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1981-10-16 第95回国会 衆議院 行財政改革に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十月十六日(金曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 小渕 恵三君 理事 海部 俊樹君    理事 藤波 孝生君 理事 三塚  博君    理事 佐藤 敬治君 理事 山口 鶴男君    理事 正木 良明君 理事 大内 啓伍君       天野 光晴君   稻村左近四郎君       小里 貞利君    加藤 六月君       梶山 静六君    木野 晴夫君       佐藤  隆君    齋藤 邦吉君       塩崎  潤君    塩谷 一夫君       澁谷 直藏君    竹下  登君       玉沢徳一郎君    中村喜四郎君       丹羽 雄哉君    橋本龍太郎君       松永  光君    三原 朝雄君       伊藤  茂君    上原 康助君       金子 みつ君    沢田  広君       中西 績介君    森井 忠良君       安井 吉典君    湯山  勇君       横山 利秋君    有島 重武君       鈴切 康雄君   平石磨作太郎君       岡田 正勝君    米沢  隆君       和田 耕作君    寺前  巖君       野間 友一君    藤原ひろ子君       正森 成二君    小杉  隆君       依田  実君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         文 部 大 臣 田中 龍夫君         厚 生 大 臣 村山 達雄君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         郵 政 大 臣 山内 一郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         総理府人事局長 山地  進君         総理府臨時行政         調査会事務局次         長       佐々木晴夫君         総理府臨時行政         調査会事務局首         席調査員    山本 貞雄君         日本学術会議事         務局長     大濱 忠志君         行政管理政務次         官       堀内 光雄君         行政管理庁長官         官房審議官   門田 英郎君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         管理局審議官  古橋源六郎君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 和田  裕君         経済企画庁調整         局審議官    大竹 宏繁君         国土庁長官官房         審議官     川俣 芳郎君         外務大臣官房長 伊達 宗起君         外務大臣官房調         査企画部長   秋山 光路君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 淺尾新一郎君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房審         議官      矢澤富太郎君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主計局次         長       宍倉 宗夫君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省管理局長 柳川 覺治君         厚生大臣官房総         務審議官    正木  馨君         厚生大臣官房審         議官      吉原 健二君         厚生省医務局長 田中 明夫君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁医療         保険部長    入江  慧君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         郵政省電気通信         政策局長    守住 有信君         労働大臣官房長 松井 達郎君         労働省労政局長 吉本  実君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設省河川局長 川本 正知君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    大嶋  孝君         自治省財政局長 土屋 佳照君         消防庁長官   石見 隆三君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     吉井  浩君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         日本電信電話公         社職員局長   児島  仁君         行財政改革に関         する特別委員会         調査室長    石川 健一君     ————————————— 委員の異動 十月十五日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     正森 成二君 同月十六日  辞任         補欠選任   沢田  広君     伊藤  茂君   森井 忠良君     金子 みつ君   湯山  勇君     中西 積介君  平石磨作太郎君     有島 重武君   岡田 正勝君     和田 耕作君   正森 成二君     野間 友一君   小杉  隆君     依田  実君 同日  辞任         補欠選任   伊藤  茂君     沢田  広君   金子 みつ君     森井 忠良君   中西 積介君     湯山  勇君   有島 重武君    平石磨作太郎君   和田 耕作君     岡田 正勝君   野間 友一君     藤原ひろ子君   依田  実君     小杉  隆君 同日  辞任         補欠選任   藤原ひろ子君     正森 成二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一  環としての国の補助金等縮減その他の臨時の  特例措置に関する法律案内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一環としての国の補助金等縮減その他の臨時特例措置に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。米沢隆君。
  3. 米沢隆

    米沢委員 まず、総理大臣にお伺いをいたします。  今回の行政改革は、その目的とするところは、総理もおっしゃるようにあるいは臨調答申も述べておりますように、わが国の目指すべき方向として、国内的には活力ある福祉社会の実現、対外的には国際社会に対する貢献の増大、この二つが挙げられておるわけでございます。しかしながら、活力ある福祉社会と一言で申しましても、その理念とか概念というものにつきまして大変わかったようでわからない、そういう不明確な部分があることも事実でございます。とる人によって解釈が違う理念概念であるならば、それは国民合意の共通の目標になり得ないと私たちは考えます。  たとえば、今回提案されておりますこの法案も、政府行政改革法案であり、これからの行政改革の第一弾であるというふうに位置づけされております。しかしながら、一方では五十七年度の増税なき予算編成、そのための緊急措置だということはよくわかりますけれども、単なる弱い者いじめの補助金削減法案ではないか、そんなものにすぎないではないか、理念原則もあったものではない、こう批判をする者もおるわけでございます。このように、同じ法案について両極端の見方があるということは、行革の理念原則にかかわる解釈の相違に由来するところも多いのではないか。したがって、まず総理にはっきりしてもらわねばなりませんことは、あなたのおっしゃる活力ある福祉社会というのはあるいは政府が目指そうとする活力ある福祉社会というものは一体どのようなものなのか、国民にわかりやすい言葉で語っていただきたい。
  4. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今度の行財政改革が目指しておりますわが国目標、将来に対する理念、こういう中に、一つ活力ある社会を建設することであり、一つ国際社会において増大するわが国への貢献に対する期待、これにこたえるようにしなければいけない、こういうことを申し上げておるわけであります。米沢さんも、いまそのうちのまず国内的な活力ある社会についてどういうことを考えておるのか、どういう内容のものであるか、こういう点についてお尋ねがございました。  わが国社会福祉の施策は、昭和四十八年を契機といたしまして急速に改善向上を見ております。今日では総体的に見れば欧米先進国水準に達しつつある、こう思います。しかし、一方におきまして急速に到来しつつある高齢化社会国民の多様な要請、国民のニーズ、こういうものもあるわけでございますから、私どもは新しい時代の求めるところの日本福祉社会というものについていろいろ考えます場合に、欧米福祉国家と言われる国々状態も勉強いたしまして、その反省すべき点は反省も加え、そして日本の風土に合うところのものを考えていかなければいけない、このように思います。  私は、福祉国家と言われるところの欧米先進国実態を見ておりますと、年金制度あるいは失業手当あるいはその他の福祉対策というものは確かに整備いたしておりますけれども、それが果たして国民に幸せをもたらしておるかどうか。改善すべき点があるのではないか。年金をもらい、あるいは失業手当をもらって、そしてまだ十分働けるような年齢と健康を保持しながら、公園等でぶらぶらしておるような状態、必ずしも御本人は満足ではない、働ける問は働きたい、こういう希望を持っておると思います。と同時に、そういう一方におきまして、外国から労働者を雇い入れて、現場の労働というようなものは外国から受け入れた労働者にそれを任せておる。それで一方においては失業者が出ておる。こういうような実態も見受けられるわけでございます。そういうようなことに対する反省欧米福祉国家と称せられる国々においても現に出てきておる。一方において経済は、世界的な情勢でありますけれども、非常に厳しい状況下にある。そこで、財政経済の面からもこれの見直しを迫られておるというのが現状であろうかと私は思います。  そのようなことを私どもはよく勉強し調査もして、日本はそのような方向に行ってはいけない。特に、今日、低成長時代といいますか安定成長の軌道に乗りつつありますわが国としては、この点については十分これに対応できるようなことを考えなければいけないということから、この際思い切った行財政改善合理化を加えて、それによって国民の皆さんが、納税者立場に立っても適正な国の負担のもとに、一方においては自立自助精神に立脚し、家庭あるいは近隣あるいは職場、社会全体の連帯を基礎とするところの社会、しかも民間活力を生かしたような社会、これを私は日本型の福祉社会と考えております。  大平総理が、かつて日本型の福祉社会ということを言われました。また、経済社会七カ年計画、この中にもそういう言葉を使っておりますが、私が申し上げる活力ある福祉社会も、大平総理の言われたものも同じような考え方の上に立っておるものである、このように御理解をいただきたいと思います。
  5. 米沢隆

    米沢委員 問題は「活力ある」という言葉意味でございます。たとえば、この法案内容を見ます限り、国民に少々迷惑をかけても国庫負担を削っていけば活力ある福祉社会になる、そういうような意味にとれないこともありません。われわれも今後の向かうべき社会として自立自助、これは結構です、全然否定もいたしません。国民はまたみんなその精神で今日まで大部分がやってきた、そうわれわれも信じております。しかし、それをいまさら総理自立自助自立自助と至るところで強調されて、福祉見直し論議財政再建論議にその言葉が使われますと、総理の言われる活力ある福祉社会というのは、いわゆる福祉の普遍主義的な福祉というのがありますね、そういうものから個別で選別して福祉をやるという昔の救貧的な福祉に逆戻りするのではないかという感じが、国民の間に率直にすることは事実だろうと思うのでございます。いままで福祉はどんどん向上してきた。しかしながら、急に自立自助を言われた。自分のことは自分でやれと言われているように見える。結果的には、政府が手を抜いてきて昔の金の要らない福祉、特に手を加えねばならないというところだけに福祉は限定をして、ほかの連中は自分でやれ、そういうふうに受け取っても仕方がない、いまそういうムードであることも実際は事実なんでございます。  御案内のとおり、昭和五十五年九月に、厚生省大臣官房高齢化問題の調査結査というのを発表しました。それを読んでみますと、年をとってから不安なものは健康問題と生活費の問題だ、圧倒的にこれが高い。ということは、急速な高齢化社会の到来を前に不安であるということは、やはりそういうものが充実してない、将来に向かって不安であるとおっしゃることはまさにその点においてまだまだ安心できない状況日本はある、そういうふうにとっていらっしゃるのじゃないか、こう思うわけでございます。  そういうときに活力ある福祉社会を目指すと言いながらも、たとえば老後所得保障については、ぎりぎりこういうところまでは守るんだ、ここまでは高めていくんだというものがどうも出てこない。財政状況によってはどう変わるかわからないというような状況しか私にはわからない。あるいは健康保障についてもこういうことで必ず確保してやるという約束事がなされない、未来像がないわけです。ですから、そういうことを示さないままに、自立だ、自助だ、こう言われましたら、国民の不安が高まるのはあたりまえ。その上、自分老後自分で守れというような風潮が高くなってきて、その上、国の年金財政は将来にわたって大変だ、公的年金に対する不安あるいは不信感が醸成されてくる、公的年金頼みに足らずということになる。  今後、年金財政等を改善していく場合には、保険料を上げたりいろいろ条件を変えていかねばならない。もたないのはあたりまえ。そういうときに、どうも政府社会保障については手を抜いていく、公的年金についても将来に余りよくないぞ、それならば保険料を上げろ、そんなのいやだ、支給条件を変えろ、そんなのばかばかしい、やめろ、こういう議論になっていったら、歓迎すべき議論ではない。そうなりますと、公的年金はもう頼みに足らずとなったら、それなら個人年金でも自前で掛けようか、あるいは企業年金をやかましく言うてつくらせようか、あるいは高めていこうかというふうに、公的年金をカバーする部分にみんな目がいってしまって、そちらの方で老後所得保障等を考えねばならない。そういう社会になってきますと、一体公的年金とは何であったかということがやはり問題になってくるのじゃないか。そういうものはわれわれの目指すべき社会であるはずがないという感じがするわけです。  確かに、個人年金結構、企業年金結構だ。しかし、それによって国の社会保障費は軽くなるかもしれませんけれども個人年金がはやって、郵政の年金だとか生保の年金信託銀行年金民間活力導入ということで、それは個人年金はよろしく繁栄するかもしれません。しかし、それは持てる者だけの福祉社会だと言われても、私は仕方がないと思うのですね。そのあたりがどうも国民にとっては不安なんですね、不満なんですね。そういう意味総理は、これからの社会保障のあり方、もう一回そこらの関連も踏まえて、どんな福祉社会社会保障というものを考えていらっしゃるのか、お答えいただきたい。
  6. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほどの御質問からさらに一歩を進めてのお尋ねでございますが、私も、これから高齢化社会に向かいまして一層所得保障を合理化し、また内容的に充実をするということが必要であろうと思います。それから第二の点は、国民医療充実という問題であります。医療保障、健康の問題でございます。第三は、生活保護等最低の、経済的に非常に恵まれない方々に対する生活保障。こういう三つの柱が中心になろうか、こう思っております。  私は、今日でも、公的年金水準というのは、この負担の問題と給付の問題を比較検討いたした場合におきましては、そのバランスの上に立ったところの給付水準というものでは、欧米先進国に比べて、決して日本公的年金というのは劣っていない、このように思います。ヨーロッパあたりではこの給付が高いところもございますけれども、それだけに今度は負担も大きいということに相なっております。負担給付、その両面を総体的に考えた場合には、日本公的年金というものは、私は、欧米先進国に比べても決して劣っていない、このように見ておるわけでございます。  ただ、その公的年金が、制度が幾つにも分かれておりまして、その間において給付の面あるいは負担面等においてもばらつきがございます、不均衡がございます。そういう不合理な不均衡というものは、これを是正して、将来はこれを一本化の方向に持っていきたい、そして合理的な、先ほどおっしゃいましたところの国民全体としての老後所得保障、それが十分確保されるようにしなければいけない、それを目標に努力してまいりたい、こう思っております。  医療保障の問題につきましては、これはもう十二、三兆円にも及ぶような医療費、その中に、薬づけであるとか、検査づけであるとか、あるいは乱診乱療であるとか、いろいろな改善すべき問題がございます。そういう点にメスを入れて、適正な負担のもとに、そして質の高い医療が提供されるように、そういう医療保障制度というものをわれわれは十分今後吟味していく必要がある、こう思います。  生活保護の問題につきましては、年々私どもはこれに配慮をいたしておるところでございます。  そういうことを考えながら、負担能力のある方にはできるだけこの際御協力をいただきながら、そして経済的、社会的に弱い方々に対しては十分な配慮をしていく、そういう方法でわが国福祉政策というものを充実してまいりたい、このように思います。
  7. 米沢隆

    米沢委員 いまもおっしゃいましたように、日本福祉水準というのは国際水準に達したという言い方がよくなされます。確かに物によっては国際水準並みになっているものもあります。御承知のとおり、約束された水準というのは確かに国際水準並みになったと言ってもいいと思うのでありますが、その水準の達成はいまからの問題なんでございまして、そういう意味で特に昔の、おっしゃる日本型福祉社会に頼む、お互いに親族で扶養し合う、親子で扶養し合う、あるいは昔の家の概念、そういうものが少しずつ薄くなっている段階におきましては、やはり今後雇用者中心日本ということになっていく。そうなりますと、国民生活の安定を確保するための社会保障必要度は逆にますます強くなっていくという認識がぜひ必要ではなかろうか、私はそう思うのでございます。  特にこのごろ社会保障費そのものの対国民所得比が一二、三%になった、急激にふえたということで、それゆえにまた大変だという理屈がよく言われておるのでありますが、確かに一二、三%急激に伸びたことは事実でございます。長年六、七%でずっとおさまってきておったわけでして、結局伸びるということはそれだけ低かったというだけの話でありまして、伸び率だけを見て国際水準に近づいたなんという議論は全くおかしい議論である。何もスウェーデン並みになれとは申しませんが、少なくとも二〇%ぐらいになるまで——それ以上になったら大変な問題だと言われても結構かもしれませんが、二〇%にはまだ半分にも満たないそういう段階で、社会保障に金を回すのはけしからぬ、こんな議論が出てきますと、日本社会福祉というのはまた十九世紀に返ってしまうのではないかという心配がある。そういう意味で、厚生大臣、そのあたりを踏まえた上で社会保障を守っていく立場をはっきりここで確約してもらいたい。
  8. 村山達雄

    村山国務大臣 いま米沢委員の御指摘は、対国民所得比社会保障がまだ一二、三%、したがって国際的に見て低いのじゃないか、だから社会保障について守るということを確約せいと、こういうお話でございますが、ことしの予算ベースで一三・一ぐらいでございます。しかし、その大部分の原因は、すでに制度としては欧米水準に劣らない、あるいはそれ以上のものであると私は思います。  ただ、なぜそれにもかかわらず一三・一%であるかというと、高齢化がまだ来ていない。したがって、年金成熟度がまだそれだけ進んでいないわけでございまして、これから急速に進んでくるわけでございます。成熟度で申しますと、現在各種年金を全部平均いたしますと一三・五ぐらいでございますが、これが急速に高まってくるわけでございます。ですから、われわれの推計によりますと昭和七十五年で社会保障の対国民所得比は二〇%になる、恐らくそれ以降になりますともっと急激に上がってくるということは、現行水準で間違いないのでございます。私たちが現在の社会保障水準が国際的に遜色がないと申し上げておるのは中身の話でございまして、すでにモデル年金では十四万五千円になっているわけでございます。これはどこの国よりも高い水準でございますし、そしてまた、現に受給者の数が少ないから比較的対国民所得比は少なくなっておりますが、もらっている人の実際の数字から申しますと約十一万円でございますから、ほかの国の、現に高齢化がすでに達しておるところの年金受給者水準に決して劣らない。  また、医療にいたしましても同様でございまして、お医者さんの全体の国民に対する比率あるいは病床の比率、さらには看護婦の比率、こういうことを見ましても、また医療費全体の国民所得に対する比から見ましても、まあまあいっているのじゃなかろうか、こういう点を申し上げておるのでございます。
  9. 米沢隆

    米沢委員 細かい問題に入りたいと思うのですが、厚生年金国庫負担の削減問題、再々この席上で取り上げられておりますから余り言うことはありません。将来的に返済してくれるということでございますから、それも信用しましょう。しかし、返済する前提が、財政状況を勘案しながら返済するというこの言葉で、皆もめておるのですね。この言葉意味するところは、財政情勢が悪いときは返済できない可能性もある、そういうことですか、大蔵大臣。
  10. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 返済いたします。(米沢委員「悪くても」と呼ぶ)いたします。  なぜそうするかというと、ただ返済期間というものについて財政事情等を勘案してどれくらいにするか、うんと悪ければ延びるということもあるでしょうが、そういうことを意味しておるわけであります。
  11. 米沢隆

    米沢委員 返済しますという返済が確実ならば、財政状況を勘案してという言葉が返済方法にある。一瓶でやるのか、分割してやるのか、何年払いにするのか、財政状況に応じて返済する方式を考えるということであって、実際は返すということであるならば、財政を勘案してという言葉をとってしまったらみんな納得して、不安もなくて大蔵大臣や厚生大臣を信用しようという気持ちになるんじゃないですか。この言葉はとられたらどうですか。一体、財政状況を勘案してという言葉をとったら、どんな問題が発生するのですか。
  12. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 もともとこの法律案をこしらえたのは、財政の情勢を勘案してということから始まったわけでございますから、繰り入れの問題につきましても、やはりその一部をカットしたものをどうするかということは、財政状況を勘案して決めていくということが、終始一貫して全部がそうなっておるわけでありますから、ここの部分だけではございませんので、私は行革関連法としてはあった方がいいのじゃないかという気がするわけでございます。
  13. 米沢隆

    米沢委員 大蔵大臣の苦衷もわかりますけれども、少なくども返済するとこの席上で確約されて、また返済のやり方そのもののために財政状況を勘案するなんという言葉を入れたというのは、ちょっと論弁のような気がしますね。そういう意味で、この際、この言葉自体を取り去ることによって国民の皆さんに必ず返すことを約束したというふうにとることができる。それが本当の確約であるということを主張し、ぜひ再検討いただきたい。  同時に、昭和六十年の時点で果たして国の財政状況がそんなにびっくりするほどよくなるかということを考えても、まあ現在とそう変わらない、赤字国債の発行をしないぐらいの状況であろう、私はそう考えるのです。そうなりますと、今度は返済の段階で相当の金額を返済していかなければならない。そして国庫負担率もまた二〇%に返すわけでありますから、これはダブルパンチで相当の財政負担になる。そういうことを見計らって国庫負担そのものを、臨時的に今度は五%減らしておるけれども、何とか二〇%をいじって下げてくれぬだろうかという方向に行くのは当然の成り行きのような気がするのです。それで厚生大臣、今後国庫負担率二〇%は、いかにどさくさに紛れようとも堅持するのだということをここで約束してもらいたい、大蔵大臣もそのことをお願いしたい、御答弁いただきたいと思います。
  14. 村山達雄

    村山国務大臣 この国庫負担率をどうするかという問題は、年金制度の根幹にかかわる問題であるわけでございます。したがいまして、この問題は、総理がしばしば申し上げておりますように、年金一元化の方向に向かって、そしてとりあえずは不合理の較差をなくしていくという長期検討の中の部類に属する問題でございます。したがいまして、この法案と二〇%確保の問題というのは直接には関係のない問題だと思っておるのでございます。
  15. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私も同じような考えでございます。
  16. 米沢隆

    米沢委員 もう一つの問題は、厚生大臣国庫負担をこの財政再建期間中は削減をさせよう、後で返してもらおう。この損得はないかもしれませんね、財政だけの議論をしたら。しかし問題は、ただでさえ将来の年金財政が大変心配されておるそういう状況のときに、幾ら国の財政再建、お国のためとはいいながら、大蔵省に年金財政に手をつけさしたということ自体は私は大変大きな問題を含んでおると思うのですね。こんなことは、一度あることは二度ある、二度あることは三度あるで、将来にわたって、国の財政状況が悪かったならば、少々保っておる厚生年金には手をつけようかという、そういう既成事実をつくらせたようなものだ。私は、厚生大臣としてはちょっと守り切れなかったことを大変残念に思うわけでございます。そういう意味では、大蔵大臣というのは、名は確かに厚生大臣に与えた、返すのだから。そのかわり将来も手をつけるということを、既成事実をつくったという意味では、私は実をとっておるのだという気がするのですね。  そういう意味で、昭和六十年以降また財政がおかしくなったときには、どうぞさわってください、こうやるのですか、厚生大臣
  17. 村山達雄

    村山国務大臣 ですから、この法案ではっきり言っているように、三年間の特例措置である、こういうところにひとつ御注目願いたいと思います。  それから、損得で申しますれば、年金財政には損はないということは十分御承知のとおりでございます。
  18. 米沢隆

    米沢委員 先ほども申しましたように、三年後にその五%分の穴埋めをしなければならない、制度改正、そういう段階で必ず持ち上がってくると思いますね。そういうときに、やはり先ほどの国庫負担の二〇%を改悪するとか、あるいは将来にわたって財政がおかしくなったら何とか頼む、そういう議論が出てこないように、ぜひ大蔵大臣あるいは厚生大臣、その点をはっきりしつつ今後の財政運営をやってもらいたい、私は特に注文をつけておきたいと思うのです。  それから、国の財政がおかしくなるとすぐこんなことをよくやるのでございますが、御承知のとおり、厚生年金を含めて公的年金の官民較差の問題、あるいは制度的な見直しの問題、あるいは積立金の自主運用を含めて管理運用の問題、いろいろな問題があるわけです。そういうものは一向に進んでいませんね。そうして何かあったら、金がないから何とか金を貸してくれといって、年金債みたいなのを発行する。そこらの感覚がわれわれから見ておると不見識きわまりないという気がするのですね。一体、官民較差はどうしたの。昔から言われている自主運用の問題を含めて管理運用を何とかしてもらいたい、一体どうしたの、こんな問題は。  年金の一元化というのを今度総理が初めて口にされたということで、新聞に書きました。しかし、総理年金の一元化なんていって打ち上げた途端に、今度は厚生大臣と大蔵大臣が記者会見か何かで、話し合いをしてそれはむずかしいよというようなことを、すぐ水をかぶせるようなことをやる。結果的には、支払いだけがまず一元化だなんていって、ずっとトーンダウンして、鈴木総理が張り切って、将来、年金の一元化をやろうなんておっしゃると、すぐ二、三日したら水をかけて歩く。一体やる気があるのかなという気がするのですね。  だから、年金財政は確かにおかしい、いろいろ考えていかねばならぬことがある、しかし、この財政再建のときとはいいながら、手をつける以前にいろいろやっておかねばならぬことがたくさんあるのじゃないのですか。昭和五十五年のあの大改正のときにもいろいろ問題になりました。あのとき問題が指摘されながら、その問題は一体いまどうなっておるのですか。官民較差の問題、はっきりしてもらいたい、厚生大臣
  19. 村山達雄

    村山国務大臣 昭和五十五年のときもたしか米沢委員から御指摘があったと思います。直ちに関係閣僚協議会をつくりまして、そして二つの措置をとったわけでございますが、一つは、共済年金の問題につきまして大蔵省部内に、まず共済年金の統一問題から論じていこう。それからもう一つは、制度審に対しまして数理部会を設けまして、そして官民較差を初めそれらの一元化の基礎になるもの、まずその場合には何といっても合理的な基礎が必要でございますので、その数理部会で鋭意検討しているということでございます。  総理がおっしゃいました究極的に一元化ということとそれから私たちが申し上げておることとはちっとも矛盾しないのでございまして、総理方向としては究極的にその方向ではあるけれども、やはり漸進的に逐次いかないと、話が年金の話でございますので、もし急激に一元化するというようなことになりますれば、それは負担者、受給者の間に大激動が起きるわけでございます。  もう何遍も申し上げましたように、いまつぶれるかもしれぬという会社とそれから優良会社と強制合併をする、対等合併だ、そんなことはとうてい望めないことはもう十分おわかりだろうと思います。その辺をどんな条件、そしてやっておるか、ここが非常に保険数理の問題も絡み、そして現実的な問題も絡んでまいりますので、私たちは、少なくとも、現在いろいろな較差のある中で実質的に不合理だと思われるものをやはり急遽取り上げまして、それを詰めていって、だんだんその辺からならしていって、最終的に大体不公平がないようなものにしていく、こういうことを考えておるわけでございまして、一元化の問題というのはそういう過程を経た上で初めて実現されるものだと、かように思っておるわけであります。
  20. 米沢隆

    米沢委員 いまの話を聞いておりますと、たとえば公的年金関係閣僚会議、ちょうど大改正のとき問題になったときに設置されました。共済年金についても基本問題を研究しようという研究会ができました。あるいは制度審の中に年金数理部会ができました。何かいろいろやっていただいて効果が少しずつは出てきているような話なんですけれども、国鉄の共済年金は一体どこにいくのだ、そんなことさえまだ決め切らぬで、そんなえらそうなことが一体言えるのかという気が私はするんですよ。  特に日本年金はばらばらですね。八つの制度がある。みんな、それぞれの問題については説明しましょうとこうやってくるけれども、トータルとして横断的にバランスを見ながらどこに問題があるかという、そんな目はどこにもないのですね。当時伊東官房長官が、そういうばらばらではいけないので、横断的な見る目として、年金関係の閣僚会議を設置して、その中には大物ばかりおるのだから、何とか横断的なバランスをとりながら制度改革あるいは官民較差について議論してもらえるはずだ、こうおっしゃっておりながら、一体どこに、いつ、そんなのが開かれて、どれだけそれが進展しておるのですか。  特に今度制度改正をやろうとするならば、現在の制度がばらばらになっておること自体が問題である。もしそれが急激に一緒になり得ないとするならば、少なくともそれを横断的に見てどこに問題点があり、どこを直したら官民較差がなくなるのか、制度改善になっていくのかという見る目が、一体どなたが責任を持ってやってくれるのかという、それが保証されない限りこれはだめなんですね。それぞれ理屈を言って、みんな狭い了見で自分のやつだけを議論していきますから、ますます制度の違いあるいは較差はおかしくなってくるのじゃないですか。そして研究会だ何とかだと言いながら、一体何が出てきたのですか。一体何かいいものが出てきたのですか、官民較差について。こうしようじゃないか、ああしようじゃないかといって出てきたのですか。出てこないから、また御承知のとおり何か名前をかえて、社会保障長期計画懇談会というものから社会保障長期展望懇談会と名前を変えて、また答申をお願いします、どうしたらいいか頼みますと。年金問題でどうしたらいいかというのは、何回も制度あたりから出しておるのでしょう。何も実行してないだけじゃないですか。それをまた、いまさらわざわざ屋上屋を重ねて新しく審議会をつくって、また給付のあり方を考えます、将来どうしたらいいかそれを考えます、制度のあり方をどうしようかを考えますと。冗談じゃないと言いたい。こんなことこそ合理化しなければいけませんよ。それこそ行政改革じゃありませんか。
  21. 村山達雄

    村山国務大臣 この年金の較差是正という問題は、やはりそれぞれの経緯が違い、そしてまた背景が違っておる、過去においての積立率も違う、こういう問題がありますので、非常にむずかしい問題であるということはもう委員御承知のとおりでございます。  俗な言葉で言いますと、アヒルの水かきと申しますか、そういうことは鋭意努力いたしておるのでございますが、問題意識はいまやもう全部に行き渡っておるわけでございまして、先ほど申し上げましたような数理部会ができたということ、あるいは調整年金について共通の場でいま検討しておる、これも私は一つの前進だと思っております。  今度、活力ある福祉社会の実現に向かいまして年金の根本的な見直しをするということにつきましては、私としては少なくとも、こういうときを機会にして一元的にこれらの問題を本当に詰めて、やはりこれは非常な専門家でなくちゃなりませんので、そういったものをじみちに話し合う共通の場を何とかしてつくっていきたいものである、そしていま米沢委員の御指摘になりましたように非常にむずかしい問題でもありますけれども、一歩でも二歩でも前進させていきたいものだ、かように思っておるところでございます。
  22. 米沢隆

    米沢委員 もう昔から、社会保障制度審議会とか厚生大臣の諮問機関あるいは総理大臣の諮問機関を通じて、年金についてはいろんな提言がなされておりますよね。それをまた今度は、この長期展望懇談会をつくってじっくり考えてもらおう、こんなことをされますと、前の審議会等で一生懸命いろいろ検討されて答申された人は頭にきますね。おれたちが言うたことは聞かずに、また同じようなことを別な頭で考えてもらおう、一体何をするのだ。あとはやる気があるのかないのか、これは決意いかんでしょう。問題点についてはすべて出てきておるのですよ。それをやってくれるかどうかでしょう。  たとえば今度長期懇談会をやりますね。一体今度は何がテーマになるの。どういう目的でやるのですか。出てきた問題については現在の行政改革の流れの中ではどういうふうに関連していくのですか。五十五年の大改正の後、今度はいつやるのですか、五十九年ですか、六十年ですか。それに向けてこの検討をやってもらうようになったのですか。そのあたりをちょっとはっきりしてもらいたい。
  23. 村山達雄

    村山国務大臣 二つ問題がございまして、もうすでに制度あたりからは意見ができているのじゃないかという問題、もう答えはできておる、なぜやらぬのかよいうお話。それからもう一つは、長期展望懇談会をつくったら今度はおまえ何をやるつもりか、こういうお話でございます。  制度審の問題は、私たちも十分拝聴したわけでございますが、おっしゃるように、あれは定額部分については基礎年金あるいは基本年金構想ということで一本にしろ、それから所得保障方式についてはいまのやつをその上に積み重ねてやったらどうか、こういう趣旨でございます。  その中に二つ問題がございまして、その定額部分の財源は何でやるのかということについては、一般消費税を当てに提言しているわけでございます。これはなかなか実現がむずかしいわけでございます。  それから、これは二問目の問題とも関連するわけでございますけれども、われわれはその一元化の方向に向かって一体どういうふうな手順でやったらいいのか。問題点はほとんど出ているわけでございます。恐らく改めてどういう状況にあるかということはやるでございましょう。それをどのようにして較差を縮めてやっていくのか、そのときの善後措置はどういう具体的な方法があるのか。望ましい姿をいま言うことは簡単でございますが、もし白紙でこれから皆年金制度をつくるというのであれば、恐らくいろいろな案ができると思います。しかし、利害関係者がもうこれだけでき、それぞれの責任とそれぞれの考えに基づいて長年やってきた問題の利害調整の問題でございます。したがって、あるべき方向は恐らく問題はないと思います。それを不満なく、各年金受給者、それから負担者にも納得してもらうような手順、そのときのそれぞれの調整に伴う具体的な調整措置をどうするか、ここが一番むずかしいのでございます。これについてはまあ何も出ていないと言っても私は差し支えないと思うのでございます。まさに一番むずかしいのはその点であろうと私は思っておるのでございます。
  24. 米沢隆

    米沢委員 その長期展望懇談会ですか、そこでいま手順等を検討してもらう、一体結論は、めどはいつごろ出してもらい、その結論については次の大改正に入れるのか入れないのか。それで、その大改正はいつごろやる予定なのか。その二点をはっきりしていただいて、次の質問に移りたいと思います。
  25. 村山達雄

    村山国務大臣 私たちは、いまとりあえず厚生年金をやっているわけでございますけれども、厚生年金で問題点になるのは、恐らくこれから三、四十年後が一番大きな問題点になると思います。あるいは若干それ以前になるかもしれません。したがいまして、私たちがいま問題意識として持っておりますのは、急いで粗っぽい議論を言うものではなくて、精緻な実行可能な案をお願いしているわけでございます。  それとは別に、五年ごとに再計算が行われていることは御承知のとおりでございまして、その五年ごとにどういうふうになっているかという問題、現在やっておるのは緊急措置でございます。いろいろな段階で本当に長期的なもの、それから再計算の問題、臨時の問題と、こういうふうに問題の緊急度に応じましてそれぞれ御検討を願っておるということでございます。(「要するにはっきりしていないということだ」と呼ぶ者あり)
  26. 米沢隆

    米沢委員 やじが出たように、確かに何を言うているのかわかりませんね、これは。そういう意味で、改めて懇談会をつくって検討していただく。手続を検討することはわかったけれども、そのめどが実際わからない、次の財政再計算期についてどういう問題を取り上げようかということも余りわからない、それを六十年にやるのか五十九年に引き寄せてやるのかもわからない、みんなわからないということですか。
  27. 村山達雄

    村山国務大臣 年金の問題でございますから、各年全部連続しているものでございます。話は年金であるわけでございます。したがいまして、それぞれの段階でその問題点をとらえながらやっていくということでございます。それはわれわれとしてもできるだけ早く結論が出ることを望みますけれども、問題のむずかしさは私たちも十分承知しているわけでございますので、本当に精力的にお願い申し上げ、できるだけ早いところ答申をいただきたい、かように考えているわけでございます。
  28. 米沢隆

    米沢委員 厚生大臣の話を聞いていると、どうも全然進まないということがわかったような気がします。そういう意味で、こういう国庫負担をどうのこうのという議論をされる前に、先ほどから言いますように、もっと将来像に向けて積極的に動いてもらいたい。年金制度も八つに分立する、みんなばらばらだ。そこらを横断的に見て、公平にながめる目がない。総理大臣、ぜひ横断的に見ながら、それをおっしゃるような年金の一元化に向ける、あるいは較差の是正に向ける、そういう目を一体どこにつけていただくのか、どういうふうに総理は考えていらっしゃるのか、その点についてちょっと総理の所信を聞かせてもらいたいと思います。
  29. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほど来米沢さんと厚生大臣の論議をトレースして私も聞いておったのでありますが、年金制度の一元化に向かって、またその年金制度のあるべき姿というものは制度審その他からも出ておる、問題はそれを実現するための具体的な手順なりその措置をどう進めるか、こういう問題をこれから詰めていかなければいけない、こういうことを厚生大臣も言っておるわけでございます。  私は、高齢化社会が急速に到来しておりますこの状況下におきまして、現在の八つに分かれておる制度の中における合理的でない面の改善を進めながら、その較差を是正しながら、一元化に向かって早くこれの促進を図るようにしなければいけないということで、当委員会等におきましても、一元化に向かってやるんだ、そこに向かって努力をするんだということを申し上げました。  政府におきましては、そういう具体的なこれからの進め方、その内容等をどう詰めていくかという問題につきまして、鋭意真剣に努力をしてまいりたいと思います。
  30. 米沢隆

    米沢委員 どうも不満足でありますけれども、時間がありません。  次は、医療費の三%の財政削減、ゼロシーリングに向けて、厚生省が今度医療費を三%削ろうという方針を立てられておられるそうであります。過剰診療だとか、不正請求とか、医療供給側の自覚あるいは指導、監査の強化、そういうことで千百七十億を削減しようということでございますが、一体こんなのは計算ができるのですか。算出の根拠をまず示してもらいたい。  もう一つは、そういう削減の可能性があるのかどうか、そのことをはっきりしてもらいたい。  そして、老人保健法の成立そのものでちょっと国庫負担が浮きますよね。この分もその三%の中に入っているのかどうか、明らかにしてもらいたい。  それから、さきの国会で医療法の改正というものが一部出てまして、もう出てくるんじゃないかなと思っていましたけれども、いつの間にかなくなってしまった。確かに、医療費の適正化対策として医療法を改正するのはけしからぬと医師会の方はおっしゃっていますけれども、地域医療の大事さというものは私は医師会も理解があると思うのですね。そういう意味では、医療法を改正することによって結果的には医療費の適正化に資する部分がたくさんある。この医療法の改正は一体どうなっているのか。  その四点を簡単にさっとやってもらいたい。
  31. 村山達雄

    村山国務大臣 老人保健法によりまして、初年度三百億ぐらい国庫負担が漸減いたします。それは医療費の適正化とは別の話でございます。それをまず第一に申し上げます。  医療費の適正化三%の算出の根拠、これは実はそんなに具体的なものはございませんが、われわれが考えましたのは、いま税の方では、恐らく所得税、法人税の更正決定による増差額というのは四、五%ではないであろうか。あれだけの強力な権限を持っておる、あらゆることができる、しかも収支決算を全部見れる、そして五万人の人間が調べているわけでございます。まあ実際には徴収漏れもありましてあれでございますが、まあ四、五%だ。こういうところを見ますと、余りできない数字を言っても、これはまた、おまえ何したんだ、こういうことになりますので、努力目標として三%ぐらいであろうかなということでございます。  その内容につきましてはもう御承知のとおりでございまして、私は何よりも医師と患者の信頼関係、これをやはり確立することによりまして、もう一部のお医者さんでございますけれども、その人たちからやはり自制していただく、これがもう基本でなければならぬわけでございまして、そうでなければ、これはいかに官吏をふやし吏員をふやしましても、逃げようという者と追っかけようという者で、これをやりましてもとうてい私はできないと思っておるのでございます。  そういう前提の中で、さらば一体厚生省なり都道府県なりが何ができるか、こういうことになりますと、何といってもいまの一番大衆な点は、すでに通知制度というのがあるわけでございまして、医療内容、どれだけ請求したかということは、これはかかった人が全部わかる仕組みになるわけでございますので、レセプトの秘密にわたる部分は別ですけれども、これを必ずかかった人に知らせる、そしてその真実かどうかということを究明すれば、これは結局できるわけでございます。  第二番目には、何といっても審査事務をやっております。審査要員も御承知のようにいまどんどん拡充してはおりますけれども、何と申しましても短時間に人間の経験に頼っておかしいものをどんどんやる制度でございます。これは人員の充実、さらに審査のやり方の検討とともに、将来コンピューターをひとつ導入したいものだ、おかしなものが出てきたらどんどんはねていく、そういうこともこれから考えていかなければならないであろう。  それから、薬価につきましては、六月一日に非常に大幅に引き上げたことは御承知のとおりでございます。  また、医療費につきましても、物と技術の分離、それから薬づけ、検査づけにならないように、そういったところは、余りそう大した違いのないものについてはどんどん統合化をしておるというようなこと。  さらには、最近の医学の進歩に伴いまして自動分析がどんどんもうできておるわけでございますので、血液の検査あるいは尿の検査等についてはコストが十分下がっておりますので、そういった点を是正しておるということ。  さらに、人工透析等につきましては、もうおよそみんなわかっております点数の是正を図る等々、これから着実にこの適正化の道をわれわれは実施してまいりたい、かように思っておるわけでございます。  それから、医療体制の問題でございますが、医療法を前国会で提出しようとしたのでございますけれども、わが与党の関係部会の中でもう少し勉強したい、これにはいい面もあるしいろいろな問題もある、そういうことでもう少し煮詰めさせてもらいたい、こういうことでございますので、その検討の結果を待ちまして、そして調整の上、その調整がついたら……(米沢委員「次の国会で」と呼ぶ)次の国会でも出したいと思っておるわけでございます。しかし、行政的にはその法律を待つまでもなく、すでに医療体制の地域的な整備あるいは救急・夜間、こういったことにつきましては、できる限りの措置を進めておるということは御案内のとおりでございます。
  32. 米沢隆

    米沢委員 その適正化の問題については、細かいことは社労委員会の方でやらせてもらいたいと思いまして、次に進みます。  お医者さんの数あるいは医療機関の数、そういうものがふえていけばどうしても国民医療費はふえていく、そういう関係にあるような気がするのですが、医師数、医療機関の増大は国民医療費にとってどういう影響があるのか、厚生大臣
  33. 村山達雄

    村山国務大臣 国民医療費との関係で申しますと、やはり理屈の上ではかかりやすいということになりましょうから、近所にたくさん診療機関ができますから、少しはふえるんじゃないかということは考えられないことはございません。しかし、今日の状況を考えてみますと、診療所の数あるいはお医者さんの数からいいまして、大体われわれは昭和六十年度に人口十万当たり百五十人くらいのお医者さんがどうか、そう言っていたのでございますが、すでにその線上よりもさらにお医者さんの数がふえているように思います。そういたしますと、大体ニーズは満たしているんではないであろうか。だから、理論的にはおっしゃる点がないとは言いませんけれども、現実的には、それだからといって医療費がそんなにふえるものではない、私は、私の勘でございますけれども、そう思っております。
  34. 米沢隆

    米沢委員 いま日本の人口十万人当たりのお医者さんの数というのは百二十人前後じゃないですか。しかし、入学定員がかなりふえておりますから、近い将来すぐに百五十人を越えるであろう。  日本列島いろんなところがありまして、過疎地帯にはお医者さんがいない、都市地区には過密状態である。でこぼこがありますよね。そういうでこぼこがどうも一向に平準化されない。しかし、平均的にはお医者さんの数が少しずつ過剰気味になってきた、こう言われるわけです。しかし、今後のお医者さんの数等々を入学定員を計算して推計された論文を読みますと、ちょっと大変なことになりますね。いま医療機関だとか医師の数がふえても医療費は余り関係ないようなことをおっしゃいましたけれども、実際は、お医者さんがかゆいところに手の届くようにたくさん出てきたら、それは医療費なんかふえますよ。私はそう思いますね。大体過疎地帯なんかに住んでいる人なんか、医療機関がないから、健康保険に入りながらわざわざ病院に行くのは大変だからといって売薬で済ませる人がたくさんおるですよ。それがお山に医療機関ができてみなさいよ、便利だからみんな行くでしょう。国民にとっては大変すばらしいことだ。しかし、医療費ということを考えたら、ふえるものについては余り関係ないような言い方は、厚生大臣、これは勉強不足だなと私は思いますね。  ところで、将来のお医者さんの数、先ほど私は大変だと申し上げましたけれども、確かにいろいろ調べてみますと、いまの医学部の定員は、学科定員八千三百四十人、昭和五十六年時点でおるのですね。いまからこの八千三百四十人、まあときには免許を取れない人もおったり、ドロップアウトする人もおるかもしれませんが、大体八千人前後の人がお灰者さんになって巣立っていくのですね。この状態がずっと続きまして、大体安定することになりますと、五十年後ぐらいには驚くなかれ四十二万三千人がお医者さんになるんだってね。それはお医者さんも人間ですから死んだりされますね。そういう生存率なんかを掛けていろんなむずかしい将来推計があるんだそうですが、そういう数字を見ましても、医学部と医科大学の現在の入学定員八千三百四十人がそのまま放置されますと、五十年後ぐらいにはお医者さんが四十二万三千人になる。歯学部、歯医者さんは、昭和五十六年学科定員は三千三百六十人だというのですが、この歯医者さんはそのころには十七万人にもなるというのですね。そういう意味では、現在の医科大学の定員というのは、将来のツケとして物すごい多くの歯医者さん、物すごい多くのお医者さん、そういうものを約束しているようなものなんですね。確かに一県一医科大学、お医者さんが足りないときにはどうしても各県ごとに医科大学が欲しかった。そういう施策はわかりますけれども、事ここに至って考えますと、これは大変な大量生産になり過ぎたという反省をしてもらわないと、私は大変ではないかという気がするのでございます。  そういう意味で、現在の医科大学、歯学部、この定員設定はどういう根拠で決められたのか。何年ごろに何人ぐらいになるという、そういう設計がなされた上でこの学科定員は決められたのかどうか、文部大臣、ちょっとお答えいただきたい。
  35. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  昭和四十五年に無医大県の計画が出されまして、ただいまお話しのように、今日十万人当たりの医師大体百五十名、歯科医師五十名、これはもう歯科医師の方は昭和五十四年で五十名に到達いたしております。それから医師の方が百四十名ぐらいになっておりますから、もうすぐこれは百五十名になります。  さような関係から、文部省といたしましての方針でありますが、これ以上どんどんとふえますとただいまお話しのような結果になりますので、医科大学、国立、公立、私立大学の学部並びに定員はもう増加しないということにいたしてとめてあります。
  36. 米沢隆

    米沢委員 とめてあるのは結構なんですよ。とめたら大変なことになると、こう言うておるんだ。たとえば、いまお医者さんの数は十七万人ですね。歯医者さんの数は五万人ですよ。それが四十二万になり十七万になる、そういう設計でいま学科定員があるということ自体、どこかで修正しないと大変ですよ。いまのものをとめたらこんなになるのです、四十二万にも十七万にも。答えになってないんですね。ぜひ文部省は早急に、一体どういう形で医者が伸びていくのか、将来設計を見た上でやはり削減の方向を考えねばなりませんね。五十年後はお医者さんが十万人当たり四百人ぐらいになるというんだ。少なくともこれはちょっと多過ぎますよ、どう考えても。少々医療サービスがよくできるように十万人当たり二百人ぐらいにするにしても、現在の国立大学あたりの、あるいは歯学部あたりの定員を半分ぐらいにするようなことにしないと二百人にならないですよ。削ったら国公立大学の先生方減りますよ。完全な行政改革だな。行政改革ですよ。  同時に、たとえば学校基本調査によりますと、大体国立大学の学生一人当たりの経費、これは五十三年のものを見ますと、法学部が大体年間五十五万円というんですね。ですから、二百二十万円卒業するまでに国が金を出すんですよ。経費が要る。医学部に至っては、六年間ですから四千百万ぐらい要るんですね。法学部や経済学部の学生の十八人分実際金が要るんです。だから、現在の定員を徐々に減らしていく努力をされたら、これまた大きな行政改革の目玉になりますね。大蔵大臣、これは興味ありませんか。
  37. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 大変興味を持っております。(「興味を持ち過ぎるな」と呼ぶ者あり)
  38. 米沢隆

    米沢委員 余り持ち過ぎるなという話がありますが、これは持ってもらって結構だと思いますね。それが余りドラスティックになりますとそれは大変になりますけれども、徐々に今度は学科定員——各県にみんな一医科大学ができたのは結構ですよ。しかし、その中の定員を少しずつ減らしていく。同時に、学校関係の先生方とか助教授とかいろんな職員がおりますが、そこらにも少しずつ、余り影響ないようなかっこうで減らしていく。そういうことをしない限り——することが行革であり、同時に、それを放置しておくならば、高齢化社会とともにお医者さんがふえるということは、やはり医療費そのものは相当の大きな影響を受けるであろう、そういう感覚を厚生大臣、持ってもらいたい。大臣の所信を伺いたい。
  39. 村山達雄

    村山国務大臣 各国との比較をとってみますと、日本は現在人口十万当たり百四十人でございます。西ドイツそれからイタリーが高いのでございまして、二百四人、二百六人、この辺が一番高いのでございます。アメリカは百七十六人。それから、いまの将来推計をとってみますと、日本はこれから大体二十年後、七十五年でございますが、二百一人という数字でございます。ですから、この辺かなという感じは持っているわけでございます。そういう意味で、今後文部省とも十分連絡をとりながら、いかにしていくべきか、こういうことを相談してまいります。
  40. 米沢隆

    米沢委員 次は、行革と地方自治に関連する問題についてちょっと取り上げてみたいと思うのです。  今度の臨調答申はそれぞれ理念とか基本原則を定められておりますけれども、大変問題だと思いますのは、国も地方も小さな政府になれということはおっしゃっておりますけれども、地方自治の分権化を進めるとかあるいは地方自治を拡充強化する、そういう物の見方というものがどうも欠落しておるような感じがしてならぬのでございます。なぜいまになって地方自治を強化しなければならないのか、行革と分権化の推進、地方自治の強化がどういう関係があるか、こう問われたならば、御承知のとおり、いま国の行革が直面しておる問題は、地方出先機関の縮小、合理化あるいは廃止にいたしましても、あるいは補助金を合理化して手間を省いていく、この問題にいたしましても、いま中央が持っております地方自治不信、地方自治体不信というものを払拭して、極力行政事務を中央から地方に移すこと、過大な統制を排除すること、すなわち地方自治の自主性、自律性を高めてやること以外に行革は大きな進展を見せないところに来ておるんじゃありませんか。地方自治を余り信用しない、自主性も自律性もいまと同じようにやっていくという議論であるならば、出先機関なんか減るはずはありませんね。補助金の合理化なんかできるはずはありませんね。したがって、臨調の本当の柱は、本当に国の行革にメスを、大なたを入れるとするならば、地方自治そのものの権限を拡大して、できるだけ事務を移していく、できるだけ補助金等を合理化してあげる、統制を排除する、そういう目がない限り、中央の国の方の行革は進まない、私はそう思うのでございます。その意味からいたしまして、今後の行革の視点は地方自治の強化拡充にあると言っても私は過言ではないと思うのでありますが、行管庁長官、どうなんでしょうか。
  41. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう方向に進むのはいまの大勢であるだろうと思っておりますが、中央自体も独自に縮減する部面も十分あると思っております。単に地方に渡さなければ縮減できないというものではありません。あるいは許認可の整理、廃止、統合等もやはり軽量化に非常に役立つのでありまして、それはまた地方自治体に対していい結果を及ぼす形になるのであろう、私はそう思っております。
  42. 米沢隆

    米沢委員 確かに、長官がおっしゃるように、国のサイドで許認可等を整理統合する、補助金を統合化していく、自己努力によって出先機関等の縮減を図っていくことは可能かもしれません。その前提に地方自治そのものを育てていくというものがない限り、やはりそれは中途半端に終わってしまうのではないですか、長官。     〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕
  43. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 今回の臨時行政調査会の大きな仕事の一つに、国と地方の分担範囲というものをここで見直すというのがございまして、その方向は地方自治の本旨というものをわきまえて、地方に権限を移譲するなりあるいは出先機関を整理するなり、そういうことが大事な眼目の一つになっていると思っております。
  44. 米沢隆

    米沢委員 私は、さきの代表質問でも指摘をいたしましたけれども、地方自治と国の行政というものが分立するなんというようなことを言うておるのじゃありません。今後、地方と国のかかわり合い方をどういうふうに見直していくかというときに、たとえば過去の反省をしてみますときに、一方では地方自治の強化、確立とか言われる。一方では、高いところから見て、国民すべて統一的にやらねばならぬ、公平的にやらねばならぬという、そういう目も実際ある。地方自治のユニークさで自治をやってもらうことと相反するという感じがあったのかどうか知りませんけれども、地方自治の確立と公平を保っていくために行政を統一的にやっていかねばならぬという、中央の要請と調和させなければならぬという、こんな議論がずっとはやっていましたよね。ところが、この調和論は、世論形成なんかにいたしましても中央の方が強いですから、やはりナショナルミニマム、公平にやらねばならぬ、統一的にやらねばならぬ、行政はそうでなければならぬというこの意見に押されまして、結果的には国が過剰介入する方向を選んだのじゃありませんか。高度経済成長の時代がやってきた途端に出先機関がどんどんふえてきましたよね。それで人間がどんどんふえていきましたね。そして補助金等がどんどん細かなものまで入っていって、その補助金を通じて地方行政を統制するような面が出てきました。そのおかげで物すごく大きなばかみたいな金が要るようになりました。そういう意味で、国の統一的な行政は結構ですよ。それだけが先行いたしますと、地方自治の確立というものがなおざりにされると、結果的には出先機関あたりの職員を縮減できない、補助金をどうも縮減できないようなものになってしまうのじゃありませんか。長官、そういう過去の反省はありませんか。
  45. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう行政の弊害もかなり顕著に見えてきておりますから、いま改革しようとも考えておるのでございます。
  46. 米沢隆

    米沢委員 したがって、たとえば分権化の推進、地方自治を強化するというその見方をぜひ臨調の委員の皆さんにもとってもらいたい。そのことを長官、注文してほしいと思うのです。
  47. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 国と地方との仕事の分担の見直しというのは、米沢さんおっしゃっているような基本的精神に立っていま行われつつあるのでありまして、私から何も申し上げるまでもなく、皆さんはその線でおやりになっていただいておるのであります。
  48. 米沢隆

    米沢委員 今度のこの法案の中身を見ますと、ここでも再三取り上げられておりますが、国保とか児童扶養手当等の都道府県への肩がわりという問題が大きな焦点になっていることは事実でございます。今回のこの行革の内容を見ておりますと、地方へのしわ寄せ、地方への肩がわり、そういう議論が出てくる背景には、どうも地方自治体は財政的に国家財政に比べたら楽なんだな、そういう大蔵省や厚生省等の暗黙の考え方があるがゆえに、不用意にこんなのが出てくるのじゃないかという感じがします。したがって、大蔵省、自治省、巷間言われる国の財政と比較して地方自治体は財政的には余裕がある、そういうことは実際どうなんですか。
  49. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 地方財政状況については大体御認識をいただいておると存じますけれども、現在地方債の残高は大体三十兆程度ございます。交付税会計の借り入れ等が十兆ぐらいありますので、合計いたしまして大体四十兆ぐらいの償還をこれからしていかなくちゃならぬ。そしてまた健全性も保持していかなければならぬ。また、償還につきましても、国債その他と違いまして償還期間が非常に短いのでございます。一般縁故債でございますと十年ぐらいでございますが、政府債にいたしますと二十年でございまして、償還が非常に殺到してくるわけでございます。さようなことで、国の方は大体八十兆、こう言っておりますが、これは建設公債も含めまして八十兆でございますが、地方の場合においてはその半分の四十兆ぐらいの債務を負担しておる。これを短期間に償還をしていかなくてはならぬ、それでまたしかも健全性を保持していかなければならぬ、こういうきわめて苦しい事情にあります。したがいまして、国家財政と比べまして地方財政が楽だというようなことはないと私どもは認識しております。
  50. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ただいま自治大臣が御説明したようなことでございますが、しかしながら国債費率あるいは依存度等におきましては、国よりはまだ軽度の状態にある、こう言うことができようかと思います。
  51. 米沢隆

    米沢委員 これはどうも平行線みたいでありますけれども、自治省の言うことと大蔵省の感覚は違う。これは各省庁ごとの意見があるからそれは、結構かもしれませんが、横から見ていますと、そういう財政そのものの認識についてもそんなに大きな差があるのかということは、どうも不思議でなりませんね。少なくとも共通の数字を土台にして物を言うならば、それぞれ省庁かわいいかもしれませんけれども、やはりそこらははっきり統一的な見方をしてもらうことが大事ではないか。この議論は水かけ論になりますから、あと細かい議論は各委員会でちょっと詰めさせてもらいたいと思うのです。  それから、地方公務員の給与と定数の問題でございます。こういうものにつきましては、答申も言いますように、「基本的には、各地方公共団体における自律機能の発揮によって改善されることが期待される。」当然だと思いますね。特に地方公務員の定員が多過ぎるではないか、国家公務員に比べてちょっとふえ過ぎたなんという議論がありますが、確かにふえ過ぎたきらいはありますが、たとえばこの十三年間に八十万人ぐらいふえたと言いますが、そのうちの大体七十万前後は、国が法律をつくって地方公務員として定数を確保しろ、そういう法律によってつくったようなものがあるわけでして、そういう意味では、今度の臨調答申が、国が何か施策をやるときには地方公務員の増員をよく考えて抑制的にやれとおっしゃったことはまさに識見だ、私はそう思うのです。  そういう意味で、国の法律等々をつくるに当たりましては、ただ地方公務員の定員がけしからぬという議論をする前に、国がえりを正してもらわねばなりません。同時に、現在ある法令ですね、必置規制あたりが昨年ぐらいから行管の努力で少しずつなくなりつつありますけれども、もう明治時代、大正時代のものがいつまでもあって、そのために定員を確保しなければならぬ、機関を設置しなければならぬ、こんなばかげたことはないわけでございまして、残念ながらその法律も流れておりますけれども、早急にそういうものは成立させてもらう努力をし、そして必置規制等々抜本的に大改正を行っていただくように行管庁にお願いしたいと思うのですが、どうですか。
  52. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その方向で努力いたします。
  53. 米沢隆

    米沢委員 そこで、地方公務員の給与が高過ぎる、こういう議論がよく行われております。確かに、自治省の発表しました地方自治体の公務員の給与は、国家公務員よりも約六・九%、七%ぐらい高い。特に東京、大阪周辺の中小都市では二、三割国よりも高い。その上、聞きますところ、やみ昇給だとかやみ手当だとか、あるいは図書費、研修費、厚生費という名目で、所得に計算されないやみ給与、こういうものが蔓延しておる、これはただごとならない問題だ、そう思うわけです。したがって、是正を図っていかねばなりません。     〔小渕(恵)委員長代理退席、三塚委員長代理着席〕 しかし、地方公共団体はこれは自主性を持ってやってもらわねばなりませんから、少なくとも国が余り介入できない、そういうもどかしさはありますけれども、何とか対策を講じていかないと、私は、官に対する民の怒りというものはますます大きくなってくるであろう、そう思います。  そこで、基本的なことをお聞きしたいのでありますが、地方公共団体の給与は大体国に準じて引き上げが行われる。大体地方の人事委員会の勧告をずらっと見ておりますと、ほとんどが国に準じてやれと書いてありますね。結果的には、国に準じてやったものが、ラスパイレスは地方の方がずっと上になる。一体なぜだろうか、一体どういうかっこうで地方自治体の給与は決まるのであろうか。臨調が言うておりますように、地方公務員の給料や退職金についても、国家公務員や地域の民間事業の従業員との均衡が図られて、地域住民の納得が得られるようなものにしなければならぬ、全くそのとおりでありますけれども、いままでも地方の人事委員会は地域の公民較差、そういうものを勘案して勧告をしてきたはずですね。一体、地方公務員の給与はその地域の正確な公民較差を本当に取り入れて決められてきたのか、なぜ国家公務員、国に準じて引き上げられる給与が国より高くなるのか、このからくりを自治大臣、はっきりしてもらいたい。
  54. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 地方公務員法のたてまえから申しますと、地方公務員の給与というものは生計費、国家公務員の給与、それからまた官民較差、他の団体の給与等、こういうものを勘案して出す、こういうたてまえになっておるわけでございます。  そこで、実際勧告がどういうふうに行われたかと申しますと、多くの場合、いままでは国家公務員のベースアップ、これに準じて勧告をするというのが通例であったように私どもは思っております。それからまた、他の団体の給与水準、こういうものをもある程度強い力を持って要求されておる実情からいたしまして、それをいろいろ考慮いたしまして、国家公務員に準じたような勧告というものが通例であったように私は考えております。そこで、民間との較差の問題も人事委員会といたしましては調査をいたして、そしてデータとしては出ております。しかし、結論といたしまして、国家公務員に準ずるベースアップの勧告というのが大体通例であったと私は思っております。この点は民間較差の問題をも相当ウエートを置いて勧告をするというふうにやるべきであろうと考えておるのでございまして、そうした指導、助言をいたしておる現状でございます。
  55. 米沢隆

    米沢委員 国に準じて勧告がなされて、それに従って給与が上がってきたにもかかわらず、なぜ国の方が低いのか。いろいろな地方自治体の業務が国よりも高級でむずかしくて国家公務員よりたくさん給料をもらわなければいかぬということで、地方公務員の給与が高いのか。自治大臣、はっきりしてください。
  56. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 それで、現状におきましてラスパイレス指数が国家公務員よりも相当高くなっておる、一体その発生原因は何か、こういうことでございますが、考えてみますと、一つは、地方団体におきまして初任給の格づけというものを国家公務員よりも優遇したという事例がございます。それからまた、これは適切じゃない、そういうことは厳に慎むべきでございますけれども、いわゆるわたり制度というものがございまして、そういうことをやったこともございます。それから、条例自体が国家公務員に準じないような条例をつくっておるものも中にはないわけではございません。そうしたいろいろなことが絡みまして、しかもその背景には高度成長というものがございまして地方の歳入も相当余裕があったと申しますか、苦しいながらもそういう事情もあった、そういうものとかみ合いましてそういうことが行われてきた、その累積が、ラスパイレス指数におきましてそういう団体がある程度出てきておるという原因になっておると私は考えております。
  57. 米沢隆

    米沢委員 そこで、地方公務員の給与の問題についてみんなで考えてもらおうということで、公表の措置がとられましたね。その中には、職員の人件費の概要、職員数、平均年齢、平均給料月額、初任給等の給料の状況、等級別職員数、期末・勤勉手当、特殊勤務手当等の状況、退職手当の状況、特別職の報酬等、こういうものを公表しろという通達が先般出されましたけれども、その際ぜひ考えてもらわねばならぬことは、いま大臣がおっしゃったように、国に準じて給料を上げながら、地方公務員の給与が大変高くなっておる。それは低いところもありますよ。異常に高いところは、少なくとも条例そのものに問題がある、あるいはおっしゃったように、不適正な給料表の使用がある、不適正な退職手当制度がある、職務に対応しない等級への格づけがある、違法な昇給期間の短縮等があるんでしょう。したがって、公表しなければならぬのはこんなあたりまえのことではなくて、それ以上にこういう違法なことを公表して、みんなで考えてもらうことの方が大事なんじゃないですか、自治大臣。  私は今回のこの公表措置は確かに評価します。そして、地方の皆さんがそういう実態を見ながら是正を重ねていってもらう。期待したいと思うけれども、ただ正式な給料が何ぼ、職員の数が何ぼ、平均給与が何ぼ、そんなことじゃないの。結局、地方公務員の給与がここまで取りざたされるゆえんのものは、いままでの確かに労使の交渉があったかもしらぬ、既得権かもしれないけれども、やみ給与みたいな、やみ手当みたいな、短縮だとかわたりだとかそういうものが、構造的に、国に準じてやったらいつまでも国よりも高い状況で推移するという、これを放置している結果でしょう。そういう意味では、八項目を挙げられること結構、それに重ねて、このような不適正な給料表の使用等々、現に、いまおっしゃったように条例なんかもおかしいのがある、そのあたりを公表することの方が早道ではありませんか。そのことが一つ。  それから、原則として国家公務員と比較せよ、比較してもらいたいと書いてありますね。それは民間も必ず比較してもらいたい。できれば組合との交渉経過みたいなものも本当はオープンにすることの方が実際は早道ではありませんか。その点を含めて、毅然たる態度で公表措置を拡大してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  58. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 発表の背景といたしましては、いま申しましたような各般の事情あるいは昇短なんかもあるわけでございますが、そういうものの実態を住民に認識をしてもらいまして、そして世論形成をするということに一つの目的があるわけでございますので、今回策定をいたしました公表の様式、これに関連いたしまして、そういう問題をも付随してやるべきだろう、私はこう思っております。この点は、今後の運用の面につきまして十分措置をしてまいりたい、こう考えております。
  59. 米沢隆

    米沢委員 次に、地方の行革を進めていく場合には、行政を適正にチェックしなければならぬ、そういう意味で監視体制が十分確立されねばならぬことは言うまでもありません。しかしながら、全国知事会等が出しております報告書等を読みますと、各都道府県あるいは市町村における監査委員そのものが、目的とするものとちょっと違って、職員のOBが多過ぎるとか、いろいろなものが指摘されておりますね。時間がありませんから一々読み上げません。少なくとも三つぐらいの重大な問題の指摘があって、できればこの監査委員制度にメスを入れて、もっと機能しやすいような人選なり委員の構成なりを考えてもらいたいということが指摘をされておるのでありますが、できれば法改正をしてでも、この監査委員会の質的な向上といいましょうか、機能が十分発揮できるような措置、そういうものを自治省としてぜひ考えてもらいたいということが一つ。  もう一つは、この前自治省が、いわゆる国の機関委任事務についても地方が監査できるようにさしてもらいたいというような法案をつくられて、残念ながらつぶれましたね。これについては行管庁が大変反対されたそうでありますけれども、地方自治というものの権限を拡大をし、地方で行われる行政が本当に国民のニーズにこたえてうまくやっているのかというのは、国の機関委任事務であれ、地方の固有の事務であれ、地方の議会人が見、地方の監査委員が見た目で率直に評価してもらうシステムが私は必要だと思うのですね。こういうものに行管庁が反対するのはけしからぬと私は思うのです。なわ張り争い以外の何物でもない。  したがって行管庁長官、自治省がつくった国の機関委任事務についても、地方議会に検査権や監査の請求権を認める、これくらいは認めることが本当は必要なんじゃありませんか。自治大臣と行管庁長官にお伺いします。
  60. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 行管庁がまず反対したというのは誤解であります。あの当時、私も答弁申し上げましたが、各省とそれから各地方公共団体との話し合いの推移を見守っております、特に自治省との話し合いの推移を見守っております、そういうふうに答弁申し上げたはずであります。ところが、機関委任事務を行っておる中央の各省庁と自治省との間で話がなかなかつかないようであった、それではわれわれの方も出ていくわけにまいりません、そういう状態であったのであります。
  61. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 機関委任事務の末端における執行状況は、議会におきましてもあるいは地方団体の執行部におきましてもほとんど一体となってやっておるのでございまして、これを機関委任事務だからといって監査から外すなんということは実態にそぐわない問題なんでございます。  そこで、去年の地方自治法の改正におきまして、この点は監査できるようにというように立案をいたしました。また、そのときにお話のございました監査委員の、OBだけでない、それは一定の制限をつけるというような内容も持ち込んだわけでございますが、不幸にいたしまして各省との話し合いがつかないために提案を断念したいきさつがございます。しかし、地方の自主性とかあるいは地方の実態から申しますと、機関委任事務を地方の監査の対象にしたところでこれは問題はないのでございます。むしろプラスになる問題なんでございまして、この点について各省が反対する気持ちはわからぬわけでもありませんけれども実態はそういうものではない、そういうことを十分に認識をしてもらいまして、いずれかの機会にこの機関委任事務の監査についてはぜひ法制化をしていきたい、こういうように考えております。
  62. 米沢隆

    米沢委員 余り時間もありませんが、地方自治と行革との関連におきまして申し上げておかねばならぬことは、先ほど申しましたように、国の法令が縛っているところがありますから、そこらの抜本的な見直しを進めてもらいたいということと、もう一つは、国の各省庁の縦割り行政ですね。上の方で話し合いがつかぬものだから、みんなそれが地方自治体に行って、いろんな例に使われますように、いろんな施設ができても、厚生省の口だとか、農林省の入り口ができたり、建設省の入り口ができたり、そのあたりはまさに国のセクショナリズムを変えてもらわなければだめなんですね。そういう意味で、国の方に総合調整能力、総合調整システムみたいなものができるように、行管庁長官、努力をしてもらいたい。  それから、国の地方出先機関の廃止だとか、国の事務の地方公共団体への移譲だとか、事務官制度の取り扱いとか、補助金の整理合理化等々は、もうすでにいろんな委員会から指摘をされて出し尽くされておるわけでありまして、いまさら臨調答申を待ってなんということはやりたくない、できれば引き延ばしたいというふうにしかわれわれにはとれないわけですね。そういう意味で、そのあたりの促進方、何も臨調答申を待たずとも、いままで地方行政調査会等が出した非常に示唆に富むユニークな提言もあるわけですから、そこらはやっぱり臨調の答申が終わってからではなくて、それ以前にでも取り組むべきは取り組む、そういう行政管理庁の方針を、ぴしっとしたものを打ち出してもらいたい。簡単に一言所信を述べてもらいたいと思います。
  63. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 ケース・バイ・ケースでよく検討いたしまして努力をいたしたいと思います。
  64. 米沢隆

    米沢委員 特殊法人とか国家公務員定員問題、ちょっと時間がないような気がします。  一言、そういう意味で最後に国鉄の再建問題に関連いたしまして質問をさせていただきたいと思います。  ことしの九月六日のある機関紙に門司鉄道管理局管内の佐賀電気区のことが報道されております。それによりますと、国労の佐賀支部電気分会が現場長との交渉でことしの夏三日間の盆休暇をかち取ったと書いてあるのですね。果たして現場交渉でこのようなやみ休暇を与えられる権限が現場長に付与されておりますか、国鉄は。
  65. 吉井浩

    ○吉井説明員 先生御指摘のその機関紙の記事は、まことにお恥ずかしいことでございますが、事実でございます。もとより現場長が所定の休暇以外の休暇を与えるという権限はもちろんございません。
  66. 米沢隆

    米沢委員 まことに残念だということでは済まされない問題ですね。これはゆゆしき問題だと私は思うのです。  ここの組合員は百六十人だそうですね。三日休めば四百八十日の労働日が消失されることになるのです。それもやみ休暇でですよ。一体だれがこのやみ休暇三日間の給料を払うの。
  67. 吉井浩

    ○吉井説明員 この事実をわれわれ把握をいたしまして、事後の措置としまして、この三日の休暇をいわば正規の有給休暇にプラスした、結果的にはそういうかっこうになったわけでありますが、それをもとへ戻すということで、すでに休みました者については振り返って年休の処理をいたす、あるいはまた休日として振りかえまして、予定されておりました休日に本人の労働を命ずる、こういう形にいたしたわけでございまして、したがって給与面といたしましてはそのような措置を講じたわけでございます。
  68. 米沢隆

    米沢委員 この実態を見ますと、事は単に佐賀だけじゃありませんね。全国各地でこういうやみ休暇的なものが現場交渉という名のもとに行われて、いろんなところでやみ休暇あたりが与えられておる。これは大変ゆゆしき問題だと思うのですね。単に済みませんでは済まない。  たとえばこの情報によりますと、確かに昨年もあるのですね、一日。ことし三日になっておるのですね。そしてこのやみ休暇が決められるまでの間、連日にわたり朝夕の現場交渉が行われて、そのときにこの現場長はやっぱりそんなのおかしいと言うて抵抗した形跡もあるのです。現に、制度上盆休みなんてのはない、一年の稼働日が二百四十三日ぐらいであり、——三分の二ですね。三日に一日は休みだ。これ以上休みをふやすと業務に支障を来します、どうしても休みたいなら年休を使えばいいでしょう、昨年一日盆休みを付与して悪いことをしているのに、これ以上はできません、と一生懸命がんばっておるのですね。にもかかわらず三日間のやみの盆休暇を与えざるを得なかった。  この経過は門司の鉄道管理局は知らなかったの。これは監督不行き届きでありますね。もし黙認したとするならば、これは重大なことだと思うのです。この事実を知った時点において国鉄本社はどういう措置をとったのですか、総裁。——総裁だ。あなたの答弁は要らない。
  69. 高木文雄

    ○高木説明員 いまのようなことは私どもの耳になかなか入らないという実態で非常に困っております。それを把握をして、そして順次一つずつ是正をしていくということが非常に大事なことだと思います。今回のことも、私の承知いたしました後で、先ほど担当常務理事が申しましたように、是正措置をとったわけでございますが、まことに残念ながら、私も、ほかにはないのかと言われると、ないとなかなか言い切れない実態でございまして、これをどのようにしてつぶしていくかということが、いま私の非常に強く関心を持っておる点でございます。過去に比べまして、たとえば年間、一週間の勤務時間も短くなってきておりますし、いろいろ実働日数が制度的にも減ってきておりますので、昔からたとえ長く続いてきたものであるとしましても、お盆休みというようなことは許されないことは明らかでございます。これを一つ一つ直していかなければならない。そのためには実態がわれわれの方に一日も重く把握されるような状態に持っていかなければならぬと思っております。今回のことにつきましても気がつきましたので早速直したわけでございますが、そのような実態を一日も早く私どもは把握をして、そして正すようにしていきたいと思っております。
  70. 米沢隆

    米沢委員 わかった時点で直したとおっしゃいますが、門司の鉄道管理局の監督責任みたいなものは問われないとおかしいのじゃありませんか。やはりこういう問題については、そういうやみ休暇みたいなものはわかった時点で直すという以前の問題として、そんなことは絶対許さない体制に国鉄はあるのだという、そういう範を示すためにも、ちゃんと門司局に対して処分をすべきである。同時に、現場長は、抵抗してがんばってくれた、かわいそうだけれども、やっぱり心を鬼にしてびしっとけじめをつけなければならない。そんなことはやられたのですか。
  71. 吉井浩

    ○吉井説明員 先ほどの御質問にかかわりますが、門司鉄道管理局がこの事態を知りましたときには、相当現場長としてのっぴきならない状況で報告をいたしましたというふうに聞いております。そこで、局といたしましては、その段階でやむを得ずという判断をいたしたようでございます。確かにただいま先生御指摘のように、これは局としてもあるべからざる判断でございますし、また現場長も、確かにいま仰せのように非常に抵抗したことではございますけれども、やはり権限を越えた扱いをしたということにつきまして、それぞれ責任を問うべく現在処分について検討中でございます。
  72. 米沢隆

    米沢委員 いみじくも総裁がおっしゃいましたように、こういう問題は全国各地で起こっておるかもしれない、実態はわからない、そういうことをおっしゃること自体、これはまた重大な問題だと思うのです。そういう意味では、この佐賀電気区にとどまらず、職場規律が乱れている多くの職場においていろんな名目でやみ休暇あたりが与えられておると、われわれは情報が入っております。そういう意味で、当局は、その現場長から通告がないとわからないというのじゃなくて、みずから足を運んでこういうやみ休暇的なものについて実態をつかんで、早急に国会に報告してもらいたいと私は思うのだ。総裁、どうですか。
  73. 吉井浩

    ○吉井説明員 そのような実態につきましては、従来も職場管理監査というふうな形で発見したものもございます。また、現場長がかわりまして、赴任した新しい現場長がこのようなことがございましたということで、局に報告をし、局と協力してそれを是正したという例もございます。しかし、ただいま先生御指摘のように、まだわれわれの触れないところでそのようなものが全くないと申す自信はございません。今後とも十分に局並びに本社それぞれ現場に足を運びまして、そういう実態の把握に努めたいというふうに存じます。
  74. 米沢隆

    米沢委員 こういうやみ休暇みたいなものは、絶対に許しちゃいけませんね。そういう意味で全国の実態を早急に調査して、そういう異様なものがあるならば即刻廃止することを総裁としてここで約束をし、今後絶対にこういうことは許さない、そういう厳正な立場で対処してもらうことを確約してもらいたい。
  75. 高木文雄

    ○高木説明員 いかなる意味におきましても、やみによるいろいろな問題は一日も早く直さなければいけないわけでございまして、どのようにして全体を把握するかということに最大の力を注ぎますとともに、それを、ありました以上はそれぞれ是正をしていくということをお約束いたしたいと存じます。
  76. 米沢隆

    米沢委員 やはりこういうものが出てくる現場というものは、本当に荒廃していますよね。これに書いてありますが、朝から晩まで交渉をされて、夜も電話がかかってきて寝かせないとか、業務には指令を出しても従わない非協力闘争だとか、これはでたらめですね。  そういうところから、この前岡田議員が指摘をしましたように、間にはさまれて自殺者まで出てくる。まさに国鉄、これは異常な状態だという再認識をもう一回してもらいたいと私は思うのでございます。  同時に、次の問題でありますが、この前、昭和五十五年の五月に国鉄当局から二回のストライキ分として、国労、動労に対して違法ストに対する処分通告が行われました。ところが、調べてみますと、通告はあったけれども、発令される段階では大幅にその数が減っておるのですね。つまり、処分通告だけは行うけれども、実際に処分される数は半分以下である。この事実を国鉄当局はお認めになりますか。同時に、監督官庁である運輸大臣に実際その問題を報告してあるのですか。報告をしてあるとするならば、運輸大臣はどういう判断をされたのですか。総裁、お答えを。
  77. 吉井浩

    ○吉井説明員 けさの新聞にもございました。事実、先生ただいま御指摘のとおりでございまして、五十五年の五月、その前の年に処分の凍結をいたしたにもかかわらず、また違法な争議行為が行われたということで、この二つを合わせ、しかも処分凍結の際のお約束もございまして、従前よりも約二段階近い重い処分をその時点で通告をいたしたわけでございます。率直に申しまして、そのとき局の中には若干の戸惑いがございました。しかし、私どもとしましては、このような情勢でございますから、そのような厳正な処分をしなければいかぬということで、全国に基準を定めて通告をいたすよう指導をいたしたわけでございます。実際の発令に当たりましては、一部の局におきまして、ただいま先生御指摘のように、大変に通告と違っておるという数字が出てまいりました。私はその内容につきましてつい最近に承知をいたしましたが、これは率直に申し上げまして、私限りでこれをとどめまして、総裁、副総裁にも、また監督官庁にも御報告をいたしませんでした。そのこともあわせて……(発言する者多し)
  78. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 本件につきましては承知いたしておりませんで、きょうサンケイ新聞を見て初めて知ったようなことでございます。
  79. 米沢隆

    米沢委員 こういう大事な問題を理事の胸のうちでとどめる。幾ら大物理事かもしれませんが、国鉄再建をやろう、違法ストライキはけしからぬ、法治国家だから法律を守らねばならぬといって大上段にかぶるこの政府の中において、残念ながら処分は、通告はしたが実際はしてないなんて、こんなでたらめが許されますか。そんなものは理事の胸のうちでとめるような問題でありますか。その点、総裁、はっきりしてもらいたい。  私の調査によりますと、たとえば高崎局ですが、停職については通告が十二人、実際に発令したのは八人、四人がドロップアウトしていますね。減給は通告が八十一人、発令はわずか十八人、六十三人ドロップアウトです。戒告は百四十七人、実際やったのは三十五人、百十二人はドロップアウトです。二百四十人処分したなんて新聞に大々的に書いて、いかにも国鉄はやったやったというような見せかけをしながら、実際は百七十九人もドロップアウトですよ。やったのはわずか六十一人です。東京四周、東京北島、東京南局、みんな資料がありますけれども、こんなでたらめをしておって、法律を守らねばならないとか、違法ストライキに断固として対処するなんという、冗談じゃありませんよ。総裁、一体何を考えておるのですか。
  80. 高木文雄

    ○高木説明員 私も実は把握不十分でございまして、ここでおわびをいたします。  従来から通告とそれから実際との間には若干の差はあるわけでございますが、今回は非常に大きいわけでございまして、確かに処分が、これは五十四年の処分を一遍凍結をした。それで五十五年に、残念ながら依然としてストがあったということで、従来に増して非常にきつい処分をさしたわけでございます。また、そういう各方面からの御指導もあったわけでございます。したがって、処分が従来との比較におきましては大変きつかったものですから、現場がいろいろそういうことで多少ふんどしの締め方が弱かったということだと思います。しかし、それよりも、そういう実態があるということが私の手元に届いてないというところに非常に問題があるわけでございまして、ぜひこの管理の仕方について改めたいというふうに考えております。
  81. 米沢隆

    米沢委員 いまおっしゃったように、一時森山さんのときにスト処分を凍結して、できれば労使の良好な関係をつくるためにスト処分を凍結されて話し合いに入ったと私は思うのですね。にもかかわらず、また違法ストライキを重ねて、やった処分はまた八割方はドロップアウトする。八割は、処分を通知しながら実際は発令しない。こんなでたらめぶりは何回言うても飽き足りないぐらいに大変だ。  特に、国鉄にはいま二十九管理局あるのですか、そのうちで処分を通知をして完全に発令までしたのは、何か八局はまじめにやっているそうですね。二十九の管理局の中で八局はまじめにやっている。二十一局はでたらめをやっているんですよ。これで国鉄の公平感は保たれますか。逆に、八局に属しておる連中は通知イコール発令、大変だという。ところが、八局以外のところでは処分が甘い。そんなでたらめな発令の仕方がありますか。そんなもの存理事の胸の中におさめておりました——冗淡じゃないですよ。まじめにやってもらいたい。当局の責任は一体どうなるんだ。
  82. 高木文雄

    ○高木説明員 従来から発令と通告との間に若干の差があったわけでございますけれども、その差はさほど大きくないということでございますので、その通告後、発令の間の把握が十分できてない、そういうことになっておりまして、そこから私どもの監督が十分届かなかったわけでございまして、これは今回の御指摘を知って私どもよく勉強したわけで、これを直してきちっとしたものにしていかなければならないというふうに考えておりまして、大変お恥ずかしいことで申しわけないと思っております。
  83. 米沢隆

    米沢委員 運輸大臣、やはり監督官庁としてこういうものがあなたのところにも耳に入らない、総裁もかわいそうに入ってない。こういうものは重大な問題だととらえて、今後どういう方針で国鉄の監督をしていくのかという所信を述べてもらいたい。と同時に、委員長、この事の経緯、実際行われた実態の数字等詳細について出委員会に資料を出していただくことを命じてもらいたい。
  84. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 仰せのように、国鉄には最近、過去におきましてもいろんなトラブルがございまして、私ども非常に遺憾に思うております。そもそも国鉄は国民の財産である、それを運用しておるんだというこの気持ちが欠如しておるのは事実であろうと思うのでございまして、したがいまして、私は、就任以来国鉄の監査制度の強化等を通じましてこういう事件の再発を防止するために鋭意努力してまいりました。昨年以来、国鉄当局におきましても、現場監査制度を強化する方針をとっておりまして、つい先日もその報告書は私の手元に出てまいりました。しかしながら、それはなお抽象的なものが多いのでございまして、今後具体的な問題について現場監査の結果を探求していきたいと思うております。  先ほど来も御質問ございましたのは、ただ単に一、二年でできたものではなく、過去十数年にわたりましてこういうものが悪慣行とし集積されてきたと思うております。しかし、今日国鉄が当面しております状況は、まさに破局的な危機にあるのでございますから、この際に私は労使一体となって改善してもらう、その方向を見出さなければいかぬ。  そこで、先ほど来御質問の問題は、内部から出てきた資料によって御質問があったと思う。そうではなくして、国鉄自身がその実態を知るためにも必要なことだと思いまして、いわばモニター制もしき、いろんな資料を得ておるのでございます。現在まで手薄でございました内部監査、特に各現場におきます監査というものに最近非常な重点を置きまして一つ一つを指導していきたい、こう思うておるのでございます。  それともう一つ、私は大事なことは人事の配置にもあると思いまして、これは国鉄当局ともいま協議しておるのでございますが、いわば幹部的な管理者と中間管理者の間、その間における協力体制というものが若干薄い、それがいろんな問題を積み起こしてきておるようにも思うのでございます。たとえて申しますならば、管理局長というような非常に重責についた人が、それの任期等が非常に短い。それがために中間管理者との間に十分意思疎通し、そして中間管理者が現場管理者と、そして現場管理者が個々の従業員という、その関係の意思疎通の期間というものが短か過ぎるのではないか、そういうこと等も考えまして、そういう制度の面からも改善を図っていきたいと思うておる次第でございます。
  85. 三塚博

    ○三塚委員長代理 国鉄当局に申し上げます。  ただいまの実態報告に関する件は、委員会に報告をいたすようお願いをいたします。
  86. 米沢隆

    米沢委員 最後になりましたけれども、御承知のように、いま国鉄再建、一兆七千億も年間に赤字を出す、何とかしてこれを再建していかねばならない。総ぐるみでいまがんばっておる最中に、このような乱費が行われる。処分をしても、処分がされない。そういう実態を考えれば考えるほど、いまや地方のローカル線はつぶされようとしておるのですよ。しかし、一方では国鉄内部においてこんな不経済なことがどんどん行われていく。一体国鉄の不始末そのものが地方のローカル線をつぶしておるのだと言っても過言ではない。こんなこと国民は許しませんよ。  これで質問をやめますけれども、どうかえりを正して、国鉄の内部規律をしっかりしたものにするために御検討いただきたいと思います。
  87. 三塚博

    ○三塚委員長代理 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  依田英君。
  88. 依田実

    依田委員 総理のお時間が限られておる、こういうことでございますので、当面の外交問題について二つばかり総理のお考えをお聞きさせていただきたい、こう思うのであります。  まず第一は、今般二十二、二十三と開かれますメキシコの南北サミット、これに総理は御出席になる予定でございまして、けさのニュースの報道などを見ると、これに臨まれる総理のお考え方、基本構想、大体固まった、こういうふうに言われておるわけであります。しかし一方、アメリカのレーガン大統領の考え方を見てみますと、どうもこれまでと違いまして、南北問題は援助だけでは済まない、つまり自助精神がこれから大事である。一部の新聞によれば援助と国防と一体である、こういう態度でアメリカは臨むのである。また、包括交渉についても、アメリカ側は余り積極的でない。一方、日本側の総理の伝えられるお考えは、この援助を五年間で倍増させる、あるいは包括交渉については積極的に支持する。そうアメリカ側と日本側との間に、伝えられるところによるとギャップがあるわけでありまして、こういうものを前提にどう臨まれるのか。そしてまた、先般はPLOのアラファト議長とお会いになった、こういう前提をもって中東の和平などについてこの会議で何か役割りを果たされるのかどうか、この二点についてお伺いをさせていただきたいと思います。
  89. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今日、国際社会におきまして、南北問題はきわめて重要な問題と相なっております。そういう中で、今度メキシコのカンクンにおきまして先進諸国並びに開発途上国、北と南の有力な首脳が一党に会しまして、この最大の国際的な問題である南北問題について率直な意見の交換をするということは、きわめて画期的なことであるわけでございます。私は、ぜひこの会議が実りあるものであるように、その成功を期待をし、またわが国もできるだけの努力をいたしたい、このように考えております。  そこで、このカンクンの南北サミットにおきましては、わが国の開発援助に対する基本方針というものを明確に打ち出したい、こう思っております。それは、そのそれぞれの途上国の経済的、社会的な振興開発につきまして、日本経済的、技術的な協力を積極的に行いまして、その国の民生の安定、福祉の向上、そういう面に貢献をしていきたい、このように考えておるものでございます。  いま私は、世界の平和安定を図ります面からいいましても、そういう開発途上国が、特に第一次、第二次の石油ショック後大変な経済的な困難に逢着をしております。南北の格差が年々拡大をしてきております。深刻なインフレあるいは失業、低成長、そして国際収支の悪化、またそういうところからいろいろの紛争問題も起こっておるということでございますので、世界の平和安定の見地からも、この南の開発途上国を理解して協力の手を差し伸べるということが必要である。と同時に、また世界の経済を再活性化させるためにも先進国だけの貿易とかそういうものだけではだめだ。どうしても多くの人口と資源を持っておりますところの開発途上国の経済にてこ入れをし、その活性化を図ることによって世界全体の経済の安定振興が期せられるものだ。そういう意味で、私は、南北問題というのは非常に重大だと考えております。北の国々も南の開発途上国も地球という同じ船の上に乗っております。運命をともにしておるわけでございますから、相ともに協力し、相ともに補完をして、そういう世界の平和と繁栄に協力するようにしたいものだ、こういうふうに考えておるわけでございます。     〔三塚委員長代理退席、委員長着席〕  それから、続いて第二の問題は、アラファトさんとの会談のことについてどういう経過であったかというような御質問がございました。中東問題は、世界の平和安定のために非常に大事である。これはただ中東の和平という問題だけではなしに、今後の世界の平和安定に大きく深いかかわりを持っておる。その中東問題の核心は、何といってもパレスチナ問題である、こういう認識を私は持っております。このパレスチナ問題を考える場合におきまして、パレスチナ人の有力な代表であるPLO、その最高指導者であるアラファトさんと、この中東問題につきましてどういうことをアラファトさんは考えておられるのか、どのように対応しようとしておるのか、そういう問題について率直な意見の交換ができた。また、わが国の中東に対する方針は、端的に申し上げますと、イスラエルの生存権を認める、と同時にパレスチナの自決権、これは独立国家を建設するということも含めた自決権を認めるという前提の上に立って中東和平というものが行われなければいけない。しかも、それは対決の中に生まれるものではなしに、あくまで話し合いのうちに、平和的な手段によってこれが達成できるようにしなければいけない。そういうことであれば、中東和平について日本はできるだけの努力をいたしましょう。こういうことでお話し合いをしたということでございます。
  90. 依田実

    依田委員 二つ目の問題は、伝え聞くところによりますと、最近総理が、日本国際問題研究所であったと思いますけれども、ソ連の脅威、これについて分析をしてほしいというような諮問といいますかお尋ねをされた、こういうふうに伝わっておるわけであります。  アメリカの言うソ連の脅威と総理自身が会われた西欧各国の首脳のソ連の脅威、こういうものに格差があるのではないか。つまり、アメリカのソ連脅威論だけを信じるわけにはいかない。また、防衛庁の考え方というのはどうもアメリカのお仕着せをそのままもらっておるのではないか。そこで、それと違った日本なりのソ連の脅威論、あるいはまた脅威でないのか、その辺の問題について考え方を持ちたい、こういうことでお聞きになっておる、分析を依頼されておるというふうにわれわれは推測しておるわけでありますけれども、その意図はどこにあるのでしょうか。
  91. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国際情勢を分析いたします際におきまして、とかく軍事的な分析に偏り過ぎるのではないか、そういう傾向がなきにしもあらずというぐあいに私は見ております。われわれが世界平和戦略を考えます場合におきまして、単に軍事的な側面だけで判断を進めるということは危険であるという認識を私は持っておるわけでございます。そういう観点から、ソ連の持っておりますところの経済力を含め、あるいはその社会的な安定度の問題、食糧の問題、あらゆる総合的な国力というものを十分分析をしてみる必要がある。また、東西の力の関係からいたしまして、アメリカはもとより西欧諸国、日本等も含めまして西側陣営の総合的な国力、そのトータルというものをやはり分析し、把握する必要がある。その比較した分析の上に立って世界の平和戦略というものが打ち立てられるものだ、私はこういう認識を持っております。そういう観点から私は国際問題研究所、これに調査をお願いした、こういうことであります。
  92. 依田実

    依田委員 総理の言われる軍事だけでは国際情勢ははかれない、確かにそのとおりであります。また、総理が望まれておるのは、ソ連にはソ連の弱点がある、つまり東欧との関係あるいはまた国内の経済情勢など、そういう弱点があるということを答えとしてもらいたい、こういうことだろうと思うのであります。  確かに弱点というのはソ連にもある。あるいはアメリカにも社会問題、教育問題を含めてあると私は思うのであります。しかし、われわれはソ連に弱点があるから差し迫った侵略はないと単刀直入に考えるのは危険じゃないか。つまり、これまでの戦争、侵略というのは、弱点がある方がやるというケースが非常に多いわけでありまして、そういう意味で、この分析結果を御利用なさることは結構でございますけれども、よく世に言われるアメリカ側のいら立ちと日本側の戸惑い、この間のギャップがまた一段と広くなるようなふうにその資料をお使いいただくのでは困るのでありまして、これは老婆心ながらお伝えをさせていただいて、総理はお時間ということでございますから、どうぞひとつ……。  続きまして、電電公社の問題に触れさせていただきたい、こういうふうに思うのであります。  われわれ国民といたしましては、行政改革と申しますと、素朴な感情で中央官庁の統廃合であるとかあるいは公共企業体の民間移譲であるとか、こういうものを期待しておったわけでありますが、残念ながら第一次臨調にはそういうものがないわけでありまして、これからいろいろ第二次臨調の答申に向かいまして、目玉としてそういうものが出てくると思うのであります。  その一つに、電電公社の民営化という問題が世上いろいろ言われておるわけでありまして、新聞報道によると、たとえば電話の架設部門を民間会社にしたらどうだろうとか、データ通信サービス部門を民間に移したらどうだろうとか、あるいはまた組合の方でも、この時代に沿って構想を持っているかに伝えられておるわけであります。しかし、いまいろいろ出ておる構想を私、見ておりますと、現在の電電公社の三十二万人体制から減らすということじゃなくて、この体制を電電公社と民間とに分ける、こういうような考え方に見えて仕方がないのであります。  私は、いまの三十二万人体制というものをまず合理化することが第一段階でありまして、それからこれを民間に移すなりしなければ、われわれの払うお金というのは同じでありまして、電電公社に払うか民間会社に払うかのいずれかの差であって、われわれの払うお金について、総額について変化がない、これじゃ困るのであります。私は、この三十二万人体制というのはどう見ても少し多いのじゃないだろうかと見ておるわけであります。というのは、御承知のように、これはいわゆる加入電話の積滞数が非常に多かった、あるいはまた電報がまだまだ盛んであった、あるいは交換手がたくさんいた、こういうときの体制じゃないかと思うのであります。御承知のように、いま積滞数はもう五十二年をピークに非常に減っております。全国すべて自動交換、オートメ化されておるわけであります。あるいはまた電報は、今日ではもうほとんど慶弔あるいはサラ金の催促ぐらいにしか使われていない。こういう状態でなおかつ前の三十二万人が必要なのかどうかということについて非常に疑問を持つわけでありまして、この点について電電公社側はどういうふうにお考えになっておるか、お答えをいただきたいと思うのであります。
  93. 児島仁

    ○児島説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、現在、正確には三十三万人の職員がございますが、電電公社発足当時の仕事量から見ますと、ほぼ二十八倍にふえております。しかし、人員は二倍のふえ方でございますが、絶対数として三十三万おるのは事実でございます。現在も、仕事量が少なくなったと申しましても、年間百二十万ないし三十万の加入電話を売り続けておりまして、恒常的に仕事はふえておるわけであります。しかしながら、われわれとしては、現在国家的な要請あるいは臨調の問題等ございますので、今後この要員問題をいかに解決していくかということについて現在鋭意検討を進めており、かつ、一つの結論が出ますれば、組合との団体交渉等の場でやっていきたいと考えております。
  94. 依田実

    依田委員 仕事量のふえ方に比べて人員のふえ方が少ない、こういうお話でございますけれども、これは数字の比較がいいかどうかはわかりませんけれども、われわれが素人なりに電力、電話、これを比較してみたい、こう思うのであります。電力も、われわれどこでももういまは明かりがあり、そしてまた電話もどこでもついておる。大体みんなオートメ化されておって、比較するには一つの例としてお話をさしていただくわけでありまして、必ずしもそれが正確かどうか、適当な比較かどうかわかりませんけれども、ひとつ聞いていただきたい、こう思うのであります。  いま九電力合わせまして、人員は十三万二千七百であります。いまのお答えにありますように、電電は三十二万七千であります。昨年の総収入、これが幾らか。電力は十兆一千八百八十六億であります。電電公社は四兆六十三億、磁力の方が二倍以上の収入であります。建設投資、昨年の実績、電力は三兆一千七百八十六億、電電公社は一兆七千九十であります。これまた半分以下であります。利用世帯はどのくらいになっておるか。事業所、家庭、両方含めまして、磁力の方は約五千万世帯、電電の方は三千九百万世帯、まあ世帯というか、事業所も入っておりますから、件数であります。これまた電力の方がずっと多いのであります。集金、御承知のように電電公社はすべて自動振り込みかあるいはわれわれ消費者が銀行なり電電の営業所へ行って、こちらが払うのであります。電気の方は、七割は自動振り込みでありますが、三割は電気会社の方から来て集金してくれるのであります。  しかじかさように、事業規模からいって、あらゆることからいって、片方、九電力が十三万二千七百で、電電は三十二万七千であります。これはいかにも多いと私は見ておるのであります。半分にしろとは言いません。半分にしろとは言いませんけれども、合理化の余地がもう大いにある、こういうふうに考えておるのです。  総裁にぜひお願いをさしていただきたいのでありますが、この民営の前に、余剰人員の削減、こういうものをいかにしてやっていくか、組合とどういうふうにして話し合っていくか、あるいはまた、いまでもすでに架設が少なくなって民間の工事会社が窮迫しておるわけでありますから、そういうものの救済をどうするか、こういうような、民営論も大事でありますけれども、いまの電電の中の合理化というものをひとつ先にやっていただけたら、こういうふうに思うわけであります。まあ総裁は、石川島播磨のときは、ドクター合理化、こう言われた方でございます。電電の合理化についてどういう基本構想をお持ちになっておるのか、ひとつお尋ねをさしていただきたいと思います。
  95. 真藤恒

    ○真藤説明員 お答え申し上げます。  現在、電電公社は三十二万七千人の従業員を持っておりまして、加入者の数が、いまおっしゃいましたように三千九百万、最近は約四千万になりました。電話機の数が大体五千六百万ぐらいございます。  それと、電力会社の方は、スイッチまででそれから先は自由化されておりまして、電力会社の所管にはなっておりません。電電公社の方は、現状においては宅内の配線と電話機まで電電公社の財産でございます。したがって、客先のそういう細かいいろいろな御要求にもわれわれ自身が対処しておるわけでございます。  それともう一つは、線路の工事につきまして、大きな新設の工事は民間にかなり出しておりますが、現状におきましては、補修についてかなり直営の人間を持っておるわけでございます。  それと、電話の需要は、大体積滞解消はいたしましたものの、現在やはり年間百万前後の新規加入がございますし、二百万以上の移転工事がございます。これも、いま申しましたように、電電が宅内配線と電話機を自分の財産として預かっておりますものですから、それに対する人間を保有しておるということでございます。  いずれにいたしましても、いまの三十二万七千というのが、しからば本当に必要最小限度の人間かということにつきましては、なお検討の余地があることもまた事実でございます。そこで、私どもはいろいろ考えまして、さしあたり五十七年度の予算の概算要求の中には、人間はふやさないという概算要求を出しております。以後、いまいろいろ計画を立てておりますが、人間をできるだけふやさないという方向で事を考えるということでいま詰めております。数字が大体まとまりましたら、いずれの機会かには世の中に数字が出ていくと思いますが、こういうことで、組合の方ともいろいろ細かく話を続けておりまして、幸いにして、私どもの組合は最近非常に合理的な物の考えをするように変わってきつつありますので、この変化と私どもの組合との誠意あるやりとりによってこういう問題を解決し、進めていきたいというふうに考えております。数字が出ますまでにはまだしばらく時間がかかると思いますが、しばらく時間を与えていただくようにお願いしたいと思います。
  96. 依田実

    依田委員 郵政大臣、行政上この問題についてこれからどういうふうに御指導なさるのか、その辺を伺わせていただきたいと思います。
  97. 山内一郎

    ○山内国務大臣 いま電電公社の総裁から詳細に述べられたのでございますけれども、臨調の第一次答申におきましても「要員規模の全体的縮減を図る」べきである、こういう答申をいただいているわけでございます。それは保守部門とそれから電話手動運用部門、電報部門、具体的にはその三つの部門についていろいろ検討して縮減をしなさい、こういうことで電電公社でも極力やっておられるわけでございますが、郵政省としても、もちろんこれはやるべきであるという点に重点を置きまして、これから指導をし、協議をしてまいりたいと考えております。
  98. 依田実

    依田委員 次に、最近歯医者さんあるいは消費者団体また一部の新聞や週刊誌、こういうもので非常に疑惑の目を持って見られておるものに、入れ歯の材料のポリサルホン、これの保険適用、この問題が出ておるわけであります。われわれ、これから財政難の中で自助努力、自分たちのものは自分たちである程度負担していく、その精神には反対するわけではございませんけれども、その前提には、正しい医療行政なり保険行政が行われて初めてわれわれは自分たち負担を潔く出すわけであります。しかし、この六月一日に保険に突如として採用されましたポリサルホン、これは先ほども申し上げましたように、全国津々浦々、おかしい、何か裏にある、疑問がある、こういうふうに言っておるのであります。町の歯医者さんもそうでありますし、またいわゆる歯科大学の先生も、これはおかしい、こう言っておるのであります。  そういう意味でこの問題を取り上げさせていただきますけれども、まず六月一日に保険の適用になったわけでありますが、それまでの審議、審査について非常に性急であった、こういうふうに言われておるのであります。五月二十一日に突如としてこの厚生省案が歯科医師会の常務理事会に出てきた。その出席の理事の中で四人ぐらいしかその問題について知っておる者がおらなかった。そして数時間の議論で、もっと議論をしたい、突如として知らされた委員の方はそう言ったのでありますけれども、いや、その夕刻には中医協が開かれるので何とかということでおさまりまして、おさまったというよりか、中医協へ持ち込まれた。そうして、その日の夕刻には、このポリサルホンという入れ歯の材料でありますけれども、これを保険の適用にする、こういうことが決定されたのであります。どうしてこういうふうに突如としてやられたのか。この辺について厚生省にお伺いさせていただきたいと思うのです。
  99. 大和田潔

    ○大和田政府委員 お答え申し上げます。  この歯科材料のポリサルホンの保険導入につきましては、実は私ども誠心誠意やってまいったわけでございますが、いま先生のおっしゃいましたようなことで、関係者の方々の理解が不十分であったということにつきましては、まことに残念でございます。これからも私ども、理解をしていただくように努めたいと思いますが、ただいまの御質問につきましてお答えを申し上げますが、なぜ私どもがこのように性急に導入に踏み切ったか、この背景につきましてちょっと御説明させていただきたいと思います。(依田委員「簡単にしてください」と呼ぶ)  まず、歯科材料につきましては、御承知のように歯科の自費診療ということにつきまして、保険外いわゆる給付外の診療のものがかなり多くあった、また現在でもあるわけでございます。これを計画的に給付の中に導入していきたい、これは昭和五十三年のときであったかと思いますが、歯科医師会と厚生省との問で合意いたしまして、これを三段階に分けまして給付の中に取り込んでいきたい、こういうような計画ができておるわけでございます。  その第一段階は、すでに五十三年のときの医療費改定におきまして、約十項目のうちほとんどが給付内に取り込まれた。この給付内に取り込まれますことによりまして、従来自己負担でございましたものが保険に入りますので、患者の負掛がうんと減ってくる、こういうふうなことになるわけでございます。  いよいよその第二段階になってまいりますと、この第二段階には、たとえば唇顎口蓋裂の問題であるとか小児歯科関連の問題であるとか、そして金属床の問題、これをいよいよ第二段階で保険に導入するという時期がたまたまことしの六月の医療費改定の時期にぶつかって、これをどうするかという問題が議論されてまいったわけでございます。議論されてきたのはある程度前からでございます。それで、唇顎口蓋裂につきましてはなかなか問題がありましたけれども、これは何とか踏み切ろう、それから小児関連につきましても何とか、全部ではないにしても、できるだけ導入をしていく。しかし、何せ御承知のように医療費の改定の枠が非常に少ない。その中で、金属床につきましてはかなり高いものである、かなり金額が張る、したがってこれを保険内に導入しますと財政的に非常に困る、これをどうするかということが私ども並びに歯科医師会との間で問題になったわけであります。  しかし、この金属床を何とか導入の方向に向かえないかと議論したわけでありますけれども、これ自体はなかなか無理だ。ところが、その前年の五十五年の七月に歯科材料といたしまして承認をされたものがあった。これがポリサルホンである。その承認の、これは薬務局でやっておりますけれども、データ等を見ますと、金属床に堅牢さ、強さ、薄さがきわめて似ておる。これを金属床のかわりに採用したらどうかということを決めまして、これはことしの初めから実は歯科医師会とは相談をしてまいったわけでございます。そこで、何とか——実は私もそのもの自体を見まして、それで手でこうやったりいろいろなことをやってみたのですけれども、非常に堅牢である、全く堅牢であるということで、私自身も、これはいいじゃないかという判断をいたしたわけでありますけれども、そういうことでこれを採用することにいたしたわけでございます。  それで急遽、ただいまおっしゃいましたように五月二十一日に知った、こう申しました。  それから、二十一日に答申があったというお話でございますが、これは二十三日でございます。二十三日に答申がございました。  そういうような経過でございますが、いま申しましたように歯科医師会とは相談をいたしまして、これを導入することについての打ち合わせをしてきたということでございます。
  100. 依田実

    依田委員 昨年の七月に、まず材料として厚生省薬務局が認めておる、こう言うのでありますが、これはまず事実として認めたにすぎないわけであります。また、歯科医師会と事前によく相談をした、こういうことでありますけれども、実際その歯科医師会の常務理事会が開かれたとき、知っておったのは四人なんであります。会長と満岡という専務理事、そしてまた副会長、そして佐藤という保険担当の理事、この四人しか事実知らなかったのです。そしてまた、普通ならこういう問題は学会へ諮問する。学会の意見を聴取するのが常識だろうと思うのであります。この入れ歯の方の学会は補綴学会、この補綴学会の会長に私は電話で聞いた。そうしましたら、一切そういう相談を受けていない、こう言うんです。そういうものがあるということは知っておる、しかしそれを歯科医師会で早急に会い、あるいは近いうちに保険の適用に応じたらどうだろうということを申請した覚えもないし、そういう相談をしたことは一切ない、こう言うのであります。いまの局長のお考えとちょっと違う。  それと同時に、われわれ素人でありますけれども、先般、丸山ワクチンの問題が国会で取り上げられた。あのときの厚生省、皆さん方の言い分は何だったか。これは治療薬と歯科の材料ですから担当が違いますけれども、あのときは、要するに権威のある臨床データがないからだと、こう言った。五年間もいろいろな人が利用して、こんなにいいものはないと言う人がたくさんいるのにもかかわらず、これは葬り去った。そしてまた、今度のこのポリサルホンは歯医者さんも何も知らない。末端の人は知らないんですよ、事実。それを突如として、何の臨床データもなくて取り上げるというのは、これはどういうことですか。どこで臨床実験をやったのか、言ってください、どこの大学でやったのか。
  101. 大和田潔

    ○大和田政府委員 薬の問題との関連でございますけれども、丸山ワクチン等はこれから薬務局におきまして薬の製造の承認をしよう、こういう段階でございます。このポリサルホンにつきましては、すでにこれは薬務局におきまして製造の承認が行われた、これはもう行われたものであります。少なくともこの材料につきましては使ってよろしい、その材料でございまして、承認が行われたものを保険に導入する、こういうようなものでございます。つまり、医薬品でいきますと、医薬品の場合も薬務局におきまして医薬品の製造承認が行われるわけです。それを薬価基準に掲載するというのにやや似ておる性格のものだというふうに言えるわけでございますが、そういったようなことで、私どもは丸山ワクチンの場合とは違うと思うわけでございます。  ただ、このポリサルホンの場合につきまして、薬務局で承認をいたしましたときのデータであるとかあるいは資料といたしましては、これは申請のときに——ポリサルホン樹脂の私どもに対する申請でございますが、そのときにつけられましたところの日本歯科大学新潟歯学部の歯科理工学教室、歯科理工学会のデータといったようなものがあるわけでございます。そういったようなものを、特に薬務局におきまして製造承認をされましたときに出てまいりましたものを見ますと、まさしく先ほど申しましたように、堅牢さであるとかあるいは薄さであるといったものにつきまして金属床にきわめて類似、近似しているということの判断ができたわけでございます。したがいまして、先ほど申しましたように非常に日にちが早うございまして、確かに先生おっしゃるように、何でこう性急だ、こうおっしゃることはよくわかるわけでございますけれども、先ほど私が申しました保険給付外を給付内に導入するそのスケジュールというものに合わせまして、どうしてもかなり急ピッチな作業をしなければならなかった、こういうような事情でございます。
  102. 依田実

    依田委員 私は、丸山ワクチンといまの入れ歯の材料の問題は違うとさきに申し上げた。ただ、臨床データがあるのかどうかということをお尋ねをしたのでありますが、いまのお答えは、新潟のどこかの大学の実験だ、こういうことであります。  また、聞くところによりますと、業者がアンケートを配った、そのアンケートの集計でやっておる、こういうことであります。メーカーが自分が配ったアンケート、それを厚生省は信用するのですか、あなた。これは、自分のつくったものはいいと言うのはあたりまえじゃないですか。そんなデータを信用してやっておるのですか。
  103. 大和田潔

    ○大和田政府委員 これは、おっしゃるように、メーカーがポリサルホン義歯を使用しております医療機関に依頼いたしまして、臨床例の報告書がございます。これによりますと、このポリサルホンでもって射出成形によってつくりました義歯七千百三十ケース、この臨床例の報告がとられておるわけでございます。それで、使用者のお医者さん方の署名をいたしまして、そのお医者さん方の意見、使用者の意見ということで、これはもう九十何%という程度の率でもって、よろしいというふうについておるわけでありますが、確かにこれは私ども見ておりますし、この報告も補完資料といたしましてはなかなかいいものであるというふうに私どもも評価をいたしておるわけでございます。  ただ、先生メーカーの出すものを信用してとおっしゃいましたが、これはたとえば医薬品等につきましてもやはり申請データとして実験材料等につきましてはメーカーが出すわけでございまして、それを云々ということにつきましてはちょっと私は解しかねる。やはりそれはそれとして参考資料として見てもいいのではないかというふうに考えるわけでございます。
  104. 依田実

    依田委員 それは参考資料としてごらんになるのは結構であります。しかし、そのほかに普通の場合は権威のある大学なりで臨床実験をして、そのデータもあわせて考えるのが当然だろう、私はこう思うのであります。しかるに、いまおっしゃったように七千アンケートが集って、それが九九%がいいからいいのだ、こんな論理じゃ困るのであります、日本のお役所の東大を出ているお役人が。何通配っているかわかりゃしないじゃないですか。三万通配って七千の回収なら九九%じゃないでしょう、その取捨選択はメーカーがしているのですから。そうでしょう。これは単純な計算です。  いずれにいたしましても、保険局長はさわってみて、いい、こうおっしゃっている。しかしながら、いま日本全国の歯医者さんはこれを使うのは見合わせようじゃないか、こう言っておるのですよ。  その前に一つ、時間がないから進行しておかないといかぬですが、このメーカーの名前は東伸洋行というのであります。この社長の名前と経歴を知っていますか。
  105. 大和田潔

    ○大和田政府委員 東伸洋行、この名前は木暮さんという方でございます。(依田委員「経歴」と呼ぶ)経歴につきましては存じておりません。
  106. 依田実

    依田委員 厚生省で保険に適用しようとするものをつくっておるメーカーの社長の経歴を知らないというのはどういうことですか。われわれ民間だってお取引するときは、その会社の社長がどういう経歴か経歴書をますとって調べる、人事興信録くらいは調べてからお取引するのが通常じゃないですか。ないなら御説明しますよ。  木暮山人。生年月日とかそういうものは抜きにいたします。最近の、皆さんに関係あるのを言うと、昭和三十二年、社会党演説会で浅沼稲次郎に水をぶっかけた。三十五年、国労の長岡操車場での安保反対ストにトラックで突入しようとして警察官にとめられた。あるいはまた昭和三十五年七月十一日、傷害、罰金三千円、新潟簡易裁判所。昭和四十二年十月二十七日、同じく傷害、罰金八千円、新潟簡易裁判所。これは新潟県警から取った資料です。  厚生省、こういう事実を知らないのですか、あなた。
  107. 大和田潔

    ○大和田政府委員 ただいまのようなことは、実は私、存じておりません。  ただ、先ほど申しましたように、この会社がこういうものをつくっており、その会社——先ほどメーカーからの資料によってというふうに先生おっしゃいましたが、そうじゃございません。これは一つの参考でございまして、薬務局に申請しておりますところのデータによりまして、金属床ときわめて類似している、近似しているということで判断をしておるわけでございますので、この点はもう一度申し上げますが、そういったようなことによりまして私ども判断し、保険に導入をしておるわけでございますので、いまの経歴等については存じ上げないわけでございますが、特にそれは問題はないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  108. 依田実

    依田委員 特に問題がないというセンスなら、これはわれわれ何をか言わんやです。日本の、われわれの医療を任せるのですよ。そういうものをつくっておる会社なんですよ。そういう会社がどういう社長のもとに行われておるのか、それを知らないというのは厚生省、あなた大変ですよ。  もう一つ。最近これがいろいろうわさになっておるのは、元の厚生大臣などいろいろ圧力があったのじゃないか、こう言われておるのです。これは言われておることだから私の意見じゃございませんが、この人は選挙区は新潟二区です。新潟ですよ。よく聞いてください。  新潟日報というのが六月の十八日に、ポリサルホンのことも含めてこの人のことを書いておるのです。この人の周辺には各種のうわさ話、憶測が多いというようなことから、いろいろポリサルホンのことが書いてあって「こういった話がつなぎ合わされて一つの図式が組み立てられた。」こう書いてあるのです。これは新潟日報が言っておるのですから私が言っておるのじゃない。「その図式とは1保険適用になんらかの政治力が加った2その中心田中派幹部の某大物政治家が存在した」これは週刊誌によると小沢辰男さんです。「3そして、木暮氏が二区から出馬する4このため、木暮氏はこの大物政治家を通じて、田中角栄氏に多大な献金をした5木暮氏は、当選の暁は田中派に入ることになった−となる。」と、こう書いてあるのです。これは新潟日報の記事でありますから憶測があるかもしれません。しかしながら、いま全国の歯医者さん、この歯科学会、そしてまた消費者の中に、そういうような圧力があったのじゃないかという疑問を持っておる方が非常に多いのであります。  いまの厚生省の御答弁を聞いて、つくった会社がよくわからない、名前だけは知っておるけれどもどういう会社かわからない。わからなければもっと調べて——私は別に、社長が悪いからつくっておる製品が悪いとは言わない。しかしながら、もしそういう会社ならば、普通二年調べるところを四年か五年調べて、オーケーならオーケーにするのが当然じゃないかと思うのであります。それを厚生省はさっき、去年からあるいは前から歯科医師会に話をしておるんだと言うのですが、事実そうじゃなくて、突如として三時間でもってこれを保険に適用したのであります。この辺をどう考えますか。
  109. 大和田潔

    ○大和田政府委員 三時間というようなことはないわけでございまして、諮問が二十一日、答申が二十三日でございます。  それはそれといたしまして、先ほど申しましたように歯科医師会とは窓口の保険担当理事、これは先ほど先生がおっしゃいましたお名前の中に入っておりますが、窓口を通じまして十分御相談を申し上げたわけでございます。したがいまして、それにつきましては、歯科医師会をないがしろにしてというわけではないわけでございます。  ただ、先生おっしゃいましたように、いろいろまだもう少し私どもといたしまして、関係方面の方に理解を得るような努力をしなければいけないといたしますと、私どもこれからそういう努力をいたしまして、このポリサルホンの導入につきまして御説明を申し上げるというようなことによりまして、十分理解を得るような努力はいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  110. 依田実

    依田委員 もし理解を得るように努力をされて、どうしても歯科医師の皆さん方が納得できない、こういうことになれば、保険の適用を中止されますか、取り消されますか。
  111. 大和田潔

    ○大和田政府委員 これは先ほど申しましたように、このこと自体は、私は患者の負担軽減ということで一歩前進であると思っておるわけであります。これをもとへ戻すということはいたすつもりはございません。
  112. 依田実

    依田委員 患者の負担の軽減だとおっしゃるけれども、製品が欠陥商品で国民の皆さんが歯の中をけがする、それでも取り消さないというのですか。
  113. 大和田潔

    ○大和田政府委員 お答えを申し上げます。  欠陥商品というデータはないわけでございます。これは私どもといたしましては、やはり欠陥でない、いいものである、こういう前提に立って採用しておるわけでございます。  なお、先ほどの政治的圧力云々というお話でございますが、全く私どもはそういうようなことはございません。
  114. 依田実

    依田委員 これが欠陥であるというデータが新聞記事などに出る、まあ幾つか出ておるわけであります。  それと同時に、問題はもう一つございまして、この東伸洋行というのがそのポリサルホンの材料をつくる。しかしこれは、一般の歯医者さんのいわゆる皆さんも御承知の技工士というのが歯のあれをつくるわけでありますけれども、その人たちにはできない。どうしてかというと、この東伸洋行の子会社であります沖歯科要材、この会社が持っておる機械を使わないとこれができないのであります。そして、その沖歯科要材というのは全国フランチャイズ制にしておりまして、契約金を三百万取って、自分のところと契約しろ、そうすれば自分のところでつくってやろう、こういうことであります。独占であります。問題会社がつくったものを問題会社の下請のところを通さないとつくれない。そこへみんな利益が集中するようになっておる。そして、保険の点数はいままでの二倍になっておるのです。つまり、それを使えば二倍保険費用がそこを通るということになっておる。この一社独占についてはどうお考えですか。
  115. 大和田潔

    ○大和田政府委員 私の聞いておりますのは、自費診療の時期にいわゆるフランチャイズ制というものがあったと聞いておりますが、いまはそういったフランチャイズ制、たとえば代理店であるとか会員でなければそれができないといったようなことはないというふうに聞いております。つまりオープンである、だれからも受注を受け付けるというふうに聞いておるわけであります。それは陶係者から承っておるところであります。
  116. 依田実

    依田委員 オープンになっておるとかなんとかよりも、いま全国の歯医者さんは、これを使うのは見合わせよう、効力がわからないということで使ってないのです。それと、この材料はリベースいわゆる修正、むずかしいあれでございますが、リベースというのができるからというので、六月一日に同時に保険の適用になっておるのでありますけれども、実際はこれはできない。  それからまた、いわゆるポリサルホンというのは入れ歯の台みたいなものでありまして、そこへ人工歯というのを植え込むわけでありますが、この人工歯も六月一日点数に入れておる。ところが、その段階ではできてなかったはずであります。厚生省はだまされておる。九月になってもできてない。そういうものをなおかつ保険の点数に六月一日から入れておるということはどういうことなんですか。
  117. 大和田潔

    ○大和田政府委員 すでに人工歯については保険適用になっておりまして、手に入るという状態でございます。  それからもう一つ、先生は適応症の問題をおっしゃったと思います。これは非常にリベースがむずかしいというようなことでございます。私どもといたしましても、ポリサルホン樹脂につきまして全部適応症がある、たとえば口の中、これがまだ可変的なもの、変わり得るといったような状態であっては、やはりこのポリサルホン樹脂については適応症があるとは言えない。もうこれが固定したという段階、もう口の中が変わらぬという段階におきましては、このポリサルホン樹脂によるところの義歯というのは非常に強力な威力を発揮するというようなことで、これが適応症であるというふうに考えるわけでございます。やはりこれの適用につきましては十分そういった適応症を考えなければいかぬということは言えるわけでございます。
  118. 依田実

    依田委員 いずれにいたしましても、私は、この問題は現代の保険あるいは医療の根幹に触れる問題じゃないか、こういうふうに思うのであります。医療機械のメーカーだとかあるいは薬剤メーカーだとか、そういうものの利害でいろいろ厚生行政が動かされているのじゃないか、こういうようなことを言われては困るのでありまして、そういう一社なり数社の利益のために私たち医療費が食われているのじゃ、われわれはいわゆる自助努力といいますか、応分の負担をわれわれが請け負うという気持ちにはなれないのであります。  きょうはいろいろ週刊誌のようなお話もしましたけれども、しかし私はこうやっていろいろ当事者にお電話なりして聞いてみて、そしてまたこの成り行き全般を見て、いまの日本の歯医者さんなりあるいは消費者の一部の団体なり、そういうものがこの問題にすべて疑惑の日を向けている、そういうようなことが行われたということについては、厚生省もよく考えていただきたい。私たちが思うには、厚生省の皆さん方も内心じくじたるものがあると私は見ておるのであります。ここの場では言えないかもしれませんけれども、確かにちゃんとしたりっぱなお役人ならそのくらいの気持ちは持つべきであると私は思うのであります。  最後に、厚生大臣、六月一日は厚生大臣厚生大臣であったのか前の大臣か忘れましたけれども、この問題についてひとつ御所感を伺いたいと思います。
  119. 村山達雄

    村山国務大臣 医薬品につきましてもあるいは義歯の材料等につきまして承認するかどうかという問題については、やはり科学的な立場で判断してまいりたいと思っております。そしてまた、それが適応性がはっきりいたしました場合には、保険財政の許す限りでできる限り保険外負担を解消するという意味で取り込んでまいりたいと思っておるのでございます。しかし、疑いを持たれるようなことがないようにいたしてまいりたい。私は今度の問題でおっしゃるようなことがなかったと確信しているのでございますが、この上とも戒心してまいります。
  120. 依田実

    依田委員 先ほど保険局長が、これから調査をする、こういうことをおっしゃいました。ぜひ厳重な調査をされて、その結果をまたこの委員会なりにお出しをいただきたい、こういうふうに思うわけであります。  きょうは行政管理庁長官には長い間お聞きをいただきまして、御質問しなくて大変申しわけありません。それだけおわびさせていただきます。どうもありがとうございました。
  121. 金丸信

    金丸委員長 これにて依田君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十八分開議
  122. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 体感前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。金子みつ君。
  123. 金子みつ

    金子(み)委員 きょうは、所管の村山厚生大臣、そして予算的、財政的には大蔵大臣に御出席をお願いして、質問を始めたいと思います。  わが国社会保障の問題ですけれども、これは御案内のように、一九七〇年代にやっと重視される形になったわけであります。そして一九七三年がたまたま福祉元年と言われるまでになったのは御存じだと思うのですけれども、すぐその後オイルショックがあったものですから、それで高度経済成長時代は終わってしまって、それと同時に福祉見直し論というのが非常にかしましくなってきたと私は思っております。それで、社会保障あるいは社会福祉などというものの性格から言えば、百年毎年これは増額し、拡張されていくということは当然のことだと思うのでございますが、それが増大していきますことが何だか国の財政危機を生み出した最大の原因であるかのように考え違いをされて、それで、たまたまイギリスにサッチャーさん、アメリカにはレーガンさんというような人があらわれて、そして小さな政府を目指すという方向が大変に強まってきました。それが日本にも海を渡ってやってきて、そして日本政府もこれにいち早く乗り移ってしまって、そうして福祉国家ではなくて、一層社会保障社会福祉に風当たりが強くなった。そういうことがあって、今回の増税なき財政再建ということを政府が言い出すようになったわけだと私は理解しているわけです。そこで臨時行政調査会が今回のような第一次答申を出す、こういうような段取りになってきていると思います。  そこで、お尋ねしたいと思いますことは、この臨調の第一次答申の中に基本理念として示されております「活力ある福祉社会」というのがあるのですね。この「活力ある福祉社会」というのは、一体どういうことを志向しておられるのかということをお尋ねしたい。  なぜかと申しますと、一九七三年に示された経済社会基本計画というのがありますね。この中でもやはり「活力ある福祉社会」という言葉が使われているわけですよ。ところが、その経済社会基本計画の中で言われております意味は、教育や社会保障充実して国民生活に安定とゆとりを約束するという国民福祉志向の意味が入っているわけなんですね。そうすると、今度の場合は違うように思うのですけれども、今回の臨調答申の中に示されている「活力ある福祉社会」というのはどういうものだというふうに考えたらよろしいのでしょうか。それをひとつお示し願いたいと思います。
  124. 村山達雄

    村山国務大臣 経済七カ年計画でも、たしか「活力ある福祉社会」という言葉は使われておりますし、今度の臨調答申でも同じ言葉が使われておるわけでございます。確かに時代の背景はおっしゃるように違うのでございますが、言われているところは、私は基本的には全く同じではないであろうか、これは私の解釈でございます。言っているところは、やはり日本人の持つ自立自助精神に立脚しながら、同時にまた、日本の持っております家庭、職域あるいは地域、こういったものの連帯との関係を考慮しながら公的社会保障充実すべきであるという基本路線においては変わっていないと思うのでございます。  そして、私なりの理解でございますけれども、その中に幾つかの問題があると思うわけでございます。御承知のように、第一次オイルショック、第二次オイルショックが過ぎました。日本は確かにかつての高度成長時代から見ますと約半減速でございます。しかし、やはり五%台の経済成長を目指しているわけでございます。  一方、西欧諸国を見ますと、一%とか〇%とかいう成長が第二次オイルショック以降続いている背景がございます。日本でなぜこういうことになったか、労使の関係その他いろいろありますけれども一つの考え方として、やはりこの点があったのじゃなかろうか。今日の日本社会の原動力は、当然のことでございますけれども国民消費という問題がウエートが一番大きいことは言うまでもございません。しかし、それと同時に、民間の設備投資あるいは公共事業、これがかなり大きいわけでございます。それははね返ってまた経済の発展にも資してきた。原資は何によって賄われたかといいますと、これは言うまでもありませんが、最終的には家庭の貯蓄で両方とも賄われているわけでございます。したがいまして、貯蓄と負担との相互関係を一体どう考えるか。そこにはおのずから程度の問題があると思います。そういうところも十分配慮しながら、先ほど申し述べましたような、別の言葉で言うと、自助自力とかあるいは職域、地域との連帯、そういったものを考えながら、やはり社会福祉は真に必要とするところに重点的にやっていかなければならぬ、こういうことを言っているのではないかと私は思っているのでございます。
  125. 金子みつ

    金子(み)委員 いま御説明を伺ったわけですけれども、結局一審の基本になるのは、国民自助自力というところに来るんだろうというふうにお話を伺っていて考えました。ですから、そうだといたしますと、そういうことは言葉をかえてさらに考えてみますと、社会保障充実は、余りこれを充実させるということは、自助自力の精神を低下させてしまう。だから、言葉をかえれば、国民を怠け者にして惰民をつくってしまう、そして民族の活力を低下させていくというふうな考え方があるんじゃないかというふうに、私には聞きとれた、考えられるわけでございます。  そこで、そういうふうになったら困る。それはいわゆるイギリスやスウェーデンで言っている病気なんで、日本にもそういった日本病というようなものが起こったら困ると思って、それを防止するというような目的で、いまのようなお考えで社会保障を進めようと思っていらっしゃるようにうかがえるわけです。  ところが、福祉元年のときには、御承知のように社会保障の費用はGNPに対して五%ないし六%くらいでしかなかったわけです。それが今日では約倍になっていますね。一三・一%ということになっています。約倍ですけれども、倍になった。こんなに急増した。これがいまのいわゆる国の赤字財源の元凶なんだというふうな扱いをされているようなことは大変にもってのほかだと思うわけです。とんでもないことだと私は思うわけです。いままで低かったのですから、上がってきたのはあたりまえなんで、短い期間に増加してきたのは当然だと思うわけです。しかもこの一三・一%だって、決して高いと言って自慢できる数字じゃなくて、御案内のように、スウェーデンみたいに三〇%近い国は別といたしましても、西ドイツの一九・八ですか、あるいはフランスの二三・九などと比べますと、まだまだ日本は低いと言わなければならないと思います。それで日本病なんということをここで言うような段階ではないと私は思います。  せんだって、八日のこの委員会で、私どもの安井委員の質問に対して大蔵大臣が答弁していらっしゃいますのを見ますと、五十六年度の社会保障給付費は国民所得の一三・一%だが、七十五年度には二〇%強になる見込みだというふうにおっしゃっていらっしゃるのですね。そういうことだと思いますが、そうすると、二〇%くらいになった時点では日本病が起こるかもしれないと思っていらっしゃるのでしょうか。その点ひとつ両大臣からお答えいただきたいと思います。
  126. 村山達雄

    村山国務大臣 三〇%になったから日本病が起きるなどとは考えておりません。しかし、高齢化がその後でずっとやってまいりますと、恐らく社会保障費の対国民所得比はもっとずっと上がっていくであろうということは容易に想像できるわけでございます。  そこで、さきに申し上げましたように、自由主義社会を基礎にして、そして企業の活力ももちろん必要でございますが、その設備投資の原資を何によって賄うのか。確かに公共事業はいまずっと財政の関係で横ばいにしておりますが、まだまだたとえば下水はもうちょっとふやしなさいとか都市公園はどうしなさいとかいろいろあるわけでございます。これまた国民のニーズであるわけでございます。その原資は言うまでもなく家庭のいわば貯蓄で賄うわけでございますので、その辺のところをどれぐらいの程度にしたらいいのかな、こういうところが最大の問題点ではないであろうか。その活力あるというのは、われわれは自由主義社会を守っていく。それから日本のこれからの経済を伸ばしていく原動力は一体どんなバランスが一番いいのであろうか。同時に、それを負担する側、たとえば税なりあるいは社会保障費負担する人の合意が得られるかどうか。これらの点を総合的に考えまして、少なくとも日本経済がやはり五%路線で伸びられるような形で、そして国民の納得が得られる範囲で、給付負担も結局は同じ国民のふところから出ており、国民に返るわけでございますから、そこの配分をどのようにすることが最も国民的合意が得られるか、その辺に最大の問題があると思っておるのでございます。決して二〇%になったら危ないなということを考えておるわけではございません。
  127. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私も村山厚生大臣とそんなに意見は違っていないのです。ただ、現在日本は老齢化が進んでおりますけれども、現時点ではまだ老人の数は少ない。たとえば六十五歳以上の人口比率というのは、日本は五十四年で九%、イギリスが一四とかドイツが一五、フランスが一四とかスウェーデンが一五とかいうのですが、ヨーロッパで一四、五というのが普通でしょう。そこで、日本は九%でございますから、長寿国になってはいますが、まだまだ老人の層が薄く、急速にふえていくということになれば、いやおうなしに年金とか医療費というものがふえるでしょう、ということになれば国民負担もふえるでしょうということを私は申し上げたわけです。  それがどれぐらいふえるのかと言われますが、どれぐらいと言われても、いま負担といっても、社会保障負担として保険料とか医療費とかという負担もありますが、税金で負担するものもあるわけですから、これは両方一緒にしたもので計算しなければ国民負担にはならない。たとえば国民所得に対して社会保障費が大きな比重を占めるということは、裏返しに言えば、その財源は国民が出しているわけですから、何らかの形で国民の租税または社会保障費がふえる。ふえなければたくさん出せないわけですから、たくさん出さなければ結局社会保障費やその他の費用もふえないでしょう。そこらをどこらの点で案分していくかということは、そのときどきの政策判断ということになるんじゃありませんか。したがって、われわれとしては、現在の個別の社会保障の仕組みなり社会保障給付水準というものは下げないようにしたいと思っています。     〔海部委員長代理退席、委員長着席〕  ただし、医療費がたくさん出ればいいという筋合いのものではなくて、医療費支出で、片一方においては負担にたえられないほどだんだんふえてくる、片一方においては億万長者続出だ、こういうことはちょっとおかしいのじゃないか。分配の仕方に間違いがあるのじゃないでしょうか。したがって、国民負担がふえざるを得ないことは承知はしていますが、一方にそれによってえらい巨億の富を残す人ができるのもどうも私は納得がいかないから、やはり医療費の支払いとか内容等についてはもっと合理的、効率的にチェックしてみる必要があるというようなことを例示的に申し上げたのであって、その他の社会保障の問題についても、似たような話が全然皆無であるとばかりは申せないのではないか。いろいろ検討してみる必要があるということでございます。
  128. 金子みつ

    金子(み)委員 御説明はそのとおりだと思います。よくわかりました。  私がお願いしたいと思っておりますことは、国民に対する給付負担のバランス、先ほど厚生大臣おっしゃいましたが、そのバランスが壊れると、いま大蔵大臣がおっしゃったような巨万の富を持つ人ができたり暮らせない人ができたりということになるわけですから、そのバランスが壊れないようにしていくということが一番重要な問題なんで、それを堅持していただきたいということと、そして現在行われている社会保障内容は十分じゃありません、不十分ですけれども、これよりは下げないといういまの大蔵大臣のお話はぜひ守っていただきたい。とにかくその面についてはいかにも不公平があるのじゃないかという感じ国民に持たせないように、国民が納得してその給付とそれから負担のバランスも受けとめられるような中身にしていただきたいということを強く要望しておきたいと思うわけでございます。  次に、社会保障の中身はいろいろございます。今度の行革の問題におきましてもいろいろと取り上げられておりますが、私は児童手当問題をきょうは取り上げさせていただきたいというふうに考えております。  今回、政府が児童手当の制度のあり方を操作するについて、その考え方を諮問されていらっしゃいますね。社会保障制度審議会に諮問なさいました。その諮問に対する答申が出されておりますのを拝見いたしました。そうしましたら、その答申でこういうことが言われておりますね。「児童手当制度の将来における基本的な構想がないままに、主として国の財政上の見地からなされた予算上の一定の枠を前提として、このような措置をとろうとしている点は遺憾である。」というふうに制度審は申しております。私も全くそのとおりで、賛成だと思います。国の基本的な計画をまず示された上で、今回はこういうふうにするんだと、先ほどの話のように、そのときの政策でというふうにお話が出るんなら、みんな納得できるわけですけれども、本当にそれが示されないままでこのようになるということは、大変に危険だと思います。国民も納得できないと思います。  それを心配させるもう一つの理由がございますのは、この政府が諮問なさいました文章の「その他」の項に「財政再建期間終了後における児童手当制度のあり方について、全般的な検討を行うものとする」と書いてあるわけですね。これがさらに疑惑を持たせる文章だと私は思うのです。それで、この点については、十月九日のこの委員会で、公明党の正木議員の質問なさったことに対して、鈴木総理はこうおっしゃっているのです。各方面にいろんな意見があるが、私としてはどうしても存続させたいというのが大前提ですと答えていらっしゃる。存続させる。ところが、同じときに村山厚生大臣は、財政再建の終期、すなわち五十九年度ですが、これをめどに、中央児童福祉審議会を中心に各方面の意見を聞き、答えを出したいと、大変濁していらっしゃるのですね。大前提がないわけですね。この児童手当制度は続けていくんだ、しかしあり方についてはどうこうというような言い方じゃなくて、制度そのものを廃止されるんではないかと感じられるようなニュアンスが入っている。その点が私どもといたしましては非常に不安定な感じがするわけでございますが、それはいかがでございましょうか。閣内不統一みたいなことになるのかもしれないのですけれども厚生大臣、どのようにお考えですか。
  129. 村山達雄

    村山国務大臣 正木委員のときには、あるいはその点ははっきり申し上げなかったかもしれませんが、公明党の坂井委員の同じ質問に対しましては、将来の検討はこの児童手当制度の存続を前提にしてやりますということをはっきり申し上げておるわけでございまして、その点は私も総理と全く同じ立場に立っているわけでございます。
  130. 金子みつ

    金子(み)委員 ちょっとはっきりしませんでしたが、現行制度を前提としてですか。
  131. 村山達雄

    村山国務大臣 いま提案しております特例法案の児童手当の中で、この特例期間中はこれこれのことをいたしますと、こう書いてあって、その後で、この特例期間の終了時を目途にしてですが、制度の全般的な検討を行おうとするという趣旨の規定が末項にあるわけでございます。それについて公明党の坂井委員から、どういう方向でやるんだ、こういう御質問がございました。そのときに私がお答えいたしましたのは、各方面のいろいろな議論がありますので、それらを十分吟味して、そして妥当な答えを出したいと思いますけれども、児童手当の存続を前提にして考えてまいります、こう私はお答えしておりますので、したがって総理と全く同じ立場だということを申し上げているわけでございます。
  132. 金子みつ

    金子(み)委員 ぜひそれを守っていただきたいと思います。  続いて次の質問に入りますが、この行われている児童手当、さらにこれを存続させるということをいま厚生大臣もはっきりおっしゃってくだすったのですが、この児童手当というものの理念をどういうふうに考えていらっしゃるかということを一度はっきりわからせていただきたい。たとえば社会保障と思っていらっしゃるのであるとすれば、低所得者だけを対象にするという今度の措置はおかしいと思います。それから所得政策だと考えるならば、今度の措置にあるような自営業者だけに所得制限を強化するというのもどうかと思いますし、人口政策だと考えるなら、第三子からでなくて第一子からにするべきではないだろうかというふうに考えられるのですが、一体政府はどういうふうにこれをとらまえて理念として考えていらっしゃるのか、教えていただきたいと思います。
  133. 村山達雄

    村山国務大臣 現行法における児童手当の理念は、目的に書いてありますように明らかでございまして、子供さんをたくさん抱えている家庭経済的援助と申しますか、それから同時に、児童の健全なる育成というところにございます。そして内容を見てみますと、第三子から出しているわけでございます。しだがいまして、この考え方は、広い意味社会保障政策あるいは所得保障政策に属することは間違いございません。しかし、低所得者対策であるかと言えば、そうでないことも明らかであると思います。  したがいまして、今度若干、臨調の答申もございまして所得制限を四百五十万から三百九十一万にさしていただくわけでございますが、この三百九十一万というのはわれわれの推計では、六人世帯の五十七年度における平均収入程度であろう、こういう平均収入で押さえているわけでございまして、決して今度の改正によりましても低所得者対策だということは考えていないということを御理解願いたいと思います。
  134. 金子みつ

    金子(み)委員 それは承知いたしました。  そこで、いま厚生大臣がお出しになったこの所得制限に関することなんですけれども、続けてお尋ねをしたいと思います。  今度は児童手当制度を合理化するというたてまえで、六十億円の政府の財源を削減するというふうに計画が進められているわけでございますね。その六十億円を削減するための方法として、いまお話の出ました所得制限を現在の四百五十万円から三百九十一万円、勤労者の平均ですが、これに引き下げていく——引き上げていくと言うのでしょうか、その結果、支給率が変わってくるわけですね。サラリーマンは四五%になってしまうし、事業主は八〇%ということで、大変開きができてしまいます。そこで大変にアンバランスになりますね。不公平になりますので、政府がお考えになったのは、両方とも八〇%にそろえるということのために、その差は三五%という差が出ますね。この差の三五%を事業主負担にするというふうに考えて、今度の考え方が出てきているわけですね。そして、さらにサラリーマンには五百六十万までにするとか、あるいは特例の手当を支給するとかというふうに配慮を加えていらっしゃるということもよくわかります。  その辺はわかるわけなんですが、私は、大蔵大臣に教えていただきたいのは、この事業主負担の問題なんですが、この事業主負担はこの五十六年度ではどれぐらいに収入としてなっているのか、あるいは今度の臨調で新しく考えられた措置によりますとどれぐらいになるのであるかというふうなことがお尋ねしてみたいわけでございます。事業主は今度のようなやり方を余裕があるからのんでいこうということで問題なく受け入れられているのかどうかということも一つ疑問だと思うのですけれども、その点をひとつ教えていただきたいと思います。
  135. 村山達雄

    村山国務大臣 いまのお尋ねの点は、私の方がずっとやっておるのでございますから、私の方からお答えさせていただきます。  この措置によりまして五十七年度事業主負担、拠出金がどうなるかということでございます。五十六年度予算では四百七十一億でございますが、この措置によりまして五十七年度は五百六十一億ぐらいでございます。したがいまして、九十億ぐらいふえるであろう、このように考えられるのでございます。そういうことでございます。
  136. 金子みつ

    金子(み)委員 わかりました。  それでは、続けて児童手当の問題でお尋ねをしたいと思いますが、児童手当を行う目的、先ほどいろいろお話もありましたので、いま時間をかけてそれをする必要はないと思うのですけれども、問題は、いまお話にも出ましたように、日本では第三子からだけになっているというわけですね。諸外国の例を見ますと、もうすでに御承知と思いますから一つ一つ申し上げませんけれども、以前には所得の低い人たちを対象に始められていたものでありますけれども、今日では、もうその特定な枠を離れて全児童を対象とした普遍的な制度に変わってきている。このことは、日本のように社会保障充実していない国でなくて、非常に社会保障制度充実しているような国ででも、これは国民の要求として出ておりますし、児童対策の最も基本的なものとして位置づけられているわけです。今日では、第一子から全児童にというのが五十七カ国ございますね。日本の場合は第三子なんでございますけれども、これはやはり日本も第一子からということが考えられてしかるべきじゃないだろうか。  なぜかと申しますと、日本の児童数の平均は、現在では一世帯当たり一・七四人しかいないのですね。二人を欠いております。ですから、第三子以降などというものの数は大変に少なくて問題にならない。ですから、仮にこれを第一子からとしても、決して無理にはならないというふうに私は思うのですけれども、そういうことになっていないものですから、日本では児童手当制度というものが国民一般に余り深く考えられていないですね。それは第三子以降にしか出ていないからでありますし、その後一つも改正されていません。昭和四十六年ですから、十年ぐらい前になりますね。約十年前から始まっているのですが、一つも変わっていないし、かえって、扶養世帯への所得制限が強化されてきていますから、給付の対象が大変に縮小されてきているというふうに見られるわけです。  そこで、私は一つの考え方と申しますか、申し上げてみたいことがございます。これは厚生大臣も大蔵大臣も聞いていただきたいのですが、いま日本では、現金で支給される児童手当のほかに、所得税法に基づく児童扶養控除というものがございますね。これが一律一人当たり二十九万円になっているわけですね。これが同額なのだから公平なように錯覚を起こしますけれども、実際問題としては大変に不平等だという実態がございます。この扶養控除というのは、所得税の非課税の世帯には全く何の関係もない。全然メリットはございません。むしろ高所得者の人たちほど、税額の控除分がよくて効果が大きくなる。高い収入のある人のところには大変メリットがあるけれども、低い人は逆になっている、こういうような不平等な状態になっているわけでございます。ですから、決して現在の控除の制度が公平だとは私は思わないのですけれども、これはどういうふうに考えたらいいでしょう。そうじゃないとおっしゃるのでしょうか。これは大蔵大臣に教えていただきたいですね。
  137. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 扶養控除の制度は子供だけじゃございませんで、配偶者の場合もあるし、あるいは親の場合もあるし、あるいは何らかの形で自分が扶養しなければならない親族の場合もございます。しかし、これを児童の部分だけなくすということは、ほかとのバランスは一体どうなるのか。児童だけはなくして手当をくれるという考えで、あなたはそういう御主張の御様子ですが、そうすると妻の場合は、これは金はくれないわけですから、これは控除を残すのか、親の場合も残すのかという問題が出てくる。  仮に子供の多い人は、まあ十人いれば二百九十万だが、五人にしても百四十五万円ぐらいのものが控除される。しかし、それは子供がいないということになれば税金がかなりかかってくるという人もありまして、子供の数にもよりますが、必ずしも——所得の税率の高い人の方が恩恵がよけいじゃないかという議論も正しいと思うのですよ。それはそういう議論もあります。ありますが、それじゃ下の方の階層で控除をなくしちゃって五千円ずつ一子、二子、三子ともらった方が得なのか、税金を控除された方が得なのか、ここらのところは人によって多少違いがあるのじゃないかと私は考えます、計算してみなければわかりませんが。  いずれにしても、しかしその扶養控除と児童手当とはまるっきり異質なものですから、それをなくして入れかえるということはうまくいかないのじゃないかと思います。ドイツで一遍それをやったことがありまして、一九七五年からやったのだが、結局はうまくいかなくてまたもとに戻しちゃったという実態があります。
  138. 金子みつ

    金子(み)委員 いまのお話は確かにそうです。私が御提案申し上げようと思っていますことは、児童扶養控除だけを外して、そしていま現金で出ている児童手当と一本にするわけです。これは予算の費目の上では違ってくるだろうと思います。ですけれども、もとは一つなんでございますから、最も効果的に、最も国民に喜ばれる形で、同じお金を使うのなら、そのようにして制度をつくるなり、あるいは政策を立てるなりする方が私はいいだろうというふうに考えられるわけです。  ですから、御承知だと思いますけれども、いま外国ではこれを一本にするという方向に動いてきているわけですね。西ドイツだとかあるいはオーストラリアなどはそのとおりそれをやっているわけです。これを一つにして、そして必要な児童に対する児童手当制度として現金で給付するということの方が大変に意味があるし、平等になるし、私は同じ使うにしてもその金の意義はあると思うのです。  日本の場合だったら、扶養控除を廃止すると、国は一兆四千百億円の増収になるわけですね、これは計算してもらいました。この額と現在の児童手当に支給されている財源、この額をそのままいま入れかえるのはむずかしいとおっしゃいましたが、仮にこれを児童手当の支給に使うといたしますと、いま一人五千円ずつ給付されております、それが一挙にして四万五千円になる。五千円が四万五千円になるという大変大きなメリットが国民にとってはあるわけですけれども、あるいはそうでなくて、西ドイツあたりがやっている、両方をプラスして一本にする、一元化するということにいたしますと、日本の場合だったら、一元化しますと第一子から四千七百円の支給が可能になるというふうに考えるわけでございます。  ですから、もしそうだとすれば、第一子から日本も児童手当を支給するということで先進国の仲間入りもできるし、制度が出発して十年になるわけでございますから、これが実現できることが望ましいと思うのですけれども、大変にこれはむずかしくて実行不可能なものかどうかということを御説明いただければと思います。
  139. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、児童手当と扶養控除というのはまるっきり異質なものでございますから、私は児童扶養控除をなくした財源で児童手当の増額を図るということは適当でないと思います。それはドイツでやったことがあるのです。やったけれども、結局は扶養者には扶養控除すべきだという議論がまた出てきてしまって、五、六年てオシャカ——オシャカになったと言ってはなんですが、五、六年で廃止になってしまったわけでございます。そういう前例もございますので、慎重に扱わなければなるまい、そう考えております。
  140. 村山達雄

    村山国務大臣 非常にむずかしい問題でございますが、いま大蔵大臣がおっしゃったように、やはり税の方は担税力理論でやっておりますから、恐らくやめるということはとてもできないのじゃないだろうかというのは、私も同じように思っております。  一方、現在の制度は、先ほど申しましたように、広い意味の所得政策であります、しかし低所得者対策ではない。各国で第一子からやっておるとかいう話は、恐らく人口政策というものを強く考えておることであろうと私は想像しているのでございます。そういう意味で、いまのところ第三子からでございますから、日本は別に人口政策の観点でこの問題をとらえているわけではないことは御承知のとおりでございます。したがって、今後の人口の推移、またこれをふやしたからすぐ人口がもとへ戻るとも考えませんけれども、それらのいろいろな議論も踏まえながら、そしてこれとこれを統合するのは少し考え方に無理があるのじゃないかとか、あるいはその辺の問題を整理しながら、将来どういうふうに考えていくか。しかし、児童手当は存続を前提にして、それらのいろいろな議論が行われているところをもう少し煮詰めてまいりたい、これがいま私の考えでございます。
  141. 金子みつ

    金子(み)委員 十分検討していただきたいと思いまして御提案申し上げたわけです。頭から問題にならないといって捨てないで、検討していただきたいと思います。  では、次に議題を変えまして医療問題を少し質問させていただきます。  今度の臨調の答申によりましても、医療問題は大きく取り上げられているわけでございます。これは、もっぱら厚生省の所管になっているわけでありますけれども医療費の適正化ということで今度の問題の中に出されてきております。適正化することによって千百七十億円節減ができるというふうに考えられているようでございます。  この中でさらに大きなウエートを占めますのは、老人医療の問題でございます。御承知のように、いま日本の五十四年度の数字で言いますれば、国民の一人当たりの医療費は八万三千六百円でございますけれども、同じときに六十五歳以上のお年寄りの医療費は二十七万九千九日円、大変に大きな金額を示しております。将来同齢化社会がますます本格的になっていく、まだほんの序の口ですけれども、これから先、本格的になっていくということになりますと、どれほどこれが上がるかわからないということで、非常に危惧をしているわけだと思います。そこで、この点を何とか抑えていかなければいけない、減らしていかなければならないということで、今回老人保健医療制度がつくられようとして、法律が準備されているというふうに私は理解できるわけでございます。  そこで、この老人保健法案の問題になりますが、老人保健法案は、きょうはいただいた時間も大変少ないですから、ここで中身の審議はできないと思います。これは社会労働委員会で専門的にやらせていただくということにしたいと思うのでございますが、私は一つ二つ申し上げたいと思いますのは、老人保健法だけが独走しないようにしてもらいたいということでございます。日本医療制度は、医療法という法律があるわけですから、やはり医療法が前提にならなければいけないというふうに考えますので、医療法の改正が考えられているということも私ども承っております。それで、まだこれが出てこないのですね。提出されない。  私は、老人保健法案が提出されるなら、本来なら医療法も一緒に出てくるべきである、そしてこの両方を並行させて、照合しながら検討していくべきものであると考えて、私どもは強く要求していたのですけれども医療法の方はまだ提出されないで、老人保健法だけが先に出てきてしまったという実態がありますが、これはできるだけ早く医療法の方も出していただきませんと、私は老人保健法案の方だけが先行し独走することは正しくないと考えます。ですから、その点をひとつ強く要望しておきたいと思うことでございます。  それから、いま一つの問題は、昨日の本会議の席でも出たわけでございますけれども、この老人保健法案提出に際して、日本医師会と政府・自民党との申し合わせという問題が出ました。それがあるんだということがあって、それはどうなんだというふうな御質問がありましたときに、鈴木総理村山厚生大臣も、あずかり知らないというお返事でございました。私は大変不思議だと思ったのです、あずかり知らないというのはどういうことなのかなと。一番トップの方というのは、何でもそういうふうにあずかり知らないことが多いのかなと思ったりもいたしましたのですけれども、実はきのう私の手元にこれが届いてまいりました。  これは「日本醫師會雑誌」でございます。一番新しい、十月一日号でございますが、この「日本醫師會雑誌」に理事会の議事録が載っています。その理事会の議事録の中に、「老人保健法案の現段階とその対策の件」という項目で理事議論をしたのがそのまま載っておりますが、そこで武見会長がこういうふうに言っているんですね。大事な問題ですから私から説明しますとわざわざ断って、武見さんが言っているんですけれども、必要なところだけを読みますが、この問題については新聞などにも出ておりますがと——確かに新聞に出ておりました。私と党の幹部と話し合いをいたしました、そして厚生省も了承いたしましたから、出来高払い制は現在の点数表で行われます。登録人頭式は行わないことになりました。もう一つは老人保健機関でございますが、と言って何かずっといろいろ言っておられて、最後に結論で、いままでどおりの保険医療機関がやるということに決定いたしましたから、老人保健機関はなくなりましたというふうに言っておられます。  そしていま一つ、老人保健審議会はあってもなくてもいいようなものになるわけです。いまの二つを外してしまえば、老人保健審議会なんて要らないという意味ですね。老人保健審議会は私ども関係なしにつぶしてしまうということで、議員同士で話が進められているようです。実質的には解決したものと私は思っております。こういうふうに、これは議事録なのです。こういうのをどうしますか。私はこれが事実だと思います。これは議事録ですから間違ってないと思います。  もう少し詳しく書いてありますが、時間の関係で詳しく申し上げられないのですが、要点だけつまんで申し上げたらそういうことで、三項目は約束されているわけですね。どなたがなすったか知りません。関係議員としか書いてありませんからわかりませんけれども、こういうことがもし、事実だと私は思いますけれども、こんなことが先にやみ取引みたいなかっこうで行われているんであれば、老人保健法案を真剣になって論議する、検討するなんという気持ちになれないですね。必要がないと思うのです。ですから、私は老人保健法案の審議をいましようと思っておりません。そんな気持ちになれませんし、問題だと思うのですけれども、これについてどういうふうに御答弁いただけますでしょうか。
  142. 村山達雄

    村山国務大臣 厚生省は一切そういうことには関知いたしておりません。はっきり申し上げておきます。それであればこそ、いま老人保健法を出しているわけでございます。いろんな人がいろんな発言をきれる、あるいは新聞記事がいろいろ書く、これはもう私たちはどうにもならぬことでございます。厚生省は一切関知しておりません。
  143. 金子みつ

    金子(み)委員 大変問題なんです。結局この老人保健法案を骨なし法案にするしかないと思う、問題はもう解決しているのだから、こういうふうな捨てぜりふみたいな発言も武見さんの発言としてある。いま厚生大臣は知らないとおっしゃいましたけれども厚生大臣が本当に知らないのかどうか、それは私も何とも疑わしい感じがするのですけれども、そんなことで厚生省、黙っていらっしゃっていいのですか。ここで厚生省も了承しました、厚生省が了承するということは厚生大臣が了承するというふうに考えちゃいけないのでしょうか。そういうふうに思えるのですけれども、違いますか。
  144. 村山達雄

    村山国務大臣 何遍も申し上げておるように、私はそんなことを承知しておりませんし、それから厚生省も一切関知していないということをはっきり申し上げておきます。
  145. 金子みつ

    金子(み)委員 それでは、厚生大臣日本医師会に抗議をなすったらいかがですか。そんなことはないはずなのに、なぜこんなことを言ったのだ、あるいは厚生大臣は知らないけれども厚生省のどこかのランクの方が了承なさったのか。それが厚生省の意見だというふうに理解されてしまうわけですから、私は大臣としては黙っていられないと思うのですけれども、いかがでしょう。
  146. 村山達雄

    村山国務大臣 関係がないと申し上げておるので、御信用いただきたいと思います。
  147. 金子みつ

    金子(み)委員 信用したいのはやまやまでございます。私どもも大臣を信用しなければこんな議論はできませんのですから、それは当然のことなんでございますけれども、こういう事実が出てきているから困ったと思っているわけなんですよ。ですから、これは大臣御存じないということをはっきりとさせるためにも、一言日本医師会におっしゃるべきじゃないでしょうか。私はそれをぜひなさるように、そうでないと、私たちもこのことがはっきりしないと議論はこの先進められない。社会労働委員会にもう付託されて、先般質問も始まっております。私どもの番にまだ回ってきておりませんが、私どもになったら——委員長、お願いします。いまのは、厚生大臣に幾ら申し上げてもああいうふうにおっしゃるだけで決まりませんから、事実を調べていただいて、この委員会に御報告いただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  148. 金丸信

    金丸委員長 村山厚生大臣、ただいまの取り消しというか、日本医師会に抗議を申し込めという質問に対して御返答はできますか。
  149. 村山達雄

    村山国務大臣 これは新聞もいろんなことを書きますし、それからまた関係機関もいろいろなことを書くわけでございますけれども、言論も自由の国でございますので、いろんなことを言うわけでございます。しかし、われわれがはっきり申し上げているように、厚生省は一切関知していませんので、どうぞひとつ御信用願いたいと思います。
  150. 金子みつ

    金子(み)委員 ちょっと大臣は勘違いしていらっしゃるみたいですよ。私は新聞記事を取り上げて言ったり、雑誌の記事を取り上げたり、週刊誌を取り上げて言っているのじゃなくて、日本医師会が発行しているれっきとした「日本醫師會雑誌」なんですから、間違っているとは思えないですね。ですから、大臣は御存じないとおっしゃいますから、事実そうなんだと思います。ですから、厚生大臣は御存じないのだろうと思いますが、厚生省から事実を確かめていただきたい、それをぜひ委員会に御報告いただきたい、これをお願いしてください。
  151. 金丸信

    金丸委員長 金子さんからのただいまの御提案でございますが、理事会で諮りまして、どのように究明するかということにいたします。お任せください。
  152. 金子みつ

    金子(み)委員 大変残念です。じゃ、理事会をすぐ開いていただきたいと思います。  きょうは、老人保健法案はもう社会労働委員会に付託されているのです。来週からは審議に入るわけです、野党側も。ですから、その前にこのことをきちっとしていただきませんと、私ども社会労働委員会が開かれても審議はできないということになると思いますので、急いでやっていただきたいと思います。(発言する者あり)
  153. 金丸信

    金丸委員長 御静粛に願います。
  154. 金子みつ

    金子(み)委員 では、もう一つ最後の時間で、これは薬の問題でございますが、厚生大臣に質問させていただきたいと思っています。  これこそ新聞に載っておりましたので御存じでいらっしゃると思うのですけれども、大鵬薬品工業という製薬会社から、本社は東京にありますが、抗炎症剤のダニロンという薬をこれはスペインから入れまして、そして国内販売を始めたわけでございますね。これが問題になりましたのは、社内での動物実験の段階で投与によっては発がんする疑いのあるデータが出ていたということが明らかになっておりますけれども厚生省の方へ出してきた資料にはデータがついておりませんでした、そのことについての。それですから、厚生省ではそのままそれを受けとめて、六月四日ですけれども厚生大臣の製造承認、許可をおろしております。もちろん薬事審議会におかけになったものだと思いますけれども、許可された。ですから、会社はそれをすぐに発売したわけでございますね。ところが、問題があるということが内部で研究者の間で問題になりましたことが外へ漏れまして、そして新聞に出されてしまった。そうしましたら、会社側は自発的に急いで発売を停止して、そしてすでに出ている薬も回収をしたという事実があるわけでございます。  そこで、私はお尋ねしたいと思っておりますことは、三つほどございます。  その一つは、厚生省に申請してそして製造認可も許可もおりた薬品に対して、なぜそんなにあわてて発売を停止したり回収したりしたのかということが一つ。時間がありませんから、質問続けて申し上げます。おかしいじゃないか、堂々と売り出していたのをなぜそんなことをやったのかということが一つ。  それからいま一つは、そういうことになったものですから、厚生省がお調べになったわけです。それで厚生省はこれに対して、大鵬薬品の科学的な判断が正しかったかどうかということについて判定するために、残されていると申しますか隠されていると申しますか、とにかく出してこなかった動物実験のデータを全部提出しなさいと厚生省は言われたようですね。そして、それが提出されてきたならば、国立衛生試験所に発がん性の観点からの実験を依頼して再チェックをする、必要なら審議会にもかけるというふうに言っておられるのですが、私が心配して申し上げますことは、出さなかった資料を出すようにと言われて再び出してくるんだと思いますけれども、そのデータはどんなものが出てくるかということなんです。いいとこ取りをして都合のいいところだけを出してくるあるいは改ざんしてデータを出してくる、そういうことだってあり得ると思うのですけれども、そうすると、単なる公文書や私文書偽造だけで済まないで、人命にかかわるということで大変問題だと思うのです。もしそういうようなことになるということがあった場合に、厚生省はどうなさるかということが一つございます。  そうしてもう一つの問題は、こういうことがあるから——いま厚生省は製薬会社が出してきた資料を信用して、それを見て許可をおろすとかおろさないとかとやっていらっしゃるわけですね。ペーパーチェックというのですか、そういうのをやっていらっしゃるだけなんですが、こんなことでいいかどうかということなんです。だから、従来から続けてきていらっしゃる薬品の許可、認可についてはその基準がありますが、その基準をもう一遍検討してみる必要があるんじゃないんでしょうか。大変危険だということが考えられます。ことにこの前の丸山ワクチンの関係もありますので、丸山ワクチンのときには大変慎重でございましたが、それで認可にならなかったのですが、今度のケースなんかは簡単に認可になってしまっているという疑問もやはり私ども国民としては抱かざるを得ないわけです。ですから、その承認基準に関する取り扱いをもう一遍再検討してごらんになるということが必要なんじゃないかと思いますが、それら三つ、あわせて御答弁いただきたいと思います。
  155. 持永和見

    ○持永政府委員 大臣がお答えになります前に、事実関係を私どもからお話し申し上げたいと思います。  大鵬薬品のダニロンにつきまして、新聞報道で、発がん性データを隠していたじゃないかということで報道がございます。この報道を受けまして、私どもとしては早急に、そういうデータがあるなら出せ、こういう指示をいたしました。あわせまして、会社側としては、あれだけ大きく新聞に取り上げられたものでございますので、したがって会社側としては、従来承認申請のときに出されましたデータは、先生御承知と思いますが、ラットのデータでございます。新聞報道されました隠していたデータというのはマウスのデータでございます。そういったことで世間を大変騒がせたというようなことで、今回に限りましては、大鵬薬品の方で自主的にこれからの販売を停止する、あるいは市場に出回っているものについては回収をしていくというような措置をとったというふうに聞いております。  それから、私どもといたしましては、データを全部出しなさい、こうはっきりと指示してございます。一両日中にデータが出てまいるはずでございますが、その中身のデータを見まして、言われているような新聞報道などでのチェックをしまして、主としていま申し上げましたようにマウスに関する発がん性データだということになると思いますが、そういったものがきちんと出ているかどうか審査いたしまして、場合によっては、私どもとして現地に乗り込んで実態の究明を行いたいということも考えております。  それから、最後に御指摘になりました承認の審査の問題でございます。これにつきましては、一応諸外国とも、医薬品の新薬の承認審査は申請者側からデータを出す、こういうような仕組みをとっております。私どももそういう仕組みをとっておりまして、これらのデータを全部国の機関でチェックするあるいは試験するということになりますと、膨大な施設、人員がかかるものでございますから、そういうような体制は現在のところはとっておりません。ただ、御指摘になりましたような、現在のメーカーのやります、申請者のやります試験方法については、御承知のようなばらつきもあるかと思います。そういった点でいろいろ問題があるかと思いますので、現在諸外国におきましても、研究につきまして、構造、設備でございますとかあるいは責任体制の明確化あるいは研究の実施方法、いわゆるGLPと申しておりますけれども、そういったものにつきまして、各国それぞれ具体的な実施の段階に入っております。私どもの方もできるだけ早くこれを実施したいということで、いま検討中でございまして、できますれば五十六年度末ぐらいにはこの実施に移していきたい、なお早くできないかというようなことで現在鋭意検討いたしておる段階でございます。
  156. 金子みつ

    金子(み)委員 この問題につきましては、私はその製薬会社のことを疑うわけではありませんけれども、態度が非常によくないと思うのですね。いまお話しのように、申請者が申請してきた資料をチェックするということなんですけれども、申請してきた資料を全部信用するということが前提で事が進められているというふうにしか考えられない。そうすると、申請者の側では全く忠実に誠実に必要な資料は提供しなければならないにもかかわらず、そこに何らかの意図的な考え方を入れて、そしてそれをねじ曲げてと申しますか、意図的にやらないというようなことだって起こり得ると考えられます。  きょう午前中に依田議員の御質問の中にあった、歯科診療に使われる薬の問題も私はやはり同じようなことじゃないかしらと伺いながら座っておりました。ですから、このやり方、非常に問題だと思います。  ことに、このダニロンにつきましては、徳島大学の病理の教授がやはり実験の依頼を受けて実験なさったその結果は、「それぞれ薬の使用量に応じて腫瘍性の病変が見られ、腫瘍には」と書いていますね、「良性も悪性の前ガン状態のものもある」「肝臓にガンを作る危険性のある薬で、人の治療薬としては難しい」と言って、その結論をつけて検査結果をこの会社に出していらっしゃる。こういう事実もあるわけでございます。こういうことがあるにもかかわらず、この会社は大変に不正な資料を提出したとしか考えられないわけなんですけれども、これはなぜこういうことになるかと言えば、一番後の質問でいたしましたように、またいま局長が御答弁なさいましたように、私は審査基準のあり方の問題だというふうに考えます。もちろん一つ一つ全部実験、検査をしていかなければならないというのは大変だとは思いますけれども、何かもっといい方法を検討して、そして改善するという方途を考えていただきませんと、国民といたしましては大変に不安でございますし、厚生省となさっては国民の健康を預かる立場から大変に責任のある問題だと思いますので、この点についてはっきりしたこれからの方向あるいは姿勢、態度のようなものを決意として聞かせていただきたいし、具体的にはその審査、承認の方法についてどういうふうに進めたらいいか、いま局長も一応御説明になりましたけれども、それだけでしかないのか、あるいはさらにもっと方法があるのか、専門家もたくさんいらっしゃることだと思いますので、ぜひその点をきちっとした形で進めていただきませんと、みんな素人ですから、薬は、そうだと言われればそうかというふうにしか考えません。ですから、その点をぜひしっかりとやっていただきたいと思います。これを申し上げておきたいと思いますので、大臣のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  157. 村山達雄

    村山国務大臣 いまの具体的な問題につきましては、薬務局長かちお答えいたしましたように、厳重に調査をいたしまして適正な処置をとってまいりたいと思います。  いま御指摘になったことは非常に大事な点でございます。新薬の承認に当たりまして、やはり申請者がすべてのデータを出すということが前提になっているわけでございます。そうでないと、この承認制度というものは妙なものになってしまいますので、そのデータを全部出すという申請基準、そういったことを励行してまいりたいと思います。  同時にまた、それにつきましては動物実験あるいは臨床実験、こういうことがあるわけでございますが、臨床実験は、もう御案内のようにいろいろなデータが出るわけでございますが、いわゆる動物実験の段階の研究基準、これもいま、承認されたものについての製造基準はもうすでに出ておるのでございますが、研究基準も、先ほど薬務局長が言いましたように、これもしっかりやって、申請のあり方、それからそれを出すときの基礎データになります基礎研究の研究基準をはっきりさせてまいりたい、そういうことによりまして国民に薬について不安がないように処置してまいりたい、かように思っておるところでございます。
  158. 金子みつ

    金子(み)委員 ぜひそれは励行していただきたいと思います。  私はなぜこれをきょう取り上げたかと申しますと、ただ単なる際物として取り上げただけではございませんで、こういう問題がいわゆる日本医療費の中にも関係してくるわけです。いわゆる薬づけの問題なんかに大変に大きな関連がございますので、非常に問題だと思いましたので取り上げたわけでございまして、これで済んだわけではありません。これはさらに社会労働委員会の方へ持ち込みまして追及を続けていきたいと考えているわけでございます。  政府の姿勢となさっては、これに対する取り扱い、それからまた、けさの依田議員のお出しになった薬に関する問題、あるいは先般大変問題になりました丸山ワクチンの申請に対する承認審査の問題、これはおかしい、大変にその辺のバランスが壊れているというふうに思わざるを得ないのです。審議会の方に問題があるのか、申請者の方に問題があるのか、あるいは厚生省の中に問題があるのか、その辺はわかりませんけれども、私はそこら辺の問題は、いつの場合でも、だれに聞かれても、事薬でありますから、国民の健康ということを第一に考えてくださって、そういう疑いがみじんも出ることのないような行政をやっていただきたいと心から要請をいたしまして、時間が参りましたから質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  159. 金丸信

    金丸委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。  次に、中西積介君。     〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕
  160. 中西績介

    中西(績)委員 私は、公立小中学校の学級編制の標準等に関する経過措置の特例についての質問を中心にして行いたいと思います。  そこで、義務教育費国庫負担制度は、憲法に保障された義務教育無償、教育の機会均等の原則を具体的に保障するために制度化された経緯を考えますと、財政事情を最優先させて学級編制や教職員定数、給与費を抑制、削減することは許されないし、教育こそ国の大綱であり国家百年の大計であると考えますと、特に今日の児童生徒の非行、校内暴力などに象徴される深刻な教育荒廃を考えますと、行き届いた教育を最重点施策として早急に実施することがすべての国民の期待であり、今回の教職員抑制措置は容認できないという立場から質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、一九七九年、五十四年の十二月二十九日に、第五次学級編制等改善計画案を策定をされました。この時期にわれわれは五年を主張し、文部省は九年、そして最終的には十二年で押さえ込まれた結果が出ました。その当時、谷垣文部大臣と竹下大蔵大臣の両者の間におきまして確認メモが交わされておるわけでありますけれども、この確認メモについて、あることを御存じかどうか、文部大臣と大蔵大臣にお聞きします。
  161. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  先生の仰せのとおりであります。
  162. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 そういう合意があると、「概ね三年後に、各般の状況を勘案し、その後の計画につき検討する。」旨文書で回答し、合意されたというように聞いております。
  163. 中西績介

    中西(績)委員 そうした合意された確認メモがあるわけでありますけれども、このことについてはいま両大臣とも認めたわけですが、このことをさかのぼってみますと、昭和三十三年ごろからこの四十人学級問題は問題にされまして、当時の初中局長あるいは文部大臣も、四十人を目指すということの大体確認をいたしております。それから以降、約四分の一世紀になるわけでありますけれども、四十九年の第四次改善計画案、この際に審議されまして附帯決議をつけましたけれども、これは衆参両院でつけておりますが、この中身も四十人を目指すことを中心に据えたわけであります。そこで、この確認メモも、大蔵省が大変な反対をしたのだけれども、最終的には、意見の対立があったが当時鈴木自民党総務会長、現総理が調整をしたと言われておりますし、そうした中で、いま大蔵大臣が言われましたように、財政再建期間中における教職員改善増は極力抑制するということを中心に据えて、九年を三年延長して十二年になった経緯があるわけです。それはあくまでも自然増が見込まれる年次、五十七年度までかかってこれが三年の延長という状況が出たわけであります。したがって、そうした内容について文部大臣は十分前任者から引き継がれておるかどうか、この点どうでしょうか。
  164. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 前任者から引き継ぐと同時に、また内部におきましてもその間の経過は報告を受けております。
  165. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、さきの湯山質問、答弁にもありましたけれども、大蔵大臣は第五次学級編制等改善計画案の終了年限を昭和六十六年、十二年間で実施をするということで、この分については絶対に延期したり後退したりすることは、もう一度再確認をいたしますけれども、あり得ないととってよろしいですか。
  166. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 目下のところ、これを変更する考えはございません。
  167. 中西績介

    中西(績)委員 文部大臣もそのように理解してよろしいですか。
  168. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 そのとおりでございます。
  169. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、いま両大臣による確認と十二年間というものの押さえについては確認ができたわけでありますけれども、当時自民党の総務会長でありました鈴木総理がこのようにして十二年という年限を決定したにもかかわらず、そして社、公、民、この三野党の修正の要求に対しまして、自民党は実質修正を行う旨の幾つかの回答がなされております。その中で改善計画案につきましてもこのような確認がなされております。「四十人学級など教職員定数改善計画は、概ね三年後に、各般の状況を勘案し、その後の計画につき検討する。」としております。こうしてこの四党合意が成立をいたしまして、五十五年度の予算の成立を見たという経過があります。  そこで、この四党合意の中身でありますけれども、ここにあります「三年後」というのは、先ほど申し上げました自然増が終了する年次、五十八年になるわけであります。いまこうした問題について、公党間における約束、合意、確認事項については行管庁長官あるいは大蔵、文部両大臣は御存じかどうか。この点の確認をいただきたいと思います。
  170. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 その種の合意があることを承知しております。
  171. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 同様でございます。
  172. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 三年後に見直すということであります。
  173. 中西績介

    中西(績)委員 そうなってまいりますと、公党として三年後短縮を前提とした見直し、この約束をしながら、三年もしないうちに短縮どころか抑制措置をとるということで今度の法律は出されておるわけです。これは全く心外であります。したがって、当時自民党の中のそうした重要な役割りを果たしておった鈴木総理、現在総裁になり、そして総理になった途端に約束を果たそうとしておらないという事実がこうして出てきておるわけでありますけれども、この点に関してどのようにお考えでしょうか。きょうは総理がいませんから、長官
  174. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 そういう合意が存在することはわれわれもよく承知しており、それを守るべくわれわれも心がけてきたのでございますが、財政状況が非常に悪化してまいりまして、当初の情勢と非常に変わってまいりました。そこへ行政改革の問題が惹起されまして臨時行政調査会の設立となり、その答申を尊重すると内閣も約束してまいりまして、この七月十日に第一次の答申が提出されまして、その中においてもその点が触れられておるわけでございまして、そういう意味からも事情が大きく変わりまして、いまのような処置になった次第でございます。
  175. 中西績介

    中西(績)委員 いま長官から説明がございましたけれども財政状況につきましてはこの当時も大変厳しいということを理由にいたしまして、先ほどから私が確認を経てまいりましたように九年、われわれは五年、本来なら五年ですべきなんです。それを文部省は遠慮して九年と言った。九年と言ったのは、もともと一年飛ばしておるわけですから十年ですね。それをさらに今度は引き延ばさせて十二年、実質的には十三年になっておるわけです。この際の確認事項をいま見てみますと、この中にはこうなっておるわけですね。「財政再建期間中は、教職員の改善増」云々ということになり、括弧して「特例公債から脱却するまでの期間」ということまで含めて、財政的には非常に厳しいということを理由にして三年間の延長がなされておるわけです。そうした中で、先ほどから申し上げるように十二年というのを確定をし、しかも今回の場合にはそれと相反すること、三年間後にはこれをもう一度短縮するという方向で見直すことを含めてやったということは、厳しいことを自認しながらそのことを容認をし、こうした予算成立を図っておるということになるわけです。  こうして公党間における約束をしたということになれば、いま長官が説明される財政状況が非常に厳しくなった、しかも第二臨調の答申に触れられておる、こういうことになってまいりますと、われわれ、こうした公党間における約束なりあるいは立法府における審議の過程なりからすると、これは大変な中身になってくるんじゃないでしょうか。まさに土光会長などを中心にして、言いさえすれば総理は天の声と言い、長官は神の声と言う。こうしたことが許されて、だからやるんだというようなことになってくれば、では立法府は、あるいは公党間におけるそうした約束事は全部破棄していいということになるのですか。もう一度お答えください。
  176. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 合意は誠意をもって守るべくわれわれも努力してきたところでございますが、その後の財政状態が思わしくなく、事情が非常に大きく変わった次第でまことに遺憾でございます。  ただ、その際お約束しました昭和六十六年に完了するという十二年間の期間は厳然と存続しておるわけでございまして、その十二年間の内部におけるやり方は若干変化してきておる、そういうことで、終期についてはやはりわれわれは厳守するつもりで努力しておるところでございます。
  177. 中西績介

    中西(績)委員 そうなってまいりますと、来年度の概算要求の中身を見ますと、科学技術だとか原子力あるいは海外に対する経済協力あるいは軍事費等については、こういうものはどんどん伸ばしていくという、こうした中身になっているわけですね。いわゆる重要な課題については、政府としてはそのことを確認してやるということになっているわけでしょう。その点どうでしょう、大蔵大臣。
  178. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ゼロシーリングの中で、いま言ったようなものを別枠扱いにしたということは事実でございます。
  179. 中西績介

    中西(績)委員 そうなりますと、私が一番冒頭に申し上げました教育問題については、じゃどうなのかということなんですね。教育に対する国の大綱だとか教育は大事だからと絶えず文部大臣を初めとして言っていますね。そうしたものの中には、文部大臣、教育は国の大綱あるいは重要政策としては入らないのですか。
  180. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 御承知のとおりに、教育こそ国の基礎であり、大本でございます。
  181. 中西績介

    中西(績)委員 いま大臣は、最重要なこと、最重要な政策として取り上げなければならぬと言わんばかりのことを言っているわけでしょう。ところが、実質的にはこのようにして手をかけ、ゼロではなしにむしろマイナス、こういう状況というのが出ておるということをここでは一応指摘をしておきます。そして次に入りまして、後のこととあわせましてもう一度確認をしたいと思うのです。  そこで、この公党間の約束、合意があったからこそ九十一国会、五十五年の四月十六日に、政府は今回の学級編制改善計画につきましてその後の計画について再検討するべき旨の、おおむね三年後見直し、十二年計画短縮を前提としました単独決議を文教委員会では行っておるわけです。その中身を言いますと「学級編制及び教職員定数改善計画促進に関する件」といたしまして、ここで上げました内容は「政府は、ゆとりある教育の実現、教育条件の整備充実を図り、教育水準の向上を一瞬促進するため、四十人学級編制及び教職員定数改善計画について、概ね三年後に、各般の状況を勘案し、その後の計画につき検討を行い、昭和四十九年標準法改正案に対する本委員会の附帯決議の趣旨を尊重し、最善の努力を行うべきである。右決議する。」ということで、共産党が反対だけで他の党全部でこういう単独の決議を上げました。同時に、参議院におきましても附帯決議を上げておるわけです。特に、立法府の決議に対しまして行政府が絶えずこの問題について軽視をするという態度に対しまして問題となって、特別この問題について論議をいたしまして、委員長から申し入れをいたしまして、当時の文部大臣はこの点について尊重するという中身までわざわざ確認をしたわけです。  こうしたことを考えてまいりますと、私は、少なくとも先ほど言われておるような財政状況、答申に盛られた、そういうことだけでこうした重要な教育問題を、いま申し上げたような原子力だとかあるいは対外的な経済援助だとか、こうしたものと置きかえるようなしろものであるのかどうか、この点文部大臣、どうですか、確認は。
  182. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 そういうしろものでは絶対にございません。むしろなお基礎的な、国家的な大問題でございます。
  183. 中西績介

    中西(績)委員 そうなりますと、もう一度明確にしてください。こうした内容についての確認をいたしたわけでありますけれども、大臣はこの確認については先ほど——それならもう一つ追及しますけれども、文部大臣は就任のときにこう言っているのですよ。五十五年の七月十八日に、あなたは四十人学級編制計画は、計画期間短縮の方向で検討したいと答えています。これは就任のあいさつとして新聞にちゃんと出ております。これは少なくとも公党間における合意、それから九十一国会における決議、こうしたものが全部あるからこそ、あなたはこうした問題を計画短縮すべきだという方向について検討していくという、こうした積極姿勢が出てきたということであろうと思うのです。そうじゃないのですか。
  184. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 私が就任いたしまして方針を述べましたときの段階においては、そのとおりでございます。
  185. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、もとに戻りますけれども、いま言うような状況がありまして、すべてがそういう方向になっておって、しかも最重要な課題になっておるかどうかということがいま問題になってきたわけです。  したがって、私は文部大臣に聞きますけれども、あなたはこうした教育問題については、先ほどから最重要課題としてとらえています。だのに、教育問題についてはこのようにしてゼロシーリング以下、削られておるという状況になりましたときに、どうお考えになっていますか。
  186. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  ただいまお話がございましたように、文教というものの重要性というものは非常に重大でございますと同時に、しかしながら国家の財政というものもこれまた非常に重要な問題でございます。それで、財政再建に対処する方針につきまして、臨調の第一次の答申が出されるなどの、昭和五十五年度当時から見ますと、新たな事態が生じてまいうておるのでありまして、このような事態を踏まえまして、国の財政の非常事態に緊急に対処するために特例適用期間中の国の歳出の縮減策の一環といたしまして、教職員定数についても抑制せざるを得ないというようなことでございまして、今回の抑制措置は特例適用期間中におけるものでございまして、昭和六十六年度におきましては全体計画を達成する、その間の一つの調整策としてのみ了承いたしておるのでありまして、との計画全体は断じて変更はいたしておらないこと、特に大蔵大臣ともよく談合いたしておる次第でございます。
  187. 中西績介

    中西(績)委員 わざわざいままで長い期間における討論の過程、そうした中身について私が申し上げたのはなぜかといいますと、いまあなたがおっしゃられるように、このようにして教育は重要だけれども、それは期間内に行いさえすれば何も問題ないのだというような言い方なんですね。そうしたところに、あなたの教育に対する本当に重要な問題であるかどうかという、こうしたことがとらえられておるかどうかが、私は大変疑問に思うのです。委員会でもどこでも口を開けば最重要だと言いますけれども、そうした問題について絶えず許していくということになれば、これはもうあなたはそうとらえておらないというふうに私は確認をしたいと思うのです。  そうした中で、もう一度確認をしますけれども、もとに戻りまして、じゃ公党間の約束については、こうした経過があって公党間の約束を破棄するのかどうか、そして他党の了解などについても、われわれ社会党だけにそうした了解についてあなたのところは求めずにやったのか、その点はどうなっているのですか。
  188. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 いまいろいろな御指摘を受けておるわけですが、私は中西委員のおっしゃることも一々ごもっともだと思っております。ごもっともな道理のある話だというように思っております。しかしながら、文部大臣がいまおっしゃいましたように、当時の状況から比べて、このままでは国の財政事情からして、どうしても思い切った削減合理化を図らなければ、将来もっと約束を守れないというようなことになりかねない。つまり、たとえば十三年の間に四十人学級というものをきちっとまとめるという大きな約束もしているわけですよ。それすらも国の財政がおかしくなっちゃったのでは、幾ら理屈が優先しても、現実にはだめになってしまうわけですから。しかしながら、一方では国会で附帯決議があったり、それからまた公党間で、国会対策委員会同士で覚書を取り交わすといいますか、自民党からも差し入れる、お約束もあるわけです。それを一方的に本当にほごにするというような結果になることは、まことに申しわけのない残念なことなんです。  そこで、そのことについては、自民党だけで抑制措置を講ずるということは、いままでのいきさつもあるからなかなかむずかしい。したがって、今回は国民の最高機関である国会にお諮りをして、国会の御同意を得て、そうして国の財政事情を考慮しながら政令事項は決めましょうということを義務づけることにしたわけでございます。そうでなければ文部大臣は動きようがないわけでございます。したがって、国会の同意が得られなければ、これはだめなわけでございます。ですから、国会にるる御説明を申し上げて、国会の御同意を得て法律をつくるわけです。そのためにこれは提案しておるわけです。だから、この法律を国会で御同意をいただきたい。御同意をいただけなければだめなわけでございます。そのために、これは極力御同意いただくようにお願い申し上げておるというのが現実の姿でございます。
  189. 中西績介

    中西(績)委員 いまあなたが言われる論理は、それはあなたの論理であって、公党間の約束というのは、他の人がおって決められることなんですね。このことはわかりますか。
  190. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 国対委員会において三年たったら見直すというお約束といいますか、それがあったことは事実です。これは率直に認めるわけでございますが、残念ながらそれがいまの段階でこの三、四年の期間は非常にむずかしい。したがって、これをやるためにはどうしても法律をこしらえて、法律によって——結局法律を出すということは、各党に御相談するわけですから、国会という場において各党の御相談にかけるということで、いま各党に御相談をしている最中でございます。
  191. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 関連を許します。山口鶴男君。
  192. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまのは問題が違う。結局、法律を国対で、立法府で決めてくれ、そこで判断すればいい、こう言っているのですが、そうではない問題、政府の責任、政府の姿勢を中西さんは追及しているわけです。  ということは、政府としては国対委員長会談という公党間の約束を尊重するのか、そうではなくて、総理大臣の諮問機関である第二臨調の答申を尊重するのか。第二臨調の答申を尊重するか、いわば公党間の約束を尊重するか、政府の姿勢としては一体どっちをとるのですか、こう聞いているわけです。  ですから、われわれとしては、議会制民主主義の立場からいって、総理大臣の諮問機関の方を重視して、国会を構成している各党間の公約を無視するということは、議会制民主主義、議会人としては絶対に許せない、そういう立場から聞いているわけですから、それをはっきり答えていただきたいと思う。
  193. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御承知のとおり、それぞれの政党も、これは公党としてわれわれはいろいろお約束をしたりお話をしたりしてきているわけですから、この間の関係も非常に重要で尊重しなければならない、これは事実でございます。  それから、臨調は御承知のように法律によって生まれた機関でございます。これは国会の御承認を受けたものでございまして、これも大切な機関でございます。その臨調から答申が出されておりまして、答申は尊重するということで始まったわけです。しかし、その答申を具体化するためには、やはり国会にかけまして、各政党に正面から御相談を申し上げなければならない。国会に提案するということは、当然、各政党に御相談を申し上げているということと同じだと私は思うわけでございます。それが当初のお約束どおり、三年間でともかく改善措置を見直すというようにできれば一番いいわけでございますが、それができないような非常に窮屈な財政事情になりましたので、今回は法律をもってその間は抑制をさせてもらうことを認めていただきたいという提案をいまお願い申し上げておるわけでございます。
  194. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 それでは、政府に聞きますけれども、この第一次答申全部をきちっと尊重して法律を出してますか。そうじゃないでしょう。これだけの答申がある、しかし現実に法律として出してきたのは、二千五百億円弱の節約をするだけの、いわば七つの事項に限られた法律でしょう。ですから、公党間の約束を尊重する、こういう姿勢があるならば、仮に臨調が答申しようとそれと違った形で政府は提案することもできるはずなんですよ。全部政府がやっているというなら別ですよ。そうじゃない、政府が守ってないものがあるのですから。問題は、議会制民主主義、われわれ議会人の立場からいって、政府の諮問機関である臨時行政調査会の答申と公党問の約束であるこの国対委員長会談の合意事項、そことが矛盾した場合にはどうするかなんということは、当然政府は考えなければいかぬと私は思う。しかし、一次答申を全部そのまま法律に出すのだからしようがないといえば、そこには一つ理屈があると私は思う。ところが、全部法律に出しているわけじゃないのです。とすれば、臨調の答申と公党間の合意とを、政府は一体どっちを尊重するのですか、こういうことを問われるのは当然じゃありませんか。この点が矛盾している。この点に関するきちっとした御回答がない以上、やはり議会を構成している議会人として、公営間の約束を踏みにじるような態度を政府がとるということになれば、この問題については審議できませんよ。
  195. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御承知のとおり、臨調答申を全部法律化しているわけでございません。これにつきましては、法律がなくとも臨調の答申の趣旨を尊重して政府が実行できるものもございます。たとえば補助金の削減その他抑制措置とかいろいろなことをやっていますが、それは法律によらなくてもできるものもある。しかしながら、法律で決まっている補助率などは、これは法律がなければ切りようがない、したがって、そういうものは法律に載せたということでございます。  それからもう一つは、臨調の中で、あるいは当面の問題を取り上げてきたもので、その中で至急に処理すべきもの、引き続き検討すべきもの等々に分かれておるわけでございまして、それを全部でなくて、われわれはとりあえずやらなければならないと判断されるものを今回取り上げたということでございます。  以上でございます。
  196. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 いまの答弁はますますおかしいのだ。先日湯山さんが質問したでしょう。これは何も法律がなくたって運用でもって政令でやれるじゃないか、こう聞いた。そうしたらあなたは、法律を通してもらった方がやりやすい、こうお答えになったはずですよ。いまの御答弁とは矛盾しているじゃありませんか。そうでしょう。そうして、いま明らかに全部の答申を法律で出しているわけじゃないのだ、法律でなくともやれるものはやれるのだ、こう言っているわけです。だったら、公党間の約束を尊重するという政府の姿勢があるならば、こんな法律は出す必要がないじゃありませんか。ですから、この問題について臨調の答申と各党間の約束と、一体どっちを尊重するのかということをきっちりしていただく。しかも全部の法律を出さないで一部つまみ食いしているのですから、しかも法律がなくたってできるじゃないか、やりいいんですよ、こう答えているのですから、この間の矛盾点をきちっとお答えになるまで、これは審議できません。
  197. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 確かに湯山委員の質問に対しまして、法律があった方がやりいいのだということを申し上げたことは事実でございます。やりいいというよりも、むしろ法律がなければひどくやりづらいと言ったことの方があるいは正しいのかもわかりません。それはいろいろいきさつがございますから、政府だけでこの四十人学級のことをカットするとか抑えるということはなかなかできない。したがって、法律を提案してこの法律に御賛同いただければ——いただかなければだめなんですよ。この法律に御賛同いただければ法律が成立するわけですから、成立いたしますと、その問題については法律で政令を定め、標準の数等を定める場合には「特に国の財政事情を考慮するものとする。」、財政事情を考慮して決めなさいよということを法律で決めるわけです。ですから、法律が優先をするということになるわけでございます。そういうことを申し上げたわけです。(「前の湯山さんへの答弁と矛盾しているのだからだめですよ」と呼び、その他発言する者あり)少し説明の足らない部分がありますが、私は、三年後には検討しないと言っているのじゃないんですよ。そういうことは一つも言っていませんよ。三年後にはこの約束があるのですから検討します、それは言っているわけですよ。それは検討しないという意味じゃないのです。ただ、裏を返せば、三年後に検討するということは、もっと前向きでどんどんやれという意味があるわけですね。にもかかわらず、二年もたたないうちに削減をするということはこの精神に反するじゃないか、約束の精神に反するじゃないかという指弾を当然受けますね。したがって、この約束をほごにするということを言っているのじゃないのです。だけれども、そういう非難を受けるではないか、だからこれは法律を出して、法律の御同意がなければ三年後の以前の問題もいじれない、だから法律を出すということを言っておるわけであります。ですから、検討をするという約束を、われわれはたがうとかどうとかということを言っているわけじゃないのです。
  198. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 湯山委員の質問に対する答弁と本日ただいまやりました答弁とは、明らかに矛盾しているわけです。したがって、この問題は速記録を調べた上でどう扱うか、これはきちっと理事会で相談してください。  それから同時に、この議会制民主主義の上に立って、公党間の約束と一総理大臣の諮問機関である調査会の答申とどっちを尊重するのかということは、基本的に重要な問題ですから、この問題も改めて十分理事会で議論していただきたいと思うのです。それが済むまで、この質問については保留していただきたい。
  199. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 ただいまの件につきましては、速記録を取り調べまして、理事会で御協議いたしたいと思いますので、本件につきましては引き続いて御質疑をお願いいたします。
  200. 中西績介

    中西(績)委員 本件は保留ですね。
  201. 小渕恵三

    ○小渕(恵)委員長代理 本件に関して、湯山議員の速記録につきまして理事会におきまして再度調べまして、この点につきましての御協議をいたしたいと思います。
  202. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、この点については理事会で十分検討してもらって結論を出してもらいたい。  そこで、学級規模と教育効果についてお聞きをしたいと思うのです。  三十人規模が適正であるということは、すべての研究機関なりいろんなところで示されている中身を見ますと、大体その結論が出ておるようであります。さらにまた、先進諸国におけるいろんな報告等を見ましても、いま言う四十人学級そのものだって問題があるし、これをさらに三十人なり三十五人学級へどいう、こうした内容のものが報告されているのが大部分であろうと思うのですけれども、この点について文部省はどうお考えですか。
  203. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 各国の例をお引きになりましたが、先生の言われまするような三十人というところもありまするし、またわが日本のような今日までの経過によりまして、四十人学級というものをぜひ実現したいという一つの教育理想を掲げまして進もうといたしておるところもあるわけでございます。
  204. 中西績介

    中西(績)委員 私が聞いておるのは、各国の例じゃないんですよ。研究機関なり何なりが出したその結論なり報告というのはどうなっているか。
  205. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 その点につきましては、事務当局から答えさせます。
  206. 三角哲生

    ○三角政府委員 一学級当たりの児童生徒数が一体何人ぐらいが適当であるかということにつきましては、必ずしも科学的にきちっとした立証を得た定説というものはないのでございます。ただ、大学あるいは教育研究所等である程度のケーススタディー的な調査研究、あるいは教員の意識調査のようなことをした事例はございます。  そういうことでございますので、若干常識的な見方ということになるかと存じますが、昭和三十年の前半のころになされた調査が二件ほどございます。当時、四十人の学級と六十人の学級で比べまして、四十人の学級の方がいろいろな意味の集中力、集中的な授業ができやすい、あるいは学級の秩序維持のような面ではやはり六十人よりは四十人の方がいいというような結果を得ておるようでございます。それからもう一つ調査でも、やはり五十人程度と四十人程度というのを比べたりしておりますが、この場合においては、人数が少ない方が児童生徒間の協力活動といったものがやりいいというような結果が出ておるようでございます。
  207. 中西績介

    中西(績)委員 いま言われたことからいたしましても、四十人学級と比較してやっておったようでありますけれども、大体いままで出ておる大学関係のあれを見ましても、九州大学、広島大学、名古屋大学、そしていよいよこれが問題になりました時期の全国教育研究所連盟の研究あるいは調査の結果、あるいはNHKの問題、さらにまたアメリカにおけるいろんな調査の結果、あるいはイギリスにおける報告等、どれを見ましてもこうした三十人から二十五人程度のものがよろしいという報告がなされているわけですね。こういう状況になっておることをまず知った上で、私たちはこの点を明らかにしていかなくてはならぬと思うのです。  そこで、そうした状況にある。いま四十五人学級なり何なりで問題になっておる点を挙げますと、たとえばきょう文部省から取り寄せた資料によりますと、五十四年の調査でありますけれども、いま長期療養で休んでいる人が三千七百五人、そして九百三十二人。さらにまた……(「けしからぬ」と呼ぶ者あり)こういうようにけしからぬなどと言っている人は、何もわからぬで言っているわけです。さらにまた、病休の代替職員の配置等を見てみますと、これはもう大変なものであります。さらに無免許教科担当を見てみましても、これまた中学におきましては四万四千三百四人、あるいは高校の場合は四千九百十二人、合計しますと四万九千二百十六人にわたる無免許の状況。さらにまた、教壇に立っていない充て指導主事などと言われるいろいろな問題がある人たちが千三百四人。さらに、まだほかのことを挙げていきますと、たくさんありますね。こういうような状況になっておる現場の中に、いまなぜこうした教員の定数を削減するかという問題があるわけでありますから、こうした問題について、私は特に行管庁長官にお願いをするのです。     〔小渕(恵)委員長代理退席、委員長着席〕  第一次臨調で長官が一番問題にいたしましたのは、この羅列的なものを拾い上げて、そして数を削ったりいろいろやっておるけれども、その中には哲学がない。少なくともこうした問題等についてはやはり十分な検討をする必要があるということから第二次臨調を設置されたということを聞いております。前回の討論の中でも、そうしたことを私は討論してまいったわけでありますけれども、こうした問題の中で先ほど申し上げたような条件、それからいままでのすべての公党間における約束なり、あるいは立法府におけるいろいろな問題等からいたしまして、私は特に一つの例を挙げますと、今度の場合には、改善必要数が六百十二であるこの四十人学級。ところが、これについての要求は三百二十二なのです。縮減は二百九十やっているのです。その他の改善で教員をいろいろ配置しなくてはならぬにもかかわらず、その数からいたしますと十二年で大体二千二百五十、一年間にずっと配置していかなければならぬのに、今回の場合には四百人しかしておりません。ということになると、総合計すると二千百四十人。ですから、金額に直しますと五十五億八千四百万なんです。約五十六億にしかならない金額なんです。  そうしたことを考え合わせてまいりますと、教育の重要性からいたしましても、いまの現場の実態からいたしましても、そうしていままでの経過からいたしましても、この問題で行管庁長官としてこれをやはり取り上げてやらなくちゃならぬという理由が、先ほどの答弁からいたしましても私は納得できない。この点について明らかにしてほしいと思うのです。
  208. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 先ほど来申し上げましたように、教育は国の基本に関する一番大事な政治的対象であると思っております。しかしながら、財政状況がこういう状況になりまして、今後の見通しがなかなかつかないという状態に変化してまいりました折から、教育の面におきましても少し模様がえをしていただくことが出てくるかもしれぬ、そういうような心配がありますから、こういうような措置に出てきたんだろうと思っております。しかし、これが最善の策だとは思っておりません。
  209. 中西績介

    中西(績)委員 いま長官の答弁の中にありますように、国の基本に関する問題としてあるということ、そしてその上に立ってこれが最善の方策ではないという、そうした理解をしておる。しかも、文部大臣もこの点に関してはきわめて重要な課題としていままでも主張してきたし、こうなったからという理由はつけているけれども、その基本的な考え方については私は変わりはないと思うのだけれども、その点はそう理解をしてよろしいですね。
  210. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 そのとおりでございます。
  211. 中西績介

    中西(績)委員 そうなりますと、わざわざこうした法律案をいま提案する必要はないんじゃないか、私はこう理解をせざるを得ないわけなんです。あくまでもいままでの主張からいたしましても、これをわさわざ——五十六億なんですよ。これとの関係で、国の基本に関する問題として、ではほかのところでそうしたものを対比してみた場合にどうなんですか。
  212. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 他の方と対比することは省きますが、御案内のとおりに、教育効果を上げるということから申しまして四十人学級の実現が望ましいところでございますることは当然でございます。その間の国家財政の非常な緊迫と、それに伴いまする、われわれも国民の一人といたしまして、その国策に対してあくまでも協力をしなければならないということから申しまして、文教政策といたしましては、ただいま御指摘のような六百十二名のものを三百二十二名というところでがんばっておるわけでございまして、本来ならば、これにつきましてはもっと厳しいいろいろな制約があったわけでございますが、われわれといたしましては、教育というものの重要性、同時にまた、それはあくまでも昭和六十六年という十二年の最後の段階におきましては、所定の計画どおりにこれが実現できるということの理解のもとに、ここに御提案いたしましたような臨調の間の調整策というものを御審議を願っておるような次第でございます。
  213. 中西績介

    中西(績)委員 いまの答弁については、内容的には私たちの理解できる内容になっていません。この点については、いま皆さんは口を開けば国の基本的な重要な事項なんだということを絶えず言うけれども、私はあくまでもそういうふうに理解をしておる。この五十六億というわずかの金額を削ってしまうということの意味、この重要性というものに気づいておらないというところに問題があるんではないか、私はこう指摘せざるを得ません。  そこで、私は大蔵大臣に聞きますけれども、このような状況の中で、ゼロシーリングによる概算要求の中におきまして、この特例に関する予算査定はこれからどうするおつもりなんですか。いま出されている概算要求については、査定の際にはどのようにされますか。
  214. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは、一つは来年度の税収見通し、これをはっきりつかまないと予算の規模が確定いたしません。いまのゼロシーリングというのは、中期展望に書いてあるような税収が確保されるであろうという前提で行われておりますから、それがもっと減るということになれば、さらに一層少なく査定を、いまのよりももっと小さな規模にしなければならぬ、あるいは人事院勧告等の問題で、給与の問題がゼロシーリングに入っておりませんから、これをどれぐらいに見るかという見方によりますが、それが大きくなればその分だけはさらにカットをしなければ予算はできない、こういうようなことになりますので、不確定要素がいろいろございますので、どの程度カットされるのかと言われましても、それにはちょっといまお答えができません。
  215. 中西績介

    中西(績)委員 だから、なお問題になるんじゃないでしょうか。と申しますのは、いま大蔵大臣の答弁によりますと、不確定であるということになるわけですね。こうして法律を提案して、その法律に基づく特例範囲に入る問題について、予算要求としては文部省の方から概算要求として提案されてあるわけですね。その法律を私たちはいまこうして審議をしておる。その中身についてはまだ不確定なんです、こういうようになってくると、この点は審議の上で大変障害になるわけです。
  216. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは毎年八月末には概算要求をやっているわけです。これは厳格なことを言えば、みんな不確定で概算要求をやっているわけです。去年の五%増しとかあるいは三%増しとか、いろいろその時期時期によって違いますが、それは別にその次の年の財政事情全部を確定した上でやっているわけじゃございません。だから、概算要求というわけでございまして、今回は伸び率ゼロ、六千億ばかり別に要求を認めるものもありますが、それ以外は伸び率ゼロという、そういう一つの条件のもとで予算要求をしてもらったわけでございますから、それはもう毎年と同じだと言っても差し支えありません。
  217. 中西績介

    中西(績)委員 毎年と同じじゃないんですね。法律は、予算委員会を通って、その後にいろいろな問題についてやっています。それが大部分です。このようにこれほど論議をしておる内容について、いま申し上げるように、公立小中学校の学級編制の標準等に関する経過措置の特例、こうした内容について、今度は一定の尺度を決めて概算要求をしていったわけです。そうなりますと、それが不確定であるということになれば、これはもうゼロだってあり得るわけですからね。こういうことになるわけです。そういうことになると、その法律というものはあくまでも、先ほどから言っているように、文部大臣としてはこれは重要だからこの程度で抑えるということで私たちは出しておるのですということを言っておるけれども、そうでなくて、これがますます削り取られていくということになれば、いま文部大臣が答弁していることとはうんと違ってくるのです。そうしたことからいたしますと、いま言う不確定要素ということから言えばゼロだってあり得るということでありますから、そうなってまいりますと、文部大臣が先ほど答弁しておることとは全く違ってくる。いま言うように、重要な項用としての位置づけが全くなくなってくるんじゃないですか。
  218. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 したがって、この法律でも、国の財政事情を考慮しとか、そういうような文言が各所に入っているということは、予算編成のときにそのときの財政事情を考慮して最終的に決めるという意味で入っておるわけでございます。  ただ、例年と違うというのは、カット率が非常に大きいし、三十数本にも関係するような法律の補助率についても抑制措置を講ずるというようなことで、通常のような予算と法律とを一緒に出すということではなかなか話がまとまらぬだろう。そのために、行革国会でございますから、臨時国会をわざわざ開いて、ひとつその中で大ごなしのものをここで合意をしたいということで国会を開き、法案を提出しているというところが例年とかなり違うところでございます。
  219. 中西績介

    中西(績)委員 いま答弁ありましたけれども、例年とは違うわけですよ、最初は例年そうしておると言ったけれどもね。そうした意味で、この問題について、予算がそうして不安定であるということになってくると、先ほどから言われている文部大臣の、きわめて重要な課題であるということも大変薄れてきましたから、そのことで私は確認をしておいて、時間がありませんから次に入ります。  そこで、この学級編制基準、四十人学級の改善計画はどうなっていくのか。特に五十八年、五十九年、この計画縮減数を見ますと、そこだけを単純に差っ引いて、そして六十四年と六十五年に上乗せしたようなかっこうになっていますね。そうなってまいりますと、私は資料をもらって見るとそうした問題があるようでありますけれども、学年進行は今度は小学校での進行と中学校での進行が二年間ダブることになるわけですね。いままではずっと通しでいきましたけれども、ダブることになる。  さらにまた、こうした実施をした場合に、いま言うような問題からしましても、将来的に、じゃこれはどうなっておるかということになってくると、また大変不安定な中身になる。それはなぜか。財政が不如意でございますということを言いさえすれば、こうしたものはまたどんどん流されていくという傾向があると私は考えます。そうした問題について、私はこの点が大変不安であるが、そうしたことは絶対にないのですか、大蔵大臣。
  220. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 財政がこれ以上悪くなったのではますます大変なことになりますから、そういうことのないように一歩前で歯どめをかけておこう、こういうことでございます。
  221. 中西績介

    中西(績)委員 文部大臣に伺います。
  222. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 ただいま大蔵大臣が申したように、さようなことがないようにこそ、われわれもはなはだむずかしいところを協力しておる次第であります。  同時にまた、われわれとしましては、文教の重要性から申しまして、学級編制の継続性とその一貫性をあくまでも守っていかなければならぬ、かように深く考えております。
  223. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、この点は私は、将来計画なり何なり確かにもらっております、こんな簡単なものを。しかし、これでは、特にこの最後にあります「実施するものとした場合の見込数である。」ということであって——これは私たちが論議するに際して、文部省が出された私たちに対する資料です。「実施するものとした場合の見込数」ですから、この十二年間で実施をするなどという表現はこの中には出ていないのです。この点を私は一つ指摘をしておきたいと思うのです。  そうした意味で、いま文部省なり何なりが考えておる、あるいは大蔵省もそれを受けてやっておるわけでありますから、大変内容的には問題があるということをいま一つ指摘をしておきます。  それからその次に、教職員の定数改善計画の中で、特に教職員定数等の改善分として小中学校の場合三万八千五百三十二名、これを十二年間の計画の中に掲げておるわけでありますけれども、その平均見込みは二千二百五十人です。これがいままで五十五年に実施をされたし、五十六年ちょっと下がっておりますけれども、大体その平均でいっておるのが、五十七年度は四百名になっております。その差は千八百五十人減になっております。ところが、教頭などといわれる人たちの問題については、もうすでに九〇%以上実施をしております。  こういうふうに、大変重要だと言われる教職員の定数、特に事務職あるいは養護教員等を含めましてたくさんあるわけなんですけれども、こうした問題等につきましては、このようにして千八百五十人、一挙に削減をしていくという状況になっております。この点についての将来計画はどうなっておりますか。
  224. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 年次計画等々の計数上の問題につきましては、政府委員からお答えいたします。
  225. 中西績介

    中西(績)委員 時間がないから簡単にしてください。
  226. 三角哲生

    ○三角政府委員 ただいま中西委員から御質問のございました、四十人学級分以外の改善措置分の年次の人数でございますが、これは委員もさきの法案審議のときに御承知なわけでございますが、十二年計画、当初の計画におきましても、これは各年度の改善数は毎年度弾力的に決定するということにしておったわけでございます。そうして、ただいま御指摘のとおり千八百五十人といったような数字が、これは後年度に送られるわけでございますが、これを後年度にどうするかということにつきましては、六十年度以降の自然減の状況とも重ね合わせまして毎年度適切な人員数を措置してまいるように相努めたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  227. 中西績介

    中西(績)委員 だから、いまのあれを聞きますと、六十年度以降における問題としてとらえていくということで、まだ確定的なことが出されていないわけですね。弾力的にという言葉でごまかされています。ですから、六十年度以降におけるそうした問題等については、いま申し上げるように、千八百五十人ずつ上積みをしていかなければならぬという状況になるのですよ。ですから、その時期までに大蔵大臣が考えておるようにこの財政構造が健全化されるという、そうした見通しなり何なりが立っていけばまだしも、それがない中では、いま私たちが理解できるような具体的な数値を出していただけるなら、私たちもそれをある程度信用しましょう。しかし、そのことについては、いままでのいろいろな討論の過程の中では出されていませんね。そういうことからいたしますと、このことを含めても、先ほどの四十人学級とあわせまして大変な問題を持っておる、私はそう断ぜざるを得ないわけです。  ですから、この点はいち早く検討事項として、そうした財政とあわせてどういう状況になるかという資料ぐらいは出してもらわないと、われわれは論議するに際して、この法案は少なくともそうしたものを裏づけにしながら論議をしないとできないわけでありますから、ぜひこの点については後日また資料なりの提出を求めたいと思うのです。  この点で、委員長、ひとつ各省庁に対して資料提出を求めるようお願いを申し上げたいと思うのです。——答弁は要りません、もう時間がありませんから。
  228. 金丸信

    金丸委員長 簡潔にやってください。
  229. 三角哲生

    ○三角政府委員 先ほど申し上げましたように、各年度の割り振りは、冒頭委員から御質問のありました大蔵大臣、文部大臣の確認事項にございますように、毎年度弾力的に決定するということになっておりまして、これは今日の時点でも変わりないわけでございます。  ただ、全体数で、資料でお出ししてあるところから計算すれば出るわけでございますけれども、自然減等今後の必要な措置数等を計算いたしますと、六十年度以降に必要な人数は約二万人弱でございまして、これを七年間で平均して割りますと一年分が約二千八百人、こういう数字でございます。それをどういうぐあいに各年度に割り振るかは、それぞれの年の状況に応じて決めてまいりたい、こういうことでございます。
  230. 金丸信

    金丸委員長 三角局長、いま説明した、そのような資料を出してください。
  231. 三角哲生

    ○三角政府委員 いま申し上げましたのが限度でございまして、それ以上の資料は出すことができないのでございます。
  232. 金丸信

    金丸委員長 資料にして出してください。
  233. 中西績介

    中西(績)委員 文部省というところは、そうした意味で資料を出したがらないところなんですね。秘密にしたがるところなんです。いままで絶えず委員会でも問題になったのはそこなんです。ですから、ぜひその点については、ここは文教委員会ではありませんから、特別委員会で別の委員会ですから、委員長はそうしたことを、ちゃんと提出を求めるようにしてください。
  234. 金丸信

    金丸委員長 はい、わかりました。  では、続けてください。
  235. 中西績介

    中西(績)委員 最後に、私はもう一つ自然増について申し上げたかったのですけれども、この点は湯山委員に対する答弁がまだ残っておるようですから一応送るといたしまして、最後に公立高校の第四次改善計画、この分につきましては一万二百三十八人を立てたわけであります。この計画については、いままで六百人ずつつけていったわけですが、これからどうなさるおつもりですか。
  236. 三角哲生

    ○三角政府委員 この財政再建期間中におきましては、御指摘の公立高等学校の改善措置につきましても、今回の行革関連特別法に基づく特例措置によりまして、義務教育諸学校の教職員定数の改善措置に準じましてやはり抑制したものになると考えております。  ただ、明年度の具体的なその内容につきましては、これは明年度の地方財政計画の策定の中で決められる事柄でございますので、文部省の立場といたしましては、今後自治省と協議をしてまいらなければならない、こういうことで目下検討中でございます。
  237. 中西績介

    中西(績)委員 これは法改正の中にちゃんと入っていますから、だからそうした問題等につきましても、自治省とある程度煮詰めてでも答弁なりをいただかないと困るわけですね。  私、時間が来ましたからやめますけれども、総じて言い得ることは、いままでの討論を見ましても、内容的にまだまだ、われわれが討論をするに際して十分な資料なり何なりを求めても出し得ない状況にあり、そうしてこれでもって具体的に決めていこうとなさる。そうしたところに私は大変な危惧を感ずるわけですね。この点はひとつ行管庁長官あたりから、いち早くそうしたものについても資料なり何なりの作成等、そして皆さんの納得いただける状況をこの期間中にでもつくって、討論をさらに深めていただくようにお願いを申し上げたいと思います。  以上で終わります。
  238. 金丸信

    金丸委員長 これにて中西君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤茂君。
  239. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は、行政改革等、税財政中心にして質問をいたします。  いままでの審議を伺っておりますと、また先ほどまでの福祉あるいは教育関連の財政問題を聞いておりますと、国民に説得性のある展望を示すよりは、何か税財政中心にして、これは歴年の自民党政府の責任でありますけれども、開き直るような姿勢の方が目立っているという感じがしてならないわけであります。痛みを分かち合うと言いながら、苦しんでいる人の方を納得させるような姿勢は見られないという感じがいたしてなりません。まず最初に、私はそういう意味から、税制について幾つか質問をしたいと思います。  今度、増税なき行革といううたい文句で進んでまいりましたけれども、実際にはいままでの審議を通じても、あるいは新聞報道を見ても、何か増税への新たな含みを持たしているという見出しの新聞報道がたくさんなされているという状態であります。多くの庶民の人が、どういう気持ちでそれを読むのかということを考えざるを得ないのであります。また四百八十四億円、いわゆるミニ減税という形に終わりましたが、私ども大蔵委員会での経過を振り返ってこの経過を考えてみましても、政府の方が事態を無視して五十六年度本予算の修正に応じない。さらには、議長裁定があっても、さまざまな手をもってこれを小さく抑え込もうとしている。要するに、やる気がないから小さくなっているんだという感じがしてならないわけであります。私はそういう意味で、いままでの審議の中でも、たとえば物価調整の問題その他、財源がありません、その他の大蔵大臣のいつもの言い方がございますが、実態の認識がまずおかしいのではないだろうかという気がしてならないわけであります。渡辺さん、いつもその問題になりますと、財源がありません、赤字公債がゼロになるまで御勘弁ください。見ておりましても、大変平然とした顔で言われておりますが、私はそういうものではないんじゃないだろうかという気がするわけであります。  まず、その銭があるかどうかの議論は後にいたしまして、実態をどう認識するか、ひとつ厳しく大蔵大臣の気持ちを伺いたいわけであります。  それについて資料をつくってきました。ごらん願いたいと思いますが、委員長、よろしゅうございますか。
  240. 金丸信

    金丸委員長 はい、どうぞ。
  241. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 二枚ありますから、大臣、その一枚目の方だけ見てください。二枚目は後で結構ですから。  本来、私はこういうものは大蔵省がきちんとつくって、国民の前にフェアに明らかにしてやるべきものだというふうに実は思うわけでありますが、大蔵省やりませんから、こちらの方でつくってきました。念のために、大蔵省が使っているさまざまの資料を基礎にしてやることがわかりやすいであろうし、また御納得もいくであろうという気持ちがするわけであります。そういう意味で、より政府統計をたくさん使って緻密に試算をしてみました。要するに、この一枚目の紙は、五十二年度以降、所得税の体系あるいは課税最低限は変わっておりません。五十九年、赤字公債がゼロになるまでは変えないと言っております。それでは、五十二年を起点として五十九年まで大蔵大臣が言うとおりやったら一体税金はどうなるのかというわけであります。平均給与の額は国税庁の調べに載っている平均賃金であります。国税庁の調査による資料であります。さらには、先のことははっきりしませんから五十七、五十八、五十九については、一応民間給与実態調査結果による五十二−五十五の平均給与額の対前年伸び率の平均値六・五というふうに出してあります。あるいはまた、社会保険料控除額などについては、大蔵省国税庁が使っている指数をここに述べてあります。  2のところを見ていただきたいと思います。年収、所得税、住民税、合計、税負担率、これらが五十二年から五十九年にどう変化をするのかというわけであります。年収で一・五六倍、所得税では五・〇四倍、五倍以上です。住民税では三・一九倍、三倍以上です。所得税と住民税を合わせますと四・〇四倍、四倍以上になります。税の負担率では二・六から六・七へ、二・五八倍ということになるわけであります。数字の記憶力のいい大蔵大臣は、五十二年−五十九年の予算規模その他指数などは私の方であえて申し上げる必要もないと思います。いずれにしても、予算規模その他を見ても、二倍になるような数字は私はないだろうと思います。  念のために申し上げておきますけれども、これは大蔵省国税庁の方の数字による男女平均の賃金の数字を挙げてみました。たとえば平均四人家族、御主人のサラリーで暮らしている四人家族というふうな意味から申しますと、平均いたしましたから女子の所得よりは倍以上男子の方が大きいわけであります。それもならした数字ですから非常に割り引いている。さらにはまた、これは言うまでもありませんが、実質所得が上がったから、実際の所得が上がったから税額がふえてもいいとかいうことはありませんね。五十五、五十六年、最近の状況は御承知のとおりです。あなた方の統計でも、実質生活費マイナスということになっているというわけでありまして、このような五十二年から五十九年度までの間に年収は五〇%そこそこしかふえないけれども、所得税は五倍になる。この厳しさというものを一体どう痛感されますか。  念のために申し上げておきますが、たとえば法人税と比べても、そのほかの数字と比べてみましても、大変な不公平が出ていると私は思います。これも私から詳しく申し上げる必要はないと思います。一九六〇年までは所得税が一〇に対して法人税は一四・七、一九七〇年ごろに所得税が一〇に法人税が一〇と同じぐらいになります。一九八〇年で所得税が一〇に対して法人税は八・五、五十九年、一九八四年、このころには恐らく所得税が一〇に対して法人税は七か八、六〇年ごろの半分、そういう大変な変化が構造的に起きているということだと思います。  いろいろ対策の前に、その厳しさの実態を大蔵大臣どうお考えになりますか。
  242. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 所得税の課税最低限をしばらく据え置いておりますから、それによって所得がふえれば税額がふえる、これは事実でございます。このおつくりになった表でも、昭和五十二年で二百四十六万の年収の人が六万三千円を所得税と住民税合計で払った。その人が三百八十四万に、約百四十万円所得がふえますと、税金も約二十万円ぐらいふえる、これも事実でございます。  そこで、税額だけを比べれば四倍だということでございますが、二十万円近く税金がふえるためには所得も百四十万円ふえているということも事実でございます。したがって、物価の値上がり分を差し引きしてみましても、一千万円超の人ですと実際は目減りしてしまっているわけですが、五百万円未満、三百万という程度だったら、大体三%ぐらいここ数年で実質所得はまだ上がっているというのも、これも事実でございます。しかしながら、数年間据え置かれているために非常に重税感がサラリーマンにある、これも事実でございます。みんな事実であります。
  243. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大蔵大臣、私はおかしいと思うのですよ。要するに、あなたはいま前段で、年収がふえましたから税額も当然上がりますという意味のことを言われました。また、重税感があるというのも事実だと思いますということを言われています。私がここに改めて言うまでもなく、総理府や労働省の実質生活水準がどうなっているか、実質家計費がどうなっているか、可処分所得がどんどん減っている、買いたい物も買えない、自由に買えるお金の部分はどんどん減っている、こんなことはいままで何遍も当委員会で議論が出ましたから、私は御承知のとおりだと思うのですね。そういう実態の認識なしに、要するに所得がふえましたから税額は何倍ふえてもあたりまえですみたいな物の言い方、これでは税の公平という基礎は全然生まれないだろうと私は思うのですよ。  大蔵大臣、もう一つ数字を申し上げてみたいと思います。もうちょっと認識を深めてもらいたいと思います。  昭和五十六年、自然増収四兆四千九百億円、そのうち所得税部分は六一・七%、二兆七千六百九十億を占める、大変異常な状態であります。春にもこれについては活発な意見が交わされたところであります。  私は、それではあなた方が出されている、いろいろと議論になっている財政中期展望ですね、こういう状態が一応あなた方が描いているベースで一体どうなるのか、五十七年、五十八年、五十九年を計算をしてみますと、これは現行税制のもとで線を引いたということになるわけでありますから、そういう意味で試算をいたしますと、昭和五十六年度についてはさっき申し上げたような自然増という中でのいわゆる自然増税ですね、そういう比率になっている。五十六年対比五十七年の増収分、さらには五十七年対比五十八年の増収分、五十八年対比五十九年の増収分、それぞれたとえば同じような比率でいったと仮定をした場合にどうなりますか。私は、税制を考えなければ実態としてはそれよりもっとひどくなるのではないかという感じがいたしますけれども、五十六年と同じような構造が五十九年度のこの数字について続いたということになりますと、五十七年度の自然増収四兆七千六十億、この中で約三兆、二兆九千百七十七億が所得税分、同じく五十八年度については三兆二千百七十八億、五十九年度については三兆六千七百四億円、こういうふうに加速度的にこの部分がふえてくるということになるわけであります。足してみたら大体十二兆から十三兆、十二兆五千億というぐあいの額になるわけであります。しかも、さっき申し上げたように、消費者物価指数と関連をいたしましてもあるいはまた総理府や労働省の統計から見ても、今日、過去、現在、未来含めて実質生活が向上し、あるいは実質豊かになったからというのではない、実質はマイナスかとんとんの中でこういう状況が続いていると言われているわけでありますけれども、こういう状況が続いたら課税最低限が生活保護費の額を下回るというふうな状態になってしまうのではないだろうかということも考えられるわけでありますが、これでも昭和五十九年度、言うならば赤字公債がゼロになるまでこの深刻な事態、こうなっても仕方がないし、いいというふうに大臣お考えになりますか。
  244. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 私もできることならば所得税の減税をやりたいという気持ちは全く——気持ちですよ、そういう気持ちを持っておることは同じなのでございます。しかし問題は、仮に減税をやるとすればその分だけ財源を失うわけでございますから、そうすると歳出を、どこを切るかという話にすぐつながってくるわけでございまして、歳出が思い切り切れるという状況ならば、それによって国債の減額が行われて、五十九年度までに赤字公債から脱却できる、それで歳出カットによって余裕財源が出るということになれば、私は所得税減税に反対しておらないのです。前からそういうような事態ができればいいな、こう思っておることは事実なのです。しかし、現実の問題として、ゼロシーリングたった一年だけやろうとしていても、これだけ非常に厳しい騒ぎになっておるわけでございますから、これがうまくいくかどうか、実際仕上げてみないことにはわからないというのが実情であります。  一方、個人所得に対する所得税の負担割合は、日本は四・五%でございますが、アメリカは一一%、イギリスは一二%と、所得対税額、これも事実でございまして、課税最低限の問題等についてもまだ日本の場合は、ずいぶん下がってはきましたよ、しばらくいじりませんから下がってはきましたが、これらの先進国と比べて、フランスを除いては高い状態にある、これも事実でございます。したがって、実態はわからないわけじゃなくて、私も重々わかっておるわけでございますが、それがなかなかできない苦しみの中にあるということも知っていただきたいわけでございます。
  245. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 財源の方は後ほどちゃんと案を申し上げますから、認識のところ、ようやく気持ちくらいのことはいまおっしゃいましたが、私はもう一つ申し上げておきたいのです。  大臣、いま減税したい気持ちはあるが減税できない。後ほど私から申し上げますが、財源がないからやれないというよりも、やらない、やりたくないみたいな気持ちの方が強い、そういうふうな気がしてならないわけでありますが、大臣、減税じゃないと私は思うのですよ。  前に都留さんなんかもいろいろな論文を書いておりましたが、国際的ないろいろな例があります。大臣御承知かもしれませんが、OECDからもこの問題についてはずっと前にレポートが出されています。そのレポートもあなたの言葉で言うならば物価調整減税という意味でしょう。しかし、そんな言葉は使いません。このOECDのレポートでもアジャストメントですよ。「ジ アジャストメント オブ パーソナル インカム タックス システムズ フォア インフレーション」、そういうタイトルで出しております。要するに、いろいろな国の例を見ましても、物価の上昇に伴うさまざまの税の不公平の構造が起きることに対するアジャストメント、是正措置としてという考え方とタイトルのもとに対策がなされている。いわゆる減税、まけろ、安くしろという話ではないのですね。取り過ぎる分を是正するあるいは不公平な問題が起きないようにする。私は極端に言ったら憲法八十四条の問題にこれは関係してくると思います、租税法定主義。要するに、本乗取られるべきものでないものまで、ことしは九〇・五でしょう、サラリーマンの把握率が。所得税の支払いですね。こういうことになってくるわけですから。  そういう意味で、もう一枚の紙をごらん願いたいと思いますが、国際的にどんな常識になっているかというのをここに簡単に紹介してございます。  上の方に国の名前がいろいろ書いてございますけれども、合計十七あります。これらの十七の国では、それぞれ物価調整措置が行われている。一番最初の完全自動調整措置、その典型はカナダ。私もカナダ、この夏ずいぶん勉強してきました。大臣もサミットで行かれたわけですから、本来でしたらこういう大きな問題についてはカナダの大蔵大臣に、一体こういう制度がどうなのかお聞きになってもいいだろうと思いますし、私が聞いているところでは、どんなに政権がかわってもこういう制度は引き返すことのできない制度として定着をしているということに伺っているわけであります。カナダの場合には七四年から導入をして、そうして考えられるすべての調整項目に自動的にこれは連動する。基礎控除、配偶者控除、扶養控除等人的控除と連動、それから税率ももちろん消費者物価指数にも連動ということで、それぞれいままでなされてきたこの措置に関するところの、言うならば減税ではない、調整措置の実績も出ているわけであります。これらのことをずっと各国調べてみますと、確かに幾つかいろいろ例の違いがあります。完全自動調整措置が法律で決まっている国は、カナダ、アルゼンチン、ウルグアイとかいう例がございます。それから、不完全自動調整措置という表現にいたしておきましたが、若干連動するものを限定してという意味でありますが、イギリス、スウェーデン、オーストラリア、ペルーとか、あるいはまたそれに準じたような措置としてはフランス、オランダ、イスラエル、ルクセンブルク、その他大体いろいろな形を併用したような問題の例としてブラジル、チリ、デンマーク、アイスランド、それからここにも書いてありますが、アメリカの州税があります。レーガン大統領も、これは前から、カーター当時から連邦議会で議論がされておりました。二本か三本それについての法案が連邦議会にすでに提案をされている、そして間もなくの時期にインデクセーションを導入するということをすでに明確に公約しているという状態になっているわけであります。言うならば、このような国際的な動向から見ても欠かせない課題であり、世界の大勢、もうちょっとはっきり言いますと、こういう方向は政策的にも理論的にも世界の常識、ひとり日本政府のみか大蔵省のみの非常識という状態ではないだろうか。これは現実の問題であります。  私はそういう意味で大蔵大臣に答弁を願いたいのですが、私はそれらの状況についてこの夏じゅうかがっていろいろな人に協力してもらって調べました。なぜ自分で調べたかといいますと、大蔵省にこの春の審議のときに資料を要請したわけであります。これは世界じゅういろいろな、OECDからもちゃんとしたレポートが出されている。こんなことぐらいは翻訳して読んでいるでしょう、主税局調査課だって何だって専門家がいっぱいいるのですから。ところが、審議の参考にもしたいからと言って頼んだら、大蔵省で持ってきたのが紙一枚です。ざら紙一枚に一覧表にして、しかも五つか六つの国を書いて、ほとんどの国はやられておりませんみたいに書いてあります。完全にやられておりませんと書いてあります。私はこれは問題だと思うのですよ。ここにありますけれども、あなた方が前にやろうとして失敗して、国民から不信任されて、国会でも否決された一般消費税、世界じゅう走り回ってこんな本をつくっていますよ。同じようなものが、一般消費税に関する資料であなたの方からもらったものが私の机の中に五十センチぐらいありますよ。世界でも二十カ国近くが採用している、しかもこれからやろうとしている、国際的にもOECD、いろいろなところで儀諭されている。紙一枚。しゃくにさわるから破って捨てようかと思ったけれども、いまの主税局長の前ですから、大臣は同じですけれども。  私はそういう意味で、これは大変問題がある、要するに、国民がこれだけ関心を持つ税制についてフェアでなくちゃならぬと思うのですよ。あなた方はどういう税制をこれからやろうとするか、国民に理解を求めるように資料提示をしてよく説明をする、政府税調その他いろいろな機関の場でもできるだけオープン・ドア・システムで議論をする、これは民主三義に基づいて当然必要だと思うのです。自分に都合のいいことは山ほど資料をつくって、世界じゅう走り回って本をつくって、日本じゅう走り回って説明会をやって、都合の悪いことは、世界じゅうこれほどあるのに紙一枚しか持ってこない、何にも知らそうとしない。私ども夏じゅうかかっていろいろな人に協力してもらって各国の例を調べましたよ。私はこの点について反省してもらいたいし、とにかく一般消費税はもう国会決議で死んじゃったんですから、それではない、いま国民的な課題となっているこういう問題について、少なくとも国民の前にフェアに資料を集め、提供して、そしてまたこれからの八〇年代の福祉社会その他に必要なあるべき税制というものをどう考えていくのか幅広く意見を求める、匹敵するような資料をつくってください。政府税調にもあるいはまた関係する委員会にも、大蔵委員会は当然ですが、提示をする、そういう努力をするという約束をぜひはっきりさせてもらいたいと思います。こういう国際的な一つの常識になっているわけですから、私は、言うならば、いまのような調子で国民には何にも知らせない、目をつぶっている、そして調べもしない、こういう状態が続いたら、国際機関、OECDなどのレポートも出されているわけですから、渡辺大蔵大臣はニューリーダーの一人と言われているわけでありますけれども、事税制については、世界の先進国大蔵大臣が比類なき不公平を断固としてやっているという印象になってしまうのじゃないだろうかと思うわけであります。いかがですか。
  246. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 この調整、インデクセーションの問題については、多くの国でそういう制度をとっていることも承知をいたしております。おりますが、私は一長一短があると思うのです。完全に物価が上がったからインフレ分だけは人的控除をふやすというようなことを本当にやっていると、所得税にはインフレを抑制する機能も半面あるわけですから、その機能が減殺されてインフレを加速するということもあり得る。おもしろいことには、カナダのような資源大国でも、完全な自動調整措置で、物価が上がれば減税、物価が上がれば減税、こう自動的にやりますが、あの資源大国がインフレ二けた、ましてその他の国は申すに及ばず。イギリスの場合もいままでそれをやってきたが、インフレがおさまらないということで、サッチャーになってから今度はそれを取りやめた、そしてインフレ抑制の方に走り出した、これも事実でございます。これは程度問題、どちらのところがどうだというようなことは非常にむずかしい問題でございますが、インフレのぐあいが激しかったら即座に所得税を減税するんだというやり方をストレートに受けることは、私は余り賛成をしない。したがいまして、今後ともよく研究はさせていただきますが、資料等につきましてはできるだけ御便宜を図るように私から申しつけておきます。
  247. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 できるだけ便宜を図るという話じゃないですよ。とにかくあなた方、これだけつくってやったんですから、それでいまは亡き大平さんのときに国民のあれを受けて、一応これはだめと。あなた方は一生懸命別のことを考えているわけでしょう。  それから、大臣、インフレ追認になるのではないかとか、政策上の問題とか、減税効果がどう出るかとか、問題もあります。大蔵大臣が一、二おっしゃったような問題点は、私どもそうではないということをもうじっくり勉強しましたから。きょうは時間がありませんからそれは全部言いませんけれども、大蔵委員会でゆっくりとその問題を申し上げますから、いろいろな国の実態についての価値評価の問題はまた別にやりましょう。  ただ大臣、できるだけ便宜を図りますじゃなくて、ぼくにとかわれわれにじゃないのですよ。国民の前に、みんなにわあわあ宣伝したのですから、そしてまた国民の税感覚がどんどん広がっているのですから、やはりアンフェアではなくてフェアルールで、ぜひ世界の例も国民の前にわかるようにしてやってもらいたい。強く要望をいたしておきます。  それで、さっきから大蔵大臣は金がないないという話ですね。この委員会でもずっと言われているわけであります。確かに大蔵省が出されている資料で見れば、赤字の計数がいっぱい並ぶという話になるわけでありますが、私は、五十七年度あるいは今後の中長期の税制改革などを含めて幾つか申し上げ、また大臣の見解を伺いたいと思います。  ただ、前提として申し上げておきますけれども、この物価調整の問題は、財源がないからできないということは筋違いだと思うのですよ。カナダの場合、その他の場合、この制度が採用されたときには相当きつい財政状態でしたよ。それで、二けた前後のインフレになる、そうはいってもこれもやらなくちゃならぬ、しかし財政規模は非常にきつくなる、非常にきつい状態のもとであえてこれをフェアルールとして採用したという経過であったわけであります。私はそういう意味では、何か痛い思いをしてもフェアにやらなければならぬというこの考え方を大蔵省は持ってほしいと思うのですね。この問題についてもそうですし、それから先般も質問がありましたけれども、最近の国債発行の問題についてもそうだと思います。  きょうはその点はやりませんでしたけれども、この七月まで休債、八月私募債、九月条件改定。最近、この十日ほどはちよびっと条件が変わったから、大体十一月も大丈夫だろうと言われておりますけれども、私どもは、市場メカニズムでいってとにかくこれはきつい目に遭う、政府財政的にもきつい目に遭う、そういう事態のときに、さらに当面を糊塗するのではなくて、きつい事態に遭ったときに、その経済実勢か市場メカニズムに合わせて財政自体も痛い思いをしてもどう直していくのかということにならなければならぬ、アメリカだって、戦後すぐ発行元と銀行とのアコードがあって、それでやってきたわけですから。そうでなければいつまでたってもこの御用金思想は変わらぬということを指摘してきたわけでありますけれども、やはり痛い思いをしてもフェアルールでやらなくてはならぬということを私は申し上げたい。  それはそれとして、この財源論に関係をして私は申し上げたいと思いますが、増税なき行政改革、増税なき財政再建という言葉がよく言われます。正確には、いまの企業税制あるいは法人税、あるいはまたさまざまの大衆にかかる税制もあります。それら全体をひっくるめて、断固いまのままにして行政改革という意味ではないんじゃないだろうか。あるべき民主的なあるいは広く国民から理解されるような方向への税制の改革をやっていく、改革の努力は日常不断に必要だ、しかし一般消費税のような大衆課税を、しかも大規模に何兆円の規模でやるということは望ましくないというのが国民の意思ではないだろうか。そうして新聞のいろいろな世論調査を見ましても、不公平税制の是正ということがまず第一の要望事項ですね。行革に関連するあらゆる世論調査の中で、それがどこでも第一項目になっている。    〔委員長退席、海部委員長代理着席〕  そこで伺いたいのですが、さっき大蔵大臣は、来年の税収見通しが立ちませんので、概算要求から査定、それから最終決定の中で、いろいろまだまだ曲折があるみたいな意味のことを別のテーマで言われておりました。何か聞いておりまして、この税収見通しというのは、全く手をつけることのできない自然現象か、曇りになるか雨が降るか晴れるか、なってみなくちゃわからぬみたいな印象に聞こえるわけでありますが、私は、この税制というものはそういうものではない、あるべき税制改革をやって、極力きちんと見通しを立てて、あるいはまた途中でも必要な手を打ちながら改革をしていくということによって必要な税収の確保を図るというのが当然だと思います。  最近、大蔵大臣の当委員会における答弁とかあるいはさまざま、まあ火のないところに煙は立たないと言いますから、主税局あたりからアドバルーンを上げているのかもしれませんが、例によって秋になるとアドバルーンの季節か。青空にアドバルーンじゃなくて、こういう税金はどうかとかいろいろなことを新聞に書いて、じっと様子を見ながら煮詰めていくという例のやり方ですね。そういうシーズンになったかと思って私は見ているのですが、いろいろな問題がある。たとえば、交際費課税の強化五百億円目標とか、あるいはまたギャンブル税具体案づくりに躍起になっている、対象金額は約四兆円、競馬とかいろいろなのがありますから、ぼくもこれはちゃんとした方がいいと思います。  さらにはまた、大臣も当委員会でお答えになったようでありますけれども、前から狭い意味での租税特別措置という意味ではなくて、広い意味での民主的改革ということで指摘をしてまいりましたさまざまの引当金、準備金の問題、たとえば貸し倒れ引当金、退職金引当金、その実態は御承知のとおりですから私は申し上げませんが、それらについての改善も前向きに考えるということを表明された。  さらには、ことしの春は電電公社から四千八百億円、四年間取るという法律がございましたが、来年から二、三年間専売公社から取ろうとか、取るのかいただくのか知りませんが、いろいろなごもっともな答弁やらアドバルーンやら上がっているということに実はなっているわけであります。  私は、これらの幾つでもいいと思うのですが、いま挙げたような幾つかの問題を前向きに検討して、企業もいまよりは若干痛い目を見るかもしらぬけれども社会的には公平じゃないかという形で、先ほどから出ていました福祉カットや教育カットにならないような最善の努力を、国の財政を預かる大蔵省の使命感に基づいてやっていくというふうな当面の財源対策や五十七年度税制の具体的な対応が必要ではないだろうかと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  248. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御承知のとおり、五十六年度予算は増税と歳出カット、それから経費の節約と三方から成立をさせたわけでございます。五十七年度予算に当たっては、増税をしないで、まず歳出の削減で要調整額を解消せよ、こういうような内閣の方針でございますので、大分いろいろな法案を提出して、いまお願いをしておるわけでございます。これがどうしてもうまくいかなければならぬわけですが、うまくいくように一生懸命やっておるわけです。  しかし、一方においては、いろいろなものの手直しというのはこれは増税ではないだろうというようなことで、それらの研究をしておくことは必要でないかというようにも考えておるわけですが、その必要性と、もう一つは財源の不足がどれぐらい出るのか、また余裕が出るのかわかりませんが、目下のところは歳出削減をやるということで進めさしておるわけであります。
  249. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大蔵大臣、主税局長もいますけれども、手続としては政府税調の審議とかあるし、与党のいろいろな議論もあるでありましょう。  ただ、言われているようなこれらの問題点というものは、さっき申し上げた幾つかの項目というものは、各界から指摘をされてきた問題であります。念頭にないということはもちろんないだろうと思いますし、それぞれ具体的に、できれば五十七年度でも何かやらなければならない、あるいはまたこの一両年のうちに取りかかってもおかしくない、あるいはやらなければならない、いろいろと経済からの問題もあると思いますけれども、やらなければならないのではないだろうかというふうに私は思うわけでありまして、そういうことをやる中で、一番最初にも申し上げた五十二年から五十九年の間に所得税は五・〇四倍になる、こういう状況も変えていかなければならないということだろうと思うのです。  もう一度ちょっとはっきり言ってほしいのですが、私どももまた言ってまいりましたけれども、世間から指摘をされている税制改革に対する幾つかさっき申し上げたことを含めたテーマですね。これもそれぞれ具体的に検討し、可能なものは取り組んでいく。納付金は別ですからね。そうして、そういう中で一番最初に申し上げたこういう事態も、あなたのいままでの理論から言えば、これは五十九年か六十年かの話ですよ。これは大変なことになりますよ。日本人のサラリーマンはしんぼう強いからこんなことになっているけれども、アメリカだったら、全米的な税の反乱が起こる事態ですよ。これはどうなるかわからぬですよ。それぐらい深刻な問題ですよ。どうですか、そういうことを、さまざまな必要な法人税制の改革などをやる。それから、さっき余りはっきりしなかったけれども、五十二年から五十九年までの間に五・〇四倍になる。五・〇四倍になっても仕方がないし、またやむを得ないとお考えになりますか。
  250. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これは私といたしましては、問題は財源問題でございますから、その前にもう一つは歳出カットをまず極力やらないとなまくらになってしまう。ですから、まずゼロシーリングで歳出カット、どこまでできるか、そういうような中で余裕が出るということになれば、われわれとしても赤字公債からの脱却ができて、それで財政再建のめどがはっきりつくということになれば、私としては決して減税にやぶさかなものじゃない、これは何遍も国会で申し上げているわけです。ですから、まずはいま進めている方向でやらせてみてくださいということをお願いをしておるのでございます。
  251. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 残念ながら、大臣の答弁で、とてもじゃないけれども満足するわけにはまいりませんし、さっきから申し上げているでしょう、これは減税ではない。国際的常識なんですよ。減税という言葉はどこも使っていないのです。これは是正であり、アジャストメント、正当化するということなんです。痛い目を見てもこれはやらなければならぬ。アメリカだってレーガン大統領が公約をする、その前にはフリードマンの提唱その他があって、すでに二、三本連邦議会に法律も出ているということも御承知でしょう。全然違うのですよ。  財源がないからやりません、何とかある状態だったらやりましょう——さっきも申し上げましたが、とにかくもうすでに二十カ国になっているのですから、アメリカ、ドイツ、フランス、カナダ、その他を含めて、サミットに参加している国の大部分がそうなっていくわけでありますから、いまのままの姿勢をとったら、大蔵大臣、サミットに出席をされても、それらの大蔵大臣の中では、がんとして不公平のままにしているというふうに内外から言われても仕方がないという状態ではないだろうか。  財源のことを言いましたが、われわれから前に提唱しましたよ。たとえば、法人の地方税の均等割がある。昨年度を見ても、大体四八%ぐらい欠損法人ですね。赤字だから国税の方は払う必要はない。地方税と同じような制度を導入する。どの程度の規模にするか、そう無理でない程度、それだけだって私ども概算しても三千億か四千億できるのですよ。ですから、私どもは理屈だけ言っているわけじゃない。こういうことをやればできるじゃないかということを実は含めて言っているわけだけれども、そっちの方は一向に身が入らない。  時間をとってやり合いばかりしてもしようがありませんから、次のことを伺います。  大蔵大臣、一つ同いますけれども、いままでの総理や大蔵大臣の答弁を伺ったり、あるいは報道を見ておりますと、所得減税も考えないわけにはいかない、間接増税で補う考え、あるいは何か大型新税の環境づくり、新たな作戦、所得減税と引きかえ大型間接税の地ならしか、というふうな報道がなされているわけであります。  私は、EC付加価値税を導入した各国の例を見ても、所得税についての何らかの是正をする、それとセットで消費税の導入を図る、いわゆるセット論ですね、これは。そういうことでずっと来て、それで消費税の方の税率がどんどん上がってくるということになっているわけでありますが、大臣、率直に言ってどうですか、これから五十八年、五十九年、財政再建期間にもこういう形で、いわゆるセット論。そうかといって、前の大型一般消費税は死んじゃったわけだから、それをそっくり生き返らすわけにいかぬでしょう。何らかの間接税と、あるいはまた所得税の手直しですね。グリーンカードを五十九年一月からすれば、あなた方の党の中であるような高率部分、高額所得部分の是正なんという話もあるようでありますから、関連してくるんじゃないかとも思いますけれども、その辺のところを、全然お考えを持ってないか、あるいはまた検討課題と思っているのか、どうですか。
  252. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 実は、経済状況、税収の確保という点については、私は非常に頭が重いのです。したがいまして、五十七年度予算編成に当たっては、内閣の方針としても増税によらないで予算編成をやるということでございますから、そのような大幅増税は考えておりません。一部手直し程度のものはあるいは予算編成のころに多少あるか、なくて済むかということは考えられますが、大幅な所得税減税のようなことはしたがってできない。  それからもう一つは、調整減税を実行してないというのは日本とかドイツ、おもしろいことにこういう国は物価がうんと安定しまして、それだけではもちろんないと思いますが、皮肉な結果になっていることも事実でございます。
  253. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大体、大臣、一言よけいですよ。物価が安定していることと物価調整減税——減税ではない、物価調整をしないことと一体どういう関係があるんですか。何かそういう措置をとらないから物価が安定している、そんな論理か政策論がどこに成り立つのですか。何ぼ考えてもそんな結びつきはできないと私は思います。私が申し上げたことは、当面のあるいは秋から年末への景気対策という意味でも大事になっていると思うのです。  企画庁長官お越しいただいておりますけれども、いままで物価調整の問題などについてそれぞれ大蔵大臣やあるいは河本さんの御答弁などを当委員会でも、議事録でも拝見をしたりしているわけであります。河本さんは、赤字国債を五十九年度までになくしていくということを大蔵大臣もたびたび答弁をしているけれども、それと減税をするという問題とはおのずから別個の問題であろうと思いますというふうな趣旨の答弁をされております。大蔵大臣はちょっと違いまして、五十九年度から赤字国債の脱却の見通しがついて初めて調整も減税も可能になる。違うわけでありまして、それぞれ経済観の違いかもしれませんしというふうな思いをするわけであります。  私は、当面の景気対策あるいは経済見通しに関連をして河本さんに伺いたいわけでありますけれども、いままでそういう一般論の議論はございましたし、またそれから後、先般の経済関係閣僚会議で当面の経済運営方針、当面の経済対策というようなことを発表されております。いろいろな内容を見ましても、評価を見ましても、内需先導に転換を図りたいというふうに言いながら、なかなかそういう効果もこの程度ではむずかしいであろうということだと思います。  私は、いま当国会の中で問題となっていることに関連をして思うわけでありますけれども、人事院勧告の問題があります。仲裁の問題があります。関連をして地方公務員の賃金問題があります。いま申し上げた物価調整、どの程度やれるかどうかという問題があります。いろいろ要素がありますけれども、私はそれらを全部含めて見ますと、大体一兆円超す額になる。もちろん財源、財政問題は別にして、一兆円超す。  これから年末に向かって、世論調査を見ても、いまの状況を見ても、商店街でもあるいはお店の皆さんでも、一体これはどういう年末になるのか。暗い、さびしい年末になるのではないかということを、特に中小商店の方なんか非常に心配だということじゃないだろうかという気がいたします。たとえば総額一兆円超す額、これがうまくいって二回転か三回転でもしてくれれば、私は相当大きな、明るい要素になるのではないだろうか。一般論ではなくて、現実いまの状態からこの年末に向けて、というふうに思うわけでありますが、その辺お考えを伺いたい。
  254. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私が、財政再建と減税の問題はおのずから別個の問題である、こういうことを言いましたが、その趣旨は、いま内閣の一番大事な政策、最高の政策といいますか、これは五十七年から五十九年までの三カ年の間に財政再建をやり遂げるということが最大の政策になっておるわけです。私の申し上げましたのは、この政策を進めながら、同時に並行して減税ができるような条件ができないわけではない、並行して可能な場合もあり得る、そういう趣旨のことを言ったわけです。つまり、五十七年から五十九年まで、財政再建という問題が終わらないと、それ以降にならないと減税の条件が整わないと断定するのは、それは少し早いのではないか。  と申しますのは、大蔵省の試算を見ますと、五十七年から五十九年までの間、相当大幅な税の自然増収を期待して財政再建を進めていこうということになっておりますが、たとえば経済状態が非常によくなる。日本には潜在成長力も相当強いわけでありますから、政府の想定以上に経済が伸びていく、こういうことになりますと、税の自然増収も予想以上の額を期待することが可能であります。何しろ経済の規模が非常に大きくなっておりますから、そういうことも当然あり得ると思いますし、あるいはまた行財政の改革が非常に順調に進んで、大幅な合理化ができる、そこで財源が浮いてきた、こういう場合にもおのずから条件が整ってくる、こういうことだと思うのです。  だから、五十七年から五十九年までの財政再建ということは最大の課題であるけれども、しかし一方で総理府の調査などを見ますと、生活が苦しくなったという人が二五%もおりますし、中流意識にやや影が差してきた、こういう感じもいたしますから、最大の課題である財政再建を進めながら、同時に政府としては、減税ができるような条件をできるだけ早く整備するような努力をするということもまた大切ではないか、こういう趣旨のことを申し上げたわけでございます。  それから、御質問の給与の問題でございますが、どの見当の数字になりますか正確には私も知りませんが、相当大きな金額になろうかと思います。御指摘の数字に近いのではないか、こう思います。これが経済にどういう影響を及ぼすかということでありますが、これは消費もいま落ち込んでおりますが、個人消費を高める、景気にもプラスになる、そういう面では大きな働きをするであろう、こう思っております。
  255. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 経企庁長官のお話を伺いましたが、大蔵大臣、大蔵大臣は財政再建か国債の発行額をどう減らすかから、あるいは要調整額の数字とか、大体毎日毎日頭の中にそういう数字がちらちらしているんでしょうから、どうしても足し算引き算といいますか、足して引いて赤字になるかならないかということだと思うんですよ、大体。いつも頭の中はそういう感じになると思うんですが、これは大変恐縮ですけれども、小学校に入れば、一年生のときに足し算引き算を覚えるんですが、二年生になると掛け算割り算から覚えていくんですよ。やはり収支論、足し算引き算のあれではなくて、一定の経済観、あるいは税制にしても財政にしても内容的な質をどう問うのか、そういうことがなければ、このむずかしい時期の財政の運営はできない。実に経済と裏表ですから。  そういう画からいいますと、税制の問題にしても、あるいは先ほど来聞いている物価調整の問題にしても、実は足し算引き算の論理から一歩も出ない感じがしてならぬわけでありますけれども、さっき質問をした景気対策その他を含めた約一兆円規模、さまざまの問題と申し上げましたが、何か御感想があったら、大臣、一言おっしゃってください。——言いにくいでしょうね。私もあえて、違うことをどう言ってどうかというまでたくらんでいるわけじゃないので聞きませんが……。  では、私は次に違うテーマで、これは実は強くまた大蔵大臣、大蔵省に言わなければならぬ。いまも河本さんに人勧、仲裁、その他減税と景気との関連のことなどを申し上げましたが、公務員制度それから大蔵省のとってきた態度を考えてみますと、どうしても私は合点がいかない。こういうことなんです。公務員制度をどうするのか、人事院制度をどうするのか、あるいは公務員の賃金がどうあるのか。それぞれ審議会もありますし、人事院もありますし、いろいろなところに議論をする場があります。これは当然そこでフェアに、またオフィシャルにきちっと議論をされるべきシステムがある。私から言うまでもありません。  ところが、今度の人勧の問題にしても何にしても、その経過を見ますと、そういうあるべき一つのシステムで動いているのではなくて、大蔵省が財源の面からこれを削っていってそこへ追い込んでいく、そういうことの方が実は大きなパワーになっているのが現実ではないだろうか。経過を見たら明らかだろうと思います。昭和五十三年度までは五%あるいは五%以上の給与改善費を当初予算に計上しました。それを全部使わなかった場合もあったわけですね。そうして五十四年は二・五%、五十五年は二%、旅十六年は一%。その一%のときに、こんなこと一体あり得るか。間に合うことはあり得ないでしょう。これは、粉飾決算という言葉が言われるけれども、粉飾予算ではないか。そのほか、住宅金融公庫の財投に振りかえた利子の分もいろいろとありますよ。それで十何年来初めて、九・九か何か一けたの伸びに抑えたと自慢していますけれども、中身としては非常に問題がある。  そうして、来年度予算については、今年度の五・二三のはね返り分も、恩給分を含め四千百億、概算要求の中には含めていない。もちろん、来年度、五十七年度の賃金改定鋼も何も考えていない。ですから、前からいろいろ議論がありました五十七年要調整額二兆七千七百億。それぞれ財源で、来年度予算、公共事業でこう削ります、今度の一括法案でこう削ります、何がどうとか言って、結局この分だけ、四千億余りの分だけはつじつまが合っていないということになるわけですね、数字からいっても。  私はこう思うんですよ。公務員制度についてあるべき場できちんと議論をするということは、それぞれあるべきルールだと思います。ところが、当初予算にお金を組まないでおいて、人勧が出たら、お金がない、ないそでは振れないといってこれを削る。そして、昨年は局長以上はカットする。あるいはことしは、何か言われているところでは三カ月とか。来年は本体自体に手をつけていく。これはフェアな議論じゃなくて、昔から兵糧攻めといいますか、というようなものですよ。(「高松城の兵糧攻めだ」と呼ぶ者あり)高松城の兵糧攻めだと言っていますけれども、戦国時代には、余りきれいな手じゃないけれどもよく使った。この間「おんな太閤記」を見ていたら、秀吉が兵糧攻めをやる、そうするとねねさんが、侍でもない人をひどい目に通わす、そんな無慈悲なことをしてはなりませんと一生懸命言う。こんなやり方をしたら、あなたは無慈悲な方だということになるわけですよ、これは。  私は、やり方としてこういうやり方は非常に陰うつで、アンフェアだと思うのですよ。一体こういういままでの経過をどう思うのですか。いままでの説明の中で、何かベースアップ、人勧の見通しがつかないからとか、財源がきついから一%にしましたなんて説明をずっとやっているけれども、こんな説明は上辺の話で、腹の中では全部そこに戦略があっている。しかも、来年は何にもわからぬ。いままでの経過をどう考えるか。五十七年度はどう措置するつもりですか。
  256. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 一%しか組まなかったというのは、財政事情からして組めなかった。したがって、一%と定期昇給分は組んであります。これも事実でございます。これから人勧をどう扱うんだ、このことにつきましては、政府の統一見解がございまして、給与閣僚会議で今後財政事情等を見ながら慎重に検討してまいる。したがいまして、五十七年度予算につきましては、五十六年度が決まらないと五十七年度の人件費も決まらないということになります。したがって、来年度の予算編成以前には、いずれにしてもはっきりした答えを出す必要がある、そう考えております。
  257. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は、大蔵大臣、そういう答弁を聞くために質問したんじゃないんです。私は、ずっとこの経過を調べてみたら、考えてみたら、とにかく非常に陰うつなやり方で、制度自体の方にそこから追い込んでいこう。要するに、非常にアンフェアな形での兵糧攻めですよ。そこから制度の方に、本体の方に持っていこうということじゃないだろうかという気がしてならないのですよ。  私は、公務員制度の将来がどうあるのか、やはり公務員職員の意見もあると思います。国民の声もあると思います。いろいろなことを総合しながら、あるべき社会に対応した一つのシステムをつくっていかなければならないということだと思いますが、財源の面から、お金の面から作戦を組んで、追い込んでいって、大体来年あたりは正念場だなというような感じがしてならないのですが、行管長官、そういうふうに私は感じられてならないのですけれども、どういうふうに思われますか。
  258. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 財政状況がどういうふうにこれから変化してまいりますか、われわれも深甚の関心を持って見守ってまいりたいと思っております。
  259. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 済みません。防衛庁長官来ていただきまして、時間がないので、何分かありますから、一つだけ最後に伺っておきたいと思います。肝心なところだけちょっと聞きます。  私の方で、いま出されている五十七年の防衛庁の概算要求、それに基づいて、五十八、五十九どうなるだろうかという一つの数字をはじいてみました。時間がありませんから後でまた上げますが。私どもの集計では、五十七、七・五、五十八、一二・〇、五十九年度一一・二という伸び率にならざるを得ないという計数ですね。これは突は後年度負担の組み方をどう調整をするのかでもっても私は違ってくると思います。  伺いたいのは、総理の方から、いまの要求かいまの発注か、このテンポでは五十八、五十九年度にどうしても二けたを突破をする、大変なことになってしまう、したがってならすようにということで何か作業をしているというのがいままでの答弁であったようであります。私はそれを計算してみますと、どういうふうにならしても、どうしてもこれは一〇%以下には五十八、五十九なりようがないという気が実はしてならないわけであります。何か総理からそういう指示があって、ならしておりますというふうに言っておりますけれども伸び率五十八、五十九、一けたで抑える可能性がありますか。さらには、私は、これは最終的には、どうしても今回の計算、予算に盛られたところの発注の機数ですね、P3C、F15、この機数では絶対無理、何か削らなければとてもじゃないけれどもあとはおさまりようがないという感じがいたしますが、それだけお答えください。
  260. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  ただいま防衛関係費の後年度負担について、将来の見通しについてお尋ねがございました。この点につきましてお答え申し上げます。  五十七年度概算要求における後年度負担につきましては、従来の年割りの考え方を勘案しつつ取りまとめたところであります。これまでの経緯、慣行及び契約の相手方もありますので、なかなかむずかしい問題ではありますが、財政再建という状況にもございますので、後年度負担を平準化、ならすために、なお検討すべき余地はないか、その点を考えているところでございます。  なお、防衛庁といたしましては、防衛力の整備の実施に当たり、当面、各年度の防衛関係費が当該年度のGNPの一%を超えないことをめどとしてこれを行うという五十一年十一月の国防会議及び閣議における決定を現在変える考えは持っておりませんので、念のため申し上げておきます。
  261. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間が参りましたから、納得できない答弁でありますが、一応これで終わります。
  262. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。  有島重武君。
  263. 有島重武

    有島委員 本特別委員会の審査も延々と慎重に進められてまいったわけでございますが、御承知のように、私どももこれに対しての最終的な結論といいますか、要求をまとめなければならぬという段階が来ているわけであります。  そこで、行政管理庁長官、ずっと主管大臣としてこの審議をお聞きになっておいでになったわけでございますけれども、どうでしょうか、この法案について修正の可能性というのですか、修正についての御所感を承っておきたいと思います。
  264. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 今回の法案は、七月十日の第二次臨調の第一次答申を受けまして、八月二十五日にその政策の大綱の基本について決定を閣議で行いまして、それに基づきまして各省庁調整いたしまして、現段階においては一番最善と思う案を提出した次第でございまして、修正することはぜひ避けたいと思っております。
  265. 有島重武

    有島委員 そうなりますと、ここで審査を一生懸命やっているわけです。この審査の成果は一体どうなるのかということですね。これはもうお考えをいただきたい。余りがんこな態度でないようにしていただきたい。私たちはまるまるこれを廃案とかいうような立場ではございません。どうか審査のいままでの過程を十分に尊重してもらいたい、そう思っているわけです。  それで、この中身ということですけれども、来年度の基本答申、これが最終といいますか、それが一番のメーンになろうと思います。そうすると、いままでも臨調の答申を大いに尊重して実践していきたい、こういうように言われておりましたけれども、この基本答申についても当然それはそうでしょう。ところで、中曽根長官の任期中にそれが完結するとは、これも考えられない。これから長い道のりになるでしょう。  思いますと、第一次臨調のときに、いろいろの問題があったけれども、ついにこれがなかなか完全実施はできなかった。このことの反省の上に、これを推進する機関というようなものを設置なさる御用意がおありになるかどうか。それも強力なもの、ただ言いわけの、言い逃れのために設置をするというような、国民から批判されるようなものではない、そういった機関をおつくりになるお考えはおありになるかどうか。
  266. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 第一次臨調の際は、第一次臨調の決議によりまして監理委員会がつくられまして、これを推進し、監視する機関として働きました。     〔海部委員長代理退席、委員長着席〕 今回の場合は、委員の皆さんがどういうふうにお感じになり、御判断なさいますか、それによって決まると思いまして、われわれの方から、特にその後どうする、ああするということは申し上げない方がいい。委員の御判断によってわれわれは判断をする、そういうふうに考えております。
  267. 有島重武

    有島委員 といいますと、その用意はあるのだけれども出方を見ている、こういうことですか。
  268. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 こういう種類のものは、われわれの方から積極的に申し出べき問題でないので、むしろ臨調の皆さんが答申をおつくりになって、その答申についてこれをどういうふうに推進していくか、監視していくか、自後のことは皆さんがお考えになると思うのです。それを受けて政府は態度を決める、こういうことが適当であると思っております。
  269. 有島重武

    有島委員 では、この点でも臨調待ちである。というのは、皆さんとおっしゃるのは臨調のことですね。われわれのことではない。  この答申をいろいろ拝見いたしますと、この理念の中に、国際社会への貢献を強調しておられる。もう一つ、国内的に「活力ある福祉社会」、ここのところはさておきまして、このことにつきまして私ども非常に賛成である。この中身は一体どういうふうになっていくのかということでもって外務大臣に来ていただきましたので、具体的なことをお伺いしておきたい。  さしあたっては、二十二日と二十三日にメキシコでもって南北サミットがございます。それに総理も行かれる。それからまた、伝えられるところによりますと、総理は中東に行かれることについて非常に意欲を燃やされておる。そういうことでございますけれども、そうした二つの問題に限ってでも結構でございますから、この方針というものを外務大臣から承っておきたい。
  270. 園田直

    ○園田国務大臣 お答えをいたします。  まず、中東の方から申し上げます。大体いまごろになりますと、年内は大体総理の行動は決まるわけでありまして、年明けの外遊計画などもそろそろ具体的に話が上ってくるころでございまして、そうしますと、いまのところは中東か中南米ということで大体話があったわけであります。今度私、サダト大統領のお葬式に行って帰ってまいりまして、諸般の情勢からぜひなるべく早い時期に中東においで願いたい、こういうことで、総理もなるほどという御意見のようで、そこでそこらあたりにまず目標を決めて、いつごろ、どこの国に、どういう目的で行くかということは今後検討すべきことだ、こういうのが総理の中東訪問の現状でございます。  それからサミットは、前々から総理が言っておられました南北問題、どちらかと言うと、やや行き詰まった感じがなきにしもあらずというのが先生御承知のとおりでありまして、北の方はやや援助疲れ、南の方は石油ショック以来状況が深刻になってきておる、こういうわけで、なかなかいままでどおりでもうまくいかぬという時期でありましたが、幸いその実情を各国とも認識しまして、北と南がいままでのような対決では南北問題は解決できない。北と南が相互依存、連帯、こういうことで共同、連帯の責任で、助ける者も助けられる者もそうすることによって世界経済が向上するという共同の目標のために努力する、こういうことに変えていこうじゃないか。これが今度の準備会議の基本的な全会一致の精神でございます。  そこで、まずこの状態で北と南に若干の食い違いがあります。包括交渉等についてもまだ完全に一致しておりませんばかりでなく、米国はやや不熱心じゃないかとも言われておる状態でございますので、そういう時期に、南と北の調整役というのが日本の第一の役目。  第二番目には、今度の会議は、いままでの会議と違って、議題を決めないで、形式化しないように、自由に首脳者が討議をするという新しき方式でございますから、ここで決議とか決定はございませんけれども、しかし意見の述べっ放しでばらばらになっては困りますので、重点通報方式ということで、前々から連絡をして、各首脳者の意見を同じ方向に持っていこうという努力が払われなければならぬわけで、それが具体的には包括交渉などの問題に出てくると思います。したがいまして、その問題についても、日本はこれの推進役であり、かつまたこれをどうまとめていくか、最悪の場合、まとまらぬ場合でも、これがばらばらに相対決する状態にならぬようにというのが、南北サミットにおける日本総理のお務めだと存じます。  かつまた、南北問題ではありますけれども、これに関連をして軍縮の問題であるとか、特にサダト大統領の逝去によって中東問題がやや動き始めた感もあるし、動きようによっては悪いようにいくおそれもあるし、いろいろな関心が集中されたところでありますから、この問題等についても個々に会談等がある場合には出てくることと考えております。
  271. 有島重武

    有島委員 大いに期待をしたいというような気持ちもございますけれども、空振りにならぬようにということを切に祈ります。  ところで、いまきわめて具体的なことを言います。南北問題といい、あるいは中東問題といい、アラブ語をしゃべっているのですな。日本の国に一体アラブ語をしゃべれる人は何人いるのだろう。恐らく百というけたではないのかと思うのですね。日本国じゅうのことはお答えになれなかったら、少なくとも外務省には何人くらいいらっしゃるのですか。またその養成機関というのはどういうふうになっておるのか。これは文部大臣も来ていらっしゃるから、外務大臣に最初に答えていただいて、文部大臣に後から答えていただきましょう。
  272. 園田直

    ○園田国務大臣 アラビア語の専門家は五十七名おります。そのうち上級職が二十五名、専門職三十二名、このうち本省勤務が十七名、在外勤務四十名、ただいま研修所で実務研修の者が六名でございます。このアラビア語の研修は外務省の研修所で行います。
  273. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  最近の国際関係の非常な幅広い立場から、アラビア語あるいはまた、その他スペイン語とか各国語、相当な数字に上っておりまして、東京外国語大学におきましても、アラビア語学科二学科ございます。十五人ほどございます。また大阪外国語大学で三十五人。またアラビア語の授業科目を開設いたしております大学は十二校に及んでおります。
  274. 有島重武

    有島委員 そういう数字を私の方の質問通告によって恐らく御報告をお受けになったのであろうかと思うのですよ。その中身について、そんな安心していられるものではないんじゃないかと思うのです。まず、大体英語やスペイン話をしゃべる人たちと比べて非常に数が少ないということですね。昨日無事にお帰りになったPLOのアラファト議長さん、総理とのお話のときには通訳は一人でやっておられたようでございました。  私、この夏、中東に派遣されまして、この委員でもいらっしゃる加藤六月さんが団長で行ったのです。そうすると、アラブの高官と話をするときには、向こうにはアラピストと言われる人が日本人でいないではないわけなんでしょう。ところが、通訳を二人立てまして、私どもが言ったことを英語で言う。英語を聞いてもう一回アラビア人の方がアラビア語で言う。こういうような場面がしばしばでありました。それで、現地ではほとんど英語さえ話せれば別に困らぬというような御認識が支配的でありました。私たち町を歩いていると、そうはいかないのです。ですから、逆に申せば、英語が通用するような範囲しか活動をしておらぬ、こういうことに相なっておるんじゃないのか。  それで、そのことはさておきまして、確かにアラブというところは遠く離れたところで、最近になって大変クローズアップされたところであります。そのつき合いの歴史も浅いわけであります。しかし、こうした国際社会への貢献というようなことを大上段におっしゃって、これからいろいろな行動をなさる。ごく近く、一番近いところは朝鮮、韓国というところですけれどもわが国のうちにも相当朝鮮、韓国の方がいらっしゃるわけです。では、朝鮮、韓国語の勘能な人は一体どのくらいいるのか、それから辞書がどのくらい出ておるのか、正式な研究機関というのはどのくらいあるのか、これをお聞きになると、ちょっと寒い思いをなさるのじゃないか。多分轄国語について正式にやっていらっしゃるのは全国五カ所じゃないですか。元文部大臣の永井道雄先生が大変に心配をなされて、それで何か二つほどふえた、そういうふうな経過もございますが、時間がございませんから詳しいことは言いません。こういったような実態があるわけです。今後調停役をするんだ、推進をするんだということになりますと、これはどうも気心通じるということが大切でございましょう。アラブのことについてどろなわ式にというわけにもいかない。でもまあ本当にトップレベルのときは人物対人物、そういったことが主になって言葉の障壁を打ち破るということもあるでしょうけれども、何といいますか、外交の根になるのは、国民的な広い国際交流あるいは学術交流ということじゃないかと思います。  こんなことは釈迦に説法みたいで申しわけないけれども、われわれの外交姿勢といいますか、あるいは文教問題もそうだと思うのですけれども、大体政治行政の姿勢というものは、明治以来諸外国に学びましょうという面が基調であったかと思いますね。今度の臨調の答申において、国内においては活力ある福祉社会、そして対外的には大いに貢献していこう、こういう積極姿勢が本当の基本になるといたしますと、相当な大変化である、こういう認識を国民全部持たなければならぬのじゃないだろうか。やはりそれに応じての外務省の行政改革というようなことが当然考えられなければならないのじゃないだろうか。その点についての御抱負なり御所見、そういうことを承っておきたいわけです。
  275. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のとおりでございまして、たとえば中東問題にいたしましても、ただいま中東のアラビア語の研修所というのは、英国でつくった語学研修所があるわけであります。したがいまして、英国の語学研修所を通ってアラビア語を覚えるということは、英国のいままでのアラビアに対する一つの門をくぐっていくわけで、アラビア国自体はこれを必ずしも好んでいないわけであります。  そこでまず、サウジアラビア初め各国から、自分たちの方も一緒になって、ひとつ語学の交流をする語学センターをつくろうじゃないかという意見も出てまいりました。これに伴って、やはりそろばん片手で外交はできませんので、やはりそろばんは利害に映ります。本当の外交というのは、いまおっしゃいましたような学問、芸術、文化、そういうものの国民国民の心のつながりをつくることが必要であります。そうなってまいりますると、いまの外務省の人員配置、機構等ではなかなか——英語をしゃべって欧米に行けばいいというわけにはまいりません。それぞれの国に適した配置をとらなければなりませんので、この点行政改革の非常につらいときではありますけれども、きわめて大事な問題でありますから、皆さん方のお知恵、お力も拝借しながら、そういう方向に努力したいと考えております。
  276. 有島重武

    有島委員 中曽根長官、いまの点、今度の基本答申にはどのように反映されますでしょうか。
  277. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 基本方針ですか、いまよく聞こえなかったのですが。
  278. 有島重武

    有島委員 そうです。
  279. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 基本方針については、外務大臣が申されました線に沿ってやっていきたいと思います。
  280. 有島重武

    有島委員 基本答申です。ごめんなさい。
  281. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 基本答申につきましては、この委員会でもよく申し上げておりますが、政府としては、これを最大限に尊重して、速やかに実施に移すという方針のもとに案を策定して、御提出を申し上げたいと考えている次第でございます。いろいろな御議論を拝聴いたしまして、野党の御議論も十分拝聴いたしまして、今後の政策の資料にいたしたいと思います。
  282. 有島重武

    有島委員 しっかりやってください。  時間がないから先に行きます。それでは外務大臣、結構です。文部大臣を中心にして、先にやらしていただきます。  行政改革ということの中で教育制度の改革についても、これは必然これから新しい時代に対応して論じられていかなければならないと思うわけですね。長官、いまの外務大臣の言われた問題についても、あるいは教育の改革ということについても、これからの行革の中でどのように位置づけられていくのか、いかがですか。
  283. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 外交の問題は、日本のいまの状況から見て非常に大事な問題であると委員の皆さんも認識しております。そこで、第一部会におきまして、外交、安全保障問題を特別に取り上げて、それに対する機構やら定員やらあるいは政策の方向等について慎重に御審議を願うことになっておりまして、それがどういうふうな答申になって出てくるであろうか、期待しておるところでございます。  しかし一方、政府政府といたしまして、外務省を中心にいろいろ政策を練り上げてやっておる最中でございます。われわれは閣議で園田外務大臣の方針をいろいろ聞いたり承ったりして、それに対していろいろ政府一体になって外交を推進していかなければならぬ、そう思っておる次第でございます。
  284. 有島重武

    有島委員 教育の問題ですけれども、申すまでもなく、教育というと家庭教育と社会教育と学校教育、こう三つに大きく分けることができるわけであります。それで、明治以来の伝統といいますか、わが国においては、大体学校教育中心ということできたのではないかと思います。それには社会的な、地域的な教育の力あるいは家庭における教育の力というものが、もう江戸時代からずっとしっかりこういった教育の力を持っておった。その中における学校教育中心主義というようなことで、日本の教育はまずまず大きな成果をおさめていると評価されていると思います。  ところが、現在の状況は一体どうでありますか。現在のこの学校中心主義のままでよろしいのかどうかというようなことが問われているような、これは具体的に申しますと、校内暴力というような事件が起こっておる。これは警察庁の方の資料をいただきまして、これも新聞発表されたものでございますけれども、校内暴力が昨年一年間で一千五百五十八件あった。補導された人員は九千五十八名であった。五十六年度はどうなりますか。年度が終わっておりませんから、一月から六月までの分だけでも、昨年の一月から六月までの六百五件、四千二百三十八人という去年の分を二百七十一件上回ったというのです。それで八百七十六件、五千一人が補導されておる。そのうちに中学生の暴力の分が大幅にふえておる、こういうことになっておる。  文部大臣、こういった現状に対して、文部大臣としてはどう対処なさいますか。
  285. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  ただいま冒頭おっしゃいました、従来の教育が学校教育を中心として行われておった。ところが、社会の進展なり、あるいはさらに先生のお話にあったような国際化というふうな問題もありますが、一方、教育それ自体といたしましては、生涯教育といったような面で、社会教育的な面も非常に大きな分野を占めてまいりました。しかし、さらにその中におきましても、特にいわゆる非行青少年問題といったような問題も、高等学校から中学校、さらにまた低年齢化というものが非常な勢いで出ております。  こういうことを分析いたしますと、その原因とするところは何かというならば、やはり家庭教育といったようなもの、さらにその家庭教育の根底をなします幼児教育、あるいはまた母の教育、ママさん教育といったようなものが非常に真剣に問われるような段階でございます。  われわれとしましても、そういうふうな社会的なニーズに対応した教育行政をとっていかなければならない、かようにも考えております。
  286. 有島重武

    有島委員 これはほんの手直しの話じゃないのですね。抜本改正に近いような話になるんじゃないかと私どもは思っているわけです。  いわゆる受験地獄というのがあるわけですが、これも学校ということに限って言っているわけですな。あるいは校内暴力ももちろんです。あるいは、ややゆがめられたというふうに思いますけれども、教科書問題というのがある。こういうふうに学校教育にしわ寄せられたところでいろいろなことが起こっておりますけれども、これを解決していくには、文部大臣も言われた、行政の立場でどうにもならぬ、家庭教育にしっかりしてもらいたい、地域の教育力もかりなきゃならぬ、あるいは新しく生涯教育という観点を導入してこなきやならぬ。  これは政府も、総理初めずっと何遍もこの委員会でも答えられておりましたけれども、将来の社会として、国内では「個人の自立自助精神に立脚した家庭や、近隣、職場や地域社会での連帯を基礎としつつ」云々と仰せられている。これは社会全般のこと、あるいは行政のことにかかわって言っておられるわけですけれども、まさに教育の問題もそこに集中化されると言っていいのじゃないだろうか。  それで、そういった観点からの教育の見直しということを大きな全体観に立ってやっていただかなきやならないのじゃないだろうか、こういうふうに思うわけです。そうした見直し作業について、これをどんなふうに位置づけられて、どんなふうにお考えになられるのか、管理庁長官の御所見を承っておきたい。
  287. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 私の所管外のことでございますけれども、おっしゃいますように、いま日本の教育という問題は大変大事な段階に来ているのではないかと思われます。  いわゆる皇国史観というものが戦後抹殺されまして、新しい民主主義の、世界的な、豊かな心の日本人をつくるということで発足いたしまして、みんな各位懸命な努力をしてきて、ある意味においては成功した面もございますけれども、また他の面におきましては、学校暴力やら、あるいはそのほかのいろいろな事件等も起きてきておるわけでございます。それを見ると、新しい教育学の体系とかあるいは幼児の知能教育とか、いろいろな面が開発されてきまして、まだそれが総合化され、体系化されていない新しい時代に入ろうとしているのではないか。それにテレビとかいろいろなマスコミが入ってまいりまして、社会がお座敷や茶の間にまで入ってきて、子供に影響や感化を与えてきているという状況になっていると思います。  そういうようないろいろなむずかしい条件が出てきている中で、どういうふうにして教育基本法が目的とするような子供たちを育てていくか。環境、条件の非常にスピードの速い変化に適応しにくい事態にあると思うのであります。そういう面で、子供を必死に守りながら、教育基本法の目的を達するような子供にどうして育てていくか。環境的にも、あるいは教材の内容や教育者の資質それ自体、あらゆる面において点検が加えられて、そういう体系がつくられていかなければならない。臨調におきましてもそういう観点から、あらゆる面から教育問題というものが検討さるべきであると考えております。
  288. 有島重武

    有島委員 いまのお答えで、私も御見識に敬服いたしますけれども、心配になります点は、戦前戦後の対比というようなことも一つ言われました。それを超えて、戦前戦後ひっくるめて、明治以来の一つの流れをいま考えなければならぬような状況にあるんじゃなかろうかということを申し上げたいわけです。さっきの外交問題も同じです。したがいまして、微調整の問題ではないのですね。いろいろな事態が来る、それに対応していく。これは文部省として、優秀な官僚の方々が一生懸命なさるわけですよ。そこに何かやっぱり決断を持った改革がなければ、本出にどうにもならぬようなところにいま押しやられている。そういった認識をぜひとも持っていただきたいというわけであります。  先に行きます。  率直な国民感じというもの、あるいは率直な議論を望むというようなことを言われておりますけれども行政改革といいますと、国民が真っ先に感じるのは、まずお役人の数が減るのじゃないか、こう思うのですね。第二番目に、お母さんたちに聞いてみますと、幼稚園と保育園はきっと一緒になるのじゃないだろうか、こういうことを言うわけです。それで、幼保の連携につきましては、行政管理庁から、かつて五十年十一月に勧告が出されております。これに対して一つの報告も出されております。そのことはもう省略いたします。  そこで、中曽根長官、勧告をなさった行政管理庁のお立場として、今度の懇談会のこの報告について、どんな態度をおとりになるかということです。簡単にお願いします。細かい状況はいいんだ。説明は抜きでいいから。
  289. 中庄二

    ○中政府委員 大分昔のことでございますので、私からお答えいたします。実態はよろしいというお話でございますが、若干申し上げませんとあれでございますので、御容赦いただきまして、簡単に申し上げます。  幼稚園と保育所、幼稚園だけしかない、保育所だけしかないということがありまして、地域に非常にアンバランスがございます。そういうことから、保育所だけしかないところでございますと、学齢期に達しますと自然、保育所へ黙っていて幼稚園側に入れるというような市町村も出てまいりましたし、一方におきましては、三歳、四歳までは保育所へやる、五歳になると一斉に幼稚園にかえるといったような非常に乱暴なものも出てまいりましたので、このような状況はやはり文部、厚生両省の間で協議をいたしまして、基本的な考え方をつくるべきではないだろうかということになりまして、両省の関係審議会の間で協議する場をつくったらどうかということを勧告したわけでございます。
  290. 有島重武

    有島委員 それはいいんですよ。いま経過報告は要らないと言ったんだ。これをどんなふうに受けていらっしゃるか。
  291. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 これは先ほど申し上げましたように、子供の教育という問題やら、環境という問題やら、あるいは親の職業、親の生活という問題やら、複雑にかみ合った問題で非常にむずかしい。それに厚生省と文部省のなわ張り争いみたいなものまで入ってきている疑いもある問題であります。そういう点で一刀両断のもとに片づけるには適しない。やはりある程度調整しながら、時間をかけて改善していくという性格の問題であろう、そう思っております。  それで、先般来勧告によりまして両省で相談をしていただいて、そうして幼稚園は幼稚園、保育所は保育所というものの使命をおのおのもう一回再確認をしつつ、両方で連携して、子供は一貫して保育所から幼稚園へとずっと伸びていく、あるいは幼稚園へ入らなくとも小学校へ入っていく、子供は大きくなっていくわけでありますから、それを引き受ける両方が子供本位の立場に立ってよく連携をしていく、また行政当局としてもアンバランスがないように、あるいは母親に余り大きな負担をかけないように配慮してあげる、そういうような点をよく注意してやらなければならぬ、そういう感想を持った次第であります。
  292. 有島重武

    有島委員 すでに地域地域によっては大変な工夫をしながら、幼稚園と保育所を両面備えたような施設をつくっているというような報道が新聞紙上にも出ました。それは恐らく御承知であろうかと思いますから省略いたします。  私たちも幼保一元化ということを標榜してスローガン的に言っておりますけれども、そう簡単にいくものでないという認識を持っております。実態的にお子さん方、お母さん方の立場に立ってその問題を解決していくということをやろうじゃないか、それでそういった推進を私どもはやっているわけです。  そこで、いま厚生大臣と文部大臣いらっしゃるから、お二方にちょっと聞いておきたいのです。  まず文部大臣。幼稚園の先生で保育所の方の資格を持っていらっしゃる方は大体何%くらいいらっしゃるのか。それから今度は、保育所の保母さんでもって幼稚園の先生の資格を持っていらっしゃる方は何名山何名くらい、何%くらいに達しているのか。そのことを聞きたい。
  293. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 資格取得者における比率等につきましては、政府委員の方からお答えいたします。
  294. 三角哲生

    ○三角政府委員 正確な調査の数字はございませんが、ほとんどが同一の方が両方の資格を持っておるというのが現状であるというふうに認識しております。
  295. 有島重武

    有島委員 次に厚生省
  296. 幸田正孝

    ○幸田政府委員 私どもも正確な数字は持っておりませんが、大体、新たに卒業いたしまして保母の資格を持つうちの七割程度が幼稚園教諭の資格を持つ、かように考えております。
  297. 有島重武

    有島委員 そういった御認識のもとにある、それは望ましい方向であろうと私は思っています。  それで、将来の問題ですけれども、これも一つの検討課題に加えていただきたいのは、地域においては実態的にももう一元化して運営しているところがたくさんあるわけです。幼稚園の先生から今度は保育所に移るという、人材の交流ですね。園長さんも交流ができるようになっているようなところもあるようであります。  そうなってまいりますと、これは地方に移管をしてしまうということですね。中央官庁が二つ頭があって、ときどき代理戦争のようなことをさせられておる。現場においては、本当はだんだん仲よくなりつつある。それで、そこの子供たちにとっては余りそれを区別するようなことがないような状況になっておる。それでひとつ、中央官庁と地方と行政の分離といいますか、そういうことも検討課題の一つになさってはいかがかと思うのですが、いかがですか。
  298. 村山達雄

    村山国務大臣 保育所につきましては、御案内のように、保育にかけるゼロ歳から五歳までの者を保育するわけでございます。したがいまして、その保育にかけるかどうかは、全部が入れるわけではございませんので、やはり夫婦共かせぎでやっておられるとか、そういう本当に預からなくちゃならぬ人に限って預かっているわけでございます。したがいまして、その入所料と申しますか、かかる経費につきましては相当多額の公費で負担している実情でございまして、恐らく全体では四割ぐらいの負担、つまり年金よりも少し高い負担をしているわけでございます。しかもクラスは非常に分けまして、Aクラス、それからB、C、Dと分けまして、生活保護世帯はどうであるか、それから地方税の非課税者はどうであるか、それから地方税だけの人はどうであるか、あるいは所得税についても税額ごとに区分をずっとしておりまして、それで徴収料を取っているような状況でございます。これはやはり国の統一的基準でやりませんと非常に地域によってアンバランスが出てまいりますので、この保育制度というものは、だれを入れるかという認定は市町村長でございますけれども、国が統一基準でやっていかないとまずいのではなかろうか。  この前の懇談会、文部大臣と私の審議機関でございますけれども、やはり言っておりますことは、それぞれの機能は十分それぞれ果たしておる、しかしそうかといって全然それなら連携できないかというと、なお工夫の余地があるという点で、三点指摘されたことは御承知のとおりでございます。一つは地域で……(有島委員「それはいい」と呼ぶ)  ですから、そういう意味で、指摘されたようなところをわれわれはこれから考えていきたいものだ、そういうふうに思っておりまして、地方に移管するということは考えておりません。
  299. 有島重武

    有島委員 いまの厚生大臣のお話で、アンバランスということが出ました。そういうことになりますと、県によって保育所ばかりで幼稚園が少ないというような著しいアンバランス、あるいは幼稚園が非常に支配的であって保育所はほとんどない、そういうアンバランスがすでにあるわけです。そっちのアンバランスのことはさておいて、そういった細かいアンバランスのことでいろいろ言われて、ああそうかなというわけにはいかないので、現場としてはもっともっと歩み寄っていくべき道がたくさんあると思うわけです。  それで、管理庁長官、いまのは厚生大臣の御意見で結構ですけれども、ひとつこれもなお検討課題にしていただきたい。お願いいたします。  それから、時間がなくなってきて、四十人学級ということについてなんですけれども、私たち、「生きがいとバイタリティーのある福祉社会トータルプラン」というのを以前に発表いたしたわけでありますけれども、その中では、一学級三十五人というものを目標にしておる。これが教育のミニマムであるというふうに思っておるわけでございまして、ですから何をおいても速急に四十人学級には達すべきである、こう思っております。これは財政再建のためにやむを得ないということでございますけれども、これは六十六年の達成は本当に確約していただけるか。本当に確約してもらいたい。
  300. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 十二年間にこれをやるという決定は、われわれはそのつもりでおります。
  301. 有島重武

    有島委員 確約をいただいたと思ってよろしいですね。  それで、この四十人学級については六百十二人ことし本来ならば要求すべきことを三百二十人の半分にした、こういうことになっているわけですけれども、そのほかに教職員の定数の改善は、このスローダウンは二千二百五十人のところを四百人にしてしまっている、こういった経緯があるわけです。これはやめてもらいたいと私は思っているわけです。修正もしてもらいたいと思っているぐらいです。特にこの中で、四百人の中身ですけれども、特殊教育諸学校が百五十人、一般小中学校が二百五十人ということになっています。特殊学級については五十五年ゼロ、五十六年ゼロということでございまして、これはちょっと心配なので確認をしておきたいのですけれども、特殊学級というものも今後どんどんスローダウンしてゼロにしてしまおうというような政策が文部省としておありになるのか。心身の不自由な方々はこれは義務教育にして、学校もつくっていく。学校の方はいまのところ充実していかなければならないということはわかります。わかりますけれども、この実態を見ますと、各学校における特殊教育のクラス、これはふやさないというふうに見受けられる。これは政策としてそういうふうになっているのか、あるいはやむを得ずそうなので、やはりこれも計画どおりずっと最終的には特殊学級というものも残していくのか、このどっちかですか。簡単に答えてください。
  302. 三角哲生

    ○三角政府委員 私どもは、やはり障害の種類と程度に応じまして、それぞれ特殊教育の諸学校なりあるいは普通の学校に置かれております特殊学級なりに適切に受け入れて、それぞれに対応した教育を行うという基本は、これまでも今後もずっと持ち続けるという姿勢でおります。  それで、全児童生徒数の〇・四%というものが特殊教育諸学校に入っておりますが、〇・七%に当たる人数が特殊学級に入っておりまして、両方合わせて一・一%というものがこのいずれかに入っておる現状でございますが、これは将来においてもそういう体制でいくということにいたしております。
  303. 有島重武

    有島委員 教科書無償について。これも教科書無償を私たちが推進してきた立場といたしまして、これは今度の臨調の第一次答申の中で「廃止等を含め検討する。」となっている。これはとんでもないことだと思っておるわけであります。こんな答申が出た根拠は一体どこにあるんだということですね。これは教育費の中に占める教科書代が低下しただとか、あるいは行政分野に無償を教科書まで広げていいものかどうかなんて、こんな議論があるんだというやに聞いておるけれども、まず文部大臣に先に聞いちゃいましょう。  文部大臣、いまのところこういった臨調の答申はあるけれども、無償存続をいままでも表明しておいでになったと思いますけれども、これでもってぐらぐらすることはないでしょうな。
  304. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 私の考え方は、先生よく御承知のとおり、この無償の問題はあくまでも堅持してまいりたい。  臨調の答申が出ておりますので、これについては、いまの答申が出ておる時点、現段階におきまして慎重に考えてまいりたい、かように考えております。
  305. 有島重武

    有島委員 大蔵大臣、いかがでしょうか。
  306. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 十分検討させていただきます。
  307. 有島重武

    有島委員 その検討の仕方なんですけれども、各界にも諮りというようなことをかつてどこかで言われましたでしょうか。そういうことを言われましたでしょうか。臨調そのものが各界に諮っての答申ということは、これは決まっているわけですが、その臨調の中に入っておらぬ各界というのは一体どの辺の人々だ、これをよくお考えいただきたいのですね。臨調に意見が反映されていないようなところといいますと、やはり本当に若い世代のお父さん、お母さん方、そういう立場方々であろうかと思うのですね、一般の方々といいますか。そこで、ぜひ廃止というふうなことではない方向に検討してもらいたい。  時間が来ちゃいましたから、先に行きます。  ちょっとまた違う問題になるのですけれども、これはやはり文部省の一つの姿勢を改めてもらわなくちゃいけないのじゃなかろうかと思う問題なんです。  せんだって、十月十三日に横浜の米軍でもって油のタンクの施設が爆発をいたしました。住民は早速に避難をした。それで八百名ほどが市立の西柴中学校に避難をした。この学校へ一般の人たちが避難するに当たっては、どういう手続をとっていくのでしょうか。これは消防庁の方から承りましょう。
  308. 石見隆三

    ○石見政府委員 お答えいたします。  一般的な扱いといたしましては、市町村で地域の防災計画をつくります際に、学校とかあるいは大きな公園でございますとか墓地というようなところを緊急避難場所として指定をしておるわけであります。そういう場合に、学校が指定をされておるということになっておりますれば、災害が発生しました場合、当該市町村長が学校と連絡をとりまして住民を避難誘導するというような措置をとっておるわけであります。  先ほどお話のございました先般の横浜市金沢区の小柴の米軍燃料タンクの火災の際には、横浜市立西柴中学校に付近住民が避難をしたわけでございますけれども、これにつきましては、所轄の金沢区長が、当該学校当局から口頭で了解を得まして避難誘導したということでございます。
  309. 有島重武

    有島委員 それから、これはちょっと古くなりますけれども、八月二十四日の未明に台風十五号による大雨でもって利根川の支流の小貝川が決壊した。茨城県の竜ケ崎の一帯の住民が非常サイレンに飛び起きて近くの小学校、中学校へ避難した、こういうわけですね。そのときは住民の避難にどのような対応をしたのか。これは所管が建設省だそうなので、建設省の方から簡単に言ってください。どういった手続でもって避難したのか、学校に入ったのか、簡単に言ってください。
  310. 川本正知

    ○川本政府委員 お答えいたします。  ただいま先生お話しの小貝川の決壊でございますが、お話がありましたように、八月二十四日の午前二時ごろ、これも推定時刻でございますが、発生したものでございまして、利根川、小貝川の今回の出水に際しましては建設省の現地の工事事務所が水防警報というものを発令しておりまして、それにつきましては、この伝達系統はあらかじめ決められておりまして、工事事務所から茨城県の河川課並びにその出先でございます竜ケ崎土木事務所を通じまして関係の水害予防組合に連絡するということになっておりまして、子の水防警報の情報伝達については適切に行われたものと思っております。  いまお話がございました避難の情報、誘導といいますか、これにつきましては、堤防の決壊いたしましたその事実は、現地をパトロールされておりました竜ケ崎市の消防職員から建設省の出先の方へ通知があったわけでございまして、私どもの方では、それに対しまして直ちに非常態勢をとりまして緊急に災害の復旧をいたしましたけれども、住民の避難については、これはちょっと私どもの管轄外のことでございます。
  311. 有島重武

    有島委員 そうすると、手続はなし。
  312. 川本正知

    ○川本政府委員 はい。
  313. 有島重武

    有島委員 災害対策基本法というのは国土庁の御所管であろうかと思うのですけれども、災害対策基本法で地域防災計画というものが市町村に義務づけられておるわけです。その際、学校その他公共の施設が有力な一時避難所、第一次の避難場所として設定されておるはずだと思うのですね。このことを——国土庁来ていらっしゃいますか、確認さしていただきたいのです。
  314. 原健三郎

    ○原国務大臣 お答えします。  そういう学校等に避難場所を設定しておる市町村がたくさんございます。それは、そういう空間も多いし、避難場所としては適当な場所である、こう思っております。
  315. 有島重武

    有島委員 文部大臣はそのことをよく御承知でしょうか。
  316. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  全国の避難個所が四万五千七百八十五カ所ございますが、その中で学校が指定されておりますところが二万一千三百七十七カ所、全体の四六%が学校が避難場所になっております。  なおまた、災害等の緊急避難等に対しましては、災害対策基本法の規定に基づきまして市町村長が学校施設を強制的に使用することができる。通常の場合は管理者が学校でございますが、緊急避難の場合におきましては市町村長がその指令ができることに相なっております。
  317. 有島重武

    有島委員 文部大臣、文部省の方の御指導によりますと、大規模地震等による災害が起こった、そうすると児童生徒というものはなるべく家に帰す、両親のもとに帰すということが原則というか、前提になって訓練をしていらっしゃるらしい。私の知っているところはすべてそうです。そうでないような、いま逆に学校の中にお年寄りなり体の弱い人なりが逃げ込んで預けられたとか、これはもういつもの実態ですね。それから、あるいは家が非常に危険で避難命令というようなことがあって学校に入ってくるというようなことについて、平素から何らかの予行演習のようなことを計画させていらっしゃるか、実施させていらっしゃるか、それはどうですか。     〔委員長退席、藤波委員長代理着席〕
  318. 柳川覺治

    ○柳川(覺)政府委員 御指摘の安全指導の問題、これは学校教育の中できわめて重視いたしておりまして、常に安全に行動ができる、また危険な状態に遭遇した場合に緊急避難その他適切な対応ができるということの訓練、指導を行っておるわけでございまして、日本交通安全教育普及協会が学校安全に関する実態調査の中で、避難訓練を小中高等学校でどのように行っているか調査したデータがございます。たとえば、小学校につきましては、年間一回ないし三回避難訓練を行っておるところが八八・一%、四回以上が一〇・六%というようなことで、定期的にあるいは臨時に避難訓練及び安全指導に努めておるということであります。
  319. 有島重武

    有島委員 文部大臣、お聞きのように、避難訓練ですよ。避難訓練で学校から外に逃げていくということです。これは実際問題として、われわれ考えてみると、何か事が起こったときに、別に教えられなくたって、近所の学校に逃げましょう、こういうことになろうかと思うのですね。それに対して地域の方では、それに準じたこと、演習もやりたいと思っておる。実際にやっているところもあります。ところが、文部省の方のいまの指導の姿勢というものは、学校というものは教育の場所なんだから逃げ込まれて避難場所にされては困るんだというニュアンスが非常に強いように私は承っておる。そういった点を国土庁の方と、ここにいまお二方いらっしゃるからこの場所でよく打ち合わせて、今後の望ましい方向を考えていただきたい。これは行政改革なんて大きなこととはちょっと違うかもしれない。あとは今度は事務レベルでのいろいろな御折衝になろうかと思いますけれども、本当にその実態に合った訓練といいますか、使い方を今後も検討していただきたい。  時間が来ましたから、以上で終わります。
  320. 藤波孝生

    ○藤波委員長代理 これにて有島君の質疑は終了いたしました。  和田耕作君。
  321. 和田耕作

    和田(耕)委員 もう時間も大分遅くなりました。きょう私は、これから四つの問題について御質問をしてみたいと思います。  第一は、来年度の防衛費七・五%問題にまつわる外交あるいは防衛等の問題。第二の問題は、せんだってお決めになったようですけれども、四百八十四億円の剰余金を減税として五百円にばらして国民に配る問題と、行革に対する姿勢の問題、これは政府だけじゃありません、姿勢の問題について第二に質問をしたいと思います。第三の問題は、仲裁裁定と人事院勧告の今後の取り扱いの問題。そして第四は、文教に関係した若干の問題。この四つの問題について、簡潔に御質問を申し上げたいと思います。  まず第一に、昭和五十七年度の予算について、ゼロシーリングという厳しい状態のもとで七・五%をめどとした防衛費のアップ、これはかなり異常なものだと思います。私は、これは理解される方向だとも思いますけれども、この七・五%アップというちょっと異常に見える状態というものには、それらしい一つの背景があると思います。  私ももう十年ほど前に内閣委員会の理事をしたことがありまして、中曽根さんが防衛庁長官のときに何回か御質問をしたこともありました。あのころは、日本の防衛の問題を考える場合のそのめどになる相手側と申しますか、仮設敵国とでも申しますか、そういうものがなかったのですね。何ぼ聞いても、中曽根さんも佐藤さんもソ連とは言わないし、中国とも言わないという状態のもとで、日本の防衛力というものは非常に漠然とした防衛、専守防衛というような状態だったのですね。そういう状態でありますから、私はあの時分から、もっと役に立つ防衛というものを考えなければならぬということで何回か質問したことがありますけれども、ともかく相手側の問題がはっきりしないものですから、なかなか現実的に役に立つ防衛というものが考えられない状態だった。ところが、最近の問題は非常に質的に違っている。したがって、新しい日本の防衛という問題が議論をされなければならないような状態になってきているということは事実だと思います。  一つの問題が、潜在的な脅威としてソビエトをはっきりと挙げるようなことになっている。日本とアメリカとの共同宣言の場合にもそういう関係の字句があること等を考えますと、かなり防衛計画というものも具体的な一つの歩み、あるいは一つ目標を設定できる歩みというものが出てきている。これが最近の防衛問題をめぐる、いままでの状態と違った状態じゃないかと思うのです。こういう問題について、総理がおられると総理にお聞きするのですけれども、外務大臣、ひとつ全般としてそのような認識でよろしいかどうか、防衛庁長官、お二人からお答えをいただきたいと思います。
  322. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答え申し上げます。  国際軍事情勢は東西間の対立と協調ということで推移していると思うのでございますが、先生御指摘のように、ソ連の全般的な軍事力の増強、そしてまた第三世界への浸透という点から見まして、最近は緊張が高まってきておるというように私ども見ておるわけでございます。とりわけアフガニスタンへの侵攻以降は厳しさを増してきていると見受けております。  さればと申しまして、平和憲法のもとにありますわが国としましては、あらゆる国と平和外交を推進するという立場にありますので、これを敵視するというわけにはまいらぬと思うわけでございますが、その客観的な軍事力の増強ぶり、特にアジア地域における配備の状況、北方領土への地上軍の配備等の一連の現象からいたしまして、潜在的脅威が高まってきている、そういったことを念頭に置きましてわが国の防衛努力を今後行っていかなければならぬ、さように考えておるわけでございます。
  323. 和田耕作

    和田(耕)委員 大体そういう御認識を持っておられると判断をしますけれども、そういう場合に一番大事なことは、私は三つあると思うのですね。  一つは、何といっても日本の防御、外交、つまり総合的な安全保障という観点から見て、アメリカとの非常に気を使った協力関係というものが大変大事になってくる。また、いろいろな面でアメリカとのフリクション、対立的な問題も出てきますから、アメリカとの関係については大変気を使っていかなければならないということが一つ。もう一つは、ソビエトに対して不必要な刺激をしてはいけないということが一つ。もう一つは、中国と、特に韓国との問題をいままでより以上にもっと真剣に、隣の国、協力しなければならない国として位置づけるということが大事だと思うのですけれども、外務大臣、いかがでしょう。
  324. 園田直

    ○園田国務大臣 第一の日米関係は、御指摘のとおりに日米関係は日本の基軸であります。  第二番目の問題、韓国、これは隣国で友邦国でありますから、これに対しても留意すべきことは当然であります。中国その他のアジアの国々とも協力していくことは当然であると考えております。
  325. 和田耕作

    和田(耕)委員 そういうふうな観点から、最近の、特に園田外務大臣になられてからの一連の問題について端的にお伺いをしたいと思いますけれども、いまの三つの問題について、園田外務大臣は三つの問題それぞれ大変気を使われておると思います。  ただ、たとえば大臣になられた直後の例の日米共同宣言にまつわる、宣言が要るとか要らぬとかいったような問題が一つありました、これは外務大臣はすぐ訂正をされたようでありますけれども。続きまして、日韓外相会談があったのですけれども、これがとっさに外務大臣になられたことでうまくいかなくて、ちょうどその時を同じくして、北朝鮮の政治的な代表が日本に来てこれを受け入れるという問題が出て、韓国側をかなり刺激したという問題がありました。しかし、この問題は客観的に見てやむを得ない面があったと思います。また、最近の日韓閣僚会議の問題でありますけれども、あの問題も、六十億ドルという日本としてはとても消化できない要求というふうに見ると、なかなかこれは聞き入れられない問題ではありますけれども、しかしあの問題をめぐっての外務大臣の日本の関係の委員会等での発言の言葉が非常に韓国側を刺激している。  ちょうどあの直後に日韓議員連盟の幹事会がありまして、私ソウルに参ったのです。最近は二度ほど参ったのですけれども、外務大臣のたとえば、金をもらう、援助してもらう方がびた一文もまけられないなんてと、ああいう言葉が向こうの新聞にでかでかと載っている。つまり言葉遣いの問題が非常に向こうの人たちを刺激したということがあると思います。この問題も、私の判断では、これは向こうから聞いたことじゃありませんけれども、アメリカ側の一つの意向といいますか、日本の態度をひとつサウンド、と言っては言葉がおかしいのですけれども、そういう背景がありはしないかという感じがするのですね。というのは、鈴木総理が東南アジアを回ったときも、直接の防衛援助はできないけれども、金で済むことならという印象をあちこちに与えていることは事実なんですね。そういうふうな問題をめぐっての、アメリカ側が後ろに、そういう利害のもとにああいう韓国の要求が出ておるのじゃないかという感じが私はするのです。ちょうど本年の二月に、私もアメリカに行っておりましたときに全斗換大統領もお見えになっておりまして、向こうの新聞に大きく発表されておりました。そして完全に防衛等の問題について意見が一致した、そして日米の問題でも韓国の援助のために十の項目もあるのですけれども、そういうふうな問題があって、あの当時の外務大臣の外務委員会等を通じての発言というのは、言葉として必要以上に相手を刺激しておるという感じがするのですね。しかし、あの六十億ドルの問題については、これは当然日本としてはできないことはできないと言うのはあたりまえのことなんですが、そういう気持ちの通じ合いというものは、できるだけ韓国のことは考えておるんだという気持ちが伝わっていないのですね。そういうところが今後の問題としても大事なことじゃないかと思います。  一つ一つ外務大臣の御意見を聞きたいと思うのですが、時間がありませんので、まとめてお伺いをしますけれども、ごく最近のPLOのアラファト議長の問題、私もサダトさんがああいうふうなことになりましたので、大変心配をしておりました。そして、アラファトさんが日本に来られて、どういう方だろう、どういうふうなことを言うだろうというあれもあって、京王プラザのあれにも私、出ました。そして、見ると意外にやさしい男という感じで、ああいう人がどうして暴力集団のあれになるのかということを思い出す、私自身も見解を少し改めるほどのソフトな感じの人だと思います。また、心配されるほどでなく、いい面が心配される面よりもよく出た。これは外務大臣の努力にもよると思うのですけれども、しかし何としてもあの問題はアメリカ側は釈然としていないというふうに私どもは聞いておるのですけれども、このような問題について外務大臣は、おとりになった処置についての反響等を含めてどういうふうにお考えになっておるのか、あるいはPLOの問題に対して今後どういうふうな態度で接触されようとするのか、そういうことについてひとつ簡潔なお答えをいただきたいと思います。
  326. 園田直

    ○園田国務大臣 お答えをいたします。  日米関係は大事でございます。したがいまして、今日の情勢下において日米が協力をして役割りを果たす場面は非常に大きいと存じます。したがって、そのためにはあらゆる問題で意見の交換を行い、お互いに意思が通ずるようにしなければならぬ、これはお説のとおりであります。しかし、その協力をするということと何でも同じことをやるということとは意味が違うと私は考えております。  第一、日韓問題でございます。日韓問題については、確かに極悪非道の張本人みたいに言われていることは承知でありますけれども、日韓問題を考えます際に、いままでのような日韓関係を続けていってはならぬ、ここで新しい日韓関係、いわゆる真に隣国で友邦国である、助け合うという関係に立たなければならぬ。それからしますと、残念ながら、簡単に申し上げますが、日本の世論調査によると、日本国民が一番きらいな民族はソ連となっております。その次が北朝鮮であります。それから二%下がって韓国と、こうなっております。これはわれわれが非常に反省をしなければならない問題であります。また同様に、韓国の国民の世論の調査をいたしますと、日本はやはりきらいな民族の相当上のパーセントを占めているわけであります。これは李承晩大統領以来ずっと学校の教科書でも抗日、反日ということが基礎になって教育されて今日の韓国の若い世代が出てきているわけであります。そこで、両国民がお互いに理解し合うというような新しい関係をつくりたい、これが私の念願であります。  したがいまして、経済協力については全斗換大統領がいろいろな困難な問題を克服しながら新しい国づくりをやっておられる、これに対してわが日本が協力することは当然の務めであると私は考えておるわけでありますが、それについては両方がよく相談し合って、どうやれば出しやすいか、どうやればいろいろな無理がきくか、こういうことで話し合いを待っているところでありますが、日本でできない防衛、軍事の肩がわりであるとか、あるいは六十億ドルなどという金は、これはアジアへの経済協力の一年間の半分以上であります。これはできない相談でありますが、相談のしようによってはできる。  なお、その六十億ドルがアメリカの後ろ盾によってできているものということは全然想像いたさないばかりでなく、アメリカは現に、日本に対しても韓国に対しても、日本と韓国がうまくいくことは希望する、しかし二国間の経済協力問題について口を出すべき立場にない、こうはっきり宣言しておりますから、これはアメリカの後ろ盾ではない。  それから、PLOの問題でありますが、これは長い過去の経歴があってああいう状態になったことは先生御承知のとおりであります。したがいまして、米国の国内では、いろいろな方々が集まっている米国の国でありますから、いろいろ問題があることも承知をしておりますが、アラファト議長が来日される前日、私はヘイグ長官とも会っております。ヘイグ長官とは就任以来半月に一回会っているわけで、多いときには一日に三回会ったこともございます。こういう問題についてもよく意見の交換をして、将来真に中東で和平交渉ができ上がるにはどうやるか、どうやったらいいか。それならアメリカはイスラエル、エジプトについてどうやるか、日本はエジプトやあるいはサウジアラビアやそれからPLOだとか、なおイスラエルとも話してどうやるか、お互いに意見を交換しつつ、お互いの役割りをそれぞれの立場からやる、こういうことでありまして、意見は十分通じておりますから、これによって日米の不協和音があるとは考えておりません。  マニラにおける発言、国内ではしかられましたが、米国に言った覚えはないし、米国は全然これは問題にしないところであります。しかし、今後とも十分注意してやります。
  327. 和田耕作

    和田(耕)委員 私は八月に韓国へ参ったときに、向こうの、名前を挙げませんけれども、かなり有力な方あるいは日本の有力な人が、現在の日本立場として北朝鮮と韓国との間を仲を取り持つとかあっせんするとかいうようなことは絶対に言ってほしくないのだ、こうおっしゃるのですね。これは韓国としては国民所得の約六%を、あるいは予算の三〇%を割いて膨大な北に対する武力を維持するためにがんばっている、そういう場合に、北の方は何も戦う意思がないのだとかいうようなことを言われると困る。これはもっともだと思うのですね。しかも、日本として南北朝鮮の間をあっせんして、何とか自分が親になってという態度は、この問題で出すべきではない。韓国はわれわれの身内、もしあそこが共産国になれば大変なことになるわけですから、身内の問題としてやはり親密に考えるということを表面に出さないと、何かよそよそしいかっこうで両方をあっせんするなんということは絶対いけない。こういうことは、私、帰って総理に申し上げたことがある。これと少し立場は違いますけれども、アラブの問題もなかなかわれわれとしては手の届かないような複雑な問題があることは事実のようなんですね。したがって、日本が親になってあっせんをするというような姿勢はいかがかと思うのですけれども、これは大臣、いかがでしょう。
  328. 園田直

    ○園田国務大臣 北朝鮮の問題であっせん役をするという発言も行動もいたした覚えはございません。のみならず、国連の一般演説においては、韓国の全斗換大統領が北に対し対話を申しかけておるにもかかわらず、北は拒絶しておる、この全斗喚大統領の行われた積極的な行為は評価をし、これがうまくいくように期待する、こういう演説をしまして、韓国からはありがとうという正式の言葉をいただいております。今後とも中に立って日本があっせん役などは考えておりません。将来平和的に統一ができればいいということで、米国や韓国とも相談しながらやっていく所存でございます。  なお、中東においても、きょうは委員会で申し上げましたが、日本がうぬぼれて、調停役であるとか仲介役とか、そういうことをやればこれは大変なことになるわけで、ただ各方面とも話し合える態度にあって、イスラエルとだけは話し合いができなかったわけでありますが、先般外務大臣が私を訪ねていただき、かつまた今度イスラエルの総理大臣と会談をすることができましたので、各方面と話し合っておりますから、いろんな情報を持ち合って、お互いが力を合わして中東和平に協力できればよろしい、こう考えているだけでございます。
  329. 和田耕作

    和田(耕)委員 それでもう一つ、防衛の問題なんですけれども、「防衛計画の大綱」ができたのは昭和五十一年でしたね。あのときには、ソビエトははっきり脅威があるというふうに位置づけたものじゃないのですね。そういうふうなこともあって、やはり何か非常な事態が起こったときに対する配慮とか、あるいはまた新しいかなり緊迫した状態についての配慮というものが若干、私はあれを拝見したんですけれども、足らないような感じがするわけなんですね。こういう問題についても、この際七・五%アップという場合に、やはり優先的に考えてみる必要がある問題じゃないかというふうに私は思うのですね。と同時に、ソビエトの脅威ということが現にありますと、韓国の問題はいままでよりももっと以上にひとつ気を使って見なければならないということにもなるわけでありまして、こういうことについてひとつ善処をいただきたいと思います。防衛庁長官にひとつお答えをいただきたいと思います。
  330. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。  「防衛計画の大綱」が策定されましたのは昭和五十一年の秋であります。五年経過いたしているわけでございますが、この大綱策定当時の状況、そしてまた大綱自身の内容は、先生御存じのように、限定的小規模の侵略に対処することを基本として考えております。もっともそれを超える場合には、それに応じて対処する、いわゆるエスカレート条項も入っているわけでございますが、その辺のことは必ずしも明確にされておらないわけでございます。  そこで、私ども最近の国際情勢にかんがみまして、五十七年度の概算要求をまとめるにあたりましては、そういった点のことも念頭に置きまして、大綱に従って防衛力の水準を高める、具体的には五三中業の早期達成を図るということを基本として進めておるわけでございますが、それ以外にいろいろ不備な点が多い。たとえば即応体制が不足しているとか、あるいは継戦能力、抗堪性あるいは指揮、通信能力、いろいろ不備な点がございますので、単に正面の装備を大綱の水準に高めるということだけではなくて、こういった不備な点もできるだけ補いまして、バランスのとれたすきのない防衛体制を着実に築き上げていきたい、そういうふうにして概算要求を取りまとめた次第でございます。  また、韓国の問題につきましてお尋ねがございました。防衛庁といたしましては、朝鮮半島における平和と安定は日本の平和と安全にも重要なかかわりがある。また、アジア全体にも深いかかわりのある問題であると考えております。そして、現在のところ、朝鮮半島における軍事的均衡は韓国自身の防衛努力また在韓米軍の駐留、この二つが相まってその維持が果たされているということも認識しなければならない、さように考えておる次第でございます。
  331. 和田耕作

    和田(耕)委員 大変大事な問題を短い時間で質疑を申し上げまして、タカ派的な意見だというふうにお聞き取りになった方もおられると思いますけれども、私の趣旨はそうじゃありません。いま防衛庁長官も最後におっしゃったように、独立国としてのバランスのとれた一つの姿勢、特にアメリカとの問題は大事な問題というふうに、ぜひともひとつ気をつけていただきたいと思います。外務大臣お忙しいようでございます。防衛庁長官もどうぞ、結構でございます。  次に、私はこれは何としても中曽根長官に、それから渡辺大蔵大臣にもぜひとも御考慮いただきたいと思いますのは、五十五年度の予算の残が四百八十四億円、これはこの前も野党の減税要求の一つの結末として、議長裁定でもって、残ができれば減税をするということになって、これを五百円ずつのあれにして、四人家族二千円という形で適当に減税をするというようなことのようですけれども、ここで考えなければならぬのは、減税の資金としては余りにも小さい、ミニなんですね。あの当時の問題は大体数千億、少なくとも二千億、三千億近いというふうに予想された一つの議長裁定でもあったと私は理解しておるのですけれども、さてここで五百億円近い残ができた、これをどうするかという場合に、これは私どもの党にも責任があります。したがって、だれをどうと申すわけではありません。ここで審議されておるように、たとえばきょう四十人学級あるいは児童手当等の問題で五十億、六十億の問題を節約するに大騒ぎなんですね。それなのに五百億近い残が出た。この問題の取り扱い方が余りに安易じゃないか。各党それぞれの党利党略みたいなもの、行きがかりみたいなものがあるから担当者はそういう主張をしたかもわかりませんけれども、一般の国会議員はそう思っていませんよ。あるいは一般の国民もそう思っていない。これを無意味に余り役に立たない形で分けるということはいかがでしょうか。その問題について中曽根長官と大蔵大臣の率直な御所見をお伺いしたい。     〔藤波委員長代理退席、委員長着席〕
  332. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 前に電気代でやはりそういう問題が出まして、それで消費者に還元するということで、いろいろまた新聞の論説なんかで批判を受けたことがありました。今回は、私は政府の側にあって実行する方でございますから、とかく批って、やはり何か非常な事態が起こったときに対する配慮とか、あるいはまた新しいかなり緊迫した状態についての配慮というものが若干、私はあれを拝見したんですけれども、足らないような感じがするわけなんですね。こういう問題についても、この際七・五%アップという場合に、やはり優先的に考えてみる必要がある問題じゃないかというふうに私は思うのですね。と同時に、ソビエトの脅威ということが現にありますと、韓国の問題はいままでよりももっと以上にひとつ気を使って見なければならないということにもなるわけでありまして、こういうことについてひとつ善処をいただきたいと思います。防衛庁長官にひとつお答えをいただきたいと思います。
  333. 大村襄治

    ○大村国務大臣 お答えいたします。「防衛計画の大綱」が策定されましたのは昭和五十一年の秋であります。五年経過いたしている判がましいことは申さないようにしたいと思いますが、あなたのいまの御議論は非常に傾聴いたしました。
  334. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 現下の財政事情を勘案しての御意見は、全くありがたい御意見でございます。しかしながら、今回の減税は、先般来の議長裁定というようないきさつがあって、それに基づいて六党の国対委員長会談によって合意をしたものであります。まことに残念でありますが、私の手を離れておることでございまして、これは国会の中でお決め願えたらば大変ありがたいと考えております。
  335. 和田耕作

    和田(耕)委員 お二人の関係責任者からのお答えをいただいたのですけれども委員長、いかがでしょう。この問題は、臨調を審議するこの特別委員会として、せっかくいままで各党の国会対策委員長が集まって——担当者は仕方がなかったと思いますよ、この経過から見て。しかし、たとえば四十人学級にしたってあるいは児童手当法にしたって、五年も十年もかかって国会で一生懸命やったことなんですね。その問題をとにかく三年なら三年ストップするとかあるいは手直しするとかということをこの段階で平気で——平気というのはおかしいのですが、とにかくやってのけるような臨調なんですね。こういうふうな臨調では、あの各党の御決定ではありますけれども、また大蔵省としても特別な法案を出さなければならない、これを実施するのに。いままだ法案を出す前ですね。だから、この委員会の理事会でこの問題の取り扱いを私はぜひとも検討していただきたい。  そうしないと、これはせっかくの臨調という精神がこの問題だけでゆがめられますよ。私はそれほど大事な問題だと思います。中曽根さん、ぜひともひとつ総理とも相談してもらいたい、いかがでしょう。
  336. 中曽根康弘

    ○中曽根国務大臣 この問題は政党間で正式に合意を見まして、議長さんもたしか御関与になった大変大事な問題でありますので、われわれ内閣側からはとやかく申すべき問題ではございません。各党間におかれて御協議願えればありがたい問題であると思います。
  337. 金丸信

    金丸委員長 和田君、ただいまの提案につきましては、なかなか重大な問題でありますから、理事会にかけて検討いたしたいと思います。
  338. 和田耕作

    和田(耕)委員 続きまして、仲裁裁定の問題と人事院勧告の問題についてお伺いをしたいと思います。  この二つの問題は、御案内のように憲法上労働者労働基本権を制約する代償としてできた二つの制度であるわけなんです。公務員に対しては人事院勧告という制度があり、公共企業体、三公社五現業に対しては仲裁裁定という制度がある。この問題について、最近新聞等で伝えられるところによりますと、衆議院でこの行革法案が成立する見通しが立ったときに仲裁裁定の問題について完全実施等の問題を考える、あるいはまた人事院勧告については、参議院で公務員二法の問題が成立したときに、その見通しが立ったときにこの問題を考えるのじゃないかという趣旨の新聞報道があるのですけれども、これは大蔵大臣、どうでしょう。行革のこの法案が通れば、あるいは公務員二法の問題が通っていけば大蔵大臣が心配されるような予算上の心配はなくなるのじゃないのですか。
  339. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 これもたびたびお話をいたしておることでございますが、この法案が通って、たとえば臨調関係で九千億とか、それから公共事業で抑え込み八千五百億とかゼロシーリングで六千億とか、そういうようなものが仮にうまく歳出抑え込みまたはカットができたといたしましても、中期展望で予定される歳入しか入らなければ、さらに四千億円程度の抑え込みといいますかカットをしていかなければならぬというのが実情でございます。
  340. 和田耕作

    和田(耕)委員 それは、せっかくの大蔵大臣のお答えですけれども、ちょっとおかしいのじゃないですか。もしそれだと、結局この二つの問題は解決する目安がつかない、結局国会で決めてもらって、補正でも組んでもらうしか仕方がないということになりはしませんか。つまり、私の申し上げるのは、この行革法案が成立するめどがはっきりついて、それで公務員二法も成立するめどがついたという段階でいまの仲裁裁定の問題と人事院勧告の問題は完全実施が処理できる、あるいは若干の付帯的ないろいろな希望意見があるかもわかりませんが、そういうふうに考えておかしいのですか。
  341. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 現にこの法案はことしの間に合わないわけです。これは来年以降の話で、ことしの予算がこれで余るという話ではございませんね。ですから、人勧とか何か言っても、それは第一にことしの話でございますから、したがってことしの予算の足しにはならないのじゃないか。  来年以降の問題につきましては、これで歳出カットはできます、確かにこの法案の中で四千百億円ぐらいのものができるということになりますけれども、それだけではまだ増税なしの予算編成まではいけないのですということを、ここ数日間るるお話を申し上げてきておるところでございます。
  342. 和田耕作

    和田(耕)委員 労働大臣、この問題はどのようなお考えですか。そして総務長官も。
  343. 藤尾正行

    ○藤尾国務大臣 お答えを申し上げます。  私の立場は、何といいましても労働慣行といいまするものが一番健全に守られていってほしい、こういう立場でございますから、それに近づけるようなあらゆる条件を進めていただくということを心から願っておるわけでございます。  ただいま和田委員からも御指摘がございましたとおり、仲裁裁定の問題は、ただいま大蔵大臣が申し上げましたような事情で、政府の手ではどうにもならぬ。その判断は国会に御判断をお願いしょうということでこれはお預けしてあるわけでございますから、国会の各党間でいろいろ御勘案を願ってこのようにやってくれといって決めていただきましたならば、私はそのとおりいくのではないかというように期待をいたしますし、現に、今日この段階におきましても、各党の非常に有力な方々がそれぞれの立場で一生懸命に、何とか道はつけられないものかということで懸命の努力をしておられるということでございますし、その最中でございますから、私がいまこの場で、やってほしいと思っておりますと言う以外に何かかんかというようなことを申し上げる時期ではない、かように思います。
  344. 中山太郎

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  人事院勧告の実施の問題につきましては、先生も御案内のように、八月二十五日の閣議決定、また財政の税収の問題で昨年も非常に厳しい状態でございましたが、昨年は人事院勧告が出ましてからちょうど四回給与関係閣僚会議を開きまして、十月二十八日に大蔵当局から財政上の見通しが立ったということで昨年は完全実施をするようになったわけでありますが、今年は八月七日と九月十八日、二回にわたりまして給与関係閣僚会議を開いておりますけれども財政当局は、昨年に比べまして税収状態がきわめて悪い、そういうことで見通しが立たないというのが第二回の関係閣僚会議状態でございました。  私どもといたしましては、この安定した労使関係というものを維持するために、引き続き給与関係閣僚会議を開きまして、その後の税収の状態を大蔵当局から説明を受けなければならない、そのように考えておりますが、できるだけ早く解決ができるように今後とも誠意をもって努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  345. 和田耕作

    和田(耕)委員 宮澤官房長官、お見えになったようですから、いまの仲裁裁定の問題と人事院勧告の問題についてお伺いしたいと思います。  いま御質問申し上げているのは、この委員会で行革の特例法案が成立する見通しがはっきり立ったとき、あるいはまた参議院で公務員二法が成立する見通しがはっきり立ったとき、こういうふうなことになればこの二つの、若干の保留の付帯の意見があるかもわかりませんが、完全実施の処理ができるんじゃないかという質問をしているのです。官房長官、いかがでしょう。
  346. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府といたしましては、仲裁裁定が公労法十六条の予算上、資金上可能であるとは必ずしも言えないという判断のもとに、国会の御判断にお任せを申し上げて議決をいただきたい、こう申し上げておるわけでございまして、ただいまの段階で客観情勢にまだ変化があったとは考えておりませんので、議決をお願いを申し上げたときの状態そのままで御判断を仰いでおる、こういう状況でございます。  お尋ねの点は、いろいろな意味で政治的な要素にお触れになったかと存じますが、政府といたしましては、議決をお願い申し上げたそのときの判断はそのままただいまも持っておるということでございます。
  347. 和田耕作

    和田(耕)委員 この問題が完全実施され出してからとにかく仲裁裁定の問題はもう長年になる。そして人事院勧告にしたってもう十年以上になる。その結果、だんだんと労使関係もよくなってきておるという事実もありますので、この問題余り詰めない方がいいという感じがいましておりますから、これでやめますけれども、ぜひともひとつ、この問題は今後の労使問題を考え——これは全く正当な一つの要求ですから、条件さえ整えば。そのことをひとつぜひともお考えになって善処をしていただきたいと思います。  続きまして、文教関係の若干の問題でありますけれども、これはたくさんの委員方々から御質疑がありましたから簡単にいたします。  まず、四十人学級の問題でありますけれども、この問題は、私はこれにタッチしたのは三年ほど前からですけれども、それ以前にもう十年近くいろいろやっていることなんですね。そしてやっとできたのが去年の国会、しかもこれは全会派一致の形でこれを通しておるのですね。いわゆる緊急であり、重要であるという趣旨のものが、一年たたないうちにこれは少し実施を延ばせという御決定があるわけですけれども、これほど臨調のいろいろな問題というのは大事な問題をいまやっているわけなんですね。これは考えようによりますと、国会の審議に対する不信任の一つの姿でもあるわけですよ、この臨調が扱っていることは。もう十年もそれ以上もさんざんと一生懸命審議したものを、一挙に学者や民間人の諸君のあれを中心にしてストップさしたり直したりするというのですから、国会の審議に対するある意味で不信任の意味を持つほどの重要なことなんですね。  そういうふうな問題のあることですが、これ率直に文部大臣にお聞きしますけれども、この段階で三年延ばすという。延ばしているうちにだんだんと生徒数が減っていきますな。結局これはやらぬでも済むという、そういう悪知恵はないんですか。
  348. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 お答えいたします。  この四十人学級の問題につきましては、もうたびたび申し上げておりますので、また改めて申すまでもございませんが、六十六年におきましては完全に計画どおり実施ができる。ただ、その間におきましての御質問の、本年をピータにしましての生徒数の減少という問題があることは御案内のとおりでありますが、六十年から六十六年の間におきまするその問題の処理につきましては、十分にひとつ検討いたしてまいらなくちゃならない、かように考えております。
  349. 和田耕作

    和田(耕)委員 確かにこの四十人学級の問題は、現在日本の小学校では平均すると三十三人だそうですね、一学級が。中学校では三十七人というわけで、もう四十人以下になっておるということも、まあこれ外から素人的に考えると、先生を動かしておれば済むじゃないかという感じも出てくるほどの実情なんですね。そういうことが確かに場所によって非常に要素は違ってくることもありますので、一応これはもう各党とも決めたことでありますから、これは実施して、そして適当な時期に問題があれば直していくということをやらなければいかぬと思いますね。そうしないと国会の審議がおかしくなります、このままであれすると。そういうことをひとつぜひとも気をつけていただきたいと思います。  最後になりました。学校の教科書の問題でありますけれども、教科書の問題は、ここにおる三塚さんが非常に勇気を出して二年ほど前に問題を提起されまして、非常に国民の関心を買ってきた。私も二つの総選挙を、もっと愛国心を持とうじゃないかと言って選挙をやって勝ってきたのですから、これはぜひともやらなければいかぬと思って、三塚さんに協力しているのですけれども、いろんな問題があって途中でへこたれることはないのでしょうね、文部大臣。
  350. 田中龍夫

    田中(龍)国務大臣 先生の御質問に対しまして、いささか私の方と立場が違うかもわかりませんが、へこたれるへこたれないという問題ではございませんで、各方面からのいろいろな御意見あるいはまた政党方面からの御意見に対しましても、りっぱな教科書をつくるという信念のもとに、あくまでもこの問題につきましては取り組んでおる次第でございます。  ただ、教科書会社が、学校現場を初めといたしまして各方面の意見を参考にしながら、教育的な適切な教科書をつくるという見地に立って自主的に努力をいたしておりますことについては評価をいたしております。
  351. 和田耕作

    和田(耕)委員 これはこの二年間いろいろな議論がありました。私どもはもっと愛国心を持とうじゃないかと言ってきたのですけれども、現在の教科書の中には愛国心という言葉がないとか、国を守るという言葉がないとか、権利ばかり主張して義務がないとか、あるいは公害等大衆運動があるとかないとかいうようなことが議論になっておりますけれども、これは一つの問題にしぼって考えますと、結局日本が独立国家としての精神状態をつくっていくかどうかというものに帰着していくと思うのですね。したがって、国家というものを正しく位置づけて義務教育で教えるか教えないかということだと思うのですね。  これは何も私どもはタカ派的なことを言っておるわけじゃないのです。一つの民主的な独立国家、平和を愛する独立国家としての国民として、正しく自分の住んでいる国を位置づけて、義務教育できちんと教えるということなんですから、これは何もおかしなことはないのです。民主国家あるいは平和国家としてのバランスのとれた教育というものをやらなければならないのです、国民の税金であれをやっているのですから。そういう問題を含めて、ひとつぜひとも内容等についてはいろいろな機関を通じて御検討を賜りまして、りっぱに改善の実を上げていただきたいと思います。  私の質問はこれで終わります。ありがとうございました。
  352. 金丸信

    金丸委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  353. 金丸信

    金丸委員長 この際、連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  本委員会において審査中の行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一環としての国の補助金等縮減その他の臨時特例措置に関する法律案について、地方行政委員会、大蔵委員会、文教委員会、社会労働委員会、農林水産委員会、運輸委員会及び建設委員会から連合審査会開会の申し入れがありました。これを受諾するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  354. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、連合審査会は来る十九日及び二十日の両日開会することといたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後七時三分散会