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1981-10-03 第95回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十六年九月二十四日)(木 曜日)(午前零時現在)における本委員は、次の とおりである。    委員長 小山 長規君    理事 越智 通雄君 理事 金子 一平君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       足立 篤郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    海部 俊樹君       後藤田正晴君    始関 伊平君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    砂田 重民君       瀬戸山三男君    田村  元君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    細田 吉藏君       武藤 嘉文君    渡辺 栄一君       阿部 助哉君    石橋 政嗣君       稲葉 誠一君    大原  亨君       岡田 利春君    中村 重光君       野坂 浩賢君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       正木 良明君    矢野 絢也君       永末 英一君    吉田 之久君       寺前  巖君    不破 哲三君       松本 善明君    河野 洋平君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十六年十月三日(土曜日)     午前九時一分開議  出席委員    委員長 小山 長規君    理事 石井  一君 理事 越智 通雄君    理事 金子 一平君 理事 唐沢俊二郎君    理事 三原 朝雄君 理事 大出  俊君    理事 川俣健二郎君 理事 坂井 弘一君    理事 吉田 之久君       足立 篤郎君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    植竹 繁雄君       浦野 烋興君    小澤  潔君       小渕 恵三君    越智 伊平君       鹿野 道彦君    海部 俊樹君       粕谷  茂君    片岡 清一君       鴨田利太郎君    北口  博君       後藤田正晴君    始関 伊平君       塩崎  潤君    澁谷 直藏君       砂田 重民君    瀬戸山三男君       中村  靖君    橋本龍太郎君       原田  憲君    藤本 孝雄君       細田 吉藏君    武藤 嘉文君       柳沢 伯夫君    阿部 助哉君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       大原  亨君    沢田  広君       新盛 辰雄君    中村 重光君       安井 吉典君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       玉城 栄一君    正木 良明君       中井  洽君    永末 英一君       三浦  隆君    榊  利夫君       寺前  巖君    松本 善明君       楢崎弥之助君    山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 村山 達雄君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      中川 一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 鯨岡 兵輔君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         総理府人事局長 山地  進君         日本学術会議事         務局長     大濱 忠志君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  石崎  昭君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       夏目 晴雄君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁人事教育         局長      佐々 淳行君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 吉野  実君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      井川  博君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         科学技術庁原子         力局長     石渡 鷹雄君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         国土庁長官官房         長       福島 量一君         国土庁地方振興         局長      柴田 啓次君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省欧亜局長 武藤 利昭君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 粟山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵省主計局長 松下 康雄君         大蔵省主税局長 福田 幸弘君         大蔵省関税局長 垣水 孝一君         国税庁長官   渡部 周治君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省管理局長 柳川 覺治君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 山口新一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   松浦  昭君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省産業         政策局長    杉山 和男君         通商産業省基礎         産業局長    真野  温君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁石油部長   野々内 隆君         中小企業庁長官 勝谷  保君         運輸省船舶局長 野口  節君         運輸省港湾局長 吉村 眞事君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省航空局長 松井 和治君         海上保安庁長官 妹尾 弘人君         郵政省電気通信         政策局長    守住 有信君         郵政省人事局長 奥田 量三君         労働省労政局長 吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 吉田 公二君         建設省都市局長 加瀬 正蔵君         建設省道路局長 渡辺 修自君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治省財政局長 土屋 佳照君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第一局長  佐藤 雅信君         日本専売公社総         裁       泉 美之松君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         参  考  人         (公共企業体等         労働委員会会         長)      中西  實君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         理事長)    野村 一彦君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         専務理事)   倉本 昌昭君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ――――――――――――― 委員異動 九月三十日  辞任         補欠選任   河野 洋平君     山口 敏夫君 十月一日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     河野 洋平君 同日  辞任         補欠選任   河野 洋平君     山口 敏夫君 同月三日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     片岡 清一君  小宮山重四郎君     石井  一君   塩崎  潤君     浦野 烋興君   正示啓次郎君     鹿野 道彦君   田村  元君     小澤  潔君   根本龍太郎君     北口  博君   原田  憲君     植竹 繁雄君   藤田 義光君     柳沢 伯夫君   武藤 嘉文君     中村  靖君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   岡田 利春君     安井 吉典君   野坂 浩賢君     新盛 辰雄君   山田 耻目君     沢田  広君   矢野 絢也君     玉城 栄一君   大内 啓伍君     中井  洽君   永末 英一君     三浦  隆君   不破 哲三君     榊  利夫君   山口 敏夫君     楢崎弥之助君 同日  辞任         補欠選任   植竹 繁雄君     原田  憲君   浦野 烋興君     粕谷  茂君   小澤  潔君     田村  元君   鹿野 道彦君     正示啓次郎君   片岡 清一君     越智 伊平君   鴨田利太郎君     渡辺 栄一君   北口  博君     根本龍太郎君   中村  靖君     武藤 嘉文君   柳沢 伯夫君     藤田 義光君   沢田  広君     山田 耻目君   新盛 辰雄君     野坂 浩賢君   安井 吉典君     岡田 利春君   玉城 栄一君     矢野 絢也君   中井  洽君     大内 啓伍君   三浦  隆君     永末 英一君   榊  利夫君     不破 哲三君   楢崎弥之助君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     塩崎  潤君 同日  理事小宮山重四郎君及び大内啓伍君同日委員辞  任につき、その補欠として石井一君及び吉田之  久君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  予算実施状況に関する件      ――――◇―――――
  2. 小山長規

    小山委員長 これより会議開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  予算実施状況に関する事項について、議長に対し、国政調査承認を求めることとし、その手続委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小山長規

    小山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  直ちに委員長において所要の手続をとることといたします。      ――――◇―――――
  4. 小山長規

    小山委員長 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。この際、その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小山長規

    小山委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事に       石井  一君 及び 吉田 之久君 を指名いたします。      ――――◇―――――
  6. 小山長規

    小山委員長 これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日参考人として、公共企業体等労働委員会会長中西貴君、日本原子力船研究開発事業団理事長野一彦君、同じく専務理事倉本昌昭君、以上の方々の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 小山長規

    小山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  8. 小山長規

    小山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。越智通雄君。
  9. 越智通雄

    越智(通)委員 去る六月の六日に、前の国会通常国会が終わりましてから四カ月が経過いたしました。その間、総理は、六月に欧州八カ国を回られ、また七月にはオタワのサミットお出かけになられました。年初来のアジアを入れると、すでに十五カ国を回られて、それなりの御所感、御所見があろうかと思います。実は私自身も、この夏に自民党石油調査団として中近東へ参りました。また、列国議会同盟の日本議員団としましてキューバに行ってまいりました。何か世界の潮流というのは非常に大きく動いている、そういう実感がいたします。それが日本にとって必ずしもいい方向に行っているのかどうか、非常に危惧する面もございます。オリンピックが名古屋に来ないで、ソウルにいわばとられてしまった、残念だということではございますが、それよりも一番こわいのは、ああいう国際場裏日本に対してみんながどう思っていたのだろうかというあの票の開きの方が、ある意味ではこわいということを感ずるわけであります。  どこの国とも仲よくしていかなければいけない、これはやはり日本の置かれている立場だと思います。しかし、同時にどこの国とも等距離外交というのはよくないのではないか、むしろ味方とする国、まあ敵とする国というわけではありませんが、そのそれぞれの国との間で差はあってもいいのではないか、そういう意味での全方位外交というものを日本は今後もきちっと確立していかなければいけないのではないか、私はこのように考えているわけでございますが、ひとつ最初総理から日本外交基本方針について、すでに所信表明でもいささか伺っておりますけれども、ここでもう一度お伺いさせていただきたいと思います。
  10. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国は、世界の平和と安定に積極的に貢献することによりまして、みずからの平和と安全を守り、そして豊かな国民生活を確保していくということを外交基本としておるわけでございます。そのような外交を進めるに当たりまして、アメリカを初め自由と民主主義自由経済体制、このような価値観を同じゅうする西側先進諸国との連帯と協調を深めながら、世界の国々との友好協力関係を増進していきたい、このように考えておるわけでございます。  わが国アジアに位置しておりますので、アジアの安定、アジアの繁栄ということには特に力を入れております。ASEAN五カ国を初め、中国あるいは韓国等近隣諸国との良好な関係親善関係、これを増進することが相互の利益であるばかりでなく、アジアの平和と安定に寄与するものである、このように考えておるわけでありまして、わが国アジア外交というのは外交の中でも一つの大きな柱になっておる、このように御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  11. 越智通雄

    越智(通)委員 いま総理からの御所見の中でも、近隣アジア諸国との友好関係を強く強調されたわけであります。私もそのとおりだと思います。俗に「遠くの親戚よりも近くの他人」とも申しますけれども、この足元であるアジア、これは総理が一番最初ASEAN諸国を回られたというところにもあらわれているとは思いますけれども、一番近い中国韓国、まだこれは行かれていらっしゃらない。これらの二つの国は、私はもう他の諸国と比べものにならないくらい日本に近い関係だ。世界で三人の人間だけが長いおはしを使って食事をしておる。日本人と中国人と韓国の人、これしかいない。文化としても、非常に同根、同じもとから発する文化を有しておるわけですから、ひとつぜひこの近隣諸国との友好親善を深めていきたい。たまたまこの中国並び韓国は政治的に言えば一種の分裂国家のようなかっこうになっております。  第一に、いま韓国についてお伺いしたいのですが、この間以来の韓国との交渉が余りうまくいっていない。ことしか来年明けてでも両首脳トップ会談が行われるかもしれない、あるいは行われてほしいという話もあったけれども、なかなかそこら辺がしっかりしためどが立たないわけでございます。片一方で全斗煥大統領南北の統一についても非常に呼びかけをいたしております。私どもにとっては非常に好ましいことだと思っております。そういう状態の中でひとつ韓国との率直な意思交流をぜひ進めていただきたいと思いますが、この件についての御所見を伺わしていただければありがたいと思います。
  12. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、先ほど申し上げましたように、アジア外交わが国外交の大きな柱にしておる、近隣諸国との友好協力関係を一層発展をさせたい、こういうことを申し上げました。韓国との関係につきましては、先般来外務大臣外相会談をやり、また定期各寮会議にも出席をいたしておりますので、外務大臣から最近の状況を御報告いたさせます。
  13. 園田直

    園田国務大臣 隣国の友邦たる韓国が新しい発足をして、五カ年計画をいろいろな困難な問題に直面しながら努力しておるところでございます。したがいまして、これに対する経済協力は、わが国経済協力基本方針のもとでできるだけの協力はすべきものと考えてはおります。しかしながら、現在非常に大きな開きがありまして、これは額の問題と、一つは、わが国経済協力軍事費肩がわりはできないということは御承知のとおりでございまして、その間の相互理解がまず必要でございます。やはり正しく理解をし、正しくつき合いをして、お互いがその好意がわかるというように持っていかなければ、これまた一番大事な国でありますから、そういう方針のもとに、時間をかけつつお互いに話を詰めていきたい、その上で首脳者会談であるとか、また外相会談であるとかということが出てくるわけでございます。
  14. 越智通雄

    越智(通)委員 私も実は韓国最高責任者の方方とお会いしてまいりました。大変な熱意であります。ことに、たまたま七年先がソウルオリンピックになりましたけれども、向こう五カ年くらいの間に近代国家としての基礎を固めたいという大変な熱意を持ってやっておりますので、時間をゆるがせにすることができない、向こうの気持ちに合うようにひとつ外交的な努力を重ねていただきたい。心から御要望するわけであります。  次に中国でございますが、去る九月に、自民党二階堂総務会長が訪問されました。その前日、かねてからの日本中国との間の途切れておりましたプラント輸出の商談と申しましょうか問題が大使からの話で再開されました。三千億の話がある意味ではアウトラインができてきた。近く谷牧首相が来られて、どういうことになるのでございましょうか、サインまでいくのでございましょうか、そういう話になる。  また、伺いますと、趙紫陽さんが南北サミットに行かれるかもしれない、向こう首相が。もちろん鈴木総理はこの十月二十二日、二十三日のメキシコ国カンクンで行われる南北サミットお出かけでございますので、先方でお顔が合うのかもしれない。そういうさなかに、この間葉剣英さんがいわゆる俗に言う国共合作、この呼びかけもされている。さらには、きのうですかきょうですか、新聞の報道では、アメリカ大統領は来年秋には中国に行くかもしらぬ、こういう報道もなされておる。中国をめぐる動きは非常に激しいと申しますか、変化がある。  こういう中で、やはり私は、鈴木総理中国を訪問されるなり何なり、もう一遍日中関係についてきちっとした橋渡しをされておく必要があると思うのでございますが、総理あるいは外務大臣から、内閣としての御方針、御予定を伺わせていただければありがたいと思います。
  15. 園田直

    園田国務大臣 当面する中国プラントの問題は、相当長い間紆余曲折があったわけでありますが、今般、御承知のとおり大筋については合意をしたわけでございます。日本としては、中国近代化のためにできるだけの協力をしたいと思うのは当然でありまして、したがいまして、合意はできましたが、細部についてはまだ詰めを必要とするわけでありますから、なるべく早い時期に両方の事務当局詰めを行って、そして合意ができ、かっこれが動き出すようにしたい、こういうのが私と中国の相談の結果であります。したがいまして、谷牧総理及び経済閣僚会議が行われるときには、すでにその実動ができるという段階まで持っていきたい、このように考えておるわけでございます。
  16. 越智通雄

    越智(通)委員 園田外相は福田内閣のときの日中最後の詰めをされた外務大臣でいらっしゃいますから、中国の御信用も厚いでしょうし、相手の出方も心得ていらっしゃると思いますので、ぜひしっかりお願いしたい。だけれども、この話は、前は石油化学などは三つもプラントのプロジェクトがあったのに、今度は大慶・南京石化プロジェクト一つになっているわけでありますね。その途中で思いもかけぬような、すべて御破算だというような声が起こってきたという、やはりかなりの経緯を持った問題でございますので、それなりの、将来二度とそういうぎくしゃくした関係の起きないようなしっかりした詰めを心からお願いいたしたいと思うわけであります。  そこで、石油の問題がございますので、ひとつ中近東問題についても御所見を伺っておきたいのですが、実は、総理は先ごろ十五カ国をお回りになられましたが、この中でやはり中近東はどこも入っていないわけです。一ころ新聞紙上などでは総理が中近東に行かれるかもしれないという報道もございましたけれども、中近東の方では大変に総理の訪問をお待ちしているというのが実情ではないか。アラブの人々は、お呼びしておもてなしするよりも、あらしをついて自分のところを訪ねてきた人を最も信頼します。中近東には国の責任者がみずから行って話をされるのが一番大きなことじゃないかと思うのであります。  いまたまたま、この十月の八日ごろでございますか、PLOのアラファト議長が来日される。中近東の問題は、私も二度行ってまいりましたけれども、大変複雑でございます。PLOがソール・アンド・レジティメートな勢力であるかどうかということについては、国際外交の上でも非常に論議の多いところでありまして、いわば日本がいまかなり前の方を走っている、西側諸国の中ではPLOの扱いについてはかなり先頭を切って走っている感じがするのでございます。  この間、エジプトのアリ副首相が見えられた。外務大臣ももちろんお会いになられていると思います。私どもキューバに行っておりましたものですから機会を失しましたが、私がカイロでお会いしたときも、PLOの問題はパレスチナの問題だ、自分たちはテーブルに着くところまでの環境づくりはするけれども、それから先のパレスチナのあり方、その中におけるPLOの位置づけは彼らの問題だということを直接アリ副首相から聞きました。そうだろうと思います。  そういう中で、中近東諸国のそれぞれむずかしい各国に対してそれぞれどういうようなお考えをお持ちになって外交を進めていくのか、それがすなわちまた石油にはね返ってくるという非常に深刻な面があるわけであります。そのいわば象徴みたいに、たまたまあと一週間もしないうちにPLOの議長が見える。恐らく世界は注目していると思います。新聞紙上伝えられるように、外交特権ないしはそれに準ずるものまでお与えになるおつもりなのかどうか、ここらにつきまして外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  17. 園田直

    園田国務大臣 中東地域は、石油の供給源であるということばかりでなくて、世界の平和のためにきわめて重要な場所でございます。したがいまして、わが国としては、特に中東地域の問題については、友邦たる米国とも相談をし、米国とは必ずしも同一歩調はとってないわけでありまして、御発言のとおり、ある意味においては日本が一番先頭を走っておるという考えを私自身も持っております。  そこで、この中東については、御承知のごとく、向こうから最近だけでもエジプトの副大統領、続いて大統領、それからサウジアラビアの皇太子など要人がおいでになる計画でございまするし、わが国の方からも議員の方あるいはそれぞれの要人が行っておりまして、ただいま江崎特使が総理の特使として派遣されておるところでございます。こういう人的交流を初めとして、やはり中東に本当の平和が来ることにわれわれは力を注がなければならぬ、こう考えております。  そうしますと、問題は、イスラエルは力をもってパレスチナを抹殺しようとするし、PLOはまたイスラエルを抹殺しようというこの争いの繰り返しでは、中東の平和は来ないわけでありますから、何としても両方がお互いに生存を認め合って話し合いをするという段階に、これは困難ではあるかもわかりませんが、英国などもそのように考えておるわけであります。そういう方向でこの問題に日本もできる限りの協力をしたい、また、両方に対して話し合いを進めたい、これが先般イスラエルの外務大臣と私が会い、今度またアラファト議長が来られたときのわれわれの一つのあれではないかと思っております。  なお、アラファト議長がおいでになることは、私は、そういう意味で待っておるわけでありますが、議員連盟の招待ではありますが、おいでになれば、総理も私もお会いする予定になっております。しかし、これによってPLOに対するわが国方針がいままでの方針と変わるものではございません。
  18. 越智通雄

    越智(通)委員 このアラファト議長という方は、非常に注目を集める方でございまして、また、そういうことをPLOとしては最大限PRしたい、こういうことでございますので、その点についていやが上にも慎重に御配慮を願いたい。  また、エジプトのサダトさんが十一月になったら来られるのじゃないか、大変よろしいことだと思いますけれども、御存じのとおりアラブの諸国の会合には、いまエジプトは入れてもらっておりません。入れてもらえない、イスラエルとの関係がありますから。キャンプ・デービッド以来のことがありますから。そのイスラエルでは、フランスで社会党政権、ミッテラン大統領が当選したときに、日本流に言えばちょうちん行列が行われたわけであります。社会主義の大統領ができてイスラエルが何で喜ぶのだと思うけれども、そういうくらい複雑な国際関係の中で中近東は動いているということでございますので、私どもは、中近東の和平をつくるために日本が一役でも二役でも買って、指導的役割りを果たすなどということはとうていできないでしょうけれども、せめてその一翼を担って国際外交場裏での日本のあり方というものを常に慎重に考えていかなければいけない、このように思うわけであります。  いま外務大臣から、ここは石油だけの問題ではない、確かにそのとおりであります。また同時に、私がこの夏ウィーンで東西経済研究所のドクター・レプチックにソ連の石油事情の説明を求めたときにも、そのような発言がありました。ソ連の石油はまだ大丈夫、十分あるのだ、ソ連がいま中近東にいろいろ攻勢をかけているのは、石油が欲しいというだけではないのだ、むしろより軍事的な観点だという解説をされておりました。いまふとそのことを思い出したわけでありますが、日本から言うと、やはりあの地区は、石油という意味では本当に心配でしようがない地域でございます。  通産大臣にお伺いしたいのですが、灯油が値上がりしている。そのこともきのうの経済閣僚会議でも問題になったというふうに聞いておりますけれども、ともかく石油がいまだぶついている、国際的にも国内的にも大変だぶついている、その中で値段が逆に上がっていく。一体石油問題というのは、これから先どんな見通しなんだ。また全然足りなくなってしまうのか、それともこのまま、まあ日本列島油浸しのままいくのか。金目からしましても、一ころ六百億ドル払っていた年間の石油購入代金がやや落ちてきたように見られます。五百五、六十億ドルで済んでいるのじゃないか。しかし、そのうちの七割くらいは、いまの中近東、アラブ諸国に行っているわけであります。通産大臣から、石油問題についての見通し、それも五年、十年先の話じゃない、せめて半年先、一年先までを見通して大体どんなくらいにいくだろうというお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  19. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  越智委員御指摘のように、確かに中近東は、わが国の油の依存ということでは非常に重要な国々でございます。御指摘のように私どもの油の中近東依存率は七〇%を超しておりまして、イラン・イラク紛争が起こりまして、多少の減り方はございますが、それでもサウジアラビアを中心に大きな依存度を確保しておるわけでございまして、そういうことのないように多様化しなければいかぬということで、いろいろあの手この手を私どもやっております。  御指摘のように油の代金は五百億ドル以上、五百五十億ドルと見てもいいのでしょうけれども、膨大な金を支払っておるわけであります。中近東ばかりに依存してはいけないというふうに思っておりますけれども、なかなかそうはいかない分もございまして、メキシコ、インドネシアいろいろなところに手を伸ばしておるわけでありますが、国内の省エネルギー、代替エネルギー、ということも鋭意進めておりまして、そのため十一年ぶりに依存率が六六%に落ちておる現状でございます。  しかし、それならば、いまの需給度が非常に緩和されておるからいいかといいますと、中長期的な展望もさることながら、この二、三年先を見ましても、現実にサウジアラビアは百万バレル・パー・デーの減産をやっておりますし、それからこれらの石油産油国は資源温存という基本方針をOPEC諸国が立てておりまして、資源というものは枯渇するものであるということからそういう方針を打ち出しております。したがって、第一次、第二次オイルショックに引き続き第三次はあるものだというふうに解釈しておかなければ、私ども日本は九九・四%という石油の対外依存率がございますので、そういうふうな考えのもとに展望しておかなければいかぬ。  それから、いま緩んでおるのは、実はいろいろな理由もございますが、それぞれの国がいまストックしておる油を放出しておる分もございますので、いずれそれも枯渇するだろうということを考えますときに、私どもは二、三年といえどもおろそかにできません。したがって、備蓄とかそういう面におきましても、いまは百二十日分ございますけれども、それをさらに積み増すという方法、それから先ほど申しました省エネルギー、代替エネルギー、そういうものについての開発、それから電源立地の促進ということで対処していかなければならぬという現状認識であります。
  20. 越智通雄

    越智(通)委員 石油の問題は、いずれ委員会の場を改めて通産大臣と篤とお話をしていきたいと思っておりますが、ことにこの中東産油国の国々との間の経済援助のあり方などをめぐりましてはいろいろ問題が多いのじゃないか。イランの石化事業について非常に大きな問題を残しておりますし、さらにサウジの分が始まるわけでございまして、二百億からの金が、政府としても負担が出てくるわけですから、中近東産油諸国との関係を、これからの大きなテーマとしてさらに掘り下げていきたいと思っておりますが、いま通産大臣の御答弁の中で、第三次石油ショックがあるかもしれないと思っておかなければいかぬ、それはそうかもしれません。  第三次石油ショックというものがあるとしたら、一体どんなかっこうで起こるのだろうか。もう一遍、OPEC諸国が強力に結束してぽんと上げてくるのだろうか。それとも何かもっとそれ以外の、たとえは悪いかもしれませんが、紛争の勃発みたいなかっこうでくるのだろうか。ないしはもっと――いま見ておりますと、世界の中がアラブはアラブでアフリカはアフリカで中南米は中南米で各地域別にグループ化しております。そういうグループ化している中で、そういう政治的なテンションが高まって日本を襲ってくるのじゃないだろうか、こんな感じもするわけでございます。  そこで、国際緊張の現状について、これは総理からお答えいただければありがたいと思いますけれども、日本の防衛努力に対しての批判も高まっているようでございますが、そういう国際情勢の中で日本はどういうふうな防衛姿勢をとっていくのか。防衛大綱だけでは物足りないという声もあるし、防衛大綱を、このままでうまく達成できるのかという議論もあるし、問題としては非常に深刻になってきておると思いますが、御所見を伺わしていただければありがたいと思います。
  21. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御承知のように、近年におけるソ連の軍事力の増強はきわめて顕著なものがございます。これに対しまして、アメリカも軍事力の増強でもって対応しようとしておる、またNATO初め西側の諸国と連携をとりながら東西の力の均衡を保持しなければ、世界の平和の維持が現実の問題として確保できない、こういうような立場に立ちまして努力を続けておるというのが現況であろう、こう思います。  また、しかし一方におきまして、そのような軍拡競争というようなことを続けていったのでは、真の恒久的な世界の平和は確立できないというようなことから、ソ連との間に絶えず対話の窓口を開いていこう、その対話を通じて米ソの間に有効な軍備管理あるいは軍縮、そういうものを進めなければいけない、こういう機運も出てきておるわけでございます。  私どもは、この十一月に米ソの間で戦域核の問題で協議が行われるというようなこと等に対して大きな関心を持ち、またその成果を期待いたしておるところでございます。  わが国の防衛につきましては、こういう流動する国際情勢の中にありまして、わが国の憲法及び基本的防衛政策に基づきまして、自衛のための必要最小限度の防衛力を整備する、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならない、専守防衛に徹する、また非核三原則を堅持してまいるというような基本方針に基づきまして、自主的な、また国民の理解協力を得ながら着実に防衛力整備の水準に近づけるように努力をいたしておるところでございます。  私どもは、それと同時に、日本としては単なる防衛力の整備という側面だけでなしに、わが国の経済的な、あるいは高い技術の水準等を背景にいたしまして世界の安定と繁栄に協力をしていきたい、経済協力、技術協力等を進めて第三世界その他の発展にも協力をし、それを通じて世界の平和と安定に協力をしていきたい、こういう基本的な方針で努力をいたしてまいりたい、こう思っております。
  22. 越智通雄

    越智(通)委員 日本が軍事大国になるということはしてはいけないし、またなかなかそういうことにはなりはしない、私はそう思うのです。やはり日本としてはもっと防衛努力をしなければいけないのじゃないか、そういう厳しい反省が、いま国の内外に沸き起こっているように私は思うわけであります。  しかし他方で、防衛ということはどうしてもいろいろと国民の負担を伴うわけで、こうした行財政の改革をしているさなかに、その要請にこたえるのはなかなかむずかしい。だからこそ、防衛費というものがそうした行財政改革の中での聖域か聖域でないかというような議論が国会で行われているのではないか。また去年のいまごろはちょうど日本の防衛費が何%伸びるかということで、いろいろ国際的な議論もありました。九・七%か七・六%か、二%違うと四百億円ぐらい違うわけですけれども、そういう金目をめぐっての議論も去年などはございました。ことしは七・五%。  私は、そこで防衛庁長官にお伺いしたいのですが、防衛努力というものは防衛費の総枠だけで議論していていいのだろうか、むしろ防衛努力というものは防衛費の中身なのじゃないか、中身をもっと効率のいいものにすることによって防御努力はさらに重みを増すのじゃないか。  私が福田元総理とともにこの三月レーガン・アメリカ大統領にお会いしたときに、実はジョージタウン大学でブレジンスキーさん、カーター大統領のときの大統領補佐官といろいろと議論をいたしましたが、彼は、率直に言いまして、日本の場合には海と空の努力が足らない、こういう話もしておりました。  わが国の防衛費というのは、前から大体人件費、糧食費の比率が高いように思います。現在でも四八%ぐらい、二兆円の防衛費の中で四七%から八%くらいが人件費であり糧食費である。逆に言うと、装備費の比率が非常に低い。よその国では装備費というのは大体防衛費の三分の一、日本の場合には二割、よくて二割二、三分、そんなところで年々推移しているのじゃないか。この装備費をぐっと強めていこうと思ったからこそ、今度の五十七年度の予算というものは国庫債務負担行為がふえてきた。装備というのは現金でその年にすぐ買うというわけにいきませんから、どうしても後年度の負担はふえるというかっこうになってきたのじゃないか。やはりそういう防衛費の中身の改善をしていかなければならない。人件費が多いということは、陸のシェアが多いということにもつながるわけでありまして、警察予備隊以来の経緯をずっと私も見てまいりますと、いまでも大体陸の経費が四五%、海と空とが二七、八%、そんなところで推移しているように思うのですが、限られた防衛経費の効率的な運営について防衛庁としていかなる努力をされているか、防衛庁長官から御所見を伺いたいと思います。
  23. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  厳しい国際情勢に即応いたしまして、防衛庁といたしましても、わが国の防衛力の整備に真剣に取り組んでいるところでございます。また、御指摘のように行財政改革のただ中でございますので、そういったこともしっかり念頭に置いて対処しなければならないと考えておるわけでございます。  そこで、ただいまお尋ねの防衛費の中身の問題でございますが、御指摘のとおり、防衛庁のこれまでの予算を分析いたしますと、人件費のウエートがかなり高い。全体で申し上げますと、かつては五〇%を若干上回っておった。去年あたりから四〇%台になりかけておりますけれども、いずれにいたしましても、人件費のウエートが高いということは否めないわけでございます。しかしながら、現在わが国は志願兵制度をとっておりますので、やはり相当な給与水準は保たないと、また精強な部隊を育成することができない、こういう面もございますので、そういった点を十分勘案の上、いま御指摘のような装備の改善の方のウエートを逐次引き上げてまいりたい。御指摘のように、これまでは二〇%程度であったわけでございますが、最近はこれを若干上回るような方向に持っていっているわけでございまして、その点につきましても引き続き努力をしてまいりたいと考えております。  なお、質の改善を図る場合にどういった点に重点を置かなければならないかと申し上げますと、いまの自衛隊で一番不足している点は、即応性が足りないということ、そしてまた継戦能力、抗堪性、それから指揮通信能力、そういった点の不備が指摘されているわけでございまして、これは陸海空を通じて言えることでございます。バランスのとれた装備ができるように陸海空を通じて行わなければいけないと思います。その上で、ただいま御指摘のございました海空の近代化の問題、日進月歩の技術水準に対応していけるような、もちろんこれは自衛の範囲でございますから、そう大きなものは考えておりませんが、きめの細かい質の高い装備を充実していく、そういった点に重点を置いて進めているところでございます。  今回提出いたしました五十七年度の概算要求におきましても、そういった点に重点を置いているわけでございます。と同時に、既定経費の徹底的洗い直しによる合理化あるいは編成等で最近の実情に合わない点の見直し、また、艦艇、航空機等で耐用年数の到来したものでも、近代化を図ることによって延命を図れるものにつきましては極力これを生かしておる、そういった点の合理化、効率化にも配意している次第でございます。
  24. 越智通雄

    越智(通)委員 財政が非常に厳しいときに防衛努力を要請されて、つらいお立場だと思いますけれども、せっかくの御努力を心からお願いしたいと思うわけであります。  そこで、時間もなくなりました。財政、経済の問題について急いでいろいろお伺いしたいと思います。  昨日、「当面の経済運営と経済見通し暫定試算」というのを御発表になりました。中身はよく存じております。この問題の中で、すべて大体うまくいっているけれども、大きな問題はやはり財政の赤字。八十二兆円たまったというだけではない、これからもその体質改善がなかなか厳しいというところ、もう一つが、景気を支えているのは輸出だということ、この二つがいまの日本経済の当面している大きな問題点じゃないか、私はこういうふうに思うわけであります。  私どもは、経済運営に当たっては、物価と経済成長と国際収支とそして財政、この四つのファクターを常ににらんでおかなければいけない、四つのメーターを常に頭に入れておかなければいけないと思っております。そして、これの優先順位とその程度とタイミング、これが運営の基本になってくるのじゃないか。私どもは物価の安定を最も重視しているいわば考え方の流れでございますけれども、そうした中で、いまの経済運営について、ことに輸出に乗っかりがちな、まあ内需を一生懸命指導するようにすると言っておりますけれども、いまの経済運営についての経企庁長官のお考えと、この財政赤字の再建期間中における解消についての大蔵大臣のお考え方と、それぞれまずお伺いさせていただきたいと思います。
  25. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 わが国の当面する財政と経済の焦点は、いま御指摘のとおりだと思います。  そこで、いま政府の進めようとしております経済運営の焦点は、外需中心の成長が続いておりますので内需の拡大をある程度図っていくということ、それから物価の安定をさらに進めるということ、こういうことを中心に昨日もいろいろな細かな具体策を決めたところでございます。幸い全体としては成長そのものは政府の見通しの線をいっておると思いますので、貿易の拡大均衡を図りながら、一方できめ細かな内需拡大策を図っていく、そういうことを今後進めてまいりたいと考えております。
  26. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま企画庁長官からお話があったように、日本における経済的な諸条件は先進諸国に比べて大変いい。問題は、財政だけが諸国に比べ極端に悪い。こういうような状態の中では、財政によるインフレーションあるいは財政によって非常に一般の歳出が妨げられて、今後老齢化社会への対応ができなくなるとか、経済のてこ入れに財政が一切使えなくなるとか、こういうようなことは非常に困ることでございます。したがって、当面は、これから三年の間でまず赤字国債から脱却することを前提として、着実な財政依存度の減少、縮小に目下努めていこうというところであります。
  27. 越智通雄

    越智(通)委員 その財政期間の三年間が実は大蔵大臣、非常に大変な時代じゃないか、私はこう思うのです。経済成長の方もそう高いものは望めないのじゃないでしょうか。いまの五%がらみの成長を維持できればまあまあだというような中で、おまけにかつてのように財政支出が次の税収を誘発してくるような構造じゃなくなっちゃっている。福祉や何かにどんどん傾いていきますと、どうしても財政的には財政支出が税収を誘導してこない。さらには、下手をすると景気が悪くなって収入がおっこったときに逆に財政支出の需要がふえてしまう。サイクルが逆になってきております。入りが少ないのです。出が少ないのじゃないのです。入りが少ないから出が多くなってしまう。そういう中で、これからの運営は非常に厳しいと思うのですが、増税しないで財政再建をしていきたいという考え方で今回も臨まれているかと思いますけれども、二体それなりの、この三年なり四年なりそこら辺の展望をどういうふうにお持ちか、もう一度お伺いさしていただきたいと思います。
  28. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり、非常に不確実性の時代と言われるだけあって、大変激動する国際経済でございますから、われわれとしては確実に三年間を計数的にはじき出してこういうことになるであろうということを申し上げる自信はございません。ただ、さきにも財政の中期展望というものをいろいろ苦心をしてつくってみたわけでございますが、あのままでは、増税をするかあるいは何かするかしなければとうていやっていけないというような要調整額があるわけでありますから、それをそういうことをやらないで、まず体質の改善を行って、極力歳出を切り詰めて、それで五十七年度予算を第一年度として本格的な財政再建へのスタートにしようということで、目下鋭意努力中なわけでございます。  もちろん、今後の景気について、これがうんと落ち込むというようなことになれば、もう土台が違ってくるわけでありますから大変な事態になりかねない。したがって、せっかく日本はいい経済事情にあるわけですから、この灯を消さないようにいろいろときめ細かい配慮をして、予定の税収を確保していくということが最も大切だろう、そう考えております。
  29. 越智通雄

    越智(通)委員 そこで、いまお話のあったように、財政の支出を洗い直していかなければならない、そのとおりなんですよ。入ってくる方はそんなに期待してはいけないし、また、ふやすということじゃなくて出ていくものを始末するという考え方が非常に大事だと思うのですが、五十七年度の要求に関して、この五月でございますか、要求額のゼロシーリングを決められた。私は一つの見解だと思うのです。一つのやり方だと思うのです。だけれども、ゼロシーリングというものは、逆に言うと各省のシェアというか比率を固定してしまう。大体各経費というのは、年々歳々いろいろ予算の中に占める比率が変わってきたのだと思うのです。過去十年間に一番伸びたのは何だ、文教の経費と社会保障費でございましょう。だからこそ、いま歳出の洗い直しをしていくと、そこにどうしてもメスが入ってくる。そういう構造が変化してくる過程で、ある時点で一時ストップをかけちゃう。そこで、そのシェアをいわば凍結しつ放しみたいにしたら、むしろ財政構造の改善ということには矛盾してしまう場合が出てくるんじゃないだろうか。ゼロシーリングをことし五十七年度の要求についておとりになったけれども、今後もお続けになるのですか。ある団体は、三年ぶつ続けにやったらどうだという要望を出しているところもある。そこにはそういう問題性があると思うのですが、ぜひ硬直性を打破して、伸び率の議論だ、増分の議論だということじゃなくて、根っこに戻って考え直す財政というものをやっていくということについての蔵相の見解をもう一度お伺いしたいと思います。
  30. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ゼロシーリングというのは、一つの政策項目を個別個別全部ゼロにする、伸び率をゼロにするというわけではございませんので、各省庁において省庁全体の伸び率をゼロにしよう、四つばかり例外がございますが、そういうことであって、その中で伸ばすべきものは伸ばし、減らすべきものは減らして、全体として伸ばさないということでございますから、私はこれがいつまでも続くというようには思っておりませんが、一応あなたのおっしゃるようにもとへ戻って、この限りある財源の中で、徹底した経費の効率化、重点化のための見直し作業としては大変役立つのではないか、そう思っております。
  31. 越智通雄

    越智(通)委員 蔵相、そうおっしゃいますけれども、お役所の常として、伸び率ゼロというと、ある役所の中でも各局ごとにゼロになってしまう、下手をすると。おれの局も前の年どおり、こっちの局も。下手をすると局と局との間で、じゃお互いに貸しっこするかなんという枠の貸借にもなりかねない、これが実情じゃないかと思うのですが、ゼロシーリングの実行に関しては、できるだけ弾力的にそういうものを考えていただきたい。  そして、それから先の実は個々の経費の問題があるわけですけれども、これは今国会は行財政改革の国会であり、そのために来る本会議において特別の委員会も設けられるというように伺っておりますものですから、各論はそちらでまたやらせていただきたいと思います。  そこで、行財政改革の中でただ一つだけこの際非常に重要だと思いますのでお伺いしておきたいのは、公務員の給与のあり方、これについて鈴木内閣としての御所見を承っておきたいと思うわけです。  私は、日本のこの官僚機構というのは、私も二十年お勤めさせていただきましたからよくわかっておりますけれども、世界に冠たるものだと思っております。それはやはり日本とフランスが優秀なる官僚機構に支えられて運営されているように私は思っておりますが、しかしもちろんその中には、いろいろ身を粉にして働いている人もあれば、のうのうとしている人もいるかもしれません。いろいろばらつきもあるかもしれない。そうした問題について一番問題なのは、この公務員の給与というものをどういうふうに決めていくのか。  人事院の勧告というものがあります。私どもが三十年ぐらい前、大学出たてに勉強したのでは、国家公務員法というのは、いわばアメリカをもとにしてつくった。人事院の勧告という言葉は、アドバイザリーオピニオンという言葉の翻訳だ、こう教わったわけでありますが、その本家本元のアメリカではいま何をやっているか。この八月にフェデラル・ペイ・コンパラビリティー・アクトという官民較差を比較する法律に基づいて、大統領にペイイングエージェントというのが一五・一%の勧告をしたら、大統領は四・八%に値切っちゃった。それで、これは議会を通っちゃった。たしか十月一日から施行されているんじゃないかと思いますけれども、もう向こうでは制度が変わっています。この法律は一九七〇年の法律です。やはりいまの五十六年をどうするかという問題を伺うのじゃなくて、むしろもっと長期に国家公務員の給与、そういうものについてまず根本的にそれは行政改革としてどのように御認識になっていくのか、行管庁長官にお伺いいたしたいし、また、勧告の具体的な運用に当たっては、いろいろな問題が出ているわけでありまして、かつては民間の場合のケースは三十人以上をとっておった。いまは百人以上をとっている。官民較差の比較のときに、同一の地位、類似の業種にあるものはどうだという比較をするときに百人以上の企業しか見ていないのです。さらには民間と官庁では本俸と手当の組み込み方が違う。いま参議院で継続審議になっている退職手当の問題に関しても、官庁によっては、公企体では退職金のベースになっているのは最後の俸給です。民間ではその人の二十年、三十年勤めた間の俸給全体の標準額です。一般会計の役人だと、やめる前の年の一年間の平均です。みんな違うのです。こういう問題が放置されたままに行財政改革というのはまずいのじゃないか。公務員給与の問題についていまどうということではありませんが、根本的に検討するお気持ちがあるかどうか、そのお考えを行管庁長官にお伺いしたいと思います。
  32. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 給与の問題は、公務員制度の中でも非常に重要な問題でございまして、いわゆる第二臨調におきましても、公務員制度の改革問題の一環として検討が加えられる予定でございます。その中には人事院制度そのものも検討の対象になるであろうと思われます。  当面の給与問題に対する措置につきましては、給与関係閣僚協におきまして、誠実かつ慎重に検討しておるところでございます。
  33. 越智通雄

    越智(通)委員 いま人事院の制度を含めて行管庁としては今後の行財政改革の中で御検討いただく。いまいただいているこの勧告あるいは閣議決定その他の中では、当面のということだものだから踏み込みが足りていないと思いますので、ぜひ根っこにさかのぼって、踏み込んで御検討を賜りたいと思うわけであります。  時間がなくなりました。最後の質問をさせていただきますが、お役人に対してうらやましいなと見ているのは中小企業なんです。お役人天国じゃないか、こういう言葉が聞こえるのですね、中小企業のだんなさん方から。非常に厳しい状況にいまあると思っております。経済全体はまあまあの運営かもしれませんが、中小企業の倒産はやはり大きいのです。去年だけで一万七千八百件もあった。いや中小企業というのは分母がふえているから、何百万もあるから大した率じゃないだろうと言う人もいますけれども、そうじゃありません。四十四年には中小企業者というのは四百六十万だ、約十年前。そのときの倒産が一年間に八千五百件。十万件当たりの例で言えば百八十三件の倒産です。いま中小企業は確かにふえた。百二十万ふえて五百八十万います。だけれども、一万七千八百件倒産しているのですから、率で言えば十万件のうちで三百六件倒れているのですよ。やはり多いのです。  こういう中小企業に対して、じゃ、きのうのあの政府の方針の中に何が書いてあるか。官公需をできるだけ出しましょうと書いてある。下請の金ばなるべく早く払いましょうと書いてある。それだけなんですね。あと不況カルテルをなるべく弾力的に、こう書いてある。私はやはり日本経済のバイタリティー、民間活力の源泉というものはこの中小企業にあると思うのですが、中小企業に対してひとつぜひもっと踏み込んだ温かい手当てをしてほしい。その場合に、不況カルテルという言葉がここに出てきていますけれども、いま三十二業種やっているのだと思いますけれども、このカルテルの認め方が細か過ぎる。いつまでだとか、種類はどうだこうだ、同じ業界のつくっている製品ごとに分けてみたり、もともと公正取引委員会というのは、民間の自由競争原理を活用させて、みんなが張り切ってやるように土俵づくりをするためのものだったと思うのです。これもアメリカから入ってきた制度じゃありませんか。これもアメリカと――ドイツもやっていますけれども、余り多くの国がやっていない制度なんですね、独禁法というのは。むしろこれがいまの中小企業の伸びやかな活力をそいでいるように思う。私はむしろ独禁法の改正をしてもらいたい。課徴金を五十三年から五十六年の間に、二十二億円取っているのです。十九件取っているのです。十九件課徴金を取られた企業の中には大企業は入ってないのです。多くは商業協同組合とかなんとか、そんなところですよ。三十二億の課徴金を取って、本当に泣いています。中小企業策対について、さらに独禁法の改正問題を含めて、ひとつ通産大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  34. 田中六助

    田中(六)国務大臣 お答えいたします。  確かに、中小企業対策というものについて、倒産件数から比べますと手ぬるいという御指摘は否めないことではないかと思います。  具体的な対策として、私ども、実は政府三機関の条件緩和とか、貸出金利をできるだけ減らすとかいう対策をとっておりますけれども、八月の倒産件数だけ見ましても千三百六十二件という件数。少しは昨年度よりも下がっておりますけれども、やはりそういう件数で、胸の痛む思いをしておるわけでございます。  当面の対策といたしましても、官公需の発注とかあるいは下請代金支払い遅延防止というようなことを二日の私どもの経済閣僚会議でも決めましたけれども、根本的な対策として、個人消費の刺激とかあるいは住宅建設とか、そういうものをしてできるだけ景気を浮揚させなければならないというふうに思っておりますけれども、総合対策そのものにやはりどこか不備、欠陥があるというふうに考えております。  ただ、悲観する材料ばかりではないわけでございまして、御指摘のような非常にみずみずしい活力というものを中小企業は持っておる部分もございまして、設備投資も非常に明るい方向にもあるわけでございます。したがって、私どもはそういう環境づくりにより一層努力して努めなければならないという方針をもって臨む所存です。  それから、第二点の独禁法でございますが、確かに母国はアメリカ、成長は西ドイツ、そして私ども日本にも独禁法があるわけでございまして、越智委員御指摘のように、独禁法の悪い面も、悪いというよりも、不況カルテルの問題とかいろいろ御指摘の面もございますけれども、独占、寡占という大企業によって痛められる面を独禁法がこれをチェックしている面もございますし、私どもも独禁法そのものについては、十分いい面、悪い面を検討して、中小企業が困らないような対策をもって臨みたいというふうに考えております。
  35. 越智通雄

    越智(通)委員 ありがとうございました。
  36. 小山長規

    小山委員長 これにて越智君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣健二郎君。
  37. 川俣健二郎

    ○川俣委員 早速ですが、審議に入る前に、総理大臣から、今回の行革に対する決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  38. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今回、臨時国会を特にお願いをいたしまして、当面緊急に処理しなければならない補助金等の削減の措置を一括法案といたしまして、行革関連の法案といたしまして、これの御審議をお願いすることにいたしたわけでございます。  いまわが国は、経済は先ほど来申し上げるように先進工業国の中でも比較的順調に推移はいたしておりますけれども、しかし財政は大変厳しい状況下に置かれておるわけでございます。  この財政を再建いたします道は、増税、大型増税によるか、あるいはまた思い切った行財政の縮減合理化に求めるか、道は二つしかないわけでありますが、私はこの増税、大型増税を求めず、行財政の改革、縮減によって財政再建を進めよう、こういう決意をいたした次第でございます。  もとより今後の行政の改革は、単に財政を再建するという目的のためのみではございません。ただ、どうしても、とかく長い間行われてまいりましたところの行政の制度とか運営とかいうものはなかなかこれを改革するということは困難でございますが、私は、この危機的状況にございます財政の再建、これを国民の皆さんの御理解を得ながら、行財政と一体にとらえまして、この際、行財政改革を強力に推進しようと考えておるわけでございます。私は、行政と財政は表裏一体のものである、このようにとらえておるわけでございます。  また、今回の一括法案は、それのみで行政改革が終わるものだとは考えておりません。これは一つの突破口であり、今後引き続き臨調の答申等をいただき、世論を十分勘案をいたしまして行財政の改革を推進してまいりたい、こう思っております。
  39. 川俣健二郎

    ○川俣委員 増税のない行政改革をやるという気持ちはわかるのだが、この春の通常国会で大衆課税はほとんどやってしまった。中小企業の二%法人税含めて十二品目の物品税、これは消費税の形を変えてやってきたものなんだが、塩の果てまで公共料金も全部上げてきて、きて今度はいよいよもうかっている企業、大企業、こういうものに増税を願おうかといったやさきに増税のない財政再建をやろうという考え方、これはちょっときょうの論議ではなくて、行革委員会で篤と審議されると思うのだが、私は、二十二日の閣議決定の七項目、それから二十八日の総理大臣の方針演説、そして本会議の質疑討論を聞いていますと、非常に落胆というか期待外れというか、総理大臣が就任されて一年有余、この方は何をやるのでしょうか、何かやってくれるに違いないと私も期待しておった。そうしたら、行政改革、歴代の内閣が旗を挙げたがなかなか実現しなかったものをやると言うものだから、よし、それじゃひとつ鈴木さんならやるのではないか、東北の南部の岩手の漁民からたたき上げて荒波で育った鈴木さんだから、これはやってくれるだろうと思って期待した。  ところが、まずここではっきりしておきたいのは、それじゃ一体何だったのだろうかということをみんなでここで、七つの項目ですか、これを主務大臣がそばに座っておられますから、中曽根長官から、ちょっと簡単でいいですから話してください。
  40. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 一つは厚生年金等の国庫負担金の繰り入れの特例、それから同じく保険の事務費の繰り入れの特例、それから児童手当の制限の特例、それから四十人学級、この問題の延期を含む特例あるいは利子補給に関する問題、それから一国務大臣の給料の凍結、それから地域特例に対する特例措置等でございます。
  41. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総理、いま七つを中曽根長官から読んでもらったんだが、もう一遍ここで復習すると、年金の国庫負担を削除する、四分の一、細かいあれは要らないんだが。それから公的保険の事務費をいままで国庫負担しておったものをカットする。児童手当は所得制限、国庫負担の削減になるわけです。四十人学級は抑制する。農業、公共事業が毎年ああいう一それで生活しておる、特に過疎、僻地等が一番大変であるこの地域特例のかさ上げ、これはまず今回六分の一をカットする。それから政府金融機関の法定金利というんだが、これとて住宅難という、住宅金利だけはこういう形でやろうという話、こういう中から生まれてきたものを、今度は弾力化という名前ではあるが、簡単に言えば引き上げるのだ、金利を。それから七つ目は、取ってつけたように閣僚給与の一部返上とあるんだが、とりようによっては、わしらもがまんするから使われておる君たちもがまんしろという意味なのかしらぬけれども、これはちょっと、さっきも越智委員から言われましたけれども、私は公務員ではなかったし国から給料をもらったことはないんだが、大臣方の奥さん方の困り方と一般の労働者の困り方というものは、この物価高の目減り賃金のときにどうこれをとらえるか、これは後で同僚委員から篤と質問があると思うのだが、こうやってみると、年金、児童手当、教育、農業、それからもう一つ別口がある。老人医療費なんだ。これは三百億なんだ。これは別途国会に提案しておって、専門委員会の社会労働委員会に提案しておる老人医療費、いわゆる初診料も、一日入院費も取るという有料化の法、これが年間約三百億、こういう別口までちゃんとある。そうなると子供、教育、年寄り、農業、中小企業、こういったところがどう考えたって、総理大臣、あなたのせっかくの決意だが、いままで本会議で答弁してきた福祉関係もやはり行革を担うべきだ、そうじゃないんだ、これは。福祉関係は行革を担うべきなんだ。「も」じゃないんだ。ほかのものはありますか、総理。どうです、これは。
  42. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御承知のように、福祉関係予算が全体の予算の中で大きなシェアを占めておりますので、この財政の縮減合理化を図ります際におきまして、福祉関係に触れる面が確かに多うございます。それが目立つということでございますが、今回の財政再建に当たっての縮減合理化に当りましては、全体の分野にわたりましてこの思い切った見直しを行うわけでございます。  今回の特例法案は、臨調の第一次答申を受けまして、当面緊急に処理すべきものを取り上げたものでございまして、五十七年度の予算の編成及び今後の行革の推進の段階におきまして、各分野にわたってこれを行ってまいる、このように御理解を賜りたいと思います。
  43. 川俣健二郎

    ○川俣委員 福祉関係は顕著にあらわれると言うけれども、いま主務大臣の中曽根さんがおっしゃった七項目に、福祉関係以外のものと言ったら閣僚の給料一部返上だけでしょう。あと全部、中小企業なり福祉関係じゃないですか。四十人学級、老人医療それから児童手当、年金だもの。そうなると、総理が政治生命をかけると言ったにしては、ちょっとこれは納得せいと言ったって国民側は納得できない。期待外れだと私は思います。  そこで、それじゃ一体君なら何とするかということは当然あります。私らもりっぱにかけています。それはわれわれがここでるる言う時間はないんだが、たとえば特殊法人なんか何とかしたらいいんでないか。余り好評でない、特殊法人というのは。全部というんじゃないですよ。中身ですよ。これは洗うべきではないか。一体その特殊法人というのは――中身で言いますから私は。特殊法人というのは一体何ぼあって、それに従事しておる従業員は何人ぐらいいるものでしょうかね、長官
  44. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 五十六年一月一日現在で百九法人ございまして、役員数が七百六十九人、職員数が九十三万八千八百四十四人であります。
  45. 川俣健二郎

    ○川俣委員 これは全部不要なんというものじゃない。それぞれの歴史的な過程を経て、現在も必要であるでしょうから。いまおっしゃったように七百六十九人、ほとんどいわゆる高級官僚の天下り、七百六十九人。従業員が九十三万人。  その中で一つだけ私は例を取り上げますと、これもいろいろと担当委員会で論議を続けてまいりました日本原子力船研究開発事業団、この日本原子力船研究開発事業団というのは、委員会では、もうほとんど廃止したっていいでないか、むしろ統合したらいいんでないか。何と統合するか。これは日本原子力研究所という二千三百九十六人の従業員を持っている法人があるわけです。この日本原子力研究所に統合して、そしてあの「むつ」というものが失敗なら失敗で、今後その失敗を土台にして、さらに研究したらいいんでないか、こういうように私ら思うのですよ。  そこで、せっかくきょう日本原子力船研究開発事業団理事長さんにお出まし願っておりますから、一体、ここでつくっておる「むつ」というものの大体の経過を、何年から始まって、いまどういう状態になって、これからどうするつもりか、時間が制約されておりますから簡単にお話し願って、その中で論議してみたいと思います。
  46. 野村一彦

    ○野村参考人 お答えいたします。  当専業団は昭和三十八年に設立されまして、原子力船の第一船実験船「むつ」の建造に着手いたしました。そして昭和四十七年に船としてでき上がりまして、それに原子炉も設備いたしまして、原子燃料を装荷いたしたわけでございます。そして諸準備を経まして、昭和四十九年の八月に出力上昇試験のために大湊港を出港いたしたわけでございますが、その四十九年の九月に大湊港の沖で放射線漏れを生じまして、その結果、地元関係の県、市及び漁連の方々との政府並びに事業団との話し合いが行われまして、そしていわゆる四者協定というものが結ばれまして、一たん「むつ」は大湊港に入ったわけでございます。  しかし、その四者協定において大湊港を撤去するということ、それから「むつ」が大湊港から出ていくということ、その他の項目が約束をされたわけでございます。その中で、修理をどこにおいてするかということと、新しい母港をどこに求めるかということで、いろいろと政府におかれまして検討し、各方面と折衝されたわけでございますが、五十三年の七月に地元の長崎県、佐世保市及び長崎県漁連と国及び事業団との間におきましていわゆる五者協定というものが結ばれまして、そして五十三年の十月に「むつ」は補助エンジンをもって大湊港を出まして、そして五十三年の十月の十六日に佐世保港に入港いたしました。そして、佐世保港で所要の準備をして修理を開始するということでございまして、その間いろいろ関係方面の専門的な助言をいただきましたり、あるいは国の方からのいろいろのアドバイスをいただきまして修理を開始するということでございましたが、不幸にして修理の開始が一年以上おくれました。  そして、五十五年の、昨年の八月に本格的な修理に着手をいたして、現在佐世保港において遮蔽改修と、それに伴う安全性の総点検という業務を鋭意行っておるわけでございますが、これが五者協定におきまして、入港のときより約三年ということでございますので、本年の十月に佐世保港を出るという五音協定の約束になっているわけでございますが、修理にいろいろと技術的にむずかしい問題がございましたり、修理の着手がおくれたりいたしまして、多少その間工程の変更といいますか手順の変更等もございまして、先般中川大臣が地元に赴かれまして、関係者の間に、五十七年の八月三十一日まで、八月末までに佐世保港を出港する、それまでに修理を完了するので、その点の御了解をいただきたいということを地元においてお話をなされ、その意を受けて佐世保市あるいは県議会あるいは漁連等においていろいろと検討なさっておるということで、佐世保市は事情やむを得ないということで、その延期の件について市議会において可決をされました。  当事業団といたしましては、新たにお願いをいたしました五十七年の八月三十一日までに修理及び安全性の総点検を終わって佐世保港を出港するということにただいま最大限の努力をいたしておるところでございます。
  47. 川俣健二郎

    ○川俣委員 問題は金なんだ。国会にも三回この法案の延期を提案して承認を得ておるわけです。その間、ちょっと調べてみると、科学技術庁長官、この大臣は、亡くなった佐藤榮作さんから二十四代目がいまの中川一郎大臣なんだ。問題は、いま行財政改革をやっているんだが、これはどなたが答弁するか知らぬけれども、一体どのくらいかかったのだろうか、もう二十年前からの金だからね。その決算だけをずっと足していって、いまの金に換算しなくてもいいから、決算だけ足してどのくらいかかったのか、ことしの予算を入れて。
  48. 石渡鷹雄

    ○石渡政府委員 お答え申し上げます。  日本原子力船研究開発事業団が設立されました昭和三十八年度から五十五年度までの決算を足しますと三百三十九億円になります。  なお、今年度の予算が六十九億円でございますので、これを加えますと約四百億円ということに相なります。
  49. 川俣健二郎

    ○川俣委員 二十年前からの決算額を数字的に足しただけでも四百億、これを今の金に換算したらというので経済企画庁で計算してくれましたのですが、かなりな額になるのです。  さらに、一体これからどうするのだろうか。そうなるとやはり中川さんに聞くしかないのだが、一体これからどうするのだろうか。私がずっと調べてみますと、一番先に横浜港に係留させようとした、定係港を横浜に選ぼうとしたが、ここにおられる大出さん方が猛反対をしてまとまらなかった。それからむつへ行った。そうしたら放射能が漏れた。それからちょうど総理大臣が、自民党の総務会長か知りませんけれども、総務会長が、つかみ金を漁民に渡した、これは十二億。それから直すのに九十億。それから今度は佐世保の方に行って、五音協定の漁業補償その他で、なだめ金で二十五億。こうやってみると、一体これは必要だろうか。佐世保にはあのようにわんわん言われておる。今度はいよいよまたむつへ戻ろうかといったら、反対派のむつ市長が勝って、これは大変だということになる。中川さん、これはどうするの。これが行政改革でしょう。
  50. 中川一郎

    ○中川国務大臣 お答えする前に、問題でございますから、放射能は漏れておりませんで、漏れたのは放射線でございます。この点は、そういう誤解が「むつ」に対する非常に大きな反発となって大変な苦労をする結果になりますので、あえてここで訂正させていただきます。  そういうことで、放射線が漏れましてああいう事故になり、佐世保にお願いして修理を来年の八月いっぱいで完成することになっております。  そこで、行き先の新定係港の問題でございますが、非常に苦労いたしました。幸い、むつの大湊において、陸奥湾の漁業者の方も理解をしていただいて、「むつ」の開発には協力しよう、将来のエネルギーにとって大事なことであると非常な御理解をいただきました。ただ、陸奥湾内はホタテ養殖漁場があるので困る、われわれが生きていく上に支障がないものとは思うけれども、命にかえられない大事な漁場であるから、湾内でないしかるべきところならばよろしいという非常な前向きの御理解をいただきまして、そうして関根浜ということにこれは決定をいたしたわけでございます。関根浜につくるに当たっては、数年かかりますから、その間は大湊に置いてあげよう、これも非常にありがたい前向きの御理解をいただいたわけでございまして、「むつ」は、いろいろ経費を使った問題はありますけれども、私どもとしては、長期的なエネルギーの問題を考えますときに、特に船舶国、海運国である日本にとっては、将来に向けて欠かすことのできない大事な研究課題である、こう思って前進を続けていこうと思っております。  ただ、市長さんがかわられたということですが、これも訂正をさせていただきますが、反対派の市長さんではなくて、慎重派の市長さんでございます。四者協定は尊重する、四者協定で大湊に仮停泊をし、将来は関根浜に移る、この四者協定は大事にするというような発言もありまして、何が何でも反対だというふうには受け取っておりません。私どもは、これをベースにして、新しい市長さんにもぜひとも理解をいただいて、この「むつ」の開発を進めていきたい、こう思っておりますので、どうかひとつ御理解をいただいて御協力賜りますようにお願いを申し上げておきます。
  51. 川俣健二郎

    ○川俣委員 もう少し自信を持って、元気を出して答弁してください。あなたにしては……。  放射能というのは失礼しましたが、放射線で、この修理に九十億かかったことは間違いないですね。これは間違いない。  それから、これは新聞の報道ですから確認していませんが、むつの市長がああいう結果になった。あなたは賛成派だと、こうおっしゃる。だけれども、両方で対立したのだから、あなた方はどっちに応援したか、それでいえばおのずからわかるのです。  そこで、記者会見であなたはこういうことを言っておる。今後のあり方についての市民の意思の反映として厳粛に受けとめたい。これもそうですか。  それからさらに申し上げます。今度返り咲いた市長はこういうように言っています。菊池市長は、あなたは賛成派だと言うのだが……(「慎重派だ」と呼ぶ者あり)慎重派だと言うのだが、雪の中で半年暮らす、半漁半農の生活で全国でも最低の地位だと私は思う、だが、山の緑ときれいな海を財産に暮らす市民には「むつ」への不安感がぬぐい切れないのだ、お上がなぜわかってくれないのか、こう言っているじゃないですか。これでもまだ言いますか。
  52. 中川一郎

    ○中川国務大臣 そういうくだりもございますが、原子力開発は必要であることについては理解できるということもありますし、四者協定をベースにして話し合いたいということもございますし、一節だけを取り上げられたのでは困るのじゃないかと思います。  また、私が市長選挙の結果をまじめに受けとめる、こういう趣旨のことを言ったことは事実でございますが、慎重派の市長さんが出た以上は、慎重派の市長さんとして厳粛な結果として受けとめて、これから交渉していきたい、こういうことでございます。  訂正しておきます。四者協定じゃなくて五音共同声明でございます。
  53. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そこで、技術的に内容的に科学技術特別委員会が改組になっていま常任委員会になっていますが、ここでかなり審議しておりますけれども、野党の方の提案で、失敗もやはり一つの経験ですから、いままでの失敗は失敗でいいのじゃないか、この失敗をもとにして研究をさらに続けて、この「むつ」の廃船、思い切ったらいいのじゃないかということをかなり懇談会でやっているのですよ。しかし、総選挙があったりなんかしてそれがしり切れトンボになっていますけれども、ただ、この専門委員会の審議の経過をずっと読んでみますと、廃船の方向なのです。  ただ、あなたのおっしゃるのは、私ちょっと書いてみたのだが、やはりあれだけの船の定係港を探すとなれば、波からも防がなければならない。そういうことから言えば湾がいい。だから、いま選ぼうとする下北半島の関根浜、こういうところなのだ、総理大臣。総理大臣は詳しいでしょう。(地図を示す)ここなのです。このまさかりの頭のここなのです。もう北風を真正面に受けるところなのです。津軽海峡冬景色どころじゃないですよ。これは吹雪です、猛吹雪ですよ。こういうところなのです。ここへどうしてもやると言う。そうなると、このおのの上に五・五キロメートルの防波堤なり港をつくらなければいかぬ。何ぼかかると思うのです。むつ市は、大体計算しておるけれども、どのくらいかかります。大体試算していますか。
  54. 野村一彦

    ○野村参考人 関根浜に新定係港をつくるという五者共同声明の趣旨に基づきまして、現在立地環境調査に鋭意着手いたしておるところでございます。海域の調査、空域の調査、陸域の調査、そうやりまして、できるだけ早く建設しなければなりませんが、現在まだその具体的な調査の進行過程にありまして、どのような規模の、どのような設計の港湾をつくるかということが確定いたしておりませんので、相当のお金がかかるということは考えられますけれども、明確な数字は現在まだ用意してございません。
  55. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総理、中曽根さん、聞いてくださいよ。相当の金はかかるでしょうとおっしゃるのですが、具体的に言わないというのなら平行線であろうから、大体五百億というのが出ておる。これから五百億かかる、役に立つものかどうか知らぬけれども。これは大体いまアメリカのサバンナ、西ドイツのオット・ハーンですか、ソ連の砕氷船、それから日本と四カ国にあるわけです。ところが、アメリカの場合はほとんど廃船のまま、新しい船を、第二船目をつくろうと言ったけれども、採算が合わない。西ドイツも廃船。ところが、日本の場合は三十八年からかかっている。四十何年につくって放射線漏れ、この事故を繰り返して、あっちへ持っていったりこっちへ持っていったり。私らは港というのは本当は風当たりの弱いところを探すものだと思ったら、その風当たりというのはそうじゃないんだ。反対の風なんだ。反対運動の風当たりの弱いところを探して歩くだけなんだ。そうでしょう。佐世保でもかなりやられたでしょう。私はいまそんな技術論をやる時間はないんだが、それでもやると言うならどうだろうか。会計検査院はどう思うんだろうか、こんなに金を使って。これが行財政改革じゃないでしょうかな。大蔵大臣あたり、どうです。これが行財政改革でメスを入れるべきことだと思うが、どうですか。
  56. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は専門家ではございませんので……(川俣委員「専門家ではございませんが、金を扱う」と呼ぶ)金を扱う者としては、なるべく金はかからない方がいいということでございます。政府内部でもいろいろ検討いたしまして、専門的な検討の結果が出たもの、そういうように私は受けとめておるわけであります。
  57. 川俣健二郎

    ○川俣委員 会計検査院にも来てもらっておりますからちょっと一言伺いたいんだが、会計検査院もたまりかねてこの間異例の特記事項という意見書を出した。この特記事項をこの間出すまではいろいろなことをおっしゃってくれております。たとえば照会の形ですが、注意事項です。  取り急いで購入する必要のない物品を買い過ぎておる。予備の品物の買い方に留意せい。素材の歩どまりは予算では四〇%ないし五〇%と見ておるが、実際は八〇%で十分だ、結果もそうだ。四番目が、所期の目的を速やかに達成するように努力しろ。これは会計検査院としては当然だ、大蔵大臣のあれとして。それから最後は、所期の目的を果たせないおそれがある船だ、こう書いてある。  そして最後に会計検査院の方から言ってもらいたいのは、特記事項として認めた事項、これは法律改正でこういうこともやっぱり注意すべきではないかという国会で決定した線で皆さん方がこういう特記事項と認めた半旗を、一考察を出しておるのですが、その点をちょっと局長でも院長でもどなたでもいいんですが……。
  58. 佐藤雅信

    ○佐藤会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいまの御質問は昭和五十年度の決算検査報告に掲記いたしました特記事項の趣旨かと存じますが、当時の状況は先ほど事業団の理事長の方からもるる御説明がございましたが、非常に多額の金を使って、そして当時、放射線漏れを起こしまして陸奥港に係留されておったような状態でございます。こういう多額の国費を投じてきたにもかかわらずその成果が確認されず、今後ともさらに相当巨額の国庫負担を要するということが認められたわけでございます。  こういうふうに予算執行の効果発現が停滞しているという事態につきまして、会計検査院といたしましても見過ごすことができないということで特記事項として取り上げたものでございまして、その趣旨は、こういうような事態について、その事実を検査報告に記載することによりまして広く国民に認識していただきますとともに、当局者それから関係者にさらに事態の進展、打開のために努力していただこう、こういう意図で掲記したわけでございます。
  59. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総理の前だし、少し御遠慮されているかもしれませんが、この文章を読んでみると、もうはっきり申し上げておる。果たして役に立つものになるだろうか、「所期の目的を果せない恐れがある。」とまで言われておる。  総理、こういうことじゃないですか。中川大臣は、地元に了解が得られると思うというようなお話なんだが、これはとてもじゃないが、特にあそこはむつ小川原で苦い経験がある。あれだけのつかみ金をもらった。それで、田畑を捨てて一たんは出た。出たというのは、会社勤めをやれるかと思って。そして学校も建てた。病院も建てた。そして整地もした。ところが、一企業も来ない。待てど暮らせど来ない。学校なんか、キツネかタヌキの学校だと笑われておる。銭を使って、いまだに戻ってきておる。やはりわれわれは農民であり、漁民である、こういうことでやっている。かなりの抵抗だと思う。  そういうようなことを考えるときに、大事なのは、総理、あなたの哲学の和の政治じゃないですか。和の政治というのは、どうですか、話し合って決めていきますか。どうです。
  60. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 原子力船の研究開発のような先端的開発研究、これには思わざる蹉跌等もあるわけでございます。私は、しかし、石油に乏しい日本としては、海上輸送、海運の振興の中でそういう原子力を使うというような分野は、非常に将来とも大事なことである、このように考えております。したがいまして、この研究開発を今後とも私は続けてまいりたい、こう思っておりますが、それをやってまいりますためには、御指摘のように関係地元の理解と御協力を得なければならないわけでありまして、十分地元の納得が得られるように、話し合いを通じてこの問題を進めていきたい、こう思っております。
  61. 川俣健二郎

    ○川俣委員 エネルギー論争をやるのでしたら私もやりますけれども、幾らでもあるんじゃないの。地熱だって、風力、波力、いろんなことがあるんじゃないの。これだけの研究費を使うくらいだったら、幾らでもあると思うんだよ、総理。なぜこれにこのようにこり固まってこだわってやるかということなんだ。しかも、大体いままでのあれは、つかみ金という言い方は悪いんだが、総理が総務会長のときに行って漁民に十二億渡したときには、やはりテレビに映る国民のあれは、あ、つかみ金をつかましたな、だからうんと言ったな、こういうように見えたんだ。  ところが、和の政治というのがせっかくあなたの哲学のようだが、あなたが就任してから、きわめて卑近な例で、ごり押しするくせがある。非常にこれは危険なんです。  たとえば、この間の日本海の日米合同演習。やめてくれと漁民が頼んだ。はえなわがずたずたになった。ようやくやめた。やめたんだけれども、もうそのときはサケ・マスが北上しちゃっている、時期物なんだから。  それからいま騒いでいる赤字ローカル線。見切り発車かどうか知らぬけれども、問答無用なんです。  それから、営林署の一割廃止。きょう山形の古口営林署ですか、戸沢村で村長さんが反対の先頭に立って、ちょうどこの時間にやっておる。話し合いがつかないで、問答無用なんです。  それから、この間――反論があったら言ってくださいよ。私の調べたものだけで、卑近な例ですから、担当官庁、言ってくださいよ。保安林を無許可伐採。防衛庁が青梅に無線基地建設のため、再三注意をしたが、とうとう切ってしまった、こういうことなんです。異論があったら言ってくださいよ。私はまた、間違いだと言って中川さんに注意されたように、言われるとあれですから。こういうことなんです。  それからさらに、もう一つある。これは私の地元ですからあれですけれども、ただ、みんなに考えてもらいたいのは、秋田に新空港をつくってもらった。二千五百メーター、東北、北海道にちょっとない、こういうようなのをつくってもらった。住民もある程度の騒音をがまんしながら、周りにずっと大きく公園をつくりながらやった。ところが、あれを少し貸してくれと来た。欲しがってきた。どこだ、防衛庁だ。何に使うのですか。
  62. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  まず、はえなわの問題、防衛庁に関係がございますからお答えいたします。  今回の一連のはえなわ等漁具切断事故につきましては、自衛艦によるものではないと確信しておりますものの、米軍艦艇やソ連艦艇により発生した可能性があることから、水産庁において被害状況の取りまとめを行い、すでに米ソ両国に対して補償のための調査、請求が行われたと承知しております。防衛庁といたしましても、米ソ両国からの補償が速やかに行われるよう、でき得る限りの協力を行っていきたいと考えております。  その次に、保安林云々のお尋ねがございましたが、これは恐らく東京都下の青梅市柚木の通信所建設の関係の問題ではないかと思うわけでございます。  防衛庁といたしましては、マイクロ通信中継所を本年度内に建設する計画で、土地所有者である柚木生産森林組合から土地約五千百平方メートルを六月初旬賃借し、七月初めに造成工事に着手しました。ところが、その後、当該土地のうち約二千八百平方メートルが、昭和十一年、土砂流出防備保安林として指定されていることが判明しましたので、速やかに土砂流出の防止措置を講じた上、工専を中止し、あわせて保安林指定解除手続を進めているところでありますが、今後は関係機関と協議の上、適切に措置してまいる所存でございます。  第三に、秋田空港の件についてお尋ねがございましたが、防衛庁といたしましては、東北地方の日本海側は自衛隊の航空救難体制上の弱点となっております。といいますのは、この区域は航空自衛隊の千歳、三沢、松島各基地の飛行部隊が主として使用するC訓練空域を含んでいること等から、従来からこの区域において即時適切な救難活動を実施し得る体制を確立する必要があるとかねてから考えていたものでございます。  このため、先般救難用の航空機を運用する飛行場として適する新秋田空港が新設されたことに伴いまして、防衛庁としては、かねてから秋田県側から同県の災害派遣能力向上の要請が出されていた経緯も考慮いたしまして、同空港内に航空自衛隊の救難隊を配備することとしたものでございます。  現在進めております計画によりますると、同救難隊は、救難ヘリコプターV107A及び救難捜索機MU2をそれぞれ二機装備して五十八年度に新編する予定であり、このため、五十七年度におきましては、これらの航空機の調達に必要な経費三十八億円のほか、所要の施設整備費を概算要求しているところでございます。  防衛庁といたしましては、地元秋田県の協力をお願いして、今後とも十分な調整を図っていきたい、さように考えている次第でございます。
  63. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この内容を論議するのでしたら私は言いますけれども、大分違う。問題は、保安林なら、保安林であるからと注意されたら一時中止するという態度が必要だと言うのです、騒がれたら。  日米合同演習は、漁民がこういうわけで必ずはえなわを切るからちょっと打ち合わせをしようと言ったら、時期を待つなり、相談しろ、こう言っているんだよ。だから、はえなわなんか切らないから大丈夫だと言ったのに切った。切ったことは間違いないと言っているんだ。  それから、秋田の新空港は、あなたの話だと、何となくニュアンスが、秋田の方からある程度要請というものがあったみたいな話ですけれども、後日これは論議をしますが、そんなことはありませんよ。とにかく雄和町という町そのものが、町長初め反対闘争が大変なんだから。だから、こういう時期に当たって、まさか予算なんか要求してないでしょうな、先取りを。どうなんです。
  64. 大村襄治

    ○大村国務大臣 防衛庁といたしましては、秋田県側からたびたび、災害発生の都度、救難の協力の要請もございましたし、できればその常時体制をしてほしいという要請があったことを承知しております。(川俣委員予算計上だけ言ってください」と呼ぶ)予算計上は、概算要求を先ほど申し上げたとおりいたしております。(川俣委員「何ぼ要求したのですか」と呼ぶ)先ほど申し上げましたとおり、三十八億円の概算要求を現在いたしておるところでございます。
  65. 川俣健二郎

    ○川俣委員 総理大臣、このとおりなんですよ。地元はやめてくれと言っておるのに、もうすでに予算の概算要求をしておると言うんだよ。この態度なんだよ。「むつ」の場合は、いい行財政改革のテーマだと思います。たたき台だと思います、どなたが客観的に見たって。そうでしょう。そういうことが必要ではないかということなんです。どうなんですか。
  66. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 原子力船「むつ」の問題、ただいまの秋田空港を自衛隊が救難の措置のために使用するという目的、いずれも必要な問題として取り上げておる問題でございますので、今後それをどのような程度で取り扱うか、そういう点はこれから十分検討さしていただきます。
  67. 川俣健二郎

    ○川俣委員 時間がありませんから、これについてはまた後刻論議したいと思います。  そこで、一つだけ、私が質問したことに対して鈴木総理の御答弁をいただいたことなんですが、それは同和対策であります。  わが党の質問に答えて、文教、福祉の面にも例外なく見直しが必要だが、社会的、経法的に見て弱い立場にある方々に真に必要な施策については確保していく考えだ、こう答弁されております。そして総理は、さきの国会予算委員会の私の質問に対して、こう答えています。概算要求の取りまとめの段階までに、国会決議でありますとか国会審議の御意見等を踏まえて政府としては結論を出したいと明確にお答えになっております。  そこで伺いたいのは、この答弁を踏まえるならば、特別措置法の強化、改正はこの臨時国会で決着をつけなければだめなんじゃないかと自然にそう考えます。具体的な内容につきましては同和対策協議会の御意見が尊重されるといたしましても、法の強化、改正についての基本的な姿勢をこの予算委員会で明確にしていただいた方が今後の論議の足しになるかと思って、あえて質問しておきます。
  68. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 川俣さん御指摘のように、同和対策は非常に重要な問題でございます。政府は、同和対策事業特別措置法施行後、十三年間にわたりまして総額一兆四千四百億に及ぶ国費を投入いたしまして、関係施策の推進を図り、相当の成果を上げてきたところでございます。しかしながら、現在まだ生活環境、産業基盤等の改善、整備について、事業の継続中または計画中のところも残されておりますために、本年八月二十八日に、関係各所管大臣の協議を経まして、関係施策の内容等について十分な検討を加え、その適正化と効率化を図りつつ、なお今後一定期間、所要の施策を講ずることとしたところでございます。このような方針を確定いたしております。  自後の措置につきましては、五十六年度いっぱいこの期間がございますので、その間におきまして十分措置してまいりたい、こう思っております。
  69. 川俣健二郎

    ○川俣委員 どうもありがとうございました。
  70. 小山長規

    小山委員長 この際、大原君より関連質疑の申し出があります。川俣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大原亨君。
  71. 大原亨

    大原(亨)委員 鳴り物入りで臨時国会が開かれまして、行財政改革に政治生命をかける、こういうふうに総理も言っておられるわけでありますが、出てきました行革の特例法案は、いままで質問がございましたように、三十六の法律案に手を加えておるわけでありますが、しかしその内容といたしましては、国の負担を引き延ばす、こういう措置を中心にいたしまして、その中で大部分は厚生年金あるいは共済年金の積立金の問題にかかわる問題であります。  そこで、この一括法案について、合計いたしまして、いろいろな数字が出ておりますが、財政効果というのは総計幾らになりますか、行管庁長官
  72. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 法律事項によりまして補助金を抑制する分が約二千五百億円弱であります。
  73. 大原亨

    大原(亨)委員 最初発表になりましたときは二千四百八十二億とありましたが、二千五百億円、大体そういうことになっている。二千五百億円の国の負担を抑制する。これは後で具体的な問題を議論いたしますが、そのために三十六の法律案に手を加えまして大騒動しているわけであります。これはもちろん本会議で答弁がありましたように、来年度の予算、ゼロシーリングに関係があるわけであります。  これは大村長官にお尋ねいたしますが、ゼロシーリングの中で、概算要求ゼロの中で、例外といたしましての一番大口は防衛予算でありますが、七・五%は幾らになりますか、金額で。あるいはそれで済みますか、どうですか。
  74. 大村襄治

    ○大村国務大臣 七・五%は、金額にいたしまして一千八百二億円に相当いたすわけでございます。これが五十六年度の予算額に対する増額分でございます。
  75. 大原亨

    大原(亨)委員 七・五%は大体一千八百億円。それで人件費を加えますと九・九%といいますから、約一割で、当初予算が二兆四千億円ですから、大体二千四百億円になるでしょう。もちろんこれには二兆円余りの国庫債務負担行為がくっついておるわけでありますね。  そういたしますと、行管庁長官、こちらの方は二千五百億円をカットするために三十六の法律をずっとやっているのですが、来年度の予算編成は大体どのくらい――まあこの二千四百億円は抑制されて浮いてくるわけでありますが、浮かし方が問題でありますけれども、結局は二千四百億円の防御予算の穴を埋める、この方が通っていく、こういうような結果になるわけですね。  ですから、スローガンを言うわけではないのですが、国民から見てみますと、この行革国会でやっているのは、二千五百億円を抑制いたしましても、こっちの防衛予算の方は二千四百億円ふえている、結果といたしましてはこういうことになるわけです。その二千五百億円の中身を見てみますと、千九百億円は厚生年金や共済年金の保険給付に対する国の負担を抑制する措置をとっている、四分の一をカットしているということでありますが、こう見てまいりますと、話がありましたように、児童手当にも関係いたしますし、あるいは定員法にも関係いたしますし、住宅政策にも関係するわけですが、国民生活の方を抑えておいて防衛予算を確保するんだ、こういうふうに言われても仕方がないんじゃないですか。いかがでしょうか、総理大使。――あなたは総理大臣じゃないですよ。あなたは候補者ではあるけれども、総理大臣じゃないですよ。
  76. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 担当大臣であります。  今回、法律事項等によりまして補助金の抑制をお願いするのは二千五百億円弱でございますが、しかし七月十日の臨調答申を受けまして、それによって八月二十五日に閣議決定いたしました。それは行革の当面の基本方針を閣議決定したわけです。それによりまして、六月五日等におけるゼロシーリングの設定等を含めまして、大体中期財政計画によれば二兆七千七百億円ぐらい来年度予算は膨張するものであったものを、それをほとんど緊縮し、節約いたしまして、来年増税をやらないというそういう大きな目標を達するためにゼロシーリングをやったのでございますが、その中でカットする分、法律出項による補助金カットが二千五百億円弱で、それ以外にも各省庁がそれぞれ自分の分を分担いたしまして、そして節減した分が約二兆数千億円に上る、そう考えておりまして、行革の目的は、その水面下の方もお考えいただかなければいけないと思うのであります。
  77. 大原亨

    大原(亨)委員 そのことは引き続いて議論するわけですが、しかしながら臨時国会を開いて一括法案で大騒ぎでやっているわけですよ。三十六の法律案に関係しているんですけれども、特別委員会でやろうというんですよ。それが二千五百億円弱でしょう。その中で千九百億円は厚生年金や共済年金に対する国庫負担を抑制する問題であります。  厚生大臣、お尋ねいたしますが、千九百億円は、給付の際における国庫負担を四分の一ほどカットするわけですけれども、これはいままで議論いたしてまいりましたが、これは間違いなく元利とも返済をする、というのは積立金に返済する、間違いありませんか。すなわち、二十八兆円厚生年金は積立金があるわけですが、これは国庫負担をカットいたしました結果といたしましては、その積立金を食べて給付をしていくわけですから、その積立金というのは完全に労使が保険料として積み立てているものでございまして、これは国の税金にかかわる問題ではないわけです。ですから、当然に利子をつけて返すべし、こういうふうに各方面で答申や主張がなされているわけですが、厚生大臣、間違いありませんか。
  78. 村山達雄

    ○村山国務大臣 お答えいたします。  今度の特例措置法案の内容にもはっきりしておりますように、この繰り入れによりまして年金の長期的財政の安定を阻害することがないようにやるということの意味は、先生がおっしゃったような意味でございます。
  79. 大原亨

    大原(亨)委員 この点は大蔵大臣、間違いありませんか。
  80. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま厚生大臣から答弁がありましたように、この特例期間中は、年金財政の安定が損なわれないようにする、それから、国の財政状況を勘案しながら減額分の繰り入れその他適切な措置を講ずるということでございまして、この場合、利息相当分の問題は、「その他の適切な措置」の中に含まれるというようにわれわれは考えておるわけです。  したがって、今後どういうようにやっていくか。適切な措置を講ずるに当たっては、そのときどきの財政事情にも配慮することになるだろうと思います。この意味で、利払い、償還方法が発行時に確定している国債とは違います。また、単なる歳出の後ろ倒しということにも当たらない、こう思っております。でございますから、その返還の時期になりまして、元利合計をどうするか、そのときどきに相談をしたいと思っております。
  81. 大原亨

    大原(亨)委員 二千五百億円弱の財政上の措置をする中で、千九百億円は厚生年金と共済年金の国庫負担にかかわる問題ですね。四分の一カットの問題ですよ。いまの厚生大臣の答弁は、この法律にございますが、ここに出ております。このことを指摘したんですが、具体的に私は聞きますよ。「政府は、前項の措置により将来にわたる厚生年金保険事業の財政の安定が損なわれることのないよう、特例適用期間経過後において、国の財政状況を勘案しつつ、」こういう条文が入っておる。これを説明したんだと思うのです。そうすると、厚生大臣の答弁とは違いますよ。元利について、どのような利子をつけて払うかということについては決まっておらぬ、こういうふうに大蔵大臣は答弁しておるわけですね。そこを明確にしてください。これはどちらが正しいのですか。  総理大臣、あなたが特に厚生年金のこの問題を行革特例法案に入れろということを指示したというふうに世上伝えられておるわけですが、あなたはどういう提案をいたしておるのですか。お答えください。
  82. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いまの大蔵大臣と私の答弁は食い違っていないのでございます。大蔵大臣は、いま法文の全体の構造をお話しになったわけでございます。私は、いまおっしゃったように、元本はもとより、積立金をいわば減額いたしましたその運用利子の問題を話したわけでございます。ですから、前段において……(大原(亨)委員「それは返すのか」と呼ぶ)法律の条文に即して申しますと、年金財政の健全性を阻害しないように適切なる措置を講ずるという意味は、運用利益を含むということでございますし、それから同時にまた、財政事情を勘案しつつ、ここが非常にむずかしいわけでございますが、それは繰り入れ期間を一体どうするのか、その繰り入れ方を均等でやるのかあるいは傾斜方式でやるのか、この点はそのときの財政事情をやはり勘案しながらやらなければ、結局今度の措置が財政再建にどれだけ寄与するかということがわかりませんので、そういう意味で、財政再建期間後の財政事情を十分考慮しながら具体的に両省で詰め合わせていこう、こういう趣旨でございまして、大蔵大臣もそのことを法律の規定に即して抽象的に申し上げた、かように思うのでございます。
  83. 大原亨

    大原(亨)委員 政府は非常にけしからぬことをしているのですよ。私は国会を代表して、言うなれば立法上の専門家として社会保障制度審議会に出ておるのです。三者構成の厚生大臣の諮問機関である社会保険審議会とは違うのです。ですから、私の意見は、幾ら声が大きいからといって全部通るわけではなしに、学識経験者が集まっておるのですが、これは総理大臣の諮問機関です。建議機関です。権威のある機関です。すべての社会保障はそこにかかるのです。  そこに答申を求めておる内容は、この前の二つの縛りはないわけです。つまり、厚生年金保険事業の財政の安定という問題、それから国の財政状況、これは九年間、一九九〇年、昭和六十五年になりましても、特例公債の措置を三カ年間でとったといたしましても、言うなれば政府の資料によると国債は百五十兆円残っておるわけでしょう。だから、いろいろな理由をつけまして、いま厚生大臣が言ったことは、返すときに利子をどれだけにして、何年間で、二年計画、三年計画、五年計画で返すのかという返し方の問題について、ここは含みがあるのだというふうに言っているけれども、大蔵大臣の答弁は全く違うわけです。二つの縛りを前提といたしまして、返すか返さぬかというのはわからぬ、そういう答弁ですね。  総理大臣、あなたはどう考えているのですか。質疑応答はわかったでしょう。答弁してごらんなさい。それなら、中曽根長官でもいいですよ。――あなたはだめですよ、いまあなたは答弁したのだから。後でやりますから、中曽根長官
  84. 小山長規

    小山委員長 大蔵大臣の答弁を求めます。
  85. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私の言ったことが言葉が足らなかったかもしれませんが、「その他の適切な措置」という中には、要するに返還の問題ですね、利息の相当部分の問題も当然に含まれますということを私は言っておるのであって、村山厚生大臣の言うことと違ってないんじゃないか、こう思います。ですから、当然元本部分は戻します。利息についても、利息の相当部分というのは当然そのときに含まれるということを言ったわけでございます。
  86. 大原亨

    大原(亨)委員 いまの点について、総理大臣にもう一回確認を求めます。つまり、厚生年金で言うなれば二十八兆円の積立金というのは、いままで議論になりましたのは、労使が保険料で負担している分の積み立てなんです。四分の一を抑制いたしますと、積立金から支出することになるわけです。そういたしますと、これは積立金の会計、労使の保険料に対する債務なんです。言うなれば債権債務の関係になるのです。当然元利をつけて返すべきなんです。そういうことであります。総理大臣、それは当然に元利をつけて返すということになりますね。
  87. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は先ほど来、厚生大臣と大蔵大臣の御答弁をよく聞いておるのでありますが、その間には食い違いがない、このように考えておりますし、年金財政等に支障を来さないように措置してまいる考えであります。
  88. 大原亨

    大原(亨)委員 そこで、この問題をちょっと残しておいて、後でやりますが、つまり、三十六の法律案をいじくり回しているわけでありますが、二千五百億円弱の大部分の千九百億円は、四分の一の国庫負担を抑制しておきまして、後で元利をつけて返すというのです。それなら資金運用部でやってもいいじゃないですか。何でやってもいいじゃないですか。何で行革特例法案といって鳴り物入りでこんな法律案を出すのですか。返すならば資金運用部でやったっていいじゃないですか。つまり、何もここで法律をつくって――来年度予算編成に関係があるならば、予算関係法案でやればいいのです。予算の審議に対しまして重要な制約を加えるようなそういう措置につきまして中身を議論してみると、元利を返します、こう言うのであるならば、何でこんな特例法案でやるのですか。別の意図があるのですか。外堀を埋めておいてどこか攻撃しようというような目標があるのですか。このことです。
  89. 村山達雄

    ○村山国務大臣 大原委員も御承知のように、特別会計の積立金は資金運用部で一括して運用することになっているわけです。もし委員のおっしゃるように運用部特別会計から借りるといたしますと、どうしてもそれはちょうど普通の起債と同じように、それだけ歳出は膨張するわけでございますし、直ちに翌年から利払いをしなければならぬわけでございます。(大原(亨)委員「後でやっても何でも同じじゃないか」と呼ぶ)いや、そういうわけにはまいらぬわけでございます。民間から金を借りるか、運用部から金を借りるか、それは同じことでございます。したがいまして、やはり特別なる立法を要すると同時に、財政はその分だけ規模が大きくなるわけでございますし、即時にまた翌年から利子を払っていかなければならぬわけでございます。  今度のはもちろんそうではございませんので、三年間財政の再建に資し、そして返し方も、そのときの財政状況を見てどういう方式でどんな期間で返すか、しかし、いずれにしても積立金の運用減収分を含むわけでございますので年金財政には支障がない、その点を考えて立案した措置でございます。
  90. 大原亨

    大原(亨)委員 これは五十七年度に幾ら四分の一カット分が相当するか、五十八年度、五十九年度、三カ年間でどういうふうになるかということの答弁は後で求めるわけですが、私はこういうことがあるんだと思うのですよ。この一括法案を出した理由は、鈴木総理大臣が本会議でしばしば答弁をされておるわけですね。つまり、日本のこの非常に崩壊に瀕するような財政危機の原因は、昭和四十八年の福祉と教育費がこれを契機にしてどんどんかさんできたということが一つ、もう一つは五十年以降の公共事業、つまり、これは列島改造的な公共事業というふうに言われておるわけでありますが、そういう問題の指摘もあるわけですが、その前半の部分、四十八年の部分に焦点を置いて、そしてこの行革の特例法案でもほとんどを福祉と教育の問題に集中をしておきまして、この三年間にこれをばっさりやってしまおう、こういう気持ちがあるんだ、そういう方針があるんだろう、こう思いますが、いかがですか。
  91. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほども御答弁を申し上げましたように、今度の行財政改革に当たりましては、特定の分野をねらい撃ちをするものでなしに、全体の行財政につきまして思い切った縮減合理化をやろうということでございます。今回の三十六法律にかかわる一括特例法案は、臨調の答申で緊急に改正を要する、立法化を要するものを取り上げたものでございまして、法律によらないものも、先ほど中曽根長官から御答弁申し上げましたように相当あるわけでございますし、今後引き続いての臨調の答申を受けまして、これを逐次実行に移してまいりたい、こういうことでございまして、これが最初の、第一次の着手であり突破口である、このように御理解を賜りたいと思います。  ちなみに、今日まで法律による補助金の削減というような立法措置、こういうことは非常に困難な問題でございまして、過去を振り返って見ましても四件か五件しかないということも私は承知しておるのでありますが、私どもは、こういう国民各層に対して犠牲を強い、痛みを与えるような点につきましては、本当に歯を食いしばって将来の日本の展望を開きますためにやっていかなければならない、このように考えて御提案を申し上げておる次第であります。
  92. 大原亨

    大原(亨)委員 鈴木総理大臣は、本会議で、飛鳥田委員長の質問に対しましてもそうですが、質問しないことについてべらべらと答弁しておる。それは渡辺大蔵大臣が方々で講演されているのと同じような中身ですが、たとえば一般予算は最近十年間に四・五倍上がったが、社会保障関係費は六・六倍上がったんだ、だからこの六・六倍をねらって、言うなれば、ゼロシーリングというのは増分主義、いままでの財政硬直化をもたらした増分主義の裏返しですが、一律にカットいたしますと、大きいところをカットすることになる。社会保障費や教育費をカットすることになる。そういうことをやるための前提でしばしば宣伝的な答弁をされているわけですが、私は基本認識を異にする。  というのは、国民所得に対する日本の社会保障の移転支出は一二%を割っているのです。ヨーロッパの方は二〇%から大きいところは三〇%なんす。問題は、日本はこれから高齢化社会に向かっていく際に、これをどうするかという課題があるわけですが、いまの社会保障の水準は、皆年金、皆保険、その他障害者福祉にいたしましても、ばらっと店は広げておるのですが、中身にたくさんの問題があるわけですよ。そういう問題について、改革をしながら水準を上げていかないと高齢化社会に対応できないのです。  そういう考え方なしに、べらべらべらべら福祉や教育費があたかも高いような、そういう錯覚を与えるような答弁をしておられるわけですが、私はその根本認識が違っておるのじゃないかと思う。つまり、日本の社会福祉の水準は、申し上げたように、社会保障移転費を見ても決して高くないのですよ。私が後で言うように、これから限られた低成長時代における負担の中でどうするかということは、これは課題ですよ。ですけれども、いま非常に大きいという前提でこれを切っていくというようなことは基本的に間違いではないか。この点指摘をいたしますが、総理大臣、あるいは行管庁長官でもよろしいが、全体的な答弁をしてください。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 今度の行革方針というものは、総理も申されましたように、文教や福祉をねらい撃ちにしたものではありません。ただ、国の財政の中に占めます割合を見ますと、金額的に近来非常に大きく膨張しているのは文教や福祉の経費でございます。したがって、これに全然触れないで行革の目的は達成することはできない。しかし、ほかの方面とのバランスも考えながらできるだけ文教、福祉を生かしつつやりたいという念願で、大蔵省とも相談して実行したのでございます。  国民全体に痛みを分け合ってやろうではないかという精神に基づきまして、国民の皆様にも、たとえば児童手当の問題あるいはいまの厚生年金等の負担金の問題等々いろいろ御迷惑を及ぼすところもございますけれども、この程度はがまんしていただいて、それほど支障を起こすものではない。児童手当のような問題については、サラリーマンにつきましてはかえって所得制限を上げまして、四百五十万から五百六十万に上げて、しかもそれを事業主負担という形でやるとか、あるいはまた最低生活保障という面から見ましたら、そのほかにつきましてもいろいろなめんどうを見ておる点もあるのでございます。  そういうできるだけの細かい配慮をしまして、精いっぱいの努力をしたということをぜひ御了承を得たいと思うのでございます。
  94. 大原亨

    大原(亨)委員 社会保障移転費の国民所得に対する比率一二%というのは日本は低いということを言ったわけです。しかし、これから大きくなるのは問題ですね。たとえば公共事業費で言いますと、日本は一般会計に占めるウエートは昭和五十六年度で一四%であります。これは米英、西独、仏等は六、七%程度ですから、高いことは高い。しかし、日本には特殊事情がある。  それはともかくといたしまして、私は基本認識が問題ではないかと思う。これは次の通常国会等では本格的に議論になると思うのですが、問題は、昭和四十八年に福祉とか教育というものが大きくなった。大きくなる理由があったのです。狂乱インフレで年金の物価スライドをすれば二割、三割と上がっていくのです。そういう理由はありましたが、しかし国際水準や制度からいいますとたくさんの欠陥があるわけです。薄まきであり、ばらまきであり、縦割りであるという欠陥がある。これをどうするかということを考えるのが行財政改革なんでありますが、それは一応おくといたしましても、問題の財政危機の根本原因はそこにはないのです。  昭和四十六年、これは佐藤内閣が池田内閣のアンチテーゼを出しまして、均衡予算に対する安定成長と社会開発を掲げまして、ケインズ流の理論を縦横に当時の福田大蔵大臣は駆使いたしました。たしかその当時は中曽根さんも通産大臣であったかと思いますが、駆使いたしまして、そうして社会資本の充実を期するために、言うなれば、歳入欠陥が生じたその年に特例公債を発行したわけです。  特例公債を発行するときにどういう選択があったかと言いますと、支出をカットするという選択があった。あるいは不公平税制是正を含めて増税するという選択があった。その当時は日本の所得税は世界に比べましても非常に高いわけですが、増税の問題を含めて選択の道があった。もう一つの道は、短期の借金でやる道があった、財政均衡を保持する。もう一つの道、第四の道は、七年以上、後に十年以上でありますが、建設公債と称する第四条の拡大解釈では済まなくなったので、特例公債が発行できる特別の法律をつくったわけであります。  そのときにわれわれが主張いたしまして、福田大蔵大臣も答弁をいたしまして三原則を掲げた。これは建設的なものである、あるいは市中消化ができるものである、そして必要でないときにはこれはやらない。こういう約束を国会でもしたわけでありますが、それを羽目を外してだだだっとやってまいりまして、そして列島改造と一緒になりまして財政支出が放漫になった。その国債政策において、特例公債の選択をし、長期の借金を経常費までやっていったという、羽目を外して、それを無原則にずっと続けたことに、財政編成の基本方針と一緒に根本的な誤りがあったのであって、昭和四十八年の福祉とか教育とか、あるいは五十年の何々とかというところへだけ焦点を合わせて行財政改革をやるというふうな、そういう臨調の答申は根本的に誤りであって、それをべらべらしゃべっておる総理大臣や大蔵大臣の考え方は基本的に是正をすべきではないか、私はそう思いますが、いかがですか。
  95. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 国債を発行する動機といいますか、それは大原委員のおっしゃったとおりだと私は思います。それによって日本が公共投資をし、失業を救ってきた、景気をいち早く回復してきた、これも事実でございます。したがって、世界の中で先進国では一番少ない失業率を何とか保っていられる、こういうような効果に国債が使われたということも私は事実だろうと思います。  それからもう一つは、社会保障の問題で、たとえば社会保障移転費が日本は少ない、それはそうでございます。それはいまから見る見るふえてくるわけでございまして、老齢化、つまりそれがまだ進んでいないというところに問題があるわけですから。しかるにかかわらず、日本の社会保障の中身は、年金にいたしましても諸外国に決してひけをとっておりません。そういうことも大原委員承知のとおりだと思います。  医療の問題にいたしましても、医療保険制度をやっている国で、国が三兆も四兆も金を出して医療に助成をしている国はございません。そういうような傍ら、国民負担、税金及び租税の負担というものも日本は一番少ないわけでございますから、この点もやはり裏、表、両方考えた上で御議論をいただかなければならない。  ただ、税収が過去八年間で二・四倍しかならないのに社会保障費は四倍になった、あるいは文教費は三倍になった、公共事業は二・六倍になった、人件費も二・五倍以上になったということは事実でございまして、税収以上に出費になった分が国債として残った。しかし、それはそれでまあいいだろう。いいけれども、今後はその国債の元利払いというものが非常に重圧になってきた。公共事業費と同じくらいの額になってきたということですから、これ以上国債を増発していくことはもう慎まなければならぬ。そこでこれに対するブレーキをかけるということは、今後の日本の財政及び経済の運営上非常に重要な問題であるということで、今後の財政再建というような問題、いろいろ含めて皆さんに御審議をいただいておる次第でございます。
  96. 大原亨

    大原(亨)委員 時間が十分ありませんが、昭和四十年の年度の途中で財政法四条の特例法をつくって特例公債を発行するようにしたわけです。そのときは歳入欠陥が生ずるというふうな異常な事態でありましたが、昭和四十一年、四十二年、四十三年、四十四年と平均いたしましてGNPは実質二%上がったわけであります。ですから、そういうときには建設国債を含めましてずっとしぼっておいて、そして不況のときに出していくというシステム、考え方がなかったわけです。  特に、ここで指摘をしておる福祉元年と言われておる昭和四十八年は、田中内閣のときの愛知大蔵大臣のことを思い出しますが、彼はトリレンマと言った。インフレを抑える。それからいまと同じようにどんどん輸出が増大いたしまして黒字になっておったわけだ。それを抑えないとニクソンショックの二の舞をやられる。また、円の切り上げが起きてくるということでありましたから、福祉を増大するということでありました。そして貿易収支を改善するという三つの課題をやろうとしたわけです。  これはたしか中曽根さんだと思うのですが、いまはインフレ政策が必要だ、調整インフレが必要だということを言いまして、私も予算委員会におきまして問題にしたことがありました。これは、変わり身の早い中曽根長官は直ちにその前書を翻されたことを私は記憶をいたしておるのです。そういうことから考えてみまして、いまは情性に流れて建設国債、特例公債をだだだっとやって、後にはどういうへ理屈を皆さん方はたれたかといいますと、好況のときに国債を減すと、国債市場というものが成り立たなくなるから、国債市場を維持するためにやる。だけれども、いまはどうですか。市中銀行はシンジケートを組んで引き受けるのですが、引き受けぬと言っているじゃないか。そういうことをやったことは、福祉や教育が上がったためではない。これから充実させなければいかぬ、そういう課題があるし、社会資本の方もおくれておるわけです。住宅環境もおくれておるわけです。  そして、日本の経済成長の構造を内需中心にする。きのう河本さんは一部修正いたしましたが、修正いたしましても輸出中心になっておるわけです。当初予算の見通しは、三%を超えるものを内需でやって、一%台を輸出に依存する成長率でやっておったのですが、事実はひっくり返りた。  そうすると、どうなるかというと、内需、国民の生活その他の個人消費支出が少なくなって輸出がふえていくと、貿易摩擦がふえてくる。自動車、電気、ずっと来る。これは危ないということにいまなっておる。昭和四十八年当時と同じことをいま繰り返しておるわけですね。ですから、いま個人消費を含めて国内の需要をふやしていかなければならぬ時期です。そういうことに対応する国債政策というものがなかったことが財政危機の原因ではないか。これはだれが考えても、そこの原因を列島改造と一緒に解明しないと財政再建はできない、こういうふうに私は思うのです。  総理大臣、あなたはこれから総理大臣といたしまして、臨調依存ではなしに、三十六の法律案で二千五百億円ですよ、国の支出をカットするということで特別国会を開いておる。何のために行財政改革をやるのだ、どういう方法でやるのだということの大きな方向を示しなさいよ。そういうことが示されないで、あれがどうのこれがどうのという勝手のいい、いまの大蔵大臣のような答弁を含めて答弁を繰り返しても問題の解決はできぬ、私はこういうふうに思いますが、総理大臣、いかがですか。
  97. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、先ほど来申し上げておりますように、今度の行革関連措置法案、三十六木の法律の改正を含む法案だけで行財政改革が終わるというようなことではない。これは第一次答申の中で緊急に措置すべきものをお願いをしたということでございます。  今後、先ほど来も申し上げますように、財政再建という国民にも重大な影響を持つ問題、将来の日本の存立にもかかわるような問題、こういう問題を突破口として、私は行財政全体にメスを入れなければいけない、このように考えるわけでございます。したがいまして、大原さんのおっしゃるように、福祉だけを私は取り上げておるのではございません。今後、行財政各分野にわたりまして等しく改革の措置を講じてまいる、こういう考えでございます。
  98. 大原亨

    大原(亨)委員 それでは、具体的な問題を議論しないと前に進みませんから、私が二、三申し上げますが、全部の閣僚に開いてもらいたいと思います。  第一は、私はこういうように思うのです。行財政改革は、いろいろ言われておりますが、外国とは違いまして、ヨーロッパとは違って、日本は低成長下に革命的な高齢化社会を迎えるのです。そのときに、雇用とか年金とか医療とか福祉とか住宅環境とか余暇とか教育、文化、スポーツ、全部にわたって日本の行政や財政制度というものの政策をどうするかということが一つの大きな中心的な課題であります。私はそう思っている。それがわが党の言う平和と福祉と分権という言葉でありまして、平和、福祉、分権だけを言ったのではこれはわからぬわけで、私が言うように言うとわかる。  そこで、たとえば年金でありますが、年金について中曽根長官、私の意見どうですか。私は前の予算委員会でもそういう主張をいたしたのですが、これからそういう制約の中で高齢化社会を迎えるわけですから。年金はいま皆年金ですが、ばらばら年金なんです。格差もあるし、ばらばらなんです。このままいきますと袋小路に入りまして、年金はパンクするのです。五年、十年、二十年後にはパンクするのです。  そこで、ばらばら年金の行政を一元化するために年金庁なり年金省を設けなさい。年金行政を一元化しなさい。そうすると、厚生省から大蔵省の共済課あるいは運輸省から自治省から農林省、文部省等に分かれておる共済関係一つに集めるわけだ。監督官庁だけでも九千三百九十八人いるのです。現業部門も入れますとその三倍、五倍もあるわけでありますが、これを一カ所に集めますと、いや宣伝費だ、交際費だ、あるいは人事課だとかいうようなものは一本で済むわけですよ。そういたしますと、全体から見るならば五%、一〇%の人員は他の方に、いわゆる適職に移動することができる。これは人員をカットできるのです。配置転換できるのです。こういうのが行財政改革ではないか。中曽根さん、こんないびつなをことをやって、三年間たったら元利返す、当然のことだ。その法律だけをここに出しておいて行財政改革でございます、何ですか。  そこで、そういう年金行政を一元化しておきまして、いまのばらばら年金については共通の基本年金をつくるべきであるというのを、高齢化社会に対応する年金として社会保障制度審議会が数年前に答申を出しておる。ですから、下半身の部分は国庫負担がいま二割厚生年金にあるのですから、それに若干プラスする問題がありますが、基本年金をつくって、報酬比例部分の年金をつくって、企業年金をいま民間でどんどんやっておりますが、企業年金をつくって、三つの段階に分けて政策を考えながら官民格差を解消するような基本年金の構想を導入すべきである、それ以外にないという主張を私どもはしているわけですが、年金行政の一元化と年金制度を一元化いたしまして、このままではパンクする年金を高齢化社会に対応して安定できるようにする、こういうことこそ行財政改革ではないのですか。これに反対の意見があれば、あるいはこれができないという意見があれば、だれでもいいから言ってください。
  99. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 大原さんの長年にわたるうんちくを傾けられた御卓見には非常に敬意を表します。私もいま聞いておりまして非常にいいお考えだなという気がしておるのです。ただ、いまの日本の年金制度は、御指摘になりましたように四省ぐらいに分かれておって、そして発生自体もいろいろな因縁があって、縦割り行政という日本の官庁の性格をそのまま受けてきております。そういう意味において、これらを整合性を持たせて統合するということは、時代の流れであり、簡素効率化に沿うゆえんでもあると私は思っております。  しかし、これらの問題は行政機構にかかわることでもありまして、臨時行政調査会においてそれらの点も検討さるべきことであると期待しております。そして考え方としては私は妥当な考え方であると思いますが、現実問題としてこれにどういうふうに対処していくかということは、臨時行政調査会の答申を待って処理してまいりたい、私たちはそう考えております。
  100. 大原亨

    大原(亨)委員 そういうことを臨調に任せて的確な答案ができますか。そんな専門家はいないですよ。あれを見てみなさい、そんなことを知っている人はいないですよ。つまり、減量経営というのは、福祉を切り下げて、言うなれば、公務員の数を減すということだけしか頭にないような人たちじゃないですか。私がいま言ったようなことについて検討できるような対応の体制がありますか。そんなことはないと私は思う。それは内閣総理大臣がやる仕事ですよ。国会がやることですよ。国会の権威にかけてやることですよ。予算の審議というのはそういうことをやるのですよ。そういうことを拘束する三十六の法律案は何ですか、二千五百億円減らすのは。それをカットしておいてまた返すと言う。国債と同じじゃないですか。国債の元利を返すのと同じじゃないですか。何が財政対策なのですか。そんなことは幼稚園の子供でもやるのですよ。  第二の問題。後でまとめてやりますが、第二の問題は、国民の立場から見ると、本年度は一年間に十三兆円の国民医療費を使うわけです。これが賃金や国民所得を超えてふえている。これは私もいつも言うのですが、世界じゅうで問題です。日本は、低成長下で高齢化社会を迎えるのですから、これは大問題です。ですから、資源の効率的な活用の面と一緒に制度を改革しなければならぬ。そのときには等分主義の裏返しの一律カット、そういうことだけではいけないのです。特に高齢化社会を迎えまして、いま別の委員会で老人保健法ができておるのですが、これもいろいろ各方面で討議されたのですけれども、非常に不完全です。  たとえば初診料を取る、あるいは高額医療について制限を緩和する。五万一千円までにするというふうな議論もあるわけですが、この議論にも私どもは真っ向から反対という議論はいたしません。しかし、これよりも先にやることがあるのではないか。というのはどういうことかと言うと、いまの医療制度の欠陥は、病気になって治療をする。たとえば富士見病院などというのは、そうでもないのに、子宮が腐っておる、卵巣が腐っておるというようなことで手術をした。こういうことではなしに、健康管理や予防をしっかりやる。そして総医療費を節約していく。  そのためにはどうするかと言えば、私はいま早急に資料をとったのでありますが、たとえば日本は保健婦の数は国際的に低いのですから、これをふやすのです。岩手県の沢内村では――あなたのところです。約千二百人に一人の保健婦さんがいるのです。西宮へ行ってまいりますと、一万三千人に一人の保健婦さんなんですね。沢内村では、診療所に行く回数は減っていないわけでありますが、医療費はどんどん減って、三分の二か二分の一ぐらいになるのです。つまり、健康管理を十分にやりまして、いろいろな問題を持っている患者や国民と接触をいたします。そうすると、生活指導や健康管理を通じまして、結果といたしまして、かからなくてもいいお医者さんにはかからないということになる。  つまり、治療自体が問題でありまして、リハビリテーションを先進国ではすぐ成人病でもやるわけです。そういう保健婦とかリハビリテーションに必要なOT、PTというふうなものは計画的にどんどんふやさなければいかぬ、いまの制度の改善を含めてふやしていく、そうすれば十三兆円の医療費というものは所得を超えてふえていかないのです。そうすれば、結果として国庫負担も減ってくるわけです。  そういう大きな観点を持った行財政の改革をやらないで、やれ国庫負担の二割をどうのこうのと言って府県の方へしわ寄せするとか、あるいは一部負担とかいうことだけを前に出すから、これは国民は納得できない。そういうことは議論をいたしまして、そうして志のある人々は合意を得ている問題ですから、そういうふうなことについては新しく年金庁をつくれという主張と同じように保健庁をつくってもいいと言う。つまり、全体としては人員は減る、あるいはこちらの方も保健婦やOT、PTをふやす、そういうことになれば、医療費は減ってきて、国民は、人生の最後まで元気に生きていけることになる。いまは病院に入ったならば帰る家もない。そして、そこで治療費を払いながら最後を全うするというふうな惨たんたる状況が高齢化社会です。  これから、高齢化社会の最大の課題は寝たきり老人の問題です。いまの特別養護老人ホームでは絶対間に合わない。ひとり暮らしの老人の問題、成人病にふさわしい健康管理の問題、こういう問題についての改革について何ら手をつけないでおいて、ぶった切るだけ、そんなことでは、国民の立場から見たならば絶対に納得できないのではないかと私は思うが、厚生大臣の経験のある総理大臣は、端的にこれに対する所見を述べてもらいたい。
  101. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 年金の問題、医療の問題、大原さんから詳細に長年研究をされた御意見を拝聴いたしました。  年金の問題につきましては、目標とするところは全く私も同感でございます。先般箱根で開きましたわが党の青年研修会におきまして、私はこの問題にも触れたわけでありますが、当面制度が分離をいたしておりますこの年金の制度、それは給付の面でもあるいは負担の面でも非常に格差がございます。ばらばらになっております。まずこの制度間の格差をできるだけ調整をする、こういうことをいま各省庁に命じまして検討をさしておるところでございますが、究極のねらいは、大原さんがおっしゃったように基本年金を確立する、こういう方向に持ってまいりたい、このように思います。  なお、医療の問題につきましても健康管理、これが大事でございます。予防と健康管理、私もこのことは、厚生大臣をやりました経験からいたしまして年来考えておるところでございます。それにつけましても、先国会でお願いをいたしておりますところの老人保健医療、これもお年寄りの健康管理、予防、こういう問題に着目をしてやっている法案でございますので、ぜひ早期にこれも成立を図るように御協力を賜りたい、こう思っております。  ただいまおっしゃった点は、これを今後私どもは目標として努力するわけでありますが、繰り返して申し上げますけれども、わが国の財政事情というのは大変な事態に相なっております。五十六年度の予算におきましても、二兆円の特例公債の減額をお願いいたしましたけれども、また私どもは、地方交付税、国債費を除きまして四・三%という三十一年来の思い切った予算の縮減、圧縮を図りました。  しかし、なおそれでも行政水準を急に引き下げるわけにはいかないというようなこともございまして、現行税法の枠内でありますけれども、一兆四千億の増税をお願いせざるを得なかった。少なくとも特例公債依存の体質を脱却するというようなことから、五十七年度予算の編成におきましてもぜひこれをやりたい。こういう問題を抱えておりまして、臨調にお願いをし、そして五十七年度予算に取り入れるべき緊急を要する問題について中間答申をお願いをした。それを今回最大限に尊重いたしまして、立法化を図って御審議をお願いをしておる。逐次五十七年度予算全体の編成に向かっていまのような心構えで取り組んでまいりたい、こう思っております。
  102. 大原亨

    大原(亨)委員 これは全然納得できません。後でまたやります。  厚生大臣、最近の新聞報道にもありますが、医療改革の問題に関係いたしまして、自民党の中の厚生大臣経験者と日本医師会との間におきまして、現行医療費の支払い制度は変えない、こういう約束をしたというふうに言われておりますが、本当ですか。あなたもかんでいるという話だ。
  103. 村山達雄

    ○村山国務大臣 お答えいたします。  私も新聞紙上で見たわけでございますが、そういう事実があったかどうかわかりません。私、厚生省は関係していないことだけは申し上げておきます。
  104. 大原亨

    大原(亨)委員 総理大臣、長官、臨調の「支出に関する個別的方策」の中でアの4でありますが、「医療費の効率化に資するため、」とありまして、引き続いて、5のところに、「現行医療費支払方式の問題点を踏まえ、医療費適正化のために有効な改革案を検討し、早急な実施を図る。」臨調の提言の中にはこのことがあるのです。あるのですが、与党の中では、厚生大臣経験者がすでにこのことはやらぬというようなことを約束をしたということが報道されているわけです。その前の3の項目には、「医療費の不正請求及び乱診乱療を抑制するため、医療機関に医療費の金額等を明らかにした文書を患者に対して発行させる。また、レセプト審査、医療機関に対する指導監査の強化、不正・不当請求事案についての厳正な処分の実施を図る。」とある。大蔵大臣、これはあなたの意見が入っておるかどうかわからぬが、あなたも賛成のはずである。何といっても、外国においてはいろいろ苦心惨たんをしているわけですから、支払い方式についていまのままではいけない。  いまの日本の実情は、健保連その他、保険庁もそうですが、保険の費用を負担する側と、そしてこれを使って医療を給付する側が断絶しているということなんです。医師会の団体が独走をしておるという一つの形態は支払い問題であります。それについても、西ドイツその他は、両当事者が交渉いたしまして、合意をいたしまして、その年の医療費を決定するような仕組みをしておるわけです。そういうシステムが確立をしないと、自由主義、活力のあるということをあなたは何回言っても、手前勝手の自由だけではそんなことはいかぬでしょう。契約を守るというふうな原則で、幾ら交渉になれていないからと言ったって、敵対関係にあることはいけないわけです。それを一方の主張をまるのみいたしまして、今度は支払い方式についてはノータッチですよというようなことを、ぬけぬけと臨時国会が始まる前から宣伝するというふうなことは一体いかがなものであるか。総理大臣いかがですか、所見を簡単に申し述べていただきたい。
  105. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが党の厚生大臣経験者の諸君が……(大原(亨)委員「あなたも入っているんだよ」と呼ぶ)私は入っておりません。(大原(亨)委員「あなたも厚生大臣だ」と呼ぶ)いや、厚生大臣ではあるけれども、その話し合いというものには私は全然関知しておりません。したがって、この医療保険制度の合理化、改善、医療費のむだを排除する、そういうことにつきましては、今後とも臨調の答申も踏まえて、引き続き努力してまいる方針でございます。
  106. 村山達雄

    ○村山国務大臣 ちょっと所管のことでございますので、補足的に説明させていただきます。  支払い方式の問題につきましては、かねがね非常に問題になっておるところでございまして、われわれも中医協に、これはぜひひとつ真剣に検討してもらいたいということを申し上げておるわけでございます。あるいは社保審等にもお願いしておるわけでございますけれども、やはり問題は一長一短あるわけでございまして、言うまでもないのでございますが、現在の支払い方式の長所を生かしながら短所をどのように詰めていくか、非常にむずかしい問題でございます。そのいろんなやり方、それからその功罪を真剣に検討して、そして結論を出したいというわけで、いま決めているわけではないということを申し上げておきます。
  107. 大原亨

    大原(亨)委員 お医者さんの中、医療機関の中に良心的な人がいっぱいおるのですよ。そうでない人も一部あるのですよ。こういう指摘をしてあるとおりなんです。それは支払い側との、保険者団体とのコミュニケーションが足りないと思うのですよ。健保連と医師の団体が話し合いをして詰めていくという形がなければ、中医協だけの形ではいけないわけですよ。  そこで大切なのは、厚生省がどのような態度をとるかということです。政府・与党の問題ですが、このような措置というものは、言うなれば、これから合意の上に医療費を抑制しながら必要な医療は確保をしていくという医療改革の中において、根本的に間違っておるのではないか、その政治姿勢のことを言っているわけですよ。  この一括法案の中に文部大臣、四十人学級の問題がある。この四十人学級の問題は、先般も本会議渡辺大蔵大臣も答弁されておりますが、四十人学級の問題はいままで長い間かかって議論をし、そして受験戦争、学歴社会、個性の否定、人間の疎外あるいは暴力学生、暴力生徒、こういう問題等を解決するためには、やはり教育の問題については、それこそ総理大臣、百年の大計であるから、四十人学級の制度を進めようというのは国会の全部の合意なんですよ。それを簡単にちょんと横の方から出てきて、これを三年間凍結すると言う。何ですか、それは。大切なこととそうでないことについては、けじめをつけてその政治的な判断をするのが内閣でしょう。国会でしょう。四十人学級について、いかがですか、田中文部大臣。
  108. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 御案内のとおり、四十人学級の問題は各党一致のもとに長い間の御検討を経て、そしてこの十二年間にその目的の達成をするということの御決定をいただいたわけであります。  今回の臨調におきまして、この財政の国家的な必要性は十分認め得ますが、いまのそれに対しまする三年間の必要な措置といたしまして、これを凍結すると申しますか、その措置を講じたのでありますけれども、その十二年の期間内におきまする全体の計画は変えておりません。ただ、この財政再建の期間中に、定数の問題あるいはまた学級編制の問題を調整するということに相なっております。
  109. 大原亨

    大原(亨)委員 大蔵大臣、この点はもう一回、これからどうするかということを含めて、昭和六十六年まできちっとやるのですね。
  110. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 ただいま文部大臣が答弁したとおりであります。
  111. 大原亨

    大原(亨)委員 時間もかなり来たわけですが、この行革特例一括法案の中には児童手当もあるのですね。簡単に言いますと、政府の見通しをいたしました合計特殊出生率、夫婦で二・一人というのはどんどん下がって一・七四になっておる。一・七四というのは、子供を二人持ったのが一番多くて一人もおるというわけです。しかし、いま日本の児童手当というのは、佐藤さんのときに私も議論を二、三回いたしましてつくったのですが、これは第三子からです。十八歳以下に三人子供があって、しかも十五歳以下から支給するという縛りを幾つもかけまして、第三子からなんです。第三子まで生むべし、子供をふやせという政策なんですか、いまの政策は。そうすると、第一子、第二子から、やはり生まれた子供は健全に育てる、社会的ナショナルミニマムは確保しながら自助と相互扶助をやるというのが私どもの考えです。自助と相互扶助をのっけから、頭からかぶせておいて行財政改革をやろうというふうな主張をしばしば土光調査会長あるいは中曽根さんはしておられますけれども、そうではないのであります。ナショナルミニマム、最低の保障はしておいて、社会連帯をつくっておいて、その上に十分でなくても自助と相互扶助でやっていくということであります、考え方は。  そういうことから考えてみましても、日本の高齢化社会に対応して、若い人たちというのはどんどん減っていく。一・七四が一・六台になる。そうすれば労働力の構造、人口構造も変わってきまして、民族のバイタリティーは低下するわけですよ。活力ある社会というようなことは言えないことになるわけでしょう。年配の人も、高齢者の雇用も十分重視をし、障害者の雇用も重視をして、力をいっぱい出して働けるようにしていく。しかしながら、若い人も十分後を継いでいけるような体制をとるというのが高齢化社会の対策ですよ。簡単に考えて六十億円引けばよろしいというふうな、こういうふうなインスタントな考え方というもので一括法案に対処することは、私は間違いだと思う。  そこで申し上げたい点は、いままでるる申し上げましたが、これから財政問題は、防衛予算の聖域化の問題、防衛予算をNATO並みに計算いたしますと、沿岸警備隊、最近問題となっておる海上保安庁、軍人恩給を加えるのですよ、総理大臣。そういたしますと、一%を超えまして一・五一%になっているのです。国際的に比較する場合にはそれを出したっていいわけです。これはかなり日本は負担をしているわけです。そうして今度は、韓国の六十億ドルの援助の問題が出ております。日韓閣僚会談がありました。これは外務大臣からも聞きたい点でありますが、そういう問題等を含めまして、行政が継続しておる。だれかが請求書を出したらすぐ払うというようなそういうことではなしに、全体の南北問題を考えながらどうするかということを考えて主張されるのが、南北サミット出席をされる総理大臣の気持ちでしょう。  ですから、内政外交の全体にわたりまして、日本の置かれておる立場から主体性を明確にして、財政の混迷と崩壊を導いているのは何であるかという私の指摘を含めまして、私はこの一括法案を突破口といたします全体の行財政改革のあり方について、政府の明確な、そして国民にわかる決意の表明を最後に総理大臣に質問をいたしたいと思います。
  112. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 最後に触れられました児童手当の問題でございますが、佐藤内閣のときにこれは設定をいたした政策でございます。私は、この児童手当制度は今後とも堅持してまいりたい。ただ、御承知のように所得制限、これは十分経済的に御負担のできる階層に御協力をいただくということでございまして、これから安定成長時代に入ってまいりまして、福祉といえども私どもはこの安定成長時代、自然増収等がいままでのように入ってこない、そういうような状況の中で福祉をどのようにして改善し充実をしていくか、こういうことでございますから、経済力のある、負担力のある方には御協力を願い、そして経済的、社会的に弱い方にはわれわれとしてはできるだけ手厚くやるような、そういう心構えで福祉の問題にも取り組んでいきたい。  また、外交、防衛の問題につきましては、あくまで日本の自主的な立場、日本は軍事的には自分を守る以外のことはできません。でありますから、世界の平和と繁栄のために経済協力等を通じまして国際的な役割りを果たしていこう、こういう基本的な考えを持っておることを申し述べて御答弁にかえます。
  113. 大原亨

    大原(亨)委員 終わります。ありがとうございました。
  114. 小山長規

    小山委員長 午後一時より再開することとし、休憩いたします。     午後零時六分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  115. 小山長規

    小山委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  川俣君の残余の質疑は、後刻行うことといたします。  質疑を続行いたします。坂井弘一君。
  116. 坂井弘一

    坂井委員 行財政改革に取り組む基本姿勢から伺ってまいりたいと思います。  総理は施政方針で、行財政改革というのは二十一世紀を展望した国家の大計で避けて通れない国民的な課題だ、この認識には全く同感であります。そうだとすれば、問題は、しからばその総理御自身がお考えになる行財政改革の中身は一体どういう姿なんだろう、このことがやはり国民の前にわかりやすく示されなければならぬと私は思う。そういう意味では、どうも総理は真正面からお答えにはなっていないわけです。したがって、いま総理が胸の中に描かれる総理御自身の行財政改革の姿、その青写真はこういうものなんだ、大まかでも結構ですから、ひとつお示しをいただきたい。
  117. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国の行政をめぐります内外の情勢はきわめて厳しいものがございます。  国内的には、経済の高度成長時代から安定成長時代に移行をいたしまして、税収等も大きく落ち込んできておるわけでございます。また、その過程におきましていろいろの施策をやりました。特に石油ショック後におけるわが国の経済の不況を克服して、雇用の問題を解決したり、また国民生活の安定を図るための施策を進めたり、福祉関係の国民的な要請にこたえたり、いろいろ財政の支出もいたしたわけでございます。  そういうぐあいに税収は減り、財政の支出は増高したという結果、今日年度末には八十二兆円というような国債残高が生まれるというような、財政は大変危機的状態になっております。それからまた、急速に高齢化社会に突入をいたしておるわけでありまして、今後われわれはこれに対応していかなければいけない。また、価値観も変わり、国民のニーズも変わってきております。こういうような状況にこたえまして、今後行政は新しい時代に対応する新しい施策を進めていかなければならないわけでございます。  国際的に見てまいりましても、わが国の国際的な地位、立場というものは非常に重くなってきております。わが国の役割りも大きくなってきておるわけでございます。特に第三世界等に対する経済協力あるいは政治的な役割りというものも大きくなってきております。  こういうぐあいに、わが国の行政あるいは財政に対するところの役割り、期待というものが高まってきておる。こういうことから、これに対する今後のわが国の行政は機動的に対応できるようにしなければいけない。それには、いまの硬直したような財政の状態、こういうものでは対応できない、こう思うわけでございます。私は、そういう中で活力ある福祉社会の建設、また国際社会に一層の貢献を果たしていくというようなために思い切った行財政の改革を行わなければならない、このように思います。  この新しい時代が求めておりますところの行財政のあり方は、それでは一体どういうものか、こういうことでございますが、高度経済成長時代に肥大化した行財政の思い切った縮減合理化を行いまして、変化の多い内外の状況に機動的に対応する。先ほども申し上げましたが、それが必要であると思います。それから、安定成長に移行した今日、行政需要とそれを充足する財政収入の間に大きなギャップが出てきております。こういう時代に巨額の赤字公債に依存せざるを得ないような状態というものを改めていかなければいけない。今年末の赤字は大変大きいわけでございますが、私どもは、こういう点を克服するような行財政の改革というものを進めていきたいと思うわけでございます。  今回の臨時国会に御提案を申し上げておりますのは、当面、臨調の第一次答申を受けまして緊急に実施すべき案件、これを三十六本の法律を取りまとめまして御審議をお願い申し上げたわけでありますが、これでもって行政改革はすべて終わるわけでございませんで、むしろこれは第一着手である。これから私どもは、臨調の答申、世論の動向等を見きわめまして、さらに広範な行政改革、財政の立て直しというものをやってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  118. 坂井弘一

    坂井委員 大変長々と御説明いただきました。総論的な、抽象的なことを実は私は聞いているわけではないのであります。  国民が行財政改革という言葉を聞きまして、それに賛意を表する、その場合、国民の気持ちというのは、それはやはりいま総理がおっしゃるように、確かに高度成長時代から肥大化した行財政機構、こういうものをうんと改編する、抜本的な行財政機構の見直しをやる、あわせてそれには制度改革も伴うんだな、そういうことで政府みずからがそうした機構、制度、そこのところに目をつけて改革をやるなら賛成だ、こういう気持ちが強いと思うのですよ。  ですから、私は端的に伺いますが、実はいまなぜ行革なのかという、こういう命題に対しまして、しばしば私はこの委員会に出しました。実は昨年、大平総理に私の考えを述べながら、大平総理の考えを聞いたのですが、私は非常に実は考えを同じくしたことがあるのです。それは単なる行政の効率化あるいは合理化、それによってむだを省くんだ、こんなことは常時ふだんにやるべきことだ。むしろ問題は、たとえば端的に言いますと、中央省庁の機構の大改革、制度の改革、こういうものが本来的、本格的な行革なんだ。しかし、やりたいけれどもいまはやれない、もう少し時期を待ちたい、大平さんはそう言われた。  いま鈴木総理が政治生命をかけるとまでおっしゃったこの行革は、まさに本来的なそういう機構の大改革、制度の改革もありますよという、そういう改革でなければならぬと私は思う。また、そういう決意であられるはずだと思う。であれば、その青写真が総理の胸の中にはおありでしょうという、こういうことを実はお尋ねをした。いま総理は、次のこれから本格的なことはなお臨調の答申を得てと、こうもおっしゃる。それならば、時間が短うございますので端的に率直にお尋ねいたしますが、臨調答申最大限尊重だと言うならば、次の基本方針、来年夏だと言われますが、臨調から答申されます。その中に中央省庁の統廃合、制度の改革、これは制度改革はみずから国会が考えるべきものだ、また政府がお考えになる問題だと思いますが、そういう抜本的な改革案が出された場合に、最大尊重で大骨は抜きませんね。そのままおやりになりますか。
  119. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 臨調は、いろいろの角度から行財政の改革案を御検討いただいておるようでございます。それには許認可の改善あるいは合理化、この中にも私は非常に国民が期待をしておる、ぜひそういうことだけはやってほしいというものもあろうかと思います。たとえば自動車の整備の車検の問題あるいはドライバーの免許の問題、こういう問題についてどうあるべきかというような問題等も許認可の改善の中に含まれておるわけでありますが、そういう点もございます。また、あるいは都道府県単位の出先機関の問題、こういう機構の問題、組織の改善の問題もございます。それから、民間と官業の仕事の分野の問題、そういう問題をどうするか、特殊法人の整理統廃合の問題、こういう問題もあるわけでございまして、こういう問題につきましては御答申を待って、そして十分その御意見を尊重してこれを実行に移してまいりたい、このように思っております。
  120. 坂井弘一

    坂井委員 総理の本当に本来的な、本格的な行財政改革の姿というのは、どうも私には浮かんでこないわけです。  それはまたおいおい聞いてまいるといたしまして、増税なき財政再建とおっしゃる。ただ、これは五十七年度限りの話で、どうも五十八年度以降余り自信がおありでないようです。増税なき財政再建と言う限りは、少なくとも財政再建期間、つまり五十九年まで増税しないで財政再建するのだ、こういうことでなければならぬと思いますが、いかがですか。
  121. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、しばしば申し上げておりますように、昭和五十九年までに特例公債依存の体質から脱却をしたい、そのために五十六年度予算では二兆円の特例公債の減額をいたしました。五十七年度も、額は未定でございますけれども、とにかく五十九年にはそれを達成するという枠組みの中でこれを進めてまいります。そして、五十七年度予算の編成に当たりましては、増税のない財政再建ということでそれを達成していきたい、こう思っております。  五十八年度以降につきましては、これからの税収でありますとか、あるいは諸般の状況を総合的に勘案をしまして、そして、できるだけ国民に対する御負担等を軽減するような心構えでこの財政再建を着実に進めてまいりたい、このように考えています。
  122. 坂井弘一

    坂井委員 総理、それでは増税なき財政再建と言うのは余りにもおこがましいと私は思うのです。増税なき五十七年度の予算編成、とりあえず増税しないで五十七年度だけは予算編成しましたにしかすぎないのじゃないか、実はこう思うのです。  そこで、そういうことであったならば、これは実は先々のことが非常に思いやられるわけでございまして、本当に行財政改革をやるのだというならば、順序はやはり仕事減らし、それに伴って人が減る、結果として金が出てくる、こういう順序であります。いま金減らし、それから人が減る、仕事が減る。外科手術、当面のあれとしてという考え方が非常に強い。それが五十七年度予算への今回の特例措置法案等にあらわれているのだろう、私にはそうとしか見えない。少なくとも国民の目から見て、政府がどういう行財政改革の方向に進むのかというのは、やはり車が走ってわだちの跡を見てわかるということで、今度出た芽というものは、国民が考えているような中央省庁の統廃合であるとか、思い切った制度の改革もやる、そんな方向ではないみたいだ、不安だ、加えて臨調の答申を尊重するのだ、それに待ちましょうというのでは、なおさら臨調オンリーであって、政府としての主体的な責任のある、明確に国民に対してこのようにいたしますよ、こういう問いかけがない。  私は、そういう立場では国会も同然だろうと思うのです。したがって、国会においても、わが党また中道四党でも、行財政改革に対するわれわれの青写真’また行財政改革に至る手順あるいは具体的な方法、そういうことについてずいぶん検討いたしました。そういうことをあらかじめ申し上げた上で、いまなされようとしておる当面の措置について若干お尋ねをしてまいりたいと思います。  今度出されました行革関連特例法案、午前中も議論がございました。二千四百八十二億円で、厚生年金が千八百六十七億、船員保険が三十七億、児童手当が六十億、合わせまして千九百六十四億、約八割が福祉関連だ。しかし、そのことについて中曽根長官は、いや、もっと総枠があるのだからそれでもって見てほしい、こういうことですね、そのことは、私はそれなりに理解ができます。そうであればここでお示しをいただきたい。一括法案に織り込み分が二千四百八十二億、外国人登録法の一部改正案が十億、加えて補助金の原則一割カット、これはならした以外の分ですね、この分が千六百億、合わせて四千百億円、これがまず五十七年度予算に向かって反映されるであろう当面の法律改正による財政効果の試算四千百億だろうと思うのです。これにプラス定員の削減分、それからやはり大きいのはその他の補助金、そういうものが上乗せされて、一体五十七年度の行財政改革による財政効果、これは総額でどれぐらいになるのですか。ちなみに、五十五年度は二千二百七十億、五十六年度は四千五百七十億でございました。この計算方式で五十七年度、総額幾らになりましょうか。
  123. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 細かいことはまだわからないわけです。わからないわけですが、御承知のとおり、概算要求というのは一応出てまいりました。これはシーリングの枠内で出てきているわけです。いままでの「財政の中期展望」によれば、二兆七千億からの要調整額がある。結局その金は、どこかで節約するか収入をふやすかしなければ、五十七年度はいままでのやり方ではもううまくつじつまが合わないよというものが、何とか今後、税収の見通し等について誤りがあれば別でございますが、一応われわれが「財政の中期展望」で見たような姿になるとすれば、かなりの財政効果が出てきておるということが言えるのではないか。  中身については、これから個別に試算をしていくわけでございますので、いまそれを全部認めるか、あるいは地方交付税のように、われわれの予想よりも少なく要求が出てきておるというのがございますから、これは当然修正されなければならないのじゃないかと私は思っておるわけです。したがって、予算の締めくくりの段階にならないと、幾ら幾らこれによって財政効果が出ましたとは申し上げられませんが、いま言った背景から見れば、かなり大きな数字がどこかで抑え込まれておるということになるわけでございます。
  124. 坂井弘一

    坂井委員 どこかで効果を生まなければ確かにゼロシーリングの予算編成はできないでしょう。二兆七千七百億の要調整額、これは埋めなければいけない。いま大蔵大臣御答弁ですけれども、そういう試算を早く一度まとめられた方がよろしかろうと思うのですね、従来の経験があるわけですから。それによってわれわれも五十七年度予算編成に向かってどういう措置が必要なのかということを検討する一つの素材になり得る、こう思いますので、その辺の作業はひとつ進めていただきたいと思います。  いまの特例措置に関連いたしまして、午前中大原委員からも質問がございました。確かに厚生年金の国庫負担の繰り入れ減額、この措置に関連いたしまして、総理は、医療等も含め事ざいましょうけれども、基本的な問題については検討を進めたい、こうおっしゃった。ことしの夏の自民党研修会で、総理はこの年金問題に触れておられる。検討すべきである、六十年ぐらいまでには何とかというようなことのお話もあったかに伺っております。総理がお考えになる年金の将来のあるべき姿というのは、制度間の格差の問題がある、その整合性の問題がある。したがって、いま言われる基本年金構想、わが党も準備をいたしました。すでにお示しをいたしております。そういう年金の一本化、つまり基本年金、そういう制度への移行というものは必要である。総理は御経験があるわけですから、そういうことを胸の中に持って、そしてその作業を進めるべきだ、こうしていらっしゃるのだろうと私は思うのです。  この際、そうした非常に大きな問題でございますので、ひとつ総理基本年金に対するお考え、同時に、もしそれがまとまるとすれば、いつごろまでに成案を得たいと考えておるのか、率直に、端的にひとつお答えいただきたい。
  125. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、この年金の問題は高齢化社会を迎えて一番重要な問題である、こう考えておりまして、現在のわが国の各種年金制度というものを見てまいりまして、負担の面あるいは給付の面等におきまして大変な格差がございます。これは歴史的な経過があるからではございますけれども、まずこれを改善をし、その格差を縮めていく、そうすることによって将来年金制度の一本化ができる、そういう条件が整う、私はこういうぐあいに考えておるわけであります。  そういう中におきまして、公明党さんが基本年金を考えられ、その上に各種年金のかさ上げ、二階上げを考えるというような構想等もお持ちになっているということも承知をいたしておりまして、各方面の御意見を十分吸収しながら年金制度の抜本的な改正に向かって進めてまいりたい。政府の責任者でございますから、いつまでということを私は申し上げかねますが、そういう方向で努力をしてまいりたい、こう思っています。
  126. 坂井弘一

    坂井委員 いずれにしましても、一本化の方向にということは総理はやはりお考え、また、そうすべきだということのように受けとめました。  そこで、戻りますが、先ほども厚生年金の減額分の返済についてのやりとりがございまして、どうも総理、お答えを聞きますと、年金財政に支障を来さないような措置をする、こういう御答弁。このことは、元金、利息ともに返すんだ、これはもう率直にそう受けとめたいわけでございますが、余りこういう抽象的な言い方をされますと、聞いている方はわからぬわけです。心配ありません、間違いなく返しますということであれば、そのようにお答えいただきたい。ただ、返す方法についてはいろいろありますということなら話はわかる。返すのか返さないのかわからぬというような話は、全くわからぬわけでございますから、その辺のところをはっきりお答えをいただきたい。  同時に、この際申し上げておきたいと思いますが、そういうことになりますと、実は、まず、負担減額分はこの三年間の措置でございますから、試算をいたしますと六千七百億になると思います。プラスそれに利息の分、これはまあ運用収入相当分ということで利子に置きかえるのでしょうか。たとえば七・五%と見込みましても約七百億。したがって、元利合計いたしますと七千四百億、大変大きな金であります。確実にこれは返済されますか。するならする、しないならしない――しないといいますか、危ないなら危ない、こういうお答えをいただきたい。
  127. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは先ほど社会党の大原委員にもお答えをしたとおりでございまして、そのときの保険の事業に支障のないようにいたしましょうということがまず第一点でございます。  それから、元利につきましては、これは元金の繰り延べの部分については返済をされるもの、利息についても、そのときのいろいろな財政事情その他を勘案して、それは当然に返済の対象として計算をしなければなるまい、そう思っております。  以上でございまして、幾ら幾らということをいまここで私ははっきり申し上げることはできない。そのときの財政事情、それからこの年金の事情等を全体的に加味した上で、支障のないようにいたしますということだけははっきり申し上げます。
  128. 坂井弘一

    坂井委員 要するに、期間が過ぎまして、六十年に入ってその後考えましょうということにも似たような御答弁でございまして、実は大変不安が残ります。このことについては、やがて特別委員会の場も設けられることでございますので、またそこで改めてただしてまいりたいと思います。  児童手当制度のことについて一音だけ伺っておきたいと思いますが、私は、やはり児童手当制度そのものは、これができたということで社会保障制度が整足をされた、こういう評価を受ける非常に大事な制度だろうと思う。とりわけ児童の人権行使ということが主たる目的でございまして、ただ単に低所得者層に対する措置でありますとかあるいは家族手当、こういう感じを持って児童手当制度をごらんになっているとするならば、これは大きな間違いであろう、こう思います。活力ある福祉社会づくりということで総理もるる述べておられるわけでございますが、私はこういう制度を含めまして、単なる保護とか救済とかという意味ではなくて、むしろ活力ある社会をつくっていくのだということであるならば、それには一つの予防的な機能、これは高齢化社会に向かう、そういう意味での予防的な機能、あるいはもっと活力を生むその開発的な機能、そういうものを求める一つの大きな制度の柱として児童手当制度があるのだ、こういう位置づけをやはり政府はすべきだろう、そうでなければ、ただ金がゆえに、財政が困っているがゆえにということでもってこういう手当に手をつけていくということは邪道であると私は思いますね。そんなところをひとつしっかり考えの中に置いていただいて、三年たって、この期間中に考えるというのですが、児童手当制度を私がいま申しましたような方向に拡大をしていくのか、それとも廃止の方向に向かうのか、腹の中にどういうことをお考えになっていますか。方向性だけ示してください。
  129. 村山達雄

    ○村山国務大臣 お答え申し上げます。  今度の児童手当についての特例措置につきましては、臨調の答申を踏まえまして、それで所得制限を強化したところでございます。それの補完措置として特例手当を創設したことは御承知のとおりでございます。しかし、いまの御質問は、三年後、再び抜本的に見直すことになっているが、どっちの方向でやるのだ、こういう御質問でございます。  この児童手当は、もう御承知のように、法律の目的がやはり児童を持っている家庭の経済関係を考えるということ、それから第二番目には児童の福祉を考える、この二つを法律目的にうたっているわけでございます。そしてまた、この児童手当のあるべき姿については各種の論議が行われておりますし、また、わが省に設けられております中央児童福祉審議会の方では非常に拡大の意見が述べられているわけでございます。したがいまして、これらの各種の論議を踏まえまして、この特例期間が終わるまでに最終的な、恒久的な結論を種々な意見を踏まえながら出したいと考えているわけでございます。  ただ、厚生省といたしましては、一部に児童手当を廃止すべきである、こういうようなことを言われておりますが、そういう考えは持っておりません。
  130. 坂井弘一

    坂井委員 特例法案に関連いたしまして、一つは地方への肩がわりと言われますが、国民健康保険、児童扶養手当、特別児童扶養手当、このことにつきましては本年末までに検討するといたしておるわけでございますが、今度の概算要求を見ますと、これがすでに出てきておりますね。児童扶養手当で約二戸六十四億、特別児童扶養手当が五十六億、国民健康保険におきましては、これは都道府県五%ということでございますから約二千四百億、さらに市町村分は約二千三百億、これはことしの末の話ではなくて、もう概算要求ですでに織り込んできた、こういうことですか。ということになりますと、地方、都道府県、市町村、これは大変なことになりますね。いかがですか。
  131. 村山達雄

    ○村山国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の児童扶養手当、特別児童扶養手当、それから国民健康保険の国庫負担の問題、こういう点につきましては、それぞれ役割り分担という点からいたしまして、都道府県の負担の一部導入が臨調から指摘されているところでございます。しかしまた同時に、この問題は中央地方を通ずる財源問題でもございますので、予算編成までに政府部内で詰めるべきであるということも言われているわけでございます。したがいまして、ゼロシーリングというのは、とりあえずはいま概算要求の段階のゼロシーリングでございますので、そのような趣旨で概算要求をしている。しかし、最後の詰めは、やはり臨調の指摘するごとく予算編成期までに関係省庁で詰めていくべき筋合いの問題である、こう思っているわけでございます。
  132. 坂井弘一

    坂井委員 そこの推移を見守りながら、十分これは議論してまいりたいと思います。  老人医療の無料化措置の問題に触れまして、これは自治大臣から実は御答弁いただきたい。  地方自治体は非常に財源に乏しい。しかし、そういう中でも、何とかやりくりをして老人医療の無料化、そのかさ上げあるいは所得制限の緩和、そういうことをやっておる。たとえば対象年齢の引き下げにつきましては、六十五歳としているのが東京、大阪を初め六府県、六十七歳が和歌山県、六十八歳が埼玉、広島など八県、六十九歳が石川等二県、合わせて十七県。それから所得制限緩和、これをやっているのは二十七都府県。これについて実はいろいろな見方があることは私も承知をいたしております。しかし、少なくともこれは地方自治体の単独事業として、独自の政策意思をもってこの措置が必要である、これはまさに地方自治の自治権の問題だろうと私は思う。これに対して禁止をしろ、やめろ。一方においては老人保健法、このことについては別途の議論です。まだできているわけじゃないのです。いまの段階でここに手を突っ込むということは、あたかも地方自治体に土足で踏み込むにも等しい、私はそう言わざるを得ないと思う。これは自治大臣としては黙っておれぬだろうと思いますが、いかがですか。
  133. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 その前に、国民健康保険のことを自治省の立場から一言申し上げておきます。  厚生大臣も御答弁申し上げましたとおり、予算編成期におきましてこの問題は十分に論議を尽くして結論を出さなければならぬ、そういう性格のものでございます。単なる財源のつけ回しということについては、自治省としても問題を抱えておりますので、十分検討してみなくてはならぬ、かように考えておるところでございます。  そこで、ただいまの御質問でございますが、単独事業として年齢を引き下げてみましたり、あるいは加算をしたりしている事例はあるわけでございます。これは単独事業でございます。そこで、各自治体が単独事業というものを決定いたします際には、やはりその政策の効果、軽重の度合いあるいはまた将来における財源の負担の問題等々、十分に慎重なる考慮を払って決定をすべき問題だと思っております。そうした結論に基づいてやったことについて、やはり自治の精神から申しますと、一女どうこうと言うべき問題でもないと思いますけれども、責任者といたしては、十分この点について考慮を払ってもらわなければならぬということだけは、私も強く申し上げているところでございます。臨調の答申はそうした強い希望を表現されたものでございまして、これが自治権の侵害だとは考えておりません。
  134. 坂井弘一

    坂井委員 自治体はいろいろなところで合理化をしよう、確かにむだのある部分は刈るとかいうことで、具体的な措置をしようということで、いろいろな知恵を働かしているというような点についても、ただ要するに勘定といいますか、物を皮相的に見て、周辺にそういうような空気があるからといって、一刀両断で、ただ金の面だけでばっさり切ってしまうとかいうような荒っぽいことはやってもらいたくない。少なくとも地方の時代とも言われました。しかし、言葉だけあって何にもないんですね。本当に自治権の拡大ということ、言うなれば中央集権型地方分権とでも申しましょうか、わが国の非常に特異なそういう中で、今後における一つの行財政改革の方向というものは、冒頭申しましたように、国が小さくなって地方の自治権ということが、ニーズでありますとか時代の変化に対応して、合理的に効率的に、住民の創意工夫によって行われていくという方向が最も望ましいわけでございますから、そういうところにも意を用いながら、いま提起いたしました問題についても、十分ひとつ慎重であっていただきたいと思います。  時間がたってきておりますので、負担の公平の問題に触れたいと思いますが、負担の公平化を図ると総理は約束をされました。それは一つは税制にある。ここに問題が二つございまして、一つは実質増税をどう緩和するかというのが一つ、いま一つは所得捕捉の格差の問題をどうするか、まずこの二つだろうと思います。  そこで、もう御案内のとおり、四年間も減税なし、実質増税が進行した、こういう状況は、国民から見れば自然増で、言うならば税の強要であります。またこのことは、巨額なこの自然増収によって財政赤字の大部分を解消するということになるならば、歳出の効率化にブレーキをかけるという側面も、これは見逃すことはできない。そういう中で、わが国の所得税制は、国際的に見ますと確かに高い累進制をとっていますから、そういう意味では公平化が図られている。しかし、現実はとうか、実態面はどうかと言いますと、いわゆる利子配当所得の分離課税の問題、さらには、所得階層が皆違うわけですね、それによって税制の相違がある。加えて一番大きな問題は、いわゆるクロヨンとかトーゴーサンと言われる所得捕捉の格差の問題、これがあります。  冒頭申しました二つの問題に対して、総理の御見解を伺いたいのですが、具体的にどう取り組まれますか、具体的な対応を、お考えがあればひとつお示しをいただきたい。
  135. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 租税の公平という制度面、執行面についての御指摘でございますが、制度面については、よく言われる特別措置法、これについては年々整理合理化をやっておりまして、特に大企業向けと言われるようなものは、全体の中で、大体二千億のうちの半分強ぐらいでございます。そういうようなことで、これはもう余り問題はないのじゃないか。問題は、それ以外のいわゆる債務性の準備金、引当金、法人税法、所得税法の本文にかかっておるもの、こういうようなものについて、実際にはそれほどの引当金が使われるほど退職者もいない、貸し倒れもないじゃないか、実態とかけ離れてはいないかという御指摘がございます。しかし一方、それは非常に債務性の強いものだというようなことも言われておるわけでありまして、そこらの整合性をどういうふうに持たせるか。しかしながら、こういう財政事情のときでございますから、何とか理由づけをしてでも、私どもといたしましては、実態に即するように検討するということも大切であろうと考えております。  なお、執行面については、いわゆるクロヨンということがよく言われますが、これは終戦直後そういう言葉が出たのでございますが、現実にはほとんど存在しないというように私は考えております。というのは、ヨンというのはどうも農家のことを指して言ったようでございますが、いまは昔と違って、むしろお米は政府に買ってもらいたいぐらいで、やみでうんと高く売れるなんという状態ではございませんし、たんぼや畑を隠すというわけにもいかない。したがって、農家の脱税所得というのはほとんどないに近いのではないだろうか。ただ、農家の幕らしが、同じくらいの所得で暮らしが楽だ、外面的に見て、どうしてあんなに楽なんだということが、よく国民感情的に言われる場合があるのですが、これは農村の場合は大世帯主義で、息子が郵便局へ行ったり、娘が学校の先生をしている、農家の人と一緒になって暮らしているというようなことで、確かに自動車を持っておったり、暮らしがよそ目から見て楽だというけれども、それは農家の所得とは別な話だと私は思います。したがって、あと事業者の問題については、これは青色申告がいっぱい普及しておりますから、そう脱税がたくさんあるというわけじゃございません。しかし、ときどきあるのも事実でございまして、これらについては一層調査を深めて、一罰百戒、脱税が行われないように処置をしてまいりたい、こう考えております。
  136. 坂井弘一

    坂井委員 所得捕捉の格差の問題は実態調査を始められた。まあ大体年内に終わって一月に取りまとめということなんでしょう。これが施策への具体化につきましては見守りたいと思いますが、お手元に資料としてお配りをいたしました。実は私も国税庁の税務統計資料等によりまして計算をしてみたわけです。  資料一をひとつごらんいただきたいと思いますが、その結果、過去十年程度の間においてわが国の所得音別の納税額の推移を見ますと、所得税収の総額に占める給与所得者の納税額は、四十五年が六〇・九%、五十年は六一・三%、一定の水準なんですね。しかし、所得税減税が見送られて二年目の五十四年になりますと、所得税収総額に占める給与所得者の納税額は六七・三%、急上昇でございます。  この事実は、他の所得者の納税額が所得税収総額に占める割合が軒並みにダウンしているということ、さらに、その後二年間も所得税減税が見送られていることとあわせまして考えますと、サラリーマン、給与所得者には非常に過酷なことになっているのではないか。給与所縁者以外の所得者も、いま大蔵大臣から御説明がございましたが、まじめに納税している人が大部分でございます。不当な評価を受ける、これは心外だと思いますね。したがって、所得捕捉の問題につきましては、その実態をぜひとも明確にしていただきたいと思いますし、対策が必要となれば早急に講じてもらいたい。これはひとつ強く要請をしておきたいと思います。  そこで、総理は、行財政改革の国内的目標というのは活力ある福祉社会の実現である。この目標を実現するためには何といっても負担の公平ということが大事だろう、前提だろう、そういう考えに立ちまして申し上げたいのでございますが、所得減税を見送りして、いま申しましたように実質増税、この不公平は私は最たるものだろうと思う。  実質増税など負担の強化がもたらす家計への影響、これを政府の家計調査報告によって試算をいたしてみました。資料の二でございます。  減税が見送られる前の五十二年五月分と五十六年五月分の家計調査報告によりまして、勤労世帯の五分位階層別に実収入に占める非消費支出を比較いたしますと、五十二年に比べて五十六年では、まず第一分位が八・九%から一一・二%、第三分位が一一・六%から一五・七%、第五分位は一五・八%から一九・二%、これはいずれもふえております。  また、この非消費支出の伸び率を実収入の伸び率と比較いたしますと、資料の三をごらんください。サラリーマン家庭の平均では、実収入が三三%伸びました。それに対しまして非消費支出は約二倍の六四%、これは大変な伸びであります。さらに、非消費支出の内訳、これは資料四につけました。勤労所得税のふえ方が一八五%、これは非消費支出の平均のふえ方の一六四%をはるかに超えているわけですね。しかも、勤労所得税が全体にふえる中でも、第一分位が二四八%、第三分位が二二七%、第五分位は一五八%。これを見ますと、低所得者、中所得者ほど増税になっている、こういうことを科学的、合理的に物語る数字でございます。したがって、サラリーマン家庭の負担が軒並みに急上昇している。低、中所得者の負担が厳しい。物価上昇とあわせて考えますと、やはり所得税減税、これはどうしても必要である、いまこそやるべきではないか、やらなければならぬときに来ておる、こういうことでございます。  結論的に申しまして、所得税減税を見送ってこのまま実質増税を五十九年度まで仮に続けるということになりますと、活力ある福祉社会づくりというものは、これは命取りにもなりかねない。  さらに、こちらからずっと申し上げます。  理由の第一は、先ほど申し上げましたように、家計部門で、非消費支出のふえ方が実収入のそれをはるかに上回って、しかもそのふえ方は、資料二、三、四、ここでも明らかでございますが、いわゆる中間所得者層の負担上昇が鮮明でございます。資料三をごらんください。分位別では、第一分位が実収入の三一%増に対して非消費支出の増が六五%、第三分位は三四%増に対しまして実に八一%増、第五分位は二九%増に対しまして五八%増、こうなっております。  理由の第二番目は、同じく家計調査で、非消費支出の第五分位を一〇〇といたしまして、他分位の比率を見ますと、第三分位が四六・三%から五三・一%に上昇。このことは、政府が、わが国の所得の平準化を大変宣伝しているわけでございますけれども、中間層は所得格差の縮小率よりも負担増を強いられている。だから、収入がふえたと率直に喜べない、こういう実情にあるということでございます。  そういうことを考えまして、活力ある福祉社会をつくるため最も政策的に配慮を要する中所得者である。つまり、政策的な判断というのは、この累進税制だけでは負担の公平化が図れない。負担の公平と適正化を図るためには所得税減税を実施することである。その方法は、やはり課税最低限の引き上げ、これを目標にいたしまして、給与所得控除でありますとか人的控除、この改善方を図るべきではないか。五十九年度まで減税見送りということになりますと、国の活力、財政の歳入面から見ましても、金の卵を産む鶏を殺しかねない、私はまじめにそう思います。いままで、わが党の本会議における浅井質問にも、国際比較を取り上げて反論されておったようですが、こんなことで、一面だけで見るのはきわめてナンセンスだということを申し上げたい。  そこで、河本経企庁長官に伺いたいのです。伺うところによりますと、五十八年度には所得税減税を実施すべきであるということが長官の真意であろうと私は思う。やはり経済運営の責任者として、権威のある、根拠のあることを胸に描かれてそうおっしゃっているのだろう。私がいま提案いたしました非消費支出の負担実態から見まして、最近特に内需の不振、個人消費がなかなか伸びない。また貯蓄も思うに任せない。したがって、設備投資の喚起も、これは一体どういうことになるか。物価が鎮静しながら消費が伸びない。内需が不振である。つまり、裏返しに言いますと、こういう非消費支出部門が非常に大きくなる、それも中、低所得者に大変大きくのしかかっておる、こういうことだろうと思うのですね。したがって、このことのためにはやはり減税が必要だ、そう考えられる長官のお考えは、私は経済運営の責任者としてそれは一つの見識であり、またぜひ必要だ、やらなければいかぬのだという強い御決意に立たれておると思うのですが、そのことを伺いたい。  あわせて、このことに関連いたしまして、実は税収の伸びを悪化させる要因にもなっているのではないかということを考えながら、減税しないことのプラスと、それから逆にマイナスに作用する分、これを経済と財政の両面から見て一度試算をしてみたら一体いかがなものだろうか。これは大変むずかしいかもしれない。むずかしいかもしれないが、しかしこれを一度政府はお考えになって検討してみられてはいかがだろうかと御提案したいわけであります。お答えをいただきたい。
  137. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いまいろいろのことをお述べになりましたが、一つは、最近個人消費が大変伸び悩んでおる、これは所得が伸びないせいではないかという御質問でございますが、昭和五十三年、それから五十四年には、おおむね個人消費は五%から六%ぐらい伸びております。昨年はいろいろな事情がございまして急速に低下をいたしましたが、ことしは、五十三、四年までは伸びないにいたしましてもおおむねそれに近づくであろう、このように考えておりました。四・九と想定をしておったのでございますが、なかなかそのとおりまいりません。これにはやはり所得の伸び悩み、特に可処分所得がふえない、こういうところに一つの大きな背景があろうかと思っております。  それから、いま貯蓄も伸び悩みであるというお話がありましたが、そういう傾向も出ておりますし、それから、先般総理府で生活意識調査をいたしましたところが、中流意識に相当ひびが入っておる、こういう感じがいたします。二五%の人が生活が苦しくなった、こういう統計が出ておりまして、そういうことをいろいろ総合的に判断をいたしますと、いまお述べになりました所得減税をすべしというその御趣旨は、十分理解できるところでございます。ただしかし、いま財政再建、行政改革を始めたところでございますし、いますぐといいましてもなかなか条件がそろっていない、こう思います。政府として考えるべきことは、所得減税ができるだけ早く実現できるような、そういう客観的な条件を整える、これがやはり緊急の課題でなかろうか、このように考えておるところでございます。  第二点は、減税をした場合の効果あるいはその影響いかんというお話がございましたが、減税をいたしますと、単純に考えますと、その分は財政収入が減りますから財政に相当な圧迫が出てまいります。ただしかし、一面、減税をすれば消費が拡大をする、景気がある程度回復するてこにもなりますから、この減税を原動力にして経済の拡大均衡ということもまた考えられると思います。そこからまた税収等にはね返ってくる、こういうことも考えられますので、アメリカの現在の政府のとっております政策などは、減税を大きなてこにして民間経済の活力を回復して経済の拡大均衡をはかる、そこから新たな税収を生んでいこう、こういう考え方でございますが、総合的にいろいろな考え方ができると思うのです。しかし、数量的に計算しておるかというお話でございますが、そこまでは計算しておりませんが、いずれにいたしましても、減税し得るようなそういう条件を一刻も早く整備をするということが急がれる、こういう感じがいたします。  以上です。
  138. 坂井弘一

    坂井委員 前提は環境整備だ、財政再建期間中にもやはりそういう環境整備をして減税すべきだ、こういう判断にはお立ちになりますか。
  139. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 財政再建というのは、総理からも大蔵大臣からもたびたび御答弁がございますように、赤字国債を五十九年度までになくしていく、こういうことでございまして、それと減税をするという問題はおのずから別個の問題であろう、こう思います。
  140. 坂井弘一

    坂井委員 大蔵大臣にお伺いしますが、さきの通常国会でわが党正木委員の質問に対しまして、前提条件つきながらも所得減税は政策判断だ、こう言われましたね。これは財源があればということです。現在もそのようなお考えだろうと思いますが、財源があればということであれば、その財源を行革に求めるのか、あるいはそうでないとするならば、もう一方で大型物品税の導入、こういうようなことは念頭にありますか。
  141. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は別に減税大きらいな大蔵大臣じゃないんです。それは財源があれば結構なことでございますということは申し上げました。そのためには、要するに歳出カットが思い切ってできて、それから五十九年度から赤字国債からの脱却の見通しがついて、それで税体系の見直しについての国民的合意ができれば、私は減税は可能であろうということを申し上げたわけでございます。  それからもう一つは、景気との関係については、河木長官からもお話がございましたが、日本の場合はアメリカなどと違って貯蓄性向が非常に高い。まあアメリカが五・四なら日本は一八%というふうに貯蓄率が非常に高いというようなこともあって、果たして減税がそれだけにストレートに景気に影響があるかどうかということについては、私は非常な疑問がある。大体一千億円減税して、これはうんと大まかな話だけれども、いろいろ見方はあるだろうが、ともかく増収としては百億円ぐらいしか増収にならぬのじゃないか。したがって、減税というものは財政的に見るとやはり失うことの方が現在の場合は非常に大きいというように考えておるわけでございます。
  142. 坂井弘一

    坂井委員 いろいろ突っ込んだ議論をしたいところでございます。時間がございません。非常に残念でございますが、ことしわれわれが要求いたしましたのは剰余金四百八十四億円、これは減税に回す、これに予備費を活用するとかいうようなことで一千億ぐらい積めば約千五百億、それぐらいの規模で減税するつもりございませんか、人的控除等積み上げまして。いかがでしょうか、大臣。非常にむずかしいというお答えだろうかと思います。そこいらひとつ御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  143. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 剰余金の五十五年度分のものについては、もう大蔵大臣の手の届かないところに行ってしまったわけでございまして、これはもう国会の御意思によってお決めになることだと存じます。  私は、その一方、いわゆる人事院勧告というようなものが出ておって、私もできるだけこういうようなものの財源を何とか探さなくちゃいかぬということで、本当にまるっきり見通しのつかないような中でございますから、減税財源を五十六年度の予算の中で探すということはとうてい考えられないことでございます。
  144. 坂井弘一

    坂井委員 じゃ、それはそれなりにひとつお言葉をいただいて、総理、時間がございませんので、人事院勧告、仲裁裁定完全実施――仲裁裁定の方は国会待ちということですが、総理としては仲裁裁定はもう早期に実施すべし、そういうひとつ腹づもり、御決断をいただきたい。同時に人事院勧告制度、これはもう制度の根幹に関することでございまして、このことについてもうずいぶんと議論もされてきておりますので繰り返すことはやめます。  いずれにいたしましても、給与を決めながらこれをカットするということは根本的に――言うなれば公務員というのは、国の政策を進めるために必要な人をそれなりに配置をして、そして給与を払う、これはあたりまえの話だ。人件費というのは必要経費ですよ。人事院勧告――いま大蔵大臣は、私が減税の問題を提案いたしましたらば、人事院勧告完全実施の財源を捻出するのに頭がいっぱいだとおっしゃっている。御苦労のほどは多といたしましょう。であるならば総理、ひとつ御決断をいただきたい、速やかに完全実施――少なくともILOへの提訴という問題がある。提訴されてからどうするのかということをいま官房長官あたりもいろいろ頭をひねられているようですが、これもおかしな話でして、何も労働四団体が提訴するというのは目的ではないのです。皆さんがあたりまえのことをやられないからやむなく提訴をしよう。提訴したらどうしようか、そんな先々のことを考えること自体が私はおかしいと思う。これは総理の御決断の問題だと思います。総理は完全実施に決断をされてしかるべきと思います。給与関係閣僚会議とかなんとかという問題ではない。いかがですか。
  145. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 仲裁裁定の問題につきましては、これは本会議でも御答弁を申し上げましたように、国会の御判断にゆだねておるわけでございます。前国会で議決案件として国会の御審議をお願いすることにいたしたわけでありますが、その当時と現在におきましても、状況の大きな変化はございません。もう少し詰めをする必要があろうか、こう思っております。  それから、人事院勧告につきましては、これはいま大蔵大臣から申し上げましたように、税収の見通しの問題とか財政のその後の状況等を見ておりまして、まだこれをいま直ちに結論を出すような段階になっておりません。いましばらく税収の動向、財政事情の推移等を見たい、こう思っておるわけでございます。  なお、ILO提訴があった場合どうとかいうようなことは、いま政府では全然考えておりません。
  146. 坂井弘一

    坂井委員 時間が参ったようでございますが、総理、完全実施を速やかにやるべきだと私は強く主張しておきます。  いずれにいたしましても、われわれはあの公務員二法等についても早期の成立だ、同時にまた、公務員についても、われわれは中道四党で五%、四万五千人純減すべきだ、それによって人件費は節減すべし、それによって、また冒頭に戻りますが機構の改革、制度の改革、そういう思い切った行財政改革をやるのだという推進の方向です。したがって、そういう人件費の総枠は抑制はするけれども、しかし個々の給与を下げてはなりません。人事院勧告がないのならば、制度がないのならばわかる。あるじゃないですか。決めておきながら払わない、こんなばかな話は通用するわけがないのですから、そういうところは良心を持ってひとつ再考いただきたい。  速やかに完全実施を強く要求をいたしまして、時間も参りましたので、終わりたいと思います。
  147. 小山長規

    小山委員長 これにて坂井君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田之久君。
  148. 吉田之久

    吉田委員 いま公明党の坂井委員からも仲裁裁定の問題、そして人事院勧告の問題、この双方を完全実施しなければならないという強い意思表明と総理への質問があったわけでありますけれども、私もいま総理の御答弁を聞いておりまして、大変不満に感ずる次第でございます。  なぜならば、御承知のとおりこの二つの問題は、国家公務員や公共企業体に働いている人たちにとりましては、まさに労働の基本権の根幹に触れる問題であります。われわれはこの人たちから争議行為を制限している。したがって、それに対する当然の補償として、あくまでもこの二つは完全に実施されなければならないということをかたく堅持している立場にあるわけでございます。特に、今度いかに財政が苦しくとも、そのことを理由にしてこれが崩されるようなことがあるといたしますならば、私は労使の秩序というものは一挙に崩壊せざるを得ないと思うのであります。また、いまお話もありましたけれども、ILO初め国際的にもひんしゅくを買うことになるだろうと思うわけであります。  われわれ民社党は、たとえば公務員二法の問題にいたしましても、退職金をいささか削る問題あるいは定年制を設定する問題、それはやはり該当者にとりましてはなかなか大変なごとでありますし、かなり深刻な問題でありますが、しかしこれも行財政改革をやらなければならないときだから、あえてお互い協力しなければならないということを十分説得しながら今日に至っているわけでございます。  そういう状態の中で、この労働の基本にかかわる二つの実施がもしも完全になされないというようなことになるならば、これはわれわれとしても重大な決意を持たざるを得ないと思うのです。いましばらく人事院勧告の実施については考えてみたいとか、仲裁裁定の問題につきましても何かまだはっきりしない、歯切れの悪い総理の御答弁を大変不満に思う次第でありますけれども、重ねて総理の所信をお伺いいたしたいと思います。
  149. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 坂井さんにもお答えをいたしたとおりでございますが、政府としては、財政事情その他も勘案しながら誠意を持って現在努力を重ねておるところでございます。
  150. 吉田之久

    吉田委員 重ねて申し上げますけれども、いかに厳しい財政下におきましても、給与のささやかな改定までこれを拒むようなことがあっては許されないと思うわけでありまして、その点は重ねて要望をいたしておく次第でございます。  次に、今次行革の実質的規模を一度お尋ねしてみたいと思うわけであります。実は、先ほど来各委員からもその点については触れられているわけでありますけれども、今度提案されようといたしておりますこの行政改革特例措置法案、省略いたしましてそう呼んでいいと思うのでございますけれども、この中身は一体、実質的にこのことによって生ずる財政効果というものはどんなものなんだろうかということでございます。総理はしばしばこの行財政改革については自分自身の政治生命をかけているとおっしゃいましたし、過日の本会議におきましても、まさに国家百年の大計を打ち立てんとするものだというように胸を張っておられるわけでございますけれども、私どもがしさいにこの中身を検討いたしますと、非常に微々たる効果しか生じてこないように思うわけでございます。  たとえば、先ほどもいろいろと質問の中でお答えがありましたけれども、一応このことによって生ずる財政上の減額効果は二千四百九十二億円であると思います。     〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕 しかし、その主たるものは、厚生年金等の国庫負担繰り入れを千九百億円減じようとするものが一番主力でありますけれども、しかしこれは法第二条によれば、措置期間が終わった後何らかの形でこれを補てんするというものであります。先ほど厚生大臣や大蔵大臣の大変一部あいまいな答弁もありましたけれども、しかしだれが何と言おうと、この書かれている文言からして、当然これは後で返さなければならない、十分に利子も考慮して返さなければならない。だれが何と言おうと、これは一極の予算の後ろ倒しであると思います。まあ言うならば後払いにすぎない、そういう性格のものでありまして、一時的なやりくりだと思います。また、形を変えた国債が残ることにすぎないと思うわけなんです。  さらに、法十六条によりましても、特定地域のかさ上げ補助の引き下げ、これにいたしましても、将来支障を生ずることのないように財政金融上の措置を講ずるというわけですから、何のことはない、一種の地方への振りかえ措置にすぎないと思うわけであります。  そういたしますと、今度のこの特例措置法によって実質的な財政効果が出てくるものは、わずかに児童手当の削減による六十億円と、それから学級編制改善の抑制によって生ずる五十六億円、さらに公的保険にかかる事務費国庫負担の停止によって生ずる六億円ぐらいのものだと思うのです。これを合計いたしますと百二十二億円であります。言うならば、この措置法によって生ずる実質的な予算効果、財政効果というものは百二十二億円なのかと、まさに大山鳴動ネズミ一匹のそしりを免れないと思うのでありますけれども、いかがなものでございましょう。
  151. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いまいろいろ数字を挙げて御説明がございましたが、いろいろなもので節約しようと思っても、法律で決まっておるものは、大蔵大臣、査定ができません。そういうようなものについても、広く国民一般について、この特例期間中はみんなで少しずつ、いま言ったように繰り延べのものもございます、それからカットするものもございます、いろいろありますが、みんなでひとつこの際、特例期間中はがんばろうという、一つのこれはやっぱり看板でございますからね。(「精神的なものだ」と呼ぶ者あり)精神的にも大切なことだと私は本当に思うのです。そういう意味で、どうしてもわれわれとしては、細かな数字ではあるけれども、この際は一本の法律として、みんな広く積み上げて出さしていただいた。そうして、そういうものが中心になって、先ほどもお話しいたしましたように、要するに、本来ならば二兆数千億円の支出と収入のギャップがあるはずでありますから、それをなくしよう、増税によらないということになると、何らかの形で、もうそれを歳出の繰り延べあるいは削減、節約、そういうもので、増税のない、ゼロシーリング予算を組んでいこうということでやっておるわけで、その一環であるというように御理解をいただきたいと存じます。
  152. 吉田之久

    吉田委員 まあ気持ちはわかりますし、その一環でこれを考えたのだとおっしゃることもわからないではないのですけれども、その結果として生じたものは、本当に正味詰まるところが百二十二億円ではないか。しかも、この百二十二億円というのは、児童手当、学級編制、言うならば一番弱いところをいじめているではないか。  総理は、きのうも参議院の本会議で、行革のための突破口を開いたのだとおっしゃいましたけれども、突破口としては余りにも小さい、針の穴から天をのぞくような突破口であります。しかも一番弱いところをまず突破する。戦争と一緒だろうかと思うのでございますけれども、こういうやつばり弱い者いじめの印象を与える行財政改革を、しかも最初に出してきたというのは、私どもはいかにも残念ですね。もっとすかっとした、さわやかな、なるほどと、みんなが本当に痛いけれどやろうというような感じのものにできないのでありましょうか。  大体、自動車重量税の場合もそうでした。税金はなぜこんなに重ねて自動車関係から取るのだ、一番取りやすいところから取るのだ、ともかく税金は一番取りやすいところからまず取る。それから今度は財政を節約しようとするときは一番弱いところからまず泣かしていく。私は、こういう態度では、やっぱりこの行財政改革というものは本当の成功を見ることはむずかしいのではないかと思うわけでございますが、重ねて総理の御決意を伺いたい。
  153. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今度の措置は、五十七年度予算を増税をしないで編成をいたしますために、臨調の御意見を徴し、中間答申としていただいたものでございます。これを最大限に尊重いたしまして、法律の改正を行おうというものでございます。  二千五百億という数字、これはいろいろの方法で生み出すわけでございますが、これは単なる後年度へのツケ回しというようなことではないかという御指摘もございましたが、いま政府におきましては、国債の発行につきましても非常に苦労をしておりますことは御承知のとおりでございます。  また、増税をしないで五十七年度の予算を編成をする、ゼロシーリングをやる。これも簡単なように一般は見るかもしれませんけれども、恐らく戦後におきましてもそういうようなことはないほど厳しい状況であるわけでございます。そういう点を御理解を賜りまして、これは必要最小限度のまず第一着手として行うものである、こういうことを御理解を賜りたい。  また、これは法律事項でございまして、確かに法律を改正をして、そして補助金を減額をするというようなことは、過去におきましても余り例がないというほどむずかしいものであるということを私は承知をいたしております。しかし、今後におきましては、これを第一着手として、決然として政府としては実行に移し、今後第二次、第三次で御答申をいただいたものを誠意をもって実行に移していきたい。  また、法律改正によらざるものにつきましても、全般にわたりまして偏ることなしに縮減合理化を進めてまいる考えでございます。
  154. 吉田之久

    吉田委員 御決意はよくわかりました。ですから、総理に重ねて申し上げておきますが、これに命をかけているわけではない、これはほんの最初の手始めであって実はこれから先に命をかけているのだということをはっきりと申していただきませんと、国民はもう終わったのだ、これではもう大変なことになると思うのですね。  次に、アラスカ石油問題についてお伺いをいたしたいと思うのです。  わが党の佐々木委員長は、いま訪米中であります。そして去る三十日にブッシュ副大統領に会っているわけなんでございますけれども、このときにアラスカ石油の問題につきまして、次のように要請を行っております。  まず第一は総合安全保障の見地から、それから第二には日米間の貿易不均衡を解消する見地から、積極的にこのアラスカ石油を日本に輸出することについて考えてほしい、特に一九七九年の修正条項の削除を図られたいということを述べております。これに対しまして、ブッシュ副大統領は、全般的なエネルギー政策の策定の中で真剣に検討しております、客観的にはこれは日米の双方の利益に資するものであると考えます、若干の反対、たとえば海員組合が、おれたちの仕事がなくなって日本の海員組合がそれを運ぶのかとか、いろいろそういう若干の反対もあるようではありますけれども、この売却は実施してしかるべきものと思う、こういうふうに述べておられるわけでございます。  また、各両院の議会筋の意見によりましても、この修正条項を削除する動きが現に出ていると言われております。これはまことに資源小国である今日のわが国にとりましては本当にありがたい、また大事にしなければならない動きだと思うわけなんです。これにつきまして、総理はどう今後対応していかれようとなさっておりますか。
  155. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 民社党の佐々木委員長がブッシュ副大統領とお会いになりまして、アラスカ石油の対日輸出の問題につきまして御懇談をいただいた、その結果について、いま吉田さんから御披露がございましたようなことを私も承知をいたしております。また、委員長日本を御出発になります際に、私のところにもお見えになりました。諸般の状況を私もお伝えをしておいたわけでございますが、私は、ブッシュ副大統領と佐々木委員長のこの会談の結果を高く評価をいたしておるところでございます。  現在、石油の需給事情は比較的緩和をしておるということで、日本の石油業界等におきましてはいろいろの意見もあるようでございますけれども、日米の貿易のバランスを改善するとか、あるいは総合安全保障その他の観点等から、私は今回のお話し合いの結果というものを評価をし、政府としても前向きで対応していきたい、こう考えております。
  156. 吉田之久

    吉田委員 次に、この前われわれにとりましても大変残念な問題でありました日昇丸事件でございますけれども、この日昇丸事件の早期解決につきましても、佐々木委員長からアメリカのホールドリッジ国務次官補に対していろいろと意見を申し述べているわけでございますけれども、同国務次官補も、日昇丸に関するすべての問題をできるだけ早く片づけたいと思っている、こう答えているようでございます。  一方、わが国の海員組合も、いまこの時期に一刻も早くこの乗組員と遺族の補償の問題を解決してほしいということを強く願っております。なぜならば、この乗組員たちは一年ごとに契約を更新する、そういうスポット契約に基づいて雇用関係が成り立っているようでございます。しかも、その時期がこの十一月に迫ってきているわけなのでございます。したがって、どうしてもいまの時点に速やかに解決されなければならない。特に、乗組員たちもいろいろ肉体的にも精神的にも非常にショックを受けております。しかも、各団体から、ひとつ来ていろいろと事情を申し述べろとか、またおれたちも支援しようではないかとか、そんなことで非常に精神的にも疲労が重なっているようでございます。こういう大事な契約更改の時期に、やはり一刻も早く問題を解決すべきだと思います。  また、これ以上この問題が延びることは、日米友好関係にも一つの影を落とすことになりかねないと思うわけであります。したがって、私どもも、いま船員が要求いたしております金額につきましてはおよそ妥当なものと考えられるわけでございまして、ひとつ政府が大いにあっせんあるいは橋渡しの労をとっていただいて、あるいは一層アメリカに対しても進言していただいて、一刻も早くこれが解決するように努力していただきたいと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  157. 園田直

    園田国務大臣 日昇丸の補償事件については、いま御発言のとおりでありまして、先般マンスフィールド大使が詳細なる報告書をまとめて持ってこられた際に、二度とこのようなことがないように、さらに補償問題を早期に解決するように申し入れてございます。  御承知のとおり、この問題は、原則的には在日米海軍の方と当事者との折衝が原則になっております。したがって、ただいま弁護士との間で交渉を続けられておりますが、いま御発言のとおり、米国でも非常に急ぎまして、こちらの要求をだんだん詰めているところでございますから、なるべく早く解決するよう政府としても促進方をやっているところでございます。
  158. 吉田之久

    吉田委員 いまこの弁護を担当している中心の弁護士が相馬弁護士でありまして、私どもの友人でありますけれども、やはり政府間でそういう雰囲気づくりをしてくれることが非常に有効な役割りを果たすということを絶えず申しております。現にアメリカ政府の方もその気になってきているようでございますから、一層外務大臣に努力していただきたいことを重ねて申し上げる次第でございます。  次に、北方領土問題と対ソ交渉の展開について総理に御質問をいたしたいと思います。  この間、総理はみずから北方領土の視察をなさいました。国民の悲願であるこの問題に総理としてこたえられたことに対しましては、私たちも敬意を表しております。しかし、この時期に総理が北方領土を視察されたということは、やはり何か考えあってのことだろう、やはりそこにかなり重要な意味があるのだろうというふうに国民は感じております。特にあなたは、歴代首相の中で最もソ連との交渉経験を豊かに積まれた方でございます。そういう意味で、この際、総理みずからが北方領土を初めとする一連の日ソ間関係の中に横たわる問題を解決するために、積極的にソ連との交渉をなさるべき時期に来ているのではないかと思うわけでございます。  わが党といたしましても、佐々木委員長もこの問題でアメリカで交渉いたしておりまして、将来国際紛争の火種となるようなこの問題は一刻も早く処理しておくことが、双方にとっても、世界の平和にとっても大変大事なことではないか、こういう観点から精いっぱいの努力を傾けているところでございます。  この点でも、ブッシュ副大統領は、自分としても日本の立場を助けるために常に努力をしてきておる、日本国民の要求を踏まえて引き続き日本を助けるために今後も努力していきたい、ついては今後国際世論の喚起等のために具体的にどういうことをやればいいのか、そういう要請を日本政府からも早く細やかに聞かせてほしい、こういうことを申し述べているようでございます。  こういう段階におきまして、総理みずからこの北方領土問題を解決するためにどのような行動を起こそうとなさっておりますか、まずお答えをいただきたいと思います。
  159. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、先般根室地方に参りまして、北方四島を空からつぶさに視察をいたしました。また、根室地方の地域の住民の方々とも親しく懇談をいたしまして、御意見や御要望等を承ったわけでございます。かねてから私に対しても北方四島の視察をしてほしいという御要望もございまして、これにこたえたものでございますが、私は、この根室地方の北方四島が返らないために、今日においても経済的にいろいろの影響をこうむっておる、地域の開発、発展の上に大きな影響をこうむっておるということを承知いたしておりまして、昨年の十一月に根室地区の開発、振興問題等につきまして、政府として関係各省で協力をしてできるだけの対策を講ずるようにということを実施いたしたような次第でございます。今後もこの問題につきましては、現地の皆さんの御希望も承知をいたしておりますから、熱意を持っておこたえをしていきたい、こう思っております。  ソ連は、わが国にとりまして大事な隣国でございます。日ソの友好協力関係を発展いたしますことは、ただに日ソ両国の利益であるばかりでなしに、アジアひいては世界の平和にも貢献をするものである、このように考えておるわけでありますが、ただ、問題は、この日ソの国交を今後増進をしてまいります上から障害になっておりますのは、何といっても北方四島の問題でございます。一九七三年に田中・ブレジネフ会談で、戦後未解決の問題ということが確認をされておるわけでありますけれども、その後におきまして、ソ連はかたくなに、もう領土問題は存在しない、解決済みである、こういうことを言っておるわけでございます。  私は、この北方四島の問題を解決し、日ソの平和条約を締結をするということが、真の恒久的な日ソの友好協力関係を発展させる基礎である、こう考えておりまして、今後粘り強くソ連側を説得し、その実現に向かって国民の皆さんとともに努力をしていきたい、こう考えております。  なお、先般ニューヨークにおきまして、国連総会に出席をいたしました園田外務大臣がグロムイコ・ソ連外相と会談をいたしまして、その際、この北方領土の問題を含めて、今後の日ソの会談の問題を話し合っておりますので、その事情につきましては、園田外務大臣から御報告をいたすことにいたします。
  160. 園田直

    園田国務大臣 北方四島の問題については、いま総理から発言されたとおりでございます。  なお、これにつけ加えますと、佐々木委員長とブッシュ副大統領との話の中に出てきておることでありますが、ソ連は、北方四島と日本が主張するのは根拠がないことであって、これは解決済みである、いま改めて北方四島返還を要求するのは、これを足場にして日本の軍国化を図ることである、こういう主張をアメリカ初め各国に申し入れを行ったわけであります。その際、アメリカでは、ソ連の主張に反論をして、日本の主張を支持するという反論がされたという事実があります。これが米ソが北方四島問題で話し合ったという一つのニュースの根源になっているわけでありまして、話し合ったわけではなくて、反論をされた。かつまたわが政府としては、ソ連が申し入れた国国には、日本の主張を正しく伝え、田中・ブレジネフ会談等も入れて詳細ソ連の言うことは間違いである、こういうことをそれぞれ両方からやっているところでございます。  今度のニューヨークでも、まず私は軍事問題で話をして、これは了承し、次に北方四島問題に触れていきましたところ、それは日本は米国と中国からの関係で軍事的なてこ入れのために要求している、こういう話がありましたから、私は、それは全く根拠のない話であり、この北方四島問題は、米国、中国とは関係なしに、日ソ二国間の純粋の問題である。そこで意見は対立をしているということは事実ではないか。田中・ブレジネフ会談というものを一方的に、厳粛に守るべき国際信義を一方的に破棄することはおかしい、こう意見をして、今後話し合いを続ける、こういうことになったわけであります。     〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、アメリカ初め関係国に、日本の主張を正しく理解してもらうための支持を求めておりますが、日ソ間の北方四島返還交渉について他国のお力をかりたりなどするべき時期ではない、あくまで日ソ二国間の問題として、現在のところ処理したが一番いいと考えております。
  161. 吉田之久

    吉田委員 いまの外務大臣の御発言はちょっと気になるのです。確かに、独立国家として自分の領土にかかわる問題を他国の力で返してもらおうと考えること自身は、それは独立精神に乏しいことはそのとおりであります。しかし、今日のこういう国際社会の中で、ましてソ連という国の国際間における行動の基準というのが非常に難解でございますね。まだ未解決の問題だと言っているかと思えば、もう解決してしまったとか、あるいはわれわれが行ったときに、いや、返してもいいんだけれども、返したら、すぐにそこにモスクワに向けたICBMを置くんだろう、だから返さないんだとか、ともかく言っていることがばらばらでありますし、今度もまたアメリカ、各国に対して、これは解決済みだという見解を配っておる。そして、それに対して、そんなはずはないということをアメリカがはねつけておる。  やはりこういう国際世論、正しい認識に基づきながらこの問題を説いていかないと、とても簡単にソ連は返しはしないと思うわけでありまして、よほどの決意が要ると思うのです。世界各国の教科書を見ましても、あの北方領土はソ連の領土と同じ色に塗られているのが大半であると言われているではありませんか。こういう状態の中で、われわれが日本人であるならば、あなた方が日本の政府を代表するならば、もっと努力をしなければならない、私はそう思います。世界の世論を喚起して、この努力をしなければならない。もちろん、外務大臣が毅然として日本の責任において交渉する、この精神はとうといと思いますよ。しかし、それだけでいいのでしょうか。
  162. 園田直

    園田国務大臣 私の発言に誤解があってはなりませんので、さらにお答えをさしていただきますが、私が言った趣旨は、ソ連と日本の意見が食い違っておる、しかし日本の意見は正しいわけであります。したがって、日本の言う根拠、主張を米国初め友邦に支持してもらうことは大事でございますから、これについては十分努力をし、今後も努力をするつもりで、これはあなたと同じでございます。  ただ、この交渉に力をかりることは別個の問題でありまして、中国とソ連の関係は御承知のとおりでありまして、なかなかこれ大変。また米ソの関係もそのとおりでありまして、米ソの関係なかりせばということさえも考えられるわけでありますから、その交渉そのものに、米国や中国やその他のお力をただいま拝借することはしません、こういう意味でございまして、日本の主張を理解してもらう、支持を受けることは大事だ、これはおっしゃるとおりでございます。
  163. 吉田之久

    吉田委員 だから総理、そういう意味でも、まずやはり総理みずからがなるべく近い時期をとらえて、そしてソ連の首脳に対して、胸襟を開いてこの問題はお話しなさるべきだと思うのですね。日本人の心情を吐露して、まずそのことを強く訴えなければ、これはいつか本当にうやむやになって、再び返ることのない島になったら、それは大変なことだと思うのです。  特に、この北方領土問題だけではなしに、漁業の問題、さらにはもっと大きい軍備削減の問題でございますね。SS20、こういうまさに恐るべき、われわれ日本にとりまして生殺与奪の権を握っているような核兵器、中距離弾道弾というものが現にある、こういう情勢の中で、やはり核軍縮を迫る。それは主役はアメリカとソ連でありましょうけれども、いまその環境づくりが必要なときに、いろいろな問題を込めて、総理はソ連に対してもっと積極的な交渉展開の姿勢をとられていいのではないかと私は思いますが、いかがでございますか。
  164. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先般の園田外務大臣とグロムイコ外相との会談におきまして、北方四島の問題につきましては意見が全く違ったわけで、対立したわけでございますが、しかし両国がハイレベルの事務協議また外相間の協議をやるということにつきましては意見の一致を見たようでございます。  今後わが方としては、そういう日ソの協議の際に、北方四島の問題も含めまして、広範な日ソの友好協力関係の問題について話し合いをしていきたいと思いますが、そういう積み重ねの上に、私が首脳会談に臨むかどうか、そういう点を慎重に判断をいたしたい、こう思っております。
  165. 吉田之久

    吉田委員 よくそういう交渉を積み重ねて――やはり総理としては、この際大変な任務を携えた立場にいらっしゃると思います。一内閣一仕事と一般に言われますけれども、総理は行財政改革をやるという大仕事と、それから日ソ交渉の糸口を開始するという大仕事と、その二つはどうしてもやるのだというくらいな決意で、やはり国家民族のためにがんばっていただかなければならないのではないかと思います。  さらに、対韓援助の問題につきまして御質問をいたしたいと思います。  六十億ドルの借款要請の問題でありますけれども、私どもはこの問題を考えますときに、ただ唐突に出てきた問題とは思えない節があります。  まず、あなたが五月八日、日米共同声明をなさいましたけれども、そのときの第三項に、「日本を含む東アジアの平和と安全にとって重要であるものとして朝鮮半島における平和の維持を促進すること、」これについて「意見の一致をみた。」ということを明確におっしゃっております。それから第八項に、「両君は、」ということは日本アメリカは、「日本の防衛並びに極東の平和及び安定を確保するに当たり、日米両国間において適切な役割の分担が巣ましいことを認めた。」とおっしゃっております。しかも、後のナショナル・ブレス・クラブでの記者会見のときにいろいろ説明をなさっておりまして、この中で言う役割りの分担とは、日米相互間の役割りではない、他の国に対する役割りの分担だということも明確に述べていらっしゃるわけであります。  また、この共同声明の第九項によりますと、総理大臣は、「世界の平和と安定の維持のために重要な地域に対する援助を強化してゆく」とお述べになっているわけでございます。  要するに、朝鮮半島は非常に重要な場所だ、しかも、われわれはそうした重要な場所には役割り分担を果たす、こういうことをこの時期に明確におっしゃっているわけなんでございます。  後のオタワ・サミット等におきましてはもう少し抽象的な表現になっておりますけれども、要するにこのことは、われわれは重要な関連地域に対しては軍事的な貢献は直接できないけれども、しかし経済技術協力はやっていこうということだということをおっしゃっていることになると思うのです。もっと平たく言えば、金は出すよということをそのときにきちんと明確に明らかにされたことになると思うわけなんです。  また、今度出されました外交青書によりましても、日本の経済援助というものの概念は、相互依存の度合いと人道的考慮のこの二つの柱からなっておる、こういうことを踏まえながら、しかし、紛争周辺国には積極的な援助を現にやってきておる、こういう報告がなされております。現にタイに対して五百七十億円、パキスタンに対して三百二十億円、トルコに対しては一億ドル、まあ二百二、三十億円だと思いますが、そういう援助を約束しておられます。  だとするならば、韓国に対しても、そういう援助を求められたときに、にべなくもはねつけることができるのであろうかどうかという問題が残ってまいります。日本予算制度や援助制度からして、五年間というロングランの約束はできないという説もあるようでありますけれども、現にわが国中国やバングラに対しては長期の援助約束をなさっております。  こういうことから、すべて集めてまいりますと、やはりこれは日米共同声、明に端を発する一つのシナリオとして出てきているのではないか。また、この六十億ドルの借款要請については、単に全大統領の思いつきではなくして、やはりレーガン大統領らとも十分に話し合ってのことであるかもしれない、こんな気がするわけなんでございますが、総理はいかがお考えでございますか。
  166. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、世界の平和と安定にわが国が積極的に貢献をするということが日本の平和と安全を図るゆえんでもある、こう考えておるわけでありますが、そういう観点から、わが国世界の第三世界アジアにおきましては、ASEANを初め中国韓国等近隣諸国に対しまして日本として経済協力等を進めていく、こういうことは常に申し上げておるところでございます。  しかし、言うまでもなく、わが国の対外経済協力というのははっきりした方針があるわけでございまして、相手国の経済あるいは民生の安定に得与し、福祉の向上に貢献をするような分野において経済協力をやっていく、こういうことが確固たる一貫した方針でございまして、いやしくもそれが軍事的な援助になるようなことは、日本の国柄からいたしましてこれはとらざるところであるということも明確にいたしておるところでございます。私はそういう観点から、韓国日本とは特別な歴史的な関係もございますし、また隣国の大事な友邦でもあるということでございまして、韓国の経済発展なり民生の向上なり福祉の発展なり、そういう分野にわたっての経済協力、技術協力というようなことを行うことにやぶさかではないわけでございます。  ただ、先般の外相会談あるいは閣僚会議等で韓国側から提起されております援助の要請というものは御承知のようなことでございまして、日本の対外経済協力基本方針とは大きな隔たりがございますので、今後なお双方の考え方、立場というものを十分話し合いをし、相互理解の上に立って、また両国民が納得するような形でこの問題は処理していかなければならない、このように考えておるわけでございます。
  167. 吉田之久

    吉田委員 大分時間がなくなってまいりましたが、あと三浦君が関連質問いたしますので、ちょっと簡単に御質問申し上げ、また簡単にお答えいただきたいと思うのです。  一つは、きのう自民党の方が「防衛計画の大綱」見直しなど小委員会をつくっていろいろ審議されることになったようでありますけれども、それを受けて、今日の段階で政府としてはどうお考えでございますか。
  168. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えします。  昨日、自民党の国防関係の合同部会におきまして、防衛力整備小委員会を発足させる、そこで防衛力整備の問題を検討されることに相なったわけでございます。政府といたしましては、自民党がそういう機関を設けて防衛力整備の問題について検討されるに当たりましては、資料の提供等協力してまいる所存でございます。
  169. 吉田之久

    吉田委員 日本人妻の里帰りの問題がいろいろ問題になっております。詳しくは皆さん御承知のところでございますけれども、特に去る七月十七日、閣議において奥野法務大臣や富澤官房長官がこの問題に政府が挙げて積極的に取り組もうということをお決めになったそうでありまして、大変関係者も弄んでおりますが、やはりなかなかに厳しい問題があると思います。しかし、国定の一部の人たちの心のうずきでもありますし、その点、総理もこの問題につきましてさらに積極的な御努力を払っていただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  170. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 お話しのように、政府といたしましては、赤十字社を通じまして日本人妻の里帰りの問題を要請いたしておるところでございます。まだその道が開かれておりませんことは大変残念に思っておりますが、今後も粘り強く交渉を続けていきたい、こう思っております。
  171. 吉田之久

    吉田委員 最後に、PLOアラファト議長がお見えになる問題で、先ほど他の委員からも御質問がありましたので詳しくは申し上げませんけれども、自由主義世界の主要国として初めて日本に来るということで世界の注目が集まっております。この際、総理としては、あくまでも平和共存の中で、パレスチナの人たちと、そしてイスラエルの国とが共存していくためのそういう話し合いを行うべきであるということを強く申されるだろうと私どもは期待しているわけでございますが、あるいはまた今後のこうした中東関係に対してとってきたわが国外交方針というものが急速に変わることもないと思うわけでありますけれども、その点いかがでございますか。
  172. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 パレスチナ問題は、中東の真の和平を図るために大変重要な問題であると存じます。それにはイスラエルの生存権を認めると同時にパレスチナ人の自決権を認める、こういう両者の基本的立場の上に立ちまして話し合いが行われなければならない。この問題が解決しなければ、真の中東の恒久的な和平は確立しない、私はこのように考えておりますが、そういう意味合いで、アラファトPLO議長が議員連盟の御招待で日本にお見えになりました際は、私もお会いをすることに予定をいたしております。  その際は、いま申し上げたようなわが国の政府の基本的な中東和平に対する考え方をお伝えし、この中東和平に日本側としてもできるだけの努力を傾けてまいりたいものと考えております。
  173. 吉田之久

    吉田委員 以上をもちまして、三浦君の関連質問とかわります。
  174. 小山長規

    小山委員長 この際、三浦君より関連質疑の申し出があります。吉田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。三浦隆君。
  175. 三浦隆

    三浦(隆)委員 関連しまして、教育問題に論点をしぼり質問をさせていただきます。  初めに、教育の荒廃の是正についてお尋ねいたします。  教育とは教え育てると書きますが、これを教えるにかわって狂人の狂をこれに当て、あるいは競争の競の字をこれに当てるなどの比喩が現在まかり通るほど教育の地位は著しく低下しております。わが国のごとく、人口に比して国土が狭く資源の少ない国にありましては、国民の教育水準の高いこと、あるいは国民が勤勉であり、誠実であることは貴重な財産であろうと思います。しかるに、昨今の教育の質の低下もありまして、校内暴力が激増し、生徒の教員に対する暴力事件、集団による、または集団の威力を背景とした生徒間の暴力事件が相次ぎ、一方教員による生徒に対する暴力事件もふえまして、教員の信用、権威が失墜するなど、教育の荒廃は目に余るものがございます。まことに危うきこと累卵のごとしという言葉のとおり、教育の荒廃は日本の前途を危ぶませるものです。  本国会に臨み、財政再建も必須な課題ではございますが、教育を再建し、教育の荒廃を是正し、教育への信頼を取り戻すこともきわめて重要なことであろうと思いますが、総理大臣に教育の荒廃の是正について御所見を承りたいと思います。
  176. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 最近におきますところの青少年の非行問題、特に中学等の低学年生徒等における学校暴力等、本当に憂慮すべき深刻な状況が生まれております。私どもは、これが是正のためには、家庭そして学校、社会、自治体、政府、関係の方面の者が本当に力を合わせまして、この青少年の健全育成に努力をしていかなければならない、このように考えておるわけでありまして、このことは、この前の施政方針演説でも私、触れておるわけでございます。内閣に設けられておりますところの青少年対策協議会等においても、絶えずこれらの対策について鋭意あらゆる角度から検討を進めておるところでございます。  また、文部省におきましても、学校教育の立場からいろいろ施策を進めておるわけでございまして、今後御協力をいただきまして、政府としても最善を尽くしてまいりたい、こう思っております。
  177. 三浦隆

    三浦(隆)委員 次に、教育と法令の関係についてお尋ねします。  学校教育は、憲法を初めとする教育諸法令に基づき行われるものです。したがって、本来、教育は、文部大臣以下教員に至る教育当事者が法令に従い行うもので、違法、偏向の教育は行われるはずのものではございません。にもかかわらず、校長、教員等により意図的に違法、偏向の教育がもし行われたとしたら、これは許されないことだと思います。このような場合、どのように具体的に対処すべきものであるか、文部大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。
  178. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  ただいまの御質問は文教政策の根幹でございまして、私は最も重要な問題であろうと存じます。もちろん法治国家といたしまして法の遵守ということは当然でございますが、特に憲法、教育基本法の精神に基づきまして、学校関係の教育法を忠実に履行するということがまず大前提でございます。  そのために、これにたがいまするような行動のありました場合におきましては、当面の直接の校長先生のもとに管理運営がなされなければなりませんし、同時にまた、校長に対しましては教育委員会がその指導監督の任に当たっておるわけであります。文部省といたしましては、法の定めるところによりまして教育委員会を指導いたす。これが現行の法制のたてまえでございます。
  179. 三浦隆

    三浦(隆)委員 三番目に、小樽市の偏向教育の実態についてお尋ねします。  これは教育法令による正常な教育を行っていない一例です。四日前の九月二十九日、北海道小樽市議会総務常任委員会で、教育正常化の請願が継続審議となりました。この請願の要旨は、校長の職務権限の徹底的な行使、違法行為を行う教職員に対する厳正な措置、学習指導要領に基づく各教科、道徳、特別活動などの教育課程の実施などです。このような法令に基づいたあたりまえのことがいまもなぜ請願の対象となるのでしょうか。ここに問題があります。  小樽市において行われてきた偏向教育につきましては、本年の四月、わが党も現地を視察し、その違法、偏向教育の事実を確認してきました。この調査に基づき、私も文教委員会で発言し、その是正を求めたことがございます。その後、教育の正常化がなされたことと思っていましたのに、今日もなお請願のような事実が行われているということは、まことに残念なことと言わなくてはなりません。  きょうの予算委員会の質問に合わせまして、私は、小樽市の教育正常化を願う人々と改めて電話で最近の実情を確かめ、あるいはそれらの人々から送られてきたおびただしい資料により、小樽市における日教組の下部組織である小樽支部による偏向教育の根の深さに驚いております。  ここにその偏向の実態を示す資料が実はございます。この予算委員会に間に合わせるべく北海道より速達で送られたものの一部でございます。たとえば十月三日、きょうの日付でございますが、こうしたおびただしいものが私のところに届いてまいっております。これは現在日教組に所属しながら教育の正常化を願う教員あるいは日教組から外れて教育の正常化を願う人々、そしてまた子供を学校に預けているPTAの方あるいは教育正常化運動に携わっている人々の記録でございます。  また、たとえばそうした一つのものとして、これは北海道現地の新聞でございますが、職員会議が最高議決機関であるといったような規定が実はここにございます。そして、そうしたことをほめたたえております北教組の新聞もここにございます。  そしてまた、これに基づきましてつくられております職員会議規定というのもございまして、ここには「本会議は学校運営の最高議決機関である。」そこの横に特別委員会があり、その下に校務分掌の問題が書かれております。こうしたことでは――ここには校長なり事務職員が並列に書かれておりますが、学校を構成する者としては同じであっても、教員なり校長なりと職員とは、おのずから役割り、使命、分担が異なるものだと思っておりますし、おかしなことだと思います。  また、ここに、ある小学校におきます一年から六年までの学習便り的なものがございます。こうしたものによりますと、学習予定の中に国語、算数、社会、理科、音楽、図工、体育とありますが、道徳は書かれてございません。こうしたものが一年あるいは二年、三年、四年、五年、六年と続いておりますし、またこうした中に書かれております補助教材の一部として使用されておりますいわゆる「あかるい社会」といったような問題の本などの提示もございます。  この「あかるい社会」といったものは市販も一部大きくされておるものでございますが、たとえば日本の戦後のあり方を示しまして、これは日本の戦後の歴史版ですが、ここに三つの写真がございます。いろいろと日本にも戦後幾つかのことがございましたが、ここで書かれておりますさし絵は、たとえばメーデーの写真あるいはまた沖繩における写真あるいはまた南ベトナムにおけるベトコンの写真、これしか戦後の日本の記事として載っていない。もっと日本における明るい記事もあるのじゃないかというふうに考えております。  ここで文部大臣にお尋ねいたしますが、小樽市において請願内容の事実があったことを御存じでしたか。事実であるとしたらどのように対処されますか。お尋ねしたいと思います。
  180. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  先生のその御資料は前の文教委員会におきましてもお話がございました。また、その後、われわれの方といたしましても調査もいたしておりまして、存じておる次第でございます。  これに対しまして、教育委員会を通じましてこれが是正を求めてまいっておりますが、さらにまた、以上のような御指摘の点につきましては、さらに道教育委員会を通じまして一層その指導を求めますと同時に、また、いろいろな情報等につきましても今後注意深く留意してまいりたい、ぜひともその偏向いたしましたと申されまする教育に対しましては正常化を求めてやまないものでございます。
  181. 三浦隆

    三浦(隆)委員 私たちが発言しました後、七月二十二日付で、小樽市の市の小学校におきます実態、いわゆる教育委員会としてこれが適正ではないかという印と、そして十月一日付で実は訂正がある、やはり間違ってバツであるといったようなことを踏まえた記録もございます。  法治主義の日本において、小樽市のごとく法を無視する教育が行われてきたり、また同時に、道徳教育を行うべきものを行わないで、行わないのに行ったというきわめて非道徳的、非倫理的なそうしたようなことは、きわめてゆゆしいことであると思いますので、あわせて総理大臣以下文部大臣がひとつ一層の教育に対する強い姿勢をもって望まれることを心からお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  182. 小山長規

    小山委員長 これにて吉田君、三浦君の質疑は終了いたしました。  次に、榊利夫君。
  183. 榊利夫

    ○榊委員 おとといの衆議院本会議における代表質問で、私ども日本共産党の村上弘議員は、行革本来の課題としての清潔な政治確立の問題といたしまして、いわゆる教科書疑惑の問題を取り上げまして質問いたしました。その実態の解明を求めたのでありますけれども、それに対する総理の答弁は、教科書疑惑といったものはないかのような答弁でありました。この問題につきまして、政府としてはどういう調査をやってこられたのか、お聞かせ願います。――総理にお尋ねいたします。
  184. 小山長規

    小山委員長 まず、文部大臣から。
  185. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えをいたします。  週刊誌等に出ておりましたいろいろの問題につきまして、それを精査いたしたのでありまするけれども、御案内のとおりに当該問題は、教科書出版業界と、それから政治団体との間の問題でございまして、文部省といたしまする行政上の問題ではないことが明白に相なりました。  なお、それに伴います御案内の、何といいますか、株の売買と言ってはおかしいようですが、つまり、申すならばゴルフ場の会員権の問題につきましても、これも篤と調べましたが、さようなことはございません。このことは明確にお答えを申し上げることができます。
  186. 榊利夫

    ○榊委員 どうも筋違いの答弁でありまして、これまでの問題につきまして、なぜマスコミや世論がこの問題に大きな関心を持つか。言うまでもなく、この問題は子供の育成にかかわる教科書をめぐって後ろ暗い金が動いている疑惑がある。そこにまさにマスコミも世論も刮目しているわけでありまして、いま何もなかったという答弁でございますけれども、私どもの調査によりましても、たとえば光村図書出版など幾つかの大手教科書会社から在職中の文部大臣の政治団体に政治献金が行われてきておる。  たとえば、一九七八年七月、十月の二度にわたりまして、当時の砂田文相の政治団体にそのような献金が行われております。そのほか、元文相とか文部次官の経験者の政治団体にも献金が行われております。教科書行政に直接影響を与え得る政治家、それと教科書会社とのこういう関係、まさに黒い霧そのものではありませんか。こういう事実について、これまで総理総理にお答え願いたい。どういう調査をされてきたのか、あるいはその結果はどうだったのか。
  187. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 教科書会社から政治家の政治団体に寄付金がなされたという問題につきましては、文部省を通じまして調査の報告を受けておるわけでございますが、ただいま田中文部大臣から御報告があった内容と全く同じものでございます。  私は、いまの御報告にありますように、事柄は教科書会社と政治団体の間の寄付行為というような問題でございまして、これを取り上げてどうこうというような事柄ではなかろう。また、ゴルフ場の会員権の問題につきましても、問題がないとの報告を受けておるわけでございます。  しかしながら、一般論といたしまして、私は、行政、政治は常に国民の信頼を受けなければならない、行政改革等に当たりましてもそういう観点で行政の綱紀の振粛、公務員の倫理の向上、そういう面につきましては最善を尽くしてまいる考えでございます。
  188. 榊利夫

    ○榊委員 抽象的な綱紀の粛正とかいったことじゃなくて、私がお尋ねしたのは、具体的に現職の文部大臣、ここに献金がある。まさにそれは所轄官庁、所轄の大臣じゃありませんか。行政指導を行うようなその責任者が、当該の教科書会社から、その政治団体が献金を受けている。これをお調べになったのかと聞いているのです、具体的に。
  189. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま御答弁申し上げましたように、田中文部大臣からこの議場で皆さんに御披露がございましたと同じような報告を私、文部省から受けておるわけでございます。
  190. 榊利夫

    ○榊委員 それだけじゃありません。この教科書会社につきましては、すでに一九七五年以来一億二百四十五万、この政治献金を与野党にわたって行ってきた事実を認めておるわけであります。この八月には、教科書協会日下事務局長の自殺未遂事件も起こっております。これは新聞でも大きく取り上げられました。この一億円のうち、七割を占めます七千四百五十五万円については、石井光次郎氏の政治団体蓬庵会、その会計責任者が空領収書を出していたのだという責任を認めておる、しかし政治献金そのものは一銭も入っておらぬ、こういうことであります。とするならば、この蓬庵会なる政治団体というのは、多数の政治家への政治献金あるいは金が流れていくトンネル、通路になっている、こういう疑惑が浮かび上がってくるわけであります。この問題と先ほどの現職の文部大臣に絡まる問題は世論からもきわめて注目を浴びている問題でありますし、あわせてお尋ねします。この問題についてはどういうお調べをなさったのでしょう。
  191. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  私の方で知り得ましたことは、自治省の政治献金のリストによりまする内容でございまして、それの自治法上の問題でありますとか、あるいは法務省的な関係におきましては、私のところでは所掌いたしておりません。
  192. 榊利夫

    ○榊委員 法務大臣に同じ質問をお尋ねしたい。
  193. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 警察当局から特別に報告は受けておりませんけれども、私としては政治団体に対する政治献金の問題だ、こう承知しているわけでございます。
  194. 榊利夫

    ○榊委員 ちょっと待って。つまり、普通の政治献金の問題じゃないのですね。全然無関係のところからじゃない、教科書会社と文部省、そこの現職の大臣にかかわるような、さらには教科書会社と、それに直接影響力を持ち得る政治家の政治団体との金銭の授受関係なんです。問題は具体的なんです。だからこそ疑惑が出ている。世間一般の政治献金の問題とは違う。この問題が提起されて問題になっている以上、責任を持って政府として調査するのはあたりまえじゃないでしょうか。その点どうでしょう。
  195. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 教科書の問題は、私もマスコミを通じまして承知をいたしております。現段階におきまして捜査をするかしないかということは差し控えさせていただきます。
  196. 榊利夫

    ○榊委員 どう言われるのです。どういう責任で、どういう権限であなたはそういうお答えをなさっているのです。あなたはどういう権限です。国家公安委員長、法務大臣ですか。
  197. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 私は国家公安委員長でございまして、警察当局がその判断をいたしますけれども、それについての総合的な相談を受けておるわけでございます。現段階におきましてこれを捜査する、しないということについては答弁を差し控えさせていただきます。
  198. 榊利夫

    ○榊委員 その捜査をする云々というのは、直接にはあなたの介在可能かもしれません。しかし、この問題については、単なる国家公安委員会だけではなくて、内閣としても全体としてやはり世論にこたえる責任があると思うのです。とにかくその点では、先ほどの法務大臣の御答弁といい、あるいは先ほどの文部大臣の御答弁といい、真剣にこの疑惑に立ち向かっていこう、解明をして国民にこたえようという姿勢は全く感じられない。  しかも、教科書行政を監督する文部省の諾津事務次官及び石橋一弥政務次官、お二人とも――先ほど私が質問する前にゴルフ場の問題を出されましたけれども、まさに昨年秋、そろって千葉県のあるゴルフクラブに入会されておる。このクラブの常任理事というのは、教科書協会の稲垣会長なんです。会員権は当時六百万円だったと言われておりますけれども、諸澤次官は、いろいろな質問に対しましても、購入価格は四百万だったと言ったり、あるいは六百万だったと言ったり、あるいは三百八十万だったと言ったり、くるくる変わっている。自分の金を出したんだったら、金は正確に覚えているはずなんだけれども、そういうところで、これは自分の金を出したんじゃないんじゃないかということがまさに疑惑として上がっているわけであります。これについてはお調べになったでしょうか。
  199. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  前段の御質問の点につきましては、一般の自治法上の政治献金の問題でございますと心得ます。  後段の問題につきましては、そういうふうな面も新聞等でございましたので、詳細に検討いたしましたが、さような疑念はございません。つまり、申すならば、一つは倫理性の問題と、一つは違法性の問題、こういうふうに問題が分かれると存じますが、両者ともに違法性の問題は全くございません。倫理性の、道義上の問題、つまり瓜田にくつを入れずといったような、そういうふうな倫理性の問題につきましても、正当な売買行為であり、そこにおきましては何ら疑念を持つようなことはございませんことを私から明確にお答えを申し上げておきます。
  200. 榊利夫

    ○榊委員 瓜田に云々なんて、ちょっとそれは表現が違うんです。李下に冠、瓜田にくつは、やっぱり脱がなくちゃいかぬ。  まあ、それはいいでしょう。その金については具体的にお調べになったんですか。そのことはさっぱり明らかでない。
  201. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 ただいまお話のございました中で二つございます。  一つ石橋政務次官の件でございますけれども、これは政務次官に直接お附きいたしましたところ、新聞の報道は一切事実と異なっているということでございまして、これは調べていただけばわかることであるということでございました。  また、文部事務次官のゴルフ会員権の購入につきましては、これは大臣の指示を受けまして諸澤次官に聞きましたところ、通常のルールに従いまして正当に入手したものであって、何ら問題はないということでございます。
  202. 榊利夫

    ○榊委員 いま新聞で言われていることに関しても一切違う、まして私がさっき具体的に挙げた事実についてもこれは何ら回答がないわけでありますけれども、そうしますと、いままで幾つか挙げた中だけでも、非常に多くの重大な疑惑があるわけであります。  要は、冒頭に申し上げましたように、子供のための教科書にかかわる問題です。しかも国民の税金によって教科書は購入される。その教科書をめぐってお金が動き、税金の一部が、教科書会社を通じて政治献金になったり、あるいは現役文部次官のゴルフクラブ会員権に化けたりする。もしもそういうことが事実とするならば、まさにそういう証拠はあるわけでありますけれども、これは政治倫理から許されないということだけじゃなくて、教科書行政のあり方からも絶対にあってはならないことであります。だから、国民はいまこの教科書疑惑に怒っている。そういう点では、私は、改めて政府に対しまして徹底した疑惑解明を要求いたしますとともに、当予算委員会におかれましても、関係者を証人喚問することをここに要求したいと思います。  それは以下の四名であります。教科書協会の前会長である稲垣房男氏、教科書協会事務局長の日下正衛氏、文部事務次官の諸澤正道氏、それから蓬庵会の前会計責任者佐藤比呂志氏、この川名を証人喚問されることを決定していただきたい、このことを委員長に改めて申し入れるわけであります。
  203. 小山長規

    小山委員長 この件については、後刻理市会に諮ることにいたします。
  204. 榊利夫

    ○榊委員 次は、行政改革と軍事費増の問題でございますが、政府のいわゆる行政改革につきましてその方向、どういう方向をとっていたのかということは、五十七年度予算の概算要求に非常に浮き彫りになっております。たとえば各省庁の伸び率、農水省で〇・二%、文部省は〇・九六%、厚生省二・四、いわば軒並み実質ゼロであります。また、社会保障関係費の場合は七千億円も大幅に減っている。ところが、防衛庁関係だけは七・五%のいわば突出増であります。二兆五千八百億、しかも予算の先取りであります後年度負担の総額は二兆六千億円にも上っておる。そうしますと、軍拡のための予算ではないか、行革ではないか、こういうふうに国民の方から声が出てくる、これも当然ではないかと思うのであります。  しかも、御承知のようにイギリスや西独でも軍事費を削る、あのレーガン政権さえ軍事費の増大計画をこれより三年間で三十億ドル手心を加えざるを得ない、こういう厳しい政治的、経済的条件になっているわけであります。  ところが総理、あなたは、米国がどうしたから、西ドイツがどうしたからといって日本の防衛について考え方が動くものじゃない、こういうふうに先般内外調査会の年次総会で述べられたそうでございます。こういう点では、向こうはどうであろうと、外国はどうであろうと、日本では防衛費の増額まっしぐら、こういうふうに受けとれるわけでありますけれども、こういう態度、こういう関係、こういう考えをいまもお持ちでございましょうか。
  205. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 五十七年度予算編成に関係してのシーリングの問題についてのお尋ねでございますが、防衛費の七・五%、これは昨年の場合と同様に、条約、協定等によるものを例外として積み上げた結果のシーリングでございます。  ただ、この際私は申し上げておくのでありますが、わが国の防衛予算というのは、自主的にわが国が決定をすべきものでございまして、よそからあれこれ注文をつけられたり強要されて行うべきものではない。かねてから申し上げておりますように、わが国の防衛努力につきましては、「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早い機会に到達できるように着実に防衛努力を進めていく、この方針というのは、わが国の憲法並びに防衛政策の基本基本的な防衛政策にのっとりまして、そしてあくまで専守防衛に徹する、近隣諸国に脅威を与えるようなものにはならない、そういうような必要最小限度の自衛のための防衛力を整備をするということでございますから、また、国民の御理解を得ながら防衛努力は進めておるということもつけ加えておきたいと思います。
  206. 榊利夫

    ○榊委員 いや、いまちょっと私が質問したのは、この間の発言はいまもそのままお考えになっていることなんでしょうかと聞いているのです。
  207. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そういうことを先日の本会議でも申し上げました。そのとおり申し上げたんでありまして、変わっていないということです。
  208. 榊利夫

    ○榊委員 そうじゃなくて、私が言っているのは、内外調査会で、つまり外国は減らそうと日本はそういう態度はとらないんだ、そういう脈絡でおっしゃっているんです。そういうことでしょうかと言っているのです。
  209. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 これはただいまの御答弁で冒頭に申し上げました。外国からあれこれ言われてやる考えはない、自主的に決めているんだということを言っております。
  210. 榊利夫

    ○榊委員 そうすると、外国で軍事費を減らすことがあっても日本は自主的に防衛費をふやしていく、こういうふうに受け取れるのですね。  ところで、防衛費の問題で次に出てまいりますけれども、日本の財政赤字の問題、そのこととの関連で渡辺大蔵大臣にちょっと一言お尋ねします。  日本の財政赤字の累積あるいは国債発行残高の八十二兆が頭にこびりついているわけでありますけれども、これは国際的に見ても最高のレベルですね。絶対額でも西ドイツの四倍ですし、イギリスの二・五倍、予算の公債依存度というのは昨年度でも三三・五%、アメリカの五倍、イギリス、西独の三倍、こうなっております。  ところで、先ほど総理の言われたこととも関連するのでありますけれども、アメリカ筋では、日本には軍備増強の潜在力がある、こういうふうにしきりに言っておるようでございますが、よもや政府としては軍備増強の財政的な余力がある、こういうお考えはお持ちではないと思うのですが、いかがでしょう。簡潔に。
  211. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 日本では、必要な防衛力はやはり日本の独自の判断でふやす場合はふやすわけでありますから、財政問題で――決して財政も楽ではありませんよ。楽ではありませんが、必要最小限度のものはやはり充実しなければならない、そう思っておるわけです。しかし、防衛費といえども、その中身を見て、節約をしてもらうべきものについては、聖域ではございませんので、査定の対象として吟味を十分いたします。
  212. 榊利夫

    ○榊委員 財政的な余力がないというのはだれが見てもみんな感じていることで、私は、軍備増強に国民の血税がどんどん使われていく、こういう事態はどうしても改めてもらわなければ困ると思うのです。  そのことで私がぜひともお尋ねしたいのは、総理は、五月の日米首脳会談二日目の席上、ここにちょっとメモしてまいりましたけれども、防衛力整備を取り上げた個所で、米軍駐留費の分担増に触れながら、自分としては財政再建に政治生命をかけている、もし一九八四年までに公債依存を脱却できれば財政運用は楽になる、こういうふうにおっしゃったわけでありますけれども、この財政運用の中に防衛費が当然含まれていると思います。  しかも、この触れられた場所というのは、防衛費の問題、防衛力の問題に触れられた個所でのことなんです。前後の脈絡からも、それから首相自身も記者会見でそのことを認めていらっしゃるわけでありますけれども、公債依存が改まればもっと防衛費、つまり軍事費の運用が楽になる、こういう御判断なんでしょうか、いまも。
  213. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いまあなたがおっしゃっております日米首脳会談の第二回目の会談の中で私が発言をしたということで取り上げておりますが、文、脈が違います。それからまた、私が記者会見でも申し上げておるということでございますが、私はブリーフィングはいたしておりません。
  214. 榊利夫

    ○榊委員 いや、文脈は同じですよ。(三)の防衛費の問題に触れたところで、いまの問題に触れられているんですよ。ちゃんとここにありますよ。  それから、ブリーフィングというが、ブリーフィングだってやはり官僚がやるもので、御当人がやられるものじゃないのですが、実際にあなた、たとえばここに新聞の報道がありますけれども、五月九日の新聞ですが、ちゃんとそういうふうに答えられていますよ。いま私が読み上げたとおり、防衛予算を立てやすくなる、こういうように述べられていますよ。これは間違っていたということでしょうか。
  215. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そういう、予算との関連で具体的にお話をした記憶はございません。
  216. 榊利夫

    ○榊委員 しかし、ちゃんと外務省から発表された文章そのものがそうなっているんですよ。外務省の方が間違ったのでしょうか。
  217. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 それでは、外務事務当局から報告をいたさせます。
  218. 榊利夫

    ○榊委員 いや、これは総理自身の発言にかかわるものですから……(鈴木内閣総理大臣「ぼくは否定しておるのだから。あなたが外務省と言ったから、外務省から」と呼ぶ)では聞きましょう。
  219. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 いま御引用になられましたところがどういう文脈で言われているのか、私も首脳会談に出ておりましたので、総理の言われたことは非常にはっきりと覚えております。日本として必要最小限の防衛力整備をする、しかし、そのためにはまず国民のコンセンサスが必要である、あるいは他国に脅威を与えない、それから特に財政再建、そういう問題を抱えているということを言われたので、財政再建ができれば防衛力整備が容易になる、そういうふうに言われたというふうには私は全然聞いておりません。
  220. 榊利夫

    ○榊委員 それは淺尾さん、あなたはそう思ったかもしらぬけれども、一般新聞はそう受け取って報道している。しかもちゃんと、つまり記者会見のところで述べられたのですから、アメリカで述べられたのだから、それがそのまま報道されているわけでしょう、向こうでも。これは事実ですよ。一般新聞もそうですし、それから外務省の資料だってそうです。  そこで、だからそういう点では、いま私が申し上げましたように、やはり財政運用、とりわけその中で軍備増強がやりやすくなる、ここを一つのポイントに考えておられるのだろうか、そういう疑惑は当然ここから出てくるわけであります。したがいまして、もしそれとは違うということであれば、それはいやそういうことじゃないんだと訂正されてしかるべきだと思います。しかし、どうもその点についても歯切れが悪いんですね、こう言っては悪いわけですけれども。いかがでしょう。
  221. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御質問がはっきりいたしません。私も、首脳会談に同席をした北米局長も、明確にそういうことはないと申しておるのに、あなたがそれに固執をして、それを前提として私にいろいろ話をされるということは、私は納得いきません。
  222. 榊利夫

    ○榊委員 私は、しっかりした証拠に基づいて、つまり活字で報道されたこと、述べられたことに基づいて述べているわけでありまして、いいかげんなことを言っておるわけじゃありませんよ。  そこで、では次の質問ですけれども、総理は、日米首脳会談でレーガン大統領、ワインバーガー国防長官から、日本の周辺海域防衛について要請を受けた、こう言われておりますけれども、どのような表現でレーガン大統領は、あるいはワインバーガー氏は言ったのでしょうか。
  223. 小山長規

    小山委員長 まず、淺尾北米局長。(榊委員「いや、総理に」と呼ぶ)まず、淺尾北米局長にやらせます。
  224. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 私から御答弁いたします。(榊委員「そうじゃない、あなたは首脳会談そのものに出ていたのですか」と呼ぶ)出ております。幸か不幸か、首脳会談に出ております。  首脳会談でのやりとりは、防衛問題について、さっき申し上げたとおり総理の方から、日ごろの総理の防衛問題についてのお考え方、財政の問題、国民のコンセンサスの問題あるいは近隣諸国に与える問題等々、非常に詳しく説明されたわけでございまして、それに対してのレーガン大統領の発言というものは非常に抽象的なものでございまして、日本が引き続いて防衛力の整備を図ってくれるということを期待している、しかしこれはすべて日本がすることであって、日本が自主的に決められることであるということです。  それから、ワインバーガー国防長官がブレアハウスに総理大臣を訪ねられて、表敬訪問だということでございますが、そこで会談された場合にも、ワインバーガー国防長官の方から、アメリカのこれからしようとする国防努力、すなわち即応力を高めるとか、あるいは継戦能力を高めるとか、一部近代兵器、戦略兵器の改善を図るというような説明がございまして、いずれハワイ及び防衛庁長官のワシントン訪問先により具体的に話をしたいということがあったわけでございます。
  225. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、あなたはこの間、これは「世界経済評論」というところに載っておりますけれども、淺尾さん自身がちょうどそこで紹介しているところによりますと、ワインバーガーはこう言ったんですね。日本日本の周辺海空域の整備をしてくれれば、それによってアメリカに余力が生まれる、結果として、安心してアラビア湾やあるいはインド洋に展開できる、こういうふうにワインバーガー氏は言ったと、現にあなたはおっしゃっているのです。総理自身、レーガン大統領の問題については耳にされているのでしょうけれども、そこは記憶ございませんか。どういう表現で言ったのですか、レーガン大統領は。
  226. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国の防衛努力につきましては、一般的な期待の表明は確かにございましたが、しかしそれにつけ加えまして、日本がどのように防衛努力を進められるかということは、これは日本自身がお決めになることであって、いささかも誤解をあたえるようなことは申し上げ得ないいうこともはっきり言っておるわけでございます。
  227. 榊利夫

    ○榊委員 期待を述べたということは、きわめて明快になりました。  それではお尋ねいたしますけれども、その後、同日のナショナル・プレス・クラブの講演で、あなたは、米国民に新しい日米関係日本の役割りについて私の所信を話したい、こういうことで述べられた後、質疑に答えて、米第七艦隊がインド洋、ペルシャ湾海域の安全に当たっているため、日本周辺海域がそれだけお留守になっているのはやむを得ない、日本の庭先であるこの海域を日本が守るのは当然であり、日本は周辺海域数百海里の範囲内で、シーレーンについては一千海里にわたり、憲法の条章とも照らし合わせて自衛の範囲内として守っていく、あるいは同日の記者会見では、固有の自衛のための防衛だということもおっしゃっております。  そこでお尋ねいたしますけれども、周辺数百海里、航路帯一千海里という広大な公海上の区域、これは南西航路の場合、フィリピンの主張する領海、北緯二十一度の北、東経百十八度と百二十九度の線内に完全にこの先端は入り込むわけであります。他国の領海に入ってしまうのです、一千海里は。そのことを承知であなたはこの一千海里を日本の庭先として守っていくとおっしゃったのでしょうか。
  228. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国の周辺五百海里、航路帯として一千海里、この問題は、通常国会におきましても、当委員会においてもしばしば政府側から御説明を申し上げておるところでございます。  この問題につきましては、防衛庁を中心にわが国が防衛に当たっておる範囲の問題でございますから、防衛庁長官から答弁をいたさせます。
  229. 榊利夫

    ○榊委員 それは違う。つまり、首相が言われたことについて私は尋ねている。一千海里、その先はフィリピンの主張している領海内に入るじゃございませんか。そのことを御承知でそう発言なさったのかと聞いているのです。
  230. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私はプレスクラブでそういう発言をいたしておりますが、それはしばしば国会でも述べておる問題でございまし、他国の領海、領空、領土、そういうようなところに入るということそれ自体が許されないことでございます。
  231. 榊利夫

    ○榊委員 そうしますと、許されないことをあなたはおっしゃったということになりますよ。そうですね。つまり、一千海里は入るのです、領海内に。それだったら、ここのところは訂正してもらわなければ困りますよ。――いや、防衛庁長官じゃない。総理の発言について聞いている。これは重大ですよ。まことに重大な問題がある。フィリピンの主張する領海内まで入るのです。
  232. 小山長規

  233. 大村襄治

    ○大村国務大臣 委員長の御指名がございますので、総理にかわりましてお尋ねの問題についてお答え申し上げます。  御質問は、ナショナル・プレス・クラブにおける総理の発言を指しているものと思いますが、これはわが国が、わが国の周辺数百海里、航路帯を設ける場合はおおむね千海里程度の海域において海上交通の保護を行うことができることを目標として、憲法を踏まえつつ、自衛の範囲内で海上防衛力を整備している旨の説明であると理解いたしております。  また、わが国が自衛権の行使として、わが国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することのできる地理的範囲は、必ずしもわが国の領土、領海、領空に限るものでないことにつきましては、政府が従来から一貫して明らかにしているところでございます。したがいまして、総理のお答えがありましたように、他国の領海までを含むものではないということは明白だと思います。
  234. 榊利夫

    ○榊委員 他国の領海に及んではならないとするならば、一千海里というのは、フィリピンの領海に入ることは許されないということになりますね。そうしますと、首相の発言、これはどうもぐあいが悪かったということになるじゃありませんか、外交的にも。現にビラタ・フィリピン首相はこう言っておる。防衛範囲を日本周辺地域まで拡大するような事態が発生すれば、アジアでの緊張が急速に高まることは免れないと、現にこのことについては懸念を表明している。一千海里が結局はフィリピンの領海に入るからなんです。それを外交的な手続もなしにぽんとおっしゃる。それはまことに異例であります。  その異例ということだけを申し上げて、次に移りますが、広大な公海上の区域、これを固有の自衛のための防衛、自衛の範囲内として守っていくというのは、これはもう本当にきわめて重大な問題ですよ。というのは、これを契機にしてアメリカは、言うなればかさにかかって次々に軍備、軍拡要求をしてきている。六月のハワイでの日米安保事務レベル協議でも、ミサイル護衛艦七十隻とか、あるいは潜水艦二十隻とか、P3C百二十五機、F15二百機、こういうふうな膨大な要求が出された。こういったことについては国会でもお認めになっております。首相がそういう発言をされ、共同声明をやられて、それを契機にそういう膨大な軍拡要求が出てきているということについては、どういう自己認識をお持ちなんでございましょうか。
  235. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ご質問の御趣旨がよく把握できませんが、周辺数百海里、航路帯一千海里といたしましても、それはコンパスの引き方でございまして、他国の領海、領空等に及ばないことは、これは明らかでございます。でありますから、ただ横に線を引いて中国の領海も入るとかなんとかいうようなことは、これは常識ではあり得ない、明確なことでございます。  それから、先ほど冒頭に申し上げましたように、わが国の防衛力の整備は、わが国の憲法並びに基本的な防衛政策にのっとりまして、専守防衛に徹するという方向で着実にこれをやってまいるわけでございまして、よその国からあれこれ注文を受けたり、圧力を受けるというようなものではない、これを明確に申し上げておきます。
  236. 榊利夫

    ○榊委員 同じことばかり答弁されておりますけれども、私が聞いているのは、そのあなたの発言を契機にして、膨大な軍拡要求が出てきている。だから重大だ。だからお尋ねしているのです。真剣に御答弁願いたいと思うのです。  それで、いま総理のおっしゃった一千海里、これを自衛の範囲としているという、これはたとえばきのうの答弁でも、従来と変わらぬ、いままたそういう文脈でお答えでございますけれども、従来と変わらないどころか、大きな変化ですよ。  たとえば、一九六〇年の安保国会、この国会答弁で当時の岸首相は、日本の自衛権の範囲について、かつての自衛権のように自衛のためなら何でもできるという考え方をしていないんだ、わが国の施政下にある領土が武力攻撃を受けた場合、日本の自衛のために必要な線を領土以外に拡大して、そこが武力攻撃を受けた場合においても自衛権が発動するという性質のものじゃないんだ、こう明確に答弁されておりますよ。この答弁と、あなたの一千海里の自衛の範囲、これとはどこから見ても違うじゃありませんか。同じじゃありません。いかがでしょうか。
  237. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 六〇年代のお話が出ましたが、当時のことは私つまびらかでございませんので、これは防衛庁事務当局あるいは外務省等から御答弁をさせます。
  238. 塩田章

    ○塩田政府委員 いまの点は、政府は従来から考え方が変わっているわけではございません。先ほどの防衛庁長官の御答弁でも申し上げましたが、自衛の範囲内において公海、公空に及ぶものであるということを申し上げております。従来から全然変わっておらないつもりでございます。
  239. 榊利夫

    ○榊委員 私がいま読み上げたものとプレスクラブでの首相の発言、これはどこから見ても食い違っていますよ。どこを押して同じと言えますか。もし同じだとするならば、食い違っていないとするならば、この六〇年の岸首相の答弁と同じでございます、こう言えますでしょうか。どうでしょう。――総理にお尋ねしているのです。
  240. 小山長規

    小山委員長 まず、塩田防衛局長から……。
  241. 榊利夫

    ○榊委員 いやいや、総理にお尋ねしているのです。
  242. 塩田章

    ○塩田政府委員 委員長の御指名でございますから……。  ただいまの件につきましては、一番最近の政府の答弁書といたしまして楢崎先生に対するお答えがございますが、「我が国が自衛権の行使として我が国を防衛するため必要最小限度の実力を行使することのできる地理的範囲は、必ずしも我が国の領土、領海、領空に限られるものではないことについては、政府が従来から一貫して明らかにしているところであるが、それが具体的にどこまで及ぶかは個々の状況に応じて異なるので一概にはいえない。」、これが現在の政府の見解でございます。(「了承してないんだよ」と呼ぶ者あり)政府がお答えをした答弁でございます。
  243. 榊利夫

    ○榊委員 私は、再三申し上げておりますように、首相の発言に関して御答弁を願っているのですよ。あなたの発言なんです。あなたが責任を持ってもらわなくちゃ困るのです。
  244. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 冷静にお願いいたします。  いま防衛局長から答弁をしたわけでございますが、その中の公の空、公の海、公空、公海でございまして、その点はよその国の領海とか領空とか、そういうものは入らないことは明らかでございます。そういう意味合いにおきまして、わが国としては、周辺海域数百海里、航路帯として一千海里、そういうものを防衛していく、防衛の範囲内と考えておる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  245. 榊利夫

    ○榊委員 一千海里を防衛の範囲とする、自衛の範囲とする。これは重大ですよ。(「それをちょっと確認しろ、それは政府の統一見解か」と呼ぶ者あり)統一見解ですな。自衛の範囲、防衛の範囲、いいですね。(発言する者あり)いや、総理に聞いている、総理総理に。
  246. 小山長規

    小山委員長 塩田防衛局長に発言を許します。
  247. 塩田章

    ○塩田政府委員 一千海里が自衛の範囲と申し上げているのではございません。(榊委員「いや、いま総理はそう言った」と呼ぶ)一千海里の中で自衛の範囲内で防衛行動をすると、こういうことを申し上げているわけで、一千海里がイコール自衛の範囲だということではございません。
  248. 榊利夫

    ○榊委員 総理は、いま明確に述べられた。自衛の範囲、そうですね。はっきり言いました、防衛の範囲、自衛の範囲だと。これはもう重大な問題ですよ。これはもう完全な拡大だ。さっきの岸首相の当時の答弁と比べても、はっきりします。それで、いまの防衛局長の発言が正しいのか、総理の発言が正しいのか、どうですか。(「同じだよ」と呼ぶ者あり)違う。
  249. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 内容は同じでございます。と申しますことは、この一千海里の航路帯といっても、よその国の船舶、艦船をこれは守るものではない、日本の船舶等について守るものである。これは自衛の範囲内でございます。その点は明確でございます。
  250. 榊利夫

    ○榊委員 いま防衛局長は、防衛の範囲、自衛の範囲ではございませんと言ったのですよ。そうでしょう。違いますよ、それは。しかも、そのことに関しては、あなたの防衛関係の高官だって、総理のプレスクラブでのあの発言というのは、一千海里自衛の範囲だというのは、従来の領域防衛から踏み出したものだと見ているんですよ。アメリカ側だってそうでしょう。アメリカ側だってそうですよ。私はここに証拠を持っています。このことについては、従来よりも一歩踏み出した発言を総理はされているのだ、これがアメリカ側が受け取っていることじゃありませんか。ちゃんとアメリカの高官、つまり国務長官だ、はっきりそう言っています。どうでしょう。したがいまして、その点については、その防衛の範囲、いままでよりも大転換だということなんですよ。防衛局長の発言とも違う。
  251. 小山長規

    小山委員長 塩田防衛局長、明確にお願いします。
  252. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、一千海里というのは、私どもが海上自衛力の、防衛力の整備に当たりまして、航路帯の場合ですが、一千海里程度のものは守れるような防衛力を整備したいという目標でございます。したがいまして、一千海里はそれを、何といいますかオペレーションエリアとして考えておるわけではございませんで、整備目標として考えておるということがまず第一点。  それから第二に、そこで行われます自衛のための行動であれば、一千海里程度のところまではわが国の自衛力でそういう行動がとれるような防衛力を整備したい、こういうことでございまして、もちろん自衛の範囲の行動のみがわが国の場合許されるわけでございますから、その自衛のための行動を一千海里程度まではわが国の海上自衛力でもってできるように整備をしたい、こういうことをかねてから申し上げておるわけであります。
  253. 榊利夫

    ○榊委員 その整備の範囲というのと自衛の範囲と、これは違うのですよ。一九七五年の段階でも、この国会で日米共同作戦が問題になったとき、政府は、自衛隊出動の範囲、これはわが国周辺数百海里、こう答弁しておるのです。ところが、この自衛の範囲は一千海里だ、こういうふうに認めますと、有事の際、何かあったら、さらにはそこから先に出ていくことができる、行動の範囲が広がるのだ、こういう論理なんですな。だから、あなたが今度自衛の範囲と言われたこと、これが政府の統一見解だとするならば、今度は行動の範囲はもっとそれから広がっていく、こういうふうになるのです。だから、範囲を次々にエスカレートしていく、こういうことになっているわけであります。  だから私は重大だ。しかもアメリカ側がそう受け取っている。もしその点について、この自衛の範囲というプレスクラブでのあなたの発言が誤解を招いている、あるいは十分でなかった、こういう御認識ならば、率直に御訂正されればいいのですよ。いかがでございましょうか。
  254. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私の発言は、防衛庁におきましても十分承知をいたしておるわけでございまして、これはあらゆる機会に米側にも日本側の方針として十分伝えておるわけでございますから、誤解はないものと私は承知いたしております。
  255. 榊利夫

    ○榊委員 誤解がないとするならば、それゆえ非常に重大なんですよ。私が言いましたように、いいですか総理、よく理解してほしいのです。自衛の範囲一千海里だ、それはあなたの発言。それが政府の見解だとするならば、膨大な区域について防衛の責任を負う、防衛できるように軍事力を増強していかなくちゃいけない、こうなりますね。だから、冒頭に申し上げましたように、どんどんどんどん軍備増強の要求が来ているのですよ。そうでしょう。そこが問題なんです。
  256. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お許しを得ましたので、つけ加えさせていただきます。  首脳会談の後、私は、ワインバーガー国防長官と会談をいたしたのです。その席上、私は、この問題につきまして、先ほど申し上げましたように、周辺数百海里、航路帯を設ける場合はおおむね千海里程度の海域において海上交通の保護を行うことができることを目標として、憲法を踏まえつつ自衛の範囲内で海上防衛力を整備していく、大綱の線に沿いながら整備を図っているところであるということをるる説明しましたところ、先方は、よくわかった、その範囲で結構だからしっかりやってほしいということを明確に述べたということを御報告申し上げます。
  257. 榊利夫

    ○榊委員 時間が参りましたので質問を終わらしていただきますけれども、これまでの質疑を通じて非常にはっきりしてきたことは、総理のそれと防衛局長の発言と全然違うということ、これは確認しておきます。そして、いわゆる自衛の範囲として一千海里というもの、これを認めた総理の発言が、ますますアメリカからの対日軍拡要求、これに油を注ぐことになっている。しかも、シーレーンなんというのは、本当に海上輸送の安全に役立つものではない。しかも総理は、第七艦隊の留守を守るとまでおっしゃっている。これは重大な問題です。そういう点では、そういう方向での軍備拡張を前提としたそのための防衛力の増強、あるいはそれを捻出するためのねらいを持った、いま政府のいわゆる行革、そういうものについては私は根本的に疑義を持つし、その撤回、これを要求して、質問を終わりたいと思います。
  258. 小山長規

    小山委員長 これにて榊君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  259. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、新会派、新自連を代表いたしまして、河野洋平議員が本会議で代表質問をいたしましたその延長線上で二、三の問題について質問をいたしたいと思います。  時間が二十六分ですから、答弁の方も簡潔、明確にひとつお願いをいたします。  まず、通常国会で私は、九州小倉の山田弾薬庫にかつてベトナム戦争時代に核兵器が一時貯蔵された疑いがあるのではないか、資料を提出して調査を求めました。総理は約束されました。どのような回答が来ましたか、まずそれを明らかにしていただきたい。
  260. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 お答えいたします。  当時楢崎委員が提示された問題は、一つは「バディー・ケア・ニュークリア」ということでございます。(楢崎委員「回答だけでいいです」と呼ぶ)それで回答は、米軍は核攻撃における負傷者の治療について訓練を行っており、この標識はこれらの訓練に使用されている。次が火災標識。消防士に対して建物の内容物の相対的な可燃性を知らせるために、最初が一九七五年まで、一から七までの番号が使用されたが、これはその場合には七が最も可燃性の高い内容を示しておる。その後、一九七五年に変更になりまして、一から四までということになりまして、その際に最も可燃性の高いものは一の数字によって示される、こういうことでございます。
  261. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全くわが日本国会をばかにしたような回答でして、私は、この問題できょう詰める時間がありませんから機会は別に譲りますけれども、あの小倉の山田弾薬庫に病院もないのですよ。核兵器が置かれておった疑いがあるから、核事故に対してあるいは災害が起こるかもしれない、そういうことなんです。小倉が核攻撃を受ける可能性があるから負傷者の治療について訓練を行う、そんなばかな話がありますか。それから二番目の火災標識、これもうそを言っています。  それで、外務大臣にお願いします。こういう回答をする根拠、つまりマニュアルですね。米軍の火災標識マニュアル、これを資料として要求をしてください。お願いします。ただこんなに言われただけじゃわかりません。
  262. 淺尾新一郎

    ○淺尾政府委員 マニュアルの提出については、相手側もあることでございますので、相談させていただいて、できるだけ委員の御要望に沿います。
  263. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 お願いします。  そこで、私は核軍縮の問題についてお伺いをします。  せんだっての河野議員の核軍縮に対する質問に、総理は大変前向きの答弁をなさいました。しかし、問題は具体的にどうするかであります。私は、この際、総理にぜひ認識をともにしたいのは、日本人の核に対する拒否感というものは、単に人類を破滅から救うという平和運動としての核拒否、これだけではないのですね。実際の体験上から来る自分の命に対するいわゆる本能的な恐怖感です。死に対する恐怖感です。生理的な恐怖感です。それが日本人の場合は他の国と違うのです。  そこで、よその国は、特にアメリカは、あの長崎、広島の経験を非常に尊重して、たとえば一メガトンの核兵器が落とされたときにはどういう被害が起こるかという研究をしております。  私は、いまから資料を配りたいと思いますが、ここに「ザ・エフェクツ・オブ・ニュークリア・ウエポンズ」、つまり「核兵器の効果」について一九七七年、これは二、三年ごとにアメリカが出しておりますけれども、これはペンタゴンと、それからアメリカのエネルギー省が発行しております非常に権威の高いものであります。この資料と、それからここにこういうものがありますが、これは「ニュークリア・ボン・エフェクツ・コンピューター」、つまり核弾頭効果計算器ですね。この二つの資料から、実は一九七七年の翌年にワシントン・ポストがまさにこれに基づいて計算をして、一九七八年一月二十九日、アメリカの主要な都市、たとえばニューヨークで一メガトン落ちたらどういうことになるかということを発表しております。  また、ワルトハイム国連事務総長が一九八〇年九月十二日に報告をいたしております。「核兵器に関する包括的研究」(2)、これであります。この中でワルトハイム事務総長は、このアメリカの議会の技術評価局の資料をもとにして、たとえばデトロイトで、これは夜間ですけれども、一メガトンの核弾頭が落ちたときにはどういう被害が起こるか、約五十万人が死亡する、六十万人が負傷をする、そういう報告がなされております。その米国議会の技術評価局の資料はこれであります。  私は、そういうことにヒントを得て、これは日本こそこういうことをやるべきであろうと思うので、まさにこれを基礎にして、東京駅の真上に一メガトンの核弾頭が落とされたとき、夏の昼間を想定して、夏は南から北に風が吹きます。気象庁で調べました。だから、死の灰というのは、東京湾の方に行くのではなしに、陸側に上がってくるわけですけれども、一メガトンというのは、広島原爆の約八十倍、長崎原爆の約四十五・五倍であります。東京駅からある間隔の距離に昼間どのような人口が存在するかという資料を私は、総理府統計局の「地域メッシュ統計資料編」、これでありますが、これからそれを出してみましたが、以下のような結果になります。  まず、東京駅の真ん中から半径百四十四メートルはすっぽり穴があくのですね。東京駅がすっぽりはまる。そして深さ六十四メートルのクレーターができる。それから半径約一キロメートル、これは火球、最高温度は太陽の中心ぐらいの熱でありますから、この横に書いておりますとおり「二重橋、有楽町、大手町、神田、日本橋、京橋は全滅」、つまり蒸発をしてしまうのであります。半径二・七キロメートル、これは一〇〇%死亡または負傷。台風の約四倍の爆風で、ビルを含めてすべての建築物が破壊される。「皇居、永田町、霞ケ関、浜離宮、九段、神保町、御茶の水、浅草橋、築地、月島」。  以下、時間がありませんから、ここに書いておるとおりです。  そのときの人口、さっき言いましたのを当てはめてみますと、半径二・七キロ以内の昼間の人口から考えますと、二・七キロ以内の範囲では二百万人が一〇〇%死傷する。そして、半径四・八キロメートルの範囲内では五〇%死亡しますから六十四万人、四〇%負傷して五十一万人。それだけで、東京駅の真ん中から半径四・八キロメートルの範囲の人は、計三百十六万人死傷する、こういうことになるわけであります。大変恐ろしいわけです。しかし、いまこういう核競争が行われて、だんだんその機器が使われる。戦域核ができて、これは使える兵器になってきた。そういう点で、私はぜひ核軍縮の点でがんばっていただきたい。  総理日本はいわゆる非核三原則で非核地域帯ですね。これを広げなくてはいけない。核を持っている国は、核を持たない国に対して核攻撃をしたり、核の脅威を与えたり、そういうことをするのはよくない。これは核拡散防止条約のときにいろいろその点が論議されました。その点は御同感でしょうか。
  264. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 楢崎さん御指摘のように、わが国世界における唯一の被爆国でございます。そして平和憲法のもとに非核三原則を堅持をいたしておる国でございます。したがいまして、核軍縮、核兵器の廃絶、そして具体的には、まず包括的な核実験の禁止、そういう問題につきまして、国連の場であるいはジュネーブの軍縮委員会等におきまして先頭に立って努力をいたしておりますことは御承知のとおりでございます。先般も、園田外務大臣が国連でそういう点を強調したところでございます。今後とも努力してまいります。
  265. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、具体的に河野代表が提案したことに加えまして、こういうことを提案したいのです。  いままさに私が言ったような内容の核不使用決議案、これはことしの秋の国連総会のために昨年仮議題として非同盟国が出したわけですね。百二十二カ国が賛成をした。ところが日本は反対をしていますね。だから、この秋の国連総会でこれが出されたときにはどうされます、具体的に。この決議案の内容は、これこそ非核三原則そのものの精神です。こういうことに具体的な行動を示さなければいけないと私は思う。総理、どうでしょうか。――いや、総理の見解。
  266. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 この前もあれが出ましたから……。
  267. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だれが出てくるのですか。――いや、事務局員が出てきてはだめですよ、こういう最高の方針ですから。
  268. 門田省三

    ○門田政府委員 決議案の具体的な提出を待って、内容を検討した上で態度を決めたいと考えます。
  269. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昨年の決議案と同じものが出たらどうします。
  270. 門田省三

    ○門田政府委員 昨年の場合と同じ態度で臨むことになると思います。
  271. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 何ですか、反対ですか。
  272. 門田省三

    ○門田政府委員 反対でございます。
  273. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 具体的な行動ではこのように反対なんですね。だから私は、総理がおっしゃっていることはまことに抽象的で、具体的な問題に直面するとそうなってしまう。それが大変遺憾なんです。
  274. 園田直

    園田国務大臣 お許しをいただいて発言をいたします。  昨年、決議案に日本が反対いたしましたのは、私、在任中でありませんけれども、一つは、現在の力の均衡が核をもって抑止力を構成しておる点が一つ。もう一つは、国連というものが往々にして一つの理想のもとに行動しないで、米ソの利害によって駆け引きに使われておる、こういう点で理想と現実が違うところがあるわけであります。したがいまして、次の軍縮総会で出された決議案については、われわれが主張する軍縮、最後の中性子爆弾を含む核廃絶の道程にかなうならば賛成をするし、単なる駆け引きであるならば反対する、こういうことでございます。
  275. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 よくその辺を見きわめて、総理の表明しておられるとおりのその思想を行動に生かしていただくようにお願いをいたします。  そこで、次の問題に移ります。  いわゆる日米防衛分担ガイドラインの三項でございますけれども、これは日本以外の極東有事の際であります。こういう際にアメリカ側からいろいろ具体的な要求があっているのは御案内のとおり。つまり何とか日本がそういう場合に後方支援、役務を提供できないだろうか、こういう要求があっているのは御存じのとおりでありましょう。民社党の佐々木委員長が訪米されたときにも、ワインバーガー国防長官から同じような要求があっております。役務というのは、修理とか輸送とか捜査とか救助とか偵察、補給、こういったものが含まれる。これに対して自衛隊は、憲法上及び防衛庁設置法、自衛隊法等の関係でこの役務の提供はできない、これは国会で答弁されておるとおりであります。  運輸大臣、海上保安庁は役務の提供ができますか。たとえば、輸送力を提供する、そういったことができますか。
  276. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 海上保安庁の任務は警備、救難でございますので、これが救難の対象になるという場合とそうでない場合と区別して行動しなければならぬ。でございますから、単なる役務といっても、その内容がわからない限り直ちに行動ができない。(楢崎委員「輸送」と呼ぶ)輸送につきましても、救難上の輸送かどうか、その点における判断が行動を決定することに相なると思います。
  277. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 民間の船はどうですか。
  278. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 民間の船でございましても、それが何の目的で救援を求めてきておるのかということにつきまして、われわれ判断した上で行動いたしたいと思います。
  279. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ケース・バイ・ケースということですね。
  280. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 救難状況を判断しての上であるということでございます。
  281. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そう思っておったんです、私は。そのとおりなんです。  ところが、海上保安庁は、この五十七年度の予算要求をするについて、基本的な考え方というのを明らかにされています。三つ挙げておられます。一つが海洋管轄権の確立、二つが資源輸送ルート等の安全確保、三番目が国際海上救難体制の確立、あなたが言っているのは三番目のことだ。いつから資源輸送ルート等の安全確保をするようになったんですか。安全確保とは何ですか、これは。これはこの資源輸送ルートを守る、防衛するという意味ですか。
  282. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 わが国の周辺は、すべて資源輸送ルートにもなっております。そういう海上の要するに警備というものがわれわれ海上保安庁の任務でございます。でございますから、警備上の必要の行動はする、こういうことに解釈していただければ結構かと思います。
  283. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、海上自衛隊が行ういわゆる警備行動ですね、八十二条です、自衛隊法。これの内容を行なうのですか、内容と同じようなことを。これは有事の際じゃないんですよ、この八十二条というのは。警備行動なんです。
  284. 妹尾弘人

    ○妹尾(弘)政府委員 海上保安庁の任務は、海上における人命及び財産の保護ということを主体といたしておりまして、資源輸送ルートに関しましても、私どもがその安全対策、資源輸送ルートの安全確保と申しておりますのは、たとえば救難でありますとか、それからたとえば、海賊船なんかに襲われる危険があるというようなことについて、その情報を流してやるとか、そういう内容もございまして……(楢崎委員「八十二条のことをするかと聞いている。警備行動です」と呼ぶ)警備行動、いわゆる自衛隊のやるような警備行動というものとはまたおのずから性質が異なるものであろう、かように考えております。
  285. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、これは一部の新聞にも載っておりますけれども、来年度の予算では、自衛隊の護衛艦の一番大きいやつよりもさらに大きいやつをつくるんですね。六千二百トンですか。それで、海上保安庁の船にいわゆる武器を積んでいる。三インチ砲から四十ミリ機関砲、三十五ミリ機関砲、二十ミリ機関砲、ソナーまで備えて、今度はヘリコプター。これはかつて四十一年ごろ私も厳しくやったし、社会党の石橋委員も徹底的にやられた。つまり海上保安庁は予備海上自衛隊じゃないか、海上自衛隊のやれないことを海上保安庁がやるのではないかという指摘をやった。まさにいまそのとおりになりつつある。  そこで塩川さん、海上保安庁が武器を使う、その使用規則というのがありますね。これは訓令の第十四号、昭和四十年六月一日、ありますね。
  286. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 武器使用は、まさにその訓令によって使用しております。
  287. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私どもはかつて、奇襲時に武器を使用するのがどうなのか、法律上の根拠があるか。そのために当時の統幕議長がやめられましたね。それから防衛出動、待機命令時の武器の使用は一体どうなるのか、これも問題になって、検討中でしょう。それほど武器使用はシビリアンコントロールのもとに置かなければいかぬのに、総理大臣、海上保安庁は武器を使えるのです、この訓令十四号で。この訓令十四号の内容を知っていますか。いや、総理に知っていますかと聞いているのです。
  288. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 これは要するに、御承知のように、その当時も議論になったと聞いておりますが、巡視船艇のいわば設備の一つとして、つまり警備船艇自身を守る目的も含めて、設備の一部としてつくったものでございまして、いわゆる自衛を主体としたものでございます。  と同時に、この使用につきますその訓令は何に基づくかと言いましたら、警察官職務執行法に基づくことになっておりますので、現に使用については厳重な規制をいたしております。
  289. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この訓令は、重要な国会の審議を必要とします。いまだかつてこれは出されたことがない、国会に。これ出しますか、資料として。
  290. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 昭和四十年、訓令を発しまして、それによって現在に至っております。でございますから、現在に至るまでにそれに支障がないと思うておりますし、また現に訓令を、厳重に遵守規定を守らせておりますので、改正する必要はないと思うております。
  291. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 改正を聞いているんじゃないんですよ。国会に出してください、審議しますからと言っているのです。何も改正なんてだれも言っていない。
  292. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 現在のところ、法案として出す予定はいたしておりません。
  293. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ちょっとあなた、どうかしているんじゃないですか。訓令を出してください。法律として出してくれとだれが言っています。改正とか法律とか、何をおびえているのです、あなたは。訓令を出せますかと。資料として出せますか。
  294. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 訓令は、資料として出します。
  295. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この内容を見てみますと、大変なんです、これは。これが野放図に、巡視船あるいは巡視艇の船長に武器使用がすべて任せられている、状況判断も。あれほど自衛隊の場合は厳しくコントロールしているのですから、やはりここが抜け穴になっちゃ何にもならない。これは外国の艦船に対しても武器使用ができる、これであったら。だから、資料として出されたときにまたいろいろ意見を申し上げたいと思います。  最後に、五十七年度の防衛予算のことについてお伺いしたいのですが……(「時間だ、時間だ」と呼ぶ者あり)いや、まだでしょう。
  296. 小山長規

    小山委員長 三十八分までです。
  297. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 経済企画庁長官、あなたは、五十七年度防衛予算の要求のときに、後年度負担が二兆二千六百億にもなる、財政硬直化になる、あなたは日本の経済の将来の見通しに責任がある、そういう立場でこういうことがいいのかどうか相談を受けられたことがありますか。
  298. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ありません。
  299. 小山長規

    小山委員長 楢崎君、これで時間は終わります。
  300. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう最後にします。  外務大臣もないはずですね。そこでうなずいてください、ない。どちらも国防会議議員です。  総理、それで総理は、聖域とみなさないで、やはり見直すのだ、この五十七年度防衛予算は。一体何を基準にしてあなたは見直そうとするのか。恐らくこれは、ベア分を入れますと、七・五%と言っているけれども、一〇%になります。大きな財政硬直になる、今後。これは財政再建と矛盾するものだ。そしてこれをつくった防衛庁の人は、局長から会計課長まで含めて全部大蔵省出身だ。だから、私はぜひ総理にお願いしたいのは、これは国防会議をきちんと開いてこの五十七年度防衛予算をチェックをしてください。単に防衛庁長官、大蔵大臣だけのすり合わせに任せるべきではない。それが私の意見です。これが最後です。
  301. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 十分、その取り扱いにつきましても研究させていただきます。
  302. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 終わります。
  303. 小山長規

    小山委員長 これにて松崎君の質疑は終了いたしました。  この際、大出君より関連質疑の申し出があります。川俣君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大出俊君。
  304. 大出俊

    大出委員 同僚、先輩各委員の皆さんに大変本日は御迷惑をおかけいたしまして、一時という時間割りでございましたが、頑健なつもりでございましても生身の体でございまして、しみじみそう感じましたが、大変御好意を賜りまして順番変更を願いました。御礼を申し上げ、かつ御配慮に感謝を申し上げる次第でございます。  私、主として中心は仲裁裁定並びに公務員の諸君の賃金、つまり人事院勧告をめぐる問題にしぼって申し上げたいと思っているのでありますが、実は大変私は、これは長い執念めいたものがございまして、戦後のこの国の公務員の賃金の制度の移り変わりのほとんどに直接携わってまいりました。三十一年の公労法の改正のための臨時公労法審議会、そこに出ていきまして、私、全逓という組合の本部の企画部長の時代でございますが、長時間意見を申し述べたこともございました。  このときに、公社の公社法その他予算関係の規定を大変たくさん改正もいたしました。その前に裁判等もありましたが、これ以後の大きな裁判は実はその点ではないのでありますけれども、そういう古い制度の改正の時点以来、かれこれ足かけ二十五年間裁定は完全に実施をされていますし、片や人事院の方も、人事院ができるときから、行政調査部の機構部長宮沢俊義さんの時代から実はタッチをしてまいりましたが、こちらも、四十四年の保利官房長官談話、四十五年の完全実施、大変これは苦労した完全実施でございますが、以来十一年余にわたる歴史がございます。それをここでそう簡単に崩されては困る。  二つ理由がございます。  一つは、戦後の日本の勤労者、働いている皆さんの賃金と申しますのは、いまだに官庁主導型と言っていいところが多分にございまして、官庁勤労者の賃金が低く抑えられるということは、きわめて密接な関連において民間の労働者の賃金、勤労者の賃金が抑えられていく、中小零細企業にかかわる勤労者の賃金も抑えられていく歴史的現実であります。資本の原理であります。そこにいまなお官庁主導型のこの国の賃金が、中心的に官庁が抑えられるということになるとすると、この国の勤労者にとってまさに重大な受難の時代が来る。米価の問題との関連が最近よく言われますが、日本における資本の原理とも言うべきものは本来低賃金、低米価政策なるものでありまして、ここらも一つ大きな問題でございまして、したがって現実にいままじめに働いている皆さんがどうなっているかということを踏まえて少し議論をさせていただきたい、こう思っております。  ついては、河本さんに承りたいのでありますが、昨日でございましたか、経済関係の閣僚会議をお開きのようでございまして、実はそこでお配りになったものだろうと思うのでありますけれども、ちょっと私拝見をいたしましたが、大変にどうも消費購買力が落ちている、落ち込み過ぎている、そういう気がいたします。したがいまして、この問題について、国内の景気との絡み、そういうところから、大体六月というところで、プラスが続くのかと思ったら、ここでマイナスになるという実は国内消費の実情等がございます。そこをどういうふうにとらえておいでになるか。もう少し個人消費、これが伸びていくような施策が必要である。なぜ伸びないか。ここのところ課税最低限は長らく据え置きのままであったり、国税庁の調査を見ましても、民間の勤労者、サラリーマンの生活の実態、実質賃金その他を見ましても落ちっ放し、こういうところが消費購買力を落としている、こう思っておるのでありますが、企画庁長官河本さんにそこのところをまずお答えを願いたい。
  305. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 個人消費は、五十三年、五十四年と大体五%から六%ぐらい年率で伸びましたが、昨年は、物価が相当上昇し、しかもベースアップが少なかった、こういうことで実質賃金が低下した、こういう背景もございまして非常に伸びが落ち込みました。しかし、ことしは若干回復するのではなかろうか、五十三、四年の水準までは無理としても、ある程度それに近づくのではなかろうか、このように期待しておったのでございますけれども、なかなかそこまではいきません。  そこで、昨日、ことしの個人消費の伸びは二・七%だ、年初は四・九%と想定しておったのでございますが、相当大幅に下方修正をいたしました。なぜ伸びないのかといいますと、物価も相当安定をしておりますし、もう少し伸びてもいいと思うのですが、やはりいろいろ調べてみますと、可処分所得が余りふえない、こういうところにどうも原因があるのではないか。ほかにもいろいろあろうと思います。しかし、ここがやはり一番大きな背景でなかろうか、このように判断をいたしております。
  306. 大出俊

    大出委員 ちょっとさっき申し上げたような事情で席を離れておりましたので、資料が見つかりませんで頭にあるところだけを申し上げましたが、この資料を見ましても、これは可処分所得が大変にどうもぐあいが悪いのですね。月例経済報告、これは五十六年九月八日、主要経済指標でございますが、六月というところで、実はその前のところ三カ月プラスになったのですね。三、四、五とプラスになった。このときに、つまりマイナス〇・一、マイナス四・五というのがプラス〇・七、二・六、〇・五と三、四、五と続きまして、そこで河本さんの方は、物価が安定してくれば急激に伸びてくる、こういうふうにしきりにおっしゃった。新聞にも出ておりますが、時間がありませんから取り上げません。ところが、六月になってまたマイナス二・九が出てきて、七月終わったらまたマイナスというところで、これは新聞記事でありますけれども、五十六年九月二十六日の日経、七月もまたマイナスですね。そうなると、これはちょっと景気の先行きに非常に大きな問題ではないのか。  きのうの五十六年十月二日、経済対策閣僚会議「当面の経済運営と経済見通し暫定試算」というのがございます。これは、河本さん、おたくが出したのだから御存じだと思いますが、ここで見ますと、景気回復の内容を見ると、輸出が堅調に推移している。これが何とか景気を支えている唯一のものである。ところが、個人消費の回復の動きは緩やかであり、つまり先ほど申し上げた数字でありまして、何とかなるんじゃないかという。ところが、ならない。住宅建設も、ほぼ底を打ったと見られるものの、なお非常に低い水準で推移していて、総じて国内民間需要の回復の足取りは緩慢である。つまり、そうするとここで一番大事なことは、個人消費をどう引き出すかということです。可処分所得が減っておりますから、どうしても消費に回らないで、逆に貯蓄性向がふえるという傾向が方々の資料にございます。たくさんここにございます。  そうすると、私はこれは決して我田に引水するわけではありませんけれども、仲裁裁定、公務員賃金というものは、これは目の子で言いまして五百万人の官庁にかかわる勤労者の家庭消費につながっていく性格のものであり、非常に大きなファクターを持っていると私は思うのですが、河本さん、いかがでございますか。
  307. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 やはり相当大きな影響はあろうかと思います。
  308. 大出俊

    大出委員 十月二日に出されたのだと思いますけれども、「人事院勧告を完全実施せよ」、五十六年十月三日付の週刊東洋経済でございます。皆さんよく参考になさいますが、この週刊東洋経済は私が言いたいようなことをほとんど書いておるんですね。そして、いまやまさに景気という面も、最後の方では個人消費をどう伸ばすかということは非常に大事なことだというわけです。だから、渡辺大蔵大臣に後から聞きますけれども、二千七百八十億ぐらいの追加財源、これを一生懸命削ろうとなさって削ってみたって、たかだか二百億か三百億しか削れぬのじゃないか。なぜならば、制度をそのままにしておいて、片や二十五年もやってきた裁定完全実施、片や十何年やっている人事院勧告、これをぶん投げて、幾ら削ろうたって限度がある。  そういうことをするよりは、踏み切りなさい。踏み切ってやった方が労使関係も非常にうまくいくし、国内の消費需要というものも出てくるということになるついろいろな意味で実はそのことがベターなんだ。後で議論をしたところで読み上げたいのでありますけれども、そういうことを取り上げているのも最近間々見受けられますが、いま河木さんが非常に大きなこれはファクターだということをお認めでございました。  さて次に、この民間給与の実態ですが、「昭和五十五年分 税務統計から見た民間給与の実態 国税庁民間給与実態統計調査結果報告 五十六年九月 国税庁総務課」という資料がございます。大変たくさん参考になることだらけでございまして、おおむね読んでみましたが、新聞が取り上げるとおりに、この中身、この調査結果からするとゆるがせにできない。この国のまじめに働く民間、官庁を含む、あるいは中小零細企業の皆さんも含む働く皆さんにとって受難の時代である。  新聞を見たらおわかりだと存じます。九月二十日の朝刊は、五大新聞どれをつかまえてもみんなそうだ。毎日新聞は「実質給与大幅ダウン 税金“受難”サラリーマン 十年来の高負担率 給与上昇たった五・七% 「物価」も迫い打ち」国税庁五十五年分民間調査、こうある。「所得税、三年で五割増」課税最低限の引き上げがないからですよ。「税負担十年来の最高 サラリーマン 給与目減りに拍車」これは朝日新聞です。  一つだけ私の地元のを紹介しますと、これは共同さんの記事でしょうが、「所得追い越す物価と税金 サラリーマン“受難” 平均年収二十年間で最低の伸び 税負担率十年間の最高を記録 昨年の民間給与実態大衆課税の傾向広がる 覆いかぶさる経済矛盾」、中身はどういうことかというと、すべての経済矛盾が全部勤労者にしわが寄っちゃった、実はこういうことなんです。細かく分析もし、書いておきましたが、ここで一々申し上げている時間がないように思いますので割愛をさせていただきます。  このことについて新聞がこれだけ書いておるが、渡辺さんという人はとかく暴虎馮河の勇を発揮しまして、それでもという自己流をよくお述べになるのだけれども、数字的にこれだけ明らかになっていることを否定はできない。こういう調査結果だということをお認めになりますな。いかがでございますか。
  309. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一つの見方として、そういうような論調があることは事実でございます。
  310. 大出俊

    大出委員 そういう答弁がよくありまして、ぐあいが悪いといつもそういう答弁をする。渡辺流でございますな。しかし、そういう答弁が出るときは大分苦しいときでございまして、(笑声)と思って、追い打ちをかけることはやめます。  そこで、総理に承りたい。総理は、本会議質問のやりとりなどの中で何を言ったかというと、つまり不公平税制というものについて、今日の税法の制度上という面から一つ、それからもう一つは徴税というサイドから一つ、そういう二つの角度で税の公平というものを考えたい。臨調の答申には、私は非常に不満なんだけれども、税の公平は重要であるなんてことを三くだり半ぐらいしか書いてないですね。何にも中身はない。  そこで課税最低限、これをいつまであなたはほっておくつもりか、ちょっとお答え願いたいのですが、総理、いかがでございますか。前に私は総理に一遍聞いているのです、これは。
  311. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 税の公平の問題は非常に大事な問題でございまして、本会議でも申し述べましたように、これは租税特別措置法等の制度面の検討、さらに執行面につきましても、いろいろ御意見もたくさんあるようでございますから、十分前向きで検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  312. 大出俊

    大出委員 もうちょっと突っ込んで聞きたいのですが、課税最低限を見ますと、これは福田内閣のときの大蔵大臣坊秀男さんのとき、これは私も質問しておりますが、このときに課税最低限が決められまして、標準世帯で二百一万五千円ということになった。以来今日までそのまま。これはいつかと言えば五十二年です。五十二年に二百一万五千円という標準世帯の課税最低限を決めた、こういうわけです。それっきりになっているというわけです。  ところが、課税最低限というのは、しからばいかなるものか。これは聞いた方がいいと思うのですが、総理、いまお答えをせっかくいただいたので、課税最低限とはどういうものだと御理解でございましょう。いいですよ、総理でなくても。――私から言いましょう。これは、ここにひとつ誤解があってはいかぬから申し上げるのですが、昭和四十年十二月に、「昭和四十一年度の税制改正に関する答申及びその審議の内容と経過の説明」という税制調査会の答申が出ておる。つまり、これは非常に詳しく課税最低限についての歴史的経過を述べて、今日あるべき課税最低限あるいは将来あるべき課税最低限とはどういうものかというのを明らかにして答申にしている。  ここで、一百先に申し上げますが、課税最低限は最低生活費ではない、こう言っている。要するに、生活費に税金はかけられぬという原則がございます。各国ともそうです。だから、生活費には税金をかけられないのだから、課税最低限は四人世帯なら二百一万五千円、年収二百一万五千円までは税金がかからない、こうとりがちなんです。最低生活費だととりがちだが、そうじゃないと明確に言っている。標準生計費を指すのだと言っている。過去の歴史をここで述べている暇はありませんが、ずっとひもときまして、大変に低かった時代があったのだけれども、そうじゃないんだ、国際的に見ても。  そこで、課税最低限は最低生活費ではなく、標準的な生計費に見合った水準に定める。これはあなた方がよく引用する、都合が悪いとすぐここへ逃げたがる税制調査会の答申なんですよ。そうでしょう。今日しからば標準的な生活が成り立つ課税最低限か。税金のかからぬ限度、年収ここまでの方々が標準的生活ができる人か。標準的生活ができない人も税金をたくさん取られているという、ここに課税最低限据え置きの、かくて所得税の自然増収がべらぼうにふえる原因がある。実質増税の原因がある。  そこで申し上げますが、独身の方の課税最低限は八十三万一千円でございます。ところで、これは八十三万一千円じゃわからない。月給にすれば幾らだ。通常、十六カ月計算いたします。十二カ月プラス手当四カ月。そうすると、八十三万一千円という独身者の課税最低限、税金のかからぬ限度の月給をもらっている方は幾らかというと五万一千円。一カ月五万一千円以上もらった人はみんな税金がかかっちゃうのです。私の娘が三月に大学を出て勤めましたけれども、十一万もらってくるのです。五万一千円の方に税金がかかっているんですよ。こういうばかな課税最低限はないでしょう、標準生計費だと言っているのに。  夫婦二人は一体課税最低限は幾らか、五十二年に決めた。百十三万六千円。これは月給に直して、十六カ月計算で計算をすると七万一千円です。これは御夫婦だ。ここに御夫婦共かせぎの人もあれば、一人で働いている人もいるのです。これが七万一千円。私はいま自分の娘のことを言いましたが、七万一千円が課税最低限です。夫婦、子供一人、百五十六万九千円、月給にすると九万八千円。九万八千円で子供さん一人ですよ。これじゃほとんど生活できないです、いまの世の中に。アパートを借りて、家賃を考えてごらんなさい。夫婦、子供二人、二百一万五千円。これが標準的世帯の課税最低限。二百一万五千円で一体十六カ月計算なら月給は幾らになるか、十二万五千円です。大学を出た娘と幾らも変わらない。これが課税最低限で、標準的生活は断じてできない。  総理、いつまで一体ほっぽっておかれるのですか。しかとこれはお答えいただきたい。できる限り速やかに検討し、できる限り速やかに前向きで対処したいぐらいのことは言ってくれませんか。日本全国のまじめに働いている勤労者の皆さんに対する国税庁の調査、そういう見方率ございますと、よけいなことは言わないでしょう、大蔵大臣が。いろいろなことが出てくるから言えないのだ。そうでしょう。これは現実なんだから。四年もほっぽっておくんだから。  お答えにならぬから、もう一つ聞きますよ。それじゃ一体、ことしの五十六年度予算に占める所得税の、申告と源泉と両方ございますが、所得税の自然増収は一体どのくらい見積もっておいでになるのですか。――後でちゃんと追認してくださいよ、皆さんが物を言わないと記録に残らぬから。私ここに資料を持っていますが、私も予算委員の一人だから、予算委員会に皆さんが出したのだから、出しておいてお答えにならぬということはないでしょう。  「昭和五十六年度租税及印紙収入予算額 (単位億円)」こうなっておりまして、二兆七千六百九十億、二兆七千億という自然増収、つまり実質増税、自然増税を麗々と予算の積算に組んで出してくるという政府。いま私の申し上げたような、独身者八十三万一千円が課税最低限だから、月給にすれば五万一千円でしょう。夫婦百十三万六千円が課税最低限で、月給なら七万一千円でしょう、二人で。夫婦に子供さん一人、百五十六万九千円で、月給九万八千円でしょう。御夫婦に子供さん二人の四人の標準世帯で二脚一万五千円、月給十二万五千円でしょう。だから、これ以上の人は全部取られてしまう。そうでしょう。だから、何と二兆七千六百九十億円も、麗々と予算委員会に出すに当たって「五十六年度租税及印紙収入予算額」と言って、これだけ実質増税でいただきますよ、こう書いてある。そんなばかなことはないでしょう、いかがですか。  だから、先ほど来河本さんが言うように、消費性向に来ないで貯蓄の方に行っちゃって、三、四、五とやっと個人消費が黒字になったからと思っていたら、六月でまたマイナスであり、七月またマイナスだということになってしまう。国税庁が民間の企業実態調査をやれば、まさにサラリーマンの受難だという世の中が出てきてしまう。だから、総理府が統計調査をとろうとすれば、中流意識にかげりどころではない、中流意識がなくなっていくという方向に進んでいくのです。明らかに間違いですよ。  河本さんにもう一遍承りたいのだが、五百万になんなんとする公労協あるいは国家公務員、地方公務員、ここに私、数字を持っている。中曽根さんがきょう午前中、特殊法人等でお答えになっていましたが、これはダブっているところがございますからダブリを取りますと、国家公務員が特別職を除きまして百十九万、地方公務員が三百三十四万、公団、公社等特殊法人で七十九万、これは専売、国鉄、電電、公庫、二銀行含めまして。四百四十七万に七十一万を足すと五百万を超える、これだけの方々なんですよ。  だから、もう一遍承りたいが、国内の景気動向、を非常に心配しておられる河本さん、私はぜひ閣内で、制度が存在をするんだから、そしてサラリーマンがこの状態なんだからということで、実施の方向に御努力を願いたいと思うのですが、ひとつ御意見をここで、国内景気を御心配の、個人消費支出を御心配の経済企画庁長官に承っておきたいのです。いかがでございましょう。
  313. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 それまでの御意見はよく理解できますが、人事院勧告につきましては、給与対策閣僚会議というものがございまして、そこで誠意をもって検討する、そういうことになっておりますので、その結果を待ちたいと思います。
  314. 大出俊

    大出委員 大変に慎重な御答弁が出てきましたが、先ほどは、大きなファクターかと言ったら、そうだとおっしゃったのですけれども、確かに人事院勧告、こうなると、枠をはめていますからね、閣内に。個々の大臣諸公が私に、実はどうも閣内不統一になると大臣答弁が崩れるというので、こうこういうことなんだとしきりに言いわけされていますから、その一環なんでしょうが、私は少しやぼだと思うんですな、そういう言い方は。やはり思うところをおっしゃるということが正しい、私はこう思っておるんですがね。そこで、次期総裁候補が何人もそこにおいでになるわけですけれども、おっしゃっていただいた方が私はいいと思うのです。  ところで、大変時間を長くお待たせして、先ほど私、冒頭おわびいたしました中で抜かしましたが、公労委の会長さん中四さん初め三公社五現業の方々にお出かけいただいておりますので、生身の体、大変御無礼をいたしました点をおわびを申し上げる次第でございます。  そこで、一つ非常に気にしておりますのは、中西さんに承りたいのでありますが、昨今の政府の物を言うこと、特に渡辺大蔵大臣などがあれこれ言うておられます中で、非常に私はかんにさわるといいますか、間違いだと思うことがある。後からまたずばっと申し上げますが、実は個人的に電話をかけてどうもと言って聞いてみたわけでありますが、そう言ったわけではないがと言うが、どうもちょっと気に入らぬのでありますが、それは、民間準拠という今日の賃金のシステム、これを崩そうとなさるというのは邪道だと私は思っている。  そういう意味で、公労委の中では大変に民間準拠という議論が続けられています。したがいまして、公労委の会長の談話もございますから、そこでひとつ承りたいのは、崩そうとする動きがある。閣内を含めて、臨時行政調査会はまことにけしからぬことをやっておりますが、これは後から臨時行政調査会の方にも参考人でも何でもどんどん出てきていただいて、議事録を出さぬところですが、私が強引に持ってきた議事録もありますから、あなた、こんなことを言ったのかと言わなければならぬ。  実はそういうことも踏まえて、公労委の中で小委員会までおつくりになりまして、公労懇をつくりまして性別あるいは年齢なんというところから、勤続年数をどうするかというようなことをいろいろやってこられて、珍しく小委員会報告をお出しになっておられるお立場でございます。私は、いろいろ議論したけれども、やはり結果的に民間準拠が正しいという結論をことしもお出しになったはずだと思うのでありますが、お答えいただきたいと存じます。お待たせして恐縮でございますが。
  315. 中西實

    中西参考人 民間準拠、これは各国共通の原則になっておりまして、われわれも三十九年以来、民間準拠ということを根本に貫きましてやっておるつもりでございます。もちろん、民間準拠につきましては、いま仰せになりました公労懇でも労使の委員が意見が一致いたしまして、この点につきましては問題がないわけでございます。したがって、政府におかれましても、恐らくこのことについては、その原則はお崩しになっていないのじゃないかと思います。ただ、準拠の仕方にはいろいろ論議がございますので、検討をさらにしなければならぬと思っております。
  316. 大出俊

    大出委員 時間の節約をいたしましたが、ここに私、中西さんのところでいろいろおやりになったメンバーから、論争の中身から、焦点から、みんなございます。民間賃金準拠のあり方などに関する調停委員長口頭説明というのまでございます。中身の資料もついております。なかなかことしは苦労されてこの資料をおそろえのようであります。メンバーから、小委員会の構成から、そして最終的に、公共企業体等職員給与の民間賃金準拠問題に関する小委員会報告という報告で、労使公益三者の委員はすべて意見が一致をして、圓城寺さんなんかも、どういうことかここへ座長になってお入りになっておられますが、そこできちっと結論が出ている、こういうわけであります。  恐らく政府の方でもというお話がございましたが、労働大臣並びに大蔵大臣お二方に、ひとつ民間準拠ということをとやかく言う気はないならないと、どうも新聞を見ますと、渡辺さんの方は率を減らせとかいろいろなことをおっしゃっているのですけれども、これはまた新聞だとおっしゃるかもしれませんが、ここに書いてありますので、ひとつお答えいただきたいと思います。
  317. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 人事院勧告につきましては、率を減らせというようなことを言ったことはありません。私といたしましては、先ほどお話があったように、第二次行政調査会の答申を踏まえて、一方、長年の労使のよい慣行というものもあって、現実の問題として四十四年ですか、以来守られてきているという現実もある。したがって、でき得べくんば、そういうような両方のことをにらみながら何とかしたいと思うのはやまやまでございます。  問題は、減税の問題も同様なことでございますが、財源問題が一番の問題でございます。これは仲裁と勧告と二つに分かれるわけですが、仲裁の方は仲裁の方で国会にお預けしたものですから、これの行方を見守っていただく。勧告の問題については、ともかく財源をどこからひねり出すか。現在のところでは、なかなかそれをどうするという決定をするような自信がない。  税収の見込みということについても、七月までは出ているのですが、まだ八月は出ていない。八月などはビールなんかよく売れたというのだが、そのほかの税金はどうなっているのか、九月、十月とこうなって、大体六カ月も過ぎなければ一年の収入の状況は断定的になかなか言えない。前半は悪いんですよ。悪いけれども、三カ月や四カ月では、なかなかそれだけで一年をはかるわけにもいかない。したがって、そういう点ももう少し長く見通しを立てたい。  それから、台風の行方というようなものも大きな影響がございまして、八月いっぱいの統計は出ているのだが、九月までのものは、まだ終わったばかりですから、被害額その他よくわからない。これも九月から十月にかけても多少出てくるというのが現実。したがって、それらの行方も見なければならぬというようなことで、いま言ったようなことを踏まえて慎重に対処をしているのであって、軽率に新聞などで話すほど実は軽率ではないのでございます。
  318. 大出俊

    大出委員 なかなか難解な答弁をなさいましたが、はっきりしたことは、率を削ろうと――私がある人に聞いたら、大蔵大臣はけっぺずろうと思っているのだなんて言っていましたが、方言で何を言ったか知りませんけれども、削ろうという気はない――ここに書いてあるんですよ。渡辺蔵相はまた、実施時期を繰り下げても来年度には、平年度化して見て計四千億――恩給費のはね返りは六百億くらいありましょうけれども、恩給費のはね返りを含む四千億円もの財源が必要になるとして、後年度の負担増を考慮した場合、抑制の方法としては、実施時期の繰り下げよりも、給与の引き上げ率(勧告は五・二三%)そのものをカットすべきだとの考え方を示した、こうなっている。  いまあなたは、新聞には大分詳しく書いてあるけれども、詳しいのは新聞が勝手に詳しく書いたので、私は率を引き下げる――これは民間準拠でやった率ですからね、これを引き下げる気はない。そうすると、あと一つは、今度は逆になる。話が出たから申し上げるのだが、実施時期を繰り延べるよりも、こう言っている。これを見ると、実施時期は繰り延べないと見える。こっちは率を下げたい、こう言う。あなたはいま率は下げる気はないとおっしゃっている。そうすると、今度は、実施時期を繰り延べるよりも率と言ったのだから、まさか実施時期は繰り延べないだろうと思うのですが、いかがですか。
  319. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは恐らく新聞の方は、私が何かしゃべったというならしゃべったのでしょう。それをどういうふうにとったかということで書いたんだと私は思います。いろいろ前提がありますから、その前提をカットして、その人の主観に合わせて書けばどういうふうなものが出るか、ごちらで考えたものと別なものも出る場合があるだろうと思いますよ。それはいろいろな仮定の話で、あるいは話したかどうか。  要するに、いまお金がない、現在対応できるという場合はどういう場合ですかというような話が出れば、それはいまのお金で対応するとすれば六百三十億しかないんだから、ともかくボーナス据え置きで一月実施だったらできるだろうとか、そういう仮定の計算の話ですね。そういうふうな例示的な計算の話は、何かどうこうするというのでなくて、そういう話はあるいは応答の中にあったかもしれませんが、率を削るようにするのだとかいうことは決まっておるわけでも何でもないので、これは大問題で私が一人で決めるわけじゃありませんから、政府のいわゆる全体の統一方針というものが内閣で決まっているわけですから、部分的にいろいろそういうような話の中の部分が表に出たとしても、それは政府の統一見解が最優先するものであるし、ここでお話しすることが優先することであるというふうに御理解をいただきたいと存じます。
  320. 大出俊

    大出委員 いまちょっと答えてくださいよ。あなたは、率は減らそう、そんなことを言った覚えもないし、さっきその気もないと言った。いまも率を云々しているんじゃないと言う。だから、それでいいのです。それなら四の五の言わないのです。  さて、そこで問題は実施時期。新聞に書いてあるから言うのです。だって国民の皆さん、ひとしく見ているのだから。ほかならぬ渡辺大蔵大臣が言ったのだからと見ている。そうでしょう。公務員なんか、目をさらのようにして見ている。実施時期の方は、だから渡辺さんに私は言いたいのだけれども、長い歴史があることをさっきもおっしゃっておられたから、本当にこの国会で、総理もおいでになるけれども、給与法を出してくれなければ公務員としてはたまったものではないですよ。給与法を出して、さてどうですかというのでなければ、本当は政府の立場から筋は通らぬです。  向こうの方にいる人は、何かILOか何かに持っていかれちゃったような勝手なことを言っている。後で聞きますけれども、そんな、あわてて官房長官あたりがILOの話なんぞをそこらでしゃべってしまうなんというのは、不用意千万でね。勝手に総理府で何かへんてこな答弁要旨なんかをこしらえちゃって。そういうこそくなことをしてはいけませんよ。なってない。だらしがなくて見ていられない。  これも話のついでと言っては申しわけないけれども、官房長官、何であなたは、まだ国会でもこういう論議もしないのに、一人で勝手に緊急避難だと言うのか。だから私は聞いているんだ。率をけっぺずることも――渡辺流の方言かどうかしらぬけれども、それから実施時期を延ばすことも、官房長官だの、渡辺さんだのが一々そこらで勝手に言われちゃったら、黙って聞いていられぬじゃないですか、議会は召集されて、開かれているというのに。これなんか全くひどいものですね。宮澤さん、あなたに答えていただきたい。何でこんなことを言うのですか。  ほら、サンケイ新聞にちゃんと出ている。「人事院勧告完全、実施できなくとも」。もうしないつもりなのですか。冗談じゃないですよ。あなた、次期何とかというのだけれども、それじゃいけませんよ。「人事院勧告完全実施できなくとも ILOへ説明つく “緊急避難”と宮澤長官」、これはあなた、うまいことを言っているのですよ。完全実施しなくたって、財政が苦しいんだから、「緊急避難措置としてなら公務員給与の抑制はILOも了解してくれるとの政府判断を明らかにした」と、勝手に政府判断を明らかにしたって困るんですよ。ところが、これは一遍、ここでおいでになるのだから聞いておかなければいかぬが、どこまで考えて物を言ったのですか。ILOにも持っていかれちゃうと思って言ったのですか。どういう判断なんですか。人事院勧告実施できなくともと言っておられるのだけれども、どうなんですか。
  321. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 記者会見における問答と思います。質問の機会は、労働団体において、政府が完全実施しないときにはILOに提訴をする御用意がある、そういうことが質問の主題でありまして、そういう質問がございましたから、私は、これは政府が給与関係閣僚会議で誠意をもって検討していることであって、まだ結論が出ておる問題ではない、こう申しました。仮にそういう結論が、つまり不完全という結論が出て仮にILOに提訴になったらどう考えるか、こういうたくさんの前提があってのことでございまして、給与関係閣僚会議の結論が全然出ておりませんから、正式にはILO云々ということは実は話題にはなり得ないわけでございます。
  322. 大出俊

    大出委員 ところが、正式になり得ているわけだ。ここに「取り扱い注意、総理府」というのがある。これは特別な資料だ。二と書いてある。「取り扱い注意、総理府」。ちゃんと手回しがよ過ぎるんですね。   人事院勧告が不完全実施となる場合に予想されるILOをめぐる問題点等について   一、人事院勧告を不完全実施するとの方針決定がなされた場合、組合側はILOに申し立て等を行うことが予想される。   二、申し立て等を行う場合の方法としては、  一、結社の自由委員会への申し立て。二、専門家委員会への報告が考えられる。   三、申し立てなどが行われた場合、その申し立てなどの内容いかんにもよるが、日本政府としては、人事院勧告の扱いは最終的には国会により決定されるものではあるが、一、人事院勧告の不完全実施は第二次臨時行政調査会の第一次答申に沿うものであること。二、不完全実施は財政危機間の緊急避難的措置または臨時的措置であることなどの反論を行うことが考えられる。 皆さんが行うと言う。  四番目、これはふるっているんだね。「ILOがいかなる見解表明を行うかは即断はできないが、いずれにしても、ILOに対する対応に関し、政府としては多大の努力を要することになるであろう。」えらいことになる。「多大の努力を要する」、何かおみやげでも持っていって頭を下げて歩きそうな感じ。あなた方政府は、何とか労働者側の提訴を聞かないでくださいだなんて、何か持っていきそうですよ。私も何回もILOに行ったけれども……。  これは穏やかでない。まだ提訴も何も、結論も出ていないというのに「多大の努力」、それに乗っかって、あなたは「緊急避難」、これは軽過ぎるですよ。いけませんよ、こんな軽くては。官房長官、これは本当に衛生上よくないですよ。こういうやり方は私は憤慨にたえない。  やはり誠意をもって――さっき渡辺さんが、率を削る、そんなことを言った覚えはない、そんな考え方じゃないと言ったから、率は削られないと私は思う、大蔵大臣なんだから。そしてあと、実施時期を削るよりもと言っているのだから、では実施時期を削らないのかと言ったら、統一見解が出るだろう、こう言う。そうすると、あとは実施時期の問題が残る、こうなるのだけれども、宮澤さん、こういうのに乗っかって――普通なら私も開き直るところだけれども、時間もないから、きょうのところは申し上げるだけにしておきますけれども、こういうのは感心しませんよ。  そこで、次に承りたいのでありますが、中西さんにせっかくお出かけいただいたのですけれども、仲裁委員長談話がございますね。ここでは、この裁定によって今次紛争が配分問題を含めて早期かつ円満に解決されることを期待しますとぽんと冒頭におっしゃっておられる。お気持ちを承っておきたいのですがね。いかがでございますか。延々と今日延びておりますが。
  323. 中西實

    中西参考人 五月に仲裁裁定を出しまして、そして談話を出しました。その気持ちは、いまも変わっておりませんので、いろいろな困難なことがあろうかと思いますが、ぜひ、あの裁定が実施されることを望んでおります。
  324. 大出俊

    大出委員 完全実施というお言葉がございませんでしたが、「あの裁定が」と、こうおっしゃっておいでになりますから、あの裁定はそのまま国会に出されておりますので、完全実施を意味しておいでのようであります。  中西さん、はっきりお答えをいただきまして、これは政府側の方も、せっかく苦労してこういうふうにおまとめになってお出しになったものですから、いままでほうっておくというのは感心しない。だから、ここで藤尾労働大臣の気持ちを一遍承っておきたいのでありますが、国会へ出したのだからと、議決案件、承認案件というものの色分けを政府は勝手に解釈しておいでになる。議決案件といっているのは白紙で出したのだ、承認案件というのは承認してくれと出したのだ、そんなことは公労法十六条に何も書いてない。書いてないのだけれども、勝手に政府はそういうことをやっているのです。だから、白紙で出しているからこれは国会で自由にしてくれ、こうおっしゃるのかもしれない。しかし、公労法という法律の解釈上そんなお答えは出てこない。本来、公労法というものを政府はどういうふうにお受け取りになっているのかという点を含めて藤尾さんに、御担当でございますから御答弁賜りたいと存じます。
  325. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいまのお話は、二つあるうちの仲裁、これについてのお尋ねでございます。公労法第三十五条に明記してありますとおり、私どもはこれを尊重しなければならぬということでございます。  そこで、私ども政府といたしましては、その三十五条の精神を踏まえまして、どうすれば実施ができるかということについてそれぞれの三公社五現業の、実態、それをつぶさにいろいろと調べさせていただいたが、いろいろなのがあるわけでございますね。たとえば電電公社というような公社あるいは専売公社というような公社、これは何といいましても政府に四千億も出してくださるほど余裕を持っておられますから、これはいつ何どきでもその仲裁裁定を実施に移す、それだけの力も持っておられますし、できると思いますね。  ただ、そこで非常に問題になりましたのは、国鉄と林野、この二つがあるわけでございまして、国鉄の場合は御案内のとおりで、一般会計からかなり多額のものを補充しなければやっていけない。金の出どころがないわけでございますな。こういうことでございますから、この仲裁裁定をこういったものを除いてできるところだけでということならば、これはこれなりに私は処理し得たと思うのです。  しかしながら、私ども労働大臣の立場といたしましては、国鉄にお勤めの方であろうが、林野でお働きの方であろうが、それぞれにお働きの皆様方の働き、それの経済的あるいは社会的効果、そういったものは電電にお勤めの方々のお働きと何ら変わるところはないですな、普通の場合は。ときどき跳びはねたり何かされる方もありますけれども、ない。そこで、国鉄、林野に限って積み残していくというようなことは、労働全体といいまするものをおあずかりをさせていただいております私どもといたしましては、これは目をつぶって見て過ごすというわけにはまいらぬ。  そこで、出せるところの方々には非常にお気の毒であったわけでございますけれども、公労法十六条の二項で書いてありまするような、私どもといたしましては、これは私どもの裁量にはちょっとその負担が重過ぎる、そこでやむを得ずこれは国会の御議決を願って、そして国会の御議決によりまして、各党御承認の上で、しかしながら非常につらいところがあるだろうけれども払ってやってくださいというような御議決を願えれば、その御議決を根拠といたしましてこれは手を打てるわけでございますから、そのようにさせていただけたらなあという意思なんですね。  ところが、これは前国会のことでございますから、私ども振り返ってみますと、各党の非常な御協力と、自民党におきましても非常な御努力をちょうだいしまして、まあこれはやれるかというように期待をいたしたわけでございます。ところが、いろいろの国会運営上の問題でありますとか、いまだにその問題は解決されていないわけでございますけれども、いろいろな諸条件がそこに絡んでまいりまして今日に及んでおる、こういうことでございまして、私どもがやりたいと言って、御議決を願いたいと言っておりますその道の上に一つ大きな石が邪魔しておるわけですな。それを取り去ってさえいただけば、これは私は、御議決を願えるものではないか、かように考えております。ぜひとも国会においてさようしていただけましたならば、労働大臣といたしましても非常にありがたい、かように考えておるわけでございます。
  326. 大出俊

    大出委員 大変突っ込んだ御答弁をいただきまして恐縮ですけれども、その石も、実は一つは、前国会、私、内閣委員会に質問の場をつくっていただきまして二時間ばかり質問いたしましたが、それがきっかけで、一つは、双方ともにこれは納得の上で解決をしたわけでありまして、したがって、もう一つの方も片づけたいと思って、ずいぶん私どもの方も、私自身も努力をいたしましたが、最終的な手違いもあって、どちらの責任とは申しませんけれども、確かにそこまで踏み込んだ答弁をなさいますというと、そこまで申し上げなければいかぬのですけれども、それを確かに私も記憶にとどめております。したがって、いまの御答弁は、そこのところが片づけば実施する、こういうことだというふうに受け取ります。  そこで、三公五現の、とにかく三公社の、電電公社の真藤さん、専売公社の総裁でおいでになる泉さん、国鉄の高木さん、皆さんにお見えいただきました。また、五現の皆さんにもお見えいただきましたが、昨日、私、こういう呼び出しをかけるのに御迷惑なことだから失礼をすると思って、ちょっとお電話でそれぞれお話をいたしましたが、まあ大出さん、ひとつ物を言いやすいようにしてくださいよと、実は結論を言えば、ざっくばらんな話でございました。しかし、労働大臣がいまああいうふうにおっしゃったのですから、大分物が言いやすいはずでございまして、そういう意味で電電公社の真藤総裁に、確かに何年間かで、ことしは千二百億ぐらいでしょうけれども、四千八百億近い剰余金を政府が持っていくというわけですから、そういうところでそれだけ一生懸命職員が働いて、金がいっぱい出てきているのを政府に吸い上げられる。にもかかわらず総裁が、裁定、そんなものはできません、そうはおっしゃらないだろうと思うのでありますけれども、そこの御見解を、おできになるはずだと私は思っておりますが、お答えをいただきたいのであります。
  327. 真藤恒

    ○真藤説明員 お答えいたします。  事柄が国会の議決案件ということになってしまっております。できるだけ早く御議決いただくことをお願いするよりほかに、いま申し上げようがございません。
  328. 大出俊

    大出委員 それは議決といいますと、実施を早くやってくれ、こういうことですか。いかがでございますか。――そのとおりでいいですな、うなずいておられましたから。  それでは、大変恐縮でございますが、専売公社の泉総裁、後から少し数字を申し上げたいのですが、公社はもう歴然たるもので、政府が金を持っていくのですから、あるに違いないのですけれども、専売の皆さんは、私が調べた限りでは、大蔵大臣が認めればいまでもできる、そういう中身でございますけれども、やれるはずだと思いますが、お答えいただきたいと思います。
  329. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  仲裁裁定につきましては、お話しのように公労法三十五条の規定もございますし、また、三十二年以来の慣行がございますし、私ども、将来の労使関係に及ぼす影響を考えますと、仲裁裁定を実施いたしたいという気持ちは持っております。  ただ、現状におきましては、仲裁裁定を実施するために九十一億円の金が要ります。そのうち、現在給与改善費として予算に上がっておりますのは十九億円でございまして、七十二億円が不足いたします。これをどうするかという点が問題でございますが、私ども、四月以降の本年のたばこの売り上げは、予算で見ておりました数字より若干好転を見ております。さらに、今後経費の節減の可能性もあるわけでございますので、御承知のとおり弾力条項を使用することによって実施できるのではないかと期待をいたしておりますが、現状におきまして、すぐに実施するということはまだ申し上げかねる次第でございます。
  330. 大出俊

    大出委員 御確認をいただきたいのですが、電電公社の皆さんの方も、さっきのように、剰余金、利益が上がるとみんな政府が持っていってしまうのですから、あるに決まっている。四千八百億もよこせと言うのだから。  さて、専売公社なんですけれども、これは計算をしてみたのです。五十六年度たばこ販売代金の見通し、これは公の専売公社の文書であります。これによりますと、表二というものですが、時間がありませんから詳しく申し上げませんが、二兆五千五百八十六億円という予算上のたばこ販売代金が実はございます。上半期実績、達成率等々がございまして、これがどれくらい伸びるかという増加見通し、販売代金が四百二十四億円ふえる、こういうふうに見通されている、これは的確な見通しであるというお話を承りました。そういうことになりますと、いまお話がございました九十一億円が給与改定をやる、裁定を実施する費用だとおっしゃる。専売全体で九十一億円。ところで、給与改善費が十八億ございまして、予備費が四十億、両方合わせて五十八億円であります。九十一億から五十八億を引きますと三十三億残ります。つまり、これが何とかなれば、ただ予備費を満杯に使うということにはなりますが、論理的にはできるわけであります。  さて、私がここで計算をいたしますと、人件費というのは、たばこ売上代金の七・九二%になる。そうすると、四百二十四億円というたばこ販売代金が伸びていくこの伸びの七・九二%というのは一体幾らになるか、三十四億になります。つまり、総裁がいま言いましたが、弾力条項等を使えば数字的にも的確にできる。そして移流用にしろ弾力条項にしろ予備費にしろ、大蔵大臣の許可が要る。これは、いまいみじくも三十二年以来裁定が完全実施されているとおっしゃいましたが、三十二年というのは岸信介さんが総理でございまして、社会党の鈴木茂三郎さんが委員長でございまして、さんざんもめました。三十一年に法律改正をして実施努力義務が法律上政府にできた。これを前提にしたのだが、三十二年にもめた。もめた一番のどん詰まりが岸総理鈴木茂三郎会談で決着をして、完全実施をした。これは歴史的な事実でございます。このときも各公社現業の、つまり予算その他の中野が――私なども全逓の書記長でございましたから、引っ張り出されましていろいろ述べた経過がございます。そういう苦労をお互いにしながら、この三十一年の改正のときに公社法等の改正を行いまして、専売公社も予算総則その他いろいろずっと改正事項がございましたが、これで改正をされまして、大蔵大臣が承認すれば移流用ができる、こうなった。どこかで何か大蔵大臣が承認しないとか言ったというので、承認しないから国会へ出したのだというようなことを言ったというのだが、早速聞いてみたら、そんなこと言った覚えはないとおっしゃった。おっしゃれば、いまおっしゃるように、いまだってやろうとすればできることになる。間違いないですね。いまの数字ちょっと駆け足に申しましたが、泉さん、御確認いただけますな。
  331. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。  お話しのように、現在のようなたばこの売れ行きが年度間通じてありますならば、四百億程度の増収にはなろうかと存じます。
  332. 大出俊

    大出委員 つまり、増収だけお認めいただければ、それによる私の計算でございますから、別に問題ない。ありがとうございました。  それで、さて、国鉄の高木総裁、昨日私いろいろ総裁とお話もいたしましたが、大変だと私も思っております。ことしの予算を見ましても、定数において一万一千人ぐらい確かに減っております。あれから私もいろいろ当たってみましたが、確かに協定をお持ちでございます。しかし、この人を減らす――人事院勧告も後から申し上げますが、制度をつくっておいて、人がそこに存在をする。職というのがある。職というのは仕事ですけれども、職の定数は法律で決める。ここに仕事があるから人を配置する。この人が定員でございます。これを減らさないことには減らないのはあたりまえだ。それを賃金勧告だとか裁定で削ろうとなさるから、昔大変な労使紛争があったというわけです。  だから、そこらのところも、越智さんがきょうアメリカの例なんか挙げて妙なことを話しておいでになりましたが、どうも生兵法はけがをすることになっておりまして、実はああなってないのであります。後から申し上げますが、アメリカアメリカの議会に総合給与法という法律を出しておりまして、それに基づきまして、本来の、つまり連邦給与法等に基づく、あるいは公務員法等に基づくもので出した一五・一を四・八にという、大統領が出せる制度が――まだできてないのですよ。いま法律がアメリカの議会にかかっているのですよ。だから、レーガン政権になって通りがいいから通るかもしれません。新しい制度をつくる。だから、一五・一を四・八に下げたとおっしゃるけれども、そうでない。しかも、一五・一が出てくる経過の中には、給与審議会がありまして、この中に組合側の委員が五人出ることになっている。大統領代理人というのが三人いて、政府の高官ですけれども、それにちゃんと場所ができていて、五人の組合の代表が出て、そこで決めて一五・一が出てくるわけです。全然制度が違う。  だから、そういうことを簡単におっしゃらぬで、やはり現に制度があるのですから、人がいるのですから、奥さんが財布を持っているのですから、お母ちゃんが持っているのだから、それが泣くようなことを私はしてほしくない、こういうふうに思っている。高木さん、実はこれから六万人の人減らしなんということをお考えになっているようです。よほどこれは職員の方一人一人あるいは組合員が協力しなければできない。この方に、国鉄の職員、現在いる人に罪はない。だれも悪いわけじゃない。経営の責任は労働者にはない。この人たちの奥さんやお母ちゃんが財布を握っていて、民間はとっくの昔に決まってしまっていて、裁定は五月に出ているのだけれども、まだくれない。どうもくれそうもなくなるなんということになったのでは、私は安心して国鉄の汽車に乗っかるわけにいかぬと思う。危なくて乗れないと思う。総裁、そこのところいかがでございますか。
  333. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもは非常に経営状態が悪いわけでございますし、実は本年に入りましてからも、先ほど専売の方から御説明ございましたように、予定よりも収入がふえるというようなことはなかなか期待できないわけでございます。しかしながら、長年の慣行もございますし、法令上のたてまえもあるわけでございますので、何とか皆さんのお仲間に入れていただきたいと思っておるわけでございます。めったにそのことのために汽車がひっくり返るとか事故が起こるとかというふうには直接にはつながりませんけれども、やはり何となく沈んだ空気にございます。そして明年度また予算定員を相当減らすという計画になっております関係で、職員の一人一人の理解を得たいということがいま大事なときでございますので、大変御理解のあるお尋ねでございましたが、ぜひよろしくお願いいたしたいと考えております。
  334. 大出俊

    大出委員 ということで、三公社の責任ある方方からお答えをいただきました。私さっき渡辺さんが許可する、しないという触れ方をいたしましたが、一括というのは、結局そういう経営状態のところがあっても落ちこぼれをつくりたくないという気持ちがお互いに、私もそうですが渡辺さんにもある。それがああいう専売の組合員が受け取るような御発言になっていたのだと思うのでありまして、曲解はしておりません。  そこで、一つ心配は、林野庁がもう一つ非常にむずかしいのでありまして、閣僚間の枠がございましょうけれども、長官秋山さんにお聞きする、そんなことも御無礼だから、亀岡さんがおいでになるので、大臣からそこのところを、もし閣内の枠の中でというのでぐあいが悪いとすれば、それでもやむを得ませんけれども、少し足りない組の心情というものがこれはおありだと思うのでございますが、お述べ願えませんでしょうか。どうも仲間を外したんじゃ山の中で一生懸命仕事をする人に気の毒だという気が私はいたしますので……。
  335. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 林野庁の場合も、計算上はどうしても七十億ほど不足することになります。したがいまして、いい方だけやっちゃえというようなことをされますと、これはもう大変指導がしにくいなという気持ちは持っておりましたが、先ほど理解ある労働大臣のお話しのとおり、あのような筋道で御指導いただいておりますので、私も実は心情的にはほっとして、藤尾労働大臣がんばれということで職員の説得に努めておるわけであります。  それで、御承知のように、木は伐採計画がありまして、四十年ないし五十年過ぎませんと切れません。会計が苦しいからといって切ってしまったのでは、山は全部荒れてしまうわけであります。やはりその木を植え、育て、そして切れるようにするまで、治山治水その他非常な社会的任務も果たしておるわけであります。しかも、切ってもなかなかいい値段で売れない。裁定のときに当たって、しかも片一方では財政再建、厳しい世論の要求もあるわけでありますから、その辺も十分国会の意向、議決に沿ってやってまいりたい、こう思っております。
  336. 大出俊

    大出委員 大変厳しい財政事情をお抱えの林野庁を持っておいでの大臣の御答弁で、大変突っ込んだお話をいただきまして恐縮でございました。五現業それぞれいろいろ問題はございますが、たとえば印刷なんかでも給与改善の費用が十六億ぐらい要るはずであります。ところが一%ですから、三億ぐらいしかないはずであります。そうなりますと、予備費が五億円ある。これは印刷の中身でございましょう。そうすると、五億全部使っても、一%組んである三億と予備費の五億で八億。そうすると、印刷だけで十六億改善費に要りますから、半分足りない。じゃどうするか。節約、移流用、いろいろなことをやらないとできない。ここにも大蔵省がうんと言わないとできない関門が一つございます。しかし、できるのかできないのかと詰めますというと、大臣にないしょならできるとおっしゃるでしょう。ただ、公に言ってくれというと、これは言えない。もっとも石井直一局長じゃちょっと言えないでしょうな。主計官を長いことおやりになっている印刷局長ですから。自分でさんざんやっていて、ここへ来て別なことを言うわけにはいかぬでしょうから、あえて印刷には御質問はいたしません、わかっておりますから。陰で聞くことにいたします。  さて、そこで、あと郵政省、五現業筆頭が残るのですが、大臣、どうも大臣のいつもの言いっぷりというのは、私もそっちの出身だからわかっちゃいるんだけれども、どうもちょっと食い足りない答弁をなさるんだけれども、何とか少し締めくくりにお考えのほどをおっしゃいませんですか。山内さん、やはり何とかしようという意欲をお持ちいただかぬと、郵政というのは現業ですから、自動車にぶつかりかかっちゃ一生懸命自転車を走らせているんですから。
  337. 山内一郎

    ○山内国務大臣 郵政省では、御承知のとおりに郵政事業を実施しておりますし、電電公社の所管をしているものでございます。したがって、今回の仲裁裁定の実施については非常に関心のあるところでございまして、仲裁裁定を提示された時点においていろいろと関係省と協議をして、議決案件として国会にお願いをしているのがいまの段階でございます。  いま、予算の実施中でございますけれども、いまなお直ちに実施できるというような、まだそういう段階には至っていないということでございますので、国会において議決をしていただいて、これは非常に職員が関心を持っておりますし、それから労使の関係の安定においても非常に重大な問題でございますので、よろしく議決のほどをお願いしたいと思います。
  338. 大出俊

    大出委員 私自身が実は郵政の出身でございまして、この間の国会のときに、いまおやめになりましたが、岡野人事局長が御自分で私のところへおいでになりまして、いろいろやってみた、満足だというわけではない財政事情だが、しかしやはりいろいろ当たってみたがやれる、だからということでひとつ職員のために実施についてのお骨折りをいただきたい、こういう実は御依頼をいただいたわけでありますから、これはできないはずはないのでございます。こういうことになりますと、国鉄さんあるいは林野庁さんという一つ難関がございますけれども、これとても足かけ二十五年、さっきのお話三十二年からということになりますと、二十三年余にわたる長い歴史でございまして、制度は厳として存在をする。今次対象になっている定数も、奥様初め御家族、御家内を含めて厳として存在をする。しかも、民間の皆さんの賃金の引き上げはとっくの昔にできてしまっている。さて、その民間に準拠している賃金が裁定という名前で出ていて、実施されていない、こういうわけであります。しかも、民間よりは低いという数字でございます、賃上げの額、裁定の出方を比較いたしますと。  そういう意味で、これはひとつぜひ総理に最後にお尋ねをしたいのでありますが、一生懸命働いている方々であり、まあいろいろなことがございましても、ほとんどの方々はそういうわけでございますから、前向きで御努力をいただけるという感触を与えていただきたい、こういうふうにまず総理に申し上げたい。この国会でひとつ決着をつけていただくようにお願いをしたい、こう思います。
  339. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 仲裁裁定の処理の問題は、国会でただいま御審議をいただき、国会の御判断を求めておるところでございますが、ただいま大出さんの御配慮で、私も三公五現の財務内容というものをつぶさに勉強させていただきました。また、各関係閣僚並びに企業体の責任の方も、非常な誠意と熱意を持ってこの問題を円満に解決をしたい、こういうお気持ちも、私はただいま親しくお聞きしたわけでございます。しかし、これは財務内容等を見てまいりますと、まだすぐに結論の出しにくい企業体もあるようでございます。全部が同じような条件でありますれば別でありますが、そういう状況でありますから、もう少し時間が最後の詰めには要るのではないかという印象を率直に受けているところでございます。政府としても、できるだけこのような状況を踏まえて、誠意ある態度で対処していきたいものだ、こう思っておるわけであります。
  340. 大出俊

    大出委員 時期が時期でございますから、なかなかそれ以上きっちりした答弁をと求めましても、私の方にも無理があろうと思いますから、前向きで誠意を持って御対処をいただけるというふうに、国会の会期中でございますから、この会期の間に出ている案件でございますので、継続審議案件でございますので、大きな期待をいたしておきたいと存じます。  そして、宮澤さんにさっきああいうふうに申し上げましたが、人事院勧告の方も、結果的に給与法も出てこない、実施もしない。渡辺さんは率は削るなんて言った覚えはない、こう言うので、それはそれでいいですけれども、何遍も念を押しますが、率の方は安心しましたけれども、あとは時期だけですから、これは四団体も何でもかんでも提訴すると言っているのではないのであって、政府に一生懸命物を申し上げているわけですから、やってくれと言っているわけで、その結果どうしてもというなら、勤務時間その他も含めて、こういうことなので、私もILOをさんざ経験していまして、権利闘争という文言は私が若いときに書いたわけですし、ILO提訴の方針書も私がつくったわけでございますから、経験がございますが、行けば、いまの時点で騒ぎになれば、やれ働きバチだとか、やれウサギ小屋だとか、やれどしゃ降り輸出だとか、ろくな話は出てこない。勤務時間が人一倍長いところへもってきて、また賃金も抑えるのかなんということになる。おまけに貿易摩擦その他も方々にある。だから、組合側といえども、私はそこまでのことを考えるべきではない、こう実は思っておるのですけれども、たくさんの組合員を抱えているナショナルセンター等からすれば、協議をする、こうなるんだと思うのですよ。  だから、そういうところに持ち込まないような対処をしていただきたいのですが、ついては人事院総裁藤井さん、お出かけいただいておりますので、これまたずいぶん長い歴史がございまして、民間準拠でマバ方式などをとって今日に至っておりますけれども、お出しになった当事者でございまして、中立機関でございます。そういう意味で、まず総裁の方から、出したままたなざらし、これは困る、こうお思いだろうと思うのでありますが、ぜひひとつ御発言を賜りたい。お願いいたします。
  341. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 この点は皆さんも十分御承知でございますが、人事院勧告というのは、公務員の労働基本権制約の代償機能でございまするし、これを保障するための措置としての給与の勧告でございます。このやり方は、官民較差があればこれを埋めるという終始一貫した方式で従来やうてまいりました。これは国会並びに大方の御了解を得ました結果、四十五年から今日まで、時期を含めて完全実施ということで参っておるわけでございます。諸般の事情があることは、私も重々承知をいたしておりますけれども、この制度が現存いたしまする限り、この線はやはり堅持をしていただかなければ困るというのが私の考え方でございます。
  342. 大出俊

    大出委員 長い伝統を見直すというふうなことを考えられるんだとすれば、それなりの順序もあれば手続もある。なぜならば、生きた労使関係が生活を抱えた勤労者中心にそこに存在をする、この現実を忘れては政治にならぬと私は実は思っている。それを拙速に臨調をつくったからというので、ぽかりと臨調が物を言う。それを閣議が真に受けてそのまま――矛盾がありますから指摘をしたい。対立した意見になりましてもあえて申し上げますが、人事院の権能というものはどういうものだ。  国家公務員法の第三条の一項にございまして、人事院は「内閣の所轄の下」に置かれていると書いてある。「所轄の下」に意味がある。いろいろ物を読んでみますと、会計検査院というのは憲法上の規定もあります。独立機関であります。ある意味で非常に似た独立性、中立性の強い機関、人事院の上はないという、そういう機関なんですね。そういう表現なんです。だから、所轄なんという言葉は、余り方々にこういうところにはない。行政組織法の適用も受けないんだ、そうなっている。そういう機関だ。しかも労働基本権の代償機関、そういうことが裁判所でもはっきりしている。全農林警職法の最高裁の判決もあります。私もさんざ参りましたが、実は数々のILOの言い方もあります。そこで、私に取り上げられたら政府も非常に困るようなことを当時ILOにさんざっぱら言っておいでになる、そういうこともたくさんある。  ところが、さて問題は、臨時行政調査会というのはいかなる調査会か。私も内閣委員会を十五年やってまいりまして、行政機構を知らぬわけじゃありません。この行政機構というものを本当に考えると非常に疑問があるんですけれども、国家行政組織法第八条の機関、称して八条機関、審議会ですよ。百幾つございます。私は、審議会というのは、さきの第一次の臨調答申で廃止せよという方向を認めている。余り次々に審議会をつくって、隠れみのにしちゃいかぬという気がする。間違いだという気がする。  ところが、これを総理府に置いておいて、総理の諮問機関ということで、財界の方々をいろいろ乗せてきて第一特別部会、第二特別部会というのをつくって、第二特別部会なんというのは鶴園哲夫さんがその中の委員でございますから、第何次、第何次と詳細に書いています。突如として五人の委員の方が、名前をわざわざ挙げて言いませんけれども、五人の方々が事務局と打ち合わせをした歴然の姿で人事院に勧告抑制を求めようという提案をした。五人全部賛成、やろう。昭和二十八年、人事院が勧告を出せなかったあのころの例を挙げて。そんなことを普通の人は知らない。二十八、二十九、三十というのは人事院廃止のための法律まで出ている。  私は、この継続審議になっている人事院を守ろうというので一生懸命やった一人ですけれども、そういう政治の、人事院の暗黒時代。出せなかった。それを百も承知で勧告を出せないようにしよう。そうしたらその次の第十五回部会、六月十六日にさすがに学識経験者、専門家の学者の方が正面から反論された。人事院というものの存在を国家行政全体の中でどう考えるのか。とうとう反論ができなくなってそこが消えていったわけです。消えた結果が人事院のこの第一次答申になっている文言なんですよ。  ところが、一つ残っているでしょう。「国家公務員の給与等の合理化」「公務員の給与の在り方については、労働基本権の制約、社会経済情勢、財政事情、国民世論の動向等が十分考慮されるべきものと考える。」ここまでなら異論はない。あるいは制度論として見直せと言うなら異論はない。ところが、その後に、「差し当たり、本年度の給与改定については、以上の点を踏まえ、適切な抑制措置を講ずる。」給与改定という言葉を知って使ったか、知らぬで使ったか知らぬけれども、人事院の歴史の中で、公務員法の歴史の中で長らく議論されている文言、かつては総平均、つまりベースといわれた賃金の水準を指した、これの改定、これが給与改定。今日は総平均の改定になるのかもしれません、中位数を使って調査しますから。そうすると、この給与改定という言葉が出てくる賃金の改定は、現行制度の上では人事院の勧告をまたなければできない。明確な事実だ。  これも論争があったが、使用者としての政府は給与の改定ができるのではないかという意見がたくさんあった。議論があった。いろいろな審議会もできた。結果的にそう言える場合もあるかもしれない。たとえば定期昇給。あるかもしれないが、この制度が明確につくられた限りは、人事院の勧告をまつべきものという結論が出ているじゃないですか。そうすると、この改定と言われるものは、人事院の勧告以外ない。それがわかっていながら――これが出たのは七月十日でしょう。人事院勧告が出たのは八月の七日でしょう。七月にこれを出して八月の勧告を大きく牽制をするとは何事か。八条機関の諮問機関ごときが、もってのほかだ。それをまた閣議が真に受けて、このまま決めるとは何事か。  いみじくも内閣を構成するメンバー、法制局長官もいて、そんなこともわからぬことはない、同じ給与の改定という文言について。こういうこそくなことをやるべきではない。定年制の問題のときに内閣委員会に私は出かけていって、書簡を政府は勝手に勧告と同等とみなす、勝手に同等とみなされて黙っている人事院ならやめちまえと私は言いましたが、そういうものでしょう。だから私は、こういうところはきちっと筋を通す、こういうふうにしていただきたいと思っているのですが、総理、いかがでございますか。
  343. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 臨時行政調査会は、臨時行政調査会設置法に基づきまして、「行政の実態に全般的な検討を加え、行政制度及び行政運営の改善に関する基本的事項を調査審議する。」第二条にこう書いてありまして、国の行政機関及び行政制度、その運営、この改善に関する基本的事項を調査審議する、こういうことからいたしまして、公務員制度あるいは公務員給与のあり方等についても、やはり行政制度及び行政運営に関する基本的事項の一環として検討審議の対象になり得るものと考えております。
  344. 大出俊

    大出委員 おおむねわかりましたから、私、一つ資料が見つからぬでそのままにいたしておりますが、ILOの百三十九次報告の中に、ちょうど一九七三年の十月十五日に、指摘だけしておきますが、労働省が中心になって各省の意見を聞いてこしらえて、外務省を通じてILOに提出した日本政府の態度という文書がございます。これは百三十九次報告に、百六項だと思いましたが、記録されております。この中で日本政府の態度として明確になっておりますのは、つまり――ここにありました。これでおしまいにいたします。意見だけ申し上げておきます。それ以上申し上げません。  まずこれは「結社の自由委員会に係属している日本関係事件に関する日本政府の態度」、四十八年、一九七三年十月十五日であります。ここで二カ所にわたって、「日本においては、争議行為の禁止に見合う必要な代償措置は完全である」、公務員の勤務条件から賃金からその他は人事院というものがあってこうなっている、仲裁があってこうなっていると説明されている。そしてもう一つこの中に、同じように完全であるという表現を「わが国においては、」日本において、「公務員及び公共企業体の職員はストライキを含む争議行為を禁止されている。しかし、争議行為の禁止に見合う必要な代償措置は以下述べるとおり完全である。」ここにも一完全。  そして最後に、これをお守りにならないということだというと、私はこれはやはり穏やかでないと思っている問題があるのであります。それは「公労委の仲裁は、公労委の公益委員」括弧云云、これは省略しますが、「全部又は一部で構成する仲裁委員会によって行われ、」そして「双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。」十六条も何も一言も触れていない。使用者としての政府も職員も、双方とも最終決定としてこれに服従しなければならない。  あと、なお書きがありますが、丸の後のなお書きは何かというと、「なお、公労委による仲裁は、関係当事者が合意した場合のほか、公労委の決議又は主務大臣の請求があった場合にも開始される。」これがなお書きでついているだけで、ここで切れている。十六条云々ではなくて、この説明は、本来改正公労法というものは、労使双方が最終的に服従すべきもの、その手続上十六条の二項に基づいて国会承認を求める。だから、法律上は承認案件、承認しか書いてない。議決などとはどこにもない。このたてまえどおりに政府はILOに物を言っている。このことを御認識いただいて、人事院勧告を含めての前向きの御対処をお願いして、終わります。
  345. 小山長規

    小山委員長 これにて川俣君、大原君、大出君の質疑は終了いたしました。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時十三分散会