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1981-11-13 第95回国会 参議院 安全保障特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十一月十三日(金曜日)    午前十時三十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加藤 武徳君     理 事                 衛藤征士郎君                 堀江 正夫君                 大木 正吾君                 渋谷 邦彦君                 上田耕一郎君     委 員                 板垣  正君                 岩本 政光君                 江島  淳君                 大島 友治君                 梶原  清君                 源田  実君                 戸塚 進也君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 瀬谷 英行君                 寺田 熊雄君                 矢田部 理君                 桑名 義治君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  大村 襄治君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長内閣総  石川  周君        理大臣官房審議        室長        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   石崎  昭君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁長官官房        長        夏目 晴雄君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁人事教育        局長       佐々 淳行君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  和田  裕君        防衛施設庁長官  吉野  実君        防衛施設庁施設        部長       伊藤 参午君        国土庁長官官房        審議官      川俣 芳郎君        外務大臣官房調        査企画部長    秋山 光路君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省欧亜局長  武藤 利昭君        外務省条約局長  栗山 尚一君    説明員        外務省北米局審        議官       松田 慶文君        通商産業省貿易        局為替金融課長  広海 正光君        消防庁総務課長  清水 英明君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国の安全保障に関する調査  (防衛費に関する件)  (市民防衛に関する件)  (日米安全保障協議委員会極東有事研究に関  する件)  (機密保護法に関する件)  (日米共同演習に伴う漁業被害等に関する件)  (防衛戦略問題に関する件)  (日米安全保障体制に関する件)  (防衛力整備に関する件)  (対米武器技術輸出問題に関する件)  (戦域核問題に関する件)  (日米防衛協力研究問題に関する件)  (対韓援助安全保障問題に関する件) ○派遣委員の報告に関する件     —————————————
  2. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまから安全保障特別委員会を開会いたします。  国の安全保障に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  3. 堀江正夫

    堀江正夫君 私はまず最初に、五十七年度防衛庁要求予算の問題に関連しまして二つの点を御質問したいと、このように思います。  その第一は、後年度負担均等化の問題でございます。総理均等化について防衛庁検討指示されておるようでございますが、その総理の御指示の内容をまず承りたい、このように思います。
  4. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 五十七年度概算要求における後年度負担につきましては、従来の年割り考え方も勘案しながら取りまとめたところでございまして、これまでの経緯慣行及び契約相手方もあることからなかなかむずかしい問題でありますが、財政再建という状況下にもあり、後年度負担特定年度に集中しないようにできるだけの配慮を払う必要があると考えております。ただいま御指摘の、鈴木総理からも五十七年度概算要求における後年度負担について、財政再建下でもあるので、なだらかにいくようにいろいろな角度から検討してほしい旨の指示を受けており、いま申し上げましたように相手方もあり、なかなかむずかしい問題でありますが、今後の予算編成過程において十分検討してまいりたいと考えている次第でございます。
  5. 堀江正夫

    堀江正夫君 いまの御返事を承りますと、どうもやはりちょっとはっきりしておらないんですが、総理の基本的なお考えの中には、現在防衛庁要求をしておる事業規模、これを縮小するという考え方は、私は基本的にはないんじゃないか、こう思うんですが、その点はいかがでございますか。
  6. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 総理大臣からは、防衛力整備の進め方につきまして、防衛計画大綱水準にできるだけ早い機会に到達できるように着実に防衛努力を進めていくという基本的な方針を示されておりますので、ただいまお尋ねのようなことは私ども総理からは承っておらない次第でございます。先ほど申し上げましたように、後年度負担が今後特定年度に集中しない、なだらかにするような方法があればそれをできるだけ検討するようにと、こういうふうに承知しているわけでございます。
  7. 堀江正夫

    堀江正夫君 問題になっていますのは、そうしますと、五十七年度概算要求の後年度負担で、特に五十八年度が一兆七百億円というふうに突出しておる、こういうことに問題がしぼられるわけでございますが、突出をした原因は何でございましょうか。これをひとつお聞きしたいと思います。
  8. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいま御質問の点は、五十七年度概算要求におきます新規の装備品等の国庫債務負担行為なり、継続費なりの全体の事業規模相当金額になっておるということが、後年度の、五十八年度以降の歳出化予定額に反映しておる要素と、それからまた五十六年度以前に行いました国庫債務負担行為等予算歳出化予定額が、やはり五十八年度には若干またふえてくるというような要素と、両方あるわけでございます。
  9. 堀江正夫

    堀江正夫君 いま御返事いただきましたが、特に私はよくわかりませんけれども、どうも航空機関係が隔年ぐらいに占めるウエートが高くなっておる。ちょうどことしはそういう年度に当たったということもあるんだろうと思いますが、ことしの要求段階ではそういうことだけれども、いままでの過去の後年度負担を見ますと、大体いいかっこうで行っておるわけですね。ことしだけ、来年度突出しているというのは、いまもお話がございましたが、単年度国債分がまた入ればいいかっこうになるんじゃないかなと私は実は思うわけなんですが、それは別にしまして、いずれにせよ来年度突出分を減らす努力をしておられる。  そこで、いまも長官からお話ございましたが、事業規模を縮小しない、その達成時期も変更しない、これで均等化するためには結局年度別歳出割合考えていく以外ない。そうなってくると、相手がある、相手と相談しなければならない、そのとおりだと思いますが、現在相手との話し合いというものがどの程度進められておるのか、またそれに対してめどというものはある程度防衛庁としては立っておるのかどうか、その辺ひとつ承りたいと思います。
  10. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 御指摘年割り平準化の問題につきましては、先ほど大臣からも申し上げましたとおり、従来の経緯慣行あるいは契約相手方というような問題もございまして、なかなかむずかしい問題がございます。したがいまして、いまの状況防衛庁の部内でいろんな角度から検討をしておるという段階でございまして、まだ具体的な案があるというところまで至っておるわけじゃございませんけれども、いずれにしても、これは十二月末までの予算取りまとめまでに詰めていくべき課題ではないかと考えておりますので、そういった予算編成過程の中で結論を出していきたい、こういう段階でございます。
  11. 堀江正夫

    堀江正夫君 現段階ではそれ以上は言えないんだろうと思いますけれども相手というのはいろんな相手があるわけでして、そう簡単に話のつく相手ばっかりではない、国内だけだと私はいろいろ協力を求められると思いますけれども。そうなりますから、やはり相当早くから検討しなきゃならないんで、恐らくもう始めておられるんじゃないかとは思うんですけれども、この問題はこのくらいにしておきます。何とかしてこの問題が、現在の厳しい情勢下で、事業規模に絶対に影響を及ぼさないように、達成時期にも及ぼさないということだけは、はっきりさしていただかなければならないと思いますが、重ねてその点を長官、御決意を承りたい、こう思います。
  12. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私といたしましては、事業規模を減らさないで後年度負担特定年度に集中しないように、さらに工夫、検討を加えてまいりたいと思っている次第でございます。
  13. 堀江正夫

    堀江正夫君 次は、五十六年度ベースアップ分の来年度予算における取り扱いについて若干お尋ねしたいと思います。  五十六年度の公務員のベースアップがどうなるか、もちろんこれは結論が出ておらないわけでありますから全く不明でございますが、仮に人事院勧告アップ率で計算しますと、防衛庁は五百七十億から五百八十億だと、こう言われておるわけでございます。予算編成上いろんな問題があることはよく承知しておりますけれども、現在の厳しい国際情勢あるいは自衛隊能力の実態、こういう観点から見ますと、私は、現在の要求事業規模を切るようなことがあったんでは、国内的にも国際的にも大変な問題である、ベースアップ分はまるまる上乗せしなきゃならぬ問題だと、こう強く思っておるわけでございますが、仮にそれができないといった場合において、もちろんその程度によって影響する程度が違ってくると思いますけれども、一般的に言ってどんな影響を受けることになるのか、その辺をひとつ承らせていただきたいと思います。
  14. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 人事院勧告ベースアップ分取り扱いでございますが、現在私どもが提出しております五十七年度概算要求には、この分は含まれておらない次第でございます。その取り扱いにつきましては、現在政府全体で検討中でございますので、またそれが決まっておらない段階におきましては見通しを申し上げることは差し控えたいと思うわけでございます。  ところで、どういう影響があるかという御質問でございますが、決まってないので、ちょっと仮定の段階でどういう影響ということを申し上げることはお答えしにくいわけでございますが、私どもといたしましては、今回提出しております概算要求財政再建が現在の緊急課題であること、最近の厳しい国際情勢にかんがみ、防衛力整備充実を図っていく必要があること等を総合的に勘案いたしまして、質の高い防衛力整備するために、必要な最小限度経費を見積もって要求したものでございますので、私どもといたしましては、それがそのまま認められるよう、最大限の努力を払うというふうに考えておりますので、せっかくのお尋ねでございますが、影響等についてはいまのところ考えておらないということを申し上げておきたいと思うのでございます。
  15. 堀江正夫

    堀江正夫君 現段階防衛庁としては、そういう優等生の答弁しかできないんだろうと思いますが、私、もう少しこの面について具体的に意見も申し述べてみたいと思っておるんです。  防衛予算を構成する要素の一番大きいシェア人件費糧食費である。全部のことしも四五%ぐらいかと思います。この人件費糧食費はこれはもうほとんどがどんな場合においても切る余地のないものじゃないか。強いて言えば海空定員増、あるいは陸の充足率アップに伴うものが若干あるかもしれない。しかし、それはもう全部から見ればきわめて限られたものじゃないか。  次に、二十数%のシェアを占める装備品購入費及び研究開発費、これで見ますと、その金額の大部は先ほど経理局長から御説明ありましたが、五十六年度及びそれ以前にすでに契約をしたものの歳出化が主体なんです。それで、新しく契約するものの歳出予算というのは本当に限られた金額しかない。そうしますと、これもとてものことに切れそうにはないであろう。特に先ほど長官がおっしゃいましたように、これは総理も言っておられます。特に総理は、この間観閲式のときに自衛隊員に対してあるいは国民に対して大綱水準は可及的速やかに達成するんだということを言っておられます。国会でも再々言っておられます。そういう線に沿って五三中業の一年繰り上げ、これはもう当然その大きな線に沿ってやっておられる。そうなりますと、そういう趣旨から言ってみてもとてものことに切り捨て論になる性格のものじゃないじゃないか。  そうなってきますと、結局勢い施設整備費であるとか、維持費であるとか、基地対策費であるとか、こういった現在の能力を維持する、あるいは現在の即応性をもっと向上する、あるいは継戦能力をふやしていく、こういったような点に切り込まざるを得ないのじゃないか。そんなことが現情勢においてできるのか。特にそんなことは防衛庁の現在の基本的な方針にかんがみて不可能じゃないかと、こう私は思うわけですが、その点いかがでございますか。
  16. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 五十七年度概算要求を作成するに当たりましては、ただいま先生御指摘のありましたような点、すなわち正面装備充実防衛計画大綱の線に近づけるために所要要求を定めるとともに、これと密接な関係のある後方関係の点につきましてもつぶさに検討して、必要最小限のものを盛り込んだ次第でございます。  また御指摘のありました即応性継戦能力、抗たん性、そういった点につきましても、シーリングの枠の中でできる限り急ぐものは充実を図るということで、限られた財源の有効な配分に最善の努力を傾注しているところでございます。総体としてバランスのとれたすきのない防衛力を、財源の許す範囲内で達成したいというのが私どもの念願でございます。そういう次第でございまして、人件費の扱いは未定ではございますが、相なるべくは私ども概算要求の線が実現することをこいねがっている次第でございます。
  17. 堀江正夫

    堀江正夫君 五十七年度予算要求に関連する問題はこの程度にとどめたいと思いますが、ただ一つ、もう一度重ねて申し上げておきますけれども、少なくも維持費関係であるとか、基地対策防音工事であるとか、そういったような面に影響力を及ぼさない、これだけはもうぜひともやっていただきたい。このことを強く要望しておきたいと思います。  次は、市民防衛の問題につきましてお尋ねしたいと思います。この問題につきましては、すでに何回か委員会等でも論議をされておるわけでありますが、きょうはまず最初国土庁にお伺いしたい。  それは五十三年に大規模地震対策特別措置法が制定をされまして、現在これに基づく施策が着々と行われております。これは東海地震というものを想定した法律であり対策であるわけでありますが、まず五十三年にこの法律が制定される前提となった東海地震発生可能性というものを簡単に承りたいと思います。
  18. 川俣芳郎

    政府委員川俣芳郎君) 東海地震発生可能性についてのお尋ねでございますが、同地域におきましては、一つはたとえば御前崎付近の地盤が最近七十年間で四十センチほど沈下をしておるというような事実にも見られますように、地震発生させますひずみのエネルギーが蓄積されていること。二番目には、東海沖では大地震が過去におきまして約百年ごとに起こっておる。最近では安政元年、一八五四年でございますけれども、それ以来百二十年間発生をしていないという状況等がございまして、そういった点から見ますと、近い将来地震発生可能性が強いという判断がされておるというふうに私どもは理解しております。
  19. 堀江正夫

    堀江正夫君 そこで次は、東海地震で予想される被害、この被害態様程度をどのように予測をされておるのか、これを聞きたいと思います。
  20. 川俣芳郎

    政府委員川俣芳郎君) 大規模地震法強化地域に指定をされております地域につきましては、東海地震発生によりまして震度六以上の被害が生ずると予測されております。この場合の震度六の被害と申しますのは、木造家屋倒壊が三〇%以下という被害であります。したがいまして、地震動によりまして家屋倒壊施設損壊等被害が生ずるものと考えられますし、また地震動に関連して津波火災等により相当被害が生ずるおそれがあると考えられるわけでございます。  ただ、これらの地域につきましては、大規模地震法予定をいたしておりますように、東海地震予知をされました場合におきましては、たとえば津波危険地域からは住民の方は避難をされる、また家庭等におきましては火の始末等がなされるということによりまして、そのような応急措置がとられるということ、あるいは昨年制定されました地震財特法に基づきまして避難地でございますとか、避難路等緊急施設整備事業を行っておりまして、これらの施設整備が行われる。また毎年九月一日に行っておりますが、大規模地震を想定いたしました訓練が行われる等々のことによりまして、予知前提といたしますと、いま申し上げました被害はかなりの程度減少するのではないかというふうに考えておるところであります。
  21. 堀江正夫

    堀江正夫君 いろんな種類の被害相当程度起きるということを予測をして、いろいろ予防措置を事前にやっておられる。同時に、仮に起きるということが予知されるという段階において、さらに対策を講ずる。単に起きた場合におけるところの方法も講じておられるんだろうと思いますが、そういった具体的対策がとられております。そしてこの東海地震のために考えておられますところの経費、いつごろまでにこの対策を完成しようとしておられるのか、そういった点につきましてかいつまんで御返事をいただきたい、こう思います。
  22. 川俣芳郎

    政府委員川俣芳郎君) 東海地震対策といたしまして、現在実施をいたしております具体的な対策についてのお尋ねでございますが、先ほども申し上げましたことと若干重複いたしますが、一つ警戒宣言が発せられました時点におきます応急対策活動を定めました官民を通じますところの地域地震防災計画を策定して、これに基づいて所要措置がとられるという体制一つございます。次には、地震財特法に基づきます避難地避難路等整備等地震対策緊急整備事業実施というものがございます。第三には、地震防災訓練実施といったようなことがあるわけでございまして、これらの事項を中心にいたしまして、地震防災体制整備に全力を挙げておるという状態であります。  経費の点についてお尋ねがございましたが、ただいま申し上げました地震対策緊急整備事業につきましては、五十五年度から五十九年度にかけまして五カ年間で整備をいたすことになっておりまして、強化地域内において避難地避難路等を初めとしまして、消防施設整備とかいろいろございますけれども、総事業費を約三千五百六十九億円予定をいたしておりまして、五十九年度に目がけて現在整備をやっておるということであります。
  23. 堀江正夫

    堀江正夫君 国土庁からいろいろと東海地震対策について具体的に承ったわけでありますが、今度防衛庁の方に承りたいと思います。  防衛庁に承りたいのは、戦争被害の問題でございます。そこで第一は、過去の戦争等における軍人と非軍人との損害の対比、今後の予測、こういったような面につきまして承りたいと思います。
  24. 塩田章

    政府委員塩田章君) 過去の戦争におきまして、軍人と非軍人損害割合につきまして直接防衛庁調査したものはございませんので、スイス政府市民防衛局資料によってお答えを申し上げますと、損害者軍人、非軍人合わせて一〇〇とした場合の比率で申し上げますと、一般国民死亡者数比率が第一次大戦におきましては五%、それから第二次大戦におきましては四八%、朝鮮戦争では八三%、ベトナム戦争では九五%というふうに同資料ではなっております。これによりまして現在の戦争におきます一般国民被害のふえておる状況がうかがえるわけでございますが、今後の戦争見通しということでございますが、具体的な見通しはもちろん申し上げることは困難でございますが、過去の戦争の推移から推定して、非軍人被害が大きくなるであろうということは推測できるのではないかと思います。
  25. 堀江正夫

    堀江正夫君 現在置かれておる世界情勢あるいは日本をめぐる情勢、これについてはいろんなことが言われておるわけであります。すでに危機の状態にあるんだと、戦争はいつ起こってもおかしくないんだと、こういうふうな言われ方もしております。あるいは米ソ軍事アンバランスというものは八五年ごろがピークに達する、こういうような見方もございます。  さらに中東から派生をする。中東でまず現在の情勢からすると問題が起きるだろう。それが派生をして日本を含む極東自体考えざるを得ない、このようにも言われております。総括的に現在の世界情勢をどのように見ておられるのか、それをひとつ承りたいと思います。
  26. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) わが国周辺軍事情勢は、極東ソ連軍の顕著な増強と活発な行動によりまして、わが国に対する潜在的脅威が増大しているので、厳しいものがあるということはしばしば申し上げているとおりでございます。他面、グローバルな観点から見ますと、米ソ関係も現在後退している。アフガン侵攻以後の諸情勢からしまして、米ソ関係も現在後退しているとはいえ、関係改善努力も行われております。また、西側の抑止力強化への努力もありまして、東西間の核戦争及びそれに至るような大規模な衝突は現状では一応抑止されているのではないかと考えております。  しかしながら、このようなことなどからいたしまして、現在わが国に対する差し迫った侵略脅威が生ずるような情勢に変化したとは考えておりません。しかし、冒頭申し上げましたように、潜在的脅威が増大していることは事実でございますので、こういった諸般の事柄を念頭に置いて、大綱に定める防衛力整備をできる限り取り急いで進める必要があると私ども考えている次第でございます。
  27. 堀江正夫

    堀江正夫君 防衛計画大綱を決めたその当時とは情勢が大変変わっている。これはもうどう言おうとも変わっておる。これは世界じゅうが認めておるところであると思います。認めざるを得ない状況になっていると思います。したがって、防衛庁も五三中業の一年繰り上げもやりたい、防衛計画大綱水準の可及的速やかな達成も図りたい、こう言っておられるわけだと思いますが、仮に日本に戦火が派生をしてくる、こういった場合において日本専守防衛だ、こう言っておるわけでありますが、私自身は専守防衛って何かよく現在もまだわかりません。よくわかりませんが、いずれにせよ、専守防衛ではっきりわかることは、国内戦場だということだけはどうもはっきりしておるようでございます。結局、専守防衛によって日本の国土を戦場にしてしまう。したがって、事が起きますと必然的に国民の生命、財産、これがまともに被害を受けざるを得ないことになってくる、こう思うわけでございます。  そこで、日本自体で起きた場合にどのような態様侵略が行われるのか、どのような被害が起きると防衛庁はお考えなのか、その辺をひとつ承りたいと思います。
  28. 塩田章

    政府委員塩田章君) まず専守防衛という戦略体制でございますけれども、もちろん防衛庁といたしましては、もし侵略を受けるという場合に、できる限り洋上であるいは水際で排除するという努力をすべきことは、これは当然でございます。しかしながら、状況によって国土が戦場になるということももちろんあり得るとは思いますけれども防衛庁努力目標といたしましては、そういったことをなるべく避けるという姿勢は当然のことでございます。  なお、いまお尋ね日本戦場になる場合にどういう侵略態様考えられるかという点でございますが、従前から申し上げておりますように、日本がもし侵略を受けるとした場合には、三つの態様があるだろうということを申し上げております。  一つは上着陸侵攻、一つ海空部隊による日本の産業活動等に対する攻撃、三つは海空部隊による海上交通の妨害というような三つの侵略態様考えられるだろうということをかねてから申し上げております。  そのうちの第一の上着陸につきましてはもちろんいろいろな態様がございまして、重要拠点の占領といったような目的の場合もありましょうし、あるいはごく一部の既成事実だけをねらったようなこともありましょうし、いろいろなことが考えられますけれども、ともかく上着陸ということが一つ考えられる。  そういった三つのことを考えた場合に、いま先生のお尋ねの国土が戦場になる場合というのは、当然ながら第一の場合と第二の場合が考えられるということでございます。その場合にどれだけの被害が想定されるかということにつきましては、その攻撃の態様が本当に千差万別でございますから、一概にどんな被害になるだろうというふうなことを想定することは困難かと思います。
  29. 堀江正夫

    堀江正夫君 少なくも言えることは、現在の航空機の能力等から考えますと、全国土にわたって航空攻撃というものが行われる可能性だってあるんだと。したがって、その損害を受ける範囲というのは局限されたところじゃないんだ、非常に広い地域になる。それから、地上侵略を受けるということになると、その地域の受ける被害というものは地震等とはまた違った意味の、しかし内容はほとんど同じでしょう。それから、物によってはまた非常に違うでしょう。非常に複雑な、広範囲な被害を受ける、こういうことになると思います。それはまあ同じお考えだろうと思いますが、そういうようなことがあって防衛庁も、特に防衛白書の中で市民防衛の重要性というものを考えておられるんじゃないか。  一方、また防衛庁がこの問題を考えておられるのは、平時災害のときには自衛隊が人命救助あるいは災害復旧、この能力を持っていますけれども、有事の場合はやりたくてもできないじゃないか、だからこういう体制とってくれと、こういうことじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  30. 塩田章

    政府委員塩田章君) 全く御指摘のとおりでございまして、もし有事の場合のことを想定して住民の避難誘導という、非常に何と言いますか大前提とすべき大事な問題でございますけれども防衛庁がそれをどういう形で受け持っていくかということになりますと、これは大変むずかしい問題でございまして、やはり政府全体の市民防衛考え方の中で、その対策はとっていただきたいというのが私どもの願望であります。
  31. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうなりますと、政府機関のどこかがやらなきゃならないということになるだろうと思うわけであります。  そこで、これは各省それぞれ関係があるわけですが、きょうは実は自治省においでいただいております。自治省の管轄される範囲で、あるいは警報であるとか消防であるとかあるいは人命救助であるとか、住民避難は入るのか入らぬのか知りませんけれども、そういった点だけでも私はいろいろな問題があるんじゃないかと。  さらに、通産省、厚生省、建設省、それぞれいろんなことを地震対策で言っておられる。こういったようなことをもっと幅広くやらなければいけないだろうと思いますが、とりあえず自治省ですね、いま防衛庁が答えましたような被害状況というものを想定した場合に、現在それに対応する能力というものが、体制というものが本当にあるのかどうか、その辺をひとつ承りたいと思います。
  32. 清水英明

    説明員(清水英明君) ただいま御質問がございましたように、消防機関といたしましては日夜火災とか国民の生命、身体、財産の保護あるいは水、火災等の災害の防除、被害の軽減等に活躍しておりますが、ただいまお話のございましたように、有事の際にどうするかというふうなことにつきましては、現在の法律の仕組みからいたしまして、そのようなことを想定したことにはなっておりませんで、私どももそういった場合にどのような体制がとれるかといったことも現在まで検討いたしておりません。
  33. 堀江正夫

    堀江正夫君 近い将来発生可能性のある東海地震に対しては、先ほど国土庁から御説明がありましたように、あらゆる角度からの検討が行われ、あらゆる対策が講ぜられておる。これは政治の本来の目的からいって当然のことだと思うわけであります。  一方、だんだん厳しくなっておる、いつ事が起きてもおかしくない、こういったような状態になっておる。そういった有事の場合、先ほど来いろいろと話がありますように、日本は好むと好まざるとにかかわらず、広く全国土にわたって、全国民的な規模で、しかも継続的に長期間にわたって被害を受けざるを得ないことになる。その被害というものは、大地震の場合に比して、もっともっと深刻なものになるのは当然予想されるわけであります。  そこで、政治の基本に立ち返って考えた場合に、国民の生命、財産を決定的に損なうこのような場合に十分に備えるということは、もう政治の果たさなきゃならない当然のことじゃないか、私はこのように思うわけでございます。きょうは、残念ながら関係大臣はお出いただいておらないわけであります。もちろん、これは政治の問題だと思います。しかし、同時に行政の問題でもあるんじゃないか、私はそのように思います。  特に、ことし防衛白書でその必要性というものが強く訴えられております。この防衛白書は、もちろん防衛庁が所管をする事項について防衛庁の責任において出しておるわけですけれども、同時に関係の事項については各省と調整をして出されておる。いわば政府の防衛に関する白書そのものであります。こういうような観点からしますと、市民防衛政策の推進の必要性というものに対する鈴木内閣の見解、これが防衛白書に市民防衛という項目で載せられておるんじゃないか、こう私には思われるわけでございます。  そこで、調整役である総理府、これが中心になって国土庁初め、いま自治省はそういう状況は一切考えておらないと言われました。そんなことでいいはずはありません。積極的に協力をして、政府国民に対する責任を果たしてもらわなきゃいけない、こう思うわけであります。この点について、特にここにおられるところの総理府それから国土庁、さらに自治省、そして防衛庁、簡単に御所見を承らしていただきたいと思います。
  34. 石川周

    政府委員(石川周君) お答え申し上げます。  いわゆる市民防衛の問題につきましては、御指摘のように、国民の生命及び財産の保護に直接結びつく重要な問題であると考えておりますが、十分に国民的なコンセンサスを得ながら対処していかなければならない重要な問題であろうかと存じております。現在国民の中にもいろいろな考え方があるわけでございます。今後とも総理府といたしましては、関係省庁と十分連絡をとりながら、政府全体として慎重に検討してまいりたいと考えております。
  35. 清水英明

    説明員(清水英明君) ただいまの有事の際の問題につきましては、私どもも重要な問題と考えておりますが、ただいま総理府の方から御答弁ございましたように、やはり政府全体の問題でございますので、その一環といたしまして消防行政といたしましても、今後いかに対応すべきか慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  36. 川俣芳郎

    政府委員川俣芳郎君) 国土庁が災害対策の調整官庁として機能しておるわけでございますけれども、私どもの災害対策は、実は災害対策基本法に基づいてやっておるわけでございます。この災害対策基本法では災害をいわゆる自然災害、あるいは大規模な人為的な事故を災害としてとらえておりますが、いずれにいたしましても、これらの災害はあくまでも平時における災害ということでございまして、御指摘戦争災害といったような事態につきましては、やはり災害対策とは別個の問題として全政府的に検討すべき問題ではなかろうかというふうに考えているところでございます。
  37. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 民間防衛の問題は、御指摘のとおりきわめて重要な問題であると考えております。この問題の進め方につきましては、国民のコンセンサスを得ながら、政府全体として検討しなければならない重要課題であると考えておりますが、防衛庁といたしましても真剣に今後取り組んでまいりたい、さように考えている次第であります。
  38. 堀江正夫

    堀江正夫君 いまそれぞれ関係のここへおいでいただいております各省庁の御見解を承りましたが、総理府が言われました慎重にというのはどういうことですか。慎重にといえば慎重にということかもしれませんが、いまのような全般状況でいつまで慎重にやるつもりなんだ。国民世論、こう言われますけれども、本当に国民の生命と財産を守るんですよ、国民の生命、財産を守るのにいつまで慎重にやるんですか。ぜひとも積極的にこの問題は取り組んでいただかなければ、政府の責任を果たせない、私はそう思いますね。そのことを強く申して、次に移ります。  時間がありませんから、まず初めに、SCCと極東有事研究の問題につきましてお尋ねしたいと思います。これは外務省が主体になると思います。あと国土庁、自治省、総理府、結構です。  SCCの開催時期は一月だとか何とかということが言われております。ところが、いままでの委員会の審議ではまだ決定してないいろんな構成的な要素があるんだ、こう言われております。そこで、SCCそのものを近くやることは決定をしておるけれども、実際やる時期が決まっておらないということなのか、まだ近くやりたいということも決まっておらないことなのか、その辺をまず承りたいと思います。
  39. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) お答え申し上げます。  御案内のとおり、この日米安全保障協議委員会は過去三年間諸般の事情で開催されないまま経緯してきております。したがいまして、日米両国政府とも従前一年に一回、少なくとも二年に一回開催してきた前例を踏まえ、できるだけ早い時期に協議し、会合したいと思っておりますが、ただいまのところ双方の日程等々から、いつごろにどういう形で開くというめどは実はまだ立っておりません。持っておりますのは、いま申し上げましたように、できるだけ早く双方の都合のいい時期に開催したいと、そういう意欲、意図はあるのでございますが、なお具体的な日程の詰めに入るような状況にはない、まだ検討段階であるというふうにお答えさせていただきます。
  40. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうしますと、いまの御返事では、結局基本的に近くやることは決まっている。しかし、やる時期が決まってない、その時期を決めるのは新しい内閣だと、こういうことでございますか。
  41. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) お言葉ですが、やることは決まっているという場合には、普通は大体時期をどの程度ということのめどがなければやるという決め方ができないわけでございますが、双方ともこの春、夏以来できるだけ早く開きたいという意図を相互に確認しておりますけれども、たとえば、年内にあるいは一月にあるいは春にというようなおおよその見当をつけての話し合いにはまだ至っておりません。
  42. 堀江正夫

    堀江正夫君 そうしますと、この間の在日米軍司令官の記者会見でも一月と、こういうのはうそですか。
  43. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) うそということは私としては申し上げられません。なぜならば、いろいろと米側は米側で参加者、すなわち駐日米国大使と太平洋軍司令官の中長期的な日程調整も含めていろいろと考えて、自分の都合のいい場合悪い場合はこうであろうという検討をしていることは事実だろうと思います。その一環として先方が、たしか一月ぐらいを希望するという趣旨の記者会見の内容であったかと報道されておりますが、そのこと自身をもってうそというふうにはとうてい申し上げ得ないと思います。
  44. 堀江正夫

    堀江正夫君 うそというのはちょっとはしたない言葉であったわけですが、そうしますと、一月というのもいま話し合いの中では出ておるんだと、ただ新しい内閣になってみないと、外交日程その他の関係ではっきりしないということなんですね。
  45. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 重ねて申し上げますが、十二月、一月、何月というような特定の日取りを念頭において詰めに入っておりません。できるだけ早く双方の都合のいい時期に開催したいという意図を確認しておると、そのように御理解願いたいと思います。
  46. 堀江正夫

    堀江正夫君 早くやらなきゃだめでしょう、それはもう。日米関係いま考えた場合に、こんな問題でもたもたいつまでもしているということは国益に合わないですよ。まあそれ以上は言いません。  極東有事研究の問題につきましてお聞きしたいんですけれども、現在のこの問題に対する開催についての検討状況はどうなっているか、まずそれを承りたいと思います。
  47. 塩田章

    政府委員塩田章君) 極東有事の事態におきますがイドライン三項に基づく研究につきましては、ハワイ会談等を通じまして、一応現在の第二項の五条事態の一つの研究が終わった時点でございますので、次の研究に入りたい。その場合に三項の極東有事の場合の研究をしたいという話が米側からございまして、私どもも原則として異存はないということで推移しておりますが、その具体的な日程、それから特に日程に入る前の、どういうスタッフでどういう具体的な窓口といいますか、そういうことをまず決めていかなきゃいかぬわけでございますが、それのための今度はまず日本側の体制をどう考えるかということにつきまして、現在外務省が中心になっていただきまして、日本側の検討をしておるということでございまして、まだアメリカ側と、その窓口といいますか、進め方についての話し合いにも入っておりません。日本側でそういう検討をしておるという段階でございます。
  48. 松田慶文

    説明員(松田慶文君) 補足して御説明さしていただきます。  ただいま防衛局長御答弁のとおり、従来よりいわゆる五条事態の検討、研究が自衛隊と米軍の間で行われてきておりまして、それには事柄の内容上外務省は直接の関与をしておりません。それが一段落をする状況になりましたので、次に、言うところの六条事態の検討に入るわけでございますが、これは安保条約第六条の運用との関係もございまして、いま答弁にございましたとおり、外務省も加えさしていただいて一緒にやることで政府部内では意見の一致を見ております。現在私どもがいわば庶務といいますか、段取りの進行をやっておりますが、新しい勉強新しい形で始めますものですから、いろいろと基礎的な検討、研究も必要でございまして、現在まだ政府部内の関係省庁の間でその進め方、始め方についての最終的な詰めをしております。いずれこの点もそう長い時間をかけないで、できるだけ早く実質的な検討に入りたいと思っておりますが、申し上げましたとおり新しい仕事でありますので、米側との間には、まずは予備的などういうふうに仕事を進めるかという点の接触にいずれ入りたいとは思っております。
  49. 堀江正夫

    堀江正夫君 この問題は五十三年に決めたガイドラインに基づく研究でございます。もうあれから三年たったわけであります。現在の情勢下で、日米信頼関係をどう確保していくのかということは、あらゆる面で考えなきゃならぬ問題だ。そういう面から見て、この問題を早急に具体的に積極的に進めるのは、私は当然のことじゃないかと、こう思います。情勢の変化が厳しくなっておる、これもその必要性を倍増しておると思いますし、現在の日韓関係、これは直接日韓関係関係するわけじゃございませんけれども、間接的にこれをやることが、やはり日韓関係の改善にも私は資するんじゃないかと、こう思います。いろんな意味において政府は常に慎重ですけれども、慎重もほどほどにしてもらって、やはりこういった問題はまじめに積極的にやってもらいたいものだということを申し上げたいと思います。  最後に、もう時間ありませんが、機密保護の問題につきましてちょっとお聞きしたいと思います。ことしの四月十七日に、同僚の戸塚議員が長官にこの問題について質問をされました。その場合に長官は現状では不十分だということを認められました。そして、よい方法があればそれによった方がよい、法制の必要性も認められたというふうに私は理解をいたしております。ただ、この場合に機密保護の対象をどうするのか、それから刑罰の対象、この刑量をどうするのかと、こういったような問題があるから国会論議や世論の動向を見て考えだけ、こう言われたというふうに理解をしております。  一方また、機密保護の体制を法的にも整えていくというのは、これは三十二年に決定した「国防の基本方針」、この中で国の安全のため必要な基盤を確立すると、こういう重要な問題の一つでないかと、こう思うわけです。ところが、ことしの防衛白書の中で防衛関連国家施策、こういったものがいろいろと述べられております。いろいろと述べられている中で、この機密保護については一行どころか一言も触れられておらない。恐らくいろいろとたたかれるのを心配されて触れておられないのかと思いますけれども、もう防衛庁そんなことをいつまでも言って済ませる事態じゃないと思うわけですね。それらを含めまして長官の御見解を承りたい。自民党がいま安保特別小委員会でいろいろと勉強してます。こういう動きも知っておられると思います。こういうことも含めて最後に長官の御見解を承らせていただきたい。もっとしっかりやってもらいたい、これが私の念願です。  これで私の質問は終わります。
  50. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ことし四月の本委員会におきまして、戸塚委員から御指摘のありました機密保護の問題につきまして御答弁申し上げましたとおり、機密保護の問題は万全の上にも万全を期する必要があり、そのために、仮に新たな立法措置についても必要があればしかるべき法制が整っていることが望ましいという趣旨のことを申し上げたつもりでございます。  ただ、機密保護のための新たな立法の問題につきましては、そのときも申し上げたと思うのでございますが、保護すべき機密の範囲、一般国民との関係、他の公務員とのバランスなど十分に検討すべき問題が多く含まれておりまして、また防衛庁だけでは解決できない問題もありますので、国会の御論議、世論の動向等も踏まえた上慎重に対処すべきものと考えているところでございます。引き続き検討をいたしているわけでございます。  仮に防衛上の機密に対象を限ったといたしましても、保護すべき機密の範囲、一般国民との関係、他の公務員とのバランスなど十分に検討すべき問題がなお多く含まれておりますし、また防衛庁だけでは解決できない問題もありますので、引き続き慎重に対処していかなければならない、さように考えておる次第でございます。
  51. 堀江正夫

    堀江正夫君 それじゃ前と同じじゃないですか。いまの質問に対するお答えにはなっていませんが、まあいいでしょう。
  52. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 最初に、去る五月の日本海における米海軍並びに海上自衛隊の共同演習で漁船のはえなわが切断をされて被害をこうむった、その件について質問をしたいと思うんでありますが、結局漁民に対する損害補償を日本政府が立てかえて払うという形式をとり、米ソ両国に対してその金額については要求するということを聞いておりますけれども、一体日本の海上自衛隊は加害者にはならなかったのかどうか。米ソ両国の海軍が加害者であったとすると、その艦艇の名前等はわかっておるのかどうか。一体アメリカの海軍がどのくらい参加をし、ソビエトの海軍がどのくらい参加をしたのか、そういう点について防衛庁長官から最初にお伺いしたいと思います。
  53. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁といたしましては、今回のはえなわ等の漁具切断事故における被害漁民の方々に対して、早急に適切な措置が講ぜられるよう現在関係省庁と鋭意検討しているところでありますが、まだ結論は出ておらない段階でございます。  ただいまお尋ねの自衛艦が損害を与えているかという点のお尋ねでございますが、自衛艦が損害の原因に当たるような行為をしておらないということにつきましては、しばしば申し上げておるとおりでございまして、その点は変わりがないわけでございます。  また、米ソ両国の軍艦に関する問題につきましては、いま外交ルートを通じて損害の賠償について交渉を続けておりますので、その辺の経緯につきましては関係方面からお答え願うのがよろしいのではないかと存ずる次第でございます。
  54. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 外交ルートと言いますけれども、この日本海の演習に外務省の係官も一緒に立ち会っているんですか。この演習はやはり防衛庁関係でしょう。その損害の算出も防衛庁でもって算出をしないというと、外務省にはわからないんじゃないですか。一体どこの船がどこでどういう損害を与えたかということは、防衛庁でないとわからないんじゃないですか。一々日米両国海軍の演習に外務省の役人も乗っけていくんですか、どうなんですか。
  55. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 事実関係についてちょっと御説明を申し上げます。  海上自衛隊の艦船が事故を起こさなかったということについては、大臣申し上げましたとおり、しばしば国会でもお答えしてきたとおりであります。しからばこの漁具を切った、加害した艦はどこのものかということについては、被害を受けた漁民から非常にさまざまな証言がたくさん集まっておりまして、艦ナンバー幾つの船がいつ、どこを航行して切ったというような、そういう証言をたくさん集めまして、水産庁の方でそれを取りまとめて被害額もいま固まってくると思います。その結果、どの艦が、つまり、米ソのナンバー幾つの艦が当時そこを通って切った可能性があるというようなことも推定できるようになっております。  そこで、外務省云々と申し上げましたのは、そうやって被害調査して取りまとめた結果を、それぞれ関係のある外国に対して調査要求をする、賠償請求をする、それの橋渡しといいますか、仲立ちといいますか、それを外務省がやっておるんでありまして、外務省が被害調査に直接当たっているという意味ではございません。
  56. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 それなら、外務省で云々というよりも防衛庁自体の調査の結果をここで言うべきなんですよ。だから私は防衛庁長官に聞いているんですけれども、一体アメリカの海軍がどのくらい参加をして、ソビエトの海軍がどのくらい参加したのか。米ソ両国にと言うけれども米ソでもって共同演習したわけじゃないんでしょう。ソビエト艦隊の方は、いわば見物人だ。主役は日本海軍じゃないですか。一々海軍と海上自衛隊と使い分けしていたらめんどうくさいから日本海軍と言うんですけれども、主役は日本とアメリカでしょう。  そして、日本自衛隊がおれの方には覚えはないと言うならば、アメリカがその加害者であるというふうに見当つけるのは当然じゃないですか。また、漁船の方でもアメリカの海軍の何番という番号までわかっておるという証言もあるわけです。そうすると、アメリカの艦隊が一体何隻参加していて、その何隻が被害を与えておるかということはわかってなきゃならないはずだと思うんです。わからなければ損害の賠償の請求もできないと思うんです。だからその点を具体的にお伺いしたいと、こういうことなんですよ。
  57. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 五月にこの事件が発生して以来、しばしば国会でも御説明してきたところでありますが、日米共同訓練は秋田の西方で区域を定めて行ったわけでありますが、共同訓練そのものは御存じのとおり、事故は何ら起こしていないわけでございます。問題になった北海道積丹半島の西方で漁具の切断事故がたくさん起きたといいますのは、その共同訓練に参加途上のアメリカの軍艦及びそれにつきまとうようにその辺を行動しておったソ連の軍艦、これらが切ったというふうに考えられているわけでございます。そういうわけで、共同訓練そのものは訓練海域で日米一緒にやったわけでありますが、何ら事故は起こしておりません。起こしたのは参加する途中、来る途中の米艦とそれと一緒になって行動しておったソ連艦、これが起こしたと考えられます。それはいろいろな被害調査をまとめた結果そういうふうに考えられるわけでございます。そこで、訓練そのものが事故を起こしたんではないということをしばしば申し上げてきたわけでございます。
  58. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 訓練そのものが事故を起こしたんじゃなくたって、訓練に参加をするというのは同じことじゃないですか、結局は。  じゃ、アメリカの艦隊とソビエトの艦隊と両方が被害を起こしたんだと言うならば、その割合はどうだ、参加艦艇は一体何隻だということだってわかっていなきゃ損害の補償の要求できないでしょう。わからずに適当に損害補償要求するんですか。その点はどうなんですか。
  59. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) まず、訓練そのものが事故を起こしていないにしても、訓練に関連する外国艦船による事故だから無関係でないという点については、当時しばしば国会でもその種の御質問がありまして、訓練の計画を立てたことと外国艦船によると思われる事故が起こったこととの因果関係の濃い薄いが論じられたわけでございます。私どもは慎重に計画を立てまして共同訓練をやったわけで、結果として事故を起こさずに済んだということで大変喜んでおるわけですが、残念なことに、その訓練に参加する途上の米艦あるいはそれに伴って行動しておったと思われるソ連艦が被害発生させたと思われているということについてはまことに遺憾なことだと思っております。  そこで、訓練計画そのものとそこへやってきた外国艦船の起こした事故との間の因果関係をどう考えるかという問題が残っておりますが、私どもは計画を立てたことと、結果として事故が起こったこととは全く無関係だとは思っておりませんけれども、因果関係はかなり薄い、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから米ソの軍艦がそれぞれどのくらいの割合で事故を起こしたかということは、もちろん状況がよくわからないままに賠償請求しているというようなことではございませんので、関係の漁民から事情をよく聞いて、これは水産庁の方でまとめられたわけですが、どの船がどのくらい損害を与えたのではなかろうかということの調査し得るような材料の積み上げで、いまアメリカとソ連にそれが提示されて、相手方はそれに基づいて調査をしていると……
  60. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 具体的に言いなさいよ、そういういいかげんなこと言わないで。その事実をはっきり言いなさいよ、わからないの。
  61. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) ですから、事実は水産庁がまとめた調書の中に全部入っております。
  62. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 だから、それを言いなさいよ。言えないの。
  63. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) これは調書といってもこんな膨大な調書でありまして、どの被害者が何月何日の何時にどういう艦ナンバーの船が自分の張ったはえなわの上を通ったとか通らないとか、そういうことを見た、それを一件一件全部まとめてあるわけでございますから、具体的に言えとおっしゃっても、全部たくさんある被害を端から……
  64. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 じゃ、いいや。そんなことをごたごた聞いていたってしようがないんで、米ソ両国に請求すると言うならば、八千万なら八千万の内訳はどういう根拠でもって、どういう割合で請求するのか、それを言えませんか。適当に請求するのか、五分五分に請求するのか、あるいはアメリカの艦隊とそれに追尾したソビエトの艦隊と言うけれども、ソビエトの艦隊の方がアメリカの艦隊の先頭を切って走ってきたのか、それともソビエトの艦隊は後からついてきたのかということで違ってくると思うんです。だから、艦隊の数からいったって、アメリカの軍艦が一体何隻、そしてソビエトの軍艦が何隻ということだって、それでもってあらかたの見当がつくんじゃないかと思うんですけれども、それも私さっき質問したけれども答えられなかった。わからないんですか、それは。
  65. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) もちろんわかっております。わからないままに請求することじゃございません。  積丹沖を通って共同訓練に参加途上の米海軍の艦艇というのは、当時、共同訓練前半、後半に二つに分けて行ったのでありますが、後半の訓練に参加する予定の米艦艇数隻が積丹の沖を通って秋田沖へ向かっておったわけでありますから、そういうことは十分につかんでおるわけでございます。また、これはしばしばその当時国会でも御説明してきたところでございます。
  66. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 具体的にはさっぱりわからないですな。いいかげんなことを言って時間つぶしだけされたんじゃ困るので、じゃ俗な言葉で言うなら、これはアメリカの艦隊が漁網を切ったということは証言ではっきりしておるわけですね。言ってみれば、これはもうお祭りのおみこしが商店のショーウインドーをぶち壊したとか商品を傷つけたとか、こういう事件です。そのおみこしのかつぎ手の方はアメリカだし、後棒をかついでいたのは日本自衛隊だし、見物人の方はソビエトの艦隊だ。そうすると、ぶち壊したのがみこしであるならば、ついでに見物人の方まで損害賠償を請求するというのはこれはおかしな話になってくるわけです。だから、その損害賠償の請求はどういう根拠で、どういう割合でやっているのかということを私は聞きたいんですよ。いいかげんなことでもってやると恥をかくだけですよ、外交的な。  ソビエトに対する要求というのはそれじゃどういうわけですか、演習の見物料として請求するんですか。どうなんでしょう、具体的に証拠があって、証人があって請求するのか。そうでないと、それは演習の見物料ということになる。その点はどうなんです、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。
  67. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ソビエトに対する政府としての措置でございますが、ソ連に対しましては八月五日に在京ソ連の参事官を外務省に招致し、水産庁の取りまとめた資料を提示し、しかるべき調査方を申し入れるとともに、ソ連艦船の関与が明らかになれば補償を要求したいとする意向を伝えております。  その後、ソ連につきましては、八月五日の申し入れに対し、九月十七日、ソ連は在京ソ連大使館を通じ、本国の指示によるものとして、五月二十九日に回答したこと以上にソ連関係機関は新たな材料を持ち合わせておらず、右回答につけ加えることはない旨回答し、この回答に対し、外務省としてはソ連の説明は納得できるものではないとして再度の調査方を申し入れた、このように承知しておるわけでございます。  なお、先般来先生のお尋ね割合の点でございますが、被害額につきましては、水産庁で関係漁業団体の代表から資料を出してもらいまして、それを積み上げて要求している、こういうことでございますので、初めに総額があってそれを一定の割合で分ける、そういうことは私どもとしては考えておらない次第でございます。  内容につきましては、非常に膨大でございますので、いま参事官が申し上げましたように、いますぐ申し上げるわけにはいかないわけでございますが、私としましてはそのように経過を承知しているわけでございます。
  68. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 じゃアメリカの方は何と言っているんですか。アメリカの方は認めているんですか。それで、その損害の補償に応ずるというふうに言っているんですか。八千万のうち全額をアメリカが負担をすると言っているのか、そのうちの半分を負担をすると言っているのか、どのくらいのパーセンテージで負担をすると言っているのか、その回答はどうなんですか。
  69. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 米側に対しましては、七月三十一日、被害者側を代表して日本海さけ・ますはえなわ漁業協同組合の組合長一行が在日米海軍法務部に対し調査及び損害賠償を請求したところであるが、外務省としましても随時在京米大使館に対し速やかな処理方を申し入れているところであると承知いたしております。  また、米側においては、その後提示された資料の翻訳を含め、鋭意検討中であると承知しておりますが、いつごろまでに何らかの結論が出るかについては、米側においてもまだはっきりした見通しがついていないと承知しているわけでございます。しかしながら、米側においては、本件について速やかな処理方に努力しているというふうに、私ども外務省から聞いておるわけでございます。
  70. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 そうすると、立てかえ払いというけれども、アメリカの方も返事をしていないということなんですね。私が聞いたのは、八千万なら八千万のうち、一体どのくらいの割合をアメリカに要求をして、どのくらいの割合をソビエトに要求するのか。具体的な損害がはっきりしているなら、その算出ができるはずだというんですよ。それができないというならば、これは適当に両方から取れるだけ取ろうと、こういうようなことで言っているのか、金額は明示しないでともかく何とかしてくれと言っているのか、あいまいでわからないので、その点をはっきり答えてもらいたいと言っているんです。その割合もわからないんですか、それとも適当にやっているんですか、どうなんですか。
  71. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 米側に対する要求は、被害の実情を漁業協同組合の方で取りまとめて申し入れをしているわけでございまして、私どもとしては、それを査定してどうするということは考えておりません。出しましたものが全額、先方が原因があると認めた場合には、賠償されることを期待いたしておるわけでございます。  なお、立てかえ云々という御発言でございますが、防衛庁含めて政府といたしましては、事件発生後、すでに半年以上経過しております。関係漁民の窮状もございますので、この際何かいい方法はないかということで、鋭意協議しているわけでございまして、立てかえという方法で支給するということを現在決定しているわけではございません。その点を、鋭意検討中であるというふうに御理解願いたいと思うんでございます。
  72. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 防衛庁の防衛政策というようなものを国会でもたびたび論議されておりますし、また防衛白書にもうたわれておるわけでありますが、最近、ソ連の侵攻の可能性はきわめて少ないということが、大方の軍事専門家の意見であるようであります。また、最近はアメリカの制服組もソ連の直接的な侵略というようなものは、まず現実的な可能性といいますか、それが非常に少ないと見ておるようでありますが、この点は防衛庁の方も肯定なさいますか。
  73. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいまお尋ねの点でございますが、先ほど堀江議員に対してお答えしましたとおり、東西間の緊張は揺らいできていると申すものの、核戦力の行使を含めて、大規模侵略の差し迫った危険はないものと私ども考えておるわけでございます。しかしながら、最近における極東におけるソ連軍の配備の状況等、総合的に見ました場合に、その現実からいたしまして潜在的な脅威は依然としてある、むしろ増大しつつある、私どもはそのように考えておるわけでございます。
  74. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 長官のいまの御答弁、東西間の緊張は緩んでいるとはいうものの、という点は、これは非常にグローバルな、やはり米ソを中心とする東西間の緊張、それから説き起こして、それをも頭の中に入れてお考えになっていらっしゃいますね。それからまた一面、とはいうもののソ連の脅威というものはあるんだという御説明がありますね。そうすると、いま長官のおっしゃった東西間の緊張というものは、グローバルな紛争を前提にしたソ連の脅威ということでしょうね。それから、とはいうもののまたソ連の脅威はあるんだというのは、ソ連が単独で、米ソの角逐というようなものから離れて日本に侵攻してくる可能性というものを想定していまおっしゃったんでしょうね。そういうふうに理解していいんでしょうか。
  75. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ちょっと言葉が足りなかったので、つけ加えさしていただきたいと思います。  東西間のデタントはかつてのような状況ではない、特にアフガニスタンへの侵攻、あるいは第三世界への状況等から見ますると、デタントは緩んできてると申し上げたんじゃありませんで、揺らいできてる、そういう意味では国際間の緊張は厳しさを増してきてる、これはグローバルな考え方でございます。しかしながら、核兵器を含めての大規模侵略の差し迫ったおそれはいまのところないのではないかと、そういうことを先ほど申し上げようとしたのでございますが、ちょっと言葉が途中で不足しておりましたので、つけ加えさしていただきたいと思います。  まあそういったグローバルな認識でございますが、範囲を極東に限って申し上げますと、最近におけるソ連極東の陸海空軍の配備の状況、また、その内容の質的な増強ぶり等からいたしますと、わが国の安全にとりまして潜在的な脅威が増大していると、そのように受けとめてるということでございます。
  76. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、端的にお答えいただきたいんですが、たとえば東西間の衝突というようなグローバルなものと離れて、ソ連が日本に小規模侵略をしかけてくる可能性というものは、私は絶無だと思うんですが、何となれば、何の得るところもありません、それはソ連にとって。それからアメリカとの衝突を招来することもほぼ確実ですからね。ですから、そういうような可能性というものは私はまず現実的には考えられないと思うんですが、防衛庁はやっぱりそういう侵略可能性というようなものは肯定しておられるんでしょうか。それを前提に防衛政策を立てていらっしゃるのか、そこのところをお伺いしたいわけです。
  77. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁といたしましては、先ほど申し上げましたように、潜在的な脅威が高まってるというふうに考えておるわけでございますが、客観的な軍事力の増強の事実はございましても、意図の点は可変的でございますので、簡単に断定することはいたしがたいわけでございます。その増大した軍事力をいかなる形で行使するかどうかは、にわかに判断を下すことはむずかしいと思うわけでございます。いずれにいたしましてもわが国といたしましては、韓国と平和の維持につきまして、外交交渉に努めるとともに、必要最小限防衛力整備していく、そういった事態が起こらないように努めることが急務であると、さように考えておる次第でございます。
  78. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そこのところが私ども考え方と皆さんの考え方とが食い違うところだと思います。つまりわれわれは、ソ連が、防衛庁がおっしゃっているような限定的小規模侵略をしかけてくるというような可能性はまず考えられない。日本戦争に巻き込まれるというのは、戦場になるというのは、むしろ米ソが何らか、ペルシャ湾ならペルシャ湾、ヨーロッパならヨーロッパで戦端を開いたときに、同時にそれが日本に波及すると、同盟国が巻き込まれるということをロング太平洋司令官が言っておりますね。これはもう予算委員会でも資料を引いてお尋ねしたんですが、そういうグローバルな紛争に巻き込まれることによって日本戦場となる。ですから、そういう巻き込まれない努力、立場を守った方がいいと、私どもの立場ですね。あなた方は、あくまでも限定的小規模侵略があるんだという前提で防衛政策を立て、自衛隊を拡充していらっしゃる。しかし、ほとんどの軍事専門家はそういう可能性を否定しているわけですよ。  それから、先ほどちょっとお尋ねしたアメリカの制服組もそういう可能性を最近は否定していると、われわれはそういう報道に接しているんですが、その点はお認めになるのかどうか、まずそれからお答えいただきたいと思います。
  79. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 一般に、侵略規模態様というのは、作戦の目的、相手方の戦力、作戦等に対する見積もりのみならず、そのときの国際情勢と広範にわたる総合的な判断のもとに決められるものであると考えております。  そこで、限定的かつ小規模侵略というのがあるかどうかということでございますが、これもよくわからぬわけでございますが、私どもは限定的かつ小規模侵略というものにつきましては、一般には、事前に侵略の意図が察知されないよう侵略のために大がかりな準備を行うことなしに行われる、かつ短期間のうちに既成事実をつくってしまうことをねらいとしたものとなると考えております。  そこで、わが国防衛力が、このような侵略によって容易に既成事実をつくることができるほどに弱体であると判断される場合とか、日米安保体制に何らかの間隙が生じた場合には、将来の国際情勢等いかんによっては、わが国に対して限定的かつ小規模侵略が絶対起こらないということではない。むしろ生ずる可能性はなきにしもあらずであると、そのように一般論としては考えておるわけでございます。’  また、ただいま御指摘のアメリカの制服組の方にそういう意見があるということは、私どもとしてはまだ承知しておりません。
  80. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ドネリー在日米軍司令官の発言というものが最近報道されていますね。この中にも、やはりそういうソ連による直接的な対日武力攻撃というものの可能性は非常に小さいと、そういうことよりも、むしろソ連の考えておるのは海上交通に圧力をかけることだと、その方が可能性が大きいと言っておると。これは事実なんでしょう、いかがでしょうか。
  81. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えします。  先ほど防衛局長が答えましたように、わが国に対する侵略があるとしますと、およそ三つ考えられますことは、一つは、着上陸いたしまして拠点をつくるとか、一つの場合が考えられるわけであります。第二の場合には、日本の産業地域に対する破壊であります。第三が、いまおっしゃいました海上交通の妨害といいますか、そういう三つの場合が私どもはあり得ると考えているわけでございまして、ドネリー司令官が発言されたということにつきましては、直接立ち会っているわけでなくわかりませんが、その第三の場合のことを言われているのじゃないか。だからといって、第一、第二の場合が排除されているのだろうか、これはちょっと発言の内容をよく承知しておりませんので、コメントするわけにはいかない次第でございます。
  82. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただ、第三の場合をアメリカが重点を置いて日本に対してそれに即応するような防衛力の増強を求めてきている。むしろ第一のものは現実的に可能性が少ないと、そういうことを前提にして日本に対して防衛力整備要求してきておるんじゃないでしょうか。その点いかがです。
  83. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えします。  私どもがハワイ会談、それからワシントンにおける会談でアメリカ側と話し合いました際に、米国から要請のありました点は、陸海空を通じて、即応態勢、抗たん性継戦能力の向上を図るとともに、防空能力、対潜能力の向上を図ってほしいということを言われたわけでございまして、確かに対潜能力の向上、これは海上交通の保護に一番関係のある点に触れてはおりますが、ほかにもいろいろ意見としては出されているわけでございます。一環ではないかというふうに理解しているわけでございます。
  84. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 時間が非常に限られておりますのでね、長官。  アメリカが特に重点を置いて日本要求しておる点が海上及び航空戦力の向上にあることは、これは否定できないでしょう。どうです。
  85. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) その点を言っていることは事実でございますが、私が最初に申し上げました、陸海空軍を通じての自衛隊の不備な点を早急に改善してほしいということにもかなり力点を置いておりますので、海上交通の保護だけが重点ではないと考えております。
  86. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 時間の問題があるので、余りこの問題だけには限定できませんが、自衛隊の防衛戦略というのは、核の使用というのは安保条約に基づく米軍の核の使用、これをやはり考慮に入れて防衛政策を立てていらっしゃるんでしょうね。それは一朝有事の際の場合ですよ。いかがです。
  87. 塩田章

    政府委員塩田章君) 核を想定した防衛戦略は考えておりません。
  88. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただ、防衛局長予算委員会でおっしゃったガイドラインですね、ガイドラインの「日米防衛協力のための指針」、ガイドラインのIIに「日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」というのがありますね。そのさらにアラビア数字の2、「日本に対する武力攻撃がなされた場合」、今度は「(i)作戦構想」というのがまたありまして、その小分けに「(b)海上作戦」、「(c)航空作戦」とある。その中に「米海軍部隊は、海上自衛隊の行う作戦を支援し、及び機動打撃力を有する任務部隊の使用を伴うような作戦を含め、侵攻兵力を撃退するための作戦を実施する。」と、同じようなことが(c)の「航空作戦」にもある。この「機動打撃力を有する」という点は、これは核の使用を含むんだということを、たしか防衛局長、あなた予算委員会でおっしゃっておられるでしょう、いかがです。
  89. 塩田章

    政府委員塩田章君) アメリカの機動部隊が核を含んでいるかどうか、そのときのアメリカの戦略によると思いますけれども、ガイドラインでいまのような条文というんですか、ガイドラインを決めていった話し合いの中では、核については考慮しないと。要するに、通常兵器の場合の日米共同対処行動について考えようということを前提にいたしております。  したがいまして、いまの御指摘の点も、日本の防衛のための共同対処行動の際、日本の機能が及ばないところは米軍が補完するということで、いま御指摘のように書いてございますが、その場合の米軍といいますのも、核を前提にした米軍ではございませんで、核につきましては、ガイドラインの一番最初のところに「また、米国は、核抑止力を保持するとともに、」云々とこうありまして、それだけにとどめておりまして、いまの御指摘の個所の作戦行動の中で、米軍の核ということを前提とした話し合いをしたわけではございません。
  90. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 だってあなたは、これはやっぱり核の戦力を含むということをたしか予算委員会で言っておられるよ、そうでしょう。その言っておられることをまさか否定はなさらぬでしょう、いかがですか。
  91. 塩田章

    政府委員塩田章君) 最初に申し上げましたように、アメリカの機動部隊がその状況によって、これはもちろんアメリカ自身の戦略によるわけですが、核を持ってくるかもしれませんということは、これは申し上げたことはあります。それはアメリカが核抑止力を行使し、場合によっては使うかどうかもわかりませんけれども、アメリカとしてはそういうことはあり得るかと思いますが、ガイドラインで日米が研究しましたのは核ではなくて、通常兵器による日本の防衛についての研究をしようということでございますから、その点は一応区別してお考えいただきたいと思います。一般論として、アメリカの機動部隊が核を持っておるかどうかという話とは一応別でございます。
  92. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは最後にしますが、このガイドラインで核の使用を考慮しないというのはちょっとおかしいんで、この前文にあるのは、憲法上の制約とか、非核三原則は考慮しないということは書いてあるけれども、核の使用を全然考慮しないということは書いてないでしょう。だから、おかしいのよ、あなたの御答弁自体が。それから予算委員会での答弁、これは私もその現実の会議録をまた探して持ってくるけれども、時間がもう来たようですからこれで終わるけれども、ちょっとあなたの御答弁は、いま非核三原則を考えないということと、核の使用を考えないということをごっちゃにしておられるんじゃないか。
  93. 塩田章

    政府委員塩田章君) もちろん非核三原則があるということを前提にしておるということは前文にも書いてございます。それはもちろんそのとおりでございますが、この以降の防衛対策なり作戦構想につきましても、核につきましてはアメリカの核抑止力によるとだけ書いてございまして、具体的な個々の共同作戦の研究の中で、アメリカの核を前提にして、それを何というんですか、ここにアメリカの核がおるということを前提にして、日本とアメリカの共同対処行動を考えるということではございませんで、あくまでも通常兵器による作戦を考えておるということでございます。  ただ、最初に申し上げましたように、アメリカの機動部隊が核を持っているかどうかということは、私どもの関知しないことでございまして、私がいま申し上げているのは、アメリカの機動部隊は核を持っていないということを申し上げているわけではございませんで、その点はひとつ御了解をいただきたいと思います。
  94. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 きょうは午前中、これで終わります。
  95. 桑名義治

    ○桑名義治君 私は午前中二十分しかございませんので、防衛費関係について最初お尋ねをしておきたいと思います。  昭和五十七年度の防衛概算要求につきましては、防衛庁側の答弁ではまだまだ国民は納得していないのではないかというふうに思われるわけでございます。その点について、三点申し上げたいことは、現在の財政の再建下におけるいわゆる防衛費規模というこの観点。それから、国民に対しても犠性を強いている、いわゆる行財政改革を進めている中での防衛費のあり方というこの二点。それから、さらには政府がとっている防衛政策と要求している装備品との整合性の問題。この三点から見た場合、私はいままでの説明というものが、まだ明確に答えていないのではないかと、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、国民の多くが考えていること、感じている事柄は、防衛費は聖域扱いをしておりませんと、こう政府は答えておるけれども、しかしそういうことはあり得ないという見方、あるいはまた対GNPの比一%を守りますと、こういうふうに言明をしておりますけれども防衛費はどんどんといまから先も歯どめなく上っていくのではないだろうかと、あるいはまたこれから福祉予算などが削られ軍事予算に回されるのではないだろうかと、こういう不信感を持っていることは否めない事実だろうと思います。  確かにいろいろな世論調査等を見てみますと、自衛隊に対する認識というものは、約七〇%の人々が認めているということではございますけれども、反面にことしの十一月の二日に同じように世論調査が行われておりますが、いわゆる行革において、まず第一に削らなければならない予算は何かということになりますと、削減やむなしと挙げた項目の筆頭は、防衛費が五二%というふうな高率を示しているというのは、これもまた世論調査の上では厳然たる事実であります。そのほか経済協力が二二%、公共事業が一八%、こういうふうな比率国民の意識が表にあらわれているわけであります。  そういうことを考えてみますと、いままでの防衛庁のいろいろな説明というものが、余りにも抽象論に落ちていたのではなかろうかと、こういうふうに思うわけでございますし、また政府関係、あるいは議員関係から資料の提出を求められたときにも、これは明確な資料がなかなか出てこない、こういう事柄が過去にもたくさんあったわけでございますが、せっかくここまで防衛に対する国民のコンセンサスを積み上げてきたわけでございますので、こういった事柄によってこういったコンセンサスが壊れるというようなことがあるとするならば、これはまたゆゆしき問題にもなるわけでございます。  そういった意味からも私はいまから先の、資料に基づいた見通しあるいは試算の形でも提示をして、国民の皆様方の判断なりあるいは国会の判断、批判を受けて立つという、いい意味での積極的な姿勢が必要でなかろうかと、こういうふうに思うわけでございますが、この点について長官、どのようにお考えでございますか。
  96. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま五十七年度防衛庁予算概算要求について、いろいろ世論調査の例等引いて御指摘がございまして、私どもといたしましても一層国民の理解と御協力を得るように、さらに努力しなければならないと考えているわけでございます。御指摘の世論調査を見ますと、確かに防衛予算を削った方がいいと、かなり高い率で示されている部分もございますし、一方におきましてはふやした方がいいと、程度もございますが、全部合わせてみますると、削ったよりも多いという見方もできるような資料もございます。これはいろいろ調査の仕方等にもよると思うんでございますが、いずれにしましても、しかし相当割合の減した方がいいという意見があったということも事実でございますので、そういった点を謙虚に受けとめながら、さらに国民の御理解を得るように努力してまいりたいと、さように考えておるわけでございます。  そこで、行革と今回の概算要求との関係についてちょっとお時間を拝借して説明させていただきたいと思うのでございます。福祉の向上や教育の充実が重要であることは、私もよく認識しておるところでございますが、他方、国の防衛は国家存立の基本でありまして、防衛庁といたしましては、現下の厳しい国際情勢にかんがみ、防衛計画大綱を準拠として、できるだけ早期に同大綱に定める防衛力水準達成する必要があると考えているところでございます。  同時に、行政改革も政府が当面する最も重要な課題一つでありますので、防衛庁といたしましてもできる限りこの点に関する努力を払わなければならないと考えておるわけでございます。そして、行財政改革につきましては、臨調においてもすべての経費について聖域を設けず検討したと承知しております。このことは、今回の第一次答申で防衛についても言及されていることから明らかだと思うのでございまして、いずれにいたしましても、防衛庁としては第一次答申の趣旨を体し、防衛力整備に当たりましてもできる限り効率化、合理化等の努力をしてまいりたい、さように考えておる次第でございます。
  97. 桑名義治

    ○桑名義治君 防衛庁長官はそういうふうにおっしゃるわけでございますが、ここら辺を私は大幅に削減せいなんか言っているわけじゃありません。こういう国民の意識がある、そうならばその意識にこたえて説明でき得るだけの説明をしていかなければならない。理解を得られるような説明をしていかなければならない。このことを申し上げておるわけでございまして、そこら辺の整合性というものをもう少し明らかにしていく必要があるのではないか、こういうふうに申し上げておきたいと思います。  そこで、将来の防衛関係予算を見通す上で大きなファクターになるのは、これは後年度負担額についてであろうと思います。そこで、昭和五十七年度概算要求におきましては、後年度負担額の合計が二兆二千六百十五億円、対前年比で六七・七%増ということになっているわけでございます。これはちなみに昨年度防衛費と比較をしてみますと、昨年度の防衛関係予算費が二兆二十二百二億円、こういうふうに対比をしてみますと、それを上回っているというような膨大な数字になっているわけであります。  そこで、この歳出化の一応の試算について防衛庁は、当委員会その他の委員会等で、五十八年度が一兆七百億円、五十九年度が五千九百億円、六十年度が三千八百億円、六十一年度が二千二百億円、こういうふうに説明をしているわけでございますが、現在もこの防衛庁の説明をそのまま了解をしておいていいわけですか、どうでしょうか。
  98. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 防衛庁の五十七年度概算要求におきます後年度負担額約二兆二千六百億円の年度別金額といたしましては、現時点における防衛庁の試算といたしましては、御指摘のとおり五十八年度が約一兆七百億円、五十九年度が約五千九百億円、六十年度約三千八百億円、六十一年度約二千二百億円というふうに見積もっておることは御指摘のとおりでございます。
  99. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、防衛関係予算に占めるいわゆる後年度負担歳出化額の割合が、年とともに着実に増加をしているわけでございます。そこで、近年は約三割に達しているというのが実情だろうと思います。現状でさえも予算の硬直化をもたらす心配があるというふうに言われているわけでございますけれども、仮に防衛庁の試算どおりに行われるとした場合、たとえば五十八年度におきましては既定分だけで一兆七百億円、これに新規分の数百億円が上積みをされますと、どんなに低く見積もりましても一兆一千億円台になる、こういうふうに思われるわけでございますが、五十八年度にどの程度予算額を期待しているかはわれわれにはわかりませんけれども、後年度負担歳出化額が予算額の何割でおさまると、こういうふうに推定しておられますか。低く見積もっても三六%、可能性としては四〇%近くなるのではないか、こういうふうに思うわけでございますけれども、この点はどのようにお考えになっておられますか。
  100. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいまもお答え申し上げましたように、五十七年度概算要求におきます後年度負担額約二兆二千六百億円の中で、五十八年度歳出化予定額は現時点における見積もりでは約一兆七百億円ということでございます。  五十八年度防衛費が一体どのようになるかというお尋ねでございますけれども、五十八年度防衛費といたしましては、こういった歳出化予定額のほかに、人件・糧食費がどの程度になるか、あるいはその他の新規施策のための経費が一体どういうふうになるかというふうなことを見積もる必要があるわけでございます。そういった点につきましては、そのときの経済・財政事情等を総合的に勘案しながら検討されるべきものでございまして、現時点で五十八年度防衛費の全体が一体どういう姿になるかということについては見通しを申し上げることが困難でございまして、したがいまして、その全体の規模もはっきりいたしませんので、その中の歳出化分のシェアが一体どの程度になるであろうかということについても、具体的に計算をすることもまた困難であるという事情を御理解をいただきたいと思います。
  101. 桑名義治

    ○桑名義治君 先ほども申し上げましたように、それぞれの年度別でいわゆる該当年度の後年度負担額の歳出化額、これをずっといま先ほどから説明をされたわけでございますが、それに新規分を加えてくるとさらに大きないわゆる予算化が一応考えられるわけでございます。そういうことをいろいろと考えてみますと、これはこのままの状態でいくならば、よく言われておりますように、先ほど申し上げましたけれども予算の硬直化をもたらす心配があるのではないか、こういうように思うわけでございますが、この点はどういうふうにお考えになっておられますか。
  102. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 防衛計画大綱にも示してございますように、毎年度防衛費といいますのは、そのときどきの経済・財政事情等を十分に勘案しながら適切な規模のものにしていくという従来からの考え方をとっているわけでございまして、具体的にどの程度の計数にするかということは、現時点では予測を申し上げることはもちろんむずかしいわけでございますけれども、ただいま申し上げましたような観点に立ちまして、全体の防衛費というものをそういった経済・財政事情等と十分にらみ合わせながら、適切な規模のものにするように今後とも十分配慮をしていくという考え方でいるわけでございます。
  103. 桑名義治

    ○桑名義治君 なぜ私はこういうことを申し上げておるかといいますと、いわゆる防衛予算の総額が当該年度のGNPの一%以内という、この前提考えた場合に、果たしてこれが可能であるかどうかという問題が大きく前面に出てくるわけでございます。  そこで、さらに、近年幾らか減少傾向にありますけれども人件費糧食費の占める割合というものが、大体おたくの防衛白書等を見てみましても、五十三年度が五四・四%、五十四年度が五一・四%、五十五年度が四九・三%、五十六年度が四七・七%、大体四割を割ることはない、四〇%を割ることはない、こういう状況になっているわけでございますが、それと同時に、ここに挙がっておりますいわゆる固定経費、これをながめてみますと、大体八〇%が固定経費に食われてしまっている、こういう状況になっているわけでございますが、先ほど基地対策費は削っちゃならぬぞというような御議論もございましたが、基地対策やあるいは研究開発の分野、こういう分野にこのような状況の中で十分な対応ができるだろうか、こういう心配があるわけでございますが、そうなってまいりますと、早くも五十八年度でGNPの一%以内という枠が崩れてしまうのではなかろうか、こういうふうに私は心配をしているわけでございますけれども、あくまでもこのGNP一%以内という枠を堅持するのかどうか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  104. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいま五十八年度見通しを参考にしながら、GNP一%の枠を堅持するかどうかというお尋ねでございました。結論から申し上げますると、私どもは一%の枠を変える考えは現在持っておらないわけでございます。  そこで、近い将来の見通してございますが、確かに後年度負担の増加の見込み額は、現在の試算によれば、五十八年度に関する限りかなり多くなる可能性が多いわけでございます。この点につきまして、特定年度に集中しないようにさらにいい方法はないか、その辺もさらに工夫、検討いたしているところでございます。  また、三十万人に近い人員を擁する防衛庁でございますから、人件費が四〇%以上を占めるということにつきましてはやむを得ない点があるわけでございますが、人員の増加につきましては極力抑制する、増員をお願いしましても必要最小限に限定するという方針を貫いてまいりたいと思うわけでございます。  その他修繕費あるいは施設費、さらには施設庁の民生安定費を含めての基地対策費等につきましても、現下の事情か言いますると、なかなか削減しがたい面があるわけでございますけれども、極力抑制を図って、限られた財源の重点的配分を図っていきたいと考えているわけでございます。現在、そういう考え方で明年度概算要求の編成並びに今後の折衝に当たりたいと考えておる次第でございます。
  105. 桑名義治

    ○桑名義治君 このGNPの一%以内という防衛費でございますが、過日の行革委員会の中では、防衛庁長官は一%を超え得るやにも聞こえるいわゆる微妙な発言をなさっています。その後、総理の答弁の中で、GNP一%以内は絶対に堅持すると、こういう明確な御答弁があっているわけです。いまの長官の御答弁の中では、GNP一%以内はあくまでも堅持すると、こういう御答弁があったわけでございますが、防衛庁のお考えは行革のときのお考えと変わったわけですか。
  106. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 私は対GNP一%の枠を変える考えはあるかというお尋ねに対しまして、変える考えはないとお答えしたわけでございます。しからば、五六中業ではどうかというお尋ねでございましたんで、そうなりますと四、五年先のことになりますので、その場合にはGNP自身がどうなるかわかりませんし、また防衛予算の中身もどうなるか、現在私ども来年の春ぐらいをめどに五六中業も作成、検討しておりますし、その辺との関係もございますので、的確なことを申し上げるわけにはまいりません。  また、閣議決定を見直してみましても、当面と書いてございますので、未来永劫固定的なものではないというふうに考えておりますという趣旨のことを申し上げたのでございます。
  107. 桑名義治

    ○桑名義治君 その後で総理が一%以内は、これは堅持するというようなお話がございましたので、結局いま長官の言われた意味もよくわかりますけれども、その後での総理の答弁が長官の御答弁を否定なさったということでございますので、その点をぼくは聞いているわけですよ。
  108. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 現在、対GNP一%の枠を変える考えは持っておりません。その点は一致していると考えております。
  109. 桑名義治

    ○桑名義治君 まだぼくは釈然としないものがあるわけでございますが、このような事態に陥る大きな原因というものは、一つには正面装備に力を入れ過ぎているんではなかろうか、こういうふうに思わざるを得ないわけであります。  いま長官も言われましたように、五六中業云々という言葉が出ました。これも当然正面装備に力を入れるということになるわけでございますから、したがって、そこら辺に大きな問題があるわけでございますが、いまの時期に正面装備に力を入れるのが適当であるかどうかという問題ですね。どこまで力を入れるのかという、この問題があるわけでございますが、わが国の防衛構想と、それを具現する装備の選択は、果たしていま考えておられるものでよいものであるだろうか、どうだろうかと、これは一面やっぱり世界の情勢というものを見なければなりませんし、あるいは日本の国情あるいは日本の財政、こういった一切のものをにらみながら、ここら辺はやっぱり勘案していかなきゃならない問題だろうというふうに思うわけでございますが、その点から考えた場合に、正面装備に力を入れ過ぎたんではなかろうか、質的変換をもう少し求めていくべきではなかろうか、こういうふうに思うわけでございますが、その点はどういうふうにお考えですか。
  110. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 正面装備がかなりのウエートを占めていることは事実でございます。また、将来の方向としてその点がどういうあれになるか、私ども重大な関心を持っておるわけでございます。  当面の基本方針としましては、防衛計画大綱水準達成すると、これは国防会議でも御承認願っておるところでございますし、しばしば総理防衛力整備基本方針としてお述べになっているところでございますので、私どもはそれをひとつ基本方針として進めてまいらなきゃいかぬと思います。ただ、その場合に、先生御指摘のように、正面装備だけ整いましてもほかのものが伴わない、飛行機はできても飛行場がない、弾がない、油がない、これでは片ちんばになるわけですから、そういうことのないように総合性を保つためには、全体として毎年度綿密な配意を加えていかなければならないと思うわけでございます。行政改革と財政再建の最中にこういったことを達成するのは容易でないわけではございますが、私どもとしましては一層勉強もし、工夫もしてやっていきたい。  たとえば、五十七年度概算要求に当たりまして、艦艇、航空機のFRAM化、航空機についてはFRAM化という言葉は用いられておりませんが、要するに、いままでの耐用年数の来ましたものについて安全の点を厳重に審査した上、さらに時間が延長できるものがありとすれば、そういったものは積極的に取り上げていく。あわせて装備されている兵器等の近代化を図るということをいたしますれば、まるまる新品を調達する場合に比べまして相当経費が節減できるという点もございまして、五十七年度概算要求にもそういった点を一部取り入れているわけでございますが、さらに、工夫できる点があれば一層工夫いたしまして、財政再建下における必要最小限防衛力整備を図るように努力してまいりたい。また、そのことが対GNP一%を守るということにつながるものであるというふうに考えている次第でございます。
  111. 桑名義治

    ○桑名義治君 時間が来ました。
  112. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 午前の質疑はこの程度にいたしまして、午後一時三十分まで休憩をいたします。    午後零時四十分休憩      —————・—————    午後一時三十三分開会
  113. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) ただいまから安全保障特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国の安全保障に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  114. 江島淳

    ○江島淳君 私は防衛に関しまして、日本が西側自由主義諸国陣営の一員として応分の役割りを遂行することが必要であると、そういう立場から二、三いろいろ御質問いたしたいと思うわけでございます。  私の率直な感じといたしましては、ただいまいろいろ政府のとっておられる立場が、言うなれば少しなまぬるいんじゃないかと、果たしてこれでいいんだろうかということを非常に感じるわけでございます。こういう意味でやはり将来の日本を思うと、世界戦略上の立場に立って、日本の国がこれから生きていくために真剣に考えていかなけりゃならぬじゃないかということを考えておりますので、二、三その点について御質問いたしたいと思うわけでございます。  きょうもテレビで言っておりましたけれども、諸外国と日本との貿易の摩擦がますます顕著になってきたと、そして、米国では自動車だけでなくて、さらに一般のものに関してもこの摩擦が広がらんとしておりますし、先日はECへ日本の経済界のトップが行かれましたが、これに対しても大変風当たりが強かったということが報道されております。私が思いますのは、日本は何といっても資源が少ないので、輸出があってこそ初めて経済が成り立つものだという感じがいたします。そのときに、ただいまのいろいろな世界の情報を見ますと、日本は、防衛はすべてアメリカに頼り、世界の情報も余り知らなくて、ぬくぬくと他人が日本を守ってくれるということに頼って裕福にやっていればいいわいと、そういうふうな態度でおるということで、非常にこうかつなる日本だとか、あるいはきらわれ者の日本と、そういう呼び方をされておるというのが実情じゃないかと思います。  こういうのを受けまして米国の議会においても、先日からいろいろ新聞にも出ておりますが、GNPの一%以上にしろとか、あるいは日米の安保改定を求める提案、これはすぐ撤回したということでございますが、あるいは安保税を払えとか、いろいろなことが議会でも起こっておるということでございます。そういうことがいまのいろいろな背景ではないかと思うわけでございますが、そういうことを受けまして私は外務大臣お尋ねいたしたいと思うわけでございますけれども、外務省でお出しになった外交青書と防衛庁の方で出されました防衛白書とを読んでみますと、安全に対するトーンと申しますか、ニュアンスと申しますか、それが私は大分違っているんじゃないかという感じがするわけでございます。  まあ外交青書の方を見ますと、非常に等方位外交ということが強調されておりまして、そして何よりも必要なのは総合安全保障であるというふうに強調されておるやに感じました。確かに等方位外交も必要でございます。しかし、私が思いますのは、対外経済協力で幾ら経済協力をしておっても、それと国を守るということは別なんじゃないかと。やはり国防というものは、相手日本侵略するという意図を起こさせないだけの力を持ってこそ初めて国が守れるんじゃないかと。等方位外交によって平和が保たれるということは、まあ穏当ではありませんけれども、メルヘン的な発想であって、神のような人がいればそれはそうかもしれませんけれども、実情には合わないんじゃないかと思うわけでございます。  たとえば、等方位外交ということから申しますと、外交青書の中でも韓国と北朝鮮とのところを見ましたら、韓国とも当然友好関係を増していくと、北朝鮮とも経済・文化をこれからまた増していくんだというふうなことが書いてございますけれども、先日韓国に参りましたときに感じましたのは、残念ながら韓国と北朝鮮とは非常に対立関係というか、そういうものが根強いものだということを感じたわけでございますが、こういうことからいきますと、日本先ほど申しました西側陣営の一員であるということを踏んまえた場合には、余りそういうふうな八万美人的な外交というものものは、今度は西側陣営に対する信頼を失うんじゃないかという感じがするわけでございます。  これに対しまして、防衛白書を見ますと、当然ながら国防の必要ということを相当にはっきりと位置づけておられるという感じがするわけでございます。そういうことで、私はやはり午前中の堀江先生のお話にもございましたけれども、白書というものは、外交青書であれ防衛白書であれ、いまの鈴木内閣の一貫した方針のもとに出されておるということでありますので、その二つのトーンが変わっているようじゃ困るんじゃないかという感じがするわけでございますが、それについての外務大臣のお感じを伺いたいと思うんでございます。
  115. 園田直

    国務大臣(園田直君) 御質問の中に等方位外交というお言葉がありましたが、これは私が使っている言葉で全方位外交のことをおっしゃるんだと思います。
  116. 江島淳

    ○江島淳君 そういうことでございます。
  117. 園田直

    国務大臣(園田直君) 全方位外交とは等距離外交とは違います。意見が対立をし、あるいは違っている、利害関係が対立する国とも話し合いだけはしたいと、こういう意味でありまして、もちろん東西関係の厳しい今日、西側陣営、西側陣営の中でもヨーロッパ、米国、あるいは西側陣営にあらざる国、あるいはソ連、北朝鮮、こういうのは関係が違うことから当然でありまして、決して同様にやろうという考え方ではございません。ただ話だけはしないといかぬと、こういう意味でございます。  かつまた、御注意をいただきました青書と白書が意見が若干違っているじゃないかと、御指摘のようなことがあると私も自覚をいたしております。これは防衛庁の方は、不測の場合に国をあらゆる手段で守るというのが防衛庁のお仕事であり、外務省の仕事は、そういう不測の事態が起きないように事前に努力をするというのが外務省の仕事であります。したがいまして、そういう意味から青書と白書が重点の置き方、具体的な述べ方等において若干差異があると存じますが、これは性格上私はやむを得ないと、こう思っております。  ただし、おっしゃいました質問の青書といい白書といい、いずれにしてもわが国として総合安全保障を確保する必要があること及び西側陣営、すなわち先進民主主義社会の一員として、わが国が世界の平和と安定のために国力、国情にふさわしい役割りを果たすべきことの重要性は指摘しておりまして、この基本については両白書の間に相違はあってはならぬと考えております。
  118. 江島淳

    ○江島淳君 私は防衛白書と言うと、やはり戦うことが専門の省でございますから、これは戦うためにやったんだという印象を深めるんじゃないかと。ですから、むしろ外務省の方が、戦うということじゃなくても、国の守りが大変必要なんだというトーンをもうちょっと出していただいた方がかえってバランスがとれるんじゃないかなということで申し上げておるわけでございます。私に与えられた時間がたった三十分でございますので、まだお聞きしたいと思うのでございますけれども、次に移らしていただきます。  今度は自衛隊についてですが、私もよくわからない点がたくさんありまして、いろいろいままでの政府の解釈などを読んでおりましても、よくわからない点があるということで、二、三お聞きしたいわけでございますが、まず自衛隊は軍隊なのかどうかということになりますと、軍隊でないというふうな解釈になっているということでございますが、この点について簡単に御説明いただきたいと思います。
  119. 塩田章

    政府委員塩田章君) 軍隊にはいろいろな定義があろうかと思いますが、通常の観念で考えられております軍隊は、外敵と戦いを交えることを任務とし、その活動については交戦権の行使に当たるものというふうに言ってよろしいかと思います。自衛隊は外国による侵略に対しまして、わが国を防衛する任務を有するものではありますけれども、交戦権の行使は認められておりません。そのほか憲法上各種の厳しい制約下にあります。そういう意味では、自衛隊を通常の観念で言う軍隊とは異なるというふうに私ども考えておるわけであります。
  120. 江島淳

    ○江島淳君 まあいろいろ解釈はあると思うんですけれども、この防衛白書を読んでみますと、軍事力、軍事力というのはたくさん使ってあるわけですけれども、そういうことからいきますと、自衛力と書いてなくて、こういうところじゃもう軍隊と全く同じ軍事力と書いてあるわけですけど、その辺での矛盾は感じられないんでしょうか。
  121. 塩田章

    政府委員塩田章君) 確かに軍事力ということで包括的な表現をしたところがあるかと思いますが、いまのような軍隊という意味を持って自衛隊の場合を軍事力と言ったつもりではございませんで、その辺、自衛隊と軍隊との区別ははっきり申し上げておるわけでございますが、それを含めまして、その前提に立って包括的な意味で軍事力という言葉を使っている個所もあろうかと思います。
  122. 江島淳

    ○江島淳君 簡単にお答えだけでいいんですけれども、この場合に自衛隊相手がいると思うんですが、これを読んでみますと、いろいろソ連の潜在的脅威という言葉が書いてございますけれども、敵国と言うと非常にどぎついですけれども、やはりそういうときの想定する対象としては、自由主義陣営の一員ということもあるし、ソ連ということを対象にしておるというふうに解釈してもよろしいわけでしょうか、簡単にお願いします。
  123. 塩田章

    政府委員塩田章君) 私ども特定の国を敵国として対象に考えておるわけではございません。
  124. 江島淳

    ○江島淳君 敵国としてと言うよりも、とにかくだれかわからないところにいろいろ配備をするということはないと思うんですが、その点がいろいろないまの国会答弁その他を見ても、もうすべてが悪く言えば三百代言的にごまかしてあるんじゃないかという感じが非常にするわけです。ですから、なかなか言えないかもしれないけれども、とにかく潜在的脅威としてソ連というものがあると、そういうものに対していろいろな自衛隊対策を練っているんだというふうに私は解釈するわけです。  それから、日本には集団的自衛権が国際法上あるけれども、憲法解釈上好ましくないから行使しないということが、いまの政府の統一見解だということになっておりますが、私は日米の安保条約を見ますと、これは何といっても集団的自衛権の枠に入るんじゃないかと思うんですが、そういう点に関しまして外務省はどういうふうに安保条約を考えておられるんでしょうか。
  125. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。  ただいま先生おっしゃいましたとおりに、わが国は国際法上は個別的、集団的自衛権の行使をする権利が認められておる。ただ、憲法上は集団的自衛権の行使というものは認められないということでございまして、安保条約自体は、先生御承知のとおりに、そういうわが国の憲法上の規定というものを踏まえてつくられております。したがいまして、先生御承知のように、安保条約の五条におきまして、わが国の領域に対する武力攻撃があった場合にのみ日米両方が共同して対処すると、こういうことでございまして、わが国の集団的自衛権の行使を前提としたアメリカに対するわが国の対日防衛義務というようなものは規定されておらないわけでございます。
  126. 江島淳

    ○江島淳君 そういうことからいきますと、たとえばヨーロッパかどこかで戦争がアメリカとソ連の間で発生したと、そしてアメリカの船を沈めるためにソ連の潜水艦が日本の三海峡を通っていくと、そうしてインド洋かどこかの方でアメリカの船が沈んでおるけれども日本関係ないから三海峡の封鎖はできませんという解釈ですわ。
  127. 塩田章

    政府委員塩田章君) 御指摘のとおりだと思います。
  128. 江島淳

    ○江島淳君 そういうことらしいんですが、私たちが感じておりますのは、集団的自衛権を行使しないというのは、きわめて日米安保条約も片務的であって、韓国ですらお互いの相互の安全保障条約を結んでおる。そうしますと、いろいろ新聞にも書いてございますが、これからは日本もこれだけ景気がよくなってきたんだから、こういう片務的じゃなくて、アメリカからお互いに相互安全保障条約に変えようじゃないかという改定要求が出てくると、そういうときも日本は憲法に反するからということで、それは困りますというと、結局安保条約も破棄するようになると、いろいろな相互の核のかさですか、これもなくなるということになるわけでしょうか。
  129. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) まずお尋ねの件の第一段、アメリカが日本に対して安保条約の双務化を求めてくるかどうかということでございますが、私たちの承知している限りで、アメリカの行政権の中にそういう考え方はございません。そうすれば、アメリカは安保条約を破棄するんではないかというお尋ねでございます。これは非常に仮定の問題でございますが、一般論としてお答えすれば、安保条約を結んでいることは、日本の利益のみならずやはりアメリカにとっても利益であるという認識に立っているわけでございまして、たとえば、アジアの安定と平和について日米安保体制が果たしている役割りについては十分アメリカも認識している。そして、アメリカ側としてはアジア政策の中でやはり日米の関係が非常に重大であるということを言っておりますので、いまお尋ねの件についてお答えするということになれば、申し上げたような次第ではないかと思います。
  130. 江島淳

    ○江島淳君 しかし、常識で考えまして、アメリカ人になって考えても、アメリカの船がぼかすか沈められておるのに、日本はそういうことに手をこまねいている。そうして一方では自動車やテレビがじゃんじゃん入ってくるというふうなことになれば、国民感情としてもこれでいいのかというのは私は当然起こってくるんだろうと。ですから、そういうことを想定をしない方がおかしいんじゃないかと思います。  しかし、とにかく時間がありませんので次に進ましていただきますが、そういうふうなことなんかもいろいろ勉強しますと、初めからすべて憲法九条の解釈の仕方によって苦しい答弁になっておるという感じがいたしますが、いまここで改憲論を言うとますます時間がございませんが、たとえば、そうしますと日本は個別的自衛権しかないということで限定しても、いま米国がいろいろ求めておる日本に対する防衛力の増強というのは、すべて個別的自衛権の中での行使を求めておるんだと思いますけれども、午前中からも、また先日来いろいろ討議されておりますが、GNPの一%オーバーするしないということはございますけれども、私は、この個別的自衛権の中で西側陣営の一員として果たすためにどういうふうなことが必要かということが先決問題であって、一%というそれに押し込んだりあるいはそれにならすようにするとかいう御答弁というのは本末転倒じゃないかと思うわけです。  したがいまして、一般国民としては、できるだけ税金も安くて軍備に対する金が少ない方がいいというのはあたりまえですけれども日本が将来貿易立国で生きるためには、これはどうしても必要なんだということをもう少し政府としてはPRをやって、そうしてそういう必要なる金というものは一%は超えても出すということにやるべきであると思うんですが、そういうことに対して簡単にお答えいただきたいと思うんです。
  131. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えいたします。  防衛力の現状を見ますと、御指摘のようにいろいろおくれている面があるわけでございます。そこで防衛庁といたしましては、西側諸国の一員として国力、国情に応じ防衛努力を行うことにより、できるだけ早く防衛計画大綱に定める防衛力水準達成したいと考えているわけでございます。  そこで、御指摘の一%を超えないというめどの問題でございますが、これは昭和五十一年十一月の国防会議及び閣議における決定でございまして、これを現在変える考え方は持っておりません。しかし、この決定の中には当面とありますように、何ら期限を固定したものではないわけでございまして、内外諸情勢の変化に伴って必要があると認められる場合には、改めて検討される可能性のあるものであると思います。いずれにいたしましても、現在は変える考えは持っておりません。
  132. 江島淳

    ○江島淳君 それからもう一つは、またちょっと問題は変わりますが、せっかくの貴重なお金を使ってつくった自衛隊でありますので、これが本当に実際に戦力のある自衛隊であってほしいと私たちは思うわけでございますが、午前中もいろいろお話ございましたが、たとえば弾薬資材あるいはいろいろ後方部隊等の関係がうまくいっているのかと、これも一説によれば三日間ぐらい弾を撃てはなくなるんじゃないかというふうな話もあるというふうに聞いております。それから訓練にしましても、昔はいろいろ鬼軍曹とかなんとかおって相当訓練したわけでございますが、私たちがときどき自衛隊に見学に参りましたときの兵隊さんたちは、本当にこれでいいのかという感じもするような訓練をときどき見かけるわけでございます。  それからもう一つは、シビリアンとユニホームの関係でありますけれども、こういう議会とかいろいろなところに答弁に来られる方は皆シビリアンでございますけれども、そういう点で、実際に現場を預かっているユニホームの声が本当に生で伝わっているのかなと、その辺のふんまんがあるんじゃないかなと、いろいろそういうふうな感じもいたしますが、これを一々伺っておりますと時間がかかるのでございますけれども、そういうふうなことを総体的に伺いたい。  それからもう一つ、有事法制の研究の問題も、五十三年の九月に一応答申が出て、それからことしの四月にも何か出ておりますけれども、それもやはり早急に解決しなくちゃならぬ問題が、まだいつまでというふうな期限が切られておらない。そういうことで、本当に能力を有する自衛隊としてこれでいいのかということに対して簡単にお答え願いたいわけでございます。
  133. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛力整備につきましては、先ほど申し上げましたように、防衛計画大綱に従い、限定的かつ小規模侵略に対しては、原則として独力でこれを排除し得るようなバランスのとれた、質の高い防衛力を目指してこの整備の鋭意検討を行っているところでございますが、現状におきましてはまだ大綱規模に達していないほか、装備の老朽化、継戦能力の不足、即応態勢の不備、抗たん性の不足等種々の問題を抱えているところであり、必ずしも武力攻撃に対して独力で十分に対処できる段階に来ているとは考えておりません。  そこで、ただいまお話がございました弾薬の備蓄、これは継戦能力の向上の一環でございますが、まだまだ備蓄が少ないのでございまして、これをできるだけ早く充足する必要がございます。また、予備品、予備自衛官等につきましても現状では十分でないと考えているわけでございます。これらの不備、不足を早急に改善し、できるだけ早く大綱に定める防衛力整備達成すべくできる限りの努力を積み重ねていく所存でございます。  また、訓練の点につきまして、実情をごらんになりまして緩い面があるのではないかというような御指摘でございますが、そういった点、御不満を聞くこともあるわけでございますが、私どもといたしましては、できる限り練度の高い自衛隊員を育成すべく最善の努力を傾注いたしておるわけでございまして、また、御指摘の点につきましてはさらに検討を加えて改善を図っていきたいと考えているわけでございます。  それから、シビリアンと制服の関係でございますが、配置につきましては、専門知識を要するものは制服の方でそれぞれの要所に配置する。政策担当の部門、主として内局でございますが、これにはシビリアンを配置すると、一応分担するような仕組みになっておるわけでございますが、事柄によりまして相互の連絡につきましては緊密な連絡を図るように講じておるわけでございまして、御指摘のようにそごがあるものとは考えておりませんが、なおしかし、これだけ防衛力整備なり運営が重視されている時代でございますので、一層気をつけてまいりたいと考えている次第でございます。
  134. 江島淳

    ○江島淳君 あと有事法制のこともございますが、もう時間がございません。  もう一つ岩国基地の問題でございますけれども、岩国基地はアメリカの基地でございまして、これが町中にあるということで沖合いに出すと、沖合いに移設してくれという話で非常に地元では燃えております。私も山口県の出身でございますので非常によく知っておりますけれども、本当に事故が起こったらこれは大変なことだなと思うわけでございます。いままでずっと調査段階で防衛施設庁の方の調査費でやっておったということでございますが、何せ非常に金がかかることなので、なかなかその辺の踏ん切りが大変なんじゃないか。しかし、これはもしもそういうアクシデントが起こったらば、それこそまた大変なことになるということで、むしろそういう防衛施設庁とかなんとかのような金じゃなくて、本物のやっぱり国防の一環としての認識というものでやらないと、とてもこれはできないんじゃないかという感じがいたしますので、それについての前向きの姿勢ということをぜひお願いしたいと思うわけでございますが、よろしゅうございますでしょうか。
  135. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 岩国飛行場の沖合い移転問題につきましては、防衛庁といたしましても、現状が非常に狭隘である、また、この飛行場の重要性からかんがみまして改善を加える必要があるということは、承知しておるわけでございます。ただ、この具体の方法としましては、沖合いの移設について御要望があるわけでございますが、この問題を解決するために安全の確保と障害緩和を図りつつ、とり得る経済的かつ合理的な施策をどうしたらいいか。その点の調査検討をするため、昭和五十五年度に引き続き、現在五十六年度においても必要な調査を行っておりますので、この調査結果をまって慎重に検討し、対処いたしたいと考えております。防衛庁全体で取り組んでおるわけでございますが、いい調査ができましたら、これを実施する場合には、やはり施設関係でございますので施設予算所要のものを確保してまいりたい、さように考えておる次第でございます。
  136. 江島淳

    ○江島淳君 毎年その辺同じお答えでございまして、調査は、私がずっと見せていただいている限りにおいてはもうやり尽くしているということだと思うんです。ですから、私が一番心配しますのは、先ほどから何遍も申しておりますけれども、岩国から基地を撤去しろという声が非常に地元から起こっておりますので、何かアクシデントが起こったならば、そういう声をもう無視できなくなるということで、いままでのように調査をしている、調査をしているということだけでは、私は大変に問題じゃないかということで申したわけでございます。  もういよいよ時間がなくなりましたので、最後に、私が先ほどから申しましたように、日本も西側陣営として非常に防衛という大変な役割りをしなくちゃならぬというときに対して、私たちが感じておりますのは、すべていろいろなエクスキューズと申しますか、何か野党の先生方から言われることに対する言い逃れ的な言葉が非常に多いと思うわけでございますけれども、もう少し、日本国民のために本当に必要だということを、私は政府としても国民によくPRする必要があるんじゃないかということでいろいろお伺いしたわけでございますが、そういうことに対しまして最後に、外務大臣防衛庁長官から一言ずつでもそれに対するコメントをいただいて、私の質問を終わらせたいと思います。
  137. 園田直

    国務大臣(園田直君) 安全保障はきわめて大事であります。特に東西関係の厳しい今日では重大な問題でありますから、それぞれ立場は違いますが、防衛庁の方ともよく連絡をとって努力をする所存でございます。
  138. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) いろいろ有益な御意見を聞かせていただきましてまことにありがたく感謝をいたしておるわけでございます。  防衛庁といたしましては、憲法並びに国防の諸原則のもとにおきましてできる限りの防衛力整備を図って、またその運用の改善を図りまして、国民の期待に沿わねばならぬと考えておりますので、御指摘の点につきましては、さらに念頭に置きながら改善充実を図ってまいりたいと考えております。
  139. 江島淳

    ○江島淳君 終わります。
  140. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 午前中の審議に続きまして塩田防衛局長にちょっと質問をいたしますが、ガイドラインの中に言われるアメリカの海軍部隊の機動打撃力、アメリカの空軍部隊による航空打撃力、これが核を装備しておるんではないだろうかということでお尋ねをしたわけでありますが、これは昭和五十六年三月十四日の予算委員会の会議録第九号、これの十九ページにありまして、結局塩田局長の御答弁というのは、機動打撃部隊は核装備をしておるということを前提にして、ただ、「わが国の領域内には核を持ち込ませないということを堅持することによって、」「非核三原則に反しない」、こういう答弁をしていらっしゃいますね。それから「いまの機動打撃部隊の中に確かに核装備をした艦艇が入ることはそれは考えられるわけです。それは私どもも否定をしていないわけですが、そのことと、わが国の非核三原則とは」「矛盾しない」、こういう御答弁がある。大村大臣は、「日本の周辺を行動する第七艦隊と米軍部隊が、いわゆる有事の際に核を装備するであろうことは考えられるところでありまして、これは米国の核抑止力の一部を構成するものであると考えます。」と。つまり、有事の際にアメリカが艦隊なり空軍部隊が核を装備するということは考えられると。ただ、核抑止力だということが、大村大臣の御答弁。塩田局長は、領海の中に入れないから非核三原則と矛盾いたしませんと、こういう答弁をしていらっしゃる。  ですから、この点ちょっとやはり釈明をなさる必要がありますよ。いかがです。
  141. 塩田章

    政府委員塩田章君) まず、アメリカの機動部隊、航空部隊あるいは空母部隊が有事の際に核を装備するであろうということは、もちろん私どもにはわかりませんけれども、装備するであろうということは考えられるところであります。  先ほど来のお尋ねは、ガイドラインのこの共同作戦の計画の研究に当たって、アメリカの機動部隊なり航空部隊が核を持っておることを前提にしてその計画を立てるのかという趣旨のお尋ねであったと私思ったものですから、それは違いますと。共同作戦計画の研究はアメリカの核を前提にした研究をするつもりはございませんということを申し上げたわけでございますが、アメリカの機動部隊自身が、あるいは航空部隊自身が核を持ってあろうということは、先ほど来申し上げているように、考えられますし、それからアメリカの方の立場から言えば、日本の防衛のために、また日本防衛の義務を負っているわけですから、そのためにアメリカがどういう形で日本の防衛義務を遂行するか、その際に核を持ってくるか持ってこないかというようなことは当然アメリカ側の判断でございまして、私どもはわからないわけでございます。先ほど申し上げましたように、まあ持ってくる少なくとも可能性はあるだろうと。しかし、ガイドラインの研究においては、その核の存在を前提にした作戦計画を立てようというわけではありませんということを先ほど来申し上げたつもりでございます。
  142. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただ、有事の際にアメリカが核を持って来援するということを頭の中に入れておられて、それに対抗するたとえばソ連の艦隊なりソ軍の航空戦力が核を持っていないと断ずることはできないでしょうね。ですから、双方が持つわけです。あなた方は、これは抑止力だから核を投げ合うことはないんだという、それを前提にして一切の計画を立てていらっしゃるわけでしょう。いかがです。
  143. 塩田章

    政府委員塩田章君) 少なくともガイドラインの研究なり防衛庁防衛計画の策定におきましては、いま先生のおっしゃいますように、核についてはアメリカの核抑止力にまつということでございますから、相手方との間に抑止が働いておるという前提に立って、私どもは核についてはそれ以上核を前提にした研究はしない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  144. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 確かにこの防衛白書を読んでみましても、核戦争を想定した作戦というものは全くないわけです。しかし、いまはレーガン大統領といえども、部分的な、地域を限った、あるいは核兵器の小規模なもの、そういう限定はあるけれども核戦争というものは否定できないということを、あり得るということを言っているわけでしょう。しかし、それが全面戦争に発展するおそれがあるので、何としても食いとめなきゃいけないということを言っておるわけです。これはあなたもお認めになるでしょう。  そうとすると、核抑止力があるから核戦争は全くないんだと、そういう断定のもとに、そういうことを一切考慮しない防衛戦略、考慮しない作戦計画というようなものは、どう言うか、非常に空想的、楽天的なもので、いまはもう現実的でなくなっているんじゃないだろうか。いかがですか。
  145. 塩田章

    政府委員塩田章君) いま御指摘のような、レーガン大統領にいたしましても、アメリカのいろんな関係者が限定核戦争というようなことを言っているじゃないかというような点につきましては、私どももっとよくいろんな資料を見た上でお答えすべきだと思いますが、いずれにしましても、基本的にはやはり核抑止戦力ということで言っておられるんではないかというふうに私どもはいまの時点では理解いたしておりますが、つまり核を使うということでなくて、抑止するという前提がアメリカの基本的な前提であろうというふうに私どもはいま理解をしておるところでございます。  その際に、先生はいずれにしましても核のことを抜きにした防衛戦略というものは空想的であるとか、ナンセンスではないかという御指摘でございますが、私どもしばしば申し上げておりますように、核については防衛計画大綱でもそうですし、それからガイドラインでもそうですが、アメリカの核抑止力にまつということを申しておるわけです。その限りにおいて核を無視しておるわけであって、やはり核の抑止力というもの、アメリカの核抑止力にまつという、そういう立場で日本の防衛戦略を考え、またアメリカとの間のガイドラインの研究をしておると、こういうことでございます。
  146. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 アメリカの核抑止力にまつという思想は、これはアメリカの核がソ連の核戦力に対して圧倒的な強さを持っていた時分の六〇年代の思想で、もうすでにそれは崩壊しておる。これはもうキッシンジャーもたしか二年前にNATOの方へ行って、ブリュッセルでそういう演説をしておるわけでしょう。だから、あなた方の方はこわいものには触れないと、そしてただ、アメリカの核があって抑止するから大丈夫ですよというその憶測のもとに一切の計画を立てている。それは国民に真実を知らしめない非常にひきょうな態度で、一朝有事の場合には核戦争になるかもしれませんよと、そうしたらこういうことになるんですよということを全部国民に知らせて、国民に本当にわが国の防衛はどうしたらいいんだと、わが国の外交はどうあるべきかということを考えさせないで、一番恐ろしいことは隠しておいて、ただソ連の脅威であると、だから自衛力、自衛力であるというような、そういうきわめて部分的なことだけをとらえ来って、そうして国民を欺いておると私は考える。防衛庁長官、いかがでしょう。
  147. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えします。  米ソ間の核戦力の比較については、かつての非常にアメリカが優位に立った時代とは違いまして、総合的に見てかなり接近してきているということは事実であると思うんでございます。しかしながら、わが国といたしましては、いま政府委員が述べましたとおり、核の脅威に対しましては米国の抑止力に依存するということを基本方針として決定しているわけでございます。その趣旨のことを防衛計画にもうたっておりますし、またガイドラインにもうたっていると。それはそれほど古い時代ではございません。ガイドラインは五十三年に決まっているものでございまして、こういった基本方針は現在なお続いておるわけでございます。  また、一体わが国に対して核戦争を含む大規模戦争の差し迫った危険があるかということにつきましては、先ほどもお答え申し上げましたとおり、米国自身の努力も始まっておりますし、また関係諸国の防衛努力も進められておるわけでございます。また、一方におきましては核兵器の問題につきまして話し合いをしようということも行われているわけでございまして、差し迫った危険があるものとは私ども考えておらないわけでございます。さらばといって、これは放置されて許されるべき筋合いのものでございませんので、それぞれの立場において努力を続ける、こういうことでございますので、私どもとしましては、日本としていま定めております核の脅威に対する対処の方針としては、現在決めている方針を変える必要はなく、続けていくことでいくべきである、さように考えているわけでございます。
  148. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまの問題、外務大臣はどうお考えでしょう。
  149. 園田直

    国務大臣(園田直君) 東西の関係が厳しくあることは御承知のとおりでありまして、これに対して力の均衡というものが平和の基礎になって、両陣営が軍備増強をやっている。この軍備増強というものがはずみをつけて不測の事態を招いてはならぬという、この第一の懸念であります。  第二番目には、とはいうものの、両陣営の力の均衡というものは、今日においてはやはり一つの平和の基礎でありますから、この均衡は保ちつつ、軍縮その他の対話によって軍備増強を逆に軍縮の方へと何とかして進めて、水準を低い水準に置いて、力の均衡を保ちつつ、一方には話し合い、軍縮等で戦争の危険を防ぐように努力しなきゃならぬというのが大多数の国々の考え方であり、かつまた米ソ両国についてもそういう考え方、必ずしもないではない、こういう状況であると考えております。
  150. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 結局、防衛白書などで強調しております、国を守る心であるとか気概であるとかいうようなことを言っておりますけれども、それは核戦争がない場合にはそういうことは理論的には成り立つかもしれませんが、一たび核戦争が起きた場合には、そういうようなものはもう一切無になってしまいますわね。これは東大の関教授、小林教授、皆、核戦争が起きればもう安全保障というのは成り立たないんだと、日本の場合、こう言っております。この点は肯定されますか。大臣いかがです。両大臣に伺います。
  151. 園田直

    国務大臣(園田直君) 核戦争を含む戦争が起きないように努力することが真の安全保障であると考えております。
  152. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えします。  核兵器が一たん使用されました場合には、日本のみならず世界各国民に致命的な打撃を与えることは必至であると思うわけでございまして、そういったことが起こらないためにもあらゆる努力をしなければいけない、そう考えるわけでございます。また、そういった全体の枠の中でわが国としましては核兵器以外の通常兵器の分野において必要な防衛力整備する必要があると考えているわけでございます。
  153. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 核戦争が起きた場合には、もう原理的に安全保障は成り立たないと、こういう原理的に成り立つ、成り立たないということをもっとお認めになるのかお認めにならないのか、その点いま両大臣ともぼかしてお答えになりました。そういう事態にならないように努力すると。外務大臣としては私はそれが第一だと思うんですよ。大臣もそう思っていらっしゃると思うんです。ですから、先ほど青書と白書の違いについて御質問があったんですが、違うのがあたりまえなんで、防衛庁と同じことを外務大臣が言ったんじゃ何のための外務大臣か、全く存在意義がなくなるんで違わなきゃいかぬと私は思いますよ。  ですから、防衛庁核戦争になったら防衛が成り立たないんだと。だから核戦争を何とかして防ぐ、戦争を防ぐのだという、そのお気持ちがやはり白書に私はなければいかぬと思うんです。ところが、白書はそういう自分の都合の悪いことといいますか、こわいことといいますか、それは一切触れない。ただもう核抑止力に頼って限定的な小規模戦争だと、防ぐんだ、愛国心だと、それだから私は白書というのはきわめて一面的であり、空想的であり、そしてそれはひきょうでもあり、国民を欺くものでもある、こう断ずるわけなんです。だから、正直に大臣核戦争があったら防衛は成り立たないんだ、だから戦争はどうしても防がなければいかぬのだ、そのやっぱりお気持ちは白書の中に出すべきじゃないでしょうか、いかがでしょう。
  154. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 核戦争が行われれば、甚大な打撃を受けるということは当然でございますけれども、これを防止するためには、各国と協力して努力を払わなければいけないわけでございます。わが国としましては、非核三原則を堅持しておりますので、直接核兵器を整備する立場にございませんので、軍縮なり軍備管理の点につきましては、所要の協力なり努力を払うということを白書の該当個所において書いてある次第でございます。  なお、私はあるいは先生のお考えと違うかもしれませんが、核兵器が甚大な影響があるからといって、これが偏ったままで放置していいとは考えておらないわけでございます。ある程度のものを整備して均衡がとれるものにするということが、かえってその行使を抑制することになるという面もあろうかと思うわけでございまして、いずれにいたしましてもわが国の立場としてはこのことを直接なし得る立場でございませんので、そういった軍備の管理なり軍縮の点につきましては、国際間の協力によって目的を果たすということを関係の章において述べているところでございます。
  155. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただいま大村長官は、核戦争が起きれば甚大な被害が起きるというところまではお認めになったようであります。  核戦争においては、安全保障が原理的に成り立たないというその問題を全面的に肯定した御答弁ではなかったと思いますが、甚大な被害を受けるとおっしゃった。外務大臣はいかがでしょう、安全保障は原理的には核戦争においては成り立たない、この点はお認めになりますか。
  156. 園田直

    国務大臣(園田直君) 核軍縮を初め、兵器制限等、各国が熱心に言っておりますのは、やはりそこに問題があるわけでありまして、核戦争が始まれば人類というものはもうなくなる時代だと学者は言っておりますが、私はやっぱり核戦争が始まったらもう人類の生存というのはほとんどなくなる、こういうふうに考えております。
  157. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まあ、言葉はかわっていますが、結局お認めになったと同じですね、人類の生存がなくなるというんですから。それじゃまあ結構でしょう。  私は、やはりその事実はあまねく国民にお知らせになりまして、そして本当に防衛問題を考える、どうしたら国民の生存と安全が保てるかということを、その前提を抜きには私は考えさしてはいけないと思います。この点は、大臣たびたびお答えになりましたが、防衛局長どんなふうにお考えですか。
  158. 塩田章

    政府委員塩田章君) 全く同感でございます。
  159. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 次に、アメリカが最近国会で日本防衛費は最低一%以上でなければいけないというような決議案が上下両院とも提出されておるということを聞いておりますが、これは外務当局ではどういうふうに把握していらっしゃいますでしょうか。
  160. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いま御指摘の点は、まず十月の二十二日に、ヘルムズ上院議員が上院の本会議において安保条約を現状に合致したものに改定するための交渉を行うべし、そういう決議案を提出いたしましたけれども、パーシー上院委員長の提言によってこの決議案は撤回されたわけでございます。それから引き続きザブロツキ下院議員あるいはレビン上院議員等から、日本防衛力の増強を求める決議案が出てきているわけなんです。いまお尋ねの件は、これを日本政府はどういうふうに考えているのかということがお尋ねの骨子だと思いますけれども、アメリカ側は現在の厳しい国際情勢のもとで、自分たちが国防力の充実に努めている、そして同じように経済力においてより余裕がある日本あるいは同盟国に対して防衛力の増強を努めてほしいという気持ちが、一つその決議案の背景にあるんではないだろうかという気がいたします。  それから、これは本来直接論理的には関係ない問題でございますけれども、日米間に現在貿易上の不均衡がございます。そういう貿易上の不均衡が日本の防衛に対する期待ということと絡まって出てきたというふうに考えるわけでございます。しかし、いずれにしても政府としては総理以下たびたび御答弁しておりますように、決議案の有無にかかわらず、日本としては日本自体でその国力、国情に応じて自衛力の整備を図っていくというのが基本的な方針でございます。
  161. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その背景なり趣旨は大体局長の御答弁でわかりましたけれども、外務大臣、立場を変えて考えてみますと、日本の国会が仮にアメリカの軍事費は何千億ドルでなければならない、それ以上でなければならないというようなことを決議したとしますと、アメリカとしてもその僣越さに驚くんじゃないでしょうか。私はやはり他国の国会が決定すべきこと、他国の主権に属することを外国の国会が決議する、外国の政府がいたけだかに要求する、そういうふうなことはもう明らかに内政干渉になると思えるんですが、これは総理大臣も不快感を表明したということを聞きましたが、外務大臣としてはこれは内政干渉になると思われないでしょうか。
  162. 園田直

    国務大臣(園田直君) この決議案は採択されてもおりませんし、どのようになるかわかりませんですし、その文言次第でございますから、内政干渉かどうかということをきめつけるわけにはまいりません。しかしながら、日本の防衛というのはやはり先ほど申し上げましたとおりに核戦争が起きてはならない、そのためには力の均衡が必要でありますから、西側陣営が団結をして力の均衡を保つ必要がある、こういう意味において防衛力というものは大事であるということは私は考えております。しかしながら、それはあくまで自主的に判断をし、相談ずくでやるべきであると考えております。
  163. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 部内で相談をして、そして、その相談の中でこうしてほしいというような要求を出すということならば、私もそれは理解できると思います。しかし、いま伝えられているところでは、日本防衛費は最低GNPの一%以上であるべきであるというような決議案だということです、報道されたところによりますと。外務大臣、文言によるということをおっしゃいましたね。希望するというような文言ではないようですよ。であるべきであると。これはもう明らかに日本の内政に対する重大な干渉と考えざるを得ません。これに対しては、外務大臣としては何らの措置も講ぜられずに拱手傍観をしていらっしゃるんでしょうか。私はこういう内政干渉は許さないということを、やっぱり何らかの外交的ルートを通じて意思表示すべきだと思いますが、いかがでしょう。
  164. 園田直

    国務大臣(園田直君) その文言によりまして日本が何%にふやすべきであるとか、あるいはどういう税金を取るべきであるとか、これならば別でありますが、そのようにアメリカの行政府日本と折衝しろと、こういうことになってきますと、これは米国政府に対する要望でありますから、なかなか内政干渉とはきめつけがたい、こういう意味であります。  かつまた、このような動きを、しかし、無視するわけにまいりませんので、これに対して日本の実情を御理解願うような努力をしなければならぬと考えております。たとえば安保ただ乗りなんという意見が出ておりますが、日本はやるべきことは相当やっておるわけでありまして、たとえばGNPの問題にいたしましても、NATOと日本と比べまして、年金その他を含めば、日本はいまでも相当NATOよりも上にいっておるはずでございます。  かつまた、防衛費の増強の比率を言いますと、NATOと比べものにならないほど、年々日本は増加をしているわけであります。かつまた、GNP一%というのは、これはあらゆる面から軍事大国にならずという一つの歯どめのためにやっている問題でありますから、これは簡単にそう左右されるべきものではないと考えております。
  165. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうも平素明快な御答弁をなさる外務大臣にしては、ちょっと何かよどみがあるようですね。これは立場を変えてお考えください。日本がアメリカの防衛費について、また、アメリカのいま軍事行動について、直接こうあるべきだというようなことを決議したとしますか、それはもう大変なアメリカに対する干渉であり、不快感を与えることだと思いますよ。ところが、アメリカがやれば日本はしようがないと、それに横手傍観するというのはちょっと国民的な矜持から言いましてもおかしいんじゃないでしょうか。やっぱり外務当局はそういう点、日本の主権といいますか、国民的矜持といいますか、それを毅然として持って対等の立場で外交交渉していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  166. 園田直

    国務大臣(園田直君) その点はおっしゃるとおりでありまして、日本は主権を守り、かつまた互角の資格で外交交渉をやるべきでございます。
  167. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それでは、対等の立場でこの問題についてもそういう内政干渉にわたるようなアメリカの国会決議がないように、何らかの手を打つおつもりがありますか。
  168. 園田直

    国務大臣(園田直君) このような意見が起きないようにいろいろ日本の実情を理解をされ、日本の意図も理解をされるように努力をしなきゃならぬと考えておりますが、相手は議会でありますから、これまた、うかつなことをやるとこちらが逆に干渉するということになりますから、その点も十分注意をしてやりたいと思います。
  169. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 御心配は要らないでしょう。相手が不当なことをしようとしているときに、こっちがやめてくれと言うのは決して内政干渉にはなりませんよ。ですから、その御心配は要らないと思うんですが、まあ余り一つのことをあれしてもいかぬからこれでとどめて、善処をひとつ極力要望するものであります。  最後に、武器の技術供与について、外務省は安保条約の第三条を盾にこれは武器の禁輸三原則に優先するという解釈をとっていらっしゃるようですね。これは余り現実的にいま差し迫った問題ではないようですが、しかし、こういう解釈をとってアメリカの要求を受け入れるということになりますと、これはやはり武器禁輸三原則というものは、アメリカには適用がないんだということになりますね。そういう結果を外務当局としては法解釈の上ではとっていらっしゃるわけでしょうか。
  170. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) たびたび他の委員会でも御答弁申し上げておりますけれども、本件について政府で統一見解ができているわけでもございませんし、またいま考えられているというふうに報道されているのは一つ考え方でございます。  ただ、先生が若干誤解されているといけないと思いますので申し上げますが、私たちの一つ考え方の中にも、武器禁輸三原則あるいは政府統一見解というのがございます。これはやはり基本的にもアメリカには適用されるという点が一点でございます。  しかし、他方、アメリカと日本との間は安保条約等特殊な関係にある、そこをどういうふうに調節していくかというのが現在検討しているところでございます。
  171. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 何か新聞報道だけで私が理解しておったんだけれども、そうすると、まだ武器禁輸三原則というのは、アメリカを除外したものだと断定したわけではないわけですね。ただ、安保条約第三条の解釈からいって、武器禁輸三原則とどういうふうに調整を図るべきか、それを模索している段階である、こういうふうに理解してよろしいですか。
  172. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 大体、寺田委員がお尋ねになったとおりでございまして、私たちとしては関係省庁含めて検討している、その検討している中身は他方において武器禁輸三原則あるいは政府統一見解があって、他方において日米は特殊な関係にある、その点について検討している、こういうことでございます。
  173. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私は、条約もその運用に当たっては日本の法令と矛盾しないように解釈し適用せらるべきである、したがって外為法とかあるいは輸出貿易管理令というようなもの、これを全く無視しても構わないんだと、形式的に条約は優先するんだという解釈をとることは、法的整合性というものに反すると私は考えている。できるだけ全体の法秩序の中において、相互に矛盾しないように解釈し適用していく必要があると考えておる。  それから、また、武器禁輸三原則というのは、これは政策だから条約上の義務というようなものを考えるに当たっては、そういう政策にとらわれる必要はないんだというような解釈を外務当局がおとりになっているというようなことも、これは新聞報道だけで見たわけで、これは真偽をやっぱりお聞きせぬといかぬから。そういうふうにあなた方は解釈していらっしゃるのですか、それともそうじゃなくて、やっぱり条約の解釈に当たっても政策の適用というものを無視はできない。その政策と条約の適用とはやっぱり整合するように、調和するように考えるべきだという立場をとっていらっしゃるか、どちらです。
  174. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ただいま先生のおっしゃいましたことと、私がこれから申し上げることは本質的に違わないというふうに思うわけでございますが、一般論として申し上げれば、一つの条約というものがあり、それに基づいて一連の権利義務関係があるという場合に、仮に一国の政策がそういう条約上の義務と反するというようなことはそもそもあり得ないわけでございまして、そういう政策というものが仮にもその条約と抵触すると申しますか、相反する面があるということがありますれば、それはやはり条約に合うように政策というものが運用されるべきものであろうというふうに考えるわけでございます。  他方におきまして、一つある種の政策というものがございまして、これからどこかの国と条約を結ぶという場合に、当然政策というものに反する条約を結ぶというようなことは、これは自己矛盾でございますから、そういうことはあり得ないわけでございまして、やはりそういう政策に合致した条約というものを外国と結んでいくと、これは政府の立場としては当然のことだろうと思うわけでございます。
  175. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 確かに通常の政策でありますと、あなたのおっしゃるようなことになると思うんですよ。ただ、武器禁輸三原則であるとか非核三原則であるとか、そういうものは日本国憲法の平和主義の原則、憲法第九条、前文、そういうようなものを総合したものから流れ出ている、いわば憲法上の当然の政策といいますか、そういう重みがありますね。だから私は、非核三原則にしたって、いま局長がおっしゃったように、元来安保条約の六条から言えば、アメリカは当然核を積んでおろうが積んでおるまいが、日本の港を利用でき得べきはずですよ、それは許されるんだから、条約上は。しかし、核を積んでおっちゃいけないんだということで、それは入れない、それは非核三原則上、そういう条約上のこちらは義務の履行もあえて拒み得るとしているわけですね。何も法律によって拒んでいるんじゃない、政策によって拒んでいる。だから武器禁輸三原則でも同じですよ、政策は条約上の義務に劣後的な地位にあるとばかりは言えない、優先する場合もある。だから私は、武器禁輸三原則というものは、どんなに憲法上から来る重要なわが国の政策であるかというその位置づけによって決すべき問題だと思いますよ、いかがですか。
  176. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。  非核三原則の問題につきましては、先生御承知のとおりに、条約上米国が核を積んで自由に出入りできるということになっているわけではございませんで、まさに日本のそういう非核三原則というものを前提といたしまして、事前協議制度というものがあって、核の持ち込みについては事前協議の義務をアメリカに課して、それに対して日本が拒否をするという条約上の権利があるという仕組みになっておるわけでございます。したがいまして、核の持ち込みと申しますか、非核三原則の問題と申しますか、その問題に関する限りは、条約上の権利義務関係と非核三原則というわが国の非常に重要な政策との間に何ら抵触関係と申しますか、相反する関係というものはないということだろうと存じます。  それから、先生の御質問の第二点の武器禁輸三原則との関係について申し上げますければ、先般来御答弁申し上げておりますとおりに、政府といたしましてはまだ本件について最終的な見解と申しますか、立場というものがまだ決まっておるわけじゃございません。ただ、いろいろ御質問がありました過程でお答え申し上げておりますことは、安保条約のたとえば三条でありますとか、相互防衛援助協定の一条でありますとか、そういう条項につきましては、別にアメリカから武器あるいは武器技術につきまして具体的なあるいは個別的な要請がありましたときに、それに一々応じなければならないというような条約上の義務というものはそこからは出てこないと、しかしながら、そういう条約の相互防衛援助協定なら相互防衛援助協定にございます防衛分野におきます相互協力という一般的な義務協力関係というものと武器禁輸三原則との関係、これをどういうふうに考えるべきかということについて現在まだ政府として検討中でございますと、こういうことを申し上げているわけでございまして、およそ防衛分野における相互協力というものを一切やらないんだというようなときには、その相互防衛援助協定の一条あるいは日米安保条約の三条との関係におきましてやや問題があるんではないかと、そういうことで目下検討しておるということを申し上げておるわけでございます。
  177. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなたのおっしゃることはよくわかるんですが、非常に条約などの解釈を誤解していらっしゃると思うんですよ。事前協議協定も何も核を持って入っちゃいけないなんということは書いてないんです。あれは御承知のように、重要な装備の変更等については事前に相談しろということなんです。その適用は非核三原則という政策から、事前協議協定で入っちゃいけませんよということが言えるので、その覚書から来るものじゃありません、やっぱり政策から来ている。あなたはこういう事前協議協定があるから、だから構わないんですとおっしゃるけれども、それは全然解釈を誤っている。やっぱり非核三原則というものがあって、初めて事前協議協定の適用の場合にお断りいたしますということが言えるんです。だから、政策と条約の解釈というものをあなた方は根本的に誤っていらっしゃるんですよ。その点をやっぱり考えていただきたい。  それから大臣、この武器禁輸の問題について、どういうふうにあなたはこれから対処なさるんですか。そのことをお伺いいたしますと同時に、通産の方も来ていらっしゃるようですから、通産の立場もこの際はっきりと言っていただきたい。時間が参りましたのでそれをちょっとお伺いしたい。
  178. 園田直

    国務大臣(園田直君) なるべく簡単に申し上げますが、日米技術交流の問題は、米国の方からわが国に対して技術交流が一方的な流れである、米国から自分だけが技術をもらっていると、これはひとつ相互的にやってもらうべきだという期待の表明はあったわけでありますが、さてどういう技術をどうしてくれというまだ具体的な話には全然なってない、これが第一の前提でございます。  第二番目には、いろいろ御意見の中にありますとおりに、われわれも考えておりますのは、基本的には米国についても、武器輸出三原則及び政府の統一方針がございます。これに基づいて対処する考えではありますが、一方いま言いますように、日米安保条約関連で果たして片務的でいいのか、双務的でなきゃならぬのかという問題が出てくる。これをどのように調整していくかということで、いまいろいろ案が出ているわけであります。いま出ております案は、政府の統一見解では全然ございません。政府関係ありません。外務省でもまだ最終段階ではありません。したがって、通産省から何とおっしゃるかわかりませんが、私はまだ通産省と外務省の話し合いは全然できてない、こう思っております。
  179. 広海正光

    説明員(広海正光君) ただいまの外務大臣の御答弁と同じことでございますが、通産省といたしましても、基本的には米国につきましても武器輸出三原則及び政府統一方針に基づいて対処する考えであるということでございます。  ただ、対米関係につきましては安保条約等との関連もございますので、この点につきまして目下外務省等で検討中だというふうに承知しております。その検討の出るのを待って、政府全体としてどうするかということを検討していくことになろうかと思います。先ほど来御指摘のような考え方につきましては、実はこれまでのところ何らどこからも出ておりません、説明を聞いておりません。したがって、私ども検討いたしておりません。もしそういうような考え方につきまして説明があれば、その段階検討することになろうと思いますけれども、いずれにしましても武器輸出三原則及び政府統一方針というものを十分に踏まえまして慎重に検討したいと思います。
  180. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 まだあと一分あるようですから、では通産としてはやはり武器輸出三原則というようなもの、閣議で決まりました統一方針、そういうものはあくまでも守りたいと、そういうお気持ちでいらっしゃると理解してよろしいか。
  181. 広海正光

    説明員(広海正光君) 基本的にはそのとおりでございます。ただ、アメリカとの関係につきましては安保条約等との兼ね合いがございますので、その点について外務省等において検討しているというふうに承知しておりますので、その結論の出るのを待って検討をしたいということでございます。かように考えております。
  182. 桑名義治

    ○桑名義治君 最近ヨーロッパにおきましては、戦域核の問題をめぐりまして西ドイツのボンでは二十五万人の人々がデモをしたと伝えられておりますし、また、ベルギーのブリュッセルにおきましても、あるいはパリ、ローマ、ロンドンでも多数の人々がこの問題について大変な関心を寄せながら、デモが行われているというのが報道をされているわけでございますが、このデモに対して、あるいはこういったヨーロッパの人々の行動に対して果たして両大臣はどのように認識をなさっておられるのか。また、わが国としてはどういうふうな対応を示そうとお考えなのか、まずお伺いをしておきたいと思います。
  183. 園田直

    国務大臣(園田直君) ヨーロッパの核反対、平和運動の想像のできないような、いままでにない勢いでやっておられることについては非常な懸念を持っております。心配をいたしております。と申しますことは、いままでは大体ああいう運動は一つの団体だけでありましたけれども、今度はこれにドイツなどは与野党が入っているわけでありまして、これからすると、これは簡単に見逃すべき問題じゃない。やはりヨーロッパの国民の方々が、一方には力の均衡で戦争があってはならない、一方にはその核が使われるようなことだけは断じて避けなきゃならぬ、戦争だけは避けなきゃならぬという非常な深刻なあれから出てきていることじゃないかと。俗な言葉でありますけれども、いまヨーロッパで非常に心配しておりますのは、各国で、選挙を見ておりますと、選挙がだんだん一つの方向に動いてきているような気がいたします。もう一つは、非常に心配なことでありますが、死ぬるよりも赤くなった方がいいという言葉がはやっているそうでございます。これはよくわかるような気持ちがいたします。しかし、そこを何とかして西側陣営が努力をして、理解をして、こういうものがヨーロッパで納得されながら本当の戦争反対、そして西側陣営の団結ということに進むように努力をしなきゃならぬのではないか、こう思っておるわけでございます。
  184. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 外務大臣が申されたとおりだと思います。ただ、ヨーロッパの国々と日本と違う点は、七九年のNATOの閣僚理事会におきまして戦域核戦力の配備につきまして共同決議をいたしておりまして、これと並行して対ソ軍備管理の交渉を行うべし、いわゆる二重決議が現に行われているという事実があるという点でございます。いずれにいたしましても、関係国におきまして核の問題に対する新しい動きがあることは事実でございます。この問題が円満に解決できることを私どもとしては強く期待いたしておるわけでございます。  また、関連いたしましてスウェーデンの領海内にソ連の潜水艦が故障か何かで擱座したとかいう問題が、西側諸国の重大な関心事になっているという事実もごく最近ございますので、両大国間の今後の折衝なり何なりによりまして、各国の心配している問題がいい方向で解決されていくことを、私どもとしては期待していきたいという気持ちも持っております。
  185. 桑名義治

    ○桑名義治君 いま防衛庁長官からお話がありましたように、戦域核の配備につきましては、いわゆる共同決議をやったということはよく存じておるわけです。その辺まではよかったと思うのです。ところが、こういうふうないわゆる国民挙げての核に対する反対運動が熾烈になってきたというのは、やはりレーガン大統領の発言が一つの火つけ役になっていることは事実だろうと思います。その内容については私たちは新聞による以外に知る手だてはなかったわけでございますが、しかし、レーガン大統領は十日の日にホワイトハウスの記者会見で、仮説としながらもヨーロッパで全面戦争には至らない、核兵器による応酬はあり得るという意味の発言をしているわけでございますが、これが大きなやはり火つけ役になったことはだれも否定することはできないだろうと思います。こういったレーガン大統領の発言に対して両大臣はどのようにお考えになりますか。
  186. 園田直

    国務大臣(園田直君) 先ほど申し上げましたとおりに、一つの平和というものを目指す方向のために二つ、一つは力の均衡、一つは軍備縮小、対話、この二つが同時に努力されなければならぬと思っておるわけでありますが、具体的には今月の末からジュネーブ、さらに続いて米ソの外相会談と、逐次軍備縮小、兵器制限に対する話し合いが始まるものと見ております。しかし、これはお互いになかなか、正直に言うと両方で思惑があってやっていることでありますから、簡単に会議が開かれて簡単に結論が出るとは私は想像いたしません。これは一月や半年、もっと長くかかるかもわからない。  一方にはこういう交渉を中心にしてにらみながら、両方がいろいろ取引をやっている、こういうのが率直に言えば話であります。たとえば、一方が核兵器をアジアに向けるぞとこう言うと、片っ方は戦域核はどうすると、こういうふうに応酬をやっている、こういうことだと思いますので、これに対してわれわれが一々それに反対するわ賛成するわということは、この応酬の取引というものに水を差すことになりますので、一つ一つを冷静に見ているところでございます。
  187. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 米国内で国務長官や大統領やあるいは国防長官がいろいろなことを言われているんじゃないかということは、私も新聞報道等で承知しておるわけでございますが、決定した方針ということではないように承知しているわけでございます。また幅広い選択の中の一つ可能性の問題として、選択的に発言されたのではないかという節もあろうかと思うわけでございまして、いずれにいたしましても、レーガン大統領の発言について誤解が生じていることは遺憾であり、今後こういうことがないよう期待したいと思っておるわけでございます。
  188. 桑名義治

    ○桑名義治君 いずれにしましても、過去の戦争というものは、やっぱりこういう一つの経過をたどりながら戦争が起こってきた。いわゆる不信が不信を呼び、さらにそれが不信を呼んで最終的には戦争に入ってしまう、こういう過去の事例があるわけです。そういった立場から考えますと、レーガン大統領がここに来てこのような強硬な発言をしたということは、レーガン大統領が大統領になったいきさつ、あるいは大統領選挙のときのいわゆる次元、そういうものから見れば、レーガンの姿勢が如実に表に出てきたなと、力の姿勢が出てきたなと、こう思わざるを得ないわけではございますけれども、ヨーロッパの民衆がこういうふうに核に対する猛烈ないわゆる反応を示してきたと、これは非常に憂慮すべきことであるという意味の先ほど御答弁があったわけでございます。  そういう御答弁の上に立って、レーガン大統領のこの発言を考えた場合に、私たちはどうしてもこれを黙視するわけにはいかないわけでございますが、ただ単にこれに水を差すことが是か非か、いろいろな応酬があると、その反面に、裏ではまた核装備についての削減の交渉事も行われているではないかと、こういう御答弁ではございますけれども、われわれは唯一の被爆国として、私はここで何らかのアクションは起こすべきではなかろうか、こういうふうに思うわけでございますが、この点外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  189. 園田直

    国務大臣(園田直君) 軍縮や平和を目指すための話し合いについては極力われわれも意見を申し、よその国とも相談をしてやりたいと思うわけでありますが、これは国連の舞台でもあることでありますが、その中軸たる米ソがお互いに駆け引きで物を言っている場合に、うかつに一方に偏した発言をしますと、それがまた逆な効果を及ぼしますので、公式な席上ではコメントを避けた方がいいと思っております。
  190. 桑名義治

    ○桑名義治君 そうしますと、今度はちょっと観点を変えますけれども、ヨーロッパの動きというものは日本も決して無関係ではあり得なくなるということは、これは考えられることだと思います。そこで、それに呼応したように、米国のロストウ軍縮局長ですか、去る十日ワシントンで同じように記者会見をいたしまして、レーガン政権の包括的な核軍縮政策を明らかにしたわけでございますけれども、その中で、現段階ではアジアにいわゆる米戦域核を配備する計画はないと、こうしながらも、米国は将来、必要と見れば日本、中国を含むアジア地域に米製の戦域核ミサイルを配備すると、こういうふうに語ったというふうに報道されているわけでございますけれども、この真意は大体どういうことなのか。  私たちは、こういう問題はその時期に来て初めて態度を決めるのではなくて、われわれは非核三原則といういわゆる国是を持っておるわけですから、したがって、いまここではっきりした姿勢をやはり示しておく必要があるのではなかろうかと、こういうふうに私は思うわけでございますが、その点、真意とそれから大臣のお考えはどうなのか、これを二点お聞きしておきたいと思います。
  191. 園田直

    国務大臣(園田直君) ロストウ局長の記者会見は、新聞記者の方からの質問に答えて、アジアの方に配置する可能性はあるかと、こういう質問を受けて、必要であれば配置する可能性はあると、なおその後、ただし現在アメリカの政策に採用されているわけではないと、逆にこう言っているわけであります。したがいまして、巡航ミサイル初め、ただいま御承知のとおり開発中のものであり、これが開発されてからそれぞれのところに配属されて、それがあちらへ行くかアジアヘ来るかと、こういう段階があると思いますが、その段階のときにこちらが余り早目にどうこう言うべきことじゃない。  ただし、いかなる場合も日本には非核三原則がありまして、日本に持ち込みは事前協議の対象であると、いかなる場合もノーと言うと、こういう方針だけはきちんとしておるわけであります。
  192. 桑名義治

    ○桑名義治君 この問題は核の問題でございますので、やはり非核三原則を国是とする日本国としてはしっかりした考え方、しっかりした方針をさらに固めておく必要があるのではなかろうかと、こういうふうに思うわけであります。  先ほどから核戦争が起こった場合の話があっておりますが、もろ刃の剣と一緒でございまして、確かに抑止力は働くかもしれないが、一たんこれが働いた場合には大変ないわゆる地球滅亡、人類滅亡の危機を招くことは事実でございます。そういった立場から考えますと、やはりヨーロッパの人々が戦域核の戦争が行われるんだという、それはソ連とアメリカとの間のいわゆるお互いの戦争はもうできない。そうするとそれぞれの出先で、これは言葉悪いかもしれませんが、そういったところで核戦争が行われる、代理戦争だと、そういう場にさせられるんだというような危惧を持つのは、私は現在の世界の情勢の中から、ヨーロッパの人々の感じ取っている事柄というのは納得できると思う。そういう意味からもこれは他人事ではないと、日本もそういった国是というものを踏まえて、きちっとした態度でもって今後も臨んでいかなければならないのではないかと、こういうふうに思うと同時に、そういった核戦争が二度とこの地球上で起こらないような最大の努力を続けていくことが最も大切なことであろうと、こういうふうに思うわけでございます。  その次の問題でございますが、先ほどから米議会の対日防衛費の増額要求の動きについての御質疑が行われたわけでございます。その御質疑をお聞きをしておりましたけれども、確かにアメリカ自身のこういった議会の動きというものは、日本が余りにも経済大国になった。それと同時に、その源泉はあくまでも安保ただ乗り論だ、アメリカに防衛をさせて、そして経済活動に専念したがために、このようないわゆる経済的な格差も生まれてきたんだと。経済の問題と防衛の問題というものは、確かに別次元の問題ではございますが、これはお互いに連動していることも、どうしても否定することのできない事実であります。  そういった立場から考えると、これはあくまでも別次元の問題だからということで経済問題をおろそかにすることもできないし、それからまた安保のただ乗り論、これもまたおろそかにするわけにもいかない。お互いにこれは並行的にやはり解決をしていかなければならない問題だと、こういうふうに思うわけでございますが、政府としてこの問題をどういうふうにお考えになっているのか。先ほどの問題では国の方針に従って決定するんだというふうなお話がございましたけれども、これは防衛上の問題に対するお考えだろうと思いますが、これは経済との関連の中でどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、御答弁願いたいと思います。
  193. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先ほども御答弁いたしましたように、経済と防衛の問題というのは全く別個の問題でございます。ただいま委員が御指摘のように、感情的にそれは絡まっているというのは事実でございます。私が先ほど申し上げましたのは、防衛の問題について国力、国情に応じて日本としてやれる範囲でやっていくということでございます。  他方、貿易の問題について現在問題になっているのは対日赤字の問題でございます。これにつきましては、近く閣議も開かれるということを私たちも承知しておりますし、いずれにいたしましても、アメリカ側が日本に対してどういうふうにしてほしいかという期待、それも十分聞きながら、日本側として、たとえば市場の開放であるとかその他の問題で、一つ一つ問題をやはりじみちに片づけていかなければならないというふうに考えております。
  194. 桑名義治

    ○桑名義治君 したがいまして、米議会の対日防衛費増額の要求の問題がいま御答弁がございましたけれども、マンスフィールド大使は、このことに対して対日防衛圧力は逆効果を生むんだというような発言をされているわけであります。さらに報道によりますと、マンスフィールド大使は百五十億ドルもの対日貿易赤字は容認できないと断言しながらも、対日貿易赤字はアラスカ原油の対日供給で解決できると、米側が思っているほど日本の市場は閉鎖的ではない、アメリカ市場がそれほど開放的というわけでもない、アメリカ人ももっと日本で積極的な売り込みを努力すべきである。ここらは大変に友好的な発言がなされているわけでございます。それと同時に、冒頭に申し上げましたように、日本に余り強い圧力をかけるべきではない、それは逆効果になる、こういうような話もしているわけであります。  先ほどまた答弁がございましたように、NATOよりも日本の方が防衛費については、年金を含めますとさらに上である。あるいはまた、NATOよりも年々の増加率は高い。こういうような意味合いもマンスフィールド大使は一応認めているわけでございますが、この発言に対して、マンスフィールドに何かのアクションを起こす、これも一つの有効的な手段ではなかろうかというふうに考えるわけでございますが、この点はどういうふうにお考えですか。
  195. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 最後の御質問の趣旨が私ちょっと必ずしも正確に聞き取れなかったんでございますけれども、マンスフィールド大使がそういうふうな発言をされているので、たとえば、マンスフィールド大使に対して、さらに日本考え方を説明しろということでございますか。——御承知のとおり、マンスフィールド大使はすでに在日五カ年になりまして、日本の事情については非常に熟知されている方でございます。マンスフィールド大使と日本政府との間には、外務大臣その他の閣僚を含めて、日常非常に緊密な接触がございます。したがいまして、マンスフィールド大使が、いま言われたようなこと、それはまたマンスフィールド大使の本国政府に対するあるいは発言というふうにも見られるわけでございまして、私たちとしてはあるいはアメリカの中で理解されていない点が若干あるんではないかというふうに考えますんで、別にマンスフィールド大使を通ずるかどうかは別にいたしまして、今後とも日米間で官だけでなく、民間も含めてやはり幅広い交流を深めて、そして日本側の立場を説明して、日本の立場についてアメリカの理解を求めていく、これが一番重要じゃないかと思います。
  196. 桑名義治

    ○桑名義治君 それで、過日の行革特別委員会で、総理日本の立場を説明するために、米議会方面については衆参両院議員が超党派の立場で米国と協議あるいは交流を活発にして理解を深めてもらいたい、政府としてもあらゆる便宜を図る、こういうふうに言われたというふうに報道されているわけでございますが、政府としてはこのような米議会の動きに対してどう対応しようとお考えなのか、先ほどの外務大臣の御答弁の中では、いま余り積極的に動くと内政干渉と見られる節があるというような御発言があったわけでございますが、そうすると、結論としては積極的にいわゆる理解を深めるための行動を起こすのか、もう少し静観するのか、この二者択一になってくると思うんですが、どちらをお取りになろうというふうにお考えになっておられますか。
  197. 園田直

    国務大臣(園田直君) 先ほど質問は、米議会における動きに対して批判なり反論をするかと、こういう意味でありますから、それはあわてていたしませんと、こういう意味でありまして、理解を求めるための努力はいろいろやらなければならぬと考えております。
  198. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁といたしましては、先般私が渡米しましたときに、アメリカの国会の両院の軍事委員長をお訪ねしまして、現在防衛庁努力している状況を御説明したのでありますが、それは一応理解を示されたのでありますが、もっと早く、もっとしてほしいという抽象的な意見はその場で出されたわけでございます。ただ、そのときにおきましてはまだ五十七年の概算要求を提出しておりませんでしたので、その後九月に来日しましたカルリッチ国防副長官に対しまして詳細な説明をいたしたわけでございます。  また、その後グレン上院議員、これも軍事委員会の大物だと承知しておるわけですが、グレン議員に対しましても概算要求の主な項目と私ども考えでいる趣旨を申し上げましたところ大変理解を示されまして、ぜひこれを実現してほしいというお話もあったわけです。今後もあらゆる機会を通じまして、米政府のみならず米議会に対する理解を深めるための努力をしてまいりたいと思うわけでございますが、防衛庁だけでは反目を置う点もございますので、国会の先生方あるいは関係省庁と御相談して、一層理解を深めるようにさらに努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  199. 桑名義治

    ○桑名義治君 こういった米国議会の動きというものは、放置しておけばまだまださらにエスカレートしていくおそれは私は十分にあるんではなかろうかというふうに思うのです。と申しますのは、先ほどからの御答弁にありますように、いわゆる貿易対日赤字というものが解消されない限りは、この問題はどんどん広がっていくおそれがあるんではなかろうかという危惧を持つわけでございます。そういった立場から、積極的なやはり日本からのアクションを起こすべきであろう。それと同時に、政府としてはこのような動きが今後どういう方向に動くであろうというふうに見通しておられますか。
  200. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) アメリカの議会で、先ほど来御説明しておりますようないろいろな決議案が出ております。その中では撤回されたものもございますし、あるいは外交委員会に付託されたものもございます。撤回されたものも含めていずれ日本についての公聴会が開かれるというふうに私たちは考えております。
  201. 桑名義治

    ○桑名義治君 そこで、私が特に言いたいことは、政府は従来から、いわゆる日米の政府間には絶えざる対話が行われている、そしてまた相互理解が進んでいると。したがって、日本が安保条約に基づいて極東平和の安定に貢献していることは米国も十二分に理解をしていると。こういう意味の事柄をあらゆる委員会において、こういう質疑が交わされた場合には御発言になっていらっしゃる。そこをベースにしながらも、さらにこういう要求が生まれたということを、私は認識をして対処していかなければ間違うんではなかろうかと、こういうふうに特に申し上げたいわけです。したがいまして、先ほどから質疑が行われておりましたけれども、しつこいようですけれども、この問題を再び私は私なりの考え方で取り上げてみたわけです。そういう立場に立って、今後の米国議会に対する政府のいわゆる働きかけをどうするかという問題を、もう一遍御答弁願いたいと思います。
  202. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) いま委員が御指摘されましたように、日米間において絶え間ない対話が進められていて、相互理解が深められているのは事実でございます。ただ、私たちはそれですべて解決されたというふうには考えておりませんので、やはり今後も行政府のみならず、アメリカの議会筋に対してもあるいは民間筋に対しても、日本の立場というものを引き続き説明し、アメリカ側の理解を深めていく必要があるというふうに考えております。  具体的にいま出ている決議案についてどうするかという問題は、先ほど来御答弁しておりますように、まだアメリカの議会がこの問題をどういうふうに取り扱っていくかということが必ずしも判然といたしません。しかし、ワシントンの大使館においては行政府のみならず、アメリカの議会に対しても折を見て働きかけをしておりますんで、今後この働きかけというものを、一層さらに強力にしていく必要、があるだろうと思います。しかし、やはりこれは行政府だけがやることには限界があるということで、国会の皆様を初めあるいは民間の方々からも、日本の立場というものをアメリカの相手側によく話していただく、そしてさらに理解を深めていただく必要があるというふうに考えます。
  203. 桑名義治

    ○桑名義治君 私はこの問題ははっきりと決着をつけておかないと、非常に日本にとっても不利な立場になる、あるいは防衛庁の立場に立っても不利な立場になると思うんです。と申しますのは、一部の意見としてあることは、日本政府のみで防衛力の増強というものは世論が非常に厳しいと。したがって、アメリカの外圧を受けながらやむを得なかったということで、徐々に譲歩しながら防衛力の拡大を図っていっていると、こういう声があることは皆さん方も御存じだと思うんです、そういう声があることは。それで、この問題の解決がおろそかになってまいりますと、その声はなお一層私は広がっていくと思うんです。そうすると、防衛の問題が逆に非常に厳しい局面に立ってくる、こういうふうに私は思うわけです。  したがいまして、この問題は、ただ単に今後話し合いを進めていくとか、あるいは政府の対応がどういう対応するかわからないので、それを見きわめながらというふうにおっしゃっておられます。それは確かに外交上の問題は慎重に図っていかなければならないことはよくわかりますけれども、しかし外交上の問題も一遍で話し合いが進むわけではなくて、やはり根回しから徐々に進みながら最終的な結論を導いていく、いわゆる息の長い交渉の中で初めて成果が実る、これがやはり一つの外交の姿であるわけですから、そういった意味でこの問題についてはやはり積極的に、しかも強力に解決の方向、方途を見出していかなければいけない、こういうふうに思うわけでございますが、この点についての外務大臣の御答弁を願いたいと思います。
  204. 園田直

    国務大臣(園田直君) 御意見よく拝聴して、そういう方向で努力をいたします。
  205. 桑名義治

    ○桑名義治君 次に、これも先ほどから議論がなされた問題でございますが、いわゆる日米軍事技術協定の問題でございます。  先ほどはいわゆる政策と国内法の関係あるいは政策と条約、国内法と条約の関連について専門の寺田先生の方からいろいろと御質疑があったわけでございますが、したがいまして、私は少し方向を変えてお尋ねをしておきたい、こういうふうに思うわけでございますが、この問題については関係各省が協議した結果、国で開発した軍事技術の対米提供は日米防衛技術資料交換取り決めにより武器輸出三原則に関係なく可能である、また民間の開発した軍事転用可能な技術についてもメーカーの同意を得て日米相互協定に基づき提供し得るとの見解、これは和田防衛庁装備局長から米側に伝えられたという報道が新聞でなされておるわけでございますが、この点の事実関係はどうでございますか。
  206. 和田裕

    政府委員(和田裕君) お答え申し上げます。  まずDEAの関係でございますが、先ほども外務省の方から御答弁がありましたように、一般的にアメリカとの関係で技術その他の武器提供ができるかどうかということにつきましては、いま政府部内で検討中でございまして、まだ成案を得ていないという段階でございます。そのことは私がアメリカへ行きましたときに、その時点でも成案ができておりませんでしたので、そういうふうに言ってございます。  その次、DEAの関係でございますけれども、いわゆる資料交換取り決めと言っておりますが、これはそもそも防衛関係の技術資料とそれから技術情報の交換を決めたものでございますので、その範囲に入るものにつきましては、いろんなお互いに合意するというような手続がございますけれども、基本的にはその範囲に入ったものについてはDEAの手続、条件に従って提供ができる。しかし、これは技術一般とはちょっと違う問題ではないかというふうに私は思っております。それにつきましては、アメリカに対してそういうことを言った事実はございませんで、DEAについては昭和三十七年以来できている問題でございますので、事新しくアメリカとの間でその解釈について申し上げるというようなことはございませんで、一般的にDEAについてはこれを活発化していこうということを昨年の九月三日、四日第一回アメリカでやりましたときにそこについては合意している、こういうことでございまして、今回は特にDEAの性格とか新しい利用の方法とか、そういった意味での話し合いはございません。  それから三番目に、民間の技術につきましてのお尋ねがございましたけれども、民間の技術につきまして私が申し上げましたのは、一般論といたしまして汎用性のある技術ということになりますと、やはりそもそも民生用のものということで開発された技術になると思いますが、そういったような汎用性のある技術につきまして、これにつきましてはたまたまそれが軍事的に転用の可能性があるものにつきましても、武器輸出三原則等によりまして規制されるべきいわゆる武器技術には当たらないというような解釈を通産省から聞いておりますので、それについては輸出可能なのではないかということをアメリカに申し上げた、こういう次第でございます。
  207. 桑名義治

    ○桑名義治君 本院は本年の三月三十一日、自民党を初めとして五党共同提案によるいわゆる武器輸出問題に関する決議を行っているわけでございます。「政府は、武器輸出について、厳正かつ慎重な態度をもって対処すると共に制度上の改善を含め実効ある措置を講ずべきである。」と。政府はこれに対しまして、「御決議の趣旨を体し、今後努力をしてまいる所存であります。」こういうふうに述べておられるわけであります。  今回の日米軍事技術の提供問題、議論がいまなされているわけでございますけれども、国会決議との関連について防衛庁長官はどういうふうな所見をお持ちでございますか。
  208. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えいたします。  国会決議の点もよく承知しておるわけでございます。また、条約等と関係のある点も承知しているわけでございます。先般、私がワシントンに参りましたときに、一方通行であります技術交流について相互交流できるように検討してほしいというお話がございましたが、私はこの国会決議等あるいは条約等の関係もございますので、関係省庁と帰って協議するということで持ち帰った次第でございまして、いま協議を進めているという段階でございます。
  209. 桑名義治

    ○桑名義治君 時間があと四分ぐらいしかございませんので、この問題またの機会に譲りたいと思います。  次に、ごく一般的な問題についてちょっとお尋ねをしておきたいと思いますが、いわゆる防衛についての国民のコンセンサスの問題でございます。九月十四日に、これ読売新聞でございますが、意識調査をしております。その中では、自衛隊の増強については現状程度でよいが五六・九%、現状より縮小すべきが一三・三%、両者合わせると七〇・二%、こういうことになっておりますし、防衛費をGNPの一%以内とする政府方針についての設問に対しては、一%以内が妥当が四二%、それから一%に近い現状は多過ぎるが一五・三%、この二つを合計しますと五七・三%、こういうような結果が出ているわけでございます。  それと同時に、朝私が申し上げましたいわゆる意識調査の中で、行革の場合にはまず何を削るべきかというと、五二%が防衛費を削るべきであると。この意識調査とそれから先ほど申し上げた意識調査というものは観点が少し違いますけれども、これはお互いに関連がある事柄でございます。これはお互いに違うような意味合いが表に出てきているわけです。こういう国民の防衛の意識について、あるいは自衛隊に対する意識について長官はどのようにお考えになられますか。
  210. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えします。  最近の新聞紙の世論調査でいろいろなデータが出ているという点は、私もこれを読んで承知しているところでございます。ところが、自衛隊そのものに対する世論調査を見ておりますと、各調査とも八〇%以上の国民の支持を得ているという事実もございます。  そこで、防衛予算のあり方あるいは対GNPのあり方ということとの関連でございますが、これは先生御指摘のとおり、いろいろ調査の時期、方法等によっても変わりがあるわけでございまして、私どもといたしましては、やはり国民の理解を深めるためにさらに努力する必要があるんではないか、さように考えておるところでございます。
  211. 桑名義治

    ○桑名義治君 なぜ私がこの問題を出したかと申し上げますと、五十七年度概算要求では、ゼロシーリングとは言いながらも、防衛費は増強されているわけです。しかしながら、防衛問題というものは、いわゆる防衛費を増額をして、それから優秀な装備をしても、最終的には国民の皆さん方がどれだけ合意をしているか、防衛に対する意識が高まっているか、これがなければ何にもならないわけです。したがって、そこら辺の国民の意識というものを本当に把握した上でのいわゆる動きでなければならないと、こういうふうに思うわけでございまして、そういった意味からこの問題を取り上げたわけでございますが、この点についての大臣の所見を伺っておきたいと思いますし、そのためにいかなる方法国民の理解と協力を得るようになされようとしているのかお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。
  212. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) 防衛庁といたしましては、最近の国際情勢等にかんがみまして、防衛計画大綱水準をできるだけ早期に実現することが必要であると考えておりまして、概算要求等も取りまとめて提出しているわけでございます。その辺の背景につきましては防衛白書、そしてまた、いま申し上げたような事柄につきましては各種広報機関を通じて、国民の皆さんに御認識、御理解を願うように努めている次第でございますが、まだまだ十分理解されていないといううらみがございますので、一層さらにその点は努力してまいりたいと考えているわけでございます。
  213. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は自衛隊の最近の演習、それから日米共同演習について質問したいんですけれども、その前に、きょうもいろいろ議論になりましたレーガン大統領、ロストウ軍縮局長の言明問題についてお聞きしたいと思います。  十一月六日に行革特別委員会で、わが党の市川議員が巡航ミサイルの攻撃型原潜への配備問題について質問したところ、園田外務大臣は、将来そういうことが持ち上がったとき事前協議があればノーと言うと、そういう答弁をされた。その後ロストウ米軍縮局長、どうもこれは私は軍拡局長の方が名前がふさわしいような気もしますけれども日本、中国を含むアジア地域に必要があれば米製戦域核ミサイルを配備すると語ったわけですね。今度は、将来の問題ではあっても、日本というわが国の名前が挙げられて、戦域核配備の計画が語られたわけなので、この段階で園田外相どうですか、唯一の被爆国として、日本に対する戦域核配備、非核三原則もあるし、当然反対だということを表明されるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  214. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 先ほど来御質疑がございまして御答弁申し上げておるとおり、ロストウ局長がこれは外国人記者団との会見において質問に答えて、巡航ミサイル等の戦域核を日本、中国などアジア地域にも配備する可能性はあるかと、こういう質問がございました。それに対し、必要となれば配備に踏み切るだろうと答えた旨報じられていることでございます。  それで、ロストウ長官の発言の詳細あるいは背景というものについては必ずしも明らかではございませんけれども、同長官の発言というのは、あくまでも一般論として戦域核がアジア地域に配備される可能性について述べたものでございまして、実際に戦域核のアジア配備について、アメリカ側がすでに具体的に決定したというふうには私たちとしては承知しておりませんし、ましてやわが国がアメリカ側からその点について協議を受けたり、あるいは通報を受けたりということはございません。ロストウ長官先ほど仮定の問題として答えたという点については、先ほども御答弁の中で出ておりますけれども、現在のところ、アメリカ政府がこのような政策を採用しているわけではないというふうに述べている点からも非常に明らかでございます。したがいまして、この時点でわが方が、まだアメリカの具体的な政策それ自身が決まっていない段階で、この巡航ミサイルについてどういうふうに対応するかということをここで述べるということは、若干時期尚早かと思います。  ただ、従来から御答弁しているのは、一般論として、いずれにせよわが国との関係について言えば、核兵器の持ち込みというものは事前協議の対象になるわけでございまして、事前協議があれば、これは政府としては拒否するというのが従来からのラインでございます。
  215. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 防衛庁にお伺いします。  このロストウ局長は、中国ということも言っているわけですね。質問は巡航ミサイルの配備についての質問なんだが、日本、中国を含むアジア地域ということになると、ヨーロッパでも問題になっており、西ドイツに八三年から百八基配備されることになっておるパーシングII、これが中国に配備される可能性も必要がある場合にあるということもあり得るのかどうか、防衛庁としてはどう判断しておりますか。
  216. 塩田章

    政府委員塩田章君) その点、いまお答えを申し上げるだけの材料を持ち合わせておりません。
  217. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 園田さん、先ほど偏った立場はとらないと言われました。それで、日本政府としては、軍縮特に核軍縮を非常に強調しているわけで、来年はいよいよ六月に第二回軍縮特別総会が開かれる。ヨーロッパではこの戦域核配備の問題が、十一月三十日から米ソ交渉が始まるということも御存じのとおり。アジアにおいても、報道によれば、ソ連がSS2〇の配備をしているとも言われるし、ヨーロッパでもし戦域核の配備縮減が決まれば、ヨーロッパのSS2〇がまたアジアに回ってくるということも推測される報道があるわけですね。そうなりますと、日本として、アメリカだけに言うのはどうもおいやのようですけれども、ソ連のSS2〇、これも全面撤去すると、それからアメリカの戦域核配備、これもやめると。これは必要がなくなるわけですからね。そういうことを来年の第二回軍縮特別総会に向けて、唯一の被爆国として、核軍縮を主張している国としておやりになる意思があるかどうか。私は当然やるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  218. 園田直

    国務大臣(園田直君) 明年度の特別軍縮総会には、いまのところ総理みずから出たいという御意向のようであります。したがいまして、これには非常な重点を置いていきたいと思います。この問題について、米ソ両国に対して警告すべきところがあれば警告するようになると思いますけれども、まだいまからそれをはっきりする必要はないと存じます。
  219. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまからと言っても、もうすでにSS2〇の配備が報道され、それに対してアメリカ側がこういう表明をしているわけですね。当然双方やめろということを言えないんですか。
  220. 園田直

    国務大臣(園田直君) 言えないとは言ってないわけでございます。
  221. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 言える可能性もあるということとして受け取っておきましょう。  それで、さて私はこの日米共同演習問題について進みたいんですけれども日本有事の際の日米共同作戦研究、三月に大村長官もこの終了を承認されて、六月の大村・ワインバーガー会談で研究終了を確認したわけですね。どうなんですか、この日本有事の日米共同作戦研究というのは、三月以後の自衛隊の演習や特に日米共同演習に際して、一つの演習の指針として生かされているのかどうか、この点をお伺いします。
  222. 塩田章

    政府委員塩田章君) その点は生かされておりません。
  223. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 生かされていない。  ことしの二月二十日に、もとの在日米軍司令官ギン中将が、アメリカ下院の軍事委員会で証言をしました。日本では合同演習への動きが遅々としていると。これは主として集団自衛権と受け取られかねないことに対する日本の政治的敏感さのためだと。日本自衛隊国民ムードに合わせて動き、また国会の支持を得なきゃならぬと。ここまではなかなかよく見ていらっしゃるんだが、その後大事なところが削除、英文の議事録では削除となっている。削除を受けて、この新しいプログラムは日米軍事協力における一つの画期的事件、マイルストーンを意味しているということを述べているんですね。だから、どうもこの削除のところは相当面期的出来事の新しいプログラムについて述べたようなんだが、ここは削除になっている。相当極秘でね、奇妙なこと、重大なことが日米間で進んでいるようで、特に集団的自衛権に関係する演習のようなんですね。これ何ですかと聞いても、もちろん削除でわかりませんということになるので、こういうことがあると、在日米軍前司令官がアメリカの下院軍事委員会でこういう重大な証言をしているということを一つ紹介しておいて、次に進みたい。  さて、日米共同作戦について、塩田さんは、ことしの三月十八日の参議院予算委員会で、「一つの設想を設けてやっておるだけ」だと。だから想定されている状況一つだと言うんですね、そういうことを答えられております。ところで、大村さんがアメリカに行かれてワインバーガーさんと会談をしたとき、二十九日に会談されたその前の日に、日本経済新聞の六月二十九日付は、日米関係筋が初めて日米共同作戦研究、つまり二人で終了を確認するはずの日米共同作戦研究について中身を明らかにしたと、それは想定は、北海道にソ連が武力侵攻、いわゆる日ソ戦争をした場合だと、想定はつまり北海道侵攻だと。中身は、着上陸侵攻阻止作戦、海上交通保護作戦、航空侵攻阻止作戦、この三つによって構成されていることが判明したという記事があります。日米関係筋の証言ですから、どなたかが述べられておる。  さて、きょうの審議で、防衛庁長官並びに塩田局長は、日本への攻撃の可能性の三つの態様を述べられた。一つは着上陸、二つは海空による産業施設などの攻撃だと、三つは海空からの海上交通路の妨害だと言われたわけね。順序はちょっと違いますけれども、大体この日経報道に三つの中身が当たっていますよ。日本有事の場合の研究をされて、こういう答弁を本委員会でやられているわけだから、日米共同作戦の想定されている作戦は研究が三つだということ、それが事実かどうか、想定されている状況は北海道への侵攻作戦なのかどうか、この点について明らかにしていただきたい。
  224. 塩田章

    政府委員塩田章君) まず申し上げたいんですが、いまおっしゃいました三つの態様考えられるということは、かねがね申し上げておるとおりでございます。それが御指摘の報道の三つと相対応するものであろうと思いますが、これが一般論としてこういうふうに申し上げたことは事実でございますが、今度のガイドラインの研究におきましてどういう設想でやったかと、特に、御指摘のような報道のような北海道云々で、こういう三つの態様でということを話をした覚えは全くございませんので、この報道につきましては私はコメントをいたしかねます。  ただ、先生の御質問を聞いておって感じたんですが、一つの設想であると言っておきながら、三つのことをやって……
  225. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いやいや、そうじゃない。北海道侵攻一つ
  226. 塩田章

    政府委員塩田章君) まあ、それならよろしいんですけれども一つの設想といいますのは、勝手にシナリオを書いたわけですから、その中に態様としてはどんなものがあるかとか、いろんなものが組み合わさっておるわけであります。ただ北海道でありますとか、どこでありますとかということ、設想の内容を申し上げることは、かねてから申し上げておるとおり、差し控えさしていただきたいと、こういうことでございます。
  227. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 さて、この五月の例のはえなわ切断事件を起こした日米海上共同演習以来、七月の陸海空自衛隊の統合演習、九月の第七艦隊と海上自衛隊の最大規模の共同演習、十月の航空自衛隊の統合演習、それから富士演習場における初めての日米陸上部隊の通信の共同演習など、急速に日米演習、自衛隊の演習が、このガイドラインに基づいて、日米共同作戦研究が終わった段階でにわかに激しくなってるという事態がある。時間がもう半分過ぎたので、余りきょう聞けませんけれども、今後次々に聞いていきたいと思いますが、幾つかきょうは聞いておきたい。  まず、五月の日米共同演習ですが、先日NHKも、七月二日の放映、十一月九日再放映で積丹沖の米海軍の事故、これを相当詳細に追及したわけで、あの中にも書いてあるんだが、あのとき参加した原子力巡洋艦ベインブリッジを旗艦とする米主力艦隊は、西海岸のサンディエゴからハワイヘ来て、そこから五月十二日にカムチャツカにこっそり入り込んで、オホーツク海を通って、五月十四日宗谷海峡を抜けて日本海に入った。演習の前期は十二日から始まってるわけですね。このことは確認しておりますか。
  228. 塩田章

    政府委員塩田章君) 自衛隊の艦艇、飛行機もいまのコースの途中で米艦艇を見ておりますので、そのとおりではなかろうかと思います。
  229. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 NHKの放映は、詳しく積丹沖の米海軍の物すごいジグザグ、十五日、十六日、二日間の航跡を放映しました。あれを見ますと、とにかく潜水艦索敵攻撃演習を米海軍があそこでやったことは明白だと思います。NHKの番組で前田海幕長は、自衛隊の艦隊も来る途中でいろいろ演習やってくると、米海軍も秋田沖に来るまでにいろいろやってくるのは当然だということを述べた。これは確認できると思うんですが、私ども重大視するのは、この米海軍の積丹沖のあの演習は潜水艦の索敵攻撃作戦、秋田沖でもそれが行われたわけだけども、その実態からいっても、実際には、秋田沖ということで発表されたんだが、あの時期の日米作戦の一こまだったんじゃないか、日本海における。そうしか思われないんですけれども、いかがでしょうか。
  230. 塩田章

    政府委員塩田章君) その点ははっきり申し上げたいんですけれども、あくまでも秋田沖の日米の共同訓練を計画したわけでございまして、それに参加する途中の米艦艇が、途中どういうコースを通り、どういう訓練をしながら来るかということは、わが方といたしましては全くあずかり知らないことでございますので、この点ははっきり申し上げたいと思います。
  231. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まあ、塩田さんの言うことは私は信用したいと思うんですけれども、そのときはあずかり知らなかったにしても、あれだけの事故が起きたわけですね。後で調査をして、あの演習なるものは一体何だったのかということは、防衛庁としてはどう判断しておりますか。
  232. 塩田章

    政府委員塩田章君) まあ、事故が起こりました後で、米軍の方といろいろ連絡をとったことは事実でございますけれども、いま申し上げましたように、米軍の行動自体を、どういう行動しておったんだとか、どういう目的でどういう訓練をしておったんだとかいうことは本来私ども関知しないところでございまして、今回の場合におきましても、いろいろそういう事故が起こったので、米軍の艦艇による事故ではないかというような話し合いはいたしましたが、そこで何を目的として何をしておったのかということについては承知していないわけであります。
  233. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 外務省は補償交渉に関して日米交渉やってると思うんですが、外務省もアメリカ軍が何をやってたか全くわからないままで交渉してるんですか。
  234. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) 外務省がこの補償交渉で関連しているのは、各省庁の御協議がございまして、補償問題について在日米海軍の法務部に対して水産庁から被害総額というものが提示されたわけでございます。上田委員御承知のとおり、この補償それ自身は当事者間の話し合いでございますけれども、今回のように非常に大きな損害を受けたということもございますし、その他のこともございまして、外務省としては、この補償それ自身ができるだけ早く進捗するようにアメリカ側に対して累次督促をしてるわけでございます。  アメリカ側としては、アメリカ海軍がこのはえなわの切断に関与しているかもしれないと、関与しているとすれば当然補償は払うという立場でございます。ただ同時に、その際にはソ連の軍艦も
  235. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、そこは聞いていませんからもう結構です、ソ連は。
  236. 淺尾新一郎

    政府委員淺尾新一郎君) ですから、私たちがいま話をしているのは補償の促進ということで、それを早くしてほしいと、その際に十分調査もしてほしいと、こういうことを言っております。
  237. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 さようの東京新聞に、大蔵省と防衛庁の調整で、被害総額八千八百万円の七割、約六千二百万円を防衛庁予算から被害漁民への見舞い金として支払うことを最終的に決定したと、そうあります。漁民の同意が得られ次第、来週の閣議で正式に了承、年内に漁民に支払われるという記事がありますが、ほぼこういうことを決めているわけですか。
  238. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えします。  現在、関係省庁と協議中でございまして、まだ結論が出ておりません。
  239. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、見舞い金を支払いたいということは、先日あの行革特別委員会で検討しているという御答弁があり、首相も年内に解決したいと述べられている。もし、幾らかは別にして、この見舞い金が漁民に支払われた場合、これはアメリカの補償の金額、補償の中身とは全く無関係のことですね。
  240. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 賠償請求は賠償請求で引き続き続いておりますので無関係であります。
  241. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 次の問題ですけれども、この五月の日米演習ですね、この問題で、対馬、津軽、宗谷三海峡封鎖作戦を取り上げるという記事が先ほどの日経にも載っているんですけれども、このことと関連して、次に七月二十日から七月二十七日に行われた五十六年度の三軍の統合演習についてお伺いしたいと思うんです。と申しますのは、この統合演習、特に前半の図工作戦ですな。この図工作戦に関連して、七月二十七日付の読売に、津軽海峡の内水面宣言、これがシナリオに含まれていたと。つまり、いま津軽海峡は国際海峡として領海三海里にして通れるようにしてあるわけですね。それをこの演習の際の想定として、本来の領海十二海里にすると。すると、どの船も通れなくなっちゃうわけですな、外国の船はちゃんと届け出て許可を得なければ。そういう内水面宣言をして対馬、宗谷両海峡に陸上部隊を急遽増強、配置するシナリオだったとされるという報道がありますけれども、あの図工作戦で三海峡封鎖のシナリオ、特に津軽海峡内水面宣言、こういうシナリオが入っていたんですか。
  242. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) ただいま御指摘の記事にあります内水面宣言云々ということは、訓練計画には全く入っておりません。訓練はすべて現在のステータスを与えられた条件ということにしてやっておりますので、そういうことはございません。
  243. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この記事も関係者の話を総合するととあるんですね。それぞれの新聞が一生懸命取材して防衛庁関係者から話を聞いて記事にすると、実は全く事実でないことを日本の新聞が報道しているということにあなた方の答弁はなります。これはきわめて奇妙な事態です。  次に、飛ばして進みますけれども、九月のアメリカ第七艦隊初参加という日米海上演習が沖縄などのあの付近の海面で行われました。  ここで、幾つも聞きたいことあるんですけれども一つだけ聞いておきたいことがあります。というのは、沖縄タイムス九月二十七日付で、これは事実がないと言えないんだ、沖縄タイムスがチャーター機を借りて発見した事実ですからね。津堅島と久高島——ホワイトビーチの沖ですね、あの中間で、海上自衛隊第一輸送隊の輸送船「おじか」二千トン、「さつま」二千トンがいかりをおろしているのを確めた。両輸送船とも隠密行動で所在を明らかにされていないのを、チャーター機で見つけられた。これは海上自衛隊が持っている大型のLSTの三隻のうち二隻がひそかにあそこにいたわけで、それが見つかったんですね。  その次に、朝日新聞九月二十九日付、見つかったのは九月の二十六日です。二十七日にこの二隻が沖永良部西三十キロ沖を北に向かっている写真を撮影して載せています。つまりホワイトビーチの沖にひそかに隠れていたLSTが北に向かって上っていた。これは熱心な日本のジャーナリストが、その二つを確認して記事で報道し、並びに写真で載せている。これはどういう演習をしていたんですか。
  244. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 御指摘の「おじか」、「さつま」がその辺で行動しておったことはわれわれは全く隠す気はございません。これは海上自衛隊の演習に参加しておった二隻でございます。ただ、その二隻の個々の艦艇が演習の中でどういう役割りを果たしていたのか、どういう行動をとっておったか、こういう演習の細部については答弁を控えさしていただきたいのでありますが、これが演習に参加している艦艇であることはもう間違いございません。
  245. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 答弁を差し控えたいと。中東で事態が起きたときに、それに連動して三海峡封鎖作戦が行われるというのは、これはアメリカ側が何回も国防長官の報告でも、またワインバーガー長官も述べているところですね。  それから、いよいよ今度は極東有事の日米共同作戦研究も始まるということが、日本側も述べておりますし、きょうもいろいろ議論になったわけですね。この二つのLSTの行動はどうも朝鮮有事と関係があって、沖縄のたとえば第三海兵師団その他その他が朝鮮に出動する際の輸送の訓練に、LSTが三隻のうち二隻まで行って参加している、目的は言えないということで、そういうことが一つの有力な想定になり得るのではないか、そう考える。ドネリー在日米軍司令官、新しい司令官ですが、日本有事の際にいろいろ便宜供与を希望すると、朝鮮戦争のときも便宜供与を受けている、いろいろ輸送に協力してほしい、それから米軍基地の使用だけでなく、自衛隊基地の使用も望みたいということを言っている。このうちの輸送問題の演習が早くも始まっているんじゃないかという疑惑を私は深めます。  それで、この点に関連してもう一つお伺いしたいのは、大村防衛庁長官が六月にワインバーガー国防長官と会談した際、六月二十九日の読売夕刊によれば、「”極東有事”の際の日本協力について、単に施設・区域の使用にとどまらず「補給」「補修」「運搬」の後方支援についても日本側の協力を前提に研究対象にしたい」という申し入れがあったと、こういう記事がありますが、この事実はいかがですか。
  246. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えします。  そういう事実はございません。ガイドライン第三項に基づく便宜供与についての研究を早く始めたいというだけのお話でございます。
  247. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そろそろ終わりにしなければならないんですけれども、ドネリー在日米軍司令官は日米三軍共同の日米演習もやりたいということを述べています。それから、これは結局チームスピリットですね、米韓でやっている、ああいうものと同じような将来日米の三軍の共同統合演習をやりたいんだと、そういうことを述べられた。  それからまた矢田統幕議長も、先ほどの統合演習の際対馬で行った記者会見で、最終目標は日米三軍の統合演習だということを述べている。日米三軍の共同防衛の演習が、ドネリー司令官によれば、朝鮮のチームスピリット、それと同じようなものを将来したいんだと、これは私は大変なことだと思うんですね。もうきょう私一部述べてきましたように、日米共同演習は、ガイドラインに基づく日本有事の研究が終わると、こういうふうにどんどんどんどん拡大していく。私、まだまだ聞きたいこと無数に持ってますけれども、新しい事実、新しい角度に進んでいる。いよいよ今度は極東有事の作戦研究、これが始まる。そして、それとともにそういう研究が始まるだけでなく、共同演習そのものも三軍共同までやろうというんですね。  それで、私冒頭に述べましたギン前司令官の証言に戻ってくるんですけれども、チームスピリットに基づく米韓合同演習というのは、まさに集団自衛権を持つ国同士のそういう共同演習でしょう。日本とアメリカの共同演習がチームスピリットに似たようなものになるというのは、核の問題を外したとしても、文字どおり集団的自衛。近時、あなた方が防衛白書その他で、繰り返し毎年毎年、集団自衛権は日本は持っていないと言いながら、その集団自衛権に限りなく近づくと。灰色高官というのがありますが、灰色演習ですね、そういうものに限りなく近づいていくんだと思いますが、ドネリー在日米軍司令官がチームスピリットと似たような日米の三軍の共同防衛演習をしたいんだということを述べた点について、憲法で集団自衛権、これを否定されている国として、この司令官の考えどう思われるか。今後日米共同演習、私どもは憲法違反のものとして全部中止することを要求しますけれども防衛庁として、憲法上の疑問が生まれるようなそういう日米共同演習は一切しないということをここで言明していただきたいと思いますが、防衛庁長官にお答えいただきたいと思います。
  248. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) お答えいたします。  防衛庁の行っております教育訓練は、あくまで憲法並びに防衛に関する諸原則の範囲内で行うものでございます。したがいまして、日米の共同訓練が米韓の間のチームスピリットに近づくというようなことは全然考えておらないわけでございます。あくまで個別自衛権の範囲内における訓練を共同に実施するという考え方でございます。
  249. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  250. 石崎昭

    政府委員(石崎昭君) 委員長、よろしゅうございますか。——ちょっと一言つけ加えさせていただきたいんでございますが、先ほど申し上げました「おじか」「さつま」の件、これは訓練の細部は差し控えると申しましたけれども、はっきりさせておく必要があると思いますのは、これはあくまでも戦術技量の訓練で行動しておったんでありまして、朝鮮有事とかそういう非常に裏側に大きなシナリオがあって行動していたという種類のものではございません。たまたま南西諸島の周辺で訓練が行われたわけでありますが、これは別の海域でやっても一向に構わない訓練でありますし、たまたま艦船をいろいろ運用する便宜上、適当な場所があそこになったというだけのことでありまして、あそこでこういう訓練が行われたから、それが何か背後の大きなシナリオと結びついたものだということではございません。
  251. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなた述べられたので、私も一言反論しておきますが、シナリオなしの演習なんていうのはないですよ。シナリオなしでたまたまあそこにいたと、そんなむだなことをあなた方がしているんだとすれば、文字どおり行政改革で軍備拡張はやめて、自衛隊はもっともっと縮小すると、こういうLSTも一切削るということを私どもは重ねて主張したいと思います。  終わります。
  252. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、私はまず対韓援助の問題から少し聞いておきたいと思います。  園田さんね、対韓援助については、確かに青瓦台周辺その他に微妙に変化の兆しもあります。特に大統領府の補佐官グループ、許文道を頂点にしたあのグループですが、あと外務部、経済企画院、窓口が多くてなかなか真意がつかめないと思うが、だからこそ外務省もいま天羽氏を派遣している。やがてあすあたり帰ってくるんじゃないですか。  そこで、大臣にまず伺っておきたいのは、たしか国会で述べられた、対韓援助については安保がらみであればびた一文もという、私に言わせれば胸のすくような、まあたんかとは言いませんが、あの大臣の答弁ですね、見解、認識、それはまだ脈々と生きているんでしょうね。
  253. 園田直

    国務大臣(園田直君) たんか切るわけではございませんが、安保がらみの経済協力は出せないのが決まりでありまして、これは私個人の考えではございません。規定でございます。
  254. 秦豊

    ○秦豊君 韓国は、紙の裏表のように、八二年から八六年度の第五次経済社会発展計画、これの必要経費が三百三十億ドル、同じ年次で同じようにスタートをするのがたまたま戦力増強計画であり、この原資が二百三十八億ドル。そこで日本への期待がずっしりと重いというわけなんだ。  しかし、外務大臣ね、こうなったらどうしますか。もう安保観については、つまり名目はあげつらわないと、欲しいのは、まさに生の実質だという高等戦術に青瓦台が転換をした場合、安保観がすり合わせができない限りは首脳会談も開けないだろうし、具体化はしないという道を通らないで、抵抗も少ない道、日韓の間に隔たりはない、安保観が合意したという前提のもとに、とにかく具体的なプロジェクトを積み上げて、このプロジェクトについてはいかがですかというふうに戦術を転換をしてきた場合には、どう対応できますか。
  255. 園田直

    国務大臣(園田直君) 経済協力の基本方針のもとに、韓国の協力要請には相談に応ずるつもりでございます。
  256. 秦豊

    ○秦豊君 そうだと思います。もともとあなたは、韓国がさっと出してきたいわゆるプロジェクトなるものについて、たしか、記憶違いでなければ、一晩で数字を並べたようなものと、私鮮明に覚えているんですが、確かに雑駁なものでしょう。しかも官庁によってまちまち。あのハイウエーにせよ、釜山の地下鉄にせよ、あるいは農業改善事業への投資にせよ、整合性と合理性がないと私も思う。しかし韓国は、もう総額も言わない、安保観の議論もしない、とにかく来年スタートしたいから、初年度に幾ばくかの、つまり何億ドルかの援助をつぎ込んでくれれば総額は問わないというふうなところまで妥協をし、後退をほのめかした場合には一体政府はどうするのか。
  257. 園田直

    国務大臣(園田直君) 経済協力の基本方針がちゃんとあるわけでありますから、額が幾ら、初年度が幾ら、その内訳は幾ら、そういうわけにはまいりません。ちゃんとしたプロジェクトなり、あるいは開発の案件が出てきて、それを両国で相談し合って、それが基本方針に合う分かどうか、こういうことから始まるわけでありますから……。
  258. 秦豊

    ○秦豊君 アジア局長は行かなくて、天羽さんが行ったところに芸の細かさは感ずるのだ、私もね。デリケートさはぴっとわかる。わかるんだけれども、じゃ、大臣ね、対韓援助の問題ですけど、来年度予算の編成の場合に一応のめどをつける必要があるのかないのか。あるいはODAその他の割り振りがあるから、必ずしも対韓については精密に積み上げる必要はないという御見解なのか。それが一つ。  それから、時間がないから詰めて聞きますけれども、じゃ、韓国がやや具体的な、もっともらしいプロジェクトを提示してきた、その場合に政府としては、それを現場で検証するために調査団を出すというふうな対応は考えられているのか。
  259. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 経済協力を進めるに当たりましては、これは従前からたびたび御答弁申し上げておりますとおり、プロジェクトベースに乗っかりまして、その積み上げということでございます。いわゆる一般会計の支出と違いまして、基金の事業計画に即して行うわけでございますから、厳格な意味で三月三十一日までということはございませんが、やはり年度年度に応じまして計画もやっておりますので、それに見合った打ち合わせというものを先方と行う必要があるかと思うわけでございます。  調査団の派遣につきましては、これは先方が希望するならば、私どもの実務家の調査団をソウルに派遣いたしまして、五カ年計画の詳細、これは先ほど秦委員が御指摘のとおり、まだきめ細かく御説明を伺ってないわけでございますので、その点の御説明をいただくなり、あるいは先方が調査団を本邦に派遣したいということであれば、それも私ども受け入れる用意があるわけでございます。
  260. 秦豊

    ○秦豊君 恐らく正式な要請が近く来るという感触であろうと思います。  そこで園田外務大臣ね、ちょっとこれはあなたのさっきのどなたかへの答弁に触発されたんですが、防衛費の概念の中でたとえばNATO、恩給費というようなことをぱっと並べられましたね。念のためにこれは国務大臣としてのあなたにちょっと聞いておきたいんですけれども、私も実は五月六日に質問主意書を出して、後日答弁をもらいましたが、それは日本防衛費負担が過小だ、過小だという攻撃、これは一%なんです。ところが、皮肉なことにアメリカの予算政府答弁から見ると、リタイアした退役軍人への恩給その他の手厚い保護については狭義の、広義じゃないですよ、狭義の防衛費に入ってるんです。ところが、日本の場合には恩給関係費のうちで文官等をオミットすると、旧軍人関係は一兆三千五百億を超え、遺族と留守家族の援護費を入れると、両者の合計は五十五年度で一兆四千九百九十八億円にも達して、対GNP比は〇・六%に当たるんです。そうすると、〇・九プラス〇・六、おのずから一・五を突き破る、これがアメリカ式概念による狭義の防衛費であるべきだと私は思うんですよ。しかも、コーストガード、沿岸警備隊の費用を積算している国もあれば、防衛費なんて言いながら、これほどシリアスな両国間交渉の最大の眼目になりながら、範疇、カテゴリーが確定されていないという、何ともおかしいことなんですよ、これ。そうでしょう。  まあ、その他の問題は後で聞きますが、そこで国防会議の重要なメンバーでもあるあなた、国務大臣としての園田外務大臣、私は防衛費の概念規定をこの際再検討してみるお考えはないかどうか、ちょっと伺っておきたい。
  261. 園田直

    国務大臣(園田直君) 私が先ほどちょっと申し上げましたのは、そういう趣旨のことをちらっと言おうとしたわけであります。かつまた、マンスフィールド大使もそういうことを言っておるわけであります。計算の仕方が違う。そこで、これはおのずから国内と国外に向けての数字の感覚もありますから、いろいろの問題あるわけでありますが、この点は十分もう一遍考えてみたいと思います。
  262. 秦豊

    ○秦豊君 少しわかってきました。やはりこれは政府部内に外相の提案として正式に提案されてみたらどうですか。いかがですか。
  263. 園田直

    国務大臣(園田直君) 十分研究してみます。特に米国でああいう事態があるわけでありますから、正当な理解を求めることは必要だと考えますので、十分研究をいたします。
  264. 大村襄治

    国務大臣大村襄治君) ただいまお尋ねの問題でございますが、これまでもいろいろ意見としては出されたことがあったと思いますが、これまでの防衛庁の扱いといたしましては、戦前、戦時中の軍人、軍属の恩給費は現在の自衛隊とは直接かかわりはないということで、防衛関係費の中からは外しておったのでございます。まあ今後、現在の隊員の年金、共済、これは直接関係ありますから、これはもっと検討の余地があるんではないか、あなたの考え方に従いましても。そういう気はいたしますので、若干申し上げました。
  265. 秦豊

    ○秦豊君 わざわざ御答弁恐縮でしたけれども、やはり私の真意は、いわゆる総合安全保障政策をもっと熟成させなさいという大前提に立ち、同時に防衛費の概念はせめてフルパートナー同士ぐらいは共通さしたらいかがですかという意味を込めて、幸い両大臣のあれがありましたから、今後政府部内の検討項目としてぜひ留意し、実現をしていただきたいと思います。  それから、先を急ぎますが、先日の行革特別委員会、一昨日でありますが、私の質問に対して総理と官房長官がそれぞれ答弁をされました。公知の事実でありますが、要するに、わが国はイージーライダーでは断じてないということ、新憲法路線による平和主義というものは、アメリカを含めて外国からこれを見た場合にわかりにくいかもしれない。また、貿易黒字と防衛が絡み合ってアメリカのいらいらを増幅していることもあるだろうが、国民は自信を持って進んでもらいたいと。この発言は私は一国の宰相ないし官房長官としてはきわめて常識論であろうと思います。ところが、その常識の発言がきわめて重く感じられるところに状況の異常さがあると私は思う。  ところが今度、条約局、北米局その他を中心にして、まさに園田外相のもとにあるあなた方外務省と、そして大村さんのもとにある防衛庁が進めようとしているこの対米軍事協力技術路線というのは、いままでせっかく積み上げた、同僚議員の話もあったが、コンセンサスの内容を構成する重要な部分に対する大胆なこれはやはり逸脱であり、大胆な大きな一歩をあえて踏み出そうとしている、私そう思うんですよ。それで外務大臣、これは実体のない一種の幻を対象にした議論に近いんですよ。和田装備局長なんか、そう思っているんじゃないかな。  では、一体アメリカが日本にどういう武器を輸出してくれという、日本正面装備になっていると四式でも何でもいいですけれども、果たしてアメリカの用兵作戦指揮構想の中で一体どこでどんなものが使えるか。ほとんど民という汎用技術で、民と民だからフリーパスだと。通産も、防衛も、大蔵も、外務も、どこもチェックできない、どうぞ御随意にということによってアメリカは十分に目的を達するんだろうと私思うんですけれども、しかしいずれにせよ、質問に返れば、私は国の最高方針とか、内閣の最高意思とか、そういうものを危うく踏み越えそうになっている外務、防衛当局の対米軍事技術協力というのは、私はなかなかこれは簡単に見逃すわけにはいかない。アメリカへの過剰サービスなんです。しかも実体がない。リップサービスに近い、実体がないんだから。私はそういう目で見ているんだが、外務大臣としてどうお受けとめですか。
  266. 園田直

    国務大臣(園田直君) これは先ほど答弁いたしましたが、米国の方はいままで技術交流については一方的で、米国から日本に技術は流れておるが、日本からは返ってこない、これをもう相互交流にしてはどうかという期待が表明されておりますが、具体的な問題は何ら提出されておりません。これが一つであります。  次に、いまいろいろ議論されております案は、これは政府の案ではございません。また外務省の最終見解でもございません。一つ考え方が外へ出まして、それで議論を呼んでいるわけでありまして、政府としては非核三原則、政府の基本方針、こういうものは十分考えてやるべきだと思いますが、ただ日米関係の特殊関係で一方的だと言われるのをどうやって処理するか、ここに問題があるわけでありまして、これは今後十分検討しなければならぬ問題だ、これが現段階でございます。
  267. 秦豊

    ○秦豊君 和田さん、あなたは折衝の責任者なんだけれども、ぼくは平たく考えても、アメリカが日本に、私がアメリカの国防長官だとした場合、ペンタゴンに座っていて、こちら六本木、榎町を見ると、ああ、あれが欲しいという武器はないですよ。ただ民にはあります、たっぷりと。民と民ならば十分に実用化できる。実際にはそういう形になるんでしょう、和田さん。
  268. 和田裕

    政府委員(和田裕君) 御質問が、いまアメリカから日本を見まして、日本の武器で欲しいのがあるかという御質問でございましたが、実は武器の話は一切したことございませんで、軍事技術といいますか、防衛技術といいますか、技術の相互交流の話だけをしていただいたわけでございます。それはいま外務大臣が言ったとおりでございまして、いまも外務大臣お話がありましたように、やはりアメリカは一つはいままでの一方通行を相互交流にしたいという、そういう原則論の問題はあると思います。  それが一つと、それから具体論としましては、これからまさにアメリカが日本に言ってくるのではないかと思いますが、ほかの委員会でも申し上げたかと思いますが、アメリカがいま具体的な技術ということでは何ら言っておりませんけれども、共同研究、共同開発ということについて話を進めたいということを言っておりました。それはこの間、私がアメリカへ行きましてデラウアー次官と会いましたときの話にも出ておりますが、それにつきまして私の方は何分にも全く新しい話でございますし、一体どういうような具体的な方法があるのか。そもそも、これは日本として受けられるのかどうかという点も含めて、もうちょっと具体論があったら検討をすることにさせていただきたい、こういうふうに言っておるわけでございます。  民間にあるかどうかという御質問がございましたけれども、それについては何分アメリカの方の意図を聞いてみませんと、ちょっといま即断することは早いんじゃないかという気がします。
  269. 秦豊

    ○秦豊君 私があえて武器とはっきり言いましたのは、条約局を中心にしてやっている、たとえば安保第三条の解釈論とか、まあ条約の解釈はあなた方の仕事のうちだから何の妨げもないんですよ、理論武装はね。だけども、あなた方のあの構想を延長すれば、武器にも妨げがなくなる、武器へのヘッジはなくなるんです。だから聞いてるんで、あれはアメリカに一たん認めれば、さてASEANから、あるいは中近東からというと、大臣、もう歯どめなんかつくれませんよ。  だから、いまこれ以上伺ってもだめだから、大臣には、じゃ第三回の日米間の技術の会議ですね、和田さんの担当だが。それは十二月とも言われ、一月だとも言われ、ちょっと有事研究みたいになってるんですがね、繰り延べ繰り延べで。国務大臣として、政府部内の調整を今後具体的にいつごろまでに、どう進めるかという点だけを伺っておきましょう。
  270. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまの会議は、年内か正月かわかりませんけれども、この会議に技術交流の結論を出さなきゃならぬという理屈はございません。
  271. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、じっくり検討してください。  それから、外務大臣への質問としては最後にしたいと思いますが、この十一月二十八日か九日か、十一月三十日かわかりませんけれども、園田さんは留任らしいとも言われるし、そうでないとも言われるしわかりませんけれども、やっぱり安保というもの、安全保障政策というのは国の最高政策である。絶えず多重、多層にとらえるし、複眼的にとらえる必要があると。だからこそ、ワシントンから檜町や霞町に来る風圧やプレッシャーについても、一本調子で緊張が高まるはずはないんだから、風圧の最高のレベルでつき合う必要はないと、自護体でいいと思っているんです。だからその意味では、これからやはり来年以降重要なまた課題になってくるのは日ソ関係である、ことさらに重要になってくるのは。  そこで、外務大臣に伺っておきたいんですけれども、経済の部門では大来佐武郎氏という政府代表という制度があり、現に機能的に動いていらっしゃる。日ソ問題について、私は日本政府として日ソ問題専任の政府代表制度を設けて、日本の姿勢を披瀝すると、実効を期すという姿勢があってもいいんではないかと思うんだが、取り組みとして、園田さんの私見で結構ですからいかがですか。
  272. 園田直

    国務大臣(園田直君) 日ソ問題は、御発言のとおり非常に大事だと考えております。大事であればこそ慎重に事を運んでいるわけでありますが、これの政府代表ということはいまのところ考えておりません。御意見は十分研究してみます。
  273. 秦豊

    ○秦豊君 防衛庁経理局長、あなたに質問するのはそう言えば初めてだと思うんだけれども、いまあなたが中心で塩田さんと相談して大蔵省側と何か——来年の概算じゃないですよ、大事な交渉していますか。
  274. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) いまの御質問の趣旨がやや包括的御質問でございますので、ちょっとわかりかねる点がございます。
  275. 秦豊

    ○秦豊君 たとえば五三中業がらみはありますか。
  276. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) その点の問題につきましては、防衛局長の方からお答えを申し上げるのが……
  277. 秦豊

    ○秦豊君 いや、あなたがそれを承知しているかどうかを含めて聞いてるんです。
  278. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) これは所管が防衛局長でございますので、お話しいただきたいと思います。
  279. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ、委員長済みません、こちらへ矢を向けてください。
  280. 塩田章

    政府委員塩田章君) 五三中業のということで、特に大蔵省と話をしているわけではございません。あくまでもいま五七の概算要求につきまして話をしているだけでございます。
  281. 秦豊

    ○秦豊君 経理局長そんなに警戒する必要ないんです。あなた方、たとえば概算要求は来年のは終わっている、まあこれから厳しい査定を受けるんだが。中業の前倒しでしょう、一方では後年度負担平準化、あれは答案を出すべくあなた命じられているんだから、お二人は。それから五六中業の作成でしょう、全部が絡み合ってミックスされている時期なんだ。ぼくたちが外から見ていると、前倒しと平準化というのは最もぶつかるんだな。これを矛盾なくすり合わせができれば大経理局長だし、大防衛局長だが、それは一種のマジックに近い。やはり防衛計画大綱水準達成すら非常にむずかしくなってきて、下方修正を余儀なくされるところへ防衛側はだんだん追い込まれていくというのが私の私見ですよ。えらく皆さんは自信満々なんだなあ。えらく楽観的なんだなあ。その根拠がぼくは全くわからない。よく官房調整費というものが予算編成期になると出てくるが、大蔵省からわいてくるが、ああいう何かマジックに近いもので、ぼくは下方修正が必ずくると思う。  防衛局長大綱水準達成のころには次の次の次の防衛局長だけれども、やっぱりぼくは、いま私の言ったような意味で下方修正が必要なところへだんだん追い込まれると思っているんだが、あなたの局長としての実感からするとどうなんですか。
  282. 塩田章

    政府委員塩田章君) 私は、決して楽観をしておりません。楽観しているような顔をしておるだけでございまして、全然楽観しておりませんで、非常に重要なむずかしい問題であろうと思って、いま一生懸命取り組んでいるわけでございます。
  283. 秦豊

    ○秦豊君 いまのは一種の名答弁だと思いますが、防衛庁、これはことしの八月にアメリカ上院外交委員会東アジア太平洋小委員会で作成され、そして上下両院の議員の内部資料で配付されているものがあります。これは百ページにまたがるものですが、それをじっくり討論、質疑の材料にすると、非常に日米間の防衛問題出てくるんだけれども、きょうは余り時間がないようですから、一つだけちょっと聞いておきたいと思いますけれども、この中にはシーレーンの防衛に関連して、アメリカ側は、日本としてはかなりの長期間、ソビエトのあらゆる攻撃をはね返せるだけの持続的な軍事能力を海上において持ってほしい、このかなりの長期間というのは、塩田さんあれですか、アメリカ側は三カ月程度ということを期待しているようだが、そう理解できる節がありますか。
  284. 塩田章

    政府委員塩田章君) そういう三カ月というような具体的な期間を理解できる節はございません。
  285. 秦豊

    ○秦豊君 これはまた改めてやりましょうけれども、防衛局長、アメリカ上院外交委員会は、もう一つあなた方の想定とはかなり違っていて、シーレーンに対するソビエトの攻撃の規模というのは、いいかげんなものじゃないと言っているわけです。大規模なという攻撃が、執拗反復して繰り返されるであろう。だから、例の在日米軍司令官のドネリーの発言にも相応するわけです。本土に来れば抵抗が大きい、安保条約を発動、じゃ真綿で首は何か、シーレーンである、そういう選択が必ずくる。しかも、長期にわたって大規模にと、この辺があなた方のいままでの答弁と全く違うんだな、そういう指摘に対してはどう思いますか。
  286. 塩田章

    政府委員塩田章君) 規模という場合に、どの程度、アメリカのその人もどう考えているのかわかりませんけれども、われわれはわれわれなりにいろんな想定をする場合に、いわゆる対日指向兵力というものをそれなりに想定をしておるわけでございます。それが私どもはアメリカ側とそんなに食い違っているとは思っておりません。現にガイドラインの研究等におきましては、そういう点は当然すり合わせた上で研究をしておるわけでございますから。
  287. 秦豊

    ○秦豊君 それから、さっきどなたかが三海峡封鎖論を展開されましたね。それに関連して、アメリカ側の資料はこう言っているんですが、三海峡封鎖については日本政府はその意義を認めながらも、現実的な封鎖能力の不足、憲法上の制約からして、現実的可能性が問題になっている、こういう指摘をしている。これは同時に能力についてのコメントもありまして、能力については三海峡全域の機雷封鎖をするには、いまの日本の現有技術あるいは補給、整備能力をトータルしても、半年かかるだろうというコメントがちょっと付されている。その点についてどう言いたいか。それから、憲法上の制約についてという指摘についてはどうおっしゃりたいですか。
  288. 塩田章

    政府委員塩田章君) かねてから三海峡封鎖問題は、慎重の上にも慎重でなければいけないということは申し上げております。それは、具体的にいわゆる憲法の条文から直ちにどうということでなくて、つまり憲法論そのものではなくて、日本の運命を決するようなことにもなりかねない封鎖でございますから、慎重の上にも慎重でなければいけないという意味では、その資料のおっしゃる意味は、そういう意味ならわかります。  それから、能力不足の問題につきましては、いま具体的にわが方がどれだけの能力を持っておるということを申し上げるわけにはいきませんけれども、逐次整備をしておる、能力の向上を図っておるというところでございます。
  289. 秦豊

    ○秦豊君 アメリカが言うほど、つまり過小評価しているとはおっしゃれないでしょうから、その点は置きましょう。  それから防衛局長、こういうふうに今後なるんですか。ドネリー司令官の発言でもわかったし、あるとき大賀元海幕長の発言にもあったんだけれども、ガイドラインで研究し、すり合わせしようとした場合に一番問題になったのは、あなた方とアメリカとの戦略観の差ですよ。脅威がどの規模で、どの方向から、どこにというやつね。これはすり合わせができなかったけれども、とにかくまず日本本土に対する攻撃という妥協の産物で、あなた方待望の北方脅威論を現実化すべきであると協議が一応でき上がって、次は極東有事だと。ぼくら素人の考えでいきますと、本土への攻撃と極東有事があったならば、必ずこれは三部作じゃなかろうかと。第三部はまさにシーレーンについての日米間協議があって、その一、二、三で有事研究は一応中間的に完了するというふうに見るのは、はなはだしく間違いであろうか、それともそうでないのであろうか。いかがですか。
  290. 塩田章

    政府委員塩田章君) もし先生がおっしゃる言葉を使えば、私は二部作だろうと思います。というのは、やはり第二項の一つがございまして、日本が攻撃された場合の、その中にいろんなシナリオが考えられる。その場合に、いまの御指摘のようなシーレーンの問題もありましょうし、またシーレーンといろんな三つの形をミックスしたようなことも考えられましょうが、いずれにしましても、それは日本が攻撃された場合という意味では第二項の問題であります。  それに対して、今回第三項の極東有事の場合の便宜供与の問題に入ろうと、こういうことでございますから、二部作ということになります。
  291. 秦豊

    ○秦豊君 ああ、そうなんですか。ぼくは勘違いしていました。ぼくは極東有事はペンタゴンでもジョーンズに聞いたもんだから、朝鮮、朝鮮とぼくはやや視野が狭かった。いまあなたによって目を開かれたが、それはやがて二部作の中でシーレーン防衛についての協議が含まれると理解していればいいですね、はっきり。
  292. 塩田章

    政府委員塩田章君) 第二項の関係につきましていろんなシナリオが考えられるんですから、その中に将来そういうシナリオを取り上げられるということも当然考えられるということでございます。
  293. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。  これは塩田さんの範囲だと思いますけれどもわが国が導入するのはたしかイーグルのJ型ですね、単座、F15は。そうすると、八十八機になるはずだが、これはサウジアラビアがすでに採用を決定して、だからイスラエルがナーバスになっているんだが、F15J、日本が導入する機種に対して、コンフォーマルパレット、略称CFTという新しい燃料タンクの付加、つまり新しい方式の燃料タンクをつけたものが日本に導入されるのか。これを検討している事実があるのか、あるいは検討しようとするのか。  申し上げる意味は、だんだん経理局長が幾ら奮闘しても機数全体を抑えられるんだ、これからは。そうすると、一部隊編成のやつを十八から二十五機とか、それでもまだ足りない、だから寿命を延ばす、工夫もする、それも限度に来る。というと、今度は一つ一つの機の性能向上を必ず考えていく。性能の中にはレインジを長くする、行動半径を。これをやると飛躍的に行動半径が広がっていく。全備重量は二トンぐらいふえるけれども、行動時間が一時間プラスされる。相当な戦闘作戦行動が付加できるわけだ、現在の性能に対して。だから、恐らく空幕としてはのどから手が出るほどであって、経理局長防衛庁長官や防衛局長にこれを必ずつけたもの、J型を導入してもらいたいと言っているはずなんで、検討している事実があるか、あるいは今後を含めて。それを伺って終わりたいと思います。
  294. 塩田章

    政府委員塩田章君) まず、J型ばかりでなくてDJ型、すなわち、複座型が若干ございます。ちょっといま機数を覚えていませんが。  それから、いまのCFTの問題でございますが、結論から先に申し上げますと、私どもいまその計画はありません。ありませんが、御指摘のように飛行性能が、増槽タンクでございますから、そういう意味ではアップする。ただし、飛行性能そのものが落ちるかどうかという問題がございまして、まだその点の調査が終わってない、研究が終わってないというふうに聞いておりますが、現在の時点で防衛庁といたしましては採用の方針はございませんし、空幕から私どもがそういう要求を受けていることもございません。
  295. 秦豊

    ○秦豊君 最後に、シーレーンの防衛その他バックファイア対策等を含めて、検討には値しますか。
  296. 塩田章

    政府委員塩田章君) ちょっと私その点、増槽タンクそのものについてまだ知識がございませんのでちょっとお答えいたしかねますが、そういう意味では当然検討には値する問題ではないかと思います。
  297. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 本日の調査はこの程度にとどめたいと存じます。     —————————————
  298. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 次に、派遣委員の報告に関する件についてお諮りいたします。  第九十四回国会閉会中、当委員会が行いました自衛隊の業務運営等の実情調査のための青森県及び宮城県への委員派遣については、報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 加藤武徳

    委員長加藤武徳君) 御異議ないと認め、さように取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十六分散会      —————・—————