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1981-11-12 第95回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十一月十二日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 野中 英二君    理事 梶山 静六君 理事 辻  英雄君    理事 原田昇左右君 理事 渡部 恒三君    理事 後藤  茂君 理事 清水  勇君    理事 北側 義一君 理事 宮田 早苗君       天野 公義君    植竹 繁雄君       奥田 幹生君    粕谷  茂君       島村 宜伸君    田原  隆君       泰道 三八君    中川 秀直君       鳩山 邦夫君    林  義郎君       松永  光君    水平 豊彦君       宮下 創平君    粟山  明君       森   清君    渡辺 秀央君       上坂  昇君    藤田 高敏君       水田  稔君    山本 幸一君       渡辺 三郎君    長田 武士君       武田 一夫君    横手 文雄君       小林 政子君    渡辺  貢君       石原健太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 六助君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         公正取引委員会         事務局取引部長 相場 照美君         通商産業大臣官         房審議官    植田 守昭君         通商産業省通商         政策局長    若杉 和夫君         通商産業省貿易         局長      中澤 忠義君         通商産業省基礎         産業局長    真野  温君         通商産業省機械         情報産業局長  豊島  格君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁石油部長   野々内 隆君         資源エネルギー         庁公益事業部長 石井 賢吾君         中小企業庁長官 勝谷  保君         中小企業庁小規         模企業部長   篠島 義明君  委員外出席者         大蔵省関税局企         画課長     長富祐一郎君         大蔵省銀行局特         別金融課長   日向  隆君         国税庁税部資         産評価企画官  内藤  彰君         国税庁間税部酒         税課長     岩瀬多喜造君         厚生省環境衛生         局指導課長   田中 治彦君         参  考  人         (中小企業事業         団理事長)   斎藤 太一君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十七日  辞任         補欠選任   武田 一夫君     大野  潔君 同日  辞任         補欠選任   大野  潔君     武田 一夫君     ――――――――――――― 十一月二日  中小企業経営安定対策等に関する請願中路  雅弘紹介)(第五七〇号)  特許管理士法の制定に関する請願外二件(石橋  一弥君紹介)(第六一〇号)  家庭用灯油価格抑制等に関する請願岡田利  春君紹介)(第六八一号) 同月十日  中小企業経営安定対策等に関する請願(岩佐  恵美君紹介)(第一一八九号)  同(金子満広紹介)(第一一九〇号)  同(小林政子紹介)(第一一九一号)  同(榊利夫紹介)(第一一九二号)  同(中路雅弘紹介)(第一一九三号)  同(東中光雄紹介)(第一一九四号)  同(不破哲三紹介)(第一一九五号)  同(正森成二君紹介)(第一一九六号)  同(三谷秀治紹介)(第一一九七号)  同(村上弘紹介)(第一一九八号)  同(四ツ谷光子紹介)(第一一九九号)  同(渡辺貢紹介)(第一二〇〇号) 同月十一日  小売大資本店進出規制等に関する請願村上  弘君紹介)(第一二七五号)  同(小林政子紹介)(第一二七六号)  休廃止鉱山鉱害防止対策促進に関する請願(  井出一太郎紹介)(第一四二八号)  同(小川平二紹介)(第一四二九号)  同(小沢貞孝紹介)(第一四三〇号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一四三一号)  同(串原義直紹介)(第一四三二号)  同(倉石忠雄紹介)(第一四三三号)  同(小坂善太郎紹介)(第一四三四号)  同(下平正一紹介)(第一四三五号)  同(中村茂紹介)(第一四三六号)  同(羽田孜紹介)(第一四三七号)  同(宮下創平紹介)(第一四三八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十一月十日  消費生活物資安全対策に関する陳情書  (第二〇五号)  テクノポリス建設に関する陳情書外一件  (第二〇六号)  灯油価格抑制等に関する陳情書  (第二〇七号)  中小企業事業活動機会確保のための分野調  整権限に関する陳情書  (第二  〇八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 野中英二

    野中委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する件調査のため、本日、参考人として中小企業事業団理事長斎藤太一君の出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野中英二

    野中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 野中英二

    野中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島村宜伸君。
  5. 島村宜伸

    島村委員 わが国経済の現状につきましては、先進諸国が一様に不景気あるいはインフレ、失業の増大等で苦しむ中で、総じて言えば景気の回復にいささか力強さを欠くものの、比較的日本経済は順調に推移していると言えますし、この点は大いに評価されてしかるべきだと思うわけであります。しかしながら、最近の経済動向の特徴的なことは、業種間、企業間に大きな格差が存在することであります。それらは原燃料高騰によるものであって、各業界の血のにじむ自助努力によっても、もはや解消し得ない構造的な問題を背景に抱えていることによるものであります。  そこで、先般エネルギー・鉱物資源問題小委員会に、そうした構造的な要因で不況に悩むアルミ製錬、石油化学塩化ビニール化学肥料カーバイド紙パルプの六業種の代表の方々を参考人として招きまして、その実情と問題点要望事項等について聴取したわけでありますが、参考人の御意見を聞いて感じましたことは、これら六業種に加えて、たとえば亜鉛フェロアロイソーダ等基礎素材産業については、わが経済社会に占めるその役割り重要性にかんがみ、腰を据えた取り組みが必要であり、可能な限りの支援措置を早急に打ち出すべきであると感じたわけであります。  そこで、この際、きわめて制約された時間の範囲内でありますが、要望を交えて若干の点について御質問申し上げたいわけであります。  まず第一に、電力コストの軽減の問題についてであります。  この問題は、特にアルミ製錬、カーバイドのほか、フェロアロイ亜鉛ソーダ等業界にきわめて関係が深いわけでございますが、まず一点としては、当面現行料金体系内で従来から行ってきております需給調整契約活用あるいは共同火力との経済融通促進、その他関係者の一層の協力を取りつけるための政府指導を強化すべきだと考えるわけでありますが、この点について大臣の御答弁を承りたいのであります。
  6. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 お答え申し上げます。  これまでも現行料金制度体系に基づきまして、大口需要家に対します需給調整契約活用ということを実施してまいりました。また、アルミ製錬事業に対します共同火力効率的運用という観点から、余剰電力電力による買い上げ及び経済融通実施等措置を講じてきたわけでございます。  御指摘需給調整契約のさらに一層の活用が可能かどうかと申しますのは、電力需給実態に応じましてそのコストを反映するような現実的な調整契約制度を設定するわけでございますので、たとえばアルミ製錬業でございますと、緊急遮断技術が進歩してまいりますと、それに応じまして需給調整契約の新たなパターンが設定できますので、そういった各産業ごと電力需給実態に応じましてさらに一層需給調整契約活用し得るように、私どもの方も関係者指導していきたいというふうに考えております。  それから第二点の共同火力につきましても アルミ製錬業におきます電力需要の減退に応じまして、電力共同火力効率的運用を助長できるような対応策をさらに協力できるように指導していきたい、かように考えております。
  7. 島村宜伸

    島村委員 このことはアルミ業界から特に強い要望があったわけでありますが、共同火力電力コストが非常に割り高であるために何とか買電に切りかえたい、こういう希望があるわけであります。この場合、共同火力設備買い上げについて何らか検討されたお考えを持っておられるかどうか、承りたい。
  8. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 現在、アルミ製錬にかかわります共同火力は五地点ございます。したがいまして、この問題は一般論で議論いたしますと、石油共同火力という性格からコスト高であること、それからそれぞれの電力会社設備能力からいきまして、なかなか結論を出しにくい問題でございます。したがいまして、問題はサイトごと特殊事情を加味いたしましてこれを検討すべきであるというふうに考えておりまして、現在五地点につきまして、電力会社、アルミ製錬業者及び共同火力という三者間の協議をそれぞれ行わせております。具体的にはすべて引き取りという問題ではございませんで、一部の地点につきましては石炭火力への転換を図ろうというようなことを考えておりますが、そういった方向で考えられるところは、石炭火力への転換を助長するという行き方もございますが、一般論としまして、先ほど申し上げましたように、石油共同火力発電コストが大体十七、八円ということできわめて高いコストでございますので、なかなか引き取りについて多々問題があろうかと思いますが、いま申し上げましたように、サイトごと特殊事情を加味して現実的な解決ができないかどうかを指導していきたいというふうに考えております。
  9. 島村宜伸

    島村委員 その場合、石炭転換促進のための財政金融措置を積極的に拡充すべきだと思うのですが、この点、どうですか。
  10. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 ただいま、石炭火力への転換につきましての助成制度がございます。この助成制度につきましても、共同火力分野における石炭転換に当たりましてこれが適用できるように、また財政上の開銀融資等支援措置がございます。こういうものを活用してまいりたいというふうに考えております。
  11. 島村宜伸

    島村委員 この問題はカーバイド業界から要求が出されたわけでありますが、県営水力からの電力会社送電線託送による特定供給について政府はどうお考えでしょうか、お伺いしたい。
  12. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 私、きわめてむずかしい問題ではないかと思っております。と申しますのは、御承知のように、約三十二公営企業ございます。主として水力発電によりまして電気供給し、これを一般電気事業者に卸し供給いたしておるわけでございます。  それは何を意味するかといいますと、一般消費者がその安い電源コストによる電力供給受益者でもあるという状況にあるわけでございまして、当然のことながら、水力カーバイド工業活用させろとおっしゃる場合には、その安いコスト地点電力を回せということになるのではなかろうかと思います。そういうことになりますと、特定産業あるいは特定受益者一般消費者との利害調整をどうするのかという問題が一つ大きな課題でございます。  もちろん、公営電力全体といたしまして出力は約二百二十万弱でございます。したがいまして、地点ごとに幾つかの系統上の問題があろうかと思いますので、そういう点もあわせて、供給の不安につながらないかどうかという地域別の問題も考えなければいかぬという問題点が第二にございます。  第三に、特に流れ込み式の水力発電の場合でございますと、託送の場合にいろいろ技術的な障害が起こらないかどうか。これは電圧とか周波数が、流れ込み式の場合には特に不安定でございます。それを託送する場合に技術的な問題がないかどうか、いろいろな解決すべき課題が多いのではなかろうかと思っております。そういった課題検討の上で結論を出すべきではなかろうかというふうに思っております。
  13. 島村宜伸

    島村委員 現在、経団連のベースで進められている電力消費型産業に対する電力料金体系の見直しについて、政府はどのような見解をお持ちでしょうか、お伺いしたい。
  14. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 ただいま経団連産業政策委員会の場におきまして、御指摘検討が進められているというふうに聞いておりますが、現段階におきましてその結論を得ているという状況ではないように承知いたしております。ただ、特定事業者が安い料金受益を受けるということになりますと、他の産業分野負担をするかあるいは一般消費者負担をするかということになります。したがいまして、基本的な考え方といたしましては原価主義と公平の原則、この大きな枠組みの中でどの程度そういったことが考えられるのか、結論が出た段階におきまして私ども検討させていただきたいと考えております。
  15. 島村宜伸

    島村委員 先般の小委員会質疑だけの問題ではなくて、いままで不況業界のいろいろな話を聞く中に、抜本的にこの対策を立てなければいけないと思うことが一つあるわけです。  それは電力料金が、石炭あるいは石油火力に頼っていく以上、国際競争力に非常に大きな影響が出てくる。そういう意味では、たとえばOPECの決定によって、来年度じゅうまでは価格が一応安定を見たわけでありますが、この石油のグラットがどこまで続くかという保証は全くないわけでありまして、その場合、石油がまずどんどん値上がりする、あるいはそれに追随してLNGあるいは石炭価格が上がるということを想定するとするならば、この際多少でも余裕のあるいまの段階原子力発電を強力に進めて安い電力を確保することが、基本的に、いわゆる基盤の段階からいろいろな不況業界を救うことにつながるのではないか、私はそう考えるわけであります。その点について通産当局見解を承りたい。
  16. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 電力供給の安定かつ料金の安定を図る上におきまして、御指摘原子力発電の推進がきわめて重要であるわけでございます。その場合に、現在は原子力の持つ蒸気のみを利用しましてこれを発電に切りかえ、その他の余力につきましては必ずしも有効活用されておりません。ただ、温排水による漁業への活用方策についていま研究を進めているわけでございますが、むしろさらに地域環境整備に役立たないか、同時にエネルギー消費産業が直接にそれを活用する方策はないか、こういったことは十分研究に値する問題であろうと考えておりまして、私どもとしましては、五十七年度からエネルギーフロンティア構想ということで、その実現可能性につきまして検討に着手いたしたい、かように考えております。
  17. 島村宜伸

    島村委員 原価主義と公平の原則に基づくといたしましても、EC等におきましては、電力消費産業に対して特別料金を出していると聞くわけであります。この点について、日本政策としてもこういう考えに立つ考えがあるかどうか、お伺いしたい。
  18. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 私ども承知しております限りにおいて、ECにおきます特別料金といいますか、そういうものは一般的にはないのではなかろうか。ごく限られた地点におきまして、歴史的経緯でそういうようなものが一、二あるように聞いておりまして、制度としてそれが確立されているというふうには承知いたしてないわけでございます。もちろん御指摘のように、エネルギーコスト高騰、特に第二次エネルギーとしての電力価格の上昇が産業構造に大きな影響を与えるということについて、電力政策の上から当然考えるべき課題は多々あるかというふうに承知いたすわけでございます。  いろいろな考え方がございます。たとえば原価一般消費者産業用と区分してしまって、産業用の中でコンセンサスが成立する範囲内において特別料金を実施する余地はないかという問題もございますが、これにつきましても、先ほど申し上げましたように、公平性といいますものが、いわば電気事業法に言う不当な差別価格になるかどうかという問題も起こるわけでございまして、そういった点を含めて今後の検討課題ではなかろうかというふうに思っております。
  19. 島村宜伸

    島村委員 いまの問題についてでありますが、原料高そして燃料高というダブルパンチであります。日本の国内の電力料金というのは、諸外国に比べて必ずしも安くない。そして同時に、安くないと言うよりはむしろ高いわけでありますし、将来的にはこれがさらにまた格差を広げるという可能性考えられるわけであります。この点についてひとつ大臣の御見解を承りたいのです。
  20. 田中六助

    田中(六)国務大臣 素材産業がほとんど現在、非常に苦況にあるわけでございます。私どもも、川下の方でこれらの産業が及ぼす影響は非常に大きゅうございますので、種々苦慮しているわけでございまして、産業構造審議会において各部会の答申を待っていろいろな対処をしているわけでございますけれども、御指摘のように、電力料金はよその国の、特にアメリカなどの三、四倍コストがかかっているわけで、電力消費産業にとっては致命傷でございます。したがって、これについての対処というものが何とかなるまいかということで、現実に実は内々九電力の幹部にもそういう点の配慮ということをお願いしておるし、行政指導の面で、料金の面で何とかなるまいかということを勘案しております。  ただ、先ほど事務当局石井部長からもお答えしましたように、原価主義あるいは公平の原則というようなこと、つまり電力料金というものが他の産業とか民生の各家庭に及ぼす影響も多うございますので、私どもも苦慮しておりますけれども、これをそういう素材産業にせめて安く供給できる方法はということで具体的にいま検討中でございますし、これからも素材産業を救うためには、まず第一に手っ取り早く電力料金に取り組むことが必要であるという観点から鋭意努力しておりますが、いまそれなら具体的にどうなのかと言われましても、実は具体的な解決策というものが出ておるわけではございませんが、鋭意、できるだけ早くこのことについては検討して、御趣旨に沿いたいというふうに考えております。
  21. 島村宜伸

    島村委員 ずばり申し上げて、原子力発電を強力に推進する以外に救われる道はないと私は考えているわけでありますが、大臣、このことについて……。
  22. 田中六助

    田中(六)国務大臣 原子力発電所はもちろん私どもエネルギー政策で一番ウエートを置いておりまして、現在、御承知のように二十二基稼働しておりまして、将来は五千百万キロワットから五千三百万ぐらいに持っていくためには、どうしても三十五基の稼働を目指していかなければならないわけでございます。  しかし、原子力発電所は、御承知のように、思い立って建設から稼働、運転まで十五年ぐらいかかりますが、これをせめて十二、三年に短くしようということ。それから、現在の稼働しておる稼働率をうんと上げるというような方策をとって、原子力発電所効率、これはもう普通の価格の半分で済むということになっておりますので、ぜひとも御指摘のように原子力発電所の設置というものを、万難を排して進めていこうというように思います。
  23. 島村宜伸

    島村委員 もっと突っ込んで伺いたいのでありますが、時間がありませんので次に移ります。  第二の点は、原料ナフサ価格の問題であります。  この問題については、石油化学あるいは塩化ビニール化学肥料等業界から強く要望が出たわけでありますが、石油化学等業界から次の点について要望が出されたわけでありますが、これらの問題は、石油政策との関係から重要な問題を含んでいるので、政府見解を承りたいわけであります。  まず第一点は、原料用ナフサに対する石油税減免措置についてであります。輸入ナフサに対する石油税免税措置が現在とられているわけでありますが、これは五十六年度末で切れるわけであります。この延長について、どうお考えでありましょうか。
  24. 真野温

    真野政府委員 先生御指摘のとおり、輸入ナフサの現在の石油税減免措置につきましては、今年度末で一応期限切れになると思います。この点について、私どもの方は、引き続き延長ということで大蔵省に申し入れております。
  25. 島村宜伸

    島村委員 第二点といたしまして、国産ナフサ石油税負担分石油化学工業への還付制度創設についてお考えがあるかどうか、伺いたい。
  26. 真野温

    真野政府委員 御指摘国産ナフサ石油税減免措置につきましては、これはいろいろな考え方がございます。現在、国産ナフサにつきましては、石油業界等より原料非課税ということでの要望もございます。他方石油税創設趣旨から、これがまた全体としての備蓄、これは石油の製品の使用者全部が受益者になる、こういう趣旨から設けられた趣旨もあり、種々観点から総合的に検討してまいる必要があると思います。そういう意味で、現在、産構審化学工業部会石油化学小委員会においても検討いたしておりますが、それは引き続き検討してまいりたいと思います。
  27. 島村宜伸

    島村委員 実は、最近ある機会にこういうことを知って驚いたのでありますが、石油化学産業状況というのはきわめて深刻であって、最近では役員はもとより社長に至るまで自家用車を全部取りやめた、みんな電車で通っている、そういう状況にあるのだそうであります。これは私、聞いた話では困るんで確かめましたら、事実、代表的な企業がそういう現実を持っているわけであります。たまたまいまお話が出ましたけれども原料非課税の問題、原料に対する課税がなされているのは日本だけの現象でありまして、この点はむしろ積極的に非課税、いわば課税分を還付するという思い切った施策が講じられるべきではないか、そう考えるわけでありますが、この点についてもう一度お伺いしたいと思います。
  28. 真野温

    真野政府委員 現在、石油には種々関税石油税その他の負担があるのは事実でございますか、他方、こういう諸税の設けられた趣旨もまた、これは石油危機の際における備蓄負担とかあるいは今後の石油開発のための負担を国民経済的にどういうふうに配分するか、こういう趣旨もあり、その辺も含めて両方で判断すべき点だろうと思います。他方、またおっしゃるように、石油化学工業全般として原料価格割り高、これが国際競争力に響く問題として非常に深刻になっておるのも事実でございますから、むしろそういう意味で、幅の広い意味で、原料価格をできるだけ国際価格に近づける、その方策の一環としていかなる形がいいか、今後検討してまいるということで、先ほど申し上げました産構審においても議論を続けておる状況でございます。
  29. 島村宜伸

    島村委員 石油化学工業としては、ナフサを直接輸入したいという希望を強く持っているようであります。この点についてどうお考えか、見解を承りたいと思います。
  30. 野々内隆

    野々政府委員 御承知のとおり、現在、石油化学工業原料用のナフサにつきましては一石油精製企業との個別契約に基づきまして、その代理商として石油化学原料の共同輸入株式会社、ペフィックと申しておりますが、これが輸入を行っておりまして、その実績もすでに上がっております。  ただ、このペフィックを通ずる輸入につきましていろいろ問題があるという御指摘もございますので、石油政策石油化学工業政策との兼ね合いということも考える必要があると思いますので、このあたりも考えまして所要の検討を行ってまいりたいと考えております。
  31. 島村宜伸

    島村委員 これは要望だけにとどめますが、石油化学工業原料備蓄コスト負担を軽減してほしいという要望が出されたわけでありまして、この点についてはひとつ検討していただきたいと思うわけであります。  第三の問題として伺いたいのは、輸入の適正化問題であります。  この問題につきましては、アルミ製錬あるいは石油化学、塩ビあるいは肥料等の各業界から特にその要望が出されたわけであります。特にこの点につきましては、通産大臣と大蔵大臣との話し合いについて、いろいろの現状と見通し等について承りたいわけでありますが、まず第一には、アルミについては当面関税割り当て制の導入は緊急課題でありますが、現在関税率審議会で検討中であると承っているわけであります。この結論はいつごろ出るのでありましょうか。
  32. 田中六助

    田中(六)国務大臣 御指摘のように十一月の二日、関税率審議会にこの輸入割り当て制度、TQ制度を答申をお願いしておりまして、鋭意結論を出すようにお願いしておりますが、いまのところいつということははっきり言えませんけれども、できるだけ早くしたいということでお願いしております。特に大蔵大臣に対しましては、私どもはこのTQ制度、輸入割り当て制度につきましてはぜひとも実現方をお願いしているわけでございまして、いま事務当局を通してこの点についても関税率審議会とは別個にいろいろ折衝しておりますが、何しろこの関税率審議会の議を経なければなりませず、その結論を急いでいただくようにお願いしておる段階でございます。
  33. 島村宜伸

    島村委員 この問題につきまして、大蔵省はC重油の関税割り当て制という代案を提示するなど、政府内で意見が必ずしも一致していないというふうに承知しておるのでありますが、この際両省の考え方を伺いたいのであります。最初に大蔵省意見を伺いたい。
  34. 長富祐一郎

    ○長富説明員 ただいま、アルミ構造不況対策につきましてはいろいろな御提案、御指摘のとおりいただいておりまして検討中でございますが、私どもの方といたしましても、その対策の一つといたしまして、エネルギーコストの軽減が何か図れないかということで、そういう案も検討をお願いしておるというのは事実でございます。
  35. 島村宜伸

    島村委員 通産省の方もひとつ。
  36. 野々内隆

    野々政府委員 C重油につきまして、現在関税割り当てがございますが、これは公害対策上必要な低硫黄のC重油の輸入ということを目的にいたしまして、国内で生産が不足しております分について輸入をいたしておりますが、これが、アルミ製錬業の対策ということでアルミ地金の関税割り当て制度の代替案になるかどうかという点につきましては、石油政策上もいろいろ問題がございますので、私どもとしては、この代案ということでは問題が多過ぎると考えております。
  37. 島村宜伸

    島村委員 これはアルミ地金だけでありませんで、燐安についても関税割り当て制の活用について業界要望が強いわけであります。この点についても両省の見解を承りたい。
  38. 真野温

    真野政府委員 燐安は御承知のように化成肥料の主要原料でございまして、特に最近、海外における燐安価格と国内における燐安価格の差から日本の燐安製造業が国際競争力が低下してまいりまして、輸入の増大を招いておったのは事実でございます。このため、現在産構審で、燐安を含めまして、いわゆる化学肥料委員会をつくりまして、そこで検討しておる段階でございますけれども、最近、実は燐安の輸入動向につきましては非常に落ちついてまいりまして、とりあえずの問題としては特に問題を生じていない状況でございます。ただ、基本的に、そういうアンモニアの価格差からくる国際競争力の差というのはございますので、これはむしろ全体として化学肥料工業をどう扱うかという一環として検討してまいりたいと思いますが、現在のところそういう状況で、検討を要する段階ということでございます。
  39. 島村宜伸

    島村委員 次の点については要望のみにとどめますが、アルミについて、六十年時点で七十万トンの開発輸入が設定されているわけでありますが、報道によると、海外プロジェクトの一部で計画の中断、延期等が見られるなど、海外投資が必ずしも円滑にいっていない面があるというふうに聞いて心配しておるわけであります。また、海外投資の円滑化のためには輸銀の融資の拡充を図る必要があると思うわけでありますが、この点についてひとつ積極的に支援体制を組んでいただきたいと希望をいたしておきます。  第四の問題につきましてお伺いいたします。これは、過剰設備の処理問題等についてであります。  この点につきましては、アルミ業界紙パルプあるいは塩化ビニール、肥料及びフェロアロイ等からの要望が大きいわけでありますが、まず第一は、過剰設備の処理等の構造改善の計画的な推進に当たって、それが円滑に行えるよう独禁法の弾力的運用を望む声が各業種から強く出ているわけであります。この点につきまして、通産大臣、そして公正取引委員会委員長に御答弁をいただきたいと思います。
  40. 橋口收

    ○橋口政府委員 産業界の一部、ことに素材産業の分野におきまして多くの企業が構造的な不況に直面しておられますことは情報として承知をいたしておりますし、また、先週の当委員会島村委員会におきましても、関係業界の代表から幾つかの陳情ないし要望が出されたことは、立ち会っておりました事務局から報告を受けておるわけでございます。  一つの対策といたしまして、業界の過剰設備の共同廃棄の問題があるようでございますが、この点につきましては、まだ具体的計画の内容につきまして承知をいたしておらないわけでございますし、また相談も受けていないというのが現状でございます。  ただ、今後業界から過剰設備の処理の問題等につきまして具体的な計画の推進について相談がありました場合には、その業界の実情を十分把握いたしました上で、独占禁止法の不況カルテルの活用等、同法の許容する範囲内で適切に対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございまして、この問題に対しまして、公正取引委員会は決して無能でも無理解でもないということを申し上げておきたいと思います。
  41. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私どもといたしましては、公取委員長がいま公取の見解を申し述べましたが、十分公取と相談をしながら、この設備の合理化に対する推進はトラブルのないように、公取と相談の上、着実に進めていきたいという考えでございます。
  42. 島村宜伸

    島村委員 次に、いわゆる特安法でございますが、五十八年の六月末に期限切れとなるわけでございます。構造不況業種の現状から見まして、これを延長するか、またはこれにかわる新法の制定が必要と考えるのでありますが、いかがでありましょうか。
  43. 植田守昭

    ○植田政府委員 ただいま、基礎素材産業につきましては産構審でいろいろと各業種ごとに検討を進めているわけでございますが、私どもといたしましては、そういった線に沿いまして今後いろいろと対策考えていきたいというふうに思っております。  お尋ねの特安法の延長なり新法制定の問題につきましても、そういったいろいろな対策あるいは審議の経過を見まして、今後いろいろ検討していきたいというふうに考えております。
  44. 島村宜伸

    島村委員 その際、特に設備処理等の構造改善資金の援助措置の拡大が望まれているわけでありますが、この点、政府はどうお考えでありますか。
  45. 植田守昭

    ○植田政府委員 御案内のとおり、現在の制度ではいわゆる債務保証ができるようになっております。これを今後どうしていくかというふうなことにつきましては、先ほども申しましたように、現在個々の業種に即しましていろいろ検討がなされておりますので、そういった現実のニーズ等も踏まえながら考えていきたいというふうに考えております。
  46. 島村宜伸

    島村委員 いろいろ御質問等申し上げましたけれども、好況産業も、すぐれた基礎資材を提供する素材産業に支えられているわけでありまして、また同時に、地域経済と雇用に与える影響等も配慮するならば、相当思い切った支援体制が組まれなければならない。その意味では、可及的速やかに、できるものから直ちに措置されたい。同時に、五十七年度予算あるいは税制にも、これらのことが十分反映されるように強く要望するわけであります。  そこで、いままでの質問といささか趣を異にするわけでありますが、実は最近中小企業者の方々との話し合いの中で、下請代金の支払い期日が不当に引き延ばされているという苦情をよく聞くわけであります。支払い遅延防止法第二条の二には、「下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。」とされているわけでありますが、現実には、親事業者が下請事業者から納付した製品の検収を意図的におくらせて、そして下請代金の支払いをおくらせているという現実があるようでございます。この点については厳重に監視をしていただきたいと同時に、これらに対して何か厳しい罰則等を設ける必要があるのではないかと私は考えるのでありますが、この点についてできれば通産大臣の御答弁を承りたいと思います。
  47. 橋口收

    ○橋口政府委員 下請代金支払遅延等防止法は公正取引委員会の所管の法律でございますから、私の方からお答えを申し上げたいと思います。  いま先生がおっしゃいましたように、親事業者が検収を意図的におくらせて支払い期日を延ばすという問題は確かにあるようでございます。それからまた、支払い期日が来ましてから現金による支払いということは要請されておりませんから、ある程度長い期間の手形を出すという問題もございます。手形の期間につきましては、業種によって区別をいたしておりまして、六十日手形と三カ月手形、この二つに分かれておったと記憶いたしておりますが、いずれにしましても親事業者の支払い遅延の問題等につきましては、従来から中小企業庁と共同で監視を続けておるわけでございますが、最近のような情勢もございますから、さらに監視を強化いたしたいと思います。  ただ、罰則の問題につきまして御指摘がございましたが、この法律は、政府による勧告を応諾しない場合には、応諾しない企業の名前を明らかにすることによって社会的な制裁を加えるということが法律の内容になっておりますから、そういう意味で罰金とかあるいはその他の罰則という制度は設けられておらないわけでございまして、これは実定法のたてまえから申しましてそういうことになっておるわけでございますが、同時にまた、下請法の制定の趣旨等から考えまして、その辺のところか妥当ではないか、こういう立法府の御判断があるのではないかというふうに考えております。
  48. 島村宜伸

    島村委員 この問題につきましてはいろいろ話をよく聞きますものですから、きのう改めてこういう下請企業の方々にお集まりいただいて実情を聞いたわけです。  それが、たとえば元請会社の経営内容が極端に悪くて、一時的な経過措置としてそういうことがなされるならばまだ理解ができるわけでありますが、意外なことに財閥系の企業にこういうことをする企業が結構あるわけでございまして、一たびその問題を表に明かせば、その下請企業は永久にその道を閉ざされてしまう、そういう大変むごい実態があるようでございます。この点については特に目を光らせていただいて、場合によってはこの法律を遵守させるために改めて法改正を考えるくらい積極的な姿勢をお願いする次第であります。  質問を終わります。
  49. 野中英二

    野中委員長 植竹繁雄君。
  50. 植竹繁雄

    ○植竹委員 私は、中小企業問題について質問いたしたいと思います。  最近の景気は、当初予測に反しまして、内需減退、輸出型、外需依存型となって、事業間の格差が開き、構造不況業種はもちろん、中小企業におきましても大変厳しい状況にあります。全事業所五百八十万のうち九九%を占める中小企業、またそのうち約八〇%を占める小規模企業は、従業員約手三百九十万を抱えまして、この苦しい状況の乗り切りに懸命の努力をしております。  そこで、まず小企業等経営改善資金融資制度、いわゆるマル経資金の金利の七%を七・五%に引き上げるという記事が先般の朝日新聞に出ておりますが、この点どうなのか、確認したいと思います。大蔵省
  51. 日向隆

    ○日向説明員 いま委員の御指摘になりました記事については私ども承知しておりませんが、私どもといたしましても、委員が御指摘になりましたように、小企業等経営改善資金が小企業者の経営の改善であるとか、ないしは比較的劣位に置かれております資金調達の状況を補っているという点で、過去において相当の実績なり効果なりを持っているということは十分評価しておるわけでございます。したがいまして、こういう厳しい財政事情にあることも委員が御理解いただいているとおりでございますが、こういう状況下におきまして、いま委員が御指摘になった点を十分念頭に置いてこの問題に対処していきたい、こういうふうに考えております。
  52. 植竹繁雄

    ○植竹委員 ということは、引き上げないということですか。
  53. 日向隆

    ○日向説明員 先般、北側委員の同様の御趣旨の御質問に対しましても、私が現下の問題といたしましてお答えしたところでございますが、将来の問題といたしまして、いま委員が予算編成との関係においてお尋ねになられるといたしますれば、予算編成につきましてはこれからまさに本格化しようという段階でございますので、委員が御指摘の点を念頭に置いてこれからこの問題に対処していくという点で御理解をいただきたいと思います。
  54. 植竹繁雄

    ○植竹委員 また、小規模企業共済制度がありますが、これは来年の三月で五年目を迎えるわけです。いま見直し時期に来ておりますけれども、この点はどういう御見解でございましょうか。これは中小企業庁に承りたい。
  55. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 小規模企業共済制度につきましては、経営基盤の脆弱な小規模企業の廃業、老齢等による退職等によりまして小規模企業事業主等がその収入の道を断たれたときに備えまして、雇用者における退職金や失業給付などにかわるものとして、また新しい仕事をするための準備資金といたしまして、その拠出によりまして相互扶助の精神に基づく共済事業を行うものでございますが、昭和五十六年八月末までの加入累計は百三十万件と、広く普及をいたしております。  この小規模企業共済制度の掛金及び共済金等の額につきましては、所得水準の変化や物価の変動等による必要資金額の変化等に対応していけるよう、少なくとも五年ごとに見直すことが法律上義務づけられております。昭和五十七年度はその見直しの時期に当たっておるわけでございます。  中小企業庁といたしましては、この機会に当たりまして、小規模企業者のニーズに応じた小規模企業共済制度の改正を行うべく、現在鋭意検討を行っているところでございます。  現在考えております主な改正点は、掛金月額の上限額を、前回昭和五十二年の制度改正以降の消費者物価の上昇による共済金の実質価格の減少等に対応いたしますために、現行の三万円から五万円程度まで引き上げること、さらに疾病、負傷または災害によりまして、経営の安定を図るための資金を必要とする共済契約者に対する特別貸付制度を新たに設けることにいたしたいと思っております。  また、この小規模企業共済制度の基盤を強化いたしまして、その事業の円滑な運営を図るため、昭和五十七年度の予算につきましても所要の要求を現在行っているところでございます。よろしくお願いを申し上げます。
  56. 植竹繁雄

    ○植竹委員 次に、中小企業の承継税制の問題についてお尋ねいたします。  この点につきましては去る四月十五日の商工委員会でも私が御質問申し上げましたが、何といっても中小企業事業継続のためには、市場性がない株式を適正な価額で評価されるようにしなければならない。また、個人事業者の相続財産の七〇%を占める土地というものは高騰をしておりますので、そういう意味においては非常に課税評価が過大になり、大きな障害となっているわけです。  つきましては、先般質問いたしましたが、一として、中小同族会社の非公開株式については収益還元方式を導入するということが必要であるという旨の御回答をいただきました。また、中会社の株式評価に適用されている類似業種比準方式を改める。二としまして、二百平米までの個人事業用または居住用土地についての評価減が二〇%に現行なっておりますのを七五%にする、こういうような御提案を中小企業庁はされると回答をいただきましたが、大蔵省見解をお聞きしたいと思います。大蔵省、お願いします。
  57. 内藤彰

    ○内藤説明員 相続財産の評価は、現在相続税法によりまして時価によるということになっております。  現行の株式の評価の問題でございますが、中小企業実態に即しまして、会社の規模の大小に応じて適正な時価を評価できるというふうな現行方式であるというふうに私ども考えております。  御指摘の純資産価額方式でございますが、これはいわゆる小会社の株式についての評価でございます。この評価に当たりましては、現在土地の評価を相続税の評価額、これは実際の売買例よりは固目に評価しておりますが、これによっております。また、その評価額が帳簿価額を超えます場合には、その超えます分の半分以上、五六%というものを減額する、控除するという方式をとっておりまして、このように現在の小会社に対する評価でもかなりの配慮を加えているところでございます。  先生御提案の収益還元方式でございますけれども、これにつきましては、収益というもののとらえ方にいろいろな考え方がございます。また、この収益を資産価値、いわゆる株式の評価でございますが、これに還元していく場合の利益率をどういうふうにするか、業種によっていろいろとございます。さらに、土地などの資産を保有しているその大小に関係なく高い収益を上げているという企業もあるわけでございます。こういった非常にむずかしい問題を抱えているわけでございます。  なお、サラリーマンのような、収益を生まない自分の住まいとする家屋、土地といったものを保有している方々の相続の場合とのバランス、その辺のところとの均衡を考えてみますると、現在の純資産価額方式というものは、先ほど御説明いたしましたようにかなり配慮を加えておるところでございまして、負担の公平という面から見ましても、この方法によることがよいのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから次の問題でございますが、現在相続財産の中で二百平米までの土地につきましては、居住用、事業用を問わず二〇%の減額をしているわけでございます。これについてはやはり、相続をされた方々が、いわば最後の自分の生活なり事業のための資産ということで、これの処分にはなかなか大変であるということから、このような評価の減額措置を講じているわけでございますが、先生御提案のようなさらに大幅な評価の減ということになりますると、私ども時価評価という原則のもとで執行させていただいておりますので、一体どこまで、その辺の問題がなかなかむずかしい問題であろうかというふうに考えておるわけでございます。
  58. 植竹繁雄

    ○植竹委員 その問題は、日本経済を支える中小企業でございますから、この承継税制というものは本当に真剣になって考えていかないと今後大変なことになるので、特に大蔵省にはこの点を十分検討していただきたいと要望しておきます。  続きまして、昨今大型店が進出しまして、地元小規模小売商との間で紛争が発生し、非常に経済的な、社会的な問題となっております。  この問題は、現実に消費者におきましても、滋賀県あるいは群馬県の前橋市その他でもって大型店進出に反対しておるわけでございます。というのは、大型店に金を落とす、そうしますと、本店にその金が吸い上げられ地元に還元されないということで、地元の発展を阻害することになる。したがって、消費者としましてもこれは捨てておけないと大型店進出に反対をしておるのでございます。  この大型店の出店問題を審議する商業活動調整協議会、いわゆる商調協というものがこの出店問題に非常に大きな影響を及ぼすわけでございますが、現在商調協の委員が実質上、大型店と商売上いろいろな関係にあった場合に、地元の小売商の意見を反映しないでこれを進めていくということが往々にして見られるわけでございます。そして、これが紛争の原因にもなっておりますので、この協議会の倫理の確立が必要だと思うのでございます。そういう意味におきまして、この委員を選定する基準その他を明確にして権威あるものにするためには、この商調協を法制化する必要があると思うのですが、この点、長官の御意向を伺いたいと思います。
  59. 植田守昭

    ○植田政府委員 ただいまお尋ねがございましたように、商調協につきましては、小売業者あるいは消費者、それから学識経験者というふうな構成で行っているわけでございます。私どもは、この委員の選定につきましては、通産局とも十分に連絡をとらせながら慎重にやっているつもりでございまして、一般的にはかなりそれなりの状況で進んでいるというふうに考えているわけでございますが、お尋ねのように最近非常に厳しい状況にございまして、いろいろと商調協につきまして改善すべきであるという御意見が出ていることは十分承知しております。  それで、そういう状況を踏まえまして、私どもといたしましては、現在大型店の懇談会を各方面の方にお集まりいただきまして進めておりまして、この中でこの問題に非常に精通した学識経験者にいまいろいろと審議願っておりますので、そういった中でこの商調協のあり方につきまして今後いろいろと検討させていただきたいというふうに考えております。
  60. 植竹繁雄

    ○植竹委員 また、大型店の問題と絡みまして、地方では生協、農協の問題も大きくクローズアップされております。この点に対するお考えを聞きたいと思います。  また特に問題なのは、面積五百平米以下の商調法第一条の二の三項に規定されておりますいわゆるダミー規定、このダミーというものが、これまた非常に地域を乱すもととなっておるようでございまして、いろいろ紛争になっておるわけですが、これが商調法第十五条第一項によって生じた紛争を、十六条の二の規定によって調整し、さらに十六条の三で調整勧告をなし、また十六条の五、十六条の六によって命令措置をとることになった場合には、結局は罰則規定というものが二十二条の三百万以下の罰金ということで終わっているわけです。大型店法のように一年間の停止というものはないわけでもって、抜け道というものは幾らでもあるわけでございます。したがいまして、この大型店対策行政指導ということによってはどうしても実際上抜け道がつくられていくということを考えますならば、絶対に小売商のためには届け出制をやめて許可制が必要じゃないかと思いますが、この点お伺いしたいと思います。
  61. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 最初に、生協、農協問題についてお答えを申し上げます。  生協、農協の行っております小売活動につきましては、先生御指摘のようにきわめて重要な問題だと認識をしておりまして、通産省といたしましては、員外利用規制の徹底、出店紛争の未然防止等につきまして、従来から、所管をいたしております厚生省、農水省と緊密な連絡をとりつつ適宜対処しているところでございますが、最近さらにこの問題が取り上げられておりますので、その徹底を図りますために、生協に関しましては各都道府県知事に対しまして七月二一三日付で、厚生省と中小企業庁の連名通達を発しまして、管下組合連合会に対する指導の強化等を図りますとともに、八月十日付で、生協法第十二条第七項に基づきまして、通産大臣名により各都道府県知事に対し、員外利用状況についての報告を求めたところでございます。また、農協に関しましては、農水省の指導によりまして、全国農業協同組合中央会において都道府県農業協同組合中央会に対しまして七月三十日付で、農協購買店舗の適切な運営について依頼書を発したところでございます。  なお、現在、先ほどから説明がございますように、大型店問題懇談会を開催しておりまして、生協、農協問題につきましてはいかようにするかということで検討いたしておるところでございます。  さらに、五十七年度予算要求におきまして、現行大型店進出対策融資制度の対象に、生協、農協店舗の出店によります影響を受ける小売業者を追加するということで、対応の円滑化に資するための予算要求をいたしておるところでございます。
  62. 植竹繁雄

    ○植竹委員 私としては、最後に、大型店に対する小売店について通産大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  63. 田中六助

    田中(六)国務大臣 大型店の進出問題については、大きな社会問題になっておりまして、私どもも、もちろん強い関心を持っておるわけでございます。いま懇談会を通じてこれらの問題を審議する段階になっておりまして、私どもは、許可制というようなことも含めまして、この問題を十分検討し、社会の要請にこたえていきたいというふうに考えております。
  64. 植竹繁雄

    ○植竹委員 ありがとうございました。
  65. 野中英二

    野中委員長 関連質疑の申し出があります。鳩山邦夫君。
  66. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 大型店舗の問題を考える場合に、都心で起きております重大な問題は、酒類販売免許との関係でございます。酒類免許というような形で小売酒屋を保護することの当否は別といたしまして、大型店が免許を獲得すれば、付近の酒屋さんの売り上げが激しくダウンをすることは全く明らかなことでございます。したがいまして、原則として大型店には酒の免許を与えない方がいい、そういうふうに私ども考えておりますが、大蔵省はいかがお考えでありましょうか。  それから、まことに嘆かわしいことでありますが、イタチの最後っぺ方式がありまして、税務署長さんがやめる寸前に免許を与えて、退官後にその大型店の税務顧問に就任をするというような例がありますが、今後そういうことが絶対ないように、再度厳重に注意をしていただきたいと思いますが、いかがでありましょうか。  そして、これは長官にお尋ねをいたしますが、大型店問題懇談会で、この大型店舗と酒類販売免許の問題についてぜひ議題に加えていただきますようにお願いをいたします。
  67. 岩瀬多喜造

    ○岩瀬説明員 酒販免許制度の運用の問題についての御質問でございますが、酒販免許制度の運用に当たりましては、この制度の目的でございます、酒税の安定的な確保に支障がないか否かについて検討をするということは当然でございますけれども、消費者利便という点にも配慮をしているところでございます。  スーパーとか生協の大型店については、ただいま先生から御指摘のございましたとおり組織も大きいわけでございますし、一般的に販売力も大きいということで、周辺店に与える影響が大変に大きいということが予想されるわけでございます。したがいまして、これらに小売酒販免許を付与する場合には、周辺の小売酒販店に与える影響につきまして十分に慎重な検討を行っているところでございます。  それから、署長がやめる寸前にというふうなお話でございますが、これらについては、私どもは、行政について適確な運用がなされているというふうに信じております。万一そういうような点がございましたら、御指摘をいただきまして、今後姿勢を正していくということを検討したいと思います。
  68. 植田守昭

    ○植田政府委員 大型店問題懇談会でございますが、この懇談会におきましては、今後の基本的なあり方を検討しておりまして、個別具体的な品目をどうするというふうなことを取り上げることは予定しておりません。ただ、業種別調整という問題がいま持ち上がっておりますので、そういう観点からの業種別の問題をどうするかということは審議の対象になろうかと思いますが、個別具体的な品目をどうするかということは、これはすぐれてまた酒の問題でもございますので、大蔵省等のお考えもいま述べられたところでございますが、当面、大型店問題懇談会では、きわめて細分化された品目を取り上げるということは考えておらないのが実情でございます。
  69. 鳩山邦夫

    ○鳩山委員 終わります。
  70. 野中英二

    野中委員長 清水勇君。
  71. 清水勇

    ○清水委員 最近、この春あれだけ堀田ハガネ事件が問題になったにもかかわらず、通産省を含めて政府部内に、武器輸出三原則の緩和を図る、こういう動きが出ていることを、私はきわめて遺憾だと思います。しかし、きょうはそのことに触れる時間を持ちませんので、わが党としては、近く武器輸出等の禁止に関する法律案を国会に提出をいたします。同時に、きょう午後になると思いますが、いま申し上げた点に関連をして、政府に対し質問主意書を提出する、こういう段取りにいたしておりますので、通産大臣も十分留意をしておいていただきたい、こういうことをまず申し上げておきます。  さて、きょうはクリーニング業界と葬祭業界に起こっております当面する諸問題についてお尋ねをしてまいります。  まず最初に大臣の所信を尋ねたいのでありますが、わが国の景気は依然として低迷から脱し切れないでいる。大企業に比べて競争力の弱い中小企業がそのためにますます困難に直面をし、残念ながら中小企業庁等の努力にもかかわらず倒産傾向が増大の一途をたどっておる、こう思います。原因は幾つかあると思いますけれども、たとえば消費者の大宗と言われる勤労者世帯の実質賃金の目減り、そこから来る消費購買力の総体的な落ち込みというものが、たとえば住宅建設を減退させ、あるいは小売商業にしてもサービス業に対しても、全体として消費購買力の停滞という形になってはねっ返って、これか中小企業の環境をいよいよ厳しいものにしているのではないか、こう思うわけです。こういう状況であればなおのこと、政府は、経営基盤の弱い中小企業の強化のために十二分な手だてを講じなければならないにもかかわらず、最近中小企業事業の分野へ大企業者の参入が非常に露骨に見受けられるようになっております。いまも大型店のことが指摘をされている。  そこで、何といってもこの際政府は、大企業者のそうした中小企業分野への参入等に対しては適切にこれを抑制する、こういうことがなければならぬわけでありますし、同時に、小規模事業者の共同化を強め、あるいは近代化等の努力に対する助成を強め、そういうことを通しながら全体として中小企業。なかんずく小規模事業者の大企業に対する競争力を確保する、こういうことがなければならぬと思うわけでありますが、その点について大臣の所信をまずお聞かせをいただきたいと思います。
  72. 田中六助

    田中(六)国務大臣 中小企業問題につきましては、実は私も就任以来一生懸命やってきているつもりでございますけれども、御指摘のように倒産件数がふえておりまして、十月も千五百八十四件、九月が千四百二十二件ですが、いずれにしてもなかなか減らない。前年同期よりもちょっと減っておりますけれども、それは大した問題じゃなくて、むしろ倒産防止相談室に駆け込む率というのはちょうど倍ぐらいになっておるのです。  そういうような状態でございますから、いかにいろいろ苦しんでおるかということが私ども如実にわかるわけでございまして、この対策については、先ほど前の委員から指摘されておりました下請代金支払遅延等防止法とか倒産防止相談室、あるいは体質強化資金で強化をするとか、あるいは先ほど御指摘のように組合の協業化、あるいは公共事業、官公需の分割発注というようなこと、あの手この手でいろいろやっておるわけでございます。  したがって、私どももそれらのことが功を奏するような方針で対策を進めておりますけれども、なかなか思うようにいきませず、これは全体的な景気の停滞について対処しなければならないということから、実は十月二日の経済対策閣僚会議におきましても、私どもこの点を特に強調し、内需の刺激それから不況産業対策というようなこと、四つの柱のうち二つはそういうようなことで進めておりまして、多少の設備投資で大企業は明るさを示しております。中小企業設備投資でというふうな指数は多少出ておりますけれども、逆に倒産件数などもふえておりますので、そういう点で、総合的な対策を打ち立てていかなければならないということで鋭意施策を進めておるという段階でございます。
  73. 清水勇

    ○清水委員 十月初めから、特に景気対策に関連をして中小企業対策政府が、とりわけ中小企業庁等を通じて力を入れているということについては、私も承知をしております。だが、いま大臣が言われるとおり、なかなか実効が上がらないということでありますから、いよいよ中小企業、なかんずく小規模事業者の厳しい環境に対応する温かい手だてを講じていかなければならないときを迎えていると思うのです。  ところが最近、そういう内需落ち込みという状況の中で、限られたシェアを前にして、たとえばサービス業等で実質的にすでに市場支配力等を通じて大企業であると目されるものが特定のグループを結成し、事業協同組合を設立し、さらに力を強大なものにして中小企業、なかんずく小規模事業の分野へ進出を図る傾向が見受けられるわけであります。  中小企業庁長官は御存じであるかどうか、たとえばクリーニング業界で、さわやかグループというものがございます。これがこの春、厚生大臣事業協同組合の認可を申請しているということがあるのでありますが、内容を御存じですか。
  74. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 担当のところでは十分検討いたしておるようでございますが、私のところではそのような企業グループ——かつては小企業であったようでございますが、これが企業組合をおつくりになって、その企業組合で一部の方が非常に力をお持ちになる、そしてその企業組合が分割をした個々の企業になったわけですが、さらに、その中心になられる方の指導で新たな協同組合を結成して、精力的に主要な需要を開拓したいという動きがあることを承知いたしております。
  75. 清水勇

    ○清水委員 ところで長官、この春申請が出されたにもかかわらず、この事業協同組合を認可するという気配が、私の承知をする限りでは一向にうかがわれないと言うことができるのでありますが、それはいわゆるさわやかグループなるものが、中小企業等協同組合法の趣旨に沿わない疑いが、あるいは疑念が持たれているからではないのか、こんな感じがするのでありますが、だれか認識がありましたらお答えください。
  76. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 実は中小企業等協同組合が備えていなければならない基準がございます。その原則の一つに、「特定の組合員の利益のみを目的としてその事業を行ってはならない。」という要件があるわけでございます。これは、先生御存じのとおりでございますが、協同組合が中小企業の相互扶助を目的とする組織であることから、当然備えていなければならないものでございます。  ところで、この組合設立認可は、所管大臣であります厚生省に出されておるわけでございます。厚生省では、そこらの実態につきまして、いま種々検討をいただいていると私どもは聞いております。したがいまして、このどちらがどうということは私ども申せませんが、ただいま申しましたような一般的な解釈がございますので、その特定の者の利益か、組合全体の相互扶助になっておるか、ここらの点について十分御検討をいただいているものだと認識をいたしております。
  77. 清水勇

    ○清水委員 それでは、私の得ている情報で、あんまりさわやかでないのでありますが、しかし「さわやか」と称するグループの実態について、参考までに申し上げたいと思います。  実は、資料の一部は事前に中小企業庁の方へ差し上げてありますから見ていただいていると思いますが、この協同組合設立発起人の筆頭である株式会社「きょくとう」というのがございます。代表は牧平年廣氏で、資本金は五百万円、従業員が八人ということで申請をしているようであります。  実はこの極東化学は、同一地区に同じクリーニング専門の八つの工場を持っております。この企業の同一性あるいは一体性というものについてちょっと考察すると、たとえば代表者がいずれも牧平年廣氏であるばかりではなく、私、ここにその写しを持っております登記によりますと、たとえば資料で申し上げている極東化学ドライ博多、極東化学ドライ日佐、極東化学ドライ原ショップ、極東化学ドライ西部、極東化学ドライ中央ショップなどなど、いずれもが五十三年四月一日に設立をされている。この辺からいっても、これらの八工場は「きょくとう」と一体のものである、こういうことは明瞭であろうと思うのです。  そこで、たとえばこの「きょくとう」を含めて九工場の資本金をトータルいたしますと、約一千八百万円になる。従業員数は約百五十人に上る。信用調査機関の資料によりますと、年間の売上高は約八億円を超えている。文字どおり大企業者とみなされる性質を持っている。  また同時に、極東化学と一緒に発起人になっております中園化学、これも中園化学有限会社中園金洋氏、これが代表者となる十二の工場を保有し、資本金はトータルをすると約二千二百万円、従業員は約二百人、全く先ほどの極東化学と同様な実態を持っており、年商は実に十三億に達している、こういう状況でございます。  そこで、まず、厚生省見えていますか。——厚生省に聞きたいのですけれども、全日本クリーニング環同組合連合会、ここの資料によりますと、同連合会の加入組合員三万三千店だそうでありますが、一店当たりの平均従業員数は一丁八人、年間の売上高は実にわずかに九百五万円、こういうふうに伺っているわけでありますが、この数字に誤りがあるかどうか、お聞かせください。
  78. 田中治彦

    田中説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘の数字は、五十四年八月に全国クリーニング環境衛生同業組合連合会が組合員に対して調査をされた数字でございまして、私どももその数字をいただいております。
  79. 清水勇

    ○清水委員 そうしますと中小企業庁長官、いま厚生省では一般的、平均的な従業員なり売上高なり間違いない、こうおっしゃっておられる。その内容は非常に零細性を持っている。そういうときに、先ほど私が指摘をしたたとえば極東化学だとか中園化学、こういうものの実態というものは、これを果たして小規模事業者、つまり事業協同組合を設立する、つまり組合員たる資格をあるいは要件を有しているという小規模事業者と一体見られるのかどうか、その辺の御見解をちょっとお聞かせ願います。
  80. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、既存の組合の皆様方が非常に小規模の営業活動で一生懸命やっていただいているということは、いま先生の数字でよくわかります。さらに、新たに市場を確保されようとする企業が、その小規模の皆さんよりは大きな規模で大々的におやりになろうということもよくわかりました。ただ、新たに出ようとする方が中小企業であることは、要件的には認められるのではないかという気がいたすものでございますから、そこらで恐らく所管庁の方では種々御苦労をなさっているのではないかという気がいたすわけでございます。明らかに大企業でございますれば、協同組合の設立等をそう簡単にお認めになることではないというところで、そこらの実態調査をいま鋭意お進めになっているものだと私どもは認識をいたしておるわけでございます。
  81. 清水勇

    ○清水委員 どうも腑に落ちない御答弁なんだけれども、たとえば、長官、信用調査機関のさまざまな資料なりあるいは熊本県なり福岡県なりというような当該地区の業界の一般的な見方、分析といったようなものを通して明らかになっていることは、たとえば極東化学なりあるいは中園化学なりは、まさに両県内に比肩し得る企業は全く存在をしない、まるでけた違いの市場支配力ないし競争力をすでに有している。これは、どうも微妙なのは、中小企業という形態をとっている限りむずかしいというようなことをおっしゃるけれども、私は、現実の問題として、これは明らかに擬装なんじゃないか。そこで、たとえば九工場なりあるいは十三工場なりというものをトータルをすれば、これはだれが見たって実質的な大企業であるということはもうわかり切っているわけなんですね。  そこで、いまるるお尋ねをしているような常識的なクリーニング業界実態の中で、超大手企業とも言うべきこの両者が中心となっていわば事業協同組合の設立をする、こういうことが一体果たして当を得たものであるのかどうなのかということを私は長官に聞いているわけなんです。
  82. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 同じようなことを繰り返して大変恐縮でございますが、組合の設立認可とか運営の監督は法で定められておりまして、都道府県知事またはその事業を所管する大臣が行うということになっておりまして、個別具体的な問題につきまして、いま事業所管大臣等が判断を進めているところでございます。ただ、私ども一般論として述べることができますことは、特定の組合員のみの利益のために組合が設立されるというようなものであってはいけませんし、そこらの実態を十分に把握した上で、組合制度趣旨に沿ったものであるか否かを慎重に判断してほしいというのが私ども、いまの考え方でございます。大変恐縮でございますが、お許しをいただきたいと思います。
  83. 清水勇

    ○清水委員 確かに私の聞き方も、このさわやかグループはどうだと言われると、ここでいいの悪いのというようなことをお答えになるというようなことは非常にできがたいことでありましょうし、特に主務大臣が厚生大臣ですからそうでしょうが、私は、それでは、いまちょっと長官も触れられた一般論といいましょうか、一般的に事業協同組合の認可についての考え方、基準、こういうものについて、もうちょっと聞かしてもらいたい。  実は、先ほども長官がちょっと触れられているのですけれども、これは昭和三十年ですね、「中小企業等協同組合法の一部を改正する法律の施行に伴う組合に対する認可制度の取扱について」という、都道府県知事あての通産局長通達、中小企業庁長官もかんでおられるわけでありますが、この中で、たとえばこういう一項目がありますよ。先ほど趣旨は長官も触れられているのですけれども、「組合員の極めて一部の者のみが組合の事業を利用するであろうことが明瞭であり、または、発起人もしくは代表理事のみの利益のために組合を設立しようとすることが明瞭であって、組合は単に名目的な存在となる可能性が強いと認めるとき。」は認可しない、こういうことが言われているわけですね。そういう点は一体どういうことを意味なさるのでしょうか。
  84. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 先生御指摘のように、昭和三十年の八月二十五日付で、通産局長と都道府県知事あてに中小企業庁長官からこのような通達が出ております。     〔委員長退席、辻(英)委員長代理着席〕  その中で、表書きに「不当不良な中小企業等協同組合の設立を未然に防止し、協同組合として相応しい健全な組合を育成強化せんとするものであって、中小企業の組織化を抑制しようとするものではないから、その運用に当っては慎重を期する必要がある」と書いてありまして、先生御指摘のように、ハのところに「組合員の極めて一部の者のみが組合の事業を利用するであろうことが明瞭であり、」等々のことが書いてございます。  法律につきましても、法律は中小企業者が相互扶助の精神に基づきまして協同して事業を行うということが目的でございまして、一部の特定の者のために利用してはならない、「特定の組合員の利益のみを目的としてその事業を行ってはならない。」ということが明文規定で書かれております。  したがいまして、先生御指摘のとおりでございますので、私どもこの法の条文、さらには通達のこの中身に本件が該当するや否やということについて、所管の厚生省と検討いたしておるというところでございます。厚生省もまだ最終決定いたしておられないというのが現状ではないかと思うわけでございます。
  85. 清水勇

    ○清水委員 長官、これはまだ差し上げてない資料なのだが、でかい字だからそこから見えるかもしれませんが、いま私が触れた「極東化学に見るその理念と組織」というものを極東化学自身が出しておるのです。その戦略構想として、最終的には、このさわやかグループを通じ事業協同組合の認可を受けて年商一千億の集団をつくる、こう言っているわけですよ。今日、クリーニング業界は全国シェアが約四千億と言われている。実にその二五%のシェアをこれが占有しようとしておる。みずから言っておるわけですよ。ですから、こういうことを考え、かつまた事業協同組合の認可を受けてたとえば商工中金の資金、国の制度資金なども大量に融資を受け、これをグループの店に、たとえばいま計画で示されているのは、一店当たり一千万円ずつ転貸をするなどというようなことを事業目標にしているような状況があるわけでありますから、私はここで答えを求めません、十分組合法の趣旨に照らして後世に悔いを残すことのないような判断を示し、これについての対応をしてもらいたい。そういう点で幾重にも慎重でなければならない、こう思うのでありますが、厚生省どうですか。
  86. 田中治彦

    田中説明員 本件の協同組合の設立の件につきましては、御指摘趣旨を十分体しまして、通産省の御意見もお伺いしながら慎重に検討いたしたいというように考えております。
  87. 清水勇

    ○清水委員 そこで、公取見えていますね。公取にもちょっと聞いておきます。  中小企業等協同組合法の百七条、排除措置の規定であります。一々読む必要はないと思いますから読みませんけれども、実質的に組合員である事業者が小規模事業者でないと認めるときは、これは組合から脱退をさせるというような排除規定ですね。現に私の承知をしておるところでも、この規定によって協同組合から排除をされた事業者が幾つか事例がございますね。  そこで、念のために聞いておきたいのですけれども、この規定の適用というのは、一般的に公取としてはどの辺に判断基準を置いておられるのか、お聞かせください。
  88. 相場照美

    ○相場政府委員 中小企業等協同組合法百七条は、先生いま御指摘のとおり、組合員たる事業者でその常時使用する従業員が百人以上、これでもって実質的に小規模の事業者でないと認める場合に、一定の手続きをとりましてその事業者を組合から排除することができるという規定でございます。  御指摘のとおり、私ども昭和五十年に実は十三件ほど、これは全部生コン製造業者の組合でございますが、そこから排除した事例がございます。実はこの規定を用いましたのは、この事件の際だけであったわけでございますが、この点につきましてはいろいろ考えなければならぬ要件が非常に多いかと思いますが、具体的な例として当時判断いたしました基準といたしまして、当該排除の対象になります事業者、大規模事業者、これはセメントの場合には外におりますセメント製造業者であったわけでございますが、セメントの人的なあるいは物的な、資本的な関係の有無とかその色の程度、こういったものを判断いたしました。それから、排除の対象になります業者の当該業界における地位の強さといいますか、相対的なものでございますが、そういったもの、あるいは当該組合員の市場における影響力というようなもの、こういった三点ほどをその際の判断要素としたわけでございますが、おおむねこういうことが考えられるのではないかというふうに考えております。
  89. 清水勇

    ○清水委員 ところで、これも公取にお尋ねいたしますが、たまたまあなたの方の福岡地方事務所に熊本県と福岡県のクリーニング環同組合の方から、さわやかグループの不当廉売なり不当表示なりについて報告の申し出があったと思いますが、もしあったとすれば、その後どのような措置をとっておられるのか、お聞かせをいただきます。
  90. 相場照美

    ○相場政府委員 御指摘のとおり、ことし十月初めごろにそういったお申し出がございまして、現在検討中でございます。検討中だと申しますのは、実は非常に料金が低いということで、これが不当廉売になるのではないか、不当廉売の件に該当するのではないかというお申し出でございます。従来、不当廉売に該当するかどうかという点につきましては、価格状況、あるいは他の事業者に対する影響の度合い、あるいはそれがコストを下回っているものかどうか、あるいは不当廉売といいますか、その価格が低いことについて特段の理由があるかどうか、こういった点についてさらに慎重に検討する必要があるというわけでございますが、そういった意味も含めまして、現在その申告事案につきましては鋭意検討中でございます。
  91. 清水勇

    ○清水委員 さて、これは厚生省に聞いた方がいいのかもしれませんが、私は、ここでいわゆる中園化学のやっているホープグループというのでしょうか、あるいは極東でも同じようなことをやっているわけですが、要するに総括をしてさわやかグループなるものが、取次店システムあるいはボランティアチェーン網といったようなものを通じて、業界の常識ではとうてい考えられない低料金で、したがって、いま公取にも法違反ではないかというようなことで訴えられるというような経過があるわけでありますが、そういう安売りをやっている。安くてよい仕事をしてくれるならば消費者のためにメリットがあると言えるのかもしれませんが、しかし、現実に私が得ている消費者からの苦情、役所でつかんでおられるかどうか知りませんが、そういうのを見ると、たとえばワンピースを出したけれども汚れが落ちていないとか、あるいは生地が大変傷んでしまったとか、あるいは背広を出したら上君が変色してしまったとか、そのほか脱色をしたとかなんとかという数々の苦情が実は環同組合の方へ出されてきている。これでは、安かろう悪かろうと言わざるを得ない。消費者のために、むしろその利益が侵害されていると見なければならない。ところが、そういう安売りがまかり通るわけであります。しかも力があって、強大な資金力なり市場支配力なりを持っているものですから、どうしてもこれが一軒一軒の旧来の一般クリーニング店では競争にならない、経営が圧迫をされる、営業を投げ出さざるを得ない、店を閉めざるを得ない、こういうような深刻な影響を受けているというふうに承っております。  そこで私は、業法もつくられ、かつまた公衆衛生上という観点も持たれ、消費者利益の保護という立場で厚生省は業界指導にこれまで適切に当たってこられているのだろうと思うのでありますが、しかし、間々こういう事例が最近は顕著になってきている。こういうものに対して一体どうなさる気なのか、あるいはどういうふうにこれから対処考えられていかれるのか、所信のほどを承りたいと思います。
  92. 田中治彦

    田中説明員 お答えいたします。  クリーニングの事故につきましては、先生御指摘のように、国民生活センターの統計を見ましても、確かに年々その苦情の件数がふえておるところでございます。その原因等につきましては、詳しい資料がないのでわからないわけでございますけれども、このクリーニングの事故の未然の防止につきましては、先生御案内のとおり、クリーニング業法に基づきまして、営業者に対しましてクリーニング所の衛生水準の確保を義務づけておるところでございます。またクリーニング所には、公衆衛生や洗たく技術についての専門的な知識を持っておりますクリーニング師というものを配置いたしまして設置することになっておりまして、そのような措置を講じておるところでございます。  しかし、現実には、ただいまの御指摘のように年々事故が多くなってきておるというようなことでございます。これにつきましては、営業者の責任といたしまして、そういう事故が起きましたときには速やかな対応が望まれるわけでございまして、全国クリーニング環境衛生同業組合におきましても、これらの紛争解決のための指針としてクリーニング事故賠償基準というようなものを定めるということで、業界としてもこの問題に真剣に取り組んでおられるところでございます。  このような事故の対策につきましては、いま申し上げましたように営業者の自主的な、かつ速やかな対応というのが第一義的には望まれるわけでございますけれども、その原因がクリーニング所の衛生状態によって起きておるというようなことでございますれば、従来にも増して保健所の衛生監視の強化というようなことで対処をしていかなければならないというように考えておるわけでございます。
  93. 清水勇

    ○清水委員 クリーニング問題の最後にちょっと大臣に申し上げて、所信をしかと承りたいのであります。  たまたまこの問題は大臣のお国の中でも大きな問題として起こっているわけですから、格別に留意をしてもらわなければならぬと思っているわけですが、正直言いまして、最近、たとえば去年の予算委員会でも私、お尋ねをしたことがあるのですけれども、九州化学などというものは、みつばチェーンというものを通じて全国一の市場占有を図ろうといったようなことでやっている。いま厚生省の方から、消費者の利益を守るために、つまりお客さんに迷惑を与えないために、業界業界自助努力をして一生懸命やっている。しかし、この種の業者というのは全部アウトサイダーなんです。だから、業界自助努力では掌握のできないものなんです。そこに一つの問題がある。ですから、さわやかグループなるものの事業協同組合の認可というようなことがあってはならないと私は思うのです。とにかく額に汗して、それこそ営々辛苦、長い間地域のお客さんと密着しながら商売をされてきているこういう小規模事業者の育成を国は国の法律や制度を通じ十分に守っていく、あるいはそこで行われる共同事業等について積極的に助成をしてやる、こういうことでなければならぬと思うわけで、平生大臣もそういう御所信を述べておられるわけですけれども、この問題についてどういうふうにお考えいただいているか、お聞かせ願いたい。
  94. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私どもは、あくまで中小企業者、特に零細企業者に対する配慮というものをやっていくのが当然でございますし、そういう観点からこの問題も等閑視はできないというふうな考えを持っております。いずれにしても所管が厚生省でございますし、私どもは抜かりなく厚生省と十分相談をして、私どもの立場からこの零細企業を中心とした中小企業者を守る、御指摘がありますように守らなければならないという観点からこれに対処していきたいと思っております。
  95. 清水勇

    ○清水委員 次に、冠婚葬祭互助会にかかわるいろいろの問題が最近起こっておりますので、お尋ねをしてまいりたいと思います。  まず最初に、現在、割賦販売法で冠婚葬祭互助会として営業の許可を受けている企業は全部で何社でしょうか。そして同時に、契約世帯数なり前受け金残高はどのくらいに上っているか、お聞かせください。     〔辻(英)委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 植田守昭

    ○植田政府委員 現在までに許可されております業者数は、合計で三百九十三でございまして、許可業者数が三百四十七、いわゆるみなし業者数が四十六ということになっております。  契約世帯数は、現在の状況を申し上げますと、互助会の契約口数、これが全国で約一千百八十七万でございます。世帯数といたしましては、おおむね平均口数が二口という程度でございますから、それから推計いたしますと、約六百万世帯弱ということになろうかと推定しております。  なお、前受け金につきましては、全国で現在約三千七十億円程度となっております。
  97. 清水勇

    ○清水委員 ところで、最近互助会をめぐる問題が、たとえばテレビあるいは新聞で取り上げられる。私が承知しているその角度というものは、消費者利益の保護という観点であるやにうかがわれているわけでありますが、通産当局としてはこれをどういう角度で受けとめておられるか。つまり、どういう問題があって、何が指摘をされているか、お聞かせください。
  98. 植田守昭

    ○植田政府委員 互助会につきましては、ただいま申しましたような数で、かなり全国的に浸透しているわけでございますが、消費者に非常に関係の深い問題でございますので、これを法律で規制の対象にいたしまして、現在、消費者保護の観点から行政を行っているわけでございます。  いろいろと問題が指摘される場合をわれわれも承知しているわけでございますが、たとえば一例を申し上げますと、消費者が将来受けるべき役務の内容につきまして、契約の内容と実際の施行内容とがどうも違う場合があるのではないかとか、あるいは解約の要件が問題がないかどうか、あるいはまた途中で解約する場合の問題もそうでございますが、そういった問題等々ございまして、さきに国民生活審議会からも報告が出されておりますので、私どもといたしましては、そういったことを十分認識しているつもりでございまして、これにつきましては従来も行政指導してまいりましたが、今後ともその辺につきまして努力をしていきたいというふうに考えております。
  99. 清水勇

    ○清水委員 いま審議官もちょっと触れられましたが、ここに経企庁が主婦連に委託をした調査報告書がございます。また、こっちには、ことし七月三日に国民生活審議会消費者政策部会が出した中間報告があります。  これらを見ると、結局こういう点が問題ではないかと私は見ているのです。一つは、互助会の名称が紛らわしい。二つ目は、契約どおりのサービスがない。三つ目は、期待したサービスを受けようとすると追加料金を取られて結局割り高になる。四つ目は、解約が自由にできない。この辺に問題点が集約をされているのではないかと私は思いますが、違ったら違ったと言ってください。  さて、そこで公取や通産省の消費者相談室というのがあるわけですが、かなり最近相談がふえているのではないか、あるいは相談があるのではないか、私はこう思いますが、どっちからでもいいですが、あったら傾向をお知らせ下さい。
  100. 植田守昭

    ○植田政府委員 相談はふえているというふうに聞いております。
  101. 清水勇

    ○清水委員 また、私が四点にわたって言った、大体これが問題点じゃないか、その点はどうですか。
  102. 植田守昭

    ○植田政府委員 おおむね、そういったような点が主な問題点であろうかと思います。
  103. 清水勇

    ○清水委員 それでは、以下、いまの問題点について逐次お尋ねをしてまいりたいと思います。  まず第一に、名称の問題ですね。  大体営利を目的にしている企業なのに、終戦直後の特別な事情下では別として、今日なお互助会と言ったり、あるいは、さすがに昨今都道府県、市などというものを冠する互助会はなくなりましたが、しかし、なお県民互助会だとか市民互助会だとか、そういう呼称を冠している企業がございます。だから、この主婦連の調査によれば、明らかな民営であるにもかかわらず公営だと思っている人が一割以上もある。多分公営ではないかと思った、疑問を持っておられる方を含めて二割近くが民営だと思っていないわけです。ですから、この点はやはり非常に問題じゃないか。特に、どういうわけか静岡、愛知、三重といった東海地方の場合には、調査の対象になった六割の人が互助会を公営だと思っているのですよ。そこにそもそも間違いのもとがあるのです。公取は五十四年二月十六日に、いわゆる改善指導という立場から警告を発したということがございます。そこで、いずれにしてもこの際、名称についてどうするのだ、このことを承りたいと思います。
  104. 植田守昭

    ○植田政府委員 いま御指摘のような名称が非常に紛らわしい、たとえば本来株式会社なんでございますが、名称に県の名前をつけたり市の名前をつけるというふうなことがございまして、そういった名称があたかも公的機関であるかのように誤認されるという点が問題ではないかというふうなことが言われてきたわけでございます。それで、私どもといたしましても、その問題性を認識いたしまして、五十四年に名称の適正化につきまして指導してまいりまして、それ以来かなりわれわれといたしましては、事態は改善されてきているというふうには思っているわけでございます。  たとえば一つの数字を申し上げますと、昭和五十一年あたりには、公営的なふうにとられかねない名称の互助会というのが九十以上あったわけでございますが、現在ではそれが十ぐらいに減ってきているのじゃないか。たとえば何とか県営とかそういうことでございますが、しかし、こういった問題はあくまでも消費者保護の観点からさらに徹底させるべき問題と認識しておりますので、今後ともその適正化につきまして指導の徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  105. 清水勇

    ○清水委員 審議官おっしゃられるように、速やかに紛らわしき名称はこれを排除する、こういうことで指導を求めておきたいと思います。  次に、さっき申し上げた所定のサービスが得られない、このことについてお尋ねをいたします。  互助会との契約をする、その契約を通じて一定のサービスを期待する。ところが所定のサービスが得られないと答えた方が、トータルすると約九割に達しているのです。契約どおりのサービスを得られたというのは約一割にすぎない。これは私は問題だと思うのですよ。特に追加料金が高過ぎる、こういう答えをされた消費者が非常に多い。私は、これは一面で言えば公取の問題にもなるが、不当表示にも当たるという問題だと思いますよ。  ここに、見せろと言えばお見せすることにやぶさかではないのだが、ある互助会のやつがありますよ。ここにりっぱな写真がついています。月に千円なり二千円なりの掛金を五年間積んでもらえばこれが施行できると言っている。しかし、実際はできない。これをやってもらうためには追加料金を払わなければならない。これは明らかに不当表示と言わざるを得ない。正直言えば、主婦連の調査によると約八割の人が追加料金を支払った、こういうふうに言っております。どういうふうにお考えになりますか、公取からも御意見を承りたい。
  106. 植田守昭

    ○植田政府委員 先ほどもちょっと触れましたが、表示と現実の役務の提供との間に食い違いがあって問題を起こす、これはこの種の問題につきまして非常に重要な問題でございまして、私どもこの点につきましては大変重要な問題でございますので、いろいろと指導をいたしております。  たとえば五十五年の七月におきましても通達で、役務表示の適正化につきまして指導をしているところでございます。この点につきまして五十四年ごろから役務表示検討委員会というものをつくりまして、そこでいろいろ検討した結果を踏まえまして通達を出したわけでございます。表示する場合にはこういうふうな形でやれということも通達の中に例などを示しまして、冠婚葬祭の際に行います社会通念的に必要なものをたとえばセットといたしまして、そのセットに対応した表示ということを指導するとかいたしまして、この表示がいわゆる不当表示にならないようにということは強く指導しているわけでございます。こういった点、この事業の一つのポイントの点でございますので、今後とも十分徹底していきたいと思います。
  107. 相場照美

    ○相場政府委員 御指摘のとおり、パンフレット等で表示しております提供すべきサービスの内容を実際に積立金で得られるようにそれが表示されている場合、そしてそれが実際には追加料金を払わなければ提供できないというような場合には、これは不当表示に該当するおそれがございますので、景品表、小法違反の可能性がございます。  私ども、実は昭和五十二年の四月にある冠婚葬祭互助会につきまして、先ほど先生御指摘の名称の問題もございましたが、同時に、そういった提供されるサービスの内容についての不当表示だということで、同様な事例につきまして警告いたした事例もございます。  以上でございます。
  108. 清水勇

    ○清水委員 先ほど審議官から、前受け金は今日約三千七十億だ、こう言われましたね。これはあくまでも加入者からの預かり金、そういう性質のものですね。ところが、現実にはこの前受け金の運用で特に大手互助会などを中心に、たとえば京都の互助会が北海道に進出する、やれ九州に進出をする、見せろと言えばお見せするが、これは一般の週刊誌に出ている広告ですけれども、全国各地に事業展開を行っている大手互助会がある。これはどうも私は腑に落ちない。この種の資金の運用については、つまり安全保障の意味で二分の一は積み立てるというような制約は無論あります。が、その他については一体どうなっているのか、何か運用についての厳しい制約があるんだろうと思いますが。
  109. 植田守昭

    ○植田政府委員 先ほども申しましたように、前受け金の残高が約三千億あるということでございます。これにつきましては、いまも御指摘がございましたように、万一の場合に消費者に対しまして不測の損害を与えないようにということで、それに充てるための保障措置を法律で行っておりますことは御指摘のとおりでございますが、その前受け金の運用につきましては、株式会社組織である互助会がどう運用するかということでございまして、通常は、たとえば銀行預金もございますし、あるいは証券の運用とかあるいは設備投資とかいうふうなことが行われているわけでございますか、この辺につきましては原則的には企業の経営ということで行われているわけでございます。私どもといたしましては、これが消費者へのサービスにつきましてもちろん問題を起こさないようにということで今後とも指導していかなければならないと思っておりますが、前受け金は形としてはそういうふうな形で運用されているということになっております。
  110. 清水勇

    ○清水委員 この点は、私はいまのお答えではどうも納得がいかないのですね。しかし、きょうは時間がありませんから、これはまた別途、御相談と言ってはおかしいか、ただしてまいりますから含んでおいてください。  さて、その前受け金の一部に、消費者が利用権を放棄するというのでしょうか中断をするというのでしょうか、そういう中断をして事実上浮き金になっている掛金も含まれているんだろうと私は思いますね。幾らになるか知りませんが、伝え聞くところによると百億とか百五十億とかいうふうに言われておりますが、そういうものがある。  さて、そこで、自由に解約ができないということについて私はお聞きしたいんですけれども、たとえば通産省の標準約款が示され、これを各互助会がモデルにして約款をつくっている。その約款ではどういう場合に解約ができるかというと、たとえば転出をした、あるいは生活保護を受ける身になった、この二つだけが挙げられて、それ以外は自由解約かできない。非常に制約的規定というように私は思うのです。これは、もともと割販法の適用を受けて互助会が営業許可の対象になる。そもそもその意味するところは、消費者利益を保護するという立場なんですね。だから、たとえば消費者である加入者が、当初期待をしたサービスを受ける必要がなくなった、こういう場合には当然民法六百五十一条がありますよ。両当事者間の自由解約という規定がありますね。そういう点から見ても、必要がなくなった以上は自由に解約ができるというふうに改めるのがあたりまえだ。国民生活審議会の中間報告にも、明確にそのことが指摘をされている。  ところが現状はどうなっているかというと、一つは契約の終期がない、終わりの定めがない。解約できるのはこれとこのときたけ。ですから、加入者は意に沿わない契約に、オーバーに言えば生涯おつき合いをさせられる、拘束を受ける、こういうことになっているわけです。そこで、解約ができないなら、やむなく先月までは掛金を払っていたが今月から掛金をやめる、掛けない。そして中断する。利用権が放棄される。互助会の方はその分いただきだ。これではちょっと問題がある。そういう場合には、少なくとも、民法等の規定に基づいて必要な手数料を支払って、それを通じて加入者が自由に解約できる、こういうふうに約款を改定しなければならない。それには通産省が、一定の標準約款を示しておられるわけですから、そのもとを改めなければならない、私はそう思うのですが、どういうふうにいまお考えになっておりますか。
  111. 植田守昭

    ○植田政府委員 解約条項でございまして、これにつきましてはいま御指摘のような点が標準約款にも書いてございまして、また先ほどのレポートにも書いてあること、これは私も承知しております。これにつきましては、この互助会の歴史的ないままでの慣習なり伝統というものもあるいはあるのかもしれませんが、そういったような運用がいまなされている。恐らくそれにつきましては、たとえばこの種の事業につきまして解約を無条件に認めるとか、あるいはまた余りに出入りが激しいというふうなことの問題性というものも、一方にはあるのかもしれません。  しかし、御指摘のように、また余りに解除要件を制限的にするということも消費者の観点からいかがかということは私も考えまして、これにつきましてはできるだけそういったものは、たとえば弾力的に運用するとかいうふうに指導するとともに、今後、標準約款自体の再検討も含めまして業界指導してまいりたいというふうに考えております。そういったことで、今後ともこの点につきましては御指摘趣旨も踏まえまして、どういうふうに持っていくかという業界指導に当たりたいと思っております。
  112. 清水勇

    ○清水委員 念のために聞いておきますが、そうすると、通産当局としても標準約款の見直しについて検討していく、こういうふうに理解をしていいですか。
  113. 植田守昭

    ○植田政府委員 標準約款の検討も含めまして今後業界指導してまいりたい、そう考えております。
  114. 清水勇

    ○清水委員 だんだん時間がなくなってまいりましたからはしょって申し上げますので、御答弁の方も、そのつもりでひとつお願いをいたします。  そこで、四十七年の割販法改正の際に許可営業の対象になったわけでありますが、条件整備がままならずで、当初経過措置が設けられ、一定の期間、みなし互助会としての営業が認められてきている。私も、もうみなし互助会なんかないのだろうと思ったら、さっきお話しのように四十六あるのだ、こういうことなのでありますが、法改正後八年にも九年にもなるにもかかわらずまだ経過措置が続いているなんというようなことは、まことに常識では考えられないことでありますから、内閣法制局にもちょっとその辺の判断を求めた経過もあるわけでありますが、まあまあいずれにしても余り穏当ではないし、常識的ではない。  そこで、一体このみなし互助会をどうするつもりなのだ。おととしでしたか、当時の佐藤消費経済課長が、ことしのうちにも何とか処理をする。しかし、あれからもう二年有余になる。ぼくはこの際、消費者保護という立場からいっても許可に値しないようなみなし互助会がいつまでも存続をする、そういうことは問題なので、これをどうするかという所信を端的に承りたい。
  115. 植田守昭

    ○植田政府委員 ただいま御指摘のような経緯がございまして、みなし許可業者というものがまだ四十ちょっと残っているわけでございますが、これにつきましては法施行後、私どもは私どもなりに業界をできるだけ強力に指導いたしまして、当初三百を超えたものを漸次減らしてきまして、現在四十幾つになったということでございます。これにつきましては、今後とも業界をよく指導いたしまして、できるだけ早くこれがなくなるように努力したいというふうに考えているわけでございまして、これにつきましては十分、経営内容の改善あるいは法人への移行等につきまして強力な指導をしてまいりたいと思っております。  なお、現在こういった業者につきましても、保証金の積み立てとかそういったことはすべて許可業者と同じようにやっておりまして、その点では消費者に対する手当てというものは厳しく同じように行っております。御指摘の点十分踏まえまして今後とも強力に指導したい、そういうふうに考えます。
  116. 清水勇

    ○清水委員 実は、先ほどもちょっと触れたのですけれども、最近大手互助会が全国的な進出を展開している。これを受けて地方の中小互助会あるいは葬祭専業業者、そうした皆さんの経営が大変に圧迫をされ、深刻な事態を迎えている。これは皆さん御承知のとおりだと思う。この大手互助会は、先ほども私が触れたような前受け金という巨額な資金を、普通の場合には銀行から高い金利の銭を借りなければならぬわけですけれども、有利な資金を使って全国展開をする。  そこで、私は考えるのですけれども、この春、中小企業分野法も手直しをされた。その意味するところは、中小企業の経営分野、事業分野に大企業の参入が著しい、これをどっかで規制をし、調整をしなければならない、こういう角度であったわけでありますから、私は、たとえば明らかに大企業である大手互助会が地方進出をして中小互助会なり地方の零細業者等に影響を加える場合には、分野法上の調整の対象にする、これは当然なことだと思うわけです。  そこで、たとえば葬祭業者の組合が分野法に基づいて調査なり調整なりの申し出をした場合、当然大企業である大手互助会なるものはその対象となると思うのですけれども、どうもその辺が明瞭でないものでありますから、この機会に承ることにしたいと思います。  それから、調査、調整等の窓口はどこが担当されることになるか、このことも承りたいと思います。
  117. 植田守昭

    ○植田政府委員 事柄の当該案件が分野調整法の要件を満たすということになれば、当然それは対象になるべきものというふうに考えます。  なお、所管は私ども産業政策局でございます。
  118. 清水勇

    ○清水委員 実は本年八月に、全日本葬祭業協同組合連合会から通産大臣あてに要望が出されております。その中では、具体的な大手互助会の企業名も付して、これこれが全国展開をしており、その影響が著しい、あるいは著しい影響を受ける危惧がある、こういうことから、その抑制について善処方を希望されているわけですね。  そうすると、いまのような観点調査ないし調整の申し出をすれば、通産局が窓口になってこれを進める、こういうふうに理解をしてよろしいですね。
  119. 植田守昭

    ○植田政府委員 いわゆる大手互助会と言う場合に、個々の企業体のグループという場合も俗称されているようでございます。したがいまして、その大手と言う場合の中身を詰める必要はもちろんあろうかと思います。先ほど申しましたように、分野調整法の要件を満たせばそれに応じて、必要に応じた所要の対処をしていくということは当然でございます。
  120. 清水勇

    ○清水委員 いずれにいたしましても、葬祭業の場合には、特別に自助努力をしてシェアを拡大するというようなわけにはいかぬわけですね。ですから、そういうところへ力の強いものが参入をすれば、当然のこととして中小業者が圧迫、影響を受ける、こういうことですね。ですから、そういうことを念頭に置いて十分対処をしてもらいたい。  そこで、先ほど来審議官から、互助会問題についていろいろな問題があるからこの際見直しながら、検討すべきものは検討しながら行政当局としてもその指導を強めていきたい。これは結構なことでありますから、ぜひ抜本的に、いま抜けているような問題点等については補完をしてもらい、いやしくも消費者利益を損ねないようにする、あるいは全国展開といったようなことを通して既存の中小業者等を痛めつけないように、これまた調整について配慮をしていく、こういうことが必要だし、そういうことをおやりになるといま言われているから、私はそうしていただきたいと思います。  そこで最後に、これは皮肉でなしに聞いていただきたいのですけれども、今日互助会をめぐっていろいろ問題の多いときに、行政指導を強化しなければならぬというときに、実は、八月まで通産の現職課長であった方が、九月一日付で互助会の連合会組織へ、全互協というところへ専務理事で転出をされている。そういうことはありますね。私は、この天下りの場合には、たくさん問題があって監督を強めなければならぬから、この際中からもしっかり指導を強めよう、そういう善意に立ってその方を送り込んだものだと、深謀遠慮のほどを感嘆しているわけなんでありますが、そういうものだと私は理解をいたしますが、相なるべくはそういう方向でこれからも通産がその運営等に十分目を光らしていただくことを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  121. 野中英二

    野中委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十二分休憩      ————◇—————     午後一時六分開議
  122. 野中英二

    野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上坂昇君。
  123. 上坂昇

    ○上坂委員 中小企業事業団の理事長がおいでになっておりまして、きょうは非常にお忙しい日程だそうでありますから、きょうの質問に関連するものとして、先にお伺いをしたいと思います。  小売商業の近代化、高度化を図る場合に、中小小売商業振興法第四条の認定に基づいて、高度化資金、これが貸し付けられるということになっているそうでありますが、これについては手続としてはどういう手続をとってやるのか、それから認定をしたりなんかするときのいろいろな条件とかシステムについて、これは理事長の方からでも結構ですし、また通産省の当局からでも結構ですが、ひとつ説明をいただきたいと思うのです。
  124. 斎藤太一

    斎藤参考人 小売商業店舗共同化事業と申しますのは、中小の小売商業者が事業協同組合とかあるいは協業組合をつくりまして、一つの店舗に入居をいたしまして、いわゆる寄り合い百貨店あるいは寄り合いスーパーあるいはショッピングセンターというものを営もうとするものでございます。これによりまして、ワン・ストップ・ショッピングという形で店舗が集積されますので顧客を引きつける魅力が出まして、大型店に対抗していこう、こういうことになるものでございまして、商店街の近代化事業と並ぶ中小小売業者の近代化対策の一つになっております。  この場合の要件は、組合員の数が五人以上であることということと、それから事業参加者の七割以上が小売商業かサービス業を営む中小企業者でありまして、かつ、半分以上が小売商業を営む中小企業者であることということと、物品販売をします床面積が二百平方メートル以上であること、これが小売商業店舗共同化事業として高度化資金の対象にする場合の要件でございます。  そのうち、特に特定小売商業店舗共同化事業と申しますのは、ただいま先生の御指摘のございました、中小小売商業振興法に基づきまして通産大臣の認定を受けました店舗共同化計画に基づいて実施する事業でございまして、特にその事業に参加する方の大部分が小規模事業者であるということが要件になっております。  具体的に申し上げますと、参加者の五分の四以上が従業員五人以下の小規模事業者であることということが要件でございます。  特定の対象になる場合とそうでない一般の店舗共同化の場合の違いと申しますのは、一般の場合には事業所要資金の六五%が融資比率になっております。それから金利が二・七%でございますけれども、ただいま申しました特定事業ということになりますと、所要資金の八割が融資されまして、かつ無利子というように、非常に優遇された条件になるところが特定の場合の違いでございます。
  125. 上坂昇

    ○上坂委員 聞くところによりますと、これはいまお話のありましたように県の方に提出して、県がこれに対して調査をし、認定を下すと言うのかどうか認定をして、それを通産省の方に上げる、そしてそれが事業団の方にいって、事業団の方としてもまた調査を加えて、そこで最終的に金額と融資をする時期を決める、こういうふうに聞いておりますが、それでよろしゅうございますか。
  126. 斎藤太一

    斎藤参考人 お話のとおりでございまして、この高度化資金の融資の窓口は一応県が窓口になっております。県の資金と私ども事業団の資金とを合わせて貸し付けるという仕組みをとっておりますので、まず県の方に融資の申し込みと申しますか、計画の提出がございます。それで県は、その計画の提出を受けますと、まず診断をいたします。その場合に、その事業計画が、現在は十億円でございますが、昨年までですと総事業費が五億円を超える大型の計画になりますと、県の職員の方と事業団の担当の職員と一緒になりまして現地に行きまして、計画診断というものを行います。これが通常の場合でございますが、特に小売商業の店舗共同化の案件の場合には、大型店舗法の適用がございますので、県にお話が出ましてからまず大型店舗法の調整を済ましたものについて現地の診断を行うというようにいたしておりまして、大型店舗法による調整が終わることを診断の前提にいたしております。  それで、この診断をいたしまして、その結果、計画の内容につきましてより成功するようにいろいろ改善の勧告というものをいたします。それは県からなされるわけでございます。その改善の勧告に対しまして改善措置がとられる、あるいはとられる見込みがつきましてから正式の借り入れ申し込みということになりまして、あと貸し付けの内定、さらには貸し付けの決定、さらには資金の交付といったような段取りで進んでまいります。
  127. 上坂昇

    ○上坂委員 具体的に問題をお聞きしたいと思います。  いま、岩手県の北上市及び江釣子を取り巻いている岩手中部ショッピングセンタープラザというものの出店の問題で、現実には訴訟が行われております。この岩手中部ショッピングセンターから高度化資金の融資要求が出ていると聞いておりますが、これについて、現在どんな経過になっているか、御説明をいただきたいと思うのです。
  128. 斎藤太一

    斎藤参考人 先生のいま御指摘の案件は岩手県の江釣子ショッピングセンターのことかと存じますが、これにつきましては、大規模店舗法によります通産大臣の勧告が五十五年の一月、昨年の一月十二日になされております。そこで、一応大店法によります処分が済んだというふうに考えまして、昨年の九月九日に、県と私ども事業団と合同で現地の計画診断を実施いたしました。それに基づきまして、ことしの三月十一日に、県から診断勧告というものをお出しをしております。  したがいまして、あと、この勧告による改善措置がとられますと、実際に借り入れの申し込みということに進んでまいろうかと思いますけれども、ただいままでのところ、借り入れ申し込みはまだ提出はされておりません。したがいまして、診断勧告をいたしてそれに対する対応をされたという段階でございます。
  129. 上坂昇

    ○上坂委員 もう一点お伺いします。  もちろん借り入れの申し込みをしてないわけですから決定も何もできないと思いますが、たとえば借り入れの申し込みが行われて決定をすれば、どういう時期にいわゆる融資をするのか、この点が第一点。  それからもう一つは、たとえばその際、裁判とかなんとかの問題がいろいろあって、いわゆる係争中あるいは紛争中というふうに見られた場合は、そういうことを抜きにしてこういうものに融資をするのかどうか。  実は融資をする場合でも、そうした大店舗に問題がないことがはっきりしたときに初めて融資をするという内規のようなものがあるのだと聞いております。その辺を含めて御説明をいただきたい。
  130. 斎藤太一

    斎藤参考人 まだ借り入れ申し込みが県の方から事業団の方に参っておりませんので、これからの問題になろうかと存じますけれども、本件は昨年の一月にすでに大規模店舗法に基づきます処分としての大臣勧告が出されまして、すでに一年以上も経過していることでもございますし、このショッピングセンター計画が現地の商業の近代化あるいは地域社会の発展上の意義等々を判断いたしまして、計画の内容については、申請が出てくれば慎重に検討をいたすつもりでおります。
  131. 上坂昇

    ○上坂委員 決まったものはいつ出すことになるのですか。
  132. 斎藤太一

    斎藤参考人 申請が出てまいりますと、通常、そう時間がかからずに貸付決定までまいろうかと存じます。
  133. 上坂昇

    ○上坂委員 店舗が完成をした時点で融資をするというようなことを聞いていたりいろいろなことを聞くものですから、完成をした時点で出すのか、完成しなくても融資の決定があればそのまま出すのか、あるいはまた、もう一度お聞きしますが、いろいろ紛争があるような場合には保留をして、そうした紛争のようなものがおさまった時点において出すというようなやり方をいままでしているのかどうか、この辺について御説明いただきたい。
  134. 斎藤太一

    斎藤参考人 実際の工事と融資の時期の問題でございますけれども、貸付決定をいたしましてから事業に着手していただくというのが通常でございます。  ただ、案件によりましては、たとえばショッピングセンターでございますならば、開店の時期の予定があるとか非常に工事に時間がかかるというような場合に、貸付決定まで待っておりますと開店を予定している時刻に間に合わなくなる、こういうケースにつきましては、県の了解を得まして、事業者の方が事前に着工されるケースも間々ございます。それにつきましては、申請が出ましてから審査をするということでございますけれども、事前に着工することにつきまして一応県の了解をとっておられますれば、申請が正式に出ましてから、審査いたしました結果、あらゆる要件に該当しておるということになりますと、工事の終わったものについて後から融資をするというようになるものもございます。(上坂委員「紛争があるような場合は」と呼ぶ)  ショッピングセンター等の場合は、大規模店舗法によります通産大臣の決定が出ますと、一応それでそういった面の問題は終了したというように考えまして、手続は進めることにいたしております。本件につきまして裁判等の問題が起こっておることは承知はいたしておりますけれども、これはこれといたしまして、一応申請が出てくれば手続は進めてまいりたいというように考えております。
  135. 上坂昇

    ○上坂委員 理事長、どうもありがとうございました、それじゃ、次に移ります。  昭和五十六年の十月八日付で産業政策局長名で、日本百貨店協会、日本チェーンストア協会、日本ショッピングセンター協会及び日本セルフサービス協会、それぞれの会長あてに、大規模小売店の届け出の自粛についての要請が出ております。この要請を行った理由について御説明をいただきたいと思うのです。
  136. 植田守昭

    ○植田政府委員 最近の大型店出店の増加に伴いましていろいろと問題が起きてまいりまして、各方面から非常に関心を集めているところでございます。こういった事態を踏まえまして、私どもといたしましては、関係者意見をよく吸収して、そこでこれからの考え方、持っていき方というものを打ち出したいという考えから、大型店問題懇談会を設けまして、年内を目途に結論を得べく検討を始めているところでございます。  ところで、いまそういった検討を進めているわけでございますが、その方向づけが決まるまでの間というものが一つ非常に問題になるわけでございまして、その間空白の状況に置くということは何かとまた問題、混乱を助長するもとになりますので、十月八日付で関係の方面に、問題を慎重に取り扱うよう指導通達を出したという経緯になっております。
  137. 上坂昇

    ○上坂委員 懇談会を開くようになったのは、もう手のつけられないような紛争が全国各地に起きてきたからだというふうに私は認識せざるを得ないわけです。そんなことはもう三年も前からこっちが指摘していたことなんですね。それをいままで通産省はやらなかったわけです。やらなかったというのは、大店舗側に立ってどんどんこれを進出させる方向に指導してきたという実績があるからだと私は解釈せざるを得ないのであります。  そこで問題なのは、いま、いまごろと言うわけにはいきませんけれども、いまごろなんと言うと、じゃやめますかと言われると困るから、いまごろというのは言わない。まあ、いまごろでも、とにかくやってもらったらこれはありがたかったとこっちは思わざるを得ないわけでありますが、現在大型小売店の出店に対して凍結宣言を行っている、いわゆる地方都市の段階で百三十八に達しておるわけであります。こういう事態に対して通産省はどんなふうに考えておられるのか、御説明をいただきたい。
  138. 植田守昭

    ○植田政府委員 仰せのとおり、いま全国で百数十に上るいわゆる凍結宣言が出されております。凍結宣言を出している主体は幾つかございますけれども、そういった状況にございます。このことは、この大型店問題が全国的にいろいろと問題になっている、あるいは紛争を起こしているということを示す一つの徴候でございますし、私どもも小売業の環境が非常に厳しいものにあるというふうに認識しているわけでございます。したがいまして、こういった状況も踏まえまして、先ほど申しましたような懇談会もつくりまして、今後の方向づけを出していきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  139. 上坂昇

    ○上坂委員 通産省は、こういう事態は全国の小売商業あるいは地域経済を受け持っている商店街、そういうところのいわゆるあり方、これからの行き方というものに対して非常に危険な状態に来ている、これは大変な状態になっているのだ、こんなふうになってくるからどうも富が集中をしてしまって、実際問題として地域経済が悪くなって不景気が深刻になるのだ、こういうようなとらえ方を一体しないのかどうか、どうしてまたできないのか。私の言うことは間違っているというふうに思うのですか。その辺についていかがですか、もう一回意見を欲しい。
  140. 植田守昭

    ○植田政府委員 先ほども申しましたように、全国でこういった事象が起きている、小売をめぐる環境、非常に厳しいというのが私どもの受けとめ方でございます。一方、不況の問題につきましては、全体的な経済の最近の推移がいろいろと、まあ分野によってかなりでこぼこがある、あるいは個人消費が伸び悩んでいるというふうなこともございまして、全般的にいま景気問題は、それはそれとしてまた別途問題があるわけでございますが、そういったことがもちろん背景にないとは言えないわけでございますが、いずれにしましても、この小売をめぐる問題あるいは大店舗をめぐる問題というのがいま広くいろいろと問題になっているということを私どもも十分認識いたしまして、先ほど来の検討なり今後の方向づけを考えている、こういうことでございます。
  141. 上坂昇

    ○上坂委員 具体的に、岩手県の江釣子村の江釣子ショッピングセンターの出店に対して、五十四年の三月二十日に三条届け出が行われ、七月の三十日、事前商調協が結審をしまして、ジャスコが七千五百平米、地元テナントが六千平米、こう決定されたわけですね。それが同年の十一月二十七日に、大店審の東北第一方部会で一回の審議が行われただけで、ジャスコの六千三百九十平米、地元テナントの五千百十平米という答申が出されたわけでありますね。そして、その答申に基づいて五十五年の一月十二日に、通産大臣からジャスコに対して、六千三百九十平方メートル以下にするようにとの変更勧告が出されたわけであります。地元テナントについては、すでに大店審の答申どおり変更されていたので、これについては変更勧告がなかったわけであります。  これに対して、隣接の北上市から、市の小売業者から異議の申し出がなされたわけであります。この申し出が、江釣子のショッピングセンターの裁判が行われた直後に、三月の五日に却下をされたわけですね。この理由は何であるか、どこに根拠を置いてこの異議申し立てを却下したのか、御説明をいただきたい。
  142. 植田守昭

    ○植田政府委員 行政不服審査法に基づきます異議申し立てにつきましては、行政庁の処分に不服がある場合に行うというのは御案内のとおりでございます。  そこで、この行政庁の処分という問題でございますが、これは通常いわゆる国とか公共団体、公権力の主体であるこういった団体が行う行為で、直接国民の権利義務を形成するような行為というふうに解されているわけでございます。  ところで、この大規模店舗法のいわゆる七条勧告でございますが、これにつきましては、勧告を行いますと、相手方の協力なり同意を前提といたしまして勧告をし、そしてそれが受け入れられることによって行政の目的が達せられることになるわけでございますが、その勧告自体は、直接国民の権利義務を形成するというふうなものではないわけでございます。つまり、いわゆる処分性がないというふうに解されるわけでございまして、こういったことから、行政不服審査法で言います行政庁の処分には該当しないということになるわけでございまして、そういった観点から本問題を処理したというのがこの問題の経緯でございます。
  143. 上坂昇

    ○上坂委員 昭和四十八年七月十一日の商工委員会で、当時の野間委員が非常にいい質問をしているわけでありますが、その質問の中で、この七条に関連する処分の問題、あるいは異議申し立て、あるいは行政訴訟の問題が取り上げられているわけですね。そこで、その場合、一つは、異議申し立ての主体あるいは訴訟の主体になる適格性と申しますか、これが論ぜられております。当時の通商産業企業局橋本次長が答弁をしているところによりますと、適格性というのは、その勧告に従ってやると影響が非常に起きるというふうに見られる出店側の中小小売商業者と、もう一つは、その店舗がつくられることによって影響を受けると見られる周辺の中小小売業者、こうなっているわけです。  私は、もう一つこれにつけ加えなければいけないのじゃないかというふうに思うのですね。この二つは明らかに答弁されているわけでありますが、もう一つは、大店舗、いわゆる非常に大きな、中小企業者でなかった企業が出店をする場合に、勧告を受けてその勧告によって影響を非常に受けると考えた場合、この大店舗法によらないで異議申し立てをすることができるかどうか、ここのところも一つあるのではないかというふうに思っているわけです。この辺をちょっと説明をしていただきたいのです。
  144. 植田守昭

    ○植田政府委員 大店舗法で言う大店舗でないものにつきましてのそういった制度は、大店舗法の中には設けられていないということでございます。
  145. 上坂昇

    ○上坂委員 そこで問題なのは、却下のいまの理由として挙げられました行政庁の処分というものには該当しない、こういうことで今度の申し立てについては却下をした、こういうことになって裁判に持ち込まれたわけでありますが、七条の変更勧告と変更命令との関係について、ちょっとお伺いをしたいと思うのです。  私は、北上の近代協の人々あるいは商店街の人々が、この勧告について異議を申し立てあるいは訴訟を起こしているということは当然ではないかというふうに思っているわけですが、なぜそれができないのか、ここが問題だと思うのです。というのは、変更命令というのは、周辺の小売業者が勧告の段階で納得をして、しかし五条届け出をしたいわゆる出店者の中小小売商業者がその勧告に従わなかったという場合に変更命令というものが出されるのではないかというふうに思うのです。そうなりますと、変更命令というのはもう周辺中小小売業者の段階を過ぎまして、いわゆる当事者といいますか、その勧告によって大きな影響を受ける、あるいは命令によって大きな影響を受けるその当事者、いわゆる出店届け出の中小小売業者、これに関係するものだと思うのです。こういう考え方は間違っているかどうか、お答え願いたい。
  146. 植田守昭

    ○植田政府委員 お尋ねの趣旨を十分理解しているかどうか、ちょっとあれなのでございますが、勧告を行う場合に、勧告を受ける小売業者がそれを納得している場合に勧告するかということでございましょうか。
  147. 上坂昇

    ○上坂委員 もう一回説明しましょう。  勧告をした場合、納得しない場合が二つあると思うのです。一つは、勧告を受けた業者が納得しない場合がある。それから、その勧告をしてもまたまた影響があると思われる周辺中小小売業者がある、この二つがあるわけです。ところが、命令の段階に入ったときにはもうすでに勧告の段階というものは終わって、そこでは周辺の中小小売業者というものはもう文句を言いません、こういうかっこうになって初めて私は命令が出るのだと思うのです。その勧告に従わなかった届け出の業者に対して命令というのは出すのだから、周辺の中小小売業者に出すわけじゃないのだから、したがって、こちらはもう関係なくなってしまう。勧告の段階では周辺中小小売業者は関係があるけれども、命令の段階では関係がなくなる。私はこれを見なければならない、こう思っているのです。その辺はどうですか。
  148. 植田守昭

    ○植田政府委員 御案内のように、この法律は、周辺の中小小売業者の事業活動機会を適法に確保するという目的があるわけでございます。したがいまして、勧告もそういった見地から勧告が出されるわけでございますし、また命令もそういったものを確保するための命令でございます。そういうふうに理解しているわけでございます。
  149. 上坂昇

    ○上坂委員 のみ込んでいないようだからもう一回説明しますが、命令というのは、勧告に従わなかった、それは困ったな、勧告に従ってもらわなければ困るのだ。でも、どうしても従わないから今度は命令でずばっとやってしまうのだというふうに出すわけですから、これは明らかに勧告を受けた人が命令を受けるわけです。しかし、命令を受けている段階では、周辺の中小小売業者の人たちは文句の言いようがないわけですよ、命令というのは当事者に出すのだから。しかし、勧告の段階では、まだそれを受けるか受けないかわからないわけですよ。その段階で初めて私の方の企業が危ないかどうか、もっともっと大きなものがあるのだから、もっと厳しい勧告をしてもらわなければわれわれは困るのだ、こういうふうに言うのが筋だろうと私は思うのです。それでなければ言えない一命令を出してしまったものについて命令はだめだということは言えないのだから。だから、周辺の中小小売業者が問題にできる時点というのは勧告の時点である、変更勧告の時点しかないのだと私は認識しているわけです。そういう認識は誤っているかどうかということを聞いているのです。
  150. 植田守昭

    ○植田政府委員 法律の目的が先ほど申しましたようなことでございまして、通産大臣が勧告なり命令なりを出す場合には、周辺への影響を考慮して出すわけでございます。その場合に、客観的に見て影響が出るかどうかという観点から出すわけでございまして、そういった周辺の小売商への影響ということから出すわけでございますから、命令を出した場合あるいは勧告を出した場合に、いろいろと周りにも御不満の意見が出ることはあり得るわけでございますが、そのときは周辺への影響というものを判断した上でのことでございまして、中小企業事業の確保が適正に行われるという判断のもとに勧告なり命令なりを出すということになっているわけでございます。
  151. 上坂昇

    ○上坂委員 審議官、あなたはあくまでも命令と勧告というものをセットにして考えているからだめなんです。セットにしてはだめなんだよ。勧告と命令とは明らかに違うのだ。勧告というのは、こういうふうにした方がいいですよと勧告するわけですよ。従うか従わないかはそっちの勝手なんだ。ところが、その勧告がまだまだ緩いと思ったときには、周辺の中小小売業者は非常に影響を受けるからこれは困るのだということで、その段階でいわゆる異議申し立てをしたり、あるいは行政訴訟を起こすというのは当然なんですよ。それができなかったら、周辺中小小売業者の利益というのは絶対に守られないのだよ。ところが命令の段階になったときには、もうこれは向こうの人がその勧告に従うか従わないかというだけの話で、こちらは関係がなくなってしまうのだ。だから、命令に対して行政訴訟を起こすのは、行政処分に対して行政のあれを起こすということではなくて、むしろ勧告の段階でいわゆる異議申し立てをする、あるいは行政訴訟を起こすということでなければ法の精神というのは生かされないのですよ。私は、そういうふうに解釈している。そこのところを教えてくれというのだ。
  152. 植田守昭

    ○植田政府委員 お尋ねの趣旨は、原告適格の問題に帰するのかと思います。問題が処分性の問題と原告適格の問題が絡んでまいりますのでちょっとややこしくなるかと思いますが、勧告の場合には、周りの者が異議といいますか、申し立てるかどうかという問題が一つ。これは、まず勧告の処分性というものがございますから、処分性に当たらないということで一つ問題がございます。  それから、処分性が仮にあるといたしましても、原告適格という点で、この法律のたてまえから周辺小売商にはないということになりますと、二重の意味で訴えができないということになるわけでございますが、命令の場合には処分性の方はあると思います。しかし、原告適格という問題になりますとやはり同じ問題が残りますので、そこに訴訟の原告適格性の問題ということで問題が残るということになろうかと思います。
  153. 上坂昇

    ○上坂委員 周辺の中小小売業者がどちらについても適格性があっても、実際問題として命令に対して訴訟を起こすとか何かということは不可能だ、なかなかむずかしい問題だと私は逆に思うのです、適格性はあっても別にして。なぜかというと、すでに勧告が行われて、その勧告が妥当なものであるというふうに一般的に認められる。命令を出す方の、勧告をする方の通産大臣は、当然これはいいというふうに見ていることは事実ですが、周辺の中小小売業者も、もうここで勧告どおりにしてもらっただけでもいい、こういうときに命令によってその勧告に従わせる、これが命令でなくてはならぬと思うのですね。したがって、適格性があるにしても、実際問題として命令に対して行政訴訟を起こすということは非常に困難である。そこで、周辺の中小小売業者が適格性があるのだから、その適格性というものは勧告の段階において初めて生きてくるものである、生かされなければならない、これがこの法の精神でなければならぬ、こういうふうに私は思っているのです。いかがですか。
  154. 植田守昭

    ○植田政府委員 訴訟の場合の原告適格の適格性が一つの問題になるわけでございますが、これは勧告の場合と命令の場合ということではなしに、およそ訴えの場合に適格性があるかどうかということになるわけでございます。したがいまして、勧告の場合は処分性にまず問題があるわけでございますが、周辺小売商の場合については原告適格性がないという判断に立ちますので、命令の場合にも、適格性があれば命令の処分の取り消しなり何なりという訴えがあり得るかと思いますが、原告適格性がないという解釈でございますので、その場合はやはり訴えはむずかしい。逆に命令の場合には、原告適格性があれば処分に対する撤回なり何なりの訴えということがあり得るのかと思いますが、その点はやはり原告適格性がないという解釈に立ちますので、やはり問題になる。  以上申しましたように、勧告の場合は、処分性と適格性というのが両方絡まっていますし、命令の場合は、処分性はございますが適格性がないということで、本件はそこにそういった違いが出てくるということであろうと思います。
  155. 上坂昇

    ○上坂委員 先ほど言いました昭和四十八年時点の法制定時の質疑応答の中で、中曽根通産大臣がこう言っているのです。その前に野間さんの質問ですが、「許可制の場合には、これは処分の対象になるから、訴訟の対象になりますよ。ところが、届け出制の場合には、これがないわけです。これは致命的じゃありませんか。」こういう質問をしているのです。その前にずっと質問があるわけです。そして最終的に、この問題について落ちたお答えがあるから、もう一回通産大臣に質問しますよということで質問しているのです。それは勧告と命令の段階を踏まえて言っているのです。勧告を満たす条件としてという言葉で言っていますが、そのとき中曽根通産大臣は、「これは行政処分としての勧告、変更命令があった場合にはもちろん訴訟の対象になりますけれども、」こう言っているわけです。「届け出の段階ではまだならないのは、行政処分に対する異議申し立て、そのほかの法令の指示するところであると思います。」こういう意味は、訴訟する前に異議申し立てすることができるから、まずそれをやって、その後で行政訴訟をやって差し支えないんだ、こういう意味で中曽根さんは言っているわけです。その前に橋本次長が、「異議申し立てをし得る人は、この法律の規定によりまして、直接その権利なる利益を侵害された、直接的に影響を受けた当該小売商は当然のことでございますが、本法自体、周辺の小売商のことも、中小小売商との関係で調整行為をやるわけでございますから、周辺の中小小売商も異議を申し立てる資格がございます。」こういうふうにはっきり答えているわけです。したがって、適格というのは、勧告の段階、もう一つは命令の段階においても、どちらにおいても明らかに適格性がある、こういう答弁をしておられる、このことについて否定しますか。
  156. 植田守昭

    ○植田政府委員 この法律改正の審議のときの中曽根通産大臣のいまお読み上げになりました答弁でございますが、これにつきましては、「勧告」ポッ「変更命令」云々ということになっておりますが、二つ問題がございまして、一つは処分性の問題でございます。中曽根通産大臣の御答弁の「勧告」ポツ「変更命令」というのは、勧告を行って後に行う変更命令というふうに、言い方としては確かにやや紛れやすい言い方になっておりますが、そこでの処分性の問題は、やはり命令に至って処分性が出るということであろうと思います。  それからもう一つは、橋本次長並びにいまのお読み上げになった大臣の答弁もそうだったかと思いますが、処分性のある命令のものにつきまして周辺の小売商が原告適格があるかないかということにつきましては、御指摘のように、そのときの国会の答弁は原告適格があるというふうな答弁になっているものと記憶しております。しかし、私どもは、その後に至りまして、実は昭和五十三年にいま議論されております問題と非常に似通った問題でございますが、最高裁のいわゆる景表法にかかわる問題、これはジュースのかんの問題につきましての表示の問題として出た判決でございますが、消費者保護との関係をとらえた最高裁の判決が出ておりまして、そういった判決を踏まえまして、私どもは改めてまたいろいろと検討をいたしました結果、当時の国会答弁とは異なる見解結論せざるを得ないということになったわけでございます。  そういうことで、そういう検討を踏まえて、私ども現在の立場から申しまして、原告適格性はこの場合はないのではないかというふうに理解している、目下の見解はそういうことでございます。
  157. 上坂昇

    ○上坂委員 裁判にも出ている景表法の問題を持ち出しているわけでありますが、これは消費者と周辺小売業者というふうな形で出てきているものじゃないのです。これは、あくまでも当事者とそれからいわゆる対象になる消費者との関係で景表法というのが出てきた。そこには周辺小売業者とかなんかというのは関係がないわけですよ。したがって、そういう判例を持ち出して反論すること自体が牽強付会であると私は言わざるを得ないわけであります。あくまでもあの四十八年の法制定時のこの国会における審議、いわゆるこの場所におけるところの審議というものを踏まえてこれは答弁をしてもらうし、判断をしてもらうし、その後の方針にしていただかないと、あの当時の審議はいいかげんなものであったとか、あるいは通産大臣の答弁というものはごまかしであった、一時しのぎの口裏合わせのようなものでごまかしであった、こういうふうに言われてしまうのではないかというふうに思うのです。それでは通産行政に対する不信というものが非常に強くなってくると私は思うのです。また、その答弁をいまのように牽強付会して新しい解釈を持ち出すということはい通産省としては自分の行政の都合のいいようなかっこうに持っていくためのこれは便法にすぎない。それは、いまになって今度は国民を欺く、国会もいいかげんにごまかしてしまう、こういうふうにとられても私は仕方がない問題だったというふうに思うのです。  あなたはいま、変更と命令とはセットになっているような話をしていましたが、中曽根通産大臣の答弁を読んで明らかにそういうふうに考えられますか。「これは行政処分としての勧告、変更命令があった場合にはもちろん訴訟の対象になりますけれども、」こうはっきり言っているのですよ。いまの通産大臣の答弁は間違いなのですか。ここのところが非常に問題だと思うのです。そういうふうな形でなくて、もっとあの当時の議事録をやはり正確に率直に受けとめて行政に携わってもらいたい、こういうふうに私は思うのです。もう一度見解を聞きます。
  158. 植田守昭

    ○植田政府委員 当時の事情からいたしましても、勧告に処分性があるということは意識していなかったというふうに私どもは理解しております。ただ、おっしゃいますように、紛らわしい表現と受けとめられかねないことは、私も決してそれを全面的に否定いたしませんが、前後を見まして、あるいはまた当時の事情を調べてみましても、勧告の処分性ということはやはり意識していなかったということは私どもは事実だと思います。ただ、御指摘のように処分に対する原告適格の問題につきましては、周辺の小売商云々という答弁がございまして、私どもは、その点につきましては改めていまの段階で、先ほどのような判例も踏まえまして検討いたしまして、原告適格の問題は個別具体的な者に対する権利の問題がない、このいわゆる周辺の小売商の事業機会の確保を図るといういわば公益目的、公共目的と申しますか、そういった法律の目的に照らしまして、やはりこの問題につきましては、処分に対する原告適格性はないという最高裁の判例等も検討いたしました結果の目下におけるわれわれの考え方ということでございます。
  159. 上坂昇

    ○上坂委員 私は、昭和五十五年、去年の四月十八日にもこの異議申し立てについて質問しているのです。その時点では、異議申し立てを受けるのかと言ったら、これは受けざるを得ませんと審議官が答えた。これは初めてです、しかし受けました、受けて検討していますと。その当時までずっといまのような形があるならば、これは受ける必要がなくなっちゃうわけですね。そうでしょう。異議申し立ては、それではできるのですか。
  160. 植田守昭

    ○植田政府委員 事実行為としての異議の申し立てがあったのに対しまして、恐らく私の前任者でございますが、その答弁は、それをどう処理するかということを検討いたし、やはり処分性の問題等々を検討した結果、先ほどのような結論に達したものというふうに考えられます。
  161. 上坂昇

    ○上坂委員 中曽根さんが答えた時点から、四十八年から私が質問した五十五年までは、もうすでに五十五年だから四十八年から七年たっているわけですよ。七年間も結論が出なくて、そしてじっとしておいて、七年もたってから今度はようやくそれは処分性がないとかなんとか言って、そういうふうに言うこと自体が、どうもだれが聞いたって納得できるはずがない。中曽根大臣が答えたときに、もうすでにいまの問題については解決を図っておかなくてはならなかったわけですね。そしてその当時、もしその答弁というものが間違っている、あるいは非常に誤解を招くような答弁であるならば、その答弁についてはちゃんとこれは明らかにしておく、これが本当の行政の姿勢だろうと私は思うのです。そういう姿勢がなくて、七年間もブランクにしておいて、そして私がやった、七年たった昨年の時点ですらまだ結論が出ていなかった。今度裁判が起きてようやくこれに対して、裁判に負けると大変だからというので、何とかうまいことがないかと思ってひねり出したのがあなた方の見解ではないか、こういうふうに私は思うのです。そういうやり方をしているから、いつまでたっても紛争がおさまらないのです。これはあなた方絶対に、いま裁判が行われているからそうではないということを言わないとは思うのですけれども、これは私は非常におかしな話だと思うのです。  そこで、裁判のいわゆる陳述書を見ますと、商工委員会の席上、当時の中曽根通産大臣が答弁したことについて、「しかしながら、当時の答弁は、変更勧告と変更命令とを峻別しないで答弁しているため、変更勧告についても処分性があると解釈できる余地を残すような表現となってはいるが、変更勧告が「処分」に当たらないことは明らかであり、当時の答弁は、変更勧告にとどまらず変更命令にまで至る場合を念頭に置いてなしたものであって、あくまでも変更命令を前提としており原告ら主張の論拠とはならないものである。」という反論をしているわけですね。  そこで私は、先ほどの命令と勧告の問題を持ち出すわけなんです。勧告というものが、ここに書いてあるように「変更命令にまで至る場合を念頭に置いてなしたものであって、」というふうに言っていることもおかしな話だと思うのです。というのは、勧告を通産大臣が出した場合には、当事者についてはその勧告に従ってもらう、どうしてもやらないから、何とも困るからということで、制裁措置として命令というものを出すわけなんです。だから、命令を出すために勧告をするんじゃないのですよ。まず勧告をして、その勧告に従わないから命令をするのです。それを、命令をするために先に勧告を出しておくんだなんというような考え方の答弁になっていたということは、私はまことにこれは牽強付会である、こういうふうに言わざるを得ないのです。だから、被告としての通産省の主張は、全く言葉のロジックでごまかしていると考えざるを得ないのであります。  そこで、もう一つの問題がありまして、中曽根通産大臣が変更勧告と変更命令を峻別していないということを確認したかという弁護団の追及に対しまして、佐伯調整官は、「「勧告の段階では行政処分性を考えていない」」、それから「「大店法成立当時の内部文書によると、行政処分の対象とならないことがはっきりしている」」こういうことを言っているわけでありますが、この内部文書とは、内容は一体どういうものであるか、発表をしてもらいたい。それから、それは一体いつつくったものであるかということを明確に示してもらいたい。
  162. 植田守昭

    ○植田政府委員 当時の法律改正の準備中の内部のメモというものであるようでございます。私も実は現物は見ておりませんが、内部的なメモでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  163. 上坂昇

    ○上坂委員 メモであろうと文章であろうと構わないから、メモであったらそのメモをいつつくられて、その内容はどういうものであるか、これを明らかにしてもらいたいのです。
  164. 植田守昭

    ○植田政府委員 いま手元に持っておりませんので、後ほど先生の方へ御報告させていただきたいと思います。
  165. 上坂昇

    ○上坂委員 そのメモの存在が明らかでないと、なかなか質問の展開ができないわけです、明らかにならないのだから。七年たっているのだからね。ことしで八年目なんだから、八年目にして初めてメモであるとか内部文書であるとか何かということが出てきたのだから、これは非常に怪しいと言わなければならない。したがって、私は、この問題についてはそのメモを見てまた質問をする機会を与えてもらわなければならないと思うのです。  そこで、先ほど言ったように、勧告の段階と命令の段階をきちんと分けて、命令をするために勧告を出すのでないということは納得できますか。
  166. 植田守昭

    ○植田政府委員 初めから命令に至ることを予想することではないと思います。
  167. 上坂昇

    ○上坂委員 初めから命令を出すために勧告するのじゃないのです。勧告を出して、できることであるならば勧告に従ってもらうということが一番大切なんです。しかし、その勧告の段階が非常に重要なんです。だから、命令が出た段階ではむしろすでに決着になってしまうわけです。そこでは、先ほど言ったように、周辺の中小小売業者はなかなかこれに対して行政訴訟を起こしたりなんかするのは事実上困難なんです、適格性があってもですよ。したがって、周辺中小小売業者は、とる手段としては、どうしても勧告の段階異議申し立てなり行政訴訟を起こさざるを得ない。それを処分性がないからと言って、これを適格性もないような形ではねのけてしまうということは通産省としてはやるべきことではないし、それは大店舗法の第一条の目的、いわゆる周辺中小小売業者の企業を守る、そういうものにならない、目的に反するものになってしまう、私はこう解釈せざるを得ないのですが、その解釈はとらないということですか。
  168. 植田守昭

    ○植田政府委員 勧告の処分性につきましては、通常言われておりますように、勧告は広い意味での行政指導でございますので、これにつきましては強制力をもって従わせるという力はないわけでございます。通常の許可処分でございますとか、そういった意味での行政処分には当たらないというのが一般的な通念であろうと思います。そういう意味からいいまして、勧告につきましてはこれに処分性があるというふうに通常は認められてないと思います。ただ、先ほどから御指摘のように、国会におけるかつての答弁が紛らいやすかったかどうかという問題はあろうかと思います。しかし、あの答弁を見ましても、明瞭に勧告に処分性ありというふうに言っている個所はたしかなかったように私は記憶しております。確かに「勧告」ポツ「変更命令」という言い方が紛らいやすい表現であったということは言えないことはないと思いますが、勧告そのものの処分性につきましては、通念といたしまして行政指導の一環である。行政指導の場合は、もちろん法律に規定を持たない行政指導もございますし、勧告というような形での行政指導もあるということは大体通説ではないかと思いますので、勧告の処分性につきましては、私どもはそういうふうに考えているというのが実はいまるる申し上げたところでございます。
  169. 上坂昇

    ○上坂委員 そこで、周辺の中小小売業者に対しては、勧告の段階でこれを納得できるように処置をしなければならない。したがって、周辺の中小小売業者が、その勧告は軽過ぎて私たちの生活権を擁護するあるいは商圏を確保するのにはまだまだ足りない、これじゃだめなんだ、もっと厳しくしてもらわないと私たちは生きられないんだ、こういうふうに言ったことについて、もし行政訴訟ができないとするならば、異議申し立ての段階でこれを十分受け取って、その精神をくんで勧告まで変更するくらいのものがないと、本当に周辺の中小小売商業者は守られない、こういうふうに考えざるを得ないわけであります。その点、私の言っていることはおかしいと思いますか、どうですか。
  170. 植田守昭

    ○植田政府委員 処分性の問題につきましては、先ほどから私が申し上げたようなことでございますが、お尋ねの大規模店舗の紛争の問題をどうするかということにつきましては、いま実は私どもも懇談会の席等で検討しているところでございますけれども、この法律の目的は御案内のとおりでございますので、その目的ができるだけ達成できるような制度なり仕組みなりを、もしいまの制度が不十分であればそれをできるだけ十分なものに直していくということでこの問題は対処していくということが筋なんではなかろうか。やはり処分性の問題につきましては、先ほど申しましたようなことで、勧告の性格上強制力を持ったものでございませんし、処分性はないというふうに言わざるを得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  171. 上坂昇

    ○上坂委員 皮肉な言い方をしますと、異議申し立てがあったら全部これを却下してしまうんだね。そうすると、これはもうしようがないから、後はやる手がないわけですよ。もうこれは行政訴訟を起こすしかないのです。ところが、行政訴訟の対象にはならないんだ、適格性がない、こうなったのでは周辺の中小小売業者は救われないですよ、いつまでたったって。だめでしょう。どうしても異議申し立ての段階で、それならば受けとめなければならない。ところが、あなた方は、異議申し立ての段階でこれを突っ返しちゃったじゃないですか。そうしたら、周辺の中小小売業者は一体どうやって救われるんですか。いつまでたったって救われる道理がない。そうしたら大店法の第一条の目的というのは達せられないじゃないですか。大店法の目的が達せられないということは、法違反を通産省そのものが犯していると言わざるを得ないじゃないですか。そういうふうに論理が展開されていっても、私はやむを得ないのじゃないかと思うのですよ。どうですか。
  172. 植田守昭

    ○植田政府委員 異議申し立てそのものは、行政不服審査法に基づくものでございますから、これはやはりその法体系の中で処理するということになろうかと思います。  ただ、御指摘のように、いま現実にいろいろと大店舗をめぐる紛争なり問題が起こっているわけでございますから、これをどのように私どもとしてはできるだけ解決していくかという観点から問題を考えなければいけないということは、御指摘と全く私も同感でございます。ただ、その方法といたしまして、やはり勧告に処分性がないとか、あるいは訴訟の場合の原告適格性がないということは、これはこれでその法律上の問題でございますので、そこは私どもといたしましても、通常の解釈に従わざるを得ない。ただ、問題の起こっているこの大規模店問題あるいは紛争、これをどのようにして裁いていったら最も法の目的にかなうことになるか、そういう観点からこの問題を考えていかなければいかぬ、大店舗問題を考えていかなければいけない、この点は全く私も同感でございまして、そういった観点から、いまどのようなスキームがいいかということをいろいろと検討しているというのが目下の状況ということになるわけでございます。
  173. 上坂昇

    ○上坂委員 この問題、これは二時間やっても三時間やってもどうもなかなか結論が出ない。ただ一つだけ、先ほど言ったように景表法の問題が出ましたけれども、私が景表法の問題で指摘した面、そこには周辺中小小売業者なんというのは対象になっていないわけですね。それは、これを手本にしてこういうことをやってはいけませんよという、それはそういう意味での意味はあるかもしれません。しかし、景表法の問題はあくまでも一般消費者と実際に表示をした当事者との問題なんです。それを周辺中小小売業者の問題まで含めたこの江釣子の訴訟問題に持ち出すということ自体も、これは誤りではないかと私は思うのです。その点についてはいかがですか。
  174. 植田守昭

    ○植田政府委員 景表法の最高裁の判決の問題は、この消費者を保護するという法律の目的が、個々の消費者を個別具体的に保護するあるいは権利を与えるという意味ではないという意味におきまして、いま問題になっております大規模店舗法に関しましても、周辺の中小小売商の事業活動機会を確保するという法目的からいいまして、それは周辺の小売商の個々の具体的な小売商につきまして権利を付与するとかそういうことではないのだ。一般的ないわば公共の利益の確保といいますか、中小企業、中小小売商の事業活動機会を確保するという、還境を確保するということが目的でございまして、個々の事業者一人一人に権利を付与するとかそういうものではない。ただ、この法律が適正に運用されることによりまして、大規模店舗の著しい出店につきまして、勧告なりあるいは行政指導なりによりましてその店舗か削られるとかそういうことによりまして、周りの中小小売商が、大きなものが出てくるのに対してより影響が緩和されるということは、反射的利益としてあることは考えられるわけでございますけれども、そのことがこの法律によって周りの個々具体的な小売商に対して権利を付与するというものではないという意味で、先ほどの景表法のケースを出したわけでございます。そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  175. 上坂昇

    ○上坂委員 通産省の方としては、この景表法の問題をどうしてもこれと関係させるというつもりで出したのでしょうから、なかなか引っ込めないとは思うのだけれども、いま言ったようなことは私の言ったこともひとつ理解をしてもらいたいと思うのです。  そこで、先ほどの問題については、これはその当時の当事者であった中曽根さんとか橋本さんにもう一回来てもらって明らかにしないと、ここのところははっきりしない。やはりそういう機会をつくってもらわなければならないということも、これは委員長の頭にとどめておいていただきたいと思います。  そこで、時間が来ましたからそろそろ締めますが、ジャスコは現在訴訟の対象に現実になっておるわけですね。しかし、本年十二月の五日にオープンをする、こう言っているのです。私たちも現地に行ってこれを見てきました。そして現地の人にも会ってきました。ショッピングセンターの人にも会ってきたのです。そうしたら、十二月五日には必ずオープンをいたしますとやっているわけです。その中に入っている江釣子のいわゆる中小小売商の人にとっては、起死回生の、いわゆる商業近代化という点ではこれにいろいろ期待をかけ、大きな目的を持っておるということはわかります。したがって、その心情はよくわかるわけです。しかし、いまこうした裁判が行われておって、まずこれが却下されるのか、あるいは裁判が不利になるのか、また私たちが主張しているような、あるいは北上市の商店街の人たちが言っているような裁判の趣旨が通るのかどうか、この辺はわかりません。わかりませんけれども、まだ裁判は係属中です。したがって、この係属中に開店をする、オープンをするということは、これはやはり差し控えるべきではないか。そして、そうした差し控えるような指導をすることがやはり必要なのではないか。それでないと、こうしたケースが起きてきた場合、どんなことがあろうと、とにかく四カ月とか五カ月の時期が来れば、もう私たちは勧告があろうと命令があろうと、そんなことは関係なくオープンできるのだというようなことになってしまうのではないか。  そこで、私は、十二月五日のオープンというものに対してはそれこそ勧告を出して、十二月オープンは差し控えなさい、裁判が終わるまでがまんしなさい、こういう指導をすべきであると思いますが、いかがですか。できますか。
  176. 植田守昭

    ○植田政府委員 大型店をめぐる紛争は、先ほど来の御指摘にもございましたように、いまいろいろ起こっているわけでございますが、これにつきましてはいろいろなケースがございます。本件も江釣子村では、ぜひ中小企業事業団から中小企業の共同化のための資金を借りて結束してやりたいというふうな、主として若い人たちが中心でございましょうか、そういった動きもあると聞いております。一方、隣の町の北上市からは、いろいろ影響が大きいということでこの問題が紛争になっているわけでございます。それで、かなり長い期間にわたりましていろいろと商調協もあり、また通産省といたしましてもいろいろな経緯を踏まえまして、その間また地元で中にあっせん等をなさった方もいると聞いていますが、そういった紆余曲折をいたしまして、私どもといたしましてもこれが最善ということで勧告をいたしたわけでございます。私が承知しているところでは、ジャスコも当分の間面積を少し自粛してやるというようなふうにも聞いておりますし、そういったことを総合的に勘案いたしまして、この問題は双方にいろいろ——双方とも十分満足ではないかと思いますが、一つの十分考え抜いたあれで私どもとしても対応してきたつもりでございます。それが不幸にいたしまして、いま裁判ということになっているわけでございますが、この種の問題は大変むずかしい問題でございまして、私も非常にいろいろとむずかしいことは承知でございますが、この勧告につきましては十分考え抜いた上での勧告であるということをぜひぜひ御了解願いたいと思うわけでございます。
  177. 上坂昇

    ○上坂委員 これで終わりますが、大臣要望します。  いま審議官が答えられたこと、これは通産大臣が答えられたことだと私は思っております。そこで、前の通産大臣といまの通産大臣考え方が全然違うなんというのでは非常に困るわけであります。したがって、ここのところはやはりきちんと一致したもので臨んでいただきたいということが一つ。したがって、そのためには、私がいままで提起した問題を含めまして、異議申し立ての問題、あるいは勧告と命令がいかに周辺の中小小売業者に影響を及ぼすものであるかというようなことを含めまして、これは懇談会の席上出していただいて、これに対する結論をきちんと出して、そして通産省の方針というものをきちんと立ててもらうことを要望いたしたいと思います。これは大臣要望いたしますが、大臣のお答えをいただいて、終わります。
  178. 田中六助

    田中(六)国務大臣 ただいま、委員とうちの事務当局見解をじっと聞いておりまして、やはり行政、政治の継続性というものはありますので、前大臣、元大臣、私ども、そういうことについての責任は免れないと思います。したがって、そういうものを全部含めまして、御発言のとおりに十分勘案して調整していきたいと思います。
  179. 上坂昇

    ○上坂委員 終わります。ありがとうございました。
  180. 野中英二

    野中委員長 長田武士君。
  181. 長田武士

    ○長田委員 まず初めに、不況業種についてお尋ねをいたします。  さきの小委員会におきまして、不況業種であります石油化学、アルミ製錬、紙パルプなどの代表から、業界の窮状について御意見を伺ったわけであります。電力コストの上昇や原料ナフサ高騰などによりまして、特にアルミ製錬や石油化学の経営は深刻な事態に陥っております。  そこで、政府は、こうしたアルミ製錬や石油化学の窮状につきましてどのような対策を講じるつもりなのか。また、このような構造的な不況にあえぐ素材産業に対しまして、政府の再建案、救済策の基本的な考え方をまずお尋ねいたします。
  182. 真野温

    真野政府委員 私どもの所管しております基礎産業関係、御指摘のような不況業種が多うございます。大きく申し上げて二つのパターンがあるかと思いますが、一つは、石油価格の値上がりによりまして原料価格が上がったということで苦慮しております業界石油化学、肥料、塩ビ、ソーダ業界、こういう一つのグループと、それからもう一つは、石油価格が上がったことによりまして電力コストが上がった、それによるいわゆる電力消費産業、こういうことに一括されております業種、アルミ製錬を筆頭としましてカーバイドその他幾つかの業種があります。この二つのタイプの業種につきまして、各業種の業態がそれぞれ非常に異なっておりますので、それぞれの業態に応じた対応策が必要かと考えております。  まず、全体を申し上げまして一番緊急度の高いアルミ製錬業につきましては、御案内のとおり、産構審のアルミ部会によりましてこの四月以降討議を重ねてまいりまして、この十月に答申をいただきました。それを基礎として私ども、いま政府部内においてこれに対する対応策を詰めておる段階でございます。  もう一つのグループといたしまして、先ほど申し上げました原料価格高騰によってヒットされておる業種石油化学工業、硫安その他の肥料工業、それから塩ビ、ソーダ工業、こういうグループにつきましては、それぞれにやはり産構審の中の化学工業部会に、石油化学小委員会、塩ビ・ソーダ小委員会、それから肥料小委員会と三つの小委員会を発足さしておりまして、この小委員会を総合しまして、全体としてのバランスのとれた化学工業のあり方、これからの構造改善の方途、こういうものを現在検討中でございまして、いま申し上げました三つの小委員会につきましては、ほぼ来年の六月ぐらいを目途に全体としての考え方をまとめるという方向で検討いたしておりまして、私どもそれを受けましてから種々の具体的な対応策について政府部内でこれを取り上げてまいる、こういう運びになっております。
  183. 長田武士

    ○長田委員 ただいま御答弁がありました産業構造審議会の答申を受けまして、アルミ製錬では国内の製錬能力を現在の年間百十万トンから七十万トンに落とそうと、削減する方向を示しておるわけであります。しかし、こうした業界自助努力だけではこの深刻な事態はとうてい解決できないのじゃないか、私はそのように考えております。  そこで、政府は、わが国におけるアルミニウム地金の安定供給確保の観点から、地金供給コストを引き下げるための関税割り当て制度の適用についてはどのように考えておるのか、この点はどうでしょうか。
  184. 真野温

    真野政府委員 アルミ産業の現在の不況の原因は、大きく申し上げまして国際的な需要の急減、これはアメリカを中心とする需要の急減、それから日本の国内における住宅投資等の不振に基づく需要の低下、その要因が一つのグループ。もう一つは、御承知のように、石油価格上昇、エネルギーコスト上昇に伴いましてコスト面で国際競争力を失ってきた。こういう二つの条件がございます。  全体としてこれからのアルミ産業の構造改善を考えますときに、現状のほかに、やや中期、長期の日本のアルミ産業のあり方、これをベースとして全体を考えるということで産構審の中でも議論してまいったわけでありますけれども、基本的に申し上げまして、現在の構造的な問題のうち、二、三年のうちに解消するものもあり、また何らかの対応策を必要とするものもありということで、要因が幾つか分けられますが、当面の緊急の問題といたしましては、何と申しましても一つは電力コストをどう引き下げるかという問題、もう一点は、全体としてアルミ産業コストをほかの方途で引き下げられないか、こういう二点であろうかと思います。  後者につきましては、日本のアルミ産業の特徴として、ほかの産業に見られない点が一つございます。というのは、現在日本のアルミ産業は国際的な場において、海外の開発輸入あるいは海外のアルミニウム企業との長期契約によりまして安定的に輸入を拡大する方途に歩みっつある途中でございまして、いわば日本のアルミの地金供給につきましては相当程度輸入に依存する体系に移りつつあるわけでございます。そういう意味で、中期的にはやはりこういう日本のアルミ需要に対して安定的な供給源をどうやって確保していくかという視点が必要でございます。そういう意味で、こういった海外からの安定的な輸入の地金についてコストを下げるということが、同時に日本のアルミ製錬業の現在の全体のコストダウンにつながる、こういう事情がございまして、現在アルミ地金の輸入に対して課せられております関税を一部引き下げる、撤廃するということによりまして相当なコストダウンが図れる。先ほど申し上げました国内製錬につきましては、電力コスト電力業との協力のもとに引き下げるというのが国内製錬コストを下げる、あわせて、国内の製錬業が輸入いたしておりますあるいは圧延業が輸入いたしております海外からの安定的な地金の供給に対して、関税を引き下げることによりましてコストダウンを図る、両々相まって当面のコストダウンを図るということ。さらに、中期的な意味電力対策としては、いわゆる現在の共同火力につきまして、石油から石炭への転換を図るという計画がすでに進行中でございまして、これによりまして二、三年先のアルミの電力コストが相当下がってまいります。そういうものをかみ合わせまして、一定期間後に自立体制へ持っていく、こういう考え方で現在進んでおります。
  185. 長田武士

    ○長田委員 ただいま御答弁がありましたとおり、電力コストの問題が大きな影響を与えております。聞くところによりますと、通産省は、アルミニウム製錬業の救済策といたしまして、電力コストの引き下げのために共同火力発電所の固定負担増などの協力を電力業界に要請をする、こういう方針のようでありますけれども、その点はいかがでしょうか。  続いて、そこでこの方針をもし実施する場合、電力コストの引き下げなどはどの程度可能と見ていらっしゃるか、また、対象となる共同火力発電所の選定基準や高コスト発電所の扱いなど、電力業界との話し合いはなされているのかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  186. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 アルミ製錬が電力との間に持っております共同火力の運営の合理化という観点におきまして、現在電力会社がその協力を行うということで進めておりますが、形態的には三つぐらいの形態があろうかと思います。  一つは、アルミ製錬会社の操業短縮に伴いまして必要となる電力需要が減退いたしますので、その余剰電力電力会社買い上げるという形におきまして、裏返しに申しますと、これは固定費の負担電力会社が負っていくという形になるわけでございますが、余剰電力電力会社が買い取ることによりまして、そのメリットを還元するというのが第一の方式でございます。  それから第二に、アルミ製錬会社の操業体制、これはほぼ一日じゅう同負荷で操業するのが最も望ましい姿ではございますが、緊急遮断方式その他需給調整の技術進歩に伴いまして、その実態に相応したコスト電力供給を行うという意味において、需給調整契約活用するというのが第二のパターンであろうと思います。  それから第三に、共同火力のアルミ製錬サイドの需要が減りますと、すべての発電機を同じように動かすということは効率が悪うございます。必要最小限度の発電機についてはフル回転をし、必要でない、あるいはほんのわずかの需要の部分については、これをむしろ電力サイドにおきまして低料金における供給が可能な状況下におきまして、たとえばゴールデンウイークとかあるいは週末あるいは高出水時、こういったときには比較的コストの安い電源が供給可能の状態になりますので、そういった時期におきましては共同火力の操業を落としまして、逆に電力会社から、これを安いコストの電源から供給するという経済融通の方式、大体この三つの組み合わせにおきましてアルミ強化のコスト低減に協力をいたしておるのがいまの状況でございます。  これにつきまして、すべての共同火力が運営が石油火力のままでは非常に困難でございますが、ほぼ二地点につきましては石炭火力への転換を具体的に電力会社との間で計画を設定いたしまして、その計画を順次進めている。他の一地点につきましては、果たして石炭転換で十分対応できるかどうか、現在電力、アルミ製錬会社及び共同火力、三者で協議を進めておるところでございまして、共同火力の全体五地点のうち三地点につきましては、そういった石炭火力への移行ということで対応を進めていこうという考えで現在準備を進めておるところでございます。他の二地点につきましては地点的な制約がございまして、石炭転換もほとんど不可能という状況でございます。それで、こういうものについてどういうような対応策があるかと申しますと、やはり先ほど申し上げましたような三つのパターンでの協力の幅を拡大していくということ以外には、なかなか方法はないのではなかろうかという感じがいたしておりますが、共同火力を引き取ってほしいという考え方が一方、アルミ製錬サイドから出ておりますので、サイトごとに各電力会社特殊事情を加味しながら、現在その二地点につきましては協議を重ねているところでございます。
  187. 長田武士

    ○長田委員 次に、石油化学について通産大臣にお尋ねをいたします。  今日における石油化学不況の原因は、第二次石油ショックによる原料ナフサ、この高騰が大きな原因をなしておるわけであります。その中でも、原料ナフサ備蓄義務を課しているために価格割り高になっておるのも現状でございます。こうした負担を解消するために、業界では、税金面における軽減措置要望いたしておるわけでありますけれども、通産大臣、この点についてはどうでしょう。
  188. 田中六助

    田中(六)国務大臣 ナフサには、国内生産のナフサ輸入ナフサと二つございまして、石油業法によりまして、輸入ナフサについては関税がゼロになっております。しかし、国内ナフサにつきましてはその恩恵といいますか、そういうものがなくて、いろいろ石油化学の面で問題になっておりますが、私どもは、そういう点で、石油業法によるそういう石油化学業者にとって不利な面についての改定というか、そういうものも頭にありますけれども、現状では石油業界にとってはこれはまた大きな痛手でもございますし、そういう点いろいろ頭を痛めるわけでございますけれども、できるだけ輸入のナフサと国内ナフサとの調整をうまくやって、石油化学業者が大きなダメージを受けないような措置種々講じてまいりたいというふうに思います。
  189. 長田武士

    ○長田委員 原料ナフサ価格高騰という原因のもう一つの原因は、やはり石油化学工業業界が輸入権を持っていない、こういうことに原因かあるようなんですね。したがいまして、石油化学工業業界におきましては、ぜひ輸入権を与えてほしいと強い要望が出ております。この点については通産大臣、どうでしょう。
  190. 野々内隆

    野々政府委員 お話しの原料用ナフサにつきましては、現在石油製製企業と個別の契約に基づきまして、石油化学原料共同輸入株式会社というものが代理商として輸入を行っておりまして、実績もしがっておりますが、ただ、これの利用につきましていろいろ問題があるということは私どもも十分承知いたしております。ただ、いろいろ石油政策との兼ね合いということも考える必要があると思いますので、これらを総合的に判断をいたしまして今後検討いたしたいと思っております。
  191. 長田武士

    ○長田委員 きょうの新聞によりますと、石油業界にもナフサの輸入権を付与したいと通産省の方針を大体腹を固めておる、このように報道されておりますけれども、この点どうでしょう。
  192. 野々内隆

    野々政府委員 けさの記事、私も読みましたが、必ずしも事実のとおりではないと思います。現在、従来の方式につきましてどのように改善をするかということを、石油化学政策石油政策等の総合的な観点から検討を続けているという現状でございます。
  193. 長田武士

    ○長田委員 それでは、見通しとしてはどうですか、輸入権を与える方向で検討するのですか、それともしない方向で検討するのですか、どっちでしょう。
  194. 野々内隆

    野々政府委員 まだ結論を出しておりませんが、石油化学にだけ特例を認めるというのは、なかなか他との関係もあり、むずかしいかと思いますが、実情に合った形で解決を図りたいと思っております。
  195. 長田武士

    ○長田委員 次に、貿易摩擦についてお尋ねをいたします。  ことしの経常収支について、政府は当初六十億ドルの赤字を見込んでおったわけでありますけれども、去る十月二日の経済対策閣僚会議におきまして、一転して七十億ドルの黒字という暫定試算を発表いたしております。確かに、上半期の貿易収支は六十五億ドルの黒字となりまして、対米輸出超過が七十三億八千万ドル、対ECで五十三億六千二百万ドル、これまでの最高を記録いたしております。こうしたことから貿易摩擦が再燃してきたわけでありますが、対ECの輸出については、八月、九月の伸び率はやや低下をいたしております。  そこで、下半期についての見通しをお伺いしたいわけでありますが、特に暫定試算で出された七十億ドルの国際収支の黒子はすでに超えているのではないかと思いますが、どの程度と考えていらっしゃるのか、この点をお尋ねいたします。
  196. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 十月一日に決めました暫定試算におきます経常収支は、いま御指摘のように、年度間で七十億ドルの黒ということになっております。四月以降九月までの経常収支はこれを超えておるものではございませんけれども、趨勢といたしましては、特に国内の内需の減退によりまして、原燃料を中心といたします輸入が著しく当初の見通しよりも後退しておるということから、貿易収支の黒字、ひいては貿易外を含めましても経常収支の黒字ということになっておるわけでございます。  今後、下半期を含めました年度間の経常収支についてどう見るかという御質問でございますが、十月二日の見通しを立てたばかりでもございますし、その後の新しい状況を加えましても、なかなかいまここで特に新しい見通しを申しかねるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、基本的には今後内需の回復の動向、さらには円レートがどのようなレベルで安定化するかということが大きく経常収支の動向を左右するものと考えております。しかし、貿易の均衡的な拡大という面から輸入の促進に対する諸方策政府としては努力していきたい、かように考えております。
  197. 長田武士

    ○長田委員 こうしたEC、米国に対する貿易摩擦の問題につきましては、緊急輸入によって当面対策を立てよう、こういう考え方であるようであります。しかし、こうした緊急輸入などを行うことで一時的には多少黒字が減るという状況は出てくるでありましょうけれども、長期的に見て、いまの日本の貿易構造から考えますと、どうしてもこれは本質の解決にならないのじゃないか。輸出力に頼らざるを得ないという傾向にどうしても日本はなる。そうなりますと、一時的にはそうあっても、長期的に見てやはり五十三年と同じような経緯だなという感じがするのですが、どうでしょうか。
  198. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 御指摘のように、緊急輸入の実現によって基本的な構造問題を解決するということがすべて調うということではないというふうに考えております。しかし現時点におきまして七十億ドルという目標数字を設定しておるわけでございまして、極力輸入を拡大するということによりまして、貿易ひいては経常収支の均衡を図り、海外からの日本経済運営に対する批判をやわらげる必要があるかと思いますが、今回政府の内部で検討中の輸入に関する促進策は、先生がただいま御指摘になりましたような緊急輸入あるいは輸入の量的な拡大策にとどまっておるわけではございませんで、いま御指摘になりましたような構造的な問題あるいは制度的な面につきまして、特に海外から日本の輸入制度あるいは輸入障壁に関する不満が具体的に指摘されておりますので、そういう面での制度的な改善につきましても、量的な拡大に対する方策と並びまして、極力これを見直すという方向で海外との摩擦を回避するということで努力してまいりたいと考えておるわけでございます。
  199. 長田武士

    ○長田委員 先月ヨーロッパを訪れました稲山ミッションの報告を見ますと、ECでは、日本における製品輸入の割合が少ないからもっと多く輸入するように要求をいたしておるわけであります。確かに、わが国の総輸入から見た製品輸入の割合は、以前は三〇%ぐらいあったのですね。ところが、昨年は二二・八%と低下をいたしております。しかし、これは産業構造の違いや日本の技術水準が高いことが原因ではないかと私は思うのです。また衣料品などについても、EC諸国のすぐれたデザインに対しましては、現在ライセンス生産が主に行われておるわけであります。こうした状況を見てまいりますと、政府の言うように製品輸入が伸びる余地があるのかどうか、また、このような点でEC諸国の日本に対する認識が欠けている面があるのじゃないかと思うのですが、この点どうでしょうか。
  200. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 まず、製品輸入比率の問題でございますけれども、御指摘のように、わが国の製品輸入比率が一時期三割を超えましたわけでございますが、それが二二%というふうにこの数年低下したという事実はございます。しかし、これは申すまでもなく、石油の単価が第一次、第二次オイルショックによりまして高騰いたしまして、その結果、わが国の石油代金に対する支払いが膨大な額に上って、輸入額のウエートといたしましても非常に大きな部分を占めてきたということにもっぱら起因するわけでございまして、日本の製品輸入に対する努力が不足しておったという結果ではないと考えております。その辺のあたりを海外にも十分、単に数字の比較のみをもって必ずしも日本の製品輸入に対する方策が劣っておるのではないということは説明しておるわけでございます。  ヨーロッパ諸国からは、御指摘のように、製品輸入比率をもっと高めてほしいという要望があることは事実でございますけれども、自由貿易の原則にのっとった通商が行われておるわけでございまして、やはり基本的には欧米の諸国の製品の競争力あるいは対日輸出努力が基本的な解決策であるということを私ども考えております。しかし、日本としても製品輸入に対する重要性を海外に示す必要がございますので、去る七月十四日に通産大臣が製品輸入の拡大宣言をいたしまして、それに基づいて大臣みずから輸入関係の諸団体、百貨店協会でございますとか商社の社長を集めた会でございますとか、そういう各団体に直接製品輸入の努力を呼びかけておりますし、また貿易会議のもとにおきます製品輸入拡大会議というところで、製品輸入につきましての具体的な方策を現在きめ細かく検討中であるという状況でございます。
  201. 長田武士

    ○長田委員 貿易摩擦については、EC諸国だけではございませんで、アメリカでも実は起こっておるわけですね。稲山ミッションに対しましても相当強烈な要求が出されております。しかも、特に貿易条件の不均衡が挙げられておるわけでありますが、残存輸入制限品目については日本は二十七品目です。これに対しましてECは六十二品目、特に対日差別的な輸入制限が五十七品目あります。また、製品輸入比率が低いのは単なる経済構造の違いであり、関税についてもECの方が高率なんですね。したがいまして、失業、インフレ、国際収支の悪化などに見られるEC諸国の経済状況の悪さが日本に対する貿易摩擦の根底にあるように私は思えてならないのです。この点については通産大臣、どうでしょうか。
  202. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私ども、もちろん製品輸入ということをやって経済摩擦をなくすることが大切でございますけれども、一方的に私どもにいろいろ言われても、やはり日本の貿易構造、経済構造というものは輸出というものが至上命題で、技術の開発、そういうもので国民が非常に額に汗を流してやっておることを、そうチェックするというわけにもいきませず、むしろ向こうの輸出努力がどの程度か、ECあたりにもいろいろ努力をしてもらわなくちゃいけませんし、日本だけが責められてもこればかりはということで、根底はただ、保護主義貿易に世界がなって、日本が提唱しております自由主義貿易、そういうものにそごを来すことは日本の首を絞めることにもなりますし、そこの兼ね合いは非常にむずかしゅうございます。しかし、私どもは、あくまで私どもの主張も述べ、向こうとの話し合い、対話を進めていかなければならない。具体的には、先ほど指摘されておりましたように、稲山ミッションという大デリゲーションがECに参りましたし、またアメリカにもいろいろ——向こうのボルトリッジ商務長官も来たりし、ECからもダビニョン副委員長を中心とする人たちも参りました。ECフェアなども日本で開催すると同時に、ECのシンポジウムもついせんだってやったわけでございます。メキシコに対しましても使節団の派遣、いろいろなことをやって輸入促進策あるいは向こうから言う輸出促進策などについても配慮して、これからもできるだけ摩擦の少ないように対話を続けていきたいというふうに思います。
  203. 長田武士

    ○長田委員 こうした貿易摩擦につきましては、この春、自動車輸出の問題のとき、すでに予想されていたことであります。対EC、対米国の貿易不均衡を是正するために政府としても種々検討されたとは思いますが、そこで政府は、集中豪雨的な輸出を避けるために、輸出に対する何らかの抑制策、これについては具体的に検討されておりましょうか。
  204. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私ども日本の立場、貿易構造からいって、輸出を抑制するというようなことがいいのか。輸出を罪悪視するというような結果になってはいけない。したがって、巷間言われております輸出課徴金、輸出をすることに何かの罰金を課するような印象あるいはそういう措置というものは、日本国民あるいは全体の政策からいって、非常に私どもは疑問に思います。したがって、輸出促進策というような具体的な案ではなく、むしろ秩序ある輸出と申しますか、いま御指摘の集中豪雨的な輸出、そういうもののないように、十分相手の国のことも配慮して、そして私どもも主張するというようなこと、そういう政策を進めていった方が得策ではないかというふうに思います。
  205. 長田武士

    ○長田委員 いまの問題にちょっと触れますけれども、去る十一月十日、記者会見で渡辺大蔵大臣が、輸出正常化調整金の創設検討していることを明らかにしております。通産大臣は、輸入促進策と同時にこうした輸出抑制策も講じた方がよいと考えていらっしゃるか、また、輸出よりも輸入促進を重点にすべきだとお考えでしょうか。この点どうでしょう。
  206. 田中六助

    田中(六)国務大臣 ただいま申し上げましたように、私といたしましては、輸出を規制するというような措置には大きな疑問を持っておると同時に、むしろ反対の考えでございます。ただ、大蔵省としては、輸出を調整するというような名目で種々考えておられるようでございますが、考え方の中にそういうものがあって一応検討するということについては、いろいろな方策があるわけでございますので、それまでしてはいけないというような考えは、これまた疑問ですから、それは一つの考え方として検討することについてまで反対ということではございませんが、基本的な考えといたしましては、輸出を阻止するというような考えは私は持っておりません。したがって、輸入促進策でございますが、七月十四日に私ども製品輸入の宣言をやりまして、できるだけ輸入をあらゆる角度から入れる、したがって、関税率の引き下げとか輸入枠の拡大、あるいは輸入手続の簡素化、そういう具体的な措置をとって輸入促進を図っていきたいというふうに思います。
  207. 長田武士

    ○長田委員 緊急輸入の方針については省内で検討されておるとは思いますけれども、すでに経企庁は五十億ドル程度の輸入を示唆いたしております。そこで、大臣はこの規模についてどの程度を考えておられるか、また、内容についてはどのようなことを検討されておるのか、あわせてお尋ねをいたします。
  208. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 輸入拡大策につきましては、近く経済閣僚会議を開きまして、関係省寄りまして対策を打ち出していくという予定になっておりまして、現在企画庁が幹事役になりまして、関係省の間でその案を練りつつある段階でございます。したがいまして、現段階では、緊急輸入によるドル減らしのターゲットの金額でございますとか具体的な内容というものはまだ固まっておるわけではございません。  今回の対策の内容として検討されるであろう方向といたしましては、先ほど大臣がお答え申しましたように、海外から要望の強い関税の引き下げについての対応策でございますとか輸入に関する手続面での改善、あるいは国内法令におきましても、輸入に関しまして海外から改善が求められている点、あるいは輸入を促進するための政府としての対応策というようなことが内容として検討されるということでございますけれども、現段階では、まだ検討の緒についた段階でございまして、具体的にお答え申し上げる段階ではございません。
  209. 長田武士

    ○長田委員 緊急輸入につきましては、すでに五十三年度に実施した経緯がありますね。品目といたしましては、ウラン鉱石、ニッケル、クロム、航空機、医療機器など、当時の規模で三十六億八千万ドルの輸入をされたわけであります。期間は五十二年十二月から五十四年九月まで、約二年間かかっております。この当時は円レートは百七十円台で、景気の先行き見通しも非常に明るかったわけであります。また、民間にも在庫積み増しなどがしやすい環境にありました。現在のような円安基調で内需が低迷しておる現状で、果たして政府考えておる規模の輸入ができるかどうか、私は非常に疑問を抱かざるを得ません。また、外貨貸しなども財政状態から見て可能かどうか、この点については私は非常に疑問を持つのですが、どうですか。
  210. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 お答えいたします。  五十三年当時と比べまして経済環境、特に円レートの水準でございますとか内需の問題、特に原燃料の輸入が落ち込んでおる状況等々につきましては、確かに大変な相違がございます。したがいまして、私どもも、基本的には経常収支あるいは貿易収支の均衡問題というのは、内需の回復、これが上向きに転じていくということが、貿易収支の均衡あるいは円レートの安定のために必須要件であるというふうに認識しておるわけでございますが、現在のそのような環境のもとにおきましても、今回の経常収支の落ち込みの原因が輸入の縮減にあることは紛れもない事実でございますので、やはり輸入について、輸入の量的な拡大につきましても、現在の制約下におきまして何とかして可能な促進策と申しますか、助成策を考えてまいりたいというのが私どもの立場でございます。確かに非常にむずかしい細い道だと思っておりますけれども、そういう方向でいま関係省と協議に入っている状況でございます。
  211. 長田武士

    ○長田委員 先ほどもちょっと触れましたけれども、緊急輸入につきましては、一時的な黒字減らしには効果はあると思いますが、長期的に見てそれは非常に効果はないと私は思っております。そういう意味で、輸入をふやす大きなポイントとしては、内需を促進することが一番いい力になるのじゃないかと思っております。いまの日本の景気は停滞ぎみでございまして、物がなかなか売れない状況でございます。そういう意味で、何といいましてもこのポイントは景気の回復、これしかないと思いますが、通産大臣、どうでしょうか。
  212. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私ども、景気と物価の両にらみという政策を当初やってきておりましたが、御承知のように、物価の方は卸売物価指数、消費、者物価指数、ずっと下がっております。問題は景気でございまして、内需の振興と申しましても、具体的には個人消費の刺激あるいは住宅建設をやるといっても、それもどうも可処分所得あるいは名目所得などの所得が落ち込んでおるというようなことがありまして、なかなか個人消費の刺激にはなっていないわけでございます。  したがって、大きな枠といたしましては、私ども十月二日に、まず物価の安定、内需、不振な産業対策、それから貿易の拡大という四つの柱をつくってスタートして、その間にきめの細かい諸政策をやっていくという政策をとっておるわけでございますが、大企業設備投資はまあまあのところ、倒産件数はちょっと多くなっておりますけれども中小企業もほのかに明るさの見えている部分もございますし、私ども政策の運営に誤りなきようにするならば、この危機は切り抜けていけると私は確信しております。  日本だけではなく、世界全体が不況の波の中にぼっかりつかっておる現状でございます。その中で日本はまあまあのところをいっている。日本ひとりで解決することはできませず、世界の景気、たとえばアメリカとかEC諸国も景気がよくなり、相互にそれがいい方の循環をしていくならばということを期待しておりまして、そういう点で、私どもも国内の景気政策に対しては万全の措置をとっていきたいと考えております。
  213. 長田武士

    ○長田委員 一方、国内景気を刺激するためには、どうしても短期貸し出しの金利の引き下げなど機動的な金融措置をとる必要かあるのではないかと考えております。また中小企業間においても、公定歩合の引き下げを求める声が非常に強く出ております。この点についてお尋ねしたいことが第一点。  第二点は、現在内需が停滞しておる主な原因は、いま大臣がおっしゃっておりましたとおり、実質賃金の目減りによって個人消費が落ち込んでいる上に、収入に占める税負担が家計を相当圧迫しております。したがいまして、どうしても大幅な所得減税を実施しなければ景気の回復はちょっと無理であろうと私は考えております。  この二点について、大臣の御所見を伺います。
  214. 田中六助

    田中(六)国務大臣 金利の問題でございますが、御承知のように長期プライムレートが上がる、したがって、それが中小企業その他の政府金融三機関にも響くということが当然考えられるわけでございますけれども、私どもは、少なくとも政府関係の三機関に対する金利につきましては、現行の八・三%をそのまま十二月末まで維持するという方針を堅持しております。また、その他マル経資金などにつきましても、金利を動かすことも考えておりませず、むしろ枠の拡大というようなことで、できるだけ中小企業者を中心に困らないように考えております。  ただ、バンクレート云々ということでございますが、これは私どもが軽々に中心金利を云々することはどちらかというと避けねばなりませんし、ただ現実段階では、私ども、先ほど申しましたような政府機関の金利をいじらないという点を強調しておきたいと思います。  それから二番目の、実質所得がつまり非常に目減りしておる、これらの対策につきましては、私ども、民間の所得あるいは公務員の給与その他の所得につきましても、できるだけのことはしなければならない。そして、物価をより一層安定させて、実質賃金の目減りがないような措置政策的にもやっていかなくてはいかぬのじゃないかというふうに思っております。
  215. 長田武士

    ○長田委員 それでは最後に一点だけ、乗用車の自主規制措置についてお尋ねをいたします。  去る十月二十一日にニューヨークで開かれました日米財界首脳会談で、米国側から、一九八三年までとしている自主規制について、八四年以降も継続を求める意見が出ております。また田中大臣も、十一月二日にEC委員会のダビニョン副委員長と会談した際、対ECの輸出を自粛するよう求められているわけであります。  そこで、自主規制後の自動車産業の実情を踏まえた上で、こうした動きについてどのように対処されるお考えなのか、最後に通産大臣にお尋ねをいたします。
  216. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私ども、日米間の自動車問題につきましては、御指摘の点をすでに実施しておりますし、そのときも、それ以上のことは全く考えてないし、向こうもそれ以上のことを要求しないということになっておりますし、いまさらそういうことを——まだ時間もたっていないのに、そういう問題については、私ども、それを交渉の対象にしようなどということは全く考えておりません。  それから、EC諸国に対しましても、たとえば西ドイツあるいはベルギーなどに対しましても一応の措置をとっておりますし、イギリスでは商業車について多少のトラブルはあるようでございますけれども、イタリー、フランス、イギリス、そういうところにつきましても、自動車問題についての大きなトラブルは余りないような調子でございます。全体的に自動車問題については、私どもの努力もあり、業界のそういう自粛的な努力もあって解決の方向にあると同時に、自動車問題に関する限りは非常に明るい方向にあるというふうに私は判断しております。
  217. 長田武士

    ○長田委員 終わります。
  218. 野中英二

    野中委員長 横手文雄君。
  219. 横手文雄

    ○横手委員 私は、いま世上大きな問題となっております大型小売店の一部地域における出店ラッシュによる混乱と紛糾問題、これに起因する大型店の出店規制強化の動きに対して御質問を申し上げます。  通産省はさきに関係方面に対して、大型店の出店申請に伴って起きたトラブルの解消のため、出店の自粛の通達を出し、一方、大型店問題懇談会の設置をなされました。この件に対して、その背景、現状等について、簡単に御説明をお願いいたします。
  220. 植田守昭

    ○植田政府委員 最近におきまして、大型店をめぐる商業環境が大変厳しくなっております。そういった状況を踏まえまして、私どもはさきに大型店問題懇談会を設置いたしまして、そこで各方面の方々から御意見を聞きながら、今後のあり方をもう一度考えてみたいということで始めているわけでございます。これは、めどを十二月いっぱいということに置いているわけでございますが、その間におきまして空白の期間といいますか、やはりこういったところで検討いたしますと、いろいろの点で思惑なり何なりも動きますし、この間をどうするかということもございまして、さきに自粛を求める、あるいは慎重な審査を行うという趣旨の通達を出したわけでございます。  そういうことで、現在懇談会で鋭意進めているところでございますが、いま懇談会の中に設けました学識経験者から成る小委員によりまして、各方面の方のヒヤリングを行う等検討を行っている途中の段階でございます。
  221. 横手文雄

    ○横手委員 私は、現在、御指摘のとおり多くの地域でこの紛争が起こっておる、このことを大変憂うるのであります。だからといって、このために一律的に規制強化をしようとする動きもまた同様に憂うるものであります。したがいまして、こういった問題に対してその実態を明らかにしながら共存共栄の道はないか、こういったことを探っていくことが賢明であろうと思う次第であります。  そのためには、現在の紛争、混乱の原因は大型店の過当な出店競争にあると考えます。一部地域に見られるような集中豪雨だとか、あるいは陣取り合戦だとか、あるいはキンギョ鉢にナマズが入ってきたごときとか言われるような大手スーパー側の力任せの出店ラッシュは、大きな問題であると指摘をしたいところであります。この結果、地元を唯一の経営基盤とする中小商店やローカルスーパーのその人たちは先行き不安を増大させていること、当然のことでございましょう。こういった特定地域では、もはや自由競争の名のもとに容認される競争の限度を超えたと言わざるを得ません。このことは流通の近代化にもつながりませんし、逆に地域商業の健全な発展を妨げ、さらに雇用不安にもつながってしまうおそれがあるのであります。これはさらに進んで、大型店そのものへの否定につながりかねない危険な状態にあると言わざるを得ません。大型店業界の自粛を強く求めるところでありますが、このことに対して通産省の見解と今日までの具体的な指導について明らかにしていただきたいと思います。
  222. 植田守昭

    ○植田政府委員 できることなら、いわゆる営業の問題でございますから、自由に競争していくのが最も望ましいのかと思いますが、いま御指摘がございましたように、状況は大変厳しいものがございまして、いろいろな面でいま私どもは問題を見詰め直してみる必要がある、そういう段階ではないかと考えております。  ただいま御指摘のございました、特に大手スーパーの問題があるのではないかということはよく指摘されるところでございますが、大手のスーパーにつきましては、確かにいろいろと議論がございます。私どもは、いま、そういった問題も含めまして、懇談会でいろいろ学識経験者その他各方面の方の御意見をいただきながら考えていくという形をとっているわけでございますが、とりあえず、せんだっての通達におきましては、一般的に自粛を求めたわけでございますが、特に大手につきましてはより強い自粛を要請いたしまして、また大手もそれにこたえまして、自主的な自粛の道をとったわけでございます。したがいまして、せんだっての通達におきましても、大手につきましては、より強い自粛をお願いしているというのが現状でございます。
  223. 横手文雄

    ○横手委員 私は、冒頭に申し上げましたように、だからといって一律的な法規制の強化等は大変憂うるのであります。一面、そういった特定地域によっては出店ラッシュによって地域に大変な混乱を起こしておる、こういう弊害があることも事実でございますけれども、しかし、それだけかというと、今日まで大型店が果たしてきた功績もまた大きなものがあったというぐあいに考えますし、今後もその役割りを持っていることも事実であります。  その一つは物価問題であります。およそ物価問題を論じ、その対策を立てるに当たっては、その大きな問題は流通機構の合理化をいかに図るか、これであります。大型店は、この流通機構にメスを入れた、つまり生産と消費を合理的に効率的に結びつけ、流通コストのむだを省き、またセルフサービス、チェーンシステム等によって物価の抑制に貢献したということであります。  その二つは、店舗のチェーンを全国に展開することによって、わが国の消費や価格の平準化に役立ち、また豊富な品ぞろえや買い物の便利さ、楽しさ、こういったものを普及して、そのことを通じて、これまでショッピングにめったに縁のなかった新しい消費者層を掘り起こしたということであります。  三つ目は、地方への大型店の出店によって、商業活動がおくれていた地域に刺激を与え、地元商店の近代化を促進し、一方では、地域の主として主婦を対象にした雇用の機会を広げたということであります。  その四つは、わが国の輸入振興にも寄与していると考えられます。  その他多くの功績を果たしたという、評価し得る面もあると思いますが、通産省の御見解はいかがでございますか。
  224. 植田守昭

    ○植田政府委員 ただいまいろいろ挙げられておりましたように、大型店は、この数十年の間におきまして、日本のおくれた流通機構の合理化とかあるいはまた価格の抑制効果、あるいは地方へ新しい風を吹き込む、さらには雇用効果をもたらすとか、あるいはまた大量仕入れが海外に及べばそれがまさに輸入の増加とかいうふうなこともございまして、いろいろな面から功績は高かったものと考えるわけでございます。  今後、もちろんまた消費者ニーズは刻々と変わっていきますので、そういった変化する消費者ニーズに対しましてどう対応していくかということが問題になるわけでございまして、そういった意味で、従来示したその創意工夫なりバイタリティーというものは今後も当然生かされなければならないわけでございますが、それにいたしましても、いろいろと各地でこの問題が起こっているということもまた一面の真理でございまして、この辺を過去における功績あるいは今後も創造し得る潜在的な能力といったものを踏まえながらも、いかにして問題を調整しスムーズに発展するようにしていくかというところが、非常にむずかしい問題でありますけれども、いま一つの転換点に立って考えてみなければいけない時期ではなかろうかというふうに思っているわけでございます。
  225. 横手文雄

    ○横手委員 特定地域における混乱を巻き起こしたというマイナス点、しかし一方では、いま私が御指摘申し上げましたそれぞれの点について、わが国の商業活動、そういったものに大きな功績があったことは事実である、こういう御見解であります。  そうすれば、私は、その調整をいかにするかということが大きな問題であって、ここに新たな立法措置というものが必要なのであろうか、こういう疑問を抱くわけでございますが、いかがでございますか。
  226. 植田守昭

    ○植田政府委員 いま、そのような問題につきましていろいろな意見が出ているところでございます。そういったために懇談会という場を設けまして、いろいろな立場の方の御意見も聞き、またこの道に明るい専門家、学識経験者の御検討をいただいているわけでございまして、そういった検討を踏まえまして私どももこの問題を慎重に取り上げていきたい、ただいま申されたことも十分踏まえながら慎重に考えていきたいというふうに思います。
  227. 横手文雄

    ○横手委員 私は、もちろんいま懇談会が開かれておる最中でございますので、思い切った発言はなかなかしにくいのではないかと思うのでございますけれども、しかし、先ほど確認をいたしましたような功罪があるとするならば、これは現行法の適正な運用、とりわけ国や自治体の積極的な指導、つまり利害対立の当事者にその解決を任せるのではなくして、その地域における商域圏、こういった資料を国や自治体が積極的に収集をし、そしてそういったところに提供していく、商調協の効率的な運営によってこれがなされる、いまなされなければならないことはそのことだというぐあいに考えますが、大臣、いかがでございますか。
  228. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほどから植田審議官がお答え申し上げておりますように、私どもは、いま懇談会に御相談申し上げてその結論を待っておるわけでございますが、基本的な考え方といたしましては、やはり消費者本位、しかも大スーパーにおきましても、消費者本位でいままでやってきた功績というものは絶大なものがあろうかと思います。それから、今後ともまた私どもは消費者を中心に、消費者のニーズが非常に多様化していくということは予想されますし、それを大きな制限的な措置対処していくというようなこともいろいろ問題もあろうかと思います。いずれにいたしましても、私どもは、いろいろな点も十分配慮して、懇談会の結論を待って、そして対処していきたいというふうに思います。
  229. 横手文雄

    ○横手委員 私は、今回設置をされました大型店の懇談会の目的と、その審議の内容について、それでは少し御質問を申し上げたいと思う次第であります。  今日までわが国の小売業に関する政治的なといいましょうか、そういった動きを見てみますと、昭和十二年に百貨店法が制定をされてから、今日まで五回にわたって大幅な法の改正や制定が行われているのであります。その都度わが国の小売業界のあり方について議論はなされておるのでありますけれども、しかし、結果的に見ますと、その結論は大型店に対する規制に終わり、根本問題であります中小商店の近代化は、若干の促進はあったにしろ、長期的展望の策定と実効が上がっていない、こういうことが言えるのではないかと思うわけであります。私は、せっかくこういったきわめて注目の集まっているときにこの懇談会が発足をしたわけでございますので、この際、わが国商業活動中小企業に対する指針も明らかにしていくべきではないかというぐあいに考えておりますが、いかがですか。
  230. 植田守昭

    ○植田政府委員 今回の懇談会におきましては、検討項目の中には中小小売商の振興策というものも含まれておりますので、その問題も当然入るわけでございますが、御指摘のように、今後の流通なり商業のあり方というふうな問題、これも基本的な問題として重要な問題であることは私どもも理解しているわけでございます。ただ、今回の懇談会は、いま置かれておりますいろいろな状況からいたしまして、非常に短期間に一つの方向づけをしようということでやっておりますので、そういった意味では、時間的な関係から、おのずからある種の限度があるということも率直に言わざるを得ないのでございます。しかし、私どもといたしましては、将来を展望したしで問題の位置づけをしていくということの必要性は十分理解できますので、幸い委員の中には大変この関係の造詣の深い方もいらっしゃいますので、そういった方たちの御意見等を十分いただきまして、できるだけ将来を見た上での現在の問題の位置づけという態度でこの問題を考えていきたいというふうに思っております。
  231. 横手文雄

    ○横手委員 いま御指摘を申し上げました日本の商業活動における長期的な展望、こういったものもきわめて重要な問題だということでございますけれども、私は、重要な問題というよりも基本的な問題だ、こういうぐあいに位置づけるべきだと思うわけであります。しかし、そういったビジョン、期待を持ちながら、年内にこれを終結したい、こういうようなことでございますので、私は、そこに大きな矛盾があるような気がしてならないのであります。御指摘申し上げてきましたように、過去五回における日本の小売業に対する問題、そのときにも同じようなことでスタートしたのでございますが、先ほど申し上げたように、大きな効果は上がっていない。だから、今日もまた同じような議論を繰り返さなければならないということであります。急ぐ余り、今日まで通ってきたその道を再び歩むようなことがあってはならない。  したがって、この際、この懇談会に二つの役目を持たせるべきではないか。一つは、いま御指摘のとおり、当面しております、先ほども御質問がございました訴訟問題まで起こって、地域の大変な社会問題にまで発展をしてしまった。これは、長期的展望などと言ってはおれないのであります。直ちにその地域の皆さん方、そして出店をするその大手スーパーとの間に割って入るような形で、その方策を明らかにしてあげなければならない。これは当然のことであります。急ぐべきであります。しかし、根本問題である日本の商業、とりわけ中小企業の商業問題に対しては、年内に結論が出るようなものではない。したがって、いまこれを契機にして長期的にその問題をスタートさせていく、こういうことがきわめて重要な問題だというぐあいに指摘せざるを得ません。そのことについていかがですか。
  232. 植田守昭

    ○植田政府委員 御指摘の点はよく理解できるつもりでございます。私どもの懇談会におきましても、そのような観点からの御意見も出ているところでございまして、そういった問題も踏まえまして専門家と十分相談いたしまして、この問題をどう処理していくか、いろいろな制約条件の中で、なおかつ御指摘のような点も含めて今後どう取り上げていくかということを、懇談会の場で御意見を十分いただいて考えていきたいというふうに思います。
  233. 横手文雄

    ○横手委員 もう一遍同じようなことをお伺いいたしますけれども、その気はあるけれども、しかし時間的な制約があるので、これではむしろ双方から不信を招くようなことになりはしませんか。双方から、通産省は何をやっておるのだ、また表面づら糊塗だけしようとしておるのか、こういった不信感を招くようなことになるおそれがある。そのことは、これから国や地方自治体が積極的にこの解決のために力をかしていかなければならないときに、大きなマイナスだというぐあいに思うのであります。  皆さんの意見の中に、この際長期的なものもということが出ておる、通産省もそのことを考えているということであるとするならば、今回、この懇談会の中に置くか外に置くかは別にして、短期的なもの、当面取り扱っていかなければならないもの、そして長期的なものを発足させる必要かいまこそあると思いますけれども、どうなんですか。
  234. 植田守昭

    ○植田政府委員 御指摘の点は十分私どもも理解できますので、それを具体的にどういうふうに実現していくか、展開していくか、そういうようなことにつきましては十分今後考え検討させていただきたいと思います。
  235. 横手文雄

    ○横手委員 また同じような質問になりますけれども、これは通産省として、そういうことをしなければならないということを考えておいでなんですね。長期的なものもこの際明らかにしていかなければならない、その必要があるということを否定なさらないのであります。懇談会の中にも、そういった意見があるということをいま明らかにされたのであります。こういった根本的な問題を取り扱うにしては、これは一カ月や二カ月でできるはずがないのであります。いまそういった機運が出ているときに、もう一つこの際そういうことも発足をさせていくというようなことを明らかにすべきだと思いますが、いかがですか。
  236. 植田守昭

    ○植田政府委員 どのような形で問題を進めていくかということにつきまして、私ども、まだ具体的な点が詰められていないというのが率直なところでございます。御意見はよくわかるわけでございますが、いまこの場で具体的に、いつどういう形でどうというふうなことは申し上げられないわけでございます。これからの進め方はもう少したちませんと、まだ今回の懇談会の持っていき方あるいはそれ以外のことにつきましても、十分いま具体的にお答えできる段階でございませんので、よく御指摘の点を踏まえまして考えさせていただきたい、こういうふうに申し上げているわけでございまして、いまここで具体的に申し上げる段階に至っておりませんので、その点御容赦いただきたい、こういうふうに申し上げたいわけでございます。
  237. 横手文雄

    ○横手委員 その中身の問題でございますけれども、先ほど少し触れましたが、こういった時期に大型店に対する多くの問題提起がなされてきておる。一方では、この際これを規制し、あるいは許可制にし、こういうような強い意見もあるやに聞いておるわけであります。懇談会の中で当然、通産省の考え方といったようなものも質問がなされることでございましょうし、その方向づけといったようなものについて明らかにしてもらいたい。
  238. 植田守昭

    ○植田政府委員 先ほども申しましたように、現在はまだ各方面の方の御意見をヒヤリングしている段階でございまして、どういう方向にまとめていくかというふうなことは、いままだ小委員会でも議論いたしておりません。これは今後早急にやらなければいけない段階ではございますけれども、いまのところ、まだ関係者皆さんの御意見を伺っているところでございまして、今後の方向づけにつきましてはもう少し御猶予をいただきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  239. 横手文雄

    ○横手委員 私どもは、先ほど来申し上げておりますように、今日の日本の商業活動、これをドラスチックなものにしていかなければならないし、その中にあっても、長い間地域の町づくり、そしてその地域社会と密着してきた中小企業の発展を心からこいねがうものであります。  そういった観点に立ちまして、わが民社党は次のような方針を出したのでございます。お手元に届いておることだと思いますが、少し前文だけ読み上げますと、   現在、小売商業関係法律としては、一方に中小小売商保護のための大企業者の事業活動の調整に関するものと、他方に中小小売商振興のための近代化促進等に関するものがあるなど、個別対策としての立法は存在するが、小売商業全体を見渡した総合政策に関するものが欠如している。   したがって、我が国における商業政策ビジョンをうち出すため、「小売商業基本法」ともいうべきものを構想する必要がある。この場合、右構想における基本的な考え方は、およそ次のようなものである。 ということで、十数項目にわたって列挙しておるわけでございますけれども、この際、今日までとられてきた大型店に対する規制、そして一方では、小売商業に対する地域振興政策あるいは商店街の振興政策、こういったものはそれぞれとられてきたわけでございますが、これが合体したような形で、将来のビジョンも含めて、わが国の商業圏域といいましょうか、そういったものを小売商業基本法ということでまとめていく必要があるのではないかということを提起しておるわけでございます。この点についてのお考えはいかがですか。
  240. 植田守昭

    ○植田政府委員 後ほど、中小企業庁長官からもあるいはお答えがあるかと思いますが、大変広大な構想でございまして、総合的に問題を進めていくという御発想かと思いますが、私ども今後どういうふうなビジョンのもとに、それから法律的にはどういうふうな形にやっていくかということにつきましても、ただいまの御提案は十分肝に銘じまして、今後考えていく上の糧にさせていただきたいと思います。大変むずかしい問題でございますが、ここでいま私から結論めいたことを申し上げる準備はございませんが、ただいまの提案、いろいろと勉強させていただきたい、そういうふうに考えます。
  241. 横手文雄

    ○横手委員 同じような質問になりますけれども中小企業庁、今日まで大変御苦労なさって、商店街の振興、アーケードをつくる、あるいは道路をカラー舗装する、そしてお客さんを呼ぶ、いわば横の百貨店、こういったことで、地域商業の発展のために大きな御努力をなさったことに敬意を表する次第でございます。  しかし、いま申し上げましたように、そういう中小企業対策を進めるということだけで、日本の商業構造といいましょうか近代化といいましょうか、そういったものが事足れりということにならないという気がしてならないのであります。したがって、いまも申し上げましたように、総合的なものをこの際策定していく必要があると思いますが、いかがですか。
  242. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 中小企業の小売商業振興につきましては、中小小売商業振興法という法律を国会でお定めいただきまして、この法律に基づいて振興いたしているところでございます。特に、先ほどから先生御指摘がありますように、中小小売商が健全に発展していくためには、その自助努力を前提とした振興対策の推進ということで進めておりまして、私どもは強い中小小売商の城づくりを中心にして進めていく。これがまた地域の住民と一体となって繁栄していくもとではないかと考えているわけでございます。  このために中小企業庁といたしましては、従来からこの基本方向に基づきまして、中小小売商業振興法に基づきます商店街近代化等の特定高度化事業の推進、さらに商店街振興対策の推進、大型店進出対策融資制度の実施、中小小売商近代化のための各種調査研究等振興対策の積極的展開を図っているところでございます。  さらに、五十七年度におきましては、現下の体制もよく反省をいたしまして、新たに小売商業振興会議の開催、地域商店街振興計画の策定、さらには同計画等に基づきます商店街整備等の事業及び中小小売業におけるコンピューター利用事業に対する中小企業事業団による融資制度の拡充と大型店進出対策融資制度への生協、農協店舗の追加等、中小小売商業振興対策の充実に努めているところでございます。  したがいまして、新しい体系のもとに入れるか入れないかは別にいたしまして、中小小売商業に対する振興の基本方針はすでに国会で定めていただいております。そして、いま申しましたものにつきましても、毎年予算の増額をお願いいたしております上に、高度化事業等につきましては、明年の三千五百億のうち約一割の三百億程度を融資できると思いますし、中小三機関におきます五兆七千億のうち相当分野は中小小売商に融資できるものだと思っておりますので、中小小売商を、先生御指摘のように、強い自助努力を中心に城づくりをして大規模店に対応でき、消費者のニーズにこたえるようにしろという方向はできているのではないかと思います。  なお、法律の体系につきましては、このたびの懇談会の中で、既存の法律をこうしたらいいじゃないかというような意見種々出ております。したがいまして、先ほど審議官からのお話もありましたように、中小企業庁としても、先生の御提案の体系を一つの参考にさしていただきまして、今後一体となって検討を進めるつもりでございます。  いずれにいたしましても、中小小売商は全国で百六十七万店、従業員にして六百万人近いものでございますので、私ども、ただいま申しましたもので完全にできていると思っておりませんが、今後とも努力を続けるつもりでございます。
  243. 横手文雄

    ○横手委員 私は、そういったいろいろ近代的な流通機構、こういったものは今後も入ってくるであろうということが予測をされるわけであります。そのたびごとに逃げ回ってしまうということでなくして、こういったものとどう共存ができるかということにその重点が置かれるべきであろう。そのためには、中小企業中小企業だけ、あるいは大型店は大型店だけ、こういった形ではなくして、日本のそれぞれの地域における全体的な消費圏における小売商業の基本的な問題というものをぜひ策定をする必要があると思いますし、それに対して、そういった方向に向かうという御答弁をいただいたことを大変力強く思うわけであります。  さらに、私も地域におります。そして、多くの商店街で多くの事業がなされております。それで一面では、たとえば駅前通りあるいは何とか町振興会といったようなところでは、そういった資金を十分に借りて、週末における歩行者天国だとかそういうことによってお客をどんどん呼んでおるという一面もございます。しかし、ややもすれば、こういった大型店が出るのは町の真ん真ん中ではなくして、郊外に出る場合がよくあるのであります。ところが、郊外はそういった商店街のアーケードというようなものに不相応な商店街でございます。そこに私は一番問題があるというぐあいに思うのであります。いろんなメニューを並べられても、とても手がつけられません。はしがつけられません。こういった人たちもたくさんいるんだということを十分承知をしていただきたいと思うのであります。今後さらにそういう、いまおっしゃるように自助努力をしてがんばっていけ、そのためにわれら中小企業庁も力をかすぞ、こういうことがその地域の人たちとかちっとかみ合うようなきめの細かい指導というもの、育成策というものが大変重要な時期を迎えてきたということを御指摘を申し上げ、そのことのために今後ともにがんばっていただきたいと思う次第であります。  時間が参りましたので次の機会にも、まだとてもこのぐらいの時間では論じ切れないわけでございますが、最後に一つ意見を申し上げておきたいと思う次第であります。  指摘してまいりましたように、流通政策はきわめて重要な問題であります。短絡的な結論はきわめて危険であります。昭和三十一年デパートの出店を許可制にした、そのときの法律によってデパートは競争を忘れた、そしてそのことが一方、中小商店をして流通の近代化、合理化をおくらせてしまったのであります。その結果、昭和三十年代の後半から、近代的な流通制度を駆使したスーパーはまさに燎原の火のごとくに広がったのであります。それを支えたのは消費者でありました。このことは経済の高度成長と相呼応し、わが国のGNPの飛躍的伸びに寄与したことも事実であります。このことは、商品を買い、サービスを受ける消費者の立場を忘れた流通行政であってはならないということを示していると言わざるを得ません。私はこういった観点に立って、流通の近代化はいまなおその途上であり、ここで息を抜くわけにはいかないというぐあいに考えます。規制の強化やあるいは許可制の導入は商業本来のダイナミックな活力を失わせてしまう、ひいては日本経済の健全な発展を阻害するおそれにもつながってしまうことと憂慮するものであります。こういう観点に立って、最後に大臣の御所見をお伺いして、私の質問を終わります。
  244. 田中六助

    田中(六)国務大臣 大店舗をめぐるいろいろな問題トラブルは、現実の社会問題化はしておりますけれども、根本的にはやはりこれらの店舗の功績というものも大きゅうございますし、私どもはあくまで消費者を中心にして考えなければなりませんし、将来とも消費者のニーズの多様化ということも十分考えられますし、といって中小の小売店の問題もありますし、こういうことを全部勘案して、私どもは長期的な展望、短期的な対処、そういうものを含めまして、委員指摘のような考えを十分考慮に入れて対処してまいりたいというふうに思います。
  245. 横手文雄

    ○横手委員 時間でございますので終わります。ありがとうございました。
  246. 野中英二

    野中委員長 渡辺貞君。
  247. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 まず、大臣にお伺いいたしたいと思います。  昨年の三月、現在第二臨調の会長でもあります土光さんが会長をしていらっしゃる産業構造審議会で、通産大臣に対して「八〇年代の通商産業政策」、通産ビジョンを答申されております。この答申を見ますと、前文から本文の至るところで、民間の活力を生かしていく、あるいは官民の総力を挙げて八〇年代の経済発展のために取り組んでいく、こういうような言葉がたくさん使われているわけでありますが、その第六章に「技術立国への道」という章があり、その第五節では「創造性を追求する技術政策」、こういう項目があるわけであります。この「創造性を追求する技術政策」の中身には、たとえば「研究開発費の拡充と資金の確保」、九十七ページから八ページにわたってそのことが展開されているわけであります。その「研究開発費の拡充と資金の確保」という中では、「今後、民間資金の積極的活用を図ることはもちろんであるが、政府資金の抜本的拡充が不可欠である。」というふうに述べて、さらに「特に、わが国においては、産業部門で使用される研究開発資金のうち政府負担割合が欧米に比べて著しく低い。民間の効率性を活かし、政府資金の配分に当たって民間への配分割合を増加させている。」こういうふうに述べられているわけでありますけれども大臣のこの答申に対するお考え方をまずお伺いしたいと思います。
  248. 田中六助

    田中(六)国務大臣 この八〇年代の産業ビジョンにも指摘されておりますように、民間の活力、民間のビジョン、そういうものを主体として私ども産業全体の政策の中心課題としております。しかし、技術という点におきまして非常にコストがかかる、危険性もある、そういう点が多うございますので、その点につきましてはある程度の金融、税制の面の国の支援は当然あっていいんじゃないかという考えを持っております。
  249. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 具体的にお伺いしたいと思うのですけれども、現在民間航空機の開発がいろいろな角度から行われているわけでありますが、民間航空機用ジェットエンジン、XJBの開発であります。この研究開発費の補助金が昭和五十五年度、五十六年度、五十七年度は概算でありますけれども、それぞれ出されていると思いますので、各年度ごとの金額、そしてこの補助金の場合には、受けざらとして日本航空機エンジン協会が設立をされておりますけれども、このエンジン協会への参加企業の名前と、一社に平均するとどのくらいの補助金の金額になるかという点について機情局から……。
  250. 豊島格

    ○豊島政府委員 XJBの計画につきましては、先生御指摘のとおり、財団法人日本航空機エンジン協会に対する補助をいたしておりますが、金額は五十五年度十七億八千五百万円、五十六年度四十七億二千万円でございまして、参加企業といたしましては、石川島播磨、川崎重工、三菱重工の三社が参加いたしております。  それから、平均金額は幾らかということでございますが、十七億八千万であると割りますと六億ということでございますが、シェアが会社によって違いますので、その点平均として申し上げると、五十五年度は大体六億ということになると思います。
  251. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 これはXJBの問題でありますが、同様に民間輸送機の開発の問題ではYX、さらにいよいよ実施段階に入るわけでありますけれども、YXXについても開発が進められて、すでにYXの場合には試作、飛行の段階に入っているわけであります。この民間輸送機YX、YXXの場合について財団法人の民間輸送機開発協会という、これも三菱重工、川重、富士重の三社でもって構成されている開発協会がありますけれども、ここへも通産省の補助金が出されて、この三社によって主として運営されているというふうに思います。そのとおりだと思いますけれども、これは後ほど一緒に確認をしていただきたいと思います。  さらに電源特会の中で、これはエネルギー庁の関係だと思いますが、原子力発電支援システム開発補助金というのがあります。この補助金は受けざらがつくられてなくて直接企業に出されていると思いますけれども、五十五、五十六年度の予算、さらに五十七年度の概算要求額について、総額と補助金の交付先について御説明をいただきたいと思います。
  252. 豊島格

    ○豊島政府委員 原子力発電支援システム開発につきましては、五十五年度八億五千万円、五十六年度十一億円でありまして、五十七年度の概算要求は十七億円になっております。  なお、対象企業といたしましては、日本原子力事業株式会社、東京芝浦電気、日立製作所、三菱原子力工業、三菱重工業、三菱電機、六社でございます。
  253. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 それでは、次に工業技術院の関係についてお尋ねをしたいと思うのです。  ムーンライト計画の中で、委託研究事業として高効率ガスタービン開発を進めていらっしゃるわけでありますが、この委託費の受けざらとしてどういう研究開発組合ができているのか、またそれへの参加企業名、さらに同様に五十五年、五十六年、また五十七年度の概算要求の額についてお聞かせいただきたいと思います。
  254. 石坂誠一

    ○石坂政府委員 高効率ガスタービンの研究開発につきましては、高効率ガスタービン技術研究組合というものをつくっていただきまして、これへの委託を中心に研究をしていただいております。  委託費につきましては、五十五年度及び五十六年度にそれぞれ約三十五億円及び約四十九億円が計上されております。五十七年度の委託費でございますが、これは約五十三億五千万円をいま要求して議論をしておるところでございます。  なお、高効率ガスタービン技術研究組合の参加企業でございますが、旭硝子、石川島播磨重工、川崎重工、京都セラミック、神戸製鋼所、大同特殊鋼、財団法人電力中央研究所、東京芝浦電気日本碍子、日立金属、日立製作所、三井造船、三菱金属中央研究所及び三菱重工、以上十四社でございます。
  255. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま御説明がありましたけれども、昭和五十五年度三十五億四百万円、五十六年度四十九億四千九百万円、それぞれのプロジェクトの内容によって若干の違いはあるというのは先ほども答弁の中でありましたけれども、客観的に見た場合に、それぞれの参加企業の平均値で割り出していくのが一般的な概念だというふうに思いますが、たとえばこの場合、十四社で割ると一社当たり、五十五年度の場合には二億三千万円、五十六年度の場合には三億三千万円、五十七年度は、概算要求でありますけれども三億六千万円というふうになるわけなんですね。  そこで、さらに続けて質問をいたしたいと思いますが、大体通産省の、これはいま三つのケースを取り上げたわけでありますけれども、その受けざらあるいは参加企業、また補助金あるいは委託費という形で出されているという性格が明らかになったわけであります。現在通産省が進めておりますこうした技術開発の問題では、特に技術先端産業である航空機やコンピューター、原子力など、また新エネルギー計画としてサンシャイン計画やあるいは省エネルギーのムーンライト計画、また横断的にも大型プロジェクトに対するさまざまな施策もありますし、また今年度から新規事業として次世代産業基盤の技術開発制度も発足をしております。それぞれのプロジェクトに対して、こういう形で通産省の補助金や委託費が出されているわけであります。  そこで、大臣にお聞きしたいと思うのですけれども、いま私も資料を差し上げましたが、通産省所管の補助金、委託費の中で、三菱重工、石川島播磨重工、川崎重工、それに日立製作所、東芝に対して、それぞれ昭和五十五年度、五十六年度、さらに五十七年度は概算要求でありますけれども、それらの企業に対してどの程度補助金あるいは委託費の総額が出されているか、御説明をいただきたいと思います。
  256. 田中六助

    田中(六)国務大臣 詳細は、恐縮でございますが、私、熟知しておりませんので、事務当局から答えさせていただきます。
  257. 豊島格

    ○豊島政府委員 御質問の、全体としてどのぐらい出しておるかということにつきましては、私どもは、三菱であれば、私どもが担当しておる補助金につきましてはある程度お答えできますが、全体としては持っておりません。
  258. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま、全体として個々に持っていらっしゃらないということでありますけれども、通産省全体の補助金、委託費の総額というのはわかるわけなんですね。  それから、先ほど私も指摘しましたように、個々の研究開発についての受けざら、これが財団法人であり、あるいは研究開発組合であり、あるいは直接企業にいくわけでありますけれども、そういうものを私が試算をして累計をいたしました。  これは、通産省からいただいた資料や、あるいは大蔵省が発行しております補助金便覧により集計をして、平均値を出して試算をしたわけでありますけれども、この試算によりますと、まず三菱重工について見ると、昭和五十五年度では補助金でYX、XJBの航空機関係原子力発電支援システム開発、重質油対策技術開発等六件で三十四億五千百万円、これは補助金であります。さらに委託費で見ると、サンシャイン、石炭液化、高効率ガスタービン開発、超高性能レーザー応用複合生産システム等九件、これはちょっと逆になりますけれども、金額は四十億七千八百万円、補助金と委託費を合計しますと七十五億二千九百万円出されている、こういう試算になるわけであります。これは、同様にして補助金と委託費の合計を五十六年度で見ると六十三億八千四百万円、五十七年度の概算によると七十八億一千万円になります。さらに石川島播磨重工を見ると、五十七年度の場合には三十一億円、川崎重工の場合には三十五億円、また日立製作所では四十六億円、東芝電気の場合には三十四億円、これは概算要求の中身を全部通産省の資料で試算をしたわけでありますが、この五社だけで二百二十三億円になるわけであります。  通産省の方が詳細な資料を出されないというわけでありますから、私の方で通産省の資料を分析してこういうふうに試算をしたわけであります。これは去る行革特別委員会でも、わが党の正森委員が質問したわけでありますけれども、現在、臨調で補助金がカットされなければならないという方向が打ち出されて、福祉や教育など国民生活関係の問題ではかなり大幅なカットがされて、国民生活にしわ寄せがされている。大変大きな問題になっているわけでありますが、いま述べましたように、それぞれの企業に対してこれだけの補助金あるいは委託金が出されているということでありますが、大臣、この点についてどうお考えでございましょうか。
  259. 田中六助

    田中(六)国務大臣 いま御指摘の点についてでございますが、たとえば三菱重工など、パーセンテージにいたしまして三六%程度の政府のいろいろな補助金関係がございます。しかし、これは私、先ほどの御質問に答えましたように、やはり技術の革新とかあるいは技術の向上というようなもの、ひいては輸出競争力というようなものにも結びつくかとも思いますけれども、やはり停滞は許されない、しかしリスクは多い、巨大な金はかかるという点から、そういう政府の補助あるいは支援というものがあると思います。これは、ひいては雇用関係にも響いてきますし、いろいろな日本経済全体の活力にも結びつく問題で、もしもそれがなくて民間だけでというようなことになった場合どうなるか。御承知のように、日本企業というものは、ほとんど自己資金というものはなく借り入れ資金が多うございまして、そういう点でもやはり政府がある程度支援するということは、川下の多くの、すそ野を開いてあります中小企業問題にも響くという観点から、私は、ある程度は当然じゃないか。国際的に見ましても、むしろ日本は低い方でございまして、平均二七、八%せいぜい三〇%に達しないような程度に比べますと、外国は五〇%以上という指数が出ておりますし、私は、リーズナブルな線ではあるまいかというふうに思っております。
  260. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 ただいま通産大臣は、それだけ出すのは当然だというふうな答弁をされたわけでありますが、私どもも、技術開発については、人類の発展の上でやはり必要な課題であるというふうに考えているわけであります。しかし現実に、指摘をいたしましたように、こうした企業にこれだけ膨大な補助金あるいは委託研究費等が出されているという現状については、きわめて重大な問題として考えていかなければならないというふうに思います。  そこで、工業技術院の石坂院長にお尋ねをいたしたいと思いますけれども、十月五日付の朝日新聞の「入射光」という欄の中で、日本でなぜ官民共同開発が進むのかについて述べていらっしゃるわけですが、「こうした日本のやり方は欧米から『過度の行政介入だ』とよく批判されますが、それは間違いなんです。日本企業研究費総額のうち、政府資金が占める割合はわずかに一・四%。西独の一九%、米国の三五%に比べるとケタ違いに小さい。日本はまだまだ政府の応援が少ないと思っているくらいです。」こういうふうに述べていらっしゃいます。この記事については間違いないと思いますが、いかがでしょうか。
  261. 石坂誠一

    ○石坂政府委員 ほとんど間違いないと思います。
  262. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そこで、先ほど私が指摘いたしました試算については、特別に否定の反論もなかったわけでありまして、全体としてはこうした流れになっているというふうに考えるわけであります。  次に、これは機情局長になると思うのですけれども、有価証券報告書、証券取引法で規定されております有価証券報告書の損益計算書の中には、法律によって技術研究費を損益計算書に計上するというふうになっているわけでありますが、一番新しい五十六年三月期の決算で計上されている、つまり五十五年度の決算でありますが、その技術研究費について、三菱重工、石川島播磨重工、川崎重工のそれぞれについてどういうふうになっているか、御説明をいただきたいと思います。
  263. 豊島格

    ○豊島政府委員 御質問になりました五十五年度の試験研究費は、有価証券報告書によりますと、三菱重工は二百七億五千二百万円、石川島播磨重工は六十九億八千九百万円、川崎重工業は百七億四千七百万円、こうなっております。
  264. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そうしますと、先ほど確認いたしました試算によって、五十五年度に国から出されている補助金等の総額は、三菱重工の場合七十五億二千九百万円でありますから、そういう点から見ると企業の技術研究費の関係では、国の補助金等の割合は、三菱重工の場合にはほぼ三六%に相当する、また、石川島播磨重工の場合には、二十一億三千五百万円でありますから三一%、川崎重工の場合には、四十一億五千五百万円でありますから三九%に相当するわけであります。つまり、民間が技術研究開発を行っている、これは通産省の所管だけであります。科学技術庁やあるいは防衛庁等の補助金等は入っておりません。そういう意味で、民間がその年度の決算をやって損益計算書の中にあらわしてくる技術研究費の総額と国からの補助金を対比してみると、三一%から三九%。これは、先ほど大臣もあるいは工業技術院の院長も答弁されているわけなんです。非常に低いと言っていますが、しかし、こういうふうにわが国の大企業、個別産業の場合にはかなりの補助金が出されている。企業全体の研究開発費の中に占める割合というのも大変大きいというのが特徴であります。こういう点から見ると、決して大企業に対しては少なくはないということが結論として言えるわけであり、臨調の答申などでは、国民が等しく痛みを分かち合わなければならないというふうに言っておりますけれども現実にはこうして大企業や軍事費などは聖域に置かれているわけであります。  しかも、御承知のように、臨調会長の土光氏は石川島播磨、東芝の相談役であり、また顧問であります大槻文平氏は三菱グループの総帥で、日経連の会長、経団連の副会長に就任をいたしております。痛みを分かち合うということになれば、本当に国民全体がということになるわけでありますけれども、大企業だけは毎年毎年補助金等が増額をされている。今度臨調で切られていく、たとえば四十人学級の凍結は、五十七年度の概算を見ますと五十七億円であります。また児童手当は十四万人、所得制限によって削減をされるわけでありますけれども、これは六十億円。こういう点から見ると、いかに一企業に対する補助金等が大きいかということがわかるわけであります。  そこで、冒頭に大臣も述べられましたけれども、まだ必要だというふうな御見解でありますが、こういう実態を見られたときに、これでも少ないのか、まだまだもっと出さなければならないのか、そういう点を含めて簡単に御所見を伺いたいと思います。
  265. 豊島格

    ○豊島政府委員 ただいま先生から、大企業に対しての補助金は非常に厚いのではないか、平均は非常に低くても厚いのではないかという御指摘がございましたけれども、先端産業である航空機あるいは電子計算機その他におきましては、非常にリスクも高く、さらに長期間にわたって資金を寝かさなければいけないという状況にありまして、諸外国でもそういう先端技術の開発のためには国か本腰を入れてやっておるわけでございます。現在、航空機に対するわが国の補助金は、最初の段階で四分の三くらいですか、平均して二分の一をやや超える程度になるくらいでございまして、それに対しましてヨーロッパの各国はほぼ一〇〇%まる抱えでやっておる、こういうことでございます。  先端技術を開発すべき企業というのは、やはりそれだけ企業の技術的、経営的ポテンシャルが高くなくてはやれないということで、たまたまそういう企業に補助金が集中しているというのは結果論ではないかと思います。  さらに、そこで開発されました技術そのものは、決してその業界にとどまるだけではなく、広く全体の産業に行き渡るわけでございまして、仮にコンピューターを例にとりますと、工作機械の競争力が日本にできたというのは、NCといいますかエレクトロニクスの開発の結果であるし、あるいは日本の自動車産業が強いというのはロボット、これもエレクトロニクスの力が波及した。さらに医療その他の面でもそういう技術は波及するわけでございまして、その結果は国民全体にわたるということでございますので、先端産業につきましては今後とも力を入れていく必要がある、このように考えております。
  266. 石坂誠一

    ○石坂政府委員 私の方は、委託費についての御質問がございましたので、それに関連して申し上げますと、委託費というのは、本来国がやるべきものを会社にお願いしてやっていただくというたてまえでございます。ですから、そのお金を会社に分けるために国の開発費を出すのではなくて、むしろ特定のある研究に対して人間を出していただき、資材も買っていただいて、それを加工して物に仕上げる、そういう研究開発をやっていただくという意味のお金でございまして、いわゆる一般的な補助金とは大分性格の違うものであるということを申し上げたいわけです。
  267. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま、いろいろ反論をされましたけれども、いずれにしても大企業には必要だし、リスクを伴うから先端産業にはそういうものを出さなければいけないということで、開き直りの論理をされたわけでありますが、ここに三菱重工の名古屋航空機製作所の昭和五十六年十月一日のニュースがあります。  このニュースには、「名航発足二十五周年を祝って」という三菱重工の末永聡一郎社長の訓辞が載っているわけなんですね。先ほど有価証券報告書の問題でも触れたわけでありますけれども、三菱重工の昭和五十五年度、つまり五十六年三月期における決算では、純利益は二百億円を超えておりますし、最近の日本経済の十一月十一日付ですか、それによると、五十六年度決算、来年の三月になるわけでありますけれども、二百七十億円にさらに増収、増益だと、大変な大もうけをやっているわけであります。この中で、社長の末永さんはこういうふうに、言っているわけなんですね。今日、最新鋭戦闘機F15のライセンス生産を初め、国際共同開発の七六七プロジェクト、これはYXでありまして、アメリカのボーイング社と共同開発を行って、すでに試作飛行が成功しているというような内容でありますけれども、こういうものがいまや当社にとっても大きな発展の要素になっておる。さらに、名航は航空機、宇宙、ミサイル等、新規プロジェクトの一斉展開で、始まって以来の繁忙を迎えており、その前途は洋々たるものがある、こういうふうに社長が訓辞をしているわけであります。つまり、国から膨大な補助金をもらって、実際上こうした大企業が大きな利益を上げているという実態を看過することはできないわけであります。  もちろん、私たちは、技術の開発という問題は人類の発展にとっても不可欠であろうというふうに考えておりますし、同時に、この技術が戦争への目的ではなくて国民の暮らしを守っていく、平和を守り人類の進歩に貢献できる、こういう技術の開発が必要である。同時に、やはりトップの大企業だけではなくて、末端の中小企業など今日深刻な危機に直面しているわけでありますから、そういうすそ野の広い技術の開発、新しい発展が必要であるというふうに考えるわけであります。そうした点で、今後の補助金等の運用については、そういう視点に立脚して進めていっていただきたいということを要望して、時間もありませんので、この問題については終わりたいと思います。  次に、中小企業の問題について、幾つかの点についてお尋ねをしたいと思うのです。  五十七年度の中小企業対策費の概算要求は、昭和五十六年度予算と比べてゼロであるというふうになっているわけでありますけれども、その中小企業対策費の中に、中小商業等統計調査委託費二十八億三千万円が計上されていると思います。この点はいかがでしょう。
  268. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 そのとおりでございます。
  269. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 この統計調査の内容はどういう内容であるか、つまり三年に一度やる商業統計なのか、あるいは工業統計なのか、その内容について。
  270. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 御指摘のように、中小商業等統計調査約二十八億円が通産省本省分の予算として計上されております。これは従来から三年周期で行われるものでございまして、五十四年度に二十四億円として計上された商業統計調査を、今回、中小企業対策費として継承したものでございます。  商業統計調査は、調査対象のほとんどが中小企業でございます。従業員区分による中小事業所だけで全体の九九・七%を占めております。さらに商業統計は、中小商業対策に不可欠の前提であることなどから、本来中小企業対策費として計上すべきものであると考えておるものでございます。今回、従来の業種別集計にとどまらず、新たに業態別等の把握が可能となるような調査項目の充実を行うというようなこと等、中小商業対策推進の基礎資料としての重要性を増大させることを契機に中小企業対策費として計上したわけでございまして、先生御指摘のように、大規模店との関係で細かな調査をする必要等がございますので、この調査を新たに中小企業の方に入れたわけでございます。
  271. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま御説明がありましたけれども、三年に一度行う統計調査であるということでありますが、そうしますと、前回の五十四年度の予算ではこれは中小企業対策費として全体の枠組みの中に入っていたのか、あるいは本省の別予算の中に入っていたのか、その点はいかがでしょうか。
  272. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 三年前は、中小企業予算の中には入れないで本省の方の予算で計上いたしました。
  273. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 そうしますと、三年前には中小企業関係の予算ではなくて本省の予算に入っていた、二十数億、ところが三年たった今日は、ゼロシーリングで中小企業関係の予算は五十六年度と変わりはないけれども、実際上その中には、いままでは本省の予算であったものが中小企業対策費として二十八億三千万円計上される、それでゼロシーリングでつじつまを合わせているわけでありますけれども、これは数字の合わせ方であって、実際上は、全体の枠組みからはむしろゼロシーリングというよりマイナスではないか。こういうふうな姿勢であっては、中小企業に対する振興策は十分できないというふうに考えますので、その点を指摘をしておきたいと思います。  さらに、これも五十七年度の予算編成との問題でありますけれども、現在、従業員二十人以下の零細企業に対する国民金融公庫からのマル経資金が出されているわけでありますが、これは約五百万という、零細企業にとっては大変大きな事業活動上のプラスになっていると思うのです。利息も七%でありますが、現在聞くところによると、大蔵では、七・五%だ、もし七%を維持すると約二百億円ぐらいの一般会計からの貸し出しをしなければならないから、財政が厳しい、こういうふうに言っているわけでありますけれども、現在の日本産業構造を見ても、中小企業と大企業との格差、跛行性が非常に広がっているというふうに、重大な中小企業の問題に直面をしているわけなんでして、こういう点についてもやはり七%、低金利で維持をしていかなければならないと考えるわけでありますが、この点についてのお考えはどうでしょう。
  274. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 マル経資金の金利につきましては、他の委員会等で大臣からすでに表明しておりますとおり、現行の七%を維持するための努力を傾注しております。  さらに、先ほど先生おっしゃいました、ゼロシーリングの中で二十八億という余分なものが入っているのではないかという御質問でございますが、先ほどるる申し述べましたように、このたびの商業統計というのは、先ほどから各先生から御質問があります最も重要な中小商業対策の基本となるものでございますので、私ども、こちらに入れました。ちなみに、補助金につきましてはこの二十八億円を含んで六十三億円を上乗せしておるということは先生御存じのとおりでございます。
  275. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 概算要求を実現していく上で中小企業の問題は、大蔵との関係でなかなか厳しいというふうに思うわけでありますけれども、ぜひそうした点は、数字合わせということではなくて、実態の上に立ってひとつ積極的な施策を進めていただきたいと思います。  時間がありませんので最後に……。年末を迎えるわけでありますけれども、こうした年末の中で、特に政府系の三金融機関、商工中金あるいは中小企業金融公庫、国民金融公庫等ございますけれども、こうした政府系三金融機関で、とりわけ中小企業に対する融資等どういうふうな立場から準備をされていらっしゃるか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  276. 勝谷保

    ○勝谷政府委員 年末の中小企業金融でございますが、先ほど来大臣からお答えしましたように、年末に向けての金利は、長期プライムでは〇・四%上回りましたけれども、それを据え置いたままで貸し付けをいたしますが、金融の枠につきましても、三機関合計で一兆八千五十億円、これは対前年同期実績比で一四%増の資金を確保しております。年度の資金計画全体の三五%をこれに充てることにいたしておりまして、私どものいまの見通しでは、十分年末の金融には対応できるという期待をいたしております。  さらに、一月一日以降におきましても、全体の〇・四に対しまして〇・二の金利のアップでございますが、その枠につきましても十分の枠、約二〇%アップの枠を用意しておりますので、金利、金融枠の面で十分対応しておるということでございます。
  277. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 終わります。
  278. 野中英二

  279. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 さきのエネルギー・鉱物資源問題小委員会参考人よりいただきました資料によりますと、日本電力価格というのは、外国と比べるとずいぶんと高くなっておるわけでして、世界の平均が一キロワットアワー当たり四円、日本と似ていると思われる西ドイツが七、八円、台湾が九円、こういう価格でして、幾つかの業界の方が電力の高料金に苦しんでいるということを申されたわけですけれども日本電力料金と外国の電力料金のこのような大きな違いは何に基づいているとエネルギー庁では判断されておるのでしょうか。
  280. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 電気料金を国際比較いたします場合に、それぞれの国におきます電源構成あるいは料金制度のあり方というようなことが大きく影響してまいるわけでございますが、必ずしも先生いまおっしゃったような数字であるとは考えておりませんが、遺憾ながら日本電力料金の水準というのは国際的に見ましても決して安くない、むしろ高い方の部類に属しておるわけでございます。  これを電源構成の比較に即して考えてみますと、たとえばイギリスの場合でございますと石炭系火力が非常に多くございまして、そのウエートは七五%程度、西ドイツにいたしましても六七%ということで、それぞれの国におきます石炭火力のウエートは非常に高うございます。これに対しまして日本の場合には、石炭火力は現段階では五%程度ということでございまして、火力の中の大宗は石油火力が占めているという状況にございます。したがいまして、現在の石油ショック以降の石油価格高騰石油火力コストの上昇をもたらしているわけでございますから、結局石油火力のウエートが大きいところがどうしても価格が高くならざるを得ないのではないかというふうに判断されます。  このウエートをちなみに申し上げますと、日本の場合には、これはちょっと古うございますが、七九年九月時点で比較した数値でございまして、最近では事情は変わっておりますが、石油系では八三・二%。これに対しまして、先ほど申し上げましたイギリスは二二・七、西ドイツは一四・七ということで、そのウエートは非常に低い。そういう意味におきまして、私どもといたしましては、主としてその電源構成が基本的な要因になっているのではなかろうかというふうに考えているところでございます。
  281. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 いま、電源構成で石油火力が多いからだというようなお考えをお示しになったわけですけれども、しかし、日本の電源で一番安いと言われている原子力発電でさえ八円ないし九円で、世界平均の倍ですね。石炭火力でも十二円ないし十三円。ということで、この差額というものは、やはり余り急速に発電所を建設したためにかかわるところの設備負担といいますか、それが大き過ぎるからじゃないかというふうにも考えざるを得ないわけですけれども、いかがでしょうか。
  282. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 私ども、五十六年度の電源別原価のモデルによります試算をいたしております。原子力発電所の場合でございますと、キロワットアワー当たり十一、二円ではなかろうかというふうに見ているわけでございます。  しかし、この値が先進諸国とのバランスにおいて高過ぎるかといえば、私ども、そういう理解はいたしておりません。たとえば工業用、まあ大口電力と申しますか、それの西ドイツ、イギリスの価格は、それぞれ十二円九十五銭あるいは十七円五十四銭というような、もちろんこれは為替レートのとり方によって変動せざるを得ないわけでございますが、そういう比較も行い得るという試算がございます。そういう意味におきまして、わが国におきます発電原価に関する限りにおきましては、原子力の優位性は十分に存在するというふうに考えております。
  283. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 私は、その何が優位とかなんとかいうのじゃなくて、絶対的な外国との差は、過大な設備負担によるところが大きいのじゃないかというふうに考えざるを得ないと申し上げたわけでありますけれども、五十六年度に九電力の合計の設備投資が三兆四千六百四十一億、五十七年度はそれよりさらに大きいものが予想されていると思うのです。その結果、電力コストアップを招いて、先ほど申し上げましたように電力消費型産業不況に苦しみ、また一般家庭にも苦しんでいるところが出てくる。一方、何のためにこのような過大な設備をして、六十五年末では五十五年末の一・八倍もの総発電量を予定して発電所の建設を進めていくのか、そうお聞きいたしますと、ピーク時の需要に対応するためだとのお答えであります。夏のごくわずかの一時期に甲子園で高校野球をやって、冷房をがんがん回してテレビを見るときがそのピークだと思うのですけれども、そんなことのために過大な設備をして高料金のために苦しむところが出てきているのが現状であります。  私は、このような図式は改めていくべきではないか、ぼつぼつ、電気というものも無際限に使えるものではないのだ、通産省も、必ずしもあらゆる需要にこたえていかなければならないと考える必要はないのじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  284. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 電力コスト構成を見てまいりますと、燃料費の関係が約四割でございます。それから償却金利負担が二割程度でございまして、たとえば五十五年四月の料金改定におきます改定貢献要因別の検討をいたしますと、八割以上が変動費、要するに燃料費の上昇に起因するところでございまして、私どもとしましては、お説のような設備の過剰性というものが料金の高水準を招いている大きな要因というふうには考えておらないところでございます。
  285. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 先ほどの質問にお答えになったようですけれども、いま質問したことにお答えになってください。
  286. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 どうも失礼いたしました。  電力需要の見通しにつきましては、私ども、そのときどきにおきます最新の需要データに基づきまして、かつ政府経済見通しその他のフレームワークを活用いたしまして、それぞれの電力の施設計画を策定いたさせておるわけでございます。これによりまして一定の、約十年間にわたります施設計画電力会社は立てるわけでございますが、これは年々改定をしておるわけでございます。  五十六年度におきまして六十五年断面の想定をいたしました段階では、先生御指摘のような数値をもちまして施設の拡充を行う必要があるという判断をいたしておるわけでございますが、ただいまエネルギー需給暫定見通しを見直し中でございまして、これに即応しまして、電気分野におきます需要想定につきましても現在見直しを実施しておるわけでございます。  そういう意味におきましては、五十七年度の施設計画におきまして、新たに五十五年、五十六年度の実績その他を加味いたしました需要見通しを立ててまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  287. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうしますと、六十五年末の電力供給目標も見直していく、そういうふうに考えてよろしいのですか。
  288. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 まだ結論を先取りする段階にございませんが、十二月の半ばごろから電気事業審議会需給部会に諮りまして、今後の全体のエネルギー需給見通しの一環といたしまして、電気事業の需要想定についても見直しを図ってまいりたいというふうに考えております。
  289. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それでは、エネルギー庁では、さきに今後十年間の電力需要の伸びを年率五・二%というふうに見られたわけですね。ところが、五十六年度上期の実績は前年同期比二・四%で、前年というのは五十四年度に比べてマイナス〇・九%、かえって少なかったわけです。現実の需要量というのは、もう予想をはるかに下回っておると思うわけなのですけれども、このような見通しの違いというものはなぜ出てきたのでしょうか。
  290. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 今年度上期におきまして電力全体の需要の増加は、御指摘のように対前年比で二・四%でございます。しかし、この内訳を見ますと、民生用である電灯需要につきましては七・四%の伸びを示しでおりまして、停滞要因となりましたものは電力需要でございます。これは御承知のように、緩慢な景気回復動向、こういったものを反映いたしまして伸び悩んだものというふうに考えておりますので、景気回復に応じまして需要の回復もあり得るであろうと判断しております。もちろん、私どもといたしましては、電力に関する省エネルギーの節約率といいますか、そういうものも十分織り込んで考えておるわけでございますが、現時点におきます需要の停滞は、主としまして工業生産の停滞に基づく電力需要の伸び悩みであるというふうに考えております。
  291. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 予想と大分食い違ったわけですけれども、この予想を立てられたときに、これからまた立てられるときに、今後産業構造転換していく、素材産業から知識集約型に変わっていく、あるいは開発輸入が盛んになる、こういったことも織り込んでおられたのですか。
  292. 石井賢吾

    石井(賢)政府委員 電力需要想定の詳細について御説明する時間がありませんが、基本的には七ないし十一業種電力消費産業につきましては、個別の産業の進展を積み上げ計算して計算いたします。その他につきましては、大口、小口電力等についてはIIPの連動で考えてまいっておるわけでございまして、ただいま先生の御指摘のように、産業構造の変化については個別大口需要産業の積み上げの段階において織り込んでおるつもりでございます。
  293. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 その見通しの立て方がどうも過大に過ぎたのじゃないかという感じがするのですけれども、何かいままでは通産省が大きな目標を立てて電力会社をせき立てる、電力会社は何とかそれに沿って発電所を建設していく、そうして余剰になった電気は民間にいろいろ工夫をして売り込もう、そういうことが繰り返されてきた。発電所が次々建設されると膨大な経費がかかるわけですから、その結果高料金につながっていくのじゃないか、こんなふうな感じがいたすわけであります。  いま部長の方から、見直しはやっていくのだというお話はありましたけれども大臣にお願いしたいことは、省エネルギーにもっと努力をするあるいは電力消費のピークを小さくすることにこそ国を挙げて取り組んでいくべきじゃないか。また、次に見直すときには大幅に、しかも早急に見直すべきだと考えるのでありますけれども、いかがでしょうか。
  294. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私どもも、先ほど政府委員がお答えいたしましたように、長期的な十年計画エネルギー見通しを持っておりまして、それに向かって進んでおるわけでございます。御承知のように石油、原油への依存率が七十何%あって、それが五十五年度は六六ぐらいに下がったわけですが、それを十年後はさらに五〇%に下げようという計画を持っております。そのためには代替エネルギー、つまり石炭、LNGあるいは原子力発電所というようなものを早急に整備しよう、それは結局、たとえば原子力発電はそういう火力発電に比べてコストが半値で済むからです。  御承知のように、日本はいま原子力発電所は二十二基稼働しておりまして、それを三十五、六基まで持っていきたいわけです。たとえばアメリカあたりは現在七十一ぐらい稼働しておりますが、それを、私どもが三十五を目標にしているときに百八十二ぐらいに、ソ連も二十七稼働しておりますが、これを五十幾つかに持っていく。共産圏、非共産圏を含めて各国とも、そういう原子力発電を含めて代替エネルギーの開発導入についての努力をやってきておるわけでございまして、わが国だけが設備投資を電力関係で無理やりにしてコストを上げておるという段階ではなくして、むしろ将来のコストを下げる意味で当面そういうことをしているわけでございます。長期的に見た場合に、私どもがどうしてもたどらなければならない過程ではないかと思います。しかし、御指摘のような点もあろうかと思いますし、そういう点は十分配慮して努力していかなければならないと思います。
  295. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 終わります。ありがとうございました。
  296. 野中英二

    野中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十九分散会