  同(武部文紹介)(第二四三一号)  同(永井孝信紹介)(第二四三二号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二四三三号)  同(水田稔紹介)(第二四三四号)  同(森中守義紹介)(第二四三五号)  同(米田東吾紹介)(第二四三六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  陸運に関する件  海運に関する件  航空に関する件  日本国有鉄道経営に関する件  海上保安に関する件      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  陸運海運航空及び日本国有鉄道経営に関する件等について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森美秀君。
  3. 森美秀

    ○森(美)委員 皆さん方、すでに新聞、テレビで御承知と思いますが、三月二十一日に千葉県の千倉アカデミー号という微粉炭を積んだ船が乗り上げまして、その点できょう質問をしたいわけでございます。本来ならば地元選出中村正三郎君が一緒にやる予定になっておりましたが、本人がちょっと出張しておりますので、私がかわって質問をさせていただきます。  実は、私はこの質問をするにつきまして、政府与党として果たして質問することがいいのかどうか、ずいぶん悩み、苦しみもしたわけでございますが、しかしながらこの際、どうしても二、三の点について運輸大臣並びに海上保安庁長官に御質問申し上げなければならないということで、きょう立たしていただいたわけでございます。     〔委員長退席宮崎委員長代理着席〕  御承知のように、三月十九日の午前三時三十分に、八丈沖船体亀裂が生じたということで救助依頼があって、直ちに海上保安部が出動して、三月二十一日午前八時半、千倉浅瀬に乗り上げたわけでございます。時間にして五十三時間でございます。しかし、五十三時間ございますが、私は、なぜ千倉浅瀬まで乗り上げてしまったか、この点について長官の御意見を聞きたいわけでございます。  現在、地元では、ヒジキアワビもエビも何もかも汚染をされておりまして、その被害は数十億になると言われております。しかしながら、大変残念なことに、外国船でありました関係保険会社代理の弁護士が時間を切ってわれわれに回答を迫って、漁業賠償についてずいぶんと苦しい思いをして、一億五千万プラス三千万、一億八千万の漁業補償を四月八日にまとめたわけでございます。しかし、これはまとめてみましても一億八千万では全く足りない。四月二十日にヒジキが解禁になるわけでございますが、そのヒジキですらもう五、六千万になってしまう大変な被害でございます。  そこで、保安庁長官にお聞きしたいわけでございますが、はっきり言って、潮流をあなた方見誤ったのではないかということでございます。一応見誤ったかどうかということだけをまず答えていただきたいと思います。
  4. 妹尾弘人

    妹尾(弘)政府委員 潮流を見誤ったかどうかというお話でございますが、私どもとしては、あそこに黒潮が流れ、北へ向かって船が流されるだろうということは十分予測していたわけでございます。潮流を見誤ったということではございませんで、私ども巡視船には、残念ながらあれだけの大きな船を曳航する能力がございませんので、日本サルヴェージが持っておりますわが国唯一大型外洋曳航船を出動させまして、それに対して水深一千メートル以上のところで曳航するよう指示をしてまいったわけでございますが、当日風波が荒いために日本サルヴェージ作業ではそれを曳航することが不能であったということによってあそこまで漂流してまいった、かようなことでございます。
  5. 森美秀

    ○森(美)委員 ということは、なすすべなく五十三時間便々としたということでございますか。
  6. 妹尾弘人

    妹尾(弘)政府委員 なすすべもなくと申しますのはやや語弊があるかと思いますが、あらゆる努力をしておったわけでございますけれども、あの風波の荒いところに漂う船に乗り移って、引き綱をかけてそれを曳航するということについて日本サルヴェージが失敗した、それでやむなく最後の瞬間において、私どもの船ではどうにもならなかったのですけれども特救隊のヘリによって決死的な着船を試み、そして綱をとって船を引っ張ってみたのですけれども、直ちに綱が切れてしまった、こういう状態でございます。
  7. 森美秀

    ○森(美)委員 ジャパンラインが、これは当然海上保安庁にもデータが来ていると思いますが、私ども書類を提出しました。それによりますと、三月二十日午後五時ごろは沈没危険性はなくなったと出ておりますが、その点はいかがでございますか。
  8. 妹尾弘人

    妹尾(弘)政府委員 ジャパンライン書類については、私ども詳細を承知しておりませんが、私ども判断といたしましては、終始沈没危険性はきわめて高かった、かように判断しております。
  9. 森美秀

    ○森(美)委員 すると、ジャパンライン沈没の危険はなくなったというデータを受け取っているということについては、あなた方は沈没の危険があるという判断に立っておりますか、どうですか。
  10. 妹尾弘人

    妹尾(弘)政府委員 この場合、ジャパンラインは契約上の運航者でございますけれども当該船舶について直接自分の船員で運航していたわけではなく、現場にもいたわけではないし、現場にいましたのは私ども巡視船乗組員がおったわけでございまして、ジャパンラインがどのようなことによってそのような判断をしたかということは、理解に苦しむところでございます。
  11. 森美秀

    ○森(美)委員 質問を次に移します。  七時半に地元で船を見ているということは、七時半の時点では何キロくらいの沖合いに船があったのですか。
  12. 森孝顕

    森説明員 お答え申し上げます。  先生指摘の時間においては、沖合い約一マイルぐらいの位置でございます。
  13. 森美秀

    ○森(美)委員 大臣が見えましたので、いよいよ私は本腰を入れて質問をします。  浅瀬に黙って乗り上げるというのは、われわれ海の男の常識では全く考えられないのですが、いかがでございましょうか。
  14. 妹尾弘人

    妹尾(弘)政府委員 もちろん、運航している船舶が黙って浅瀬に乗り上げるということは考えられないわけですが、漂流船舶サルヴェージ等を使って一生懸命乗り上げを回避しつつも、ついにやむなく乗り上げに至ったというのが今回の事件だと思っております。
  15. 森美秀

    ○森(美)委員 大臣、私は大臣とは年来の友人でございまして、このことを大臣質問するのは個人的には大変ぐあいが悪いのでございますが、公私は別にいたしまして、ひとつ質問します。  ともかく五十三時間前に救助依頼を受けて、三隻も四隻も船がついていて、そのまま真北に向かって船を持っていかせて、そして浅瀬にぶち上げさせた、こんなばかなことは私ども常識ではない。当然のこと、もしいよいよ浅瀬に乗り上げるのだったら必ずいかりをおろすというのが船の常識だと考えますが、いかがでございましょうか。長官答えてください。
  16. 妹尾弘人

    妹尾(弘)政府委員 もちろん、そのいかりをおろす要員があって、いかりをおろすことが可能ならば、いかりはおろすということは当然だと思いますけれども、あの場合船に乗組員はいなかったわけでございまして、確かに八時ごろだと思いますが、私どもヘリコプターから特救隊員、これは救難隊でございます、その救難隊員が綱をとりに決死的な覚悟で着船したという状況でございますから、この二人に、いまだかつて乗ったことのない六万トンの、これは重量トンでございますが、いかりの操作をしていかりをおろせということを要求することはきわめて困難であった、かように考えております。
  17. 森美秀

    ○森(美)委員 そういう背広を着た人の話というのは全く信用ならない。特救隊員が行っている以上、特救隊員は当然無線を持っているはずです。何をどうしてやるかということくらいがわからないようでは、特救隊員に何のため給料を払っているのか。そんなばかな話はありません。もう一度答えてください。
  18. 妹尾弘人

    妹尾(弘)政府委員 現在、その特救隊員がそのときに携帯無線機を持っていたかどうかということについては、よくわかっておりません。ちょっといまわかりませんが、あの場合、乗った時点においてはもうすでに浅瀬に近いところでございます。それで私ども、その時点で、ともかく沖へ引き出すということをその特救隊員に命じて、乗ったわけでございます。いかりをおろすという作業、これはやはりあれだけの大きな船でいかりをおろすというのはかなり複雑な作業が要るわけでございますが、そういうことを予定しないで乗った特救隊員が、いかりということに思いつくということはきわめてあれですし、また思いついても、いかりをおろすことができたかどうかということは疑問がありますし、またいかりがおろされたからといって、いかりをおろした時点で、あそこで亀裂沈没して油や粉炭を流すということがなかったかということについては、必ずしも私は保証できないと思っております。
  19. 森美秀

    ○森(美)委員 そういう無礼な答えもってのほかだ。いかりをおろしたら船が割れるか割れないかは予想できません、そんなばかな……。漁民がいま本当に死ぬか生きるか悩んでいるときに、何でそういうことを言う。あたりまえのことじゃないですか。いかり浅瀬へぶち上げる前に入れておいて、浅瀬へぶち上げたときの抵抗と、いかりを入れて海の抵抗とどれだけ違う。——黙れ。まだ僕は質問をしている。無礼だよ。質問中に答えるとは何だ。これは余りに相手が素人過ぎるので、この問題はやめます。  次の質問をします。船がいよいよ浅瀬に乗り上げた。あと、そのときのいかりはどういう処置をしたか、答えてください。
  20. 森孝顕

    森説明員 お答え申します。  乗り上げてからは、日サルの手によって船首部分にまずいかりを入れております。
  21. 森美秀

    ○森(美)委員 ということは、たった一つしかいかりを入れてないということですか。
  22. 森孝顕

    森説明員 お答えします。  乗り上げた地点では、船首部いかり一つ入れたのみでございます。
  23. 森美秀

    ○森(美)委員 小学校の一年生でもわかる理屈です。浅瀬亀裂の生じた船を乗り上げさしておいて、たった一方だけいかりを入れておいたらどうなるか。保安庁は四そうも五そうも船を出して、ヘリコプターつきの船まで出しているのですよ。それが浅瀬へ乗り上げました。いかり一つぼこんと置きました。一日か二日で亀裂が生ずるのはあたりまえじゃないですか。われわれの言葉で船固めと言います。その船固めさえしなかった海上保安庁が、何でおれたち責任がないなんてほざいているか、私には全くわからない。大臣答えを聞きたい。
  24. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいままでの御議論は前々からいろいろと伺っておりまして、このたびの保安庁のいろんな諸対策において、いろいろと地元の方や関係者に御迷惑をかけたことを大変遺憾に存じております。  ただ、われわれといたしましては、ああした海難事故が起こって非常に不運であったのは、あの船が強風にあおられて、よもや岸に向かって流されるということを予測し得なかったこと、あるいはそこまで配慮が至らなかったことは、私は大変残念なことだと思っておりまして、また、いまおっしゃいましたように、一つだけいかりを入れれば、さらに連続してきた台風的な風雨の中で海が荒れて亀裂がさらに大きくなるということについても、海難に対しての対策が不十分であったように考えまして、済んでしまったことはまことに遺憾でございますが、今後はあのような事故に対しましには、今回の諸事態を十分考えまして、対策に万全を期するよう保安庁の方にも私からよく話をいたしておきたいと思います。
  25. 森美秀

    ○森(美)委員 私ども与党政府を責めても、決して楽しいことではございません。しかしながら、漁民といたしますと、この際何としても船体撤去命令を出してもらいたい。船体撤去命令を出してたとえ代執行という事態になっても、五十三時間もほっておいたということについての責任は十分に果たしていただきたいと私は思いますが、保安庁長官、いかがですか。
  26. 妹尾弘人

    妹尾(弘)政府委員 私どもといたしましては、運航者たるジャパンライン、それから形式的にはアカデミー・シッピングというペーパーカンパニー船主なんでございますがこれを相手にしてもしょうがないので、香港のリージェント・シッピング、実質上の船主、これを相手といたしまして、船体撤去並びに粉炭除去について強力に指導しております。  現在までのところ、当事者もその意図を体しまして努力中であり、近日中にその見積もり計画等も出てまいる、かように考えている次第でございますが、今後こういったことに遅滞を生ずるようなことがありますれば、私どもといたしましては、法律上あるいは行政的に可能な限りの手段を講じて、遅滞なく船体並びに粉炭撤去が行われるよう強力に指導してまいりたい、かように考えております。
  27. 森美秀

    ○森(美)委員 間もなく東京湾の封鎖を東京湾漁民がやろうとしております。私は、そういう事態に至らない前に御処置をお願いいたしませんと、えらいことになるかと考えております。  なお、ジャパンラインにつきましては、こういう書類保安庁が持っていないというのは私はもってのほかだと思いますが、大変りっぱな書類を出してきております。責任を十分に感じているということを言ってきております。しかし、その行間にじみ出るものは、金でもって解決しようという機運が濃厚でございます。たとえばホテル・ニュージャパンの場合に、あの社長はあれだけ悪い男かもわからないけれども、波風を一身に受けている。ところがジャパンラインは、現地にだれ一人姿をあらわさない。金では何とかめんどうを見ようと言う。私は、金だけで世の中がめんどう見られるなら、まさに平和だと思います。金よりも何よりも、私は心だと思う。ジャパンライン社長以下が現地へ来て、漁民に、申しわけないことをした、おれらは直接責任はないけれども、申しわけないことをしたと言うのは、私は当然なことだと思う。だれ一人姿をあらわしてない。保安庁にしても同じ。保安庁責任がない、ないということを言っている。おれの失敗はここにあるんだということで責任を認めるものは認めて、しかしながら、私も世の中理屈はわかる。保安庁に全責任を負わせようと思わない。今回の場合、何としても保安庁並びにジャパンラインの心の問題、道義的な問題を大きく取り上げたいと思うわけでございますが、私に与えられた時間がございません。  水産庁研究部長が見えております。現地におられた水産庁の方も来ておられますが、房総半島はいま全く火が消えたようでございます。サバは十二月から一匹もとれない。そこへもってきて今回のこの問題で、私たち漁業者というものは、どうしてあすを生きていくかわからない。水産庁のわれわれ漁民に対する今後の処置というものを、温かい姿でやっていただきたいことをお願いいたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  28. 尾島雄一

    尾島説明員 いま、漁業水域二百海里時代に入りまして、沿岸漁業重要性というのが一段と高まってまいっておる状況でございまして、水産庁といたしましても積極的にその振興に実は努めているところでございますが、今回の事故被害を受けた海域というのは、先生承知のように、ヒジキとかアワビとかサザエとか、ああいう藻類、貝類の非常に繁茂している重要な磯根資源漁場でございまして、こういう海域漁場効用を維持、回復するということはぜひ早くやらなければならぬ。このためには、まず船骸撤去とか微粉炭除去、こういうことが望まれる、早期にやらなければならぬというぐあいに思うわけでございますが、今後こういうような撤去が速やかに行われた場合、あの海域というのは比較的オープンシーでございますし、波が荒いということもございますので、長期間影響が出てくるかどうか、どのように残るかということについては、ないのではないかというようなことを考えるわけでございます。それでもなお漁場効用回復が非常に思わしくないというような場合には、われわれ水産庁といたしましても、沿岸漁業振興を図る観点から、千葉県ともよく協議いたしましてかつ現地の実態に応じまして、漁場効用回復ということに対しまして前向きに所要の措置を対応として考えてまいりたい、こういうぐあいに考えておるところでございます。
  29. 森美秀

    ○森(美)委員 私も農林水産大臣以下に陳情申し上げますが、ひとつくれぐれも後々のことをよろしくお願い申し上げたいと思います。  最後運輸大臣、ひとつ漁民のことを考えて、あなたは大変海を愛している方でございます。ひとつわれわれの立場をお考えいただいて、しかるべき早急なる御処置をお願い申し上げたいと思います。  きょうはどうもありがとうございました。
  30. 宮崎茂一

  31. 吉原米治

    吉原委員 昨年の七月六日に運政審答申が発表されましてから約十カ月経過したわけでございますが、この間は言うに及ばず、全国的にもさまざまな波紋をこの運政審答申はもたらしておるわけでございます。  代表的な例としては、政府も御承知のように、六百二十余に上る地方各級自治体から、答申に反対をする意見書あるいは決議書が上がってきております。これは去る十二月議会状況でございますが、本年に入りまして三月議会では相当数決議あるいは意見書が追加されてくるだろう、こういうことが考えられるわけでございます。地域は、ことほどさように重大な関心を持ってこの答申扱い方に注目を払っているわけでございますが、私は、政府が今後十年を目標とした総合交通体系と称する問題の多いこの答申の基本的な問題点に幾つか触れ、それを踏まえて関連する諸問題、ことに地域交通、中でもバス問題について、具体的に政府の考え方をお尋ねしたいと存じます。  最初にお尋ねしたい点は、私、この運政審答申を何回も読み直してみたわけでございますが、どうも一貫して経済効率性を追求する余り、地域利用者といいますか、人間を大事にするという哲学が欠落しておる。まるで株式会社でも運営するかのような感覚でこの答申書は書かれておると私は思うわけでございます。一体この答申どおり運輸省はやられようとしておるのか、あるいはまた現実にマッチしない問題については修正をしながら具体化方向へ持っていかれようとしておるのか、まず運政審答申に対する基本理念をどう御理解なさっていらっしゃるのか、お尋ねしたい。
  32. 石月昭二

    石月政府委員 先生指摘のように、今度の運政審答申は、厳しいエネルギー情勢財政事情というものを反映いたしまして、従来以上に効率性重視ということが非常に求められていることは事実でございます。また私どもも、この効率性重視ということは、いつの世にも変わらない交通政策基本理念であろうかと考えております。  しかしながら、効率性重視だけではございませんで、ごらんいただきますとおわかりのように、たとえば旅客交通におきましては、高速交通体系の恩典を全国くまなく均てんさせる、それによって社会的な公正を確保するというような発想も出ておりますし、また将来の高齢化社会に対応いたしまして交通施設整備につきましても、交通弱者が利用されるような方向で物を考えろというような御指摘もございますし、さらには過疎地域交通弱者と申しますか、交通手段のない方々の足を、財政が非常にシビアな中でどのように確保したらいいかというような形で、タクシーの多面的利用であるとか、場合によっては自家用車の活用の方法というものも含めて検討しろというような多面的な御指摘がなされておりまして、決して効率性一辺倒答申であるとは私ども、受けとめていない次第でございます。  なお、答申につきましては、今後できるものから可及的速やかに実施したいというのが私どもの基本的なスタンスでございます。
  33. 吉原米治

    吉原委員 経済の効率性を追求する余り利用者の立場を無視されておると私は最初に指摘をしたわけでございますが、そうではないんだ、こうお答えをいただいたわけです。経済の効率性を追求する余りこういう矛盾点が出ておるんじゃないかということについては、後ほどの質問の中で順次明らかにしていきたいと思いますが、ここでちょっと事務的なことをお尋ねしておきたいと思うのです。  従前、地方交通という表現をわれわれもよく使ってきたのですが、この答申の中にはわざわざ地域交通という表現が随所に見られるわけでございまして、この地域交通というのは一体正確な意味ではどういう地域を指しておるのか、これは事務的にお尋ねをしたい点です。
  34. 石月昭二

    石月政府委員 運輸政策審議会答申の中で、地域交通という言葉と地方交通という言葉といろいろあるわけでございますが、私ども答申をつぶさに読みまして推測するところ、地域交通という言葉を使っておりますときには、住民の地域の基盤としての交通施設、それを利用して、たとえば住民が通勤、通学、通院というような、日常生活をするための人の移動をする地域というような観点で地域という言葉を使っているんではないかというぐあいに推測されるわけでございます。したがいまして、地域交通と言う場合には、都市の交通、山村の交通というようなものも含めまして地域交通。それから、地方交通という言葉を使っております場合は、主として過疎地域と申しますかカントリーサイドというような感じの表現で使われているように受けとめているわけでございます。  しかし、実際の使い方を見ますと、地方と言う場合にも、たとえば国鉄地方交通線というような場合には、いま申し上げたような形でのカントリーサイドというニュアンスが出ておりますけれども、地方陸上公共交通維持整備に関する件とか地方陸上交通審議会というような場合の地方はむしろ地域に近いような使われ方がしておりまして、その点につきましてはどうも統一的に区別して使っているわけではございません。
  35. 吉原米治

    吉原委員 どうも明確なお答えがいただけぬわけですが、これはいずれまた機会がございましょうし、地域交通というのは正確にはどういう範囲、どういうものを指しておるのか、私の方も勉強していきたいと思いますので、この問題は余りこだわりたくはございません。  ただ、次にどうしてもお尋ねをしておきたい点は、過ぐる八十五国会で六党共同提案による決議がございます。この決議に基づいて当時の運輸大臣は、速やかに立法、行財政措置を講じます、こうお答えになっていらっしゃるのですが、今日までこれがなかなか具体化されない。その具体化されない理由の大きなものは、一体何と何が障害になっておるのか、この点をひとつお答え願いたい。
  36. 石月昭二

    石月政府委員 御承知のように、五十三年十月の六党共同決議以来、私どもその決議の趣旨に沿ってその実現を図るべく努力してきたわけでございます。  初めにまず、地域交通の充実には安定的な財源が必要であると考えまして、五十四年度、五十五年度の両年度にわたりまして、その財源のための特別会計の設置を要求してまいりましたが、諸般の事情からこれがなかなかできなかったということでございます。  その後、財源の問題もさることながら、地域交通を充実していくためには、やはり長期的展望に立った地域の交通計画というものをかっちり固める必要があろうということで、五十五年十月に陸上交通審議会を改組いたしまして、その中で府県部会をつくり、そこで地方公共団体の方々等関係者を集めまして、地域の交通計画というものを目下鋭意作成しておるところでございます。この計画に基づきまして、私どもの日常の行政措置それから財政措置を運用していくことによりまして地域交通の充実を期したいということを現在考えている次第でございます。  なお、これだけでは不十分でございますので、安定的な財源を今後確保していかなければならないと考えておるわけでございますが、御承知のように、非常に厳しい財政事情の中でそういう新しい財源措置を考えるということにつきましては、いずれにいたしましても国民の皆様の負担になることでございますので、その対象となる地域旅客交通政策につきまして十分な国民の御理解とコンセンサスの形成を図っていかなければならないと考えておりまして、今後行財政措置の動向等を見ながらさらに努力してまいりたいというのが、私どもの現在の姿勢でございます。
  37. 吉原米治

    吉原委員 安定的財源措置ができないというのが一つの理由だ、それから部会を設置してそれぞれの地域の計画を立てる、その計画を実施に移す段階で必要な財源をそれに合わせていくという意味のお答えをされましたけれども、安定的財源がないと一方で言いながら、地域の交通部会で論議をして出しました計画を実施に移すためには財源はあるのでございますか。財源は用意してございますか。
  38. 石月昭二

    石月政府委員 地域交通計画で出されました答申に沿いまして、私どもの現在の、たとえばバス路線の設定であるとか過疎バスの補助金であるとか地方鉄道の補助金であるとか、そういういろいろな現在持っております助成措置の運用、さらには、地域の交通におきましては国有鉄道の役割りというのがかなり大きゅうございまして、たとえば国鉄線の電化であるとか複線化であるとか、その他改良というような問題につきましても、この地域交通計画に盛られたものをできるだけ反映させるというようなやり方で当面は地域交通の充実を図っていきたいというのが、私どもの考え方でございます。
  39. 吉原米治

    吉原委員 それでは、地域から上がってくる計画に沿って財源の裏打ちはしたいというふうにお答えいただいたと思うのですが、そのことと安定的な財源の確保が見通しが立たないというのとは、ちょっと矛盾をしたお答えのように受け取るのですが、どうなんでございますか。地域から上がってきた計画に沿って財源の裏打ちをします、しかし、そうは言いながら、六党共同提案の決議がなかなか実施、具体化できない、安定的な財源がないんだ、こういうお答えといまのあれとは矛盾しておるような感じがするのですが、そうじゃないですかね。
  40. 石月昭二

    石月政府委員 地域の交通計画として答申されてまいります中身につきましては、現実の私どもの予算措置、それから私どものみならず、たとえば建設省に新しいバイパス道路をつくっていただくとか、また交通規制のあり方をバス優先レーンを設定していただくとかというような、私ども並びに関係の各省の行政措置で解決される問題もございます。またさらには、長期的な展望に立って地域の要望に沿っていくためには、何らかの新しい財源がないとなかなかできないという問題もございます。しかし、現在私どもが持っております予算措置、それから行政の運用というような面でできるものからこたえていく。さらに、その充実を期すためにはやはり安定的な財源をぜひとも確保したいというのが、私どもの考え方でございます。
  41. 吉原米治

    吉原委員 審議官、できるものからという意味はわかりますが、安定的な財源の確保については、確保したいということだけで具体的なそのお考えはないのですか。何とか安定的な財源を持ちたいという希望だけがあって、具体的にこういうふうな手だて、方法、手段によって安定的財源を確保する努力をしておるんだという、その具体策はないのでございますか。
  42. 石月昭二

    石月政府委員 安定的な財源を確保するということにつきましては、私どもその必要性を非常に痛感しておりますし、従来からいろいろ勉強してきたところでございます。また、昨年答申をいただきました運輸政策審議会の場におきましても、いろいろ御議論をいただきました。その場合の財源の考え方といたしましては、たとえば自家用車に課税する案でございますとか、事業所に課税する案でございますとか、石油に課税する案とか、いろいろな案が出てまいりましたけれども、いずれにいたしましても、各案につきましてはいろいろの問題点がございまして、どの案にするかということにつきましては、今後の国の税制の動向というようなものも踏まえながら、また利用者の皆様方の御理解も得ながらこれから決めていくという問題でございまして、いまの国の行財政状況からいきますと、この問題をいつまでにどうするということをちょっと申し上げることができないのは残念でございますけれども、いずれにいたしましても、公共交通重要性という認識に立ちまして、今後精力的に検討を進めてまいりたいというように考えておる次第でございます。
  43. 吉原米治

    吉原委員 そこで、せっかく部会の話が出たのですが、現実のこの部会の設置状況というのは、まだ各県にできていない。恐らく私の承知しているところでは、全国で十二カ所ぐらい設置をされておるのではなかろうかと思っておるのですが、現実にいまこの部会の運営がやられておる経過を見てみますと、非常に形骸化されておる。陸運局の方から分厚い資料を、こういうことにしたらどうかという、全く上意下達といいますか、役所の分厚い文書をもう短時間で審議しろというような運営のされ方が現実に起きておる。この部会の構成員の中にわれわれの代表も、数は非常に少ないのですが入っておりますけれども、そういう方たち意見を聞いてみますと、あんな部会ではまことに意味がない、むしろ役所の隠れみのに利用されておるような感じがしてしようがない、部会の運営が非常に非民主的なやり方のように私は聞いておるのですが、審議官あるいは自動車局長は、そういうせっかく設置していただいた部会の運営が非常に形骸化されておる現状を御認識でございますか、どうですか。
  44. 石月昭二

    石月政府委員 地方陸上交通審議会の部会の運用が、ただいま先生がおっしゃいましたように、非常に分厚い資料が提出されて、それを短時間で審議しなければならないというようなコンプレインを私も聞いております。  それで、調べてみたわけでございますけれども、この地方陸上交通審議会のやり方と申しますのは、初めに十年を踏まえました地域の開発計画なんかを踏まえまして需要予測その他をやりますと、これはかなり膨大な資料ができるわけでございますが、そういう資料を御審議いただくところから始めなければいかぬという問題が一つございます。いま一つの問題といたしましては、実は費用の面でいろいろ制約もございまして、余り回数を重ねて開くわけにもいかぬというような問題もございます。  いずれにいたしましても、与えられた予算の制約の中でどのように地域の御意見をくみ上げていくかということについて、運用面でさらに検討を進めるべく現在指示しているところでございます。
  45. 吉原米治

    吉原委員 現状はいささか審議官も認識をされておるようでございますが、一つは、構成しておるメンバーの問題もあると思います。もう本当の意味の地域利用者の代表が数が少ないという点もございますし、また、部会の運営をするための事務的な費用といいますか予算上の制約もあって、かなり短時日で審議をしてしまわなければならぬ、そういう金の面と人の面とがあると私は思う。特に金の面は、今後部会がもっともっと、いまのように全国十二カ所程度のものでなくて、少なくとも各県に一つずつぜひ早急につくってもらいたいわけです。  この構成メンバーについて、利用者代表が入っておるからいいじゃないかというふうなお考えではありましょうが、やはり本当の意味のその交通を利用する人たちの数が、いささかちょっと少ないように思う。もっと部会の中に、半数ぐらいは本当に利用する方の立場の人の数をふやすべきじゃないかなという気がするのですが、その点はいかがですか。
  46. 石月昭二

    石月政府委員 地域交通というものを論議する審議会の性格といたしまして、私も先生と全く同意見でございまして、やはり利用者である住民の意見をどのように吸い上げるかということに焦点を置いて、私どももこのメンバーを決めた次第でございます。  それで、このメンバーの中には、先生指摘のように利用者の方、それから関係の交通事業者、またそれの労働問題を代表する学識経験者としての労働者の方、そのほか、たとえば運輸省のみならず警察庁でございますとか地方の建設局でございますとか、そういうところの代表の方々というような形で、かなり網羅的にやっております。  御指摘のように、利用者としては一人でございますけれども、私ども地域住民の意見というものを総合的に把握できる立場にあるのは、やはり地方公共団体の長ではないかと考えている次第でございます。したがいまして、部会を設置いたします場合には、もう最大限、極力知事さんに部会長を引き受けてくれるように私から地方局長に強く要請をいたしまして、非常にたくさんの知事さんに部会長を受けていただいている次第でございます。またその地域の、各県の中の交通圏の中心である市町村長という方々にも参加いただいておりますので、その意味では、利用者意見というものはかなり正確に反映されているのではないかというぐあいに私ども考えておる次第でございます。  なお、今後先生の御意思を踏まえて運用の面で検討していきたいとは思っておりますけれども利用者の方を過半数に持っていくということは、そのような諸般の構成の問題、予算の問題等を含めまして、ちょっと御要望に沿いかねるのではないかという感じがいたす次第でございます。
  47. 吉原米治

    吉原委員 私が言っておるのは、それは確かに知事も該当の市町村長というのも必要でしょう。しかし、毎日バスや列車を利用しておらない方方、黒塗りの乗用車で後先しておるような人では、本当に実態はわからぬと私は指摘をしたい。ですから、本当に通勤者の代表というものを、同じ地域から何名もということではなくて、それぞれの線区の通勤者代表的な者、本当に毎日利用しておる者が出す意見でないと、不便さとかなんとかいうものがわからない。たとえば本線と支線との接続の時間だとか、毎日通勤しておればわかるのですが、知事や市町村長というのは、そういうバス路線や列車なんか、実態としてなかなか利用してない人なんだから、その点はひとつ部会の構成メンバーの中に、それは知事も市町村長も入っておって結構ですから、通勤代表的な方をもう少し加えることによって、ひとつより現実的な部会にしてほしい、こういう立場からお願いをしたわけでございます。  時間が過ぎますので、この運政審答申の中で、私は三つの大きな課題があると思っておるのです。一つは地方バスの補助制度、もう一つは三種生活路線対策、もう一つは、全国的にも大変危険に思っておりますが、自家用車の活用問題、大別するとこの三つが大きな課題だと私は思っておるわけでございます。  最初の三種路線の補助というのは五十七年度、本年度で終わるというのがいままで運輸省がおっしゃってきたことでございます。この三種路線というのは五名未満と言われておりますけれども、どうしても廃止ができないままに今日来ておるのです。いろいろな歴史的な事情やら、あるいはその部落、町、人数は少ないけれども残してもらわなければ、その住民がほかに代替路線がないのだ、代替の交通手段がないのだという、いろいろないきさつからこの三種路線が今日まで存続をしておるわけでございますが、私は、いままでの経過、特に大蔵省との交渉の過程で、もう五十八年度以降も引き続いて三種路線を補助対象にすることはどうもむずかしい、こう思っていらっしゃると思うわけでございます。この際、ひとつ二種、三種という枠を取り外すといいますか、たとえば十五名未満であっても、沿線の市町村長が、生活路線としてこれはどうしてもなくてはならぬ路線だ、そういう意味で生活路線として認定をした場合には補助対象路線にするのだ、つまり三種の枠を外してしまう、そういう考え方はこの際ひとつとれないものかどうなのか。特に五名未満といいますと、実質収入に対するキロで割るわけでございますから、現実には七人、八人乗っておる。通学者なんかは三割引きぐらいの定期券を利用しながらやっておるわけですから、計算上はなるほど五名未満だけれども、実態としては七人も八人も利用しておる、そういうのが現実の問題であろうかと思うのです。そういう意味で、三種という、あそこに一ランク設けることは必ずしも合理的なものではないと私は思いますので、そういう考え方には運輸省としては立てないのかどうなのか。せっかく五十七年度で三種に対する補助を打ち切るという機会でもございますので、この際そういう考え方はとれないかどうか。これはひとつ自動車局長の方からお答え願います。
  48. 飯島篤

    ○飯島政府委員 先生よく御存じのとおり、現在の補助要綱におきましては、平均乗車密度五人以上十五人未満のバス路線が第二種生活路線、それから五人未満のバス路線が第三種生活路線といたしまして、その欠損の補助に当たりましては、国、県、市町村の負担割合に差を設けているところでございます。第三種生活路線は乗車密度がきわめて少ないということから、企業として採算を維持することが非常に困難な路線でございます。したがいまして、その維持を図る必要があると考えられる場合には、地域社会の問題として地域の民生の安定という見地から、市町村がその欠損について応分の負担を行うということを前提として補助制度ができ上がっているところでございます。  それで、三年間、一路線についてでございますが、これはお断りしておきますが、五十七年度で制度がなくなってしまうのではなくて、一つの系統については三年間ということでございます。  五十五年に切りかえたときに、それ以前から補助をしておりました路線等を含みますが、三年間に需要を喚起して二種への格上げを図っていくか、あるいは市町村の責任判断におきまして代替バスに肩がわりするか、あるいは単独補助を考えてもらうか、地域の実情に合った対応が選択されることを期待しているのでございます。したがいまして、二種と三種との区別を廃止して一律生活路線として取り扱うということは、従来のいきさつ、またその基本的な考え方等から見まして適当ではないというふうに考えております。  蛇足でございますが、市町村が負担する分については、八割が特別交付税の対象となっておりまして、国としてもかなりの配慮をしているというものでございます。
  49. 吉原米治

    吉原委員 ここは、自動車局長と私は大分見解を異にしておるわけでございまして、三種路線を切り捨てる、つまり、もう具体的に切り捨てることにつながるわけでございまして、そうしますと、この路線を切り捨てることによって、五名以上の二種路線と称するそういう路線もいろいろ影響が出てくると思うのです。ですから、ちょうど川の流れのように、枝線を全部切ってしまうと本流に流れてくる水の量が理屈の上からは少なくなるという、それと同じように、三種路線を事実上切り離してしまうということは、いつか二種路線も三種路線に転落をしてしまう。そういう悪循環を繰り返すわけでございますから、そういう意味では、いまから業者は関係市町村あたりとも折衝を続けていくでしょうけれども、どうしても、市町村の代替バスではとても手に合いません、残してもらわなければ困る。市町村側と企業側とでは、現状は真っ向から意見が対立しております。そういう意味で、沿線の市町村も回数券を買うとかなんとかして三種から二種に格上げをする努力は当然するわけでございますが、どうしてもどうにもならぬ路線が残るだろうと思います。これも、いま五十五年以降三年間という期限つきだから、一律に補助対象からは外すのだ——どうにもならぬ路線ですよ。いろいろやってみたけれどもどうにもならぬ、そういう路線に対してはどういう対処の仕方をされる気なのか、お答え願いたい。
  50. 飯島篤

    ○飯島政府委員 同じことを繰り返すようなことになりまして申しわけありませんが、五十五年度以降三年間の補助対象期間内に輸送需要を喚起する、あるいは路線の再編成をするというようなことで路線バスとして存続し得る条件を整備していただく、あるいは市町村代替バス、市町村の単独補助というような形で整備するというようなことで、地域の実情に合った選択が行われることを現段階では期待しているところでございます。その進捗状況を見ながら、将来の補助制度のあり方については検討してまいりたいと考えております。
  51. 吉原米治

    吉原委員 局長、どうにもならぬ三種路線が残った場合のことを言っているのです。その路線はどう対処されますか。市町村も努力した、業者も努力した、どうにもならぬ三種路線が残った場合には、既定方針どおり補助対象から外すというお考え方なのかどうなのか。その二種に格上げする努力、あるいは市町村の努力、こういうものの努力の現状を見ながら、どうにもならぬ路線についてはまた別途の考え方をされるということなんですかどうなんですか、そこが聞きたいわけです。
  52. 飯島篤

    ○飯島政府委員 いま申し上げましたように、現時点では、ともかく需要の喚起等による二種への格上げ、あるいは市町村の肩がわり、あるいは単独補助、そういう方向努力をしていただく、その進捗状況を見ながら今後の補助制度のあり方については検討してまいりたい、現段階としてはそう申し上げるしかないということでございます。
  53. 吉原米治

    吉原委員 大変歯切れの悪い答弁で納得はできませんが、そこでちょっとお尋ねしたいのですが、三種から二種に格上げをした実績、あるいは逆に二種から三種に転落をした路線、こういうものの五十五年から六年にかけての一年間の実績でもあれば、数字をもってひとつ御説明を願いたいと思います。
  54. 飯島篤

    ○飯島政府委員 五十五年度におきまして、第三種の生活路線の補助対象系統九百三十六本ございましたが、八十六本が五十六年九月末現在で第二種生活路線に格上げになっております。一方、五十六年度には三百八十九系統が新たに第三種生活路線の補助対象に加わっております。このうち二種生活路線から第三種生活路線になってしまったものは百八十四系統でございます。
  55. 吉原米治

    吉原委員 そうすると、二種から三種へ転落した系統が百八十四系統ということは、傾向としてはどうなんですか、三種から二種に格上げをするといいますか、その数字よりも、二種から三種へ落ちていく系統の方が傾向としてはふえておるのじゃないでしょうか。
  56. 飯島篤

    ○飯島政府委員 確かに先生のおっしゃるような傾向にございます。
  57. 吉原米治

    吉原委員 そうなってまいりますと、いよいよもってこの三種生活路線の取り扱いの問題というのが、答申の中で言われておる、地域交通をどうやって維持整備していくのかという基本問題にかかわると私は思うのです。一方では、三種路線はもう補助対象から外すんだ、どうにもならぬものは市町村でおやりなさい、また、やれないところはもう自然淘汰だ、こういうことで、答申の中ではいろいろきれいごとが書いてございまして、地域交通を維持強化していくという方針を掲げながら、それに対応する運輸省の対応策というのは逆に地域の交通をより不便にするといいますか、利用者の立場がどうあろうとも画一的にこの三種を外してしまう。こういう、答申方向とそしてままた運輸省のそれに対応する対応策というのが、相矛盾しておると私は思うのです。そういう意味で、どうにもならぬところはマイカー活用という問題が出てくるだろうと思うのですが、たまたま時期が一緒になったのだから計画的にやったものじゃない、こうおっしゃるだろうと思いますが、三種を一方で補助対象から外す、事実上路線を廃止してしまわざるを得ない方向に向かせながら、一方でどうにもならぬ地域は自家用車を活用するんだ、こういう答申が実は出てまいっております。  この自家用車の活用問題は、今年度は調査費を若干つけていらっしゃるようでございまして、試験的にといいますか、全国で何カ所か地域を指定して一遍やってみたい、こういうふうにおっしゃっておりますが、具体的に一体どうやってこの自家用車の活用問題をやられようとしておるのか、ちょっと現状なり考え方を説明していただきたい。
  58. 石月昭二

    石月政府委員 運輸政策審議会答申で、今後、交通需要が非常に少ないところで公共交通機関のないようなところでは、自家用車の活用を検討してみたらどうかという御答申をいただいておりますので、それに従いまして今年五百七十万円ほどの予算をいただいておる次第でございます。  私ども、どんなことをやるかという問題でございますが、現在のところ、どの地域でやるかということをまだ決めておりませんが、これから地域を決めまして、その地域でどういうような利用者を対象として考えたらいいのか、それから事故の場合の損害賠償、補償という問題をどう考えたらいいのか、さらには、いまいろいろ御議論ございました第三種路線でございますとかそれからタクシーでございますとか、既存の交通機関との関係をどのように考えたらいいのかというような点につきまして、これから勉強してみたい。つきましては、目下のところ、学識経験者の方々を中心にして、その問題点を議論していただこうということで人選を進めておるというような段階でございます。
  59. 吉原米治

    吉原委員 まだ研究あるいは人選をする段階だ、こうおっしゃっていますから、具体化はされていないので何とも言えないところでございますが、私が危惧しておりますのは、少なくとも、五百七十万余であっても予算をつけて一遍試験的にやってみようということである限り、一カ所でも試験的にやってみた、地域の皆さんから非常に好評を博した、そうなってまいりますと、似たような地域でまた一カ所やろう、あるいは予算上の問題もあるでしょうけれども、次々にそういうマイカー活用という問題が全国的に広がっていくのではないか、何年かの後ですよ、単年度ではとてもできっこないと思いますが。そうなってまいりますと、三種を外してしまう、事実上廃線をしてしまう、その後補充というのを全部マイカーでしてしまうということになってしまう。そうでなくても白タクだ白トラだということで、地域では大変問題が頻発をしておるのです。そういう特別のマイカーによる運行というのが限られた地域にとまっておってくれるといいのですけれども、マイカーですからどこまで行くかわからぬ、非常に制限がしにくくなってくる。しかもナンバープレートでも、色を変えてやるというふうなことにでもなれば、ますますもう一つの制度のタクシーというのが地域にはんらんするようになるんじゃないか。そうなってまいりますと、タクシー業界も大変だ。したがって、従来三種路線でも利用しておった利用者は、便利なものですからそっちへ頼む。そうするとバス業者もたまらなくなる、お手上げの状況になる。そういう意味では、マイカーという自家用車によって地域交通はもうずたずたにされる、そういうことが考えられるわけですよ。ですから、自家用車の活用というのは一見何か便利でよさそうなものでございますが、交通の秩序という観点から、あるいはせっかく許認可をいただいて営業をやっておる既存の交通機関に大きな影響を与えるものだと私は思うのです。自家用車の活用問題は、そういう意味では、試験的にやってみるという運輸省のお考え方はきわめて現実を無視された問題だ、この問題についてはひとつ慎重に取り扱ってもらいたい、私はこう思うのですが、私の危惧にすぎないのでございましょうか。
  60. 石月昭二

    石月政府委員 私ども、今年度の予算で実験を行ってみたいというのは、予算の制約もございまして一カ所でしか行えないと思っております。また、それで十分ではないかと考えておる次第でございます。  それから、先生いまいろいろ御指摘になりましたように、マイカーを活用するということの結果が公共交通の足を引っ張るというようなことになるのではないかという問題は、私どもも非常に重要な問題点だというぐあいに認識しておるわけでございます。したがいまして、現在の段階ではまだ具体的な勉強を詰めておりませんので、明確なお答えができないのが残念でございますけれども、いずれにいたしましても、どのような地域で行うのか、それは、たとえば第三種路線も市町村代替バスも何もない場所であるのか、タクシーもない場所であるのか。しかし、そうは言っても、タクシーや市町村代替バスというようなものと全然関係がないというような話もなかなかないのではないかと思いますし、その辺どういう地域でやるのかというような問題、それからどういう利用目的の人に対してやるのかというような問題、それからさらには、自家用車の有償運送にならないように、どういう手段を講じていったらいいのか。先生指摘のように、たとえばナンバーの色を変えるとか運行区域を決めるとか、いろいろな考え方があろうかと思いますけれども、その辺については、御指摘のことも十分踏まえまして今後検討を詰めてまいりたいというぐあいに考えておる次第でございます。
  61. 吉原米治

    吉原委員 恐らく運政審答申の一番大きな目玉が、自家用車の活用問題であると思うのです。それだけに地域交通はもう大変なことになるということで、冒頭申し上げましたように、各地方自治体でも答申の趣旨に反対だという、そういう決議が上がってきておるのも無理からぬ話だと思うので、特に自家用車の活用問題はいまから研究なさるようでございますから、十分ひとつ地域交通を発展させるという立場から真剣に御検討を願いたいと思います。  そこで、バス協会の中に地方交通委員会というのが設置をされておるようでございます。この中でいろいろ議事録のようなものをちょっと見させてもらっておるのですが、欠損補助の充足というのがかなり出てきております。現行の補助要綱でもって、バスの経常収支赤字の一〇〇%補てんの会社が、恐らく全体で百五十何社だと思いますが、その中で何社あるのか、それ以下の会社が何社ある、数字的にはすぐ出てくると思いますが、一〇〇%に満たないあるいは六〇、七〇%程度にとどまっておる企業を、経常収支の赤字一〇〇%補てんまでこぎつけていけば、一番理想的な地域交通の体系がそう問題なく確保できるのではないか、私はこう思って日ごろから考えておるわけでございますが、一体現行の補助要綱のどの部分をどうやって手直しをすれば、この一〇〇%補てんにつながるか。これは大変ややこしい補助要綱のようでございますし、資料は後ほどいただきたいと思うのですが、この場でひとつ、どういう点とどういう点を手直ししないと、あるいは改正をしないと一〇〇%補てんにはなりませんか。そこをお尋ねしたい。
  62. 飯島篤

    ○飯島政府委員 最初に、経常欠損を一〇〇%補てんされているバス事業者の状況でございますが、昭和五十六年度補助対象事業者百五十八社ございますが、一〇〇%補てんいたしておりますのは五十二社、三二・九%でございます。九〇%以上一〇〇%未満が十五社、八〇%以上九〇%未満が十八社、七〇%以上八〇%未満が二十社、七〇%未満が五十三社という状況になっております。  それで、この地方バスに対する補助につきましては、先生よく御存じのとおり、これまでいろいろと改善を図ってきたところでございますが、基本的な考え方としては、集約、競合の排除等によりまして能率的なバス経営を促進する、コスト低減についての企業努力を期待し、標準的な経営のもとにおいて欠損補助を考えていくという思想ででき上がっております。したがいまして、補助要綱の幾つかの制約から一〇〇%補てんされない事業者が出てくるわけでございますが、幾つかの点を挙げますと、まず乙種、それから丙種の事業者につきましては、全事業の経常欠損を限度として補助をいたしております。それから第二に、路線バス事業者の実績経常費用がブロック別の標準経常費用を超える場合には標準経常費用を使用して欠損額を算定いたしております。それから、二種の路線について運行回数が十回を超える場合は補助対象になりません。それから丙種の場合に、系統別の競合率が五〇%以上の場合は補助対象になりません。それから、市街地乗り入れ部分に係る経費が補助対象経費からは除外されております。最後に、県独自の補助基準というものによりまして補助対象から除外される場合等がございます。  こういう点を改定するとしますれば、確かに相当の路線バス部門の経常欠損がカバーできるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、企業の能率的な経営という前提で補助制度を考えるということはやむを得ないことであり、また現在の金融財政事情から考えまして、今後改定については慎重に検討する必要があるというふうに考えております。
  63. 吉原米治

    吉原委員 時間が参りましたので間もなく終わりますが、いま五、六点にわたって、現行の補助要綱のこの部分がこうなっておるために一〇〇%補てんはできないのだ、こういう説明がございました。その中で特に丙種の業者、これはもう競合率の関係が出てまいりますが、こういう問題や、あるいは市街地乗り入れ部分、これが補助対象から外されるとか、私はこの現実を見て、丙種の競合率、市街地乗り入れ、この程度のものは何とか解消できるのではないだろうか。また従来の甲乙丙という、そういう分類の仕方というのが本当に合理的なものなのかどうなのか。同じようにまじめに企業努力をしておりながら、たまたま丙種という指定を受けておるために努力してもどうにもならぬ、そういうのが全国至るところにあるわけでございまして、特に地方の中小私鉄というのは、大手は解決ついたといえども、そういう意味ではいまもって春闘も片づいてないというのが実情なんでございまして、そういう意味から、従来の補助要綱の中身について一遍、現状とそぐわない点も私は出てきておると思いますので、ぜひひとつ補助要綱の手直しといいますか再検討といいますか、現実に合うように手直しをしていただきたい、このことをひとつぜひお願いしたいと存じます。  最後大臣にお尋ねをするところでございましたが、大臣おられませんで政務次官いらっしゃるわけでございますから、いまお聞き願ったように、運政審答申というのが一〇〇%私はいかぬとは言いませんよ、いい考え方も出てはおりますけれども、先ほど言いましたように、答申によってマイカー活用というふうな、これは苦し紛れに出た案ではないかと思いますが、そういうことが結果的には地域交通をだめにしてしまう。さらには、現在補助金をもらいながら細々と運営をしております過疎地域のバス会社あるいは軌道も含めてでございますが、そういう意味では大変苦しい経営を余儀なくされておるわけでございます。政府が補助金を出す場合には、物差しは全国共通のものでつくられるわけでございまして、必ずしも一本の物差しがそれぞれの地域に徹底しないという嫌いもあるわけでございます。何とか地域の交通を充実していくという観点から、答申の内容については慎重に、そして既存の業者の立ち行くような配慮、いま申し上げました補助要綱の手直し、こういうものをひとつお願いしておきたいと存じますので、政務次官のこれからの取り組みの決意のほどをお聞かせ願いたい。
  64. 鹿野道彦

    ○鹿野政府委員 一つ財政的な制約なりあるいは資源の制約という中でやっていかなければならない問題でございまして、運輸省といたしましても、従来から地方バス路線の維持という問題につきましては、その重要性について十分認識をして取り組んできた問題でございますので、今後ともそのような一つの認識のもとに努力をしてまいりたい、こういうふうに考えるところでございます。
  65. 吉原米治

    吉原委員 時間が来ましたから、終わります。
  66. 宮崎茂一

    宮崎委員長代理 午後一時から再開することとし、休憩いたします。     午前十一時三十四分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  67. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上原康助君。
  68. 上原康助

    上原委員 私は、前々からぜひ運輸委員会で一遍お尋ねをしたいという問題を抱えていましたので、きょうその機会を与えていただいたわけですが、せっかくの質問でしたので、運輸大臣が最初からおいでいただければありがたいと思ったのですが、何か時間の御都合があるようで、後ほど大臣おいでになってからまた所見をお伺いいたします。     〔委員長退席、三枝委員長代理着席〕  これまでも、ほかの委員会でも若干議論がされてきておりますけれども、ACMI、航空機戦技訓練評価装置といいますか、あるいは空中戦闘技量訓練評価装置とも言われているようですが、このACMIの設置問題が米側から提起をされて、運輸省、外務省、防衛庁、防衛施設庁等々でいろいろ検討されてきたやに聞いております。  そこで、この件についての日米間の交渉経過が一体どうなっているのか、まず御説明をいただきたいと思います。
  69. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 ただいま御質問ございましたACMIの件でございますけれども、私ども運輸省は昨年の十一月に防衛施設庁から御連絡を受けまして、米軍側が航空機の戦技訓練評価装置にかかわる空域を設けたい、こういう御提案がございました。これは航空交通に関係がございますので、運輸省といたしましては、昨年の十二月から民間航空分科委員会を開催いたしまして、また非公式の会合も数回行ったわけでございます。  私ども、米側から提案されました案につきましては航空交通に対する支障が大きいというふうに考えまして、わが方としてそのまま受け入れるわけにはいかないということで、再検討をお願いしている段階でございます。
  70. 上原康助

    上原委員 米側提案をそのまま受け入れるわけにはいかないということで再検討をお願いしているところだ、簡単に言うと、これが運輸省のお立場ですか。  そこで、いま御答弁がありましたように、昨年の十一月に運輸省の方はこのACMIの設置の計画があるということを連絡受けたということですが、それ以前に米側からは提案がなされてきていると思うのですね。  なぜ十一月段階まで運輸省にはこの問題の提起といいますか、あるいは連絡を伏せておったのか、その経過についても説明をしていただきたいと思うのです。
  71. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 ただいま運輸省の方から御答弁がございましたように、この問題につきましては、昭和五十六年八月に施設特別委員会を通じて米側からの計画案というものを日本側に提案してきたわけでございます。  御承知のようにACMIにつきましては、その設置に当たっては空域が必要であると同時に、また陸上における各般の施設といったようなものもございますので、まず私どもの方としましては、ACMI設置に伴う問題点であるとか、あるいはACMIそのものの理解といったようなもので米側との調整を行いまして、その結果、空域設定というのは非常に重要である、この問題については運輸省の方にお諮りするということで、十一月に御連絡したわけでございます。
  72. 上原康助

    上原委員 そこいらがきわめて私は問題だと思うのですね。きょうは主に運輸省の御見解をただしたいわけですが、私がいろいろ調査をしてみて感ずることは、この問題は、いまも施設部長は、米側から八月ですか、提起がなされたということのようですが、経過を若干振り返ってみますと、五十六年の六月十日から十二日までの間行われた、いわゆる日米安保事務レベル協議で米側から提案をされてきていると思うのですね。去年の六月末に、当時の大村防衛庁長官がワシントンもうでをしておられる。ワシントンに行っておられる。そのときに、大村・ワインバーガー会談というものがなされた。そこでまた米側は、重ねてACMIの設置というものを日本側に強く求めてきて、しかも大村長官はわざわざアメリカ国内のACMIを視察している。そういういきさつがあるわけでしょう。それはどうなんですか。
  73. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 ただいま先生指摘になりました点につきましては、私ども承知しておりません。ACMIにつきましては、先ほども御説明申し上げましたように、昨年の八月、施設特別委員会において米側からの計画案の提案を受けたのが初めてでございます。
  74. 上原康助

    上原委員 しかし、あなた、それはいま言ったように外務省も知らないのですか。いきさつは、皆さんがどう言おうが、そうでしょう。これはむしろ一般的に明らかにされていることですよ。その施設部会に米側が提案したという内容も後で聞きますから。六月段階からその話が出ている。  そうして、もう一つ確かめておきたいわけですが、たしか米側がこの案を提案する前の昭和五十五年七月の二十日前後から八月の二十日前後まで約一月、米空軍及び民間技術者が嘉手納において、このACMI設置の可能性についての技術的な討議を行ったはずなんだ。行っているはずなんだ。米空軍及び民間技術者が嘉手納で会合したということについての、この民間技術者というのは一体何者なのか。運輸省が立ち会ったのか、どういうメンバーがここで会合を持ったのか、その点も明らかにしていただきたい。
  75. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 米軍内部においていかような検討がこれ以前になされたかについては、私ども承知しておりません。
  76. 上原康助

    上原委員 何で施設部長が一々そんなことを答えるのですか。これはあなたが担当ですか。外交問題が出たら外務省、もし民間技術者も入れてのことだったら運輸省関係しているか、どっちかでしょう。施設部長が一々そういうのをわかるのですか。その事実関係、どうなんですか。
  77. 加藤良三

    加藤説明員 お答え申し上げます。  ただいま上原先生指摘の、五十五年七月二十日から八月二十日までの件につきまして、私ども承知いたしておりません。  なお、最初に先生の方から御指摘がございました六月の日米安保事務レベル協議の中でこれが取り上げられたかどうかという点でございますけれども、この点につきましては、日米間に、会議の個々の内容を明らかにしないということがございますので、お話し申し上げられないわけでございますけれども、いずれにせよ、ACMIについて米側から具体的な要請が出されたのは昨年の八月であると私ども承知いたしております。
  78. 上原康助

    上原委員 日米間で、どういう議題で、どういう話し合いがなされたかを明らかにしないのが原則だ、これは常にそういう口実で秘密にしてきているわけですね。国民には知らせないで、いろいろなことが日米間で秘密裏に行われている。これもきわめて問題ですね。しかし、いま私が言ったことについては、その事実は恐らくあったと私は思う。この問題は、いずれ時間をかけて明らかにしていきたいと思うのです。  ですから、そういう過程を経て、このACMI問題というのは出てきている。しかも、空域の選定とか設置、新しい訓練空域とかを設置するに当たっては、直接の担当省庁というのは運輸省だと私は思うのですね。だが、このACMIのことだけに限りませんが、最近のいろいろな状況というものは、まずは防衛庁が先行していく、あるいは外務省がリードしていくとか先行していく。担当省庁には、大体案が固まった段階で通告するという手順がとられておりますね。これは明らかに本末転倒で、また運輸省ももっとしゃんとしてもらわなければ困ると思うのですね。これだけ重要な問題で、六月段階から日米間では具体的な話し合いがなされているのに、しかも八月には施設部会に提案がなされているのに、八、九、十、十一とまる三カ月、担当省庁である運輸省はつんぼ桟敷に置かれておったのですか。どうなのですか、そこいらは。
  79. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、運輸省が連絡を受けましたのは昨年の十一月でございますので、八月から十一月までの間、私どもは知り得ない状態でございました。
  80. 上原康助

    上原委員 こういう状態では、国民の立場からするときわめて問題があるということを、政務次官お座りですから、御認識をしておいていただきたいと思うのです。  そこで、ではまず、五十六年八月何日ですか。
  81. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 施設特別委員会が開かれました日にちでございますが、八月の十八日でございます。
  82. 上原康助

    上原委員 五十六年八月十八日、たしか第五百六回施設特別委員会ですね。
  83. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 そのとおりでございます。
  84. 上原康助

    上原委員 このときに、施設特別委員会に米側はどういう提案をしてきたのですか。
  85. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 ACMIそのものの内容の説明といいますか、航空機搭乗員の戦技向上訓練を安全かつ効率的に実施するために必要な施設を設置したい、そのための内容の説明を受けております。
  86. 上原康助

    上原委員 その目的、規模はどうなっていますか。
  87. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 まず、概念としましては、先ほど申し上げましたように、目的としては、航空機搭乗員の戦闘技量を向上させるため、しかも、それを安全かつ効率的に実施するというものでございまして、現在の技術、エレクトロニクス技術とか通信技術といったようなものを総合いたしまして、まず、空域としましては縦横数十キロ程度の空域、その空域で訓練を実施する航空機の位置、姿勢等を刻々的確に把握していく、そのために必要な施設といたしまして、洋上ブイ、中継アンテナ、それから必要な解析を行うためのマイクロ回線といったようなものの設置を主要な内容としております。
  88. 上原康助

    上原委員 ですから、その面積はどのくらいになるのかということ。それと、必要な空域は平均水面からどのくらいの高さなのか。あなたは安全、安全と言うけれども、主要目的は空対空ミサイル訓練でしょう。戦闘機の空中戦訓練でしょう。
  89. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 いまお尋ねの件の、数十キロと申し上げましたのは、そういった空域の範囲内において可能な空域ということで、具体的に細かく詰めているわけではございません。  それから、高度等につきましても、当然、戦闘機が戦闘行動を行うための常識的な高度というのはございますが、そういった高度につきましても、米側としては、今後の調整事項ということで、私どもとしても、これがこうだというきっちりした数字というものは持っておりません。
  90. 上原康助

    上原委員 あなた、また、そんないいかげんな答弁よしなさいよ。  米側提案に具体的なものはないですか、本当に。八月十八日の米側提案に具体的なことは書いてないの。
  91. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 米側提案の内容から申し上げますと、ある程度その具体的な数字というものは提案いただいているわけですが、現実にそれがどういうように設定され、運用されるかということで、いま正確なことをお答え申し上げられないというふうに御答弁申し上げたわけです。
  92. 上原康助

    上原委員 私が聞いているのは、米側提案の中身なんですよ。運輸省はまだ検討中で、恐らく具体的な決定がされてないでしょう。そのことを聞いているのじゃないのです。  ACMIの範囲としては、東西約八十キロ、南北約六十キロ、そうしますと、これは四千八百平方キロメートルですね、単純に言っても。そういうのが具体的に出ているのじゃないですか。どこからどこ、緯度も全部。しかも、「必要な空域は平均水面上五百フィートから六万フィートまでの範囲である。この空域は連日(現地時間〇六〇〇時から二〇〇〇時まで)の十四時間使用され、通常当該訓練区域における飛行訓練は昼間に実施される。」が、民間機その他は制限を受ける。全く排他的じゃないですか。五百フィートから六万フィートですよ。それが米側提案でしょう。  ここで質問するからには、ある程度いろいろ調査もしてやっているんだよ。そんなごまかし答弁、よしてよ。これだけの範囲の非常に重要な問題だから、私はきわめて重要なんだと言って押してきているのです。何でそんないいかげんな答弁するんだ。はっきりさせてください。いま米側の方はそういう提案になっているわけでしょう。
  93. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 私どもの立場としまして、米側との間に行っております内容につきましては、細かいことまで申し上げるという立場にありません。  それから、空域につきましては、特に米側の提案は、米側の所望する必要な水域というものをつないでおりまして、いま先生指摘のような数十キロというような形での提案内容にはなっておりません。
  94. 上原康助

    上原委員 あなた、おかしいんだよ。それは細かいことですか。じゃ、もう一つ別の角度から聞いてみましょう。  この提供しようとする施設名はどうなっているのですか。米側は何を求めているの。要するに言わんとするところは、新規提供ですか、それともどうなんですか。
  95. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 先ほど申し上げましたように、必要な陸上部分といいますか、そういったものにつきましては、全体的な図ができたときに必要な陸上部分を取得するようになりますので、その際、既存の施設、区域内においてそういったものが得られない場合には、新規提供ということもあり得ると思います。  それから、空域につきましては、領空部分につきましては提供という形になりますし、公海といいますか、公空部分につきましては、必要な空域の指定といったような形になろうかと思います。
  96. 上原康助

    上原委員 それはもちろん、硫黄鳥島を使おうというわけだから新しい施設提供になる。  しかし、米側はそういう提案の仕方じゃないでしょう。「施設名 沖縄航空機戦技訓練評価装置区域は、嘉手納飛行場への追加提供として措置されるよう要請する。施設番号 FAC六〇三七」。現在の嘉手納飛行場はFAC幾らですか。
  97. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 嘉手納飛行場のFACナンバーは六〇三七でございます。
  98. 上原康助

    上原委員 だから、嘉手納飛行場の追加施設として提供してくれと米側は求めているわけでしょう。そういう広大な訓練空域を確保し、新たな施設も確保しようとするのにこういう提案をしてきているんだよ。  ここにちゃんと空域のあれも書いてあるのですから。「下記座標により特定される空域が排他的に使用される。北緯二十七度三十二分 東経百二十八度二十八分、北緯二十七度十八分 東経百二十七度四十分、北緯二十八度〇〇分 東経百二十七度四十分、北緯二十八度〇〇分 東経百二十八度十八分」。さっき私が言いましたように、「必要な空域は平均水面上五百フィートから六万フィートまでの範囲である。」こういう具体的な提案を米側はしているのじゃないですか。あなた、何でそれをごまかすの。  いま私が言ったことは、米側提案として事実かどうか、確かめておきましょう。
  99. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 私どもの基本的な姿勢としましては、施設特別委員会等において提案のありました米側内容につきましては、それを逐一公表するということはやっておりませんので、私どもとしましては、現在日米間で折衝の行われておるものの内容につきましては、事細かくお答えするというわけにはまいらないと思っております。
  100. 上原康助

    上原委員 細かくお答えしなさいとかなんとか——あなた答えないから僕が言っているのじゃないですか。そういう内容が提案されていますねと聞いているのですよ。
  101. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 先ほど来お答え申し上げておりますように、昨年八月、ACMIにつきましては米側からその設置希望と、それからACMI設置に必要な規模であるとかあるいはACMIの機能であるとかいう説明は受けております。
  102. 上原康助

    上原委員 あなた、そんなこと言ったって、これは「第五百六回施設特別委員会議事概要」じゃないですか。ちゃんとあるじゃないですか。何で皆さんはそういうのをごまかすんだ。これだけ重要な問題なんですよ。  もう一点確かめておきたいのですが、沖永良部島の関係で「有人マスター・ステーション設置のため航空自衛隊の受信所(北緯二十七度二十一分五十七秒、東経百二十八度三十三分五十秒)を共同使用する。」これは合意を見ているわけですか。
  103. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 現在まだ、必要な空域あるいは実際にその空域に基づいての地上ステーションといったものをどこに設定するかにつきましては決定しておりませんので、航空自衛隊の基地を共同使用するというようなことについての合意は行っておりません。
  104. 上原康助

    上原委員 しかし、米側はそれを求めていますね。
  105. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 米側としては当然、ACMI設置に当たっての必要な地上ステーションを地上に設けることについて、必要な土地、区域等の提供というものは要求しております。
  106. 上原康助

    上原委員 それで、私はこういうのはさして極秘にすべきものでない、秘密にすべきものでないと思うのであれなんだが、皆さんは何か、日米間で話し合おうというものについては、もう口を貝にして語らず、国民には明らかにしない。秘密裏にやる。これは、何もこの問題だけじゃないのですが、われわれとしてはきわめて納得いきませんし、重要な点だと指摘をしてきたわけです。この問題はそれだけ重要な内容を含んでいるのですね。  そこで、ある程度概略というものはわかったわけですが、なぜこれをこれだけ問題にするかといいますと、今度運輸省に聞くわけですが、米側がこういう計画、こういう構想で、こういう規模で、この種の訓練空域を持ちたいと具体的に出されていながら、肝心の運輸省に対しては十一月にしか連絡がなかった。さっき言いましたようにきわめておかしいのですが、恐らく運輸省も知っておってそういうことをさせているのかどうか。なぜこれを重要視するかといいますと、ACMI設置に関連する問題点として、硫黄鳥島周辺の空域は、那覇、嘉手納を中心とする沖縄空域にとって地理的に大変重要な空域であり、ACMIが設置されれば管制上重大な支障を来すおそれがあると航空管制官の皆さんは言っているわけですね。この件については運輸省、どういう御見解を持っていらっしゃるのですか。
  107. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 ただいま先生指摘のように、米側から提案されました沖永良部の西方空域、これは航空路ではございませんけれども、沖縄の那覇空港に入る民間航空機にとりまして、いわば道路におけるインターチェンジに相当すると申しましょうか、レーダーで誘導して那覇空港の滑走路に北の方から真っすぐに入ってくるというために、管制上非常に重要な空域でございまして、私ども調査によりますと、那覇空港に離発着いたします民間航空機の約三分の一はこの空域を利用するわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この空域について米側提案のような空域を設定するということは、民間航空の安全あるいは円滑な流れを阻害するおそれがあるということで、先ほど御答弁申し上げましたように、米側に再検討を要請したところでございます。
  108. 上原康助

    上原委員 では、委員長、ちょっとこの図面を運輸省の政務次官あるいは大臣にお配りしたいのですが、これでちょっと説明しますから。  陸上で言うとインターチェンジ的役割りをこの空域は果たす。そこで、いまお手元に上げましたこの三枚目をごらんになっていただきたいと思うのです。  まず、ここが那覇空港ですね。赤いのが那覇空港。この黄色いのが嘉手納米軍基地。米軍飛行場。この那覇空港から飛び立つ飛行機は、北風の場合、大体こういうルートで飛んでいっている。赤線で矢印してございますね。いま米側がACMIを設置しようというのは、ちょうど青い斜線を引いてあるところです。ちょうどここに入っていくわけですね。その沖永良部の隣あたりで、香港へ行くもの、あるいは大阪、東京というふうに仕分けをしてやっていく。一方、嘉手納基地から飛び立つ米軍機というのは、ここの右側を大体飛んでいっている。現在は、簡単に言うとこういう交通整理をされているわけですね。なぜこういうふうに曲がって行くかというと、ここに伊江島の訓練空域があるから、ここにも真っすぐ行けない。一方、もう少し、このいまACMIを設置しようとする西側についてはW−179、ウォーニングエリア柵がある。これも民間機を排除して米軍が排他的に使用しているところ。一方、東側に行きますとW−173、そういうふうに、どこに飛んでも米軍の訓練空域とかいろいろなのがあって、いまACMIを設置しようというところだけは何とかスペースを確保してあったんです。これは、米軍統治下にあっても、いま航空局長おっしゃいましたように、そこはきわめて重要なコースなので、そこまで訓練空域に指定しては困るということで、アメリカもあえてしなかった場所なんですね。  次のページを見てください。飛行機はもちろん風の方向によって離着陸は違いますから、じゃ今度南風の場合、糸満の方向に向けて飛び立ったとしましょうか。飛び立ってこう行くとしても、しかし、入ってくる飛行機はまた全部ここを通らなければいけないわけですよね、逆に。こう飛んでいって、こっちから入ってくるんじゃないんです。どう見たってここにはひっかかるわけなんです。これでもう一目瞭然。これは私がつくったんじゃない。これは専門家がつくってあるんですよ。現在でも那覇空港というのは非常に過密な飛行場になっている。さっき言いましたように、W−179とかあるいはW−173とかスコープ・ヒートとか、あるいはすぐ近くには伊江島訓練空域がある。W−178A、W−178、こういう状態になっているということなんですね、政務次官。関係者もその程度はわかるでしょう、実際。いまの図面は、飛行場管理部門の航空管制面から考えてこういう状態になっているんです。沖縄県もこれは反対ですよ。  もう一つは、これは沖縄県の基地渉外課でつくってあるものです。ここが沖縄としますと、この青く塗られたところはみんな米軍の訓練空域なんですよ。沖縄は、何も陸だけに基地が過密状態じゃないんです。空だって過密状態だ。新しくここに設置しようというわけでしょう、このあいているところに。この黄色いところ。これは県の渉外部で、ACMIが設置された場合どの付近かというて図示しておる。そうすると、沖縄というのは、アメリカの演習空域にみんなすっぽり埋まっているようなものですよ、これじゃ。  こういう危険を冒してまであえてアメリカの便宜供与を図らなければいかぬ立場にあるんでしょうかね、主権国たる日本の国というのは、幾ら何でも。いま私が説明を申し上げたことに対してどういう御認識か、御答弁をいただきたいと思います。
  109. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 ただいまお示しいただきました北風時の離着陸の方式あるいは南風時の離着陸の方式、これは私どももこのように、すべてがこの線の上を通るという意味ではもちろんございませんけれども、那覇空港の滑走路の方位からいいまして、やはり真北から入るということのために、あるいは真北の方へ出ていくということのためには、どうしてもこの空域はレーダー管制上必要な空域であるというふうに考えております。したがいまして、私どもとしましては、この空域は、先ほども御答弁申し上げましたが、民間航空の交通安全上の大変重要な空域であるという認識を持っております。
  110. 上原康助

    上原委員 もう一つ最後のやつです。     〔三枝委員長代理退席、委員長着席〕  これをごらんいただくと、大体飛行機の通る航路らしいですね。レーダーで観測したものね。だから、全部こういった空域を避けて通っているわけですよね、制限空域というのは。いまはもう多く指摘するまでもないのですが、これだけ重要なところにあえて、しかも広大な面積を確保して新たにACMIを設置しようとする。どう考えても、航空路の安全性の確保からして理解しがたいですね、これは。  若干付言しますと、那覇の航空管制業務に携わっている皆さんの意向は、現在でもこれだけ大変米軍用の空域がひしめき合っているので、非常に神経を使うと言っているわけですよ、いまでも。アンケート活動などもよくやっていらっしゃる。いろいろ運輸省は、よくこういうのもお目通ししておられると思うのだが……。しかも、この沖永良部付近は雷雲が大変発生する。たとえばこういうアンケートがある。「雷雲回避や安全間隔設定にウォーニングエリアが支障をきたしたことがありますか。」という問いに対して、航空管制官の皆さんはどう言っているかというと、八九・一%が「はい」と答えているのです。「わからない」が九・八%、「いいえ」が一・一%。ないというのは百人に一人程度なんです、現在でもですよ。それと、航空管制上安全確保の面から「ACMI設定に対し、賛成しますか。」という問いに対して、「賛成」は一・一%、「反対」が九三・五%、「わからない」が五・四%。  だから、航空管制業務をやっている管制官というのは、実際業務を運営して、こういうところにこの種の訓練空域が確保された場合はどれだけ過密な状態であるかわかるわけですね。  したがって、運輸省としては再検討を求めておるということですが、ぜひこの件については再検討どころか、やはり空の安全の問題——本当に万一いま米側提案のように設置された場合は大惨事が起きるかもしれません。われわれ、年じゅう飛行機に乗って本当に心配です。いまでもこれだけ制限空域の中をよけて飛んでいるのです。宇宙空間というか、それが広いからということで、どこを飛んでもいいということじゃないらしい。やはりそれはレーダーの誘導に従って、あるいは制限空域に入ってはいかぬということになると、それを避けて飛んでいかなければいかぬ。だから、パイロットは神経を使うのだ。航空管制官のそういった面に対する気の使い方、これは並みのものでないと言っているのですね。  そこで、こういう訓練空域を求める場合の手順ですが、冒頭言いましたように、私は疑問を持っている。これは施設庁なり外務省だけが運輸省には知らさないでやるというのは、いささかどうかと思うのですね。どうなっているのですか。まず、アメリカ側がそういう問題を提起しようという場合には、何に基づいて、どういうルートで、どういう手順を踏んで現在はやらなければいけないのですか。何かそういう取り決めがあるのでしょう。
  111. 伊藤参午

    ○伊藤(参)政府委員 施設、区域の提供等につきましては、当然地位協定に基づきまして日米合同委員会の場を経て、その他所要の手続をやって実施しております。
  112. 上原康助

    上原委員 ただそれだけですか。  では、具体的に聞きましょう。合同委員会に諮るまでの前提もあるんじゃないですか。一つは、きょうはこれを主に議論する目的ではありませんので簡単に聞いておきたいのですが、一九五二年、昭和二十七年六月二十五日、合同委員会で承認された航空路管理に関する協定というのがありますね。これは現在どうなっているのか、その後この協定は改定されているのかどうか。
  113. 武田昭

    ○武田説明員 お答え申し上げます。  昭和二十七年六月に、日米合同委員会におきまして航空交通管制に関する合意というものがなされておりますが、それは昭和五十年五月に改定をされまして、五十年五月の航空交通管制に関する合意という形で現在は適用されております。
  114. 上原康助

    上原委員 昭和五十年の五月じゃない、八月五日じゃないですか。五月八日ですか、八月五日ですか、ちょっと確かめておきましょう。
  115. 武田昭

    ○武田説明員 改定の日付は、昭和五十年五月八日の日米合同委員会承認でございます。
  116. 上原康助

    上原委員 五月八日ですね。そうしますと、この一九七五年五月八日の合同委員会で承認された内容というのはどうなっているの。
  117. 武田昭

    ○武田説明員 一九五二年、昭和二十七年でございますが、そのときの航空交通管制に関する合意というものは、日本国が日本領空において航空交通管制業務を実施する、ただし、一時的な措置として、わが国の自主的な実施が可能となるまでの間、米軍に管制業務を委任するというのが主たる内容でございます。
  118. 上原康助

    上原委員 それだけではないと思いますね。  昭和二十七年、それから三十四年の六月にも恐らく改定をされていますね。その後、沖縄返還のときの七二年五月十五日の取り決めもある。次いで、いまおっしゃるように昭和五十年、一九七五年五月八日の航空路管理に関する協約というふうになっていると思うのです。経過をたどると大体そういうことじゃないのか。  そこで、この中で、こういうことになっていませんか。便宜供与の点については「要撃機等に対する管制及び誘導に関する中央協定の締結について」というのが四十七年七月十四日付である。そのことと同様に、「他の航空機の安全に支障のない限り、」要撃機等の便宜供与を図る、こうなっていると思うのです。  時間がありませんので、これはいずれ航空管制業務全般についてどこかでお尋ねをしてみたいと思っているのですが、同時に、この七五年に改定された航空路管理に関する協約の中で、その十条、一般(民間)航空委員会というのが設置されるようになっているはずなんです。しかも、その十条の規定の中では、「現業部門で解決できない空域使用の問題は」云々とあるはずなんです。これは、民間航空委員会において十分検討をして、合同委員会なら合同委員会、施設部会なら施設部会に勧告もしくは提案をすることができることになっているはずなんだよ。そうなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  119. 武田昭

    ○武田説明員 航空分科委員会に関連する取り決めはそのとおりでございます。
  120. 上原康助

    上原委員 これは、運輸大臣もおいでになりましたから、あの図面ちょっと目を通しておいていただきたいと思うのですが、そうであれば運輸省の権限、御見解というのはきわめて重要ですよ。何もアメリカ側が提案をしたから、それをぜひ受けなければいかないということじゃないです。受動的立場じゃないのですよ。このいま私が引用して、そのとおりだ。百歩譲って、日米間の取り決めにおいてでさえ、日本側の見解なり運輸省のこの民間航空委員会の見解とか提案というものは、きわめて重要視というどころか、それが主体にならなければいかないということになると思うんだな、私の解釈では。しかし、先ほどから申し上げましたように、それが逆になってきている。施設庁が先行していて運輸省は、意図的かどうかわからないが、ないがしろにしている。これじゃ私はやはりいかないと思うのですね。もしそうであるとするならば、先ほど来航空局長なり皆さんおっしゃいましたように、これだけ支障を来すということであるならば、大臣、この件については沖縄県民のみならず多くの国民が大変気にしますよ、ここにもしいま米側提案のようにこのACMIが設置をされるということになりますと。  せんだっても大臣は、この件についてはこういうふうに予算の分科会でお答えになっておりますね。「これがたまたま航空路の相当な要衝の点に当たっているという事実もあるので、こうしたことは非常にわれわれとして困るというので、防衛庁並びに外務省を通じて、この問題については、さらに先方の配慮、再考を促すということで、現在交渉を続けてもらっていると了解して」いる、この種のことをお述べになっておられる。そこで、きょう改めていま航空局長の方からもお答えがありましたが、やはりここに設置をされると、これだけふくそう、錯綜するところですからね。もう申し上げるまでもなく、これはいわばターミナルですよ、交差点ですよ。そういうことで、やはり航空行政なり特に航空路の安全性というもの、一たん事故でも起きるともうこれは大惨事ですね。そういう立場からぜひ運輸省としては運輸省の見解をまとめて、やはり空の安全性の問題あるいはいまでも過密状態になっているというようなことを含めて、この米側提案に対しては毅然たる態度で対処していただきたい。また、そうすることがやはり筋だと私は思うのですね。大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  121. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いま委員が仰せられたとおりのことでありまして、私らも初めそういう話を聞いたときに、こちらだって大変たくさんの方が飛んでいるところなんで、そんなところで変なことをされちゃ困りますからお断りするということを申して、先方には、われわれの方は同意できないということを申して、その後文書による回答を求めておりますが、まだ交渉中らしいのでありますが、他の地点に恐らく移してくれるであろうというふうに思っております。
  122. 上原康助

    上原委員 いま、かなりはっきりしたお答えがありましたので、一応ほっとしますが、これは私は、正直申し上げて、何も防衛論的立場あるいはそういう点からだけ指摘をしているわけじゃないですよ。その面の伏線もあるやに聞いてはおりますが、何よりも国民の、そういった飛行機を利用する立場にある方々の安全の確保というのが最優先されなければいかないという視点から私は申し上げているので、さらに、二、三引用いたしましたが、この日米間の取り決めの中でも、これは運輸省意見というものは最大限に尊重されなければいかない、こういう立場にあるわけですから、もうこれ以上のあれはないと思いますので、ぜひいま大臣なり局長がお答えになった姿勢で最後まで御努力をいただきますことを強く要望申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  123. 越智伊平

  124. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  一番最初にちょっと要望だけ申し上げておきますが、きょう大臣が途中で退席なされるそうでございますので、本来、私はきょう皆さん方の御了解を得て、この委員会で特に港湾行政の問題について具体的な資料を中心に問題提起をしようと思っておりましたけれども大臣等もお見えにならぬようでございますので、また別の機会に譲りたいと思っております。そこで、資料等については、私ども港湾局にいろいろと要求をしておる問題もございますので、ぜひ今後の段階の中で資料等を御提示願いたいということだけ、まず最初に申し上げておきたいというように思います。  第二番目の問題でございますが、これもごく簡単に自動車局の方に質問をいたします。最近、新聞等で、鈴木自動車工業の五十三年型スズキフロンテセブンSという車があるわけですが、前進ギアを入れたけれども、エンジンの逆回転現象が起きたということが報道されておりまして、福岡の陸運局においてこれの走行実験を行ったわけでございます。一定の条件下では後ろに走り出すということが確認をされたということが言われておるわけでありますが、このエンジンの逆回転現象の訴えは、他の車種についても全国的に起きておるのか、あるいは部分的にでもそのような申し出があるのか、運輸省は現在までこのような訴えの全国的な状況なり逆発進によるところの状況、あるいは対象車種の販売台数等を具体的に把握をしておるかどうか、お伺いをします。
  125. 宇野則義

    ○宇野政府委員 ただいま先生指摘の点についてお答えしたいと思います。  まず最初に技術的な問題でございますが、エンジンの状態が正常な状態でありますれば逆回転するということはございません。しかしながら、この鈴木自動車のエンジンはツーサイクルと言われるシステムのエンジンでございますが、そのエンジンの点火系統の整備不良と他の特殊な条件が重なった場合にはエンジンが逆回転するということはあり得ることでございます。  先般福岡の陸運局でテストをやったわけでございますが、そのテストをやったという報道が新聞等で報道されまして以来、同じような同種のエンジンに逆回転があったというユーザーの情報が実は入っております。きょう時点で二十八件、運輸省に報告されております。  私どもといたしましては、今週の初め、十九旧でございますけれども、この問題を調査すべく、鈴木自動車工業に対しまして、逆回転に関するユーザー情報を早急に調査するということと、当該エンジンにおいて逆回転発生の原因究明を行うように、その結果を至急報告するように指示をしたところでございます。  また、全国の陸運局に対しましても、同種の情報の収集に努めて、発生状況について調査の上、本省に報告するように指示をいたしたわけでございます。  これまで軽自動車についてのこのようなエンジンの逆回転という情報は入っておりませんでした。今回が軽自動車について初めてになるわけでございますけれども、現在、その原因等について調査をしておる段階でございます。  なお、福岡陸運局の管内で四月十七日に再現試験を実施したということは新聞報道のとおりでございますが、このときの状況は一応報告は参っておりますが、詳しい報告がまだ入っておりません。したがいまして、この再現試験の詳しい情報をいま仕入れるべく手配をしておりますけれども、非常に特異な状態を強制的に設定してエンジンの逆回転を実験したという感じがいたしておりまして、現在の時点で直ちに車両欠陥ということを結論づけるものではないというふうに考えておりますが、なお調査を続けてまいりたいと思っております。
  126. 草川昭三

    草川委員 いま御答弁がございましたように、正常な状況でない条件のもとではある、こういうお話でございますが、いずれにいたしましても、一気筒のプラグが外れて点火が働かなかった場合についてはそういう場合があるということが事実であるわけです。私どもも免許証を取りましてから非常に古いのですが、免許取りたて当時の日本の軽自動車のグレードというのは、プラグがよく外れた。これは日常茶飯事でありましたし、プラグの修理等もゲージを持っておりまして、点火の間のすき間を自分で調整をしたような経験があるわけでありますが、最近ではそのようなことがないだけに、私はかえって偶発的にプラグが外れた場合の、ペーパードライバーというのですか、最近ではドライバーの数も非常にふえておるわけでございますが、メカに弱いドライバーが運転をした場合には、安全対策上も大変問題がある、こういうわけであると思うので、至急に調査をしていただくわけですが、少なくとも全国的に二十八件の報告があるということは、これは無視できません。それで直ちに欠陥車という認定はいかがなものかとは思いますけれども、しかし、いずれにしても、重要な時期になる場合にはリコールということも当然指示をすべきだと思いますが、いまの調査の結果では将来リコールもあり得るというように理解をしていいのかどうか、お伺いします。
  127. 宇野則義

    ○宇野政府委員 ただいまお答えしましたように、全国から情報が入っておるわけでございますが、個別に見ますと、匿名希望という形で情報提供してくださったユーザーの方もおられますし、かなり前の話で、具体的にどういう条件のもとでどういう現象が発生したというような細かい情報は一切入っておりません。したがいまして、過去のものについては非常に調べにくい点があろうかと思いますが、私ども、いまきょう時点で申し上げられますことは、かなり特異な状態で、整備不良とその特異な状態とが重なったのではないかというふうに一応の推定はいたしておりますけれども、これはあくまで推定でございまして、ただいま申し上げましたように、メーカーに対する調査と、それからもう少しその現象等について細かく調査をいたしませんと、最終的な結論を出す段階には至っておりません。
  128. 草川昭三

    草川委員 いまの答弁にもございましたように、ぜひ早急に調査を進められて、私どもが安心できる結論が出るようにしていただきたい、こう思います。  では、三番目の問題に移りますが、実は外務委員会あるいは法務委員会等で、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約の締結について承認を求めるの件、これはきのうの本会議でも確認をされております。あるいは法務省の方では、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部改正、こういう問題があるわけでありますが、きょうはそのものに関連をいたしまして、主として日本の被害者あるいは荷主側の問題点等について、少し具体的な事例等を含めて、当局の御見解を賜りたいと思うわけでございます。  そこで、まず最初に、外務省がお見えになっておられると思うので、この海事債権についての責任の制限に関する条約の成立の背景ということを、簡単で結構でございますから、お伺いしたいと思います。
  129. 佐藤裕美

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  一九七六年の海事債権責任制限条約の成立に至る国際的な背景でございますけれども、まず、船舶所有者の責任につきましては、各国とも伝統的に責任制限の制度を採用してきておりまして、ただ方式がいろいろと異なっておりましたために、これを国際的に統一しなければならないという必要性が指摘されていたわけでございます。  それで、まず一番初めに、具体的な動きといたしましては、大正十三年、一九二四年でございますが、ブラッセルにおきまして海上航行船舶の所有者の責任の制限に関するある規則の統一のための国際条約、いわゆる一九二四年条約と申しておりますけれども、この条約が作成されたわけでございます。しかしながら、この条約というのは責任制限の方式がいろいろと複雑でございましたために、いわば欠陥が指摘されまして、締約国の数も少なかったという事情がありました。それで各国におきまして、船主責任制限制度の統一という目的が結局達成されなかったわけですけれども、第二次大戦後に至りまして、再びこの責任制限制度の国際的な統一という機運が生じてまいりました。そうして一層合理的な条約をつくろうということになりまして、昭和三十二年、やはりブラッセルにおきまして海上航行船舶の所有者の責任の制限に関する国際条約、これを一九五七年条約と申しておりますけれども、この条約が作成されました。そして、この一九五七年条約と申しますのは、かねてから責任制限の方式として最も合理的であると言われておりました金額責任主義を基礎としたことがございまして、その後各国に広く受け入れられることになりまして、締約国の数も現在三十四カ国ということになっております。それで、もちろんわが国も昭和五十一年、一九七六年にこれを批准いたしております。ところが、一九五七年条約が作成されましてから十数年を経た一九七六年の段階でございますが、十数年を経まして、その間のインフレーションの進行等がありましたために、責任限度額の大幅な引き上げということの必要性が指摘されるようになったわけでございます。  そのほかの要因といたしましては、その後に作成されております海事関係のいろいろな条約との調整が必要になってきたということ等が理由として挙げられますが、一九五七年条約の再検討の必要性ということが言われたわけでございます。そうして、IMCOの法律委員会におきまして一九七三年、昭和四十八年からその改正のための検討が行われてまいりまして、一九七六年、昭和五十一年十一月にロンドンでIMCOの主催によりまして開催された国際会議におきまして、この一九七六年条約というものが採択されたわけでございます。その際にはわが国を含む四十四カ国の代表が出席いたしまして、十一月十九日に条約が成立したわけでございます。
  130. 草川昭三

    草川委員 いま一九五七年条約の締結国数は三十四というお話がございましたが、これで一九七六年の条約のいわゆる署名国というのは何カ国になるのか。それから、締結国はどの程度になるのか、お伺いします。
  131. 佐藤裕美

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  一九七六年の条約の署名国は八カ国ございます。それから、締約国といたしまして、フランス、リベリア、スペイン、イギリス、それからイエメン、この五カ国が締約国となっております。  現在のところ、条約はまだ発効いたしてはおりません。
  132. 草川昭三

    草川委員 そこで、いずれにしても、わが国も昨日、衆議院の本会議でこれが確認をされたわけでございますが、このような条約等をそれぞれ締結することによって、いわゆる船舶事故によって生ずる、特に日本の船舶事故によって生ずる被害について妥当な救済というものが確保され、それから海運業の安定的な発展を図るということができるのかどうか、十分自信を持って対応ができるかどうかということをお伺いしたいと思うのですが、これはどうでしょう、外務省に聞くよりも、船舶ということを含めて運輸省海運局の方から答弁を求めたいと思います。
  133. 永井浩

    永井政府委員 これらの条約の批准あるいは国内法の所要の措置という目的は、それぞれ被害者の救済とそれから海運業の安定と両方の要請を調和すると申しますか、両方の要請の調整という意味で、ただいま御質問のような趣旨にかなうものと私どもは考えております。
  134. 草川昭三

    草川委員 こういうことを聞きたいわけです。結局、本条約の目的は被害者の救済ということになるわけですけれども、この被害者というものは、船舶の衝突事故によって死亡した船員あるいは衝突事故のために沈没した船の所有者、まあ当然のことでございますけれども、あるいは船舶によるところの海上運送の過程で貨物損害を受けた貨物の所有者、いわゆる荷主ですけれども、こういうものもすべて含まれたものになると理解していいわけですか。
  135. 永井浩

    永井政府委員 当然のことながら、船舶による被害というものにはそれらのものが含まれております。
  136. 草川昭三

    草川委員 ぜひその立場からきょうはひとつ議論を進めたいと思うのですが、その前に、最近の海上事故の事例というものを少し数字で説明していただきたいのです。  これは海上保安庁にお願いをしたいと思うのですけれども海上保安白書というもの、私も交通安全対策特別委員会理事をいたしておりましたからそれなりの資料を参考にしてきたわけでございますが、わが国に寄港する外国船舶は、世界有数の経済国でございますから年々増加してきておるわけであります。同時に、その外国船舶、特にわが国に寄港する外国船舶というものは、日本の船に対して比較的海難事故をたくさん発生しておるということが、昨年の海上保安白書あるいは本年の海上保安白書等にも触れられているわけであります。それで、まずこの事実を数字で御説明願いたいと思います。
  137. 森孝顕

    森説明員 お答えいたします。  昭和五十四年から五十六年までの過去三カ年におけるわが国周辺海域における救助を必要とした漁船を除きます一般船舶の、ほとんど商船でございますが、海難状況でございますが、五十四年が千百二十二隻、五十五年が千二百七十六隻、五十六年が千百十五隻、三カ年トータルで三千五百十三隻、こうなっております。この中で外国船舶につきまして見ますると、この三カ年で三百一隻発生いたしております。
  138. 草川昭三

    草川委員 外国船が三百一隻発生をしておるということでございますが、数だけでは余り正確なウエートというのははっきりしませんから、一千トン以上ということでもう少しこれをしぼっていきますと、また数字がちょっと違ってくるわけでありますし、あるいは一万トン以上の船ということになりますと、それなりにまた数字が違ってくるわけであります。昭和五十四年、五十五年、五十六年トータルで、要救助船舶に占める外国船舶の割合という数字を参考に見てみたいと私は思うのですけれども、これを見ますと、外国船によるところの要救助船舶というのが五八・七%だ。これは昭和五十六年の数字でございますが、五十五年の場合も要救助船舶に占める外国船の割合は五七・八%、五十四年は五七・二%という数字をこの白書等から私ども見るわけでございますが、戸の点の数字は間違いないでしょうね。
  139. 森孝顕

    森説明員 トン数階層別と申しますか、千トン以上の外国船舶の海難のわが国の要救助海難船舶全体に占める割合は、まさに先生のおっしゃるとおりでございます。
  140. 草川昭三

    草川委員 そして、その外国船の中でも、どこの国の外国船に非常に事故率が多いかといいますと、特にパナマ、韓国、リベリア、ギリシャ、中国などの船籍を有する船舶海難事故を非常に起こしておるという事実があるわけでございますが、この点についてもひとつ海上保安庁の方から、どこの国が多いのか、私が指摘をした国が多いかどうか、御説明願いたいと思います。
  141. 森孝顕

    森説明員 国籍別の海難の発生状況について御説明申し上げますと、先生指摘のように、大韓民国が三カ年の合計で百六十七隻、ただし、これは漁船が入っておりますが、一般船舶のみについて言いますと六十八隻であります。リベリア船籍が、一般船舶のみについて言いますと四十四隻、同じくパナマが八十六隻、ギリシャが十隻、中国が十一隻、そのような状況でございます。
  142. 草川昭三

    草川委員 いま御指摘になりましたように、これらの国の事故によるために、わが国の国民の被害というものが非常にたくさん発生をしておるわけでございますが、このわが国の国民の、わが国の側の被害というものが、本条約によって解決をされるかどうかという問題があるわけです。これは非常に重要でございますので、これは運輸大臣も、きょうは時間がございませんからあれでございますが、産業界の出身ですからよく聞いておっていただきたいことであると思いますし、慎重な対応をしていただきたいと思うのですけれども、問題は——もう結構ですから、大臣はどうぞ退席していただいていいのですが、相手国の国籍が違うだけで救済の条件というものが全部違うわけですよ。それから、同じような事故で同じように日本の国民が被害を受けたといっても、相手国の船舶の国籍が違うためにわが国の方の被害の救済の範囲というものが異なるということは、私はこれは重大な問題だと思うのです。これは妥当なことかどうか。それは、その都度その都度によって仕方がないといえば仕方がないかもわかりませんけれども、受ける方の被害者にとってはたまったものではないわけです。こういうことについて、本来はこれは法務省にもお聞きしなければなりませんし、この条約の批准を求めた外務省にも聞かなければいかぬことですが、これはとりあえず、そういう事実を運輸省は知っておみえになるかどうか、お伺いしたいと思います。
  143. 永井浩

    永井政府委員 被害の態様と申しますか、事故によりまして、たとえば漁業その他第三者に及ぼす被害、それから衝突等によって相手船の船体に及ぼす被害、あるいは積み荷による被害、みんなそれぞれ違いますが、船主責任制限法に基づきます主として第三者に対する被害等につきましては、相手の国籍がどうであろうと、日本の領海内での事故に対する考え方は同じでなければならない、このように考えております。
  144. 草川昭三

    草川委員 ですから、いまの局長の答弁ならば、私はきょうわざわざここで皆さん方にお願いをして、質問する必要はないわけです。そこに問題があるわけです。  そこで、たとえば韓国ですけれども、韓国の場合は、一九五七年の責任制限条約の加盟国ではないと私は聞いておりますが、これはひとつ法務省にお聞きをしたいと思います。たとえばギリシャでも同様でございますし、中国でも同様だと思うのですが、一体韓国だとかギリシャだとか中国の法律は、このような事故に対してどういうことになっておるのか、お伺いをしたいと思います。
  145. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 韓国における責任制限制度は、いわゆる船価主義というものに金額責任主義を加味したものだというふうに考えられます。これは航海の終わりにおける船価を限度として責任を負うということでございますが、その船価がトン当たり十五万ウォン、邦貨にしますと大体五万円ちょっとくらいになると思いますが、それよりも大きいときにはその金額の限度で抑える、そういう主義でございます。  ギリシャにおきましても、この船主責任制限法を制定する前のわが国の法制でございました、船と運送賃を債権者に差し出して、そして責任を許してもらうという、そういう委付をするか、あるいは航海の開始のときの船価の十分の三あるいは十分の六というものを限度として責任を負う、こういうようなシステムになっているようでございます。  中国の制度につきましては、これはまだ中国の法制が余りきっちりとでき上がっておりませんので、どのような責任制限制度になっているかということは余りはっきりいたしませんけれども、どうも船価責任主義ではないかというふうに言われております。
  146. 草川昭三

    草川委員 いま言われておるのはいいですが、たとえばの話ですが、中国船が加害者になった場合には中国法を適用するとした場合に、いまおっしゃったように、法務省の方としては法律の内容が全く不明になっておるわけでありますけれども、これは漏れ承るところによりますと、中華人民共和国の外国籍船舶管理規則第八条によりますと何かあるようでございますけれども、これは不明だとおっしゃっておるんで不明なんですが、こういう場合には本条約は中国船に対して適用になるのか。これは外務省に聞きましょうか。外務省でも法務省でもいいです。
  147. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 外国法を適用するか、あるいは日本法を適用するかというのは、いわゆる準拠法の問題でございまして、先ほど海運局長がお答えになりましたように、日本の領海で起こった事故につきましてはすべて日本法が適用されるという原則になっております。ただ、公海上で起こった事故につきましては、これはいろいろ説がございまして、加害船の国籍による——両方とも日本の国の船が衝突して事故を起こしたという場合であればこれは問題はございませんけれども、国籍が違う、つまり加害船が中国船であって被害船が日本船である、こういう場合には、その加害船の船籍を有する国の法律による、あるいは被害船の船籍を有する国の法律を適用する、あるいは両方を累積的に適用する、いろいろの説がございまして、これは国際的に統一した慣行がございませんので、そのときどきの裁判所の判断によって規律される、こういうような状況になっているというふうに承知しております。
  148. 草川昭三

    草川委員 まさしく私が問題提起をしたいのは、いまの御答弁にあるわけですよ。そんなあいまいなことで日本の船主というものは外国船に荷物を依存することができるのかどうか。不安定で外国船に荷物を託することはできないわけですよ。私どもが申し上げたいのは、たとえばの話ですけれども、バイ・アメリカンという言葉がありまして、どこの国の船舶を使うかというので、アメリカの船を使わなければ輸入ができないとかというので一時大騒ぎをしたことがございます。日本も逆に非常に偏狭的な国家主義というものが出てきて、バイ・ジャパン、日本の船以外では荷物を運ばぬということにもつながりかねない重要な御答弁だと私は思うのですよ。しかも、線引きをどこでするか。そこで第三国の船が、船長の指揮命令が悪くて水浸しになってしまった。その中に穀物が積んであった。日本の荷主が買ったときには使い物にならなかったというような事例は、私はずいぶんあると思うのです。そのときに加害者というのですか、その船の運航管理者が外国船の場合には、われわれは損害賠償をそこの国の船側に要求しなければいけないわけです。その船そのものを加害者として処置をするというアクション・イン・レムという制度がアメリカにはあるそうでありますけれども、船そのものが悪いんだということで差し押さえをする、先取り特権をしなければならない、こういうことになるわけでありますけれども、それがきわめてあいまいでございます。  しかも、いま韓国のお話がございましたけれども、私は、いまの答弁の数字は間違っておるのではないかと思うのですが、われわれの調べた数字では、韓国の船主責任制限の金額は、物損だけの場合はトン当たり一万五千ウォン、USドルで二十一ドルであります。これは物の場合でありますけれども、人の死亡の場合及び傷害を含む場合には、その倍のトン当たり三万ウォン、USダラーで四十二ドルにすぎないわけであります。こういうようなデータについても、法務省はどのように実態をつかんでおみえになりますか。私は、いまのお話は、十五万ウォンとおっしゃいましたけれども、そうではないと思うのでございます。もし違っておれば後刻訂正をしていただきたいし、これはきわめて重要なことでありますから、私の方の数字が間違っておるならば、いつでもこれは訂正をしておきますが、ひとつ重要な問題提起をしておきたいと思います。  そこで、いま稲葉参事官はいろいろな雑誌においても準拠法等の原稿というのですか、論文も書いておみえになりますけれども、私がここで日本にとって非常に問題だと言いますのは、条約の十三条第二項を見ますと、「第十一条の規定に基づき基金が形成された後は、締約国の裁判所その他の権限のある当局は、その者のために基金が形成されている者の所有する船舶その他の財産であつて、基金に係る債権として請求することのできる債権に関して当該締約国の管轄内で差し押さえ」云々という言葉になっておるわけであります。それで、事故が生じた場合、生じた港あるいはまた寄港した港を(a)とし、死亡または身体の傷害に遭って下船した港を(b)とする。(c)というのが積み荷の損傷について荷揚げをする港、(d)が差し押さえの行われた国、こういうようなことがずっと述べられておるわけであります。  そうしますと、これは法務省に特にお聞きをしたいわけでありますけれども、この条約の十三条は、いま私が述べた(a)、(b)、(c)、(d)の地点を管轄する裁判所、すなわち、わが国の港またはわが国の近海で発生した事故に関しては、わが国の被害者は外国船を差し押さえをすることができるということを前提にこの条約というのが書かれてあると思うのです。そして、たとえば先取り特権でその船を差し押さえるわけでありますけれども、差し押さえをした場合に、必要的に本条約で定める基金、とにかくお金を積むと引きかえに差し押さえを解除する、こういうことになると思うのですけれども、たとえその加害者がどこの国の国籍であろうとわが国で差し押さえの手続というものを、船でありますから足が非常に速いわけでありますから、それを速やかに行うということをまず明確にすべきではないだろうか。いま稲葉参事官は、国によって違うとか学説によって違うと言っておりますけれども、私が聞いておるのは、日本の国としての対応を求めておるわけでありますが、その点はどうでしょう。
  149. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 わが国の法律によりますと、先生の御指摘のように、商法に八百四十二条という条文がございまして、これによってこの事故が起こったような、つまり責任制限の対象になる債権がございますと先取り特権が生じまして、これに基づいて差し押さえを常にすることができるということになっております。  そして、日本法が適用になります限りにおいては、対象がいかなる国の船であっても差し押さえが可能になるわけでございます。ただ、よその国の法律が適用になるということになりますと、その国の法制いかんによって、先取り特権を認めている国もございましょうし、認めていない国もあるということで、そこのところは必ずしも一律に処理するわけにはいかないということでございます。  法律の場合に、常に日本法を適用するということにすれば非常に簡明になるわけでございますけれども、それはなかなかできないわけでございまして、海商法というような法律につきましては、そのためにできるだけ各国において同じ内容の規制がされることが望ましいわけでございます。そのためにこのたびのような条約をつくりまして、そしてその条約が世界各国で共通して国内法としての効力を持つようにするということが望ましい、そのために今回の条約の締結ということになったのだというふうに考えております。
  150. 草川昭三

    草川委員 だから、このたび批准をしたんですけれども、それは責任の制限の金額的な問題が片一方では多くなりまして、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律の一部改正、こういう形になっておるわけです。  しかも、私どもが言いたいのは、千九百七十六年の海事債権についての責任の制限に関する条約の中のまず第一章の第一条の五項の中に「この条約の適用上、船舶所有者の責任には、船舶自体に対して提起される訴えの対象とされる責任を含む。」ということまで明確にあるわけでありますし、米国のアクション・イン・レムの制度の問題も私、問題提起をしたわけでありますけれども、実は日本の裁判所においては二、三判決があるわけであります。  たとえば秋田地裁の昭和四十三年の百二十七号、昭和四十六年一月二十三日決定、これは申し立て棄却で負けておるわけでありますけれども、この中には「国際私法上それが物権として有効に成立するためには、」いわゆる差し押さえが「その債権の準拠法上先取特権が物権的効力を有するものとして認められ、かつ物権の準拠法たる目的物の所在地法においてもこれに物権的効力を付与していることが必要である。」そして「船舶に関する物権についてはその旗国法をもって準拠法とすべきものであるから、」というわけで、これも負けておるわけですよ。だから、たまたま北米からでも南米からでも、どこでもいいんですけれども、小麦とか大豆を外国船に積んできた、ところが船倉に大量の海水が入って日本の輸入業者が大損害を受けたということになりますと、たとえばいま触れましたように、ギリシャの船だとかシンガポールの船だとかインドの船だとかイギリスの船だとか、いろいろな船になるわけですけれども、差し押さえが日本の港でできないわけですよ。しかも、韓国だとか台湾、中国、キューバというような国になりますと、相手の国の法律がどうなっているかわからぬということになります。結局、バイ日本、日本の船でないと信用して荷物を輸入するわけにいかぬともし日本の海運業者が言い出したら、日米貿易摩擦で最大の話題になっている上に、さらにこの問題が大変なことになる。さりとて、そういう国の船を通じて荷物を運ばないというわけにいかないわけですから、結局日本の業者が泣きっ放しになるというわけであります。  私は、実はいま申し上げたような現実の裁判例の中、基本的には「動産及ヒ不動産ニ関スル物権其他登記スヘキ権利ハ其目的物ノ所在地法ニ依ル」という日本の国の基本的な法例第十条に、船舶の場合は現在地をもって所在とするという考え方を法務省なりが一言態度を表明すれば本件のような問題はないわけでありますし、日本のきちんとした姿勢というものがわかる。最近、第三国間経由の船舶等を含めまして船舶事故というのは非常にふえておるわけです。ヘーグ・ルールの問題がフィリピンで問題になりまして、あの問題を通じまして雇用の面、資格の問題等が出ておりますけれども船舶責任の制限あるいは債権という問題についても、いま少し法務省の明快な態度があれば、私が指摘をしたことはすべて解決をすることになると思うのですが、その点どのようにお考えになられるのでしょうか。
  151. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 私、不勉強でその問題の裁判例をよく承知しておりませんけれども、法例の十条というのは、先生指摘のように、この「其他登記スヘキ権利ハ」というふうに言っておるわけでございまして、船舶の先取り特権というのは登記すべき権利ではないわけでございます。これにつきましては、日本法が適用になる限りにおいては日本の法律によって差し押さえができるということは確かであろうというふうに思うわけでございます。その判決をつぶさに検討してみませんと、果たしてその判決が正しいものであるかどうかということはわかりませんので、責任持ってお答えはしかねるわけでございますけれども船舶の先取り特権に関します限りはこの十条の問題ではないのではないかと思います。  ただ、なお私どもも十分検討をしてまいって、先生指摘のような問題点が何らかの形で法制上の欠陥に基づいて生じているというのであれば、それについて改めることにはやぶさかではございません。
  152. 草川昭三

    草川委員 私は、皆さんと違って法律屋ではありませんから、実態論から問題を進めておるわけでございます。私どももいろいろな関係者の訴えを聞きますと、法例第十条の解釈が基本的になり、しかも問題は仮処分ですから、船ですから港で執行しなければ、命令をしない限りは本訴で争うわけにはまいりません。とにかくその物を、船体自身が悪いのだという考え方で押さえて、相手側の船主の方からいわゆる基金を積む、それで勘弁してもらいたい、あとは話し合いでということになるわけなので、その差し押さえがスムーズにスピーディーに行えるように、法務省の見解なりそういう問題点を速やかに調査をされて、欠陥があるならば、私はそのように問題提起をしていかなければいけない、こう思うわけでございます。  これは私どもも、いろいろな意味で関係者の方方の御意見を聞いておるわけでございますけれども一、一九五七年の船主責任条約、この条約の成立について、何といっても英国がリーダーシップをとっておると聞いております。海上保険もロンドンということになるわけでございますけれども、英国においては日本と違いまして、英国人が被害を受けた場合には、加害船舶の国籍いかんを問わず法律の適用を異にするという態度をとっていないと聞いております。非常にクイックアクションというのですか、スピーディーに押さえて被害者の救済を図っていく、こういうわけでありますから、日本もぜひ英国と同じように対応を立てられることが——何といっても日本は物を非常に買う、量を輸入するという意味では非常に関係が深いわけでありますから、せっかくこのような条約を批准するという立場でございますし、日本の運輸省も、海運局は船舶を取り扱う関係部局でありますし、さらに荷主の保護はどこの省庁になるか、それぞれ違いますけれども、とりあえずは運輸省の役割りは私は非常に重要だと思うので、法律は法務省、外交は外務省と言わずに、運輸省の対応も強く求めたい、こう思うわけでございます。  ついでに、非常に恐縮でございますけれども、稲葉参事官にもう一つ、この件とは若干違いますけれども船舶の所有者の責任制限のことに関連するわけです。二隻のトロール船なんかの例がありますけれども、共同作業で船を運航していた、船舶所有者の責任制限法は、同一船主に属する船舶同士の衝突事故の場合には適用になるのかどうか。特に船員に対して、たとえば三十人の人間が乗っていた、十人の人間がその衝突事故によって被害を受けたという場合に、これの適用になるのかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  153. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 船舶責任制限の制度は、船ごとに責任限度額が決まるということになっておりますので、その関係では、二隻の船であればそれぞれの船ごとに責任限度額が設定されることになります。  御指摘のように、同一船主に属する二隻の船だということになりますと、そこで生じた債権がだれの債権であるかということによって差が生じてくるわけでございまして、もしその船主だけしか損害が生じていない、つまり船の損害しか生じていないということであれば、およそ損害が生ずるという問題はないわけでございます。それに対しまして、先生の御質問のございました船員の関係になりますと、船員は船主に対して損害賠償請求権を持つわけでございますけれども、その船員が船主に対して持つ損害賠償請求につきましては船舶責任制限の対象外である、つまり無限責任を負わなければならないというのがこの条約のたてまえであり法律のたてまえでございますので、その限りにおいては適用はないということになろうかと思われます。
  154. 草川昭三

    草川委員 その点は、私どもが事前にレクで聞いた話とちょっと違うので、私の方の問題提起がレクのときと違ったかもわかりませんので、非常にむずかしい問題でもございますし、個別な案件でもございますので、それはまた改めて別の機会に問うてみたい、こう思います。  時間が来てしまいましたので、海事債権の問題は以上で終わりたいと思います。  第四番目になりますけれども、過日、私鉄電車の、具体的には小田急の電車内のコマーシャル放送は騒音で問題があるという差しとめ請求が、三月の三十日に東京地裁から棄却をされております。いわゆる音に対するプライバシーというのですか、問題があるわけでございますが、この事実経過は一切別にいたしまして、私は、ホームでのアナウンス、広告でございますが、ホームのスピーカーで流れる放送はどこでやっておるかという問題を調べてまいりましたら、たまたま東京地裁の中で小田急電鉄の担当者の方が、これは五十七年二月四日の日にちでございますけれども、商業宣伝放送はどの場所でやっておるのですかという問いに対して、当社の信号所のところで行き先案内または列車案内等を行っておるわけでございますが、そのところで同様にやっておるという証言があったわけでございます。私はこれを見ておりまして、先ほど触れましたように交通安全特別委員会に籍を置いておりまして、これは非常に問題があるじゃないか。騒音差しとめが棄却されておりますけれども、これはせっかくの判例ですから、そのことがいいか悪いかという議論をする場ではございませんから問題にはいたしませんけれども、少なくとも運輸省の立場から安全上いかがなものかということを私は問題にしたいわけでございますが、その点運輸省はどのようにお考えになりますでしょうか。——私、実はきのうのレクでこの問題をやるよと言ってあるのですが、局長見えないようですから、答弁者が見えなければ見えないで仕方がないのですが、これはせっかく私ども問題提起をしてありますから、もう現実的な問題だけ私は言うということで申し上げておるので、これは手続上非常に残念でございますけれども、ぜひまた別の機会にひとつ明確な答弁を求めていきたいというように思います。  最後になりますが、時間が六分間しかございませんのでごく簡単に申し上げますと、交通反則金というのがあります。これは交通違反をした場合に納めるわけですが、この交通反則金の納付の仕方について、私どもは最寄りの郵便局あるいは最寄りの指定された国庫納入の金融機関、それから日本銀行に直接持っていくか、こういうことになるわけでございますが、その手数料が非常にまちまちであるという問題があるわけであります。  ごく簡単に申し上げますと、私は実は愛知県の出身でございますけれども、愛知県は、愛知県下の交通違反者の方々が郵便局を通じて交通反則金を納付いたしますと、年間二億円余分に郵政省に払わなければいかぬわけであります。愛知県が二億円損をするわけでありまして、これは非常に重要な問題でございますので、事実は間違いがないわけです。時間がないので、総トータルは幾らかということはきょうは聞きません。結論的に自治省はどのようにお考えになるのか、あるいは郵政省はその手数料をまけるということを考えるのかどうか、あるいは交通の取り締まりをするところの警察庁の方は、この金額の中から手数料というようなもの、いわゆる経費というようなものを、それぞれの地方自治体なりあるいは金融機関なりに返すということを考えたらどうだろうか。この根本になりますのは、警察法という法律があるようでございますが、この警察法第三十七条の中に、交通反則金というものは、手数料のことですけれども、手数料については国庫が支弁するなら支弁するというようなことも、ある程度考えなければいかぬ時代が来ると思うのですが、関係各省の答弁を求めたい、このように思います。
  155. 持永堯民

    ○持永説明員 反則金に関しましての手数料の問題につきましては、事実関係はいま御指摘があったとおりでございます。  そこで、私どもといたしましては、これは一応反則金ということで国の歳入に入るわけでございますけれども、御案内のとおり最終的には都道府県なり市町村に、交通安全施設の整備のための地方の財源として付与される形になっております。そういった意味で、この手数料につきましても郵政当局に手数を煩わしているわけでございますけれども、それに必要な経費といいますか事務費といいますか、そういうものについては、これはやはり最終的な交付金の交付を受けている地方団体で負担することはやむを得ないのではなかろうかというふうに思っております。当然のことでございますが、そういった手数料の額の決め方等については、これはやはり毎年妥当な、合理的な水準のものが決められるべきであると思いますが、そういったいま申し上げましたようなことから言いまして、この手数に必要な経費については都道府県が負担することはやむを得ないのではなかろうかと思っております。
  156. 山口憲美

    ○山口説明員 御説明を申し上げます。  国庫金の受け払いの事務でございますが、これは当然でございますが、私ども設置法に基づいて郵政省でつかさどっているというふうな性質のものでございます。この事務の取り扱いに要する経費につきましては、郵政事業特別会計法の四十一条というのがございまして「年金及び恩給の支給その他国庫金の受入払渡に関する事務の取扱に要する経費に充てるため、当該事務の取扱を委託した会計は、予算の定めるところにより、この会計に繰入金をすることができる。」こういうふうになっておりまして、法律上、委託をされた会計からこの会計へ予算の定めるところによって繰り入れをされるというシステムになっているわけでございます。  先ほど先生のお話で、軽減することができないかというふうな御趣旨の御質問であったかと思いますけれども、私ども、これらにつきましては所定の計算をやりまして、そしてそれに要する経費というのを予算に組んでいただいているということでございますが、仮にこの反則金につきまして軽減をするというふうなことにいたしますと、その軽減した分をいずれか他の業務で負担をしていかなければならないという問題に発展をするわけでございまして、私どもといたしましては、ある業務を他の業務に負担させるというふうなことは原則的には余り好ましくないというふうに考えておりまして、この交通反則金につきましても、所要の経費はそれなりにぜひ繰り入れていただくのが適当ではないかというふうに考えて、運営をしているところでございます。
  157. 福島静雄

    ○福島説明員 自治省から答えられましたとおり、納付されました反則金は国に帰属いたしますが、これに相当する額が交通安全対策特別交付金として、政令で定める一定の基準によって都道府県及び市町村に交付され、交通安全施設の整備に充てられているところでございます。とのように一たん国に帰属した反則金は、結果的にはその全額が都道府県等に交付され、また郵政取り扱い手数料に要する経費につきましては地方財政計画によって措置されておりますので、現状ではこのような仕組みが妥当であるというふうに考えております。
  158. 草川昭三

    草川委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、私の言いたかったのは、交通反則金は銀行へ納入する場合にはほとんど手数料がゼロなんです。そして、郵便局に納入をした場合に限ってその手数料を地方自治体が負担をしなければいけません。だから、平易な言葉で言うならば、交通違反をやるような悪い人の納付のためになぜ地方自治体が手数料を負担しなければいけないのか。愛知県の場合は、交通違反者のために二億円県財政が使われるわけです。その金は戻ってこないのです、愛知県とか東京都の場合は。いま自治省の幹部が、何らかの形で還付すると言っておられますが、それは別の話でございまして、単純な手数料というものは入ってこないわけです。だから、交通反則者に対して、郵便局へ納めるなよ、地方銀行を通じて納めなさい、これを言えば一番筋がはっきりするのですよ、この問題の解決は。しかし、そうもまいりません。それは、実際上は身近な郵便局を使うわけですから。またその郵便局も、たとえば地方の県税を納める場合の料率と交通反則金の料率が違うやに私どもも聞いておるわけでございますから、その点の矛盾点を指摘したつもりでございます。これは、ぜひまた別の機会に論議をしたいと思うので、以上で問題提起を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  159. 越智伊平

  160. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私は、初めに日米航空協定の今回の交渉の問題についてお伺いしたいと思います。  今回の日米航空交渉が決裂したその原因を要約いたしますと、まず以遠権の問題で、日本がアメリカに対し以遠権をほとんど持っていない。ニューヨークからは一つありますけれども、これも使えていない。ところがアメリカの方は、三つの国際空港から無制限の以遠権を持っている。日本側はこの以遠権を均等にしたい、こういうことを主眼にしていたと思います。     〔委員長退席、楢橋委員長代理着席〕 ところが、アメリカがこれに対しまして猛烈に反対をした。日本側は、これ以上アメリカから日本に以遠権を渡さない、また協議にも時間がかかるというのならば、これまでアメリカに与えておった以遠権は仕方がないとしても、これから乗り入れを許すであろう航空会社に対しては以遠権を認めない、凍結をしたい、こういうふうな点で最終合意を見なかった、こういうふうに私は解釈をしているわけですけれども、日米航空交渉の決裂した原因は、要約そのようなことでいいでしょうか。
  161. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 日米航空交渉は、残念ながら今回合意に達しなかったわけでございまして、いろいろな争点がございましたが、ただいま先生要約されましたように、日本側といたしましては以遠権とそれから乗り入れ地点、この二つの点について、現在の協定上不平等ないし不均衡が存在するということで、私どもその不均衡回復に努めたわけでございますが、米側は、まず日本側がアメリカ側に認めております現在の乗り入れ地点、つまり東京と大阪と那覇でございますけれども、特に大阪の使用制限が行われているということに対して非常に強い不満を持ち、これは日本側がアメリカ側に権益を与えていると言いながら実は制限をしているのではないかというような点が一つと、もう一つは、現在、御承知のように米国国内の航空輸送需要もかなり落ち込んでおりまして、米企業が非常に赤字に悩んでおるという国内事情もございまして、これ以上日本側に以遠権なりポイントを与えることはアメリカとして得策でないという判断から非常にかたい態度に終始した、これが今回決裂に至った原因だと考えております。
  162. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいま局長の御答弁の中にもありましたが、日米航空協定というのはきわめて不平等であり、また不均衡である、こういうふうに私たちも思いますけれども、この不平等あるいは不均衡という問題につきまして、アメリカ側はどのようにこれを認識しているのですか。
  163. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 アメリカ側は、現行の日米協定上不均衡は存在しないという立場をとっております。その理由といたしまして、現在の協定に基づいて日本企業とそれから米企業とが現実に日米間で運航しております。御指摘のように、アメリカは日本以遠の運航もいたしておるわけでございますが、アメリカ側の主張によりますと、日本側企業とアメリカ側企業の得ている収入にはほとんど差がない。また、アメリカ側の計算によりますと、これは私ども納得できない計算なんでございますが、むしろ日本側の方が若干多いというようなことを言っておりまして、したがって、現実に実現している運航の実態からいって、現在の日米間には不平等は存在しない、これがアメリカ側の立場でございます。
  164. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そういたしますと、アメリカ側はこの協定には不平等はないという認識に立って交渉に当たっている、こういうふうに解釈できると思います。  ところで、日本政府の方もこの日米航空協定の中身、確かに局長も、不平等であり不均衡があるというふうに御指摘がございましたけれども、中身そのものがきわめて不平等な規定になっていると私は思うのです。  重ねてお聞きしたいのですが、日本政府はそのことについてどう認識し、対応をしてこられたのか、また、今後どういうふうに対応をされようとしているのか、それについてお伺いをしたいと思います。
  165. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 私ども、現行の日米航空協定におきまして、先ほども申し上げましたとおり、乗り入れ地点の問題とそれから以遠権、この二つの点においてきわめて明瞭に不均衡が存在するというふうに考えております。したがいまして、一九七六年以来、私どもといたしましてはこの不均衡是正のための交渉を行ってまいりまして、残念ながら一九七八年までの三カ年かけた協議におきましては合意に達することができず、わずかにサイパン関係のごく小さな問題だけの暫定合意を見て終わった、こういうことでございます。しかし、アメリカ側としても、現行協定そのものを是認するということではなくて、さらに現行協定を改正しようという考え方が出てまいりまして、一九八〇年の秋から非公式の打診が始まり、そして昨年の一月から再び交渉が再開されたということでございますが、先ほど申しましたように、今回残念ながら合意に至らなかったわけでございます。  私どもといたしましては、今後もこれはかなり粘り強い交渉が必要だと思います。何とかこの現行の協定の不均衡の是正のために、今後も努力していきたいというふうに考えております。
  166. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 その不均衡の中身なんですけれども局長の御答弁によりますと、以遠権それから乗り入れ地点、こういうところに不均衡がある、これを是正していきたい、こういうふうにおっしゃっているのですけれども、私は協定そのものですね、そういうふうな具体的な以遠権の問題だとか、どういうところの地点をどうするかということよりも、協定そのものの成り立ちといいますか、そういうものがきわめて不平等になっているのではないか、その点をちょっと御指摘をしたいのです。アメリカにとりましては、この協定では無制限の権益を持っているわけです。ところが、日本側はきわめて制限つきの権益しか持っていない。  私は、外務省からいろいろな国との航空協定の条約集ですか、これをいただいておりますけれども、これを見てみますと、日米航空協定の中身とイギリスあるいはフランス、イタリア等他の国との協定とは中身が異なっている、条約の成り立ちそのものが異なっているというふうに私は思います。すなわち、いま申し上げました国々との協定ではギブ・アンド・テークになっておりますけれども、アメリカとの協定においてはそうなっていない。私は、具体的に言うならば、以遠権の問題あるいは乗り入れ地点をどうしていくかということが確かにあるのですけれども、まず出発点が、アメリカの方がずいぶん高いところから出発をしている。日本はずいぶんおくれているわけです。この差のあるところに、さらに以遠権の問題、乗り入れ地点の問題、こういうふうな具体的なことをやろうとしているわけです。具体的に言うならば、この条約の中の附表、とりわけ附表の中の(B)項ですね、ここのところを改定するようなことをやっていかなければ、本当の不平等や不均衡をなくすことができないのではないか、このように私は考えるのですけれども局長、いかがですか。
  167. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 御指摘のように、日米の航空協定は戦後の非常に早い時期に結ばれた協定でございまして、その当時の日本と米国との関係から、御指摘のような当初から非常に均衡のとれない協定にならざるを得なかったという歴史的な背景がございます。その他の国とは、その後次々と協定を結んでまいりましたが、確かにおっしゃるとおり、権益のバランスというものを十分考慮した協定の中身になっておると同時に、日米協定との非常に大きな差がございまして、日本と他の諸国との協定におきましては、あらかじめ両国間の輸送力を事前に取り決めをいたしまして、秩序ある競争をしていこうということがその協定に必ず盛り込まれているわけでございますが、残念ながら日米の協定にはその事前審査主義というものがとられておりません。その点がかなり大きな相違になっておるわけでございまして、御指摘のように、以遠権それから乗り入れ地点という点だけにとどまらないで、他の点についても、私どもといたしましては、今次交渉におきまして主張すべきところを主張したわけでございます。ただ、非常に不均衡の象徴的な存在になっております以遠権と乗り入れ地点の点について特に強調して、先ほど御答弁申し上げた次第でございます。
  168. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 さらに言いますならば、この協定そのものは、さきに言ったように、アメリカが無制限、日本は限定されているということがあるのです。ところが、その協定にないものまでアメリカは自由に、たとえば増便などをすることができるようになっています。他の国との間では、先ほど局長もおっしゃいましたけれども、増便などをする場合にはまず政府間で話し合う、しかも相手国の企業の利益あるいは需給の観点、そういうふうなものなども考慮して協議をし、合意の上で増便する、こういうふうな手続が踏まれているわけです。しかし、日本とアメリカとの場合はどうでしょうか。アメリカが増便したい、こういうふうに思いますと、日本との協議なしにアメリカがまず方針を決めてしまうわけです。そして、日本政府がそれを追認する、こういう形になっています。しかも、こういうことができるようになっているわけです。協定の枠内という言葉の中でできるわけですね。ここに問題があるのではないでしょうか。事後追認で、いかに日本の国内法、航空法に照らして手続ができたと言っても、まず出発点でアメリカの方針を追認せざるを得ない、そういうふうな形をとるような関係にこの協定がなっている。  まず、認めるかどうかについて日本政府とアメリカ政府との交渉が持たれるべきではないか、こういうふうに考えるのです。協定の中身そのものにも問題があるし、協定以外のことでも、アメリカがきわめて自由に振る舞えるというふうになっている、そこのところに大きな問題点があると私は考えますが、運輸省はどのようにお考えですか。
  169. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたとおり、日米の協定上、御指摘のように、輸送力を増加させるということについての事前に調整するやり方というものは決めておりません。したがって、事前のチェックなしにふやし得るというのが協定上の権利になっております。  ただ、先ほどちょっと申し上げましたサイパンのケースにつきましては、暫定取り決めではございますけれども、日米間におきましても事前調整方式を取り入れておるということでございますので、日米全般に事前調整がないということではございません。しかし、米本土と日本との間には事前調整方式というものはございません。著しく不当な増便を行った場合には事後協議ができるということにはなっておりますけれども、残念ながら事前の調整方式はとられておりません。  したがって、今度の交渉におきましても、この点が一つの非常に大きな争点でございまして、私どもといたしまして、でき得べくんば事前調整方式に持っていきたいと考えておりましたが、この点に関する米側の態度はきわめてかたいものがございます。そこで、私どもといたしましては、一歩前進の策をとらざるを得ないということで、事後の調整方式を実効あるものにするという提案をしたわけでございますが、残念ながら、この点についても米側は非常にかたい態度に終始したというのが実情でございます。
  170. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いま、事後の審査方式を実効あるものにしたいという検討をされたということですが、具体的にはどういうことになるのですか。
  171. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 私ども、アメリカと他の国との協定をずいぶん調査をいたしました。アメリカは、他の国に対しても大部分事後審査主義と申しますか、日本がとっておるような事前審査方式はとっていないわけでございます。ただ、特定の幾つかの国との協定におきまして、先ほど申しました実効ある事後審査方式と言い得るような協定を結んでおる例がございます。オーストラリアでございますとかその他の国がそうでございますけれども、これは要するに、双方が便数をふやす自由は持っているけれども、いわば増便をし過ぎた結果があらわれたときには、両国間が協議をすると同時に、その便数をそのまま凍結するというやり方でございまして、私どもも、本来でございますならば削減をするというのが当然のことかと思いますけれども、まずは一歩前進ということで、その凍結方式の導入ということをアメリカとの間でとったらいかがかと考えた次第でございます。  しかしながら、今度の交渉は、あらゆる争点を一つのパッケージとして解決しよう、こういうことでございましたので、この点はいいけれども、この点はだめということではなくて、一つのパッケージ案というものが合意に至らなかったということのために、その点についても未解決のままに終わった、こういうことでございます。
  172. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいま、事後審査方式を実効あるものにしたいということで再度お尋ねをいたしましたが、日本とアメリカとの間にあるような状態では、いまおっしゃったような、よその国とアメリカとの間に結ばれているきわめて友好的なというか、対等、平等の中での事後審査を実効あるものにするわけにはいかぬのではないでしょうか。私はそのように思います。  わが国の航空法を見てみますと、外国人国際航空運送事業者、これは運輸大臣の許可を受けて旅客または貨物を運送する事業を経営することができる、こういうふうにしております。そして、航空法施行規則の第二百三十二条一項の七「事業計画」では、「路線の起点、寄航地及び終点並びに当該路線の使用飛行場及びそれら相互間の距離」、それから「使用航空機の総数並びに各航空機の国籍、型式、貨客別積載能力、登録記号」云々、それから「運航回数及び発着日時」等、四項目にわたって事業計画を出させるように規定をしているわけです。  ですから、もしアメリカがいかに要求をしてこようとも、わが国の法律に照らし合わせて、都合が悪ければノーと言わなければいけないものです。ところが実際には、イエスにしろノーにしろ、事前に日本政府判断できない。たとえばフライング・タイガー社が日本乗り入れをした場合、それからパンナムが中部太平洋周航であったのを、さらに一コースふやして北部太平洋周航をやった場合、ノースウエストが北部太平洋周航であったのを中部太平洋周航にした、一コースずつふやしている。このときも、当時のニクソン大統領の意向によって強硬にこれをふやしていきたい、こういう中で、これらの三つの航空会社が新しく乗り入れを決めたりあるいは一コースをふやす、こういうようなことをやっております。これをやったためにさらに不均衡が拡大をした、そのために日本側としては次の交渉の要求をせざるを得なかった、第三次の改定交渉、こういうふうになっているわけです。  こういう具体的な事例を見ましても、いま日米の間に結ばれている航空協定では国内法が適用できないのではないか、こう考えるのですが、いかがですか。
  173. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 航空法上の手続は、アメリカ企業が増便をしたり事業計画を変更する場合には、必ず法律の規定に従って申請をしてもらうわけでございますけれども、その前に、御指摘のように日米の航空協定がございますので、私どもとしては、特段の支障がない限りそれは認めるということにせざるを得ない。  しかしながら、たとえば私どもの空港の使用条件等がございまして、先ほどもお話し申し上げました大阪につきましては、大阪空港の諸条件から便数を抑制いたしております。したがって、現実にもアメリカ側のコンチネンタル・ミクロネシア社から大阪乗り入れの要求が出ておりますが、私どもはそれは認めないという態度をとっておるわけでございまして、その点が今度の交渉で、先ほども申し上げましたアメリカ側としての、日本側の態度がおかしいという主張になってあらわれてきておるということでございますが、私どもといたしましては、空港条件等による制限というものは、日米間に不当な差別をした制限でない限り正当なものであると考えております。
  174. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 こういうふうに見てまいりますと、航空局長も認めていらっしゃるように、いよいよ営業開始するというときには国内法を適用させるということですけれども、その以前には、アメリカがふやしたいと言えば認めざるを得ない、ノーが言えないような状況にあるというのが不平等協定の本来持っている中身である、このように私は思います。  そういたしますと、先ほども局長の方から、今回の交渉が不調に終わったその一つの原因として大阪空港の使用制限ということがあるとおっしゃったのですが、このように不平等協定がありますと、航空機のもたらす空港周辺の環境に及ぼす公害から地域住民の健康や命を守る、こういう法的保障がないのではないか。確かにいま局長は、公害を規制するということで乗り入れを断っているというふうにおっしゃっておりますけれども、これもたとえば、あの大阪の現空港周辺の地域住民の人たちの大きな公害反対闘争があればこそ、運輸省もアメリカに対してそう言わざるを得ない、こういう状況ではないかと思うのです。これは、よその国が増便を申し入れてきているのと違って、日米航空協定の不平等で、しかも向こうが言ってきたら受けざるを得ないような協定のもとで、法的保障がない。重ねてこの問題について局長にお伺いしたいと思います。
  175. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたが、私どもは、空港の条件、これは環境条件もございますし、あるいは滑走路の長さでありますとか、そういう諸条件に照らしまして、相手国の申請を何でも認めるということではなしに、そこにおのずから制限を課するということは、先ほども申しましたように、ある国だけを差別的な取り扱いをするとかあるいは日本の企業に対して差別的な取り扱いをするということがあれば、これは非常に問題であろうかと思いますけれども、あくまでも平等な取り扱いである限りそれは当然許されるべきものと考えておりますが、アメリカ側は、それは協定上の権利を不当に制限するものである、アメリカ側の解釈はそういう解釈でございまして、したがって、この点は協定の解釈の相違ということになっております。アメリカ側は、あくまでもその点については権利であると言っております。しかしながら、アメリカといえども、現実の大阪空港なりその他の空港の情勢というものを知らないわけではございませんので、今回の交渉でも、大阪乗り入れができないならばかわりに代替空港への乗り入れを認めてほしい、こういう要求になってきておるわけでございまして、アメリカ側は当然の権利であるとは言いながらも、それをごり押しして、何が何でも入れるべきだという主張にはなっていないということでございます。
  176. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 確かにそういうふうに承りますと安心かなとも思うのですけれども、法的保障がないという場合には、いついかなる力関係の相違で変わってくるかもわからない、きわめて不安定な状況です。現に大阪空港周辺の人たちは、あの裁判に負けたということで、非常に不安感を持っているわけです。  そういう点でさらに私が申し上げたいのは、先ほど局長も、この協定は成り立ちそのものからアメリカの方にきわめて有利になっているということをお認めになりましたが、先ほども私が指摘いたしましたように、その成り立ちの根源のところからの交渉じゃなくて、積み上げていく方からの交渉をしておられるわけです。薬のコマーシャルではありませんけれども、発生源を絶たなければにおいは幾らでもぷんぷん出てくるわけです。この発生源を改定しない限り、このような不平等な関係は直すことができない。このような立場から、アメリカ政府に対して改定主張並びに交渉をすべきではないか、こういうふうに私は思うのですけれども大臣がいらっしゃいませんので、局長にお伺いいたしますけれども、その辺はいかがですか。
  177. 松井和治

    ○松井(和)政府委員 ただいま御質問の発生源を絶つような交渉という意味が、現行協定を廃棄した上で全く新しい協定を結ぶ交渉をすべきだという御趣旨かとも伺ったわけでございますが、私ども、確かにそういうやり方がないわけではないということも承知しております。また、他国がアメリカとの交渉におきまして、現に協定を廃棄した実例も幾つかあるわけでございますので、今後の検討すべき——検討すべきと申しますか、とるべき態度の一つではあろうかと思いますけれども、しかしながら今回の協議、昨年の一月から始まった協議におきまして、アメリカ側は不平等の存在は認めないと言いながらも、実は日本側に以遠権なりポイントを与えるという案をパッケージの案の中の一つとして出してきておるということも事実でございまして、これまで一年間に約八回の協議を通じまして、双方の立場もかなり明らかになってまいりましたし、これまで積み重ねてきましたこの交渉の結果を一切破棄してそれから出発をするということになりますと、やはりこれまでの積み重ねを全く無視するわけにはいかないわけでございますし、また廃棄した場合には、一年間は有効でございますが、その後は無協定状態になるわけでございますので、その辺の見きわめを十分つけないで軽和しく廃棄するということは、現段階ではとるべきではないのじゃないだろうかというふうに考えております。
  178. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私が申し上げましたのは、たとえば附表の(B)項あたりを改定するようなことの交渉もできるのではないか、こういうことも言っているわけですけれども、とにかく日米航空協定の中身は、ただ単に一つ航空会社がもうかるとかもうからないとか、そういうことではなくて、日本の国民の経済主権あるいは安全の問題というふうなものがこの航空協定で著しくゆがめられている、そういう問題は私たちとしてはどうしても黙視することはできないという観点で、本当に私が、においの発生源から改定するようにと言うそれは、国民全体の要求としてぜひとも今後の交渉に生かしていただきたい、これを御要望いたしまして、航空局に対する質問は終わらせていただきます。航空局の皆さん、どうも御苦労さまでございました。  次に、国鉄問題についてお伺いをいたします。  カラスの鳴かない日はあっても国鉄問題が新聞に載らない日はないというふうにまで言われておりますけれども、きのうきょうはまた一段と国鉄問題が新聞紙上をにぎにぎしく飾っております。  これは四月二十日の日本経済新聞ですが、一面トップに「国鉄再建政府・自民と臨調一致人員二十万台に削減秋に新改善計画 民営化でも歩み寄り」こういうふうに大きな見出しが載っております。これはもう国鉄の総裁を初め運輸省の皆さん読んでいらっしゃると思いますので、中身は省略させていただきますが、この記事の一番後の方に、「この日の協議には」臨調からどなたが出られた、自民党からどなたが出られたということが書いてありまして、最後に「運輸省関係者が出席した。」というふうに書いてあります。  さらに本日の新聞に、これはいよいよ臨調が改革案を固めたということで、これも日経新聞の一面トップに大きく載っております。「国鉄再建へ「行政委」臨調、改革案固める 債務処理は管理保全会社」という大きな見出しがついております。  ところが、その中に、「第四部会が一気に国鉄改革案の大筋を固めたのは、十九日の政府・自民党と臨調との協議で国鉄の経営形態に関し特殊会社化を経て分割・民営化する方向が確認されたため。」というふうになっているわけでございますが、運輸省はこの問題に対しまして、そのように合意をされたのですか。政府・自民党がというふうになっておりますから、政府が入っていらっしゃるんだろう、運輸省がお入りになっているんだろうと私は思うのですが、運輸省はこういう方向で承認をされましたのでしょうか、いかがですか。
  179. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 御指摘のように、新聞でいろいろと書かれております。十九日の月曜日に、自民党の先生と臨調の委員の方、それから臨調の事務局の方が会談をせられたというふうに聞いておりますが、いまお読みいただきました中に、運輸省が参加しておるというふうに書いてあるのは間違いでございまして、私どもは中に入っておりません。それから、いまいろいろと臨調の方でお考えの案につきましても、私どもの方は正式に相談にあずかっておりません。したがいまして、その辺の事情は何とも申し上げられない段階でございます。
  180. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 国鉄を預かっていらっしゃる運輸省が、その国鉄の行く末につきまして非常に大事な問題が発表されているにもかかわらず、これにはあずかっていらっしゃらない、こういうことですね。  そういたしますと、国鉄の財政再建について、巷間いろいろと言われております。また、臨調も民営・分割というふうなことを言っておられますけれども運輸省としては、国鉄の財政再建のために、いまの時点で一体どのような方向でお進みになるおつもりですか。
  181. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 臨調でいろいろな御検討がなされておる状況は知っておりますが、現時点運輸省がどうかというふうにお尋ねを受けました場合におきましては、やはり、現在運輸省が承認をし、国鉄さんが実行しております経営改善計画、もうこれしか現在のところは政府としまして確定した計画はないわけでございますから、これを速やかに確実に実施するということだけが、現在時点におきましてのわれわれの国鉄に対する指導理念でございます。
  182. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 では、ただいま出されている改善計画を着実に誠実に実行していく、これが運輸省の御方針のようでございますが、この経営改善計画を着実に誠実に実行されても、果たして国鉄再建が本当に展望を持てるのかどうか、非常に大きな問題をたくさん含んでおりますので、そのことで二、三御質問をしたいと思います。  まず、鉄建公団や本四公団に受けている国鉄の借料の問題についてお伺いしますが、上越新幹線、青函トンネル、本四架橋ですね、この鉄道部分に対する国鉄の借料は、それぞれ幾らになっておりますか。
  183. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 上越新幹線につきましては、ことしの十一月から開業をいたすことにしております。今年度の借料は、三百七十億円と見込んでございます。ただ、これは開業が十一月からということでございますので、来年度になりますと、四月からまる一年営業いたすということになりますので、それを見越しますと、大体一千億ぐらいの額にはなるのではなかろうかと思っております。  それから、青函トンネルでございますけれども、これにつきましては、まだ正確に幾らということが決まっておるわけではございませんけれども、私ども一つの試算によりますと、大体七百億円ぐらいになるのではなかろうかと思っております。  また、本四架橋につきましては、政令で国鉄の通行料を定めるようなことに決められておりますけれども、まだそれもできておりませんので、これまた確実に幾らということではございませんけれども、これも私どもの推定によりますと、おおむね五百億円ぐらいの通行料を支払うということになるのではないかと思っております。
  184. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そういたしますと、上越新幹線が約一千億、青函トンネルが約七百億、本四架橋が約五百億、こういうふうな借料が出てくるわけです。ところが、先ほど局長が、誠実に一生懸命やっていきたいとおっしゃいました、いわゆる経営改善計画の六十年度の収支見込みとの関係でこれを見てみますと、この六十年度までの計画の中には、いわゆる特定人件費の赤字七千七百億円、それから地方交通線の出します赤字二千二百億円、合計九千九百億円、この膨大な赤字を見込んでおられるわけです。ところが、いまお聞きいたしました国鉄は、まだよくわかりませんが試算をいたしますとというふうにおっしゃいましたけれども、とにかく二千億に近い借料が出てくるわけですね。これは全然経営改善計画の中に考えられていないのですよ。九千九百億の上にまだこれだけ積み上がるわけです。これは一体どうされるのですか。これの対策はどうされるのか、まず国鉄にお聞きをしたいと思います。
  185. 竹内哲夫

    ○竹内説明員 上越新幹線の借料につきましては、私ども、昭和六十年度でその分がおよそ一千億ぐらいになるのではないかということで考えておりまして、これは、いまお話のございました幹線、地方交通線・地方バス、それから特定人件費、これらのほかに、脚注のような形で、東北・上越新幹線の資本費負担ということでこれを掲げておるわけでございます。東北・上越新幹線につきましては、私ども、その輸送需要なりの線の素質から申しましても、東海道新幹線のように短期での収支均衡というのは、東海道ほどにはまいりませんけれども、一定の期間を置きますれば、これは資本費を含めまして回収可能だというふうに考えております。  青函トンネルと本四架橋につきましては、六十年度にはまだ完成してないだろうということでございますけれども、これにつきましては、私ども、国鉄の経営にとりまして、この借料なり通行料を従来の方式のようにそのまま支払うことのできるような経営状態ではないと考えておりますし、この点については、政府を初め関係個所につきまして、その取り扱い方については、国鉄の負担になりませんように強くお願いをしてまいりたいというふうに考えております。
  186. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 要するに、めどが立っていないということですね。それを監督していかれる運輸省はどういうふうな御見解ですか。
  187. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 上越の方は、長期に見まして、これは採算が成り立つというふうに私ども考えております。したがいまして、資本費等に対する助成につきましては比較的問題は少ない。しかし、いま竹内常務が申し上げましたように、青函トンネルと本四の問題につきましては、これはなかなか収支採算ベースに乗りがたい。長期的に見ましても採算に乗りがたいものであろうというふうに想定をいたしておるところでございます。  経営改善計画は一応六十年度を目標にいたしておりますが、ちょうど青函の開業時点、これが、取りつけ部分等をいまやっておりますが、果たして六十年度に開業が可能かどうか、その辺が非常に不確定でございましたので、経営改善計画上はこれを算定せずに横に置きまして、数字を除外いたしております。  それから本四につきましては、一応完成が昭和六十二年というふうに目標を立てておりますので、これも六十年度までの計算の中には入り得ない。  ただ、御指摘のように、経営改善計画六十年度以降の問題といたしましては、確かに資本費の重圧といたしましてこの借料が相当大きな問題になることは事実であろうかと思います。いま、これをどういうふうにするというふうに申し上げられる段階ではございませんが、国鉄再建という立場から、今後この問題を十分に検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  188. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いろいろお答えいただきましたが、局長も結局、やはりめどが立ってなくて何とかというふうな感じでございますので、先ほど経営改善計画を誠実にということですが、当然起こってくるべきこういうふうな赤字の問題について、完成がちょっと先になるだろうからこれは横に置いておいてとか、あるいは上越新幹線も多分うまくいくだろうと思いますというふうなことで、これだけ膨大な赤字を抱え国民的な問題になっている国鉄を再建させていく当事者としては、きわめて不適切な御見解ではないかと思います。  さらに、国鉄が鉄建公団に支払われる借料の中で、特定地方交通線に承認された線、乗車密度が四千人未満の線が四線あります。その中の鹿島線を除きまして、丸森線、岡多線、伊勢線は公団から借料があります。国鉄の方からいただきました資料によりまして計算をしてみますと、五十五年度実績で年間二十六億円、これだけの借料を払っているわけです。ところが、これらの線は、第一次廃止の選定に入っている線です。廃止された後も、だれかがこの借料を払っていかなければならないわけです。いまは赤字でも、走っていると少しでも収入がある。廃止してしまえば、収入は全くゼロになります。仮に第三セクターにしても、これは無償貸与ですから、だれかが負担しなければならない。一体こういうふうな借料の負担はだれがするようになっているのか。国鉄、いかがですか。     〔楢橋委員長代理退席、委員長着席〕
  189. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 先生おっしゃいました第一次選定の廃止路線の中で、いま四つとおっしゃいましたが、対象は当面は丸森線一線でございます。丸森線は、御承知のように有償線区ということで建設されたものでございますが、これを今後どう扱うかということにつきましては、すでにことしの二月十六日に対策議会が発足いたしまして、ここで今後いろいろと詰めていだたくということになっておるわけでございます。  ただいまの、従来の有償資金の金額をどうしたらいいかという問題でございますが、この協議会での検討におきまして二つの方向があろうかと思います。  一つは、もう鉄道をやめてしまう、バスに転換するということになった場合。これは鉄建公団が国鉄に貸し付けておるものを再び鉄建公団に戻してこれを財産処分をするか、あるいは鉄建公団から国鉄に譲渡いたしまして国鉄がこれを処分するか、いずれにいたしましても、廃止された場合におきましてはそれらの路線敷等を譲渡する、売ってしまうということが必要になってまいります。しかし、恐らくこの譲渡されるであろう金額と、いままでこのために投じました有償資金との差はどうしても出てくるわけでございます。これを一体どうしたらいいかという問題。  それから、もう一つ方向としましては、第三セクターで運営をするというような方向が仮に出た場合は、鉄建公団から国鉄へ貸し付けられたものを、さらに国鉄から第三セクターへ無償貸し付けされるということになるわけでございます。したがいまして、依然といたしまして従来投じました有償資金というものが残るわけでございますが、国鉄あるいは鉄建公団が有償資金の赤字をそのまま抱えるということは、やはり問題があろうかと思います。したがいまして、何らかの形でこれを回収する必要があろうというふうに思っておりますが、これをいま、たとえば国がお金を出すというふうにはっきりお答えするだけの検討ができておりません。これからその回収方法につきましては十分関係方面と検討をして結論を出したい、このように考えております。
  190. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 一昨年の国鉄再建法を討議いたしましたときに、当然赤字路線を廃止するということを皆さん方は強力に推し進められたわけでしょう。廃止すれば借りたものはどうなるかというのは、その時点からわかっていたわけですよ。そういうことのちゃんとしためどもつけないで、地方住民がローカル線の廃止反対だと言っているにもかかわらず、六十年には何とか収支均衡がうまく償えるようにいたしますというふうなことを言って、さてやってみると、第三セクターの場合でも困ったな、第三セクターでない場合でもこれをどうするかはっきり決まってない、こういうことで、赤字線を廃止するということだけであなた方は押し通してこられたわけですよ。いま民営・分割論なんというのが出てきています。こういうふうにきわめて当てのないことを国民に押しつけてくる、そういう無計画さの中でこういう論も出てくるのではないか。運賃を上げる、そして地方ローカル線のレールをはがしていく、国民にだけ負担を押しつけて、当然かかってくるべきそうした借料の問題には何のめども立たないで法案だけ通していくという態度は、本当に許せないと私は思います。  さらに、国民の立場からどうしても納得のいかない国鉄の出資問題があります。国鉄が現在関連会社に行っておられる出資は幾らになるでしょうか。
  191. 縄田國武

    ○縄田説明員 お答えいたします。  ただいま関連会社全部に約千二百億円出資いたしております。
  192. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それでは、国鉄が受け取っている配当金は幾らですか。
  193. 縄田國武

    ○縄田説明員 大変お恥ずかしいのでございますが、約三億円の配当でございます。
  194. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 これをパーセンテージに直しますと、わずか一・一%なんですね。私鉄と比べてもまことに異常と言わざるを得ません。この関連会社を見てみましても営利会社です。営利会社に出資をした場合に、適当な配当を適当に受け取る、これは当然ではないかと思うのですが、どうしてもこういうふうな非常識なことは考えられません。  さらに、その中に臨海鉄道、これは配当ゼロになっていますけれども、昭和五十五年度実績を見ますと、十三社中赤字は一社だけですよ。十二社は黒字。これだけの黒字を出しているところに出資をして、配当金をもらってない。物資別ターミナル、これを見ましても配当は三千六百万、一・三%に当たります。ところが、これも十二社のうちで赤字は二社だけです。あとはみんな黒字ではありませんか。そんなに国鉄は、もうかっている会社に出資をして配当をいただかなくてもいいほど裕福なのか。これはもうとんでもない話でしょう。財政再建がどうなるかわからぬ、身売りの話まで出ているような国鉄が、なぜそのような大名商売をやるのか、どうして適当な配当を受け取るようにしないのか、いかがですか。
  195. 縄田國武

    ○縄田説明員 実は、御承知かと存じますが、私どもの出資には二通りございまして、一つは、駅ビルとかあるいは土地を非常に高度に利用する、それからもう一つは、いまおっしゃいました臨海鉄道、物資別ターミナル、それから乗車券等の代売でございます、かわりに売る作業でございますが、本来私どもの業務を助けましたりあるいは貨物の収入を確保したり、貨物の量を確保したり、そういうようなことで二つのタイプに分かれておるわけでございます。おっしゃるとおり、確かに各社に督励いたしまして、これらの業績を上げ、配当を受けるのが本筋でございますが、土地の使用料金が六、七百億円まるまる入ってまいりますし、あるいは旅客の誘致、貨物の誘致等、そういう面で非常に寄与しておりまして、会社の経営についてはいろいろ管理監督あるいは営業活動についても私どもの方から注文をつけまして督促しておるわけでございますが、配当は先ほど申し上げました約三億弱という現状でございます。
  196. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それじゃ重ねてお伺いしますけれども、出資をしている会社の中でも鉄建公団、営団地下鉄、これは言っていだたくと時間がありませんから私の方で申し上げますけれども、これも配当金額は全くありませんね、ゼロになっていますね。この鉄建公団といいますと、まず第一に国鉄の赤字をつくっている機構そのものではないかというふうに思います。  それから、先ほど、なぜ配当を受けないのかという私の問いに対しまして、ちょっとわかったようなわからぬような御答弁ですが、多分公共性があるからだ、国鉄に役に立っているからだ、こういうことがおっしゃりたかったんだろうと思うのですけれども、しかし、公共性だとか役に立つということで言いますと、国鉄そのものが公共性というものを全くいま放棄しているんじゃないでしょうかね。運賃は値上げする、ローカル線は廃止する、中小貨物は切り捨てる、サービスは低下する、安全性対策はおくれている、こういうふうなことでは、国鉄の方がもっとそういうことに徹してもらわなくてはいけないのですけれども……。たとえば営団地下鉄、これは配当ゼロになっていますけれども、二千六百億円にも上る内部留保をため込んでいるのですよ。そのようなところに、しかも出資をするといいましても、あり余っている金を出資しているわけじゃありません、借金をして出資しているのでしょう。どうしてそういうふうな大名商売といいますか常識外れのことを国鉄が、いまのこの状況の中でそういうことを見直さないでなさるのか、なぜそういうものを改めていこうとしていないのか、どうなんですか。国民に納得のいくように御説明いただきたいと思います。
  197. 杉浦喬也

    ○杉浦政府委員 営団の地下鉄に対しましては、営団法によりまして東京都と国鉄が出資をするものとするというふうになっております。ここのところずうっと毎年十億ずつの出資を行っておるということでございます。  貧乏会社がほかの会社にまで出資できる身分であるかというような御指摘でございますが、営団の路線、特に東京の山手線の環状内とその外側を結ぶ営団の路線と国鉄線、国電の区間、これは輸送系絡といいますか鉄道輸送網という立場からいたしますと、非常に緊密な連係を持ったところでございます。まあ昔からいろんな歴史があって営団と国鉄とに分かれておるわけでございますが、東京都の都民の輸送の足の確保という意味におきましては、最近の総武・中央線あるいは常磐線と営団千代田線というような直通乗り入れ等の例に見られますように、都民の足の確保には、相互に連係いたしました大変重要な役割りを果たしておるというのは事実でございまして、国鉄といたしましても、営団の地下鉄に対して、出資という形によりましてその連係を深め、確実に首都圏の輸送の体制を推進するという意味合いをもって出資をしているというふうに私どもは考えておるところでございます。
  198. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私は、いま国鉄がお答えにならずに運輸省がお答えになりましたから、よけい言いたいのですけれども、営団には昭和五十五年に十億円を追加しているわけなんですよ。それは東京都民の足を守るために出資協力しているのだ、こういうことでしょうけれども、何も赤字の国鉄、もう財政再建でふうふう言っている国鉄が出資をしなくても、政府そのものがその辺については考えるようにしてもいいのじゃないですか。このようないいかげんな見方で再建ができるとか、六十年までに誠実にやっていく、それしかありませんとか、そういうふうないいかげんなことで本当に国鉄のこの赤字が脱却できるのかどうか。本当に国民が考えているほど運輸省や国鉄御当局が、御苦労していらっしゃるのは私も十二分に察しはしますけれども、本当に真剣に考えているのかなと……。金もないのがなぜ出資して、しかも配当も受け取らない。しかもまだ、金が余っているわけじゃないのに、さらに足りないうちから借金をして黒字のところに十億円も渡している。これは国民からいったって、どんな勘定したって合いませんから、こういうふうなところをきちんと点検をして見直していただく、こういうふうにしていただきたいと私は思います。  あと運賃の問題があったのですが、もう時間が参りましたのでちょっと質問ができなくなりましたが、私は高木総裁に質問するのは、連日御苦労さまで、大変お気の毒なような気もするのですけれども、私が先ほどからずっと質問をいたしましたこういうふうな問題、これは十二分に御検討いただきたい。私、再建法のときに高木さんに、この計画で本当に再建ができるのですか、この経営改善計画について詳細なことをもっと知らせてくだざいというふうに御注文したことがあると思うのですけれども、この状況ではとても国民としては見ておられないというふうな状況でございますが、最後に、私が国鉄問題に関して質問いたしましたそういうことも含めまして、総裁から御答弁を願いたいと思います。
  199. 高木文雄

    ○高木説明員 法律の御審議をいただきましたときにも申し上げたと存じますが、現在の国鉄の状況は、率直に申しまして破産のような状態でございました。そこで、残念ながら六十年度時点におきましても約一兆円の赤字がどうも残らざるを得ない。これは単年度でございます。それのうちで七千七百億円が特定人件費である。私どもとしては、とても再建という言葉にふさわしくはございませんけれども、しかし、幹線部分において六十年度の時点でどうにか収支とんとんにするような計画でございますということを申し上げたと存じます。  その計画がその後どうなっているかということでございますけれども、今日までのところは、いろいろ幾つかの変化が、前提条件の変化が起こってまいりましたけれども、なおかつ六十年度までに幹線を収支均衡させることに持っていくということは十分できると考えておりますし、そのための手だての一つである、人員を減らして人件費を減らしてという計画は、五十五年度、五十六年度二年度とも一応計画の線に乗ってやっております。  ただ、最近起こってきております問題は、一つは運賃の問題でございまして、運賃はそう高い水準に持っていくわけになかなかいきにくいということが一つと、それからもう一つは、貨物の輸送量が減ってまいりまして、当時考えておりましたよりも貨物収入が減ってきたということでございます。この二点については、当時考えておりましたものと若干の食い違いが出てきておりますので、今日ただいまこれに対する具体策をどうするかということを鋭意検討しておりますが、それを実行いたしますれば、六十年度までに収支均衡を幹線についてだけはできるようにいたしますというお約束は守り得ると思っております。ただ、その時点でも非常に問題になりましたのが東北・上越新幹線の資本費負担の問題が一つ。これはしかし、先ほど担当常務から御答弁申し上げましたように、六十年時点というのはちょうど上野開業の時期でございまして、資本費負担が非常に大きく響いてまいりますので、これは長い目で見てお許しいただきたいと考えております。  青函トンネルと本四架橋の問題は、私どもとしては非常に困った問題でございまして、これはお引き受けしても資本費を償うということはとてもできない、これはいわば永久にできないというふうに考えられますので、この対策は何とか政府で考えていただきたいということで、当時からも内内そういうふうに申し上げておりましたし、最近も政府にお願いをいたしておりますけれども、ちょうど臨時行政調査会ができ、行財政改革に取り組まれ、五十九年度で赤字国債を解消するというようなことになってまいりましたので、その問題についての取り組みをお願いはしておりますけれども、もうしばらくは様子を見てくれということを言われておって、私どもも弱っておるわけでございます。  それから、出資の問題につきましても、これはいろいろ問題があるわけでございますが、特に臨海鉄道、物資別ターミナル問題は、このごろは全くそういう式のものには出資をいたしておりませんが、四十年代に相当出資をしたわけでございますけれども、これはそもそも貨物の扱い量がだんだん減ってまいりましたので、そういう臨海鉄道会社、それから物資別会社の経営そのものが非常にきついことになってきておるようでございまして、私どもとしても、昔出資したものとはいえ、とにかく配当がもらえないということで、何とか少しずつでも立ち直らせる方法はないかということで日ごろ取り組んではおりますが、どうもこれまた貨物関係はうまくいかないということで、いまはっきり、どういう時点で配当をもらえるようになるだろうというところまではいってないわけでございます。  それから、営団の問題も非常に問題があるわけでございまして、私どももしょっちゅう気にしておるのでございますが、営団もだんだん累積赤字も減ってまいりました。ようやく累積赤字がほぼ消えるようになってきたので、もうしばらく待ってくれということを言われておるわけでございますが、これは向こうさんは少なくとも単年度では収支が償っておりますし、こっちは単年度でも収支が償っておりませんので、何とかお願いをしたい。先ほど鉄監局長がお話しのように、ともども手を相携えて東京の交通、通勤対策をやっておるという関係がございまして、ほかの私鉄のように余り競争関係にはないのでございますから、それはそれなりに考えながら、しかし配当は何とかしていただきたいものだということで、事実問題としては申し入れをしたりいろいろお願いをしておる次第でございます。  いずれにつきましても、再建計画そのものも、いま申しますように、それで単年度で全部が均衡するというような内容になっておりませんし、その後の状態もどうにか計画の線には乗っておりますけれども、決していい方に向いているという方向ではございません。御督励をいただきましたことを肝に銘じまして、ますます努力してまいりたいというふうに考えております。
  200. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 もうこれで終わらせていただきますけれども、運賃問題は、これ以上お上げになったらますます国鉄の客離れが起こりまして、それは総裁が考えていらっしゃるのとは逆の方向に参りますので、その点だけは最後に申し添えたいと思いますし、まだ竜華機関区の問題等がありますけれども、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  201. 越智伊平

  202. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 若干大枠的なお尋ねをしたいのでありますが、運輸省というところでやっておる仕事は、たとえば陸運であるとか海運であるとか航空であるとか、いろいろあるわけであります。しかし、いまその中でも特に交通全体の動きと運輸省がやっておるいろいろな任務、仕事、こういうものがほとんどになる。そういう中で交通全般のことに対しては、運輸省は一体どういう組織、どういういろいろなところとの組み合わせで対応しておるということになるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  203. 石月昭二

    石月政府委員 御承知のとおり、運輸省は陸海空にわたる交通機関を所管して運輸行政を推進しておるわけでございますが、現実の問題といたしまして、陸上輸送につきましては道路の建設は建設省が所管しております。道路上での運輸事業の許認可、監督ということは運輸省が所管しております。それから、道路上の交通規制というものは警察庁が所管しております。それから、鉄道輸送につきましては運輸省が専管しております。それから海上輸送につきましては、これは港湾建設、海上でのいろいろな運航の安全の確保、犯罪行為の取り締まり等も含めまして、運輸省が一貫して所掌しております。さらに、空港につきましても運輸省が所管をしておるという状況でございます。  なお、建設省、警察庁、各省にまたがる行政につきましては、お互いに密接な連絡調整をとりながら、行政の円滑化に資するように努力しておる次第でございます。
  204. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 密接な連携をとりながらやっておられる。ところが実際問題は、いま国鉄問題の論議が当委員会においても非常に長期、真剣に行われておる。国鉄のやり方にいろいろまずい点もあったのだろうと思います。しかし、長い目で見ました場合、国鉄がなぜ今日のような身動きのとれないような状況になったかということを考えますと、端的に言えば、道路の整備がどんどん進む、それと逆に国鉄が至るところで採算割れを来すという状況がひどくなってきたんだと私は思うのであります。  私は、そういう意味で、運輸省はいまお話しのようないろいろな分野にわたってやっておる、しかしわが国全体の交通というものを、交通運輸全般というものをどこかでもっとひとつぴしっとしたものをやっていかないと、ちょっとやそっとのことをやったくらいで今日の国鉄の直面しておるような問題をぴしっと解決していくということは、そう簡単にはまいらぬのじゃないかというように思うのであります。いま運輸省あるいは建設省、警察庁等々密接な連携をとりながらやっておるとおっしゃるのでありますが、それは起こっておる現象の処理、対症療法というものであって、わが国交通運輸全般を今後どのようにするかということは、一体どこで、だれが、どういう仕組みでやるということになるのでしょうか。
  205. 石月昭二

    石月政府委員 交通政策全般につきましては経済企画庁で総合調整をするというたてまえになっておりまして、経済企画庁長官が現在、総合交通主管大臣ということになっております。しかし、現実に、先生のお話の中にございましたように、私どもといたしましては、交通体系の形成というのはやはり利用者の選択、交通機関の特性というものを前提といたしましてそれを利用者がどのように選択するか、その選択に応じて交通体系が形成されるのが適正であると考えておりますので、これは基本論でございますけれども、そういう考え方で政策を進めてきている。  しかし、そうは申しましても現実の交通市場の場合には、たとえば大都市交通におきまして、利用者が選択するからといって自家用車で通勤するというわけにはまいりません。そういうような場合には、やはり大量公共交通機関というようなものにできるだけ誘導するような措置を講ずる。その場合に、鉄道を整備することもございますし、また警察庁にお願いしまして、バスについては優先通行レーンを設けるけれども自家用車については取り締まりをお願いするというような形での連携をとらしていただいているという意味で、先ほどのような御返答を申し上げた次第でございます。
  206. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 いまの経済企画庁長官は、わが国運輸交通全般のことを本当に総合調整しておるなどというふうに僕らも余り思っていない。一般の皆さんも、河本経済企画庁長官がわが国の運輸交通全般を本当に総合調整してぴしっとやっておるななどと認識している国民は、ほとんどいないのじゃないかと思うのです。形式はそうなっておるのかもしれませんけれども、機能しておるとは言えないのじゃないかと思うのですが、やはりちゃんと機能しておるのでしょうか。
  207. 石月昭二

    石月政府委員 「運輸に関する基本的な政策及び計画の総合調整に関すること。」ということが企画庁設置法の中にございまして、現実に、たとえば企画庁で立案いたします経済社会七カ年計画というようなものの中において、各交通施設整備量等を定めてそれの間の調整を図っていくというような形での調整はやっておるわけでございます。
  208. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そうすると審議官、さっきのお話でも、交通全般のことは運輸省と建設省とそれから警察庁、そう言われた。その後、それじゃそこでぴしっとなっておるかと言ったら、実は総合調整は経済企画庁です、こう言い直されました、設置法にもちゃんと書いてある。だけれども、何かいろいろな文章の中にちょっと書くくらいのことはやっておるかもしれませんが、本当にいま国鉄が直面しておる問題であるとか、わが国の道路全般が今後五年、十年、二十年という展望に立ってどういう状況になっていくか、これをほかのたとえば鉄道なら鉄道・航空なら航空との総合関係でどのように調整するかなんということを本当にやっておるなどというふうには、私はどうも残念ながら思わない。全部、たとえば鉄道なら鉄道、道路なら道路、航空なら航空という縦割りの縄張りの中でやられておって、外面の文章だけちょっと調整しておるにすぎないのじゃないかというふうに私は思います。国民のほとんども、恐らく国会の中でも、交通運輸全般の総合調整は河本経済企画庁長官がやっておるのだという認識をしておる人は、ほとんどおらないと思う。これを機能させるにはどうしたらいいのかということですね。ちょっとそこが私は疑問なんです。
  209. 石月昭二

    石月政府委員 交通体系の形成というのは、御承知のようにいろいろな交通機関がございますので、各交通機関がその特性を発揮いたしまして、全体としての効率的な交通体系を形成させる必要がある。その考え方といたしましては、やはり基本的には各交通機関の特性というものを前提として、急ぐ方は速いものをお使いになるというような形で利用者が選択する、その結果決まるというのが私どもの基本的な考え方でございます。  いま先生おっしゃいましたように、やはり交通機関には特性があるんだから、この分野では鉄道を使え、この分野では航空機を使え、この分野では自動車を使えというような、機関特性に基づきまして各利用の配分をやり、その配分に基づきまして投資量を決めて、その投資の間の調整をするというような考え方も考え方としてはあろうかと思います。しかしながら、現実には交通機関の技術進歩というものは各機関ごとに非常に違いますし、それからそれを選択される方の需要のサイドの変化というものも時々刻々と変わってきております。その他各交通機関の経営の能率というものもみんな違います。  そういうことを前提といたしますと、先生がお考えになっていらっしゃるのではないかという計画的調整というようなことについて、私ども決して否定するわけではございませんけれども、そういう調整というものにつきましては、なかなか国民的なコンセンサスを得られるような提示はできないのではないか、やはり基本的には各交通機関の特性を前提とした競争、その中での利用者の選択というものに頼らなければならぬのではないかというぐあいに考えている次第でございます。
  210. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そこで、国鉄のことで言えば、先ほどもお話に出ておりましたが、私は裏日本であります、今度の上越新幹線が通りますと大宮乗りかえで新潟、また乗りかえてさらにL特急が通っても二時間何ぼ、その先また乗りかえていかなければならぬ。それでもこの新幹線ができるということに私どもの、いままで日の当たらなかった地域にとっては大変な期待があります。  この新幹線、先ほどのお話ですと、上越の方は必ず黒字になるはずであります、こう言っておりました。私の認識では、残念ながらそう甘くはないという見方であります。山陽、東海道は、日本の人口の最も濃密な地域を走る新幹線であります。したがって、あれだけ濃密なダイヤグラムを組みましても大丈夫、利用者はいるわけであります。上越、東北はこれは過疎地帯なんであります。それでも私ども、やはりこの新幹線をやってもらわぬといけないのであります。なぜか。国土の均衡ある発展という政策課題を持っておるからであります。私の認識では、国鉄はいまぐうたらの標本になっておる、ぐうたらの象徴であります。しかし、この国鉄に、収支の関係は乗り越えて、国土の均衡ある発展という政策課題のために新幹線を持ち込んでいるわけでしょう。そうだとすると、私の認識では、ペイするかしないかは第二の問題として、本当はするようにいろいろ計画やその他はペーパープランでうまくやってもらったのでしょう。結果は、絶対にそう甘いものではない。しかし、私ども日本のこの国土の中に住んでおって、国土の均衡ある発展という、同じようにやはり利便を享受しなければならぬ、こういう立場から言えば、これはやってもらわなければいかぬのである。損得計算になると全く別の問題なんですね。こういう問題も全部、いま国鉄に押し込んでおるわけです。こういう観点などを——私の認識で、いまどこも全然、総合調整してぴしっとくくり上げていくという体系は、わが国政治の中にはないのではないかという気がする。河本経済企画庁長官が、そのあたりの総合調整をみんなぴしっとやっておりますよなんということを、国会議員だれ一人、確信を持ってまさにそのとおりなんと思っておる人はいないのではないでしょうか。
  211. 石月昭二

    石月政府委員 お話のように、国土の均衡ある発展というのは、交通政策が果たすべき重要なる課題であると私ども認識しているわけでございます。その場合に、どのような機関を使ってそういう均衡ある発展を図るべきであるかということが残ろうかと思います。やはり資源というものが無限でございますれば別でございますけれども、御承知のような非常に財政難の折からの中で、国土の均衡ある発展というものをどうやって効率的に図っていったらいいのかということが、われわれに課せられた課題ではないかと考えておる次第でございます。  その場合に、交通機関というのはいろいろ特性がございますので、たとえば先生が例にお挙げになりました新幹線、これは大量の輸送需要がある場合には非常に効率的な機関でございます。しかし、これは輸送需要の少ないときには、また非常に非効率な機関でございます。現実に先生がおっしゃいましたような裏日本の一部である、私も裏日本でございますけれども、そういうところにつきましては、高速交通体系の恩典に浴していない分野がございます。やはり、こういう浴していない方々につきましても、同じように高速交通体系の恩典に浴されて東京に日帰りができるというような交通体系というものは、われわれ運輸省として達成していかなければならぬ課題であると考えておるわけでございます。そういう意味で、輸送量の少ないところには航空機で、輸送量の多いところでは新幹線で、いずれにしろそういう高速交通体系というもので、一時間ぐらいで到達できるというような形で全国を覆っていきたい。そのために在来線の改良であるとか高速道路の整備であるとかというようなことを今後とも進めていきたいと考えておりまして、そういうことにつきましては運輸省でいろいろ考えて政策を進めているところでございます。
  212. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 いま私は、このことはもう一つだけ申し上げて終わりますけれども、国鉄のやり方は決して私はほめられないと思う。営業収支としてはペイしない。しないけれども、国土の均衡ある発展という政策目的のためにやらなければいかぬ。そうだとすれば、その分は営業収支とは別に政治が責任を持たなければならぬはずなんですよ。もちろん国鉄トータルの中では、政治は相当のいろいろなことをやっておるでしょう。ところが、いまはみんなが、国鉄はぐうたらの張本人になっておるけれども、そういう政治が相当いろいろな意味で国鉄に、収支のもうかるか損するかとは別に、求めておることは口をぬぐって余り言いませんね。国鉄のぐうたらなところはきちっとしなければいけない。  しかし、同時に、片一方の道路は、私は長年道路に非常に関心を持ってきましたが、ほとんど財政整備してきたわけです。道路がよくなるのと逆に国鉄はずるずるっと採算割れをしてきたのですよ。したがって、同時に国鉄も運輸省も、道路が建設省サイドでどんどんよくなって、いま国鉄はこのようになるぞという前提に立ってどういう立ち向かいをするかということは、そっちの方の責任は河本長官ということになるらしいのでありますけれども、どこでやるのか知らぬが、やはりぴしっとしたものを持たないといけなかったのではないか。そして、いまここまで来て、何度再建計画を出しても——私は十五年何カ月の間に、国会で何回だか国鉄の再建計画を拝見しました。一遍だって再建計画どおりになったためしがなくて、最近はだんだん、もうどうにもならぬ。先ほどの高木総裁の顔を見ていると、まあ気の毒で気の毒で、破産寸前と、こうみずから言わざるを得ない。  私は、そこでやはり交通運輸その他社会環境全体の状況の中で、ぴしっとしたくくり上げをするものがないといけないのではないか。いままで全部縄張りで来ておったと思うのですよ。縦の縄張りで来ておって、そんな総合調整など、私はやられていなかったと思う。今後も、私は今度臨調がどんなようなことを言ってくるのか知らぬけれども、いろいろなことが新聞に書かれております。したがって、それは、国鉄よ、おまえさん、ぐうたらだよということのほかに、運輸省は、これは設置法によれば、ちゃんと監督その他みんなやることになっておるのです。しかし、これは運輸省の領域だけで国鉄がうまくいくか、いかぬか、決められないのですよ。道路がよくなったら国鉄はどんどん食い込まれていくのですから。そういう全般のことでどうするかということをだれがやるのだといったら、これは河本さんだ。しかし、河本さん、そんなことで体を張ってやっているなということを、国会議員だれ一人、ちっとも知りませんな。私はそういう意味で、今後も、いまここまで来た国鉄でありますけれども、全体的なことをだれが責任を持ってぴしっとしていくのか、このものがないといけないのではないかと思うのです。私は、このことだけを申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので、次に、いま運輸省で持っていらっしゃる五カ年計画は、一つは港湾、一つ航空、もう一つは海岸保全、この三つだと承知しておりますが、そうですか。
  213. 石月昭二

    石月政府委員 そのとおりでございます。
  214. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そうすると、私はどうもこの長期計画というものをいろいろ拝見して、大蔵やなんかと縄張り主義で予算の関係をいろいろやるために、この五カ年計画というのは——これは運輸省だけでありませんよ、どこでもある。しかし、本来この長期計画というのは、この年次までにこれだけの現場状況をここまで整備するのですというものが前提で、あるのですよ。ところが実際は運輸省——私、決して責めるつもりはありませんよ。どこの省庁も長期計画というのはあるけれども、社会関係、いろいろな状況、物価が変わりました、何が変わりましたで、目標どおりいったことは一遍もないです。いま運輸省がお持ちになっておる三つの、もっとも一つはほかの省と並行したものでもありますけれども、これはやはりいま私が言ったような位置づけにあるというふうに思っていいか。いや、そうじゃない、運輸省のだけは違う、これはちゃんとこういう目標があって、五カ年計画でここまでちゃんといくというものだというふうに理解していいのかどうか。
  215. 石月昭二

    石月政府委員 五カ年計画を策定いたします場合には、将来のたとえば港湾でございましたら物流の量でございますとか、空港でございましたら旅客輸送需要でございますとか、そういういろいろな目標を定めまして、その場合に想定される輸送需要量というものがさばけるような形での施設の整備を行う。また同時に、各施設の整備というものがほかの交通体系との整合性がとれるように、港湾だけできても道路ができてないということでは困るわけでございますし、その辺につきましては、企画庁が総合調整をやって行うことは先般申し上げたとおりでございます。したがいまして、どの場所をいついつまでにどうするかというような具体的な目標は、五カ年全部にわたっては決まっておらないかもしれませんが、考え方といたしまして、どういう方向での整備をやるということにつきましては、きっちりと決めて整備を進めておる次第でございます。
  216. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 その中で航空の方の五カ年計画、いま審議官も、私も過疎地域の裏日本だ、こうおっしゃいましたが、交通の状況というのは、日本経済の状況から社会のあり方から、いろんなものまで全部左右するという状況になりつつある。そういう意味で、わが国全体の交通運輸、こういうトータルなものを、どこでだれがきちっと本当に掌握しておるのかということを、さっきから少ししつこく私はお尋ねをしたのでありますけれども、その中でさっき審議官は、新幹線のようなのは相当大量のお客さんを運ぶのに大変効率がいい、少数のお客さんを運ぶのにはまた大変に効率が悪い、こう言われました。私も全くそのとおりだと思います。したがって、わが国土全般の均衡ある発展、そういう観点から考えると、先ほど、過疎地域でしかも高速交通の中からは取り残されるような地域については、航空機関などを中心にしてわが国全般の均衡ある発展というものを考えていく、こういうふうに言われました。いま審議官のおっしゃるような、わが国の全般的なレイアウトというか、この新幹線で、このあたりは今度こういうふうに変わる、この東北新幹線で、このあたりまではこういう影響が出る、しかし、このあたりは、建設省の道路の計画その他から見ましてもこういうふうに落ち込んでいく、そういうようなことで、今後の交通全体のネットワークをどのようにするかということを全般的に、最終的に判断をされるところは、いまの政府組織の中ではどこになるのでしょうか。
  217. 石月昭二

    石月政府委員 私の答弁が非常にまずくて十分な御理解が得られないようでございますけれども、私ども運輸省におきましては官房企画部門、私のところで運輸省所管行政についての総合調整を行っております。  なお、先生からたびたび御指摘のございます道路の問題等につきましても、高速道路等につきましては、予定路線を決める段階から運輸省と建設省との間で調整ができるような仕組みが法律的にもできております。そういう観点で、私ども具体的な個所づけ等につきましても建設省から相談を受けているわけでございます。そういう形で、全体的に私どものところでは見ているわけでございます。そういう状況でございますけれども、その調整は十分であるかどうかという評価につきましては、またいろいろ評価の仕方があろうかと思いますけれども、一応そういう形で、私どものところでは総合的に見ておるということでございます。
  218. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そうしますと、道路に関する限りは建設省道路局、それから審議官のところで、わが国全体の道路及び高速道路のいろいろな基本的な枠組みは決まる、こういうことになりますか。
  219. 石月昭二

    石月政府委員 高速自動車国道につきましては、建設省から私どもは協議を受ける立場になっております。建設省で計画をつくりまして、それに対しまして私ども意見紹介してまいります。一般の道路につきましては、そのようなシステムはございません。
  220. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そうしますと、たとえば港の関係では、審議官の方の運輸省でほかの省庁といろいろ協議をしなければならぬところはどこになりますか。経済企画庁ですか。
  221. 石月昭二

    石月政府委員 港湾の関係につきましては、全体の投資量その他を決めますときには、港湾に限らず航空につきましても、先ほどから申し上げていますように、各交通機関間の施設の整備量の整合性というのがございますから企画庁と調整をいたしますけれども、一たん投資量を決めました場合には大体港湾局の方で話を進めております。ただ、取りつけ道路その他の問題につきましては、港湾区域外につきましては当然建設省と協議をするというような場面も出てこようかと思います、要望をするということでございましょうから。
  222. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 それから航空関係のことは、総投資枠は経済企画庁といろいろありますけれども、どうするかは運輸省の中だけということになりますか。
  223. 石月昭二

    石月政府委員 仰せのとおりでございます。運輸省の内部で決定をいたします。
  224. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そこで私が申し上げたいのは、運輸省が決定するときに、もちろん交通運輸全般のいろいろな流れ、そして歴史的な今後の展望なり過去からのいろいろなものなどを踏まえておやりになるのでありましょう。しかし、結果的には、いまここまで来てみますと、国鉄などはどうにもならぬところに来ておりますね。これは運輸省が国鉄を監督し、指導しという立場にあったと思うのです。しかし、国鉄はだめになってきた。何度再建計画を出してもうまくいかない。これは国鉄、運輸省の枠組みの中だけではどうにもならぬいまの時代の反映なんではないか。道路とのかかわりがあり、いろいろなものとのかかわりが全部出てきておる。そうすると、この総合交通体系というか総合的な交通運輸政策というものは、経済企画庁なんというところよりもむしろ運輸省なら運輸省が中心になって、わが国全体の交通問題については運輸省が全責任を持ちます、しかし必要なところは、建設省も道路を持っていますから入ってこい、あるいは総投資額や何かになると企画庁入ってこい、あるいは国土庁も何かの場合必要だから出てこい、警察庁もあれだよというぐあいになるとか——いまのところだと、経済企画庁が総合調整をするなどといってもどうにもならぬのじゃないでしょうか。そのいい例が私は国鉄じゃないかというふうに思うのですよ。状況がどんどん変わっていく、この変わっていく状況に対して一運輸省と国鉄だけでは対応できなかったんですよ、この縦割りの縄張りだけでは。ほかとの全部のかかわりの中で一体どうするのかということを、本当はいまになってからじゃなくて、もっと十五年も前からやっていなければならなかったんだろうと私は思う。その総合調整はどこでやるのかと思ったら、経済企画庁だと言うんですが、私はそれは全然機能していなかったと思う。それはやはり必要なんじゃないかと思うのですね。
  225. 石月昭二

    石月政府委員 各交通機関間の調整の必要性につきましては、私どもも全く同じ認識でございます。そういう意味で、従来から調整に努めてきておるところでございます。  しかしながら、確かに先生おっしゃるように、国鉄の経営が悪化いたしました一つの原因といたしましては、やはりモータリゼーションの進展、それによって国鉄が押されたということは御指摘のとおりでございますけれども、モータリゼーションの進展というのは世界的な情勢でございまして、各国におきましても国鉄というものは自動車の前にシェアを失ってきた。それはなぜか。要すれば、やはり自動車という便利な機関を国民が選択したからだったのだろうと思います。その選択に対してこたえていくというのは、交通政策としてはやむを得ないことではないのか。反面、国鉄というのは、そういう選択で国鉄のシェアなり役割りを果たせる範囲というのは確かに狭くなっておりますけれども、その中で国鉄というものがそういう経済社会の変化に対応いたしまして、自分の特性を発揮できる分野というものをおのずから求めていかなければならぬ。そこに経営の重点を集中してやっていくというようなことが、そういう対応が、国鉄は相当おくれておるのではないか。その辺が大きな原因ではないかと私どもは考えているわけでございまして、調整の必要を否定するつもりは毛頭ございませんけれども、そういう道路投資を抑制しなかったから国鉄がだめになったというような考え方は、ちょっと私どもはいただけないと思っている次第でございます。
  226. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 いや審議官、誤解してはいけません。私はいままで、国鉄の問題より道路の問題に一番力を入れてきました。したがって、道路がよくなったことが大変よかったと思っているのです。しかし、道路がよくなるときは相対的には国鉄が食われるという相関関係にあるのですよ。  したがって、それはいろいろなことはあっても、全体としてはどこかで総合調整をびしっと政治の責任でやられていなければならぬのだろうと思います。いまのところ、総合調整はあるようなないような、全部各省の縦割りの中で、実際上は投資の総枠だけを企画庁の方といろいろやり合うという程度のことで続けてきたという問題も——私は、交通運輸政策全般は運輸省責任を持たせい、おれの方で全部やるよ、したがって建設省も警察庁もどこも、みんなおれの方を中心にして寄ってこい、交通運輸政策はわが運輸省でやります、これならこれでいいと思うのです。いまのかっこうは、そんなびしっとできるような仕掛けはどこにもないでしょう。自然にいろいろ国民が選択して国鉄はだめになり、道路もあっちこっち詰まったり何かなっているのをいろいろやりながら、起こってくる現象に立ち向かっておるだけの話で、これをどこへどういうふうに持っていくかというそういう理想とかビジョンとか、そんなものは私はあるとは思えません。それをやるためにはどこかが中心になって、交通運輸全般にわたる総合調整をびしっとやって引っ張っていくような、これからの流れはここへ行くのだよということをびしっと出せるようなものが、運輸省なら運輸省が、交通運輸はおれの方に任せておけ、いろいろ関係のあるところはみんな出てこい、それでやらないといけないのじゃないかと思うのです。いままでと同じように縦の縄張りに立てこもっておったんじゃ、今日の国鉄のような状態が至るところにまた起こりかねない。  すでに地方の私鉄交通などは、いま大変厳しい状況にあります。バス会社は大変ですよ。それから同じように、ハイヤー会社とか何かも地方は大変なんです。運送会社なども大変なのがどんどん出てきている。したがって、全般的に総合調整、わが国の交通運輸はここへこのように行くのだ、そういうものをそれぞれみんな縄張りでやるのではなくて、いろいろなところもみんなかかわりますから、運輸省が中心でいくんなら運輸省が、各省みんなおれのところに従えというまとめ方できちっと持っていかないといけないんじゃないかと思うのです。いや、いままでのでいいんですと言うんならば、私は残念ながら行政というのはだめだなあと思わざるを得ないのです。それだけお聞きして、終わります。
  227. 石月昭二

    石月政府委員 現在の交通に関係する行政の各省の所管につきましては、いろいろの歴史的な沿革その他があるわけでございまして、それなりの合理性がある問題だと思います。しかしながら、先生がおっしゃるような行政の総合性ということにつきましては、われわれ今後とも意を用いていかなければならぬというぐあいに考えております。  それから、先ほどの先生のお話にございました道路と鉄道の調整というような問題につきましても、私ども、現在のような厳しい財政制約のもとで効率的な交通体系を形成するには、鉄道と道路というものは相互補完的なものでございますから、確かに一面では先生おっしゃるように競合する面もございます。しかし、道路というのはどちらかというと、現在の状態では、国民生活の必需物資を運ぶとか産業の必需物資を運ぶというような形で、物流の方に非常にウエートがございます。片方、鉄道の方はどちらかというと、パッセンジャー、旅客でございます。したがって、物流のニーズがあるところには鉄道のほかに道路も要るというのが現実の情勢でございますので、その辺、個別具体的に建設省の方とも相談をし、道路を敷くならば鉄道の培養効果があるようなところを優先して敷くというような形で、相互補完的な交通体系の形成というようなことにこれから意を用いてまいりたいと思っている次第でございます。
  228. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 終わります。
  229. 越智伊平

    越智委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会