○近藤忠孝君 私は、日本共産党を
代表いたしまして、議題となりました
法案について、
総理、
関係大臣並びに
発議者に質問いたします。
去る十月二日の本
会議代表質問におきまして、わが党の上田
議員は、「
全国区制
改革案は
政党法的規制の
導入、
無所属立候補の事実上の禁止など、
憲法違反の疑いが強いので再提出しないよう」強く求めました。これに対し
鈴木総理は、「
各党も
検討を重ねていると聞くので、
論議を重ね、可及的速やかに
改正が実現するよう望む」と
答弁されたのであります。
元来、
民主主義の根幹にかかわる
選挙制度の
改革は、全
政党、各会派の合意のもとに進められるべきものであり、
法案提出に至るまでに十分な協議や相談がなされてしかるべきであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
ところが、
自民党はこれを怠ったばかりか、野党の強い反対を押し切って本
法案を提出し、その成立を急いでおります。これは
議会制民主主義の原則に反することであり、国民と野党に対する重大な背信行為ではありませんか。
総理並びに
提案者の
答弁を求めます。
自民党が本
法案の前に準備いたしました「一票制」は、
地方区への
投票で
比例代表議員を決めてしまうなど、
憲法違反の内容と余りにも強い党利党略性のゆえに世論の厳しい
批判を浴び、撤回を余儀なくされたものであります。ところが、今回の二票
制案もまた
政党の
要件を限定して
無所属を排除する
規定など、一票制の中の反
民主主義的な中心点を引き継いでまいりました。
自民党の
全国区制プロジェクトチームの
検討の際「
選挙に勝つかどうかが
制度改正のキーポイントだ」と言われたと伝えられておりますが、これでは
自民党強化のための党略性がむき出しではありませんか、
提案者の
答弁を求めます。
ところで、
自民党はなぜこのような党利党略の
公選法改悪を押し通そうとするのでしょうか。それは、
総理がいま異例の意気込みで推し進めようとしております臨調路線と無
関係ではありません。すなわち、汚職腐敗の一掃と簡素で効率的な行政とを求める国民の声を逆手にとって鈴木内閣が進めようとしております行政
改革なるものは、日本の軍事大国化、福祉切り捨ての企てであり、国民が戦後から取ってまいりました民主的権利と諸
制度に対する全面的攻撃の方向に国の歩みを変えようとするものであります。行政
改革という名で、財界の戦略とレーガン戦略への協力という
立場で、国の政治経済のあらゆる分野でこれまでの政策や
制度の抜本的
見直しをやり、一挙に反動的再編を強行しようとしておりますが、本
法案はこの中で
選挙制度の反動的再編の
役割りを果たそうとしているのではありませんか。
この
法案が強行されるならば、それは
現行選挙制度成立以来三十年余、初めての抜本的な
制度改悪となり、戦後、政府・
自民党が繰り返し策してまいりました
選挙制度の全般的改悪への突破口となる危険を指摘せざるを得ないのであります。それは、
自民党首脳や閣僚が再三言明してきた
衆議院での小
選挙区制
導入を最終
目的とし、
憲法改悪を展望した
選挙制度の抜本的な改悪の重大な一環ではありませんか。
総理の
見解を求めるものであります。
このように国民のために行ってはならないこととは逆に、緊急になすべきことがあります。その第一が、
衆議院及び
参議院地方区の
定数を
国勢調査の結果に基づいて是正することであります。
国民の
意思が正しく政治に反映されていないことに対する怒りと
批判が高まる中で、
選挙制度への
発言を避けてまいりました最高裁ですら「各
投票が
選挙の結果に及ぼす影響においても平等であることを要求せざるを得ない」として、
衆議院議員定数不
均衡違憲判決を下したではありませんか。
総理も
提案者もこの判決を尊重し、この
趣旨に沿った
改正をこそ第一に着手すべきだと思いますが、その
意思はありますか。
また、戦後、
参議院が設けられて以来、人口密集地区と過疎地との間に著しい格差が生まれながら、一回の
是正措置もとられていない
参議院地方区の
定数是正も緊急の必要があるのではありませんか。
あわせて、個別訪問禁止
規定は
選挙運動の自由を保障する
立場からはすでに時代おくれとなっております。日弁連の
調査に対する
国会議員の回答者の八八%が廃止すべきだとしているではありませんか。
総理並びに
提案者に対し、個別訪問禁止
規定を削除することを求めるものであります。
なすべきことには手をつけず、
全国民どこに住んでいても一票の価値に変わりのない
全国区制を廃止し、種々の改悪を加えようとしているのはもってのほかであります。以下、
法案の重大な
問題点について質問いたします。
第一に、
政党規制という
議会制民主主義の根幹にかかわる問題についてであります。
政党は、本来、議会の発展とともに国民の政治
意思を形成する最も有力なる
組織体として、
議会制民主主義を支える不可欠の要素として発展してまいりました。
政党が時の権力によって弾圧され侵略戦争への道を突き進んでいった事実は、日本国民が忘れてはならない重要な教訓であります。だからこそ、戦後の民主
憲法のもとでは第二十一条、結社の自由はこれを保障するとし、大
政党であれ少数の結社であれ、
民主主義を守る基本として最大限尊重することにしているわけであります。
ところが、本
法案は、
候補者名簿を提出することのできる
政党及び
政治団体の
要件を定め、それに合致しなければ
名簿提出を認めないという、結社の自由を侵す
政党法的規制を
導入しているのであります。すなわち、
国会議席五人以上、
直近の国政
選挙での
得票率四%以上、
参議院選挙立
候補者十人以上という三
要件は、
政党に対する不当な規制を
わが国の
制度に初めて持ち込むものであり、結社の自由を保障した
憲法の
規定と理念に反するばかりではなく、戦後、反動
勢力が一貫して追求してきた
政党法制定への突破口となる重大な内容を持つものではありませんか。
総理並びに
提案者の明快な
答弁を求めます。
さらに、
候補者名簿作成にかかわる党内買収罪及び
名簿選定機関の虚偽宣誓罪を設けている点であります。
政党が時の権力によって内部干渉を絶対に受けないという保証はありません。
提案者はそういうことはないと断言できますか。
自民党は、この
規定がないと、買収により
名簿登載をさせようとする者や、
順位を上位にさせようとする者を排除することができないのでしょうか。みずからの金権買収
選挙を根絶することができない
政党の
基準によって日本の
民主主義の根幹にかかわるような立法をすることは、断じて許すことができません。
第二に、
無所属、無党派の立候補を事実上制限し排除している点であります。
少数
政党の
議席を抹殺した悪名高い西ドイツの五%阻止条項でさえ、
得票率の結果について作用するものであって、
一定の
有権者の署名を集めることによって
選挙への立候補は可能であります。ところが、本
法案は、
政党の三
要件によって、これに合致しない
無所属無党派や小
政党からの立候補自体を禁止し、いわば門前払いをするものであります。無党派、
無所属議員の議会進出への道をも保障することは、少数
意見を含むあらゆる民意を正しく反映し、
政党支持の自由を守る上できわめて重要であります。
たとえば、清潔な
選挙をモットーとして多くの
有権者の支持を得てこられた故市川房枝
議員が、昨年の
選挙で得た票は二百七十八万票に上ります。
総理並びに
提案者は、このような多数の国民の
意思表示の道を本
法案によって封殺してしまおうというのでありますか。
また、小
政党の発展の可能性を保障することも
議会制民主主義と国民の参政権を守る上で重要であります。真理が少数
意見の中にもあり得ること、おごれる多数者が少数に転落していくこと、これは古今東西の
歴史が示すととろであります。小
政党の伸びる芽を法の規制によって摘み取ってしまおうとすることは、国民の選択する権利を奪うものであり、独裁政治につながるものと言わなければなりません。
政党法的規制にあわせ、
無所属や小
政党の立候補を禁止しようとするのは、
自民党が
現状維持を目指すだけではなく、悪政から身を守るための国民の変革の
意見をも拒否し、その可能性を抑えて、大企業とアメリカに奉仕する
現状の支配体制をより強化しようとしているからではありませんか。これは国民主権に対する重大な侵害であって、断じて許せないものであります。
憲法前文は「日本国民は、正当に
選挙された
国会における
代表者を通じて行動し」とうたうととむに、
憲法十五条に「国民固有の権利」として
選挙権を保障しております。
昭和四十三年十二月四日最高裁大法廷では「被
選挙権者特にその立候補の自由も
憲法十五条一項の保障する重要な基本的人権の
一つと解すべきである」との判断が示されています。しからば、この
憲法の保障する基本的人権が、
所属政党の大小により、または
政党所属の有無によって侵害され差別されるのは、法のもとの平等を定めた
憲法十四条、及び人種、信条などによって被
選挙権の差別を禁じた
憲法四十四条に反することは明らかではありませんか。
憲法二十一条一項の結社の自由は、
政党に加入し、または加入しないことの自由を保障するものであり、いずれの
政党にも加入しないことで立候補を認めないのは、明らかに結社の自由を侵害するのではありませんか。
総理並びに
提案者の明快な
答弁を求めるものであります。
提案者は、十名の
候補者をそろえれば立候補できるから
憲法違反でないと説明しています。しかし、本
法案は、
各種選挙における
供託金を
現行の二倍の額にし、
供託金を
比例代表選出議員の
選挙については一人四百万円という莫大な金額にするとともに、
当選者の二倍の立
候補者の
供託金を除いて残りを没収するとしています。こうした多額の
供託金を強要し、厳しい没収
規定を設けられては、事実上立候補を断念せざるを得なくなるのであります。自治大臣と
提案者にお尋ねいたしますが、さきに指摘いたしました
名簿提出の三
要件に加え、二重三重の立候補制限にはなりませんか。
第三に、本
法案が
選挙運動について大幅な規制を新たに
導入していることであります。
民主主義を支えるものは言論の自由の保障であり、特に政策を掲げて国民の審判を仰ぐ
選挙に際しては、それが最大限保障されるべきであります。ところが、
現行の
公職選挙法自体、第二次大戦前の専制政治の時代の規制を少なからず引き継いだ上、たび重なる改悪によって、戸別訪問の禁止という先進諸国に例のない規制を初めとして、言論による
選挙活動をがんじがらめに規制するものとなっているのであります。
これに加えて、本
法案では、
現行全国区の
候補者の
選挙運動として認められていた言論宣伝戦の手段を一切禁止した上、
政党の
選挙運動も、
選挙公報、
新聞広告、テレビ、ラジオ政見放送のみにするという大改悪であります。
有権者の側からすれば、どんな
候補者が
名簿に
登載されているのか、その
候補者がどんな政策や識見を持っているかなど知る権利があります。また、
候補者も、自分が
所属する
政党の政策や自分の政見を
有権者に広く伝え、
登載名簿への支持を訴えることは当然の義務ではありませんか。
政党自身も政策を高く掲げ、
名簿への積極的支持を訴えることこそ、
政党の厳粛な使命ではありませんか。
政党の活動は多種多様、広範囲にわたって認められなければなりません。
総理並びに
提案者、こうした
選挙の基本である
有権者の「知る権利」を保障する
選挙運動がほとんど禁止される本
法案は、
民主主義に対する重大な挑戦ではありませんか。
第四に、
当選人決定方式でありますが、一人区など
地方区で多くの
議席をまず確保した上、
比例代表制もまた
自民党に有利なドント方式で決めようとしております。党利党略きわまれりというべきであります。
今回の
自民党案であるドント方式で過去六回の
全国区の
自民党の
得票数を計算すると、実際の
当選者に比べ一
議席から六
議席といずれも
議席増をもたらすことになり、まさに
自民党に有利な方式にほかなりません。多数党に特に有利であることは国際的にも明白であり、だからこそスウェーデンやノルウェーなどでドント方式を排し、他の方式を採用しているではありませんか。
提案者の
見解を求めます。
提案者の説明によれば、
全国区
制度の改悪も、
選挙運動禁止の
理由も、結局は
現行選挙制度に金がかかり過ぎるからだというのでありますが、一体どこに金がかかるのか。金をかけているのは一体だれなのか、金をかけている者はその改善を本気でやろうとしているのか、このことの解明が先ではありませんか。糸山英太郎派による十億円とも言われる空前の大買収事件、利益誘導の国鉄ぐるみ事件、後藤田正晴派事件等々
自民党候補による買収事件は後を絶たないどころか、ますます巨額化、悪質化しております。この事実は、金がかかるのは
選挙制度に原因があるのではなく、
自民党などの金権腐敗体質によるものであり、これを改めない限り、
比例代表制にしても金権
選挙はなくなりません。
総理並びに
提案者にお尋ねします。これを一掃することこそ、金のかからない
選挙を実現する第一歩だとは思いませんか。
その絶滅のためには事実を明らかにすることが必要です。国家公安委員長に対し、
昭和五十一年以降の国政
選挙における買収事件数の党派別内訳を明らかにすることを求めます。
次に、大企業から献金を受け、それに有利な政治を行っていることこそ、今日の悪政の根源であり、
選挙に金を使う温床であります。ところが、政府・
自民党は、
政治資金規正法の五年後の
見直し規定を逆手にとって、企業献金を拡大しようとしているではありませんか。これは政治倫理に反し、「金をかけない政治」に逆行します。
鈴木総理は、企業献金や団体献金の禁止をする勇気を持つべきではありませんか。
以上、あれこれの
理由は挙げても、結局本
法案が
自民党の党利党略に基づき、
わが国の
議会制民主主義を一層危険に追い込むものであることが明らかであります。
わが党は、
全国区
制度が、
現行の
国会議員選挙制度の中では
有権者の選択がより公正かつ民主的に
政党の
議席数に反映し、無党派
議員進出をも可能にしてきた
制度であると
考えます。また、わが党は、「今後、
衆議院小
選挙区制
導入の突破口とするような党略的策謀と絡めることなしに
全国区制の
改革が公式に提起され、しかも
現行制度に比してより合理的な方法と内容が示され、国民の選択の公正な反映が侵されない保障がある場合には、拘束
名簿式の
全国一区
比例代表制の
検討に反対するものではない。」という態度も表明してまいりました。ところが、本
法案は「
比例代表制」の名を用いながら、その内容はわが党が
考えている本来の民主的な
比例代表制とは全く異質のものであり、明らかに
参議院制度の抜本的改悪であり、
衆議院小
選挙区制
導入への突破口としようとするものであって、とうてい認めることはできません。直ちに本
法案を撤回することを
総理並びに
提案者に強く求めて質問を終わります。(
拍手)
〔
金丸三郎君
登壇、
拍手〕