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1982-03-30 第96回国会 衆議院 運輸委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月三十日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 越智 伊平君    理事 加藤 六月君 理事 三枝 三郎君    理事 楢橋  進君 理事 宮崎 茂一君    理事 福岡 義登君 理事 吉原 米治君    理事 草野  威君 理事 中村 正雄君      小此木彦三郎君    久間 章生君       小山 長規君    関谷 勝嗣君       近岡理一郎君    浜野  剛君       林  大幹君    三塚  博君       山村新治郎君    井岡 大治君       伊賀 定盛君    小林 恒人君       関  晴正君    浅井 美幸君       小渕 正義君    四ツ谷光子君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 小坂徳三郎君  出席政府委員         運輸省海運局長 永井  浩君         運輸省船舶局長 野口  節君         運輸省船員局長 鈴木  登君         海上保安庁次長 勝目久二郎君  委員外出席者         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ————————————— 三月二十六日  道路運送車両法の一部を改正する法律案内閣  提出第七三号) 同月二十九日  脊髄損傷者に対する運輸行政改善に関する請願  (小川国彦紹介)(第一六九六号)  同(小杉隆紹介)(第一七六二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  船員法及び船舶職員法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七〇号)  船員災害防止協会等に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第七一号)      ————◇—————
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  内閣提出船員法及び船舶職員法の一部を改正する法律案及び船員災害防止協会等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。関晴正君。
  3. 関晴正

    関委員 今度の法案提出するに当たって、運輸大臣お尋ねをしたい、私はこう思うわけです。  船員法及び船舶職員法の一部を改正する法律案のことでございますが、この法案といわゆるSTCW条約、このSTCW条約と今度出されました法案との関連と申しましょうか、この条約批准するためにこの法案を出すということにしたと思うのですけれども、この法案がなければ、批准ということにおいてどのような支障がまた生ずるのか、その辺のことが少しお尋ねをしたいわけなんでありまして、まず大臣に、この条約批准のこととこの法案関係、そのことについてひとつ先に伺っておきたいと思います。
  4. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  一九七八年に、STCW条約船員訓練及び資格証明並びに当直基準に関する国際条約と申しますけれども、この条約が成立いたしました。この条約につきましては、わが国政府も最初から非常に積極的に参加いたしまして、賛成投票の一票を投じております。この条約と申しますのは、もともと昭和四十二年にトリーキャニオン号という、二十万トンタンカーでございますけれども、それが英仏海峡で事故を起こしまして、そのうち十万トンの油が流れまして、英仏海岸を大きく汚染するというふうな事故がございました。その事故契機に、何とかしてこういう海難事故防止すると同時に、海洋汚染事故を防ごうということからこの条約が採択されたわけでございます。  わが国の方は、もう先生方御存じのとおりに、非常に先進海運国でありまして、船員制度それから船員教育制度というのはかなり進んでおりますけれども、やはりこういう条約他国に先駆けて批准することによりまして、海難事故防止あるいは海洋汚染を防ごうという先進海運国としての一つの責務として早急にこの条約批准しようということになりまして、今国会に批准案件が別途、外務委員会の方に提案されている次第でございますけれども、われわれの方も、その批准に相応して船員法船舶職員法改正いたしまして、そういう国際的な動きに率先して参加しようというような趣旨で、今回批准及び法律改正ということに立ち至ったわけでございます。
  5. 関晴正

    関委員 条約とこの法案との中で、言うなれば第何条と第何条は条約にかかわる部面でございます、言うならば条約にかかわる法律条項、この条項だけひとつ示してください。
  6. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 条約船員法体系との関連あるいは船舶職員法体系との関連ということにつきまして、簡単に御説明申し上げます。  条約の第三条というところで、まず、その条約がどういう船に対して適用されるかということを書いてございます。それに伴いまして、私ども船舶職員法の方も、いままでいわゆる配乗国主義といいまして採用しておったわけでありますけれども、今後旗国主義を採用しようということで第二条を改正してございます。  それから、条約の第十条に監督規定というものがありまして、これは外国船に対しても入港国監督できるという規定がございます。その規定を採用いたしますために、船員法では、百一条及び百二十条の二を改正し、それから船舶職員法につきましては、二十二条の二それから二十九条の三を改正いたしまして、そういう条約趣旨をここに取り入れたわけでございます。  以上が条約の本文でございますけれども、そのほかに、条約附属書というのがたくさんございまして、まず第一に、いま申し上げました外国船に対する監督方法をさらに附属書の方で細かく書いておるのが附属書の第一−四規則というのがございます。その第一−四規則につきまして、先ほど申しましたように、船員法及び船舶職員法も同時に改正しております。  それから、これはちょっと基本的な問題でありますけれども、第二−一規則というのがございまして、そこでは、甲板部当直に当たり遵守すべき基本事項というようなものを決めております。それにつきまして、これは実は、わが国におきましては当直のやり方というのは慣習法的にずっと昔からやっております。法律には特に規定しておりませんけれども、やはり条約がそういうことを規定しておりますので、今回船員法の十四条の四を改正いたしまして、そこに、そういう条約に書いてあることの関連条文を挿入するということでございます。  それから、条約の第二−二規則、これは甲板部につきましての船長一等航海士資格、どういう資格が要るかという資格証明でありますけれども、それに平仄を合わせまして、船舶職員法四条五条、十八条、二十一条という規定改正いたしまして、船長及び一等航海士等海技資格を取るために必要な要件というものを幾らか修正いたしました。  それから、次は第二−三規則でありますけれども、これも小型船船長甲板部担当職員規定であります。  第二−四規則は、二百トン以上の甲板部当直を担当する職員のそういう資格に関する規則。  以上、二−四までが、一応いま申し上げましたように甲板部職員資格を決めておりますが、それを四、五、十八、二十一条によりまして取り入れた。  それから次は、これはちょっと重要な改正でありますけれども、二−五規則というのがございまして、これはいわゆる海技免状有効期間というふうにわれわれ呼んでおりますけれども条約では、甲板部職員につきまして、「技能の維持及び最新の知識の習得」を図るための措置を五年ごとにチェックせいということになっておりますので、これは職員法の七条の二の改正をいたします。従来、日本船舶職員に対する海技免状は、一度発給いたしますと終身有効であったわけですけれども、やはり船員技能知識を維持するために、条約に従いまして海技免状を五年の有効期間にしようということにした次第でございます。  それから、二−六、二−七、二−八規則、これは主に部員の要件及び港における当直、それから危険物船舶に対する当直基準を定めておりますが、それに対しまして船員法の方を改正いたしまして、具体的には百十七条の二、十四条の四あるいは六十一条を改正いたしまして、特定の場合には停泊中であっても航海当直をやるようにというふうな規定を設けたわけでございます。  以上は甲板部に対する規定でありますけれども、それと同じことが第三章の規則の中で機関部につきましてもずっと決められておりまして、いま私が船員法及び船舶職員法で申し上げたと同じことが、その機関部について修正されております。  それから、条約の第四章が無線部に関する規定でありまして、これにつきましても、いま申し上げましたような免状更新制とか、あるいは船舶通信士資格証明のための要件とかいうことが、このSTCW条約の第四章に規定されておりますけれども船舶職員法四条五条、十四条、七条の二の辺を改正いたしまして、その条約を取り入れた。  それから、条約の第五章はタンカーに対する特別な要件であります。先ほど申しましたように、トリーキャニオン号という大事故契機に、これはタンカーでありますけれども、この条約が成立いたしましたので、この条約タンカーに対する規制を普通の船よりも厳しく取り扱っております。したがいまして、第五章にタンカーに関する特別の要件を決めておりますが、船員法につきまして、百十七条の三という規定を新たに設けまして、そこにプラスアルファのタンカー乗組員要件を決めたような次第でございます。  それから最後に、条約の第六章というのがありまして、これは救命艇手、要するにサーバイバルといいますか、事故のときにも船員死亡事故を少なくするための規定でありますけれども、これを条約が詳しく規定しておりますので、私どもの方も百十八条の救命艇手条約をさらに一部改正いたしまして詳しくする、これは省令を中心にやりたいと思っておりますが、そういうふうな点で条約法律との平仄合わせをやってございます。
  7. 関晴正

    関委員 STCW条約とそれに関連するところのいまの船員法船舶職員法改正部面については、これはよくわかります。また、それは急いで結構なことだと思います。  だが、わが国の今日の海運の姿、特に他国からも非難をされている便宜置籍船あるいは仕組み船、いずれが正しい呼び方か別としても、こういうようなものが横行しておって、これがまた至るところに障害を発生させているわけなのですが、こうした便宜置籍船に対して、あるいはまたいわゆるマルシップと言われる日本船について、この部面についてのあるべき姿、あるいはまた監督のメスを入れる、こういうことになりますと、今度の法律によってそれがなし得るものなのか。その法律のあるなしにかかわらず、従前でもなすべきことはしてきているものなのかどうか、しようとしてもされないものなのかどうか、この点ひとつ伺っておきます。
  8. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 便宜置籍船それからマルシップといいまするものは、御存じのとおりに便宜置籍船といいますのは、これは日本の船ではございませんで、実質的には日本船社が支配している船でありますけれども、形式上は外国に置籍しまして、外国人船員が乗っておるという船を便宜置籍船と通称言っておりますし、それからマルシップといいますものは、日本の船籍があり、日本の旗を立てておるけれども外国に裸で貸しまして、外国船社外国人を配乗させて動かしておるという船をマルシップと通称しております。この船につきましては、実は船員法船舶職員法の適用がちょっと違いまして、便宜置籍船は全部外国船ですので、船舶職員法船員法関係ございませんけれどもマルシップにつきましては、船員法の方は適用するけれども船舶職員法の方は適用しないということに現在のところ、なってございます。  ただ、マルシップにつきましても、それから便宜置籍船につきましても、国際海運というのは非常な激しい国際競争の中にさらされておりまして、非常に低賃金あるいは低資格開発途上国発展途上国の船とも競争していかなければいかぬという非常に厳しい状況にさらされておるのが海運の状態でございます。そういう点にかんがみまして、やむにやまれぬ措置として、そういうマルシップ制度とかあるいは便宜置籍船制度が自然発生的に発生してきたものだろうと思います。  ところが、われわれは、便宜置籍船につきましては、これはもともと外国船でございますのでやむを得ないわけでありますけれどもマルシップにつきましては、もともとは日本籍の船でございますので、できるだけこれに対していろいろと行政指導をしていこうというふうに考えまして、先ほど申しましたように、船員法は完全に適用しておりますけれども船舶職員法は適用していない。適用していないけれども外国に対する貸し出しの許可をいたします際に、いろいろと私どもの方でできるだけ、非常に質のいい日本人船員を乗っけて安全を図るようにという行政指導をしている次第でございます。  今回の法律を適用いたしますと、先ほど申しましたように、条約では、すべて加盟国旗国主義の採用を強制しておりますので、今後船舶職員法改正いたしまして、そういう船につきましても船舶職員法を適用させるための措置をとるようにとしておりますけれども、私どもは、そういうマルシップに対しても船舶職員法を適用していくことによって、マルシップの航行の安全を今後、従来以上に図れるものだというふうに考えております。
  9. 関晴正

    関委員 わが国の管轄すると申しましょうか、関連すると申しましょうか、そういう意味マルシップ便宜置籍船というのはどのぐらいありますか。
  10. 永井浩

    永井政府委員 まず、その前にわが国商船隊の規模でございますけれども昭和五十六年度の年央でおよそ二千四百隻、六千二百万総トンございます。このうち外国の船を日本船会社が雇っている、いわゆる外国用船が千二百隻、二千七百万総トンございます。この外国用船の中で、いわゆる便宜置籍船あるいは仕組み船というものがあるわけでございますが、この的確な数字を把握することは非常に困難でございます。ただ、大手の中核六社の仕組み船につきましては、大体百八十隻、五百万総トン程度あると考えられております。  なお、マルシップでございますが、マルシップにつきましては、日本の船を外国に貸す場合には許可が要るわけでございまして、裸用船、つまり船員を乗せないで船体だけを外国に貸すという許可の件数が、二千トン以上でございますと、やはり五十六年の年央で約三百隻ございます。そのほとんどが恐らくマルシップであろう、このように推定されるわけでございます。
  11. 関晴正

    関委員 いまの、便宜置籍船の方は何隻ですか。
  12. 永井浩

    永井政府委員 便宜置籍船そのものを把握するのは困難でございますが、その大部分が便宜置籍船と思われます仕組み船のうち、中核六社がやっておりますのは百八十隻、五百万総トン、こういうことでございます。
  13. 関晴正

    関委員 私の聞いているのはそういう中核六社のことではなくて、便宜置籍船と呼ばれあるいは仕組み船と言われるものが海運界には何隻くらいあるのかということを聞いているのです。わずか百八十隻そこらというようなものじゃないでしょう。その実態は掌握していませんか。
  14. 永井浩

    永井政府委員 便宜置籍船あるいは仕組み船というものの実態は非常にむずかしゅうございまして、これを正確に把握することは困難でございますので、いま申し上げました中核六社についてはわりあい正確な数字を把握しております。あと推定でございますが、先ほど申し上げました外国用船千二百隻、二千七百万総トンのほぼ三分の一ないし半分ぐらいが仕組み船ではないか、このように推定されます。
  15. 関晴正

    関委員 いま世界から、この便宜置籍船あるいは仕組み船あるいはマルシップと言われるような存在、こういうようなものはやめていただきたい、排除していただきたい、排除すべしという国際的な意思が出ているわけなんです。そういう観点からいけば、私ども日本海運においてこの便宜置籍船がどのくらいあるかとか、あるいは仕組み船はどの程度になっているかなんという実態がわからないということでは話にならないと思う。せっかく大事な訓練の問題や資格の問題あるいは当直の問題についての条約をいまここでやろう、その条約とまた関連があるわけなんです。  特に私がこの問題を聞きたいと思うのは、大臣、ここを聞いていただきたいと思う。大臣の提案の説明の中にも、国際競争力をつけなければならぬからこの法案を出すのだ、こう言っているわけなんです。その際、わが国海運力というものの国際競争力を弱いと見ているのか低いと見ているのか。絶対に高いでしょう。絶対に高いにもかかわらず、国際競争力を考えてこの法案を出すに至ったんだということが出てくるわけです。この場合の国際競争というのは、おしなべてどこの国との国際競争を指しているのか、それとも自分の国の中の会社競争を指してでもいるのか、あるいはまた対象に便宜置籍船マルシップというようなものを考えての競争力のことなのか、理解に苦しむ点があるわけなんで、そういう点から、この法案を出すに至った国際競争力をつけなければならないという意味、どこに追われようとしているのか、どこに負けようとしているのか、どこの国の脅威があってそうしなければならないと考えるというのか、この辺がわからないわけです。船腹の量においても海運の実績においても、しかも世界国々の中でも、一から十二までの中でわが国が半分以上を占めている。そういう姿を見ますときに、国際競争力を高めるためにというこの言葉がぴんとこない。ひとつこの点について大臣の考えておることがあるならば示していただきたいし、大臣就任早々でよくわからぬというならば、具体的なことは後の方でもよろしゅうございますが、少なくとも大臣法案提出に当たって大きな柱なんです。一つの柱は条約の件、一つの柱は国際競争力にかかわる件なんです。そういう点についてひとつお答えをいただきます。
  16. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 日本船費と申しますか運賃その他の面におきまして、特に最近アジアの国々あるいはまた中東の国々に対しまして日本運賃が非常に割り高にならざるを得ない事情がございます。そうしたようなことでありますので、わが方としましては極力その合理化を技術的な面から図って、無理のないところで落ちつげていくということが現在の一貫した政策でございますが、そうした意味においても、今回の条約批准並びに法改正がきわめて重要であるというふうに考えておるのでございます。  特に相手国の名前を私、つまびらかにいま全部を挙げるわけにもまいりませんので、詳細につきましては局長からお答えさせます。
  17. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 今回の法律改正理由は二つありまして、一つSTCW条約批准に伴う改正、もう一つ国際競争力強化に伴う改正でございます。  先生は、国際競争力強化中心に御発言になられまして、大臣はそれについてお答え申し上げたわけでありますけれども国際競争力改善というのは一つ表現方法でありまして、私どもは、近代化のための法律改正という表現を使ってございます。  近代化というのはどういうことかといいますと、いま大臣からお答えのありましたとおりに、東南アジア、特に韓国、香港あるいはフィリピン、ギリシャ、そういう方面の国際海運が非常に伸びてまいりまして、しかも、そういうところの船費日本船費よりもずっと格安だということから日本船が非常に込みやられておるというようなことで、それに対して対抗力をつけなければいけないというのがいま御質問国際競争力強化の問題でございます。  ただ、私ども近代化と言いますのは、単に国際競争力強化だけじゃなくて、船員地位をもっと向上せなければいかぬじゃないか。昔は船員地位というのはもっと高かったのだろうと私は思います。ところが最近、これは私的な見解かもしれませんが、徐々に低まってきて、社会的な評価は昔ほど高くないのじゃないかと思います。それを今回何らかもう一度既往に復すると申しますか、船員地位をもっと高めなければいかぬじゃないかという意味船員制度近代化の中に入っておりまして、まあ二兎を追うと言うかもしれませんけれども国際競争力強化とそういう船員地位の向上を同時にひとつやってみようじゃないかというのが今回の法改正趣旨でございます。
  18. 関晴正

    関委員 私は、余り船のことはわからないけれども、あなた方の提案していることも、またわからない。われわれの常識からいけばですよ。  こう書いていますよ。「日本船国際競争力の低下が昭和四十年代の後半から顕著になってきましたが、わが国外航海運は、これに対処するため、船舶における技術革新を推進する一方、外国用船への依存傾向を強めてきました。しかし、外国用船への依存傾向がこのまま進みますと、日本人船員の雇用の場がますます縮小するのみならず、わが国経済的安全保障上の要請にも対応できなくなるおそれがあり、いまや、日本船国際競争力の回復が緊急の課題となっております。」近代的な諸国間において、日本のように海運のよく進んでいるところ、また競争力だって、これらの国々に比較してきちんと備えているところはないのじゃないか。日本競争力が低下しているのですか。低下しているというならば、そういう点を具体的に示してください。どこが低下しているのです。  それから、最近の各国の船の建造に当たって、またその建造された船に配乗されている職員の数等について、比較してどうですか。他国の方が日本よりも定員が下回ってきたというのですか。追われてきたというのですか。どうなのですか。
  19. 永井浩

    永井政府委員 第一のお尋ねの、日本船国際競争力がどのように低下しているのかという点でございますけれども、これは日本に出入りいたします貨物日本船による積み取り比率がどうなっているかということでわかるのではないかと思いますので、数字を申し上げますと、昭和三十六年度に日本から輸出いたしました貨物日本船が運んでいる量は五三%でございます。それが、五十五年度では二〇・三%に減っている。その分は外国船が積んで輸出している、こういうことでございます。輸入につきましても同様でございまして、三十六年度に日本船が四〇・五%を運んで日本に物資を入れておりましたが、五十五年度には三七・四%に減っているということで、これは主として、運賃の安い外国船に荷物をとられている、こういう現状でございます。
  20. 関晴正

    関委員 私の聞いていることに答えてないです。私の聞いているのは、国際競争力に呼応してわが国も考えなければならない、こう言っているわけなのです。では、その国際競争力について比較した場合、同じ船をつくっているならば、他国の船の方が、日本が乗せている船員よりも少なく乗せてきているのかということなのです。八〇年、八一年につくられている大型近代船、装備の誇れる近代船ですね。イギリスにおいてもあるいはまたアメリカにおいても、それらの近代船における乗員の数というものは、国際競争力日本に迫っていますか、そこを聞いているのです。
  21. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 船員の数、それから船員の給与についての国際比較の御質問だろうと存じます。  まず、船員の数につきましては、最近のコンテナ船あたりを例にとってみますと、日本在来船は大体三十名余り乗ってございます。それから、日本の超近代船といいますか、私どもいわゆるMO船と呼んでおりますけれども、そういうMO船は二十五、六名乗ってございます。それに対しまして、東南アジア、いわゆる韓国とかフィリピン、いま私ども競争にさらされている相手国の船は三十五、六名乗っています。これは航路によりまして、船によりまして非常にばらつきがございますので、二、三名の上下はございますけれども、そういう状況でございます。  それに対しまして、船員費の方は、これも調査は非常にむずかしゅうございまして、人によっては十分の一ぐらいの給与という場合もございますけれども調査対象によって非常に違いますので確たる数字は申し上げにくいのでありますけれども、通常言われておりますのは約三分の一ぐらいの給与だ、日本船員を一といたしますと、韓国あるいは東南アジア船員の給与は三分の一ぐらいじゃなかろうかと言われております。  そういたしますと、給与が三分の一に対しまして、船員の数が三分の一であれば、国際競争力上はとんとんだということになるわけでありますけれども、先ほど申しましたように、乗組員の数は、向こうの三十五、六名に対しまして、私ども日本の方は現在、要するに一番少数精鋭で乗っております船でも二十四、五名ということになっておりますので、まだ半分にも達しておりません。そういう意味から、国際競争力上そういう開発途上国発展途上国の船には対抗できないという意味でございます。
  22. 関晴正

    関委員 先ほどのお答えの中で、便宜置籍船外国船として扱ってお話しになっているのじゃないですか。どうです。
  23. 永井浩

    永井政府委員 先ほど申し上げました日本商船隊の中の外国用船の中に便宜置籍船を入れております。
  24. 関晴正

    関委員 とにかく今度のこの法案提出に当たっては、STCW条約にかかわる部面については私はよくわかる。だがしかし、二段目の、国際競争力をつけるために次の法律改正をするのだというこの理念については、いささかわかりかねる向きがあるわけです。  それで、いま一番言われている問題は、船員の皆さん方の一番の心配点は何か、こういうことになりますと、近代化という名のもとに合理化されるのじゃないだろうか。本当に施設の近代化なら結構ですよ。科学とともに進んでいく近代化、これは当然のことです。だがしかし、いま言われているような近代化の方向というものは合理化であり、乗っている諸君たちの首切りになるのじゃないか、こういう点が一つおそれられているわけです。しかも、近代装備をする特定の船においてこれはやるのだ、こう言っておるのですが、その特定船が一般船にも及んでくるような気配が出てくるのじゃないだろうか、そういう傾向が生じてくるのじゃないだろうかというのも心配の中にあるようです。  そういう点から、この近代化というものの考え方、そうしてこの考え方の与えている影響、それからそれに不信を持つ諸君たちに対して、どのような説得、あるいは指導、あるいは意見表明といいますか、そういう点についてどの程度までなされておりますか。
  25. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  先ほど先生のお読みになられたところは、提案理由の中の最初の部分だろうと存じますけれども、その次のところに私ども、「船員制度近代化は、このような日本海運の置かれた環境を踏まえ、かつ、近年の船舶技術革新にも対応して、わが国船員が快適な労働環境のもとでそのすぐれた技能を十分に活用し、意欲的に職務を遂行することができる新しい職務体制を確立するとともに、これにより、日本人船員が運航する日本船舶が国際海運界において比重を増し、日本人船員の職域が確保される条件を整備すること」が目的なんだということをここに書いてございます。  確かに、近代化合理化じゃないか、あるいは首切りじゃないかという意見もいろいろございました。そのためにこういう問題が議論されたのは、約十二年前に、あるいは、さらに四十四年ごろにMO船が最初に出てきたころからの問題点でございます。いままでいろいろそういう議論をしながら、あるいは官公労使の間で検討しながらなかなか進めなかったという点も、いま先生の御指摘の点がやはり一つの問題点としてひっかかっておったせいだろうと私は理解しております。ただ、十二年あるいは十数年間議論しました過程で、先ほど申しましたような日本国際競争力がどんどん落っこちてくる、このままほうっておきますと日本船がそのうちに、現在は四八%ぐらいが外国用船比率でありますけれども外国用船比率が五〇%を超え、六〇%を超えということで、どんどん外国用船がふえてくるのじゃないか、そうしますと、結局、日本人の乗る船がなくなってくるのじゃないか、これは日本船員にとってもゆゆしい問題でありますし、もう一つは、先ほど先生が御指摘のとおりに、日本国家の存続という点につきましても、国民の非常に重要物資を運んでいるのが海運でありますから、そういう点で非常にゆゆしい問題だということで、やはり官公労使の間で、これをこのままにしておいたら大変な問題だということで、五十二年以来船員制度近代化調査委員会あるいは五十四年度以来船員制度近代化委員会というものをつくりまして、官公労使一体となってこの問題を進めてきたわけでございます。  そして、一隻当たりの乗組員の数がたとえ幾らか減りましても、それによって国際競争力を回復できればそういう日本船がふえるだろう、そしてまた、用船比率もどんどん落っこちて、十年ぐらい前は日本の用船比率は一六%だったわけでありますけれども、それくらいの率にまた戻し得るのじゃないか、またわれわれはそれを目指して戻さなければいけないということで、この点につきましては、海運造船合理化審議会の方でも、日本船をこれからどんどんふやしていこうということが答申されておりますし、それに応じて船員サイドでも、労働側も、使用者側も、公益側もあるいは官側も一緒になってこの問題は議論してきたわけでございます。そうすることが、また日本船員の数もふやすし、先ほど申しましたように、日本船員自体も非常にプライドを持って、船を動かす技術というのは、従来のように甲板の仕事しかしない、機関の仕事しかしないというのじゃなくて、甲板の仕事も機関の仕事も、あるいは将来はさらに通信の仕事も、すべての仕事をできるような、非常に高級技術なんだということにすることによって、社会的な評価といいますか、船員という職場を見る社会の目も非常に変わってくるようなものをねらおうということで、官公労使が一致してこの五年間やってきた問題でございます。  それは、いろいろと個人的な意見の差はあると思いますけれども、私どもは、前回あるいは前々回の全日本海員組合の大会でも非常な問題としてこの点が議論されまして、大会の御承認を得たと聞いておりますし、現在こういうふうに近代化法案提出できたのも、そういう船員側の、一〇〇%とは言いかねるかもしれませんけれども、少なくとも大多数の方の御了承を得たがゆえに、こういうふうな法案を上程できたものだというふうに理解してございます。
  26. 関晴正

    関委員 簡潔にお答えいただきたいのですが、この近代化の方向が、言うなれば近代装備を施した特定船と申しましょうか、それに限ってのことであって、一般船にはそうしたことは考えていないんだ、この区分だけは明確にしておかなければならぬのじゃないだろうか、こう思うのです。そうでないと、この近代化の波というものは、近代化の方針というものはとめどもなく広がっていくようなことになってしまって、いま批准しようとする条約の精神にもまた反してくるのじゃないか、条約規定にも違反してくることになるのじゃないだろうか、こう思うわけで、その点はひとつきちんとお答えいただきたいと思います。
  27. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  いま御指摘の近代化、それから要するに新しい船員制度を適用する船といいますのは、実は過去五十四年から、非常に近代化されました特定の船を実験船として使いまして、その船で、乗組員の数が減りましても船舶の運航上安全かどうか、それから船員の労働上過重にならないかどうか、その辺を十二分に実験し、検証してきたところでございます。その結果、こういう法案をやってもいいじゃないかということになったわけでございます。そういう趣旨からいたしますと、従来の在来船、全然そういう新しい設備を持っていない船にまで、こういう先生御指摘の制度を拡充するということはやはり行き過ぎだと思います。したがいまして、法律の中でも特に運輸大臣が指定いたしまして、その指定した船についてだけこういう新しい運航士の制度あるいは運航員の制度というものを採用していこう、船員制度近代化船としてそういうものにのみ適用していこうという態度で、法律改正をしてございます。
  28. 関晴正

    関委員 それなら、その点は明確に方針として堅持されることでしょうが、その際、海員組合においては安全性を第一とした、言うなれば近代化の七原則というものを示されてきていると思うのです。この七原則というのは、一つは安全の確保であり、二つは雇用の保証であり、三つは労働条件の向上であり、四つは船員としてのやりがいであり、五つは教育と訓練であり、六つは船員地位向上であり、七つは生活環境の向上。この近代化に取り組むに当たっての全日海が提言したところの七原則はどのように生きていますか、またどのように吟味されていましたか。
  29. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 全日本海員組合の基本方針として、先生御存じのとおりに、近代化を進めていく際の七原則として、いま御指摘の安全問題あるいは労働条件の改善問題あるいは教育問題等々指摘されてございます。この点につきましては、私ども近代化委員会の席で、その七原則をいわば近代化委員会の原則的なものと考えまして、十二分にいままで対処してございますし、今後とも、いま申し上げましたような点につきましては十二分の配慮をし、それに対応した一つ行政指導を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  30. 関晴正

    関委員 船員法の第七十条には、「総トン数七百トン以上の船舶に乗り組む甲板部の部員で航海当直をすべき職務を有する者の定員は、六人以上としなければならない。」というふうにして定員の定めがあるのです。甲板部の部員については定員の定めがあるんだけれども機関部の部員についてはどうして定員の定めがないのですか。これはこの後するつもりですか、お伺いいたします。
  31. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  甲板部につきましてはいろいろと、甲板部当直というのは非常に類型的に決めやすいというふうな状況にございますので、甲板部当直は六名ということで船員法七十条に規定してございますけれども機関部につきましては、機関の種類とか大きさとか、あるいは船の種類その他もろもろの条件によって非常に変わりやすいものでございますので、なかなかそれが一律に規定できないというような意味もありまして、具体的な数字は書いてございません。ただ、船舶所有者は、それぞれの航路の状況とか船の状況とかあるいはエンジンの状況とか、そういうことによりましてそれぞれ独自に定員を決めて、それを就業規則に明示し、その就業規則を船内にはっきり明示しておくようにということになってございますので、私どもは、労務官を立入検査させたりそういうことによりまして、その就業規則どおりの機関部の人間を乗っけておるかどうかということをチェックしておるような次第でございます。
  32. 関晴正

    関委員 七十条の適用を受けない七百トン未満の船舶の定員は、総数でどのくらいになっているのですか。二百トンクラスのところではまた何名になっていますか。その基準はどのように定められておりますか。実態基準についてお答えください。
  33. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 七百トン未満の船につきましては、二百トンを限度といたしまして、二百トン以上の方は大体四名の職員、それから二百トン未満は二名の職員、すなわち船長と機関長が乗船してございます。これは、現在は船舶職員法の別表によって決められておるところでございます。  ただ、部員につきましては、それぞれ船舶によりましてかなり差がございます。これはやはりそれぞれ労働協約に基づきまして、一船別に労働組合とそれから船舶所有者との間で決められておりますので、しかも航行する区域あるいは場所、非常に危険なところを通るのか、あるいは非常に安全な港内ばかりのようなところを通っているのか、どういう荷物を積んでいるか、どういう港に着くのか、あるいはオーバーナイトするのかどうか、そういうことによりまして、種々その船の事情が違いますので、部員につきましてはそれぞれ船舶所有者と労働組合との間で決めた数字が乗っておりまして、私どもの方ではちょっと具体的に総合計として理解することはできないような状況でございます。
  34. 関晴正

    関委員 こういうような船についても、乗るべき定数を定めるべきじゃないですか。任せ過ぎるということは適当でないんじゃないですか。基準は当然示されてしかるべきじゃないですか。
  35. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 いま御説明申し上げましたように、職員につきましては定員をちゃんと決めておるわけでございますけれども、部員につきましては、非常にそれぞれ本当に千差万別でございまして、航行する区域も千差万別、荷物も千差万別、それから大きさも千差万別ということでございますので、非常に一律に法律あるいは規則で決めることはむずかしゅうございます。したがいまして、私ども、労働協約によって使用者側と労働者側とで十分話し合って乗せるようにということで指導しているような次第でございます。
  36. 関晴正

    関委員 いままで配乗数の定めは法律でやっておったのですね。配乗定員については、配乗別表が法律であったものが今度は政令に落とされる、こうなるのですが、今度の法律を見ますというと、この政令に落とされる面、政令にゆだねられる面について、政令とあったり、命令とあったり、省令とあったり、非常に判読しがたいと申しましょうか、理解しがたいものがある、こう思うのです。命令で定めるとか、あるいは省令で、あるいは政令で、この部面が少し混同されているんじゃないだろうか、こう思いますし、あるいはまた行政命令の命令が同じ文面の中にも出ているわけです。  そういう点からいきますと、この命令というのは、政令もしくは省令にそう定めた方がいいんじゃないだろうか、こう思うし、いままで法律で定めていたものを政令に落とすなんというのは適当じゃないのじゃないか、こう思うのですが、言うなれば、民主的な運営、近代的な運営ということになると法律の方がいいんじゃないですか。どうして法律から政令に落とさなければならぬのか。そこにも、そんなことをするというと監視の目が届かなくなって、また適当ならざる措置が生じてくるんじゃないだろうか、こう心配もしているわけであります。そういう点についてひとつ整理をしたらどうかということと、格下げと言えば言葉は悪いが、そうせぬで、現行よりも下がるようなことはしない方がいいんじゃないだろうか、こう思いますので、その点についてのお考え等お答えをいただきたいと思います。
  37. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 いままで法律で決めておったものを政令に落とすというのはおかしいじゃないかという御指摘だと存じますけれども、いま御指摘の点は、船舶職員法の政令の配乗別表、現在法律の別表一から五まで決めております配乗別表のことだと存じます。  実は、配乗別表は現在は船舶職員法の別表で決められておりますけれども、もともとはこれは非常に技術的なものでございまして、何トン以上の船に、あるいはどういう種類の船は、どういう職員をどういう形で、何人くらい乗せなければいかぬという非常に技術的なものでございまして、これは国際的にもほとんどそういう法律じゃなくて、政府の命令的なもので決めておるのが一般でございます。  それからまた、現在の日本の法体系におきましても、最近の法律はこういう問題はすべて政令あるいは省令で決めておるのが普通でありまして、この機会にそういう一般的な慣例に従おうということと、それからもう一つは、先ほどから御説明しておりますように、船員制度近代化というのは、現在も船員制度近代化委員会でいろいろ御検討をお願いしておりますけれども、まだ変わる可能性が非常に多い。しかも、きわめて技術的な面で変わる可能性が非常に多い。そういう点で、そういう船員制度近代化の進捗に、新しい実験結果が出ればまた新しいそういう配乗体制を組んでいかなければいかぬという、そういう臨機応変な措置がとれるようにという趣旨で、今回政令にゆだねるようにお願いしているわけでありまして、決してそういう民主的な制度を無視しようというような姿勢はございません。特にこの政令の改廃に際しましては、いま申しましたような公労使の意見を十二分に尊重するつもりでございますし、また閣議決定という措置もございますので、そういう民主的な制度は今後とも、政令に落としましても維持できると思います。  それから、法律の中で命令と書いてあったりあるいは省令と書いてあったり政令と書いてあったりいろいろということでございますけれども、これは各法律によりまして、そういうふうに運輸省令ということを明示しておりましたり命令と書いてあるというようなこともございまして、これは従来からのそういう慣習的な一つ平仄合わせということでございますので、特にそういう点ではそれぞれの場合によってうまく公正な処理ができるものと存じております。
  38. 関晴正

    関委員 船員労務官の任務の問題についてお尋ねしておきたいと思います。  船員労務官というのが今後は非常に重要な任務を受け持ってくるだろうと、こう私は思います。特に、外国船監督に当たってそのことが負担とされてくるだろうと、こう思うのです。そこで、船員労務官という任務にある人の人員はふやさなければならないんじゃないか、充実されなきゃならぬのじゃないだろうか、こういうことと、外国船舶の監督に当たっては、海上保安部が担当している部面と今度は共同しておやりになる、こういうお考えのようであります。  いま現実にパナマのアカデミー・スター号が座礁しておる。この座礁に当たって、運輸省としては何か実態調査をされていますか。あるいはまた、海上保安部に任せておるというならば、海上保安部でも結構です、いま法律ができておればこういう場合にはこうされたのにというお感じでもお持ちになっておりますか。それらを含めてお答えいただきたいと思います。
  39. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 いま先生御指摘の石炭船の事故の点につきましては、別途海上保安庁の方からお答えがあると思いますけれども、私ども船員労務官につきましては、現在全国で百二十六名の船員労務官を主要な港に配置してございます。できるだけこの数をふやしていかなければいかぬということで、五十七年度も二名の増員がやっと認められまして、五十七年度以降やっと百二十八名になるわけでございます。そのほかにまた、海上保安庁法十五条によりまして、海上保安官にもこの船員法あるいは船舶職員法の監査権限が付与されてございますので、海上保安官と共同していろいろとそういう船舶の安全問題、運航問題について十二分に監督してまいりたいと思っております。
  40. 勝目久二郎

    ○勝目政府委員 二つお答えいたしたいと思います。海上保安官の外国船舶への立入検査の問題、それから現在起こっておりますアカデミー・スター号の海難の二点についてお答えいたします。  まず、海上保安官の外国船舶への立入検査の件でございます。  これは、海上保安庁法第十七条第一項の規定に基づきまして、法令の励行を図るため、船舶に立入検査をすることができるということに相なっております。平均で申し上げますと、毎年約六千隻ぐらいの外国船舶につきまして立入検査を実施しておるわけでございます。船員労務官等が実施をされる立入検査につきましても、私どもも十分御連絡を受け、できるところは可能な限りの協力をしたいというように考えている次第でございます。  それから、アカデミー・スター号の海難の状況でございます。  三月十九日、貨物船アカデミー・スター号、総トン数三万三千四百四十二トン、乗組員三十一名が、石炭をほぼ満載いたしまして、ロサンゼルスから水島港向けに航行中、三月十九日午前三時ごろ、千葉県の野島崎の南東二百十海里の付近におきまして、船体に亀裂が発生をいたしました。四番船倉と五番船倉に浸水をし、船体が約十五度傾斜し、救助を求めてきたわけでございます。  当庁は、直ちに巡視船と航空機を出動させまして、同日の午前十時二十七分ごろ航空機が、午後零時三十分ごろ巡視船が該船と邂逅いたしまして、さらに特殊救難隊員を午後二時五十五分該船に派遣をいたし、浸水状況調査いたしましたところ、全船倉に相当の浸水があるということが判明をいたしました。また、当時低気圧が接近しておりましたので、同日の午後十時十八分、該船の乗組員全員を巡視船に収容したわけでございます。  一方、船主から依頼を受けました日本サルヴェージの曳船が二十日の午前十時ごろ、また同日の午後十時ごろ、相次いで到着したわけでございます。海上強風警報の発令下のしけでございまして、船体を救助するという作業がきわめて困難でございました。該船はそのまま北へ漂流を続けまして、二十一日の午前五時三十分ごろから船体の沈下が進み陸岸へ接近をいたしまして、同日の午前八時四十一分ごろ、千葉県の千倉海岸の沖合いに乗り上げたということになっております。
  41. 関晴正

    関委員 いまのような事態が発生した場合に、この法律が今度はできますというと、運輸省として直ちに取り組む、この法律がないために運輸省としては何の用もできない、こうなっていますか。
  42. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 今回の法律を適用いたしますと、外国人でもわが国の領海内で事故を起こしたときには、その船の当直体制が正しかったかどうか、あるいは適正な船舶職員を乗っけておったかどうかという点につきまして、今度船員労務官が立入検査をいたしまして、そして、それに違反しておりますときには出航停止を命じるというような措置が講じられるようになりました。したがいまして、従来以上にそういう点で、危険な外国船に対しては適正な指導ができるというふうに存じております。
  43. 関晴正

    関委員 この外国船監督の問題で船員労務官が担当するということになりますと、いろいろと範囲が広くなること、それから資質の問題も考えなければならなくなってくるだろう。たとえば外国人に当たるわけですから、また外国語にも通じておらないとこの任務を遂行できなくなるであろう、こうも言われておるようであります。そういう点からいきますと、今度条約批准する、外国船舶に対する監督強化されていく、そうなりますというと、いまの姿のままではとてもこなせないのではないか、批准はいいけれども消化することがむずかしくなるんじゃないか、こういうことが心配されます。そういう点からいきますと、いま二人ふやしたといったところで、二人ふやして間に合うようなものでもないと思いますし、何らかの方法を別個に考えるというようなこともないものか。代行機関にでもゆだねるとか代行機関を設置するとか、そういうことでも考えてみたらどうかとも思うのですが、その点が一つ。  もう一つは、違反があった場合の命令をする場合、百一条の件です。船舶所有者に命令を発する、その次には船員に対して命令を発する、こうあるのですが、これは船長に対しては何も発しないのですか。むしろ船長に対して発すべきものとするのが妥当ではないだろうか、こう思うのですけれども、その点はどうお考えになられたのでしょうか。
  44. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  まず、最初の御質問船員労務官の点でございます。  実は、昭和三十九年に船員労務官の任命に関する訓令というものを決めまして、いままで事務官と併任させておりましたのを、船員労務官は専任制にいたしまして、しかも、学校教育法による高等学校、大学を卒業して、かつ船員の労働条件だとか船員の保護に関する事務を一定年数以上経験した、非常に有経験者の中からでなくては選任してはいけないという規定に変えたような次第でございます。したがいまして、三十九年以前と比べますと、船員労務官の資質というのはかなり向上しておるとわれわれ思っております。  ところが、いま先生御指摘のように、これからは外国船に対して立入検査をしなければいけませんので、特に要求されるのはやはり御指摘のとおりに英語の能力だと思います。実はこの点、私どもも非常に心配して気を使っておりまして、現在いろいろ御審議いただいております五十七年度予算でも、そのための英語の講習を強化しようということから講習費用を要求させていただいておりまして、それが認めてもらえますれば、われわれ、労務官に対する英語の能力向上ということをかなり積極的にやってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  それから第二番目の御質問の、百一条の一項で違反が事実あると認めるときは、船舶所有者または船員に対して、その違反の是正をするために必要な措置をとれということを命じておる。それで、船長ということですけれども、この船員というのはわれわれ、船長というふうに理解しておりまして、船長に対してこの命令を発するということになると存じます。
  45. 関晴正

    関委員 それならば、船員というのを船長と直したらいかがですか。
  46. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  いまのその点は非常に技術的な問題でございまして、船には必ずしも船長がおるわけではございません。船長事故で死亡するとかいうようなときには船長がおりませんで、一等航海士がかわりになると思いますけれども、そういうようなことを前提にこういう船員という表現を使ったようなわけでございます。
  47. 関晴正

    関委員 ただいまのお答えは少し乱暴じゃないかと思いますし、これについてはまた後で触れることにします。いまのところの時間は、私もこれで終わらなければなりませんから、あとの続きは、またこの次の時間に言わせていただきます。  では、小林さんと交代します。
  48. 越智伊平

    越智委員長 小林恒人君。
  49. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 同僚議員の質問に引き続いて、冒頭、大臣にちょっとお伺いをしておきたいのであります。  船員法及び船舶職員法の一部を改正する最大の要素は、一つ船員の資質の向上ということがうたわれており、もう一つの要素としては、国際的なSTCW条約批准に伴う国内法の整備、こういったことが表題に掲げられているわけであります。     〔委員長退席、楢橋委員長代理着席〕  そこで、このSTCW条約の中で大きな課題の一つとして旗国主義ということがうたわれているわけでありますが、旗国主義という問題、決して緩和をすることなく厳重にこれを実施していくという角度で法律そのものが提案をされているわけですが、ここらにかかわって大臣の所見をまず冒頭にお伺いをしておきたいと思います。
  50. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先ほども関委員から御質問がございましたが、マルシップその他にも大いに適用してまいりたいということでございます。
  51. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 この旗国主義を厳格に遵守するということ、加えて船員の資質の向上を図っていくということ、こういった部面にかかわっては、従来から運輸省の船員労務官、こういった者がその任務に携わってきたわけであります。先ほども関委員の方から御指摘がありましたように、船員法百二十条の二、船員災害防止法による権限の強化あるいは要員の増員、さらに機動力の強化、こういった部分について考え方が一体あるのだろうか、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  52. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  おっしゃるとおりに、今度STCW条約批准をやりますと、あるいはもう一つ法律船員災害の防止強化をやりますと、船員労務官という職務は従来以上に増して重要な責務を負うことになりますし、従来以上に責任を持って職務を遂行しなきゃいかぬことになると存じます。したがいまして、先ほどもお答えいたしましたとおりに、私どもは、現在百二十六名の船員労務官を主要な港に配置してございます。ただ、その中では、二人労務官を原則としておりますけれども、まだ一人しか配置してないような支局もございますので、今後徐々にそういう点を充実してまいりまして、原則は二人以上、必ず一つの支局には二人以上の労務官が配置するような二人体制というものをとっていきたいというふうに考えております。そのために、五十七年度におきましても二名の増員を予算上お願いいたしておる次第でございます。  そのほか、労務官につきましては、われわれ、いろいろとこれから重要な仕事に従事しなきゃいけませんので、その選任の際には十分に注意し、選任しました後はまた法律の教育、特に英語を中心とします教育の充実というものを図ってまいって、この法律の施行の万全を期したいというふうに考えてございます。
  53. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 二十九条の三関連でも明確に示されているのですけれども、本邦の港にある日本船舶以外の船舶であって運輸省令で定めるものについては次のような監督を行うことができる、こういった角度から検査項目もそれなりに出てくるわけでございまして、加えて、こういったものに問題がある場合は、船舶の航行の停止あるいは航行を差しとめることができることになっているわけであります。  ここまでの仕事をするのに、全国主要な港に百二十八名の要員で一体、船の場合も昼夜を問わず入港、出港があるのだと思うのですけれども、十二分な体制が確立できると御判断なんでしょうか。
  54. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 船員労務官は百二十六名、五十七年度から百二十八名でありますけれども、海上保安官が全国の港に非常にたくさん配置されてございますので、海上保安官と協力しながら、あるいは御支援を得ながら、万全を期していきたいと思っております。  また、新しい職務をやるにつきまして、船員労務官がいままで以上の外国船を立入検査したりしなければいかぬから労働過重になるのじゃないかというような点につきましても、私ども、現在職員といろいろとこの点につきましては話し合いをしておるところでございまして、職員自身は、より新しい覚悟でそういう新しい職務についてくれることを表明してくれているような次第でございます。
  55. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 多少の教育を施し、あるいはよって来る条件の整備をすることによって、総合的な日本海運総体の資質の向上という分野で改めて法律の一部を改正する、こういった基本的な姿勢については一定の理解をしないわけでありません。  ただ、資質の向上、充実、強化ということになりますると、たとえば、この改正案で出てきております七十条の関係につきましても、たとえば現行法七十条二項が削除されて、これらが政令に——省令でしょうか、そういったものにゆだねられている。あるいは旧態依然として、たとえば甲板部員の定員などについては「定員を六人以上とし、」というぐあいに引き続いて明記をされているわけでありますけれども船舶の安全航行という立場からするならば、機関部員の数字については一切記載をされておらない。そんな意味では、船舶総体を見詰めた場合、これは片手落ちではないのかなという危惧の念を持つのでありますけれども機関部員の定数などについてあえて記載をしない理由、あるいは現行法二項の削除をして、なおかつ安全とそれから資質の向上に寄与できると判断をされた根拠を明確に示していただきたいと思うのであります。
  56. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 御質問は二点と存じます。まず第一点は、七十条の二項を廃止してしまったのはなぜかという御質問と、それから、機関部の部員の定員を甲板部と同じようになぜ決めないのだという御質問でございます。  まず第一点の、七十条二項の、甲板部の勤務一年未満の者をこれに充ててはならないという条文が現在あるわけでございますけれども、この条文は、実は新しく条約批准いたしますために当直部員の要件を決めなければいけないというふうになっていますので、それで新しく百十七条の二という条文で今度追加いたしまして、ここに航海当直部員の要件を非常に詳細に決めたわけでございます。この航海当直部員の要件の具体的な内容につきましては、いま先生の御指摘のとおりに省令で決めるのでありますけれども、実はわれわれ、その省令で条約よりも上乗せして、条約は現在の七十条第二項よりも幾らか下の低い線で決めてございますけれども、われわれはその省令で現在の七十条第二項と同じ規定を置こうと思っています。  ただ、法律で「一年未満」と書いてあるのを省令に今度落とすのはどうかという点につきましての御質問につきましては、そのほかのそういう要件というのは、実は今度条約で非常にたくさん決められておりまして、この第二項だけが法律で書いてあるということもちょっと平仄的におかしくなりますので、ほかの要件とも合わせまして——法律というものはやはり国民の一つの指標になりますし、一つ法律あるいは省令を見れば、全部が平仄をとって非常にわかるというのも法律一つの制定の理由でございますので、今回その他の基準もあわせまして一つの省令にゆだねたというようなわけでありまして、決して軽視したようなものではございません。  それから、第二番目の御指摘の、機関部員の定員を甲板部員の定員と同じように決めたらどうかという点につきましては、実は甲板部当直というのはかなり類型化されておりまして、七十条に書いてあるとおりに六名というような従来の決め方が可能でございます。この六名といいますのは、狭水道とかあるいは入出港時の当直体制のことを考えて普通三直体制をとっておりますので六名という数字が決められたわけでございますけれども、ただ機関部当直につきましては、その機関の種類が非常に豊富なことだとか、あるいは船型によって機関部の職務内容が非常に違うとか、あるいは積み荷、航路の状況によって職務内容が違うということから、そういう点で甲板部と同じような定員を画一的に決めることが非常にむずかしいというような状態から、昔からこの機関部につきましては部員の定員を決めてないというふうな状況でございます。今回もそういう形で機関部の定員は特に決めなかったような次第でございます。
  57. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 言葉は大変丁寧ですけれども、これは法律に対する認識がちょっと違うのではないのかなという気がするのですよ。  資質の向上を図っていく、国際的にも安全航行を確保するために、そのための基準を国内法の中でも整備をしていくということが冒頭で大きな課題になっているのだとすれば、これは法律そのものの充実強化を図っていくというところにつながっていかなくてはいけない。  ただ、内容的に見ますると、近代化船のように船員制度近代化していく、そういう意味ではすでに実験船等が航行されているわけですから、こことの触れ合いの中では今日段階でなおかつ法令化ができないものがあるのだという言い方であるとすれば、一定の理解をしないわけではありませんよ。そういった部分には一切触れずに、それらは省令で十分できるのだ、行政の範囲内であるということなのだとすれば、これは船員法あるいは船舶職員法というのはもっともっと簡素化してよいのではないですか。今回あえて盛り込まなくてもいい条項がたくさんあると思うのですよ。政令で全部できるじゃないですか。  それと、もう一つ私は指摘しておきたいのは、何でもかんでも省令にゆだねていく、こういった傾向が最近の一部改正の中では、この法律に限定するわけではありませんけれども、ずいぶん数多くなってきているわけです。しからば政令の中ではどういった政令が組み立てられていくのだろうか、そこが明確にならなければ改正法律そのものを議論することができないではありませんかという指摘をこの間やってきたわけですけれども、この法律の中でも同じことが言えるわけですよ。ですから、たとえば船員制度そのものが将来的に大きく飛躍をしていくために、いましばらく充実強化をしなければいけない部分があるけれども、十二分に兼ね備わっていない、しかしSTCW条約が当面の大きな課題として存在をするのだから、暫定的にこういった一部改正をするのです、こういう答えになるのがたてまえなのではないでしょうか。この点についての見解を明確にしていただきたいと思うのです。
  58. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 STCW条約は、実は先ほど制定経過からも御説明申し上げましたように、低開発国の船員資格が非常に低い、そのために海難事故が多発しているというような一つの社会実態がございまして、それを防止するために国際的な基準を定めて、それをレベルアップしようということで決めたものでございます。この国際条約というのは、そういうような制定経過もありまして、条約の内容は非常に詳しいことを事細かに書いてございまして、それを日本法律に直します際に、どの部分までは法律にするか、どの部分までは政令にするか、どの部分までは省令にするかというのは非常に迷うところでございます。  ただ、われわれ、いろいろと法制局などとも相談をいたしまして、特に重要な点につきましては、ほかの法律との平仄合わせもやりまして、基本的な問題については法律に書き、その他の点につきましては政令あるいは省令に落とす、その中でも特に重要な点は政令に落とし、さらにいわばマニュアル的な点につきましては省令とか告示に落とすというような形でやってございます。条約をそのまま法律に書く方法もございますけれども、やはり条約というものは世界各国の妥協のもとにでき上がった条約でございまして、そういう点で日本法律にそのまま合わせるということが非常にむずかしゅうございますので、日本法律体系に合うような修正をいたしまして、そのために非常に命令が多いというような形になってまいりました。  ただ、私どもは、これから政令あるいは省令あるいは告示をつくっていきますときに、船員の方々あるいは船舶所有者の方々がぱっと見て、全体の体系が非常にわかりやすいような形で政省令をまとめていきたいというふうに考えておる次第でございます。法律というものは、われわれは、やはり縛るだけでなくて、それに準拠していただく際の一つ基準になるということで、非常に読みやすい、見やすいということも考えなければいけないというふうに考えております。そういう点で、決して恣意的に、民主的な制度を踏みにじるような意味で政令に落としたり、省令に落としたりするわけではありませんので、御了解いただきたいと思います。  それから、もちろん政令、省令をつくりますときにも、船員中央労働委員会とかあるいは海上安全船員教育審議会とか、そういう官公労使で構成されております諮問機関に十分相談し、使用者側の意見も、それから労働者側の意見も十二分に尊重して決めたいと思っておりますので、その点は遺漏のないようにやっていきたいと思います。
  59. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 STCW条約の第九条の中に同等規定というのがございますね。特に船員制度近代化にかかわって、新しい制度とそれから外国による監督という問題なども出てくるわけです。  そこで、この中で特に運航士という課題が改めて出てきているわけですが、今度の法律の中には具体的に記載をされてございませんけれども船員局長の私的諮問機関として官公労使が協議をする場が設置されているやに伺います。この中での今後の具体的な作業工程、ここが果たさなければならない役割りというものをあなたはどのように考えておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
  60. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 実はこの近代化の問題は、四十五年ごろからいろいろと検討の俎上に上りまして、いろいろ議論してまいったわけであります。その後いろいろと紆余曲折がございましたけれども、五十二年に官公労使が集まりまして、船員局長の諮問機関といたしまして船員制度近代化調査委員会というものをつくっていただいたわけでございます。そこでいろいろと諸外国近代化実態だとか、あるいは実際の現在の日本船舶あるいは船員制度の実情というものを十二分に調査いたしまして、これらは一回実際の船でひとつ近代化実験をやってみようということで、五十四年四月に組織を船員制度近代化委員会というものに衣がえをいたしまして、そこでいろいろと現在の点につきまして検討を進めていただいたわけでございます。  いままでにやりましたことといいますのは、特定の近代化された、これは十四隻の船でありますけれども、その船を実際に使いまして、最初は二重に、甲板部機関部の両方の仕事をする職員、部員を乗せてそこで実験をやりまして、後半は、実際に十八名の船員甲板部の仕事も機関部の仕事もする運航員あるいは運航士を乗せまして、そこで具体的に実験をやってまいりまして、現在、お手元にお示ししてございますようなところまでは法律化していいのじゃないかという提言を、実は昨年の十月にちょうだいした次第でございます。そういう提言をちょうだいして今回この法案を上程させていただくということになった次第でございます。  ただ、この法律改正されましても、船員制度近代化というものはまだまだこれから続くものでございます。われわれはA段階、B段階、C段階という形で分けてやっておりますけれども、現在のところはまだA段階が済んだところで、これからB段階に入ろうというような実態でございます。B段階が過ぎましてもさらにC段階、いわば極端な言い方をしますと、無限軌道的に船員制度近代化というのは進んでいくのではなかろうかというふうな考え方を持っております。  したがいまして、今後とも、こういう船員制度近代化委員会というような官公労使で構成されておるところの御意見を十二分に尊重しながら、この点を進めていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  61. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 総合実験船の基準ともいうべき目指す船の設備というようなものが、運輸省の中ではある意味でトータルにされて、それぞれ二十一項目くらいにまとめられた機械化、近代化施策、こういったものが示されているわけです。  ただ、後ほどこれらも含めて議論の対象にしなくてはいけない部分だと思いますけれども、たとえば作業状況の集中監視などということも大きな要素の一つになっているわけですね。なぜこんなことを言うかというと、同時に提案をされております船員災害防止協会等に関する法律も一部改正をする、こういった考え方で、やはり船に働く労働者の労働安全ということを非常に重要な課題の一つとして取り上げておく必要があるのだろうと思うのです。ところが、陸上の労働安全施策と海上における施策の中ではいささか違いがあるわけでして、私どもに言わせるならば矛盾だと判断せざるを得ない部分が幾つかあります。特に船員の労働安全衛生規則というものにかかわって、幾つかお尋ねをしておきたいと思うのです。  陸上の場合と船舶の場合の大きな異なりは、海技免状というものが船員にはそれぞれの試験によって交付されるけれども、陸上で当然必要だと言われるものの資格を持たずとも、船舶上ではその作業に従事することができるというものが幾つも幾つもあるわけです。たとえばボイラーの問題あるいはクレーンの問題、こういったものは船舶上では船員がやることになるわけですね。資格は問われていないわけです。こういったことなどを放置しておいて、結局は、船員が陸上に就職を求めた場合、船の上ではやっておりましたと言ってみても、陸上では免許取得がないから通用しないということにつながっていっているわけです。これらの部分にもかかわって、一つは安全施策上の問題、それから船員の資質の向上という角度から、それぞれ総合的に再整備を図っていく必要があるのではないかと考えられるのでありますけれども、政府側の見解を求めておきたいと思うのです。
  62. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 資格の問題につきましては、実は御指摘のとおりに、陸上では労働安全衛生法に基づきます免許が十九種類、職業訓練法に基づきます技能検定が百十九種類というふうに百四十種類ぐらいの資格認定制度がございます。それに対しまして船の方ではそういうのがないじゃないかという御指摘だと思いますけれども、船の方では一つのトータルシステムと申しますか、たとえ浅い知識でもすべての点を知っていなければいけないというふうな一つの船の技術上の特色がございまして、船の機関も運航の方も陸上ほど詳しくないけれども、かなり広くあらゆる能力があるという形になっております。そういうものを目指しまして商船大学でも商船高専でも教育をやっておるわけであります。したがいまして、私どもの方は、陸上の技能ほど非常に精緻あるいは詳しくはないけれども、いろいろの点を知っておるような船員という形でいままで教育をやってきたわけでございます。ただ、今後船舶がそういうふうにかなり高度化してまいりますと、そういう点での改善措置というのは当然御指摘のように必要になってまいりますので、その辺は十二分に注意をしてこれから教育問題に当たってまいりたいと思います。  ただ、その際に、陸上の資格と海の資格とを比べた場合に、もっと海の者に陸上の資格を与えていいんじゃないかというふうな御指摘かと存じますけれども、実はこの点につきまして私ども、従来からいろいろと御要望がございますので、関係各省の方と折衝しておるような状況でございます。特に海関係でもかなりの作業をやっておりますので、非常に関係深いと見られます先ほど申しました約百四十種類のうち十八種類につきましては、海上でもかなりの能力があるじゃないかということで、海上の海技免状を持っておる者にも陸上のその資格を与えてくれということを関係各省に要求しておるわけであります。その中心は労働省でありますけれども、労働省のやっておる資格の内容と運輸省の船員資格の内容と、もう少しきめ細かく平仄合わせをやってみないことにはなかなかできないというふうなことを言われまして、現在両省で細かな点にまでその業務内容の平仄合わせをやっておる状況でございます。かなり厳しい態度ではありますけれども、われわれ、そういう点ではこれからも鋭意努力してまいりたいと考えております。
  63. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 そこまでおっしゃるのでしたら、先ほどの議論にもう一度戻らなければいけないのですけれどもね。現行法の七十条二項で言う「前項の定員」は、たった六名ですよ。この六名の定員は、「労働協約に特別の定のある場合を除いて、甲板部の勤務一年未満の者を以て、これに充ててはならない。」というこの項目が削除されてしまった理由は一体何ですか。労働安全というものを軽視しているのじゃないですか。  それからもう一つは、船舶職員船員法に基づく資質の向上を図っていこうというこの遠大な計画は、こういう一面を見ても、どうも中途半端だなと思えてならないのですよ。あなたがいまお答えをされた内容とこれは明らかに矛盾しますよ。明らかにしてください。
  64. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  七十条二項の具体的な内容を省令に譲ったということにつきましては、実は先ほど最初に御説明申し上げましたとおりに、条約の中では部員の要件職員要件、非常に細かなことを決めておりまして、この勤務一年未満の者を充ててはならない、この条文もいわば当直部員の要件に該当いたしますので、ほかの要件と一緒に百十七条の二に基づきますその省令で、ほかのものと一緒に規定するようにしたというわけでありまして、この点だけを法律に残しておきますと、ほかの条約上の諸要件も全部法律に書かなければいけないというような点で、非常に厄介な問題を生じますので、いま先生御指摘のように、この七十条の二項を百十七条の二に移しまして、それからさらに省令に落としたというような事情でございまして、決して安全問題を無視しておるとか軽視したとかいうような趣旨ではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  65. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 本会議の都合があるようですから、ここで一応保留しておきます。
  66. 楢橋進

    ○楢橋委員長代理 午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午前十一時四十四分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  67. 越智伊平

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草野威君。
  68. 草野威

    ○草野委員 法案に入る前に、大臣に、わが国海運政策について簡単にお尋ねをしたいと思います。  「日本海運の現況」によりますと、わが国の外航船腹量は、五十五年度におきまして約三千四百万総トンということで、リベリアに次いで世界第二位の船舶所有国となっております。しかしながら、わが国を取り巻くもろもろの情勢は非常に厳しいものがございまして、船員費中心として船舶のコストが諸外国に比べて大きく上回り、国際競争力が次第に失われてきた。このため、日本船の隻数は四十七年をピークに減少を続け、外国用船に依存する傾向を強めており、今後わが国外航海運のあり方が問われております。このため、政府は、五十四年度から三カ年計画で外航船舶緊急整備対策を講じまして国際競争力を回復させ、それなりに効果を上げてまいりました。しかし、五十七年度以降利子補給等が打ち切りになりますと、計画造船の建造量はかなり落ち込むことが予想されるわけでございます。  今後の外航海運のあり方、展望等につきまして、大臣はどのようにお考えになっているか、まずお尋ねをさせていただきます。
  69. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 委員御指摘のとおり、外航海運は、日本のこれからの経済運営あるいは国民生活を維持するためには必須の課題であるというまず認識を持っております。そのために、五十七年度で利子補給が打ち切られますが、五十七年度からは、われわれは計画造船制度による長期低利資金の供給によって、日本の造船をコストを安くつくるということが一つ方法であると思います。  同時にまた、こうしたような事態に対応して、海運業界も労使相協力して、現在のような非常に割り高につく経済競争力の衰えというものに対応して、この際努力していかなければならないというふうに考えるものでございまして、ちょうど五十七年度から、これからが日本の将来にわたっての外航海運の姿勢を決めるきわめて重要な時期だと考えておりまして、われわれといたしましては、こうした海運政策に特に意を用い、また多くの方々の御理解をいただきながら間違いない運営と成果を上げてまいりたい、そのように考えておるところでございます。
  70. 草野威

    ○草野委員 では、船員法及び船舶職員法の一部を改正する法律案につきまして、何点かお尋ねしたいと思います。  初めに、昭和五十三年STCW条約の採択と国内法の整備につきまして、今回法改正が行われるわけでございますけれども、この法改正の提案に当たりまして、どのような基本的な考え方をお持ちになっているか、まず冒頭に伺っておきたいと思います。
  71. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  今回の船員法及び船舶職員法改正趣旨は二点ございまして、一点は、STCW条約批准に相応するように法律改正を必要とする、第二点は、船員制度近代化を達成しようという趣旨でございます。  第一点のSTCW条約批准に関しましては、実は過般起こりましたタンカートリーキャニオン号事件を契機にして、世界船員の資質のレベルアップをしようということがいろいろとIMCOの場で議論されまして、わが国も当初から参加いたしまして賛成の投票をしてきたわけでございます。ようやく一九七八年にその条約が成立いたしましたので、世界海運船員の資質のレベルアップに資するためにわが国の方もこれを早期に批准しよう、実はまだ発効はしてございませんけれども、やはり世界の一級の海運国としてそういう点を先駆けすべきだという観点のもとにこの批准をする、その必要な船員法及び船舶職員法改正をしようということでございます。  それから第二点の、船員制度近代化の問題につきましては、実は最近、ここ十年くらい船舶近代化というのは非常に進んでまいりまして、すでにエンジンルームに人を入れないような、いわゆるMO船というような設備までできた船が非常にあらわれつつございます。それとはもう一つ別の問題といたしまして、開発途上国の船が非常にふえてまいりまして、そのために相対的に日本外航海運国際競争力が落ちてきたというような点がございます。かてて加えて、そういう二つの問題を同時に対処していく、しかも船員にとっても非常に楽しい職場にするというような観点から船員制度近代化をしよう。その骨子は、機関、甲板両方の仕事をひとつ乗組員がやっていこうじゃないかというような方向のもとに、いろいろと新しい船で実験、検証を進めてきたわけですが、その成果がある段階まで得られましたので、今回それを法制化しようという趣旨でございます。それが船員法及び船舶職員法改正の理由でございます。  もう一つ船員災害防止協会等に関する法律の一部改正を出してございますけれども、これは、船員制度近代化のような形が進んでまいりますと、商船につきましては少数定員による運航ということが起こってまいりますし、それから、さらに漁船につきましても、いろいろと漁場の遠隔化だとかあるいは定員の減少というのが出てきておりますので、船員の労働安全衛生の問題あるいは災害防止の問題をもっと強化しなければいかぬだろうということで、その強化のために船員災害防止協会等に関する法律の一部を改正する法律案を御提案申し上げた次第でございます。
  72. 草野威

    ○草野委員 航海当直の実施に当たっては十分に安全が確保される体制が必要であるわけでございますが、この航海当直基準について簡単に御説明をいただきたいと思います。
  73. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  現在、航海当直基準日本の法体系ではほとんど書かれておりません。詳しい内容はほとんど慣習法的なものによっておりまして、明治時代以来そういう形をとって船舶が運航されております。  ただ、今度のSTCW条約は、ただいま申し上げましたように、世界船員の資質をレベルアップしよう、そうすることによって海難事故を防ごうという趣旨でございますので、かなり詳しくSTCW条約の方は当直基準のあり方というものを書いてございます。具体的に申し上げますと、附属書の二−一規則で、甲板部の具体的な当直基準を書いてございます。それから三−一規則で、機関部航海当直基準のあり方を書いてございますし、二−七規則と二−八規則では、停泊中の航海当直のやり方というものをかなり詳しく書いてございます。  さらに具体的に申し上げますと、非常に長い文章でありますけれども、項目だけ簡単に御紹介いたしますと、当直体制の編成の仕方、針路、船位の確認の仕方、航行設備の効果的な使用の仕方、それから機関の適切、効率的な運転のやり方、それから当直を担当する者は、具体的にどういうような事態のときにどういう措置をとるべきかというその措置のとり方、それから適正な見張りの仕方、そういうような点につきましてきわめて詳細に何条にもわたりまして書いてございます。     〔委員長退席、楢橋委員長代理着席〕  私どもの方は、それを法制化せねばいかぬ。ところが、そのSTCW条約の書き方は具体的な内容でございますので、その根拠条文だけを法律に書きまして、いま申し上げましたような非常に具体的な問題につきましては、これを省令あるいは告示の方にゆだねていこうと考えております。
  74. 草野威

    ○草野委員 先ほども同僚の質問で出ておりましたが、小型船の定員の問題でございますけれども、七百トン未満の小型船は最低の定員について法制化すべきであると思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  75. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 小型船の問題につきましては、私どもも、いろいろと今回の法改正について御要望も出ましたしいろいろ御意見もございましたので検討はいたしましたけれども小型船といいましても非常にばらばらで、その運航形態、特に日本の国内の非常に近い地回りの航海に従事しておりますし、小型船の中でもたとえば夜間航行するものも、夜間航行せずに昼の間だけ航行するものも、いろいろの種類に分かれております。それから、積み荷の問題にしても船の設備の問題にしても非常に個々ばらばらでございますので、なかなか七百トン以上の大型船のような画一的な規定がむずかしい。特に七百トン以上の機関部につきましては部員の定員を決めてないわけでありますけれども、七百トン未満の点につきましては甲板部機関部もそういう点で非常に区々ばらばらでございますので、なかなか一律的に規定することがむずかしいということから、これを労使間の協議事項にゆだねまして、労使間でそれぞれ適当な定員を決めてそれを守るように、そういう決められたものは労働協約あるいは就業規則に必ず明示されておりますので、私ども船員労務官に立入検査をさせまして、そういう就業規則で決められているとおりの定員を維持しているかどうかを十二分にチェックしているような次第でございます。
  76. 草野威

    ○草野委員 先ほど伺ったわけでございますけれども、いろいろな安全という面から考えて最低の定員、これについてはやはり検討すべきではないかと思うのですが、重ねて伺いたいと思います。
  77. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 おっしゃるとおり、あらゆる点を法律で決めてしまうという一つ方法もございますけれども、やはりこういう問題は基本的には労使間で処理すべき問題でございます。労使間で処理できないような最低基準を決めるのが法律だと思いますので、こういう点については非常に法律で決めにくいということもございまして、私どもは労使間の話し合いに任せて、その労使間の話し合いを尊重していって、そのとおりにやられているかどうかということを十二分にチェックしていきたいというふうに考えております。
  78. 草野威

    ○草野委員 タンカーの問題でございますが、百十七条の三にタンカーの管理責任者の要件について定められておりますが、この命令で定める要件というのはどういうことでしょうか。  また、その要件がかなり厳しくなるようでございますけれども、教育、講習等についてどのような方法で実施をするか、伺いたいと思います。
  79. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  今回のSTCW条約は、その成立の経緯からいたしまして、タンカーの安全、これは海洋汚染防止に直接つながりますので、タンカー事故を非常に重く考えております。したがって、条約の方も、タンカーに乗り組む乗組員には、普通の船に乗り組む乗組員よりも加重要件を課しておるのがその中身でございます。したがって、私どもも、その条約批准する以上は、タンカーに乗り組む乗組員には、一般のその他の船に乗り組む乗組員よりもプラスアルファの要件を課さざるを得ません。そこで考えておりますのは、講習をやるべきだろう、講習で処理したいと考えております。  講習の内容を簡単に御説明申し上げますと、三日程度の座学と一日程度の消火実習ということでやりたいと思っております。  座学については、現在もうすでにタンカーの乗組員には、タンカー安全担当者講習というのを実施しておりまして、その内容は、タンカー等引火性液体積載船舶の構造設備の点についての講習、それから石油等引火性液体類の性状に関する教育、それから火災、爆発の発火源に関する講習、燃焼と消火に関する講習、災害防止対策に関する講習、海洋汚染防止対策に関する講習、保護具、検知器具の取り扱いに関する講習、それから関係法規の講習というような講習を、現在この条約の実施前からもタンカーについてはやっておりますが、それに幾らかプラスアルファした講習を三日程度座学でやってみたいと考えております。  それから、消火実習については一日程度のもので、実際に火を燃やしてその火を消す練習、実習をやりたいと思っております。場所としては東京湾の第二海星、それから苫小牧、舞鶴、呉、佐世保、その辺で、もうすでに場所を手配してございます。  そういう形で、できるだけ条約に沿った、しかも現在やっている内容にある程度のプラスアルファで、極端に現在の船員に過重な義務を課さないということを考えながら、いま申し上げたような点を命令で定めたいと思っております。
  80. 草野威

    ○草野委員 次に労務官の問題ですが、外国船監督をやることになるわけでございますが、現在の体制では不十分ではないかというような感じがするわけでございます。  先ほどの答弁の中に、来年度で百二十八名、主要港に配置されるということでございますけれども、この問題については早急に強化する必要があるのではないか。  また、民間の代行機関の設置等も検討すべきではないかと思いますけれども、この点についての御見解。  また、この外国船監督について外交問題等トラブルが起きてくる心配はないか、こういう問題についてもあわせてお伺いをしたいと思います。
  81. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 労務官の点につきまして申し上げます。  現在、労務官は主要港に百二十六名配置されておりまして、しかもその労務官の選任基準というものも省令で非常に詳しく決めております。高等学校ないし大学を卒業して、しかも船員の保護の関係の仕事を一定期間した者でないと労務官に選任できないというふうな形になっております。実は、昭和三十九年以前は一般の事務職員をそのまま労務官に併任しておるというふうな制度をとっておったのですけれども、それではなかなか船員の労働保護の万全を期しがたいということから、三十九年以降はそういうふうに専任の労務官を選任いたしまして、選任の資格要件をかなり加重いたしまして、現在百二十六名でそういう仕事をやらしておるようなわけでございます。  ただ、この条約の適用によりまして、外国船監督とか、さらにその他のいろいろの仕事がまた出てまいりますので、さらに一層その教育、講習体制の充実を図るとともに、特に英語につきましては五十七年度予算で幾ばくかの予算を要求しておりますけれども、そういう国費をつぎ込んで英語の実力を充実していきたいというふうに考えております。  それから、民間の点、民間の方々をこの労務監査というような点に活用したらどうかというような御趣旨でございますけれども船員労務官の権限というのは非常に強大でございまして、犯罪捜査あるいはそれに対する送検、司法警察職員としての権限の行使というようなことまでも及びますので、国民の権利義務の侵害に及ぶ場合もございますので、民間の方々にその権限を任せるとか、あるいは民間の方々にそういう監督をお願いするということは非常にむずかしい次第でございます。  それから、第三番目の問題であります外国船監督によってトラブルが発生しないかという点につきましては、実は条約の制定の際に一番大きな問題になった点でございます。したがいまして、その点条約では第十条以下に非常に厳しく、外国船の立入検査をする場合の具体的な例というものがかなり詳しく書かれておりまして、むやみやたらに立入検査をしたり、外国船に出航の停止を命じたりできないような形になっております。  具体的に申し上げますと、当直した管理体制の点について監督しますときには、具体的に船が領海内で事故を起こすとかいうことがない限りは、そういうことはできないということになっておりますし、それからまた、実際にそういう立入検査をいたしまして、出航停止を命ぜざるを得ない場合も、船長のみならず相手国の領事にもそういう点を通報した上でやるというような形で、そのほかもろもろ非常に詳しくあるいは厳格に外国船への立ち入り権の行使を制限されておるような次第でございます。したがいまして、先ほど申しましたように、船員労務官の資質の向上ということを図ると同時に、こういう条約趣旨をわれわれ、船員労務官に十二分に通達いたしまして、そういう国際的なトラブルが発生しないように、ひとつ十二分に注意してまいりたいと思っております。
  82. 草野威

    ○草野委員 いまお話ありましたように、こういう問題で外交問題に発展しないように、労務官の資質の充実強化について力を入れていただきたいと要望いたします。  それから、救命艇手要件の問題でございますが、適任証書の指摘要件、こういうものにつきまして、従来とどういう点が変更になりますか。
  83. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 実は救命艇手につきましては、条約で新しく第六章でかなり詳しく書かれてございます。ただ、私どもの方でも、すでに船員法の百十八条で「救命艇手」という条文がございまして、そこで救命艇手要件というものがかなり詳しく書かれております。したがいまして、条約批准いたしましても現在以上に救命艇手の条件が厳しくなるということはございません。  ただ、条約と現在の船員法との差は、具体的に条約の方が救命艇手の証明書を発行するときには、救命艇の操作とか具体的な実習、具体的な実務の講習をやるようにというふうになっておりますので、そういう点について今後とも具体的な実習のあり方というものを強化してまいりたいというふうに考えております。
  84. 草野威

    ○草野委員 旗国主義の問題でございますが、この旗国主義の適用に当たっては、いわゆるマルシップにも本法が適用されることになるわけでございますが、これは原則どおりに実施されるべきであると思います。大幅な経過措置あるいは特例措置、こういうことを検討しているのではないか、こういうことも聞かれるわけでございますが、この点はいかがでしょうか。
  85. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 マルシップというのは、日本船であるけれども外国に対して裸で貸して、外国船会社外国人を配乗しましてまた日本の方にチャーターバックしておるというような船をわれわれ、通称マルシップと称してございます。  現在の船舶職員法は、日本船舶を所有する者が所有することができない者に貸し付けた日本船舶を適用除外する。すなわち、外国人に貸し付けてしまった日本船舶には現在船舶職員法を適用しないというふうになっております。ところが、今度のSTCW条約旗国主義ということを採用しておりまして、ただいま私が申し上げましたのは、いわゆる専門用語で言いますと配乗国主義でございます。現在日本は配乗国主義を採用しているわけでありますけれども、今度の条約旗国主義と称しまして、いわゆる船籍国の法律をすべて、そういう船員の配乗というような点については適用するということになっております。したがいまして、今度の新しい条約批准するためには、われわれの配乗国主義を捨てまして旗国主義に乗りかえなければいかぬということになります。  そうしますと、いま先生の御指摘のいわゆるマルシップは、現在わが国船舶職員法は適用されておりませんけれども、今後船舶職員法を適用しなければいかぬ。そういたしますと、非常に極端な言い方をいたしますと、従来はマルシップには日本船舶職員は一人も乗せてないとか、あるいは日本船舶職員を乗せておっても、日本法律なら甲種船長という非常に上級の船舶職員が必要なところを乙種船長とか、どちらかと言いますと下級の方の船舶職員を乗っけてでも運航ができたわけでありますけれども、今回の条約批准によりましてそういうことはできなくなるということに相なります。  ただ、そういう点で、先ほど海運局長から御報告のございましたように、現在かなりのマルシップがございます。そのマルシップの存在ということも、かなり重要な意味をいままでの日本海運には持ってまいりました。すなわち、非常に競争力の落ちてきた日本海運開発途上国の非常に競争力のある海運とのいわば接点といいますか、つなぎといいますか、潤滑油的な機能を果たしてきたというのも、これは一つの大きな隠せない事実だと思うわけでございます。  そういう点もわれわれ考慮しなければいけませんし、やはり条約批准する以上は、そういうマルシップに対しても条約を適用しなければいかぬというような点もございます。そういう点からできるだけ、一挙に急激にマルシップに対して完全に一〇〇%船舶職員法を適用することによってまた世の中の混乱もございますので、その点はやはり効果的に、しかも漸進的にやっていかなければいかぬだろうというふうなことを考えておる次第でございます。  したがいまして、原則はもちろん、条約批准します以上は船舶職員法マルシップに適用いたすことになるわけでございますけれども、その間に経過的にかなり具体的には幾らかの定員の削減の余地を認めて、一般の日本船舶と同じような方向に進むべくひとつ丁重に指導してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  86. 草野威

    ○草野委員 次に、無線部の無線関係職員について伺いたいと思いますが、やはり近代化実験に参加しておりますので、今後運航士との関係を法的に明確にすべきであると思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  87. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  無線関係職員につきましては、実はいろいろと船舶職員法の規制を受けると同時に電波法の規制も受けておりまして、いわば監督が郵政省と運輸省と両方にまたがっているというふうな事情もございまして、御指摘のとおりにわれわれ、非常にむずかしい問題がございます。  それからもう一つは、この近代化の生成過程が、機関部甲板部のいわば相互流用といいますか、機関部職員甲板部の仕事をする、甲板部職員機関部の仕事をするというものを中心にいろいろと検討してまいりましたので、無線部の点につきましては、どちらかといいますと余り検討を進めてこなかったというのが現状でございます。具体的に五十四年以降の近代化船の実験、検証の過程におきましても、無線部職員甲板部あるいは機関部の仕事をやらせるような実験というのは進めてまいりましたけれども、それが反対に機関部あるいは甲板部の乗組員に無線部の仕事をやらせるというようなことは、実は実験としてやらなかったような次第でございます。そういう点を踏まえまして、今回も法律的には機関部甲板部無線部の完全な相互流用ということは実はできなかったような次第でございます。ただ、完全な形での近代化ということを考えてみますときには、やはり機関部甲板部だけじゃなく、無線部もあるいは事務部もすべてをひっくるめた船内全体の近代化というのは、将来、これはいつの時点になるかはわかりませんけれども近代化委員会の方でいろいろ御検討いただく問題ではありますけれども、そういう点で船内を渾然一体としての一元化というものを図っていくのが筋だと思います。  したがいまして、今後近代化委員会の場を通じましていろいろと郵政省の方にもそういう会議の席に御参加いただくなり、いろいろと通信と甲板、機関との相互流通というような点につきまして検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  88. 草野威

    ○草野委員 次に、船員災害の問題について伺いたいと思いますが、初めに海上保安庁にお尋ねしたいと思います。  ことしの一月、ベーリング海におきまして、日魯漁業所属のあけぼの丸の遭難事故がございました。この事故についての原因の調査並びに救命設備の改善問題が指摘されておりますけれども、工マージョンスーツだとか、それから密閉カプセル型ゴムボートの開発の問題とか、こういうことがいまいろいろと指摘をされております。このような救命設備の改善の問題、それからさらにもう一点は、救難体制の整備について、特に遠距離海域における問題でございますけれども、この三点について海上保安庁の方からひとつ伺いたいと思います。     〔楢橋委員長代理退席、委員長着席〕
  89. 勝目久二郎

    ○勝目政府委員 まず、遭難原因につきましての調査状況でございますが、一名生存者がおります。三等航海士の方でございます。それから、同時期に同漁場におりました僚船の乗組員、こういった方々から事情を聴取しておる次第でございます。それから、当該の第二十八あけぼの丸の船体図面等を入手いたしまして北海道大学水産学部の川島利兵衛教授に鑑定を依頼し、原因を究明中でございます。したがいまして、ただいまの段階では最終的にどうというところまで参っておりませんが、今後特に注意して調べなければならぬ点は次のようなことだと思っております。  当時の気象、海象状況における揚網の方法、それから揚網時の操船ということにつきまして、三点ほど重点を置いて調査をしなければならないというように考えておりますが、第一点は、漁獲物を右舷側に片積みしたまま左舷の正横、真横からの風波を受けて揚網を開始したこと、それから多量の漁獲物の入った網を船体が傾いた状態で甲板に引き揚げたこと、それから三番目には、右の方へ傾斜をするという傾向が次第に増しつつあったわけでございますが、これを直すために速度を速めて、しかも左方向へ転舵をしたこと、こういう点につきましてさらに調査をいたしたいというように考えております。  それから、設備関係につきましては当庁の所管ではございませんので、もう一点の救助体制につきましてお答えしたいと思います。  海上保安庁の海難救助体制といたしましては、全国の基地に巡視船、航空機を配備いたしまして、常時遭難通信の聴守をいたし、海難に即応するという体制でおりますことは先生も御承知のとおりでございます。さらに、気象、海象の状況、海上交通の状況等から海難の多発が予想される海域には、あらかじめ巡視船を配備をさせるという前進哨戒ということをやっておりまして、緊急事態に備えるようにいたしております。  今後は、海上保安庁といたしましては、遠距離海域での海難に対処するため、海上捜索救難に関する条約、通称SAR条約と言っておりますが、これの趣旨に沿いまして広域にわたる哨戒体制の整備、それから海洋情報システムの確立ということを図りまして、こういう海難救助体制の一層の充実に努めていきたいというように考えております。
  90. 野口節

    ○野口政府委員 救命設備の点について御説明をいたします。  初めに、二十八あけぼの丸の救命設備でございますが、二十八あけぼの丸は機船底びき網漁業に従事する第二種従業制限に分類されております漁船でございまして、これに対しましては、救命設備としましては、最大搭載人員を収容することができるような救命いかだあるいは救命胴衣、そのほか遭難信号発信装置というようなものが義務づけられておるわけでございます。昨年の五月にこれは定期検査を受けておりまして、そのときの状況でございますと、これらの救命設備はいずれも良好な状態で備えつけられていたということでございます。  それからもう一点の、救命設備の改良についてどうかという御質問でございますが、御指摘のように、非常に冷たい海につかりましたときには、保温性の高い耐寒救命衣というものがあれば非常に役に立つわけでございまして、そういう点については、これは世界的にも非常に関心が高まっておりまして、国連の専門機関でありますIMCOというところで五十三年からずっと検討を続けております。ことしの初めに、その性能とか要件の技術的な基準というようなものが固まりまして、近くこれをSOLAS条約、海上における人命の安全のための条約でございますが、SOLAS条約と呼ばれているものの中に取り入れるという動きになってございます。  わが国においても、この耐寒救命衣については前から調査研究を行っておりまして、ただ、このIMCOの要件に適合するようなものであって日本人にうまく合うというのは、なかなか開発できなかったわけでございますけれども、こういう事故も起こりましたことでございますし、条約にも取り入れるということでございますので、ここのところ一、二年ぐらいをめどに急ぎ本格的な開発に取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。その成績を見ながら逐次普及に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  91. 草野威

    ○草野委員 いまいろいろお話があったわけでございますけれども、現実にこういう事故が起きているわけでございますし、そしてまた三十三名中ただ一人しか救助されなかった、こういうことでございますので、海難事故があった場合、その救命策とか延命策とかいろいろ言われてくるわけでございますけれども、やはりこういう事故契機にして根本的にそういう対策というものを考え直さなければならない、このように思いますので、この点を強く要望しておきたいと思います。  次に、災害防止に関する国の具体的な考え方について伺いたいと思いますが、独立した労働安全衛生法というものをなぜ制定することができないのか、こういう問題について当局のお考えをひとつ伺いたいと思います。  また、あわせて、陸上に比べまして船員の場合、災害の発生状況は非常に多いわけでございますけれども、簡単に数字をお示しいただきたいと思います。
  92. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 ただいまの御質問、二点ございまして、最初は、労働安全衛生法をなぜつくらないのだという御質問だと思います。その点については、実はこれは船舶の特殊性というものをわれわれ非常に重んじておるわけでございます。  船というのは、労働の場であると同時に生活の場でありますし、あるいは船自体が沈没とか海難とかいうふうな事態に遭遇しますと、職場も生活の場もすべてだめになるというふうな特殊なものでございます。これは陸上の職場とは非常に違う、海だけの特色のある性格のものだと存じます。したがって、船員法体系なんかでも船長の権限というのは非常に大きく書かれてございます。そういう観点から、船員法の中で船単位の労働安全衛生面の強化、それから労働災害の防止の点というものを強化しておるわけでございます。船全体の安全を考えながら、船員自体の労働安全衛生面、災害防止面を考えていくというのが船員法の立場でございます。そういう点で、陸上の労働安全衛生の保持の仕方と海上の労働安全衛生の保持の仕方と非常に大きな差があると存じます。  さらに具体的に申し上げますと、たとえば非常に緊急時、非常に危険なときには、陸上では労働してはいけないというふうな場合がございますけれども船舶の場合は、遭難に瀕したときとか危険なときこそ一生懸命に働かなければいけないような場合もございます。そういう点が一つ、海上の産業と陸上の産業との大きな差でございます。これが労働保護法体系も別になっておりますし、あるいは行政機関も別になっておる一つの理由だと思います。  そういうことを考えまして、私どもの方は、船員法の労働安全衛生の保持、災害防止の保持というものを中心に現在やっておるところであります。ただ、具体的にいろいろと検討いたしました結果、それだけではなくて、やはりもっと船会社の本社機構の労働安全衛生面の強化あるいは災害防止強化をしなければいかぬということから、今回、船員災害防止協会等に関する法律の一部を改正いたしまして、その辺を強化しようということにしたわけでございます。したがいまして、船員法体系の方は依然として従来どおり、そういう船単位の船員の安全の保護という感じからいままでどおり残しておいたような次第でございます。  それから、具体的な船員災害の発生状況につきましては、実は四十二年にいま申し上げました船員災害防止協会等に関する法律が制定されましたとき以来、労使の協力もございまして、具体的に船員災害の発生件数はかなり減少してまいりました。すなわち、四十二年に災害、疾病合わせて二万六千七百五十二件ありました船員災害発生件数が、五十四年には一万四千二百六十件というふうに約四七%の減少を見ております。ところが、まだそれでも陸上に比べますと、陸上では死傷者の発生が千人のうち九・五人であるのに船員では二六・五人だとか、さらに死亡発生率を見ましても、陸上の全産業では千人に対して〇・一人であるのに船員については一・七人というふうな状況にございまして、そういう点ではまだかなり厳しい問題がございます。  それからもう一つは、最近の傾向といたしまして具体的に申し上げますと、死傷者の発生を千人率で言いますと、四十五年に千人に対して三一・五人でありましたのが、五十二年あたりには二六・九まで減らしましたけれども、その後五十三年には二七・六、五十四年には二六・五というような形で、ちょっと下げどまりのような感じにございます。われわれ、その辺を非常に心配しておるところでございます。  今回の船員災害防止協会等に関する法律の一部改正も、その辺を踏まえましてもっと強化しなければいかぬだろうということから、この政正案を上程したような次第でございます。
  93. 草野威

    ○草野委員 次に、近代化関係の問題でございますが、今回の法改正船員制度近代化ということが一つの大きな柱になっているわけでございますが、その中に日本人船員の職域の確保ということがうたわれているわけでございます。しかし、現実には、先ほどもお話がございましたように、現在の船の定員が二十四、五名、昭和四十年におきましては三九・七人ですか、それが昭和四十五年に三五・三人、五十年には三一・三人、このように事実上ずっと定員が削減されてきておりますけれども、この問題と同じに、安全運行に対する疑問の声も皆無とは言えないわけでございます。  そこで、お尋ねしたい第一点は、海運先進国における近代化船の実験例につきまして伺いたいと思います。
  94. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 私ども、五十二年に船員制度近代化調査委員会というものを発足させまして、これは官公労使で編成しておりますけれども、その調査委員会が五十二年、五十三年の二年間にわたって、先進海運国のいわゆる船員制度近代化状況というものをいろいろと調べてまいりました。  それによりますと、船員制度の改革に関して実証的な検討を行っている国が、イギリス、西ドイツ、フランス、オランダ、ノルウェー、デンマーク、ベルギー、ポルトガルというふうに、西欧の主要諸国はほとんど全部、そういう新しい船員制度を目指していろいろと実証的な検討を開始しているところでございます。  それをさらに具体的にちょっと、部員と職員に分けましてどういう状況か見てみますと、甲板、機関両用の部員の制度を認めていこうというのは、これは一番進んでおりまして、イギリス、ノルウェー、オランダ、ポルトガルあたりでは、もうすでに具体的な制度としまして甲・機両用部員という制度が取り入れられております。  それから、職員にいたしましては、これは学校の教育制度が非常に絡んでまいりますので、一朝一夕でやるというのは非常にむずかしいわけでありますけれども、フランス、オランダ、ノルウェーなどにつきましては、学校教育自体を変えてしまいまして、大学の教育の中に航海科、機関科の区別をもう設けておりません。ところが、具体的な実際の船ではまだそれをそのまま適用せずに、現在教育課程から先に進んでいくというような状況でございます。  それから、私どもがやっておりますような実験船で調査しておるという点につきましては、オランダで二十二、三名の近代化船を実験中ですし、それから西ドイツ、ベルギー、デンマーク、ノルウェーという国では、わが国と同じように十八名船の実験をやっております。それから、さらに進んだところでは、これは実は構想中でまだ具体的に実験というところまでいっておりませんけれども、西ドイツには「明日の船」というふうな名称で、十二名船の研究をいまやっております。それから、ノルウェーでも同じような形で、十四名船構想という形でいろいろと現在検討中だということを私ども聞いております。
  95. 草野威

    ○草野委員 近代化の問題についてもう一点伺っておきたいと思いますが、船員制度近代化委員会、現在船員局長の私的諮問機関ということでございますが、この委員会の位置づけについて伺いたいと思います。  近代化作業を同時に推進していくためには、官公労使の合議機関であるこの近代化委員会の役割りが非常に重要になってくると思いますけれども、今回、明治百年来の船員制度の改革ということで、この委員会大臣の直接の機関にして予算上の措置を講ずる、こういうような必要があるんではないか、こういう位置づけを一体どうするのか、非常に重要な問題であろうと思いますので、この点についてひとつ明快な御意見を賜りたいと思います。  なお、この点については大臣からもできたら御答弁をいただきたいと思います。
  96. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 この近代化は非常に重要なことでございまして、いまそれを私のところの直轄というよりも、現在のような形の中で自由に審議をしていただいたものを、われわれとしては十分尊重してまいりたいという方向で進めていきたいと思っておるところでございます。
  97. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 大臣お答えになりましたことを、もう少し事務的な点から御説明申し上げますと、実は今回のこの近代化を検討していただきました船員中央労働委員会あるいは海上安全船員教育審議会の席におきましても、いま先生が御指摘のように、単なる船員局長の諮問機関というよりも、もっと法律に基づいた一つの組織に格上げしたらどうかというような御要望が出てまいりまして、私どももいろいろその点を検討したのでありますけれども、何せ御存じのとおりに、現在行政機構改革という政策が国家の一つの大政策として実施されようとしておる段階に新しい組織を大臣の機関といたしますのは、一つ法律的な機関として国家行政組織になりますので、そういう組織をつくることはどうしても不可能だという一つの国家方針もございまして、われわれ、これができなかったわけでございます。  ただ、そういうことができませんでしても、こういう労使に関係します問題は、官公労使の集まったそういうところで今後とも検討していくのが当然のことであるとも存じますので、今後とも私ども船員制度近代化委員会、これは船員局長の諮問機関でありますけれども、十二分に尊重してまいりたいというふうに考えております。
  98. 草野威

    ○草野委員 では、最後に別な問題でございますが、海運局長お尋ねしたいと思います。  昨年の五月ごろでございますが、小型船の免許の不正事件が発生いたしました。これは日本船舶職員養成協会関東支部の小型船免許にかかわる大がかりな不正事件が発生いたしまして、新聞に大々的に報道されたわけでございますが、それによりますと、この不正事件の中身は「書類上は試験不合格者や試験を受けていない者が修了証明書をとっていたり、無資格教員が講習をするなど目にあまるズサンなケースが過去三年間に五百余件もあることが判明した。」こういう大変大きな問題が報道されたわけでございます。運輸省はこの事態を大変重視をいたしまして、全国海運局に対して協会の各支部の総点検の実施を指示した、このように報道されております。  まず、この件に関しまして、この事件の概要と総点検の結果、またいかなる処分を行ったのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  99. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 船舶職員養成協会の監督は私どもの方でやっておりますので、私から御説明申し上げます。  いま先生御指摘の日本船舶職員養成協会の不祥事は、実は昭和五十六年、去年の一月に茨城県の鹿島におきまして、日本船舶職員養成協会が小型船操縦士の資格を取るための希望者の養成をやったわけでありますけれども、その席で身がわり受講が行われたということが投書によりまして発覚いたしまして、それで私ども驚いて全国をチェックいたしました。いま先生の御指摘のとおりでございます。  その結果、過去三年間、これは書類の保存期間が三年でございますので三年しか調べなかったわけでございますけれども、過去三年間に全国で五百五十名に上る者が不適正な、決められたとおりの講習をやらずに受講資格を取って免許を取ったというような事例が発生したわけでございます。  それで、私どもは、去年の七月三十一日付の文書で日本船舶職員養成協会に対しまして、いま申し上げました五百五十名に上ります不適正な受講者に対して講習のやり直しを指示すると同時に、養成協会に対しまして業務の改善命令を出したわけでございます。業務の改善命令の内容は後ほど御説明申し上げますが、その五百五十名の不適正な受講者に対する講習のやり直しというものは現在もまだ続いておるわけでございますけれども、現在までのところ約三百五十名が修了いたしました。あと残っておりますのが約二百名。二百名はこれからもまだ全員について続けていくつもりでおりますけれども、幾らかの人たちは居所が不明だということもありまして、数名ないし数十名はそういう再受講させることは不可能だと思いますけれども、できるだけこの五百五十名全員を再受講させるべく、現在いろいろと指示しておるような次第でございます。  それから、その他の改善事項につきましては、具体的に申し上げますと、船舶職員養成協会の本部の管理体制の改革、それから支部の講習業務の管理体制の改善、受講者の募集方法改善、さらに講習の運営方法改善、その他というふうに五項目に分けまして、それぞれ約十項目ずつぐらい、全部で五、六十項目にわたりまして非常に詳細にその改善事項を指示しまして、現在そのほとんどの部分はもうすでに措置されております。  なお、この点につきましては、執行部の方もそういう点でいろいろと至らぬ点があったということで、会長、専務理事、常務理事が引責で退職をいたしたというふうなことで、私ども、今後こういう事例が二度と発生しないように措置したつもりでございます。
  100. 草野威

    ○草野委員 今後も十分な指導を行っていただいて、このような不正事件が二度と発生しないようにしていただきたいと思います。  時間が来ましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
  101. 越智伊平

    越智委員長 小渕正義君。
  102. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今回の船員法及び船舶職員法の一部を改正する法律案の中では、一つの柱として船員制度近代化を図り、それによって船員の快適な労働条件の確保並びに新しい職務体制を確立する、そのことによって日本船舶の国際競争力がもっと比重を増していくというようなことが提案の趣旨で言われているわけでありますが、この船員制度近代化という言葉、非常に聞こえがいい言葉でございますが、この船員制度近代化の大きな柱となるものは何か、端的にひとつその点について当局の御見解を示していただきたいと思います。
  103. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 船員制度近代化の柱につきましては、実は私は二つあると思います。一つはやはり船員の職場の確保の問題と、もう一つ船員の社会的地位の向上、この二つの問題だというふうに思っております。  最初の問題につきましては、実は十年ほど前まではわが国の用船比率、わが国海運が支配いたします船腹のうちの外国用船の比率はわずか一五%程度であったわけでありますけれども、いわゆる日本船国際競争力の低下という事態がこの十年間に非常に進みまして、最近は四八%ぐらいまで上がってきた。簡単に申しますと、日本の支配船腹のうち半分は外国人が持っていた外国船だ、その中にはマルシップ便宜置籍船も含んでおりますけれども、そういうような状態になってきたわけでございます。これをそのままほっておきますとその用船比率がどんどん増加してきまして、日本船の方が逆に二〇%あるいは一〇%というふうな低率になってしまうおそれがなきにしもあらずだというふうな感じがいたします。この点につきましては、海運造船合理化審議会の方でも、そういう観点から日本船をもっとふやさにゃいかぬじゃないかという点が非常に強調されておりますけれども船員の立場に立ちましても、日本人の優秀な船員の働く場所がなくなるというようなことに危機を感じまして、五十二年から船員制度近代化をやろうということで官公労使が一つの場に着きまして、いろいろとやってきたわけでございます。  端的に言いますと、従来二十数名あるいは三十数名乗っておった船を十八名で動かそう、そのための実験をしてみようというようなわけでありますけれども、たとえ一船別の乗組員の数が減りましても、そういう船が日本の船腹の中でウエートを増していけば、あるいはさらに申しまして国際的な、国際海運の中で日本人の運航する日本船舶のウエートが増すということになってくれば、結局船員の職場の確保につながるわけでありまして、このままほっておきますと、じり貧でだんだん日本船員の働く場所がなくなる。ここらあたりで何らか乾坤一てきの措置を講じざるを得ないのじゃないかというのが船員制度近代化一つの柱でございます。  それから第二番目の柱は、船員地位の向上ということでありますけれども、実は私は従来、従来と言いましても近代的な船員制度が始まったころは、やはり船員の社会的地位というのはもっと高かったと思います。もちろん、航空機がなかったことだとかいろいろあると思いますけれども船員というのはそれなりに一つの冒険産業の担い手として、かなり社会的な高い評価を受けておったのじゃなかろうかというふうに考えます。ところが、いろいろと機器の近代化に伴いまして、あるいは航空機の発達とかその他もろもろの交通機関の発達に伴いまして、社会的にそういう点で徐々に忘れられてきたといいますか、社会的な評価が落ちてきたのじゃなかろうかと思います。ここらあたりでそういう点を改革しなければいかぬだろう。その具体的な事例といたしまして、最近船員になり手がなくなってきた。非常に希望者が減ってきた。海員学校とか商船高専もほとんど希望者が定員に満たないような状況でありますけれども、そういう点をやはり何とか改革して、もう一回船員になり手のある、非常に働きやすい希望の職場にすべきじゃなかろうかというふうな考え方があるべきだと思います。  そういう観点から、船員の仕事の内容を変えまして、甲板部の仕事も機関部の仕事も、あるいはさらに将来には事務とか通信の仕事も全部やれるような、非常に船員の職場が高度な技術的な仕事なんだ、高度な技術集団なんだというふうな職場にすることによって社会的な目がもう一度船員に向いてまいりまして、そうすることによって若者もまた海に戻り、船に戻ってきてくれるような状況がつくれるのじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。  以上申し上げましたような船員の職場の確保ということ、それから船員の社会的な地位のレベルアップというこの二つが、私は船員制度近代化の大きな柱だろうというふうに考えております。
  104. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ただいまのお話、職場の確保並びに地位の向上、特に社会的地位の向上ということが大きな柱であるということを言われたわけでありますが、船というのは非常に長い歴史の中で今日まででき上がっておるわけでありまして、船員制度も、そういう非常に長い歴史の中から今日の制度があるわけであります。しかしながら、実際にいまお話がありましたように、新しい時代の最先端を行くようなものもまた船であります。そういう点からいきますならば、こういうものは常時そういう新しい時代に即応できるような体制、絶えずそういった体制をつくるようにしていくべきが至当かと思うわけでありますが、そういうものが今回一つ条約批准契機に、長い歴史という経緯の中で取り組もうとされておるんじゃないかというふうに私は受けとめるわけであります。  したがいまして、そういった点からいきますならば、今回ここに出されているものは、非常に長い間の船員制度という歴史的な制度の改革でございますから、そういう意味では慎重にやらなければならないという面もありますけれども、とりあえず今回の法改正というそういう意味では、これによってすべてが解決するという問題ではなしにまだまだ一歩踏み込んだものだ、そういうような形にようやく入っていくというふうに今回の改正を理解していいかどうか、その点いかがでしょうか。
  105. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、実は近代化をやりますときに、この近代化委員会で実験船というものを指定いたしまして、特に近代化の進んだ船を十四隻指定いたしまして、その十四隻で具体的に十八名による運航が可能かどうか、危険ではないか、あるいは船員の労働過重にならないかどうかという点を十二分にチェックしてきたわけでございます。したがいまして、そういうふうな近代化された船につきまして、特にこの新しい船員制度を適用していこうというのが現在の法改正趣旨でございます。したがいまして、在来船、そういう近代化されていない船、いわば古い船につきましてはこの新しい制度は適用されないようにしてございます。  具体的な点につきましては、船員法の七十二条の三で、運輸大臣がそういう具体的な新しい近代化船としてその船を指定することになっておりますし、それから船舶職員法の第二条の三項につきましても、運輸大臣の確認する船についてのみそういう制度を採用するということでございます。  ただ、船というのはいわば漸次近代化されてリプレースされて、古い船はスクラップされて新しい船ができてまいりますので、そういう近代化船は徐々にふえてまいろうと思います。それと同時に、また、いまでは考えられない新しい船も出てくると思います。  それから、いままで実験をやっておりますのは三等航海士、三等機関士までの段階でございますし、これから三等航海士、三等機関士よりもさらに上級の二等航海士、二等機関士の方までも、機関部甲板部両用の研究あるいは実験を続けていっていただくことになっておりますので、御指摘のとおりに、現在の状態がそのまま固定されたものではなく非常に流動的なものでありまして、これから船員制度近代化の程度も進んでいくと存じますし、船の量も徐々にふえてまいるというふうに考えております。それに応じて私ども、適宜その近代化の進展状況に応じていろいろとそれなりの体制をとってまいりたいというふうに考えております。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕
  106. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 その点では理解するわけでありますが、非常に危惧する面といたしまして、もちろん今日の船の状況からいって、日進月歩いろいろと新しい技術が取り入れられてどんどん近代化していくわけであります。そういう中におきまして、いま現在、実験船十四隻を指定してそれでやっているのだということでありますが、本当にそういう実験船に相当するような新しい設備の船でなしに、若干の技術革新による何か新しい技術を導入したということを一つの理由にして、そういう実験船的な考え方の枠を拡大していく、そういうことで十八人の人員で何とかやっていこうということは、ある逆な意味で拡大されていくという懸念も実はなきにしもあらずというふうに思うわけです。したがいまして、そういう点ではぜひひとつこの特例措置といいますか、実験船に対して十八名で乗り組んでやっていこうという船の指定については、より厳密に運用をやってもらわないことには、完全なそういった実験船的なものがないにかかわらず、逆に人員だけが削減された中で運航をやらざるを得ないという状況になるのではないかという不安がまだ一面ありますので、その点に対する何か御見解がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  107. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 その点につきまして私どもも十二分に注意をしておりまして、具体的に申しますと、新しい船員法に七十二条の三という条文を設けまして、「船舶の設備、甲板部及び機関部の部員で航海当直をすべき職務を有するものの要件及び定員その他の事項に関し命令で定める基準に適合する船舶」として、運輸大臣の指定する船舶ということを具体的に書いてございまして、そういう非常に恣意的な船員近代化制度の適用をやっていくことがないように配慮しております。特に、運輸大臣がそういういわゆる近代化船を指定いたしますときには、その基準を非常に厳しく決めまして、その基準は、近代化委員会とかいうようないろいろな労使の御意見を十二分に尊重した上で決めまして、その基準に従って運輸大臣がその船を個別に指定していくというふうな体制をとってまいって、いま先生御指摘の安易な適用によることをやっていかない、そうすることによる海難の増加のおそれもございますので、そういう点には十二分に注意してまいりたいと思っております。
  108. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、近代化推進についてはこれからも引き続きずっと取り組まれ、研究され、推進をされるわけであろうかと思いますが、これからの取り組みとして、今日まで船員制度近代化ということで局長の私的諮問機関があって、そういう官公労使それぞれの代表者の人たちの中でこれらの制度の推進についての研究その他が行われたというふうに聞いております。そういった考え方で、これからも船員制度近代化の作業が終了するまでは、そういうそれぞれの代表による機関の中で取り組んでいくということで確認しておいていいかどうか。  それからあと一つは、先ほどもお話がありましたように非常に重要な問題でございますので、そういったそれぞれの代表が参加するような審議機関は、一つの単なる局長の私的諮問機関じゃなしに、何らかの形の公的なものの中で考えていくべきじゃないかというふうなことも考えられるわけであります。たとえば海上安全船員教育審議会か何かあるようであります。そういう機関の中の一部会とか、そういう中に一つの公的な機関をつくってこれらを推進するということについてはどのようにお考えなのか、この二点についてお尋ねいたします。
  109. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先ほど来、局長から御答弁申し上げているとおりでございますが、私といたしましては、ただいまの委員の強く御要望になっていらっしゃいます公労使の三者構成による委員会の運営並びにその出た結論というものに対しては、常時これを十分に尊重してまいりたいと思いますし、またこうしたことを今後も続けていかなければ、きわめて歴史の古い現在の船員法そのものの改正、そしてまた言うならば日本海運事業そのものが、ここで大きく日本のためにも役立つ方向に動くということのきわめて重要な諸点を考えますれば、ますますそうしたことには慎重に対処していかなければならないというふうに考えておるところでございます。  なお、委員会を新たにつくるということ、審議会を新たにつくるということは、御承知のような現在の臨調のいろいろな制約もございます。ただいま御指摘の委員会局長の私的諮問機関というわけではございますけれども、しかし、所属はそのようになっておりましても、われわれといたしましては最も重要な委員会であり、またその出た結論は最も重視していかなければならない委員会あるいは審議会であるという認識を持って対処してまいりたいと思っております。  なお、今後の事態の変化の中で、局長の私的諮問機関という性格では弱いというような事態があれば、その時点において十分考慮してまいりたいと思っております。
  110. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次にお尋ねしますが、今回のこういう改正によりまして、一つ船員制度近代化のための推進ということで行われるこの実験船といいますか、こういったものは、STCW条約が発効するわけでありますが、これを守っておれば諸外国の港においてSTCW条約違反だということで問題になる、こういった懸念はないのかどうか、これは国際的にも問題ないということではっきり言えるのかどうか、その点若干、関係者の中には一抹の不安がございますので、この点についてお尋ねいたします。
  111. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 今回のSTCW条約につきましては、船舶において当直する職員、そういう職員につきましては、十分な知識、能力、経験を必要とするというふうないろいろの細かな要件が決められておりまして、その職員がそういう条約に決められておるとおりの要件を満たしておるかどうかということは、船舶を登録しております国の政府が発行する証明書にその点を裏書きせいというふうな規定STCW条約にございます。  したがいまして、私どもは、今後この条約批准され、この法律が施行されますと、現在の海技免状の中に、この船員STCW条約が要求しておる知識、能力、経験等の要件を十分満たしている者であるというふうな証明の判こを押そうと思っております。これはもちろん英語でやるわけですから、各外国へ出ましても、その免状外国官憲に見せますと、これはSTCW条約を満たしておる職員なんだなということがわかると思います。  それから、船員制度近代化に伴いまして運航士という新しい職種が出てくるわけでありますけれども、この点につきましても、甲板部機関部、両方の仕事をするというふうな状態のもとに、従来なら、たとえば機関の一等機関士の免状を持っていながらデッキの当直に立っておるということは、STCW条約に違反するおそれがあるわけでありますけれども、新しい運航士の免状の裏にも、この者は正当に甲板部機関部、両方の当直をし得る者であるという政府の証明書として判を押したい、こうすることによりまして、外国からのそういう官憲から取り締まられるのを除去し、トラブルを防止するようなことはできるだろうというふうに思っております。
  112. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、先ほどの方にちょっと戻りますが、今回この近代化推進の実験船として適用指定を受けていく船舶の指定をする場合における基準、そういうものについては、たとえば先ほど話があっておりました船員制度近代化委員会のようなところでの合意基準をつくり、そういうものをもって適用するというふうにするのかどうか、そこらあたりの考え方についてお聞かせいただきたいと思います。
  113. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 近代化船の指定基準は、私どもは、具体的には船舶の設備基準とそれから陸上支援体制の問題、この二点を考えております。  そのうち、船舶の設備基準につきましては、現在十四隻の実験の際に近代化委員会でもうかなり御検討いただいておりまして、実は二十項目程度すでに決められております。  具体的に申しますと、機関の遠隔操縦装置あるいは集中監視装置、異常警報装置だとか、あるいは燃料油、潤滑油及び冷却水の自動温度制御装置だとか、あるいは電源の自動制御装置、火災探知装置あるいは機関運転の諸元の自動記録装置だとか、あるいは荷役機械の動力駆動装置だとか、あるいはウインチの遠隔操縦装置、それから荷役の遠隔制御装置、バラストタンクの遠隔制御装置、衛星航法装置等々、いろいろそういうような、いま具体的に申し上げたわけでありますけれども、設備基準をつくりまして、そういう設備をしておる船が近代化船なんだ、そういう設備を持っておる船は、運輸大臣が一船別に指定していくよというような基準を決めたいと思っております。これは改めて船員制度近代化委員会あたりで御審議いただき、さらにいろいろと関係の審議会、委員会あたりに御相談しながら決めていきたいと思っております。  それから、もう一つの陸上支援体制といいますのは、これは乗組員が少なくなりますと、非常に忙しい入出港時の業務につきましては陸上からの職員の応援ということがやはりどうしても必要になってまいります。そういう点で、そういう点につきましてもやはり何らかの基準を決めたい。ただ、その陸上支援体制の基準といいますのは、港の事情によりまして、あるいは船の事情によりまして、航路の事情によりまして、それぞれ非常に区々ばらばらでございまして、いま申し上げましたような船舶の設備基準のような形での詳しい基準づくりというのは、非常に困難な事情でございます。したがいまして、陸上支援体制の基準は、船舶の設備基準と比較しまして幾らか抽象的な基準にならざるを得ないと思っておりますけれども、そういう点につきまして決めたい。いずれにしましても、官公労使の意見を聞きながら慎重に決めてまいりたいと思っております。
  114. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 いまのお話の中で、特に陸上の支援体制、これは確かに港のそれぞれ置かれている条件が違いますから、画一的なことはなかなかできないでしょうけれども、しかし、そういう陸上支援体制があるということが前提で当然これはやられるわけでありますから、その陸上支援体制というものは一体いかなるものかについても、できる限り明らかにできるものは明らかに示してもらうということをぜひひとつ検討していただきたい、かように思います。  それから次に、こういった特例規定に適用されない一般船舶ですね、そういうものについては従来どおりの資格制度の中でそれぞれ運航されるというふうに理解していいかどうかですが、この点、いかがですか。
  115. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 御指摘のとおりでございます。従来の在来船につきましては、現在の船舶職員法でも配乗別表が決められておりまして、それにつきましては条約批准のために必要最小限度の修正はいたしますけれども、基本的な内容は変えるつもりはございませんし、従来どおりの配乗体制、乗り組み体制でやってまいりたいと思っております。
  116. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、このSTCW条約批准することで非常に国際的な海運の秩序を乱していると言えばちょっと語弊があるかどうかわかりませんが、国際海運の秩序を乱しておるような、ああいったマルシップ船または便宜置籍船、こういったものがかなり規制されていくことになるわけであります。そういったこと等を考えますならば、今回特に旗国主義に基づいてこれからの運用を行う、こういうことになるわけでありますが、そういう旗国主義で厳格な運用をするという考え方の中で、従来の海技免状についての考え方はどうなのか、その点についてのお考えをひとつお示しいただきたい、かように思います。
  117. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 実は、海技免状の点につきましては、各国にかなり自由に決定を任されておりまして、条約にはそれぞれ必要最小限度の教育すべき項目、たとえばレーダーについての講習をやれとかあるいは消火についての講習をやれとか、そのほか、いろいろと事細かに条約には書かれております。ただ、具体的にそれの試験をどういう形でやるかということにつきましては、各国の自由にかなり任されてございます。  現在、海技免状は、わが国におきましては、航海科につきましては甲種船長から丙種航海士、機関科につきましては甲種機関長から丙種機関士まで八階級に分けております。通信士につきましては、甲、乙、丙の三階級に分けております。ただ、これは条約とは関連ない事態でございますけれども、八階級にも分かれておるのはちょっと分かれ過ぎじゃないかというような点。それからまた、甲、乙、丙とか一級、二級とか、いろいろとわかりにくいような表現というのは、これは国民一般にとっても非常に通用しにくいのじゃなかろうか。特に甲種二等航海士と乙種船長というのは、どちらがその資格として上なのかというような点につきましては、一般の国民の方々は、どうも船長という名前がついておるから乙種船長の方が上じゃないかというふうな御理解をいただいておるようでありまして、特に外国なんかに行きましても、乙種船長というのはキャプテンというふうな翻訳もしておりますので、キャプテンという名前がついておる以上は、甲種二等航海士あるいは甲種一等航海士よりも上級の職だろうというふうな誤解も生ずる原因になっておりまして、その点、やはり船員制度近代化に伴いまして、そういう名称もひとつ新しいものにしようということから、今回の船舶職員法改正で「甲種船長」を「一級海技士(航海)」とかあるいは「甲種機関長」を「一級海技士(機関)」というふうな形で、一級から六級までに整理したような状況でございます。  この点につきましても、いろいろと船員の方々の御意見を聞きながら、大方の賛同を得ましたので、この機会にそういう資格制度もひとつ新しいものにして、新しい気分で船員地位の向上を図って前向きに進んでいこうというふうな方向で進み出したものでございます。
  118. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 あわせまして、従来からこの海技免状については、外国免状等なんかと比較すると、わが国とかなりレベルが違うということで、外国免状は、わが国としては認定していないというように承っておるわけでありますが、その考え方はこれからも変わりはないのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  119. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 国によりましては、たとえば英語圏の国だとかあるいは特定のそういう欧州のような国につきましては、お互いに二国間の条約を結びまして、相互にその免状の互認制といいますか、それを認めている場合がかなりあると思います。ただ、わが国の場合は、海技免状の試験を日本語でやるとかいうようなこともございまして、非常に特殊な言葉を使っております。それを一挙に、外国の英語で免許を取った方々との相互互認制を認めるということは、やはり船舶の安全上、特に日本の港に入ってきたときには、日本の側がいろいろと日本語を使っておりますので、日本語を理解しない外国船員にそのまま日本法律を理解させるということも非常に困難がございます。それがそのまま、また船舶の安全にも絡んでまいりますので、現在のところ、そういう互認制というのはとっておりません。外国人がどうしても日本免状を欲しいというときには、改めて日本語で日本海技免状を取っていただく、日本の試験を受けていただく、日本人と同じ場で同じ試験を取っていただくというふうな制度を採用しておるわけでございます。  今後ともそういう制度につきましては、よっぽどの事情の変更がない限り、できるだけそういう制度は維持していかざるを得ない。国際的にいろいろとそういう場合の相互互認制が問題となる場合があると思いますけれども日本語という非常に特殊な言葉でいまやっている関係上、事実問題としてもなかなか無理でございますし、今後ともそういう互認制を認めることは非常に困難だろうというふうに考えております。
  120. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、運航時の航海当直体制について一、二点お尋ねいたしますが、航海の十分な安全を確保されるということで、条約趣旨から考えましても、本来、海技免状を所有している船舶職員が直接この航海当直の任に当たるということが、STCW条約の内容からいきましても、またIMCOの安全な配員の原則に関する勧告というようなことからいきましても、これはぜひ守らなければならないことだというふうに思いますが、これからのこういった問題については、行政としてはどのようにお考えなのか。当然これは、本来的に海技免状を所有している人がただ船に乗っているということじゃなしに、やはり当直のそういう業務に従事するということが一番大事なことじゃないかと思いますが、この点についての御見解を承りたいと思います。
  121. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 御指摘の点は、航海当直を部員にさせるのよりも、やはり職員にさせるべきじゃないかというような点だろうと存じますけれども、現在の船舶職員法の配乗内容は、一応航行の安全という観点から必要最小限度のものを決めておるわけでございます。ただ、それ以上の点につきましては、これはいろいろと就業規則とか労働協約によってプラスアルファの措置がとられておるのが現状でございます。また、こういうふうな観点から船舶職員法の基本的な考え方としまして、航海当直は一応船舶職員またはその監督のもとに経験ある部員が当直をやるんだというふうな基本的な考え方をとっておりまして、船舶所有者の方もそういうふうな観点からいろいろと定員を決め、配乗をさせておるわけでございます。
  122. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 その点、やはりそういった資格のない人が当直の実際の業務に当たるということは、ある意味においては無資格の運転ということにもなり、私は、そういったことは安全上、非常に好ましくないことじゃないかと思うわけでありますが、そういう意味では、やはりもう少し踏み込んで、そこらあたりをきちっとしないことには、せっかくの条約趣旨に反するようなことになるのじゃないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  123. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 当直のやり方につきましては、条約の方も、部員の単独当直はいけないというふうなことを規定しておりませんで、部員の単独当直が可能だ、あり得るんだという前提の書き方をしてございます。私どもの方は、そういう点で職員が、一応原則は職員であるけれども、いつでも職員監督指導できるような体制のもとに部員が当直に立つというような形で、できるだけ先生の御指摘の点については配慮しながら規制しておるような状況でございます。
  124. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 職員監督指導できるような体制を十分考えながらということでありますから、その点は要員の中において、どのような実際的な配置になるのか、そういった全体を見ないと何とも言えませんけれども、ただ、そういった者が一人でもおればそれですべて事足りる、そういうことであってはいけないと私は思いますので、その点、特に慎重にひとつ御指導をよろしくお願いしたいと思います。  次に、今回これを批准することによりましての新しい監督体制の問題であります。それぞれのこういった船の関係の諸法令に関する監督といいますか、そういったものは船員労務官または海上保安官がその任に当たっているということのようでありますが、こういった現行の体制のままでこれからの新しい状況の中における適切な監督や指導が果たしてできるのかどうか、そういった一つの危惧がございます。まして、今回こういった条約を導入することによって、外国船監督するような状況にもなるわけでありまして、そういうものを含めますと、早急にこの監督体制の強化拡充ということが不可欠なものだと私は思うわけでありますが、その点に対してはどのような対策が講じられておるのか、その点をお伺いいたします。
  125. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおりに、今回の法律改正によりましてあるいはSTCW条約批准によりまして、船員労務官の職務というのは従来以上に重要になってまいります。従来からも私ども、事ごとに船員労務官の質の向上というのを図ってまいりました。たとえば昭和三十九年の通達の改正によりまして、従来から兼務であったものを労務官の専任制度に変えてみたり、あるいは船員労務官の選任基準を高等学校、大学卒業者に限り、しかも一定の船員の保護の業務に一定期間従事した者でないと選任できないような制度に変えてみたりいたしました。要は、やはり先生御指摘のとおりに、船員労務官の質を向上させると同時に、量をふやすということがこういう監督体制の強化のためには必要だと思います。  したがいまして、今後とも、いま申し上げました船員労務官の質の向上には十分注意したい。特に今回、外国船監督が必要になってまいりますので、英語の教育の強化ということを図りたい。五十七年度におきましても、そういう観点から特に英語の講習のための費用をお願いいたしまして強化していきたいというふうに考えております。  それから、量の強化の点につきましても、私ども従来から徐々に船員労務官の量はふやしてまいりましたけれども、何せいろいろと定員法の関係で一挙に船員労務官の数をふやすわけにもまいりませんで、非常に微々たるものではありますけれども、ふやしてまいりました。特に五十七年度におきましてもそういう観点から、現在百二十六名の労務官の体制でやっておりますけれども昭和五十七年度はプラス二名増員してもらいまして、予算的には現在御審議いただいておりますけれども、百二十八名というふうになるように措置してございます。なお、もちろん百二十八名でも、これだけの船舶の安全あるいは労働基準の保護を図っていくためには少々不足でありまして、これからも徐々にできるだけふやしてまいりたいと思いますし、それから海上保安官の御協力を得まして強化を図ってまいりたいと思います。特に今後、この法案の御裁可をいただきました暁には、海上保安庁とよく連絡をとりまして、この法律の内容をよく海上保安官の方にも御理解いただいて御協力を賜りたいというふうに感じております。よろしくお願いいたします。
  126. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、時間が余りございませんから主な点だけを申し上げますが、今回の条約の国内法導入に伴いまして、タンカーにつきましても、安全上の観点から一定の経験と講習が義務づけられるというふうに承っております。そういう意味で、船長、機関長または一機等についての講習はどのような形のもので行おうとしているのか、どういう形で実施しようとしているのか、その点をお尋ねいたします。
  127. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 このSTCW条約自体が、トリーキャニオン号という二十万トンタンカー事故契機にして制定されたということもありまして、非常にタンカーを重視してございます。  現在、わが国におきましては、タンカーに乗ろうが貨物船に乗ろうがあるいは旅客船に乗ろうが、そう乗組員の資格に差がないわけでございます。きょうタンカーに乗っていましてもあすすぐ貨物船に乗れる、あるいはあさってすぐ旅客船、フェリーに乗れるという状況でございますけれども、この条約批准いたしますと、条約ではかなりタンカー乗組員の要件を加重しておりますので、そういうわけにまいりません。  したがいまして、私どもも、その条約批准する以上はタンカーに乗り組む乗組員の資質を向上させなければなりませんので、座学と消火実習という二つの制度を採用することによりまして、船員の資質の向上を図ろうと思っております。  座学につきましては大体三日間程度の制度を採用しまして、いわゆる油類の講習、それから船舶タンカーの構造、設備等の講習、それから爆発の発火のような状況についての知識経験、それから燃焼の過程とそれに対する消火方法の問題、それから災害防止の問題、それから海洋汚染防止措置の仕方、それから保護具あるいは検知器具の取り扱いの問題、それから船員労働安全衛生規則とか危険物船舶運送及び貯蔵規則、あるいは海洋汚染関係法令等、もろもろの関係法令の点についての講習をやりまして、タンカー乗組員にふさわしい知識を与えようというように考えております。  それから、もう一つは実習でございますけれども、具体的に油を燃やしましてその消火の訓練をやっていただく。実は火というのは非常に恐怖感がありまして、火を見るだけで逃げてしまうというふうな場合が非常にありますので、消火に適任な乗組員を養成いたすためには、具体的に火を消す練習をしてもらいまして、火に対する恐怖感をある程度除去することが必要でございます。したがいまして、消火実習をしてもらうわけでございますけれども、場所といたしましては、現在のところ、東京湾の第二海星だとか苫小牧、舞鶴、呉、佐世保あたりを考えておりまして、できるだけ船員にとっても講習を受けやすい場所を徐々にふやしていきたいというふうに考えております。  そういうふうに座学と消火実習の両面から船員の資質の向上を図りまして、タンカーに乗り組む船長以下の乗組員の資格を充実してまいりたいというふうに考えております。
  128. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今回STCW条約の導入によりまして、海技免状の取得、航海当直部員の要件タンカー乗組員のそういった講習、そういったいろいろな要件資格を取るための講習が条件になってくるわけでありますので、御要望になりますが、これらの講習を受ける受講者の便宜を十分考えていただいて、広く施設を活用するような方法もぜひお考えいただきたいということを特に要望として申し上げておきます。  それから、今回の法改正では、具体的事項につきましてはほとんど政令または省令によって定められることになるわけでありますが、これらの改正された事項を本当に円滑に実施に移していくために、そういった政令や省令等を定める場合には、たとえば先ほどからありました近代化委員会または関係の審議機関に諮りながら十分検討をいただいた上で、政令、省令を定めていくという考え方なのかどうか、その点のお考え方があればお聞きしたいと思います。
  129. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 御指摘のとおり、これから条約批准それから近代化のために政令、省令を決めていく必要がございますけれども、その際には十二分に公労使の意見を尊重してやってまいります。
  130. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 次に、船員災害関係について二、三点お尋ねいたします。  これは先ほどからも論議が出ておりましたが、陸上関係に比較いたしますと海上関係については、労災面については非常に取り組みがおくれておったということが私は指摘できると思います。したがいまして、陸上におきましてはいち早く労働安全衛生規則等も法律で制定されておったにもかかわらず、海上という特殊性もあったかもしれませんが、そういった意味においては非常に取り組みがおくれておったわけでありますので、そういう点で今回、このような形に取り上げられてきたということは非常に大きな、一歩前進だと思って評価するわけであります。先ほどからも災害の実態の報告がちょっと局長の方からありましたが、なぜ船員といいますか海上関係については、陸上に比してこういうふうに非常にスタートから立ちおくれておったのか、まず第一にそこらあたりの認識をしっかりしておかぬことには、この問題のこれからの審議にも、これからどう推進するかということについても一つの大きなあれになると思いますので、陸上だ比較して非常に特殊なものであるということは承知しながらも、陸上と比較した場合に余りにもこの種問題についてはおくれておった、そういった要因は一体どのようにお考えなのか、その点をまずお尋ねいたします。
  131. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 船員の災害の発生状況は、陸上と比べまして、たとえば死傷発生率が、陸上につきましては千人に対して九・五人であるのに、船員の方は二十六・五人というふうな高い率にあることは、確かに先生御指摘のとおりでございます。ただ、船員は、陸上全産業と比べますと確かに高うございますけれども、その他の、たとえば陸上でも建設関係あるいは石炭鉱業とかいう鉱業関係あるいは林業、そういう関係はかなり高うございまして、船員並みあるいは船員よりもっと高い業種もございます。そういう点を考えてみますと、やはり船員職場というものは、危険性という点につきましては、陸上では鉱業だとか建設業だとか港湾貨物取扱業あるいは林業、そういう種類に等しいような危険性のある産業だというふうな感じがいたします。  その上に、さらに陸上にないことについては、船員につきましてはいわゆる海難ということが、これは海上を航行する以上は、われわれ非常に努力していろいろとその減少を図っておりますけれども、まだ絶滅を期し得ませんで、海難がかなり多い。そのために、さらに死傷発生率が陸上に比べまして高まっておる。繰り返しますと、いろいろと危険作業がある上に、さらに海難があるために、陸上の一般産業に比べて船員はかなり死傷発生率が高くなっているということが言えると思います。  その点でわれわれ、船員法で、これは船を単位といたしまして、船員の労働安全衛生とか災害の防止をいろいろ図ってまいりましたけれども、それだけではやはりちょっと不足で、特に最近は死傷発生率が下げどまりだということもありまして、これは何らかもっと強化策を講じなければいかぬだろうということから、今回、そういう反省の上に立って船員災害防止協会等に関する法律改正いたしまして、陸上の本社組織すなわち船会社の本社組織でも、もう少し船員の海上の労働安全衛生問題、災害防止問題を遺漏ないように検討していただこうということから今回の法改正に至ったわけでございます。
  132. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 船員の場合における労働環境というのは非常に多種多様でありますし、大型船から遠洋漁業、北洋漁業等のああいった漁船等までいろいろと環境も違うわけでありますが、そういうことであればあるほど、こういった安全衛生問題についてはもっともっと公的にも整備、確立していかなければいかぬのじゃないかという気がするわけであります。  そういう点で、船員労働安全衛生規則船員労働安全衛生法という法律に引き上げていく中で整備を図る、そういう考え方にはなぜ立てないのか、その点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  133. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 陸上の方は、御指摘のとおりに労働安全衛生法という法律があります。それに対しまして私どもの方は、同じような労働安全という名称を使っておりますけれども法律じゃございませんで、労働安全衛生規則というものを設けております。この労働安全衛生規則というのは船員法に基づく省令でありまして、船員法自体は船舶の安全ということを中心船舶単位に物事を考えております。それは、やはり陸上との一つの差がございまして、陸上では事業所自体が、たとえばある日突如としてなくなるということはございませんけれども、船につきましては、いま申し上げましたような海難という事故がありますので、まず、職場と労働の場が同じであるそういうところの安全を図らなければいかぬという観点から、船員法はかなり詳しくいろいろと規定しておるような次第でございます。  したがいまして、そういう観点からわれわれの方も労働安全衛生規則を決めまして、船自体の運航の安全ということの絡みで考えておるようなわけでございます。ここが陸上の労働安全衛生法との抜本的な差でございまして、そういう点が陸上の労働安全衛生法をそのまま海上の労働安全衛生法にできなかった大きな原因でございます。  なお、陸上の労働安全衛生法の方は、御案内のとおりに、いろいろの種類の業種につきまして非常に細かい安全衛生規則になっておりまして、これは陸上産業がいろいろの業種から成り立っておるということの一つの大きな原因だと思いますが、船員の職場というのは、それに比べますと非常にコンパクトな、総合的な一つの職場という形になっておりますので、私どもは、現在のような船員法体系で処理するのが一番やりやすいし、船舶の安全も、さらに船員の労働安全衛生も図れるのだろうというふうに考えております。ただ、先ほど申し上げましたように、本社サイドのいわゆる労働安全衛生面に対する意識革命がもっと必要であろうということから、今回、船員災害防止協会等に関する法律の一部を改正いたしまして、そういう点を新しく取り入れたわけでございます。
  134. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 具体的な問題でお尋ねしますが、危険作業といいますか高所作業ですか、これは陸上においては二メートル以上は高所作業という規定があるわけですが、船内作業においては五メートル以上ということで、違うわけです。それは必ずしも同一にすべきかどうか、いろいろ議論はありますが、いずれにしても、陸上で二メートル以上を高所作業と一応規定しているにもかかわらず、船は何で二倍以上の五メートルというふうにしたのか。まあ落ちるところは海だからいいと言えばそれまでですけれども、船でも、いま大型指定も十何メートルの高いところがあるわけでありまして、そういう点からいきますと、この数字の根拠というのはちょっと説得性がないのじゃないかという気がするわけですが、その点いかがですか。
  135. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 御指摘の点は、労働安全衛生法では高所作業は二メートルにしておるのに、船員の労働安全衛生規則では五メートルで、平仄が合っていないじゃないかという点でございます。  この点につきましては、実は労働安全衛生法の改正以後、私ども船員労働安全衛生規則改正の機会がなかなかございませんで、そのままになっておるわけでありますけれども、そういう点は今後できるだけ早急に、この法律改正を機会に船員労働安全衛生規則改正というのが当然出てまいりますので、そこで十二分に検討して配意していきたい、こういうふうに考えます。
  136. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 いまこの機会に、いろいろそういった問題についても今後取り組みたいというお話でございましたが、船員労働安全衛生関係につきましてはこれからももっと永続的にひとつ取り組んでいただいて、早くそういったいろいろな整備をしていただかないと、ただ特殊な環境に置かれているというだけでは済まされない問題だと思いますので、その点はぜひひとつ早急に今後とも見直しを進めていただきたいということを特にお願いしておきたいと思います。  時間がありませんのであわせて御要望申し上げますが、今回のこれでいきますと、船長その他海技免許者の職員の人たちが、船内における規定に従った安全担当者ということでいろいろな仕事をやっていくことになるわけですけれども、やはりいろいろと船内における保守、点検、整備、そういった問題でそういう担当者、管理者としての仕事をされる場合におきましては、陸上と比較いたしまして、やはりそういう人たちが持たれておる資格といいますか、いろいろな技能的なものが陸上でも通用するような、もっと権威あるものに、これはもちろん大変でしょうけれども、そういうもののレベルをもっと高めていくような講習、教育等もやっていただきながらやらないと、ただ海技免許者の職員だからということで、安全衛生関係のそういった管理者に指定していくということではきわめて不十分だと思いますので、その点も今後の検討課題の中にぜひひとつ十分考慮していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  137. 宮崎茂一

    ○宮崎委員長代理 四ツ谷光子君。
  138. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私は、まず最初に、STCW条約批准に伴う国内法の改正部分は、船舶の安全を確保し、向上する上で一定の改善が図られており、また便宜置籍船事故防止対策上も、改正条項が有効に機能するならば一定の効果が期待できるものと考えております。  ところが、このたびの改正案は、この条約関連とはその目的も内容も全く異にする船員制度近代化のために、改正を一本にして提案しております。本来、この二つは別々に提案され、慎重に審議するべきものだと思いますので、まずその点を指摘しておきたいと思います。  まず最初にお聞きしたいんですけれども船舶職員法の第一条はどう述べられておりますか。
  139. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  今回の法律は、先生御指摘のとおりに二つの問題がございまして、一つは……
  140. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私の質問、聞いていなかったのじゃないですか。船舶職員法の第一条は何と述べていますかと聞いているのです。
  141. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 失礼しました。  船舶職員法の第一条は、「船舶職員として船舶に乗り組ますべき者の資格を定め、もって船舶の航行の安全を図ることを目的とする。」というふうに書いてございます。
  142. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 ただいま局長が読まれましたように、船舶職員法の第一条は、「船舶の航行の安全を図ることを目的とする。」というふうに明確に書いております。現在、配乗別表を法定しているのも安全を守るための一環である、私はそのように思います。それは、船舶に乗り組ませる船舶職員の定員を国会で十分審議をし、国民的立場から決めようということではないでしょうか。タンカー事故に見られるように、一たび事故が起こりますと船員はもちろん、国民の生命、財産にも被害を与え、海洋の汚染など大惨事になる危険性を持っているからです。国民の代表が集まっている国会で、船の航行安全を確保する上で必要な乗組定員を決めるのは、法律の目的からいっても当然なことではないかと私は考えるのです。  ところが、今回の法改正では配乗表を政令に落とす、こういうふうになっていますね。それは、国民的立場からの検討を避けよう、こういうことではありませんか。なぜ政令に落とすのですか。
  143. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 先生御指摘のとおりに、現在、船舶職員法は別表で船員の配乗規定、配乗表というものを定めておりまして、そこにトン数別にあるいは船長はどういう資格の者を乗せなければいかぬか、機関長はどういう資格の者を乗せなければいかぬかということを決めております。ところが、これはきわめて技術的な問題でございまして、あくまでも必要最小限度の最低基準でございまして、これ以上は船舶所有者と船員団体との話し合いによりまして、あるいは労働協約でさらにそれの上乗せをやるのは自由でありますけれども、一応最低基準として決めておるような次第であります。ただ、非常に詳細な表でございまして、すでにごらんのとおりに非常に細かなことを技術的にいろいろ詳しく書いてございます。これは国際的にもほかにほとんど例がございませんで、全部こういう具体的な表は政府の命令あるいは政令的なもので決めておるのが国際慣習でございます。     〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つは、実は今度、船員制度近代化という船員にとっては非常に画期的な制度で、これは船員の職場の確保とそれから船員地位の向上のために船員制度近代化をやっております。それは、労使の共同のもとに、いろいろ実験をやりながら新しい船員像というものを求めて、労使一致しながらやっておるわけでありますけれども、その結果によりましては、この船舶職員の配乗規定、配乗表というものが刻々新しい制度に変わっていくだろうと思われるわけでございます。  そういうことを踏まえまして、この際、そういう技術的な面を融通無碍に、労使の合意を得た段階で変えていけるような体制にしようということから、今回この現在、船舶職員法で決めております別表を政令で定めて融通無碍にやれるようにする。もちろん融通無碍と申しましても、恣意的に行政官庁がやるのじゃございませんで、労使の意見それから公益代表の意見を聞きながら、その意見を尊重して決めていくということでございます。
  144. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 この配乗表の政令委任に関しまして衆議院の法制局に検討してもらいますと、ある程度配乗表が複雑になることは考えられるけれども、法定のまま残すことは法律上可能であり問題ではない、こういうふうに言っているのです。法律的には法定のまま置くことが特に問題がないのに、なぜわざわざ政令に委任するのか、法定であればどのようにぐあいが悪くなるのか、その辺をもう一度お答え願いたいと思います。
  145. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 実は、この法律は非常に古くからあるわけですけれども、最近の法律を私ども内閣法制局の方へ伺いますと、最近の法律は、こういう技術的な問題はできるだけ政令にゆだねておるのが一般的な日本の法的な形だというふうなことでございまして、内閣の法制局の方では、私どものそういう説明に対して、十分の御理解、御同意をいただきまして、時代時代に相応し、それから使用者、労働者の御意見に即刻相応したような形で改正できるような体制をとっておくのが妥当な方法であるというふうな御理解をいただいたわけであります。
  146. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 私も法制局に聞きましたら、法制的に複雑になるけれども特に問題ではない、こう言っておるのですね。それで、その時代時代に応じて労使の関係でというふうなお話がありましたけれども、その辺もう一度おっしゃってください。その時代時代に応じて一体どうしようというのですか。その辺をもうちょっと言ってください。
  147. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 別表の点につきましては、実はこの別表は今度政令に落ちましても、表現がかなり変わってまいります。トン数制限のランク分けが現在かなり詳しいランク分けになっておりますけれども、それをもう少し簡素化するということと、それから資格の名称が現在、甲種船長から丙種航海士、機関部につきましては甲種機関長から丙種機関士まで八階級に分かれておるのを一級から六級までに整理をしたというようなこともありまして、それに平仄を合わせまして、現在法律で決めております別表が政令にゆだねられたときも、その点についてはかなりの、形式的なものでありますけれども改正点が出てまいります。  そういう点で、先ほど申しましたように、現在、船員制度近代化委員会というものがございまして、将来の理想的な船員像というものを仮設船員像として認めまして、そこを目標にしながら現在移行的な段階の船員像を求めて徐々に新しい実験をやり、新しい検証をやり、調査をやっておるような次第でございます。そして、現在の段階は、一応われわれA段階と呼んでおりますけれども、A段階の段階までは実験が済みまして、それをひとつ具体的な法律の形としてやれというふうな提言をいただきまして改正したものでございます。     〔委員長退席、宮崎委員長代理着席〕  したがいまして、これがさらにB段階、C段階に入り、それからまた、現在のところは一応B段階、C段階までしか決めておりませんけれども、これはまだかなり年月がかかりますので、C段階が済みますと、また新しい船員制度を求めて、いわば無限軌道的に船員制度改善というものがされていくものだろうと思います。そういう点で、現在の段階での近代化の実験はA段階でございますから、A段階までの実験を一応前提にこの職員法は決めますし、それからB段階、C段階に入ってきますと、当然また船舶職員法の別表も変わってまいりますので、このB段階にいくのがいつなのか、早ければ来年の終わりになるのか、あるいはことしの終わりになるのか、そう遠い将来ではないと思いますので、そういう点を前提に今回の法律を政令にゆだねたわけでございます。
  148. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それではちょっと伺いますけれども、頻繁に、刻々にと、ずいぶん表現があれですけれども、頻繁に、刻々に、そして無制限に変わっていく、だから今回配乗表を政令に落とすのだ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、ちょっといま御説明がありましたけれども、それではもう一度それを念を押したいと思うのです。  調査室がお出しになりました「船員法及び船舶職員法の一部を改正する法律案について」という冊子がございますね。それの六十八ページの「仮設的船員像」ですか、二番の「移行過程としての仮設的船員像」こういうので図示がされておりますね。そして、現在はA段階の実験をされた。そしてDPCの導入だとか三等航海士あるいは三等機関士のところにワッチオフィサーを導入する、そういうふうな実験をされた。そして、これがB段階に移って三等航海士のところはワッチオフィサーに変わる。さらに二等航海士、二等機関士のところもワッチオフィサーに変われるかどうかというふうな実験をやって、次にはC段階に移っていく、こういうことですね。ところがそのC段階も、一応C段階までということだけれども、それよりまだ変わるかもわからない、何年先かわからない、こういうことですね。そして刻々、頻繁にというのだけれども、これで言いますと、今回A段階の実験が済んで、で、法改正でしょう。次にB段階、C段階といったって、二回ぐらいしか変わりませんよ。それもその次、C段階から向こうにいくといっても、何年先かわからぬと言っているでしょう。何年先かわからぬようなことをいまの段階で政令に落としてしまうのですか、国会の審議を抜きにして。そういうことですか。いかが  です。
  149. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 いまの調査室でおつくりになられた資料の左側、六十九ページのところに「将来の目標としての仮設的船員像」というのがございます。これにおきましては、さらに「管理者」のところで、「航海・運用」「機関・電機」それから「電波・電子」というものが、上の方では管理者と一体になり、下の方では「運航・整備チーム」として一体になっております。右側の方の「移行過程としての仮設的船員像」というのは、そのうち航海、機関の部分、管理者の下にあります左側から「航海・運用」「機関・電機」の部分のみについての移行過程としての仮設的船員像が右側の六十八ページの図でございます。  だから、これはもちろん近代化委員会の進捗状況、これは私がリーダーシップをとるというよりも、むしろ近代化委員会の十五名の委員の方々でいろいろと御審議いただいておりますので、先ほど徐々にとかあるいはだんだんとかいうことを申し上げましたけれども、何年先とか何カ月先とか、私はここで申し上げるわけにまいりません。これはいろいろと官公労使が集まって議論していただいておりますので、そういうわけにまいりませんけれども、一応現在のところはA段階、B段階、C段階をねらって、それが完成いたしますと、さらにこの左側の「将来の目標としての仮設的船員像」の形をねらっていくということになるのだろうと思います。     〔宮崎委員長代理退席、委員長着席〕  しかもその仮設的船員像の方も、仮設的という言葉が仮に設ける的というふうに書いてございますけれども、これは本当に実験をやり、研究をやり、近代化委員会の中でいろいろと官公労使が議論していく過程で一応仮の姿、仮に設けた形としての船員像を置いたわけでございまして、あくまでも仮ですので、この仮設的船員像があしたにおいてもまた別の仮設的船員像に修正されるやもしれません。これはいろいろと近代化委員会の皆さん方で議論していただいている点でありまして、私が申し上げましたのは、あるいは無限軌道的にと申し上げましたのは、これは一応の仮設的な問題であって、したがいまして、将来この仮設的船員像がまたより新しい像を求めて、別の形でのさらに新しい仮設的船員像が設定されれば、その過程でまた右側の移行過程としての仮設的船員像の方も変化があり得るということを申し上げたわけでございます。  したがいまして、そういう点で臨機応変に近代化委員会の方でやっていただいておりますので、われわれの方もそれに広じた臨機応変の別表の改正ができるようにという配慮もありまして、それからもう一つは、こういう技術的な点につきましては、国際的にもほとんど法律じゃなくて命令のような形で決められておるというような点を配慮いたしまして、政令に落としたわけでございます。
  150. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いまの船員局長の御答弁から推察しますと、A、B、C段階の仮設的船員像、これからももっともっと変わっていく、今後とももっと合理化が進んでいくのだということがどうもあらわれているようですね。そうですね。  それじゃ、このことはまたもう一度後で御質問するといたしまして、今回の改正で、第二条の三項に示されています一から五、五通りの資格を持つ運航士制度というのが導入されるわけですね。これが配乗表にはどういう形で載るのでしょうか。わかりやすく、そして、大変恐れ入りますけれども局長の御答弁は懇切丁寧で結構なんですけれども、時間がございますので簡潔にお願いをしたいと思います。
  151. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 船舶職員法第二条に規定してございます運航士は、一応現在のところ、配乗別表の中では三等航海士、三等機関士のところに張りつけようというふうに考えております。
  152. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それでは、現在の配乗定員九名のところで、三等航海士または機関士のところに部員で運航士の資格を持った人が入れかわられた場合、船舶職員の定員は運航士を含めて九名ということがあり得るのか、または九名プラス一名、計十名ということがあり得るのか、どちらでしょうか。
  153. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 いわゆる部員から運航士に上がってきた人たちをどういうふうに取り扱うかという点は、これからまだかなり研究を要する問題でありまして、その点につきましては、現在考えている政令案にはまだ入ってまいらないと思います。現在のところは、三等航海士、三等機関士のところに運航士を採用する。ただ、将来、要するに現在の船員制度近代化の方向といたしましては、横といいますか、甲板部機関部との相互乗り入れといいますか、そういう点を中心にやっております。  それから、将来はそれをさらに上下の職員と部員との相互流用も非常に積極的にやっていくということから、当然将来は、いつの時点かはまだ申し上げかねると思いますけれども、部員と職員との相互流用という観点から、この配乗をいろいろと検討しなければいけないという事態も出てくるかと思います。
  154. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 これからの検討課題だというふうにおっしゃいましたが、私は、あなたのおっしゃる仮設的船員像じゃありませんけれども、仮に言っているわけですけれども、三等機関士、三等航海士のところに部員から運航士の資格を取った人が入れかわったとき、甲・機部員、いわゆる船員の方ですね、部員は定員六名ですけれども、それは五名というふうになるのでしょうか、それとも六名のままなのでしょうか。どうですか。
  155. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 その点につきましては、これから近代化委員会の中でいろいろと具体的な船で実験をやっていった過程でそういうことは出てくるやもしれないと思っております。そういうふうな実験の結果それが了承されれば、先生の御指摘どおりになる可能性もあると思います。
  156. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 そうしますと、了承されるとそういうふうに部員のところが減ってくることがあるかもわからぬ、こういうことですね。  その次に、職員で限定免状を持った人が配乗表に載った場合、航海士、機関士二名の定員が一名の定員に、言いかえますと、船舶職員九名が八名定員というふうになるのか。ここの「三等機関士」「三等航海士」のところが、いま機関士と航海士二名になっていますけれども、それがワッチオフィサーにかわりますと、そこのところはどうなりますか。
  157. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 その点につきましても、将来、実験がなされまして、実験の結果、船舶の安全上あるいは職員の労働上過重にならないというふうな結論になれば、近代化の御答申をいただければ、そういうふうな形になる可能性はあると思います。
  158. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 いまの局長のお話を聞いておりますと、まだ検討しなければならない点もあるようですけれども、これがどんどん進んでいくと、労使の話し合いがつけばというふうな言葉がちょっと言いわけ程度についていますけれども、どんどんと船に乗ってくれる人の定員を減らしていくということがどうも出てきそうな気配です。これほど大きな変化が将来にわたって起こりそうな今度の法改正におきまして、非常に大事な配乗表を、頻繁に、どう変わっていくかわからないというこれほど大事なことを、どうして国会の審議を経ないで政令に落とすのか。これは非常に大きな問題だと思うのですが、それはまたちょっと後で、まとめて局長の御意見を聞きたいと思うのです。  それに関連しまして、運航士の受験資格について御質問したいと思います。  運航士は限定免状で、現在、航海士や機関士の行っている航海当直などの任務につくことになるわけですが、現在、商船大学等の学卒者で一年間の乗船訓練、それから、部員から二等航海士になるのには四年間の乗船経験が必要とされております。またSTCW条約でも、航海当直に立つ船舶職員は最低三年間、特別訓練を受けた者でも一年間以上の乗船経歴が求められています。実験では、いままで乗船訓練は四カ月にしておられたのが、今度からの実験では六カ月に延ばすというふうに聞いておりますけれども、これをこのまま運航士の受験資格に横滑りさせたのでは、現行の海技免状要件条約の要求していることとの整合性がとれないというふうに思うのですが、その辺はいかがですか。
  159. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 運航士の資格条約の要求する乗船歴との関係でございますけれども、運航士になるためには、少なくとも航海当直限定あるいは機関当直限定とされた海技資格をまず取ってもらわなければなりません。ところが、そのような海技資格を受験するためには、一つの乗船履歴というものがまた別途要求されておるのでありまして、これは条約上の当直担当職員に関する要件とここで整合を図っておるというわけでございます。  具体的には、甲板部当直担当職員につきましては三年以上の期間、了承された海上航行業務を行ったことだとか、あるいは機関部当直担当職員については、その任務に関する承認された教育または訓練を、合計して三年以上の期間受けたことがあるというふうなもろもろの条件が条約に決められておりますので、そういう条約要件を満たした上で、別途運航士になるための船橋当直限定試験あるいは機関士当直限定資格の試験を受けていただくということになると思います。
  160. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 重ねて伺いますが、それでは運航士の受験資格につきましては、そうしたSTCW条約での資格要件を満たした上で受験資格をお決めになるのですか。その辺をもう一度おっしゃってください。
  161. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 先生の御指摘のとおりでございます。
  162. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それで、そういう受験資格をお決めになるのは一体どういう機関で検討をされるのですか。受験資格というのがまだはっきりしていないわけだから、法案が決まっても、すぐにどういう人をというわけにはいかぬわけですね。その辺はどこで検討しておられるのですか。
  163. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 運輸大臣の諮問機関といたしまして、現在運輸省に海上安全船員教育審議会というのがございます。その中に試験管理委員会というのがありまして、そこでそういう問題の基準を決めていただこうと思っております。
  164. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それでは、先ほどの御答弁にありましたように、特にこの受験資格につきましては新しい制度でもあるし、航海士、機関士の仕事が交わるわけですから新しい仕事になりますので、後から実験の問題についても御質問させていただきますけれども、いまの実験結果でも決して十分であるというふうな結論は出ていない。とりわけ、実験レポートで四カ月の乗船訓練だったのが六カ月になったということは、四カ月では不十分だということで六カ月になったのだと思うのです。ところが、六カ月でよかったかという結論はいまのところまだ出ていないわけでしょう。ですから、その受験資格を決めていただくにつきましても、STCW条約のそういう考え方を十分に入れていただきまして、受験資格について不適格であるというふうな結論が出ないように十分に御検討を願いたい、このように思います。  さて、この近代化船の実験船で十八名体制ということで実験が進められているわけですけれども、十八名体制で果たして船の航行の安全が保たれるかどうかということは非常に大きな問題だ、このように思うわけです。  特に船舶がふくそうする沿岸海域だとか狭水道航海の船橋当直を運航士で行う実験では、これは全日海が出しておられる「新しい船員制度をめざして」「その七 船員制度近代化に関する提言(第一次)」ですね。それのところをちょっと読んでみますと、バックアップなしの就労体制、これは非常に困難である、バックアップ体制なしの就労体制を組むには問題がある、こういうふうにも指摘をしておられます。それから「正確さと素早さが求められる船位測定、四囲の状況を把握し適切な報告ができる能力、水路通報および航行警報を事前に調査し対処できる能力などについては評価が低く不安である。」こういうふうに述べて、結論的には「さらに実験を重ねた教育訓練が必要である。」などの指摘が海員組合の分析でも行われているわけです。  これは、十八名体制では現段階では、船舶がふくそうする海域だとか狭水道を航行するときに、船長プラス正規の航海士にかわった運航士による当直では航行の安全上不安が残るということを示しているのではないでしょうか、いかがですか。
  165. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 十八名定員の実験というものは、実は五十四年の総合実験以来かなり長い間、三年に及んでやられてまいりまして、私どもは途中で、先生の御指摘のように、いろいろと実験の結果につきましては、教育の点がもっとやるべきだとか、あるいは原職に関して将来水準の低下するおそれがあるのじゃないかとか、いろいろの評価結果はいただいてございます。私どもは、そういう実験の結果ですので、いろいろの細かな評価結果はいただいておるのでありますけれども、そのいろいろな意味でのあらゆる評価結果を踏まえた上で、最終的に昨年の十月二十九日に船員制度近代化に関する第一次提言というものをちょうだいいたしまして、いろいろとそういう点で実験結果については今後まだ検討していくべき事項があるし、それは一〇〇%完全なものあるいは九〇%完全なものというふうにいろいろ濃淡はありますけれども、そういう前提を踏まえて最終的には近代化委員会として、一応A段階はよろしい、次はB段階の実験に入ってよろしいという答申をいただいたわけでございます。  その間に、先生の御指摘の狭水道の問題もいろいろと御意見はございまして、特にそういう狭水道、出入港の状態、あるいは沿岸航海の状態というのはかなり精密に調べていただいております。事実を申しましても、それぞれ狭水道の当直にワッチングオフィサー、いわゆる運航士がかなりの時間立っておりますし、沿岸航海の場合にもかなり長い間運航士が航海当直に立ちまして、その上での最終的な第一次提言だと私は思っております。その実験の経過ですから、いままで三年間の間にはいろいろの意見も出てまいりますし、それはごく大ぜいの調査員の調査によりまして調査していただいたものでありますから、一人一人の意見の差もございますけれども、最終的に私ども船員制度近代化に関する第一次提言で、五十六年十月二十九日にいわばA段階はゴー、行けという形で御提言いただいたんだというふうに理解しております。
  166. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 かなりの時間をかけて、狭水道だとかいわゆる船舶がふくそうする危険な海域についての新しい制度による実験を行ったというふうにいま局長がおっしゃったのですけれども、私たちは、狭水道だとか船舶がふくそうする海域での新しい制度による安全度というのは、大洋を航海する場合と違いましてこれは非常に重要だ、こういうふうに思いますので、いまの局長の御答弁を疑っているわけではありませんけれども、それを裏づけるために、狭水道におけるワッチオフィサーによる船橋当直の実験の状況につきましてちょっと御報告を願いたいのですけれども、いかがですか。
  167. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 狭水道における運航士の実験実施につきまして御報告申し上げますと、A段階において狭水道の実験を行ったものは十四隻のうち十三隻が行っております。それから、第一次提言の前提であります乗船調査を行った船は九隻、そのうち狭水道の実験を行ったものは四隻でございます。
  168. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 もう一度お聞きします。  九隻の調査員が乗られた乗船実験ですね、この場合実験をした船四隻ですが、この四隻はどういう船なのか。それから実験をしなかった船、五隻ありますね。どういう種類の船ですか。
  169. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 実験をした四隻は、きやんぺら丸、白馬丸、日豪丸、ジャパンアポロ、これはコンテナ船でございます。
  170. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 局長はちゃんと私の質問を聞いていてくれなければいかぬのですよ。私、時間がないからむだなこと言わさぬといてください。  実験しなかった船、五隻あるでしょう。そのうちの種類、船の名前はいいですから、タンカーとかコンテナとか、そういうふうに言ってください。何隻ずつなのか。
  171. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 実験しなかった船は、タンカーが三隻、それからコンテナ船が一隻、それから自動車専用船が一隻でございます。
  172. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 それじゃ、A段階の十四隻中、一隻は実験しなかった、十三隻が実験をしたということですけれども、実験をした航海は何日、何回なのか。
  173. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 ワンラウンド実験はしておりますけれども、何日という点についてはいまだちょっと統計をとっておりませんので、お答えいたしかねます。
  174. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 特に私が注目したいのは、その九隻のうちで実験をした船、これは調査員がお乗りになるのですから、実験の密度が濃いわけです’が、実験をした船四隻がコンテナ船ですね。実験できなかった船五隻のうちタンカーは三隻で、これは全部狭水道での実験ができてない、こういうことですね。  私が前から、その十四隻の各船の実験についてレポートを全部出してくださいと言ったら、出してくださらない。先ほど局長は、時間をかけて懇切丁寧に狭水道の実験をやりましたと——非常に危険なタンカーは狭水道の実験をしてないじゃありませんか。  それから「各船報告の例」、これは局長の手元にあると思うからお読みいただいたらいいと思うのですけれども、I丸という船では、「船橋当直については、大洋航海の当直のみであったが、船長および航海士のバックアップ体制もあり問題なく消化されている。」結局、船橋当直についてはタンカーにおいては大洋航海の当直のみだ、こういうふうなことで、いわば局長がおっしゃったことは、そんなに時間をかけて危険である狭水道の実験が十分に行われていなかった、九隻のうちタンカーについては一〇〇%行われていなかったということが言えるわけですね。私は、別にタンカーの狭水道での運航士による実験をやらなかったということを指摘しているわけではないのです。それは、タンカーなどがもしここで事故を起こせば大変なことになるので、実験をしようにもできなかった、そういうことをあらわしているのではないかと思います。先ほど局長は、ずいぶんいろいろな実験をして近代化委員会がもうお認めになったからゴーでいけ、こうおっしゃいますけれども、とてもこれでは安心して——われわれ国会としては、このようなあやふやな実験の結果をたくさん残しながら、今回の法改正をゴーと言うわけにはいかぬとはっきり指摘ができるじゃありませんか。  船舶職員法第一条の目的には、船舶職員を乗り組ませ、船の航行の安全を図る、これを第一義の目的にしている。ところが、近代化という名前をかりて、十分な実験もできていないという状況で、私の方に十四隻のレポートを出してくださいと言っても出してくださらない。いまの船橋当直の実験につきましても、もう四、五日も前から報告をしてくれと言っているのに、これが届いたのは質問をする一時間ほど前ですよ。一体どういうことなのですか。これでは私たちは安心して、今度の法改正近代化制度に踏み切ろうとしている運輸省の試みに対して、うんとは言えませんね。  もう一つ指摘をしますと、先ほどの配乗定員が政令で変更される問題ですけれども、いまこういうのを聞かせていただきますと、近代化船の実験で確認されたものはほんの第一段階です。これから何遍も何遍も変わっていくというんでしょう。五十四年からされた実験のうちで、ごく一部分だけがいま出てきた。しかも、それもこの近代化委員会がお出しになった「仮設的船員像にもとづくA段階実験の評価」を見ますと、これもいろいろな問題が指摘されている。特に、見直しというのが幾つもあります。たとえば大洋航行中の一名体制、ワッチオフィサーによる当直制、航行の安全上最も重要な狭水道や船舶のふくそうする海域での船橋当直には不安が残されておったり、もっと実験や訓練が必要、こういうふうに指摘されているわけです。  また、先ほど伺いますと、運航士が配乗表の船舶職員の欄にある三等航海士や二等航海士のところに入れかわる。船舶職員として職務につくことができるようになる。そのようなことが全面的にできるように実験が進んでいるのか、検討ができているのか。これでは、一〇〇%とまで言いませんけれども、今後変更される政令はほとんど白紙委任に等しいではありませんか。いまわかっていることしかわかっていない。それも、検討しなければいけないとか、見直ししなければいけないというふうなことがある。ところが、それについても、こういうふうに見直したとか、こういうふうに検討したというようなことが、一向に国会にも示されない。先ほど私が配乗表で、こういうふうに変わることがあり得るのかと聞いたら、まだそこまでは検討していないので今度の政令にはそこまではのっかっていません、それでは国会の審議の場では一体何をさせようというのですか。何もなしで、あとは全部私らに任せてくれ、白紙委任でやってくださいというわけですか。いかがですか。
  175. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 狭水道の実験をやっていないじゃないかという点については、実は確かに先生御指摘のとおりに四隻しか、しかもコンテナだけしかやっておりません。ただ、具体的には、そういう狭水道を通る船は、たまたまタンカーの方が狭水道を通らなかったとか、特に東京湾あたりにはこの実験船に適しているタンカーは入っていないと思いますので、そういう点でそういう機会もなかなかなかったのだろうと思います。  ただ、この十四隻の実験というのは、A段階については最後の詰めのような実験でありまして、その前段階としていわゆる基礎実験もやっておりますし、そのさらに前段階としては、五十二年からの基礎調査あたりもかなり厳重にやっております。そういう点で、私は、近代化委員会でこういう実験船を選び、実験ルートを選び、それから調査員の配乗体制をとったのだろうと思います。これは、あくまでも官公労使四者が寄ってこの実験船を選び、ルートを選び、その調査員の配乗船を選び、日時を選び、回数を選んで決めたものでございます。したがって、私は、そういう前提のもとに第一次提言をちょうだいいたしましたので、その第一次提言を一応現在の段階での最終結論として受け取り、それを法文化せいという近代化委員会の御指示に基づいて法文化したわけでございます。  それから、もう一つの点について、政令あるいは省令にすべてを譲って、その政令、省令の内容を言わずに審議ということですが、現在の段階までの近代化については、近代化委員会あたりでほぼ審議が尽くされておりまして、そういう点については、私どもこの場で一々その内容を御説明する時間もございませんし、労使の妥協をかなり得ておりまして、そういう点を政令あるいは省令に成文化してまいりたいと考えておる次第でございます。
  176. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 局長、さっきからあなたは、近代化委員会がいろいろ検討し——専門家の集まりだとおっしゃりたいのでしょう。そういう方々がお集まりになっておやりになっている、それで十分に検討し審議をしているのだ、労使で妥協したとおっしゃったけれども、労使で話し合いがついた、十二分にやっている、だから国会はもう黙って通せばいいのだと思っているのでしょう。それは大分見当違いですよ。近代化委員会が第一次提言をされても、仮に労使がそういうふうな意見をお持ちになっても、それはあくまでも近代化委員会の意見であり労使の間の意見ですね。国会の役割りや国会の権限はまた別じゃありませんか。だから、国会で十分に審議しようと思えば、たとえばこれも私が出してほしいと言っているのになかなか出してこない。この近代化委員会による実験の評価について、たとえば「知識、経験の積重ねが必要などの問題点が指摘されている。」とか、これを読んでいたら時間がなくなるほどたくさんありますよ。「一部経験面の不足が指摘されている。」とか、何とかの見直しが必要であるとか、ずいぶんたくさん書いてあるのです。だから、近代化委員会でどこまで検討されたかということですね。あるいは、こういうふうな検討だというふうなレポートがあるならば、こういう検討をしてこういうふうにいまやっていますとか、そういうふうな報告が国会にきちんと提示されなかったら、近代化委員会でも決めましたから、労使で話し合いがついてますから、あとはめくら判を押して国会を通しますというわけには私たちはいかぬのですよ。あなた方は国民の大事な船を預かっているのでしょう。それに乗せている船員の命だって、安全がどれだけ大事か。近代化近代化と言っているけれども、これはいわば合理化じゃないですか。そういう中で、こんないいかげんなことですぐに国会を通してしまおうとしているのですか。  しかも、まだ実験がある段階までにしか来ていないのに、その後のこともまだわかっていないじゃありませんか。先ほどの話で言いましても、たとえば乗船訓練の四カ月をこのレポートで見直して六カ月にしたのはいいですよ。しかし、六カ月がそれでよかったのか、一年乗せなかったらだめなのか、二年乗せなかったらだめなのかという結果はわかっていないじゃありませんか。にもかかわらず、あとは全部政令に落とします、国会は白紙委任でよろしいというのですか。どうなんです。その辺をはっきりしなさいよ。
  177. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 先ほどから先生はレポートも出さないということでありますけれども、十四隻の実験のレポートは非常に膨大なものでございまして、その後私は担当課長に持参するように言いまして、先生ごらんいただいたと思っておりますけれども、非常に分厚いものでございます。それをどういうふうに集約するかということは、実は先生お手持ちの「仮設的船員像にもとづくA段階実験の評価」というのは近代化委員会でまとめたものですけれども、これだけではなかなか理解できませんで、その全体をお読みいただかないとなかなか御理解いただけないのではなかろうかというふうに感じます。その点、私ども先生に対しては、十四隻のレポートを全部お持ちしたことでひとつ御了承いただきたいというふうに存じます。  それから、近代化の点を実は合理化だとか首切りだとかいうふうな御指摘でございますけれども、先ほどから申し上げておりますとおりに、実はおっしゃるとおり二十名余り乗っておるのを十八名ぐらいで運航するという点につきましては、それは確かに合理化だ、首切りだという御指摘もあろうかと思いますけれども、これはやはり最近の海運事情から考えまして、どんどん日本船が少なくなっていく。しかも、日本船が少なくなるということは、わが国船員にとって致命的な職場の喪失につながるということ。それからもう一つは、われわれは船員地位の向上といいますか、社会的な評価の向上という点を考えてやっておるのでありまして、ただ船員の首切りだとか合理化だとかという前提のもとにやっておるのではないことをひとつ御了解いただきたいと思います。  そういう点につきましては、全日海の前回あるいは前々回の大会におきましても十二分に検討されまして、その大会でこれを進めようという御決議をいただいておるわけでございまして、この船員制度近代化をそういうふうに単に合理化だとか首切りだとかという形のみで見られるよりも、もう少し広い目で、前向きな目でごらんいただきたいと思うわけでございます。
  178. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 局長、十四隻の実験レポートは見せてくださるのですね。
  179. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 はい、持参いたします。
  180. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 こんなの、国会の質問の前に見せてくれるものよ。質問が済んでから見せてもろたってあかんのです。一体何を言っているんや。よろしいですか。  それからもう一つ近代化の問題ですけれども、私が言いたいのは、近代化の問題をこのまま進めていくのがいいか悪いかというのは、これはこの国会の審議の場で各党、各議員のそれぞれの立場から審議をするわけでしょう。ところが、国会もここまでなら航行安全上問題がないという判断ができる範囲の材料を示してくれるならともかく、先々どうなるかわからぬ、そうでしょう、あなたもおっしゃったもの。C段階どころか、どんどん無制限的にというのかな、無期限的に変わっていくんだ。無期限的に変わっていく先々どうなるかわからないものを、政令委任にしてしまうわけにはいかぬということを私は言っているんですよ。現在結論も出ていないことじゃなくて、現在結論が出ている範囲で政令に委任するとかしないとかというふうなことで審議ができるわけであって、まだ結論の出ていないことをここで政令に委任せよ、こういうふうなことを言うのがけしからぬと私は言っているわけで、近代化の問題についてあるいは法改正の問題についてここで論議をするのは、それは各党、各議員がそれぞれの立場からやって、そして後で決めるわけですけれども、しかしそれを決めるためには、ここまではこのようにきっちり決まってます、もうこれでしたら皆さん見てくださいというふうに、審議に必要な材料をきちんと提示をして、そして国民にはっきりと明らかになるようにしていただかなければ、こういう無責任な法案の審議のさせ方というのはまさに国民をだますものだと私は指摘をしたいと思います。  さて、時間がありませんので、船員近代化問題をどのように受けとめておられるのかということを最後に御質問をしたい、こういうふうに思っております。  これも全日海がお出しになっている「新しい船員制度をめざして」の「自由意見」のところにあるわけですけれども、ここにはこの近代化問題についてずいぶんいろいろな御意見が載っていますね。「乗組員が減ったにもかかわらず、作業量は合理化されていないため、一人当りの労働量は増し安全性が低くなる。乗組員の肉体的、精神的ロードは他船に比べ相当大きいと思う。」だとか、ずいぶんたくさんございます。  先ほど局長は、船員地位が低くなっているというふうにおっしゃったんだけれども、「最近の船員の父親で子供を船員にさせたいと思っているのは皆無と思うがそれほど一般的には良い職業と思われていないのか、船員になりたい、させたいと思う日はこれから来るのだろうか。」こういうふうな意見もありますよ。それから、「後に続く若い世代が絶えることのない船員制度であり職場であってほしい。」「近代化することによりわれわれの職場が存在するなら、後輩のためにもここでひとふんばりしなければなるまい。」こういうふうな御意見もあります。しかし、後に続く世代にとって近代化された職場が本当にいい職場でなかったらいけないというふうに書いているのは、やはりこの近代化に非常に問題がある、こういうことなんです。  私は、特にここで指摘したいのは、「居室にシャワー、トイレ、冷蔵庫を設けるとともに部屋を明るく、又大きくしてほしい。作業後の休息時間をゆったり自室でくつろげるようにしてほしい。」こういうふうな意見があるのですけれども、「総合実験船A設備基準」というのをいただきましたが、その中に「船内生活環境向上のための設備」というのがあります。これを伺いますと、パス、トイレ、シャワーつきの個室というふうなことがあるようですけれども、現在十四隻の実験船の中でこれが完備している船は一体何隻ですか。
  181. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 乗組員の居室の個室化がされている船舶は十四隻全部でございます。  それから、バス、シャワー、トイレが各部屋に設置されておるのは、職員のみが設置されているのが九隻、職員及び部員両方が設置されておるのが十四隻のうち七隻でございます。
  182. 四ツ谷光子

    ○四ツ谷委員 今度のこの法改正の中には、近代化目標の一つに「快適な労働環境」というのが書いてありますね。「快適な労働環境」というのはずいぶんたくさんあると思うのですけれども、とにかく個室であって、シャワー、トイレというふうなものが完備をされている。外国の船はこういう点では日本と違って大変条件がよいというふうに私も聞いておりますけれども——首をかしげておられますが、そんなことはないと思っていらっしゃるかしらぬけれども日本の船は条件が悪いと、こういうふうに船員さん、言っていらっしゃるんだから。局長はしょっちゅう船に乗ってはるわけはありませんからね。船員さんの意見というのは、これは正しいんですよ。だから、近代化船を進めていくのはいいですけれども、合理的にそういうふうな新しい設備を備えていくのはいいとしても、そういうふうな船員のための、とりわけ居住環境というのですか、生活環境というものには十二分に注意をして、労働者の本当の快適な労働環境というものをつくるようにしていただきたいと思います。  最後に、私は今回の質問で、本当に政令に落とすだとかいうふうなことが、いかに近代化という名前をかりて、合理化で、そして船員労働者の労働条件をどんどん切り下げようとしている、こういうふうなことは非常に遺憾だ、こういうふうに思います。私は質問の中で、われわれにも先々わからぬようなことを政令に落としてしまう、こういうふうなやり方については厳しく指摘をしておきたいと思うのです。  政府は、乗り組み定員の合理化船員費を引き下げ、日本船国際競争力を回復し、日本船を拡大することで日本人船員の職域拡大を図る、このように主張していますけれども仕組み船などの便宜置籍船の利用を野放しにしたままでは実現する保証は全くありません。日本船主の便宜置籍船利用は、低賃金の労働力を使って超過利潤を得るための海外への資本投下であり、この資本移出そのものへの民主的規制なしには日本人船員の雇用を真に守ることはできない、私はそのことを最後に指摘をして、質問を終わらせていただきます。
  183. 越智伊平

    越智委員長 中馬弘毅君。
  184. 中馬弘毅

    ○中馬委員 わが国は、御存じのように貿易立国でございます。ほとんどの輸出入品目を海外、そして船に依存しているわけですが、海上運賃に大きく負うことは、日本の国民生活にまでそれが響いてくるわけでございまして、やはりそういった価格の安定、経済の安定の意味からも、特に日本船による長期積み荷契約といったもので安定した輸送が確保されることが必要だと思っております。  また最近、国際的な経済あるいはそれ以外の緊張関係も出てまいりまして、安全保障の意味からも、やはり一つの自国のしっかりした船団を持っていることが必要かと存じます。国際収支の面からももちろん大事なことでございますし、あるいは安全問題からも、ちゃんと日本監督下に置かれた日本の船団というのが必要だと思っておりますけれども、最近輸出入の貿易におきます自国の船舶による積み取り比率が低下しております。原因はいろいろあろうと思いますが、この法律によってこの低下が防げるものかどうか、その原因と同時に、そういった先の見通しもひとつお答え願いたいと思います。
  185. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 これは海運局の方からお答えするべきかもしれませんけれども、私どもの方の把握していますところでは、先生御指摘のように、十年くらい前までは、日本の船腹に占めます外国用船比率というのは一六%ぐらいであったわけでありますけれども、最近四八%まで高まった。その理由は何であるかということでありますけれども、やはり何といいましても、韓国あるいは香港、フィリピンあるいはギリシャ、あるいはパナマというふうな発展途上国開発途上国の船腹が非常にふえてきた。しかも、そういう国家の船は非常に安い船員費で、まあそれは種々雑多でございますので全部言えないかと思いますけれども、人によりましては、東南アジアは大体日本船員費の三分の一で働いておるというふうなことを言われておりますけれども、そういうふうな三分の一くらいの人件費の船員で働いております開発途上国の船が、どんどんどんどん数がふえてきたということで、やはり国際海運市場の非常に生々しい競争場裏にさらされておりますわが国海運が、そういう点でなかなか競争できなかったということから、どんどん外国用船比率をふやしてきたんだろうと思います。  この状態が比較的最近、実は一昨年あたりの海運造船合理化審議会でも、もっと日本船をふやさなければいかぬというようなことが言われまして、幸い利子補給とかいういろいろの政策で日本船に対する保護が図られてまいりましたので、そういう点で最近幾らか下げどまりの傾向はございますけれども、やはりこれをこのまま放置いたしますと、さらにどんどん、五〇%を超え六〇%、七〇%と進んでいくんじゃないかというのがわれわれの憂慮しているところでございます。
  186. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ですから、この法律によって自国積み取り比率を、危惧されておるわけですけれども、これの低下傾向が阻止できるのかどうか、先の見通しをお答え願います。
  187. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 海運というのは国際競争でございますので、日本船舶近代化船員制度近代化をやって、国際競争力を高めていきましても、またいずれそういう開発途上国の方も、いわばわが国に従って船員制度近代化をやり、あるいは船舶近代化をやるということがあるかもしれませんけれども、当面われわれは、そういうことよりも、まず、現在の時点にかんがみまして、やはり船舶近代化に応じた船員制度近代化をやることによってそういう国際競争力を高め、これ以上外国用船比率が増加することなく、日本人の乗る日本船の比率を高め、国際的にももっと日本人の乗った日本船の活動分野というものを広めていく必要があるだろうということで、今回、船員制度近代化に踏み込んだわけでございます。  具体的に申しますと、一応十八名定員という実験をやりまして、それがオーケーだということでこれから入っていくわけでありますけれども、先ほど申しましたように、いずれ将来はまた開発途上国に追っつかれるかもしれませんけれども、われわれは、まずさしあたって十八名定員を実現することによってその日本船のウエートを高めていけるだろうと思います。  それからまた、この十八名定員の実験というものは、単にわれわれだけではなく、労働者側、使用者側も入った上での合意のもとにやっておりますので、現在の船舶所有者、すなわち船会社の方もそういう点で、日本人船員を乗っけた日本船をふやすというふうな態度をとっていただけるだろうと思いますし、それから先ほど申しましたように、海運造船合理化審議会の答申なんかも、今後日本船のウエートをふやしていくんだ、外国用船比率をできるだけ低めるような対策を進めていくんだというようなことを答申しておりますので、そういう点ではかなり日本人の乗った日本船がふえていくだろうというふうに私どもは考えております。
  188. 中馬弘毅

    ○中馬委員 法律の中身の細かいことはもう他の委員がお聞きになりましたから、根本的なところをお聞きするわけでございますけれども便宜置籍船の問題なんです。  これを放置されておく限りにおいて、日本との先ほど申しました意味での競争といったことも、あるいはいろいろな安全の問題も、船員の確保の問題も非常に阻害されると思うのですね。国連貿易開発会議あたりでも問題になっておりますけれども、しかし、ここでも発展途上国と先進国との間で意見が分かれております。発展途上国の方は、便宜置籍船の存在が海運発展の阻害になるということで、これを排除すべきだという立場をとっておりますし、先進国の場合には、安全技術上の基準が遵守されることは必要ですけれども、しかし、この排除は発展途上国自体の経済発展に貢献しないんじゃないかといったような対立した関係にあるわけですね。日本としてどちらの立場をより多く主張されていくのか、基本的なことをお伺いしたいと思います。
  189. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 仕組み船、別の言葉で言えば、その大部分は便宜置籍船でございますが、便宜置籍船は実質的にはわが国の船でございますが、形式的には外国の船という形になってございます。こういうことは、一たん緩急あるという場合には非常に不安定な船でございますので、わが国の経済安全保障の見地からも余り好ましいものではないと思います。したがいまして、過度にそれに依存することは、やはりわが国全体として危険ではなかろうかというふうに考えます。  ただ、御存じのとおりに、外航海運というのは非常な国際競争の場にさらされておりまして、市況の変動に伴う影響を受ける度合いも非常に強い産業でございます。したがいまして、そういう点で、従来から一つのクッション効果といいますか、バッファー効果のような感じからこの便宜置籍船がふえてきたんだろうと思います。  ただ、先生御指摘のとおり、UNCTADあたりでも、開発途上国の側から、こういう便宜置籍船は排除すべきだというかなり強い意見が出ておりますし、こういう点はわれわれ政府の方も十二分に念頭に置きながら、今後便宜置籍船対策というものを慎重にやっていかなければいかぬだろうというふうに考えております。
  190. 中馬弘毅

    ○中馬委員 日本は、従来、便宜置籍船は少なかったのですね。日本一つの誇りとして、自分でちゃんと旗を立ててやるのが大体日本の伝統的な海運業だったはずなんですけれども、しかし、最近はそういった誇りを持った人も少なくなったのか、個々の利益の方を追求するような形になってきております。この便宜置籍船の問題、こういった今度の法律もございますけれども、ここを根本的にやめさせる、あるいはむしろ、これはある意味では税金逃れでもあるわけですから、こういうことに対してもっとはっきりした態度をとる必要があるんじゃなかろうか。それをむしろ阻止するような形での一つ基準なり何なりを、日本としてあるいは運輸省としてとる必要があるんじゃなかろうか。これは大臣、どのようにお考えでございますか。
  191. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 STCW条約批准されれば、その点については非常に改善をされるであろうと思っております。そうした非常に安い労働賃金の上に安住するというやり方については、経営的には大変いいのでしょうけれども、国全体として見る場合には、余り好ましいことではありません。そのような考え方で現状を見ておるわけでございます。
  192. 中馬弘毅

    ○中馬委員 このSTCW条約に加盟して、それを遵守しているところはいいのですけれども、それ以外の船舶日本に入ってきた場合のことなんですね。いろいろ命令で規制することができることになっていますけれども、現実にこれはできますか。国際的なトラブルの問題もあろうかと思うのですが、その辺はどのように対処されるおつもりですか。
  193. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 やはり外国との関係がございますから、そうしたことをむき出しにぶつけるわけにもいかないわけでございまして、その辺は慎重に対処してまいりたいと考えております。
  194. 中馬弘毅

    ○中馬委員 しかし、一方でまた非常に矛盾したことでもありますけれども日本の立場をそういうことで守るならば、これは発展途上国のそれぞれの立場をまた崩してしまうことになるのですね。まだまだそういった船員訓練も十分にできないのが発展途上国だろうと思うのです。そこに、ただただ追い出すだけでは、逆に反発を買ってしまう。そしてまた、一つの新たな国際関係、特に日本の原料輸入先でございますし、またいろいろな製品の輸出先でもあるわけですね。こことトラブルを起こすことは、また日本が最近の欧米との摩擦以外の形で発展途上国からも非常に反発を食らう形になってまいります。そうすると、ただただこれを排除するだけではなくて、そこに相手の国の船員の教育に日本がもう少し力をかしてやるといったことまでも、日本の置かれた国際的な立場から言えば必要じゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  195. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 先生御指摘の点につきまして、われわれ、かなり十分な配慮をしておりまして、条約にもそういう点での規定が入ってございます。教育に関する開発途上国援助をするようにという規定が入ってございますけれども、われわれ、従来から開発途上国に対する技術援助としてかなりの船員教育の援助をしてございます。運輸省の中でも、海外技術協力としては船員局の行っております開発途上国船員教育に対する協力というのはかなり大きなウエートを占めておりまして、具体的には東南アジア諸国だとかあるいは中近東、それの方に私ども職員が出向いたしまして、そこで具体的に船員教育を実施しておりますし、それから沖縄あたりでも、外国人開発途上国船員を教育するための施設を設けようということで現在検討中でございます。  それから、さらに、せんだって海事国際協力センターという法人を運輸省の中に設置いたしまして、その中でそれを一つの基幹にいたしまして、開発途上国船員教育に対する援助をやるべくいろいろと検討中でございます。  かなりそういう点では従来とも努力しておりますけれどもSTCW条約の中に規定もございますので、今後ともさらに一層そういう技術援助を強化してまいりたいというふうに考えております。
  196. 中馬弘毅

    ○中馬委員 このことは、今度の船員法関係におきましても特にお願いしておきたいことなんです。  先ほど言いましたように、非常に矛盾することでございますけれども日本のいままでの大きな経験、これを発展途上国にまで及ぼしていくような、その程度の大きな力がなければ、逆に日本船員の立場を守り、そして居住環境もよくしていく、こういうことをすればするほど逆に格差が広がって、発展途上国をそのままにしておけば結局そこに経済原則で引っ張られてしまって、安い船が海運市況上に出回るという形になるわけですから、国際的な立場を日本もわきまえて、このことはODAの一環でもあるわけでございますから、政府を挙げて、運輸省挙げてお願いをしておきたいと思います。  それから、安全の問題なんですが、このMO船がだんだん普及してまいりまして、三割を超えるような形になってきておりますけれども、そうしますと、機械化が非常に進んでくるわけでございまして、それだけに船長や機関士の精神的な負担までも非常に重くなってくるわけです。これは、この間の航空機事故じゃございませんけれども、かなり精神的なものにまでいろいろな影響が出てくると思うのです。ただ単に、いままでの資格だとかいったような基準でやっておったら、心身症じゃないですけれども、そういったことで船長が最後まで船に残るのじゃなくて、みずから飛び出してしまうような人も出てこやせぬとも限らぬわけです。こういうことに対する一つ資格なり検査といったものの体制はどのようにされていますか。
  197. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 私ども、特に快適な船内生活ができるということを中心に考えております。そのためには、先ほどから御議論いただいております船員制度近代化も実はこの辺をねらっておりまして、先ほどちょっと申し上げなかったのですけれども、実は九十二号条約という条約がございまして、その条約では、部員と職員の食堂を全然別にしろというような条約があるわけでございます。私どもの方は、むしろそういう条約、まだ批准してございませんけれども、それはわれわれのねらっておる、いろいろ船内の生活環境の改善という点では逆行しておるという形から、むしろ部員の食堂も職員の食堂も同じ食堂にすべきだというふうな形で、いろいろと行政指導をしておるわけでございます。  これは一つの具体的な例ですけれども、そういう点で近代化の方向も、職員、部員の区別もなく、あるいは機関、甲板の区別もなく、みんなが一致団結してこの船を運航しておるのだ、そういう共同意識を持てることが少数の定員になると必要だと思います。現に私自身、近代化実験船に乗りましたけれども、通信士に聞きましたところ、デッキの当直をすることは非常に楽しいと、これは、いままではデッキの方々とほとんどコミュニケーションがなかったのが、今度近代化実験に参加することによってデッキの方々とも、エンジンの方々とも非常にコミュニケーションがスムーズにいくようになったという形で非常に喜んでおられましたけれども、そういう点も船内の生活環境の改善に役に立つのではなかろうかというふうな感じがいたします。  そのほか、ハード面でもやはり船内生活環境の改善をやらなければいけません。具体的に申し上げますと、いま申し上げましたような食堂を職員と部員とで区別をしなくするとか、居室の個室化だとか、暖冷房あるいは居室へのシャワー、トイレの設置、それから娯楽施設、趣味教養施設、屋内運動場等のレクリエーション施設の整備だとか、あるいは家族の声だとか、そういうのができるだけ入りやすいような、ファクシミリとか衛星通信、そういう通信手段の拡大だとか、あるいは近代化中心話題であります、いま申し上げましたけれども、甲・機職員、部員間の相互のコミュニケーションをよくするとか、そういう点をもっと強化しなければいかぬだろうと思っています。  現に、この点につきましてはいろいろとやることがあるだろうということで、昨年度以来三カ年計画で日本海技協会、これは私ども監督しておる公益法人でありますけれども、そこに委嘱しまして、船内の生活環境、居住環境、快適な生活環境、職業環境の充実方策について、現在検討してもらっているような状況でございます。その検討結果ができますと、それを今度は具体的に実施に移す、実現していくという方向に持っていきたいと思います。
  198. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いま、すばらしいことを並べられましたけれども、そういうことをどうやって担保されますか。船会社あたりにどういう形でそのことを指導されますか。
  199. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 快適な生活環境の問題を私は五点ほど申し上げましたけれども、それは近代化委員会の中でも議論していただいておる問題でございまして、そういう近代化委員会の席には使用者側代表も参加の上でやっておりますから、合意の上でやっておる事情でございます。したがいまして、当然、使用者側もその点につきましては前向きに対処していくものと思います。  それから、日本海技協会に委嘱しておりますそういう船内生活改善策につきましては、具体的ないい一つの手段が出てまいりますれば、われわれはそれを予算化して、具体的に国家予算をつぎ込んでやっていくというふうなことまで考えております。
  200. 中馬弘毅

    ○中馬委員 その近代化委員会ですけれども、これは私的諮問機関ですが、いま言ったような大事なことも大分出てきているわけですから、もう少し公的に位置づけることの可否についてどうお考えなんですか。
  201. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 この委員会はスタートしてすでに五年間でありまして、昨今、非常に大きな成果が上がっておりますし、また専門家の話でございますので、きわめて具体性があるわけでございます。われわれは、今度の船員問題につきましては、この委員会の答申を率直に受けて、政策の中で進めてまいりたいというふうにしております。  こうした状態でございますが、これを新しい別個の審議会なり委員会をつくるということは、現在、行政改革がいろいろ言われておりますので、そうした意味から言うと、なかなか困難であろうというふうに考えておるわけでございます。しかし、この五年間の大きな実績と、さらに、今後もこの委員会は、船員問題につきまして、また日本海運問題につきまして、非常に大きな協力と前進の原動力になる委員会であるという認識を持っておりまして、われわれといたしましては、この委員会局長の私的諮問機関と、名前は大変にプライベートなものでありますけれども、むしろきわめてこれを公的なものだと考えておりますし、また、その結論に対しましては全面的にそれを信頼し、政策に生かしてまいりたいという考えでおりますので、御理解をいただきたいと思っております。
  202. 中馬弘毅

    ○中馬委員 時間が参りましたが、非常に国際化が叫ばれている、現実に各国からの反発も強くなっている昨今でもございます。自国の利益を追求しておりますと、船員の方もそうですし、あるいは船主の方もそうですし、あるいは国の立場としてもそうかもしれませんが、結果的に、国際的に大きな反発を食らって、かえって不利益をこうむるというケースも現実出てくるわけでございますし、一方、余りに全体的な配慮だけをしておりますと、自国の利益の確保にしのぎを削っている国際経済競争場裏ですから、ここで生き抜いていけないことにもなるわけでございまして、この調整をうまくやっていただきたいということを心から念願いたしまして、私の質問を終わります。
  203. 越智伊平

    越智委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  204. 越智伊平

    越智委員長 速記をお願いいたします。  小林恒人君。
  205. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 午前中に引き続いて、若干の御質問を申し上げておきたいと思います。  午前中、私の方からも質問をいたしましたし、また、各委員の先生方からもいろいろと御質問が出ているのでありますけれども、提案をされております一部改正の中で、法律条項から落とすものがあったり、また政令事項に移行する、こういったものが相当部分でつまびらかになってきているのだと思うわけであります。当初政府側が御検討された段階から、ある意味では、この委員会の論議を通じて御判断をされるとすれば、法律条項としてもう少し整備をしなくてはいけない部分があることについてはそれなりの御理解をいただけたのかなという気はするのです。ただ、政府側が提案をしておりますように、船舶そのものの近代化という非常に遠大な計画等もあって、これが近代化委員会等も含めながらいま進行中である、こういった認識をしてよいのではないのかなという、こんな考え方を持つわけです。  したがって、法律というのは一度でき上がれば何十年も変わらないものではなくて、このように機械化、近代化がえらい速いスピードで進行する段階では、適切な時期をとらえて、できるだけ早い時期に法令そのものの整備を図っていく、こういったことがある意味で前提条件にならないというと、審議そのものがただ議論の空転をしたということになるのではないのか、こういう気がしてならないわけです。こういう私どもの考え方について局長の御見解を賜っておきたいと思うのです。
  206. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 お答えいたします。  時の変化、時の移り変わりによって社会情勢が変わってまいりますし、社会情勢が変わればそれに応じた法律制度というものをやはり変えていくべき点は、先生御指摘のとおりだと思います。  ただ、その中でも、やはり基本原則的なものは法律規定し、その基本原則から幾らか派生した副次的な点といいますか、第二次基本原則的なものは政令に規定し、それから第三次的なものは省令、それからさらにその下のものについては達とか告示とかいうふうなのが一つの法体系だろうと存じます。そういう点で、やはりそういう法体系を踏まえ、それから移り変わりの激しさを踏まえて、法律改正、それから政省令に譲るべきか法律に譲るべきかということを考えていくべきだと思います。その点につきましては、これはやはり日本法律全体の平仄合わせをやりながら、しかも、その中での船員法体系のあり方を考えながらやっていかなければならぬ問題だと思いまして、私ども、いろいろと内閣法制局とも相談し、国会にも御審議をいただきながらやっておるつもりでおります。
  207. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 船員近代化船舶そのものの近代化を含めてお伺いをしておきたいのですけれども、従来ですと、このほかに、船舶によっても異なるのでしょうけれども、たとえば事務長のようなものが存在をする船、事務長のもとに事務員がということで事務作業全体を処理するという、こういうパーティーがあるのだと思うのです。  さらに、司厨長などについても、五十年の三月段階で運輸省は省令七号をもって、船舶料理士に関する省令というのを出しているわけですね。これは、陸上で言うならば調理師の資格というようなものがなければお客様に料理を提供する資格がない。船舶の段階でも、多くの働く皆さん方に食事を提供するというこういった観点から、食品衛生上の問題も含めてこういう省令が公布をされ、千トン以上の船の中ではこれが拘束条項になってきているのだと思うのです。こんな事柄などを考慮をすると、一応運輸大臣の交付する資格条件がなければ司厨長としての役割りを果たすことができないという、こういう実態があるにもかかわらず、船舶近代化に伴って事務部員の中に包括をされるというような構想が示されているわけです。これは、船にとっては非常に数の少ない資格条件と比較対照すると、ちょっと矛盾をするのではないのかなという気がするのでありますけれども、この点についての考え方はどのようなものになっているのでしょうか。
  208. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 御指摘の事務部の点につきましては、現在船によって幾らか違いますけれども、三人程度乗っておりまして、そのうち一名は船舶料理士の試験、運輸大臣の実施する試験を通った者が乗っておるようになっております。そういう点で、現在のところ、主に事務部の人たちは調理関係の仕事を中心にやっておるのが実情でございます。  そういう点では、確かに先生の御指摘のような一つの御不満があろうかと思いますけれども、現在、近代化委員会の方でいろいろ検討しておりますのは、そういう事務部に調理関係の仕事だけではなく、先ほど申しましたような住みよい船内の生活環境づくりを、これは事務部の方々の一つのお仕事として定めていくべきじゃなかろうかという点で、そういう教育もこれからやり、それから、そういう点で責任をとってやっていただくという感じに持っていこうという形で、いろいろと実験研究がやられておるような次第でございます。  そういう点で、事務部の方々に、単に調理だけではなく、船内の融和を図るかなめになり、レクリエーションのリーダーになるというような形になれば、事務部の方々もまた物の見方というものもかなり変わってくるのではなかろうか、あるいは意欲的な職務内容という点でもかなり変わってくるのではなかろうかという点で、そういう方向に持っていくべくいろいろといま検討中でございます。
  209. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 次に、これはSTCW条約とも関連をするわけですけれども、今回の法改正の中で、海技免状の五年更新というものが新しくうたわれているわけです。この海技免状五年更新という事柄に伴って、運輸省当局として五年ごとに免許証を更新していく体制はでき上がっているものなのかどうなのか、明らかにしていただきたい。
  210. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 海技免状の点につきましては、今度条約の方は、船員知識とか技能とかを維持するために五年、五年の更新制をとっておりまして、私どもの方も今回船舶職員法改正いたしまして、それに従うということにしたわけでございますけれども、従来と違いまして、最近は電算機による事務処理が可能になってきておりまして、私どもの方も昭和五十一年から電算機による事務処理を導入いたしまして、海技従事者の免状取得状況を全部電算機に入れておりますので、非常に事務が簡素化されてまいりました。したがって、この点については、私どもそれをフルに利用いたしまして、海技免状の五年更新制を遺漏のないようにやっていきたいというふうに考えております。  なお、御参考までに現在の海技免状の取得者は、これは個々変わりますものですからことしの四月一日現在を推定いたしまして、全部で約百九十六万人ございます。そのうち大型の免状は四十四万人、小型の免状は百五十二万人ということになっておりまして、かなり大部な数量でございますけれども、先ほど申しましたように、電算機による処理を円滑にやっていくことによって十二分に対処していけるというふうに思っております。
  211. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 電算機の発達でできるようになった、これは結構なことだと思うのですけれども小型船舶の海技免状取得に伴って講習が行われていますね。  これについて、たとえばことしの一月二十九日の東京新聞でも指摘をされているわけですけれども、「小型船舶操縦免許 ついに汚職に発展 試験課長ら三人逮捕」したという大変大きな記事が出ているわけです。実施をしたところが日本モーターボート協会、笹川良一さんが会長をやられている。ここで小型船舶操縦士試験に絡んで現金数十万円を授受をしたという事件が発生をしていることに象徴されるように、全国に幾つかの養成協会等があったりなどして、小型船舶にかかわっての操縦免許が行われているわけですが、ある意味ではこれは外注をしていると言ってもよい部分なのかと思いますけれども、こういった事件にかんがみて、運輸省としてはもっと適切な運営措置をお考えになっておりますか。
  212. 鈴木登

    鈴木(登)政府委員 実は昭和四十九年に船舶職員法改正いたしまして、小型の免許制度に関する整備をやったわけであります。これは、海水浴場などで小型モーターボートによるいわば殺人事件といいますか、殺人事故が発生いたしまして、それを契機に、もう少し小型の免状をしっかりしなければいかぬじゃないかというような御指摘も国会の方でもちょうだいいたしまして、そのとき改正いたしましたのが現在の船舶職員法の小型船舶職員制度でございます。  そのときに、従来は政府でやっておりましたのが、急に数がふえましたので、それを政府、国家でやることはなかなか人的にも無理だということから、これを指定機関にやらせようということで実はいろいろと検討した結果、日本モーターボート協会の方に試験の代行を法律に基づいてお願いした次第でございます。それがいわゆる指定試験機関でございます。  実は、その小型の免状は、そこで学科の試験あるいは実技の試験を受けてもよろしいわけですが、もう一つは指定養成機関というのがございまして、これはいわゆるその養成機関を卒業すれば、卒業証書を持てば、試験の方は無試験でいいというふうな形になっておるわけですが、それは指定船舶職員養成機関として、先ほど御質問のありましたとおりに、日本船舶職員養成協会その他の団体を指定しておるような次第でございます。  そこで、実はまことにお恥ずかしい話ではありますけれども、去年の初めから指定養成機関であります日本船舶職員養成協会におきましても、いろいろと替え玉に受講をさせるというふうな不祥事が発生いたしまして、約五百五十名の者が不適正な受講で免許を取ったという事例が発生しました。また去年の暮れには、試験機関であります日本モーターボート協会の方で金を取って試験を合格させたというふうな、いわゆる収賄事件が発生いたしました。養成機関の方でも試験機関の方でもそういう不祥事が発生いたしまして、非常に恥ずかしく思っておるような次第でございます。  この点につきましては、養成協会の方につきましては、先ほど、いろいろと養成のやり直しをすでに三百三十名ぐらい実施させたとか、あるいは養成協会の内部改革をやらせたとかいうことを申し上げましたけれども、もう一つのモーターボート協会の方につきましても、これは刑事事件になった事件でございますので、根本的な試験のやり方の改正というものが必要だろうということで、ことしの一月に私から会長あてに改善命令を出しまして、現在その改善命令をモーターボート協会の方で鋭意検討中でございます。徐々に私どもの方へその報告が参っておりまして、現在私ども、それを追跡しながらいろいろと監督指導しておるような次第でございます。完全な改正には、もうしばらくお時間をいただきたいと思います。
  213. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 少し甘いのではありませんか。たとえば最近新聞をにぎわしてきた建設土木関係の談合入札あるいは収賄事件等、こういったものの始末にかかわっては、入札の差しとめといった措置があるんですよ。こういったことも含めて体質を改善していく。私はそもそも土木屋だから、そこら辺の中身はよく知っているんですけれども、そういうことまでしてずいぶん努力をしてきても、なおかつ談合入札という問題は今日なくならない。ところが、公に行われなければならない試験、銭をいただけば何とかなりますぞと言ってへ言葉は悪いのですけれども、イカサマ試験が横行してきた。こういったことに対して、局長の側からの注意か改善命令か、そういった程度でおさまるということについては、癒着体質をここに暴露したと指摘をせざるを得ないのです。いいですか。こういったことが再び起こらないように、これはもっと厳しい措置が必要ではないのか、こういう気がします。特に強く要望申し上げておきたいと思います。  時間でありますから最後に。各分野で、時代の進捗とあわせて船舶そのものの近代化というものが進んでくる。さらに船舶の歴史からすれば、鎖国が解かれてから以降、日本の歴史を築き上げてきた主要な交通機関、こういったところに働く船舶労働者の位置づけというのは決して小さなものではなかったと私は思うし、対社会的に見て低く見られるようなものであったとは思わないのです。ところが、特にこの近年にわたって、船舶労働者そのものが、先ほどの御質問の中でも出ているように、自分の子供すら船には乗せたくない、二世、三世が育っていかないという実情になっているのは何かと言えば、船舶だけがいかに近代化をしても、そこに働く労働条件が必ずしもそれについていっていない、こういったところに大きな要素があるように思えてなりません。  先ほど私が申し上げたとおり、非常にスピーディーに進むものであるとするならば、それだけにこの労働条件の改善施策といったものを含めて法の抜本的な改正、それから労働安全衛生法の制定方、これは規則からやはりもう少し確実なものに推し進めていくことを御検討されることを特に要望いたしまして、終わりたいと思います。
  214. 越智伊平

    越智委員長 次回は、来る四月二日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十四分散会