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1981-10-13 第95回国会 衆議院 行財政改革に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十六年十月十三日(火曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 小渕 恵三君 理事 海部 俊樹君    理事 藤波 孝生君 理事 三塚  博君    理事 佐藤 敬治君 理事 山口 鶴男君    理事 正木 良明君 理事 大内 啓伍君       天野 光晴君   稻村左近四郎君       小里 貞利君    加藤 六月君       梶山 静六君    木野 晴夫君       佐藤  隆君    齋藤 邦吉君       塩崎  潤君    塩谷 一夫君       澁谷 直藏君    竹下  登君       玉沢徳一郎君    中村喜四郎君       丹羽 雄哉君    橋本龍太郎君       松永  光君    三原 朝雄君       上原 康助君    木間  章君       沢田  広君    中村  茂君       森井 忠良君    安井 吉典君       湯山  勇君    横山 利秋君       有島 重武君    鈴切 康雄君      平石磨作太郎君    岡田 正勝君       米沢  隆君    安藤  巖君       東中 光雄君    藤田 スミ君       簑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鈴木 善幸君         法 務 大 臣 奥野 誠亮君         大 蔵 大 臣 渡辺美智雄君         厚 生 大 臣 村山 達雄君         農林水産大臣  亀岡 高夫君         通商産業大臣  田中 六助君         運 輸 大 臣 塩川正十郎君         労 働 大 臣 藤尾 正行君         建 設 大 臣 斉藤滋与史君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     安孫子藤吉君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      中山 太郎君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 大村 襄治君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      河本 敏夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官)         (北海道開発庁         長官)     原 健三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         管理局長    加藤 圭朗君         人事院事務総局         給与局長    長橋  進君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         総理府人事局長 山地  進君         総理府恩給局長 島村 史郎君         総理府統計局長 永山 貞則君         総理府臨時行政         調査会事務局次         長       佐々木晴夫君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         警察庁長官官房         長       金澤 昭雄君         警察庁刑事局保         安部長     谷口 守正君         警察庁交通局長 久本 禮一君         行政管理政務次         官       堀内 光雄君         行政管理庁長官         官房審議官   門田 英郎君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         管理局審議官  古橋源六郎君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  上野 隆史君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁防衛局長 塩田  章君         防衛庁装備局長 和田  裕君         防衛施設庁長官 吉野  実君         防衛施設庁総務         部長      森山  武君         防衛施設庁施設         部長      伊藤 参午君         経済企画庁国民         生活局長    小金 芳弘君         経済企画庁物価         局長      廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁総合         計画局審議官         兼物価局審議官 川合 英一君         経済企画庁調査         局長      田中誠一郎君         国土庁長官官房         長       福島 量一君         国土庁長官官房         審議官     川俣 芳郎君         国土庁計画・調         整局長     白井 和徳君         国土庁土地局長 小笠原正男君         国土庁地方振興         局長      柴田 啓次君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省矯正局長 豊島英次郎君         法務省入国管理         局長      大鷹  弘君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵大臣官房審         議官      矢澤富太郎君         大蔵省主計局次         長       西垣  昭君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         国税庁税部長 吉田 哲朗君         国税庁間税部長 篠原 忠良君         文部大臣官房長 鈴木  勲君         文部省初等中等         教育局長    三角 哲生君         厚生大臣官房総         務審議官    正木  馨君         厚生省公衆衛生         局長      大谷 藤郎君         厚生省児童家庭         局長      幸田 正孝君         厚生省保険局長 大和田 潔君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁医療         保険部長    入江  慧君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         水産庁長官   松浦  昭君         通商産業大臣官         房審議官    斉藤 成雄君         資源エネルギー         庁長官     小松 国男君         資源エネルギー         庁石炭部長   福川 伸次君         資源エネルギー         庁公益事業部長 石井 賢吾君         中小企業庁次長 木下 博生君         運輸大臣官房長 角田 達郎君         運輸省港湾局長 吉村 眞事君         運輸省鉄道監督         局長      杉浦 喬也君         運輸省自動車局         長       飯島  篤君         運輸省自動車局         整備部長    宇野 則義君         運輸省航空局長 松井 和治君         労働大臣官房長 松井 達郎君         労働省職業安定         局長      関  英夫君         建設大臣官房長 丸山 良仁君         建設省計画局長 吉田 公二君         建設省都市局長 加瀬 正蔵君         建設省道路局長 渡辺 修自君         建設省住宅局長 豊蔵  一君         自治大臣官房審         議官      小林 悦夫君         自治省行政局長 砂子田 隆君         自治省行政局公         務員部長    大嶋  孝君         自治省財政局長 土屋 佳照君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         内閣官房内閣参         事官      中村  徹君         外務大臣官房領         事移住部長   藤本 芳男君         会計検査院長  大村 筆雄君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     吉井  浩君         行財政改革に関         する特別委員会         調査室長    石川 健一君     ————————————— 委員の異動 十月十三日  辞任         補欠選任   森井 忠良君     木間  章君   安井 吉典君     中村  茂君  平石磨作太郎君     有島 重武君   小沢 和秋君     安藤  巖君   寺前  巖君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   木間  章君     森井 忠良君   中村  茂君     安井 吉典君   有島 重武君    平石磨作太郎君   安藤  巖君     簑輪 幸代君 同日  辞任         補欠選任   簑輪 幸代君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   藤田 スミ君     正森 成二君     ————————————— 本日の会議に付した案件  行政改革を推進するため当面講ずべき措置の一  環としての国の補助金等縮減その他の臨時の  特例措置に関する法律案内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  行政改革を推進するため当面講ずべき措置一環としての国の補助金等縮減その他の臨時特例措置に関する法律案を議題とし、質疑を行います。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤敬治君。
  3. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この臨調の第一次答申の中に第二というところがありまして、「緊急に取り組むべき改革方策」、その中の三の(三)というところに「中央地方」という項がございます。これはそれの十二ページにあります。この中に「国、地方を通ずる行財政の簡素・効率化を図るために、地方自治の原則に立脚しつつ、地方における行政効率化及び支出の節減合理化を国に準じて行う。」こういうふうに書いてあります。  私は、それと今度のこの行革案というものを二つ比べてみまして大変矛盾を感じるのです。というのは、この国会提出されておりますこの法案、これは行政効率化あるいはまた合理化をやるという趣旨とは、法案自体が大変かけ離れたものだ、こういうふうに感じるのです。  たとえば、厚生年金を国が四分の一カットする、ところがそれを今度は補てんする方法が——きのうもわが党の森井委員からお話がありました、何が何やらさっぱりわからないような方法でやる、しかもそして後年度に複雑な影響を残す。あるいはまた、これから論じますけれども地域特例の問題に関しましても、削って、さらにそれを地方債で埋め合わせして、そしてさらにそれを半分は交付税に入れる、そしてまた残りの半分を交付税で見るような見ないような、非常に漠然とした、ややこしい、こういうような措置が至るところでとられておるわけでございます。これを見ますと、一体臨調答申にあるような、国、地方を通じての行財政簡素化効率化、これを図るための趣旨というものが、この法案自体でどこで一体生かされているのか、これを非常に疑問に思うのです。効率化合理化どころか、かえってこの事後処理が複雑でわかりにくくて手間がかかって、大変な、いわばへんてこな法案になっておる。この国会はいままでの国会と違うのです。これは行革国会なんですね。行政改革をする国会。その意図するところは、いま言いましたように国、地方を通じての行政簡素化能率化、これを図らなければいけないこの国会に出してきた法案というものが、まことに複雑で、後年度に大変な手間のかかる、災いを残すような法案であります。国会趣旨というものと出している法案というものの非常な矛盾を私どもは感ずるのですが、一体これでいいと思うのか。本来ならば、こんな法案行革国会と名のつく国会に出してきたならば、とてもわれわれは審議されるようなしろものじゃない、こういうふうに思うのですが、総理と担当する行政管理庁長官の御答弁を願います。
  4. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 臨調答申を見てまいりまして、国と地方行政機能分担、この問題に触れておるわけでございますが、国と地方行政上の機能分担ということは、行政の円滑な、また効率的な運営をする上から非常に大事なことである、このように思うわけでございます。一般的に申し上げますならば、その際におきましてはできるだけ地方住民に密着した行政はこれを地方に移譲する、こういうことを考えておるわけでございます。  いま佐藤さんは、この国会提案をされておる特例法案の内容を見てみると、その趣旨に沿うかどうか、こういう疑問を投げかけておいでになります。しばしば当委員会でも私申し上げておりますように、臨調の第一次答申の中で私どもが緊急を要するものとして取り上げましたものは、五十七年度予算編成に当たりまして増税のない予算編成をしたい、五十九年度特例公債からの脱却ということを目指して増税のない財政再建を進めたい、こういう観点から、臨調に対しましてそのような緊急を要する問題についての御答申お願いをしたわけでございます。その第一次答申を受けましてまとめたものが、今回御提案を申し上げておる法案でございます。佐藤さんが御指摘になっておりますような諸問題につきましては、逐次臨調の方から答申が出ると思います。これらを尊重いたしまして、中央地方機能分担、そして簡素で効率的な行政運営ができますように措置してまいりたい、このように考えております。
  5. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今回の法案は、八月二十五日の閣議決定を受けまして、その閣議決定で当面緊急に行う行財政改革の大綱を決めました、その法律に関する部分国会に上程されたわけであります。八月二十五日の閣議決定は七月十日の第一次答申を受けてつくったものでございますが、その中には、この補助金整理統合の問題のほかに、たとえば、国家公務員の五年間五%削減とかあるいは地方公務員、あるいは地方公務員給与問題に関しても措置を決めて自治省が指導することになっております。あるいは特殊法人に対する役員の削減等々決めておりまして、その一環として今回法律事項に当たる部分お願いをしてまいっておるわけでございます。  それで、臨調といたしましては来年の初夏に向かって第二次答申を急いでおりまして、そのところでいよいよ本番である中央地方、あるいは官業民業、あるいは中央行政組織等々が答申として出てくる予定でございます。  そのように仕事の区分けをして、当面は緊急財政対策一つの焦点でございまして、それで調整を行いつつ、その財政状況の展望を見ながら諸般の政策を次に展開していく、そういう考えに立って今回の法案お願いしているものでございます。
  6. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 何でもかんでも土光大明神の御宣託を鞠躬如として守っている、こういうようなお話でありますけれども、私はそんなことを言っているのじゃないのです。簡単に言いますと、いま出しているこの法律そのものが改革しなければいけないような法律なんです。元来、こんなでたらめというか複雑というか、わけのわからないようなものを出して、そして、わけのわからないような償還をいつ、どうして、どう返すかもわからないような、きのうもさんざん議論がありましたので申し上げませんけれども、ああいうようないわばでたらめなような方法で返すとか、こういうことを言っているのです。それが年金でもあるいは特例措置の問題でも随所にあるのですね。ああいうようなことは、本来ならば行政改革でもって改革しなければいけない部面なんです、こんなことをやっちゃいかぬと。それを、いやしくも行政改革国会と名がつくこの行革国会にそれ自体改革しなければいけないような法案を出してくる、これは少し私は不見識だと思うのです。どうですか。
  7. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 行政改革を進行させるにつきまして、いろいろ諸般の情勢も配慮いたしまして、地方に対しても急激な変動やショックを与えないように配慮しているところもあります。また、中央地方調整をある程度時間をかけて合理的にうまくやっていこうという配慮もございます。  そういうような関係から、必ずしも一刀両断のもとに事態は解決されておりませんが、しかし、これはやはり大きな前進でございまして、総理も申されましたが、補助金削減するという大きな法案昭和二十九年の補助金削減一括法案以来初めてのことなのでございまして、削減というか調整というか、そういう行為に出ることができましたのは、やはり国民や各党の御協力のたまものでできたもので、感謝しておる次第なのであります。
  8. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私は、やり方にしても、こういうようなわけのわからないようなやり方じゃなくて、もっときちんとしたやり方があるのではないか、こういうふうに思います。いつまでもこれをやっているわけにいきませんので、これで一応終わります。  ことしの七月三十一日に、地方制度調査会は、この第二臨調一次答申地方財政に関する問題について、行政改革理念に合致しない、こういう趣旨でもって異例の意見書総理提出いたしました。これを受けて、総理はどういうふうに思いますか。いかなる点が行政改革理念に合致しないのだというふうに思いますか。
  9. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 地方制度調査会は独自の法律に基づいて、その法律趣旨に基づく観点からいろいろ勧告をなさっておりますが、やはり名前が地方制度調査会でありますように、非常に地方を中心に地方に重点を置いたお考えからお考えになっておられる。これは憲法上、「地方自治本旨」という言葉がございますから、その線に忠実に沿った御見解であるだろうと思います。  しかし、また一方において国政全体の統合考えてみますと、必ずしもその「地方自治本旨」という考え方において解釈が一致しているとは限らない点もございます。それは地方事務官制度の問題とか、そのほか地方支分部局の問題とか、いろいろいままでそういう懸案事項があったわけでございます。それらの問題につきまして、臨調でいろいろ大局的見地から判断を願って、そして今回はそれを実行しよう、尊重しよう、そういう考えに立脚しておりますので、地方制度調査会のお考えはお考えとしてわれわれも理解しつつ、最終的に国政全体の中にそれを位置づけるという考えで進めてまいりたいと思っておる次第です。
  10. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私どもはそういうふうに考えてはおりません。この意見書というものはもっと大変意味が深いものじゃないか、こう思います。同じものを二つの審議会でどんどんやって意見の食い違いができてくると、これは大変なことになります。  この意見書提出というものは、五十六年三月二日に、臨時行政調査会地方制度調査会との間に、自治大臣行政管理庁長官との申し合わせがありました。「臨時行政調査会地方制度調査会との関係について」という文書であります。この中に、「臨時行政調査会は、行政制度及び行政運営改善合理化について調査審議する機関として設置されるものであり、地方制度調査会との関係におけるその調査審議範囲は、前回の臨時行政調査会におけると同様であり、地方自治本旨を尊重し、地方自治の問題については、国の行政との関連において調査審議するものであること。」こういうふうに言われております。  このことはいわば臨調守備範囲を示したものでありまして、臨調がやるべきことは、地方自治に関して言うならば、国、地方を通ずる行政事務の再配分だとか、国の出先機関調整だとか整理だとか、国庫補助に絡む国の縦割り行政の弊害を除くとか、あるいは国と地方の財源の再配分だとか、あくまで行政制度及び行政運営改善に関する基本的な事項調査審議する、こういうふうな形でもって第一臨調で取り上げておるのでありまして、私はこういう意味から、したがって、国保の国の負担金をぶった切るとか、あるいはまた児童扶養手当特別児童扶養手当を県に負担させるとか、地域特例を引き上げるとか、補助金の一律削減だとか、こういうのは一つ越権行為ではないかというふうに考えます。特にこの前の国会継続審議になりました地方公務員定年法、こんなものは早く通してしまえ、こういうようなことは臨調として言うべき筋合いではない、私はこういうふうに思います。特にこういうような、あれも削れ、これも削れということになりますと、地方団体としては仕事をそのままにして金だけを削ってしまう、こういうことについては、行政サービスの低下につながるというので、これは本末転倒だ、こう考えて猛烈な反発をしているのはあたりまえのことであります。  またさらに、第一次答申でいろいろなことを取り上げておりますけれども、この中で一番大きく取り上げているのは公務員制度についてであります。私、勘定してみましたら、まるまる四ページほとんど地方公務員のことだけ書いてある。数を抑制しろとか、あるいは給与を抑制しろとか、そういうことばかり書いてあるのです。まさに、これを見ますと、何か公務員を抑えつけるためにこれが出てきたような感じさえします。そうなりますと、公務員から猛烈な反発を食らうのは当然であります。そしてそこにイデオロギーが持ち込まれる。いろいろな問題で国民的な合意を得なければ達成できないところのこの行革の問題が、国民的な合意どころか分裂をもたらす、こういうような危険性が非常に出てきて、いま国論がかなり分裂しておるのじゃないか。  たとえば第一臨調ではこういうことを考えています。この第一臨調ですね、調査会設置法の成立に当たり、衆参両院で、行政改革公務員人員整理身分変更を目的としているものでないこと、重要事項については全員の意見の一致を必要とするという附帯決議が行われ、これにおいて運営されている。これは、この行政改革は非常にむずかしいものであるから、国論を統一してやらなければなかなかいかない、皆さんもそう言っている。国民理解がなければできないと言っているのです。その国民理解を求めなければいけないのに、わざわざ公務員を刺激したり知事会を刺激して反対をさせたり、こういうようなことは、この第二臨調というものが自分の守備範囲を逸脱して、余り細かい、末梢のことにどんどんささってきたのでこういう結果になったのではないか、こういうふうに私は強く感ずるわけでございます。いかがでありますか。
  11. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 第二臨調も、われわれ政府当局も地方自治本旨を尊重するという点は十分配慮してやってまいりたいと思っております。ただ、国の行政地方行政とのかかわり合いに関する部面においては、全国的な統一性とかあるいは均衡や公平性ということが要請されるわけでありますから、そういう面から地方制度の問題も対象として扱われるということになります。  その中で、いろいろな問題がございますが、従来いろいろ叫ばれて、特に第一次臨調のときでもわりあいにその点は指摘されておりました中で、今回のように積極的にそれを唱えるというところまでいきませんでしたけれども、その後の情勢から見て、非常に大きくふくれてきた地方公務員の問題も看過すべからざる情勢に立ち至った。そういうわけで、過去十二年間にたとえば国家公務員の場合は総定員法を設けまして、その結果、たとえば一般行政職においてはネットで約二万七千人減っておるわけであります。しかし地方公務員の場合は、それがネットで九万五千人もふえてきておる。あるいはほかの職分まで入れますと、国家公務員は約一万人弱減っておるのに対して、地方公務員は約八十万人も増員されておる。それにはそれぞれの理由もございますけれども、これは精査をして簡素、効率化すべき分野でもあります。そういう面から今回はその点はかなり早く改革を要する部面として臨調でも取り上げたのでございまして、別に他意があってやっているわけではございません。
  12. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 要するにこの臨調はもっともっとやるべき本来的な任務がたくさんある。そういうのを全然手をつけないで、やらなくてもいい、たとえば大蔵大臣がやればいい、あるいは地方制度調査会がやればいいような補助金の打ち切りとか、そういう個々の問題に余りに深く過度に介入し過ぎるのは筋違いだ、こういう批判が地方制度調査会からの意見となって出たのだと私は思います。(「これは総理大臣の諮問機関だよ」と呼ぶ者あり)いま両方とも総理大臣の諮問機関ですからね。それで、いま管理庁長官から、地方は人数がよけいだ、こういうことを言っています。私はこれに対して別に反発するつもりはなかったのですけれども、余りにも、国家公務員だけが少なくなって地方公務員だけがどんどん多くなった、こういうようなことを言われておりますので、後でまた詳しく申し上げますけれども、一言言っておきます。  機関委任事務が県のものは二倍半にもなっている。市町村に関しても二倍にもふえておる。さらにいろいろな問題がどんどんふえておる。警察、消防、教育、いろいろなもの、そのために上がったのです。だから単に上がったからこれを第二臨調のこれでもって一番多く取り上げなければいけない理由にならぬと私は思う。むしろ改正すべきは、国がこういうような行政改革をもっと早くやって、そして機関委任事務であるとか、補助金の煩雑な手続を軽減するとか、いろいろなことをやっておればこんなにふえなかったのです。自分でやっておきながら、あたかも地方が悪いかのごとく事あるごとに批判するという態度は、地方反発を招いて行政改革にも余りいい効果を及ぼさないのではないか、こういうように考えわけでございます。  今回、臨調は初めから行政改革と個々の政策が全く混同されて、行政改革の名前さえつければ何を取り上げてもいいというような風潮がみなぎっておる。しかし、行政改革というのは行財政上の制度や運営を刷新することでありまして、それをしないで歳出を単に削る、これは行政サービスの切り捨てであって、行政改革などという名前で呼ばれるものではない、こういうような混同というものがいま総論賛成、各論反対だと言って無用の摩擦を起こしている原因になっておる、こう私は思います。国民の期待している行政改革は、まず官僚機構自体の抱えているむだを徹底的に省いて、それによる経費の節減で増税をやめたり行政サービスの低下を防ぐことであると私は思います。けちな補助金を削って大衆を苦しめても——それ以外に臨調のやることは数限りなくたくさんあるはずなんです。その追及をおろそかにして政府の隠れみのの役割りを果たすなどということは、国民の期待を著しく裏切るものである、私はそう言わなければいけないと思います。答弁は要りませんけれども、今後の臨調のあり方について一言警告して、本来の任務に戻るようにお願いいたしたいと思います。  そこで、それに関連しましてちょっと申し上げたいのですが、八月十四日付の某紙の行革討論会で、財界の代表として臨調委員になっております旭化成工業の社長宮崎輝氏と鈴木都知事の対談が載っております。これをちょっと要点だけ読み上げてみますと、私どもから見ると大変びっくりするようなことが書いてある。宮崎さんはこう言っておる。  民間人の立場からいうと、国と地方という言葉は奇異な感じがする。われわれは全国に工場を持っている。ところがいろんな法令に縛られて許認可手続きは複雑。住民や議員とのつながりもある。小さな市では、われわれが事務処理を手伝わないといけない。スピードが遅くて、民間の活力が鈍らされている。地方制度調査会が三十二年に道州制を答申していますが、もう少し広域行政にできないものか。知事も官選にすれば、国の出先機関との関係も今よりうまくいくと思う。 こういうような発言をしております。さらに、国も地方人員整理をやりなさい。国の総定員法、あれは地方にもできないか。あるいはまた、私は驚いているんだが、どうも日本の中に国と地方という独立国が二つあるという感じだ、こういうようなことも言っておる。それから革新系の首長になるとどうしても人が多くなったり給料が上がったりします。それから人も仕事法律もできるだけ減らし、一番欠けているところ、たとえば防衛の強化、通商、外交、そして道路政策と産業政策、このバランスをとって、そういう総合政策に国はもっと力を入れるべきです、こういうようなことを言っておる。あるいは財政的には地方の方が中央よりずっといい、こういうようなことをたくさん並べておるのですが、こういうことを見ますと、臨調というものは財界出身者が非常に多い。  たとえば臨調委員九人のうちの五人が大企業の社長とかそういう人ばかり出ておるわけです。したがって、こんな考え方でこの臨調が進められて、第二次報告が一体どういうものが出てくるかということに私どもは非常に危惧を感ずる。まさに財界主導、財界のための行革になるような気がするのです。こういう人たちが行政効率化を急ぐ余り中央支配を強化せよというのだから、私どもは非常に心配でございます。現に、臨調の中には地方交付税率を切り下げて中央の財政指導を強化しろ、こういうような意見も非常に強くあるわけです。こんなことを考えてみますと、どうも臨調の人選というものが、もう少し広く各層から集めてやらなければ、よく世間で言われておりますように、財界主導の財界のための行政改革になるのではないか、こういうふうな批判も当たらないわけでもないという気がします。これに対して総理、行管庁長官の御意見を求めます。
  13. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 宮崎さんは長い間監理委員もしておられまして、日本の行政機構に対する研究者としては非常に高い水準の権威者でございます。自分でも会社を経営して合理的な大改革をやった方でありますが、その経験から見ても、というところから長い間の見識に基づいて御発言をなすったものであり、日本は憲法で言論の自由が保障されておるのでありますから、その範囲内におきましたら、そういう声をわれわれは十分よく聞いて政策の資にしなければならぬと思っております。  地方問題についていろいろいま御意見を承りましたけれども、そういう御意見があることもまた知っております。そういうさまざまな多角的な意見を総合しながら、一つの大きな国民合意に再形成していこうというのが今回の臨調趣旨でありまして、委員にいたしましても財界に偏っていることはございません。委員長の土光さんほか瀬島さんと宮崎さんが委員であります。三人でありますが、土光さんは会長で、ほとんど主宰するだけであります。それで、あとは官界とか、労働組合からは今回一人ふやしまして二人お願いしてあり、ジャーナリストであるとか、そういう方面で大体日本の各界各層を代表し得るようにバランスをとってつくっておるのでありまして、決して財界主導であるとか財界のための行革であるということはないのであります。
  14. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 まあそれは見方でしょうけれども、私の見るところでは九人のうち五人が財界の出身である、こう思います。  それはともかくとして、第二臨調の掲げる課題の中には行政の民主化ということが確かに入っております。しかし、こういう市場原理にとらわれている財界出身の委員たちがこの点をどれだけ理解しているかということは、私は非常に心もとないと思う。こんなように人たちには、いまこれを見てもわかりますように、地方分権などという思想はさらさらない、むしろ地方自治体に対する不信感の方が非常に強い、私はそう思います。しかし、今回の行政改革地方を無視しては改革は絶対にできませんので、その点について十分留意しながらこれからひとつ進めていくように私からもお願いしておきたいと思います。  第二番目は、国と地方を通じての行政制度の改革の問題について多少論じてみたいと思います。  先ほど申し上げましたように、今日大多数の国民が期待している行政改革は、官僚機構が抱えるむだを徹底的に省いて、それによる経費の節減で減税を行い、行政サービスの低下を防ぐということであります。だとすれば、国と地方を通じての行財政簡素化効率化は今度の行政改革の最大の眼目にならなければいけないと思いますが、どう思いますか。
  15. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 お示しのとおり、国と地方とをよく調和分合させて国民全体が行政に対して恩恵を感じ、また感謝してくれるような体系につくっていくことが大事であると思います。
  16. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 今日、国全体の仕事のうちの七割を大体地方が実施しておる。国は三割の仕事の担当をしておる。しかし財源から見ますと、逆に国が七割持っていて地方が三割を分配されているということはすでに大体の常識となっております。つまり、金と仕事、七割と七割の金と仕事がオーバーラップしているこの四割の中に国と地方仕事と金、これが複雑に交錯している分野であります。この分野の中で地方はいろいろな制度によって国からがんじがらめに支配されている、こういう形がいまの地方と国を通じての形だと思います。その典型的な道具として使われておるのが補助金であり、あるいは委任事務、特に機関委任事務であり、起債であり、許認可の問題である、こういうふうに思います。この三つの、たとえばこういう制度こそが、余りにも繁雑な手続のために国と地方とに、特に地方に対して人と金の膨大な浪費を強いている元凶である、こういうふうに私ども考えております。したがって、今回の行政改革に対する国民の期待にこたえるためには、この繁雑な事務手続を簡素で効率的なものに変えなければいけない、これが一番大事なところではないか、私はこう思っておりますが、総理長官、それからもう一つ大蔵大臣、自治大臣のお考えを述べてください。
  17. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点は同感でございまして、そういう方向で改革していきたいと思っております。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私も同感でございます。
  19. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 私も同感でございます。そのとおりだと思っております。
  20. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 各大臣、政府の皆さん、こんなことは百も承知であることは私も百も承知であります。しかし、知っているということと実行するということは別のことであります。釈迦に説法であるはずの政府は、これまで第一臨調や第十七次地方制度調査会等、大変りっぱな国、地方を通じてのいろいろな提言がされております。大変りっぱな答申がすでに出ております。しかし、それにもかかわらず、百も承知のそう思いますという同感をしている皆さんが、結局何もやらなかった。何をやりました。何にもやらなかった。  そこで私はこのときに当たって、いまやるべきこの煩瑣な事務手続、これをどういうふうにしたらいいか、この問題についてもう一遍、わかりながらあえて取り上げてみたいと思います。  私は、常任委員会地方行政委員会でありますので、こういう問題にかなりな興味を持っております。(「興味じゃない、関心だよ」と呼ぶ者あり)関心を持っております。ただ、急にこの行革委員に入ってまいりましたので、いささか勉強不足なところがありますが、いろいろな議論をしても、これは百も承知のことでありますのでしようがありません。そこで、勉強不足で自分の資料を余り持っておりませんので、幸いにして各新聞がこの問題をたくさん取り上げて新聞に掲載されております。この新聞記者の皆さんの労作をひとつおかりいたしまして、この問題を論じていきたいと思います。  まず、補助金の問題であります。  一つは、零細補助金の問題でございます。こういう例が書いてあります。大阪府豊中市は、五十五年五月、児童福祉法に基づく事務費、五十四年度補助金五万八千七百十円を国から受け取った。施設に入っている子供たちの医療費の支払い、府との連絡、研修会などの事務費をもらうために、同市福祉事務所が府に提出した書類は、まず、交付申請書、交付申請内訳表、歳入歳出予算抄本、年度末には事業実績報告書、精算書、事業報告書、歳入歳出決算見込み抄本、計七つの書類は一つ一つ厳しくチェックされた。その結果、十九万二千円を申請して、認められたのは事業費にはほど遠い三分の一である、こういうふうに書いてあります。また、大阪府の場合に、三十二市町に平均三万三千六百二十五円が支払われた。泉大津市など四市の補助金はたったの一万円。各市町とも事務手続は府を通して行われたので出張旅費はかからなかったが、自治体はこの補助金をもらうために人件費相当額約二万円と紙、コピー代などの需用費約千円を支出しており、これらの経費を差し引くと自治体がこの事業で受け取った金額は平均一万二千円、泉大津市などは赤字となり、なぜ補助金を申請したのかよくわからない結果となった、こういうふうに出ております。  こういうふうに零細補助金というものは手間がかかって、どうも実効がない。これが大変たくさんあるのに、さっぱり実効が上がる補助金になっていない。各地方から零細補助金の打ち切りということが非常に強く唱えられております。全国市長会は昨年の七月に国庫補助金の整理合理化に関する改善策を提言し、この中で一般財源とすべき国庫補助金として三十一件を挙げている。婦人、更生相談所の事務費、結核、法定伝染病の予防費、予防接種費補助金、こういうものが主なもので、いずれも額が少なく事務手続が複雑である。また、建設省の街路事業費などをやり玉に上げて、手続の簡素化を要求している。こういうような要求があちこちにたくさんあります。神奈川県の例では、八十九万円を獲得するのに経費が五十六万円もかかった。こういう例が各市に枚挙できないほどたくさんあるわけであります。  さらにこういうような手続上の不満を訴えているのもあります。建設省関係補助金でいいますと、補助金をもらうために、まず前年度の六月に交付方針の説明をし、地方で事業計画を作成し、省庁と地方の第一次の事前協議をし、省庁の大蔵省への概算要求をし、省庁、大蔵省へ陳情し、国の予算原案を決定し、地方が事業別に二次要求し、省庁による内示、地方が交付申請、省庁の審査、交付決定、事業の承認、事業の執行の概算払いの請求、省庁が概算払い、事業の変更申請、承認、省庁への実績報告提出、省庁による審査、現地調査、地方に対する確定通知、省庁の地方に対する精算払い、会計検査院の検査、これは挙げてみますと大変な手続なんです。読むだけでも大変な手続になってきておるわけです。(「もらわなければいいんだよ」と呼ぶ者あり)そうなんです。もらわなければいいんです。ところが、これをもらわなければその次のものがもらえない。実績をつくっておかなければくれない、だからこれをどうしてももらわなければいけない、こういうような形になっておるわけです。  補助金を出す側にとって、何というか、地方に金をやれば何をするかわからない、むだ遣いをするかもしれないという地方に対する一つの不信感がこの中にあるのじゃないか。何でもいいからがんじがらめに縛っておかなければ地方などというものは何をやるかわからないという一つの不信感があるんじゃないか、こういうふうに私は思っております。  しかし、必ずしもそうだと私は思いません。最近の地方自治体というものは決してそんな昔の役場のようなものではないと私は思います。確かに敗戦後のときにはそういうことが、事務能力がない、不足のあったこともあるかもしれませんけれども、いまは村の役場でさえも大変な事務機械を備え、課制をしき、きちっとした体制を整えて大変な事務能力を持っておるわけで、ある意味では最近では国よりも先取りをしていろいろなことをやり、国が後からそれを追っかけている、こういうようなところさえ次から次と出てきております。  たとえば、武蔵野における日照権の問題、マンション規制の問題、あるいは私どものいま参議院の議員をやっておりますところの池田町のワイン町長と言われております丸谷さん、これは企業経営まで成功させておるというようなりっぱな経営の業績を残しております。また私どもの同僚である社会党の衆議院議員、前旭川市長の五十嵐さんは皆さん御承知のようにりっぱな町をつくって、全国の模範となっている。(「ここにいる」と呼ぶ者あり)あそこにおります。そういうような大変な行政能力を持っておりまして、皆さんから不信感を買われるいわれはないと私は思いまして、もっともっと地方を信用して、こういうことに対して積極的に煩瑣な手続というものをなくするように取り組む必要があるのではないかと私は思います。  さらに、これに対していろいろなあれが報告されております。たとえば複合施設の問題に関しまして、こういうおもしろい報告がされております。ある町で総合文化センターみたいなのをつくった。ところが、そこへ行ってみますと、そこの係長は大変いろいろな名前を持っておる。教育委員会の社会教育課の社会体育係長兼管理係長、中央公民館防火管理者、老人福祉センター、働く婦人の家、勤労青少年ホームの各主査を兼ねている。なぜこういうふうになったかというと、ある一つのものをつくるために、官庁のセクトがあってどうしても総合的なものをつくれない。ところが、財政力の乏しい市町村にとっては、こういう文化施設というものをばらばらにつくることはとてもできない。そこで何とかしてこれをまとめるためにというので、こういうへんてこりんなものができ上がったわけであります。中央公民館は文部省の所管、老人福祉センターは厚生省、働く婦人の家と勤労青少年ホームとは、ともに労働省であるけれども、前者が婦人局、後者が少年局と全部担当が違う。国から補助金をもらうためには、一つのものをつくるのにその設備ごとにいろいろな条件がついて、その設備ごとに大変な書類を出さなければいけない。同じ労働省の施設であるのに担当の局が違うと、両方に図書館をつくれ、料理室をつくれ、便所をつくれ、こう言ってくる。こういうようなことを何とか一つにしてほしいと希望してもなかなか認めてくれない、こういうようなことも報告されておるわけでございます。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕  こういうことをいろいろ考えてみますと、これは大変ないわゆる繁文褥礼、いま、はやりませんけれども、大変な煩瑣な手続があるということがわかります。こんな補助金はきっぱりとなくしてしまえば非常にさっぱりすることになりますけれども、なかなかそうきっぱりとさっぱりするわけにはいきません。特に問題になるのは財源の配分の問題で、これは大変むずかしい問題なので簡単にはいかないと思います。だから、余りむずかしいことをやれと言っても、皆さんやる気がないでしょうから、しかしせっかく今回行政改革を命を張ってやると総理は言って、やる気になっておりますので、やる気にさえなれば簡単にやれることを私は二つ申し上げてみたいと思います。  私がこれから言うことは本当にばかみたいな簡単なことです。しかし、さっきも言いましたように、簡単だけれども決してつまらないものではございません。これをやっただけでも大変な効果があることだ、こう思っていま御提言申し上げます。  一つは、補助金問題について、すでに意義は認められないけれども惰性でやっている補助金、あるいはこれに近いもの、こういうものをこの際断固として整理してしまう。非常に簡単でしょう。しかし、やれますか。各省に全部ありますから各大臣にお尋ねしますが、おたくの役所にこういうような補助金がありませんか。大抵一つや二つ必ずあると思いますが、どうか行管庁長官からひとつ話してください。
  21. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 今回の七月十日の第一次答申の中におきましても補助金整理の標準をつくっておりますが、その中にいまお示しのような項目がございまして、それらにつきまして各省ともウの目タカの目でいま探しておる、そして臨調と協力して思い切ってそういう惰性的なものをこの際掃除しよう、そう考えておるところでございます。
  22. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私は、あなたの役所に、こういうような惰性でやっているような、切ってもいいような補助金がありませんかと言って聞いているのですよ。
  23. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ないとは限らないと思います。目下、大いにそれを検索中でございます。
  24. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大蔵省にはないと思います。
  25. 田中六助

    田中(六)国務大臣 私の方は産炭地振興法という法律がございまして、これは十年延長になったわけでございます。これに関連いたしまして、八道府県に対しまして地方債の起債を許しておりまして、これを産炭地振興法の十条で利子補給をやっております。それから十一条で政令都市、たとえば北九州市とか福岡市、こういうところに事業の促進のためのかさ上げ制度という二つの制度を設けておりまして、それは六分の一だけいままでの補給金あるいはかさ上げ制度を縮小するという案でございます。
  26. 村山達雄

    ○村山国務大臣 厚生省は、五十六年度すでに三十五本廃止ないしメニュー化をいたしました。なお、今後もその線で検討してまいりたいと思います。
  27. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 自治省は非常に補助金の少ないところでございまして、惰性でやっておるというようなものはございません。
  28. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 不急不要の要らなくなったような補助金というものはわが省に限ってございません。いままで毎年、行政改革補助金の近代化、合理化というものをやってきておるわけでありますから、そういうものはいままでの間においてカットをし、統合をし、メニュー化をいたしております。今回も千二百件ほどある補助金も、もっと合理化し、もっと近代化して効率的に使おうということで、総合的にこれをまとめまして六百件にいたして概算要求をしてあるところであります。
  29. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  建設省関係はすべて公共事業費でございますので、そうした関係に類することはありません。
  30. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま聞いてみますと、ほとんどこういうものはない、したがってこういうものを改革する必要はないということなんですね。しかし、私どもから言いますと、こういうような意義が認められない惰性でやっているようなものはたくさんあると思います、後から出てくるでしょうけれども。まあこういう認識がなくて、いま行管庁長官はないことはないでしょうと言っているけれども、各省から聞いてみるとほとんどこれはないようでありまして、これからの展開がかなり見ものでありますけれども、まあこれはこれでいいでしょう。とにかく、こういうものを切るということが非常に大きな繁文縟礼をなくする。一方では金は出ていき、一方では経費の節減という面で、必ずやらなければいけないことだと思います。  それからもう一つ二番目は、特にこれは廃止した方がいいのは、いま新聞をかりて申し上げました零細補助金であります。これはもう絶対に排除すべきであると私は思います。そのかわり地方には、一々ひものついた金ではなくて、地方税あるいは交付税、こういうような財源を付与して、この零細補助金は莫大な数に上りますので、絶対に切った方がいい。あるいは人口段階でこの額を分けて、ある人口以下の都市には、ある金額以下のものは許可しないとか、何かこういう形で、絶対にこの零細補助金というものは切るべきです。これは先ほど申し上げましたように実効は何もない、しかしながら金は大変かかる、こういうような行革には一番やらなければいけない問題でありますので、ぜひひとつこれはやった方がいいと思います。  もう一遍各大臣にお尋ねしますが、あなたの役所にはこういうような零細補助金がありますか。
  31. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 零細という額をどの程度から零細と言うかと、そういうことでございますが、まあ百万以下というようなものであるとすれば、われわれの方にはないと思います。しかし、各省庁の中には市町村段階までいきますと四十万とか三十万というようなごく零細なものもあるようでありまして、そういうものは佐藤さんおっしゃるようにこの際思い切って改廃すべきであると考えております。
  32. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大蔵省にはないと思います。
  33. 田中六助

    田中(六)国務大臣 先ほど申しましたように産炭地振興法の八道府県などにそういうものはございます。
  34. 村山達雄

    ○村山国務大臣 五十六年度整理いたしました三十五本の補助金の中には、先ほどおっしゃったもう漫然とやっているもの、それからいまおっしゃっておる零細なものを含んでおるわけでございます。今後も検討してまいりたいと思います。
  35. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 時間の関係で、あとの大臣は要りません。  いま申し上げましたのは、私は、ぜひひとつ行政改革というものは本格的なものをやってもらいたい、このために言っているのでありまして、このいま申し上げた問題これだけをやっても本当にこれは画期的なことだ、こういうふうに思います。いま皆さんは自分のところには何もない、こう言いますけれども、詳細に調べてみるとたくさんあると思うのです。ぜひひとつこういう、やれば第二臨調にかけなくてもすぐできるようなことは、土光大明神の御託宣を待たなくてもどんどんやっていただきたいと思う。これは強く要求いたしておきますが、断固としてやるという総理の決意をひとつ聞かせてください。
  36. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま佐藤さんから行財政の具体的な問題につきまして御指摘がございました。私どもも、御指摘がございましたような国及び地方全般にわたりまして、その改善、改革、合理化能率化という観点から見直しをやっておるわけでございまして、臨調答申を注視しつつ政府としても真剣に取り組んでまいる所存でございます。
  37. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 ぜひひとつやっていただきたいと思います。  もう一つ、次に機関委任事務の問題を取り上げてみたいと思います。  機関委任事務は、ここで私が申し上げるまでもございませんが、七百幾つありまして、地方行政の中に割り込んできて、地方行政というものを大変混乱さしているものでありまして、これは国と地方を通じての行政改革の眼目としてぜひひとつ強力に取り上げていただきたいと思います。  申すまでもなく、この機関委任事務というものは、本来国がやるべき仕事を知事やあるいは市町村長にやらしている仕事でありますが、やらしているくせに大変強力な縛りをかけているものであります。もしこれをやらなければ訴訟を起こしてやらせる、代執行する、それでもやらなければ免職させる、こういうような大変強い拘束力を持っております。あるいはまた都市計画のあるものについては、訴訟を起こさなくても国が直接代執行をやる、こういうような強い権限を持っております。  さらに第二番目は、議会がこれに対して関与することができない。予算の議決権だけはありますが、その他は一切監査することさえもできないという地方自治、分権という立場からいくと、はなはだおもしろくない状況になっているわけでございまして、こういうものはこれからどんどん整理していかなければいけないと考えます。  特にこれが県の行政の段階では、県の仕事の七割を占めているのではないか、あるいは市町村の段階では五割ぐらい占めているのではないか、大変大きな地方行政の比重を占めておるわけでありまして、こういう意味からも、地方自治と言いますけれども地方自治は決して自治という名に値しない、その値しない最大の問題は、この機関委任事務によって拘束されているからだ、こういうふうに私ども考えておるわけであります。  現在、知事に対する委任事務が三百二十七件ありますけれども、これを各省別に見ますと、最も多いのが厚生省の八十四件、全体の約二五%であります。次いで農林水産省が六十九件で二一%、建設省が四十七件で一四%、総理府が四十一件で一三%、通産省三十件で九%、これらの五省だけでもって二百七十一件と全体の約八二%を占めておるわけであります。この手続というものが、先ほどの補助金と同じで、大変めんどうくさい手続を経なければできない。  試みに、機関委任事務である民生委員の問題について制度ができておりますが、民生委員を任命するのにこういうような手数が要るわけであります。まず市町村に民生委員の推薦委員会というものをつくる。そして、その委員会の推薦する者を都道府県知事が都道府県にまた設置された民生委員審査会というものの意見を聞いてさらに厚生大臣に推薦し、厚生大臣がこれに基づいて委嘱する。解職するときはその反対の道筋を通るわけなのです。こんなむずかしい手続をやる民生委員が何をやっておるかというと、市町村のことしかやっていないのです。厚生大臣の許可を得る必要は何もない。県知事の許可を得ることも何にもない。市町村の範囲でしか行動していないのです。それなのにこんな手続が必要である。  そこで、こんな民生委員の推薦委員会をなくしても、あるいは県段階のこういう民生委員審査会をなくしても、厚生大臣から任命されなくても、そういう手続を一切除いても何の支障もないのです。これが一事が万事、約七百あるのにほとんどこういうむずかしい繁雑な手続が必要なのです。これは県や市町村に大変大きな束縛となっているだけじゃなくて、経費の節減の面からいくと大変膨大な経費になっております。  これは県や市町村だけではありません。国でも同じです。細々した、たとえば何の利得もないような零細補助金がどんどん各省庁に持ち込まれ、それに各省庁が対応していく手間がかかる。同じわけで、機関委任事務についても、地方手間がかかると同じ手間がやっぱり国でもかかるのです。だから、たとえばこの民生委員関係で厚生大臣の任命にしなければその手間が両方とも省かれるのです。こういうことを一つ一つ解決していくことが本当の行政改革であると私は思うわけでありまして、この機関委任事務をぜひひとつ見直して、第二臨調の最大の眼目として取り上げて、これを解決していただきたい、これを強く私からお願いいたしたいと思いますが、総理長官の御意見を伺います。
  38. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 機関委任事務の問題は、従来からもいろいろ論ぜられておりまして、今回の臨調におきましても検討すべき大きな眼目の一つになっております。
  39. 村山達雄

    ○村山国務大臣 二つの点、お答え申し上げたいと思います。  機関委任事務の最大のウエートを占めているのは厚生省だという問題、それから第二に民生委員の問題でございます。  御案内のように、日本社会はいま福祉社会と言われるわけでございまして、非常に福祉行政が進展しているわけでございます。それは国民の福祉であると同時に住民の福祉なのでございます。住民は同時に国民の両方の資格を持っております。特に福祉行政のような細かい身近な問題でございますので、どうしてもやはり市町村の方にお願いしないと手が回りかねる。これを全部国でやれということになりますと、国家公務員の数が激増するわけでございます。そういうことで、勢い機関委任事務、団体委任事務がふえてくると思っております。  それから、民生委員お話がございましたが、御案内のように昔方面委員と言い、現在民生委員と言っておりますが、全国に約十六万人おるわけでございます。大きな仕事は、何と申しましても生活保護者の状況をどういうふうにやるか、あるいは母子家庭についていろんな手厚いことをやっておりますが、その状況をしっかり把握して措置権者にそれを連絡し、的確な認定をするというためにあるわけでございます。それで、十六万の民生委員はほとんど無料でやっているといっても差し支えないのでございまして、ほとんど実費でございます。もし民生委員を廃止するということになりますれば、それだけ地方のあれが非常にふえてくると私は思うのでございます。  以上でございます。
  40. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いまの村山厚生大臣の答弁は大変おかしいのです。私の言っていることにとんちんかんな、ちぐはぐな答弁をしていますが、私はこう言っているのです。  民生委員をやめさせろとは言ってないのです。ただ、民生委員は市町村にだけ活躍して、国のあれは何もないのですよ。だから、市町村長が任命して、そこで行動するだけでいいのです。ところが、いま言いましたように、民生委員会をわざわざ設置して、それの諮問を受けて、知事が今度は自分の県の段階の審査会にまた諮問して、そうして厚生大臣へやって、厚生大臣が任命する、そういう手続、そんなめんどうくさい手続をしなくとも十分民生委員の効果は上がる、こういうふうに言っているのです。そして、それを市町村に任せれば、その膨大な手続、経費が省ける。人も金も浮くのだ、これが行政改革じゃないか、こう言っているんですよ。私は民生委員をなくするなんて一つも言っていませんよ。どうですか。
  41. 村山達雄

    ○村山国務大臣 お答えいたします。  民生委員につきましては、先ほど申しましたように非常に重要な仕事をやっているわけでございまして、一部には民生委員がともすると必要もない認定をするというようなことを言っておりますので、したがって、その手続についてはある程度慎重に選ぶ必要があると思います。  現在の機構は、それにつきまして最終責任を厚生大臣が負っておりますので、そのようなことになっておりますが、なお実効的にどの点が省略できるか、その点については検討させていただきたいと思います。
  42. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この機関委任事務の廃止ということは、ある意味では今次の行革の最大の眼目になると私は思います。それがどうも村山厚生大臣の言うことを聞いておりますと、何か自分の権限を放したくない、どこまでも固執している、こういうふうなことしかない。大体機関委任事務というものは、ほとんどが国民の生活に密着し、その土地にもう定着してしまっているのです。あらかたこれを県や市町村長に持たせても何の支障もないことなのです。現にいま全国知事会がこれに対して詳細な整理の仕方を発表しています。国にやるものは全部国にやってしまえ、廃止するものは廃止してしまいなさい、それから県や市町村にやるものはやってしまいなさい、これをやればあらかた片がつく、ほとんど片がつくのですよ。そうしてしまえば、その中にあるところの膨大な手続上の人員、経費というものが浮いてくる。その浮いてきた経費でさらにまた民生委員なら民生委員仕事をやれば、もっと効率的じゃないですか。これをやらなければ行革の名に値しないと思う。どうも各省が自分のなわ張りにとらわれてこれをやらないということになれば、これは首相の決断で断固としてやらないやつは首を切ってやらせるしかない、これがあなたの政治生命をかけたところの決心だ。その決心をひとつ聞かせてください。
  43. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 機関委任事務の見直しの問題は、先ほど行管長官から御答弁申し上げましたように、今次の行革の非常に重要な一つの課題でございます。政府としてもこれを避けて通ろうなどということは毛頭考えておりませんし、むしろ積極的にこの問題と取り組んで改革をしてまいりたい、こう思っております。
  44. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 ぜひひとつやってください。  今度は、地方公務員共済年金の問題についてお伺いいたします。  これはきのうわが方の森井委員から厚生年金について大変議論が起こりまして、結末を理事会に任せられたのでございますけれども、それと同じ問題ですが、厚生年金の場合は百分の二十を国が負担して、それを四分の一カットするというのであります。片やこの地公共済は積立金の百分の十八・八五、これが地方自治体の負担になっておりまして、交付税の需要額に算入されておるわけでありますけれども、今度はこの四分の一をカットするというのであります。ところが、これを考えてみますと、この四分の一を一律にカットするということは、どうも理屈に合わないのです。これは切るのは国の負担だけでありますから、この問題については国から給料をもらっておる教員あるいは後で出てきますけれども地方事務官、これは国費職員でありますが、この国費職員以外は国からこの負担金をもらっておりません。だから、これを一律に四分の一カットするということは、私は筋が通らぬと思う。厚生大臣、どうですか。
  45. 村山達雄

    ○村山国務大臣 厚生年金につきましては、厚生省の所管でございますけれども、その他の共済の年金部門のものについては私の所管ではございません。
  46. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 これは大蔵省でしょうか。
  47. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはいずれの年金に対しましても、率は多少違いますが、国が国庫負担をしておるわけでございます。厚生年金は二〇%、船員保険二五とか、それから私立学校なら一八とか、そのほかいろいろございますが、厚生年金に対する国庫負担だけを削減するということでは片手落ちになるものですから、それらの公的年金、いま羅列をした厚生、船員、国家公務員共済、地方公務員、私立学校、農林漁業団体共済、これらについて、その国の補助額、国庫負担額の四分の一を三年間カットする、一時お借りをするということでございます。
  48. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 国が負担している分を四分の一、三年間カットする、それはわかります。それをそのまま真っすぐに地公共済に適用すれば、それの対象になるのは国から給料をもらっている学校の先生、それから国費職員、これ以外は国からは負担してもらっていないのですよ。だから、それを切る必要はないでしょう。
  49. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 厚生年金の加入者も、国から給料をもらっている人というのはまずいないのではないかと思います。私の言うのは、要するに国庫負担しているその負担した率——これらの年金は国から月給をもらおうがもらうまいが、年金自体について国庫補助があるわけですから、その国庫補助のいわゆる国庫負担率を三カ年間四分の一だけをお借りする、こういうことで一律にやらせていただいたわけでございます。
  50. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この地公共済の積立金のあれは百分の十八・八五、これは国が負担しているのじゃなくて地方自治体が負担しているのでしょう。
  51. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 政府委員から答弁させます。
  52. 大嶋孝

    ○大嶋政府委員 御指摘のように地方公務員共済組合の場合、国からの負担分とそれから地方団体が負担する分がございます。  それで、同じような措置をとりましたのは、一つは、公的年金制度の横並びの問題がございます。特に地方公務員共済の場合は、国家公務員共済と非常に深い関係がございますので、この際同じ措置をとっておくことが必要であるということが一つでございます。  それからもう一つは、共済組合の負担金の中に、いま申し上げましたように両方ございますので、国家公務員関係部分だけ入ってこない、地方だけは全部入れておくということは、やはり均衡上問題があろうと思いますので、以上二つ申し述べました点から同様の措置をとったわけでございます。  補てんします場合にも、国が返還をされる場合に同様の措置地方団体も返還をする、こういうことでございます。
  53. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 問題は、国の負担というものを軽減するために四分の一カットするというのであります。したがって、いま話されたように国の問題だけやればいいのであって、何も地方の問題をカットする必要は私はないと思うのです。そうでなくても、これは何か地方にしわ寄せして、地方を苦しめている弱者へのしわ寄せだとかいろいろな批判をされているのでありますので、国の分だけやればいいので、地方をこれにともに引きずっていって苦しめる必要は何もないと思うのですが、どうですか。
  54. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは、ただいま自治省から答弁があったようにおつき合いというか、全体のバランス上そうさせていただいたわけでございます。
  55. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 これはもらう人には全然関係ないのですよ。だから、こっちの方はただめんどうくさい手続をやって、交付税に算入したり算入しなかったり、こういうことをやるだけなんです。かえって手続がめんどうくさくなる。めんどうくさい手続をしてまで地方を国に巻き添えさせる必要は何にもないのです。国の財政再建のためにいま一生懸命あなた方は無理なことをやっているのですが、それに地方をつき合いさせる必要は何もないじゃないですか。
  56. 大嶋孝

    ○大嶋政府委員 先ほど申し上げましたように、公的年金制度の横並びの問題がございまして、同一の制度をこの際とっておくことが今後も同じような歩調で歩んでいく場合に必要であるというふうな判断から、財源の問題でございますけれども、同じような措置をとったわけでございまして、御了解いただきたいと思います。
  57. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 了解できない。これはもらう方に段階がついて、あるときが不利になり、あるときはあれになるならば、それはそのとおりだと思う。しかし、この問題は何にも関係ないのです。国がやればそれで済むことだ。地方を巻き添えにして、めんどうくさい手続きをして、これを今度やれば、もらった金を今度また返すというふうな逆算入をしなければいけなくなる。こんなめんどうくさい手続きをなぜやるのですか。しかも、それがもらう人に影響があるならばいいけれども、もらう人に何も影響ない。交付税だけの操作なんだ、交付税法の中だけの。
  58. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 共済制度の一つのバランスの問題があるわけでございまするので、国がそういう措置をとれば、やはり地方の共済組合においてもそういう措置をとることが妥当であろう、こういう考え方で措置をいたしております。
  59. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 これは何にも妥当だとは私は思いませんよ。やる必要のないことを——いいことをやるならばあれしてもいいけれども、悪いことをやるのになぜ右ならえする必要がありますか。しかも、これをやらなければ非常に困るということでも何でもない。これをやらなくても何も困ることはない。金額が五十七年度で大体四百億ぐらいですね。一年四百億ぐらいになって、三年間で千二百億ぐらいになるのです。これは交付税会計の中で出たり入ったりするだけなんです。実態は何も変わらない。なぜこんなことをやる必要があるのですか。こんなことをやらないのが行革じゃありませんか。
  60. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 よけいなことをやらぬでいいじゃないかということでございまするが、しかし、これは事務的にはそう大した問題ではありません。制度の横並び、バランスの関係から申しまして、そういう措置をとることが適当である、こういうことで措置をいたしております。
  61. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私はこれはどうも納得できません。国が四分の一カットする。何にも関係のない地方自治体を同じようにまた四分の一カットする。入れたり出したりする。単なる交付税会計の中だけの問題だし、こういうことをやらないのが改革じゃございませんか。おかしいですよ、こんなの。どうですか。
  62. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 繰り返して申しますけれども、これはやはり国の職員の関係地方の職員の関係が一緒になっている部分もあるわけでございます。その制度の中におきまして、国がそういう措置をとった場合に、地方についてもそういう措置をとる方が、制度といたしましては適合性を持つものだと思います。そして事務的に非常に繁雑だと申しますけれども、そう大きな繁雑さはございませんから、この点は制度の均一性という観点から私どもはこれを了承しているわけであります。
  63. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 横並び横並びと言うけれども、四分の一をカットすると、国はこれでもうかるのです。それはそれでいいじゃないですか。交付税からその分を算入しないで、そしてこういう複雑な手続をとる必要は何もないでしょう。四分の一カットすれば国はもうかるのです。いま言ったように、財政のつじつまを合わせなければいかぬから何とかカットしてくれ、それでカットしようとしている。しかも、それでも、どうしてこんなものを返していくかというので、きのう私ども森井委員からあれほど大きな質問があって、あれほど紛糾して、決め得ないで理事会にゆだねているような大きな問題点があるのです。そういうものになぜ一体自治体が巻き添えを食って、巻き込まれなければいけないのか、どうしても私は納得できない。そんなのは横並びの整合性でも何でもないと思うんですよ。どうですか、総理
  64. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 繰り返して申し上げますけれども、国の場合だってこれでもうかるとかなんとかという問題じゃないと私は考えております。地方の場合におきましては、そうした事務的な手続の問題はございますけれども、制度の均一性という点から考えますと、やはり同様の措置を講ずる方がベターである、私どもはそういうふうに判定をしております。
  65. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 どこまで行っても平行線で、私は納得できません。国が四分の一カットしておいて、それになぜ地方がそのまま横並びしなければいけないのか。同じような制度だったらいいですよ、これはそうじゃないんだもの。どうです。
  66. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 ただいま安孫子自治大臣からるる御説明を申し上げたとおりでございまして、政府としてはこの方針をやってまいりたい、こう思っています。
  67. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私は納得できません。  そうしたら、もう一遍それでは聞きますけれども、この金額はどのくらいになるのですか。
  68. 大嶋孝

    ○大嶋政府委員 五十七年度で約四百十九億、その中で国家公務員関係の分が五十七億余ございます。(佐藤(敬)委員「三年だ」と呼ぶ)試算によりますと、五十八年度が四百三十二億、五十九年度で四百四十五億、合計千二百九十億円余でございます。
  69. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 これを返すことになるのですが、これをどういうふうにして返すのですか。
  70. 大嶋孝

    ○大嶋政府委員 国が厚生年金あるいは国家公務員共済組合等へ返還をされますときに、同様の方法によりまして返還をいたすつもりでございます。  なお、この点に関しましては審議会等にお諮りをいたしまして、厚生年金等と同様の答申をいただいておるところでございます。
  71. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そうすると、これを返すのには、六十年から厚生年金で返すのと同じ方法で金を借りて返すのですか。
  72. 大嶋孝

    ○大嶋政府委員 全く同様の方法で返還をすることになります。(発言する者あり)
  73. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そうすると、全体で何年で一体……(「外野を静かにさせなさい」と呼ぶ者あり)いや、あなたが一番うるさいんだ。一体これは利子がどのくらいで、利子を含めて幾らになって、そして何年から何年かかってこれを返すのですか。
  74. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 国で決まったとおりに地方の方でもやる、こういうことになっております。
  75. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 とんでもない話で、きのうこれは混乱して理事扱いになったと同じように、これも一緒に理事扱いにしてください。とてもこのままでは納得できません。いいですか。いいですね。
  76. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 後刻理事会で協議いたします。
  77. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 それじゃ、これはやめておきましょう。  次に、特定地域に係る国の特例負担の引き下げについて、これで御質問いたします。  対象範囲の問題でありますが、対象範囲は、北海道開発のためにする港湾工事に関する法律から、地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律、これまでですね、十七本。その削減額は、都道府県四百億円、指定都市六十億円、合わせて四百六十億円とありますけれども、そのとおりですか。
  78. 窪田弘

    ○窪田政府委員 そのとおりでございます。
  79. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 次にお聞きしますけれども、このかさ上げ補助率等の規定がもっぱら政令に委任されておる法律があります。これが十三本ありますね。土地改良法、森林法、森林開発公団法、道路法、空港整備法、地すべり防止法等十三あります。この十三本は、政令に委任されている法律でありますが、これも引き下げられるのでありますか。
  80. 窪田弘

    ○窪田政府委員 十三本でございまして、これも法律と同じ措置をとる予定でございます。
  81. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そうすると、これも前の十七本と同じように後年度のカバーをするわけですか。
  82. 窪田弘

    ○窪田政府委員 その方針でございます。
  83. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 それからもう一つは、五十六年度末に終期が到来する法律が三本あります。豪雪地帯と沖繩振興と琵琶湖ですね。この三本あります。これについてはどういうふうにするつもりですか。
  84. 窪田弘

    ○窪田政府委員 五十七年度予算編成のときに検討することといたしております。
  85. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そうすると、五十七年度予算のときやるというのは、これは延長しないということですか。
  86. 窪田弘

    ○窪田政府委員 延長するかどうかということも含めて予算編成のときに検討いたします。
  87. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 総理にお伺いしますが、沖繩振興開発特別措置法は、これは廃止する方針ですか。
  88. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、沖繩の復帰後十年、その後の開発振興の状態、そういう点を先般も見てまいりましたし、各方面の御意見も拝聴いたしております。本土との格差はいまだ縮まっていない面もございます。そういう点を十分勘案しながら、期限満了の際、五十七年度予算編成に当たりまして十分慎重に対処したい、こう思っています。
  89. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 同じような質問を、豪雪地帯対策特別措置法、それから琵琶湖総合開発特別措置法について御意見を伺います。
  90. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 沖繩と同様、これについては延長も含めいろいろな点も総合的に判断をしたいと考えております。
  91. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 どうもにおいをかぎますと大体延長になるようでありますが、そうしますと、この三つ、この法律に出ていないのは、これは財政効果に何も算入されておらないようですが、これらを全部合わせますと、この金は一体合計でどのぐらいの金額になりますか。
  92. 窪田弘

    ○窪田政府委員 法律の分は先ほど御説明したとおりでございますが、政令の分は約七百億と計算しておりますが、年によって予算額にかなりの変動がございますので、五十五年度ベースでとりますと約七百億、政令委任十三本は。(佐藤(敬)委員「全部合わせて七百億円ですか」と呼ぶ)全部合わせますと、したがいまして四百六十億と——削減額は法律分が四百六十億、政令委任によるものが百二十億、合わせまして五百八十億でございます。
  93. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 あれですか、七百億というのはどうなったんです。
  94. 窪田弘

    ○窪田政府委員 それはかさ上げ額でございまして、その六分の一の額がいま申しました百二十億の……
  95. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 そうすると、法律分が四百六十億で、あとの二つは百二十億ということですね。——わかりました。  そうすると、この問題についてお伺いしたいのですが、自治、大蔵大臣の間で、これに対して地方債を充てる、そして地方債の元利償還額の二分の一を五十八年度以降、臨特として交付税特別会計に繰り入れる、こう言いますけれども、あれを見ますとどうも漠然としたことしかわかりません。一体どのぐらいの利率で、何年償還、どういうふうにして返すのか、この点をひとつはっきりしてもらいたいと思います。
  96. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 財政金融上の措置についてという覚書を交わしておるわけでございまして、少し長くなるかもしれませんが、これらの「嵩上げ補助等の引下げ措置の対象となる都道府県及び指定都市に対し、嵩上げ補助等の減少相当額について、地方債による措置を講ずるものとする。」この「地方債に係る元利償還に要する経費については、昭和五十八年度以降の各年度において、関係都道府県及び指定都市に対し、地方交付税の算定を通じて適切な財政措置を講ずる」、五十八年度以降各年度においてということが一つ。いま言ったことの「元利償還に要する額の二分の一に相当する額を、昭和五十八年度以降の各年度において、臨時地方特例交付金として国の一般会計から交付税特別会計に繰り入れるものとする。なお、」なおですよ、「地方財政の状況に応じ必要がある場合においては、この臨時地方特例交付金の額について、配慮するものとする。」二分の一というふうに決めてはおきますが、なおそのときの財政事情その他については配慮することもありますということでございます。
  97. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 何というか、半分を措置する、こういうことは、やはり地方財政の面からいくとかなり問題になると思うのです。というのは、半分を措置して、そうして交付税の総額を上げなければ、半分の分はこのまままいりますと、市町村の方を食って県の方に回していくことになるのです。そうすると、このために市町村は大きなしわ寄せを食うことになる。財政上かなりの問題が残ると思いますが、どうですか。
  98. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 もちろん、その総額から申しますと、そういう議論も成り立つと思います。しかしながら、現下の諸情勢から考えますと、特に財務当局におきましても、地方財政の状況に応じまして必ずしも二分の一にはこだわらない、こういうことでございまするから、原則としてはそういうたてまえをとってやり、それが地方財政に非常に大きな影響を及ぼすことはないという判断のもとに、この合意を私としてはいたしました。
  99. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この地域特例というものは非常に貧弱なところをねらい打ちにしている。かさ上げされているところは非常に財政上貧弱なところなんです。そのためにこの地域特例をわざわざ設けている。その地域特例を切ってしまうということは、これはやはりこういう地域特例をつけたところの趣旨に反する、制度の崩壊である、私はこういうふうに思います。だから、これを切ればますます地域格差がひどくなる。だから、地域格差のかさ上げ分を切らないで、その下にあるところの一般補助金を少し切り下げて、そしてかさ上げ分はそのまま残しておいたらどうですか。そうすると地域格差の解消がそのまま残ってくる。
  100. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 この問題は地域格差の問題が前提としてあるわけでありますが、それは起債等の措置によりまして事業がそのままできるわけでございまするから、その面の支障はないと考えております。
  101. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この償還の問題を私ははっきりしておいていただきたいと思うのです。というのは、どうもいろいろな動きがある。後からやりますが、国保の身がわり、代理として、いままで決まっておった臨調の半分を地方が肩がわりしろ、こういうような議論まで出ておりまして、いつどうなるか逆睹しがたいものがある。したがって、私は、この償還の問題については、自治大臣お願いしますが、はっきりとした確信を持って対処していただきたいと思います。  時間がないので次に移ります。国保の問題に移りたいと思います。  国保の問題につきましては、四〇%のうち五%を県に肩がわりさせようという、自治省と厚生省の意見が食い違っているようであります。先日どなたかの質問で、厚生、自治両大臣からその理由としていろいろなお答えがありましたけれども、もう一遍、なぜこれを切らなければいけないのか、厚生大臣、なぜこれを切ってはいけないのか、自治大臣の論拠を申し上げてください。
  102. 村山達雄

    ○村山国務大臣 国保につきましては、これは社会保険ではございますが、地域保険でございます。したがいまして、その監督指導権あるいは医療費の監査権限、これは都道府県が持っているわけでございます。また、国保の法律の中で、都道府県が補助することを予定する規定が入っております。また同時に、これはまあわが党でございますけれども行革に関連いたしまして国保の問題が取り上げられまして、昭和五十二年十二月、これは閣議の口頭了解でございますけれども国民健康保険のあり方については、都道府県への移管をも含め、抜本的な改正の際に根本的に検討する、こういうことも言われているわけでございます。そういうことからいたしまして、臨調答申もこれありまして、われわれとしては一部負担をお願いできないものであろうか、こういうことで提案させていただいているわけでございます。
  103. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 国民健康保険は社会保険の一つの部門でございまして、これは国の負担とそれから保険料をもって賄う、それは単なる地域制度じゃない、全国的な問題である、こういう観点に立ってこの制度というものは成り立っておると思っております。したがいまして、この問題を単に国民健康保険だけについて都道府県に負担をさせるということは適切じゃない、私どもはこういう考え方をいたしておるわけでございます。  それからまた、よく議論されておるのでございまするが、都道府県が監督の責任があるじゃないか、したがって、それに財政負担をさせる方がいいのだ、こういう議論がございますけれども、これは全く責任の転嫁でございまして、医療制度の増高に対する各般の措置というものはそれ自体の制度として充実強化をすべきであって、国がその負担を市町村に肩がわりすることによってそれを強化するというのは、これはよこしまな道ではなかろうか、こういうふうに私は考えておるわけでございます。(発言する者あり)本来の筋ではないのではなかろうか、こう思っておるわけでございます。それはその制度といたしまして強化をするということであろうかと思っております。そういうものからいたしますというと、この際に国民健康保険というものの一部負担を都道府県にやらせるということは適切ではない。もう少し制度の全般についての見直しを行いまして、その中において十分論議を尽くした上に結論を出すべきものであって、単に財政が非常に苦しいからその一部を負担させるのだというような端的な扱いというものは適当ではないではないか、こういうふうに考えておるわけでございまして、この点については地方制度調査会におきましてもそういう趣旨答申も得ておるわけでございます。  それから、もう一つつけ加えますと、児童扶養手当、それから特別児童扶養手当というのがございますが、これもひとつ県に持たせようということでありますが、これのよく議論されまするのは、児童手当がそうだというような観点がございまするが、しかし、この二つの制度というものは、その前提といたしましては母子福祉年金とそれから障害福祉年金、こういうものの関連においてこれが出ておるわけでございまして、この本家の方が全額国庫負担であるのに、分家と申しますかから派生した問題について、これだけをひとつ県に持たせるということも適切じゃないじゃなかろうか、こういうことで厚生省当局と私どもとの見解の相違があるわけでございます。しかし、答申趣旨は、そういう議論があるので、財源の問題もあるだろうから、年末の予算編成におきましてこの点はひとつ財政当局も入れて両方でよく相談の上に結論を出せ、こういうのが答申になっているわけでございます。  したがいまして、いまの私どもの主張している問題については、おそらく厚生当局もこの点についてはそうした議論をした時代もあるわけでございまするから、まあ財政の問題というものが非常に苦しいという観点からもこういうことを考えなくちゃならぬわけでございまするので、これは予算編成のときに十分論議を尽くしまして結論を得たい、こう考えておるところでございます。
  104. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま議論を聞いてもよくわかりますように、厚生省、大蔵省の考え方というものは、何とかして金をひねり出したいために無理にこれをこじつけて切ろうとしておるのです。これはもう地方財政法上からも国の財政法上からも決して許されるべき事態ではないと私は思うのです。前に大蔵省がこれをやろうとした。ところが、これに対しては自由民主党の政務調査会の社会部会も猛反対をした。それから、あの当時はあなたの厚生省も反対したいきさつがあるのです。それをいまさら厚生省が手のひらを返したように賛成するというのはおかしいじゃないですか。
  105. 村山達雄

    ○村山国務大臣 あの当時議論として厚生省が反対しました基本的な態度は、やはり保険制度、国保というものについてどういうふうなあり方かというその制度の基本を考えないで、財政だけを突出させようというところがわれわれとしては反対の基本的な意見であったわけでございます。今日いま言っておりますのは、財政問題だけではございませんので、制度のあり方としていかがなものでありましょうかということを提案しておると同時に、また、これは財政問題に非常に関係するわけでございますので、先ほど自治大臣がおっしゃいましたように、それぞれの理由は私はあると思いますけれども、この年末までに両方で議論を深めまして妥当な結論を得たいものだ、かように思っておるところでございます。
  106. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 この問題はまたやりますけれども、時間がなくなりましたので、質問したい問題を一つだけ質問しておきます。  これは地方事務官の問題であります。この問題は前にも同僚議員が取り上げておりますけれども、私どもこれは大変な関心を持っております。地方行政委員会においては、これを地方公務員にすべきだという満場一致の決議もいたしておるわけであります。それから、本会議等でも、たびたびにわたって総理がやると答弁しております。しかし、自来三十年たってもいまだにこれが解決できない。この国と地方のはざまにいるところの公務員、二万一千百十七人おります。これは大変に情けない思いをしている。新聞によると、「“ヌエ的存在”の悲哀」と書いてあるぐらい大変に困っておる。ある意味では、人生というものをどこかヌエ的に、はっきりしない人生を送っているような、人道的な問題でもあると私は思うのです。これは一にかかって今度の行革の問題である。これはもう単なる官庁の一つの権限争いというかそれにすぎない。厚生省が一番多いけれども、厚生省がこれをやらない、あるいは運輸省がこれをやらない、あるいは労働省がこれをやらないとすれば、行革に命をかけている総理が、断固としてこれをやめさせてもやらなければいけない。これをやれないならば、私は、行革というものはやる意思がないと断定せざるを得ないわけです。これをやりますか。総理はいませんが、担当の行管庁長官からぜひひとつ強い強い意思を表明していただきたい。
  107. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この問題は、占領治下からずっといままで続いている、長い間の懸案の問題でございまして、歴代の内閣でも取り扱いにずいぶん苦慮してきた問題でありますが、この処理についてはもはや限界点に来ているように思います。したがいまして、臨時行政調査会答申をいただきまして、今度はできるだけ速やかに決着したいと思っております。     〔海部委員長代理退席、委員長着席〕
  108. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 臨時行政調査会答申をいただきまして、何でも土光さんの御託宣がなければできないようなことを言わなくたって、こんなのは臨調の問題じゃないですよ。何年も来て、やると言明しているじゃないですか。それをもう一遍臨調に戻して、それが来なければやらないというのは、やる意思がないことでしょう。どうですか。
  109. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 中央地方仕事の分界点をいま臨調で検討しているところであります。したがいまして、何を中央に返し、何を地方に戻すか、そういうことをやはりしっかり検討していただいて決着をつけたいと思っております。
  110. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 冗談じゃないですよ。三十年もかかって、一体どっちに返せばいいか、まだわからないのですか。何言っているのですか、そんなのは。  この地方事務官の質問は一応これで終わりますけれども、先ほどの国民健康保険の問題について、なお疑義がありますので、山口議員から関連して質問させてもらいます。
  111. 金丸信

  112. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 村山さん、あなたは本会議で、すでに国会提案をしている老人保健法を、これから提出しますというような全くすっとんきょうなお答えをされましたですね。国会にすでに所管大臣で法案を出していることを忘れて、これから出すというようなお答えをされることは全く不見識もはなはだしい、私はこう言わざるを得ないと思うのです。  それで、ただいまの国保の問題ですけれども、財政的な問題だから云々だ、こう言いましたね。しかし、違うでしょう、厚生省は。ちゃんと「国が制度の健全な運営を確保すべき責務を負っていることは法制上明らかであり、その財政的裏付けとして国庫負担が制度化されているものである。したがって国庫負担の一部を都道府県に負担させることは、制度の健全な発展を図るべき国の責任を他に転嫁することとなり、社会保障制度拡充に対する国の責任を回避するとの非難を免がれない。」「筋違いも甚しいものといわなければならない。」こう言っているじゃありませんか。いまあなたの言っておられることと全く正反対な、これは厚生省の見解ですよ。朝令暮改もはなはだしいじゃありませんか。そんなことで済むのですか、一体。
  113. 村山達雄

    ○村山国務大臣 そういうことを言いましたその背景をいま申し上げているわけでございます。その背景は、やはり国保制度についての抜本的な制度のあり方を言わないで財政の面からだけ言うのは不合理だという意味で反対しておるのでございます。  今日われわれが問題にしておりますのは、国民健康保険というものが地域保険であるということ、それから、同時にまた、ほかの社会保険、医療保険にはそういう規定がございませんけれども、都道府県に関する補助の規定があること、また、広域団体である都道府県に本来任すべきではないかという議論さえあるのでございますので、そういう意味で、われわれは、この地域保険という特性、それから持っておる権限、監査権限等々考えまして、やはり抜本的な考え方として一部負担をしていただいてはいかがか。しかし同時に、それは大変な財政問題を伴うことでもございますので、この財政状況が明らかになりますのは予算編成の時期でございますので、筋は筋、それぞれの見解の違いは違い、しかし同時にまた、両方の財政問題に非常に影響する問題でございますので、その辺をにらみ合わせながらさらに論議を深めて、財政当局をも含め、そして妥当な結論を出していきたいというのがわれわれの現在の立場でございます。
  114. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 私はそんなことを聞いているのじゃないですよ。制度上一部負担をさせるべきではない、こう厚生省は見解を表明したわけでしょう。制度上そうであるべきではない、こう言っておるのに、今度は、単に財政上の問題じゃなくて制度的な問題もあるからいい、こう言っているのでは、全く矛盾しているじゃありませんか。そうでしょう。制度上おかしいということをちゃんと厚生省は言ったじゃありませんか。そのことをまず確認してください。
  115. 村山達雄

    ○村山国務大臣 当時の反対理由の中で、いま山口先生おっしゃった文句が入っておることは私もよく承知しております。しかし、その背景をよく聞いてみますと、やはり主張はいろいろな主張をするわけでございますけれども、根本的な理由は、やはり財政措置だけを考えて、そして財政的な措置だけのためにやろうとした当時の背景に対してわれわれはそういう論議をもって対抗した、かように理解しているのでございます。
  116. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 同じじゃないですか。一たん厚生省としてそういう方針を決めて、今度は全く君子豹変。あなたは、国会に出した法律をこれから出すなどということを言って取り消したのだから、取り消すのが好きなのかどうか知りませんけれども、そういうことでは通らぬですよ。厚生省として国民に、少なくとも制度上一部負担はおかしいと明確にしたのじゃありませんか。それを今回百八十度違うような見解を出して、よくぬけぬけとそんなことを言って通るものだと思うのですね。厚生省、権威を持って、一体厚生省どうして君子豹変したのか、百八十度転換したのか、国民にわかるように説明してください。
  117. 村山達雄

    ○村山国務大臣 当時そういうことはございましたけれども、繰り返しになりますけれども、やはり財政措置が突出しているというところが基本でございます。それで、今日社会が非常に変化しているわけでございまして、新しい現在の情勢でこの制度のあり方ということを考えることも、やはり社会の進展に従い、それから制度の持っている役割りによりましてそのときどき見直すということはあってもいいのではないかと私は思っておるのでございます。
  118. 山口鶴男

    山口(鶴)委員 とにかく制度上一部負担は誤りだという見解を厚生省明確にして、今度は全く正反対のことをやろうとしているわけですね。少なくとも、一つの省が明確な態度を出して、それを変更した理由が何ら具体的に答弁できない。こういうようなことでは、当委員会としても審議を進めるのに私は大変困ると思うのです。少なくとも、やはり省が一つの方針を決めて転換する場合には明確な答弁をいただく、そのことを強く委員長から厚生省に要求していただいて、そしてそういった明確な答弁があるまで、この国保の問題については引き続きやはり当委員会として慎重な議論をするというお取り計らいをいただきたいと思うのです。委員長、よろしくお願いします。
  119. 金丸信

    金丸委員長 ただいま山口君から委員長に対しての注文があったわけでありますが、厚生省はひとつ確たる方針を今後別の席で述べるということで、十分研究してきてください。
  120. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 それじゃ終わります。
  121. 金丸信

    金丸委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  122. 金丸信

    金丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切君。
  123. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、行政改革に関しまして総理並びに関係大臣に質問をするものであります。  私はまず鈴木総理に、行政改革は国家百年の大計であり、そしてその目指す方向は、国内にあっては活力ある福祉社会、そして対外的には国際社会に一層貢献するため、国、地方を通じて行財政の基盤を確かなものにしなければならないということを強調されました。そこで、総理の言う活力ある福祉社会というのはいかなるビジョンに基づいて言われているのか。総理はその中でまた、個人の自立自助の精神に立脚し、職場、家庭での連帯を求め、適正負担のもとに福祉の充実を図る社会だとも言われております。  となりますと、今回の行革関連特例法案の中身を見ますと、少なくとも国民の方々にかなりの痛みを覚える部分が出てきております。そういうことになりますと、やはりこれからの福祉社会というものはどういうふうになっていくんだろうかということが大変に、言うならば不安に思えてならないと私は思うわけであります。  そこで、総理にお伺いいたしたいわけでありますけれども、福祉の領域というものが、果たして憲法で保障されているいわゆるナショナルミニマム、この水準とか領域とか、こういうものについて総理としてはどうお考えになっているか、まずそのことについてお伺いをいたしたいと思います。
  124. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 行財政改革におきまして、国内的には活力ある福祉社会の建設、また、対外的には国際社会に一層貢献できるような体制をつくるということを目標にやっていきたい、こういうことを申し上げました。一方におきまして、行財政改革ということになりますと、道は二つしかないわけでございます。一つは、大衆増税のような御負担を願って、そして公債への依存体質から脱却をするという道、もう一つは、これも厳しい道ではございますけれども行財政の思い切った縮減合理化、これによって達成をする、道は二つしかない、こう思います。  そこで私は、この後者を選ぶことにいたしました。そのためには、国民の各界各層広く痛みを分かち合う、犠牲を分かち合って、そしてこの行財政改革を達成をしたいということで御協力を求めておるところでございます。  そこで問題は、ナショナルミニマムを切り込むようなことがあってはいけないのではないか、こういう御指摘が出てくるわけでございます。全くそのとおりでございまして、私は今回の措置を進めるに当たりましても、社会的、経済的に弱い立場にある方々にはやはり特別な配慮をしなければいけない、そういう方の福祉や生活を十分配慮していく必要がある、このように申し上げておるのもそのためでございます。要は、この国民生活の中で、生涯のどの段階におきましても十分生活の、福祉の水準が確保できるような、そういう基礎条件というものを確立することが私はナショナルミニマムである、このように考えております。
  125. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、総理がこれからやられる行政改革、これがなされた場合に、国の財政あるいは国民の生活、国、地方の機構というものはこのような形になりますということを明らかにした上において、そして国民の皆様方に五十七年度増税なき財政再建であるというならば、その痛みを分かち合ってもらいたいというのならば、それは国民だって、ある程度、将来こういう形になるんだというビジョンがあるならば、それはそれなりに納得する点もあろうかと私は思うのですけれども、今回出されてきているのは、御存じのとおり、ただ単に増税なき財政再建ということが主眼でありまして、実際には、まあ言うならば、これから日本の国というものがどういうようになり、そしてまた福祉というものがどのように取り扱われるかということがわからない中にあっての問題だけに、非常に国民というものは不安に思っているわけであります。  そこでお聞きしたいわけでありますけれども、現在の福祉水準、この福祉水準について、どうされようとされておりましょうか。すなわち現在の福祉水準はそのままずっと続けていかれるのか、その点についてはいかがお考えでしょうか。
  126. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 わが国の福祉の水準、これは昭和四十八年以来の国民の皆さんの理解と御協力、また政府もその充実に力を入れてまいりました。その結果といたしまして、おおむね福祉の水準は欧米先進国並みの水準に達しておる、こう私は見ております。それを細部にわたりまして掘り下げた検討をすれば、いろいろ欧米に比べて優劣のそれぞれあるところがあろうか、こう思いますけれども、全体としての福祉水準というのは、私は、欧米先進国並みに改善をされてきておる、このように思います。  今後におきましてもこの水準をできるだけ維持するように考えてまいりますが、先ほども触れましたように、特に社会的経済的に恵まれない弱い立場にある方々に対しては特別の配慮をしながら行財政の改革を進め、かつ福祉水準を余り切り下げないように維持してまいる、こういう基本的な方針で取り組んでまいりたい、こう思っています。
  127. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 厚生大臣にお伺いいたしますけれども、私は、内外のやはり経済社会の動向を洞察し、国民福祉中期計画というものをつくった上において、福祉ナショナルミニマムというものは、少なくとも、大別をいたしますと、住宅権の保障に立つ住宅ミニマム、あるいはまた年金権の年金ミニマム、あるいは教育権の教育ミニマム、あるいは労働権の勤労ミニマム、あるいは健康権の医療ミニマム、そして生存権の公的扶助ミニマム、こういう形に私はナショナルミニマムというものを大別すると分かれるというふうに思うのでありますけれども、日本型福祉社会ができるということについて厚生大臣は、福祉の領域、水準について、どのようにお考えになっておられましょうか。たとえば住宅権の問題については専門ではないわけでございますけれども、しかし、これは総合をしてやはり福祉ということになりましょうから、その点についてお伺いいたします。
  128. 村山達雄

    ○村山国務大臣 福祉というときに、これは私の私見でございますけれども国民の幸福という問題がもし福祉というのであれば、非常に広範な範囲に触れてまいるだろうと思います。教育の問題、住宅の問題、さらには将来の経済発展の問題あるいは国内の治安の問題あるいは平和外交の問題等々、すべて福祉だろうと思うのでございます。特に厚生省が所掌しております福祉は、その中のいわゆる福祉でございまして、社会保障移転と言われるものでございます。そういったものに限定いたしますと、ただいま総理がおっしゃいましたように、すでに全体としての水準は欧米社会に遜色のない水準に来ていると思うのでございます。  それで、いま鈴切委員のおっしゃいました今後五年間ぐらいどういうことを考えているか。私は、厚生行政で持っている面が大きく分けて三つあると思います。  一つはやはり健康の問題でございます。特に、高齢化を迎えて健康な老人をいかにしてつくっていくか、これが大問題だと思うのでございます。これにつきましては、もうすでに提出してあります、提出する予定ではございません、提出してあります老人保健法がまさにこれを目指しているわけでございまして、もう若いときから、壮年期から健康の予防、それから健診あるいはリハビリテーション、そういう生涯を通じての一貫した健康づくりの中の一環として治療というものを考えていく、これが今後五、六年あるいはこれからずっと将来大きな問題であろうと思います。  第二の問題は、いわゆる所得保障の問題でございます。これは何よりも年金の問題であり、あるいは生活保護の問題であるわけでございます。あるいはいろいろの手当が出ておりますが、そういったものが所得保障につながるわけでございます。それからこれにつきましては、もうすでに大体欧米の水準まで来ておりますし、生活保護にいたしましても、大体一級地で十三万四千円までまいっておるわけでございます。  それから第三番目の問題は、狭義の意味の福祉と申しますか、いろいろな、寝たきり老人あるいは児童福祉、障害者福祉、これには施設福祉と在宅福祉の問題があるわけでございます。いろいろ各方面の意見を聞いてみますと、福祉施設についてまだ不十分のところはあるけれども、むしろ在宅福祉の方に今後重点を置くべきであろうし、施設福祉にしても、家庭と切り離されたりあるいは地域と切り離される施設福祉というものは、入っている人にとってもやはり地域、家庭と遮断されるところに非常に問題があるので、今後は地域、家庭との連携を保つような施設福祉を考えていかなければならぬ、これがほぼ、いま各界の恐らく希望であろうと思っておるわけでございます。  したがいまして、私たちはそういった方針に向かいまして今後懸命な努力をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  129. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この問題については、明日わが党の委員から福祉の問題については専門的にお伺いをすることになっておりますので、次に進ませていただきます。  経済企画庁は、本年度の経済白書でも「公共部門の役割と見直し」の章を設けられまして、公共部門の役割りがいかにあるべきかの観点から提案されております。この中で、大きな政府必ずしも経済成長にプラスだけではないとの観点から、歳出についても公務員の人件費と補助金を取り上げておられます。われわれは人件費については憲法に基づいた人事院勧告制度があり、今国会でも完全実施を要求しているので、この問題については後で私、質問をしたいと思いますけれども補助金整理合理化についてお伺いをいたします。  これについては政府も五十七年度予算で、臨調が個別に指摘した施策及び生活保護費を除いて一律一割削減を行うということにしております。こうしたやり方については必ずしもこれは最善ではないだろう、あくまでも次善の策として考えられたものではないかと私は思うのでありますけれども、本来の整理合理化はやはり国民のコンセンサスを得ながら優先順位をつけ、経済の活力を失わない方法で行うことが必要な要素であると私は考えわけでありますが、経企庁長官におかれては具体的な方策があるならばお聞かせ願いたいと思います。
  130. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 行政改革を進める場合に経済の活力を失わないように進めるべきである、こういうお話でございますが、その点は私も同感だと思います。ただ、日本経済の規模が非常に大きくなっておりまして、ことしは二百六十兆前後、来年は三百兆弱と想定をしておりますので、その大きな経済の規模の中で若干の補助金のカットを吸収して、経済の活力を失わないようにするということは十分可能だと考えております。  特に、行政改革をしない場合には、一面で増税問題とか国債の増発とかこういう問題が仮に起こった場合には、これはまた別の角度からのデフレ問題が起こってまいりますので、やはり補助金のカットを合理的に進めながら経済全体の活力を維持していく、そういう方途につきまして総合的にいろいろ考えていくということが大事だ、こう思っております。
  131. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中期展望に立って、増税なき財政再建をするための要調整額については二兆七千七百億円だというふうに明らかになっておりますけれども、この中で臨調答申による削減約九千億というふうに言われておりますけれども、今回提出されたいわゆる行革関連特例法案削減されるのは大体二千五百億、そして補助金で各省に一〇%カットを大蔵省の方から宿題として出したのが約千六百億円、あるいは臨調に指摘された個別的なものの減額等を合わせますと、これが九千億円ということになっているわけであります。  そこで、この三つの問題については、いずれも国民に直接痛みを与えるだけに関心が深い問題だろう、行革関連法案法律改正を必要とするものだけに、その内容の全体像が明らかにならざるを得ないということで、いまここで行革関連法案というものの審議をやっているわけであります。  ところが、大蔵省は各省に補助金の一律一〇%カットの宿題を出されました。千六百三十六億円でしょうか。本来ならば、各省の概算要求に盛り込まれているのでありますから、この行革国会においても当然審議をして国民の前に明らかにするのが筋ではないだろうかと私は思います。私はそういう意味から、一律一〇%の補助金の各省から出された全容を本委員会提出することを要求したいと思っておりますが、しかし、私が要求をすると言いますと、大蔵大臣は、いずれ次の通常国会に五十七年度予算提出する段階において御審議願うことになると思うので、各省から出された一〇%一律カットに対しても最終的に決定したものではないし、これからさらに厳しい査定をしなくてはならないから今回は御勘弁を、こう言うだろうと私は思います。そのことについては私は大蔵大臣の立場がまるっきり理解できないというわけではございません。しかし、行革国会では行革関連特例法だけではないはずであります。補助金の一律一〇%カットが本当にそれでよいのかということを審議することもやはり重要な今国会のテーマであります。審議をしていまの段階で改めることがあるなら、それもやらなければならないと思っております。  そこで、百歩譲って、大蔵省が一律一〇%カットを各省庁に提示された宿題は約一千六百三十六億円ですか、そうなっておりますけれども、各省いろいろ工夫をされまして、大蔵省に出された各省別のトータルは幾らになっておりましょうか。個々の中身まで一々ここであなたに言えと言ったって、それは先ほど申し上げたような理由になるわけでございますから、中身について私は言えとは申し上げません。ただしかし、各省別のトータルぐらいは明らかにしてもよいのではないかと思いますが、その点については幾らになりましょうか。
  132. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先生がいまお話しになったように、現時点でははっきりしたことは言えないのです。言えないのですが、せっかくのお尋ねでございますから、大体千九百億円ぐらいになっているのではないか、そう思っております。
  133. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 千九百億円ぐらいということは、千六百三十六億円から比べるとかなり各省の方からも努力して出してきているというふうに思いますが、そうなりますと、ここにあります九月十六日の日本経済新聞で実は補助金の減額について報じられております。その中に、「行政改革補助金カットが大きな課題となっているため各省庁とも補助金の廃止や統合化・メニュー化に努め、一般会計の補助金件数は二千八百二十三件と前年度に比べ約七百件、二〇%減少した。閣議決定で一〇%削減の対象となった生活保護費などを除く“削減対象補助金”のカット額は一千九百三億円に達し、政府目標(一千六百三十六億円)を三百億円近く上回った。」こう書いてありますね。あなたがいま千九百億円くらいだとおっしゃったことはこれに非常に近い、このように私ども考えてよろしゅうございましょうか。
  134. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 件数や個別には申し上げられませんが、総合的に見て大体その程度と思います。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、この日経の資料をもとにいたしまして少しずつお聞きしていきたいと思いますが、補助金整理縮減の方向を見ると、おおむね、建設省などのように件数は変わらないけれども金額を減らす方法、また農林水産省、労働省などのように件数も金額も減らす方法の二つになっております。これについては各省それぞれ努力された結果と思いますけれども、若干の疑問が残るのでお伺いをしたいと思います。  それは、補助金が実は多い文部省、厚生省、農水省の三省で見ますと、減額幅は文部省が四百三十億円、厚生省が四百八十三億円、農林水産省は四百三十六億円と、それぞれ一〇%であります。しかし件数減で見ますと、文部省が二十四件、厚生省は十件、農林水産省が五百二十六件と大きな開きがあるというのがこの資料の中ではわかります。この農林水産省の件数減は、五十六年度の千百二十六件から五十七年度は六百件にと約半分に減るようになっております。補助金整理が進められることは私は非常にいいことだと思いますけれども、それにしても、一年で約半分に減らすということは大変に驚異的だと私は思っております。  そこで農水相にお聞きしたいわけでありますけれども、農林水産省の補助金整理やり方を具体的にどういうふうにされたのか、その点について示していただきたい。  それからまた、メニュー化をしたと報じられておりますけれども、具体的に五十六年度補助金のどれとどれをメニュー化するおつもりなのか、その点についてお示し願いたい。
  136. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 ゼロシーリングの閣議決定直後に指示をいたしまして思い切った補助金整理統合・メニュー化をやろう、こういうふうにいたしまして、公共事業では前年度百七十六件のものを百十五件、六十三件を統合いたしました。それから非公共は九百五十件、廃止したものが六十七件、新規といたしまして、新たに要求したのが十八件、統合いたしましたのが四百十六件、差し引き四百八十五件、合わせて要求した、残した補助金が六百件、こういうふうにいたしたわけでございます。  それで考え方といたしましては、地域性やあるいは事業ごとという大別をいたしまして、新地域農業生産総合振興対策という大きな柱のもとに統合をいたしまして、その事業を実施するところに補助金が集中していく、そしてその地域の発展を期することができるというふうにいたしましたのと、また畜産関係におきましても、たくさんありました補助金を総合いたしまして畜産総合対策というふうにいたしまして、地域の畜産団地としての発展も期することができるような政策としてそれに対する補助金ということにいたした次第でございます。もっと詳しく申し上げましょうか。よろしゅうございますか。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 せっかくですから詳しく御説明願えるならばぜひしていただきたいし、また資料として出していただきたいと思います。  そこで、農林水産省が、実は参議院予算委員会提出した資料によりますと、五十五年度は百五十八件の廃止で三百八十九億九千三百万円の減額になっておりますね。五十六年度は八十二件の廃止で二百四十七億四千九百万円の減額になっております。これと比較しますと五十七年度の概算要求では廃止の件数は実は非常に多いのですけれども、金額の減額が少ない、こういうことはどういう事情なんでしょうか、その点について説明していただきたいと思います。
  138. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御承知のようにゼロシーリングの中で、この厳しい環境の中にあります日本の農林水産業を発展せしめてまいりますために、やはり農家だけの負担力、また自治体と農家の負担力、また団体と農家だけの負担力では、土地改良でありますとかあるいは生産向上のためのもろもろの品種改良の問題でありますとか、技術の普及向上の問題でありますとか、そういう農家だけの力ではどうにもならないわけでありますので、その点につきまして総合化はいたしましたが、補助金も重点的に効率的に使っていくという立場をとったわけであります。絶対額をカットして浮きました分につきましては新たないわゆる品種改良の技術開発面、さらには種子関係が非常に重要になってきておりますので、その面に対する新規の予算要求でありますとか、そういう方面に充当いたしてまいりましたために、件数は思い切って合理化をいたしましたけれども、やはり農林水産業に対する助成、保護政策というものに大激変を加えるというようなことのないようにして、政策の強化を図っておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 メニュー化したと仮定して、これが補助金交付の業務の簡素化に役立つかというのには非常に私は疑問に思うのです。たとえば麦とか大豆とか野菜など、各作物ごとに設けていた補助金統合し、地域別や用途別に改めたというふうになっておりますけれども、その補助金の交付を受ける市町村や農民は、従来どおり麦に関する補助金の交付、あるいは大豆に関する補助金の交付、野菜に関する補助金の交付のそれぞれの書類と手続を必要とし、農林水産省が麦、大豆、野菜を個別に審査して補助金を交付する仕組みになっているのではないかと私は思うわけでありますけれども、そうなりますと、この方法では、交付を受ける立場からは補助金合理化にはならないし、手続の簡素合理化にもならないわけでありますが、補助金件数を半分に減らした点と補助金交付改善の具体策についてどのようにお考えになっているか。つまり、件数減はまず事務手続でどういう合理化になるのか、また国、地方ともその係や窓口はどう合理化されるのか、さらにそのことがどう人員増の抑制につながるか、そして結果としてどう金減らしにつながるか、こういう問題についてはどのようにお考えでしょうか。
  140. 亀岡高夫

    ○亀岡国務大臣 御質問でございますが、直接いまのところ人員の減にまで結びつけるというところまでは、検討を十分に尽くしておりません。いま検討の最中でございます。  まずそれを申し上げて、次いで、メニュー化して、たとえば麦を中心にして転作を団地化していこうというところでありますれば、麦を中心にして将来やっていこうということでありますれば、その麦作を進展せしめていきますためのもろもろの、たとえば排水の施設でありますとかあるいは構造改善事業でありますとか、そういうものが、いままで幾つもの書類をつくらなければならなかったものが一つの書類で申請ができる、そういうふうになって、そのために、行政府としての農林水産省としての仕事も、総合的に各局がそれぞれの係官が目を通すということにしまして、その辺で合理化を図ってまいるということに相なるわけでございまして、この点は私は、従来よりも補助金の件数を減らしたために大いに能率が向上するもの、こう考えております。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはりメニュー化をしても、結局受ける側の行政簡素化合理化がなければ、こちらの方はできておるけれども実際に受ける方ができていないということになると、これから非常に問題が残るわけでありますから、そういう点についてもこれから当然いろいろとやっていかなければならない問題があろうかというように思います。  そこで、総理に伺っておきたいわけでありますが、いまたとえて農林水産省を挙げて申し上げましたけれども補助金整理合理化約一〇%カットといっても、財政の帳じり合わせが優先で、それが果たして、事務手続の簡素化あるいは係や窓口の縮小、人員の抑制、財政の効率化という、本来の行政改革のあり方から見れば私は非常に疑問が残るのではないだろうか、そういうふうに思っておるわけであります。大変に補助金のカットの額が多い農林水産省あるいは厚生省、文部省、きょうは文部大臣は国体で出かけておられるということでございますが、これについてはぜひ後で資料等を出していただきたいと思います。各省とも概算要求についてはもうすでに出ているわけでありますが、かなり煮詰まった段階において資料を出していただきたいなというように思っておりますし、その点についていかがなものであるか。  あるいは、五十七年度予算審議の段階では補助金整理の波及効果というものを果たして出していただけるかどうか、それについてはいかがでしょうか。
  142. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 できるだけ御要望に応じるよう努力をいたします。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 次に、行政改革と物価問題についてお伺いをいたします。  これもやはり経済企画庁は五十六年度経済白書の中で取り上げております。それは「公的規制・介入の見直し」ということで、要約すると、総理府作成の消費者物価指数の品目の中で、政府が法令等に基づく参入規制、設備・数量規制、価格規制を行っている五十四品目と、その他の商品の値上がり状況を、五十年を一〇〇として見た場合に、規制商品の値上がりは四三・二%で、その他の商品の値上がり二三・七%の約二倍近くになっております。この規制商品は、経企庁や公取の資料から見ますと、米とか麦とか魚とか肉とか塩とか酒、たばこ等でありますが、こうした規制については、それに従事する人の生活や経済的安定保障の観点から必要性があることも、十分に私は理解をしております。しかし、経済白書も指摘するように、こうした規制のプラス面が特定の少数者に明確に及ぶのに比べ、マイナス面は不特定多数の者に分散されることから、マイナス面が軽視されがちなことも事実であるというように言っております。  しかも、今後のわが国の経済運営において物価の安定が最重要課題であるならば、是正すべきものは是正し、残すべきものは、規制のメリット、デメリットを国民の前に明確にし、コンセンサスを得る必要があろうかと思いますが、これについて経済企画庁長官はどのようにお考えになっておりますか、具体策をぜひお示しを願いたいと思います。  また、公取委員長も見解をぜひお示し願いたいと思います。
  144. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま御指摘のお話は、主として政府が介入をいたします品物は食料品、それからエネルギー関係、こういうものが中心でございますが、もともとこういう分野は比較的合理化がしにくいということもありますが、概して申し上げますと、やはり政府が価格介入をいたしますとどうしても合理化がおくれる、こういう面がございます。でありますから、できるだけ介入対象品目を減していく、そういう今後の配慮が望ましい、また努力が望ましい、こう思っております。
  145. 橋口收

    ○橋口政府委員 わが国経済は、申すまでもないわけでございますが、自由経済体制のもとにあるわけでございまして、鈴切委員から御指摘がございましたように、一部の産業につきましては政府による公的な規制ないし介入があるわけでございます。  自由経済体制を確保し、また経済の効率性を伸ばしていきますためには、できるだけ政府による規制、政府の公的介入を減らすことが望ましいわけでございまして、これは競争政策の立場から、かねてより公正取引委員会が取り組んでおるところでございます。さらに、昭和五十四年九月にはOECDから政府規制の見直しの問題につきまして勧告が出されておりますので、こういう勧告も受け、また行政簡素化効率化には行政管理庁はかねてから取り組んでおられますから、行政管理庁とも御連絡をいたしまして、政府の介入、規制につきまして、将来どの程度緩和することができるかということにつきまして、現在中長期的な観点から検討している最中でございます。
  146. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理大臣にお聞きいたしますが、この行政介入と物価については、総理大臣の諮問機関でありますところの物価安定政策会議から、十年も前の昭和四十五年の七月に、「行政介入と物価について」の提言の中で、「これらの提言の諸事項の多くは、政府が自ら行ない得るものであるから、本提言の実施につき、総理始め関係閣僚が率先して、物価対策閣僚協議会等の場において、スケジュールを作成し、本提言の具体化を積極的に推進し、一日も早くその成果を国民に明示することを強く要望する。」と言われております。  総理、今回の行財政改革では、もちろんこれは実施していただけると思うのですが、その点についてはどうなのか。この件について第二臨調答申があれば、これも実施していただけるのかどうか。そうでなければ、国民は、行政改革財政再建の名のもとに、増税とは名前が違っても、非常に重い負担というものを課せられることになるわけでありますし、物価の問題というのは非常に重要な問題でありますから、その点について総理の御見解をお伺いいたします。
  147. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国民生活の安定確保の上からいたしまして、まずもって物価の安定を図るということが私は非常に大事な施策である、こう考えております。  そこで私は、基本的にはやはり、自由経済体制の中で競争原理によってできるだけ合理化を進めていく、むだを排除していく、そういうことが物価の安定につながるものだ、このように考えるものでございます。食料でありますとか、ある特定の、国民生活の上から特に必要欠くべからざるもの、そういうものに限定をいたしまして、できるだけ政府や行政がこれに介入をするというようなことは避けていきたい、市場経済の中でそういう合理化努力によって物価の安定を図っていきたい、このように考えておるわけでございます。  今回の行財政改革におきましても、そういうような観点から、特に民業と官業のあり方という点等につきましては、十分そのような立場でこれにメスを加えていきたい、改善措置を講じていきたい、このように考えておるわけでございます。
  148. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 こうやりとりをしておりますと、実は意外と時間が進むのが早いわけでございます。  それでは、新経済社会七カ年計画についてある程度まとめて御質問をし、御答弁をいただきたいと思います。  行革推進関連法では、昭和五十七年度から五十九年度までの間、補助金負担金等にかかわる国の歳出の縮減措置を定めております。かかる措置によりまして、計画の描く六十年度経済の姿がかなりの影響を受けるんじゃないだろうかというふうに思いますが、この点についてまず第一点。  第二点は、来年度予算のシーリングや財政の状況等を考えれば、新経済社会七カ年計画にある公共投資百九十兆円の達成については、実際には困難ではないだろうかというふうに思います。公共投資をするにしても、波及効果が上げられるためには、今後どのような配慮が必要であるかという問題が第二点です。  第三点は、法律に定める特例措置がとられた場合、計画の社会保障の目標、これは社会保障移転の国民所得比が一四・五%と社会保障負担の国民所得比が一一%を果たして達成できるのかという諸問題があろうかと思いますが、その点についてまとめて御答弁を願いたいと思います。
  149. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御質問の第一点と第二点は、補助金の圧縮をした場合に当然経済にも影響が出てくるではないか、あるいはまた、予算のゼロシーリングを実行した場合には公共事業が計画どおり遂行できるのかどうか、もしできないとすればこれもまた計画に大きな影響が出てくるのではないか、こういう御質問でございますが、先ほども申し上げましたように、日本経済の規模は非常に大きくなっておりますから——この分野では若干の影響があるいは出てくるかもわかりません、補助金のカットなどによりまして若干の影響が出てくるかもわかりませんが、しかし一面、これをカットしなければ、増税とか国債の増発とか、こういう問題も起こってくるわけでございますから、そういう点を総合的に勘案をいたしますと、いろいろな経済政策を総合的に進めることによって、これらの影響を経済全体に吸収してしまう、こういう政策の整合性が望ましいと考えております。  それから、ことしの一月に、二百四十兆円という七カ年計画の公共投資計画を百九十兆円に圧縮をいたしました。これは昭和五十四年、五十五年が公共事業の伸び率がゼロだった、こういうことになりましたので、それを受けて修正をしたわけでございます。それでこの一月に百九十兆に修正をいたしましたが、これは昭和五十六年から六十年までの五カ年の間にやはり若干の伸びを見ておることは事実でありまして、その初年度に当たります五十六年度においてもこれが伸び率がゼロになる、あるいはまた五十七年度においてもこれがゼロになるということになりますと、これは若干の影響が出てくると思います。  しかしながら、公共事業が仮に伸びないという場合でも、たとえば民間資金を導入して仕事の量だけは減らないようにする、そういう工夫をする方法もあろうか、このようにも考えられます。  したがいまして、いますぐこの時点において、昭和六十年度までの中期展望を修正してしまう、その必要はないと思います。と申しますのは、毎年この計画はフォローアップをしておりまして、そのときどきの経済情勢に応じまして、実情に合わせて調整をしてきておりますので、これはそういう方法で微調整を図っていって実情に合わせる、こういうことを考えていった方がいいのではないか、現時点ではこのように考えておるところでございます。  それから御質問の第三点は、社会保障計画が予定どおり遂行できるかどうかということでございますが、これは厚生年金の場合なんかを見ますと、年金の支払いそのものを減すということにはなっておりません。そういうことでありますから、社会保障移転そのものには関係はないと考えております。また、現在までの社会保障移転あるいは社会保障負担等の数字の推移を見ますと、大体七カ年計画の線に沿って進んでおるのじゃないか、このように考えておりまして、この面もいまのところは修正する必要はない、このように考えております。  この点はあるいは厚生大臣からお答えがあるかもわかりませんので、私はこの程度にとどめます。
  150. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはいいです。  そこで、行革関連のいわゆる特例措置、これは実は予想されなかった問題が五十七年から五十九年に入ってきたわけであります。となりますと、この新経済社会七カ年計画は六十年度が最終ということになっておりますから、経企庁長官が毎年フォローアップしているとはおっしゃいましても、その後すぐに、今度はまた新しい計画等もこれは考えていかなければならないわけでありますけれども、もうすでに経済企画庁の方では長期展望作業、すなわち、これからのもう二十年先ぐらいのことまで見通した作業に入っているというふうに私は聞いているわけでありますけれども、その点、経企庁長官はどういう御構想のもとに、どういうことをされようとしておられるのでしょうか。
  151. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま経済企画庁では、経済審議会にお諮りをいたしまして、今後二十年間、二十一世紀の初めを展望いたしました長期計画に取りかかっております。長期計画といいますか、長期の展望に取りかかっております。  これは、最近技術革新によりまして経済の変化、産業の変化が非常な勢いで進んでおります。そこで、今後二十年間に世界経済はどのように変わってくるのか、またエネルギーの動きはどうか、またそういう影響を受けまして日本経済はどのような変化を遂げるか、そういう変化の中において国民生活はどうなるか、こういう問題につきまして、二十年間の非常に長期にわたってのおおよその展望をつくりたい、こういうことで、ことしの春から作業を進めまして、来年の五月ごろには、長期展望部会というものを経済審議会につくっていただいておりますので、そこでのおよその答申が出てくるであろう、このように期待をしております。この長期展望計画と七カ年計画とは全然別個のものでございます。  そこで、七カ年計画の修正問題についてまたお話がございましたので、もうちょっと触れさせていただきますと、何しろこういう時代、経済の激動期でございますから、いろいろな変化が起こってまいります。たとえば、第二次石油危機など予期しないそういう事態も起こっておりまして、この第二次石油危機の影響などは日本経済に非常に大きな影響を及ぼしております。今度の行政改革も、若干の影響はあるにはありますけれども、第二次危機の影響から比べますと一けた違いの影響だろう、私はこう思っております。第二次危機の影響を一応吸収することのできた日本経済のことでございますから、行政改革による若干の影響が出ましても、先ほど来繰り返しておりますように、これはもう十分吸収は可能である、七カ年計画の根本にはひびは入らない、このように考えておるところでございます。
  152. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理大臣にお伺いをいたしますけれども、実は昭和三十九年に第一臨調が池田内閣のときに答申を出しました。そのときにくしくも、鈴木総理大臣は池田内閣のたしか官房長官をされていたというふうに思いますが、答申の中で、その後の実施を進める上で、性格は行政委員会的なものとし、勧告権とか調査権を与えてその実施を図ろうとされたわけでありますが、しかし、結局は骨抜きといいましょうか、審議会的な行政監理委員会になってしまったという経緯がございます。  実はそういう結果から、意外と第一臨調の実施状況というものは芳しくない。答申をずっと私、調べてみますと、提言が十六項目で改善勧告が四十項目になっておりまして、完全に行われたのが十一、それから一部やって中途半端的になったものが二十、全く手がつかなかったものが九になっております。これに対する総括、反省が実は余りなされていないのじゃないだろうか。そうなりますと、第二臨調も中途半端に終わってしまうのではないだろうかという国民の懸念がありますけれども総理は、この第一臨調の実施状況を見て何か反省される点がおありでしょうか。
  153. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 第一臨調は、御指摘のように池田内閣の後半に答申をちょうだいをいたしまして、実施に努力をしたわけでございますが、ちょうどあの当時は、御承知のように、わが国の経済が高度経済成長期に向かっておったわけでございます。池田内閣から佐藤内閣へかけまして、相当毎年毎年自然増収もふえる、さらにまた、その原資を中心にいたしまして行政需要も拡大をしてまいったわけでございます。佐藤内閣におきましては、社会開発というような新しい政策課題を掲げまして取り組んでまいったわけでございます。そういうようなこと等もございまして、第一次臨調答申の一部は実施できなかったものもございますし、不徹底に終わったものもございます。私どもは、そういう体験の上に立ちまして深い反省をしておるわけでございます。  したがいまして、私は、第二次臨調におきましては、答申をいただきますればそれを直ちに実行に移す、平たく言いますと、鮮度の落ちないうちにそれを実現をする、こういうことにいたしまして、新しい行政が要請するところの行財政の改革、そういうことを着実に推進してまいりたい、このように考えております。
  154. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第二臨調が最終的な答申を出すのは五十八年の三月であります。その中にはもう本当に広範的な、これから二十一世紀にわたる日本の将来を決定づけるような、そういうものまで含めていろいろと答申が出されるわけでありますから、総理大臣が、生きのいいうちに処理したい、それは気持ちはよくわかるんですけれども、それは短期的に、中期的に、あるいは長期的に物を考えていかなければならないと私は思います。  そこで、申し上げたいわけでありますけれども、第一臨調において実はその監理委員会というものが行政監理委員会、すなわちそれは審議会的な要素であって、権限はほとんどなかった。そのために、なかなか政府としても、行政改革のむずかしさというものをいやというほど知っている各総理大臣は、意外と、言っただけでやらなかった。それでは、今後の第二臨調答申がなされても国民に申しわけないんじゃないだろうかと私は思う。  そこで、やはりある程度権限のある、勧告権あるいは調査権ぐらいはある、そういう何か機関というものをつくって、将来政府をしてその実行に当たらしめるという形のものをつくらなければいけないんじゃないかというふうに私は思うのですけれども行政管理庁長官、どう思います。
  155. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 傾聴に値する御議論であると思います。  第一臨調の際は、ともかくその成果をフォローアップして推進するために監理委員会ができましたが、今度の場合はどういう答申が出てくるか、また最終段階において委員がそれを追跡、推進するためにどういうお考えをお持ちであるか、そういうことも委員の御意見を伺った上でやらなければいかぬと思いますが、ともかく行政改革はこれは恒久改革の性格を持っておりまして、毎年毎年、いかなる内閣も相継いでたくましく推進していかなければ、すぐまたばい菌がはびこるような性格を持っておりますから、そういう点からもこれは考慮に値するお考えであると思っております。
  156. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 考慮に値する、そういうことですが、具体的にそれじゃどういうふうにするかということについてちょっとまだお考えがまとまっていないようでありますけれども、私は次に進みたいと思っております。  行政機構というものは、ほっておけばどんどん肥大化してしまいます。そればかりではありません。いわゆる高度経済成長という一つの大きな日本の過渡期においては、非常に大きくこれが肥大化してしまいました。  たとえて言うならば、時代の要請とはいいながらも、昭和四十六年に環境庁、昭和四十九年に国土庁ができました。この低成長時代になって整理統合するといっても、環境行政というものは人の生命を預かっているわけでありますし、また、言うならば密接な関係があるから、これは取り扱いはやはり慎重にならざるを得ない。国土庁の場合は国土計画と国土保全の分野を分けて、建設省とかあるいは農水省に整理統合するということもあながち不可能なことではない、そういう意見もあります。  中央省庁の機構をまず見直して、思い切った削減をしなければ、器をそのままにして行革をすることは非常にむずかしいと私は思う。もちろんこれは第二臨調答申を待って政府が対応する問題であろうかと思いますが、臨調においても時代に即応した簡素、効率的な中央省庁の機構削減を望むと同時に、政府においても、答申が出されたら思い切って答申を実行する決意があるのか。総理が言ういわゆる答申の最大限の尊重というのはどういう意味なのか、その点についてお伺いをいたします。
  157. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 今日第二次臨時行政調査会国民的な期待をしょって、そして、真剣にわが国の行財政全般についての掘り下げた検討をしていただいておるわけでございます。そういう中から、いまお話しになったような行政の組織、機構、中央地方を通じましてそれに対する改革案の答申が出てまいりました場合には、政府としてはそれを最大限に尊重いたしまして、必要があれば立法化を行いまして、これを実行に移してまいる、そういう決意でございます。
  158. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 すべて隗より始めよであります。中央省庁の統廃合というのはやはり真剣に検討しなければならぬのじゃないだろうかと私は思います。  中央省庁を統廃合するということになりますと、実は大臣の数は減ります。総理を初め二十一名おられる大臣、ポストは二十四ありますけれども、それが二割から二割五分ぐらい減るだろう、自分としてはこう考えております。それでもやはり、そういう状態の中にあって中央省庁の機構の改革——先ほどは中央省庁並びに地方あるいはその他の云々ということで、中央省庁については余り明確な御答弁が出なかったわけでありますが、答申が出た場合には、中央省庁の機構の統廃合についても総理としては前向きにやる、そのようにお答え願いたいわけであります。  それと同時に、いま実は自民党の一部あるいは財界等で、行政改革のときには防衛庁を国防省に格上げをしよう、そういう考えがまるきりないわけじゃありませんけれども、これについては、ちょっと私どもとしてはいただきかねるということだけは申し上げておかなくちゃならぬけれども、しかし中央省庁、この改革について総理はどうお考えでしょうか。
  159. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、中央省庁につきましても、臨調答申をいただきました際にはそれを最大限に尊重いたしまして、改革を断行したい、こう思います。
  160. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理大臣としては非常に歯切れのいい御答弁になりました。次に参りたいと思います。  中央省庁と都道府県の存在は、実は国と地方ということで分権されているわけであります。ところが、中央省庁と都道府県の中間に中央庁的な総合出先機関、これがあるのですよね。ブロック機関よりまだ大きいいわゆる総合出先機関があります。かつての中央庁的な存在価値あるいはその果たし得た役割りを評価することについては私、決してやぶさかではございませんけれども、いまや行政の簡素合理化地方分権という立場からいうならば、その存在の必要性も薄らいできているのじゃないだろうか。むしろ、それによって中央省庁の権限がそこに温存されて弊害が出てきているという点も、あながちそれを私は否定することはできないと思います。  そこで、直ちに中央庁的な存在をなくせと言っても実は無理な点があるにしても、将来的な展望としてその方向性というものを明示して実現を図っていく、そして地方自治というものを尊重していく、そういう立場がもう必要な時代になったんじゃないかと思うのですが、その点について行政管理庁長官……。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕
  161. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 この問題は中央地方との責任分担、業務分担という問題で第二次臨調で論議されているところであり、かつ来年初夏に予想される第二次答申の大事な眼目の一つになると思います。ただその際、方向としては、やはり地方自治を尊重する、それから次第に広域化してきている、それから各省の仕事統合化していく、そういうような方向が時代の方向であると私、考えておりますが、臨調の皆さんがどういうお考え答申を出されますか、それを待ちまして断行したいと思っております。
  162. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 佐藤内閣のときに一省一局削減ということで、当時百二十局あったのを十八局削りました。なかなか行政改革が進んでいない、そういう歴代の総理大臣の中においては、佐藤内閣の場合は、総定員法それからこの一省一局削減、これは大変に評価されていると言われております。  そこで、高度経済成長と行政の肥大化と、スクラップ・アンド・ビルトという原則に立っているとはいいながらも、現在もう百十四局になっております。行政改革仕事減らし、器減らしということによって人減らしができるということであるならば、思い切って機構も大改革して、局、部、課、官、室を四年間で一割程度削減するという考え方に立って勇断をふるうべきではないだろうかと私は思います。  そこで、一律に一割を削減するということでなくして、必要に応じた削減を図り、総体として一割を目標としなければ——これから新しい需要、将来を展望する行政機構というものを考えたときに一律でということはちょっと無理でありましょうから、そういうふうに総体として一割を目標とするという考え方でありますが、昨年の九月三十日に実は四党合意に基づいて大蔵大臣とか行政管理庁長官に申し入れたわけでありますが、どういうふうにこの問題については検討されたのか。今後臨調中央省庁を含む行政機構の大改革の答申が出たときに、言うならばこの一割削減がいいのかどうかということは、これはちょっと私もさらに、それよりも多くできるかどうかという問題については検討はしなければなりませんけれども、少なくともこの際、局、部、官あるいは室、こういうものを改革し削減をし、統合していくいいチャンスじゃないかというふうに思うのですけれども、これについてはいかがでしょうか。
  163. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 その点も検討してみたいと思っておりますが、しかし大事なことは、行革理念というものがやはり徹底して出るということが大事であると思っております。そういう面からいたしますと、現段階におきましては、内閣全体としての統合あるいは行政監察の機能を強化していくということ、それから許認可官庁から政策官庁へ各省が脱皮して、各局あるいは部、課等もそういう方向に脱皮していかなければならぬということ、それから国際関係における経済や文化協力等の重視、こういうような面が今後中央省庁の統廃合問題について考慮されなければならぬ問題ではないかと私は考えております。
  164. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 特殊法人について、やはり特殊法人の天下り役員の数がどうも多いというように私は感じてならぬわけであります。  最近の閣議了解でありますけれども、五十四年の十二月十八日及び閣議決定の五十二年の十二月二十三日あるいは昭和五十四年十二月二十八日や、臨調第一次答申にある特殊法人の常勤役員の縮減並びに選考の見直しについては、常勤役員の総数は単に全体として二割削減といった抽象的なものとせず、私は、やはり規模別あるいは個別法人ごとに総数を見直した方がいいんじゃないかという感じがするのです。  そこで、私、調査をしたわけでありますけれども、現在職員五十名以下の特殊法人の数は十五法人で、現行の役員の数は五十四名です。平均して三・六名。五十名で三・六名の役員がいる。あるいは五十一名から百名におきます十七特殊法人については、現行の数は七十九名ですから四・六名になります。百一名から五百名、三十六法人については、現行の役員の数は二百三十一名でありますから六・四名になります。五百一名から千名、これについては十二法人、役員が百十四名でありますから九・五名です。一千一名以上二十八法人については、現行の役員の数が三百四ですから十・九名。すなわち百八法人について現行の役員の数は七百八十二名でありますから、七・二四名の言うならば役員数があります。これはちょっと多いんじゃないだろうか。  たとえて言うならば、かなり少なくても結構機能を果たしているところのそういう特殊法人もあります。例を申し上げますと、私立学校教職員共済組合は、職員数が二百四十一名に対して役員数はわずか三名。日本学校安全会は、二百五十六名に対し役員数は三名。沖繩電力株式会社は、千五百七十六名に対して五名。簡易保険郵便年金福祉事業団は、二千八百四十三名について役員は五名。社会保険診療報酬支払基金は、五千四百六十五名に対して役員は三名。労働福祉事業団は、九千七百五十三名の職員を抱えていながら七名、こういうことですね。かなり少なくても結構機能を果たしているところもあるわけでありますけれども、私は役員二割というのは、それは五十九年度までという一つのめどを立てて二割減ということだと思いますけれども、本来私は、少なくとも二割以上四割近くまでこれは削減できる、こういうふうに思うわけであります。  この特殊法人の天下りの役員数については、今後どのようにされようとしておるか。しかも政府は、いかなる方法昭和五十九年度までに常勤役員数の二割削減を達成されるか。これはかなり具体的に御説明いただかないと、ただ五十九年二割目標に削減いたしますではちょっと済まないのじゃないかと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  165. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは実は内閣官房長官の方の仕事でございまして、行管の仕事を離れていることでございますが、今度の行革特殊法人の常勤の役員を二割減らす、ただし、いまの理事長とか総裁を除くとそれは三割に当たる、そういうことで、これをぜひとも遂行するようにいま進めておるところでございます。中道四党の皆様方は大体半分にしろという御議論をしていらっしゃいまして、私たちも実はぜひそこまで持っていきたいと思っておるのでありますが、とりあえずともかく二割の削減を断行して、その次にまた考うべきときがきたら考えよう、こういう段階的に考えておるところであります。  それから、そのやり方についてでございますが、これは内閣官房の方でそれぞれの部局において各特殊法人の点検をいまやっておりまして、どこが多過ぎるか、どこが不均衡であるか、仕事の内容等もまたよく見なければならぬところです。たとえば保険数理とかそういう数理関係とか、あるいは定型的な仕事をしているところは役員もそう要りません。しかし、労務関係とかあるいは対社会的関係が多いところは、意外に役員が要るわけでございます。そういうわけで、その内容を見ながら全体的にまた均斉を得るように削減をしようというので、いまいろいろ努力をしておる最中でございます。
  166. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五割これは減らせるということは、これは最終目標としてぜひやってもらいたいわけでありますけれども一つのめどを申し上げますと、たとえば五十名以下の特殊法人の役員数を一名にしたら、全部で十五名の役員で済みます。それから五十一名から百名、これは二名にすれば三十四名で済みます。それから百一名から五百名、この役員数を三名にすれば百八名で済みます。五百一名から千名の場合には、四名にすれば四十八名で済みます。千一名以上については、やはり現行の役員数の二割削減、これはそういう形をとらざるを得ないだろうと思いますと二百四十四名。ひとつこういうある程度の水準というものを決めて、それに伴って規模別というか仕事別、各法人ごとにどうかということをやりませんと、とても減らすというわけにはなかなかいかないと思うわけであります。やはり基準というものを考えませんと、いまの考えでいきますと大体四割になるわけでございます。五割というわけにはいかないけれども、四割で私は申し上げたわけでありますが、それについていかがでしょう。
  167. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 実際お説のとおり、役員数を減らすということは非常に難事中の難事でありまして、昔よくあった一局削減とかあるいは総定員法とか、そういうようなやり方でやらぬと、現実問題としてはなかなかやれるものではないのが行政の実情でございます。そういう点をお考えになりましていまのような案を御研究いただいたのであろうと拝察いたしておりますが、大いに参考にさせていただきたいと思います。
  168. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 農水省所管の糖価安定事業団と日本蚕糸事業団が十月一日から統合されて、蚕糸砂糖類価格安定事業団となりました。実態は、糖価安定事業団は役員が六名で職員が八十九名いました。それから、日本蚕糸事業団は役員が六名で職員が三十五名、合計で百二十四名ということになっております。新しい機構は、役員数が九名で職員数が百二十四なんですね。とすると、百二十名強の職員に対して九名の役員が果たして必要であるかどうかということ。なぜもう少し役員数を、少なくとも統合するときにおいては六名ぐらいで十分じゃなかっただろうかという、いわゆる内部的な意見もあるのですね。やはり私は、そういうところにしっかりメスを入れていただかなければ、ただくっついただけであって、くっついて焼け太りなんということになりますと、これは国民は何をやっているのだということになりますので、こういう役員数はそういうときには思い切って改革をすべきじゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  169. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 そういうケースははなはだ残念ながら、たとえば宅地開発公団と住宅公団の合併の場合にも見られまして、はなはだ不徹底のように私も思います。したがいまして、いままでそういうふうに決まったものも、今度の行革におきましてさらに二割削減という対象になると考えていただいて結構でございます。
  170. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実は天下り役員ですね。これは非常に多いということで、役員総数のうちの比率を昭和四十八年天下り白書から拾ってみましたところが、政府関係機関すなわち特殊法人、公益法人六十一法人の役員三百八十四名中、天下りが三百三名、七八・九%。昭和五十五年の十月に、同じく政府関係機関の七十四法人の役員四百六十三名を調べてみましたところが、天下りが何と三百五十三名、七六・二%なんですね。となりますと、昭和四十八年から五十五年の七カ年間の天下りの比率はほとんど減っていない。わずか二・七%減で、しかも天下りは役員の四分の三を超えておるのですね。昭和五十四年の十二月十八日の閣議了解で、特殊法人の常勤役員のうち天下りの割合を半数以内にすると決定しておるわけです。ところが、まるきり変わっていない。これはどうなんですか。達成はいつやられるおつもりでしょうか。
  171. 中村徹

    中村説明員 五十六年十月一日現在で私どもで把握しております数字は、常勤役員の総数が七百五十三名でございますが、そのうち国家公務員から直接そちらの特殊法人に行った方、あるいはこれに準ずる方、これを合わせまして四百二十五人ということで、五六・四%という数字になっております。
  172. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五六・四%、これは多いじゃないですか。半数以下というのですからね。やはり私はこれについて進めていただかなければならぬと思いますし、五十九年度までに特殊法人の常勤役員の二割削減を第一次臨調答申は言っておりますけれども、これについても、縮減については、天下りというのは非常に問題があるわけでありますから、天下りを縮減すべきだろう、内部登用とか民間登用についてしわ寄せをしては、これはかえってバランスが崩れてしまうのではないかと思いますが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  173. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いわゆる天下りというものは、今後も厳重に規制していく考えであります。
  174. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 また、例のいわゆる世襲人事とかあるいは渡り鳥とか、こういう問題がずいぶん問題になっております。公務員出身から特殊法人の役員を選考する場合は、関係省庁の職員にとらわれず、広く各省庁から適任者を選考することを決めた昭和四十年五月十四日の閣議口頭了解があります。実際には成果は上がっておりません。  たとえば昭和五十五年の四月から九月までの間に退職した役員の後任者五十三名中、前任者と同じ省庁から天下っておる者は三十五名、六六%です。そうなりますと、やはり世襲人事ということになってしまうわけでありますが、これは本当に各省庁、次はおまえだよ、次はおまえだよというようななわ張り的なポストを約束しているというようにしか思えないわけですが、世襲人事についてはどうお考えになりますか。  それから、もう一つ渡り鳥について申し上げますけれども昭和四十年五月十四日の閣議了解以降、昭和五十四年の十二月十八日の閣議了解に見られるように、政府のたび重なる決定にもかかわらず、渡り鳥というものはもう野放し状態になっております。一九八一年の天下り白書の中で渡り鳥役員の実態を見ると、いわゆる渡り鳥は依然多いわけでありますが、全役員数四百六十三人中、何と百十八人、二五・五%が渡り鳥をやっております。二つ目が八十五名、三つ目が二十四人、四つ目が五人、五つ目が二人、六つ目が二人、こういう状態になっておりますけれども、この野放し状態についてはどうお考えでしょうか。
  175. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 まず世襲人事というようなものが公の職にあってはならない、そう思います。これも十分監視してまいりたいと思います。  それから、いわゆるたらい回し、渡り鳥というようなものも、これは人事の刷新の上からも必ずしもいいとは思いません。この点もわれわれは大いに監視してまいりたいと思っております。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 行管庁長官、簡単にお引き受けになりますけれども、これは本当に真剣にやっていただかないと、やはりここで御答弁されたことはいつまでも後を引くわけであります。  一つの例を申し上げますと行政白書ですね。これはあなた、ことしの秋からおつくりになるとおっしゃったでしょう。それはどんな準備をされておられましょうか。そしてまた、この秋には行政白書として国民の前に、現在の行政機構というものはこういう状態であるということを明らかにするものをおつくりになるつもりですか。
  177. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 行政白書はことしの秋出すために着々と準備を進めております。白書刊行のための委員会も庁内につくりまして、責任者を決めチームを編成して、目下執筆して整理している最中であります。
  178. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この行政白書は毎年お出しになるわけですね。構想は決まっておりましょうか。
  179. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 毎年出したいと思っております。ただ、そういう需要がないときに無理に出す必要もないので、原則として毎年出すという考えでおります。
  180. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 五十五年行革で、通産省の所管である沖繩電力株式会社は、五十六年度末を目途として民営移管をすることになっておりますけれども、まだ五十六年度末までは多少の期間がございます。しかし、もうそろそろ民営移管の基盤が整っていなければならないわけでありますが、どこがそれを引き受けようとしておられるのか、実際にそれはできるのか、さらには、民営移管して電気料の値上げに直接つながらないだろうかという問題がありますし、累積赤字をどうされるのか、民営を図るについてはそれをたな上げされるのか、そういう問題についてはどのように通産省ではお考えになっていましょうか。
  181. 田中六助

    田中(六)国務大臣 沖繩電力の民営移管の問題は、結論から申しますと非常に私どもの頭の痛いことでございますけれども、五十四年、五十五年の末に閣議決定しておりまして、五十六年度末までに民営移管するという方針を決めております。  しかし、沖繩電力は、鈴切委員御承知のように非常に特殊な状態、たとえば離島が非常に多いとか、石油を一〇〇%火力に使っておりますというようなことでコスト高、そういうようなこと、しかもまた、一キロワットアワー二十七円二十銭ぐらいでございまして、北海道電力を含む九電力で、非常に高いといっても平均二十二円程度でございます。そういうことを考えますと、沖繩県民の方々が非常に心配するのは当然でございまして、私どもが閣議で決めたとおりに民営に果たしてできるかどうか、そうしなければならないということにはなっておりますけれども、この実現方については沖繩県民の民意というものも十分考えなければいけませんし、御指摘の累積赤字が約百六十八億円ぐらいございます。これをどうするかという処置の問題もございまして非常にむずかしい現状ではございますが、いずれにしても民営移管するという方針で進んでおるという現状を申し上げておきたいと思います。
  182. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国家公務員地方公務員は、中曽根長官も言われているように、身分が保障されて首切りはないということについては再三答弁されておりますけれども特殊法人の場合は、中央省庁の縦割り行政の中にあって非常に連係がとれない問題があります。  一つの例を申し上げますと北海道地下資源開発株式会社、これは昭和四十三年に廃止されました。これは北海道開発庁が中心の特殊法人でありました。それで、そのときに仕事の内容の似通っている金属鉱物探鉱事業団、これは通産省でありましたけれども、それがあったので、廃止をする方にしてみるならばぜひ統合してもらいたいというような主張をし続けてきたわけでありますけれども、実際には百五十名中わずか五名しかそこへ入れてもらえなくて、あとはばらばらになり、事実上の首切りになってしまった。こういうのが特殊法人に実はあるわけです。これをほうっておきますと、特殊法人臨調においてもこれからかなり厳しく見るでしょうし、特殊法人の統廃合という問題についても、いまの状態のままではないと思いますけれども、やはり働く人たちの生活安定というのは一番大きな問題じゃないだろうかと私は思います。  となりますと、この問題については、行政改革を進める上においても特殊法人間の横断的な雇用保障制度、これを今後考えていかなければ、非常に不安定な要素しか残らないだろうと思うわけであります。各特殊法人もこれからいろいろ統廃合されるについて、首切りにつながらないようなそういう横断的な雇用保障制度、これは行管庁長官やはりお約束していただかないと、また首切りにつながるんじゃないかという不安だけしか残りませんんので、その点はいかがお考えでしょう。
  183. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 特殊法人国家公務員に準じて縮減措置を講ずる、そういう原則を持って今度の行革も実施しております。いまの鈴切さんのお考えはひとつ検討さしていただきたいと思います。
  184. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、これはもう特殊法人についてもやはり総点検をしまして、事業内容に見合う適正人員を決める必要があるだろうというふうに思います。国家公務員については総定員法がありまして、総定員法というものはかなり効率的に運用されておりますけれども国家公務員の数が減りますと、どうしても特殊法人とか認可法人へどんどん人が流れてしまう。そのためにどんどん肥大化していく状態の中にあってはやはりこれもある程度ぴしっとしないと、補助金等を出しているわけでありますから、人事管理の問題からいっても問題があろうかと私は思うわけであります。まず特殊法人を総点検して事業内容に見合う適正人員を定め、そして総枠として横断的な特殊法人の総定員というものを決めなくちゃいけないんだろうと私は思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  185. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 特殊法人は、国家公務員と違いまして職種によって非常に性格が違うものが内包されております。たとえば日本航空みたいな株式会社のものもありますし、あるいは国鉄や三公社のようなものもありまして、内容が非常に変わっているものもあるわけであります。したがいまして、国家公務員のように一律に決めるということが果たして適当であるかどうか。国鉄のように四十二万体制から三十五万体制に切りかえられつつあるところもあるわけで、非常に流動性を持っている面もございます。特殊法人の再検討ということが官業と民業との関係という面で第二臨調でも重大事項として研究されておる折からでございますので、それらの結論の帰趨も見守ってみたいと思っております。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 各省庁の権限に基づいて設立されるいわゆる認可法人というものは、数の数え方によっては六十六ともあるいは九十八とも、もっと多くとも数えられるわけでありますが、特殊法人の設立というのはスクラップ・アンド・ビルドで厳しくされているために、どうしても隠れみのの認可法人が設立されていく傾向があります。設立の段階で政府から関与するものがありまして、補助金とか出資金が出されているものもあります。政府が出資したり補助金を出したりするなら、私は何ら特殊法人と変わらないではないかという感じがしてならぬわけでありますが、特殊法人でもない民法上の法人に政府がお金を出して関与するということは、将来の官僚の天下りポストをつくっているようなものであると私は思います。  その中で五十五年度は二十一の認可法人に対して補助金等の名目で四百八十六億五千五百万円一般会計から国庫支出しております。それについて、大蔵大臣はその必要性を認めて厳しく査定をしていくつもりがあるのか、また認可法人の設立について総体的にどこがチェックをしているのか。私がこう言いますと、行管庁長官がお立ちになりますと、これについては実は私の所管ではないのですけれどもと、こういうふうに答弁するのですね。だから、この認可法人の問題については総理、どこが所管するのですか。
  187. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 認可法人はいわゆる特殊法人と違いまして任意の民間の方々が自律的に設立する、特殊法人のように法律でもって強制的な性格を持ってやるものでない、民法上の法人に近いという性格を持っております。したがいまして、国が余り干渉することは必ずしも適当ではない要素がございます。しかしおっしゃるように、補助金なりあるいは委託費というものがかなり流れている団体ではございますから、これは乱造されたり乱費されたりしてはいけないとわれわれも考えております。  ただ、認可法人の設立は各省庁が監督権を握っておりまして、各省庁大臣の監督のもとに設立されておるというのが現状でございまして、実は行管庁の手を離れているものです。行管庁としては、一括してこれらをできるだけふやさないように、いろいろこちらも横目で見て、ある程度勧告、監査ということもやっております。  そういう意味において、今後ともこれらが乱造、乱費がないように注意してまいりたいと思っております。
  188. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 行管庁の所管でないので横目でこれをにらんでおるというのですが、これはやはりまともに見ていただかないと、政府の中でどこかが認可法人についてまともに見ないと、これはやたらに各省庁の権限に基づいて設立されていくというならば、補助金も出す、出資金も出すじゃ、もう特殊法人と何ら変わらぬわけですよ。こういうものを乱立させるということについて私は問題だと思うのです。  総理、これについてはどこかぴしっとまともに見るような所管庁をつくってくださいよ。
  189. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御指摘のように、認可法人は各省庁の大臣が認可をしておるわけであります。したがいまして、各省庁の責任者、大臣が認可法人の設立につきまして厳しい指導監督をする必要がある。特に認可法人に対して補助金を出す、交付金を出すというような問題は、いま財政再建の厳しい状況下でございますので、特に厳しくこれを指導監督していきたい、こう思います。
  190. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで大蔵大臣、出資金や補助金を認可法人に出せる根拠というのは何なのだろうかと思うのですね。一般法なのか、それとも特別法なのか、その点についてはどうなんでしょうか。
  191. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは特別の法律に基づくものと思います。
  192. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 特別の法律に基づくものなら、出資金とかあるいは補助金を出すということは特殊法人と変わらないわけです、実際には。これは言うなら、特殊法人が非常に厳しい規制があるから認可法人へ流れていくわけですから、こういう問題についてはやはりチェックしないとだめですね。しかも相当の金が出ているわけです。これは実に四百八十六億円も出ているわけです。だから、こういう点について大蔵省としてはどういうふうに対処されるのですか。
  193. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御指摘のように、この認可法人は民間等の関係者が任意に設立して主務大臣が認可する法人ですから、これはやはり特別の法律に基づくものである。それについては国が監督、規制を行っているのも事実だと私は思います。そこで、そういうものに確かに御指摘のような出資金とか補助金、委託費、交付金、給付金等が出ております。これがルーズになれば何にもならぬじゃないか、特殊法人うるさく言ったって片っ方で同じものが続々生まれるじゃないか、これは私はごもっともな御意見だと思いますから、これにつきましては関係省庁とよく連絡をとって厳しく対処したいと考えます。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府は人事院勧告については誠意を持ってやると言われておりますけれども、誠意があったかなかったかはやはり結果を見ないとわからないですね。たとえば誠意を持って実は払えなかった、誠意を持って繰り延べした、誠意を持って勧告率五・二三%を崩した、これでは誠意にも何もなったものじゃないです。やはり誠意というのは、少なくとも人事院勧告を完全実施をすること、私はこういうふうに思っておるわけであります。人事院勧告は完全実施をしなくてはならぬ。なぜならば、一つは政府がILOに言ったように、この人事院勧告は非常によき慣例として、しかも完全実施が日本においては行われております、こういうふうに言ったわけでありますけれども、どうしてILOに言ったことをやらないのでしょうかね。もしやらなければ、ILOの場において日本の輸出攻勢に批判が高まることも予想されます。日本は長時間労働の上に賃金を抑制して輸出を促進しているという批判がさらに高まってくるだろう。ゆえに、国際的な観点からも考えてやはり完全実施、仲裁裁定についても完全実施をすべきだと私は思うのですが、総理はどうお考えでしょうか。
  195. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 仲裁裁定につきましては、すでに前国会以来国会に議決案件として最高の御判断を求めておるわけでございます。いま御審議の過程におきまして、政府も各三公社五現業の財務内容等をさらに検討いたしまして、何とか国民の皆さんも納得するような結論が出るように、政府としても国会と御協力をしてその結論を出したい、このように考えています。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院総裁が来ておられると思いますので、労働基本権の保障のない中での代償機関である以上、人事院勧告は完全実施をすることはもちろんだ、私はそのように思いますし、それがよき慣例になっております。今回も給与の勧告を出されました。しかし、その勧告の取り扱いが実は問題になっているわけでありますけれども人事院総裁のこの勧告に対する御意見と、あなたは臨調委員会に出席されて、人事院として官民比較の中で人事院勧告の意義ということについて非常に強調されたというふうに言われますけれども答申が出てみますと、御存じのとおり、国家公務員給与については抑制をという文言が入ってしまいました。それは人事院という第三者機関の存在というものをよくお知りにならなかったのかというような疑問にさえ実はなってしようがないわけでありますけれども人事院総裁は人事院勧告についてどういうふうにこれを位置づけられるか、この点について御所見を承りたい。
  197. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 お答えをいたします。  いま御指摘がございましたように、去る五月十一日に臨調に出てきてもらいたいという要請がございました。私といたしましては、要請がなくても、この際大変重要なことだから、臨調の各委員によく事態を認識をしていただきたいという切なる希望を持っておりましたことでもございますので、喜んで参上をいたしました。相当時間をお与えいただきましたので、ちょうどいい機会だと思いまして、私からるる御説明を申し上げました。これは戦後における公務員制度の沿革、国家公務員法成立の経緯とその内容、目的。その中における人事院の使命、性格、なかんずく、人事院がその権限の中で最も重要視いたしておりまする給与に関する人事院勧告制度の意義というもの。それと従来におけるこれの取り扱いの実績というものを中心にして詳細に御説明を申しました。私の印象としては、それなりの御認識は十分御理解をいただいたように実は推察をして帰ってまいったのでございます。  申し上げるまでもなく、その中で私が特に強調いたしましたのは、この給与に関する人事院勧告というものは特に重要な労働問題としての性格を持っております。この労働問題というものは、民間でもそうでありますように、非常に長年の積み重ねでもってだんだんといい慣行ができていく、そういう筋合いのもので、そう短日月にこれができ上がるものでもなく、また何かの情勢が変わったといってこれを急に覆すというような性質のものではないはずである。特に人事院の給与勧告については大方の御了解がだんだん進みまして、よく御指摘がございますように、昭和四十五年以降は勧告どおりに完全実施されて今日まで来ておるのであります。しかも、このことが何といっても公務における労使関係の良好な安定ということに私は寄与している部面が大変大きいということは確信をいたしております。  これはいろいろな事情があることは私自身も否定はいたしません。いたしませんが、それはそれといたしまして、この給与の勧告に対する取り扱いにつきましては、これをやはり従来どおりのよき慣行を尊重して完全実施していただかないと、良好なせっかくの積み重ねのこの労使関係にひびが入る。ひびが入ることになりますと、いろいろな問題が起きてまいりましょう。いまここでもたびたび論議されます、また、いま鈴切さんも御指摘になりましたように、国際問題のこともございましょうし裁判所の問題もございましょう。やはりそういうような取り扱いいかんによってそういう問題に発展をいたしますることは大変残念なことでございますので、従来の慣行をこの面については何とぞひとつ尊重して、完全実施をしていただきたいというのが私の切なる願望でございます。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 人事院総裁公務員の中にあって代償機関としての立場の長だけあって、やはり言われていることに対して私は非常に筋が通っているというように思います。  人事院として昭和六十年まで公務員の制度全般についての見直しをするための作業に入っているということでありますが、人事院が作業に入っている内容はどういうものであるか。  また臨調答申は五十八年の三月というふうになっておりますが、この中にあって、公務員制度については恐らく一番最後のところで答申が出てくるのじゃないかと思うわけでありますが、中曽根長官に、臨調における公務員制度における今後の検討方向は何であるか、これをお聞かせ願いたいと思います。
  199. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま第二次臨調におきまして、公務員制度全体を対象として検討することになっております。そうして来年の初夏を目途にこれらの改革案が出てくる予定でございます。公務員制度の中には、もちろん人事院制度それ自体も含まれると思いますが、公務員の任免あるいは勤務、待遇、そういうような諸般の問題について検討がなされると思っております。
  200. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 人事院の主管をいたしております公務員制度の見直しの問題については、昨年の人事院勧告の際にこのことを言明をいたしました。これを受けまして、本年の勧告においてもさらに一歩進んだことで、今後の見通しなり検討の項目の概要なりについて触れたところでございます。  申すまでもなく、現在の制度はそれなりに非常に完熟をしてきておると思いますけれども、何せ世界の情勢、経済社会状況というものが急速に変化をいたしております。その一番特徴的なことは高年齢化、高学歴化と称せられるものでございますが、そのほかにいろいろな変動がございます。こういう情勢に対応して、現在行われておりまする制度について根本的な見直しをする時期に来ておるのではなかろうか。具体的な例を細々申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、任用制度、試験のあり方、あるいは昇進制度をどうしていくかというような問題等を中心にいたして検討してまいります。また給与制度につきましては、現在の俸給表の種類の問題、あるいは等級構成あるいは号俸制度というものがそれでいいんだろうかというような問題、さらには本俸と各種手当との配分の問題、そういうような事柄を含めまして、いろいろな点をさらに深く検討をしてまいりたい。そのほか、公務員倫理というような問題も特に最近やかましく言われております。これは大変大事なことでございますので、そういうこととともに、職員の研修の制度のあり方等々についても深く掘り下げて検討をし、問題点について対策を打ち出してまいりたいということでございます。  なお、いま行政管理庁長官からお話もございましたが、恐らく臨調でもこの問題は取り上げられると思いますが、しかし、われわれ人事院として専門的に自負している分野もございます。そういう点がただ単に臨調との関係で審議が重複をしたり非常に不経済なことになっても、それこそこれはつまらぬことですから、われわれはこういう点についてやりますよということは、これは臨調の審議を拘束するというような意味ではなくて、御参考ということで、人事院としてはこういう点を掘り下げていきます、こういう点はこういう状況になっておりますということは緊密に連絡をとって、審議というものを能率化するという努力は極力やってまいりたいと思っております。
  201. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、やはり総定員法の見直しをしなくてはならない問題がもう出てきているんじゃないかというふうに思います。それで、実は昭和四十四年の五月十六日に制定されましたいわゆる総定員法は、定員の総数の最高限度を五十万六千五百七十一人と決めております。これは法律で決めております。これは五現業職員及び地方事務官は除いた数字になっております。ところが、昭和四十七年に沖繩が復帰して特措法政令定員が別枠になり、さらに五十二年から国立学校設置法定員が別枠になっております。それで、四十四年に決められた五十万六千五百七十一人が、五十六年では一条定員が五十万二千二百九十九人、沖繩復帰特措法政令定員が八千六人、国立学校設置法定員が一万四千八百四十一人となっておりますので、合計しますと五十二万五千百四十六人であり、総定員法の五十万六千五百七十一人の最高限度をはるかにオーバーしているという状態となっております。だから、総定員法は崩壊しているから、総定員法を見直したらいいのではないだろうかということを私は申し上げたいわけであります。  確かに沖繩の復帰は昭和四十七年で、総定員が施行された昭和四十四年以降のことであるから予想されなかったことであり、別枠でもやむを得ないというような考え方もあろうと思いますけれども、しかし沖繩復帰後約十年を経過し、県制までしかれている状態になり、来年は沖繩復帰特措法が延長される可能性が強くなってきております。だから、いつまでも沖繩復帰特措法を、政令定員を残しておくということはむしろ差別待遇、差別扱いだというふうに思いますし、本来の国家行政組織法の上からいっても非常に問題を残すのではないだろうかと私は思います。  それから実は国立学校設置法、これはいわゆる新設の国立医科大学を政策的につくったわけでありますが、五十六年の総定員法に見合う一条定員は確かに五十万二千二百九十九人であったわけでありますけれども、その中にすでに国立学校の職員十一万数千人を含んでおります。だからそうなった場合、この十一万数千人を含んでいるのと、この国立学校設置法定員の別枠一万四千八百四十一人というものは本来総定員法の中に含まれなければならない問題ではないかというふうに私は思います。  そう考えてまいりますと、総定員法の中に沖繩とか国立医科大学とか、これからまた幾らか新設されるでありましょう。そしてまた、言うならば一年から四年の中にあってどれだけの職員が必要であるかということ等も含め、私はこれだけオーバーしている問題の中から総定員法というものはもう見直さなければならないんじゃないだろうか、時代に合った定員というものをしなければ無理になってきたのではないか、このように思うわけでありますが、その点についてはいかがでございましょうか。
  202. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 総定員法では五十万何ぼと決めましたが、政府は実行計画におきまして、五現業も入れまして、いまの国立大学や沖繩までたしか含めたと思いますが、八十九万何ぼという枠をつくって、それを超さないように、それをさらに減らすように努力して、約十四年間に一万人弱減らしてきたところでありまして、人間をふやさないという面につきましては、さらに大きな枠の中で実行努力してきておるところであります。当分の間はこれでやっていくよりやはりしようがないだろうと思います。また、医科大学も各県にまだできつつありますし、そういう点で不安定な要素もございます。しかし、いずれは適当な将来に、いまのすべてのものを組み込みまして、しっかりとした総定員法をつくり直す必要はあると思います。その場合にはできるだけ縮減するという方向に進むべきであろう、そう思っております。
  203. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その中には地方事務官というのも含まれておりますし、五現業職員まで含めてどうのと言いますけれども、実際には法律で定められているのは五十万二千何ぼという数字です。ですから八十九万何がしというものは、それは政府としては考えておられるかもしれませんけれども、五現業も形態はこれから行政改革によって変わってくるわけですよ。ですから、それまで含めてしまうと、ちょっと——あるいは地方事務官制度についても、本当に政府は何やっているのだろうかというような考えが私はしてならぬのですよ、だんだん後退していくのじゃないですか。最終的には、これは御存じのとおり臨調答申を待って、こういうことです。そんなことで果たして主体性がありますか。  そう考えたときに、いろいろな行政改革の中にあって変わり行く行政機構というものを考えた上において、五現業だって、これからもうどんどん変わっていくわけですよ。そういう問題を考えたときに、やはり法律で定めたものだけは、これはきちっと決めなくてはならぬだろうというふうに私は思うのです。  大変に幾つも問題を残してしまいましたけれども、またこれは、いずれ私の所管する内閣委員会等でもやりますけれども、時間になったようですから、その点について最後にお答え願いたいと思います。
  204. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま第二次臨調でいろいろ御研究を煩わしておりまして、三公社五現業関係につきましても、いろいろな変動があり得ると予想されます。そのほか、いろいろな行政改革が進行中でございますので、その情勢も見守りつつ、ある適当な時に至りましたら、やはり総定員法を見直す必要はある、そのように思います。
  205. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは質問を終わります。  実は、きょうお呼びして御答弁いただかなかった大臣については、まことに申しわけないと思っておりますが、お許しを願いたいと思います。  以上です。
  206. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて鈴切君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田正勝君。
  207. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま、行政改革のことにつきまして慎重な論議が繰り広げられておるのでありますが、いかに制度をいじりましても、機構をいじってみましても、肝心かなめのことは、やはりそれを取り扱う人間であろうと思うのであります。しかして、国の財政は税金がなければやっていけないことも当然であります。そこで、行政改革にまつわりまして増税増税でないかという問題も繰り返されておりますので、私は、以下、行政の基本的な問題と、それに付随をいたしまして、北鮮におります日本人姿の安否調査の関係と里帰りの実現の問題について、所信をただしたいと思うのであります。  まず最初に、素朴な質問からさせていただきますが、大蔵大臣にお尋ねをいたします。  昭和五十六年度の国家財政の税収は三十二兆二千八百四十億円でありますが、この税金は一体何のために取るのでありましょうか。お答え願います。
  208. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 政治を行うために取るわけであります。
  209. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。大変簡単で明瞭であります。簡にして明とはこのことだと思います。私も同感であります。  総理大臣にお尋ねをいたしますが、税金は政治を行うために取るのである。しからば、その政治というのは何のためにあるのでしょうか、これについてお答えを願います。
  210. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 国民の生命財産を守り、また国民の幸福な生活を実現するためでございます。
  211. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この問題につきまして外務大臣さらに法務大臣、お答えをいただきたいと思いますが、外務大臣は、ただいまエジプトから成田空港の上を回っているころでしょうか、着いたぐらいのところですから、これは政府委員の方からでも結構ですから、外務省の態度ととらせていただきますので、お答え願います。
  212. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 国家、国民を守り、国家、国民の発展を期していくためにあるものだと考えております。
  213. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  外務省の方はいかがですか。
  214. 木内昭胤

    ○木内政府委員 外務省といたしましては、当然のことながら、在外におられます邦人の方々の安全、保護ということを任といたしております。
  215. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは重ねて、いまのお三名の方にお尋ねをいたしますが、先ほどの御答弁から見ても大体答えは出ておると思うのでありますが、念のためにお尋ねをするのであります。  国は、したがって国民を保護する義務があると私は思っておりますが、イエスかノーかだけお答え願います。
  216. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  217. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この問題につきましても外務大臣、法務大臣でございますから、外務省はひとつ政府委員の方から、法務大臣もお願いします。
  218. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 総理からお話があったとおりに考えております。
  219. 藤本芳男

    ○藤本説明員 邦人の保護は、外務省の最も重要な基本的な任務の一つと心得ておりまして、あらゆる在外公館の機能を使って邦人の保護に遺憾なきを期しております。
  220. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、総理に再度お尋ねをいたしますが、私は、政治というものは公正で、かつ公平でなければならぬと思いますし、公務員たる者は、国民に対して常に不偏不党の姿勢を持って、誠意を持って奉仕すべきであると考えておりますが、いかがでございますか。
  221. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 御指摘のように、政治は公正であり、かつ公平でなければならない。また公務員は、国民に対する奉仕者として清廉であり、身を持することが潔白でなければならない、国民に信頼されるものでなければならない。このように考えております。
  222. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま基本的な姿勢を伺うことができまして、私も大変満足をしておるのであります。  そこで今度は、北鮮におります日本人妻、現在千八百二十八人、日本国籍のままおられるはずであります。この里帰り問題につきまして、法務大臣は、法務委員会でもその訴えを聞き、承りますところによりますと、本年の七月十七日、閣議で積極的な御発言をいただいたそうでございます。これは閣議に列席しておった大臣各位は聞いておられましても、われわれ国民は聞いておりませんので、大臣の生の声を、この際お聞かせいただきたいと思うのであります。
  223. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 たまたま七十幾つかの市町村の議会から、議会の決議を法務大臣あてによこしてこられたわけでございます。非常に重大な問題でございますし、法務大臣だけで処理できる問題じゃございませんので、閣議に報告をし、さらに閣議後の記者会見で申し上げたわけでございます。その趣旨は、皆さん方にこの問題についての理解を持ってもらいたい、また理解のもとに実現に向けて御協力をいただきたい、こういう気持ちからでございますが、よろしければ、その閣議のときに申し上げたものを、もう一遍ここで申し上げてもよろしいと思います。(岡田(正)委員「ぜひお願いします」と呼ぶ)     〔海部委員長代理退席、委員長着席〕  先般、北海道帯広市議会ほか全国にわたる五市四十三町二十三村の市町村議会から法務大臣あてに、朝鮮人の夫と一緒に北朝鮮へ渡航した日本人妻の里帰り実現についての意見書提出されました。  意見書の内容は、このような日本人妻が数千名もおり、在日の家族たちがその安否を気遣っているにもかかわらず、わが国に里帰りした者は一人もいないので、一日も早く、わが国への里帰りができるようにしてほしいというものであります。  当省で調べましたところ、昭和三十四年十二月以来これまでに朝鮮人に随伴して北朝鮮へ渡航した日本人は六千六百七十三人で、このうち朝鮮人の妻として渡航したいわゆる日本人妻は千八百二十八人(日本国籍は離脱しておりません)のようでありますが、これらの人たちが一度も里帰りしていないことは事実であります。  この問題については、外務省においても努力されていると聞いておりますが、わが政府としては、わが国に在留する朝鮮半島出身者に対して、人道的観点に立って、昭和四十年から親族訪問や墓参を目的とする北朝鮮への渡航を認めており、昭和五十五年中だけでも三千二百四十九人、本年は六月末までに千五百人の者に、親族訪問等を目的とする北朝鮮への渡航、いわゆる里帰りを認めているのに、日本人妻が一人も里帰りできない現状を思いますと、出入国管理行政を所管する法務大臣として胸の痛む思いがいたします。  これまでにも事務レベルで朝鮮総連の幹部に対しまして、日本人妻の里帰りについて善処方を要望したことがあるようでありますが、これに対する朝鮮総連側の応答は、  一、日本人妻は北朝鮮に入国すれば、そのときに北朝鮮の国籍を取得し、日本国籍を喪失するので、この問題はもっぱら北朝鮮の国内問題であって、日本政府からとやかく言われる筋合いのものではない。  二、日本人妻と言われる人たちはすべて幸せな生活を送っており、里帰りを希望する者は一人もいない。 ということで終始しているようであります。  しかしながら、わが国の国籍法上、これら日本人妻が日本国籍離脱の手続をとらない限り、単に北朝鮮に上陸したことのみにより日本国籍を喪失することはあり得ない。これらの人たちが現在もなお日本国籍を保有していることは明らかであり、また、日本人妻の人たちから日本の親族に送られてくる手紙などから、この人たちが望郷の念に駆られ、一日も早い里帰りの実現を熱望していることが十分にくみ取れるところであります。  このような事情を考えますと、わが国が在日朝鮮人の北朝鮮への訪問について人道的な配慮をしているにもかかわらず、北朝鮮当局が、いまもなお日本人妻の里帰りを認めないことはまことに残念であります。  全国の市町村議会から意見書が寄せられた機会に、このような問題があるということをとりあえず御報告した次第であります。  こういうことを申し上げたわけであります。
  224. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大臣、ありがとうございました。大変素直に家族の声を反映し、しかもそれは、ただ向こうへ渡っております千八百二十八名の日本人妻だけではございません、男性を含めた六千六百七十三名の諸君が、いまの大臣の閣議発言を聞いたら、いかばかりか涙を流して喜ぶと私は思います。ありがとうございます。  そこで、その後の問題でありますが、これは事務当局からでも結構でありますけれども、私は、いかに国と国との間の交わりがアンバランス過ぎるかという問題を克明にさせるため、次の数字の発表を要求するのであります。  国交がない北鮮から、わが日本へ出入国しておる数は相当なものであります。その目的別の各年度の数字を、近年だけで結構でありますから御発表願いたい。  なお、ただいま大臣の発表の中にもちょっとあったと思いますが、在日の北鮮人の方が、祖国訪問と称して北朝鮮へ行かれたり帰ったりしておる数が、これまた相当なものだと思うのであります。この数もあわせて御発表願いたいと思うのであります。
  225. 大鷹弘

    ○大鷹政府委員 ただいま御質問のありました北鮮からのわが国への入国者の数でございますけれども、過去三カ年の数字を申し上げたいと思います。  まず昭和五十三年からでございますけれども、五十三年が二百六十二名、五十四年が百九十一名、五十五年が二百六十一名でございます。なお、五十六年の六月末までの半年の間で、北朝鮮からの入国者は百四十八名に達しております。  次に、再入国の方のケースでございますけれども、これまた過去三年間の数字を申し上げます。  昭和五十三年には、在日朝鮮人が再入国許可証を持って北鮮に渡航したものは千百九十七名おります。このうち人道ケース、つまり親族訪問というような形で行かれたのが八百三十三名でございます。五十四年になりますと、この再入国許可による朝鮮人の北鮮への渡航の数は大分ふえまして、全部で二千五百十六名、そのうち、いわゆる人道ケース、先ほど申し上げました親族訪問、墓参り等のケースが千九百六十九名でございます。五十五年には、さらにこれが伸びまして、再入国許可のすべての数が四千二百四十五、このうち人道ケースが三千二百四十九名に達しております。
  226. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この際、総理にちょっと資料提出をお許しいただきたいと思います。  ただいま発表がありました数字を見ますと、何とも言われぬ怒りの気持ちが込み上げてくるのであります。いま総理のところに私が差し出しました書類は、その本になっておりますのは、北朝鮮からわずかに日本に届いてまいりましたずたずたに切られた手紙、あるいは、ほとんど真っ黒に塗りつぶされたような手紙、それもほんのごくわずか集まっただけのものを編集した、まさに読むのも聞くのも涙なくして語れないような内容ばかりであります。そういうものがごくわずか音信があったというだけでありまして、六千六百七十三名のほとんどの人から音信がなく、一体どうしておるのかと思って尋ねようと思っても尋ねることができない。  きょうは日赤総裁の出席も要求したかったのでありますが、御用繁多ということでありますから、私がここで実情を申し上げておきますが、この日本人妻の自由往来の運動をやっております池田文子さんという御婦人を中心とする千五百の日本におる家族の人たちは、毎月毎月わずかな金を出し合って「望郷」というパンフレットを出しながら帰還促進運動をやっております。ところが、その実は上がりません。国連本部にも行きました。国際赤十字にも行きました。板門店にも行きました。しかし、どうすることもできません。ただ一つ残された手がかりとして、国際赤十字を通じて日赤から北鮮の赤十字に働きかけをしてもらい、この六千六百七十三名の安否調査を一遍にお願いするといったら、向こうがびっくりするであろうからというので、厳選して厳選して二百十通だけ安否調査をお願いしたにかかわりませず、すでに、ことしで満七年を迎えようとしております。ただの一通も北鮮赤十字から、返事はありません。まさにナシのつぶてなんであります。これがジェット機で飛べばわずか一時間という一衣帯水の間にある国かと思えば、全く情けなく思っておる次第であります。  そして、その次のパンフレットにとしてありますのは、昨年、自民党のAA研の方々がわざわざ向こうへ行かれましたとき、金日成主席と会われてこの問題を訴えた。そのときに主席はなかなかいいことを言っているのです。いま総理が開いておられるページのところでありますが、これはまことに結構な話である、それは里帰りもどんどんさせてあげたいし、大いに結構なことであるから話は進めてくれ、こうおっしゃったのであります。しかも具体的に、対外文化連絡協会などを通じてやってもらいたい、そして朝鮮労働党を通じてやってもらいたいということまで、どこを通じたらいいかということまで名指しをされてやってあるのでありますが、しかしその後、何の動きもありません。かくのごとく、その家族は一時大変喜んだのでありますが、今日におきましては年も越え、やっぱりだめだったかと実は全くぬか喜びを嘆いておるような次第であります。  こういうときにおきまして考えてみてください。幾ら国交がないといっても、いまさっき入管局長の発表がありましたように、昨年なんかの実績では、里帰り、いわゆる祖国訪問団という分だけでも三千二百四十九名も、わが日本から出入国さしておるではありませんか。何で北鮮に行っておる六千六百七十三名の日本人、なかんずく、その中で向こうの奥さんになっております千八百二十八名の日本国籍を持ったその国民が、なぜ日本に墓参りにも、親の危篤にも来ることができないのですか。一人も来れないということは私は異常だと思うのです。こんなあほなことがあっていいかと思うのです。  どうしても、どんなに要求しても聞き入れてもらえないということになれば、法務省も外務省も、それならわが日本におる北鮮の人が里帰りをすることを許さなくてもいいはずなんだ。私は、目には目を、歯には歯をとは言いません。だがしかし、先ほど来政治の基本姿勢でお尋ねしたとおり、小学校の生徒が質問しておるかと思うようなことを言いました。これはこのことのために聞いたのです。なぜ日本政府が日本国籍を持った国民を守ることができないのですか。何のための税金ですか、何のための政治ですか、何のための政府なんですか。私はそれが言いたいのです。  その点につきまして、総理大臣のこの問題に対する所信を表明していただきたいと思うのであります。
  227. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 岡田さんの切々たる御意見、また多くの人にかわっての御発言、私も本当に胸の詰まる思いでございます。国交がないというようなことからいたしまして、いま政府としては国際赤十字社等を通じまして、今日まで幾たびか、この問題についての善処方を要請、要求してまいっておりますが、いまだにそれが実現をいたしておりませんことは、まことに残念でございます。  一方におきまして、日本政府は、人道上の高い見地から、在日朝鮮人の墓参りあるいは親族の訪問等々につきまして最大限の理解と便宜を図っておるわけでございますが、これに対していま申し上げたような、何ら日本側の誠意が届かない、実を結ばないということは、まことに遺憾にたえないところでございます。  今後とも、この国民的な願い、この課題につきまして、政府としても一層努力をしてまいる所存でございます。
  228. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それではお願いだけを申し上げておきますが、先ほど差し上げましたあの本の中にも書いてありますから、要点だけをまとめて申し上げますが、あの六千六百七十三名行っておる日本人男女、なかんずく日本人妻千八百二十八名の人々から、検閲の間を漏れて、わが日本に入ってきましたわずかなわずかな、しかも、ずたずたの手紙の中から、その文意を拝察いたしますに、もう帰還船が出てから二十二年目を迎えようとしております。ことしの十二月で満二十二年です。日本を出てから以来二十年間いまだに着たままの服で生活をしております。当てぎれに使うきれでもいいから送ってほしい。子供の着物がすり切れて、自分の着る物を着ないでも子供のためにつくってやっているが間に合わない。ぼろぎれでもいい、古いシーツでもいい、送ってもらいたい。ハンカチでもいいから十六枚送ってくれと書いてある。どういう意味かわかりません、前後が切られてあるからわからぬのです。そして、働かなければ米がもらえません。しかし体が悪ければ働けません。働かなければ米が食えません。したがって人から米を借りました。いま、たまりにたまって六十キロたまりました。これを返すのに当てがありません。家の者も肩身が狭くて外が歩けません。サッカリンでいいから、いい値段で売れるので八キログラム送ってもらいたいというような切切たる内容が書いてあるのです。  これが、たった日本海を隔てただけの隣の国、地球の反対側の国じゃない、隣の国なんです。その隣の国におるのが日本人なんです。そのことを十分考えていただきまして、いまの総理の御発言、私はまじめに、まともに受けて引き下がりますが、どうぞひとつ、この日本人妻の家族の人たち、そして現地におる人たち、一人も帰ってこれぬなんという異常な状態、これは何かあるに違いない、何かありますよ。私は、それ以上の言及はしませんが、ぜひともひとつ前進をさしていただくよう重ねてお願いを申し上げて、質問を、この問題は終わります。ありがとうございました。(拍手)  次に、これもまた幼稚園の生徒が聞くようなことをお尋ねして恐縮でありますが、総理大臣にお尋ねをいたします。  行政にとりまして生産性向上なんということは全く無縁なものでしょうか。
  229. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、行政の場合におきましても生産性ということは非常に大事だ、このように考えます。
  230. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次に、行管庁長官人事院総裁にお尋ねをいたします。  いまも総理大臣は、行政にとっても生産性の向上というものは大変大事なものだとお答えいただきましたが、近代化、合理化、生産性の向上ということにつきまして一体いかなる努力がなされておるのか、具体的にお答えをいただきたいのであります。
  231. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 昨年、私就任以来、行政の簡素効率化ということと行政サービスの画期的改革、親切、能率、清潔、そういう目標をつくりまして鋭意努力してきているところであります。  行政の簡素効率化につきましては、昨年の十二月に閣議決定をして、ただいま許認可の整理あるいはそのほかの諸般の政策を進めておりますし、行政サービスの改革につきましては、各省庁に御協力を願いまして行政監察を実行しまして、そして各省の出先機関におきましてどういうふうに変化しているか監察いたしまして、大体点数をつけて、いいところはいい、悪いところは悪いで通達をして、さらに督促しているという状況でございます。
  232. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 私も、総理がお答えになりましたように、公務においても生産性ということは大変重要な目標であって、これを達成するためにあらゆる努力を傾けていかなければならぬという基本的な態度は堅持をいたしております。  ただ、先生も御承知のように、公務における生産性ということを考えまする場合に、これを非常に的確に測定をすることができるかどうかということになりますと、公務の分野というもの、あるいは種類というものが大変種々雑多でございまして、それが非常に端的に測定できるものとそうでないものとがございますので、これは民間の場合におけるように、価格が決定をされる、あるいは利潤がそこに生まれるか生まれないかというようなそういう簡明な尺度というものがない場合がございます。  ただ、公務の中でも、そういうふうに人員とその業務量というものを測定できるものはあることはあります。この点はどこかのところに資料として出しておりますけれども、たとえば入管の職員というようなものが、入管件数がふえればそれがどの程度比重が上がっておるか、人員をふやさないでやっておるということもございますので、そういう意味では大変な生産性が上がっておるということが言えると思います。また、税務職員の場合も、これも大変御努力を願って、徴税額、課税額等は大変驚異的な伸びを示しておるにもかかわらず人員はそれほどふやしておらない、その中で処理をしておるというような努力もやっておりまして、これはある意味から言えば、生産性を非常に向上させるための努力をしておるということは言えると思います。  しかし、測定のできない部分もございますけれども、これは公務の性格として、たとえば非常に生産性云々がむずかしい治安の問題とか、あるいは教育の問題とか、公共事業の遂行の問題とか、そういうような点もございますので、一概に民間と対比して云々ということはなかなかむずかしいと思いますけれども、しかし、同じような場面において努力することはもちろん、全般的にいってやはり能率を上げていく、特に窓口その他については能率よく、国民にも大変喜んでいただくような努力というものをもっと推進すべきでないかということは、それは努力目標として当然あり得ると思うのでありまして、われわれとして、また人事院といたしましても、現在の制度を十二分に活用いたしますとともに、世界に冠たる成績を上げております民間の生産性の向上に見合って、公務においてもできるだけの努力をしていかなければならぬというように思っております。
  233. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、人事院総裁にちょっとお尋ねをしますが、国鉄の生産性の向上というのはどう思っていらっしゃいますか。所管外ですか。
  234. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 これは人事院の所管ではございませんので、個人的にはいろいろ考え方はございますけれども、やはりこういう席上で申し上げることは差し控えさせていただきます。
  235. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 言いたくないのも答弁の一つでありますが、聞くと言ってもらいたいのがまたこっちの気持ちでございまして、はたからながめておられて、特にこういう人事院月報で公務員制度の調べをお出しになりましたときに、公務員の数と業務指標の推移などまで懸命に研究をして、何とかして生産性を上げようということも一生懸命にやっておられる人事院総裁でありますから、いま国民から一番注目を浴びております国鉄について、あれは生産性が上がっているのかな、上がってないのかなというぐらいのことは何か言えるのじゃないでしょうか。それだけでもお答えください。
  236. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 繰り返して申しますが、紋切り型の答弁ではなはだ恐縮でございますが、所管でもございませんので、その点の御答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、しかし、国鉄は国鉄として、いろいろ世論の動向もございますし、また大変な赤字を抱えておるという現実の姿があるわけでありまして、それを克服するために労使を挙げて解決に努力をする、政府もこれに対して大変な関心を払って、財政的その他から諸般措置を講じておるということも事実でございまして、最も端的なあらわれとして人員の縮減ということを打ち出しておることから申しましても、それなりの懸命な努力はされておるのではないかというふうに考えております。
  237. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  それでは、運輸大臣と国鉄総裁にお尋ねをいたします。  まず冒頭の質問は、先ほど総理にもお尋ねをしたことでございますが、日本国有鉄道については、生産性の向上、合理化、近代化というのは全く必要がない、無縁のものであると思っていらっしゃいますか、お二方から御答弁願います。
  238. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 国鉄もいわば企業でございますから、近代化、合理化能率化、これに努力することは当然であると思うております。
  239. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもは、法律で公共性と採算性とこの相矛盾する目標を持って仕事を進めることを要求されているわけでございます。やはり鉄道業という一つ仕事でございますから、当然のこととして生産性を上げる、それによって何とかして運賃を少しでも安くサービスを供給するということに取り組まなければならないわけでございまして、過去におきましては六十万人の職員がおりましたのですが、現在四十万強ということでございまして、そのテンポがいいかどうかという問題はございますが、当然生産性は上げなければなりませんし、また、長い目で見ていただきますならば、そういう方向に歩んできたということは言えると思います。現状いろいろ御批判ございますが、なお一層努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  240. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、具体的にお尋ねをいたします。  国鉄再建の主要な柱というのは、私は三つあると思うのです。  そのうちの一つは運賃値上げ、これは国民の協力がないとできませんね。これは御承知のとおり、五十五年度の決算報告を見てみましても、運賃全体を平均いたしまして、六・七%上げたけれども、収入は二%しか上がらない。すなわち、露骨な言葉で言ったら、国民は国鉄離れを起こしつつあるという状態でありますから、これも余り頼れない。  第二の柱は国庫補助でありまして、これは政府の補助でございます。これは御承知のように、本年は七千三百四十一億円。さすがは大蔵省の御出身の総裁でありますから、まあ国鉄当局は、言葉を悪く言えば、総裁を人質にとったようなつもりでおるのでしょうか。補助金は年々上がっていきます。一体どこまでいくんだろうか。単一の団体で一年間七千三百四十一億円というような膨大な補助金をもらっておるのは、国鉄以外にはありませんね。三K赤字の一つと言われる食管会計にもこれほどはいっておりません。最大のものであります。しかして、この補助金というのは、何ぼ渡辺大蔵大臣でも、財政再建期間中はもうこれ以上出せぬぞということをおっしゃっておられるようであります。ということになれば、第二の柱の国庫補助も頭打ち。  残る一つの第三の柱は、合理化以外にありませんね。この合理化というのは、国鉄自身の企業努力でやらなければならぬのであります。  そこで、もっぱら総裁にお尋ねをいたしますが、三十五万人体制というこの間決まったあの計画というのは、単なる国鉄再建の一里塚でございますわね。肝心な職場は一体どうなっているのか。その職場のことにつきまして、先ほど総裁は胸を張って、そして大臣も胸を張って、国鉄といえども企業でござる、したがって、近代化、合理化、生産性の向上を当然のことであるとおっしゃった。当然のことであることを何をやっておるか、ちょっとひとつ言ってみてください。時間がありませんから、ぎょうさん言わぬでもいいです。目立つようなものを一つか二つ言ってみてください。
  241. 高木文雄

    ○高木説明員 一つの例といたしましては、五十五年度予算上四十二万人をちょっと超える職員で仕事をやるということでございましたが、五十六年度、現年度は四十万前後ということで、予算定員で約一万一千人減るということになったわけですが、実際の職員数も減っております。そして事務量の方はそう大きくは変動がございませんので、そういう意味から言えば、私どもとしましては、力いっぱい能率を上げる努力をしているつもりでございます。
  242. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  大変わかりやすい答弁でありまして、国鉄当局が胸を張って、わが国鉄といえども企業でござる、したがって、近代化、合理化、生産性の向上は負けぬようにやっておる。それでは、その中の主なるものを一、二挙げてください。その答弁は、五十五年に四十二万を超えておった人間が五十六年には約四十万、実際は一万一千人も減りました、やっておりますということをおっしゃいましたね。これは何にも知らぬ人が聞いたら、うわあ、すごいなと思うのでありますが、そうはいきません。  一つだけお尋ねしますが、国鉄におきまして定年的なものでおやめになっていく人数というものは、いま五十五年からの人数を言われたから、昭和五十五年から向こう十カ年間に自然退職をする者は一体どれだけおりますか。
  243. 高木文雄

    ○高木説明員 十年間というお尋ねでございますが、十年間ですと、大体十四万五千から十五万ぐらいになろうかと思います。
  244. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ただいまお話しのとおりでありまして、一部の説によりますると、定年制的な尺度ではかっていくならば、ここ十年間に二十万人が減るであろうと言われております。しからば、昭和五十五年四十二万五千人の体制から十年間、国鉄総裁は何にも手を染めずして二十万人は減っていくのであります。新規採用せぬかったらですよ。ということになれば、一万一千人、一年間で減りましたということは、余り手柄にならぬと思いますがね。これ以外にもうないですか。国民が聞いても、これが大蔵省から送った、日本の赤字の最大の国鉄を立て直す経営の大家高木さんだと言うてもらうのには、ちょっと答弁がさびしいじゃありませんか。私はさびしいのです。しかし、時間がありませんから、次に参らせていただきます。  さて、その国鉄の再建を妨げておるものは一体何か。いま、減量はわかりました。その国鉄の再建を最も阻害しておるのは何か。これは総裁は一番よく知っていると思う。何ものにも恐れず答弁をしていただきたい。
  245. 高木文雄

    ○高木説明員 恐縮ですが、ちょっと前段の点に触れさせていただきますが、確かに現在職員の数を減らす、少ない数で仕事をするようにしておりますが、欠員を全く補充しないということではないのは、これはやはり輸送業の特色でございまして、安全という問題とも関連しまして、全然補充しないというわけにもまいらぬことを御理解いただきたいと思います。  それからいまの、どうやって再建をやるか、一番問題は何かということでございますけれども、これはたくさんございます。いろんな事情がございますけれども、いまの職員数を目標年次までに目標数まで減らすことによって生産性を上げたいという問題については、当然労働条件の変更という問題を伴いますから、いろいろむずかしい問題がございますけれども、十分話し合いをし、理解を深めることによれば何ら障害がない、これはやり遂げねばならぬと私は考えております。
  246. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 総裁は何を恐れておるのですか。国鉄の再建を妨げるものは何か。たったこれだけしか聞いておらぬ。その答えが、いや、人員は減らしておるのですが、新しゅう入れもせぬと、またこれ企業ですから。そんなことはだれでも知っておるのです。そんなことを聞いておるんじゃないのです。人間だけですか。ほかに国鉄の再建を妨げるものはないと総裁は現時点で思っておられるかどうか、はっきり言ってください。
  247. 高木文雄

    ○高木説明員 現在再建計画でいろいろ考えておるわけでございますが、再建という意味をどういう意味でおとりいただくかという問題があるわけでございます。非常に恥ずかしいことでございますけれども、現在の再建計画では、六十年時点において、申しわけありませんけれども、なお一兆円の赤字が残るということになっております。この一兆円の赤字が残るという問題につきましては、その主たる原因は年金、退職金の異常負担という問題によって押しつぶされそうになっておるわけでございまして、そうした問題をどのように政府でもってお助けいただけるかという問題がありますけれども、そうしたポイントについて十分の御配慮をいただけるのであれば、とにかく何とか六十年度までに収支が償う形をとれるというふうに考えております。
  248. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、ここにこういうものが発表されておりますから、さらに国鉄総裁の御意見を聞きたいのですけれども、私から見れば、何かこう恐れているような感じですから、先に運輸大臣からひとつ御答弁をいただきたいと思うのです。  こういうものが出ております。これは、去る四月、国鉄に三十年間おりました大野光基さんという方が国鉄の鉄道労働科学研究所長を最後にいたしましておやめになりました。その方がいま全国を行脚していろいろと調べて歩いております。この人の経歴をちょっと申し上げておかぬと話のつじつまが合いませんが、御承知のとおりマル生運動、いまから十年前、このマル生運動というのは生産性向上のための運動であります。このマル生運動の神様と言われた人でありまして、昭和四十四年の末から昭和四十六年にかけまして国鉄本社の職員局能力開発課長として生産性運動を推進したがために、国労、動労の猛反発で、マル生紛争に当局が全面的に当時の総裁が屈服をいたしましたので、A級戦犯の烙印を押されて窓際に押しやられたさびしい生涯を送った人であります。その人が——まだ死んじゃおりません。まだ余生がありますが、国鉄の生涯です。大人ですからそのつもりで聞いてください。  さてそこで、その人が実にショッキングなことを言っておるのですよ。こういうことを言っております。いまのような当局の事なかれ主義、それから労働組合のストや非協力闘争という力のおどしに対して譲歩の繰り返しばかりしておったら、国鉄の再建は永久にあり得ないと言っておりますが、運輸大臣、お聞きになられまして、そうだと思われますか、それは違うと思いますか。
  249. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 私は大臣就任以来、国鉄の再建のかなめは、まさに労使一体となって燃えるがごとき気持ちを持って再建に取り組んでもらいたい、それが念願でございました。でございますので、たとえば昨年の十月のダイヤ改正時におきましても、労使の間で意見の食い違いがございましたけれども、それを集約してお互いが協力する体制をとらし、ダイヤの改正も円滑にいったこともございます。仰せのように、まさに国鉄の中には長年にわたりまして、われわれから判断いたしまして悪い慣行と申しましょうか、そういうものはあることは私も承知いたしております。でございますから、それらを今後再建の途上において解決をぼちぼちやっていくということが一つの大きい課題であると私は思うのでございます。  先ほどお尋ねの、再建を妨げておるものは何かという御質問がございましたので、国鉄総裁としてはいろいろな要因が重なって再建を妨げておる、それはいろいろございましょう。その中のやはり一つの大きい問題は、労使間が一体となってやってもらうということ、これに尽きると私は思うております。
  250. 高木文雄

    ○高木説明員 ただいま大野君がいろいろな問題を提起しておるというお話がございました。私は大野君とついせんだってまで一緒に仕事をしておったわけでございますから、大野君の考え方はよく知っております。大野君の言う点にも十分耳を傾けるべきものがございますし、また、残念ながら大野君の指摘するような事態が現場において見られる、全部ではございませんが、一部そういうところがあるということは事実でございます。これをどういうふうに直していくかということについては、いま私どもの重要な仕事になっておるわけでございますが、これをまたどういう手順でやっていくかということについてはいろいろの問題がございますので、私は私なりにいま最大限の方法はこういうやり方ではないかということで進めておるわけでございまして、その点では若干大野君とは意見が違っている点もあります。しかし、しばしば意見を聞き、彼はいまあちこち回ってくれておりますので、すでに現職ではありませんけれども、事実問題として彼の意見も聞いたりしてやっておるわけでございます。
  251. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、ちょっと質問を繰り上げまして、先にお答えいただきたいと思いますが、現場管理者、中間管理職にあります現場管理者の中でよく自殺者が出ますね。この自殺者の数とその原因の究明、その後の対策、それからあわせて、この国鉄という職場の中では暴行事件というのがよくあるのですね。この暴行事件の数と、そしてその原因、その対策、これについて一緒に御発表願います。
  252. 高木文雄

    ○高木説明員 本年に入りましてから自殺者の数は、いわば管理者といいますか、駅長、助役グループで三人でございます。それで、毎年の自殺者の数は大体四十人ぐらいでございます。(発言する者あり)それは全体の数でございます。職員が四十万人おりますので自殺者の数も多いわけでございます。(発言する者あり)そのうちで管理者の自殺者というのは毎年大体一割ぐらいでございまして、これはやはり職員の数と管理者の数の割合と、自殺者の中の職員の数と管理者の割合は大体同じぐらいの割合でございます。  しかしながら、やはり現在管理者が非常に骨の折れる立場にあることは事実でございまして、われわれとしてはあくまで決められたルールに従って現場管理を行うべく指導をいたしますし、それから現場においてはいろいろな意味での紛争がございますので、その中で間にはさまってということがしばしば——自殺に至るというのは非常に特異なケースでございますけれども、非常に現場の管理者諸君が苦労しておることは事実でございます。これがためには、まずバックアップ体制と申しますか、管理局所在地から遠く離れたところにやはり問題が起こりがちでございまして、そうしたことについて現場管理者任せでなくて、いろいろな悩み事についてもう少しそれぞれ管理局の担当の諸君が絶えず気を配っていなければいけないというふうに思っております。そういうことを通じて、現場管理者が単独で責任を異常に負わなければならぬというような雰囲気になりますとどうしてもそういうことになるわけでございまして、まだまだ管理局の現場に対するバックアップ体制が不十分だというふうに考えております。  なお、いまお尋ねになりました件数については担当常務から答弁させます。
  253. 吉井浩

    ○吉井説明員 ただいま職員並びに、特に管理者の自殺の件につきましては総裁から申し上げました。  そんなことで、私どもこれから三十五万体制に向かいまして合理化を進めていかなければならない。ある職場で仕事やり方が変わる、人が減るというときにはとかく職場のもめごとが起こりがちでございますが、そういう場合に管理者として自信を持って対処してくれるようにということで、ただいま総裁が申し上げました、局、現場を通じて、特に管理者相互の連帯感の醸成ということに十分努めていきたいというふうに思っております。  それから、暴行の件でございますが、これまたまことに残念なことでございますが、いわゆるマル生後に非常に暴行事件、その中には職員の管理者に対する暴行、あるいは組合の所属を異にする職員相互の暴行事件というものがございます。これに対しましては、私ども、どんな理由があれ暴力というものは絶対に許してはならないという強い姿勢を現場管理者に対しましてよく徹底をいたしております。また、組合に対しましても、このようなことがないようにということを言っております。  暴行事件につきまして、非常に古くからの数字につきましては実は持ち合わせがございませんですが、五十五年度、昨年度におきましては、これは実はお互いの、特に千葉の関係でいろいろな暴力事件がございました。これにつきましてはなかなか人物の特定ができないということでございましたが、人物の特定がございました件につきまして、五十五年度、二つの事案につきましては、それぞれ厳正な処分をいたしております。一つは、職員の管理者に対する暴行でございます。一つは、組合の所属を異にする職員相互の暴行でございます。  それから、今年度に入りましてからの暴行事件、これは四件ございますが、これにつきまして、やはり職員と職員の間のもの、職員から管理者に対して暴行を働きましたもの、これらにつきましては、それぞれ停職、ある者は懲戒免職といった処分をいたしておるわけでございます。
  254. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私は、こういう質問をしますよということを、事前に、入念に連絡を申し上げておったのであります。近年二、三年でいいから、その数字を発表してもらいたいと言っておりましたのに、総裁は、自殺者のことになりますと、本年だけ——本年に入ってということは、いま十月ですよね。何月現在のことか知らぬが、大体、毎年四十人は死ぬわい、そのうち一割が管理者だろう、えらいラフなお話でありまして、人が死ぬのは余り関係がないのかな、そう感じるのかなと思うんですけれども、民間の会社において、四十万ぐらいで、一年間に四十人も自殺者がおるなんということは民間じゃありませんよ。全くこれは異常ですよ。そういうことの原因の追及。  それから、いまの暴行事件にいたしましても、資料がありませんのでというのは、何事ですか。私は大分前に説明していますよ。それを、五十五年で特定できるのが二件、特定できないのが四件、何か検察庁の発表を聞いておるような感じがするが、この暴行事件なんというものが、いまの管理者の諸君の自殺に結びついておるのが数多くある疑いがあるでしょう。  たとえば、ここに、いまの大野さんが発表しておる例でありますけれども、大野さんの発表しておる例でいきますと、こういうことですね。いま鉄道労働科学研究所におきまして、サンドイッチ症候群、いわゆるえらい人と組合との間にはさまれた中間管理者の諸君が起こす病気の名称だそうでありますが、サンドイッチ病というのだそうです。これが五十三年、五十四年で通院加療を要するという症状を見せた者が八十八名おった。しかも、そのうち、もう私は死にたいよと、どこにも行くことができぬのなら、職場もかえてもらえぬのなら、私は死にたい、こう言った者が九人。女性ではありませんよ、いっぱしの大きな男性がそういうことを言っている。何が何でも退職さしてくれ、もう転職さしてくれるのがだめならやめさしてもらうという人が十四人もおった、大変な数でありますね。しかも、列車から飛びおりをいたしまして、沿線の適当な木にベルトをくくって首をつられた人、また、その後を追うかのように、二人の助役が列車に飛び込み自殺をはかるなど、たくさんの例がありますね。一体、それは何が原因なのか。大体、この一つの例だけを見てもおわかりだろうと思うのでありますが、たとえば、やみ協定、やみ慣行なんというものが、もう国鉄の中にはうじゃうじゃあるわけですね。  その中の一つをちょっと紹介いたしますと、まことに読んでみてびっくりする。これは現実に調べてきたものを発表しておるのでありますが、一、二の例を言いますと、ドラムかんを二本運搬するときには、作業員が六人おらなければ運搬はしないことにする。こんなことは民間で聞いたら一体どうなるのでしょうか。ドラムかん二本を運搬する場合には職員が六人そろわなければ手を汚さないという。そして重量物の取り扱いの作業をしておるときに、雨が降って、かっぱを着て長ぐつをはかなければならぬということになったら、作業はやめた。そして管理者は、作業員の出勤前、そして昼休みの時間中には決して作業班の中に足を踏み入れてはならぬ。一体どうなっておるのですか。こういうような職場協定を結んでおるから中間管理職の諸君は、上司からの責めと下からの現場協定による締めつけと、両方の板ばさみになって、サンドイッチになって自殺をする者が出、退職を要望し、転職を要望するのではありませんか。  私は、労働組合の存在というものについては、私自身も労働組合の幹部をやり、労働運動をやったために二回解雇になった男であります。現在、労働運動をやっておって二回も首になったというのは恐らく私ぐらいのものでありましょう。そういう記録を持っておる、労働運動をまともに評価しておるこの岡田でさえ、いまの国鉄の内部は異常過ぎる。このやみ慣行、やみ協定なんというようなものをやめさせ、そしてポカ休、職場の上司に届け出もせずにいきなりポカっと休んでしまうのをポカ休という。穴があいたらどうにも仕事ができないからだれかを持ってこようとする、組合へお伺いを立てなければ埋めることができない、したがって、仕方がないから中間管理職がわれみずから作業に従事しなければならぬ、したがってオーバー労働になる、体はまいってくる、精神も憂うつになる、そういうことが明瞭にわかっておるのに、話は聞いておりますが、私は私の考えでいまいきよりますと、こう言う。しかし、私の考えは、ここで御発表になりませんでした。だがしかし、労働運動をやって二回にわたって首を切られた岡田でさえ許すことのできないこういう国鉄の中の労使の慣行は、まさに国鉄を滅亡させる、やがては国民から見放されるときが来ると私は思うのです。高木さんが重大な使命を背負って大蔵省から出向されたということになれば、私は、これはもう命をかけてでもやってもらいたいと思う。  そしていま一つ、こういう国鉄の中でも、暴行事件で痛めつけられて、あばら骨を二本も三本も折られながら、抵抗もせずに、勤務につこうとしてがんばっておる諸君、ストライキなんかやっちゃいかぬ、国鉄は国民のものである、世界に冠たる、一分一秒のおくれもない日本の国鉄、この名前を落としちゃいかぬと言ってストライキに反対をし、生産性向上に賛成をし、合理化に、近代化に賛成をして懸命に努力をしておる鉄道労働組合の諸君、鉄労の諸君のその扱い、その待遇というものは——私は何も鉄労に入っておるから一階級昇進させえなんということを言うんではありません。こういうまじめな組合員がおらなかったら、私はとうの昔に国鉄は倒れておったと思う。そういう人が八万人もいまこの四十二万五千の中におるから何とかまだ両目が保たれておる。ストの最中でも汽車を動かしたり、殴られたりけられたりしながらでも、歯を食いしばってがんばっておる諸君がおる。こういう諸君を国鉄の救いの神だと思って、総裁はもっと対応を変えてもらいたい。  そして命をかけて、体を張って国鉄再建のために闘ってもらいたい。ただそろばんの上だけで何ぼ銭が足りませんから渡辺先生お願いします、そんなことだけの総裁にならぬように心から希望をいたしまして、本件は打ち切ります。(拍手)  次に、これも国鉄に関係をしてまことに恐縮なんでありますが、事のついででありますから申し上げます。  職域病院の赤字解消と一般開放についてであります。私の調べたところによりますると、臨調の御答申でも職域病院の合理化をやるべしということを言っております。ところがこの職域病院の合理化については、閣議決定がないのじゃないかと思うのです。これは私の見間違いかもしれません。私はないような気がいたします。許認可事務の関係もなかったと思います。これはひとつ行管庁長官から御回答をいただきたいと思うのであります。まず最初にそれを。
  255. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 閣議決定の有無につきましては、政府委員から答弁させます。
  256. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 ただいまのお話の職域病院のことでございますが、閣議決定の中には入ってございませんが、五日後の八月三十一日の事務次官会議申し合わせにおいて、三公社四現業の職域病院について、当面、利用率の低い病院あるいは小規模病院等の整理統合及び一般開放等による収支改善を図ることを決めております。
  257. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 はい、わかりました。そこらがちょっと私にはわからぬのでありますが、閣議決定にならないで、それから五日後に、八月三十一日事務次官会議でやったんです、こうおっしゃるのですね。何かひどう重たいんかな、軽いんかな、私はよくわからぬのですがね。  そこで、具体的にそれではお尋ねをしますよ。これは行管庁の方にもお尋ねをいたしますが、鉄道病院におきまして三十八病院、出した赤字が単年度で二百七十二億円、そして収支率、いわゆる入ったお金が出るお金の二九%。そして電々逓信病院十七、これが百九十一億も赤字を出しておる。三一%しか収支率がない。郵政病院が十六ありまして九十八億円、三八%しか収支率がない。専売公社が二つありまして二十二億円、そして四〇%の収支率しかない。印刷局が二ありまして十二・六億、三三%の収支率。造幣局が三ありまして三億円、一六%の収支率。営林の方が一つありまして一億六千五百万、そして四三%の収支率。一体これが病院ですか。七十九の病院を合計して一年間の単年度赤字六百億円。しかしていま四十人編成行革委員会にかかっておるこの臨調答申に基づく行政改革法案三十六本締めて実質減百二十二億円。病院の赤字六百億円。すばらしいものですね。そして収支率は三二・九%しかありません。  以下代表して国鉄総裁の方から、一体この国鉄病院をどうしようと思っているのかということについて、その意思を発表してください。
  258. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもは、ただいま御指摘がありました行政改革という問題とは別に、五月の段階で経営改善計画というものを国鉄自体の問題として立てましたが、その中におきまして、病院につきましては健康診断の部分を除きまして六十年時点で収支をとんとんにするということにしております。その健康診断の部分というのは、普通の職員と違いましていろいろありますので、普通の労務者の場合よりは非常に高い頻度で健康診断を義務的にやらしておりますので、その分だけは経営として持たざるを得ないだろう。その他の点については収支とんとんにする。  その場合の一番の問題は、地方におきます鉄道病院は最近は県立病院、市立病院といったものがずいぶんできてまいりましたので、もはや必要がなかろうということでやめてしまうということでございます。  それからもう一つは、むしろ都会におきます比較的設備その他もよろしい病院の方については、主として医師会その他地域の方々にお願いをいたしまして、職域病院でなしに一般病院として一般のお客さんを扱わしていただきたいということでいまお願いをしておりまして、かなり多くの地域で御賛同を得ております。まだ御了解を得にくい部分もありますけれども、現実にそういう方向で進め得るというふうに考えております。
  259. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 行管長官、この点についてはいかが思われますか。
  260. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 国鉄病院あるいは特殊法人の病院につきましては、いま御指摘のとおりの惨状でございまして、これは至急改革を要する。これはいままでの各内閣における行革のたびごとに実は指摘されてきておる問題なのであります。特に民社党から厳しく指摘されてきておるところでありまして、今度は並み並みならぬ決意をもって一挙に改善を図ろう、そう思っておるところであります。
  261. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、いまの七十九病院六百億、今回の七項目三十六法律案の集計、締めて純減百二十二億円のちょっきり五倍、六百億円の赤字を年々悠々と出しておるこの職域病院についての整理統合、近代化について一段の促進方を要望いたしまして、次に移ります。  次の問題でありますが、これは成績主義と信賞必罰という問題であります。  さて、この問題は、成績主義の確立、勤務評定の強化につきまして現在は何がとられておるかといえば、三つあります。試験で採用する、そして昇進する、特別昇給をする、特別昇給というのは短縮、二号アップ、こういうものでありますが、その三つであろうと思いますが、そのとおりでしょうか、人事院総裁
  262. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 そのほかに現在は特別給というものがございます。これは民間の賞与に当たるものでありますが、これの内容は、期末手当と勤勉手当と二つになっております。なかんずく勤勉手当につきましては、本人の成績率、成績というものに着目をいたしまして、上下四〇%から九〇%までということの差をつけております。これが第四の柱でございます。
  263. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは間違いであってほしいと念じつつ質問をするものでありますが、そのいま言われました特別給のその前に、特別昇給というのがありますね。これは各省庁ごとに年一五%人数を分けて一巡方式でぐるりっとまんべんなく回っていく、何年かたったらみんな特別昇給した、よかったな、こういうやり方をしておるということですが、本当ですか。
  264. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 いまお述べになりましたように、特別昇給の枠というものがございまして、これは最近は一五%の枠内であればやってもよろしいという決めをいたしまして、各省庁にその点はお流しをしておるわけでございます。しかし無論、これの運用については一五%は必ずやれという趣旨じゃございません。その中で該当者があればやってもよろしいという限度でございます。申すまでもございません。そういうことで厳密に、やはり特別昇給ということでございますので、成績優良者にこれが当たりまして、なるほどあの連中はよく働いているから、成績を上げているからということの実証がそういうことでなされるようなことで運用しませんと、これは何のためにやるのかわかりません、そのほかに一般の定期昇給というものがあるわけですから。そういうことでございます。  そこで人事院といたしましては、その趣旨を徹底するために毎度努力もいたしておりますし、給与簿の監査というのが例年ございます。相当精力的にやっております。そのときに、ちょうどいい機会でございますので、個別に当たりまして、この職員は特別昇給をどうやっているかというようなことも厳密に調べまして、その結果、集計が出まして注意すべき点があれば注意をいたしております。  ただ、いまお述べになりましたことの中に、たらい回しをやっているんじゃないかというお話がございましたが、われわれが調べましたところでは、中にはそういうおそれがあるというものが絶無ではございません。ただ、この点につきましては、われわれの方で最近調べましたところでは、これは全部が全部一挙にというわけにまいりませんので、一割の抽出検査ということで実施をいたしたのでありまして、大体の傾向はわかると思います。  これでもって集計をいたしたところを見ますると、たとえば二十年以上勤続をしておるという職員について平均をとりますと、二十年以上勤務しておるのに全然特別昇給が当たっていない、あるいは一回しか当たっていないという者が一〇%ございます。それからまた、四回以上という者も十何%ございます。したがって、この運用から申しますと、必ずしも順繰り方式、一巡方式ということでやっておるところが多いというわけにはまいらない。大体において、特昇の運用の精神にのっとってやってもらっているのではないかというふうに思っております。  だが、全般の風潮といたしましても、当然この勤務評定の強化あるいは成績本位というようなことは、さらに徹底をしてやっていかなければならないというふうに思っております。先般の臨調答申にも、成績本位ということはさらに徹底すべしという趣旨答申がなされておりまして、これは人事院として独自にやれることでもございますので、この点に沿ってひとつ今後ともさらにその趣旨が徹底いたしまするように、きめ細かい努力をしてまいりたいと思っております。
  265. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま私が聞きましたのは、そういうことがあるかないかと聞いているのです。私の質問は非常に簡単なんです。一巡方式をとっておるところがあると聞くが、間違いであってもらいたい。あるのかないのか。議事録に残りますよ。
  266. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 ごくわずかな分野でございますが、そういうふうな疑いが持たれるところがございます。
  267. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 どうも皆さん、どこに遠慮しよるのか知りませんが、奥歯に物のはさまったような答弁が多いようでありまして残念であります。  いま一つお尋ねをしますが、しからば、特別給をさっきおっしゃいましたね。この特別給というのは、勤勉手当と期末手当ということになりますが、期末手当というのは、これはだれが読んでみてもボーナスですわな。勤勉手当というのは、一生懸命ようやったなというのが、これが勤勉手当でございましょう。やってもやらぬでもやるのが勤勉手当ですか。そこらがどうもわからぬので、この際、小学校のような質問でありますが、勤勉手当というのはどういうときに出すのか、期末手当というのはどういうときに出すのか、その区別を教えてください。
  268. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 特別給には、先刻申しましたように期末手当と勤勉手当というものがございます。それぞれ民間との対応でもって、参考にいたしまして、期末手当何%、勤勉手当何%というふうに決めております。民間においては、すでに御承知でございますように、期末手当に当たるものはいわゆる定率、定額分、賞与における定率、定額の配分をいたしております。これが基本でございます。これがいわゆる期末手当に当たるものでございます。それから勤勉手当に当たるものは、民間では成績配分というふうに言っているものでございまして、その配分の仕方、率等も民間の実情を参考にしながらやっておるということでございます。
  269. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 区別というのは、いわゆる辞書の解説みたいなことは教わったのでありますが、それでは、実際に勤勉手当が機能していますか。全く同じ率で配当しておるのではありませんか。
  270. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 それは、そうではございません。人事院規則の別表でちゃんと段階をつけまして、こういう者については何%から何%、その枠内において処置しなさいということが明確になっております。(岡田(正)委員「それは知っておる」と呼ぶ)したがって、その運用も、これはこのとおりにやられております。この点は、私の評価としては、例のいわゆる特別昇給の運用よりももっと厳密にやられておるのではないかというふうに評価しております。(発言する者あり)
  271. 金丸信

    金丸委員長 静粛に願います。
  272. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは人事院の方にさらに重ねてお尋ねをいたしますが、どうも聞いておりますと、この特別昇給というのは、省によってはまあ一五%ずつ六年にわたってぐるぐるっと回ってくるというやり方をしておるところがないとは言えないということで、恐らくあるという意味だと思うのですが、そういう答えでありました。まことに残念なことでありまして、昇給と特別昇給とが全く一緒なら特別昇給という制度をなくしたらどんなものでしょう。そして、いまの昇給が年に定昇が幾らあります、定期昇給が何%ありますというふうに国会へ発表してください。その方が国民にはよくわかります。  だから定期昇給が何%、ベースアップが何%、こういうのをみんな新聞を読んでいるわけですから、ははあ、合わして何%上がったなと、こう思うのでありますが、それ以外に新聞に出ない特別昇給がある。こういうものを全然国民にわからぬところでやっているわけでしょう。これは、何も悪いことをしていると言うんじゃないですよ。しかし、本来の機能を発揮してないようなやり方をするのなら、まんべんにばらまくのなら、頭から定期昇給の中に入れられたらいかがでございますか。  そういうことをいろいろと考えてみますと、信賞必罰の基準が一体日本の国にはあるのかなと思うのです。この点につきまして、人事院の方から発表してください。(発言する者あり)
  273. 金丸信

    金丸委員長 番外は黙っていてください。
  274. 藤井貞夫

    ○藤井(貞)政府委員 信賞必罰のためには、制度的に先刻お述べになりましたような点、それからその基本になります勤務評定というような制度の運用を通じて、この実現に努めております。また半面、信賞に当たるものといたしましては表彰制度というものがございますし、また必罰の方では、昇給の延伸でありますとか、あるいは分限としての降任、降職、退職というようなものあるいは懲戒制度としてのいろいろな措置がある、そういう制度の全般的な運用を通じて、信賞必罰の徹底を期するという努力をいたしておる次第でございます。
  275. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これはその書いてあることを言っていらっしゃるだけのことだと思うのです。私が言うのは、永年勤続をしたら金杯を上げます、何年なら木杯ですというようなことを、そんな規定を聞いておるのじゃないのです、私が言っておるのは。私は、非常に言いにくいことを申し上げますが、言葉は悪いけれども、まあ当たりさわりのないように、とにかくおくれず騒がず何とやらというのがありますね。はなはだ聞きづらい言葉でございますが、簡単につづめて言ったら、公務員というものは、沈香もたかず、へもひらず、静かに静かにしておれば何ということはない、こういう状態であるから、生産性の向上も何にもあったものじゃない、時間がたちさえすればそれでよろしいということになりかねないわけです。  私は、全部の公務員がそうであるとは言わない。だがしかし、まじめに働いて一生懸命やった者が報われるような職場でなかったら、だれがやりますか。やってもやらぬでも特別昇給も同じ、そして勤勉手当も同じ、期末手当も同じ、昇格も一緒、あほらしい。まあいいかげんにやっとこうわいとなるのがあたりまえじゃないですか、お互いに人間ですよ。私は、いま日本の公務員制度にとって一番悪いところ、制度としてはいいのでありますけれども、その運用面において信賞必罰がきちょうめんに行われておらない、そこに私は諸悪の根源があると考えておりますが、この点について行管庁長官総理大臣の所見を伺いたいのであります。
  276. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 信賞必罰の件は、行政改革の主要な題目でございまして、今回の臨調の第一次答申の中にも特に付記されておるところでございます。これは国家公務員はもとより、特殊法人あるいは地方関係におかれましても、同じように励行してやっていただいておると思っております。
  277. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 岡田さんも御指摘になりましたように、私は信賞必罰あるいは勤務評定の制度、これは制度としては確立しておると思います。問題は、その運用が適切であるかどうかという問題でございますから、今後そういう面に十分意を用いて指導してまいりたいと考えます。
  278. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。大変率直なお答えをいただきまして、何か明るさが出たような気がするのであります。ひとつ来年の国会におきましては、ああやったなあというようなところが出てまいりますように、まじめにやった者はよくやったということがはっきり出るように、そして仕事をやらぬ者は手厳しくこれに対して懲罰を加える明確な体制をとっていただきたい。これは国民の声です。要望しておきます。  さらに次の問題でありますが、これもまた皆さんお聞きになるのがいやな話でございまして恐縮でありますが、国民の声ですからあえて言わしてもらいます。  特殊法人への天下りと退職金の二重取りであります。これは前の鈴切さんもお触れになりましたので、余り重なるようなところは言わないように注意をして質問をいたしたいと思いますが、閣議決定におきまして昭和五十四年十二月、天下りの人数は二分の一以内にすると閣議決定しておりますね。ところが現実には七六・二%、七六・五%というような数が毎年毎年天下りをするようでございます。しかもまた、この中には渡り鳥というなかなか特徴のあるのもありまして、ひどい人になると六カ所にも飛んでいく、こういう人もあるわけであります。この渡り鳥の数だけでも百十八人、そして、二五・五%にも及んでおると言います。しかして、六回飛んで歩いた人というのは、これは飛べば飛ぶほど金になるのでありまして、十三年十カ月お勤めになって、五千九百四十三万円の退職金をふところに、あばよということになったわけです。  官庁をおやめになるときに相当の、粗末じゃないはずの退職金をもらって、しかもその上に大体平均いたしまして年金を二百八十万毎年もらいながら、そしてボーナスも、その公社、公団におきまして年間四百万を下らないボーナスを受け取り、したがってボーナス四百万、年金二百八十万、ざっと七百万のものは別個。それで、それ以外に給料が毎月百八万円、これは総裁、理事長の場合です。一番下である——下であると言うと怒られますが、まあ一番遠慮しておる方の監事でさえ月給六十五万円であります。庶民に比べたらまことに手の届かぬ高いところにおる人ばかりです。しかも、そこで何事もなく、大過なく過ごせば、平均在職五十二カ月間をもって千五百十八万円なりの退職金、これは平均です。一番よけいもらう人は三千万というのが五人を下らぬ、こういう状態であります。まさに国民の大ひんしゅくを買っておる問題でありますが、この問題につきまして、一体総理大臣は今後どのようになさろうとしていらっしゃるか、そして、行管庁長官はこれをバックアップしてどう対処しなければならぬと決意をしておりますか、お答え願います。
  279. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 特殊法人のいわゆるわたり等の問題につきましても、前に申し上げましたように厳重な規制をするようにやっておるのでございます。最近の事例を見ますと、やや成績は上がってきているように思いますが、しかしさらに厳重にやる必要があると思いまして、特に注意して持っていきたいと思っております。
  280. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いま行管庁長官のお答えを聞いておりますと、何かこう不思議な気がするんでありますがね。御指摘のとおりでありまして、この問題は非常に重要な問題です、したがって、今後も厳重にやっていこうと思っておりますと、こうおっしゃるのです。昭和五十四年十二月に閣議決定をもって天下りは二分の一以内とするとお決めになった。しかし、その決定は、早くも破れて年年七五%、七六%が法人の中に役員として入っていっておる。しかも、全法人の中で一〇〇%天下りばかりというところが二十七カ所もある。それ以外の者は一人も入れておらぬというのが二十七ある。こういう現状にありながら、今後厳重に対処したいとこうおっしゃいますが、それなら法人の役員というのはどういう手続をもって選ばれるのでありましょうか、簡単に言ってください。
  281. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 大体、内閣官房において選定をしているように伺っております。詳細につきましては、政府委員をして答弁せしめます。
  282. 中村徹

    中村説明員 各法律によりましてそれぞれ主務大臣、内閣総理大臣が任命するケースがございます。それは、それぞれ内閣官房において調整いたしまして任命をいたしております。それから、主務大臣が任命するものにつきましては、一件一件内閣官房の方で協議を受けまして、それによって各主務大臣が任命するという手続になっております。
  283. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ということになりますと、いまの答えは非常に明確でありましたが、手続は、私はどこか違うところでやっているのかなと思ったのです。だから、これから厳重にやると言うが、なかなかだなと思って私は同情しておったのでありますが、いまお聞きをいたしますると、主務官庁の所管する法人については、主務大臣がその役員を選考をしてそれを内閣官房に上げてくる。それ以外のものは内閣官房が皆選ぶ。言うならば、主務大臣と官房長官との間で協議決定をなされて役員が派遣されるという仕掛けがわかったわけです。  ということになりますと、日本の国の閣議というのは、官房長官特殊法人を主管する主務大臣は閣議の中には入られぬ仕掛けになっておるんですな。それをちょっと教えてください。
  284. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 官房長官も各省の大臣も、無論閣議に入っております。
  285. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ということになりますでしょうが、そうなると、先ほどの行管庁長官のまことにスマートな答弁というのは、どうもいただきかねるのでございます。とにかく、あと一、二分したら次の質問に行く、ここじゃという一時しのぎの答弁のように思えるのです。まことに残念でありますが、しかし厳重にやるとおっしゃるから、私は紳士としてそれを認めることにいたします。  さて次に、最後の質問に入らしていただきます。  いま関西、西日本において大変問題になっております、本年においても調査費がついておりますところの関西新空港、一体これはどこへ行くのであろうか。飛行機は空を飛ぶと決まっておりますが、関西新空港はどこへ飛ぶということについて伺いたいのであります。  まず、運輸大臣にお尋ねをしたいと思うのです。これは、大臣は張り切って答えてもらわなければいかぬことです。埋め立て方式と審議会は結論をお出しになりました。さて、ことしも調査費がついております。今後の方針はどうなさるのか、これを聞いておきたいと思います。
  286. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 今後の方針ということでございますが、これは臨時行政調査会等におきましても慎重に調査検討していく、こういうことになっております。もちろん、現在国際空港として成田以外に、さらにわが国に国際的に開かれた空港が必要であるということは御認識いただいておると思うのでございまして、しからばさらに成田に代替し得る国際空港の建設というものは、これは国家的事業としてもやっていかなければならないと思うておる次第でございます。現在、財政がこういう窮迫した時期でございますので、したがいまして、建設につきましては十分な調査をして、むだのない状態において着工いたしたい、こう思うておる次第であります。
  287. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ただいまの大臣の答弁のようなことについては、地元もよく承っておると思うのであります。慎重に調査検討をいたします、成田以外に国際空港が必要なことはだれもが認めるところであります、そして、財政が窮迫をしておりますので、建設費も節約できぬかよく調査を重ねてまいりたいと思います、こういうことはみんな聞いておるのです。その聞いておる肝心かなめの地元の反応というのはどうなのか、地元はどう対応しておるかということをおつかみになっておりますか。
  288. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 地元、特に大阪府におきましては、御承知のように黒田府政、これは革新府政でございましたが、その当時は環境調査に対する反対も強かった時代でございました。しかしながら、一昨年から環境調査のいわば集計もできてまいりましたし、昨年航空審が答申をいたしましたときには、環境評価の概要をつけて答申が出てきたという次第でございます。したがいまして、現在自然的な環境条件というもの、この評価は着々と調査をし、ほとんど完了いたしております。  あと残っております問題は社会的な環境でございますが、この問題につきましては、地元ではまだ種々議論はございます。しかしながら、私は本年の五月に、いわゆる環境評価を中心といたしまして空港の基本計画並びに周辺整備計画の大綱を提出いたしました。これは、いま地元で真剣に検討されておるところでございます。  そのいきさつをずっと見てまいりますと、それまでは、つまり昨年まではいろいろと関係自治体、市町村等におきまして反対の意見もあったことは承知いたしておりますが、今日ではこれを真剣に検討しておる段階でございまして、単に反対のための反対だけではなくなってきたということは事実でございまして、一歩理解の前進はされてきたと思うております。
  289. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この調査に約十年ぐらいかかっておると思うのでございますが、いままでそれに使った予算、そして本年度予算、二つを発表してください。
  290. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 五十五年までに約九十九億であります。本年は二十四億五千万円であります。
  291. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで大型プロジェクト、これは新幹線とか本四架橋の問題でありますが、それの凍結というものが閣議決定をなされたことは御承知のとおりであります。  さて、関西新空港は、調査の段階におきまして閣議決定はされていません。このままでは、このプロジェクトを前に進めることはできぬわけでありまして、いつまでも待っておるわけにいきません。この際、根本的に計画変更を考えてみるべきではないかと思うのでありますが、運輸大臣いかがでございますか。
  292. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 根本的に基本計画とおっしゃる中身はちょっとわかりませんが、計画を変える意思はございません。
  293. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 しからば、重ねてお尋ねをいたします。  この財政再建期間中は慎重に検討するという方針であると聞いておりますが、そんなことをしておったら、西日本の航空需要に対応することができなくなってまいりますね。これは、財政事情だけの問題で判断してはいけないと思うのです。そこで、国に金がないということはだれもが認めておるのですが、国の金で空港をつくるという親方日の丸方式、すなわち成田方式というものはこの際断念をいたしまして、別の方式で建設を考えるべきではありませんか。
  294. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 いろいろと御意見を出していただきましてありがとうございます。私たちも、もちろんこれからの公共事業というものは、単に国の施設、国の資金のみでは建設はなかなかしにくい。でございますから、どうしても地元と一体となったものということを基本的に考えております。でございますから、運営もあるいは資金的にも地元が何らか参加し得ることをいたすべきと思うておりまして、方法につきましては第三セクターという御意見でございますけれども、これは御意見として承っておきたいと思うのでございますが、先ほど申しましたような方針で今後の建設主体並びに運営の主体というものを考えて、幅広く考えていきたいと思うております。
  295. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 それでは、いままで十年間で九十九億調査費を使い、さらに本年度予算におきまして二十四億五千万円の調査費をおつけになっておるのでありますが、この調査費は着工分ではありませんね。一体何を調査しようとしていらっしゃるのですか。
  296. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 こういう大型プロジェクトになってまいりますと、事前調査というものは実は案外幅広く、しかも深刻な問題を含んでおりますので、十分いたさなければなりません。たとえば本四架橋等を一つ見ましても、過去におきましてやはり二百数十億円の調査費がかかっておるのでございまして、それが十分な調査をしておりましたがために、建設の段階になりましてから非常にスムーズにいっておるということは事実でございます。でございますので、関西空港におきましても十分な調査をいたしたい。  今日までやってまいりました調査の主体は、先ほども申しましたように自然環境を中心とした環境評価、これに重点を置いてまいりまして、これの調査はほぼ終わりましたので、環境影響評価として公表いたしたところでございます。いま、予算の執行をいたしておるところでございますが、現在、建設するのに必要な土壌の調査あるいは土砂の運搬の方法、こういうものを調査しておるということが一つでございます。それともう一つは、周辺整備計画等をさらに綿密にいたしますために、社会的環境の変化をいろいろな面から検討するための調査、そういうものに使っておるというところでございます。
  297. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私は非常に疑問に思うのでありますが、九十九億円、十年間かけて慎重に慎重に調べて、そしてボーリングまでやって、その上で審議会はそれを資料として結論をお出しになったわけですね。であるのに、なおかつまだこの二十四億五千万の調査費を使って何をやるのだろうな、実際疑問に思っているのです。大臣の御答弁としてはその程度でわかるのでありますが、ひとつ当局の方から事務的に、アイテムを余りたくさん要りませんから、三つぐらいでも挙げて何と何と何とに使うのである、こういうふうに言っていただけませんか。
  298. 松井和治

    松井(和)政府委員 お答え申し上げます。  まず、調査の一つといたしまして、これは空港をつくります場合には気象の条件、海象の条件、こういうものが通年観測として数年間のデータが必要でございます。したがいまして、これは継続した調査ということで本年度も行いたい、これはすでにもう行っておるわけでございます。  それからもう一つが、先ほど大臣が御答弁申し上げましたとおり、今後の建設に資するために、現地の土質調査ということでボーリングを行う予定にいたしております。  それからさらに、地盤改良の幾つかの工法がございます。これの実験の調査、こういうものが主体でございます。なお、そのほか細かい調査がございます。  二つ、三つということでございましたので、以上でございます。
  299. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 金を一緒に言ってください。わからぬ。
  300. 松井和治

    松井(和)政府委員 最初の、気象等の通年観測が二億九千万、それから土質調査が十一億七百万でございます。それから地盤改良工法の検討調査が三億六千百万円でございます。
  301. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ここで、これはあくまでもうわさでありますから、この際お尋ねをしておきたいと思うのでありますが、この土質ボーリングをいたしますのに対して、地元の大阪府漁連はこれに応ぜずというので調査が難航しておるという話でありますが、事実でありますか。
  302. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 地元の漁連と大阪府当局との話し合いは、難航しておることは事実でございます。それは補償費につきましての難航でございます。しかし私が聞いておりますのには、先月から実質的な話し合いが進んでまいりまして、現在大詰めに来ておるということを大阪府当局から問い、ております。
  303. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大臣、いままでのような御答弁を聞いておりますと、今日まででも十年かかっておるのですね。これからまだ海洋、気象の調査を続け、さらに土質の調査でボーリングをやり、それでまた埋め立ての実験を重ねていくというようなことを聞くのでありますが、これは、いままでの九十九億の中で十分に、模型実験なんかもやってきたはずですね。その模型実験をやった結果、埋め立てをやっても大事ないという結論が出たから、審議会はこれに賛成をしたと聞いておるのです。にもかかわらず同じことを調査をしていくというのは、私にはどうも納得がいかぬのでありまして、関西新空港をつくるための株を取っておこうということで二十四億五千万、調査費をつけておくだけであるのじゃないですか。いわゆる存目のつもりじゃないのですか。この点をはっきり言ってください。
  304. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 それは、余りにも御質問の的が外れておると思うております。そうではございませんで、航空審で調査いたしましたのは、いわば概括的な調査を主体といたしましたし、もちろん、それにいたしましても科学的な根拠を持った調査でございますが、しかしながら、これからいよいよ設計図をかく、そして工事費を見積もっていくということになりましたならば、その場合は土壌の一つ一つにつきましても、地点一つ一つにつきましても、十分に調査をしてその資料を得なければ設計ができませんし、簡単なビルを建てるのではございませんで、永久にわたる施設として填め立てをしていくのでございますから、そのためにはなお精密な調査が必要である、そういう調査をいまやっておるところでございます。  それからなお、海象であるとか気象であるとか仰せでございますが、これはどんなに年数がたちましても、やはりあらゆる空港におきまして気象等の調査等はずっと続けておるという性質のものでございます。そこで、濃淡はございましょうが、しかし、いずれにしても、そういう自然環境というものは、空港である以上は絶えず調査が伴っていくものであるという御認識を持っていただきたいと思います。
  305. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大臣、重ねて恐縮でありますが、お尋ねをします。  いまのお話を聞いておりますと、この調査費というのは——いまの海洋とか気象の調査は継続的なものだ、これはわかります。これはわかりますが、さて、建設費の見積もりをしなければなりません。その建設費の見積もりをするためになお精密な調査を要するので、調査費をお願いしておるということでございます。しからば、審議会におきまして、施工の方法、そしてその手段、工期、建設費、こういうものを全部何回も何回もはじき出して、模型もつくって実験もしてみて、そしてその工法を決めて、建設費を見積もって——浮体工法が採用されなかったからといって言うのではありませんよ。そのときのいきさつで言うのですから。浮体工法はこれだけかかる、埋め立てはこれだけかかる、したがって浮体工法の方が高いので、安い方をとりましょうというのが主なファクターとなって決まったのは御承知のとおりですね。  ということになりましたら、これ以上何のために建設費の見積もりをするための調査が要るのでしょうか。しかも、いまのお話を聞いておりますると、建設費の調査のために必要とするお金が実に十五億一千万を占めておりますね。余りにも巨額過ぎるではありませんか。私は、まさに二重投資ではないかと考えておるのでありますが、いかがでありますか。
  306. 塩川正十郎

    ○塩川国務大臣 先ほども申しましたように、このような大きいプロジェクトになってまいりますと、当然いろいろな面からの再調査あるいは再々調査ということが必要になってまいります。そのこと自体が結局は建設を容易にし、そして単価を安くしていく一つの基礎になってくるものでございます。でございますから、航空審の検討の段階で調べましたものを土台にいたしまして、さらに精密なものをやっておるということでございまして、決してわれわれ、むだに使っておるとかあるいは時間かせぎでつなぎにやっておるという性質のものでは絶対ございませんので、その点はひとつ大いに御理解していただき、今後とも御支援を賜りたい。
  307. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 運輸大臣は所管大臣でありますから、たとえば私がいま最後に申し上げた関西新空港のような問題でも、調査費の内容について詳細にお話ができるのでありますが、一般の国民、なかんずく西日本、その中でも関西の人たちにとりましては、関西新空港の行方というものは大変重大な問題であります。しかも、おらがところから大臣が出ておるんじゃという期待も大きなものがあるのであります。そういうときに行革とは情けないというお気持ちを持っておるのでありまして、この関西新空港というものは、既定の審議会で出たようなもろもろの問題にこだわることなく、私はこの機会に、この行革の問題で一とんざしてちょっと足踏みをするということは天が与えたチャンスではないかと思うのです。  したがって、根本的にもう一度振り返ってみて、たとえば浮体工法に私は固執するのではありませんけれども、この資源のない日本が外国に乗り出していくためには非常に大きな手段になることは間違いのないことであります。したがいまして、そういう関係も、関西新空港に限らず、これからの地方空港の建設等につきましても、補償が要らない、最も安全な空港として考える余地があるのではないかと思っておりますので、大臣の方におきましても十分御検討いただきますよう要望しておきたいと思うのであります。  なお、総理に申し上げておきますが、いま二時間かかって申し上げました中で、数々の貴重な御答弁をいただきました。行管庁長官、大蔵大臣、そして運輸大臣、皆さんから大変結構な答弁をちょうだいいたしましたが、私は、この場限りのものではないとかたく信じております。どうぞひとつ真剣に、前向きに問題に取り組んでいただきますことを心からお願いを申し上げまして、私の与えられました質問を終わります。ありがとうございました。
  308. 金丸信

    金丸委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、横山利秋君。
  309. 横山利秋

    ○横山委員 今日まで本委員会は連日質疑を交わしてまいりました。きょうも朝からずっとお互いにがんばっておるところでございます。総理以下各閣僚もお疲れの色がちょっと見えるようではありますが、われわれは真剣にがんばりますから、ひとつ皆さんも誠実なる答弁をお願い申し上げておきます。  さて、行革の基本姿勢については、五十六年七月十日の臨調答申で、こういう言葉が重要な言葉としてございます。新しい時代が要請する行政のあり方について、行政にとっての新たな目標とその達成を可能にする行政の制度と方法国民の前にまず示さなければならない。この「理念をめぐって国民合意が形成されることが民主的な行政改革の前提である。」これは私は非常に重要な言葉だと思います。  きょうまで大体論議がわりあいに財政再建を中心に行われてまいりました。     〔委員長退席、小渕(恵)委員長代理着席〕 行政改革については一体となるものではありますが、何のために行政改革をするか、これは大前提として、この臨調答申にございますように、新たな目標とその達成を可能にする制度と方法国民の前にまず示さなければならないということに私は重要な力点を置きたいと思います。  とかく財政再建は、あるいは行政改革は、国民に、総理の言葉によりますと、まずがまんをしてほしい、こういう言葉に尽きるような結果を及ぼしがちでありますが、国民のコンセンサスを得るためにはどうあればいいか。九月十二日の行管の文書の中で、「機構いじりや器べらしを重点とするものではない。」という内容がございます。財政再建もこの行政改革もわれわれが直面いたしております重要な二本の柱でありますが、特に行政改革は「変化への対応」、「簡素化効率化」、「信頼性の確保」を三本の柱としています。私は、三番目の「信頼性の確保」、つまり国民の信頼性の確保のためにどんな積極的な手段を講じられたか、いま講じられつつあるか、そこのところが案外なおざりになっているのではあるまいかと思います。  行政管理庁長官にまずお伺いをいたしますが、この行革の第三の柱であります国民の信頼確保のためにどんな積極的な手段を講じていますか。
  310. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 ここ数年来、公務員の汚職事件等々もあり、あるいは特殊法人の職員等の不正事件等もありまして、国民の皆様方から非常な批判を受けました。そういうケースもこれあり、この際、特に公務員の倫理の向上及び精励恪勤を旨として国民に対する奉仕に徹するという考えに立って督励してきたつもりでございます。  この新しいやり方につきましては、公務員制度全般の改革と相まって、ただいま臨時行政調査会の方で検討に入っておるところでございますが、いままでのやり方につきましては、特に私、力を入れましたのは、綱紀の刷新、非違をいささかも起こさないように注意していくということ。もう一つはサービスの改革の問題でございまして、サービスの改革につきましては、特に各省庁の協力を求めて、行政管理庁としても約半年にわたって各省庁を監察いたしまして、特に出先機関の監察等を行い、三公社五現業の各出先機関等の監察等も行いまして、国民の評価をこちらで獲得いたしまして、それに基づきまして、それぞれ所要の改善措置を講ずるとか、あるいはほう賞措置を講じた、そういうことで、今後とも国民の皆さんとの接点にある大事な窓口とか、あるいは行政の態度とか、あるいは効率的なスピードアップとか、そういう面につきましても努力してまいりたいと思っておるところであります。
  311. 横山利秋

    ○横山委員 公務員に対する見方については、私が先日質問をいたします前提として、自由民主党の橋本議員の公務員に対する見方、あるいは中曽根長官公務員に対する見方、それを多といたします。先ほどの質問の中で、公務員に対する見方、私はみんなが間違っているとは言いませんが、一つの見方であって、大局的な見方ではないと思われてなりません。  この問題について余り言及するのを避けたいと思うのでありますが、きのうの夕刊でもごらんになりましたように、たとえば例示をされました国鉄の問題につきましては、夕刊でごらんになりましたように、国鉄労働組合、鉄道労働組合ともに、特に国鉄労働組合は全国の幹部がすべて総裁以下幹部と会見をいたしまして、熱心な国鉄再建の方途について隔意のない懇談をいたしておったのは御存じのとおりであります。この大局的な流れに逆行して差別をしろ、こういうような点は私はいただけない点だと思うのであります。しかし、そのことをいまとやこう私は言おうとは思いません。私は、少なくともいまの公務員の形而上にあります見方よりは、これから質問をいたします日本における官僚制度の分析こそ、行政改革の中で最も中心をなす議論の焦点ではないかと思うのであります。  官僚制度は五悪あると私は思っております。一つは秘密主義であります。私が調査いたしましたところ、守秘義務の項目があります法律は百十四にわたっています。一つは権威主義であります。役人がいばる。役人が必ず料理屋の上席に座る。かつて松永安左エ門という有名な人がおりまして、あるパーティーで、民間の電力の鬼と言われた私に役人ばらの一番最後にあいさつさせるとは何事かと言って怒ったそうでありますが、これは町のすべての現象であります。第三番目の官僚主義は学歴主義であります。これは申すまでもございますまい。第四番目は陳情主義であります。第五番目は書類主義、通達主義であります。この五つの日本の官僚制度の根幹に触れずして、私は日本の行政はよくならないと思っています。     〔小渕(恵)委員長代理退席、委員長着席〕  試みに、鈴木総理はいまお見えになりませんが、総理以下各閣僚の学歴を私はちょっと拝見をいたしました。鈴木総理は農林省水産講習所、園田外務大臣は県立天草中学、渡辺大蔵大臣は東京商大専門部、藤尾さんが上智の専門部、それから中山さんが大阪高等医専、あと全部東大、早大あるいは九大、慶大、陸士、こういうことになっている。私は、いまこの例を引いてみて、われわれ政治家というものは学歴じゃない、私も夜間の中学を出たばかりでありますが、政治の姿、政治の世界は本当に実力主義であります。その点は私は多としておる。  しかし、試みに大蔵大臣の渡辺さん、この間、大蔵省の採用について、何も東大ばかりじゃないじゃないか、けしからぬというお話をされたそうであります。非常に私はいいことだと思う。けれども、大蔵省自身全く学歴主義ではなかったでしょうか、その点、感想をまず伺いたい。
  312. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私もそんな感じがしまして、聞いてみたわけですよ。ところが、いや、決して東大でなければならないというわけではないのです。問題は、私大とかそのほかの大学でも採りたいのだけれども、受験に来てくれない、受験しない人を採用するわけにはいかないので、ひとつ受験をしてもらうようにしてくれと言うものですから、そこで私は、まだ間に合いそうだということで、幾つか声のかかったのもあると言うものですから、それで受験に来てもらうように少しPRをいたしました。結果は、多少良好なようでございます。
  313. 横山利秋

    ○横山委員 総理大臣、いまちょっとお立ちになったようでありますが、私がいま申し上げていることは、閣僚の学歴を皆ちょっと見て、大変結構なことだ。われわれもそうだが、われわれは学歴にとらわれない世界におる。しかし、役所の中心をなすものは学歴社会である。そして、官僚の五悪と言われるものは、秘密主義、権威主義、学歴主義、陳情主義、書類主義である。この問題にメスを入れずして日本における行政改革の背骨は、形而上的には直るけれども背骨が筋が通らない。この五つの改善をしなければならないのであるけれども、この問題についてに行革の中で余り触れていない。それを私が言っておるのですが、どうお考えですか。
  314. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 横山さん、日本の官僚機構の五悪というようなことで御指摘がございましたが、私は、それを全部そのとおり悪であるというぐあいにきめつけていいかどうかという点につきましては、今後やはりそういう問題点もあるということで検討を要する課題であるとは思います。  いま学歴偏重の社会であるということもおっしゃいました。この点につきましては、人事院の制度、任用の問題、選考の問題あるいは人事管理の問題、いろいろそれに関連がある、こう思います。したがいまして、今後人事院制度のあり方につきましても臨調においては重要な課題として御検討いただくことに相なっておりますから、そういう点を踏まえて政府としても取り組んでまいる考えでございます。
  315. 横山利秋

    ○横山委員 この間、総理に内閣改造について聞きましたら、いま考えておらぬというお話で、私は、いまの閣僚はなかなかいい人がおるのじゃないかと思うのです。試みに閣僚の中で官庁出身の人は、奥野さん、村山厚生、山内郵政、安孫子自治、宮澤官房、たしかそのくらいですね。別にそれは悪いと言っているわけじゃない。悪いと言っているわけじゃないけれども、しかしながら、私の言う日本における官僚制度に十分なてこが入らないといけないという意味においては、官僚以外の人がたくさんおるこの内閣は、私はなかなかいいのじゃないかと思いますよ。  それで、行政管理庁長官にお伺いをいたしますが、私は、いまこの五つを十分にらみながら行政改革をしなければならないと思うのですが、あなたはどうお考えですか。
  316. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 いま五悪と仰せられましたが、私はそれに匹敵するもう一悪があると思うのです。それはなわ張り主義。なわ張り主義に実はわれわれも非常に悩んでおるわけであります。したがいまして、いまの五悪にプラス一悪、この六悪を退治するために、横山さんと力を一緒に合わせてやりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  317. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと総理大臣に別な角度で伺いたいことがございます。それは、行政国民という意味であります。  実は、例としては適当であるかどうかわかりませんが、名古屋のオリンピックが行政主導と非難を受けました。名古屋オリンピックの誘致は行政主導で始まった、それはもっぱらの話であります。しかし、それを削除しますためにいろいろな努力を払ったのでありますが、十分な開花をしないままに大惨敗をいたしたことは御存じのとおりであります。これは名古屋のオリンピックだけの限定された問題と一体考えていいのだろうか。韓国が総力を挙げて、国のあらゆる機能を挙げて大宣伝をし、名古屋が、行政改革の時だから、行政改革臨調答申の中にも、政府の意見にも、それから国会の決議にも、なるべく簡素に簡素にということがあったために、なすべき宣伝も十分行われず、政府、外務省、総理府の協力も十分得られないままに、こういう結果になった。しかし、国際的に見れば名古屋のオリンピック大惨敗というものは影響するところが心理的にも政治的にもかなり多いのじゃないか。この名古屋オリンピック惨敗についてどうお考えになっているでしょうか。
  318. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 名古屋オリンピック誘致のあの結果につきましては、名古屋市、愛知県並びに関係の方面の皆さんのあのような熱意と努力にもかかわらず、ソウルにこれを譲らざるを得なかった、ああいう結果になったということは、私も非常に残念に思っておるわけでございます。  しかし、ソウルに決まった以上、アジアの隣邦でございますから、私ども昭和三十九年当時、東京オリンピックでよき経験を持っております。そういう点を生かして、韓国ソウルで開かれますオリンピックが成功裏に終わるように協力してまいりたい、このように考えております。
  319. 横山利秋

    ○横山委員 韓国の成功を望むことについては異存はございませんけれども、この問題についての後味の悪さといいますか、やはり国際的な影響を、名古屋自身もそうでありますが、政府としてもお考えを願っておきたいと思う。  さて、マックス・ウェーバーという有名な人でありますが、官僚的行政はその傾向から言えば常に公開制を排除する行政であり、職務上の機密という概念は官僚独自の発明品であり、この態度ほどの熱心さを持って官僚制が維持擁護するものは何一つとして存在をしない、こう言っております。  一九六六年、画期的なアメリカにおける情報自由化法が制定され、そしてウォーターゲート事件その他の続出、日本における国内情勢からいって、情報公開法の問題についての関心がとみに高まってまいりました。臨調答申の中にもこれは出ておるわけでありますし、しばしば歴代の政府においては、総理が本会議場においても、情報公開法の制定について言明をされました。しかし、その作業はとんと進んでおらないのであります。  私は、中曽根長官にお伺いをいたしますのは、一体本当に情報公開法を出そうとしておるのか。きょうまでのあなたの御答弁を見ますと、重要な点は臨調答申を待ってとおっしゃるけれども、この情報公開法は行政管理庁独自の責任の問題ではないか。あなたが判断をし、案をつくり、それを臨調へ出してどうでしょうかと言うべき責任ではないか。そういう意味合いにおいて、五つのことについて考え方を承りたいと思うのです。  一つは、公開は例外でなく原則であるべきだ。このことが外れたならば、非公開情報ばかり多くなりますよ。意味がありませんよ。二つ目は、個人はすべて公開請求権がありますよ。これも各国の例からいって当然な原則であります。三つ目は、救済手段が的確であることであります。四つ目は、請求はなくても政府が積極的に公開する義務がありますよ。五つ目は、政府が独自でつくって臨調に諮問して、はい、できましたよではなくて、つくること自身に国民の協力を得る、国民と一緒につくるというやり方でなければ意味がありませんよ。この五つの点についてお考えを伺いたいと思う。
  320. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私も情報公開法の必要性を痛感しておる人間の一人で特に過去の情報の公開が正確に行われませんと、歴史が歪曲されるおそれがあります。アメリカは占領中の資料を勇敢に出したり、戦争中の資料も勇敢に出して、歴史が矯正されることもあるようであります。これは日本にとっても非常に大事なポイントでありまして、情報を正確に公開するということは子孫に対するわれわれの責任でもあると考えております。  また、現在におきましても、たとえば薬の問題であるとか、あるいは治療法の問題であるとか、そういういろいろな問題についても、国民が知りたがっている問題もあり、適切に公開を必要とするものもあると思っております。そういう点に配慮しながら情報公開を行うことは、歴史の流れであり、必要であると考えております。  ただ、国家の安全問題であるとか、あるいは企業の秘密の保護であるとか、そういう特に注意をしなければならぬ部分もございます。これは例外的にやはり保護しておく必要もあると思いまして、その辺の限界点をどういうふうに線を引くかという点も考慮を要するポイントであります。  しかし、原則的には私は横山さんのお考えに賛成でありまして、わが行管庁としても勉強させております。海外の情報、資料等も集め、また、われわれがやる場合のいろいろな構想についてもやらせておりますが、一方、臨調においてもお取り上げになっておりますから、相協力して、できるだけ早期に御期待に沿うようにいたしたいと思っております。
  321. 横山利秋

    ○横山委員 これに関連しまして、自由民主党で、防衛秘密にかかわるスパイ行為等の防止に関する法律案要綱が昨年できております。俗称スパイ防止法というのですが、これを地方自治体で請願書に採択をしろという運動が各所に行われておること、御存じのとおりであります。私は、むしろ政府・与党の情報公開法に対する熱意と、このスパイ防止法制定の熱意と、一体どちらにウエートを置いておるのだろうかとまで思わざるを得ないのであります。  防衛庁長官にお伺いをいたします。  このスパイ防止法は、もっぱら防衛秘密にかかわる法律案であります。しかも、これによりますと、十年以下の懲役に処する、あるいはまた、うっかり漏らしても二年以下の禁錮または二十万円の罰金、教唆は五年以下、こういうような防衛産業におります者、あるいはまた私どものように、防衛秘密とは言いませんけれども、こうしていろいろ話を聞く者、新聞記者のようにわりあいに知識の豊かな者、そういう者も考えようによってはこのスパイ防止法の該当者にならざるを得ない場合があり得るのであります。防衛庁としては、このスパイ防止法について制定を御賛成なすっているのですか。
  322. 大村襄治

    大村国務大臣 お答えいたします。  スパイ防止法と申しますか、秘密保護のための新たな立法措置を講ずべきかどうか、この問題につきましては、防衛庁といたしましては、保護すべき秘密の範囲、一般国民との関係及び他の公務員とのバランスの問題等、十分な検討を要する問題が多く、また防衛庁だけでは解決できないものもありますので、国会の論議、世論の動向を踏まえ、慎重に対処すべきものと考えております。
  323. 横山利秋

    ○横山委員 防衛秘密が仮に存在すれば、外交秘密も存在することは言うまでもない。そういう秘密が、政府の権力のもとにあるものだけ特別法で強化されることに、私は絶対賛成しがたいのであります。これは言っておきます。  法務大臣にお伺いをいたします。  この情報公開法と一連の関連を持ちますものに、刑法の改正がございます。刑法の改正でやはり同様の条項がございますし、また、法務大臣が力説される保安処分の問題がございます。保安処分についてはいま日弁連の案が出ておりまして、あなたは評価していらっしゃるようでありますが、ただ、この行政改革国会財政再建の立場から言いますと、保安処分を仮に実現いたしました場合に、医師、監獄施設が非常に必要になります。あわせて次の国会提出を予定されます監獄法、この焦点は、代用監獄の廃止にやはりポイントが置かれると思うのであります。いま警察署にあります代用監獄を廃止して、それを収容する施設をつくるということは、漸減方式をとるにしたって容易ならぬことであります。この両法案提出については財政を莫大に伴うものでありますが、一体大蔵大臣と御相談をされての提案になるわけですか、どういうことになりますか。
  324. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 スパイ防止法の問題と保安処分の問題、二点についてお尋ねをいただいたわけであります。(横山委員「監獄法」と呼ぶ)わかりました。  御承知のように、わが国の刑法には、敵国のためにスパイ活動をした者については刑罰に処する規定があったわけでございます。新憲法の制定によりまして、戦争の放棄、戦力は保持しないというようなことになりまして、敵国というものが存在しないじゃないかというようなこともございまして、占領軍の指導により、このスパイ罪が刑法から消えたわけでございました。刑法全面改正についての法制審議会におきまして、やはりこの問題が重要な課題になったわけでございます。これは刑法に入れるよりも、特別法にした方が妥当ではないだろうかという意見が多数説になったわけでございまして、同時にまた、情報公開法の議論が高まるにつれまして、別途プライバシーを守る、あるいは国家の機密を守っていく、そういう意味の体制も整備すべきじゃないかという議論も、多々私たちに伝えられてきていることも事実でございます。この中で適正な対処方針を決めていかなければならない、こう考えておるわけでございます。  次に、保安処分なりあるいは代用監獄をやめていって、拘置施設を整備するというような問題でございます。これらの問題につきましても、最も適切な方法考えていくべきだと思いますが、私は、刑事治療処分を仮に創設いたしました場合に、国立の精神病院に預かっていただくことが一番適切じゃないだろうかな、こんな気持ちを持っているわけでございます。そういう気持ちを持っておりますから、日弁連でいろいろ議論をされて、そうしていまの精神衛生法上の措置入院、これをさらに改善すべきだ、その改善すべきだという意見の中に、退所する場合については、第三者機関を設けてそこの結論によって退所させることにすべきだ、こういう内容が入っておったわけでありますが、私は、その第三者機関に社会公益を守る、社会全体の安全を守るという見地の方々も入っていただいて、そうして第三者機関が構成されるならば私たちが考えている構想と一つも変わりはない、ですから評価すると申し上げたわけでございました。しかし、それが困難だということになりますと、さしあたり医療刑務所を整備してそれに充てる、さらに理想的に考えますと、それなりの法務省所管の病院を持つということになっていくのだろう、こう考えわけでございます。いずれにいたしましてもまだ内容が決まっておりませんので、大蔵大臣と相談するというところまでは至っていないわけでございます。  いずれにいたしましてもできる限り経費がかからないようなことで、しかもその制度の成果を上げるという方向で努力していかなければならないことは当然のことだと思います。  代用監獄の問題につきまして、漸次拘置所を整備していくということで日弁連も御了解いただいたわけでございまして、いますぐに拘置所を全面的につくって、代用監獄を廃止するということになりますと莫大な経費もかかる、そういうことで日弁連もよく御理解いただいているんだ、こう思っているところでございます。
  325. 横山利秋

    ○横山委員 情報公開法につきましては、私ども社会党は昨年以来国会提出をいたしておりまして、手前みそではございますけれども、私は一番進歩的ないい案だと思っているわけであります。ただ、いま国会提出いたしましたものの、地方議会におきまして、神奈川県を初め各方面で非常な研究が進んでおります。これについて自治大臣はどういうふうに対処されていますか。
  326. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 情報公開についてはその必要性を認めますが、お話しのように神奈川県、埼玉県及び滋賀県等におきまして、条例制定についての検討をいまいたしておる最中でございます。なお、そのほか数団体におきましてその研究会を持ちましてこの問題に取り組もうとしているわけでございます。自治省といたしましては、地方団体の責任と決断とに基づいて措置されるべきものであろう、こう考えておるわけでございます。  なお、この問題についていま数名のアメリカの知事がやってきておりますけれども、全国知事会との間に情報公開についての意見の交換をするということを議題といたしまして、近く検討をいたす運びに相なっておることを申し添えておきます。
  327. 横山利秋

    ○横山委員 情報公開法については、臨調の中で新しい施策として上がりました大黒柱でありますが、もう一つの大黒柱がオンブズマン制度であります。これも情報公開法と相並んで与野党ともに検討にかかっておるわけでありますが、いずれにしても、これもまた中曽根長官の手元において立案し、作案し、そして仮に臨調の議を経るならば経て、速やかに国会へ上程をしていただかなければなりません。問題は、そのポイントがオンブズマンの独立性、高い見識、機動性、権限、人間性、包括性、非常に抽象的な言葉を言いましたけれども、なかなか日本になじまないところがいままでの概念ではあるわけであります。これをいかにしてなじませ、いかにしてその効果を発揮させるか、われわれも政治家でありますから、オンブズマンが必要であるということに必ずしも——自分たちの職責がそれならどうなんだ、国会はやっておるのか、なぜオンブズマンが必要なのかという問題にもこれは議論が発展をいたしますが、しかし、それを超してなおかつオンブズマンが各界の要請があるというところに、いまの日本の政治の弱いところがあろうかと私は思います。  問題は、これも行政管理庁の中に、枠内に国会の任命でつくるか、国会の任命で、国会一つ機能としてつくるか、その二つの問題がございましょうし、執務の独立性をどう担保するか、いかなる権限を付与するかという問題の焦点はもうわかっているわけです。ですから、中曽根長官一つの政治的決断、判断によるものではないか、総理大臣の最終的な決断によるものではないか、私はそう考えますが、オンブズマンについてどうでありましょうか。
  328. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これも大きな問題でございまして、行管庁では林修三さんを長とする研究会をつくりまして、その中間答申もいただいておるところでございます。  いま横山委員が御指摘になった国会の枠内につくるか、行政各部の中につくるかという点が最大の問題の一つになるだろうと思います。各党の御案を拝見いたしますと、国会の枠内の方向でお考えいただいておるようですが、そこはいまおっしゃった日本になじむかどうかという問題があります。  きょうも、実は行政相談週間をきのうから始めておりまして、八重洲口で都民の相談を受けているわけですが、私も昼休みに行ってみましたら、いろいろな問題でそれを聞きつけて来ている方がいました。たとえば印刷工場がそばにあって、その使う液体や何かのにおいがする、しかし、それは規制の枠内には入っている、だがしかし、においがして困る、これを何とかしてくれとか、あるいは恩給問題でどうやって、どこに行っていいのかわからないとか、そういうような末端の皆さんで、どうしていいかわからぬというようなところがかなりこういう機会を通じて来ております。また、この間電話を開設いたしまして、行政管理庁に一一〇番をつくりましたら、いままでで、わずか四、五日の間に八百数十件の電話が入ってきて、みんな身辺問題等の陳情やら、役所の悪いところを言ってきているというのが多うございました。  そういういろいろな面を見ますと、これはどうも行政各部の中に置いた方がなじみがいいのではないかという気が私はしておるのであります。その点は、しかし各党の御意見もよく拝聴しなければなりませんが、ともかくいまの国民の皆さんのうっせきしているいろいろな悩みを直接お聞きするというポジションはやはり必要であり、大事であると思いますが、やり方につきましてはさらによく慎重に検討してやっていきたいと思っております。
  329. 横山利秋

    ○横山委員 この情報公開法、オンブズマンと匹敵して、まだ十分に成熟はしていないものの、近代社会の日本において特筆すべきものがプライバシーの保護であります。  たとえば、いま役所の中で、自治省が住民基本台帳、国税庁が税歴その他納税資料、警察庁が自動車免許による集中管理、総理府が国勢調査、社会生活基本調査、警察庁が犯歴資料、法務省が戸籍、厚生省が健康管理、総理府が恩給等々、国民のプライバシーに関する問題は、大なり小なりほとんどの役所にコンピューター化されております。その上、民間におけるコンピューターが非常に進んで、国民のプライバシーが民間のコンピューターの中にいっぱい山積をいたしておるわけであります。  その一方、どんな問題が市中に起こっておるかといいますと、たとえば文部省関係では、千葉県八千代市の八千代台小学校で子供に総背番号制を危うく採用することになった。滋賀県の警察では、天皇のお出かけに精神病者の調査を行って、危うくそれが中止をされた。文部省系統では、学校で非行調査のリストを校長先生がつくろうとした。自治省では、住民台帳が企業やダイレクトメールの業者に活用されておる。鶴岡市では、住民台帳を写した冊子の販売が行われた。福島でも宇都宮でもそうである。青森市、甲府市では選挙人名簿を写した冊子が販売された。郵政省関係では、市川市で出産届が郵便局の保険勧誘の資料に流用された。それから自治省関係で、やはり民間の信用調査が部落民の調査を特別に行った。厚生省関係では、兵庫県で健康手帳がいろいろなところで流用された、こういう問題が市中にいっぱいあるわけであります。近代社会において、個人のプライバシーがいろいろなところで集積されていく。だんだんそれがおれのところだけではもったいないという話になってくる、他に流用させてもらえぬかという話になってくるのが必然であります。  そこで、自治省に聞きますけれども、住民基本台帳による住民登録を基礎にして、税、健康管理、年金等を一元化、ファイルで統一するというのが、ある市で四十一項目ないしは五十三項目にわたってつくられようとしておるという情報がございますが、自治大臣はこういうような状況についてどうお考えになりますか。
  330. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 住民台帳その他の問題につきましては、それぞれの行政目的があるのでございまして、その範囲内において保管をすべきものでありまして、これはいたずらに一般に提供するという性質のものではございませんので、この点については十分に注意するようにいたしておるところでございます。
  331. 横山利秋

    ○横山委員 行政管理庁長官にお伺いをいたしますが、行政情報ネットワークという構想があったやに聞いております。それは警察、防衛、郵政、運輸、通産を中心にして、この種の各省及び出先を通信回線で結んで、行政情報ネットワークを行管中心に準備を進めた節があるというのですが、いかがですか。
  332. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 これは情報ネットワークというよりも、通信ネットワークというのが正確だと思います。本省から各支分部局に電話をかけておりますけれども、その電話を一々電電公社の電話を分立しながらかけていると非常に費用がかかる。そこで行管が一本に契約して、その線を各省庁が利用していただいて、四国でも九州でも即時通話で話ができる、そういう簡便な方法を打ち立てようというので、それをいま実施に移しているところです。これは時間と経費の節約という意味でやっておるわけです。
  333. 横山利秋

    ○横山委員 このプライバシー保護について、行政管理庁としては、私がいろいろ例示をいたしました問題につきまして、プライバシーを各省で集約する、自治体で集約する、いろいろな民間で集約する、そういうような傾向について、プライバシーの保護法案が必要であると思いますが、いかがですか。
  334. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 私は必要な時代が来ていると思っております。早く準備しないといかぬと思っております。それは市民のいろいろな情報がみんなコンピューターに入ってまいりまして、そのコンピューターに入った情報、たとえばカセットに大体入れておるようですが、そのカセットが、安易に盗まれたりあるいは利用されたり、あるいは外国に流れたりすれば一大事が起こるということもなきにしもあらずであります。そういう意味において、プライバシー関係を扱う人たちの資格やら、あるいはそれに関する諸般の秘密保護の規制措置、あるいは倉庫にせよそのほかにせよ、やはりそれが不用心に漏れないようにしておくことも非常に大事な時代になってまいりまして、そういう点についてもいま検討させておるところであります。
  335. 横山利秋

    ○横山委員 次は会計検査院にお伺いをいたします。  行政の非違行為行政の中におけるありようをただすためには、行政管理庁と会計検査院は非常に重要な二本の柱だと私は思っております。  時間の関係上引用いたします。  会計検査報告によれば、五十三年度事業費、建設省関係でありますが、三兆七千二百八億のうち、国庫補助が二兆一千六百二十八億、そのうちの一方四千四百四十件は、三月末竣工をしていないのに、竣工したとして、国庫補助二千三百十三億円を不当に支出した。五十四年度では、事業費二兆六千二百十七億、その中の国庫補助が一兆五千二百四十二億、未竣工が八千二百三十九件、国庫補助不当支出が千三百八十七億、この交付を不当にした。繰越手続をせずに完了報告をしたという指摘がありますが、間違いございませんね。
  336. 大村筆雄

    大村会計検査院長 間違いございません。
  337. 横山利秋

    ○横山委員 歴年このような問題が起こっておるわけであります。時間の関係上簡潔に伺いますが、刑法百五十六条、公務員が虚偽の公文書をつくりましたときには一年以上十年以下の懲役、これに該当すると思いますが、法務大臣はいかがですか。
  338. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  339. 横山利秋

    ○横山委員 五十三年度に一万四千四百四十件、五十四年度に八千二百三十九件の虚偽の公文書が作成され、それによって、会計検査院の指摘をもってしても総額三千六百億円の国庫の不当支出がされた。このことについては、五十五年度も恐らく同様であろう、今後もまだ多少の漸減があっても続くであろうと私は見ているわけであります。  なぜこんなことが起こるのか。各県、各市、あるいはこれは建設関係でありますが、農林関係でも同じようなことが起こっておるわけであります。これは明らかに刑法の百五十六条、虚偽の公文書を作成したということであります。なぜこういうことが起こるか。それは大蔵省が、繰り延べ申請をすると次の予算編成に差し支える、そういう印象を地方自治体の担当者が持っているからであります。繰り延べ申請をしたところで、別に次の予算編成に影響ないと何度あなたが言っても、それを心配して、工事が竣工していないのにかかわらず竣工の報告を出して虚偽の公文書の作成をしている。それが何と二年で約二万二千件。全国至るところの地方自治体がこれを行っておるということであります。しかも刑法百五十六条の違反。大蔵大臣は、この予算編成の影響をどういうふうに処置なさいますか。
  340. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私どもとしては、事実ありのままに報告を出してもらいたいと思っております。
  341. 横山利秋

    ○横山委員 会計検査院長にお伺いをいたしますが、会計検査院法三十一条で、この種の問題があったら懲戒処分の要求をすることができる、あるいは三十三条には、この種の公文書偽造については検察庁に通告しなければならないと書いてあるのに、一件も通告してないのはどういうわけですか。
  342. 大村筆雄

    大村会計検査院長 ただいま御質問の会計検査院法第三十一条あるいは第三十三条は、国家公務員あるいは公社職員に適用される規定でございます。
  343. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと、地方公務員は適用されないから自分はやってない、こう言うのですか。
  344. 大村筆雄

    大村会計検査院長 懲戒処分の要求、あるいは検察庁に対する通告処分は、地方公務員に対しては適用にならないわけでございます。
  345. 横山利秋

    ○横山委員 自治大臣にお伺いをいたします。  自治大臣は、会計検査報告でこの種の明らかに違法行為である、刑法の違反であるということが明白な問題について、どういう措置をおとりになりましたか。
  346. 安孫子藤吉

    ○安孫子国務大臣 原則的には当該団体の責任者が判定をすべき問題だと思いますが、しかし、この繰り越しの問題は、明許しておれば問題ないわけでございますが、繰越明許がとかく行われにくいというような事情もありまするので……(横山委員「どういう事情ですか」と呼ぶ)これはやはり所管省におきまして、そうしたことになりますといろいろな関係があるので、実際は繰越明許をしたがらぬ面もないわけではございません。それは全部とは申しません。そういう事情も絡んでまいりまするので、地方公務員についてやはり考えるべき問題もあると思いますが、その辺の判断はその団体の長がすべきものだろう、こう思っております。
  347. 横山利秋

    ○横山委員 時間の関係上要約をいたしますが、明らかに法務省の見解をもってしても虚偽の公文書を作成をした、年間一万件くらいのものがある、国庫の不当支出がある、こういうことは明白なことなのであります。会計検査院は、地方公務員の問題だから私は知らぬ、事実を知っておっても何もしない、こう言っている。自治大臣はわかって物を言っているのか、わからずに物を言っているのかわからないようないまの答弁であります。この問題の処置のあり方については、時間がございません、一体政府として、この種の問題が後を絶たないことについて、どうあればいいかということについて関係各省でひとつ協議をしてもらって、改めてこの問題の措置について御説明を願いたい。委員長からおとりなしを願いたいと思いますが、いかがですか。
  348. 金丸信

    金丸委員長 横山委員からただいまのような提案がありましたが——中曽根長官
  349. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 御趣旨に沿って相談をいたしまして御報告いたすことにいたします。
  350. 横山利秋

    ○横山委員 結構です。  政治の清潔についてひとつお伺いをいたしたいと思います。  五十四年の九月五日、閣僚協で提言がいろいろされました。しかし、現実的にはほとんどそれが行われておりません。政治資金の規正法も、倫理委員会も、経済界への要請も、行政監察機能も、政治倫理化運動も、行政の責任追及も、多国籍企業も、許認可問題も、大規模調達の手続も、閣僚協の提言がほとんど実現がされておりません。そして今日に至っておるわけであります。  私は先般の質問で給与の一部返上の意味について総理にお伺いをいたしました。私の時間の関係で十分な御答弁をいただけなかったのですが、私はむしろ給与の一部返上よりも、アメリカで行われておりますように、政治家の資産の公開、政治家の職業申告、このことをなすべきではないかと思います。これはアメリカ、イギリス、西ドイツ等ですでに行われておる問題でありまして、私ども社会党としてもすでに提起をいたしておる問題であります。いかがでありますか、政治家の資産公開、職業申告、この問題についてどうお考えでしょうか。
  351. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 政治家の資産公開等の問題につきましては、これは確かに政治浄化の観点から検討すべき課題であろう、こう思います。私は内閣総理大臣になりましてから、各方面の御意見がございまして、総理大臣としての資産の公開等は実施をいたしております。ただ、政治家全体ということになりますと、これはむしろ国会の問題でございますから、国会の各党各会派におきまして十分御論議の上、結論を出していただいたらいかがか、このように考えております。
  352. 横山利秋

    ○横山委員 社会党は、その点について法案を出しておりますから、御検討願いたいと思います。  この機会に法務大臣にお伺いをいたします。  いま、ロッキード裁判で田中総理大臣、田中被告が罪を問われて、五億円を収受したかしないか、その証人喚問でもう大変な問題となっています。法務大臣としては、検察陣の起訴事実が正しいと確信をしていらっしゃると思うのでありますが、いかがでございましょうか。起訴事実が正しいと確信をなさっているか。田中角榮被告有罪と判断をされておるか、いかがでしょうか。
  353. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 検察庁としては、公訴の維持に最善を尽くしていると確信をいたしております。しかし、現在裁判が続行をされておるわけでございまして、裁判所はそれぞれの言い分を慎重に聞いた上で公正な判断をするものだ、こう確信をいたしております。
  354. 横山利秋

    ○横山委員 私が特にこういうことを聞きましたゆえんのものは、かつてNHKの会長が、保釈されました田中角榮被告を訪問したということだけで社会的非難を浴びまして、おやめになったことがございます。最近の風潮はこれとは別に、まあどういう機縁かわかりませんが、鈴木善幸総理大臣がゴルフ場で田中さんとお会いになってゴルフをおやりになる、そして行政管理庁長官は、行政改革の協力を求めに田中総理とお会いになる、こういう風潮というものは国民に対してどういう印象を与えておるとお考えになるでしょうか。政府みずからが、NHKの会長が会っただけでやめざるを得ないような状況でありながら、いまは総理大臣、担当大臣が、公式、非公式は別にしても、新聞にはちゃんと載るわけでありますから、そういう点についていささか私は社会の世論というもの、この公正な裁判を求めておるいまの雰囲気というものとちぐはぐに考えられないかと思いますが、総理大臣はどうお考えでありますか。
  355. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 私は、この夏、軽井沢で静養をいたしておりまして、ゴルフ場でお目にかかりましたが、しかし、私の毎日毎日の行動につきましては、総理番、新聞社の諸君が常に身辺について回っております。したがいまして、別に平常のごあいさつを申し上げたということでございますから、世間の疑惑あるいは誤解を招くようなことは毛頭ございません。
  356. 横山利秋

    ○横山委員 中曽根さんはどうですか。
  357. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 われわれも公私の別は明らかにしなければならぬと思いますが、しかし、田中さんも選挙区で選挙民の支持を受けられて当選されて、何回かもうすでにその後も当選されて、政治家としての職責は選挙民に対して果たさなければならぬ立場にあるだろうと思いますし、また、私にとりましては同期生で、昭和二十二年に一緒に当選してきた仲間でもあります。そういういろいろな面も考えてみて、見識のある人についてはその見識を聞くということもあながち否定すべきものではない。そういう、政治家として出てこられて、国家のために働くために選挙民は出しておるわけでありますから、見識のある人にはやはり見識を聞くということは、私はあながち否定すべきではない。私は、行政改革問題について田中さんにそういうお話を伺いに行ったことはございません。ありませんけれども、筋はそういうものである。また、私的な場合に友人同士でゴルフをする、また、彼はいま逆境にあるから慰めてあげるというのは、友人として、やはり心してやるべきことではないかと思います。しかし、公の立場と私の立場というものは、あくまでこれは分けて考えているつもりであります。
  358. 横山利秋

    ○横山委員 大蔵大臣にお伺いをいたします。  これは大臣でなくても結構ですが、当時、五億円をもらった、いやもらわない、いやもらったというのが検察陣、政府の立場でございまして、それで、それならば課税しろということになりました。それで課税をして、その課税額が指摘をされて、その後どういうふうになっておるか承りたいと思います。
  359. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 事務当局から説明させます。
  360. 吉田哲朗

    吉田(哲)政府委員 お答え申し上げます。  この問題につきましては、昭和五十五年の四月に衆議院の法務委員会におきまして先生から御質問がございまして、国税庁より御答弁したところでございますが、田中角榮氏の課税処理につきましては適正な課税処理をいたしております。また、課税額につきましては、十分な担保を徴しまして租税債権の確保を図っているところでございます。ただし、課税処分につきましては、田中氏から異議申し立てがなされている、そういう現状でございます。
  361. 横山利秋

    ○横山委員 時間がなくなりまして、木間委員の関連質問がございます。私は、これで私の質問を終わりますが、総理に、総理としてでなくて総裁として聞いておいていただきたいことがございます。  それは国会の主としたる任務ではございますけれども、私どもは政治の清潔というものは政治家の清潔である、その意味において倫理委員会の設置が必要であること、それから議員倫理というものを項目を挙げて確立をすべきことであること、それから議院証言法を制定をすべきであること、国政調査権についてひとつ確立をすべきである、四つのことを国会提案をいたしておるわけであります。  私ども国会議員の任務が、いまの法規、いまの状況、システムでは十分ではないと私は思っておるわけであります。もちろん、これは国会の問題ではありましょう。しかし、政治の清潔を行政改革の中で求める、これが大事な点であるとするならば、総裁としてもこれらの問題についてひとつ十分お考えを願いたい、そう思っておりますが、いかがでございましょう。
  362. 鈴木善幸

    鈴木内閣総理大臣 いま横山さんからお話がございました国会に倫理委員会を設置する問題でありますとか、議院証言法の改定の問題でありますとか、私は御指摘のように政治の倫理を振粛をする、そういう観点から非常に大事な問題だ、こう思っております。  倫理委員会の設置、議院証言法の改正等の問題は、自由民主党においても前向きで検討しようということでございますから、あと二つの問題とあわせて、各党各会派でよく御議論をしていただきたい、こう思っております。
  363. 金丸信

    金丸委員長 この際、関連質問の申し出がありますので、これを許します。木間章君。
  364. 木間章

    ○木間委員 私は、横山委員の関連で、総理大臣以下各大臣の皆さんに質疑を行いたいと思います。  なお私は、土地住宅問題、つまり建設行政に係ることを中心にしながらただしたいと思いますが、総理大臣以下各大臣には連日御熱心に御審議をされておりまして、敬服を申し上げる次第でありますが、簡潔に、要領を得た御答弁をお願いをしておきたいと思います。  また、すでに通告をしてあります中で第一の問題につきましては、昨日、わが党の沢田広委員の方からもただされておりますし、重複をする部分もありますので、この機会に省かせていただきまして第二の問題から入りたいと思っておりますので、御了承をお願いいたします。  まず第一の問題は、住宅と住宅金融公庫の関係についてでございますが、住宅の建設状況は、最近年ごとに落ち込んでおります。その原因は、地価の上昇あるいは勤労者の取得能力の低下が特徴的にあらわれておるのでありますが、取得能力の分析については今日まで公的機関あるいは民間機関とそれぞれさまざまな調査は出ておりますが、結論においては一致をしておるのであります。地価や建材価格の上昇に加えて、昭和五十五年の実質可処分所得の増加率はマイナス一・四となっております。一方、住宅ローン金利も五十三年の七・六%は五十五年には八・八%までに上昇し、今年度は若干下がっておりますが、八・三%台であります。家計と比較しても住宅は持てないと、民間住宅建設は減っている。  しかし、こうした中でひとり公庫融資住宅は気を吐いておるのが現状であります。年次計画はそれぞれ上回っておりますし、建設の進捗率を見ましても二二〇%を超えておる状況でありますから、公庫は勤労者の住宅建設に大きな役割りを果たしておると言えましょう。こうした状況の中で、政府はいま公庫金利に手をつけ、政令加算制度を設けようとしていることは、私には全く理解ができないところであります。  そこで、まず大蔵大臣にお尋ねを申し上げたいのであります。建設省は、さきに私たちの勉強会への説明の中で、根幹的金利は動かさない。根幹的金利とは五・五%の部分であるとなされたのでありますが、これは政府の統一見解であるのかどうか、まずお尋ねをしたいのであります。
  365. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私どもといたしましては、貸付金利の点についてはこういうことは決めてあるのです。「住宅金融公庫及び農林漁業金融公庫が行う貸し付けの法定金利は、全部弾力化をする。公庫金利の弾力化に当たっては、政令で金利を定める場合に」そこからが大切なところですが、「社会的必要性に十分配慮する。」そういうことになっております。
  366. 木間章

    ○木間委員 私どもの今日まで聞いてきた建設省の見解と、ただいまの大蔵大臣の答弁とは異なっておるのであります。  そこで、建設大臣にこの問題に関連してお尋ねをしたいと思います。
  367. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  大蔵大臣の御答弁と同じでありまして、要は、法制定後の政令で決める場合は、なお社会的経済的必要性と財政負担の調和を図りながらなお話を進めていくということで、大蔵大臣の趣旨と変わっておりません。
  368. 木間章

    ○木間委員 どうも私どものいままでお聞きしたことが、この場において建設大臣のお考えも変化をしております。またその間、この金利を何とか維持をしてもらいたい、持続をさせてもらいたい、いろいろの国民の皆さんからの陳情も出ておりますし、大臣もそのことを御承知のところであります。私も、大工さんや工務店の皆さんと一緒に建設大臣の陳情に同行させていただいたのでありますが、そのときにも建設大臣のお話は、何とか守っていきたい、こういったことであったわけでありますが、建設大臣のいまの答弁では私は納得ができないのでありますが、重ねてお尋ねをしたいと思います。
  369. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  御案内のような住宅事情でございますので、所管する私といたしましては、でき得べくんば現行でやっていただくのが一番よろしいわけでございます。まだまだ国民の住宅に対するニーズは非常に高うございます。ただ、御案内のような行財政改革という最重要課題のバックグラウンドを考えた場合に、そうしたことをもおもんばかりながら、なお弾力化という字句を用いて対応するという形でございまして、真意といたしましては、いままでどおりやってきたことが一番よろしいわけでございますが、前段申し上げましたように、やはり社会的経済的事情あるいは政府の財政負担等との調和等をも考えなければならないというようなところで御答弁申し上げているところでございます。
  370. 木間章

    ○木間委員 どうも、弾力的にやっていきたい、建設大臣の方は先ほどの答弁とは少し、私ども先ごろ聞いた話の方向へ進んでおいでた、こう思うところでありますが、しかし、どうも私どもはやはり納得ができないわけであります。それはもちろん社会的必要性を認める、あるいは経済的なものも勘案しながら、こういうことでありますが、この社会的経済的には大変幅が広いと私は言わざるを得ません。そしてまた、本来これらの国民生活に直結する問題は法律事項でなければなりませんが、最近では政令事項になっております。それは一歩譲るといたしましても、私は、やはりこの問題についていま少ししゃっきりとした答弁をお願いしておきたいと思います。
  371. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  現段階では、先生明確にというお気持ちであろうかと思いますが、せっかく提案を申し上げておりますし、それ以上申し上げるということはいささかお許しを願いたいと思うわけでございます。
  372. 木間章

    ○木間委員 それでは、少し角度を変えてお尋ねしたいと思います。  本来、二十五年とか三十五年とかという長期ローンで三カ年間だけ金利を動かそうということは、あるいは電信電話、たばこ、国鉄料金、そういったものとは異なりまして私はなじまない、このように思うのであります。公庫を活用しよう、こういう国民の皆さんは、三年間待てばもとの金利に戻るんだ、あるいは、もし上がったこの三年間の中で融資を受けようとすれば、二十五年もので四万円、三十五年もので八万円の負担増になるわけでありますから、私は国民のいまの生活実態からいってそのことは当然だろうと言わざるを得ないのであります。三年間たってこの期間が切れたときにまたもとへ戻そう、こういうことでありますから、やはりいまここでこれは動かさないんだ、このような措置がされないと、国民の皆さんは三年間、結果的にはうちを持つということが延びるわけであります。  それから、大蔵大臣にお尋ねを申し上げたいと思いますが、先般報道なされたように、あるいは当分の間このようにしておく、そして、やがてはという二段階論をお考えになっておるのではないだろうか、私はやはりこのように思えてならないわけでありますが、大蔵大臣のお考えをいま一度お尋ねをしておきたいと思います。
  373. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 いま私が前に答弁したとおりなんですが、財政再建の問題と絡めて申し上げますと、財政再建期間中に、世界が非常に不安定な状態であって、金利の暴騰、暴落ということが絶対ないということも断定いたしかねます。したがって、財政再建期間中において財投金利が著しく上昇する、こういうような場合には住宅金融公庫貸付金利の根幹を含め、貸付金の社会的経済的必要性と財政負担との調和を図るための見直しを機動的に行う必要がある場合もあります。このためにも法定金利の弾力化ということは意味のあることでございます。そういう事態が来なければ大変うれしいことでございますが、そういうような場合もあるかもわからないというようなこともございまして、そういう場合にも対応できるようになっておるわけでございます。
  374. 木間章

    ○木間委員 長い期間の中にはいま大臣がおっしゃったような変化も私はなしとは言い切れないと思いますが、この法案の適用期間は三カ年間です。日本経済がどのように急成長いたしましても、あるいはマイナス成長になりましても、この三年間の中でそのような急激な変化というのはあり得るだろうか。私はやはりいまの御答弁ではなかなか理解ができないのであります。
  375. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは、ならないようにわれわれも十分努力をいたしますし、そうでなければならないと思っておりますが、世界の情勢というのは二けた金利時代、われわれはそういう中に巻き込まれないように必死にがんばっておるわけですから、しかしながら……(木間委員「そう、上げないようにがんばらなければいけない」と呼ぶ)それはもちろんがんばるわけですが、ともかく世界の経済はつながっておりますから、ですから、そういうようなことで……(木間委員「三年間だれもうち建てませんよ」と呼ぶ)うち建てないと言われましても、それは上げれば建てないかもしらぬけれども、上げなければ建てるかもしらぬわけですから、だから、上げるということを言っているわけじゃないわけでございまして、そういうことで、それはもうこの法律をつくって、上げれば建てないかもしらぬけれども、では上げられそうだ、早く建てるかという人もあるかもわからぬし、それはわからぬわけですよ。ですから、万一の場合のことも備えてこれは考えられておりますと言うだけであります。
  376. 金丸信

    金丸委員長 関連で、中村茂君。
  377. 中村茂

    中村(茂)委員 中村でございますが、同僚の木間委員の関連で若干質問させていただきたいと思います。  九月一日でございますけれども、午後一時から衆議院の第二議員会館の会議室で、建設省の丸山官房長に来ていただきまして、いま問題になっております行財政改革及び五十七年度のゼロシーリングに関係する建設関係についていろいろ説明していただいたわけであります。  その際、丸山官房長から、「行財政改革に関する一括法案の作成等について 昭和五十六年八月二十五日 閣議決定」この文書をリコピーにとって私どもに配付いたしまして、この中の「6 政府関係金融機関の法定貸付金利の弾力化」その「(2)前項の利率を政令で定める場合においては、当該貸付金の社会的な必要性と利子補給金等の財政負担との調和が図られるよう考慮しなければならないものとする。」これを説明いたしまして「社会的な必要性」ということについて説明がございました。第二臨調の第一次答申の原案の原案のときにはこの「必要性」ということはなかった。しかし頼んで入れてもらった。そして閣議決定でこの法案をつくる、この際、この「社会的な必要性」ということについて、根幹的金利は動かさない、ただし金利が暴騰した場合はこの限りでない、こういうふうに解釈している。  そこで、私の方から次の二点について質問したわけです。根幹的金利とはどういうことか。個人住宅貸付金利の五・五%である。それから、金利が暴騰した場合というのはどういうときか。予測はなかなかできないけれども、日本の経済事情からして三年の間に高金利時代が来るとは、私個人としてはそう思っていない。こういう説明がございました。これは私が質問して、丸山官房長がそういう説明をしたわけであります。ということになると、この「社会的な必要性」ということ、これは根幹的金利は動かさない、これは五・五%なんだ、こういうことです。  その後九月の二十九日に、全建総連という建設に携わっている労働者の皆さんと建設省へ行きました。それで、建設省の豊蔵住宅局長とお会いいたしました。私もそこへ立ち会いました。全く丸山官房長と同じ説明を受けました。そのときに私は、新聞で見ましたので、先ほど木間委員が大蔵大臣に質問いたしました、いわゆる金利を十一年後七・五にするという二段制を考えているということが大蔵大臣の写真入りで報道されました、本当にそういうことを考えているのか、こういうふうに聞いたところが、いや、どこからそういうものが出たか私は全然知りません、いまのところ根幹的金利というのは五・五%で、これはそう動かせない、こういうふうに考えています、こういうお話でございました。  その日に大臣に、社会党の要求についてお会いいたしました。大臣についてもこの金利問題、弾力化問題について私は質問いたしました。中村先生、そんなに心配するな、こういうふうにあなた言われました。  そういうふうに考えてみますと、建設大臣に答弁をお願いしたいわけですけれども、いま私がずっと申し上げたことが建設省の方針なのかどうか、私が言った内容が違っているのかどうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  378. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 ただいま御質問の中で私の名前が出ましたので、大臣の前に一言御説明申し上げたいと思います。  本法案におきまして、先生御承知のとおり第十七条第三項におきまして、公庫の融資に関しますところの社会的経済的必要性と財政との調和というようなことに配慮すべき旨が規定されておりますが、その具体的な運用につきましては、法制定後、政令を定める段階におきましてこの配慮事項を十分留意の上判断すべきものと考えております。したがいまして、私どもは、現在の住宅建設状況等々を考えてみました場合に、政令を作成する場合には十分慎重に配慮すべきである。そしてまた、根幹というのが仮に五・五%の個人住宅貸し付けということであれば、そういうものについて皆様方の御要望が非常に強い、一緒になってこれをひとつ何とか維持できるようにしたいということを申し上げたつもりでございます。
  379. 中村茂

    中村(茂)委員 私は、しさいにそのときにメモしたのをここで言っているわけであります。何かロッキード事件の裁判を聞いていれば、何がし運転手日記というのが出てくるわけですけれども、そういう中身と私は違うのです。非常に正確なんです、私の言うのは。ここでいろいろごまかしを言っているわけじゃないのです。  いま住宅局長から話がありましたけれども、私が行ったときも、根幹的金利、こういうのは五・五%だというふうに明確に言っているわけです。ですから、いま私がずっと言ってきた根幹的金利というのは五・五%のことを指すのか。社会的必要性というのはいまずっと私が言ったことを意味しているのか。いずれにしても建設大臣、あなたの部下が私どもにそういうふうに説明してきたわけですから、建設大臣の見解をお聞きいたします。
  380. 金丸信

    金丸委員長 斉藤建設大臣。簡潔にやってください。
  381. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  豊蔵局長、当事者から発言がありまして、それで尽くしていると思います。私はその言を聞いておらないわけではございますが、根幹的金利が五・五%を指すとか指さないとかいうことでなく、やはり住宅金融金利というものと国の行財政問題という環境との触れ合いというものをどのように政治的に配慮していくかというようなことで、法案についてはこうした表現をもってしていることと思います。  私は所管省として一番いいのは、願望としては住宅需要が非常に高いものでございますから、現状でやるのが一番よろしいわけでございますが、それよりもっと政治的課題として行財政改革ということに取り組んでおるわけでございますので、貸付金利いろいろとございましょう、そうした中において、中には見直されるものもあるかもしれませんけれども、とにもかくにも、一連一括法案としての中でやはり同じような形で進めさせていただくというようなことであろうかと思います。御理解いただきたいと思います。
  382. 中村茂

    中村(茂)委員 建設大臣の部下が私どものところに言ったことについては責任を持ちますか、持ちませんか。
  383. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  内容的な問題でございますので、まだ本人からそのときの事情等々を聞いておりませんので、先生御指摘の向きについて責任云々ということでなく、当然部下の発言については責任ある地位にございます。  なお、本人の発言等々をよく精査しまして対処させていただきたいと思います。
  384. 中村茂

    中村(茂)委員 これは、私は非常に重要な問題だというふうに思うのです。なぜ重要かといえば、これはもういま住宅建設について、ここ二、三年落ち込んでおります。よく考えてみると、住宅建設というものは住宅金融公庫が土台になって、それで家を建てようか。金融公庫の調査によりますと、住宅を建てる場合に、金融公庫の金をお借りして建てるという、その一軒家を建てた金融公庫の割合は大体二五%から三〇%、それが呼び水になって、それで自分の持っている金をそこに上積みをする。その上に、自分の勤めている厚生年金とかそういうところからまた借りて上積みして、そして何とか家を一軒建てる。しかし、それをやるのは何といってもこの五・五という住宅の個人貸し付けのこれが土台になっているわけです。それがこういう弾力化の問題が出て、その土台のやつがたとえどれだけでも上がるということになると、非常に個人的な負担が重くなるわけです。そのことを大臣は特におわかりですから、そこのところで言明しなくても、いまの住宅事情からして社会的必要性というのは、根幹的金利というのは五・五なんだ、こういうふうに私は建設省の説明を理解し、この問題についてはこれで打ち切ります、そういうふうに理解して。  そこで、私の考え方を申し上げるのですけれども、三年間の時限立法で今度の問題を取り上げている。根幹的金利ということで五・五が三年間そのままでいく、そういうことになると、何でこの問題をこの時限立法で取り上げたか、全然意味がわからない。  それから、先ほどから言っておりますように、住宅建設というものが非常に落ち込んでいる。そこのところへ持ってきて、この住宅金融公庫の金利をいじるということは、ますます住宅取得というものの意欲を損なってしまう。金融公庫の金利の弾力化、弾力化というふうに言いますけれども、いまでもこの前の改正によって五・五から六・五を上限とするというふうに若干の弾力化が行われているわけであります。先ほど丸山官房長が言いましたように、ただし金利が暴騰した場合は別問題だ。私は、ここ三年間にそう高金利の時代が来るとは思いません。  そういう中で、特に三年間の弾力化という問題を考えてみると、郵便料金の値上げなり国鉄の運賃の値上げというのは、上げればそれで済みます。しかし、三年間だけ金利を上げて——あと二十年なり二十五年を返していくという長い返済期間のあるのを三年間だけ金利を上げて、この法律が終わればいまの金利にまた下がるわけですから、そういうものは全く三年間の時限立法になじまないというふうに私は思うのです。出しても大して効果のないもの、しかもなじまないもの、こういうものについては直ちに撤回するよう強く要求して、関連質問を終わります。
  385. 木間章

    ○木間委員 この問題でいま一つお尋ねをしておきたいと思います。  業界紙の一部あるいは一般紙の一部に、大蔵省と建設省との間に覚書があるやに報道されておる記事を読んだのでありますが、両大臣、どなたからでもいいですから、そういった覚書が存在するのかどうか。あれば御提示をいただきたいと思います。
  386. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  覚書、ございません。聞いておりません。
  387. 木間章

    ○木間委員 次の質問に入らしていただきます。  この金利に関連いたしまして、たとえば住宅金融公庫や開発銀行からデベロッパーに融資をされておりますが、この金利に手をつけられていません。この理由をまずお尋ねしたいと思うのですが、大蔵大臣、お願いします。  住宅金融公庫や開発銀行へのデベロッパーに対する融資について金利がそのままになっております。
  388. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 銀行局長から答弁させます。
  389. 宮本保孝

    ○宮本(保)政府委員 お答え申し上げます。  住宅金融公庫の民間デベロッパーに対します貸付金利は、現在政令によって定められておるわけでございますけれども、これが現在八・二五でございます。これは住宅金融公庫の金利の中では最高水準でございまして、これ以上の金利を設定することはむずかしいという状況にございます。  また、開銀の貸付金利でございますけれども、これは現在、民間デベロッパーに対しましては基準金利の八・四が適用されておりまして、これも一応最高金利になっておるわけでございます。  したがいまして、現在の金利体系のもとではこれ以上引き上げられませんので、一応安定しておるということであります。
  390. 木間章

    ○木間委員 次の質問に入らしていただきますが、住宅金融公庫の利子補給の問題でございます。  従来、この利子補給につきましては義務的経費として一般会計から全額補てんをしておりましたが、近年、財政事情悪化という観点からでしょうか、いよいよこの昭和五十六年は全額をつけるわけにはいかない、不足分は借入金で処理をしなさい、こういったことからでしょうか、財投に一部頼ることになりました。昭和五十六年では六百六十一億円でありますし、五十七年度はさらに大幅に上がるやに聞いておるのであります。しかもこの期間は五カ年間だということも聞くわけでありますが、いままで国鉄や米の問題などで公庫の運営に大変大きな影響をもたらしてきました。極端に言いますと、住宅金融公庫は他の団体と違いまして、経営努力や合理化をやろうといってもやりようがないわけです。結果的には金利に手をつけざるを得ない。昨年末にそうした財投からの繰り入れがなされたというのは、どうも今日問題になっておりますこの金利がすでに計画の中におさまっておったんじゃなかろうか、このように私は考えざるを得ないのであります。  国民に迷惑のかからない一般会計からの繰り入れを約束いただきたいと思いますが、大蔵大臣、いかがなものでしょうか。
  391. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一般会計からいままで入れてまいりましたが、非常に財政事情が厳しいために、五十六年度の住宅公庫の補給金の要補給額は、一般会計から二千七百八十億円という莫大な金額になるわけです。それを全部一般会計で出せない。したがって、五十五年度予算額千九百五十四億円を上回る部分の八百二十六億円を五十五年から六十年の五年間で措置するということにしたわけであります。五十六年度における補給金の一部繰り延べは六百六十一億円、御承知のとおりでございます。この収支差額については一般会計から補てんするという考えは持っておるわけでございますが、五十七年度以降の措置額は毎年度ごとに国会の御審議をいただくつもりであります。また、五十七年度の要求につきましては、安易な方法はとらないで対処したいと考えております。  いずれにいたしましても、今後の予算編成の過程で財政事情等を踏まえ、よく検討いたします。
  392. 木間章

    ○木間委員 よく検討するということは、これから一般会計からの導入をやっていくんだ、こういうことで理解してよろしいでしょうか。
  393. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 財政事情を踏まえ、よく検討さしていただきます。
  394. 木間章

    ○木間委員 と申し上げますのは、先ほども申し上げたように、住宅金融公庫の今日果たしておる役割りは大変大きい。  たとえば数字を申し上げますと、昨年度末で終わりました第三期五カ年計画の実績を見ておりますと、公営住宅では、五カ年計画が四十九万五千戸、そして実績は三十六万戸でした。進捗率は七二%。公団では、三十一万戸の計画に対しまして実績は十七万戸、達成率は五四%です。ところが、公庫住宅を見ておりますと、計画では百九十万戸、実績では二百五十二万戸です。進捗率は一三二%です。つまり、今日の住宅計画は、公庫が大変なウエートを占めておるというのは数字にも明らかなとおりであります。  したがいまして、これがどんどん財投資金等の投入がなされてきますと、先ほども申し上げましたように、いま大変国民の皆さんが困っております国鉄の問題あるいは米の問題、健保の問題等等に私はまたまた——いまきちっと財政改革をやるんだ、再建をやるんだとおっしゃっておりながら、その裏から水が漏れていくということを憂えるわけであります。ぜひ、そういった点で、この心配がなければ私もまた国民の皆さんも大変安心ができるわけでありますが、重ねて大蔵大臣のいまの決意をひとつお願いを申し上げたいと思います。
  395. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 住宅公庫の果たしておる役割りが非常に大きな意義を持っておるということは私も率直に認めておりますし、今後とも財政事情の許す限り、それは住宅政策には全面協力いたしたいと考えております。
  396. 木間章

    ○木間委員 ぜひお願いを申し上げたいと思います。  次に、住宅宅地関連公共施設整備促進事業について、建設大臣、大蔵大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。  この制度の創設は、わが党がかねてから強く主張を申し上げ、そして政府もそのことに踏み切られてできた制度であります。いまそれぞれ関係者から大変喜ばれておる制度の一つでもあろうかと思いますが、とは言っても、効果がいまひとつはっきりと上がっていないのです。その根拠は、まず法定制度になっていない、法律補助になっていない、こういうことであります。  いま財政再建を真剣に考えておいでになる政府の関係者にとりましても、やはりこれはこのままでいいのかどうか。私はこの機会に法律補助にすべきだと思いますが、まず建設大臣のお考えをお聞きいたします。
  397. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 お答えいたします。  御案内のように、関連公共施設は予算補助として別枠で行っているところでございます。この事業の実施は、道路法、河川法、下水道法等おのおのの制度の決めるところにより行われておりまして、本制度のこのような性格からして、いま特別に法律により制度を定める、そこまでの必要はないと考えております。執行に当たっては適切な活用を図ることによって十分目的は達せられるのではなかろうか、このように考えているところでございます。
  398. 木間章

    ○木間委員 いまの質問に対して、大蔵大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
  399. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 建設大臣の発言を支持します。
  400. 木間章

    ○木間委員 私は、いま総理以下皆さん方も財政再建をやっていこう、それにはきちっとした法律制度に基づいて執行もやっていこう、こういうことで先般来から論議が続けられておると思いますが、いま両大臣の答弁では私は納得ができません。それは、金額も大変膨大なものになっておる。支給されておる関連公共事業には、いろいろ資料もいただいておるわけでありますが、住宅局全体の予算を見ておりますと、五十六年度は七千六百億円です。五十七年度は少し伸びるやにも聞くわけでありますが、その中で公営住宅の関係で三千億円。これに対しまして、いま申し上げております住宅宅地関連公共施設整備促進事業一千億が使われておるのであります。  私は、こういうものこそ法律補助にしなければ、そしてその使途を明確にして、なおかつ有効に運用すべきだと考えております。行管庁長官のお考えをお尋ねしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  401. 中曽根康弘

    中曽根国務大臣 先ほど来の建設大臣あるいは大蔵大臣の発言を支持いたしたいと思います。
  402. 木間章

    ○木間委員 どうも行革を真剣にやっていこうという行管庁長官のお考えにも似合わない答弁をいただいて、私は不満であります。  そこで、総理にお尋ねをしたいと思うわけでありますが、この一千億円というのは国民の血のにじむような税の中からの支出であることは、総理もよく御存じのところであります。ですから、私は、先ほどから言っておりますように、法的に根拠を持たない、そういった支出というのは一体いかがなものか。私は、住宅建設関連に関するものである限り、先ほどから言っておりますように、多くの国民の皆さんから住宅行政に対して喜ばれておる側面を持っておるわけでありますから、やはり国民の期待に反しないように、いまこそはっきりと明文化されるべきだろう、こう考えわけでありますが、総理の御決意のほどをお尋ねしておきたいと思います。
  403. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先生のお話ですと、一千億円というのは非常に国民の血のにじむような金であるのだから、もっと明文を持たしたらいいじゃないかとおっしゃることでございますが、予算のお金は全部国民の税金に関係のあるものでございまして、法律で決まってなくとも重要な支出もたくさんございます。補助金等でも、たとえば十四兆のうち十一兆何がしが法律で決まっておりますが、二兆数千億円は法律で決まっておりません。それでも、非常に重要な支出のものも中にはございます。したがいまして、法律をふやすだけがいいというばかりにもなかなかいかないわけでございまして、一方、法律も減らせと、行革関連では法律がなくてもいいものはなるべく法律をなくしてやれというような声もある時世でもございますので、この際は法律をふやすということでなくて、運用でやらしていただきたいと思っております。
  404. 木間章

    ○木間委員 どうも私は納得できません。納得できる答弁をお願いしたいのであります。  私どもは、いろいろな国民の輿望を担って政府各省にそれぞれ要請をしてきておるところでありますが、法律制度にないからいけない、そういったことがほとんど大半の状況です。くどいようでありますが、私に納得できる答弁をお願いしたいと思いますが、委員長、いかがなものでしょうか、ちょっととりなしていただければ幸いかと思いますが……。
  405. 金丸信

    金丸委員長 渡辺大蔵大臣、納得のいくように答弁を願います。
  406. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私といたしましては、法律をつくらなくとも、この住宅宅地関連公共施設整備促進事業というのは毎年予算が非常にふえまして、喜ばれておるところがふえているのだと思うのですよ。三百億、六百億、九百億、一千億と、こんなに高度成長のものは、同じく公共事業据え置きという中でこれがふえているのですから、どこかは減っているということですからね。ですから、私は、こういうものは必要があるからふえておることであって、法律をつくらなくとも、必要なものはやはりその中で使うということになっておるわけですから、まあこの際、まげて御納得のほどをお願いいたします。
  407. 木間章

    ○木間委員 何遍聞いてもよくわからないのです。私は、新たにここで、そうした制度を設けるべきだ、こういう主張を申し上げておるのではありません。いませっかくあって、そしてそれぞれが有効に作動いたしまして、業者なりあるいは付近住民の皆さんなり、自治体の皆さんにも喜ばれておる制度である、すでになじんできておるというのも大臣お認めのとおりであります。だから、これを法制化しろ——法律をつくったから行革に反するものではない。むしろそういったものを明確にすることによって国民の皆さんに喜んでもらえる、こういう性格のものじゃないだろうか。いまここで、さらにこれこれしかじかの金額の上積みを申し上げておるのでは決してありませんから、そういった角度からの納得のいく答弁をお願いしたいのですが……。
  408. 斉藤滋与史

    ○斉藤国務大臣 御案内のように、住宅宅地関連公共施設整備促進事業は、良好な住宅及び宅地の供給を特に促進するため、住宅宅地事業に関連して必要となる道路、河川、下水道等公共施設の整備事業に要する費用について、予算上別枠で一括計上して、通常の公共施設整備事業に加えて別枠で補助を行うものでありまして、事業の実施は道路法、河川法、下水道法等、先ほど私が申し上げましたけれども、おのおのの制度に定めるところにより行われておりますので、本制度を十分に活用していくならば、ここで法律ということでなくても、十分執行が厳格に行われるものと考えているところでございます。
  409. 木間章

    ○木間委員 この問題につきましてはまた別の機会にも申し上げたいと思いますが、いま大臣がおっしゃられた公共事業の中に土地対策が入っておりません。今日、土地対策は、住宅事業にとってもきわめて環境が悪化をしておりますし、それは国やあるいは地方自治体がやろうとする公共事業にもきわめて大切な問題になっておりますから、私はやはり、先ほどから言っておりますように、使途を明確にして土地対策も入れるような、そういったようなこと等も将来考えていただきたいと思っております。  あとまだ七分ありますから、次の質問に入ります。  住宅建設第三期五カ年計画でのお話は先ほど申し上げたわけでありますが、その中でも民間住宅が大変落ち込んでおる、公共住宅もそうでございますが、そういった特徴があらわれております。民間住宅の落ち込みは、土地の値上がりやあるいは——いまこそ土地対策を強力に進めるべきだろう、こう思っておりますが、いま一つは、ローンの裏資金対策を十分に行う必要があるのではなかろうか、このように私は考えておるわけです。  たとえば資料によりますと、すでに住宅を持っておる皆さんの中で、自営業者は六百三十七万世帯、七八・八%の持ち家率でありますが、雇用者の場合は一千百六十一万世帯、五四%という結果であります。したがいまして、今後マイホームを持とう、こういう希望の人たちは、この勤労世帯に集中をしてくるだろう、私はこう思うわけです。  そこで、一つ提案をしながらお尋ねをしたいのでありますが、厚生年金の還元融資をそういった面でもっと充実をしていただいたらどうだろうか、こう思うわけでありますが、厚生大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
  410. 村山達雄

    ○村山国務大臣 厚生年金の還元融資は、御承知のように、最近では新規預託分のもう四〇%になっているわけでございます。それが年金福祉事業団を通じましてどんどん貸し付けられておりまして、五十四年度では約二〇%増、五十五年度ではやはり六〇%増、非常に伸びております。貸付実績から申しましても、件数から申しましても、また金額からいいましても、大体それぐらい伸びているわけでございますので、今後とも努力してまいりたいと思っております。
  411. 木間章

    ○木間委員 いま一つの例で申し上げてみたいと思いますが、住宅金融公庫の最近の特徴の一つに、返済延滞事故が激増しております。つまり、融資を受け、月々返済に努力をされておるのでありましょうが、返済ができない、そういったことであります。五十四年度は三万一千七百五十三件、五十五年度は四万一千七十七件、これは全体の〇・九%ないし一%を超える数字であります。単年度に直してみますと七%にもなっておりまして、いよいよ大変だということが、数字の上では出てきておると思います。引き続いて今年度はどうだろうか、尋ねてみましたが、まだ集計がなされていないような状況ですが、残念ながらふえておるという答弁が返ってきておるのであります。やはり裏資金を解決してあげる、つまりローン地獄から解放してあげる、これが今後の住宅政策だろう、住宅政策の中心に置かなければならない、こう私は思っておるのであります。  ちなみに、この住宅金融公庫法の誕生いたしました昭和二十五年の会議録を取り寄せて調べてみました。いまとは経済状態あるいは社会構造、格段の開きがあるわけではありましょうが、当時の貸付金額の限度等も調べてみますと、貸付金の一戸当たりの金額は住宅の建設費の七割五分に相当する金額を限度とする、七割五分まで融資をしてあげましょう、そして自己資金は二割五分でありますよ、このことを言っておるわけでありまして、当時は大変温情に満ちた政治がなされた、私はこう評価をするわけであります。  ところが、最近は、これもいろいろのデータが出ておるわけでありますが、自己資金率は大変なものだ、そしていよいよローン地獄にはまってしまう、こういうことでありますから、私は労働大臣に、やはり枠をふやすとか、そういった面の御努力をお願いしたいと思いますし、そういった点からいま一度お尋ねをしてみたいと思いますが、いかがなものでしょう。
  412. 金丸信

    金丸委員長 労働大臣がおりませんが、どうしましょうか。
  413. 木間章

    ○木間委員 どうも失礼いたしました。厚生大臣でした。
  414. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま還元融資額の全体の約五割、五十六年度予算でいいますと七千七百億がこの勤労者の住宅建設に充てられているわけでございます。そういった意味で、総額からいいますと非常に多くのものをやっておりまして、いま十分な資金量を持っておるわけでございます。  いまおっしゃる点が、もし一戸一戸の貸付限度額を上げろという意味でありますと、これは全体の需要が非常にふえておりますので、戸数の方で考えるかあるいは一つの貸付金額の額で考えるか、この辺は非常にむずかしいところでございますので、まあ全体としては、先ほど申しましたように六〇%、二〇%という割合で、そして還元融資の約五割を使っておるわけでございますので、金額としては相当われわれはがんばっているつもりでございます。その辺の量か単価かという問題は、慎重に検討させてもらいたいと思います。
  415. 金丸信

    金丸委員長 木間君、時間が来ましたので簡潔にお願いします。
  416. 木間章

    ○木間委員 厚生大臣の御努力もよくわかりますし、一方、住宅金融公庫では最近は無抽せんの時代に入っておりますから、ぜひ枠の拡大もお願いを申し上げたいと思います。  土地問題にも触れたかったのでありますが、時間が迫っておりますので、また次の機会に譲りまして、ここで私の質疑を終わらせていただきたいと思います。
  417. 金丸信

    金丸委員長 これにて、横山君、木間君、中村君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十四日正午理事会、午後一時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四分散会