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1981-10-15 第95回国会 参議院 内閣委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十月十五日(木曜日)    午前十時三十分開会     ―――――――――――――    委員異動  十月十五日     辞任         補欠選任      山内 一郎君     大木  浩君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         遠藤  要君     理 事                 伊江 朝雄君                 林  ゆう君                 矢田部 理君                 柄谷 道一君     委 員                 板垣  正君                 大木  浩君                 岡田  広君                 源田  実君                 竹内  潔君                 林  寛子君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 片岡 勝治君                 野田  哲君                 山崎  昇君                 中尾 辰義君                 峯山 昭範君                 安武 洋子君                 秦   豊君    国務大臣        労 働 大 臣  藤尾 正行君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       中山 太郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       中曽根康弘君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  大村 襄治君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        管理局長     加藤 圭朗君        人事院事務総局        給与局長     長橋  進君        内閣総理大臣官        房広報室長兼内        閣官房内閣広報        室長       小野佐千夫君        総理府人事局長  山地  進君        臨時行政調査会        事務局首席調査        員        山本 貞雄君        日本学術会議事        務局長      大濱 忠志君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        行政管理庁行政        監察局長     中  庄二君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   石崎  昭君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁長官官房        長        夏目 晴雄君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  和田  裕君        防衛施設庁長官  吉野  実君        防衛施設庁総務        部長       森山  武君        防衛施設庁施設        部長       伊藤 参午君        防衛施設庁労務        部長       木梨 一雄君        労働省労政局長  吉本  実君        消防庁次長    鹿児島重治君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 源三君    説明員        外務省北米局安        全保障課長    加藤 良三君        食糧庁業務部買        入課長      羽鳥  博君    参考人        公共企業体等労        働委員会会長   中西  實君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国家公務員退職手当審議関連して、国家  行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並  びに国防衛に関する調査  (国家公務員等給与改定に関する件)  (横浜市内における米軍燃料タンク爆発事故  に関する件)  (行政改革に関する件)  (国の防衛に関する件)     ―――――――――――――
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから内閣委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、山内一郎君が委員を辞任され、その補欠として大木浩君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  本日の委員会に、国家公務員退職手当審議関連して、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査のため、参考人として公共企業体等労働委員会会長中西貴君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 御異議ないと認めます。     ―――――――――――――
  5. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 本日は、国家公務員退職手当審議関連して、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 野田哲

    野田哲君 まず官房長官、それから総理府総務長官人事院勧告取り扱いについて伺いたいと思います。  去る八月七日に政府国会提出をされた人事院勧告、もうすでに二カ月以上も経過をしているわけでありますが、いまだに政府態度が決まっていないし、臨時国会が開かれて一カ月近くもたつにもかかわらず、法案提出がない。これは一体どういうことなのか。  われわれが当委員会で毎年給与法審議を行うに当たって、毎回の審議でいつも問題になっているのは、四月から改善をされるべき公務員給与が、差額の清算が行われるのはいつも十一月の終わりあるいは十二月、こういうことで半年以上もその実施がおくれる。こういう点の改善策政府に毎回ただしてきたことに対して、政府はその都度、勧告後できるだけ早い機会国会開会を要請をし、そこに最大限に急いで給与法提出をすることによってその問題の解決を図っていく、これ以外に現行制度のもとでは方法はない、こういうことで、政府としては勧告後に開かれる国会の冒頭に給与法改正案国会提出をする、こういう趣旨のことをその都度答弁をされているわけであります。  ところが、最近の報道によりますと、渡辺大蔵大臣のごときは、この問題は十一月の終わりごろにならないと結論が出ないなどという、いままでの国会審議経過とは全く逆行した発言をされていることも報道されているわけでありますが、一体この取り扱いをどうするのか、給与関係閣僚会議を主宰する官房長官と直接の担当の総理府総務長官のまず基本的な見解、あるいは現在の政府部内の協議状況等について御報告をいただきたいと思います。
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題につきまして、政府方針決定が遅延をしておりますことはまことに恐縮なことでございますが、と申して、じんぜん日を送っておるわけではございませんで、勧告がなされましてからすでに二回給与関係閣僚会議を開いております。  会議におきまして議論になっております主な点は、御承知のように、ただいま行財政改革法案審議を主たる課題として国会をお開き願っておるわけでございますが、行財政改革につきまして答申をいたしました臨調が、この給与問題につきまして、昭和五十六年においては何らか適切な抑制措置を講ずべきであるという答申をしております。  それで、こう臨調答申全体につきまして、政府は基本的にこれを尊重するという閣議決定をいたしておりまして、その点は、したがいましてこの給与についての適切な抑制措置ということをも含んでいることに一方でなるわけでございます。  それで、このような臨調答申と無関係ではございませんが、御承知のように非常に財政が厳しい状態になっておりまして、年度の前半をただいま過ぎたところでございますが、経済動向あるいは税収見積もり等々楽観を許さない状況でございまして、それが先ほど御引用になりました大蔵大臣の、もうちょっと経済なり税収動向を把握してみないとという発言になっておるわけでございます。  他方で、しかしながら、人事院勧告完全実施するということはここ十年来ほぼ慣熟した慣行になり、それがわが国労使関係をこのような安定したものにしていることに大きな寄与をしておることも事実でございまして、この労使関係が良好であるということは、わが国が現在世界各国から評価されております非常に大きな要因であることも御承知のとおりでございますから、この点も決して軽々に考えるわけにはまいらないといったような観点からの議論、それらをめぐりまして給与関係閣僚会議がなお検討を続けておるというのが今日までの大体の実情でございます。
  8. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) ただいま官房長官からお答えを申し上げましたのと全く一緒でございます。
  9. 野田哲

    野田哲君 この問題と関連をした三公社現業仲裁裁定については、けさのある新聞報道によると、十九日に政府与党連絡会議を開いて完全実施ということで結論を出す、こういう報道がされておりますが、これはそういうふうに受けとめていいわけですか。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その報道は私まだ目にいたしておりませんが、政府としては十九日にそのような決定をするという方針は持っておりませんで、基本的には仲裁裁定につきましては、公労法十六条の規定によって、予算上、資金上直ちに可能とは考えにくい状況でありますので、国会の御判断お願いを申し上げたわけでございまして、議決事項として御判断を仰いだ当時の状況とただいまと基本的に状況の変化がないということで、引き続き国会の御判断にお任せをしておる、お願いをしておるというのが現状でございます。近いうちに、この問題をさらにどういうふうに新しい要因があると考えるか、ないと考えるか、政府部内で協議をいたしたいとは思っておりますけれども、十九日に云々といったようなことはございません。
  11. 野田哲

    野田哲君 先ほど官房長官お答えになった、昭和四十五年以来公務員給与に関する人事院勧告完全実施をされて労使関係改善という状態になっている、こういうことを報告をされたわけですが、昭和四十四年の十一月十一日のこの問題についての官房長官談話があるわけです。これによりますと、「四十五年度にはいかような困難があろうとも完全実施する。」と、こういうふうに当時の佐藤内閣のもとで保利官房長官談話で述べられております。実は私は、そのときに、この官房長官談話給与関係閣僚会議で決められた直後に官邸でこの談話をメモにしたものを受け取った当事者なんです。公務員組合を代表して官邸に招致をされてこの見解を受け取ったわけです。  そこで、私が当時の保利官房長官にただしたのは、昭和四十五年にはいかような困難があろうとも完全実施をする、四十五年のことだけでは困ります、これは政府方針として今後ずっとこの方針を続けていく、こういうふうに受けとめていいですか、こういうふうに伺いましたところ、先の先までこういう文書に書くことは性格上はばかられる面もあるが、基本的な政府の姿勢としては、四十五年以降はいかような困難があろうとも完全実施をするんだ、こう受けとめていいんだと、こういうふうに保利官房長官が答えておられるわけで、私どもは、その精神というのは当然生きているんだ、こういうふうに考えているわけですが、長官、この保利官房長官の当時の談話、これは御存じでしょうか。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和四十四年のただいま仰せられました十一月十一日、昭和四十四年の人事院勧告完全実施できない状況におきまして、もう来年は決してこういうことはいたしません、四十五年度にはいかような困難があろうとも完全実施をするという趣旨官房長官談話が出ておりますことをよく承知しております。
  13. 野田哲

    野田哲君 これは総務長官に伺いたいと思うんですが、一九十二年にILOに対して「結社の自由委員会に係属している日本関係事件に関する日本政府総括意見」というのがありますね。これをずっと検討してまいりますと、こういうふうに述べています。「日本においては、争議行為禁止に見合う必要な代償措置は完全である。」と、こういうふうに述べています。三公社現業の問題については、「労使紛争は最終的には公正な第三者機関である公労委の仲裁によって解決される。」と、こういうふうに述べています。そして「公共部門を含めて雇用者団結権及び団体交渉権は十分に尊重されており、かつ、団結権あるいは団体交渉権侵害行為に対する救済のための制度も十分に整備されている。」と、こういうふうにILOに対して政府は述べているわけであります。そしてさらに、後段の方でも「わが国においては、公務員及び公共企業体の職員はストライキを含む争議行為禁止されている。しかし、争議行為禁止に見合う必要な代償措置は以下に述べるとおり完全である。」と、こういうことで、人事院勧告については、あるいは仲裁裁定については、政府は完全に実施しているし、これからも完全に実施する、こういうふうに文書できちっと政府見解を述べてILO提出をしています。  もし、これを報道されているような形で政府公務員給与に関する人事院勧告削減をする、あるいは仲裁裁定について削減をする、こういう措置をとったときには、これは国連の機関であるILOに対して日本政府は大うそをついたことになるわけですが、もしそういう措置政府がとったときには、この見解に対して総務長官はどういう今度は見解ILOに表明されますか。
  14. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) お尋ねのILOに対する政府見解表明のことはよく存じております。仲裁裁定に関しましては国会議決お願いをしていることでございまして、政府としては国会の御判断を得たしていただきたいと考えております。  また、人事院勧告完全実施、あるいは実施しない場合の問題につきましては、先般衆議院予算委員会における大出俊議員の御注意もございまして、まだILOに提訴する、しないというような問題も、だれも論議しない間に政府ILOに提訴した場合のことを考えてとやかく言うことは控えられるべきではないかという御指摘もございました。政府といたしましては、ただいま給与関係閣僚会議でこの十年間慣熟いたしました安定した労使関係というものをさらに維持、発展させるために誠意を持って努力をいたしておるところでございます。
  15. 野田哲

    野田哲君 「争議行為禁止に見合う必要な代償措置は完全である。」ということは、つまり人事院勧告についてはそのとおりに実施をすると、こういうことじゃないですか。
  16. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 誠意を持って努力をいたしておるところでございます。
  17. 野田哲

    野田哲君 誠意だけではこの問題はけりはつかないんです。「代償措置は完全である。」ということは、つまり勧告があったとおりに実施をすると、こういうことが「代償措置は完全である。」と、こういうことで、代償措置というのは精神上の問題だけであって中身は変えてもいいんだ、こういうことではないと思うんですが、くどいようですが、再度。
  18. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) この人事院制度ができまして、完全実施が実現するようになりました昭和四十五年に至るまでの経過におきましては、完全実施ができなかった歴史がございます。この歴史の中で一番大きな問題は、国の財政収入というものが最大の原因であった。しかし労使双方努力、そういうことによりまして、先ほど先生指摘保利官房長官談話というものが出て完全実施ができた。私は、それ以来の政府のとってきた態度もあるいは組合側態度もきわめて国のためにはよかったというふうに考えております。  昨年も、先生御案内のように、きわめて厳しい財政難の中で、四回にわたる給与関係閣僚会議でやはり誠意を持って従来の労使関係を維持するために私ども努力をさしていただきまして、十月二十八日に、第四回の給与関係閣僚会議でこれの結論が出たわけで由ございます。  今回、大蔵当局によりますと、国の財政はきわめて税収の面で見通しが立ちにくい、昨年よりもさらに悪いという状況でございまして、私どもといたしましては、財務当局も含めた給与関係閣僚会議でその原資となる税収がどういう見通しになるか、そういうものをただいま鋭意検討中でございますので、しばらく経過をお待ちいただきたいと考えております。
  19. 野田哲

    野田哲君 しばらく経過をお待ちくださいということで、法案が出てこなければ待つしかないんですが、しかし黙って待っておるわけにいかないから催促している。  四十四年までは、確かにいま言われたように実施時期をおくらせて削減をしていたわけです。そのことに対して、公務員組合政府との間でいろいろ問題が起きて、そして公務員関係組合ILOにこの問題を訴えた。それに対する政府見解表明というのが先ほど私が述べた文章なんですから、これはもう平らに言えば、もうこれからは値切りませんと、だから公務員争議権等の制約に対する代償措置は完全でありますと、パーフェクトだと、こう言っています。そうしたら、ことしまた値切るというのは、これはまさに国際的な大うそつきということになるわけです。  官房長官の時間が迫ってまいりましたので官房長官に再度伺いますが、国会会期はもうあと一カ月しかございません。その間には飛び石連休どもあって審議日数もかなり迫っている、残り少なくなっているんですが、給与法改正案について政府はどういう形でこの国会提出をなさる予定なのか、この国会でこの問題が決着つけられる見通しなのかどうか、そういう立場に立って法案が出されるのかどうか、この点をお伺いをいたしたいと思います。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 給与関係閣僚会議で討議をいたしております事柄の内容は先ほど申し上げたとおりでございまして、できるならば、できるだけ早く結論を出しまして国会法案提出するのが本来であることは私もよく存じております。しかしながら、先ほど御紹介申し上げましたような経済動向税収見積もりなどから、たとえば大蔵大臣のお立場から言えば四、五カ月は様子を見たいという御主張もございまして、この国会、定められた会期中に法案提出を申し上げて御審議を願うことができるかどうか、まことに申しわけございませんが、ただいまはっきり見通しを申し上げることができないようなありさまでございます。できるだけ早く結論を出すために最善努力をいたすことはもとよりでございます。見通しについて、確たる見通しを申し上げ得ないことを御了承いただきたいと存じます。
  21. 野田哲

    野田哲君 官房長官政府努力目標として、あるいはいままで国会でこの制度についての問題点を私ども指摘をして、四月からの賃上げの差額が十二月にならないと清算できないというようなことで一体どうするんですかという指摘に対しては、勧告が行われた後の国会決着がつくように、しかも早い機会決着がつくように政府としては努めてまいることによってこの問題の早期解決を図っていきたい、こういうふうに何回も官房長官総務長官が述べておられる。だとすれば、やはり今度の国会の中でこの問題が処理ができる、こういう立場に立っての法案提出というものがなされなければならないんじゃないかと思うんですが、その点での努力目標として長官見解、再度伺いたいと思うんです。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 正常な事態でございましたらまさしくそのようにあらねばならぬところだと存じますが、何分にも行財政改革というのは恐らく何十年に一度というような事態でございますし、また今年度の財政もきわめて異常な様子でございます。正常な事態と申しがたいような状況でございます。しかしながら、政府としてはできるだけ最善誠意を尽くして早く結論を得るように努めたいと存じますが、国会提出をいたします時期につきましては、申しわけないことでございますが、ただいま確たる見通しを申し上げることができませんので、御了承を得たいと存じます。
  23. 野田哲

    野田哲君 長官、結構でございます。  総務長官にこの問題でさらに伺いたいと思うんですが、新聞報道によりますと、いろいろなたのふるい方やかんなのかけ方について協議がされているような報道がありますね。政府与党の間で人事院勧告にどういうふうにかんなをかけるか、どういうふうになたをふるうのか、いろいろ方法が二つ、三つ報道されている。御承知でしょう。大体そういうかんなのかけ方やなたのふるい方をやっているんですか。
  24. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) そのようなことはございません。
  25. 矢田部理

    矢田部理君 関連質問をいたしたいと存じます。  人事院総裁に伺っておきたいと思うのですが、本来の人事院存在理由についてはもう改めて申し上げるまでもありませんが、公務員争議行為等禁止代償措置として人事院存在をする、その法的な性格は準司法機関である、したがってまた、そこから出される勧告につきましても、いわば裁判所の判決にも等しい法的意味あるいは重みを持っているというふうに考えられるわけでありますが、その点、総裁としていかがお考えでありましょうか。
  26. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 人事院性格なりその任務なりというものにつきましては、事新しく私からるる申し上げる必要もなく、皆様方先刻よく御理解をいただいておるとおりでございます。  いま御指摘になりました点は、恐らく、全農林の関連で最高裁で過去に判決がございました、その判決理由等引用をなさってお述べになったことだと拝察をいたします。この場合に、私として感じておるところ、あるいは理解をしているところを申し上げたいと存じますが、この点は、実は先般の衆議院でもいろいろ論議をされましたことに対して、政府として法制局長官、またそれに付随して私からも申し上げたところでございます。  実は、あの判決の中で準司法的機能ということを申しておりますが、これは、私は純法律的に考えてみました場合には、このように理解をいたしております。と申しますのは、人事院というものは、その性格からいってきわめて独立性の強い中立的機関として法的に位置づけられておるのであります。そのために、ここでもう省略して申し上げませんが、諸般の独立性確保のための措置を講じております。これは人事院性格あるいは人事官身分保障のみならず、その他いろいろ、勧告であるとか意見の申し出とかいうようなことで、非常に独立性があるという仕組みになっております。  これの機能を全体に分けますと、私はやっぱり三つあると思います。その一つは、いわゆる一般的な仕事一般的業務――行政的業務と言ってもいいかもしれません、一般的な業務。それから第二が、いま御指摘になりました準司法的機能。それから第三が立法的機能。大体分けてこの三つであろうと思っております。  その中で、準司法的と申しますのは、なるほど言葉としては人事院独立性をそれだけ権威づけるといいますか、理由づける一つ言葉として、私はそれ自体は大変意義のあることだとは思いますが、純法律的に申しますと、先生もこれは十分御承知でありますように、準司法的という機能に着目をいたしておりますのは、実は人事院のやっておりまする仕事の中でいわゆる裁判に類する仕事がございます。これは行政措置要求でありますとか、あるいは不利益処分に対する審査でありますとか、これはまさしく準司法的機能の範疇に類するものでありまして、なかんずく不利益処分等については、人事院会議で最後的な決定をいたしまする前に公平委員会というものを組織いたしまして、ここではほとんど裁判所の裁判事務と法廷の仕事と同じような形で審査を進めておるということは、これまた御承知のとおりであります。これを中心にして準司法的機能というふうになっておりますのが現行制度のたてまえでございます。  したがいまして、これと給与勧告は、私は直接に結びつくものではないというふうに考えております。勧告勧告として、ほかならず、ほかにも全く例のない国会に対する勧告、内閣のみならず、国会に対する勧告を申し上げるという機能が与えられておるのでありまして、それ自体が非常に大きな意義を持っている、独立性を保障しておる。これでありますからこそ、累次いままでも御質問等で明らかになっておりますように、完全実施をめぐっていろんな論議がございましたけれども、四十五年以来は、これはやはり勧告趣旨からいって、また人事院性格からいって、当然にこれは完全実施すべきものだということでルールがしかれまして、以来今日まで、まことに慣熟した制度として成長をしてまいりました。このことが、やはり日本の公務における良好な労使関係の形成に大きな役割りをしたことは疑うべからざることではないかというふうに私たちも考えておるのであります。  そういうことでありまして、いろんな面から言って、人事院というものはいろいろな角度から保障されて独立的な機能を持っておる、中立機関としての性格を持っておる。そういうことから、これを保障する意味において準司法的機能も持っておるということが言われておるのでありまして、そういう意味では、それ自体は結構なことでありますが、純法律的に言えば、その準司法的というのは、いま申したような行政措置要求、あるいは不利益処分の審査、これがまさしく法律的にはそれに当たるものではないかというふうに私は考えております。  それはそれとして、勧告自体は、以上のような労働基本権制約という重大な制約に対する代償機能として与えられており、したがって、それの実現のためにはほかに類例のない国会に対する勧告権も与えられておるということから申しまして、この勧告はやはり最大限にと申しますか、完全に実現をしていただきたい、人事院の心からなるお願いでございます。
  27. 矢田部理

    矢田部理君 人事院全体が準司法機関ということで私は申し上げているわけではなくて、審査とか勧告も含めて、非常に重みを持つあるいは法的意味を持つという意味で申し上げているわけでありますが、あわせて法制局長官に伺っておきたいと思いますが、全農林の警職法事件判決につきましては、これはもともと公務員争議行為等禁止が言うならば違憲ではないかということをめぐって主として争われた事件でありますから、人事院存在理由とか代償機能としての役割りとかということは直接的に争いになったわけではありません。ただ、判決指摘をしておりますのは、公務員争議行為等禁止は、適切な代償措置が講ぜられているのであるから憲法二十八条に違反しない、こういうふうに言っているわけですね。  そうなりますと、これは逆の立場といいますか、裏返して問題を指摘をしますれば、適切な代償措置が講ぜられなければ、言うならば憲法二十八条に違反をするというふうにも当然のことながら読めるわけであります。その点、法制局長官としていかがお考えか、伺っておきたいと思います。
  28. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 全農林事件の最高裁判決の読み方についてはいろいろな読み方があると思います。いま矢田部委員がおっしゃいましたような読み方も確かにあると思います。ただ、もう少しこの最高裁の判決の全体を見ますと、多数意見は、公務員の労働基本権の制約をする場合に代償措置というものの存在、つまり代償措置が講じられなければならないということは確かに言っておりますが、それだけではない、つまり公務員の労働基本権が制限される、それが憲法上合憲だと言われる理由としては、こういうふうに言っているわけであります。  いろいろ細かいことを抜きにして申し上げますと、「私企業の労働者とは異なる公務員の職務の公共性とその地位の特殊性を考慮にいれ、その労働基本権と公務員をも含めた国民全体の共同利益との均衡調和を図るべきであるという基本的観点に立ち、その説示するような諸般の理由を総合して国家公務員法の規定する公務員の労働関係についての規制をもって、いまだ違憲と見ることはできないとしているものなのである。」と、こういうふうに言っておりますから、代償措置だけをもって、あるいは極端な言い方をすれば、代償措置さえ講じておけば憲法違反にならないと、そういう端的を言い方はしていないと思います。  ただし、別のところで、まさにそれが問題になるところでございます、指摘されるところでございますが、「労働基本権の保障と国民全体の共同利益の擁護との間に均衡が保たれることを必要とすることは、憲法の趣旨であると解されるのであるから、その労働基本権を制限するにあたっては、これに代わる相応の措置が講じられなければならない。」と、こういうことを言っているわけです。そうして、具体的措置が憲法の要請に沿うものかどうかについて詳細な検討を加えた結果、「公務員は、労働基本権に対する制限の代償として、制度上整備された生存権擁護のための関連措置による保障を受けているのである。」と、ここまでは言っておると思います。しかし、それ以上に、いま矢田部委員が言われたように、代償措置が、具体的には人事院給与勧告が、仮に一仮に完全に実施されなかった場合に直ちに違憲となるというところまでこの最高裁の判決が断定しているとは言えないのではないかと、こういうふうに考えます。
  29. 矢田部理

    矢田部理君 法制局長官指摘を待つまでもなく、私どもは、本来の議論としては、代償措置さえ講ぜられれば争議行為禁止は合憲である、憲法適合性を持っているというふうなことは全く言っておりません。むしろ代償措置があったからといって、争議行為禁止は根拠を欠く、むしろ違憲の疑い――違憲だというふうに言っているわけでありまして、しかしながら、一面で禁止をし、しかもその代償措置すら完全に機能をしないということになれば、この最高裁の判決は、やはり違憲の疑いが強いということを、たとえばこの再補足意見ども交えて読んでみれば、指摘をしているのでありまして、法制局長官見解とは少しく見解が違うわけでありますが、ただ、こういうことは言い得るんじゃないでしょうか。  人事院勧告がありました、しかしこれを全くネグってしまったと、法制局長官は、不完全実施でも直ちに違憲とは言えないという言い方をしているわけでありますけれども、では全く実施をしなかったということになれば、違憲の問題、憲法上の問題が出てくるというふうにはお考えでしょうか。
  30. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) これも、その点について最高裁の多数意見は直接には言及していないと思います。したがって、推論を加えるほかないのでありますけれども、多数意見に属する七裁判官が、少数意見の五裁判官の論難に対して答えているところに、「代償措置制度さえ設けておけばその争議行為禁止しても憲法に違反するものではないとの安易な見解に立っているものであるかのごとく誤解し、多数意見を論難している。」と、こう述べておりますから、言いかえれば、そういうふうな考え方は持っていないということだろうと思います。したがって、制度さえ設けておいて、そしてそれは完全に実際の場合にはすべて無視するというようなことであっては、最高裁の多数意見は、それはいけないんだと、こういうことは言っていると思います。しかし、それ以上にどこまで言っているかということは、これはたびたび指摘されるように、多数意見のうちの二人の裁判官は一応その問題を取り上げてはおりますけれども、多数意見そのものとしては、その問題についてはそれ以上明白に説示はしていないと私は考えます。
  31. 矢田部理

    矢田部理君 私が伺っているのは、何も最高裁判所の判決の解説を聞いているのじゃない。これは一つの重要な中身ではありますけれども、直接的に代償措置のことを法律的に性格づけたり、指摘をしているわけじゃありませんから、傍論といいましょうか――的な位置づけでありますから……。  ただ、ここの文脈、内容から見ても、少なくとも代償機関は置いた、しかしそれが不完全実施ということなら憲法に必ずしも違反するとは言っていないという解説は、あなたの解説として承りますが、同時に、全く実施をしない、代償機能として機能しないということになれば、当然憲法上の問題が出てくるのではありませんか。その点、最高裁の判決の解説ではなくて、あなたの見解、法制局としての見解を伺っておきたいわけです。
  32. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) ちょっとお断りをいたしておきますが、最高裁の判決の考え方によるというのが行政府としての政府の基本的な態度であるべきだと思います。そういう意味で、それでは最高裁の判決はどういうふうに読むべきか、理解すべきかということを申し上げているわけでございますから、いわば私の意見は、最高裁の判決を私なりに読んだその見解を申し上げているというふうに御理解願いたいと思います。  そこで、いまの御質問でございますが、繰り返すようでございますが、その点については、先ほども申し上げましたように、制度さえ設けておいて後は知らぬ存ぜぬということであっては、少なくとも最高裁は、それは憲法上の問題が生ずるであろうということは、これは言っているわけでございます。それは先ほど申し上げたとおりであります。
  33. 矢田部理

    矢田部理君 わかりました。  そこで、もう一点ぐらいで関連質問ですから終わりたいと思いますが、やはり代償措置が適切に機能するというためには、この最高裁も言っておりますように、労働組合要求をそのまま受け入れないからといって、その制度が本来の機能を果たしていないというわけにはいかないにしても、少なくとも人事院勧告をした、それについて完全実施を求めているというのが最高裁の本来のねらい、要求だろうというふうに私は受けとめているわけです。  特にこの追加補足意見などでは、こう言っているわけですね。代償措置が迅速――これはもう時間の点でもやっぱり迅速でなきゃならぬ。しかも公平にその本来の機能を果たさず、実際上画餅に等しいと見られるような事態が生じた場合には、公務員がこの制度の正常な運用を要求して争議行為に出たとしても、その争議行為は処罰することはできないんだとまで言っているわけでありますから、当然のことながら、代償措置を設けた、単に措置を設けた、機関を設けただけではなく、その機能が適切に機能するということが争議行為禁止の前提だと、重要な中身なんだということは言っていると思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  34. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) これも衆議院行政改革特別委員会でたびたび御質問があり、私もお答えいたしておりますが、ただいま御指摘のようなことが追加補足意見として書かれていることはそのとおりでございます。ただし、同時にこの追加補足意見の後の方には、若干ニュアンスの違ったことも書いてあることも事実であります。それをどちらを強く読むかというのは、人によって読み方は違うと思いますが、両方のことが書いてあることは、これは事実として指摘せざるを得ないと思います。それから、同時にまた、この追加補足意見はあくまで追加補足意見でありまして、多数意見そのものにもなっていないということもございます。  したがって、私ども判決理由全体をいろいろ総合勘案して先ほど申し上げたようなことを申し上げているわけでございますけれども、しかし、何度も同じことを申し上げますが、代償措置が設けてありさえすればいいというのではなくて、やはりそれが機能を発揮しなきゃならない、実効性を持ち得るように少なくとも当局は最大限の努力をしなければならないんだということは最高裁判決趣旨とするところであろうと、こういうことも衆議院委員会において私は一番最初にそれを申し上げております。
  35. 矢田部理

    矢田部理君 いま法制局長官からも言われたように、政府としてはこの最高裁判決に即してみても最大限の努力をしなきゃならぬ。同時にまた、私どもから言わせるならば、代償措置さえ設ければ、あるいはそれが機能を果たしさえすれば争議行為禁止は合憲だなどというふうに私たちは考えてはおりませんけれども、少なくとも設けられた代償措置が有効かつ適切な機能をやっぱり完全に発揮する。それができないようでは、やっぱり憲法二十八条違反の疑いが強いというふうに言わざるを得ないわけでありまして、その点で総務長官としても、担当大臣として、その最高裁判決人事院制度の持つ意味を十分に理解をされ、財政難という理由だけでこれを引き延ばしたり、まだ見当がつきませんと言ったりすることではなくて、一刻も早く人事院勧告完全実施のために努力をする、あるいはそのために全力を尽くすということが総務長官としての役目だと思うのですが、最後に総務長官見解財政事情が容易でないというのは大蔵大臣が言うことでありまして、あなたがそこまで考える必要はないんです。もっと、やっぱり財政事情その他があっても、従来の歴史的な経過から見てもILOに対する関係から見ても、何としてもこれは実施をすると、とりわけ今国会中には明確にするということを明らかにしてほしいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  36. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) かねて国会等で御答弁しておりますように、給与関係の担当大臣として、この十年間のいわゆる労使の安定した関係というものが日本の社会の発展には非常に大きな貢献をしておる、これはもう世界でもそれを認めているところでございます。私は、この労使関係というもの、安定した労使関係というものを維持するということが国の政治の大きな柱である、そういう基本的な考え方に立って、給与関係閣僚会議におきましても誠意を持って努力をしておるということをたびたび申し上げておるのでございまして、今後ともそのような姿勢は変わるものではございません。
  37. 野田哲

    野田哲君 それでは、この問題はこれで終わりまして、火事の話を聞きたいと思います。  まず、一昨日の横浜における米軍の貯油施設の火災事故について、施設庁の方からその概況と今日までにとられてきた対応措置について報告を願いたいと思います。
  38. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 施設庁が承知しているところによれば、事故の概要はおよそ次のとおりであります。  十月の十三日十二時七分ごろ、横浜市金沢区にある米軍小柴貯油施設内の第六号タンク、地下式でありますが、容量が二十万バレル、三万二千キロリットルですか、から火災が発生をしました。同タンクには航空機燃料JP4が約二万四千キロリットル入っておりまして、消火活動には米軍のほか横浜市の消防車等約七十台、約三百人が出動いたしまして、午後四時十五分鎮火をいたしました。  この事故によりまして、付近住宅の窓ガラス等が破損し、付近の住民二名と市の消防員一名、米軍日本人従業員一名が軽傷を負いました。また、周辺住民約七百二十世帯千百人が近くにある中学校とかストアに避難をいたしましたが、夕刻鎮火をいたしまして、同時に避難命令は解除をされたところであります。  事故の原因調査につきましては今後関係機関が行うこととなるわけでございますが、とりあえず防衛施設庁といたしましては、事故後直ちに、つまり当日の十三時三十分でございますけれども、合同委員会の下部機関であります施設特別委員会におきまして、米側に対しまして事故原因の早期究明と安全対策の確立を申し入れた、こういうことになっておるわけでございます。
  39. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 関連して二、三お伺いをしたいと思います。  いま、この事故の概要について御説明がございました。新聞、テレビ等で詳細に報道されておりますので、この点についての内容は省略をしたいと思います。  いま、御答弁によりますと、これから関係機関においてその原因等の調査が行われるという答弁があったわけですが、これはどういう手続でどういう機関が構成されて調査が行われるのか、この点、具体的にお話しをいただきたいと思います。
  40. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 関係機関の立ち入り、具体的には市の消防それから神奈川県警の人たちが入ることになるわけでございますけれども、現地で米軍との話し合いの上立入調査に入ると、こういうことになるわけです。
  41. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 これは正式には、いまもちょっと答弁の中にもありましたように、日米合同委員会の下部機関ですか、そういうものの一応の何といいますか、協議を経てからでないと、正式にいわゆる警察なり消防なりが、もちろん警察独自、消防独自ということじゃなくて、日米で合同して真相といいますか原因を解明するわけですか。そういう手続を経なければいけないのじゃないですか。
  42. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 新聞にも出ておりますけれども、すでに警察当局及び消防当局は立ち入りをいたしておるわけでありますが、これは合同委員会の議を経ておるわけではございません。現地にそれぞれ交渉して、それで中に入った、こういうことでございますが、現地のそういう取り組みといいますか合意ができないでこじれるような場合には、合同委員会あるいはその下部機関に諮って、われわれの方からも強く申し入れを行う、こういう手続になろうと思います。
  43. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 そうすると、そういう手続がなくても警察あるいは消防がそれぞれの権限を持って調査ができるんですか。相手はアメリカですけれども、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  44. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 施設、区域内の維持管理の権利はすべて米軍に属しておりますので、日本の法令が直には適用されないわけであります。  したがいまして、県当局あるいは市当局がそういう中で立ち入って調査をするというようなことになりますと、これは、するようにするためには現地米軍の了解を現地で行った上でないと入れない、こういうことになるわけであります。
  45. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 いや、ですから了解をしても、いわゆる警察固有の権限というのを持っていますね、消防は消防で持っている。そういうものの権利というか、そういう権限に基づく調査というのがいまの段階ですぐできるというふうに理解していいんですね、それでは。
  46. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 先ほど申しましたように、わが国の国内法が施設、区域内で適用されるわけでありませんから、そういう権限がそのままに適用されるということにはならないわけであります。
  47. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 いや、ですから私どもは特にその点を非常に疑問に感ずるのですよね。なるほど警察はすでに入っておりますし、消防も入っておりますけれども、言ってみればいわゆる日米の、つまりアメリカ軍と日本との正式の協議に基づく調査ということではない。消防が入っていっても、そこで証言を求めるとか、あるいは証拠物件を出せとか、警察が行って捜査をした場合に、そういうことはできないのじゃないですか、直ちに。ですから、そういう手続を日米合同委員会なり何なりを経ていなければ、警察なり消防なりがこれほどの事故を調査するということは私は現実に不可能だと思う。  そういう点がもういままであらゆる事故についていつも問題になっているのですよ。この点、もう少しはっきり言っていただきたいと思うのです。いや、そうじゃなくてできるんだということなら、それは願ってもないことなんですよ。それは、われわれとしていままであらゆる事故についてあなた方に追及をして、少なくともそういうことについては機を逸せず直ちに調査機能が発揮できるようにすべきだということを主張しているのですから、それがこれからはできるようになったということであれば、私は大変大きな成果だと思うのですが、いいんですか、そういうふうに理解して。
  48. 吉野実

    政府委員(吉野実君) いま先生がおっしゃるように、そういうことがいまからできるようになったということではありません。日米合同委員会でそういうことをやって、日本の国内法をそこに適用するということを日米合同委員会の場でやるかどうか、これさえも実は条約上に問題があるんだろうと思いますが、いずれにしても日米合同委員会でそういう立入調査を実質的にやるということを話すことはできると思いますが、権限を、つまり日本の国内法が直に施設、区域の中でもって適用されるようにするということは、日米合同委員会仕事の範囲を越えているんではなかろうかと思います。
  49. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 ですから、当初私が申し上げましたように、いま警察が入り、消防が入っていますけれども、言ってみれば法律用語で言えば訪問なんですよね、訪問。それは横浜市と米軍との協議によって、いわゆる点検とか調査という権限はないと、訪問をすると、それは許そうということですからいま訪問をしているんですよ。ですから私は、いまお答えにあったように、警察、消防が調査に入っているというならばちゃんと手続、手順を踏んで、そういう機能を持たせて行かなければ真相究明ができない。こういう事故に当たって、非常に米軍基地という特殊な状況下にあるということは私もある意味ではよくわかるんですが、少なくともこういう事故については、軍事優先とか機密優先というようなことじゃなくて、防災優先、救援優先という原則を日本政府はもっと米軍に対して要求すべきだ。そのことは国民の利益を守る上で基本的な問題だと思うんですよ。  それは、軍事よりも機密よりもまず防災だ、あるいは事故が起こった場合には救援だ、このことを優先させるということは私は政府の責任だと思うんですが、これが一向にできていないということについて、特に基地を持っておる神奈川とか沖縄とか、その他の地域では大変大きな不満があるんですよ。こういう点、たまたま今回は人命を失うというようなことが幸いにしてなかった、だからということじゃないけれども、こういう今度のこの機会を契機にして、ひとつ強硬に米軍と交渉していただきたい。防災優先、救援優先、それは軍事よりも優先だ、この原則を確立するようにしていただきたいんですが、この点についての見解を承りたい。
  50. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 基地の安定円滑な運用のためには、先生がおっしゃいますように、防災の問題を重視しないではできないわけでありますので、当然われわれもいままで米軍当局に対して申し入れしておりましたけれども、現在こういう大きな事故が起こった以上、われわれとしては、現地だけではなくして、東京におきまして合同委員会等において強くその旨を申し入れ、その旨と申しますことは、事故の原因を完全に究明して、今後こういうことがないようにきちんとしてもらうということを強く申し入れるつもりであります。
  51. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 今回の事故については、それでは直ちに日米合同委員会を聞くというふうに理解してよろしゅうございますね。  それから、この点を確認すると同時に、こういう事故が起こってから、今後そういうことがないようにやれということはもちろんいいんですよ。私が言っているのは、こういう事故が仮に起こった場合には、防災優先、救援優先というそういうシステムを事前につくっておけということなんです。だから今度の事故があっても、消防、警察が行ったって単なる訪問じゃしようがないじゃないですか。こういう事故が発生したときには、警察も入って現実にその調査ができる、消防が入って調査ができるというそういうシステムをつくっておきなさいと言うんですよ。この二点について。
  52. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 合同委員会に、近いうちに開かれますから、先ほど申しましたようにわれわれとしては強く申し入れるつもりであります。  それからもう一点。今後予防のために、あるいは起こったときのいろいろの動き方についてフレームワークを準備しておくべきではないか、こういうお話でございますが、中央の関係機関とよく相談をいたしまして、われわれとしましてアメリカ側に対しましていろいろ申し入れることに、必要な協力をいたしておくつもりであります。
  53. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 単なる申し入れじゃなくて、そういうシステムをつくるように、もちろんこれは関係官庁いろいろ相談しなければならぬと思うんですが、ぜひこの機会につくるべきであると、これは強力にひとつ要求をしておきたいと思います。  それから、今度の事故によって明らかになりましたけれども、いわゆる石油タンクというものが非常に率直に言ってお粗末なものであるということが暴露されました。ところが、日本のいわゆる民間なり――政府関係があるかどうかわかりませんが、民間の石流タンクというのは非常に厳しい規制があるんですよ。一たんこういう事故が起きれば自動的にあわの消火剤が注入されて消えるようになる、そういうものを施設しなければ許可しない。非常に厳しい。ところが米軍の貯油タンクについては、言ってみれば野放しなんですよ。ですから、こういう米軍のいわゆる貯油タンクにつきましても、少なくとも日本が民間企業の貯油タンク、石油タンクに適用しているそういう厳しい規制というものは、これは当然やってしかるべきじゃないですか。これについて見解はどういうふうに持っておりますか。
  54. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 消防、危険防止の観点から、石油タンクにつきましても、従来アメリカはアメリカの基準でもってやっておるはずでありますけれども、こういうことが起こったわけでございますので、心配なところもないとは言えません。そこで、関係機関がいろいろ基準とかそういうことはよく専門であると思いますので、われわれもそういう方々と相談をいたしまして、アメリカとの橋渡しに必要な協力を積極的にしてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  55. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 消防庁の方見えていますか。――消防庁のひとつ見解をこの際お話しいただきたいと思うんですが……。
  56. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 現在問題になっております施設につきましては、地元の横浜市消防局と米軍との間に相互援助協定がございまして、今回の事故に際しましても、この援助協定に基づきまして横浜市の消防局が出動いたしたわけでございます。実際にかような消防活動を行うということになりますと、やはりそれに相当した相互の連絡調整ということが必要なことは当然でございまして、かかる危険物施設、石油タンクにつきましては、先ほど来お話がございましたように、国内法におきましてはさまざまな厳しい規制を実施をいたしているところでございます。したがいまして、先ほど来お話がございましたとおり、米軍の施設につきましては国内法の適用はございませんけれども、やはり国内法に相応したような形の安全基準というものを確保していただきたいというのが私どもの希望でございまして、しかるべき機関の御要請がございますならば、消防機関といたしましてはできる限りの協力を申し上げたい、かように考えております。
  57. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 この際、消防庁それから施設庁協力して、少なくともこういう事故を契機にいたしまして、事実上ふたをあけてみたら野放しの状態だ、日本のタンクは非常に厳しいということでは、私は国民は納得しないと思うんですよ。ですから、これはもう早速米軍に対しまして、日本のいわゆる規制といいますか、貯蔵タンクの施設をつくる場合に、あるいは現にある施設に対しては日本の法律を、適用という言葉は適当かどうかわかりませんが、それに準拠した施設をつくらせる、これはもう日本政府として当然の責任だろうと思う。施設庁、この点について今後米軍の方に強い折衝をしていただきたいと思いますが、いいんですね、それは。
  58. 吉野実

    政府委員(吉野実君) いまお話がありましたように、消防庁の方におかれましても本件について非常に関心があるはずであります。われわれの方といたしましては、消防庁とよく相談をいたしまして、十分な連携をとりながらアメリカの方に必要なことを申し入れると、そういうつもりであります。
  59. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 次に、あと一点。  新聞報道によりますと、昭和四十八年、米本国から、老朽化しておるジェット燃料貯蔵の施設について緊急対策が必要であるという見地から、日本国内の貯油タンクを全部調査をして、その報告が恐らく米国の方に出されたと思うんですが、この資料は施設庁は持っておられるんですか。
  60. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 四十八年当時米軍がそういう報告を出されたということについては、五十一年当時ですか、新聞報道等ありまして、それに基づいて私どもの方は米側の方にも申し入れをやっておりますので、内容については承知しております。
  61. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 それをひとつ資料としてお出しをいただきたいと思います。
  62. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) その文書そのものは、米国政府が出したものでございまして、私どもの方の責任を持って作成したものでございませんので、ただいまの資料提供の御要望につきましては私ども立場からはお答えいたしかねると思うんでございます。
  63. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 だって、アメリカが日本国内の石油タンクがいろいろ老朽化して問題だというのを一斉調査したんですからね。それをあなた方が知っているんならどうして言えないんですか。あなた、いまその報告承知していると言うんだから。そういう報告に基づいてさっき消防庁の言ったような対策が出てくるんじゃないんですか。大体そういうものを秘密にしているからこういう事故が起きるんですよ。それは秘密文書なんですか。
  64. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 先生もおっしゃいましたように、昭和四十八年当時の時点での米軍調査報告ということでございますので、その後私どもがこの件について申し入れを行い、それから米側からその後の状況を聞きましたところ、昭和五十一年当時で、すでに報告書で小柴貯油タンクの中の修理せよと言われたものの十八基のうち十四基につきましては修理を終えておりまして、昭和五十四年七月にはさらに二基の修理が終えてあるというような米側からの説明を受けて、当時国会等にも御報告申し上げたと思います。そういう意味合いで、この報告書につきましては、私どもとしてはいま申し上げましたように措置さしていただきたいと思っております。
  65. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 その後修理をしたと言うんならむしろ出した方がいいんじゃないんですか、そういうものを含めて。四十八年当時調べたけれども、確かにこういう問題があった、しかし、その後こことここは修理しましたよというのはむしろ報告した方がいいんじゃないんですか。だから、防災については、あるいは救援活動については軍事優先、機密優先になっていると言うんですよ。むしろそういうものは発表したらいいじゃないですか。それは出しなさいよ。
  66. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 先ほども申し上げましたように、米軍の内部の報告資料でございますので、私どもの方としてお出し申し上げるというふうに申し上げられませんので、その点は御了解いただきたいと思います。
  67. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 私はそんなものが機密文書だとは思わないんですよ。石油タンクなんか見ればわかるんですからね、どこに何基あるかというのは。それは米軍の資料だからと言うんなら、それは了解とりなさい。いま日本の国民は心配しているから、その資料、その後どう改修したか、その実態を報告して国民に安心してもらうという意味であって、むしろ積極的にあなたの方が出すべき資料じゃないんですか。とにかく努力してくださいよ。それはできないと言うのか。
  68. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 先生のおっしゃった方向で私は努力してみるつもりであります。ただし、相手のあることでございますので、どういう結果か、いまここでコミットはできませんけれども、そういうスタンスで臨んでみたいと思います。
  69. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 こういう事故について、繰り返して申し上げますけれども、防災優先がどうか、この一つの試金石だろうと思うんですよ、その資料が出せるか出せないかというのは。  最後に、軍事基地の問題について基本的にわが党は一つの考え方を持っておりますけれども、それについていま論議しようとは思いません。しかし、こういう非常に重要な問題についてかねがね私が感ずることは、特に人口稠密地帯、人口密度が非常に高い都市あるいは都市周辺にこういう施設を置くということは非常に問題がある。これは飛行場についてもしかりであり、その他いろいろあるわけでありまして、この際政府としても施設庁としても、石油タンクを初めとする、いわば一たび事故があった場合にその波及する影響が非常に大きい施設、そういうものについて米軍の方の資料の提出を求めて、なるほどここは危ない、むしろこれは移転した方がいい、そういうひとつ検討をしていただいて、特に大都市、都市周辺地域のこういう施設については撤去をさせる、こういう検討を直ちに始めていただきたいと思います。このことをひとつ申し上げて、私の関連質問を終わりたいと思います。
  70. 野田哲

    野田哲君 横浜の貯油施設の火災の問題ですが、新聞などで承知をするところによると、あの施設は四十年以上も前にできたもので、いまの状態ではとても、後で消防庁の次長にも伺いますが、日本の消防法、危険物取り扱いの基準から照らすと、とてもあれは燃料を格納しておくことが許される状態のものではない、老朽、おんぼろの施設だと、こういうふうに聞いているんですが、まずこの施設がいつできて、どういう構造になっているのか、施設の概要を報告を願いたいと思います。
  71. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 小柴貯油施設でございますが、五十二万六千平方メートルという面積の中に現在タンクとして二十六基ございます。二十六基のうち二十基が、ただいま先生指摘になりましたように、旧海軍で昭和十一年から昭和二十年までの間につくられたものでございます。これのうち、約半数ほどが三万キロリットル程度のもの、それから残り半分が五千キロリットル程度のもので、いずれも地下式でコンクリート構造といったようなもので、これがかなり古い時点につくられております。それから、残り六基は戦後でございますが、昭和三十年の初めに米軍がみずからつくったのが二基ほどございます。それから、昭和五十三年に小柴地区の一部タンクを返還しましたときに、代替として当庁の方でつくりましたのが四基ほどございます。そういう状況でございます。
  72. 野田哲

    野田哲君 その米軍がつくったものについての構造の内容については、施設庁の方では承知をされているんですか。
  73. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 米軍のつくったものにつきましては、地下式であるとかあるいは構造であるとか、それから容量等につきましては承知しております。
  74. 野田哲

    野田哲君 鹿児島消防庁次長に伺いますが、ああいう立地条件のところにジェット燃料を格納するタンクを二十六基も設置をする――設置をするというか、これが存在をする。しかもほとんどは四十年前後あるいは四十年以上も経過をしている老朽施設。もし国内でああいう場所にああいうものをこれからつくろうという申し出があったとすれば、これは許可になるしろものですか、どうですか。
  75. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 今回事故が生じました具体的な施設の内容につきましては、私ども詳細を承知いたしておりませんので、その適否につきまして判断し得る立場ではございませんが、国内法上の規制といたしましては、御承知のように、このような施設を設置します場合に、まず施設の位置、構造あるいは設備につきまして一定の基準に適合するということが要件になっております。また、実際に使用を開始する前におきましては、一定規模以上のタンクにつきましては改めて溶接、地盤、基礎あるいは水張り等の厳しい検査を行うということになっているわけでございまして、詳細がわかりませんと具体的なことは申し上げられませんが、一定の保安距離を保つ、あるいは一定の空地が必要である、あるいは構造、設備等につきましても、一応の附属設備等がついてなければいけないというような基準がございますので、それらの詳細がわかりませんと具体的な適否につきましては判断がいたしかねますので、御了承いただきたいと思います。
  76. 野田哲

    野田哲君 吉野長官政府はこの大規模地震という問題について特別法などをつくって、静岡県から太平洋岸については大変な神経質になっている。こういう状態のある中で、あの施設についてマグニチュード五とか六とか、あるいはそれを超すような地震があったときに、あれは絶対に間違いないと、安全だということを確信を持っていまこの席で言えますか。
  77. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 残念ながらその勇気はありません。
  78. 野田哲

    野田哲君 鹿児島さん、国内法では、消防法、危険物取り扱いのこの措置では、あのような施設に対してはどのようなチェック、どのような行政措置をされているのか、これをひとつお知らせいただきたいと思います。
  79. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 消防法及びこれに基づきます危険物政令で規制しております概要について申し上げますと、まずタンクを設置いたします場合には、その施設の位置、構造、設備、これが一定の技術上の基準に適合している必要があるということでございます。先ほどもちょっと申し上げましたが、当該タンクがたとえば住宅、学校、病院、劇場等の保安物件に対しまして一定の距離がなければいけないということでございますとか、あるいは敷地内距離と申しまして、タンクの側板から敷地の境界までやはり一定の距離を有する必要がある。あるいは保有空地ということで、タンクの周囲に最小限タンクの直径以上の距離を保有しなければいけないという基準でございますとか、その他細かい点いろいろございますが、こういう技術上の基準に合致いたしました場合に、権限がある市町村長等の審査を受けた上で設置の許可を得るという形になっております。  そして、具体的に建設が行われました後におきましては、その完成前に、これは千キロリットル以上のタンクでございますけれども、このようなタンクにつきましては、まず基礎、地盤が強固であるかどうかということを実地の検査をいたします。さらに溶接部につきましても実地の検査を行いました上で、水張りあるいは水圧検査を行った上で具体的に使用の許可を出す、こういう段取りになっています。
  80. 野田哲

    野田哲君 施設庁、それから外務省おられますか。――施設庁なり外務省として、この横浜の施設に対して、いま消防庁の長官が述べられたような日本の国内法に基づく行政措置、チェック、こういう措置と同じような措置がとられていたのかどうか、安全対策について米軍がどういう措置をとっていたのか、これは承知をされておりますか。
  81. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 私どもといたしましては、累次の機会に米側に対して安全性に対し最大限の配慮を払うよう求めるということは言ってきているわけでございます。不幸にしてまた事故が発生しましたような場合にも、その再発防止、原因究明のために必要な措置をとるよう求めてきておるところでございます。米軍としてはわが方のこのような申し入れというものを十分認識しているというふうに承知しております。
  82. 野田哲

    野田哲君 抽象的に安全対策を求めているということではなくて、具体的に日本の国内法と照らして同水準の安全措置がとられていたかどうか、具体的なことは承知をしていないんですか、あなた方は。
  83. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 米軍につきましては、もちろんその公的活動に対し日本の法令の適用はないわけでございますけれども、しかし他方、地位協定の十六条に基づきまして、米軍日本の法令を尊重するという一般国際法上の義務は負っているわけでございます。私どもとしては、累次の機会に米側に対し最大限の安全措置をとるようくどいほど申し入れてきている次第でございまして、米側としてはわが方のそういう趣旨を十分理解している。たとえば今回の事故につきましても、十三日、北米局長より在日米軍の参謀長に申し入れを行って、早急な事故原因の究明、それから再発防止のために必要に応じ適切な措置をとることを申し入れ、先方もこれを子としているという経緯がございます。
  84. 野田哲

    野田哲君 抽象的なことを私は聞いているんじゃないんですよ。日本の国内でとっている措置と同じような安全措置がとられていたかどうか、その内容をあなた方は承知をしていたのかどうか、これを聞いているんです。
  85. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 米側に対しては安全性に対して最大限の配慮をするということを幾度も申し入れております。そして、米側は常にそのようにするということを私どもに言ってきているわけでございます。
  86. 野田哲

    野田哲君 つまり、あなた任せであったということなんですね。  そこで、大村長官に私は最後に見解をこの問題で伺いたいと思うんですが、これだけ住民に大きな不安を与えている、そしてしかも老朽施設、住宅地の真ん中にある、かなり大規模の地震が起きたときに一体これが安全を約束できるかどうか、非常にこの点も不安定な状態です。これは基本的には私は、ああいう地域にああいう施設があるということは、国民の不安をぬぐい去ることはできないと思うのです。まず撤去、これが基本的に日本として求めるべき措置だと思うのですが、そこに至るまで、原因を徹底的に究明して、その対策が講じられるまではあそこは使わない、こういうことを政府としてアメリカに対して強く求めるべきであると思うのですが、いかがですか。
  87. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 私といたしましては、この米軍の施設、区域、これは条約に基づく提供義務があるわけでございますが、その中でも、こういった揮発油の格納施設等につきましては安全を重視しなければならない、そういう観点からこれまでもいろいろな機会を通じて注意を喚起し、改善努力を要請してきたところでございます。しかるに、今回の事故が発生いたしまして、付近の住民に重大な御心配を与えたということにつきましては深く遺憾と存じている次第でございます。  そこで、先ほど政府委員が述べましたとおり、早速合同委員会の下部機構を通じまして原因の究明と対策の早急な樹立を要望してまいったわけでございますが、今後さらにあらゆる機会を通じてこの点の徹底を図ってまいりたいと考えているわけでございます。  ただいま御提言のありました安全対策が確立するまで使用の停止を求めるという点につきましては、せっかくの御提言でございますが、条約上の義務がございますので、直ちにそういう提言をすることはいかがかと存ずる次第でございまして、あくまで原因の究明と早急なる対策の樹立、実施を要請してまいりたいと、さように考えている次第でございます。
  88. 野田哲

    野田哲君 長官ね、揮発油じゃないんです、あれ。ジェット燃料なんです。  それで、米軍に対してそのことを求めるお気持ちはさらさらないということなんですか。
  89. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 直ちに使用停止を求めるということは、先ほど申し上げましたような観点からいたしましていかがかと存ずる次第でございます。
  90. 野田哲

    野田哲君 直ちにということではないんであって、安全のために原因究明しようとすれば、燃えたところだけ私はやってもしようがないと思うんで、あそこを全部空っぽにして、そして四十年たったタンクのコンクリートにひび割れがないかどうかとか、抜本的な検査をやるためには、私は空っぽにしなきゃできないと思うんですよ。沖縄のパイプラインでもよくあったじゃないですか。川端を通りすがりにたばこを吸った人がマッチを投げたら川が燃えたとか、井戸水をくんだのが燃えたとか、そういう問題があった。これはやはり亀裂があれば地下へかなり浸透していると思うんです。空っぽにしなければ、抜本的なあの施設全体の問題は、私は検査できないんじゃないかと思うんです。そういう意味から、私はあれを空っぽにして全部検査が終わって付近の住民が安心をするまではもう新たなものは入れないと、こういう措置を求めることはできないんですかと、こういうふうに言っている。
  91. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 先ほどから申し上げておりますけれども米軍がこの貯油タンクの現状を調べた、それから現に坂田長官国会で答弁をされて、それに端を発しましてわれわれの方で合同委員会の下部機関を通じてともかくちゃんとやれということを申して、それに基づきまして現在まで、先ほど施設部長が話したようにアメリカ側も修理をしておるわけです。その修理がどの程度、大規模なものか小規模なものかは詳しくは存じませんけれども米軍としても非常にこの事務防止について関心がある、弁護するわけではありませんけれども、そういうことだと思うんです。  それで、いま先生がお話しになりましたように、空にせぬと調査ができぬのかどうかということは実は専門的に存じませんが、そういうお話があったことも念頭に置きまして来るべき合同委員会で篤と米軍当局と話をしてみたいと、こういうふうに思っております。
  92. 野田哲

    野田哲君 委員長、私は国会としても、防衛問題を所管している内閣委員会としても、これは、これだけの事故が起こった現地でありますから、やっぱり調査を――米軍の施設ですからなかなか簡単に入れないと思うんで、これはやはり国会として公式に現地を調査をする、このことを要求をいたしたいと思いますので、計らってもらいたいと思うんです。
  93. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 後刻、理事会において御相談いたします。
  94. 野田哲

    野田哲君 防衛庁に引き続いて伺いたいと思いますが、先ほど来、公務員給与に関する人事院勧告取り扱い議論を続けていたわけでありますが、あの人事院勧告が完全に実施された場合の防衛庁関係についての給与の追加所要額はどのくらいになりますか。
  95. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 人事院勧告取り扱いにつきましては、現在慎重に検討中でございまして、まだ政府としての方針決定しておりません。防衛庁といたしましても、職種別に具体的な作業を行うまでには至っておりませんので、勧告完全実施されるとした場合にどのぐらいになるかということは、現段階で正確に申し上げることはできない状況でございます。ただ、人事院勧告の平均アップ率五・二三%と承っておりますが、これをもとにしまして単純に算定するとすれば、約五百七十ないし五百八十億円程度と見積もられます。
  96. 野田哲

    野田哲君 五百七十億ないし五百八十億というのは五十六年度の完全実施の場合の所要額と、こういうことですね。  そういたしますと、昭和五十七年度のいま概算要求が出ている。この中で人件糧食費一兆一千五百六十一億。しかし、実際の給与費は一兆一千七百七十六億と、こういう内訳になってくる、そういう理解でいいわけですね。
  97. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五十七年度の概算要求額は対前年度全体で七・五%というシーリングの中で調整いたしておりますが、その中には、ただいま大臣からお答え申し上げました五十六年の人事院勧告実施がなされたとした場合の所要額は含まれていないわけでございます。
  98. 野田哲

    野田哲君 ですから、それは当然、五十六年度は完全実施であろうと年度途中からの不完全実施であろうと、これはともかくとして、この五・二三%の上積み額というのは五十七年度についてはそっくりそのまま上乗せになるわけですか。そうですね。だから、結局五十七年度の概算要求、人件糧食費の一兆一千五百六十一億、これには五百八十億がプラスをされて一兆一千七百七十六億、こういうことになるはずですね。どうですか。
  99. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五十七年度の概算要求ですでに提出いたしております人件糧食費の額は一兆一千五百六十一億ということで、御指摘の金額でございますが、それに五百七十ないし五百八十億円がもし仮に五十六年の勧告実施されるとした場合には加わってくるということでございますから、ちょっといま足しておりませんけれども、一兆一千七百数十億とおっしゃいましたけれども、そうじゃございませんで、一兆二千百数十億になるんじゃないかと思いますが……。
  100. 野田哲

    野田哲君 ですから、その上積みを入れると、これは総額ではいまのこの概算要求にプラス五百七十ないし八十ぐらいのものが上積みになって、結局これは二兆六千億をかなり超える、二兆六千四百億ぐらいになると思うんですが、そういう理解でいいわけですね。
  101. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 防衛庁がすでに提出いたしております五十七年度の概算要求の総額が二兆五千八百億という数字でございますから、それにこの五百七、八十億が加わってくるということは御指摘のとおりでございますが、ただ、これは完全実施がされたという仮定をした場合の金額でございます。
  102. 野田哲

    野田哲君 それは局長ね、違いますよ。完全実施がされるかされおいかによって、上積みの金額が五百八十億で済むのかあるいは四百億で済むのかというのは五十六年度限りのことであって、年度の途中から実施されたとしても、五十七年度についてはことしのこの完全実施で必要とする額そのままがそっくり上積みされる、こういうことになるんじゃないですか。そうでしょう、
  103. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 先生の御議論に立って計算いたしますと、そういうことになると思います。
  104. 野田哲

    野田哲君 だから、それは結局、それを加えると伸び率は、いまの概算要求がそのまま計上をされたとして、それにさらに給与費の上積み分を加えると五十七年度については伸び率は一〇%近くなる、こういうことですね。約一〇%ぐらいになりますね。どうですか。
  105. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 御指摘のようなケースで考えますと、七・五%というすでに提出しております概算要求の伸び率にさらに約二・四%程度が加わることになろうかと思いますので、九・九%程度というような数字にはなろうかと思います。
  106. 野田哲

    野田哲君 そこで、それは結局五十六年度の勧告を上積みをしたわけでありますから、昭和五十七年度について給与の引き上げがゼロの場合に九・九%ぐらいになるわけです。物価の上昇等は政府の計画でも五%ぐらいは見込んでいるわけでありますから、そうすると当然五十七年度についても給与の引き上げが行われるということになれば、これはいまの防衛庁の要求どおりでいくと一〇%を大幅に超える、こういうことになりますね。どうですか。
  107. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) 五十七年度の当初予算の姿といたしましては、ただいまお話のございました五十七年度の人事院勧告要因はその時点では出てまいりませんので、ちょっと時点が違ってくるのではないかなと、こう思います。
  108. 野田哲

    野田哲君 だから、五十六年度の給与の引き上げを上積みをして伸び率が九・九%ぐらいになるだろうと、こう言っているわけですから、五十七年度で給与の引き上げがさらに行われたとすれば、防衛庁の要求どおりでいくと一〇%を超えるんだと、これはもう明らかなんです。  そこで、大村長官に伺うわけですけれども、十月十二日の衆議院行政改革の特別委員会で、上原康助議員の質問の中で渡辺大蔵大臣は、この五百七十ないし五百八十億円のベア分を含めても七・五%の概算要求よりは少なくなる確率が大きいと見てもらっていいんだと、こういうふうに答えている。それから新聞報道では、自民党の首脳部の発言ということで、やはり同様に給与費の上積みを含めても七・五%以下でおさめる、こういうふうな発言報道されておりますが、この渡辺大蔵大臣衆議院の行革特別委員会での答えどおりとすれば、いま概算要求で出ている正面装備の方を五百七十ないし五百八十億ぐらいかんなで削るということになるわけですが、そういうことでの措置としてこの防衛費が取り扱われる、こういうふうに理解していいわけですか。大村長官としても、そういう渡辺大蔵大臣の五百七十ないし五百八十億円の給与費の上積みを含めても七・五%の枠内でとどめるということに同意をされての大蔵大臣の答弁と理解していいわけですね。
  109. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします。  十月十二日の特別委員会における上原議員の質疑に対する大蔵大臣の答弁、私も同席しておりましたので伺っております。また速記録も読み返してみました。これによりますると渡辺大蔵大臣は、今後の予算の規模がどうなるかということは、明年度の経済見通しが出ないと税収のはじきようがない、暮れまで三、四カ月かかって検討してみなければわからないということを言われて、そして防衛庁の問題についても、これはまず大きくなることはない確率が高いか、概算よりも小さくなる確率が多い、こう見てもらっていいんじゃないでしょうか、こういうお答えをされておりまして、どうも趣旨がよくわからないのでございますが、私としましては、聞いておりまして、今後の経済財政事情いかんによって変動し得るものであるということを言われたことは明白であると考えておるわけでございます。  ところで、防衛庁として一体いま人事院勧告の関係をも含めて概算要求との関係の見通しはどうかという趣旨のお尋ねでございますが、私ども、繰り返し申し上げておりますように、概算要求の場合には人勧関係を含めておらない、そしてぎりぎりの必要の所要額を予算要求したものでございますので、今後とも予算折衝に際しましてはその実現を目指して努力してまいらなければならない、さように考えておるわけでございます。
  110. 野田哲

    野田哲君 われわれとしてはどっちを受けとめればいいんですか。経済見通し云々というのはこれは予算の規模全体のことであって、私が具体的に聞いているのは、いまの概算要求、これに当然増として防衛庁、自衛隊員の給与の引き上げが、ことしの実施時期はまだ不確定要素ですけれども、来年はこれは十二カ月分に夏や年末の手当も含めた完全な上積みになるわけですから、それは五百七、八十億が上積みになるでしょう。そうすると、先ほど経理局長とやりとりをしたように、そっくりそのままいまの概算要求が認められ、さらに給与費の上積みを加えると九・九%ぐらいの伸び率になるんじゃないか、こういう計算ができるわけですよ、現在でも。  それに対して渡辺大蔵大臣は、給与費を含めて七・五%より大きくなることはないという意味のことを理解しておいてもらいたいというような意味のことを言っているわけですが、あなたは、七・五はもうぎりぎりだ、給与費の上積みは別だと、これは大蔵大臣と全くそこの取り扱いでは異なった見解をここで述べられたわけですが、一体これはどういうふうに政府として統一見解を持たれているんですか。
  111. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えします。  先ほどもちょっと速記録について私が引用しましたように、来年度の予算の規模をどうするかということは、明年度の経済見通しがわからないと歳入の方の見通しがいまのところはじきようがないということを言われた。なるほど歳出の方は、先生おっしゃるような前提に立って計算すれば、これだけふえるという可能性があることは私もお認めいたします。しかしながら歳入の方は、肝心の大蔵大臣の方がわからぬと、いま見当づけようがないと、こう言われておるのでございますので、せっかく大蔵大臣もいろいろお考えのようでございますので、そういった点に期待をしながら、これまでのシーリングの範囲内でぎりぎりの要求をしているものの実現を目指してこの年末の予算折衝に臨んでまいりたいというのが私の率直な意見でございます。
  112. 野田哲

    野田哲君 いや、それはそういう抽象的なことではないんですよ。五百八十億ぐらいは当然見込まれるものがあるんですよ。それは七・五%の内なんですか外なんですか、どっちで扱うのですか。渡辺大蔵大臣は、いろいろ言い回しはあったにしても、端的に言えば五百八十億ぐらいを含めて七・五%におさめるんだと、こう言っている。あなたは、五百八十億、人件費の当然増は別枠だ、こう言っているんですよ。これは国会の中での答弁ですから、統一的な見解を示してもらわなければ、われわれはこれから行革の議論もできないじゃないですか。どうですか。
  113. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 防衛庁が八月末に大蔵省に概算要求として提出しました二兆五千八百億円の要求予算の中には、人事院勧告に基づく人件費の増額分は含まれておらないことは明白でございます。先ほど政府委員が繰り返し申したとおりでございます、私どもはこれを堅持しながら今後の予算折衝に臨んでまいるということを申し上げておるわけでございまして、またこれに対する十二日の大蔵大臣の御発言も、必ずしも矛盾するものではない、一貫して読んでみまするとそうではないというふうに私は受け取っておるわけでございます。
  114. 野田哲

    野田哲君 それはやっぱり二つの見解大蔵大臣と大村防衛庁長官とは別々の見解があるんだと私はここで受けとめざるを得ないわけです。  最後に、防衛施設庁の長官の方に伺いたいと思うんですが、これは人事院勧告取り扱いが決まらなければ結論は出ないと思うんですが、駐留軍労務者の労務費、これは対米折衝がなければ結論が出ないわけですが、これについてはどういう形でいま行われておりますか。
  115. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 駐留軍労務者の給与につきましてりベースアップでございますけれども給与勧告国会でもって法律として成立をいたしますと、そこから用意ドンで対米折衝が行われるわけですけれども先生あるいは御存じと思いますけれども、それでは対米折衝に時間がかかりますので、仮に同率だといっても、もち代にならないというような時期に出るのはまことに申しわけないというふうに私どもは思っておりますので、したがいまして、勧告が出た後でわれわれの中でもって、給与表に準じて同率の作業をするとこういうベースアップになりますよという案をつくりまして、それでアメリカ側にそれを示しまして、よく勉強しておいてくれと、こういうことになっておるわけでございます。
  116. 野田哲

    野田哲君 感触、感度は良好ですか。
  117. 吉野実

    政府委員(吉野実君) ワシントンのみならず、ハワイ会談等の話から総合しておわかりと思いますけれども、アメリカの軍事予算につきまして、いろいろ大胆な計画でやっておられるようですけれども、しかし経費の節減についても相当厳しいわけでございまして、ここでは全部申し上げることは控えますけれども、アメリカ側が非常に厳しいスタンスであるということはあるいは先生御存じだと思います。したがいまして、見通しは非常に楽観を許すということはいまここで言えないのですけれども、われわれとしては最善努力をせざるを得ない。安定した労使の関係といいますか、維持するためには最善努力をする、こういうふうにここで申し上げます。
  118. 野田哲

    野田哲君 安全保障特別委員会で私は大村長官指摘をしたことがあるわけですよ。レーガン大統領が国防費の削減をアメリカでやるという報道がされたときに、日本に対してかなりこれは影響が出てくるんじゃないですかと、こういうふうに伺いましたところが、あなたは、アメリカと日本は別々なんだから日本に影響が出てくることはないと、こういうふうに言われたわけですが、私はやはりいままでこの種の問題に長年タッチした関係から、一番最初に影響が出てくるのはそこじゃないかということを懸念をしたのですが、幸いあなたは、日本には関係ありませんと、こう大みえを切っていただいたので、まさかアメリカが出し渋ったから駐留軍労務者の賃金は公務員どおりには払えませんということは私はなさらぬと思うんです。  後でまた機会を見て指摘したいと思うんですが、かなり思いやりとか何とかいうことで、本来日本で持つべきものでない、地位協定によっても疑義のある金を五十七年度でもかなり計上されているという状態の中で、アメリカ側が払う義務を負っている駐留軍労務者の賃金がアメリカの言いなりに大なたをふるわれるというようなことは、防衛庁長官、施設庁長官としてはなさらぬでしょうね、どうですか。
  119. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 私が先般のお尋ねに対して申し上げましたのは、一般的に申し上げたわけでございます。アメリカがさきに決めた計画を一部縮減するということがありましても、わが国予算の概算要求でありますとか、そういったものにつきましては自主的に判断するもので、直ちに右へならえをすると、そういうふうなことは考えておりませんということが申し上げた趣旨でございます。  お尋ねの労務費の問題につきましては、ただいま政府委員が述べましたとおり、安定した労使の状況を続けるために、私どもとしましては最善努力を今回も傾注してまいりたいと考えております。
  120. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 午後一時三十分から委員会を再開することとし、休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十三分開会
  121. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調査並びに国防衛に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  122. 伊江朝雄

    ○伊江朝雄君 きょうは、退職手当審議関連して、給与問題を中心にして質疑をするということになっておりますが、私もそういう意味におきまして退職手当の一般論にも触れて若干の質問をさしていただきたい。ただし、私はお許しいただきたいのは、三十分なのでその間に能率よく御答弁もしていただきたいし、お願いをしたいと思うのであります。  それで、けさほどから同僚議員のいろんな御質疑の中で、大なたの問題やら切れ味のいいかんなの問題が出ましたが、その五十六年度の人事院勧告につきましては、同時にまた仲裁裁定取り扱いの問題については、これは関係者の非常に関心事であるし、特に本委員会に付託されている退職手当等の改正案について非常に関連のある、影響のある大きな問題だと思うんです。先ほど、同僚委員の御質問に対しまして官房長官が、現時点では速やかにその結論を得るように努力をしたいというふうにおっしゃられたわけでありますが、私は現時点では速やかに結論を得るように努力するということは一つの評価だと思うんです。ですから私どもは、内閣委員もそうでありますが、関係者として速やかに結論が出るように本当に努力をしていただきたい、こういうふうに冒頭御依頼を申し上げ、また要望しておきたいと思うのであります。  そこで、先ほど来の話の人事院勧告なり仲裁裁定という問題は、退職手当に非常に影響のある問題だと。その人事院勧告というのは、人事院が民間の給与ベースとの均衡を図るために毎年勧告される。その人事院給与ベースについて勧告される、その給与ベースは退職手当に非常に関連するにかかわらず、国家公務員法を久しぶりに私読ましていただいた、その国家公務員法の中に退職手当という文言、用語が一つも出てこない。これは一体どういうことなんだろう、私自身非常に理解に苦しんだわけでありますけれども、先ほど人事院総裁が言われたように、人事院はそれこそ中立的な国家公務員の行政、あるいは国家公務員制度に関するそれこそ不偏不党、公正中立の行政機関であるわけなんで、それが給与ベースについてはしかるべき勧告をなさるのに退職手当についての勧告がなされない、しかも国家公務員法にはそれが書いてないということについて一体どういうふうにお考えになるのか、まず一般論として、その点について総裁からひとつお聞かせいただきたいと思います。
  123. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 御指摘がございましたとおりでございまして、退職手当というのは、これは現在の法律のたてまえでは俸給月額を基礎として算定をされる仕組みになっておりますから、非常にこれは重要な問題でありまするし、公務員立場に立って言えば、それは公務員の勤務条件そのものということで、大変重要な役割りを担っておるものだと思います。  ところで、退職手当につきましては、現在の国家公務員法には規定がございません。これは、私もこの立法作業のときにはこれに参画をいたしておりませんので、どういういきさつであったかということは確信を持って申し上げるわけにはまいりませんですが、担当の人事局長さんがおいでですから、必要がございますれば補足的にいろいろ御答弁を申し上げる機会もあろうかと思います。  ただ、退職手当というのは、御案内のとおり、これはわれわれ人事院が担当いたしております一般職の公務員だけを対象にしておるのではございません。一般職の公務員のみならず、その他全部の特別職関係というものをその対象にいたしております。具体的に言えば裁判官、検察官その他の特別職関係も全部対象でございますし、もう一つは、ほかで余り例がないことですが、三公社関係の職員もその対象になっておりまして、これらについて同じようなたてまえ、同じような仕組みで、こういう場合には退職金はこういう計算で支給されるんだということを一般的に規定をいたしております。一般職並びにその他の公務員に通じての通則法としてこの規定ができておるということが一つの大変な特徴でございまして、そういう意味で、やはり一般職を対象といたしまする人事院の関係におきまして、申すまでもなく人事院は特別職なりむろん三公社関係等は管轄いたしておりませんので、そういうことで、やはりこれは退職手当全般として管轄するということになれば総理府というか内閣というか、そういうところで所管するのが自然の姿ではあるまいかというようなことから退職手当法案の仕組みができたのではないかというふうに私は考えておるのであります。  しかし、一般職の公務員立場に立ってみましても、先刻も申し上げましたように、これは非常に重要な勤務条件自体に関係のある、あるいは勤務条件自体の問題でございますので、公務員の処遇、待遇について関心を持っておりまする人事院といたしましては、退職手当制度のあり方等につきましても、またその運用の仕方につきましても、これは無関心であり得ない、大変重要な関心を持って見守っておるわけでございます。  それの最も有力な基礎になりますものといたしましては、われわれの方で退職手当について定期的に民間の実態を調査をいたしております。これは毎月の給与と違いまして、そう毎年毎年その仕組みが変わるという性質のものではございません。そういう意味で、私の方の調査能力の点もございまするから、その間の調整を図る意味もありまして、毎年はやらないで、大体五年置きに調査をいたして今日まで来ております。  先般の国会から継続審議に相なっておりまする退職手当法案も、最近におけると申しますか、われわれの方といたしましては調査としては最近でございますが、時点といたしましては五十三年に調査をいたしましたものを基礎といたしまして所要の措置を講ずるということが決定されたといういきさつがございます。調査は、これは大変重要なことですから、われわれの方としてはやっておりまするし、今後ともこれは継続をするつもりでございますが、かっこうとしては、現在退職手当は総理府の所管でございますので、調査自身も総理府当局の方から御依頼を受けて、依頼を受けた形で実施するという形にしております。その調査の結果が出ましたら、これを総理府にお送りいたしまして、それのいろいろ分析検討は総理府自身の立場からおやりになってそれぞれの適切な措置を講ずるという仕組みに相なっておるのでありまして、現在までそういう仕組みで動いてきております。
  124. 伊江朝雄

    ○伊江朝雄君 わかりました。  いや、重大な関心を持たれるということは当然なことだと思うんです。先ほど総裁がおっしゃったように、政府、内閣に対する立法勧告権というのがおありですね、機能として。私はそのことについてちょっと御質問したわけなんですが、これは後ほどまた触れますが、いままでこの退職手当問題に関連して、国会はそうじゃないんですが、政府、内閣に対して勧告ないしは示唆と申しますか、そういった経緯がありますか、事例がありますか。
  125. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 調査報告を出しております関係上、総理府の方とは緊密な連絡をとって、それぞれ所要の御相談に応じたりなんかということはやっておると思っておりますが、形式的あるいは法律的な制度関係として表面立ってこれについての公式の意見を表明したことはございません。勧告制度は現在ございませんですし、あえて言えば、国家公務員法の二十三条に法令に関する意見の申し出というのがございますから、これを活用いたしますればやれないことはないというふうに私は考えております。
  126. 伊江朝雄

    ○伊江朝雄君 わかりました。  私は、退職手当法に限らず、人事院から勧告される給与ベースのアップにつきましても、民間の調査をなさるというそ調査の信頼性と申しますか信憑性と申しますか、それについては私はいささかも疑問の余地はないわけで、したがって、それをもとにして総理府が退職手当の問題を民間の給与ベースに合わせて時々、変化に応じて平衡レベルをとっていかれるということは、これは結構なことだと思うんです。ただ私は、後ほど御質問申し上げますことに関連して、将来退職手当についての問題についてお考えをいただかなきゃならぬじゃなかろうかということを指摘するために、提案するためにいまの御質問を申し上げたわけなんです。  そこで、私はいつも思うのでありますけれども、民間の給与ベースと公務員給与ベース並びに退職手当のベースをそろえなきゃならないというその理念について、どういうふうに考えたらいいのかということを簡単にひとつ御答弁いただきたい。これは総理府でも人事院でも、どちらでも結構です。
  127. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 簡単に申し上げますが、特に近時、公務員給与のあり方に関連をいたしまして、官民の比較をする場合にはいわゆる生涯給与というものを考えるべきだという議論が大変盛んに行われております。すなわち、毎月の生活の糧としての俸給、給与、給料というもののみでなくて、退職手当あるいは退職年金、そういうものをひっくるめて要するに議論をすべきじゃないかという御議論であります。これに対しましては、私は従来から申し上げていることでありましてこれは一貫しておりますが、そういう生涯給与的な考え方はこれはごもっともでありまして、私もそれはやっていってしかるべきことだと思います。  ただ、技術的にどういう比較の方法をするかということにつきましては、これはやはり毎月の給与の比較方式と、そのままでいいかということになりますと大変むずかしい問題がございます。態様も民間の場合は非常にいろいろ千差万別でございますので、退職手当、年金もそうであります、そういうことがございますので、比較方式はなかなか研究をしていかないとめんどうな問題があるというふうに考えております。一般的にはそれは結構です。しかし、そうだからといって、いまたまたま年金が公務員の方がいいからといって、その分を毎月の給与に反映さすべきだというのは、これは私は技術的に不可能だと思います。どういう反映のさせ方をするかということは非常にむずかしいことですから、これはできないと思います。私は、やはりそこは全部分けまして、給料は給料、退職手当退職手当、年金は年金、そういうふうに個別に比較をして官民の均衡を保っていくと、そういうやり方は私は考えていってしかるべきことではないか。まさしく退職手当について今回お願いをいたしておりますのも、そういう線に沿っての総理府のお考え方の一端があらわれておるというふうに理解しております。
  128. 伊江朝雄

    ○伊江朝雄君 それはそれとしてよく私もわかります。  そこで、最近、民間の退職手当制度が非常にさま変わりしてきていると思うんですよ。たとえばベースアップの一部を将来の給付の年金に繰り入れるとか、そういうふうないろんな制度が考えられているように聞いておるわけです。  私、国家公務員法を先ほども引例をいたしましたが、その中で退職金には触れてないけれども、退職年金制度には非常に詳しく触れておるわけです。ということは、立法者の意思は那辺にあったか知りませんけれども、昔のような、官吏がやめるときに退職金はないけれども恩給法でもって全部処置したというふうなこと、あるいは欧米諸国はどうなっておるか知らぬけれども日本的な事情とは違う諸外国ですから、退職年金制度に肩がわりさせようというふうな意図を立法者が持っていたとしたならば、これはまたいろいろ考えなきゃならない。そういうふうなことを含めまして、現在、民間においてだんだんだんだん退職年金制度というものにさま変わりしていくというふうな状況を踏まえまして、今日の民間の退職金制度というのはどうなっているかということが非常に疑問になると思うんです。また参考にしなきゃならない。将来の公務員の民間給与ベースとの均衡をとる意味においても、制度間の比較という問題も当然出てくる問題だと私は思うんです。  それで、最近の民間の退職金のあり方は私の理解でよろしいのかどうか、つまりベースアップそのものが退職金にはね返るということから、将来に、やめた後の年金として継続させた方がいいじゃないかというだんだん傾向が出てくる。退職金の一時払いというのがそれこそ企業の大きな経費の負担になる。それよりか、ずっと何年かにわたって、老後のと申しますか退職後の生活を保障する年金制度に変わっていくという傾向、こういうふうに私は受け取っているんですが、そうであるのかないのか、これはもう時間もないですから簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  129. 長橋進

    政府委員(長橋進君) 民間におきます動向といたしましては、いま先生指摘のとおり、退職一時金というものが年金的に支給していく方向にあるというふうに私ども承知しております。
  130. 伊江朝雄

    ○伊江朝雄君 私が言った前段の、日本の民間のことはいま給与局長の御答弁のとおり。諸外国においては、わが日本のこの退職手当と同じような制度をとっているところはありますか。
  131. 長橋進

    政府委員(長橋進君) 諸外国におきましては、それぞれ国情の違いというものを背景にいたします関係上、わが国退職手当と同じものであるかどうかということになりますと問題がないわけではございませんけれども、それはそれとしまして、ほぼ類似のものと考えられるものにつきましては、イギリスとかイタリア、カナダ等にその例がございます。  御参考までに申し上げますと、イギリスにつきましては退職一時金制度がございまして、これは勤続五年以上の退職及び勤続二年以上の役所都合による解雇、これが支給要件になっておりまして、算定方法は、年俸掛ける八十分の三掛ける勤続年数という計算方法になっております。それからイタリアでは、支給要件としまして、厚生年金の加入が一年以上の者につきまして、年俸に十二分の一を掛けましてさらにそれに〇・八を掛けて、それからプラスボーナス掛ける勤続年数というような算定方法になっております。ちなみに、このボーナスが……。
  132. 伊江朝雄

    ○伊江朝雄君 簡単に。
  133. 長橋進

    政府委員(長橋進君) それからカナダは、年金受給権を有する者の退職、これは週給に勤続年数を掛けるということになっております。
  134. 伊江朝雄

    ○伊江朝雄君 民間の退職金のベースに合わすために五年ごとに見直しをして改定されるということは、これは、私はそれが必要だと思うんです。しかし実際、今日まで振り返ってみますと、たとえば四十六年に調査されたものが四十八年に法律改正されて百分の百二十になった。これはわりに民間のベースに近い線を措置としてすぐにとらえた。ところが、その五年後の五十三年に調査されたものが、今日、法案になってもう五十六年。そうすると、たとえば四十六年に調査されたものが四十八年なら、まだ二カ年間というその期間でもってわりに民間に近づけるような退職金のベースアップ、これができる。しかし、それが余り時間的に延びますと、法律の改正がおくれるというと一体それはどうなるんであろうと。  たとえば四十六年に調査されたものが四十八年に百分の百二十になったとするならば、四十六年、四十七年にやめた連中は民間ベースよりも低いものをいただいている。四十八年にやめる連中から初めて百分の百二十いただいたと、こうなるわけですね。ところが、今回本委員会に付託されている法案によりますと、五十二年度の調査をされたものがいまだにできない。それは減額法案である百分の百十だ。そうすると、五十二年はすでにもう民間を上回っている。上回っているものを五十二年も五十二年、五十四年、五十五年ももらってやめるんだということになりますと、私はその期間というものは非常に問題だと思うんです。しかもその民間のベースと合わせてやるために、その変動係数を求めるための時間が長かったり短かったりする。上げる場合には短いけれども、落とそうとするときには長くなってしまう。  こんなことを言って不謹慎な言い方かもしれませんけれども、そうなりますと、これは非常に大きな影響だと思う。したがって、民間との均衡をとる意味においてももちろん必要なんだけれども、そういった余り変動係数に左右されないような合理的な退職金制度というのを考えるべきじゃないかということを私は提案したいのです。  そこで、この付託されている法案の十八項を見ますと、見直し規定の中で退職手当の「総合的に再検討」というのが出ている。これは一体どういうことを考えておられるのか、総理府にちょっとお伺いしたい。
  135. 山地進

    政府委員(山地進君) 先生のおっしゃるとおり、退職手当というのはどうも時間差がどうしても出てしまう。これはおっしゃるように致命的な欠陥でございまして、ただいまの法案も五十二年度の調査を五十四年になって提案し、政府としては一日も早くこの成立を期しているわけでございますけれども、残念ながら本日までできてこないということでございます。  そこで、その上げる場合でも下げる場合でも議論になりますのは、随時変わるということについて、もう少し簡便な調査方法というのはないだろうかというような御指摘がございまして、私どもといたしましては、この見直し規定の中で退職手当制度全般にわたりましていろいろと考慮していきたい、かように考えております。
  136. 伊江朝雄

    ○伊江朝雄君 そこで、冒頭に申し上げたように、退職手当制度についての人事院の立法勧告機能もフルに発揮されて、総理府はいま所管でございましょうから、将来にわたって退職金制度というものをやはり見直す機会があるじゃないだろうか。この附則の十八項に書いている六十年度までに見直すということを私は言っているんじゃないので、やはり将来にわたってそういった安定的な退職金制度というものを考える必要があるんじゃないか、こういうふうに思うのです。  それについて、もう時間がありませんので、人事院総裁と、大臣がお見えですから、山地局長いまの私の質問していることをちょっと耳打ちされて答えてもらって、最初に人事院総裁、その次に大臣の御答弁をいただきたい。
  137. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 御指摘の点は私も同感でございます。やはり、退職手当制度も大変重要な事柄であるだけに、現実に対応して速やかに措置を講じていくということが必要だろうと思います。ちょうどこれはいまの御指摘になりました総合的検討ということもうたっておりますし、人事院自身も長期計画の中でそういう一環としてやはり検討の対象にしたいと思っております。臨調等でもあるいは論議になるかもしれません。そういうことをにらみ合わせながら、より合理的で、しかも簡素で迅速に事が運ぶような制度を積極的にひとつ開発するために私たちも努力をいたします。
  138. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 先生指摘のとおりでございまして、総理府といたしましても、昭和六十年をめどに各般の見直しを進めるよう努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  139. 伊江朝雄

    ○伊江朝雄君 あと二、三分ありますけれども、大体材料が切れてしまいました。そこで、私は三十分で大体このぐらい済むだろうと思ったらちょっと余ったので、あと三分ぐらいありますから、ここで一つ要望を申し上げたいと思うのですが、私はいまの人事院勧告制度は、これは本当に日本的な、非常に定着しているし、この制度はいささかもよそから文句を言われる筋合いではないし、これはまた人事院としてのお立場がそこではっきりと、内閣に対するあるいは国会に対する勧告として私はりっぱな制度だと思うんであります。しかし、それが――まあこれは皆さんと同じ意見でありますけれども、それがいつも大なたをふるうとか、かんなをかけるとかという議論の場に持ち出されるということに対して、私は、自由民主党の一員であって与党でありますから、余りこういうことは言いたくないけれども、しかし本当の腹を言うならば、一生懸命やはり働いている国家公務員について、財政上の問題を気にしないで人事院勧告というのが出されるわけなんですよ。仲裁裁定についても、それぞれの行政府の、あるいはそれぞれの企業体の財政状況を考慮して出すものじゃないんです。  それだけに、冒頭に申し上げたように、きょうは官房長官が速やかに結論を出すようにという御答弁があったので私は評価いたしますが、その結論を出すのも、まあ私の本当の率直な希望を申し上げるならば、先ほど話が出たように、かんなを持ち出したり大なたを持ち出したりしないように、そしてしかも円満に退職金に反映できるような、そういう措置をとらないといけないと思うんです。これは自民党の委員であるとかなんとかという立場を離れて、国会議員の一人として、今日置かれているこの制度状況下においての私は意見としてお受け取り願いたいと思うんです。これは答弁要りませんから。  これで終わります。
  140. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 午前中からいろいろ質問ございましたので、きょうは私は幾つか質問したいと思いますが、初めに、ただいまも同僚議員の方から質問ございました人事院勧告並びに仲裁裁定の問題についてお伺いしたいと思います。  先ほどから社会党さん、また自民党さんの質疑を聞いておりまして、人事院制度並びに人事院勧告制度そのものがすばらしい制度であるということにもなってまいりましたし、わが内閣委員会といたしましては、これは全会一致でございます。しかも人事院勧告につきまして、大なたをふるうなとか、かんなをかけるなという話も、これも一致しておりますので、これは完全実施が非常に速やかにできそうな話になってまいりました。しかしこの問題、さきの内閣委員会におきましてももうすでに私も質問さしていただきましたし、また、午前中からも同僚議員の方からいろいろ質問ございました。重ねて言うこともないわけでございますが、とにかくこれは早いこと何とかしないといけないというのがもう真情であります。  そこで初めに、総務長官、この人勧は大体どういうふうになるのか。かんなが大分かかるのかどうかという問題もあるかもわかりませんが、まず手続的に考えまして、法律を出していただかないといけないわけですが、いわゆるこの法律を出す時期等も含めまして、これから大体どういうふうな手続になるのか。昨年の例も大臣御存じでございまして、昨年も相当苦労されまして完全実施していただいたわけでございますから、ことしもいろいろと苦労していらっしゃると思いますが、その経過等を踏まえまして、これからの大体のスケジュール、どういうふうになるのか、そういうことをあわせて御答弁いただきたいと思います。
  141. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) いま先生お尋ねの、これからどういう経過をたどっていくのかという見通しについての御質問でございますが、人事院勧告が八月の七日に出まして、それを受けて早速第一回の給与関係閣僚会議を開いたわけでございます。その第一回の関係閣僚会議では結論が出ませず、続いて九月の十八日に第二回の給与関係閣僚会議を開きました。いろいろと担当の各閣僚から意見が出たわけでございますが、特に大蔵省の財政当局から、今年度の税収見通しというものが非常に立ちにくい、悪い状態にあると、こういうふうな話がございまして、この問題を討議する一番大きなファクターの一つである財源の問題に見通しが立たないと、こういう話がございましたので、一応その会議は引き続き検討するということで閉じたわけでございますが、私はいろいろと各党の方々からの御意見あるいは労働団体からの御要望等も十分聞いておりますので、できるだけ早い機会に第三回の給与関係閣僚会議の開催ができるように連絡をとらしていただきたいと思います。  第三回の給与関係閣僚会議におきましては、当然のことながら財政の実情、その後の変化等を十分聴取をいたし、長年慣熟してきた労使のこのいい環境が今後とも持続できるように努力をしたいと考えております。給与関係閣僚会議でのいろんな話が詰まりました段階においては、一日も早く国会給与法の一部改正の法律案を提出して御審議をいただくことになろうかと考えております。
  142. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま大臣もおっしゃいましたように、昭和四十五年から昨年まで、もう十年間ですか、完全実施されましたのは。本当にこれは長い間これだけの積み重ねをやってきたわけでございますけれども、これはいずれにしましても、今度のこういうふうに財源がないという問題もある面ではありましょうけれども、もう一つは、第二臨調答申の中の文言がやっぱり一つ大きな問題になって、そのことが給与関係閣僚会議の席上でもいろいろと吐露されているようでございますので、実際問題そういうような関係からこれがおくれているんだろうと私は思います。  実際問題として、その行革の委員会も、衆議院の方はわれわれが予想しておりましたよりもなかなか順調に進んでいるようでございますな。そうしますと、総括質問とか、またいろんな質疑がどんどんどんどん進んで、各党一巡質問も終わりまして、それでしかも今度は二十日から総理が南北サミットへ出かけると、こういうふうなあれになっているわけですね。せめてそれまでに何とか給与の関係のこの人勧、まあ仲裁裁定は大臣の所管ではございませんけれども、そういうようなものにやっぱりある程度何らかのめどをつけていただかないと、これは本当にわれわれ、私の党は今度の行政改革の問題につきましては、ある面で一生懸命賛成をして一生懸命進めているわけでございますけれども、ところが片方のこっちの方は全然踏んだりけったりけ飛ばしたりでは、これはちょっとね、非常に大変なんですよ。そこら辺のところもお考えいただきまして、この問題についてやっぱり何らかの決着をつけてほしい。先ほど大臣おっしゃいました、できるだけ早く第三回の給与関係閣僚会議という問題もございますが、そこら辺のところも午前中も同僚議員の方から多少質問ございましたけれども、そういうことも踏まえまして、もう少し中身のある御答弁、何かありませんでしょうか。
  143. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) いまお答え申し上げましたように、私は、現段階で給与担当閣僚として私がなし得る最善のことは、この第三回の給与関係閣僚会議を開き、第二回関係閣僚会議以降の国の税収状況並びに今後の見通し等を論議して、そうして誠意を持ってこの勧告問題に対して事に当たるということが私の現段階における大きな責任を果たす方法だと、このように考えておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  144. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひ、この問題は重要な問題でございますし、政府の責任でこの問題は早く解決していただきたい、このことは要望しておきたいと思います。  人事院総裁もせっかくお見えになりましたので、これ非常に難航しているわけでございますが、これは特別、私、人事院総裁にこんなことを聞かぬでもいいわけですが、人勧がなかなか難航していることにつきまして御感想、いかがですか。
  145. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 難航しておることについては毎日大変心を痛めております。要するに慣行として慣熟した制度でございますし、これがやはり日本における公の場の労使関係の良好な推移ということに大変大きな役割りをしてきたことは、これは疑いのない事実でございます。こういう慣行が一たん破れますと、これを修復することは多大の犠牲と混乱が起きます。私は、万難を排してやはり完全実施ということで速やかに結論を出していただきたいというのが念願でございます。
  146. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題はこの程度にいたします。  次に、行政管理庁お見えになっていますか。――私は日ごろから行政管理庁の中でも特に行政監察局というお仕事につきましては高く評価をしている一人なんですけれども、きょうは特に最近の行政監察の中で、政府の所有米の保管に関する監察の結果というのが先般出されておりますけれども、これに関連をいたしまして、管理庁並びに農水省の皆さんにお伺いをしたいと思います。  まず、農水省の方にお伺いいたしますが、現在政府の所有米というのはどの程度保管をしていらっしゃるわけですか。
  147. 羽鳥博

    説明員(羽鳥博君) お答えいたします。  最近時点におきます政府所有米の在庫の状況は、九月一日現在で約五百二十万トン程度となっております。
  148. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その内訳を、何年度産米がどの程度というのをちょっと言ってくれませんか。
  149. 羽鳥博

    説明員(羽鳥博君) お答えいたします。  五十年産が二十八万トン、五十一年産が百二十四万トン、五十二年産が百六万トン、五十二年産が百二万トン、五十四年産が十二万トンで、五十五年産が百四十六万トンと、こういうようなことになっております。
  150. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、私の手元にございます行政管理庁の資料によりますと、五十年度産米が二十九万トン、五十一年度が百二十九万トン、五十二年度が二百一万トンと、こういうふうにずっとありますので、これは正確ですね、一応。これは御存じですね。
  151. 羽鳥博

    説明員(羽鳥博君) 先生指摘のその在庫量につきましては、たしか若干、時点が古いのではないかというふうに思います。したがいまして、その後の状況の変化を最近の状況でただいま申し上げたわけでございます。
  152. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、私が言っているのは、これは監察の時点でのことですからそれはそれで結構なんですけれども、この監察の時点でこれだけあったのは間違いないですねと言っているわけです。
  153. 羽鳥博

    説明員(羽鳥博君) 行政管理庁の方の監察結果、その報告書に出ておりますのは間違いないと考えております。
  154. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それで、私がちょっとお伺いしたいのは、要するに五十年度、先ほど課長おっしゃいましたのは現在の時点のをおっしゃったわけですね。要するに五十年度産米は監察当時二十九万トンあったのが二十八万トンで、一万トンしか減ってないわけですね。五十一年度産米は百二十九万トンあったのが百二十四万トン、五十二年度産米が二百一万トンが百六万トン、五十三年度産米が百二十九万トンが百二万トン、五十四年度産米が百七十八万トンあったのが十二万トン、要するに古い米は余り減ってないということを言いたいわけですよ、要するに。これはそのとおりですね、これ。
  155. 羽鳥博

    説明員(羽鳥博君) お答えいたします。  過剰米処理につきましては、昭和五十四年度から、私どもその当時在庫しておりました六百五十万トンの過剰米を計画的に処理を進めておるわけでございます。  用途といたしましては、工業用それから輸出用それから飼料用と、こういうことで処理を進めてまいっておりまして、これまで五十四年度及び五十五年度二カ年で約二百十五万トン処理いたしまして、五十六年の、本年の四月一日には約四百三十五万トンというふうなことになっておりますが、本年度におきましても、計画といたしましては約百二十万トンを処理するという計画のもとに鋭意努力しておるところでございます。
  156. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは、私が言っていることを正確に聞いてほしいわけですけれども、要するに五十年度産米が二十九万トンこれはあったわけですね。これが二十八万トンまだあるわけですから、一万トンしか処理してないわけですよね、これ。五十年度産米がまた二十九万トンあったのがそれは全部処理してしまって、新たにどこからか五十年度産米というのが出てきてというわけじゃないんでしょう、これ。
  157. 羽鳥博

    説明員(羽鳥博君) お答えいたします。  私ども先ほど申し上げましたように、過剰米の処理は工業用、輸出用、飼料用と、こういう優先順位で処理してまいりまして、一番多く処理いたしましたのは輸出用でございます。輸出する場合には、やはりその輸出先においてこれは主食として供されるというようなこともございまして、年産につきましては大体五十二年産米が中心に進められてきたというふうなこともございまして、先生指摘の五十年産というような古い米につきましては輸出としては必ずしも適当でないということもございまして、処理が若干おくれてきたという状況もございます。しかしながら、最近に至りまして、これはえさ用としての処理ということも進めなきゃいかぬというようなことで、古い米につきましては極力これからえさ用の処理に向けていきたいというふうに考えております。
  158. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうもよけいなことをさんざん言うね、あんた。要するにえさ用がどうのこうの、工業用がどうのこうの、そんなこと一言も私は言ってないわけですよ。要するに五十年度産米はどうなっているかと。要するに五十年度産米はまだ一万トンしか減ってないなと、そのとおりなんだなと確認しているだけなんですよ、私は。ですから、そのとおりならそのとおりですと、違うなら違うと言ってもらえばいいだけで、要するにいまあなたがおっしゃった五十二年度産米を中心に処理しました、それで云々という、ようけいろんなことを言ってはりますけれども、そんなことは全然聞いてないんです、私ね。特別そのことを問題にしようと思ってないから言っているわけです。  そこで、まず行政監察の概要、これはせっかく行政管理庁の局長さんお見えになっていただきましたので、特に私は行政管理庁が対象として調査した十一の食糧事務所ですか、のところを監察をされたそうですが、そこで特に保管に関する問題点等について概要をちょっと一遍御説明いただけますか。
  159. 中庄二

    政府委員(中庄二君) お答え申し上げます。  主な点が三点ございまして、第一が倉庫業者におきます政府所有米の保管状況でございます。これが保管管理の基準が決まっておりまして、こういうものが十分励行されていないということが一点でございます。それに関連しまして、やはり過剰米が多うございますので、ただいまも御指摘ございましたような過剰米の処分をやること、これが一点でございます。  それから、二点目が倉庫の指定の問題でございます。これも指定基準がございますが、いままでは非常にたくさんのあれがございましたが、指定基準に照らして私ども見てまいりますと、指定基準に合致してないのではないか。順次指定のし直しといいますか、見直しをやっていただいたらどうかというような点が一つ指定問題としてございます。  それから三つ目の問題といたしまして、農水省では低温保管ということをやっております。低温保管の米は非常に早期にやりますとおいしく食べられるわけでございますが、その処理にもやや時間がかかっておってまずくなっている面もあるのじゃないか。  主にその三点を指摘したわけでございます。
  160. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この点に対して農水省はどういうふうに対応していらっしゃいますか。
  161. 羽鳥博

    説明員(羽鳥博君) お答えいたします。  ただいまお話ございましたような指摘事項の多くにつきましては、大量の過剰米の在庫に伴います倉庫事情から、本指定に比べまして必ずしも十分とは言いがたい多数の臨時指定倉庫の使用とか、高はい――これは高積みでございますが――とか、通路保管というような、そういったことに関連するものが中心であったというふうに思うわけでございますが、一部におきまして防鼠対策とか、あるいは火災予防施設等が不十分だというふうな面があったことは大変遺憾に考えておるわけでございます。  最近の過剰米処理の進展に伴いまして庫腹の需給が緩和してまいっておりますので、指摘のありました臨時指定倉庫の使用を極力少なくするとともに、高はいとか通路保管等を改め、また防鼠、防火対策などの日常の保管管理についても万全を期すよう、すでに食糧事務所及び系列の業者団体を通じまして指定倉庫業者を指導しておるところでございます。今後、政府指定倉庫の保管管理の指導を一層厳正に実施していくというふうに考えております。  また、監察結果の報告におきましては、低温米の売却について所定の期間を超えるものがあるという指摘があるわけでございます。これにつきましては、自主流通米の取り組みがふえまして、政府米については需要が計画を下回ったと、それで取引がおくれたというようなことにもよるものでございますが、いずれにせよ、今後改正食管法に基づく供給計画のもとに、より計画的な売却、輸送に努力したい。そういうことによりまして、極力所定の期間内に受け渡しを行うよう食糧事務所や販売業者を指導していきたいというふうに考えております。
  162. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いつも行政監察局だけじゃなくて会計検査院もそうなんですけれども、こういうふうな監察報告という、こういうようなものに記載するときには、よっぽど悪いから書いているわけですよ、これね。ちょっと注意したぐらいで直るぐらいなやつは書きませんわ、大体。いままでの経験から言いましてもね。ですから、ここに書いてある実情というのはもう相当悪いわけですわ、言うたらね。その受けとめ方が、あなた、さっきから大分いろいろ聞いておりますとあれこれ弁明はしておられますけれども、この具体的な事例として、全部でここに幾つか、具体的にどこどこの事務所でこういう問題についてはこうと指摘していますね。ただ、たとえば倉庫がいっぱいで通路まではみ出しておったと、そういうふうなのはそれはあると思うんですよ、私はね。  そういうような問題ではなくて、たとえば温度計で温度をはかるのに、温度計なくて何もはかってないのに、いわゆる虚偽の測定値を管理日誌に記載していたと。虚偽の、要するにはかってないのにはかったように書いておったとか、それから水分の記録簿にも、これも水分の測定をしていないにもかかわらず、虚偽の測定値を水分記録簿に記載していたというのは、どう考えたってこれは善意なんてないと私は思うんですよ。そこら辺の――これはそのほかいっぱいありますね。しかも、これは全国の食糧事務所を全部やったわけじゃないんですね、これは。ですから、行政管理庁がやったいわゆる十一の食糧事務所でこれだけの問題が出てきているわけです。  そういうふうな意味では、もう少しこの問題を深刻に受けとめて、そしてやっぱり対応しなければいけないんじゃないか。本当は、私はきょうは食糧庁の長官なり、または大臣なりに来ていただいて、この問題はそれなりにやっぱり本格的に取り上げて対応していかなければいけないと思っていたわけです。しかしながら、きょうは急なことでもありましたので、そこまでは私言いませんけれども、この監察するに当たっては、相当やっぱり監察官の皆さんというのは苦労しながらやっているわけです。しかも、いやがられながらやっていますよね。だから、そういうような意味では、ここに書いてあることは、やっぱり少なくとも文書にこれだけするからには、それだけの決意と、それだけの資料をもとにして勧告していると私は思うんです。そういうような意味では、それだけの決意を持ってあなた方はこの問題に取り組んでいかなければいけないんじゃないか。この点だけ私は申し上げておさたいと思いますが、どうですか。
  163. 羽鳥博

    説明員(羽鳥博君) お答えいたします。  私どもも、先ほど申し上げましたように、いままでの倉庫の状況、いろいろございましたが、確かに御指摘のように、管理の面で手落ちがあったということは大変残念に思っておるわけでございます。このようなことのないように今後も指導を一層厳正に実施してまいりたいというふうに考えております。以上でございます。
  164. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、これも午前中、少し同僚議員の方からございましたが、横浜の――防衛庁長官は見えていませんな。それではこの問題、後回しにしましょう。防衛庁長官がお見えになっておりませんので、違う問題をやります。  まず総務長官、例の学術会議の問題ですね。なかなかにぎやかに論争しておられるようでございますが、まず、この問題について総務長官の基本的な考え方を初めにちょっとお伺いしておきたいと思います。
  165. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 基本的な考え方は、私は日本のこれからの生きる方法、一億一千六百万人の国民が飢えずに、豊かに、平和に暮らしていくという方策を何に求めるかと言えば、鈴木内閣がすでに施政方針演説で申し上げておりますように、科学技術を振興していくということが基本の大きな柱になるわけでございますが、そういうものを振興していくために政府機関、民間機関というものがいかにあるべきか、こういうふうに考えていかなければならない。そうすると、日本の科学技術政策を基本的に確立するものは科学技術会議、それからいわゆる学術振興会とか、あるいはまた日本学士院、あるいは日本学術会議というふうないろいろな政府機関がございます。これはもう御案内のように、全額国費で運営されている機関でございますが、その中の一つに、日本学術会議というものが日本の科学者の内外に代表する機関として、科学を振興するために設置をされているわけであります。  それで、科学をたとえば産業とか行政とか、国民生活に反映、浸透させるという目的を持って存在をされておる、それが二百十名の会員によって構成をされている機関である、会員は特別職の公務員として位置づけられている、こういうふうな形になっていると思うんです。その国家的な代表機関が果たしてその目的に沿うように十分機能しているかどうかということは、政府としても当然、絶えず国民にかわってこれを監督するといいますか注目をしていなければならない。ただし、日本学術会議は法律の定めるところによりまして独立機関でございますから、内閣総理大臣といえどもその運営に対して指揮監督する権限が与えられておりません。  そういう組織の中で、この機関自身が内外に科学者の代表機関としての権威と力を持っておるかどうかということが一番大きな問題でございまして、海外から見た場合も、特に世界的に権威のある機関から見てこの日本学術会議が相応の評価を受けているかどうか、あるいは日本の学者、研究者から、自分もぜひ日本学術会議の会員になりたい、ああいうりっぱな機関の会員になりたいという大いなる希望が持たれているかどうか、また、そういう会員によって十分科学に関して論議がされているかどうかというところについては、総務長官としてもこれに対して絶えず調査をする権限は与えられておりますし、意見を吐く権利も与えられておるものと考えられておりますが、私は基本的には、日本の科学振興のために日本学術会議が充実した活動をされることをまず念願をしておるというのが基本の姿勢でございます。
  166. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 基本的な姿勢はそれでよくわかりましたが、これはまず、この間の十三日の閣議で中曽根長官が学術会議の実態を、行政監察ですか、をした上で臨調検討を依頼するかどうかの判断をしたいと、こういうふうな報道があるわけですが、これは事実かどうか。
  167. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 事実であります。
  168. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、具体的には行政監察として、学術会議にこういうふうないわゆる行政監察のメスを入れるのは今回初めてじゃないかと思うんですけれども、これからの日程、あるいはどういうふうな作業を始めるのか、そこら辺の見通し等も含めまして、また基本的な考え方も含めましてお伺いしておきたいと思います。
  169. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 学術会議につきましては功罪いろいろ評価がございます。そこで、先般来いろいろ問題にもなりました折から、学術会議が本来の目的に向かって予算や人員を効率的に使ってやっておるかどうか、むだはないかどうか、あるいは日本の行政機構全般を見た上で学術会議が果たしている役割りがどういう役割りを果たしておるか、そういうような点から監察をしてみる必要も感じまして、いま監察の準備をさせておるという状態でございます。
  170. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それからもう一つ、これは衆議院の方の行特の方で質疑があったそうでございますが、この学術会議の問題につきまして臨調審議の議題にするというようなことがこれも報道でなされておりました。この点についてはどういうふうにお考えですか。
  171. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 何でも臨調臨調にというふうに頼むのはあんまり適当ではないと思います。臨調は終末処理場ではないのであって、独自の見解に基づいて政府から諮問を受けて大所高所に立ってやっておる場所であります。そういう意味で、まずそういう問題を行政的に調べるのは行政管理庁の仕事でございますから、行政管理庁としての権限に基づいて、果たして有効に人間が使われているか、予算が使われているかどうか、むだはないか、あるいは事務処理、事務管理というものが適当に行われているかどうか、そういう問題をまず監察してみて調べる。その結果によって、これはどういうふうに判断をするかということはそのときに考えてみたいと思っております。
  172. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 中山長官、先ほどの姿勢の基本的な問題はわかりましたんですが、現在の学術会議で特にこういう点がやっぱり問題だとお考えになっていらっしゃることがございましたら、幾つかお伺いしたいと思います。
  173. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 私は、一番大きな問題は、日本の優秀な科学者が十分選ばれていないというところに最大の問題があろうかと思います。  その理由は、やはり全国区と地方区の二種類の選挙によって二百十名の会員が選ばれる。この選挙の結果を見ますと、最も新しい選挙の結果では――この学術会議自身が第一部から第七部までございまして、そしてこの各部について全国を東北、北海道とかブロックを七つに分けて選挙をするわけでごございますが、それを七部会の七ブロックでやるわけでございますから四十九選挙区があるわけでございます。選挙が行われるわけでございます。その中で四十三選挙区は立候補者が一人しかいない。二十二万人の有権者がいながら立候補者が一人しかいない。これはやっぱり一番大きな問題であろうと思います。それで、どうして一人しか出ないのか。二十二万人の有権者がいて一人しか出ない。しかも学術会議の選挙の規約には、電話による選挙運動も禁止をされておる。学術会議の選挙管理委員会が発送する公報以外にない。そこいらの原因が一体どこにあるのか。選挙運動が禁止されておるわけですから、一人にしぼっておるとは考えられない、裏で工作をして一人にしぼっておるとは考えられない。もし、しぼっておるとすれば、それは選挙違反であります。しぼってなくて一人しか出ないということであれば、学術会議自身がいかに魅力のないものかという証明になるんではなかろうかと考えております。この問題が一つでございます。  もう一つの点は、いろいろな研究機関、私も現場の人たちと会いましたが、大きな組織が後援団体としてなければ立候補しても優秀な学者でも当選できない、ここに一つ問題点がございます。たとえば、名前を出して恐縮ですが、東大の向坊先生あたりも落選された、落選候補のお一人でございます。こういうふうなことを考えてまいりますと、選ばれている会員のいわゆるグレードといいますか、どういうものであろうか。ここらも十分これから検討していかなければならない。  また、海外における評価もどうかというと、決して高くないということを私自身が確認をしております。これでは、日本を代表する機関として国民の税金を――今年七億数千万円、来年は八億の概算要求になっておると思いますが、黙って看過をして毎年八億近い金をどんどんどんどんとお渡しをする、その運営については政府は一切監督する権限が与えられていない、ここいらに国民の立場から考えると相当大きな問題が存在しているのではなかろうか、このように考えております。
  174. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、この学術会議の法律そのものも場合によったら検討し、改正する必要があるということになってまいりますが、その点どうでしょうか。
  175. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 先生も御案内のように、日本学術会議自身が、改革の必要がある、こういうことで第八期から今十二期まで改革委員会をみずから設置されて御論議を十数年やっておられるわけでございますが、結論が出ないところに問題があるんではないでしょうか、私はそのように考えております。  学術会議の方から改革についての御意見が出て、それが法律の改正が必要であるものならば、当然制度自身の改革というものが法の改正によって行われるでございましょうし、もし学術会議自身が具体的な意思の表示がなければ、政府は、学術会議をつくった経緯からも考えまして政府独自での考え方というものも立てていかなければならない責任がそこにあるんではなかろうかとも考えております。
  176. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私も大分いろいろと調べましたし、また意見もお伺いしてみました。第一部から第七部まであるけれども、非常にうまくいっておる部門もあるんだ、こういうようなことでもありました。しかし、非常にこれは重要な問題でもありますし、またこれから、学問の自由といいましょうか、非常に日本の将来にとりましても大事な問題であります。そういうふうな意味で、昨日、総理も学術会議側の自主的な改革を望むというような答弁もございましたけれども、いずれにしても、この問題がスムーズに解決するように私たちも念願をいたしておきます。  この点はそれだけにいたしまして……
  177. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 委員長、ちょっといまの見解……。  先生、学問の自由の問題にお触れいただきました。先般の閣議におきましても、日本国は憲法におきまして第二十三条に「学問の自由は、これを保障する。」と明記をしておりますし、鈴木内閣は現憲法を遵守するということを数次にわたって国会の場で国民に対し公約をいたしております。そういう意味から考えていただきましても、政府は学問の自由を守るということをはっきりとお約束をしていることを御理解いただきたい。  もう一点、学問の自由と学者たちの組織のいわゆるあり方の問題とは、学問の自由とまた違った意味で国民的課題ではなかろうかと、このように考えております。
  178. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次の問題に移ります。  防衛庁、きょう大臣はお見えにならないそうでございますので……。午前中にも質問ございました例の横浜の米軍の燃料タンクの爆発事故の問題につきまして、私もちょっと何点かお伺いをしておきたいと思います。  まず施設庁の方から、一昨日の事故の概要について一遍ちょっと御説明いただけますか。
  179. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 施設庁が承知しているところ、事故の概要を御説明いたします。  十月十三日十二時七分ごろ、横浜市金沢区にある米軍小柴貯油施設内の第六号タンクから火災が発生をいたしました。このタンクには航空燃料JP4が約二万四千キロリットル入っておりました。消火活動は、米軍のほか横浜市の消防車約七十台、約三百人が出動いたしまして、午後四時十五分鎮火をいたしたわけでございます。  この事故により、付近住宅の窓ガラス等が破損し、付近住民二名と市の消防員一名、米軍日本人従業員一名が軽傷を負いました。また、周辺住民約七百二十世帯、千百人が近くにある中学校とストアに避難をいたしましたが、夕刻鎮火と同時に避難命令は解除されたわけであります。  事故の原因調査については今後関係機関が行うこととなるのでありますが、とりあえず防衛施設庁といたしましては、事故後直ちに、つまり当日の十三時三十分、合同委員会の下部機関である施設特別委員会におきまして、米側に対して事故原因の早期究明と安全対策の確立を申し入れたところであります。
  180. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この事故ですね、午前中にいろいろ質問ございましたのでそれを踏まえて質問いたしますと、これは、神奈川県には特にこういうふうな施設が非常にたくさんあるそうですね、あちこちに。今回の事故を起こしました小柴貯油タンク施設ですか、それ以外にも鶴見貯油施設ですか、等ございますね。そのほか、どういうようなものが神奈川県にあるんですか。
  181. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 米軍貯油施設としまして神奈川県にございますタンクとしましては、そのほかに横須賀に吾妻倉庫地区がございまして、ここに貯油タンクを持っております。
  182. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この間事故のありましたところは燃料タンク二十八基でございますか、それでいまおっしゃった吾妻倉庫地区というのは何か三十七基ある。違いますか。それから鶴見の貯油施設というのは十九基あると聞いておりますけれども、ちょっと違いましたら正確な数を……。
  183. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 今回事故のございました小柴貯油施設がタンク数二十六基でございます。それから鶴見貯油施設が二十基でございます。それから吾妻倉庫地区が三十八基でございます。
  184. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほど、午前中の質疑で今回事故のありました二十六基のタンクの建設時期の説明がございましたが、それをも合わせまして吾妻地区、鶴見地区、それから小柴、この三カ所のタンクの建設時期、どのくらいたっているのか、一遍ちょっとそれもお願いします。
  185. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 小柴貯油施設につきましては先ほど申し上げましたが、二十六基のうちの二十基が旧海軍で昭和十一年から二十年――一つ一つについては詳細把握しておりませんが、昭和十一年から終戦二十年までの間に建設されたものと承知しております。それから四基につきましては、昭和五十三年に小柴貯油施設のタンク地区を一部返還した代替施設としてわが方の手で建設しております。それから、そのほかに昭和三十年代の前期に米軍の経費でつくりましたのが二基ございます。それで、旧海軍の施設は全部半地下式になっておりまして、戦後につくりましたものは地上式のものでございます。  それから鶴見地区と吾妻倉庫地区でございますが、ちょっとただいま建設年度につきましての資料を持ち合わせておりませんので……。吾妻倉庫地区は旧海軍がつくったものというふうに承知しております。
  186. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これも先ほど私は質問されるのを聞いておりまして、要するにマグニチュード三ないし四、五ないし六と言いましたかね、の地震が来たら大丈夫かと聞かれまして、施設庁長官、どうも絶対大丈夫ですとは言えません、こういうふうに答弁しておられましたけれども、そんなことをえらいはっきり、大丈夫だということが言えないなら言えないだけのことをきちっと裏づけの処理なり、やっぱりきちっと対応をしておかないといけないと私は思うんですよ。実際問題として、その程度の地震が来るということは考えられるわけですからね。  しかもそれだけじゃないんです。現実に横浜では、鶴見の施設でも五十四年にはやっぱり事故が起きているわけです、実際問題。しかもいまお話ございました吾妻倉庫地区の三十八基については、その中の幾つかは少なくとも旧海当時代につくったものであるということですから、これは今回事故のあったところと同じ施設になるわけですね。そういうふうな意味でもこれは大変な問題じゃないかと私は思うんです。地域住民の皆さんが本当に安心して生活、いろいろ学校へ行ったりなんかするためには、どうしてもやっぱりここら辺の施設の安定性というのが重大な問題になってくると私は思うんです。  しかも現在の日本の国内法の適用という問題を見て、現在国内法を適用した場合に、これだけの戦前つくったタンクなんというものは実際安全なのかどうか。午前中にはタンクを空にして検査するという話もございましたけれども、それだけで済む問題でも私ないと思うんです、実際問題として。実際厳密に検査すれば――昭和十年から二十年にかけてつくったとおっしゃいましたね。十一年につくったということにしますと、四十数年たっているわけです。ですから、そういうふうないろんな問題、これは考えてみますととても安全とは言えないと私は思うんです。  そういうふうな意味で、しかも私いまお伺いしても、今度事故のあったところだけはいつごろできたものかというのは調査していらっしゃいますけれども、そのほかのところがすぐわからないというのも対症療法的なあれしかないんじゃないかと私は思うんです。ですから、もう少しこういうふうな問題は本格的にやっぱり防衛施設庁としても取り組まないといけないんじゃないか、こういうふうに思いますけれども、ここら辺の問題についてまずちょっとお伺いしておきたいと思います。
  187. 吉野実

    政府委員(吉野実君) いま施設部長からの話の中で、鶴見の貯油タンクが何年にできたか知ってないのはおかしいじゃないかと言うんですけれども、いまここに詳細なデータは持っていないということで、役所には用意はしてありますので申し添えます。  本論に入りますけれども、こういう事故が起こらないようにと思いまして、われわれの方としましても坂田防衛庁長官のときから米側に申し入れをしておりまして、先ほど話が午前中ありましたけれども、アメリカ軍の方で貯油タンクの現状についていろいろ調査した結果が出たということ、それからわれわれの申し入れ以後、アメリカ側が、いまの小柴地区の貯油タンクについて申し上げれば、何回かの修理をやっておるわけです。その修理の詳細については私現在承知しておりませんけれども、やっていることは確かでありまして、この事故が発生したそのときも、実はある建設会社がアメリカ軍との長期契約によりまして修理をやっておったわけであります。そういうことで、アメリカ側も事故の防止についてはわれわれの申し入れを受けるまでもなく当然に安全基準をつくりまして努力をしているところだろうと思います。  今後どうするんだと、しかしながらこういう事故が起こったわけでございますので、先ほど午前中も申し上げましたように、技術的なことをいまここで直ちに私答弁できませんが、いろいろお話があったようなことを念頭に置いて――非常に重要なことであります、日米安保条約の円滑な運用という目的達成のためには基地が円滑に運用されていることはどうしても必要なことなんでございまして、それは米側だけじゃなくて日本側にとっても非常に重要なことでございますので、われわれといたしましては、いろいろ御示唆のありました点も念頭に置きまして来る合同委員会において篤と米側と話をしてみたいと、そういうふうに思っておるわけであります。
  188. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 地元の横浜市あるいは防衛施設庁と具体的に安全関係について協定なり協約なり何か結んだことはあるんですか、現実にあるんですか何か。
  189. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 安全に関しましては、いまわが方と米軍につきましては、ただいま施設庁長官お答えになったとおりでございます。  それから地元の横浜市と米軍関係ということでは、私どもとして承知しておりますのは、消防の相互援助協定といいますか、そういうものが横浜市消防局と米軍の間で行われていると聞いております。
  190. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは長官も、安全基準をつくっているらしいというふうな答弁しか先ほどなかったんですけれども、現実にあなた方もらっているわけですか、その安全基準というのを。その安全基準に基づいて施設を見たことが実際あるんですか。あるいは横浜市と地元の米軍の方と、いわゆる在日米軍の横須賀基地司令官との協約みたいなものをつくって、それは現実に実施されているんですか。協約そのものはあなた方のところに届いているんですか。そして、その協約に基づいて現実に協約が発動して、いわゆる消火のときにはこういうふうにしよう、ああいうふうにしようという具体的な打ち合わせが行われているんですか。日本側の担当者はそこへ入って現実にやっているんですか。いろいろ言いましたけれども、まず防衛施設庁の方から御答弁いただきたいと思います。
  191. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) ただいま御指摘米軍の安全基準ということでございますが、米軍の基準そのものというものでは私どもいただいておりません。それで、米側には常に米側の安全確保を申し入れて、米側としては独自の安全基準で安全を確保しているということで承知しております。  なお、横浜市と米軍の関係につきましては、私どもの方で細部承知しておりませんので、消防庁の方からお願いしたいと思います。
  192. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 横浜市の消防局が実際に活動するにつきましては、いわゆる消火、警防活動とそれから予防面の活動と、二通りあるわけでございます。具体的に米軍と消防局との間で結ばれております協約は、警防活動、消火活動に関する協約でございまして、相互にそれぞれの火災につきまして応援をし合う、かような協約になっております。
  193. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それはあなたの手元へ届いているわけですか。
  194. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 昨年五月二十日に新しく制定されました協約につきましては、昨日横浜市から取り寄せてございます。
  195. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その第六項にはどういうことが書いてありますか。
  196. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) この協約の第六項におきましては、「この協約にもとづく両当事者の所属消防隊の幹部及び隊員は、互恵の基盤に立って、各施設の保安上の規制に適応する範囲内で、それぞれの地域に対する精通を目的とした案内付訪問を時宜に応じて行い、実行可能な限り火災先行計画及び訓練、演習を合同で実施することが招請され、推奨されるものとする。」と、かように規定されております。
  197. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 具体的にそういうふうなことは実行されているんですか。
  198. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) 現地の消防当局が事後処理に追われておりますので正確な情報は得ておりませんが、私どもが電話で確かめたところによりますと、事実上内部に入りまして中を見せてもらったことはあるそうでございます。
  199. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 実際問題として、私も電話で確認をし、お伺いしたわけでございますけども、具体的に火災先行計画及び訓練演習、こういうことはとてもやってもらえそうにないと。現実に計画したことはあるけれども、そういうふうに実施されなかったというふうな答弁でした。次長の先ほどの答弁ですと、案内して見せてもらったことがあるということですから、まあ同じようなものでしょう。  いずれにしても、こういうような問題はもう少し突っ込んでやっぱりやっていただきたいと思いますし、住民の安全のためにもこれはもう密接な関係があるわけですし、またしかもここにあります――後で何かのときにこれは防衛施設庁の方から資料を一遍出してください、私の方へね、あなたの労資料みんなあるそうですから。吾妻倉庫地区それから鶴見貯油施設ですか、全部で三カ所ありますね。ここのいわゆる施設がいつごろ建設されてどういうふうな配置になっているのか、そこら辺のところは多少やっぱり調査をしていただいて、本当にそれが日本の国内法に照らして安全であるのかどうか、そればそれなりにやっぱり検討はできると私は思うのですよね。資料は防衛施設庁の方から一遍出してください。  それから、それが本当に安全であるのかどうか。今回事故を起こしましたこれが、昭和十一年から二十年にかけてつくられたものが二十基あるということですけれども、先ほど施設庁の答弁でも、吾妻倉庫地区のものについても戦前のものが相当あるというような答弁がございました。これは消防庁の方も御存じですか。
  200. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) それぞれの施設につきましては、国内法を適用いたしておりませんので消防計画もございませんし、査察も行っておりませんので、詳細は承知しておりません。
  201. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 しかし、現在はそうであったにしても、現実にこれは地元住民にとりましては非常に不安な問題でもあります。火災という問題を考えた場合に、そういうような資料を施設庁なりそういうところから取り寄せて、それで本当にそれが安全であるかどうか、そこで事故が起きたらどういうように処理をしたらいいかというようなことはやっぱり研究していただいた方がいいのじゃないか、こういうふうに思いますけれども、そこら辺のところ、一遍あわせてお願いします。
  202. 鹿児島重治

    政府委員鹿児島重治君) これらの危険物施設につきましても、やはり私どもとしましては安全対策上非常に大きな関心を持っておりますので、今後関係省庁間でよく連絡いたしまして、安全確保という観点に立って適切に対処してまいりたいと思います。
  203. 伊藤参午

    政府委員(伊藤参午君) 先生ただいま御要望になりました吾妻地区と鶴見貯油施設に関しての資料です。先ほど小柴地区についてお答えしたような内容につきまして、米側とも調整の上御提出申し上げたいと思っております。
  204. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 最後に施設庁長官にちょっと。  いずれにしましても、神奈川県は沖縄県に続いて国内でも一番基地の多い町でありますし、しかもこういうふうな危険な貯油タンクもたくさんあるわけであります。しかもそれだけではありませんで、先般から厚木の飛行場におけるいわゆる飛行場内の燃料タンクの燃料漏れの事故とか、いっぱいあるわけですね。そういうような意味では、非常にこれは問題が多々あると私は思います。  そういうふうな意味で、施設庁としてもそういうふうな一つ一つの問題にやはり本気で取り組んでいただいて、そして地元の住民が安心して生活できるような環境をつくるために全力を挙げて取り組む、そういうふうな姿勢であっていただきたいと思いますが、その点についての御答弁をお伺いしたいと思います。
  205. 吉野実

    政府委員(吉野実君) まことにおっしゃるそのとおりでございまして、先ほど来申し上げておりますけれども、そういう意味でやや異例に属するかと思いますけれども、来る合同委員会において、先生方の御示唆もあったのを念頭に置きまして、篤とアメリカ側と話をして問題の前進のために最善努力をいたしたいと考えております。
  206. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 終わります。
  207. 安武洋子

    ○安武洋子君 官房長官のお時間のかげんで、防衛庁長官からお伺いをしてまいります。  防衛庁長官は七月の二十二日に硫黄島を視察されております。そこで記者会見をされておりますけれども、その中で、硫黄島はわが国の最南端でもあり、防衛を考える上ではどうしても欠かせない位置にある。救難基地、海上自衛隊基地のほか、将来は航空自衛隊の訓練基地として使用する計画であるのでよく見ておきたかった、こういうふうに言っておられると報道されております。硫黄島が防衛を考える上でどうしても欠かせない位置と長官言っておいででございますけれども、この防衛を考える上でどうしても欠かせない位置というのはどういう意味でございましょうか、お伺いをいたします。
  208. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) お答えいたします。  硫黄島は、御承知のとおりわが国の本土からおよそ約一千キロ余の地点に所在しておりまして、いわば最南端に所在する島でございます。そして防衛庁としましては、この島には訓練基地として使用してまいりたいということでいま諸般の整備を進めておりますので、私も七月に同島の状況を視察に参った次第でございます。
  209. 安武洋子

    ○安武洋子君 ちょっと御答弁になってないんですよ。防衛を考える上でどうしても欠かせない位置だとおっしゃっているから、どうしてですかということをお伺いいたしております。
  210. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) いわば南の方の一番遠いところにある島でございまして、その島が現在訓練基地として重要視されておりますので、その状況を視察に参ったわけであります。
  211. 安武洋子

    ○安武洋子君 またちょっと後でその問題についてはお伺いいたします。  それでは聞きます。六月のハワイの安保事務レベル協議で、F15の追加購入と関連いたしまして、F15を硫黄島に配備してほしいという話ですが、こういう話がアメリカから出ましたでしょうか。お伺いいたします。
  212. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 御指摘のような話は出ておりません。
  213. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、ここに一つ報道がございます。これは防衛関係の高位筋の話として出ているわけでございますが、アメリカからハワイ会談でF15を四個隊追加購入して、それを北海道に二個隊五十機、硫黄島に二個隊置いてほしいという話があったと報道されております。さらに、バックファイアの南進を北海道を第一線、最前線のことですね、それから硫黄島を第二線として阻止しようというものだ、こういうふうに言われておりますけれども、こういうような話は全く出なかったんでしょうか。さらにお伺いいたします。
  214. 塩田章

    政府委員(塩田章君) そういう話は全く出ておりません。
  215. 安武洋子

    ○安武洋子君 でも、全然そういう話が出ないのに、防衛庁の信頼ある高位筋からこういう話が出たということが報道されているということは、そういうふうに否定はなさいますけれども、やはり硫黄島にF15を配備してほしいというアメリカからの話があったと私は思わざるを得ないわけなんですよね。  長官は硫黄島を視察をなさって、記者会見で、防衛を考える上で硫黄島はどうしても欠かせない位置だと、こういうふうにおっしゃっているわけです。なぜかといまお伺いいたしましたら、一番南の端にあるからというようなことと、訓練基地だからとおっしゃいますけれども、しかし私は、先ほどの高位筋から漏れたというアメリカの要請、北海道を第一線にする、硫黄島を第二線としてバックファイアの南進を阻止しようと、こういう点ではなるほど硫黄島というのは欠かせない位置だというふうに思うわけですが、この北海道第一線論、硫黄島第二線論と非常に一致をするというふうに私は思いますが、長官はいかがでございましょうか。
  216. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) ただいま政府委員から御答弁ありましたとおり、いま引用された報道のような事実は、私どもの会談の際には何らなされておらないわけでございます。  私が硫黄島を視察いたしましたのは、硫黄島の現状を視察して今後の施策の材料にしたいと思うことで行ったわけでございます。行きましたら、やはり火山の活動が激しく、また地盤の沈下もひどく、飲料水も島内にないと、訓練基地として整備する上にもまず飲み水の確保から始めなきゃいかぬということで、非常にむずかしい条件にあることを認識したのでございますが、当面これを訓練基地として活用してまいりたい、そういうことでございます。
  217. 安武洋子

    ○安武洋子君 長官、行かれた理由とか、そういうようなのは結構なんですよね。長官が言われた、防衛を考える上ではどうしても欠かせない位置なんだと、いまおっしゃったように、そんなに条件が悪いのに防衛上欠かせない位置なんだと、だから将来、海上自衛隊とか救難基地のほかに航空自衛隊の訓練基地とでもしたいんだというふうなことをおっしゃっている。ということは、私がさっき申し上げた――そういうハワイ会談では出なかったとおっしゃいますけれども、アメリカの高位筋から漏れたという、それでアメリカから要求されているという北海道の第一線論、硫黄島第二線論と合致して初めてやっぱりここは、硫黄島は欠かせない重要な位置なんだと、こう合点するわけなんです。長官の御発言と余りにもぴったりとするので、長官もそういう御感想をお持ちでないかということをお伺いしております。もう一度お伺いいたします。
  218. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 繰り返し申し上げておりますとおり、私どもの参加しました会談では、何らそれに相当する発言はなかったわけでございます。にもかかわらず先生おっしゃるので、ちょっとその点は私ども心外でございますが、そもそも防衛庁としましては、わが国周辺では飛行訓練環境の制約により、海上及び航空自衛隊の訓練が十分に実施し得ない状況で非常に困っているわけでございます。そこで、本土から一番遠く離れておりますが、その周辺が比較的訓練の障害が少ないということで、この硫黄島の実情も十分把握した上で訓練に必要な施策を現在講じておるのでその実情を視察に参った、それ以上のものはございません。
  219. 安武洋子

    ○安武洋子君 それにしては長官が、日本防衛を考える上で欠かせない位置だと、いや日本の衛とはおっしゃっていないんです。防衛を考える上ではどうしても欠かせない位置だ、こうおっしゃっているんですね。  それで、この高官筋はさらにこうも言っているんです。硫黄島というのは日本の最南端、これは長官と御一緒ですけれども、そこでバックファイアの南進を食いとめるというのは日本防衛とは全く関係がない、素人の私が考えましても全くそのとおりで、長官のおっしゃられるように、最南端のこんなところでは日本防衛とは全く関係がないわけですね。ですから硫黄島、ここは長官が欠かせない位置だとおっしゃる意味というのは、私はまさにアメリカの第七艦隊、それからグアム、フィリピンなどのアメリカの基地の防衛のためにはこれは防衛上欠かせないということだということではないかというふうに思わざるを得ないわけですね。このような、日本防衛のためでなくアメリカの防衛のために将来本格的な実戦基地としてF15をここに配備しようというふうなことであれば、これはとんでもないことだと思うんです。  そこで聞きます。将来やはりここを本格的な実戦基地としないということを言っていただけるでしょうか。そして、F15を配備しないということをお約束願えますでしょうか。
  220. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 精強な自衛隊をつくり上げますためにも訓練は欠かせない、その重要な訓練がわが国の周辺では十分実施できないというまことに残念な状況にございます。そこで、大分遠いところにはございますが、硫黄島を活用して訓練ができるようにしたいと、これがわが国防衛上きわめて重要な問題であるというふうに私は理解いたしておるわけでございます。したがいまして、現在、先生が御指摘のようなものに使うという考えは持っておらないわけであります。
  221. 安武洋子

    ○安武洋子君 確認いたします。  では、いまの長官の御答弁は、硫黄島は将来本格的な実戦基地としないと、そしてF15も配備しないと、こう確認させていただいてよろしゅうございますね。
  222. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 繰り返し申し上げます。  私は、訓練は防衛のために最も重要な一環であると考えております。訓練場として硫黄島を活用してまいりたいと、いまのところ、実戦基地とするような考えは持っておりません。
  223. 安武洋子

    ○安武洋子君 それでは、この高位筋から漏れているようなF15の配備ということもないということになれば、私は、F15を硫黄島にも配備していこうというふうな計画でもあるというふうにも言われているわけですから、こういうむだなF15の購入を削減すべきだと、こういうこともお考え願いたい、こう思いますが、いかがですか。
  224. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) F15につきましては、既定の計画に従いまして整備を進めているところでございまして、硫黄島とは何ら関係がないというふうに理解いたしております。
  225. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は重ねて要求しておきますけれども、F15そのもの、北海道とか硫黄島とか、こういう配備は何も日本防衛のためでない、こういうむだは削減すべきだということを強調しておきます。  それから次に、時間のかげんで、極東有事の問題についてお伺いいたします。  九月の二十八日に、アメリカの国防副長官カールッチ、この方が来られて外務省、防衛庁と協議を行っておられます。極東有事の研究について話し合いが行われて、極東有事の研究はできるだけ早く研究に着手するということで合意しているというふうに言われております。  そこでお伺いいたしますが、一体この研究はいつから始めるのでしょうか。
  226. 塩田章

    政府委員(塩田章君) カールッチ副長官が来られまして、その話題が出たことは事実でございます。ただ、日米両国ともその研究をしようではないかということについての合意はございますけれども、具体的にいつからどういう手続で始めるかということについてはまだ合意に達したという段階ではございませんで、いまからそういう手続のことを検討しておると、こういう段階でございます。
  227. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、どういう点が合意したんですか、合意した事項を挙げてみてください。
  228. 塩田章

    政府委員(塩田章君) ガイドラインに基づく第三項の研究をしようということが合意されただけでございます。
  229. 安武洋子

    ○安武洋子君 できるだけ早く研究に着手しようと、こういうことじゃないのですか。大体の期日ぐらいは限っていないんですか。わざわざ来て防衛庁と外務省と協議したと、まあ研究しようと、たったそれだけのことですか。
  230. 塩田章

    政府委員(塩田章君) その問題についてはそれだけでございます。
  231. 安武洋子

    ○安武洋子君 では防衛庁として、この研究の責任省庁を一体どこにしようと考えておられるのか。もしそういうことになれば、構成人員は何人ぐらいにしようと考えておられるのか、そして制服自衛官の人も入れるように考えておられるのか、そして、どういうこととどういうことを研究しようとされているのか、そういうことをお伺いいたします。
  232. 塩田章

    政府委員(塩田章君) まず、いろいろお尋ねがあった第一点の、どこを責任官庁とするかという点でございますが、これは事柄の性質上私ども当然外務省が主体になっていただけるものだというふうに思っておりますし、現に外務省ともそういうことで話を進めております。  それから、それ以外の幾つかお挙げになった項目につきましては、まさにそういうことをどういうふうにやっていこうかという、いまからそういう相談に入るわけであります。
  233. 安武洋子

    ○安武洋子君 そういうことと言われましたけれども、私が構成人員、それから制服自衛官の人も入れるか入れないかというふうなことを挙げたわけです。そのほかに、では内容として何と何と何とというふうなことを大まかに、どんなことを考えていらっしゃるんですか。
  234. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いまの制服を入れるか入れないかとか、人員をどうするとか、どこの役所を入れるかとか、そういうことをすべていまからよく検討して米側と話し合いに入ろうと、こういう段階でございまして、いまの時点で決まっておることは、この次に日米ガイドラインに基づく研究としては第三項の問題を取り上げようということだけでございまして、それ以外のことはいまから検討する、そういう段階でございます。
  235. 安武洋子

    ○安武洋子君 ことしの七月の二十八日に、当委員会で私が質問いたしましたのに対しまして、塩田局長は「ガイドラインは現行法に基づいての研究でございまして、現行法上できないことはいたしません。」と御答弁なさっていらっしゃいますが、これは変わっておりませんですね。
  236. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 変わっておりません。
  237. 安武洋子

    ○安武洋子君 そうすると、新聞報道でございますが、これは訪米なさった民社党の佐々木委員長に対しましてアメリカ側は、アメリカは極東有事の際、日本がアメリカに対する便宜供与として輸送力の提供、艦船の修理などについて検討してほしいと、こういうことを述べたというふうになっておりますが、極東有事の際、こうしたことはできませんでしょうね。これは外務省と防衛庁、両方にお伺いいたします。
  238. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 本件につきましては、先ほど防衛局長からもお話がありましたとおり、すべて検討中の段階でございます。したがって、その仮定の問題についての確たるお答えを差し上げることはできませんですが、ガイドラインの中にもありますとおり、日本の憲法上の制約その他に反するようなことはしないということは当然前提でございます。
  239. 安武洋子

    ○安武洋子君 防衛庁。
  240. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 外務省と同じでございます。
  241. 安武洋子

    ○安武洋子君 これは、いまの現行法上ではこういうことは当然できないということでしょう。アメリカの極東有事の際に、日本がアメリカに対する便宜供与として、輸送力の提供とか艦船の修理とかと、具体的に挙がっているわけです。これについて検討をしてほしいと言っているので、この検討はできませんでしょうと、ガイドラインは現行法に基づいてと、これは変えていないとおっしゃるから、そのことを確認しております。
  242. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 繰り返しになりますですが、この件につきまして、米側からすでに具体的な要請があってそれを検討しているということではございません。  いま日米間にありますことは、要するに六条事態に関する研究というものを始めようと、こういうことでございまして、その内容、そしていついかなる態様でこれを始めるか、これらの点については検討中でございます。
  243. 安武洋子

    ○安武洋子君 法的に根拠もないものの私は検討をしていただいたら困ると思いますので、現行法に基づいての研究であると、ガイドラインは、ということを、変わっていないねということで私は御答弁をいただいたわけです。ですから、こういう法的根拠のないものの研究を進めないということを確認いたしとうございますが、よろしゅうございますか、防衛庁。
  244. 塩田章

    政府委員(塩田章君) ガイドライン三項は、申し上げるまでもないんですけれども日本米軍に対して行う便宜供与のあり方は日米安保条約その他関連取極これこれに従って規律されると、それを研究すると、こういうことでございますから、いま自衛隊が何ができるかということにつきまして、これは現行法上実際上ほとんどできることはないということはかねてから申し上げております。ここで言っていますのは、日本政府米軍に対して何ができるかということで、それを研究しようということでございますから、具体的にいま外務省からもお答えがありましたが、どれができるとかどれができないとかということを決めてかかるわけじゃございませんので、その辺は御理解いただきたいと思います。
  245. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、さっき私が申し上げたような輸送力、こういうものを提供したり修理をするというのを日本政府がやる場合の法的根拠は何なんですか。
  246. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いまも外務省からお答えありましたように、具体的にそういう話が出ておるわけではございません。もしこれが協議が始まって米軍側が何かそういうことを言ってきた場合に、その内容によりまして、できることできないことを振り分けていかなきゃいけないということにはなろうかと思いますが、どういうことを言っているかわからない時点でそれができるとかできないとかをここで申し上げることは、まだいまの時点ではできないわけです。
  247. 安武洋子

    ○安武洋子君 それはすりかえ答弁で、私がこういうふうにはっきり申し上げて、こういうことをもし政府がするならどういう法的根拠に基づくのかということまでお伺いしているわけですから、いまの中ではできないということになるわけでしょう。そういう点、かっちり御答弁をいただきたいと思います。  時間の関係で次に進みますけれども、五六続演についてお伺いいたします。  五六続演の図上研究は七月の二十日に始まっておりますけれども防衛出動待機命令ですね、これは何月何日の何時に下令されたのでしょうか。
  248. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 待機命令はすでに出たというところから訓練が始まっております。
  249. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、防衛出動不令は何月何日の何時なんでしょうか。
  250. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 防衛出動命令は七月二十日の十六時下令ということです。
  251. 安武洋子

    ○安武洋子君 在日米軍関係者はこの演習を見学ないし視察をしていたのでしょうか。
  252. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 若干の人が視察に来ております。
  253. 安武洋子

    ○安武洋子君 それと、この問題についてもっとお伺いしたいんですが、私の与えられた時間が限りがありますので、大変中途半端ですが、ここで人事院勧告の問題に移らしていただきます。  人事院勧告仲裁裁定、この早期の実施については強い公務員労働者からの要求があるわけですけれども政府はいまだにこれを実施しようとはしておりません。新聞報道によりますと、行革一括法などと取引の材料にしようとしているというふうなことも言われているわけですが、私はそういうことがもし事実ならまことに許しがたいことだというふうに思いますので、くれぐれもそういうことのないように強く要求をいたしておきます。  けさ、同僚議員の質問に対して、法制局長官は御答弁の中で、最高裁の考え方が行政府の基本的態度であるというふうな意味のことを言われております。  そこで、お伺いいたしますけれども、全農林の警職法の事件の最高裁判決、これは人勧を完全に実施しなくても違憲とも合憲とも明文化していないと思いますけれども、そのとおりでございましょうか。
  254. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) その点につきましては、衆議院委員会でも申し上げましたけれども
  255. 安武洋子

    ○安武洋子君 イエスかノーかでいいんですよ、明文化しているかどうか。
  256. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 代償措置としての不可欠の要素であるか、言いかえればそれが直ちに違憲になるかあるいは合憲なのかという問題については、最高裁の判決自体としては特に直接には言及していないと思います。
  257. 安武洋子

    ○安武洋子君 官房長官ね、九月の二十五日の記者会見で、この全農林の最高裁判決の解釈に関連して、人事院勧告完全実施しなくても違憲問題は生じないとの見解を示されたと、新聞報道はこのようになっておりますけれども、これは政府としての正式の御見解なんでしょうか。
  258. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 九月二十五日といいますと、これは衆議院の議院運営委員会の理事会でこういう問題が出まして、そこで申し上げたことと同じことを記者会見で申しておるんですが、私は自分が法律の専門家でありませんので、これについて確たることは自分からは言えないと。しかし、これが代償措置であるから政府は誠実に履行しなければならないということは確かに判決趣旨である。さて、誠実に履行したが完全に要求どおりにはできていないというときには、この判決は違憲とはそれを即断していないのではないかと思うけれども、これは解釈の分かれるところだろうと、こういう趣旨のことを申しております。
  259. 安武洋子

    ○安武洋子君 それでは、それが政府の正式見解なのかどうかということと、いままで政府がどこかで正式見解をお出しになったことがあるんでしょうか、お伺いいたします。
  260. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) したがいまして、法律問題でございますので、正式見解法制局長官から申し上げるのが本来であろうと思いますし――法制局長官が答弁をいたしております。
  261. 安武洋子

    ○安武洋子君 法制局長官のけさの御答弁ですね、最高裁の考え方が行政府の基本的な態度であるというふうな意味のことをおっしゃっておりますが、私は、官房長官もそれから法制局長官も、いままでの新聞報道を拝見いたします限り、この全農林の判決、これに推論を加えておっしゃっているにすぎないと思います。  今後、最高裁がこういう問題に言及しまして違憲であるという、こういう判決を出した場合ですね、政府態度が変更するということもあり得るわけですね。その点お伺いしておきます。
  262. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) けさほども申し上げましたが、政府の基本的態度としては、最高裁判決の考え方に従うというのが行政府として当然とるべき態度であろうと思います。
  263. 安武洋子

    ○安武洋子君 では確認として、最高裁がこの問題で違憲であるという判決を出した場合は、政府もそういう態度をとるということだということで確認させていただきます。  公務員のスト権の制約の理由といたしまして、最高裁は公共の福祉とか全体の奉仕者とかといろいろ挙げているわけです。この中の一つ代償措置の問題も挙げております。私は、この代償措置の問題は、他のいろいろ挙げております全体の奉仕者とか云々とかということとは根本的に違うと思うんです。代償措置というのは、制限をした理由ではなくて、スト権を制限し剥奪したあくまでも代償で与えたものであるわけです。歴史的にもそのことははっきりしていると思います。政令の二百一号であのスト権を奪ったと、その代償として設けられたということは、これはもう歴史的に動かしがたい事実です。で、この代償措置は、公務員労働者の生存権を守る立場から設けられているということもこれもまた明白なことです。  ですから、公共の福祉とかそういういろんな問題、これはあなた方が代償措置のほかにもいろいろありますよと、こういうことで挙げてはなさいますけれども、これはスト権制約の理由がいろいろあるということであって、スト権を奪ったということの代償として人事院が設けられたと、こういうことで、この代償措置機能が完全に機能しないということになれば、これはスト権を与えるか、あるいは代償措置を完全に発揮させるか、二つに一つしか私はないのではないかと思います。で、この代償措置機能を弱めるというふうなことは、憲法の生存権、ひいては労働基本権を侵すことになります。政府の重要な、私は憲法上の問題でもあって、これは憲法違反の疑いも出てくるというふうに思いますが、いかがお考えでございましょうか、お伺いをいたします。
  264. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) そういう御意見があることは私も無論承知しておりますけれども、けさほども申し上げましたように、全農林事件に関する最高裁判決の読み方として、そういう読み方しかないとは私は思いません。
  265. 安武洋子

    ○安武洋子君 読み方しかないって、私の申し上げた続み方しかないと思わないとおっしゃいますけれども、しかし歴史的に考えたって、いろいろと公務員からスト権を奪った理由としては、全体の奉仕者であるとか公共の福祉とかそういうものがうんとあるから奪ったと、そのかわりにこういうものを代償措置として与えましょうと。その機能が完全に発揮されなかったら、スト権を与えないといけないわけでしょう。だからこそ、あなた方がいろいろ公共の福祉とは何だと、ほかにも理由がありますよと言われるなら言われるほど、この代償機能をりっぱに発揮させるというそういうことになるんじゃありませんか。私はいまの御答弁、納得できませんが。
  266. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 私は、先ほども申し上げましたけれども、最高裁判決の考え方をそのままどう理解するかということを重点にして申し上げているわけですが、それは直ちに、同時に私のと申しますか、政府見解でもあるわけです。そして最高裁判決では、「公務員についても憲法によってその労働基本権が保障される以上、この保障と国民全体の共同利益の擁護との間に均衡が保たれることを必要とすることは、憲法の趣旨であると解されるのであるから、その労働基本権を制限するにあたっては、これに代わる相応の措置が講じられなければならない。」と言って、いろいろ代償措置はこういうものがあると言って、そして「公務員は、労働基本権に対する制限の代償として、制度上整備された生存権擁護のための関連措置による保障を受けているのである。」と。そこで一応とめまして、さらに多数意見に属する七裁判官の意見としては、五裁判官に対する反論として「代償措置制度さえ設けておけばその争議行為禁止しても憲法に違反するものではないとの安易な見解に立っているものではない」というような意味のことも言っておられますので、そこで私は、けさ申し上げたと思いますけれども公務員の労働基本権を制約することの合憲性を肯定する一つの理由として代償措置というものが憲法上の評価を受けているわけですから、その一つである人事院給与勧告制度が実効を上げるように国会及び内閣が最大限の努力をしなければならないと、このことは当然最高裁判決趣旨とするところであろうと、ここまで申し上げたわけであります。
  267. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、一体政府代償措置機能が発揮され、そして果たされた状態、こういう状態はどのような状態だと思っていらっしゃるんですか。
  268. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) それは一義的には言いがたいと思います。ただ、岸、天野二裁判官の追加補足意見の中で……
  269. 安武洋子

    ○安武洋子君 もう時間ないんだから結構ですよ。
  270. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 一々もう申し上げなくてもいいと思いますが、言っているわけでございます。ですから、あの事態というものをどう見るかということになるわけですが、それについても一義的にはなかなか言えないと思います。
  271. 安武洋子

    ○安武洋子君 だれが考えたって代償措置機能が完全に発揮されたというのは、人事院勧告、それを値切りなしに実施することであるということは明々白々の私は状態だと思います。  そこで、質問を移しますけれどもILOでも公務員争議行為禁止するについては適切な代償措置が必要であると指摘をしております。これはもう御存じのように結社の自由委員会、七十六次、七十八次の報告です。しかもその代償措置とは「適切にして公正、しかも速やかな調停、仲裁の手続きをともなうべきであり、これらの裁定は完全に、迅速に実施されるべきである。」と、これは、総評とか国公共闘の提訴に対するILO結論で、一九七三年の百三十九次報告で述べられておりますけれども、私は、政府はこのILO結論を実行するということは、国際法上も道義的にもやっぱり重要なことではないか、ILO結論を尊重すべきではないかと、こういうふうに思いますけれども長官、いかがお考えでございましょう。
  272. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 原則としてそうすることが望ましいと思っております。
  273. 安武洋子

    ○安武洋子君 そういうことが望ましければ、もうぜひそういうふうにやっていただきたい。これは何も国際的でなく、国内的にもあるわけです。  これは一九五〇年の二月の二十五日の東京地裁の国鉄年末賞与をめぐっての判決です。これは、国鉄の年末賞与四十五億円の支出をめぐりまして、国鉄が予算上、資金上流用もし得る範囲内で十五億円支出した。ところが、残金の支出については国会の承認を必要としたけれども国会に承認を求めたけれども結局国会の承認が得られなかった。この残金の支給をめぐって東京地裁に提訴して争われていたわけですけれども、東京地裁は、仲裁制度機能を発揮しない場合というふうなことで、ここに「仲裁委員会による仲裁制度は、公共の福祉のため、被申請人の職員から争議権を奪った代償として、その労働権並びに生存権を保障するための制度として設けられたものである。ところで労働者の労働権並びに生存権の保障ということは、賃金その他の給与改善によって、最もよくその目的を達し得ることはいうまでもないことである。」と。ちょっと中、飛ばしますが、「従ってこれらに関する内閣または大蔵大臣決定または承認が、その自由裁量にゆだねられているとするならば仲裁制度は全くその効果を滅却せしめられるごとくなるのであって、かくては、生存権に対する適切な保障の制度を与えることなくその争議権を奪ったことになるのであって、まさしく憲法に違反するといわざるを得ないのである。」と、こういうふうに書かれております。  仲裁制度機能を発揮しない場合ということでこういう判断を下しておりますけれども、この代償措置機能についての具体的な判例というのは非常に少ない。これは貴重な判例であると思うわけです。こういう判決から見ましても、人勧や仲裁裁定を値切らずに実施するということが代償措置機能が発揮された状態であるということがわかるわけです。ですから、代償機能を発揮させるというのが政府が憲法上負うべき政治責任だと、私はこのように思います。ですから、速やかに人事院勧告を値切らずに実施をすべきだと、こういうふうに思いますが、長官の御所見をお伺いいたします。――官房長官です。
  274. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 失礼しました。  いまおっしゃいましたのがちょっと判決の方のお話でございましたけれども、いまの判決昭和二十五年二月二十五日の東京地裁判決でございますか。
  275. 安武洋子

    ○安武洋子君 ええ、一九五〇年二月二十五日です。
  276. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) ああ、そうですか。  それは、地裁の判決ではおっしゃるように法規裁量行為だというふうに言っておりますけれども、高裁では自由裁量行為だというふうになりまして、そして最高裁まで行って、やはり高裁の判決を認めているように思いますが、ちょっと御引用としては地裁の判決だけを御引用になったようですが、事件としてはむしろ逆の結論が出ている事件じゃないかと思いますが。
  277. 安武洋子

    ○安武洋子君 官房長官にお伺いしています。
  278. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 要するにいま御議論になっておりますのは、そういう代償措置を完全に履行することがそもそも望ましいという、その国内法の観点からもILOの観点からもそうだとおっしゃっていらっしゃることは、もう政府としてもそのとおり考えておるわけでありますが、仮に一これは仮にでございます、仮に誠実に全部努力を尽くしても完全な履行ということにならなかった場合に国内法上どうなるのか、ILOとの立場がどうなるのかということになりますと、それが直ちに違憲になる、あるいは条約違反になる、そういうものであるかどうかということは一概には断じられないのではないか。仮にの話でございますが、そう思います。
  279. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま、まあ直ちに違憲になるとか、ILO条約に違反するとか、その点はいまのところまだわからないというふうな御見解でございますけれども、ここの中で論議をしておりますことは、私がいまこの東京地裁の判決を挙げましたというのは、ここの中にこそ私どもが先ほどから申し上げている趣旨が盛り込まれているから私はこの判例を引用しているわけでございます。ですから、公務員の生存権を本当に保障するんだと、こういう立場から、先ほども申し上げましたように、代償機能というのはほかのものと違うから完全に機能させるという責任が政府に課せられているわけです。ですから、私は完全に機能させる以外にないじゃないかと、それは人事院勧告を値切らずに実施することであると、それ以外に道はないということを申し上げておりますので、やはりここではそういうふうに実行していくという明確な政府の御答弁を私はいただきとうございます。その御答弁を期待して、時間が残念ながら参りましたので、私の質問を終わりたいと思いますので、ひとつその点明確な御答弁をしてくださいませ。
  280. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) もう一遍東京地裁の判決のことをおっしゃいましたが、それは、先ほど申しましたように高裁で覆って、最高裁は高裁を支持したということでございます。
  281. 安武洋子

    ○安武洋子君 いや、そのことを言っているのじゃないですよ。私、判決がどうなったかということで長官にお伺いをしているんじゃございません。私は、この中にこそ私どもが論議をしてきた趣旨が盛り込まれていると。で、こういう判決が一たん出たということは非常に貴重であるということで引用させてもらったと言っているわけです。ですから、どちらにしてもいままでの論議の中で長官ILOのこの勧告に従っていくのが望ましいんだと、そして代償機能は十分に発揮させるのが望ましいんだと、そうありたいと、こうおっしゃっておりますから、代償機能を発揮させることは公務員の生存権を保障することでもあると、非常に重要な政府に課せられた憲法上の責務でもあるということですから、私はここでそういう立場に十分立って、この公務員人事院勧告仲裁裁定、値切りなしに実施をするという姿勢を示していただきたい、そのことをお伺いして私の質問を終わると、こう申し上げたので、もう一度御答弁願います。
  282. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それにつきましては、完全実施が望ましいということは先ほど申し上げましたとおり疑いのないところでございますが、政府としてはそのために最大限の努力を尽くしたいと考えておりますけれども仲裁裁定につきましてはすでに国会の御判断にゆだねてございますし、人事院勧告につきましては給与関係閣僚会議結論がまだ出ていない段階でございます。その点は御了承をお願いいたしたいと存じます。
  283. 柄谷道一

    柄谷道一君 本日は、国家公務員等退職手当審議関連する公務員給与問題にしぼりまして御質問いたしたいと思います。  まず、行管庁長官にお伺いいたしたいと思います。  去る七月十日、臨時行政調査会から「行政改革に関する第一次答申」が出されました。その中に「緊急に取り組むべき改革方策」として「国家公務員給与等の合理化」が述べられております。問題は、その精神と読み方についてでございます。私は、この臨調答申は、行政の簡素化、効率化、行政コストの節減を図るための定員削減計画の改定強化、機構及び事務・事業の見直し、民間委譲の推進、行政サービスの向上、民間活力の導入等による行政の減量化、公務能率の増進を図るための給与に関する成績主義の採用、国家公務員等退職手当法の一部改正法案の早期成立、さらに共済年金についてその支給制限を厚生年金との均衡を図るために強化する、いわばこうした総合的施策を通じてこれを精力的に実現し、総枠としての人件費を削減、適正化して国民負担の軽減を図ることを目的にしておる、こう私は読み取っております。  法制局長官がすでに矢田部委員の質問に答えられました最高裁判決趣旨、さらに私が前回の質問で指摘いたしました準司法機関としての役割りを持つ人事院性格及び労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告の持つその意義、これらを軽視してもよろしい、公務員給与は民間準拠の原則を破って民間より低く抑えてもよいというふうには私としてはとうていこれを読み取ることができないわけでございます。長官のまず御認識をお伺いいたしたいと思います。
  284. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 柄谷さんが最初に申せられましたお考えは、中長期的には私も同感であります。要するに簡素合理化によって金を浮かして、また人間もできるだけ減らして、そして公務員給与の方にそれを回してやるということも考うべきであるというお考えは、中長期的には私も同感でありますが、仰せいまの五十六年度の仲裁裁定やあるいは人事院勧告の問題につきましては、中長期的な考え方はいまのところ間に合いません。  そこで今度、七月十日の第一次答申は、当面の緊急措置として御提言があったわけであります。その中で、公務員給与につきましては、労働基本権の制約あるいは財政状態あるいは社会経済状態あるいは国民世論の動向、そういうものを踏まえて、そして適切な抑制措置をとるように、五十六年度と特に指定してその点は書かれておったと思います。これは、やはり中長期の考えが間に合わないという意味もあるのではないかと思います。  そういう観点に立ちましていまわれわれとしては検討しておるところでございますが、労働基本権の制約という点は私たちも非常に重要視しなければならないと思っています。そうして、いままで続けられました良好なる労使関係を維持していくということも私たちは大いに考えていかなければならぬポイントであると思います。しかしながら、国家財政という面もまた見逃すことのできない重大なポイントでございまして、七月十日の答申が緊急として出されたのは、国家財政の現状という面も非常に考えられてあのような文章になったんではないかと思います。その辺の判断はわれわれ政府に任せられていると、この文章を尊重して政府よ適切に判断せよ、そういう政府に任せられているところであるというふうに考えておりまして、いま政府といたしましては、そういういま申し上げたようなことを頭に置いて、そしてできるだけ公務員皆様方にはいままでの方針に基づいて給与も差し上げたい、これはわれわれの誠意を尽くしてやっぱりやるべき重大なポイントである、そういう基本線に立ちながら、財政事情とどういうふうに調和してこれを行えるか、その点をいま検討中でございまして、給与閣僚会議でそれらを最終的には考えようということになっておる状態でございます。
  285. 柄谷道一

    柄谷道一君 私がさきに申し上げましたのは、この臨調答申の第一、すなわち「行政改革の理念と課題」という中に含まれている問題ではないんです。すべてこれは、第二の「緊急に取り組むべき改革方策」の中に建議されております項目を私は申し上げたわけでございます。したがいまして、いま長官は、これらの問題は中長期の問題である、こう言われましたけれども、私は、臨調答申を正確に読み取る限り、これは緊急に行わなければならない課題の中に含まれるべき課題である、こう理解をいたします。  そこで国家公務員給与等の合理化について触れられておるわけでございますが、この中には退職手当法、共済年金等の例示が掲げられております。それらを総合しての適正な措置というものが建議されているわけでございます。  そこで、長官に再度お伺いいたしますけれども、それでは労働基本権の制約、社会経済情勢、財政事情、国民世論の動向等を十分考慮しなさい、そして「適切な抑制措置を」という、この「適切な抑制措置」とは一体何を意味するのでございますか。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 「適切な抑制措置」の「適切」という中身は、以上の例示のありました四つの点をよく考えて、そこから出てくる適切な措置という意味ではないかと私は考えております。上の四つを無視して適切ということは考えられない、そのように考えております。
  287. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、人事院に具体的にお伺いをいたしたいと思います。  国家公務員法第六十四条の二項では「俸給表は、生計費、民官における賃金その他人事院決定する適当な事情を考慮して定められ、」と、こう書いてあるんですが、「その他人事院決定する適当な事情」とは何でございますか。
  288. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 法律にはそういうような規定を設けておりますが、われわれといたしましては、従来、長年にわたる経験上、または国会における論議その他を踏まえまして、これの中心をなすのはあくまでも民間給与の実態であるというふうに考えておるのであり、それがまた一番正しい、一般に納得のいくやり方ではないかという結論でいままでやってきておるわけでございます。というのは、民間の企業における春闘その他を通じての給与改善等は、これはそのときの社会情勢を背景にいたしまして、物価とか生計費とかその他あらゆる要素を絡み合わせて、労使の間の合意で成り立っていく一つの基準でございます。したがって、ここにすべての要素が溶け込んでおるというふうに見るのが一番いいんじゃないかということを経験上われわれは確信をいたしております。  したがいまして、従来、むろん生計費のことも考えます。なかんずく標準生計費については、人事院としていままでやってまいりました方式に従ってこれを算出をいたしまして、給与配分をいたしまする際の下支えの参考に十分いたしております。その他物価情勢、あらゆる経済社会の情勢も加味して考えておりまするが、究極のねらいというものは、やはり民間の給与決定状況というものを把握するのが一番ではないかということから、毎年四月現在でもって民間の給与動向というものを正確に把握いたしして、これを調査の結果積み上げて、そこに民間と公務員との間に較差があればその較差は埋めていただく、これが一番正しい方法ではないかということで従来からやってまいりましたし、この点については大方の御評価をいただいて今日まで来ておるというふうに確信いたしております。
  289. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、総裁に端的にお伺いいたしますが、民間準拠に基づいて勧告を行うということでございますから、この勧告が完全に実施されなければ官民の給与に関する逆較差が生ずる結果となる、こう理解してよろしゅうございますか。
  290. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) そのとおりでございます。
  291. 柄谷道一

    柄谷道一君 次は、公労委に対してお伺いいたします。  給与特例法の三条、また日本専売公社法二十一条、日本電電公社法三十条及び日本国有鉄道法第二十八条、これにそれぞれ職員の給与を何によって準拠をすべきかということがうたわれております。その法文の内容につきましては、この際、時間の関係で読むことは省略いたしたいと思いますけれども、今回の仲裁裁定は何を主たる準拠として出されたものか、お伺いいたします。
  292. 中西實

    参考人中西實君) 法文にございますように、生計費あるいは国家公務員給与、それに民間給与、これあたりを勘案して決めろということになっておりますが、もうすでにわれわれの方は長年一つの慣例になっておりますけれども、一番主として考えますのが民間準拠――生計費のことも、これはもう民間の給与の中でいろいろ論議されました中に入っておるということでございますね。それから国家公務員も、先ほど人事院総裁から話されておりますように、民間との比較でやっておりますので、そこで最も重視しておりますのは民間に準拠してやるということで、これはもうずうっとこのところ十数年来その方針で来ております。
  293. 柄谷道一

    柄谷道一君 私もそのように承知いたしております。  とするならば、人事院にお伺いしたと同様に、この仲裁裁定が――これはもちろん労使を拘束するものではございますけれども、仮にもう完全実施されないということになりますならば、その結果、官民逆格差が生ずるという結果を生み出すことは必然である、こう思いますが、間違いございませんでしょうか。
  294. 中西實

    参考人中西實君) 結果的にはそういうことになろうかと思いますが、人事院勧告と違いますところは、三公社現業におきましては給与は当事者で団体交渉をして決めるというのが原則でございまして、決まらなければ公労委へ持ってきて調停の手続をする、その段階を経て、双方の意向を受けまして仲裁でそういうことも、そういう過程も考えて仲裁裁定をするということになっております。したがって、人事院と違いますのは、全く数字で比べましてやるというんじゃなくて、その間労使双方の意向、こういうものも入れまして総合勘案して仲裁裁定が出る。しかし、その出ますのは結局民間準拠でございますから、おっしゃるように、もし実施がされませんければ、そこに格差ができることは、結果としておっしゃるとおりでございます。
  295. 柄谷道一

    柄谷道一君 この仲裁裁定に当たりまして、仲裁委員長談話が発表されております。この談話を見ますと、「配分問題を含めて早期かつ円満に解決されることを期待する。労使に対し一段と労使関係の安定に努めることを要望する。関係政府機関の特別な配慮によりその効果がすみやかに職員に及ぶよう必要な措置をとられることを期待する。」と、この三点に要約されると思うわけでございます。仲裁裁定実施に関して、率直に公労委会長としての御所見をお伺いいたしたい。
  296. 中西實

    参考人中西實君) いま読まれましたが、あれは仲裁裁定が出ましたときに同時に談話として出したもので、出しました当事者としまして、当然一日も早く実施されまして、これが従業員に恩典がいくように実施してもらいたいと、このことは現在も変わりございません。
  297. 柄谷道一

    柄谷道一君 最後に、公労委の会長にやや技術的なことでございますが、所見をお伺いいたしたいと思います。  それは、仲裁裁定は三・八一%プラス二千八百八十円という形になっております。いわゆる定率プラス定額という方式をとっているわけでございます。こうなりますと、三公社現業の中でも平均年齢が高い、平均勤続が長い、そのために結果として賃金水準が比較的高く表示されているというところほどベースアップ率が結果として低くなるという結果になると思うんです。これは体系の相違ではなくて、人員構成が必然的にもたらす結果であろうと、こう思います、  そこで、そうなりますと、そのような理由で平均賃金の高いところはベースアップ率が比較的低位に抑えられる、それは退職手当金の基礎が抑えられるということとイコールでございます。ここ当分の間、定率プラス定額方式が採用されてきたわけでございますけれども、そのことは必然的に退職手当において官官格差を生む要因になっていると、私はこう思うのでございますが、その事実は間違いございませんか。
  298. 中西實

    参考人中西實君) 御承知のように仲裁裁定は、これも慣例的にもうなっておりますけれども、額と傘とでやっております。大体三と七というようなことでこのところずっと来ておるんでございまして、これは結局、やはりいろいろのことを考えましてそういうことになっておるんで、ベースを考えますときに、やはり年齢が高ければどうしても高くなるが、しかしその高いのをそのまま率ばかりでやってはかえってその間生計費その他のことを考えましても不合理になるということから、このところずっと大体三対七の割で額、率でやっておるわけなんで、そのことによって大体毎年もう一遍民間との比較あるいは三公社現業同士の給与の比較をやっておりますが、きわめてそれで調子がとれておるわけなんです。そうだとしますると、そのことによって退職金に非常な不利が起こったり、あるいは有利になるということも実はないのではないかというふうに総合的に考えまして思っておるわけでございます。
  299. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいまの御見解でございますが、私の持つ資料では、相当三公五現間のカーブに差が出ておる。そのことが退職手当に非常に大きく作用しているというふうに理解いたしておりますが、これは退職手当審議の中で逐次明らかにしつつ、また御質問をいたしていきたいと、こう思います。  参考人、ありがとうございました。
  300. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 参考人には御退席いただいて結構でございます。  ありがとうございました。
  301. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理府総務長官にお伺いいたします。  すでに本委員会に付託されております退職手当法の一部を改正する法律案は、一言で申し上げますならば退職手当の官民格差を是正するというところにその目的があると、こう思うのでございます。そして、その退職手当は俸給に係数を乗じて求められるものでございます。ところが、その退職手当の基礎給たる俸給、給与について、人事院勧告及び仲裁裁定取り扱いについて、政府はいまだその態度を明らかにいたしておりません。いわばこの基礎額の取り扱いが不明なまま退職手当の官民格差の是正を図れと、こう言われましても、確かに五十二年時点における官民の差はございますけれども、この手当法が発効していくのは今後の問題でございます。そうなると、われわれとしてはその基礎額がどうなるのか、そのことによって算出されます退職手当と民間との実態がどうなるのか、これを全部もやに包んだまま審議を進めてほしいということはどうも私は理解しがたいわけでございます。この点について、ひとつ賢明なる長官の解明を願いたいと思います。
  302. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 五現の方々の給与に関しましては、ただいま国会で御判断をいただくようにお願いをしておりまして、私ども政府といたしましては、国会の御判断がいかなるものになるかというふうにただいま慎重に拝見をさしていただいているところでございます。  公務員給与の改定につきましては、先生の御案内のとおり給与関係閣僚会議をすでに二回開きまして、誠意を持ってこの問題の解決努力をいたしておるところでございますが、昨年、今年ともに財政事情がきわめて悪い。特に今年は税収の見込みがなかなか立たないという段階で、第三回給与関係閣僚会議を今後も引き続き開催するということになっておりますが、すでに九月の十八日でございましたか第二回を開きましたが、約一ヵ月近くにもなってまいっておりますので、できるだけ速やかに第三回の給与関係閣僚会議の開催をさしていただいて、その後のいわゆる税収状態がいかなるものかということを財務当局からも報告を受け、誠意を持って安定した労使関係が今後とも維持できるように努力をしてまいりたいと、このように考えております。
  303. 柄谷道一

    柄谷道一君 では、その基礎額のうちの一つ仲裁裁定について、労働大臣に率直にお伺いをいたします。  私は、今日まで民主的全官公の諸君は、公労委の権威、なかんずく公労法体制を守り抜きながら遵法精神に徹して組合運動を堅持してきておると思います。そして労働大臣は、今日まで閣内において、健全な労使関係を維持発展させるためには仲裁裁定は完全に実施すべきであるとの主張を貫かれてきた、こう承知いたしておりますし、またその達見に対しては敬意を表するにやぶさかでございません。まことにくどいようでございますけれども、この際、改めて労働大臣としての仲裁裁定実施に対する所見と決意をお伺いいたしたいと思います。
  304. 藤尾正行

    国務大臣(藤尾正行君) ただいま公務員給与人事院勧告問題と絡めまして総理府総務長官が申されましたが、その中で仲裁裁定問題にも言及をしておられるわけでございます。これは政府の中の話でございますから、私の申し上げることと総理府総務長官の申し上げることと中が違っておったんでは、これはえらいことになります。全然これは違わないといったてまえで終始をするわけでございます。  そこで申し上げたいことは、仲裁裁定の問題にいたしましても、その仲裁裁定のでき上がります、裁定までに至ります間の当事者、これは組合とそれぞれ三公五現の経営者でございます。でございますから、もし仮にそこに官庁がどうしても関係をしていくということであれば、国鉄の場合にはこれは運輸省が、あるいは郵政あるいは電電というような問題につきましてはこれは郵政大臣が、あるいは専売、印刷、こういった問題につきましては大蔵大臣が、あるいはアルコール専売に対しましては通産大臣がそれぞれ関与をしておられるわけで、私、労働大臣が関与しておる問題は何一つないわけでございます。ただ、私が関係をいたしますのは、事お働きになっておられる労働者の給与の問題でございますから、そういった点につきましては、私が当面の責任者じゃございませんけれども、応援団といたしましてその間の判定、こういったものを適切に正しく運用をしていただいて、日本経済あるいは社会を支えておられる労使の問題といいまするものをできる限り御満足のいただける最大限のところまでこれを実行をしていただくような環境をつくる、それが私の任務でございます。  そこで、そのような立場から、私は私といたしまして、ただいま柄谷さんも御指摘になられました日本の労使慣行、三公五現の労使慣行、こういったものがより完全に、うまく決着をさせるためにはどのようにあらねばならぬかということにつきまして、私は私の立場で申し上げておるということでございます。ただ、御案内のとおり、今回の仲裁裁定といいまするものは、いままでの仲裁裁定と同じでございまするけれども、非常に残念なことながら、国鉄と全農林の場合、これは正直を申し上げましてそれぞれの御当局におかれましてお支払いの能力がない、こういうことでございますから、そういうことでは、お支払いの能力があるところはそれぞれの当局からお支払いになられて、お支払いの能力のないところはそれではどうするか、これは別個考えましょうということでは私はそれはちょっと納得はできぬ。少なくともお勤め先がその時点におきまして非常にりっぱにやっていけるような環境にあるお仕事である場合には、仲裁実施もきわめて円滑にいく。そして、非常に残念なことながら、国鉄のように長い間赤字に苦しんでおられるそういったところにお勤めの、同じお働きの皆様方の場合には残念ながら金がないから差し上げられませんということでは、少なくともそれぞれのお仕事に一生懸命になっておられまする方々の労働といいまするものの価値、これはちっとも変わってないわけでございますから、そういった非常に不公平な判定をされるということでは、私の務めであります労使の慣行を良好に保っていく、労働というものの価値を十二分に尊重していくという立場は貫けませんから、私といたしましてはさようなわけにはまいらぬ。  仲裁裁定といいまするものは、その経営がよくても悪くても、ともかくこの裁定といいまするものを実施をしてもらいたいということでございまして、それが財源問題と絡みまして、実施可能であるとかないとかという問題がそこに絡みますものでございますから、これは政府立場において決められる問題ではありませんと。したがいまして、一括をいたしまして最高権威のありまする国会の御判断にゆだねて、そうしてこれを出すべきか出すべからざるかということを御判断をいただくという議決案件としてお出しをさしていただく、こういうことになりまして、ただいまそのような措置になっておるというところでございます。
  305. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま御発言の中に全農林というお言葉がございましたが、これは一組合の名前でございまして、恐らく林野という間違いであろうと思います。
  306. 藤尾正行

    国務大臣(藤尾正行君) 林野でございます。そこのところは間違いでございますから御訂正願います。
  307. 柄谷道一

    柄谷道一君 全農林と言われると、こちらも日林労と言わなければなりません。  そこで、仲裁裁定を所管いたしました公労委の会長の意見措置というものは、いま明らかになったところでございます。  私は、公労委のそうした意思というものが今日まで無視されて、政府与党国会対策と絡めて対処しておるということについては、はなはだ遺憾と言わざるを得ません。しかし一方、かつて六月二日の与野党国対委員長会談で、公務員三法が成立すれば仲裁裁定実施するという意向を与党国対委員長が述べられたという事実は打ち消せるものではないと、こう思うのです。また、当時と状況が特に変わったと思われる筋もございません。さらに、こうしたものを受けて、来る十月十九日には再度仲裁裁定実施に関する与野党国対委員長会談が持たれると承知をいたしております。  これは国会内の動きでございますけれども、労働大臣としてこうした国会の動きを踏まえて、ただいま労働大臣の言われましたのはまさに正論でございます。その正論を貫き、仲裁裁定の早期かつ完全な実施を図ることが労働大臣に課せられている私は重要な責任である、このように思います。大臣のせっかくのなお一層の御健闘をここで期待いたしたいわけでございますが、がんばってくれますな。
  308. 藤尾正行

    国務大臣(藤尾正行君) 私ががんばるとかがんばらぬとかということではないんでございまして、先ほども申し上げましたように、この問題はいま国会の御議決をちょうだいをするということになっておりまして、それがいろいろなお金の件が絡んでおるとか絡んでないとか、説はいろいろございますけれども、そういうこととは別に国会の中で国会としての御判断をいただくわけでございますから、国会がどのような御判断になられるにいたしましても、その御判断がつくまでは、私は一労働大臣といたしまして、私の所見はこうであるということだけは、私のお会いをさしていただくあらゆる方面に同じことを申し上げ続けていくということでございます。
  309. 柄谷道一

    柄谷道一君 いままでの労働大臣とのやりとりを通じまして、私は大臣のお考えも十分わかりました。国会内の動きも私なりに承知いたしております、したがって、これは私の判断でございますけれども退職手当法の審議に際しては、少なくとも三公五現に関しては、その基礎額のあり方が明確になった上での審議に入れるものだと、こう確信をいたしております。前提が崩れましたら、またそのときに申し上げます。  しかし、人勧の方です。これは総理府長官。労働大臣ありがとうございました。  総理庁長官官房長官も、人事院勧告完全実施については誠意を持って努力するということは再々言われるのでございますけれども、それではいつ給与法を提案なされますかという同僚議員の質問については、現段階でその時期を明らかにすることはできない、こう答えられるわけですね。したがって、われわれ理事会の決定からすれば、二十日から退職手当法の審議に入るわけですけれども、大臣が確保されればですね。その時点ではわからないわけですね。本国会にまた給与法を出してくるという保証も与えてくれないわけです。  それでは、私は率直にお伺いするのですけれども、当委員会人事院勧告完全実施するという前提で審議を進めてほしい。万が一にもそんなことはあってはなりませんが、完全実施ということにならない場合は五十八年に官民の再洗い直しがございます。そこときに法律の補正を行うことを確認する、それだけの姿勢がなければわれわれ審議に入れないと思うんですけれども、いかがですか。
  310. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 私ども、実はこの退職手当法案の一部改正につきましては、この臨時国会まで継続審議になるということを考えておらなかったことでございまして、この問題はすでに過ぎ去った通常国会で御審議をいただいて可決をいただくと、こういうふうに実は大きな期待を持って国会の御審議お願いしておったようなことで、その事態と今日の事態とでは、少し法案提出の時期との絡まりが違うんではなかろうかと考えております。  いま先生から、人事院勧告完全実施が約束されない時点では法案審議には入れないじゃないかという御指摘でございますけれども政府といたしましては、継続案件でございますので引き続き御審議を賜ることが願わしいと考えておりますが、一方、人事院勧告実施に関しましても、私がたびたび申し上げておりますように、給与関係閣僚会議誠意を持って努力をするということで御理解を賜りたいと思います。
  311. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは委員長お願いいたしておきたいんでございますが、ここで、私の持ち時間も余りありませんので、一度理事会に人勧の取り扱い退職手当法の関連について総理府長官みずから出席して、その見解を明らかにする機会委員長として設けていただきたい、これは要望いたしておきます。  次に、これははなはだ初歩的な質問になるかもわかりませんが、仲裁裁定につきましては、公共企業体労働関係法第十六条の二項によりまして政府国会に付議し承認を求める。また、参議院先例の八六によりまして国会議決を求める例が開かれております。いわば仲裁裁定に関しましては、まず政府公共企業体予算上または資金上支出不可能か否かを判断した上で、承認を求めたり、また国会に白紙で判断をゆだねる。政府がまずその判断をする順番になっておるんですね。  ところが、人事院勧告国家公務員法第二十八条で、人事院国会――国会が上ですよ、国会及び内閣に同時に報告し、勧告することを定めているわけでございます。いわばこの趣旨から言いますと、国会議決決定というものが非常に大きく扱われているというのがこの読み取り方だと思うんですね。そこで、政府判断がつかない場合はまず人勧どおりに法案を出して、政府がそれを守れないとすればその法案審議の中で政府としての理由をわれわれ国会に述べる、それを決定するのは国会である。これが私は筋ではないかと思うんですが、間違いですか。
  312. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 先生のいま御提示になった考え方も一つのりっぱな考え方であろうと思います。政府政府としての考え方も持っておりますが、十分今後先生の御意見も研究さしていただきたいと考えております。
  313. 柄谷道一

    柄谷道一君 研究もいいですけれども、これも私、内閣委員長に理事会に出ての説明を求めておきましたんで、それまでに勉強してわれわれにお教えいただきたい。  最後に、私は退職手当の官官格差の問題について二言だけ触れておきたいと思います。  三公五現は労使間交渉によって給与体系を定め、賃金配分を行っておる。その結果、さきに指摘いたしましたように定率プラス定額方式による配分総額の問題、さらに企業の特性がこれに加わりまして、賃金体系のカーブに三公五現別に差が生じておる。これはもう資料を見れば明らかでございます。したがって、それが退職手当の基礎額であるだけに、当然退職手当の官官格差が生ずるという結果に波及するのは必然でございます。今回の、まあ審議にはまだ入っておりませんが、行政職(一)の官民格差を代表的なものとして三公五現を画一的に取り扱うということの政府の意図ですね、これを明確にしていただきたい。私はその答弁を一応頭の中に置きまして、今後の審議の中で私の意見を申し上げていきたいと思います。  これで質問を終わります。
  314. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 御指摘の点は技術的な重要な問題でございますので、人事局長から答弁をいたさせます。
  315. 山地進

    政府委員(山地進君) 退職手当の法律につきまして、これ二十八年にできた法律でございますけれども、これは退職手当という、国鉄あるいは専売、その他三公五現にあるいは国家公務員にいろいろの歴史があるわけでございますが、それらを一括いたしまして退職手当法でやるということが決まっているわけでございます。したがって、官官格差の問題というのは昔からあった問題だと私は思うわけでございまして、これは四十八年のときに二割上げたときも、同じような方式で行政職の(一)の高校卒というものを代表に選んで官民の格差というものを是正したわけでございまして、これは特別職から三公五現、一般職に至るまで全部カバーしている、先生のおっしゃるように俸給掛ける支給率という一律の方式でやっておりますから、必ずどこかで民間と合わせるということをやらないとできないわけでございまして、私どもとしては、一般職の中の半分を占める行政職の(一)の高校卒というものを代表に選んで民間と比較しているわけでございます。  個々に比較いたしますと、あるいは三公社あるいは五現業あるいは行(二)の人、そういう方々と民間の同様の方と比べると、またこれは違う差があるというのも事実だろうと思います。指定職に比べたらどうだろうか、そういうような細かい比較をいたしますと、そこにどこかででこぼこがあるわけでございます。そのでこぼこというのを、民間と比べたでこぼこあるいは官の中で比べたでこぼこ、これをどういうふうにするかということは工夫の余地はあるわけでございますけれども、俸給掛ける支給率と、一律の方式でやるということになりますとそれはなかなか是正しにくい問題であると、かように考えております。
  316. 秦豊

    ○秦豊君 最初に、中曽根行官庁長官に伺っておきたいことが二、三あります。  長官は、この夏、七月のたしか二十七日だと思いますけれども、矢次さんが主宰していらっしゃる国策研究会で行革に絡んだ講演をされたと思います。御記憶でしょうか。
  317. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 記憶しております。
  318. 秦豊

    ○秦豊君 私はそのメモをちょっとある機会に拝見しました。むしろあなたのなすった講演、矢次さんがあなたになされた励ましの言葉か、これを絡めて言いますと、行革の全体像か理念のようなものにかかわってくるわけです。つまり明治維新が第一維新だと、敗戦が第二の維新、今行革はまさに第三の維新であると、それぐらいの意気込みで行官庁は取り組んでもらいたいという意味の激励があなたに寄せられ、あなたもそれに、もとより私もその取り組みをいたしたいというふうにお答えになったわけでしょう。
  319. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そのとおりであります。
  320. 秦豊

    ○秦豊君 鈴木総理の本会議とか特別委員会のいろんな答弁をまとめての私の印象だが、大変残念なことに、鈴木総理のその答弁からは行革の全体像が必ずしも鮮明に浮かび上がってこない。こちらの感受性の問題ではないと思う。表現の方法だと思う。深さだと思う。方向だと思う。  そこで、ぼくはやっぱり行革というのは、それを中曽根長官に伺いたいんだが、やはり明治藩閥政権からたまりたまった官治中央集権型行政システム、しかも過度な、そのシステムと慣行と慣例がすべて今日の国際化あるいは現代的な時代の趨勢、これにかみ合わなくなった、対応できなくなった。だから、御破算にしてすべてを見直そうという広がりと深さを持つべき大仕事だと私は思っているんです。つまり新しい国家像、国家目標の設定、つまり全国家機構の洗い直しというくらいの広がりと分厚さがあってしかるべきである。単に中央省庁の統廃合とか中央と地方の事務の配分等々にとどまっては断じてならないというのが私のとらえ方ですけれども長官どうでしょうか。
  321. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行革の理念はまさにそういう全体的俯瞰のもとに行われるべきであると思いまして、同感でございますし、大体同様の趣旨のことを衆議院の本会議の答弁でいたしております。
  322. 秦豊

    ○秦豊君 そこで中曽根長官、しかしなおかつ現在進められようとしている、また進められている行革の歩幅とか方向を見ると、へたをするとまた矮小化の袋小路にはまり込んでしまうという懸念がむしろ強まっているんです。しかも、ほかならぬあなたが長官をされているんですから断じてそうあってほしくないという期待を込めて言っているんだけれども、やはり私は、藩閥政権以来を見直すとなると、その対極にあるものをイメージしなければいけない。つまり、官治中央集権型に対しては、分権あるいは参加あるいは国際化という村型の行政システムから都市型へという転換が私は当然あると思うんだが、その点もどうでしょうか。
  323. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 衆議院でもちょっと似たことを申し上げておりまして、いままで日本の行政の体系を見ておりますと、明治以来欧米に追いつこうと、いわゆるキャッチアップという考え方で進んできて、そのために混合経済型の社会体系を維持してきている。そして、それにはやはり官治的な、中央集権的な、そして指導監督、規制的な方向で国の歩みを進めてきて、それはまた成功もしたと思う。しかし、いまやこの段階になると、いわゆる追いつきは終わった。終わったけれども、しかし混合経済的要素は日本には依然としてある。社会資本の欠如も外国と比べてみたら歴然とあるんである。しかし終戦以来、特に高度経済成長以来余りにも肥大化して浪費もはなはだしくなってきた。したがって、ここでメスを入れて思い切ってオーバーホールをする段階に来て、しかも新しい時代が音を立てて近づきつつある。それは高齢化社会であり、あるいは情報化社会であり、あるいは国際化の時代である。それに対応する日本の政策やら体系を打ち立てなければならぬときに来ておる。まさにそういう過去と未来の接点に立ってこの行革は行われるべきであると思う。  そういう面からすると、日本は監督とか指導とかという形で中央集権的にやってきたために、ややもすれば官庁の性格が監督官庁という性格になって政策官庁でない。いまや政策官庁に脱皮すべきときでありましょう。あるいは、いわゆる許可認可というようなものはできるだけ民間にも開放して、自由なはつらつたる活力を回復する段階に来ていると思う。また、いわゆる指揮監督という関係は縦割り行政になっている。この縦割り行政を直すというのも、指揮監督という傾向を直すことから来ている。あるいは許可認可というものを外すことによって地方に対して権限が移譲されるということもあるし、支分部局がこれで整理されるということも出てくるし、そういう意味から、性格的に見れば中央集権型から地方分権型へ、あるいは許可認可型から政策型へ、あるいは国内オンリー型から国際型へと、そういう方向に行くべきときに来ていると思う。それと同時に、いま新しい情報化や高齢化社会に適応した新しい準備をしてやらなければならない、そういうふうに考えております。
  324. 秦豊

    ○秦豊君 共感できる部門がほとんどだと思います。  やっぱり言われたように国と広域自治体、基礎自治体があって、藩閥政権以来できたのは巨大なピラミッドだと。巨大過ぎると。ではどうするかという発想。やっぱりそれを委任事務で縛り上げて、抜き差しならないから、いま長官の言われたような弊害が起こっている。ならば、やっぱり下から行政のシステムを組みかえるという発想がないと断じて成功しない、むしろ第一臨調の矮小化に終わってしまうという懸念を私も持っています。ただ、こういう理念論はきょうはそこまでにしておきたいと思う。  そこで、同じ七月二十七日のその国策研究会で中曽根長官がこういうことをおっしゃったのではないか。つまり、かつての防衛庁長官の体験を踏まえて、防衛体系全般をいまや世界戦略の面からもう一度洗い直しをしてみて、そこから日本防衛庁や自衛隊のあり方を総点検する。その総点検の上に立って兵器とか人員を再編成し、情報関係を整えるとか、あるいは国産技術を整備するなど、きちんとした体系を整備する時期ではあるまいかと、こういうことも述べられたやに伺っております。  そこで、これは行管庁長官というより国務大臣、なおかつある時期の防衛庁長官を体験された中曽根さんにあえて聞くんだけれども、やはりいま与党の方にはいろんな動きが顕在化している、時の勢いのように。大コーラスも起こっている、ワシントン、東京。そういう中で、やはりぼくは趨勢としては防衛計画の大綱の見直しとか、これはもう何万回も言われている古典的な議論だが、あるいはGNPの一%論とかいうものがたまたま焦点になっている、二つの。ところが、長官のこの論理の展開、展開された論理を敷衍すると、当然GNP論とか計画大綱なんというものも含めて総点検し、見直すべき時期に逢着している、到来していると、こういう認識なんでしょうか。
  325. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) せっかくの御質問でございますが、私がそういうことを私的に言ったことは事実であり、研究会における私の所見開陳でございますが、目下私は行管庁長官として行政改革に真剣に取り組んでおりまして、とてもそこまで考えを及ぼして公に発言する余裕はございませんので、何とぞお許しを願いたいと思います。
  326. 秦豊

    ○秦豊君 あなたらしくもないと思うが、きょうはいいです。あなたをきょうは攻める場ではない。あなたと一応行革の理念論をちょっとやっておきたかっただけ。機会を改めましょう。きょうはよろしいですよ、どうぞ。  中山総務長官、これは御記憶であろうと思いますが、去る六月二日、当委員会であります、質問の終了直後に私が幾つかの条件を付して、たとえば自衛隊は役に立っていると思いますか、マル・バツのような単純な世論調査ではなくて、サンプル数を多くし、選択肢を多くし、情報量を多くして、いま新しい段階を迎えている日米共同作戦、有事法制、リムパック、ライシャワー発言以後のいわゆるこのトランジット問題等々、さらに防衛計画の大綱、シーレーン、そういうものを含めて世論を正確に把握するためには大規模な思い切った世論調査をしていただきたいと言ったら、さすがに感度の鋭敏なあなたらしい受けとめ方をされてどうやら準備が進んでいるようであります。ところが、この質問はたしか六月二日で、いま十月十五日ですから、その間のその進み方の程度、どこまで準備がなされたか、いつごろ実施をするのか、やるとすればつまみ食いではなくて、私の要望を生かした、趣旨を生かしたどういう項目で、まず柱ですね、それからどういうふうに調査をしようとするのか、これを含めて御答弁を願いたい。
  327. 中山太郎

    国務大臣中山太郎君) 確かに先生の御質問に対して、さきの内閣委員会で、先生のおっしゃる御趣旨を体して実施をいたしたい、このようにお約束をし、お答え申し上げたことは十分記憶いたしております、その中でも申し上げておりますように、防衛問題等につきましては、防衛庁あるいは外務省とかいろいろ関係省庁がございますので、先生とお約束をしました後、関係省庁と事務当局で鋭意ただいま連絡をいたしておる最中でございまして、これをいつごろ実施いたすかということにつきましては、なるべく早くいたしたいと考えておりまして、遅くとも年内には実施をいたすというめどを立てております。  なお、細部につきましては、広報室長が参っておりますので、広報室長からお答えをさせていただきます。
  328. 小野佐千夫

    政府委員小野佐千夫君) いま総務長官からお話がございましたが、現在調査を考えております事項でございますが、国際情勢それから外交、経済協力、資源エネルギー、それから防衛問題等について調査する予定で、いま関係省庁と協議をしている最中でございます。
  329. 秦豊

    ○秦豊君 広報室長、ここは公開の委員会だから遠慮される必要は毛頭ない。防衛の下にまだあるでしょう、柱が、項目が。おたくが部内で練っている、たとえば軍縮とか有事法制とか核問題とか、私もまさにそのことを要望しているわけだから。それはどうして外れているんですか。
  330. 小野佐千夫

    政府委員小野佐千夫君) 先生いま御指摘の軍縮につきましては、これも調査項目として検討中でございます。
  331. 秦豊

    ○秦豊君 いや、まとめて言ってください、小出しにしないで。有事法制はどうなんですか。
  332. 小野佐千夫

    政府委員小野佐千夫君) 有事法制につきましても検討中でございます。
  333. 秦豊

    ○秦豊君 核はどうなりましたか。
  334. 小野佐千夫

    政府委員小野佐千夫君) 核の問題につきましては、検討をいたしました結果、これは政府としては非核三原則を今後とも堅持するという方針でございますので、今回の調査ではこれは調査しないということで、いまそういう考えでございます。
  335. 秦豊

    ○秦豊君 これは非核三原則堅持だから調査項目から外した、オミットしたじゃなくて、やはり戦域核の持ち込み問題あるいはこれから起こるであろうさまざまな日米軍事関係の中で、政府部内の意見が集約し切れぬから、刺激が強いからこの際外そうというふうな存念ではないかとも思うけれども、有事法制について民意を聞くなんというのは政府としては初めてですからね。大変これは気がかりでもあり、どういう設問の仕方をされます、広報室長、有事法制については。
  336. 小野佐千夫

    政府委員小野佐千夫君) 質問内容といたしましては、有事法制を必要と考えているかどうか、また、それぞれについてその理由を聞く予定でございます。
  337. 秦豊

    ○秦豊君 これだけやっていると時間になってしまいますから、なお、なぜ核の項目がいまや外されようとしているのかについては、まだどうも納得のいかぬもやっとしたものしか残らないんだけれども、これ以上聞いても室長からは出ないでしょう。  とにかく総務長官、要望としては私はつまみ食いはしてほしくない。民意を正確に把握する。どうか先ほどの学術会議改革案における中山発言のごとく、明快にきっぱりとした世論調査を行っていただきたい。なお進み方、年内と言われたけれども、設問の仕方についてはその都度やはり当該委員会でもチェックをしていきたいと思っていますので、よろしく。  防衛庁に伺っておきたいんですが、和田装備局長にまず伺います。  和田さんのさまざまな発言と一部の報道を総合してみると、日米間の技術協力問題、これは非常に情報がちらついているわりにシルエットが浮かんでこない。結局あいまいである、ぼうっとしている。装備局長ね、アメリカが日本に求めているのは、果たしていまの一部の報道にちらついていたようなVHSIC、つまり高速演算素子あるいは低損失光ファイバー、長距離の、こういうふうなものははっきりと組み込まれているのか。それは公式にはとてもなかっただろうけれども、非公式には日本側に要請がすでに来ているのか。どうなんです。
  338. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 防衛庁とアメリカの国防総省との話し合いにおきましては、一般的にアメリカ側は、これまで非常にアメリカから日本に技術を出しておりますが、日本からはほとんどお返しがないということについて、こういうことでは困るというお話がございまして、したがってこれからもっと総合的な防衛技術を交流したいというお話がございました。しかしながら、どういった技術を日本に対して出してくれというようなことにつきましては、一切お話はございません。技術について触れた点が全くなかったかと言えばそういうことではございませんで、確かに触れた点はございますけれども……
  339. 秦豊

    ○秦豊君 その点を言ってください。
  340. 和田裕

    政府委員(和田裕君) はい。それは、いわば日本の技術水準が非常に高いということとの関連で、たとえばエレクトロニクスとか、それからオプティクス、これは光工学と申しますか、光工学とかの例を挙げまして、それで話したことはございますけれども、でき上がった技術そのものを日本からアメリカに出してほしい、そういう意味合いでそういった技術の名前が出てきたという事実は一切ございません。
  341. 秦豊

    ○秦豊君 これは第三回の日米定期協議が十二月なのか十一月末なのか、それも伺いますよ、後で明らかにしてください。一応それがメルクマールになるわけでしょう、タイムミリットというか、中間的な。ゼロ回答はもう三回目できないんだから、そうでしょう。外務省は純軍事技術であっても対米提供は可能であるというふうな非公式な意見をまとめつつある。通産がちょっと抵抗している。防衛庁はこの外務省の見解は全く異存がないわけでしょう。どうなんですか。
  342. 和田裕

    政府委員(和田裕君) この技術の相互交流と関係のある事項といたしまして、私はアメリカに対して申し上げましたのは、日本には武器輸出三原則というものがあるということにつきまして、これは前からも説明をしておりますが、この間デラウアー副長官とお会いしたときも、武器輸出三原則、統一見解、それから国会決議というものがあるんだということについてはかなり詳しく御説明いたしました。それとまた同時に、日本とアメリカとの間には条約等の関係もあるので、こういったことが関係があるかもしれないというようなことを含めまして、この七月十日の閣議で、大村長官がアメリカから帰られたときに、そういったことにつきまして……
  343. 秦豊

    ○秦豊君 それはわかっている。
  344. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 関係省庁との間でちゃんとしていただきたいということで了承を得たということを申し上げました。当面、私が出るまでの間には三省庁で何らの結論が出てなかったということを申し上げたわけでございますが、その後の情勢につきましては、この間総理大臣が本会議で申し上げましたし、大村長官も申し上げたとおり、政府部内で検討を続けているという段階でございまして、それ以上のことをつけ加えて申し上げる点はございません。
  345. 秦豊

    ○秦豊君 いま外務省はこういうことを考えているらしい。輸出貿易管理令――貿管令ね、これはずいぶん分厚いものだけれども、この中の一九七から二〇五の項目は銃砲、爆発物、火薬類、爆薬安定剤、軍用車両一軍用船舶、軍用航空機とそのパーツ、防潜網、装甲板、その他細菌化学兵器等々が網羅されていて、こういうものであっても日米間の特殊な同盟関係にかんがみて提供の可能性があるのではないかという意味の検討に入っていると伝えられているんだが、その限りにおいて和田さんたちは異論はないんだろうと聞いているんです。経過を聞いているんじゃない。重ねて。
  346. 和田裕

    政府委員(和田裕君) いま政府部内で検討中でございますので、防衛庁がどうかとか外務省がどうかとかいうことを申し上げるのはどうも適当ではないんじゃないか、総理が当面政府部内として検討しているということでございますので、まとまった段階でお答えするということになるだろうというふうに私は承知しております。
  347. 秦豊

    ○秦豊君 装備局長ね、そういう答弁だと過去形になるわけだ。私が聞きたいのは、第三回の日米の装備技術定期協議というのは一、二回を積み重ねて三回に当然至るんだから、いま問題になっているようなことについては、今後の方向のために一応中間的な結論をアメリカ側は当然期待すると思う。年を越してもいいんだじゃなくて、一応これはメルクマールになるわけでしょう。
  348. 和田裕

    政府委員(和田裕君) メルクマールになるかどうかという御質問なんでございますが、まず日米間の技術交流そのものが直に武器輸出三原則と結びつくかっこうでしかできないかどうかという点につきましては、私どもまだ十分検討は進んでおりません。むしろ、これまでもある意味では日米間で技術交流をやっておったわけでございますので、武器輸出三原則と結びつかないかっこうでもできる面はかなりあるというふうに考えられる点もございますので、必ず第三回の装備技術定期協議、これはまだいつやるか決まっておりませんけれども、それがメルクマールにならなきゃいかぬということでもないような気もいたしております。
  349. 秦豊

    ○秦豊君 では、あなたはなかなかそれ答えないだろうと思うから、私がいまから挙げる項目について、アメリカ側は以下述べる項目については関心と興味を持っているのかという点についてだけ、イエスとノーだけでいいから答えてください。  つまり、われわれが持っている赤外線探知装置、七四式の油圧懸架装置、レーザー測遠機のノーハウ、それから東芝がいま開発している地対空携行ミサイルの誘導装置つまり電荷結合素子CCD、あとはレーザー関係等についてはアメリカ政府は関心と興味を示しているのか、どうなんです。
  350. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 米側が関心と興味を示しているかどうかというのは、どう申し上げたらよろしいんでございましょうか……
  351. 秦豊

    ○秦豊君 率直に言ってくれればいい。
  352. 和田裕

    政府委員(和田裕君) まず、公式には一切――公式にというか、私が聞いている限りでは、品目名を挙げてこういうものについて興味あると言ったことは一切ございません。それはさきに申し上げたとおりでございます。  それからもう一つ、技術情報、技術資料等の関係で言いますと、先生御存じのとおり、資料交換取極というものができておりまして、そこの中で技術情報等を出しておりますが、これについては先生もよく御存じのとおり、いま言ったような個別の技術につきまして、内容につきまして一切申し上げられないということになっておりますので、申しわけございませんが、ちょっと申し上げられません。
  353. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁長官ね、ここに通産大臣も官房長官もいないし、だれもいませんよ。ただ、あえて言えば、去年の堀田ハガネ事件からたった一年弱なんだが、日米間の軍事技術協力はここまで来ようとしている。まだぼわっとしていますよ、方向はまさに油断ならないわけだ、そこまで来ている。こういう段階について、ぼくたちはやっぱり警戒の目を緩めるわけにはいかない。とめどないです、あなた方のやろうとすることは。その都度、委員会でチェックしていかなきゃならぬと思っている。  これ以上あなたに聞いても何にも出ないと思うからやめますが、防衛庁長官、ちょっとこれ大事な点だからとてもあと十何分じゃおさまりませんが、今後ずっと継続的にあなたに聞かねばならぬ問題として、あなたはもしかしたら来月留任かもしれないんだし、そうした意味を含めて、防衛研究というのがぐわっと出ましたわな。この防衛研究それ自体がいわゆる統合マインドを促進する、助長する、強化するというねらいがあることは事実なんだけれども、いま現実には統合部隊というのはどこにもない、そうでしょう。統幕の機能の中に統合訓練計画とかそういうものは入っている、統合防衛計画は入っているけれども、現実に統合部隊はない。相変わらず陸海空ばらばらである、防衛構想ももちろんちぐはぐと。詳しく繰り返すまでもないと思う。  それで、長官の頭の中では、統合部隊というのは防衛出動不令までは編成をしなくてもいいんだと、有事防衛出動下令即統合部隊の編成、これでりっぱに運用してみせるというふうなお考えなのか、あるいなし得れば平時から統合部隊というのは編成をしておいて、特定のエリアに限ってもいいから、そして常時訓練を積み重ねて有事に備えるという方が望ましいのか、その点だけまず伺っておきます。
  354. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 自衛隊法におきましては、自衛隊法第二十二条第三項に言ういわゆる統合部隊に対するものを除きまして、部隊に対する防衛庁長官の指揮監督は各幕僚長を通じて行われ、長官の命令は各幕僚長が執行することになっておりますので、このたてまえに基づきまして各幕間の円滑な連絡等が行われるように現在配意しているところでございます。
  355. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁長官、これは檜町の大命題になると思うんだけれども、一朝一夕では片がつかない、この問題、いまから申し上げる問題も。つまり、ぼくがいつも注意しているのは、この三つの自衛隊の統合運用を促進するためには、それにしては現在の統幕議長は横並び一線で抜きん出た権限も持っていなければ強さもない、だから統幕議長の権限を強化すべきであるというのはユニホーム組の悲願だ、これは。そうでしょう。そういう方向というものについて、たとえば最近では日米共同作戦を円滑に運用するためにもそれは必要であるという声がまたぞろ強まりつつある。その趨勢に対して長官はどうとらえていらっしゃるか。お考えか。
  356. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 現在の統幕議長の権限が余り多くない、確かに御指摘のとおりでございます。また、部内の研究、防衛研究におきましても一つの考え方も出されているわけでございますが、またこれにつきましては違う意見もある。従来どおり関係の各幕僚長が行う必要があると、こういう意見もございまして、双方の観点から意見があるということで、私としては慎重に検討してまいらにゃいかぬと、さように考えているわけでございます。
  357. 秦豊

    ○秦豊君 防衛局長、この軍政、軍令というのはもう旧軍以来のこれは大きな流れだ。いまは、たとえば部隊に対する防衛庁長官の基本的な指揮命令は、たとえば基本的なというのは、部隊の展開とか行動とか編成とか含めて、この大綱については統幕議長を通じて各幕の長に伝達をされ、各幕僚長が執行をすると。これを制度として、運用として認めるとどうなるかというと、それは軍令については内局から離れて軍令についての一元システムが完成すると、こういう方向になるわけだ。もちろん制服はそれを熱望しているだろう。その場合、いまは防衛局長というのは二重性があって、そういうものにも乗っかっているわけだ、あなたの権限は。しかし、それを外して、つけもののおもしはうっとうしいから外して、そしてぼくの言った軍令の一元化システムをつくろうというのは、これはユニホームとしては一種のユニホームの常識かもしれないけれども、そうなると現行のシビリアンコントロール体制は基本的に大きな圧力を受ける。こういう大きな方向について防衛局長と防衛庁長官はどういう認識なのか。
  358. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 旧軍の言っておった意味での軍令と軍政との分割といいますか、分かれは、現在の自衛隊でとってないことは先生承知のとおりでございます。内局、それから各ユニホーム、幕僚長も軍政にも軍令にもある分野で関与しております。その基本的な構成が、統幕議長の場合は指揮命令の基本に関する事項は統幕議長だという規定がございます反面、行動の基本に関しては内局である参事官の方にあると、防衛局長の方にあるというふうな現在のたてまえになっておりまして、そのたてまえを現在のところわれわれは変える必要はないというふうに考えております。そういう意味で、旧軍的な意味での軍令と軍政を分けて、片一方がユニホームであり、片一方がシビリアンであるというような考え方はとっておりません。
  359. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) 先ほども申し上げましたように、いろいろな意見があるわけでございますが、先生のいま言われたような方向で進めることにつきましては、シビリアンコントロールとの関係が深いので、私としましてはそういう方向の進め方につきましては慎重でなければならないという考え方を持っております。
  360. 秦豊

    ○秦豊君 それならば防衛局長、いま統幕の事務局のスタッフが配置されておりますよね、配属されている。有事の際にもあのスタッフのこの現状でいいのか、あるいはそうではなくて、有事になれば統合幕僚監部というふうなものは当然あるべき機構なのか。その点についてはどうですか。
  361. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 機構的に現在の事務局スタッフで十分かどうかということにつきましては――機構的にといいますか、陣容的にそれはやはり強化していかなきゃいかぬだろうと思いますが、組織的、機構的な意味でいまおっしゃったようなたとえば統合幕僚監部というようなものをつくるかということになりますと、これは現在の各幕僚監部との関係、非常に複雑微妙な問題がございまして、容易に決せられる問題でございません。現在の時点で、われわれは御指摘のような統合幕僚監部といったような事務機構をつくることは考えておりません。
  362. 秦豊

    ○秦豊君 あと二年たつと自衛隊が変わるわけだ、象徴的に。中央指揮所という上物ができる。あれは建物だ。しかし建物がシンポライズするものは自衛隊のあり方だ。骨幹回線がとっくにできているし、装備は強化に向かう。その後二年だったころに、ぼくはやっぱり統幕議長のあり方や等々を含めて三軍の編成はいかにあるべきかとか、師団単位ではなくて戦闘集団、いわゆる連隊規模の戦闘団編成に切りかえるべきだとか、あるいは装備全体のバランスの優先度、いろいろ問題になってくると思うが、その方向を収数していけば、やっぱり自衛隊法と防衛庁設置法を一体このままでいいのか、改めねばならないのかというぎりぎりのところにあなた方は必ず逢着する。収斂していけば必ず防衛二法に突き当たる。ぼくはもう数年来一貫してそういう視点で見ているけれども、もちろんあなた方はそれをこうかつにも現行法制の拡大解釈、憲法と同じだ、改める必要なんかも頭ない、一番抵抗の少ない形、ややこしかったら長官の特命事項で日米共同作戦研究でも何でもやれと、実にこうかつな奸智でもってくぐり抜けていく。やがてそれが限界に来れば二法の改定に必ず突き当たる。そう思うんだが、ぼくの基本的な認識はあなたはどうです。
  363. 大村襄治

    国務大臣(大村襄治君) いろいろ御高見をお聞かせくださいまして大変ありがたく思っておりますが、それらの点も今後の課題として勉強してまいりたいと思っております。
  364. 秦豊

    ○秦豊君 塩田防衛局長、時間のある限りこの問題をちょっと出しておきたいが、昭和五十五年の十一月二十七日、当委員会で私のデータを挙げたシーレーン防衛問題の質問に対してあなたは、有事必要量はおよそ二億トン、南東、南西両航路はそれぞれ月二往復、四個護衛隊群で八往復、守れるのは一回が五十隻で計四百隻、タンカーの平均トン数十二万トン、貨物船が三万トン強で試算をすると二億トン近くが入ってくる計算に一応はなる。ここで問題なのは、有事に際して国民生活を保つために、ミニマムに保つために、四個護衛隊群をふやさなければ全部、つまり現有勢力を全部ぶち込まなければ民族生存の最低線も確保できないという計算にこれはなる。つい先日も衆議院で何か同僚議員がその種類のことを問いならしいが、データは余り引用していなかったようだが、そうなるわけですよ。  そうすると、現状ではシーレーン、シーレーンとあなた方盛んに躍起になっておるけれども、同僚議員も聞いたけれども、全自衛隊全部投入しても二億トンの輸入を守ることができるかできないかについても疑念が多い。つまり、これは損害率をゼロに試算しているという全く非現実的、ロマンチックな、実態的でない試算になっている。こんなものは防衛の専門家を呼号するあなた方のORにもならない。見積もりも形成しない。そうなると、内航二本、北海道とか太平洋岸、これは全然ネグるわけでしょう。無視するわけでしょう。その他重要港湾の警備も全部無視する。つまり、現有四個隊群で即応態勢にあるのはわずかに一個隊、ところが二億トンやるためには四個隊群をぶち込む。こうなると、私はやっぱり国会ではこういう論議をもっとやるべきだと思うんだが、これはかってあなた方が抱いたたとえば八八艦隊とか、それから海幕はたしか七個護衛隊群論を強固に練った時期もある。  そうすると、アメリカがハワイで要求したとか要請したとか何かいろいろ言っているけれども、いやあれは報道機関が先走りしています、書き得でそれが走っているだけです、何も聞いていませんなんて言っているが、あのアメリカが要求したと言われている隻数、たとえばDDGを含めて七十隻、その他航空機等その他を含めて、対潜機を含めて、これはかつて日本側の海幕を中心にしてやったソ連の脅威に対する所要防衛力、つまり昭和五十一年の防衛計画の大綱以前に檜町を走った、ちらついたあの水準にまさに近似するわけで、まさに至近弾だ、弾で言えば、なかなかいい線をいっているんじゃないですか。あながち荒唐無稽な数字をアメリカが強要しているんじゃなくて、まさにあうんの呼吸だ、向田邦子じゃないけれどね、これは。非常にいい線を見ているのではないかと私は思う。  そこで、塩田防衛局長、国会のいままでシーレーンの防衛論議でも、あなた方がいつも踏まえているのは昭和五十一年の例の海幕のあの古典的な資料だ。その後そういう解析、分析はあるのか。あるいは南東、南西両航路についての月間、年間の航行量、国籍別、積み荷別の把握ぐらいはしているんでしょうねということを含めて、一体このシーレーンをミニマムに防衛し得るための護衛隊群の戦力と現状とを比べてどれぐらい戦力は欠落をしているのか、どれぐらいは望ましいのか、その辺を、幾つか並べたけれどもそれを聞いておきたい。  それからもう一つは、いわゆる海幕のああいう数字なんていうのは非常にラフですよ。その場合にぼくが聞きたいのは、ソビエト太平洋艦隊の中の、SS型を含めた、つまりウラジオを基地としている、ペトロパブロフスクを基地にしているいわゆるソ連太平洋艦隊の海上兵力、あるいは沿海州に展開をしている航空兵力、これを含め、三軍を含めて、シーレーンに対するソ連の軍事力、直接的な軍事力、脅威、これをどう積算しているのか、それを含めてあなたに聞いておきたい。その答弁が終われば大体時間になると思う。はみ出せば次の回にまたやりましょう。
  365. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 余りたくさんいろいろおっしゃったので抜けるかもわかりませんけれども、まず、この前確かに御指摘のような答弁をいたしました。しかし、そのときにも十分お断りをしたつもりですが、もちろん数字もラフでございます。そのときも私言いましたが、国民の食糧一つ考えても、どういう食糧が最低要るんだというようなことを海幕が本当に専門的にやっておるわけじゃございませんし、エネルギーにしましても鉄鉱石にしましても、どれだけ購入したらその後の産業連関がどうなっていくんだというようなことについての専門家でもございません。そういう意味で、ただいまの政府の中でそれを研究しているところがございませんものですから海幕として一応のめどをつけたということをまず前提に申し上げました。  それから、たとえばいま損害がないという前提だとおっしゃいましたが、損害がないところか、四つの護衛隊群が完全にフルに動くという前提のお話をしております。実際の海上兵力というものは必ず三分の一ないし四分の一が動いておるのがこれは常識でございます。そういう点からいきましても、私の説明は全く現実的な説明ではないわけです。それは承知の上で申し上げております。ただ数字の上で計算上こうなる、二億トンの護衛がこうなるということを申し上げたつもりでありますから、そういう前提に立ってあの話はお聞きいただきたいと、いまでもそう思っております。  その後、それじゃずっとそういった資料等についてのフォローアップなり何なりしておるのかということでございますが、そもそもがそういうスタートで研究したものでございますから、精密にそれをずっと後をやるということは実際にはしておりません。しておりませんが、五十一年当時の資料である四十八年当時の国の輸入量、そういったもの、約六億トンというのはその後も大体において変わっておりません。原油にしましても鉄鉱石にしましても、木材、食糧、飼料、そういったものにしましても、シェアもほとんど変わっておりません。現在やっぱり約六億トンであり、それぞれのシェアも大体同じようなことで来ておりますから、そういう意味では、あのときの数字が一応数字としてはいまでも申し上げられることができるのではないかというふうに思っております。  それから、現在それでは海上自衛隊の方で、南東航路、南西航路についての船の航行状況あるいはその積み荷の状況を把握しているのかということでございますが、これは、南東航路、南西航路というものがそもそももちろん定義があるわけでもございませんし、それから平時にそういう航路があるわけでもございません。それはもう御承知のとおりでございまして、ただ戦時になった場合に、護衛をするということになった場合に、ある程度航路を指定して護衛せざるを得ないだろうという意味で南東航路、南西航路ということを申し上げているので、平時にそういう航路があるわけでないことは申し上げるまでもない。したがいまして、現在の時点で私どもわかりますことは、運輸省等の資料によりまして、年間いわゆるマラッカ海峡といいますか、南方、フィリピン方面からどの程度の船が来ておると、あるいは大洋州、北米、中米の方からどの程度の船が来ておる、あるいは反対側のソ連、韓国、北鮮、中国方面からどういった程度の船が来ておる、こういうふうなことはもちろん把握しておりますが、それは年間どれだけのものが来ておるという運輸省等の資料によって把握をしておるということでございまして、それ以上、別に航路ごとにどういうものが月間どの程度動いておるという分析をしておるわけではございません。  それから最後に、ソ連の太平洋艦隊の例を挙げられまして、具体的な脅威をどう見ておるかということでございますが、御指摘のように、ソ連の太平洋艦隊の動きというのは私ども一様に関心があるわけでございますけれども、それが具体的にいわゆるわが国防衛にとっての脅威、端的に言いますと対日指向兵力ということになりますが、もちろんこれは、私どもはソ連を仮想敵国として言っているわけでは決してございませんが、そこをお断りして申し上げますが、対日指向兵力をどう見るかということは、それこそ最も秘密度の高いものでございまして、その点の公表につきましては差し控えさせていただきたいと思います。
  366. 秦豊

    ○秦豊君 最低戦力言わなかったね。護衛するためのミニマムな海上兵力言わなかったね、ラフな試算にせよ。
  367. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 一つ落としておりましたが、先ほど先生が五十一年の防衛計画の大綱の前に海幕にいろんな意見があって、それが今度のアメリカ側の言っている数字と非常にずばり似ているじゃないかという御指摘ございましたが、私の承知する限り、防衛計画の大綱をつくる以前の段階で五個護衛隊群がほしいという海幕の意見があったことは承知しております。しかし、そのことと今度のアメリカ側の言っていることとどの程度関連があるか、私は関連なくて、現在の時点におけるアメリカの意見としてアメリカが言っているんだろうと思いますが、その辺は私どもにもわかりません。  それで、いま最初に私が言いましたように、例のシーレーンの防衛の話が、損害もないし実際の可動率を無視した議論であるから、実際上はどれだけのものがあればいいのかということにつきましては、これはちょっとにわかにどれだけあればということをお答えしにくいのですが、私どもはそういうことではなくて、現在のところ防衛計画の大綱の線に早く到達するという整備目標に向かって努力しておるということで御理解をいただきたいと思います。
  368. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時十三分散会      ―――――・―――――